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1968-03-15 第58回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月十五日(金曜日)    午前十時七分開議  出席分科員    主査 植木庚子郎君       小山 省二君    坂田 英一君       二階堂 進君    福田  一君       山崎  巖君    加藤 清二君       阪上安太郎君    田中 武夫君       武藤 山治君    吉田 泰造君       岡本 富夫君    斎藤  実君    兼務 阿部 昭吾君 兼務 安宅 常彦君    兼務 大出  俊君 兼務 大原  亨君    兼務 加藤 万吉君 兼務 内藤 良平君    兼務 広瀬 秀吉君 兼務 細谷 治嘉君    兼務 山中 吾郎君 兼務 玉置 一徳君    兼務 林  百郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 西村 直己君         通商産業大臣  椎名悦三郎君  出席政府委員         北海道開発庁総         務監理官    馬場 豊彦君         経済企画庁水資         源局長     今泉 一郎君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         大蔵省国際金融         局長      柏木 雄介君         文部省大学学術         局長      宮地  茂君         農林大臣官房長 桧垣徳太郎君         農林大臣官房予         算課長    大河原太一郎君         農林省農林経済         局長      大和田啓気君         農林省農政局長 森本  修君         農林省農地局長 和田 正明君         農林省畜産局長 岡田 覚夫君         農林省園芸局長 黒河内 修君         食糧庁長官   大口 駿一君         林野庁長官   片山 正英君         水産庁長官   久宗  高君         通商産業大臣官         房長      大慈彌嘉久君         通商産業大臣官         房会計課長   井上  保君         通商産業省通商         局長      宮沢 鉄蔵君         通商産業省貿易         振興局長    原田  明君         通商産業省企業         局長      熊谷 典文君         通商業省重工         業局長     高島 節男君         通商産業省化学         工業局長    吉光  久君         通商産業省繊維         雑貨局長    金井多喜男君         通商産業省鉱山         局長      両角 良彦君         通商産業省鉱山         保安局長    西家 正起君         通商産業省公益         事業局長    井上  亮君         工業技術院長  朝永 良夫君         中小企業庁長官 乙竹 虔三君         中小企業庁次長 沖田  守君  分科員外出席者         行政管理庁行政         監察局監察審議         官       石田  勝君         法務省民事局第         一課長     香川 保一君         法務省訟務局次         長       上田 明信君         文部省文化財保         護委員会事務局         次長      小川 修三君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 野津  聖君         厚生省環境衛生         局公害部公害課         長       橋本 道夫君         農林省農地局参         事官      佐々木四郎君         通商産業省企業         局参事官    橋本 徳男君         通商産業省企業         局立地公害部長 矢島 嗣郎君         運輸省航空局飛         行場部管理課長 梶原  清君         建設省河川局河         川計画課長   渡辺 隆一君         建設省道路局日         本道路公団監理         官       森  一衛君     ————————————— 三月十五日  分科員阪上安太郎君、田中武夫君、麻生良方君  及び正木良明委員辞任につき、その補欠とし  て板川正吾君、武藤山治君、吉田賢一君及び斎  藤実君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員板川正吾君、武藤山治君、吉田賢一君及  び斎藤実委員辞任につき、その補欠として、  阪上安太郎君、田中武夫君、小沢貞孝君及び大  野潔君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員小沢貞孝君及び大野潔委員辞任につき、  その補欠として吉田泰造君及び中野明君が委員  長の指名分科員に選任された。 同日  分科員吉田泰造君及び中野明委員辞任につき、  その補欠として麻生良方君及び岡本富夫君が委  員長指名分科員に選任された。 同日  分科員岡本富夫委員辞任につき、その補欠と  して正木良明君が委員長指名分科員に選任  された。 同日  第一分科員山中吾郎君、玉置一徳君、第二分科  員大出俊君、加藤万吉君、内藤良平君、細谷治  嘉君、第三分科員大原亨君、第五分科員安宅常  彦君、阿部昭吾君、広瀬秀吉君及び林百郎君が  本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十三年度一般会計予算農林省及び通商  産業省所管  昭和四十三年度特別会計予算農林省及び通商  産業省所管      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    ○植木主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  昭和四十三年度一般会計算予算及び特別会計予算中、農林省所管を議題といたします。  質議に入ります前に一言申し上げます。  本日は、多数の方々が質疑を予定されておりますので、議事進行の円滑をはかるため、質疑の持ち時間は、本務員は一時間、兼務員もしくは交代で本務員となられた方は三十分にとどめていただきたいと存じます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。武藤山治君。
  3. 武藤山治

    武藤(山)分科員 まず最初に林野庁お尋ねをいたします。林野庁長官御存じだと思いますが、これから私が取り上げようとする問題は、昭和三十六年十二月に、茨城県笠間営林署管内に起こった、民有地だと信じて登記謄本登記簿土地台帳に基づいて買ったと思って伐採しようとした。ところが、林野庁が待ったをかけて逮捕者が七人出たという事件であります。  一体、この民有地がなぜ国有地になったのか。そこらの争いがいま行なわれているわけであります。どうも該事件を振り返ってみますと、林野庁やり方に非常にふに落ちない点が数々ある、こう私は思うのであります。そこできょうは、まず林野庁官のほうに届け出した該事件の概要を先に御説明願いたいと思います。
  4. 片山正英

    片山(正)政府委員 先生のお尋ね事件につきましては、東京営林局笠間営林署国有林の一部がございまして、具体的に申しますと、四十三林班のあ並びにさ小班に起きた事件でございます。  ここは、御承知のように、国有林といたしましては非常に古い話ではございますが、明治九年に官林調査によりまして官林帳というものをつくっておるわけでございます。その官林庁をもとにいたしまして、明治三十九年に国有林野台帳規程というものに基づくものに移行して記載したわけでございます。その後、旧国有林野法の第四条になるわけでございますけれども、境界査定処分ということを、民有林隣接所有者立ち会いを求めまして確認をいたしたわけでございます。それに基づきまして境界査定をして測量をいたしまして現在に至っておるわけでございますが、経営といたしましては、大正三年にヒノキの造林をやってまいったわけでございます。その林が現在の林であるわけでございます。それを神永三四郎氏でございますかが買われましたことによりまして、神永三四郎氏が自分所有であるということで伐採をいたしたわけでございます。しかし、その林というものは、先ほど御説明したような形で確定いたしておりますので、これは国の所有であるということで訴えをいたしたわけでございます。大体の経過の要点は以上でございます。
  5. 武藤山治

    武藤(山)分科員 国の所有であるという根拠が私は非常にあやしいと思うのであります。というのは、この土地明治二十一年登記所登記簿あるいは図面等に明らかに民有地になっている。しかも、その後民有地がずっと続いておりまして、ここに登記謄本もございますが、あるいは権利証登記所が発行しているわけであります。大臣もちょっと聞いてもらいたいのでありますが、民有地で正式に謄本が発行され、登記所で正式に権利証が交付されている。林野庁はそれは国の土地であるといって明治時代査定をやったので、境界はその当時きまっているのだ。その土地をいまになって、もう本人もみな死亡して孫の時代になって、所有権相続登記が行なわれ、ぐるぐると時がたっている今日、これは国有地だという争いを起こしたわけであります。しかもそれは七人の犠牲者を出している。仮差し押えをやり、その後逮捕と、こういう手荒い手段で民衆とたいへんなあつれきを起こしているという問題であります。  そこで私は、林野庁お尋ねしたいのは、いま長官は旧国有林野法第四条で査定をして、しかも所有権者立ち会いの上で境界を定めた。この定めたのはいつですか。明治何年ですか。
  6. 片山正英

    片山(正)政府委員 明治三十五、六年のことでございます。
  7. 武藤山治

    武藤(山)分科員 明治三十五、六年。あなたの部下の訴訟官が私の部屋に来ていろいろ書類に基づいて説明をしたところによると、明治三十五年十一月に一応境界査定をやった。やったけれども、そのときにははっきり承諾がなくて、どこからどこまでという境界が定まらなかった。明治三十八年には当時の所有権者谷田部なる者と林野庁話し合いをして測量を行ない、境界を定めた、こういうわけであります。大臣、そこでお尋ねしたいのは、境界を定めたなら、当然法務局台帳登記簿民有地抹消して国有地にすべきであったと思いますが、大臣、その場合どう考えられますか。
  8. 片山正英

    片山(正)政府委員 国有林といたしましては、境界査定行政処分によりまして確定いたしましたものにつきまして、それぞれ本人に対して通知を申し上げておるわけでございますが、登記関係につきましては、いわゆる登記簿抹消ということになるわけでございましょうが、あるいは訂正ということになるわけでございますが、これは不動産登記の取り扱い上の問題と思いますので、法務省のほうからお願いしたいと思います。
  9. 武藤山治

    武藤(山)分科員 しかし、林野庁が、個人所有地を、これは林野庁のものだ、国有地だ、しかも立ち合いの上で定めたというなら、当然それを国有地になるようにきちっと法的手続をとらない限り権利証が代々続く、権利証が残っていくじやありませんか。そうして、善意第三者は、それに基づいて売買をやり抵当権を設定する。当然そういう売買行為が続くでしょう。したがって、そのとき当然抹消する責任があったのじゃありませんか。
  10. 片山正英

    片山(正)政府委員 これにつきましては、先ほどもお答えいたしましたように、本人に対しましては、その査定に基づいた結果を御通知申し上げたわけです。登記の問題については、本人申請をして訂正するのが登記上のたてまえと存じておりますが、これは法務省のほうからひとつ御答弁いただきたいと思います。
  11. 武藤山治

    武藤(山)分科員 それでは法務省お尋ねいたしますが、本人抹消するのがたてまえだと言うが、しかし、本人通知一本で、本人抹消しなかった場合には、当然林野庁としては、当時立ち合いの上で境界を定めたのだから、おまえ抹消してくれよという訴訟を起こすなりして、きちっとして民有地抹消しておかなかったのか。そうでしょう。通知一本で、おまえ、自分土地を放棄して国に返すのだ、それで完全に登記がえをするようなことは考えられませんよ。なぜそのとききちっと訴訟なら訴訟を起こして、登記抹消しなさいということを言わなかったのか。その林野庁責任を責めておるわけです。法務省はどうですか。もし境界査定をやって、立ち合いをやって、さあ抹消してくれという通知一本やっただけで、完全に民有地抹消できないのは個人責任だ、こう林野庁はおっしゃいますが、法務省はどうですか。
  12. 香川保一

    香川説明員 不動産登記法たてまえといたしましては、国有地民有個人の名前で登記されますと、原則はその登記されておる個人から抹消申請をするたてまえとなっております。
  13. 武藤山治

    武藤(山)分科員 抹消するたてまえとなっている、だとしたら、林野庁は当然本人に、ここは国有地だ、境界はこうぶちますよと立ち合いでやったというのですから、抹消するまで林野庁本人と当時話し合いをすべきであったろうし、書類を出さすべきじゃありませんか。いかがですか。
  14. 香川保一

    香川説明員 不動産登記法は、登記申請につきまして義務づけていないわけでございます。本人申請して抹消されるのが望ましいわけでございますけれども、本人抹消申請しなければ、国のほうで職権で消すとかいうことはできないわけでございまして、林野庁のほうから、おそらく当時抹消申請を慫慂されたと思いますけれども、その辺のところは私どもよくわかりません。
  15. 武藤山治

    武藤(山)分科員 その場合法務省は、この権利証を発行し、謄本を出せば、善意第三者はこれは信頼しますね。権利証謄本持っておるのですからね。登記所に行けばちゃんと個人のものになっているのですから、その場合第三者に及ぼす害悪というもの、どちらを一体証拠にしたらいいのか。登記台帳あるいは土地図面というものは、登記所にあるものは証拠として唯一の力を持つべきものと思うけれども、国有財産台帳林野庁の持っている図面のほうが正しいとお考えになるのですか。どちらが正しいのですか。
  16. 香川保一

    香川説明員 不動産登記法では、かりに国有のものが民有所有名義になっておりましても、いわゆる公信力というものがないわけでありまして、登記簿に甲の名義登記されておるから法律的には甲の所有権が確定されるというふうな性質のものではございませんで、登記簿記載を信頼して取引された中に、万一その記載が実体と合ってない不当な登記だということになりました場合には、取引した方は権利を取得できない、こういうふうな結果になると思います。
  17. 武藤山治

    武藤(山)分科員 しかし、あなたはいま、もともとこれが国有地だという前提で考えて答えていますね。私は、もともとこれは民有地だ、明治二十一年から法務局台帳にあるのだから、これは民有地だ、それを林野庁のほうが、権力を乱用して、いや、ここはわしらのものだといって無理やり判を押させて、本人たちに、ここが境界だと明治時代にやらせたと思うのです。それはみんな死んじゃっているからわかりませんよ。明治二十一年ころの人はみんな死んじゃって、登記簿を見ると、孫の時代にまで代々登記がえをされているわけですからね。明治三十五、六年ごろ持っていた人は谷田部さん。ところが、これはもう孫に相続登記が行なわれて、その後今度は抵当権が設定されて、その抵当権が設定されたものが昭和十九年に売られて、また、昭和三十六年前後に買った河原田さんがまたせがれに相続をして、それをまた最近三十六年に売買が行なわれてきている。こういう形に何代にもわたって動いてきているんですね。その間なぜ林野庁は、これは国有地だと言うなら、それを抹消するような訴訟を起こさぬかと私は言うのですよ。一方的にできないなら、確認訴訟をずっと前に起こしたらいいじゃないですか。それを実測をしてちゃんと境界はこうやってきめたんだと称しながら、なぜ法的手続をきちっととらぬのか。これは林野庁の怠慢だと私は言うのですよ。怠慢じゃありませんか。どうです。
  18. 片山正英

    片山(正)政府委員 林野庁といたしましては、査定したそのものに基づきまして境界標その他を全部整理いたしておりまして、さらに大正三年以降におきましては、林野庁みずからが造林をいたしておるわけでございます。そのような形で所有者その他は理解しておるというふうに思っておるわけでございます。
  19. 武藤山治

    武藤(山)分科員 そうなると、いまの民法の規定からいくと、取得時効だってこれは作用するのじゃないか。平穏かつ公然に自分のものだと思って権利者が持っていたということになれば。その当時林野庁が職務怠慢でなくきちっとやっておればともかく、何十年もうっちゃっているんですから。どうですか、時効になりませんか。
  20. 上田明信

    上田説明員 本件におきましては、仰せのとおり所有権について争いがございましたので、目下訴訟中でございまして、本年一月三十一日に結審いたしましたので、そのうち判決があろうかと思います。  さて、時効の問題が出てまいりましたが、本件訴訟におきましては時効主張はされておりません。と申しますのは、おそらくこの占有自体林野庁にあるいはあったのかもしれませんが、相手方から時効取得したんだという主張が出ないまま裁判所では結審になっております。
  21. 武藤山治

    武藤(山)分科員 現在の所有者は、三十六年十二月に神永三四郎という自民党の元県会議員が買ったので、この人は買ったばかりで時効取得訴えができないわけですよ。しかし、これはもう元来林野庁主張でき得る性格のものではないということを、私はいま時効に該当するのではないかと質問しておるわけです。この間全く争いを起こしてないのですから。しかも、林野庁やり方のけしからぬのは、大臣、三十六年の十二月に伐採を始めたら、初めは話し合いをしよう、林野庁権利者話し合いをしよう。そこで一時仕事をやめた。ところが、やめたすきに直ちにそれを仮処分をして立ち入り禁止をまずやって、おまけに今度は、検察庁に林野庁の署長か局長が行って検事に頼み、県警本部長に頼んで一挙に七人を全部逮捕したのです。そして十九日間ぶつ込んだのですよ。これには全く善意第三者の準公務員も含まれている。ほんとに気の毒な事件なんです。林野庁が当時やるべき行為をやらずに、怠慢の結果、民衆にこういう被害を加えているという事実、重箱のすみをようじでつつくような法律理論ではなくて、政府というものが、国家権力を持ったものが、こういう態度をもって民衆を苦しめるというあり方は断じて許せない、こう私は思のです。大臣として、いまの話を聞いている範囲内で、当時の林野庁としては手落ちがなかったかどうか、大臣いかがですか。
  22. 西村直己

    西村国務大臣 まあ法律上の争い訴訟になっておる。そこで時効の問題、いま法務省からお話しになったような意見が出ておるわけであります。問題は、ただその間において林野庁は正式の権利としてこれを保存するというか維持をしていく、それに対して行為が不法であるとして検察処分が起こってきた。その間の法律的な検察側が起こした事由。また検察側法律的根拠なくしてかってに行動はしないと思います。そこいらの事実をさらにすべて明らかにしてみませんと、私の妥当であるかどうかの意見は出ないと思います。C武藤(山)分科員 この訴訟弁護士側は、これは林野庁の不当な行為だといって、今日まで三十七年からずっと長引いているわけですね。この長引いた事実を見ても、いかに林野庁国家権力を背景にしてがむしゃらに無理押しをしてきたかということの一つの証拠だと私は思うのであります。いずれにしても、時間が三十分に限られておりますから、これ以上お伺いすることはできないのでありますが、こういう事件笠間営林署管内に他にもあったと聞いている。だから、あの営林署を誘致するときに、国有地面積が狭過ぎては誘致できない、営林署があそこにできないというので、かなり無理して民有地を侵食して面積を広げた図面をつくったと地元人たちはいまでもうわさをしているわけであります。ですから、林野庁が逆に民有地をどんどん侵食してしまって、これは国有地だといって押しつけて、今度はその借用証を書けといって明治時代借用証を書かしている。自分土地について国に逆に借用証を入れている。それをいま林野庁証拠にしているのです。事がいずれにしても古いことであるから、だれもきちっとした証人がいないために、権利証登記謄本も全く価値のないものにされている。これは法務省としても、こういうものがそのまま抹消できない、ほんとに正しものであっても抹消できないというようなことでなくて、もっと事実関係をきちっと法務省としても調査をして、法務省手続が間違っていた、台帳が間違っていたとするならば、その台帳を直す方法、法律を特例をつくってそういうものは直さなければいかぬと思うのです。そうしなかったら、害はいつまでも民衆に及びますよ。また第二、第三の犠牲者が出て叩きますよ。かわいそうじゃありませんか。私はそれを憂えるのであります。林野庁としても、そういうことをあとからあとから繰り返さないように、大臣、厳重にひとつ調査を願って、解決できるものはすみやかに法務省との話し合いの上において解決するように努力してもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
  23. 西村直己

    西村国務大臣 本件の事案につきましては、御存じのとおり訴訟になっております。万一林野庁行動に間違いがあれば、これはこれなりで十分われわれのほうで責任をとらなければならぬと思います。ただ、すべては裁判なり、それらの法律的な解釈なり、運用なり、手続なりに従ってまいりたいと思います。  それから、こういったことが起こりますことはまことに残念でございます。われわれは、国民のために政治をやっておることは間違いないのでございまして、政府権力のために国民があるのはたいへんな間違いであります。この趣旨から、林野行政も今後気をつけてまいりたい。御趣旨の点は十分理解をいたします。
  24. 武藤山治

