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1968-04-23 第58回国会 参議院 内閣委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月二十三日(火曜日)    午前十時四十八分開会     —————————————    委員異動  四月十九日     辞任         補欠選任      北畠 教真君     柴田  栄君      内田 芳郎君     二木 謙吾君  四月二十三日     辞任         補欠選任      原田  立君     鬼木 勝利君      片山 武夫君     向井 長年君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         井川 伊平君     理 事                 八田 一朗君                 伊藤 顕道君                 山崎  昇君     委 員                 熊谷太三郎君                 菅野 儀作君                 二木 謙吾君                 山本茂一郎君                 前川  旦君                 多田 省吾君                 片山 武夫君    国務大臣        国 務 大 臣  田中 龍夫君    政府委員        内閣総理大臣官        房審議室長    橋口  收君        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院事務総局        給与局長     尾崎 朝夷君        総理府総務副長        官        八木 徹雄君        総理府人事局長  栗山 廉平君        総理府特別地域        連絡局参事官   加藤 泰守君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○総理府設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 井川伊平

    委員長井川伊平君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十九日、北畠教真君、内田芳郎君が辞任され、その補欠として柴田栄君、二木謙吾君が、また、本日、原田立君が辞任され、その補欠として鬼木勝利君がそれぞれ選任されました。——委員長井川伊平君) 総理府設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案は去る十八日、衆議院から送付され、付託されました。  なお、提案理由説明はすでに聴取いたしております。  それでは、これより本案質疑に入ります。関係当局からの御出席は、八木総理府総務長官橋口審議室長宮崎参事官加藤参事官、以上の方々でございます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この法案そのもの関連する事項について二、三お伺いしたいと思いますが、まず順序としてお伺いしたいのは、日本政府沖縄事務所関連してお伺いいたします。   提案理由説明を先般承ったのですが、その説  明によりますと、沖縄におけるアメリカ政府機関との協議に関する事務を、総理府付属機関である日本政府南方連絡事務所所掌事務に追加される、こういう説明があったわけです。ここにいう協議に関する事務とは、一体どのような事務なのか、これを具体的に説明願いたい。  それと、日本政府南方連絡事務所のおもなる所掌事務はどのようなものであるのか。この機会にあわせて御説明いただきたいと思います。その要点だけでけっこうです。
  4. 加藤泰守

    政府委員加藤泰守君) お答えいたします。南連所掌事務は、総理府設置法十三条に規定してございますが、アメリカ管轄区域——これは沖縄にあるアメリカ合衆国の政府関係機関、主として民政府でございますが、それとの連絡、それから本土から沖縄に渡航する関係事務、それから沖縄にいる日本人の保護に関する事務、それから身分関係公証事務、その他沖縄本土関係解決を要する事項を調査し、連絡し、あっせんする。それから貿易、文化の交流等というようなことを所掌事務としております。  アメリカ政府機関との連絡は、従来は連絡事務だけでございましたので、特にいわゆる交渉的なことはほとんどなかったわけですが、今回協議事務といいますか、協議の能力が与えられることになりまして、これはその範囲としては非常に広い意味アメリカ機関との間で合意を目的として意見の交換をする、そういうことになるわけでございます。  ただ、具体的にという話でございますが、まあいま申し上げましたように、非常に広い範囲にわたっておりますので、特にこういう事務ということを申し上げる必要もないかと思うのですが、非常に広く全般にわたりましてアメリカとの合意前提にする事項、そういうことについて協議をする、こういうことでございます。ただ諮問委員会というものがございまして、あすこ一体化事項を相当強力に進められる、こういうことになっております。そこに日本政府からの代表が出ております。その諮問委員会との関連におきましては、諮問委員会のほうは抽象的、制度的な主として重要な事項について協議して、あすこ合意されたことが高等弁務官に対して勧告される、そういう形で仕事が行なわれますが、連絡事務所のほうは、そういう諮問委員会におけるように抽象的、制度的というよりも、具体的、個別的な軽微な事項について、アメリカとの間でそのつど必要に応じて話し合って合意に持っていく、そういう点で差があると思っております。
  5. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 昨年十一月に行なわれた日米首脳会談において、沖縄本土復帰に備えて、高等弁務官に対し勧告し助言することを任務とする——いま御指摘のあった諮問委員会を設置することとなって、同時に日本政府南方連絡事務所機能拡大して、高等公務官及び米国民政府共通関心事項について協議することができるようになった、こういう説明でありますが、高等弁務官に対して勧告し助言することを任務とする諮問委員会構成等はどうなっておるのか、この機会に伺っておきたい。
  6. 加藤泰守

    政府委員加藤泰守君) 諮問委員会構成は、日本政府アメリカ政府、それから琉球政府、それぞれから出ます代表をもって構成されます。アメリカ政府関係を申しますと、沖縄におきますアメリカ政府機関国防省系統機関でございまして、この諮問委員会代表国務省系統から出されております。したがってアメリカ関係を言えば、現地機関とは指揮系統を一応異にする代表ということでございます。
  7. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま申し上げた内容の一部に、共通関心事項についてとあるわけですが、ここに言う共通関心事項とはどのような事項をさすのか。ひとつ具体的に説明いただきたい。
  8. 加藤泰守

    政府委員加藤泰守君) 日本政府として解決を必要とする事項と、それに対してアメリカ側のほうも、特に沖縄における治安維持等から考えまして、また、沖縄民生福祉の増進ということから考えまして、いろいろ関心を持っておる事項、こういう事項につきましては、当然両政府共通した関心事項、こう言っておるわけであります。経済の発展等につきましても、もちろん非常な関心になっております。
  9. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 日本政府南方連絡事務所総理府付属機関でありまするが、米国の政府機関との協議に関する事務執行については、外務大臣指揮監督を受けるとの説明があったようですが、この外務大臣指揮監督は、総理府を通さずに直接受けることになるのか。もしそうだとすると、協議に関する事務執行については、総理府は除外されるような結果になろうかと思う。いや、そういうことではなく、外務大臣は、協議に関する事務執行にあたっては、南方連絡事務所指揮監督するけれども、その場合外務大臣は、その旨を内閣総理大臣に通知することになるのか。この辺が明確でないので、この点についての説明をいただきたい。
  10. 加藤泰守

    政府委員加藤泰守君) お尋ねの件は、外務省総理府事務関係に関するものでありますが、総理府設置法の第三条の第三号におきまして、南方地域、それから北方地域とともにでございますが、「に関する事務外務省所掌に属する事務を除く。)」ということになっておりまして、外務省所掌事務は、総理府事務とはなっていないわけでございます。したがって共管関係にはないわけでございます。したがいまして、外務省所掌事務である外交事務外交交渉というものが、外務省専管事務、こういうことになります。そういう関係にございますので、今回南方連絡事務所協議機能が与えられるということになりますが、その協議というものは、外務省所掌事務である外交交渉の一部、こういうふうに判断されますので、この設置法の三条の趣旨から申しますれば、外務省専管事務、こういうことになります。そういう関係で、これはむしろ総理府に置かれる機関外務省事務の一部が委任されている、こういう関係にありますので、外務省といたしましては、当然単独で指揮できるわけでごいますが、しかし、事務所を管轄しております総理府といたしまして、外務省事務がどの程度あるのかというようなことは、当然把握していかなければならぬわけでございます。そういう意味におきまして、今回の改正におきまして、外務大臣指揮するときは、総理大臣に報告することになっているわけでございます。その外務省所掌事務とする協議のその関係は、実は内容的に申しますと、総理府所掌しております——  特に一体化業務というようなものが入ってくると思いますが、そういう関係におきましては、当然総理府としても重大な関心を持っております。そういう意味で、内容の点につきましては、外務省十分連絡をとっていかなければならないことであるし、ただ、ここで申します外交事務に属する協議機能というのは、やや外交テクニック的なものとしてわれわれは判断しておりますので、外交テクニックとしての外交一元化という観点から、外務省専管事務をそのままにいたしまして、総理大臣に対して通知してもらうことによって、事務内容、それから事務分量等総理府で把握していきたいと、そういうふうに考えます。
  11. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 ここで言うところの沖縄現地において解決することが適当な事項とあるわけですが、そういう事項というのは、一体どういうような事項なのか、具体的に御説明いただきたい。
  12. 加藤泰守

    政府委員加藤泰守君) 事務の具体的な内容というお話でございますが、これは全般的にわたる事項でございますので、あらゆる面について一応考えられるわけでございますが、直接現地において解決できることを前提にして、交渉といいますか、協議してもらうことになりますので、当然軽微な、あるいは具体的、個別的なということに大体入るようなもの、こういうことになるわけでございます。
  13. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 ここで南方連絡事務所機能を拡充するというふうに説明しておりますけれども、協議に関する事務を新たに加えると、そういう説明はあったわけです。しかし、そのほかに何かあるのか、また組織定員等についてもこの際説明願いたい。
  14. 加藤泰守

    政府委員加藤泰守君) 今回の改正によりましては、特に事務範囲としては協議だけでございます。ただ、内容的には、一体化の推進に伴いまして、いろいろ具体的な仕事はふえてまいると思います。  定員の点につきましては、現在南連固有定員といたしまして、固有のといいますか、諮問委員会との関係でちょっとふえておりますけれども、その点を除いた定員といたしましては六十五名、所長以下六十五名でございます。その六十五名の定員は、所長の下に次長が二人、それから課長が三人という組織仕事をやっております。なお、諮問委員会代表に対する補佐員といたしまして、参事官二名、調査官三名、それからその他三名、合計八名の定員がつくということになっております。
  15. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 総理府設置法の第十四条の二の二項を見ますると「職員に対して支給する在勤手当支給額は、職員がその体面を維持し、かつ、その職務と責任に応じて能率を充分発揮することができるように南方連絡事務所の所在地における物価、為替相場及び生活水準を勘案して、政令で定める。」、現在この政令でどのように定められておりますか。これは政令ですから、国会審議対象じゃありませんけれども、関連がありますから、この機会に参考までに伺っておきたい。
  16. 加藤泰守

    政府委員加藤泰守君) 政令がちょっと手元にございませんが、大体本俸の二倍の手当を考えています。ただ、甲表乙表ございまして、甲表のほうと申しますと、こちらから行かれた方の手当が二倍でございます。現地採用の方はちょっと……。
  17. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 同じく総理府設置法の第十三条四項「南方連絡事務所所掌事務を分掌させるため、南方連絡事務所に、出張所を置くことができる。」とあるんですが、現在この出張所はあるのかないのか、もしあるとすれば、定員とか内部組織、そういうことについて御説明願いたい。
  18. 加藤泰守

    政府委員加藤泰守君) 現在は出張所はございません。
  19. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 琉球政府主席民政府によって任命され、立法院の議決する議案は民政府に監視され、議決された法案についても高等弁務官拒否権を持っている、こういう事実があるわけですね。それと、立法院議員は一応公選はされますけれども、立法院はほんとうの立法権を持つ最高機関である国会ではないわけですね。また、民政府はいつでも布令布告を出すことができるんですが、この布令布告は絶対的なものであって、統治上重要な事項はすべて布令布告で規定する。したがって、司法権の独立も存在しない、こういうことが言えますが、そこでお伺いするわけですが、最終審であるべき上訴裁判所の判決も、民政府はいつでも自由に破棄できるようになっておりますし、また、民政府裁判所は、必要とあればいつでも事件を取り上げることができる、こういうことから総括して害えることは、沖縄県民基本的人権を保障するものは存在しないと思うんですが、その点はどうなのか。
  20. 加藤泰守

    政府委員加藤泰守君) 大統領行政命令におきまして、その十二節におきまして、「高等弁務官は、第十一節」、この第十一節と申しますのは、先生のおっしゃったような一種の拒否権でございますが、拒否権——「を含むこの命令を実施するにあたっては、琉球列島にある人々に対し、民主主義国家の人民が享受している言論、集会、請願、宗教並びに報道の自由、法の定める手続によらない不当な捜索並びに押収及び生命「自由又は財産の剥奪からの保障を含む基本的自由を保障しなければならない。」、そういうふうになっておりまして、いろいろ問題はあろうかと思いますけれども、大統領行政命令によって、少なくともそういう民主主義国家国民が享受しているような自由は保障するということを前提にして、その行政命令が出されております。したがって、そういう趣旨でいえば、そういうような点については一応は配慮がされておるというふうに考えますが、具体的にいろいろ問題がございます。特に、この十一節の、この権限をもっと制限するとか、あるいは裁判関係移送問題等につきまして、できるだけといいますか、移送ということをやらないようにとか、その他琉球政府自治権拡大という方面につきましては、いろいろわれわれ総理府としてもその点、機会あるごとに高等弁務官に、それから民政府等にいろいろ話し合いをしておりまするが、だんだんと自治権拡大方向にいくということは考えられます。また、現にこの十一月に主席公選も行なわれることでございますので、ますます民政府が従来やっていたようなことは、琉球政府がその自治権によって規律していくようになっていくだろうというふうに考え、またそういう方向でわれわれも努力していくというふうに考えております。
  21. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この基本的人権を保障するためには、条約第三条を廃棄して、結局沖縄完全復帰をはからなければならぬ、そういう問題につながってくるわけですけれども、こういう問題は基本的な問題でありますので、後ほど大臣がお見えになったときにお伺いすることとし、沖縄問題はこの程度にしておきたいと思います。  なお、この沖縄問題については後刻、この次の週になると思いますが、前川委員が詳しくお伺いすることになっております。
  22. 山崎昇

