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1968-03-12 第58回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会昭和四十三年三月九日(土曜日)委員 会において、設置することに決した。 三月十一日  本分科員委員長指名で、次の通り選任され  た。       愛知 揆一君    小沢 辰男君       川崎 秀二君    野原 正勝君       藤枝 泉介君    船田  中君       川崎 寛治君    北山 愛郎君       楢崎弥之助君    広沢 直樹君 三月十一日  野原正勝君が委員長指名で、主査に選任され  た。 ————————————————————— 昭和四十三年三月十二日(火曜日)    午前十時十分開議  出席分科員    主査 野原 正勝君       小沢 辰男君    川崎 秀二君       藤枝 泉介君    石野 久男君       川崎 寛治君    楢崎弥之助君       帆足  計君    穗積 七郎君       稻村 隆一君    広沢 直樹君    兼務 加藤 清二君 兼務 山中 吾郎君    兼務 横山 利秋君 兼務 折小野良一君    兼務 竹本 孫一君 兼務 伊藤惣助丸君    兼務 松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         外務政務次官  藏内 修治君         外務大臣官房長 齋藤 鎮男君         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省中南米・         移住局長    安藤 龍一君         外務省欧亜局長 北原 秀雄君         外務省経済協力         局長      上田 常光君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         外務省条約局長 佐藤 正二君         外務省情報文化         局長      新関 欽哉君  分科員外出席者         法務省刑事局総         務課長     伊藤 栄樹君         法務省入国管理         局次長     笛吹 亨三君         外務省アジア局         北東アジア課長 野田英二郎君         外務省経済局外         務参事官    鈴木 文彦君         大蔵省主計局主         計官      岩瀬 義郎君         大蔵省国際金融         局投資第一課長 田中啓二郎君     ————————————— 二月十二日  分科員川崎寛治君、北山愛郎君及び楢崎弥之助  君委員辞任につき、その補欠として石田宥全君、  山口鶴男君及び石野久男君が委員長指名で分  科員に選任された。 同日  分科員石田宥全君石野久男君及び山口鶴男君  委員辞任につき、その補欠として岡田利春君、  稻村隆一君及び帆足計君が委員長指名分科  員に選任された。 同日  分科員稻村隆一君、岡田利春君及び帆足計君委  員辞任につき、その補欠として楢崎弥之助君、  穗積七郎君及び北山愛郎君が委員長指名で分  科員に選任された。 同日  分科員穗積七郎委員辞任につき、その補欠と  して川崎寛治君が委員長指名分科員に選任  された。 同日  第一分科員山中吾郎君、折小野良一君、第三分  科員横山利秋君、第四分科員加藤清二君、竹本  孫一君、伊藤惣助丸君及び第五分科員松本善明  君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十三年度一般会計予算外務省所管      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  私が本分科会主査をつとめることになりましたので、よろしく御協力をお願いいたします。  本分科会は、会計検査院、防衛庁、外務省及び大蔵省所管につきまして審査を行なうことになっております。審査順序は、お手元に配付いたしました日程により進めたいと存じますので、あらかじめ御了承をお願いいたします。  それでは、昭和四十三年度一般会計予算中、外務省所管議題とし、説明を求めます。藏内外務政務次官
  3. 藏内修治

    藏内政府委員 外務省所管昭和四十三年度予算について大要を御説明いたします。  予算総額は三百五十四億五百十万四千円で、これを主要経費別に区分いたしますと、科学技術振興費一億一千七十一万七千円、遺族及び留守家族等援護費百五十八万五千円、貿易振興及び経済協力費八十八億六千四百七十七万六千円、その他の事務経費二百六十四億二千八百二万六千円であります。また組織別に大別いたしますと、外務本省百九十三億五千百八十七万八千円、在外公館百六十億五千三百二十二万六千円であります。  ただいまその内容について御説明いたします。  まず外務本省。第一、外務本省一般行政に必要な経費三十四億二千三百七十六万九千円は、外務省設置法に定める本省内部部局及び付属機関である外務省研修所外務省大阪連絡事務所において所掌する一般事務処理するため必要な職員千五百六名の人件費及び事務費等であります。  第二、外交運営充実に必要な経費六億二千三百十万円は、諸外国との外交交渉により幾多の懸案の解決をはかり、また、各種条約協定締結する必要がありますが、これらの交渉わが国に有利に展開させるため本省において必要な工作費であります。  第三、アジア諸国に関する外交政策樹立及び賠償実施業務処理等に必要な経費三千五百八十二万二千円は、アジア諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整並びに賠償実施の円滑、かつ統一的な処理をはかるため必要な経費であります。  第四、米州諸国に関する外交政策樹立に必要な経費一億九千五百五十一万二千円は、米州諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整等を行なうため必要な経費社団法人ラテンアメリカ協会補助金三千四百四十一万八千円、ニューヨーク日米協会新館建設費補助金一億三千万円及びサンパウロ日本文化センター講堂増築費補助金二千万円であります。  第五、欧州諸国に関する外交政策樹立に必要な経費二千三百八十万九千円は、欧州諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整等を行なうため必要な経費社団法人北方領土復帰期成同盟補助金四百六十五万円であります。  第六、中近東アフリカ諸国に関する外交政策樹立に必要な経費一千百三十四万六千円は、中近東アフリカ諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整等を行なうため必要な経費社団法人アフリカ協会補助金四百八十三万六千円及び財団法人中東調査会補助金二百二十三万二千円であります。  第七、国際経済情勢調査及び通商交渉準備等に必要な経費四千二百五十三万一千円は、国際経済に関する基礎的資料を広範かつ組織的に収集し、これに基づいて国際経済を的確に把握するための調査及び通商交渉を行なう際の準備等に必要な経費であります。  第八、条約締結及び条約集編集等に必要な経費二千三百四十一万五千円は、国際条約締結及び加入に関する事務処理並びに条約条の編集及び先例法規等調査研究に必要な事務費であります。  第九、国際協力に必要な経費四億二千八百二十万三千円は、国際連合等国際機関との連絡、その活動の調査研究等に必要な経費及び各種国際会議わが国代表派遣し、また、本邦国際会議を開催するため必要な経費財団法人日本国際連合協会補助金四千八百五十七万六千円、社団法人日本エカフエ協会補助金一千二十八万三千円及び財団法人日本ユニセフ協会補助金四百三十八万七千円であります。  第十、情報啓発事業及び国際文化事業実施に必要な経費十二億九百十九万一千円は、国際情勢に関する国内啓発海外に対する本邦事情啓発及び文化交流事業等を通じて国際間の相互理解を深めるため必要な経費並びに財団法人国際学友会補助金七千四百八十二万二千円、財団法人国際文化振興会補助金一億六千八百九十万七千円、財団法人国際教育情報センター補助金一千三百七十五万円、社団法人日本新聞協会国際関係事業補助金一千四百六十八万一千円及び啓発宣伝事業委託費二億九千九百二十五万円であります。  第十一、海外渡航関係事務処理に必要な経費一億三千四百十五万二千円は、旅券法に基づき、旅券発給等海外渡航事務処理するため必要な経費及び同法に基づき事務の一部を都道府県に委託するための経費六千三百五十六万八千円であります。  第十二、海外経済技術協力に必要な経費五十七億七千三百二十七万六千円は、海外との経済技術協力に関する企画立案及びその実施総合調整を行なうため必要な経費コロンボ計画等に基づく技術者の受け入れ、派遣日本青年海外協力隊派遣各種技術訓練センター設置並びに医療、農業及び一次産品開発のための技術協力実施に必要な委託費五十億一千九百九十一万五千円、経済開発計画実施設計委託費一億円と海外技術協力事業団交付金六億二千九百三十八万二千円等であります。前年度に比し十三億四千二百五十八万八千円の増加は、主として海外技術協力実施委託費経済開発計画実施設計委託費及び海外技術協力事業団交付金増加によるものであります。  第十三、海外技術協力事業団出資に必要な経費三億二千五百万円は、海外技術協力事業団中央センター増築等に要する資金として同事業団に対し出資するため必要な経費であります。  第十四、国際分担金等支払いに必要な経費二十八億四千百四十五万七千円は、わが国が加盟している国際連合その他各種国際機関に対する分担金及び拠出金を支払うため必要な経費であります。  第十五、国際原子力機関分担金等支払いに必要な経費一億一千七十一万七千円は、わが国が加盟している国際原子力機関に支払うため必要な分担金及び拠出金であります。  第十六、貿易振興及び経済協力にかかる国際分担金等支払いに必要な経費二十三億六千百九十六万二千円は、わが国が加盟している貿易振興及び経済協力関係各種国際機関に対する分担金及び拠出金を支払うため必要な経費であります。  第十七、移住振興に必要な経費十七億八千五百万九千円は、移住政策企画立案及び中南米諸国等に移住する者千五百名を送出するため必要な事務費並び移住者渡航費交付金一億三千七百二十三万七千円及び海外移住事業団交付金十五億一千七百三十九万一千円等であります。  第十八、旧外地関係事務処理に必要な経費二百二万二千円は、朝鮮、台湾、樺太及び関東州等旧外地官署所属職員給与恩給等に関する事務処理するため必要な経費であります。  第十九、旧外地官署引き揚げ職員等給与支給に必要な経費百五十八万五千円は、四十三年度中の旧外地官署所属の未引き揚げ職員留守家族及び引き揚げ職員に対し俸給その他の諸給与を支給するため必要な経費であります。  在外公館。第一在外公館事務運営等に必要な経費百二十七億九千六百十万一千円は、既設公館百二十八館三代表部千二百十一名と四十三年度中に新設予定の在チュニジア大使館設置のため新たに必要となった職員四名並びに既設公館職員増加二十五名計千二百四十名の人件費及び事務費等であります。  第二、外交運営充実に必要な経費十三億九千十万円は、諸外国との外交交渉わが国に有利な展開を期するため在外公館において必要な工作費であります。  第三、輸入制限対策等に必要な経費三億六千二百万七千円は、諸外国におけるわが国商品輸入制限運動等に対処して啓蒙宣伝運動実施する等のため必要な経費であります。  第四、対外宣伝及び国際文化事業実施に必要な経費三億三千九百十七万二千円は、わが国と諸外国との親善に寄与するため、わが国の政治、経済及び文化等の実情を組織的に諸外国に紹介するとともに、国際文化交流を行なうため必要な経費であります。  第五、在外公館営繕に必要な経費十一億六千五百八十四万六千円は、在フランス大使館及び経済協力開発機構日本政府代表部合同事務所ほか五カ所の継続工事その他事務所公邸の諸工事に必要な経費と在アルジェリア大使館事務所ほか二カ所の公邸並びに在ガーナ大使館ほか五カ所の各公務員宿舎不動産購入費等であります。  以上がただいま上程されております外務省所管昭和四十三年度予算大要であります。慎重御審議のほどお願い申し上げます。
  4. 野原正勝

    野原主査 以上をもちまして、外務省所管予算説明を終わりました。     —————————————
  5. 野原正勝

    野原主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間は、一応本務員は一時間程度兼務員もしくは交代して分科員となられた方は三十分程度にとどめ、議事進行に御協力願いたいと存じます。  なお、政府当局に申し上げます。質疑時間が限られておりますので、答弁は的確に、要領よく、簡潔に行なうよう特に御注意申し上げます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。川崎秀二君。
  6. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 外務省の批判ばかりしては恐縮なので、最初に事務的に私の経験から申し上げたいことがある。いま外務省予算の一番最後に、営繕費のお話が出ました。しかと聞きました。そこで、実はいろいろ青少年の交歓その他で私外国へ行くことが多いので、自分の視察した経験、それから一般国民の声では、在外公館が貧弱過ぎる。ソ連アメリカ並みとは言わなくても、イギリスやその他の欧米諸国とは同じくらいのかまえがあっていいと思う。それでなければ信用もつかない。ところが、バンコクやあるいはイラク、さらにには一般公館は非常に貧弱で、借り家ばっかりである。あれではだめだと思うので、来年度予算でひとつ大いに要求しませんか。平和外交をたてまえとするなら、少しは堂々たる公館を整備することが必要だと思いますが、官房長いかがです。
  7. 齋藤鎮男

    齋藤(鎮)政府委員 お答え申し上げます。  現在、先生も御指摘のように借り家が非常に多いのでございますが、外務省におきましても、各国と同じようにできるだけ国有化の実をあげたいという方針で進んでまいりまして、ただいまお願いいたしております昭和四十三年度におきましては、十一億六千万円を計上しております。しかし、これではもちろん不足でございますので、現在特別の委員会をつくりまして、この営繕関係の改善のために努力を払っております。ちなみに、十一億六千万円はフランスアルジェリア中華民国大使館を購入すると同時に、新築としまして、フランス、ケルン、パキスタン、オーストラリア、大韓民国、中華民国を計画しております。  以上です。
  8. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 外務大臣はどうですか。
  9. 三木武夫

    三木国務大臣 われわれはしばしば海外へ出まして、どうも貧弱である。これは一ぺんにはいかないでしょうけれども、しかし、もっと在外公館というものは、国力もこれだけ日本は高まってきておるのですから、充実していく必要は、川崎君と同感でございます。
  10. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 住宅も貧弱だと思うのですね、この公館だけじゃなしに。特に欧米ソ連ではやはり職員住宅を建てて、そして安定した形で外交業務を推進しているわけですが、その点でどうですか。職員住宅を各地に建てる用意はあるか、あるいはまた、これは佐藤觀次郎氏もいつか聞いたと思うのですけれども、外交官の子弟の教育というものは大問題だと思うのですね。二年も三年も、特にアフリカや南米の小国などへ行かれて御苦労なすっておる間に、子供はだんだん大きくなる。中学や高校では当然東京へ残していかなければならぬ、そういうものに何か手当みたいなものを出してもいいのじゃないかと私は思っているのですが、そういう点で外務大臣官房長答弁を要求します。
  11. 齋藤鎮男

    齋藤(鎮)政府委員 まさに御指摘のとおりに、外務省といたしましても、いまの二つの点、一つ教育手当の点、もう一つ住宅手当の点、この点、できるだけ充実しようということで、これもまた特別の室をつくりまして検討しております。特に教育手当につきましては、教育手当だけの面ではなくして、むしろ子供手当という面で広くとらえる必要があると考えております。また住宅手当につきましては、単に手当の増額にとどまらず、公務員宿舎に相当するような在外公館宿舎というものを検討しております。すでに今年度新規にかなりのものを検討しております。
  12. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 これから本番であります。  ベトナム問題は、現在、世界の最大の問題である。私はいま入り口に一つの重大な問題を発見したので、これは与党だから爆弾にはならぬですが、しかし、非常に重要な要素を含んでおると思われるのでお伺いをしたい。大蔵省にも来てもらっておる。アジア開発銀行への出資金、本年度予算で七十億、そのアジア開発銀行は、昨年来いろいろ会議を開いて農業開発特別基金というものを設置することになっておる。そこで、南ベトナムはこの対象になりますか。
  13. 田中啓二郎

    田中説明員 お答え申し上げます。  農業開発特別基金の設立に関しましては、本年度わが国がまず七十二億円を限度としてこれに拠出をする。アメリカも現在は議会に二億ドルの特別基金の承認をお願いしておりますが、まだ議会を通っておらない。そして特別基金の入れもの、つまり銀行がこれを管理して運営いたしますので、銀行として内部の規則をつくらなければならないわけであります。それは現在アジア開発銀行理事会審議途中にございまして、まだ固まっておりません。したがいまして、南ベトナム農業開発基金が使われるかどうかということはわかりませんが、そもそもアジア開発銀行そのものエカフェ地域加盟国としておりますし、当然銀行としましても地域いし国によって差別するということはないだろう、かように考えております。
  14. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 ということは、対象になり得るということですね。
  15. 田中啓二郎

    田中説明員 はい、そのように承知しております。
  16. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 そこで対象になって、来年度中に南ベトナム政府から要請があった場合は、非常に重大な問題を含んでくると思うのであります。その議題となった場合に、三木外務大臣に伺いますが、現在の南ベトナムベトコンの総反攻期において、南ベトナムから農業基金というものが要請があって、アジア開発銀行の課題になった場合、妥当と思われるかどうか、日本政府はどういう態度をとられますか。
  17. 三木武夫

    三木国務大臣 いま大蔵省政府委員から答弁がありましたように、エカフェ地域ですから、南ベトナムを除くというわけにはいかない。しかし、これは、どういうプロジェクトにこの金を出すかということは、きわめて慎重な検討をなされるに違いない。それはなぜかと言えば、資金は必ずしも十分ではないですよ。したがって、各国要請などをにらみ合わして、簡単に資金が出されるとも思いませんので、単に南ベトナムから要請があったというようなことではなくして、どういうプロジェクトに対して南ベトナム政府から要請があって、そのことが、ああいう治安もまだ十分確保できてないところですから、そういう状態で有効に資金を使って農業開発の目的が達成できるかどうかということは、慎重な検討をされることになると思いますので、ただ何にもプロジェクトも出てないのに、南ベトナムに対してどうするかということは、ちょっと時期としては早いと思います。
  18. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 たいへんでいねいな答弁であります。しかし、仮定の問題にしましても非常に切迫する可能性はある。現にアジア開銀はタイに工業水準の引き上げのために貸し付けを行なっておるし、それから韓国に視察団を出しております。ですからインドネシア、南ベトナム順序とすればだんだんそういうところへいくものだと私は思う、正確に言えば四十三年度中に。  そこで、きのうあたりから開かれておるアメリカ上院外交委員会でベトナム問題が取り上げられた契機は、フルブライト委員長がこのことに目をつけて、もし南ベトナム政府農業基金貸し付けをするなら自分は反対である。同時にわれわれの知っておるゴア議員ペル議員あるいはマンスフィールド議員の有力な意見が台頭してきて、ここに聴聞会を開かざるを得ない経過となっておるわけです。われわれがこれを取り上げたのは、昨日大蔵省へ行って調べてみると対象になり得るということである。そこに重大な問題が提起されたと思いますので、あえて私の所見を申し上げますが、現にベトコン農村地帯に相当な浸透力を持っておる、都市拠点攻撃を行なっておるという際であります。アメリカ国内にも、ベトコンからは引けない、したがってあくまでも戦わなければならないという意見は猛然と強いけれども、しかし戦線をディスカレーションして都市を防衛しようということに重点を置こうという意見政府部内に高まって、したがって二十万増派の問題についても非常に議論が戦わされておるところですから、私は政府が七十二億出資をするのは、これは与党が認めたことであるから、党員として異議は差しはさまない。けれども南ベトナム農業基金のために使われるようなことになるならば、フルブライト氏が言っておると同じように、どろ田に金を投げ込むことと同じだという意味では、注意を喚起せざるを得ないのであります。  そういう意味で、端的に私の意見を申し述べるとともに注文をいたしたいと思うのでありますが、これは開発銀行出資金を出す際にそういう条件をつけたらどうかと私は思うのです。あるいは外務大臣所見として、政府出資金は出すが、南ベトナムの現在の状況から見て、そういうことがあっても日本側はこれは留保する、あるいは条件をつけるということが今日の日本政府の正しい態度ではないかと思いますけれども、これに対する御所見を承りたい。
  19. 三木武夫

    三木国務大臣 アジア開銀に対して特別基金として出すわけですが、これに対して条件をつけて、この資金南ベトナム農業開発に対して使ってはならぬという留保をつける考えはありません。やはり基金の出し方としては、そういう条件をつけることは適当でないと考えております。しかしこの資金を出す場合においては、南ベトナムだからどうだということでなくして、そのプロジェクトと、そのいろんな諸条件というものを勘案して慎重に出さるべきであるということは、さように考えますけれども、日本資金拠出する場合において、南ベトナム政府農業開発を除くという条件をつける意思はございません。
  20. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 これは、私は全く意見が相違をいたしております。かりに条件がつけられないでも、そういう状況下において出資をするということについては、相当多くの国民の間に疑問がある。これは来年度中に農業基金というものが南ベトナム側から要請があった場合に、日本国民は納得しないだろうと私は思う。一体、南ベトナム農村全体がどんな状況にあるか。もとより、二、三日前に私が見ました毎日新聞の紙上では、あれだけの戦争が行なわれておっても、南ベトナム農民の中には、何とか水田を改良し農業実績をあげようということで、日本平和部隊の隊員と一緒になってなにしたという非常に悲しい農民の姿を写し出しておるのを見たことがありますから、そういう意味では意義はもちろんあるのです。もちろんあるけれども、今日それが南ベトナム政府の手を通じて運営されるということについては、今日の南ベトナム政府の能力から見て非常に私は疑問を差しはさまざるを得ない。これがもし一億でも二億でも使われるということになるならば、国民の疑惑というものは相当に深刻なものになっていくと思いますので、重ねて御注意を喚起したいと思うのであります。もし出てきた場合、日本政府は慎重な態度をもってこれに対処されますか。
  21. 三木武夫

    三木国務大臣 それは、必ずしも十分でない資金を使うのでありますから、日本も御承知のように渡辺君がアジア開銀に総裁としておるわけでございますし、当然にこれは慎重な、単にベトナムに限らず、わずかな資金アジア全体に向かって使うというのでありますから、慎重であるべきことは川崎君の御指摘のように当然だと考えます。
  22. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 昨年の十二月の三十日でありましたか、北ベトナムの外務大臣のチン外相が、米軍が北爆を停止されるならば和平に応ずる用意がある。そのときに自民党の総務会へ御出席を願いまして、いまが非常なチャンスではないかということを、一月の十五、六日の総務会で私は申し上げた。ところが三木外務大臣の御答弁は、残念ながらアメリカのジョンソン大統領と同じで、北ベトナムがほんとうに和平の意思があるかどうかわからぬということであります。続いてその後の総務会でまたお会いしましたときには、和平の意思があるように見られるけれども、しかしながらアメリカが、サンアントニオ方式で北爆停止に関連してのアメリカの立場を言っておることは自分は十分理解ができるというようなことであって、その間日本が——三木外務大臣はそのときこう然と私に対して、アメリカを説得する能力のある国は日本が筆頭だと言われた。筆頭と言われたか第一と言われたか、言われたところがその後十数日を出ないうちにテト攻勢というものが起きたわけです。やはりタイミングというものは非常に重要であって、一カ月アメリカが北ベトナムの真意を捕捉できないうちに、また疑っておるうちに大逆攻勢が出たというふうに私は判断せざるを得ないのであります。こういうチャンスを逃がすと、ベトナム戦争の和平というものはなかなか遠くなってくるわけでありまして、今後こういうようなチャンスをつかんだら、やはり日本外務大臣としては積極的にアメリカを説得する立場に立たなければならぬと思うのですが、その間の経緯を私はむしろ伺いたいのであります。
  23. 三木武夫

    三木国務大臣 川崎君の御指摘のように、昨年末チン外相が、一切の、北爆ばかりでもない、一切の戦闘行為をやめるならば話し合いに応じてもよいという発言があったことは事実であります。ところがアメリカとすれば、アメリカが言っておることは普通の補給はよろしい、ノーマルな補給はいい。しかし北爆停止の間に、普通の補給ではなくして人間あるいは物資、武器、この補給を増大することは困る、やはりその保証がほしい、こういうことを言っているわけであります。われわれとすれば、それはいいとか悪いとかではなくして、戦争の当事国があって、その人間が繰り返して両方の主張というものを言っておるのですから、それを第三者的におまえが悪い、いいと言っても戦争は終わらない。われわれはいかにしてベトナム戦争を早く終わらすかということに、やはり日本の外交の重点は置かるべきものだと考えております。そういうので、私が考えるのは、北爆は停止しなければならない、これはもう大前提である。そのときに、その北爆の停止の期間に戦力を増大するというようなことを北がやらないで、そうして普通の補給はいいというのですから、そういうことにするということを北ベトナム政府自身がみずから言うことが、いかにも条件——無条件といっておるのに、条件をつけるような形になってやりにくいならば、ハノイの友好国がこれを何か保証できないであろうか。もう両方の開きというものは、そんなに克服できない大きな開きだと私は思わない。だからそこで、ハノイ自身が言えなければ、ハノイの友好国がそれくらいの保証というものはできないであろうか。これは裏でも私はいいと思う。そういうことで、何か話し合いのテーブルにアメリカもハノイも着くというような条件をつくられないであろうかということで、われわれもこの点では非常に努力したのです。しかし、なかなかハノイにかわってそれだけの保証をするという国はありませんでした。したがっていまのところ、それはチャンスだと川崎さんは言われますけれども、両方の当事者があるのですから、向こうのほうとしては、絶対にそれだけの条件がなければ困ると言っておるのでありまして、われわれもしばしば北爆停止というものが戦争終結へのきっかけになる、いまは北爆停止から始まるよりほかないと思っているのです。そこで何かそういう条件をつくれないか、そういうふうなことに持っていけないか、条件でなくてそういうふうに持っていけないかということで、アメリカともこれは話の大きな中心の議題になるわけです。しかしアメリカとしては、どうしてもやはりその北爆停止のうちに、いま言ったようなハノイが非常に補給活動を活発にするようなことは困る、そうでなければアメリカは話し合いに応ずるわけにいかぬというので、非常に強い。したがってわれわれとしては、そういうチャンスだとは言われますけれども、戦争の当事者が、一方の当事者がこれでなければどうしても応じられないと言う以上は、それをチャンスとして話し合いに持っていくということがなかなか成功しなかったということが現在の状態でございます。
  24. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 御苦心のほどはよくわかります。しかし、いま御答弁の終わる一分ぐらい前に言われた、すなわち北爆停止は賛成だということをいま言われたが、和平はやはり北爆停止から始まるだろうと言われたのは初めてですでから、それが始まりは北爆停止だというならば、やはりそのことに全力をかけてアメリカを説得すべきだと私は思う。ウ・タント事務総長が昨年以来数十回にわたって、ベトナム和平は北爆停止が唯一の条件だということを言うてきたことは、私は非常な根拠のある立証になったと思うのです、チン外相の言明以来。その後、事務総長は各地を歩いて、やはりそういう心証を得、また確証に近いものさえ得てニューヨークに帰っておられるわけですから……。  私はこう思うのです。和平というものが始まるときにどっちが譲歩するかといえば、それはやはり大国が襟度を持たなければならない。だれが見たってアメリカが大国であり、北ベトナムが小国であるということは明瞭であり、しかもその小国のほうから、和平の唯一の条件は北爆停止であるということが出た以上、これはアメリカとしてはある意味ではだまされても乗ってみなければならぬ。だまされても二日か三日のことじゃないか。数日中には和平のテーブルに着く。そしてその初日に相手を見て切り出してもいいことではないかと私は考えるのですが、この点はどうでしょう。非常に機微でありますから……。
  25. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、二、三日やめてみて、そして話し合いができなければまた再開したらどうかという……。
  26. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 再開したら困る。
  27. 三木武夫

    三木国務大臣 再開しないのですか。——二、三日やめて様子を見てみたらどうかというお説でありますが、これはたいへんに長い相当な期間をかけて、あすこまでやはり大きな対立を呼んでおるのですから、したがってなかなか——少し冒険としてそれをやめてみたらどうかということもそれは考えられるでしょう。しかし、アメリカとしても、われわれがいろいろアメリカ側と折衝してみても、そう無理な大きな注文でないのだ。やはり普通の正常な補給活動はいいけれども、北爆停止のときに非常な戦力の増大は困るという、そう無理な注文でもないから、ハノイがこれを聞いてもらいたいというのがアメリカの立場ですね。だから、こういう戦争になってきたならば、大国が譲歩すべきだという川崎さんの言われることもわかりますが、みながハノイに対してももう少し呼びかけてみたらどうか。アメリカばかりでなしにハノイに対してもですね。だから表向きでなくてもいいのですよ。しかし、実際に北爆停止のうちには、そういう戦力を増強するようなことはやらないのだというこのことを、本人が公の条件として出すことはメンツ上困るかもしれません。しかしアメリカもまた信頼でき、ハノイもまた信頼できるような国がハノイと話をして、そういうことはできないであろうか、ハノイも、みなもう少し説いてみることはできないであろうか、やはり戦争を終わらすためには、一方だけの譲歩というものも無理——そういう場合もありましょう。しかし無理な点もある。やはり両方とも譲歩というものが戦争終結の妥協点になる場合が多いのです。だからハノイのほうも少しそういう点で考えてみる余地はないであろうか。そこに少し両方の友好国が、戦争を終わらすために中に入ってもっと働けないのだろうかという感じを、今日も私は持っておるんだということをお答えといたしたい。
  28. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 私も同感です。それならばやはり魂から始めたらどうでしょう。つまり三木外務大臣が意を決して北ベトナムと接触してみたらどうか。つまりあなたが北ベトナムに、ハノイに行くといっても、今日北爆もあるし、いろいろ危険だというなら、それは行くところはまだほかにもある。たとえばカンボジアのプノンペンですか、行って、北ベトナムの特使を呼ぶような交渉をするのもそうだし、あるいはあなたの最も信頼する政治家に行ってもらったらどうです。そういうやり方をやったら、必ずやはり打開の道があるわけであって、そういう案も何も出さずに、だれかがやるだろうでは私は困ると思うのです。どうです。
  29. 三木武夫

    三木国務大臣 これは一々ここで明らかにはできませんが、やはりハノイとの接触というものは、日本の外交機能においても重視しておるわけです。したがって、この段階でどうだこうだと申し上げることは適当でないと思いますが、できるだけわれわれはハノイとも接触を保ちたいということで努力をいたしております。もし私が海外に出て、そしてハノイの代表と会うような機会があったら、私は行くことを少しもいといません。これは実際アジアとしてベトナム戦争が一日も早く終わるということが、われわれ日本国民の願望でもあるし、ベトナム戦争があるばかりに、いろいろな問題が外交関係の上においても障害になるのですよ。すべての世界問題の中にはベトナム問題が関連してきて、世界の平和と安定に対する大きな障害になっておる。そういう意味から、それがベトナム和平に通ずるのだったら、どんなことでも私はすることをいとわないということでございます。
  30. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 いまアメリカ政府の中に、ウエストモーランドの二十万アメリカ軍増派ということに対して、にわかに対立があると伝えられておる。これは非常に重大なことであって、私は自由主義国の盟邦として——また、いままで戦後二十年間はむしろアメリカ日本を指導してきたことだけは、これは疑いのない事実です。いまはわれわれの力もつき、また独立国として、当然言うべきことは言わなければならぬけれども、われわれの最も盟邦である。それがベトナムで大きなあやまちをしておる。外交委員長は連日これを指摘しておるというようなときに、政府の部内にも波及してきたということは、これは非常に深刻な段階ではないかというふうに私は昨日の朝日新聞の記事を見て思った。これはもう三木さんのことでありますからすべて御承知だろうと思うけれども、どうもわれわれが見ておると、これは家庭の事情に立ち入るわけではないけれども、ベトナム問題に対するガンはラスク国務長官。国務省の内部で、いろいろな和平的な条件を出す人があるそうです。いろいろな資料、いろいろな上申書が出ていくと、ラスクは、不利なやつは全部くずかごへ入れてしまうというのです。ジョンソンの耳に入らぬという。ジョンソン大統領というのは長い間の議会の有能なベテランであるかもわからぬけれども、そうエスプリのあるケネディみたいな指導者だと私は思わぬ。それが、補佐官が悪い情報を全部くずかごへ入れてしまう。これは日本外交官の五、六人からわれわれは聞いておる。新聞記者からも聞いておる。また国防省の中でも和平的な空気がある。つまり限定戦争なんて言い出したのはマクナマラです。私は今度の戦争で一番驚くべき現象は、戦争をやっておる陸海空軍の三司令官を兼ねた国防長官が更迭をされて、そして国務長官のほうが強硬な戦争継続者である。そんなことはアメリカにとっても奇妙なことでありますけれども、まあそのことは別にして、アメリカの世論というものはいま非常に大きく変貌しようとしてきておる。  そこで、私はぜひ三木さんに伺いたいのは、時間がないのでいろいろな質問ができないのは残念ですが、ベトナム戦争を終わらすことが日本の国益でもあり、世界の願いでもあると私は思うのです。ベトナム戦争がもし一たびエスカレーションするならば、まあこれはないでしょうが、大陸での武力衝突ということになれば、第三次大戦への戦火、そしてわれわれの繁栄は一瞬にして土崩瓦解する。日本は特に被害者になるということだけは明らかでありますから、それだけはないように願いたいと思って、今日政治家としてのつとめを果たしたいと思ってあらゆる機会に発言いたしておるわけでございます。  そういう意味でいま私がお聞きしたい点は、ベトナム戦争をやめることがいろいろなものにつながる。たとえば川崎寛治君が隣におられて沖繩復帰への非常な熱弁をふるわれておる。沖繩を返還せよ、核つきでなく返還せよ。私もその論者であります。しかし、どう考えてみてもベトナム戦争がある間は、ベトナム戦争がたけなわの間は、縮めて言うならば、私は沖繩は返らぬと思うし、またこの点に関する限りはアメリカ政府だけではない、アメリカ議会の和平派であるマンスフィールド氏にしてもフルブライト氏にしても、ベトナム戦争ある限りは沖繩は返らないということを、また返せばそれはアメリカの敗北になるということを知っておるから、決してアメリカではそういうような意見にはならぬと思う。ベトナム戦争の火を消すことが、私は沖繩が将来、そのときはむしろ核つき返還でなしに返る。それは日本の全国民が体当たりでそういう気持ちになれば、必ず沖繩は本土並みになる、こういう感想を持っておる。これは区切って言いたかったけれども、時間がないからまとめて私の所見を述べましたが、どういう御感想を抱いておられるか伺いたいと思う。
  31. 三木武夫

    三木国務大臣 アメリカ政界の内部にいろいろお触れになりましたが、ラスク長官もわれわれとしょっちゅう日米協議をする相手であります。それは戦争をいつまでも継続していきたいなどと考えておる政治家は、私はいないと思う。やはりいろいろな発言の中にも平和への模索というものが、ラスク長官の中にもある。それはいつまでもベトナム戦争を継続していくことがいいのだと考えるような者は、やはりそういう者は政治家であり得ようはずはないわけであります。したがってアメリカ自身も何か——それはアメリカ自身の尺度があるでしょう。その尺度というものが必ずしもわれわれの尺度と一致するかしないかは別問題ですよ。しかし、何か、早く戦争を終わらせたい、アメリカの名誉を保持しながら戦争を終わらせたいと考えているということは、ワシントン政府の一致した考えであるということを私は疑っていない。その尺度が世界全体の尺度と違う場合もありましょうけれども、戦争を終わらせたいということについて、政府部内の考え方に違いがあるとは思いません。  そこで後段で御指摘になった、もうベトナム戦争というものはいいことはない、みな国際問題の進展を阻害しておるということは、御指摘のとおりだと思います。それは、沖繩問題にもお触れになりましたけれども、これは間接にはやはりベトナムの動向というものは沖繩の施政権返還にも無関係であるとは言えない。そういうことを考えてみると、いろいろな点でベトナム戦争というものは、日本の立場から言っても、一日も早くこれを終わらすということが日本のためにも好ましいことでもあるし、また日本ばかりでなしに、世界各国からしても、こういう戦争がいつまでも続いていくためにどれだけ世界を不安におとしいれているか。これはアジアに対しての平和建設を足踏みさせておることは事実であります。そういう点で、一日も早く終わらすために日本もまた全力を尽くさなければならぬという川崎君の激励のことばだと受け取って、同感の意を表するものでございます。
  32. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 中国貿易で具体的に二、三お聞きします。  日中覚え書き貿易協定の成立によりまして、中絶されると思ったLT貿易も復活をしたわけであります。細い細い線で復活をした。情けないことだと私は思っておるのですが、輸出入銀行の活用と吉田書簡というものはいろいろ論ぜられますが、私は、吉田書簡を総理自身が越えようというわけですから——ということは、実績をもってこれを開拓をしなければならぬ。輸銀の活用について通産大臣はかなり前向きの姿勢でいられるようですけれども、これについて三木外務大臣はどう思われますか、現時点で。
  33. 三木武夫

    三木国務大臣 これはだれが前向きで、だれがうしろ向きだというものではありません。政府は具体的なそういう事態が起これば、その具体的事態として処理したいというのが政府の統一した考え方であります。だれがうしろを向いて、だれが前を向いているというものではございません。
  34. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 たとえば、日立造船が輸銀を活用したいということの申し出がこの前あって、これは中絶をしているわけですが、今度あったらどうしましょう。
  35. 三木武夫

    三木国務大臣 そういうものが具体的に起こったときに、具体的な問題として検討をするということであります。
  36. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 外務大臣としては、活用する場合もあり得るのですか。
  37. 三木武夫

    三木国務大臣 これは政府全体の方針にも関係いたしますから、そういう問題が具体的に起こってくれば、具体的な問題として検討するということ以上に、まだ何も出ていないのに対してとやかく申し上げることは適当じゃないと思います。
  38. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 まだいろいろ問題があると思うのですが、私は、今度古井君が向こうへ行っている最中に、北京が遠いとはいままで思っておったのですけれども、驚くべし、電話が一日に午前中に二時間、午後二時間しか通じない。で、北京へ行くのに三日、電話はわずか四時間、北京は、中共は地球上最も遠い大国である。これは間違いないです。こういう不自然な状態だけは何とか打開したいと思うのですけれども、たとえば電話線の架設あるいはその時間の延長というようなことは考えられませんか。
  39. 三木武夫

    三木国務大臣 まあ、こういう隣国でありますから、両国の関係というものは次第に改善していかなければなりませんが、そのためには両国の状態というものが、日中関係にはできないこととできることとがありますね。できないこととできることとがあって、そのできないことをできるという幻想を抱くことはよくない。しかし、できることの範囲内では御指摘のような問題もいろいろあるでしょうが、そのためには、両国の関係というものがもう少しお互いに両国の立場を尊重し合う、中国もまた日本の立場というものを尊重し、日本もまた中国の立場を尊重して、そして単に自分の友好国というのではなくして、原則として平和共存という一つの原則を中国も認めて、そういう中国自身にも問題がある、日本もまた問題がありますけれども、そういうことで両国の関係が改善された雰囲気になってくれば、川崎君の言われておるいろいろな問題も、日中関係で改善すべき問題はたくさんにある。その前提になるものは、両国がやはりお互いの立場を尊重し合う、内政は干渉しない、その上でお互いに日中関係というものを改善していこうという考え方が両国にあることが、いろいろな日中間の問題を改善していく大きな前提になる、こう考えております。
  40. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 実はまだ相当お聞きしたかったのですが、時間の制約もありますからこれでもう終わります。  要望だけ申し上げておくと、ケネディラウンドの関税引き下げということによってずいぶん恩恵を受けるわけですが、中国がこれに入らない。これも一つの問題である。これは答弁があれば最後に御答弁いただきたいと思います。  私は、この機会に、最近の内外の政局を見まして、明らかに本年は世界情勢も国内の政局も転換期に差しかかったと思っておるのです。私は自民党を心から愛しておるし、自民党政権が長く続くことが日本国のためにいいと考えておるけれども、どう見ても現政権の政策遂行能力には限度が近づきつつある。このくらいのことばでとめておかぬといけないと思っておるが、しかし、限度が近づきつつあるということは確かだと思っておる。少なくとも昨年の暮れあたりからのこの内閣の姿は相当に硬直化してきておる。財政硬直化とと言うけれども、内閣硬直化の現象はだんだん強くなってきておる。これは自民党が硬直化しておるのではないのですよ。自民党は非常にフレキシビリティを持っておるし、国民各層の意見を聞こうと思っておるから、いろんな動きが出てきておる。そのときに一番注目されるのは、三木外務大臣の長い党人生活のその力をどこに入れるかということであります。私は総裁選のことには触れない。あえて総裁選のことに触れない。しかしながら、長く三代にわたった官僚政治のあかというものを一掃しなければならぬ時期ではないか、それでなければ国民の声というものはスムーズに民生の上に反映しない、政治の上に反映しない。あなたは昔、男は一回勝負すると言われた。これは映画のせりふではないが、非常にいいせりふであると思う。いいときに使われたが、使うときのタイミングというものがだんだん近づいてきておるのではないか。三木外務大臣という人は、すでに国会の質疑応答ということについてのテクニシャンでは、戦後政治家におけるトップであります。ナンバーワンだ。私はあえて推奨申し上げたい。しかしながら、政策をいかに実行したかということでは、そうあまり実績がないのです。たとえば三木答申、あんなものはまるで逆行しているじゃないですか。党内の情勢は派閥を奨励しておる。派閥を打破しろといってあれだけりっぱな作文を書いた。作文を書いたけれども、三木外務大臣は言うこととやることは逆だ。きょうの答弁などは相当高く評価されていいと思いますが、それならば自分で乗り込んでいく、そういう勇気を私は要請したいし、また三年半ほど前に、主査野原さんも一緒だったけれども、私があなたと別れたのは一つの政策的な見解が違ったからであります。まことに申しわけないと思っている。いつかはまた再び近づかなければならぬ。感覚はいま近づきつつあるけれども、踏み切らなければならぬ。それをきょうはぜひとも言いたかった。男は一回勝負するというから、勝負してもらわなければならぬ。いま川崎秀二のことを新聞が取り上げると、自民党の川崎秀二と書かない、自民党反主流派の川崎秀二。それでけっこうだ。しかしながら自民党の自由主義の流れをわれわれはくんでおるから、鳩山、齋藤隆夫、われわれの血潮は自由主義で埋まっておる。だから平和を呼号し、これを実行したいという考え方ですが、三木さんはそういう感覚だけ同じであって——勇気を持って立ち上がってもらいたい。どこに立ち上がれとは、いまどこの時期に立ち上がれとは言わないが、しかし官僚政治の弊害についてあなたはどう思われるか。その一点だけはぜひこの機会に聞いておきたいと思うのであります。
  41. 三木武夫

    三木国務大臣 非常に見解の相違する点も多々ございました。第一に、この内閣が政策遂行の能力を失った——私は有力な閣僚であります。有力な閣僚であって、それに対して同意を与えることはできません。この内閣はいろいろ国会などに対して問題もございますが、これはやはり内閣というよりも国会民主主義というものの一つの徹底していく姿であって、内閣はやはり政策遂行の能力を持っておる、かように考えます。  また、一つの大きな転換期ではないかということは、私もそういうふうに考える。これは世の中がここで変わるというのではないけれども、やはり世界的に見ても転換の要素をはらんでいる時期である、そういうように感じます。  こういうときに必要なことは、これは何も現内閣というのではなくて、全部がやはり意識の硬直化を来たさない必要は御指摘のようにある。これはやはりこういう大きな変わり目でありますから。したがって、あまりものの考え方が硬直化するということは、こういう大きな転換の時代的機運に即応しない結果になる、こういうことに対しては同感であります。しかしお説の点では、佐藤内閣の閣僚として承服しがたい点が多々あることを申し上げておきます。
  42. 野原正勝

  43. 加藤清二

    加藤(清)分科員 社会党を愛する者も、自民党を愛する者も、ともに意見の一致点、共通点があるということを、いま川崎さんの質問並びにその答弁を聞いておって気がつきました。非常に喜ばしいことだと存じます。なぜかならば、党人、議員が党を愛するということは、それを通じて相国を愛し、世界の平和を願っているからでございましょう。私は、この意味におきまして、川崎委員の質問のあとを受けまして同じような趣旨で外務大臣の御意見を承りたいと存じます。  まず第一、ベトナム和平、これがアジア平和建設の基礎である、世界の平和建設の基礎であるという御意見、これはもう完全に一致しております。そこで、あなたはどんなことでもいとわないとおっしゃられました。ベトナム戦争を中止させるためにはどんなことでもいとわないとおっしゃった。意気たるやもって壮とすべしでございます。私もそうあってしかるべきだと思います。今日の政治家の最も大切なこと、なすべきことは、このベトナム和平のためにほんとうに命をささげることであると、さように存じております。そこで、一歩進んでアン・アクチブでなしに、行動的に出ていただくために一つ提案をいたします。うしろに東郷さんがいらっしゃいます。東郷さんをはじめ大ぜいの方にお世話になりまして、先年私どもはフルブライト外交委員長に会いました。パストーレ、ケネディの弟さんにも会いました。そのときに話し合った結論も大同小異でやや似ておるのです。平和を愛し、自由を守るためには、命をささげるという意味のことをおっしゃられました。ところで、中国がうしろに控えていて相手にしてくれないからいけない、こういう意見がございます。そこで、私どもはそのときに申しました。それはあなた、西洋流にものを考えなさるからいけない。西洋の方々が相手にプロポーズする場合には、アイ・ラブ・ユーとおっしゃるんです。しかし、東洋では、それをとらざるところなんです。東洋では仲介人がいる。直接交渉ができない場合には、仲介人を介してアイ・ラブ・ユーと言います。あなたのほうがそのつもりなら、われわれも仲介人になろうじゃございませんかと言って話をしたことがございます。この意見については、ワシントンポスト、ニューヨーク・タイムズの編集長にも、ぜひそういう道が開けるならばお願いしたいものである、こういう意味のことを言われたわけでございます。ただし、われわれも時期をねらっていたわけでございます。まさにタイミングは一番よい時期に迫ってきたんだ。したがって、外交をつかさどる三木さんとしては、この際一歩前進して、中国とアメリカとのかけ橋になるために、具体的にあなたみずからが、古井さんたちのように中国に出かけて、そして和平の基礎を築くということは、歴史的に意義がある、世界平和のためにたいへんけっこうなことだと思いまするが、御高説を承りたい。
  44. 三木武夫

