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1968-03-28 第58回国会 参議院 内閣委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月二十八日(木曜日)    午前十時四十八分開会     —————————————    委員異動  三月二十七日     辞任         補欠選任      赤間 文三君     横山 フク君      館  哲二君     黒木 利克君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         井川 伊平君     理 事                 石原幹市郎君                 八田 一朗君                 伊藤 顕道君     委 員                 熊谷太三郎君                 黒木 利克君                 菅野 儀作君                 二木 謙吾君                 山本茂一郎君                 横山 フク君                 北村  暢君                 中村 英男君                 前川  旦君                 多田 省吾君                 片山 武夫君    国務大臣        法 務 大 臣  赤間 文三君        国 務 大 臣  田中 龍夫君    政府委員                 宮内庁次長    瓜生 順良君        皇室経済主管   並木 四郎君        法務大臣官房経        理部長      辻 辰三郎君        法務省保護局長  本位田 昇君        法務省入国管理        局長       中川  進君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君    説明員       法務省民事局第       一課長       香川 保一君       法務省刑事局青       少年課長      安田 道夫君       法務省矯正局保       安課長       福原 弘夫君       法務省人権擁護       局総務課長     辻本 隆一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○皇室経済法施行法の一部を改正する法律案(内  閣送付、予備審査) ○法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 井川伊平

    委員長井川伊平君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二十七日、赤間文三君、館哲二君が委員を辞任され、その補欠として横山フク君、黒木利克君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 井川伊平

    委員長井川伊平君) 皇室経済法施行法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案は去る二月十日、予備審査のため付託されました。  それでは、まず提案理由説明を聴取いたします。田中総理府総務長官
  4. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいま議題と相なりました皇室経済法施行法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申します。  内廷費及び皇族費定額は、皇室経済法施行法第七条及び第八条の規定によりまして、現在、内廷費は六千八百万円、皇族費は六百二十万円と相なっております。このうち、内廷費定額は、昭和三十九年四月に改定されたもので、改定以来すでに四年近くを経過しており、また、皇族費定額は、昭和四十年四月に改定されたもので、改定以来三年近くを経過いたしております。その後の経済事情、なかんずく物価の上昇及び数次にわたります国家公務員給与引き上げ等情勢にかんがみまして、内廷費及び皇族費につきまして、人件費及び物件費の増加を考慮いたし、内廷費定額を八千四百万円、皇族費算出の基礎となりまする定額を七百二十万円にいたしたいと存じます。  以上がこの法律案のおもな内容及びこれを提案いたしました理由でございます。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同賜わらんことをひとえにお願いいたします。
  5. 井川伊平

    委員長井川伊平君) 以上で提案理由説明は終わりました。  本件につきましては、本日はこの程度にいたします。  速記をとめて。   〔速記中止
  6. 井川伊平

    委員長井川伊平君) 速記を起こして。     —————————————
  7. 井川伊平

    委員長井川伊平君) 法務省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案は去る十八日、衆議院から送付され、付託されました。  なお、提案理由説明はすでに聴取いたしております。  それではこれより本案質疑に入ります。関係当局からの御出席赤間法務大臣でございます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この法案に関連して二、三大臣を中心にお伺いしたいと思います。  先般大臣から提案理由説明を承ったわけですが、その提案理由説明によりますと、今度移転しようとする旭川刑務所移転理由として、一つは現施設老朽したこと、それから非常に狭隘であること、それからいま一つは、旭川都市計画事情によるものと、こういう点があげられておるわけですが、四十二年度の犯罪白書においても、いわゆる行刑施設老朽化一つ問題点として指摘されておるわけです。そこで、この点については、刑務所施設に関する限りまだ戦後は終わっていないのだと、こういう意味指摘があるわけです。そこで、お伺いするわけですが、このことについて、こういう現状について、法務大臣としてはどのようにお考えになっておりますか。
  9. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) この刑務所移転問題がいろいろあるのでございますが、旭川刑務所は、いまお述べになりましたように、都市計画の上から、なおまた、相当老朽をしておるという点からも、これを移転するということが問題になっておるのでございます。法務省としましては、やはり都会にありますものは、その地方地方実情によりまして、あまり便利は悪くない地方のほうに移してくれぬかというような地方希望相当多いところがありますので、そういうところはよく話し合いをいたしまして、比較的都心から離れた、で、しかも刑務所の機能には差しつかえぬような場所を探してもらってこれを移転する、こういうふうな方針をずっととってきておるような次第でございます。
  10. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私がいまお伺いしたのは、この行刑施設は非常に老朽化しておる、こういうことをこの犯罪白書にも指摘しておるわけです。それで、この行刑施設に関する限り、ほかの点は別として、施設に関する限りまだ戦後は終わっていないんだと、こういうふうに法務省としても考えておられるわけですね。ということは、裏を返せば、いかにこの行刑施設老朽化がひどいということの一証左であろうと思うんですがね。だからこそ問題点になっておる。こういう点に対して大臣としては、どのようにお考えかということを聞いておるわけです。
  11. 福原弘夫

    説明員福原弘夫君) ただいま御質問にございましたように、矯正行刑施設は非常に古いものがまだございます。そこで、現在移転要請を受けておりますのは二十数カ所になっております。この中で緊急度の高いものから移転敷地候補地などがございますれば、逐次考えてございます。まあ、その例といたしましては、名古屋、福岡、滋賀、松江というように、逐次その実施に移っておりますが、なおまた施設が古い中で移転問題等のない施設につきましては、極力補修等をいたしまして、整備につとめておる状況でございます。ただ、移転問題が起こっております施設につきましては、移転との関連におきましてその移転の促進について考えておる状況でございます。
  12. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私の質問の要旨にまだピントが合ってないようですが、さらにお伺いいたしますが、法務省の四十三年度の予算を見ますると、旭川刑務所のほかに岡山刑務所に二億五百八十四万七千円、それと四十二年度にさかのぼりまして見ますると、静岡刑務所に七億四千二百万円、こういうのが計上されておろうかと思うんです。このように、これはまあ一例ですが、老朽化とか宅地化、こういう影響で改築とか移転を迫られる刑務所が、いま一部御説明があったように相当ふえてきているのではなかろうか。で、これは間違ったら御訂正いただきますが、全国刑務所が大体五十七ぐらいだと思うんです。もっとふえておるかどうか、この点もあわせてお伺いいたしますが、こういう数ある刑務所の中で、あるいは改築あるいは移転を迫られておるものは、大体どのくらいあるのかということですね。これを数をあげないでも、大体三分の一とか四分の一とか、そういう表現でけっこうですが。
  13. 福原弘夫

    説明員福原弘夫君) 現在行刑施設拘置所刑務所少年刑務所、全部で七十三施設ございます。そこで、ただいま御質問の何カ所かということにつきましては、私も何カ所とはっきりした数字をここで申し上げかねますが、二十四、五カ所というように承知いたしております。まあ、この中には国費をもって逐次改築にかかっているものもございます。たとえば宮城刑務所高松刑務所というような、まあそのほかにもございますが、そういう施設もございます。大体三分の一くらいが移転問題が起こり、また建築相当の年数もたっているというような実情でございます。
  14. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 法務省として刑務所移転とか改築についての当然に考えられることは、年次計画のようなものがあろうかと思うのです。行き当たりばったりに改築したり移転するのじゃないだろうと思うのです。そういう年次計画はあろうかと思うのですが、計画に基づいて移転改築をやると、当然こう考えられるわけです。  そこで、そのこととあわせてお伺いしたいのは、数ですが、刑務所については五十七、少年刑務所が九、刑務支所が十六、拘置所七、拘置支所九十八、計百八十七と、これが現状ではなかろうかと思うのですが、もし間違いがあったらこの機会に訂正していただくということと、その年次計画、あわせて御説明いただきたい。
  15. 福原弘夫

    説明員福原弘夫君) ただいま私申し上げました施設の数は、本所だけを一応申し上げたのですが、こまかく申し上げますと、現在の数は、拘置所が七施設、これは本所でございます。それから拘置支所が九十八でございます。それから刑務所が五十七、刑務支所が十六、少年刑務所が九というように、本、支所を合わせますとなっております。  その次に、移転年次計画につきましては、実は私まあ矯正局から本席へ参りまして、どうもつまびらかにしないというと非常に申しわけないわけでございますが、年次計画としては、老朽のものから逐次やるという計画はございますが、いまこの席で申し上げる資料を持ち合わしてございませんので、はなはだ具体的にお答えできないのは遺憾に思いますが、どうかあしからず御了承願います。
  16. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 伊藤委員のおっしゃいましたこの年次計画でございますが、私も法務大臣になりまして、ぜひひとつ三カ年あるいは五カ年、こういう計画をつくろうということは考えておるのでございます。まだ現在におきましては、老朽のはなはだしいもの、それからまた、わりあいに市街地にありまして、当該都市からぜひひとつ郊外のほうに移ってくれ、敷地その他いろいろな点についても十分配慮するから、こういうふうな、非常に老朽したもの、また特に地元の希望の強いものから移転にかかっておるというような実情でございます。お述べになりましたように、私はやはりこれはたくさん老朽しておりますので、五カ年計画ぐらいでしっかりした計画を立てていきたい、かように考えます。
  17. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 刑務所の数は全国で五十七あって、一部はまあすでにあるいは改築あるいは移転しておろうと考えておるのですが、そこでいま大臣が心強く五カ年くらいで極力解決したいとおっしゃるわけですけれども、いままでの現状から見ると、この五十七、一部はもう移転改築は終わっておるものもありますから、全部じゃありませんけれども、大部分まだ老朽のままに存置しておるわけですね。そういう情勢の中で、五カ年計画ぐらいで全部完成することは、私しろうととしては考えられないわけですわね。そこで、私のお伺いしておるのは、全国のこの現有刑務所実情を、当然法務省としては把握しておると思います。それに順位をつけて、予算関係もあるし、いろんな点を勘案して、いま申し上げたように、短ければ短いほどいいでしょうが、五カ年ならたいへんけっこうですが、五カ年ぐらいでとてもその数の多いところ、相当予算を伴うわけですから、そこでたとえ六年、七年、たとえ十年になっても、これは計画的に当然行なわれなければならぬと思うのです。ただそういう計画はあるけれども、いまここに資料がないとおっしゃるから、やむを得ませんが、そこでこれはあとでもけっこうですから、この刑務所改築移転等年次計画の大要をひとつ資料として御提出いただきたいと思うのです。  それと、なおお伺いいたしますが、今回の旭川刑務所移転については、現施設を含む現用地と、新設の職員宿舎を含む移転用地とを旭川市と交換することになっておるように伺っておりますが、そこで、この辺の事情についてひとつ承っておきたいと思うのです。
  18. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 旭川刑務所移転の問題でございますが、これは昭和四十二年度、四十三年度におきまして、新しく現地から、現刑務所から新刑務所に移ることになっております。これはその部分旭川市で担当していただいて新しい刑務所を建てていただく部門と、巣鴨東京拘置所財源といたします一連の刑務所交換計画の一環といたしまして、新都市開発センターという会社が担当いたします部分と二つに分かれております。新しい部分につきまして旭川市のほうで担当していただく工事の分が二億三千五百八十七万七千円、センター分のほうが二億八千四百八十七万三千円と、かようにそれぞれ担当区分をきめまして、目下工事中でございます。来年の——本年の十二月には全部これが完成するという関係になっております。
  19. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 ちょっとお伺いしたいのは、移転先施設については、東京巣鴨東京拘置所を新都市開発センターというところに分割移譲して、譲渡して、このセンターで新しい施設を建設するんだと、こういうふうに聞いておるわけですが、その具体的なひとつ説明を願いたいということと、あわせて予算関係はどうなっておるのか、このこともお伺いしたいと思うのです。
  20. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 現在の巣鴨にございます東京拘置所移転を前提にいたしまして、この東京拘置所財源、現在の施設財源といたしまして、新しい東京拘置所を現在の小菅につくると、そして現在の小菅刑務所にかわるべき新しい刑務所を青梅市付近へお願いする。それから、いま申し上げました旭川刑務所一部分岡山刑務所一部分、それから川越少年刑務所一部分浦和刑務所一部分、これだけの施設を新築または増築するという関係の、国と新都市開発センター建築交換契約ができております。この予算につきましては、昭和四十一年の国庫債務負担行為予算といたしまして国会の議決を得ておるわけでございまして、国庫債務負担行為の総金額は、五十七億三千五十九万九千円という金額になっております。このうち、巣鴨の現在の東京拘置所財源といたしまして、この財源は四十六億七千三百一万六千円というのが巣鴨の現在の評価として財源に充てられておるわけでございます。
  21. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 先に提出されましたこの資料を見ますると、今度移転することになる新施設は、現在の施設に比べて、敷地建坪相当広くなって、収容人員も多くなるわけですが、職員定員は百四十人で、一向変更がないわけですね。現施設と新施設を比べると、相当広くなっておりますし、それから建坪相当拡大される。ところが、現在の定員は百四十人で、新施設に移っても百四十人ということになると、職員について言えば、相当負担過重になろうかと、当然に考えられるわけです。そうだとすれば、運用上支障があるのではないか、こういう問題が当然出てくる。この面はどうなんでしょう。
  22. 福原弘夫

    説明員福原弘夫君) 施設はもとより、いまおっしゃいましたように、敷地も広くなります。いままでに比べますと相当広い敷地になりますのですが、ただ建物といたしましては、また収容人員といたしましては、従来の収容人員と大差がないわけでございます。また、現在ございます旭川刑務所は、旧来の建物でございますので、小さい建物が幾つもあるというようなことから、勢い、かりに十五名の収容者収容しても、一人の職員がなきゃならないというように、非常にこま切れになっている部面もございます。したがいまして、敷地は広くはもちろんなりますし、建物も新しくなりますが、職員は、私どもの検討した段階では、新施設建物に合わせて、それぞれ、この舎房には一名の職員が要る、あるいはこの工場には二名の職員でよろしいというような面も検討いたしました結果、現在の職員数でいけるというように考えている次第でございます。もちろん、完成いたしました上で、いろいろのこまかい点についてはさらに検討して、若干の増減はこれは起こり得るとは考えますけれども、現在の段階ではそのように考え職員を算出いたしております。
  23. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 従来の旭川刑務所収容定員は百八十六人であったと思うのですが、さて、実際の収容状況を見ますると、四十二年度で一日平均が三百二十五名になっておろうかと思います。このように大幅にオーバーしておるわけです。百八十六人の収容人員が三百二十五名になると、相当大幅にオーバーしているということが言えると思うのですね。新施設収容定員は三百人だと思いますが、これは現状から見て不足とも考えられるわけですが、この点は一体どうなのか、こういう点を御説明願いたい。
  24. 福原弘夫

