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1968-04-04 第58回国会 参議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月四日(木曜日)    午前十時二十五分開会     —————————————    委員異動  三月二十九日     辞任         補欠選任      大森 久司君     園田 清充君      山内 一郎君     堀本 宜実君  四月一日     辞任         補欠選任      鈴木 一弘君     浅井  亨君  四月四日     辞任         補欠選任      渡辺 勘吉君     横川 正市君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         和田 鶴一君     理 事                 高橋雄之助君                 任田 新治君                 川村 清一君                 中村 波男君                 宮崎 正義君     委 員                 青田源太郎君                 岡村文四郎君                 櫻井 志郎君                 田村 賢作君                 温水 三郎君                 野知 浩之君                 堀本 宜実君                 森 八三一君                 山崎  斉君                 武内 五郎君                 達田 龍彦君                 鶴園 哲夫君    国務大臣        農 林 大 臣  西村 直己君    政府委員        農林政務次官   日高 広為君        農林大臣官房長  檜垣徳太郎君        農林省農政局長  森本  修君        食糧庁長官    大口 駿一君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法  の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法案(内  閣提出、衆議院送付) ○農林水産政策に関する調査  (昭和四十三年度農林省関係の施策及び予算に  関する件)     —————————————
  2. 和田鶴一

    委員長和田鶴一君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  本日、渡辺勘吉君が委員辞任され、その補欠として横川正市君が選任されました。     —————————————
  3. 和田鶴一

    委員長和田鶴一君) 北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案及び南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法案を一括して議題といたします。  まず、両案について提案理由説明を聴取いたします。西村農林大臣
  4. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法は、北海道における寒冷のはなはだしい特定畑作地域寒冷地畑作振興地域として指定し、この地域内の農業者営農改善計画を立て、これに基づいてその営農改善をはかろうとする者に対し、農林漁業金融公庫が必要な資金貸し付けることにより、当該農業者経営の安定をはかることを目的とするものでありまして、昭和三十四年に制定されたものであります。  この法律は、二回にわたる改正を経て今日に至っておりますが、この間における北海道畑作農業を取り巻く諸条件変化等にかんがみ、かつ、昭和四十一年春におけるこの法律改正の際の本委員会における附帯決議の御趣旨に沿い、政府におきましては、昭和四十一年度以来鋭意対策調査を実施し、本制度につきまして種々側面から検討を加えてまいったのであります。  この調査の結果によれば、寒冷気象条件に加えて排水不良で、かつ、土壌の物理的、化学的性質等の劣悪な畑が広く分布している寒冷地畑作振興地域において、安定的な農業経営育成を総合的かつ効率的に行ならためには、現行融資措置及び一般の土地改良事業のみでは必ずしも十分とは言い難い点があるのであります。そのため、北海道寒冷地畑作営農改善資金貸し付けの種目を拡充し、かつ、貸し付け条件改善することにより、本地域寒冷気象条件に積極的に適応した営農確立をはかるとともに、新たに畑地における劣悪な条件改善し、営農基盤を整備するための土地改良事業を総合的に実施するほか、家畜用水等を確保するための営農用水事業を実施することとしたのであります。 本法律案は、これらの対策らち立法措置を必要とする営農改善資金融通制度改善について所要措置を講じようとするものであります。  以下この法律案要旨につきまして御説明申し上げます。  改正点の第一は、農林漁業金融公庫貸し付け営農改善資金として、新たに乳牛もしくは肉用牛購入に必要な資金を加えることであります。  第二は、営農改善資金貸し付け利率据置期間中は年四分五厘以内、償還開始後は年五分以内とし、据置期間につきましても八年以内に改めることであります。  第三は、営農改善資金貸し付け資格認定申請期限を五カ年延長して、昭和四十八年三月三十一日とすることであります。  以上が、本法律案提案理由及びその主要な内容でございます。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。     —————————————  次に、南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法案について、その提案理由を御説明申し上げます。  南九州における畑作農業は、夏期の多雨及び特殊な火山噴出物の広範な分布等はなはだしく不良な自然条件のもとで行なわれているため、その農業生産力はきわめて低く、農業所得は恒常的に低位な状態にとどまっているのであります。  政府といたしましては、かねてから所要対策を講じてまいりましたが、去る昭和四十一年春本委員会における北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案の御採決の際に行なわれました附帯決議の御趣旨に沿い、昭和四十一年度以来対策調査を実施し、南九州畑作農業振興についての基本的な方策のあり方について種々側面から検討を加えてまいったわけでございます。  この調査結果によりますと、南九州の劣悪な気象条件土壌条件等を克服して安定的かつ合理的な畑作営農確立をはかるためには、地域営農条件に適応しつつ高収益作目積極的導入によって作目転換をはかる必要のあることが指摘されるのであります。しかしながら、南九州畑作農家は、その生産性及び農業所得の低さから資本蓄積はきわめて低い現状にありますので、営農改善を進めるためには、必要な資金を総合的かつ長期低利貸し付け資金融通制度確立をはかる必要があります。また、劣悪な土壌条件に対処し、かつ、合理的な農業経営確立をはかるためには、防災のための農地保全事業とともに営農近代化のための圃場整備事業畑地かんがい事業等を行なうことも必要であります。  したがいまして、今回策定いたしました本地域に対する対策は、農林漁業金融公庫による畑作営農改善資金融通と、農地保全事業を中心とする土地改良事業総合的実施等をその根幹としているわけでございますが、このうち畑作営農改善資金融通制度につきましては、特別の立法措置を必要といたしますので、ここに御提案申し上げたわけであります。  以下この法律案要旨につきまして御説明申し上げます。  まず第一に、農林大臣は、関係県知事からの申請に基づき、南九州地域のうち、政令で定める基準に適合する畑作地域南九州畑作振興地域として指定することとしております。  第二に、農林漁業金融公庫は、南九州畑作振興地域内の農業者で、営農改善計画を立て、これに基づき営農改善をはかろうとする者に、必要な資金長期低利条件で総合的に貸し付けることとしております。  第三に、営農改善資金貸し付けを受けようとする者は、営農改善計画作成して、一定の期限までに関係県知事に提出して、その認定を受けなければならないこととしております。  第四に、関係県知事指導等に関することを規定しております。  以上が、この法律案提案理由及びその主要な内容でございます。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますようにお願い申し上げます。
  5. 和田鶴一

    委員長和田鶴一君) 次いで、両案の補足説明及び資料説明を聴取いたします。森本農政局長
  6. 森本修

    政府委員森本修君) 北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由説明を補足して御説明申し上げます。  本法律案を提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由説明において申し述べたので、以下その内容概略を御説明申し上げます。  改正点の第一は、営農改善資金貸し付け対象事業改正に関することでありまして、第三条の改正であります。  北海道寒冷地畑作振興地域における安定的な営農方式は、主として酪農または酪農を組み入れた経営であると考えられるのでありますが、従来の営農改善資金には、家畜購入に必要な資金が含まれておらず、農業者経営を一体として改善するための資金制度としては、必ずしも十分でないうらみがあったのであります。そこで、家畜購入に必要な資金もこれに含めることとし、今回、これを貸し付け対象事業として追加することといたしております。  第二に、営農改善資金貸し付け条件改正に関することでありまして、第四条の改正であります。  貸し付け利率につきましては、本資金効率的利用を促進して営農改善をさらに進め、当該地域の諸条件に適応した安定的な経営確立するためには、多額の資金が必要とされ、金利負担の軽減をはかる必要があるので、現行利率年五分五厘以内を据え置き期間中は年四分五厘以内、償還開始後は年五分以内に改善し、また、据え置き期間につきましても、現行六年以内を八年以内に改めることといたしております。  第三に、営農改善資金貸し付け資格認定申請期限延長に関することでありまして、第六条第三項の改正であります。  この法律に基づき農業者営農改善資金貸し付けを受けようとするときは、所要資格認定を受けることとされており、その申請期限は、当初、昭和三十九年三月三十一日とされておりましたが、その後、二回にわたる延長を経て昭和四十三年三月三十一日までとなっております。  今回は、営農改善資金内容等を改定することとしたことにかんがみまして、この資格認定申請期限をさらに五カ年延長して昭和四十八年三月三十一日とし、この間に農業者経営の安定をすみやかに達成させることとしております。  以上をもちまして、この法律案提案理由補足説明といたします。     —————————————  南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法案につきまして、提案理由説明を補足して御説明申し上げます。  本法律案を提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由説明において申し述べたので、以下その内容概略を御説明申し上げます。  第一は、この法律目的で、第一条に規定しております。  この法律は、南九州地域のうち、夏期における降雨量がきわめて多く、かつ、特殊な火山噴出物でおおわれている特定畑作地域南九州畑作振興地域として指定し、その地域内の農業者営農改善計画を立て、これに基づきその営農改善をはかろうとする者に、農林漁業金融公庫が必要な資金長期かつ低利貸し付けることにより、その地域における農業者経営の安定をはかることを目的としております。  第二は、南九州畑作振興地域指定に関することでありまして、第二条に規定しております。  農林大臣は、関係県知事からの申請に基づき、南九州地域内で五月から七月までの降雨量がきわめて多く、かつ、特殊な火山噴出物でおおわれている畑作地域政令基準に適合するものを、気象条件その他の自然的、経済的条件の類似する地域ごとに、南九州畑作振興地域として指定することとしております。  なお、南九州地域とは、宮崎県及び鹿児島県の区域をいうものとしております。  第三は、営農改善資金貸し付けに関することでありまして、第三条から第五条までに規定しております。  農林漁業金融公庫は、南九州畑作振興地域区域内の農業者営農改善計画を立て、これに基づき営農改善をはかろうとする者に対し、営農改善に必要な資金を総合的に貸し付けるものとしております。  営農改善資金としては、土地改良主務大臣指定施設果樹植栽もしくは育成茶樹もしくは桑樹植栽及び乳牛もしくは肉用牛購入のための資金が総合的に貸し付けられることとなっておりまして、その貸し付けの場合の利率据置期間中は年四分五厘以内、償還開始後は年五分以内、償還期間据置期間を含めて二十五年以内、据置期間は八年以内において、それぞれ農林漁業金融公庫が定めるものとしております。  第四は、営農改善計画作成及び認定に関することでありまして、第六条及び第七条に規定しております。  本資金貸し付けを受けようとする者は、営農改善計画作成して、本資金貸し付けを受けることが適当である旨の関係県知事認定を受けなければならないこととしており、その営農改善計画内容及び関係県知事認定要件を規定しております。  なお、この認定申請は、昭和四十八年三月三十一日までに行なうものとしております。  第五は、関係県知事指導等に関することでありまして、第八条に規定しております。  本資金貸し付けにつきましては、農業者営農改善計画作成またはその達成を容易にするため、指導を強力に行なう必要がありますので、関係県知事指導等につき必要な規定を設けております。  以上をもちましてこの法律案提案理由補足説明といたします。     —————————————  御配付申し上げました関係資料の要点を御説明申し上げます。  北海道のほうから申し上げますと、二ページをごらんいただきますと、北海道畑作地域自然条件の特徴的なことをここに掲げてございます。  一番目は気象条件でございまして、五月から九月までの積算気温、それから日最低気温五度未満の日数というのが一つの作物の成育にきわめて関係の深い気温条件でございますが、従来から指定要件によりますと、積算温度は二千五百以下、それから最低気温は二百日以上というふうなことでやっておりますが、点線以上のところは大体そういう要件にはまるような気象条件になっております。  それから二番目には、土地関係でございますが、畑面積が多いということは当然でございますが、その中でも排水不良の畑の面積内地等に比べてきわめて多いということが特徴でございます。ここにございますように、北海道では一番右の行にありますが、四二・五%が排水不良畑割合であります。都府県では四・二%というのが下から二段目に出てございます。  それから三ページ目の農用地状況でございますが、これは一番下の欄を見ていただきますと、畑及び牧野の率が北海道では七九%、約八〇%に達する、都府県平均は四〇%ということで、畑・牧野率がきわめて高いというのが北海道特色でございます。  それから四ページにまいりまして、農家状況でございますが、農家状況の一番まん中の欄に一種農家比率が出ておりますが、下のほうに構成比がございまして都府県が六八%、北海道が七九%ということで、一種農家割合都府県よりもかなり高いということであります。それから下のほうにまいりまして、経営耕地規模別農家数、大体モードについては右の欄にございますように、三町から五町——水田が入っておりますからこういうことになりますが、三町から五町程度というのがモードになっておるかと思います。そういう規模別状況でございます。  それから五ページのほうには、経営型態別農家数がございます。これをごらんいただきますと、二段目の畑作、これが全道の欄を見ていただきますと、二八%、それから一つ飛びまして酪農が一四%、それから混同、これは畑作経営でありますけれども七・六%というふうな経営、これを三つ足しますと大体五〇%、半数に達するわけでありまして、畑作型態経営農家数が比較的多いということが出ております。以下地帯別にありますが、これは省略いたします。  それから六ページにまいりまして、主業農家畑地率別戸数割合が出ておりますが、これも畑地率五〇%以上が六七%、七〇%以上が五八%という状況で、都府県よりも画然と開いておる状況であります。  それから七ページにまいりまして、これは作付構成であります。右の欄に都府県北海道と比較いたしました構成が出ておりますが、特徴的なことは、四番目のバレイショ都府県に比べて比率としては高い。それからその一つおきまして豆類がこれまた都府県に比べて高い。それから飼肥料作物構成がきわめて高いというのが北海道特色であります。逆に野菜なり果樹なり、これは御案内のように都府県に比べて構成割合が低いというような作物構成になっております。  それから八ページ畑作物の十アール当たり収量とその変異係数でありますが、変動率でありますが、特徴的なのは右のほうの変異係数、最近の十年間の平均でありますが、大豆なりアズキなりの変異係数がきわめて高い、つまりきわめて不安定であるということを示しております。なお、下のほうにありますてん菜なり牧草なりは逆に安定度が高いというふうな数値が出ております。  それから九ページ地域別農業生産指数ということで、これも安定度を示すわけでありますが、一番下の欄を見ていただきますと、北海道は一一・九というふうな変動係数を示しております。全国は三・六ということで、これまたこの面から見ても不安定度がきわめて大きいということであります。  それから十ページ農家経済状況でありますが、一番上の欄の平均を見ていただきますと、まん中辺に農家所得というのがございます。北海道都府県も大体七十六万円程度ということで農家所得としてはほぼ同じでありますが、一番左の欄の農業所得割合としては北海道がきわめて多く、逆に農外所得が低いというのが都府県に比べて農家経済特色であろうかと思います。なお右から二番目の固定資本額内地よりもずっと高い、つまり金のかかる農業であるということを示しておるかと思います。一番右はその資本設備に対する能率でありますが、能率は、金がかかるわりあいに都府県よりも若干落ちるというふうな数字が出ております。  それからその次のページへまいりまして、これは畑作振興地域地帯区分でありますが、これは省略をいたします。  それから十三ページへまいりまして、認定見込み戸数、ここにございますように、大体の予定といたしましては五年間に一万二千五百戸を認定してまいる、年々二千五百戸ということで均等にやってまいりたい。初年度の資金ワクとしてはとりあえず十五億ということで公庫で募集いたしております。  最後のページへまいりまして、北海道の従来のマル寒資金実績でございますが、一番左の欄の一番下に九千五百二十二という数字がございます。これは三十三年以来の合計の認定戸数であります。なお、四十二年度は約千二百戸の認定予定されておりますので、それを合わせ約一万七百戸の認定がされる予定になっております。なお、金額はここにございますように貸し付け決定としては四十九億、その内訳主務大臣指定が四十四億ということでその割合が圧倒的に多いというのが貸し付けの従来の実績でございます。     —————————————  次に、南九州のほうを申し上げますと、一ページのほうは南九州自然条件特色でございますが、これは五月から七月までの平均降水量というのが他の地域に比べてきわめて多いというのが特色でありまして、大体千二、三百ミりということであります。内地の主要な農業地帯平均的な降水量は六百ミリぐらいでありますから、それに比べて倍以上というのが自然条件特色でございます。  それから二ページから三ページへまいりまして、土壌状況でありますが、上欄の左から三行目にございますが、宮崎鹿児島を含めまして全体の畑地域の中で平均をいたしますと六六%が不良な特殊土壌におおわれているということでございます。その内訳は右のほうにお示しをしております。それから下のほうは全国のそういった特殊土壌分布状態に対して南九州はどういう割合を占めるかということでございまして、一番右の欄をごらん願いますと、全国を一〇〇といたしますと南九州は約八五%ということで、全国特殊土壌の大部分がこの南九州に集まっているということでございます。  それから四ページへまいりまして、農用地状況でございますが、これも一番下の欄をごらん願いますと、畑・牧野率南九州が六〇%、それから都府県が四〇%ということで、典型的な畑作地帯である。  それから、五ページへまいりまして、農家状況でありますが、都府県よりも全体の戸数のうちで農家割合が大きい。要するに、一種農業地帯であるということであろうかと思います。それから、下の欄にまいりますと、一種農家、二種農家状況がございますが、まん中のほうに都府県が六八%、一種農家比率であるのに対して、南九州は五九%、むしろ二種農家割合全国よりも高いということで、北海道とは逆な現象を示しております。  それから、六ページへまいりまして、経営耕地規模別農家数でありますが、これをごらんいただきますと、南九州のほうは〇・五ヘクタール未満都府県よりも多い、いわゆる零細経営が多いということを示してございます。それからその下のほうは、経営型態別状況でありますが、これも右のほうをごらんいただきますと、上から五欄目に、カンショ、バレイショ豆類、雑穀というのがございますが、そういうものをつくっておる農家都府県よりも多い。それから、もうちょっと下へまいりますと、工芸作物、これはタバコなりなたねなりお茶なりということでございますが、そういう農家も多いということでございます。逆にその上の二つの欄、野菜なりあるいは果樹なりをつくっておる農家は、都府県に比べて比較的少ないというのが経営型態別特色であります。  それから、七ページへまいりまして、農家畑地率五〇%以上が南九州は六一%、七〇%以上が三五%ということで、これまた畑作農家比率がきわめて多いということを示しております。  それから八ページへまいりまして、作物作付状況でございますが、これも構成比のところでごらんいただきますと、三行目イモ類が二二%ということで、都府県に比べて構成割合が高い。先ほどと同じで工芸作物も高いというのが特色でございます。逆に野菜果樹構成割合が低いという形になっております。  それから九ページへまいりまして、作目別農業生産額、これは先ほどの反映でございますが、イモ類工芸作物比率都府県よりも格段と高いということになっております。米も若干つくっておりますが、当然都府県よりも構成比率が低い。それから、野菜果樹構成割合が低いというのが特色でございます。  それから十ページへまいりまして、農業生産性をあらわしております。これも比率のところで見ていただきますと、十アール当たり生産額、つまり土地生産性でありますが、全国を一〇〇といたしますと七九%、八割弱の土地生産性である。それから労働生産性は七二%ということで、なおそれよりも劣っておるというふうな対比でございます。  それから十一ページのほうは生産性伸び方でありますが、一番下から二欄目を見ていただきますと、二欄目の右のほうに八〇%、七一%という数字がございます。八〇%というのは三十年から三十二年ぐらいの状況であります。全国を一〇〇として八割というふうな土地生産性でありましたが、三十八年から四十年ぐらいになりますと、七一%ということで全国に比べて土地生産性の伸びが低い、つまり停とんの状況を示しております。労働生産性は低位の状況でパラレルに移動しておる、七三から七二。  それから十二ページのほうは農家経済状況でございますが、一戸当たりの農家所得——これは一番左にございます。全国に比べて六五%の状況である。それから農業所得のほうは七一%。  それから十三ページの一番上の欄の右を見ていただきますと、家計費が七七%、それから固定投資も八一%、それから一戸当たりの農機具も六割程度しか保有していないというふうな状況が出てございます。  次の図のほうは省略をさしていただきます。畑作区分の表でございます。  それから十七ページのほうは、農家畑作営農改善資金貸し付け認定戸数でございますが、これは予定でありまして、五年間で二万四千戸を一応の目標にしております。年々四千八百戸認定する予定でございます。それから資金ワクとしましては四十三年度は九億六千万円というのが公庫資金ワクに組まれてございます。それから下のほうは、従来やってまいりました防災営農資金実績でございまして、一番右を見ていただきますと、合計が六億五千万円、宮崎県が三億、それから鹿児島が二億というふうなことで、それぞれ年次別にかような貸し付けをいたしました。なお貸し付けの対象種目は、下にございますように畜舎が一番多くて、農機具、その他、こういうふうな構成になっているのでございます。  簡単でございますが……。
  7. 和田鶴一

