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1968-05-15 第58回国会 参議院 産業公害及び交通対策特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月十五日(水曜日)    午前十時二十六分開会     ―――――――――――――   委員の異動 五月十五日     辞任         補欠選任      小平 芳平君     矢追 秀彦君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         松澤 兼人君     理 事                 山内 一郎君                 横山 フク君                 加藤シヅエ君                 原田  立君     委 員                 植木 光教君                 木村 睦男君                 楠  正俊君                 紅露 みつ君                 佐藤  隆君                 菅野 儀作君                 土屋 義彦君                 宮崎 正雄君                 柳田桃太郎君                 木村美智男君                 小平 芳平君                 矢追 秀彦君                 瓜生  清君    衆議院議員        産業公害対策特        別委員長     山崎 始男君        産業公害対策特        別委員長代理理        事        島本 虎三君        修正案提出者   橋本龍太郎君    国務大臣        厚 生 大 臣  園田  直君    政府委員        経済企画庁水資        源局長      今泉 一郎君        厚生省環境衛生        局公害部長    武藤一郎君        通商産業政務次        官        熊谷太三郎君        通商産業省企業        局立地公害部長  矢島 嗣郎君        通商産業省鉱山        局長       両角 良彦君        運輸政務次官   金子 岩三君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        厚生省環境衛生        局公害部公害課        長        橋本 道夫君        運輸省大臣官房        参事官      内村 信行君        建設省都市局都        市高速道路公団        監理官      角田 正経君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○大気汚染防止法案内閣提出衆議院送付) ○騒音規制法案内閣提出衆議院送付) ○産業公害及び交通対策樹立に関する調査  (産業公害対策に関する件)     ―――――――――――――
  2. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ただいまから産業公審及び交通対策特別委員会を開会いたします。  大気汚染防止法案閣法第一〇五号)(衆議院送付)及び騒音規制法案閣法第一〇六号)(衆議院送付)、以上両案を一括して議題といたします。  まず、政府から順次提案理由説明を聴取いたします。園田厚生大臣
  3. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいま議題となりました大気汚染防止法案について、その提案理由を御説明申し上げます。  近年、わが国における産業発展、人口の都市への集中等には目ざましいものがありますが、このような急激な経済的、社会的変動の過程において、大気汚染による公害が各地で発生し、国民の健康や生活環境上に問題を生じていることは、御承知のとおりであります。  このような事態に対処して、政府としては、昨年、公害対策基本法を制定して、公害対策に関する基本的な考え方を示し、国民の健康と生活環境を守る立場に立って、公害問題と積極的に取り組んでいくことを明らかにしたのでありますが、本法律案は、基本法に基づく施策具体化の一環として、大気汚染防止対策を総合的かつ強力に推進するため、これに関する施策拡充強化をはかろうとするものであります。  大気汚染防止については、昭和三十七年以来、ばい煙排出規制等に関する法律に基づき、工場及び事業場からのばい煙等排出規制中心とした施策が講じられてきているのでありますが、現行法におきましては、その規制工場及び事業場において発生するばい煙等に限られていること、予防的な見地からの規制が行なわれてはいるものの十分でないこと等、必ずしも十全とはいいがたい面があるのであります。  このような状況にかんがみ、政府としては、公害対策基本法によって明らかにされた基本的な方向に沿って、ばい煙排出規制等に関する法律に抜本的な再検討を加え、排出に関する規制強化、予防的な規制実施等により、工場及び事業場におけるばい煙等に関する規制強化するとともに、自動車交通量の著しい増大に伴い、自動車排出ガスについても本法において許容限度を定めることとする等、新たに大気汚染防止めための総合的な規制法として整備拡充することとした次第であります。  以上がこの法律案提案した理由でありますが、次に、この法律案が、現行ばい煙排出規制等に関する法律に対し、規制強化し、あるいは新たに講ずることとしている施策のおもなものについて、その概要を御説明申し上げます。  第一に、ばい煙発生施設が集合して設置されることが予想される地域指定地域として指定し、そのばい煙排出を予防の観点から規制するものとしたことであります。  第二に、排出基準についてばい煙排出量等を考慮して、その設定方式合理化をはかることとするとともに、これに都道府県知事意見を反映させる方途を講ずることとしたのであります。  第三に、環境基準をこえるような著しい大気汚染が生じている地域に新設されるばい煙発生施設については、一般の排出基準を上回る特別の排出基準を適用することができることとしたことであります。  第四に、スモッグ警報時における措置強化をはかり、一定規模以上のばい煙発生施設について、あらかじめばい煙排出量の減少のための計画を届けさせ、都道府県知事は、スモッグ警報時にはそれを参酌して勧告を行なうことができることとしたのであります。  第五に、本法において、自動車排出ガスにかかる許容限度を定めるとともに、これによる汚染状況に関する都道府県知事の測定について定めることとしたのであります。  以上がこの法律案提案理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。     ―――――――――――――  次に、議題となりました騒音規制法案について、その提案理由を御説明申し上げます。  戦後、わが国産業経済発展の成果として国民生活は目ざましい向上を見ることとなったのでありますが、その反面、主要工業都市中心として各種公害発生国民生活環境に予期せざる問題を投げかけているところであります。  これらの公害問題については、政府といたしましても、ばい煙等規制工場排水規制等中心対策を進めてきているところでありますが、大気汚染水質汚濁に次いで大きな社会問題となっている騒音問題については、国の手による一元的な法律上の規制措置は講じられないまま、今日に至ったのであります。  政府としては、昨年、公害対策基本法を制定し、公害対策に関する基本的な考え方を示し、国民の健康と生活環境を守る立場に立って、公害問題と積極的に取り組んでいくことを明らかにしたのであります。本法律案は、公害対策基本法精神にのっとり、騒音問題に対処して、工場及び事業場における事業活動並びに建設工事に伴って発生する騒音についての規制措置を講ずることにより、生活環境保全をはからんとするものであります。  以下、この法律案のおもな内容について、その概要を御説明申し上げます。  第一に、工場及び事業場騒音についてでありますが、その規制については、都道府県知事都市の市街地及びその周辺地域を指定し、指定地域内に設置される著しい騒音発生する工場及び事業場について、指定地域土地利用状況に応じて規制基準を定めて、所要の規制を行なうこととしたのであります。そのため、これらの工場及び事業場における施設設置について、事前届け出制をとるほか、規制基準に適合しない騒音発生することにより周辺生活環境がそこなわれると認めるときは、騒音防止方法等に関し、改善等勧告あるいは命令を行なう等の措置をとることとしたのであります。  第二に、建設工事に関する規制についてでありますが、著しい騒音発生する建設作業を対象に、指定地域のうち、住居の環境の良好である区域、病院、学校等周辺で行なう場合に、事前届け出を行なわせるほか、一定基準に適合しない騒音発生することにより周辺生活環境がそこなわれると認めるときは、騒音防止方法等に関し改善等勧告または命令を行なうことができるものとしたのであります。  第三に、騒音にかかる紛争についてでありますが、この種の紛争解決に迅速を要し、また専門的知識を要すること等から、騒音による被害について民事上の紛争が生じた場合について、都道府県知事による和解の仲介の制度を設けることとし、騒音にかかる紛争の円滑適正な解決に資することとしているのであります。  第四に、飲食店営業等にかかる深夜騒音等については、地方公共団体が必要に応じ規制措置を講ずるようにしなければならない旨を定めるとともに、この法律地方公共団体騒音規制に関する条例との関係を明らかにすることといたしました。  なお、以上のほか、市町村長に対する事務委任について定めているほか、騒音規制の実効を期する見地から、騒音防止に関する国の援助、研究の推進等について規定をいたしております。  以上がこの法律案提案理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  4. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 次に、両案につきましては衆議院において修正議決されておりますので、この際、両案に対する衆議院における修正点について、衆議院産業公害対策特別委員長から説明を聴取いたします。
  5. 山崎始男

    衆議院議員山崎始男君) 大気汚染防止法案に対する衆議院修正並びに騒音規制法案に対する衆議院修正それぞれの趣旨について御説明申し上げます。  国民の健康の保護生活環境保全基本目的とする公害対策基本法精神にのっとり、いずれも目的の項を修正したものでありまして、  まず、大気汚染防止法案に対する修正は、公害対策基本法においてなされた修正と同様、第一条を二項に分け、第一項におきまして、まず国民の健康の保護生活環境保全本法基本目的であることを明らかにし、次いで、第二項におきまして、生活環境保全については、産業の健全な発展との調和をはかる旨を規定したものであります。  次に、騒音規制法案に対する修正は、第一条に国民の健康の保護に資する旨を加えたものであります。  以上であります。
  6. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) これより両案の質疑に入ります。両案に対し質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 厚生大臣に伺いたいと思いますが、この大気汚染防止法案騒音規制法案提出に至るまでのいきさつ、つまり公害行政一元化ということを私どもは強く期待しておるのでございますけれども、これは結局、名目に終わっているのではないかというおそれがある。それからこの法案がたいへんに提出がおくれた、その最大の原因はどういうところにあったか、そういうことについて伺いたいと思います。それで提案に至るまでのいきさつを見ておりますと、厚生省行政部内案としての試案を最初につくられまして、これを公害対策会議事務担当者会議提出した試案内容は、ばい煙騒音発生する施設設置について許可制を採用するなど、公害規制強化に相当前進的な姿勢を示されたものでございましたが、各省事務担当者会議において討議の結果、大幅に後退させられたというようなことを聞いております。すなわち、公害発生源に対する規制の権限について、各省間の意見調整がつかないで、工場事業場許可については通産省自動車排出ガス規制については運輸省、それから建設騒音発生施設許可については建設省が、それぞれ自己の所管と規制の緩和を主帳して譲らなかった、こんなことも聞いております。結局のところ、最後は公害対策会議において政治的な話し合いの上、やっと四月の二十七日に国会提出の運びとなった。本院特別委員会において基本法審議のおりに再三再四指摘しておいた公害行政一元化、これに対して総理と関係大臣が「公害対策会議で十分」というふうに答えているにもかかわらず、現実は少しも改善されていない。提案がこのようにおくれた原因は、やはり中央公害行政組織欠陥にあると言えるのではないか。これは、この二つの法律の非常に基本的な問題に触れておりますので、その点について厚生大臣の御答弁を願いたいと思います。
  8. 園田直