    説明員福原弘夫君) いま御指摘のように、旭川の現施設定員は百八十六名でございます。それに対しまして、平均人員といたしまして、構外作業を除きますと、大体三百二十六名という数字が出ております。したがって、新施設は三百名という観点に置きましたのは、最近の収容者増減傾向から見まして、三百名でまかなえるのではないだろうかということとあわせて、あすこには西神楽の構外作業場、農場がございます。そのような人員考えますと、三百名の収容人員収容定員がまかなえる、旭川地区収容者をまかなえる人員だというように考えて算出いたしたものでございます。
  25. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま伺った点ですが、収容定員は百八十六人で、実際上の一日平均定員が、私は三百二十五名と申し上げたが、三百二十六名のようですが、そうなると、相当オーバーしておるわけですね。ということは、ことばをかえて言えば、相当無理して収容しておるということが言えると思うんです。そういう観点から見ますると、今度新設するところの刑務所においても、また数年で現在の旭川刑務所と同じような無理な収容をしなければならないような事態が起こるであろうことが予測されるわけです。  そのことと、さらにお伺いしたいのは、刑務所を建設する場合、収容者一名当たり敷地とか建て坪基準というものがあろうかと思う。たとえば学校には、小学校には児童の一人当たり運動場の広さとか、教室の広さ、こういうものの基準があるわけです。中学校高等学校の生徒にしても同様の基準というものがあるわけですね。そういうことから推すと、刑務所についても当然に敷地とか建て坪基準というものがあろうかと思いますが、こういう基準はどういうふうになっておるかということをあわせて御説明願います。
  26. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) ただいま役所のほうにその資料がございますので、すぐに取り寄せまして御説明さしていただきたいと存じます。
  27. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いまお伺いした敷地とか建て坪基準というものは資料を取り寄せてお答えになる、それでけっこうなんですが、いま一点お伺いした点は、現在の旭川刑務所相当無理な収容をしておる。そこで、今度の新施設刑務所についても同じことが繰り返されるんではなかろうかということが考えられるわけですね。そういう点についてはどういうふうに考えておるのか。
  28. 北村暢

    北村暢君 関連してちょっと。いまの伊藤委員質問を聞いておりまして、収容定員と実際に収容している人員とで非常に大きな差があるようですね。これは旭川に限ったことでないと思われるのです。それでお伺いするのは、全体的に言って、全国刑務所収容定員と、それから現実に収容しているものとの開き、あまり住みごこちよくなるとぐあいが悪いから、無理して入れたりして、住みごこち悪くするというのかどうか知りませんけれども、どうも、私もいつか刑務所を視察に行ったことがありますが、いま伊藤委員質問のように、収容者についての面積的な基準というものがおそらくあるだろう。それをこえて収容するということになると、やはり受刑者といえども人権というものがあるわけですから、そういう意味において、あまりにひどいことになりはしないかという感じがするのですが、収容定員と実際の人員とは約倍くらいの差があるようですから、最近バスでも汽車でも定員外の乗車がずいぶんふえているから、そういうことからいって、定員が守られてないというのは常識でいいのかどうか、どういうふうな状況なのか、この点重ねて御説明いただきたいと思います。
  29. 福原弘夫

    説明員福原弘夫君) ただいまの御質問旭川が三百という定員をつくったことで、将来また狭隘にならないかという御質問でございますが、全国収容人員の動態から申しますと、むしろ若干減少ぎみにございます。したがいまして、最近の戦後のずっと増高の鈍化あるいは減少傾向から見まして、旭川は三百名でよいであろうという判断をいたしたわけでございます。  それから関連質問でございました収容定員現員と合わせるということにつきましては、私ども、御説のようにできるだけ合わせたいということを考えてございます。したがいまして、その合わせる場合に、拘禁調整ということと、施設の運営ということを考えまして、年間こういう拘禁調整のために収容者移送を約千名、あるいは昨年度は、四十二年度は約千三百くらい動かしているわけでございます。そのような努力をいたしましても若干の凹凸がございます。この凹凸が、定員現員というだけで凹凸がございますのは、非常に表の上から見ますと、定員を割っているようでございますが、未決部分を持っておる施設につきましては、未決は非常に波が多いわけでございます。そこに定員現員の表から見ますと、上下の差がある場合もございます。受刑刑務所につきましては、できるだけこれは移送調整によりまして、極端な過剰にならないように努力をいたしております。したがいまして、御質問のように、できるだけ定員に合わせるような調整努力をしているということをお答え申し上げさしていただきたいと思います。
  30. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私はあえてお伺いしたのは、このことについて、もちろん悪いことをしたから刑務所に入れるわけですが、刑務所収容するゆえんの趣旨は、どこまでも改過遷善であって、昔のように膺懲の意味ではなかろうと思います。そうだとすると、大体定員をオーバーして入れるということは、これは改過遷善目的完遂のために支障があるのではなかろうか、せっかく刑務所に入れて、所期の目的は達せられないのではないだろうか、こういうことを憂慮するわけです。  なお、このことに関連して、この犯罪白書を見ますると、刑務所における受刑者一人当たりの一日三食の副食費は、昭和四十一年度で三十二円二十三銭になっておるわけです。これは生活保護のそれと比較いたしますと、生活保護が七十二円三十二銭、四十円の開きがあろうかと思うのですが、はるかに低くなっておる。さらに、国民生活白書を見ますると、副食費食糧費の七〇%になっておるけれども、刑務所においてはこの比率は四〇%台だと思うのですが、そうだとすると、受刑者といえどもあまりにも低きに失するのではなかろうかということが言えると思うのです。この点については改善の必要はあるのではなかろうかと思う。  そこで具体的にお伺いするわけですが、もし改善したいというお考え法務省にあるならば、四十三年度予算にはどのようにあらわれておるのか、こういう点についてあわせてお答えいただきたいと思います。
  31. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 被収容者食糧費の問題でございますが、逐年予算要求の際にはこの改善に努力をいたしております。現在御審議願っております昭和四十三年度予算におきましては、成人受刑者の副食費が一日三十五円四十三銭、主食が五十三円六十九銭ということで要求いたしておるわけでございまして、一日八十九円十二銭という関係になっております。この内容につきましては、この範囲内において十分のカロリー、栄養をとれるように種々考案をいたしておるところでございます。
  32. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 昭和四十一年度で三十二円二十三銭、間違いないとすると、いま御説明のあった四十三年は三十五円四十三銭、およそ三円上がっておるわけですね。ところが、四十一、四十二、四十三の物価上昇から見ると、物価の上昇に追いつかぬのじゃないですか。むしろ低下しておるとしか考えられない。いささかも改善の具体的な数が出ていないと思う。四十一、四十二で二年間経過しておるわけでしょう。二年間の物価の上昇率はこんなものじゃないと思う。ぐんと上がっておる。物価の上昇ということがなければ、わずかでも前向きに上がって、ほんのわずかでも改善ということが言えますけれども、これは二年間で三円ぐらいでは、繰り返し申し上げたように、物価の上昇に追いつかないということがあり得ると思う。この点どうなんですか。
  33. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 四十一年度予算におきましては——これはあくまでも成人受刑者について申し上げておきます。成人受刑者は三十二円二十三銭でございます。四十二年度予算が三十三円七十四銭でございまして、四十三年度の予算案では三十五円四十三銭ということになっておりまして、この四十三年度予算におきましては、前年につきまして五%アップということになっております。このうち私どもは四%が物価値上がりに見合う分、一%の増が内容改善に見合うということで計算をいたしておる次第でございます。
  34. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 どうもそういう数字では納得しがたいわけですが、さらにお伺いいたします。刑務所における受刑者の処遇の基本となるものは監獄法であろうかと思うのですが、この監獄法は明治四十一年の制定にかっておって、そのまま今日に存置されておる。名前からしてどうも前近代的なような感じがするわけです。この点についてはもちろん法務省としては監獄法改正準備会等を置いて、新しい刑事政策の進展に合わせて改正を検討しておるように伺っておるわけですが、相当年数もたっておるし、その作業も相当具体的に進んでおるのではなかろうかと思いますが、その経緯について、その大要をこの際に伺っておきたいと思うのです。
  35. 福原弘夫

    説明員福原弘夫君) 監獄法の改正につきましては、昨年の当初から、法務局の中に監獄法改正準備会を設けまして、現在その準備会におきまして、収容者人権の保障あるいは収容者に対する教化処分、あるいは社会復帰の促進というような諸点から改正作業を進めております。しかしながら、まだ最終結論までは得ておりません。そこで監獄法の法律改正ということとは別に、当面の問題といたしまして、一番問題になる諸点につきまて、監獄法施行規則の一部改正によりまして、実施面におきまして、たとえば新聞紙の閲読問題あるいは収容者の調髪の問題というような、とりあえず運営上必要とする諸点につきまして施行規則を改正いたしまして、昨年の一月一日から実施に移しております。以上のような段階現状はなっております。
  36. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 明治四十一年制定になったこの監獄法の改正については、現法務大臣としては、一体どのようにお考えになっておられるのですか。基本的な考え方を承っておきたいと思います。
  37. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 伊藤委員からお尋ねになりましたように、四十一年というと、もう相当古いもので、私ども今日の時世に合いにくい部分相当あるのじゃないかと考えております。名前をお述べになりましたが、私も全く同感で、今日監獄というようなことばは、もう適切であるかどうかということを研究しなければならぬ。それからなおまた、先にもお述べになりましたように、ここでは食費、食べものの問題なども、よほど栄養、その他あらゆる面から今日の時世に合うように、私は研究をしていく必要がやはりあるのじゃないか。あるいはまた、そこにおける作業というような点も、十分今日の時世に合うように作業という点も考え、またいろいろな教養を中で与えるというような点についても、さらにやはり研究をしなければならぬ。それからなお、特に私ども考えますことは、やっぱりこういう施設に入る人についても、そこを出たならば、比較的りっぱな腕を持って、生活上あまり困らんでもやっていけるというような職業的な訓練も相当やっぱり、これは年限の相当ある人には施すような方法を考える。要は私は一言言うと、何もこらしめるというのみではなくして、あわせてその人が性格をよくし、改善していくという気分になるような、しかもそこを出れば、社会人として衣食ができるようなふうのこと等も、これはいろいろな面からひとつ十分研究いたしまして、今日の時世に合うような方法に、相当思い切った改正をやっていく必要があるのじゃないか。やっぱりこれはまあ一つの、こういうところでありますから、その意味も十分ありますが、やっぱり一方においては、お述べになりましたように、幾ら刑務所に入っておっても、人権は擁護するということ、これはもうあらゆる面において私はもとをなすもので、そういう点もあわせて考えて、監獄法が今日の時世に合うものにしたい、そういうようなふうに考えております。  なおかつ、こういう点については衆知を集めて、ひとついい法律の改正ができることを希望をいたして、困難な点も多かろうと思うので、専門家並びに一般の人の意見も十二分に取り入れて、いい法律に改正をしていきたいと、理想を持っております。
  38. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なおお伺いいたしますが、現在、全国刑務所収容されておる総数は一体どのくらいか。これはもちろん男女別に概数でけっこうです。いまここでおわかりなければ、後ほどでもけっこうです。そのことと、受刑者についての更生保護ですね。これは非常に大事な点であろうかと思うのですが、現在はどのように進められておるのか、その大要についてあわせて御説明願いたいと思います。
  39. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 現在の収容人員実情でございますが、四十一年の実績を申し上げますと、刑務所におきまして、一日平均在所いたしておりますものが六万三千八百九十人でございます。そのうち、被疑者、受刑者と区別がございますが、成人の受刑者平均いたしまして五万二千三百八十七名、少年受刑者が千四百六名、残りの一万九十七名が被疑者被告人、いわゆる未決でございます。かようなのが四十一年の実績でございます。
  40. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 その中に女子はどのくらい含まれておりますか。概数でけっこうです。
  41. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 概数千四百ぐらいじゃないかと思います。
  42. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なおお伺いしたいのは、刑務所を出たあとのいわゆる更生保護ですね、この事業はどのように進められておるのか。
  43. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 現在、保護局の担当者がおりませんので、的確なことを御説明いたしかねるわけでございますけれども、大体、御承知のように、仮出獄で出ました者につきましては、これは保護観察、仮出獄中は保護観察ということに相なっているわけでございます。そのほか、一般の満期終了者その他につきまして、いろいろ職が、その日の職にも困るというような者につきましては、これはまた御承知のとおり、更生緊急保護法によりまして、それぞれその更生に遺憾のないような手当てをそれぞれ更生保護委員会、それから保護観察所が中心になりまして、保護司さんに具体的な活動をしていただいている。これが保護活動の概要でございますが、その的確な詳細なことにつきましては、保護局関係者と直ちに連絡いたしたいと思います。
  44. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 担当者はいまお見えにならないとすれば、後ほどでけっこうです。  それで、以上、刑務所関連して二、三お伺いしたわけですが、このことを要約すると、私もしばしば全国刑務所のうちで主要なものについて、実際に中に入って、実情をつぶさに視察しておるわけですが、一見どこでも感ずることは、建物が非常に暗い。昼間でも電気をつけないと顔がよく見えないというような実情、狭いところへ多勢が入っている。先ほどの説明で、言う必要もないのですが、施設老朽で、通風とか採光、こういう点に遺憾な点が多いわけですね。それと食事についても、先ほど申し上げたようにきわめてお粗末である。こういうような点を総合いたしますと、刑務所の所期の目的を達するためには、やはり通風、採光のいい、今後つくるものについてはそういう点を十分考慮して、いわゆる冬の暖房、そういう点をもあわせ考慮して、食事についても人権を無視するかのごときものにならないように、そうして明るいところで、先ほど大臣も御指摘になったように、十二分なる職業補導を徹底さして、社会へ出たら再び刑務所へ戻らぬように、先ほどの御説明で、この収容者は漸減の傾向にある、これはたいへんけっこうで、もう漸減どころでない。もう激減して、刑務所はほとんど、ここもあそこもみんな廃止になったというような社会がまことに望ましいわけですが、一挙になかなかそこまでいきませんから、そういう方向でひとつ今後一段の配慮を願いたいということを、刑務所について御要望申し上げておきたいと思うのです。  なお、次の問題についてお伺いいたしますが、入国管理事務所の出張所というものが今度新たに設けられるようになっておりますが、このことについて二、三お伺いいたします。  今回のこの設置法改正案の立案当初の予定では、入国管理事務所出張所設置については、従来の法律事項からこれを削って省令事項にする方針であったかのように伺うわけであります。現に、事前に出されたものについては、これは省令事項にする方針で立案されておったと思うのです。しかし、今回新たに提案理由のあったものによっては従来どおりと、またもとに戻っておるわけですね。何かそこに事情があったかと思うのですが、その間の経緯についてひとつ詳細に、かつ具体的に御説明願いたい。
  45. 中川進