    委員長和田鶴一君) 両案についての質疑は後日に譲ることといたします。     —————————————
  8. 和田鶴一

    委員長和田鶴一君) 次に、昭和四十三年度農林省関係の施策及び予算に関する件を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 中村波男

    ○中村波男君 私は日本社会党を代表いたしまして、去る二月の二十九日の当委員会における西村農林大臣の農政に関する所信演説に対しまして質問をいたしたいと思うのであります。その所信演説をお伺いいたしますと、私は全く官僚的作文の域を出ておらない、実に平板で新鮮味も感じなかったと同時に、わが国の農業に対する認識が非常に甘いのではないかということを考えているのであります。もちろん大臣は就任早々でもございますし、みずから筆をとられたとも考えておりませんので、ただいまから若干の質問を申し上げまして、いわゆる西村農政の施政の方向というものを確かめてみたいと思うのであります。  まず大臣は冒頭で、「果樹、畜産等農業生産の選択的拡大がおおむね順調に進展するとともに、……農業近代化への動きがみられる」と自賛しておられるのでありますが、しかし、先日公表されました農業白書を見ますと、「選択的拡大のチャンピオンである乳牛については、昭和三十八年まで年一割前後の高い率で増大して来た乳牛飼養頭数は、四十年は四・一%増、四十一年は一・六%増とその増勢が鈍り、四十二年にやっと五%増に回復した」と報告をいたしております。肉牛に至りましては、三十九年をピークに減少を続けておりましたが、四十二年の飼養頭数は前年比一・六%減にとどまったと報告をしております。また、自給率を見ましても、果実は三十五年は一〇〇%でしたが、三十九年以降九三%であります。肉類は三十五年の九〇%から、三十九年及び四十年の八九%、さらに四十一年は八八%と低下しておるのでございます。牛乳、乳製品は三十五年の八九%から四十一年の八〇%と著しく低下をいたしておりまして、以上述べましたように、畜産や果樹の生産指数が年々上昇していることは確かでありますが、これらを見ますと、「選択的拡大がおおむね順調」と言っておられるのに、私は大きな疑問を持つのであります。去る三月三十日に四十三年度上期輸入見通しを通産省が発表いたしておりますが、それによりますと食糧輸入伸び率が倍増するという、こういうことが発表になっております。また、「農業近代化への動きがみられる」と言っておられることにつきましても、たとえば白書によれば、いわゆる自立農家は三十九年度は八%、四十年度は九%、四十一年度は一〇%と、その比率が高まっていると見ております。この点は、昨年までの白書ではコンスタントに八%程度だとしていたことと違うのでありますけれども、農業労働力が顕著に減少傾向にある等、白書がかなり克明に分析をいたしております一‐二ヘクタール層の動向——これはこれらの中間層発展型と下降型の二つに分解せざるを得ないことを示しているのでありますが——等々を勘案いたしますと、いままでの労働力は減るけれども戸数は減らないといったタイプから、弱肉強食の階層分解が赤裸々にあらわれ始めたことを私は示しておるのではないかと考えるのであります。つまり、政策の効果ではなくて、農民のやむにやまれぬ対応を示すものにすぎないという認識を私は強く持つものであります。これらの点につきまして、まず大臣の見解をお伺いいたし、次の質問に移りたいと思うのでございます。
  10. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 細部にわたりましては関係の局長等からお答え申し上げます。  白書を中心にただいま御質問がありましたが、まあ私も着任早々でありまして、まだ十分な検討はできておらないことは御了承願いたいのでありますが、日本農政は御存じのとおり、非常に経済全体が高度成長の中における日本農業という立場をとりまして、全体としては非常にいろいろな大きな波を受けておるわけです。したがって、特に農村における労働力流出の傾向というものは相当激しいものがあったが、その間におきまして、労働力は出ましたけれども、農家戸数というものはそれほどには変化していない。したがって、兼業農家がふえていくというような中において、どうしたら近代化を進めるかというので、ずっと基本法に基づきましていろいろな施策は展開しておるのであります。したがって、そこにあらわれました動向等から見まして、近代化なりあるいは選択的拡大、あるいはものによりましては自給率の上がりつつあるもの、また自立農家が少しふえつつあるという傾向等については、私どもも希望は持ちつつあるのでありますが、一方、需給関係から見ますというと、消費構造その他が相当変わってきておりまして、必ずしもまだ供給というものに対しては、われわれとしては非常な施策を講じていかなきゃならない。言いかえれば、生産というものに対して、さらにこれに力を注いでまいらなければならない、諸般の施策をやってまいりたいと、こういう考え方に立っておるわけでございます。
  11. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 大臣のお答えに補足をして、私ども事務当局から御説明を申し上げたいと思うのでございますが、確かに農業の総生産がふえておっても、自給率については低下の傾向にあるのではないかということは、御指摘のとおりでございます。ただここで申し上げましたのは、国民所得の上昇に伴いまして食生活の動向に変化が起こる。その変化の過程で果樹とかあるいは畜産物等の需要が強まっていくということは、当然の動向でございますが、そういう動向に従いまして農業の生産自身もいわゆる選択的拡大、需要の大きい方向に即して生産の拡大が行なわれたという事実だけは間違いがないのでございまして、これは申すまでもないと思うのであります。たとえば果実にいたしましても三十五年が総生産三百七十四万八千トン、それが四十一年には五百八十六万トンにふえておる。肉類にいたしましても三十六万四千トンから九十六万九千トンにふえておる。さらに牛乳、乳製品につきましても、百九十三万九千トンのものが三百四十三万二千トンにふえておる。こういう生産の拡大は需要に即応しつつ拡大をしたという意味で、私どもはやはり国際的に見ましても、そういう生産の増大が選択的拡大の方向をとって、おおむね順調に進展したという表現は許されるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  ただ自給率の低下の問題につきましては、大臣の発言にございますように、将来を見通しまして食糧需要に生産が必ず順調に円滑に対応するかどうかという点については、懸念なしとしないということを私ども申しておるわけでございます。  また、農業の近代化への動きという問題につきましても、御指摘のありましたように、自立経営内容が他産業の所得の上昇につれまして、自立経営として定義し得る所得水準というものは上がっていくと、そういう過程の中で、なおかつ若干ながらも自立経営比率がふえておる。自立経営の生産をする総生産へのシェアが高まっておるということは、やはり私どもとしてはそこに日本農業の希望を見出したいという気持らがここにあるのでございまして、近代化への動きが見られるということを指摘をいたしておるのでございます。これがそのこと自身農業の将来の動向に楽観すべきものがあるかどうかということを私どもは言っておるわけではございませんが、そういう事実を指摘をしまして、叙述をした次第でございます。
  12. 中村波男

    ○中村波男君 官房長から農業白書についての答弁があったのでありますが、「農業近代化への動きがみられる」ということを、わずかな自営農家、自立農家がふえたことに目を向けて、いわゆる兼業化が大きく進み、農業収入というものが兼業収入に大きく依存しておるという実態というものは、やはり私は農政の当面する基本ではないかというふうにも考えるのでございますが、これらの問題についてはまた次の機会なり、またこれから申し上げる質問の中で具体的にこれを出してまいりたい、こういうふうに考えるのであります。  次に、大臣は早急に解決すべき問題というものを三つおあげになっております。  その第一点は、増大する食糧需要に生産が必ずしも円滑に対応し得ない懸念があるということであります。  私は、この点については、懸念があるという程度のなまやさしい実態ではないというふうに考えておるのであります。現に白書は、食用農産物の自給率が、四十年価格で見まして三十五年の九〇%から、四十一年には八〇%に低下したと言っております。年平均二%近い顕著な自給率の低下という問題がここにあります。一体、わが国の食糧需要は年々増大すると考えられているのでありますから、自給率を同じ水準に維持しても、食糧輸入は増大するのであります。白書には主要農産物の自給率を掲げておりますが、米を除いてはいずれも自給率が低下したか、現状維持であるわけであります。大臣はこの問題を、 「懸念がある」という程度にしか認識しておられないとするならば、これは私は大きな認識上の誤りがあると思うのでありますが、いかがですか。
  13. 西村直己

