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1968-05-10 第58回国会 参議院 大蔵委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月十日(金曜日)    午後一時三十九分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         青柳 秀夫君     理 事                 植木 光教君                 小林  章君                 柴谷  要君     委 員                 青木 一男君                 伊藤 五郎君                 大谷 贇雄君                 西郷吉之助君                 塩見 俊二君                 徳永 正利君                 西田 信一君                 木村禧八郎君                 田中寿美子君                 戸田 菊雄君                 瓜生  清君                 須藤 五郎君    国務大臣        大 蔵 大 臣  水田三喜男君    政府委員        大蔵政務次官  二木 謙吾君        大蔵省銀行局長  澄田  智君        中小企業庁次長  沖田  守君        労働省労政局長  松永 正男君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○中小企業金融制度整備改善のための相互銀行  法、信用金庫法等の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○金融機関合併及び転換に関する法律案(内閣  提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  中小企業金融制度整備改善のための相互銀行法信用金庫法等の一部を改正する法律案金融機関合併及び転換に関する法律案を議題とし、質疑を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  3. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 金融関係の二法案について、最初に基本的問題について若干質問してまいりたいと思うのですが、今回のこの二案の改正の目的、これは何ですか。
  4. 澄田智

    政府委員澄田智君) 戦後日本経済成長してまいりまして、また日本経済を取り巻く国際的環境も著しく変わってまいりました。三十年代の高度成長時代からの安定して均衡のとれた成長というような成長あり方も違ってまいりました。そういう情勢において金融をめぐる環境というものも非常に変わってきておる、そういう事態を前におきまして、これからの経済に最もふさわしい金融あり方はどうか、こういうことで、金融全体について金融制度調査会において再検討をいたしておるわけでございます。その一環といたしまして、中小企業金融専門機関、これは二十六、七年に現行制度になりましたが、その後最も成長も著しく、制度実情に沿わないという面が目立ってきておりますので、まずこの領域から検討いたしまして、昨年の十月に中小企業金融あり方についての答申が出たわけでございます。この答申に基づきまして、今回の立法をいたしたわけでございますが、今後の金融をめぐる環境においては、日本経済の今後の要請に即応して、一そう効率のよい経済にして、国際競争力を高めていかなければならない。そういう意味において経済全体の効率をはかるためには金融効率化が必要である。そういう考え方金融効率化ということをねらいといたしまして、そのためには適正な競争原理導入いたしまして、金融機関あり方、さらに金融仕組みというものを効率化するということで、今回の中小企業金融専門機関改正となったわけであります。  内容は、業務の範囲を中小企業成長に応じてある程度拡大いたしますとともに、より広く適正な競争が行なわれるような現行法改正をいたしますとともに、そういった競争の働く環境をつくるというような意味におきまして、異種金融機関合併及び転換は、従来これは法律的に制度がなかったわけでございますが、その法律上の道を開くというために、別に法律異種金融機関合併及び転換に関する法律案を御審議願っているわけでございます。以上が今回の改正のねらいでございます。
  5. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 結局いまの局長説明を聞きますと、要約をしますと、三点あるというふうに理解をするんです。第一点は、海外の貿易自由化等に伴ってそれの対応策、第二の問題は、いまおっしゃられた金融効率化、さらに金利国際水準ということがありましょう、まあそういうことになると思うのでありますが、そこで一つ一つ具体的に聞いてまいりたいと思うんですが、資本自由化等に対する外資進出に対抗して、具体的にどういういま金融面からの対抗策というものが考えられていますか。また過去に具体的なそういう措置というものをやられたかどうかですね、その辺のことについてひとつ伺いたい。
  6. 澄田智

    政府委員澄田智君) 資本自由化ということになりますと、これは貿易自由化でございますと、同じ国際競争力と申してもそこには運賃とか、あるいは関税の関係とか、いろいろそういうような要素が入りまして、それによってある程度外国競争に対して対抗していくというような、そういう場合もあるわけでありますが、資本自由化ということになって、直接外資系企業日本生産活動を行なうというようなことになりますと、その場合はあらゆる条件が同じことになってまいります。そういうことになりますと、金融による差というものが非常に大きな影響がある、これは当然に予想されるところでございます。そういう意味において資本自由化に備えて、日本金融機関というものが国際的な条件に対抗して、日本経済産業資金供給ができるような体制を逐次整えていかなければならない、こういうことになると思います。そういう意味におきまして、逐次資金コスト等もいままで下がってきておって、そうして円シフトという問題が起こるように、短期の面等には内外の金利差というものが相当縮まってまいりましたが、長期資金等の面では、まだ若干の差があるというような状態でありますので、今後とも金融機関あり方といたしましては、できる限り効率的な制度及び運営をいたしまして、そうして資金コストを下げて、外国に対抗できるような、できるだけ低利で、できるだけ安定した資金供給するような金融体質というものをつくっていかなければならない、かようなふうに考えられるわけで、そういう意味で、いま現在金融制度全体についての再検討を行なっておりまして、今回の法律はその一環であるわけでありますが、それにはやはり適正な競争を通じて資金コストを下げる、そういうための努力金融機関がする、そういうような仕組みにしていかなければならない、かように考えられるわけであります。今回の法律も、日本経済で非常に大きな部分を占める中小企業に対する金融という意味において専門機関体質の強化ということをはかって、そうして資金吸収力を高め、資金コストを下げるということによって中小企業金融円滑化をはかっていく、こういうことにあるわけで、これはやはり資本自由化という時代を迎えての施策、こういうことになると思います。  もちろん、以上は民間金融機関あり方の問題でございますが、そのほかに政府金融機関等においても体制整備というための資金等を、開発銀行を通じて戦略的な産業等供給するというようなことも、別にやはり外資資本自由化対策として考えられるところでございますし、そのほか税制その他のいろいろな面における問題というのがあると思いますが、民間金融の問題を中心に申し上げれば、以上のことになるかと思います。
  7. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いま局長のおっしゃられたように、十分貿易自由化等に対応する体制というものをつくり上げる、こういうことであるというのですが、必ずしも私はそのように理解しておらない。たとえば昨年の七月ですけれども、世界一の総合電機メーカーという例のゼネラル・エレクトリック、これは従業員三十五万人おる会社ですが、この会社といわば日立製作所など、あるいは東芝、こういったものが合併をして、新たに原子核燃料の加工、こういうものを開始したんですね。あるいはGEゼネラル・エアコン、東京三洋電気、こういうものと技術提携をしてGE型ルームクーラー国産化に取り組む。こういういろいろなアメリカの大独占と日本のそういう最大の大企業、こういったものが合併をし、同様にいま日本金融機関企業系列というものが徐々に進出しつつある、こういうのが私は実態じゃないかと思うのです。ですから、そういう面から考えるならば、日本が独自的な立場でそれと対抗して自由化にうちかっていく、こういうことが本気でやられているかどうか、いまの金融の面も含めて私は非常に疑問に感ずるわけです。まだ大蔵大臣おりませんから、政策的な面は省きますけれども、そういう点について局長は一体どういうふうにお考えですか。
  8. 澄田智

    政府委員澄田智君) 資本自由化に対応する施策といたしまして、あるいはまたそれに対応しての企業等あり方といたしまして、合併ないし合弁というような形である程度外資と提携しつつ、しかしこれはこちらに最終的な発言権は残すような形で外資と提携しつつ、そして対応していく、あるいは技術導入をはかっていく、そういうことでもって対応していく対策というのも企業業種等によっては当然あることと思いますが、これはいろいろの業種等によっていろんな場合があり、いろんな対策があろうかと思うわけであります。私先ほど申し上げましたのは、金融面において外資企業が非常に国際的な外国の大きな金融力というものを背景にして資本進出をするということによって、日本側が非常な影響を受けるというようなことに対処するような金融面対策考えていかなければならない。日本金融あり方というものがそういった国際的な金融の力というものに対抗し得るように金融界自体がなっていく、これが産業外資に対抗する上の一番基盤といたしまして重要なことではないか。そういう意味金融効率化をはかるということが非常に焦眉の急ではないか、かように申し上げた次第でございます。
  9. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 従来大蔵省金融機関に対する考え方というものは、合併その他に対しては非常に消極的でなかったかと思うのですが、それが最近急激にそういう合併推進に変わったということは一体どういうことなんですか。
  10. 澄田智

    政府委員澄田智君) 従来非常に消極的であったのが急に変わったというようなお話でございましたが、時代経済情勢の推移というようなもので、必ずしもそういうふうにはっきり消極的であったものが積極的に変わったというものではないわけでございますが、御承知のように戦前の金融恐慌あと弱小な金融機関というものの整理統合が進み、さらにそれが戦争直前あたりから一県一行というような方針がとられて、整理統合が大幅に進んできたわけでございますが、そうして一応そういう意味整理統合というものがある段階に達したわけであります。戦後におきましては、この一県一行というような考え方を若干ゆるめて、地方の実情に応じては新しい金融機関を認めるというようなこともいたしたわけでございますが、その後合併につきましては、これが円滑な合併が行なわれて、そうして合併当事者も非常にそれと意欲的に取り組んで合併効果が十分に考えられるというような場合の合併はこれは認可する方針で臨んでおります。昭和三十年以降におきましても、最近まで合併ケースとしては、これは普通銀行の場合に限っておりますが、合併ケースといたしまして幾つかあるわけであります。最近に至りまして、というよりは先ほど申し上げましたような新しい金融をめぐる国際及び国内の環境というものに対処いたしまして、金融機関に適正な競争が行なわれるようなそういう環境をつくる、そうして金融効率化をはかっていく、こういうような考え方で、その中には当然に合併という問題も、そのほうが効率化に資するという場合には考えてしかるべきであろうというような考え方で、今回御審議をお願いしております金融機関合併及び転換に関する法律案というようなことに相なっておる次第でございます。
  11. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと議事進行ですが、銀行局長ね、御答弁が詳細にわたって御丁寧なのはけっこうですが、しかし、あなたの御答弁が長いと質疑のほうの時間が制約されるものですから、なるべく簡潔にお願いしたい。きのうからぼく質問してそう感じるものですから。
  12. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 時間がきめられておるのですよ。ですから、ひとつ質問した内容についてのみ答弁をしていただきたいと思うのです。  ただいまの問題はあとでまた触れますけれども、もう一ぺん金融効率化ということは一体どういうことなのか、この点についてひとつ説明願いたい。
  13. 澄田智

    政府委員澄田智君) 一言にして申し上げれば、国民経済に最も望ましいような資金需要に対応して最も望ましい形で資金供給され、そうしてそれが低利でもって安定した資金供給される、そういうような金融仕組みをつくり、金融機関の経営をそういうふうにしていくためにその効率化をはかる、効率化をはかる手段といたしましては、やはり競争原理というものを働かせ、それによって資金コストの低下をはかるということを考える、これが金融効率化でございます。
  14. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それで具体的にちょっとお伺いしますが、金融機関資金コスト割合について説明を願いたい。都市地方銀行相互銀行信用金庫長期信用銀行、大体こういうことでけっこうです。
  15. 澄田智

    政府委員澄田智君) 資金コストのとり方はいろいろございますが、総資金コスト金融機関全体のコストということでとりますと、四十二年度の上期で、都市銀行は六・二一%、それから地方銀行は六・二六%、相互銀行は六・九五%、それから信用金庫は、これは信用金庫は年一回決算でございますので四十一年度でございますが、六・七九%、それに対しまして長期信用銀行は七・五%、こういうことになっております。
  16. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 さらにいまの各銀行人件費率物件費率、その内容についておわかりでしょうか。それからでき得れば、これは統計が何年になるかわかりませんが、アメリカ割合ですね、ちょっとお示しを願いたい。
  17. 澄田智

    政府委員澄田智君) 人件費率で申しますと、都市銀行が四十二年上期一・〇六%、以下四十二年上期でございますが、地方銀行が一・二二%、相互銀行が一・七二%ということでございます。それから信用金庫、これは四十一年度でございますが、信用金庫の四十一年度の人件費率は一・六八%でございます。それから長期信用銀行は〇・二四%、こういうようなことになっております。  それから物件費率でございますが、都市銀行は〇・七四、それから地方銀行が〇・五八、相互銀行が〇・八三、信用金庫が〇・七二、長期信用銀行が〇・五六ということになっています。  それから米国の場合でございますが、米国連邦準備制度加盟銀行数字で申しますと、人件費率が一・一六でございます。それから物件費率は、米国数字物件費とそれから税金率両方合計になっておりますので、日本の場合と違いまして税金が入っておりますが、一・五三でございます。米国の例はこれは一九六六年です。
  18. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いまの資金コストの各銀行ごと、ないしアメリカ比較では、確かに資金コスト総体から見ればアメリカに比して二%前後高くなっているわけでありますが、しかし市銀や地銀の比較対象では、すでにアメリカトップ銀行とほとんど同一、こういうところまで日本はいっていると思いますね、いまの説明で。そういうことになりますと、今後金融企業に対して各種合理化を進める、こういうことを言われておるのですけれども、どの部面の合理化を一体進めていこうとしておるのか、またそういう政策的な指導内容というものをどの辺に置いているのか、その辺のことについてひとつお聞かせ願いたいと思います。
  19. 澄田智

    政府委員澄田智君) ただいまお話しになりましたように、この人件費率等を見ますると、日本の場合も逐年少しずつ人件費率が下がってまいっております。物件費率につきましても同様でありまして、そういう意味で、アメリカの私申し上げましたのは、これは連邦準備制度加盟銀行全体でございますので、六千ばかりある銀行全体の数字でございます。したがって、アメリカの非常に小さいところまで含めましたこういった数字のレベルとは、物件費率人件費率の場合においては差のないところに来ておるというのは事実でございますが、預金金利あるいは債券金利等日本資金吸収面の差というものがございます。これは今後経済環境情勢というものに即応して、今後も考えてまいらなければならないところでございますが、人件費物件費というところに限って考えました場合にも、なお一そう適正な規模によって合理化効率化ということを行ない、そうして人件費率物件費率というものをやはりこれはできる限り下げていくということが資金コストを下げるゆえんでございます。アメリカの場合でありましても、これは全体の数字でございますが、金融機関によってはもっとこれより低いわけでございますので、日本の場合も当然にやはり経費率というものを低める、それが資金コストを下げる一つの有力なる手段でございますので、そういう点については今後とも金融機関努力をするということでなければならないと、かように思います。
  20. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そういった合理化方向については明確なお答えがないのですけれども、どういう方向で今後合理化をしていこうというのか、その指導内容なり、この問題についてはどうですか。
  21. 澄田智

    政府委員澄田智君) 日本金融機関のこれからの経済におけるあり方というようなものは、いまなお金融制度調査会でいろいろ検討しておりますが、従来のように企業設備資金、それも重化学工業というようなもの中心設備資金というものが資金需要の中の大きな部分を占めるというような形から、逐次企業自己金融力というようなものの姿も変わってまいりますし、資金需要というものももっと広い面で多様化されてきて、そしてあるいは消費の金融の面とか、住宅金融の面とかいうそういった面、あるいはもちろん中小企業の面とか、非常に金融資金供給の先もそういうふうなところに広がってまいりまして、それと同時に、いろいろの金融機関あり方というものにも変化が出てくる。逆に言えば、そういう面においてはある程度経費がかかるような面への金融というものもやっていかなければならない。金融国民経済の要請するような資金供給をするというためには、そういうふうな従来の産業資金供給重点から、より多面的なものになっていくということによる、ある面においてはいろんな金融に応ずるというコストアップの要因というようなものも他面にあるわけであります。これに対しまして、一方においてはやはり機械導入、コンピューターの採用というようなものによって、そして適正な規模においてそういうものが営まれるということによって経費のなお一そうの節減につとめる。いままでのようなやり方の人件費物件費の節約というようなものは相当のところに来ておりますので、これからはそういう機械化というようなことでもってコストの切り下げをはかっていくという面が一方にあるわけであります。こういうふうに金融機関をめぐる環境というものは非常に変わってまいりますので、コスト引き下げという面と、まあ他方コスト引き下げという面からは反対のようなものであっても、そういう資金需要を充足していかなければならないという面も出てまいるわけでございますので、そういうようなところを考えて、今後は一そうそういう機械化等中心とする合理化できる面においては合理化を徹底して行なっていかなければならない、こういう情勢であろうと思うわけであります。
  22. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 ただいまの問題は、またあとで大臣もおいでになるでしょうからいろいろ承っていきたいと思います。  それで、今回の改正の結果、私の見通しとしては、金融制度全般変革に通ずる改正ではないか、こういうように考えるのですよ。もう一つは、国債消化に対する解決策といいますか、いわば低利恒久消化体制にもっていく、こういうことが一面裏で考えられているんじゃないかと思うのですが、その辺はどうですか。これは政務次官にひとつ。
  23. 二木謙吾

    政府委員二木謙吾君) もう一ぺんひとつ…。
  24. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 今回の改正の結果は、結果的には私は金融制度全面変革に通ずるものではないか、これが一つ。それからもう一つは、最近国債消化状況が非常に悪くなっていることは御存じのとおりです。そういう点から、これを恒久的に低利でもって消化体制というものをひとつ確立をしていく、こういう考えは裏にないかどうか。二つです。
  25. 二木謙吾

    政府委員二木謙吾君) それじゃ局長が先に申しましたあと、私が考えを申し上げます。
  26. 澄田智

    政府委員澄田智君) 今回の改正金融制度全般改革というものにつながるかどうかという点でございますが、これは基本的な認識といたしましては、金融全体のあり方についての再検討、それを必要とする、まさにそういう時期に来ている、こういう考え方金融制度調査会でそういう問題を進めてまいる、その第一段階といたしまして、中小企業専門金融機関あり方というものについて結論を得て、それを今回の法律案ということにいたしたわけでございますが、異種金融機関の間に合併転換の道を開くというような点は、異種という中には中小企業専門金融機関のみならず、普通銀行も含めての異種金融機関の間にそういう道を開くというようなことでございますので、もちろん全体との関係はございます。それからまあこれに引き続き、いま金融制度調査会普通銀行等あり方について検討をいたしておりますので、いわばこれが全部まとまりますれば、民間金融機関あり方というもの全体についての改正、こういうふうなことになるわけであります。その一環として、いまここで御審議をお願いしておりますものを一つの大きな前提といたしまして、引き続いていまあと普通銀行等について検討をいたしているところでございます。  それから国債消化という点でございますが、これからの金融に要請されるところといたしましては民間資本民間資金というだけでなくて、社会資本、公共的な投資というようなものも、民間金融機関としてそういう資金供給というものも非常に大きな使命になるような趨勢というものは当然考えなければなりません。先ほどいろいろの資金需要が多様化すると申しましたが、その中にはそういった公共的な資金供給というようなものも含まれるわけでございます。そういういろいろな今後金融機関に要請されるそういう資金需要というものに対処するようなものでなければならないという意味でございまして、直接今回の改正国債消化というものと結びつくというよりは、今後の金融機関あり方として、国民経済の多面的な資金供給に応じられるようなものになっていくというような考え方を持っている次第でございます。
  27. 二木謙吾

    政府委員二木謙吾君) ただいま局長答弁をいたしたとおりでございますが、御承知のとおりに、わが国経済は年とともに発展をしているのでございます。この経済界において経済発展あるいは産業振興、こういうことにつきましては、何と申しましても資金というものが大きな役割りをつとめていることは御存じのとおりでございます。経済が非常に発展をした、その経済発展産業振興、そういうものとにらみ合わせまして、金融制度改革というものもやる必要が私はあると考えているのでございまして、その第一といたしまして、中小企業に対して特に専門的な金融機関を設けよ、そして中小企業に質のよい、ことばをかえて申しまするならば、低利で潤沢な資金中小企業に使ってもらおう、こういうことが本改正一つのねらいであることは、先ほど金融効率化について申し上、げたとおりでございまして、やはりいま金融制度調査会で調査をしておりますが、その結果を待ちながら、金融全般についても再検討する必要があると私はかように考えるものでございます。  それから公債の点についてお話がございましたが、やはり私は国民にも社会開発あるいは公共投資の一環は持ってもらうということが、経済発展なりあるいは社会開発なりに大きな関係があるものである、かように考えまして、やはり民間に公債を持ってもらうということも必要であろうか、かように考えている次第であります。
  28. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 先ほど金融機関資金コスト割合についてお伺いしたのです。国債の九〇%は市中銀行消化という発行した当時の政府の態度であったわけです。いままでにもそういう方針というものは変えているということは私たち聞いておりません。ですから、そういう状況でいっていると思うのでありますが、その国債の応募者利回りが今回二月に六・九〇三%に変わりました。従前は六・七五%、先ほどその資金コスト、各銀行割合をお示しになったんですけれども、この採算にのる銀行というものは、各種金融機関というものは一体幾つあるかと言ったら、都市銀行しかないんじゃないですか。あとの各種銀行はほとんど利回りの点からいって国債を忌避しなければいけないというそういう状況に追い込まれていると思うのであります。この現状についてはどういうように考えるか。
  29. 澄田智

    政府委員澄田智君) 国債の応募者利回りというものと金融機関資金コストというものを比較いたしました場合には、都市銀行あるいは地方銀行、その他おおむね国債の利回りよりは資金コストは低い、しかし、すれすれであるというような場合もあるわけでございます。ただ、これは国債というものだけを資金コスト比較するというよりは、その国債を最も確実な資金運用の方法として、あるいは余裕金の運用方法として持つというような性質でございますので、貸し出し、債券保有、全体の運用利回りというようなものを見てまいらなければならない。国債だけ資金コストとストレートに比較をして、利ざやがほとんどない、だから国債は持てない、こういうものでは金融機関資金運用というものは必ずしもないわけであるので、一がいにそうは申せないと思います。
  30. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それでは具体的にお伺いしますけれども、現在の金融機関資金需給の問題はバランスがとれておると思いますか。
  31. 澄田智

    政府委員澄田智君) 現在引き締め中という非常に特別な状態でございます。しかも引き締めの定着、その効果が逐次出てくるというようなそういう時期でありまして、引き締めの影響が非常に大きくあらわれている時期であると、かようなわけであって、したがいまして、どうしてもこういう時期には実質預金の伸びが悪いというようなことで、他方資金需要が非常に強い、そういう状態でありますので、いわゆる金融機関資金ポジションというものはある程度悪化をするというのはやむを得ない、そういう時期でございます。たとえば四十年あるいは四十一年というような時期には相当ポジションがよくなったわけでありますが、また四十一年の後半から四十二年にかけては資金ポジションが悪化してきている。こういう状態で、したがってそういった資金の需給の関係から言えば、いまは需給の点ではアンバランスであって、そのためのポジション悪化というような状態が見られるわけでございます。
  32. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 従来中小や農林金融機関というものはコールの出し手として比較的余裕資金があったんじゃないかと思うんですね。都市銀行の場合は逆に産業資金の集中から慢性的な資金不足という状態があったんじゃないですか。その辺はどうですか。
  33. 澄田智