    政府委員(中川進君) ただいま伊藤委員から御指摘の点、まことにそのとおりでございます。私どもといたしましては、毎年相当数の新しい入国管理事務所の出張所ができるわけでございますから、一々国会にお手数をかけるのもいかがかと思いまして、できましたら、国会の議決を経ないでそれが新設できるようにしたいと考えておりましたし、いまでもおりますわけでございます。国会の諸先生方の御意向を伺いますと、やはり法律に従うという御意向がございました。それでここに御提案申し上げた次第でございます。
  46. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今回の改正では、五カ所の出張所を設置しようとしておるわけですが、この出張所ができることになると、当然に庁舎が必要になってくるわけです。そこでお伺いするわけですが、公安関係の合同庁舎等に入る予定になっておるのか、一体どうなっておるのか。国政調査のときしばしば入国管理事務所それ自体、あるいはこの出張所等を視察してまいりましたが、近時改築されたものもあるし、また近代的な庁舎に移っておるのもありますけれども、多くは既設の建物の一部を借りて、それに不健全なような感じのする庁舎に入っておるのが多いようです。そうだとすると、まことにこれは職員の健康上からも問題だと思うんですが、今回五カ所の出張所については一体どうなっておるのか。この点について御説明を願いたい。
  47. 中川進

    政府委員(中川進君) 今度新設せられます五カ所のうち、御承知のように一カ所は空港でございまして、港湾は四つでございますが、これらはいまのところはまだ合同庁舎に入る予定がございませんが、できるだけすみやかに合同庁舎に入れていただきたいと、かように考えております。
  48. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今度新設される予定の出張所は、いずれも一カ所二名の構成のようですが、所長兼審査官が一名で警備官が一名、こういうふうに聞いておりますが、そこでお伺いをするわけですが、一カ所で二名ですから、五カ所で十名の増員ということになりますが、これは定員削減措置の行なわれているこの条件の中で、一体どのように充足されるのか。この点を一体どうなのかということと、一出張所二名程度の構成で業務遂行には支障がないのかどうか。こういう点も当然に考えられるおけですが、こういう点についてあわせて御説明を願いたい。
  49. 中川進

    政府委員(中川進君) お答えいたします。  まず定員のやりくりでございますが、今年度におきましては幸いにして二十二名の増員が認められました。これはしかしながら、主として羽田、伊丹、板付というような空港に行くわけでございまして、新しくできます五カ所の定員十名というのは、従来の私どもの手持ちの中からやりくりして捻出する。その財源と申しますか、人的な資源のもとは、主として大村の収容所から出すということになっております。  それから第二の点でございますが、確かに二人で、警備官一人、審査官一人という陣容で十分であるかと言われますと、これは確かに手不足でございまして、そこの任務に服する具体的な二人の方には、はなはだお気の毒なことでございますが、いかんせん国家財政、定員状況から見まして、これ以上要求することは無理かと思いまして、私どもといたしましては、この二人で全力を発揮して任務に遺憾なきを期せしめたい、かように考えておる次第でございます。
  50. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、このことに関連して、出入国管理令については、従来から法務省において出入国管理令改正準備会なるものを組織して、令をやめて法律にするように検討が行なわれつつあると伺っておるわけですが、それから相当年数もたっておりますし、いままでの進捗状況は一体どうなのか、今後の見通しは一体どうなのか。もうそろそろ結論が出てしかるべきだと思うんですが、その点はどうなっておりますか。
  51. 中川進

    政府委員(中川進君) ただいまの点、御指摘のとおりでございます。ただいま私どもが仕事をしておりますもとになっております法令はポツ勅でございまして、確かにいまの時世から見ますというと、若干古い点がございますので、何とぞこれも現在の要請にあったような改正をしたいということは、歴代の入国管理局職員の念願でございます。ただいま幸いにして相当作業は進捗いたしておりまして、もうほとんど御審議を願える法律案そのものが九分九厘まで固まっておる、こういう状況でございます。見通しといたしましては、したがいまして、ごく最近の機会におきまして国会の御審議を願うようにお願いしたいと思うのでございますが、それが具体的にいつの時期になるかということは、これはいろいろな政府全体の法律案の提出予定その他にもかかわりますので、これはちょっと客観的にいつということは、私としても申し上げかねる次第でございます。いずれにしても、私どもの希望といたしましては、できるだけすみやかに提出したいと、かように考えております。
  52. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは次の問題をお伺いいたしますが、この提案理由説明を見ますると、愛知少年院の位置の表示を改めるということの説明があったわけですが、そこでこの少年院に関連して以下二、三お伺いをしたいと思うわけです。  まずお伺いしたいのは、少年非行の現状ということですが、これはちょっと古い数字ですが、昭和三十八年中に警察に検挙された犯罪少年、これはもちろん十四歳から二十歳未満、これとそれから触法少年、これは十四歳未満であろうと思うのですが、これが大体百万四千三百三十六人というふうに百万以上を突破しておる、こういう憂うべき数字が出ておるわけです。最近特に青少年の犯罪が増加をたどっておるわけですが、ここで問題なのは、数がふえつつあるということだけではなく、質が悪化しつつあるということ、これがより一そう問題であろうかと思うのですね。まことに憂慮にたえないわけです。もちろんこの青少年の対策としては、法務省だけの問題でなく、文部省も総理府、厚生省、労働省、農林省、運輸省、警察庁あるいは最高裁判所、こういうような官庁がそれぞれの立場から対策を講じておるわけですが、なかなか成果があがっていないわけです。先ほどの説明で、刑務所収容人員は漸減しておるという御説明があったわけですが、それとは逆行して、青少年の犯罪はますます増加の一途をたどっておる、しかも質が悪化しておる、こういう点、現実にこういう傾向が現在見られるわけです。  そこで大臣にお伺いしますが、法務省としては、やはり抜本的なこの犯罪対策を打ち立てなければならない当面の責任があろうかと思うのですね。もちろん、青少年対策そのものは、以上申し上げた各省庁がそれぞれ分担し、それぞれ対策を講じ、それをまた横の連係をとるために、先般二年ほど前に総理府に青少年局まで設けられた。ところが、これはこの法案に直接関係がございませんけれども、今度はせっかくつくった青少年局を、一局削減の犠牲にしてこれを削ろうとしておる。こういうような事態の中で、なかなかこの青少年対策、特に青少年の犯罪対策というものは、法務省にとって重大な課題の一つであろうかと思うのですね。もちろん具体的なものについては後ほどお伺いいたしますが、基本的な大臣の姿勢についてお伺いしておきたいと思う。
  53. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) この青少年の犯罪の問題は、全く伊藤委員がお述べになりましたように、これは非常に私は国として力を入れなければならない憂慮すべき問題である。数がふえて、しかも質が悪くなり、犯罪が悪化の傾向にある。私が考えておりますることは、御承知のように現在二十ということが一つの標準になっておりますが、どうも今日の犯罪のいろいろなケースを見ると、二十というものを一つの区切りとせぬで、いずれこれらの年齢を少し引き下げて、まあ十八ぐらいから特別扱いするような制度にしたらどうか、十八から二十一、二までの間を適当に区切りをつけて特別な方策を——刑法、少年法等についても特別の施策を考えるということが必要じゃないかと考えておるのであります。そのやり方につきましては、これまた学者先生方、いろいろな御意見があると思いまするが、どうもいま言いました二十というものを、少なくとも十八ぐらいに年齢を下げて、そして十八から二十一、二ぐらいまでの間をひとつ幾らかの階級に分けて、それに適合させる取り扱いをやるような改正というものが、現在は必要ではないかと考えております。  で、まあ法務省としましては、お述べになりましたように犯罪、非行の取り締まりという方面から考えますると、もとはやっぱり、お述べになりましたように文部省の教育、あるいは内閣でやっている青少年の対策とか、そういう積極的な対策というものを多く講じて、この青少年の悪化を防ぐ施策を国としては十分ひとつ考えなければならぬのじゃないか。こういうふうに青少年の犯罪がふえるというのは、どこにその原因があるのか、だんだん悪化するというのは、何のために悪化するかというような、こういう面も政府としてはあらゆる面から十二分な検討をして、非行青少年が少なくなるような方途を、これはもうおざなりでなくて、お述べになりましたように、真剣にこれはやはり考えなければいけないようであると私は考えております。まあ、おとなの人がいろいろ問題を起こすのも困りますが、われわれのあとを追うてくるこの青少年が好ましくない非行が多いなんということは、これは非常に憂うべきことで、法務省としましても、これはむしろ法務省の分野から十二分なひとつ方策を講じなければならぬ、かように私は思っております。
  54. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なおお伺いいたしますが、青少年対策に関する国の予算を見れば、大体国の青少年対策と取り組む姿勢がうかがえるわけです。そこで、この場で御提出は無理かと思いますが、午後、簡単にできると思いますからお願いしておきたいと思うのですが、最近五カ年間の年度別、各省庁別の一覧表をひとつ資料として提出願いたいと思います。これは午後でいいです。その資料によって二、三またお伺いいたします。  それと、犯罪の増加の傾向はいま申し上げたわけですが、これはただ単にわが国にとどまらず、欧米諸国にも見受けられる傾向であろうかと思うのですが、ただここで問題なのは、わが国の場合は、増加率についても凶悪化についても、とにかく世界の中でも一番ひどいように見受けられるわけです。そうでなければけっこうなんですが、数字は正直にその辺をあらわしているわけです。そうだとすると、これはまことにゆゆしい問題であると思います。増加の傾向は世界的だ。しかしながら、その増加率、凶悪化、これは日本が最もひどい部類に入るということになると、これはなかなか世界的な傾向だからといって楽観できないわけです。そういうことになるとゆゆしい問題でありますけれども、この点については一体大臣、どういうふうにお考えですか。なぜ、日本の場合増加率も世界のそれに比較して高いし、凶悪化も相当ひどいということは事実だとすればゆゆしい問題だと思うのです。これはそういう私のお伺いしたことは、いや、そういうことはないのだということであればたいへんけっこうです。そういうふうに聞いているわけです。その点はどうなんですか。
  55. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) まあ青少年の悪化の問題は、世界の中でも比較的高いほうに私ども聞いております。原因は人によってもいろいろあると思いますが、お尋ねだから、私が思います原因を申し上げますと、やはり敗戦後一般に道義の観念というのが低くなったのじゃないか。御承知のように、経済産業部面は高度化とか、きわめて経済の発展とかいうようなことは、世界各国で目ざましいほどの発展をしておりますが、精神方面、道義の方面、そういう面がやはり物質の方面と車の両輪のようにいってないし、こちらのほうが、どうも戦後道義の高揚という点が思うようにいかない。おそらく青少年の犯罪なんというものは、青少年個人個人の性格とか、いろいろなものによりますが、やはり社会のいろいろな関係から犯罪がふえる部分がある。青少年がよくなるためには、やはりおとなが緊張して、子供をよくするためにはやはり両親がしっかりしていなければならないことは、これは一番大事なことだと思うのでありますが、言いましたように、やはり道義の観念が社会的に少し弛緩したのがこういう青少年の犯罪に響いてきたのじゃないかというふうに私は考えます。  それからもう一つは、やはり御承知のように家族主義というものが大体終戦後なくなりまして、個人主義、個人民主主義ということになってきまして、家として子供のめんどうを見るのが行き届かない点が多いのじゃないか、非常に自由をとうとぶことはけっこうである。やはり親などが子供に対して何といいますか、保護指導、そういう点において幾分欠けるところがある節も一つの原因がある。そういうふうに思います。一番大きい問題は、やはり社会の道義観念を高めて、おとながしっかりしてくると少年犯罪は減るということに非常に関係が深い。これは私の説が正しいか正しくないか知りませんが、私個人はそういうことを考えている次第でございます。
  56. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 まだお答えいただく分がちょっと足りないと思いますが、私のお伺いしたのは、こういう状況があるが、大臣どのようにお考えになるか。そこで大臣としては、敗戦に伴う道義の低下とか家族制度の問題、こういう点に原因があるのではなかろうかという御指摘であるが、敗戦国といえばドイツもそうだし、イタリアもそうだし、同じ運命にあったわけですが、それとの比較はさておいて、そういう原因ではなかろうかと考えられる。それでは一体今後どういう対策を講ずべきであるか、そのほうがむしろ大事ではなかろうかと思うんです。こういうことはこれこれによって起こった、それにはどういうふうに法務省としては手を打つべきか、その後者のほうがむしろ大事なことだと思うんですが、それについてお考えが当然あろうかと思いますが、そのことの一つの基本的なお考え方を伺っておきたいと思います。
  57. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 法務省だけから考えるというわけにはまいりませんが、法務省といたしましては、さきに申し上げましたように、少年法といいますか、何かによりまして、現在二十というところにめどがあるのは、やはりこれを十八ぐらいに下げるのが今日の時勢に合うのではないだろうか。それから十八から二十一、二の間には等級を設けて、おとなとは違うが、いろいろな制裁的な規定、またこれの特殊指導の方面、こういうようなやっぱり少年法というもの、こういうものを時世に合うような方法で、悪を少なくしていくということを考えていくのが法務省一つのしかたじゃないか、こう考えております。しかしながら、お述べになりましたように、ただ悪いものが起こったからそれを処置するといういまの法務省の行き方だけでは、これは十分ではない。やっぱりもとを何とか悪いものが出てこないような方策を講じなければならないということになると、まあ私はよくわかりませんけれども、伊藤先生のほうが詳しいかもしれませんけれども、私は学校教育あるいは家庭教育、あるいは社会の秩序保持とか、正しく明るくなる社会をつくるというのが、そういうふうな悪を少なくする方法じゃないだろうか、こういうふうに考えます。
  58. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 もちろんこの法改正によって、少年法の改正ということももちろん役立つでありましょうが、基本的には先ほど御指摘申し上げたような関係の省庁が、犯罪少年だけでなく、青少年そのものの対策を具体的に強化するためには予算が要るわけですね。そこで先ほど五カ年間の予算の経緯を見ると、国が青少年対策にどのように取り組んできたか、また今後取り組もうとしておるのか、そういう基本的なことがわかるわけですね。と同様に、今度は犯罪少年に対しては、法務省が責任ですから、これについてはやはり最初の例で申し上げますと、法務省どんどんお金をかけて、明るくするにはやはり予算が伴うと思うんです。ただ理論だけでは解決がつかない。特に今日前向きの施策としては、いわゆる職業補導を徹底的に行なって、入監者にいわゆる一種の特技まで与えるようにして本人に自信を持たせる。そうして出た後にその特技によって活躍をさせる。いま特殊技能者は払底しておるわけですから、社会にも受け入れられると思うんですね。そういうことになると相当予算をかけないと、職業補導の高度化は望めないと思う。  最初に申し上げましたように、全国各地の刑務所を視察してまいりますと、相当進んだ職業補導をやっておるところがありますけれども、ありふれた職業補導にすぎないところも相当あるわけですね。やはり高度の職業補導をやるとか、前向きの姿勢で取り組んで、一つの例ですが、そうしてあたたかくこれを迎えて、再び刑務所へ戻らないようにと、こういう施策を具体的に進めるためには、どうしても相当予算がかかろうかと思うんですね。予算を使わずに、ただ理想を追うだけではものごとは解決できないと思う。こういう点をあえてお伺いしたわけです。したがって、法務省でも、もう四十三年度の予算は御承知のような状況になっておりますからこれは無理でしょうが、今後そういう方面にも格段の意を用いて、前向きの面でひとつ格段の御努力いただきたいと思います。
  59. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) いまお述べになりましたことは、全く同感でございますし、また一番私は大事なところであると思う。やっぱり刑務所にいたしましても、少年院にしても、お述べになりましたように非常に薄暗い、狭いようなところに置いておくということは、改善するのにはこれはやっぱり妨げになる。やっぱり明るく——ぜいたくなことはできない、これはもちろん問題になりませんけれども、人間としての扱いということをしてやらなければならぬ。特に私大事に思うのは、お述べになりました特殊技術というものを身につけておれば、出ましても犯罪を犯さなくてもりっぱに生活ができる。そういう職業がないために、また食べるために、心ならずもまた悪に走るというような例も多い。  それから予算のことでございますが、全く同感でございまして、予算がやっぱり伴わなければ、なかなか思うようにはできないのであります。まあ大体法務省予算は、御承知のように、あらゆる面から見まして、どうも少な過ぎるんじゃないかというような個人としては気持ちも持っておりますが、将来はひとつそういう方面に向かっては相当やっぱり予算を増加しつつ、それからまた看守とか、いろいろな方面で人手が足りないのは思い切って、幾ら国としては減らす必要があっても、必要なものはむしろふやして、明るい行政のほうに今後はひとつお述べになりましたようなことを中心に全力を尽くしてやりたい、このように考えます。
  60. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、犯罪少年とか、いわゆる触法少年について一端お伺いしたわけですが、犯罪ではないけれども、たとえば未成年でたばこを吸うとか、学校をサボる、いわゆる怠学、仕事をサボる怠業、あるいは盛り場などを俳回する、あるいは不健全な娯楽に走る、あるいは家出をする、こういうのは一括して虞犯少年として見ておると思うのですが、この虞犯少年の最近の傾向は一体どうなんですか、あわせてこの際伺っておきたいと思うんです。
  61. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 虞犯少年の数は大体百三十万から百三十五万ぐらいの人員が補導されております。それでこの補導はもっぱら警察が補導しておりまして、少年法で厳格な意味での虞犯少年は、これは家庭裁判所のほうに送致しなければならないわけでございますけれども、ただいまの百三十万人と申しますのは、これは先生の御指摘になりましたような、いわゆるその厳格な意味での虞犯だけでなしに、さらにいわゆる不良行為を行なっているような、そういう少年をすべて含めての数字でございまして、その大部分は警察の段階で適切な補導を施した上で処理をしておるような状況でございます。
  62. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお青少年の犯罪に関連してお伺いいたしますが、青少年の保護観察業務については、現在どのようになっているか、その大綱でけっこうですから御説明を願いたいと思います。
  63. 本位田昇