    武藤(山)分科員 もう一点、あと九分しかありませんから。  農地局長お尋ねをいたしますが、御承知のように、利根川渡良瀬川が合流をする地点に、赤麻遊水池という三百六十町歩に及ぶ広大な遊水池がございます。これがあることによって利根川堤防の決壊を防ぎ、東京の荒川のはんらん、東京の水害というものを防ごうというので明治時代にできた大きな遊水池でございます。これがいま囲繞堤を築堤いたしておりまして、広い沼の中へまた堤防が一つできて、やがてこれが古河のほう、小山のほうへ結ばれる道路になろうという工事が進んでおるようであります。この工事のために、渡良瀬川の水が滞留してなかなか流れが早くない。堤防ができるために水のとどまる期間が非常に長くなる。それが巴波川に逆水をし、巴波川赤麻遊水池の周辺の田んぼが非常に水のはけが悪い、こういう問題であります。そこで、いままでも国や県からかなりの補助金を出しポンプを備えつけてあるのでありますが、ポンプのない部落もあるわけであります。私がいま取り上げているポンプのない部落というのは、藤岡町部屋上坪という部落であります。新川という小さな川と巴波川にはさまれて、しかも渡良瀬川がちょっと増水をいたしますと、その水が滞留をして田んぼの水が川へ流れ込まない。そのために稲作がだめになってしまう。この部落人たちは何とかこの排水をやりたいと何十年来県や市町村に嘆願をしているのであるが、地元負担があまりにもかかるのでできない。御承知のように、国営ならば問題はありませんが、国営には三千町歩以上の面積がなければならぬ。県営の場合は受益者負担が二五%ある。さらに団体営の場合になりますと四五%受益者負担しなければならぬ。二億からのポンプの費用一切かかるとなりますと、とてもこれは四五%の負担を五、六十戸の農民にやれといってもできるはずがない。建設省囲繞堤を築堤することによる被害がさらに大きくなるのであるから、国家的事業のために農民が非常な被害を受けるのであるから、何とか受益者負担を出さないで排水のできる方法を国家として考えてしかるべきではないか、こういう趣旨であります。農地局長の御見解をひとつ承りたいと思います。
  25. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 ただいまお尋ねのございました渡良瀬川赤麻遊水池は、先生も御承知のように、明治から大正にかけまして遊水池のまわりに堤防を巻きまして、洪水の際に付近の農地へ水が広がらないようにという手当てをいたしましたほかに、たしか三十八年ごろから遊水池の中を通っています川のみおなりに溢流堤のようなものをつくりまして、遊水池の非常に大きな効果を期待しようということで建設省工事中であります。その川の囲繞堤をつくりますこと自体が、おっしゃいますように背後地の排水が悪くなるというふうには技術的には私ども考えておらないのでございますが、遊水池の周辺の排水は古くから悪うございますので、すでに十三ヵ所にわたりましてポンプが過去において設置をされ、また一部には排水樋門等も設けて排水を進めておるわけでございますが、これらのポンプが、すでに設置以来長年月たっておりまして、機能的にも低下をしておるので、そろそろ更新を考えるベき時期にもなっておるわけでございます。そういう河川の流量との関係で排水の不良な地区の問題につきましては、建設省の河川の事業としての内水排除と、私どものほうでやります湛水防除の事業と二種類あるわけでございますが、おっしゃいます地区につきましても、早急に県と打ち合わせまして、農地局でなり、あるいは建設省河川局でなり、できるだけ早くポンプの機能が従来の機能を回復するような工事を実施をするほうが適当であろうかと思いますので、十分県と打ち合わせをして検討いたしたいと思っております。  なお、私どものほうで湛水防除の事業としてもし採択をいたすとすれば、国の補助率が六割で、残り四割のうち半分は県の義務負担になりますので、二〇%程度が地元負担になるわけでございますが、現在この区域の周辺について、栃木県から来年度与良川の関係について湛水防除事業の採択の申請が出ておりまして、現在検討いたしておりますが、その場合には残り二〇%分を農民に負担をさせずに、町村でみずから負担をするということで工事を進めることを県等としても検討いたしておりますので、そういう県なり地元町村等の負担等もかみ合わせまして、農民負担を極力軽減をしながら、今後具体的に県等と打ち合わせをして工事をしてまいりたいというふうに思っております。
  26. 武藤山治

    武藤(山)分科員 ただいまの局長の前向きな姿勢の答弁には賛意を表するのでありますが、私がいま取り上げている問題は、この与良川と違うのであります。与良川は小山工業地帯から流れてくる水です。それから栃木の工場から流れてくる水が非常にきたない。そのためにこれは魚もいなくなる、水田にもよくないということで、これは湛水防除の排水予算でできると思います。ところが、巴波川、それから渡良瀬川のちょうど三角点に該当する、先ほど申し上げました地点は、湛水防除に該当するのかしないのかというのが私の聞きたい問題点なんであります。その地域の排水もその湛水防除に該当するならば、農民は非常に喜んでこの工事のすみやかな施行を期待をするわけでありますが、きょうはそこまでこまかい地域の問題は局長としてまだおわかりになりませんか。
  27. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 ただいま県から申請の出てきております地区は、受益市町村は小山市でございます。先生おっしゃいますように、いまお話しのございました部屋の地帯につきましても、昭和の初期につくりました排水機が四機現在ある地区でございますから、現在申請をしてきておる地区とは違うのではないかと思います。ただ、現地につきまして、もう少し実態の把握をいたしまして、先ほど申しましたように、農地局の湛水防除でやり得るのか、あるいはそれができない場合に、河川局の内水排除事業としてやってもらうのか、十分建設省とも打ち合わせをし、県とも打ち合わせをいたしまして、地元負担ができるだけ軽減できますように、具体的に詰めてまいりたいと思っております。
  28. 武藤山治

    武藤(山)分科員 農林大臣もお聞きになっているように、他の省、すなわち建設省工事が水害を防ぐために進捗をする、そのはね返りが農地に来ているという問題でありますから、建設省ともそういう点は大臣同士で十分話し合って、農民の不安を一掃するようにひとつ努力を傾けていただきたいと思いますが、大臣の決意のほどを伺って、時間でありますからやめたいと思います。
  29. 西村直己

    西村国務大臣 ただいま農地局長からも前向きに、農民の負担を軽減して、できれば湛水防除、場合によれば内水排除というようなかっこうで——両省の関係が深うございますから、十分それは御趣旨に沿うように努力してみたいと思います。
  30. 武藤山治

    武藤(山)分科員 終わります。
  31. 植木庚子郎

    ○植木主査 内藤良平君。
  32. 内藤良平

    内藤(良)分科員 ちょうど大臣もおられますので、一言大臣に御答弁をお願いしたいと思います。  昭和四十三年度の予算編成方針を拝見しますと、施策の重点をいろいろ掲げておりますけれども、私は秋田の出身ですが、われわれたいへんな関心を持っております地域格差の是正なり解消なりということが、本年度の予算編成には重点事項に取り上げておられません。文字もないわけであります。しかし、今日の過密、過疎の国内の事情から見て、なお私はこの地域格差の是正、解消は、政治問題として大きい問題だと思っておりますけれども、農林大臣としましていかようにお考えですか、御所見を承っておきたいと存じます。
  33. 西村直己

    西村国務大臣 いま農業につきましては、御存じのとおり生産政策、価格政策、構造政策等を並立させまして努力をいたしておるわけでありますが、その中から地域格差というものを解消してまいりたい。幸いにいたしましてややその効果があらわれている面も、地域格差においてはございますが、それ以外にもまだ残された大きな問題がありますので、今後いろいろな施策で努力をしてまいりたいと思っております。
  34. 内藤良平

    内藤(良)分科員 了解しました。  それでは次に、予算の問題で、具体的に低開発森林地域開発事業につきましてと、国営の総合開拓パイロット事業の問題と、それから八郎潟の建設事業の問題この三点にしぼって御質問したいと思っております。  これも具体的にざっくばらんに、ひとつ低開発の森林地域の開発事業の中で、田沢スーパー林道の問題がございますけれども、これの地元の強い要望につきまして、取り上げ方なり、経過なり、今後の見通しを御答弁願いたいと思います。
  35. 片山正英

    片山(正)政府委員 お答え申し上げます。  御承知のようにスーパ一林道は、森林開発公団がやっておる事業でございます。四十年から着工が始まったのでございますが、四十年三路線、四十一年に二路線、四十二年に三路線ということで現在八路線やっておるわけでございます。四十三年度の予算につきましてはさらに三路線の追加をいただきまして、十一路線を実行するわけでございますが、これはすでに調査されたものの実行でございますので、路線は確定いたしております。  そこで、御質問の田沢の林道でございますが、これは来年度新たに調査する路線といたしまして一応三路線ということが了解されまして、その経費としまして百七十万円実はついたわけであります。ただ、その路線をどういう形で調査するかということにつきましては、毎年の例でございますが、予算が確定し次第、関係省との打ち合わせの上で確定するということに相なっておりますので、現在のところはどの路線をするかということは検討の段階でございます。
  36. 内藤良平

    内藤(良)分科員 いま大臣からも御答弁いただきましたように、地域格差の解消あるいは是正ですね、こういう点をひとつ重点的にお考え願いまして、いま私が申し上げました田沢方面の問題につきましても、ひとつ明るい見通しを私は持ちたいと思うのですが、いかがでしょう。
  37. 片山正英

    片山(正)政府委員 少なくとも三路線の調査ということをいたすわけでございますので、ことに田沢につきましては、先生のおっしゃるとおり、低開発地域であり、かつ資源的にもりっぱなところでございまして、したがいまして私は、やはり有望な路線だとは思いますけれども、なお検討の上関係省と打ち合わせの上決定したいと思っております。
  38. 内藤良平

    内藤(良)分科員 了解しました。  次に、国営の総合開拓パイロット事業、秋田のほうには能代地区と大野台地区、この二つの地域から強い要望がございまして、幸い御当局に取り上げられまして継続されておるところであります。四十三年度は、ちょうど事業の年度から考えますと、重要な年度に当たっておるわけでありまするが、これに対する当局の対策、また見通し等、率直にひとつ御発表、御答弁願いたいと思っております。
  39. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 お尋ねがございました地区のうち、まず能代地区のことについて申し上げますと、御承知のように、能代地区の山林原野千九百ヘクタール余と、その山林原野の間に錯綜して現に存在をいたしております既存の畑約千七百ヘクタール、合わせまして三千六百七十ヘクタールを対象とした総合パイロット事業ということで、事業が完了をいたしました後には、その周辺の既存の農家の経営規模が平均二町二反ぐらいの自立農家になるということを目安にして工事をいたしたいというふうに考えておるのであります。昭和四十一年と四十二年と二年にわたりまして全体設計を完了いたしましたので、四十三年度から工事に着工いたしたいというふうに考えて、現段階におきます総事業費はおよそ八十七億七千万円ほどでございますが、四十三年度は初年度でございますので、一応七千万円の予算を計上いたしておる次第であります。私どもとしては昭和四十九年までには全事業を完了させるように今後予算措置をしてまいりたいというふうに考えております。  それから第二番目の大野台の開拓パイロットでございますが、これは四十二年度から工事をいたしますための前提になります国営調査地区として採択をした地区でございまして、おおむね調査期間を三年間と予定をいたしております。明年度四十三年度は調査の第二年目になるわけでございますが、できるだけ早く調査を済ませまして地元の要望にこたえたいというふうに考えております。地区面積は二千八百ヘクタールくらいで、住家数は二千戸くらいの区域であります。
  40. 内藤良平

    内藤(良)分科員 了解しました。  次に移ります。八郎潟の建設事業のことですが、これは四十三年度につきましても、干拓の基本工事あるいは新農村の建設事業ということで、それぞれ強い要望によりまして、当局でもそれぞれ対処しておると私は聞いております。この点は一応省略しますけれども、実はこの八郎潟の干拓に関連しまして増反の問題であります。この増反問題につきましては、先般も和田局長ともお会いしていますけれども、なお御質問したいと存じます。  八郎潟干拓の中央部に約二千町歩の増反配分の土地が予定されておりまして、これは八郎潟の周辺の八郎潟町、琴丘町、山本町、八竜村、琴浜村、この五ヵ町村の関係住民の皆さんのたいへん期待するところでございます。御存じのとおり、世紀の大事業として秋田県の八郎潟は干拓されまして、この大工事を成功されて、しかも新農村の建設ということで、画期的な国の事業が行なわれておるわけであります。これは地元の秋田県としてもたいへん喜んでおることでありますし、周辺の農民、漁民の皆さんも、若干の被害はありましたけれども、喜んで協力してまいっておるわけであります。そこで私の言いたいのは、過去においては地先の増反配分の際には——地先の増反といいますのは、その町村の地続きに干拓された分が増反配分されるのでありますから、中央干拓地と全然違った場所にあるわけでありますけれども、この地先の増反の際は、三反歩以上のたんぼを持っている方が地先増反の配分の対象になったわけであります。ところが、今度中央の二千町歩の増反が配分されるということで皆さんが期待しておるわけでありますが、いわゆる有資格者といいますか、有資格者となるものは七反歩以上のたんぼを持っている者にこれを限定する。漁民の皆さんは、これはもう無条件ゼロ反ですね。漁民の皆さんは漁業補償を受けましたけれども、これは特別な有資格者で、たんぼがなくとも対象にする、こういうことになっていますけれども、農民の皆さんは、七反歩以上でなくてはならない、こういうことになっておると聞いております。これに対して地元関係の住民の皆さんは非常に不満であります。長年の間干拓ということでいろいろ喜んでおりまして、何らかの恩恵があるのではないかとほのぼのとした期待を持っております。  ここで私一言申し上げたいことがございますが、いま中央の大干拓地帯、新農村の建設事業、これも農民には開放されておりますけれども、入植者には条件がございまして、なかなか高い条件でありますので、一般の農民の皆さんがだれでも参加できるわけじゃありません。また、面積もきまっております。五町歩、七町五反歩、十町歩、こういう大型の農業経営をやろう、こういうわけでありまして、入植者も希望者は全国にまたがっておりまして、毎年予定人員を上回る何倍という希望者があって試験が実施されておる、こういう狭き門でありまして、これではなかなか一般の零細農民の皆さんは参加する機会はないのであります。そこで、この増反配分の分に対して非常に期待を持っているわけであります。ところが、先般和田局長とお話し合いした際には、やはり自立農業というものを一つのめどに置いているのであるから、私たちは、あまりこまい農家の皆さんは増反の配分の対象にしたくないというようなことでございました。しかし、私振り返ってみまするに、農業構造改善事業ということが論議されまして設けられました際には、あの当時三十七年ころでございましたか、自作農は大体二町五反歩くらいというように考えておりました。ところが、今日にまいりまして、八郎潟の新農村建設のあの事業を見ましても、五町歩、七町五反、十町歩、こういう大型になってきておる。現実、秋田県内の農村の事情を見ましても、二町五反、三町歩つくっておる方でも農業というものはなかなか自立ができないために、出かせぎにたいへん来ておる、こういう実情であります。自立農業というのはどこへ線を引いていいか、私はいまなかなか困難な時期じゃないかと思うのです。そういう時期にあって、この増反配分を七反歩以上ということで制限を加えておるということは、ちょっと私は、理想としてはわかるけれども、実情に合わないのじゃないか、こう思うのであります。しかも、特に強調したいのは、自作農をこしらえる、できるだけ自作農を多くしよう、こういうお考えもわかりますけれども、たてまえはわかるけれども、いわゆる八郎潟の周辺の五ヵ町村の実情は、農民の諸君は長年待っておったのでありますから、何か土地の配分があるのではないか、こういう期待に燃えておったのであります。それが三反歩以上ではだめであって、七反歩以上でなければだめだということになったわけでありますから、ここは非常にふんまんを持っておるわけであります。私は、これは自作農維持創設するというたてまえではなくして、世紀の大事業の八郎潟の干拓、新農村の建設、こういうことで周辺の湖岸の農民の皆さんの長い間の希望、あるいは大きな協力、こういうものに対してのあたたかい政治の一それこそ政治の配分といいますか、こういうことが最も実情に即したやり方ではないかと思うわけであります。この点につきまして、私は議論をふっかけているわけじゃありませんが、どうか農林当局は、大臣はじめ関係局長の皆さんのもっと別の角度の、ほんとうに秋田の関係農民の皆さんが、なるほどと——特に強調したいのは、西村大臣は新しい大臣ですから、西村農政、なるほどと思われるようなことを、この際ひとつやっていただきたいと思うわけであります。この点いかがでございますか、ひとつ御答弁願います。
  41. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 八郎潟の中央干拓地の増反の問題につきましては、先ほどお話がございましたように、二千ヘクタールほどを背後地の農家に増反として配分をいたす考えでございまして、本年中に工事を完了いたします約八百ヘクタールほどは、今年中に配分を終えたいというふうに基本的に考えております。  さて、配分の基準でございますが、やはり多額の国費を使って造成をいたしました土地でございますので、できるだけ専業農家になるような人に配分をいたしたいという基本的考え方を私ども実は持っておるのでございます。七反歩という基準を県と打ち合わせをしてきめました背景は、一つには、現在あの干拓地の背後地にございます農業地帯での専業農家の平均経営規模をまず検討いたしまして、その経営規模になるように増反配分をするということを考えたのでございます。それから、もう一つは、専業、兼業のうち、特に第二種兼業農家がどのような階層に属しているかということを、秋田県の統計資料等を調べてみましたところが、現在七反未満の農家は大部分が第二種兼業農家という実情にございますので、零細配分を避け、今後農業だけで専業でやっていくような農家を育成していきたい、そういう立場で、七反以上の現在の農家に対して五反または一町を現在の経営規模に対応して追加配分をしてやる、それらの人たちが背後地における専業農家の平均経営規模になるように持っていくのがこの事業としては最も適当であろうというふうに考えて、県庁と打ち合わせの上現在そういう基準を定めておるわけでございます。  ただ、御指摘のように、中央干拓でなく八郎潟の周辺干拓地、特にただいまお話のございました南部と東部の地区につきましては、昭和三十五年ころにすでに増反配分の基準をきめ、工事の完了とともに逐次配分をいたしました際には、ごく経営規模の小さいものにもほんのわずかずつ零細配分をいたした例が御指摘のとおりございます。こういう零細な配分をすることは、あのような国家的な大事業をいたしましたたてまえとしては好ましくもない。また、今後配分をいたそうとしておりますのは、周辺部の干拓ではなく、全く事業の中心でございました中央の干拓の問題でもございますので、こういう基準を定めたのでございます。  ところで、そういう配分について、地元の希望を聞いて少し配分基準を改めることはできないか、こういう先生の御意見でございますが、いまのところ、先ほど申しましたような基準、零細配分を避け、増反の結果として、農業が専業的にやれるような農家をつくっていきたいという気持ちでおりますので、いま直ちにこの基準を変更するということは、私どもとしても考えにくい状態でございますけれども、たとえば入植者につきましては、毎年工事の完了に対応いたしまして、相当戸数を毎年毎年募集をいたしておりますが、そのうちの約半分は、地元の秋田県から入植者を選考するというような事情にもなっておりますので、そういう既存の農家が従来の耕地を捨てて新しく入植地に入りましたような場合の従来使っておりました農地等の配分等にあたって、地元の町村等でいろいろな配慮を加えるというような、やや迂遠ではございますが、そういうような方法もないではないと思いますので、そういう回りました道を通りながらでも、秋田県と打ち合わせをいたしたいわけでありますが、増反配分の基準をこの際変更するということにつきましては、御容赦を願いたいというふうに基本的には考えておるわけでございます。
  42. 内藤良平

