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1968-04-23 第58回国会 参議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月二十三日(火曜日)    午前十時二十三分開会     —————————————    委員の異動  四月十八日     辞任         補欠選任      増原 恵吉君     谷村 貞治君      黒柳  明君     和泉  覚君  四月十九日     辞任         補欠選任      谷村 貞治君     増原 恵吉君  四月二十二日     辞任         補欠選任      和泉  覚君     黒柳  明君  四月二十三日     辞任         補欠選任      杉原 荒太君     近藤英一郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         三木與吉郎君     理 事                 木内 四郎君                 増原 恵吉君                 山本  杉君                 森 元治郎君     委 員                 鹿島守之助君                 近藤英一郎君                 廣瀬 久忠君                 岡田 宗司君                 羽生 三七君                 大和 与一君                 黒柳  明君    国務大臣        外 務 大 臣  三木 武夫君    政府委員        外務省条約局長  佐藤 正二君    事務局側        常任委員会専門        員        瓜生 復男君    説明員        外務省アジア局        外務参事官    金沢 正雄君        外務省条約局外        務参事官     高島 益郎君        郵政省郵務局次        長        石井多加三君     —————————————   本日の会議に付した案件理事補欠互選の件 ○公海に関する条約締結について承認を求める  の件(内閣提出衆議院送付) ○領海及び接続水域に関する条約締結について  承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○アジアオセアニア郵便条約締結について承  認を求めるの件(内閣提出) ○日本国シンガポール共和国との間の千九百六  十七年九月二十一日の協定締結について承認  を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○日本国とマレイシアとの間の千九百六十七年九  月二十一日の協定締結について承認を求める  の件(内閣提出衆議院送付) ○国際情勢等に関する調査  (国際情勢に関する件)     —————————————
  2. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  理事補欠互選についておはかりいたします。  この際、理事が一名欠員となっておりますので、その補欠互選を行ないたいと存じます。  互選は投票の方法によらず、先例によりまして委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 御異議ないと認めます。  それでは増原恵吉君を指名いたします。     —————————————
  4. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 公海に関する条約締結について承認を求めるの件  及び  領海及び接続水域に関する条約締結について承認を求めるの件を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から提案理由説明を聴取いたします。外務大臣
  5. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ただいま議題となりました公海に関する条約締結について承認を求めるるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  公海に関する条約は、国際連合による国際法法典化事業一環として、国際連合主催のもとに一九五八年二月二十四日から同年四月二十七日までジュネーブにおいて行なわれた海洋法に関する国際会議において採択されたものであります。この条約は、従来国際慣行によって規律されてきた公海制度に関する基準等成文根拠を与えるものでありまして、そのおもな内容としては、公海の自由、船舶とその旗国との関係沿岸国追跡権、海賊の取り締まり等に関する規定が含まれております。多くの国がこの条約当事国になることは、海洋における諸国間の関係を円滑ならしめ、国際社会全体の利益に資するものと期待され、わが国としても、この条約当事国となることによりまして、国際法法典化事業に寄与することとなるとともに、公海制度等に関してわが国と諸外国との関係が一そう明確な基準にのっとって円滑に処理されることとなり、これがひいては世界の主要な漁業国及び海運国たる地位を占めているわが国利益に資することにもなると認められます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、領海及び接続水域に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  領海及び接続水域に関する条約は、国際連合による国際法法典化事業一環として、国際連合主催のもとに一九五八年二月二十四日から同年四月二十七日までジュネーブにおいて行なわれた海洋法に関する国際会議において採択されたものであります。この条約は、従来国際慣行によって規律されてきた領海及び接続水域制度に関する基準等成文根拠を与えるものでありまして、そのおもな内容につきましては、領海の幅については、会議参加国間の合意が成立しなかったため規定が設けられていませんが、領海測定のための基線、無害——航行権及び接続水域に関する規定が含まれております。多くの国がこの条約当事国になることは、海洋における諸国間の関係を円滑ならしめ、国際社会全体の利益に資するものと期待され、わが国としても、この条約当事国となることによりまして、国際法法典化事業に寄与することとなるとともに、領海及び接続水域制度等に関してわが国と諸外国との関係が一そう明確な基準にのっとって円滑に処理されることとなり、これがひいては世界の主要な漁業国及び海運国たる地位を占めているわが国利益に資することにもなると認められます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  以上二件につきまして、何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  6. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 以上をもって説明は終了いたしました。  二案件に対する質疑は後日に譲ることにいたします。     —————————————
  7. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) アジアオセアニア郵便条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願いま元
  8. 森元治郎

    森元治郎君 アジアオセアニア郵便条約日本調印をして、そうして批准を今日までしてこなかったのはどういうことなんですか。
  9. 高島益郎

    説明員高島益郎君) わが国は、このアジアオセアニア郵便連合ができた当初から関心を持っておったわけでございます。ただ、各国加盟状況を見た上で、いろいろな考慮を払って加盟する準備をしてきたのでございますけれども、これまでのところ、わずか四ヵ国という加盟状況で、そういう状況のもとに日本が入ってもはたして効果があるかという観点から、実は批准を促進しなかったわけでございますが、やはりこのアジアオセアニア地域におきまして日本の占める地位にかんがみまして、ぜひとも日本加盟しなければほかの多少の関心を有する国も加盟してこない、したがって、アジアオセアニア地域における郵便協力関係が促進されないという考慮をいたすに至りまして、特に来年秋に万国郵便連合の五年ごとに開かれます大会議が東京に招集されますので、そういった特別の考慮を払って今回加盟することにいたした次第でございます。特にオーストラリア及びニュージーランド日本と同様な関心を持っておりまして、日本加盟いたしますればこれに続いて加盟の用意があるというように聞いておりますので、そういう観点からこの際促進するということに決定いたした次第でございます。
  10. 森元治郎

    森元治郎君 ただいまの説明はこの条約をつくるときに集まったときと同じであって、そのときも、日本がすみやかに調印して批准をすればオーストラリアニュージーランドも入って、日本条約調印した時点で満足するものができたと思うんですね。いまの説明一つも納得できないんだが、うかうかとして参加しなければならなかった理由はどこにあるんですか。君たち小さい国と相談したってたいした郵便物もない、航空郵便物もない、小包もない、まだ早いと言って、行かないほうがいいじゃないか、ぬけぬけと、むしろサインしておいて、どらも相手が小さい国ばかりでたよりにならないからしばらくうっちゃっておこうでは、少し軽率だな。どうですか。
  11. 石井多加三

    説明員石井多加三君) お答えいたします。  ただいま外務省のほうからお答えがありましたとおりでございますけれども、ここ二、三年の間に、私たちといたしましても、アジアオセアニア連合加盟しておる国、未加盟の国、双方との接触におきまして、国際会議等でも接触いたしておりまして、それらとの接触の過程で、われわれの経験では、やはり私たち日本がこれに加盟すれば未加盟国も相当これに入ってくるだろうということが大体確信を持って言えるような状態になっていると思いますし、特にオーストラリア及びニュージーランドは、当初この加盟を保留いたしましたときにも、日本同一歩調で進もりということを申しておりまして、その後の会議等におきましても、しょっちゅうあの加盟についてはどういうふうにするかというふうな話をわれわれのほうにいたしておりますので、この連合加盟が実現いたしますと、おそらくオーストラリアニュージーランドも直ちに加盟するものと期待いたしておる次第でございます。
  12. 森元治郎