    国務大臣西村直己君) おっしゃるように、総合自給率自体におきましても、昭和四十年八二に対して四十一年が、暫定計算ではありますが、八一一%に下がっております。品目別にして見ましても、率としては下がっておるものがあるのでありますが、その中で、御存じのとおり米は自給率はかなり上がっております。それから横ばいあるいは現状維持のものもあります。ただこの中で、私ども非常に今後も力を入れてまいります飼料関係でございますが、これもかなり全体の食用農産物の中の自給率低下の一つの大きな原因にはなっておるではないかと。したがって、これがいわゆる海外輸入の一つの大きな部分も占めておるというふうにも考えております。しかし、いずれにいたしましても、自給率を上げなければならない、こういう観点だけは、私どもは食糧問題に対する供給の変化、多様化に応じながら、しかも自給率を上げていくという施策だけは、予算あるいはその他の施策を通しまして御協力を得て、今後も推進をしてまいりたいと思うのであります。
  14. 中村波男

    ○中村波男君 これはですね、大臣、ことし急に下がったのではないのでありまして、最近、毎年下がっていくのでありますから、その現実が、低下という問題に対応する政策、手が打たれておらない、こういうことを考えていただきまして、ただ一片の答弁ではなしに、真剣にこれは考えなければならない問題ではないかというふうに私は思うのであります。  第二の問題点として大臣が指摘しておられますのは、農産物価格の上昇であります。  この問題は、確かに物価政策上大きな問題がございます。また白書は、農業の比較生産性が三十九年以降着実に向上しているとしておりまするけれども、農業のこのような結果をもたらした裏には、農産物価格が他物価以上に上昇したことに負う面が強いのではないかと思うのであります。  しかし、この大臣の所信表明は、農産物価格の上昇を、国民食糧の安定供給という農業の使命から見て好ましくないとしておられるのでありまして、私は、このような大臣の一面的な見方には問題を感ずるのであります。  白書は、農業と製造業の労働生産性指数を掲げております。それによりますと、三十五年を一〇 〇として、四十一年には農業一四一・七、製造業一六七・三であります。年平均伸び率にいたしますと、農業は六%、製造業は九%であります。この農業労働生産性の伸びは、国際的には非常に高い水準であることは私も認めます。しかし、その中身には、裏作放棄、畜産、養蚕等の部門における零細非能率経営の脱落といった経営努力の所産とは考えられない面の効果が、他産業よりもはるかに大きいウエートを占めております上、就業者一人当たりの農業・非農業別実質国民所得や比較生産性を見ても明らかなように、もともと農業と製造業ないし、非農業との間には非常に大きな格差があることはお認めになると思うのであります。したがいまして、農産物も製造業の生産物もともに社会的に必要であるといたしますなら、また、わが国経済が労働過剰型から労働不足型経済への過渡期にあるといたしますならば、農産物価格の上昇はむしろやむを得ない現象でございます。大臣も安定的供給と言っておられまして、価格の安定とは言っておられないのでありますけれども、先ごろの乳価や豚価の問題を見てみましても、どうも農産物価格の上昇を罪悪視し過ぎるきらいが強過ぎるように印象を受けるのであります。  私はこの機会に具体的にお尋ねをしておきたいと思うのでありますが、限られたもの、限られた時期には、なるほど高いと指摘を受けるような農産物もあるかもわかりませんが、全体を通じて農産物と他の物価とこれを比較いたします場合に、特に生産者の手取りという前提に立ちますならば、決して私は農産物は不当に高いとは認識を持っておりません。したがって、いま大臣もおっしゃるように、農産物が高過ぎるという認識が政府のいわゆる畜産物の価格の決定にいたしましても、あるいは今後行なわれますところのでん粉の価格の決定にいたしましても、さらに米麦の価格の決定にいたしましても、高過ぎるという認識からくる問題というのがいろいろ出てくると思うのであります。この点についてひとつ具体的な所信をお聞きしておきたい、こう考えるのであります。
  15. 西村直己

    国務大臣西村直己君) この農産物の価格につきましては、ただいま御質問なり御意見が出たわけであります。私どもはただ、農産物価格を押えていくとか、そういう思想あるいはこれが上がるのは悪いことである、こういうような前提に立って農林大臣としてやっているのじゃありません。言いかえますならば、もちろん生産面におきまして自給度を上げる、いわゆる供給に合うところの生産に向かって努力をする、しかも、それを安定的な供給確保と申しますか、そういうところをねらってまいる中において価格というものは決定してまいりたいということが私どもの念願であります。したがって、大きな日本経済、あるいは国際経済の中におきましては、日本の農業、農産物に対しましては、あるいは価格支持制度あるいは輸入割り当てというような制度によってかきねをこしらえ、あるいは保護をするかたわら、さらに自給の中におきまして価格というものを維持し、安定させようというその中において、したがって、ここにおことばを返すようでありますが、価格の問題につきましても、農業の使命から見て、安定供給確保という農業の使命から考えましても、価格水準が少し上昇の傾向を帯びていることは好ましくないという意見ではございません。ゆるがせにすることはできない。これを見逃がして、ただそのまま上がりっぱなしというところについていくのではいけない、こういう趣旨の発言をこの所信におきましては申し上げておる次第であります。
  16. 中村波男

    ○中村波男君 答弁の限りにおきましては了解をいたすのでありますが、この機会に私は特に指摘をいたして今後善処を願いたいと思いますのは、農産物の価格上昇という中で見落としてならぬと考えておりますのは、中間経費が先進国に比べて多くかかるという、いわゆる流通過程の合理化を急がなければならぬという問題が、これは物価政策からいいましても、あるいは農家経済、農民の所得拡大の見地からいいましても急がなければならぬ重要な課題であるというふうに考えるのであります。そのために、いろいろ予算の上にも配慮はされておりますが、全く不十分である。したがって、またこれは別な機会にいろいろ政府のお考えもお聞きしたいし、私は私なりの私見も申し述べて議論をいたしたいと思うのでありますが、それなくして、ただいわゆる小売り価格、卸価格の段階における上昇だけをとらえて、あたかもこのためにいろいろな問題点が出ておるというような、そういう認識というものは間違っているというふうに考えるのであります。  第三の問題点として指摘されているのは構造改善が「必ずしも所期のテンポでは進んでいない」というふうに述べられております。「所期のテンポ」というのは、私が考えますには、おそらく倍増計画を考えておられるのではないか。自立農家百万戸を十年で育成するといういわゆる計画であろうというふうに思うのであります。この点は、「必ずしも所期のテンポでは進んでいない」どころではなくて、全く私は所期の目的とほど遠いものがあるというふうに考えております。構造政策については、農地法改正案その他関連法案が提案されておりますから、その際じっくり伺いたいと考えております。  時間もありませんから、以上三点について具体的に指摘をいたしたのでありますけれども、どうも大臣の認識が甘過ぎると思うのであります。したがって、そういう甘いところからいわゆる前進的な政策も生まれませんし、抜本的な改革案というものも出てこないと思うのであります。そういう点について、最後に、構造政策に対する政府の甘さ、それがないとするならば、それに対する反論をお聞かせいただきたいと思うのであります。
  17. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 先ほど来お話のありました中で、確かに私は農業につきましてこういう考え方を持っておるのであります。日本農業、日本経済というものは所期の目的を達しないという一つのことばを所信の中で申し上げましたが、所得倍増当時に想定したよりはおくれておる、これは確かに私率直に認めなきゃならぬと思います。言いかえますれば、おくれた農政という面があったと思います。ただその一面は、日本経済というものが予想以上に高度成長をした。そこで今日では安定成長、しかもその裏には、さらに総合させた社会開発的な面を含めた農政というものとの総合性の中で農政というものを盛り上げていくと、こういう考え方に立っておる。その一つとしていろいろな施策、柱といたしましては、先ほどのお話の価格政策もございます、生産政策もございます、構造政策もございます。これらをバランスをとっていかなければならない、こういう考え方の中で構造政策を進めていきたい。  そこで、この構造政策につきましても、従来からやっておりますものをさらに展開すべく、昨今におきましても、予算面におきまして、あるいは法案の面におきましていろいろと施策を練りまして皆さまの御審議をお願いして、少しでもわれわれとしては、日本農政というものを近代的な安定した食糧の供給をやると同時に農業の従事者の所得の向上、いわゆる豊かな、体質の強い農村づくりに向かってまいりたいという所信で進んでおるのであります。
  18. 中村波男

    ○中村波男君 構造政策に関連をして、農業の近代化の施策として今日まで農林省がとってこられましたいわゆる基盤整備、大型圃場、その上にコンバインとかトラック化を強行——強行ということばは言い過ぎかもしれませんが、強く奨励をされまして、水田農業の機械化をはかろうとしてこられたのでありますが、私は全部が全部失敗したとは思いませんけれども、この発想はいわゆる日本的でなかった、そこに大きな失敗があったと思いますし、私の狭い見聞で全体を律することは独断的になりまするけれども、いわゆる機械化によってその重荷に農民はひしがれてかえって苦しんでおるというような、せっかくの何千万という施設が眠っておる、倉庫に放置してあるという実態さえ多くあるのであります。  そこで私考えさせられましたのは、新佐賀段階と言われております佐賀県においては、昨年あれほど大干ばつにあいながら反収五百四十キロの収穫をあげた。もしこの干ばつがないならば、県下平均反収五百七十キロ以上が取れたであろうということを統計事務所が報告いたしておるのであります。その佐賀県が、皮肉なことには、依然として田植え式、刈り取り式をやっておる、こういうふうに聞いておるのでありますが、しかるに米の生産費は全国平均いたしますと一番低いという報告を読んだことがございます。  私が申し上げますまでもなく、機械化を行なうという目的の第一は、いなすべてであるかもしれませんけれども、労働の生産性を上げるということではないかというふうに考えます。農林省の一貫機械化という発想そのものは正しいかもしれませんけれども、欧米で体系化されたものを直輸入して日本へ持ち込んだところに誤算があったのではないかと思うのであります。したがって、もう少し厳密にいろいろなことをチェックしまして、どういう条件でどういう地域なら大型機械化が可能であるのか、どういう条件のどういう地域なら集約的農法に突っ込んでいけるのかということをまず考えなければならないのではないかというふうに思うのであります。したがって、稲作地帯の構造改善事業については再検討を迫られておるのではないか、かように考えておるのであります。したがって、日本に適した機械化体系と技術政策が確立されなければならぬと思うのでありますが、これについてお考えを明らかにしていただきたい、こう思うわけであります。
  19. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 基本におきまして日本農業の近代化、特に機械化の問題、これは御賛成は願えると思うのであります。ただ、日本の自然地理的条件あるいはそれのもとにおける資本的な制約、いろいろなものが、日本の体質というものがうまく妥当にかみ合わなければお説のとおり、いろいろな弊害面も出てまいると思うのでございます。私どもとしては今後もさらにそういう点についてはより農民の立場において目的が達成できるように検討を不断に続けていかなければならないと思っておるのでございます。
  20. 森本修

    政府委員森本修君) 補足してお答えをいたします。  御指摘のございましたように、確かに日本の機械化というのは戦後労働力が不足をするといったような条件に迫られて発足をしてきたという経過がございます。したがいまして、西欧諸国のようにかなり長い歴史を持ったような機械化という形にはなっておりませんので、当初の発足の段階におきましては、機械としても日本型は少ないというふうなことで、ヨーロッパの機械を入れて機械化の初期段階を過ごしてきたということで、御指摘のように現実におきましては若干の問題があったことは事実であると思います。最近におきましては、御案内のように、機械も日本型の機械がかなり開発をされてきております。それからまた、農村のほうでもやはり機械化のためのいろんな条件なり、あるいは機械を使用する技術なりといったようなものが発達をしてきまして、おそらく現在あるいはこれ以降の段階においてはやや地についた機械化が進んでいくであろうというふうに思っております。で、私どもとしても機械の導入なりあるいは使用のしかたにつきまして機械化の基本方針、また県においてもそれぞれ現地に即した方針を立てていただくというふうなことをやっております。また、四十三年度の予算におきましても、それぞれ現地で各種の機種を集めて、そういった適地に適当な機械を導入をするというふうな指導事業も開始をしようということで、漸次御指摘がございましたような問題を克服して、地についた機械化を進めている、また進んでいくであろうというふうに思っておるわけでございます。
  21. 中村波男