    山崎昇君 ちょっと関連して、沖縄事務所について聞いておきたいのです。  第一は、機関としては付属機関でやられるのが、どうも私納得いかないのです、いままで十条で置かれておるのですが、今度沖縄事務所に変えるにあたって、なかなかこれは行政処分的なものもかなり入っているのじゃないか、それから、場合によっては外務大臣の直接指揮を受けて、いわば領事事務的なことも入ってきやせぬかという気がしているのですが、そういうことになれば、当然内局か、せいぜい外局的な存在にしなければ、機関としてはおかしいじゃないかという気がしているのですが、これについて見解を聞いておきたい。なぜ付属機関でやられるのか。
  23. 加藤泰守

    政府委員加藤泰守君) お答えいたします。  従来連絡事務が中心でございましたので付属機関ということになったわけでございますが、今回協議機能の付加、なお、昨年の改正によりまして、旅券発給事務の追加が行なわれておりますので、そういう意味では、性格的に変わってきていることは事実であります。ただ、いまの段階ですぐに支分部局的なものに持っていくのは、ちょっと施政権の問題との関係がございますので無理ではないかというふうに考えます。
  24. 山崎昇

    山崎昇君 そうするとあれですか。いまのところは付属機関から変えるということは、多少ちょっと時期尚早のような感がする。しかし、これは当然沖縄一体化問題とか、かなり重要な内容を含んでくるとすれば、私は付属機関でやるべき性格のものじゃないのじゃないか、一般的に付属機関という性格からいえば。したがって、検討されるべきであろうとは思いますけれども、これは機構上の問題ですから、早急に解決してほしいと私は思うのですが、これはむしろ副長官にお伺いしておきたいと思います。
  25. 八木徹雄

    政府委員八木徹雄君) ただいま山崎先生がおっしゃるとおり、一体化施策が具体的に緒について、そうしてその性格がそれだけ改善強化されていくということになれば、当然そういうことは考えなければならぬ課題だと思います。そういうことをひとつ想定をしながら進捗さしていきたいと考えております。
  26. 山崎昇

    山崎昇君 それから第二点目にお聞きをしておきたいのは、外務大臣が外交問題について直接指揮をするのですね。そうなれば、私は、せめて所長外務事務官程度兼任が必要ではないかと思うのです、これは人事行政上から言えば。しかし、そうでなければ、単なる規定だけで、これだけについては外務大臣が直接指揮をとりますということは、少し私は役所の機構問題としてもおかしいような気がするのですがね。これは当然外務事務官兼任さしておいて、外務事務官としては外務大臣指揮を受けて、そうして所長は、その身分において直接自分の部下指揮監督をとるこうならなければ、人事上からいってもすっきりしないのじゃないかと私は思うのですが、それについてひとつ副長官見解を聞いておきたい。
  27. 八木徹雄

    政府委員八木徹雄君) 今回の措置によりまして、諮問委員のほうは、御案内のとおり外務省プロパー仕事だということで高瀬君がすでに赴任しているわけでございますが、所長のほうはやはり一体化施策を進めていくという、そういう性格が強力にこの仕事の中に入ってまいりますので、そういう意味合いで諮問委員外務省の方、また所長外務省の方というよりも、所長のほうは、そういう新しい仕事性格というものが強く出てくる意味におきましても、やはり内政のよくわかる、どちらかというと自治省系統の人で、まあその本省における局長相当といったような人を想定をして用意をしようというつもりでございまして、諮問委員高瀬君と新しい所長とのチームワークの上に円満なる事が推進できるようにしむけていこうという考え方でございますので、その間、両方とも外務事務官にしなければならない、外交官にしなければならぬということでなくてもいけるのじゃないか、こういうふうに見ております。
  28. 山崎昇

    山崎昇君 そういう意味で私は聞いているのじゃないのです。十四条の二項に「所長は、内閣総理大臣の命を受け、所務を掌理する。」とあるのですね。四項では、外務については主任の大臣外務大臣になるわけですね。そこで所長身分総理府事務官になっているわけでしょう。したがって私は、外務大臣指揮を受ける場合には、身分上は外務事務官兼任させる必要があるのではないかという気がしている。だからそういうふうに人事上もすっきりすれば、当然外務大臣外務事務官としての所長指揮監督し、それを受けた所長部下職員指揮監督するということがすっきりするのではないか。そうでないと、所掌事務指揮監督との間にどうもやはりすっきりしないものがあるのではないか、こういう気がするから、兼任措置が必要ではないでしょうかと、こう聞いているわけです。
  29. 加藤泰守

    政府委員加藤泰守君) お答えいたします。実は現在も、先ほど申し上げましたように旅券事務外務省仕事でございますが南連でやっている、こういうことでございます。そこで現在の所長外務省から参りまして総理府事務官になりました場合、外務事務官兼務ということで仕事をやっております。先生のおっしゃるように、特に外務事務につきましては、何と申しますか、直接その指揮を受けるような関係にございますので、そういう措置を現在とっているわけでございますが、もちろん、所長はいまも兼務の状態でございますけれども、今後いま副長官のおっしゃった内政的な方がなった場合にどうなるか、こういうことであろうかと思います。その点につきましては、まだ十分外務省話し合いをしておりませんけれども、よく検討してみたいと思います。
  30. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、同和対策協議会関連して二、三お伺いしたいと思います。この同和対策協議会は、昭和四十年八月十一日に行なわれた同和対策審議会答申趣旨に沿って設けられたと思うのですが、同和対策に関する長期計画の策定と、その円滑な実施をはかるために今日まで総会、部会等、計五十回を開催しました、こういう提案理由説明があったのです。また、昨年政府の行なった全国の同和地区対象とする実態調査に協力した、こういう説明があったわけですが、同和問題については、昭和三十五年八月、同和対策審議会が設置され、その後二回にわたって存置期間が延長されておるわけです。この審議会答申趣旨に沿って設けられたとする協議会を、いままた二カ年の期間延長をはかろうとしておる。こういうものをあわせ考えると、それぞれその場その場で期間を延長して、一貫した計画性がないのではないか、こういうふうに見られるわけです。この間の経緯について承りたいと思います。
  31. 橋口收

    政府委員橋口收君) お答え申し上げます。ただいま先生から御指摘がございましたように、三十五年に同和対策審議会が設けられたわけでございますが、その前に政府全体といたしまして同和関係閣僚懇談会を持ちまして、そこで同和対策に関する基本的な方針を決定いたしておるわけでございます。それに基づきまして審議会が設置され、先ほど指摘がございましたように、審議会答申に基づいて協議会が設けられたわけでございます。協議会につきましては、過去二年間にわたりまして、総理府審議会の中でも最も活発に活動いたしておる審議会でございます。現在の審議状況等から勘案いたしまして、さらにもう二カ年間審議期間を必要とするというふうに考えておるわけでございます。
  32. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この同和対策審議会答申趣旨に沿って同和対策協議会が設置されたということですが、どうも納得しがたいのですが、審議会協議会と一体どのように違うわけですか。名前は確かに違うわけですが、内容は別に変わらぬのではないかという疑問が出てくるわけです。どのように違うのですか。
  33. 橋口收

    政府委員橋口收君) 同和対策審議会は、政府の諮問を受けて答申をするということが主たる任務となっておるわけでございます。協議会につきましては、同和に関する施策の重要事項につきまして調査審議するというのが、協議会としての任務として与えられておるわけでございます。そこに性格上の多少の相違があるわけでございます。
  34. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 どうもおかしいですね。審議会を廃止して協議会を設けたほんとうの真意は、審議会が二回にわたって存置期間を延長しておるわけですね。それでまたいま協議会になっても、これまた期間を二回延長しようとする。どうもこういうことをやると、批判が相当強くなるということをおそれて、そういうもっともらしい理由をつけて協議会を設けたのではないか、こういう考えが出てくるわけです。まだ完全に審議の結果をまとめ得ないというのなら、目的を貫徹するまで審議会で、いま二回期間を延長したわけですからちょっとまずいわけですけれども、しかし目的を完遂していなければ、やむを得ないからさらに期間を延長する、そういうことでも事足りるわけですが、どうも協議会を設けたけれども、その協議会をここに二年期間を延長しようとしている、こういう点でどうも納得しがたいわけですが、その点をひとつ説明いただきたいと思います。
  35. 橋口收

    政府委員橋口收君) 同和対策協議会につきましては、先ほどもお答え申しましたように、同和対策審議会答申に基づいて設けられておるわけでございます。協議会任務といたしまして、具体的には長期計画の策定に関する意見の具申並びに同和対策の基本にかかわる法的措置についての研究を進めておるわけでございます。当初の予定といたしましては、政府の行ないます実態調査に基づきまして長期計画の策定に関する意見の取りまとめが、大体ことしの二月中に完了する。それから法的措置についての検討の結果を、おおむね年度中に終わる、こういう見込みで作業をいたしておったわけでございます。ただ、政府の行なっております長期計画策定のための実態調査の作業が約半年くらいおくれておるわけでございまして、さらに第二の任務として与えられておりました法的措置に関する検討も、まだ最終的な結論を得るに至っておらないわけでございます。そういう点を彼此勘案して、本年三月末で一応任務を完了するというふうに当初考えておりました協議会期間を、さらに二年程度の延長を必要とするというふうに判断をいたしたわけでございます。
  36. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 半封建的な差別に苦しむ部落の現状について、この機会に伺っておきたいと思います。たとえば部落はどのくらいあるのか、部落民は全国でどのくらいか、それは概数でけっこうです。
  37. 橋口收

    政府委員橋口收君) お尋ねのございました同和地区の住民の数でございますが、これは昭和三十八年に、同和対策審議会が中心となりまして第一回の調査をいたしております。それから第二回は協議会が中心となりまして、昨年調査をいたしております。昭和四十二年の調査で申しますと、同和地区の世帯数が二十六万一千八百八十五戸となっております。それから同和関係の住民の人口が百六万六千七百七十三人となっております。これはいわゆる同和地区に世帯を持ち、同和地区に住居を持つ者の総数でございまして、そのほか同和地区を離れて、いわゆる部落出身者として社会的活動をしておる人数は含まれておらないわけでございます。あくまでも同和地区としての存在に着目いたしての実態調査の結果でございます。
  38. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 昭和四十年の八月十一日の同和対策審議会答申内容は、部落の完全解放を要求する人々から見ると、きわめて不満足なものであったわけです。けれども、部落問題の解決を促進する上に画期的な意義があったと思うわけですが、たとえば、「同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題である。」という点を指摘しておる。また、市民的権利の保障がなされなければならないと、部落問題の重要性を答申指摘しておるわけです。  そこでお伺いしたいわけですが、いま長官お見えになりませんが、総理府としても、こういう答申が出た以上、重大な課題として取り組まなければならない責任があろうかと思うんですね。これは後ほどまた長官にもお伺いいたしますが、副長官としてどういうふうなお考えですか。
  39. 八木徹雄

    政府委員八木徹雄君) 御案内のとおりに、いま延長を願います協議会の目的である長期計画と法的措置という、その長期計画を策定して、それによる具体的施策を進めることによって解放の実をあげるという努力を重ねていくことは必要であろうと思います。  それからもう一つは、それに付帯して法的措置というものが必要であるということで、いま両方にわたって、法的措置に対する準備体制並びに長期計画に対する、その前提である実態調査の把握ということにつとめているわけでございまして、おっしゃるとおり、基本的人権の尊重という意味においても、平等の原則という意味におきましても、当然やらなきゃならぬことでございますので、今後総理府といたしましては、法的措置というものも、ひとつできるだけすみやかにこれを実現するように努力をする。また、長期計画を策定して、予算的措置等によってその解放の実をあげるような具体的施策を進めていくというふうに努力をしてまいりたいと、こう考えております。
  40. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この同和対策審議会答申ではこういうことも指摘をしておるわけです。「部落差別とは、ひとくちにいえば、市民的権利、自由の侵害にほかならない。市民的権利、自由とは、職業選択の自由、教育の機会均等を保障される権利、居住および移転の自由、結婚の自由などであり、これらの権利と自由が同和地区住民にたいしては完全に保障されていないことが差別なのである。」、明確にこういう差別のあることを指摘しておるわけですね。また、こういう点も指摘しておるわけです。「これを未解決に放置することは断じて許されないことであり、その早急な解決こそ国の責務であり、同時に国民的課題である」として、産業職業、教育、文化、生活環境等に関する基本的対策と具体的施策を提案し、政府にその積極的実施を答申は要望しておるわけです。  そこでお伺いしたいわけですが、この答申があってからすでに二年八カ月経過しているわけです。答申の示す基本的対策と具体的施策は、どのように実現されておるのか。これは基本的な問題であり、後ほど長官にもお伺いしたいと思いまするが、一応副長官お見えになっているから伺っておきたいと思います。
  41. 八木徹雄