    国務大臣園田直君) 公害行政社会構成関係各省にまたがっておって、しかも実施上いろいろ不便であるから一元化せよということは、しばしばの機会において承っておったところでございまして、そこでとりあえずは、いま御指摘公害対策会議を開き、各省大臣及び幹事会を開きまして、その幹事会には各省事務当局が入ってやっておるわけでございまするが、それでもなお、法案の作成あるいはその他のことについていろいろ問題があることは、御指摘のとおりでございます。将来何とかして、この行政運営の面において支障なくやるのには、やはり一元化方向にもっていかなければならないとは感じますが、現実のところは、そこまでまいらなかったわけでございます。  なお、次に、この法律案提案がおくれましたことは、御指摘のとおりに、これもやはり各省間における意見調整に手間どったわけでございます。私のほうでつくりました原案が、提案する際には若干変更になったのでありますが、この経緯その他については折衝をいたしました局長から御答弁をいたします。
  9. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) ただいま厚生省の当初原案よりも、いろいろな問題が後退もしくは難航したことについて、御指摘がございましたが、その点について簡単に御説明申し上げます。  第一の許可制の問題でございますが、これは大気汚染防止法許可制の問題につきましては、通産省工業立地適正化法、その他いろいろな土地利用規制など関連法案との関係上、立地問題が非常に関係しておるわけであります。したがいまして、この大気汚染につきましての許可制の問題は、政府部内で立地規制観点からなお検討を要する。大気汚染防止法だけにおきます許可制の問題をさらに広い角度から検討してみる必要があると、こういうことで、許可制をあきらめたわけではございませんで、なお今後、ほかの法案との関連上適正を期したい、こういうようなことでございます。  それから、大気汚染防止法の中で燃料規制の問題がございましたが、この問題は直接的に法律燃料規制をやるということにつきましては、燃料供給事情等の問題があることは通産当局から強く指摘されまして、この問題につきましては直接燃料規制をやるんじゃなくて、自主的に燃料規制ができるような仕組みを今回の大気汚染防止法では考えておりまして、この点につきましては、後ほどまた、逐条のときに御説明申し上げたいと思います。  それから、あと自動車の問題につきまして、運輸省との関係を御指摘になりましたけれども自動車の構造、設備等につきましては、従来から運輸省当局が長年の間やっておられまして、その点やはり運輸省のほうでおやりいただいたほうがより責任体制等がはっきりしておりますので、運輸当局でやっていただくと――ただ、まあ自動車排気ガスをきめる場合に排出基準厚生省と一緒にきめたらどうかというような御意見がありましたけれども運輸省のほうでは厚生省意見を十分尊重するというお話でございましたので、現在提出法案のような形態になっておるわけでございまして、この点につきましては、衆議院附帯決議でもその旨を特に強調されている次第でございます。  それから、騒音関係につきましては、一部許可制の問題を取り上げておりましたけれども、この問題は現在の都道府県におきます条例等におきましても、すべてほとんど届け出制でございまして、この点は、改善命令あるいは事前計画命令等につきまして十分なる担保が行なわれれば、それで十分であるというようなことで届け出制になった次第でございます。  そのほか、新幹線騒音問題とか交通関係騒音問題につきましては――新幹線の問題につきましては技術的に、あるいは行政的になお検討を要する問題がございますので、運輸当局となお今後検討して、この法律へ盛り込むか、あるいは特別の立法をするか、あるいは既存の法律の範囲内においてこれが行なわれるかということについて、鋭意現在検討中でございます。  それから、行政一元化の問題につきましては、たとえば騒音規制法等におきましては、地方に対します指導その他につきましてはすべて厚生省窓口を通して行なうということに各省間で合意に達しておりますので、この点は御指摘公害行政一元化の線に沿ってこの法律が運用できると、かように考えております。
  10. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 一元化の問題につきまして、いま御答弁を承っておりますと、問題の窓口が非常に広いために、一元化を具体的にやっていくのになかなかむずかしい点があることはよくわかりますけれども被害を受けております者の立場からいえば、これはどうしても一元化していただかなければ、安心して生活ができるような環境を求めている人々にとっては、どこへどう訴えてよいのか、もうこれは非常に多岐にわたって被害が迫ってくる。これをもう、とても一々追い回しているわけにはいかない。結局は疲れ果てて泣き寝入りというのが、いままでの現状でございますから、これはどうしても一元化していただきたい。  それで、厚生省一元化窓口ということをいま伺いましたから、そのようにこれから了解いたしますけれども、いままでの例によりますと、厚生省というお役所は、たいへん失礼でございますけれども、はなはだ力の弱いお役所でございまして、いつでもほかの産業を奨励するようなお役所の圧力に負けてしまう。そのために、被害者はいつも泣き寝入りと、こういうわけでございます。最近、園田厚生大臣が就任されましてからは、二、三の例でも厚生省行政というものは非常に力のあるところを示してくだすって、私ども、特に婦人、子供を持つ親の立場に立ちましても、たとえばサリドマイドの奇形児が生まれたという問題に対する厚生省責任、おくればせながらこれもお認めになると。あるいは、いろいろよくない売薬についての取り扱いについても十分強力な行政措置をとろうとか、あるいはイタイイタイ病とか、ああいうような病気発生源についての審議が前国会でたびたび行なわれまして、現に参考人の方々がおいでになったときに私どもが受けました印象は、この際、厚生省がもう少しふんばってくだされば――明らかに被害者がもう現実に何年かにわたって、そこに出ているものに対しても、まだ答えをあいまいにしているというような、たいへんに心細い状態でございましたが、まあ園田厚生大臣が大いにふんばってくだすって、これはたいへんに感謝いたしております。厚生大臣、今後もうんとふんばっていただきたいと思うんですけれども園田さんのような厚生大臣おいでになるときは私どもも非常に頼もしいのですけれども、また他の大臣おいでになって、相変らずほかの役所にみんな押されてしまうということになるんではないか。私は、それを非常に心配いたします。ですから、ただ窓口だけでなくて今度は権威を持つということにならなくちゃいけない。それでなければ公害問題は解決しないのでございます。  特に私、一つ問題点を出して厚生大臣に伺いたいのでございますが、ことに騒音公害なんかでございますと、騒音というものはつかみどころのない、形になってつかめないものです。それが人間肉体にどんなふうに被害を及ぼすかということがつかめない。そうしますと、言いのがれをしようと思う者は、それは心理的な問題だ、精神的な問題だというようなことで、何か肉体が傷ついて、そこから血でも流れるとか、何とがしなければ――あるいは病気で、お医者さんがこういう病気にかかったというような診断を下さなければ、被害が及ばないのだというようなこの見方、これは非常に間違っていると思います。公害の多くのものは、これは心理的であり、精神的な被害でございます。それが人間生活にとって非常に重大な問題であって、その問題を形がないからというふうな言いのがれをする、こういうようなところに、いままでの大きな欠陥があるわけでございます。これは厚生大臣、そういうような言いのがれが、いままであったということに対して、いろいろの被害精神的、心理的なものでも、これは非常に重大だということについて、厚生大臣はどういう御見解をお持ちになりますか。
  11. 園田直

    国務大臣園田直君) 騒音被害というものは、これはなかなかまた学問的にもむずかしい問題で、御指摘のとおりに、特に妊産婦、授乳中の母親、子供、こういうものに対しては健康上、発育上あるいはその他にも、各種の神経の関係疾病等には非常に影響がある。したがって精神上に与える影響というものは、今後もっと深く掘り下げて検討しなければならないと、御指摘のとおりに考えております。
  12. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) ただいま加藤先生の御指摘の点について若干お答えいたします。  騒音問題につきましては、ただいま大臣からも御答弁がありましたように、国民生活環境に非常に重大な影響を与える問題でございます。自治省の調べでございましても、四十一年度の苦情処理の中に二万件ほどございますが、その中で騒音は七千六百件と、非常に多く第一位を占めておりまして、この問題がいかに国民生活にいろいろの問題を与えているかということにつきましては、この件数を見てもわかるわけでございます。情苦処理一元化につきましては現在、政府部内また中央公害対策審議会等紛争処理並びに救済問題の検討を進めておりますので、そういう点の中でひとつ苦情処理一元化窓口一元化ということにつきましては、法律上の問題としても解決したいと思っておりますし、現在の地方公共団体等でも、先生指摘たらい回しがないように、いろいろくふうを重ねているようでございます。  なお、いろいろ厚生省に御激励のおことばがございましたけれども、昨年の公害対策基本法、これも世界で初めてだということになっておりますし、それから大気、水、騒音、この三つの大きな公害問題につきまして、私ども大気汚染防止法騒音防止法という法律を立案いたしまして、昨年の公害基本法と今度の二法案、それから先般御可決いただきました公害防止事業団法の改正と、いろいろ努力をしております。もちろん御指摘のように、かすり傷は負いましたけれども、ここまで提案にこぎつけましたことにつきましては、厚生省努力をひとつお認めいただきたいと、かように思います。
  13. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 いま厚生大臣に対しまして心理的な、精神的な問題を含めた被害というものを、もっと重要視していただきたいということを、私は伺っているのでございますが、大臣の御答弁には、たとえば騒音妊産婦、赤ちゃんにたいへんな影響がある、こういうようなお答えなんでございますが、そこに妊産婦とか、乳幼児とか、嬰児とかそういうような問題が出て、その人たち被害があるというような見方は、これはやはり純粋な心理的、精神的な見方じゃないと思うのでございます。たとえば健康な人間でも、もう耐えられないようないやな、不愉快な騒音が自分の住居の周囲に絶えず起こっているというようなことは、その人の健全な精神をもむしばみ、その人を非常に精神的にいらいらさせてしまう。社会に起こるいろいろな問題というものは、生活環境が悪いというところからやはりだんだん発生していくと考えなければならないので、こういうような問題はつかめない問題であるが、とにかく人問が住むところには、たとえ、そこに健康な人たちばかり住んでいたとしても、やはり騒音というものは絶対に防止しなければいけないという、こういう基準をはっきり定めていただきたいと思うのでございます。  それから、その次に、私いま申し上げたいと思いますのは、東海道新幹線がもうできてしまいましたけれども、そのときには新幹線のスピードの問題や何かに、みんな目を奪われてしまいまして、その沿線の住民がどんな被害を受けるかというようなことは、ほとんど表の問題に出ないで新幹線はできてしまいました。まあ新幹線が非常な成功であったことは、だれしも認めておりますけれども、そのそばの沿線の住民の方たちがその騒音、電波障害などで非常に困っていらっしゃるわけです。また沿線の学校なんかでも列車が通るときには、もうほとんど授業ができないような事情で、しかもこれは、もう非常にひんばんに、絶えず毎日毎日起こっておることでございますから、そうした影響というものはたいへんに大きいものであって、どうすることもできないであきらめるというようなことで終わってはならないわけでございます。これに対しましては、いま私ここで問題を提起したいのは、これからやろうとする山陽新幹線でございます。これは、もっとスピードが早いというようなことを聞いておりますので、その騒音とか何とかいうものはもっともっとひどいのじゃないか。そうなりましたら、その沿線の住民の方たちは一体どうしたらいいか。ここの工事が急がれております尼崎、伊丹、西宮など、こういうところは、いままで住宅地域としてはまあ世間の人がうらやむような、日本としては一番いい住宅地域でございました。そこに今度新幹線の工事が始まるということになりますと、これはもう財産にたいへんな、えらい被害を受けて、そこの住民たちは逃げるに逃げる場所もない、自分の財産の価値は低落してしまう、これはもうたいへんな被害なんでございます。そういうことに対して、どういうふうに対処しようとお考えになっていらしゃるのか。そこのところを伺いたいのでございます。
  14. 園田直

