運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1968-04-25 第58回国会 参議院 社会労働委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月二十五日(木曜日)    午前十時五十五分開会     —————————————    委員の異動  四月二十五日     辞任         補欠選任      柳岡 秋夫君     森中 守義君      佐野 芳雄君     沢田 政治君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         山本伊三郎君     理 事                 鹿島 俊雄君                 黒木 利克君                 大橋 和孝君     委 員                 植木 光教君                 紅露 みつ君                 玉置 和郎君                 沢田 政治君                 森中 守義君                 小平 芳平君                 中沢伊登子君        発  議  者  小平 芳平君    衆議院議員        発  議  者  田邊  誠君    国務大臣        厚 生 大 臣  園田  直君        労 働 大 臣  小川 平二君    政府委員        厚生政務次官   谷垣 專一君        厚生大臣官房長  戸澤 政方君        厚生省医務局長  若松 栄一君        労働大臣官房長  石黒 拓爾君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省安全衛生        局長       大野雄二郎君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        文部省大学学術        局審議官     清水 成之君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○最低賃金法の一部を改正する法律案(内閣送  付、予備審査) ○最低賃金法案小平芳平君外一名発議) ○最低賃金法案衆議院送付予備審査) ○労働問題に関する調査  (労災保険支払い遅延問題に関する件)  (炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特  別措置法施行後の諸問題に関する件) ○社会保障制度に関する調査  (診療エックス線技師法の一部を改正する法律  案に関する件) ○医師法の一部を改正する法律案(第五十七回国  会内閣提出、第五十八回国会衆議院送付)     —————————————
  2. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  最低賃金法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から提案理由説明を聴取いたします。小川労働大臣
  3. 小川平二

    国務大臣小川平二君) ただいま議題となりました最低賃金法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  最低賃金制につきましては、昭和三十四年の法施行以来今日までにその適用を受ける労働者中小企業中心として約六百万人に達するとともに、その金額も逐次改善され、賃金の低廉な労働者労働条件改善中小企業近代化に役立ってまいりました。  この間、わが国経済高度成長の過程において、若年労働者中心とする労働力逼迫等により一般賃金上昇は著しいものがあり、このような中でなお改善から取り残される労働者に対し、より効果的な最低賃金制度を確立してその生活の安定と労働力質的向上をはかっていく必要はますます大きくなっていると考えます。  かかる事情にかんがみ、政府は、昭和四十年来中央最低賃金審議会に今後の最低賃金制のあり方の御検討をお願いしていたところでありますが、昨年五月同審議会より答申が提出されました。その答申に基づきまして、最低賃金決定方式については、業者間協定に基づく決定方式廃止し、最低賃金審議会調査審議に基づく決定方式中心とすることに改めることが適当であり、また、このような措置を円滑に進めるためにはある程度の経過措置が必要と考え、ここに最低賃金法の一部を改正する法律案を提出いたした次第であります。  次に、この法律案内容につきまして概略御説明申し上げます。  第一には、最低賃金制度をより効果的なものとするため、業者間協定に基づく最低賃金及び業者間協定に基づく地域的最低賃金二つ最低賃金決定方式廃止することといたしております。  このことに関連して、最低賃金審議会調査審議に基づく最低賃金につきましては、労働大臣または都道府県労働基準局長は、従来、その他の方式により最低賃金決定することが困難または不適当と認めるときに限り審議会調査審議を求めることができることとされておりましたが、その要件を除き、賃金の低廉な労働者労働条件改善をはかるため必要があると認めるときは、調査審議を求めることができることといたしております。なお、最低賃金審議会調査審議を行なう場合においては、関係労働者及び関係使用者の意見を聞くものとするとともに、労働大臣または都道府県労働基準局長最低賃金決定に先立ち、関係労働者及び関係使用者は異議の申し出をすることができることといたしております。  第二には、業者間協定に基づく最低賃金及び業者間協定に基づく地域的最低賃金二つ決定方式廃止に伴う必要な経過措置を定めることといたしております。すなわち、現在まで業者間協定に基づく最低賃金決定方式が広く実施されている実情にかんがみ、その廃止に伴い無用な混乱を生ずることのないよう、法施行の際現に効力を有する業者間協定に基づく最低賃金及び業者間協定に基づく地域的最低賃金は、法施行後なお二年間はその効力を有することとし、その間においてはなお従前の例により改正または廃止することができることといたしております。しかしながら、その期間内に最低賃金審議会調査審議に基づく最低賃金が新たに設定または改正されたときは、その最低賃金適用を受ける労働者については、業者間協定方式による最低賃金はその効力を失うものといたしております。  以上、この法律案提案理由及びその概要につきまして御説明申し上げました。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。     —————————————
  4. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 次に、最低賃金法案(参第九号)を議題といたします。  発議者参議院議員小平芳平君から提案理由説明を聴取いたします。小平君。
  5. 小平芳平

    小平芳平君 ただいま議題となりました最低賃金法案につき 提案者を代表いたしまして、提案理由並びに内容概要を御説明申し上げます。  申すまでもなく、国家強制力をもって賃金の最低限を規定する労働者保護立法、すなわち最低賃金制は、近代国家に不可欠の制度であります。ゆえに、ILO二十六号条約最低賃金決定制度の設立に関する条約は、一九二八年のILO総会で採択されて以来、七十三カ国が批准を終了しております。わが国先進工業国として大きな躍進を遂げながらいまだにこれが批准されないのは、政府労働政策の重大な欠陥と言わざるを得ません。近代産業国家においては、いかなる労働者に対しても、労働者最低生活を保障するとともに、企業間の不公正な競争を防止し、経済の健全な発達と産業平和、労働市場近代化を達成することがきわめて重要であります。  すなわち、企業にとっても、必要以上の低賃金、低生産性は、決してプラスとはなりません。むしろ賃金水準を安定し向上していくことにより、良質の労働者を得、企業機械化近代化を促進することが必要なのであり、また、国民経済  の面から見ても賃金上昇とともに労働者生活向上購買力上昇し、有効需要を喚起し、経済活動が活発となっていくのであります。それは企業労働者がともに繁栄する道にほかなりません。  しかるに、わが国最低賃金法は、昭和三十四年四月に成立しましたが、その内容はいわゆる業者間協定がその主体となっておりまして、ILO二十六号条約労使平等の原則に反しているのであります。労働者側の参加しない業者間協定のごときは、悪法の最たるものであることは言うまでもありません。政府もようやくその非を認め、今回、最低賃金法の一部を改正する法律案を提案いたしました。しかるに、われわれは、この政府案では労使平等の原則を十分に尊重しない非民主的な要素指摘せざるを得ません。また、現行最低賃金原則でも、本来の労働者保護の精神を十分に確立しているとは言えません。  そこで、公明党は、大衆福祉実現のために、すべての労働者最低賃金を保障することといたしました。  次に、法案内容について御説明いたします。  まず、第一に、すべての労働者に健康で文化的な生活を営むために必要な賃金最低額全国一律最低賃金を十八歳の労働者に必要な生計費全国平均によって算出することにいたしました。  第二に、右の全国一律最低賃金決定または改正は、中央最低賃金委員会がこれを行なうこととし、同委員会は、労使各十人及び公益五人の委員をもって構成することといたしました。  第三に、中央最低賃金委員会は、一定地域内の十八歳の労働者に必要な生計費全国平均に比して著しく高い場合に当該地域についての最低賃金決定することができることとしました。  第四に、以上のほか、労働協約に基づく一定地域内の産業別最低賃金を認めることができることとしました。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。     —————————————
  6. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 次に、最低賃金法案(衆第一号)を議題といたします。  提出者衆議院議員田邊誠君から提案理由説明を聴取いたします。田邊君。
  7. 田邊誠

    衆議院議員田邊誠君) 私は、提案者を代表いたしまして、最低賃金法案につき、提案理由並びにその内容概要を御説明申し上げます。  戦後、わが国経済は、著しい荒廃と混乱の中から再出発したにもかかわらず、異常な成長を遂げてまいったのであります。今日、その経済成長率は、実に、先進国でも世界第一位を示す状態に立ち至っておるのであります。しかし、この経済高度成長の中には、国民の勤勉で低廉な労働力の提供がその重要な要素として存在しておることを忘れることはできないと思うのであります。  もちろん、今日までの社会機構の中では、労働市場はごく一部の例外を除いて、常に買い手が値段をつける買手市場でありました。しかしながら、現下のわが国の情勢は、経済成長が招来したひずみを是正し、格差を解消することが急務であることが叫ばれ、また、若年労働力不足の事態が起こりつつある状況にあり、労働市場も大きな変革を来たしつつあると言えるのであります。  この事実に着目するとともに、今後わが国近代国家として国際競争下にあって正しく発展し、真の福祉国家としての実をあげるためには、まず勤労国民労働力を大切にし、その価値を高く認めることが肝要であると言わなければなりません。  申すまでもなく、最低賃金制度は、ときとして団体協約によって最低賃金をきめる制度を含むこともありますが、通常は法定最低賃金を設け、賃金についての最低限度を国の法律によって強制する制度でありまして、歴史的には極貧階層救済のための労働者保護立法として発足したのであります。次いで、貿易競争から来る国際緊張を緩和する役割りを果たし、これが国際連帯を強める結果となり、ILO二十六号条約の採択と、次いでこれが批准が七十カ国以上に及ぶまでに至ってきたのであります。さらに、第二次大戦後は、労働者最低生活水準を保障する制度として受け取られるように発展してまいったのであり、今日、最低賃金制度は、労働価値の正しい評価と、再生産に必要な生活をなし得るに足る賃金国家によって保障することを常識とする制度となっておるのであります。  しかるに、わが国労働者賃金の現状はいかがでありましょうか。わが国工業生産が造船の世界第一位、化学繊維の第二位、自動車、鉄鋼、セメントの第三位など、世界有数の地位を占めていることは周知の事実であり、これに比べて国民一人当たりの所得世界第二十位前後という低位にあることも動かせない現実であります。さらに、月二万円以下の低賃金労働者が八百万人も存在し、内職労働者で低い工賃に呻吟している層が二百万世帯にも及んでいるのであります。  この生産所得経済成長賃金の著しい不均衡を是正し、労働者生活の安定と労働能率向上をはかるとともに、産業の平和を維持するためには、労働者最低賃金を保障し、規定することが絶対に必要不可欠であると信ずるのであります。  現行最低賃金法施行後十年になんなんとしておりますが、適用労働者数は昨年十二月末現在で中小企業労働者千三百万人のようやく半数に近い六百十一万人であり、しかも、そのうち、現行法の中核をなす、悪名高い第九条の業者間協定方式によるものが二千二件、四百六十七万人も占めておるのであります。さらに、適用労働者数の七六%は、依然として日額五百五十円以下、月額換算一万四千円以下の低い賃金決定を受けている状況にあるのであります。  このことによる低賃金労働者の存在が、他の労働者賃金に多大の悪影響を与え、一方、法的規制賃金として米価決定の重要な要素である生産費中の労働力評価基礎ともなり、農民所得水準を押える役目もなしているのであります。さらに、生活保護基準失業保険最低額、失対賃金国民年金とも関連し、国民生活水準を低く規制しておるのであります。さきに指摘したとおり、この国民犠牲の上に裏面上のわが国経済高度成長と繁栄が築かれてきたことを看過することは断じて許されないのであります。  われわれは、現行最低賃金法が、わが国の低賃金構造の裏づけと、政府の低賃金政策を合理化する役割りを果たし、一方、国際貿易市場で歴史的にわが国の信用を失わせてきたソシアル・ダンピングの原因をなしてき、さらには業者間協定によって、賃金労使の直接交渉で決定すべき原則と権利を踏みにじり、低開発国においても適用可能といわれるILO二十六号条約に違反する指摘すら受けてきた経緯にかんがみ、この際、新しい時代に即応した正しい最低賃金法実施に踏み切るべきときがきたことを認識し、ここにこの法案を提出した次第であります。  以下、法案内容について御説明申し上げます。  まず、第一に、最低賃金適用については全国一律制を採用いたしたのであります。わが国のようにいまだに産業別業種別地域別賃金格差が存在し、なおかつ低賃金労働者が多数残されている状態では、この制度実施があくまでも必要であると思考いたすのであります。それぞれの格差賃金をきめることは、最低賃金制度の本来持つ効果をなくさせるからであります。なお、この上に、労使団体協約に基づく産業別地域別拘束力を持つ最低賃金拡張適用制度も確立することといたしました。  第二は、最低賃金額決定基準は、生活賃金たる原則を貫き、労働者人たるに値する生活を確保するために必要な経費である生計費と、一般賃金水準の動向などを考慮してきめることといたしました。  第三には、最低賃金額決定及び改正は、最低賃金委員会において行ない、同委員会に強力な権限を与え、その決定一般的拘束力を持たせ、行政機関も追認せしめることといたしたのであります。  第四に、最低賃金委員会は、六カ月に一回、必要生計費及び一般賃金水準に関する調査を行ない、その結果を公表するとともに、基礎となった必要生計費が三%以上増減したときは、最低賃金額改正決定しなければならないとしておるのであります。  以上、この法律案概要について御説明申し上げましたが、この際、賃金支払い能力の問題と関達して、この法案による全国一律制最低賃金実施は、中小零細企業の存立の基礎を脅かし、経営を困難にするのではないかという論に対して、一言言及しておきたいと存じます。  そもそも、今日、わが国中小企業が常に経営の危機に立ち、相次ぐ倒産に見舞われている原因はどこにありましょうか。このことは、政府の大企業偏重の財政、税制政策に基因し、これに呼応する小規模企業への強い金融引き締めと、大企業からの下請単価切り下げ下請代金支払い長期手形化による遅延などの圧迫が中小企業の基盤を不安定にしておる要因ではありませんか。  その結果としてのしわ寄せが、労働者賃金労働条件に転嫁されていることを考えるとき、中小企業家と、そこに働く労働者は、ともに大企業の共通の犠牲者であると言えるのであります。一律制最低賃金実施は、大企業による下請単価切り下げを防止する歯どめになると同時に、労働力の再生産を円滑にし、労働能率を高めることから、経営改善近代化に役立つ結果ともなるのであります。そのためには、格差賃金の残存よりも、最低賃金は国が責任を持つという規定のほうが中小企業家自身も歓迎する制度であると確信するのでありまして、日本経済の二重構造を解消し、中小零細企業経営安定のためにも、中小企業への国の保護助成政策の推進と相まって、この全国一律制最低賃金実施が必要であるゆえんがここに存在することを深く認識していただきたいのであります。  国民の待望するこの法案について、何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いして提案理由説明を終わります。     —————————————
  8. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 本日は、三案に対する提案理由説明聴取のみにとどめておきます。     —————————————
  9. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 次に、引き続いて労働問題に関する調査議題といたします。  これより質疑を行ないます。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  10. 大橋和孝