    三木国務大臣 いずれの日か、米中関係も改善をされることをわれわれは切に願うものであります。しかしながら、いまのこのベトナム戦争のさなかに、実際問題として米中関係が非常な改善をできる時期だとは私は思わない。やはり、ベトナム戦争というものが世界の安定と平和のために非常に大きな障害になっているということは、やはり米中関係にも言えると私は思うのであります。ベトナム戦争というものが早く終結を遂げるならば、いろいろな国際関係にも変化が来る。しかしいま一方において、ベトナム戦争が進行しておる、その中で米中関係の画期的な改善をはかるということは、現実問題としてそれは容易なことではない。それよりもわれわれが精力を傾けなければならぬことは、どのようにしてベトナムの和平を早期に実現するかということが問題の中心ではないか、このことが自然に国際関係にも変化をもたらしてくる。それを、国際関係から入ろうとすると無理がある。むしろベトナム戦争に焦点を合わすことがいわゆる国際関係の変化を生む、これが基礎になる、こういう感じを私は持っておるものでございます。
  45. 加藤清二

    加藤(清)分科員 もちろん、中国とアメリカとの親善を進めるということは、目標がベトナム戦争を早期中止させるというところにある一つの具体策でございまして、それを提案したわけでございます。しかし、それは回り道である、直接その戦争を中止させる方法がほかにあるとおっしゃるならば、どんなことをもこのためにはいとわないとおっしゃられました外務大臣のいま今日持っていらっしゃる具体策を、お示し願いたいのでございます。
  46. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、川崎君の質問にも答えましたように、ハノイとアメリカとの関係が非常に克服のできない、もうこれはいつまでも戦わなければ克服のできないものだとは考えてはいないのです。戦争の終結のきっかけには北爆停止のきっかけになりましょう。それ以外にきっかけになるものは、ちょっと現在われわれは見出すことは困難でございます。しかし、その北爆停止についてアメリカが言っておることは、いわゆるサンアントニオ方式によって言っておることとの間には、これはもう越えることのできないみぞがあるとは思わないのであります。したがって、ハノイとアメリカとの間には非常な不信感情があって、どうも両国間の直接の話し合いということではうまくいかない点があるので、第三国が、ハノイの友好国もおればアメリカの友好国もおるわけでありますから、まあ相当に両方の言い分というものの妥協をはかるようなことが、第三国の手によってできないか。それで日本としても、第三国にもあらゆる機会を——ただ在外公館を通じて言っておるばかりでなしに、私は海外にその用事のために出向いたこともございます。そういうことで、何か第三国の手を通じてこのような不幸な戦争を終わらすことができないかということでいままで努力を傾けてきておるのですが、まだ戦争が終わるというような手がかりがつかめないことは残念ではありますが、こういう努力は今後も続けていくつもりであって、ベトナム戦争のようなものは、だれも成算を持って、こうやったらああなるといってやれるものではないのです。みながやっぱり積極的に何とか平和をもたらすことはできぬかという、努力の集積の中に和平というものが達成できるので、だれかいい知恵を出して、一人でベトナム戦争を終わらすというようなことはなかなかできるものではない。みなが失敗するということをいとわないで、みながベトナム和平のために努力する、その努力の集積が大事なんで、日本もまたその努力の集積の一翼をにないたい、こう考えております。
  47. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それは三木さんと川崎さん、三木さんと私が、ここでベトナム和平を論じ合うことも、これまた和平を早からしめる一つの道であると私も思うております。したがってこういうことを申し上げておるわけでございます。ところで、アメリカと中国との和平促進、それは私はベトナム戦争を早期解決するに非常にいい手段だとは思いますが、外相が、アメリカとハノイの和平のほうが先である、その話し合いのほうが先であるとおっしゃるならば、一歩譲りましょう。それもけっこうだと思う。当然のことなんです。そのために在外公館のみにまかせておかずに私も努力している、こうおっしゃられましたので、この国会でも終わりましたころ、時機を見て、外相みずからがその関係諸国に出かけて和平工作をなさる、あるいはまた、それが不可能であるとするならば、与野党の議員の代表をすぐって、関係諸国に和平工作部隊を送り込むということは、これは決して不合理でもなければ、マイナスなことでもないと思いますが、こういうことが国会の空気として起こってきました暁には、外相としてはどうなさいますか。
  48. 三木武夫

    三木国務大臣 あらゆる方法、努力が積み重ねられることが必要だということを私は申し上げました。したがって、われわれも、必要があれば海外に出向くということに対していとう気持ちはありません。ただ、しかし、やみくもに出て行っても、出て行くについては、それまでの間にいろんな準備が要りますから、ただ走り回ることが和平への努力だとは思いませんから、それを効果的にあらしめるためには、外相も大いに動かなければならぬとは思っております。しかしながら、議員の方々が和平のためにずっと回って行ったらどうかというお話でありますが、なかなかこれは、与野党といっても、ベトナム戦争に対していろいろ意見も違っておる点もありますし、与野党がチームを組んで各国を回るというような条件は、国内政治の上においてもやはりなかなか整わない。それよりかは、たとえば加藤さんの属される社会党などは、ハノイとも関係を——関係といったらおかしいが、ハノイヘも行かれる方もおられるのでありますから、そういう意味で、戦争を終わらすために、一〇〇%自分意見を通さなければ戦争を終わらさぬということでは解決はできない。やはり戦争を終わらすためにはある程度の妥協が必要である。そのためには、戦争を早く終わらすということについて、そこに焦点を合わして、野党の諸君は野党の諸君として働ける余地、働いていただける余地があるのじゃないでしょうか。与野党が一致して議員を海外派遣するというようなことは、なかなか実際的ではなくして、むしろそれぞれ手分けして、みなが和平のために努力するというほうが、私は実際的だという感じを持っておるものでございます。
  49. 加藤清二

    加藤(清)分科員 わかりました。仰せられるまでもなく、すでにわが党においては、書記長がこのことについてかの地に渡って和平工作をしていることは御案内のとおりであります。そこで、せっかくの三木外務大臣のおことばでございますので、そういうつもりで私どもは中国へもソ連へも北鮮へも渡航したい、こういうことでございますので、外務省事務の関係の方、わが党の方々がかの地に渡られますときには、ひとつ気よくパスを出していただきますように、これを念を押して次に進みます。  国際法と二国間協定と競合した場合に、いずれが優先するのでございましょうか。
  50. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 これは国際法と申しましても、国際法は、御案内のとおり慣習法が主でございます。現在国際法と申しますと国際慣習法が主で、一般的なものも、非常に多数国間条約国際法的になっておるものもございますけれども、これは一がいにどちらが上とか下とかという問題じゃございませんで、たとえば国連憲章のようなものでございます。あるいは前の国際連盟の憲章のようなものでございます。ああいうものはむしろ上位規範として考えるべきものだと思うのでありますが、それ以外の一般国際法と申しますか、多数国間条約の行政条約なんかは、これは一般国際法といってもいいわけでございます。たとえば例を申し上げますれば郵便条約のようなものであります。こういうふうなものは特に二国間条約、上、下というようなものではないと思います。ただ一般国際法の慣習法となったようなものでございますと、これは一種の上位規範と考えていいものではないかと私は存じております。
  51. 加藤清二

    加藤(清)分科員 気をつけて答えてくださいよ。決して落とし穴にあなたを追い込むつもりで質問しているのじゃない。そういう結果になることをおそれるからです。特に国際法と二国間協定とが競合した場合には、国際法が慣習法になってしまっているという場合、その場合は二国間条約よりは上回る力を持っている、こういうお答えでございますか。
  52. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 その上回る……
  53. 加藤清二

    加藤(清)分科員 競合した場合は、どちらが上回るでしょう。
  54. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 競合するということ自体が、通常の場合考えられないわけでございます。両方とも国家意思できめるわけでございますから、国際法の競合法規のようなものがもしあったといたしますと、それに違反するような条約というものは当然結ばないのが通常でございます。
  55. 加藤清二

    加藤(清)分科員 わかりました。  二国間協定と国内法が競合した場合には、いずれが優先いたしますか。
  56. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 これはまたいろいろ議論の分かれるところでございまして、先生御案内のとおりでございます。たとえば国内法でも憲法のようなものがございます。それから一般法律がございます。憲法なんかになりますと、憲法に反するような国際条約というものは、国際条約にいたしましても、当然国会で御審議を経て成立するわけでございますから、憲法に反するような国際条約というものができるはずのものでないわけであります。実際問題として、たとえばその法律がございまして、それにたとえば多数国間条約ができる、それで法律を変えなくちゃならないというような場合には、一般法律を申し上げておりますが、これは法律のほうを変えるという手当てをいたすわけでございます。たとえば二国間の場合をとりますと、二国間の二重課税の防止条約をつくります。そうすると、税法でそれに合わない部分がございます。そういうときには、法律自身も同じ国会で変えていくわけでございます。
  57. 加藤清二

    加藤(清)分科員 わかった。あなたに講義を聞いているのではないのですからね。簡潔に、いずれが優先するか、これに答えてもらえばいいのです。  次に、海里説はいろいろあるようでございますけれども、日本の領海は何海里説をとっていらっしゃいますか、外務大臣
  58. 三木武夫

    三木国務大臣 三海里でございます。
  59. 加藤清二

    加藤(清)分科員 ここから先の問題は、別の委員の方がお尋ねすることになります。  そこで私は、経済のほうへ進みます。ここらあたりで統一見解を出しておかれる必要はございませんか。
  60. 三木武夫

    三木国務大臣 統一も何もございません。
  61. 加藤清二

    加藤(清)分科員 いいですか。それじゃ私が申し上げます。  アメリカ日本の貿易の歴史は、アメリカ日本品を制限する歴史でございます。制限の連続でございます。これは日米友好通商航海条約違反であるというので訴えますると、アメリカは、国内法によって制限するんだ、こう言われるのでございます。中川条約局長ははっきりと、日本の法律と日米友好通商航海条約が競合した場合に、いずれが優先するやと尋ねた場合に、日米友好通商航海条約が優先すると答えておられます。ところが、アメリカ国内において、このようなことが起こって裁判になりますると、これはアメリカの州法が優先するということにいままではなっておるのでございます。これは矛盾とお考えになりませんか。
  62. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 先ほどことばが少し足らなかったと思うのでございますが、そのいまの具体的な例の問題については、当然裁判になるわけでございますから、裁判の場合には、州法違反というところで問題になるかと思います。その州法自体が日米通商航海条約に違反しているという事態を御設定になったと思いますが、その場合は、日米通商航海条約自体の違反にはアメリカ国としてはなっていると思います。そういう関係になると思います。
  63. 加藤清二

    加藤(清)分科員 時間が限られているのですから、私の質問に答えなければいかぬ。矛盾するとお考えになりませんかと聞いておるのです。だから、外務大臣にお尋ねしている。
  64. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 どれとどれが矛盾しているかということを……
  65. 加藤清二

    加藤(清)分科員 よく聞いておってくださいよ。  日本国内法と日米友好通商航海条約とが競合した場合——そういう実例がたくさんある。いいですか。その場合は、日米友好通商航海条約が優先するという方針で貿易のあまたの案件の始末をしておられます。ところが、アメリカ国内法と日米友好通商航海条約が競合した場合には、アメリカの州法が優先するというさばきのもとに始末が行なわれております。これは日米友好通商航海条約の精神に違反するではないか。矛盾するではないか。すなわち、両国間が内国人と同等の待遇を与えるというこの立法の精神に違背し、矛盾するではないかとお尋ねしておるのです。
  66. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 日米通商航海条約の違反となります。
  67. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そうでしょう。そのようなことがいままさにまた行なわれようとしている。すなわち、アメリカ国内における日本品の制限立法でございます。課徴金でございます。これについてもう一度外務大臣の確固たる信念を承りたい。
  68. 三木武夫

    三木国務大臣 予算委員会でもしばしば申し上げましたように、このことはアメリカの従来の主張と矛盾するものであり、また、一方において、このことが連鎖反応を起こして世界貿易の縮小を招く結果になって好ましいものではない、したがって、アメリカとしては、このような輸入課徴金制度のようなものを思いとどまってもらいたい、これが政府がいま努力いたしておる努力の中心点になっておるわけでございます。しかし、そうは言っても、もしアメリカがそういうことを実行するという場合になれば、これに対して対抗策を日本は講ずる、こういうことで検討は始めておるということを申し上げておるわけでございます。
  69. 加藤清二

    加藤(清)分科員 もしアメリカが課徴金を実行に移すということになりますると、必要不可欠な手続がありますですね。すなわち、ガットの特認が必要でございます。IMFの判定が必要でございます。これはお認めになりますか、なりませんか。
  70. 三木武夫

    三木国務大臣 それは当然にガットの特認が必要でございます。
  71. 加藤清二

    加藤(清)分科員 ガットの特認とIMFの判定、この特認と判定を受ける必要条件条約局長に聞きたい。
  72. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 経済局のほうからお答えさせます。
  73. 鈴木文彦

    ○鈴木説明員 お答えいたします。  アメリカがいま言われましたような措置をとる場合には、国際収支上の理由によってとるのだということである限り、ガットとIMFの協定によりまして、国際収支の問題についてはIMFが判定を下すということになっておりますので、必ず事前にIMFの見解を徴し、かつ、具体的にその会議の場にIMFの代表が来まして、IMFとしての意見を申し述べるということになっております。かたがた、いま御質問のございましたガットの特認の件につきましては、ガットの関連規定に従いまして、三分の二の多数決を得ない限りガットの特認が得られないことになっております。
  74. 加藤清二

    加藤(清)分科員 手続はあなたのおっしゃるとおりでございまするが、特認を求め、判定を求めるにあたって、アメリカとしては国内的に特認を求めるための必要条件がございますですね。それは何と心得てみえますか。
  75. 鈴木文彦

    ○鈴木説明員 いま御質問の趣旨、必ずしも私はっきりいたしませんが、アメリカ国内的に必要な条件と申しますのは、おそらくアメリカの行政府において、あるいは国会において、かかる措置をとることを正当ならしめる、あるいは納得のいく理由づけが少なくともなければならぬということで……。
  76. 加藤清二

    加藤(清)分科員 わかった。時間がないですからね。あなたを困らせようと思って質問しているのじゃないですからね。  今度は逆の立場から考えましょう。ガットの側で特認をする、IMFで判定をする、それは申請があったら何でもしてあげるというわけではないのですね。その条件が必要なんですね。かくかくの条件があればこそこれは認めてあげる。そっち側から照らしてみてください。
  77. 鈴木文彦

    ○鈴木説明員 いま言われましたとおり、申請があれば自動的に認めるという筋合いのものではございません。
  78. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それには国内条件が整わなければいけない。すなわち、国内で増税をしている、もうこれ以上増税はできません、したがって外国にも迷惑をかけるのです。この条件と、それから国内の景気の引き締め、いわゆる財政の引き締め、これがもうこれ以上は耐えられませんというところまでいかないと、八条国はこれが許されないはずなんです。もしそれが許されるとなれば、日本もガット八条国であっても、かってなふるまいができるわけですから。そうでしょう。外務大臣、これはお認めになりますか。
  79. 鈴木文彦

    ○鈴木説明員 国際収支上の理由があるかないかということについて、これはまさにその措置を認めるか認めないかの焦点でございます関係上、そのガットの特認を求める場合に、この点が議論の集中する点になります。もちろんIMFは国際収支上の理由からのみの、つまりそういう状態にあるかどうかという意見を述べるだけでございますが、少なくともこの特認を求める会議に出席する各国代表は、それだけではなく、はたしてその国が、その国際収支上の理由が非常に暫定的で終わるかどうか、つまり、それ以外の国内的な財政金融のしかるべき措置をとるであろうかどうかということが、やはりその認めるか認めないかの意思決定をする場合の心証の問題になります。これはかつて一九六四年にイギリスが特認を——特認というかっこうでは求めませんでしたが、輸入課徴金の制度を事実上とりましたときに、各国が常に言っておりましたことは、イギリスのそれ以外の国内政策が、この輸入課徴金を不必要ならしめるほど真剣にとられているかどうかという点に焦点がしばられたということを申し上げておきます。
  80. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そのとおりです。名答弁でございます。イギリスもカナダも世界の総反撃を受けて、ついにこれはやめざるを得なくなった前例にかんがみて、日米友好を促進しようとしていらっしゃる日本外務省は、再びおろかなあやまちを友好国がおかさないよう努力をなさる必要があると存じます。及ぼす影響は、これはもはや言う必要はございません。  そこで、最後に一問だけ申し上げておきます。  さっき、川崎さんもちょっと触れてみえましたが、外国に行って公館にお世話になってみますると、日本の料理人はおりまするけれども、先生がおりませんですね。さしみじょうゆやお茶わんやお米の御飯はありまするけれども、黒板がないですね。これは一体どういうことでございましょうか。これでは三木さん、あなたの部下が安心をしてその地に長くとどまることができないではないかと存じます。外務省の方々も、やはり人の子、わが子の小学校教育、中学校教育には人並み以上に苦労していらっしゃると思います。料理人はいる。にもかかわりませず、なぜ先生がいないだろうか。日本外交官のみならず、その地に働かれまする商社の方々、メーカーの方々、外貨獲得のために一生懸命になって働きなさる方々、この方々の子弟教育はどうなっているのか。日本の義務教育日本人の子はオール含まれているはずなんです。その義務教育すら行なう手だて、行なう組織、それがないということは、これはもはや法律違反じゃございませんか。すべからくこの点に着目していただいて、外地に働かれる方々が安心して子供教育をまかせられるような措置を大至急おとりになることを要望します。  同時に、もう一つの問題は、在外公館に行ってみますると、日本の美術、文学、芸術等々をかの地に紹介するためのいろいろな備品がございます。けっこうでございます。しかし、外務省としては画、骨とうということはお考えのようでございまするが、書がないですね。日本では書画骨とうというのです。その書が抜けているのです。この書はすでに国連の事務局にも、あるいはジョン・リンディの部屋にもあるはずなんです。世界各国から日本の書道はいまやアウフヘーベンの一つのシンボルとして尊重されている。民間のうちへ行きますと、カリフォルニアのお百姓さんのうちに行ってもちゃんと額がかかり軸がかかっている。にもかかわらず公館にこれがない。これは一体どういうことでございましょうか。片手落ちもはなはだしい。三木さんの賢明な頭と実力をもってここを開拓していただきたい。  以上申し上げまして、質問を終わります。
  81. 三木武夫

    三木国務大臣 われわれが心配しておる問題にお触れになりまして、いわゆる外交官の子弟の教育がほかの官庁に比べて非常に犠牲を払っている。それで、大きいところでは小学校教育などの学校の施設を持っておる大使館もございますが、これはもう限られたもので、人数が限られておりますからなかなかそれはできない。したがって、東京で子弟の教育などをする施設を拡充するとか、そういうことを今後一そう充実していかなければならぬと考えております。とにかく、数の少ないところにみな学校の教育者をそこへ一緒にということ、それは理想的でしょうけれども、やはり大使館員がごく数の少ないところに教師を一緒にということもなかなかできませんから、そういう点で今後ともわれわれが留意していかなければならぬ点であると、御注意を感謝いたします。  それから、書のほうは、加藤さん、なかなか書道振興のために功績をあげられたお方でございまして、昔はともかく、最近は——最近の傾向ですよ、書道というものが振興されたのは。あなたもその功績者の一人です。だから、おいおいと大使館にも、書道いわゆる書画という名にふさわしいような書が応接室にも飾られる日がくるに違いないと私は考えております。
  82. 野原正勝

  83. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 昨日の予算委員会では時間が足りませんで、お互いにことば不足であったろうと思うのです。特にポラリスの領海無害通航の問題は、ああいう簡単な答弁では私どもは了承するわけにはまいりません。   〔主査退席、小沢(辰)主査代理着席〕 そこで本日も、与野の皆さんからは私の持ち時間を、一時間はいいのだけれども、さらに三十分か四十分にしてくれということですから、この問題は私どもも十分用意をして、いずれ本格的な論議を別の機会でやることになっておりますので、私はその準備のために若干の点についてお伺いをしておきますが、ポラリス潜水艦が、佐藤総理のおっしゃる核の抑止力として領海に入り、領海を航行することは無害航行と言えますか。
  84. 三木武夫

    三木国務大臣 この抑止力とポラリス、おそらく総理はポラリス潜水艦、ICBM、こういうものがやはり大きな抑止力になっている世界的な一般的な話として言われたのだと私は思います。そのことは、このポラリス潜水艦の領海の無害航行と関連をして私は言ったのではない、こう考えております、総理の発言は。そこで、これは抑止力ということが、領海にポラリス潜水艦が入ってくること自体が抑止力と直接の関係——全体としたらポラリスの持っている抑止力というものは、これはやはりわれわれとして評価しているわけです。しかし、日本の領海に入ってくることが即抑止力だというふうに直接結びつけてわれわれは考えていないのでございます。
  85. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それは、ポラリスの抑止力、核の抑止力としては領海に入ることは認めない、こういうことですね。
  86. 三木武夫

    三木国務大臣 きのう予算委員会で、私は領海に入っていかりをとめたり、もう入ってきて——何か私の頭の中には停泊するような感じがあったので、あなたに答えたわけです。しかし、ある一つの海峡などをすうっと——三十五年の速記録というものを読んでみたら、すうっと通るときは、これはやはり無害航行であって、そしてこれは事前協議にかからない。しかし、停滞したり、まごまごしたり、そういうふうなときには、やはり無害航行ではないという答弁、なかなかすうっと通るというような感じが出ておると思いますが、そういうふうなことであって、ポラリス潜水艦が日本の領海に入ってくるという、ちょっとその感じと違うのですね。すうっと通り抜けると、そういうときに領海をかすめる、そういうことは、それは持ち込みじゃないですからね。持ち回ってはおるかもしれぬけれども、持ち込みじゃないのですから、いま申し上げるような事前協議の条項にはかからない。私は少し、何か入ってくるという、あなたの質問がじょうずですから、ついそれにつり込まれた感じもあるのですが、ただオープンシーからオープンシーへ領海をさあっと通り抜けていく、こういうものは、いわゆる無害航行の典型的な姿であって、それは事前協議の条項にはかからないということでございます。
  87. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私は、事前協議条項が全く空洞化している、使おうという気がない、軍艦についてはそういう気があるのを指摘しますよ。いいですか。そういう外交の姿勢だから、大臣がいくらすうっと通るとおっしゃっても、それがすうすうになるのですよ。行ったり来たりになるのですよ。それで私は、核の抑止力、ポラリスの抑止力との関係で、領海に入ることは許さない。その場合の核の抑止力としての入る姿はどういう姿であるか、これを実は明確にしてもらいたい、こう思うわけです。
  88. 三木武夫

    三木国務大臣 いま言ったように、国際公法の一つの慣習法として成り立っておる無害航行というのは、日本の領海を行ったり来たりというようなものは無害航行だとわれわれは考えない。ただ、こうすうっと通り抜けるような場合であって、それをこちらの領海内を行ったり来たりするときには、これはやはり無害航行だとは言えませんから、そういうときは事前協議の対象に私はしたいと思うのであります。したがって、抑止力というものは、御質問の中心であるポラリスの抑止力というものは、全体としてポラリスが抑止力を持っておる。ただしかし、通り抜けることは、領海内をすうっとかすめて通り過ぎることが直接の抑止力というものと結びついては考えていない。ポラリスの持っておる全体としての抑止力というものに対しては、われわれは評価しておるということでございます。
  89. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 では確かめておきますが、領海に入るときには、潜水艦は必ず浮上しなければなりませんね。
  90. 三木武夫

    三木国務大臣 そのとおりです。しかも海中をもぐってこられたのはわかりません。やはりアメリカの旗を立てなければいかぬ。したがって、潜水艦は浮き上がらなければいかぬということでございます。
  91. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いまおっしゃったとおり、領海内にもぐってくればわからぬではありませんか。どうなるんですか、その点。
  92. 三木武夫

    三木国務大臣 実際、国際関係というものは、もう疑ったら切りがないですね。条約というものも、その条約の持っておる何というんですか、約束というものはゆらいでくるのですね。それはアメリカに限りませんよ。どこでもそういうものを結んでおいて、それが目に見えないようなところで条約違反をやったらどうするのかと疑ってかかると、やはり国際条約というものは成り立たない点——わかる点もありますけれども、わからぬ点もある。どうしても国際関係というものは、世界の信義の上に立っておると私は思う。したがって、アメリカの場合でも、ポラリス潜水艦を、これは停泊しちゃいけないのですよ、うろうろしちゃいけないのですよ、行ったり来たりしちゃいけないのですよ、だから、すうっと通り抜けるというのですから、何も日本の領海内を、少なくとも公海なら自由ですからね、そういうことを何のためにする必要があるかということを考えてみると、われわれとしては、ただ領海内を通るときには浮き上がらなければいけないぞ、もぐってはいけないんだということで、そこはやはり信頼をするよりほかはないと考えております。
  93. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私がこのことを非常に重要視しているのは、当面二つの問題を考えておるのです。  一つは、いわゆる沖繩の核つき返還の問題が考えられるのですよ。きのうも言いましたが、3Bのうち、もうB52はあなた、核を積んでいないとおっしゃるのです。だから沖繩に行こうと、日本に来ようと、いいということにならざるを得ない。いいですか。それからICBM、これは日本列島に置く必要はないでしょう、戦略上。そうすると、残っているのはポラリスだけですよ。だから、このポラリスの行動についてはどうするかということは、いわゆる核の持ち込み問題、事前協議の問題装備の重要な変更の問題で、具体的に日本と関係のあるのは、もはやポラリスだということをわれわれ集中的に考えざるを得ない。それが一つです。  いま一つは、御承知のとおり、マクナマラは、薄いABMシステムを置くようにきめたのです。そうして、いまのアメリカの開発の状態は、アメリカの本土にABMを置くということと同時に、艦船にいわゆるABMを装置するという開発をどんどんやっておるのです。そうして、それは近いほどよろしゅうございますね。そういう問題がある。当面私は二つの問題があるから、総理が言っていらっしゃる非核三原則という問題とも関連をして、領海にその種のものが、たとえ領海通航であろうと、それは困るということは言える根拠があると思うのです。私があると思うのは、今国会に出されております領海及び接続水域に関する条約の——私もまだ十分調べておりませんが、いま私がさしあたって気のついておるのは、二十三条なんですね。その領海を航行中の軍艦に適用される規則の二十三条です。この中に、「軍艦が領海の通航に関する沿岸国の規則を遵守せず、かつ、その軍艦に対して行なわれた遵守の要請を無視した場合には、沿岸国は、その軍艦に対し領海から退去することを要求することができる。」いいですか。「領海の通航に関する沿岸国」つまり私が指摘しておるこの具体的な例では日本です。日本が領海の通航に関して何か規則を持っておったときにはそれを守る、こういうことですね。そうすると、国内法でもそれができるのに、ましてや日米安保条約というアメリカとの条約で、事前協議条項というものをこれほどきびしくしておるならば、その条項に照らして、核装備艦は領海に入っては困るということは言えるじゃありませんか、この二十三条で。国内法でもそれができるのに、ましてや安保条約できまっておるのにそれができない。そこに私は外務省の姿勢が問題になると言うのです。その根拠は十分あるではないか、どうですか。
  94. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、やはり核を事前協議の条項に——装備の重大なる変更というのは、核の持ち込みに対して事前協議をするということになっておるんです。いま言ったような場合には、沿岸をうろうろしたようなことは、これはわれわれは直ちに事前協議の条項にかけますよ。かけてしなければならぬと思います。また、いかりをおろしたりしてはいけませんよ。ただ、一つの海峡のような場合に、公海から公海へすっと通り抜けるような場合に、これはアメリカの軍艦に限りませんよ、ほかの軍艦だってそういうことは国際法上認められておるんですから。核を積んでおるものも、それはないとは言えない。そういうもので、ほかの国においても、これはやはり拘束することはできない。したがって、そういうことですから、いま安保条約の事前協議の条項があると言うが、それは一つのある公海から公海までをすっと通り抜けるようなことが、それで領海内をかすめるような場合があっても、その場合は、核装備、核兵器を積み込んでおるような場合には事前協議にかけなければならぬというふうな装備の重大なる変更というものにわれわれは解釈をしてないんです。それはアメリカ以外の国もそれで束縛することもできないわけですから、そういう意味で安保条約は、ただすっと通り抜けるということを事前協議の条項にはしていない。だから、安保条約をたてにとって、これは事前協議をしなければならぬということは、われわれは考えていないのでございます。
  95. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 核の持ち込みという問題について佐藤総理は、領土、領空、領海とおっしゃったんです、これは拒否すると。そこで、日本政府さえその気であれば、一般的な国際法規はそうなっておっても、核装備艦については困るということは言えるはずです。言えない根拠はありません。国際法でそうなっておる。現にあなた方が今国会に出されておるこの領海及び接続水域に関する条約、これがあなたがおっしゃっておる国際法を基礎にした国内法なんですよ、大臣。その二十三条にこういうことが書いてあるではないかと私は言っておる。だから、疑わしい場合があるから、それでこの条項を基礎にして、領海に核装備艦が無害航行といえども入るのは困るということは言えるではないか。そして、それは国際法違反にはならない、私はそう言っておるんです。それをあなたは、そのつもりがないと言う。政策上の問題ですね。これは法的な根拠の問題じゃないんです。国際法に違反するからそれを言えないというんじゃないですよ、いまの大臣の答弁は。政策的にあなたは、いや、それは無害航行だからいいとおっしゃる。しかし、私は一法的にもそれは困るということは言えるではないか、決して国際法には違反しないのだ、これを私は言っている。二十三条、まさにそのとおりであると思うのですね。
  96. 三木武夫

    三木国務大臣 それは、日本の周辺ばかりに限らず、世界にもそういう狭い海峡などというものはあり得ると思います。したがって、一つの公海から公海へこう通り抜けていくような場合、それが領海をかすめるような場合があっても、通り抜けることをいけないと言うことは、ほかの国内法というのはほかにいろいろな問題はありましょうけれども、いわゆる無害に航行する権利そのものを束縛するようなことは、国内法で私はできるとは思いません。また、日本の場合は、私は何かこう事前協議というものをできるだけ空文化していこうというその考えはないのです。私は、現在できる以上の、いままで政府が解釈しておること以上のものをつけ加えようということは、私としてはできません。しかし、事前協議を厳格に解釈したいと考えておる論者の私は一人なんです。したがって、このポラリスの場合においても、ただ一つの公海から公海へ通り抜けるような場合は、これはやはり当然に国際法の慣習、今度できる条約などにもそれを認められておる。しかし、沿岸を通り抜けるのではなくして、そして接岸しなくても、停泊するような形でポラリス潜水艦が領海に入るということは、事前協議の対象にされなければならぬ。ただすうっと通り抜けるような場合はそれを事前協議の対象にはしない。そのことが国際法の一般的な慣習にも反しておる、こういうふうに私は考えております。
  97. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私はほかにあと二点問題点を出しますから、ここで議論は保留しておきます。しかし、私どもは、やはり核装備艦が領海に入るのは、無害航行でも困るということを言うことは、決して国際法に違反しないし、このあなた方が出されておる領海及び接続水域に関する条約にも違反しない、こう私はいま意見を述べておきます。   〔小沢(辰)主査代理退席、主査着席〕  それから、大臣の答弁、ちょっと長過ぎまして、時間を——質問させまいと思っているのじゃないですか。  それじゃ、いまのあれでいくと、ソ連の核潜水艦だって、中国の核潜水艦だっていいということになりますね。
  98. 三木武夫

    三木国務大臣 それはアメリカだけを区別することはできない。
  99. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それではソ連でも中国でもいいと——私は三木さんのために惜しむのですよ。きのう一番初めに、領海といえども断じてまかりならぬと、最初答弁されたあの答弁が正しいのです。大物の外務大臣ですから、そのくらいの考えを通してもらいたかった。そうしたら、何か過去の答弁にこだわられて、局長から何か耳打ちされて、そのような重大なお考えを急にひるがえされるという、たいへん私は残念であったわけです。これは問題を残しておきましょう。  では次に、私は総括質問で出せなかった問題を出してみたいと思います。事前協議がまさに空洞化しているという例を、私は二つあげましたね。一つはゼントルマンズアグリーメント、これほど重大な問題が、口約束で何のことかさっぱり外交的な効力がないということ。それから、例の岸・ハーター往復書簡、日米安保協議委員会によって双方とも事前協議についても条文上はできる、実際問題としてはアメリカにイニシアがある、私はこういう観点を出したわけです。ところが、それもだめだとおっしゃる。これも一つの事前協議の空洞化だと私は考えます。  次にもう一つ空洞化とわれわれが考えられる例をあげてみます。あなた方政府は、配置の重要な変更について、軍艦の場合は母港でなくちゃいけないというような見解を出される。それでいくと一時的に寄港するのは、たとえタスクフォースであろうと、あるいは大げさに言えば、第七艦隊全部であろうと、事前協議の対象にならない、そうなったのですよね、あなた方の見解は。  そこで、お伺いしますが、佐藤総理は、エンタープライズの佐世保入港は安保条約の義務としてこれを許可したのだとおっしゃいました。安保条約の第何条ですか。
  100. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 エンタープライズの入港は基地の使用でございますから、六条でございます。
  101. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私は局長ともう論争したくないのですよ。私は官僚の皆さんのお答えを聞くつもりはないのです。政治家、日本の外交をあずかる三木さんのお考えを聞きたいのです。条約の解釈はあとでそのときそのときで局長さんと言いますから、忌避は決していたしません。  それで、いまお答えのとおり、安保条約の第六条によってエンタープライズの入港を認める。そうするとこのエンタープライズは、入港した場合には地位協定のアメリカの軍になりますね。
  102. 三木武夫

    三木国務大臣 地位協定で地位協定の軍になります。
  103. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そのとおりなんです。地位協定の第一条に該当するアメリカ軍になるのです。そこで、私はいじめるつもりはありません。意地悪するつもりもありません。旧安保条約と現安保条約のいろいろ相違点がありますが、大きな相違点は何かというと、旧条約のときには在日米軍という観念が確立しておったのです。なぜならば、日本に配備されたアメリカの軍隊以外には日本の基地を使用できない。配備された軍隊、英語の本文は、ディスポジション、ディスポーズということばを使ってあるのです。ところが、現条約では配置ということばが使ってありますね。ディプロイメントと使ってある。そして、アメリカの軍隊であれば日本の基地使用ができる。旧条約は在日米軍でなくちゃ使用できなかった。それほど変わってきているのです。だから、一時使用であろうと、長期の使用であろうと、全部これは第六条の規定の適用を受けるのですよ。エンタープライズに例をとると、エンタープライズの入港は安保条約第六条の適用を受ける、そして地位協定の第一条の適用を受ける。地位協定の米軍は、御承知のとおり「日本にある間の米軍」となっているのです。ウエン・イン・ザ・ジャパンとなっているのです。長期なんということはないのですね。それとディスポジションとディプロイメントの差、ディプロイメントはあなた方は戦略上防衛面ではどういうことばになるか御存じですか、訳をしますと。
  104. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 展開ということになります。
  105. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうです。展開です。配備、ディスポジションというのはある程度固定化という意味があります。ディプロイメントは展開なんです。一時寄港も展開なんです。いいですか、だから、配置の重要な変更の際に、一時であるか、その期間を条件に入れるということは間違いなんですよ。それを条件に入れてそして事前協議の対象にならない、なぜあなた方の解釈がそうなったのかというと、タスクフォース、あのエンタープライズの機動艦隊が——機動艦隊ですよね、あれは。あれはもはやタスクグループじゃないのです。アメリカもそう言っているのです、あれはタスクフォースだと。だから、そのタスクフォースかタスクグループかで争ったら、あなた方は負けるから、そこで今度はある程度の期間入港しないと配置の重要な変更にならないというふうに、あなた方がわざわざそういうふうに解釈してきたのです。  そこで、あなた方はどちらかに解釈を統一しないといけないと思うのです。六条本文の適用を受ける米軍は六条関係のものは全部適用を受ける。つまり二つあります。一つは地位協定、一つは六条に基づく交換公文、本文の適用を受けて六条の実施に関する交換公文の適用を受けない米軍なんてあるわけないじゃないですか。どちらかにしなければならぬ。一つはそうですよ。六条本文の適用を受けるアメリカ軍は交換公文も地位協定も全部適用を受ける、そうするか、あるいは交換公文の米軍が六条本文の米軍だ、こうするか、もしあとの解釈であるならば、エンタプライズは入港できないことになりますね。それは一定期間日本におるアメリカ軍でなくては基地を使えないという解釈になるから、エンタープライズは入港できないのです。どちらかの解釈にしなくてはいけませんよ。都合のいいときだけ米軍を分けてはいけませんよ。どうですか外務大臣、おわかりになりましたか。
  106. 三木武夫

    三木国務大臣 条約局長答弁したほうが適切だと思いますが、私の答弁を求められるわけでありますからいたしますが、要するに交換公文は、第六条全部を網羅するというものではなくて、やはり第六条を受けてしぼって交換公文の中に規定を置いたので、したがって、いま言ったように全部が全部六条が交換公文に入らなければならないというものではない。装備条項なんかもそうですが、それを取り上げていくというのが交換公文の性質である、こういうふうに考えます。
  107. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうじゃないのです。交換公文はその米軍の大きさの問題ですね。陸、空は一師団、海は一機動部隊、配置の変更の場合、大きさを言っているのです。それから今度は装備、それを言っているのです。それから戦闘行為、日本におる期間の問題なんか問題になっていないのですよ。それをあなた方は一月三十日にそういう統一見解をつくったのです。そしてわざわざ事前協議にかからないようにしたのです。私が空洞化しておるじゃないかと言うのはそこなんです。六条本文の適用を受ける米軍で、その実施に関する交換公文の適用を受けない米軍なんというのはないのですよ。その米軍のうち、特に大きさの場合と装備の場合と戦闘行為の場合がかかるだけであって、米軍を二つに分けるような解釈をしてはいけませんよ。地位協定の適用も受け、本文の適用を受ける米軍であって、しかも本文実施の交換公文を適用されない米軍をつくってはいけませんよ。それはあなた方の全くの空洞化への一つの解釈であろうと思います。しかし、これはあなたがそう強情を張られるのですからしょうがない。しかしディスポジションとディプロイメントの差というものを、局長でいいですから一応ここで明確にしておいてください。
  108. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 ディスポジションとディプロイメントの差と申しますよりも、先生のおっしゃるいわゆる旧安保と新安保との差の問題になると思いますが、旧安保の場合には、在日米軍という非常にはっきりした観念がありました。新安保の場合には、いわゆる地位協定は入ってくる分もかぶるわけでございます。それはもちろん六条からきているわけであります。お話しのとおりでございます。ただ、その六条に関する事前協議の交換公文と申しますのは、もともとその六条でアメリカに対して与えました権利を制限した規定でございます。したがって、制限規定と申しますのは、全部に対する一部を制限していくわけでございますから、先ほどのお話しの大きさを制限した——確かにそうでございますが、大きさを制限したという意味では、重要なという意味のところで大きさを制限しているわけでございます。その次に重要な配置ということになりますから、その配置という意味自体で、われわれは何と申しましょうか、配置というのがまさしくディプロイメントという字が使ってあります。一ぺん入ってまいりまして、ある程度まで本拠にしてないというものは配置でないというふうにわれわれは解釈しておるわけでございます。
  109. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 ある程度根拠地にしておるといったら、第七艦隊の根拠地はどこですか。
  110. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 根拠地にしていると申し上げません。本拠としておる……。
  111. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 本拠とは何ですか。
  112. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 これは、それから先になりますと軍事上の常識の問題になってくると思いますが、あるいは母港というような観念もあると思います。根拠地というような観念もあると思います。しかし本拠というのは、ある程度長さも必要だろうと思いますし、それから一種の何と申しますか、統制的なつながりと申しますか、そういうふうなものも必要だと思います。しかし、これは事実認定の問題でございますから、条約上から出てまいりますのは、そういったばく然たる観念しか出てこないわけでございます。
  113. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 だから私は言うのですよ。政策の問題だ。そうですよ。そうでしょう。条約上は私が言っているように解釈してもいいんですよ。悪いことはちっともありません。政策の問題です。いまあなたのおっしゃったとおりです。条約上は非常にあいまいであるから、解釈は何とでもできるのです。だから、日本外務省の外交方針の問題です。三木大臣、私が言うのはそれですよ、三木さんに期待するのは。  じゃ、一点だけ伺っておきますが、アメリカの艦隊で、あなたがおっしゃるような観念に該当する艦隊がいま日本にありますか。
  114. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 先ほどのお話しの、いわゆる政策とはっきりきめつけられますと、私どももちょっと困るのでございますが、常識的な一つの判断基準というのは当然あると思います。  それから後ほどのお尋ねの点は、私よりもむしろ北米局長から……。
  115. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 日本に配置されたものとして最も典型的なものは、要するに日本の横須賀なり佐世保なりというところに、何と申しますか、張りつけになった、そうしますと、非常に小型なものか何かになりますけれども、そういったものが常、時日本に配置されているということだと考えますと、第七艦隊の大きな艦船が補給その他のために立ち寄るのは、先ほど条約局長が申しましたような配置、すなわちディプロイメント・インツー・ジャパンというのには該当しないと考えております。
  116. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 大臣、お答えを聞かれたと思うのですけれども、これじゃ、まるで軍艦の場合は、配置の重要な変更なんというのは起こり得ないのです。軍艦というものが一つの港にじっとしているわけないです。特にいまベトナム戦争があっているのです。ベトナム戦争があっているときに、役に立つような軍艦がじっとしているわけないじゃないですか。いわゆる反復寄港という姿になるのですよ、現実の具体的な問題は。だから、局長が言われたように、これは現実の具体的な問題で判断をするということになるならば、いままさにベトナム戦争があっているこの段階においては、反復寄港というものは当然配置の重要な変更の場合と考える必要がある。これは外交方針の問題でなくちゃなりません。外務大臣、この点どうです。
  117. 三木武夫

    三木国務大臣 先ほど条約局長が言ったように、事前協議は交換公文で来ておるし、この中の重要な問題点は配置ということですから、政策といっても、何でも政府がきめられるというものでなくして、配置というものをどう解釈するか、その配置の解釈ということが問題になるので、政府の政策によってその配置の解釈を自由にできるとは思わない。やはり配置というものの解釈の限界において政府といえども考えざるを得ない、こう考えております。
  118. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 外務大臣はあまりお詳しくないようなので、議論をしても時間がかかりますけれども、そうじゃないのです。いま局長がお答えになったとおり、ある期間とか、まことに概念がぼやっとしているのです。だから、これは解釈できちっとできるんですよ。お答えになっておったでしょう。だから政策の問題だと言うのです。  それじゃ次に、もう一点だけお伺いをいたします。  私は、これも総括でやろうと思っておったのですが、佐藤さんとジョンソンが会われて帰ってこられた。私どもは、現在の日米安保条約が非常に拡大されて、アジアの安保体制になっておる、しかもアジアの核安保体制になっておる、そう心配をしておるのです。その一つの問題として、アメリカを軸とする東南アジア各国の軍事条約、これをひとつ明らかにしてみたいと思うのです。そこで、共同声明の七項で、沖繩の米軍基地が「日本その他の自由諸国の安全を保障するためバイタルな役割を果している」こうなっております。このことについて、これはここに同席しております川崎委員が質問をいたしました。「その他の自由諸国」とは一体どこであるか、これに対して政府のお答えは、それはアメリカといろいろの条約関係にある韓国、台湾、フィリピン、特にそういう条約関係にある極東の自由諸国を念頭に置いていると東郷さんはお答えになったんですね。そうする、アメリカ条約関係にある国というのは、これはあげられております韓国台湾、フィリピン、いいですか、米韓、米台、米比各防衛条約、それから、これに、ANZUS、SEATOが入ってくるわけですね、この五つ。そうして、これも私はせんだってしり切れトンボになっておったのですが、沖繩を含んでおる適用範囲です。そこで、沖繩がもし返還されれば、自動的にこれは適用外になる、沖繩、小笠原は。そういう御答弁をいただきました。しかし、この共同声明の七項からいくと、沖繩の地位をこんなに重要視しておる共同声明からいくと、沖繩が返還されたとて、政治的に考えた場合に、はたして自動的にはずされるというようなことになるでありましょうか、外務大臣
  119. 三木武夫

