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1968-05-15 第58回国会 参議院 建設委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月十五日(水曜日)    午後一時十六分開会     —————————————   委員異動  五月十四日    辞任          補欠選任     内田 芳郎君      中山 福藏君  五月十五日    辞任          補欠選任     中山 福藏君      内田 芳郎君     鈴木  強君      田中  一君     和泉  覚君      中尾 辰義君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         藤田  進君     理 事                 稲浦 鹿藏君                 内田 芳郎君                 山内 一郎君                 大河原一次君     委員                 石井  桂君                 大森 久司君                 小山邦太郎君                 中津井 真君                 村上 春藏君                 沢田 政治君                 瀬谷 英行君                 中尾 辰義君                 片山 武夫君                 春日 正一君                 相澤 重明君    国務大臣        建 設 大 臣  保利  茂君    政府委員        建設政務次官   仮谷 忠男君        建設大臣官房長  志村 清一君        建設省計画局長  川島  博君        建設省都市局長  竹内 藤男君    事務局側        常任委員会専門        員        中島  博君    参考人        横 浜 市 長  飛鳥田一雄君        全国農業会議所        専務理事     池田  斉君        東京大学教授   井上  孝君        全日本農民組合        中央常任委員   梅原  昭君        経済団体連合会        専務理事     古藤利久三君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○都市計画法案(第五十五回国会内閣提出、第五  十八回国会衆議院送付) ○都市計画法施行法案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 藤田進

    委員長藤田進君) ただいまから建設委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。  昨十四日、内田芳郎君が委員辞任され、その補欠として中山福藏君が選任されました。  また、本日、中山福藏君及び鈴木強君が委員辞任され、その補欠として内田芳郎君及び田中一君が選任されました。     —————————————
  3. 藤田進

    委員長藤田進君) 次に、理事補欠互選についておはかりいたします。  先ほど報告いたしました内田君の委員異動に伴い、理事が一名欠員となっております。この際、その補欠互選を行ないたいと存じます。互選は投票の方法によらないで、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事内田芳郎君を指名いたします。     —————————————
  5. 藤田進

    委員長藤田進君) 都市計画法案及び都市計画法施行法案を一括して議題とし、参考人より意見を聴取し、質疑を行ないます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず、特に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。ただいま本委員会におきまして審査中の両法案につきまして、忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じております。  委員会の進め方といたしましては、まず、最初に参考人方々からお一人約十五分ないし二十分程度で御意見のお述べをいただきまして、その後委員質疑にお答えいただきたいと存じます。  まず、飛鳥田参考人からお願いいたします。
  6. 飛鳥田一雄

    参考人飛鳥田一雄君) 御紹介いただきました飛鳥田でございます。現実都市計画地域で行なっております立場の者として意見を述ぶることをお許しをいただきましたことを、光栄だと存ずる次第であります。  私たち都市計画を行なってまいります場合に、まず第一にこの都市はだれのためのものであるか、こういうことを考えざるを得ないのであります。すなわち、都市がもしそこに住む大多数の勤労市民都市であるとするならば、そうした形で都市計画を立てていかなければならない、こう私たちは思っております。すなわち都市計画の主体は市役所であったり、あるいは県であったり、あるいは国であったりするのではなしに、民衆あるいは勤労市民でなければならない、こう思っております。しかし、そうは思いましても、現実にそのことを具体化し、執行をしてまいりますものは、市であり、県であり、国である、こういう立場からいろいろな苦しみを持つのであります。  そうした意味横浜がいま一番苦しんでおりますものは、公害地帯における人口流入であります。無計画人口流入でありまして、いわゆる都市スプロールの弊害というものに耐えかねているというのが実情であります。この都市スプロールがいわゆる蚕食という形で入ってまいりますために、都市がこれに投じなければならない公共投資、その他が非常に二重になり三重になり、効率的でない、同時にまたその公共投資のための負担に耐えかねるという実情であります。ごく端的に申し上げれば、明治以来百年間に横浜市を形成してまいりました都心部、この都心部の犠牲において郊外部公共投資を行なうという形をさえとらなければならない、こういう点で私たちスプロールに対して非常な苦しみを持たざるを得ない。そうしてそのことがただ公共投資を二重にも三重にも投入するというだけにとどまらず、結局、アトランダムに自由に入ってまいりますものが、結果としてはその一人一人の便宜ではあっても、全体の勤労市民便宜にはならない、こういうことを感ぜざるを得ません。そうした意味で少なくとも一つ原則を示し、国なり、市なり、県なりがこういう形でやっていけるという法案ができますことについては、私たちとしては歓迎をいたしたい、こう思っております。  なかんづく、この法案を拝見いたしまして、一つのその方向として私たち喜びを感じますことは、開発許可制度創設であります。これは法案を拝見いたしておりますと、いろいろな点で抜け道がございますし、問題点がたくさん残ります。しかし、一元的に開発許可の権限を市という市民の事務所に与えていく、こういうことは一つ前進であろう、こう私たちは思いますし、同時にこのことがスプロール防止に何らかの寄与をするであろう、こう存じます。  ちょっと付言をいたしますが、開発についての許可を市あるいは政令指定都市に与えつつ、計画そのもの、その地域指定等について関与ができない、あるいはその意見を聞くという程度であって、許可権県段階に上がってしまうというのは、どう考えてみても私には解せない点でありますが、しかしいずれにもせよ、そういう幾つかの問題を含みつつ、開発許可制度が一元化されていくということについて、方向としては私は賛成をいたしたい、こう考えるのであります。同時にまた、市街化区域市街化調整区域区分されていくという思想それ自身についても、一つ前進として評価をいたしたい、こう私たち考えています。もちろん、現実にこれをどう適用していくかという問題になりますと、それはたいへんな問題を生みます。したがって、この運用について、この地域指定について、知事段階指定権がありますことについては、私たちもどうも解しかねる。先ほど申し上げておりますように、この都市市民のものである以上、市民がこれを決定をする。もちろん、市民一人一人が決定はできませんけれども、その代表者としての市議会なりあるいは市長なりがこれを決定する、ということでなければ困るのではないだろうか。ことに、その区分によってある地域は不満を持ち、ある地域は非常な喜びを感ずるというようないろいろな利害がふくそういたしてまいります。この利害ふくそうに対立をするものを知事指定という形で問題を解決していいだろうか、こういうことを私は感じますが、しかしいずれにもせよ、方向としては市街化区域市街化調整区域というものをきめていくという方法は、都市計画としては少なくとも歓迎をすべき方向であろう、こう私は思っております。したがって、運用というものをどうするか、このことについてお考えをいただきながら、しかし、これはこれとして、一歩前進であると考えていいと思います。  さらに、この法案の中で私たちが注目をいたしたいのは、土地基金創設であります。スプロール防止をいたしますためにもあるいは公共用地を確保いたしますためにも、少なくとも土地基金というものを考えていただくことは当然であります。むしろ、もっとさかのぼって土地制度というものについてもっと基本的な考え方を持っていただきたい、こういう希望を私たちは持ちます。しかし、その土地制度について基本的な方向を確立し得ないとするならば、とりあえずの措置としての土地基金制度をつくっていただくということは、われわれにとってかなり大きな力となるだろう、こう私たちは存じます。  これによってスプロールをある程度防止するという具体的な力を私たちは持ち得る、こう信じております。しかし、そうは申しましても、この土地基金制度というものがどう財政的に裏づけられ、どう私たち運用する力を持ち得るかということになりますと、この法案を拝見いたしております限りわからないのであります。いやむしろお先まつ暗という感じになるのであります。まあいままで、はなはだ申し上げにくいことでありますが、スローガンあるいは趣旨としてはかなりりっぱな趣旨を立てながら、いざ実行の部分にまいりますと、くるっとひっくり返って妙な運用が行なわれて、現実運用と法の精神というものとはうらはらになっているという事例を、私たちはたくさん経験いたしております。こういう点で、特に私は土地基金制度創設せられるについて、もう少し現実執行をしていく私たち安心感が与えられるような御示唆をいただきたい。法案の中にそこまでおきめを願えないとしても、議員皆さん方にお考えをいただきたい、こう私たちは思っているのであります。  この法律の目的を拝見いたしますと、基本理念というところを拝見いたしますと、「都市計画は、農林漁業との健全な調和を図りつつ、健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保すべきこと並びにこのためには適正な制限のもとに土地の合理的な利用が図られるべきことを基本理念として定めるものとする。」こう書いてあります。私は市役所の若いある吏員の人に、まるで憲法を読んでいるようだなと言ったのであります。書かれていることは非常にりっぱでありますけれども、現実にこれがどの程度まで保障していただけるか。こういう疑念を持たざるを得ません。そういう意味で具体的な一つとして土地基金制度創設というものを私はあげて特に強く申し上げておかなければなるまいと、こう考えているのであります。  いずれにもせよ、こうした一つ基本方向として、私はこの都市計画法案というものについてある程度賛意を表したいと、こう思います。しかし、冒頭申し上げましたように、それはあくまでも市民がつくっていく、自治としてのあるいは市民のための都市をつくるという態度、すなわち、市民都市をつくっていくんだという、官製で計画が与えられていくのではないという態度前提にして、そういう基本方向を私は是認する。こういうふうにお聞き取りをいただきたい、こう私は思います。その前提がくずされて市民不在都市経営というものが考えられる限り、この法案は整っているだけに、かえって相当悪い武器になるだろうと、こういう印象さえ持たざるを得ません。どうぞこの点について、議員皆さん方に十分お考えをいただいて、その保障を賜わりたい、こう存じます。  さらに、この法案が成立いたしますと、私たちはどういう現象が生じるだろうかということを、実際家として考えてみないわけにまいりません。  第一には、市街化区域市街化調整区域区分をする、こういうことでありますが、しかし、かりに市街化調整区域に編入を指定をされるといたしましても、一体都市農業というものをどうもっていくのか。こういうことが確立され、方向づけられない限り、かりに調整区域に入りましても、そこの農業は滅んでいかざるを得ないのじゃないだろうか。私は都市計画というものは、農業というものを排斥したり、除斥したりするという形の中で成り立ち得るとは思いません。そうあってはならないはずであります。むしろ、都市農業と、いわゆる都市部分都市農業とが共存できるような形を、これはこの法案の責任ではないかもしれませんけれども、しかし、十分お考えをいただいて、新しい都市農業創設するという方向をお考えをいただきませんと、この市街化調整区域というものの指定が、実は内容を失ってしまうのじゃないか、こう私には考えられます。と同時に、この市街化区域指定せられますと、十年以内に市街化をしなければならない。こういう形になります。この十年以内に市街化をするということは、都市にとってもあるいは企業家にとっても、これはたいへんな負担であります。したがって、十年以内に市街化をするということをきめる、その決心をするということになりますと、私たちは、実質的にはこの市街化区域というものをごく小さく小さく指定をすることが安全だ、という態度にならざるを得ないと思います。これにたいへんな公共投資を投入しなければならないのでありますから、したがって、市街化区域を十年以内に市街化していくための資金、この問題については、先ほどの土地基金のみならず、一切の公共投資について相当政府がお考えをいただくという保障なしには、市街化区域はもう最少限度にとどめざるを得ない、こういう形になってしまうだろう。そして本来の都市計画理念を逸脱していく危険さえあると思います。そういう意味で、私たちはこの都市計画法が成立をいたしましたと同時に、並行して、いわゆる公共投資に対する国の負担なり県の負担なり、そういうものをかなり厚くしていただくという御決意なしに市街化区域をばく然とおきめになることは、結果としてはたいした結果を生じない、こう思います。すなわち積極的な財政的なバックアップをいろいろ賜わらなければ、法律はできて現実はでき上がらないという結果に終わります。  次いで、先ほど申し上げました土地基金でありますが、この基金については早急に問題点を整備して、私たちスプロールに先立って公共用地その他を取得していくことのできるような現実措置を賜わらなければならない、こう私は思っております。  さらにもう一つ問題点がありますのは、この市街化区域の中に小規模のものは無許可開発が行ない得るということであります。私たちは、いま横浜市の現実に照らして考えてみますと、大規模開発よりはむしろ小規模開発にてこずっているのであります。大規模開発の場合には、資本的な背景相当強うございますし、また市民のこれに対する世論というものも形成されやすいのであります。したがって、市民立場から世論もどんどん上がってまいりますし、その世論背景にして私たち開発施行者に対するかなり強硬な要求を提出いたします。たとえば法律にはきまっておりませんでも学校用地を無償提供してもらうとか、いろいろな手段をとって、現実に聞いていただいているわけです。ところが、小規模の、ほんとうに小規模の開発に対しては、資金的にも非常に貧困でありますために、こっちが要求いたしましても、実現する力も持っておりません。そして私たちの監督の目を盗んで、ごく大ざっぱの、もう穴だらけの仕事をしてさっさと逃げてしまう、というような開発が多いのであります。これのあと始末をして回りますだけで、私たちはもうあごを出しているというのが現実であります。道路は当然舗装をしてくれなきゃ困りますよ、という話はしておきましても、ほうりっぱなしで宅地宅地の間の道路を残して消えてしまいます。やむを得ません、市のほうでこれを舗装しなければなりません。そういう形、あるいは下水道などが土管が入っていると思いきや、入口のほうと終わりのところがあるだけでまん中が抜けているというところがございます。こういうものはまた私たち下水道を入れかえなきゃなりません。現実に入ってくる人々のことを考えればやらざるを得ない。噴飯ものでありますが、水道管なども一々私たちが検査をいたしまして、掘り返してみて調べるわけにはまいりません。そうでありますために、鉛管を入れておかなければならないものがビニールの管なんかが入っております。ですから、越して来られて一ヵ月や六ヵ月の間は水は出ますけれども、一年もたつと、ビニール管ですからだめになっちゃって、もう私たちが次に入れてあげなければならない、こういうような形でありまして、いろいろなこれは建築基準法その他での規制方法はあると思いますが、しかし無許可開発というものが小規模に限って認められていくという点は、私はちょっと問題じゃないだろうかと思います。やはりここには規制の強化というものをもっと考えていただく必要があるだろう、こう私は存じております。  時間もありませんのでごく端的に申し上げますが、以上のような考え方で、少なくとも都市農業創設する御努力というものを、この法案の問題とは関係なしにお考えいただきませんと、市街化区域調整区域を分けることの基本精神は失われてしまいます。市街化地域というものに対して、公共投資その他の問題を相当政府バックアップをしてくださるということでありませんと、十年以内というこの期限をおつけになりましただけに、かえって市街化区域をごく狭く、調整区域をごく広くという形に指定をせざるを得なくなっていくだろう、先買いをしようとしても、事実上公共用地の先取りはできなくなるような土地基金制度では困ります。小さいから見のがしてやっていいじゃないかということではなしに、小規模のものといえども無許可のものは困ります。また、もとへ戻って恐縮でありますが、小さくても大きくても、ここに住むのは勤労市民でありますから、被害を受けるのも同じであります。そういう意味で私は無許可開発というものに対しては、スプロール防止の上からいっても許可規制を強化していただきたい、こう思います。  もう一度原則に戻していただきますが、私たち政令指定都市のほうからも意見書を出しておるはずでありますけれども、私たちはあくまでもこの都市計画というものは国がやるのじゃない、県がやるのじゃない、お上がやるのじゃない、市民がやるのだという原則を確立しておかなければならぬだろうと、こう思います。そういう意味自主計画というものに対して、すなわち区域指定というものについて政令指定都市市長がはずされているというのは、どうもちょっと解せないのであります。開発許可については、もちろん政令指定都市市長許可権が与えられておりますが、この指定というものについてはずされているというのは、すなわち計画自主性というものを失わしているのじゃないだろうか、何とかこの点についてお考えをいただきたい、こう考えますし、また各都市にまたがって都市計画が行なわれます場合にも、やはりその中心となる都市自主性、こういうものを相当尊重していただきませんと、結局私たちは押しつけられた都市計画という形しか感じられないのであります。そういう点で、私たちのいわゆる大都市がいま一番スプロール現象に悩み、人口の稠密に悩み、流入に悩んでいる現状でありますので、政令指定都市という大きいからこういうことを申し上げるという妙な巨大都市意識ではなしに、一番大きな被害を受けている都市として、やはりこの都市計画法の中にその自主性をはっきりと認めていただきたいと、こういう希望、さらには都市都市が共同して行なう都市計画等については、一級上の県知事が統制をするなんというばかばかしいことではなしに、その中心都市自主性をゆだねていただきたい。すなわち、市民がつくる町だ、こういうふうにお考えをいただくように、こう私は考えておる次第であります。  まだこまかい点についてたくさん申し上げたい点もあるのでありますが、時間がもうまいりましたので、以上私は基本的に一つ方向を示す第一歩としてこれを受け取りたい、しかし、これの実施にあたって幾つかの問題点があり、それは単なる問題点というだけではなしに、それが変に実行されるという結果は、法の基本的なものまでじゅうりんしてしまうようなことになるだろうと存じますので、幾つかの点をあげてお願いをいたしました。どうぞひとつ、私たち現実都市計画を実行してまいります側の意見も、御検討を賜わりますようにお願いをいたしまして私の意見といたします。
  7. 藤田進