    内藤(良)分科員 しかし、それじゃ、漁民の皆さんで、ゼロ反、全然持っていない方々に対しては、どういうぐあいになさるのですか。
  43. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 旧漁業者につきましては、漁業権補償との関連の中で、できました土地の一部を配分をするということが、工事着工以来の話し合いにもなっておりましたし、従来漁業をいたしておりました海面積もなくなることでもございますので、旧来の漁業者につきましては、当時経営をいたしておりませんでした人につきましても、ほぼ一町歩程度を、また一町以上の兼業の漁業者につきましては、さらに一町歩というふうなことを考えておりますが、これらの零細な兼業漁業者は、一町歩の新しい増反部分と、残りました海面における漁業とで生計を立てていくということになろうと思いますが、漁業者に対します配分は着工の際の約束ごとでもございますので、従来から農業をやっておった方とは、やや取り扱いを変えているのでございます。
  44. 内藤良平

    内藤(良)分科員 この点、結局三反歩ということも、これは三十五年ごろ三反歩ということがあったわけでありますけれども、これは私は、当時の住民の皆さんとの一種の約束ごとの一つのケースができたという形で、関係住民からは理解されておると思うわけでございます。それが、いつの間にか七反歩というぐあいになってきたわけですね。そういうことで、農林当局として、いろいろなたてまえはわかりますけれども、関係の湖岸の住民の皆さんとしては、非常に大きな不満がますます燃え上がっておるというのが実情なんであります。過去において三反歩ですね。これをやられて、途中から七反歩、こういう変更も、ある意味では湖岸の農民に対する契約を何か——契約じゃないですよ、はっきりした契約じゃないけれども、違反したような感じを与えているわけであります。そこら辺、何かどういうぐあいにお考えになっていますか。
  45. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 過去において三反という農家に増反配分をしたことは、先ほどもお答えをいたしましたように事実でございますが、それは西部干拓地及び南部干拓地という従来の湖岸の部分の干拓でございまして、昭和四十一年度の配分をいたしました東部及び北部の干拓地は、やはり湖岸の部分でございますが、すでに七反以上ということで配分基準を定めております。干拓の当初から三反程度の人にまで配分をする約束があったという経緯はなかったように私どもとしては承知をいたしておるわけでございます。また、いまおっしゃいますように、関係の背後地の農家の希望であるということで、七反という基準を三反まで引き下げるということになりますと、二千ヘクタールというきめられました配分の中に入ってまいります農家の戸数は著しく増加してまいりますので、私どもとしては、背後地の専業農家の水準に、できるだけ多くの農家を近寄せたいということが本来の念願でございますので、先生の農村に対する非常にあたたかい御配慮のほどは私もよくわかるのでございますが、先ほど来繰り返し申し述べておりますように、七反という基準をこの際変更をしろということについては、御容赦をいただきたいというふうに考えます。
  46. 内藤良平

    内藤(良)分科員 先ほど話の中にありましたが、新農村の建設事業によりまして中央の干拓地に入植した方のいままで持っておりました土地は、これをできるだけ配分するようなことを言ってましたね。それは、その土地は結局本人が手放すということを農林省としても強制的にやれるわけでございますか。
  47. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 実は、先ほどちょっとそういうことを申し上げましたのは、八郎潟ではなくて、琵琶湖の大中ノ湖の干拓をいたしましたときに、背後地の農家の一部が、従来の耕地を捨てまして、相当数干拓地に新規に入植をいたした。捨てますというと少しことばが悪いかもしれませんが、入植をする人が移転をして、旧来使っておりました農地は入植をしない母村の部落人たちに配分をいたしまして、背後地の農家の経営規模を高めるということをやったことがございます。昨年か一昨年でございます。それを頭に置いていまそういうことを申し上げたのでございます。私どもは強制的にするということはできないと思いますが、地元の町村なり県とも十分打ち合わせをいたしまして、そういう方法も納得がいけば可能ではないかというふうに思ったわけでございます。
  48. 内藤良平

    内藤(良)分科員 時間もなくなってまいりましたが、一言だけ。くどいようですが、そういう場合には、農林省も、地方自治体なりあるいは手放す本人の中に入って、価格の問題もあるわけですけれども、農林省自体も乗り出してそういう問題にも当たっていきたい、そういうことですか。ちょっと一言だけ。
  49. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 県庁なり町村ともよく相談をしてみたいと思います。
  50. 内藤良平

    内藤(良)分科員 私の質問は以上で終わります。
  51. 植木庚子郎

    ○植木主査 御協力を感謝いたします。  次は広瀬秀吉君。
  52. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 私は、きょうは東北縦貫道建設に伴って、関連して起こります農業問題等についてお伺いいたしたいわけであります。  最初に農林省にお伺いをいたしますが、縦貫道が非常に大事なものであることには変わりはないわけでありますし、私どもも基本的に東北自動車道に対して賛成の立場をとったわけでありますが、しかしその中で農業が非常に無視されるような形というものが出てくる、あるいはまた農業に生活を依拠している農民の立場というものが比較的軽視をされて押し通るのでないか、私はこういう不安を持つわけであります。まず、その一つの例が、たとえば栃木県に矢板というところがあるわけでありますが、これはたしか四十一年度に約四、五年くらいかけて構造改善事業による土地基盤整備が完成をしたわけであります。その直後に、この地区のどまん中に近いようなところを路線決定で通っていくということで、中心ぐいも打たれたわけであります。農業構造改善事業もまさに国の重要な農業施策としてやられた。縦貫道がそのあとを追っかけてそれを今度はぶちこわしていく。これも国益全体からいえば必要なことだということも言えるけれども、路線決定等の段階において少し配慮をするならば、若干のカーブがついても、こういうことは避けられたのではないかという考えも持つわけであります。そういうものの調整について、一体農林省はどの程度建設省と相談をし、そういうものに対して注文をつけてきたのか。こういうことはおそらく出先にまかして、あとから出てきた縦貫道、これははでな仕事ですから、県あたりもそのほうに力点を置いて、構造改善事業の土地基盤整備が完成した直後にもかかわらず、そいつをぶちこわしてはばからないというような事態になっていると思うのです。こういう点について農林大臣の御所見をまず伺いたいと思うわけであります。
  53. 西村直己

    西村国務大臣 もちろん申し上げるまでもなく、国土縦貫自動車道、それから農林省でやっております構造改善事業、それぞれ大事な目標を持ってやっている仕事でございまして、またそれらの農地の取得と競合しないということが最も望ましいことであることは当然でございます。したがって私は両方とも大きな目的だと思います。そいう意味では、われわれのほうの意見というものも、基本的には絶えずそういった建設事業等に対して訴えていったわけであります。  ただ問題は、具体的な現場現場の問題になってまいりますと、道路のカーブも、いろいろな全体としての一つの技術その他の面からいった経済効率と申しますか、他の面からくる要求も出てまいると思います。そこら辺をどう調整するかということで、基本的にはわれわれも非常に関心を持って、あとはそれぞれの地方の段階において、その方針の中において調整をとっていってもらいたいし、またいかなければならない、こういう考えでございます。
  54. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 大臣の基本的な考えはそれでいいと思うのでありますが、しかしその中にはやはりおのずから現地現地に応じての調整というようなものがあってしかるべきだと思うのです。  農林大臣になられたばかりでありますから、これはあなたに聞くよりは事務当局のほうが詳しいかと思いますので、いま私が具体例をあげました矢板市における構造改善地区を通る問題について、事前にどういう努力をされたか。路線は、その構造改善地区を避けて通れば通れないこともないと私どもしろうと目には思われるようなところなんです。東北自動車道については、五年前に路線の下調べだということで、私、調査にも参加をいたしました。その段階においても、建設省の役人も参加をされましたけれども、大体山すそを通って、農地をできるだけつぶさないように考えるということでした。栃木県だけでも約八百十ヘクタールの農地がつぶされる状況にあるわけであります。しかも構造改善を完成した直後にそのメリットがぶちこわされるような形で通るというこにとついてはなかなか納得ができないわけでありまして、しかもそれが絶対不可能というようなことであればわかるが、どう見ても矢板地区の場合は、このところを通らなければ次のところへ行ってどうにもつなぎが悪くなるのだという状況ではないような気がするのです。そういう問題について、安易に、せっかくでき上がったものを——縦貫道ができるだけまっすぐがいいことはわかっておりますが、そこらあたりで幾らかでもこの路線を寄せればそれを避けられるというような事態に対して、どういう努力をなされてきましたか、このことをお伺いいたしたい。
  55. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 一般的に、土地改良にせよ構造改善事業にせよ、農業投資をいたしましたような優良な農地はできるだけ将来にわたって確保してまいりたいという基本的な考え方はあるわけでございます。しかしながら、この高速度道路あるいは河川の改修といったような公共事業におきましては、個々の住宅や工場の場合と比べて、立地の選択性がきわめて乏しいものでございますから、またそれぞれの公共事業の性格としての経済効果なり、あるいは技術面の問題なり、あるいは今後の予算と申しますか建設費用の問題等がございまして、やはり立地の選択性の乏しいものにつきましては、ある程度やむを得ないという考え方をとらざるを得ないのでございます。もっとも、ただやむを得ないというだけでほうっておこうというつもりはございませんので、一般論として申し上げますれば、単なる用地補償ばかりでなしに、公共事業の補償基準に伴いまして、経営規模が小さくなりました場合の補償とかその他諸般の補償については、公団のほうで十分めんどうを見てもらいますし、また従来の水路や農業用の道路が高速度道路で分断されますために従来の機能を失うようなおそれがございますれば、これには公団のほうで補償工事をやってもらって、従来の機能を回復するところまでは公団の責任で処理をしてもらうというような事後処理的なことは、それぞれ地元現地と打ち合わせの上で積極的に処理はいたしておる次第でございます。  なお、御質問の矢板の地区等個々の場所ごとに起こります具体的な問題については、やはり私どものほうとしては直接には把握ができませのんで、関係の市町村なり関係の県と公団との間で必要な話し合いをしてもらっておるというのが実情でございまして、矢板地区について特に農林省として何らかの路線変更等の積極的な動きをしたかとおっしゃれば、率直に申し上げて、農林省としては直接何もいたしておりません。
  56. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 あなたのお考えをいま述べられましたけれども、実際には農林省としては、こういう問題については出先にまかして、県や市町村にまかして何もやらなかったという結論であります。この点について私は非常に遺憾だと思うのです。東北縦貫道がこれからずっと福島、宮城、岩手あるいは青森、こう伸びていくわけでありますが、その中でおそらくこういうものが、これは栃木県でもここだけではありません。鯉名沼の干拓事業、あれも完成したわけですがやはりそのどまん中を通っている。あそこの場合には、路線の関係で、回しても、やはりほかがそういう状況ですから、それはそこを犠牲にせざるを得ないと思いますけれども、矢板のような場合には、もうすぐ近くに山すそもあるわけでありますから、やればやれるようなところでもあるわけです。こういうような、先ほど西村大臣も答えられたように、現地を見て若干修正すればこれは避けられるのだというような場合であるならば、やはりそういうものについての農林省の統一見解のようなものを——こういう該当地区で構造改善をやって土地基盤が済んだようなところを、そのメリットを台なしにするような形でどんどんやっていくというようなことでなしに、その点について、やはり農林省が農民のために日本の農業構造を変えようとしてこういうことをやったわけですから、その成果というものをできるだけ発揮させていくという方向へ進むべきである。どうも農林省の態度があまりにも建設従属というような、道路従属というような立場で、農民の利益を守ることにきわめて不熱心であるというふうに私は思わざるを得ないわけであります。この矢板の地区だけでも総工費一億四千七百万かかっております。端数は抜きますけれども、国の費用も七千三百万かかっております。県が二千九百万も出しております。栃木県で一番貧乏な都市であり、全国でも最下位の部類に当たる矢板市が一千四百七十万も出しておるのです。そして農民が約三千万に近い借り入れ金と自己負担をやっておるわけです。こういうものに対して、いま農地局長が答えられたような程度の安易な考え方では私は困ると思うのです。福島県あたりでは、いま申した路線の中心ぐいも打たせぬといって農民が結束をして騒いでおりますが、栃木県は比較的協力的なんです。しかしながら、農民の利益をこれほどあからさまに無視しておるという事態で一現地の人たちからも、おそらく幅ぐらいなんか打つときにはかなりな抵抗が出てくるのではないかということもあるわけであります。そういうものに対して農林省としても、たとえばこの地区等について現地を見ていただいて。路線修正が可能ならば——これは建設大臣にもこの間分科会で質問をいたしたわけでありますが、絶対に不可能だということを言ってはおりません、非常に困難だと言っております。しかしながら、その点については私は納得をしていないということで質問を留保したような形にしておるわけでありますが、また路線変更のわずかな修正で済むと思うのですが、そういうものについて農林大臣としても現地をしっかり見きわめていただいて、この路線を幾らかでも修正するというようなことで、この構造改善の成果を発揮させるように骨を折られるお気持ちはございますか。成否は別でございます。
  57. 西村直己