    政府委員(本位田昇君) 現在保護観察対象者は、総数におきまして常に約十万七、八千ございます。その中で少年が占める割合は常に七〇%程度でございます。少年の場合の保護観察は、御承知のように家庭裁判所におきまして保護処分として保護観察を言い渡すというものが大部分、数の上では一番多いのでございます。  それから少年院から仮退院してまいりますそれらにつきまして、保護観察を行なっておりますのが、大体常に一万二、三千ございます。それを合わせまして約七、八万という保護観察の少年の対象者があるわけでございます。これにつきましては、全国各県庁の所在地にございます保護観察所におきまして、保護観察官が中心になりまして、民間から委嘱しております保護司の協力を得て、なおそのほか、これも若い学生の人たちの運動でございますが、BBS運動などにも御協力をいただいております。そういうことで、社会の中で再び犯罪を犯さないように指導監督し、補導、援護していくということでつとめてまいっております。
  64. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、女子少年院とか医療少年院というようなものがございますが、ここに収容されております女子少年についての大要でけっこうです。御説明いただきたい。
  65. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 少年院に収容されております少年の数は、大体各年とも変化がございません。その総数は八千名程度でございます。で、そのうち女子は六百五十名から七百名程度でございます。
  66. 井川伊平

    委員長井川伊平君) 速記をとめて。   〔速記中止
  67. 井川伊平

    委員長井川伊平君) 速記をつけて。  それでは暫時休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      —————・—————    午後一時五十一分開会
  68. 井川伊平

    委員長井川伊平君) これより内閣委員会を開再いたします。  午前に引き続き、法務省設置法の一部を改正する法律案質疑を続行いたします。  午前の質疑中答弁が保留になっている部分について聴取いたします。辻経理部長
  69. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 午前中に伊藤先生から御指摘がありました件につきましてお答えいたします。  まず第一は、行刑施設舎房等の建築基準がどうなっているかというお尋ねでございました。これにつきましては、法務省といたしましては基準を設けております。もちろん、具体的な建設にあたりましては多少の変動もあろうかと思いますが、一応の基準といたしまして、行刑施設舎房につきましては、独居房につきましては一人当て十平米、雑居房につきましては一人当て五平米を基準にいたしております。もっとも、これは舎房に付属いたしております廊下の部分その他を含んだ広さでございます。それからなお新しい、最近全部終戦後つくっております行刑施設につきましては、御指摘がございました通風、採光等にも十分意を用いまして、原則といたしまして舎房は片側舎房——両側舎房にいたしますと日陰の部分ができるとか、いろいろ弊害がございますので、片側舎房ということにいたしまして、通風、採光に意を用いております。  なお、行刑施設につきましては、全体の広さの問題でございますが、施設の、舎房はもちろん、庁舎であるとか工場でありますとか、建造物の延べ面積の三倍の敷地を大体確保するということで行刑施設基準といたしているわけでございます。これが大体の行刑施設の、なお詳しくは病舎は幾らであるとか、いろんな基準がございますが、おもな基準は以上のとおりでございます。  なおもう一点、同じく御指摘のございました行刑施設改築計画はどうなっておるかという御指摘でございましたが、この点についてお答え申し上げます。現在、この行刑施設——刑務所少年刑務所拘置所、この行刑施設につきましては、本所全国で七十三、支所が百十四、合計百八十七あるわけでございます。そのうち、戦後すでに改築が完成いたしました、完成庁と申しておりますが、完成庁が本所が十一、支所が三十六、合計四十七庁完成いたしております。それから現在改築の実施中のものが、本所が十九、支所が三、合計二十二、これが現在改築を実施いたしているわけでございます。残りの百十八、この内訳は本所が四十三、支所が七十五になるわけでございますが、百十八庁につきましては順次改築計画いたしておるわけでございますが、そのうち、その所在地が市街地の中心に位しておるとかそういう関係で、現在のまあいろいろな都市の状況に見合わないという関係移転を要請されております、都市計画上その他いろいろな問題がある、移転問題がある庁が合計二十七に及んでおります。まず私どもといたしましては、この移転問題のある庁につきまして、この改築考えるというのが一つ基準になっておるわけでございます。で、第二が、その他につきまして、この建設の老朽年度その他によりまして、具体的にそれぞれ検討をしていっていると、かようなのが大体の改築の大綱でございます。
  70. 井川伊平

    委員長井川伊平君) 順次御質問を願います。
  71. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 先ほどお伺いいたしました青少年対策についての、各省庁別最近五カ年間の予算の提出方をお願いしたわけですが、これは総括するのは総理府の青少年局ということ——今度は廃止になるようですが、青少年局でありますから、法務省へ先ほど要請しましたけれども、いささか無理の点もありますから、ごくわかる程度の概数でけっこうです。それをまず御説明いただきたいと思います。
  72. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 昭和四十二年度の主要青少年対策関係予算の各省庁別の政府原案の総合計額は、ただいま御審議いただいております額でございますが、それは七百七億円になっております。で、昭和四十二年度の予算額では、それに対応する額が六百億でございまして、四十三年度は約百七億増額をお願いしておるわけでございます。で、国の一般会計は昭和四十二年度におきましては四兆九千五百億でございますので、青少年関係の経費、すなわち六百億が占める割合は約一・二%に当たります。昭和四十三年度予算につきましても、その比率は、一般会計が約五兆八千億でございますので、それに対する七百七億の割合は約一・二%ということで、一般会計全体に占める青少年関係の主要経費の割合は、昭和四十二年度も四十三年度もほぼ同じような率になっております。  なおそのうち非行対策関係の経費だけについて見ますと、昭和四十三年度の政府原案では、法務省関係が約二十七億円でございます。それから警察庁の関係が三億、それから最高裁判所が千五百万ということで、合計いたしまして三十億八千四百万ほどになります。昭和四十二年度もこの非行対策関係の経費は合計で三十億でございまして、これまた昭和四十二年度に比べまして四十三年度の原案では一億弱の増額になっております。以上でございます。
  73. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは、これに引き続いてさらにお伺いいたしますが、少年の非行から更生、保護、こういう経路はどうなっておりますか。この経路の大要でけっこうです。ごく大要について御説明願いたいと思います。
  74. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 非行少年がまず警察に補導、検挙をされますと、事案によりまして直接家庭裁判所、または検察庁に送致されます。検察庁に送致された少年は、検察官のもとで簡単に調べまして、犯罪の嫌疑ありと思量いたしました場合には、これをすべて家庭裁判所に送致することになっております。で、家庭裁判所では家庭裁判所調査官が、その少年につきまして、その環境あるいは素質、その他いろいろ犯罪事実も含めまして調査いたしまして、その調査の結果、家庭裁判所裁判官によって審判がなされるわけでございますが、その審判の種類といたしましては、その事案によりまして、検察官に送致して刑事処分の請求をなさしめるものが一つでございますが、それ以外は原則といたしまして本処分に付することになっております。その本処分の種類といたしましては、御承知のように保護観察、それから少年院、そのほか教護院、養護施設への送致というような種類がございます。いずれの処分も必要としないと判断された場合には、審判の不開始、または不処分という処分になります。  検察官に送致された少年は、検察官がこれを一般の刑事裁判所に成人と同様な手続で起訴いたしまして、刑事裁判が行なわれるわけでございます。刑事裁判の結果有罪となって実刑を言い渡された場合には、少年刑務所にその少年は収容されることになります。もちろんこの場合には執行猶予になる場合も当然あるわけでございます。で、その場合にさらに保護観察が付せられる場合もございます。それから検察官に送致されないで、保護処分として保護観察に付せられた場合には、保護観察所の保護観察官による保護観察に服するわけでございますが、この場合には全国に約五万人おられる保護司さんの協力を得て、これに対して適正な更生保護の指導がなされるわけでございます。それから少年院送致の決定のあった少年は、全国約六十の施設、少年院施設収容されて、そこで職業教育、その他教科教育等の社会復帰に必要な訓練が施されることになっております。手続といたしましては、大体そのようなことでございます。
  75. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 非行から更生保護までの経路についてはよくわかりましたが、そこで更生保護の状況についてもこの際御説明いただきたいと思います。ごく概略でけっこうです。
  76. 本位田昇