    委員長藤田進君) ありがとうございました。     —————————————
  8. 藤田進

    委員長藤田進君) この際、委員異動について報告いたします。  本日、和泉覚君が委員辞任され、その補欠として中尾辰義君が選任されました。
  9. 藤田進

    委員長藤田進君) 続いて池田参考人お願いいたします。
  10. 池田斉

    参考人池田斉君) ただいま御紹介をいただきました農業会議所池田でございます。私は農業の側からこの都市計画法案につきまして若干御意見を申し上げ、御審議の参考に供したいというふうに考えております。  もともとわれわれも御案内のようないわゆるスプロール化しつつある農村現状から見まして、これを防止いたしまして、土地利用の面をもう少し都市と農政をうまく調整をして、明るい建設的な都市計画を今後推進していくというこの基本的な法の考え方にはもちろん賛成でございまして、異議がないわけでございますけれども、しかし農業の側から見ますと、この法案を全体としてながめてみまして非常に問題があるわけでございまして、その点について申し上げるわけでございますが、日本農業を営んでおる農村の情勢は皆さん案内のとおりでございまして、何か日本農業の中で大きな農業地帯を守ってそこに生産を集中するということは、北海道でございますとか、東北でございますとか、あるいは南九州とか北陸等におきましては、そういうことも可能でございますし、またそのこと自体は非常に大切な問題でございますけれども、現状が、御承知のように全体として都市化した姿の中で農業を営まなきゃならない、こういう現実農業の姿になっておるわけでございまして、いうなれば相当の大きな部分農業都市というものがうまく併存をしながら農業の問題を解決する、こういう状態にあることは御案内のとおりでございまして、いうなれば全国的に都市化した中での農業を営む、こういう問題でございまして、都市計画法の適用の市町村の数もこの法の方針で長期的に考えますと千三百幾つというような数字になっておりますし、そこにある面積も全体の日本面積の半分以上を占め、農家戸数もそうである。こういう現実の中でこの法律を、これがかりに通った場合にどう適用するかというような問題を考えますと、非常に農業から見ますと問題が多いと思うわけでございます。先ほど前参考人の方も申されましたように、いわゆる都市農業と申しますか、そういう中には数の上でもかなりございますし、また農家の質の面を考えますと非常に優良な、いうなれば農業基本法がいうような自立経営でありますとか、企業的な経営でございますとか、こういうものは純農村地帯よりもむしろ都市地帯に実は多いわけでございまして、そういう農家中心として生鮮食料品なり、あるいは卵なり、あるいは豚肉なり、そういうものが大量に現在都市に供給されておる。そのことを抜きにして、いかにりっぱな都市計画を立てましても、都市の食糧の問題から見ますと、やはりそういうものが残された形での都市づくりは、こういう問題を解決をしなければならないではないか。ただ、今日のように非常に地価が上がってまいりまして、これは都市づくりの面でも大きな問題でございますけれども、一面農業の側から見ましても、このことが逐次、都市地域農村はもとよりでございますけれども、いわゆる純農村地帯にまで波及して、今日農地の地価が非常に高騰をしてきておると、こういう現実の問題もございます。したがいまして都市周辺の農家というものは、農業の側からこういうことを申し上げるということはどうかと思いますけれども、ほんとうに農業をやってみようと、そういう農家と、それから非常に悪い形の言い方でございますけれども、そのうちに都市化するであろうから、しばらく農業を営んでおって地価の値上がりを待とうと、こういう農家都市周辺には存在をしておる。その現実の姿というものは、これは大体御推察になられるとおりでございまして、その現実の姿の中で、われわれはやはり都市周辺の農業は大事である、その中でほんとうに優秀な農家はあくまでも守っていかなければならないし、できるだけそういう農家都市周辺にも多くつくりあげる、こういうことが農政上の一つの大きな問題であると思うわけでございますが、しかし、現実にいま申しましたような状態でございますので、特にこの法案の中におきまして指定をされます地帯におきまして、これを市街化区域調整区域一つの市町村で分けるという、非常にむずかしいいま申し上げました農業のいろいろの情勢の中でこれを行なう、こういうことは、役所の観念的な理論といたしましては、これはさい然と分かれるのだというような御議論もあるいははあるかもわかりませんけれども、現実的には非常にこれはむずかしい問題であろうと思います。農家自体が地価の値上がりを待っている農家もあるでしょう、ほんとうにやろうとしている農家もある。こういう中でどこで線を引いていくのか、こういう問題を現実に適用する場合におきまして、私は非常にむずかしい問題に逢着するのではないか、埼玉県等におきましては、ほとんどの市町村長がこれを二つに分けることは事実上できないということさえ言っております。衆議院の段階等におきましていろいろ御審議の過程におきまして、建設省ではこの市街化地域に該当するそういう地域の中の農地というものは、およそ今後十年間には十九万ヘクタールで、できるだけ市街化地域はしぼっていくのだ、こういうことを申しております。そして一つの町村におきまして、必ずしもさい然と線を引くのではなくて、曲がりくねった形でもいいから線を引くのだ、非常に頭の中ではそういうことが言われますけれども、ほんとうにこのことが実現の可能性があるかどうか、こういう問題になりますと、私は非常にむずかしい問題であるというふうに考えざるを得ないわけでございます。  そういう視点に立ちまして、われわれは特に農地の側から見まして、市街化地域に編入されますと、その法律の中の附則にありますように、農地法の四条、五条が適用除外になるというような問題がございまして、非常に私は憂慮する点があるように、この問題を考えざるを得ないわけでございます。特に転用の規制指定と同時に一ぺんにはずすというようなことになりますと、今日農地転用につきましては公害の防止でございまするとか、あるいは仮需要、いわゆるブローカーの介入する、そういう問題につきましては、原則として転用は許可しない、というような方向で法は規制し、運用されているわけでございますから、この市街化地域は必ずしも簡単にしぼれない、かりにしぼりましても、建設省の言うように、十九万ヘクタールを十年間でここを都市づくりするということでございますので、当分の間はその地域の中におきましても農業が営まれるわけでございます。しかし、この転用の規制がはずされますと、いわゆる第三者の仮需要の動きというものは、これはもう火を見るよりも明らかでございまして、そういうことを含めましてむしろ地価を抑制していかなければならない問題が、さらに地価が騰貴する、こういう力に逆に発展をするような危険を感ずるわけでございます。その辺の問題を含めましてどうするかというようなことになりますと、現実的な手段といたしましては、私は市街化地域におきましても当分の間、やはり転用規制は残す、そして具体的なその地域の中で諸般の計画が整いまして実施の段階ということが認定される段階に入りまして、四条五条の転用をはずす、衆議院の段階におきまして特に届出制をするというような問題が、法の修正が若干行なわれて参議院に送付されておりますけれども、届け出制でございますと、先ほど申しましたように、今日公害なりあるいは第三者の土地の購入というブローカーの暗躍を防ぐ方法はないわけで、ただ届け出をする、経由の形だけでございますので、いわゆる転用規制というものはできないわけでございます。まして市街化地域が私の考え方では、しぼらなければならぬという基本的な建設省の考え方あるいは農林省の考え方には賛成でございますけれども、そのことがそう簡単にはいかない。かなり広地域市街化地域というものを指定せざるを得ない、こういうような現状から見ますと、特に先ほど申し上げましたような農業のいろいろな実態から見まして、この規制問題につきましては当分の間、やはり段階的にはずしていく、こういうような方向での問題をぜひお考えを願いたいと思うわけでございます。この点は法の修正につながる問題に相なるかと思います。  それから市街化地域の中の農業の問題でございますけれども、これは一応十年間ということを想定しての問題でございますけれども、現実的にはなかなかそう簡単には、全体として市街化計画が完成をするというようなわけにもまいらないし、また現実にはそこに相当農家というものが、先ほど申し上げましたような相当大きな面積市街化地域の中で農地として保存をされる期間が、かなりの経過があるわけでございまして、そこで農業がかなりの期間現実的に行なわれる。そういう農家に対してどういうような手を打つか。こういう問題につきましては、市街化地域にもう入ったのであるから、農政からはとかくこれは疎外されがちでございます。衆議院段階におきますところの審議におきましても、農林省もその辺につきましては若干の手心は加えるが、本格的な農業としての問題をそこに対象としては考えない、というようなことを裏で言っているような感じもいたします。しかしながらその面につきましては、税制の問題あるいはその他いろいろな問題につきまして、十分保護をしていただかなければなりませんが、この税制問題につきましても、農業を営む間はあるいは農地として事実上ある間は現在の固定資産税についても、あるいは相続税につきましても、現行の問題をそのまま適用するのだということは申しておりますが、その辺は十分ひとつはっきり政府に対しまして念を押して、農業として残る間の農地と農業を守る、こういう考え方は絶対にひとつこれははっきりしていただきたい。特に形の上で考えますと、当然その中で優秀な農家もおるわけでございまして、自分の意思に基づかないで農業をやがてやめなければならない、こういう農家もおるわけでございます。そういう農家は長い間の知恵によりまして、いわゆる農業に精進をしてきて、しかも非常に資質の高い農家層でございます。そういう農家層がやはり職業として農業をやりたい、こういう農家も必ず私はおると思います。そういう農家に対しましては、それに対する代替地の世話をする、あるいはその他いろいろな万般の問題につきまして十分手厚い施策をその農家に与える、こういうような政策につきましても、この審議の段階におきまして、政府に対しまして正しくその点をひとつ明らかにさしておいていただきたい、ということをお願い申し上げると同時に、特に農業委員会等が土地問題を中心として今日までやってまいった実績があるわけでございまして、やはりそういう問題の世話については農業委員会市街化調整地域の新しい任務として付与する、こういうような問題につきましても、明らかにひとつ今後の施策としてお考えを願いたいと思うわけでございます。  その次の問題は、いま申し上げましたようないろいろな農業側に対する問題が一番これは大きい問題でございますので、県、市町村段階におきまして農民の側の意見というものが、どういう形でこの都市計画法を具体的に執行する場合に反映をしていくか、この問題について格段のひとつ御配慮をお願いいたしたいと思うわけでございます。いままでの審議の過程におきまして市町村におきましては、地方自治法に基づきまして審議会をつくり、これに農業の代表として農業委員会なり農協の代表を入れて、そこで市町村の段階の問題に対して農業側の意見を十分聞くのだ、こういう建設省の御答弁でございます。しかしながら、県や中央の審議会におきまして農業側の代表を入れるというようなおことばは、いまのところ聞いておりません。やはり県なり全国におきましても、全国のこれは農業問題、県の農業問題に非常に大きな影響を持つ問題でございますので、その審議会に農業の代表を参画させるという措置を必ずとられるように、政令その他におきまして明らかにしていただきたいと思うわけでございます。  その次の問題は、先ほど申し上げましたように調整地域をつくるということは、非常に困難と思いますけれども、まあしかし、調整地域というものができ上がる。その場合にこの調整地域都市の側から見ましても、これは疎外をされる地域になる、農業の側から見ても、ややもするとこれは疎外をされる地域に相なるかと思います。いわゆる国の施策の谷間に置かれるような地域にややもすればなる危険があると思うわけでございます。御承知のようにこの法案の中では調整地域にひとたびなりますと、そこは現在以上に転用をきびしく規制をする、都市からの施策というものは何も与えられない、農業側からにおきましても、とかくこれが疎外をされる、こういうようなことで、しかも現実農業の状態の中におきましては、これらの地域にこそほんとうのたくましい農家群というものが相当いるわけでございます。そういう面の農政上からの問題につきましても、本日は建設委員会でございますけれども、特に政府に対しまして十分この調整地域を疎外のないように、いわゆる今日農業地域振興法という法律が国会に出ておりますけれども、これが現在審議の過程でございます。やはりこれらの地域農業振興地域としてもむしろ率先して指定をされる、こういうような形で農業の施策というものが手厚くそこにやられる、こういうような基本的な考え方を、私は特にお願いを申し上げておきたいと思うわけでございます。  それから最後にやや小さい問題にもなりますけれども、市街化地域におきまして先ほども前参考人が触れましたように開発行為の許可を要しない面積、これがいままでの審議の経過に基づきますと、一般的には〇・五ヘクタール、特別の地域におきましては〇・一ヘクタール、なるほど〇・五とか〇・一、非常に小さいように感じますけれども、一般的には〇・五ヘクタールというのは千五百坪になります。特定の場合でも三百坪、こういう地域開発につきましては許可を要しない、こういうような問題になりますと、これに伴う非常に大きないろいろな影響が私もあると思います。したがいまして、もしこの制度を残すのでございましたならば、この面積というものは、もっともっとしぼるべきではないかということが、庶民の感情から見ても、私は正しいのではないかというふうに考えております。そして、転用の問題をわれわれははずすべきではないという原則に立っておりますけれども、不幸にして、この問題が、現在のまま修正をされないで通るというようなことに相なりますれば、土地の問題の何らかの形でのこれが公害、あるいは先ほど申しましたように、仮需要的な形で地価の騰貴を行なうというような問題につながる問題を、若干でもチェックをするというような意味におきまして届け出制をやる場合に、この許可の書類をつけて、そうして農業委員会を経由して知事に出す、こういうような方法が行なわれますれば、若干でも、そこで具体的な形でチェックが少しはできるのではないか、こういう感じもいたしますので、これは付随的な問題であり、こういうことをやることはわれわれは基本的に反対でございます。四条、五条の転用をはずすということは、基本的に反対で、その点の修正をお願いをいたしたいわけでございますけれども、万一、それがどうしてもできないというような場合におきましては、いまのようなきめのこまかい形で、いわゆる転用に応じて農民を保護し、第三者の転売を防ぐ、あるいは公害を防ぐ、こういう問題につきましても、いわゆる市街化地域におきますところの残された農地、当分続く農業、これを土地農家の場面から守っていただくと、こういうことでの御配慮をお願いをいたしたいと思うわけでございます。  以上、きわめて概括的でございますけれども、以上を申し上げまして御審議の参考にしていただきたいと存ずるわけでございます。ありがとうございました。
  11. 藤田進