    国務大臣園田直君) 騒音人間の健康に及ぼす心理的、精神的な影響については、私も全く同様に考えておりまして、妊娠中の母親と乳幼児のことを申し上げましたのは、特にという意味でございますから、御了解を願いたいと思います。  なお、ただいま言われました新幹線、それからもう一つは高速道路、この騒音の問題がありますが、これは当初お願いをしまする騒音規制法律案の中にわれわれは考えておったのでございまするが、この高速道路と新幹線問題については、各省意見が合わなくてこれを取りやめたわけではなくて、各省ともその必要性を認識しておりまするが、これに緩衝地帯をどうつくるか、あるいはどういうふうに用地を買収していくか、あるいは付近に居住している方々の賠償請求をどう処理するかという問題で、非常に問題が大きいものでございますから、これは各省とも意見が対立したわけではなくて、それをやっておると一般の騒音のほうが間に合わないから、とりあえず、これは今後の検討する問題として残して、そしてともかく提案しよう。こういうことにしておるわけでございまして、いまの高速道路、新幹線については今後の大きな問題として、早急に検討して別個の法律案でお願いするか、あるいはこれに追加するか、こういうことを考えておるわけでございます。
  15. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 これは運輸省関係のある問題でございますので、運輸当局としてはどんなふうに考えていらっしゃるのか。ことに、その被害の及ぶ距離でございますけれども、それは沿線からどのくらいの範囲を被害の及ぶ距離としてお扱いになろうとしていらっしゃるのか。その辺も伺いたいのでございます。
  16. 内村信行

    説明員(内村信行君) 東海道新幹線につきまして、今回の法律に盛られなかったことにつきましては、先ほど厚生大臣から御説明のとおりでございますが、かと申しまして私どもといたしまして、新幹線騒音問題ということを全然考えないわけでは毛頭ございません。従来からも、設計の当初から、あるいはロングレールというものを採用するとか、あるいは駆動する歯車の音を下げようとか、あるいは長いスカートをはかせまして周囲に騒音を及ぼさない、あるいは床下の機器の騒音防止するとか、あるいは市街地、学校、こうしたところの騒音防止するために防音壁をつくるとかあるいは変電所に防音構造をとるとか、あるいは工事上の音がしないように低圧の配線を使うとか、いろいろ防音対策実施してまいったのでございまして、こういうようなことをやってみたわけでございますが、しかし実際に新幹線が始まってから御指摘のようにいろいろな騒音問題がやはり出てまいるということで、こういうことも極力防音壁の設置とか、そういうことを考えてまいっておるわけでございます。また、さらに、山陽新幹線というものが今度予定されておりますが、それにつきましても先生指摘のように、いろいろ騒音というものは問題になりますので、これは技術的な改良をもっといたしまして、従来の新幹線よりもっと上回って騒音防止ができるように、たとえば鉄げたをなくしてコンクリートの道床にしてまいるとか、あるいは必要なところにゴムのパッキングをしてまいるとか、あるいは防音壁をつくるとか、あるいはスカートだけではなくて、下の機器を全部包んでしまうとかいうようなボディ・マウント方式というようなものを使うとか、そういうようなことについていろいろ研究を進めておるわけでございます。それで、そういうふうなことをやっても、なお音が出たらどうするのかという問題も、あるいはあるかと思いますけれども、その点につきましては、先ほど厚生省のほうから御説明がございましたように、いろいろな補償問題その他また非常に金がかかってまいります。そういたしますと、国鉄財政からどの程度負担するかという問題もございます。それから騒音の性質に対する技術的な解明、あるいは技術的にどの程度防げるか、こういった問題もございますので、そういう点につきましては厚生省当局と十分連絡を密にいたしまして、研究いたしまして必要な措置をとってまいりたい、このように考えております。
  17. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 現地の、たとえば西宮とかあるいはあの辺の方たちは、今度の山陽新幹線の両側五十メーター、これだけは一番ひどく被害を受ける地域として国鉄に買い上げてもらいたい、このいう考えを持っていらっしゃるのですけれども、なかなか費用や何か相当広範囲な面積でございますから、相当な大きな予算をとらなければならない。それがまあできないかもしれないというようないまの御答弁でございますけれども、こういうような場合には建設省とも相談して、都市計画とか区画整理とか、そういうものの名目で解決すべきではないかというふうに私どもは思うわけでございます。そういうことに対して、建設省や何かと何か御相談なさっていらっしゃるかどうか。建設省はまた他にどんなお考えを持っていっらしゃるのか、それも伺えましたら聞かせていただきたいと思います。
  18. 内村信行

    説明員(内村信行君) この点、ただいま先生の御指摘ございましたとおり、国鉄だけでは非常に金がかかるということは確かでございます。そこで御指摘のように、建設省当局あるいは地方公共団体等とも十分連絡をいたしまして、都市計画の一環としてある部分についにやっていただくというふうな方法でいろいろ折衝を進めております。そこで、建設省当局に対しましても、この点につきましては前向きの姿勢で考えていきたいというふうに考えております。
  19. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 建設省のほうのお考えはどうでしょうか。
  20. 角田正経

    説明員(角田正経君) ただいまの御質問でございますが、直接担当でございませんのでつまびらかではございませんが、ただいま運輸省からお話ございましたように、都市内の問題でございますと、都市計画としても十分検討いたしまして、運輸省と相談しながらそういうふうな措置がとれますものはとるような措置検討したい、こういうふうに考えております。
  21. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それだけですか。――それじゃ、なおこの問題は運輸省建設省で十分に考えていただかなければならない問題だと思いますので、さらに深く検討してくださいますようにお願いをいたします。  次は公害、これはやはり厚生大臣に伺う問題と思いますが、公害紛争処理及び被害救済法というものの御提出はどういうような御準備をなさっていらっしゃるのでありますか。前回の通常国会で、公害対策基本法の御説明の中で、厚生大臣も総理も、次期通常国会には救済法案提出するという御答弁があったわけでございますが、いまだにこれを見送っていらっしゃる。これはどういう理由でございますか。あるいは方々の御意見調整ができなかったのかどうか。こういうような問題について伺いたいのでございますが、この救済の問題はいつも非常に手おくれでございまして、現に原爆の被災者に対しましてのその取り扱いでも、あまりにもみじめであるので、諸外国の人たちが、原爆の平和都市を建設された広島に来られたときにも、原爆の被災者の方々の病院をお見舞いすると、それはもうまるで貧民扱いをされたような扱いであって、これが国家的な犠牲者の扱いであるかというふうに、みんなが驚いているというふうな話も、私は広島の市長から聞いております。こういうふうに、この被害者というものは非常に弱くて、そしてもう圧力団体をつくって陳情するわけにもいかないような状態になっている。こういうふうな被害者、これが公害のあらゆる面で起きてくるわけでございます。四日市なんかでも非常に困っていらっしゃって、これは地方自治団体の費用で治療のほうは当たるというところまで前進されましたけれども、治療費だけもらっても、その方たちの生活が保障されなければ、結局働き手が病気で倒れていれば困るわけでございます。その被害というものは非常に深く広いものである。この救済について、いまどういうようなことを考えていらっしゃるか。また、今国会にその救済法が出なかったのはどういう理由であったか。それを御説明願います。
  22. 園田直

    国務大臣園田直君) 基本法に基づく公害関係法律でいまお願いしましたのは二つでございますが、このほかに、通産省が考えられておりました工業立地の規制、これは今国会に出すように手配、準備をし、成案も得たのでございますが、関係各省意見がとうとう調整できずに、今国会には間に合いませんでしたが、これは早急に提案されるものと考えます。  次には経済企画庁が所管しております水質の保全、これは私のほうでも協力をして、水の、河川における毒性その他の資料等の収集も終わりましたので、これも早く出していただきたいと考えておるわけであります。  次に、いま御指摘紛争の処理及び救済、これは一番大事な問題でございまして、当初から準備しておったのでございまして、まず第一には財政上の問題がございます。救済の基金の問題、これは本年度予算には入っておりませんが、この法律案提案されて成立をすれば財政当局はいつでも準備をするということで、財政上の問題は大体めどがつきました。ところが、一つには、これは私のほうの責任もありまして、事務上ここまで手が及ばなかったことも生じております。それから各省との関係も、なかなか大筋においてまとまらなかったということでございまするが、これは御指摘のとおりに、公害に対する対策のこういう法律の中で環境基準を設定することよりも、一番大事な問題でありまするから、早急に準備をして、できるだけ早い機会に出したいと引き続き検討、準備いたしておる。なお急ぐ問題でありまするから、公害審議会にも当初からお願いをし、その審議会の結論を待っておっては事務的におくれるおそれがありまするから、厚生省としても、これと並行して検討し準備をいたしております。その私の考えておりまする大体の内容というものは、まず第一は、公正取引委員のような権威のある、しかも公平でいかなるものからも干渉されないような委員会をつくりまして、その委員会が紛争の処理をやるという、これを基本にして考えておりまして、その基金は、公害ができましてから紛争の処理の決定を待つのには、やはりこれは大事な問題でありまするから早急にやらなければならぬが、また一面には、慎重に公平に資料等を集める、そのためには若干の年月を要することは申すまでもないと思いますので、その年月の間被害者がいまのまま放置されることはたいへんなことでありまするから、とりあえずその基金の中からやりくりをして、あとでそれぞれの所掌に基づいて、賠償すべきものは賠償する、補償すべきものは補償するというような線で大体考えております。早急に――これは逃げことばではなくて早急にやりたい。現実に準備を進めております。
  23. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 いまの厚生大臣の御答弁によりますお考えは、私も非常にけっこうなお考えだと思います。ことに公正取引委員会のような権威のある、そうしてどこからも影響を受けないような一つの委員会を発足さして、それにやらせるということは、公正を期するために、また役所に気がねをしなくていいというような意味で、こういうようなお考え方は、私はたいへんけっこうだと思います。また公害の問題でいつも問題になるのは、俗なことばで言えば、犯人はだれかということをまずきめようというところにたいへんな無理があり、また、そこに非常に長い年月を要するので、公害発生原因をつくったのがどこのだれであるか、どこの会社であるか、何であるかというようなことをきめることも大切でございますけれども、現にそこに被害者があるという現実があれば、その被害者の救済は、まず原因のいかんにかかわらず救済をする。ことに生活能力の低い方々に対しては、それは十二分な生活の保障にまでいかなければいけない。こういう考え方厚生大臣がお持ちであるように、いま承りましたので、どうかそういう線で少しも早く救済、紛争処理、そうした問題についての法案を御提出くださるように希望いたします。時間がまいりましたので、私の質問はこれで終わります。
  24. 小平芳平

    小平芳平君 厚生大臣、いまのこの被害者救済基金、それからまた紛争処理の問題ですが、厚生省としてはもう四十三年度予算要求のときに具体案を立てたわけですね。それでもうこの参議院の産業公害及び交通対策特別委員会――当委員会でそのときの坊厚生大臣また政府側が具体的に説明しているわけです。これはもうその企業に八分の五を持たせる、それでその八分の五持てといっても、中小企業をどうするかとか、そういうような具体的な質問に対して答弁をしているのです。それにもかかわらず、結局、新聞記事で見れば予算折衝の過程で大蔵省に削られたと、こういうわけでしょう。ですから、もしそうだとすれば、いま大臣答弁なさったように早急にやります。早急にやりますだけでは済まされないと思うのです。いかがですか。
  25. 園田直

    国務大臣園田直君) これは、予算折衝の最後の場合に私がじかにやりましたので申し上げますが、財政当局の――これは数字は五億だったと覚えておりますが、その数字を削られたからできなかったわけではなくて、財政当局では法律案がないのに予算を組むわけにはいかない。しかし、今国会紛争処理、救済の法律案が成立をさしていただければ、それに対する財源はやりくりをする、こういう約束で私は予算折衝をいたしたわけでございます。おくれましたのは財政上の問題ではございません。
  26. 小平芳平