    政府委員(本位田昇君) 更生保護の概況でございますが、午前中に若干申したことを含めて大要を申し上げたいと思います。  現在更生保護と申しております仕事は、保護観察という仕事が中心になっております。しかしながら保護観察だけではございませんので、そのほかに、たとえば刑務所を満期で出獄してきた者が適当な寄寓する先がないというような場合に、本人の申し出から出発しまして、全国で現在仕事をしておるのが百二十二ございますが、更生保護会に収容し、そこで生活指導的なこともやり、職業の就職先をあっせんするような努力をいたしまして、社会の中で自立更生がはかっていけるような、そういう手だてをやる仕事も含まれるわけでございます。  保護観察の仕事につきましては、午前中も申しましたけれども、主として全国刑務所所在地にございます保護観察所が中心になりまして、保護観察官が専門的な立場でこれを処遇する。あわせて民間から委嘱しております五万人の保護司の方に、民間人としての長所を発揮していただきまして、社会の中で協力して更生をはかっていくというたてまえをとっておるわけでございます。その対象になっておりますのが常に約十万人から十一万人の間の数で、なお刑務所、少年院などに入っております者が社会に出てまいります過程といたしまして、一方では、先ほど申しましたように、刑務所などを満期で出てくるということでございますけれども、施設の中におきます成績なども勘案し、出て行く社会の寄寓先なども勘考いたしまして、仮釈放の制度がございます。早目に社会に出してやる。それによって本人の自立更生の意識をより高めるということもございます。こういう者が社会に出てまいりました場合に、刑務所から出てきた者につきましては、残刑期間、刑期の残っておりますだけ保護観察をするわけでございます。  そのほか少年院の場合でございますと、仮退院してまいりました者について保護観察をする。それから刑事裁判所で執行猶予になりました者が保護観察つきの執行猶予の言い渡しを受ける場合がございます。この場合に、社会の中で保護観察を行ないまして、指導監督という援護の措置を講じつつ保護をはかるというたてまえになっているわけでございます。  更生保護会の——先ほど申し上げました行く先のない者に対します更生保護会による更生保護の措置、狭い意味の更生保護でございますが、これなども、成績から申しますと非常に実はいいのでございます。更生保護会に入る期間は、たてまえとしては六カ月以内ということでございますけれども、それ以上にわたる場合ももちろんございます。その更生保護会に入っております間に再犯をするという場合はきわめて少のうございまして、全体から申しまして二%以内くらいにとどまっておるわけでございます。社会の中で適当な処遇をしてまいりますと、ある程度再犯の防止が効果的になっているという感じを持っております。この努力を精一ぱいしておる次第でございます。
  77. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なおお伺いしたい点は、戦後、全国的に窃盗とかすり、こういう種類の少年犯罪が発生したわけですが、これらはほかにも理由がありましょうけれども、主として生活の苦しさから発生したものと一応考えられるわけです。ところが、現在のような凶悪性の少年犯罪の増加は、このことに比べて一体那辺に理由があるのであろうか、こういう問題が出てくると思いますが、この点について大臣としてはどのようにお考えになっておられるか。
  78. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) この青少年の凶悪犯人がふえた理由につきましては、私は、青少年がその理想と申しますか、自分はりっぱな社会に役立つような人間になろうというようなふうの理想というものを持つことが少なくなった。それでつい誘惑に負けて、その欲望を達成するために凶悪なる犯罪におもむくというようなことで、やはりこのりっぱな人間なり、世のため社会のためになるような人間になろうという、そういう考えというものが非常に少なくなった。これが私はやっぱり凶悪なる犯罪のふえた一つの大きな原因であろうと思います。  それから、この戦後においてそれがふえたのは、やはり先にも伊藤委員に申し上げたように、道義の観念が社会一般に低下をしておる。産業、経済、文化とか、あらゆる面において非常に進歩をしておるにかかわらず、道義方面あるいは精神方面というものが、一向これと均衡を保って発展をしなかったというようなことが、私はその一つのやっぱり大きな原因じゃないかと、かように考える。  なお、まあ広くいうならば、小学校から中学校の教育等において、もう体育の方面は比較的非常に戦後は私はよくなったように思いますが、やっぱりこの道義、精神方面というようなものが、環境がよくないために、学校の教育もその徹底を欠いた部面がある。やがては、それがひいてはいろんな犯罪のもとになる。で、まあどうしてもこれは、このためにはやっぱり社会環境と申しますか、本人に理想を与え、生きがいを与えるとともに、社会環境の浄化ということ、環境をよくするというようなことをやるならば、凶悪なる犯罪というもの並びに一般の犯罪も、少年の犯罪等は特に減ってくるのじゃなかろうか、かように私は考えております。
  79. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 このような青少年犯罪が、主として戦後は貧困家庭を中心に多かったわけですけれども、最近これが中流以上の家庭に拡大されつつあるという、こういう現象があるわけですね。これも一つの特異性だろうと思いますが、この現象については大臣としてはどうお考えになりますか。
  80. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) この前は比較的貧乏と申しますか、そういうところにそういうのが多かったのが、だんだん中流の家庭に多くなった。私は全くこれは精神方面の欠如がやっぱり一つの大きな力じゃないかと思う。おそらく中流以上の相当な家庭に生まれて、おとうさん、おかあさんは、りっぱに発育し、模範的なぐらい思っておると、あにはからんや、それが不良化しておるのを知らないというような事例がたまたまあるように承知をいたしております。これまったく、やはりこの精神方面が私は欠けておるのじゃないか、さように考える次第でございます。
  81. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なおお伺いしたいのは、このような青少年の犯罪とか、いわゆる不良行為、こういう面が年長の青年に主として多かったものが、最近年少の青年に急速に増加しつつある、こういう傾向があるわけですね。このことについても法務省としてのお考えを確めておきたいと思います。
  82. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) このだんだんに年少な者にまで犯罪者がふえるというのは、やはり体力と申しますか、体格と申しますか、そういう方面は、私はやはり食糧関係がよくなったためか、運動が盛んになったというためか知らぬが、非常に私は体育の発育は前よりは非常によくなったと思うのであります。しかしながら、さっきから申し上げますように、精神方面の訓育、修養とか、そういう方面がこれと相並行しないでおくれておるために、誘惑に負けたり、一時の衝動にかられてたいへんな事件を引き起こしたり、不良のうちに入るというような事柄が多くなるのじゃないかと考えます。やはり私は、まず社会環境を浄化するということと、適切なる学校の指導、また適切なる家庭の教育、こういうものが相まって、こういう若き青少年が不良化せぬように、さらに努力を要するものがある、かように私は考えます。
  83. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 こういう青少年の犯罪を一掃するためには、いろいろ手が打たれておるわけですが、あるいは補導あるいは検挙したり処罰したり、さらには更生指導、更生保護、こういうような例があるわけですけれども、根本的に大切なことは、その原因を科学的に究明して、そして予防対策に万全を期すと、こういう点ではなかろうかと思うのですが、さて実情、どうかというと、予防対策にはまことに遺憾の点が多いと考えられるわけです。この点はどういうふうに法務省としてはおとりになっておるか、その点をひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  84. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 御指摘のとおり、非行防止の方法としましては、一たん非行におちいってから後にその再犯を防ぐというのよりも、むしろ未然に犯罪におちいるのを防止するというほうがより妥当であり、より効果的であることは申すまでもないことでございます。そこで、その未然防止を実現するためには、先生御指摘のとおり犯罪の原因というものを究明して、この原因に対する対策を講ずることが必要なわけでございますが、およそ犯罪の原因というものは非常に複雑多岐にわたっておりまして、それらの各要素が微妙にからみ合って発生するものでございますので、従来から刑事政策の基本的な問題として、この原因究明については、いろいろな説明が立てられ、また研究が進められているわけでございますけれども、まだ現在の段階では、確定的な説というものはございませんで、およそ原因として考えられるというものについて、いろいろと施策を講じておるわけでございます。  法務省としましても、この犯罪原因の究明、研究のために、昭和三十五、六年であったと記憶いたしますが、本省の付属機関といたしまして、法務総合研究所という施設が設けられまして、そこで青少年犯罪の防止並びに予防についての調査、研究をいたしております。その研究所全体の関係予算は、ただいまちょっと手元にございませんけれども、その研究所で行なっております青少年に関する研究経費といたしましては、昭和四十二年度及び三年度ともに約三百三十万円程度の予算を計上して、これによって調査を行なっておるような次第でございまして、法務省といたしましても、その充実についてさらに一そうの努力を続けたいと考えているわけですが、ただいま申しましたこの三百三十万の金額は、それだけで見ますときわめて僅少のようでございますけれども、実は、この研究の実施にあたりましては、それぞれ検察庁あるいは少年院等の各施設の協力を得ていたしております関係で、実際にこれに使っております金額というものは、もちろんこれよりもはるかに上回るものでございます。
  85. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま、お伺いをした補導とか検挙、処罰、更生保護、更生指導、こういう面があるわけですが、たとえばこの補導の面だけについてお伺いをしたいんですが、現在どのような補導が行なわれておるのか。あちこちの実情によると、あるいは警官がパトロールをやるとか、あるいは街頭補導をやっておるようなことは承知しておりますが、そのほかにどのような補導が行なわれておるのか、こういう点についてもお聞かせいただきたい。
  86. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 少年の犯罪を未然に防止するための補導活動といたしましては、主としてただいまのところ警察が主体になって、民間の各協力者の協力のもとに活動を展開しておるわけでございますが、たとえば青少年の補導センターというようなものが各都市に設けられまして、そこを中心に民間の民生委員その他の青少年関係の方々の御協力を得たり、あるいはまた、婦人団体の御協力を得るというようなことで補導がなされております。なおそのほかにBBS活動というようなものもございまして、一般の健全な青少年が非行青少年のよき友だちとなって、その更生をはかる補導をするというような活動もなされております。非常に多岐にわたっておりますし、また各都道府県におきまして、それぞれの特殊事情に応じて活動が展開されております。その具体的な活動の模様につきましては、総理府が取りまとめました青少年白書の中にかなり具体的に掲げられておりますけれども、ただいま持ち合わせておりませんので、その詳細についてお答えしかねますが、大体以上のとおりでございます。
  87. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 さらに青少年犯罪の予防にとって大事なことは、家庭とか、あるいは学校、地域社会、こういう面の協力を得るということがきわめて重要な点ではなかろうかと思うのです。きわめて重要な点だとすると、そのことについて法務省としては、従来からどのような努力をされてきたのか、この点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  88. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 地域社会あるいは学校関係との連絡は、法務省関係機関としましても非常に重視しておりまして、検察庁、それから保護観察所あるいは少年院の関係機関が、裁判所あるいは警察機関と協力いたしまして、学校の先生、あるいはそのPTA関係、あるいは地域社会といたしましては各種の民間団体、その中にはもちろんロータリークラブのようなものもございますれば、また一般雇用者の団体というようなものもございます。それらの各種の団体と随時、またはものによりましては定期的に会合いたしまして、情報を交換し、あるいはまたその処理の実務を通して得たいろいろな経験、教訓というようなものをその地域社会においての活動に反映していただくように材料を提供し、また地域社会あるいは学校方面からもいろいろな御要望をいただきまして、それを各関係機関の施策に反映させるというふうに、相互に緊密な連絡を保持しながら、相互に協力してその効果をあげていくように努力を続けております。
  89. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なおお伺いいたしますが、暴力行為とか、あるいは殺人、性犯罪、こういうような残虐な行為を露骨に表現するところのラジオとかテレビ、映画あるいは出版物、広告、こういうものに対して敏感な青少年には有害な刺激を与えて、これが不良化とか犯罪の動機となることが考えられるわけです。こういう完全な人間性を麻痺させておるところのこのようなマスコミに対して、法務省としてはどのように考え、どのように手を打っておられるのか、この機会にお伺いしたいと思います。
  90. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 不良マスコミが青少年の非行化にきわめて大きな影響を与えておりますことにかんがみまして、法務省としましても、いわゆる不良文化財の一掃という面について、法務省関係の機関といたしましては検察庁でございますが、検察庁が中心になりまして、その取り締まりの強化につとめております。しかし検察庁がなし得ますことは、御承知のように、いわゆる犯罪を構成するもの、すなわち刑法の規定あるいは各種の青少年保護育成条例等の法令違反の分でございまして、きわめて限定されてくるわけでございます。むしろ問題となっておりますのは、いわゆる犯罪になるかならないかというすれすれの線の不良文化財が町にはんらんするところに問題があるわけでございます。したがって、この取り締まりということにつきましては、法的にこれを規制するということは、いろいろ憲法上の表現の自由などの問題とも関連いたしまして、きわめてむずかしい面がございますので、結局青少年の健全な育成をはかるために、各マスコミ関係の業者の方々の自主的な御協力を得るということがとりあえず必要になってくるわけでございます。そこでその関係の活動を、これまた総理府の青少年局が中心になりまして、関係各省これに協力いたしまして、マスコミ関係の方々と懇談会を持って、その非行防止についての御協力を得るように活動しているわけでございまして、法務省もその一端を担当しているわけでございます。
  91. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なおお伺いいたしますが、現在の日本では、医学とか精神衛生学あるいは心理学あるいは社会病理学、犯罪学あるいは刑事学と、こういう貴重な研究が重ねられておるようです。たいへんけっこうなことなんですが、だが、しかし、この研究の成果が結集して強力に展開されるだけの体制ができていないと思う、体制が。そこでその成果も期待できないと、これが現状ではなかろうかと思うのですね。せっかくこういう貴重な研究があるわけですから、この研究の成果を活用するだけの体制をつくることがまず大事な問題ではなかろうかと思いますが、そのことについて大臣としては一体どうお考えですか。
  92. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 心理学あるいは医学、その他の学問から見た青少年の精神薄弱あるいは不良化等は、これはもう私は一番重要な問題に考えております。本人は別に人間自体としては悪くないが、医学的な欠陥があるために犯罪を犯したと、その犯罪の原因は、やはりからだの欠陥がそれをさせた、あるいは好ましくない行為をやったのは、やはり精神病がもとであるというようなことは、私は社会には相当多いのではないか。それで先生のおっしゃったような、そちらの方面から徹底的に青少年の不良化、犯罪化を防ぐということは、これは一番大事なことに考えておりますが、お述べになりましたように、その効果を十二分にそちらのほうに結びつけて活用していく、あるいは実際の役に立たせるという点については不十分な点がまだあるんじゃないかと私もそう思うのであります。今後においては、やはりさきに先生が言われたように、その原因がどこにあるか、その原因探求ということが、あるいはこれを少年院に送るとか、いろいろ矯正をやる上においても、何にしても原因探求という、その原因を除去するということが、私は一番大事なことでもあるというので、法務省あたりももっとそういう機関とできるだけ連絡をとって、合理的なる解決を進めていくと、そういうことに一そうの努力をしていかなければならぬ、かように私は考える次第であります。
  93. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま大臣言われたように、原因を探求することはきわめて大事なことであると、もちろんそのとおりだと思うのですが、私がお伺いしておるのは、こういうようないろいろな科学の貴重な研究が進められておる、そうして貴重な成果がおさめられておる、にもかかわらず、この成果を結集して強力に展開するだけの体制ができていないのではなかろうかと、こうお伺いしておるわけです。したがって、原因探求はもちろん大事なことですけれども、これらの科学的研究の成果を結集して強力に推し進める体制づくりが緊急の要務であろうと思うのです。そこで、その体制を何とかひとつできぬものか、体制を強力に打ち立てることによって成果を活用し得るのではなかろうか、こういう観点からお伺いしたわけです。この点はいかがでしょう。
  94. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 非常にごもっともでございまして、そういう点は特にひとつ前向きの姿勢で研究していきたいと考えております。その研究ができて、体制ができると、私は青少年の犯罪などもよほど減ってくるのじゃなかろうか、不良化なども相当減ってくるのじゃなかろうか。しかしまた、なかなか根が深いとも思うのでございまして、たとえば、まだ真相はよくわかりませんが、いろいろな花柳病というような病気も日に日に蔓延しつつあるということも聞いております。そうなりますというと、またこれからいろいろな好ましくない結果が先々においてふえていく。なかなかこの原因も多種多様にわたっており、それでその役に立つ体制をつくるということが、お述べになりましたように、一番大事なことでありますから、十分ひとつこの点は研究をしていきたいと考えます。
  95. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 法務省は、たしか三十四年であったと思いますが、四月に、青少年の不良化や、あるいは犯罪を防止しようというこういう施策の一環として、法務研修所というのがあったのを法務総合研究所に改めておるわけです。この総合研究所について調べてみますると、刑事政策的な面が中心であって、科学技術的な面が軽視されておるのではなかろうかと見られるわけです。もちろん刑事政策的な面の研究もきわめて大事なことではありますけれども、犯罪予防の立場から考えてみると、科学技術的な面もきわめて重要な面ではなかろうかと、こういうふうに考えられるわけです。そうだとすると、科学技術的な面にいま少し力を注ぐべきでないかと、こういう結論を得ると思うのです。この点についてはどういうふうにお考えですか。
  96. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 非常にごもっともに考えます。もっとこの研究の実があがるようにくふうをしてまいりたいと思います。これはこの研究所を活用すれば、おそらくいまでもわかっておるかもしれませんが、不良化の原因なども精細に、やっぱりどういう方面からどういうふうな科学的な端緒で起こっておるかというようなことも、研究所のほうの成績が発表されると非常にわれわれの仕事にも役に立つと思います。大いにこれは機能を発揮して、十分な成績をあげるように努力をしてまいりたいと考えております。
  97. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 科学技術的な面についても十分やっていきたいと、そうおっしゃるんですから、こちらがお伺いしたことについてやろうとおっしゃるのだから、問題ないわけですけれども、どうも通り一ぺんなような気がするわけですね。そこで具体的にほんとうに法務省がこの刑事政策的な面にももちろん重点を注ぐが、科学技術的な面に相当重点を向けて検討を進めておるということであるなら、何かこう、たとえば予算の面とか、具体的な面にあらわれてこなければならぬと思うのですが、その面はどうなんですか。
  98. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) ただいま御指摘の総合研究所の刑事政策の研究部門でございますが、この予算は四十二年度におきましては、総計事業経費といたしまして千四百五十六万六千円を計上いたしております。これは四十二年度に対しまして百六万一千円ばかりの増でございます。とりあえずこういう増になっております点の重点は、四十三年度におきましてどういう研究をするかという点でございますが、新たに精神障害的なものからくる非行少年、これの集団精神療法というものを科学的に研究していきたいということを新たな施策といたしまして、その経費といたしまして新規に二十三万八千円が本年度増額されて計上されております。なお、そのほか一般的にこの研究部門におきます試験研究費が単価改定その他で七十五万二千円ばかり増額されておるわけでございます。
  99. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 現在犯罪少年の予防系列については、先ほど一部お答えもあったわけですが、まず警察、家庭裁判所、少年鑑別所、少年院、保護観察所ということになりますが、この鑑別所以下は法務省の管轄下にあろうかと思うのです。ところが、この保護体系ですが、保護体系そのものは、世界の各国のそれに比較しても遜色のない、列国のそれに比較して完ぺきに近いものだというふうに聞いておるわけです。そういわれておるわけですけれども、にもかかわらず、その内容は、先ほど来お伺いしておる予算の面で、まあ予算は結局一番究極の問題だと思いますが、予算施設職員の問題、予算が十二分にあれば施設も十分できるし、職員も有能な職員を十分に配置できるわけですね。だから、要約すれば予算ですけれども、具体的には施設職員、こういう面にそれぞれが最小限に切り詰められておるので、せっかくこういう世界のそれに比較して決して遜色のない、すぐれたいわゆる保護体系を持ちながら、予算の面で制約を受けて成果を期待できないと、こういううらみがあろうかと思うのですが、そうだとすると、これはゆゆしい問題で、せっかくそういう保護体系を持っているなら、何とかひとつ成果をあげるべきじゃないかということを繰り返しお伺いしたのは、予算に結局尽きると私どもは考えられるわけですが、これは何とかならぬものですか。いま少し、そういうりっぱな体系があるんですから、ひとつその体系を各面を充実させれば、成果も期待できるわけですね。こういう面について大臣のお考えをお伺いしておきたいと思います。
  100. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) この青少年に対する法務省施設は、いまお述べになりましたように、世界のいろいろな国に対しましても遜色のない制度が採用をせられておる、そして今日まで相当な成績をあげてきておることは事実でございます。しかしながら、いまお述べになりましたように、さらにやっぱり予算を必要な部面に、施設にこれを増していく、あるいは人間の足らないところをとにかくある程度まで増員をしていくというような方法を講じていくならば、お述べになりましたように、さらに私は世界に誇る成績があげられると考えております。それでこの法務省予算をつぶさに調べてみますと、お述べになりましたような個所も相当私はあるのじゃないか、制度そのものは世界のどこに比べてみても一応の形は整っているが、何ぶん予算あるいは人というような点でまだ不十分な点が相当あると思います。こういう点につきましては、ひとつ今後皆さん方の御協力を得て、私はむやみにふやさなくても、効果があがるだけの予算をふやして、国民の期待に沿うようにひとつしていきたい、かように私は考えておる次第でございます。御注意の点はありがたくこれをお受けして、これが実現にひとつ邁進をしていきたいと、かように考えておる次第です。
  101. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、お伺いしたいのは、少年院とか女子学院ですね、こういうところの施設の少年がしばしば逃亡しておるということが新聞とかラジオ、また直接にそういうことを聞くわけです。いろいろ原因を探究してみると、施設がきわめて貧弱であること、予算が少ない、職員定員が少ない、こういう点にあるようです。したがって職員は、この少年たちが逃亡すると非常に責任問題となるので、平素から逃亡対策にこれつとめておるということは、これは裏を返せば、肝心の教育に全力を傾注できない、そういううらみがあるだろうと思います。こういうのが実情ではなかろうかと思うのです。そうだとすると、これは先ほど来の問題にもつながりますが、施設をもっとりっぱにし、予算を、有能な職員をふやす、そうして十分教育の成果があがるようにと、せっかく国の予算でこういうものをつくっているわけですから、成果があがらなければ何ら意味がないと思うのです。いわゆる少年の保護、指導をするという成果があがらなければ意味がないわけですから、原因がこういう点にあろうことがおおよそ定説になっているわけです。そうだとすると、こういう面にも相当力を入れなければならぬという結論になろうかと思うのですが、その点はいかがですか。
  102. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) お述べになりましたことに全く同感でございます。今後そういう方面にもひとつ力を入れて、成果があがるように力を尽くしていきたいと考えております。
  103. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 このような施設には十四歳から二十歳未満までの少年が収容されているわけですが、十八歳以上の年長少年については刑事扱いにしたらいいのではないか、こういう意見もあるわけです。先ほど大臣からもこの点に触れられてお答えがあったわけですが、大臣としては、なお法務省の統一的な見解としては一体どうなるのか。十八歳にすべきか、現行でいいのか、こういう法務省としての統一見解ですね。大臣のお考えは先ほど述べられたのですが、法務省全体として、法務省の中にも十八歳以上は云々の意見もあるように聞いているわけです。こういう見解としてはどうなのかということです。
  104. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 二十未満を十八未満にすることが、犯罪防止の上からいうと適切ではないか、私もそんなふうに考えておりますが、法務省の幹部も大体私と同じような考えを持って、いろいろと少年法、その他の研究をいたしておる。それから十八歳から二十一歳ぐらいまでの間は、間を区切って、それで適切な方策を講ずるということが必要じゃないかという考えに大体固まっております。そういうことで研究をいろいろやっております。
  105. 井川伊平