    大橋和孝君 たいへん時間の制約があるようでありますから、いろいろお尋ねしたいことはありますけれども、要約をいたしまして、今度の労災保険支払い遅延の問題だけにしぼってちょっとお伺いしたいと思うのであります。  実は、ことしの二月、三月分の労災保険の金が、京都——私の地元でありますが、京都方面ではだいぶ遅延をしておる、医療機関に支払われるのが非常におくれておるというような話を聞いておるのでありますが、いま実態はどんなようになっておるのでございましょうか。
  11. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 年度末に一部遅延いたした例がございまして、たいへん恐縮に存じております。それは、年度当初に見込みました保険金より、たとえば医療費の増高等によりましてかなり支出が多くなりました。その結果、予備費使用せざるを得ない、こういうことになったのでございますが、予備費使用が三月下旬に承認されたというそういった手続支払いがおくれたという事情にございまして、まことに恐縮に存じておりますけれども、三月末には必要な予算を地方に配賦いたしておりますので、その後支払いが行なわれたというふうに考えております。
  12. 大橋和孝

    大橋和孝君 まあその仕組みのほうはよく私は知らないのでありますが、急激にふえるということになれば、どちらかといえば、交通災害もありましょうし、あるいはまた工場災害もあるわけでありますが、予測以上のものがあればそれは別にわからないと言えば言えるわけでありますが、こうした同じような推移状態で来ておったのか、また、去年の年末にかけては特別に費用がふえておったのか、その辺のところはどのような経緯をたどっておるのか、月々支払い金額などちょっと示していただきたいと思います。
  13. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 最近の傾向を申し上げますと、たとえは療養補償給付——療養費についてのみ見ましても、三十九年度が百七十六億でございましたが、それが四十年度には二百十三億というように三十七億増加いたしております。さらに、四十一年度は二百六十七億というように前年度比五十四億の増加になっておりまして、比率といたしますと二百十三億に対して五十四億増というかなりの増になっているわけでございます。  これは、いろいろ理由がありますけれども、特に四十二年度におきましては、医療費改定健康保険の点数の改正といったようなことと関連いたしまして、労災でも医療費改正を行ないましたので、医療費が相当ふえております。そういうことで当初予想をかなり上回ったという結果になっておりますが、予備費使用手続が三月に繰り越した、こういうことで不足金額が十五億六千八百万円不足いたしまして、その分が年度末の三月になりまして地方に配賦されたと、こういう関係でおくれたわけでございまして、まことに恐縮に存ずる次第でございます。
  14. 大橋和孝

    大橋和孝君 ちょっといま聞き取りにくくてノートを十分しにくかったわけですが、去年度ですね、総額じゃなくて、月々にどういうふうに支払われておったか。それからそのほか医療費改定が大きく影響しておるとすれば、前年度と比較をしてぜひそれを資料的に——もう資料が出ていますか もし出ておれは それを教えてもらったら見ますけれども、何かわかりやすく対比をして資料的にいただきたいと思うのですが。
  15. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 私どもで出しております「労災保険事業月報」というのがございまして、これに出ておりますが、いかがいたしましょうか。月々推移も大体は出ておるのでございますけれども、資料として……。
  16. 大橋和孝

    大橋和孝君 ごく最近になっての事情がその表を見ればわかりますか、たとえば二月、三月も。今年度のやつがほしいわけですがね。
  17. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 現在一番新しいものは、昭和四十二年十月末現在までのものが月々わかっております。
  18. 大橋和孝

    大橋和孝君 それを見せてもらいまして、それ以後の分は、同じように月々払われておるのをちょっと知らしていただきたい。予備費は幾ら出されておるか、それからどういうところでいつごろにどういうふうな資金処置をとられたかということをちょっと知りたいと思いますから、この三月一ぱいまでの分くらいがわかればと思います。
  19. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 資料を調製いたしまして提出させていただきたいと存じます。
  20. 大橋和孝

    大橋和孝君 これは二月の審査分の一部が四月の中ごろになって支払われておると、三月の分はまだ全面ストップになっておるということで、もうぼつぼつ払うべきやつがずっとおくれておるので非常に不安であるようでありますが、いまお話を聞くと、予備費からも出す、また、資金的にも処置されたと言っておるわけですが、これはいつごろ払われて今後の見通しはどういうふうになっていくのか、そこのところをちょっと聞かしていただきたいと思います。
  21. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 資金的には、労災保険予備費はかなりございますので、大蔵大臣に協議いたしまして承認を得ますと支出可能でございます。これは一般会計と違うものでございます。そこで、各地方の局から集計いたしまして、そして医療費等の財源を地方に配賦いたしておるわけでございますが、先生御指摘の三月ごろの状態について申し上げますと、三月分給付決定分は今日まで九九%、ほとんど支払い済みであります。つまり、予備費使用が認められますと直ちにその資金地方の局に示達いたします。それまでに大体審査をいたしておりまして、もう内容的にはっきりいたしておりますと、金が参りますればすぐ支払いを開始するということで、現在まで三月分の支払いは完了しておるというふうに報告を受けております。
  22. 大橋和孝

    大橋和孝君 大体いままで労災支払いというのはうまく潤滑にいっておったと私は聞いておったわけです。しかし、今度そういうことが起こったものですから、ちょっと意外に感じておるわけです。これは、私、京都で聞いた話で、全国的には知らぬのですが、全国的にもそういう遅延をしたところはたくさんあるかどうか。それからまた、いまおっしゃったことによると、予備費さえ認めてもらえば円滑に払われていたんだということですから、そういう措置がいままでは少しおくれていたために支払い遅延になっておったのか。そうだとすれば、そういう措置なんかはもっとスムーズにやってもらったほうがいいのではないか。こういうふうな疑問を持つんですが、全国的にはどういうふうになっているか、そんなことを詳しくひとつ聞かしてください。
  23. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 全国的な遅延というわけではございません。と申しますのは、各都道府県の局で扱っております件数が、まあ災害の発生件数とも関係するんですが、ある局では大体示達額で処理し得た、ある局では足らない、こういうことで、多少のでこぼこはあるわけでございます。ただ、一般的に言えますことは、昨年の秋ごろから新しい医療費支払いが開始されましたために、医療費の支出の増加の状況が昨年の年末からことしの初めにかけては必ずしも的確に把握し得なかった。その間に、四十三年度予算の編成がございまして、そして予備費使用手続が三月に繰り込んだ、こういう事情もございまして、医療費改定の影響を把握するのと、その予備費使用決定の時期がずれたということで、例年はあまりないのでございますけれども、本年度年度末に支払いがおくれたという事態になったわけでございます。そういう事情にございますので、資金不足からと申しますか、資金はあるんですけれども、予備費使用手続がおくれたというのと、医療費改定後の支出増加がどれぐらいか的確に把握し得なかったので、その状況の把握につとめておった、そのうちにおくれが生じた、こういうことでございますので、御了承を賜わりたいと存じます。
  24. 大橋和孝

    大橋和孝君 そうすると、これはあんまり全国的ではなかったわけですね、遅延したことは。そして、予備費なんか今度どれくらい出すことをされたのか。それはまた先ほどの表でけっこうですが、調べていただいて、どれくらいをどの府県あたりにどういうふうな調子で予備費を出したかということの資料でもいいですから、いただきたいと思います。
  25. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 予備費使用をいたしました金額は、十五億六千八百万円であります。これは、先生御承知のように、年度末の予備費使用につきましては、余ったり不足したりすることのないように、全国的な集計をいたしましてぴたっと年度末に合わせる関係上、三月になったわけでございます。  全国的なおくれはどうかという点ですが、全般的にまだ承知はいたしておりませんが、多少おくれたという県が例年に比較しては多かったように聞いておりますが、これも、先ほど申しました医療費改定等もございまして全国的把握に手間どった、それと関連いたしまして予備費使用決定がおくれたと、こういう事情によるものと私ども考えております。
  26. 大橋和孝