    森元治郎君 私の聞きたいのは、そんなら、なぜ初めからアジアオセアニア郵便条約をつくる会議参加したかということ、初めから、いま批准をした四ヵ国がどんな国であるかということはわかっている。それで、結んでも実効のないこともわかっている。大量の郵便物の往来もない。それなら、初めから参加しないで、しばらく待っていたって一向に差しつかえないと思うんだが、参加はしておくわ、批准はしない。大体この万国郵便連合の中には、限定連合と言いましたかね、アラブとかアフリカとか北ヨーロッパ、みんなそれぞれの国のうちから、風俗習慣が一致したような適当なブロックなんだな。アジアオセアニアというと赤道の北と南で、海洋国で、それぞれ文化の程度も違う、文明程度も違うというものを一緒にやるということはむずかしいのだな。こういうことでニュージーランド豪州日本というのと、タイとかフィリピンとかというものは、たいへんすべての点で違う。これを単に地域限定だと言って、アジアオセアニアと言っても非常な広い地域だよ、これは。そもそもこれは無理があったと思うんだな。だから、批准をしておる四ヵ国だけでまずつくって、今度これに参加するというのなら私は意味があると思うんですよ。ところが、そういうことにもかかわらず初めから参加していて、気乗り薄で、参加して調印はする、そしてあとになってから調印して、残る国が参加するだろうと言っても、残る国と言ったって日本自身オーストラリアニュージーランド、三国でしょうよ。そこでいろいろ相談しているなんという人をばかにしたようなことで、初め四ヵ国がつくりあとから参加する、これのほうが至当だったと思うんだが、それほど急がなければならなかった理由はどこにあるのですか。
  13. 石井多加三

    説明員石井多加三君) もう少し具体的に申し上げますと、この連合加盟いたしますと、条約に書いてございますように、加盟国間で交換されます郵便物には原則として国内郵便料金と同額または外国郵便料金の六〇%以下の料金の適用を受けるということもございますし、これは利用者にとってはそれだけ有利になるわけでございます。また、船便によって仲介国を通じて送られます通常郵便物につきましては、仲介国に払います運送料でございますが、これは継越し料でございますけれども、原則として免除になるわけでございますし、こういった面では支払う額が減少いたします。したがって、また支払いに伴う事務も減るわけでございます。またアジアオセアニア地域全体の職員支換というようなことも現在実行上いろいろ考えておるわけでございますけれども、この連合一つ目的の中にそういったことが掲げられておりまして、そういったことも今後の郵便業務全体の水準向上に役立つことになると思います。いろいろ書いてありますことはあまり実益がないじゃないかというお話でございましたけれども、われわれは非常に実益があると考えておりますし、また、ただいま御指摘ございましたように、確かに非常にアジアオセアニアといいますと、七つあるほかの限定連合と比べますと一番広い地域ではございますけれども、最初アジアだけでこの限定連合をつくろうというお話でございましたところへ、豪州及びニュージーランドがぜひ入れてほしいというふうな話で、アジアオセアニア全体の郵便連合をつくろうというふうなことになっておるわけでございます。すでに世界の各地域におきまして、他の地域においてすでに限定連合ございますし、今後の国際会議その他の面で、わが国のみならず、このアジアオセアニア全体の郵便事業をより向上さしていくためには、やはり限定連合をつくっておくことが望ましいものと考えておる次第でございます。
  14. 森元治郎

    森元治郎君 ただいまの説明は、条約調印してすぐ批准さるべき十分の理由を備えた御説明だと思うのだが、なぜ延びたのかということ。批准を、そんなけっこうなものなら、なぜいままでうっちゃっておいたのか。ニュージーランド等になぜ相談しておくれたのか。条約局長、これはどうなんだ。
  15. 石井多加三

    説明員石井多加三君) 率直なところを申し上げますと、アジアオセアニアに散在する万国郵便連合加盟国各国とも、この限定連合参加したらどうかと、最初から重大な関心を持っておったわけでございますけれども、他の国の動きを見ると申しますか、やはり財政上の負担も若干必要なわけでございますし、いろいろ他の国の動きを見ようというような空気が非常に多くて四カ国で発足したというようなかっこうになったわけでございます。その点、わが国といえども同一の立場をとっておったわけでありますが、先ほど来申し上げましたように、やはり一番ウエートの高い、郵便事業の上でアジアオセアニア地域の一番中心にならなければならないわが国がこれに入ることによって、その連合自体ウエートも上がってきますし、また、わが国もそれによって利便をこうむるということで、この中にわれわれも入っていこうではないかというふうな積極的な考え方に変わったというのが実情でございます。
  16. 森元治郎

    森元治郎君 これは日本は現条約調印はしたが批准はしないのでしょう。入っていって大いにリードしょうということで入ったんだから、批准してリードしていったらいいんじゃないのですか。いままで四年も五年ももたもたして、六二年からですか、何年こうやってうっちゃっておいたんです。その理由一つ説明がないんです。けっこうなものなら、調印はしたんだし、けっこうだと言うなら、国会にかけて承認を求める手続を直ちにとるのが普通なんでしょう。小さい問題のようだけれども、一体取り扱いがあまり軽々しいような感じがするんです。結んどいて、たいした理由がないのに延ばしている。仲間と相談すると言うが、その仲間ニュージーランドオーストラリア調印している。何かはぐらかされているみたいな感じがするのだが、そうじゃない、けっこうだと言うなら、なぜ延ばしたのか。もっと明快に返事してください。明快に返事すれば承認してやる。説明できないですか。
  17. 石井多加三

    説明員石井多加三君) お答えいたしますが、ただいまの、なぜいままでほうっておいたかと申されますことにつきましては、われわれといたしましては、当初からこれに入らないということを決意したわけじゃなくて、入るつもりで情勢を見ておったわけですけれども、当時は四ヵ国程度しか加盟しないというような状態では、これに入りましてもあまり効果がないのじゃないかと、非常に消極的な態度をとっておったわけでありますが、われわれとしては、その後の世界各地限定連合等動きを見ますと、やはりわが国にとりましても、こういった限定連合を強化していくことが、アジア地域のみならず、わが国にとっても非常にプラスになるという観点で積極的に加盟しようというふうに考えてまいったわけであります。
  18. 森元治郎

    森元治郎君 調印しているんだろう。要は、全然新たにできておるものに日本が入っていくのではなくて、調印しているんだろう。だから、なぜ批准手続をとらないかということなんです。
  19. 石井多加三

    説明員石井多加三君) ちょっとその点につきまして申し上げておきますが、一九六一年にこの基本条約最初マニラにおきまして締結されたわけではございますが、そのときの条文とただいま私たちが入ろうとしております現在の条文とは変わってきております。一九六五年にマニラにおきまして第一回の大会議——会議と申しましても、いまの四ヵ国を中心にして他のオブザーバーを入れましたところの会議でございましたけれども、その一九六五年の大会議でできました条約にいま加盟しようということでございまして、当初の条約とは変わってきていることを申し上げておきます。六五年の分には調印いたしておりません。
  20. 森元治郎