    三木国務大臣 それは沖繩の施政権が日本に返ってくれば、日本はそういう条約に加盟しておるわけでありませんから、条約区域からはずされることは当然だと思います。
  120. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そこで、これも確認をしておきますが、これらの五つの条約は、在日米軍が日本に、一時寄港であろうと何であろうと——そういう意味の在日米軍ということばを私はいま使いますが、在日米軍は五つの条約の適用範囲に入りますね、外務大臣
  121. 三木武夫

    三木国務大臣 入ります。
  122. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 入るんですね。そこで私は、ここで一点お伺いをしておきたいのですが、たとえば一例をあげてみます。米韓条約第二条の「行政的管理の下にある領域」の中に在日米軍基地は含まれますか。
  123. 三木武夫

    三木国務大臣 入る余地はないと思います。
  124. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 入りませんか。「行政的管理の下にある領域」の中に在日米軍は入りませんか。
  125. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 御指摘のあれは三条ということでございますか。
  126. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 米韓の二条です。「行政的管理の下にある領域」とあるでしょう。
  127. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 三条だと思いますが……。
  128. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 では私の間違いです。
  129. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 これは当然入らないと思います。
  130. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そういう御解釈であろうと思うのです。それでは公海上の在日米軍はこの「行政的管理の下にある領域」に含まれますか。
  131. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 在日米軍でございませんね。米軍でございますね。
  132. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私のいま言っているのは在日米軍です。
  133. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 在日米軍と申しますのは、日本で地位協定の適用がある米軍というお尋ねでございますか。
  134. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 あなた方はこの新条約において、在日米軍は二つ観念がある、そういう解釈をして、私がさっき指摘したように、一つの在日米軍は交換公文の適用を受ける、もう一つの在日米軍は受けない、こう答弁しているのですよ。これは間違いですけれども、あなた方はそんなように答弁しているのです。だから交換公文の適用を受ける在日米軍と、こう正確に……。
  135. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 それは米軍が基地に入りまして、日本の領域に入ってまいりましたときに在日米軍となるわけでありますから、その二つ目の意味の先生のおっしゃる在日米軍がそういう意味でございますが、公海というお話でございましたら、それは入らないと思います。
  136. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そういう答弁をすると困ることが出てくるのです。どうしてかという一例をあげますよ、いいですか。地位協定によって日本人が基本労務契約で雇われておりますね、この人たちがサイゴンに行っているのです。これはLSTじゃないのです。なぜサイゴンに行くかというと、サイゴンに行っても、その船は在日米軍だから、地位協定の適用を受けておるから行けるのだ、解釈はこうなっているのですよ。そういう解釈をされると、あなたたちは困りますですよ。
  137. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 私ももう少し調べてみますが、その関係は、こういうことじゃないかと思います。LSTじゃないかもしれませんが、船員が直用でおそらく雇われておる形だと思いますが、その場合には日本でその……。
  138. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうじゃないのです。地位協定によって雇われているのです。基本労務契約……。
  139. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 間接雇用で雇われた場合には、日本でそういった契約を結んでおられるわけでございます。したがって、その契約によってベトナムに行かれる、そういう関係になるのじゃないかと思いますが、もう少し調べてみます。
  140. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いまの政府答弁は、地位協定によって雇われているというけれども、これが外に出ても在日米軍、地位協定の適用を受けておる米軍であるから行けるという解釈を過去に示されておるのです。時間がないから議論しませんが、よく調べてください。  そこで、私はもう一点だけ聞いておきますが、局長でよろしゅうございます。たとえば米華条約の場合、第六条だと思います。「相互の合意によって決定されるその他の領域」とありますが、こういう場合は、アメリカと台湾が合意をすれば在日米軍は適用範囲に入るわけですね。
  141. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 この字づらから申しますれば当然そうなると思いますが、この「相互の合意によって決定されるその他の領域」と申しますのは、条約地域を台湾ということに限っておりませんが、たとえば台湾が伸びていったような場合、それは条約地域を広げるということを前提にしてつくった条文だと思います。
  142. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 時間がございませんから、もうこれで論争はやめます。しかし、私が問題を指摘していることは十分おわかりであろうと思います。この問題は、沖繩、小笠原は五つの条約の適用範囲に含まれておる、しかも、沖繩は非常にバイタルな役割りをその関係国に与えておると答弁で言っているのですよ、いいですか。沖繩が日本にとって必要であることは——もちろん返還運動はやっております。しかし、この沖繩は、共同声明によれば、あるいは共同声明について質問したところが、これらは条約関係にある韓国とかフィリピンとか台湾にとっても重要な役割りを果たしておる、そう答弁されておるから、返還されても自動的にすっと沖繩が適用範囲からはずれるということにはなかなかならぬではないかということを私は言っておるのです。条約上はそうなりますよ。沖繩が返還されれば、自動的にそれはもうアメリカの施政権がはずれますから、条約的にはそうだけれども、あなた方のキャップである佐藤さんの共同声明はそうなっておるのです。だから、自動的にはずれるということには実際問題としてはなかなかならないのではないか。これが一つ。  それといま一つの問題は、在日米軍です。この在日米軍というものを、あなた方ばく然としておるようにおっしゃるが、これを確立しておかぬと、この五つの条約との関係が出てくる。そうすると、日本は関係のない戦争に巻き込まれる可能性がそこから出てくる、そういう心配があるということを私は言っておるのです。外務大臣、おわかりでしょう。  そこで、私は事前協議条項なり条約をひねくっておりますけれども、それは真意ではないのです。問題は、事前協議の条約をどう解釈するとか、技術的な問題じゃないのです。実際は、現在でいえば、ベトナム戦争に対して日本の外交方針はどうあるか。すぐれてこれは外交方針の問題ですよ。ベトナムの戦争をチェックする方向に日本の外交方針が向いておるか、あるいはアメリカの言うままになってそれを認めるか、そういう外交方針によって何ぼでも技術的な解釈はできる。だから問題は、条約の技術的な解釈じゃなしに、すぐれて外交方針の問題であるということを言いたかったのです。  去年か何か、外務省は大隈重信の銅像を建てられたのですか。
  143. 齋藤鎮男

    齋藤(鎮)政府委員 陸奥さんのでございます。
  144. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 失礼しました、陸奥さんでした。陸奥さんが言われたことばは御存じですか。なまいきなようですけれども、私は読んだことがありますから申し上げておきますが、外務省はわざわざ銅像を建てられたのですから、教訓をそれから得たいということであろうと思う。陸奥さんはどう言われておるかというと、条約の技術的な解釈が大事ではなしに、外交方針が大事だということを言っておるのです。政治というものはそこに目をつけなければいかぬと陸奥さんはおっしゃっておるのです。どうぞひとつ、銅像を建てられたら、それを教訓にして今後運営をしていただきたい。たいへんなまいきなようですけれども、お願いをしておきます。
  145. 野原正勝

  146. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 B52の問題を中心に少しお尋ねしたいと思いますが、その前にひとつ議論を整理していくために、去年の特別国会における沖繩特別委員会その他を通じてすでに議論をされておる問題ですが、そのことを一ぺん詰めたいと思います。  沖繩の施政権の返還については、まず第一には佐藤総理が昨年の一月大津で全面返還と、こう言いましたね。それから外務大臣も特別委員会で全面返還、こういう政府の方針を言われたわけであります。そうしますと、いま基地の扱い等その他でいろいろと議論があります。そういう中で分離返還、機能別分離返還あるいは地域別分離返還等はとらずに、あくまでも全面返還を通すという方針であるかどうかをまずお尋ねしたいと思います。
  147. 三木武夫

    三木国務大臣 政府の方針はそのとおりでございます。
  148. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 そうすると、先般私の総括質問に対して、施政権の返還後基地の自由使用はあり得ない、こう佐藤総理は答弁をされております。そのことは貫かれるというふうに見てよろしいのですね。
  149. 三木武夫

    三木国務大臣 総理のどういう趣旨か、打ち合わせてはおりませんけれども、総理がそういうことを明白に言ったとすれば、総理の考えておる方針だと思います。
  150. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 そのことを確認をいたしまして、ただいま楢崎委員が、沖繩の基地の役割りについて、共同声明に関連をして質問をされました。その点で詰めたいと思いますが、共同声明の基地の役割についてはバイタルロール、先ほど指摘のとおりですね。そうしますと、つまりバイタルロールを持っておる間、その変化がない間にも施政権の返還についてはあり得るかいなかということです。
  151. 三木武夫

    三木国務大臣 この施政権返還についてはこれから日米間で協議をするわけになっておりますから、これはその協議にかかってくると思います。だからいま言った「重要な役割り」と訳しますか、そういう極東に対して持っておる重要な役割り、そういうことはもうわかり切っておるわけですが、返還は返還として日米の協議にかかっていくということでございます。
  152. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それでは、昨年共同声明の、首脳会談のあと総理がたいへん得意になられました点は、これまでは極東の緊張の緩和というまくらことばがあったが、それをはずしたのだということをたいへん強調されたわけですね。そうしますと、極東の緊張の緩和と関係なく施政権の返還については両三年にめどがつけられるということは、そのまますなおに受け取ってよろしいんですね。
  153. 三木武夫

    三木国務大臣 従来、川崎君も御承知のように、共同声明に、極東情勢が平静化したら、というまくらことばがいつもあったわけです。今度はそういうまくらことばはなしに、施政権返還の方針のもとに、という共同声明になったということを強調されたものだと思います、総理のことばは。したがって、その方針のもとに、日米間で継続的に共同の検討を加えるということになっていますから、そこで総理としてはできるだけ早くめどをつけたい、両三年のうちにめどをつけたいという希望を表明をしたわけです。その希望に対して、そういう総理大臣の発言等も頭に入れて協議するということであって、それは総理大臣の一つの、沖繩返還にめどをつけたいという希望、非常に強い希望を総理大臣が持っておるという一つの意図が共同声明にあらわれたものである、こういうふうに解釈することが妥当だと思います。
  154. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 たいへんあいまいになってまいりましたが、強い願望である、こういうことになる。ところが首脳会談のあとは、極東の緊張が緩和されたら、平定化されたら、ということは条件からはずれたんだ、そしてそれと無関係に両三年でめどをつけるんだ、こういった。しかし、いま外務大臣の言われておる点はそうではなくて、これはそういう強い願望だ、だからそういうものを念頭に置きながら、ということになりますと、そこには非常にニュアンスの違いがあるわけですね。ですから、それを抽象的に議論をしていても時間が惜しいので、いたしません。  先般、日米宇宙会談というのがテレビであって、見ておった。そうしますと、ハワイ選出のスパーク松永とか、あるいはマンスフィールド、こうした議員の諸君は、ベトナム戦争が終わらなければ、こう言い切っておるのですね、沖繩の返還ということは考えられないという断定をしております。このことは佐藤総理の判断が食い違っておるのかどうか。それからまた、先般牛場外務次官もそのようなことを言って物議をかもし、これは取り消しました。取り消しましたが、つまり判断の基礎には外務当局としては、あるということがはっきり出たわけです。そうしますと、ベトナム戦争が終わらなければということは、沖繩の返還とは関係ない、こう断定できますか。
  155. 三木武夫

    三木国務大臣 私が申しておるのは、共同声明の解釈——最初の、両三年にめどをつけるというのも、総理が強い希望を表明して、それを受けてジョンソン大統領との間にこれから協議をしようということの合意に達したのですから、それは単に佐藤総理自身の個人的願望とは言えないものであることは、川崎さん御承知のとおりであります。主として交渉に当たるのは私が当たることになると思いますから、この総理の強い願望を受けて外交交渉をしたい。総理は両三年にめどをつけたいという。この総理の意図を受けて、私は外交交渉を進めていきたいと考えております。その第一点、非常に調子が違ったのではないかということに対しては、国民に誤解を与えてはいけないので、それを申し上げておきます。  第二の、マンスフィールドの発言。それはアメリカ側としてもいろいろな意見があると私は思います。したがって、われわれとしても施政権返環に関する日米の協議を通じてアメリカ側の意見も聞きたいと思います。しかし、少なくとも共同声明にはそういうベトナム戦争が終わればというような条件をつけずに、沖繩の施政権返還の方針のもとにという共同声明であったことは事実であります。しかし、アメリカが返還というものに踏み切るについて、アメリカ側としていろいろ、マンスフィールドみたいな考えもありましょうし、またマンスフィールドは必ずしもアメリカ政府の考え方をそのまま代弁しておるとも言えないでしょうし、いろいろな考え方があるでしょうが、そういう考え方こそが沖繩返還をめぐる日米交渉一つの焦点になってくると思います。われわれは極東情勢というよりかは、施政権を一日も早く返してもらいたい、こういう前提のもとにおいて日米の交渉を始めたいと考えております。
  156. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それではB52の問題をお尋ねします。  先般もちょっとお尋ねしておるのですが、ちょっと不明確ですので、もう少し詰めたいと思います。  一月二十六日に外務省に通告があったわけですね。これは外務大臣の言明ですね。この通告は何に基づいてなされたわけですか。
  157. 三木武夫

    三木国務大臣 アメリカ日本に対して通告する義務は持っていないと思います。ただ、こういう考えをアメリカが持っているのだという情報と一して、アメリカ日本政府にそれを言ってきたということで、そういうことはしばしばあるので、何も条約上の根拠とかいうのではなくして日米間の友好関係、ことに沖繩というああいう特殊な地帯、そういうことにかんがみてアメリカのほうから、こういう考え方をアメリカは持っておるのだということを通知してきたものであって、何によってということで、よる条約上の根拠は私はあるとは思っておりません。
  158. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 つまりその内容はどういう表現で言ってきたわけですか。
  159. 三木武夫

    三木国務大臣 そのことばそれ自体は、私が会ったわけではないから覚えてはおりませんが、要は、その言ってきた中心は、極東情勢の緊張した状態にかんがみてB52を沖繩の基地に十数機移動するかもしれぬという考え方を持っておるというような意味の通知であったという報告を受けております。
  160. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 抑止力の点についてはこの間もお尋ねした点でありますが、それは向こうも通告の義務はないにしても言ってきた。そして外務省のほうとしては、政府のほうとしては抑止力として認めたわけですね。つまり積極的にその役割りというものを認められたのかどうか。
  161. 三木武夫

    三木国務大臣 これは認めるとか認めないとかいう性質のものでないし、向こうもまた移駐してくるということを、何月何日に移駐しようということじゃなくして、アメリカ一つのそういう考え方を持っているということを言ってきたので、これに対して積極的に認めるとか認めぬとか、そういう形でこのアメリカが言ってきたことをわれわれは受け取ってはいないのでございます。
  162. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 今後も、常駐の問題はあとでお尋ねしますけれども、今後こういう形のものは前例になると思うのです。というのは、四十年七月に台風避難で来ました以降も五、六回台風避難はいたしております。しかし、その七月二十九日のときに直接ベトナムヘの爆撃をやっておる。しかしそれ以後は沖繩からは直接爆撃はやっていないと思う。その点はどういうふうに見ておられますか。
  163. 三木武夫

    三木国務大臣 御承知のようにアメリカの軍事行動は、新聞紙あるいはその住民からいろいろな情報的なことはわれわれも耳にし、目に触れるのでありますけれども、アメリカの軍事行動を沖繩の場合は的確に把握しにくいので、ここで私が軍事行動についてある一つの証言的な発言をすることは、差し控えたいと思います。
  164. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 煙幕を張ってきたわけですが、当初三十八度線の緊張で抑止力として移駐した、しかし現実には、ワシントンポスト等も報道しておるように、ベトナムに毎日やっておる。これは外務大臣も沖繩の立法院あるいは原水協の代表者諸君とたびたび会って、そういう現地のなまに受け取っておる現状というか、見方は受け取っておられると思うのです。ベトナムに爆撃を続けておるという点についてはよくわからぬということを外務大臣は前には言っておられるわけでありますが、その点はもう否定できない。ベトナムのB52の活躍のしかた等についても判断して、沖繩のB52がベトナム戦線に参加しておるということについてはお認めになりますか。
  165. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、私は決して隠しておるわけではないのです。しかし、否定も肯定もできないというのが現在の正直な私のお答えでございます。
  166. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 たいへんたよりないわけでありますけれども、そうだと言えば、それ以上はどうもしょうがないので……。  それでは、外務省が申し入れた、そして抑止力として積極的に認めた、しかし住民に対して配慮してくれ——どういうことを配慮してくれと言ったのですか。
  167. 三木武夫

    三木国務大臣 私がしばしばお答えしておるのは、これは抑止力として積極的に認めたというわけではないので、これは口頭で北米局長が言ったわけですが、ちょうど申し出てきたときには朝鮮半島の状態というものは非常に悪化しておったものですから、そういうこともあって、抑止力というもので移駐されるものだと思うのだがということで、何か新聞紙にいろいろなことを話した中の一ことばが報道されたわけですが、しかし局長が言ったアクセントのついておったのは、住民が非常に不安に思っておるからアメリカ側としても善処してもらいたいということが申し入れの中心でありまして、その前にいろいろなことを言った中の一つが報道されたわけであります。  そこで、これは私がしばしば申し上げるように、条約上からいえばアメリカが沖繩に対して自由使用の権利を持っておりますからね。また軍事上——川崎さんとわれわれの考え方は違うかもわかりません。それは安保というものに対しての評価が違うわけですが、沖繩の持っておる軍事的な日本の安全、極東の安全に対する役割りというものをわれわれは評価しておるわけです。しかしその上に立って、なおかつ住民が非常に不安に思うということは、基地を利用していく上についてはどうしても住民の理解、協力というものがないと基地は有効に利用できませんからね。そういう点は、一注目しなければならぬいろいろな側面は持っておるにしても、住民の理解と協力というものが基地を有効に使用する大きな要素になっていくのだから、この点についてはアメリカとして十分に気をつけてもらいたいということを申し入れたわけでございます。根拠はやはり政治的な側面であります。
  168. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 はっきり出てきたわけでありますけれども、基地を有効に使用するためには住民の理解と協力がなければならぬ、そのためには住民の不安に対して配慮してほしい、こういうふうに言ったわけですね。住民に不安があるということはお認めになりますか。
  169. 三木武夫

    三木国務大臣 これはしばしばわれわれのところにも沖繩から、立法院というああいう公の機関が決議をしてまいりましたし、あるいはほかの団体からも陳情に来られましたし、やはり立法院というああいうふうな公の機関が決議をしてくるということは、沖繩の人が相当に不安に思っておるということの一つの証拠であるというふうに受け取っております。
  170. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 沖繩原水協の諸君と総理が会っていただいたときに、私立ち会ったわけでありますけれども、総理の言っておられるニュアンスというものはよくわかるのですが、総理は繰り返しそれらの諸君に対して、前の立法院に対しもそうですが、不安はないのだ、こう言っておるのですね。だから立法院の諸君に対しては、諸君は帰って県民を説得してくれ、こういうふうに言いましたね。この点は、くしくもアンガー高等弁務官が立法院の代表やら主席やらに会ったときにも、不安はないのだ、東洋で最も安定した地域だ、沖繩も安全な地域だということを言っておる。また総理も昨年の暮れの臨時国会の沖繩特別委員会では、沖繩は平和の島だ、こう言ったですね。いまの外務大臣は、不安があるということを住民代表の口からは率直に受け取れる、こういうふうに言っておるが、そこはニュアンスが非常に違ってくるわけですね。アンガー高等弁務官が言い、あるいはジョンソン大使もそういうことを沖繩代表の諸君には言っておるわけです。まさにそういう点を協議したのだろうと思いますけれども、ことばはちゃんと合っている。ところが、不安がないということを総理が言って、説得せいというわけでしょう。その点どう思われますか。
  171. 三木武夫

    三木国務大臣 おそらく私も会いまして、あの沖繩から来られた人の不安に思っておる一つは、核兵器を積んでないか、第二番目は、やはり戦争に巻き込まれはしないか、こういう点が不安の中心であるということを、話を聞きながらわれわれもわかったわけであります。核兵器というものは、おまえ見てきたか、こう言われると私も困るのですが、しかし、第一、極東にアメリカがいま核兵器を使うという意図を持っていないことは御承知のとおりですから、だから、常時核兵器を使う必要もないのにB52が核兵器を搭載して——それが沖繩の人の目には飛び立っておるというのですから、こういう必要もないのに核兵器を常に搭載しておるということは、実際問題として、一つはそういうことはあり得ないのではなかろうか。第二番目の、戦争に巻き込まれるというのなら、それなら、いま米軍のあれだけの巨大な基地に向かってどこかからやはり攻撃を加えてくるということが可能だと考えられるであろうか。一体どこの国があの沖繩の基地に対して武力攻撃を加えてくるであろうかということを考えてみると、実際的にちょっと考えはつかないです、いまあそこ、沖繩の基地に攻めてくるというのは。そういうことから、不安に思っておるという中心であるこの核兵器、あるいは戦争に巻き込まれるのではないかということは、そういう不安はないのではないかということを総理が言われたんだと思います。私は、不安な気持ちが沖繩の住民にないと断定することは独断にすぎると思います。これはみな不安に思っておることは事実で、不安に思っておるからこそ沖繩の立法院なんか決議したわけですから、だからその不安の内容というものについては、いま言った核兵器とか、あるいは戦争に巻き込まれるということは、よくこういう意見を言っておったということを知って、説いてもらいたい。総理ばかりでなしに、私もそう思います。しかし、何かこうばく然とした不安が沖繩の住民にあるというこの事実は、やはりそれは説得もしてもらいたいと思いますが、なおかつ不安な気持ちを持っておったという事実は否定できないと思います。したがって、こういうことに対して、たとえばアメリカ自身としてもいろいろな点で、B52の出入りに対して事故を起こしたりすることのないようなとか、あるいは騒音であるとか、いろいろな点で、すぐに撤去しないまでも、この不安に対しては、いろいろな不安があるわけですから、こたえるという配慮をしてもらいたいということは、やはり直ちに撤去といかなくても、私はアメリカとして配慮をすれば配慮のできる余地はある、こういうふうに考えておるわけでございます。
  172. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 ところがその方向と違って、現地の動きというのは、たとえば嘉手納の基地がある。基地の村長、これにいたしましても、一月の中旬にあのガソリンその他の流出事件に対する基地公害反対の臨時大会を開いた。このときには協力しなかったわけですね。沖繩原水協の諸君のそういう集会に対しては協力しなかった。ところが、いまもう村長が先頭に立っているのです。あるいは沖繩の教職員会も、従来穏健な団体です。それから自分の教え子たちが働いておるという関係もあって、基地撤去でなかった。それが基地撤去になってきておる。つまり、基地があるから、沖繩の不安というのはいつまでもあるし、われわれの施政権の返還もできないのだという方向にまできておるわけです。ところが外務大臣は、いま理解と協力がなければ基地の有効な使用はできない、こう言った。いままさに沖繩で進んでいる方向というのは、その距離がますます拡大されつつあるわけです。しかも那覇の市議会がつい最近決議した中では、B52は直ちに撤去してほしい、と同時に、出撃基地化に反対し、沖繩を戦争に巻き込む一切の戦争行動を即時取りやめるよう強く要求する。これは自民党を含めて沖繩では決議されておるわけです。この沖繩県民の動向というのは沖繩の基地有効使用にとってたいへん逆の方向である。しかも再申し入れしないという本土政府態度からするならば、先般、総理が沖繩原水協の諸君に会いましたときも、それは権利がないのだからしようがないのだ、こう言って突っ放したわけですが、その距離はますます拡大される方向にあると私は判断いたします。その点、外務大臣どうですか。
  173. 三木武夫

    三木国務大臣 やはり必要以上に不安感をかき立てるようなこともよくないと思うのです。やはりこの問題は、実際沖繩という特殊な地位に戦後二十数年もあって、そのためにこそ施政権の返還というものをわれわれは一日も早く達成せなければいかぬということで努力しておるのでありますから、いまは、沖繩が日本の本土との間にはいろいろ条約上も特殊な地位にあることは事実であります。したがってわれわれとしては、日本政府としても何か沖繩に対して、できることとできないこととの限界というものがあるということであります。そこで必要以上に沖繩の人たちが不安にかられて、もういまにでも戦争に巻き込まれて、原爆で灰になってしまうのだというような、そういうことでみなにとにかく不安というものをかり立てるようなことも、私は沖繩の人々に対して理解のある態度ではない。最初に申し上げましたように、戦争に巻き込まれるといっても、沖繩が原爆の戦場になるというようなことは、実際問題として考えられません。したがって、そういう必要以上の不安感をかり立てるというのでなくして、事態を冷静に判断をしてもらいたいと思う面もあります。しかし一方において、とにかく、そういう冷静に判断をしてもらっても、なおかつやはり不安な気持ちというものは残るでしょう。そういうことでわれわれとしても、できるだけ沖繩の人たちに理解してもらうところは理解してもらうが、なおかつばく然たる不安が残るというものに対して日本政府として注目せざるを得ない。これに対してアメリカのほうとしても、これは一時的な緊張状態に対しての移駐であって、永久的な基地にする考えはないのだという、事前にそういうことをアメリカから申し出てきたことも、アメリカの配意というものの一つのあらわれだと私は受け取っておるわけであります。今後もこの問題、外交権も持たない沖繩の人たち、この人たちの動向というものは、今後も注目していきたい。お願いしておきたいのは、必要以上に、もういまにも原爆で沖繩がやられてしまうような、実際的でない不安感をみなでかり立てるようなことは、みなで慎んでもらいたい。いま沖繩というものの、ああいう日本の施政権下でわれわれでどうするということがなかなかできにくいところにあるわけですから、そういう沖繩の特殊な地域であるということも頭に入れて、そうして必要以上に不安感におとしいれるようなことのないようにお互いにするということが、沖繩の人々に対してのわれわれの親切な態度であると私は思っております。
  174. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それでは、一時的だ、こういうことですが、沖繩の基地体制、特に嘉手納の基地を中心に考えたら、B52のあそこに移駐している体制というのは、決して簡単な、たまたまプエブロがあったから、あるいはテトの攻勢があったからということではないのですね。昨年すでに十カ月かかって国道一号線はたいへんな改装工事をやった。どんな重量ものでも走れるだけの体制ができているわけです。これは私は去年行き、ことしまた行って、その実態を見ておるわけですけれども、さらには嘉手納の飛行場自体も四千メートルに拡張しておる。しかもB52がヨーロッパから極東に移ってきたのは、突然移ってきたのではなくて、去年からもうすでにその体制にあったわけです。いまグアム島に帰ろうと思ったって、グアム島に収容力がない。そうすれば、グアムなりタイのウタパなりというものと沖繩というものは、B52の基地として組み込まれておるわけですね。では、一時的という、その一時的とはどれだけの期間をいうわけですか。
  175. 三木武夫

    三木国務大臣 この背景にあるものは、極東情勢の緊迫というものが背景にありますから、ただこちらの主観的な判断だけでその期間をはかることはできないわけであります。したがって、いまその一時的なものであるという期間は何月何日までである、あるいはまた何カ月間であるとここで申し上げることは私はむずかしい。   〔主査退席、小沢(辰)主査代理着席〕 しかしながら、アメリカがそういうことを申し入れてきておるのですから、どれだけの滑走路をつくったにしろ、これは目に見えることでありますから、普通の常識から考えて、これを恒久的な基地にしておるのか、一時的なものかということは明らかになるわけでありますから、アメリカがそういう恒久的な基地にしておるにかかわらず、日本政府に、これは極東の緊迫に対しての一時的な移駐であるということを申し出てくるはずは私はない。目に見えることですから、すぐ——すぐというか、ある時期がたてば結果はわかることですから、そういうふうに信じております。
  176. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それでは端的にお尋ねしますが、木村官房長官が、ケサンとプエブロが静まったらと、こういうことを言いましたが、それは政府の統一見解ですか。
  177. 三木武夫

    三木国務大臣 私は統一見解だと思いません。木村官房長官も、いろいろ記者諸君に何らかのめどを示せと言われて、言われたのだと思いますが、そういうベトナム戦争とかプエブロ事件の解決とは、どういうことが解決なのか、ベトナム戦争もどういうことが解決なのか、そういう個々の一つの事件で解決すればということは、私は実際的でない場合があると思います。これはそういうことで、極東情勢がある程度平静になったらということのほうが実際的なんで、ある事件をとらえて、この事件が解決したらという、事件をめどにしでものを言うことはちょっと実際的でないのではないかという感じを私は持っています。
  178. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 これはケサンの問題は後ほどベトナムの問題でもう少し詰めますけれども、ベトナムのケサンその他を中心にしたこういう緊迫状態がさらに続いたとする。しかし秋の立法院選挙と主席公選の前には、適当な時期に、それまで続いても、おそらくアメリカはB52をしばらくどこかにのけると思います。これは戦術的にそうとらざるを得ない。でなければ、佐藤総理が自由民主党の沖繩支部の諸君を集めて、施政権がどうあろうとも断固勝ち抜くために何でもやるのだ。たいへんここでは威勢がいい。しかし一方、沖繩の代表諸君に対しては、君たちは半ば復帰したような気持ちで甘えちゃ困ると、こう言って県民は突放すけれども、沖繩自民党の諸君に対しては、施政権なんか問題でないのだ、やるぞといって、応援をやる体制をたいへん意気込んで言っておられる。しかしこれは、いずれそういう時期的な変化はあるにしても、今後極東で問題があれば、B52がこうして沖繩にやってくるということは前例になりますね。
  179. 三木武夫

    三木国務大臣 私は必ずしも前例になるとは思いません。やはりそのとさの極東情勢の必要性から、将来そういう必要が起こってくるかどうかということはあり得ましょうけれども、これも前例になるというふうには考えていない。それはむしろ判断の基礎になるものは極東情勢だと思っております。
  180. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 極東情勢だと、こういうことになります。そこで、最初の施政権返還の点ともう一ぺん関連をしたいのですが、施政権の返還後バイタルロールを持っておる、その辺の変化はまたなかなか議論のある点ですから、詰めにくい点がありますので逃げられるかもわかりません。しかし、この施政権の返還後、基地の態様がひとつ問題になるんだが、自由使用はさせないと総理が言った。その前提に立つならば、施政権の返還後なおかつ極東の情勢の緊張があって、B52を持ってきたい、そのときには抑止力としてお認めになりますか。
  181. 三木武夫

    三木国務大臣 川崎さんの御質問が、少し御質問としては時期が早過ぎるのではないでしょうか。それはなぜかといったら、基地のタイプというものをどういうタイプにするかということが、施政権の返還の中の大きな問題点だと思います。したがって、その基地のタイプがどういうタイプになるかということに御質問のようなことも関連をしますので、いますぐにB52がそのときにはどうなるとか認めるとかいうことは、私は少し時期的に早いと思います。まずやはり基地のタイプというものをどうするのかということが施政権返還の場合の、そればかりではありませんけれども、大きな問題の中心点であると思っています。
  182. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 これは牛場発言に関連をするわけですよ。牛場発言に関連をするわけだけれども、基地の重要性、極東に占める、先ほどのアメリカとの相互防衛同盟条約のそれらの国々に対する重要性というものを持ち続ける限りにおいては、あり得るわけですよ。つまり、事前協議の点についても、これはそのときに問題になるでしょう。だから、これが前例になるかどうか、どうですか、もう一ぺん。
  183. 三木武夫

    三木国務大臣 前例といっても、基地が一体どういうタイプになるのかということ、そのB52の問題にしても、基地のタイプによって私はいろいろ変わってくると思いますよ。したがって、施設権返還をしてない前に、基地のタイプがどういうことになるかいまわからないときに、B52がその場合どうなるこうなるということは、いまお答えするのに少し条件が整っていない。牛場君の場合でも、前にもお触れになりましたけれども、外務当局としては、交渉する前に日本が絶対にこれでなければいかぬといって、日本がちゃんと方針をきめてアメリカ交渉するのは、交渉するとしてやりにくいということを言ったのが牛場発言だと思います。しかし、牛場君がやるのではないのですからね。主として私がやる。私はあまりむずかしいと思っていないのです。むずかしいとは思っていない。みんなむずかしい問題をかかえて日米両国がこの問題を解決しようとするのですから、外交交渉は、一方的にアメリカのいうことをそのままわれわれが受け取るというわけでもなし、アメリカもまた日本のいうことをそのまま受け取るというのではなしに、そういういろいろな事情をかかえて、友好国日米間で賢明な解決をしようというのが沖繩問題でありますから、日本がもうこれだといって結論を持って旗立てて、もうこれ以外には話し合いができぬのだといえば、これはむずかしいと思いますが、そうじゃないのですから、そうむずかしいこととは思っていません。
  184. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 条約局長に、理論上の問題としてお尋ねしたのです。  B52が、いまのようにあすこから自由に作戦行動をする、水爆を持っておるかどうか、これはいろいろ逃げている点でありますけれども、水爆パトロールもやるとする。そうしますと、安保条約の事前協議をどうすればよろしいのですか。
  185. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 現在の沖繩の状態を(川崎(寛)分科員「返還、返還」と呼ぶ)返還した後でございますか、返還した後でございましたら、これもまた仮定もだいぶ入ってまいりますが、本土並みの形で安保条約が全部あすこに適用されるといたします、そうすれば当然核の持ち込みというものも事前協議の対象になると思います。水爆を持ち込むこと自体が、事前協議の対象になると思います。
  186. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 だから、いまのように重要な基地の役割りを果たしていくために、いまやっておることがそのまま行なわれるためにはどうしなければならないのですかと聞いておる。
  187. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 また同じようなことを申し上げるようでございますが、いまやっておりますことと申しますのは、先生おっしゃるのは水爆を持ち込むというお話でございますが、水爆を持ち込んでおると現在仮定いたしまして考えますれば、水爆を持ち込むこと自体は事前協議の対象に当然なります。  それから作戦行動を、あすこから直接にベトナムに飛んでいく、爆撃をやる、それは当然事前協議の対象になります。
  188. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それでは、従来の事前協議の精神を貫いていく。つまり積極的に事前協議があったときに認めるということになれば別ですよ。しかし、事前協議がいままでずるずるずるずる抜けてきているけれども、少なくともそれを貫いていく限りにおいては、施政権の返還後においては持ち込みあるいは作戦行動の自由はないということですね。
  189. 三木武夫

    三木国務大臣 私が最初から申し上げておるのは、一体基地というのはどういう形になるか、本土並みということになればそういうことになるし(川崎(寛)分科員「だから全面返還だと言っているでしょう」と呼ぶ)全面返還だという場合においても、やはり施政権は全部返してもらう、その中で基地をどうするかということはこれから協議しようとしておるのですから、いまの御質問は基地のタイプというものに触れた御質問になると思いますので、沖繩の基地がどういう形になるかということが決定をしない場合に、ある一つのこういうことだという前提のもとでお答えをするということは私は適当でないと思うのです。したがって、いつかはこれは明らかにする時期がありましょうが、この段階では私は適当でないと思います。
  190. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それでは次に移ります。  日本にはB52は来ていませんか。
  191. 三木武夫

    三木国務大臣 来ておりません。
  192. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 この「潮」という雑誌に、横田基地に着陸したときの写真があるのです。絶対にないと外務省は断言しますか。
  193. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 過去において来たことはございますが、現在はおらぬものと了承しております。
  194. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それではこの問題はそれまでにしておきます。  今度、沖繩に調査団を不安の問題で出してほしいということに対して、結局政府調査団は出さない。これはアメリカ大使館からもだいぶ文句を言われたようですが、この沖繩問題懇談会というもの、この性格はどういう性格かということが一つです。これは、経費政府が出すのですか。どうですか。  時間の関係がありますので、急いでやっていきますからね。  それから、その不安の状況調査するということに対して、アメリカ大使館から何らかの申し入れがあったかどうか。まずそれだけをお尋ねします。
  195. 三木武夫

    三木国務大臣 「潮」の点は、川崎さん、ちょっと調べてみます。南方援護会というところから出していると思いますけれども、これは調べてみます。これは午後にでも申し上げたい。  それから、沖繩問題懇談会は、御承知のように、相当な顔ぶれで、熱心に施政権返還に伴う沖繩と日本本土との一体化問題に対して、私も出たことがありますが、かなり建設的な、審議会としては珍しく、と言ったらほかの審議会を悪く言うことになりますが、中でも特に非常に活発な議論が行なわれる審議会であります。こういう人たちが、沖繩へ行こうという計画があったわけで、政府としては、沖繩の住民が非常に不安に思っておるので、よく調べてきてもらいたいという委嘱をしたことは事実でございます。これに対してアメリカ大使館からいろいろ申し出を受けるべき性質のものでもないし、また、受けたこともございません。
  196. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それでは、委嘱した。そうしますと、その調査結果というものについては、当然オフィシャルなものとして聞けますか。それとも、ただ単なる個人的な感触として受け取るのですか。
  197. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、沖繩問題懇談会というものは、オフィシャルの機関とも言えないわけですからね。いまのは……(川崎(寛)分科員「総理の諮問機関ですよ」と呼ぶ)オフィシャルというのが、法律によっておるような機関ではない。しかし、法律によるよらぬは別として、まあ公的な性格を帯びた面もありますわね。したがって、これは、正式の報告書と言ったらものものしくなりますが、見てこられた結果をどういう形で発表されるか。総理に報告は当然にされるものであります。されなければ意味がないわけです。その発表の形式についてはいろいろしかたがあろうと思いますが、その調査の結果は総理に報告があることが当然である。
  198. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それは、今度は説得に来るのだろうという現地も受け取り方をしておりますが、そういうひねくれたところは除いたにしても、その調査の結果なおかつ不安がある、こう出てきたら、再度申し入れをやりますか。
  199. 三木武夫

    三木国務大臣 いまの調査は、この沖繩問題懇談会の方々が行かれて、その結果をいろいろ御報告があると思いますから、その報告を聞いてからのことであって、まだ出発もしない前に、いろいろ、ああする、こうするということを申し上げることは、適当でないと思います。
  200. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それでは最後にベトナムの問題を簡単に質問したいと思いますが、アメリカの上院の外交委員会が報告を出して、ベトナム戦争は全く行き詰まっておる。あるいは、フルブライト、ロバート・ケネディ、マンスフィールド、こうしたいわゆるハト派といわれる人たちが、ベトナム戦争は間違った戦争だ、これ以上深入りすべきでないと、いま論争が始まっておりますね。また、ギャラップの調査を見ても、米国のベトナム軍事介入は誤りだった、こう、四九%というたいへん強いあれで、出てきておりますね。それから、ライシャワー前駐日大使も、アメリカアジア政策を変えよ、こう言っておりますね。最初の川崎秀二氏あるいは社会党の加藤清二氏等の質問に対しても、ベトナム和平の問題、いろいろ言いました。  そこで端的にお尋ねしますが、現在、アメリカのベトナム戦争のこの状態というのは行き詰まっておるとあなたはお考えになりますか、どうですか。
  201. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、アメリカは御承知のように非常に言論の自由な、そういう意味において非常に民主的な国家でありますから、いろんな議論がアメリカには出るわけであります。したがって、その議論がアメリカ全体の声であるということは言えないと思います。アメリカの今度のベトナム戦争が行き詰まったという——この行き詰まったというようなことばも、どういう意味ですか、予定しないようなああいう旧正月の攻勢などもあって、予期せないこともいろいろ起こっておるというようなことであれば、そういうことならば、そういうことは起こっていますが、アメリカはもうどうにもしようがない、行き詰まっておるというふうに日本政府がベトナム問題を断定するわけにはまいりません。
  202. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 平定計画は、アメリカのラスク国務長官等をはじめ、大体失敗だということを控え目に言っております。平定計画が失敗であったというふうに思われますか、どうですか。
  203. 三木武夫

    三木国務大臣 全部が全部平定計画が失敗だという評価はできますまいが、予定どおりにいってないことは事実でしょう。予定どおりにいってない。
  204. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 そこで沖繩のB52を撤去させるためにも、極東の緊張緩和あるいはケサンの平定——静まるというふうなことを言っておりますが、もう時間の問題だと思います。ケサンのアメリカの海兵隊が落ちるのも時間の問題だと思うのです。つまり、ちょうど十三年前の状況になっておるわけでありますが、いまマクナマラが退場、フランスはもうすでに十三年前に手を引いた。そうしていまイギリスがまた手を引く。昨年の十一月の日米首脳会談というのは、それゆえに日米が全責任を負おうと、日米共同責任体制という方向にいきつつあるわけでありますけれども、真に日本が——アジアの平和とはベトナムがまず片づくことだとあなたは先ほどから言われた。とするならば、いま名誉ある撤退をやることがアメリカにとってもよろしい。またそれが沖繩の問題を片づけていくためのまず出発点です。ところが、どうも昨年の首脳会談以後の佐藤内閣の方向というのは逆行しておるわけです。ジョンソン政策にあまりにもコミットしているわけですね。フリーハンドを失っておる。沖繩の核についてはフリーハンドを言うけれども、佐藤内閣の外交政策全体としてはフリーハンドを失っておるわけです。だからいま沖繩の同胞の問題を考えるにしても、いまほんとうにフリーハンドを持ち、沖繩の問題を片づけていく出発点として考えても、アメリカが直ちにこの問題を片づけることを日本が勇気を持って言うべきだと思うのです。イーデンが失敗をした。そのイギリスの外交の今日の姿というものも、これは時間があればお互いに追及してみたいと思いますけれども、ずるずると失敗してきておる。いま日本アメリカのベトナム戦争の政策に協力をして、昨年のグエン・バン・チューと佐藤総理との共同声明、これを問題にしましても、たくさんあります。いまの時点で、平定計画が失敗をした、あるいはベトナムで行き詰まってきておるという過程をずっと追及していきますと、たくさん問題がありますが、そういう点を抜きにして、いずれにしてもいま決意しなくちゃならぬ。その決意があるかどうか、最後にお尋ねします。
  205. 三木武夫

    三木国務大臣 川崎さんの御意見は、あまりにも、何といいますか、一刀両断のもとにベトナム戦争はアメリカが撤退して片づけろというのですが、私はそんなに簡単な問題ではない。きわめて複雑な問題を含んでおって、アメリカの世論も、何も中途半ぱでアメリカの兵隊はみな引き揚げて来い、これがハト派の主張だとは見てないのであります。それは撤退すれば終わるのでしょうけれども、そういう形でアメリカの兵隊が撤退してこの戦争にピリオドを打てというのがアメリカのハト派の意見だとは私は受け取ってないわけです。したがって、やはりこれは話し合いをして、アメリカとハノイとの間にも話し合いをしてこの問題を片づける、そういうふうな条件をどうしてつくるかということに問題の焦点があるので、そういうアメリカの兵隊をみな引き揚げて戦争を終わらせてしまえ、そういうことでアメリカがよろしゅうございます、もう戦争というものに対していろいろ批判の声もあるから、みな一致してアメリカが兵を引き揚げる、撤退することに対してアメリカの世論が固まる、そんなにアメリカの世論というものは、あの国会の発言をそういうふうにとることは、私はアメリカ態度に対する非常に大きなミスリードになる。戦局というものも必ずしもアメリカの予定どおりにはいってない、そういうことで、もう撤退して片づけてしまえということでアメリカの世論が一致するとは思わない。どうしても日本がすることは、話し合いのテーブルにつかすために、どういうふうにわれわれが働いてそういうふうな環境をつくるかということがベトナム問題の中心になる。それはいいとか悪いとか言ってみても、そうでなければ平和が来ないのですから、そういう点で今後われわれとしては、日本の外交としてできるだけの努力をしたいと思っておるのが私の心境でございます。
  206. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 一点だけ官房長にちょっとお尋ねしたいのです。外務省予算を少し詰めてみたかったのだけれども、もう時間がないからあれですが、外務省の中に安全保障の問題を——北米局にある安全保障課はこれは別です。これは日米安全保障条約を扱っている課で、いわゆる安全保障課ではない。そうではなくて、日本の安全保障の問題を継続的に、科学的に検討をし、政策立案の基礎をつくっていく、そういう外務省の機関は何かありますか。
  207. 齋藤鎮男

    齋藤(鎮)政府委員 いま御指摘のとおりに、北米局の安全保障課というのは、主として安全保障条約を中心にした課でございますが、それ以外の一般的な安全保障につきましては国際資料部という部がございまして、そこで二つの課で検討しております。これは単に資料の収拾だけではなくして、意見の開陳といいますか、表示もやるわけでございます。
  208. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 これで終わりますが、アメリカでさえも安全保障会議というものがあるわけです。日本にある国防会議というのは、これは安全保障じゃないのです。防衛問題です。防衛問題というのは安全保障のごく一部です。外務大臣がせっかく平和外交を言ってみても、そういう機構がないのです。いまのは日本外務省国際資料部ですよ。国際資料部が安全保障の政策を恒久的に、継続的に、科学的にとは、どうも外から見ても見られませんね。ひとつこの点は検討していただきたい。そして外務大臣のお答えを伺いたいのです。
  209. 三木武夫