    政府委員八木徹雄君) それらの問題につきましては、実際は具体的に歴代内閣が力を尽くしてきておるところでありますけれども、まだ実効が十分に完ぺきにあがっていないということに対する批判だと思うのであります。審議会答申が出たんだから、それによってすぐ措置をしたらいいではないかという御意見ではなかろうかと思うんでありますけれども、先ほど橋口審議室長から申しましたように、審議会答申に基づいて協議会というものが設置されて、その協議会において長期計画に必要ないわゆる実態調査というものを進めているということでございますので、われわれとしては、審議会答申に基づくその協議会の具体的作業というものを十分ひとつ見きわめて、最終的には法的措置並びに予算措置、そういうものにひとついままで以上に今後努力していかなきゃならぬと、こういうことでございますが、審議会答申以後やっておることは、毎年毎年の予算の、同和に対する予算措置が大幅にふえておると、そういうことによって努力を政府はしておると言っていいのではないかと思いますけれども、まだそれだけでは不十分であるので、長期計画に基づくほんとうの具体的計画的措置というものを、これからひとつ進めていくようにいたしたいと、こういうことでいま準備をしておるところでございます。
  42. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 せっかく審議会答申が示すところの施策やあるいは対策が、約三カ年を経過しておる現在ただいまでも、あまり実現されていない。しかし、説明によると、年々予算はある程度ふえておると、こういうことですけれども、国費を費やして、あるいは審議会をつくり、あるいは協議会をつくって、いろいろな諸課題を調査、審議されておるわけですが、あまり着実に実現されないということになると、どうも審議会協議会をつくっても、あまり意味がないんではないか、こういう意見が必ず出てくると思うんです。もう少し答申趣旨を尊重して積極的に取り組まなければならぬ責任があろうかと思うんですが、あなたはただ、年々予算は少しふえておると言うわけですけれども、いかなるものでも予算は年々ふえるわけです。これは全体のワクがふえているものですから。問題は全体の予算に対する割合ですね、ここに重点が置かれなければならない。年々予算はふえているですよ。だから、それに即応して当然この対策の費用もふえているでしょうが、ただ予算がふえたからということだけでは、結局積極的にこの問題に取り組んだことにはならぬわけです。  したがって、ここでお伺いしたい点は、もう少し真剣な態度で積極的に取り組めないものかと、課題はあまりにも多いわけですね。これを待望している部落の人々の立場を考えると、まことに同情に値するものが現在あるわけです。これをできることから一つ一つ具体的に解決する必要があろうかと思うんですが、そういう点についていま一度総理府のお考えをお伺いしたい。
  43. 八木徹雄

    政府委員八木徹雄君) 予算の全体に占める比率の伸び率につきましては、事務当局のほうからあとで説明いたさせますが、概括的に申しますならば、いわゆる普通の伸びというものではなくて、その伸び率というものは、一般の伸びを相当上回る大幅伸びをいたしておるというところでございます。しかしながら、それでもって、もうそれでは十分成果があがるだけの予算措置ができておるかというと、それはそうではございませんので、そういう意味ではなおなお努力しなければならぬ、こう考えておりますが、ただ審議会が一回延長して、またこの協議会が延長する、いたずらに審議会協議会の何といいますか、その期間を延長するという姿勢は不十分ではないかという、そういう御批判は、われわれも反省しなきゃならぬと思いますが、決して延ばしているということではございません。結果的に延びたということでございます。  私たちは、先ほども申しましたように、抜本的解決をはかっていくためには、一つは、やはり同和に対する基本的な法的措置というものをひとつ確立するという、そういうことを考えなきゃならない。いま一つは、御指摘のように、ただいたずらに予算が伸びるということじゃなくて、長期計画が策定されて、その年次計画に基づくその具体的予算措置というものが確立するということが、それがやはり同和の方々に対する安心感にもつながっていくことだ、こう思いますので、その意味長期計画を一日も早く策定をいたしたい。長期計画を策定するためには、実態調査というものを、完ペきな実態調査をしなければならぬということで、実態調査に真剣に取り組んできたわけでございますけれども、先ほど橋口審議室長から申しましたように、その作業が半年おくれた、結果的には長期計画のほうも延びざるを得ない。そこで今回二年の延長を願うということにいたしましたが、私たちは、二年というものを、二年一ばいかけようという気持ちはございません。いま半年おくれた実態調査が間もなくできるわけでございますから、それに従って、できるだけすみやかに長期計画の策定をして、四十四年度以降、それが具体的に計画的に措置できていくように努力をしてまいりたい。そういう気持ちで意欲的に取り組んでいるというところでございます。御了承いただきたいと思います。
  44. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 具体的な面でお伺いしたいんですが、たとえば部落の青少年は、高度経済成長のもとにおいてすら、差別のために就職の機会的等を保障されていないわけです。近代産業からは完全に締め出されて、非常に条件の悪い臨時工あるいは社外工、あるいは零細企業の従業員など、きわめて不利な雇用にさえ就職がむずかしいのが現状だと思うんです。このような現状に対して、どのように具体的に対策を考えておられるのか。
  45. 橋口收

    政府委員橋口收君) 先ほど予算についてお尋ねがございましたので御説明申し上げますが、四十三年度の予算で同和対策関係の経費は六十一億五千万円となっております。対前年増加率が三一%、同和関係の対策予算として昭和三十七年に九億四千八百万円が計上されたわけでございますが、それと四十三年度と比較いたしますと六・五倍になっておるわけでございます。  ただ、先ほど御指摘がございましたように、同和問題は予算だけで解決する問題でもございませんので、さらに全般的な施策を講じておるわけでございますが、そこでお尋ねがございました就労の問題でございますが、この点につきましては、それぞれ関係省庁で努力をいたしておるわけでございますが、昨年行ないました同和地区実態調査の中で、精密調査というボーリング調査をやっておるわけでございます。その調査のやり方といたしましては、同和部落を形態別に、たとえば出かせぎ型とか、あるいは伝統産業型とか、そういう類型別の調査をいたしておる。あるいはスラム型、類型別の調査をいたしておりまして、その中にも先生から御指摘のございました就労の問題、就労構造の問題等についても、かなり掘り下げた調査ができておるわけでございます。今後そういう調査を受けまして、さらに労働省が中心となりまして、政府の全体の施策の中に反映してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  46. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 大体部落の方々は昔から皮革あるいは敷きもの、こういう面が部落の伝統的産業であったわけですけれども、大資本に圧倒されて、いま壊滅的な打撃を受けつつあるわけです。農村の部落では、大体五反以下の貧農ということがいえると思うわけですが、そうなると農業構造改善政策によって、いずれは切り捨てられる運命に置かれておる。そういうことになると、町でも村でも容易ならざる問題が現出されるということになると思うが、どのように対策を考えておるのか、この際伺っておきたいと思う。
  47. 橋口收

    政府委員橋口收君) 先ほど申し上げました精密調査の中に、やはり先生指摘のような問題が調査の対象になっておるわけでございまして、たとえば農村における部落農業の現況、あるいは漁村における特殊な形態としての部落漁業のあり方等についても調査が進められておるわけでございます。こういう調査結果を参酌いたしまして、さらに対策を前進させたいというふうに考えておるわけでございます。
  48. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 まあ調査もちろん必要で、その資料を得るために調査をやる、これは非常に大事なことですが、調査に基づいて強力な対策を講じないと意味がないわけですね。いまの段階では調査、調査といって、調査はなるほど大体手順はわかってきたでしょうけれども、対策を強力に推進しなければ、何らの改善は得られぬわけです。たとえばまた、同和地区内の中学生のいわゆる進学率を見ても、その率はきわめて低い、一般地区の約二分の一といわれておるんです。憲法二十六条でいう教育の機会均等ということは一つも実現されていない。こういう点についてはどのような具体策があるのか、伺っておきたいと思うんです。
  49. 八木徹雄

    政府委員八木徹雄君) 御指摘のように、やはりその格差是正、差別の解消をはかっていくために一番大事なことは教育の機会均等、教育の質を上げることだと思うんです。現状のままで部落を解放するということだけで、生活向上というのは必ずしもそれに結びつきませんから、飛躍をはかっていくための教育の向上ということを最重点に考えていかなければならない。そういう意味における一般的な育英奨学事業とは別個に、それに重点を置いたその進学対策というものに熱意を示していかなければならない。そういう方向でいままでもその努力をしてきておりますけれども、まだ御指摘のように進学率が一般並みに向上していないという実態があるわけでございますから、さらにこれをひとつ向上のほうに努力をいたしていきたい。また、先ほど橋口君が申しましたように、まず実態調査を確立して具体的対策を立てるということが望ましい。農業の場合においても、漁業の場合におきましても、それは一般の農業、漁業どれにも当てはまることでありますが、やはり反別をふやすための農業構造改善事業について、一般的な措置だけだと、おくれを取り戻すというわけにはまいらぬと思いますから、そういう農業改善事業に対することにつきましても、いわゆるプラスアルファを同和地区に加えるということ、それが今後の長期計画の基礎になっていくことだろうと思うのであります。そういうことにおいて、いままでのおくれをひとつとりあえず政治的に解消できるようにしてあげる、そこからみずから立ち上がる意欲と努力によって問題の解決をはかる、そういうふうにしむけていかなければなるまいという前提で、長期計画の中でそれが解決できるように、政府といたしましては最善の努力を払ってまいりたい、こう考えておるわけであります。
  50. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 昭和三十五年の八月に、同和対策審議会が設置されて、政府はおそまきながら同和問題と取り組んできたわけです。それから現在まで八カ年経過しておるわけですね。いま副長官が言われておったように、基本的な調査を通じて実態を把握しており、その実態に即応した対策を立てる必要がある。それは当然に言えることになるわけですけれども、八年も取り組んでいるので、八年も経過しておるわけですから、たとえば部落民が農村の面ではこういうふうに救済されたとか、進学率もわずかであってもそのほうに進んできたとか、いわゆる生活保護を受ける者も逐次漸減してきた、こういう前向きに改善されておるならまた話が別でありますけれども、以上幾つかの具体例を総括してみても、同和地区内には常に多数の停滞的な過剰人口が固まっており、失業者と生活困窮者、これが増加の一途をたどっておる、そういうふうに言えると思うのです。したがって、少しでもよくなるような、前向きに改善されておるなら、それはたいへんけっこうなことですが、遺憾ながら、いまは少しでも具体的に改善されている向きがあまり見受けられないようなので、そうだとすると、早急に対策を講じないと、憂うべき事態を引き起こすことも容易に察知できるわけであります。こういう点をお伺いしているわけですが、具体的にこの際、一つの改善された面があるならば、その改善策を御説明願いたいと思います。
  51. 橋口收

    政府委員橋口收君) 先ほど来御説明申し上げております同和地区実態調査でございますが、これは基本調査と精密調査と分けて、基本調査におきましては、悉皆調査を目標として調査表を配付いたしまして、基本事項についての調査を行なっておるわけでございます。さらに精密調査につきましては、類型別に掘り下げた調査を実行いたしまして、その両者を総合いたしまして、十年計画の基本的な資料にしたいということで作業をいたしておるわけでございます。  先ほど来お尋ねの進学の問題等につきまして、詳しくは文部省から御聴取いただきたいと思いますが、手元にあります資料で申し上げますと、高等学校等進学奨励費補助というのが文部省の予算に計上されておるわけです。これが昭和四十二年度は四千五百万円でございますが、四十三年度は七千七百五十万円ということで、三千二百万程度の増加を示しておるわけでございます。これも高校進学等の進学補助のために対象人員の拡大をいたしておるわけでございます。そういう個々の予算の費目の内容等につきまして、全部御説明する材料を持ち合わせておりませんが、そういう点をとらえましても、同和対策は前向きの姿で前進しておると申すことが可能であろうと思うのでございます。
  52. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 四十年八月十一日、審議会答申によると、全国の同和地区数は四千百六十ということですが、四十二年については先ほど御指摘があったわけです。ここでお伺いしたいのは、こういう地区をきめるのは、どのような基準によっておるのか、この際説明願いたいと思います。
  53. 橋口收

    政府委員橋口收君) いわゆる同和地区という用語を使っておりますが、この概念といたしましては、五世帯以上の同和世帯が居住する地区で、従来からいわゆる同和地区と目されていたもの、こういう定義で調査をいたしておるわけでございます。
  54. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 全国人口千人に対して同和地区人口は一一・八人ということのようですが、奈良県は七二・一、高知県が五二・三、和歌山県もこれに次いで多いと、そのよってきた理由はどういうことになるのですか。
  55. 橋口收

    政府委員橋口收君) 同和問題は先生御承知のように、非常に長い歴史と沿革を持っておるわけでございます。そういう点から申しまして、日本全国を見渡してみましても、大づかみに申しますと、関東以北はいわゆる同和地区というものが非常に少ないわけでございます。地区といたしましては、大体関西以西に集中をいたしておるわけでございます。これは、長い歴史を持つ同和部落、解放部落の存在がそういう姿になって定着をいたしておるわけでございます。そういう意味におきまして、同和対策執行上も、やはり地区別の配慮が必要になってくるということが言えるかと思うのでございます。
  56. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 全国同和人口のうち、生活保護法の適用を受けておる世帯は概数でどのくらいありますか。
  57. 橋口收