    政府委員澄田智君) 従来の引き締めの場合ですと、その辺が非常に強くそういうような傾向があらわれたわけでございますが、現在はコールレートもかつてのように非常に高く上がるというようなことではございません。月越し無条件もので、いま二銭四厘というような状態でございますが、いままでのような三銭、四銭というような状態ではない。それからコールを出す割合というようなものも、従来は非常にこういう時期にはコールを放出しておりました金融機関相互銀行信用金庫等もコールの出し手に回った、そのほか農業系統金融機関等のコール放出というものは非常に目立ったわけでございますが、今回におきましては、さほどコールというものの急増というような形ではなく、その点の状況も従来とはいささか様子を異にしておる、そういうようなふうに見られます。
  34. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そうしますと、局長はその資金の需給面はバランスがとれているという結論ですか。どうなんです。
  35. 澄田智

    政府委員澄田智君) 先ほど申しましたように、都市銀行中心に見ますると、そこにおいては預金の伸びが鈍化し、そうして貸し出しの需要が強いということで、資金の需給の関係からいってポジションというものは悪くなってきております。そのために都市銀行は手持ちの債券を売っている、主として金融債等を売りに出しているというようなことがずっと続いております。そういう意味で需給はとれていない、そういう状態でございます。ただ、その点が従来のように極端なもので、都市銀行が非常に多額のコールを取っているというようなことは今回はございません。そのかわりに手持ち債券 を売っているというようなところは見られるわけでございますが、従来に比べてのことを申し上げた次第でございます。
  36. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大蔵大臣が出席されましたから、現在の金融機関でですね、資金需給面についてはバランスがとれていると思いますか。大臣はどうお考えですか。
  37. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) いまの質問をもう一ぺんどうぞ、すみませんが。
  38. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 もう少し先に進めてからお伺いいたしましょう。結局、私はこういうふうに理解しているんですが、しろうとですから誤まっておれば指摘してもらってけっこうです。現在の都市銀行の場合は資金需給という面が非常にアンバランスで不足をしている。それからその一面都市銀行以外の各種金融機関の場合は資金コストが上昇している。そういうところは結局国債消化というものに対して非常に困難を来たしているのじゃないか、こういうように考えるのですけれども、その点はどうですか。
  39. 澄田智

    政府委員澄田智君) 都市銀行等につきましては、先ほど申しましたように実質預金の伸びの鈍化と、これに対して貸し出し需要がこういう引き締めのときでございますのでどうしても強い。こういうような状況で資金需給は非常に苦しい状態でございます。その分が都市銀行資金ポジションの悪化というような形になってあらわれておりまして、これに対処いたすために、都市銀行等はいままで持っておりました手持ちの金融債等を売ったりしておるわけでございます。そうしてそのポジションの悪化を防ぐというようなことをいたしておるわけでございます。国債消化というものも、当然にそのシンジケートで引き受けた範囲内の消化ということはいたしておるわけでございますが、そういうような資金需給の状態でございますので、市中消化というものが適当な量でなければいろんな面で消化がむずかしい。こういうようなこともあり、したがって四十三年度の国債の発行額等も前年度よりも少なく、こういった資金需給に応じて妥当な程度にとどめると、こういうような方針でこの対処をいたしたわけでございます。
  40. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 もう一点お伺いしますけれども、証券会社の場合はどういう御理解を持っていらっしゃいますか。国債消化について現在一〇%消化という立場でやられておりますが、満足すべき状態でしょうか。
  41. 澄田智

    政府委員澄田智君) 証券会社が一般の個人消化のために、証券会社を通じて国債の個人消化をはかっておるわけでございますが、おおむね一〇%というようなところでございますが、これは国債の発行条件や、あるいは小額貯蓄非課税制度というようなものも拡張いたしまして、そうして鋭意個人消化につとめており、証券会社もそういう努力を非常にいたしております。昨年の末から本年の初めあたりは、条件改定問題等もございまして、やや消化に困難だというような状態でございましたが、その後条件改定等の結果若干好転をいたしまして、何とか消化を、一〇%というシンジケート団内部の割合というものを果たすような努力をいたしておるわけでございます。
  42. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 結局、現在日本の場合はどうしても金融体制というものが金融優位体制、加えて国の公社債市場というものが結局、特に流通市場ですね、非常に未熟だと思うのです。そういうところにより一そう個人消化というものに無理を来たしておる。こういう現象だと思いますが、どうですか。
  43. 澄田智

    政府委員澄田智君) 公社債市場、流通市場というものが整備されるということは、やはりお説のとおり国債消化、ことに個人あるいは機関投資家等の消化というものにとってきわめて重要な点でございます。公社債市場については国債も上場いたしまして、そうしてできる限り円滑にその市場が機能するようにということで努力をしておるところでございますが、まあ日本の公社債市場というのは非常にいままでおくれております。そういう関係もありまして、なお一そう公社債市場の育成というものが望まれる次第でございます。
  44. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大蔵大臣に質問いたしますが、今後とも国債というものは発行していくと、前途の見通しについてはどう考えておりますか。
  45. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 結局国債の市中消化ということが、事実上国債の歯どめになるわけでございますので、市中消化ということが国債の発行には非常に意味をもっておるわけでございます。したがって、やはり金融の市中の状況というものによって、国債の発行についてもこの量の調節をするとかというようなことを一面政府側としては行ない、また同時にこういう公社債市場の育成というようなことに努力するという両面をもってこの調整をはかっていきたい、経済的に大きい影響を与えないような調整のとり方をしていきたいというふうに考えております。
  46. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 昨年は国債の発行利回りの引き上げがあり、あるいは発行条件の改定、こういうことを政府はやったのですね。だから現状の国債というものは 一番本来ならば信頼されるべき性格のものが、利回りも相上引き上がっている。こういうところから実際は国民に対して非常な不信感を与えている。ですから、これの手直しというものが必要ではないかと思うのです。ですから、今後国債を発行していくということであれば、前途何年か、いま大臣は答弁なされませんけれども、そういうことであるとすれば、恒久的に低利でということが私は常識じゃないかと思うのですが、そういう見通しと大勢についてはどう考えますか。
  47. 澄田智

    政府委員澄田智君) まあ国債条件というのは、これは当然長期金利の水準というものに適応したものでなければならないわけであります。先ほどから、今回の御審議を願っておる法律に関連いたしましても、日本の長期金利というものが国際的な条件に比べてなお若干まだ割り高でございますので、そういうところをできるだけ国際条件に近づけるように、その金融制度面においても、あるいは金融機関の運営の点においても資金コストを下げるということで近づけていかなければいかぬと、こういうふうに考えられるわけでございますが、国債条件というのは、結局そういった長期金利の最も代表的なものとして長期金利の趨勢に合わせていかなければならぬ、そういう意味国際金利水準というものに近づけていくべきものである、かように考えます。
  48. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そうしますと、局長答弁ですと、結局現在の国債消化の阻害条件というものを改変をしていく、こういうことになりますか。もしそういう解釈だとすれば、具体的にどういう部面でそういう阻害条件というものを取り除いていくのか、そういう内容についてひとつ御指摘を願いたい。
  49. 澄田智

    政府委員澄田智君) 私いま申し上げましたのは、長期金利日本の長期金利というものの水準をできるだけ下げるように持っていかなければならないということで、そのためにはやはり長期金融というものがどうあるか、どういう制度が一番適当であるか、最も効率的な長期金融の体系というようなものを現在金融制度調査会で特別委員会を設けて検討をいたしておりますが、そういう場合に常にやはり検討の目標としてそういうことを考えていかなければならないのではないか。国債金利というものは、結局はその金利水準というものと離れて考えられるわけにはまいらないものでございまして、日本の長期金利一般の問題として考えていく、こういうことであろうと思います。
  50. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そうすると、具体的に阻害条件にこういう具体策をもって対処するというようなものはいまのところお持ちになってないのですか。
  51. 澄田智

    政府委員澄田智君) 長期金利一般の問題であるというふうにいま申し上げたのは、そういう面を申し上げたわけでございます。そういう面では現在金融制度調査会のそういった制度の問題として検討していると、こう申し上げたわけでございます。もちろん国債消化という点につきましては、先ほどからお話に出ております公社債市場の育成をはかる、あるいはその発行条件というものをそのときの金融情勢に応じて最も適当なものであるように考えてまいるというようなこと等もございます。まあ今回少額貯蓄というような制度も拡充されまして、いろいろそういったような制度と相待ちまして、国債消化の促進、国債消化というものを円滑にするということが努力すべき問題であろうと思います。
  52. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 結局その制度上の検討というのは、金融構造自体の変革ということで理解していいですか。どういうことですか、制度上の検討ということは。
  53. 澄田智

    政府委員澄田智君) 現在の長期金融機関としての長期信用銀行等のあり方というようなものをまあ検討しておるわけでございます。そういうような日本金融の長短の両方の金融あり方というような問題でございまして、これを今後の検討中心の問題として取り上げていきたいと、かように思っております。
  54. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 私は、結局先ほど来、一つ国債の利回りの問題があり、資金コストの問題があり、あるいはこの資金のアンバランスの問題あるいは証券市場等の問題、総合的にそれらをしん酌すれば、当然いま都市銀行の場合オーバーローンになっている、あるいはこの都市銀行に対して中小や農林金融に対しては資金が偏在をしている、あるいはこの中小金融機関合併、先ほどおっしゃられたそういう問題が存在する、あるいは個人消化のそういった証券市場の問題が存在をしておる、こういうものが早期に手を打たれなければ今後の国債消化というものは私はできないのではないかと思うのです。そういう具体的な内容についてはどういうふうにお考えになっていますか。
  55. 澄田智

    政府委員澄田智君) いろいろ広範な問題が関係をするわけでございます。当面、その金融制度の面で検討をしておることはいま申し上げましたが、そのほか、いま御指摘のように、証券市場対策等も関係を持ってまいりますことは当然でございます。証券会社につきましての認可制というようなものも行なわれましたし、証券市場というものに対しても、今後さらに一そう機能が十分発揮できるような面で考えていかなければならないと存じておりますが、まあいろいろ各般の問題が全部関係をしていることでもありますので、それぞれの面から問題を検討をしていくと、こういうことになろうと思います。具体的とおっしゃいますが、いろいろな面にわたる問題でございます。いまそのいろいろ今後検討していくものを含めて申し上げると、そういったようないろいろな面の問題だろうと思います。
  56. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 まあいま具体的に私は四項目ほどあげたわけですが、具体的にいえばそういうことだろうと局長はおっしゃられた。その結果は、私は、結局国債消化の分担関係、こういうものの変化促進、さらに都市銀行の負担転嫁、こういうものを可能ならしめよう、こういうところにいくのではないかと思うのですが、大臣はどう考えますか。
  57. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) いままでやってきたことをみますというと、この景気調整のために短期の金利は、これは弾力的に操作いたしますが、さっき局長が言いましたように、長期金利はまだ日本は非常に水準が高いのでございますから、この長期金利中心をなしておる国債条件を変えるということは、長期金利の体系に一番多く響く問題でございますので、政府は単に国債消化させたいということのためにこの条件改定をするということはできるだけこれは避けたいという方針で、この国債消化についてむずかしい問題が出てきたというときには、まず、できるだけ量の調節によって対処するという方法をとってまいりましたが、今年度に入りまして、結局国債のやはり条件改定をせざるを得なくなった。ごくわずかの改定でございますが、それをすることによって、やはり他の全部の条件を改定するということをやって、体系的に水準を少し高めたというようなことにいまなっております。結局それをなるだけしないように、長期金利の水準が高いですから、その水準を上げないようなくふうをどうこらすかというのが、これからの私どもの政策でございます。これにはいろいろな総合施策が必要じゃないか、できるだけこれを避ける策を私どもはとっていきたいというふうに考えております。
  58. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 結局今回の中小金融機関の再編成に政府が着手をしたということは、いま言ったようなこと、前段でいろいろな御質問をしてきた内容等に向かってやられていく、すなわち金融機関の構造面に対する変革意味するのではないか、そのことを先ほど一番最初に実は大臣に聞いたのですが、その点はどうですか。
  59. 澄田智

    政府委員澄田智君) ちょっと私から。先ほど申し上げましたとおり……。
  60. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 局長の見解は先ほど聞いてわかっているのです。政策上の問題もありますから、大臣に私は質問をしているのです。
  61. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) おそれ入りますが、もう一ぺんどうぞ。
  62. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 結局、いまの各種金融機関に対して国債消化の面からいって、私は国債利回りの現在の割合、あるいは資金コストの各金融機関割合、こういうものを比較対照いたしますと、非常に国債消化と、そういう阻害要件というものがそこにあるのではないか。もう一つは、各金融機関に対する資金の需給面から見ても非常にアンバランスになっているのではないか、こういう形。さらにこの証券市場を見ても、個人消化の一〇%というものはどうしても消化が無理である。そういうもろもろの諸条件があるのではないか、そういうところから具体的に今後この国債消化に向って低利恒久体制というものにいく場合には、それぞれ政府としての具体的検討対策があるであろうということで、先ほどそれらの点を指摘した。こういうことを通じでみていくと、結局局長は認めて、そういうことを検討しなければならないと、そのことは全面的な金融構造の変革意味するかということについては明確な答弁をいたしておりません。そういうことになっていくとすれば、当然私は、いわば都市銀行中心のそういう資金集中対策をとるという結果になってくるのではないか、しかし、このことはいますぐにそういうことがとられるとは私も思っておりません。そういうところからいろいろ情勢を眺めてみますれば、今回の中小金融機関合併というのは、結果的にはそういうものの前哨戦になっているのではないか、この点に対する見解は大臣としてどうですかと、このことを質問しているわけです。
  63. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 今度の措置をそういう意味の前哨戦というふうに見ることはどうかと考えます。結局もうすでにたびたび言われましたように、さっき私が申しましたように、あらゆる総合的な施策がやっぱり金融面に必要でございますが、特にいま必要となっておることは御承知のようにやはり金融効率化であり、この問題が実現するような環境をつくるということが当面として一番必要なことでございますので、その一つ施策が今度のわれわれの施策であるというふうに考えます。それによって今後さらに一般銀行の再編成の問題、普通銀行あり方というようなものに入りまして、この全貌が描かれて施策ができるというときに、初めていま考えている金融問題の解決がだいぶ前進するというふうに考えておるのでございまして、今度はそういう金融政策のひとつの最初の出発と見ていただいてけっこうじゃないかと思っております。
  64. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと関連して。ただいま戸田君が非常に公債消化の問題について重要な質問をされているわけですが、そこでこの際伺いたいのは、国債の管理政策について伺いたいんですよ。これについては金融制度調査会答申があるわけですね。人為的に無理に、たとえば国債価格が下がったときにこれを維持したりしてはいけない、やはり資金の需給関係による金利の水準の性質というものがあるわけですね。需給関係からくる金利が高くなったりあるいは低くなったり、そういうものと調整をとってやるべきであって、たとえば売れないというような場合には無理に売れるように今度の場合たとえば五十万円以下の——五十万円については税制面からこれを無税にするとか、これなんかも相当私は問題だと思うんです。これも税制調査会にかけずにやっちゃったんでしょう。そういう人為的な国債管理制度はとっちゃいけないという答申ですよ。ですから基本的には、もし無理にしなければならないなら公債は減らしていくべきですよ。そうでしょう。国債の発行自体を減すべきであって、無理にこれを消化させるということでいろんな今度の税制面とか、あるいはまた今度逆に日銀から金でも貸してやればこれは消化できるんですからね。そういうような人為的な管理政策をとっちゃいけないというのが金融制度調査会答申なんでしょう。それに反しているじゃありませんか。今後はどういうふうにやっていくか、とにかくまあまだ証券市場の国債消化体制に対するいろんな条件が整備できてないところに、そこに無理に公債発行してしまったからこういうことになると思うんですよ。その管理政策についてひとつ……。
  65. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) その点さっき申しましたが、無理して人為的な施策をとらなければ公債の消化はむずかしいというような事態になりましたら、これは公債発行そのものについていろいろ考慮を払うべきときであると思います。ですから公債を消化するために無理な人為的な措置はとるべきでないと思っております。ただ、無理な人為的な措置をとるわけではありませんが、もしそういう策をとったら、たとえば国債金利を非常に多く上げるというようなことをしたら国債消化するかもしれませんが、これは他の産業その他への影響が非常に大きいので、そういうことを簡単にやって国債消化をはかるべきじゃない、そういうことをしない、他への影響のない範囲においてこの金融情勢に対応した改善策をとられるということは、これはいわゆる国債消化のための人為策ということも言えないんじゃないかと、そういう範囲内において特に個人消化というようなことをもう少し促進するというような策についてはいろいろな措置はとりましたが、これは人為策というものときめつけることは、私はできないんじゃないかと思います。
  66. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それじゃ質問を続けてまいりたいと思いますが、戦前ですね、具体的に年を申し上げたいのですが、昭和元年、四年、十年、二十年、この銀行の総体の数はどのくらいあったのでしょうか。それから昭和八年と十一年、当時の国債の発行割合は、当時の国家予算から見まして何割くらいの割合を占めておったか。それからもう一つは、昭和三年に銀行法が制定になったと思いますが、当時は一県一行主義という方針が確立されておった。さらに最低資本金の導入があったのは一体いつごろか、そのことについてひとつ伺いたい。
  67. 澄田智

    政府委員澄田智君) まず、銀行の数でございますが、これは戦前の銀行制度といたしまして、普通銀行とそれから特別銀行、それから貯蓄銀行、農工銀行、こういったような銀行を合わせたものでございまして、昭和元年には千五百七十七でございます。それから昭和四年、これが千六でございます。それから昭和十年とおっしゃいましたね、十年が五百五十九でございます。それから昭和二十年、このときは七十六に減っております。  それから次の御質問の、国債昭和八年と十一年の財政、予算に対する割合でございます。これは一般会計の補正後の予算をとりまして、昭和八年ですと、国債発行額が四〇・七%に当たっております。昭和十一年、このときは三〇・八%でございます。  それから第三点は、最低資本金でございますか。
  68. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そうです。最低資本金が導入された年月日です。
  69. 澄田智

    政府委員澄田智君) 昭和二年の銀行法で最低資本金百万円、それから勅令をもって指定する地域に本店のある銀行、これが二百万円、こういうふうに定められました。
  70. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 ただいま発表になりましたように、昭和元年は千五百七十七行、四年になりますと千六行と減っており、十年にきまして五百五十九、二十年に至りまして、これは終戦時でございますけれども、七十六行ということに減っているわけですね。こういうふうに銀行が戦時中極端に昭和元年以降二十年の間にこのように整理をされたという原因は一体どういうふうに理解されますか。
  71. 澄田智

    政府委員澄田智君) 明治以来の銀行の数は非常に多くあったわけでございますが、それがいわゆる昭和の初めの金融恐慌のときに、非常に弱小銀行の倒産というようなものが大きな混乱を起こしまして、経済秩序の混乱となりまして、それ以後弱小銀行を整理をするということが最大の問題となって、ずっと整理統合を続けてきたわけでございます。これが昭和の初めからの情勢でございまして、先ほど申しましたように、元年と四年でも非常に減っておりますが、これは弱小銀行整理統合が行なわれております。昭和八年から一県一行主義ということが言われまして、できる限り一県一行に統合していくというようなことになりまして、それから整理がまた一段と進みまして、終戦時には七十六行というふうな姿になったわけでございます。現在その七十六行に当たるものは、ついででございますが、この七十六行の系統に当たるものとしては、四十三年三月末現在で八十五ということになると思いますが、そういう事情でございます。
  72. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 局長から単に経過的な内容について説明がありましたけれども、少なくとも昭和四年は、これは局長もおっしゃられましたように金融の恐慌時代ですね。昭和六年には満州事変が勃発しているんです。昭和十二年にシナ事変が勃発している。十六年に大東亜戦争、一貫して十二年間戦時経済下にあったわけですね。これは何びとも否定することができないと私は思うんです。そういう中で公債は昭和八年以降、いま発表されたように、四〇・七%ないし三〇・八%というぐあいに国債増政策をとった。当時の国債というのは、明らかに戦費調達の手段としてやられたのだから間違いない。そういう形できたから、一応政策的に昭和三年に銀行法というものを制定をした。そういういわば恐慌時代なり、あるいは当時の軍閥の政策によって大体見通しがついたから、政府は政策的に一県一行主義というものをとらせたのでしょう。そういういわば歴史的な背景の中でこのような銀行というものが私は削減の一途をたどった、こういうふうに考えるわけです。ですから、そういうものを無視をして今回のこの中小金融企業合併、もちろんこれは当時の戦時経済と現在の経済条件というものとは相当違うと思うんですよ。違うと思うんですけれども、何か中小企業金融合併ということに踏み切ったことに、今後非常に私たちは一面情勢背景として危惧をする点が一ぱいあるわけです。こういう点について大蔵大臣は一体どう判断をされておるのか。
  73. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 過去の問題といまの問題の比較は少し無理じゃないかと思います。私どもは今後できるだけ国債の依存率を下げていく、何年かの間にはもう五%さらに下げようという一つの目標をもっているときでございますので、今回の一連の金融機関合理化というようなものが公債の発行とつながっているというようなものではございませんで、公債の発行はむしろできるだけ依存度を低めようとしていま考えておるところでございますので、これと結びつけた考えは妥当ではないんじゃないかと思います。
  74. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それじゃもう一点、昭和二十年当時の国家予算と国債発行総額は幾らになっておりますか。おわかりですか。
  75. 澄田智

    政府委員澄田智君) 昭和二十年の国家予算に対する国債の発行の割合は五二・三%……。
  76. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 総額、額でお願いします。
  77. 澄田智

    政府委員澄田智君) 額ですか、財政規模が当時二百十四億九千六百万円でございます。これに対しまして、国債の発行額は百十二億三千二百万円でございます。
  78. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 ちょっとぼくの記憶と違うのですが、ぼくは八百八十億見当の国家予算じゃなかったか、国債発行の総額は千六百億と記憶しているが、これは間違いないですか。
  79. 澄田智

    政府委員澄田智君) これは一般会計予算でございますが、あるいは臨時軍事費特別会計等の問題があろうかと思います。それから千何百億というのは、これはおそらく国債発行の残高……。
  80. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 累積総額です。
  81. 澄田智