    委員長藤田進君) ありがとうございました。  次に、井上参考人お願いいたします。
  12. 井上孝

    参考人(井上孝君) 井上でございます。  私は、戦後、戦災復興事業を手始めといたしまして、長い間、都市計画に携わってまいりました。今回、都市計画法改正のことを伺いまして、これは新しい都市計画の基礎を定めることである、という強い印象を受けておるわけでございます。わが国の都市計画には、さまざまな問題が山積いたしております。その解決は、国民生活にとって、いずれも焦眉の急と思われるものであります。で長い間、この都市計画法をどうするかというこの宿題を、現在新たに出発させようというその意味におきまして、私は、この都市計画法改正は、その着手がおそきに失する非難はあっても、早過ぎるということはないと思うのでございます。  私は、この新しい法案を拝見いたしまして、全体の結論といたしましてまず申し上げますと、やはりできるだけ早く成案を得られまして、そして実施に移すべきではないかと、こういうふうに私は感じた次第でございます。しかしながら、複雑で変転がはなはだしい、いわばこの生きもののような都市というものの将来の姿というものを、何らかの形で法律的に取りまとめていくという、これは非常なむずかしい問題でございます。したがいまして、私は、できるだけ早く立ち上がるべきではあるけれども、その進め方は、漸進的でいろいろと実態に即して、少しずつ切り離していかなければならないものではないかと、こういうふうに思うのでございます。  都市計画というものがいわゆる近代都市計画として現在の日本に行なわれ始めまして、たとえば明治二十一年の東京市区改正条例、それから大正八年の都市計画法と、これはそれぞれ八十年あるいは五十年以前から、またその後長い歳月を経て進められておるものでございます。その間の経過を振り返ってみますと、いずれもまず東京、あるいは大都市というところでこれが試みられ、そうして次第にそれが地方の中核都市あるいは市町村に及んでいったと、いわばその姿がやはりこの新しい法律に対しても考えられるべきではないかと、そういう進め方に学ぶべきではないかと、こういうふうに考えるのでございます。  新法の一つの大きな特徴は、市街化すべき区域とそれから市街化を押える区域とをはっきりきめまして、そうしてこれに従って都市建設を指導していこうという、こういう考え方一つの特徴があろうかと思うのでございます。このような考え方は、戦後たとえば東京都の区部の戦災復興事業に関連いたしまして緑地地域というものを東京都区部の周辺に設ける、これによって東京都の市街地が無制限に広がることを防ごう、こういうような考えからこの制度が出てまいり、あるいは首都圏整備委員会のこの計画というようなものにも、そのような市街化をどうするか、あるいは市街化を抑制するべき区域をきめようというようなことを問題として取り上げておったわけでございます。しかしながら、いつの段階におきましても、これは非常な困難がございまして、そうして首都圏整備委員会でも、最後までそれがはっきりした形ではまとまっておらないように思うのでございます。で、こういうふうな経験から、今後有効な施策ということを、いままでの経験を踏まえまして、やはり進めていかなきゃならないと、こういうふうに思うのでございます。で、新法の現在の市街化区域市街化調整区域を定めるという問題の最も私はむずかしかったと思われますのは、この考え方だけでこの制度というか、計画を実現しようと思って考えたところにあるのじゃないかと思うのでございます。やはりほかの施策がこれに伴って、交通計画でございますとか、それぞれの市町村の計画でございますとか、いろいろのものがやはり一体となって一つの目標に向かって合一しなきゃならなかったと、こういうことがあるいは欠けておったのではないかと思うのでございます。  そのことは、新法の最もむずかしいと思われますこの地価、土地の値段というものに対してどういうふうに考えるかという、この問題についても私はあらわれてくるのではないかと存じます。全体といたしまして、現在のような形で野放図に市街地の発展を認めていくということについては、何らかの対策が要るに違いない。対策をしなければならない段階であるということは、私もよく認めるわけでございます。またそれを制限することによって地価が著しく市街化する部分について騰貴するかどうかという点につきましても、私、衆議院におけるいろいろな御議論も読ましていただきましたが、これにつきましても、極端に地価がつり上がるのでもなかろうという、そういう皆さまのお考えも私は認めるものでございます。しかしながら、この法律だけで地価の問題、あるいは土地の問題が片づくということではございません。私は第二次大戦直前にイギリスのバーロー・レポートというレポートがございますが、このレポートが、その後二十年以上のイギリスの都市計画のいわば基本的な考え方として重んぜられてきたということを想起するのでございます。このバーロー・レポートは、大都市人口が集中することに対してどういう不利な点があるかということを調査した報告書でございますが、その報告書をさらに検討してまいりますと、農地に対してしからばどうしたらよいか、あるいは土地の問題についてどうしたらよいか、あるいは工業についてどうしたらよいか、というような問題が起こってまいりまして、それらの問題につきましては、その後一つ一つさらにこまかい調査報告書が出ました。そして、あるいはその考え方を踏まえまして、ロンドン地域の大きな計画、具体的な計画というものもつくられたわけでございます。そして、それらのいろいろな議論のまた一つの結論といたしまして、新しい都市計画法がイギリスに生まれ、そして工業を適正配置する工業配置法というようなものもでき、さらに新しい都市、いわゆるニュー・タウンというものを建設するような、そういう法律もつくられ、そしてそれに従って都市計画も運営されておるわけでございます。私は、このバーロー・レポートをいまだにこのイギリスの都市計画家が引用いたしまして、バーロー・レポートではこう考えておる、その後新しい事態もございまして、いろいろと間違っておったところもあるように思われますが、なおかつ一つの報告書に基づいてその後のいろいろな施策が長く続けられ、そしてそれがまた横にいろいろと対策を広められたという、このことが私は今回の都市計画の新しい法律に対しても考えられるべきではないかと思うのでございます。それは、宅地制度審議会から始まりまして宅地審議会に至るまでさまざまの議論が、あるいは私はこのバーロー・レポートに当たるものではないかと、そして、それに応じてこの都市計画法というものがいまや生まれつつあるのであろう、こういうふうに私は考えるわけでございます。しからば、それから先、地価の問題、あるいは工業の配置その他いろいろな法律が、すでにできておるものもございますが、やはり一貫したこの対策というものがとられ、そしてそれと同時にそういう考え方が長く続かなければ、とてもこの大問題は解決できないのではないかと、こういうふうに私は考えるわけでございます。必ずしもすべてのものがそろわなければそれで対策が立たない、というものではないと思うのでございます。都市計画法がまず第一の布石といたしまして、あるいは建設省の御関係の法律もあろうかと思いますが、それ以外のいろいろな対策というものがまたこれと軌を一にして進められなければならない。これが私どもこの法律を拝見いたしまして一番強く考えた点でございます。  それからさらに、これに関連いたしまして若干の私といたしまして考えた点を申し上げたいと思います。  第一は、この新法律には、七十四条でございますか、受益負担の規定がございます。私は、都市計画のいろいろな問題に携わっておりまして、この都市計画事業をやることによって非常な得をした人がたくさんおって、そしてその点については何ら手が打たれておらないという点に、やはり一つ非常なもの足りなさを感ずるのでございます。七十四条のお考えが、あるいはその全体をカバーするものではないかもしれませんが、私は、都市計画事業によって利益を受けた、その利益に対してどうするかと、これは、海外の都市計画におきましても、公共の投資を公共に返せということが非常に強く言われておるように思いますが、この点にもひとつ御注意をいただきたいと、こういうふうに思うのでございます。  それから、第二番目といたしましては、これはこまかい課税のシステムでございますが、税金をとられる基本となる値段と取引される値段というものにあるいは若干の差があるのではないかと、こういうような点につきましても考えたいと存ずるのでございます。  それから第三番目には、これは主として道路でございますが、道路を建設いたしますと、それに応じてその沿道に新しい開発が進められます。そういう開発が進められることによりまして、その道路が次第にこまかく出入りする車両のためにいわば死んでくるわけでございます。著しい例を東京の周辺で申しますと、たとえば大宮、浦和を通る街道筋でございますが、古い街道から国道ができ、さらに国道が一ぱいになって産業道路ができ、産業道路がさらに詰まって、また最近の大宮バイパスというものができるというような形で、一つ道路にあまりにもこまかい交通までがぶら下がるという、こういうことは、やはり、公共投資のむだではないか、沿道に対する制限というようなこともあろうかと思うのでございます。  それから第四番目といたしまして、都市整備ということが非常に言われておりますが、たとえば道路整備あるいは河川の整備、国鉄の整備というようなものに比べまして、私はやはり都市整備の財源に対して、何らかのくふうが要るのではないか、こういうふうに思うのでございます。環境整備のための財源というものが、全体といたしましてはあるいは多少乏しいのではないか。公共事業の一部を新しい開発者は負担しなければならないということがございますが、住宅公団ですら大きな団地に対しては国の補助を、地方公共団体による道路事業というか、街路事業というようなものに依存しなければならないというような点もございまして、私はそういう都市を総合的に整備するためには、どうしても都市整備のための財源を確立する必要があるのではないか、こういうことを考えるわけでございます。  それから第五番目に、この新しい都市計画がいろいろと進み出しますにつきましては、それを実際に担当する、法律の運営に当たられる人、あるいは都市計画を技術でつとめる人、そういういわゆる仕事を担当する人々がはたしてこの新しい体制に対して間に合うものであろうか、という問題があると思うのでございます。これは日本だけでございませんで、都市問題に対する世界的な一つの傾向でございますが、そういう仕事に携わる人をどういうふうにするかという、こういう問題でございます。  それからその次に第六番目でございますが、これはこの法律のたとえば二十三条前後でございますか、関係機関との調整ということが掲げてございます。これがはたしてこれだけうまく調整ができて、そうして総合的な計画ができるであろうか。