    大橋和孝君 そうすると、おくれた理由が私もよく理解できてきたんですが、労災医療費の仕組みを考えてみますと、まあこれはちょっと議論にはならぬような議論ですけれども、健康保険に準じて支払われているわけでございまして、労災の性質上、急激に時間をかまわないでやっていく、いわゆる救急医療と同じような形のものがあるわけなんでして、そういう観点からいいますと、この医療費というものはむしろ厚く支払われるべきものだ。いままでの経過を見ますと、普通の病気でも時間的な問題があって、予定の時間以外、深夜なんとかいうことの必要はありましょうけれども、それは深夜手当がついておるわけであって、そういう点から考えますと、やはり労災関係医療費というものはむしろもっと厚くして、そしてほんとうに業務上で仕事をやっていて受ける災害に対してはもっと手厚くできるようなあれをしなければならぬというのが、いままでの主張であり、労働省としての希望でもあり、また、労働省としてもそういうことは配慮しておったものと私は考えておるのですが、そういう観点から言うと、支払い遅延するということは、そういう労働災害を防止したり、そうした災害を受けた人たちの手当てをする上においても、そういうことが大きく響くのではなかろうか。だからして、やはりこうした事柄はよほど慎重に考えてもらわなければならぬと思うのですが、そういうふうな仕組みに対してはもっと流動的にいくような仕組みが行なわれて運営されていかなければならぬのじゃないかと思うのです。そういうことはされていると思うのですけれども、こういう事態があちらこちらで起こることを考えると、総元締めであるところの労働省のほうでは、こうした問題を少し考えてもらわなければいかぬのじゃないかと思うわけです。  私は、いま、労災保険についていろいろ疑義があります。ですから、こういうものを改正してもらったり、将来の考え方を持ってもらうために、一度よく労働省の皆さん方ともお話を承わりながらいろいろお尋ねしたいという点がたくさんあります。特に、労働災害を受けた人たちを遇する道として、労働災害者に対する治療というものをもっと徹底していいものとしていくという立場から、僕は労災病院だとか、そういうふうなものの病院の中のシステムというものに対しても、どこの大学病院とかあるいはまたどこの研究機関と比較しても、労災病院として各地のローカルにできておるところの病院のセンターとなるように、労災病院はもっと徹底をした治療ができる、また研究もできる、もう労災関係のことであれば日本じゅう最高権威であるというふうなものが各地区にあることが非常に望ましいという観点から、この労災保険並びに労災の治療、労災のシステムということに対して、いろいろと一ぺんお話を承りたいと考えておりますが、きょうは時間的な都合もございますのでそこまでいきませんから、支払い遅延になった事柄を一つ聞いて、これからそういう観点からいっても支払いをぴちっとして、労災だけは絶対そういうことがないということがこれはまた患者さんに対しても一つの遇する道ではないかと思うわけで、労災保険の金を支払われるという上においてはいままではスムーズにいっておったわけですから、相当の展望を持ちながら今度の原因というところを相当深く見きわめてもらって、今後そういうことのないような処置をひとつとっておいていただきたい。それは最低限の必要ではないかと思います。ちょっとその辺のところを大臣から承りたいと思います。
  27. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 今回、労災保険金の支払い遅延という事態を生じまして御迷惑をかけたことは、まことに恐縮に存じております。十分反省いたしまして、今後は必ず適時に支払いがなされるようにいたしたいと存じます。  なお、四十三年度におきましては、保険給付費も増額いたしまして予算を編成いたしております。四十二年度の六百八十七億に対しまして四十三年度においては八百二十九億、百四十二億増、かようなことにもなっておるわけでございます。御注意をいただいたことにかんがみまして、十分注意をするつもりでございます。  なお、労災病院につきまして御意見がございました。実は、私、ことごとく御同感でございます。この関係におきましては、毎年、施設建設費といたしましては十六、七億円程度、機械器具等の整備には五、六億円程度計上をいたしまして充実をはかっておるわけでございます。まだまだ足りない点がたくさんあると存じます。今後ともいろいろ御注意をいただきまして充実をはかっていきたいと、かように考えております。
  28. 大橋和孝

    大橋和孝君 これで労災のほうはあれさしていただいて、あと、一酸化炭素中毒症に関して、昨年の十月だったと思いますが、特別措置法が施行されたわけでありますが、もうそれから約半年を経過いたしておりまして、いま現在大牟田市のCO中毒患者はその後どういうふうになっておるか。ちょっと報告を聞きますと、まだあの法を制定してもらったころの考えが十分生きていないのじゃないかという点が考えられるわけでありますけれども、一体いまの実情はどういうふうになっておるか、詳しく一ぺん御報告していただきたいと思います。
  29. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 昨年十月二十五日から炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法が施行されたわけでありますが、御承知のように、この立法によります内容は、健康診断、介護料の支給、その他幾つかございますが、健康診断につきましては、その後、石炭鉱山の所在する労働基準局におきましては、特に災害直後の健康診断体制を整備するように事業所を指導いたしたわけであります。その結果、現在までそれぞれの規模に見合う災害直後の健康診断体制がほぼ整備されてまいりましたが、今後さらにその充実をはかる必要があると存じております。  なお、この法律施行されました前後に発生しました炭鉱災害といたしましては、三井鉱業所三川鉱における坑内火災、これは九月二十八日でございましたが、そのほか、三井芦別鉱業所におけるガス爆発、これが十一月四日でございました。さらに、本年には美唄鉱業所におけるガス爆発の災害がございましたが、この施行以前におきましても健康診断につきましてはその内容を承知しておったわけでございますので、災害直後本省から係官を派遣して災害直後の健康診断を法施行前にも実施いたしましたし、その後法施行後に生じました美唄鉱業所におけるガス爆発の際の健康診断もほぼ完全な健康診断が実施されたんじゃないかというふうに私ども存じておるような次第でございます。  次に、介護料の支給の問題がございますが、本年三月末の状況を申し上げますと、常時介護を要するCO中毒患者といたしましては八十七名、これは三池被災者が八十四名、北炭夕張被災者が三名でございますが、その八十七名の方々に対しましては法の定める介護料を支給いたしたわけでございます。CO法施行後の分として二百六十七万八千円、四月分は五十一万二千円でありますが、これは現在支給を行なっておるところでございます。  また、この特別法の第九条の規定によりますアフターケアにつきましては、被災労働者の申し出に応じまして診察、薬剤の支給その他の措置を行なっております。  なお、三井三池の被災者につきましては健康診断を一斉に実施いたしましたが、一部が昨年の十二月、一部が本年の三月末に行なわれまして、三十八年十一月の被災者につきましては全部健康診断を完了いたしました。  そこで、今後さらにアフターケアを必要とする方、あるいは職能回復訓練を必要とするという方方に対しましては、今後適切な援助指導をいたしたい、かように考えております。  なお、CO立法と同時に障害等級の改正も行ないまして、新しく九級を設定したのでありますが、これにつきましても申請をまちまして障害等級の認定を行ないたいというふうに考えておる次第でございます。  以上でございます。
  30. 大橋和孝

    大橋和孝君 型どおりは一応行なわれておるように思いますけれども、半年たっている現在、なお、いまやっておられるところの健康診断をあげてみれば、診断されたほうではこうこうだと言っても、本人が実際動いてみても動けないという人があって、再審査要求を出しておるようであります。その診断だけを見てみましても、どういうふうな状態で、まあ三池あたりは終わられたということでありますけれども、終わられたあと再審査に回っているのがどのくらいあるのか、あるいはその診断によって患者たちはいまどういうふうな状態になっておるのか、そこのところをその診断の結果をお聞かせいただきたいと思います。
  31. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 昨年の秋審査請求についての最終決定をいたしたその後におきまして、労働保険審査会に再審査請求をさらに提出してきた方々がおります。しかし、その後におきましてその健康診断が実施されたわけであります。労働保険審査会に再審査の請求をいたしました方々は百二十名でございます。その後、約半数の方が昨年の十二月に健康診断を受けられ、約半数の方々が本年の三月末に健康診断を終わった。これにつきましては、健康診断のやり方等につきましていろいろ御意見がございまして、その意見調整に手間どりまして、一部の方々は本年の三月になったのですけれども、これはきわめて円滑に行なわれまして、全員所定の健康診断を終わったわけでござます。  そこで、昨年秋、保険審査会の段階における審査が一応決定しまして発表したわけでありますけれども、その直後に百二十名の方が再審査を請求されたのでございますけれども、さらにそのあとに健康診断が行なわれたと、こういう結果になっておりまして、これから職能回復訓練及びアフターケアというものを現実にどのように個々人に当てはめて実施していくかという問題があるわけでございます。この問題につきましては、最近ほとんど問題はございませんで、なめらかに問題が進んでいるように私ども報告を受けております。三月末に行なわれました健康診断の結果につきましても、近く結論を出しまして、アフターケアを行なう方々、職能回復訓練を行なう方々を決定いたしまして、所定のコースによりましてさらに必要な措置を講じていきたい、このように考えております。
  32. 大橋和孝

    大橋和孝君 いま、そういうふうにして健康診断が行なわれて、大体そういう区分に従っていろいろな訓練なんか始まっているようでございますが、実際その訓練を受けてみると、ああした病気であって、外見上はそうでなくても、やってみたら非常にこたえるというような方々がかなり出てきているように聞いておりますが、いま、スムーズにうまくいっているというような報告であったのですけれども、かなり患者そのものは困っている状態じゃないのか、そういうことも聞いているのですが、そのことはどうですか。
  33. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 類別しますと、会社の指揮下に入りまして職場復帰訓練を受けておる方及び職場に復帰した方、また、会社の指揮下に入りませんで職能回復訓練所におる方がございます。先般、一部新聞に報じておりました方々は、一応会社の指揮下に入りまして会社において回復訓練を受けた方々につきまして新聞紙に一部報道されておりましたが、いま私が申し上げましたのは、まだ会社の指揮下に入らない、荒尾の回復訓練所の模様がえをいたしまして職能回復訓練所という形で施設をさらに充実いたしまして、そこで会社の指揮下に入る前の職能回復訓練を実施をいたしたい。この訓練を受けまする方々の選別が必要であるわけでございますが、それがためには、健康診断を完全に実施いたしまして適正な割り振りを考えたい、かように考えたわけであります。会社の指揮下に入られました方々につきましては、会社の行なう回復訓練を終了いたしますと、坑内作業に復帰する方、あるいは坑外における軽易な作業に従事する方、いろいろな種類分けを行ないましてそれぞれもう就労いたしておるわけでありますが、これは本年一月初めに締結されました労働協約に従いまして処理されておるわけでございます。
  34. 大橋和孝

    大橋和孝君 いま私がお尋ねしているのは、訓練所でやっておられる分でありまして、復帰した人に対してはあとからお尋ねしようと思っておるわけですが、復帰していない、訓練所のほうへ入っている人なんかでも、何と申しますか、この病気そのものが外見上では健康診断では変化があまりないけれども、頭が痛かったり、あるいはまた目まいを生じたりという症状が起こってくる。非常に不安さを本人たちが持っているようです。そして、私は、いまおっしゃいました健康診断をしてどうもないという裏づけをしながらやってもらっているという、それでいいと思うのですが、そうした事柄をもう少し徹底さして、また、本人たちにもPRをして、ある程度からだというものを健康診断の結果に信頼をして、自分でもそういうふうな病的意識から離れようとするような訓練が要るのじゃないかと思うのですが、私は医者の立場から考えてみまして、そういうことが必要ではないか。また、患者の訴えておることだけを主体に置いて、遊ばせるとかあるいはまた大事にし過ぎることもまた問題がありましょう。けれども、そういうことだからということでもって患者の訴えを押えつけていくこと、これはまた非常に不安をもたらして訓練の効果をあらわさないというふうに考えるわけですが、そういうところのかみ合い、そういうものに対しては非常に微妙なものもあるし、また、そういうところには労働省の指導の立場では特に配慮をしてもらう必要があるだろうと、こう考えて、実際現場からの話を聞きまして私は私なりにそういうふうに考えておるわけですが、一体、局長のほうでは、そういうものを見たことがあって、そしてもういまのとおりでスムーズだからもっとびしびしやれというような考え方か、あるいはまた、もう少し患者の立場に立ちながら、そういう不安を省いて、もっと効果をあげるような方向に何とか配慮をすべき段階ではないかというようにお考えになるのか、局長の考え方を聞いておきたい。ぼくは、いま申しましたように、もう少し患者のことを考えながらも、しかし患者の言うことを一〇〇%受け入れるんではなくして、それを指導しながら、安心感の上に立っていくという指導をもう少し何かの形で出せないものかと思うんですが、そういう点はどうですか。
  35. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 最近やっておりますのは、会社に復帰した者は何名、労働省の回復訓練所に入れる者は何名と一たんきめたらこうだといったような硬直した扱い方をしておりませんので、実際の例を申しますと、職能回復訓練を現に受けておる者が二十四名——これは新労系の方々です。労働省としてはこのワクはもっとふえてもよろしいという考えを持っておったのでありますが、希望者が二十四名、そうして一たん会社の指揮下に入りました方でぐあいが悪いという方はまた荒尾の回復訓練所に入りまして訓練を受けるというように、その間の出入りはあるわけでございまして、硬直した扱いはいたしておりません。旧労関係の方々につきましては、三月末に健康診断を終わりましたので、これから何名入所をいたしますか、これからの選別になるわけでありますが、これにつきましては組合推薦の医師の方のいろいろな判断も聞いておりますし、争いがないようにきめたいと思います。何名で、これっきりしか入れないとか、あるいはどうとかいったような硬直的な扱いをいたしておりませんので、できるだけ先生方の御心配をおかけしないように処理していきたい、かように考えております。
  36. 大橋和孝