    政府委員澄田智君) 累積総額、残高でございますね。昭和二十年は千三百九十九億です。
  82. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 どこを比較の基準にしたらいいかわかりませんけれども、かりにいま国債の残高の総額は当時、終戦時に千三百九十九億と局長がおっしゃられた数字をもってすれば、五倍以上ですね、当時の国家予算が二百十四億とすれば。私は反対に八百八十億と記憶しておりますが、それはちょっとあとで正しい資料を出していただきますが、いずれにいたしましても、当時やはり一貫して金融体制確立、そのことは国債発行と相伴って表裏一体の中で私は遂行されてきた、そのことがいわば軍需産業、そういうところに集中的に戦争に勝つためということでやられた、こういうことだけは私は間違いないと思う。ですから、戦後財政法第四条においては、国債発行というものはこれはいかなる場合でもやっちゃいかぬというのは、そういう反省から出ている。ところが、政府は一片の特別措置法をもって改廃し、再度また国債の発行に踏み切った。このときわが党としては、当然それらに対して反対したのですが、強硬に現在もまた将来も続けようと、そういうものと最近の防衛庁予算の三兆四千なにがし——第三次の五カ年計画です。こういうものと比較しますと、どうも私は情勢が似通ってきている、こういうことが考えられる。それが大臣は飛躍していると、こう言うかもしれませんけれども、どうも私たちはそういう危惧の念を持つのです。ですからそういう面についてもう一度大臣の見解をお聞かせ願いたい。
  83. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 過去における公債発行というものが、これは当然問題となるものでございますので、したがって、ただいまではこの公債の発行がいわゆる建設公債に限られると、しかも日銀引き受けの公債は禁じられ、市中消化の公債に限られるということになっているのは、そういう過去のあり方から新しく厳密に規定されたものでございまして、したがっていまの公債の発行は、もういままでの公債の発行とは全く違うということと、国民負担を軽くする、もし国民が必要な公共事業、社会資本の充実を求める場合に、その年の税をもって公共事業をやるということはこれは国民にとって大きい負担でございます。しかも、できる資産というものは今後何十年間国民経済に貢献する資産でございますので、それをその年の国民の負担によってそういう社会資本の蓄積をするということは、これは明らかに適当でございませんので、したがってこの公債発行ということはやはり財政政策として必要だ、必要ではあるが、これだけ厳密な制限を置くのだということで運用をされておるのでございますから、そういう意味ではいまの公債発行は私は悪いものじゃないというふうに考えております。
  84. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連質問ですから簡単に申しますが、これはずいぶん前に論争したところなんですが、政府は国債の発行の弊害をチェックする歯どめの一つとして、ただいま大蔵大臣が言われたように建設公債である、建設公債とは何かと言えば公共事業費の範囲なんです、財政法の。ところが、実際にいまの公共事業費の範囲よりはるかに低い公債発行をやっておるのです。ですから公共事業費に限る、つまり建設公債だからということは歯どめにならぬのです。公共事業費のほうがはるかにいまの公債発行より大きいのですよね。いま公共事業費全部公債発行するとすれば、いまの公債発行よりさらに多くなるのですよ。だから公共事業費のために発行する公債、すなわち建設公債、すなわちそれが健全な公債とはいえないでしょう。いまでさえすでに売れないで、公債を予定よりふやさなければならない条件にあるわけでしょう。ですから建設公債といってこれまで政府がやってきた、つまり公共事業費をまかなうためのものが建設公債だからということは歯どめにならぬ。どうなんですか。そういうことになってきてやしませんか。いままでの経過から。
  85. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 先ほどから申しますように、公債の発行は、まず建設公債ということの制限を受けると同時に、市中消化という制限を受けておりますので、市中で消化しない国債を発行するということは事実上できないという、もう事実上のこれが大きい歯どめになっていると思います。
  86. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 しかし結果的には、市中消化と仰せられますけれども、日銀の国債保有をごらんなさい。いままで発行した公債の七割ぐらいは結局日銀に行っちゃってるんですよ、回り回って。一年間は担保あるいはオペレーションの対象としないとなっていますけれども、一年済んだらできるんですから。結局歯どめになっていないでしょう。だから結局公債発行をふやさなければならぬと、こういうことになってきているでしょう。ですから、建設公債だ、いや市中消化だと言っているけれども、それはいままでの経過からいって、それは公債発行を合理化する論拠を失ってきていると、こう言わざるを得ないんじゃないですか。いままでの経過からいってはっきり。だから今後公債発行の弊害をなくすためには公債発行自体を、まあ一番いいことはやめることですよ。あるいはもうどんどんこれを計画的に減らしていくと、そういうことじゃありませんか。結局いままでの論拠がもうなくなってきていると言わざるを得ないんです。いかがですか。
  87. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 現に昨年におきましては、全部で公債発行の削減が当初予算のときに比べて九百億円ということでございましたが、これもやはり市中消化という原則があるための一つのやはり歯どめの作用であったというふうに私どもは考えております。したがって今後の公債発行も、この二つの制限内に行なわれる限りは、私はそう弊害はないだろうと思います。
  88. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 まあいま木村先生もおっしゃったんですがね、やはり大蔵大臣は歯どめ歯どめとこう言ったんですが、同じようなことを四十年度当初、赤字公債を発行するときに福田大蔵大臣が当時言ったんです、そういうことを。それは九〇%市中消化でいくから、これをもって最大の歯どめとする、だからそういうことは一切心配ありませんと。しかし現状はそういっていないでしょう。結果的には一年経過したものを日銀買いオペという、これは最初からもう日銀引き受けと同じような方向にいまきているんじゃないですか。ですからそういうところからいけば、当時幻想を与えた歯どめ論争というものは、いまは何の効果も与えていない、こういうことだけははっきり言えるんじゃないかと思うんですがね。あらためてその点ひとつお伺いします。
  89. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 日銀が買っておりますのは、次の国債消化を助けるという意味じゃなくて、御承知のように、必要な成長通貨をどう調達するかということについて、昭和三十七年から大体オペレーションによって必要通貨の調達をするという方針がとられて、こういうふうに今日まで運営されてきましたが、このオペレーションの対象になる証券類といいますと、何といってもやはり国債が一番信用あるものでございますので、国債を対象とした運営が行なわれておるということでございまして、これはまた一面、従来オペレーションの対象がなかったということから考えますと、ただいまはむしろ景気調整策というようなことについては日銀が機能を発揮し得るということも言い得るわけでございまして、このことと、日銀引き受けの公債を現在われわれが出しているのだということは全く違うことでございまして、これは全然別の話だと私は思います。
  90. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 この論争はいつまでやっても、これは将来の事実が立証するでしょうから、ひとつ先に質問を進めたいと思います。  それで労働問題について若干お伺いをしたいと思うのですが、金融保険業の過去十年間の賃金上昇率ですね。これは全産業の労働者と比較をいたしましてどういう割合になっていますか、それを説明してください。
  91. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 労働省でとっております毎月勤労統計調査がございます。それによりますと、その内容は現金給与総額でございますので、超勤手当からボーナス等も入った総計でございますが、ただいま過去十年間とおっしゃいましたが、ちょっと三十五年からの数字しかいま持ってきておりませんので、三十五年から申し上げますというと、調査産業総計におきまして、昭和三十五年が実額におきまして二万四千三百七十五円でございます。昭和四十二年におきましては、それが四万八千七百十四円ということになっております。それに対しまして、これは金融保険業という分類になっておりますが、昭和三十五年におきまして、三万二千百九十一円、それから四十二年におきまして、五万九千五十八円ということになっております。  アップ率でございますが、これは三十五年対四十二年のアップ率が、ちょっと計算すれば出ますのですが、出ておりませんので、年率で申し上げますと、調査産業計におきまして、全部申し上げましょうか、年率でございますので。
  92. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 三十五年と四十二年で発表しましたから、それでいいです。
  93. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 対前年比しかちょっと数字がございませんので、対前年比で申し上げますと、昭和三十五年におきまして調査産業総計におきまして、前年に比べて六・八のアップでございます。それからごく最近の三年間を申し上げますと、調査産業全体におきまして、四十年におきましては対前年比九・五%、四十一年におきましては一〇・八%、四十二年におきましては一二・一%でございます。  それから金融保険業におきましては、昭和三十五年は対前年比四・四でございます。それから最近の三カ年を見ますというと、昭和四十年におきましては対前年一〇・一%、四十一年九・七%、四十二年八・四%というふうになっております。
  94. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 その調査内容によりまして、全産業労働者の賃金上昇率とそれから金融保険関係の労働者の場合に、どのくらい金融保険の労働者の場合にアップ率が高まったという回数ですね、何回ありますか。その割合において、全産業労働者の上昇率とそれから金融保険関係の労働者のアップ率と比べて、この金融保険の労働者のアップ率の上回った場合ですね、何回くらいありますか。
  95. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 昭和三十五年におきましては、金融保険業のアップ率が下回っております。三十六年におきましても下回っております。三十七年におきましては同率でございます。三十八年は下回っております。それから三十九年が下回っております。四十年は上回っております。四十一年は下回っております。四十二年も下回っております。
  96. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そうすると、こうして見ますると、金融保険関係の労働者は三十五年以降四十二年までの統計で見ますと、全産業労働者のアップ分と比較してわずか一回しか上回っておらない。あとは全部下回っている。こういうことがいまこの労働省調査によって発表されたわけですが、こういう内容について大蔵大臣どう考えますか。金融保険関係の労働者の待遇上の問題についてはどうお考えになりますか。
  97. 澄田智

    政府委員澄田智君) 全体の傾向としては、ただいまのようなことであると思いますが、ただいまの全産業の調査と金融業というものを比較をした場合には、いろいろいまの比較のアップ率だけで判断のできない要素もあるいはあるのではないかとも思われるわけでございますが、賃金水準全体として見た場合に、なおこの金融関係あるいは銀行というものの水準が高いことだろうと思いますし、アップ率だけで判断のできかねる問題もあるのではないかというふうに思われます。なおそういう点についてはよくお話を伺ってみないと、ちょっと申し上げかねるわけでございます。
  98. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 労働省の発表ですと、四十二年の最近の事例をとっても五万九千五十八円が平均賃金だと、こういう発表です。これは局長、年齢平均と勤続年平均、これはわかりますか。この賃金の平均は。
  99. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 賃金構造基本調査というのをやっておりまして、それで当たりますと出てまいりますが、きょうは持ってまいっておりませんのでたいへん恐縮でございますが、性別、年齢別、勤続年別というのがちょっと申し上げかねるのでございますが、あとでまた調査をいたしたいと思います。
  100. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それはあとでひとつ資料で提出をしてください。  銀行局長のほうでわかりますか。いまの四十二年の五万九千五十八円の年齢別平均、性別平均、それから勤続年数、それから賃金体系、こういうものについて。
  101. 澄田智

    政府委員澄田智君) ちょっと私どものほうの手元に資料がございませんので、わかりません。
  102. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それは大蔵省と労働省の調査では違うでしょうかね、内容が。
  103. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 給与につきましての全般的な調査といたしましては、政府の統計におきましては、この毎月勤労統計調査が一般に使われておりまして、そのほかに総合的な調査というものはないのではないかと思いますが、ただ銀行局として独自の御調査をなさっておられれば、それはあるかと思いますが、全般的、統一的な調査としてはこれだけでございます。
  104. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いや、大蔵省と違うでしょうかと、こういうことです。調査の内容はわかりました。大蔵省とその調査結果は違うでしょうかと、こう聞いている。
  105. 澄田智

    政府委員澄田智君) 銀行局として特別な金融機関に対する調査を、賃金のいまのお話のような面の調査というものをいたしておりませんものですから、結局労政局長の言われた調査によるわけでございます。
  106. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それじゃ労政局長のほうで資料を作成して御提示を願いたい。  それで銀行局長にお伺いをしますけれども、いま行員ですね、労働者の数はどのくらいですか。職員全体の数でけっこうです。それから性別、これはわかりましょうか。性別と数です。
  107. 澄田智

    政府委員澄田智君) 男女別の、性別のあります資料は四十一年三月末でございますが、四十一年三月末で普通銀行全体で従業員数二十三万二千八百四十二人、このうち男子職員が十二万千二百十九、それから女子が九万九百九十三ということになっております。
  108. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 九万幾らでしょうか。
  109. 澄田智

    政府委員澄田智君) 九万九百九十三でございます。
  110. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 行員数はこれは結局プラスしたものということになりますね。そういうことで理解していいでしょうか。
  111. 澄田智

    政府委員澄田智君) 先ほど申しました二十三万というのが行員全体の数でございます。二十三万二千八百四十二。
  112. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それでいいんですか。
  113. 澄田智

    政府委員澄田智君) それでいいです。
  114. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それからもう一つお伺いをしますけれども、いま銀行の全体の中で組合の数は幾らくらいありますか。それで所属組合員の人数は御存じでしょうか。
  115. 澄田智

    政府委員澄田智君) 特別な組合関係の調査をいたしておりませんものですから、よくわかりかねるわけでございますが、組合が二つあるところがある普通銀行が十行ばかりございます。そのほかの普通銀行は一組合ということになるわけですが、組合のないところがありますかどうか、そこがちょっとわかりかねますものですから、組合数というのはわかりません。  それから組合員の数は、私どものほうはそういう数字を持っておりません。調査をいたしておりません。
  116. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大蔵大臣、この銀行関係の労働者に対する労務政策の基本的な考えはどういうようにお持ちですか。その考え方、労働対策について……。
  117. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 私のほうでは銀行局が銀行のいろいろ監査、指導をやっておりますが、労使関係には立ち入らない、現在立ち入った労務監査をしておりませんので、特別に大蔵省銀行に対する労務政策をどうするというものを現在持ってはおりません。
  118. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これは昭和三十八年十二月十六日ですけれども、「各店長殿、総務部総務課」、こういうことで、「大蔵省検査講評写送付について」、こういうのが大東相銀のあれから出ているわけです。この内容を見ますると、この大蔵省の検査講評、主任検査官が湯山政治、日時は昭和三十八年十一月二十八日、場所は本店会議室、検査期間が昭和三十八年十一月十二日から昭和三十八年十一月二十七日まで、検査基準日が昭和三十八年十一月十一日というようなことで、以下要旨として、その検査講評内容についていろいろと文章が載っておる。作成した文書がある。行内における業務の指導内容、いろいろとあるようでありまするが、さほど問題になるようなことはあまり言っておらぬ。しかし、この後段にまいりますと、組合に対しては非常に強く指摘しておる文章がある。ちょっと読みますけれども、「最後に当行の改善しなければならない問題は何か、現在時点に於ける本当の姿と云うものを少し申し上げたいと思います。一つは組合問題です。御存じの様に当行組合はここ一、二年非常に強くなって色々問題を起した。特長的なものを申し上げますと、完全ユニオンであること、それから給与体系は年令給一本で他に何んらメリットがない。それから組合活動というのは届出さえすれば時間内に或る程度の組合役員は自由な行動が出来る、幾ら業務を阻害してもチェックが仲々出来ない。そう云う様な点、陰に陽に銀行の業務推進にブレーキをかけている」と、こういうことがこの検査講評写しの中には明確に明記されておる。これは明らかに大蔵省銀行局から行って、大東相銀に対して監査をした内容がこういうことになっておる。この点はどう一体御理解なさっておるか。
  119. 澄田智

    政府委員澄田智君) 金融検査は、金融機関の公共的な性格にかんがみまして、その業務とか財産の状況等の把握をすると、そして預金者保護とか、あるいは金融機関の公共的な機能の発揮という点から見るわけでございますが、したがいまして、経営内容として資金コストの重要な構成部分である人件費率等について、他行との比較等をいたしまして著しく高いというような場合には、まあそういう指摘をすると、それがしかも金融機関の健全な経営を確保する上で人件費を引き下げるというような努力というものが必要なような場合には、そういう指摘をすることは事実でございますが、それ以上立ち入って労使関係——給与べースを含みます労使関係に検査そのもので立ち入るというようなことはやらない方針で、これはずっとそういうふうにやってきておるわけでございます。その点は慎重にその検査の目的という範囲に限定をして講評等をやっております。ただ、いま御指摘のケースはよく調べてみますが、講評そのものでなくて、検査官と経営者との間のまあ雑談的ないろいろな話というような中にそういう雇用の関係というようなものに触れた場合があって、それを引用しておるというような例ではないかと思うわけであります。これは私の想像でございます。
  120. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 銀行局長のほうは御存じないという答弁ですけれども、もしそういうことがあったとしたら、労政局長、これはどういうことに解しますか。
  121. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 銀行の検査の目的は、ただいま銀行局長が申されましたような預金者保護ということでございますので、当然経理内容の検査をやられるわけですが、その場合に、たとえば物件費人件費等のコストにつきまして、ただいま御説明ありましたように、同じような同種の銀行で比べたところが、特にその銀行人件費が高いというようなことを指摘する場合はあり得ると思うのであります。その場合に、それは人数が多いとか、あるいは単価が高いとか、いろいろあると思うわけでありますが、一方におきまして労働条件の決定というものは、労使対等の原則によりまして労使協議によって定めるという原則になっておりまして、多くの場合は労働協約を持っておるわけでございます。したがいまして、そのような経理内容の検査、コストというような面から労働協約の内容にも関連する問題が取り上げられるということは、私はあり得ると思うのであります。したがいまして、検査の際にそのような経理の内容コストという面からそれぞれのファクターに触れて、その中に人件費の問題があり、給与があるということもあり得ると思うのでありまして、その限りにおきましては、私はそれは検査としては別に差しつかえのないことであるというふうに思うのでありますが、一方労働組合法におきましては、たとえば労働組合の組織、運営等につきまして介入してはならない、それからまた労働組合を結成し、あるいは組合員であると、あるいは正当な組合活動をやったということのゆえをもって不利益な取り扱いをしてはならないといったような、またその他の規定があるわけでございますが、そのような労働組合法で不当労働行為として禁止をしておるような事柄につきましては、これは検査の際といえども、それに抵触するような内容の検査があってはならない。これは使用者に対して不当労働行為、違法であるということで禁止をしておる行為でありますから、そういう内容のものは検査の際においても行なうべきでないというふうに考えます。
  122. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 松永労政局長ね、一般法律解釈論を聞いているのではないのです。私は具体的な事実行為を指摘して、ここで言っているように、最近この組合が非常に強くなったのですね、そういうものが陰に陽に銀行の業務運営を阻害している、こういった具体的な指摘事項について、これは不当干渉と言わないかどうか。この事実行為に対して、この内容については銀行局長あとで確かめてこちらのほうに通知するということですから、これは確かめてもらいますよ。この内容について、かりに事実行為があったとすれば、これは不当干渉にならぬか、このことを具体的に聞いているのです。
  123. 松永正男

    政府委員(松永正男君) ただいま御指摘のような表現をもし用いたとしますと、やや問題があるかと思います。たとえば労使関係につきまして、その検査対象の銀行の労使関係が非常に不安定であって、これは銀行の経営についても大きな影響があるし、預金者に対してもそのような状態では責任は果たせない、こういう指摘はあっても差しつかえないと思うのであります。常にトラブルが起る、しかしそれはどちらに罪があるかということは、それぞれの状況といいますか、労使双方の問題でございますので、そこの判断はいろいろあるかと思いますが、したがって、ただいま御指摘のその銀行におきまして、そのようなトラブルの原因が組合側が悪いためにあるのか、経営者が悪いためにあるのかというような判断につきましては、これは非常に慎重を要する問題だと思いますが、一般的にトラブルが絶えない、そうなりますと銀行経営上問題じゃないかという指摘はあってももちろん差しつかえはないと思うのであります。それから先ほど御指摘がありました、たとえば組合活動の問題にいたしましても、一般に組合活動につきましては、協約において協定を結びまして、このような場合には届け出によって活動ができるとか、あるいは人数がどうであるとかいうような協定を結ぶのが普通のわけでありますけれども、しかし、その場合に給料をもらいつつ組合活動をするというようなことになりますというと、むしろ組合法で禁止をしておるところの組合に経費援助をしてはならないという項目に該当するおそれもあり得るというふうに思います。
  124. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 どうも労政局長大蔵省に遠慮して言っておるようですがね、具体的に「御存じの様に当行組合はここ一、二年非常に強くなって」いる、これは法律的に読みかえるならば、団結権の象徴であろうと私は思うのです。それから次にくるものは何かというと、「特長的なものを申し上げますと、完全ユニオンである」と、こう指摘している。具体的に組合の組織形態について、これは労働法でもきめられている。これは全く労働者の一方的な自由な権利でしょう、そうじゃないですか。あるいは給与体系は年齢給一本だ、これも労使双方できまったことなんでしょう。これに何が問題があるか。そういった具体的な事実について労政局長は一体どう考えるか、かりにこういうことがあったとしたら。具体的な問題について伺いたい。
  125. 松永正男

    政府委員(松永正男君) ただいま完全ユニオンというのは、おそらくユニオンショップ協定のことではなかろうかと思うのですが、従業員は組合員であるといったようなことでありますが、これは労使の労働協約において普通きめられる問題であります。したがいまして、経営者側が協定を結ぶか結ばないか、これは自由でありますし、労働組合が結ぶか結ばないかも自由であります。一般論といたしまして、団結権というものは労使がお互いに相干渉せずに、組合は組合員のフリーな自由意思によりまして、組合に加入することも脱退することも結成することも自由に行なえるというところにあるわけであります。
  126. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 ぼくは具体的な事実を指摘しているわけです。この問題についてはどう考えるか。
  127. 松永正男

    政府委員(松永正男君) したがいまして、ユニオンショップであるということにつきまして、ユニオンショップというものは労使の協定によって結ばれるものであります。いわば契約事項でございます。したがいまして、そういう契約を結ぶか結ばないかという問題でありまして、組合側で全く自由にきめられる問題ではないということを申し上げたかったわけでございます。
  128. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 私は、組合側の申し出がどうのこうのじゃないのです。聞いているのは、講評監査に行った大蔵省の主任検査官という方が、こういう文面で大東相互銀行に対して行政指導の内容に入れて指摘をしておる。そういう事実行為によって一体労働組合に対する不当干渉にならぬのか、内容一つ一つこういうことだ、こういうことで具体的に言っているのです。だから、そのことについて労政局長としては、憲法なり労組法に基づいて、当然労働者の権利が保障されているかどうかということを端的に言ってもらえばいいのです。何も労働組合のそういうどうのこうのという抽象的な問題じゃなくて、このやった大蔵省の検査官の事実行為はどうなんだ、こういうことです、これが事実だとすれば。
  129. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 先ほどから申し上げておりますように、いまの指摘のありました事項につきまして、たとえばこの給料等の関係がはっきりいたしませんが、給料をもらいつつ組合活動ができるというのは、むしろ組合法としては望ましくないと考えておるような事項でございます。それから、ユニオンショップにつきましては、どういうことを言ったか、詳細にはわからないのでございますが、ユニオンショップ協定を結ぶか結ばぬかという内容は、たとえば賃金アップを幾らにするかということを労使の協定で結ぶと同じような意味におきまして、経営者側が自由に判断をし、そして組合側と結ぶ事項に属するという意味を申し上げたのであります。したがいまして、労働条件につきましてこの銀行を監査したところが、労働時間が普通のところよりは非常に短い、あるいは賃金が非常に高いといったような経営コストの面からしての検査の講評ということは、御指摘のように、そのこと自体は労働協約で結んでおりますので、労使関係に響いてくる問題であります。しかし、そのような、他と比べた場合にどうだという指摘をされた。そういう指摘を踏まえまして、労働条件というものは、しかし、あくまで労使の間で話し合いによって、協定によってきめていくということになるわけでございますので、労働協約の内容影響があるような事柄については一切検査をしてはならないということにはならないかと思うのであります。その意味におきましては、この経理監査の面からする検査官の意見というものも、一つの要素として経営者が踏まえまして、しかし、労働条件の決定等につきましては労使で自由な立場で協議をして、そうして意見が合致すれば協定できめていく、こういうことになるのが筋だと思います。
  130. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 私は、業務遂行上いろいろ諸条件というものがあるでしょうから、当然、監査ですから、業務指導ないしそういう面からいろいろ検討されることは、それはあると思うのです。だけれども、先ほど大蔵大臣に聞きましたら、労組問題については、労使の立場に対して介入しないと言っている。これは明確な大蔵大臣は答弁をしているのです。それで、いま私が具体的に読み上げたのは、かくかくのようなことが組合が強くなって問題が起きているようだ、分ければ四項目あるのです。もう一度読みますと、特徴的なものを申し上げますと、完全ユニオン、これはいけないということなんです。否定しているのです。それから、給与体系は年齢給一本で、ほかに何らメリットがない、これはいけないですよ。それから、組合活動というのは、届け出さえあれば、時間内にある程度組合役員が自由に行動できるようにしている、それはいけませんよ。それから、業務を阻害してもチェックがなかなかできないというようなことではいけませんよ。こういうことなんじゃないですか、この内容は。だから、こういうものについて、陰に陽に銀行の業務推進にブレーキをかけている、こういうことなんだから、そういう解釈になりませんか。これをちょっと見てください。
  131. 松永正男