    政府委員橋口收君) 先ほど同和地区の人口百六万六千人と申しましたが、それに対応する生活保護人員は八万四千百二十六人でございます。
  58. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 同和問題については、問題の性質上多方面にわたっておると思うのです。この点については対策も各省庁に関連してくるので、同和対策関係諸官庁の横の連絡には欠陥が多いと答申でも指摘しておるわけですが、同和関係の統制的な機関は設置されていないようですが、その調整はどのようにして行なっていくか、及び今後はどのように考えておられるのか、過去の経緯と今後の考え方について伺っておきたい。
  59. 橋口收

    政府委員橋口收君) 同和対策は御指摘のように関係省庁に多数またがっておるわけでございます。また相互の連絡を緊密ならしめるために、総理府が相当程度その役割りを持つべきであるということは、同和対策協議会の中間答申でも御指摘をいただいておるわけであります。同和対策に関しましては、同和対策協議会が基本的な事項について調査、審議をいたしております関係から、協議会事務部局として総理府審議室がその運営のお手伝いをいたしておるわけでございますが、それと同時に、各省間の連絡調整を緊密にいたしますために、連絡協議会——各省の課長クラスを中心といたします事実上の協議会を設けて、随時連絡をいたしておるわけでございます。そういう各般の施策をとっておるわけでございます。現在のところ、特に同和関係の部局を総理府に設けるという考えは持っておらないわけでございます。協議会の運営なり、あるいは事実上の連絡協議会の円滑化、緊密化によりまして、解決をはかってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  60. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 審議会答申では、同和問題解決のための政府による施策に対応して、その実効を確保するために、政府資金の投下による事業団形式の組織を設立すべきである、こういうふうに答申しているわけですが、そこでこの件については、一体どのようにいま進められているのか、その実情について伺いたい。
  61. 橋口收

    政府委員橋口收君) 同和対策審議会答申では、行政上の要請として六項目を政府に対して注文をつけておるわけでございます。で、その中に同和対策協議会の設置ということも入っておるわけでございますが、その他法律の制定等、ただいま御指摘のございました事業団形式による組織の確立ということも指摘をいたしておるわけでございます。現在の検討の段階におきましては、先ほど来繰り返して申しております長期計画の策定と、それの裏づけとなる法的措置の整備ということに重点を置いておるわけでございます。したがいまして、現在のところ、審議会答申に盛られておる「事業団形式の組織」については、今後の問題として検討をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  62. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この同和対策協議会は、昨年の二月に中間的な意見書として「同和対策長期計画の策定方針に関する意見」を出しているわけです。それによりますと、長期計画についての基本的方針を明らかにするとともに、現在は同和対策の推進に関する法律制定の問題等関係行政機関相互の連絡を要するものに関する基本的事項の調査、審議に当たってまいった、こういうふうにありますが、このことについて一、二お伺いしたいと思うのです。  一つは、長期計画についての基本的方針についての概要を説明願いたいということと、二つには、同和対策に関する基本法なるものは考えられているようだけれども、現在どのように具体化しているのか。なお、この同和対策基本法については今国会——  最近でも野党各派は一体となって政府国会提出を強く要求しているようですが、これは一体どういうことになるのか。この三点について伺っておきたいと思います。
  63. 橋口收

    政府委員橋口收君) 長期計画の策定につきましては、協議会の中間答申におきましても、昭和四十年度から向こう十年間ということを指摘いたしておるわけでございます。で、その中の前期と後期を分けまして、前期で具体的な施策を樹立いたしまして、後期はさらにそれをアフターケアによって拡充すると、こういう考え方をとっておるわけでございます。われわれの作業も、四十四年から十年計画が発足できるように現在実態調査の分析等を通じて計画策定の作業を進めておるわけでございます。計画といたしましては、政府がこれを立てて、同和対策協議会にはかって意見を聞くという形式をとることになろうかと思います。また、計画の内容といたしましては、各省にまたがる問題がたくさんございますので、省庁別の計画がその主たる内容をなすというふうに考えておるわけでございます。  で、第二の問題として、法的措置でございますが、これも長期計画を円滑に遂行するために裏づけとなるような法的措置ということで、同和対策協議会で、法律部会において検討を進めてまいったわけでございまして、昨年の十一月以来、法律部会、四回開きまして検討いたしてまいったわけでございますが、さらに法律部会におきましては、各団体の代表者の意見も聴取して採用してまいったわけでございます。ただ、何分にも広範な内容を持ち、また微妙な問題をはらむ同和問題についての法的措置でございますので、三月三十一日の期限切れまで非常に努力をいたしたわけでございますが、同和対策協議会としては正式の答申を取りまとめるに至らなかったわけでございます。法律部会におきましても、中間的な意見というものの取りまとめをいたしたわけでございますが、法律部会としてもまださらに検討をいたし、それを総会に出して了承を求めるということにいたしたわけでございますが、政府といたしましては、同和対策協議会答申を得て立法したいと、こういう基本的な考え方を持っておったわけでございます。  ただ、伊藤先生から御指摘がございましたように、同和問題の推進上非常に重要な法的な措置であり、しかも緊急を要するということで、現存私の承知いたしておりますところでは、与野党含めて、この問題の処理について御相談いただいておるというふうに承知をいたしておるところであります。
  64. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは、時間の都合もございますから、あと一点だけお伺いして、午前中の私の質問はとめておきたいと思いますが、この協議会は、本年度中にこれらの調査審議の結果をまとめるべく鋭意努力しているけれども、なおしばらくの期間がほしい、そういう説明をしておるわけです。そこで総理府は、この協議会の要望をも考慮してなお二カ年の期間を当てたい、こう説明しておるわけです。  そこでお伺いするわけですが、調査審議の結果は出ているけれども、それをまとめるのになおしばらくの期間がほしいのか、それとも調査審議の結果はもうすでに出ておるのか、その辺。先ほど副長官からも、二カ年を要しないでまとめたいというふうな御意見であったわけですけれども、との点についてもお伺いしたい。先ほども申し上げたように、審議会については二回も期間は延長しておるわけですね。そこでこの協議会もそのような轍を踏むことはないのか。先ほどの副長官の御答弁で、二カ年は要しないであろうという意味の御答弁があったわけですけれども、審議会で二回も期間を延長している、必ず期間を延長するときには、あと二年あればもう十分結論を出し得ると言うにもかかわらず。これは同和対策審議会あるいは協議会だけについて申し上げておるんではなくして、一般論として、政府審議会等の期間を延長する場合には、そのときはあと二年なら二年延ばせば十分やれる、そういう確信をもって答えておられたわけです。審議会のときもそうなんです。一回やれば十分やれるという、それが二回にもなっておる。そういう経緯もあるので、この際、こういう点についてもお伺いしておきたいと思うんです。
  65. 八木徹雄

    政府委員八木徹雄君) 先ほど申し上げましたように、協議会の主たる任務である長期計画、これにつきましては、その前提になります実態調査というものの把握が必要だ。その実態調査が当然この二月ごろまでにできるであろうと思っておったのが、半年延びたということでございますので、実態調査のほうはもう半年たてば当然整備ができるわけでございますので、それができれば、長期計画は直ちに作業に入ってやれますので、今度はいわゆるもう一回ひとつ協議会の延長を願うといったようなことには絶対ならないという気持ちで私たちもおるわけでございます。また、そういうふうに作業を進めてまいりたい、こう思っております。  それから、法律のほうの事項でございますけれども、先ほど橋口君から申し上げましたように、いわゆる協議会の中の法制部会がつい先般中間報告というものをいたした。総理もたびたびこの国会で、法的措置をいたしたい、こういうふうにもう各委員会等で述べておることでございますので、でき得べくんば、この国会に間に合わすようにいたしたいという心組みであったわけですけれども、法制部会のほうが結論を得るに至らなくて、中間答申であるという経緯もございますので、いま実は橋口君から言いましたように、衆議院のほうで、国会対策委員会のほうでこの問題が取り上げられて、中間答申でもひとつこの法的措置をやったらどうかというような野党三派の申し入れもございまして、国会対策のところで調整をしておるところでございます。中間答申でもやるということにはたしてなるのか、やはり中間答申では不十分であるから、本答申を待ってやるということになるのか、おそらく今週中が一つのめどではないかと思うんであります。私たちは万全を期する意味において、本答申をいただいて一その本答申に従って法律条項の整備をはかりたい、こういうふうに考えておりますが、どちらにいたしましても、もうすでに中間答申が法制部会で出ておるというタイミングになっておるわけですから、これが本答申がまた一年半も二年もかかるということにはならぬと思います。あるいは国会対策の関係で急転直下解決することになるかもしれませんが、それができなくても、できるだけすみやかに本答申をいただいて、そうして長期計画だけでも先行して、ひとつ法律条項の整備ができるように、そういうようにし向けたいものだと、そのことが総理の発言、総理の意思でもございますので、行政府のわれわれといたしましては、その線に従って最大の努力を払ってまいりたい、こう考えておるところでございます。
  66. 井川伊平

    委員長井川伊平君) 午前はこの程度とし、午後一時再開いたします。  休憩いたします。    午後零時八分休憩      —————・—————    午後一時十三分開会
  67. 井川伊平

    ○公務員長(井川伊平君) これより内閣委員会を再開いたします。  この際、委員異動について御報告いたします。  片山武夫君が辞任され、その補欠として向井長年君が選任されました。     —————————————
  68. 井川伊平

    委員長井川伊平君) 午前に引き続き、総理府設置法の一部を改正する法律案質疑を続行いたします。関係当局からの御出席は、八木総理府総務長官、佐藤人事院総裁、尾崎給与局長、栗山総理府人事局長、以上の方々でございます。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  69. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 公務員の給与に関連して、総理府人事院を中心に二、三お伺いしたいと思います。  まず、総理府にお伺いしたいのは、いずれ給与担当大臣である総務長官がお見えのとき、基本的な問題は聞き直しますが、順序としてまずお伺いします。四十二年度の予備費については、当初予算は七百億であったわけです。四十三年度予備費については、当初予算は千二百億となっておるわけです。四十二年度に比較して五百億増となっておるわけです。そこでこの五百億の増は、給与費とどのような関連があるのか、この点からお伺いしていきたいと思います。これはもちろん大蔵省にお伺いすべき筋合いですが、総理府は給与担当の面で、この点も当然総理府も重大関心があるところでありますから、一応お伺いしておきたいと思います。
  70. 八木徹雄

    政府委員八木徹雄君) この問題については、総理や大蔵大臣や、田中長官からも再三答えておりますように、本年度千二百億円、昨年七百億円だから、差額の五百億円が給与関係予算ではないかというたびたびの御質問をいただいておりますが、決してそうじゃございませんでございまして、やはり予備費全体の千二百億円の中で善処する、こういうことでございます。
  71. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうしますと、毎回当委員会で人事院勧告については完全実施すべきである、こういう点で追及してまいったわけですが、今年初めて政府もいままでの考えを改めて、ほんとうに完全実施するためには、いわゆる給与予算をある程度確保しておかないと、口では尊重すると言いながら、なかなか完全実施できない。そういう従来の例にかんがみて、今度は大体予備費をふやしておいて、昨年に比べると五百億ふえているわけですが、その五百億は必ずしも給与アップ率ということではない。一応含みのあることばで言えば、この合計の千二百億の中から給与改善費を捻出する、そういうふうに理解していいわけですか。
  72. 八木徹雄

    政府委員八木徹雄君) 例年給与担当大臣であります総務長官は、人事院勧告を尊重しますということで、最大の努力を払ってきているところでございます。今回総合予算主義をとったと言いましても、その人事院勧告を尊重するという在来の姿勢はいささかも変わるものではございません。そういう意味におきまして、勧告が行なわれた場合には、その時点において、いままで同様に最善の措置をはかってまいりたい、こういう態度でございます。
  73. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 給与担当省である総理府は、従来といささかも変わらぬ態度でいきたいというと、非常にこれは憂うべき事態がまた繰り返されると思うのです。と申しますのは、総理府は給与担当の府として、また総務長官は給与担当大臣として、従来人事院の勧告は尊重しますと言い続けてきたわけですね。しかし、現実には少しも尊重してないということになる。そうすると、四十三年度も全く変わらない考えでおりますということになると、今後もその点信頼できぬわけです。総理府の考え方は、事人事院の勧告に関する限り、どうも信頼できぬわけです。従来一回も完全実施したことがないのだから。しかも、従来と少しも変わらぬ態度で臨んでいきたいということになると、もう心細いきわみだと思いますが、そう解釈せざるを得ない。人事院の勧告を完全実施したことのない総理府ですからね、信頼しろと言っても信頼できぬわけです。だからあえてお伺いしたわけです。従来よりも変わった、ことしこそ完全実施をしたい、そのためのいわゆる準備として、予備費についても何がしかを増加してある。問題は予算ですからね。人事院の勧告は尊重する、予算がないから、予算が苦しいからといって完全実比をしてこなかったわけでしょう。そうすると、その考えにいささかも変わりがないということになると、また四十二年度も完全実施すると、尊重すると言いながらも、なかなか完全実施はされない事態を引き起こすかもしれない。私どもは予備費は五百億もふえているのだが、もちろんこの五百億で完全実施は不可能であろうと思いますが、まあそれにしても、これだけあれば、あと足りない分は、人事院がどれだけの勧告をするか、これは将来の問題ですから、いま人事院としては、民間給与の実態をもうすでに調査し始めていると思う。しかも、それは科学的にやるわけですから、その結果が出れば、やがて勧告がされるわけですね。  そこで、繰り返してお伺いしますが、どうも従来と変わらぬ考え方だとなると、非常にこちらとしては困るわけで、やはり従来は人事院の勧告を尊重するとは申してきたけれども、実際には完全実施されなかったのだから、ことしこそ従来の考え方をかなぐり捨てて、文字どおり完全実施したい、その一つのあらわれとして、予備費もふやしておいた、そうお答えしてくだされば、こちらは安心できるわけです。この点はどうなんですか。
  74. 八木徹雄