    ○中村波男君 かねがねわが国における試験研究機関、またそこの試験結果というものを農民におろすについての問題点というものを私は私なりに考えておったところでありますが、先般「農業共済新聞」の囲みを読みまして、その内容に共感を覚えますと同時に、これからちょっと読みましてお考えを聞きたいというふうに思うのであります。   「私は試験場に材料提供はしても試験場から  技術を教わったことはない。わが国では、収量  でも品質でもトップになるのは常に実践農家だ  が、試験場でそれができなければ農家の信頼を  得られまい」と現在の試験研究制度について物  申すのは、ハウス園芸技術では自他共に日本一  を認める栃木県の小島重定氏。小島氏は昨年オ  ランダの園芸技術を見てきたが、収量や品質で  もいつもトップになるのは試験場だというのに  感心したという。それは、試験場と大学が直結  していること、試験場の運営費の七割は受益者  である農民が負担しているため、農民の声がよ  く反映されるかららしい。小島氏は「日本の研  究者ももっと〃田んぼ〃に入れ。また学位を  とってしまえばやめるような〃真理探求〃は無  意味だ」と強調していた。  こういう囲み記事であります。  私は先般この農林水産委員会から静岡県の産業調査に同行をいたしたのでありますが、視察の中でいわゆる選択的拡大、農業近代化資金を借りましてメロン栽培に踏み切った集団がございます。建物はりっぱにでき、中にも栽培はされておりますけれども、聞いたところによりますと、暖房費が一個に大体二百円かかる。しかし、いま売るこのメロンは二百円以上は取れない、そこで浜松の先進地へ視察に行き、県に行くけれども、なかなか技術もあるいは教えて教われないものもございますから、金になるメロンがつくれない、借金は返さなければならない。県に指導を依頼しても指導してくれる普及員が一人もおらない。経験のある普及員が近くにいたけれども、先般転任を命ぜられて、全くたよるところがない。ここの話を聞きまして、ここにも私は今日までの政府のとってきた選択的拡大、農業構造政策の大きな欠陥があるというふうに感じたのであります。またここにもありますように、試験場と大学が直結をしておりませんし、日本の研究者がたんぼに入らない。先日の新聞にも、いわゆる獣医科を卒業する獣医というのがほとんど現場へ戻る人が少なくて、会社とか、あるいはその他のいわゆる月給取りになってしまう。そういうことも新聞に指摘しておったのでありますが、こういう点を真剣に考えなければこれからの世界農業の中の日本の農業を位置づけ、また、近代化を推し進めますためには、機械と金だけでは私はできないのではないかというふうに思うのであります。こういう点についても大臣としてひとつ真剣に研究をし、取り組んでいただきたいと思いますし、これらの問題について方針をお聞かせいただきたいというふうに考えるのであります。
  22. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 私もいまのお説を伺いまして、私自体としても同感でございます。試験研究というものはあくまでも農業あるいはそれの実際をやる農民のためにあるのでありまして、単なる学問だけというのではなく、学問は生きてまいらなければなりません。そういう意味で今後ともそういう点は十分留意してまいりたいと思うのであります。  なお、現実の状況につきましては関係の局長から現状はどうなっておりますか御説明させます。
  23. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 機械課から参っておりませんので私から若干大筋を申し上げたいと思うのでございますが、日本の農業試験研究の体制は、中央試験場では原理的な研究をするということに相なっているわけでございます。そうして国の地域試験場においてその原理を応用する応用試験を実施する、府県の試験場において実用化試験をやるというたてまえになっているわけでございます。そういうたてまえになっておりますが、私も御指摘のように、農業試験研究というのは、圃場と試験場との間に、材料の提供というものと材料をこなしたものとの間に還元というものの関係がなければならないというふうに考えておりまして、いまの試験研究の関係者もそういう心がけでやっていると思います。が、なお問題は残っていると思います。  ただ、申し上げておきたいと思いますことは、技術という問題は、若干初歩のお話を申し上げて恐縮でございますが、科学的なプロセスのコンビネートをつくるということが枝術の研究であると私どもは思っているわけでございます。でございますから、客観的なものを求めていくということでございまして、その客観的な科学的プロセスというものを実際に適用して経営をするという段階になりますと、そこに技能の問題が加わってまいるわけでございます。でございますので、試験場での技術試験研究の段階におけるたとえば反収の問題でございますとか、そういう問題は、さらに個々の農家が持っております技能の問題が加わって変化が出てくるということでございまして、必ずしも試験場で常にいわゆる多収獲等の成果を出すようなことを求めていくという性質のものではない、その点だけは御理解をいただいておきたいと思うのでございます。その研究機関から出ましたものを、これを普及組織を通じて流すということがシステムになっておるわけでございます。ただ、御指摘にありましたように、果樹でございますとか、畜産でございますとか、あるいは新しい園芸の技術でございますとかというものの技術につきましては、歴史が比較的に浅いということもございますし、農業の試験研究には非常な年月を要する問題がございますので、現場の要求に直ちに合うような研究が今日すべて完備しておる、完成しておるというわけではございませんので、私どもとしても、今後、御指摘のようなことを頭に入れて農業の方向に沿うような試験研究を進めさせるということに全力をあげてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  24. 中村波男

    ○中村波男君 以上で所信演説に対する質問は終わらしていただきたいと思うのでありますが、もちろんこれから申し上げますのも関連のある問題であるわけでございまするけれども、私は、所信演説を読みまして、大臣の所信の中に、今日、最も重大な国民的関心があり、さらに米審の委員を一月任命になりまして今日までたなざらしになっておるのに象徴されておりますように、食管問題は混迷いたしておると思うのであります。したがって、まず農林大臣として片づけなければならぬ当面する重大課題というのは、米審をいつ発足させ、また、経済同友会の食管制度改正提案がされましてから物価安定推進会議等々のいろいろな意見、提案が出ておりますし、すでに大蔵省におきましては、間接統制をめざす方向と財政硬直化による食管赤字の財政負担を軽減するという立場で相当な作業が進められ、いろいろ折衝が行なわれておるいきさつから言いましても、大臣がこの問題に一言も触れておられないということについては、奇異な感じを受けますと同時に、それほどまでに重大な問題でありますから、ただいまから食管問題を中心にいたしまして、いろいろお伺いをいたしてまいりたいというふうに考えるのであります。  その第一は、倉石農林大臣が、まあ抜き打ち的という言い方は語弊があるかもしれませんけれども、新米審に対しまして野党及び農業団体が強硬に反対いたしておりまする背景をあげてみますと、第一には、倉石前農林大臣が米審任命以前からしばしば述べられておりましたように、新しい米審は米価の決定のときだけではなく、食管制度のあり方について検討をしてもらうと言明をし、そこへ抜き打ち的に生産者団体、消費者団体の代表を除外し、もちろん国会議員も除外されたのでありますが、中立の名のもとに間接統制論者と目される人々を多数任命されたということが一つ。第二は、四十三年度予算の編成にあたって補正予算を組まないことを前提に総合予算主義をとり、米価の抑制意図が予算上はっきり出てきておると考えておるからであります。  そこで、まず西村農林大臣にお尋ねしたいのは、就任直後の記者会見、その後予算委員会等々でたびたび言明をされておるのでありまするけれども、食管制度の根幹を堅持する、この食管制度の根幹を堅持するということについて、私も予算委員会等の議事録を読ませていただきましたが、実にまあ抽象的でございますので、食管制度の根幹を堅持されるということは、具体的にどのような内容であるのか、だめ押しのような質問で恐縮でありますが、具体的にお答えをいただきたいと思うのであります。
  25. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 米審その他の問題につきましての経緯は長々もう申し上げませんでも御存じと思うのでございますが、私、大臣を拝命いたしましたとき、すでに米審の構成につきまして、特に生産者、消費者の意向を反映する問題等、構成問題について国会で御論議が続けられておったことは私存じております。  それからいま一つは、お説のように、食糧の安定的供給の中で一体食糧管理制度というものはどうあるべきかということに対するいわゆるいろいろな面からの意向というもの、同友会であるとか、その他民間と申しますか、物価懇談会等で論議があったことも私は承知いたしております。したがって私は、これらの諸問題を通じまして、まず問題を安定の中で解決をしていくということが一番大事だ、これが私の所信でございます。  そこで、米審問題につきましては御存じのとおりに、各党間で御協議をなさっていくというのが最終的なことでございますので、先般ここで申し上げましたような発言になっておるわけであります。  それから食管制度の問題は、これは国民の大事な主要食糧、これは生産者にとりましても消費者にとりましても国民的な大きな問題だけに、私としては慎重な扱いをしてまいりたい、この所信のもとに、予算委員会を通じまして現行の食管制度の根幹は守ってまいるのだという姿勢をとっておるわけであります。その根幹と申しますのは御存じのとおり、食管法に定められておる売り渡し価格、あるいは買い入れ価格等の一つの方針がございます。そのたてまえというのはくずさないでまいりたい、こういう主張でまいっておるわけでございます。
  26. 中村波男

    ○中村波男君 まあ根幹を、もう少し具体的な内容をお尋ねいたしたいと思うのでありますが、その前に米審委員構成でありますが、国会議員はもちろん、生産者、消費者の代表を全部除外することについて、おそらく大臣としては各党間の話し合い中であるから、大臣としての意見を申し述べることは差し控えたいという答弁があろうと思うのであります。しかし、私は、もちろん国会の意思を尊重願うということは必要でありますが、そもそも今日のこの混乱を引き起こしました原因というのは、前農林大臣が消費者、生産者の代表を除外して、一方的にいまの委員を任命されたところに問題があるのである。したがって、幸か不幸か、倉石前農林大臣がやめられて、大臣中の大物である西村さんが就任をされたのでありますから、西村さんが当時の客観的な情勢なり国会の意向なり、そういうものをそんたくされまして、いわゆる倉石農相任命の新米審を改組しないという、この基本線に立ってこられましたから今日なお混迷が続いておると思うのであります。  そこで、倉石前農林大臣の日程によりますと、一月の末にはすでに米審を開く予定でございます。すでに四月に入りまして、まだ各党間の話し合い待ちでありますが、七月には、従来の例からいうならば米価を諮問しなければならないという、こういう時期的な問題を考えましても、やはり私は、大臣として米審に対する基本的な態度、また今日の時点における考え方というものがなければならぬというふうに思うのであります。したがって、生産者、消費者代表を加えることについては、大臣はどういうふうにいまお考えになっておるのか、お尋ねをいたします。
  27. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 私は、着任いたしまして以来、やはり大事な米価、生産者、またこれを使う全国民的な立場にある消費者の御意見というものは米価決定には反映されなければならないと、こういうことは申し上げております。ただ、それをどういう形で反映せしむべきかという問題は、米審構成とからんでおるのであります。着任以前からすでにこの米審の構成問題は各党の間ですでにお取り上げになっております。その後の経緯を経まして、私としては、今日の段階では各党間の話し合いの結果というものを見ながら、あるいは結果を待ちながら、これを尊重してきめてまいりたい、これがいまの私の考えなんでございます。
  28. 中村波男

    ○中村波男君 そういう答弁になるであろうと思っておったんでありますが、大臣としては、少なくとも生産者、消費者の代表を加えることについての可否については、答弁はできないという、そういうことですか。
  29. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 先ほど来申し上げますように、生産者、消費者の意向というものは米価決定には何らかの形で反映しなければいかん、これは当然のことだと思います。ただ、米審の構成そのものと生産者、消費者との関連につきましては、いろいろな御議論もあり、同時にこれがただいま各党間で検討されておる段階でありますので、私としてはそれに対するいま結果を尊重してまいりたい、こういう態度でございます。
  30. 中村波男

    ○中村波男君 米審は農林大臣の任命事項でありまして、したがって、除外をされたということは、それはそれなりの理由があったと思うのであります。したがって、やめられたから責任のすべてがなくなる、失うというものではないと思うのであります。したがって主務大臣としても、農林省としてこのような態度をとりましたことについての理由があると思うのでありますから、くどいようでありますが、なぜ除外をされたかということについて、大臣としての所見をお聞かせいただけないでしょうか。
  31. 西村直己

    国務大臣西村直己君) まあ私自体当時を引き継いだわけでありますが、政府といたしまして生産者、消費者を米審そのものに参加をしていただかなかったというのは、一つのやはり理由はあったと思います。それは、いわゆる利害関係の方々も御一緒になりまして、そうして米審構成をやってまいりました従来の経緯におきまして、その間に答申の得られなかったというような従来の経緯にかんがみまして、むしろ生産者、消費者の意向というものは別の形で十分御反映を願うという意味で、ああいう形の米審構成を発令したというのが状況だと思うのであります。
  32. 中村波男

    ○中村波男君 この場でそれの蒸し返しを続けましてもおそらく微妙な立場に今日立っておられますから、それ以上の答弁はないと思いますので、その問題については保留をいたしますが、しかし、少なくとも大臣という責任から言いますと、各党間で話し合っているから、その結論を待って対処するということ自体が問題なのでありまして、話し合う必要が生じたのは、いわゆる除外をされたからでありまして、そういう情勢をお考えいただくならば、私は野党三派はもちろん、農業団体が強く要求をしておりますやはり生産者、消費者の代表を加えて、その上で米審を発足させる、言いかえますならば、過去のいろいろないきさつなり、こだわりを捨てて新発足させるという、こういうひとつ勇断を望んでやみません。そこで根幹を守るということについては、具体的にお聞かせをいただきたいという私の質問に対して、これまた抽象論から一歩も出ておらないのであります。そこでまあ食管制度の根幹を守るというようなことを、ここで議論をしなければならなくなった背景を少し申し上げて、その中でさらにお聞きをいたしてみたいというふうに思うのであります。  端的に言いますならば、財界が日本経済の高度成長を維持するための資源としての労働力を農村に求め、しかも、低賃金労働力の供給源として農民に目を向け、さらに労働力不足による賃金の上昇傾向とそれに輪をかけている物価の値上がりが経済活動の妨げになるという考えに立って、食管制度改正を従来から強く主張してきたのでありますが、特に四十二年産米の豊作によって需給が緩和したことを絶好の機会と考えまして、間接統制への移行を打ち出し、これを受けて立つかのように、政府特に大蔵省においては財政硬直化の一大要因として食管会計の赤字の解消と、食管法における価格支持の機能を大幅に弱めることによって米価の値上がりを押え、すなわち米価、物価、労賃、米価という形で上昇していく循環を断ち切ろうとしていることは明らかであります。食管会計は従来にかつてない根の淡いものがあるのであります。  しかるに西村農林大臣は、根幹を守る、根幹を守るとおっしゃいますが、具体的に聞きますが、いわゆる昨年米価がきまりました、これはいわゆる三条、四条の規定によるきめ方が、農民側からいえば不十分であったかもしれませんし、消費者からいえば上がり過ぎたという批判があるでありましょうけれども、いわゆる食管法の根幹を真正直に解釈をしてきめられたというふうに私は認識をいたします。そうだとするならば、そのような方式をことしもさらに踏襲をし続けるということであるならば聞く必要はございません。それらに何かの変革を加えるということであるならば、根幹が私は変わったというふうに認識をいたすのであります。したがってそういう観点に立って、ひとつ具体的に腹のうらをお聞かせいただきたい、こう思うわけです。
  33. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 私はいろいろな食糧制度につきましては、これは古くて新しい問題でございまして、私も多少関係したことありますが、昭和十六年か十七年に食管法をつくりました当時にも、米が非常にあって、しかも問題があって、そしてああいうかっこうの食管法ができた。それからまた戦後におきまして、今日こういうような状況に立っております。なかなかこの食糧の安定供給、また生産者の立場を考えて、この制度のあり方というものは非常に大問題でございます。それだけに、できるだけこれらはすべて安定の中で解決をしてまいるということに、まあ私は基本を置いてまいりたい。  そこで、先ほど来申しますように、私としては食管法の、食管の制度の根幹を守りながら米価決定に当たってまいりたい。すなわち、政府の買い入れあるいは売り渡し、これはすでに再生産確保であるとか、あるいは消費者の家計というものを考慮するという一つの、まあ上限と申しますか、下限と申しますか、そういうようなものが食管法によってきめられておる。その中での米価というものが、いずれきめられていかなければならない、この考え方を続けてまいりたい、こういうことでございます。
  34. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大臣、関連ですから短かくお伺いしますが、ここに出ております農林水産委員会における農林大臣の所信表明ですね。これを見てみました。非常にお粗末ですね。これはどうも困りますね。これはどうしてこういうものを出したのかと思ってびっくりしているのですが、いま農業問題で一番問題になっているのは、これは食管であり、それから米審の問題なんですからね。これだけ大きな問題になっているものを、米審の問題にひとつも触れていないというのは、これはどうもぼくはなっていないというふうに思いますね。それから印刷もきたないですけれども、これはまあ川村さんもやられるそうですから……。  私これを見まして、所信表明の五ページの最後の行とそれから大臣の予算説明の十三ページの最後の二行ですね、これは全然違ったことを言っておりますよ。これは、農業問題に関心を持つ者は、この点はひとつの焦点になっているわけですから、これをこんなに間違えて書かれたのでは責任問題ですよ。どうしてこんなことをするのですか、違うでしょう。だれが書いたのですか、所信表明は。予算説明のほうならわかりますよ。所信表明のほうは、「農業構造の改善につきましては、規模が大きく生産性の高い農業経営をできるだけ多く育成するため、」と書いてありますね。だから自立経営農家を育成するためですよ。ところが予算説明のほうはそうじゃないですよ。「自立経営と効率の高い集団的生産組織の育成助長」、この二つを推進する。これは農業問題に関心を持つ者は、一番これが焦点ですよ。これをこんなふうに間違えて書くのはどういうわけですか、論議にならないんですよ。  ついでに米審の問題について……。大臣、米審は、これは大きな問題は三つあると思いますけれども、いま中村委員が問題にされました利害関係者を除いたということですね。それは、先ほどの大臣の説明では、これはだれでも納得しないんですよ。普通言われていることなんですから、つまり、利害関係者を除いたのは、答申が出なかったからだというようなお話ですけれども、そういうお話ではだれも承知しないですよ。それは、そういう答申の出ない審議会というものは幾つもあるのじゃないですか、米審のほかに。しかも、利害関係のはげしく対立する委員会はすべてそうじゃないですか。どうもそういう説明をされますと——大臣の説明、どうですか。これはだれも納得しないですよ。ですから倉石さんがやられたのですから、それを大臣が引き継がれたのですから、ほんとうのことを言ってもらいたいんですよ。農水でほんとうのことを言わないでどこでほんとうのことを言うのですか、はっきり言ってもらいたいですな。それで私も若干意見がありますが、関連ですからあとで質問いたします。
  35. 西村直己