    森元治郎君 いずれにしても、取り組み方が本気じゃないということ。それから、大体アジアオセアニアなんていう関係がちょっと無理な点もあるんじゃないかと思うんです。だけれども、まあ、日本は何でも手を出したがる。仕事を取り合ったりして、死守しようとするし、役人は条約一つでもつくれば昔は勲章か何かあったから、いまはくれないけれども、昔は条約をつくればくれたのだ。そんな悪いくせがあって、何でもつくれという、そういうことでは困るので、今後もっと真剣に取り組んでもらわなければならぬということを御忠告して終わりにするが、ただ、もう一つ万国郵便連合の大会議が来年の秋かにあるので、日本議長国になるんだろうが、日本はかっこうつけようと、おまえのところはやってないじゃないかと言われたらたいへんというので、あわててやるのは醜態ですよ。安保条約だというと国会はかっかとするけれども、こういう小さい問題は熱を上げない。たるんでるんでしょう。大臣、そうでしょう。
  21. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) たるんでいるとは思いませんけれども、やはりこういう点があるのですね。日本が、各国はどういう態度をとるか様子を見ようというような点があるのですね。その他、国際会議の場合に、やはり日本調印をした場合に、できるだけ調印をすれば批准をするというのがほんとう態度でしょうね。ただ、あまりアジア地域においてこれに対して加盟する国が少なければ、目的を達成できぬという、ただひより見というのではなくして、目的を達成するためには相当多数の国が参加する必要があるという必要論もあります。ただ様子を見るというのではなしに、そういう点からいままで延びたと思うのだが、やはりこういう国際会議には、調印をしたらやはり批准は早くするということがほんとうだと思います。同感であります。
  22. 羽生三七

    羽生三七君 一つだけいまのことで、アジアオセアニアのことではないのですが、モンゴルとの郵便関係も非常に悪い状態になっているというのですが、どこを経由するか、中国経由ですか、これはどう改善するのか。それから、モンゴルとの国交問題も問題になっておりますが、どうするのか。二点だけ、簡単でよろしい。
  23. 石井多加三

    説明員石井多加三君) お答えいたします。モンゴルは、現在UPU——万国郵便連合加盟国でございまして、万国郵便条約のほかの小包約定にも加入しておりますので、同国との郵便交換UPU条約によって行なっております。現在、現実には同国あて郵便物通常郵便物小包郵便物ともソ連経由で送達しております。改善いたしております。
  24. 岡田宗司

    岡田宗司君 この間モンゴルから、日本モンゴル友好協会の総会に来たのです。そのときに、こちら側の人がいつもモンゴル手紙等を出す。これがいままで中国経由で行っておって、時間がかかって、着いたのだか着かないのだかわかるまでにもたいへんだった。そういうことで、向こうも非常に改善を希望していたし、こっち側も、まず友好を深めていく上に、あるいは国交回復に至る前にそういう問題を解決したいということが両側の非常に希望であった。それからまだ一ヵ月もたっていないのですが、いっそういうふうに改善したのですか。
  25. 羽生三七

    羽生三七君 みんな来たのは一ヵ月ぐらい前ですよ。
  26. 岡田宗司

    岡田宗司君 いつ改善されたのです。改善されてソ連経由になっていると言うけれども。
  27. 石井多加三

    説明員石井多加三君) お説のとおり、つい最近までは中共経由で参っておりまして、そのために非常に郵便物がおくれておりまして、向こうのほうも、お互いに不満の状態であったわけでございます。ことしの、つい先ほどの四月から改正いたしたのであります。
  28. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでわかりました。
  29. 羽生三七

    羽生三七君 国交はどうですか。
  30. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いまモスクワで中川大使との間で賠償問題などの問題がありまして、それで話し合いをしているというのが現状でございます。
  31. 羽生三七

    羽生三七君 これは条約に直接関連ないからまたの機会にしますが、向こうでは必ずしも賠償問題を固執してどうこうということはないということを、来た連中は言っておったようです。御参考までに。
  32. 岡田宗司

    岡田宗司君 これも条約に直接関係ないのですが、とにかく日本中国とも、あるいは北朝鮮とも、また北ベトナムとも、こういう未承認国との間にやはり何らかの交通があって、そうして郵便物小包等が行き来しているわけですけれども、やはりいろいろな面で不便もあるので聞いておきたいのですが、こういう国交を持っていない国との間の郵便物交換等について何らか改善の道を講じられておるのかどうか。いまのモンゴルの場合は、四月以降そのルートが変わることによって早くなったが、そういうことを積極的に行なう意思があるのか、また、行ないつつあるのか、その点どうでしょうか。
  33. 石井多加三

    説明員石井多加三君) お答えいたします。  ただいま御指摘になりました北朝鮮及び北ベトナムとの郵便関係でございますが、北朝鮮との間は、船便によります通常郵便物香港中共経由、またはソ連ナホトカ経由で行っておりますし、それから、航空通常郵便物香港中共経由で送達いたしております。ただ、小包郵便物につきましては交換をされておりませんが、これは香港中共との間に小包郵便業務がございませんし、また、他に適当な仲介国もございません。また、北朝鮮日本との間には小包のための特別な協定もございませんので、いま方法がないわけでございます。それから北ベトナムも、通常郵便物船便によるもの、航空便によるもの、いずれも香港中共経由で送達しておるわけでございますが、小包郵便物は同様交換できておりません。これもほとんど北朝鮮と同様なことでございまして、他に適当な仲介国もございませんし、日本との間にも直接の交渉がございませんので、直接の交換もできていない状態でございます。
  34. 岡田宗司

    岡田宗司君 だから、そういうような状態を何とか国交がなくても改善する道があるかどうかということをお伺いしているのです。全然改善する道がないのか、それとも、改善するつもりがなくて何もやらないのか、どっちなんでしょう。要するに、国交がなければ何もやらないのだ、改善する必要もないのだ、こういうことですか。
  35. 石井多加三

    説明員石井多加三君) お答えいたします。  通常郵便物は先ほど申し上げたとおりでございますが、小包郵便物につきましては、私たちとしてはその気持ちがないのではなくて、いろいろ非公式には連絡の方法を検討をしておりますし、また、向こうにも当たっておるわけでございますが、いままでのところ、これといういい方法、あるいは直接の話し合いがまとまらないというふうな状況でございますので、今後検討してまいりたいと考えております。
  36. 岡田宗司

    岡田宗司君 北朝鮮国交はないけれども、ある程度の貿易がありましょう。それで船が直接行っているでしょう。それから北ベトナムとも交易があって、まあ、日本船は行っていないようですけれども、向こうから日本へ物を運んでいるでしょう。そういう関係がすでに成立をしていて、直接のコミュニケーションは船によって行なわれていて、なおかつ小包郵便物だけは何もできませんというのもちょっとおかしいと思うのですが、どうでしょう。
  37. 石井多加三

    説明員石井多加三君) お答えいたします。  当方といたしましては、相手方にそういった話を持ちかけておるわけでありますが、向こうから一切回答がございませんので、いまのところ、いたし方ないと考えております。
  38. 岡田宗司

    岡田宗司君 ほんとうに持ちかけておるのですか。さっきの話の様子では、あまり持ちかけているとも思われないけれどもね。まあ、それはそれでいいですけれども。  それでは、中共との間はどうなっているのですか。
  39. 石井多加三

    説明員石井多加三君) 中共との関係も同様でございまして、これも三十年から三十五、六年ころまでは、われわれのほうから何回も向こうに対してそういった連絡をとっておるのでございますが、何も返事がございませんので、いたしかたない状況でございます。
  40. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。  別に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  アジアオセアニア郵便条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに御賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  43. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 全会一致と認めます。よって、全会一致をもって本件は承認すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  45. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 日本国シンガポール共和国との間の千九百六十七年九月二十一日の協定締結について承認を求めるの件  日本国とマレイシアとの間の千九百六十七年九月二十一日の協定締結について承認を求めるの件  以上二案件を便宜一括して議題といたします。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  46. 森元治郎