    大橋和孝君 それから職場へ復帰した方の分ですけれども、重症で長くかかっている者、それから通院しておる者とかおるし、あるいはまた、いまのような職業訓練を受けておる者は別なんでありますが、特に復帰しておりながら訓練を受けておる者というのがいろいろ問題があるように思っています。新聞なんかにも報じておりましたけれども、職場そのものが、何と申しますか、これはもうほとんど健全で作業所に復帰しておる、たとえば坑内に復帰したというような者でも、坑内の湿の関係もあろうか、あるいはまた、労働か相当強い関係もあろうか、出てきたらもうすぐ頭が痛かったり気分が悪くて、家へ帰ればすぐふとんにもぐり込まなければならぬということを繰り返しておる人もあるやに聞いております。あるいはまた、訓練を受けるほうの人にしても、職場を軽くしてもらって、そうして坑内へ入らなくて坑外の職場についているような方でも、まだまだ時期によって、何と申しますか、ある循環的なものというわけでもなかろうと思いますが、からだのコンディションとか、あるいはまた時期によって、いままでよくなっていたものがまた頭が痛くなったり、からだに非常に疲労感を感ずるというようなことが起こってきたりする、循環するわけでもないんですが、ときどきそういう変化が来る。からだに注意をしておりながら、いい調子が続かないことが多いということを聞いておるんですが、こういうふうな者については、先ほど、悪ければまたあとへ戻して訓練するというんですけれども、なかなかたてまえはそうなっておっても実際においてそれがうまくできていないという例も多々あるやに聞いておりますが、こういうことなんかには、そういう指導員とかなんとかいうものに対して、もっと何かいい方法でそういう人たちがそういうようにして適宜診断を受けたり、あるいはまたそれに対していろいろ適当な処置が講じられるような、もっとそういうことによって患者あるいはまたそういう人たちの不安を除去するような方法は考えられぬものかと思うんですが、考えられておるけれども現にそういうこともたくさん聞くわけですが、そういう点はどういうふうに把握しておられますか。
  37. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 先ほども申し上げましたように、旧労関係の方々につきましては、健康診断を終了して、これからいわば選別をするわけでございます。したがいまして、いま先生御指摘のような問題がどういう関係のほうで生じておるか、私どももさらに実情をよくつかみたいと思っておりますが、ただ、たてまえといたしまして労使が協定を結んで、会社の指揮下に入ったという者につきましては、会社と労働組合という関係で今後いろいろな問題を処理していこう、こういう形になっておるわけであります。そこで、職能回復訓練をいたす者につきましては、労働省としては、それらの方々の人数は医学的な基準から選びますけれども、ただいま申しましたように、会社の指揮下に入ったけれどもどうもぐあいが悪い、やはり継続的に職能回復訓練を受けたほうがよろしいという者は、引き取るという形で処理していく。いろいろ個別的な事情があろうかと思いますが、会社の指揮下に入った方々の問題と、それから職能回復訓練を受けたいと望んで来られた方々、いわばそれぞれの責任の立場がございますので、私ども会社のほうにも強く要望しておりますけれども、労使の間に本年一月に締結されました協約に基づいて適正な管理をしていただきたいというふうに申しておる次第でございます。
  38. 大橋和孝

    大橋和孝君 それでは、今度は、重症で長期の治療を受けておる方、あるいはまた、通院しておる患者、つまりまだ全然職場復帰あるいは訓練もできないような者については、実際上は、条文によって、あるいはまた法の精神によって、労災の補償を受けたり、あるいはまた会社のほうの援助を受けたりしておるのだろうと思うのですけれども、その点でいまどんなふうになっておりますか。あの法を施行後、そういうような人はどれくらいあって、いまどういうふうな状態にあるか、それをひとつお伺いしたい。
  39. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 三年たってもなおらない、そこで長期傷病補償に移行する、そういう扱いを受けておる方々がいま二十六名おられます。それから長期傷病補償給付に移行するかどうかもう少し経過を観察してから判断したいという方々が五十七名ございます。合わせて八十三名の方に対しましては特別措置法に基づく介護料の支給をする。それから療養は従来どおり労災の療養をやっておるわけでございますが、休業補償あるいは年金の支給は全く従来と変わらないという状態が継続しておるわけであります。その他の方々につきまして、先ほど申し上げましたような健康診断の結果に基づいてそれぞれの処置をしておるということでございます。
  40. 大橋和孝

    大橋和孝君 このCO特別立法は与野党が一致協力してできたわけで、これは人道上の見地に立って立法制定されたことは明らかでありますけれども、この特別立法はまだ完全に実施されていないという向きがあるのではないか。完全なものでなくて、悪く言えば補完的なものだというふうに言えるような点もあるわけなんですが、労使協定でそれを補完していろいろやられておるようでありますが、今年一月の労使協定では、会社は重症患者を向こう三年の間は解雇しない、解雇する場合はその時点で労使が協議するというようなことが確認されたと思っておるのでございますが、そうした重症、通院のいわゆる職場復帰していない患者の立場はちょっとまだ弱いのじゃないか。三年後長期にする者とか、しないでまだ審査中の者とか、そういう者があるわけでありますが、何かそういうところでもう少しそういう人たちに不安感がないように、もし長くかかるものならば長期にするように、あるいはまた、そういう患者に立場があまり弱いような感じを持たせないように、そこらのところに基本的な権利を守ってやろうというような状態をもっとかもし出さなければいかぬのじゃないかと思うわけですが、特にいま問題になっておるのは、長期に移行する何名か、あるいはまた、そういうことで回復しないで非常に長引いておる患者というものは不安感を持っておると思うのですが、そこらの処理はうまくいっているんですか。
  41. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 解雇等の問題がございますが、私どもは、労使の問に自主的な協定を結びましたその点について、その程度が低いとか高いとかいう批判は差し控えたいと思うのでございますが、少なくとも即時解雇できるものを解雇期間を延長したというような措置がとられておることは御指摘のとおりでございます。  そこで、特別措置法が完全に働いていないのじゃないかという点、私ども具体的に承知いたしておりませんが、たとえば退職後の社宅の使用というような問題は、三年たって解雇されたその時点から働く規定でございますので、まだそういった解雇された方がないということでございますと、社宅使用のあの新しい措置も働いてこないと、こういうことでございます。そういう意味の新法かまだ働いていないという部分はあろうかと思いますが、その他の点につきましては、私ども法施行の完全を期したい、かように考えておる次第でございます。
  42. 大橋和孝

    大橋和孝君 CO以外の大きな災害、最近は労働災害というのは大型化してきていると言われておるんですが、そういう点からいっても、何と申しますか、病気やけが、後世症が非常に大きくて長くかかるので、労災の補償法の立場からいえば三年たてば打ち切っていつでも解雇できるということになるのでしょうが、そういうことを守るためにCOの特別法ができたわけでありますが、そういう観点からいっても、もう少しこういうような点を将来補償法の中でもっと充実させて、そして労災を受けた者は打ち切らないように、また、解雇の制限もするように、かなりの大きな大幅なものにこれから伸ばしていかなければならぬと私は思うのですが、今後の姿勢についてどうですか。
  43. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) これは先生十分御承知のところでございますが、労災保険制度は、わが国だけじゃなくて、諸外国でもあります制度でございますので、こういう災害補償の問題と解雇の制限の問題をどう扱うかという点につきましては、諸外国の例などを見ますると、むしろわが国のほうが手厚いと申しますか、労働者側の立場から申しますとまだまだ足りないという御意見でございましょうが、少なくともかなり長い解雇の制限をいたしておる、こういう状態でございます。そこで、労働省といたしましても、保険給付の充実といった観点から、今後とも労災保険審議会におきまして問題点をさらに検討する、こういうことに相なっておりますので、給付内容の充実ということが今後考えられると思います。ただ、解雇制限の問題と関連いたしまして問題をどう扱うかということは、単に補償だけの問題でございませんで、労使関係の基本に関する問題でございますので、ちょっとこの場で私どうこう申し上げるのは困難を感ずるわけでございます。
  44. 大橋和孝

    大橋和孝君 よくわかりました。しかし、非常に大型化されてきた労災患者がふえてきたということがいわれるとすれば、もちろんそういうことはまだまだ問題はたくさんあると思いますけれども、そういうような傾向になってきたいまの事態から考えますと、この労災患者、そういった後遺症のひどい者、だからしてひどくなってきたらもう使えぬからおまえは首だということ、私はそこのところに非常に抵抗を感ずるわけです。それは労使間の雇用関係の問題もありましょうから、いま局長の言われたのは当然のことだと思いますけれども、労災患者のいわゆる医療給付という中に、もう少し改良して、そういう人たちを手厚くすることのできるようなものをもうぼつぼつ考えないと、またそういういろんなはみ出した例が出てくるのではないかという考えをもって、今後——業務上でその仕事に殉職したような形になるわけでありますからして、こういうものに対して、もう少し診療内容なりあるいはまたそういう補償の方面についても相当前向きの前進をしてもらわなければならない。先ほど局長も言われたように、そういう審議会にもかけておられるかもしれませんが、いまの時期は、看過しておくとまたじきこういう問題は非常に大きい問題を尾を引いてくるのじゃないかと、私はCO患者のことを考えるといつもそういうところに心配がいくわけでありまして、そういうことを最後に含めて、労災患者に対する手厚い補償と治療、こういうような観点からひとつ大きな改善を考えてもらいたい時期だというふうに考えておりますので、その点だけを申し上げて、私の質問を終わります。
  45. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 午前の議事はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二分休憩      —————・—————    午後二時十一分開会
  46. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 午前に引き続き、ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、柳岡秋夫君及び佐野芳雄君が委員を辞任され、その補欠として森中守義君及び沢田政治君が選任されました。     —————————————
  47. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 社会保障制度に関する調査中、診療エックス線技師法改正に関する件を議題といたします。  本件に関しましては、理事各位と協議を行ない、各会派の御了承をいただきまして、お手元に配付いたしてありますような改正草案がまとまりました。  この際、便宜委員長から提案申し上げ、委員各位の御賛成を得たいと存じます。  本草案の趣旨については、草案とあわせてお配りしました法律案要網に即して申し上げます。  改正の骨子は、現行の診療エックス線技師——これは、高校卒業後、二年の修習課程を終了した後、厚生大臣の行なう試験に合格することを免許の要件とするものでありますが、この診療エックス線技師のほかに、新たに診療放射線技師の制度を設けることであります。その免許要件は、修習課程を一年延長して、高校卒業後三年の修習課程終了後、国家試験に合格することとされております。  なお、両者の業務については、現行のエックス線技師の業務は、まず範囲をエックス線のみの人体照射に限定しています。さらに、その中で、エネルギーを百万電子ボルト未満のものと限定されています。ただし、現在、百万ボルト以上のものの取り扱いに従事しているエックス線技師については、届け出を条件として、今後七年間はこのエネルギーについての制限ははずすことになっております。  以上が改正の骨子でありますが、次に、この改正によって、診療放射線技師と診療エックス線技師の二本建ての制度となることに伴う措置として特に配慮されている事項が二つあります。  その第一は、今後の新たな養成については、三年制の診療放射線技師に重点を置いていくということであります。  その第二は、エックス線技師から放射線技師へ上がっていく道について特に考慮をしていることであります。すなわち、一つは、学校、養成所に入り直して勉学する者のために一年間の修習課程を設けます。他は、勤務と勉学を両立させつつ放射線技師になろうとする者のために講習課程を設けていることであります。  以上が草案の内容をなす事項でありますが、なお、法律の題名が診療放射線技師及び診療エックス線技師法と改められることになっております。  本草案に関し、御質疑、御意見等がございましたら御発言を願います。
  48. 大橋和孝

    大橋和孝君 ただいまの附則につきましたことは一応了解は得ているわけでありますけれども、念のために、厚生大臣のほうでお考えになっているお気持ちをここでちょっと確認と申しますかお尋ねをしておきたいと、こういうふうに思うわけであります。  附則の第五項と第六項に関する経過措置の運用について、政府の方針をいまも申したように伺っておくわけでありますが、その第一番目には、この改正案によって、新しく診療放射線技師が生まれることになるのであります。ところで、この放射線技師を、これから新しく学校で基礎的学習から始める養成をはかることは、これはむろん必要であります。しかし、人物経済の見地から考えてみますと、現在の診療エックス線技師を放射線技師に格上げしていく努力が特に必要であると思うのであります。附則の第五項と第六項は、この趣旨を織り込んだものであるが、政府の了解もそれでいいのでしょうか、それを第一番目にお伺いしておきます。
  49. 園田直