    小平芳平君 それでは何の問題ですか。
  27. 園田直

    国務大臣園田直君) 事務上、関係各省との折衝の問題でおくれたわけでございます。
  28. 小平芳平

    小平芳平君 具体的に……。
  29. 園田直

    国務大臣園田直君) それでは事務当局のほうから……。
  30. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 一番問題でございましたのは、救済制度の基金の費用の分担制度の割合につきましての各省間のいろいろの意見のまとまりができなかった、こういうことでございます。
  31. 小平芳平

    小平芳平君 そういう問題がありはしないかということを、この当委員会で質問したのに対して、それはもう十分やっていけるという答弁をしているのですよ。
  32. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) その点につきまして、各省間の調整の推移を見ながら、私どもとしては立案したわけでございますけれども、最終的には各省間の合意が見られなかった、こういう事情でございます。
  33. 小平芳平

    小平芳平君 どこが何と言つて反対したのですか。
  34. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 関係各省とも、この制度自身をつくることにつきましては問題ではございませんけれども、やはり国の出す割合とか、あるいは企業が負担する割合の問題とか、あるいは地方公共団体が負担する割合の問題とか、そういう点が主として問題でございました。
  35. 小平芳平

    小平芳平君 関係各省が制度に反対していないといいますけれども現実にできないということは反対なのですよ。ですから私たちも、少なくともこの特別委員会の委員の方々と、また厚生省当局の厚生大臣はじめ皆さんとは同じ意見だと思うのです。それは、生活環境基準を守り、生命を守るというそれを、第一に公害防止は考えなくてはいけないということは同じだと思うのです。しかし各省には、そう考えていない省があるから、まとまらないのでしょう。そこで、そのことについてもっと具体的に御答弁願いたいことと、それからもう一つは――時間の関係でまとめて申し上げますが、もう一つは四日市市ではもうすでにこの公害病患者のために市で認定した患者に対しては市で予算をつけてお金を出しているわけです。これは何年から幾ら出していますか。
  36. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 前段の御質問でございますが、先ほど私がお答えいたしましたのは、私どもが考えました基金制度についての割合の問題についての各省間の意見がまとまらなかったということでございますが、そのほか、たとえば保険制度でありますとか、あるいは事前の供託制度をとるとか、あるいは初めから国から立てかえ払いをするとか、そういう私どものほうの基金制度に対しますところの問題につきましても、いろいろ代案的な意見も出まして、そういう問題も含めて調整がつかなかった、こういう事情でございます。  それから、四日市につきましては、国のほうも補助金といいますか――補助金を出しておりますけれども、四日市全体としてどの程度いままで出したかにつきましては、後ほど調べまして御報告さしていただきたいと思います。
  37. 小平芳平

    小平芳平君 そうではないですよ、私がお尋ねしておる点は。国の問題はあとでいたしますから……。市が予算を組んで、認定した者に対しては何年も前からやっておるのです。それを厚生省が知らないというのはおかしいですよ。
  38. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 四十年度から市が予算を組んでおるようでございまして、大体四十年度から八百万から一千万程度の費用を組んでおるようでございます。
  39. 小平芳平

    小平芳平君 ですから、そういうように一つの市でも八百万――一千万円という予算を組んでやらざるを得なかった現状がすでに昭和四十年、それができるまでには、どれほどいろいろな問題が起きていたかしれないわけです。それほど困難に困難をきわめているこの公害病に対して、国の施政が、四十三年度からやりますとはっきりもう具体案まで参議院の委員会で説明をしておきながら、発足できない。これは重大な問題だと思いますね。いかがですか。
  40. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) ただいまの四日市の予算につきましても、四十三年度につきましては百万程度の国の費用を出しておりまして、国としても前向きに援助の制度を立てているわけでございます。  なお、先生の御指摘の救済制度の基本的な問題につきましては、先ほど来お話ししましたような問題がございましたので、本年度当初からはできませんでしたけれども、二千万の医療研究費補助金というものを計上いたしておりまして、今回のイタイイタイ病につきましてもその中から支出いたしたい、かように考えておりまして、基本的な制度につきましては鋭意いま努力しておるところでございます。
  41. 小平芳平

    小平芳平君 これは大臣、前にも私が再三申し上げたことがあるわけですが、それはいまの政府の御答弁は、四日市に対しても百万円予算をつけたと言われる。しかし、そうした個々の――うるさいからまあ百万円とりあえずつけて、その場ごまかしをしよう、そういうほどじゃないと思いますけれども、そういうその場のがれみたような、行きあたりばったりのような施策では間に合わないから、公害基本法ができたでしょう。そういう個々の問題に、それではあちらへ百万円、こっちへ二百万円と、医療研究費程度で済むならば何も公害基本法はいらない。これは坊厚生大臣のとき公害基本法が成立した、昭和四十三年度はその第一年度に当たるのだ、公害防止の画期的な一年にしようということで、意気込んでこの案も立て、説明もなさっていらっしゃる。しかし現実、結果としては、「四十三年度予算政府案――被害者に冷たい公害対策、救済基金設立を認めず、無視された基本法」と、新聞にこんなに大きく出ているじゃありませんか。そういうことを、大臣として、大臣も私の申し上げる意見に全然反対ということはないと思うのですよ。それで財政当局がいいというなら、今度はきかないところをきかせなければいけないと思うのですね。一四日市市すらそういうような予算をつけて、毎年これを出しているのですから、現実にほおっておけないわけです。ですから、なるべく早く――なるべく早くではなくて、ひとつ、厚生大臣が具体的に前にも答弁されていらっしゃるわけですから、より具体的な答弁をし、お約束をし、ともに実現に向かっていくという姿勢でなければならないと思いますが、いかがですか。
  42. 園田直

    国務大臣園田直君) 四日市に対する百万の金が前向きだと答えましたが、前向きでなくて申しわけ的であるというおしかりも、私はそのとおりであって、それを前向きと考えるか、申しわけ的と考えるかによって、公害に対するわれわれの誠意がきまってくると思いますので、そのおしかりはそのまま受けておきます。  なお、救済基金の法律案は、実は本国会にぜひとも出したい――御指摘のとおり、委員会でもそうでございますし、総理もことしの正月だったと思いますが、伊勢で記者会見の際に、新聞にその基金の割り当ての比率まで発表しておりますが、そういう経緯とは別に、紛争の処理と救済が一番大事だと思いましたので、できましたら本国会と考えましたが、現実においては、私の責任において間に合わなかったわけでございますから、ぜひこの法律案だけは――ほかの法律案のこともさることながら、この法律案だけはぜひ次の機会にお願いするという覚悟で準備を進めてまいります。
  43. 小平芳平

    小平芳平君 現に病気をしているわけですから、いまの大臣の御答弁が、私もぜひ実現することを期待いたします。病人に対しての救済ですから。公害部長さんが言われたように話し合いがつかなかった――いろいろそれは事情もあると思います。行政府としての事情もあると思いますが、現に病気で悩んでいる人、現に医者にかかっている人、その人のことを考えて推進していかなければならないと考えます。  それからもう一つ、日永肝炎というのが四日市にありますね。これは三十七、八年から死亡七十八名ですか、これは現に病気どころか、肝炎を起こして――どうしてこの地方だけ肝炎を起こして死ぬのだろう。こういう危機にさらされている。これはいかがですか。
  44. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 四日市の日永地区の問題でございますが、私どもとしては、現在県当局から受けております報告によりますと、ウイルス性の疾患であるというように聞いておりますが、なお先生指摘のような公害発生地区でございますので、あるいはそういうようなことがあるんではないかというような疑いが一部になされましたので、県当局は市当局と十分連絡をとりまして、現在そういう点についての解明をいたしておるようでございます。  なお、本日の新聞でございましたか、東大の研究班は、これは純然たるウイルス性の疾患であるというような報告をいたしたというような報道もあったようでございます。
  45. 小平芳平

    小平芳平君 その県当局、市当局、あるいは東大、これについては私も、ほかのほうから知りますので、私がいまお尋ねしているのは、厚生省としての対策――調査をされるならば、どういう具体的な調査をされるか。いかがでしょう。
  46. 橋本道夫

    説明員橋本道夫君) いま御質問のありました肝炎の件につきましては、防疫課のほうと連絡をとっておりまして、防疫課のほうから、肝炎につきましての調査の一切の資料を私どものほうも受領いたしております。それから、現地の衛生部長が参りまして、防疫課のほうと私どものほうと話もいたしております。本人は防疫をやった専門家でございますし、公害のほうも十分やった人でございますから、内容をいろいろ話しまして、この問題はウイルス性疾患だというようにはっきり申しております。  なおまた、きのう現地のほうから、東大に対しまして鑑別の調査について依頼したことにつきまして、東大からウイルス性の疾患だとはっきりいわれたということでございまして、私自身も、きのう四日市におりまして、そのことにつきまして現地で見聞をいたしております。  なお、この点につきましては、私どもも、一こういう御心配のないように防疫課のほうと絶えず連絡をとって当たりたい、こういうように思っております。
  47. 小平芳平

    小平芳平君 要するに、公害ではないということですね。
  48. 橋本道夫

    説明員橋本道夫君) はい。
  49. 小平芳平

    小平芳平君 もしそうでなければないように、いま言われたように、地元に対しても、これはこれこれこういうわけだということを説明する必要があるわけですね。  それから次に、やはり去年の委員会のときに、公害対策会議、あるいは公害対策審議会がまだできていなかったので、基本法はとっくに成立したのに、これはいかにもおそいではないかということも一つあったのです。まあ、これはできましたですね。それと関連して、環境基準はできましたですか、環境基準
  50. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 基本法ができましてから、さっそく環境基準の専門家を動員いたしまして、いま検討しておるところでございますが、現在、SO2につきまして審議会での最終的な検討が行なわれている状況でございます。
  51. 小平芳平

    小平芳平君 何ですか。
  52. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) SO2につきましての環境基準検討は、審議会で最終的にいま検討が行なわれておる状況でございます。
  53. 小平芳平

    小平芳平君 環境基準についてはSO2は近く出る。そのほかはどうですか。
  54. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 環境基準は、次には自動車排気ガスのCO等につきましても早急に制定したい、かように考えております。
  55. 小平芳平

    小平芳平君 公害対策といいましても、環境基準がはっきりしなければ、結局何をどう規制するかということの尺度がないわけでしょう。尺度なしに基本法ができた、関連する法律ができた。問題は、この尺度がなければどうしようもないわけですね。ですから、これはもう環境基準は、ほかの省に遠慮する必要はないわけですから――要するに生活、生命を守り、公害から人間を守る、そのための基準ですから、これは基準法ができてもう長くかかっているわけですから、てきばきと進めていくべきだと思いますが、よろしいですか。
  56. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 先生指摘のように、環境基準というものは、公害の総合的な政策の一つの重要な指標でございますので、早急に定めていきたい。しかしながら、それをきめるとともに、現在いろいろ排出基準等の規制がございますから、この点についての規制強化につとめてまいりたい、かように考えております。
  57. 小平芳平