ただいまの担当の衝に当たられる公務員の方々その他も考えあわせまして、この調整の仕事というものは、非常に大きな仕事になるのではないか、さらに原案の第六条に書いてございます基礎調査の中で、将来の市街地の見通しという条項がございます。こういうような見通し、いわゆる基礎調査でございましたら、これは比較的この形式どおりに私はできるかと思いますが、将来の見通しを立てるという意味においては、これはやはり相当関係する機関も多かろうかと、そういうようなことに対して何か一つのそれを受けとめる機関というか、組織というか、そういうものが要るのではないかと、こういうふうに思うのでございます。これは私は都市計画に従事する人々を強化すると同時に、都市計画の機構そのものをやはり相当強化しなきゃならない。先ほど申しましたイギリスのことを思い返してみますと、都市計画に対する一つの新しい省が生まれたというような事実もございます。しかしながら、これは日本日本なりのことを考えなけりゃならないと思うのでございますが、少なくとも経済的な計画というものと、それから社会的な計画という経済を基礎とした計画と、それから社会福祉を基礎とした計画とを二つ取りまとめて、この施設としてこれを打ち出すということ、これは法律の一番初めにも書いてございますが、そういうことができるような場所である。これはおそらく私は道路をはじめといたしまして、水を取り扱う、道路を取り扱う、あるいは住宅を取り扱うというそういう国土建設のこの全体を、さらにその中で計画の見通しを立てるという、そういうような機構が必要になってくるのではないかと、こういうことをこの法律を拝見いたしまして、私は感じたのでございます。  地価の問題という、土地の値段の問題ということ、それから関係のいろいろな機関とのむずかしい調整というこの二つのことを考えましても、なかなかこの法律ができまして、それからそれが理想に目ざして進んでまいることは私はむずかしいことであろうと思います。しかしながらこれはむずかしいからやらなくてよいということではなく、従来その対策がなかったために非常に大きな損を国民にかけておったんではないか、こういうふうに私は思うのでございます。今後のこの新しい布石の一番初めのものとして、私はこの法律が成立し、そして今後の対策に期待しておるものであります。こう申し上げたいと思うのでございます。
  13. 藤田進

    委員長藤田進君) ありがとうございました。  次に、梅原参考人お願いいたします。
  14. 梅原昭

    参考人(梅原昭君) 私は大阪におきまして、農民組合運動に携わっておる者といたしまして、新都市計画法案農業と農民の役割りを無視し、農業を強制的にやめさせる内容を含んでいるという理由で、これに反対をするものであります。以下この法案に反対をする理由を具体的に申し上げたいと存じます。  新都市計画法によって、農業と農民が最も影響を受ける点は、市街化区域指定を受けますと、農地転用の規制がはずされるという問題を後ほど申し上げますが、農地に対する税金の問題であります。現在の農地法によりますと、農地を宅地に転用しようとする場合には、その農地が宅地化することによって、周囲の農地が受ける被害、つまり農業用水や日照の問題などの悪影響をできるだけ防止する立場で転用申請を農業委員会知事が審査をすることになっております。このような手続によって都市計画農業との調整をはかろうとしておるわけでありますが、新都市計画法考え方は、市街化区域の農地については転用しようとするときは、あらかじめ知事に届け出をしておけばよろしいということであります。また土地区画整理事業を実施する場合も同様でありまして、現行法では事業が農用地を廃止したり、水路などの用排水施設を廃止したり変更しようとするときは、県ごとにある農業会議や地区ごとにある土地改良区の意見を聞かなければならない、ということになっております。ところが、新都市計画法の施行法によりますと、農業会議土地改良区など、農業関係の意見は聞く必要がないということになっております。つまり都市計画法を一貫する考え方は、市街化区域については農業のことは一切考慮しないで、都市計画のことだけを考えればよろしい、こういうふうな立場に立っているものと考えられます。  そこで、都市計画法が全面的に実施された場合に、どの程度の範囲で市街化区域指定を受けるのかというと、昨年の暮れに、私、農民組合の代表として農林省の責任ある方とこの問題についてお話をする機会がありましたけれども、そのときの話によりますと、現在都市計画区域の中に含まれておる農地というものは、全農地の中のほぼ六〇%に相当する新しい都市計画法ができた場合に、いままでの都市計画区域はそのまま引き継ぐことになるので、市街化区域の中の農地というものはその中の六〇%程度になるだろう、つまり全農地の三六%程度になるだろう。さしあたりは、新都市計画法の実施は大都市から始めていくことにはなるけれども、最終的にはその程度になるのではなかろうかというような話を伺ったことがございます。このようなことになりますと、新都市計画法の第二条では、都市計画基本理念として農林漁業との調和をはかることが強調されておりますが、このりっぱな理念は、全農地のほぼ三分の一程度のものにつきましてはまっかな偽りで、どのように農地をつぶそうとも、かってたるべしということになるのであります。  このような、広い地域農業を短期間に廃止させる結果、国民生活にさまざまな悪影響をもたらさずには済みません。その一例として野菜の問題について申し上げたいと思います。大阪府の場合に、府下の農地で生産する野菜は、府民が消費する野菜の四割ないし四割五分に及んでいるのですが、大阪府都市計画当局の見込みによりますと、新都市計画法が実施された場合に、府下の農地の九割程度のものは市街化区域指定を受けることになるだろう、このように発表をいたしております。大阪で野菜が生産されなくなりましても、他の府県から持ってくればよいじゃないかという意見もあるかもしれませんが、いわゆる軟弱野菜というようなものは、荷いたみの関係上どこからでも持ってこれるというものではありません。かりに持ってこれるとしましても、人口十万人以上の市町村を含む地域につきましては市街化区域指定ができる、将来はこれがさらに拡大をされるということになるわけですから、野菜産地のかなりの部分がつぶされてしまうということになります。それでなくても野菜の生産が消費の増大に追いつかず、そのために野菜の値段が高くなって消費者の家計を脅かしておる、国としても何とかしなきゃならぬということが強調されているときに、これを逆行することが行なわれようとしているのであります。農林省も、つい最近になりますと、市街化地域の範囲を拡大することにやや消極的になったようなことも承るのでありますけれども、都市近郊のかなりの地域市街化区域として非農地化を強行しようというのが法律の基調にある以上は、生産が消費に追いつかず野菜の価格が高騰するということは避けられない、というふうに考えられるわけであります。  次に、農地に対する税金の問題であります。都市計画法案は農地の税金の問題に直接には触れておりませんけれども、税制調査会におきまして現在審議されておりますし、これについて建設省、自治省、大蔵省など、関係各省が意見を述べるなど、税金と都市計画法案とは表裏一体をなしております。政府考えは、市街化地域の農地については、農地の非農地化を税金の面から強行するということであります。つまり、農地に対して現在課税されております固定資産税や都市計画税が安過ぎるから農民は農地を手放さないのだ、農民が農業を続けられないほどの重税をかける必要があるのだ、このような考え方から、農地に対しても宅地並みの固定資産税や都市計画税をかけようとしております。宅地並みの固定資産税、都市計画税によって、税金はどのくらいになるのかといいますと、大阪の場合で申しまして、評価額が坪一万円程度、したがって税金は一反歩当たり四万八千円程度ということになります。坪一万円程度の評価をさらに上げることを税制調査会あたりでは検討しているようですから、将来は税金はもっと高くなるかもしれません。これに対して農業所得はどうかといいますと、米の場合で三万五千円程度、一反歩当たり三万五千円程度というのが、税務署で査定をしております所得であります。つまり所得よりも税金のほうがずっと高いということになるのであります。しかも固定資産税や都市計画税のほかに、幾らりっぱな農地でありましても、宅地として利用されていなければ、それは空閑地だということで別個に税金を取ろうという考えもあるわけですから、農業がやっていけるはずはありません。そもそも税金というものは営業上の利益が出た場合に、それに対して税金をかけるというのが原則でありまして、営業をつぶしてしまうような税金をかける権限は、国といえどもないというふうに思うのであります。これが税金についての第一の問題です。  第二の問題は、都市計画事業の今後の中心をなすと思われます土地区画整理事業に対しまして、農民の熱意が税金のために喪失するのではないかという問題であります。当初建設省は市街化区域の中の全農地に対しまして、先ほど申し上げたような宅地並みの課税を考えていたものを、最近では市街化区域の中でも、特に市街化の進んでいる地域に限定をしたらどうかというように変わっているようであります。ところが限定をいたしましても、区画整理地域の中の農地への宅地並み課税という問題はまっ先に出てくるわけであります。現在におきましても、自治体の都市計画当局は、区画整理をすれば土地の値段が上がりますよといって農民にこれをすすめているわけです。農民のほうからしますと、今後かなりの期間農業を続けるつもりでおりますから、区画整理をしたら農業用水などの関係が悪くなって農業がやりにくくなるのではないかということから、大阪におきましても農民との間に幾つかの紛争が起きているわけであります。まして区画整理をしたら最後、税金はめっぽう高くなるということになりますと、区画整理に対する熱意はとたんに喪失するでありましょう。大阪府下で昭和六十年までに全農地の四分の一の地域土地区画整理を実施する計画を自治体では持っております。このような目標は、いま申し上げましたような税金がかけられるということになりますならば、とうてい実現できるものではありません。都市計画を推進するつもりの税金が、かえって逆に都市計画を妨げる結果を生ずるということになると思われます。  最後に、繰り返して申し上げたいことは、都市計画法第二条の都市計画基本理念で強調しております農業との調和が単なるから文句にすぎないということであります。先ほど大阪府民の消費する野菜の半分近くを大阪の農民が生産をしているというふうに申し上げましたが、専業農家が大阪のどの地区に一番多いかと申しますと、一般の予想に反しまして、まっ先に市街化区域指定を受けるだろうと思われる大阪市内で専業農家の比率が一番高いという統計数字が出ておるわけであります。私はややともしますと、このような農業の実態が忘れられ、都市近郊の農業や農民がじゃま者扱いされているということを、大へん残念に思います。そうして、この都市計画法案の中に都市近郊の農業をじゃま者扱いをする政策が、典型的に表現をされておるというふうに考えまして、これに反対をする次第でございます。
  15. 藤田進