    国務大臣(園田直君) お説のとおりであると了解いたしております。
  50. 大橋和孝

    大橋和孝君 じゃ、続きまして、その方法として、今後の運用において問題になると思われるような諸点を明確にしておきたいと思うのであります。  まず、第五項は、現に職場にいるエックス線技師に対しまして、現在の職場の勤務を犠牲にしないで、すなわち学校に入り直さないでも放射線技師になれる道を開いている条項であると、こう考えるのであります。その要件としましては、二年以上の一定の実務経歴と、それから講習課程の終了とが定めてあるのでありますが、そのうちの講習の行ない方いかんによってはその趣旨が没却される心配があるのであります。  そこで、まず、講習について、指定基準と運用上の配慮について明らかにしておいていただきたいと、こう思うわけであります。  第一番目には、講習の期間と内容についてでございますが、国が示されたところの基準によって指定する講習機関の中にエックス線技師会を含めるべきであると考えておりますが、どうでありましょうか。  第二点といたしましては、現に勤務しているエックス線技師の受講にあたりましては、勤務しながらできるよう配慮する必要があると思うのでありますが、この点についてはどうでございましょう。  第三点は、特に講習の開催地よりずっと離れた地域いわゆる僻地に勤務しているところの技師に対しましては、通信教育なんかの特別な配慮をされる必要があると、こういうふうに思うのでありますが、これはいかがでございましょうか。  この三点についてちょっとお伺いしておきます。
  51. 園田直

    国務大臣(園田直君) 講習会の実施にあたっては、お説のとおり、エックス線技師会も含まれるものと考えております。  なお、また、講習を実施する際、現に勤務している場所で勤務しながらできるように配慮をしたい。特に遠隔地については、通信または特別の配慮を実施にあたって十分やっていきたいと考えております。
  52. 大橋和孝

    大橋和孝君 次に、第三の要件とされておりますところの試験について伺っておきたいと思います。  講習終了後に受験するエックス線技師は、すでにエックス線技師試験によってその基礎的な部分についてはその適性が確認されております。したがって、その確認された部分につきましては、この試験の受験科目から除外すべきであると考えますが、いかがなものでございましょうか。  それから次に、第六項の趣旨を確認しておきたいと思うのであります。  この項の趣旨は、本則において、三年制の放射線技師の制度と二年制のエックス線技師の制度とが同格で併立された形になっているのでありますけれども、今後の養成の重点は放射線技師にあることを示し、かつ、今後三年間に——それはすなわち七年マイナス四年ということになるのでありますが、その三年間にその重点目標を現実に示していく政府の努力義務を定めてあるものと、こう解釈しますが、政府はそうした用意をお持ちだろうと思うのでありますが、この点を伺っておきたいと思います。  それからもう一つついでに申し上げますが、診療放射線技師の業務について念のためにちょっと政府の解釈のしかたを伺っておきたいと思うのでありますが、人体内の放射性同位元素について体外から測定する業務、あるいはまた、人体から採取したところの体液とか組織、または人体から排泄された排泄物の中に含まれる放射性同位元素を測定する業務というものについては、当然この業務の中に入っておると考えていいと思うのでありますが、そのように解釈していいのでありましょうか、その点をお伺いします。
  53. 園田直

    国務大臣(園田直君) 診療放射線技師の試験を実施する場合には、すでに適性が確認された科目についてはこれを免除するのが当然であると考えております。  第二番目の御質問の、第六項の趣旨はこれを尊重して、放射線医学の進歩と放射線医療の需要の増大に対処するために、養成施設の養成期間を三年に延長することができるように奨励をし、放射線技師の養成につとめる所存でございます。  最後の項目は、専門的なことであって、確認する必要がありますから、事務当局からお答えさせます。
  54. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) アイソトープその他による放射能の体外測定、並びに排泄物等の放射能測定につきましては、これは当然放射線技師の業務として認められるものと考えております。
  55. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 他に御発言もございませんようですから、本草案は確定したものと認め、本草案を診療エックス線技師法の一部を改正する法律案として本委員会から提出することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  56. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、本会議における趣旨説明内容につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  57. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  ちょっと速記をとめて。
  58. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 速記を始めて。     —————————————
  59. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 医師法の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑を行ないます。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  60. 大橋和孝

    大橋和孝君 それでは、このあいだに引き続きまして、医師法の一部改正に対していろいろお伺いしたいと思います。  第一番目にお伺いしたいのは、いままで行なわれてまいりましたインターン制度というのは、昭和二十一年から実施されて二十数年間行なわれてまいったわけでありますが、その間にもいろいろこの制度については議論をされつつまいったのでありますが、その制度がいままで続いてまいりました間に相当な期間を経過いたしておりますので、厚生省としてはいままでのインターン制度というものに対してのいろいろの考えのもとに処置されるべきものだと私は考えていたのでありますが、現今の改正までの間に一体どういうところがいままでのインターン制度では悪かったか、また、そういうところから今後どういう考えを持っておられるのかということがいろいろ論議されていままできたと思うのでありますが、インターンのいままでの制度が十分に討議検討されない限り、これから出てくるところの研修というものに対しての考え方はまとまらないと思うのであります。ですから、いままでのインターン制度というものについての得失、あるいはまたどういうふうにしていままで厚生省部内ではこれを取り上げて検討されたか、そのすべての点についてつまびらかにしていただきたいと思います。
  61. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) インターン制度が戦後始められまして二十年間経過してただいま改正審議をお願いしているわけでございますが、この制度がそもそも始まりました当初におきましては、いわゆるアメリカの占領軍に押しつけられたというようなお話もございますけれども、戦時中の末期に、医療制度改善に関する厚生大臣に対する答申の中で、現在のようなインターン制度を進める意見が出ておりました。その実施が期日が至らない間、つまり、国民医療法の改正がなされましたが、それが実施に至らない間に終戦になり、新しいインターン制度に踏み込んだわけでございます。この制度それ自体といたしましては、当初は諸外国の例等にかんがみてこれが有効に運用されるものと考えておりましたけれども、残念ながら、日本の医療制度、また大学の運営、あるいは一般病院におけるこのような教育訓練に対する能力、設備というような面から、必ずしも所期の目的が達せられず、かえって弊害さえあるというような意見が出てまいりました。  これらのものに対処いたしまして、何とか改善をしたいということを考えられまして、昭和三十六年ごろからこの制度に関する討議が盛んになってまいりました。三十六年には国立大学の医学部長会議で現行制度のあり方を検討され、さらに、三十七年にはまた国立大学の医学部長会議で現行のインターン制度は医学教育の改善をはかることにより廃止するようにしたいという意見が出されました。さらに、三十七年の十二月には、インターン制度を専門に審議する実地修練部会におきまして、インターン生の処遇の改善、実地修練の基準改善、また実地修練病院の指定の改善等について意見が出されました。さらに、その後、改善方策が各方面で討議されまして、特に三十九年には医学部長の代表、病院長の代表が意見書を出すという段階になり、また、私どもも、その改善のために、医師法に基づきます医師試験審議会の部会等を設けまして審議をいたしました。  そのような経過を重ねておりますうちに、学生その他の批判が非常に強くなり、そうして御承知のようなインターンボイコット、国家試験ボイコットという事態にまで発展いたしました。私どももこの事態をできるだけ円満に解決するために各方面の御意見等を聞き、特に昭和四十一年からは文部省と厚生省の共同によります医学部卒業後の教育研修に関する懇談会というものを設けまして、その意見によりまして現在御審議いただいているような医師法の骨格ができ、さらにその後各方面の御意見を入れまして修正等のことが行なわれ、現在御審議をいただいているような法案の姿になった次第でございます。
  62. 大橋和孝

    大橋和孝君 その経過はそれでわかりますが、いままでのインターンの制度でどこが欠点であり、どこが美点である、そういう点を明確にひとつ聞かせてください。それによって私も今後の厚生省の考え方をただしていきたいと思います。
  63. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) インターン制度は結果として私は失敗だったと思いますけれども、インターン制度がうまくいかなかったという一番大きな要因といたしましては、医育機関いわゆる教育病院といわれるもの、インターンにおきましてはインターン修練病院でございますが、このような機関に十分な効果をあげるだけの物的、人的な能力、設備がなかったということが大きな欠点であると思います。なおまた、近年に至りましては、インターンというものが、医学部卒業の医学士であり、しかも医師でないということから、修練を行なう段階におきまして現実に医療行為を多くやることができないという医師法上の身分のあいまいさ、不確定さというものが修練に大きな支障を来たしたと思っております。また、医学士であり、すでに通常の大学よりも二年長い課程の大学を卒業して、しかも修練の期間無給であるという経済的な不安定さというもの、これもこの制度の運用には重大な欠陥であったと思っております。
  64. 大橋和孝

    大橋和孝君 美点、よかったという点はなかったのですか。
  65. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) この制度の美点といいますか、これは理論的には私は必ずしも悪い制度ではない、こう思っております。諸外国である程度実をあげてきたということは、制度を形の上だけから見ますれば決して悪い制度ではなかった。しかし、その運用の面で諸外国における場合と条件がかなり違っていたということ、特に先ほどの医育機関あるいは修練病院というようなものの人的、物的な設備、能力というものが欠けていてこれを十分に生かすだけの刀がなかったということが欠陥であったわけでございまして、いまでも制度の形としては必ずしも悪いものではなかったと考えております。
  66. 大橋和孝

    大橋和孝君 形だけがよくて、運用がよくいかなかったというお考えのようでございますが、外国でやっておるからして制度としていいのだ、これはどこに根拠があるわけですか。   〔理事鹿島俊雄君退席、委員長着席〕 私もちょっと調べてみましたけれども、最近では、アメリカあたりは八年の教育のあとインターンを一年やっておる。あるいはまた、カナダでも一年やっておるとか、スウェーデンでも一年やっておる。イタリアでも半年くらいやっておる。英国でも一年、デンマークでも一年、西ドイツでは二年だ、こういうふうになっておるようでありますが、しかし、アメリカで一年といっても、州によっては廃止されておるところもあるようでありまして、外国全体からいってもインターン制度廃止されつつあるということでありますから、いま外国でこれをやられておるからした、よかったとおっしゃるが、私はおそらく二十何年間もやられたのでありますから何かいいところがあったのじゃないかと思うのですが、制度はいいのだというならば、その制度を何とか生かすための、運用を改善するための努力をされたろうと私は解釈するわけですが、制度そのものでも、外国の例を引いてみればどんどん減っているわけですね。いままでのようではインターンが修練を受けるについて人的にも物的にもよくないのだということを言われておるわけですが、それではこの問題につきましてこの二十何年間に多少ともそれが改良されたのですか。悪いといまおっしゃっておりますが、一体、内容的にどこが悪くて、もっと細部について見ればどことどこに欠点があるのか。いまいう医育機関並びに修練を受けるところの病院、そういうところの悪いところを、人的とか質的とかいうだけでなくて、もっとそういうものはどういうところが悪い、しかしその経過には二十何年の間どういうところを直されてきたかということをひとつ教えていただきたいと思います。
  67. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 戦後二十年間インターンが行なわれてまいりましたので、その時間の経過の間にいろいろな世の中の変化に伴っていろいろな欠点が露呈してまいりましたけれども、この制度が開始されました当初におきましては、大部分の方々、特に医学教育に携わる方々、あるいは実際の修練を受けるほうの方々も、それほど大きな疑問あるいは反発というようなものもなかったと思っております。といいますのも、従来インターン制度がない場合におきましても、現実に医学部卒業後の研修というものは自主的に行なわれていたわけでございまして、それが自主的に行なわれていたものが一つの制度として行なわれるようになったという意味では、必ずしも反発もなかったという時代があったと思います。しかし、その始まった制度を、従来制度がなくても自主的に行なわれていたのであるからということから、確かに放任的に過ぎたということはあろうと思います。そういう意味で、厚生省といたしましても、これの改善運営についてもう少し積極的にやるべきであったと思いますが、経過から見まして熱意の欠けた時代がかなり続いたということのために、内容改善が非常におくれた。しかし、現実には、相当りっぱな内容のところも決してないわけではございません。相当の施設におきましては、欧米の一流の病院に匹敵する程度の研修体系、また、研修の設備、あるいは人的な面の充実を備えているところも決して少なくないわけでございます。  総体といたしましては、なおかなり欠点が多かったということであろうと思います。そういう意味で、スタッフの面におきましても、病院研修を行なう病院等でかなり格差があった。十分その能力のあるものと必ずしも能力の十分でなかったものとがあったということが一番大きな原因で、また、大学等が研修の場として大きな比重を占めておりましたけれども、日本の場合は無給医局員というような制度がなお存続しておりましたために、これらとの関連におきまして、必ずしもインターンというものと無給医局員というものとのうまい振り分け、かつ、その振り分けの上でそれぞれに適した研修を計画的に効率的に実施していくという体制がなかったということも、これもこの制度の運用に非常に大きなきずになったと思っております。
  68. 大橋和孝