    森元治郎君 まず事実を伺いたいのです。不幸な事件と称するもの、これはわれわれも常識には、第二次大戦中マレー半島、シンガポールなどで日本軍が華僑なんかをたくさん殺したのだというふうには聞いているんだが、一体何を不幸な事件と言うのか、それから、ただ華僑をたくさん殺したというようなことのほかに何かあるのか、不幸な事件というのは複数になっておりますから、いろいろあるでしょう。その間の事情を簡単でいいですから、御説明を願いたいと思います。
  47. 金沢正雄

    説明員(金沢正雄君) 御説明申し上げます。  シンガポールにおきましては、シンガポールの軍事裁判がございまして、このときの英軍検察側が提出いたしました証拠摘要書によりますと、日本軍はシンガポール及び近傍において、昭和十七年二月におきまして、中国人約二千五百人ないし五千人を殺害したといわれております。それからマラヤ半島地域におきましては、クアラ・ルンプールの軍事裁判におきまして、英軍側の提出いたしました証拠摘要書によりますと、日本軍は昭和十七年三月スルンバン地区周辺におきまして、中国人九百九十人を殺害したといわれております。それから、北ボルネオにおきましては、中国人の大量殺害事件といたしましては、ジェッセルトン事件というのがございまして、昭和十八年に中国人の抗日分子約五百名が暴動を起こしたという事件がございまして、日本軍はこれらの暴徒を鎮圧いたしまして、四百二十名を逮捕し、そのうち約三百二十名を軍法会議に送致いたしまして、三百二十名中約二百二十名は死刑、約百名は懲役に服した、こういうことになっております。こういういろいろな事件があるわけでございます。
  48. 森元治郎

    森元治郎君 こちら側ではどんなふうですか。日本側でも、もちろん華僑側からの強い要求があって事件が起きたんですから、こちら側も調べたんでしょう。シンガポールは二千ですか、クアラ・ルンプールは九百九十、それから北ボルネオは死んだ者が三百二十。こっちではこれに対してどんなふうなことを言っておるのですか。
  49. 金沢正雄

    説明員(金沢正雄君) 日本側の資料、これは第一復員省の俘虜関係調査部でございますが、これによりますと、シンガポールにおきましては日本軍は昭和十七年の二月に約五千名、それから二月の末から三月にかけまして約千五百名、これは三月末に約三百名の容疑者を逮捕いたしまして、このうち主として抗日自由隊員及び抗日諸団体の首領並びにマラヤ共産党等の通敵行為者約五千名を処刑いたしまして、約一千名ないし一千五百名を釈放した、こういうことでございます。それからマレー半島地区におきましては、日本軍の資料によりますれば、日本軍は昭和十七年の三月上旬からマラヤ各地区の粛正工作を開始いたしまして、四月末までにスルンバン、マラッカ両州において約千五百名の中国人を逮捕して取り調べまして、その大部分を釈放したということになっております。北ボルネオの、先ほど申し上げましたのは、これは法務省の調査による数字でございます。
  50. 森元治郎

    森元治郎君 シンガポールではイギリスのほうの調べより日本側のほうが多いわけですね、どうですか。
  51. 金沢正雄

    説明員(金沢正雄君) シンガポールにおきましては、英軍の証拠書類によりますと、中国人を約二千五百名ないし五千名殺害したと、こういうことになっております。
  52. 森元治郎

    森元治郎君 さっき五千名と言わなかったろう。二千五百名ないし五千名だとは……。
  53. 金沢正雄

    説明員(金沢正雄君) さっきは五千名と申し上げたつもりですが。
  54. 森元治郎

    森元治郎君 この殺された人数を概略見ると、片方のマレイシアには二千五百万マレイシア・ドル、それからシンガポールには倍の五千万シンガポール・ドル、これは人数が基礎になっていますか。
  55. 金沢正雄

    説明員(金沢正雄君) シンガポールは五千万ドルでございまして、そうしてマレイシアが二千五百万ドルは御指摘のとおりでございますが、シンガポールでは五千万ドルのうち半額の二千五百万ドルが無償になっておりまして、そうしてあとの二千五百万ドルが有償になっておるわけでございます。そうしてマレイシアにつきましては、無償の二千五百万ドルだけがこの協定で約束されているわけでございますが、それ以外に、マレイシアにつきましては一九六六年に円借款の一億六千万ドルの供与をいたしております。で、無償供与につきましてはシンガポールとマレイシアは同額の二千五百万ドル、こういうことになるわけでございます。で、その点は両方の国の大きさも、人口も、御承知のように違うわけでございますが、お互いの間の関係でございますとか、あるいは国民感情、そういうものを考慮いたしまして同額ということにしたわけでございまして、これには必ずしも殺害された数等は基礎になっていないというふうに解しております。
  56. 森元治郎

    森元治郎君 だれが読んでも、この問題これで終わった、不幸な事件の解決は完全に。将来またまた請求するようなことはないとシンガポールの協定では言っているわけですね。こっちは言っていない。マレイシアのほうの協定には将来の保証、約束はないわけです。しかし、これほどもんだ問題だから、その間にはマレイシアとも一納得のできる理由があるんだろうと思うんだが、それを説明してください。
  57. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 森先生の御指摘の点は協定第二条についての、マレイシアの場合とシンガポールの場合の相違に関する御質問だと思います。われわれ、従来この種の協定締結いたします際には、シンガポール協定の第二条と同様な趣旨の協定をすべて締結しているわけでございますが、マレイシアの場合につきましては表現が若干違っております。ただ、マレイシアの場合におきましても、「両国間に存在する良好な関係に影響を及ぼす第二次世界大戦の間の不幸な事件から生ずるすべての問題がここに完全かつ最終的に解決されたことに同意する」ということが書いてございまして、その限りにおきましては、シンガポールの場合と実質については何ら相違はないわけでございます。ただ、シンガポールの場合と違って、そのあとに、したがって今後一切の請求を行なわないという趣旨の規定がないわけでございますけれども、「したがって」以下のことにつきましては、日本とマレイシアとの間におきまして何ら意見の相違がございません。特にマレイシアの場合におきましては、華商連合会とマレイシア政府との間に特別の関係がございまして、非常に最後まで紛糾いたしました。政府といたしましては、シンガポールの場合と同様なことで何ら差しつかえはないけれども、華商連合会との関係において、どうしてもそのことを協定の文言中に書くことにおいては非常に問題なので、その点何とか日本政府のほうで了解してほしいという趣旨の依頼がございました。特に最後の段階で、ラーマン首相から華商連合会に対して特別な書簡が出ております。その要旨を申し上げますと、「華商連合会の立場には関心をよせているが、対日補償要求には法律的根拠のないことを理解すべきである。日・マ友好関係、マレイシアの国際的地位等にかんがみ、華商連合会が政府の下した解決を支持するよう要請する」というような特別の書簡を出しましてこの説得に当たった次第でございます。そういうことでございまして、政府間においては何ら誤解はないわけでございますけれども、特別にそういう華商連合会との政治的な特殊な関係であって、もしシンガポールと同様の規定を置きますると、いかにも従来法律的な賠償要求権があったにもかかわらず、それを日本との関係において放棄せしめられたというふうに誤解されては非常に国内政治上困るという特別な関係があって、こういうことになった次第でございます。
  58. 森元治郎

    森元治郎君 その華商連合会会長から、何てラーマン君に返事したの。一方的に、ラーマンさんの気持ちはわかるが、受けた華商連合会のほうで総会でも開いて、総理の趣旨は了承したとか、何か文書でもあるのか。
  59. 金沢正雄