    西村国務大臣 一般論といたしまして、私は最初に申し上げたとおり、国の大きな目的をどう調和させるかということは、単に縦貫道だけでなくて、たとえば将来起こるであろう例の新幹線、ああいった問題でも同じ問題が起こると思います。いわゆる農業の構造改善事業あるいは農村の建設などをやっていく場合に、同じ国費をお互いにむだに使い合っている、これは一番いけないことであるということは重々わかります。その調整を絶えずはかることが必要でございます。  それから、具体問題につきましては、私も実は東北地方を旅行したときに、その話は県庁その他住民の方々からも両論があって、いろいろな意見は聞いておったわけです。ただ、具体的には私は正直に申しましてわかりません。建設省建設省なりの一つの意見を持っておられるだろうと思います。しかしまた政治でございますから、そういうところがうまく話し合いといいますか調整がつくことによって全体にひびがいかないような形で工事が促進されるというような方法があれば、またこれは当然政治として取り上げなければならない。そこいらはもう少し私も建設省関係と話をしてみたいと思います。
  58. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 ぜひその点もう一ぺん骨を折ってみてください。  そこで、先ほども数字を申し上げましたように、市が一千四百七十二万五千円負担をしておる。それから農民の借り入れ金が二千三百六十万円。これは関係戸数は三百六十五戸でありますが、総面積三百三十七ヘクタール、そこで農民の個人負担が五百八十五万一千円、こういうことにもなっておるわけであります。こういうものがかりに路線変更ができないでそのままいまの姿で通ってしまったという場合に、これが得らるべき成果が百だとすれば、縦貫道にぶち抜かれることによってこのメリット、効果というものが何分の一かになる。これは二分の一かあるいは七割程度でとどまるか、いずれにしても非常にメリットが減殺をされるわけであります。一〇〇%の成果を期待して五百万の個人負担もし、あるいは二千三百万の借り入れもしてきた農民の立場とすれば、こういうものをそのままの姿でやられたのではたまったものじゃないわけです。それは農林大臣わかりますね。こういうものに対する補償の問題というのは一体どうされますか。
  59. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 補償の基準につきましては、すでに古くから閣議決定をいたしました公共事業の補償要綱のようなものがございまして、またそれをもとにして基本的な補償の基準等については、建設省なり道路公団とも十分打ち合わせをしておるわけでございますが、単に買収されます用地の買収費に見合いますもののほかに、たとえば経営規模が縮小されますような場合には、予ての縮小に伴って資本なり労働力等が過剰になって遊休化するというようなこともございますので、それらについても金銭に評価をして補償をするという措置も補償基準の中には含めておるわけございます。なお、そういう金銭補償のほかに、私どもとしては、高速道路関連の公共事業として圃場整備事業の予算を持っておりまして、たまたま道路敷になった人たちの経営規模が縮小するということだけでなしに、関連の部落全体として圃場整備事業をいたしまして、共同減歩という形で全体の人がそれぞれ負担する、あわせて圃場の区画をされいにすることによって、残りました土地での今後の経営が効率的にできるようにしていくというような配慮も、従来名神なり東名なりの道路の場合もやってまいりました。今後の縦貫道路についてもそのような事後措置的な方法として、単に経営規模が減ってしまったということだけでなしに、減ったことに見合いながら経営が近代化できるような対策も農地局の予算で処理をしていくということもあわせて考えております。
  60. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 一般的なお答えをされたわけでありますが、私が聞いているのは、二千三百六十万の借り入れをし、五百八十五万の個人負担をしている。それは構造改善地区は、建設省の方針でも、構造改善の済んでない隣接の農地よりは幾らか価値が上がったということで、買収価格の中にある程度織り込まれますという答弁はあるわけでありますが、しかしそのことによって、いま私が数字を申し上げましたように、これはどれだけ効果が減殺されたか。本来五百八十五万に対して五百八十五万の見返りがあるということで、一〇〇%その縦貫道が通らざりせば得られる利益というものが減殺されている。五百八十五万というものがその限度において、国の力によっていわゆる投資の経済効果が減殺されてしまった、そういうことに対する補償というものまで含まれるのかどうか、こういうことを伺っているわけであります。
  61. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 土地改良等の公共投資をいたしました場合には、投資をいたします前とは土地の価値が違ってきておりますので、当然用地代として公団から支払われます金額の中には、ただいまお話がございましたように、そういう土地の価値の増価分を含めた補償として支払われるはずでございます。それに見合って、事業の一部自己負担等が公庫借り入れ等になっておるといたしますれば、やはり補償金の中からお支払いをいただくということになろうかと思います。
  62. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 農地の買い上げ価格一本でそれを操作されますか。それともいわゆる広い意味での農業補償というような、先ほどちらっと農地局長から言われましたけれども、農業補償全般というような形で、土地の買い上げ価格と別個に補償をされるたてまえですか。その点いかがですか。
  63. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 もちろん用地代が主力だとは思いますが、単にそればかりではなしに、過去においてその土地を利用して得ております所得の何カ年分とか、あるいは経営規模が縮小することに伴いまして遊休化した施設なり労働力を金に換算をして補償する等の基準もそれぞれあるわけでございますから、そういうもの全体を含めた中から処理をいただくということになると思います。
  64. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 それはわかりました。  それで、建設省にも尋ねたわけでありますが、非常に小規模な残地というようなもの、農業用にはもう使えないというような残地の補償の問題とか、あるいはいま局長も言われましたように、土地をかなりのパーセントで減殺されてしまうというような状況になる。二町歩のものがはなはだしいものは一町歩になってしまう。とても自立経営としては成り立たなくなる。いわゆる労働力と、せっかく二町歩に見合う機械設備をしたものが完全燃焼をしない、農機経営としてはきわめて不利な状態に追い込まれる、こういう事態があるわけでありますが、そういうことについても補償をされるということをおっしゃったわけでありますが、それについて具体的にどういう基準があるのか、このことをお示しいただきたいのと、さらにこの二町歩の農家が一町歩になったということになりますと、営農形態というものがまるっきり変わってくるわけであります。米をつくったり、あるいはその他のものでは、反収の比較的少ないものではもうどうにも農業としては成り立たなくなる。代替地を何とか心配するといっても、それは十キロなり、十五キロなりというような遠いところにしか求められないというようなことになると、これはほとんど不可能に近い。代替地は不可能に近いだろうと思うのです。表現としては、代替地をできるだけ世話をするというようなことを言っておりますが、現実としてはむずかしい。こういうことになりました場合に、営農をどういうようにさしていくか。新しい営農形態というもの、たとえば反収六十万なり七十万というようなものが得られるようなものに転換をさせるというようなことなんかも当然やっていかなければならぬことだと思うのですが、そういう面での営農転換といいますか、そういうものについてどのような考えと方針で指導をされていくか。そしてまた、そういうものに転換される間の補償というものは、労働力、機械が完全燃焼しない、遊休化したというものに対する補償、こういうものはすぐれて農業補償というものだと思うのですが、そういうものに対しても十分な基準があってやられるお考えでしょうか。その営農転換の指導というものと補償の基準というものをお示しいただきたい。
  65. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 まず残地の補償でございますが、同一の所有者に属する土地が大部分買い取られて、ごく一部非常に不定形な形などで残りますような場合には、その土地は買い取りませんで、そういうふうに残地になったことに伴います価格の低下とか利用価値の減少、そういうものを見積もりまして金銭で補償をするということになっております。  それから経営規模が縮少いたしますことに伴いまして、先ほどもちょっと申し上げましたが、資本や労働が過剰で遊休化をいたします場合、それから経営効率が客観的に低下をするというようなものにつきましてもそれぞれ金銭に評価をして補償をする、そういうたてまえでございますので、補償面につきましては、これらの基準を具体的に現地に当てはめていきます場合に、十分県庁等も指導いたしまして遺漏ないようにしてまいりたいと思います。
  66. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 それから、いまのような形でやられる、その中に農作業それから作物の収穫、運搬、資材の運搬なども当然でありますが、縦貫道が少なくとも三メートルないし四メートルの高さで走るわけですから、地下道みたいなものを通るわけですが、そうすると畑が分割された上に非常に遠回りしていかなければならぬというようなことでの問題も当然出てくるわけであります。そういうものなんかもやはり補償基準の中に入りますか。
  67. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 従来ございました農道なり導水路が分断をされましたりいたしました場合には、やはりその高速道路の下を抜けましてその農道なり導水路なりが従来の機能を果たし得るようなところまでは、公団の補償工事として実施をしてもらうたてまえでございます。そのほかには、さっきちょっと申しましたように、関連の公共事業として私どものところの予算で圃場整備事業とか土地改良事業等を実施をいたしまして、残りました土地についての営農が効率的に、近代的にやれるような措置を別途講じていくということを考えているわけでございます。
  68. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 時間がないものですから一つ一つ詰めた議論はできませんが、そういういろいろな基準は、これは建設省農林省の打ち合わせのような形になっているのだろうと思うのですが、現地の農政の出先あるいは県や市町村に対して、農民の立場に立ってやはり農林省としてはそういう基準もつくられたと思うのですが、そういうことが徹底しておりません。農民もそういうことは知っておりません。どこまでやってくれるだろうということについては、現地の人たちは何も知らないのです。県も知らせようとしないし、市も知らせようとしない。何とか補償されそうだというばく然たる話しかないのですよ。そういうものに対しては、もっと、農民の立場に立つ農林省なんですから、だからそういう立場でこういう補償基準もあるのですというようなことをちゃんと徹底させていかないと、それが絵にかいたもちになるという点を十分注意をして、農民に知らせて、当然補償さるべきものは補償されていくといった形に持っていっていただくようにしていただきたいと思うのですが、大臣、その点いかがでございましょう。
  69. 西村直己

    西村国務大臣 縦貫道の問題だけ一つ取り上げましても、日本道路公団も東名高速道路等でこういった農地の用地買収にずいぶん苦労された経験もあります。したがって、また同時に広瀬さんのおっしゃる現地農民の不安もよくわかります。実は私も東名のところに郷里を持っておる男だけに、その間の農民の不安、同時にまた建設省もいろいろな意味で経験を持たれたと思います。そこらを十分かみ合わせて、最も農民にも安定を与えると同時に、また国家目的が円滑に推進されるように努力をしてまいりたい、こういうふうに思います。
  70. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 特に私が大臣に要望しておきたいことは、この縦貫道というのは大体農民にはあまり利用されない。目の前をすばらしい道路があって、そして、私も名神道路を見たわけですが、日本の経済建設に役立っていると思われるような物資の輸送があまり見られないのですね、状況として。レジャー用の乗用車がぼっぼっ通っているというようなことで、ぜいたくしている連中が遊びに通っているじゃないか、おれたちの土地をこれだけ踏み台にして、こういうような感じを持つわけですね。しかも地元人たちはよほどのことがないと、おそらく上に上がって見ることもできないというようなことであって、そういうような点もありますから、縦貫道によってこれは国家目的には大きく奉仕するわけでありますけれども、地元人たちには不便と犠牲だけをしょわせるというような形になるわけでありますから、それらの点も十分配慮されたいということを申し上げたいのであります。先ほど農地局長は、関連して当然整備事業とかあるいは土地改良は新しくやらなければいかぬとおっしゃったということは、それはこの道路が通ることによってそうせざるを得ないという問題が出てくるわけですね。その問題については、これは農民が希望をして、そしてだんだん市も認め、県も認め、そして農林省にきて認可をされて土地改良事業が始まるというものとは、まるっきり性格を異にする。そういう場合には、これは全く国の必要によってやらざるを得ないことになるというような、その種の土地改良というものは、いままでの概念とは違った予算のつけようもあるだろうし、補助率の引き上げもあるだろうし、また、われわれの希望から言えば、そういう程度のものは国で全額見てやってもいいんじゃないか、こういうような希望も持つわけでありますが、これはいかがでしょう。大臣、ひとつ前向きのそういう姿勢がおありかどうか。
  71. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 高速度道路の関連の事業としては、主として圃場整備事業が、たとえば先ほどもちょっと申しましたように、道路用地等を共同減歩で生み出すということも考えておりますので、一番地元から要望が多いわけであります。私どもとしては、道路がたまたま通るからやらなければならなくなったというよりは、今後農業経営の機械化が進み、効率的に進んでいきますためには、基盤整備としての圃場整備事業を非常に重要視して、予算の計上等をはかっておるわけでございまして、むしろ高速度道路が通ることによって、本来やるべき圃場整備事業の着手の時期が早まったというふうにも理解ができますので、従来の採択基準、従来の補助率ということで現在は考えております。
  72. 植木庚子郎

    ○植木主査 広瀬君に申し上げますが、おおむね時間が超過いたしていますから……。
  73. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 この一問で終わりますので、お許しをいただきたいと思います。  これは農林経済局長でございますが、農業共済団体に対する事務費の国庫補助の配分方式についてお伺いをしたいのですが、特に栃木県の場合に、点数から見て、連合会及び組合等に対する補助金が非常に少ない。この資料をずっとながめましても、私ここで数字を一々読みませんが、これは皆さんのお手元にもいっておるはずでございますが、これをどうながめましても、類似の総合点数のところを全部比較いたしましても、栃木県が一番安くなっておる。これは一体どういうわけなんだろうか。私どもこの表をどう分析しましてもわからないわけであります。これはやはり何か理由はあるんでしょうけれども、非常に不公平な配分になっておりはしないだろうか、こういう気持ちを持つわけであります。不均衡ではないかという関係の数字を全部持っておるわけでありますけれども、これは皆さんのところにもいっておると思いますから読み上げませんが、これについてどうお考えでしょうか。この配分についてぜひひとつ直していただきたいと思います。
  74. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 栃木県の共済組合連合会のところから、いま御指摘のようなお話がございまして、私ども検討をいたしておるわけであります。ただ事務費と申しましても、農業保険の事務費は百億に近い額の金を県の連合会、組合に配っておりますので、私どもきわめて客観的な基準でこれを配分いたしませんと、各県からいろいろ苦情が出るわけでございますので、相当慎重にいろいろなデータでこれを配っておるわけであります。栃木県からの意見は、実は私どもが使っております土地のデータについて、部分的に自分のところで計算をいたしまして、それで事業分量がたとえば同じような宮城県と比べて、栃木県が非常に不利だというふうにいわれておるわけでございます。これはよく御承知のことと思いますけれども、その場合でも、単に事業分量割りといたしましても、農作物で申し上げますと、私ども面積とか筆数を加えておりますし、蚕の場合は、箱数とか養蚕戸数とかその他組合員の数とか、あるいは組合と連合会の距離等、当然かかるべき費用をいろいろな基準を用いて算出いたしておりますので、栃木県の連合会で自分のところではじいているのと若干基準が違っておるわけであります。それで、私どもよく栃木県のほうに納得してもらうように話をいたしておるわけでございます。別に栃木県からのいろいろな問題で私ども算出方法をいま変えるというふうには考えておりませんけれども、私どものただいまやっております算定基準では、事業実績といいますか、事業分量割りだけでいきますと、栃木県のほうがほかの県に比べて若干不利になっていることは事実でございます。私どもが試算に使っているその他のデータでそれが薄められておるわけでございますが、それでだんだんに栃木県に総体的に有利になってまいりまして、四十三年度の事務費の配分は、まだ私ども決定しておらない試算の段階でございますけれども、四十三年度の試算の段階におきましても、多少は事務費によるある意味での有利さといいますか、そういうものがだんだんにあらわれてきつつあるというふうに考えておるわけでございます。
  75. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 データの一部だけを引用している面もございますでしょうけれども、大体この中で引用しているのにはかなり重要な面がある。ほかのデータで薄められる部分があるにせよ、いまおっしゃったような面もあるわけでございますから、これはひとつできるだけ増額の方向で十分御検討をいただいて、要求にこたえられるようにお願いいたしたいと思います。  以上で終わらせていただきます。
  76. 植木庚子郎

    ○植木主査 次は玉置一徳君。
  77. 玉置一徳

    玉置分科員 まず冒頭に、農林大臣からひとつ所見を求めたいのでありますが、昭和三十六年に農業基本法が制定されまして、ようやく七年間を経たのでありますが、御案内のとおり、当時のうたい文句でございました他産業との所得の格差を解消するというようなこと、これもうまくいっておりません。自立経営農家の増加も期待するほどのことはない。農産物の国内自給率も低下しております。青少年は農村を離脱して、ほとんど三ちゃん農業になりつつあることも御承知のとおりでございます。このままの農政では、農業の近代化も非常に至離であると思います。一体これをどうしていったらいいか。ただに農林大臣だけではなくて、われわれ国会で農政に関心を持っておる議員もほんとうに心配いたしております。この際ひとつ、どういうようにおやりになろうと思うのか、御所見を承りたいのと、もう一つ、重ねまして、一枚看板でございました構造改善事業も同じく七年を経過してきておるわけでございますが、それの受益面積、あるいはやってまいりました実績も、必ずしも満点ではないと思います。私は、毎年の予算委員会もしくは分科会等で、赤城農林大臣以下各歴代大臣にこのことを申し上げまして、その評価並びに、やがて次の施策をやらなければいかぬ時期が参りますので、どのように評価し、そうして、今後どういうように改善していこうとお思いになっておるか、このこともあわせてお伺いをいたしたいと思います。
  78. 西村直己

    西村国務大臣 まことにごもっともな御質問で、大事なことでございます。  実は御存じのとおり、本日閣議におきましても、四十二年度の農業の動向を中心として、農業白書を政府は発表いたすことにいたしました。それで、四十三年度においてこれから講じようとする施策を、農業基本法に基づいて出すことについて協議いたしたわけでございます。基本は、何と申しましても、農政の基本につきましては農業基本法に従って生産政策、価格政策、構造政策、こういう三つの政策を中心に施策をすることをきめましたが、私どもの立場のほうから見ますと、一応その間において七年、この政策を基本法に基づきましてとりましてから、やはり選択的拡大とか機械化によって生産性の向上をはかる、それから耕地規模の拡大、資本の集約化による農業経営の近代化と申しますか、それから所得格差と申しますか、農業所得も漸次上がりつつある。もちろんその裏には価格が上がったからという含みもありますけれども、そういう方向にあることは農林諸統計指標において示されるところでございますから、一応政府の立場においては、御批判はありますけれども、テンポはかかっておりますが、着実な方向では進んでおる。元来、農業の性格は、玉置先生御存じのとおり、一日、二日、一年、二年で解決すべきではなくて、方向を誤らずに、着実に、しかも粘り強く前進させる、それが基本だと思います。ただ、おっしゃるとおり、一つは予想を上回るところの高度成長というのがぐっと伸びております。そして、都市化その他いろいろな現象が続いてきておりますので、農村あるいは山村におけるところの過疎現象あるいは労働力の減少、しかも多少労働力の質的な退化、こういった現象が出てきたこと、それから冬季に裏作が行なわれない、こういうようなことから、食糧の需要構造も変わってきておりますが、自給率が全体としては少し下がってきておる。非常な下がりではありませんけれども、全体としては少し停滞ないし下がっておる、こういうようなことは、われわれとしてはやはり大事な反省材料である、こう思っております。  そこで、食糧を中心としましたわれわれのほうの責任は、国民に安定的な効率の食糧を確保すると同時に、農業従事者の福祉向上と申しますか、生活確保、発展、これを考えていくことが大きな使命でございますから、今後も農業基本法の定める基本に従いまして、この変化をよく見定めながら、先ほど申しましたような姿勢の中で具体策をとってまいる、これでございます。特に、一番中心は、零細農耕、それから土地が小なくなっておる、あるいは土地を資産的な傾向で保全しようなどということに対しまして、これが農業構造の改善に相当壁になっておる。そこで、御意見はいろいろ出ますが、近く農地の流動化に対するわれわれの考え方、施策なりを出して、国会ですみやかな御批判を受けたい、こういう考えでございます。  資金面でも、農業経営に対して、本年度から総合資金制と申しますいわゆる一種のプールにおける機動力を持った資金制度を起こすとか、協業関係の共同集団的生産体制の強化とか、それから、もちろん従来からやっております基盤整備は計画的に促進する、あわせまして、われわれはあえて、やはり多少ずつ職業転換が起こってまいります。それを円滑に進めると同時に、年金制度に対する検討を急いで進めてまいる。さらに技術面であるとか、機械化面であるとかというようなこと、それから、地域全体としては、単に農業の経済の面だけではなくて、今度は生活全体として農村をつかんでいくような環境整備と申しますか、その中に優秀な青少年を中核体とした農村づくりをやっていく。これは、やはり国会の場におきましては、農村振興地域整備に関する法律案というような形でもっておそらく皆さまに御提示申し上げて、御批判を請いたい。そこで、こういった一連の構造政策によって、体質の強い日本農業、それから近代的な農村づくり、こういうところを私としては、私が特にこの仕事を受けたから変化するのではなくて、従来のをさらに緻密に、着実に推進してまいりたい。  それからもう一つの御質問のほうの、構造改善事業に対する評価と反省、この問題を簡単ではございますが、申し上げますと、構造改善事業をどれぐらいの量でどういうふうにやったかということは、それぞれの専門のほうから御説明いたしますが、評価につきまして、これはわれわれのほうでも絶えずしかるべき方面に調査をいたしておりまして、近代的農業経営の基盤が確立をされてきたとか、労働力のいわゆる省力化が行なわれたとか、作業の能率化、それから婦人労働の軽減、協業の促進、それから農家の考え方もかなり変わって進歩的になる。また、この構造改善事業というのは、従来、農業は気の毒だからただ金を与え補助金を与えるという、そういう形とは違って、いわゆる引き合う農業と申しますか、経済としてもきちっとしてやっていける農業になり得るのだという方向へ漸次生産意欲が展開していくような——もちろんこれには流通、消費、こういった面とも十分われわれは関連してものを考えていかなければならぬのじゃないかと思います。こういった方面に明るい面もありますが、一面におきましては、相当負債をしょっているとか、それから今後のアフターケアと申しますか、維持とか、地域にうまくマッチしてないとか、いろいろな反省の問題もあると思いますので、これらも十分勘案して、今後、次期政策等を推進する場合にも、こういうものを基礎にしてまいりたい、大ざっぱに申し上げましてそういう考えでございます。
  79. 玉置一徳