    政府委員(松永正男君) ただいま大蔵大臣からおっしゃいました、労使関係につきましては一切ノータッチであるという方針からいいますと、やはり労使関係の分野に踏み入った問題だと思います。したがいまして、まあ組合が強くなったという非常にラフな表現で、どういうことを言わんとしているのかよくわかりませんが、この組合に対する批判といいますか、このことば限りでは批判かどうかわかりませんが、事実を言っているようにも見えるのでありますけれども、先ほど来銀行局長の言っておられます経理の監査という線から言うと、やはりややはみ出しているという感じがいたします。
  132. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それじゃわかりましたけれども、あとでひとつ銀行局長のほうからよくお調べになって、その事実行為等について出していただきたいと思います。  それで、具体的に大東相互銀行の場合ですけれども、問題があるようなんですが、それは第一組合と第二組合とが、非常に賃金問題なり日常の業務なり、あるいは待遇上の問題で差別扱いを受けている、こういうことがあるのですけれども、もしそういうものがあるとすれば、これは不当労働行為事象となりませんか、どうですか。
  133. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 不当労働行為になるかならぬかということにつきましては、非常に事実審査を詳細にやりまして、労働委員会におきまして、あるいは裁判所におきまして審査をいたすので、具体的にどの銀行のどれが当たるかどうかということはお答えを差し控えたいと思うのでありますが、組合員であるがゆえに差別を行なったということであれば不当労働行為になると思います。
  134. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 こういう実例があるわけですけれども、組合員が一応経営者のほうから解雇通告を受けました。それで、地労委で組合の救済申し立てが全面的に認められる。ところが、この銀行は、そういう判定が下ったのにもかかわらず、これを守らず、中労委に再審申し立てをやった。この点までは、私は、この地労委の判定、それから中労委への再審申し立て、これは法律に基づいてやったんでしょうから、これはいいでしょう。ところが、その係争中に、一回首を切っている者を、再度再解雇を通告しておるんですね、これは一体どういう解釈なんですか。
  135. 松永正男

    政府委員(松永正男君) ただいまの御指摘のような例はほかの会社等におきましてもときどきございます。しかし、不当労働行為制度というものは、その解雇が有効であるか無効であるかということとは別に、労働組合法に基づきまして、それが不当労働行為であれば労働委員会が原職復帰、バックペイ等を命ずるわけでございます。その命令が確定をいたしました場合に、その命令に従わないという場合には、一日につき十万円以下の過料に処すということになっております。で、再解雇というような形をとろうととるまいと、労働委員会の命令が出ました場合には原職復帰、バックペイの義務があるということになりまして、それに従わない場合には過料に処せられる。それから、また、裁判の結果で判決が確定をしたという場合には刑罰が科せられるということになっております。
  136. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 結局、労政局長見解ですと、地労委で一たん救済申し立てをやって判定が下ったんだから、経営者側は中労委へ再審をしようがしまいが、その決定に従え、こういうのがたてまえ、そうですね。違うんですか。
  137. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 労働委員会といたしましては、地労委と中労委と二審制になっております。で、地労委の命令に不服がありました場合には、一定期間内、たしか十五日だと思いますが、十五日以内に中労委に再審請求をいたします。そして、その再審の結果、中労委が地労委と同じように原職復帰、バックペイを命じたということになりますと、使用者側がこれに不服の場合の対抗手段といたしましては、東京地裁に対しまして、中労委の決定に対しては不満であるという訴訟を提起いたすわけでございます。これに対しまして中労委から緊急命令の請求を地裁にいたすわけであります。そうして、この緊急命令が下りました場合、地裁によってこれが支持されました場合には、これに従わない場合には過料に処せられるということでございます。したがいまして、中労委段階を経て、その中労委の命令が緊急命令で支持されるという段階におきまして過料という段階になります。それから、さらにその解雇、再解雇が有効か無効かという問題はまた別と。たとえば裁判所における無効確認の訴えというような訴訟を提起いたしまして、効力問題は別個になります。しかし、労使関係におきましては現実の問題が非常に大事でございますので、そういう法律上の有効無効とは別に、いま申し上げましたような中労委の命令、そして緊急命令が出た場合にはそれに従わなければならない。訴訟はそれでまた別途やってもそれは差しつかえないけれども、中労委の緊急命令には従わなければならない、こういう立て方をとっておりますので、いま具体的なケースにおきましては、中労委の再審の結果、同じような命令が出る、それを緊急命令として東京地裁が支持をするということによりまして過料をもって強制をするということになっているわけであります。
  138. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 法的な解釈はわかりましたけれども、その一回首を切られていま係争中であるそれをさらに二重解雇したというこれは、解雇の乱用になりませんか。
  139. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 労使の争いの接点でございます。したがいまして、解雇権の乱用、あるいはその解雇が有効か無効かという法律問題はあるのでありますが、労使関係としての処理といたしましては、いまのシステムによって、とりあえずと申しますか、あるいはことばとしては、たとえば本訴に対する仮処分的なものとして、労働委員会の命令によって、とにかく生活問題でもあるし、原職に復帰させるという措置がとれるような法体系になっておるのであります。したがいまして、いま係争中の問題につきまして、会社側としてその解雇が正当であった、組合のほうは不当労働行為であった、地労委は不当労働行為であるという判定をしたわけでありますが、さらに中労委において争っております際に、正当であったという主張をすることは一向に差しつかえないかと思いますが、それをまた再解雇という形でやるということが適当かどうかということであれば、さらに紛争を激化させるという意味におきましては、必ずしも望ましくないというふうに思います。   〔委員長退席、理事植木光教君着席〕
  140. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 ただいまの事実経過について局長御存じですか、内容を。
  141. 松永正男

    政府委員(松永正男君) ただいま中労委に係属中でございますので、その審議録を読みますと具体的な内容承知できるかと思うのでありますが、私はまだこの経過の概要だけを、実は御質問があるというので、中労委に電話をかけましてとりあえず調べましたので、内容を具体的には詳細に存じておりません。
  142. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それじゃ、あとでただいまの事件の内容について当該銀行に照会をして、ひとつ資料として提示をしていただきたい。  それから、大東相互と静岡相銀の組合が分裂していることは銀行局長御存じでしょうか。
  143. 澄田智

    政府委員澄田智君) いま御指摘になりました大東相互、それからもう一つ静岡相互、これは組合が二つあるというその状況は聞いております。
  144. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 私もだいぶその面の経験はあるのですけれども、分裂には必ず職制の介入があることは間違いないのですね。一つ一つその不当労働行為事象などの例示はいたしませんけれども、ただ、そのことによって非常に第一組合に対する差別待遇が具体的に起きている。一つの事例としては、人事異動の際に、第一組合員に対しては、夫婦でありながら五十キロぐらい遠隔の地に飛ばしてしまって別居生活をさせてしまう、これは全く人権そのものにかかわる問題だと思うのですがね。そういうことをさせたり、あるいは職場に出てきても、いやがらせのために正当の業務に就労させずに、バイクを洗わせたり、そういう雑用に供する。少なくとも、その職員として採用され、就業規則があり、労働協約があって、そういうもとで労使慣行というものが結ばれているにかかわらず、あえてそういうものを権力的にやってくる。そういうところに一つは分裂を助長して、結果的には職場全体を不明朗におとしいれる、こういうことですね。そういう事実行為というものが非常に多くあるのでありますけれども、そういった事実行為については御存じないですか。
  145. 澄田智

    政府委員澄田智君) 組合が二つに分裂しているというそういうことは承知をいたしておりますが、いま御指摘のような事実については承知をいたしておりません。
  146. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 もしかりに調査の結果そういう事実行為があったということになれば、大蔵大臣はどういう措置をこれにやっていきますか。
  147. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) やはり大蔵省の監査も、労使のそこまでに介入をして、こうせいああせいというところまではやらぬ方針になっておりますので、介入はいたしません。
  148. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そうすると、そういう問題については、一面、労使問題で解決をしなさい、一面は、法的にいろいろ問題があればやりなさい、こういった全く自主的な形をとらせるのですね。関与しない、これは一貫しておりますね。労政局長、いまの事実行為があったら、これは労働省の労政局としてどういう態度をとりますか。
  149. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 一般的には組合法七条に違反するような行為をなしてはならない、これは明確なことでございますので、いまおっしゃいましたようなことがありますというと七条違反の疑いが濃厚でございますので、そういうものについてはなすべきでないということを労働教育の面におきましてふだんから周知徹底をするということが私どもの行政の一つの目的でもございますので、そういう点につきましての周知徹底をつとめますとともに、具体的に事件が起きました場合には、これを処理する担当の機関である労働委員会等においてこれが処理されるということが望ましいと思うのであります。
  150. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これが事実だということになれば、労政局長、不当労働行為になりませんか。
  151. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 実は、私も中労委に籍を置きまして、不当労働行為の審査をたくさん取り扱ったのでありますが、具体的にこれが不当労働行為に当たるかどうかということが非常に微妙な問題でございまして、事実審理を何十ぺんと繰り返しまして、その結果判定をいたすということになっておりますので、個々具体的な問題につきましては、労政当局、労働省当局からそれは不当労働行為だというようなきめつけ方をするのは非常に軽率でありまして、また、危険もあると思うのであります。ただ、抽象的に、たとえばいまおっしゃったように、組合が二つありまして、一つの組合を差別する意思をもちまして不利益な取り扱いが行なわれたということになりますれば不当労働行為が成立するというふうに考えます。
  152. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 もう一つ具体的な事実、たとえば静岡相銀において実際あったのですが、昨年の年末一時金の場合に、平均二・三カ月の一時金を支給したわけですね。最低が〇・六カ月、最高が二・七カ月、こういう段階方式でもって支給をした。その場合に、第一組合の平均は一・八カ月なのです。こういうぐあいに、銀行ですから、科学的にノルマなり、あるいは個人の評価基準というものがあって、明確に科学的に実証できるものがあるかどうかわかりませんけれども、こういうことは普通の場合考えられますか。
  153. 松永正男

    政府委員(松永正男君) たとえば年末ボーナスにつきまして、普通の場合、一律支給部分、あるいは考課査定部分といったようなことがございます。あるいは全部考課査定ということもあるかもしれませんが、その場合に、第一組合、第二組合を通じまして、同じ基準によりまして、個々に、たとえば勤務評定等、勤務実績に応じた取り扱いがなされておれば、たまたまその結果、組合員を集計してみると、第一組合のほうが低かった、あるいは第二組合のほうが低かったというようなことがありましても、それのみをもってしては不当労働行為とは言えないのではないか、その基準の適用におきまして、差別意思をもって差別をしたという事実がありましたときに不当労働行為が成立するというふうに考えております。
  154. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 一貫した状況があるのだろうと思います。分裂時におけるそういう不当干渉、分裂したあとにおける両組合に対する勤務上の問題、待遇上の問題、こういう一貫した形の中で、終始職制の圧迫なり、そういうことがなされるというところからいけば、最も大事な賃金等の問題についてそういうふうに差別をつけるということは、全く私は労務政策上からいっても最低じゃないか、そういうことがますます職場を不明朗化し、不団結の要素を増大し、一面においては業務遂行上非常に支障を来たすということは明らかなわけです。どこへ行ったって、銀行へ行ったって何したって、われわれ国政調査に行っても、何といいますか、その銀行の標本というものは人間の和であるとかいうことをやっているわけです。そういうのにもかかわらず、実際に運用されている労働政策というものは、各銀行とも、これはあげれば枚挙にいとまがないのです。きょうは時間がありませんから、一、二例でやめておきます。そういう周囲の経過状況から推して、一体こういう問題は各所にあるというのはどういうことか。
  155. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 個々具体的には、先ほど申し上げましたように、慎重な判定を要する問題だと思うのでありますが、職場におきましてそのような不当労働行為、あるいは不当労働行為的なことがひんぱんに行なわれる、トラブルが絶えないということは望ましくないことでございまして、これは改善を要すべき点だと思います。
  156. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 労働問題に入りましたから、続いてお願いをしたいと思います。いま銀行の中で出納違算が出た場合、一日金を扱ってまいりまして、結果的に締めますね。その結果、取り扱った金額が一万円損したとか、そういう違算が出た場合、これは各銀行のそういう違算金に対する処理方式としては、大体私が行内の就業規則などを見れば銀行負担ということがたてまえのようであります。ところが、最近そういう問題について非常に個人負担、間違った本人、ある銀行では百万円損をした。ところが、一カ月一万円ずつ月賦でもって百カ月支払えということなんです。これは全く生活の圧迫だろうと思うのです。こういう問題について、意識的に、計画的にそういう自分自身が盗難なり紛失のそういうものがあるとすれば別ですけれども、全く善良で、それはほんとうに多忙な当時の状況で、仕事の作業上そういうことができなかったというような場合にどういう措置のほうが局長としてはいいと思いますか。その考え方について。
  157. 澄田智

    政府委員澄田智君) 通例の場合ですと、出納関係の仕事に従事している者に対して特別な出納の手当を支給する。まあそのかわり、ある程度個人の責任ということを問うというような仕組み、やり方の場合と、それから、特別に重大な過失がないというような場合には、これは銀行の負担でやる。こういうようなやり方と、いろいろやり方があるようでございますが、いずれにしても、本人のその場合の状況から類推して、そうして非常に過失というような問題が特別にからまるわけで、やはり金融機関の性格として、出納というものを非常に厳格に個人に責任を持たしてやる、正確にやらなければならないという金融機関の性格、そういった特殊な条件というものを考えて、そうして、しかし、他方、個人に過度の負担になるというようなことはもちろん避けなければなりませんので、十分その点については各銀行で注意をしてやっていっているかと考えておりますが、一般的な問題としてはさようなことではないかと思います。
  158. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大体いまの銀行で、従来やってこられた銀行側の負担というたてまえは、ことさら意識的にそういうものがなければそれでよろしいと、こういう考えですね、これは確認していいですね。
  159. 澄田智

    政府委員澄田智君) 通常の場合として、本人の重大な過失というものがない場合の事故というのは、金融機関がしいて個人負担にするということではない、そういう処理のしかたというのが通常とられているのではないかと思います。
  160. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 じゃ、時間もありませんから、統一経理基準というのは一体どういう内容を持ったものであるか、ちょっと説明をしていただきたい。
  161. 澄田智

    政府委員澄田智君) 従来、金融機関の決算経理のやり方におきましては、必ずしも統一した基準というものはございませんで、各行それぞれ行なっておったわけでございますが、その期の営業成績を明らかにするということがやはり金融機関の適正な競争を行なっていく上においては最も必要なことである、こういうような認識のもとに、昨年の九月期から、普通銀行につきましては、決算処理にあたって諸償却及び準備金、あるいは引き当て金繰り入れについて一定の原則を立てまして、その原則に従って各行が経理を行なう。たとえば貸し倒れ準備金で申しますと、期末における貸し出し残高の千分の十八というものを毎期継続的に繰り入れる、こういうようにいたしたわけでございます。その他、価格変動準備金、あるいは退職給与引き当て金、あるいは不動産その他の償却というようなものについての原則をきめたわけでございます。ただ、一挙にこの原則どおりにまいらないところもございますので、三年間の経過期間というものを設けまして、三年後にはすべてこの原則に従って決算経理が行なわれる、こういうようなことに業界と話し合いの上でそういうふうにきめまして、その内容を通達をいたしまして実施に入っております。
  162. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それは一応局長もかつてこのことについて声明を発表している事実もありますからわかるんですけれども、結局この不動産の償却については、税法基準の一五〇%相当額を毎期継続的に償却する、それから、貸し倒れ準備金の繰り入れ率は、期末における貸し出し残高の千分の十八として、これは毎期継続的に繰り入れる、退職給与引き当て金については、自己都合退職の場合の退職給与規程による要支給額の一〇〇%を目標として毎期計画的に繰り入れることとする。それから、経過期間は四十二年九月から四十五年三月までの三年度、こういうことになっているわけですね。この形で今後強く規制をしていくということになれば、いままでは預金のかり集め等には非常に各銀行競争が激しくやられておったその競争が、今度はいろいろこういった内容において、先ほど局長もおっしゃられた経理内容、業績内容まで全体がやられて、そうしてこの業績格差というんですか、そういうものも表面に出てくるということになりますと、えらい競争激化という状態になると思いますし、一体いまの相互銀行自体の中でこの基準案で今後やっていける可能性があるのかどうか、この見通しについてはどうですか。
  163. 澄田智

    政府委員澄田智君) ただいま相互銀行についてのお尋ねだと存じますが、相互銀行につきましては、実はただいまこの統一経理基準の実施の準備といたしまして、まあいろいろ話し合いをいたしておりまして、できますれば本年の九月期から実施をするということで、現在なおいろいろ検討をいたしております。したがいまして、先ほど申しました、いまお話のありました普通銀行の基準と必ずしも全然そのとおりのものになるかどうか、まだこれは今後の検討に待つわけでございますが、いずれにいたしましても、その準備期間中にこのような基準に適合した経理ができるようなそういうふうな基準自体も、そういう意味実情に即したものというようなことで考えていかなければならないと、まあかように考えております。
  164. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して。じゃ信用金庫についてはどうなんですか。
  165. 澄田智

    政府委員澄田智君) 信用金庫は、まあ業態の内容も、それから、会員組織というような点につきましても、   〔理事植木光教君退席、理事小林章君着席〕 いろいろ違う点がございます。相互銀行に統一経理基準を実施いたしまして、引き続いてその後信用金庫に対しても何らかの基準を考えたいと、かように考えております。
  166. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その中身について、さっき相銀についても、中身が——いま銀行の経理基準についてはお話があったのですが、相銀と信用金庫の経理基準の内容ですね、そういうものは大体どういうものですか。
  167. 澄田智

    政府委員澄田智君) 経理基準の対象となります事項は、これはやはりその償却、あるいは準備金、引き当て金、そういったようなところを対象といたしますが、それをどのくらいな率にすると、それから、経過期間をどのくらいにするというようなことは、それぞれの実情を見てよく検討しなければなりませんので、まだその内容はきまっておりません。   〔理事小林章君退席、委員長着席〕
  168. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 途中ですが、ちょっと最近、銀行の方々にいろいろ聞きますと、経理基準をもってどんどん各銀行を締めつけていると、大蔵省はですね。へたに基準に合わないような業務運営ということがあると大蔵省の人を派遣する。派遣するというのは、結局人事異動ということになりますね。そういうこともあるというのですがね。そういう事実行為はないのですか。
  169. 澄田智

    政府委員澄田智君) 経理基準は、先ほど申しましたように、昨年九月期から実施に入りまして、三年の準備期間、その間に適時計画的にこの基準に即応するような経理を行なうように持っていくと、こういうことでいたしております。これはまあ各金融機関努力の対象ということになるわけでございます。いまお話のありましたその人事面というような問題はこの経理基準とは全然無関係でございますし、さようなことは全然ございません。
  170. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 まああったら問題だろうと思うのですが、あるのですね。では、ちょっとお伺いしますが、三井、三菱、住友、富士、第一、三和、勧銀、東海、大和、神戸、北拓、この各銀行の中に、かつて大蔵省におられたそういった方々が行っているという人事交流の具体的な内容について、きょうもし発表できるならきょう発表してもらいますが、できなければ、あとで資料を御提出願いたい。
  171. 澄田智

    政府委員澄田智君) 役員ということで、私承知いたしております限りにおきましては、いまおあげになった銀行の中で、北海道拓殖銀行と神戸銀行大蔵省におった大蔵省出身者が頭取になっておりますが、それ以外には、いまおあげになった銀行には該当者はいないものと思います。
  172. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと関連して。さっき統一経理基準ですね、これは相銀及び信用金庫についてはこれから検討するというお話だったのですが、それと関連して、経常収支率の問題ですね。これについては衆議院の大蔵委員会で井手以誠さんから質問があったわけですね。この経常収支率については相当問題があるわけですが、その後、井手氏に対しては、いわゆる統一の経理基準の適用と関連して再検討しているという御答弁があったわけですけれども、どういう点について再検討しているかです。
  173. 澄田智

    政府委員澄田智君) 経常収支率というのは、御承知のとおり、経常の収益と支出というものを対比をしてその比率を見るわけでございますが、金融機関の場合には、経常支出のほかに諸償却、繰り入れというようなものがございまして、これは臨時支出ということになっております。したがいまして、経常支出だけで見ますると非常に経常収支で余裕があるように見えますが、実は償却とか繰り入れというような臨時支出に分類されているものをあわせて見ませんと実態がわからないというような面がございまして、経常の収支というよりも、むしろ営業の収支と営業外の収支というようなものにこれは分けて営業の収支というようなものを見るというようなほうがよく実態をあらわすのじゃないか。ただ、従来は統一経理基準のようなものがございませんので、諸償却とか繰り入れとかいうものがまちまちでございましたので経常収支で見ておったというような点があろうかと思います。今後、統一経理基準というものの実施状況と、その実施の結果というものをよく勘案いたしまして、そうしてその経常収支率という従来の指導基準の考え方についてはもう一度再検討いたしたい、かように思っております。
  174. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 井手氏の質問の趣旨は、御承知だと思うのですが、銀行では経常収支率は七八%ですね、それから、相銀は八〇%、信用金庫が八三%。要するに、銀行の場合を見ると、七八%の経常収支率ということは、二二%の利益を強制することになる。つまり利用者の負担をそれだけ重くするということですね、資金を借りる人のほうのね。で、金利を不当に高めるという結果になるのではないか。ですから、そうならぬようにやはり再検討しなければならぬ。特にこれについてはあまりこれをきびしくやると、そのしわ寄せが、さっき戸田君が質問しておりましたが、結局それは労働者のほうにしわが寄せられる、労働強化ですね。それでまた不当労働行為みたいなものが起こってくるという弊害も出てくると思うのですよ。それから、特にまた弱小金融機関に対して非常にきびしくこれが強制されて、そして決算承認銀行に弱小金融機関を指定する。そして利益処分の内容、それから、役員の人事、労働者の賃金に至るまで、事前に大蔵省の承認を求められているところが非常に多い。ところが、都市銀行のほうは規制を守っていない、全く野放しになっている、こういう実情であるということを聞いておるのですが、その点についてはどうなんですか。
  175. 澄田智