    三木国務大臣 川崎さんの言われる点、私もそういう感じをするのですよ。外務省がやはり機構を改革する。いまの時代から照らし合わせてみて、機構の中に改革を要するような問題というのがいろいろございます。いまのような御意見も、機構改革の場合には非常に参考になる御意見であると承っておく次第でございます。
  210. 小沢辰男

    小沢(辰)主査代理 次に、折小野良一君。
  211. 折小野良一

    ○折小野分科員 最初に、本会議が迫っておりますので、私の持ち時間について委員長の善処をお願いして始めたいと思います。  横須賀におきまして、アメリカ婦人が日本の自衛隊の隊列に突っ込んで二名死亡、十数名の重軽傷者を出した。この事件につきまして、私一般質問で御質問申し上げた。これは一応ケリをつけました。ただ、その際に北米局長から、条約につきましていろいろ御説明がございました。しかしこれは事実上お取り消しになったような形になっております。それは私は了承いたしております。しかしそれは釈放についてということでございまして、その御発言の裏には、いわゆる米軍の拘禁にゆだねた、いわゆるアメリカに引き渡した、この点につきましてはなお条約の適用についてこだわりをお持ちになっておる、こういうふうに感じます。したがってこの面を、まず条約の解釈といいますかそういう点から御質問をしてまいりたいと思います。  安保条約の第六条に基づきまして地位協定の第十七条の五、これによるということでございますが、これに関する合意議事録、これにいろいろ書いてございます。読むのをやめますが、これには「軍法に服するものを犯人として逮捕したとき」というふうにございます。軍法に服するというのはどういうものをいうのか、根拠を持って解釈をお示しいただきたい。
  212. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 軍法に服するものというのは、第十七条の第一項に出ております。その第一項の合意議事録に、軍法に服する者の範囲は、合同委員会を通じて日本側に通告するということが書いてございます。それによりますと、軍法に服する者とは、合衆国統一軍法第二条、三条にいう者全部ということになっておりまして、その中に海外に駐留する軍隊については軍人、軍属及びこれに随伴するものということがございまして、軍人の家族はその随伴するものに入るという解釈になっております。したがいまして家族が、十七条一項に申します軍法に服する者という中に入るわけでございます。
  213. 折小野良一

    ○折小野分科員 私がいただいた資料によりますと、ただいまおっしゃったその根拠なんですが、軍法に服する者は海外に駐留する軍隊の構成員のみならず、これに随伴するものも含む、こうあります。これは間違いございませんね。おたくのほうで了解されたので、資料によって私は申し上げたのです。
  214. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 統一軍法第二条にそういうことがございまして、間違いございません。
  215. 折小野良一

    ○折小野分科員 といたしますと、ただいま局長のお話では、軍人、軍属、その家族というふうにおっしゃった。この条約を見てみますと、軍隊の構成員というものと軍属は並べてございます。軍隊の構成員というのは通常軍人というふうに解釈されます。そうするとここには軍属というものはない。それなら随伴するものというのは何でありますか。いまは家族だというふうにおっしゃった。御答弁願います。
  216. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 随伴するものと申せば、軍隊に雇用される者も入りますし、いま申し上げましたように家族もこれに随伴するものという中に入るわけでございます。
  217. 折小野良一

    ○折小野分科員 私は、ただいまの御答弁は間違った解釈ではなかろうかと実は考えております。と申しますのは、地位協定の第一条の(b)に「軍属」というものがあります。これには、「合衆国の国籍を有する文民で日本国にある合衆国軍隊に雇用され、これに勤務し、又はこれに随伴するものをいう。」こう書いてあります。そうしてそのほかに「家族」とあります。と申しますと、結局ここにいう随伴するものというのは軍属の一部であるということではございませんか。したがってこれによる軍法に服するものというのは軍人と軍属の一部である、こういうふうに解釈すべきであるというふうに考えます。いかがですか。
  218. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 これは合衆国統一軍法の解釈になると思いますが、その件に関しまして、合同委員会において向こうからの見解が正式にきておるわけでございます。その中には、家族が随伴するものという中に入るということになっておるわけでございます。
  219. 折小野良一

    ○折小野分科員 随伴するものの中に入るということですか、それとも家族は別に通知されてございますか。
  220. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 随伴するものというものの中に家族も入るという定義でございます。
  221. 折小野良一

    ○折小野分科員 それはたとえ向こうからのそういう解釈であったにいたしましても、私はその解釈は誤りである、かように考えます。しかし一応この問題はここにおいておきます。  それから先ほどの十七条の五に関する合意議事録、これを見てみますと、さらにもう一つ上の概念といたしまして、「合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族で合衆国の軍法に服するもの」というふうになっておるわけであります。すなわちこの規定が適用されますのは合衆国軍隊の構成員でなければならない、または軍属、またはそれらの家族、こういうことになっております。ひるがえってこの地位協定の第一条を見ますと、この第一条におきましては、この協定におきまして、「「合衆国軍隊の構成員」とは、日本国の領域にある間においてアメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍に属する人員で現に服役中のものをいう。」、こうございます。すなわち日本におるアメリカの軍人をいっている。したがって家族というものは、日本におるアメリカの軍人の家族をいっておる。お聞きだと思いますが、今度の婦人の主人は現在ベトナムに行っておるというふうに聞いております。といたしますと、ここにいう合衆国軍隊の構成員ではないということになりますが、いかがございますか。
  222. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 いま例におあげになりましたように、第七艦隊の艦艇に乗っておる者の家族の問題でございます。日本にまず入ってまいります場合には、家族のそういう資格において入ってくるわけでございますが、船が出たとたんにその身分がまた変わるという、それから船が戻ってくるとまたもとの身分に戻るわけでございます。つまりそういう中間的な期間の扱いをどうするかという問題、これは船の移動のたびにその地位を変えて扱うということは、実際問題としてなかなか困難でございますので。地位協定ができた当時から、そういうものの家族は日本におる軍人の家族と同様に協定上取り扱ってくるという扱いをいたしております。
  223. 折小野良一

    ○折小野分科員 そのことを直接お聞きいたしておりません。日本国の領域にある合衆国軍隊の構成員ではない、これははっきりしておりますね。その御主人は現在ベトナムに行っておるのですから、構成員ではないということははっきりしておりますね。
  224. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 第一条の定義はそうでございます。
  225. 折小野良一

    ○折小野分科員 ということになりますと、その家族はもちろん日本国の領域にある合衆国軍隊の構成員の家族ではないということになりますね。
  226. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 先ほど申し上げましたように、そういう場合は協定上軍人の家族として従来取り扱ってきております。
  227. 折小野良一

    ○折小野分科員 その取り扱いではございません。この条約からいって、私が申したようなことになりますね。
  228. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 条約上の解釈といたしましては、先生のおっしゃるとおりでございます。
  229. 折小野良一

    ○折小野分科員 そういうことになりますと、安保条約第六条に基づくこの地位協定には全然拘束されないものである、これは一個のアメリカ婦人にすぎない、こういうことになりますね。
  230. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 条約上の非常にきびしい解釈といたしましてはそうだと思いますが、ただ取り扱いの問題は、東郷局長が言ったようにいろいろ違ってまいると思います。
  231. 折小野良一

    ○折小野分科員 私はいま条約の解釈についてお伺いをいたしておるわけであります。ということになりますと、釈放はもちろんでございますが、いわゆる拘禁、これについてもアメリカに引き渡さなければならぬとか、そういうようなことは全然ない。また、この合意に基づく議事録がたとえあったにいたしましても、こういうものは一切関係ない、こういうことでございますね。
  232. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 条約局長から言われました条約の厳密な解釈と、取り扱いの問題とございますが、前者の点については先生のおっしゃるとおりだと思います。
  233. 折小野良一

    ○折小野分科員 確かにただいま申し上げたように安保条約、そしてこれに基づく地位協定、それからそれの解釈をいろいろきめました合意議事録、こういうものによりましても、今回のような事件のこの犯人、これは条約には全然関係ないものだ、一個のアメリカ人だということでございますから、そういう立場で処理されてよろしい、こういうふうに申して差しつかえないわけですね。
  234. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 実際の取り扱いはむろん私のほうでなく法務省のほうの問題でございますけれども、私、先ほどから申し上げますように、この婦人は、日本に来ておる理由その他から考えまして全くただの旅行者とは違うわけでございますので、そういう観点から、条約上、先ほど申しましたような取り扱いをいたしておるわけであります。
  235. 折小野良一

    ○折小野分科員 私は取り扱いをお聞きしておるのではございません。これはやはり法的に拘束する問題でございますから、その点をお聞きしておる。ですからその点から申しますと、ただいま申し上げたようなことになる。これは条約上間違いございませんね。はっきりおっしゃっていただきたい。
  236. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 条約上の問題といたしましては、先生のおっしゃるとおりだと思います。
  237. 折小野良一

    ○折小野分科員 ということになりますと、この人は当然この地位協定に基づく九条の二ですか、安保条約に基づく特権というものは持ちませんね。
  238. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 出入国の問題ですか。これは入りましたときには、おそらくだんなさんと一緒に入ってきたと思いますから、当然九条で入ってきたのだと思います。それでまた出ますときにもおそらくそういう形になりましょうから、そういう意味では、主人が帰ってまいりましたときには同じような取り扱いになると思いますが、現在出国をすると言いましたときには、その場合には、きびしい条約上のあれでございましたら条約に乗らないということであります。
  239. 折小野良一

    ○折小野分科員 現在のような状態になったときには、すでにこの条約に基づく適用からけずれておる一般の外人になっておる、これはもう条約上承認されました。承認していただきましたとすると、一般外国人ですから外国人登録をしなければならない、出入国管理令の手続をしなければならない、こういうのはやってございますか。
  240. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 おそらくそういうことはやっておらぬと思います。と申しますのは、先ほどから申し上げますように、実際上の扱いとして、たとえば船が出たときに身分をすぐ切りかえて登録をするということは、もともと来た目的がそういうことでございますし、帰るときもそういう九条に従って帰っていくことが予想されるものでございますから、その間、実際上の扱いの問題として、身分を切りかえるようにさせるという扱いはいたしておりません。
  241. 折小野良一

    ○折小野分科員 実際上の扱いをお聞きしているのではありません。わが国は法治国家でございますから、一外国人が日本に居留いたしております場合には、当然日本外国人登録法それから出入国管理令に基づく手続というものが、法によってなされなければなりません。これは当然なされてしかるべきだと思います。いかがですか。
  242. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 実際上の取り扱いと申しますか一これはもう条約上に乗る家族でないということは確かでございますから、そういう意味では、法律がかぶるといえば確かにかぶっておると思います。しかしそれをどういうふうに手続上取り扱うかということになりますと、私自身は存じませんが、おそらく外人登録なんかはやっていないのじゃないかと私は思います。
  243. 折小野良一

    ○折小野分科員 私もそう思う。そういう手続はなされていない。ということになりますと、日本の法律によって告発されなければならないということになります。いかがでございますか。
  244. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 私、実は外人登録の所管ではございませんで、刑事事件関係の所管でございますが、法務省から参っておりますので、一言御説明を申し上げたいと思います。  外人登録の関係では、おそらく一般在留外国人の扱いをしておらないことは事実でございます。結局軍人と一緒に本邦に入ってきましたその家族は、一体どの期間条約上の利益を享受することができるか、条約上はどれだけか、また実際上はどれだけ享受せしめるのが妥当であるかという観点から、それぞれの事項によって扱いが異なっておるのじゃないかと思います。  先ほど来北米局長が言っておられますように、たとえば空軍の将校に随伴して入ってきました家族でございますと、飛行機が飛び立つごとにその身分を切りかえるのか、数時間ずつの飛行の過程において切りかえるのか、問題がございます。それらの問題はやはり合理的な限度において、この構成員の家族として扱っておるのじゃないかと思います。  詳しいことは、もし御要求がありますれば、立ち戻りまして、外人登録所管の係と打ち合わせまして、あらためてお答えいたしたいと思います。
  245. 折小野良一

    ○折小野分科員 確かに条約あるいは国内法の適用、こういう面において、ただいまの御答弁でもおわかりのようにきわめてずさんでございます。いろいろむずかしい問題はございましょう。しかし、それはそれなりにはっきりさせておかなければならぬ。先ほどからいろいろおっしゃいました実際上の扱い、これは条約あるいは法律に反しない限りにおいて許されることであります。それに抵触するような実際上の扱いというものは許されないはずであります。したがって、そういうような実際上の扱いをしてこられておるところに今度のようなはっきりしない問題を起こしておるわけです。しかもそういう点にいわば非常に屈辱的な扱いをする、屈辱的な慣例をつくる、そういう原因があるわけなんです。この問題につきましては特に外務省がそういう面の配慮というものをしっかりやってもらわないと、あとに続く法務省も現地の警察ももたもたするばかりなんです。私は、こういう点において、特にアメリカあるいは米軍に対する軟弱ともいわれるような扱い方、こういう外交姿勢に一番の問題がある、かように考えます。その点、最後にひとつ大臣しっかりお答えをいただきたいと思います。
  246. 三木武夫

    三木国務大臣 これはいま私も御質問の応答を聞いておりまして、条約が実際の運用面においては特別な扱いもあろうと思います。したがって、これは法務省とも打ち合わせて、もっとはっきりと御答弁ができることになると思います。  しかし最後に言われた、やはり法治国家として何か国民に屈辱的なそういう取り扱いをしておるというような印象は——やっておりませんが、そういう印象を与えるということは好ましくないので、今後外人といえども法治国家としての法律に従って——法律または慣習もありますね。それに従って処理するということを厳重にやらなければならぬということについては同感でございます。
  247. 折小野良一

    ○折小野分科員 大臣はやっていないというふうにおっしゃいますが、この問題の処理を見ましても、まあやっておる。これは必ずしも意識的ではないにしましても、そういうふうに感ぜざるを得ないわけであります。限られた時間ではっきりした確答まで得られない面もあったかと思いますから、こういう面については早急に検討をしていただいて、そうして政府の統一見解をはっきりしていただき、また私が質問しました個々の問題についてはっきりした見解が出ましたら、ひとつ御報告を願いたい。  この点を留保いたしまして、私の質問を終わります。
  248. 小沢辰男

    小沢(辰)主査代理 この際、午後の分科会は本会議散会後直ちに再開することとし、暫時休憩いたします。    午後二時四分休憩      ————◇—————    午後三時二十一分開議
  249. 野原正勝

    野原主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  外務省所管に関する質疑を続行いたします。横山利秋君。
  250. 横山利秋

    横山分科員 短い時間ではございますが、朝鮮に関係いたします諸問題について大臣の所見をただしたいと思います。  朝鮮の問題にはいろいろなケースがございますが、政治的に考えるべき問題、あるいは人道的に考えるべき問題、あるいは貿易行動の面から考えるべき問題等、幾つかのケースがございます。  最初は、人道上の例のコロンボ会談以降の問題について、数点にわたって簡潔にお伺いしたいと思うわけであります。  私の質問したい要旨はもう大臣もよくおわかりでございますから、項目をまず言っておきますが、コロンボで話ができなかった、しぼった理由は一体何であるか。つまり一万七千人の問題についてはいいけれども、あとの問題については協定にすることができないというのか、一体しぼったその一番の問題は何かということが第一の質問であります。
  251. 三木武夫

    三木国務大臣 実際正直に申しまして、われわれもどうしてあの段階で決裂したのかよくわからないような点もあるくらいです。話し合いももうほとんどまとまるものだと思っておったのですが、原因になったのは、やはり暫定的な処置でなしに協定でなければいかぬということも大きな底流にあったと思います。しかし、ほんとうはこれがまとまるものだと思っておったので、非常に意外に思ったくらいでございます。
  252. 横山利秋

    横山分科員 事実問題としてはまとまっておったし、私どもはそのつもりで政府を督励し、朝鮮民主主義人民共和国に対しましても、おそらくまとまるであろうと期待を持っておった。問題は、私が客観的に考えてみまして、一万七千人といって政府が一方的に打ち切って一方的に送り返すと言ったことについては政府に責任があるんだから、これは責任を持って政府も協定に調印するのはやぶさかではないだろうと私は思うんですよ。これは間違いありませんか、どうですか。
  253. 三木武夫

    三木国務大臣 あのことが切れまして、日赤と北鮮との間にはちょっと連絡が閉ざされたような形ですから、だから今後の処置というものは、これは日赤のほうでも十分検討をすると思いますが、日本政府とすれば、あそこまで日赤のああいう考え方でことしの七月まででしたか、暫定的な便宜をはかろうということ、ああいうことでまとまるならば、それは何もわれわれ言うところはないのです。しかし、いろいろこじれておりますから、ああいう線からまた違ってくるということになれば、日赤としても話をまたもとへ戻してということもなかなか困難ではないか。日赤がコロンボで提案したようなことでまとまるということならば、これはまた考える余地はあると思います。
  254. 横山利秋

    横山分科員 大臣があちらこちら考慮して、奥歯にもののはさまったようなものの言い方をする議論は、私もわからないことはないんですが、このままでは済まされないので、壁に耳ありということも意識してお互いに話をすることの余儀ない事情ではありますが、少なくとも、さしあたり一万七千人だけは合意のもとに送り返すという話ではないんです。あれは政府が一方的に協定を——一方的ということばが適当かどうか知らぬけれども、向こうの合意なしに打ち切った、それでその人たちは準備して家財道具も売り払って、それじゃひとつということになっておるのがいませきとめられておるのですから、その点については、責任は一にかかって日本政府にあるわけです。そのことのまず責任を感じてもらわなくちゃいかぬ。それで、今後どういう条件になったら第二のコロンボ会談が開けるのか、どういう条件下にやろうとするのか、向こうから話があったらいつでも応じられるのか、それとも条件つきでなければいやなのか、そういう舞台の幕を開くかぎというものはいまや全くないのですから、そのかぎは一体何なのかという点は一うしろを向いて聞いておっては困るな。それでわかりますか。そういうことをそこで相談してもいいから、よく考えて返事をしてください。
  255. 三木武夫

    三木国務大臣 ああいう形で実際は日本の赤十字も話をまとめようと思って行ったことは事実ですね。ですから、北鮮側の態度がどういうことであったか、急に意外とするような変わり方をしたのですから、日本ばかりがこうしょうということだけでもこの問題はいかぬと思います。したがってこの問題は、何かこちらの側から新しい方針があるかということは、現在のところはない。ああいうふうな取りきめができなかったという時点に立って、できるだけ出国者に対して便宜をはかるということのために最善を尽くすというよりほかにはないのじゃないか。話がまとまらなかったのですが、横山さん、八年間やっておったのですから……。(横山分科員「あなたになってからストップになった」と呼ぶ)われわれになってからずいぶん送りましたけれども、そういうことで何か一方的に打ち切ったと言って、いかにも打ち切ったように——八年というあれは、初めは一年くらいやるという予定が次々に延びて八年という期間やっておったのです。あなたが一方的責任と言うから、政府は無情なことをしたわけではないというために申し上げた。
  256. 横山利秋

    横山分科員 責任を追及するよりも、現実にどうするかという問題を議論しておるので、私がお伺いしたことは、詰めて言えば、いま打ち切りになっておる一万七千人の人が待っている、あとの人もどうするかということについて心配しておる、いま空白状態になっておる、この空白状態はどういう条件が来たら舞台が開かれるのか。これは双方とも意地になればいつまでたっても続く。続く過程で待っておる一万七千人の人は、合意で送り返すと言ったのではなくて、政府の責任で送り返すと言ったのだから、道義的責任を考えてもらわなければいかぬではないか。どういう条件、どういう雰囲気、どういうことになったら幕を開くのか。この幕を開こうとする誠意が日本側にあるのか、こういうことです。
  257. 三木武夫

    三木国務大臣 これは相手もあることですから、どういう条件なら、またどういうふうに事態は変化するということを一方的に日本がここで言うことは、コロンボ会議のいきさつから考えて困難な段階ではないか。ここで、こういうことになればもう一ぺん開くんだ、ああいう会議を開くんだという条件日本が申し上げるということは、今日困難な状態ではないかと思います。これは相手もありますから、日本だけの一方的な意思というわけにはいかない。
  258. 横山利秋

    横山分科員 それも私は承知の上です。しかし、現実に待っておる人がいるのですから、それでは向こうが再開をしたいと言ってきたら応ずる用意があるのか、あるいはまん中に立つ何かがあって、双方に希望したら日本政府はいやだとは言わないのか、そういうことについてはどうなんです。
  259. 三木武夫

    三木国務大臣 これが先方で、北鮮のほうで、ああいう結果になったことに対してどういうふうに考えておるか、政治というものはいろいろ動いておるものですから、いろんな事態について政府は判断をするよりほかにはないと思いますが、いまのところで、ああいう形で決裂したのですから、いろんな場合を仮定して私がお答えするのは適当でない。しかし、政治は動いておるものだから、そういういろんな動きが出てくれば、その時点でわれわれとしては判断をするということであって、いまからこういう場合、ああいう場合というものをここで私が想定してお答えすることは適当でないと思います。
  260. 横山利秋

    横山分科員 いろんな問題がありますから、いろいろ問い詰めることもいかがと思います。  最後にお伺いしておきたい。三木さんのお考えとして、何べんも繰り返すようですけれども、少なくとも家財も売り払い準備もし、親戚にも別れを告げた一万七千人の人をどうお考えになっておるのか。いまのあなたのお話だと、全く白紙のようなお話のようですが、現実としてのお気持ちは一体どうなんですか。
  261. 三木武夫

    三木国務大臣 申請を用意した人は御説のように一万七千人、しかし、それがみな家財道具を売ったというわけではないようで、その中の少数の人が、帰国を準備されたような人もあるでしょう。そういうことで、ああいう取りきめはできなかったが、何か帰るような便宜ははかれるだけ——ああいう取りきめによってということではないけれども、できるだけの便宜はわれわれとしても考えるべきだと考えておる次第でございます。
  262. 横山利秋

    横山分科員 たいへん不満なお答えです。しかし、ことばのニュアンスの中に、いろんな動いておる政治事情であるから、言うに言えない点があるというような趣旨を私は無理にくんで、また別途しかるべき委員会で御質問いたすことにして、次へ移りたいと思います。  プエブロの事件がございましてから、御存じだと思いますが、岩国における基地の状況はきわめて変化をいたしております。岩国から飛行機が出て、ナホトカかあるいはどこかからベトナムへ向かうソビエト船をフィリピンまでつけて行って、フィリピンでまたかわりの飛行機がつけて行く。それからアメリカの例のプエブロが偵察をするというように、日本海は最近非常に動いておるわけであります。そこで、きのう私テレビを見てみますと、三十八度線の板門店の近況をテレビでずっとやっておりました。最近における三十八度線の紛争事故は五倍になっておる模様であります。これは私どもは、そういうことのないように期待をしたいのでありますけれども、いつどういう状況になるともわからないという心配を実は抱くわけであります。その心配のために二、三お伺いをしておきたいのでありますが、朝鮮におりますいわゆる国連軍、あえて私はいわゆる国連軍と言いますが、このいわゆる国連軍は、国連憲章四十三条に基づく正規の国連軍でないということは、もうすでに大臣もどこかの委員会でお答えでございましたが、間違いではございませんか。
  263. 三木武夫

    三木国務大臣 それはこういうことだと思います。国連憲章でいう国連軍というのではなくして、安保理事会の決議による国連軍でございます。
  264. 横山利秋

    横山分科員 ソビエトが欠席をいたしました際、安保理事会における決議の国連軍であるが、国連憲章の各条章に基づいて正規に送り出された国連軍でない、こういう意味でございますね。
  265. 三木武夫

    三木国務大臣 安保理事会で——理事会の決議の場合のいろいろないきさつはございますが、とにかく決議になったことは事実で、この国連の安保理事会の決議による国連軍でございますから、国連憲章の条章というものにのっとったものであると考えざるを得ないのでございます。
  266. 横山利秋

    横山分科員 それはすでにほかの委員会でも政府がお答えになっておるのです。国連憲章四十三条に基づく正規の国連軍ではない、こうお答えになっておると思いますが、政府側の御意見は統一していると思うのです。私の言うのは、安保理事会で決議をされたいわゆる国連軍である。国連憲章四十三条はじめ各条章に基づいた国連軍ではない。さきの政府答弁を蒸し返しておるのですが、それでよろしゅうございますかという意味です。
  267. 三木武夫

    三木国務大臣 そのとおりでございます。
  268. 横山利秋

    横山分科員 日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定という二国間協定がございます。四十一年版に出ておるのですが、ここにいうところの国際連合の軍隊というのは、いまの区分によって、いわゆる安保理事会の決議に基づく軍隊との問題をきめておる、こう理解してよろしいのですか。
  269. 三木武夫

    三木国務大臣 そのようにわれわれも解しております。
  270. 横山利秋

    横山分科員 一九五〇年の十月七日の決議三七六の(V)の中で、「全朝鮮にわたって、安定した状態を確保するためにすべての適当な措置をとること。」ということが常に問題になっておるわけであります。これはいわゆる三十八度線突破を可能ならしめた決議であるかどうかということが議論の対象になっていますが、政府はこの「全朝鮮にわたって、安定した状態を確保するためにすべての適当な措置をとること。」という一九五〇年十月七日の総会の決議三七六の(V)をどういうように解釈をされておりますか。
  271. 三木武夫

    三木国務大臣 これはいま御指摘の「全朝鮮にわたって、安定した状態を確保するためにすべての適当な措置をとること。」というものが……。
  272. 横山利秋

    横山分科員 三十八度線突破決議と見るか見ないか。これによって三十八度線を突破できるという解釈をされる決議であるかどうかというのです。
  273. 三木武夫

    三木国務大臣 専門家の解釈もありますが、私はできないと思っております。
  274. 横山利秋

    横山分科員 いいですね。黙っていらっしゃるところを見ると、大臣の考えでいいですね。大臣が言うのに、下の人の意見を聞くのはばかな話でありますから。それじゃ、この決議は三十八度線の突破を認めたものではないと解釈して次へ進みます。  そこで、この決議採択までは、アメリカ軍は三十八度線の中に、いわゆる国連軍はいたわけで、この決議がされた後に三十八度線をいわゆる国連軍は突破したわけであります。その意味においては、いわゆる国連軍がこのすべての適当な措置をとるという文章を、三十八度線を突破し得る決議に援用したとすれば、これは誤りである、こう解釈できますが、いかがですか。
  275. 三木武夫

    三木国務大臣 この問題についてはいろいろな経過等もありますから、政府委員のほうで調べてお答えしますが、現在の時点において考えれば、やはり三十八度線というもので朝鮮の秩序を維持しているのですから、これは簡単に突破できるということが、合法的だと私は思っていない。ただしかし、これができたいきさつは、北のほうから韓国に進撃して来たわけですね。そうして、それを追い返すために鴨緑江近くまで行ったというその経緯のもとに、いま申したようなこの決議がそういう時点に起こった、その時点を考えると、あまり三十八度線というものを意識せないでできた決議かもしれない。現在のところ、私が言うのは、現在三十八度線というもので南北の秩序が維持されておるのだから、この三十八度線を簡単に突破することはやはりいけない。これは私自身が思う。しかし、これができたときは、そういうことがあって、この決議をどう思うかということに対しては、三十八度線というものを意識した決議にはこれはなっていないのだと思います。そのいきさつは……。
  276. 横山利秋

    横山分科員 大臣が三十八度線突破を許した決議ではないと、そのとき日本は国連に加入していないからね、日本がいないときに決議されたこの決議は、三十八度線突破を許したものではないと思う、しかも、現在は三十八度線で維持されておるのだし、この三十八度線をこちらが突破することもないと考える、要約すると、こういうことでございますね。
  277. 三木武夫

    三木国務大臣 最初この決議をしたときには、三十八度線というものを突破して、そこから侵入して来たわけですから、それを追い返すために突破して行くこともあり得るということが、この決議をした時点においては考えられたのではないでしょうか……。
  278. 横山利秋

    横山分科員 話が違いましたね。
  279. 三木武夫

    三木国務大臣 だけれども、現在の時点において……。
  280. 横山利秋

    横山分科員 さっきの大臣の答弁と……。
  281. 三木武夫

    三木国務大臣 さっきはそういうことを申し上げたのですよ。三十八度線というものを意識してこの決議がされたのじゃなくて、侵入したことに対して、これを追い返して行くために……。
  282. 横山利秋

    横山分科員 だめですよ、答弁が回っちゃ。
  283. 三木武夫

    三木国務大臣 回っていないですよ。だから、この決議をしたときには、やはり三十八度線というものがあまり決議の中に意識されたものではなくして、安全を確保するというようなことが中心になった、現在の時点では、三十八度線というものは一つの秩序を維持する境界線になっていると私は思います。この決議のできたときには、三十八度線というものが中心になって、この境界を突破するのがいかぬとか、いいとかいうことでこの決議がなされたのではないかと思うと、最初から申し上げております。
  284. 横山利秋

    横山分科員 この決議がされるまでは、いわゆる国連軍は三十八度線以南におったんですよ。決議がされた後三十八度線を突破したんですよ。それが実態なんです。だから、私はこの決議をアメリカが一方的に解釈したのかどうかということは議論の外にして、日本政府としては、この決議を三十八度線突破を許す決議と考えるか考えないかということを言っているんですよ。いまでもどうなんです。
  285. 三木武夫

    三木国務大臣 この決議の解釈は条約局長から申し上げることにいたします。  この決議は、いわゆる三十八度線を突破できるとか、できないとかいうことではなくして、必要な場合にはそれを突破することもできるのだというような決議のように考えられております。私の判断は、やはり政治的な判断として、三十八度線で南北というものが一応の秩序が維持されているのだから、南も北も三十八度線というものを侵すことは政治的な解釈としては好ましくない。だから、条約上の……。
  286. 横山利秋

    横山分科員 日本政府はこの条文をどう解釈するかということを聞いている。
  287. 三木武夫

    三木国務大臣 それは条約局長から申し上げます。
  288. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 大臣のおっしゃったように、これを……。
  289. 横山利秋

    横山分科員 簡潔に言ってください。
  290. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 この決議は、全朝鮮にわたって安定した状態を確保するのに適当な措置をとるという意味でつくられたものでございますが、当時から、この決議によって三十八度線を突破したということは考えておりました。
  291. 横山利秋

    横山分科員 考えておりましたとかいうことではなく、いまこの決議について、日本政府は、この決議は三十八度線の突破を許す決議であるかどうか、どう解釈しているかというぎりぎり一ぱいの話をさっきから何べんもしているんですよ。あなたの解釈によると、日本政府は三十八度線を突破し得ると考えている、そうならそうとはっきり言ってください。
  292. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 この決議が三十八度線突破と申しますか、北鮮の地区に入ることを許したものであると考えております。ただし、現在の状態は、休戦協定がその後にできておりますので、変わっております。
  293. 横山利秋

    横山分科員 これは、実は質問をしながらきわめて意外に感じました。アメリカがこの決議を援用して三十八度線を突破した事実は事実でありますけれども、多くの国は、それはこの決議の乱用である、こういうふうに解釈しているのです。ひとり日本政府だけが、この決議によって三十八度線突破を許しているし、また、そう解釈しているというのは、私にとりましてはきわめて意外な返事でございました。間違いありませんね。大臣にあらためて念のために確認します。これでは前の議事録をもう一ぺん取り寄せなければなりません。少し違うようですが、いまの解釈で間違いありませんね。
  294. 三木武夫

    三木国務大臣 条約局でいろいろ検討した政府の見解というものには私も従います。ただ私は、特に決議というものを離れてというか、休戦協定もできておりますから、それで三十八度線という境界を私は重視するわけです。したがって、現在の時点でお答えしたわけでありますが、この決議それ自体の法文解釈というものは、条約局の解釈に従うことが適当だと私も思います。
  295. 横山利秋

    横山分科員 従うことが適当だということは、先ほど三木さんは、条約局長が御返事なさる前に、この決議は三十八度線突破を認めたものではありませんと、そうお答えになりましたね。私は正直のところ、そこで安心をしたんです。それが常識的だろうと思った。ところが今度変わって、条約の解釈が三十八度線突破を許したものだと解釈するなら私もそれに従うということを聞いて、私はあ然としております。いいでしょう。しかし、それで話を進めますよ。  そうしますと、その後日本政府は、日韓条約発効後一九六六年の二十一回国連総会で、朝鮮問題に関し決議案の共同提案国になりました。一九六六年六月、ソウルでのアジア太平洋会議で、この三七六(V)を支持した共同コミュニケに参加をなさいました。つまりそのことは、単に解釈ばかりでなくて、実際問題として、この安保理事会の決議に対して、いわゆる国連軍が三十八度線を突破することが、事実関係なくしてもしあったとしたら、日本はそれを支持する、こういうことになりますね。
  296. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 支持すると申しますが、別に兵隊を出すとかという意味じゃないので、決議を支持するという意味ではそのとおりでございます。
  297. 横山利秋

    横山分科員 そうしますと、三十八度線突破をいわゆる国連軍がした場合に、日本は共同提案国としてその行動を認め、それを支持し、それに国内措置として必要な措置をとる、国内を認められる限りの必要な措置をして支持する、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  298. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 国内措置については、現在交換公文の制約がございますから、それによりまずならば、支持するという意味では確かにそうでございます。
  299. 横山利秋

    横山分科員 申すまでもなく、三十八度線突破は軍事行動であります。この朝鮮問題の解決に、軍事行動をもって三十八度線を突破する場合に、日本政府はそれを支持し、それに必要な援助をすることが義務づけられておる、そういうことになりますが、三木外務大臣、それでよろしゅうございますか。
  300. 三木武夫

    三木国務大臣 これは国連憲章の条項によって行動する。(横山委員「正規の国連軍ではありません」と呼ぶ)正規でなくても、国連の安保理事会の決議によってできた国連軍でございますから……(横山委員日本は参加しておりません」と呼ぶ)決議には参加しておられなくても、そういう決議によってできたものですから、国連憲章の制約を受ける軍隊であって、他の軍隊とは性質を異にするものだと考えております。
  301. 横山利秋

    横山分科員 その当時、日本は安保理事会でこの決議に参加してなかった。講和条約が発効されて、それから日本は賛成国から今度は共同提案国になった。そして六六年にはソウルでさらにこの三七六(V)を支持した。事はどんどん発展をしておるということを私は言いたい。あらためていまあなたにお伺いしたところ、あなたは、どうも御研究が不十分だったらしい。驚いたことです。これは、あなたがきわめて常識的に素朴に、三十八度線突破を認めたものではないと思うと言った最初のことばが、一番すなおで一番三木さんらしいと思う。ところが、どんどん条約局長に巻き込まれていって、今度は、三十八度線突破を認めたものであり、それによって行なわれる軍事行動を日本が支持するというふうな解釈は、あまりにも逸脱じゃありませんか。私は、三木さんがもう一回よく検討されんことを望みたいと思いますが、お考えは変わりませんか。
  302. 三木武夫

    三木国務大臣 これは要するに、決議の解釈を政府がずっと続けている以上は、こう性質のものではない。ただ私が重視したいのは、休戦協定ができて、朝鮮の事態というものは、この国連で決議した事態とは大きな情勢の変化があるというこの事実に私は注目をするものであります。
  303. 横山利秋

    横山分科員 あり得べきことを最初に申し上げて、今後朝鮮問題がひょっとしてあり得べきことを想定して言っているんですから、三十八度線でとまっている現状だけで議論してはだめだと私は言うんです。  時間がありませんから最後にお伺いしたいのですが、この在韓国連軍が軍事行動をした場合、これもほかの委員会で少しお触れになっている模様でありますが、安保条約における事前協議は適用されるかどうかという問題であります。簡潔にお答えを願います。
  304. 三木武夫

    三木国務大臣 米軍ならば適用いたします。
  305. 横山利秋

    横山分科員 米軍ならばということですが、かりに韓国軍が国連軍に参加して入っている場合です。イギリス軍、ニュージーランド軍等々が参加しているいわゆる国連軍ですよ。
  306. 三木武夫

    三木国務大臣 安保条約は米軍以外は適用いたしません。
  307. 横山利秋

    横山分科員 いわゆる国連軍というのは、御承知のようにアメリカ軍司令官が全体のさいはいを振っているものです。その中にニュージーランドもいるし、どこそこもいるというもので、トップの最高指揮官はアメリカ軍司令官でございます。そういう意味合いにおいて、その全体が動くときにどういうことになるか、事前協議を適用されますか。
  308. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 アメリカ軍が日本から出てまいります場合の事前協議と申しますのは、この場合一番適用になりますのは、おそらく直接作戦行動だろうと思います。アメリカ軍が日本から出てまいります場合には、当然事前協議の適用になることは御承知のとおりであります。ほかの国連軍が日本にいて、そうして戦力になっているということは国連軍協定では考えておりません。日本においては補給基地であるだけだという考え方でございます。
  309. 野原正勝

    野原主査 横山君に申し上げますが、時間がきましたので、結論をお急ぎ願います。
  310. 横山利秋

    横山分科員 それでは、もう一問だけにいたしまして、後日に議論をいたします。  私の心配いたしますのは、日本におります国連軍は軍事行動をしないという解釈をしていいかということが一つと、それから岩国におります在日アメリカ軍は、岩国を出たとたんに、また、日本におります国連軍も日本を出たとたんに——いや、日本にいる間に国連軍たり得る、われわれの知らない間に国連軍たり得るのですから、そうしますと、日本にいる間に国連軍になって、われわれの知らない間に戦闘作戦行動命令を受領するということが現在きわめて簡単に行なわれているわけですね。そうしますと、われわれはいま国会で在日米軍の作戦行動だけ議論しておりますが、この朝鮮で何か起こりました場合には、いわゆる国連軍としての問題が中心になってまいります。在日米軍でなくて、いわゆる在韓国連軍の作戦行動がその目的中心に推移してまいります。そういたしますと、いわゆる在韓国連軍の作戦行動によってずいぶんわれわれは考えなければならぬことであります。そこで先ほど端的にお伺いしたのですが、その国連軍——日本もそれを支持し、決議に賛成している国連軍の行動は、事前協議の対象になるかならないか、これはひとつ明白に答えていただきたい。どういう場合に対象になりますか。
  311. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 繰り返すようになりますが、事前協議と申しますのは、当然直接作戦行動の問題だろうと思います。これは国連軍協定五条の公式議事録に「国際連合の軍隊の使用に供する施設は、朝鮮における国際連合の軍隊に対して十分な兵たん上の援助を与えるため必要な最小限度に限るものとする。」というきめがございますが、こちらのいわゆる米軍以外の国連については、兵たん基地としてしか使わないという定めでございます。米軍については、これは安保条約がそのままかぶりますから、事前協議の対象になります。
  312. 横山利秋

    横山分科員 残念ですが、次の機会にいたします。
  313. 野原正勝

  314. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 私は、総括質問で外務大臣に質問をする機会を失っておるので、その続きのつもりでお聞きしたいのですが、私の質問する要点は、どうも、いろいろ論議をしておる中で、安保条約があるためにいろいろ矛盾を生んで、うそも言わなければならないし、ずいぶんむだな論議がある。安保が前提であらゆる問題が出ておるように思うし、また逆に、政府は安保条約を利用して間接的に憲法を空洞化する方向に使っておる点もあるような気がするのです。私は、安保条約を解消しなければ戦後は終わらないのじゃないかという感じを持っておるので、そういう点を率直にいろいろな点からお聞きしたい、こういうふうに思っておるのです。  そこで、施政方針演説の中で、三木外務大臣の施政方針演説は非常に格調が高く、私は敬意を表して聞いておったわけです。総理大臣の演説よりは数等上だという感想を持って私は聞いておりました。その論旨の中にも、憲法という線で外交を行なうという点も明確に出しておられるので、その点についてわが意を得た点もあるわけですが、それでも安保との関係の矛盾が出ておるのではないか。こういう施政演説が、ただ文章だけでなくて責任のある施政演説でありましたら——個々のむずかしいことは私はわかりません、条約などはしろうとですから。その点、この機会しかないので外務大臣にお聞きしておきたいと思うのです。というのは、大臣の外交演説の中で、日本外交の基本路線として三つあげて、一つは、海洋国家として孤立主義はとれない。これも日本の歴史的、地理的条件からそのとおりです。それから第二に、資源が少ない、小さな国であるので、自給自足経済ではなくて、貿易主義でいかなければならない。第三に、隣接するアジア大陸に対して相互尊重、親善関係を保たなければならない。これはどういう政権、どういう国、どういう憲法ができても変わらないものだと思うのです。ところが同時に、われわれは日米安全保障条約を堅持していく考えであるということを、一方にまた同じ演説で言わなければならない。アメリカは中国に対して脅威を持って、中国に対する戦略体制をつくっておる。あれだけ反共でこり固まって、いわゆる日本アジアにおける立場と矛盾をしたヨーロッパ的立場の中で、ヨーロッパの帝国主義、植民地主義の嫡出子としての遺産を負っておるアメリカ、そういう偏見を持ってきておる国と、どうしても日米安保条約を持っていかなければならないという中に、非常に矛盾があるのではないか。それをまず外務大臣に伺っておきたい。安保条約を結んでいるがゆえんの矛盾が出るのではないかと私は思うのです。いかがでしょう。
  315. 三木武夫

    三木国務大臣 どこの国でも、安全保障の問題というものはみな国の最高政策であります。したがって、アメリカとしても、日本ばかりでなしに、一番大きな組織はヨーロッパ北大西洋条約であります。このように、世界各国とも集団安全保障の形態をとっておる場合が多いのですね。日本もまた、そういう意味において日米の安保条約を結んでいるわけです。これはどこの国でも、安全を確保するのには一体どうするか——非同盟諸国のような国もありますけれども、これはごくわずかです、もうたいていの国が、やはり集団安全保障条約による安全保障というものが今日の安全保障の形態になっておりますから、したがって、日本アメリカとの間に結ぶことが、私の言うアジアの善隣、アジアの近隣諸国との友好関係を維持するということとは少しも矛盾しないと思う。各国ともみなその国の——中共なら中共にしても、原爆まで開発して自国の防衛ということをやっておるわけです。各国がみな安全保障政策を持っているわけですから、これは今日の世界情勢ではやむを得ないことであって、そういう安全保障条約の体制を越えて各国がみな友好関係を築こうというのが今日の世界情勢でありますから、そのことが私の言う近隣諸国との友好関係を増進するように努力したいということとは少しも矛盾していないのでございます。それはやはりみな各国の安全保障政策から生まれてくるので、そういうことを言えば、米ソなどの関係なんというのは、友好な関係を築くということはとてもできるわけはない。軍事的にはきわめて対立しておるわけです。それを越えてでも、米ソの平和共存を打ち立てようということは、やはり一つの大きな政治が安全保障政策を乗り越えて関係の改善をはかろうとしておる、これが世界の姿である。矛盾をするものではないと私は考えております。
  316. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 一般論をおっしゃいますけれども、北大西洋条約というのは、欧米諸国のヨーロッパ的立場というものに何も矛盾がないのですが、日本の場合はアジアの一員だという外交の一方の方針があって、アメリカアジアに対する立場と、日本アジアにおける立場は違うと思うのです。そのアメリカだけと安全保障条約を結び、しかも、安全保障条約の中で、日本ばかりでなく、極東の平和という名のもとに日本に軍事基地を置いて、仮想敵国を中共として基地を置き、沖繩問題をあれだけ大激論しておるのですから、いま外務大臣がそれだけ一般論をおっしゃったって、何の説得力もないのですね。だから、これは幾らお話ししておってもきりがない。やはりその矛盾というのは、どっかでうそを言わなければならぬのは安保条約があるためです。アメリカソ連の体制が違っても、あそこでの平和共存という立場、それをもって、いま軍事基地をここに置かれて、しかも、反共極東体制という日本の立場、同時に、いわゆる植民地化されたアジア民族の民族独立という立場も守っていくという、違った立場を持っておる日本が、ほこ先を中国に向けておる軍事基地を認めることを前提とした日米安保条約には何も矛盾がない——三木さんが、一方に、アジアと侵されもせず侵しもせずという、そういうことをうたっておる、そのすぐあとに書いておるのは、これは矛盾ですよね。おそらくいろいろと苦心をして答弁されなければならぬと思うのですが、その矛盾は、やはり政治的の悩みとして考えるべき問題ではないのでしょうか。何かすらすらっと本を読むような答弁をされる問題ではない、私はそう思うのです。  そこで、ちょっと角度を変えてお聞きしますが、外務大臣は中国の脅威ということについてお考えになっておられますか。
  317. 三木武夫