    説明員(金沢正雄君) その後華商連合会のほうからは、全然ラーマン首相のほうに対しては何ら問題は提起されていないというのが実情でございます。
  60. 森元治郎

    森元治郎君 この問題に関してまた華商側が取り組んだために騒ぎが起こるということは絶対ないと確信していいかね。
  61. 羽生三七

    羽生三七君 関連して。そこで、そういうことが起こらないかどうかということとともに、起こった場合でも、それは先方の国内問題で、政府間の関係で新たに問題が起こることはないか、その保証はあるかということ。
  62. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この問題、私もよく知っておるんですが、それは国内問題であって、日本政府とマレイシア政府との間には問題にならないことになっております。
  63. 岡田宗司

    岡田宗司君 アジア諸国のうち、太平洋戦争に関連した国々とだんだんこういうような問題が解決されていく、あとこういう問題が起こるであろうと予想されるのは中国、それからベトナムですね、北ベトナム。それから、北鮮等ともし国交が結ばれるというよらな場合には起こり得る可能性があると思うが、どうでしょう。この点はどうお考えになりますか。
  64. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 平和条約関係における賠償の処理は済んでおりますが——済んでおるということになるわけですが、しかし、いろいろな問題が起こり得ると考えております。
  65. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは、処理の非常にむずかしい問題で、な駐非常に先のことでもあるし、相手の国の出方等もあるから、いま私はここでこの問題について深く触れないことにいたしますが、そういうことが起こり得るということは予想されるわけですね。  もう一つ、この問題について具体的にいま問題になっているのは、モンゴルとの国交回復の場合における問題だろうと思うんです。これはおそらくノモンハン事件によって起こされた損害というか、それに対する賠償の問題だろうと思うんですけれども、この問題については、先ほどモスクワでもって中川大使モンゴル側との交渉が行なわれているように聞いたんですが、この問題についても解決のめどはつけ得る可能性があると、こうお考えですか。
  66. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 日本としては、たてまえの上からいろいろ言っているのですが、向こうもまたたてまえの上から言っておるわけです。実際は経済協力というような実際的な方法もあるのですけれども、一応、両方がたてまえでいっておるのですが、しかし、これの解決は絶対に不可能だとは思ってないのです。話し合いで解決する可能性もあると考えております。しかし、時間がかかると思います。
  67. 岡田宗司

    岡田宗司君 解決の可能性があるとお考えになっておるなら、これは形はともかく、何らかの実質的な解決を見て、私はモンゴルとの間の国交回復は一日も早くされることを期待したいと思っております。     —————————————
  68. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) この際、委員の異動についてお知らせいたします。  本日、杉原荒太君が委員辞任され、その補欠として近藤英一郎君が選任されました。     —————————————
  69. 森元治郎

    森元治郎君 この条約を見ているとたいへん苦心のあとが見える。条約の名前なんかも、これは「六十七年九月二十一日の協定」なんという、なかなかこれは苦労したが、「不幸な事件」——だれがどうしたということが一つも入っていない。全く日本人の得意の、なあなあみたいな条約文だと思うんだが、この間、向こうはどんながんばり方をしたんですか。「不幸な事件」ということに対して、向こうは何を言おうとし、協定の名前は何と言おうとしたんですか。
  70. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 日本といたしましては、過去の傷あとに触れないで、将来の日本とマレイシア、日本とシンガポールとの間の友好関係にやはり着目し、もっぱら経済協定ということを中心にこの協定の名前を考えた次第でございます。一方、マレイシア及びシンガポールのほうは、そうでは必ずしもなくて、むしろ過去の問題の解決という点を重点に置かれた次第でございます。しかし、そういうことで、いつまでも名前にこだわっていては解決になりませんので、いっそのこと、協定本文には何も入れない。こういう例は過去にもございますし、最近におきましても一若干例がないではありませんで、単に日付だけをつけた協定の名前にした次第でございます。
  71. 森元治郎

    森元治郎君 これのほかにどんなのがありますか。日付協定というのはほかにあるのか。
  72. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 日本が結びました条約では、戦後にはもちろんございません。戦前を申し上げますと、非常に古い条約でございますけれども、一八五四年の日本とイギリスとの間の協定で、日本国=大不列顛国約定というのがございます。それから同じく一八五七年の六月十七日の日米間の条約が、日本国=米利堅合衆国という名前でございます。それから非常に古い条約でございますけれども、日露協約一九〇七年、そういう種類の条約がございます。戦後はもちろんございません。
  73. 森元治郎

    森元治郎君 それから、このマレイシアの場合は、経済協力で、オーシャン・ゴーイングの船を、ボートを二はい買ったというんだけれども、シンガポールのほうは何もはっきりしたことがない。これはこれまで十年前の日本とラオスとの経済協力協定、十億円くらいかな、十億円の供与。それから九年前のカンボジアとの協定にもその附属書で畜産センターをつくるとかなんとかということが書いてあるのですよね。こういう場合には時間も相当長い間の話し合いだから、当然何をおよそこれくらいというくらいのことがアンダースタンドされでなければならぬと思うのだが、全然そういうにおいがないので質問をするわけです。
  74. 金沢正雄

    説明員(金沢正雄君) その点につきましては、シンガポールのほうで条約締結いたしました際に、具体的にどういう種類の部面について経済協力を求めたいかという具体的な案がございませんでしたので、金額だけをきめて合意をしたわけでございます。それで先方のほうからのプロジェクトでございますか、協力を求める案件につきましてそれを提示してまいりましたけれども、それをわがほうで検討いたしまして、それで経済協力を促進したい、こういうことでございまして、現在のところはまだ具体的な協力は出ていないという段階でございます。
  75. 森元治郎

    森元治郎君 普通ならば、あらかじめ何らかの話、大筋ぐらいの話があるのが普通だと思うのですね。今度の場合は少しこっちにひけ目があるというか、まあ、向こうの言うとおりという気持ちもあるので、その辺はこまかく言わないで金額だけということになったと思うんだが、そんなに理解していいかな。
  76. 金沢正雄

    説明員(金沢正雄君) そういう、先生のおっしゃいましたことで御了解願ってけっこうだと思います。
  77. 森元治郎

    森元治郎君 事実をもう一つ聞きたいのは、当初向こう側の要求は、一番多かったときは幾らですか。マレイシア・ドルでどのくらい要求したか。
  78. 金沢正雄

    説明員(金沢正雄君) 一番先方の要求が多かったときは、まだシンガポールとマレイシアが分離いたす前でマレイシア連邦があったときでございますが、そのときには一州について一千万ドル、全部で十四州で一億四千万ドルというのが一番高い要求であったわけであります。
  79. 森元治郎

    森元治郎君 大臣、この協定を見て感ずるのだが、昔から戦後の処理というものは次の戦争まで続くと、こういわれているのですね。二十三年もかかってやっと昭和二十七年の事件の解決がいまできたが、先ほど大臣の御答弁にあったように、その他いろいろまだできない問題がある。ほんとうに罪深いと思うのだな、大戦争というものは。次の戦争で、その未解決が次の戦争によってまた別な形での解決方向に行くのが歴史の示すところなんです。つくづく私は、この二つの協定を見て、戦争というものはあとあとまで長く続いて苦しむものだという感じを深くするわけですよ。大臣の印象はどうですか。
  80. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 全く同感です。戦争というものが、そのときに講和条約ができても、やはり諸外国に対してはいろいろな戦争の傷あとが残るし、国民の中にもいろいろ残るですね。敗戦というものがもたらす国内への影響というものは、やはり相当長期に残っていきます。これは形だけ平和条約ができたというだけではない、非常に長い償いが残るということは全く同感に感じます。
  81. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。便宜二案件を一括して討論を行ないます。  別に御意見もないようでございますが、二案件に対する討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  まず、日本国シンガポール共和国との間の千九百六十七年九月二十一日の協定締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  84. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 全会一致と認めます。よって、全会一致をもって本件は承認すべきものと決定いたしました。  次に、日本国とマレイシアとの間の千九百六十七年九月二十一日の協定締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  85. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 全会一致と認めます。よって、全会一致をもって本件は承認すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  87. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  88. 森元治郎