    小平芳平君 次は、若干この法案について、時間があまりないので、簡単に御質問しますが、騒音について、自動車、空港周辺のジェット機の騒音、あるいは新幹線、こうしたものが今度の法律によって規制を受けるか受けないか、その点はどうですか。受けないなら、なぜ受けないか。
  58. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 飛行機の問題につきましては、昨年の国会で、飛行場周辺に関します特別立法がなされましたので、これにつきましては運輸省から御説明いただきます。  それから、新幹線の問題につきましても、先ほどからるる御説明いたしましたように、将来の検討事項として、いま運輸、厚生両当局で検討しております。自動車騒音の問題につきましては、これは道路交通法等の指導強化、もしくは現在条例等で行なっております運転者に対します取り締まり規定等を活用して、自動車騒音については善処したいと、かように考えておりますので、この法律の施行と同時に、いわゆる工場騒音、建設騒音以外の騒音については条例等の指導をいろいろやっていきたい、かように考えております。
  59. 内村信行

    説明員(内村信行君) 新幹線騒音につきましては、先ほど御説明申し上げましたので御理解いただきたいと思います。  それから、飛行場の騒音につきましては、先ほど厚生当局から御説明ございましたように、第五十五特別国会におきまして、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律、こういうのが成立いたしまして、それに基づきまして特定飛行場における周辺の学校、病院等の防音工事でありますとか、そういうものを整備いたしますとか、あるいは学習、集会等の用に供する共同利用施設、こういったものに対する助成、それから飛行場の周辺一定区域内の建物の移転補償、土地の買い取り、農業、漁業、そういったものに航空機が与える障害に対する補償というものをやっておるわけでございます。今後もその線に沿いまして、さらにそういった対策強化いたしてまいりたい、こういうふうに考えております。  それから、自動車でございますけれども自動車騒音につきましては、先ほど厚生省のほうから御説明ございましたように、これは総合的にやってまいらなければならないことでございますけれども、さしあたり私どもといたしましては、道路運送車両法というものがございますので、それに基づく保安基準の中で、大体走行騒音というものを八十五ホンに規制するということでやっております。現実ではある程度それ以下の騒音しか発生しないというふうに考えます。なお、これも今後さらに加速騒音の問題であるとか、高速騒音の問題がありますので、そういった問題につきましても、技術的研究を進めて、しかるべき方法をとりたいというふうに考えておるわけでございます。
  60. 小平芳平

    小平芳平君 それは空港周辺については法律ができた、あるいは新幹線については先ほど説明があった。それは、こういう研究をしておるという説明をしたでしょう、山陽新幹線の新しい建設について。いま私が尋ねている点は、国会でこうした騒音についての騒音規制法というものができるわけでしょう、いま国会を通過すれば。騒音規制法案国会を通過して成立したということを聞けば、国民騒音が減ると思って期待しているわけでしょう。これは、騒音は一つの音で何万人が直接うるさいと思うことじゃない。それは局地的でしょうけれども、局地的だけに耐えられないわけです。ですから、こうした規制法ができる。そこで、じゃどのくらい騒音が減るのだろう、そういう期待に対して、運輸省は、法律はもうとっくにできている、あるいは新幹線についてはこれから研究するというだけじゃ、騒音が減るだろうという期待に、ひとつもこたえないのですが、いかがですか。
  61. 内村信行

    説明員(内村信行君) 新幹線騒音について、なぜこれから落としたかという御質問がまず第一でございますが、それにつきましては、先ほど厚生大臣のほうからるる御説明がございましたように、この騒音の問題につきましては、なお環境基準の設定等も関連いたしまして、技術的、経済的あるいは行政的にいろいろ詰めていかなければならぬ、なお検討すべき問題があるということで、さしあたり今回の騒音規制法を早急に上程するために、一応今回は省いて、なお今後引き続いて検討を進めてまいりたいということでございます。  さらに一般的に――これも必ずしも全面的な回答にはならぬかと思いますけれども、一般的に、騒音規制をいたします工場とか、あるいは建設騒音、こういったものは不特定多数のものから発生するわけでございますけれども新幹線の場合には、騒音発生源と申すものが国鉄というふうな特別の法人に限定されております。したがって、犯人探しじゃございませんけれども、まずつかまえることは容易である。それから運輸省の指導、監督も行なっている。それから現にある程度――先ほど御報告申し上げましたような騒音対策を行なっておるということから、将来ともこのままの形でいいのだというわけじゃございませんが、先ほど申し上げましたような理由によりまして、今回は一応残念ながら省かれたということでございます。
  62. 小平芳平

    小平芳平君 これもやっおあり厚生大臣にお願いしておくよりしかたがないのですけれども、それは技術的にむずかしい点、なお検討を要する点、それからまた、いま説明のあった点ですね、今回すぐにはこたえることはできないという環境基準の設定、これとも関連してと言われる。ですから、こういう点については厚生省意見が強く出ていいと思うのですね。また厚生省意見が強く出なければならないと思うのです。実際に厚生省として、いまの答弁のように、環境基準厚生省がきめてくれるのを待っているのだというようなことがないように――それはもう技術的、経済的に困難な点はありましょう。ありますが――今度の騒音規制法それ自体も技術的、経済的に困難なことがあるから法律ができるわけですよ。そういう困難なことがあるから――それが簡単にできるのだったら何も法律をつくる必要はないのであります。ですから、私が大臣に申し上げたいことは、また大臣に推進していただきたいと思いますことは、先ほど来説明しているように、こうした規制法ができた、したがって、これこれのものはこういうふうな規制を受ける。町は静かになる可能性が期待できる、したがって、ジェット機等についても新幹線等についても、厚生省としては、こういう方式で進めていきたいのだという点について、具体的な御説明をいただけたらいいと思いますが、いかがですか。
  63. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいまお願いしておりまする騒音規制法にいたしましても、これは高速道路及び新幹線、あるいは基準の設定、こういうものができて初めて御指摘のように騒音が減ってくるわけでありまして、これが抜けている間は、とりあえず騒音公害に取り組んだという姿勢だけにしかすぎぬわけでありまして、抜けておるというよりも、その実態はなかなか効果が出ないわけでありまするから、これができて初めて騒音規制というものが大体前向きに前進するわけであります。したがいまして、技術上、財政上いろいろ問題はあるし、相当広範囲な問題ではありまするが、責任を持って私のほうで各省と相談をし、解決をしていきたいと考えております。
  64. 瓜生清

    ○瓜生清君 私はまず、園田厚生大臣がたいへん公害問題について積極的な姿勢で対処されておることにつきまして、敬意を表したいと思います。どうか勇断をもって今後も公害対策についていろいろ努力されることを、この席をかりで要望しておきたいと思います。  そこで、議事進行に協力する意味から、私、五つの問題を一括して質問いたしますので、大臣並びに関係者から御答弁をいただきたいと思います。  まず、質問の第一点は、今回の二つの公害法案公害対策基本法実施法として提案されておるわけでありますが、これによって国民の健康保護という基本法が生かされておるとお考えになっておるのかどうか。すなわち大気汚染がなくなる、騒音がなくなるという御確信がおありなのかどうか、その点についてお伺いをしたいと思います。  第二点は、厚生省原案に見られました公害発生源はすべて許可制とするという大原則が、先ほど来各委員から指摘されておりますとおり、通産省なり建設省なり、あるいは運輸省などの反対で単なる届け出制に後退した内容となっておるわけであります。現行ばい煙規制法欠陥届け出制となっていて実効があがらない点にあったのでありますが、だからこそ、これを許可制に持っていこうというのが本法案の最大のねらいであったように、私は理解しておるわけであります。これを、あえて届け出制に後退させて、ほんとうにいま以上に実効があがる規制がやれるのか。くどいようですが、もう一度当局の所信を承っておきたいと思います。もし届け出制としても実効をあげ得るとするならば、具体的規制力はどういうところにあるのか。そして、その規制力は罰則をたてに強制することができるものなのかどうか、お示しを願いたいと思うのであります。  第三点としては、公害が特に深刻化している原因は、その一つの発生源である企業が公害防止のための投資を節約している点にあることは無視できない事実であろうと思います。こうした企業の公害防止対策の手ぬるさのために、国の力によって規制強化してほしいというのが被害者としての国民の率直な気持ちじゃないかと私は判断をしておるわけであります。こうした国民の期待を今回の公害法案はどうも裏切っておるとしか言いようがございませんが、これを当局側としてはどのように説明されるのか、お聞きしたいと思うのであります。  第四点は、公害発生が問題になるつど、被害者から聞かれる声は、公害発生源である企業の責任を厳しく追及してほしいという点であります。しかし、企業の側は科学的に一〇〇%立証されなければ責任をのがれようとする動きがとかく強くなりがちであります。そこで、公害に対するこうした姿勢の企業に向かって届け出だけでいい、もし公害発生したら原因究明に協力を要請するという程度のことでは、公害防止対策にならないと思うのであります。やはり都道府県知事などに、たとえば、ばい煙発生源施設の新増設について不許可措置がとれるようにするなど、思い切った規制強化を加えなければ、公害の絶滅は期することができないのじゃないかというふうに思います。少なくとも、そうした趣旨が盛り込まれていた厚生省原案の線にまで、せめて最小限にこの法案修正して戻すべきじゃないかと思いますが、その点について、どうお考えになるのか、お聞きしたいと思います。  最後に、この二つの法案をざっと読んで見まして、事国民の生命保全のためには公権力、すなわち公の権力を用いてでも公害防止するんだという精神は強くうかがえません。で、私は常々わが国公害行政の最大の欠陥は、国民のための総合行政という立場を失っているところにあるんじゃないかというふうにまあ思うわけです。すなわち、具体的に言えば、政府公害行政産業界の利益擁護に傾き過ぎて、企業の立場を優先さしてものを見過ぎている。もう一つは、現在の行政制度からくるセクショナリズムにあるんじゃないかというふうに思うのであります。で、政府公害対策を立てるにあたっては、どこかで強力に総合調整する必要があると思うのでありますが、現在の政府公害対策会議というのですか、それでもあまり実効があがっているようには思えません。そこで私は、公害対策というのは厚生省一本でいくのが一番望ましいのじゃないか、またそれが本筋ではないかというふうに考えます。厚生省中心となってイニシアチブをとって最終的に公害行政というものを一元化していくべきだというふうに考えるわけであります。そうでないと、今度のように各省の縄張りや権限争いが今後も繰り返されるとすれば、国民の期待はますますこの公害対策に対して薄れていきまして、それがひいては政治不信につながっていくというふうに考えるわけでありますが、公害行政一元化についてのお考えをお聞きしたいと思います。最後の点は大臣から御答弁をいただきたいというふうに考えます。  以上でございます。
  65. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいまの五つの御質問、まことに貴重な御意見でございますから、まずそれぞれ事務的な面を各省から御答弁いたしまして、最後に私から大臣として答弁を申し上げます。
  66. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) まず、この二法案で確信が持てるかということにつきましては、大気汚染防止法につきましては、まず第一に予防的な観点から地区の指定を考えております。それから次に、現在自動車排気ガスにつきましては大気汚染関係から取り上げられておりませんが、今回は大気汚染防止法で考えられたわけであります。それから排出基準につきましても、特別の地域につきましては排出基準を強く規制できるというようなことができるようになっております。それから緊急時におきましても、自主的に燃料規制等の計画を作成させまして、都道府県知事はそれに基づきまして企業に勧告ができる、こういう仕組みになっております。そのほか、いままで電気ガス事業法等につきましては、それぞれの法律でやっておりましたけれども、今回は緊急時につきましては、立ち入り検査もしくは報告の聴取等が行なわれておりまして、従来よりも改善が行なわれております。騒音につきましては、現在二十四の都道府県条例によって主として工場騒音等につきまして規制が行なわれておりますが、この法律では新たに建設騒音につきまして取り入れる。そのほか和解の仲介制度等を新しく取り入れる。また各地で問題になっております地域的な現象ではございますが、深夜騒音等につきまして積極的に規制いたしまして、地方公共団体を督励するというようなことができるようになっておりまして、十分この二法案で、従来大気騒音につきましていろいろ問題が起こっておりますことにつきまして、改善が行なわれると、かように考えております。許可制の問題につきましては、先ほどお話しいたしましたように、立地上の問題からなお検討すべき点があるということで、現行どおり届け出制をとっております。それから騒音につきましても、条例と大体歩調をあわせまして届け出制をとっておりますが、これにつきましては事前計画の変更命令もしくは事後の改善命令、それに罰則等もつけておりまして、十分な監督が行なわれております。  それから、企業側が公害防止についで努力が足りないんじゃないかということでございますが、この点は、公害基本法ができましてから企業の責任というものが重くなった点につきましては、各地を回ってみましてもずっと改善されておりますし、また公害防止事業団法等でいろいろな改善措置が考えられておりますので、こういう点は改善ができる、かように考えております。  それから、この法律で企業に対しての責任の追及度合いが届け出もしくは協力関係によってだけ行なわれて、公権力の程度が少ないではないか。公権力の強制力が少ないではないかという御指摘につきましては、私どもとしては、届け出もしくは協力等の規制措置によっても十分責任企業の協力を得て対策が確保される、かように思います。もしも、この法律の施行によりまして不十分な点につきましては、もちろん十分検討をいたしてまいりたい、かように考えております。  それから、各省間の調整の問題でございますが、公害は各方面にわたりまして、ほとんどの省にわたっております。まあこういう点を単一的に一つの省で扱うということにつきましては、いろいろ不十分な点も出てくることも考えられますので、現在の制度としては、公害対策会議中心とした各省間の連絡会議幹事会ということで運用が行なわれておりますが、たとえば騒音規制で申しますと、地方等への指導は、厚生省窓口が一本になりまして、混乱を生じないようにと、かように行政上の運用を考えておる次第でございます。
  67. 園田直