    委員長藤田進君) ありがとうございました。  次に、古藤参考人お願いいたします。
  16. 古藤利久三

    参考人古藤利久三君) それでは私からは大体産業界の立場から見まして、今度の都市計画法案というものについてどう考えておるかということを、概略申し上げてみたいと思います。  基本的な考え方といたしましては、近代的な都市計画法というものを施行することは、日本の産業経済がこれだけ発展してまいりまして、人口都市集中化が非常にはげしくなった現在、現在このような計画法案がつくられるということは、むしろ時期おそきに失したのではないかという感じもいたします。特に、この五十年間の日本の経済の変わり方というふうなものを考えてみますと、人口都市集中という問題は、反面、産業並びに工業の都市集中という問題とうらはらになっておりまして、都市計画の問題は、同時に産業立地の問題と非常に大きな関係を持ってきているということを、私どもは痛感せざるを得ないわけでございます。で、ただいま都市計画法趣旨につきましては、市街化区域並びに市街化調整区域というふうな区域に限りまして、そうして、計画的な開発をやっていくというこのお考えにつきましては、欧米、特にヨーロッパ各国も大体こういうふうな開発の方式をとっているようでございまして、この方式そのものは非常にけっこうなことじゃないかと、われわれも考えておるわけでございます。  したがって、この法案趣旨につきましては、私どもは賛成でございますが、ただ、いろいろ、この現実の問題として考えますと、この法案がうまく運用されるかどうか、その運用の面につきまして、産業界としては若干の危惧を持っておりますので、その点をひとつ指摘さしていただきたい、かように考えるわけでございます。  第一の問題は、日本での総合国土開発計画、あるいは首都圏整備計画、それから新産工特というような、いろいろの開発計画がございますが、どれ一つとして具体的な計画まで煮詰ったものがございません。そのときに、この都市計画法案というものは、かなり具体的に下から問題を片づけていくというふうな性格を持っておりますので、この法律が成立いたしまして、この角度からどんどん事柄が進んでいくというようなことになりますと、法案の中にございますいろいろの上位計画に適合するという文句が使ってございますが、その適合がいかにしてなされるかという点について、一つの疑問にぶつかるわけでございます。したがって、この都市計画法案が成立されまして、実施されることにつきましても、上位計画というようなものと十分に合致するような形で運用されたい。これは非常に大きな問題でございまして、単に都市計画法の範囲の問題ではないと思うのでございますが、これをどういうどころで調整なさるか、その調整される方向につきまして、やはり国民に納得させるようなひとつのお考えをお示ししていただくことが必要じゃないかと、こういうふうなことを感ずるわけでございます。  基本的にはそういうことでございますが、具体的な問題としまして、たとえば中身に立ち入って申し上げますと、先ほど来いろいろ引用されておりますように、第二条で、「都市計画は、農林漁業との健全な調和を図りつつ」、ということで、まず第一に農林漁業との調和ということが、非常に大きくクローズアップしておりますが、これは事柄の性質上、そういうものであろうかと思いますが、しかし、最近における都市の過密化というふうな問題と具体的にこれを結びつけて考えてみますと、やはり工業の都市集中というふうな問題、臨海地帯の整備というような問題と不可分の問題がここにあるわけでございまして、同じようなウエートで、農林漁業との調和をはかりつつというようなことと同じウエートで、産業との調和をはかりつつという問題をお考えいただかなければならないのではないか、もちろん第十三条の中に、そういうふうな産業の利便をはかるというふうな文句は入っておりますけれども、しかし、第二条でうたい上げて、このウエートをどうも考えておられないようです。その点はやはり法律を実施する上におきまして、いろいろな問題が生じてくるんじゃないかというふうに考えられますので、この点について特に御配慮いただきたい。それで、実はこの法案と関連しまして、産業立地のために工業立地適正化法案とかあるいは臨海地帯の整備法案というふうな構想もございまして、そういう工業関係の今後の長期的な展望に基づいての開発計画という考え方も出ておったわけでございますが、そういう法案が提出されることにならずに、この都市計画法案がずっと先行して進んでまいるというふうなことになってまいりますものですから、特にいま申し上げた点を強調したいと思うわけでございます。したがって、産業界といたしましては、都市計画法案によって都市計画開発されることは非常にけっこうでございますが、このごろ公害の問題その他がございますので、工業地帯の整備ということについては、従来以上にウエートを置いてお考えいただきたい。そのために、実はこの法案の中で、都市計画決定につきましては農林大臣と協議を義務づけているというようなことになっておりますが、その農林大臣には意見を徴するということに書き分けてございます。この農林大臣との関係は、農地転用の関係があるからという御説明でございますが、私どもはこれ以外に、やはり工業と都市との関係というものを新たなる角度からひとつ十分に御認識をいただきまして、通産、運輸大臣には意見聴取となっておりますが、文句を変えていただくということは、この段階でむずかしいといたしましても、運用の上では意見を尊重するということにぜひやっていただきたい。そして、これを総合的な立場運用していただきませんと、いろいろな支障が生じてくるんじゃないか、こういうふうに私どもは感じておるわけでございます。  それから市街化区域の設定のしかたにつきましては、先ほど来もさきの参考人からいろいろ御意見がございましたが、どういうふうにきめられるかということは、非常に現実の問題としてむずかし問題だろうと思うのでございます。特に財政硬直化のおりから、先行的な公共投資というものの裏づけのない近代化、市街化地域というようなものを先にきめようといたしますと、勢い地域が非常に狭くなる。そういうふうなことになりますと、その地域の場合に工業立地の適正な確保ができるかどうかという問題に一つの難点が生じてくるんじゃないか、ということも心配しております。したがいまして、この市街化区域の設定につきましては、将来の十年間に優先的かつ計画的に市街化をはかる地域を定めると、こうございますが、この十年間を展望していただくことは非常にけっこうでございますけれども、これについては財政との関係もございましょうから、実際問題として工業用地の確保に支障のないような運用を行なわれたい、これをぜひお願いしたいわけでございます。  それから、市街化区域指定されますことによって、どうも地価が高騰するという、これは理論的に証明しろとおっしゃってもむずかしいのでございますが、どうもいろいろ検討してみますと、地価は高騰するんじゃないかという考え方が強いようでございますので、このために工場、産業等の立地が困難になるということでは、やはり都市計画法のほんとうの目的からいって、それは適当じゃないんじゃないかということにも考えられますので、この地価の高騰につきましては、こういうふうな対策を持って臨むんだという一つの基本的な方針というふうなものを、あるいは政策というふうなものを合わせ決定していただくということが、非常に重要ことではないかと存じます。  それから市街化調整区域における開発行為の許可基準でございますが、この基準の中には、どうも表現が非常に抽象的でございまして、ややわかりにくい点がございますので、これは政令以下であるいは詳しく運用の面が出てくるかもわかりませんが、その運用につきましても、工業用地の確保につきまして特段の御配慮をしていただきたい、こういうふうなことでございます。  要するにこの都市計画法案というものは、全体として産業とそれから人口、それから農村というふうなものを全体を含めて都市計画的な開発をやるという問題でございますので、もちろんこれは建設省の所管の問題ではございましょうけれども、非常に広い総合的な運営ということが必要だということをぜひともひとつ御考慮の上、運用の上に十分な御配慮をいただきたい。産業界のちょっとした不安というものが、そういう点に集中しているわけでございますので、その点をひとつよく御理解いただきたいと思います。  最後に、非常につまらない小さな問題でございますが、七十五条の受益者負担金の問題というのがございますが、こういった問題につきましては、やはり地方自治体にまかしてしまうということじゃなくて、国としてやはり統一的な基準を作成していただくということが、工場の規模も大きくなりますし、また全国的に設定してまいるというふうなことになってまいりますので、できるだけ統一的な基準をつくっていただくというふうなことに御配慮をいただきたいと考えるわけでございます。先ほど申し上げましたように産業界としましては、この法律に対して趣旨に対しては全く賛成でございますが、運用の面が非常にむずかしい問題を含んでおりますので、どうかひとつ総合的な見地からうまく運用していただくようにお願い申し上げます。
  17. 藤田進

    委員長藤田進君) ありがとうございました。  以上で参考人方々からの意見の陳述は終わりました。  これより参考人方々の御意見に対する質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  18. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 井上参考人にお伺いしたいと思うのでありますが、他の施策ですね、つまり公共政策その他ということをちょっとおっしゃったのですが、私どもこの法案についてちょっと首をかしげざるを得なかったことは、都市計画というごく限られた都市計画ということにいろいろと手を加えるように見受けるけれども、しからば道路だとか鉄道だとか、要するに総合的な国土開発計画との関連はどうなっているのか、こういう不安があるわけであります。いま建設省は、道路計画を立てております。この道路計画道路計画でもってどんどん進められようとしている。国鉄は、全国的に新幹線をこれから建設をしていこう、あるいはまた線路を増設して、複線、電化をやっていこう、こういう計画は、国鉄は国鉄でやっている。それから住宅公団は、なるべく土地の安い所に目をつけて、安い所、安い所と土地を買って、そこに住宅団地をつくっていこうとしている。これらのそれぞれの計画というのは、つながりがないような気がするわけです。つながりがないままに、それぞれ大きな投資をして計画を進めていく、その中でこういう都市計画というものが現実に日の目を浴びるということになった場合に、やはり非常にちぐはぐな形のものになりはしないかと、こういう懸念がするわけであります。したがって、もっと体系のしっかりした、つまりばらばらの計画ではなくて、十分な連携のとれた総合的な国土計画というものが、やはりこの都市計画というものとつながりをもって画一をされなければいけないのじゃないかと、こういう気がいたしますけれども、特にごく公正な学者の立場からこの問題をお考えになった場合に、それらの欠陥をおくみ取りをなられたのかどうか。根本的にしからばどういう方法でもってその国土計画というものを結びつけていったらよろしいというふうにお考えになるのか、それらの点について見解を承りたいというふうに思います。  それから委員長、ほかの方にもまとめてお聞きしてよろしいですか、それとも一人の方に……。
  19. 藤田進