    国務大臣西村直己君) いまの所信の趣旨につきましては、官房長からさらに補足を申し上げますが、米審の問題につきましては確かに大きな問題で、むしろこれは率直に申し上げまして——政治問題であると思います。私が表明する以前にすでに各党間でこれをお取り上げになりまして、国会対策委員長会議等ですでにそれを取り上げられて協議をするというたてまえになっておるのであります。  それから、政府といたしまして米審委員に生産者、消費者代表を発令申し上げなかったという点については、なるほどそういう御議論も十分私はわかっておりますが、同時にまた政府としては、従来の米審というもののあり方をずっと検討した結果、この場合には生産者、消費者がお入りいただかない、ただし、別な形でもって十分御意見を反映していただく方法を講ずるというような考え方のもとに、あの発令が行なわれたのだというように御説明を申し上げておるのであります。
  36. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) できがたいへん悪いということでお叱りがあったわけでございますから、今後は十分注意したいと思います。  まず、私のほうから御説明して御理解を得たいと思います点は、所信表明のほうで、特に「農業構造の改善につきましては、規模が大きく生産性の高い農業経営をできるだけ多く育成するため、」、——ここで「規模が大きく生産性の高い農業経営を」という場合には、この農業経営には、いわゆる家族経営でやりますまあ理想的な自立経営というものと、それから協業経営も含めて実は表現したつもりでございまして、次のページの一行目と二行目にかけまして、「協業等集団的生産組織の育成、」ということで砕いて実は表現をいたしたのでございます。予算の説明のところでは、「経営規模が大きく生産性の高い自立経営」というものと、「効率の高い集団的生産組織の育成助長」ということで、ここでは並べて書いたという表現の違いでございますので、御理解いただきたいと思います。
  37. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 関連ですからあまり長くなると恐縮なんですけれどもね、これは官房長のその説明はおかしいですよ、あなた。だってね、日本の農業をこれからどういうふうに持っていくかという場合に、自立経営農家一本でいくのか、あるいはそれと並列的に、いまお話の育成能率の高い集団的な生産組織というものと協業、両方でいくかというのが問題になっているわけでしょう。その場合に、この表現は、所信表明の場合は明らかに自立経営農家だけですよ、これ。そうじゃなければ——もしそうでないとするならば、自立経営農家——これは「高い農業経営」を、「規模が大きく生産性の高い」とつないでありますよ。それが何がゆえに農業経営が集団組織に入るんです。しかもそのうしろに「ため」と、ここに「協業等集団的生産組織の育成」とまた出てくるじゃないですか。これ間違いですよ。だからぼくは、事情を知らない人が書いたと思うんです。これ端的に言って、そういう焦点がわからない人が書いたものだと思うんですよ。そういうものであれば、私それはわかりますよ。別問題ですよ。それからいまの大臣の答弁では、これわからないのですよ。もう少しはっきり言ってもらわなきゃ。  まあ、いろいろいわれていますね、きのうかおととい出ました「農林金融」という本ですか、あの中には、農林大臣と大蔵大臣の間に秘密協約があるんだというような話でありますし、それでスライド制について農林大臣——農林大臣て前の農林大臣になりますけれどもね、倉石さんと大蔵大臣の間にそういう約束があって、どうしても米審というのは利害関係を除かなければいけないんだということだったということも出てますね。そこら辺のことをもう少し明らかにされたらどうですか。そうでなければ、これは米審は、先ほどおっしゃったようないろんな事情がありまして利害関係を除いたというので説明つかないですよ。  しかも大臣、もう少し言っておきますが、この間、朝日新聞で取り上げていましたが、社説の中で、政府の行政改革本部というのがありますね。あそこで決定した四項目がありますね。政府審議会等についての改善について数を減らすということがあります。その中で、利害関係があってもめているような委員会は、公益というんですか、中立委員をふやすということで解決したいという一項目もありますよ。それからその中にも、三十九年の審議会の委員の兼務の問題がきめてありまして、委員の兼務は四十一年の十一月のときには、四つ以上の兼務は、これはやらぬようにするとかいうようなこともきめてありますね。どうも私は、政府の従来の行き方からいって、こういう利害関係者を除いたということは説明がつかないから、もう少し腹を割ってお話しになったらどうかと思う。
  38. 西村直己

    国務大臣西村直己君) おことばを返すようですが、腹を割るにも割らぬにも私はありのままを申し上げているんでありまして、私、引き継ぎまして、別に前大臣と大蔵大臣の間に秘密協定とか、そういうもののあったことは聞いておりません。ただ利害関係のある方を従来の経緯から米審には加わっていただかないで発令をした、こういうふうに私としても解釈し、またそういうふうな引き継ぎをしております。そういうわけであります。
  39. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それからあれは、さっきの自立経営農家と集団組織は……。
  40. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) これまたおことばを返すようになって恐縮なんでございますが、所信表明で、「規模が大きく生産性の高い農業経営」という表現のところでは、これは当然私どもとしては、家族経営的な自立経営というものと、それから協業組織による——協業によって規模を大きくし、生産性を高めなければならぬという農業経営も含めて実は表現をしておるのでございます。   〔委員長退席、理事任田新治君着席〕 基本的には、御指摘のように今後の日本農業経営の形態としては、個別経営として他産業の従事者と所得を均衡させ、生活水準を均衡し得るような所得のあり得る農家、いわゆる自立経営というものを考えると同時に、日本の農業の特殊性から申しまして協業の形による規模拡大、生産性の向上ということを並存して考えていくということが、当然の方向であるというふうに思っておるのでございます。問題意識としては持っておったつもりでございますが、所信表明では要点についてなるべく簡潔に大臣から申し述べていただくことがけっこうであろうということで、私どももこういうような表現で大臣の御意向を表明したつもりでおるのでございます。
  41. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それは官房長、そういうふうに言い逃れたみたいな話をしちゃ困りますよ。これはあなたのさっきの考え方はわかりましたよ。ですが、ここのところは「生産性の高い農業経営をできるだけ多く育成するため、農地の流動化の促進、」云々、そうして「協業等集団的生産組織の育成」と書いてある。はっきりしない、もともとこの中に協業などなまやさしい文句が入るなんて、考えるのがおかしいですよ。その「ため」とは、協業まで育成するのですか、こんな日本文がありますか。それはやめなさいと言うのです、そういう話は。これならわかるのです、あなたのおっしゃるとおり、このとおり書けばよかった。間違いない。これをこういうふうにされるから、それじゃ全然話が違いますよ。知らない人が書いたのじゃないですか。
  42. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 御指摘のように、農林大臣の予算説明の表現のほうが正確かつ適切であったということは、私どもさように思いますが、簡潔にするための表現としてそこに御理解をいただきにくいというような点がございます点は反省いたしております。
  43. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 昨日、衆議院の委員会におきましても、これ自体ではありませんが、私の考え方を申し上げましたが、それも全くいま官房長が説明したような形で御説明をいたしております。したがって、大臣の所信表明の表現が十分その意思を的確に体していなかったかもしれません点は、今後ともまた作文等の場合には気をつけたいと思います。
  44. 川村清一

    ○川村清一君 私も関連して一言お聞きしたいと思います。  ただいま中村委員から米審の問題、それから食管法の問題等について質問をされておるわけでありますが、どうも大臣の御答弁が納得できませんので、重ねて関連してお尋ねしたいと思うわけであります。大臣は、米審の問題につきましては、現在与野党間で話し合いを進められておる、その結果を待ってという御答弁を固執されております。それから食管法の問題につきましては、根幹という形でとらわれておるようにお聞きするわけですが、前段の米審の問題については、政党政治を必要とする現在大臣の言われることもわからないわけではないのでありますけれども、実態は話し合いをされていると言っても私はされておらないのではないか。要するに与党自民党のほうからどういう回答が出るかということを野党がただずっと待たされておるといったような状態じゃないかと、これが現在の政治情勢じゃないかと、こういうふうに考えておりますし、それから大臣は、一体先般当委員会におきまして委員長の所信を表明されたあれをどういうふうに受けとめていらっしゃるか。すなわち、「米審の構成につきましては生産者代表、消費者代表を入れるように再検討すべきである」ということをはっきり言っておるわけであります。それから食管法につきましては、「根幹」などということばを言っておらないのであります。「食管法はあくまで堅持すべきである」、こういうことを言っておるのであります。これは委員長委員会を代表して発言したわけでございまして、与野党の理事があの文案をつくるまでには数度となく集まりましていろいろ話し合い、知恵をしぼり合ってそうして最終的にまとめました文案であり、いわば本委員会における満場一致の決定によってなされた委員長の意思表明であります。国会の意思を大臣は尊重しないのかというふうに私どもは考えざるを得ないのであります。各党間で話し合われておる、これもわからないわけではございませんけれども、一体、国会の意思というものを大臣はどう受けとめられるのか。尊重するのか、しないのか。参議院の農林水産委員会において満場一致、そういう意思決定がされたとするならば、当然行政庁の大臣はそれを実現するために最大の努力をすべきでないか。これは民主政治における原則的な私は問題であろうと思っておるわけでございますが、そういうことに大臣は一言も触れられないことに対しましては、私は納得できないのであります。どういうお考えなのか、これを明らかにしていただきたいし、もう一点は、食管法の問題でございますが、根幹とは何かという問題は、さらに中村委員からいろいろ深く掘り下げられて質問されると思いますけれども、大臣はあまり根幹、根幹と言って、根幹ということばにとらわれ過ぎておるのじゃないか。われわれはいわゆる食管制度というものをあくまでも堅持すべきである、こういう意思決定をしておるわけであります。これに対しまして大臣はどういうふうに受けとめられるか、この二点につきまして明らかにしていただきたい、こう思うわけであります。
  45. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 先般委員長としての御要望は十分承りまして、そのときにも私発言を積極的に申し上げまして、農林水産委員会委員長としての御要望、これに対しまして、米審につきましては各党間の話し合いを進められておるおりでありますから、十分この要望は承りまして、そうして各党間の話し合いの結果を尊重して努力してまいりたい、こういうふうに御答弁申し上げておりました。私はそれは国会の農林水産委員長の御要望というものを十分念頭におきつつ、各党間の話し合いを見ながらやってまいりたいという趣旨でございます。  それから食管制度につきまして、私どもは根幹を守る。ただ食管につきましては、当面運用についての改善の部分があるかもしれません。そういうような点は大臣の所信表明におきましても食管管理制度の運用の改善というようなことを申し上げております。そういう趣旨で食管制度の根幹を守りながら運用改善はしていきたいという趣旨であります。
  46. 川村清一