    玉置分科員 農業のことでありますから、もとより一日でどうするということはでき得ないと思いますけれども、いまのお話しのように、過疎地帯が起こるとか、いろいろなことが起こってまいっております。社会の進展に対応する意味におきましても、あるいは安定した農業を確立するという意味におきましても、私は、結局圃場の整備がない限りは、自立経営の拡大もなかなかむずかしいのではないだろうか、先ほどお話しの近く提案されます農地法の改正にいたしましても、圃場整備ができまして土地改良が完成しておりますと、非常に実効があがると思うのです。日本の農業の近代化あるいは構造改善政策の推進は、一にかかってというほど農村の圃場整備が必要である。政府も、一昨年からですか、十ヵ年計画によりまして約一兆一千五百億円の圃場整備を伴う土地改良事業をお考えになったのでありますか、片一方で道路の五ヵ年計画が、四十二年度から五ヵ年で六兆六千億、そのほかに予備費一千五百億、十年間で約十四、五兆円までやろうと思っておるわけであります。性質は違うとは思いますが、日本農業全部の近代化でありますから、そのくらい思い切ってやらなければならないのじゃないだろうか。大体日本のたんぼの八割ぐらいと、畑作も考えまして、約二兆五千八百億円ぐらいは直接要るのじゃないだろうか、間接の費用を入れましてその倍の五兆円ぐらい要るような感じがいたします。このことは、私は問題は原資の問題だと思いますが、ガソリン税に匹敵するような何らかのくふうがあってしかるべきじゃないだろうか。もしくは、この一兆一千五百億円にいたしましても、八千五百億円の補助金のほかに、融資の三千億円を考えております。日本農業の近代化でありますから、どこかに融資をし、長期債券を発行することによって、将来その利子補給をするというような手でもって相当な源資を集めることもできるのじゃないだろうか。米価に関しては、物価の問題のやかましいおりから問題はございますが、これまた何らかのくふうを農林省はしていいのじゃないだろうかというような感じがいたします。かようにいたしまして、何とかして一兆一千五百億の土地改良事業を完遂することはもちろんのこと、せめてこれの倍くらいな速度で進めていただくことをひとつお願いを申し上げたいと思うのでありますが、御所見を承りたいと思います。
  80. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 農業生産の今後の効率化あるいは近代化の基盤として、圃場整備事業がきわめて重要である、また、現在の計画で融資ワクを含めまして一兆一千五百億円というようなことでなしに、もっと事業のテンポを早め、あるいは事業量をふやすような方向についてくふうが必要ではないか、こういうたいへん御激励なり御鞭撻の御趣旨の御質問であったわけでございますが、玉置委員も御承知のように、先年立てました土地改良長期計画は、全体として二兆三千億ということで、前期五年、後期五年に分けてものごとを考えておるわけでございますが、一応今日までのところいろいろと御支援をいただきましたおかげで、計画に見合う事業の進捗率は、まあまあという進捗率を示しておるわけでございます。まだ計画を立てましてから数年を経たにすぎませんので、いまのような事業テンポで進むならば、この計画も相当なところまでこなしていけるというふうにも考えておりますが、逐次工事が完成をしていく過程を踏まえながら、今後もさらに適当な時期にはこの計画に検討を加えまして、できるだけ工事の促進をはかり、基盤の整備をはかってまいりたいというふうに考えております。
  81. 玉置一徳

    玉置分科員 流通の近代化でございますが、これは生産者、消費者、両者にとりまして非常に重要なことであります。農業の近代化にも直結すると思うのですが、これにつきましては、皆さんの御努力によりましてかなりの予算を確保できたのでありますが、これの細目は近日できるというようなお話でありますので、質問を省略いたしまして、野菜の生産出荷安定資金制度の問題であります。これは米麦に匹敵するほどの農産物であります野菜につきましての唯一の価格支持政策でございますが、私も数年これを主張してまいりまして、四十一年に制度化していただいたのでありますが、調べてみましたら、それから今日まで一回も適用されておらないということであります。  これはなぜかといいますと、過去五年間の平均価格のとり方がだいぶ前の価格をとっておったところに問題がある。それから、補償基準額が三分の二であります。これも農家の満足を買わないでしょう。てん補率が七〇%である。おまけに足切りの最低基準額がきまっておるのですから、大げさなものものしい制度でございますけれども、あけてみればまだ一回も適用にならないというくらいにしか農家には恩恵が施されておりません。こういうことでは、かつて京都府の農林部長をしておりました浜田さんがやられましたように、あるいは過去三年間の平均価格をとりまして、それで赤字が出た場合は借金をしろ、黒字が出た場合にそれを返せ、借金中の利子補給を、生産者団体と、こちらでいえば政府が分割して持っておる、こういう案のほうが、あるいは直載簡明で、農家にはわかりやすいような感じがするくらいであります。それがいいとは申しておりません。だから、せっかくの野菜の価格支持政策の柱でありますから、ひとつ十分これの内容を充実していただきたいが、どういうように施策をお考ええになっておるか、お答えをいただきたいと思います。
  82. 黒河内修

    ○黒河内(修)政府委員 ただいま先生からお話がございました野菜の生産出荷の安定制度につきましては、先生も御承知かと思いますけれども、野菜生産出荷安定資金協会は四十一年十月に発足をいたしておるわけでございます。昨年の四十二年度は一、二月に若干寒さの害がございましたことと、七月中旬以降の干ばつ等によりまして野菜の価格がわりあいに堅調でございました。そういう関係で、四十二年は異常な価格の下落はないというために、御指摘のように今日まで交付金を交付した実績はございません。しかし、これはまだ発足早々のことでございますから、今後の危険はやはりあるわけでございますので、そういう意味でひとつ御了解願いたい。  なお、参考までに申しますと、この協会が発足する以前に財団法人組織でやっておりましたときには、三十八年、それから三十九年には、先生も御承知と思いますが、タマネギ、キヤベツにつきまして、両方で約二億五千万ばかりの交付金が交付された、その結果、財団の存在がうまくないというようなこともございますから、危険は将来もあると思います。  それからなお、制度の内容につきましての御指摘がございましたが、まず第一番の平均販売価格を過去古いものをとっておるという点は、まことに御指摘のとおりでございまして、従来は三十三年度から三十八年度を基準にとっておりましたが、これは関係者の強い要望もございまして、私どもも来年度から改定をいたしまして、三十六年度から四十一年度までの六カ年を来年度からとる、それで最近の野菜の価格の実勢が反映できるように改善いたしたいと考えております。それから第二点の、補償基準額が、御指摘のように、現行制度は三分の二でございますけれども、これも関係者の強い要請がございまして、四分の三に来年度から改正をはかる、こういうことにいたしております。  それから、補てん率の問題につきましては、従来どおりまだ七割でございますが、これにつきましては、補てん率を上げることはけっこうなことですけれども、一方において、生産者団体の負担が増すという問題もございますし、それから、あまり補てん率を上げますと、生産者が合理的な販売努力を怠ると申しますか、そういうようなこともございまして、これらについても慎重に将来の問題として私ども検討いたしたい。  なお、制度の改善については今後も努力をいたしたい、こう思っております。
  83. 玉置一徳

    玉置分科員 次に、大臣、後継者対策についてでありますが、昭和三十九年だったと思いますが、農業の後継者対策といたしまして、改良資金の無利子貸し付け制度ができまして、御承知のとおり五年間たちまして、五十万円無利子、こういうことでありますが、この限度五十万円では、今日の事態には全く適応できないようになっておるのではないだろうか。御承知のとおり、すでに限度八百万円の総合資金貸し付け制度が創設されようとしている今日であります。限度を少なくともこの八百万円近くに上げなければならないのではないか、こう思います。農業の特殊性というものを考慮いたしますと、期限五年というのはほんとうに試験的に何かをやるということしかないと思います。すでに果樹振興法が十年、自創資金はそれよりもはるかに長い、こういう資金制度があるわけでありますので、私が三十七年、三十八年の予算委員会におきましてこの制度の創設を強く迫りましたのも、農家の青年諸君が安んじて農業を続けていただくようにするのには、ぜひともこういう着意が必要ではないだろうか、こういうことであったのです。しかるに、御承知のとおり、父祖と違う、異種のものでないと金は貸さぬ。親子げんかが起こったらいかぬから、二人担保のうち一人は親の担保を置け、こういうことになっておりますが、私は、いままでおやじと一緒にいそしんできた経験豊かな農業の経営拡大をするところへ持っていってやらなければ、話は逆になるのではないだろうかと思います。こういう意味におきまして、私は先ほども申したことと類似いたしますけれども、自創資金あるいは果樹振興法をそのまま適用いたしまして、むしろ利子補給を後継者にはするということのほうが無難であり、その後継者にもありがたいのじゃないか、こういうふうに感じるわけであります。農業後継者資金の改善につきまして大臣の御所見を承りたいと思います。
  84. 西村直己

    西村国務大臣 お説も一つの考え方だと思いますし、その後継者に対して改良資金というよりはむしい総合的に利子補給して、しかも長期化する、そして現在の経営者とは違った面で五十万円、しかも期間も中期と申しますか、そういうものでなくて長期、金額も大きく、一種の一般の金融の中で利子補給して安定的に後継者を育てる。ただ、われわれのほうがいままでやってきました制度は、融資というよりは一般会計から出す補助金と一般融資との中間のようなところをねらって助成して、新技術の導入、伝習といいますか、勉強といいますか、修得する、こういうふうなことで、国、県がそれに対処する。ですから、一般の融資ということになりますと、普通の公庫融資とか、あるいはは系統資金とかいろいろあるのですから、そこいらの区分けから見ますと、われわれのほうとしては、いまのところ、中間的の助成のような気持ちでもって後継者の育成に資するというこの制度のたてまえからいくと、ちょっと混淆ができ過ぎはせぬか、こういうので、私のほうとしてはそういう考えでおります。ただ、こういう問題は、完全なものと申しますより、とにかく農村にりっぱな後継者に定着してもらうということが目的でありますから、その目的のためにはわれわれも不断に検討はしていかなければならぬ。何も絶対にこれがいいのだというふうに言い切れるものじゃない、よく検討していかなければならない、こんな感じを持っておりますが、なお専門的なことは政府委員のほうから御答弁させたいと思います。
  85. 玉置一徳

    玉置分科員 おやじが稲作もしくは果樹をやっているときに、むすこは、それならば豚を飼い鶏を飼うというようなことになりますと、あまり成績があがっていないのじゃないかということを推定いたしております。皆さんのほうも、私のほうも、ともにこれは調査いたしまして、ほんとうにどういうことを希望しておるのか、次の国会にはそういうものを基礎にお話し合いができるようにお願いをしたいと思います。  時間の関係がございますので、残りを一括して質問いたしますから、それぞれお答えをいただきたいと思います。  農民年金の創設でありますが、このことばかりきょうまでしゃべってきたのでありますが、いよいよ大沢さんを中心に研究会も発足されまして九回に及んで会合されたと聞きます。三月中に十回目の会合をして、一応今日までの何らかの結論を得られるように承ってもおりますが、そのことは事実であるかどうか。  その次に、和牛の増産でありますが、和牛の増産は三十年ごろから横ばいになっておりますが、食生活の向上のために需要はどんどん伸びてきておるというのが現状であります。そこで、多頭飼育その他について非常に御努力いただいておりますが、流通の問題においてなお思い切った改革が必要であろうと思うのですが、和牛増産並びに流通改善にどのような案をお持ちになっているか。  最後に、競馬会法のことでございますが、これは文部省の文化財保護委員会と農林大臣からお答えをいただきたいのです。中央競馬会の国庫納付金は昭和四十年に百二億、うち十五億が第二国庫納付金であります。四十一年は百四十八億、四十二年は百八十六億、このように伸びてきております。そして国庫納付金は、日本中央競馬会法の第三十六条におきまして、社会福祉の事業の振興、それから畜産振興というような必要な経費に充てるというふうに規定しておりますけれども、畜産振興と社会福祉事業というものは当然国の一般財政でも措置しなければならない問題であります。昔の軍馬の養成時代と違いまして、いまや競馬は国民の健全な大衆娯楽でありますが、一面、政府が直轄するギャンブルであるということもいなめない事実だと思います。そこで、せめてもの贖罪といたしまして、古文化財保護国民の魂のふるさとである古文化財を守るというほうへも若干の金がいくようにしたらどうだ。これは、西村農林大臣は自民党の政調会長もしておいでになりましたので、大所高所からものを言っていただくのに好都合だと思いまして御質問申し上げたのですが、古文化財保護のほうは、建造物に至りましてはこれから三十年、その他の防災施設にいたしましても十年かかるような遅々たる予算で進んでおります。その間に法隆寺だとか根本中堂だとか金閣寺だとか、非常にりっぱなものが滅失しております。一日もゆるがせにできないわけでありますが、原資が足りません。したがって、こういうところを少し改正していただくことによりまして若干の政府基金を出資し、そこに民間の浄財を集めまして特殊法人をつくって、その改良をやったらいかがであるかということを文部大臣に一昨日質問をいたしました。他省所管のことでございますのであれでございますが、いままでのようなものでは原資がどうしても伸びませんから、農林大臣と相談して検討させていただく、こういうようにお答えがあったわけでありますので、所管大臣として一応質問をいたしたわけであります。  以上三点にわたりましてそれぞれ御答弁をいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  86. 西村直己

    西村国務大臣 御質問でございますから、農民年金、それから競馬会の問題を私からお答えさせていただいて、和牛の問題は畜産局長からお答えをさせていただきたいと思います。  そこで、農民年金は、予算委員会の本委員会等を通じましてお答えをいたしておりますとおり、これは政府、党が公約もいたしておる問題でもございます。また、先生も非常に長い間これを御主張になっておられると聞いております。そこで問題は、具体的検討ということを必要としますので、農林省におきましては、御存じのとおり農民年金研究会、これはなるべくすみやかに検討を進めてもらいたい。一方、厚生省におきましても、多少の予算小さな調査費と申しますかをもって国民年金審議会などの専門部会で検討する。厚生年金が基礎に関連がありますので、四十四年には厚生年金の改定、したがって国民年金制度もそれに関連して変えていかなければならぬ。それにめどを置きましてわれわれのほうも成案を得て運んでまいりたい、こういう考えで前向きに進んでまいりたいと思います。  それから競馬会のほうでございますが、中央競馬会法の三十六条でございますか、それで国庫納付金の四分の三は酪農、残りの四分の一が社会福祉ということになっております。いま先生のおっしゃいました、文化財保護のために中央競馬会法を改正して、一種のテラ銭でございますね、国庫納付金を充てたらいい、文化財についてはもっと前向きな保存をしていかなければ、魂のふるさと、民族の歴史というものが失われる、これは当然のことで、ただこれは一般会計その他から考えることも重々私承知しておりまして、率直に申しますと、小さな竜吐水で火事を消しているような感なきにしもあらずです。ただ、競馬の金を持っていくかどうかにつきましては、御存じのとおり競馬の金というものは、率直に申しますと便宜的にあらゆる方面から大義名分を立ててちょいちょいと、悪いことばですが、率直に言って、これに便乗しようという雰囲気の中で問題が解決されてはいけない。やはり国営競馬でございます。ある意味ではギャンブルでもございますが、これの正常な考えの中で、しかも単に農林省と文部省との相談というよりは、政府全体として、どうしてもここにウエートを置かなければならぬという決意のもとにこういったことを進めていただける場合においては、われわれとしても慎重にこれを検討していく、こんなふうな考え方で、十分に、ほんとうに国策としてこういうものにさらにウエートを置いていくという決意がないと、便宜主義的なことではいけない。しかし、先生のおっしゃる文化財の保護というものは、単なる国民の税金の一部の手当てで糊塗していけばいいのだということであっては相済まない、こういう考え方はもちろん了解できます。
  87. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 和牛の増産並びに流通の問題でございますが、御承知のように最近食生活が高度化してまいりまして、牛肉の需要がだんだんふえてまいっておるわけでございます。一方で生産のほうはどうかと申しますと、先生御承知のように、従来和牛というものは、使役であるとかあるいは採肥ということで飼育されておったわけですが、農業機械化が進展してまいる、あるいは化学肥料が普及してまいるということに伴いまして、だんだん減少の一路をたどってまいったわけであります。そこで、私たちのほうといたしましても、昭和四十一年に肉牛の増産に対する基本的な方針を立てまして、これに基づきまして、たとえば改良地域でありますとか、増産地域でありますとか、飼育地域でありますとかいうふうな地域を指定しておりまして、そこで総合的な増産の施策を講ずることにいたしたわけです。そこで、たとえば肉牛の家畜導入制度でございますとか、草地改良でございますとかいうこと等の施策を講じまして推進をしてまいっておるわけでございますけれども、四十三年度におきましては、さらに従来やっておりました肉牛繁殖センターに加えまして、里山利用の飼育施設の助成をするというふうなこと、並びに昨年度行なわれました肉牛販売に伴う所得税の五年間の免除措置、あわせまして地方税の免除ということについても検討、計画をいたしておるわけでございますが、さらにこれに加えまして、子牛の安定基金を設置いたしまして、これによりまして増産の一翼にさせたいというふうに考えておるわけでございます。  流通関係といたしましては、センターを設置をいたしまして、ここで合理的な処理をするというふうなことを考えておりますし、また、家畜の取引につきまして再編整備を行なうというふな考え方でございまして、これをさらに一そう推進をしたいというふうに考えておるわけでございます。最近、御承知のようにいろいろな施策の効果も出てまいったわけでございまして、従来どんどん減っておりました肉牛も、最近下げどまりというふうな状態になりまして、今後は増産の方向に向かうのではないかと期待をいたしております。さらに一段と増産のための努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  88. 玉置一徳

    玉置分科員 終わります。
  89. 植木庚子郎

    ○植木主査 次は安宅常彦君。
  90. 安宅常彦

    安宅分科員 私は、いわゆる干害等の応急対策事業と通称言われておる、たとえば話はたいへんこまかくなりますが、干害等の場合に国が補助する——激甚災害地に対しての補助やその他に分かれておりますが、たとえばたんぼが水がかれてひび割ったとか、そういう場合に、たいへんだというので農民がポンプを据えつけたりいたしますね。これに対して政府の補助助成をやる。こういうものを通称そう言っているようでありますが、こういう補助助成をやる場合に、農民に対して、これは実質的にたいへん国がありがたいことをしてくれた、こういうような方針で終始行なわなければならないと私は思うのでありますが、これについて大体どういう方針でやっているか、ここまでは農林大臣でけっこうでありますが、あと予算と、それから特に法律根拠などについてどなたかから若干答弁を得たい、こう思うのです。
  91. 西村直己

    西村国務大臣 干害の応急対策事業の査定の問題基本は応急でございますから、一応直ちに現場の……。
  92. 安宅常彦

    安宅分科員 査定の問題は聞いていない。補助をやる場合の方針を聞いているのです。補助をやる場合には、国は、西村農林大臣はいいことをしてくれたというような方針で終始やるべきものだと思うがどうかと聞いているのです。
  93. 西村直己

    西村国務大臣 それは、われわれのほうも、応急対策事業につきましては、国の方針として今後もやっていかなければならないと思います。
  94. 安宅常彦

    安宅分科員 法的な根拠等について、どういう法律に準拠し、どういうことをどんな方針でやっているのか。
  95. 森本修

    ○森本政府委員 干害の応急対策事業は法律根拠は別にございませんで、予算補助で処理をしておるわけです。現実には、まず緊急を要することでございますから、現地の農家その他がポンプを買うなりビニールパイプを買うなり、あるいは井戸を掘るなりというようなことをまず先にやってもらいまして、終わりましてあとで決算補助のような形で助成をする、そういう考え方でございます。
  96. 安宅常彦

    安宅分科員 わかりました。そうすると、こういう問題については農林省責任を持って処置をする、こういう体制だと思いますが、そのとおりでありますか。
  97. 森本修