    政府委員八木徹雄君) 在来もその結果手を抜いたり、熱意が不足したり、努力を怠ったということではないのであります。結果として御指摘のように、完全実施できなかったという御批判をいただいているということでございますけれども、歴代人事担当の総務長官は、もう全力をあげて、いわゆる人事院勧告をひとつ尊重する立場に立って努力をした。しかし、結果として御指摘のようなことになった。で、そういう意味において私たちが——私がいま申し上げていることは、田中総務長官も、歴代大臣と同じように最大の努力を払いたいと、こういうことを申し上げた。そのことは、結果としてやはり尊重しないことになることを想定しているということではないわけでございます。あくまでもその完全実施ができるように、最大の努力を払うという心組みでこれに対処をしてまいりたい、こういう気持ちを吐露したわけでございます。
  75. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 どうもこれは水かけ論みたいになりますがね、従来も完全実施すべく努力をしてきたけれども、結果としてとにかく完全実施できなかった。従来は少しも最大限の努力をしていないわけですよ。たとえば、ほんとうに実現する、完全実施しようと思えば、必ず予算を伴うのだから、年度当初において、予算上の措置を講じておかなければならぬ。そういう意味で、昨年度当初予算の予備費に比較して今年度五百億ふえているのは、そういう給与、完全実施するということをも含めて、そういうことと関連を持たして、そうしてふやしたのだということになると、よく意味がわかるわけです。従来どおりならば、また同じことが繰り返されるわけでしょう。予算がなかったから、しかたなしに、結果としてできなかったとおっしゃいますけれども、従来においては、三十七、八年ころ、あのころはもう予算は潤沢にあったわけです。そういう年でも、なおかつ実現できなかった事例があるわけですね。したがって、これはあとでまた給与担当大臣がお見えになったときに重ねてお伺いするとして、ともかく、総理府としては、ことしこそなんとかひとつ完全実施したい、その一つのあらわれが当初予算に五百億だと、そういう形で出たと、こういうことじゃないのですか、これは。
  76. 八木徹雄

    政府委員八木徹雄君) 先生も御承知のとおり、今回予備費を千二百億円にした、こういうその直接の理由というものは、御案内のとおり、財政硬直化で年度途中における自然増というものは期待しがたい、しかし予期せざる財政支出というものがあり得る。その意味において千二百億円のいわゆる予備費というものを計上したということでございます。もちろん、その中の一つの有力な要因として、やはりこの人事院勧告を完全実施するための財政措置というものがあるわけでございます。人事院勧告の尊重のために千二百億円にした、こういうことではなくて、年度途中における補正というものができないということのためにやったということでございます。しかし、その中の有力要因の中に、人事院勧告と災害という問題があるということでございますので、われわれとしては、財源のいかんにかかわらず、この人事院勧告はどこまでも尊重しなければならぬ立場でございます。あくまでもひとつ尊重してまいりたい、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  77. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 まあ一応この問題はおいて、そこで人事院総裁にお伺いいたしますが、いまの昨年の七百億が千二百億になって、昨年に比べて五百億ふえたと、そういうことに対するいま副長官からお答えがあったわけですが、いずれにしても、これは希望的要望を含めて総裁にお伺いするわけですが、人事院としては、政府の給与改善費に要する費用は幾らであろうと、どういう準備ができておろうと、なかろうと、人事院としては本来の使命感に立って、十分御自慢の科学的調査をやるわけでございますが、その科学的調査の結果に基づいて、これが最も合理的だという考え方、結論で勧告を実施すると、何ら政府の予算の云々にはとらわれることは、当然のことですが、ないと、人事院独自の立場でそういう勧告をすべきであると、そういうことになろうかと思うのですが、この点について総裁としてはどのようにお考えですか。
  78. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) おことばどおり、まさに当然のことでございまして、御承知のとおりに、本年度の四月調査もすでに実施に取りかかっておるわけでございまして、従来どおり官民の給与を厳正に比較いたしまして、その格差は絶対に完全に認めていただきたい。そういうつもりで作業を進めておるわけでございます。
  79. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこで次にお伺いしたいのは、四月の民間給与の実態を、いま懸命に調査のほうを進めておると思う、人事院としては。そこで調査するには、いろいろ人事院としての基本的な考え方に基づいてその調査を進められると思うのですね。そこで以下みな要望をかねてのお伺いですが、たとえば上薄下厚の方向で、ひとつそういう基本的な考え方に立って、科学的調査に基づいての勧告をしていただきたい。こういうまず第一の要望はあるわけです。たとえば、いま上薄下厚と申しましたが、四十年の勧告では、これは上薄下厚の改正があったわけです。この点われわれは人事院に、その誠意のあったことを認めたわけですが、四十一年の勧告では、上下の改善率の差はぐんと縮まってしまったわけですね。したがって上厚下薄の傾向となってきた。昨年四十二年には、ついにこの上下の差はほとんどなくなって、ほとんど各等級一律に七%台の改善率となっておるわけです。指定職については一〇%台の改善率となっておる。そういうここ二、三年の経緯があるわけです。  そこでお伺いしたいのは、本年こそひとつ、こういう上厚下薄の傾向にならぬよう、上薄下厚の改正に踏み切れるよう、いまからひとつその心組みで善処していただきたいと思うわけです。この点についてのお考えを伺っておきたいと思う。
  80. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) まず御要望としては十分承っておきます。その上でなお御指摘の点に対する所見を述べさしていただきますが、御承知のとおりの、また、いまおことばにありましたとおりの大体経過で、この数年来の勧告は行なわれておるわけです。私どもは、先ほども触れましたように、大体民間の態勢というものにのっとりつつ、かつ公務部内の均衡ということで配分を考えてまいっておるわけでありますが、たとえば上薄下厚で貫いてまいりまして、あるいは中だるみができてやしないかというようなお話が出てくれば、もちろん民間のほうも見合いながら、やはり中だるみの是正もせにゃならぬ。昨年の例もおあげになりましたが、この指定職辺の高い給与のところの人々は、数年間据え置きでがまんしていただいたという実情が公務部内にありますのと、たまたま民間との比較におきましても、それがバランスがとれると、昨年は上下——私どもは上厚下厚と年しておりますが、見方によっては上薄下薄ということになるかもしれませんが、いまお示しのような形になりまして、これは公務部内のバランスもそうでありましたが、第一に民間側が実にその辺がそういう形ではっきり出ておるわけです。というようなことで、これをとったわけであります。ことしどういうことになりますか、ことしのことについては、いま申しましたあらゆる諸点を十分勘案して、合理的な体系のものにしたいと思いますが、いまおことばにありました御要望は御要望として、十分体した上で事に臨みたいと思います。
  81. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、民間給与の調査についてですが、人事院のこの民間給与の調査については、従来企業規模が百人以上、それと事業所規模は五十人以上、こういう限度について調査が進められてきたと思うのです。そこで事業所規模五十人以上というのは、官民給与の比較に際してはあまりにも規模が小さ過ぎるのではなかろうか。これは毎回当委員会で人事院総裁に要望を含めた質問を繰り返してきたわけです。そこでこの点、またいよいよ民間の給与の実態を調査に入るところですから、これ調査が済んでからこういう問題を伺ってもあとの祭りで意味がないので、いまこれからやろうとするときに、当面人事院のどういう考えでやるのか、重大な変化が今後予想されるわけです、調べ方一つによってもですね。そういう意味でお伺いしておるわけです。まあ、公務員を民間企業とか事業に比べると、大企業、大事業所になろうかと思うのですね。そういう視野からも、五十人以上というのはあまりにも過小ではなかろうかと、こういう意見が当然出てくるわけです。これは一躍二百、三百とすることも無理でありましょうけれども、そういう前提があるわけですから、漸増の方向でこの規模を改善する御意向はないのかどうか、ひとつこういう点についてもお伺いしておきたいと思います。
  82. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 重大なポイントに触れる基本問題だと思いますが、私ごとを申して恐縮でありますけれども、私自身ことしで公務員生活満四十年を迎えるわけなんですけれども、長年公務員としての経歴を持つ者として、個人的の考え方を申しますと、これは官民比較というようなことをしないで、公務員は公務員そのものずばりをとらえて、その職務の責任から、あるいは生活上の条件から、あるいは名誉も維持せねばなるまいというようなことを勘案して、ずばりと白紙の上にあるべき給与の額というものを描きだすような世の中になってほしいものだというのが、私個人の願望でございますけれども、残念ながら、御承知のように、今日における日本の経済あるいは賃金情勢を大観いたしますというと、一般の水準がまだまだとても低いという私は感じを持ちます。しかも、公務員は全体の奉仕者ということになって、特権的な地位は許されないということから考え合わせてみますというと、当面のそのような経済あるいは賃金情勢を前提として考えます限りにおいては、やはり公務員だけが特別の扱いをというわけにはまいりません。これは納税大衆もそういうことでは納得してくださらないと思います。したがいまして、当面の措置としては、民間の水準をとらえてこれに合わす、民間の水準と申しましても、まあ大会社に比べるべきではないかという考え方も出てまいりますけれども、やはり先ほど申しましたような基本的の立場から申しますというと、やはり民間の従業員の国内における過半数、半数近いところに押えて、その水準がかようでございます、かくかくでございます、したがってここまではぜひ追いつかしていただきたいという立場をとることが、最も確実な手がたい行き方であろうということで、そういう点からこの規模にものさしを当てて見ますと、企業規模は百人、事業所規模が五十人以上ということで押えますと、大体日本の全体の従業員の半分ぐらいのところがそこで押えられまするので、それを水準でございますということで今日まできているわけです。これをだんだん標準点を上げてまいりますというと、カバーする従業員の数が減ってまいりますからして、私どもの先ほど触れました前提から申しますというと、まだいまのところ説得性は弱いのじゃないかということで、今日、今回の調査も、従来どおりの百人、五十人というところで押えてやっておるわけでございます。私の願望は願望としてまた別にあるわけでございますが、当面はこれでいくのが一番手がたいという気持ちでおるわけでございます。
  83. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 百人、五十人でどうも合法的だというような御答弁ですが、われわれの視野からすると、過小の評価をせざるを得ないわけです。そこで、ここでこのことをひとつ百人を二百人に、五十人は百人にと言っても、総裁なかなかイエスとは言わぬでしょうから、この問題はまたあとで、後日さらにお伺いするとして、一応おきますけれども、もうこの問題を続けてやらないから、伊藤は了承したかのごとくお考えにならぬように、将来の課題としてさらに追及申し上げます。  そこで、次にお伺いしたいのは、対応等級の設定についてですね。これによっても官民格差が相当影響されるわけですから、公務員の賃金は申し上げるまでもなく、等級別の標準職務表に基づいて本省、管区機関とか、あるいは府県機関あるいは出先というように、機関別に格差をつけられて等級に格づけされておるのが現状です。それから民間の場合、多くの企業は、本社とか工場、支社、営業所などに分かれて賃金水準は格差があるわけです。ところが人事院の官民対応の基礎は、民間事業所を、五百人以上と五百人未満の企業規模別に分類するという方法をとっておる。全くこれは根拠のない方法を用いておるんではなかろうかと考えられるわけです。これはもっぱら民間賃金にあるところの企業間の格差とか、あるいは企業内の機関別上下格差を利用して、官民賃金格差を小さく算出しようとする、そういう意図にほかならない。そういうふうに解釈されるわけですが、この点、再検討して改善すべき要があるんではなかろうかと、その点をお伺いしたいと思うんです。
  84. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 対応等級の問題は、いつもいまのおことばにありましたような角度から批判をわれわれは受けてまいっておるわけでありまして、そういうふうに誤解されては、はなはだ私ども立場がないわけなんでありますから、私どもは私どもとして、この関係は常に検討を怠っておりませんわけで、御承知のように、ある時期には多少の改定をしたこともあるわけです。いまできております対応等級は間違っておるかどうか、これは私どもは自信を持っておるわけであります。課長という職名だけでこれをとらえて済むことなら、またそれは話は単純でございますけれども、御承知のように、役所の内部におきましても、本省の課長、府県単位の機関の課長、出先の出張所の課長ということになりますと、同じ職名でもいろいろ段階がある。民間の企業のごときは、これは大小色とりどりでございますからして、同じ課長といいましても、やはりその実態には違いがあるということで、名前もある種の目じるしには使うことがありましても、あくまでもやはり実態をとらえていかなければ正確な比較はできないということで、たとえば五百人以上という点で押えることも一つの方法でございますし、あるいはまた、部下が十人以上あるものは、大体本省の何とかというようなふうに対応させまして、私どもとしましては、できるだけ便宜上課長というような見出しを使ってる場合もありますけれども、実態としてそういう条件をきめた上で比べておるわけでございまして、その間に食い違いがあるというようなふうには考えておらないわけでございます。
  85. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いまお伺いした点は、ことし新たにお伺いする問題ではなく、いずれも当委員会でそのつど問題になる問題点であるわけです。それでなぜ繰り返すかということについては、問題が解決すれば、そのことはもう触れないでいいわけですけれども、なかなか改善されないので、こちらの立場からして改善されぬということで、これは改善されるまで同じことを繰り返し繰り返しお伺いして、そのうちに人事院がわかってきて、一部改正ということになれば、一歩前進ということになろうかと思うのです。そういう視野からお伺いしておるわけです。決して事新しいことを聞いておるわけではないわけです。  さらに、この問題で人事院は、公務の府県機関の課長と、それから民間の支社、出張所の上級係員とを対応させておるわけです。あるいはまた、民間における女子の差別的な低賃金を取り上げたり、あるいは民間の一度退職して低賃金で再就職した五十五歳以上の高齢者の分を大量に持ち込んだり、それから三十代で課長になる、民間の早い昇進速度をこれを無視してしまって取り上げないとか、要は、幾つか例を申し上げましたけれども、こういうことについては、いまも申し上げたように、私どもは繰り返しこういう点を批判してきたわけであります。官民賃金格差はなるべく小さくあらわれるようにという視野からこれに対応しておるのではないか、そういう考えが持たれるような対応のしかたをしてきたわけです。こういうことを繰り返しておったのでは、ほんとうの公務員の利益を守ることはできない。ほんとうに人事院で本来の使命感に立つならば・こういう点・改善の要があるのではなかろうか、ことしは一体どうなのかということでいまお伺いしておるわけです。この点についての考え方を……。
  86. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 私どもは決して無反省に、固定的に考えておるわけではございませんので、先ほども触れましたように、なるほどと思う、修正を適当とする点がありますればやっておるわけでありますけれども、また、そういう心がまえで、毎年毎年この調査に取りかかります前、レビューいたしまして、今回もそういう趣旨で念のためレビューをしてまいっておるわけであります。かねがねそういうおことばのあることも体しながらレビューをして、従来どおりでよかろうということで踏み切ったわけでありますけれども、いま申しましたように、これはもう勧告のたびごとに念のために、また念には念を入れて、そういう点は慎重に検討して臨むべきことであるという心がまえだけは十分持っておりますから、いまのようなおことばはおことばとして、たびたび承っておるということも心の中にしみ込んでおるわけであります。今後またさらに検討する機会があれば、そういう点に万誤りのないようにという心がまえで臨みますけれども、今日までのところでは、これでよろしいという気持ちでおるわけでございます。
  87. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうしますと、いまお伺いした点についても、いまここですぐ改善される運びには至らんというふうに解釈せざるを得ないわけなんですが、もしそうだとすると、きわめて遺憾であることを表明せざるを得ないわけです。同じように、格差算出の計算式についてお伺いしても、人事院としては、官民の賃金の格差を算出するのに、いろいろ計算式があるわけです。その計算式のうちで、格差は最小にあらわれてくるであろう計算式、いわゆるラスパイレス、この方式を従来使用してきたわけですけれども、どうもこの方式でいくと、官民の格差は最も小さくあらわれてくるというふうに言わざるを得ないわけです。この式によると、たとえば年齢別、学歴別あるいは地域別、等級別、俸給別、こういう官民の格差及び全体の格差を算出しておるわけです。したがって、どうしても官民の格差が小さくしか出てこないという、そういう事態があろうかと思うのです。この点についても改善の余地があろうと思うのですけれども、何とかこれは検討されたことがあるわけですか。で、ことしは何とかこの方式を変える考え方は持っておりませんか。もう内容については、ラスパイレスの問題については、もう毎年これも繰り返しやってきたわけで、多くのことばは必要ないと思うのですが、いかがですか。
  88. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) これは相当基本的なやはり問題でございまして、私が初めて人事院にまいりましたときに、いろいろな方式があるということも承知いたしまして、ラスパイレスがある、それに対応するパーシェ式がある、さらにそれを平均した形のフィッシャー式というのがあってフィッシャー式というのは、フィッシャー氏自身が、これは理想方式だといっているというようなこともいろいろ勉強したわけです。そうしてまた、それぞれその場その場において、どれが一体公務員のために得になるやら、そういう保証はないということも確認しておるわけですが、さてそれで、実益のあれは別といたしまして、筋としてどれが正しいかということになりますと、やっぱり官民の給与の比較をして、そうして公務員の給与をどうしようというための計算でございますから、やっぱりそれにはラスパイレスで、公務員の方の構成等を基本にして、それに民間のほうを合わせて、そうして計算をするということが、どうも筋としては正しいということで今日までずっと一貫してまいっております。一応はそういうことで根本に触れて検討した上でのことであります。
  89. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 たとえば、ことしはまだ出ていませんから、昨年の例で申し上げますと、行(一)の表に見ても、一、二等級は四%台、それから三、五は二%台、四、六は六%台、七、八が九%台というふうに、官民の格差はでこぼこしておるわけですね。非常にでこぼこしておる。これは前申し上げたように、どうも人事院のほうがやっている中に、比較の方法によってこういうものが端的に出てくるのじゃないか、そういうふうに解釈されるわけなんですが、どうも一段と改善をする必要があるのではないかという考え方に私どもは変わりないわけです。その点いま一度お伺いしておきたいと思います。
  90. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 精密なお話は給与局長から申し上げてもよろしいのですけれども、私どもは、これは基本問題として相当論争をし、検討を重ねた結果の結論であるわけでありまして、いまお述べになりましたような点についても、これは先ほど最初に私が触れました、公務部内の均衡の問題であんばいしておるところもありますから、一律に民間とのある差でそういう。パーセンテージになって出てきたということも認めますし、全般の見方としては、ラスパイレス方式が正しいという基本に立っているわけでございます。
  91. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 総務長官はまた衆議院の本会議のほうへおいでになるようで、時間があまりないようですから、一、二基本的な問題だけについてお伺いしておきたいと思うわけです。  先ほど副長官にもお伺いした問題ですが、これは総務長官が給与担当大臣として厳然として存置されておるわけですから、これは給与担当大臣としてお伺いしたいと思うんです。もちろん、いまお伺いしようとすることは、大蔵大臣にもお伺いせねばならぬ問題ですが、簡単に問題をしぼってお伺いいたしますが、四十二年度の予備費については、当初予算は七百億であったわけです。四十三年度の予備費について見ると、当初予算は千二百億、五百億が昨年に比較してふえておる、こういう事実はあるわけですが、さて当委員会においては、給与担当大臣に対して、当委員会で毎回、人事院の勧告を完全実施すべきではないかという点について問題をしぼって追及を重ねてきたわけですが、給与担当大臣としては歴代の総務長官が、これは、人事院の勧告は尊重いたします。質問すれば必ず人事院の勧告は尊重いたします——にもかかわらず、いまだかつて人事院の勧告が完全に実施されたことは一度もないわけです。詳しいことは多く申しませんけれども、ここでお伺いしたいのは、人事院勧告に対して総務長官としては、ことしこそ文字どおり完全実施したい、そういう決意のあらわれが当初予算の予備費の増という形に出ておるのではなかろうかと善意に解釈するわけですが、この点はどういうふうに理解したらよろしいのか。その点からまずお伺いしたいと思います。
  92. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) 本年度の総合予算主義というもので予備費が相当額計上せられましたにつきましては、いままでのような恒常的な補正を組まなくても、人事院の勧告が円滑に処理できるものとわれわれは考えておる次第でございますが、人事院の勧告がございました暁におきましては、私どもとしましては、財政需要とも勘案いたしまして、最善の努力をいたし、これを尊重いたす次第でございます。
  93. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 まあ、いままでも、そのつど努力いたします——今後についてもいま大臣は、最大の努力をすると、努力してもらうことはたいへんありがたいのですが、さて問題は、具体的に処理せぬことには前進がないわけです。たとえば人事院の勧告は、人事院は、先ほど総裁もおっしゃいましたが、人事院本来の使命感に立って民間給与の実態調査をいま進めている。科学的な調査の結果が出てくれば、政府の予算に対する準備がどのようなものであろうが、人事院本来の使命感に立って勧告するわけですから、これは当然そうするのだと総裁もおっしゃっているわけです。そこで、かりに五百億ふえておる、それが全部給与を見込んだものであろうとなかろうと、何か善意がそこにあらわれておるということでわれわれは理解したいわけですが、それで人事院の勧告完全実施のために足りれば問題ないわけですね。そこで、理論上不足する場合もあり得るわけですから、不足した場合は一体どうするのか、そこまで聞いておかないとどうも安心ならぬわけですね。いまの、当初予算千二百億で、そのうちの一部を給与改善資金に充てるというわけですが、不足した場合には——余る場合には予備費はほかにも使うわけです、給与費だけじゃないわけですから。それで足りればいいわけですが、足りなかった場合にはどうするか、その考えを聞いておかないと、せっかく当初予算に組んでも、それだけでは安心ならぬと思うのです。そういう不足の場合には一体どういうふうな方策を考えておられるのか、この際お聞きしておきたいと思います。
  94. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) 何分にも千二百億円という大量のものが予備費に組んでございますので、私どもは人事院の勧告を尊重いたしまして、その中でやり得るものと存じております。
  95. 山崎昇