    ○川村清一君 もう一点重ねてお尋ねをしておきたいのですが、非常に重大な御発言だろうと私どもはいまとらざるを得ないわけであります。委員会の決定あるいは決議に対する大臣の受けとめ方の問題でございまして、単に米審だけの問題でなくて、私は委員会運営の今後に非常に大きな問題を残す御発言だろうととっておるわけであります。すなわち、委員会の決定、委員長の発言は十分承っておきます。そうして各党間の話し合いを尊重してきめますと、大臣自身が非常に自主性がないことと、それから委員会の決定は承っておきます、こういう考え方は、われわれとしては納得いきません。このことがいろいろな今後法案審議にあたりましても委員会では附帯決議というものを全く与野党一致してつけることがずいぶんあるわけです。その附帯決議が決議としてはつけられましても、その実施というものに対しましては、まことに御当局は無責任である。このことがしばしばこの委員会において追及されている。先般の乳価問題でも渡辺委員からこの問題を鋭く追及されましたことは、大臣御承知のとおりだと思うわけです。いわゆる委員会の決定をこういうような、簡単に、承っておきますというような姿勢でもって受けとめられておるということはまことに遺憾でございまして、そういうようなお考えでありますならば、今後われわれは委員会運営につきましていろいろ考えなければならないと、こういうふうに私はいま思ったわけであります。  そこで、米審の問題でございますが、先ほど申しましたように、各党間の話し合いを十分見守るということも必要でございましょう。しかしながら、最終的にはやはり大臣が任命するのですから、大臣が断を下さなければならないと思うのであります。もちろん大臣の属する政府、自民党からいろいろ大臣の意向を聞かれるでしょう。そのときに何も自主的な考え方もなく、ただその決定に従うというだけなんでありますか。それとも、委員会でこういう決定がある。大臣としてやはり国会の意思を尊重するという立場から委員会の意思を実現するように私も懸命な努力をする、こういう立場で委員会決定に臨むのか、この大臣のかまえです、姿勢です。   〔理事任田新治君退席、委員長着席〕 現在どういうような一体気がまえでいるのか。まあどうにかきまるだろう。きまってきたならばそのとおりやるというようなことなのか。大臣には信念がないのか。倉石さんは、いろいろあとから批判されまして、ずいぶん悪口を言われました。悪口言われても、倉石さんは倉石さんのやっぱり信念があったからあれをやったのでしょう。しかし、西村さんにはその信念がないのですか。ただ、各党間で話し合っているから、それを尊重してきめるというだけなんですか。あなたには、米審というものはこうでなければならないのだという、そういう信念がないんですか。そういうお考えで進めなければならないと思うのですが、一国の農政をあずかる大臣じゃございませんか。もう少し自主的な信念を持ってやっぱり答えていただかなければ、一体日本の農民は安心して西村大臣の農政を信頼していけないじゃないですか。はっきりひとつ申していただきたいと思うのです。
  47. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 非常に大きな重大な問題でございます。したがって、この点につきましては、私同じことを繰り返すようでありますが、各党間の協議結果、これを十分尊重する、同時に農林水産委員長から御発言のありました点も、ああいう経緯を十分存じております。そして、もちろんこれは最終的には米審委員構成というものは、私、農林大臣の責任であるということも十分存じておる次第であります。
  48. 中村波男

    ○中村波男君 質問を戻しまして、根幹を守る、根幹を守るとおっしゃるのは三条、四条の規定を守るというふうに理解してよろしいですね。
  49. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 細部は食糧庁長官から御説明してもいいのでありますが、私の考え方は、三条におきまして生産者の価格、これは再生産価格、これを十分守ってまいりたいと思います。同時に四条のほうでございますが、売り渡し価格のほうは家計安定ということを目標として、そしてそれらが御存知のとおり、「物価ソノ他ノ経済事情ヲ参酌シ」というふうになっております。そして、その間において米価を決定する、これは守ってまいりたい、こういう考えであります。
  50. 中村波男

    ○中村波男君 よくわかりました。それでは具体的に私が申し上げて、それに回答を与えていただきたいと思うのでありますが、三条は生産者米価のきめ方でありますが、いわゆる生産費・所得補償方式がとられておる。その生産費・所得補償方式によります計算のしかたについては、あるいは労賃の基準をいわゆる他の製造業労働者の労賃をとるといいましても、小規模と大規模とは労賃の格差があるのでありますから、あるいは地代をどう見るか、その他等々と、いろいろ問題はありまするけれども、少なくとも昨年おとりになった方式によって計算をするという、これが確認されなければ具体的に三条を守るということにはならないと思うのであります。  四条は申し上げますまでもなく家計米価主義をとっております。家計米価とは、いまさら私が申し上げる必要はないのでありますけれども、消費者米価改定の上限としていわゆる一般物価、コスト、生産者との関係及び財政事情などを総合的に勘案してきめるのでありますが、その家計米価の根拠になりますのは消費者家計の可処分所得の伸び率を既定の消費者米価に乗じて求めたものであります。大体その方式で昨年も消費者米価が決定されておるというふうに思うのであります。したがって、いま申し上げますように、生産者米価は生産費・所得補償方式をとる、それから四条の消費者米価は家計費米価をとる、こういうことを堅持されるということでありますか。
  51. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 再生産確保、そのためにいろいろな要素を積み上げたり、あるいは方式というものが出てくるわけであります。同時に家計米価、いわゆる消費家庭の家計というものを守っていくという四条の規定、これを十分堅持してまいりたい。それの内容のとり方等につきましては食糧庁長官から御説明をいたさせます。
  52. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 生産者米価の算定にあたりましては、昭和三十五年産米以来いわゆる生産費・所得補償方式をとっておりますることは中村委員も御承知のとおりだと思いますが、この生産費・所得補償方式という名前で呼んでおります考え方の根本は、生産費はもちろんこれはカバーするようにきめる。その生産費の中で家族労働報酬に当たる部分を、農業と他の産業との所得格差の是正をはかるという見地から、製造業賃金に評価がえをして所得を補償する、これが生産費・所得補償方式の根本であろうと思います。  そこで、最近数年間の米価の決定の足どりを見ますと、いわゆる積み上げ計算方式という方式と指数化方式という方式が二つ考え出されまして、四十年、四十一年産米は、いわゆる指数化方式で算定をし、昨年は、従来の指数化方式にいろいろ基礎になっておる三十九年産米に政治加算が入っておるとか、入っておらないという問題がいろいろ論議を呼びますので、昨年は積み上げ計算方式でもって算定をいたした経過は御承知のとおりであります。私どもは、これらは単なる方式の問題でございまして、共に生産費・所得補償方式というものに総称される中であるというふうに考えております。したがいまして、ことしの四十三年産米の米価決定でもっていかなる算式をとるかという方針についてはまだ検討もいたしておりませんが、しかしいずれの場合でも、生産費・所得補償方式で算定をするという考え方をいま直ちに本年から変える意思はございません。  それから消費者の米価のほうでございますが、消費者米価は食管法の四条に「消費者ノ家計ヲ安定セシムルコトヲ旨トシテ」ということの具体的な表現として、ただいま御指摘になりましたように、前回の消費者米価に一定期間の可処分所得の伸び率を掛けて算定した計算上の家計米価というものを上限としてきめるということでやってまいっております。この方式は、やはり食管法第四条の具体的な運用の姿だろうと思っておりまするので、本年かりに消費者米価の改定があるといたしますると、その計算の考え方の根本は従来と同様であろうと考えております。
  53. 中村波男

    ○中村波男君 私はもうちょっと素朴に、端的にひとつ明らかにしてもらいたいと思うんですが、生産費・所得補償方式というものの中に指数化方式なり積み上げ方式なり、いろいろそのときそのときでおやりになってきたのですが、私の聞いておるのは、少なくとも昨年の米価の計算方法より内容的に下がるような方式をとらないということさえ言ってもらえればはっきりすると思うんです。四条の関係については、いま長官から御説明がありましたので、いわゆる家計米価方式をおとりになるということで納得いたしますが、語るに落ちるといいまして、本年は生産費・所得補償方式をとっている、長官はこう言っておられますので、その問題についてまたあとから具体的に聞きますが、重ねて言いますが、昨年の生産者米価をきめられたいわゆる計算方式、その内容が下がるようなことはない方式をことしもとる考えだと、こうはっきり言っていただけば一ぺんに済む話です。
  54. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 食糧庁長官から……。
  55. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 中村委員が一ぺんに済むと仰せられるので、私も一ぺんで済ませたいのでありますけれども、やはり事は重要でありますから、正確に表現をいたしたいということでさっきのようなことを申し上げたわけであります。  積み上げ計算方式と指数化方式というものは、それぞれ方式の違いはあっても、生産費・所得補償方式には違いないと私どもは思っております。そこで、それぞれの方式にはそれぞれ長所、短所がございます。端的に申しますれば、積み上げ計算方式には要素の取り方についての見解の対立が絶えない。したがって、算定方式の安定化をはかる意味では、私どもは指数化方式のほうがよりスムーズに、論議が生じない方式だろうと思っておりますが、しかし指数化方式で算定をいたしました二年間に出ました論議の中で、指数化方式のもとになっている三十九年産米の米価というものは、御承知のとおりに五百五十円という特別加算額がありますので、これを含めて指数化方式を適用いたしますことはよろしくないという御意見もあったわけでございまして、それらを頭に置いて昨年は積み上げ計算方式をとったわけでありますから、いまの中村委員が申されましたことに端的に一ぺんに済ませるようにお答えする方法は、昨年と同じ積み上げ計算方式をとってなおかつ要素も同じにいたしますというふうにお答えをせざるを得ないということになるわけでありますが、私は、どの方式をとるかについてまだ未決定でありますときに、一ぺんに済ませるような御答弁を申し上げることができないのがはなはだ残念でございます。
  56. 中村波男

    ○中村波男君 答弁としては名答弁かもしれませんが、私の言っているのは、内容的に少なくとも昨年より下らない方式をとるんだということさえ明らかになれば、食管の根幹を堅持されるという西村農林大臣の方針について大体了承いたします。それが明らかにならなければ生産費・所得補償方式であっても、とり方によっては低くもなるし高くもなるのでありますから、これが一番私は聞きたいところであり、またそれを明らかにされることが大臣の根幹を守るという内容であるというふうに思うのであります。
  57. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 私もあまり留保条件をつけたような答弁を申し上げるのはこの際としてはいかがと思いまするので、中村委員が申されておりまするのは、具体的な数字はともかくとして、考え方で後退をしないようにということでお聞きになっているとすれば、私どももそのようにすべきではなかろうかというふうに考えております。
  58. 中村波男

    ○中村波男君 一つの問題に時間をとるわけにまいりませんから次に入りたいと思いますが、食管赤字二千四百十五億を一般会計から繰り入れたのでありますが、逆ざやの問題についてどういうお考えをお持ちでありますか。
  59. 西村直己

    国務大臣西村直己君) ただいま、もうすでに御説明申し上げるまでもなく、米価におきまして消費者米価のほうが生産者米価より安いと、そこで財政負担も相当膨大にのぼっておる。こういうことは必ずしも食管の制度の中において、食管制度自体もある意味では経済性がなければいけないわけであります。非常に正常ではない姿である。逆ざやであるというふうに私どもは考えております。
  60. 中村波男

    ○中村波男君 正常である、正常でないということは見解の相違でありますが、大臣は正常でないと、——正常でないようなことを長く続けられるということは、これまた責任問題だと思うわけです。そうだとするならば、正常でないのがどことどこにあるのか。したがって、正常にされるためには方策というものがあると思うのでありますが、その点いかがですか。
  61. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 具体的になりますから大口長官からお答えさせることにいたします。
  62. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 現在の生産者米価と消費者米価の関係数字でちょっと最初に申し上げてから御説明いたしますが、御承知のように、生産者米価は玄米一石当たり一万九千五百二十一円ということになっておるのは御承知のとおりであります。消費者米価を玄米一石当たりに換算をいたしますと一万九千六円になるのでありまして、この両方を比較いたしますと、差し引きますと五百十五円消費者米価が安いというかっこうに実はなっておるわけであります。  そこで、正常でないという表現をしばしば大臣が申されておりまする意味について、私の理解をしておる範囲で申し上げたいと思いますが、現在の食管法の三条では、生産者米価の算定の根拠が示されており、四条では、消費者米価の算定の根拠が示されておりまして、それぞれ別個の条文を基礎にいたしておりまするので、これは二重米価を予定したものであるという議論があることも承知をいたしております。しかし、二重米価ということばの正確な定義は必ずしも見解の一致の上に立って使われておるとは思いませんが、私どもはやはり、食管法の第一条に示しまする目的に従って食管制度を運用していく場合に、両米価がいわゆる通俗的な意味での二重米価制にならざるを得ないということは、私どもも全く否定はいたしておらないのであります。しかしながら、その事態がだんだんと極端になってまいりまして、先ほど申しましたように、生産者米価よりも末端の消費者米価のほうが五百円も安いという状態を食管法制定当時から当然行き着く姿として予想しておったとは考えにくいのではないかということが第一点と、それから現在の食管制度を健全に運用する上において食管法というのは農家に一定の米の保有を認めた上で残りを国民食糧の確保のために供出をしてもらうというのがたてまえと思いまするが、末端の農家が自分のつくった米を全部政府に売って、逆に配給を受けたほうが有利であるというような形は、少なくとも食管法の健全なる運用には若干正常を欠く事態ではなかろうかという二つの理由で正常化をはかってまいりたいということをしばしば申されておると思います。
  63. 中村波男

    ○中村波男君 いまの食管制度の根幹を守るという上に立って運用するということになれば二重米価性であり、おのずから逆ざやというものが出て赤字が出るということは明らかであります。そのことを不正常だとしていま長官が指摘されました生産者は政府に全部米を売り渡して配給を受けたほうが得になる、それはそのとおりでしょう。しかし、そのような道は食管法その他によってやれないと思いますし、そういう、生産者が全部国に売り渡して配給を受けるような道が開けておりますか。——開けてないと思います。
  64. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 私の表現がやや極端であったかと思いまするが、御指摘のように、ただいまの制度の運用面では、政府に米を販売した農家には配給通帳を交付いたしておらないように指導をいたしておりまするから、現実には、そういう保有米を全部売って食いぶちを全部配給を受けるという農家は起きないように指導をいたしております。私は、食管法の分理解釈からして、そういうことが可能であるかどうかの議論はやや問題がありまするから差し控えるといたしまして、しかし、食管法の基本的な考え方はやはり、一定の数量を農家に優先的に保有を認めて、残りを消費者のために供出をさせるというのが基本的なねらいだと思いまするので、実際にそういう姿が起きる起きないにかかわらずいま申したような価格関係というのは制度ができたときから予想した姿ではないのではなかろうかという私の見解を申し上げたのであります。
  65. 中村波男