    委員長井川伊平君) 速記をとめて。   〔速記中止
  106. 井川伊平

    委員長井川伊平君) 速記をつけて。  引き続き御質問を願います。
  107. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この十八歳から二十歳までの年長の少年についていま大臣にお伺いしたわけですが、いまの現行法では施設で教育することになっているんですね。そこで私たちとしても現行法どおりがいいのではなかろうかと思うのです。ところが、いま大臣の御指摘になったように、十八歳以上二十歳まで切り離したほうがいいんじゃないか。これはいま大臣にさらにお伺いしようと思ったんですけれども、大臣が退出されましたから、どなたかからお答え願いたいんですが、十八歳以上二十歳までの分については切り離してどうなさろうとするのか、そこのところを、大臣いなくなったので聞けないんですが、その点をどういうふうにお考えですか。
  108. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 現在の少年法のたてまえは、御承知と思いますけれども、人間を二十歳を境に二分いたしまして、二十歳未満は少年、二十歳以上は成人、いわゆる二分説の立場に立っておるわけでございます。それを法務省が一昨年発表いたしまして、各界の御意見を伺っております青少年法構想では、少年と成人の中間に青年層という中間層を設けて、いわゆる三区分制にしようというわけでございます。現在の少年法のたてまえでは、二十歳未満の者は——十八歳の者も九歳の者も、これは十四歳の者も十五歳の者も、これもすべて一律にいわゆる保護手続という手続にのせまして、原則として保護処分を科する、刑事処分というものは、これはごく例外的にしか科さないんだと、こういうたてまえになっております。  しかし、御承知のように、人間の成熟状況を見ますと、十四、五歳、それから十八、九歳と、あるいは二十一、二歳という段階とでは、きわめて急速な変化があるわけでございます。それを一律に保護手続という同一の手続で取り扱って、同じ理念でもって処理をするということに、いささか実態とかけ離れたものがあるのではないかという問題があるわけでございます。そこで、現在の少年法のたてまえ、すなわち保護処分を優先的に適用するという理念は、これは心身の発育が未熟であるとか、あるいはまた社会的な経験が乏しい、そういうものに対してまことにふさわしい理念でございますので、そのような理念が適用するに相当する成熟状況を見ますと、大体十八歳ぐらいのところに一つの線が引かれるのではないかということで、十八歳未満の者には現在の少年法の理念をそのまま適用していきたい。しかし十八以上にもなりますと、現実の社会の扱いにおきましても、またその成熟状況におきましても、かなりな変化が出てまいります。もう少しいわゆる社会的な責任というものを自覚してもらうような、そういう立場での指導理念が、処遇について望ましいのではないか。まあこういうことで、したがって、完全な成人でもなく、また少年でもなく、その中間層として、事案に応じて保護手続、または刑事手続を適切に選択適用していくという、すなわち成人のほうにはこれは刑事処分を優先的に適用し、少年については保護処分を優先的に適用して、青年層については両者を事案に応じて適宜選択適用していくと、こういう形をとろうというのが、一昨年の青少年法構想の一つの眼目になっております。したがって、十八歳、九歳の者について、これを完全なおとなと同じに、すべて刑事処分で臨むというようなものでは毛頭ございませんで、事案に応じて、保護処分が適当であると思えば、十八歳未満の少年と同様に保護手続を適用するという道も開いていこう、こういう考え方でございますので、大体世界各国の少年法制の改正の動き、あるいは各種の国際会議において論議されております動向なども、このように三区分制に改めるという方向で検討が進められております。で、そのような見地から、先ほど大臣のお話にもございましたように、法務省の内部ではおおむね意見が一致しておるわけでございます。
  109. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 その辺の事情は大体わかりましたが、さらに重ねてお伺いしますが、そうしますと、十八歳以上二十歳未満の者については、事例、ケース・バイ・ケースで、時に刑事扱いする場合もあり得る、また、現行法どおり保護措置を講ずる場合もあり得る、そういうふうに理解していいのですか。
  110. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) そのとおりでございます。
  111. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 ただ、最高裁判所の見解としては、十八歳以上二十歳未満の者について刑事扱いするのはよろしくない、そういう見解があるようですが、こういう最高裁のお考えなども取り入れられるおつもりなのかどうか。まだこれは決定したわけでない、今後の課題であろうかと思うのですね。そこで、いかようにもなり得るかと思いますが、ただ一律に扱わないで、ケース・バイ・ケースで、時によってその事情を十分考慮して、時には保護措置を講ずる、時には刑事措置を講ずる、取り扱いとする、そういうことも一応意味はあろうかと思うのですが、大体私どもとしては、現在ある、いわゆる現行法ですね、の適用でよろしいのではなかろうかと考えておるのでこういう問題をお伺いしたわけです。大体わかりました。  なおお伺いいたしますが、少年院、それから少年鑑別所に入った者は、教育を受けて、大体まじめになって働こうとして、時期がきて外へ出たと、そういう場合に、どうも一般社会がこれを、あれは少年院を出たのだ、鑑別所を出てきたのだという、前科者扱いをするので、結局まじめに働こうと思ってもやけぎみとなって、再び少年院や鑑別所に逆戻りと、そういうケースが多いように聞いておるわけです。それではせっかくの施設における教育は意味がないと思うのですが、そこでお伺いするのは、何とか前科者のレッテルを張られないようにならぬものか。せっかくまじめに働こうとしても、そういうことが繰り返されるようでは成果はあがらぬと思うのです。この点について、法務省としてはどうお考えになっているのか。
  112. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 現在の少年法におきましても、成人と異なりまして、刑の執行を終わったような少年につきましては、いわゆる前科者としての不利な扱いをしないことになっております。すなわち、その点成人と異なった扱いをしておるわけでございます。しかし、これは法制面ではそのように整備されておるわけでございますけれども、社会の現実におきまして、少年院の出院者であるとか、あるいは保護観察の前歴のある者であるというようなことで、いろいろ色目でこれを見るというようなことが、現実問題として、少年の更生を途中で挫折させるケースがないでもございません。そこで実際の運用面におきまして、結局世間のこれらの少年に対する十分な理解を得、その更生に協力をいただけるように啓蒙活動を展開するということ、それからまた執行機関におきましては、少年がそのような色目で見られることのないように、たとえば保護観察をいたします場合でも、同僚あるいはまた場合によっては雇い主などにも、そのような処分を受けていることを秘匿して、少年との接触を円滑に進めていくというようなくふうも、努力も続けておるわけでございます。毎年七月ごろに展開されますところの「社会を明るくする運動」などにおきましても、ここ数年、青少年の非行防止並びにその保護更生ということに重点を置いて、ただいま申しましたような、いわゆる前歴のある者に対するあたたかい理解と、その更生についての御協力を得るための啓蒙活動を展開しているような次第でございます。
  113. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この少年院は全国相当、婦人を含めてあるわけですが、この教育期間についてここでお伺いしたいのですが、この教育期間については、法規に別段の定めはないわけで、歴史的ないわゆる経過で、おおむね一年とか一年三カ月となっておるようです。しかしよく考えてみると、少年によっては一カ月でも十分だという場合もあろうかと思う。また少年によっては三年、五年を必要とする者もあろうかと思うのです。だが、しかし、そういうことは考えられないで、これを画一的に扱っておるようですが、それじゃ成果はあがらないと思うのです。そこで現状では六カ月未満の教育を必要とする少年については、これは家庭に帰されておると思いますが、二年を必要とする少年も一年ばかりで退院せしめられておる、こういうことだとすると、どうも教育の成果は期待できないのではなかろうかと思うのです。もし現状どおりでこういうものが進行すると、短期のいわゆる一年未満の教育を行なう必要のある少年については救われないことになろうかと思う。そこで、そのことに関連をして、一年未満の教育を行なう少年院の施設が必要ではなかろうか、こういう考え方が出てくるわけですね。いま六カ月未満ではみな家庭に帰されておるわけですね。教育ができない。こういう点がどうも不合理のように思うのですが、この点は何かこのまま行なうつもりなのか、再検討しておるのか、または再検討した結果はどういうふうに変わっておるのか。そのいずれなのか、ひとつ御説明願いたい。
  114. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 現在も法制上のたてまえでは、かりに六カ月くらいの教育期間が必要だと思う少年についても、これは少年院に収容することができるようになっております。したがって、そのような少年も現実に少年院に送致されております。ただ、統計上は平均いたしますと、大体少年院に在院する期間が一年二、三カ月というところになるわけでございますが、これは平均でございまして、短いものは一年以内に出るものもございますし、また、長いものは二年以上になることもあるわけでございます。したがって、そのような画一的な運用はいたしておりませんけれども、しかし大体少年院という中で系統的な教育を施すとなれば、ほぼ一年程度の期間というものがやはり必要となってまいりますので、おおむね一年程度、一年以上必要と思うような少年が少年院にやはり送致されやすくなります。そこで御指摘の、短期間の収容施設というものも、また別途設ける必要性が考えられるわけでございまして、実は一昨年の青少年保護構想におきましても、保護処分の種類をさらに多様化するということで、その一環といたしまして、短期の少年院と申しますか、短期の施設収容の処分も提案しておるわけでございます。この点につきましては、裁判所のほうも大いにその必要を認めております。で、現在そのような施設をどのような組織形態で実現すればよいかということを、関係機関と相談しながら研究を進めておる段階でございます。
  115. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なおお伺いいたしますが、少年鑑別所に関するいわゆる法的の基礎は、少年院法、この条項にあるわけです。単独法はないと思うのです。わずかに省令で処遇規則があるだけではなかろうかと思うのですが、そこでお伺いするわけですが、これはやはり単独立法化の必要があるのじゃなかろうかと考えられるが、法務省としては、いや必要はない、現行のままでいこうとお考えになっておるのかどうか。その点を御説明願いたい。
  116. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 単独立法として設ける必要があると法務省では考えております。そうしてその単独立法についての検討もかなり進んでおります。ただしかし、この場合に青少年保護構想というものがどのようになるかということとの関連で、やはり少年鑑別所のあり方もきまってくるというような、相互に密接な関連がございますので、その辺もあわせて検討を進めておるような段階でございます。
  117. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお少年院に関連して、婦人補導院についても一点だけお伺いしておきたいと思うのですが、婦人補導院については、昭和三十一年のいわゆる売春防止法第十七条の規定によって補導処分に付された者を収容して、これを更生させるために必要な補導を行なう施設、こういうことになったと思うのですが、ただ、そのことはけっこうなんですが、その補導院は全国で東京、大阪、福岡とこの三カ所しかないと思うのですが、そうだとすると、日本全国で三カ所にしかないとすると、数多い特殊婦人を補導するのにはあまりに貧弱ではなかろうかと思うのですが、その分院についてもあろうかと思うのですが、いずれにしても、どうも現状にそぐわないのではなかろうか、こう思うわけです。そこであわせてお伺いしたいのは、いま東京、大阪、福岡の各補導院にはどの程度の婦人が収容されておるのか、なお、その補導の現状についてもごく概略でけっこうです、この際御説明願います。
  118. 福原弘夫