    委員長藤田進君) 幾人でもけっこうです。
  20. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 梅原参考人にお伺いしたいと思うのですが、農民の場合、市街化地域の中で要するに孤立をした農村といいますか、農地ですね、孤立をした地域が今度は出てくることになるんじゃないか、こういう懸念が私どもにもあるわけです。だからそういう場合、周囲の環境からいやおうなしに農業を断念をしなければならない、こういう人が出てくる。要するに、いびられる農民というものが出てきはしないか、こういう懸念があるような気がしたわけであります。それらの懸念に対して梅原参考人としては、やはり日本農業の将来ということを考えた場合に、この法案に対して結論的にはあなたは反対である、こうおつしゃいましたけれども、具体的に注文をおつけになるとすれば、どのような点に注文をつけたならばよろしいというふうにお考えになるのか。これをそのものずばりでもってお聞かせをいただきたいと思うのであります。  それから飛鳥田参考人にお伺いをしたいと思うのでありますが、都市現状というのは千差万別であって、いろんな都市があると思うのですが、こういう計画は何にもない無人の荒野に都市計画でもって新たな都市をつくっていこうという場合には、こういう法案も曲がりなりにもこれをやっていけるんじゃないかという気がいたしますけれども、すでにでき上がっている都市、すでにでき上がっている都市には、いろいろな問題が出てくると思うのです。横浜のようにきわめて広い地域を持っているところは、中には市の区域には入っているけれども、事実上だいぶこやしくさいところもあるし、それからまた工業の団地のようなところもあるんじゃないか、こう思うし、またアメリカなんかの軍のための土地というようなものがあって、なかなか思うとおりに市のほうで手の下せないようなところもある、こう思うのでありますけれども、こういう複雑な地域を持っているところで、こういう都市計画でもって線を引くという場合に、事実問題としてたいへんに難関に逢着するんじゃないか、こういう気がいたします。それらの難関に逢着をした場合に、一体運用上どのようにやっていくということができるか。またそれらの予想される難関にぶつかった場合のことを考えたならば、この法案に対して具体的にどのような注文をおつけになられるのか、その点をお伺いしたいと思うのであります。
  21. 井上孝

    参考人(井上孝君) お答えいたします。ただいま御質問の要旨は、都市計画法都市計画をきめるけれども、さらにこの国全体の計画あるいはそれぞれの地方の——私はいまの御質問でたとえば首都圏の区域というようなものを考えたのでございますが、そういうこの地方、いわゆる広がりのある地方の計画、それからこの問題の都市計画とはどういう関係になるのかという、こういう御質問と私は伺ったわけでございます。それに対しまして私が考えておりますのは、それぞれの計画の段階におきましてきめるものが違っておるのではないか、こういうふうに考えるのでございます。国土計画は、国全体のことを考えますので、国全体として、たとえば道路について申しますと、東京からどういう道路が大阪のほうへ行く、その経過地はどこであるということを国会でおきめになっておるように私は思うのでございます。そういうものと、それからそれが首都圏の計画におりてまいりますと、もう少し形のあるものに入ってまいります。そうして、都市計画として、ここに書いてございますように、市もしくはそれぞれが一体となる町村の市街地というような形になりますと、もうこれは一体どこを、どの市街地の中のどの部分を通って、それはどういうものになるかということまできめなければならないような、そういう立場に立っておるのではないか。つまり都市計画立場からいたしますと、最も具体的にきめなけりゃならない。そうして、きめたものについては、住民の人々の財産を直接制限するような、そういうようなものになってくる。したがって、そういう計画を立てるほうの立場にかりに私がなったといたしまして考えますと、これはやはりその上にある首都圏全体あるいは国全体がどういうことを考えておるのか、自分たちの町には、それがどういうふうに響いてくるのか、人口は一体もっとこの町は伸びる方向にいくのだろうか、あるいは工場はくるのだろうかというような、そういう見通しがやはり知りたい、私はこういうふうに思うのであります。したがいまして、上位計画は上位計画一つ方向あるいは大きな人口のますをきめ、そうして、それがそれぞれの市町村におりてまいりますと、それを受けた一つの具体的な計画という形になるべきではないか、こういうふうに思うのでございます。  それから、御質問の中で御指摘になりましたたとえば、そういう道路計画あるいは新幹線とか、それから、国鉄のああいう改良計画というものとは、一体どういう関連があるのだろうか。私は、現状都市計画のこともよく承知いたしておりますが、これでは私はむしろそれぞれの立場がそれそれで、何とかこのむずかしい中に自分たち計画を盛り込もうと、それによって自分たちの役目を果たそうと、こういうようなことがございますので、非常にひしめき合っておるような感じがするのでございます。しかしながら、全体といたしましては、私はいまの国あるいは首都圏の計画というもので統一されまして、そうして、それが都市計画のほうへおりてこなければならないものである、こういうふうに考えております。
  22. 梅原昭

    参考人(梅原昭君) 計画的な都市づくりをするということについて反対をしているものではありません。しかしながら、その都市づくりのために、いまお話がありましたように、農民がいびり出されるというようなやり方で都市づくりがされることに対しては反対だ。こういうふうな立場から、先ほどのような意見を申し上げた次第です。  そこで、そのようにならないために、それじゃ具体的にどういうふうにすればいいという点の御質問かと思いますが、先ほど申し上げましたように、一つ都市計画法の附則の中で農地法の一部改正が行なわれる。そうして、農地の転用をしようとする場合に、いままでのような農業委員会知事の審査というようなものは要らないんだ。したがって、市街化区域の中で転用をする場合には、農業に対する配慮は要らないのだ、こういうふうなことでは困る、したがって、都市計画法に関連した農地法の改正というものはやめていただきたいということが一つであります。  それから、もう一つの問題は、これも先ほど申し上げましたけれども、直接都市計画法案それ自体の問題ではありませんけれども、うらはらの問題になっております税金の問題で、農業がやっていけなくなるような農地に対する税金というものがかけられたのでは、とてもじゃないけれども、たまったものじゃない。したがって、農業がやっていけなくなるような固定資産税であるとか、都市計画税であるとか、あるいはいま審議されております空閑地税でありますとか、そういうものはやめていただきたい。ほかにこまごまとすればいろいろありますけれども、最も基本的な点を申し上げますと、その二つの点であります。
  23. 飛鳥田一雄

    参考人飛鳥田一雄君) 非常に申しわけない言い方ですが、私はこの都市計画法ができることで、ほんとうの都市計画が急速に進むとは実は考えていないわけです。露骨に申し上げます。この計画法が国土総合開発計画とか、地域開発計画をはじめとして都市開発法とか、公害関係の法律とか、農地関係とか、工業立地法、こういうものとの相互関連が明白でありませんので、私たちとしては、これがどの程度に役に立つか、どの程度にほんとうにわれわれの理想とするものを実現する手段となり得るか、はなはだ疑問を持っておるわけです。ですから、これで一挙にものが解決するとはとうてい考えておりません。  それからもう一つの問題は、横浜市等の実情は、いまかなり広い地域をとおっしゃったのでありますが、もうほとんどございません。なるほどいまはまだたんぼになっておりますけれども、農地になっておりますけれども、もうすでにそこにいろいろな計画が組まれておりまして、ほとんどがもう都市地域と言って差しつかえないんじゃないだろうか。これは農民代表の方が、あるいは農業会代表の方がおっしゃったように非常にむずかしい問題であります。したがって横浜としてはこういうことが言えます。都心、すでにでき上がってしまっております都心の再開発をどう持っていくかということとからめてでなければ、調整区域をきめることはできません。すでにもう都心はできてしまっている。これの再開発も何もしないで外側だけを規制していくという考え方では、都市地域調整区域の区別はできないわけです。そういう意味で、私たちは都心再開発という問題とからめて考えなければなりません。そうなりますと、先ほども申し上げましたいろいろの法律との関連性が明らかでありませんので具体的な第一歩を踏み出せない、この法律がかりにできても、こういうふうに私たちは感じます。したがって、一刻も早く私たちが公害地域と都心地域とをあわせて基本的な都市構造を定められるような方途を、この法案とは別途に考えをいただきたい。これは法律であろうと、具体的な政治措置であろうと差しつかえございません。いずれにせよ、それを考えていただかなければいけないだろう、こう思います。  そこでもう一つは、今度は具体的な問題になりますが、私たち調整区域市街化区域をかりに分離できたとしても、それは確かにスプロール防止という意味で先ほど申し上げましたように原則としては私たち賛成であります。基本方向としてはけっこうだと申し上げたわけです。具体的にまいりますと、もうたいへんな住民の中に対立を持ち込んでしまうという結果になります。したがって、私たちはこの区域のきめ方あるいは都市計画のきめ方という問題について、もっと住民自治を認めていただけないだろうか、住民の考え方をもっと反映するような手段を講じていただけないだろうか。もう概括的に言えば、調整区域あるいは都市化区域を定めるきめ方は、自治体にゆだねてほしい、自治体と申しますか、基本的自治体すなわち市町村にゆだねていただきたいという感じがいたしますし、そうでない限り責任持てないわけです。ぼくらは。県知事さんがおきめになったものと、私たち考えている市民あるいは農民の意向を反映して私たちがつくったものとがぶつかり合ってしまう。そうすると知事考え方のほうが優先するなんていうことで、しかも具体的に責任を持って——責任を持つのは私たちですから、責任を持てと言われても、これはもう不可能です。ですから、もっと私たちに責任を持たせてほしい。と同時に、私たちが市議会なり市の理事者が住民を代表して責任を持つというのにとどまらず、もっと都市づくりあるいはその地域指定等について、市民のなまの意見を述べられる機関をつくってほしい。いわゆる公聴会という方式でもけっこうですし、他の方式でもけっこうです。住民会議という形でもけっこうです。何かそういう制度をつくっていただきませんと話はつきません。事実上法はできても実行においてものすごい混乱を生ずる。場合によると、市民の中に対立をさえ持ち込むという結果を私たちはおそれております。  それから、もつ一つはくどいようでありますが、そういう都心とのからみ合いの中で、都市化を行なっていくとするならば、この財政上の措置というものは、欠くべからざるものです。この点についても、もう少しお考えをいただきたい、こう私たち考えているわけであります。非常に難関にぶっつかるであろうということを、私たちはいまから予測し、かなりその点についての苦悩はいたしております。
  24. 沢田政治