    三木国務大臣 中共が一番最後に核兵器の開発をやったわけですね。核兵器というものを世界自身がこれをどうするかということは大問題になって、核防条約なども、不徹底ではあるけれども、核兵器の拡散を防止しようという意図のもとに、いまジュネーブで検討されておるのですから、核兵器はやはり一方において一つの抑止力ではあると同時に、一方においては脅威ですね。人類の脅威です。もし核兵器による戦争が行なわれれば人類は全滅しかねない。これほどの脅威はない。中共は国内でああいうたくさん問題を抱えておりますね。それが核兵器の開発というものに相当力を入れるということは、やはりアジア諸国に対しては一つの脅威といいますか、中共の動向が非常なそういうものを与えておるという面は否定できないんではないでしょうか。
  318. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 日本アメリカの基地があるから脅威を感じるということならばわかるのです。だから安保を解消したほうがいいという結論になるのですが、これは読売新聞が元旦に発表した世論調査で、これは一般の世論調査、無差別抽出でなくて政治家その他百名を選んで、そうして自民党の有力な国会議員も十四名、社会党七名、民社党四名、公明党二名、その他労働界、実業界の発言権のある者を並べて、それのアンケートをとっているのですね。「アジアの平和と安定を阻害する主たる原因は何か。」中国の脅威、アメリカの介入、アジア諸国自身の問題、あるいはソ連共産主義このいずれがこのアジアの平和と安定を阻害する主たる原因かということに対するアンケートの中で、百人のうち中国の脅威と感じているのは十五人。それからアメリカの介入と考えているのが二十人。アジア諸国自身の問題と考えているのが二十六人。ソ連共産主義の浸透はゼロ。そうしてその中で特に中国の脅威を阻害原因としてあげたのは、自民党の国会議員の中では賀屋、前尾、川島、増田、船田の五氏だけで、他の九氏は中国を脅威と指摘していないことである。そうしてその中で、特に脅威ではないと言っておるのが藤山、大平、福田、江崎、小坂、石田、田中の七氏と書いてある。これだけ自民党の中でも——国会で安保条約というものを頭に置いて論議するだけでなくて、ほんとうに中国の脅威を感じているかどうか、アジアの一員としてどうかということについて、自民党の中でたった五人だけが中国の脅威とし、七人がそうでないんだ、そうしてむしろアメリカの介入に賛成しているのですね。三木外務大臣は自民党の中で、そうでない、脅威でないと感ずる認識を持つ近代的な外交感覚を持った人であると私は確信をしておりましたが……。事実こうして常々と出している、どこにこういうちぐはぐが出るのか私は非常に奇異に感ずるのです。  そこで同時に私はそれに対して、佐藤総理大臣に、国民の声を体し、自民党の五人に対する七人の意思も含んで疑義があるのは、日米共同声明の第三項のところに「総理大臣と大統領は、最近の国際情勢、特に極東における事態の発展について隔意なく意見を交換した。両者は、中共が核兵器の開発を進めている事実に注目し、アジア諸国が中共からの脅威に影響」されるという認識を、合意のもとにずっとうたってきているのですね。こんな矛盾をどうしてせなければならぬか。そして外交官一つの権力に対するおもねりを含んでおるかどうか知らぬが、アメリカ大使がああいうことを言ったということで問題になっておる。これはやはり安保条約というものの中から、このちぐはぐな現象が出てきておると私は思うのです。同じ元旦に毎日新聞の世論調査の発表の中にも、私ずっと見ましたら、中国の脅威を感じている者は五%だけですよ。六三%は感じていない。これは全国の無差別抽出でそうです。そういうところから見ますと、ことに自民党の中の顔ぶれから見ても、そういうことを言って新聞に発表になっておるのに、外務大臣はなぜそういうことをおっしゃるのか。もっと現実にアジアの民族の声を聞きながら、しかもアジア感覚から言えば、中共がアメリカに対する敵視はあっても、日本に対してはそんな侵略は考えていない。ただ安保条約という、基地という問題が介入してそういうことがあり、日本の政治家が、安保条約というものを守らざるを得ないように押しつけられた中でそういう発言をしているのではないか。それなら解消したらいい。解消したあとに、社会党と自民党で非武装防衛論がいいかあるいは武装防衛論でやるかということを国民に訴えればいいので、次の問題だと私は思う。いかがですか。
  319. 三木武夫

    三木国務大臣 お互いに、中共から見れば安保条約などに対してはいろいろ意見を持っておるでしょう。日本からすれば、核兵器の開発などに対しては、みなだれもこれは賛成だという人はないですよ。(山中(吾)分科員「脅威がないと書いてある」と呼ぶ)脅威ということになれば、核兵器というものは全般的に言って、中共だけを言うのではないのですよ。どこの国でもやはり核兵器というのはやはり人類の脅威である、これは私の解釈です。そういうことで、中共だけの核が悪くて、ほかの核がいいというのではない。核兵器は、やはり全般としてこれは脅威を与えるものである。そういう点で、中共も核兵器を開発しておるわけですから、そういう意味の脅威を与える。それで日本自身が、私自身が中共に非常な脅威を感ずる、それほどのものはありませんわね。中共に脅威を感ずるものはない。しかし核兵器というものは、これはやはりだれにも脅威を与える。そのことがアジア諸国に対してもある程度やはり脅威を与えておると思いますよ、核兵器の開発というものは。そういう点で、それは中共自身に対して、全体としてわれわれが、いま日本が中共というものに対して何らの対抗策を講じなければならぬ脅威を感ずるような相手であると私は思わない。やはり日中関係というものはお互いに、向こうもまた日本に脅威を感じておるかもしれない、そういう日中関係は改善されなければならぬと私は思っていますよ。そういう意味で中共に大いに脅威を感じて、これに対抗策を講じなければならぬと言っておるのではない。全般的に核兵器というものの持っておる脅威というものは、これは中共の核だからといって例外ではない、こう言っておるので、全体として中共が日本に対して非常な脅威を与えて対抗策を講じなければならぬというような意図で申し上げておるのではないので、そういうことを申し上げたような印象を受けられたとすれば、その印象は改めていただきたい。
  320. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 だから日米安全保障条約を堅持していかなければならぬという認識と、人類に対する脅威とは当然——これも核兵器はどこの国の脅威ではなくて人類全体の脅威、だからこそいま抑止力の問題も出ておると思うのです。だから三木外務大臣の施政演説の中の、日本の外交の基本路線であるアメリカとの、いわゆる中国を敵視しておる、これを明確にしておるアメリカと同一の外交地位を承認をしておる安保条約、しかもだんだん軍事的に共同責任を負わされる方向に進んできてしまっておる日米安全保障条約を堅持するという認識は自己矛盾である。これはもう少し考え直さなければ、日本の進む道は窒息するのではなかいということを考える段階に来ておるのではないかと私は思うのです。  そこで、私は正直ですから、文章を作文として見ないものですからお聞きするのですが、そのあとに外務大臣の考えを述べて、「今日を核外交時代と呼ぶ人があります。そして、軍事力の背景の、ない外交は無力であり、現代の力の象徴は核兵器であるから、核兵器を持たない国は国際的発言力が弱いという意見があります。私はこの意見にくみすることはできません。」これは倉石さんと違って、やはり一つの現代の平和外交についての明確なる御認識を持っておられるので私は正しいと思うし、平和憲法を持った日本外務大臣として私は間違いのない判断だと思うのです。こういう一つの演説も出ている。だから中国に対する中国脅威という判断が、正当な姿できておるのではなくて、やはり一つの安保という、偏見をつくる最初の前提があるのだ。それで安保に対する考え方、安保護持という考え方からは、こういう矛盾がだんだん出てくるのではないか。それは外交演説の中で、外務大臣の演説全体に敬意を表しながら、矛盾というものを私は肉体的に感じておるのです。それは検討すべきではないのですか。
  321. 三木武夫

    三木国務大臣 私は安保条約というものが永久に必要な条約だとも思っておりません。あるいは国際連合などによってもっと有効な世界に対する安全保障の機構ができるかもしれない、それは好ましいことでしょう。しかし、現代の時点における安保条約というものの必要は私は認めておるのです。これは何となしにまだ世界は不安定な状態にあって、安保条約を破棄せよという世論も国民の中にはあるでしょう。しかし、いますぐ日本の自衛隊といったところで、これは諸外国の中でも防衛費なども一番日本は少ないのですね。こんな防衛費の少ない国はほとんどないわけです。そのことは、防衛力だってよその国に比べれば十分だとはいえないわけです。それを補っていくためには日米安保条約のような一つの集団安全保障形態、自国だけの防衛というのではなくして、そういう集団安全保障形態がいいというので安保条約を結んでおるわけです。私は当分の間日本はこういう防衛の——防衛といいますか、安全保障の政策をとることが国のためによろしいという意見であります。ただ、安保条約というものが、これは日本の安全を守るための条約でありますから、極東ということも、日本の安全というものに関連を持つ極東情勢というものにわれわれとしては関心を持つわけで、中心は、日本の安全というものが一番中心になっておるわけでありますから、このことから直ちに安保条約が中共を敵視するということが生まれてくるわけではない。したがって、安保条約というものが日本の安全を守るし、日本はまた外に向かって、海外に派兵したりはしないわけですから、軍事的にはよその国際的紛争に介入しないのですから、これだけの平和的な憲法を持ち、あるいは平和的な意図を持っておる国というものは、憲法の上から見れば、世界に類例を見ないくらいのたてまえをわれわれは持っておるわけでしょう。だから日本がそんなによその国に脅威を与えるわけはないのであります。したがって、この日米安保条約が非常にアジアの諸国と日本が友好関係を結んでいくための障害になっておるとは私は思わない。米中関係なども、ベトナム戦争でも終わってくれれば、これは必ず改善の日が来る、改善されなければならぬ。それは安保条約があるから永久にできぬのだというふうには私は見ていないのです。これは安保条約ではない。それは米中間のいろいろな国際問題に対する立場の相違であって、安保条約があるから米中関係がうまくいかないのだと私は思わない。したがってこの安保条約というものがあっても——ほかの共産諸国だっていろいろな集団安全保障条約をみずから結んでいるのですからね。日本だけが結んでおるのではないのです。やはり共産圏は共産圏でワルソー条約をはじめ個々の安全保障条約を結んでおるのですから、自分のほうはよくて人のほうはいかぬ、そういう考えを共産圏は持つわけはない。したがって、その条約ということが非常に侵略的な条約であれば、これは脅威を受けますよ。しかし安保条約というものはきわめて防衛的なものですから、事前協議の条項というものをいろいろいわれますけれども、作戦行動などに対しはきわめてきびしい事前協議の条項があるのですからね。そういうふうなことを考えてみると、安保条約というものが、いま言われるように、アジア諸国との善隣友好関係を促進していく上で非常に阻害になっておるというあなたの考え方には、私はくみすることはできないのであります。
  322. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 安保条約がなければすっきりと外務大臣の御意見は頭に入るのですがね。B52が、太平洋のかなたのアメリカがベトナムを侵略する現実の前で、日米安保条約アジアに対して何の攻撃的なものもないとか、それは無理な説明じゃないのですか。戦争をしておるアメリカですよ。そして日本の軍事基地から飛んでいるじゃないですか。そこで私は、これは前に言ったことがこうだああだということで論議をしたり秘密文書でやるのではないのですから、見解の相違で終わりにして、水に流すということになってしまってまことに遺憾だと思うのです。大体私は、日本の独自の国際的立場というものはアメリカと違う、明確にすべきだと思うのです。ヨーロッパ文明の中から着々としてアメリカができて、そしてヨーロッパ的な立場の遺産を継いで、依然としてアジアアフリカに対する別な角度の植民地政策をとにかくやっておる。そのアメリカの文明のアンチテーゼとしていわゆる共産主義が出て、やはりヨーロッパ文明の生んだ流れだと思うのですが、それは一つの影響を与えておる。中国は、植民地化されたアジアの国々の中で、民族主義というものを含んでああいう影響を与える国が出ておる。やはり違うと思うのです。しかし日本の場合は、いわゆるアジアの地理的、歴史的立場と同時に、ヨーロッパ文明を吸収して近代化したのだから、東西の橋渡しというようなこともいわれますけれども、違った国際的地位があるはずですよ。だからこそ、世界共通の平和という一つの理念を最高の外交の価値として独自の道を歩む運命づけられたものがあると私は思うのです。それをすぐアメリカ一辺倒のヨーロッパ、嫡出子のほうだけと手をつないでいくという外交の原理からは、外務大臣のおっしゃる三原則は出ないと私は思うのです。そういう点について、むしろ現在の憲法というものをもっと評価して、外交基本方針の最高の一つの原理としての憲法を評価して、いま一度考え直すということを含んでの論議をしなければ、いまのようなことになるのです。三木外務大臣は、日本の世界的な地位における特殊な地位を含んで分析をしてこの演説でうたわれておるのかというと、案外そうではないのです。これは時間ですから言いませんけれども、それだけでは日本の民族は救われないと私は思います。  そこで私は、現在の外務省のことについても、もしそういう立場に立つならば、現在の外交官というのは事務屋になってしまっているのですね。昔は外交官の中に、高い識見を持った者がずいぶんあったのですが。外務省というような古くさい名前も変えて、平和国際省くらいの名前をつくって、外交官教育で外交大学校でもつくって、新しい感覚で日本が世界に影響を与えるような平和国家、偉大な不戦国家としての平和外交を進めていく。ここにあなたもうたっておるわけですよ。武力によらない外交。それならば、人間再教育も含んでやっていくような中で、この演説というふうなものが実践的にいくようにしないと、これは単なる作文にすぎないと思うのです。そういう点について、与党の中で感覚を新しく持った三木派の総領の三木さんというイメージを考えたときに、もう少し違った角度のお話が出るのではないかと期待しておったのですが、案外そうでない。なお今後もう少し角度を変えた検討をしてもらいたいと思うのです。  時間がないので、一つだけ提案をして外務大臣検討を願いたいと思うのですが、その外交演説の中で「共存の哲学」という、これはなかなかいいことばが外務大臣にあるのです。「共存の哲学を悟る以外に人類の生きていく道はない」。名文がある。確かに新しい世界人類共存の思想が生まれないと私はいけないと思うのです。そういうふうなお考えを持つならば、このアジア全体について、平和憲法を持っておるという意味において日本の場合は発言権も私は持っておると思います。ヨーロッパの植民地主義のためにしいたげられてきておるこのアジアに対して、共通の共存の哲学というものを前提としていくイメージを実現するのには、やはりアジア国際友好大学というふうな構想を立てて、その中で共通の広場をつくっていく。これは共産圏も含んでですよ。そういう一つの提案をして進めていくというのでないと、共存の哲学の実現の道はないと思うのです。  いつか、二年前ですか、私は予算委員会で、国際大学構想などを立てるくらいの積極的な平和外交を進めるべきじゃないかと言ったら、検討に値すると言われた。その点について、その後何か構想がお進みになっているのか。あるいはそういうことを閣議を通じて実現の方向に持っていくようなお考えを、検討するとおっしゃったから、何か動いておられるかどうかお聞きして終わりたいと思います。
  323. 三木武夫

    三木国務大臣 最初の点は、もう共存以外にない、これは私の信念です。これはイデオロギーを越えて、どんなにむずかしくてもその道を追求する以外にない。そうでなければ、核兵器が出てきておるときに世界戦争をすれば、人類は生き残れないかもしれない。やはり、みんながいろんな立場を越えて共存を学ぶという以外に平和は成り立たない。そういうことで、これは私の強い信念でございます。そのためにいろいろな方法がある。平和というものは、平和、平和といってすぐに実現するものではなくして、平和というものは組織されなければならぬ。それは経済協力もあろうしそれから政治の面もあろうし、社会的な開発もあろうし、一口に言えば平和ですけれども、それは、組織していくためにはやはりあらゆる努力が積み重ねられなければ平和は来ない。その中の一つに、お取り上げになった教育というものはきわめて重要だと思います。アジア大学ですか、アジア大学のようなものをつくって、次のアジアを背負う人たちの教育の場をつくるべきではないかという熱心な御提案、これは東南アジアの閣僚会議でもしばしば話題になりましてね。そして熱心なのは日本とタイ——タイも熱心です。タイのバンコクにつくりたい協力してくれというような提案もなされて、日本もこれには非常な関心を持っておりまして、いまの御提案というものが具体的な一つのプログラムの中に、具体的な日程の中にだんだんと上りつつあるということでございます。   〔主査退席、小沢(辰)主査代理着席〕 ただ言ったというだけで消えておるのではない。アジア各国の構想の中にそういう構想も取り入れられて、具体的な検討に移されつつあるということを申し上げる次第でございます。
  324. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 これで終わりますが、客観的に、移されつつあるという第三者的表現でなくて、そういうものを実現するのに国務大臣として、外務大臣として、また政党の発言権を持つ立場でみずから努力をするのかどうか。これは共存の哲学を教育の原理にするならば、イデオロギーを越えてというのですから、反共グループだけのそういうイメージを捨てて、アジア全体の共通の広場で、平和憲法を持っておる日本がまずそういう教育センターを持つということこそ私は世界に対する発言権を持った、いわゆる世界的平和国家という一つのイメージを持ち、国民がそれに誇りを持って、愛国心なんていっても国が何だかわからぬような、そうでない目標を与えてこそ実態を持ったものになると思うので、努力をするという主観的な御答弁一つお聞きしておきたいと思うのです。
  325. 三木武夫

    三木国務大臣 努力をいたしたいと思います。
  326. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 質問を終わります。
  327. 小沢辰男

    小沢(辰)主査代理 伊藤君。
  328. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 初めに外務大臣に伺います。  去る九日、予算委員会においてあなたは、米国の沿岸警備隊は北海道その他にもいる、このようにおっしゃいましたが、その沿岸警備隊の駐在する場所、その司令部、司令官等がわかりましたらお知らせ願いたいと思います。
  329. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 現在、日本内地におきます沿岸警備隊は府中と北海道におります。人員等はちょっといま手元に資料がございませんが、北海道における場所は十勝太でございまして、そこにある通信施設のロランCの管理に当たっておるそうでございます。
  330. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 ちょっと不十分なんですがね。どこに司令部があって、司令官はどなたですか。
  331. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 ちょっといま司令官の名前は私手元に持っておりません。
  332. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 この仕事の内容ですが、いかなることをやっているか。
  333. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 ロランCという通信施設の維持に当たっておるそうでございます。
  334. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 私が聞きたいことは、日本にいるその米国の沿岸警備隊の仕事の内容です。たとえば極東支部は府中市の在日米軍の中にあるとか、またその仕事の内容は日本の海上保安庁と同じであって、また権限や特権は在日米軍の軍人の一員と同じであるとか、さらにその管轄は米国の財務省にあるとか、また司令官はE・P・マティーソン少佐であるとか、あなたはわからないようですから、私言いますが、さらに横浜港にある艦船部は米極東管区輸送本部と密接な関係があるとか、さらにその任務というのは軍の荷物を積んだ米商船の監督、犯罪事故の調査がおもな任務だとか、また日本のほかに硫黄島にあるロランA、宮古島にあるロランB、南鳥島にあるロランCを監督している、これに間違いございませんか。
  335. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 私、この間お話がございまして、さっそく関係方面について調べました。コーストガードは平時においては米国政府の財務省から運輸省に移りまして、運輸省の所管、戦時におきましては海軍のもとに入る。平時におきましても一九一五年の法律によりまして、米国の中では運輸省ないしは財務省にありましても、常時ミリタリーサービスである、すなわち合衆国軍隊の一部門であるということになっております。なお、先ほど申しましたように、日本内地におきましてはわれわれの調、へましたところでは、北海道のいまの十勝太及び府中、それから小笠原諸島に関しましては、いまのお話のように、硫黄島のロランCにおります指揮官その他は私はわかりませんので、おそらく先生のおっしゃいましたとおりと思います。地位協定上は在日の陸海空軍の一部として、軍人として扱われております。
  336. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 聞かないことまでおっしゃいましたようですけれども、、これは非常に大事なことであって、少なくとも日本の在日米軍に対する窓口、いわゆる安保条約に対する窓口については一切外務省が当っているわけです。そういうことからも、このくらいのことは知るのが私は常識だと思うのです。間違いないだろうと言いますから進めますけれども、ただいま少しお伺いしましたけれども、それでは米国における沿岸警備隊の任務の内容ですね。現在はどのようなことをやっておるのか、またその警備の範囲はどこなのか、そういう点を伺いたいと思います。これは私は九日の日に、必ず委員会でやる、しかもきょうの質問通告にははっきり沿岸警備隊のことについてやる、このように申し上げておいたはずです。私はこれをはっきりしていただかなければ、この問題はまたはっきりしないわけです。私はそういう点ではっきりしていると思うのですね。ですからちゃんと教えてもらいたいと思います。
  337. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 米国の沿岸警備隊の本国におきます任務と申しますのは、沿岸の警備すなわち関税法の実施のための取り締まりというようなことを含めまして、沿岸のいわゆる警備をやり、おそらく日本の海上保安庁と同様の任務を与えられておるものと存じます。なお本土におります沿岸警備隊は、もっぱら通信施設の管理のために派遣されておるものでございます。
  338. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 何だかさっぱりわからないんですがね。日本の海上保安庁と同じといえば大体想像がつくわけでありますけれども……。それじゃもう一回大臣に伺っておきますが、あなたは、小笠原返還後は日米安保条約の適用範囲に入るので、米軍使用の施設区域は日米合同委員会検討される、沿岸警備隊は極東の安全のため米側が希望すれば引き続き駐留することもあり得る、こう答弁されましたけれども、間違いありませんか。
  339. 三木武夫

    三木国務大臣 間違いありません。
  340. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 沿岸警備隊といいますのは、米軍の沿岸または港湾の施設——日本の海上自衛隊と同じであります。したがって小笠原施政権返還前は、それは米国の領海または領土でありますから、当然アメリカのその政権下にあってコーストガードがいるのは当然であります。しかし外務大臣が言うところの、安保条約にある米海軍に沿岸警備隊も含まれる、こういう答弁に私は納得いかないわけです。どうして安保条約の、しかも海軍に所属するのか、法的根拠をあげてもらいたいと思います。
  341. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 アメリカの法律によりましても、沿岸警備隊は国内法上の所轄は運輸省でございますが、常時合衆国軍隊の一部門として観念されております。安保条約地位協定上の陸海空三軍と総合的に規定せられておりまして、その中には米国のほうで通常軍隊と観念されているものも当然入り得るわけでございます。
  342. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 いま海軍に所属していると言いましたけれども、これはどこで取りきめが行なわれたのですか。また、どんな法律にそれがあるのですか。
  343. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 戦時中は海軍の直轄になるということになっているそうでございます。常時合衆国軍隊の一部門であるというのは、一九一五年のコーストガードに関するアメリカの法律に根拠がございます。
  344. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 私はいま指揮系統を聞いたわけでございますけれども、いま所管は財務省から運輸省に移っている、こうおっしゃいました。その指揮系統は、海軍に所属すれば——いわゆる海軍に所属するということは、これは戦時のときである、こういうふうにおっしゃいましたね。いまは戦時でございますか。
  345. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 現在は府中にございます在日米軍司令官の指揮下にあるものでございます。
  346. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 これは私が調べたことと違うわけです。これは一九四六年でございますが、コーストガードは第二次大戦後財務省に戻ったわけです、自動的に。それでもう一つ、たとえば海軍に所属するというのであれば、要するにコーストガードが海軍の指揮下に入って活動する場合には二つの方法がある。その一つは、いま言ったように戦時体制のときが一つと、もう一つは大統領の命令がなければその指揮下に入って活動することができない、こういうふうに載っておりました。その二つしかない。であるならば、どちらなんですか。
  347. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 私も、外国の法律のことでございますから、そう詳しく知っているわけではございませんが、アメリカで運輸省ができましたのは比較的近年、おととしぐらいだったかと思いますが、そのときに財務省から運輸省にたぶん移ったものだろうと思います。現在は戦時ではございませんので、日本にある警備隊は、戦時におけるという意味で海軍の指揮下にあるということではございませんが、日本に駐留しているわけでございますから、その意味において在日米軍司令官のもとにあるということございます。
  348. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 私はここで伺いたいことは、日米安保条約の第六条に、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持は寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」とあるわけです。しかしこの中では、米国の沿岸警備隊は含まれていないわけです。あなたはこの間の委員会において、地位協定にもある、こういうふうに答弁したのですけれども、その取りきめがどこにあるのですか。でたらめなことを公式の場で言っちゃいけませんよ。
  349. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 安保条約地位協定には、合衆国の陸海空軍という文字が出てまいります。英語では、ランド・シー・オア・エア・アームドというような字が使ってございまして、いずれにいたしましても、陸海空三軍ということで、軍隊を総合的に表現しておるわけでございます。このコーストガードは米国の国内法上の通常軍隊の一部と観念されておりますので、この安保条約第六条にいう軍の中にはコーストガードも入っておるということでございます。
  350. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 これはどうしても海軍に所属できない、またするならば大統領か何かの命令書があるはずだ。日本の唯一の窓口である外務省はそのくらいのことを調べておいて当然だ、私はこう思うわけなんです。私はこの問題をはっきりしてもらわなければ前へ進みません。
  351. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 私から御答弁させていただきます。  東郷局長の御答弁と全く同じになりますが、海軍には入ってないということは先生のおっしゃるとおりであると思います。ただ、安保条約六条の読み方が、陸海空軍と書いてございますが、それは個々の陸海空軍をさしたということよりも、軍隊というものを総合して書いたというふうにわれわれ解しておりますので、アームド・フォーセス、いわゆる軍隊、米軍の中に入っておりますものはこの中に含まれるとわれわれ解釈しております。
  352. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 わからないですよ、それでは。私はそれ以上の先のことを考えているのですよ。これをはっきりしてもらわなければ困るわけです。私はこの問題は九日の日に、次の分科会等においてはっきりしてもらいたいと言っている。地位協定にあるなんて私もごまかされて引っ込んだわけですけれども、公式の場でそんなことを言われたのでは、私は納得がいかない。だから、はっきりしてください。
  353. 三木武夫

    三木国務大臣 大統領から何か来ておるかということは、それは来ておらないようです。ただしかし、アメリカの沿岸警備隊というものが、やはりもう通常観念として軍隊の中に入っておる。アームド・フォーセスの中に入っておるということで、それは常識になっておるから、特に大統領から、いろいろなそのことに対する解釈に対して日本政府に通告する必要は考えられないほど常識になっておる。その常識に従ってわれわれも在日米軍の一部であるという解釈をしておるわけであります。特に大統領から何らかのこれの解釈に対する文書を受けとっておるわけではないのであります。
  354. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 私は、こういう外務省態度が一番いけないと思うのです。それで、確かに戦時中、多くの米軍が来て、そして在日米軍のもとに、またアメリカ海軍のもとにコーストガードはいたはずです。しかし、平時になって帰るべきコーストガードも帰らなかった。そのままずるずると残っていた。これも考えられることです。しかし私は、何のために安保条約を結んだか、先ほども外務大臣のお話を聞いておりましたが、日本の平和と安全のためだということです。私は、そういうあなたのおっしゃることと、安保条約の拡大解釈が、実はうらはらだ、そう思えてならないわけです。話が飛躍しますけれども、王子野戦病院にしても事前協議の対象にならない。また日本がベトナムの基地化、後方基地のような状態になっておるじゃないですか、こう言っても、それは問題にならない。日本の平和と安全を守る、これが安保条約の精神であるならば、当然国民がおびえ、民生に不安を与えるならば、前向きに交渉すべきが当然ではありませんか。そういう点からいっても、あなたがそういう常識論でごまかそうとしましても、私はそういう点をはっきりしてもらわぬ限りは質問ができないわけです。大統領から来てないらしい。それじゃこれからどうするのですか、大統領の命令がないから出ていけというのですか、いままでいたからしょうがないというのですか。その点の見解を伺いたい。
  355. 三木武夫

    三木国務大臣 これはいままで申したように、アメリカの軍隊の一部である、地位協定によって日本に駐留することができる。だから、出ていけというようなことは、われわれとしては申す考えはありません。
  356. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 私は、日本外務大臣ですから、日本の立場に立って考えてもらいたいと思うのです。確かにアメリカ側に立つとするならば、私も先ほど申し上げたとおり、いま外務大臣がおっしゃるとおりに、これはやむを得ないかもしれない。しかし、もう戦後も二十年以上も過ぎております。ここらで日本の外交姿勢はもっと前向きにいかなければならないと私は思います。しかも小笠原の返還というものは、もう間近に迫っております。その問題をはっきりしない限りは、あなたのおっしゃるように、必ずあの沿岸警備隊は小笠原に残留します。日本にはたくさん優秀な観測に従事する技術者もいます。小笠原が返ってくるときに沿岸警備隊が一緒にくっついてくるような、そんな調印を間近に控えて——あなたは今月中に小笠原調印をやるとおっしゃいましたけれども、もう目の前にきております。私は、この沿岸警備隊に対する考え方、これをはっきりしていかなければ必ずついてくるから、いま問題にしているわけです。あなたがどこまでもおっしゃるならば、その法的根拠を私は示してもらいたいと思うのです。
  357. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 どうも繰り返すようになりまして相済みませんが、法的根拠と申しますのは、先ほど先生御指摘の安保条約の六条と地位協定の一条でございますが、それによりまして、陸海空軍ということで、米軍が全部入るという意味で沿岸警備隊が入る。それしか法的根拠はないと思います。
  358. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 それでは何回言っても同じなわけですよ。だから、先ほども言ったように、海軍に所属する。それでは、海軍に所属する場合には二つの例がある。その一つは、先ほどからも何回も言いますように、戦時のときである。宣戦布告し、戦時体制のときに限って海軍に従属し、そして海軍の命令の中に動く。そうでなければ大統領の命令が必要だ。この二つにしぼっているわけです。だから、いまは、聞いたならば平時だと言っておるじゃありませんか。であるならば、大統領の命令がない限りは、日本国にいる沿岸警備隊は安保条約違反なんですよ。それを認めようとすることは、安保条約の拡大解釈になるわけです。それを認めたならば、また小笠原返還のときに、あの沿岸警備隊の残留を認めなければならなくなってしまうわけです。答弁願いたい。
  359. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 先ほど申しましたように、安保条約にも地位協定にも日本語で陸海空軍と書いてございますが、それは条約局長も言われますように、米国の軍隊に属するもの全部ということでございまして、たとえば、海兵隊という字は安保条約にも地位協定にも出てまいりませんが、海兵隊も陸海空、いわゆる陸軍、海軍、空軍のいずれにも属しませんが、当然のこととして軍隊全部の中には海兵隊も入っておるわけでございます。それと同じように、沿岸警備隊というものも、アメリカの法律上も軍隊の一部ということでございまして、安保条約六条に陸海空三軍と書いてございまして、そのもとで海兵隊あるいは沿岸警備隊の駐留を認めても、従来の安保条約の拡大解釈ではございません。
  360. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 あなた、そこはごまかしてはいけませんよ。海兵隊は確かに三軍の傘下にあります。先ほど言ったように沿岸警備隊は、あなた財務省から運輸省に移ったと言ったじゃありませんか。所管が違います。答弁願いたい。
  361. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 所管はアメリカ国内法の問題でございまして、しかもその国内法において、沿岸警備隊はアメリカ合衆国軍隊の一部であると、こうございますので、したがって、海兵隊にしろ、沿岸警備隊にしろ、安保条約六条にいいます陸海空三軍の一部と解されるわけでございます。
  362. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 あなたの解釈はほんとうにおかしいです。沿岸警備隊は沿岸警備隊であって、日本の海上保安庁と同じです。たとえば日本の自衛隊がよそに派遣された。そこに警察がいくことは常識的にいってもおかしいんです。同じように、確かに安保条約によって三軍は来ている。これはもうしようがない。しようがないといって安保条約を認めるわけにはいかないけれども、あなた方の立場に立って言うならば、やむを得ないかもしれない。しかし、そこに海上警察が入ってきていろいろなことをやっている。入ってくる理由はあるかもしれない。であるならば、向こうの法規にもあるとおり、さっき言ったように、戦時体制の場合、大統領から命令を受けた場合、これに限ると言われておるんです。であるならば、どちらかをはっきり要求すべきじゃありませんか。大統領の命令がなければ安保条約にあなた方の基点はない、悪いけれども行ってくれ、どうしても日本にあなた方は通信施設やなんかの関係でいなければならないならば、それでは大統領からの命令書をお持ちください、このくらいのことが言えないんですか、外務大臣、答えてください。
  363. 三木武夫

    三木国務大臣 これはいま申しておるように、アメリカで、沿岸警備隊はアメリカ国内法によって軍隊の中に入っているわけであります。そういうことで、日本の場合はこれは安保条約の地位協定によるアメリカの軍の一部として扱っておったわけでありますが、これはわれわれとしては、もうそれで米軍の沿岸警備隊がおるということに対していろいろ疑義を差しはさんでなかったわけでございます。この点はいろいろともう少しその点を検討を加えて——御説明が足らないというならば、これ以上は今日説明申し上げる材料はないのでございます。これ以上説明をするような材料は時間をかけて取りそろえるよりほかにはない。きょうは実際御説明するのにこれだけの考えしかないのでございます。
  364. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 いまあなたは根本的に、アメリカ国内法にはちゃんと向こうの軍隊に沿岸警備隊が所属している、こういう認識に立って何回も私に押しつけようとしております。これは違うんですよ。いま北米局長が言ったとおり、財務省から運輸省に移った。全然軍隊とは違うんです。それをまた、アメリカ国内法には沿岸警備隊はいわゆる軍隊の傘下にあるみたいなことを言っている。そのくらいなことを、何回言ったって変えないわけでありますけれども、ここらへんにも問題があるのです。私は話を進める上において、どうしても大統領から一つは命令がなければいられないということしかないとするならば、そのことを率直に認めて——またほかに方法があるかもしれませんよ、私も調べた範囲なんですから。しかしながら、そうであるならば、はっきりこの際命令書を出させるなり、またはロラン局の今後の日本在留については安保条約はないんだから、強い姿勢で、悪いけれども、あなた方のコーストガードは沿岸警備隊なんだから帰ってくれ、そのくらいの前向きの姿勢でいくのが当然だと私は思うのです。
  365. 三木武夫

    三木国務大臣 伊藤君の国内法の根拠、コーストガード法、コーストガードの設置法、公法二百七号という中に、合衆国軍隊の一部分であるという、これは国内法の規定はあるわけでございます。
  366. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 それはいつのやつですか。
  367. 三木武夫

    三木国務大臣 一九一五年一月二十八日に設置されたコーストガード法に載っております。
  368. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 それは私も調べました。それは古いんですよ。何言っているんですか。第二次大戦後一九四六年一月一日財務省に戻ったとあるのです。そのあとにあるのですよ。そんな古いんじゃしようがないよ。
  369. 三木武夫

    三木国務大臣 伊藤さん、お答えいたしますが、これ以上われわれの持っている材料はないのであります。だから、したがって、御納得がいかぬとするならば、材料を取りそろえて御説明をする機会を持ちたい。いろいろわれわれの材料すべてによってお答えしているので、これで御満足がいかないということならば、材料をもう少し整えて、そしてお答えをいたすことにいたします。
  370. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 私はここではっきり言えば、たとえばこれが取りきめがあったとしても、米軍はもう撤退してもらいたい。さらに小笠原の返還にあたっては、確かにコーストガードがいてその役目をやっていたに違いない。しかしながら、この間の運輸大臣の答弁にもありますように、わがほうにおいては幾らでも優秀な技術も何もある。向こうが許すならば全部引き受けて海上保安または気象観測にあたりたい、このようにも言っておるわけで。私はここで大臣にお願いいたしたいことは、これ以上何も言えないのではなくて、もしか大統領の命令がなければ、それこそコーストガードの日本の駐留は認められないということに——結論が立たないならば前向きで、日本からの駐留は撤退してもらいたい。小笠原返還協定にあたっては、あくまでもコーストガードは軍隊じゃないんだから、沿岸警備隊に対しての施設または区域外なんだから撤退してくれ、こう前向きで調印に臨むべきではないか、こう思うわけです。外務大臣の所信を伺いたいのであります。
  371. 三木武夫

    三木国務大臣 いま申したように、この点はいろいろ御質問の趣旨にもございましたし、十分な検討を加えることにいたします。
  372. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 どうも、私は率直に伺っているわけですが、率直な答弁をいただけないわけですけれども、そのような前向きで、今後の調印にあたっても外務省はいくべきである、こう思いますが、もう一回答弁願いたい。
  373. 三木武夫

    三木国務大臣 私は前向きうしろ向きというふうにはものごとを考えていない。やはりちゃんとした根拠のもとに日米の安保条約というものを運営したい。前、うしろというと、人によって、前、うしろの解釈が違いまするし、だから厳格に日米の安保条約、これを解釈する、厳重に解釈してまいりたいと考えております。
  374. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 それでは、時間もありませんから、またあらためてその法的根拠を示し、さらに前向きということは、あなたはすぐに前向き、うしろ向きなんて変なことを言っておりますけれども、日本のために、日本の国のほんとうの平和と安全を思い、日本国民のためにプラスになることを、また日本のために前向きの姿勢でいってもらいたい、こういうことなんです。それで、私の調べでは、いまのような状況なわけです。そこで、この沿岸警備隊については、日本の駐留を認められない。どうしても駐留を認めるならば、その法的根拠をはっきりしなければ、これはもちろん当然です。そこで、あなたがいままで何回か答弁しましたけれども、すべての上に拡大解釈というか、じゃ何が歯どめなんだと私は言いたくなるような答弁で、姿勢というものがいつもはっきりしないわけなんです。また、こちらも何回聞いても安保条約の拡大でしかない、こういうわけです。ですからどうしても今度のこの問題については、安保条約違反である。そしてこのような保障がないときには、安保条約の拡大解釈になるから認めない、こういう姿勢をはっきりしてもらいたいと思うのです。
  375. 三木武夫

    三木国務大臣 これは何べんも言うようでありますが、日本の国の利益という立場に立って安保条約というものを考えるということは、むろんそのとおりに考えております。
  376. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 その問題がはっきりしませんので、これ以上進まないわけでありますが、いずれにしても安保条約というのは米国側に立って拡大解釈すれば、私たちは歯どめはない。この問あなた、私たちは事前協議なんかにおいて空洞化する意思はない、こうおっしゃいましたけれども、私はあなたの言っていることは実は反対であって、事前協議の対象なんというものは、ほんとうによくよくのことでなければならない、このように感じてしようがないわけです。そこで、最近の日本国内におけるいろいろな問題がございます。たとえば、ベトナム戦争で傷ついた人を野戦病院に運んでいるとか、または在日米軍基地が日本のどまん中にあって、そして付近の人たちが非常に困っている。または在日米軍基地があるために、付近の住民がものすごく悩んでいる、こういう問題がたくさんあるわけであります。私は、こういう問題については、どんなちっぽけな問題であったといえども、外務省は前向きで日米合同委員会等にはかって、その面のチェックをする、こういうふうな方向でいくべきである、そのように思うのです。大臣の所見を伺いたいと思います。
  377. 三木武夫

    三木国務大臣 日米安保条約という重要な条約を結んで、そのことは、日米両国の理解、協力という上にこの条約が成り立っておるのでありますから、日米安全保障条約をめぐる諸問題について外務省が絶えず注意深くその実施を行なっていかなければならぬことはお説のとおりだと思います。
  378. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 最後に、時間もまいりましたので申し上げますが、私たちは、この安保条約状況下においていつも思うわけでありますが、何か米国の極東戦略のために安保がある。そして、その安保条約が、日本国民をおとしいれたとしても、安保条約に違反しないからしようがない、こういう考え方に立つ外務省政府のその法解釈、これは私たちは断じて認めるわけにはいかないわけです。たとえ法的にそういう解釈があったとしても、われわれは日本の平和と安全とまた民生の安定のために、たとえ法に取りきめがあったとしても、あなたのおっしゃる、日本のためだというならば、どこまでもこちらから随時協議または事前協議で、あなたがイニシアチブをとっていくべきである。米国にしかイニシアチブがないというけれども、最初のほうはそうでなかったらしい。あなたは、いまそのことを、この間総理からも聞きましたけれども、検討しているとおっしゃった。そういうことがもし向こうにあったとしたとしても私は、日本外務大臣として、こちらから積極的にイニシアチブをとって話し合いをし、そして安保条約のその精神を生かしていくべきである、このように思うわけです。大臣の所見を伺いたい。
  379. 三木武夫

    三木国務大臣 いま、日本国民をおとしいれるという、そういうことはあり得ようはずはないのであります。外務省が常に考えておることは、日本の国益を守り、そして日本の国益の上に立って外交活動をやっていこうというわけでありますから、意見の違いはありましょう、安保条約の必要ないという者と、必要あるという者の意見の違いはあるけれども、その違いというものは、国民をおとしいれるというような考え方であるわけはないのであります。われわれも日夜日本の国益を守るということに対して骨身を削っておるわけでありますから、そういう意図を持ち得ようはずはない。ただ意見の違いはある。また安保条約は、これは日本の防衛というものに対して、アメリカとしても、あらゆる攻撃に対して日本の防衛の責任をアメリカに負わしておるわけですから、日本もまたその必要を認めて安保条約を結んだもので、いやいやなものをアメリカに押しつけられたものではない。日本の防衛力や自衛力だけでは足りないというところに、日本の同意のもとに安保条約を結んだので、一切安保条約において米軍の行動が、日本国民がいやだのにしておるのだというふうな考え方で安保条約というものを評すべきではない。これはやはりこの核時代において、日本をあらゆる攻撃から守るという約束はたいへんなコミットメントであります。それだけの責任をアメリカは課されておるのですから、一から十までアメリカのすることが日本国民の意思に反してアメリカが要らぬことをしておるという、そういう形で安保条約を評価しようという考え方には私は同意できない。しかしながら、いま申したように、日米の安保条約というものが、日本国民の理解と協力の上に立たなければ、これは円滑な運営というものはできない。そういう点で日本国民のいろいろな動向というものに対しては、注意深くこれは関心を持たなければならぬ。これは責任は外務省にもあるということは、あなたの言われるとおりであります。事前協議についても、われわれは安保条約第四条の規定で、これもできるだけやろうと思うのですよ。これはやらぬというのではないのですよ。だから第四条の随時協議というものはいつでもできるわけですから、日本がイニシアチブをとれるわけですから、これはいままでも、私が外務大臣になってもひんぱんに——きょうは第四条によってあなたとお目にかかるのだという前置きをしてアメリカ大使と会わない場合もありますよ。しかしこの第四条という規定の上にのっとって、アメリカとの間にはもう絶えず協議をしていきたい、これは活用したい。だからこういう条項をなるべく使わぬようにしようというのではなくして、われわれは積極的に使いたい。この随時協議の条項は使いたいというたてまでありますから、なるべく使わぬとするためにいろんな条約解釈をしておるのだというふうに誤解をなされないことを希望いたすものでございます。
  380. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)分科員 最後に、時間が参りましたので申し上げますが、いずれ先ほどのコーストガードの件については、総括でうちの伏木委員からまたあらためて質問をいたします。  それで、いまおとしいれるということを私は使いましたが、その事例はたくさん持っているのです。このことについてそれでは日米合同委員会でいつやったかというのですよ。あなたのおっしゃるとおりならば、幾らでもそれこそこういう問題を取り上げていかなければならない問題です。そうであるならば、政府は横着だと言わざるを得ません。私たちのところに、調べなくても、電話があり、手紙がきます。こういう問題があります、ああいう問題があります、しかし外務省はこうです、安保条約に違反するからだめですと言っております。そういうのがいっぱいあるのです。きょうは時間がございませんから、また別の機会にやりますけれども、どうかそういう面において、ほんとうに安保条約の精神を、日本の安全と平和のためにあるというならば、その精神をあなた方はどこまでも守るために、あらゆる面で国民の納得のいくようなそういう施策をしっかりやっていただきたいということを要望して終わります。
  381. 小沢辰男

    小沢(辰)主査代理 穗積七郎君。——穗積君に申し上げます。一人平均三十分でございますからよろしくお願いします。
  382. 穗積七郎

    穗積分科員 かねて困難な状態に逢着しておった日中貿易関係ですが、与党の良識派の方々の月余にわたる非常な努力で、やっと両代表団の間で共同コミュニケが発表されて、これをきっかけにして、政府が巧みにこれを政治的に活用いたしまして、アジア問題の中核である日中問題の解決のために前進されることを期待しながら質問をいたします。特に今度の覚え書きは、与党の方々の署名された覚え書きに、かつてない政治三原則、政経不可分の原則が両方で確認されている、こういう画期的なものがこういう困難な情勢の中にできただけに、意義深いものだと思うのです。  そこで順次お尋ねをいたしますが、佐藤内閣としては、この協定が、話し合いが決裂しないで妥結に至りましたことに対して歓迎をしておられますかどうですか。どのような評価をしておられるか、まずそれを伺いたいと思います。
  383. 三木武夫