    大橋和孝君 まだ漠としているんですが、ここのところでいままでやってきたインターンの制度をほんとうに踏んまえて、そして分析をしておいてもらわないと、これから改正されるこのもとが一体全体どうなっているのか、ぐらついていると思うんですね。そういう意味で考えてみたならば、いまアメリカあたりではやっているところがありますね。そこらで、非常に効果をあげている。そんな不満があるどころではない、医学進歩の上からいっても効果がある。いままで日本でやってきたものは、カリキュラムの点が悪いのか、あるいはまた、いまおっしゃっているような人的、質的な受け入れ体制ができていないのか、そこのところをもう少し突っ込んで明確にしておかないと、今後やる上において何を改正するのかわからぬ。わからぬままに法律を通していったのでは、また同じことになる危険性があると思う。アメリカでもやられていいものがあったら、比べてみて、日本はこことここが悪かったともう少し明確に把握しないと、この改正の段階で雲の上ですっと通っていってしまうようなことでは何ら意味をなさぬ。根本的に考えたら、もっと日本の医療の水準を上げていくということが大事であろうし、国民は、おそらく、一昨日の藤田委員からの質問にもありましたように、受ける側からしてみると、水準の高いいい人に自分の命を預けたいというのはこれは当然でありますからして、そういうことに対してどういうような役割りを演じているかということを論ずるためには、いままでのインターンを行なってきた中の悪さの点がもう少し明確に、もし外国とあなたが比較してこのインターン制度をやって制度としてはよかったというふうに認識されるならば、どういうふうになっているかということをもう少し対比してあなたのお考えを明確にしておいてもらわぬと困ると思うわけです。
  69. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 従来のインターンにおきましては、一応、厚生省といたしましても、インターンの研修の基準というものを大ざっぱでございますが示してございますが、これを実施する段階におきまして、受け入れ施設におきまして、インターンの指導委員会というような形のものを病院長直属等の形でつくり、そして、担当者をきめ、また、そのローテーションのコースをきめ、各科にこれこれこういう内容のトレーニングをやっていくんだということを詳細にきめ、かつ実施し、また、その一面、この病院自体のCPCその他各種のコンファレンス等に参加させる等のスケジュールをきちんと組みまして実施しているところがございまして、そういうところでは相当の効果をあげてきたと思います。  ただ、そのような体制が必ずしも十分でなく、指導者並びにそれを実際に動かしますインターンの指導委員会という形のものの機能が必ずしも強力でなかったという点が大きな原因であり、また、インターンの指導のカリキュラム等がもう少しきちんとしたものであったら、もう少し一様な平均的な効果をあげ得たのではないかと思っておりますが、それは各施設にあまりにもまかせきりでありましたし、あまりにも差があり過ぎたということがこの運営の欠点であったと思います。
  70. 大橋和孝

    大橋和孝君 文部省のほうでは、大学のほうでのこうしたインターンの受け入れにはどういうような考えをもっていままでおやりになってきたか。いま局長に聞いてみますと、カリキュラムなり明細な方式を出してやっておったところではきれいにうまくいっているとおっしゃっているんですが、あなたのほらで各国立大学のほうで相当インターン生というものをいままで取り扱ってこられたわけですが、カリキュラムとかそういうようなことに対してはどういうふうに把握しておられるか、ちょっと……。
  71. 清水成之

    説明員(清水成之君) ただいま厚生省の医務局長からお答えがございましたけれども、インターンの基準につきましては、厚生省でお示しになられました基準に基づいて大学もやっておるはずでございますけれども、全般を通じてみました場合に、御指摘のように、それが完全に果たされていったというふうに自信をもって申し上げるということはこれは非常にうそになるのではないかと思いますが、そういう点からいたしまして、やはりいま厚生省からお話がございましたように、指導体制の問題等が大きな問題であったのではなかろうかと、かように考えておる次第でございます。
  72. 大橋和孝

    大橋和孝君 局長のほうも、また、文部省のほうも、指導体制、あるいはまた質的にそうした面から向上しなかったということ——文部省にはそういうところはなかった、まだそこまでいっていないだろうと思うんですが、そういうこともあったろうと思います。その質的な問題、それから指導体系という問題ですが、指導体系の問題がいままでよくなかったからインターン制度が失敗した。だから、今度の改正にあたってはどういうふうな方向で指導体制を固めていこうと考えておられるのか、そこのところをその展望をお聞かせいただきたい。
  73. 園田直

    国務大臣(園田直君) おそれ入りますが、一言いまの御質問に関連をして申し上げたいことは、第一に、インターンと研修医制度とは全然別個のものである。インターン制度が失敗をしたから、これを変更して研修医制度にしたいというものではありません。インターンは、過去においては歴史的な使命を果たしたと思います。ただし、行政運用の面については、おしかりを受ける点が、環境の面、質の面であったと思います。ただ、その後、学校教育、医学教育が進歩いたしまして、先生御専門家でございますが、御指摘のとおりに、カリキュラムの中にベッドサイド・ティーチングだとかあるいは少人数教育の方法等がとられて、そうして過去にインターンでねらったところの医師としての基礎訓練、実地訓練というものは終了した。それと、いままでの不十分と相まっていろんな問題が起きてきたから、ここでインターンというものは終了して、文部省が行なわれる、あるいは私立大学において行なわれる医学教育において一人前になるには十分の実地訓練を経た。ただし、その後、医学の進歩、また、医師の心がまえも相当進んでおりまして、やはり思想的にも社会建設の念に燃えておりますから、おのおのの良心と研究心に従って、さらに医術の水準を上げるために自分で研修したいという方がおられるでしょう。それを全く放任して自主研修でいったほうがいいか、あるいは、日本の現状においてはこの点を政府が援助しあるいは奨励する方法をとったらいいのか、こうした別個の問題として研修生制度ができたのであって、インターン制度は歴史的使命が終わって、そこで一人前の医師になるのは学校教育で十分であり、その後医学の進歩に見合い将来の水準を上げるために新たに研修生制度というものをお願いしているという方針でやっておるつもりでございまするから、お願いをいたします。
  74. 大橋和孝

    大橋和孝君 いや、大臣、それはあとからまたその移りぐあいのところは私もいろいろとお伺いして御意見を伺おうと思っておりますが、いままでのインターンのあった二十何年かの間に、いま厚生大臣がおっしゃったように、学校教育はそれだけ内容を充実してきて、ベッドサイド・ティーチングとか、あるいはスモールグループ・ティーチングとか、いろいろなものがやられた。もちろん、いまでも、外来診察には数の少ない人でいろいろ予診をやったりしているが、前からもあったと思うんですが、そういうことがかなり改善をされて、そうしていまの医学教育四年の間に、もう免状を渡してもだいじょうぶだ、ある程度そういうことが完備した教育の内容になってきたから、それでは今度はそのインターン制度廃止するんだと。考え方はインターン制度とは別に考えるからと大臣おっしゃっている意味はわかりますが、過去二十数年間の間に大臣のおっしゃるような文部省のほうでも国立の大学教育の中でそれだけの改善を加えられたのですか。それとも、このあいだ医師法が衆議院を通った段階で、さっそく、新聞発表を見ますと、文部省のほうでは千二百時間でしたか何ぼかをふやして、そうして今度はその中に充実するもののカリキュラムをしてみたいというような御意見発表もあったように思いますが、それはそれで、まあ大臣がおっしゃるとおり、もう少しそうしたベッドサイド・ティーチングだとか、あるいはまたスモールグループ・ティーチングなんかのその時間をふやしておやりになる、その点は大臣のおっしゃっているとおりになると思いますが、私の聞きたいのは、いままで当然そういうことは考えるべきだったと私は思うのでございますが、大学当局、文部省のほうでもそれはおそらくいままでできていなかったのじゃないかと思うのですが、その点はどうですか。
  75. 清水成之

    説明員(清水成之君) いま厚生大臣からお話がございましたように、時間数の問題はともかくといたしまして、教育方法の改善という点では大学当局も非常に努力をしてきたと思うのでございます。ただ、今回の改正にあたりまして、直ちに医師免許ということに、卒業と同時にということになりますので、さらに臨床実習を強化したほうが一段とよかろう、こういうことから、私ども、医学専門委員会を持ちまして、医学部段階におきますカリキュラムのあり方について御検討をなおいただいておるわけでございますが、中間的な方法といたしまして、いま御指摘ございましたように、現在の基準からいきますと専門課程が四千二百時間ないし四千八百というものを五千四百まで引き上げて、主として臨床実習のほうにそれを使っていく、そのほうがより効果があがる、こういう考え方でいま御審議をいただいておるわけでございます。
  76. 大橋和孝

    大橋和孝君 そうすると、いまのところ、大学の審議会のほうでは、そうしたことをやれば、先ほど大臣がおっしゃったように、大学の間で十分にベッドサイド・ティーチングもできるし、そうした臨床実習の場面もやれると、だからしてもう一人前の医者として考えても差しつかえないと。まあ別に本人が進んで研修することは別ですよ、それは。ですけれども、教育の側から立ってみて、もうそういうことに踏み切ってもいい段階だと文部省側は考えられますか。
  77. 清水成之

    説明員(清水成之君) その点でございますが、専門家——まあ学界の国公私立を通じて、あるいはまたがって大学教育に御経験のある方々の専門家の御意見が一致しているわけでありますから、それでいけば卒業と同時に国家試験を受けて免許を与えて十分である、こういう結論に達しておるわけでございます。なお、いまお話がございますように、それ以上勉強するという人はそれはともかくでございますけれども、そういう結論をいただいております。
  78. 大橋和孝

    大橋和孝君 そうすると、大臣がいまおっしゃいましたように、大学教育は、大臣のお考えも文部省のお考えも同じであって、だいぶこのごろの勉強のしかたがよくなってきたから、もう大学を卒業すれば大体一人前の医者としてこれを認めていくんだと、こういう状態になってきたからして、いままでは一年間の研修をやらなければ一人前の医者として免状を渡しては早過ぎると、こういうことであったのを、今度は大体これで免状を渡しても差しつかえない程度のもんだと、こういうことの認定の上に立って今度の改正というものに踏み切られていると解釈していいのですか。
  79. 園田直