    政府委員澄田智君) 経常収支率につきましては、先ほど申し上げましたように、金融機関の経理の場合ですと、他種の金融機関以外の企業であれば、営業支出に含まれる償却とか準備金の繰り入れとかが、これが経常支出に含まれない臨時支出ということになりまして、したがって、表面には七八でございますと、二二というものが収支の差の利益と、こういうことになるわけでありますが、実はここから諸償却や準備金の繰り入れを引かなければならない、こういうことで、他業種と同じような考え方になりますと、決してそういうふうな意味の経常収支は過大であるというふうに一がいになるわけではないのであります。そういう問題を含めまして、いわゆる経常収支率というものについては、現在のように統一経理基準というものの実施段階に入ってまいりました場合には、もう一度考え方を再検討するということが適当ではないか、かように考えて、今後検討してまいるわけであります。経常収支率、その他指導基準に従いまして決算の内容を見まして、決算承認銀行というようなものを、現在そういう銀行につきましては決算に承認を受けさせておりますが、これにつきましては、その決算内容を見まして、適正に決算が行なわれるような見地から承認をいたしておるわけであります。  なお、都市銀行も決算承認というような形——都市銀行につきましては、経常収支率が超過をしておるということで、その面の承認ということは、やはりこれはいたしております。しかし、いずれにしても、これは決算内容を見まして、そうしてそれを承認をするということで、それ以上に特にいま御指摘のような意味内容に立ち入って行き過ぎたというようなことのないように注意をいたしております。
  176. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは決算承認銀行とか、あるいは金庫も含めて、これをそういう今度の指定をやりますと、経営者側はそれを口実として、そうして労働組合に相当締めつけをしてくるという、そういう弊害もあると思うのですよ。ですから、これは都市銀行については、いま経常収支を上回っているからやらないと言われますけれども、何か非常に差別的な感じがするわけですよ、われわれは。ですから、こういうあれはやるべきではないと思いますが、これは廃止できないですか、事前の承認というのは。
  177. 澄田智

    政府委員澄田智君) やはり金融機関内容の健全性というものは、これは申すまでもなく、金融行政をやっていくうちで最も重要な点でございますので、決算内容を事前に十分審査をする必要がある。そうしてそれが改善されていく経緯を見守る必要があるようなものについては現行の決算承認制度は必要であると、かように考えております。
  178. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連ですから、私は簡単にしますが、私も、銀行あるいは金庫の経営内容を不健全ならしめるようなことは、これはもうもちろん避けるべきだと思うのですよ。しかし、いまのお話では、それが事前の承認が労働者のいろいろな労働条件、待遇を悪くする方面に悪用される、そういうおそれがあるということをこれはやはり十分に頭に置いて、もしこれが廃止できないとするならばやるべきじゃないか。  それから、もう一つ銀行の三月決算が新聞に出ておりましたね、ことに都市銀行、これは前に私は質問したことがありますが、とにかくこれはいろいろなあれがあったかもしれませんが、不当にもうけさしてはいませんか、大銀行を。しかも、たとえば価格変動準備金というようなものを見てごらんなさい、資本金を上回っているんですよ、こんなにまで優遇する必要があるんですか。私はどうもこれは前から奇異に感じておるのですけれども、それならばもっとこれは金利を下げて、そうして事業会社のほうにこれを均てんさしていく、事業会社はこれをいわゆる物価を下げるほうに回すとか、あるいは労働条件をよくするほうに回すとか、そうすべきで、これは銀行というか、固いことばで言えば金融資本というんですか、大銀行はあまりもうけ過ぎているように思うのです。これは私は産業会社でも同感に思っているんじゃないかと思うのですが、大蔵大臣、これはいままでの税制上の優遇措置というものは、私は特に価格変動準備金というようなものは、これはもっとなくすべきじゃないか、あるいはもっと低減すべきじゃないかと私は思うのですが、その点についてはどうですか。
  179. 澄田智

    政府委員澄田智君) 三月期の決算につきましては、御承知のような公定歩合の引き上げに伴って貸し出し金利が上昇する、こういうような現在の特別な事情というようなものも反映いたしまして利益がふえたというような面が出てきておるわけでございますが、もう一つは、統一経理基準の実施ということによって内容がはっきりあらわれてきまして、したがって、格差もあらわれる、それはやはり実績が出てきている、こういうことで、ある意味において統一経理基準のねらいが逐次あらわれてきている、こういうことになるわけでございます。金融機関が過大な利益というようなものをおさめるということは、もちろんそれは金融機関内容の健全性ということは必要でございますが、それをこえて過大な利益というようなものは、これは必ずしも好ましくないことはもちろんでございます。現在は金融引き締めというような事情で、金利もこれにつれて上がってきているという面は、これはやむを得ませんが、長期的に見れば、もちろんその貸し出し金利を引き下げる、金融機関資金コストを下げて、それを貸し出し金利の引き下げに回していく、こういうような経営をやっていくような、そういうふうな点で効率化もはかっていくべきだと、かように考えておりますので、決算内容がはっきりして、そしてそれが資金コストの低下と貸し出し金利の低下につながっていくということが望ましいのではないか、かように考えております。
  180. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 税制面についてはどうですか、それは価格変動準備金をごらんなさいよ、もう資本金こえていますよ。価格変動準備金というのはどういうのですか、銀行における。
  181. 澄田智

    政府委員澄田智君) 価格変動準備金は、これは税法の基準によって毎期継続的に繰り入れるというのがいまの統一経理基準の考え方でございまして、税法で認める範囲を継続して繰り入れるということで二%、これは従来三%とありましたのが二%というふうに引き下げられておりますので、価格変動準備金が非常に多額であるというふうには考えておりません。
  182. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは内容はどういうのですか。銀行における価格変動準備金というものはどういうものですか。そうして、それがいま一%下げたといいますけれども、とにかく資本金を比較して見てください、たいがい資本金を上回っていますよ、そうでしょう。そんなにまで資本蓄積をさせる必要があるのですか、健全性健全性といいながら。
  183. 澄田智

    政府委員澄田智君) 価格変動準備金は、御承知のように、有価証券等の価格変動に対応して、私申し上げましたように、二%を税法基準で積み立てておるわけでございまして、いま手元の四十年の下期の数字で見まして、普通銀行全体で価格変動準備金は八百七十一億で、これに対しまして資本金は三千七十億でございますので、資本金を上回るようなことは、それはないと思います。
  184. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 価格変動準備金じゃないのかな、資本金を上回っているあれがありますよ。
  185. 澄田智

    政府委員澄田智君) 価格変動準備金はいま申し上げたところでございますが、貸し倒れ準備金は、先ほど申し上げました四十年の下期で、資本金が三千七十億に対しまして、貸し倒れ準備金が三千三百十六億、かような数字になっております。貸し倒れ準備金は、これは申すまでもなく、金融機関の資産運用の最大部分でありまする貸し出しというものに対して、それの貸し出しの債権のその資産を担保する金融機関の経理の上で最も大切な準備金でありまして、これがやはり金融機関の場合には、これを厚くするということで資産の健全性が保証される、そうしてこれが内部蓄積の一つの大きな役割りを果たしているもので、金融機関としては、やはりこれは厚いということが必要であります。今度千分の十八ということに統一経理基準では定めたわけでございます。
  186. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まだ答弁が漏れているが、決算承認の問題についてさっき質問しましたね、それについて、それの弊害がないようにしなきゃいかぬじゃないかということです。
  187. 澄田智

    政府委員澄田智君) 決算承認という制度につきまして、やり方につきましては、先ほど申し上げましたように、そういう特殊な状態にあります金融機関については、決算の内容の改善というものを十分見守っていくという必要がございますので、これは必要と存じますが、いま御指摘のような決算承認ということで、それで不当に行き過ぎになるような、給与、その他労働条件等にそれが影響をするというような点、過度に行き過ぎになるということのないように決算承認の運営については留意をしてまいりたいと、かように存じます。
  188. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 時間もありませんから、あと二点ほどで終わりたいと思うのですが、結局いま木村先生の質問に対しての回答でもわかりますが、経常収支率で一方ではきちっとワクをはめて、さらに物件費等については、これは店舗増設とか何とかというものがありますから、その面もあまり節約はできない。結局せんじ詰めていきますと人件費の節約ということになりかねない。そのことは、結局労働者に対する労働条件の低下、待遇の低下、こういうことに通じていくと思うんですね、傾向としては。そこで、その問題は衆議院の大蔵委員会において、そういう心配があるから附帯決議というものを実はつけたんだろうと思うのです。この附帯決議の内容を見ますと、「金融機関合併及び転換に関する法律案に対する附帯決議」、「本法の推進にあたり、特に人員整理、労働条件の引下げ、差別待遇等を行なうことのないように、労使間において自主的に決定せしめるとともに合併及び転換に際して、中小金融機関に専ら依存していた中小零細企業者が、不利益をこうむる結果を招来しないよう特に配慮すべきである。」と、こういう附帯決議が決定されておる。得てして、いままで幾度も附帯決議がつけられて、最後にこの担当大臣が、一生懸命やります、実現をしますと、こういうようなことを言うんですけれども、あまり効果のあがっていないのが附帯決議だと私は思うんです。そこで、問題は、この人員整理、労働条件の引き下げ、それから差別待遇、こういうことやらないと言うのですが、ですから、先ほど申し上げましたように、具体的な事例として大東相銀なり、こういう事実はやらないということでありましょうから、今後は一切監査なり、あるいはそういう部面のタッチはしない、こういうことはもう再確認をしていいですね。
  189. 澄田智

    政府委員澄田智君) 従来から、金融機関の検査にあたりましては、全体として人件費比率を見、それがあまりに他の水準に比べて高いというような場合にこれを指摘するということはいたしましても、それ以上に、自主的にきめらるべき労使間の関係内容、労働条件等に介入するということは厳に慎しんでその内容にいたしてきておるところでございますが、今後も十分その点は一そう注意してまいりたいと思います。
  190. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 もう一つは、結果的には、私は、この零細企業育成強化といっていますけれども、逆の方向になっていくんじゃないか、そのことが心配だから附帯決議をつけたんだと思うんですが、今後の育成強化、そういう具体的な内容はお持ちですか、その点をひとつ。
  191. 澄田智

    政府委員澄田智君) 今回の制度改正によりまして中小企業成長ということも考慮に入れて、中小企業の範囲というものは、相互銀行信用金庫につきましては拡大するということにいたしましたが、中小企業基本法による中小企業という面には、すべての専門機関が重複して融資の対象として十分その融資に当たっていく、こういう考え方でございます。したがいまして、当然に中小の零細な面に対します金融というものは、今回の改正等によって金融機関体質が強化をされて効率化がはかられ、それによってむしろ融資が拡充されるということはあっても、そういうところが不利益をこうむる結果がないようにということについては、今後法律の運用、認可等にあたっても十分留意してまいる考えでございます。その点については特に重点を置いて、附帯決議の御趣旨もございますので、配慮してまいりたい。
  192. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大臣はどうでしょう。
  193. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 附帯決議の趣旨のとおりに私もやりたいと思っております。
  194. 田中寿美子

    田中寿美子君 実は、もう時間がありませんで、私も五時半ぐらいまでしかおられませんから、もう戸田委員や木村委員から私の言いたいことも大部分言っていただきましたし、それから、昨日も多くの委員から問題は出されておりますので、重複しないところだけを少し伺いたいと思います。で、労政局長、急がれるようですから、私いま質問の順序とちょうど反対で、労働問題を一番最後にやろうと思いましたけれども、ちょっと関連したところだけ最初に言わしていただきますと、さっきの戸田さんのあげられた事例というのは、不当介入であるかどうかはわからない、抽象論では不当介入をしてはいけないということを言われたわけなんです。まあ法律というものはそういうものですから、幾らでも逃げ道もありますが、かりに不当介入でなくても、事実としても好もしくないようなやり方で、大蔵省の検査官が行って、そして相互銀行なり信用金庫なりでその意見を述べるというようなことは、心理的な作用をその企業に与えるわけですね。それで、自主的にその企業が労働者に向かって圧力をかけるという状態になると思うのですね。そういうことが好ましくないということを私は特に申し上げておきたいのですけれども、そこで、さっきから戸田さんがたくさんの事例をあげられました。で、これに関連しまして、信用金庫、あるいは相互銀行などにもあると思いますけれども、そこに働く婦人労働者に対しての差別の事例がたくさんあるわけです。これは基準局の問題でもあると思いますけれども、これも大蔵省なり財務局のほうから押しつけたものではないから不当介入でないということになるかもしれませんけれども、たとえば私はここに東京信用金庫の例を持っておりますけれども、ここはわりあいに大きなところなんですね。預金量も五百二十三億円、労働者は全体で六百五十三名、店舗の数が十七で、都内で第三位ぐらいの大きさのところなんですね。それであるのにもかかわらず、賃金の平均ではほかより低い、それから、男女の賃金は全部違いがあるわけなんですが、一人当たりの預金額というのはほかの銀行に比べて多いのですね。つまり非常に労働が強化されて、非常に働いているわりに賃金が低いという状態の中でいろいろと差別が行なわれているわけなんです。これは憲法でも、男女の平等の待遇、平等に扱うべきであるという本来の原則がありますし、労働基準法でも男女は同一賃金の原則があるわけなんですけれども、ここではいろいろのことで、たとえば賃金の男女差はもちろんですが、女だから低くするというようなやり方ではないだろうか。賃金体系は同じでも、女性は一級職に常に格づけしておる、男子のほうは二級職というように、格づけを違えてしまって事実上の差別をするということが行なわれている。それから、結婚退職ですね、これを四十一年度から、女の人が入ってくるときには、結婚したら退職するという誓約書を入れなければいけないということを指示している。それから、出産した婦人の例がございますけれども、この人を外勤に回して、そのために健康を非常に悪くして死産をするというような事例があったりして、つまりいま母性保護ということをやかましくいわれて、ILOの勧告にも、家庭の責任を持つ婦人が働けるようにしなければならないといういろいろの勧告をしているのにもかかわらず、それと反した方向に労働条件が進んでいっている。それから、さらに、御存じでございましょうか、一人の女の人が職業病としての認定をしてほしいということで労災保険認定請求を出した、そのことは御存じでごさいましょうか それは基準局のほうだろうと思いますけれども、これは非常に過労で、いつも同じようなかっこうをして同じような機械を扱っているために、非常に肩と首と腕とが痛んでいたたまれないようになって休んだのに対して、これを労災として扱ってほしいという請求ですね、これに出ておりますけれども、一向らちがあかないようですが、これはどうなっているかということ。それから、希望退職を募って、四十歳以上の男子と、それから、二十六歳以上の女子職員、あるいは共かせぎの女子職員に希望退職を募るというようなことで、すべて女性に対する差別の待遇が行なわれているんですが、こういうことは労働行政をあずかるものとしては、まずこれはある部分は違法であり、また、好もしくないというふうにお考えになりますでしょうね。
  195. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 最近におきまして男女同一賃金の条約の批准もいたしましたところでもわかりますように、女子の差別待遇ということにつきましては、これは厳に排除すべきものであるというふうな基本方針で、特に婦人行政を中心にいたしまして、基準行政等におきましても行政を進めておるところでございまして、御趣旨のような差別というものがあってはならないものであるという方針においては全く同感でございます。それから、最近特に労働問題といたしましては、人不足という問題が非常に強くなってまいっておりまして、やはり外国等と比べまして、この労働力問題に対処する角度から見ましても、婦人の労働がそれぞれの適職におきまして有効に発揮されるということが望ましい、そういう労働力面からいたしましても、今後におきましては婦人の方々にうんと働いていただくという方向が、日本経済におきましても社会におきましても必要な方向であろうかと思います。そういう観点からいきまして、ただいまおっしゃいましたような、憲法の精神はもとよりでございますけれども、労働行政といたしましては、婦人の職場がいかに確保され、そこでまたそれぞれにふさわしい能力がいかに発揮できるかということが非常に大きな関心事であろうかと思うのであります。そういう方向においてわれわれの労働行政は進めていっているというふうに申し上げられると思うのでありますが、具体的な労災補償につきましては、私、所管でございませんので承知しておりませんが、労災償補の考え方といたしましては、業務に基因をいたしまして、そして業務上起こりました障害につきまして補償をするというたてまえになっておりますので、ただいま御指摘のものがそのような業務上の障害であるかどうかということが判定の問題として中心になるのではなかろうかと思いますが、なお調べまして、あるいは資料として御連絡申し上げまして実情を報告さしていただきます。
  196. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまおっしゃったような、つまり労働力が不足している現在、家庭の責任を持つ婦人も働かなければならないという観点からいろいろのことが要望されているわけで、そういうことと逆行する非常におくれた考え方銀行信用金庫の中の経営者の中にあるということ、そして、それを利用してと申しますか、これはさっきの行政指導の面に関係しておりますけれども、大蔵省の行政指導の中で、非常にいろいろとそういうことを摘発するというか、女の給与が高過ぎるのではないかとか、あるいは女子の比率が少ないのではないかということは、女子は安く雇えるから、もっと女子の比率を多くしたほうがいいのではないかというようなことを指導するようなことばすら出てくるわけなんで、そういう点から申しますと、日本の国の労働政策が正しく浸透するような指導をしていただかなければならないと思うのです。実際に信用金庫、あるいは相互銀行なんかでもそうだと思いますけれども、非常に超過勤務も多いわけなんですね。決算期なんかになったら非常におそくまで女の人は働かされます。それから、それこそ預金獲得競争が非常に激しいので、みんな忙しくなり、外勤なんかも激しいわけでございますし、そういう中で結婚退職を勧奨するというようなことは、かつて住友セメントの鈴本節子さんが結婚退職を勧奨されたことに対して憲法違反の訟訴をやって、第一審で勝ちましたですね。ああいうようなことまでしなければ実証できないというような、そういうことでは嘆かわしいと思うのです。ですから、今後婦人労働者の権利をもっと労働省としては守る立場をとっていただきたいということを申し上げまして、時間がありませんので、きょうは労政局長はそれでけっこうでございます。  それで、大蔵大臣、もうすでにいま触れられましたけれども、統一経理基準だとか、あるいは経常収支率なんかの規制によって行政指導をしていく、その行政指導が、実はさっきからそういうようなことはさせない、不当介入になるようなことはしない予定だというお話がありましたけれども、現実に、たとえば肥後相互銀行、これは相互銀行の組合の新聞に掲載されているものですけれども、やはりこれからさっき言われました統一経理基準というものを実施していくのだ、信用金庫もたぶんことしの九月ごろからし実施する予定なんでございましょう、信用金庫に対しても。それをもうすでに先に見越して、相互銀行はことしの九月からですか、肥後相互銀行で労使の交渉のとき、その経営協議会の席上で、三月一日、この銀行は女性の退職金が高過ぎる、女の人はよく途中でやめますから、それをもう少し支給率を下げるべきだとか、いろいろと言っているわけですね。そして、その理由は、統一経理基準に合わせなければならないからというふうなことを、つまり行政指導というのは、大蔵省の側では、いや、そういうふうな不当な介入はしておりませんと言われますけれども、現実にはそういう作用をするわけですね。やはり大蔵省に取り入るというか、よく思われなければなりませんから、だから銀行当局と信用金庫に対しても、経営者はそういう姿勢をとる。だからその点を特にさっきからみんなが問題にしておりますので、大蔵大臣はそういうことは今後気をつけますとおっしゃいますけれども、もう一度それを確認したいと思うのです。
  197. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 先ほど戸田さんの御質問でしたか、例を出されましたが、文書の形で公表をする。公表というときに、私は、そういうさっきのようなことが言われたというふうには思っておりませんで、問題は、木村さんから指摘されましたように、この監査の結果がいろいろそういう方面に悪用されることが非常にあるということを考えておりますので、特に労使の条件問題に介入するというようなことは気をつけてやっておるつもりでございますが、今後この点は十分気をつけるつもりでおります。
  198. 田中寿美子

    田中寿美子君 特にその点を注意して行政指導をしてください。そういう注意をするようにという行政指導をしていただきたい。特に統一経理基準の中で、退職給与引き当て金、これは一〇〇%積み立てておかなければならないということがありますですね、これは一番こたえるのですね。相互銀行なんかでも自分たちで試算してみて、そうしてはたしてこの一〇〇%の退職給与の引き当て金を積んでおくことができるものは幾らあるかということで見ると、三分の一くらいはだめなんじゃないか。三年の間に統一経理基準に合わせるということも不可能だと思っている銀行がたくさんある。で、これは必ず一〇〇%を守らせるというものですか、あるいは三年間にそうしなければならない、そうしますと相当つぶれる、あるいは合併、統合される相互銀行が出てくる。むしろそれが望みなんじゃないかとすら思うのです。大蔵省が望むのは合併、統合していくこと、そうじゃないでしょうか。
  199. 澄田智

    政府委員澄田智君) 合併、統合は、弱小で非常に経営の基礎が不安定であるというような場合等は、それはその合併によって健全な金融機関になるというようなことが、その預金者の立場はもちろんのこと、貸し出しを受ける者、それから、さらにその金融機関に働いている者等のあらゆる面から見て望ましいという場合が最も合併の適当な例ではないか、いまのその合併に追い込むために統一経理基準等でそういうような手段に使うというような、そういう考え方ではございません。統一経理基準によって経営の実態があらわれて、そうしてそれによって、従来、ともすれば金融機関の実態というものがそういう点にあらわれないために競争が十分に行なわれていない弊がありましたために、それを改めて、そうして金融全体の合理化効率化をはかっていきたい、こういう趣旨でございます。  それから、退職給与引き当て金は、自己都合退職の場合の退職金の一〇〇%を積み立てるという場合には、これは貸し倒れ準備金の場合などと違いまして、目標でございます一〇〇%を目標として毎期計画的に繰り入れる、こういうような指導基準になっておるわけでございます。したがいまして、できるだけその目標に近づくように努力すると、こういうことであるわけでございます。  それから、この相互銀行等については、これを達成することは非常にむずかしいのじゃないか、こういうお話でございます。都市銀行地方銀行等の普通銀行で実施いたしました場合におきまして、三年間の経過期間内にその目標を達成することがむずかしいというような場合は、退職給与引き当て金の場合については若干あるかと思いますが、割合は全体のごく一部でございますが、若干そういうものが出てくるのではないかというように現在見ております。
  200. 田中寿美子