    国務大臣園田直君) 運輸省その他はないそうでございますから、私から申し上げます。  五つの御質問でございますが、この二つの法案で完全に公害が防げるか。私は完全に防げるとは、残念ながら考えておりません。したがいまして急いで基準の設定、大気騒音、水等に対する基準を設け、次には先般来から御報告申し上げておりまする各種法律案を整備をして、なるべく早く十分なる成果があげられるようにしたいと考えております。  なお、全般的な問題でございまするが、第一に、私が公害に対して考えておりますことは、いいたとえかどうかわかりませんが、野球のゴロみたいなものであって、たまを追っかけておってはなかなか追いつくことは困難でありまして、公害を救うということよりも、やはり公害を防ぐということが公害の第一の問題点でなければならぬと思います。それからすると、率直に私の意見を申し上げますると、やはり公害に対しては、ほかの法律案と違いまして、企業の計画を立てられるなり工場設置をされる際に、まず人命と健康というワク内でそういうものをされるように、企業も第一に、生産よりも先に生命と健康、そのワク内で生産を立てるんだというふうに考えていただかなければいかぬのであって、だとするならば、やはり公害関係法律案というものは、ただいま御指摘のとおりに、少し強めにやらなければ、抜け穴があるというようなことではいけないのではないか、こう考えておるわけでございまするが、ただいまのところは許可制ではなく、届け出制でそれぞれやっておりまするが、これはそれぞれ命令の変更であるとか、あるいは許可の取り消しであるとか、その他の方法を考えて、十分配慮していかなければならぬと考えております。  次には、さらにそれができましたら、一番大事なことは、一つの公害防止計画というものを早く策定しなければならぬので、これは逐次必要なものからつくっておりまする関係上、この策定がおくれております。ほんとうをいうと、計画を策定して、それに基づいて法律案をお願いするのが当然であると私は反省はいたしておりまするが、現実の社会の要求、現実各省の要求が並行してやることを余儀なくさしておりますので、これはひとつ早急に策定をして御報告をしたい、こう考えております。  次に、企業の公害防止のための投資についてでございまするが、これは非常に御貴重な意見であって、私はこの点について考えたいと思いますことは、各省関係をいたしまして――大私国務臣でございまするから、個々の問題については申し上げるわけにまいりませんけれども、やはり一番大事なことは、一元化ということよりも、公害に対する政府の姿勢というものがまちまちであるということを政府みずからが反省しなければならぬ。ということは、やはり通産省のお方は企業の自山育成ということを重点に考えられ、そしてその付随物として公害を考えられておる。たとえば、しろうとに煙突のことがわかるかということを、おっしゃらないけれども、そういう気持ちがあるのじゃないか。運輸省のほうはまた運輸行政の中から、公害というものを考えられておる。たとえて言えば、私から推測すれば、自動車排気ガス規制厚生大臣がやるということは、自動車の構造については運輸大臣責任を持っているのだし、そういうことに口を出してはいけないということでございますが、私は、自動車の構造に口を入れたり、あるいは煙突の数に口を入れたりしたいという考えがあるのではなくて、ただ人間の生命と健康のために一切の企業があるのでありますから――一切の行政もあるのでありますから、やはり生命と健康を守るという一つのワクだけは、私持たしていただいて、そのワク内で企業の自由がある、あるいは行政の自由があるというふうに、政府公害に対する姿勢をもう少し統一をして、徹底してきめる。それが一番大事な問題であると私は考えておるわけであります。率直に申し上げます。  そこで、この防止問題でございますが、今度私がイタイイタイ病に対して、公害病と認定をいたしましたが、これについて率直に、中小企業、零細企業の方は、ああいうふうに川から何から一切やられると、われわれは商売できないじゃないかという不安があるようであり、私のところにも手紙が参っております。私は、中小企業や零細企業はどうなってもいいと、こう考えているわけでは決してございません。やはり第一に企業の繁栄、中小企業の繁栄というものは、やはり間接には公害が十分防止できるかどうか、救済ができるかということにつながっておる。しかしながら、この点をはっきり分けて考えないと、いかなる理由にもかかわらず、生命と健康を守り、公害防止だけはきちっとやる。その中で生産に関係のない公害防止施設をすることは、これはまあ企業側から言えば大事なことではあるが、生産に関係のない余分なことである、あるいはまた、公害病の認定をされたならば、小さい企業というものは痛手を受ける。そういう方面については、企業の育成強化責任を持っておられる通産大臣責任を持って国家から低利長期の資金をやる、中小企業、零細企業に公害防止施設をしてやるとか、あるいは倒れそうな企業には何らか便法を講じてやるとか、こういうふうにはっきり分担を分けてやらなければならぬことであって、したがって、そういう面から、先般公害防止事業団法の一部改正をお願いしまして、かっこうだけはつけたわけでありまするが、私は、なわ張り等は考えておりませんので、そのような公害防止施設であるとか、あるいはその他事故の問題については、これは通産省のほうに、私のほうからむしろ業務はお願いしてもよろしい、譲ってもよろしい、こう考えておるわけでございまして、この公害防止施策に対する投資、これに対してはやはり政府が通産行政あるいは運輸行政のほうからお考えいただき、私は生命を守るほうからいく。そこで、やはり生命が第一で、企業は二番目である、こういうふうに考えるべきである。このように各省とも話し合い、逐次委員各位の御指摘に従ってやっていく考えでございます。  次に、企業責任の追及ということばが出ましたが、中には非常に紳士的な企業もおられるし、それから事件が起こったらすぐ浄水設備等をやっていただく企業家もございまするが、中にはおれの責任じゃないと、ほうりっぱなしでおられる企業家もおられるわけでありまして、この点はやはり企業の繁栄というものはやはり人間のしあわせのために貢献するのだ。しかも企業というものは、人々から喜ばれるような企業をやって、はじめて繁栄するのだという、企業道徳といいますか、企業の倫理というもの、こういうものをやはり政府はそれぞれお願いをし、指導していかなきゃならぬのであって、その歯どめというものは――お聞きにならなければという一本の公権の発動――そうおっしゃいましたが、そういうものは今後先生のおっしゃったように考えていくべきであると、私は個人としては考えているわけでございます。  最後に、一元化の問題でございますが、この行政一元化ということは委員各位からしばしば御指摘を受けて大事なことではございまするが、実際問題としては今後社会機構なり企業というものは相当複雑になってまいりますので、これを一本にまとめることは実際にはなかなか、おしかりを受けますが、困難であると思いまするが、御意見のとおりに公害の最終的な問題だけはやはり一本化しなきゃならぬと、私もさように考えております。
  68. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 両案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。     ―――――――――――――
  69. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) この際、委員の異動について報告いたします。  本日、小平芳平君が委員を辞任され、その補欠として矢追秀彦君が選任されました。     ―――――――――――――
  70. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 産業公害及び交通対策樹立に関する調査を議題とし、産業公害対策に関する件について調査を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  71. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私が昨年の五月二十六日にこの委員会でイタイイタイ病を取り上げまして以来、約一年で、今回厚生省から大臣の勇断によりましてイタイイタイ病は公害であると、このように断定をされまして、まことにけっこうであると私も感謝をいたしております。しかしながらこの際、はっきりしておきたい問題点が幾つかございますので、その点を時間の許す限りお伺いをして、今後の対策の問題等を含めまして質問をさしていただきたいと思います。  まず最初に、このイタイイタイ病を公害である、このようにきめられました根拠につきましてお伺いいたしたい。
  72. 園田直