    山崎昇君 長官がいなくなるというので、ちょっと関連をしてお聞きをしておきたいと思います。  これは佐藤総理のことばでありますから、総務長官に聞くのはどうかという気もいたしますが、今月の十九日に物価安定推進会議に総理が臨まれて、そうしていろいろ質問があったそうでありますが、当面の物価対策のポイントは、米価と公務員給与の安定にあり、これに全力をあげるという御答弁をされたと、こういうのです。そこで、これは私どもから言うと、重大な発言だと、こう思うわけなんですが、佐藤総理の言う公務員給与の安定だという、この安定の意味が実は私ども、はかりかねるわけなんですが、これは内容的にいうならば、大きく分けて二つぐらいになるのじゃないか。一つは、これは私らの考えですが、毎年繰り返される公務員労働者と政府との間のトラブルというものを何とか解決したいという考えがこの中に含まれるのじゃないか。もう一つは、毎年値切っておる人事院勧告を、ここら辺で一ぺん原則に戻して、完全実施をすることが安定という意味と、私は二つが含まれておるのじゃないかと思うので、この発言はきわめて重要だと思うわけです。これは佐藤総理に直接聞かなければなかなかわからないことでありますが、給与を担当する総務長官として、この佐藤総理の述べられておることはどう理解をされるのか、ひとつ長官の腹のうちを聞いておきたい。
  96. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) 総理ならぬ私では、総理のその場合のあれはよくわかりませんけれども、しかし私どもといたしましては、給与を担当する者といたしまして、人事院の勧告を待ちまして、その人事院の勧告を尊重いたし、最善を尽くすことができる、かように考えておる次第でございます。
  97. 山崎昇

    山崎昇君 これ以上総務長官に聞いてもなかなかむずかしいと私は思うのです。思うのですが、特に総理が物価問題と関連をして公務員給与を重大視をして、これを安定させると、こう言うのですから、中身が何としても私は問題だと思う。そこで担当する総務長官に聞いたのですが、従来のように、ただ尊重するということばの繰り返しにしかすぎないのですが、これは総理に一ぺん来てもらって、どういう形でほんとうに給与を安定させるのか、これはいずれば私どもは、この委員会でもほかの委員会でもけっこうですが、佐藤総理にじきじき聞きたいと思っておることなんですが、しかし当面は、公務員給与を担当する総務長官ですから、ぜひ安定ということばは、ほんとうの意味で安定させるように私どもしてもらいたい。その意味でいえば、単に尊重だけではおさまらない、ことしはどんな条件があろうとも完全実施をしたいんだと、こういうひとつ決意はこの場で述べてもらいたいと思うんですが、どうですか。
  98. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) 物価という問題と給与の問題は、非常に何かしら相関関係を持つと同時に、給与が重大でございますことは当然でございます。私も給与担当者といたしましては、この今回の予備費に相当額の部分を留保いたしましたことから考えましても、ぜひとも人事院の勧告をりっぱに行ないたいものだと、尊重いたしてこれを実現いたしたいと、かように念願いたしております。
  99. 山崎昇