    三木国務大臣 イデオロギーは違っても貿易はするという政府の方針でありますから、この貿易の交渉が妥結したことを歓迎いたします。
  384. 穗積七郎

    穗積分科員 そこで、これを機会に政府としてこれを歓迎し、支持し、協力するという意味で、前向きにこの協定が生き、かつ発展するように、どういう施策を考えておられるか、具体的なものは逐次あとでまた伺いますけれども、総括的にまず外務大臣から政府代表してお答えをいただきたい。
  385. 三木武夫

    三木国務大臣 これは政府の協定でございませんから、民間協定ではありますが、たとえば米の輸入などに対しては、政府が御承知のように本年度は米の輸入というものは相当日本も米の貯蔵を持っておりまして、実際問題としては必ずしも多量な米を輸入する必要があったかどうかということは、いろいろ意見の分かれたところです。しかし、まず十万トンの米を輸入するということの政府が方針をきめたことも協力のあらわれである、かように考えております。
  386. 穗積七郎

    穗積分科員 かつて周総理が、対日関係でお互いに尊重したいというので提案いたしました政治三原則、これを外務大臣はどういうふうに理解されておられ、どういうふうに評価しておられますか。
  387. 三木武夫

    三木国務大臣 三原則——まだ私は古井君に、面会は申し込まれておりますけれども、その経緯は聞いておりません。ただしかし、新聞にあらわれた面から見ますると、中共を敵視しない、あるいはまた二つの中国をつくる陰謀に加担しない、陰謀に加担しない、日中関係の正常化に妨害をしない、これは私は日本の従来言ってきておる外交政策に矛盾するとは思ってないわけです。日本は敵視政策をとらず、そしてまた現実に中国には二つの政権がありますけれども、日本が陰謀に加担したものでもございませんし、そういうことで、その三原則と日本外交政策は矛盾するとは私は考えていないものでございます。
  388. 穗積七郎

    穗積分科員 いまお話しのとおり、これはあえてプリンシプルというかたい意味で理解すべきほどのことではないのです。非常にゆるやかな、国際関係で少なくともつき合う以上は、どこの国とも当然なことを言っている。お互いに敵視をしない、それから二つの政権の分裂または拡大に加担もしない、それからお互いの国交関係が正常化することに妨害は加えない、これは当然おっしゃるとおりだと思うのです。そうであれば政府として、特に党の領袖としてお考えになってもけっこうですが、今日の政党政治は、自民党にささえられた政府であるわけです。だから党と政府の関係というのは不離一体でございますね。その不離一体の中にある、しかも党内外から尊敬されておる松村謙三先生の派遣する古井、田川両代表を中心とする使節団、これがいま日本の政治家として、ある  いは与党の立場から見ても当然である、この日中お互いにつき合う原則としての三原則を共同コミュニケの中にお互いに意見の一致を見て確認してきたこと、これは私は当然なことである、むしろこれは歓迎すべきことである。最近のお互いに誤解と偏見がますます拡大しよう、あるいはさせようとしておるときに、このような原則の上を踏まえた日中関係の基礎はここにあるんだ、政治三原則にあるのだということを確認してきたことでありますから、したがって党の領袖としての三木さんからも、いまの内閣の外交の担当責任者である三木さんとしても、これはむしろ、私はいまのお話のとおり、率直に賛成、評価さるべきだと思いますが、いかがでございますか。
  389. 三木武夫

    三木国務大臣 まだ詳しくこの経緯というものを聞いておりませんが、外に出た三原則というものは、これはあたりまえのことをいっておるのであって、特にこれはもうどこの国との関係においても、これをほかの国との関係に適用しても、あまりこれは通用しないというものではないでしょう。そういうことですから、こういう三原則ということが、いま申したように、これは私のいろいろ日ごろやっておる外交政策とは矛盾しない、これはあたりまえのことだというふうに考えています。
  390. 穗積七郎

    穗積分科員 そうすると、古井団長と劉団長との間で署名されましたこの共同コミュニケを支持されますね。
  391. 三木武夫

    三木国務大臣 支持とか、どういう意味で使われるのか知らぬが、あたりまえのことをいったと考えている。これを支持するとかしないとか、こういうことではなくして、あたりまえのことを言ったことと自分は評価しておるし、これに対して従来の外交政策と矛盾しておるとは思わない。こう申し上げるのがすなおなことばで、ここでかみしも着ていろいろ、これを支持して何の、というふうに言ういますと、何か——どういう意図がおありなのか知りませんが、そういうことでなしに、すなおに、あたりまえのことをいったので、外交政策と矛盾しないと、こうお答えしておいたほうが一番適当だと思います。
  392. 穗積七郎

    穗積分科員 何といいますか、かなめになると非常に慎重になる。私も何かトリックがあって支持なんということを言って聞いたわけじゃないのです。非常に常識的に聞いているのです。だから党人として、あるいは外交担当の責任者として、この共同声明の趣旨を了承するものであるというくらいな意味ですが、どうですか。
  393. 三木武夫

    三木国務大臣 これはやはり非常にかた苦しく了承とか支持とか、そういう大きなことばを使わないほうがいいと私は思う。そういうのではなくして、全体の雰囲気、また経緯なども聞いてみたいと思うのですが、そうやってかた苦しく——やはりこれは自民党員であっても民間の協定ですから、政府間の協定でないのですから、あなたがお使いになるようなビッグワード、大きなことばを使わないで、やはり外交政策と矛盾しない、あたりまえのことだと、こう言うことが私は適当だと思う。これをいまいろいろと政治的な意味を持たすような発言でなしに、さらっとこの問題に対してはお答えすることが一番適当だと、私は正直に考えております。
  394. 穗積七郎

    穗積分科員 時間がないから先へ行きますが、もう一つ問題なのは、やはり自民党内の非常に古い中国観を持った人々、あるいは社会主義思想に対するアレルギー体質を持つ人々が、何か、政経不可分であるというこの原則を認めたことが中国のいまの毛沢東思想のイデオロギーそのものを認めたとか、引き込まれたとか、あるいはまた中国の社会体制そのものに対して何らの自主性なしに同調したとか、ばかばかしいことを言っておられますが、あなたにはまさかそういう誤解はないでしょうね。政経不可分ということばに含まれておるこの協定の趣旨です。いかがですか。
  395. 三木武夫

    三木国務大臣 どうも私、日本で通常政治に使われるのに、何かスローガンみたいなことばが多過ぎる。何でも定義というもの一その内容というよりも、一言で、気が早いからでもあるのでしょうが、スローガンみたいな、政経分離、政経不可分と、こういったら、西と東と違うように違うように見えるでしょう。しかしその内容に立ち至ったならば、ことばそれ自体が持っておるような大きな開きでないかもしれない。たとえば日本だって、中共をいま承認はできないけれども、貿易はする。これは一つの政経分離ですね。承認はできぬけれども、貿易はする。だから政経分離というものは、その場合に政とは何ぞや、経とは何ぞや、こういうことから定義づけないで、一言に政経分離、不可分とこういうことで、あれはけしからぬ、政経不可分だからけしからぬ、これは政経分離だから非常に頭が古いとか、私はそういうふうに定義というものが、いろいろな説明を抜きにして、ただ政経分離賛成か、政経不可分賛成かというような、こういう形の政治論議は私は適当でないと思っているんですよ。だから古井君からいろいろないきさつを聞いてみて、向こうが言う一つの政経不可分というその政とは何ぞや、経とは何ぞやということも聞きたいと思うのです。ただことばだけのことからすれば、たいへんに違っているのですからね。そういうことからくれば、案外ことばのごろからくる政経分離政経不可分という越えがたい大きな違いがある概念でないのかもしれない。だから、古井君からよくいきさつを聞きたいと考えておる次第でございます。
  396. 穗積七郎

    穗積分科員 私はあなたに政経不可分の原則の解釈をしてくれと言っているのではないのです。あのコミュニケの中に含まれておる政経不可分というのは、もう説明するまでもなく、中国がいままで幾たびか日本の人々あるいは世界の人々に唱えた中国の考え方を言っているわけなんです。それがここに組み込まれて、それを古井使節団が理解をして、そういうことであるならば正しいことであり、当然なことである、これこそがむしろお互いに確認するいい原則であるというふうに考えてやられたわけなんです。それに対して、いま言いましたように、イデオロギーを承認、引きずり込まれたとか、社会体制の違いを認誠をしないで無差別にやってきたとかいう一つの誹謗が党内外にあるわけですね。   〔小沢(辰)主査代理退席、主査着席〕 そういうことは、この貴重な共同コミュニケをあなたは歓迎し、そしてこれは当然なことであるという原則的な立場に立っておられて、これの発展のためにやることが両国の利益であるという考え方をするならば、こういうイデオロギーアレルギーのような偏狭な考え方でこの解釈をすることは誤りである、自分はそういうふうには考えないということを実は伺いたかったのであります。そういう意味で、あなたは直感的にどういうふうにお考えになるか。はなはだあなたに対しては釈迦に説法で恐縮ですが、一言で言いますと、古井さんももうすでに幾たびか立つ前からも帰ってからも説明しておられるように、日本はやはり近代西欧主義のものの概念規定をするわけですね。政治、経済、文化、政治は司法、立法、行政と、きちっと分けてしまう。人間の作用は何だといえば、知情意だと、こういうふうに分けて分類した概念主義によってものを考えていく。ところが政治も経済も、国民、民族の生活というものは共同体、一つの生命体なんですよ。そのときの政治とは、経済、文化、宗教あるいは科学技術、そういう国民のすべての生活を包括するものが政治である。いわゆる東洋の思想でいえば、まつりごとの思想なんですね。ものを考え、ものを言うこと、商売をすること、あるいはまた絵をかくこと、これらの経済、文化の一々の行ないに対して政治というものはすべて責任を持たなければならない、行ないはすべて政治的な意味を持っておるのである、こういういま持っておるイデオロギーを相手国に政治的に押しつけるとかなんとかいう考えではなくて、あるいはこちらのイデオロギーを理解し支持しなければ貿易はしないというのではなくて、そういう非常に高次元の用語でございます。そういう意味からいたしますと、いま申しましたような概念主義によって政経不可分を取り込んできたことは、中国の思想、中国の社会体制に対してあまり警戒心が足りないというか、混同してきたのではないか、商売とそういう思想、社会制度と政治制度と混同して一緒くたに引き受けてきたのではないかという見方は、偏見であり、この共同コミュニケを正しく理解するものではない。正しくこれを発展するために妨害になるものである、こういうふうに私は考えますが、あなたは先ほど、これを歓迎し、これを発展することに何らかたくなな態度をとるものではないという趣旨のことを言われた。そうであるならば、当然その部分についてもそういう理解のしかたをされて取り扱われることが一番大事じゃないか。発展のためのネックとして、私は問題を提起しておるわけです。いかがですか。
  397. 三木武夫

    三木国務大臣 私が最初から言っているのは、政とか経とかいうことの定義が問題であって、もし政というものを国の承認というようなことで考えるならば、いま承認できないわけですから、承認はできぬけれども貿易はするといったら、それは政経が分かれたような形、それをまた政というものをいま言われたように人間の営みすべてがすべて政だということになれば、これは分けられないですよ。だから、私が言うのは、そうやって政経分離か不可分かということは、政とは何ぞ、経とは何ぞというものを何にも定義をしないで、政経分離、不可分ということにたいした大きな意味があるとは私は思わない。したがって、古井君からも事情をよく聞いてみたいと思っておるわけでございます。私は、日中関係が改善されることは好ましいという論者であります。したがって、そういう意味から考えても、そういうことでみな両方が政経分離だ、不可分だと言って、政と経との定義も何もしないで、ただことばのスローガンみたいに全然西と東と違うんだというふうに違いを拡大するようなことが、たいして意味があるとは思っていないんです。それだから、古井君からもよく話を聞いてみたいというのは、そういう点でございます。
  398. 穗積七郎

    穗積分科員 時間がありませんから、最後に具体的な問題についてお尋ねしたい。  それはプラントに対する輸銀を使うか、使わぬかの問題です。これはもう長く説明いたしません。外務大臣もお互いに十分知っておる間柄のことでございますから、一問一答でお尋ねいたしますが、吉田書簡は何ら日本の外交を拘束するものではない、そういう効果のあるものではない。政治的にもそうであるし、道義的な拘束からも解放されておるというふうに私どもは理解すべきだと思いますが、これはいかがでございますか。
  399. 三木武夫

    三木国務大臣 吉田書簡に対する政府の統一見解というものがあるんです。これを私はここで申し述べておきたい。それは、吉田書簡は、両国間の取りきめのような、両国間を拘束するようなものではない。したがって、輸銀を使うという問題は、具体的な問題が起こったときに具体的な問題として検討をする、これが政府の考えでございます。
  400. 穗積七郎

    穗積分科員 こういうことですね、いままでの統一見解は、以前からも何らあれに拘束されるものではない、あれはプライベートレターだ、こういうふうに言っておった。ところが、あそこにしるされた方針と政府が自主的にとろうとしておる方針と、たまたま一致しているんだ、こういう説明であったわけです。これは今日まで続いているわけですね。いまの統一解釈がそういうことになっておる。ところが、問題はケース・バイ・ケースでプラント輸出の輸銀使用の問題を検討すると口では言っておって、いままでは全く検討もしなかったんです。だから、申請をいたしましても受け付けもしなかったわけですね。それが事実なんです。そこで、今度の共同コミュニケを契機にして、この輸銀の問題については、原則としては中国に対しては他の国と差別するものではない、無差別である、他の国と同様に使うものであるということで理解してよろしゅうございますか。他の国に対してもケース・バイ・ケースですよ。ところが、中国に対してだけは他の国とは別に、特別の制限原則というものがあるのかないのか、それを伺いたいのです。
  401. 三木武夫

    三木国務大臣 他の国といっても、輸銀の場合、条件が国によって違うわけですから、他の国より不利にしないとかするとかいうことは、誤解を生ずると思います。だから、申し上げられることは……(穗積分科員「原則上の違いです。具体的条件じゃないのですよ。誤解のないようにしていただきたい。」と呼ぶ)原則上は、どこの国の場合においても、具体的な問題のときに検討を加えて許すものは許しておるわけだから、中共の場合においても原則的な手続は同じでございます。具体的な問題が起こったときに検討する。
  402. 穗積七郎

    穗積分科員 いや、私の言うのは、具体的な条件というものは、これは取引ですから、商売の内容が何であるか、それから品目が何であるか、額は何であるか、延べ払いの期間がどれだけであるか、金利は幾らであるか、それから支払い能力の確実さはどの程度保証されておるか、こういうことを一応見るのはあたりまえのことですよ。そのことを私は聞いておるのじゃない。他の国を審査する場合と、そういう具体的な条件以外に、一般的に中国のプラント輸出については、特別な、または政治的なと言っていいかもしれぬが、そういう差別をする制限原則がありますかありませんかと聞いておる。いまの話だと、ないということですね。
  403. 三木武夫

    三木国務大臣 何かこう差別をするとかなんとか言うと、非常に誤解を生ずるのですが、中共の輸銀使用の問題は、それ自体として検討を加えるのだ、いろいろ差別とか差別でないとか言うと、いろいろな誤解を生じますから、そのものをずばりと、中共の問題は具体的な問題で起こったときに具体的な問題として処理するというお答えにとどめておきたいと思います。
  404. 穗積七郎

    穗積分科員 三木さん、それはちょっとあなたの良識と勇気をもってはおかしいじゃありませんか。具体的なと言って、どの国に対しても、どのケースについても、ケース・バイ・ケースで、そしてあらゆる経済的なコンディションを検討してやることはあたりまえですよ。金を貸すわけだから、取引に対して保証するわけだから、そんなことはわかっておる。そんなことを聞いておるのじゃないですよ。そんなことは、われわれがまた口出しをしようとは思っていない。問題は、他の国と何らか差別した制限条件というものがあるのかないのかということを聞いておるわけです。一般的、原則的な制限がありますかないかということです。いまのお話だと、ないというふうに理解してよろしゅうございますね。
  405. 三木武夫

    三木国務大臣 こういうことになるのです。輸銀の資金というものは潤沢にないですからね。だから、その国とのいろいろな関係も考えながら、それから経済そのものの条件、貿易の条件なども考えて、輸銀があり余るほどあれば別ですけれども、そうでないのですから、できる場合と、申し出があってもできない場合もたくさんあるのですよ。だから、そういう意味で、これは何かそういうものを断わられた相手からすれば差別、こういうふうに考えられるかもしれぬ。差別ということじゃないが、いろいろな諸般の情勢を考えて、それに対しての決定を下す。それを差別というふうには考えておりませんが、諸般のその両国の関係なども考えて、そして輸銀の使用の場合に対しは総合的に判断をするんだということ以上にお答えをすることは、非常に誤解を招くと思います。
  406. 穗積七郎

    穗積分科員 この問題、非常に今度のこの取りきめは、日中関係が前進することがここでまた後退するか、一つの大きな条件といいますか、チャンスになると思うのです。そういう意味で非常に重要でございますから、もう少し掘り下げてお尋ねしたいんですが、お約束の時間も参りましたし、他の委員会の機会に続いてお尋ねすることにして、なおあと同僚の石野委員もこの問題について続いてお尋ねいただくようですから、それに譲りまして、私の質問は終わることにいたします。
  407. 野原正勝

  408. 石野久男

    石野分科員 大臣にお尋ねします。  先ほど、日中覚え書き貿易のことについて非常に歓迎する、そしてまた政治三原則は、これは外交方針に矛盾はしない、こういうお話でしたが、穗積委員からのこれを支持するか、承認するかという問題について、大臣は、はっきりしたそういう大きいことばを使うなという話でした。しかし、貿易協定を歓迎するというたてまえに立てば、当然にやはり政府としてはこれをほっておくというわけじゃないだろうと思うのですが、これに対してどういうようにそれじゃ対処するのか、そういうひとつ対処のしかたについて所信を聞かしていただきたい。
  409. 三木武夫

    三木国務大臣 これは民間貿易でありますから、政府がタッチできる面というのは限られていると思うのです。第一番に、先ほども申し上げた米の問題は、さしずめこれは食管会計が入らなければならぬわけですから、米などは、政府が約束をいたしましたものはこれは買うことになる。これは民間貿易であるだけに、政府自身が関与する面は非常に少ないと思うのです。
  410. 石野久男

    石野分科員 米が六万トンから十万トンになったということ、しかし古井さんたちの話し合いの中では、この十万トンをなるべく上積みするということを了解として今度の話し合いを一応妥結点のほうへ持っていったという内容があったといわれておるわけですし、私もそういうふうに理解しております。ただ米だけじゃなしに、政府としてはこれは民間の仕事だからということでほっておくんじゃないということになれば、当然協力してやるということだろうと思うのですが、その協力のしかた、協力するという態度はとるのかどうか、ここをひとつ聞かしておいていただきたい。
  411. 三木武夫

    三木国務大臣 私どもは、やはりこういう中にも日中関係が貿易で接触していったほうがいいと思うわけです。だから、この貿易が民間貿易であっても円滑に運営されることは好ましいと思いますが、いま政府で何ができるかといったら、さしあたり頭に浮かぶのは米くらいで、そう具体的にいまわれわれがするということはたいしてないと思います。ただしかし、日中のこの貿易関係の接触面が続いていくということは、われわれも歓迎するわけですから、これをじゃまするなどという考えはないのです。ただしかし、政府が実際に自分でやれることといったら、少ないと思います。
  412. 石野久男

    石野分科員 政府がしかしじゃまはしないということの意味は、なるべくやはり貿易の総額が減らないように、ふえていくようにするということの意味だろう、こういうふうに理解するのですが、そういうことなんでしょう。
  413. 三木武夫

    三木国務大臣 日中貿易の金額がふえていくことは、好ましいことだと思っております。
  414. 石野久男

    石野分科員 そうすると、これは金額がふえていくためへのじゃまはしない、それがふえていくような条件ができてき、それがまた政府によって協力されれば、それはやはりしてやる、こういう意味ではないのですか。
  415. 三木武夫

    三木国務大臣 政府協力のできる点があれば、むろん協力いたします。
  416. 石野久男

    石野分科員 たとえば今度の場合、米の問題でも、これは食糧庁がいろいろ国内の昨年度のできや何かのことも考えてその量をきめているわけですが、しかし、先方としてはこれをまだ十万トンを上積みしてくれろというふうな話もあるわけです。それが可能な限りにおいてはなるべく協力してやる。あるいはまた他に、いま一番日本国内の取引をする方々の要望点として大きい問題では、食肉の問題があります。食肉問題では、これは非常に強い要望が業者の中からありますし、そしてまた日本の食糧事情、あるいは食肉需要の関係からいっても、これはやはり入れたほうがいいという考え方を持っておるわけです。こういう問題について、いまこの食肉が入らないというのは、実は政府のほうでこれを入れない方針をとっているところに問題があるわけです。これにはやはりいろいろ考えなければならぬ問題もあるでしょう。技術的問題もあると思います。しかし、技術的な問題はあるけれども、しかしそのほかに政治的な観点からこれを妨害するというようなことがあると、これはたいへん迷惑をこうむるわけなんですね。そういうような場合に、政府は食肉の問題等について、もうほとんど技術的な問題では解決していると思われることが、これを押えられているという点があります。そういう点に対しては、やはり外務省としては、政府としてはできるだけ道を開いていくという考え方をすべきだと思うのだが、大臣はどういうふうに考えますか。
  417. 三木武夫

    三木国務大臣 これは食肉の話も聞いておりますが、何も食肉を押えようとするのじゃなしに、検疫上これは厳重にやるべきでしょうね。検疫上のいろいろな配慮というものは、厳重であっていいわけです。そういうことだと聞いておりますので、食肉に限らず、日本が輸入できるものはあると思うのです。米々というと非常にむずかしいけれども、たとえばほかのもの、雑穀などあれば、それは買える余地はあるのですから。そういう点で日本が買える余地のあるものを買って拡大をしていくということに対しては、われわれとしても協力を惜しまない覚悟でございます。
  418. 石野久男

    石野分科員 先ほど穗積君から、吉田書簡の問題が出ました。これは政府は、この書簡は両国間を拘束しないという統一見解を持っているのだ、こういうふうに話があったけれども、従来もそういうふうに言っておったわけですね。言っておったのだけれども、日中間の問題では、事が輸銀の問題に入っていくと、すぐ吉田書簡が出てくるわけです。したがって、今後は、輸銀の問題が出る時点で、吉田書簡というものはそこでは何の用役も果たさない、何のかかわりもないのだということだけは、はっきりしたわけですね。
  419. 三木武夫

    三木国務大臣 先ほども申しますように、吉田書簡というものは両国間の取りきめのようなものではないから、したがってこれは拘束するものではない。吉田書簡が、これを緩和するとか、吉田書簡の効力をなくするとか、そういうものではない。両国間の取きりめではないというふうに考えておる次第でございます。
  420. 石野久男

    石野分科員 だから聞くんだ。いままでは、日中間の問題で輸銀を使う場合には、必ず吉田書簡が一つ出てくるわけですよ。それでこの輸銀を使うときの問題が解決しないで、パアになってしまうのですね。だから、いま吉田書簡が両国の間を拘束するものでないという統一見解があれば、具体的な事例として輸銀が今度必要になったときに、吉田書簡というものは何のかかわりもないということだけははっきりしたのですね、ということを聞いているのです。
  421. 三木武夫

    三木国務大臣 ああいうときに吉田書簡が出たという歴史的な事実は、抹殺できないでしょう。ああいう歴史的な事実だけは……。しかし、日本政府がこれによって拘束を受けるものではない、これは条約のような、両国間の取りきめのような拘束を受けるとは考えていない。
  422. 石野久男

    石野分科員 吉田書簡が出た状況、その歴史的経緯というものは、私たちはそれは認めていないけれども、その事実があったことは認めます。認めるけれども、それが非常にまずいから、われわれはこれをやめなさい、こう言ってきた。しかも今度は、政府も拘束しないということをはっきり言った。そこで問題になるのは、せっかく日中の貿易に対する一つのパイプが細いながらもつながった。これは政府がどう言おうと、日本の財界では喜んでいるわけですね。これをやはり守り、育て、太くしていくということは、古井さんも言っておるように、一にかかって政府態度による、こういうのですよ。事実上私がLTの問題についての話を周総理から引き出す場合でも——話を引き出すと言っては悪いけれども、話をことづかってくる場合でも、問題はそこにあったわけです。だから、これから後の日中の貿易を拡大するという問題は、とにかく佐藤内閣の政治態勢というものはどうあるかということによって、民間の協定ではあるけれども、太くもなったり細くもなってしまいます。特に問題になるのは、輸銀の問題がひっかかってくると思うのです。その輸銀の問題の命脈を決するものは、いままで吉田書簡だった。だから、今度はそれはなくなった、そういうものはもう関係ありませんということが、先ほど言った政府の統一見解がありますと、非常に明るい顔で言われた三木さんのそのことばが出てくるのは、そこなんでしょう。輸銀を使うときには、吉田書簡というものはもう関係はありません、こういうことなんですねということを私がわかりやすく聞いているのだから、そこをはっきり答えてください。
  423. 三木武夫

    三木国務大臣 吉田書簡というものは、いま申したように条約のような拘束力があるとは思っていないわけです。したがって、こういう吉田書簡というのがいつも出てくることが好ましいと私は思わないのです。これはだいぶ昔の、ああいう歴史的な事実になっておるわけですから、これでいわゆる条約的な拘束力は持たない。したがって、政府は輸銀を使う場合には、これは単に経済ベースというか、そういうものばかりでなしに、いろいろな総合的な判断があると思います。金額の必ずしも多くない輸銀を使うのですから、総合的な判断のもとに輸銀というものは具体的な問題ごとに処理する、吉田書簡は条約的な拘束力は持っていない、こういうふうに考えております。
  424. 石野久男

    石野分科員 条約的拘束力がないということは、一般的に言えば、国際間の関係では政治的拘束力がない、こういうふうに私ども理解します。結局やはり輸銀を使う場合のほとんどの問題は経済的側面にあるのだ、それがいわゆる総合的という意味の内容である、こういうようにそれでは理解してよろしいわけですね。
  425. 三木武夫

    三木国務大臣 輸銀というものは、いま申したように必ずしも金額が潤沢でないわけですから、輸銀を使う、使わぬという場合には、やはり経済的ばかりでなしに、たとえば非常に友好的な関係の国に対しては、輸銀を使う場合に好意的な配慮をする場合も実際問題としてあり得ると思いますよ。だから、経済ばかりということにも言えない。全体として、具体的な問題としていろいろなことを頭に入れて判断をするということが、実際的に正直なお答えだと思うのです。
  426. 石野久男

    石野分科員 いま外務大臣が、友好的な国に対しては考える、輸銀を使うというのは、裏を返せば友好的でない国に対しても考えるということになる。だから、今度そこに政治が出てくるのですよ。それではやっぱり政治的な配慮があるのじゃないですか。
  427. 三木武夫

    三木国務大臣 政治的な配慮といいますか、東南アジアの諸国なんかで、いろいろな新興諸国で、ずいぶん無理して輸銀を使っておる場合もありますね。それは日本との友好というか、そういう関係で、しかも国の経済を発展さそうとしておる東南アジア諸国の中には、輸銀としても、実際からいえば、経済事情からいえばお断わりしたいという場合もありますが、そういう場合にも相当いろいろ考えてその国の将来などを考えて、日本との関係も考えてやる場合もある。だから、輸銀、を使うのは純然たる経済ペースそのものかというと、それは実際問題として経済ベースそのものとは言えない。いまいろいろな要素が輸銀というものを使う場合の要素の中には入っていくだろうと申し上げたのでございます。
  428. 石野久男

    石野分科員 友好国、特に東南アジア等に対して友好的な立場で輸銀を使うという配慮、これは非常にけっこうなことです。私は、それはやはりやってもらっていいと思う。しかし、それを今度裏を返しますと、当然経済ベースではやってやるべきであり、国際関係からしてもそうであるけれども、政治的な関係からしてそれはおもしろくないから、それは断わりますということが、その裏に出てくるわけですよ。それじゃ、やはり吉田書簡の内容がそのまま残ってしまうわけだ。三木大臣の話は、ことばの上でひっくり返してしまうという、そういうぺてんにかけたようなことをやられたのでは困るわけですよ。いまここで吉田書簡についての非常に大きな問題は、やはり日中の問題についてできるだけ前向きの方向でいきたい。そして輸銀の問題については少なくとも吉田書簡の関係はないのだということを明確にしておいて、ただ輸銀のワクの中で、資金量の中でできないもの、これはしかたがないと思いますよ。しかし、そこに逃げ込む理由が政治的であってはいけないということなんです。そこのところをわれわれはそこまで捕捉できませんから、そこで問題は吉田書簡というものにかかわるから、吉田書簡は輸銀には関係ありません、こうきっぱり言えば、私たちはそれで一応は政府の誠意はわかるのですがね。簡単にひとつ答えていただきたい。
  429. 三木武夫

    三木国務大臣 いま申したように、われわれが輸銀を使う場合に、吉田書簡というものによってどうこうというものではないわけです。しかし、輸銀を使う場合には、具体的な検討をする場合の中にはいろんなことが要素に入る、そのことだけは御承知おきを願いたいと思います。
  430. 石野久男

    石野分科員 吉田書簡の関係するのは、中国以外にはないのですね。ほかにもあるのですか。
  431. 三木武夫

    三木国務大臣 中国以外にありません。
  432. 石野久男

    石野分科員 そうすると、いまの答弁は、やはり中国に関しては吉田書簡は完全に無縁なものであるということは言い切れないということが、現在の政府態度ですか。
  433. 三木武夫

    三木国務大臣 無縁なものであると言い切れぬというわけではないのです。そういう吉田書簡が出たという歴史的な事実は抹殺できないけれども、輸銀を使う、使わぬというときに、吉田書簡というものが条約のような拘束力を持っておるものではない、こう言っておるのです。
  434. 石野久男

    石野分科員 条約上の拘束は持っていないけれども、しかし、諸般の事情によってやはり問題は残る、こう言うのですか。
  435. 三木武夫

    三木国務大臣 いや、その具体的な問題が起こったときにわれわれとしては具体的な問題として検討しようということで、吉田書簡というものがそんなに大きな両国間の取りきめのような拘束力を、今日輸銀を使う場合に持っておるものとは考えておりません。
  436. 石野久男

    石野分科員 三木さんは簡単に言いますけれども、従来、たとえば日立の船の問題にしても、その他いろいろなプラント物が出るときには、いつでもこの吉田書簡でじゃまされてきたのです。しかし、今日の段階で政府が言う意味は、従来のようなそういうようなことは政府もとらない、そしてまた輸銀の問題についてはオープンな形でいくのだ、こういうのなら、それをはっきりしてもらえばよろしいのですよ。ただ、三木さんが言われるように、友好的な国に対しては輸銀を無理してでも使うという意味が、友好的な国のためには中国に対して輸銀を使うことを断わる場合もあるということの意味を言っているのかということを、私は聞いているのです。
  437. 三木武夫

    三木国務大臣 これは輸銀というものは無制限でないですよ。だから、東南アジアに対しては、よその国に比べればかなり無理をして使っていますよね。そういうふうなことは、経済ベースからいえばもっと有利なところがあるのではないかということもあるでしょうね。経済ベースばかりでなしに、日本が東南アジアというものに対しては非常な関心を持ち、そういう国の安定を望んだりしておるから、そういう国々に対しては輸銀の使用について特別な配慮をする場合もある。純然たる経済ベースだけでも輸銀というものはきめていない面があるということを申し上げたのでございます。
  438. 石野久男

    石野分科員 輸銀の問題だけで時間をとるとなくなってしまうから、のらりくらりのそういう答弁をいつまでも聞いておれませんが、ただ、中国に対しては従来のようにはきびしくはやらないのだ、とにかく政治的な立場からいかないので、ただ問題があるとすれば輸銀の資金量の問題だけだ、こういうところへだけは狭めていくという意味ですね。もう長く時間は要りませんから。
  439. 三木武夫

    三木国務大臣 だから私の言うことを、石野さんすなおにおとり願いたい。具体的なケースが起これば具体的なケースとして検討いたします。いろいろあなたが、質問が出てくるといろんなことを言いますから、そういうものを前置きなしに、中央に対して輸銀の資金を使う場合には、問題が具体化すればその具体的な問題として検討処理する考えであります、これだけに置いていただいたほうがかえっていいのではないかと思うのでございます。
  440. 石野久男

    石野分科員 輸銀問題ではまだ疑義がありますけれども、一応外務大臣が従前よりも輸銀に対してはゆるやかな態度をとるのだという理解だけはしましょう。問題は、中国に対してはいま輸銀が非常に大きなネックになっておりますが、これからあといろんな意味において、やはりなるべく覚え書き貿易が前進するように政府としては協力するという態度だけは間違いなくおとりになるのでしょうね。
  441. 三木武夫

    三木国務大臣 この貿易、名前は変わったようですが昔のLT貿易、これは拡大することは好ましいと思っております。
  442. 石野久男

    石野分科員 今度ガットの関係で、いわゆるケネディラウンドが実施されることになりますね。その中で、ガット非加盟国の中でやはりこのケネディラウンドから疎外される部門と、それからやはりなるべくそれで救済するという面とがありますね。現在このケネディラウンドに基づくところの関税一括引き下げという問題で、ガット非加盟国に対する態度をどういうふうにとっていったらいいか、その点を……。
  443. 三木武夫

    三木国務大臣 御承知のように関税は相互主義ですから、お互いに利益を受けたものに対してはこちらのほうも特恵国待遇など、相互に与えてやっておるのですから、中共はガットに入ってない、そういう点で関税上の問題については最恵国待遇にはいかぬわけですが、いまの御質問の点については経済局関係の者がお答えいたします。
  444. 石野久男

    石野分科員 なるべく簡単にやってください、時間がないから。
  445. 鈴木文彦

    ○鈴木説明員 いまの点について簡単にお答えいたします。  日本の法律の立て方は、二国間条約で、最恵国待遇を約束した国には協定税率を適用する、それからそういう関係にない国については国定税率を適用するということで、二本立ての税率になっております。ただ、日本の従来の方針からいたしまして、ガット非加盟国であってもわが国に対して特別に差別をしてない、有利な待遇を与えておる国につきましては関税上の特別の立法がございまして、便益関税ということで、自主的にこちらが最恵国待遇の低い税率を適用するという関係になっております。ただ、わが国が承認してない国もしくは地域につきましては、わが国の産品に対してどのような待遇を与えておるか、それを確認する手段がないことと、同時にわが国に対して有利な待遇を確保する外交手段もないために、実際上これらの国に対しては国定税率が適用されるかっこうになっております。これは特にそういう国を差別するというかっこうでやっておるわけではありませんで、ただ法律の立て方から、結果として国定税率が適用されるというかっこうになっております。
  446. 石野久男

    石野分科員 中国に対しては、その国定税率がどのように適用されるのですか。
  447. 鈴木文彦

    ○鈴木説明員 中国に対しましては、したがいまして、いまの考え方から申しまして国定税率が適用されております。これはつまり日本の税率が国定税率とそれから協定税率、協定税率は関税交渉の結果、当然低い税率ということになっておりますが、したがって中国に対しては高い税率が適用されるということになっております。  ただ現実の問題といたしまして、日本における特定産品の需給動向、あるいは関連企業の影響その他を考慮しまして、日本が承認してない国の地域の産品であっても、いまのような考慮から低い税率を適用するということが日本にとって適当であるという場合にはそういった待遇を供与するという方針のもとに、現在関税定率法の一部を改正する法律というかっこうで国会に上程しております法律の中に、中国の主要輸出品であります大豆及び銑鉄について協定税率と同じ税率を適用するという法案が出ております。
  448. 石野久男

    石野分科員 中国のものについて大豆とか銑鉄については特別に配慮していく。その他のものについては非加盟国でもあるし、それからまだ国交も回復してないということで、ケネディラウンドからくるであろういい方面の影響が出てこないということになると、これはせっかく日中間の貿易協定がパイプは細いなりにもつながりましても、事実上はやはり貿易量が非常に締めつけられてしまうであろうし、またそれに携わっている業者諸君が非常に苦しい立場に追い込まれる品物が非常にたくさんあると思うのです。同じ品物で、たとえば絹なら絹というもの一つとりましても、いままでこれは中国から入ってくるべきものが、税率が違うために今度はほかから入ってくるという形になります。しかもそういう場合に中国の側が困るということだけではなくて、日本のそれに関係する業者で非常に苦しむ品種がたくさんあると思うのですが、そういう問題についての配慮は全然いたしませんか。
  449. 鈴木文彦

    ○鈴木説明員 いまの点でございますが、具体的な品目についていろいろと要望その他のあれがありました場合には、当該品目に即しまして、先ほど申しましたような国内の関係産業に対する影響なり、あるいは実際に需給の動向がどうなるかということを考慮した上で、少なくとも関税面についてはできるだけ協定税率と同じ税率を適用するということが適当である場合には、おそらく政府としてそのような方針で具体的な提案をいたすというふうに考えております。
  450. 石野久男

    石野分科員 時間がないのであまり論議はできませんが、大臣にひとつお聞きしておきたいですが、いま銑鉄とか大豆というものは、ものが大きいですから日本の側でも非常に有利になりますし、そういう意味からやはり便宜を与えるという体制が出ておると思うのです。しかしいま中国が取引しておるものは数百種に及んでおるわけです。その数百種に及んでおるもので、他国と競合しておるものはたくさんあります。そういうものが、他の国では非常にケネディラウンドによるところの便益を与えられて日本に入ってまいりますし、片方は、中国から入るものはそのままおっぱなしになってしまうと、ほとんど商売ができなくなってしまう場合がたくさんあると思うのです。これは何か国の立場で考えないと、せっかく古井さんや田川さんたちがああいうような貿易の新しい道を開いてきましても、なかなか量としても実績としてもあがってこないという欠陥が出る危険がございます。いまお話によりますと、そういう事態があれば政府としては考えるというところまでいきましたが、この問題はもう少し積極的に考えてやってもらわなければいけないと思うのです。積極的に考えるという道は、やはり政府側で関税問題を積極的に考えて、たとえば銑鉄や大豆のようにやってくれる場合もありましょうし、また気づかない場合で、業者からのいろいろな陳情や何かがあって、それにこたえる場合もあるだろうと思うのです。それはそれぞれの業者と話し合いする中で、この協定適用を具体的成果をあらしめるように努力をしていただくことが大事だと思いますが、きょうは時間がありませんので、ただそれに対する大臣の考え方だけをやはりひとつ聞かせておいていただきたいと思います。これは民間業者等から、個々のものではなくて、全体としての、団体としての考え方で意見が出た場合にはそれを積極的に取り上げてくれるという体制ができるのかどうなのかという問題について……。
  451. 三木武夫

    三木国務大臣 われわれのほうでも検討いたしたいと思っております。
  452. 野原正勝

  453. 帆足計

    帆足分科員 第一にお尋ねいたしたいのは、私はたびたびお尋ねしようと思っておりましたが、吉田書簡、吉田書簡ということばが始終新聞に出ますけれども、国会議員で、しかも外務委員でありながら、この吉田書簡というものを見たことも聞いたことも、内容についてはないわけでございます。これは発表を要求した人もなかったのでしょうか。また発表する意思はないのでしょうか。または発表することはできないのでしょうか。その事情をお聞かせ願いたいと思います。
  454. 三木武夫

    三木国務大臣 これは個人の私信ですから、私信を国会で公表するという慣習はないわけですから発表しなかったわけでございます。
  455. 帆足計

    帆足分科員 それはラブレターと同様のものであるという御返答とするならば、かくのごとき恋ぶみがわれわれ国会議員の政策に対して、外務委員会の政策に対してこれが重大なブレーキになる。しかも、これが十九の春の恋ぶみならとにかく、老いらくの恋ぶみなんというものが、なお死んだ恋ぶみ外務委員会をストップさせる、こういうことは私は理解できないと思いますが、この私信によってなぜ政府の政策が拘束されねばならぬのでしょうか。まことに理解しがたいことだと思うのです。
  456. 三木武夫

    三木国務大臣 いま石野さんにもお答えしておるように、これは個人の私信が両国間の取りきめのような拘束力を持つものでないということを申し上げておるゆえんでございます。
  457. 帆足計

    帆足分科員 一歩前進の御答弁をいただいて多少気持ちもなごやかになった。どうかそういうふうなお取り扱いを願いたいと思います。時間もあと数分しかありませんから……。  第二に、これは文部大臣から少し授業料をいただかねばならぬ告知、助言、アドバイスをするわけですが、われわれ与党といい、野党といいますけれども、同じく日本国民でございますから、私ども不逞のやからでもありませんし、あなたが国の利益を云々する——これは失言してはたいへんですが、国の利益を阻害する方でないことも、阻害しないように心得ておることももちろんでしょう。だとするならば、古井喜實氏がお帰りになって、私はその論説を注意深く読みました。そうしたとこるが、これは一つ行き違いがありまして、日本政府は政経分離という、ということは、政治は政治でイデオロギーにとらわれず、海の国日本は貿易は貿易でやろう、政治の雑音から離れて純粋の貿易、政治をからましてこないならば純粋の貿易をやろう、こういうお気持ちであるならば、私はそれはそれなりに理解できるように思うのでございます。古井さんが理解した中国側の言い分で政経不可分という意味は、政治は党利党略というようなこまかな政治でなくて、平和な隣邦でなくてはお互いに貿易もしにくいではないか、互いに敵視するような政治のもとでは貿易も気が進まぬ、こういうふうに理解すれば、またこれも理解し得ることであって、古井さんが大局から見て、誠実に良心的に考えるならば、これは二つの間に一つの調整が成り立つ、こういうふうな事実を書いておられまして、私はそのとおりだと思うのです。したがいまして、たとえば輸銀という問題にしましても、ただいま石野さんから質問がありましたように輸出入銀行というものは貿易の国日本の輸出入を促進するための銀行でござますから、政治から離れて純粋に輸出入をよくしようというときには、これを十分活用してしかるべきである。党利党略に便乗してやろうというならば、政治と経済の混同であるからこれは困る、こういうふうに純真に解釈したならば、昨日あなたのお考えに近い考えを椎名通産大臣がその解釈について漏らして、これは弾力性のある一歩前進した解釈でいこうと言われたのに対して、私は外務大臣も御同感ではあるまいかと、わが意を得たりと思って新聞を拝見したのですが、さかしまの御答弁をなさるくらいなら、この際おしになられたほうがけっこうでございますが、前進的、合理的御答弁がいただけるならば、私のただいまの感想に対しまして、ひとつ前向きの姿勢の御答弁をいただきたいと思います。と申しますのは、日本は海の国でございまして、日本国と言うよりも日本丸と言ったほうが適当なくらいの国で、貿易のこと、平和のことは党派を越えた国民の利害に関することですから、あえて申し上げる次第でございます。
  458. 三木武夫

    三木国務大臣 いま古井さんのコミュニケについて石野さんやほかの方からもいろいろ御質問があったわけです。個々にことばをとってくればいろいろ言う人もあるでしょう。しかし全体として私が考えますことは、やはり中国との関係というものは改善していかなければならぬ、中国との間に戦争をやったり、対決したりするということでは、そういうことはとても考えられないことでございます。どうしても、困難はあっても、日中関係というものは改善していくことが両国のためにやはり利益である、これは私の前提でございます。しかし国交が回復してないわけですから、いろいろな不自然さはあると思います。コミュニケの場合でも一つ一つを取り出して言えばいろいろ問題はあると思いますが、この不自然の中で貿易はやっていこうというのですから、やはりそういう非常に不自然な両国の関係にあるということを大きくのみ込んで、おとなのつき合いをするよりほかにはないと私は思っております。おとなのつき合い、そういうことで日中関係というものを改善していくほかにはない。
  459. 帆足計

    帆足分科員 あと一分しかございませんから、あとは事務官殿に伺いますが、国際赤十字が今度の朝鮮人帰国ストップについて非常に不満の意を私のところにも申してまいりました。国際赤十字または朝鮮赤十字、日本赤十字等が、政治の雑音から離れまして朝鮮人帰国の問題について再び話を進めますならば、大臣はこれを純粋の人道の問題として、そういう認識を持ってお取り扱いになるという前向きのお気持ちがあられるかどうかだけを伺っておきます。各大臣から御同様の答弁をいただいたし、また外務政務次官からも同じ御答弁をいただきましたが、そのお心がまえのほどだけ、鬼でもジャでもなくて、赤十字精神は非常に尊重していく、それだけの御答弁でけっこうです。それで雪解けになりますから。一言お答えを願いたいと思います。
  460. 三木武夫