    国務大臣(園田直君) そのとおりでございます。
  80. 大橋和孝

    大橋和孝君 私は、実は、この問題に対しては、文部省に対しても厚生省に対してもいま少し——大学の教育のあり方も、前とはずいぶん、先ほど文部省の方がおっしゃったように、改良がされてきていると私も思います。大臣のおっしゃっているように、ずいぶんこのごろ勉強のしかたも変わってまいっておりますからして、われわれが昔大学でごやっかいになっておったころとはずいぶん変わってきていると私もそう思うわけでありますけれども、しかし、いま国民の側からいえば、すぐそれがそれでいいということにはなるまいと思うが、まあいま審議会にかけてカリキュラムなんかも御相談をなさっているということを文部省から聞いて、非常にあれしておりますけれども、その大学時代の教育のあり方は、国立大学は国立大学として、あるいはまた私立大学にしても、そういう大学に対してはそういうふうな考え方をもってこれからは示していただくことだろうと思いますが、そういうことは、これからはまだ大きく変化をさせていかなければならないという見通しであるのか、ほぼまあいまの段階でいいと考えていられるか。先ほどはいいということではありますけれども、それは大体でありましょうけれども、いろいろの点からいえは、もっともっと教育のあり方をここらで考えなければいけない。それは、私の考えでは、そう早急に一ぺんにそれをこういうふうにするということにはなかなか相ならぬのじゃなかろうか。これはもっともっと研究して、そうして、大体、医学の教育というのはほかの大学よりは二年も長いわけでありますし、あるいはまた、ぼくは大学の年限がもっと長くなっても、必要な場合はなってもいいと思うんですよ。いいと思うが、少なくとも教育期間内にもっと徹底した臨床的な研究もするということであればなお一そういいと思うのでありますが、それを、早急にもういまの時点でできるものなのか。私は、このあいだ、すぐに文部省が発表されて、千何百時間か増加するということを発表されて、まあ前向きにそういうことを考えてもらったのはなるほどということで感激もしたけれども、しかし、そういうことはほんの一つの手直しである。教育というものを根本的に直すには、そんな簡単なことじゃいかぬのじゃないか。少なくとも国民の医療というものがこれだけどんどんと進歩していくときに、教育のあり方ももちろん進歩はしておりますけれども、もっと国民の信頼を集められるような教育を大学の教育の中でやるべきじゃないか。これに対しては、もっと前向きな姿勢で相当な討議も重ねてやるべきじゃないか、こういうふうに考えております。  先ほど、医務局長のほうからは、大学の、何といいますか、病院長会とか学部長会からいろいろな意見が反映されたと、これでもっていままでも検討してきたというのでありますが、私のほうの聞くところでは、むしろ大学の教授会の中で真剣にそれを取り上げるのじゃなくして、そのときにたまたまある学部長がおられて、個人的な意見の反映でもってこれが出されている点は、私どももらっている書類の中でちょいちょい承っているわけであります。今度の制度改正にあたってのいろいろ医学部長会あるいは病院長会からの意見は、それは実際その学部長会で行なわれたこととは違いますということを逆に反論しておるところの医学部長も中にはいらっしゃる。こういうようなことになってみれば、ある程度個人プレー的な、そう言っちゃ失礼かもしれませんけれども、何かそういうことでもって、ほんとうに大学の中でこれが真剣に討議をされてその結果が厚生省に集まってきているというほどまで考えるのは、実態より少し離れているのではないか。厚生省がそういうふうにとっていられるとするならば、実際から言えば、それだけの深い討議が盛り上がった、いわゆる学者先生のほうのほんとうに統一された意見でそういうようなものになってきたというふうに受け取りにくいと思うわけです。そういうところから考えていきますと、この教育の制度というものを考えるのに、大学の教育というものを考えるのに、少しは時間をかけても、相当しっかりしたものに考えてもらいたい。そういう意味からは、こうした法律改正する前にそれをやってもらうのが一番いい。私は、二十年も待ったのだからして、もっと前からやってもらいたいと考えておったわけですが、それが私から見れば、ほぼの点では大臣おっしゃるようにいいと、こういうふうなことに考えられているにしても、国民の側から考えればもっともっといろいろ要望も多いわけでありますからして、こういう問題に対してはもっと真剣に考えていただきたい。  まあ現時点でそんなことを過去のことを言ってみてもしかたがないわけでありますけれども、現時点で考えるならば、少なくともこういう法律を出すというからには、何年以内にかくかくいたしますということを一つは国民に明示をしておいていただく。この法律なるものもいわゆる時限の法律ということに解釈するほうがいいのではないか。たとえば、去年の特例法ですか、出たときにも、何か二年の時限立法になって、あの特例法は何か民社党のほうからもあれを出されて、私は非常にいい意見であると思いますが、それで今度の医療制度の抜本改正の中でこれは完全に改めなさいということで時限がつけられたと聞いておりますが、そういう観点から言いましても、今度の教育の問題も、ただずばっと出すだけでほっておかないで、何年なら何年の間にこういうようなもので教育の内容を変えますというて、それがほんとうに将来につながるところの明かるい展望の教育内容にするのだというくらいの決意がここでなかったら、その法律なり、あるいはまた千何百時間変えますわと、こういうような場当り的に教育の問題を取り扱っていくのでは、国民の側から見ればもっと不安さがあるのじゃないか、こういうふうに思うわけでありますが、大学の教育というものだけを考えてみても、これから何年間にはどういう方向でやりましょうというふうなことが、過去からいままでのインターンの制度からずっと大学教育を見てきたところから、そこのところに何が悪かってどういうふうにしたいということが出てこなければいけないのじゃないかと思うのです。特に、私は、厚生大臣のほうからも、あるいはまた医務局長のほうからも、あるいは学校のほうからも、そういうことについての大体の展望というものを少し聞いておかないと、将来の医学教育というものを学校の中で大学の中でどういうふうにするのだという一つの何かのイメージといいますか、ビジョンといいますか、これぐらいにするのだということをこういう改正をする時点でおぼろげながらも将来のビジョンというものを考えて、しかし、これには、先ほど私が申し上げたように、いろいろ段階があって検討しなければならぬからして、何年くらいでこうしましょうというふうな一つの明かるい見通しをここらでつけておいていただきたい。そうすれば、即座に国家試験をやってそしていま大臣がおっしゃったように医師として取り扱ってもほぼだいじょうぶだということが、診療を受ける側にもとれると思う。このごろは、インターンという問題というものが、大学のほうではああいうふうにボイコットのような形で世論を大きく喚起いたしておりますので、そういう点からいっても、国民の側はひとしくいまの医学教育というものはこれでいいのかという不安さというものが去らないと思うのですね。そういう意味からも、いままであったあり方からも、今後それをどういう意味でどういうふうにするかというそこらのところをひとつ伺っておきたい。
  81. 園田直

    国務大臣(園田直君) 前段、後段の御意見、私は全く同じ意見でございまして、医師としての基礎的な資格は十分得たが、決してこれで十分満足するものではなくて、将来、御指図のような教育内容の充実、あるいはその他施設等十分にして、ますます学校を卒業した時期における医師の能力というものを高めていくべきである。できれば、国家試験と卒業試験と二重にやらなくても、卒業試験さえ受けたら医師としての資格があるのだと認定できるような地位まで教育を上げていただきたい。そのあとを受けた研修生の制度というものは、各人の希望に従って、各人の欲するところで、各人の好む科目を研修できるように施設を整え、将来はこの法律が単に何年間に限って国家が財政的な援助をいたしますという程度の法律に直せるようなことを大体描いてやっておるわけでありますが、あと詳細については事務当局からお答えをいたします。
  82. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 将来の医学あるいは医学研修に関するビジョンということでございますけれども、私は、現在の世界の動向といたしましても、やはり医学教育という学部教育というものを充実し、そして学部教育のあとには専門的な教育に進めるという形のほうが、今後の医学あるいは医師研修のあり方として基本的な問題ではないかと考えております。医学が非常に広範になり、分野が広がり、かつ深くなってまいりますと、すべての医師があらゆる分野に通暁した多角的な専門家というものはなかなかむずかしかろうと思っております。そういう意味で、一般的な基礎的な医師の教育というものをまず完成し、その後においては、すでに非常に分科の進みました比較的専門的な教育に深く突っ込んでいくということが必要であろう。そういう意味からいいますと、いままでのインターンというものは、一般教育の仕上げであり、決して専門的教育への道筋ではなかったわけであります。そういう意味からいたしますと、従来のインターンの教育内容というものはむしろ学部教育の中に吸収し、そして学部教育のあとは、すでに基礎的な能力が完成した医師としてそれぞれの専門的な分野で、その技能と識見を深めていくという方法が適当ではないか。そういう意味で、むしろこの際はインターンという中途半端なものはなくしたほうがよろしい。そして、しかも、学部卒業後の研修というものは、現実の診療の場でなければなりませんので、どうしても医師の資格がなければなりませんし、また、現実に患者を相当数扱うという意味から、大学あるいは病院というものを高度に利用していかなければならぬ。そういう意味では、従来の学部教育のように多数集団的なやり方では困難であり、少数のマン・ツー・マンの教育方法でなければ効果があがらない。そういう意味では、大学だけではなかなか受け入れ能力が十分でない。そういう意味で、大学と教育病院というものを並行して充実させつつ、卒業後の教育研修というものの場を広げ、かつ、その質を高めていくというのが今後の医師の教育研修のあり方ではないかと考えております。
  83. 大橋和孝

    大橋和孝君 文部省のほうではどういうふうに考えておりますか。
  84. 清水成之

    説明員(清水成之君) ただいま厚生大臣、医務局長からもお話がございました点とほぼ同じでございますが、文部省の学部段階の教育について考えてみました場合に、先ほどお答えいたしました点が、当面の措置といたしまして、時間数をふやし、かつ、ベッドサイド・ティーチングとかあるいはスモールグループ・ティーチングに教育方法を改善していく、こういう行き方でやっていくということでございますけれども、私どもの大学設置審議会基準分科会は、単に臨時的なものではございません。専門の委員の先生方も、今後も継続して学部段階の教育基準について引き続いて検討していく、その間で修正したりあるいはまた新しいものを打ち出していきたい、こういうことを専門家がおっしゃっているのでございまして、ぜひそういう方向で行っていただけると思っておるのでございます。  なお、先生からも少し広範なお話が出たわけでございますが、大学の学校教育という観点から見ました場合に、特に臨床の場合、大学院を含めてどういうふうに考えるか、あるいは論文博士の問題をどうするか、それから専門課程と進学課程の結びつきの問題をどうするかと、こういう学制上の問題があると思うのでございます。懇談会その他の審議会におきましても、そういう広範な問題を今後検討課題としてやっていくと、こういうお話になっておりますし、一面、また、現在中央教育審議会で学制全般の御審議をいただいておるわけでございますが、ひとつ大所高所から厚生省の御意見も伺って、医者の養成あるいは教員養成というような特に専門職の学校制度についても実は諮問事項の一つに入っておるわけでございまして、それらも御検討の結果を得まして改善を加えていきたいと、こういうように考えておる次第でございます。
  85. 大橋和孝

    大橋和孝君 それでは、現段階で大学の教育というものについての一つだめ押しみたいなことをさしてもらいたいと思うのですが、いろいろ審議会に聞きましても、厚生省の大臣はじめ局長に話を聞きましても、大学の教育というものは、大学を卒業した医師免許証を渡す時点でもう大体そういうことが完成したと。いま、臨床的に少人数での研修やらあるいはまたベッドサイドでのいろいろな研修なんかも、大体在学中に終わる。だからして、一人前の医者として認められるということにするわけで、そういうことにしてもらうということで了解をさしてもらう。同時に、私は、そういうものの内容を、いまお話を聞けば、これからひとついろいろ審議会にもかけ、それに対しての修正をしながらいいものにするとおっしゃるのですから、それは短期間内に、二年なり一年なりの間にひとつできるだけ配慮をしてもらって、そうして大学の教育は十分それで確立していただけると、もう免状をもらったらそう国民が不安のないような一応の診療はできると、その人に病気をまかして見てもらえるという程度までにはしてもらえると、こういうふうに解釈していいのでございますね、大臣。また、そういうことをしてもらうには、ちゃんと今後一年なり二年の間に、医療制度の抜本改正が行なわれた時期において、あわせてそうした基礎的な大学教育というものを充実させてもらう。それはもう前提条件で、必ずそうしていただくということに了解をさしてもらっていいですね。
  86. 園田直