    説明員福原弘夫君) ただいまお話しのように、東京、大阪、福岡と三カ所でございますが、この三カ所の年末現在の収容状況を申し上げますと、東京は七十一名、大阪が二十七名、福岡が二十一名というような数字になっております。したがいまして、各補導院の定員よりもそれぞれ下回っているような現状でございますので、補導院を広げるというような点は現状ではなかろうかというように考えております。で、補導院におきます大体の運営方針と申しますか、やり方は、正常な社会生活を営めるように生活指導あるいは職業補導、あるいはまた医療措置というようなことを考えて運営いたしております。その中でも正常な社会生活が営めるようにという観点から、生活指導に最も力を注いでおりますし、ほかの職業補導、医療措置ももちろんあわせて運営の基本方針として運営がされております。
  119. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いまの御説明によりますと、東京、大阪、福岡、それぞれ非常に少ない数になっておるわけで、これが日本の現状であるとすればたいへんけっこうなんですが、ただ私どもが憂慮するのは、補導を必要とするいわゆる特殊婦人というものは、相当の数があろうかと思うのですね。いまの御説明では、ほんのわずかな数であるので、この三カ所で十分だということなんですが、それはもう補導を必要とする婦人のほんの一部分ではなかろうかと考えられる。現状はそんななまやさしいものではなかろうと思うのですが、こういう点については、法務省としては、補導を必要とする婦人は全国でどの程度だとお考えになっておるわけですか。そうとは当然どうにも受け取れないわけなんですが。
  120. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 確かに先生の御指摘のとおり、現実の潜在的な補導を要する婦人の存在は、現在収容されておる婦人の数をはるかに上回るものがあると思います。ただしかし、この補導に収容するためには、裁判で補導処分の言い渡しがなされなければならないわけでございまして、その補導処分の言い渡しがなされるためには、執行猶予になった者についてこれはなされるという条件がついております。で、最近の裁判の状況を見ますと、執行猶予になる売春婦のうち補導処分がつく者は、その何分の一かでございまして、私どもといたしましては、もっとこの制度を活用して、婦人の更生をはかるのが適当ではないかと考えておる次第でございます。したがって、法務省といたしましては、公判段階において検察官が意見を述べます際にも、補導処分の必要性を強調し、裁判官からこの処分の言い渡しをしていただけるように、さらに一そうの努力を続けたいと考えておる次第でございます。
  121. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 時間の関係もございますから、少年関係の面ではその程度に打ち切って、次に法務局の、主として登記事務の渋滞ということと、人権擁護の関係の面で一、二点お伺いしておきたいと思いますが、従来からこの法務局の登記事務の渋滞とか定員の問題については、そのつど当委員会で問題になっておるわけです。  そこで本年の三月十一日の読売新聞にも出ておりましたが、法務省の法務局には、定員外職員が千六百人ほどおると指摘しておるわけですが、こういう事実はそのまま受け取ってよろしいのかどうかということと、これら定員外職員の実態は一体どうなのか。特に、たとえば処遇とか実際の勤続期間、あるいは将来定員化の見通し、こういうものについてこの際御説明いただきたいと思います。
  122. 香川保一

    説明員(香川保一君) 御指摘の法務局におきます定員外職員、つまり賃金職員でございますが、これは臨時的な業務としまして、現在法務局で登記簿台帳の一元化の作業あるいは登記簿の尺貫法によります地積等をメートル法に書きかえる作業、まあそういった一定期間で終わる作業、このような作業につきましては、定員で処理することが適当でございませんので、賃金職員を雇用いたしましてその作業をやっておるわけでございますが、昭和四十二年の十二月一日現在での調査の結果を申し上げますと、いま申しました賃金職員は総計で千二百六十一名おります。で、そのうち男子が百六十九名、約一三%強でございます。女子が千九十二名、八六%強でございます。で、これらの賃金職員は、原則的にはその性質上臨時雇用ということになっておるわけでございますけれども、なかなか賃金職員を解雇いたしますと適当な就職ができないというふうないろいろの事情もございまして、やむを得ず継続雇用になっておる一部の職員もございます。大体は一年未満の者が多いのでございますが、概略申し上げますと、いま申しました総計千二百六十一名のうち一年未満の者が八百四十名、約六七%でございます。一年から二年未満の者が二百四十三名、二年以上の者が百七十八名ということになっております。最も長いもので五年から六年ぐらいたっておる者もございまして、ごくわずかでございますが、数名おります。  で、かような賃金職員に対する待遇でございますが、これは昭和四十二年度におきましては賃金単価が六百円であったのでございますが、四十三年度予算におきましては六百五十円と、五十円アップされる予定になっております。で、いま申しましたように、継続的に若干期間長く雇用しておる者もおりますので、その賃金職員の待遇改善も十分考えなければなりませんので、いま申しましたような単価アップに努力いたすほかに、いろいろの面で予算の執行を考慮いたしまして、できるだけ待遇改善に努力したいと、かように考えております。  それから、かような長期の雇用になりました場合に、待遇改善も一方で努力いたしておりますけれども、やはり成績優秀な者につきましては定員に組み入れる措置も適当かと考えまして、できるだけ国家公務員試験を受けるようにすすめまして、その合格者を増員あるいは欠員を生じました際に定員に組み入れる。また人事院の特別承認によって定員組み入れができる措置がございますので、かような方法も利用いたしまして、昭和三十五年から今日まで、総数八百九十六名の賃金職員定員に組み入れている状況でございます。
  123. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 これは衆参の当内閣委員会で、毎国会法務局の職員の一万名増員等に関する請願、こういうものが付託されて、そのつど採択されてきておるわけです。で、法務省では、この問題について、まあいま一部御説明ございましたが、どのように一体基本的に考えているのか。地方を回ってみても、国政調査等で地方を回ってみても、地方法務局の登記事務の実情ですね。まあ土地売買が非常に土地ブームで盛んであるのも一つの大きな原因でしょう。それだけではないが、そういう事務が主として登記事務が山積しておるわけですね。もちろん定員を、職員をふやすだけでは効果があがらないと思うわけです。それと並行して、いわゆる事務の簡素化、能率化をはかることはもちろん必要ですけれども、それと並んで、定員をふやさなければならない。仕事はどんどんふえるわけですから、同じ定員でやったのでは事務は山積するのは理の当然だと思うのですね。そういう事情があって、毎国会、当委員会で問題になるのですね。まあそういうことが一つの反映となって、衆参でも法務局一万名の増員ということはいつも採択になる、こういう実情であります。  それで、こういうことについては年次計画でも法務局にあるのですか。法務局として、登記事務を何とか山積を解消するためのいろいろ計画はあろうかと思うのですね。いま申し上げました事務の簡素化もさることながら、定員の増についても、そういうことも含めた一連の年次計画でこれを解決していかないと、将来ますます登記事務は山積していくと、ますますこれが憂うべき事態になるやもはかり知れないわけです。そういうことが憂慮されるわけです。そういうことは一般国民の利益に直結した問題だと思うのですね。そういう観点からお伺いをしておるわけですが、そのことについてこの機会にお伺いをしておきたい。
  124. 香川保一

    説明員(香川保一君) 御指摘のとおり、法務局におきます登記事件は年々増加いたしておりまして、昭和三十年と四十二年とを比較いたしますと、約五・三倍の事務の増加を見ておるわけでございます。かような激増する原因は、もちろん公共事業の活発化とか、あるいは不動産取引が大衆化してまいりました結果とか、あるいはまあ経済活動の活発化というようなことに原因があろうかと思いますが、かような事務を適正、迅速に処理する対策といたしまして、増員のほかに施設の整備改善あるいは事務の合理化、機械化というふうなことを取り上げまして、従来から年次計画に基づいていろいろ努力してまいっておるわけでございます。  増員の点でございますが、これは昭和四十二年度におきまして二百名の増員措置がとられたわけでございますが、昭和四十三年度予算案におきましては、やはり二百名の増員が予定されております。で、先ほど申し上げました登記簿台帳の一元化とか、そういった関係も事務の合理化措置として実施いたしておるわけでございます。そのほかに謄抄本の交付請求事件が非常に激増しておりますので、従来手書きで謄抄本を作製しておりましたのを機械化するということで、現在より高性能のそういった機械を導入する年次計画を立てまして、逐次実施してまいっております。それから施設の整備、特に出張所の関係でございますが、これは非常に劣悪でございますので、昭和三十九年から十カ年計画で三百三十六庁新営するということで、予算的にもさように措置されてまいっております。
  125. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは、最後に人権擁護の問題でお伺いしておきますが、法務年鑑を見ますと、人権侵犯受理の傾向は、たとえば三十七年では六千百三十一件であったものが、四十一年では八千七百四十六件で、増加の傾向を示しておるわけです。特に四十一年は、前年の四十年に比較すると二五%も増加しておる。そういう件数が伸びているにもかかわらず、法務局、特に地方法務局の関係では、いま御指摘申し上げた登記事務関係職員の増員に追われて、従来から人員不足は指摘されておったわけですけれども、なかなか人権擁護関係職員まで手が回らない。この面では手おくれの感があるのではなかろうかと考えられるわけです。その点はどうなんですか。
  126. 辻本隆一

    説明員(辻本隆一君) 確かに人権侵犯事件の受理件数は、先生のおっしゃいますとおり、近年、逐年増加いたしております。のみならず、人権相談事件などはかなり飛躍的に激増いたしております。それに見合いまして、職員の事務量もきわめて激化してきた現状でございますが、法務省といたしましても、毎年この職員増の要求をいたしておるわけでございますが、御案内のとおり、政府職員の増員抑制の中で特に人権だけがという要求はきわめて困難な事情にございまして、やむを得ず事務の簡素化あるいは能率の向上というところでこの事務量の増加を処理いたしておるわけでございます。しかし人権局といたしましては、できるだけこの予算の許す範囲で職員の人数の充実強化ということに努力いたしたいと思っている次第でございます。
  127. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いわゆる事務量はどんどん激増していけば、定員もそれに比例してふえていかなければならない。これはきわめて常識的な考え方だと思うのですね。もちろん事務の簡素化とか合理化、そういう点である程度カバーできるでしょうが、ある程度増員は必要だと思います。そういう観点からすると、ことしは特に国際人権の年に当たりますということで、その方面の活動を充実するという意味の所信を述べられておるわけです。この際ひとつ、このことについての大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  128. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) お答えします。  ことしは人権宣言の二十周年記念の年に当たりますので、大いに人権の記念式典などもできるだけ盛大にし、また人権宣言に関するいろいろな印刷物等もできるだけ出して、なおまたやっておりまする法律扶助の事項などもふやすし、人権相談も徹底させて、大いに人権の実をあげていこうということで、いまから準備をいたしておるような次第でございます。私といたしましては、法務省人権擁護を受け持っておると思いまするので、今後におきましても、あらゆる方面から人権擁護の実績があがるように努力していきたい。なおまた、民間の九千二百人ぐらいの人権擁護委員の方にもいろいろと御苦労を願っておるのでございます。こういう方々ともさらに手をとって、全国至るところに人権擁護の精神がいまよりももっと徹底するように期していきたいと考えております。  私、人権擁護のうちで特に考えておりますることは、いまお述べになりましたように、年々歳々人権擁護の相談を受けることが多いのでございます。なおまた侵犯の審理もなかなか多い。こういう点からして、やはり民間の人の手を借りておりますが、人手が十分ではないということをよく強調されておりますので、将来ひとつできるだけ必要な人間は、人権擁護に関する限りふやしていきたいと考えております。  それからもう一つは法律扶助の問題でございますが、刑事事件については国の弁護人制度、国選弁護人という制度がございますが、民事のほうの事件については国選弁護人というような制度がないために、そのために、裁判にかけたい、訴訟がしたくても、金がないから訴訟ができないというような方も相当あるのであります。こういう人のために、ひとつ思い切って民事の国選弁護をやるような、いわゆる法律扶助の制度について、ひとつ将来補助金等も思い切って増額をしていかなければならぬのじゃないか。ことしはわずか五百万だけふやしまして、大体六千五百万の補助をいたしておりまするが、諸外国の例にとって見ても、こういうふうな貧乏なために訴訟が思うようにいかないというような者についても、法律扶助のほうは思い切って将来補助をふやしていくことが、公平の原則に合うのじゃないかというような気が私いたしますので、努力をしていきたいと考えております。  いずれにいたしましても、人権擁護ということは、もうあらゆる面において、法務省としては最も力を入れなければならぬ仕事であります。人を処罰するのも、やはり社会、国家のために、人権を重んじながらやむを得ず処罰をする。法務省の仕事は、全部人権を重んずるというたてまえのもとに法律の遂行をやっていくというように考えておる次第でございます。皆さんの一そうの御協力をお願い申し上げたいと思います。
  129. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この人権擁護のために、民間の人によって、人権擁護運動とか、あるいは人身保護、あるいは貧困者の訴訟援助、こういう施策が講ぜられているわけですけれども、大臣がいま一部御指摘になったように、これはいまだ形式的で、徹底を欠いておる。したがって、これを、いませっかくこういう民間における措置があるわけですから、これをひとつ徹底してほしいということを強く要望するわけですが、繰り返し申し上げるように、人権侵犯事件は年々増高の一途をたどっているけれども、法務局、特に地方法務局のこれに対応した準備がない。相当未決事案が多かろうと思うのですが、また処理事案の内訳についても、告発、勧告、通告等について、一体実情はどうなっているのか、こういうことをひとつ概略御説明いただくことによって、この人権擁護についての私の質問を終わっておきたいと思います。
  130. 辻本隆一