    三木国務大臣 赤十字精神は大いに尊重いたします。
  461. 帆足計

    帆足分科員 いま朝鮮の帰国問題に触れましたが、私は朝鮮人帰国協力会全国幹事長をしておりまして、この事業に八年携わっておりますし、六つの年から十六歳まで、たまたま父に連れられて朝鮮の平壌におり、平壌中学を出まして朝鮮語も多少はできる、朝鮮の歴史も多少は存じておる者の一人でございます。したがいまして、今次の朝鮮帰還協定を一方的に打り切りました成り行きについては、韓国からの雑音でこういうことをやったらしい、また法務省は、残念ながらそれと相応して納得できぬ動きがあったように新聞記者諸君が伝えておりますが、この点は遺憾と思っております。しかし、それは過去のことでございますし——法務省は局長はいらっしゃいませんか。
  462. 野原正勝

    野原主査 次長でございます。
  463. 帆足計

    帆足分科員 局長はまだ御病気ですか。次長にはあまり賛成いたしておりません。というのは、評判がたいへんよろしくない。しかし、せっかく御勉強くださって、評判がだんだんよくなるように御努力なさればいいと思いますが、国会で評判がよくないということはゆゆしいことだと私は思っております。(「いやこっちにはいいよ」と呼ぶ者あり)それは党派によって評判というものは変わるべきものではないと思います。  そこでお尋ねいたしますが、ある無学な人間が私にこういうことを言いました。朝鮮人はなるほど五十八万人日本におるから、自然に月に百人や二百人、年に千人や千五百人は帰るであろう、これは統計学的事実であるから否定はできない。現に一万七千人帰国申請者がすでにおるから、そのうちの半分と見ても八千人帰りたいという人がおることはわかる。しかし、それは貨物船かナホトカ経由で帰ったらよかろう、こういうことを私に言ってきた者がございます。だれが言ったかと言いますと、法務省でも外務省の一部でもそういうことを言っているからということを聞きました。私は、それはたぶん学歴詐称のにせ大学生か何かではあるまいか、まともな教育を受けた者ならば、今日そういう航路はないはずだ。私も外務委員をしておりますから、法務省の職員よりも交通には明るいのでございます。だれがそういうことを言い出したのか、お心当たりがあったなら、まず小川局長外務省のベテランですから小川局長、次に権威薄い次長さんから、ひとつ順々にお答えを願いたいと思います。事実、地理学と航海学に基づいてこういうことをお答えを願いたいと思います。
  464. 小川平四郎

    ○小川政府委員 先生御指摘のことをだれが申し出したかということについて、私承知しておりません。
  465. 帆足計

    帆足分科員 しかしだれが申したにしろ、そういうことをだれか言うた者がおったとしたならば、それは正しいと思いますか、間違っておると思いますか。
  466. 小川平四郎

    ○小川政府委員 現在そういう道の開いていることも事実であると思います。
  467. 帆足計

    帆足分科員 その道が開いておるというのは一人か二人で、電子顕微鏡で見て開いている。ナホトカ行きは、行こうと思えば、特別のパトロンでもいなければ——二十万円近くもかかるでしょう。まず、どういうふうにナホトカ行きの道が開いておって、すなわち、これは大量の百人、二百人という移民の道が——移民と申しますか、帰国の道が開いておるということでしょうか。それならば、どういう航路が開いており、幾らくらいの経費がかかるとお考えですか。まず、ナホトカ航路、次には丸特船、ひとつ御承知ならば伺いたいと思います。
  468. 小川平四郎

    ○小川政府委員 これは外国人の出国の問題でございますので、法務省のほうにお答え願うのがいいと思います。
  469. 帆足計

    帆足分科員 法務省はどろぼうをつかまえる係でありまして、本来ならば、これは運輸省がお答えにならなければなりません。しかし、世界地理学に対してはやはり外務省のほうが詳しいと思います。大体現在の小川局長は御担当の局長ですから、あなたの常識で、ナホトカ航路はたとえばよく知らないとか、それから五十人も百人も乗せることはできないと思うとか、丸特船は十名以上一挙にはむずかしいとか、むずかしくないとか——そこで入れ知恵されておられる方は外務省の方ですか。
  470. 小川平四郎

    ○小川政府委員 ナホトカ航路はソ連のバイカル号が就航しておりますので、これは相当収容人員があると思います。  それから、貿易船につきましては相当数が就航しておりますが、その中で一番大きな船は約十人くらいの船であります。費用については、ちょっと承知しておりません。
  471. 帆足計

    帆足分科員 もってのほかの入れ知恵です。いま入れ知恵をした方はどこの大学をお出になりましたか、ちょっとおっしゃっていただきたい。たいへん悪い資料を局長に差し上げた。よくはありません。
  472. 小川平四郎

    ○小川政府委員 ただいま御指摘の問題について入れ知恵をされたのではございません。
  473. 帆足計

    帆足分科員 それでは冤罪でございますから、私はおわびします。  小川局長の常識としては、非常に教養高い局長でありますのに、やはり航海学のことまでは御存じなかった。しかし朝鮮人帰国の問題は、朝鮮人の生活をかけての重要な問題でございますから、そういううろ覚えの御記憶でお答えくださったとするとたいへん困るのでありまして、どうかツーリストビューローなりその他に局長の秘書なり参事官なりおやりくださって、バイカル号はどのくらい満員か調べさしてごらんなさい。バイカル号に乗る人はモスクワ経由のツーリストであって、非常に多額の金がかかる。バイカル号によって行こうとするならば、相当の金満家であるか、パトロンのおる二、三の亡命者であるとか、そういう例外的な二、三名の人でなければ——私がバイカル号を使って行きますときにも、席を取ることがむずかしいことが多いのでございます。出国。パスポートを請求いたしますときには、船もその他のルートも一応は申し出ていかねばならぬと思いますから、丸特船のごときはどういうふうにたよりになりますか。いま十名というのは松濤丸のことを言われたと思いますが、ジャーナリストや貿易業者は特に船長に頼めば乗せますけどれも、高血圧の患者や結核患者、赤ん坊、妊産婦、船に弱い者等を一般の丸特船が乗せるということは、船員組合との協定でそういうことはできないことになっておりますし、海員組員及び海運業者からもその旨決議をして発表いたしております。したがいまして、ナホトカ航路にいまの貧しい帰国朝鮮人数十名でも乗って行くということは容易なことでございませんで、行くとすればどこを通って行くでしょう。さてナホトカに船は着いた、それからどこを通って行くのですか。アジア局長も御存じないようなところを、ことばの不自由な朝鮮人が行けるはずもありませんし、経費もないでしょう。もし、よくわからなければわかないとおっしゃっていただいてけっこうです、人間は何もかも知るわけにいきませんから。ただ誣罔の言を飛ばして人心をたぶらかすことのないように御注意申し上げた次第でありまして、お答えを願いたいと思います。
  474. 小川平四郎

    ○小川政府委員 通常のルートで出国してナホトカ経由で朝鮮に行く方は、ナホトカ、ハバロフスク、それから汽車に乗って平壌に入るのが普通のルートのようでございます。
  475. 帆足計

    帆足分科員 ハバロフスクからどういうふうに朝鮮の平壌に参りますか、お答え願いたい。
  476. 小川平四郎

    ○小川政府委員 エールクックというところに出るようであります。
  477. 帆足計

    帆足分科員 エ−ルクックに出ましてから、中国の国境にどういうふうにして入って行くことができますか。——お知りにならぬときは、やはりちょっと知らないと言ったほうが……。
  478. 小川平四郎

    ○小川政府委員 正確には承知しておりませんが、列車によって行くのではないかと思います。
  479. 帆足計

    帆足分科員 正直な答えでございまして、行くえも知らぬ旅の果てかな。こういうことで帰国問題が取り扱われたのではまことに迷惑でございまして、小川局長も同学の方でありますから、感想は同じであろうと思います。それでは、丸特船松濤丸のことはもう言うまでもありませんが、その他の丸特船に朝鮮人を二十人、三十人いつでも乗せるような船長さんがどこにおるでしょうか、お答えを願いたいと思います。それについて、海員組合及び船主協会はどういう決議をしたか、御承知でしょうか。
  480. 小川平四郎

    ○小川政府委員 松濤丸が一番大きな収容力を持っておりまして、約十人と聞いております。その他は二、三人の程度であろう、そういうふうに聞いております。
  481. 帆足計

    帆足分科員 その松濤丸が、貧しい、そしてときによってはニンニクも食べるし、ときによっては高血圧者もいる、老人もおる、妊産婦もおる、そういう人たちを、紹介もなく無条件で、ジャーナリストや高名な経済使節を乗せるように乗せることを松濤丸の船長が承認するとお考えでしょうか。確かめたことありますか。
  482. 小川平四郎

    ○小川政府委員 これは自由出国で出る外国人でございますので、特に人によって差別をするということは、私ども聞いておりません。
  483. 帆足計

    帆足分科員 松濤丸は貨物船でありまして、旅客船ではございません。したがいまして、特別に船長の取り計らいで貨物船の一部に乗せてもらうのでございます。その他の船もおおむねそのようでございます。したがいまして、アジア局長がそうお考えになっているのは、特殊の例外中の例外であるというふうに御理解を願います。私の申し上げたことは御理解願えましたでしょうか。それとも、私があいまいなことを言っておるとお考えでしょうか。
  484. 小川平四郎

    ○小川政府委員 差別的な待遇をしておるということを聞いておりませんので、そのまま率直に申し上げた次第でございます。
  485. 帆足計

    帆足分科員 差別的というのではありません。動脈硬化症とか肺結核とか、病人、妊産婦、老人など、そういう人たちを普通の貿易業者や経済使節のようなじょうぶな人と同じように無差別に引き受ける能力がこの貨物船にあるかどうか。それはないということを、私は調べて、直接聞いて、ただいま申し上げておるわけです。常識をもって御理解できると思いますが、すなわち人種差別でなくて、老人、乳幼児、妊産婦、病人等、無条件にすべてのお客さまをお迎えできる旅客船ではございませんということを申し上げておるわけで、御理解願えますか。
  486. 小川平四郎

    ○小川政府委員 具体的な事例を聞いておりませんが、あるいは御指摘のようなこともあろうかと思います。
  487. 帆足計

    帆足分科員 そのようなたよりないことで百人、二百人、千人に及ぶ帰国問題を取り扱うということは、親愛なアジア局長ですけれども、以後はそういう考え方はお取りやめを願いたいと思います。本来ならば、悪口雑言をもって言わねばならぬほどのことでありましょうけれども、しかし、アジア局長のよい心ばえを存じておりますので、私は、同僚議員各位ももうよく理解されて、これ以上申さぬほうがやはり礼儀と思いますし、また委員長もにっこり笑っておられますから、これで御理解くださったと思います。笛吹さんに同じことをお尋ねいたしますが、御感想の一端を……。
  488. 笛吹亨三

    ○笛吹説明員 昨年の八月十三日から御承知の……。
  489. 帆足計

    帆足分科員 そのことではないのです。船便のことを端的に……。
  490. 笛吹亨三

    ○笛吹説明員 そのことを申し上げます。  御承知の出国証明書を発給する制度をつくったわけでございますが、それから今日までの間に二名だけがこの証明書の発給によって出国しているケース、これはもう御存じかとも思いますが、本年の一月十七日に横浜港を出港しましたバイカル号で洪三孝という朝鮮人、この細君の手澄子という夫婦二人がナホトカ経由で帰っております。これがただいままで入国管理局へ申請がございましたものでございます。そのほかに、申請がございまして、出国証明書を発給したのがもう一件ございます。金順子というのがございますが、これはしかし、出港はまだしてないようでございます。出国証明書だけ発給してございます。
  491. 帆足計

    帆足分科員 一体、そういう御答弁でいいでしょうか。年に千人をこえる帰国者、一万七千人すでに有効期間内に登録してある帰国者に対する対策について——亡命者の二人か三人に特別のパトロンがついてバイカル号にたまたま乗り込み得た、バイカル号から先はことばもわからぬ、ナホトカに行き、ハバロフスクに行き、イルクーツクに行く、イルクーツクからどういう飛行機が出るかもわからず、ソ連と中共と朝鮮の政治関係も今日微妙なようなときに、それに轗軻不遇の貧しい人たちの運命を託してパスポートを出すことが、特殊の例外のほかにできるでしょうか。すなわち、今日の常識で言えば、もし笛吹君がにせ東大出身でないとするならば、今日遺憾ながら両国の間の国交が正常化していないし、幸いにして貨物船は若干通っておるけれども、旅客船はほとんどその道がない、またナホトカ航路もほとんど満員であるし、満員でなくても、イルクーツク経由から行くことも非常に困難であるし、多額の経費が要って、帰国問題の解決のためには、これはほとんどネグリジブルの状態である、こう答えるのが当然ではないでしょうか。私の申し上げることに間違いがあるでしょうか。一体日本の官吏として、ただいまのような答弁をしてのうのうとしておれるでしょうか。人を欺くものといわねばならぬと思います。私は、ほんとうにおこることは十年に一ぺんくらいしかありません。ほんとうにこれは腹に据えかねることです。笛吹さんですか、お答えください。
  492. 笛吹亨三

    ○笛吹説明員 私は、今日まで出国証明書によりまして北鮮向けに出国いたしましたその実績を申し上げたわけでございます。そのほかにどういうようなルートがあるか、これはナホトカ・ルートで行くルートもこのように通じております。あと、先ほど小川局長からお話のございました貿易船が北鮮へストレートで行くのに便乗する道も通常的にはあるわけでございますが、これが実際に、この出国証明書制度によって出た者があるのかどうかということになりますと、これはいままでございませんので、そういうルートが閉ざされておるかどうかということは私にはちょっと……。
  493. 帆足計

    帆足分科員 まだそういうことを言うのですか。委員長、こういうことを言って、これが外務委員を侮辱していると言えないでしょうか。現在あちらに帰る道はないのです、一人か二人の例外以外は。何もないのです。私は、ないということを皆さんが認めた上に、帰る人のために、まじめに対策を講ぜねばならぬ。したがって、赤十字を通じて従来道をあけていたのがストップしたから、そこで適当な代案をつくりたいというのが官房長官とわれわれとの約束でもあるし、そのために関係の皆さんは御苦労をされてこられたわけです。そこで私がお尋ねしたのは、そういう道はただいまのところないということをあなたに御確認願いたいと思ったのです。御確認願えますか。笛吹さん、もうこれ以上ばかにすることはやめてください。
  494. 笛吹亨三

    ○笛吹説明員 お怒りにならないで聞いていたがきたいと思うのですけれども、私は、いままでこういう申請をしてきて、そういう船で行けなかったという実績がないものでございまするから、それはあるということを……。
  495. 帆足計

    帆足分科員 何を言う。委員長、こういうことを言うていいでしょうか。私が聞いておるのは、帰国者が船に乗るか、または飛行機に乗るかして無事に、安い費用で通常に帰れるルートがまだ残っておるかどうかということを礼儀正しく最初聞いたわけです。そうしたら顧みて他を言う。そこで、現在通常なルートでは、まずまずほとんど九九%船及びナホトカ航路というものは帰国朝鮮人に望めない状況である。ふん詰まりの状況である。この事実を笛吹さん認めますか。あなたのところに何通申請書がきたなんということを聞いておるのじゃない。船がないから申請が出ないのはあたりまえです。船があって初めて申請書が出せるのじゃないですか。外務委員をばかにするのにもほどがあると思います。ぼくはもう一年間がまんにがまんを重ねてきょうに至りましたけれども、笛吹さん、そういうことを言っていいのでしょうか。主査、事態のこのようなことですから、主査から御注意を願います。私は、議会ではったりでおこったということは、いままで十七年の歴史、一回もありません。それは主査の御承知のとおり。したがいまして、このナホトカ航路、丸特船で特殊な例外を除いては、まず通常の帰国ルートは残念ながらないのが、地理学的、航海学的現状である。これを認めますか。笛吹さん、これを認めますか。なぜ答弁をぼやかすのですか。さっと立って……。
  496. 笛吹亨三

    ○笛吹説明員 先ほど申し上げたとおりでございます。
  497. 帆足計

    帆足分科員 認められたわけですか。ちょっと私聞き落としましたが、笛吹さん、何とおっしゃいました。
  498. 笛吹亨三

    ○笛吹説明員 先ほど申し上げたとおりでございます。
  499. 帆足計

    帆足分科員 それではわかりません。すなわち、帰国の道は、現状では、残念ながらほとんど困難である、これをお認めになったわけですか。はっきりおっしゃってください。
  500. 笛吹亨三

    ○笛吹説明員 道はあると思っております。
  501. 帆足計

    帆足分科員 まだ同じことを言っておるのです。アリが一匹通るくらいの道があるからといって、道があるということを言うばかがどこにありますか。人間が通れるくらいの道があるとき、初めて道があるというのでしょう。  そこで、道はあるという、どういう道がありますか。幾らかかりますか。そして一月に幾つ道がありますか。その道を示してあなたのほうにビザの申請ができますか。笛吹君、人をばかにするのはやめたまえ。私は、弾劾委員会でも何でもあなたをかけねばならぬ。官吏服務規律違反じゃないですか、そういうことをなおかつ言われるのは。笛吹さん、答えてください。そういう道は、残念ながら、国交の回復がなく、かつ旅客船がないために、ほとんど正常な道は閉ざされておる現状です、なぜこう言えないのですか。
  502. 笛吹亨三

    ○笛吹説明員 先ほど申し上げましたように、本年一月に出国しました二名の者も、北鮮のほうに入国許可はわりあい早くとれておりますし、ソ連のほうでも通過ビザをわりあい早くくれております。したがいまして、バイカル号などナホトカ航路によりまして、ナホトカ経由でハバロフスク、エールクックを通じて平壌への道は通じておるものと私は考えております。
  503. 帆足計

    帆足分科員 まだ言っているね。何人くらい可能かと言っているのです。あるいは亡命のときの特殊なパトロンがおるときは例外中の例外でありまして、普通の帰国者が五十人、百人と乗れるようなルートがありますかということを聞いているのです。二人か三人のことだったのですか。まだそれを言うならば、これは主査から注意していただかねばならぬと私は思います。何のためにわれわれは予算分科会をやっているのでしょうか。竹本さん、予算分科会はこういうことでいいでしょうか。笛吹さん、返答してください。
  504. 笛吹亨三

    ○笛吹説明員 亡命のケースとおっしゃいましたが、私は金東希のケースを申し上げておるものではございません。先ほど申し上げましたように、洪三孝、尹澄子夫婦が自由に出国いたしましたケースがいままで一件ございますので、こういうように……。これはもっと詳しく申し上げますと……。
  505. 帆足計

    帆足分科員 そういうことを聞きたくない。まず正常のルートでは九九%、貨客船においてもナホトカ航路においてもその道はないという事実を認めますか、ということです。笛吹さん、答えてください。——アジア局長のお答えでもけっこうです。
  506. 小川平四郎

    ○小川政府委員 先生の御指摘になっておられますのは、この間まで協定によって船が入っておりましたときに比べて、協定の船がなくなった場合に、それに比べて非常に不便になる、そういう点を御指摘になっておられるのだろうと思います。ただ、帰国者にもいろいろの種類の方がおりまして、ことに自費出国に変わりますれば、自費で帰れるというたてまえになりますので、自分の費用で帰れる者が全くないと言うことも、ちょっと行き過ぎではないか、その点を入国管理局次長は言っておられるのだろうと思います。
  507. 帆足計

    帆足分科員 そうではありません。千人、一万人のうちの十人も困難であるということを言っているのです。千人のうちの十人も困難である。ごく例外は、ジャーナリストとか、非常に富裕な人とか、パトロンのついた人とか、そういう人だけがそういうことが可能なのであって、普通の一般の民衆にはほとんど絶対に不可能である。どうしてこういう事実をごまかすのでしょう。一体こういうことで予算分科会の時間を費していいものでしょうか。ほとんど不可能なんです。お金があってもほとんど不可能なんです。ましてやお金のある人はごく限られております。それからイルクーツクから先は不安で、よほどこれも特殊な連絡のある人でないと、不可能な現状です。私は全部調べてみたわけです。あなた方はどこでお調べになりましたか。——その助言される方は、それは何課長でいらっしゃるか。
  508. 野田英二郎

    ○野田説明員 北東アジア課長でございます。
  509. 帆足計

    帆足分科員 担当課長から聞いてもいいのですが、正確なところを言ってください。あいまいな形容詞を——万葉集を論じているわけではありませんから、率直に言えばいいじゃないですか。
  510. 野原正勝

    野原主査 主査から、先ほど帆足さんからお話がありましたので、私からちょっと発言いたしますが、先ほど来のお話を聞きますというと、朝鮮の方々がかなり大ぜいの人が出国を希望しておる。しかし、現実にはほとんどどうも帰る道が閉ざされておるというように伺ったのですが、それについてはいろいろな状況もあろうと思いますが、とにかく人道上の立場から見ましても、できるだその希望にこたえてやるというような配慮が必要であろうと思います。いままでのお話を聞きますと、どうも当局側の態度は、いささか不親切なような印象を受けました。ここでいま直ちにこれに対するお答えは困難かと思いますが、この問題に対しましては、どうでしょうか、帆足さん、たいへんお怒りのようですけれども、外務省におかれましても、あるいは法務省におかれましても、とにかく人道上の立場から、朝鮮の引き揚げ問題等は今後できるだけ善処していただく、私からもそのことをお願いしておいて、この辺でひとつこの論争は一応ピリオドを打っていただかないと、時間の関係が実は困りますので……。
  511. 小沢辰男

    小沢(辰)分科員 議事進行について。  ただいまの点は、主査のおっしゃるようでいいと思いますが、もう時間ですから、最後に、外務政務次官がおられるわけですから、政務次官から帰国の問題についてのいまの主査のようなお話の結論をおっしゃっていただいて、それで時間がきたんですから、外務委員会なり何かの問題に移していただいて、ひとつこれで帆足先生の質問を終わっていただきたい。
  512. 帆足計

    帆足分科員 同僚小沢分科員の御親切な御助言に感謝します。また主査のいまの人道的に善処せねばならぬというおことばにも、私は感謝いたします。それは分科員として、党派を越えて確認なさるでございましょう。ただ、現在その道がないという物理的、現実的事実、この事実をなぜごまかされるか。それは現実に帰る方法は、千のうちの一人もむずかしい現状である、その事実だけ確認していただきたいのです。ごく少数の例外中の例外はあるでしょう。世の中に例外のないものはありません。しかし、二十人、三十人、五十人と一月に行くような例外は、この道は閉ざされておってない、こういうことを申し上げておるわけです。小川さんにはよくおわかりと思いますが、だれがナホトカとか、丸特船とか、誣罔の言を専門家の私に対して、私がこれほど調べていることに対して、どうしてまだ笛吹君が言いがかりをつけるのでしょう。あなたは右翼ですか、まさか右翼でもないでしょう。またはにせ大学色ですか。またはうそつきですか。この道はほとんどない。しからばどうすればいいかということは、今度は次の問題ですから、それはいま委員長のおっしゃったとおりです。しかし、この地理学的事実をなぜごまかそうとするのか。これは外務委員を侮辱するものと言わねばならぬと私は思いますから、委員長、ことばを重ねて恐縮ですが、いまの結論には感謝いたします。しかし、ファクトはファクトですから、ほとんど帰る道がないという歴史の、及び航海の現状を、それをことさらに口をつぐむのは何ゆえであるか。けしからぬと思うのです。それだけを結末を聞かしてください。
  513. 藏内修治

    藏内政府委員 帆足先生にお答えを申し上げたいと存じます。  北朝の帰還協定が非常に不幸にいたしましてコロンボにおいて決裂をしたことは、御承知のとおりでございます。この決裂をいたしましてあとの収拾と申しますか、対策をいかがするかということにつきましては、まだ政府の関係各省を通じて政策的にこうしようという最終的結論に到達をいたしておりません。したがいまして、関係各省といたしましては、それぞれの立場におきまして自主的な発言を今日まで繰り返してきたのが現状でございまして、その点につきまして先生の御了解をいただけなかった御答弁が、法務省から出たと存じております。御指摘のとおり、現状と申しまするか、入管局次長の申しました自由出国の方法によりますれば、現在帰りたいと言っておりまするいわゆる北鮮系といわれておる朝鮮公民の非常に多数が帰国困難であるという事実は、私も率直に認めねばならないだろうと思います。したがいまして、この現状に立って、いかにしてこれらの人々に帰国の道を開いてやるかということが、非常にむずかしい問題でございますが、これにつきましては、関係諸国も、国際情勢もございまするので、最もよいタイミングのときに最も賢明なる方法を講じたいと思うわけでございまして、これにつきましては、関係各省において将来できるだけ早く善処いたしたいと思いますので、御了承をいただきたいと思っております。
  514. 帆足計

    帆足分科員 他の議員の質問もございますから、いまの外務次官の御答弁をもって私の発言は、事実は確認されたものとしまして、とにかく笛吹さん、ひとつ学歴詐称などと言われないように、よい官吏になってください。小川局長も、私の言ったことは調べ上げたことですから、こういう誣罔の言に迷わされないように、問題は委員長があとをどう善処するか、これにかかっているということを御了解願いまして、多少失礼なことも申し上げましたが、これでもって質問を終わります。
  515. 野原正勝

  516. 竹本孫一

    竹本分科員 大臣が見えるまで簡潔にお尋ねをいたしますから、ひとつ簡潔に答えてください。  ケネディラウンドが実施された場合に、中共貿易関係においてはいかなる差別というか、結果において格差が出てくるかということが一つ。それから次には、関税定率法の改正等の手段で、大豆や銑鉄についてはこういう救済措置を講じようというお考えのようであるけれども、それでどの程度に完全に救済されるのかどうか。並びにその他のものについては、救済がされない残ったものについては、どうするおつもりであるか、それをお聞きしたい。
  517. 鈴木文彦

    ○鈴木説明員 お答えいたします。  ケネディラウンドの結果引き下げられました関税が、どの範囲にわたって適用されるかということでございますが、日本の法律の立て方から申しまして、ガットその他二国間の最恵国待遇を与える義務のある国に対しましては、当然のことながら、このガットの結果である……。
  518. 竹本孫一

    竹本分科員 いや、中共関係だけでよろしい。どれだけの差別になるかという具体的な点。
  519. 鈴木文彦

    ○鈴木説明員 大ざっぱに申し上げまして、中共からの輸入品のうち、大体四〇%が最低税率の適用を受けないというかっこうになりますが、先ほどの質問のときに私お答えいたしたかと思いますが、そのうち銑鉄及び大豆につきましては、別途関税定率法の一部を改正する法律案を今国会に提出しておりまして、それが御承認を得られました場合には、この二品目についての関税が低い、つまりガット税率と同じ税率が適用される。その結果、先ほど申しました四〇%のうちの半分二〇%がさらに最低税率の適用を受ける。したがいまして、残る二〇%について格差が残るというかっこうになるかと思います。
  520. 竹本孫一

    竹本分科員 残る二〇%については、いかなる救済措置を考えておられるかということを伺いたい。
  521. 鈴木文彦

    ○鈴木説明員 その残りました部分につきましては、具体的な品目に即しまして、その品目について国内の関連産業に対する影響なりあるいはそれに対する需要供給の動向を考慮いたしまして、当該品目につきましてガット税率を適用することが適当であると日本政府において判断する場合において、その品目について最低税率を適用するというかっこうに、法案が国会に提出されることとなると思います。
  522. 竹本孫一

    竹本分科員 そうすると、残る二〇%について必要であり、また有益であるというものについては、関税定率法をあらためて一つ一つ改正をしていこう、こういうことですか。
  523. 鈴木文彦

    ○鈴木説明員 そのとおりでございます。
  524. 竹本孫一

    竹本分科員 ところが、これは朝鮮のお帰りの問題と同じように、議論としては筋が立っておると思うのです。しかし、実際問題として見れば、その二〇%に当たる品目は何種類あるか。またそれについて国会が毎日毎日開かれて法案が通るわけでもないのだから、実際問題としては——議論としては、二〇%について必要なものについては適宜措置を講じますと言えば、一応の答弁になりますけれども、実際問題として、品目の数から考えてみても、国会の審議のテンポから考えてみても、なかなか間に合わぬだろうと思いますが、どうですか。
  525. 鈴木文彦

    ○鈴木説明員 御指摘のごとく、品目全体について一律に最低税率を適用するというかっこうでこの問題が提起されるかどうか、私必ずしも自信がございませんが、おそらく品目に即しまして、その輸出品目としての重要性、ないしは国内における需要の強さ、あるいは今後の貿易の伸び、いろいろな点を考慮いたしまして、ある具体的な品目について要望が強くなるというかっこうが自然かと思います。したがいまして、それらの品目の希望の強さに応じまして、品目を検討する場合には、ある国会の開会の時期との関連もありまして、具体的な品目が幾つになるか、そのときの状況によってきまると思いますが、一括してこれらの品目全部について最低税率を適用するかどうか、ということになるというふうには必ずしも考えておりません。
  526. 竹本孫一

    竹本分科員 要するに、二〇%の救済措置は漸次必要に応じて講ずるというのだけれども、実際問題としては、それは時間的に非常なおくれが出たりズレが出たり、いろいろ困難があるということは、あなたもお認めになっておるわけでしょう。
  527. 鈴木文彦

    ○鈴木説明員 そのとおりでございます。
  528. 竹本孫一

    竹本分科員 ちょうど大臣もお見えになりましたから、この問題を早く片づけますが、そうなりますと、そういう不便があり、困難があり、いろいろまずい点が出てくるのだから、そこでこれは条約局長に聞くのがいいのかどうかわかりませんが、便益関税というような措置で一括して救済するということは、どうしてできないのであるか。これについては、おそらく国交がないのだという議論がまた出るのだろうと思うけれども、それならば、国交を回復していない場合には、一切そういう取扱いは、いかなる国も、いかなる場合にも、日本もやってないかどうか、その辺をひとつ。
  529. 鈴木文彦

    ○鈴木説明員 便益関税は、日本の法律のたてまえ上、二国間条約その他で最恵国待遇を約束し合ってない国に対しましても、当該国が日本の輸出品に対しまして何ら差別してない、むしろ有利な待遇を与えているという場合には、政令で国及び貨物を指定しまして、最低税率、つまりガット税率を適用することが可能になっております。ただ、わが国が外交関係のない、つまり承認してない国もしくは地域につきましては、これらの国の日本の輸出品に対する待遇がどうであるかということを詳細に知る方法がありませんほか、日本に対して有利な待遇を確保する外交手段もないというために、これらの国の産品に対しては特定税率を適用するというかっこうになっております。特にそれらの国を差別するという趣旨からその特定税率が適用されるということではなくして、法律の立て方から、結果としてそれらの国に対して特定税率を適用されるということになっております。
  530. 竹本孫一

    竹本分科員 私が聞いているポイントをそっくり言ってください。いまおっしゃるような前提について、国交は中共との間にはまだ回復していないのだから、それは一切そういう措置を講ずる余地がないというふうにおっしゃるのであるか。まだおっしゃるのであるならば、国と国との国交が開けていない場合には、一切の外交関係あるいはそういう協定関係というものはないという前例であるかどうか。英国の場合でも、満州国の場合でも、あるいは交通通信関係の場合でも、そういう例があるでしょう。法的な説明を聞いているのです。事実を聞いているのじゃない。
  531. 鈴木文彦

    ○鈴木説明員 国交のない国に対しては、便益関税を供与をいたしておりません。
  532. 竹本孫一

    竹本分科員 それができないかできるかということを、法律解釈を聞いている。また、そういう例が外国にはないかということも聞いている。これは法律解釈です。
  533. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 おくれて参りまして、申しわけありませんでした。  関税定率法の解釈の問題だと思いますが、その点につきまして、現在私、有権的な解釈がどうなっているのか、便益関税が適用できないのかどうか、私ども解釈しているところでは、できないと理解いたしておりますが、有権的にそれが正式な解釈であるかどうかにつきましては、現在はっきりとお答えできない、その点まだ十分存じておりませんということを申し上げざるを得ないかと思います。  それからただいま先生の御指摘になりました、ほかの国でそのような制度があって、国交のない国に対しては便益関税を適用していないかどうかということでございますが、ほかの国で便益関税という制度を持っていて、しかも国交のない国に適用しているかいなか、私ども調べましたところでは、必ずしも便益関税というような制度がなくて、一本の税率にして適用をされているという国もあるようでございます。したがいまして、ただいまの先生の御質問に対して必ずしもまっすぐにお答えしたことにはなりませんけれども、そういう点で御了承いただきたいと存じます。
  534. 竹本孫一

    竹本分科員 便益関税の問題も、通商協定といったような問題も同じでイギリスなんかの場合には相当弾力性があるのではないか。そういう例からいって、初めから便益関税はもう中共には与えることができないものだという前提は、法律的に再吟味、再検討を要しないかということを、ぼくは問題にしているわけですね。一応困難であることはわかりますよ。しかし、先ほど来大臣も、非常にきょうは前向きに御答弁になっておる。そういう空気の中で、またケネディラウンドというものが突然ではないかもしらぬが、突然実施されると、そういうことのために格差ができますね。そういう格差を埋めていくのに、大臣おいでにならなかったけれども、二〇%のものについては救済措置を講ずる。あと二〇%のものについては、大豆、銑鉄以外のものについては一つずつさがして考えていく、こういうことなんです。それじゃ間に合わぬから、間に合うように、しかも政治的に考えれば、中共を特に差別をした結果にはなるけれども、差別した意味ではないのだということを事実で示すためには、あるいは便益関税といったような方法が考えられるじゃないか。ただし、それは従来の常識からいえば困難です。しかし、吟味してみれば、いま申しましたように、イギリスの通商協定なんかの場合にも、そういう例があるようだ。また、日本でも通信あるいは交通関係の協定等については、必ずそういう例があるとぼくは思うのです。そういう意味からいって、法的にはなおこれは困難ではあるけれども、絶対不可能ではない。再検討する理由があるのではないですか。それならば、それを再検討してみたらどうですか、こういう御質問をしたのです。大臣にひとつ御答弁願いましょう。
  535. 三木武夫

    三木国務大臣 お話しを聞きますとごもっともな点もあると思って、これを関税法のたてまえから事務当局にもいま打ち合わせをしたのですが、中共は二つの関税があって、高いほうと安いほうがある、日本のほうは高いほうをかけている、そういう場合に、便益関税を適用することが法律的に困難であるということを事務当局が申しておるわけです。したがって、法律的に困難であるということになれば、なかなか実現はむずかしいわけでございます。したがって、これは何か期待をあなたに持たすような答弁は、ちょっとこの段階ではできにくいと思います。
  536. 竹本孫一

    竹本分科員 関税が高いという問題は必ず出る問題なのですけれども、御承知のように、中国はすべて国営経済ですね。だから、この入り口で関税をたくさん——高いほうをわざわざかけてコストを上げれば、私企業の場合には私企業の負担で済むわけですね。ところが、国営経済の場合には、結局高い関税をかければ、国が払わなければならぬわけですから、国の経済のコストが上がるわけです。だから、高いと低いとかりにあったとしても、よく話をしてみれば、中共が特にわざわざ高い関税をかけるというようなばかな態度をとるはずはないとぼくは思うのです。それは私企業に負担させるのじゃない、国が入り口で関税を高いものをかければ、国の経済のコストが——自分の責任においてかぶっていかなければならぬ、コストが高くなるのですからね。そういうことは経済原則で成り立たない。だから、私は、これは中共が特に高い関税をかけておるということでなければ、いまの政治的理由によって、高い関税をかけているからこちらも特恵的な考え方はできないのだという理由はなくなるのです。一方また、中共といったような国交の回復してない国との間には、これはまたむずかしいのだといっても、私の言っているように例がないわけじゃない。こういうことを含めて、ただ従来のあり方、在来の考え方と在来の外務省のワクの中だけで考えずに、ひとつ検討してみたらいかがでしょう。外務大臣にその点だけ伺います。
  537. 三木武夫

    三木国務大臣 実際問題ですと、向こうがよくわからぬ点もありますよ。だから、そういう点で研究はいたしてみます。
  538. 竹本孫一

    竹本分科員 これはひとつ前向きに、私は決して無理なことを言っているわけじゃないですから、検討してみてください。法律的並びに政治的にも検討していただいて、先ほどの前向きの態勢を生かしていく一つのてこに使っていただきたい、こういうことでございます。  次に、本論に入りまして、これは大臣のお得意のところでございますから、はっきり伺いたいのですが、わが国の輸出を今後長期間伸ばしていくためには、特に私どもは核のかさというのに対応いたしましてこれは私の使ったことばですけれども、ドルのかさに入っているばかりが能じゃないということで、EECやEFTAに対抗するような新しい太平洋の自由貿易地域というか、われわれの自主的な、経済圏とわれわれは呼んでおりますけれども、そういうものをひとつ構想すべき段階に来た。三木さんのよく言われるようなアイデアを具体的な政治の日程にのばせなければならぬ時期になってきておる。私は特にあとで申し上げますが、ドル危機を前にして特にそういうように思うのでございますが、しかし、それはアイデアばかりであってはいけないので、日本アメリカ、カナダ、豪州、ニュージーランドだけでもよろしい。そういうところで、ひとつ関税その他の点で、まずとりあえずの第一歩として、貿易の障害を除いていくためには、EFTAやEECの向こうが張れるといったような経済圏の確立に一歩前進する具体的な手は、何かお考えになっておりますか。この点だけ伺います。
  539. 三木武夫

    三木国務大臣 アジア太平洋構想というのは、私は、日本として果たすべき役割りとして大きな方向である、これ以外に道はない、こう考えております。ただしかし、これは大構想でありますから、一朝にしてはできない。いま太平洋の先進五カ国の間で、これは自由貿易圏の問題も、この一月にエコノミスト、学者などが寄って、そして東京会議が行なわれたのであります。そのときには、いろいろな問題がそこに出たわけでございます。また、最近にはシドニーで五カ国の経済委員会が開かれることになっております。日本の永野重雄君が会長をしておるわけであります。したがって、この太平洋先進五カ国がどのように貿易を拡大し、あるいは経済的な協力を進めていくかということが、具体的な日程にのぼりつつあるわけでございます。したがって、そういう会議などを通じて、自由貿易圏の構想であるとか、あるいはまた太平洋投資銀行の構想であるとか、あるいはまた先進国の中での出資による肥料回転基金とか、いろいろな構想が出てきつつあるわけでございます。これはいままでそういう五カ国が一緒になって共同の問題としていろいろな問題を討議するようなこともなかったわけでありますから、したがって、御指摘のような自由貿易圏というのも、これは一つの大きな検討の課題である。いまそういう問題がいろいろと興味を持って議論をされておる段階になってきたということで、これをいますぐ急に進めていくということについては、いろいろな障害が私はあると思う。五カ国が、気持ちの上からまだそうところまで来てない。そういうことで多少の時間はかかると思いますが、確かに検討に値する一つの課題であると考えております。
  540. 竹本孫一

    竹本分科員 私は、大臣の御説明もよくわかりますが、しかし、せっかく三木さんがそれだけの構想を持っておられるのだから、三木外相時代に、この太平洋経済圏の問題について、これだけは一歩前進したという何かがほしい。これは三木さんの点数かせぎだけで言うのではなくて、やはり日本の立場からも、あるいはアジアの将来からも、何か一歩前進させたいと思うのです。それで私が伺っているのは、このラインからそういう方向について一歩前進をしたいと思っておるのだというアイデアに興味を持つとか関心を持つとかいうことでなくて、さらに具体的な一歩をここで踏み出して、たとえば民間でアジア共同投資会社がある、あるいはそれに向こうを張って僕はこちらの考えがあるとか、あるいはその考えをぜひまとめていくためにこれだけの手を打っておるとか、何かそういう具体的な展開はありませんかということを聞いています。
  541. 三木武夫

    三木国務大臣 これには多少の時間をおかけ願わないと、その前に日本の貿易の自由化の問題もありますし、各国ともすぐいきなり自由貿易圏というところまで持っていくのには、日本自身でも解決しなければならぬ……。
  542. 竹本孫一

    竹本分科員 芽を出してくださいと言っておるのです。
  543. 三木武夫

    三木国務大臣 だから、芽を出せるように努力をいたしましょうということで、このためには日本だって相当腹をきめて、そういう提唱をする以上は、貿易自由化ということに思い切った前進がなければ提唱もできないわけでありますので、多少の時間が、そういう芽を出すのにかかるという御理解は賜わりたいと思います。
  544. 竹本孫一

    竹本分科員 もう一つ欲ばって言いますが、芽を出すのがなかなかむずかしい、これもわかるけれども、それでは芽を出させるために、たとえば官民一体のこういう調査機関をつくるとか、推進機関をつくるとか、ただ演説の中で関心を示されるだけでなくて、なるほどあそこからあしたのアジアができていくのだという足がかりというか、手がかりというか、何かそういうものは考えられませんか。
  545. 三木武夫

    三木国務大臣 一つは一月にあった、エコノミストであるとか学者などが寄った太平洋——名前は何かついておったと思いますが、とにかく太平洋の先進五カ国の人々が寄ってきて、自由貿易圏の問題も話題になりますし、何かやはり五カ国の経済貿易の面で、これを関係を緊密にし、拡大していくような方途を研究しようということで、これはこれ一回限りの会議でないのです。これからずっとやはり続けていこうということでありますから、これも一つのいま御指摘のようなことになり得ると思います。また、太平洋経済委員会のほうも、いますぐにというよりかは、何かやはり協力する体制をつくろうではないかということで、ここもまたいろいろ問題を研究されるし、またアジア自身からいえば、近く東南アジア閣僚会議とか、そういうものも来月ある予定でありますから、   〔主査退席、小沢(辰)主査代理着席〕 そういうみなが一ぺんにアジア太平洋を結びつけるというところまではいっていないけれども、アジアと太平洋でいろいろな学者あるいは経済人の間に何かやはり生み出そうという機運は相当に高まりつつあるということは、われわれも喜ぶべきことだ、われわれとしてもそういう空気を助長して、何らかのものを生み出さなければならぬと考えておる次第でございます。
  546. 竹本孫一

    竹本分科員 せっかくの御答弁だし、大臣のお気持ちもわかりますけれども、ただ、私も欲ばっておるわけだから、われわれとしては何かあそこを押していけば、いまは小さな芽だけれども、将来はこういうふうになるのではないか。私は時間がないのできょうはドルの問題に触れられませんが、結論から申しますと、ポンドの支配した時代は終わった。ドルの支配しつつある時代も、大きな亀裂がいま入りつつある。そうすると、次は何だ。アジア太平洋経済時代になるかもしれないというのに、万国博もずいぶん準備がおくれているようだけれども、それ以上に、今度はアジア太平洋経済時代——三木さんが演説をしただけで、何の受入れ態勢というか、推進態勢もなかった。しかも時代は急転直下もしこれでドルの切り下げなんということになりますと、大きくアジア経済圏の問題が具体的日程にのぼってくる。それにはあそこを踏み台にし、手がかりにし、前進基地にして問題を展開していくのだという、何かきっかけがなければうそじゃないか。それがアイデアがはっきりまだ確立されない。よくわかります。それならば、そのアイデアを打ち出していく推進機関というか、そういうものぐらいは考えられないと、いつまでも大臣の頭の中だけにあるのだということでは、ぼくはちょっと不十分だと思うのです。その点最後にもう一つ伺いたい。
  547. 三木武夫

    三木国務大臣 これはたとえば東南アジア閣僚会議にしても、太平洋アジアの閣僚会議にしても、みんな目を向けておる方向は一緒ですよ。そういうことで、これは一番最初の基礎になるものは、アジア太平洋地域の連帯意識ですね。これは非常に高まりつつあります。豪州、ニュージーランドのごときは、アジア太平洋のコモンウエルスのメンバーというよりも、アジア太平洋のメンバーである、こういう自覚というものが非常に確立されたような気がいたすのであります。こういうことで、一ぺんにアジア、太平洋両方を結びつけた大きな機構というものは生まれてないが、その機構をやがて生むための、太平洋地域あるいはまたアジア地域におけるいろいろなそういう大きな構想を生むための一つ会議体というものがだんだんと成果をあげるような方向に発展しつつあるということは言えると思う。だから、ただ私の頭の中にあるというだけではなくして、これは非常に具体的な一つの政治の日程にのぼりつつある、これはもう否定するわけにはいかないような、現実として生まれつつあるということが言えると思います。
  548. 竹本孫一

    竹本分科員 のぼりつつあるんじゃなくて、ぼくは三木さんがのぼせつつあるというような積極的なリーダーシップがほしいということを申し上げているのですから、ひとつ善行していただきたいと思います。  時間がないから、簡単にあと二つだけ聞きたい。  一つは、輸入課徴金の問題もいろいろ出ましたけれども、ちょっと私、これは向きが変わりますけれども、通産大臣もされましたし、三木さんは何でも御存じだから伺っておきたいのですが、日本の輸出秩序をもう少し確立するという問題なんです。これはとにかく日米親善も大事だけれども、日々親善のほうが大切じゃないかというようなことばもありますように、私はいろいろアメリカあたりのかってなことに対しては皆さんと同様にいかりをもって感じておりますけれども、じゃ、日本のほうには、全然反省すべきものがないかというと、そうでない。もう少しこれはいまのうちに——日米だけじゃありませんけれども、各国との親善、友好、貿易促進を考える上からいって、何かここで輸出秩序の確立ということしに、非難を受けないように、たたかれる前に、あるいはボイコットされる前に、あるいは反ダンピング法を適用される前に、もう少しこちら自身の秩序づけもやらなければいかぬと思います、そういう点については、外務省はいかなる努力をしておられるかということをひとつ……。
  549. 三木武夫