    田中寿美子君 それは都市銀行でしょう。
  201. 澄田智

    政府委員澄田智君) 普通銀行です。
  202. 田中寿美子

    田中寿美子君 相互銀行の場合はもっと相当あると思うのです。その場合は、しいて一〇〇%達しなくともみていくということですか、それともどういう指導をしていくのですか。
  203. 澄田智

    政府委員澄田智君) 先ほど申し上げましたように、まだ相互銀行の統一経理基準については、目下相互銀行協会等といろいろ検討いたしております。実情に沿うように持ってまいりたい、かように考えておりますので、いまの御指摘のような点も今後検討してまいりたいと思っております。
  204. 田中寿美子

    田中寿美子君 それで、大事なことは、すでに普通銀行に適用されている統一経理基準について、相互銀行の経営者たちは、自主規制というか、自分からそれに合わせるということを口実にして、三年以内に何しろ退職金は二倍積み立てなければいけないわけでしょう。で、そういうことであるというので、それを理由にして賃金の上昇を押えてみたり、それから、基本給を押えたり、そういったことをしやすいわけでありますね。ですから、さっきも戸田さんも言われましたように、物件費のほうを押えられなければ人件費のほうを押えていくということになりますのと、それから、貯蓄奨励の競争で非常に労働強化になっていくということがありますから、さようなことにならないような、よい意味の行政指導をしてもらわないといけないわけであります。で、大蔵省の現場に出られる検査官のそれぞれの考え方次第で非常にきびしくされてみたり、それから干渉がましいことがされたりするということでは困りますので、そういう検査に当たる人々への行政指導も十分していただきたい。それはいかがですか。
  205. 澄田智

    政府委員澄田智君) 金融検査官が、検査にあたっていろいろ検査の方針内容等についてまちまちであるというようなことは、これはないように、金融検査官の検査方針、それから、検査のやり方等について常に統一をとりながら、それから、各地の財務局等もいたすわけでありますが、それは随時全体に対しまして必要な連絡をいたしまして、そういう検査官によって差があるというようなことのないようなふうに指導をいたしておりますが、なお、今後とも十分いまの御意見等も体しまして、その点は十分指導してまいりたいと思います。
  206. 田中寿美子

    田中寿美子君 統一経理基準をつくって監督をしていくということは、別に弱小機関を整理するのが目的じゃないというふうに言われましたけれども、私は結果としてそうなっていくと思います。で、これはあとでもう少し触れたいと思いますが、大体、相互銀行とか信用金庫、あるいは信用協同組合でも、中小企業のための金融機関であるはずだと思うのです。で、中小企業庁の方がいらっしゃいますか——中小企業の倒産が非常にふえておるということはいつも報道される。で、衆議院の大蔵委員会でだいぶん議論されていたようでありますけれども、発表される件数ですね、これは私は本物じゃないと思う。というのは、国の調査機関というものはないのですね。で、帝国興信所と東京商工興信所の資料で中小企業白書もできておるでしょう。私は、中小企業対策というものは、もう政府の大きなものであるかのようにいわれておりますけれども、どうしてそんなに手抜かりなのか。ずいぶん多い多いといわれておる件数より、実際に倒れている零細企業なんかを入れたら一体どのくらいになるものかわからない。推定もできないでしょう。
  207. 沖田守

    政府委員(沖田守君) 現在いろいろ対策を講じます場合、御報告申し上げております倒産統計と申しますのは、東京商工興信所及び帝国興信所の調査によるものを取り上げておりまして、調査対象となっておりますのは、倒産は負債総額一千万円以上のものを拾っておるわけでございます。しかし、実際には負債総額一千万円未満の小規模企業の倒産も相当あると考えております。したがって、どの程度が実態かということにつきましては、仰せのように、非常に小規模零細の倒産までくまなく調査いたさないと確実な数字はつかめないわけでございますが、国民金融公庫の取引先で、金を貸しておる取引先が倒産した例がございまして、その国民金融公庫の取引先の倒産企業の中で調査いたしましたところでは、調査対象の中の五〇・八%が負債総額一千万円未満になっておりました。したがって、国民金融公庫の融資先は、主として小規模層を中心としておりますので、一千万円以上のものと一千万円未満のものとはほぼ同じだということは、必ずしもそれだけでは言えないと思うのでございますが、一応国民金融公庫の調査によれば、一千万円以上でいま出ております数字のほかに、ほぼ同数のものがそのまま類推すればあるわけでございますが、その点の断定は非常にまだ危険であろうと考えております。で、ただ、問題は、非常にそれでは数字がふえたために危険な状態になっておるかという点でございますが、これは三十九年の引き締めのときと今回と比べてみますと、今回は引き締め前から相当人手不足、その他構造的要因というものがずっとあったと思われるような倒産が続いておりまして、引き締め後の倒産というのがふえた程度としては前回が相当激しかったという意味で、私どもたいへん内容的には憂慮いたしておるのでございますが、激しさの程度、あるいは政策運営の中小企業への引き締めのしわ寄せ防止が非常に粗末であったというふうな結果こうなっておるというふうには私どもは考えておらないわけでございますが、ただ、政府みずからが調査すべきであるという点につきましては、現在、東京商工興信所では千七百名の人間が七十四カ所にわたって普通の興信所の仕事とあわせてやっておるわけであります。同じく帝国興信所でも千七百名、六十七の支所、出張所で兼業でやっておりまして、その資料というものをある程度利用するほうが、人手の問題、行政の効率性という点からも使い得るのではないか。外国におきましてもダン社その他のいわゆる信用調査だとか、そういう機構を利用しておる例もございまして、ただ、それだけに依存してやりますということは、非常に倒産原因だとか、問題の重要度に対する判断が民間調査だけでは不十分かと考えておりまして、従来、これまでやっておりますのは、中小企業庁におきましては、出先の通産局、それから、政府系の中小企業専門金融機関、ただいま申しました国民公庫や中小公庫の協力を得まして、主として倒産原因はどこにあるかという点を中心とした倒産事情調査をこれまでもやってきておりまして、新年度からは、さらに調査の内容、調査件数をふやしてやるのみならず、さらに倒産企業のその後の追跡調査ということにウエートを置きまして、倒産後六カ月たったあと企業主はどういうやり方をしておるか、あるいは再建の模様はどうかということの調査を追加いたしまして実態把握につとめたいと、こう考えておるわけでございます。
  208. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと関連。この中小企業の倒産の調査については、前にもぼくは要求しておいたんですけれども、いま手形交換所でもやっておりますけれども、ぼくたち方々で労働組合なんかにいろいろ話を聞くときが多いのです。地区労なんかでは非常によく聞いているのです、こまかく。それに労政事務所というものがあるのです。ですから、労働省のほうからもやはりそういう資料をとると、かなりこまかいところまでとれると思うのです。そういうふうに前にぼくは要求しておったのですが、そういうふうにやっておらないので、それはかなりこまかいところまでわかると思います。要望しておきますけれども。
  209. 田中寿美子

    田中寿美子君 きのう大蔵大臣は、普通銀行の貸し出しも、中小企業に対し、五〇%くらいはやっているんだとおっしゃった。その対象となっているものは資本金幾ら以上のものですか。
  210. 澄田智

    政府委員澄田智君) 昨日五〇%というふうに申し上げましたのは、あれは中小企業向け金融のうちで、普通銀行等が、長期信用銀行も入りますが、等が資金供給している割合が……。
  211. 田中寿美子

    田中寿美子君 資金総額ですね。
  212. 澄田智

    政府委員澄田智君) 割合でございます。それがほぼ五〇%、四九・九%と申し上げたのでございます。この場合の中小企業というのは、中小企業基本法の中小企業で、製造業については資本金五千万円以下または従業員三百人以下、そういうような基準に従ったものでございます。
  213. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうすると、件数はわからないですね、資本金だけ。貸し出し件数はわからないですか、一件当たりの金融金額。
  214. 澄田智

    政府委員澄田智君) きのうの数字とちょっと違う件数でございますが、件数をお尋ねというよりも、一件当たりの数字ということで一件当たりを出しますと、中小企業向けの貸し出しの一件当たりの残高でございますが、四十二年の九月で、普通銀行が三百十五万三千円ということになっております。
  215. 田中寿美子

    田中寿美子君 全体の件数はわからないですか、貸し出した件数は。
  216. 澄田智

    政府委員澄田智君) 普通銀行中小企業向け貸し出しの件数は、四十二年九月で二百三十四万九千件でございます。
  217. 田中寿美子

    田中寿美子君 大蔵大臣がきのうも、中小企業にはちゃんと手当てがしてあると、銀行貸し出しの五〇%は中小企業のためにやっておりますというふうにきのうおっしゃいましたですね。その中小企業というのは、きのうも各委員が言われましたところの、もう手を貸してやらなければ倒れるという、ほんとうに零細ないま資金が必要だというものじゃないと私は思うのですが、たとえば非常に大きな企業の系列の中にあるものに対して貸してやる。やっぱりリスクのないところなんかだけに貸すという方向にいっていると思うのです。そういう点で、ほんとうに救済されなければならない小企業、零細企業を救う道というものは非常にないのではないかと思うのですが、大蔵大臣いかがですか。
  218. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 通常の経営を行なっている企業である限りは、何らかの形で銀行取引を持っておると思うのですが、中小企業、いわゆる零細企業の中には、そうじゃなくて、親類友人から融通したりなんかして、金融機関を利用しない企業というものが非常にたくさんある。これがやはり一定の担保を持ち、銀行取引ができるというところへやはり企業を育てていかなければいけないと思うのですが、そういう軌道に乗らない企業が、苦しくなって突然金融機関に飛び込むというようなときに金融ができなかったといういろいろな問題があると思いますが、しかし、通常の経営をやっている限りは、やはり金融機関との取引を持った企業であるべきはずでございますが、そうでないものがまだ非常に多く存在している。これは金融機関中小企業に少しも金をこういう企業に貸していないじゃないかという論議の対象から私ははずれていいのじゃないかと思います。
  219. 田中寿美子

    田中寿美子君 それは違うのです。実例は幾らでもあります。たとえば青森ですけれども、さしもの師の人たちが五人ぐらいで共同して、そして千万円ぐらいの資金ですが、それで機械を入れるときには金を借りられたのです。それを償却しなければならない、だから、もう一年運営のために貸してもらえれば必ずそれは返せる、そして企業も成り立つのだけれども、どうしても金融機関のほうから貸してもらえないということで、ほんとうにこういうものに対する救いの道というものがないということを言っておりました。こういうのはたくさんあるのですよ。それで、今度の中小企業のための金融機関に関する法律改正は、必要なところに資金が豊かに供給されるということを目的にしているわけなんですね。ですから、それがほんとうに効率化ということばはたいへん私は便利なことばだと思うのです。銀行局長説明ですと、国民の需要にこたえて、低利で安定した資金を出すことができる、そして適正競争の原理に基づいて資金コストを下げると、それが効率化だと言われるのだけれども、ほんとうに中小企業金融というのは、そういう零細な企業でも、資金が必要なところへ供給されて、そしてそれが立ち行くようにするというのが一番効率化の目的じゃないかと思うのですけれども、その点ではむしろ反対のような気がするのですが、いかがですか。
  220. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 非常に中小企業の倒産がいわれておるときでございますので、金融による倒産というものだけは避けたいというので、ここにいる銀行局長も、最近はそういう問題で非常に活躍しておりますが、いまのところ、正常な経営をやっている企業で、理屈が立って、これを金融してやればつぶれないで済むというようなものは、やかましく言って各銀行にもお願いして、倒産させないような措置を私どもはとっておりますが、それでも倒産するというものは普通の経営じゃなくて、とても銀行の貸し出しというあれに乗らないものであって、これは結局金融によって倒れたという理由にはならぬようなものが倒れているというのが実際において私は実情だと見ております。そうでなくて、りっぱにやれるものを、金融機関が融資をとめたために倒れるということだけはないようにと、これは最近の実情から見まして私ども骨を折っておりますが、今後も骨を折っていきますが、遺憾ながら、企業倒産の中にはそうでない企業が多いということは事実でございます。
  221. 田中寿美子

    田中寿美子君 時間がなくなってまいりましたので、私は一番根本的なことを最後に質問したいと思うのですけれども、今度の法律改正案ですけれども、そのねらいですね、先ほどから相互銀行信用金庫などに対する今度の改正というのは、決して金融機関の再編成、合併、統合というような、そういうことを考えているのではなくて、大蔵大臣はさっき、将来は普通銀行のほうはやはり再編成されていくだろう、その次の段階でそういうことがあるかもしれないというようなことをさっきおっしゃったのですが、私はそうではないと思うのです。これは産業面の資本のほうでもいま合併集中が行なわれて、そうして寡占化体制に入ってきているわけですね。国際競争をするためにどうしても資本の再編成が行なわれつつある。そうすると、金融のほうも再編成せざるを得ないような立場にあって、そうして考えられていることだと思うのですがね。これまでは産業資本のほうも過当競争だったけれども、それを今度はむしろ整理していかなければならない。さっき事前に金融をめぐる国際、国内の環境に対応するためにこうするのだとおっしゃったけれども、その国際、国内の環境ということは、これは日本資本が再編成される過程で金融のほうも再編成されていくのだ、その第一段階として中小の金融機関のほうの再編成を行なっていって、そうしていろいろの基準の中で整理しながら、相互銀行普通銀行のほうに合併し、整理していく、そういう考え方じゃないかと思うのですが、いかがですか。
  222. 澄田智

    政府委員澄田智君) 日本金融全体が、新しい情勢に対応いたしまして、国際条件及び国内の今後の経済情勢というものに即応して、これに適応したようなものになっていくという、そういう意味におきまして金融の現在の体制というものの全体を再検討をする、こういう段階になっているということは、申し上げましたように、今度の法律案の基礎になっております答申の出発点から、そういう認識でもって金融制度調査会において取り組んでまいったわけでございます。その場合に、中小企業金融機関から取り上げたという理由は、何と申しましても、相互銀行信用金庫といったような制度は、制度発足以来、最も実体的変化をいたしまして、最も成長をいたしてきておりまして、資金量等から見ましても、いま一番変化が激しい領域でございます。法律との間の実態との違いというもの一番目立っております。そういう意味から中小企業金融機関をまっ先に取り上げるという必要があったわけでございます。また、中小企業金融というものの重要性というようなこともございましてこの問題を先に取り上げていったわけであります。引き続きまして、一般の民間金融機関について委員会で検討をしている、こういう段階でございます。中小企業専門金融機関につきましてのその答申の中に、従来、法律上の道がなかった異種金融機関の間の合併転換というようなこともできるような法律上の道を開く、そうして必要に応じてはその合併あるいは転換ということによりまして金融機関体質の強化、その金融機関としての効率的なあり方というようなものの実現をはかっていくという場合も出てまいるということで、この面が先に今回の改正案となったわけでございますが、これはあくまでも、やはり現在検討しております特別委員会の普通銀行等検討と全体一環として金融の新しい体制づくりということが行なわれるその第一段階であるというようなことであるわけでございます。異種金融機関との間の合併転換というような道を開くということで、必ずしも中小企業金融機関だけでなくて、普通銀行等、全部を含めた問題というのも同時に提起されていることは事実でございますが、当面といたしましては中小企業専門の金融機関というところに重点を置いての今回の改正案であると、こういうことになっているわけでございます。
  223. 田中寿美子

    田中寿美子君 金融機関の再編成の第一段階だということはお認めになったわけですね。ところが、それは中小金融専門機関として定着させるという考え方は、はたして私はいまの状況で成り立つかどうかということを考える。これは金融界の常識になっていると思うのですけれども、将来銀行はずっと整理されて数が小なくなってくるわけです。都市銀行が六行になるというのがありますね。それから、全体として数は地方銀行だって五つくらいになるんですか、いろいろいわれていますね。そういうふうに整理されていく中で、いまのところ比較的、さっきおっしゃいましたように、相互銀行信用金庫資金をわりあいと豊富に持っている。それに対して都市銀行普通銀行のほうが資金が枯れている、だから、それを吸収していって、資金の吸収のために使うというような感じがするのですね。そうしてやがて大きな銀行にずっと集中されていくのじゃないか。世界にもないといわれた異種銀行との合併を今度認めるということもそういうことを意味しているのじゃないかというふうに考えますと、何か中小金融機関としての役割りがはたして保障されるかどうか。むしろ合併転換を促進していくということを目的にして今度のこの法案が出されているのじゃないかという気がするのですが、どうでしょう。
  224. 澄田智

    政府委員澄田智君) 異種金融機関の存在というものにつきまして金融制度調査会でいろいろ議論がございました。外国には例のないようなこういう中小企業専門機関というものが必要かどうかという点までさかのぼって議論は行なわれたわけでございますが、相互銀行信用金庫というようなものの持っております大きな重要性というものから、当然これを存続をさせまして、そうしてその場合には法律上もはっきり中小企業専門金融機関というふうに定めまして、そうして定着をさせるということにいたしますが、しかし、その内容はかなりいろいろの差が出てきておることでもございますし、最も実態に合うように、そうして必ずしも零細な、あるいは劣弱な金融機関というものが多数あることは中小企業金融という面からいっても好ましくないという場合も考えられますので、そこで、その金融機関実情から見て、それに最もふさわしいような種類の金融機関として機能を発揮していくというようなことに重点を置いて、異種金融機関合併転換ということを考えた次第でございます。
  225. 田中寿美子

    田中寿美子君 もう最後ですけれども、確かにことばで国民大衆というところを改めて、主として中小企業金融というふうに書きかえて、そうして専門的な中小企業金融の機関とするというふうにいいましても、事実は、もしほんとうに中小零細企業を救うための機関とするのだったら、小口の預金を集めてきて小口貸し付けをするような機関として置いておくことが非常に必要じゃないかと思うのですけれども、それがむしろだんだん大きいところへ集中されていきますと、貸し出しもだんだん大口のほうに片寄る危険もあって、それについてきちんと、何といいますか、制約はないわけですね。それから、小口の金を集めて小口の貸し出しをするということを義務づけるということは、たいへんどちらかというと歩の悪いことですから、そういう仕事をする以上は、信用金庫なんかに対して相当のいろいろ優遇措置があってもいいはずだと思っています。そういう点については何かいい考え持っていらっしゃいますか。ほんとに中小企業金融を確保するんだという以上は、国がいろいろと優遇の措置をしてもいいんじゃないか、どうですか。
  226. 澄田智

    政府委員澄田智君) 最初にお触れになりました、大きい金融機関にだんだん統合されていって、中小企業というものから離れていくようなことになるのではないかという点でございますが、この点につきましては、今度の法律の第六条の認可というような場合にも、中小企業金融円滑化というような点について、十分にそういう点をよく検討をして認可をするということになっておりますし、なお、認可に際して条件をつけるというようなこともできるような規定にもなっております。そういう点は最も注意をしてまいらなければならないところでございますが、ただ、零細な金融機関はどうしても非常に経営も脆弱でございますし、預金者保護という点からも問題があるのみならず、資金コストが高く、借り手、中小企業金融を受ける人から申しましても、必ずしもそれがたくさんあるということが有利なわけではない。適当な規模で、そうして十分効率的な経営ができて、コストダウンができるというような程度の規模というようなものがやはり金融機関の場合には必要でございますので、そういう意味で、合併転換によってそういう体質金融機関がなるということは、中小金融の面で見ても、もちろんその円滑化という意味からもぜひ必要である、かように考えるわけでございます。  それから、いま信用金庫、あるいは信用協同組合というようなものに対して国の立場から保護を与える、そういうような何らかの特典というようなものがないかと、こういうようなお話でございますが、民間金融機関でありますので、原則は、もちろんそれぞれ民間金融機関として預金を集め、貸し出しをするということにあるわけでございますが、ただ、信用金庫、あるいは信用協同組合という、そういう株式会社以外の組織につきましては、これはそういう組織の特殊性からいって、法人税率等も、普通の法人よりは軽減されているというような点もございますし、それから、相互銀行等を含めまして、中小金融機関につきましては、てん補を認めてまいるというような場合においても、普通銀行等の場合よりもこれを優遇して従来やってきております。それから、さらに、政府金融機関の代理店の業務でありますとか、あるいは興長銀等の代理店というような場合も、それぞれ機関の性質に応じてこういう中小金融機関を活用する、そういうようなことをいたしてまいりまして、これらは中小金融機関の基礎を強固にするというような上において相当な役割りを果たしておる、かように思うわけでございます。
  227. 田中寿美子