    ○中村波男君 四十三年度の予算編成に当たって大蔵省はあらかじめ生産者、消費者米価を見込むいわゆる予算米価主義をとろうとしたのでありますが、倉石前農林大臣がこれには抵抗をされまして、それはまあ行なわれなかったのでありますが、しかし総合予算主義がとられております以上は補正を行わないということになっておると思うのであります。したがって、倉石前農林大臣は一応筋は通したかに見えまするけれども、いま食糧庁長官も言われましたように、現在の赤字というものをもとに考えるならば不正常である、しからばその不正常をあなたのほうの言い分からいうならば正常化するということが真剣に取り上げられ、考えられてしかるべきだと思うのであります。したがって、不正常を正常化するためにどのようなお考え方を持っておられるのか、私たちはスライド制の採用というものが当面お考えになっておる方針ではないかというふうに思っておるのでありますが、その点はどうでありますか。
  66. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 総合予算主義という財政の考え方に基づいて本年の予算編成をやっておりまする根拠なり理由は、必ずしも米価だけを頭においていっているのではなくて、いわゆる年度途中で大体予見できるような財源というものはフルに見込んで予算を組むという考え方から出発をしたものと私どもは理解をいたしておりまするが、食管特別会計におきまして、私どもが先ほど申しましたように、米価の現在の状態はやや不正常であるのでこれを正常化したいということは——ただいまスライド制ということばで申されましたが、私どもはスライド制ということばは、これまた、いろいろな意味がありまするので、大臣もしばしば機械的なスライド制というものをとるのではないということばを使われておるのであります。しかし、やはり生産者米価の改定があれば、先ほどの米価関係からいたしますると、消費者米価をある程度手直しして両米価の関係がこれ以上不正常にならないように、できればもっと正常の状態に戻したいという考え方で、また食管制度の運用を健全にするための見地から、そういうことを考えておるわけで、そのことの結果、財政面では総合予算主義の考え方と結果的に一致するのではないかというふうに考えております。私どもは現在の赤字の額が不正常だというふうに申し上げたつもりはないのでありまして、私どもの立場からいたしますると、現在の米価の正常化をはかるという直接の動機は、両米価の関係、位置の問題を申し上げているのでありまして、赤字の額が膨大であるから不正常だという趣旨は申し上げていないのであります。
  67. 中村波男

    ○中村波男君 今度は逆にことばを返すようでありますが、不正常な状態というのは、いわゆる昭和三十五年ですか、いまの方法が採用されてから今日まで続いておるのでありまして、したがって三、四年前にも財界その他ではそういう意見があった。なかったとは申しませんけれども、日程にのぼってきたのは、第一番には昭和四十二年産米がいわゆる千四百万トンという壁を破るほどの大豊作であった、赤字が二千億を連続してこえたというところに、食管制度を考えなければならぬという背景と条件があったと思うのであります。端的に言うならば、二つではないかというふうに思うのであります。  そこでお尋ねいたしたいのは、西村農林大臣は予算委員会でわが党の田中寿美子さんの質問に答えて、生産者米価について上がる要素があるが下がる要素もある、こういうふうにまあ説明をされております。私は下がる要素というのはいわゆる増産、収穫が上がったということも大きな下がる要素であると思います。もちろんまだ的確な数字をもって米価が全体として上がるということをお示しいただけないと思いますが、大ざっぱに言って、昨年のような算定方式を踏襲するとするならば本年度は生産者米価というものはどのような計算になるかということを、ひとつ長官からお示しいただきたい。
  68. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 予算委員会で田中さんからもその点質問がありまして、たしかに私は労賃、資材費等が上がって、したがってそれらが要素になった場合には上がる要素があるわけであります。ただそれに対して他の生産性の向上その他が多少チェックしてくる要素も考えられないことはないであろう、こういう意味で、全体としては生産者米価が上がるというふうに考えるべきじゃないかというふうに、こういうふうに申し上げたのであります。
  69. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) いまの上がる要素と下がる要素という表現をお使いになられたことは、昨年までの生産費・所得補償方式を本年も踏襲しようと思っておりますが、それは御承知のように、生産費をまずもとにいたしまするので、生産費の構成要素になっております物価、資材費それから労賃、これが上がれば生産者米価の算定値は上がることはこれは当然でございます。しかしながら逆に土地生産性の向上に伴う反収の増、それから労働生産性の向上に伴う労働時間の減、これは下がる要素という表現がいいのか、上がるほうをチェックする要素ということがいいのか知りませんが、少くとも逆に働く要素であるということは間違いないわけでございますから、そういう趣旨を申されたのだと私は理解いたしております。
  70. 中村波男

    ○中村波男君 それでは消費者米価でありますが、昨年消費者米価をきめられた以後の指数と申しますか、いわゆる家計米価の算定を行ないまして、見通しとしては何%くらいの数値があるのですか。最高限度は何%かということをお伺いしたい。
  71. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 長官のほうから……。
  72. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 可処分所得の推移というのは総理府の家計調査に基づいて私どもは計算をいたしているわけでございまするので、これは毎月毎月の数字をとった上で、消費者米価を改定いたす場合には、その直前の統計数字に基づいてやりますので、いまから本年のかりに秋と考えましたときまでの家計の伸び率を推計することは非常にむずかしいのでありますが、しかし大体の傾向から申しまして、最近の各月の可処分所得の数字がちょうど一年前の各月に対してどのくらいの比率であるかということを見ましてお答えにかえさせていただくといたしますと、本年一月の総理府の家計調査に基づく数字を昨年の一月の数字に比較いたしますると、一一〇・八という数字になっております。この可処分所得の傾向というのは、景気の動向その他いろいろなファクターによって左右されますので必ずしも一律ではございませんが、ことしの一月のいまわかっております数字が一年前に対して一一〇・八という数字に実はなっております。
  73. 中村波男

    ○中村波男君 もう少し具体的な数字に入って質問したいと思うのでありますが、食管会計の昭和四十二年度の決算見込みは……。——二千四百十五億を繰り入れられたわけでございますが、もちろんワクの中でおさめられるべくいろいろ努力されているようでありますが、それらを含めて御説明いただきたい。
  74. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 昭和四十二会計年度におきましては食管特別会計に対しまして、当初予算並びに補正予算を合わせまして二千四百十五億円の繰り入れをあおいだわけでございますが、実際にどれだけの損失が見込まれ、かつこの繰り入れでどういうふうに操作したかということを申し上げまするというと、その前年であります四十一会計年度におきまして最終的な決算の結果、調整勘定の中に六十五億の残高が出たのであります。そこで四十二会計年度中に当初予算、千二百三十五億、補正予算千百八十億、合わせて二千四百十五億の繰り入れをあおぎました。実際に四十二年度の国内米、国内麦、輸入食糧の各損益を全部通算いたしますると二千四百六十九億の損失になります。したがいまして、当初の繰り越し金額と四十二年度中の受け入れ金額を合計いたしまして、ただいまの損失を差し引きますると残高十一億の繰り越しということになる見込みでございます。四十二年度の現在御審議願っております予算におきましては私どもの推計といたしましては、国内米勘定二千二百九十五億、国内麦勘定で二百六十億のそれぞれの損、それから輸入食糧におきましては百四十億の益というものを予定いたしまして、合計いたしまして二千四百十五億の損失というふうに推計をいたしておりまするので、年度初めの十一億の繰り越しがそっくりそのまま年度末に繰り越されて、年度中におきまする損失は一般会計から二千四百十五億繰り入れてもらって消すという考え方で、現在の予算案は編成されております。
  75. 中村波男

    ○中村波男君 一番集計をしておられる近い時点における今年の政府買い入れ量は幾らですか。
  76. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 四十三年度産米の一番最近の買い入れ実績は、三月二十日までの数字を目下つかんでおりまするが、九百八十一万五千トンぐらいでございます。三月末の数字は、あと二、三日たちませんとちょっと私どもの集計が終わりませんが、予算で大体見込んでおりまする数字、つまり買い入れ日の手当てその他をいたしました数字は九百八十二万トンまで買える弾力条項の発動その他の準備はすでに終わっております。
  77. 中村波男

    ○中村波男君 この予算措置としての九百八十二万トンをわずかでも上回るという予測はありませんか。
  78. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) これは神様でないので、ちょっとわれわれの考え得る範囲でまずだいじょうぶだと思ってつくった見込みでございまするが、実は三月に入りますと、例年買い入れはほとんど大部分ピークを越しましてスローダウンしておりまして、三月の二十日現在で九百八十一万五千と申し上げましたが、その前の十日間でございますか、もう五、六千トン程度の数量に落ちておりまするので、私どもは最後の十日間で五千トンこさなければ九百八十二におさまるわけでありますが、まずまずだいじょうぶだと私は思っております。
  79. 中村波男

    ○中村波男君 重ねてお尋ねいたしますが、昭和四十三年度繰り入れの二千四百十五億、これは見通しとしては赤字にはならない、こういうことでありますか。
  80. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 赤字にはならないということばのことばじりを申し上げるわけじゃございませんが、赤字になるからこそ、繰り入れを仰いでおるわけでありまするが、この繰り入れ以上に赤字を出さないという趣旨でのお尋ねかと思いまするが、私どもは実はことしの食管会計の運用は、まだ生産者米価をどういうふうにするか、消費者米価をどういうふうにするかという問題も重大問題として控えておりまするが、しかし食管特別会計の損益に影響を及ぼす要因といたしましては、両米価の決定、買い入れ数量並びに中間経費の推移等が全部からんでまいりまするので、私どもといたしましてはこれらの全部の要素を総合的に勘案をいたしまして、予算編成の考え方を十分念頭に置いた上で、現在予定されておる損益の範囲内でこの一年間の運営をはかってまいりたいということを基本的に考えております。
  81. 中村波男

    ○中村波男君 四十二米穀年度ですか、それから四十三米穀年度に繰り越したいわゆる古米は六十四万トンですか、と聞いておるわけでありまするが、これの処分はどのようになっておりますか。
  82. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 昨年の十月末すなわち四十二米穀年度末の古来の持ち越し量は六十三万九千トンでございます。そこで、私どもは四十三米穀年度に入りましてから、この古来の売却を続けているわけでありまするが、大体二月までで五十四万二千トン程度を売却いたしまして、あと九万トン前後の数字を三月以降に売却をするということでやっておりまするが、これは保管におきましても品質保持に万全の注意をしてやってまいっておりまするし、また新米と古米というものをできるだけ消費者の食味に不均衡を来たさないような配慮を加えながら今日まで売却操作を続けてまいって、ほぼ古米の処理が完了いたしかけている現状でございます。
  83. 中村波男

    ○中村波男君 四十三米穀年度から四十四米穀年度に繰り越されると予想される古米というのは何万トンあって、これは相当五カ月以上の需要量に見合うかと思うのでありますが、問題があると思うのでありますが、それらについての対策なりお考えをお尋ねいたしたいと思うわけであります。
  84. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 今米穀年度末、すなわちことしの十月末に持ち越します古米の数量は現在の需給計画上からいたしまして二百三十五万トンでございます。この数字は戦後にかつてない非常に大量な数字でありまして、昨年の十月末の持ち越しておりまする六十数万トンの古米処理でも相当な苦心をいたしたのでありまするから、それからいたしますると、この秋の持ち越し古米の処理については配給操作の面でなみなみならぬ苦労をいたすものと思っております。私どもの苦労ばかりではございません。消費者にも結果的には非常に一部ごしんぼう願うということに相なるわけでありまするが、私どもといたしましては、できるだけ品質保持のむずかしいような米はできるだけ早期に、たとえばつゆ前に軟質米を処理するというようなことで持ち越し米にはできるだけ良質の米を充当するような配慮をすると同時に、できるだけ長期にわたって古米の売却を続けなければなりませんので、保管管理については食糧事務所の職員並びに倉庫業者を督励いたしまして、従来にも増して万全なる、保管管理にあらゆる努力を傾注してもらうようにいたしたいと思っております。
  85. 中村波男

    ○中村波男君 繰り越し古米に関連して、新聞によりますと、全糧連が古米の値引き要求を出してきておるようであります。三十四年に古米十万トンについて一俵あたり四十円の値引きをされた例があるようでありますが、まだ相当な期間がある問題でありますが、それらの要求についてどう対処されようとするのか、方針が明らかになっておればお聞かせをいただきたい。
  86. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 古米の問題につきまして、米の配給業者からすでにいろいろな要望が出されております。そこで私どもは、この古米の処理に当たって、消費者の問題と米屋の問題とを区別して慎重に検討する必要があると思いますが、米屋の問題というのは古米は歩どまりが悪いので同じ値段で売ってもらったんでは米屋のそろばんが悪くなるという見地から出されておる要望でありまして、結局、消費者には同じ値段で古米を売るということを前提として考えておるわけでございます。消費者の問題といたしましては、古い米を同じ値段で配給せぬでもいいじゃないかという声が別にあるはずでございます。いずれにいたしましても、いまの時点で具体的にどうするかという問題は、何にもまだ具体案を持っておりませんから、いずれ今後、十分に検討すべき問題であるというふうにお答えせざるを得ないわけでありまするが、しかし、過去にも、古米については、若干の値引きをして売った例が、ただいま中村委員が御指摘になりましたような年にもあったわけでありまして、ことしの秋の持ち越し数量が前例のないほど大量な数字でありまするので、この問題はよほど取り扱いを慎重にいたした上で、先ほどの古米処理をできるだけスムーズにやっていくという見地からも検討していかなければならぬ問題だと思っております。
  87. 中村波男

    ○中村波男君 米の保管上いろいろわれわれも聞いておるのでありますが、保管が悪いといいますか、不完全なために、相当いたみ米と申しますか、人間が食えないためにほかのほうに転用し処分をするものも出ると思うのでありますが、そういうのが三、四年の間にどれくらいあったかということもこの機会にお聞きをしておきたいと思います。
  88. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 米を保管いたします場合に、大事な食糧を品質の低下を来たさないように万全を期してまいるという考え方で従来もやってまいったのでありまするが、やむを得ざる事由で事故品として主食用から除外をしていかざるを得なかったものがございます。たとえば、火災によって損傷を受けた米であるとか、あるいは風水害、地震等で倉庫保管中の米が品いたみがしたために主食用に充当できないで事故品として売却した数字がございます。最近の数年間の数字を申し上げますと、昭和三十八年度——この年度と申しますのは会計年度でございます。会計年度として御理解いただきますが、昭和三十八年度二百五十五トン、それから昭和三十九年度千五百三十九トン、昭和四十年度七百九十四トン、昭和四十一年度七百二十三トン、それから昭和四十二年度は十二月末までの数字しか把握いたしておりませんが、千百二トン、以上でございます。
  89. 中村波男