    森元治郎君 けさの新聞で見たのですが、例の北ベトナム友好協会の人が三名ですか、日本に来たいと。政府ではいろいろ検討しておるようなことが出ている。まあ、好意的な雰囲気が記事の文面から考えられるのですが、これはあまり小理屈を言わなくとも、入国にオーケーされるだろうと思うのだが、各省間の話し合いもあるだろうし、政府態度をちょっと伺いたい。
  89. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 森さんも御存じのように、各省間に関連するところがありますので、至急各省間の話をまとめたいと思っております。何か入国の目的の会合というものが、二十九日ですか、非常に接近しておるわけでありますので、早急に政府態度をきめたいと思っております。
  90. 森元治郎

    森元治郎君 それは技術的に、入管の法律もあるだろうし、技術の問題は別として、外務大臣というのは大きな政治家ですから、大きな観点、客観情勢その他から見て政治的判断を下すという面が非常に大きいと思う。ことに三木さんは、ベトナムその他中国問題についても自民党内では進歩派らしく見受けられるので、こういうところで変にヘジテイトする必要は毛頭ない。簡単に処理していいと思うので、大臣の御判断を。
  91. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 外務省の連絡があったのは昨日ですから、私はまだ、きのう電話で報告を受けたばかりで、そうしてきょう、委員会が終わりましてから、午後役所に参って、いろいろな申請の書類なども私検討してみたいと思っております。
  92. 森元治郎

    森元治郎君 役人から電話があったというのは、子供の使いみたいな電話というものはないので、これこれの人が入りたいと言っている。それで、君どうかと大臣もお尋ねになるだろうし、また事務当局の人も、これは入れてしかるべきものと思うとかいう意見も私はあるのが普通で、聞きましたというだけなら、新聞記事かUP電報みたいなもので、それはなかったのですか。
  93. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いろいろないままでのいきさつ、いろいろな点で、まだ詳細に外務省として資料をそろえて私のところに相談するということがなくて、とりあえずそういう連絡があったという報告を受けただけであります。どうせきょうは、役所に参りますれば、いろいろな書類も一整えていると思いますから……。
  94. 森元治郎

    森元治郎君 ゆうべから一晩明けて、時間もあるし、朝の幹部会もあっただろうし、いろいろな打ち合わせをもやったので、「おおむね妥当」ということばぐらい——これはなかなかうまいことばがあるのですが、どうですか。
  95. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まだよく、幹部会もとのことでしておりませんし、私も役所にはきょうまだ行っておりません、閣議もあったものですから。
  96. 森元治郎

    森元治郎君 これはタイミングというものがあって、三木さんは非常にベトナム和平後の話なんかをしているでしょう。あるいは外務当局も——あるいは外務当局をしてしゃべらしているのかどうか知らんが、終わったならば北ベトナムも援助しようだのなんだの、いま和平会談の場所すらきまらないのですが、和平にも何年もかかるのに、終わったあとのことまでお話ししているぐらい進歩的でおられるので、これを、あすの会議だの午後の何のと、話を下げてしまっちゃまずいと思うのです。よかろうと一発やれば、またたいへん世界的反響があるのですよ。そうしなければ並び大臣になってしまうわけでしょう。外務大臣というのはりっぱな国務大臣で、これは閣僚の筆頭なんです。閣内にも、わからないしろうとみたいないろいろな人もいるだろうから、リードしていく立場で、いままで大ぶろしきを広げたとたんに、事務的な話に落としてしまったのでは、三木さん、だめだ、これは。そこで大臣は——気持ちはわかるのですよ、答弁の趣旨は。大臣は「よかろうと思う」ぐらいのことは言えると思うのですが、いかがですか。
  97. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは、いま申しているように、できるだけ早急に処理する考えでございます。
  98. 羽生三七

    羽生三七君 いまの問題は、できるだけ早急に処理されることは当然だろうが、処理された場合、訪日を認めるというだけでは足りないと思うのです。その機会に政府間が接触する。政府自身としてもちろん接触するかどうかという、この問題があると思う。なぜ私がこういう質問をするかというと、昨年の当委員会で、ちょうどいまごろでしたね、私が外務大臣にお尋ねしたところが、必要があればハノイへでも行く、喜んで行くと、こう答えられている。予算委員会でも同様にお答えになっておる。したがって、そういうこともあるので、単に訪日を認めるというだけでなしに、この機会に何らかの接触政府としてもされてはどうですか。そうでないと、ずっといままで過去一年間いろいろ言われてきたことが非常に意味がなくなるので、ひとつ積極的な姿勢を期待したいと思います。
  99. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 羽生さんの貴重な御意見として拝聴いたします。
  100. 羽生三七

    羽生三七君 まあ、貴重な御意見と聞き流しでも困るから、ひとつ実りあるように期待をいたします。  次の問題は、これも私の先日の質問にも関連あるので簡単ですからお尋ねしておきますが、これは予算委員会の中の分科会で椎名外相代理に、日中間にいかなる国際情勢の変化にもすぐ対応できるように何らかの接触の糸口をつくっておいてはどうか、こういう質問をした。そうすると椎名外相代理は、それは必要なことであるし、対処する用意があると受け取れる答弁をされている。これは明確に言っております。したがって、何か政府のほうでも事務的に検討されておるようにも聞いておりますが、これはぜひワルシャワにおける米中会談のようなもの、ああいう大使級のものであるかどうかそれは別として、何らかの接触の糸口をつくっておく必要があろうと思う。外相代理すらそう答えておるのですから、外相としてこの機会にひとつ所見を聞かせていただくようにお願いしたい。
  101. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま現に接触は持っていますわね、中共との間にいろいろな角度から。
  102. 羽生三七

    羽生三七君 民間でなしに、政府間です、私の言うのは。
  103. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) こういう問題については、やはりこれは私が常に申しておりますように、単に日中関係だけ取り出すというわけにも、なかなかそれは限界があります。もう少し広いアジア全般の情勢との相関関係が私はある、日中関係は。したがって、アジア情勢に大きな変化の起こるきざしはあります。そういうことも含めて中共の問題というものはいろいろ検討をいたしたいと思っております。
  104. 羽生三七

    羽生三七君 その検討というのは、一般的な国際情勢の検討の中に中共も含まれるということでなしに、その検討は何らかの接触の糸口をつくるという意味の検討でないと、私の質問に対しての答弁ということにならないと思うので、椎名さんはかなりその点はっきり答えられているのです。ですから、ぜひその点を明確にしていただきたい。
  105. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 羽生さんはいろいろ政府間の接触をやるのかということで、それで私が用心深くお答えをしておるのです。これは接触をどういう形で——今後接触を強化していくことは必要でしょうが、いまあんたの御指摘のように、政府間の接触をするということをここで申し上げるわけにはいきません。ただ、接触を強化していくのにはどういうことが可能であり、必要であるかという検討はいたします。
  106. 羽生三七