    山崎昇君 そこで予算と関連して私はもう少し具体的に聞きたいと思うんです。まあ、伊藤先生からかなり開かれましたから、あまり重複したくないと思うんですが、たとえば最近の新聞見ると、いま春闘でやっております公労協に対して、政府はおおむね昨年並みという考え方をいまお持ちのようですね。これはこれからの戦いどうなるかわかりませんが、一応きょうの段階までは、政府の考え方は昨年並みというふうにいわれておる、こう報道されておるわけです。そこでもしも、これは仮定の問題でありますが、人事院が昨年並みの七・九%勧告したとすれば、衆議院内閣委員会における大蔵省の給与課長の説明では、昨年は一般会計で五百四十八億かかりました、ただし三十億は経費の節減でやったから、補正予算としては五百十八億でありますと、こういう答弁をしておるわけですね。そうするとことしは幾らかかるのかというふうな再質問に対して、五百七十九億円ばかりになりますと、こうなっておる。で、これはいずれも八月実施の数字になるわけであります。  そこで私が長官に具体的に聞きたいと思うのは、昨年並みに勧告が出るとすれば、いま増額された予備費の五百億円では間に合わない。したがって七十九億円ばかりは何か節約をしてやりくりをしなければどうにもならない。もしやりくりがなければ、当然補正予算を組まなければならないということに一つなります。  もう一つは、いま長官が、何とかして人事院勧告を守っていきたいんだと、こういうことになれば、四月実施にかりになるとすれば、当然かなりな金額がかかります。これはまだ私が数字計算しておりませんから、具体的に申し上げませんが、当然いまの予備費に組んでおる五百億円程度ではとうてい間に合わない。したがって、これは補正予算を組まなければどうしようもなくなると、こう思うんです。そういう意味長官にお尋ねするんですが、いま私の言うのは仮定の問題でありますから、それは長官は、そのときにならなければわからないと、こう言うんです。大体だれが考えても、公労協が昨年並み以下になることはない、前進しても後退することはない、こう考えれば、当然人事院の勧告も一応は昨年並み以上と考えておくことが常識だと思う。そういう意味からいくと、いま私が具体的に申し上げましたように、いずれの場合にしても補正予算を組まなければ、いまの予備費程度では間に合わないんじゃないかと思うんですが、どうですか。
  100. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) 五百億というお話でございますが、別に五百億という予備費の中にひもつきで限定されて入っておりますわけではございません。予備費の中から必要に応じまして出すわけでございますが、千二百億あるわけでございます。さような次第で、今後その範囲内におきまして、いろいろと推移もよく見ながら——まだお話のように仮定の問題でありますから、どういうことに相なりますかわかりませんが、しかしながら、私どもはできるだけ人事院の勧告を尊重いたしまして、そうして目的を達したいと、かように考えております。
  101. 山崎昇

    山崎昇君 いま予備費千二百億円、なるほど予算上はそうですね。そこでここ二、三年の予備費に組まれた内容を私ども見ますと、おおむね災害が四百億ないし四百五十億くらいですね。そうすると、米価の問題がかりに政府の考えているようにスライド制をとるとすれば、残るのは公務員給与ということになるから、従来の実績からいけば、大体七百億ないし七百五十億円ぐらい予備費が充当できるのではないかという想定も成り立つと思うわけです。そうすれば、いま長官の言うように、補正予算を組まずに、昨年並みの程度のものであるならば、人事院勧告を完全実施できるのだ、こういう一つの結論は出ると思うわけです。その点はどうでしょうか。
  102. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) さようにありたいものと、かように考えております。
  103. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、もう一つやっぱり補正を組まないという要因の一つに、これも仮定になりますが、人事院の勧告が昨年を上回った場合、これももちろんこれから起きる災害でありますから、災害対策費がどうなるかによって予備費の問題もまた変わってくると思うのですが、いずれにしても、昨年より上回れば、七百億あるいは七百五十億程度見込まれる予備費では足りなくなる場合もあり得ると、こう思うのです。その場合に補正予算を組まないということになると、人事院勧告を結果としてはまた去年のように値切るということもあり得るわけですね。ですからその場合には、長官のほうはやはり補正予算もやむを得ないのだという気持ちもあるのかどうか、重ねてお聞きをしておきたい。
  104. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) まことに微妙な御質問でございますが、将来の仮定の問題につきまして、いまここで明確な御回答もできないわけでございます。しかしながら、われわれといたしましては、いろいろなことを想定をいたし、配慮もいたさなきゃなりませんが、現実に勧告がございました時点におきまして最善を尽くしたい、かように考えておる次第であります。
  105. 山崎昇

    山崎昇君 重ねて長官にやっぱり聞いておきたいのは、参議院の予算委員会で、これは自民党の塩見先生からこの問題について質問がなされておる。それに対して大蔵大臣は「人事院の勧告をあらかじめ推測するわけにはまいりませんが、勧告が出てきても対処し得るように予備費を今回は非常に増額をしてございます」と、なかなかこれは、とりょうによっては満度に実施できるだけの予備費を組んでありますよというふうにもとれますし、私どももやっぱり実施してもらいたいという気持ちがあるから、あるいは都合のいいようにとるのかもしれませんが、この大蔵大臣の答弁でいくと、いま長官の答弁と合わせて私どもは推定、判断をすれば、何かことしは去年並み程度人事院勧告が出るならば、完全実施があるいはやれるのではないだろうか、こう思うのですがね、その点長官どうですか。
  106. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) ただいま申し上げましたようにまだ先のことでございまして、どのようなことに相なりますか存じませんが、しかしながら、御審議を通じまして、あるいは予算委員会、その他内閣委員会におきましても、大蔵大臣が出てまいりまして、お答えしたこともございますので、その辺のことはよく今後の折衝なり、あるいは推移を待たなければいかぬ、かように考えております。
  107. 山崎昇

    山崎昇君 それでは人事院総裁に二、三点お聞きしたい。  第一は、いまの給与制度の根本的に確立されたのは、たしか昭和三十二年の改正だと思うのですね。現在八等級制なんですが、指定職俸給表の甲乙入れれば、実際上は十等級制みたいになるわけです。したがって、私は、人事院はかなり職務給制度がたてまえだということで、等級制度を厳格に守っておるようですが、みずからその等級制をこわしているのが私は人事院だと思っています。そこで、上級職の職員には、これは何べんも申し上げたが、甲乙指定職俸給表をつくって、かなり局長さんの三割程度は救われておる。そこで、まあ私が聞きたいのは、下級一般職員についても、いまの等級制の二等級上ぐらいまでは当然峰渡り等使って格づけをしてもいいのではないか、そうでなければ、人事院が実質的に十等級制を実施をしているいまの段階で、下級職員には過酷ではないだろうか、こう第一に考えるわけです。そういう意味で、いまかなり何等級は何ときまっておるようでありますけれども、これはまた等級別定数等ももちろん関連ありますが、一般職員のために、いまの等級制度の運用上から、二級程度は上位にランクする道を開いたらどうだろうか、こう考えるんですが、総裁の見解を聞きたい。
  108. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) いまの等級制度の基本は、結局公務員法なり、あるいは給与法が根本の鉄則と存じております。職務と責任に応じてというところに基づいての等級制であろうと思いますし、いまおことばにありました級別定数あるいは標準職務表というようなものも、それに即応してできているわけでありまして、したがって、等級制度というものがいま申しましたような職務と責任ということに基づいてできているとすれば、この等級にまたがってわたるというようなことは、本来は邪道であるということに、これは結論はなるわけです。しかし、現実は、これはおそらく山崎委員十分御承知の上でのお尋ねであると思いますけれども、現実は人員構成が、ことに終戦後に大量に採用されました人々のかたまりが、だんだんと動きつつあるということに関連いたしまして、なかなか機械的に理詰めでさばいておったのでは現実に合わないという面が実はありまして、そこで等級の渡りというような要望もそういうことにつながって出てくる面が私ども相当多いのじゃないかと思っております。そこで私どもは、鉄則をくずすわけにはゆかず、しかし、現実に目をつぶるわけにもゆかずということで、理屈を立てながら、御承知のように級別定数、いまのおことばにまさにありましたが、級別定数というようなことで、相当弾力的に考えまして、この四月ですかの級別定数でも大体お察しいただけると思いますけれども、そういう面に努力を集中しているという段階でございまして、まあしばらくその辺のところでひとつながめておいていただきたいという気持ちでございます。
  109. 山崎昇

    山崎昇君 総裁の苦心なり努力は私どもも認めていいと思います。ただ、人事院から出しておられます「人事院月報」なり、あるいはその他の資料等を見ますというと、実際問題としてどうしても六、七、八ぐらいにかたまるわけですね。かなり頭打ちの者もいる。そういう者は、多少は救われておりますけれども、しかし、それでも私どもとしてはもっと救う道があるのではないだろうか。考えみれば、一等級の局長が三割ぐらいはやはり何といっても指定職俸給表に移行しているわけですから、そうなれば当然そこらの職員の三割ぐらいも、やはり上級の等級にいってもいいのではないか、これは理屈の上ですよ。現実的にはいろいろあるでしょう。そういう意味でいうと、もっと峰渡りの基準なり何なり広げて、下級職員というものを救う必要があるのじゃないだろうか、これはもちろん今後の給与改定の問題とも関連しますが、等級の運用にあたって、何かしらぼくら、やはり下級職員に過酷であって、上級の職員にはしり抜けになっているというような印象がどうしてもとれない。そういう意味で重ねてお聞きしているわけなんですか、もう少しひとつ努力してほしいと思います。  そうでないと、給与上の問題から、主任でありますとか、審議官でありますとか、調査官でありますとか、役職をつけなければ実際問題として上がらないのです。ですからやたらにそういうものがふえていく。そういう傾向にあるわけです。そういう意味で、私は給与上の問題から機構上の問題に及んできているいまの現況を見ますと、もう少し等級の運用にあたっては実情に合うように、ひとつ人事院はやってもらいたいし、そうして一番職員が片寄っている五、六、七、八ぐらいの等級については、もっと考えてもらいたい。これは最後は要望になりますけれども、質問かたがたこう申し上げておきたいと思います。  それから重ねて私はもう一点申し上げておきたいのは、これは去年の委員会で毛申し上げましたが、どうしてもいまの扶養手当について私は納得いかないのです。ということは、これは性格論はもうやりません。もうやりませんが、逓減法則をとるところに私はやはり第一の問題点があるわけです。それは総裁の言うように、いまの等級による俸給では何としても生活困難なことはおわかりのとおり。したがって、それを補足するためにいろいろな手当を出すわけですね。中でも一番沿革的に歴史を持っているのがこの扶養手当なわけです。そこで私は、この抹養手当について、奥さんは千円になりました。第一子も千円、しかし、第二子以下、何で逓減法則をとらなければならぬのか。やはり私は総体的で俸給というなら、当然第二子以下についても扶養手当は満度に払うべきではないであろうか、こう考えるわけです。これはもちろん勧告とも関係ありますが、人事院の考え方一つで変え得る問題なんですね。あらためて何も民間どうのこうのということはないわけです。そういう意味で、今度の勧告の際に、この扶養手当の漸減方針といいますか。逓減法則といいますか、そういうものについて変える意思があるかどうか、また、検討されるかどうか、この機会に聞いておきたい。
  110. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 扶養手当の問題は、これはこの間確かめにこの席でいろいろ本質論、御議論があったのでありますけれども、私どもは、あの席でも申し上げたかと思いますけれども、こういう手当はもうだんだん解消していって、本俸の中に吸収していくべきものだ。配偶者の千円を上げたときも、これは給与の専門家からいうと、いまどき何をやるかという非常な御批判を受けたことなんです。しかし、あのときは給与改定のパーセンテージも低うございましたし、われわれとしては、生活防衛だというようなことを旗じるしに掲げまして、あえてあれをやったわけですが、その当時御説明したかもしれませんが、民間の扶養手当の状況を見ますというと、第一子以下の方については、日本の場合においては、途中でもうちょん切って、それから下は見ないというところもございますし、大体逓減のたてまえをとっているということで、それとまた額がたまたまその当時、現行いまでもそうですが、に大体合っておったものですから、子供のほうはこれでよかったのだというので、配偶者だけ思い切ってやったわけでございます。外国の例でいいますと、生めよふやせよの政策の上から、むしろ末のほうほど高くするというようなところもございますけれども、これはむしろ私は例外と考えて、子供のほうは児童手当の問題もどうなりますか、それとのかね合いも御承知のようにございますけれども、まずいまのところで、これはもういじる必要はない、こういうふうに考えております。
  111. 山崎昇