    ○森本政府委員 責任を持ってという意味が必ずしも理解ができなかったのでございますが、本来普通でございますれば、かんがい排水事業でございますとか、一般の土地改良事業で必要な用水が得られますような、そういう施設等について助成をいたしておるわけでございますが、それらの施設は一定の基準でつくりますために、それを越えるような干ばつが現実に起こったというような場合に、地域的にもごく限られた場所であり被害額も少ないというような場合には、町村なり県なりで処理をしていただくことになりますが、全国的に非常に大規模であり被害も非常に大きいという場合には、地方公共団体でみずから処理をすることができにくいということもございますので、そういう場合に、一定の基準で国も応援をしていきましょうというたてまえで助成をするわけでございます。
  98. 安宅常彦

    安宅分科員 私が言っているのは、県やなんか地方自治体に少し責任があるような、そっちのほうが主体で私のほうは応援していくのだというような答弁を求めようとしたのではなくて、これは応急の事業ですからおおむね国会の議決が要るとかということでなくて、予備費の流用などそういうことでいままでやっているのですが、これは補助すべきだという決定というのは、行政機関である農林省がその責任においてやらなければならない、あとで補正予算なりそういうもので国会の承認を受ける、こういう手続上の問題でありますから、農林省は、その意味において責任を持って、決断をするにしてもしないにしても、あなた方の責任においてやるんだ、こういうふうに理解しているか、こういう質問です。
  99. 森本修

    ○森本政府委員 全国的にわたって干ばつがございまして、非常に被害が大きいというような場合には、やはり国として補助をして、地元被害者に対してしかるべき手当てをしなければいけないというふうに判断をして処置するのは農林省責任でございます。
  100. 安宅常彦

    安宅分科員 わかりました。これはそういう場合に、実際に補助を出す農林省としては、それが補助を出すところの基準などをきめておるとあなたは言いましたが、その基準などに合致しているかどうか、こういうことについては干渉する権限を持っているわけですね。そうですね。
  101. 森本修

    ○森本政府委員 予算を伴うことでございますから、財政当局とも打ち合わせをいたしまして、応急対策事業の補助要綱及び査定基準等を作成いたしまして、それを地方に流して、それから個別に、私どものほう、主として地方農政局の担当者でございますが、そういうものを現地に派遣をいたしまして、現地で査定基準に合わせた査定をする、そういう段取りでございます。
  102. 安宅常彦

    安宅分科員 たとえば、労働省の管轄あたりで災害が起きる。たいへんないろいろな事故が今日起きておりますが、こういう場合、あるいはまた、事故が起きなくても、事業所の安全のためのいろんな検査であるとか、そういうことは法律に基づいてやれるようになっておりますね。ところが、なかなか人が足りない。事業所を全部、労働基準局の係官が回るとすると、十年に一ぺん顔を出せればいいような人員しかいないと言って嘆いておるところもある。あるいは、出かせぎの現場なんというのは放置状態ですね。こういうものは法できまっておってもそういう状態。したがって、たとえば雪害に対する場合に、雪害対策基本法というのがありまして、流雪溝をつくるときには三分の二補助をするとか、いろいろなそういう基準というものは法できまっているのですが、それさえもなかなかうまくいかない。こういう場合には——あなた方の所見を伺いたいのですが、法律できちっとしたものを、基準として農林省がかってにきめるのではなくて、ある程度のおおまかなところは法律できめる、こういうような必要、そのための人員の配置なりそういうものをやったほうがいいのではないか、私はそう思うのです。制度的にはっきりしておりませんと、あとでたいへん問題が起こりそうな気がいたします。問題が起こっていないというのならそれでいいのですが、今日実際に起こっているような気がいたします。そういうあなた方は——これは予算委員会分科会でございますから、予算の制度としては一応そういうことになっておっても、これが法律に基づいた予算措置であるかどうかということについても、いままでの慣行で、予備費流用ばかりいつまでもいつまでもやるのではなくて、きちっとした基準をきめる法律があったほうがいいのではないか、私はそう考えるが、あなたはどうですか。
  103. 森本修

    ○森本政府委員 概して災害復旧の事業というのは、予算編成前にその年の被害の程度を予測しておくというのは困難でございますので、二年目以降は、当初から、既定の復旧事業に対して一般予算に計上してまいりますし、また、その補助率等についても、それぞれ公共事業の災害復旧に関する法律措置がございまして、補助基準その他もきめられておりますが、当年度は、従来も予備費で支出をいたしておるのが例でございます。  ところで、干ばつ応急対策は、毎年発生の態様が違いますし、また、被害を受けます場所等も違います。本来は水の不足によって生ずる問題でございますから、一般的には水源手当てを土地改良事業として実施をするのが本質でございます。というような点もございまして、毎年そういう実態が起こってきましたときに、実態に応じて応急対策ということで事業の実施を定めて、助成をいたしておるということで、やはり発生の態様その他を考えまして、そのつど臨時的に具体的に処理するほうが適当ではないかというふうに考えて処理をしておるわけでございます。
  104. 安宅常彦

    安宅分科員 答弁は簡潔にしてください、持ち時間がないから。法律は必要でありませんというならそれでいいです。よけいなことは言わぬでいい。  あなたのほうではそういう答弁ですがね、そうしますと、その査定基準というは、ことしは予算がなさそうだとかいろんなことがあった場合、硬直化とかなんとか——硬直化にだれがしたのかおれは知らないけれども、そういう事態になると金が出ない。基準はあなた方のほうの執行権で、国民の代表である国会の賛成も何も得ないで、基準を幾らでも変えられるという自由裁量権を、あなた方が最後まで持つということになります。こういうことになりますと、ある年はたいへんうまくいったが、その次の年は金がない。適当なところで基準を切ってしまえ、ある年は大きくやってしまえ、そういう心配があるんですよ。だから私は、大まかなところはきちっとしたものを法律で法的措置をしたほうがいいと思います。大臣どうですか。
  105. 西村直己

    西村国務大臣 簡単に申し上げますが、干害の実態が地域によってずいぶん違いますね、御存じのとおり。干害というのは非常に態様が違ってまいり、対象も違ってまいる。しかしながら、行政基準としてはそのつど限りの基準では困りますね。法律をつくらぬにしても、ある程度の基準というものは、役所なり政府なりが持っていなければならぬということは事実でございましょう。
  106. 安宅常彦

    安宅分科員 わかりました。農林省の方針がそうならそのように——きょうは時間がありませんからその点は追及いたしませんが、こういう場合にえてして問題になるのは、その指導方針がぐらぐらしていることだと思うんですね。ある場合には、たとえばポンプをつくって、発動機を据えつけて、あとはビニール管で自分の田に水を引いて、そうして国家から補助をもらう、こういう場合に、あまり長いときはだめだとか、何も断わりなしにやったものだからそれは補助をやらないとか、いろいろなトラブルが起きている。この点、現地ではそういうことが原因になって、私がいま主張しようとした問題がたくさん起こっております。一つの例を申し上げますと、去年山形県下において干害応急対策事業の査定が行なわれた際、こういう通達を村長が出しているんですね。これは昭和四十二年十一月十五日です。「四十二年度干害応急対策事業の査定について 標記に関し昭和四十二年十二月九ー十日の両日にわたり先に実施いたしました干害応急対策事業について現地確認査定がありますので種々準備しなければならない事項がありますので御繁忙の折誠に恐縮とは存じますが万障繰合せの上当日必らず関係書類を持参の上参集下さるよう通知いたします。」四十二年十一月十七日午前九時から、役場の振興課に来い。「当日出席ない場合は補助対象より除かれますから念のため申添えます」これは悪代官の標本みたいなものです。そうでしょう。そんなばかな話がありますか。この辺の村は、そのころはおやじは出かせぎでいないんで、かあちゃんが、何の書類やらわからないものだから、あわてて行った。そうしたら、行ったあとどういうことになったかというと、さらに通達が来て「十二月八日農林省より査定官が来村し購入したポンプ、発電機、発動機、ビニール管その他諸資材及手持ポンプ、モーター発動機等利用した者はその手持利用した諸資材について調査がありますので当日(十二月八日)午前八時三十分まで時間厳守の上持参し査定を受けるよう通知いたします」発電機も発動機もみんな持ってこいというのです。ようございますか。大きい村ですから、八時三十分までに持っていくのはたいへんです。前にたんぼに引いたビニール管をもう一回、四百メートルぐらいのものを掘り出して、発電機やなんかを自動耕転機、小型自動車に積んで、おやじさんのいないところでは人を頼んで、かあちゃんが泣きの涙で二日もこれはあとになって、そうしてやっと持ってきた、こういうことなんです。「当日査定を受けない場合は補助対象から除かれますから宣敷くお願いいたします」こういうことです。これでは、何というんでしょうかね、補助をしてあげるなんと農林大臣うまいことを一番最初に言いましたけれども、あなたは喜ばれているんじゃなくて、あなたは昔の悪大名になって、この村長は、これは悪代官だ、こういうことになるのですよ。そういうことがいいか悪いか、大臣、ひとつ所見を伺いたいですな。
  107. 西村直己

    西村国務大臣 私もいまその状況をお聞きしまして、それはもう行政執行としては非常にまずいやり方だ、不親切な行き方だと思います。
  108. 安宅常彦

    安宅分科員 これは、行政管理庁からどなたか来てますね。こういう行政が行なわれているので、あなたのほうで調査をするという気持ちがありますか。初めて知ったと思います。知っておったならば調査したと思いますが……。
  109. 石田勝

    ○石田説明員 きょう、初めてそういう事実を拝見したのですが、それは状況判断、農林省のほうでもおそらく善後措置をいろいろと講じられるというふうに存じておりますが、その後において、さらに必要があれば現地を見守っていきたい、こういうふうに考えております。
  110. 安宅常彦

    安宅分科員 これはこの村だけではなくて、ある郡全地域について、約六千戸の農家がこういう仕打ちを受けているのであります。よろしゅうございますか。そして、いろいろ聞いてみたら、そういうことを言っても安宅さん、一々検査を六千戸もやるわけにいきませんので、農協の前へみんなに持って来いと言ったんです。何が悪いんですかという意味ですよ。先ほど労働省の管轄のことで言っておりましたが、ほんとうはこういう場合には、たとえば労働災害が起きておったが、調査ができません。来ないですよ。それから、ある事業で大きな独占事業なんかは、たとえば東北開発の関係の会社だと、何か溶鉱炉だとか、そういうものが破損したから補助をもらいたい。溶鉱炉は熱くて中が見えないから、検査しないまま補助をもらったわけです。つくらないといううわささえあるんですよ。それをあなたのほうは放置したままです。これはいま一般常識になっています。相手が農民だからといって、一里も半里もあるところを、十二月、したがって雪が降っていますよ。農協まで発動機も発電機もモーターもポンプまで引っくり返して持ってこいというような、そんな検査の方法がいいのか悪いのかというだけではなくて、こういう場合には、もし農林省の基準に合っておったというならば、補助はそのままもらえるわけであります。そうですね。合わなかったら、あなたのほうでは処罰をするか補助対象も打ち切りにする、対象外にするのでしょう。そういう白黒をきめる場でありますから、合格した場合は——そのビニール管ははずして持ってきたんでしょう。それは一回はずしたらつけられませんよ。そういう使えないようになったビニール管の費用、それから運搬賃、そのために諸会合したというが、そこまでは言いませんけれども、そういうのは農林省で弁償してくれるでしょうな。どうなんですか。
  111. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 山形の最上郡におきますただいま御指摘の事実につきましては、先ほど来、県庁に問い合わせて調査をいたしておりますので、その結果も含めて私どもの考え方を申し上げたいと思います。  干ばつの緊急応急対策というのは、先ほども申しましたように、工事をするなりあるいは機材を買うなりは、まず農家のほうでやりましたものを、あとになりまして決算補助的に処理する補助金でございますので、やはり工事の出来高なりあるいはポンプその他の機材器具をどのように買ったかということ、その現物、あるいは現地を確認をいたしますとともに、証拠書類等によりまして適正な事業費を決定をした上で補助するという基準は当然のことだろうと私は考えております。ところで、それらの現地確認をいたします場合に、一ヵ所に集めなければ査定をしてやらないとか補助をしてやらないというような指導を、私どもはいまだかつていたしたことはございません。  ただ、本件につきましては、山形県のほうで御承知のように昨年九月から十一月にかけまして、いわゆる羽越水害の災害がございましたために、その査定の準備に多大の日時を要した関係で、できるだけ干ばつの緊急対策の査定を短期間にしたいという趣旨で、県庁から移動性のものはなるべく取りまとめて査定の効率をはかってほしいということを指導いたしたそうでございますが、いまお読みになりましたように、一部の町村で少しく行き過ぎがあったことは事実でございまして、今後の同種の査定の際にも、このような行き過ぎがございませんように、私どもとしましても今後心がけてまいりたいと思います。  なお、おっしゃいますような破損等のことが生じました場合には、県庁自身もはっきり指導の行き過ぎを認めて、実態調査をいたしました上で県と関係町村との協議で善処したいというふうに県も答えておりますので、御了承をいただきたいと思います。
  112. 安宅常彦

    安宅分科員 どこと協議して……。
  113. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 県庁自身が、自分のほうの指導が若干の町村で行き過ぎがあった事実を認めて、県庁で実態調査をいたしまして、関係市町村と打ち合わせて、県庁において善処するというふうに県では答えております。
  114. 安宅常彦

    安宅分科員 これは「農林省より査定官が来村し」と、こうなっている。あなたのほうの東北農政局から来ているのですね。農林省は知らなかった、そういう指導をしておりませんと言う。あんた、逃げようとしている気がいたしますが、何ですか、先ほど、そういう補助助成をしている限りは検査をしなければならない、それは当然のことだというふうに言いましたが、行き過ぎでないという方法はどういうことをやるのですか、農林省の考えているのはどういうことをやるのですか、六千軒もやるというのは具体的に……。
  115. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 干ばつ応急対策の場合にいろいろな事業種類がございますが、大部分はリーガルポンプとか、非常に軟質のパイプ等を使うケースが多いわけであります。本来、移動性のものにつきましては、町村が協力をして一ヵ所にまとめていてもらえれば、現地確認が可能でございますから、査定の効率があがることは事実でございますけれども、井戸のような物理的に固定したものを動かすわけにはまいりませんし、あるいは塩化ビニールでできております硬質のパイプ等をはずせば、先ほどもお話のございましたように、破損等を起こすことは当然でございますから、そういうものはそれぞれ現地に出向いて現物の確認をするというのがたてまえでございまして、そういうようなことが現実に起こりましたことにつきましては、若干指導の行き過ぎが現地にありましたことは認めざるを得ないと思います。
  116. 安宅常彦

    安宅分科員 若干とは何です。若干とは。農林省はそういう気持ちなんですか。若干の行き過ぎがある——弁償してくれる気持ちがあるかどうか伺いたいと思います。移動性のものだったら一ヵ所に集めるのが効率的だから、今後もやる、そういうふうに私聞きましたが、よけいな点は要らないから、それだけ……。
  117. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 地元でそういうふうに協力しようというお話がございますれば、個人個人の納屋を見て歩きますよりも効率的でございますから、そういう御協力を拒む必要はないと思います。
  118. 安宅常彦

    安宅分科員 それでは、六千戸だったら、一々六千戸をあなたのほうでは確認しなければだめだという意味でございますか。抽出調査とか、そういうことは全然やる気はありませんな。
  119. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 過去において抽出調査をいたしたことが実はあるのでございます。ところが、抽出自体が非常に不均衡がございましたり、実態に合わなかったりいたしましたので、昭和三十一年以降は抽出調査という形での査定はやめまして、現地でそれぞれ確認をすることにいたしております。
  120. 安宅常彦

    安宅分科員 それでは方法は二つしかありません。若干の行き過ぎがなんというあなたの態度が一番いけない。じゃ六千戸全部あなたのほうで回るか。地元で協力しなければ回る方法しかないのですよ。それから、移動性のないものは、あなたは固定したものは見ないのですか。移動性のものは集めてこいというのだ。それは協力があれば集めることもできるでしょう。集めることと一軒一軒回ることと二つしかない。どっちをとるかです。農林省は。
  121. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 移動のできませんものは、やはり現地へ出向きまして、それぞれ確認するのが当然であろうかというふうに考えております。
  122. 安宅常彦

    安宅分科員 そうすると、地元の協力がない場合には一軒一軒回るのだということですね。そんな暇なことを農林省はよくしているものですね。先ほど各省の例を言いましたが、大臣、そんなことができるのでございますか。
  123. 西村直己

    西村国務大臣 この問題は、具体的な問題であるとともに一般問題でもありますが、災害を受けられた方々に対するこういう応急措置に対しては、国その他がごめんどうを見るという方針を基本方針としてやっていかなきゃならない。それをどういうふうな形で具体的に実行していくかという方法論の問題だと思います。それには、一つは、会計検査院その他国の面からの立場もあるだろうと思います。それから同時に、受けるほうの農民の最もやりやすいように、一ヵ所に集めるというような行き方でなくても、分散して、たとえば部落準位でいくという方法もあり得るかもしれませんし、いろいろなくふうの問題があるのであって、同時にまた、それに対してわれわれのほうの指導——特に地元の町村等が文書等で、それに来なければ補助を打ち切るなどということは、確かに、おっしゃるように、行政としてはまずい行政で、これは明らかにそうだと私も思います。
  124. 安宅常彦

    安宅分科員 ちょっと名前がわからないのですけれども、農地局長の言ったことは、農林省責任ある統一見解だと理解していいですか。これだけは確認しておきましょう。
  125. 西村直己

    西村国務大臣 農林省の気持ちは……。
  126. 安宅常彦

    安宅分科員 大臣は具体的なことはわからないんだから……。具体的な答弁をしているのです。道は二つしかない、そのとおりだと言っているが、それでいいですか。
  127. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 補助事業につきましては、補助事業が現実に行なわれたかどうかという確認をしなければならないということは、農林省のみならず政府全体の原則でございます。いかなる確認方法をとるかは、大臣のおっしゃいましたように、何も画一的な方法だけではないというふうに思っております。
  128. 安宅常彦

    安宅分科員 これは最上郡というところでは約六千戸だが、たとえば非常に大きな災害などの場合には、何万戸になるか何十万戸になるかわからない。農林省の役人が一々ずっと査定して歩いたら、三年くらいたつんじゃないですか。これはできるのかできないのか、はっきりしてください。そんなばかなことがどうしてできるのですか。三年もかかるのに、農林省にはそんなに人がいるのか。
  129. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 これは行政の系統の中でも、援助というか、そういうことも仰がなければいかぬ。たとえば県庁の協力を得るとか……。
  130. 安宅常彦

    安宅分科員 県庁の協力を得ようが市町村の協力を得ようが、何十万戸を回ったらどうなるかと聞いている。そんなことはできやしないじゃないか。金はいつ来るのか。インフレで物価がむちゃくちゃに上がって、貨幣価値がなくなったころに補助金をもらってもありがたくない。一年に五%も一〇%も物価が上がる今日の日本の世の中だから、そんなことができるかと聞いているのだ。
  131. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 現在までも各種の補助事業をやってまいりましたが、査定に何年もかかるというようなことはございません。
  132. 安宅常彦