    田中寿美子君 もう時間がございませんので、この点はまたあらためて木村先生からだめを押していただきたいと思いますが、実際に信用金庫——東京都内でも非常に大きな上野信用金庫と、それから庶民信用金庫合併しましたですね、最近。それから、奈良でも三つの信用金庫が一緒になっていらっしゃる。どんどんこれから合併が進んでいくのじゃないか、そうしてその信用金庫同士が合併して、さらに今度は将来都市銀行転換しようと思えばその道も開けているわけですね。二段階ぐらいで、今後ほんとうに私はそういうことで大きな銀行に集中していくだろうということを考えますので、特に中小金融を目的とするということについてはたくさんの保障が必要だろうと思っております。その点を私は大蔵大臣に特に要望いたしまして、その中小企業のための金融を確保していくということと、そのためにいろいろな基準が制約を受けて、そこに働く者の労働条件を切り下げるというようなことになったり、不当な介入がその企業にされていくというようなことがないように、ほんとうの意味の行政指導をしていただきたい。このことについて、最後に大蔵大臣のお覚悟を聞かしていただきたいと思います。
  228. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 私は、田中さんのおっしゃられることはむしろ逆のような気がいたします。もし中小企業のための専門金融機関というものが必要だといって今度のような措置をとることと、そうじゃなくして、諸外国を見ましても、特殊なこういう金融機関というものを持っている国はあまりないのですから、やはり普通銀行的なものに全部再編成させていこうというような考え方を持つというと、いまおっしゃられるような統合、吸収、合併、いろんなことが起こって、はたしてこれが中小企業への金融に役立つことになるかどうか、そこにむしろ疑問がたくさん出てくると思いますが、そうでなくて、一応中小企業金融機関というものは必要である。この専門機関中小企業金融に定着させようという法律で一応こういう形で落ちつかせるということが、いま考えられているようなものを避けられて、そして中小企業へのほんとうに金融機関になり得るというふうに思っておりますので、このほうが私はそういう意味からは安心な適当な措置じゃないかというふうに考えています。したがって、この法律が御承認願えましたら、この趣旨に沿った指導は十分にやっていきたいと思っております。
  229. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私自身も非常に時間がないものですから、なるべく重複しないように質問したいと思うのです。信用協同組合についてはあまり触れませんでしたから、信用協同組合のことも含めて伺いたい。  その前に、さっきちょっと、これはまた議論をするわけじゃないのですけれども、都市銀行の収益についてやや問題があるので、特に貸し倒れ準備金は、あれは銀行としてのやはり信用業務を扱っているから、特にそういう点については貸し倒れ準備金を厚くする必要があると言いましたけれども、これはそれじゃ何のための保証かといえば、それじゃいま預金は都市銀行はどのくらいなんですか。預金に対する保証だったらナンセンスですよ。結局そういうことを口実にして、そうして貸し倒れ準備金を資本金以上に多くするということは、結局それは税金というものがそれだけ安くなるのですよ。ですから、そういう面からいって、私は不当に保護する必要はないのじゃないか。その預金者に対する保証というのは、これはまた預金保護の問題として別途あるわけでして、これは銀行のいわゆる経営に対する私は非常にこの保護が厚過ぎるのじゃないかと思うのです。その点は税制面からもやはり検討する必要があるのじゃないですか。とにかく私は過当保護だと思う。そういうことは考えませんか。問題になっているのですよ。銀行の過当保護というもの、これいかがですか、大蔵大臣。
  230. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 統一経理基準をつくったということは、そういう意味で私は非常に意味があることと思っております。これによってこの内容の優劣というようなものもはっきりしてまいりますし、銀行の収益というものも、そういうような金融機関比較されるような形ではっきり表に出てくるものでございますので、それがいままでは表面に出なかったところが、今度そういうものが出てくるというところに意義がある。したがって、次にそれを土台にどういうことが考えられるかと申しますと、次の問題は、いまちょっとおっしゃいましたが、預金を保護する預金保険と、これもいま研究を願っておりますが、こういうものが考えられて、預金が保護されるというような一つの基礎的な問題が片づきますというと、そういうものとあわせて、今度は収益の多い場合は、これは金利の低下ということになって当然いくべきであろうと思いますし、適正な競争というものが、それを中心にして競争の原理が働いていくということで、やはり統一経理基準というものができることが、今後の金融機関あり方についてのこれは出発点になりますので、これに基づいて出てきたいろいろなこれからの問題に対しては、私ども十分善処するつもりで、いま研究中でございます。
  231. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この問題につきましては、いま統一経理基準の結果、いままで隠されていた利益がはっきり表へ出た、これは私は評価しますよ、その意味においてはね。で、大蔵大臣は、これに基づいて今後どうすべきかということを検討すると言われましたが、これはまた今後この点についていま具体的に検討されているようですが、今後のまた課題としてこのほうを残しておきたいと思うのです。それで、これに対して、さっき私が言いましたように、金融機関を、特に大金融機関を過当に保護するということでなしに、過当の利益は、やっぱり産業とか、あるいは産業を通じて今度は価格の引き下げとか金利低下のほうに還元すべきだ、そういう立場に立っていろいろ考慮されていくことというふうに理解いたしまして、そういう措置を期待するわけです。これは答弁は要りません。そういうことで期待します。  それから、次に、さっきの信用協同組合を含めて質問したいのですが、この法律は、相互銀行と、それから、信用金庫と信用協同組合ですね、この三つの改正になっておりますね。そこで、全体としまして、結論から申しますと、結局信用協同組合の業務機能を拡張する、それから、信用金庫につきましては、員外の貸し出し、それから、その他の付随業務の員外開放を許す、それから、相互銀行については営業区域の制限をはずす、結局そうしますと、結論としては同質化を認めていく、同質化を促進する方向にいくように思われるわけです、結果としてわね。そうすると、同質化を進めるならば、競争はますます激化する。そこで、これは金融機関と、それからほかの企業との違いは、企業をいろいろ競争によりまして、そうして技術の開発とかコストの引き下げですね、それから新しい製品の開発とか、いろいろそういう社会的メリットが相当あると思うんですよ。金融機関の場合はむしろ同質化をどんどん進めると、そうすると競争がひどくなってコストを高くする原因になっていくんじゃないか。ですから、そういう意味で、前に言われましたが、適正な競争原理導入するという、そういうことと矛盾してくるんじゃないか、逆に。その点はどういうふうに考えられますか。むしろ同質化を促進していくと競争を激化さすと、そうなりますと、結局適正な競争原理導入とまた矛盾していく。
  232. 澄田智

    政府委員澄田智君) 競争の範囲を拡大をして、その間に適正な競争原理が働くようにしていくということは今度の改正考えられているところでございますが、競争の結果、かえってコストを高めていくというようなことになるようなそういう競争ということは、これは好ましくないわけでありまして、適正な競争というような表現をいたしております理由も、競争原理というものがどういうふうな形で働くか、働き方について十分考えていかなければならないと、こういうことだろうと思います。預金獲得競争等が非常にコストを高めるような形に過度に働くというようなことは、これは好ましくないわけでございまして、やはり、たとえば先ほど経理基準の話がございましたが、経理基準等によって実態があらわれると、そういうことによって経営の合理化資金コストの低下ということにつながる、そういう結果をもたらすような競争を促進する。なお、いまお触れになりました業務の拡張、員外に業務を拡張するというような点は、いずれもそれだけ取引の相手方に便益を与えると同時に、その金融機関としてもやはりそれだけ収益面においてもプラスになる、あるいはそういう競争を通じてコストダウンがはかられる、そういう要因になり得ると、こういうふうなような考え方で今回の措置となったわけでございます。
  233. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まあ私は時間がございませんから論争はしませんが、私は、むしろ逆の方向に、コストを大ならしめる、そういう逆の結果になるんじゃないかと思うんです。  それから、次に伺いますが、最初滝口試案というのがありましたですね、最初の大蔵省原案と見られるような滝口調査官の試案というのがあった。滝口試案は、一番最初の三金融機関改正の、何といいますか、たたき台というんですか、になっていることは御承知のとおりです。そのとき滝口試案では、これは大体中小企業の専門金融機関を二つに整理しろということだったんでしょう。一つは株式会社組織、もう一つは協同組合組織と二種類にする。信用金庫のうち、機能の拡充を希望するものは相互銀行とともに株式会社に移す。それから、協同組合組織を維持したいものは信用組合とともに協同組合組織にすると、こういう案だったわけですよ。中間的な信用金庫制度は廃止して、そうして組織制度と分野を明確にせよと、こういう滝口試案だったんです。ところが、結局信用金庫というのは残ってしまったのですよね。信用金庫が残ったために非常にそこにあいまいなものが残ってしまっている。それで、いままで三つあったわけですね、信用協同組合、信用金庫相互銀行、そうして前向に中小企業金融専門機関を整備する、そうしてこれを前向きに発展させるというならば、私は、滝口試案みたいに二つの方向に整理すべきじゃなかったかと思うのですよ。信用金庫が出てきたって、いままでのを存続させるということになって、それぞれこの三つの機関の業務をどんどん拡大させるというふうになって、そこにまた競争が出てくる。私は、そこで、いわゆる滝口試案のごとく、これは二つの方向に整理すべきだ、そう思うのです。滝口試案のほうが正しかったというのは、信用金庫のこれまでの歴史的な経過を見まして、やはりこれは信用金庫は、その機能からいって、一つ相互銀行の株式会社のほうに移行し、一つは協同組合のほうへ整理をすると、そのほうが正しかったのじゃないですか。おそらく私は信用金庫あたりから猛烈な運動があって結局こういうことになっちゃったのだと思うのですが、ぬえ的な。どうなんですか、その点は。
  234. 澄田智

    政府委員澄田智君) いわゆる滝口試案といわれております滝口調査官の試案でございますが、これは当時の金融制度調査会の特別委員会の委員でありました川口、あるいは末松というような教授の方々のそれぞれ試案もございました。まあ三試案出ました。そうして一つの議論のいまたたき台と言われましたが、まさにそういうような議論の基礎として提供されたものでございます。その考え方がいま御指摘のような考え方でございますが、いろいろ一つ考え方ではあるということであったわけでございますが、その結論といたしましては、現在のその信用金庫も含めて、それぞれのその専門機関の果たしている役割りというものを十分評価いたしまして、そうしてそれぞれ特色を持たせてそういう制度を認めていく。相互銀行は、これは受信、与信——まあ預金等で資金を吸収する面、あるいは貸し付けをする面、両面とも広く中小企業者に利用できるような株式会社の組織の専門機関である。それから、信用組合は、これは組合員の相互扶助ということで、与信、受信両面とも組合員に限定されているものである。これに対しまして信用金庫は、その受信面につきましては、これは広く一般の会員外の資金を集め、与信面につきましては、原則として会員に資金供給するという、その両面の性格を持っていると、こういうことで定義づけまして、そうしてそういう性格が十分に帰納するようなそういうような制度考える。その会員制度について、いろいろ会員制度が十分働いていないというような点については、総代の選任方法等についても改善を加えるというようなことで信用金庫制度を改善すると、こういう結論になった次第であります。
  235. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは検討すればするほど、信用金庫を存続したということが非常にいろいろな矛盾が出てくるわけです。それで、基本的に信用協同組合、それから信用金庫、これはいずれもやはり協同組織であると見ていいのか。いずれも私は協同組織であると思うのですが、その点はいかがですか。
  236. 澄田智

    政府委員澄田智君) 信用金庫は、これは通常、会員組織ということばを使っておりまして、会員という制度で、その会員の組織ということにしておりますが、協同組織ということばを広く用いれば、やはり協同組織性を持っていると思います。
  237. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうすると、本質は会員制度といっても、実質においては協同組織であるということを認めているのです。どっちも同じ協同組織、あるいは協同組合組織でありながら、そこに非常に機能について違いが出てきた。その違いが今度の改正でますます拡大してしまうのですね。そこで、信用金庫というものが、これがこの信用協同組合と相互銀行の中間的存在としてあらわれるに至った経緯というものは、御承知のとおりの前の旧市街地信用組合のそのときに、これはもうすでにあのときは議員提案ですが、議員提案で妥協的に便宜的な制度としてつくられたといわれているのですが、経過からいってそういう歴史的な経過があるわけですね、非常にぬえ的存在になっているんですよね。ですから、こういう中小企業の専門的金融機関を整備していくというときには、むしろぬえ的存在ではなくて、これはやはりその協同組合組織と株式組織の二つに分けていくと、非常に同質化がひどくなってきておりましたが、同質化については、普通銀行のほうで地方銀行的な方向にいくほうと、それから協同組織的な方向にいくほうと株式会社と、こういうふうに整理されていくのが私はいいのであって、したがって、これは今度の改正案では存続するわけですよ。しかし、今後の行政指導としては、やっぱり将来そう二つの方向にいくように指導していくのがほんとうじゃないか、どうもこのまま存続して、それでいまこの改正案によりますと、非常に多くの矛盾が出てくるのですよ、この協同組合と信用金庫のことについては。そうして員外のあれを認めていくでしょう、員外貸し出しとか、それから、付随業務の員外貸し出しとか、信用金庫は許していく。そういうことになると、協同組織でありながら、あるいは協同組合でありながら員外のあれを認めてまいりますと、非常に、何といいますか、たとえば貸し出しの場合でも、いままでは会員に一〇〇%貸し出しできたのを、今度は員外の人も入ってくるとなると、二〇%入ってくれば八〇%しか貸し出しを受けられない、利用できないということも起こりますし、それから、員外の人の預金の保証までもその会員が負担しなければならぬ、保証しなければならぬという問題も起こってくるでしょう。同じ協同組織でありながら、協同組合と信用金庫との間に、非常にそこにそんな矛盾が出てくるのですよ。そういう点は一体どういうふうに考えられたのか。その歴史的な経過もあるのですから、これは相当業界でも問題になったのでありまして、そうして御承知のように、われわれ聞くところによると、その大きいところの相互銀行なり信用金庫なりはこういう形を望んでいるようですけれども、下のほうではかなり反対のところもあるでしょう、小さいところは。その経緯をひとつざっくばらんに話してください、どうしてこういうことになったのか。瀧口試案がこういう形になってしまったのであります。今後将来の指導のしかたに大きな影響があるわけですから。
  238. 澄田智

    政府委員澄田智君) ただいま、同じ協同組織でありながら、非常に差が出て差が開いてくると、こういう御指摘でございましたが、両方の制度をともにそれぞれの長所、特色というものを生かしながら、かつ、活用していくと、そういう制度が十分に働いていくようにしていくと、こういうためには、ある程度お互に特色を持たなければむしろならないので、そういう意味で、信用協同組合と信用金庫というのは、これは機能の面、組織の面で差があると、そういうふうな前提で考えたわけでございます。一番大きな違いは、何というか、やはり員外の預金をとるという点でございます。そうして今回員外の貸し出しというものも、二〇%の範囲内で卒業生金融とか、あるいは小口員外の貸し出しとかというものを認めたわけでございますが、現在員外預金の比率というのは、件数で七五%ぐらいが員外の信用金庫の預金であります。それから、金額でいえば、総預金の五〇%以上五五%程度、非常にこれが員外預金と、こういうことになっておりますが、それだけ広く員外から金を集めて、そうして会員たる中小企業を原則としてそれに融資をしていく、員外の預金を集めて中小企業に広く融資をする道を開いていくというのが信用金庫の特色である。二〇%会員外の貸し出しがあるので、それだけ会員の貸し出し分が少なくなるではないかというような点については、いわゆる員外預金の比率はそれだけ大きいのでありますから、その一部を会員外に融資するということもあっても、会員の全体として受ける利益は非常に大きいのではないか。それから、また、それだけの員外預金を集めるわけでありますから、それだけ一般金融機関としての性格を広く持っております。したがって、検査とか、まあ行政監督等の面においても、一般金融機関としてこれを厳重に見ていく、それだけ会員、その員外預金者のための負担というようなお話がございましたが、これはやはり会員がそれだけの利益を得るのであるから、他方、負担も当然である、まあこういう考え方、これに対して組合のほうは、これは閉鎖的な組合員のための金融機関、組合員の金を組合員の間で金融をする、こういう閉鎖的な機関である。まあそういうふうにお互いの長所と特色というものを認めて両方を存立さして、そして信用金庫というような、これは独特の制度でございますから、この制度は十分に今日においてはそういう機能を十分に果たしてきておりますので、これを認めて中小金融円滑化に資していこうと、こういうことでもって結論になった次第でありまして、今後もそういう方針で進んでまいる考えでございます。
  239. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私もそれは承知しております。たとえば調査会の答申によれば、中小企業のための専門金融機関の必要性を明らかにするとともに、多種多様な中小企業各層に応じた金融のパイプを通ずるために、専門金融機関もまた多様にするほうがいいと、こういう答申がしてあるわけです。これに基づいてやったと思うのです。しかし、実態は、さっきも話しましたように、信用金庫ができる過程に、信用組合からあの過程を見ますと、これが非常に中間的なもので部分的なものだ、私は、結局やはり信用金庫側のいろいろな要望、主張もあったことはもちろんありますが、そこで、結局は年来のこれをもっと制度的に整理すべきだという宿題を解決できないで、結局同質化あるいは過当競争に拍車をかけるだけで、結局はかけ声だけで、実質的に何ら改善がなされないんじゃないか。結局いま存続している相互銀行なり信用金庫、協同組合それぞれの主張があるわけですから、それを入れて結局まあまあというところでこういう形になったと思うわけですよ、この点がですね。私は、この改正案で一番問題ではないか、むしろこれは改革にならなかったんじゃないか、こう思うのですけれども、それで、具体的にさっきいろいろ信用金庫と協同組合との違いについていろいろ御指摘があり、いろいろ御説明がありましたけれども、それは何といったって、預金の面、貸し付けの面でこれはますます差別が拡大していくことは間違いないわけですよ。私は、将来これは非常にやはり問題になってくると思うのです。その点ですよ。これについて、大体いままでいろいろ業界からの要望があったから、こういうような何か具体的な信用金庫を存続して改正案を出したということになっていますけれども、しかし、将来はやはり滝口試案のようにすっきりさせていくという基本的考えがあって、そうしていまは現状をあまり急激に改革するとフリクションが多いからというので、そういう意味で出しているのかと思ったんですよ。ところが、将来やはりこのままで続けていくということになると、それはずいぶん矛盾しますよ。信用金庫と協同組合の間にそれは矛盾だらけじゃありませんか。だからこれは率直にそれはやってみて、試行錯誤で、やってみて、おかしかったらまた直すということもあるかもしれませんけれども、しかし、基本的な考えとしては、私は、やはり滝口試案のような方向でいくのがほんとうの改革だと思うのですが、その点どうですか。これではまるで現状維持ですよ。
  240. 澄田智

    政府委員澄田智君) 御意見は、そういう性格をはっきり株式と協同組織という、そういう点から二つに分けるというと御意見のようになるわけでございます。また、滝口試案というような考え方もあるわけです。広い意味の協同組織という中におきましても、その態様を分けまして、員外の預金をとるということを中心に、会員組織というような、現在のすでに市街地信用組合が両方に分かれて、一部はあのときに信用組合に残ったものもございます。それから、市街地信用組合が信用金庫になったものもございます。そういう経緯でまいりましたが、今日まで発達をしてまいりまして、それはその制度として十分に機能をしている、大きな使命を果たしている。ただ、会員組織というのは運営上問題があるという場合も御指摘がございました。その点は総代の選出とか、そういう点について改善を加えて、会員組織らしい会員組織として、今後そういう信用金庫制度というものを生かしていく、こういうような考え方に立ったわけでございます。  一方、異種金融機関合併転換というようなこともございますので、実態に合わせて、最も実情に合うような種類の金融機関として今後存続、活動していくと、こういうようなことに個々の機関について見ればなっていく、また、その道が開かれている、こういうことで、十分今後も、信用金庫という組織は中小企業金融の上で大きな役割りを果たしていくものと、こう考えております。
  241. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いままでの経過で、たとえば協同組合的な性格を存続するために、信用金庫の総代の選出方法にリコール制を取り入れるとか、そういうようなことで会員意識を高める、そういういろいろな方法があるからというのですが、しかし、いろいろどういうようにそういう方法をとっても協同組織であるということは、この信用金庫の目的のところですね、それから組織のところ、これは改正されていないのですから、はっきりしているわけでしょう。ですから、同じ共同組織でありながら、非常に差が出てくるということについて問題点があるのじゃなかろうか。だから、これは過渡的にこうしたというのならわかりますよ。だけれども、やっぱりこれでいいとは、何としても、どうも私も、たとえばこの預金の貸し出し量について会員が一〇〇%利用できないで、八〇%ぐらいしか利用できない、あるいは、また、外部負債についても、会員外の人の負債の保証もしなければならないでしょう、会員が。そういうような非常に不合理がたくさんあるのですよ。ですから、これはどうなんですか大蔵大臣、私は、このままで非常にぬえ的な信用金庫というものを存続させるべきではなかった、しかし、いまこれを二つにしてはあまり急であるから、一応過渡的にはこれは存続するとしても、やっぱり将来の専門中小金融機関を整備するという方向からいけば、私は、やっぱりどこかでいろいろな混乱が起きるんじゃないか。ですから、大きな方向としては、やっぱり滝口試案のように、協同組織と株式組織と、こういうふうに、そういう方向に向かって整理するように運営をし、指導をしていく、行政指導もしていく、こうならわかりますよ。ただ現状のままでいくといったらおかしいですよ、信用金庫。いかがですか。
  242. 澄田智

    政府委員澄田智君) ちょっと大臣の前に私から。  先ほど申したことにつけ加えまして、御承知のように、市街地信用組合が現在の信用金庫になりましたときに、その実態が、その当時もう企業協同組合というような制度もできつつあったわけでありますが、その協同組合の中にそのままでは入らない、むしろいまの員外預金等の関係から、それと違うものとしてそういうふうに育ってきているということで、信用金庫制度ができて、それがその後ずっと成長をして今日に至っていると、こういうことでございます。そして協同組合という組織にはまるようなものは、あのとき協同組合法による信用協同組合として残ったものもあったことは御承知のとおりでございます。そういうような実態でありまして、いまの信用金庫という制度について、これを完全な協同組合というような組織にするというのは、やはりそれと違う発展を遂げた現状においてむずかしいのではないか。それから、員外預金をとるということが一つの大きな特色になっておりまして、員外預金をとるという、広く員外預金を集めるという、一方にそういう大きな機能を持っております。したがって、員外預金をとる反面、会員が若干そのための制限を今度は受けるというのも、これは員外預金とプラスマイナスの関係からいえば、やはり会員のための利益になる、こういうことで、それはやむを得ないことといいますか、当然のことと、かように考えております。信用金庫という機能が独特の機能として十分その意味を持っている、かように考えるわけでございます。
  243. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣どうですか、いまの点。
  244. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) ちょうどこれはもう十七年前になりますが、実は、この信用金庫法と相互銀行法を準備して提案したのが当時私の責任でございまして、あのときに、いわゆるみなす無尽ということが問題になり、この解決策として相互銀行法を議員立法として準備するし、一方、この信用金庫法を提案したわけでございますが、木村さんの言われている議論は、実は当時からもうすでにあった問題でありまして、長い間の宿題でございましたが、今回これの金融機関をどうするかという問題にぶつかったときに、当然いろいろな議論が出てまいりましたが、結局は、あの当時から見て、両方の金融機関とも非常に大きく成長している。そうなってまいりますと、その現状を大きく変革することがどうかという問題に当然ぶつかりますが、やはり融資を受ける中小企業者の立場というものを考えなければなりませんし、そういうことになってきますというと、信用金庫も信用協同組合も、資金量は四兆をそれぞれ皆こしておるというところまで発達しておるものでございますから、これを飛躍させた考えを持たないで、この現状に即して、これを中小企業専門機関として改善して育てていくことが当面やはり一番妥当ではないかというのが金融調査会の結論でございまして、私どもは、やはりその結論に従ってやっていくのが妥当であるという考えから準備したわけでございますが、これはまだ今後もそういういろいろな議論は当然胚胎していると思うのでございますが、しかし、なかなか実情を急に変えていくということは、やはり融資を受ける者にとっての問題もございますので、やはり当分これを専門機関として育てるという方針でやってみて、あとあとからの問題だと考えております。
  245. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 協同組織の場合ですね、脱退の自由は、原則としてこれは確保しなければならないことになっているでしょう。ところが、信用金庫の場合は、協同組織でありながら、今度脱退について制限するわけでしょう。そうなると、協同組織でありながら、非常に妙なことになるわけです。そこで、いま大蔵大臣が、実際問題として信用金庫が非常に大きくなった、それなら信用金庫の協同組織というものに対する規定を変えるならわかりますよ、何らかの形で。それならわかるけれども、いまの法体系のもとで、どっちも協同組織なんですから、どう考えたってはっきりと。だから、そこのところをどういうふうにいかれるかわかりませんが、信用金庫というものをいままでどおりにその点はちっとも変えないでおりながら、協同組織であることについては規定は変えないで、そして今度の改正によって協同組合と信用金庫の間に非常ないろいろな差別が出てくるのですよ、非常な矛盾が出てくる。だから、そこのところをどうするかですね。からだを着物に合わせるのか、着物をからだに合わせるのか、そこがやはり必要じゃないですか。そこのところをはっきりしないといろいろな問題が起きてきますよ。人によってはいろいろ協業組合とか協業会社とか、いろいろな提案をしている人もありますが、その点はどうですか。そうでないと、どうもおかしいと思うのですがね。
  246. 澄田智