    国務大臣(園田直君) 御意見のとおりにしなければ医療制度は確立はしないと考えております。
  87. 大橋和孝

    大橋和孝君 そこで、今度改正されるのは、根本的に変わると思うのです。いままでは、インターンというものは、一年間たたぬといま言ったような臨床的な教育ができないからして、それで一年間インターンをやったんだというのでありますけれども、今度は、いまのように改正されてきますと、卒業して免許証をもらった時期においてはほぼ完成しておる、専門的ではないけれどもほぼ完成しておるために、われわれが命を預けて見てもらっても、それは託し得る程度になっていると解釈するわけです。そういうことになったわけでありますが、そうなったら、今度はそこであとの研修というものは少しイメージが変わってくると思う。何でそこに二年間というものをくっつけたか、そこのところの意味がわからない。一人前の医者なんでありますから、医者はこれからはいろいろな進歩に従っていろいろな勉強をしなければならぬ。こういう使命を持って一人前の医者になってきているのですから、医者に対しては、もうそんな二年ばかり、こればかりのことをしなさいとか、どこへ行ってやりなさいとかいうことではなしに、ほんとうにそれからの時点は、やることが勉強につながるような形の場を提供するほうが大事であって、そして私は裏に二年というのを区切るのはどうも意味がわからぬのですが、そこのところを説明してください。
  88. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 大学医学部の教育課程を充実することによりまして、従来にも増して資質の高い医師を教育し、教養の整った医師をつくるという先生の御趣旨は、そのとおりだと思います。さらに、その後二年間にわたって研修を、義務づけるとは言いませんけれども、研修を何らかの形で規定するということは、まあ、行き過ぎ、あるいは無意味ではないかという御意見でございますが、医師という場合は、これはあらゆる方面の医学的一般の知識を持ったものでございまして、内科医になろうとも、外科医になろうとも、婦人科医になろうとも、常にその可能性が整った医師であると解釈いたします。また、それらのものについてある程度の診療はやれる。しかし、現在の段階におきまして一般国民が期待しておりますのは、やはりさらにまたそれぞれ専門的な課程を積んだ医師ということも当然期待されるところでありまして、そういうような意味で医師は一生研修するものでございますけれども、特に卒業後の気力に満ち向学心に満ちた時代に最も効率的な研修をする場をつくりたい。その場をつくるためには、何らかの形で国あるいは制度的な援助をするほうが好ましい。もちろん、自主研修という形で、研修する者も自主的、また、研修を与えるほうの指導する方も自主的という形もあり得ると思います。しかし、その自主性を尊重しながら、しかも、これに何らかの助成、援助を加える方法があり、さらにそれを効率的にする方法があれば、それは好ましいことではないか。そういう意味で、国もそのようなお手伝いをするほうが適当である。また、国民がそのようなすぐれた医師の養成を期待している以上、国が責任をもってそういうことをやる必要があろう。そういう意味で、強い自主性を尊重した研修であって、しかも、それを国が適切に助成する方法として何らかの制度を考えたい。そういう意味で、通常の医学者の常識等に従いましても、卒業後の最初の二年間というものをみっちり勉強することによってすぐれた資質の高い医師ができるということから、このような制度にし、国が責任をもってその確保をはかりたいという念願と義務感をあらわしてこのような制度を創設したいというふうに考えております。
  89. 大橋和孝

    大橋和孝君 時間がきょうはあまりないので、ここのところでちょうどいいところになってきたので、もう少しぐっといろいろ話をするとわかるだろうと思うのでありますけれども、ここらでやめるのはどうもちょっと残念でございますが、いま話を聞いておりますと、国が二年で区切るのがおかしいと私はいま言っているわけです。それから国がめんどうをみるのになぜ二年で区切らなければならぬのか。当然そうやって勉強できるような環境のところは国が責任をもってつくるんですよ。そうしたら、あなたのほうから話を聞いていれば、国が二年みてやればあとはそれでいいようなことになるわけですね、話を裏返しに考えれば。そうじゃないんですよ。われわれ国民が念願しているのは、もっともっと日進月歩のものを追いながら勉強していくような制度がなかったらいかぬわけです。私は、これは当然一生勉強のできるような場所をつくらなければいかぬと思う。身分を保障せいということは、保障するほうがあたりまえだと思います。医者という免状を渡したんだから、医者としての待遇をするのはあたりまえですから、これは医者としての待遇をしていけばいい。だけれども、自分が勉強するというのは、いままでの制度でもありましたように、たとえば、自分から金を出して大学の学生になったり研究生になったりする人もある、勉強しようとする人は。そういう勉強する場所が十分あれば、制度を飛び越えて、自分から金を払ってでも勉強をする人があるわけです、これからも。おそらく、勉強したい人は、自分の自腹を切ってでも勉強したい人はするでしょう。国が補助するということは当然必要でしょう。医者を使っておいて、ただで使うわけにいかぬのですから、使えば使っただけペイする、これはあたりまえだと思うのですが、しかし、そういう場所をつくることを何で二年で区切るのか、二年だけやったらいいと。それを裏返せば、二年たてばいいと認めるのか。これはこのあいだも藤田委員からも追及していましたが、保健所長を集めて、こういう法律ができてきた、あれは義務規定でないと書いてあるけれども、研修を受けなかったら採用するとかせぬとかいうこともあり得るということを何か若松局長が言われたようでありますが、言った言わぬで、この前の話では言っておられないという話になっておりますから、それで私は了解しておりますけれども、今度の二年というやつをあそこにちょびっとつけておいたり、強制規定のようなことはしないようにしたとは言うものの、何とかかんとかいって二年というものをある程度義務的にやらなければならぬというようにする。もっと悪く言えば、二年をどこかでやったやつを、かってに二年研修した者のように報告されてしまう。本人はそういうつもりじゃなかったけれども、そういうふうにされてしまう。あなたのほうで出された法律では、陸軍病院へ行け、あるいは沖繩へ行ったら二年の研修の中に入るという法文が入っておったのですが、あそこにちょろちょろとよろいの先が出てきているわけです。表はきれいな布を着ておっても、裏からちょろちょろ出ているんですね。だから、このあいだも藤田委員が追及していました。しかし、私はそれは別としても、少なくとも二年なんというように区切らなくても、ほんとうにやっていけるようなそういう環境さえつくってやればみんなかってにやれるわけです。それでやらなければいけないと私は思う。あなたのほうは、やるように行政指導をしていけばいい。少なくとも国がそういうことを、医者というものは医師法の第一条に書いてあるように、国民の健康をつかさどるための大きな責任を持たされているわけですから、その目的を達成するためにはそういう制度を完備して。いけばいい。それをやっておりさえすれば、それでやっていけるわけじゃないですか。もしあなたが今のようにやっておったら、一昨日も触れたように、そんなことで二年間くぎづけにされたら、ますます保健所に行く人はなくなります。僻地に行く人はなくなります。いま医者が少ない少ないといってあちこちで困っているのに、いいところの病院、厚生省のよく目の届くような病院、大きそうな病院に、ばしっとここが教育病院でございますということにしてしまえば、よけい人が少なくなるじゃありませんか。こういう観点から言ったら、今度の制度をやって、いい面もあるかもしらぬけれども、何か押えつけて、わずかばかりの研修手当を出すとかということでもって二年としばって、報告するという義務をつけて、そうしてそういう人たちをある一定の病院に固定させるということになってくるわけです。そこに行かなければぐあいが悪くなるわけです。そういうようなつまらぬところに区切りをしないで、みんなの者が喜んで勉強していけるようなシステムをつくったらどうですか。私はそういうふうに思うのです。  この問題については、もう一度この次に続いてやらせていただきます。そしていろいろ御見解を承りたいと思いますけれども、シュルスとして、いまの時点では、結局は何年間の間と少なくとも時限を切っていただいて教育というものをよくしていただく。それからまた、教育というものに対してのいろいろな考え方を根本的に考え直す。それを今度の医療制度あるいはまた——抜本改正——いま前の厚生大臣の鈴木さんあたりが調査会長になってやっておられるようでありますが、そこにもいまの園田厚生大臣もたいへんアドバイスをしていただいておるようでありますから、非常にいいものが出てくるだろうと思いますが、教育の問題も、あるいはまたそうした今後の医者が研修をしていくことのできる問題も、そこでするんだと。その期間までの間には、二年なら二年、まあ来年出されたら一年でありますが、一年ないし二年の間に根本的にこれを考え直すという、こういう決意がおありになると解釈していいかどうかということでありますが、そういうことはひとつ大臣から文部大臣のほうにも十分お話し合いをつけて、教育の問題だけはその期間にひとつ何とかする。その教育制度というもの、教育の内容というものを考えるのも、医療制度、全体の医療というものの抜本改正の中できちっと位置づけるんだと、こういうことと解釈さしていただいていいかどうか、その辺のところを聞かせていただいて、きょうは私はこれで質問を終わります。
  90. 園田直

    国務大臣(園田直君) 医学教育を終えられて一人前になった若いお医者さんが研修されるについては、直ちに職について職場で研修される方もありましょう。あるいは、職場の中途で再び学校とか病院に行って研修される方も現にあるわけでございます。あるいはまた、大学に行かれる方、あるいは博士論文あるいは学校の職員として研修される方もありましょうが、それ以外にみずから自分の欲するところで研修をしたいと言われる方のために研修の道を開く。ただいま無給医局員というのがおられますが、これは医師の資格をとった方が自分で勉強をしたい、新しい技術を覚えて、そして自分が医師としての良識として、あるいは開業医の道だと考えて、そこで非常に変則的な無給医局員がどんどんふえてきて相当長い期間おられる。したがって、理想から言えば、第一は、ただいま大橋委員が言われたとおりに、人命に関する医療制度の問題でありまするから、過渡期に対する処置をやるのが当然であると私も十分御意見は拝聴いたしました。なお、また、理想から言えば、そういう研修したいという人は、大学を出たばかりの人だけでなくて、途中で開業をやめて来られる方についても、それぞれ分に応じた国家の補助をするのが理想ではございましょうが、残念ながらインターンから今日までくる経緯——インターンと研修とは全然別個ではございますが、それぞれ経緯がございますし、また、国家財政上等の問題で実は二年間と区切ったわけでございまして、したがいまして、ただいま言われました理想に向かって、それぞれの学校教育の充実、あるいは国のほうでやるべき諸問題については、早急にその過渡期をカバーするようにやらなければならぬと考えております。
  91. 森中守義

    森中守義君 質問ではございませんが、明日の連合審査に必要な資料をひとつ御手数ですけれども特に大臣のほうで御手配を願いたい。  一つは、二十四年病院特別会計が設定をされて以降、病院が地方に移譲されたものが相当あるようです……
  92. 園田直

    国務大臣(園田直君) 国立病院ですか。
  93. 森中守義

    森中守義君 国立病院です。したがって、それらの施設名、及び当時における採算の状況、それから何を根拠に移譲したのか、移譲の基準。同時に、療養所に転換も行なわれておるようです。それらの施設名、また、前段と同じように、当時における採算の状況、及び転換の基準。  それからその次には、設置法の二十九条以外の調査会がございますね。この前、ここ四、五日前に、大臣が何か身体障害者の調査会をつくったと、こう言われたようです。したがって、二十九条に列挙されている機関以外の調査会、こういうものがどのくらいあるか。それの設立の年月日、及び解消されておるならばその年月日、及び設立後解消に至る間の予算の措置。それから調査の結果としてどういう行政措置がとられたか、その行政効果。  その次は、四十三年度の補助金。四十二年度の便覧を見ましたが、四十三年は出ておりません。ですから、法律補助の件数と金額、それから予算補助の件数と金額。なお、これらは、自治体補助の件数と金額及びその他の公機関の補助件数と金額及び任意団体等の補助件数、金額、こういうように仕分けをしていただきたい。  それから二十四年の病院特別会計に移行後、及び療養所も含めて、ずいぶん基盤の整備が促進されてきておるようですから、これに伴う改築された施設名、着工の年月日、完工の年月日、及び確定された経費額、同時に受注業者名、これは本体工事及び付帯工事別に提出してもらいたい。なお、受注業者の本社の所在地、代表者名。  以上、たいへんめんどうですが、明日の連合審査に間に合うように御提出願いたい。
  94. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) たいへん膨大な資料でございますし、また、私どもの担当以外のものが相当ございますので、もう一度先生に詳細に内容をお伺いした上で、できる限り明日までに調製いたします。  なお、施設整備のほうは私どものほうでございますが、施設整備によりましては、本省で直接扱って本省が直接指導してやりますものと、地方地方医務局でそれらの施設を直接指導してやっておりますものがございますので、工事受注業者、ことに本体工事だけでなしにそれぞれの付帯工事等について業者別まで全部出せるかどうか、ここらの点はもう一度調べてみてからできるだけの資料をつくりたいと思っております。
  95. 森中守義

    森中守義君 それはどういう仕組みになっているのかよくわかりませんが、地方医務局に相当権限を委譲しているのですか。たとえば、百万円以下とか以上とか。大体これは行政官庁のことだから、発注したその業者とか金額とかその辺のことは本省で掌握しているのじゃないでしょうか。問題だよ、そんなことを言ったら。
  96. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 出先の地方局にある程度の権限はもちろん委譲しております。しかし、最終的には本省で把握しておりますので、できるだけ調査をして提出いたします。
  97. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめておきます。  本日はこれにて散会いたします。   午後三時二十七分散会      —————・—————