    安宅分科員 農協前に持ってこいということを言っている。あなたが言うように、各戸ごとに調べなければならない、三十七年までは抽出調査をやっておったけれども、ごまかす者があったのでやめたという。これは大衆を信頼しない政治だ、愚民扱いにした政治だ、相手が百姓だと思ってなめている政治だ、そういうことなんだ。できるか、実際できないじゃないか。あなたのほうはやれると言うんですが、たいへん農林省はたくさんの人員をかかえているものだとふしぎに思っているんだ。そんな、できないことをできると答弁するなということを何回も言っているんだ。忙しい場合に、農協前に自動耕うん機や何かでビニールパイプやポンプを持っていくのはどうしようかなと思っても、お上がこわいからしょうがない、泣く子と地頭には勝てないというので泣きの涙で持っていく。こういう補助方式をとれば、補助事業の助成資金はおくれるでしょう。あなたは、おくれない、そんなことはいままでなかったと言う。若干行き過ぎだったと言っているけれども、行き過ぎどころか、べらぼうな暴政をやっているんだ。あなたは、いままでは補助金査定がおくれたためしがない、一戸一戸回りますと私の質問に対して答弁していますが、そういう方法をとれば必ず一年か二年は延びますよ。こういうことを言っているのに、あなたは、延びないということで私の質問に対して反論できるんですか。どういう理由で延びないということが証明されるか、具体的に官房長言ってください。
  133. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 私は、事業を実施したということの確認は必要であるということを申し上げたのでございます。確認の方法は、先ほど大臣のお話にもございましたように、たとえば簡易に移動のできるものでありますれば、部落単位、集落単位に確認をしていくというようなことも可能でございます。また、場合によりましては、たとえば市町村等の協力で設置個所の写真を提示しておくというようなことによって、一戸一戸回ることにかわる確認の方法等もあると思っております。
  134. 安宅常彦

    安宅分科員 初めからそう言えばいい。もう時間が来ましたからやめますけれども、これは行政管理庁に聞きます。  こういう行政があった場合には監察をいたしますね。そしてやり方が不当であるという結論が出たといたします。そういう場合には国家賠償法なり——はなはだ飛躍した議論ですが、私がそういうことをやられたら、行政事件訴訟法か何かで国を相手にして訴訟を起こしますよ。こんなばかな話はありませんからね。あなたは、抽出調査をやったけれども、ごまかす者があったから今度はやらないぞ、みな持ってこいと言う。持ってくるにはたいへんな労力や機材の破損や何か、そういうものがあるんです。また持って帰らなければならないから二日もかかる。合格した場合には、そういうことはどうしてくれるんだ。合格しない場合、ばっさりやられる。正当な良民たるこの人たちに対しては、当然賠償しなければならぬというのが国の立場だと思いますが、私ならば訴訟を起こす。予算を執行するにあたっては、そのくらい厳正に国の政治はやらなければならないというふうに私は考えますが、行政管理庁にそういう弁償はすべきではないかという見解はないでしょうか。
  135. 石田勝

    ○石田説明員 御承知のとおり、その弁償の段階以前の問題で、行政相談制度というのが私のほうにあります。(安宅分科員「結論だけ言え」と呼ぶ)農林省のほうで善処されると思いまするので、その国家賠償法云々の問題も、当然含めて御検討願うものだとわれわれは考えます。
  136. 安宅常彦

    安宅分科員 わかりました。  最後に、県や町村がやったことだから県が賠償するかもしれないなどというさっきの答弁は、いまの答弁で打ち消されておりますから、農林省房長、よく私の顔を見てくださいよ。おとといか何か、私のことを天下一品の悪役と書いてありましたが、あなた、そういうことで農民をごまかしたり何かしたらただではおかないということを言っておきます。以上で終わります。
  137. 植木庚子郎

    ○植木主査 次は、阿部昭吾君。
  138. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 私は、農業生産法人の問題についてお尋ねをしたいのであります。  三十七年に農協法の一部改正を行なって農業生産法人、特に農協法による農事組合法人の組織というものを制度としてつくられたわけでありますが、現在、この農事組合法人がわれわれの地方におきましても進んできているわけであります。この進んでいる背景には、私の山形県などでは、米作日本一になった。その一つには耕うん機からトラクターに移行したということがあると思います。また同時に、一定品種を一定面積に統一して集団栽培をやっていくというやり方なども、米作日本一をつくり上げた背景になっていると思うのでありますが、そういたしますと、耕うん機なら一戸一戸で持てますけれどもトラクターということになると、各戸で持つわけにはいかない。それから集団栽培といったやり方も、個別のやり方に対して集団化、法人化というものを進めていく背景になっている、こう思うのであります。国のほうでは、農協法や農地法はそういう形で制度としてつくったわけございますが、関係土地改良法あるいは農業災害補償法、その他いろいろとこの関係法律や規則や制度があるわけでありますけれども、全体が農業の法人化、共同経営、こういうものに適合するように整備をされていないのであります。したがって、これらのもの全般にわたって整備をする必要があると思うのです。この一例を申し上げますと、相当広い面積が共同経営、法人経営になっていくという場合に、土地改良区の組合員資格ということになってまいりますと、耕作権が全部法人に集中いたしますから、法人に一票になってしまうのであります。そこで、広い面積を持っている法人が一票ということになりますと、その地域における土地改良事業、その団体を運営してまいります場合に、発言力が著しくアンバランスになる。したがって、どうしてもいろいろ障害が起こってくるというような状態が出てきているのであります。そういう意味では、せっかく農協法あるいは農地法等において、三十七年に法人の組織というものを、共同経営というものを制度としてつくった以上、他の関係の制度、規則、法律、こういう全部関連するものを一体的に整備する必要があるのではないか、こういうように思うのですけれども、そういう方向で努力をなさるのかどうか、伺っておきたいと思います。
  139. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 ただいま一つの例として、土地改良区の議決権のことをおあげになりましたので、そのことについてお答えを申し上げますと、現在土地改良区の議決権は、土地改良区の運営にできるだけ関係者の意思を反映していこうという、一種の組合組織のような土地改良区でございますので、個人の場合といえども、所有面積の大小ということには関係なしに一票という議決権になっておるわけでございます。   〔主査退席、小山(省)主査代理着席〕 したがいまして、今度はそれが自然人と法人というふうな関係になりましても、やはり所有面積なり耕作面積が大きいとか小さいとかいうことで票数を区分することは適当でございませんので、すべてを通して一人一票ということになっております。それで、ただいま先生がおっしゃいますように、もし法人であるがゆえに、経営規模が大きいから何票かの票数を与えなければいけないということになりますと、所有面積なり経営面積に応じた議決権ということになりまして、やはり関係者が平等に一人一票という組合の組織論にも触れてまいりますので、これは別に、法人だから一票しかないというふうに差別待遇しておるわけではございませんから、御了承いただきたいと思います。
  140. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 これは局長、やはり理屈としてはわかるのであります。ところが、一つの部落なら部落で三十戸ある。その中で、二十戸なら二十戸が共同化あるいは法人というものをつくった。そういたしますと、二十戸が一票になってしまうのであります。十戸のほうは十票を持っておる。そこで、いま一定の土地改良事業を進める場合に、国が全部銭を出して事業をやってくれるならばいいけれども、農民に多くの負担をかけなければいかぬのであります。そういたしまして、二十戸で一単位一票ということになりますと、たとえば負担金を割りつけをする、事業の運行をやっていくという場合に、従来なら総代も出ておった、理事も出ておったが、一法人一票でありますから、理事も出ていかなければ総代も出ていかない。したがって、土地改良区の事業の運営上たいへんな支障が生まれるという状態が至るところに起こってきておるのであります。したがって、実際は土地改良区のほうでも銭を集めなければいかぬし、いろいろ問題が起こるというので、従来の個別の皆さんに対して、法人の理事者が組合員資格を委譲するというのですか、そういう形で実際上は参加をさしておるのです。それは法律上からいうと、非常に無理な解釈だというふうに言っておるようです。県あたりの指導のしかたも。しかし、実際上そういうふうにして参加をしてもらわぬことには、土地改良事業なんというものは、盛り上がってやろうという場合よりも、どうもいやいややっておるものを無理無理引っぱってやるというような場合のほうが、いま非常に多くなってきておる。そういう意味では、どうしてもいまの土地改良区のような場合でも、法人経営に変わった段階でも、いわば旧の組合員をそのまま続けさせていくようなかっこうにならないと、特に事業をやる場合、なかなかやりづらい。一般的な土地改良事業の中の管理的な、毎年毎年同じようなことをやっておる場合はあまり問題が起こらぬのですが、特に新たな基盤整備とか圃場整備とか水路の整備とか、こういう非常に負担を求めなければならぬような事業をやる場合は、法人一票ということは至るところでたいへんに問題を起こしておるわけなんであります。そういう意味では再検討の要があるのじゃないか。いわば旧の組合員にいまは一票一票みな持たしておるわけです。それは解釈からいうと非常に無理な解釈をして、運営上やりづらいから何とかしようなんということで、あるいは土地改良法三条二項ですか、それを実際拡大解釈して、いわば旧の組合員に一票一票持たしておるのです。これは実は法律違反じゃないかと私は思う。そうまでして参加をしてもらわなければ、負担金を賦課するのに容易でない、大きい事業をきめる場合はたいへんだということで、実際にそういう便宜的なやり方をしておるわけです。したがって、現状に即した方法でやはり考えなければいかぬのじゃないか、こう思っております。災害補償法などの問題も、かつて解散運動や何かいろいろ起こった経過があるわけです。これを法人一票で、一組合員ということになりますと、これはやはり共済などに不満を持って、ゆり動かそうと思えば非常にゆり動かしやすい状態が起こるのであります。私は、そういう意味でもう一ぺん検討の必要があるのじゃないか、こう思っておるのです。
  141. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 お話の御趣旨は、必ずしも法人だからどうということではなくて、最近、第二種兼業農家と専業農家が入りまじっておりますような地帯では、いまさら新しく土地改良の投資をしなくてもいいのだという第二種兼業農家等がございまして、そういうことが、今後土地改良をやりながら農業生産を伸ばしていこうと考える専業農家にとってじゃまになっておるというような面は、少しずつ各地に出ております。ですから、私どもとして検討いたします場合も、自然人と注入との表決権に差をつけるということではなくて、そういう土地改良にあまり熱心でないような、そういう家計の状態にある人と申しましょうか、そういう人たちと、ほんとうに農業を進めるために、どうしても土地改良投資等を積極的にしたいと考えておるような人たちと、そういう面での問題としてとらまえなければならない、そういり実態は確かにあると思っておりますので、自然人、法人であるから表決権を云々ということではなしに、今後の土地改良事業を推進します意味で、そういう第二種兼業農家と専業農家というような関係を調整する意味での検討は、現在加えておるわけでございます。
  142. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 いまの、あとから私の質問以外に出てまいりました答えについて、また違った観点から私どものほうで問題だと思うのですが、きょうは私の主題とは違いますから、あえて言いませんけれども、とにかく伺いたいのは、農林省のほうで共同化、協業化、自立経営農家、こういうことを言っておられるわけでありますが、共同化あるいは法人経営というものを、将来一体どういうふうに見ていくのか、こういう問題が一つあると思うのです。ですから、いまの問題も、法人と個人で差をつけようなどと理解をしておりません、こういうことですけれども、たとえば災害補償法などの場合、ある時期に非常に解散運動などが起こった。ところがその場合、いまのように法人が一組合員資格として行動するということになりますと、共済組合などをゆさぶるのには非常に簡単にゆさぶれるわけです。いまゆさぶる気はありませんけれども。そういう意味で、制度的に見ると共同化、法人というものに対して農協法、農地法を整備しただけでは、他の関係の制度や規則というものは、いまの土地改良法に見られるように、なかなか適合していない。したがって、これはやはり全般にわたって整備の必要があるのではないか、こう思っているのです。とにかく、そういう方向で共同化、協業化、法人経営というものに対して、将来もっともっと位置づけを明らかにしてやっていく気があるのかどうかということをお聞きしたいと思うのです。
  143. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 現在の農業関係の法制は、いわゆる農業法人のようなものが数多く出るであろうということを予定してつくった法制ではございませんので、今後の共同体の設立の推移等を見守りまして、法制全体の上で再度検討していきたいというふうに思います。
  144. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 官房長の答弁わかました。  それで私は、私どもの地域で出ておる議論なんですが、もう五、六年たったら一株ずつかまで稲を刈るやつはいなくなる、十年もたったら四つんばいで一株ずつ田植えをやるなんという農業は見ることができぬようになるだろう、そういう変化は、われわれが好もうと好まないとにかかわらず、やはりそうなっていく。それにどう対応するかということになると、現在農林省は——いまの官房長のことばじりをとらえるわけではありませんが、農業法人のようなもの、こうなるのですね。そして、自立経営農家が一番いいんだというニュアンスが末端に流れ込んでくる、農林省は自立経営農家の育成を目ざす。ところがわれわれの地域では、自立経営農家が何らかの意味でみんな集団化され、協業化の道を歩む、そういう方向にいくのです。三十万、四十万の耕うん機なら個別に持つことができるが、百万以上のトラクターに移行するには、とてもじゃないが個別で持つということはできない。したがって、全面共同をやるか、あるいは機械部分だけの協業をやるか、あるいはとにかくトラクター利用組合のようなものでいくかは別にして、次第次第に集団化、協業化、共同化という方向を歩んでいることは事実なんです。その際に、農業生産法人のようなものという理解ではなく、それが将来の農業の方向だということをもっと積極的に直視した諸般の施策、制度というものをつくる必要があるんだ、こういうふうに思っているわけであります。  なお、具体的な点については、ここで議論するのは筋ではありませんから、また農林省にでも出かけて行って議論したい、こう思っておるのであります。  第二の問題でありますが、土地改良の事業、この場合に、われわれの地方を見ますると、平たん部は土地改良の事業がたいへんに進んでおるわけでありますが、中間部、山間部に至りますと非常におくれている。この場合に、現在の県営土地改良事業あるいは圃場整備事業の採択基準というものをもっと引き下げをしていかないと、中間部や山間部においてはできない状態になっているわけであります。したがって、農民は大きな負担をしなければやっていけない、しかも、山間部は条件が平たん部よりもっともっときびしい、こういう意味で進まないのでありますが、県営土地改良事業や圃場整備事業の採択基準を引き下げて、中間部や山間部でもっともっとこれらの整備をはかれるようにすべきだ、こういうふうに思いますが、そういう方向に向いておるというふうには私どもなかなか思えないのですが、いかがでしょうか。
  145. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 県営圃場整備の採択基準につきましては、昭和四十二年度及び四十三年度にわたりまして、従来一般には三百ヘクタール以上という採択基準でございましたものを二百ヘクタールまで引き下げることにいたしまして、本年度以降つきましては、採択基準は二百ヘクタールというように百ヘクタール引き下げたわけでございます。一般に土地改良事業の採択基準なり補助率などにつきましては、ただいまいろいろおっしゃいましたような趣旨から、採択基準の引き下げあるいは補助率の引き上げ等について、非常に多くの御要望があるわけでございますが、いろいろ、それぞれに体系的な部分もございますので、今後ともそれらの制度の横の関連をにらみながら、十分検討を加えてまいりたいというふうには思っております。
  146. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 私どもの地域で、現実における農業の生産関係、生産活動というものは、政府のおっしゃるように、農林省のいうように、農民の皆さんはたいへん努力してきておると思うのです。たとえば、米だけじゃなくて、今度は選択的拡大生産で畜産をやりなさい、果樹をやりなさい、こういうことを言うものでありますから、みんな熱心に、養豚なり和牛なり養鶏なり、いろいろ政府のおっしゃるような方向での努力をしてきておる。ところが畜産の問題になりますと、価格の問題が非常に不安定なんです。農林省がおっしゃるものでありますから、国のいうとおりにがんばったならばたいへんよくなるであろう、みんなこういう期待を持って、近代化資金や何かを仮りて豚舎を建設する、そして豚を飼う、そうこうしております間に値段は暴落するということを、この何年間か繰り返しておるわけであります。  そういう面で、近く畜産審議会や何かもやっていくんだと思うのですけれども、われわれの地域で肉豚の価格補償協会というものを三十八年ごろからつくってきておるわけであります。そして生産者と単協と経済連と市町村、これが契約頭数一頭当たり大体五百四、五十円ずつ原資を出し合って、そしてキロ当たり最低価格三百二十円を割った場合にはこの補償会計が補償する。三百二十円というのは上肉であります。こういうやり方をしてきたのでありますけれども、生産者や単協や経済連や町村だけでやるのではなくて、やはりこういう補償会計のようなものを一定の制度としてつくり上げて持つべきではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  147. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 御質問の点にお答えいたします。  肉豚の価格は、御承知のように、従来から三年ないし四年ということで変動を繰り返しながら、生産は過去十年間に六倍というふうな急速な成長を示しておるわけです。そこで政府としましては、そのような価格変動が養豚の経営に与えます影響をできるだけ緩和しようということで、三十六年度から畜産物価格安定制度を設けまして、安定上位価格及び安定基準価格を定めまして、畜産振興事業団の買い入れ及び売り渡しを通じまして、価格がこの幅の中で安定的に推移するような努力をいたしておるわけでございます。
  148. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 私のお聞きいたしましたのは、生産地で農民が農民の努力でつくり上げておる価格保障の会計のようなものに国も一部の参加をしていく、そして一部の責任を持っていく、特に、これはいいかげんに始めたものではなくて、国のほうとも協議をして、やりなさいといわれて、この地域は米プラス養豚だ、選択的拡大生産だというようなことで、養豚の主産地形成をここはやりなさいなどということをいわれて大いにやってきた。したがって、国が主産地形成とかなんとか、そういうことで指導して進めた以上、価格の点についてもやはり責任を持っていくということがなければいけないと思うのです。えさ会社がどの辺でどうもうかっているのか知らぬけれども、生産者の側になると、豚なんかは、いつも値段が高いときよりも安いときのほうがはるかに多い。こういう状態に対して、生産者の側は生産者の側で、いまみたいな肉豚価格保障協会のようなものをつくって、原資を契約頭数一頭当たり五百何十円も出し合ってやっている。こういうような場合に、政府のほうも、農林省のほうも、こういうようなことに対して一定の責任を持つような体制、これがなければいかぬと思うのですが、いまお聞きしておりますと全然的はずれで、よそのことを言っているように思うのですがね。
  149. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 ただいま申し上げましたように、国といたしまして、全体的に豚価の安定ということをはかる施策を行なっておるわけでございます。したがいまして、都道府県段階において、こういう政府の施策を補完するものとして自主的な価格安定対策を講ずるということは、その趣旨がいいか悪いかは別といたしまして、政府が保障しております安定基準価格以上の価格水準を保障するということになれば、そのこと自体がきわめて困難であるというふうに考えられますし、場合によっては、価格による生産調整をやろうというふうに考えておりますそういう方向なり効果を減殺することになりまして、市況の回復をむしろ逆におくらせる結果ともなりかねないという問題がありまして、したがって、私どもといたしましては、このような問題のある地方の制度につきましては、できるだけ廃止をしなさいということを従来も勧告してまいっておりまして、政府の価格安定対策一本で価格の安定をはかるべきであるというふうに考えておるわけでございます。  ただ、子豚の価格安定対策というふうに、政府の直接の施策とはなっておりませんけれども、政府の価格安定対策を補完する効果の大きいものにつきましては、御承知のように、畜産振興事業団が出資をいたしまして助成いたしておるところでございまして、決して地方におきまして自主的に価格安定をはかるということを否定するわけではございませんけれども、あくまで国が行なっております価格安定対策を補完して、それをより効果的にするというふうなものに限定さるべきものであるというふうに、実は考えておるわけでございます。
  150. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 まあ、ぼくらのほうの意見とは違うのです。国のやっておるものよりも高い保障をしているじゃないかというけれども、キロ当たり三百二十円は国のやっているものより高いのですか、高くないでしょう。——まあ、けっこうです。それで、国のやっておる価格安定政策のワク外のものはやっちゃいけないということなんですけれども、国のやっておるものなどは、たとえていえば、事業団で買い上げておるものは、動いておるものに比べれば全体の五、六%にしかすぎない、六%ですね。そういう状態で、しかも上ものしかとらぬ、こういうやり方で、価格安定などにはならぬわけです。安定というのは、低く押える意味ではなっているかもしれぬけれども、生産者の側がプラスになるような価格安定にはなっていない。私は、そういう意味で、やはり現地、末端で生産者がほんとうにみずからの努力と苦労でつくり上げていくこういう制度を、もっと国自体が責任を持って体系化をしていく、こういう方向が必要だと思います。しかし、きょうはこれ以上議論はいたしません。  大臣にちょっと伺いたいのでありますけれども、どうも最近の日本の農政というのは、日本の農業と農村社会をどこに持っていこうというのか、実際問題として、現地、末端において生産に意欲を持っている農民を、どうも農林省は何をなさんとしておるのかはっきりしないというのが現状だと思うのです。そういう意味で、一つだけ伺っておきたいのでありますが、一昨年、太平洋学術会議か何かの際に、二十世紀の末期は食糧危機だというふうに言っておるようであります。この二十世紀末期が食糧危機だという学者の皆さんの見解が出されているわけでありますが、農林大臣は二十世紀末期は食糧危機だというふうに考えて日本の農政をやろうとなさっているのかどうか、この点、まず伺いたいと思うのです。
  151. 西村直己