    羽生三七君 もう一点だけ、簡単ですが。  これもきょうの新聞に出ておりますが、軍縮委員会に参加するために何か大使級の担当官を置いて積極的に推進されようと、十八ヵ国軍縮委員会に参加をですね。これは前々からの政府の考え方で、これはよく了解しておりますが、その場合にはどうなんでしょうか、国連軍縮委員会というものは国連で決定することですけれども、日本加盟さしたような場合には、今度は反対にまた共産圏から一国というようなことになって、二十ヵ国というようなことになるのか、日本がもう少し何か、日本が中立をとるとは言わないでしょうが、何か、少なくともあまり片寄らない形をとって、日本だけでも単独加盟ということを期待しておるのか。それで、もし日本参加を認めれば今度は反対側からも一ヵ国参加して二十ヵ国になるという、国の数がふえるだけじゃ結局意味ないので、日本がそれに参加した場合にどういう役割りを果たすかということが問題なので、そういう構想を持つことなしに、ただ参加を求めるということでは私は意味がないと思うのですが、その基本的な考え方をひとつ承わりたい。
  107. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは核防条約の十八ヵ国軍縮委員会、これと日本政府といろいろ間接に連携をとったわけですけれども、非常に不便がありますね、間接では。したがって、ラスク国務長官、グロムイコ外相、ゴールドバーグ・アメリカ国連代表にも、日本が軍縮委員会に加入したい意図を持っておる、そして外務省においても軍縮というものについての機構をいま強化し始めているのだ、日本は軍縮問題に対して関心を持っておる、だから、軍縮委員のメンバーになっても日本は寄与できる国の一つであると思う、そういうことで加入をひとつ推進してくれということを申したのでございます。それがトロイカ方式のようなものじゃなしに加入ができる方法はないだろうかということを申したのでございます。これ否定的な返事ではありませんが、しかし、ソ連、アメリカだけでこういう問題はきめられる問題でもないということで、否定的ではなかったけれども、すぐに日本の希望が実行に移されるというような返事でもなかったが、今後、軍縮委員会には日本政府も加入の熱意を持っておりますから、何かこれが実現のために努力をしてみたいと思っております。
  108. 羽生三七

    羽生三七君 これで終わりますが、それは努力してくださることはけっこうなんですが、そういう場合に、基本的にどういう考え方で臨むかということがむしろ問題で、参加することにそれほど意味があるわけではない。参加したら何をしようとしておるのか。それは核拡散防止条約に関する発言を求める、それはあるでしょうが、これは十八ヵ国軍縮委員会、国連のほうに正式委員会移っちゃっているのですから、むしろ今後の検討とするならば、具体的な、軍縮委員会に日本がどういう寄与、役割りを果たすかということが問題なので、その点を伺っているわけです。  それともう一つは、これはずっと前に当委員会で、佐藤尚武さん、それから私どもが希望して、軍縮関係の何らかの局をつくってはどうかということから、これは七、八年前ですか、大臣官房にわずかほんのちょっとした資料室みたいなものをつくって、それが今日、ささやかであるけれども、軍縮関係の若干の担当官ができたわけですね。だから、今度は相当大きな規模に発展させられるお考えもあるようですが、この前、イギリスの軍縮、軍事関係のどなたか大臣が来られたときに——チャルフォントですか、そのときに、外務省じゃなしに某新聞社の調査室なんかとその問題を話し合われたというような事実も私聞いております。ですから、そういう面で、まことにこれでは権威がないことだと思うので、積極的に強化をするとともに、それに値する軍縮の構想を持って活動してもらうことが必要だと思う。その点だけ伺って質問を終わります。
  109. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 御指摘のとおりだと思います。軍縮委員会に加入ということだけに意味があるのじゃなしに、やはり内部において軍縮を推進していくということに対して日本も寄与しなければならない、日本という国の立場から言えば。軍備拡張競争の停止、核軍縮、一般軍縮も含めて、そういうふうな、核の国際管理とか破棄、そういう一連の日本国民としての願望があるわけですから、そういう点で、いままで十分な軍縮に対する検討というものが少ないことは御指摘のとおりだと思いますが、しかし、国民感覚としては、軍縮というものに対して非常に推進してもらいたいというものを持っている国民でありますから、われわれとしても、外務省の機構等も、もり少しやはりこの問題に対しては真剣に取り組めるような機構の整備、また一方においては軍縮に対しての問題の検討を加えて、また加入の促進、両々相まって目的を達成するような努力をしたいと思います。
  110. 森元治郎

    森元治郎君 昔は大臣、国際連盟に、一般軍縮会議というのが国際連盟時代にあった。それはワシントン・ロンドン条約の廃棄問題にからみ、当時の外務省の機構では欧亜局の所管で、分室があって、加藤伝次郎という人とか、井上孝治郎君、あるいは与謝野秀君もいた。その他寺崎太郎もいて、軍縮の専門家であった。あの当時の軍備を持っているときでさえ、特に軍縮局はなかったけれども、そこで専門家がじっくりやっていたのですね。先ほど羽生さん触れたように、佐藤尚武さんなんか先輩として言っておられたが、今日までできていない。そればかりか、せっかく軍縮担当の人をきめて、たとえばパキスタン大使をやっている田中君なんか、軍縮でかばんを持ってジュネーブへ行ったり飛び回って、せっかく覚えたと思ったらパキスタンだ。これではいつまでたっても系統的な勉強はできないと思うのですね。やはりがっちりした機構で進まないとだめだと思うのです。機構がでかいばかりでなくても、過去の例見ても、二、三人でやっておりますから、そういうものがあれば、ここへおいでになっても、もっと実のある答弁ができると思うのですが、お考え願いたいと思います。
  111. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そうだと思います。これは局というようなことに必ずしもする必要はないので、もっとやはりしっかりした担当する者を中心にして、少数であっても、少し継続的にこの問題を取り扱う中心の人間がいる、そういう形の機構の整備というものが必要だと思います。
  112. 岡田宗司

    岡田宗司君 朝鮮大学校の認可問題について、韓国側から木村大使を通じて厳重な抗議が来た。それに対して外務省から木村大使を通じて韓国側に回答を送っておる。その記事を新聞で見たわけです。多少各新聞内容違っておるんですが、どういう抗議が来て、これに対して日本側は木村大使を通じてどういう回答をしたのか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  113. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 朝鮮大学の問題については、新聞にどういうふうに書いてあるか知りませんが、韓国側がこの問題に対して注目していることは事実でございます。しかし、日本政府とすれば、これはいままでの経過を説明する、こういうことであって、この問題の東京都知事の認可、またその間の政府の発言等の事実を述べる以外に、それ以上のことを政府がするわけはないのであります。いままでの経過以上のことを韓国に説明をするという、そういうことの必要を考えておりません。
  114. 岡田宗司

    岡田宗司君 この問題について、美濃部知事が認可をしたのは、現行法に基づいて彼の行政的立場からその権限に基づいてやったことで、灘尾文部大臣も、まあ遺憾ではあるけれどもやむを得ないというようなことで認めざるを得なかった。それを取り消すこともできないし、また、不承不承ながら認めざるを得なかったわけです。韓国側がこれについてかなり強い抗議をしてきているように聞いております。また、国内においてもそういうような意見が強く出されておる。これは韓国側の考え方ですけれども、私ども見ておりますと、非常に内政干渉にわたるような点が多いように思います。それから、木村大使のこの答えが、新聞に書かれておることがほんとうだとすれば、これは私たいへんなことだと思うのですよ。というのは、これに対して、たとえば遺憾だといったような意味の答弁、それからまた、外国人学校法を成立させてそうして取り消すというような意味が伝えられておるのですね。おそらくこれは、木村大使がどういう発言をしたか知らないけれども、向こうの新聞なんかではそういうふうに伝えている。それが国内に打電されてきているわけです。この回答を、何か公文書をもってされたのかどうか知りませんけれども、あるいは口上書きでされたのかどうか知りませんけれども、それをはっきりひとつさせてもらいたい。
  115. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 先ほど私が申しておりますように、木村大使はこの間の事情というものの説明以上には出ておりません、口頭で。したがって、取り消すとかそういうことは絶対にありません。そういうことを出先の大使が、法案の将来に関して発言のできるというようなことはあるわけはないのであります。木村大使はそういうことを言うわけはないのであります。いままでの経過を口頭で説明したという以上のものはございません。
  116. 岡田宗司