    政府委員澄田智君) いま御指摘になった点のうちで、特に自由脱退というようなことは今度制限されるというような点を御指摘になりました。協同組織というようなところからいって矛盾をするではないかというようなお話がございました。原則はもちろん脱退することはできるわけで、これは持ち分を他に譲渡して脱退をするということですが、もし譲渡を受ける者がいないというような場合には、これを金庫が買い取るということもできるわけでありますが、ただ、一定の時期においてそれまでに譲渡できないものは金庫が買い取りますが、それがただ非常にその部分が多くなりますと、その分だけ金庫の資本が減少していくことになり、金庫は員外預金を、先ほど申しましたように、非常に大きな割合でとっているわけでございますし、員外預金者の保護というような見地からその資本の欠缺というような形になることは防ぎたいというようなことで、そこを制限するということは、員外預金をとっているというような一つの大きな利便というか、プラスというものに対してやむを得ない制限である、かように考えているわけでございます。協同組織ということばを広く解釈いたしますと、協同和合ではもちろんないわけでございますが、協同組織という組織の中で員外の預金をとり、ある程度員外の貸し出しもする、こういうような、より開放的な協同組織と閉鎖的な協同組織というものがある、そういう実態がある、こういうことで問題を分けて考えたわけでございます。そういう意味でそれぞれの性格をはっきりさせて、その点についての十分そういう性格の特色が発揮できるようにしたいというのが今度の改正の趣旨でもあるわけでございます。
  247. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いままでは脱退者は一定期間で持ち分を買い取らせた。今度は改正案で脱退する者の持ち分の買い取りの限度が政令できめられる。それはどの程度か伺いたいのですけれども、もし限度に達した場合、その後脱退をする者が他の会員に、あるいは会員になろうとする人を自分で見つけなければならない。見つからない場合は脱退できない、こういうことになるわけですよ。ですから、そこのところは非常にいままでと違ってくるのであって、脱退の自由が。それで、そんなら最初の協同組織であるという規定を変えなければならぬわけですよ、協同組織は脱退の自由が原則なんですから。それにもかかわらず、今度の改正によって自由に脱退できないということになるんですよ、そうでしょう。だから、そこが矛盾しちゃうんですよ。協同組織であるということははっきりうたっておきながら、さっき実質的には同じだと言われたが、そういう非常に矛盾が出てくるんですよ。
  248. 澄田智

    政府委員澄田智君) 現在考えておりますその持ち分の買い取りの制限は政令できめるわけでございますが、それは金庫の資本金、出資金の五%の以内というようなことで、いま現実にやはり買い取りして買い持ちをしているというような金庫がございますが、その平均の比率はこれより相当低いので、現実問題としてのその五%という制限は決して無理な制限ではない、かように考えておりますが、まあ御指摘のような点で協同組織として矛盾するではないかという点でございますが、その買い取りは、脱退希望をした場合に、まず自分でその譲り受けを希望する者を探す、それがない場合には金庫に買い取りを請求する。買い取りを請求いたしますと、その期の期末において金庫が買い取る、こういうことになるわけですが、そのとき五%をこしておりますと金庫としては買えない、こういうことになるわけでございます。金庫は、御承知のように、一年決算でございますので、金庫としては、なおその一年間に買い取りの希望がありました場合には、金庫が今度はその持ち分の譲り受け人がいないかということを探しまして、そうしてそこに一年以内の期間がございますので、その間にあっせんをしてその持ち分を買い取らせる、他に買い取る者を見つけるということで金庫があっせんにつとめる、こういうようなことで実情は支障がない。そういうようなことで先ほどから申しておりますような員外預金をとっているというような開放性に基づく協同組織としての一つの制約というものがあってそういう独特な協同組織ということになるだろうと思います。さように考えております。
  249. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは御説明はわかりましたが、実際は、いま説明というより、弁明みたいなものですね。それは何といっても矛盾しておりますよ、協同組織であると。先ほど両方ともそうだと言われたのですが、片方はできない、片方は脱退自由ですね、実際、協同組合の場合には。ところが、信用金庫の場合には、いまお話のように、あっせんするといっても、もしそれが買い取ってもらえなければ脱退はできない、実際問題として。そういう矛盾はおかしい。だから私はここで救いの案を出しているのですから、とにかく信用金庫というものの性格を変えなければいけない。同じなんですよ、規定ははっきりと協同組合なんですから。片方は脱退自由の原則、片方は脱退できない。それから、預金にしても貸し出しにしても、非常に差ができる、そこはぼくは何といっても割り切れないと思う。やはり今後考える必要があるんじゃないですか、この矛盾については。この矛盾のままこれを押し通すということは、私は、何といったって、政府では、ことに大蔵当局なんというのはその点は特にやかましいはずなんです。本質規定と実際と、同じものでありながら、非常に異質のものが出てきてしまう。だから、そうでないようにここはすっきりさせるべきですよ。それは検討されてもいいですよ、今後。検討しなければならぬ問題じゃないですか。ただ弁明だけで、何でもかんでも現状が間違っていないという説明だったら、これは私はおかしいと思うのです。だれが聞いたって合理的な説明になっていないですよ。そこで、いま大蔵大臣が言われたように、実際問題として信用金庫が大きくなってしまっているんだ、そこで二つにいま急に整理するといったって、それは無理じゃないかという、それはわかりますよ、もう一つ意味なら。そんならそのように合わせるべきです、これは。合わせないで、同じものを、どちらも協同組織であるんです、事実。それでありながら、片方は脱退自由の原則に基づいて、片方は制限するというのは、これは預金とか貸し出しについてもまだいろいろほかにもありますよ。それは何としたっておかしいじゃないですか。検討されなければならぬと思うが、いかがですか。
  250. 澄田智

    政府委員澄田智君) どうも繰り返して弁明とおっしゃられると弁明になるわけですが、信用金庫法の第一条の目的の中に「協同組織」ということが書いてあります。そしてこの部分はもちろん今度も改正をいたしませんでそのままでございますが、「協同組織による信用金庫制度を確立し、」というふうにうたっておりまして、そして「金融業務の公共性にかんがみ、」云々と、こういうことになっております。いわゆる協同組合法による協同組合というものではありませんで、「協同組織」ということばが使ってあります。それから「金融業務の公共性にかんがみ、」云々と書いております。信用金庫は、信用協同組合に比べますと、広く員外預金をとるという意味でもって一般の金融機関性を非常に持っている。協同組合は、これは組合員のためのものでございますので、一般の金融機関より閉鎖的なものでございますが、こちらは員外預金を広くとるという意味において、一般の金融機関としての性格を持っている。その「公共性にかんがみ、」と、こういうふうなことで、出資があまり減っていくというようなことは、これは防がなければいかぬ。そういうような意味で、脱退の制限に実質のあるような持ち分買い取りの制限ということも現行法においても許される考え方であろう、かように考えております。
  251. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういう弁明をされるだろうと思っていましたよ。そういうことよりほかに理屈のつけようないと思うのです。それは大体私は予定しておる、そういう弁明をされると思って。しかし、これは弁明ですよ。ですから、今後非常に混乱が起きなければ幸いだと思うのです。いま私が言ったように、何も私は何でもかんでもいまの信用金庫をいますぐ整理しろと言っていないのです。そんなら法体系をきちっとすべきだと言うのです。いま実質的には、何といったって信用金庫は協同組合なんですから、そういわれているのです、名前をいろいろ言っても。その点はこれから議論になるだろうが、私はおかしいと思う。  それから、もう一つ信用金庫の連合会がありますね。その連合会の業務の運営方針について、これは私は問題があると思うのですが、この点について伺いたいのです。と申しますのは、連合会は、単位信用金庫から全信連に貸し付けの名目でコール資金を集めて、これを大口のコールに運用してピンはねをやっている、そうしてその連合会自体の営利に重点を置くような運営方針であると思うのですよ。本来ならば、これはもっと中小零細業者に資金を貸し付けて運用すべきであるのに、コールが有利であればコールのほうに回して、そしてそういう運営をやっているということは、これは私は間違いじゃないかと思うのですが、この点いかがです。これはずいぶん批判があるところじゃないですか。
  252. 澄田智

    政府委員澄田智君) 連合会は、その単位の信用金庫資金をプールするという機能を営んでおりまして、そうしてその資金需給の繁閑によりまして単位金融機関から預金を集めて、その預金を会員である金庫に貸し付ける、あるいは代理貸しという方法でもって金庫の会員に金庫を通じて貸すと、こういうふうなことでやっておるわけでございますが、余裕金をコールに運用しているというので、コールの比重がまあ高いというような点で、そういう点を指摘をされるのかと思いますが、これはまあ余裕金の運用という範囲でやっておるわけでございます。その個々の単位金庫に対して貸し付けをする、あるいは代理貸しをするというようなことが当然重点でありまして、その余裕金の運用というような面でコールも活用されていると、まあコールが時に非常に多いというような御指摘については、最近はコール全体が取り手のほうの銀行等も、相当前のように取りあさるというようなことも慎しんでおりますし、そういう意味で特に目立つというようなことはないと思います。
  253. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは銀行局長は弁明ばかりしているけれども、いままでずいぶん批判があるわけですよ。結局このことは、中小業者から集めた預金をコールに回すことによって、これは大企業のほうへ融資するということになるんですよ。だから中小企業金融機関としての正しい機能を果たさないということなんですよ。そればかりでなく、多額の政府保証債とか、それから国債を保有しているわけでしょう。そういうことは本来の中小企業金融機関としての役割りを果していない、これはどうして行政指導しないのですか。弁明ばかりしないで、もっとこの点は正しくないということをはっきりと言うべきじゃありませんか。私はおかしいと思うのですね。ずいぶんいままで問題になったことは御承知のとおりじゃありませんか。ですから、その金額ですね、政府保証債、あるいは国債をどのくらい保有しているか、コールにどのくらい回しているか、数字をはっきりしてください。時によってコールに、多い少ないはありますけれども、非常に批判を受けたのですよ、中小業者にね。
  254. 澄田智

    政府委員澄田智君) 四十三年の一月末で申し上げますと、全信連のコール運用が、四十三年一月末で千六百億でございます。それから、有価証券の運用が千六十二億、こういう状況になっております。
  255. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 国債と政府保証債……。
  256. 澄田智

    政府委員澄田智君) 政府保証債は、ちょっといま数字を持っておりません。この有価証券の一部でございますが、その内訳を手元に持っておりません。
  257. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは銀行局長、いままで相当批判があったことは御存じでしょう。新聞なんかでもずいぶん批判されていたんじゃないですか。それについて、こういういままでの全信連のいわゆる運営方針でいいのかどうか、これは改めるべきものがあるなら改めるのだということを、これははっきり私はここで言われるべきじゃないかと思うのですよ。だって、コールにほとんど運用して、そして中小業者から集めた金を大企業のほうへ融資するというのは矛盾していると思うんですよ。こういうような機会でないと、それはわれわれそういうことを指摘する機会はないわけです。ですから、むしろ銀行局長にいいチャンスを与えてあげているんですから。
  258. 澄田智

    政府委員澄田智君) 今回の金融引き締めになりましてから、コールというものの動きはわれわれも常に注視をしておるわけでございます。いままでの引き締めのときは非常にコールがふえて、そうして中小金融機関とか、あるいは農林系統機関等から非常にコールを取りあさるというようなことが行なわれたわけでございますが、今回はコールレートも急上昇いたしませんで、また、コールの取り手に当たります都市銀行等につきましても、外部負債がふえますということは、これは日銀の貸し出し増加額規制というような規制の場合に不利に規制をするというような方針もとりまして、そういう点からも、コールに対しては従来のような極端な動きというものは今回については見受けられなくて、また、中小企業金融専門機関等を見ましても、相互銀行の場合でも信用金庫の場合でも、コールに出す割合というものは、いままでに比べれば相当低い状況でございます。御指摘の連合会のコールにつきましては、特に過大であるというようなふうにも見ておりませんが、もちろんいま御指摘のような点の注意をいたしまして、これが行き過ぎたコール運用ということになる点につきましては、これは監督上十分注意をしてまいりたい、かように存じます。
  259. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そのコールばかりでなく、政保債とか国債の保有なんかについてもやはり考慮すべきだと思うのですよ。それは中小零細企業金融のほうにもつと回すべきじゃないかと思うのです。その点についてもやはり考慮すべきじゃないか。いかがですか。
  260. 澄田智

    政府委員澄田智君) 国債、政保債等に運用しております実情等についても、よく内容検討いたしてみたいと思います。
  261. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 検討したいというのではなくて、そういう批判が相当あるのですよ。ですから、本来もっと中小零細企業金融すべきものを政保債、国債に固定することは矛盾しておるのじゃないか、そういうふうにならぬように指導するというならわかりますよ。ただ検討するというだけじゃ、これじゃ意味がないのじゃないですか。
  262. 澄田智

    政府委員澄田智君) 特に中小金融専門機関の連合会としてのあり方というような意味から見て過大にわたるかどうかというようなところを検討いたしまして、過大にわたるというような場合についてはもちろん注意をいたしたい、こういう趣旨で検討したい、こう申し上げたのであります。
  263. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 銀行局長、怠慢ですよ。われわれやはり実際にいろいろなことを聞いておるわけですよ。だから、もっと具体的な根拠に基づいてあれしますけれども、知っておるはずじゃありませんか。そんなことわからないでどうするんですか。もっと中小零細企業のほんとうの金融に役立つようなそういうような点は、コールあるいは地方債、国債の運用については、十分に零細、あるいは中小企業金融にもとらないような運営方針をとらせるようにいたしますというならわかりますよ。ちっとも実情に通じていないようですから、これで私はこの質問をやめます。  最後に、まだたくさん問題点があるんですけれども、きょうは時間がおそくなりますから、最後に、私は、衆議院のほうからつけてきた附帯決議、これについてひとつ確認しておきたいのです。この附帯決議のうち、合併転換に関する附帯決議については先ほど戸田委員から質問がございましたので、これは私は省略します。相互銀行法信用金庫法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議、これについて確認しておきたいんですが、三つの附帯決議がついているのですね。第一は、「中小企業金融制度整備改善に伴い、これらの金融機関が本来の中小企業金融に徹して、借入れ側中小企業の必要とする低利にして豊富な資金供給するようさらに指導すべきである。」、これが一つ。それから、「これとあわせて、信用保証の拡充、政府関係公庫資金枠の拡大、利子の引下げその他融資条件の改善等を通じて、中小企業者に対しより有効にして確実な効果をあげるよう必要な措置を行なうべきである。」、こういう附帯決議が第一なんです。そこで、この中で四点について確認しておきたいんですが、「低利にして豊富な資金供給するようさらに指導すべきである。」、こういう附帯決議、これは具体的に政府としてはどういうふうに指導するのか、もう少し具体的にこの附帯決議に対しての御意見を聞きたい。それから、「信用保証の拡充」といっても、これは附帯決議は非常に抽象的ですが、これに対して政府は具体的にどういうふうに拡充しようとしているのか。それから、「政府関係公庫資金枠の拡大」、これについてももう少し政府は具体的にどういうふうに対処するか。それから、「利子の引下げ」、それから、「融資条件」、これについて政府の具体的な、ただ善処するではなくて、こうこうこういう形において漸次考慮する、そういうふうな見解を承りたい、第一に。
  264. 澄田智

    政府委員澄田智君) 第一点の、この「これらの金融機関が本来の中小企業金融に徹して、借入れ側中小企業の必要とする低利にして豊富な資金供給するようさらに指導すべきである。」という点は、これはいわば今回の改正の目的もまたこういうところにあるわけでございまして、今回の制度改正を通じて金融機関の経営の効率化というものをはかり、そしてその体質を改善して、さらにそういうことによって資金吸収力というようなものも高まり、その結果、その資金コストの引き下げも可能になる、こういうような条件が整って、そうしてその結果、そのねらいといたします低利資金を潤沢に供給するような体制というものが整備される、そういうことが一つの今度の改正のねらいでございます。それと同時に、その金融行政の面の金融機関に対する指導の面等を通じてもそういうふうに持っていくように、そういうふうな目的に適合するように法律の運営もはかってやっていきたい、かように考えるわけでございます。このほかのここに指摘されております「信用保証の拡充」、この点については、これは保証料率等もさらに引き下げをはかるとともに、信用保証の普及率を高めるというような点について、今後とも十分その努力をしてまいるところでございますし、さらに今後の金融情勢等を見て、それに適応して政府関係金融の機関の資金量等についても弾力的に対処をしていくと、そういう考えでおります。まあ利子の引き下げ等も、あるいは融資の条件の改善等もうたってございますが、まあ四十三年度の場合におきましても、いろいろな点で融資条件の改善がはかられておるという面が、中小金融の政府金融機関関係において融資についてございますが、今後とも、そういう点を一そう拡充をしてまいりたい、かように考えております。
  265. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まだ非常にいまの御答弁では不満なんですけれども、まあ時間がありませんから、次の附帯決議について具体的な意見を聞きたいんですが、それは「中小企業金融専門機関の指導と育成にあたっては、次の事項につき充分配慮すべきである。」、第一は、「競争原理導入を急ぐ余り、規模の小さい専門機関の営業分野が不当に侵されないように配慮すること。」、それから、第二は、「代理業務の範囲の拡大をはかり経営の安定に資すること。」、この二点については特にまあさっきも信用金庫と協同組合につきまして質問したんですが、規模が小さい場合に、規模が小さいからといっても、それはそれぞれのまあ特色を生かして、やっぱり中小零細企業金融を十分に果たせるように配慮すべきであると思うんです。それから、いたずらに合併集中ですか、転換をあまり急いでやるべきじゃない。中小であるからといって、必ずしも専門金融機関として不適正ではない場合もあり得るのですから、そういう点をよく考慮する。それから、代理業務につきましては、これはやっぱり中小零細なんかにかえって代理業務をやらしたほうがいい面があると思うんですよ、保護育成のために大きいところばかりやらせないで。そういう点も十分配慮せよということなんだと思うんですが、この点について御意見を承りたい、具体的にですね。
  266. 澄田智

    政府委員澄田智君) 最初の、小さいから必ずしも専門機関として適当でないということはなくて、十分そういうふうな専門機関としての機能を果たすというような場合もあるという点については仰せのとおりであろうと思います。そういう点につきまして、今後この法律の運用上も、特に競争原理を急ぐのあまり、ここに書いてありますような趣旨にもとるようなことのないように留意をしてまいりたいと、かように思います。  それから、代理業務につきましては、現在、中小企業専門機関——相互銀行信用金庫、信用協同組合というようなものの代理業務のウエートというものは非常に高い状態になっております。できるだけ利用者の便宜というようなことも考えまして、代理店の業務の範囲というようなものは広げてまいるというようなことでやってきておりますので、今後とも、この点については十分留意してまいりたいと、かように存じます。
  267. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 第三ですが、「預金者保護」、これについてはいままでいろいろ討議がございましたけれども、この際に、あらためてどういう措置をとるお考えでおられるのか、具体にお考えがあったら承っておきたいと思います。
  268. 澄田智

    政府委員澄田智君) 金融機関の指導等にあたりまして、その資産の状況、業務の内容等について、いろいろ公共性の見地から十分これを監督、検査をしてまいります。それは、一つには、預金者に対する万全の措置ということが第一のねらいでございます。その点は今後とも一そう充実をやっていきたい、かように存じますが、なお、先ほどから話の出ております預金保険というような制度につきましては、現在、金融制度調査会の特別委員会の検討事項ということになっておりまして、今後金融機関が適正な競争を営んでいく上に、預金者保護のために預金保険というような制度導入するということは、先ほど大蔵大臣からの答弁にもございましたように、十分検討すべき課題である、かように存じます。
  269. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これでもう最後の質問ですが、中小企業庁を中心に、政府は具体的に中小企業対策を講じているんですが、通産省の中小企業関係の予算を見ましても、項目としては、もうあらゆるいろいろな指導、育成の項目はそろっています。実にこまかく項目としては、もうほとんど行き届くような、中小企業何とか何とか。ところが、それにつけられる予算が、大蔵大臣、非常にちょっぴりちょっぴりなんですよ、みんな。全体の予算の中に占める比率が、あれは大体〇・六、七%ですかね。ですから、問題は、これはまあ専門の学者先生等にも聞きましたが、なるほど項目としてはほとんどもうよく出ている、通産省の中小企業対策に。しかし、それにつける予算の額が小さいんですよ。ですから、今後はやっぱりかなり思い切った予算措置を講ずるということが一つ中小企業対策としては非常に重要なことじゃないか。いろいろな専門の学者先生に聞いても、何しろ項目は非常にいいのがある、あるけれども、何しろ予算が足りないので実現できない、せっかくこういういい政策があっても実現できない。結局はこの予算の裏づけがないということが、それが大きな障害になっていると思うのですよ。それが一つと、それから、今度は金融面についての政府の低利、長期の資金ですね、これはいろいろあるわけですよね。社会保険関係のいろいろな資金もあるわけです、低利のね。コストの安いあれがあるのです。そういう政府資金も十分に金融としても運用されるように、そちらの方面に。この二つですね、やはり資金の量、金融としては。それから、大臣としては予算の裏づけ、これがいかにも貧弱なんですよ。もう結局結論はそこへいく。これに対して、ひとつ中小企業庁のほうで御答弁を。それから、最後は結局大蔵大臣にいくのですが、大蔵大臣から結論をひとつ御答弁していただいて、私の質問を終わります。
  270. 沖田守

    政府委員(沖田守君) たいへんこの苦しい中小企業の立場を御激励いただきまして、ことしは予算の平均の伸び率よりも中小企業対策予算の伸びは少し低いという程度でございましたが、幸い、各省の自主的な効率的配分というのを認めていただきましたので、少ない金がいまよりは相当効率的に使えるという面で、財政硬直化の中では、幾らかその意味での前進はあったと思っておりますが、御指摘のように、このいろいろな施策についての中小企業対策費の充実は今後の努力方向であろうと考えております。それから、財政投融資につきましては、ことしの予算におきましては、たまたま金融引き締め下における中小企業へのしわ寄せ防止という観点から、財投の平均伸び率一三%に対しまして、中小企業関係の中小公庫、国民公庫、商工中金の三機関の貸し付け規模の伸びは一九%でございまして、この点では政府として相当はっきりとした努力の線が出ていると、こう考えているのでございますが、今後ますます環境激変下の中小企業対策を充実していくための努力は、私どもとしても極力進めてまいりたいと、こう考えております。
  271. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃ大蔵大臣にひとつ。
  272. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 必要な予算の強化については、十分努力いたします。
  273. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) それでは、質疑は、本日はこの程度といたしまして、これにて散会いたします。    午後七時一分散会      —————・—————