    ○沢田政治君 最初に井上参考人にお聞きしたいわけでありますが、井上参考人は、この法案は決して早きに過ぎるということはない、おそきに失したと、基本的には賛成というお立場で六点ほどの問題点、今後起こり得るであろう問題点を御指摘なさっておるわけでありますが、これに対して私は意見といいますか、その意見ということじゃなく、もう一歩突っ込んでお考えをお聞きしたいと思うわけであります。六点の中に、第一点は、第一点といいますか、その中の一つには、地価の問題に対しても、若干、憂慮されておったやに私は理解をするわけであります。さらに井上参考人は、市街化地域指定になったとしても、そのために地価がどんどん上がるであろうということはあり得ないだろう、こういうことを楽観的に考えておられるようであります。私もこの是非について問うておるわけではありません。ところが、私考えてみて、なるほどある程度広い地域になるか、狭い地域になるかわかりませんけれども、市街化指定になった場合には、ある程度土地の需給というものは緩和される。そういう角度から、土地がどんどん値上がりしていくということは、幾らか緩和されるのではないかというものの考え方も、私は一面にはあると思うわけであります、考え方としては。しかし、私は土地の価格というものは、決して需給関係にだけあるものではないと思うわけであります。もちろん、需給関係が土地価格に対する影響というものは、私は否定しませんが、それのみによって土地価格が左右されないと思うわけであります。と申しますのは、もう大体、この付近が市街化区域指定されるということを、利権にさといブローカー等は、すでに知っておるわけであります。したがって、おそらく今後土地ブローカーといいますか、ことばが悪ければ、不動産会社等がこういう事実を見のがすはずはないと思うのであります。したがって、農地法の四条、五条が適用除外になりますから、大っぴらに土地を買いあさることができるわけであります。そうなると、私はそういう面から相当土地が値上がりするのではないか。ラインを引いて指定はしたけれども、実際にはお金持ちでなければ、その指定内の地域に住めないという状態がくるのではないかと、私は考えるわけであります。したがって、やはり都市計画は、ただ単に箱庭を何というか、並べるようにあるべきビジョンというものはだれでもできると思うわけであります。やはり地価対策というものが一本加わらない都市計画というものは、砂上の楼閣ではないかと私は考えるわけであります。人が住めない計画というものは、計画倒れなわけであります。したがって、私の考えとしては、少なくともやはり都市計画をする場合には、地価対策も明確に、あまりこまかくなくとも、大まかな明確に、あまりこまかくなくとも、大まかな計画というものを織り込まなければ、これは一本——一本というより柱が抜けていると思うわけであります。そのために、私は市街化指定された土地については、民間の取引ですね、土地売買の取引を禁止して、どうせここまで私権制限になるわけでありますから、そういう制限は許されるものですよ、公共のために。したがって、取引はやはり、国、地方自治体が土地を先行取得して、そうして地価の値上がりを防ぐ、こういう考え方というものをとられるべきではないか、とるべきではないか、こういうように考えておるわけでありますがいかがでしょうか。  それから池田さんにお伺いしますが、池田さんも若干御懸念されておったように、今度この法案が通りまするならば、既成市街地あるいは将来の市街化地域、さらには調整地域農業振興地域ですか、こう四つのラインが引かれるわけでありますが、特に、私も農業の経験がありますので非常に心配することは、あなたも若干御懸念されておったように、調整区域がこの計画のために灰色の谷間になるのではないかという御懸念ですね。都市を抑制する地域であるし、農業振興地域でもないし、どっちからも見はなされる地域になる危険性が、確かに私はあると思うのであります。特に調整地域にいる農民の方々は、これは調整地域といっているけれども、将来は、あるいはさらに十年後、二十年後には都市化される地域ではないかという懸念が出てくると思うわけであります。そうなると、農業経営のために抜本的な先行投資をして農業の生産性を高める、ということを手控えする傾向になるわけであります。そういう面から、私は、農業一つとらえてみても、また国の食糧の自給政策という面から見て、憂うべき状態がくるのではないかと思うわけであります。私は、国民が都市にだけたよって生きていければいいけれども、こういう狭い国でありますから、やはり国の政策全体を見なければならぬわけであります。そういう意味からいって、農業政策の面からいって懸念すべき事態がくるのではないか。むしろ、私は調整地域は要らぬのじゃないかと思うわけであります。なぜこの調整地域を設けるかということです、両方から見はなされるような。そうして十年を想定して、市街化なら市街化地域指定して、それでもどうしても都市人口がどんどん密集してくる割合が多くなって、あふれそうになると想定されたならば、もう一回地域指定をし直してもぼくはいいと思うわけであります。なぜそういうどっちにもつかないようなものを残すのかということについて、私は非常にいま疑問を持っておるわけであります。と同時に、いまの既成市街地内で、遊閑地域といいますか、遊休地域もあるわけであります。これには何ら手を加えておらぬわけであります、税制上でも。強権を発動しておらぬわけであります。そういうことはほっぽっておいて、今度は農地にラインを引いて強制的に取り上げるということは、片手落ちじゃないかと思うのです。既成市街地域に関連して言ったならば、そういう矛盾というものがあると思うわけであります。これに対して、御意見でもいいし御感想でもひとつお聞かせ願いたいと思います。  それともう一つは、この法案に直接関連があるかないか別としても、ちょっとはみでるかもわかりませんが、私は、やはり農地というものは売るためにあるのじゃないと思うのです。税金の問題を広げるわけでありますけれども、昭和三十八年か九年、宅地あるいは田地田畑の固定資産の評価がえが行なわれましたね、評価の基礎が。従来は収益還元方式であったと思うわけでありますけれども、今度は売買実例方式ということになったわけであります。私はこれは非常に問題があると思うわけであります。一体、たんぼ、畑というものは、不動産会社じゃないんだから、売るために存在するものではなく、そこから生産物をあげるために存在すると思うわけであります。したがって、そういう角度からいくならば、当然、農地として経営を存続しておる以上は、その直前までやはり農地の扱いをすべての税制においてなすべきである、こういうように考えておるわけであります、政府のほうでもしかるべきように取り計らうというように答弁はしておりますけれども、なおかつまだ心配だと思うのですね。これは法案じゃありませんから、法律ができると一人で歩きますから、国会でどういう議論をしたから考慮してやらなくちゃということにはならぬと思うわけであります。法律そのものが解釈をして歩いていくのでありますから、その点に対してまだ御懸念を持っておると思うのでありますので、やはりこの点は懸念して懸念し過ぎないですよ。もう一つ懸念されるならば、明確にやはり態度を御表明願いたいものである、こういうふうに考えておるわけであります。  最後に飛鳥田さんに意思表示をお願いしたいのは、私はやはり飛鳥田さんが言われましたように、地方の都市を含めて都市というものは為政者のために、国のためにあるものでもないし、また国がこれを統制するものでもないし、ほんとうのやはり都市というのは地域住民が住みやすいように、地域住民の発意によって、納得によって都市というものは形成さるべきだと思うわけであります。地域にふさわしい、地域の望むような都市づくりというものが必要だと思うわけであります。特に横浜日本開港の地でありますので菜っぱ一からげ、かん詰め料理のように国が押しつけてなさるべきものじゃないと思うわけであります。したがって、全部何というか、地方自治体にまかせるということになったとしても、これはやはり開発計画、能力のある自治体とない自治体もあると思うのですね。小さい自治体では、少なくともこれは私見ですけれども、やはり人口十万人くらい持っておる自治体であるならば、ある程度開発計画なり都市計画のやはりスタッフというものが全然ないとは言えないと思うのであります。したがって、やはり人口十万人以上くらいの都市については、やはり計画は県知事とか国とかではなく、国のほうでは調整事務とかあるいはお金の心配はしてもらうとしても、計画自体はやはり地方自治体に一切おまかせすべきである、こういうように私としては考えるわけであります。飛鳥田さんも大体同意見のようでありますが、ただ私の言っておるのは、人口十万人以上くらいの都市については、当面やはり自治体の意思に計画開発、こういうもの一切をまかすべきである、こういうような私は考えを持っておるわけでありますが、これに対する御感想でもありましたら、ひとつお述べ願いたいと思います。
  25. 井上孝

    参考人(井上孝君) 御質問が私からでございましたので、私からお答えいたします。  ただいまの御意見に対しまして、私も先ほど申し上げましたように、地価の対策ということを全く抜きにしてこのいまの都市化区域、市街化区域市街化調整区域というものをきめるということには、かなり無理があるのではないかと、こういうふうに思うわけでございます。しかしながら、それに対していろいろな対策を宅地審議会でも示唆いたしておるわけでございますが、やはりいずれからかそれにとりかからなければならない時期ではないか。いまこのままの形で市街化を野放図にするということは、私はやはり将来のために、どうしてもあるところで踏み切らなければいかぬのじゃないか、私はそれがいまの時期であって、どうしても早くこういう制度を確立すべきであると、こういうふうに申し上げておるわけでございます。しかしながら、それに続くいま御指摘のございましたような対策というものを、宅地審議会の答申の線に従ってやはり一つ一つ具体的にこれを実施に落としていく必要があるのではないかと、こういうふうに思うのでございます。  それから、この区域を、ある区域は使える、ある区域は使えないということのために、それが著しくそのあとで上昇するだろうかという——私は、中央線の沿線で、新しい駅ができまして、そうしてその駅の周辺がいまだになかなか市街化してないわけでございますが、やはりそこの地価というものは、その前後の立川であるとか国立であるとか三鷹であるとか、ああいう前後の空閑地に見合ってやはりそこの地価が出てまいるものでございまして、必ずしもここに新しい市街地ができ——あれなんかは確かに全く新しい市街地が駅の開設によってできるわけでございますけれども、必ずしもそれだけでなしに、やはりほかとの比較において出てくる。したがって、市街化区域が非常に局限されますと、これはあるいは問題があるかもしれませんが、現在私どもが聞いておりますような姿というものでございましたら、私はどうしてもその狭い中にすべてが殺到するというものではないのではないか、そういう意味で私はこの著しい地価の上昇はないのではないか、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  26. 池田斉

    参考人池田斉君) ただいまの御意見につきましては、私も全く賛成でございまして、第一点の問題につきましては、先ほど一つの市町村を市街化区域調整区域に分けるということが、住民の非常に複雑な様相なりあるいは気持ち、将来の展望、いろいろ勘案いたしますと、これは非常にむずかしい問題で、なかなか分けること自体はできない、かりにやってもこれは旧市町村単位ぐらいで線を引くのが精いっぱいであって、そのこと自体もむずかしいのではないか、こういう感じが現実考えますと出てくるわけでございまして、一つの町村を二つに割るというこういうなまなましいことが、都市計画法の施行と関連して可能かどうか。むしろいまお話ありましたように、できるだけしぼることは好ましいわけだと思いますが、やはりある程度そういう適用の対象になる市町村につきましては、横浜市長のおっしゃるように、これは都市計画地域というものをいろいろな観点から、特に市街化地域、これだけをきめて、あとはやはり差別をつけない、農業地帯として守っていく、こういうことのほうが実際の適用から見て現実的ではないかと、こういう私も感じを持っております。なお、市街化地域指定をされた場合にも、これは第二の問題につながるわけでございますが、私も基本的に四条、五条をはずすことは反対でございます。あのことがあるために、結局いわゆる農地なり農業というものが、先ほど来お話がございましたように、いろいろな公害その他の問題から守られ営農が続けられる、そしていわゆるブローカー的な形での仮需要の場合には許可しない、そういう方針で、またほかのいろんな農業上の政策がそこに加えられて農業が守られる、こういうことが農地法の転用との関連であるわけでございますので、これは何としてもひとつ守ってもらう。ただ結局市街化地域をしぼるという基本的な観念としてはいいのですけれども、現実的にはこれがかなり広がるというようなことも想定をいたしますと、その中におきますところの農業というものはある程度期間は続く、しかもそこには相当優良な農地もあり優良な農家もある。こういうものが一ぺんにはずされるという問題は、どうしてもわれわれは承服ができないわけで、転用をはずす場合も、全体が一ぺんにでき上がるわけじゃないのですから、国づくりというものは、具体的な計画化といういろんな条件が整って具体的な認可がおりる、というような一つの段階まで農地の転用を残す、こういう形で農業を守るというささえが一つないと、これはブローカー等が暗躍をするという問題、そのことが、先ほどお話がございましたように地価の高騰に当然つながると思うので、その辺を含めてもう少しきめのこまかい現実適用の段階を考えて、東京で観念的に頭の中で都市計画を描いてやるということの法律については、もう少し私はきめのこまかい注意が必要ではないか、こういうふうに考えます。  なお、税金の問題も御指摘のとおりでございまして、これはいままでの審議の経過におきまして、農地として農業を営んでおる以上は、固定資産税につきましても相続税につきましても、現在のほかの地域の農地と差をつけないのだ、こういうことは言っております。しかしその中におきましても、たとえば固定資産税の場合におきましても、客観的な市街化地域の条件が整備されるまではとあるが、一体客観的な市街化地域の条件が整備されると、こういうことを一体どういう形で具体的に把握をするか、この辺の問題になりますと、非常にものの見方がまちまちになってまいります。特に税務当局はできるだけ取りたいというような考え方に立ちますので、非常にその辺があいまいでございますので、御指摘のように非常に心配いたします。したがってこの辺の問題は、もう少し詰めた形でしっかりとひとつ念を押しておいていただきたい。また相続税の問題等につきましても、これは現在の相続税そのものに非常に私は問題があると思います。少なくとも農民にとって農地というものは、これはなるほど財産的な一面はございますけれども、基本的にはこれは農業の生産手段でございます。したがってこれは税金の対象として取る場合は、いまお話がございましたように、これは収益還元価格と申しますか、その範囲での税金が、これが農業経営の条件の中から見れば限界でございます。その限界をこえていわゆる財産とみなしてこれを今日取っている。そういう中にもある程度の配慮は払われておりますけれども、そのこと自体にも問題がございますけれども、なお市街化地域の農地ということになりますと、いま申し上げましたような何か抽象的な、客観的とは申しますけれども、非常に観念的な条件の整備、この辺を基礎にして税金をかけるかかけないかをきめるのだ、こういうことでございますので、非常に不安に感ずるのであります。その点はひとつくれぐれもこの委員会におきまして、十分ひとつ政府にこまかい点まで含めまして念を押しておいていただきたいと、特にお願い申し上げるわけでございます。
  27. 飛鳥田一雄