    山崎昇君 総裁からいじる必要はない、こう明確に言われると、私どももなかなか継ぎ穂がないのですが、しかしいまの公務員給与は何といっても手当賃金ですね、簡単に言えば。あれやこれやひっくるめて、それで一カ月の生活を維持するわけですが、しかし、その中でも扶養手当は、ほとんどの手当の支給の対象になるわけですね、簡単に言えば。ですからそういう意味でいうと、少し極端な議論ですけれども、ある意味でいえば、本俸化的な要素がかなり強いのではないだろうか。そうすれば、いまだめだというお話でありますけれども、これは逓減法則をとるべきものではないのじゃないか。もちろん公務員の給与について、いまの体系そのものには私自身にも意見はありますけれども、しかし何といっても、これでめしを食っているわけですから、そういう意味でもう一ぺんこの扶養手当について私は実際に考えてもらいたい、これは要望しておきたいと思います。  もう一点聞いておきたいのは、これは去年もここで論争になりましたように、また大蔵大臣から出ましたように、人事院の五月実施は不合理だといっておるのですね。ですからことしは勧告に際して、不合理を改めまして、四月から給与を改定すべきだというように私は勧告を出すべきだと思うのですが、どうですか。これは、これからのあなたの意思決定の際にどうするかの問題でありますけれども、しかし勧告出たあとではこれはどうにもなりませんから、当然毎年毎年議論になるわけですから、ここら辺で、ことしは実施の月については四月からにするつもりならつもりだということの総裁の意見をひとつ聞いておきたい。
  112. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) この点はしばしば御指摘を受けておるわけで、五月実施ということにきまったいきさつなども、当時の速記録を克明に調べてみますと、皆さんどうも五月説でずっとやっていらっしゃるらしいので、これはよほど理由があるのだろうという気持ちは持っておりますけれども、これもたびたび申し上げましたように、四月説も決して一理なしとせずというところまで現在のところは来ておるということは申し上げたはずです。したがって、その辺は絶対五月でいくのだというふうにこだわりませんけれども、しかし、政府がどうおっしゃったからということで、その辺の圧力に屈して四月にするというふうなことは考えておりません。
  113. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 ことしの春闘の積み残しに対する人事院の基本的な考え方についてお伺いしておきたいと思います。
  114. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 積み残しの問題も、不幸にして近ごろ毎年の問題になっておるわけであります。これは私ども人事院の立場としては、全くそれこそ受け身の立場におけるわけでして、外国のように民間における賃上げ率というものが年間ばらばらに行なわれておれば、そういう問題はないわけです。と同時に、また、わが国の場合においてもかつてそうであったと思いますが、春闘が非常に早目に行なわれて、もう三月の末にはおしまいということになっておれば、何らわれわれとしては苦労するところはないわけでありますが、御承知のように、私どもが四月の時期をとらえて、四月に現実に支払われた額をもって官民を比較するという立場をとっておりますと、今年のごとく春闘がおくれますというと、たいへん迷惑を感ずるということになるだろうと思います。したがいまして、その積み残しが出ても、これはそちらのほうの御都合によることであって、われわれのほうとしては知ったことではないというふうに、たんかを切れば切れる事柄だと私は思います。しかし、そういう理屈だけで突っ張っておりましても、積み残しが多ければ多いほど、それはみすみす来年の官民比較に出てまいります。妙な時期になってそれが残って出てくるということでは、これまた現実に合いませんし、また、公務員の方々の利益という点から見ても、これは大きな問題になりますものですから、私どもとしては、拾える限りは拾おう。相当のこれは決意をした上で、数年前からそういうことを始めたわけであります。おかげさまで毎年毎年、四月予算の結果を見て、前年度の清算をしておるような気持ちで見ておるわけですが、そうたいした積み残しらしいものも出ておらぬということで、一種の内払い的なものではございますけれども、その年その年、ほとんど消化はしておるなあという気持ちは持っております。  ですから、さらに御要望としては、もう少しこれを精密につかめないかという御要望がありますけれども、これはとてもできないことで、われわれとしては、現在のやり方が精一ぱい、これを精密にやるということになりますと、今度はやむを得ませんから、私どもの四月調査という時期を今度はずらして、こちらがそれを受けていかなければならないということにもなります。そうなると、さかのぼってまたいろいろ検討すべき問題がありますから、調査時期をずらすこともそう単純にはできないじゃないかということで、まず従来のやり方が精一ぱいのところという気持ちでおります。したがって、ことしもその気持ちで臨んでおりますけれども、しかし調査に行きます人々には漏れないように、ぜひぜひその点は注意をして拾ってきてくれということは、念には念を入れて指示をしておるということでございます。
  115. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 大体お考えはわかりましたけれども、こういう積み残しが出ないよう人事院として、あくまで人事院は設立された本来の使命感に立てば、幾らでも解決し得る問題だと思う、事務的には非常にやっかいな問題であっても、あくまでも公務員の利益を守る、そういう考え方に立ってひとつ最大限善処してもらいたいと、これは要望申し上げる以外にないわけです。  次にお伺いしたいのは、住宅手当についてこの機会にお伺いしておきたいと思うのです。人事院は昨年、公務員の皆さんから非常に要望の強かった住宅手当の新設は取り上げないで、そのすりかえとして、きわめて見ばえのする勧告になるように、都市手当が新たに設けられたわけです。この地域手当については、従来から多くの問題点を内包しておったわけで、これは昨年ああいう形で新設されたことには各方面で歓迎はされなかったわけです。いたずらに混乱を招くだけで、あまり得るところはなかったと思うのです。そこで、何といっても公務員の住宅手当支給に対する要望は強いわけですから、しかも、公務員と類似している事業所の実態を見ると、昨年の調査によっても、五五・一%の設置率を示しておるわけです。  そこでお伺いしたい点は、この都市手当、昨年設けてしまったわけですが、住宅手当を新設することのほうがはるかに合理的であり、また公務員の利益にも結びついておる、こういうふうに考えざるを得ないわけですので、あえてお伺いするわけです。
  116. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 住宅手当の問題は、とれまた公務員諸君の多年の要望であります。したがいまして、私どもとしても、これも御承知のとおり、ここ数年来、毎年しつこいくらいに民間調査をやってまいっておるわけであります。昨年の調査の結果では三九・何%というところで、どうしてもまだ五〇%にも達しないという実情で、その伸びもはなはだ遅々たるものがあるわけであります。したがって、住宅手当の新設に至るには踏み切り得なかったわけであります。ただ、この手当関係では、公務員住宅に入っておる人と、入っておらない人という問題が一つありまして、絶対的な住宅不足という現実の面をやはり片足踏ま、えているわけでありますが、私どもは、公務員住宅の施設の拡充のほうとあわせて十分お願をしてまいりたい。去年は閣議決定でもそれは取り上げていただいて、予算のほうの計画としては、毎年ふやしていただいており、そのほうは着々増設の方向へ向かっております。何ぶん住宅手当そのものに対して、まだ条件がそろわないということでおるわけなんです。ただ、いまたまたま都市手当関連においてお話がございました。都市手当が住宅手当のすりかえではないかというようなおことばもございました。この都市手当は、当時御説明を申し上げたかと思いますけれども、発想は住宅手当とは全然違うわけです。しかも、都市手当は、給与法の二条の命ずるところを着実に、誠実にこれを実現したわけで、少し見ばえがし過ぎて、いろいろ御批判を受けましたけれども、これはこれで発想は全然別であります。発想は別でありますけれども、結果において見ますと、やはり家賃などの高いのは都市が高いという点からいいますというと、都市手当も、この住宅手当関連について、現実的には相当貢献をしているという見方はできます。ということでありまして、結果においては、多少その辺は相通ずるところはありますけれども、発想は別でありますことと、それからもう一つは、御承知のように、これが調整手当ということになりまして、そして一種の暫定的なものになって、そして三年の間にもう一ぺん十分研究をするということに、宿題になっておるわけでございまして、私どもとしては、その宿題をさらに精緻なものとすることもあわせまして、ことしはそういう地域給関係手当としてどういうものがあるかということ、及びその手当についての民間の実態調査ということをやることにしておりますので、住宅手当についても、まあその一環という形にはなりますけれども、実際上は住宅手当がどの程度また去年から変わってきているかというようなことは調べます。なお、そういうことをやりました上で、この問題は何とか実現するものなら実現するということになりますし、要するに実態調査した上の話だということで考えておる次第でございます。
  117. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 先ほども私から指摘申し上げたように、民間業種のうち公務員と類似しておる面においては、昨年の調査で五五・一%、これは年々増加の一途をたどっておると、そういう機運にもありますので、この点を十分取り入れられて、ひとつ公務員の強い要求にこたえてもらいたいという要望をこの機会に申し上げておきたいと思うわけでございます。  次に、時間の関係もございますから、通勤手当について一点だけお伺いしておきますが、昨年の勧告で、通勤手当が若干引き上げられたわけですが、依然として実費は支給にはなっておりません。通勤手当性格から見ると、これは実費支給であってしかるべきだと考えられるわけです。本年は、この通勤手当については基本的にどういうふうにお考えか。最近国鉄の定期についても大幅な値上げがあったわけです。公務員のほうも定期などを使って通勤している方は多いと思うのですね。こういう情勢の変化もあるし、これに対応する必要があるのではなかろうか、こういうことから、結論としては、ことしは、ひとつ実費支給を実現させるよう、少なくともそれに近づくよう、ひとつ最大限の努力を願いたいと思います。この点いかがでしょうか。
  118. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) これもやはり今回は定期乗車券の大幅の引き上げというようなこともございましたし、したがってわれわれとしては、大きな問題の一つだろうという認識を持っております。さらに、したがいまして、民間の給与調査の場合においても、それを一つの項目として取り上げているわけであります。ただ、この全額をこっちで持つかどうかということにつきましては、これはそうあってほしいという気持ちはありますけれども、理論的にもどういう問題がありますか別といたしまして、民間の実態を調べてみましても、全額会社で負担しておるというところは、まだまだ非常に少ないわけでありまして、したがいまして、私どもの今回の態度も、一応民間の調査を見ました上で善処してまいりたい、こういうことに尽きるわけであります。この際、全額でいきたいと思っておりますというところまで、はっきり申し上げる段階には至っておりません。御希望は御希望として十分承っておきたいと思います。
  119. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 最後に一点お伺いいたしますが、それは前にも伺ったことがあるわけですが、勤勉手当を廃止して期末手当一本化にするお考えはないか。これは現在の期末手当は、ここで申し上げるまでもなく、期末手当と勤勉手当に分けられているわけです。ここでお伺いする要旨は、これを特段に区別する必要もなかろうかと思うわけです。したがって、これを一本化にする考えはないか。ここでこの場でさよういたしましょうとか、そういうことは、にわかにはできないと思うのですが、これはもう古い話ですが、三十四年の十月のころ、第三十三国会の際、当委員会で私は初代の浅井総裁にこの問題をお伺いしたことがあるわけですが、浅井総裁のお答えは、その点についてはよく検討してみたい、そういうお答えがあったわけですよ。それから総裁はかわっておられるわけですけれども、検討した結果についてお伺いしたいというところですが、総裁がかわっておるものですから——しかし、総裁がかわっても、人事院は現存しておって、前総裁の検討する旨の公約は生きていると思うのですけれども、あなたに引き継ぎがあったかないかは別として、そういう意味でお伺いしているわけですが、この二つを検討してみると、給与法の十九条の四に、勤務成績に応じて支給するという旨の勤勉手当の規定があるわけですが、実際にはやはり期間率のみで、成績ということは加味されていないわけですね。実際、勤勉手当、期末手当を見ても、ほとんど期間率のみで計算しておるのが現在の実情だろうと思うのです。  そういうことと、勤勉手当の支給は、ほとんどいま言った勤務期間率において支給されておるということと、期末手当の支給もまた勤務期間率において支給されていると思うのですね。そういう点においては変わりはないわけで、特別これを分けて離す必要はなかろうと思うのです。ただ、勤勉手当を設けた趣旨については、成績褒賞的なものであったろうと思うのですが、もしかりにそうだとしても、わずかな率の褒賞では全く意味がないわけで、しかも期間率のみで計算されておるのが実情で、そういうことをあわせ考え、さらに公務員制度調査会も、諸手当は整理簡素化すべき旨の答申をしているわけです。そういうことになりますと、ほとんど意味がないので、この際、勤勉手当と期末手当をあわせて一本化して期末手当とすべきではないかと、こういう結論になろうかと思うのです。もちろん、私はここでひとつ総裁に、さよういたしましょうという答弁を期待しているわけではなく、十分検討する必要があろうかと思いますので、ひとつここで、それではよく検討してみましょうという御答弁ができるかどうか。もう全然その必要がないのかどうか、そのことについてきょうはお伺いしておきたい。
  120. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 一木化の問題は全く御同感でございますが、浅井総裁のお話もいま初めて伺ったんですけれども、それは間にまた入江総裁というのがはさまっているものですから、引き継ぎは受けませんでしたけれども、しかし、いまお話しのように、これはかねがね、この間もお話に出たと思いますが、これは一つの考え方としては成り立ち得ることで、しかも御承知のとおり、民間では大体一本化でやっているじゃないかということはよく理解できる。ただその場合に、勤勉度ということを全然のけてしまうということは、これまたたいへんな——成績主義を原則としておる公務員法等の問題から見ますと、なかなかとてもそれはできないことなんで、成績主義、いわゆる勤勉度というものは、ぜひそれはかみ合わせないと、引き受けはできないということは、はっきり申し上げられますけれども、二本立ては何とか一本にならないかというような御指摘は、これはいまのような条件つきで考えた場合には検討の余地はあると思いますですね。
  121. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 時間の関係もございますから、あとはまた後日に譲りますが、以上、幾つかの点についてお伺いをしたわけですけれども、このことは、先ほども指摘申し上げました、人事院は目下民間給与の実態を調査しつつあるわけですが、そういう観点に立って、人事院が創設されたときの本旨は、あくまで公務員の利益を守る立場のための機関として設置されたことは明確ですから、何か問題があれば、いつも頭に公務員の利益を守る立場の人事院だということを——もちろん、私などがそういうことを言う必要はないと思いますが、心得ておられると思いますが、ひとつそういう立場に立って、わかっておるだけじゃだめですよ。それを具体的に実現しないと、公務員の利益を守るわけにいかないのですから、そういう本旨をしっかりかみしめていただいて、この四月の民間給与の実態調査に科学的なメスを当てていただきたいということを最後に強く要望申し上げて、本日のところ、私の質問を終わりたいと思います。
  122. 井川伊平

    委員長井川伊平君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  123. 井川伊平

    委員長井川伊平君) 速記をつけて。  それでは、本案につきましては、本日はこの程度にいたします。これにて散会いたします。   午後二時四十六分散会      —————・—————