    三木国務大臣 御指摘のとおり、やはり日本は貿易によって国を立てていくよりほかにはないわけですから、そうなってくると、輸出秩序というものは、長い期間にわたって日本の貿易というものに対し影響力を与えるわけですから、第一番はやはり貿易業者の自覚というものが必要です。これは自由経済ですから統制的なことは非常にやりにくいので、いろいろそういう貿易業者の団体というものもあるわけでありますから、そういうものを通じて業者自身がやはり自制していくということが、問題の中心だと思います。こういう点で、業界みずからが輸出秩序を確立するための呼びかけというようなものも、あらゆる機会にやるわけです。それはなぜかといったら、外交にはね返ってくるわけです。こちらから見れば、輸出にいろいろな制限をすることはけしからぬということで、われわれも抗議をするわけです。また先方からわれわれに言われることは、輸出もいいけれども、あまり秩序を無視するようなことは先方としてもやはり困るという苦情をわれわれは聞くわけで、そういう点では、やはり業界自身の秩序を確立しなければ貿易は長続きはしない、そういう自覚のもとにやはりみずから秩序を確立するための努力を民間が積むような、こういうことをいろいろな面でわれわれが助長していくことが根本だと思います。
  550. 竹本孫一

    竹本分科員 これで最後にいたします。  時間がありませんから大臣に一つだけ伺いますが、大臣の通産大臣時代でもそうであったか、あるいは今後もそういうお考えをお持ちかということで、いまの問題に関連いたしまして、輸出共販組合というのがありますね。これをぼくは抜本的に組みかえる、改組するというか、強化するというのか知りませんが、とにかく輸出秩序の整正のにない手にするというくらいの感覚がないと、なかなかこれはうまくいかぬと思いますが、その点についての大臣の善処の御決意ありやいなやだけお伺いして、最後にいたしたいと思います。
  551. 三木武夫

    三木国務大臣 輸出組合のことを言われておるのだと思いますが、確かに輸出組合というものが、貿易の秩序の上においていろんな自主的な規制をやる余地はあると思います。こういうものが、ただばく然とした業界というものから、さらに輸出組合などを通じてみずからの秩序を確立するために、自主的な規制というものは非常に効果があることで、これも確かに秩序確立のために役立つことだということは、御指摘のとおりだと思います。
  552. 竹本孫一

    竹本分科員 終わります。
  553. 小沢辰男

    小沢(辰)主査代理 松本善明君。
  554. 松本善明

    松本(善)分科員 私の外務大臣に対します質問の第一は、まず沖繩に在駐しておりますアメリカのB52に関する問題でございます。  B52は連日ベトナム爆撃に出撃し、沖繩県民はじめ全国民に大きな不安を与えております。わが党と社会党、公明党は、三党共同して、沖繩を含む日本国民の強い要望にこたえて、アメリカ空軍B52の沖繩からの撤去を要求する決議案を提案いたしました。外務大臣はこの決議案に賛成であるか反対であるかをお答えいただきたいと思います。
  555. 三木武夫

    三木国務大臣 直ちにB52が撤去せよという決議に賛成はいたしません。しかし、私は繰り返し申しておるように、やはり沖繩の人たちがB52に対して持っておる、核兵器、戦争に巻き込まれるのではないか、こういう不安に対しては、われわれの考えでは、そういう不安はないという判断の上に立っておるのですから、できるだけわれわれとしてもそういうことの理解を求めることは必要でございましょう。しかし、住民の人が、そればかりでなしに、その他にもいろいろ不安に思っておるという、この現実は無視することはできません。そういうことでアメリカにも善処を申し入れて、アメリカも、これは一時的なものであって、永久の基地にする意思はないという意思表示をわれわれのところにいたしてきておるのでございます。したがって、われわれとしても、いますぐにB52の撤去を求めるという考えはございませんが、沖繩の人たちの不安というものに対しては、不安の原因というものに対して、できるだけ現実をよく理解してもらうという努力はいたさなければなりませんが、一方において、沖繩の住民の持っておる不安というものに対しては関心を持たざるを得ないと考えております。
  556. 松本善明

    松本(善)分科員 昨年の日米共同声明は、沖繩の米軍基地が日本及び極東の安全に重要な役割りを果たしておるということを認め、今国会でも政府は一貫してこういう答弁をされております。一方、外務大臣はきょうも言われたわけでありますが、委員会で、基地周辺の住民が不安を持つことは、基地の果たす役割りを弱めるという答弁をしておられます。このB52の在駐に不安を感じ撤去を要求するということは、日本及び極東の平和と安全に役立っているといわれている、この沖繩の米軍基地の役割りを阻害するということになると外務大臣は考えておられるか。
  557. 三木武夫

    三木国務大臣 このB52が極東地域に対して軍事的な役割りというものは、あると思います。しかしながら、やはり軍事的な役割りというものを切り離しては考えられないのではないか。軍事だということ、軍事的役割りというものが有効に果たせる陰には、住民の理解、協力というものが必要であって、それを軍事だけだ、あるいはもう住民の気持ちはどうと軍事だけだというふうには切り離せないので、軍事的な要請はあっても、その軍事的な要請を有効に働かすためには、やはり住民の理解、協力が要るのだ、これを一体に考えざるを得ない問題だと考えております。
  558. 松本善明

    松本(善)分科員 琉球立法院は全会一至でB52の撤去を決議しておるということは、御存じのとおりだと思います。ところが、佐藤首相は立法院代表に対して沖繩住民を説得するよう要請しておりますし、アンガーアメリカ高等弁務官も同趣旨の発言をしております。外務大臣も、いまこの住民の不安は根拠のないものであるということを言われましたけれども、B25の撤去を要求する住民の考えは間違っていると政府は考えているのかどうか。
  559. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、B52が常に核兵器を搭載しておるとは思っていないのです。核兵器をいま極東で使わないということを明らかにしておるので、使わないものが常に核兵器を積み込んでいるとは考えられない、こういう立場です。  それからまた、戦争に巻き込まれると言いますけれども、実際問題としてどこの国かが沖繩のアメリカの基地に攻撃をしてくるということに対しては、松本さんの場合はお考えがあるのかもしれませんが、私にはちょっとそういう事実は考えられないことである。不安というものは、そればかりでもないと思いますよ。いろいろな不安がほかにもあると思うが、一番大きな不安はそういう不安であるということを上京された人々から聞きました。そのときに、私もそういう話を率直にしたわけであります。したがって、それ以外にもいろいろな不安の原因があると思うが、一番大きなのはそういう不安でありました。しかし、人間が不安に感ずることを、おまえが感ずることは間違っておるというふうなことは、これはそう感ずるのですから、その感じ方を間違っていると頭ごなしに言うことは、私としてはそういうことは好ましいとは思っていない。しかし、その事態を正確に理解するということは必要ですよ。理解してもらうための努力もしなければならぬが、とにかく感ずるのだという、その感じ方が間違っておるということで、一言のもとにその考え方を変えろということは、あまりにも人間というものに対しての理解がないことばだと思います。
  560. 松本善明

    松本(善)分科員 沖繩立法院が全会一致できめて、それが間違っているということは言えないということであるならば、外務大臣、やはりこれは現地の人たちが思っているのがほんとうじゃないかというふうに深く考えて、この決議を尊重し、三党決議案に賛成すべきだろう、そこまで踏み切られるべきだろうというふうに、私は思います。  ところで、いまB52は核を持っていないということを言われましたけれども、そうすると、B52が日本本土へ来駐ということは、断われないということになりますか。
  561. 三木武夫

    三木国務大臣 B52が日本へ来るというようなことは、台風とかいろいろなことは別として、いままでのところもございませんし、B52が日本に常駐するというような予定のあることも聞いておりません。したがって、これは向こうが何もそういう計画がないのに、これを来れば認めるとかなんとか言うのも適当でない。そういう計画はないので、いまは何も考えていない。
  562. 松本善明

    松本(善)分科員 核を持っていなければ、何もそんな慎重に言われることは一つもないじゃないかと思うのです。アメリカの核を持ってない飛行機は、幾らでもやってきています。なぜそういうふうに慎重に発言されるのですか。
  563. 三木武夫

    三木国務大臣 慎重にというのは、何もアメリカのそういう核を積んでおる危険があるから言っておるのではないのです。それは積んでないのです。使うことの必要がないのに常に積んで歩く必要はないのではないかという、そういう論理からして、私は積んでないと思う。しかし、アメリカのB52にしてもその他のなににしても、向こうが何も予定がないのに、先にこれをいらっしゃいと言うような必要もなければ、これが何も困るという理由も——それは核を積んでなければ、そういう理由もないわけですし、まあ何にも計画のないときにいろいろこっちから言う必要もないじゃないかというだけの意味です。核を積んでおる懸念があるから、そういう慎重にするという、そんな意味じゃありません。
  564. 松本善明

    松本(善)分科員 B52は、御存じのとおりに、水爆飛行のためにつくった飛行機であります。これが来るということは、核を持ってくるのが普通だから、それは外務大臣が慎重に言っているのだ。それはそういうふうに言うと前後矛盾するものだから、外務大臣はそういうふうに言われていると私は解さざるを得ませんけれども、質問としては次に安保条約と事前協議制の問題について伺いたいと思います。  御存じのように、一九七〇年はいわゆる安保条約の再検討期ということです。安保条約がほんとうに日本国民の安全を守っているのか、それとも日本国民を危険な戦争の道に連れていくものであるかということを、あらためてすべての国民の関心事になって検討するということになるのじゃないかと思うのです。そして、事前協議がはたして政府のいうように日本が戦争に巻き込まれるのを防ぐ歯どめの役割りを果たしているのかどうかと、これも重大な関心事になってきております。こういうことでありますので、この安保条約と事前協議の問題について若干質疑をしたいと思いますけれども、この国民すべての関心事について、あらためて外務大臣が、一緒に検討するというつもりで、問題を回避しないで、率直にお答えいただきたい、こういうふうに思います。本日は、私は、事前協議のうちで、特に日本が戦闘作戦行動の基地になるという場合に関してお聞きしたいというふうに思います。このために、前提になっております安保条約の六条と五条の関係、それから事前協議に関する交換公文についてもお聞きしたいと思います。  ところで、質問でありますけれども、安保条約の第六条は、日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、米軍が日本国において施設及び区域を使用することを認めている。これは安保条約の五条が、日本が攻撃を受けた場合のことを定めているのとは違うわけです。日本への攻撃とは関係がなく、アメリカ軍が日本の基地を使うことを認めるという趣旨である。しかも日本の安全に直接の関係のない極東における国際の平和と安全のために基地を使用することができるということをきめたものだというふうに思いますが、そのとおりでいいかどうか。
  565. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、そこの日本の安全及び極東の平和と安全ということを、全然日本の安全に関係のない極東の安全というものとは考えていません。それはやはり日本の安全のために、極東の平和と安全というものが日本の安全に影響を持つ、そこにやはり極東の情勢というものがわれわれとしては関心を持たざるを得ないので、日本の安全にはもう無関係であるという極東の平和と安全というものが、安保条約にいうところの極東の平和と安全だというふうには私は思わない。条約の解釈を私はさように考えておるのでございます。
  566. 松本善明

    松本(善)分科員 そうしますと、いままでにも幾つか政府答弁があるわけですね、たとえば岸元首相は、日本の安全に寄与する場合には、日本の基地が戦闘作戦行動の基地になることを認める、こういうふうに言っている。だから、これは事前協議に関して言っているわけですけれども、日本の安全に寄与する場合以外にも、戦闘作戦基地になるということを認めているわけです。結局、この岸首相の答弁というのは、日本の安全に関係のない場合でも——いいですか、よく聞いてください。日本の安全に関係のない場合でも、米軍による基地使用があるということを前提とした答弁だと思います。それから藤山元外務大臣、極東の地域の中で起こったことが、そのまま日本の安全に影響するということは言えない、こういう答弁をしているわけです。だから、日本の安全と極東の安全、平和が完全に一至をするというふうに、いままで言われたことは一度もないわけです。それについては、どうですか。
  567. 三木武夫

    三木国務大臣 私、完全に一至すると言ったら、これはいろいろな議論を呼ぶと思います。しかし、日米の安保条約を結んだということの、その結んだという根本は、日本の平和と安全というものが中心になってこの条約ができたのじゃないだろうか。極東の平和と安全というものが日本の平和と安全に影響を持つために、やはり極東というものの動向にわれわれも関心を持たざるを得ないし、そのためにアメリカが施設、区域を使う権限を安保条約の第六条において認めてあるのですから、完全に一至するかと言ったら完全に一致するとは言えないかもしれませんけれども、日本と無関係な極東の情勢が安保条約のいうところの極東の平和と安全だとは、私は思わない。それは人によったら、関係は間接的だと言う人があるかもしれません、直接完全だとは言えないじゃないかということを言われる人もあるかもしれません。人によってそのからみ合いの度合いは違うかもしれないけれども、日本の平和と安全に全然関係がないという場合に、そういうふうな場合というものは、ここでいう極東の平和と安全だとは私は思わないのであります。
  568. 松本善明

    松本(善)分科員 私が言いますのは、この安保条約六条がいっておるのは、直接全然ということをいま外務大臣は言われたけれども、直接日本の安全に関係のない極東の平和と安全ということがあり得るでしょう、こういうことを言っているのです。
  569. 三木武夫

    三木国務大臣 それはあり得ます。そのことはやはりひいて日本の平和と安全を脅かすから、そこに安保条約の根拠があるのだと私は思っております。
  570. 松本善明

    松本(善)分科員 それではもう一つ、六条の実施に関する交換公文についてお聞きしますが、この交換公文に事前協議を定め、その事前協議を要する事項の中に、戦闘作戦行動の基地になるということが入っております。これは日本が、五条と違って攻撃を受ける場合でないのに、日本アメリカの戦闘作戦行動の基地になっている、そのために日本が戦火にさらされるというようなことがないようにというために、この事前協議条項が設けられている、こういうふうに解していいですか。
  571. 三木武夫

    三木国務大臣 日本を作戦の基地に使うということになれば、これは日本に対しての報復的な爆撃といいますか、その他の報復を受ける可能性も持ってきますから、したがって、作戦基地に使う場合には、厳重に事前協議で、政府の同意がなければ作戦基地に日本を使えないという事前協議の条項を設けることは、当然だと思います。
  572. 松本善明

    松本(善)分科員 そうしますと、この六条と六条の実施に関する交換公文は、日本が攻撃をされた場合以外でも、日本が米軍の戦闘作戦行動の基地となり、そのために日本が戦火にさらされることがあり得るということを前提としているというふうに言ってよろしいのですか。
  573. 三木武夫

    三木国務大臣 戦火にさらされるかどうかということは別として、(松本(善)分科員「いわゆる戦争に巻き込まれるということです。」と呼ぶ)戦争に巻き込まれる——巻き込まれるというと、何か欲していないのにそういう戦争に不本意ながら入るという意図がありますが、この事前協議で作戦の基地として日本を許す場合というのは、これはたいへんな事態であります。非常な事態である。したがって、これは、極東に対して、日本が直接攻撃を受けなくても作戦基地に日本を使うことを認めるというときには、非常の事態でありますから、それは国民から見ても日本が非常な事態というものに遭遇しておるということが明らかな場合でなければ、日本から直接作戦の行動をするということを認めるわけはないのであります。だから、巻き込まれるといったら、何か欲しないのに国民の意思に反して戦争に巻き込まれる、そういう意味ではなくして、日本の基地を作戦基地に使うことを許すほどの事態というものは、非常な危険が日本自身にも感ぜられる事態であって、それは巻き込まれるどころか、日本の防衛のために必要である、こういうふうな、受け取り方としてはそういうものがあるから、巻き込まれるというのではなくして、日本の防衛のためにどうしてもこれは非常な事態であるという事態であって、何もたいしてそういうことをしたくないのに巻き込まれていくというような、そういう事態の中に作戦基地として日本を使うというようなことは、私は考えられない。
  574. 松本善明

    松本(善)分科員 そうすると、この交換公文にはわざわざ、この戦闘作戦行動の場合は条約五条の場合は除く、こうなっているのですね。だから、日本が攻撃された場合以外にも、日本が戦闘作戦行動の基地になって——外務大臣の言うのでは、巻き込まれるというのはいやだ、事前協議で戦争に入るのだということになると思うのですけれども、そういう言い方をすれば、この日本が攻撃された場合以外でも、事前協議で戦闘作戦行動の基地になって日本が戦闘に入るということもあり得るということを前提に六条と交換公文がきめられているのだ、こういうことでいいですね。
  575. 三木武夫

    三木国務大臣 私、全体としての松本君との考えの違いは、やはり安保条約というものが持っておる戦争の抑止力というものを高く評価するわけで、日本に対して攻撃をした場合に、その攻撃はアメリカとの間の戦争を覚悟しなければならぬわけですからね。それだけの決意をして日本を攻撃し、また日本が作戦の基地として日本を認めざるを得ないような事態が起こるということは、これはたいへんな事態ですから、まあそういうことは万々ないということが安保条約というものの抑止力だと思うのですよ。松本さんのようなことで、私がここで戦争に巻き込まれることもあるのだといろいろ言いますと、国民がいまでも非常に不安に思うのですが、もし率直な私の気持ちを言わしてもらうならば、今日の日本の防衛体制のもとで日本が攻撃を受けて、またあるいは日本の周辺に日本を基地として使うような、そういう戦争が起こるとは、私は考えてないのですよ。しかし、条約のたてまえからすれば、そういう日本が攻撃を受けた場合に、それ以外においても、アメリカ日本の基地を使いたい、作戦行動に使いたいということを言ってくれば、事前協議の対象にはなる。しかし、そのときの事前協議というものはきわめて厳格な、日本政府が何でもよろしいというのではなくして、真にこの事態というものが日本の防衛のために絶対に必要だという厳格な事前協議というものであることは、申すまでもない。これをつけ加えて言わないと、あなたの言うように、安保条約があるから、いまにも戦争に巻き込まれて、戦争がすぐにでも起こるような不安を国民に与えることは、ミスリードすると思いますから、長くなったけれどもつけ加えたのであります。
  576. 松本善明

    松本(善)分科員 いや、そこまではまだ言っておらぬのですけれども、結局私の言った安保条約六条と事前協議は、日本が攻撃を受けた場合以外でも、日本が戦闘作戦行動の基地になるということを認めた趣旨である。しかし、外務大臣の言われるのは、アメリカの武力が大きいから日本を攻撃するというようなことはあり得ないことだ、こういうことだと思うのです。だから、その問題もまたあとでやります。アメリカの武力が大きいから……。
  577. 三木武夫

    三木国務大臣 いまのところで、あなたが言われたから。それは、作戦基地になるというのは事前協議の対象になるということが適切でしょうね。作戦行動の基地になるというより、事前協議の対象になる……。
  578. 松本善明

    松本(善)分科員 もちろん戦闘作戦行動の基地になるということが、事前協議の対象になるわけです。私がいまこれから外務大臣に聞きたいことは、その事前協議で同意を与えるということです。戦闘作戦行動の基地にするということは、日本が軍事介入をするということ、あるいは参戦をするということになりませんか。
  579. 三木武夫

    三木国務大臣 こういうことだと思うのですね。これは私の政治家としての判断からすれば、日本海外に出ていかれないのですからね。兵隊を出していけない。だから、軍事的に日本の外に向かって日本の兵力を出すわけにはいかぬですから、参戦という感じは出てこないと思うのです。武力をもってこれに参加していくわけでないのですから、だから基地を提供するということであって、何かこう参戦したという判断は、少しその場合の実情に適さないのではないか。
  580. 松本善明

    松本(善)分科員 軍事介入にならないという問題については否定をされなかったわけですけれども、いままで政府答弁によりますと、日本の領域が攻撃をされたら、日本は自衛のためにその発進基地をたたくことがあるということをずっと言ってきました。この考えでいきますならば、日本が米軍による戦闘作戦行動の基地になったら、日本の基地への攻撃は当然あり得るというふうに見なければならないと思います。これは日本が戦闘状態になる。外務大臣は、これは参戦ということにはどうも感じが違うということを言われたけれども、これはどういうふうに言われても、実際上、日本が戦闘状態に入るということであります。しかも、日本は攻撃されないのに、日本が戦闘状態に入るということです。この状態に入ることを憲法九条は認めておると思われますか。
  581. 三木武夫

    三木国務大臣 憲法九条の規定は、日本自身が武力によって問題の解決をはかるということを禁止しておる条項だと思います。したがって、そのために戦力を保持しないとか、いろんな規定が出てくるわけであります。したがって、日本がそういう場合において、日本を基地に使うという事前協議の条項で、政府の同意が要るわけですからね、その同意を与えるという場合は、きわめてこれは厳格な事前協議が行なわれなければならぬと思いますから、日本が単にいつでも戦争に介入していくのだということでなくして、そういう事前協議の同意を与える事態というものは、日本の防衛に対しての重大な危機が来た場合であって、いま松本さんの言われるような、たいして日本の防衛のための危機も何も来ないのに、アメリカの極東戦略から日本がそこに入っていくというような場合は、われわれ考えられないのであります。それはやはり重大な日本の脅威、そうでなければ事前協議でわれわれは拒否する権利を持っておるのですから、したがって、それをあんまり簡単に日本が同意をするものだという前提の上に立っていろいろ考え方を発展さしていくことは、非常に国民に誤解を与えると私は思います。
  582. 松本善明

    松本(善)分科員 そうすると、この事前協議で戦闘作戦行動の基地になるということを認めるというこの事前協議での同意ですね、これは自衛権の行使だという場合でなければやらないんだ。そういう意味だから憲法違反でない、こういう意味ですか。
  583. 三木武夫

    三木国務大臣 法律的な用語はともかくも、やはり日本自身がそれを認めるというときには、日本の自衛のためである、それだけの危険というものが日本に迫ったという事態であろうと、私は考えております。
  584. 松本善明

    松本(善)分科員 そうすると、自衛のためだということを言われましたけれども、五条の攻撃を受けた場合、これは別ですね、これは全然六条と別だということになっているのですから。  それから先ほどの外務大臣の御答弁では、日本の安全と直接関係がない一いわゆる極東条項といわれています。世界に類例のないものです。日本の安全と直接関係のないいわゆる極東の平和と安全のために基地を使いたい、こう言ってくる。これに同意をするということはあり得るということを六条と交換公文は前提にしているわけですよ。こういう極東条項の趣旨で事前協議が求められてきた場合、これは絶対に同意をしないのだ、こういうような趣旨ですか。
  585. 三木武夫

    三木国務大臣 これはその場面場面の一つ条件というものがあります。なければ、いまここでどういう場合ということはちょっと想定できませんが、それに対して日本が作戦行動の基地として同意を与えるというときには、重大な日本に対しての脅威が生じたとき、それは広い意味において日本の自衛手段を必要とするような時期、これは法律的にはいろいろ議論がありましょうけれども、私の解釈では、日本の防衛に対する重大な脅威が生じた場合、そうでなければ、たいして脅威も生じてないのに、日本を作戦基地として事前協議で承認を与えるということは、私は考えられないと自分は思っています。
  586. 松本善明

    松本(善)分科員 そうすると、問題を分けて正確にお聞きしたいと思うのですけれども、これはそういう場合でなければ同意は与えられないという話は、よくわかりました。よくわかりましたけれども、いわゆる極東条項というのを、いま事前協議の関係でみな非常に問題にしているわけです。国際法学者もみんな問題にしています。この極東条項によって、たとえばベトナムなんかにしても、これは日本の安全に直接関係があるとは言えないと思いますが、こういうことについても戦闘作戦行動の基地になり得る、こういう関係に安保条約はあるのだ。そうなっちゃ困るから事前協議があるのでしょう。そういう関係にあり得るのだということは、外務大臣はお認めになるのですか。
  587. 三木武夫

    三木国務大臣 御承知のように、極東の範囲というのはやっぱり一応の一つの範囲がありますね。それでベトナムは極東の範囲には入っていない。それに準ずる地域である。だから、ベトナムの作戦基地に日本を使うために事前協議というものを申し出てくることは、私はないと思っています。いまでもそういうことはないのです。しかし、全然申し込めないかというと、それは全然申し込めないということではないと思いますよ。極東に連なっておる地域である。しかし、その場合に対しては、まだ申し込んでこないのに日本がどうするかということはいま申し上げることは適当でないと思うが、そういう場合には、その事前協議というものは、やっぱり日本はきわめて厳格な事前協議を行なわなければならぬことは申すまでもないということでございます。しかし、申し込めることは申し込んでこられる。
  588. 松本善明

    松本(善)分科員 そうすると、結局直接日本の自衛のため以外でも、戦闘作戦行動の基地に日本がなり得るということが、この安保条約の実態であります。それをお認めになったと思います。そしてこれが事前協議でこういうことになる。事前協議で同意を与えるということ、これは本来憲法でできないことだ、憲法九条に違反をすることなんだと私は考えるわけです。これが認められるかのような発言はきわめて重大だと思います。ところで、日本がその戦闘作戦行動の基地になって、米軍の相手国から日本の基地が報復攻撃を受けた場合には、今度は安保条約五条によって日本の自衛隊は自動的に防衛出動をするということになっておると思いますが、そのとおりですか。
  589. 三木武夫

    三木国務大臣 これはいろいろな場合を想定してこうやっていろいろお話しになりますが、日本がとにかく攻撃を受けたといえば、自衛のために日本の自衛隊がこれに対抗せざるを得ないことは申すまでもございません。
  590. 松本善明

    松本(善)分科員 防衛出動につきましては、自衛隊法の七十六条で一応国会の承認を要することになっております。ところがこの戦闘作戦行動の基地にするということは、いまの論議でわかりますように、事実上日本を戦争状態におとしいれることになります。この重大な基地提供によるいわゆる参戦、これが政府の一存でできるということになっている。しかもこの事前協議は、今国会で三木外務大臣答弁されているところによりますと、アメリカのイニシアチブでのみ提起をされて、日本がそれを受けて承認するものだ、こういうことを言われておる。これは日本が戦闘状態に入るかどうかということについて、アメリカのイニシアチブできまるということになるんじゃないかと思います。どうでしょうか。
  591. 三木武夫

    三木国務大臣 これはいま盛んに何か基地を提供せんならぬというふうに言われておりますが、事前協議をするということで、そういう提供をするかしないかということは日本がイエス、ノーを言うわけですから、提供することにきまっておるようなことは、これはやはり事実に違います。事前協議にかけてこられるということだけでございます。かけてきた場合に日本がいかぬと言えば、ノーと言えばそういうことにならぬですから、必ず基地を提供せんならぬという義務ではない。向こうが事前協議にその基地の提供をかけることができるということであります。日本は常にこれに対してノー、イエスを言う権利を留保しておる。それからこの事前協議の場合に、一つ言われた日本が攻撃を受けるその場合に、それは参戦とかあるいは軍事介入とかいうのでなくして、攻撃を受けた場合には当然にこれに対して防衛措置を講じなきゃならぬですが、ただそういう場合に、もし日本が基地を提供した場合に、軍事介入とか参戦とかいうのでなくして、それは基地を提供したという事実で、軍事介入だとはわれわれは認めていないのでございます。直接日本が行ってやるわけではない。しかしきわめてそれは重要な事項でありますから、事前協議というものは厳格にやらなきやならぬ。その事前協議をする場合に、第六条による事前協議というものはいろいろなアメリカの軍事行動に関することですから、その第六条による事前協議はアメリカのイニシアチブによるべきであることは申すまでもない。しかしそういうふうな危険があったような場合、日本が第四条によってやはり協議をしようではないか、こういう随時協議を日本が申し出る権利を第四条において持っておるんですから、第六条はやはり事前協議というアメリカの装備の変更であるとか配置とか作戦行動とか、アメリカの軍事行動に対して、アメリカが何かの意図を持っておるとき、意図を持ってきたときに日本と事前に相談しようという条項ですから、どうしてもアメリカ自身がそういう考えがなければ、これは事前協議にかからぬですから、アメリカが申し出てくるということが、第六条の事前協議ではそれが自然の姿だと思う。しかしそのことは、われわれは事前協議の条項というものをなるべくはずそうとして言っておるのではなくして、第四条によっていつでもできるんですから、そういう場合にはわれわれのほうから、どうもこういう形勢になっているから、したがって四条でやらぬかということを言えるのですから、常に日本アメリカに対して何も協議をすることができぬというふうに私の言っておることをとるならば、それは事実に違います。ただ条約上の解釈、交換公文上の解釈を私は申したので、常にできるんですよ。日本が第四条によって随時にやればいいのですから、何か日本がこう事前協議をなるべく避けて通ろうとしておるというような印象を国民にあなたの質問が与えるとするならば、政府の意図と違うものである。
  592. 松本善明

    松本(善)分科員 極東条項というのがなければこれはいいです。外務大臣が言われるように、日本の事前協議を認めるというのはたいへんな防衛のためだと言うけれども、極東条項があるということはそれでない、自衛のためあるいは直接日本の安全に関係のないことについて問題になっているのですよ。それについてみんなが不安を持っておるのですよ。だからいま外務大臣の言われたことは答えになってないと私は思います。よくあとから速記録をごらんになっていただけば、答えておられないと思います。そして先ほど申しましたけれども、戦闘作戦行動への基地提供というのは日本への武力攻撃を招き、必然的に自衛隊の出動が起こることになります。そうすると第一撃はアメリカが行なって、相手国は報復する。第二撃は自衛の名目で日米共同でやるということになる。そうすると、この日本の自衛隊は決してほんとうに日本の自衛のために行動するのではなくて、アメリカ軍の行動を支持して戦うという軍隊になるのだということが、この五、六条の関係ではっきりしているんじゃないかと思うのです。これは時間もありませんからもういいです。これは問題ですが、あとから……。  それでまた随時協議について言われましたけれども、随時協議とはこれは質が違うのです。全然質が違うのです。それでそのことをちょっとお話ししながら質問したいと思うのですけれども、先ほど、日本が戦闘作戦行動の基地になってもすぐ攻撃を受けることはないと言われました。これはアメリカの強大な武力が抑止力になっているという趣旨のことを述べたんだと思います。そうすると、日本の安全は事前協議というよりはアメリカの武力に依存をしている。そうであるならば、アメリカ軍が強大な武力を発揮できるようにすることがあなたの言う日本の安全のためによいということになるのじゃないか。結局米軍が日本で自由に基地使用ができたほうがよいということになる。だから事前協議の対象はできるだけ少ないほうがいい、こういうことになるのじゃないかと思う。それをいま政府がやっている。事前協議の対象がだんだん少なくなるということは、それだけ日本における米軍の自由を拡大するということなんだ。随時協議の問題と全然違います。随時協議ならしょっちゅうやるのでしょう。先ほど答弁したとおりです。六条の事前協議の対象が少なくなるということは、米軍の日本における行動の自由がますます大きくなるということです。ここのところを混同してもらってはいけないと思うのです。事前協議の対象を、米軍の行動の自由のためにできるだけ少なくしたほうがいいというふうに考えているんじゃないか、この点を質問します。時間がそうありませんから、ほかの方にも迷惑でありますので、簡潔に聞いたことをお答え願いたいと思います。
  593. 三木武夫

    三木国務大臣 そういう考えはありません。事前協議をできるだけ少なくするために、日本がイニシアチブをとって六条の事前協議をやらぬという意図ではないわけであります。われわれは、事前協議というものは少なくする多くするといっても、一つの基準があるわけですから、その基準に従って厳格にやろうという意思であるということであります。
  594. 小沢辰男

    小沢(辰)主査代理 もう時間ですから、そろそろ……。
  595. 松本善明

    松本(善)分科員 では具体的に聞きますけれども、最近の政府答弁によると、航空母艦が戦闘作戦行動に入るのは甲板から飛行機が発達したときだ。そうすると、航空母艦の寄港については、戦闘作戦行動に関する限り事前協議の対象になり得ないということなんですよ。航空母艦はどんなに来ても絶対に事前協議の対象にならぬ、これは事前協議の対象を少なくしているという解釈をやっているという証拠です。そうでしょう。それからもっともっと幾つでも証拠をあげられます。増田防衛庁長官は、あれほど足り長い航空母艦は、攻撃機なら、戦闘機が甲板から発進したときに作戦行動に入ったものであるという説に感心した一人である、こういうことを言っておられる。この考えでいけば、足の長い原子力潜水艦も戦闘作戦行動に関しては事前協議の対象に絶対になり得ない、出ていくときには戦闘作戦行動になり得ぬ、こういうことで一貫しておるわけです、このごろの政府の事前協議の対象になるかならぬかという問題についての答弁。これは空母や原潜だけではありません。日本からアメリカ兵がどんどん空輸をされております。それから負傷兵は日本の野戦病院で治療を受けております。これは実際上政府がどんなふうに言っても、これは出撃基地になっているということです。だから椎名元外務大臣も、こういう状態のときにはベトナムから攻撃を受けるおそれがあるということを現に答弁をされております。  これから質問になりますからよくお聞きいただきたいと思いますが、問題は戦闘作戦行動の基地になるという場合を非常に少なく解釈をして、事実上出撃基地になっていても、戦闘作戦行動の基地になっていないかのような印象を国民に与えています。こういうやり方で、日本国民が知らぬ間に戦争に巻き込まれているのではないかというふうに考えられます。  ところで、質問なんですけれども、先ほどここの分科会で、ポラリス潜水艦の無害航行を認めると言われました。これはこの限度で非核三原則がくずれたということではありませんか。
  596. 三木武夫

    三木国務大臣 ポラリス潜水艦で午前中私お答えしたのは、ポラリス潜水艦でも一つの公海から公海をすっと通り抜ける、そういう場合に領海をかすめるような場合も無害航行の中に入る。しかし、ポラリス潜水艦が沿岸に来て、そうして……(松本(善)分科員「この限度で非核三原則をくずしたのかというのです」と呼ぶ)くずしてはいません。持ち込みはいけないというのですから、ただ公海から公海をすっと通り抜けることを核を持ち込んだという解釈にすることは、それは持ち込んでないのでありますから、核を持ち込んだというふうにはいえない、これは非核三原則に反していないと考えております。
  597. 松本善明

    松本(善)分科員 結論を申しますが、この非核三原則はくずれていないというのは事実に反すると思います。実際上くずれているのです。領土、領空、領海の中に入ってきている。それで、ポラリス潜水艦の例を出しましたのは、非核三原則をくずしただけではなくて、さらに事前協議の対象からも除外している、これも一つの例なんです。こうやって一つ一つ事前協議の対象からなくなっている。これがこの国会で盛んにほかの委員から言われた事前協議の空洞化なんです、空文化なんです。これはアメリカ軍の行動を、先ほど申しましたように、できるだけ自由にしておくことが日本の安全のためだという考えから出てきているのじゃないかと思います。客観的にそうなっております。これは本委員会で、非核決議はアメリカを拘束するから反対だと言った佐藤首相の発言と全く同じ考えです。戦闘作戦行動の基地に関しても同じことになってきておるのです。これは日本の基地を使用してアメリカアジアにおいて何の拘束もなく軍事行動をすることを保障し、その結果日本が直接戦火にさらされるということを容認することになると思います。このことは、日本国民にとっては重大な危険であると同時に、戦争か平和かを選ぶという重大な主権の行使がアメリカに事実上握られているということを意味していると思います。私はこのことを指摘して質問を終わりたいと思います。
  598. 小沢辰男

    小沢(辰)主査代理 稻村隆一君。
  599. 稻村隆一

    ○稻村(隆)分科員 日本とモンゴルの国交の樹立の問題につきまして、昨年も三木外務大臣にお尋ねいたしましたが、今度もお尋ねをして、ひとつはっきりした御返事を得たいと思っておるのです。  一昨年私がモンゴルに行ったときに、モンゴルのツェデンバル首相から、ぜひ日本と国交樹立をしたいから、佐藤総理と椎名外務大臣に私の考えを伝えていただきたいと言われたわけです。私は野党ですけれども、外交には野党も与党もありませんから、外務委員会でそのことをお伝えしたところが、佐藤総理は、モンゴルが国連に加盟するときに日本は拍手を送ったのだから、前向きの姿勢でひとつ検討してみよう、こういうお話であったわけであります。ところが、昨年ほかの国際会議でモンゴルの第一外務次官が来朝したときに、ほかに連絡する人がないものですから、野党である私のところに連絡がありまして、日本政府のほうに国交樹立の問題についてお話を願えないか、こういう話なので、私は内閣委員会外務大臣にそのことをお尋ねしたはずです。ところが、たまたまモンゴルから外務次官が来ているのに、牛場外務次官がモンゴルとの国交の樹立をしても何の利益もないというふうな談話を新聞に出したわけですね。そこで私はいろいろ三木外務大臣にそのことについてお尋ねしたのですが、まあ何とか検討してみようというふうなあいまいな話だったわけであります。ところが最近、モンゴルにおける相当指導的地位にあるアジルビシという人が来まして、非公式に外務省に行って小川アジア局長と会って、いろいろ国交樹立の問題について懇談をしたということを聞いているわけです。モンゴルがそういうふうに熱心に日本との国交の樹立をしたいと希望しているのに、何か日本政府態度というものはおかしい、あいまいなんです。逃げ回っているような気がする。ちょうどあばた莫連女に追いかけられているような態度——そんなことを言ってははなはだ悪いですけれども、逃げ回っているような態度があるのですが、モンゴルとの国交樹立の問題に対しては何か障害があるのですか。それがもしあるならば、ひとつ率直に聞かせていただきたい。
  600. 三木武夫

    三木国務大臣 いまモスクワなんかで接触をしておるわけです。ところが、賠償問題などが両国の間でまだ話がつかずにおるわけであります。向こうは日本に対して参戦したので賠償請求権を持っておる。日本は違った考え方を持っておって、この意見がまだついていないわけですが、今後ともモンゴルとは外交機関で接触をしていこうと思っています。
  601. 稻村隆一

    ○稻村(隆)分科員 賠償の問題は具体的にありましたか、新聞にちょっと出ておったようですが。
  602. 小川平四郎

    ○小川政府委員 先日アジルビシ氏と話したときにも、また昨年エカフェに参加しました代表と話したときにも、賠償という名前は使わないでもいいけれども、そういうものを自分らは権利として持っておるんだ、そういう言い方をしておりました。
  603. 稻村隆一

    ○稻村(隆)分科員 これは私の個人的な見解じゃなくて、個人的に私が話し合ったのでは、賠償というとなかなかそれはむずかしい。だから賠償でないほうがいいんじゃないか。かりにたとえば、これは私のかってな意見ですけれども、借款とかなんとかという形式でもって賠償と言わぬほうがいいんじゃないかと言ったところが、はっきりは言いませんでしたけれども、まあそういうことも考えてもよろしいです、こういうふうなことを言っていたようです。私はそういう印象が残っています。それで私は、一昨年ツェデンバル総理に会ったときも、日本との国交樹立には何か条件があるのですか、むずかしい条件があると、なかなかこれはめんどうだと思うのですがと言ったところが、朝日新聞記者にも言いました、全然条件はありません、こう言うのですね。   〔小沢(辰)主査代理退席、主査着席〕 だから私は、賠償はそうやかましく言わないんじゃないか、こう思ったのです。むろんノモンハン事件がありますから、終戦直後は何かモンゴルの総理も演説をしているようです。ノモンハンの問題に対しては損害を請求する権利があるようなことを演説なんかしているようですけれども、そのことは、その後、必ずしも賠償をどうしても取ろうという見解を持っていないような気が私はしたのですがね。具体的に賠償というふうなことをはっきりは言っていないと思うのですが、それは小川局長もそういう感じを受けませんでしたか。
  604. 小川平四郎

    ○小川政府委員 先ほど申しましたように、賠償という名前を使うということにはこだわるものではないというようなニュアンスは出しておりましたけれども、やはりある種の戦争に基づく権利というものを依然として主張しておるようでございました。
  605. 稻村隆一

    ○稻村(隆)分科員 それなら具体的に話し合いを進めていったらいいんじゃないかと思うのですがね。これは私は率直に申しますけれども、新聞に出ておりましたが、やはり国民政府の抗議というものが、私は政府がモンゴルとの国交の樹立をちゅうちょしている第一の理由じゃないかと思うのですが、その点、外務大臣どうお考えになっておりますか。
  606. 三木武夫

    三木国務大臣 国府のことで気がねしてモンゴルの問題をわれわれが延ばしておるという理由ではございません。
  607. 稻村隆一

    ○稻村(隆)分科員 それならぼくはもっと積極的に進められたらどうかと思うのですよ。もう一昨年から、これから検討して前向きでやると言っておるし、あなたも昨年そう言われたようですな。だからもうそろそろ——賠償などはそう複雑な問題じゃないですよ、ほかの国と違って。それはそう複雑な関係はないだろうと私は思うのです。話をどんどん進めて一向差しつかえないと思う。しかも一九六一年の十月二十七日のモンゴル国連加盟に際して、日本側は、反対の意思表示はしないばかりか、拍手を送っているんじゃないかと私は思っている。だからそういう意味からいって、これは反対の意思表示をしない、拍手を送っているのは、これは棄権の意味ですか。それとも賛成の意味ですか。どっちですか。
  608. 三木武夫

    三木国務大臣 これは国連ですか。
  609. 稻村隆一

    ○稻村(隆)分科員 モンゴルが国連に加盟したときです。
  610. 三木武夫

    三木国務大臣 これは賛成ですよ。棄権じゃありませんよ。賛成です。
  611. 稻村隆一

    ○稻村(隆)分科員 それなら国交樹立をしたらいいじゃないですか。たいした問題ないですよ。どうもおかしいとぼくは思うのだ。それはどうも国府の申し入れによってではないというけれども、それ以外に考えられないですよ。どうもおかしいですよ。
  612. 三木武夫

    三木国務大臣 稻村さんの御熱心なこと、私昨年からよく知っておるわけで、今後やはりモスクワの大使館を通じて、そして両方の意思の疎通を今後ともはかっていって、賠償の問題なども解決をしたいと考えております。
  613. 稻村隆一

    ○稻村(隆)分科員 ぜひひとつ早急に解決するようにしていただきたいのですよ。向こうは日本と国交を樹立したい、したいと言っているのを、それをあなたあいまいにして、何か逃げ回っていると思われないようにしてもらいたいのです。国連に加盟するのを賛成していて、それと国交樹立をしないなんという話は私はないだろうと思うのです。ぜひひとつ今度こそは、ことしのうちに国交の樹立をしていただきたい。それは損はないですよ。いま貿易代表も現に来ておりますが、貿易なんというものは、人口百三十万しかないですから、たいしたことはないだろうと思うのです。しかし、国は日本の四倍もあるし、あすこは地域的には非常に重要な地帯です。中国とソ連の間にある。いろいろな面において、外交関係を樹立しても損はないですよ。それでなければイギリスやフランスがあすこに大使を置くわけはありませんよ。西欧諸国は情報その他いろいろな点において、やはり重要な緩衝地帯だから、イギリスやフランスがあすこに大使を置いているのだろうと私は思うのですよ。そういう意味で、ぜひともひとつ国交の樹立に邁心していただきたい、こう思うのです。  もう時間がだいぶおそいですから、私はこれでやめますが、最後に、貿易業者もだいぶこのごろは前向きでやっておりまして、日本から今度八十万ドルくらい買うそうですが、そういうわけでいろいろ連絡が非常に困るのですね。中国を通じて行くものですから、電報でも行かない場合があって、非常に困っているわけです。早く行って四十日くらいかかるのですね。現に私も手紙を出したけれども、行かないで戻ってくる場合が多いのです。それだから、これは直接ソ連を通じて連絡ができるような方法はできないのですか。どうなんです。私はそういういろいろな規則は知りませんからわかりませんが……。
  614. 小川平四郎

    ○小川政府委員 先般話しましたときも、最近はソ連経由に貿易その他が変わっているそうでございます。ナホトカ経由の貿易、通信等も行なわれておるという話でございました。貿易、通信その他非常に熱心でございましたので、ソ連経由の貿易あるいは通信ということが、これから行なわれるのじゃないかと考えております。
  615. 稻村隆一

    ○稻村(隆)分科員 それではこれで終わります。
  616. 野原正勝

    野原主査 以上をもちまして、昭和四十三年度一般会計予算中、外務省所管に関する質疑は終了いたしました。  明十三日は午前十時より開会し、防衛庁所管について審査を行なうことといたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後八時三十九分散会