    国務大臣園田直君) 答弁します前に一言申し上げておきますが、ただいま委員各位から御激励のことばをちょうだいいたしましたが、これはすでに御承知のとおりに、私の勇断では断じてございません。これは委員各位の長期にわたる御激励と、それから社会のいままで特に押えられておった被害者の強い意見がこうなったものであるということでございまするから、この点申し上げ、並びに今後とも御支持をお願い申し上げます。  第一の質問の、どういうふうなことでこういうふうになったか。御承知のとおりに四カ年間にわたってこの実態を調査してまいったわけでございます。そこで、私のほうで委託をしました研究班から最終的な調査の結果を受けましたが、この結果は、御案内のとおりに事実は事実、推定は推定、わからないものはわからないと、きわめて率直に学問的な報告でございました。次に、この研究班に加わりました委員はそれぞれの権威者でありまして、この分析並びにこの結果は世界においても例なきものでございまするが、学者その他の意見を聞いても、この報告というものは世界的レベルと判断してもよろしい、こういうことでございます。  そこで、この委員会の結論は、第一は、このイタイイタイ病というものがカドミウムの慢性中毒に、妊娠とか、あるいはからだが弱ったとかいうことが誘因となって発生したということ。  二番目には、原因の物質であるカドミウムが自然界に微量に存在するものを除いては、神通川上流の神岡鉱業所の事業活動に伴って排出されたもの以外には見当たらない。  三番目には、カドミウムは農作物、飲料水を介して体内に吸収され、長年月にわたって蓄積されたものと見られるというのが、大体この報告の結論の木筋であります。  したがいまして、私は、これから判断をいたしまして、この研究においてなお不十分なものもございます。その不十分であろうというのは、鉱業所から出された排水の中に含まれたこの物質が、どのような経路でどのように体内に入り、どのように蓄積され、人間の許容量が幾らであるかというような点については、まだ研究を続ける必要がありますけれども、しかし公害というものがそのように証拠が十分あがらなければ公害と認定できないということになりますと、ほとんど公害というものは存在しない。たとえば企業のほうで事件が起こったらすぐ浄水設備をやって、そうしてその浄水設備をやったあと河川の分析をやったり、あるいはその他の分析をやったといたしましても、なかなか困難でありましょうし、あるいはまた、毒にいたしましてもその蓄積作用、相乗作用というものば機械的、物理的なものだけでは分析できないものもあるわけでございますから、これだけの資料がそろい、この研究班以外に各方面の専門家の意見も聞き、あるいは新聞等に載せられるいろいろな意見等も聞きまして、私はこれを公害による病であると判定するのは間違いでないと、このように慎重に考えた結果、公害病気だと判定したわけでございます。   〔委員長退席、理事山内一郎君着席〕
  73. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 それでは、いまの理由はわかりましたが、今後この根拠となるべき研究レポートにいろいろな異論を差しはさむような人が出てきた場合、その根拠がぐらつくというようなこともなきにしもあらずだと思うのです。というのは、富山県知事が公害にかかわる疾患と厚生省では言っている、したがって公害と断定したのではないというふうな発言をしたということは、私も向こうの地元の人からも聞きました。また新聞でも見ました。そういう点がちょっと気になりますので質問するのですが、この知事の発言等をどのようにお考えになっているか。
  74. 園田直

    国務大臣園田直君) 実は、きのうテレビでございますが、県の副知事さんが、厚生大臣は本事件に関する研究はこれで打ち切ると言われたが、今後も続けてもらいたい、こういう御意見がありましたので、私は次のように答弁をいたしました。私が調査を打ち切るといったのは、この事件が公害であるかどうかということの調査はこれで打ち切る、と申しますことは、いまおっしゃいましたとおりに、いままでいろいろ経緯がありまして、いろいろな公害厚生省意見とどこか食い違ったり、あるいは結論が出てからまたどうなったりということもありますから、不安を与えてはいけませんので、各省と連絡をし、政府としての統一見解を出して私はやったわけでございまして、本事件の私の先日の発表は、もうこれで打ち切って、それを動かすことはないという意味で打ち切ると言ったわけで、ただ予防の問題、治療の問題、あるいはどういう経路で入ったかという、この研究については依然として続行するわけであります。しかしながら、私が公害と認定いたしましたことは、これでゆるがすことは断じてございません。
  75. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 県知事のこれに対する考えです……。
  76. 橋本道夫

    説明員橋本道夫君) いま先生からお話のございました公害にかかわる疾患ということであって、公害病ではないということについての話でございますが、この点につきまして、県当局の企画部長さんと実は私こまかに電話でお話をいたしました。公害にかかわる疾患という表現は、これは公害対策基本法の中で公害にかかわる被害の救済ということで扱っております。あれは公害対策基本法でございまして、損害賠償の法律ではございません。そういうことでございまして、公害にかかわる疾患ということを申したわけでございます。もう一つは、この公害病であるかいなかということにつきましては、現地で論議があったようでございますが、公式のことばとして公害病ということは公文書上存在しておりません。私どもは、公害にかかわる疾患という表現で言っておりまして、一般の人には公害にかかわるというのでは、わからないのではなかろうかというので、普通の人には公害病といえばわかりやすいであろうということで、そういうふうな意味として解釈願いたいということでございまして、県のほうでも、それに対してそれ以上の異論があったというのではございません。法律条文を引いたことばに対して、少し解釈的に違った受け取り方をされたやに一般に印象を与えておったようでございますが、両者で話し合った結果、大きな違いがあってそのような違いが生じたとは考えておりません。
  77. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、この研究レポートの結論のところでありますけれども、第四番目のところです。これがやはり私は一番問題になるのではないかと思いますが、二十ページの終わりから三行目からですが、「ただし同鉱業所関係以外にも低濃度ながら自然界に由来すると考えられるカドミウムが存在することは事実であり、したがって同鉱業所関係の寄与度を現在計量的に確言することはできない。」と、その寄与度という問題ですが、公害という問題になってきた場合、はたしてその寄与度ということをはかることが是か否かという問題。というのは、この場合でありますと、カドミウムを流していなければあの病気は起こらなかった。したがって流しておるのだから、この病気は完全に、いろいろな要因はあったとしても、公害という面から考えれば、あるいはオール・オア・ナッシングというような考え方も成立すると思うのです。たとえばこのカドミウムだけでなしに、大気汚染にしても、その他の水質にしても。したがって疑わしきは罰せずでなしに、疑わしきを罰するということになる。その点はむずかしい問題になると思うのですが、はたして今回の場合、寄与度ということをやはり追及する必要があるかどうか。いまに、これは結局裁判の問題になると思いますけれども、何んでもかんでも裁判、裁判といっておったのでは、時間もかかりますし、やはり今後公害という問題について、はたしてその要因となるべきものがどれくらいその病気あるいはその被害関係しているかということは、計量的に出していくべきかどうか。そういう問題に対して、厚生省としてはどういうふうにお考えになっておるか。
  78. 橋本道夫

    説明員橋本道夫君) いま先生の御指摘になりました第四項につきましては、カドミウムの濃度に対する寄与度ということでございまして、これをストレートに公害に対する寄与度という表現では用いておりません。そういうことで学問的に数十年昔にさかのぼって何%出したかということを、学者に正直に言えと言われれば、学者としては確言できないことが学問的にはきわめて良心的なことだと私ども思っております。  それから、おっしゃいました寄与度ということを、どう考えるかということでございますが、どういう割り切り方をするかという立場がいろいろありまして、それによっていろいろ論議はあろうかというふうに考えております。私どもは、寄与度というものは数字では割り切って言えと言われれば出るものがあるかもしれませんが、しんしゃくすべき事項であろう。しんしゃくということばで表現されるのが最も適切ではないかと思っております。
  79. 園田直

    国務大臣園田直君) 今後の問題もありますから、いまの点は私の考え方を申し上げておきたいと思います。  いまの問題については学問的に今後解明する問題であるとは存じますが、私は公害病に認定する場合には、疑わしきは罰せずなどとは考えておりませんが、少なくとも専門の研究をやり、その研究の調査を聞き、各方面の意見を聞いて、そして大体これに間違いがないといういろいろな推定する資料が完全にそろえば、公害と私は認定すべきものである。そこまでわからなければ認定をしてはならぬということではない、このように私は考えております。すでにカドミウムにつきましても、これは神通川ばかりでなくて、ありとあらゆるところに微量は存在するわけであります。ただ神通川は、多年の神岡鉱業所の水によってその量がやや多いかもわからない。しかしだれが見てもやはり、そこから出てきたものによって存在したものであるそれと、自然に存在するものであるその量が若干変動があっても、これは鉱業所から排水されたものに間違いないという認定をくだすことには私は異論がない、こういうふうに考えております。
  80. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 公害課長の話によりますと、今後の公害の問題でもやはりしんしゃくということで、そのケース、ケースに応じて、大体は計量的には無理だから、そこでは話し合いをもってきめていく、こういうふうに受け取れると思うのですが、そう解してよろしいですか。
  81. 橋本道夫

    説明員橋本道夫君) いま大臣のおっしゃいました公害と認めるか認めないかという問題と、その問題につきまして一体相手に賠償の責任の問題として寄与度を考えるか、あるいはその事象に対する貢献度を考えるかということによって、数量的な問題として割り切りを許すか許さないかの問題だけで、一般的には何メートル、何センチあるいは何%ということよりも、しんしゃくすべき事項である、しんしゃくということばで表現されるのが最も適切な事項であるというふうに、私ども行政的には考えております。
  82. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 それから次のページにあります「過去において流出した」云々の項でありますが、「かなりの量にのぼるものと推定されるが、その正確な流出状況を現時点において追求することは困難である。」、これは確かにこのとおりだと思います。ただ私はせっかくこれだけ時間もかけておやりになったのですから、いまさらもう一回やり直せということも言えませんので、今後のために申し上げます。   〔理事山内一郎君退席、委員長着席〕 また、もしできればやっていただきたいと思いますが、推定がはたして――研究班の研究は少し私は弱かったと思うのです。というのは、地質学の先生が非常に少ないことが一つ、お医者さんの場合はあまりこういうことはわからないのです。だから、できますれば、あの鹿間ダム等の分析をもっとやれば出たのではないか。で、過去に相当生産をしておりますから、会社側でも過去の生産量を良心的に明らかにしてもらって、そのときはカドミウムが検出されておりませんでしたからわかりませんけれども、鉱石はあると思いますから、その鉱石の中にあるカドミウムはどれくらいか、あるいはそれが生産されて捨てられた状態で、どのくらいのものが流されたということはかなり推定されると思いますし、また、あの神通川の牛が首用水、あのあたりにたまっております。土地の状態でも、私は地質学的にはどれくらいあとでたまったものかということが出ると思います。かなり出していただいておりますけれども、そういう点でもう少し、完ぺきな過去の状態を再現することは不可能であったにせよ、もう少しその点をやったという実績があれば、私はもう少し説得力があったと思う。もちろん大臣公害と認定されたことは、まことにけっこうなんですけれども、やはり飛躍であるという議論も出る余地がなきにしもあらず、また今度は、企業の側に立った場合、責任をのがれる一つの材料にならないでもないわけです。だからその点で、絶対できないものであればやむを得ませんけれども、もう少し私は、その点の過去の追跡を、ただ無理だとしないで、この程度までやった、現在の科学の粋を集めてこれだけやったけれども、最終的には出なかった、だから困難であるという点を、私は入れていただければ非常によかったと思うのですよ。そういう点を思いますし、また今後その過去の状態をこれ以上探るおつもりであるかどうか、これで一応この点については打ち切られて、あくまでも学問的な面だけに残されるかどうか、この点もあわせてお伺いしたい。
  83. 橋本道夫