    岡田宗司君 これはおそらく、木村大使が発表したのかどうか知りませんが、しかし、木村大使が韓国側に伝えたことを韓国側で発表したのではないか。そうすると、必ずしも木村大使が言わなかったとも言えないものがあるのじゃないかと思うのですが、それならばこれは私はたいへんなことだと思うのです。その点、あなたのほうでもって木村大使に対してどういう指令をされたのか。また、木村大使が口頭で伝えたにしても、その口頭で伝えたものの報告が、あるいは向こう側のそれに対する見解等の報告があるはずだ。それをひとつここでお知らせ願えませんか。
  117. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私自身もこの木村大使の報告は見ておるのですが、私の見た限りの報告においては、いままでの経過の報告以上に木村大使が韓国政府にどうこうという約束をしておるようなことはございません。いままでの経過の報告だけでございます。
  118. 岡田宗司

    岡田宗司君 新聞記事は、どの新聞もいろいろ多少の違いはあるけれども、ほとんど同じように伝えている。これは私はやはり重大な問題だと思うんです。そういうことは、はっきり外務大臣として、ないという打ち消しをしていただかなければだめだと思う。これは今後の日韓外交の問題についてやはり相当日本側に暗影を投げるものだ。問題自体は日韓間にあって非常にむずかしいけれども、どうもとかく日韓の問題となると、日本態度というものはき然たるところがないように思います。そうして何か常に卑屈な態度をとっておるようなきらいがある。たとえば北鮮へ帰りたい人の帰還問題についても、何か日韓条約締結時のことが影響をして、そうしてそれがあの帰還交渉の上にも暗影を投げた。今回の問題もその当時の暗影がおおいかぶさっているように私どもには感ぜられるんです。これは日本と韓国との国交回復をした後における日本の外交態度に影響を持ったとすれば、私は非常に重大な問題だと思う。ひとつ韓国に対する日本の外交態度についてはもっとしゃんとした姿勢で臨んでもらいたい。いやしくも、あの伝えられる木村大使の言のようなことがあったとすれば、これはやはり重大な問題と思いますので、その点についての外務大臣の御見解を承りたい。
  119. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは明白にいままでお答えしておりますけれども、一そう明白にしておいたほうがよろしいと思います。木村大使は韓国政府に対して、いままでの事実に基づく経過を報告した以上の約束は何も、将来にわたって何らかの約束をしておるような事実はありません。これは明白にいたしておきます。
  120. 岡田宗司

    岡田宗司君 次の点ですが、どうも日韓の問題になるというと、何か日韓条約締結の際のいろんなことが日本の外交姿勢に影響を及ぼしているように思うんですけれども、その点についてはどうお考えになっておりますか。
  121. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは韓国から内政に対して干渉を受けるべき筋合いのものでもない。われわれは常にそういうふうなことに対しては、韓国と話すような場合においても、日韓関係を今後友好関係を樹立するためには、お互いの立場を尊重しなければこの友好関係は築かれない。そういう点で、両国とも内政に干渉するようなことをなくして、日韓の友好関係を築かなければならぬということを常に強調しておりますし、韓国から内政の干渉を受けるようなことは、私どもは断じて認めるようなことはいたしません。これは申し上げておきます。
  122. 岡田宗司

    岡田宗司君 それからもう一点お伺いしたいのは、過日国会で吉田書簡の問題がいろいろ論議されて、中曽根運輸大臣が、吉田書簡はもう野辺送りを済ませるべきだというような発言でした。そうして、政府としても前向きに取り扱うというような発言が各大臣からあったわけですが、台湾政府のほうからその抗議が来ておると、こういうことですけれども、その抗議は正式になされたものであるか。これに対して日本外務省としてはどう回答をしておるのか、その点をお伺いしたい。
  123. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 国民政府から抗議は受けておりません。そしてまた、輸銀の使用の問題は、しばしば政府が申しておりますとおり、具体的な問題が起これば具体的な問題として自主的な政府の判断に基づいてこれを処理する、こういう態度でございます。
  124. 岡田宗司

    岡田宗司君 新聞に伝えられた台湾政府のこの問題に対する態度といいますか、あるいは抗議といいますか、そういうものは正式にはなかったんですか。
  125. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 正式な抗議はございません。
  126. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、前にはしばしば抗議があったと思いますが、今回は抗議がないということは、台湾側の態度に、この問題に対する変化があった、こう解釈してよろしゅうございますか。
  127. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは、私は変化があってからそうだというふうには考えていないのであります。それはどういうことか、国民政府側の事情でありますが、とにかく事実問題として、この問題に対して抗議を受けたことはない、こう申し上げておるのです。
  128. 岡田宗司

    岡田宗司君 私どもとしては、従来輸銀の資金の使用問題については、政府としてはケース・バイ・ケース、また、それをきめるのは輸銀の機関、つまり総裁であるというようなことを言われておりましたけれども、輸銀の総裁がケース・バイ・ケースでこれを取り扱うにしても、国の方針がきまっていなければ取り扱いようがないと思います。だから、ケース・バイ・ケースというその背後に、一体国の態度としてどういうものがあるかということが常に論議されるのはそこにある。もう一つ、この問題には常に国府の存在がからんでいる。国府がこの問題に対していろいろ反対をするとか抗議をするとか、あるいはこちら側が国府の顔色をうかがうというような問題がからんでおるわけでありますけれども、アジア情勢も大きく変わろうとしておる。特に対中国関係というのは今後変わらざるを得ない。私はこの問題について、単に輸出増進のための技術的な問題だとは考えておりません。それはもっと大きな意味がある。こう思っておるので、この問題についてはやはり政府としてもう少し明確な態度、つまり、ケース・バイ・ケースなんというのじゃなくて、そのケース・バイ・ケースで行なう、これはまあそれが損になるとかならないとか、あるいはそれによって日本利益を受けるとか受けないとかという問題の基準できめるのでございましょうが、その背後にある問題についての政府態度というものはもう少しここで明らかにしたらどうかと思いますが、いかがですか。
  129. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは裏も表もございません。やはり日本の国益を踏まえて、そうして具体的な問題ごとに自主的に判断をする。決して裏があり表がある問題ではございません。その政府態度、額面どおりにおとりいただきたいのであります。
  130. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうしますと、たとえば台湾側から抗議があった。さっき朝鮮大学校の問題について韓国側から抗議があったときに、これは内政干渉にわたるようなことについては日本側では受けられないというのと同じように、台湾側から抗議があった場合に、日本政府としては、これは内政問題である、したがって、あなたのほうの抗議なりなんなりは受け付けられない、こういう態度をとられますか。
  131. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは、韓国に限らず、国民政府でもその他の国でも日本の内政に干渉することは認めません。
  132. 岡田宗司

    岡田宗司君 その立場をひとつこれからかたく守って進んでいただきたいと思います。どうもとかくそのためにいろいろ私どももおかしいなと思うことがあるし、国民にもそういう印象を与えているので、これはひとつ外務大臣として国民にそういう印象を与えないように積極的な姿勢をとってもらいたい、こう思います。  これで私の質問を終わります。
  133. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二分散会      —————・—————