    参考人飛鳥田一雄君) あくまでも都市計画がだれのために行なわれるかということを考えてみますと、直接勤労市民に責任を背負っております自治体に、大幅に計画設定あるいは実行についての権限をゆだねていただきたい、こう私は思います。ただし、いま井上先生のお話のありましたように、人材の点でかなり私たちは貧困を感ぜざるを得ない。横浜のような二百万の都市ですら十分だとは思っておりません。この点についての御配慮をいただきながら、同時に財政的な御配慮をいただきながら、ぜひ自治体におまかせいただきたい、こう思います。  そこでちょっと、御質問になかったのですが、申し上げさせていただきたいと思いますのは、一応自治というのは、私は二重構造だと実は考えております。道路を直してくれ、下水を直してくれ、保育所がほしい、学校を建ててくれ、緑がほしいというようないわゆる家庭生活を中心にいたしました部分の自治と、もう一つはその上位概念として、横浜から東京に一日に三十万くらいの人が通っている、川崎から横浜へ十万人くらいの人が仕事に参ります。こういうふうにしてそういう家庭生活を中心にした自治と、ここではいわゆるカシの木の下の民主主義というものが行なわれるでしょう。しかしそれは大事でありますが、同時に東京、川崎、横浜を含めた勤労市民の活動の場としての自治があるんじゃないだろうか。これは首都圏と普通言っておりますが、この首都圏を私たち横浜に住んでいる勤労市民の活動の場と考えております。この場合の自治についてのお考えが、どの法案を見ても、全然ございません。たとえばこれを見ますというと、道路あるいは高速鉄道、地下鉄、こういう問題について都市計画はきめなければならない、こうあるわけです。あるいはまた水道の問題についてもそうであり、あるいは流通業務団地についてきめろ、こう書いてあります。これを私の横浜だけできめるわけにまいりません。当然美濃部東京都知事と御相談をいたさない限り、十分なものはできないわけでございます。川崎の市長とて私と相談する、あるいは美濃部知事と相談する、場合によると千葉県の知事と御相談をする、こういうことでございませんと計画決定というものはできないわけです。そういう意味で言ってみれば、市民の活動圏というふうに首都圏をとらえてまいりますと、個々の自治をある程度考えいただけないだろうか。ところが都道府県にまたがった問題は、建設大臣と市町村がきめるという形になっておりまして、まあたとえば私と美濃部さん、川崎市長と美濃部さん、こういったお話し合いが、そこできまっていく、いわゆる住民あるいは広義の住民自治というものが、この計画決定の中に取り入れられていくルートが、実はできていないわけであります。そういうものも十分運用の中で御尊重をいただきたい、こう私は思っておりまして、この点はつけ加えて住民自治を活動圏という形で上位概念、拡大概念として考えていかない限り、もう現代の都市生活はあり得ないのでありますから、この問題が首都圏整備法との関連においてどうなるのか、この点も実はわからないわけです。そんな点も御配慮をいただいておきめをいただきたい、ということをつけ加えさせていただきたいと思います。
  28. 大河原一次

    大河原一次君 たいへんざっぱくな質問になるかと思いますけれども、梅原参考人池田参考人お二人にお聞きしたいと思います。最近の私、農業事情を具体的に承知しておりませんが、皆さんすでに御承知のように五年前ですか、農業基本法が制定されまして、いわゆる選択的拡大の方向がとられました。あるいは構造改善計画がとられて、従来までの非常に米麦に重点を置いたその米麦も、どちらかといえば軽視されたという形で、米麦中心から果樹、畜産、園芸の方向に農政が移ったことは事実であります。私はどちらかといえば率直に申し上げますと、やはり日本の九千万国民の食糧を担当すべきものは、やはり日本の農民の手によってこれをまかなっていかなければならぬという、そういう考え方を固持して持っているわけです。それはもう古いのではないかという御意見もあろうかもしれませんが、今後の世界の食糧事情は御承知かもしれませんが、四年前でございますか、世界食糧宣言なるものが出されまして、東南アジアを中心とする後進地域において、世界全人口の三分の一が食糧の飢餓状態に今後置かれるだろう、こういうことが発表されました。いわゆる世界食糧白書といいますか、食糧宣言が出ております。私は今日の日本都市化が急速に進んでおる現実であります。今後二十年後におきましては、日本人口は一億三千万になるだろう、東京都も十年を待たずして、これまた千五百万になるだろう、こういうことが言われてきた。しかも、その中でその八〇%が都市化されていく、市街化されていくというこういう現状をながめまして、一面にはいま申し上げましたように、日本もやがては世界の全人口の三分の一の仲間入りをするのではないか、こういうことを私は非常に今日憂え、日本の将来の食糧問題というものをあわせて考えないと、この都市問題というものは簡単に考えられないわけであります。そこで農業団体の皆さんが特にお考えになっておられると思いますが、一体日本の食糧ですね、絶対量として特に米麦を中心として幾ら確保すればいいんだ、同時にこれに対応するためには、農地をどれだけ絶対量としては確保しなければならぬのであるか、私は特に憂うるのは東南アジアを中心として、あるいは今日激動する世界の状態を考えましたときに、食糧の安全供給、安全確保ということに対する見通しというならば、これは農林当局といえども完全に見通しはだいじょうぶであるということは言えないのではないか、こういうことを考えましたときに、やはりいま申し上げましたように、日本九千万国民の食糧は日本の農民の手によって確保する、という一応の基本線というものは確保すべきではないか、そのためには絶対量の農地は幾ら、もちろん国際貿易関係もございまするから、外国からの輸入も当然しなければならぬでありましょう。しかし、だからといって外国に多くをこれから依存するということは非常に危険ではないか、かように考えるわけであります。したがいまして、農業団体特に全日農の皆さんあるいは農業会議皆さん、それぞれ同じ農業団体であっても、多少考えが異なっておるのではないか、そういう点からお伺いするわけでありますが、率直に言って一体絶対量の農地というものはどれだけ確保すべきである、それに対応する食糧はどれだけ確保すべきであるという、こういうことのお考えをお持ちでありましたならば、今後の私は都市政策を進める上において、絶対量の農地の確保というものは非常に重大なものじゃないか、かように考えておりますので、両参考人の御意見を伺いたいと考えております。以上であります。
  29. 梅原昭

    参考人(梅原昭君) いま、ここで検討の対象になっておりますのは、都市問題をどういうふうに解決するのかということのために、都市計画法の問題が議論されておるわけでありますけれども、広い立場から見ました場合に、私は土地問題の中で先ほど来土地価格の問題が出ておりますが、土地価格が都会において非常に高騰している。そのために都市計画が非常にやりにくくなっているということが話に出ているわけでありますが、この問題を裏返しをすれば、山村におきましては農地を売ろうとしても買い手がないという事実と、裏はらの関係になっているのだというふうに考えております。お話ありましたように、どんどん農村部から農業人口が減っているわけです。農業人口がどんどん減っておりますけれども、それでは減ったのに見合ってそれだけの農業の生産性というものは上がっているのかというと、残念ながら上がっておりません。このままの状態でいきますと、食糧問題としてかなり大きな問題が出てくるのではなかろうか、というふうに考えております。お話ありましたように世界的に見ました場合に、食糧事情というものは決して十分だ、潤沢だという状況にはありません。三年前でしたか、四年前でしたか、米不足というような事態も起きまして、あまり公表はされておりませんでしたけれども、一時、米を確保するために農林省あたりがやっきになったという時期もございました。そういうぐあいですから、一がいに生産性との関連がありますから、農地が幾らなければならぬということは、一がいに断定しがたい問題だと思いますけれども、私など基本的にはいまの農地面積を大幅にしかも短期間の間に減らすということになりますと、これは生産性の向上というのがこれに見合ってまいりませんので、たいへんな問題が出てくる。特にいまの都市計画法との関連で申し上げますと、一番農業生産性の面で被害を受けますのは生鮮食料品の面ではなかろうか。都市近郊がどうしてもたくさんつぶされるというふうな関係にありますので野菜、果実あるいは牛乳であるとか、そういうふうな生鮮食料品の打撃が一番大きい。それに対する対策が一体どうなるかということは、さっぱり政府全体としても検討されておらないようであります。こちらの都市計画のほうで農地をつぶすほうだけがどんどん先行してまいりまして、つぶされない面での農業の生産性をどういうふうにあげるか、特にその中での生鮮食料品というものの足りない部分をどういうふうに補っていくかということが、後手後手に回ってまいりますので、その間のギャップというものは、今後の国民生活の中でかなり大きな問題になってくる。したがって、土地問題だけを切り離して検討するのではなくして、大局的な角度からすれば、国土全体をどのように有効に利用していくかという問題、山村あるいは純農村人口が減っている、そうしてそこでの農業はあまり生産性があがっていかない、この辺の問題を基本的に解決をしてまいりませんと、ほっておけば人口がどんどん大都会へ集中してくる。それを受け身の立場で、全体としてそれをどうするのだという立場だけでは、基本的な解決にはなっていかないのじゃないか、私このように考えております。
  30. 池田斉

    参考人池田斉君) 農政の根本的な問題につながり、それの展望との関連に相なるわけでございまして、簡単に——推定は慎重でなければならないと思いますが、いまお話しがございましたように、わが国の食糧問題を、日本農業の中で一体どれだけ守っていかなければならないし、それに対する土地問題を含めて長期的な展望についてどういうめどをつければいいかと、こういう問題になるわけですが、すでに御案内のように、わが国ではもう八〇%を割るような自給率に相なっておりまして、米等につきましては、どうにか完全自給という態勢がございますが、これも、まあ今後の技術水準の開発なり、いろいろな問題を含めまして、現在程度の水田があれば生産性の向上、特に反収の向上との関連で人口増をまかなっていけるかどうか。この辺は、農林省もわりあいに楽観的な展望を持っておるようでございますが、やはりもう少し詰めてみなければならないのではないか。少なくとも一国が独立をしていくというような場合に、食糧の基本になるものにつきましては、日本の国内においてできれば完全自給、できなくてもそれに近い線を守る、こういう国の基本的な態度がなければならないわけでございまして、基本法に基づきまして選択的拡大というようなことで、畜産等は非常に伸びており、なるほど卵は完全に自給をされ、また、豚肉等におきましてもそういう状態でございますけれども、その裏は膨大なえさの輸入にささえられておる。特に、また大家畜になりますと、そういう問題につきまして草地その他の問題等をどうするかというようなことで、えさをある程度完全自給ということは、これはまあ観念論になるかもしれませんが、相当程度自給すると、こういうことを含めて、基本になるわが国の食糧を相当程度自給していく、米はもちろんのことでございますが、そういうことになりますと、私は技術水準なり開発なり、いろいろそういう問題のテンポが今後進みましても、相当程度のやはり農用地、これは採草地等も含めてなると思いますが、確保をしなければならないだけではなくて、むしろ、積極的に造成をしなければならないと、こういうふうに考えるものでございます。過去十年間に約三十万ヘクタールの農地がつぶれ、またその程度のものを土地造成をする、現状を何とか守っていこうと、こういうことが政府態度であるようでございますが、しかし、今後都市計画の進展との関連で、むしろいまのような農林省の政策では、なかなかつぶれるものを補うというような程度をやっていくそれ自体においても、だんだんとあやしくなるのではないか。まして大体つぶれていくところは、優良農地でございますので、開拓をして広げていくというところは生産力が低い、こういうような状態であると思いますので、やはり現状を守るにしても、造成をむしろ倍なり三倍していかなければ、ほんとうに生産は守れない。さらにえさの問題等を考えますと、もっと積極的な形でないと、私は基本的な食糧につながる問題を、自給の体制に持っていくことは困難ではないかと、そういうような考え方をとって、そういうことが基本的に農政の基軸として日本農業を運営するという国の基本的な政策を、実は要求いたしたいというふうに考えるわけでございますが、これらの問題につきまして、農政審議会等におきましても、いまだに基本的な基幹作目についての長期展望に対して、いろいろな試算はあるようでございますけれども、政府にその基本的な見通しが立っていない。われわれもはっきりとした形でそういうものを承知していないというようなことで、基本法に基づく選択的拡大の政策につきましても、農民はやみくもの中で長期の国のささえということのない姿の中で、構造改善事業等が今日行なわれている、きわめて遺憾に考えるわけでございます。その辺の問題を含めまして、きょうは、ちょっと離れました根本問題でございますので、この程度でひとつお許しを願いたいと思います。
  31. 藤田進

    委員長藤田進君) 他に御発言もなければ、参考人に対する質疑は、終了したものと認めます。  参考人方々には、御多用のところ、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  両案の審査は、本日はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後三時四十六分散会