    説明員橋本道夫君) 重松調査班の報告の中では、昭和十三年、昭和二十年、昭和三十一年、この三つは公式の記録に堆積場が決壊と報告されております。そのうちで、量的な推定、これも非常に甘い量的な推定でございましょうけれども昭和二十年のときには四十万立米、昭和三十一年のときは一万五千立米ということでございまして、四十万立米ということを現在の状況で換算しますれば、十数年分のカドミウムの量に該当するのではなかろうかというようなものが出たのではないだろうかというような推定に基づいた、ほぼ見当はある程度あり得るかと思いますが、この点は、どういうためにこの堆積場から出たのかということが、自然災害等によるものでこれは大体出ておりますので、そこらの問題につきましては、やはり鉱業法との関連も非常にあることでございますし、その点につきまして現在科学技術庁の特別研究調査班とか、厚生省通産省両方でいたしておりまして研究の中にある程度の手がかりがあるものもあるかと思いますが、あくまでも、これは予防のための研究でございまして、文献的な価値を有するものがあるかもしれないというような程度に考えております。それ以上追求する考えは厚生省としてはございません。
  84. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いまの質問に関連して、通産省どうですか。
  85. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 問題は、原因物質としてのカドミウムが神岡鉱業所から排出されたという事実が存在いたしまする以上、相当部分を排出している神岡鉱業所としての責任ということについては免れないものと考えます。しかしながら、ただいまいろいろ御議論がございましたように、その程度という問題につきましては今後とも裁判所におきまして最終的な判断を下されるのを待つほかはないかと考えております。
  86. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま裁判の問題が出ましたので、ちょっと問題は変わりますけれども、今後の公害解決ですね、やはりすべて裁判待ちということは、私は好ましくない。厚生省として研究をして、これが因果関係が明らかになって、公害という決定が出た。じゃ今度はそれをどこかの機関がどれくらいこれは企業に責任があるか、それを追及する機関というのは、結局いま裁判でやるしかない。ちょうど物価問題等の公正取引委員会、ああいうふうな、何か公害裁判所的な機関、これが私は必要じゃないかと思う。そこである程度かなりの研究機関を持ちまして――それはどっかに命じてもいいわけですけれども、そこで企業責任の問題を出す。それを今度は通産省が受けて、企業に対して賠償を請求していく。やはりこういう第三者的な、いわゆる冷静な裁判所的なそういう機関、これを私はぜひ今後の問題として御検討されたほうがいいのじゃないか。公害基本法、それからいろいろの法律が出てきておりますけれども、そういう点の設定が私はちょっと弱いのじゃないかと思うんですが、この点大臣のお考えを伺いたい。
  87. 園田直

    国務大臣園田直君) 御指摘のとおりでございまして、先ほど申し上げました紛争処理委員会を早くつくりたいというのは、そういう意味でございます。
  88. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 時間があまりありませんので、いま問題になっておりますお米の問題に入りますけれども、この間厚生省としては心配ない、このように言われましたけれども、実はきのうのテレビで、研究班の一員である石崎教授が、一〇〇PPM濃度の水でカドミウムをまぜたえさをやってもあまり変化がなかった。だから一PPMではだいじょうぶだ、こういうふうな発言があったのですけれども、これは私ちょっと問題じゃないかと思うんですが、これはどうお考えでしょうか。
  89. 橋本道夫

    説明員橋本道夫君) いま先生のお話がございました昨日のテレビの番組は、私は実は見ておりませんが、きょうのあさも、かようなことについての御意見を別の方面から承りました。石崎先生が論文としてお書きになって、公式に発表されている数字は一PPMでございます。一〇〇PPMという数字がどこで出てきたかということは、私どもその点を存じません。その数字は、石崎先生が三〇〇PPMの塩化カドミウムの水溶液をネズミのえさにまぜまして、そしてある程度栄養をダウンさせた形で実験したときに、イタイイタイ病の実験的な再現に非常によく当てはまってくるような所見を得たということについての研究でございまして、これが約半年でございましたか、一年に若干足らない期間で発生しております。そういうことで、石崎先生が公式に学界の文書にお書きになりました一PPMという数字を、富山県もその数字を一つのたよりにしております。私どもも、その数字を一つのたよりにして、現在使用しております。そういうことで厚生省といたしましては、石崎教授が公式の学界に発表された一PPM以下なら、そういうことは心配ないということな中心にしておりますので、一〇〇PPMという数字は毛頭念頭に置いておりません。
  90. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 もちろんイタイイタイ病は、結局どうして起こったかということになると、これまた問題になりますので、そのイタイイタイ病発生患者がやはり戦時中食べておった米の中のカドミウムは一PPM以下であったと思うのですが、そうなりますと一PPM以下の米を食べても起こらないという議論に相反してくるわけです。もちろん土壌にたまった水を飲んだのが大きな原因だと思います。米だけではないと思います。もし一PPMのものがだいじょうぶだということが厚生省で取り上げられているとなると、今後の裁判の問題で影響が出てこないか、ちょっと心配ですが、その点いかがでしょうか。
  91. 橋本道夫

    説明員橋本道夫君) 私どもは、行政立場で、現在まで確認された科学的な見解を活用して申しておりまして、裁判について特殊な考慮を払って行政的な見解を申し述べているものではございません。いまおっしゃいました一PPMという数字でございますが、これはそこの米の中のカドミウムの濃度が、サンプルが非常に少のうございまして、完全に類推するには若干問題があると思います。水口と、たんぼの中央と、水の出る所、それだけの、たんぼと米についての測定数値がございまして、これを全部いろいろ統計的に処理をしてみまして、もととしまして中央値となりますのが〇・七でございます。平均値は〇・八、あるいはたんぼの中央のものを全部並べますと一PPMを若干こえる、こういう数字でございます。これは玄米でございまして、その玄米をさらに精白をいたしますと、農林省のほうとも相談いたしましたが、約半分以下になるというわけであります。この点につきましては、また小林先生が学界に発表されている数字を見ますと、ぬかの中には十倍ぐらいの濃度が出ているということでございまして、本日朝、小林先生からお話を伺いましたが、私どもは大体半分以下になるものと、こういうぐあいに考えております。そうなりますと、〇・三ないし〇・四ということになってくるわけでございます。そういう点から見まして一PPMからかなり下回るものになってくると、かように考えます。もちろん先生の御指摘になりましたように、私どもは配給米については心配はないということでございまして、大阪、愛知県、そういうところに対して、農林省と文書を交換をいたしまして、現地に対しましてもそれぞれの処置をすることになると考えておりますが、現地の人が食べておる米につきましては、イタイイタイ病は、あのようなひどいものは起こらないと、私どもは確信しておりますが、もっともっと予防的な段階において注意をする必要がある。しかし、その点につきまして現在までの学問的な所見は、明らかにされておりません。そういう点におきまして、今後の健康管理を農林省の関係ともよく両者話し合いまして、漸次その量を減らしていくという形の努力は、なお、していこうじゃないかということで、農林省の方面でも、非常に積極的にそのようなことについての検討を始めていただいておるということでございます。
  92. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 こういう問題もありますので、いねのカドミウムの許容量をきめるべきだと思いますが、それに対する研究を進められて、それをきめられる方針であるかどうか、お伺いしたい。
  93. 橋本道夫

    説明員橋本道夫君) 許容量はどうきめるかという問題でございますが、この、人が何十年となく食べた量でございまして、何十年食べてだいじょうぶかという実験を完全にすることになりますと、現在の医学では非常にむずかしゅうございます。そういうことで、私どもは従来学界に発表されました数字を一応暫定的に使いながら、その判断をいたしたいところでございますが、これはやはりいいかげんにしておく問題ではございませんので、それとは別に、純粋な研究的な立場で、今後カドミウム汚染ということにつきまして、農業関係、土壌関係の人ともよく連絡をとりながら、権威ある基準ができるというような形に、かなりの年月を経てその研究はいたしていきたい、そのように考えております。
  94. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 それともう一つ、これにあわせて問題になる水質基準ですが、この問題についてはどうですか。
  95. 橋本道夫

    説明員橋本道夫君) 水質基準につきましては、現在のところ水質保全法の関係では、カドミウムに関係した水質基準はございません。その関連の水域がなかったということも一つの原因でございます。御指摘を受けております飲料水の水質基準につきましては、私ども水道課とも現在話をいたしておりまして、飲料水についてのカドミウムの基準を指導基準としてまず設けようということを検討いたしております。その点につきましては、アメリカの公衆衛生サービスの飲料水の水質基準というのがございます。これは〇・〇一一PPMであります。もう一つWHOが出しております基準は〇・〇〇五PPMということになっております。正しい基準をきめまして、全国どこでもはかれるようにしなければならないということもございますので、まず指導基準として打ち出していく。これは、はっきりした根拠のある基準にしていきたいということで、水道課とも意見の一致を見ております。
  96. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 対策の問題に入りますが、いろいろやっていただい七もまいりましたし、これからもやっていくと思いますが、特に早急に必要なことは、一つは水道と、もう一つは客土の問題であると思います。この点については、どうですか。
  97. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 水道の点につきましては、現在、簡易水道を設置するための適当な水源についての調査が進むよういたしておりますけれども、四十三年度からこの設置に着手するように取り計りたいと思います。なお、この点につきまして補助率等につきましても、財政当局と打ち合わせまして優遇措置を考えたい、かように考えております。
  98. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 それから、一つ伺っておきたいのですが、いままで神岡鉱業所が出しておった年間二百五十万の補償金ですが、これは公害となったら今後どうなっていくか、この点も。
  99. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 御承知のように、地元におきまして、神通川公害対策委員会というものが設けられております。昭和三十年来五年ごとの協定をもちまして、神岡鉱業所の操業に基づく神通川流域一帯の農作物の減収その他一切の影響に対する補償料として毎年二百五十万円程度の金額を支出いたしてきております。今回の米の問題は、今後農林省もしくは厚生省の御判断にまつところが多いわけでありますが、それがこの基本協定との関係でいかに扱われるかという点につきましては、今後の情勢の推移によりまして、地元においてさらに検討をしていただく必要があろうかと考えております。
  100. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 これで質問を終わりますが、最後に大臣にお伺いしたいのですが、今回公害ときまりました、また企業責任通産省のほうも明らかであるという態度をとられまして、解決は円満に、しかも納得のいくような方法で行なわれると私は確信しておりますが、ぜひお願いしたいことは、あの地元の患者さん、あの人たちのなまの声をひとつ厚生省また通産省もよく聞いていただきたい。ともすれば、こういう問題が起きた場合、一部のいろいろな各種団体とかいろいろな人たちの運動で――こういう人たちの、一つの何かの目的のために、ほんとうのその地元の人たちの素朴な意見というものが埋没してしまうおそれが、ときたまあるわけです。そういうわけで、特にあの辺の人たちは、大臣もお会いになって御存じのように、非常に純朴な――大臣に会っただけでも感激して涙を流すような、そういう人たちですから、それだけにあの人たちのいままでの苦しみ、また、ここまできて非常に希望を持っているわけですから、ほんとうにひとつ円満な解決をしていただきたい。それが、ともすれば企業の非情な力によって動かされたり、また各省の対立等がうまく調整ができなかったり、そういうことのために――日本の人口からいえばわずかな数でありますけれども、あの人たちのためにいい解決がされるまで、どうかがんばっていただきたいと思うわけです。たとえば、大臣がかわられましても永久にやっていく、せっかくあれだけの感激的なお話をされたわけですから、ぜひお願いしたいと思います。その点について、どうか最後に大臣の決意を披瀝していただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  101. 園田直

    国務大臣園田直君) あの地区の直接被害者の方々の声をただいままで聞いておりますが、今後とも十分直接に、私なり役所から人を派遣して承って、一人一人の患者のお気持ちが納得できるようにやっていきたいと思います。なおまた、この問題の円満な解決につきましては、地方の方々の純朴なお気持ち、それからここの会社はほかの会社に比べてわりに良心的なところがある、こう見ておりますので通産大臣とも相談をしておりますので、これは各省とも意見が一致しておりますから、円満な解決をしたいと思っております。  なお、医療につきましても、現地の方が心配しておられるのは、一つは病気になるまでの、イタイイタイ病になるのではなかろうかという、要注意者と申しますか、そういう方々の診断とか治療についても特別な便法を講ずるように、ただいま検討中でございますので、その決意をもってやります。
  102. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後零時三十五分散会      ―――――・―――――