    ○中村波男君 火災あるいは水害等、不可抗力な面から出てくるいたみ米というものは、これはやむを得ぬと思いますが、保管倉庫の不備、あるいは保管者の怠慢等々から、悪くならなくてもよい米がいたむという事例も相当あると思うのであります。さらに今後米の需給が緩和するということは倉庫の在庫期間が長くなるということでありますし、すでに保管上の問題が相当出てきておると思いますし、農協等の保管倉庫は、相当古くなっておりまして夏を越すということ自体に完全でないという倉庫も相当あるのでありますが、保管対策というものをやはり真剣に考え、長期見通しの上に立ってどうするかという問題が急務だと思いますが、それらの対策がございますか。
  90. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 政府の手持ち米が非常にふえておりますので、倉庫対策としては、まずスペースを確保するという対策と、それから保管管理米の品質保全と二つに分けてお答えをいたしまするが、倉庫収容力の確保につきましては、新規に契約をして倉庫指定を行なうとか、あるいは臨時に指定をするというようなことで、できるだけ倉庫の数をふやしたり、あるいは倉庫の高度利用をするために、やむを得ず若干の県内移送等を行なって倉庫のスペースの確保にはあらゆる努力をして、四十二年度米の最もピークでありまする十二月末の保管には一応乗り切ったのでございます。  それから保管米の品質保全につきましては、通常倉庫業者を督励してやってまいるほかに、本年のように非常に長期にわたって保管をいたしまする場合には、一定間隔で水分検定をやらせるとか、あるいは見回りをひんぱんにやらせるとか、あらゆる努力を講じて、大事な米の保管をしておる間に品いたみ等が起きないように、あらゆる努力を例年にも増してやっております。  それから先ほど、保管中にいたまなくてもいい米がいたんだものがあるかというお尋ねでございまするが、先ほど申しました不可抗力による転用事故品のほかには、品いたみのために値引きをしなきゃならぬとかいうようなものは起こっておりません。ただ、一部若干、品いたみ等でカビくさいようなものにつきましては、政府が販売業者に販売をしたあとの段階で、販売業者にはそういうような事態に対処するために、調整金制度というものを一定の積み立て金制度をやっておりますので、これは販売業者の段階で処理をするものが起きた例は若干ございますが、政府の売り渡し段階で値引きをしなきゃならぬようなものは、先ほどの不可抗力による数字以外にはございません。
  91. 中村波男

    ○中村波男君 そこで新聞等の伝えるところによりますと、食管制度に対する農林省の態度は、生産面に手をつけると抵抗が強いので、これはあと回しにする、したがって、配給面から手をつけようというのが私はほんとうの腹のうちではないかというふうに思うわけであります。第一番としては、準内地米の自由化などを含めて配給機関に手をつける、第二番目としては、配給価格では最高価格を設け、その範囲内で米屋が混米をしたり、うまい米をサービスするような制度をつくる、まあこういうことが伝えられております。  そこで、もう時間もありませんから、まだいろいろお尋ねしたいことがありますが、そうもなりませんので、大臣にお願いをいたしておきたいと思いますが、大臣が食管制度を堅持する、堅持すると言われれば言われるほど疑心暗鬼、農民はどうなるかということに、大きな不安におののいております。したがって、さっきもおっしゃったように、端的に表現をされましたが、いまの状態というのは不正常だ、だから私が質問を申し上げておりますように、不正常であるならば正常にすることを考えるのは、大臣として当然な任務であり、責務であると思います。したがって、具体的にこのような構想を持っておるのだ、そのことについてひとつ国会とも話し合おう、農業団体ともひとつ腹を割って話し合おう——私たちでも食管赤字が一兆円になっても一兆五千億になってもよろしいなどという、そういう考えを持っておるのではありません。したがって、もう少し具体的に現状を明らかにされまして、そうして方針を打ち出されることが私は重大だと思います。それがない限りは混迷は続くと思います。そういう意味でいま私が質問をいたしました、具体的な農林省の構想として伝えられておる流通面についての何と申しますか態度があるならば、お聞かせをいただきたい、こう思うわけです。
  92. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 食管につきましての御意見は私は御意見として承りますが、配給面につきましてかなりわれわれとしてはまだ合理化、改善をする、くふうを加える余地もあるかもしれません。そういうところは検討してまいりたいと思うのであります。なお、細部は食糧庁長官から配給についての補足をしてもらいたいと思います。
  93. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 先ほど中村委員は、集荷のほうは抵抗が多いから配給に手をつけるのだということを申されましたが、決してそういうことではないので、現在の食管制度の運用面においていろいろ配給の面に特に問題が多い、たとえば販売業者が格上げ、混米等を行なって消費者に不当に高い米を売っておるという事態が、全国ではございませんけれども、一部の大消費地にあることも事実でございます。それから内地米の供給が非常に多くなってまいりました関係で、一昨年の十二月からいわゆる普通外米と申しますか、東南アジアでとれます長い粒の外米、これを自由販売にいたしたのも、これも一つの当時としては運営の改善の一つだったと思いますが、やはり配給の面では、現在の食管法の範囲内でまだまだ改善を要する点が幾多あるのでございまして、たとえば販売業者の登録の問題等につきましても、私どもはいろいろ賛否両論あるとは思いますけれども、しかし一定の卸、小売りのルートが固定しておって、何らそこに競争が行なわれないことからくる是正の余地というものも指摘されている向きもございます。また、これは逆に言えば、政府が配給統制をいたしておりますので、米屋のほうから見れば、自由に品質を選択して政府から米が買えないということもありまするので、全くの自由販売の商品と同じように競争させるということは、これは適当ではないかと思いますが、そこら辺にもいろいろ検討しなければならぬ問題もありまするし、配給も全体でいろいろ運用の改善の問題はあろうかと思います。  それから集荷の面で全く問題がないわけではないわけでありまして、たとえてみますれば時期別格差の制度のごときは、この制度がありますために非常に短期間に米を乾燥の上出庫させるというようなことから、事後の配給米の品質保全の点から非常に問題が起きておるとか、それから一時期に非常に労働力を過重に必要とするということから、農業経営の労力配分の問題でもいろいろ問題が起きておる等の問題もありまするので、ここらについてどのように監督するかという問題も解決を迫られている問題の一つでございます。  いずれにいたしましても食管制度全体で、運用の改善というものは今後もやらなければならぬことがたくさんあると思っておりますので、そういう趣旨で今後ますます運用の改善をはかってまいりたいということをおりに触れて大臣は申し上げたのでございます。
  94. 中村波男

    ○中村波男君 食糧庁長官の親切な答弁は多とします。時間もたいへん経過しておりまするから、私が質問したことに端的に、そういう考えはないと、それをいま検討中だと、こういうようにひとつやっていただきますと時間も早いし、抽象論をお並べいただくことに意味はないと思いますので、具体的に、いま指摘したような問題は考えておらない、検討の余地があるから検討しておる、こういうふうに答えてください。
  95. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) ちょっといまの御質問の趣旨がよくわからない、よけいに長くしゃべるなということだけよくわかりました。
  96. 中村波男

    ○中村波男君 あなた私の質問聞いてなかったですか。——準内地米の自由化などを含め配給機関に手をつける、このことはいま抽象的におっしゃったが、配給価格では最高価格を設けてその範囲内で米屋が混米その他うまい米というものを売れるような道を開く、こういうことがいわれておるのでありますが、どうですか。
  97. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) その問題は検討いたしております。
  98. 中村波男

    ○中村波男君 そこで大臣、二千四百十五億というのは寝ても起きても忘れられないほどやかましい数字になりましたが、私は厳密に言って二千四百十五億赤字だというこの事態に問題があると思うのです。やるやらぬは別にして、間接統制にいたしましても政府の財政負担、財政支出というものは一定限度は必要とすると思うわけであります。それから食管会計といいましても米だけではないのでありまして、そういう点から考えて、あたかも全部が米の赤字である、したがって逆ざやである、戦前の間接統制の時代でも、相当農林予算と比べて、当時の農林予算よりも多く赤字を出し、負担を最終的にはしたと、こういう歴史もあると思うのです。そういう点はどういうふうにお考えになっておりますか。
  99. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 二千四百十五億と申しますか、財政上の問題、これもさらに食管に関連する一つの問題でございましょうけれども、私どもとしては食糧の安定供給という観点からすべてを考えて、単なる財政とかそういうだけにとらわれていくという考えはないのでございます。
  100. 中村波男

    ○中村波男君 だから食管会計の内容改善するといいますか、分類のしかたを変えるといいますか、その点を検討する私は段階だと思うし、余地があると思いますし、いまのコスト主義というものを考えてみる場合には、内容的にいろいろな問題が含まれておると思うのでありますが、その点どうですか。
  101. 西村直己

    国務大臣西村直己君) おっしゃるとおり、私どもは先ほど申し上げましたように、主要食糧、特に米を中心にした問題、これは食管は米だけではございません。したがって、私はこういうような問題を扱うのに、食管特別会計を扱いますのでも、単に財政だけの問題というような観点からものを運んでいきたいという考えではないのでございます。むしろ食糧の、特に主食の安定供給、これが私らに対しての課せられた大きな任務だ、こういう観点からすべての問題を取り上げてまいりたいというわけでございます。
  102. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) ちょっと補足して申し上げさしていただきますと、おそらくただいま中村委員が申されておりますことの趣旨は、一口に食管赤字といって、全部それができれば縮小すべき赤字であるかのごときことを漫然とやらずに、もっとくふうをしたらどうかという御趣旨だと思いまするが、私どもも実際に食管特別会計を運用しておる責任者の立場で赤字ということばを使われるのは非常に迷惑でありまして、何かやり方がまずくて出た赤字と混同されているように思われるのは非常に迷惑でありまするが、しかし、この赤字と通常申されておる中の中身には、売買価格の差額からくるものと経費に属するものとがございます。たとえて申しますならば、二千四百十五億の中で国内米の管理のためには二千二百九十五億でありますが、この二千二百九十五億は売買の価格差では千百一億、経費では千百九十四億になっております。そして、この千百九十四億の経費の中では、あまりこまかく申し上げては恐縮でございまするが、おそらく事務人件費のごときは、赤字として観念をしないでやるべきであるという御議論も過去に何回かいろいろの方面から御指摘になっておりまするし、また運賃、保管料その他、できるだけ運用の妙を発揮して、できるだけ節減をすべきであるという御指摘もいただいておりますので、そういう趣旨でいままでも努力をしてまいりましたし、今後もますます努力してまいりたいと思いますが、経費の計上のしかたには確かにいろいろ研究しなければならない問題がある、そのことは私どもも認めております。
  103. 中村波男

    ○中村波男君 私は私なりにさらにまだいろいろの意見がありますが、たとえて言いまするならば、食管会計と申しますか、需給操作のために年間資金量が数千億浮いておるのじゃないかと思いますが、それでありますから、金利も四百億以上にのぼっておると。国がその責任において食糧の需給を調整するというのであれば、少なくとも二千億くらいは利息の要らない金を国が食管会計へ資金として投資をすると、そういうようなことがあってもいいんじゃないかというふうにいま考えるわけです。したがって、出てきた数字にとらわれて、二千四百十五億だから、これでは何ともならない、不正常だと。それにはスライド制をとる以外にはないんではないか、あるいは需給が緩和してきたから、間接統制へ移行することが一番政府としては負担もかからないし、簡単ではないかというような、そういう安易な考え方に立っておるとは思いませんけれども、世論はそういうような内容において強く風当たりが出てきておるのでありますから、その点実力のある大臣でありますから、ひとつ少なくともいま私が申し上げますように、二千億といかなくても、千億円でも無利子の金が使えるということは、それだけ赤字会計がなくなるということでありますので、前向きでひとつ検討を願って、少なくとも大臣が言明をされておりますように、食管制度の根幹を守るという立場を明らかに具体的にしていただきたいというふうに思うわけであります。  なお私は、まだ今後の米の需給問題について、具体的に方針をお聞きしたいと思っておりましたけれども、すでに三時間近い質問時間をお借りしておりますので、最後にもう一点だけ大臣にお尋ねをいたしまして、本日は質問を終わり、次の機会に譲りたいというふうに思うわけであります。  話はまた戻りますが、米審がいつ発足するか、私には予測が立ちませんけれども、倉石さんは米価を諮問するだけではなしに、食管制度のあり方についても検討してもらう、こういうことをおっしゃって、そういう構想がありましたから、例年にない一月米審を任命されて、具体的に米審を開く計画が立てられておったと思うのであります。そこで西村農林大臣の予算委員会等における答弁を聞いておりますと、政府としては価格以外には諮問をしない、こういうふうにおっしゃっておるのであります。価格以外諮問をしないということでありますならば、従来の例に見ますならば、米審は七月開くということであれば、七月招集をされて開会をされれば事足れりと思うのでありますが、それらの点はどういうふうにお考えでありますか。
  104. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 最初のほうの御質問は、食管の赤字が何とか、あるいは二千四百十五億、それだけにこだわることなく——ごもっともでございます。同時にまたわれわれとしてはこれの運用におきましても、国庫余裕金その他を十分勘案して、金利の負担軽減をすべきまだくふうの余地を検討してまいりたいと思います。  それから米審に対する政府の態度の問題でありますが、これは米価その他主要食糧の価格決定、これを御諮問申し上げるという諮問機関でございますから、政府としてはこれについての答申を期待してまいりたいというのが政府の考えでございます。したがってこれは、ただいま構成等につきまして、先ほど来申し上げておるような経緯はありますが、それらを勘案いたしまして運用してまいりたい、こういうふうに考えております。
  105. 和田鶴一

    委員長和田鶴一君) 本件についての質疑は、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十六分散会      —————・—————