    説明員(辻本隆一君) 人権侵犯事件、約八千件処理でございますが、そのうちで侵犯事実の認められるものが約七割から八割でございます。その認められる事実の中で、処分としましてきわめて重要なものが勧告、通告、告発といったようなグループでございます。第二のグループは、説示——説いて示すという説示とか、排除措置とかいうふうなものがございます。第三のグループは、きわめて軽い処置猶予、そういったものでございますが、勧告、通告、告発という事案が、この数カ年間、大きく見ますとやや減少いたしておりまして、まず年間三十件程度のものでなかろうかと見ております。これはわれわれの努力が必ずしもまだ至っておらない点もございますが、同時に、終戦後の各行政機関がかなり混乱期を脱出いたしまして整備され、人権尊重の場面がまあまあ行きわたってきたために、そういう事案が終戦直後よりは減少しておるのではなかろうかと観測いたしておるわけでございます。しかしながら、われわれはこれで十分人権尊重が行きわたったなどとは毛頭考えておりません。まだまだこれから真に人権思想の充実した社会になるために、いろいろの施策を講じていかなければならないと考えておりますので、今後も正すべき事案については強く正していく。したがって勧告とかあるいは告発あるいは通告といった事案も、やはり強く打ち出していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  131. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は若干、旭川刑務所の位置変更、移転につきまして質問したいと思います。  まあ刑務所移転といいますと、最近では東京の巣鴨拘置所あるいは小菅刑務所移転、青梅の新刑務所の問題、あるいは滋賀の刑務所移転等について、土地の評価がえに対する疑惑であるとか、あるいは地元民の猛烈な反対というものが起こっておるわけです。  で、最初にお尋ねしたいのは、東京拘置所移転、または小菅刑務所移転、新しい青梅刑務所がずいぶん難航しているようでございますけれども、最初の予定と、そして現在の見通し、東京拘置所あとがどういう建物になるのか、それから青梅新刑務所がいつごろから着工になって、いつごろ完成になるのか、その二点をお尋ねしておきます。
  132. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) ただいま御質問東京拘置所移転を契機といたします一連の刑務所移転の問題でございますが、まず東京拘置所を明け渡しまして、東京拘置所を現在の小菅刑務所に持ってまいる、小菅刑務所を青梅市に予定しております新しい刑務所に持っていく、そのほか渡し財源関係で、なお先ほど御指摘旭川刑務所岡山刑務所川越少年刑務所、浦和拘置所、かような施設のごく一部の建設を行なうという予定になっておるわけでございます。  そこで現在の池袋にございます東京拘置所は、この一連の計画が全部終わりましたあとで、これがこの交換の相手方でございます株式会社新都市開発センターに渡るわけでございます。この土地の上には、都市計画法に基ずきます各種の公益的な事業もあわせて行なう一つ施設が株式会社新都市開発センターの手でできるわけでございます。しかしこれは最終的な池袋の姿でございますが、一連の刑務所移転でございますが、まず青梅のほうに新しい施設ができませんと、小菅刑務所があかないという関係になっております。かようなわけで、私ども青梅に新施設ができますように鋭意努力いたしておるわけでございます。なかなか青梅市の地元の方々あるいは青梅市御当局、その他のいろいろな御意見がございまして、必ずしも現在のところ、いつ解決するというふうな見通しになっておりませんけれども、私どもはこの一連の計画が十全にできますように、目下むしろ最終的といってもいいくらいの努力をいたしておる次第でございます。
  133. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでは、いまの青梅市の新刑務所を最終的に推進していくということであって、よその土地を考えておるとか、そういうことはないわけですね。そうして見通しとしてはいつごろ着工でき、いつごろ完成できる見通しなのか。
  134. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) この一連の計画昭和四十一年から五カ年間の、いわば最終的には昭和四十五年度末——四十六年の三月でございますが、三月までにこの一連の刑務所計画ができないと、御承認を受けております国庫債務負担行為その他が十全に執行できないわけでございます。さような点で、押せ押せに逆算されてまいるわけでございます。とりあえず私どもは、青梅の解決が少なくとも本年上半期ぐらいには解決しないと、なかなかこの計画がうまくいかないのじゃなかろうかということで、鋭意努力いたしておるわけでございます。
  135. 多田省吾

    ○多田省吾君 じゃ、ことしの上半期ですか、に計画の見通しがつかない場合は、ほかの地に移転するとか、また計画を練り直すとか、そういうことになるわけですか。
  136. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 現在のところは青梅市一本で努力いたしておりますが、理屈といたしましては、青梅市のほうがどうにもならぬということになれば、計画の再検討という理屈にはなるわけでございますが、現在のところは青梅市に協力方を切にお願いしておる段階でございます。
  137. 多田省吾

    ○多田省吾君 旭川刑務所ですが、まあいままでの定員が百八十六名となっております。これは移転予定施設収容定員が三百名。ところがちょっと収容状況を見ますと、昭和四十年年末収容人員が四百二十九名とか、収容者一日平均人員昭和三十九年が三百九十六名、四十一年が三百六十五名とかいう表が出ておりますけれども、これはずいぶん多いですけれども、いかがですか。
  138. 福原弘夫

    説明員福原弘夫君) 旭川刑務所定員を三百名と設定いたしましたのは、最近の収容状況増減状況から見まして、完成移転をする時期には大体三百名で収容できるという推定をいたしたわけでございます。
  139. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですから、現在は収容定員が百八十六名なのに、収容者の一日平均人員が三百九十六名とか三百六十五名とかなっておりますけれども、これは実際にこんなに収容できるわけですか。
  140. 福原弘夫

    説明員福原弘夫君) 旭川刑務所には、あの近くに西神楽という農場がございます。したがいまして、その農場と刑務所と合わせまして、御指摘のような数字になっておるのでございますが、もとより定員から見ますと非常な過剰でございます。過剰の緩和につきましては、いろいろと他施設移送のようなことで努力はいたしておりますけれども、あの地区に御指摘のような人員が集まっておるわけです。
  141. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですから、こういった過剰人員が集まっておって、実際に収容能力があるのか、人権侵害のような姿はないのか、お聞きしたいです。
  142. 福原弘夫

    説明員福原弘夫君) 御指摘のように、人員が非常に多いのでございますのですが、一人当たり収容面積というような点から申しますと、基準よりも下回っております。しかし、人権侵害のような問題を起こさないように、そのほかのいろんな処遇面で配慮を加えております。
  143. 多田省吾

    ○多田省吾君 西神楽の農場にも収容しているということですが、これは法で許されているのですか。
  144. 福原弘夫

    説明員福原弘夫君) 構外作業場という作業場でございますので、構外作業場は監獄の延長である、刑務所一部分であるという見解をとってございまして、その構外作業場における収容はやはり在所者という立場を続けることになりますので、許されていると解しています。
  145. 多田省吾

    ○多田省吾君 刑務所移転につきまして、旭川市並びに東京拘置所を買い取るところの新都市開発センターですか、この二つが、移転予定施設の土地の買収から、また建設から全部やる。この費用は、旭川刑務所施設特別取得費として一般会計予算に組み込まれているらしいですが、この明細を説明してください。
  146. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 新旭川刑務所の新設の経費でございますが、新都市開発センター建築いたしておりますその分が二億八千四百八十七万三千円でございます。旭川市のほうで担当していただいておる分が二億三千五百八十七万七千円でございます。
  147. 多田省吾

    ○多田省吾君 旭川市のほうでやっている土地の買収費はどのくらいですか。
  148. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 旭川市の新しい敷地の買収費は八千九百六十万四千円でございます。
  149. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、いままでの旭川刑務所のあと地ですね、これは旭川市と交換するわけでございますけれども、ただ、あと地は大体どういうように使う予定になっておりますか。
  150. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 公営住宅用地に使うことになっております。
  151. 多田省吾

    ○多田省吾君 何ですか、この前の旭川市議会では、裁判所と大体一緒になっておりまして、裁判所のほうは小公園にする、ところが刑務所あとのほうはまだきまってないというふうな話をしてたそうですが、それはどうなんですか。
  152. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 建物交換の場合でございまするが、一般論といたしまして、このあと地のほうは、国有財産が払い下げられました場合に、公共的なことに使っていただくという制約がございます。かような観点で、この旭川刑務所の場合も、公益的な公共的なものに使っていただくということになっておりまして、先ほど公営住宅用地と申しましたが、なおそのほかに、同じようなことでございますが、旭川市の職員住宅の用地であるとか、旭川市の合同車庫の用地であるとか、そのほか旭川関係の公共用施設用地になさるということになっております。
  153. 多田省吾

    ○多田省吾君 その刑務所あとの敷地、官舎等も入っているでしょうが、三万余坪あるのですが、旭川市と交換する場合の土地の評価の見積もりはどのくらいですか。
  154. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 旧旭川市の敷地の見積もり価額は二億三千二百九十六万四千円でございます。
  155. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうすると、大体坪当たりどのくらいになるのですか。——それはあとで計算してもらうことにいたしまして、旭川の新刑務所の予定地は東鷹栖村になっておりますし、農村ですから、そう強い反対運動もないと思いますが、逆に旭川市あたりからも非常に遠い、こういうことも相当考えられます。差し入れ等もありましょうし、そういった土地の便、不便の点はどうなっているのですか。
  156. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 新刑務所予定地は、現在の施設から車で大体十分か十五分程度の土地でありまして、非常にいい道がございます。市街地からちょっと出たというような所でございまして、そういう差し入れその他につきまして、一般の皆さま方に御迷惑をかけるという点はないわけであります。  なお、先ほどの売り渡しの土地の坪当たりは幾らになるかという点でございますが、概算いたしまして坪当り約二万七千円になっております。
  157. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に大臣にお尋ねしたいのですが、旭川刑務所の場合にはそんなに問題ないように思いますが、いままでの東京拘置所あるいは滋賀刑務所においては、地元の反対も非常に多いようですが、いまもって、昭和四十五年に完成しなければならぬのに、まだ青梅市の全体の反対のために着工もしていないという状態であります。こういったことは、最初の計画自体が非常にずさんであるということも考えられますし、今後も三十カ所ばかり移転考えられているということも聞いておりますけれども、東京拘置所移転を含めて、こういった刑務所移転問題に対して、またその責任をどう感じておられるか、お答え願います。
  158. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) この刑務所移転は重要な問題でございまするし、よほどその計画するときに慎重にひとつ計画を立てていきたい、計画したことは必ず実行ができるような見通しをひとつはっきりした方法でいきたい、かように私は考えております。ただ、一たんきめたのは徹底的に勉強して、何とかひとつやり上げるように全力を尽くしていくと、こういうつもりでおります。いま言いましたように、ひとつ計画するときは、やはりこれが実現ができて、合理的で、それがうまくいくような選び方を特に注意してやってまいりたいと考えております。
  159. 多田省吾

    ○多田省吾君 もう一回お尋ねしたいんですが、先ほど政府委員からも答弁がありましたけれども、青梅市の場合は、非常に新しい市議会をはじめ、市長が率先して、また市民全般にも相当強い反対運動が起こっているわけです。お聞きしますと、ことしの上半期に決定しなければ、昭和四十五年に間に合わないというようなこともお聞きしているわけですね。もしそうなれば、予想であるけれども、他の土地に対する移転考えなくちゃいけないと、理論上はそうなると、そういうお答えもありましたけれども、もう初めの計画自体がずさんなんですから、当局もその点を相当強く留意して、いま計画を立てたならば、もう全力をあげてやるというようなお答えでありますけれども、それではちょっと納得できないわけですね。大臣として、青梅市への新刑務所移転自体に関しては、どう考えておられるのか。
  160. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 青梅市への刑務所移転につきましては、全力をあげてひとつ努力していきたいと、何とかこれが一たんきめたものが実現ができるように全力をあげていきたいと、かように考えております。
  161. 多田省吾

    ○多田省吾君 それじゃ先ほどの政府委員の御答弁のように、あれですか、もしことしの上半期にできない場合には、ほかへの移転というのは考えておられるのかどうか。
  162. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) いまのところは、ほかへの移転はまだ考えておりません。徹底的にひとつ、このせっかくきめた青梅市に何とか実現ができるように全力を注いでいこうと、かように私は考えております。
  163. 多田省吾

    ○多田省吾君 じゃあ最後に、そういう見通しですね。市当局とどういう話し合いが進んでいるのか、住民の方々の説得に十分自信があるのかどうか。
  164. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 青梅市当局及び刑務所の予定地の付近の地元の皆さま方に対しましては、かねてからこの新施設ができました場合に、地元——まあ友田部落と申しておりますが、そこの部落の方には、公民館であるとか、その他の地元の方の利便になりますような施設をつくらしていただくということを前から申し上げておりますし、また東京都と建設省との御協力がありまして、八王子市と青梅市の間に一つの都道をつくっていただくというようなお考えも建設省、東京都のほうで計画していただいておるわけでございます。かような新施設ができますことにつきまして、いろいろと法務省の立場におきましても、この新都市開発センターやあるいは関係省庁の御尽力をお願いいたして、このことを地元及び青梅市の皆さま方にかねてから申し上げておるところでございます。
  165. 北村暢

    北村暢君 私、ごく簡単に、せっかく法務大臣見えておりますから一点だけお伺いいたしたいと思いますが、この設置法によりましても、出入国の管理事務の強化のために出先をふやすということのようでございますがね。これに関連してですが、沖繩との出入国の管理について、いまだに自由に往復ができない状態にあるわけです。で、潜在主権を認められているというたてまえから、せめてこの往復くらいは自由にさせたらどうか、さしてもらいたいという要望が非常に強くあるわけです。それで、この沖繩返還の問題は両三年にどうなるかということでめどをつけるのだ、こういうふうに言われておりますが、それ以前であっても、この出入国管理の問題について、自由に行き来ができるような措置というものは私講じられてしかるべきではないかと思うのですが、この問題について法務当局でどのように検討されているか、この点だけお伺いしておきたいと思います。
  166. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) ごもっともな御質問でございまして、まあ沖繩と日本の出入りが自由になるということが最も自然で、実際に合うように思いますが、御承知のように、何ぶん施政権が向こうにありますので、この施政権とやはり出入国管理がいつもくっついておるという実情で、特にひとつ施政権が返ってこなくても、こちらの何とか便法でいけるような方法につきましては、とくとひとつ研究をさしていただくようにお願いをいたしたいと思います。
  167. 北村暢

    北村暢君 いま法務大臣から、施政権が返らない場合でも自由に出入りができるように検討すると、こういうことでございますから、答弁は私はそのように理解しますが、両三年で、かりにこの三年で返ってくるということがはっきりして、施政権が返ればいいわけですが、これがやはりまだ返すということをきめるということでなしに、返ってくるか返ってこないかわからぬということですから、したがって両三年後においてもまだ施政権が返らないということが続くということになると、施政権が返らない限り出入国が自由にできないということでは、私は問題がある、こう思いまするので、いまの大臣の答弁は、この両三年の見通しが、施政権の返還の見通しがつく、つかないにかかわらず、ひとつ自由に往復ができるように検討されるということのように受け取りますから、この点については、私は早急にひとつ自由にできるように検討をやっていただきたい、特に要望をし、大臣の御所見をひとつ……。
  168. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) この沖繩と日本の間でありまするので、出入国管理のことは、私はとにかく施政権が返ってこなくても、何とか簡素化するというか、便利にやっていくくらいのことはぜひひとつ実現したいという気が非常にある。たとえ完全にそれが内地と同じようにならなくても、沖繩と日本の間の出入りは、何か簡便な方法がありはしないか、そういうこともひとつあらゆる面から前向きの姿勢でとくと研究をさしていただきたいと、こういうぐあいに思っております。
  169. 井川伊平

    委員長井川伊平君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  法務省設置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  170. 井川伊平

    委員長井川伊平君) 総員挙手と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  171. 井川伊平

    委員長井川伊平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時十二分散会