    西村国務大臣 私も勉強が足りないかもしれませんが、米以外の食糧の供給においてはかなりきびしくなってくる、こういうふうな見通しのもとにやっております。
  152. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 そうであるのに、食管のほうはぐらつかせる、プラスアルファでいろいろなものをやれとすすめておりながら、豚にしても養鶏にしても、価格のほうは、いいときよりも悪いときのほうがはるかに多い。したがって、地方では、大体国の言うのとさかさまのことを百姓がやっておると何とかなりそうだ、国の言うとおりにやっていくと、大体みんなはずれて、特に畜産や果樹なんかになりますと、国のすすめることをやっちゃいけないという空気さえ実は強いのであります。したがって、私は、食糧が二十世紀末期の人類の課題だ、こう学者の皆さんが言うことを是認なさるとするならば、やはりもう少し積極的に、うしろ向きではない前向きな全体の組み立てが必要なんじゃないか、そういう意味で、きょう私、畜産の問題と農業法人の問題を申し上げたのでありますが、あまりわれわれにとって手だてになるような答弁をいただけなかったのであります。この点は、後ほどまたいろいろと議論したいと思います。  以上で私の質問を終わります。
  153. 小山省二

    小山(省)主査代理 斎藤実君。
  154. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 御承知のように、戦後農地改革によりまして、全国的に相当なる農地が国に買収されまして、その国有農地が相当な数にのぼっておりまして、全国的にその運営あるいは管理等で数多くの批判もあり、また問題もあるようでございます。私は、特に国有農地の管理の問題について大臣お尋ねをいたします。  国有農地を国が全く貸し付けていないという状態の中で、それが無断で使用及び転用されているというものが、全国的に相当多数にのぼっているんじゃないかというふうに私は考えるわけです。この中には一般の国民やあるいは地方公共団体、さらに公社、公団、国の機関等も含まれておる。当然これは違法でありまして、これらの無断に国有農地を使用しておるということに対して、農地法上どういう措置をとっておられるのか、まず最初にこの点をお尋ねいたしたいと思います。
  155. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 国有の農地でございますが、四十一年度末現在で国有のままで残っておりますものが五千四百七十四ヘクタールございます。それらのうち、都市の近郊等にございまして農業用としての利用ができませんために、貸し付けをいたしませんでおるものが二千三百六十一ヘクタールございます。それらの未貸し付けのものの中で無断に使用をされておるということにつきましては、従来からも会計検査院等の御指摘もございまして、四十二年の九月までの数字でございますが、六百九十九件、百七ヘクタールが無断使用されていることになっております。それで、これらの無断使用されておりますものは、発見次第、それが農耕用に使われておるといたしますれば、無断に使用を開始しましてから今日までの間の農耕用の貸し付けの手続をする。それから転用されております場合には、今日までの間の宅地としての使用料相当額に年五分の利息をかけましたものを損害賠償金といたしまして請求いたしまして、あわせて、必要に応じて原状回復の請求等をいたしておりますが、昨年九月までに六百九十九件のうち五百八十六件、九十ヘクタールについては、そのような成規の手続に切りかえる措置を終わりまして、なお約十七ヘクタールほどのものが話し合いを続けておりますが、今後も早急に成規の手続によりますように処理をしてまいりたいというふうに思っております。
  156. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 ただいま御答弁がありましたが、無断使用、転用の場合は損害賠償金を取る、あるいは原状回復という話がございましたけれども、これは一般の国民がそういうふうに無断使用した場合なのか、公社、公団あるいは公共団体、国の機関等に対してはいかがですか。どういう処置をとられるのですか。
  157. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 公社、公団等が無断転用と申しますか、使用しているかどうかという実態について、私いま詳細承知いたしておりませんが、やはり国有財産でございますので、成規の手続を経ることが当然必要でございます。そういう事実がございますれば、使用しておるところと十分話し合いまして、成規の手続によって処理すべきものというふうに考えております。しかし、先ほど来申し上げましたものも、そういう趣旨——百七ヘクタールの中にそういうもの、が入っておるかどうかは、私手持ちいたしておりませんが、同趣旨でございます。
  158. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 いま局長から答弁がありまして、大体わかりましたが、国有農地を国の機関が使用する場合、たとえば飛行場であるとか、あるいは開発局の材料置き場であるとか、そういうものに使う場合はどういう手続が必要でしょうか、お答え願いたいと思います。
  159. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 個々のケースによって現在の制度は違います。たとえば、材料置き場のような一時的な使用の場合には、一時使用の手続をするわけでございますが、飛行場の敷地になりますような、将来にわたって農耕用に戻ってくる可能性のないようなそういう施設をいたします場合には、現行農地法の第八十条では、公用、公共用その他緊急のやむを得ないものに使用するということが認められます場合には、一たん当該用途に使用したかどうかということを確認する間貸し付けをいたしまして、その後、旧所有者に旧価格で売り戻しをするというのが現行八十条の規定でございます。ただ、そこに問題がございますのは、買収をいたしました当時といまとの間で、貨幣価値と申しますか、価格とかそういうものに大きな変化がございますため、買収価格相当額で旧所有者に戻すことにつきまして、現実に社会の実態に合わないというような御批判もございますので、いろいろむずかしい法律論がございますから、そういう問題を現在慎重に詰めながら、八十条の規定を現実に即していかように直したらよろしいかということは、現在関係者の間で慎重に検討しておるところであります。
  160. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 手続を正確に踏まなくてはいけないというお話がございました。  まず、具体的な事例に入る前に、普通財産の管理処分は大蔵大臣国有農地の管理処分は農林大臣というふうになっておりますが、間違いございませんか。
  161. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 国有の農地は自作農創設特別措置特別会計の所管財産ということでございますので、農林大臣が管理をしておりますが、実際には都道府県知事に管理の委託をいたしております。
  162. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 私は、実際の取り扱い上は、農業委員会あるいは県知事等に権限は委譲されておりますけれども、最終責任はどこかを聞いておるのです。
  163. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 先ほど申し上げましたように、自作農創設特別措置特別会計の所管財産でございますので、農林大臣の管理に属するわけであります。
  164. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 実は私は、先般北海道へ行って調査をしてきたのですが、石狩郡の石狩町、この町に昭和二十六年十月から、北海道開発庁が三千五十一平方メートル、これは材料置き場あるいはかんがい排水に使っておるのです。結局十七年間たっておるわけです。ところが農業委員会では、どうしてこれは所属がえしないのだろう、こういうふうに何べんも言っておるらしい。ところが、いまだにこれは十七年もこのままにしておいておる。国の機関であろうが何であろうが、当然これは財政法できちっときめられておるわけですね。財政法第九条第二項に、国有財産の維持保存として「常に良好の状態においてこれを管理し、その所有の目的に応じて、最も効率的に、これを運用しなければならない。」というふうに規定をされておる。さらに事務処理要領第二条には「土地の所在、境界を明確にすること。」さらに「実地検査又は調査を実施し現況を明確にすること。無断耕作、無断転貸、転用その他国有農地の管理上の事故の発生を防止すること。」北海道開発庁が無断で国有農地を十七年間も使っておる。こういう事例があるのです。  さらに私は、もう一点申し上げます。これは同じく北海道の函館であります。昭和三十二年四月から、運輸省が四百八十二平方メートルを函館の空港の用地に使用しております。これも農業委員会が再三にわたって所属がえをしてくれということを言っているらしい。これも十一年間たっている。いまだに何とも言ってこない。こういう事例があるわけです。私は、先般北海道へ行って調べてみて、大体国の機関が使っているだろうという個所は二十ヵ所くらいあるだろうというふうに見ているわけです。その中で、この二件が私の調査で明らかになったわけですが、一体この問題に対して、大臣はどうお考えになるか答弁を願いたいと思います。
  165. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 ただいま具体的に御指摘になりました石狩町及び函館市におきます国有農地の北海道開発庁及び運輸省での無断使用という事実については、私、具体的にいま承知をいたしておりませんので至急調査をいたしますが、現在の自作農創設特別措置特別会計に属しております国有農地は、御承知のように、農地改革の際に一定の基準で本人の意思とは無関係に強制買収をいたしました関係で、行政目的である自作農の創設という用途に供しないという場合には、これをそれぞれの所管庁で直ちに所管がえをするという制度にはなっておりませんで、先ほど申しましたように、そういうふうに使います場合には、旧所有者に払い下げをするというふうに八十条の規定でなっておりますので、おっしゃいますようにこれを所管がえするということは、いまの制度のままでは不可能でございます。ただ、先ほどもちょっと申しましたように、五千四百余ヘクタールありますうちで、自作農創設の用途に事実上供し得ないと考えられます二千三百六十一ヘクタールにつきましては、現行法の規定のまま旧所有者に旧価格で売り戻しをするというようなことは、現在の社会常識から考えて適当でないという御批判もございますので、現在それらの処理については、何らかの合理的な立法措置を研究いたしておる次第でございます。  なお、本二件につきましては、まことに管理が適当でなかったという点は遺憾でございますので、早急に調査をいたしまして必要な措置をとりたいと思います。
  166. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 いまの国有農地は、たとえば先ほど局長から答弁があったように、無断転用あるいは無断使用の場合は相当きびしい罰則があるわけですよ。国の機関だからといって十数年間もそのままにおいておくということは、私はほんとうに遺憾なことだと思うのですね。国有財産を国がみずから使用する場合は、国有財産法、農地法等において明らかに手続をとらなければならないというふうになっているわけです。当然この法律を守るべき国の機関が、国有農地を無断使用して、しかも手続もしてない。これでは法治国家であると私は言えないと思う。大臣、いかがですか。
  167. 西村直己

    西村国務大臣 この具体的例につきましては、私も調査して処置をとりたいと思います。
  168. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 私は、そういうことを聞いているのではないのですよ。先ほど申し上げているように、こういうふうに、国民に手本を示さなければならない国の機関が、法を無視して、しかも、手続もしないで十何年間もほったらかしているということは、これは責任問題じゃありませんか、農林大臣として。あなたはこれをどうお考えになっているかということを私は伺っているのです。調査するということは当然です。もう一ぺん答弁をお願いします。
  169. 西村直己

    西村国務大臣 法律上、これが妥当でないといいますか、法律的に処置がとれていないということは遺憾に存じます。
  170. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 私は、実はいろいろ資料を持っているのです。きょうは分科会で時間が三十分よりないというので、私はきょうは突っ込んだ話もいたしませんが、十分また後ほど時間の許す限り審議を行ないたいと思うのです。  それから、実は北海道の事例でございますが、境界不明あるいは現状がどうなっているかわからないというもの、これも戦後二十数年たっている間に相当な数があるわけですけれども、この問題について、どのくらいあるのか教えていただきたいと思う。
  171. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 先ほども申し上げましたように農林大臣の管理に属しますが、実際の管理は都道府県知事に委託をいたしております。境界不明とか、あるいは現状がどうなっているかわからないというのがどのくらいあるかというふうにお尋ねをいただきましても、私も現在手持ちがございませんので検討いたしますが、ただ、五千四百ヘクタールのうちの約八割にあたります四千五百ヘクタールにつきましては、二年ほど前に都道府県市町村を通しまして現状把握をいたしましたわけでございまして、それらの調査の結果として、先ほど申しましたような無断の転用等が出てまいりましたものを、逐次成規の手続によるように現在処理をいたしているわけでございます。
  172. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 先ほどの国有農地の無断使用の件ですが、北海道開発庁にお伺いします。  この件について御存じですか。
  173. 馬場豊彦

    ○馬場政府委員 先ほどあげられました石狩町と函館の例は、遺憾でございますが、承知いたしておりませんでした。さっそく調べたいと思います。
  174. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 これは北海道に二十二、三件あるようですけれども、その中で四、五件は開発庁関係であるわけですね。私は、一年や二年というのであれば、それは最近のことだからわからないといっても、これはしようがないと思いますけれども、十七年間もたっている。しかも、面積も相当あるわけですね。私は、あなたの答弁から推して、いやしくもこれは国民の財産でもあるし、当然開発庁としても把握していなくちゃいけない問題だと思うのです。私が先ほど指摘をいたしましたが、これに対してどういうふうに処置されるか、もう一ぺん答弁を求めます。
  175. 馬場豊彦

    ○馬場政府委員 おっしゃるとおり開発庁において把握すべき問題だと思いますので、さっそく把握をいたしまして、合理的な手続にすぐ改めるつもりでございます。
  176. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 北海道開発庁関係の数量あるいは場所あるいは件数について、後ほど資料を提出いただくように主査にお願いいたします。
  177. 小山省二

    小山(省)主査代理 いいですね。
  178. 馬場豊彦

    ○馬場政府委員 承知しました。
  179. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 それから運輸省来ておりますか。運輸省の方にお伺いしますが、先ほど指摘をいたしましたように函館空港の用地の問題について御承知かどうか。
  180. 梶原清

    ○梶原説明員 承知をいたしております。
  181. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 どういう措置をとられますか。
  182. 梶原清

    ○梶原説明員 目下調査中でございまして、早急に適切な措置をとりたい、かように考えております。
  183. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 農業委員会がほんとうに無責任だと言っている、幾ら手続をしてくれと言っても手続をしないというのですね。私はほんとうにけしからぬと思うのです。民間人であれば先ほど言ったように、一般国民であればいろいろな罰則もあるし、さっそく手続をするわけでしょう。現地の農業委員会はほんとうに困っているのですよ。しめしがつかない、こう言っている。そういう無責任な態度では困ると私は思うのです。運輸省としても全国的に相当あると私も思うのです。来週まででけっこうですから、先ほど申し上げましたように、無断使用の資料、場所あるいは件数そういったものについて資料を要求いたします。
  184. 小山省二

    小山(省)主査代理 後ほど提出願うようにいたします。
  185. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 時間も参りましたので最後に農林大臣にお伺いいたします。  先ほど私がいろいろ申し上げましたように、農業構造の改善あるいはいろいろな基盤整備の問題等についてどうすれば農地を有効適切に農民のために使えるかということは、これはわれわれとしても当然考えなければならぬ問題であります。先ほど来私も指摘をいたしましたように境界不明だとか、現状がわからないとかあるいは無断使用されているなどという農地が相当あるわけです。私はこれをまず政府自身が正していかなければならないというふうに考えるわけです。農政上のいろいろな施策や方向を打ち出すのもけっこうですけれども、それ以前に私は国の財産である農地の管理というものが非常に大事である、こういうふうに考えるわけですが、農林大臣の今後の国有農地に対する管理上のお考え並びに決意のほどを最後にひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  186. 西村直己

    西村国務大臣 国有農地につきましては、従来ともかなり調査をして処理した部分もありますが、しかしまだ今日御指摘のようないろいろな問題も残っておりますので、でき得る限りそれについてはわれわれのほうでも適切な措置をとるように努力していきたいと思います。
  187. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 農林大臣から力強い御答弁をいただきまして、佐藤内閣きっての実力者である農林大臣の御答弁ですから私は期待をしてこれから見守っていきたいと思います。  以上で私の質問を終わります。
  188. 小山省二

    小山(省)主査代理 林百郎君。
  189. 林百郎

    ○林分科員 私は主として西村農林大臣にお聞きしたいと思います。  実は、共産党は予算委員会で一般質問の機会もありませんので、西村農相の農業政策の基本問題をお聞きする機会はまれでありますので、ひとつ丁寧に率直にお答え願いたいと思います。時間の関係もありますので、その中で食管制度について、あなたの基本的な考え方をお聞きしたいと思うのです。  あなたも予算委員会ですでに答弁しておるのですけれども、食管制度と佐藤内閣の総合予算主義、これとの関係について、あなたはどういう基本的な考えをお持ちになっておりますか。
  190. 西村直己

    西村国務大臣 非常に大きな観点からの御質問だと思うのでございます。そこで総合予算主義というのは、御存じのとおり今度年の予算の編成方針、それからもう一つは、それとは直接の関係ではないが、関連はございますけれども、食管制度というものに対して、巷間いろいろ議論が出かかっていることも御存じのとおりでございます。  食管制度自体についてどう考えるかということをまず申し上げたいと思います。食管制度の問題は農政の全体の中においても非常に比重が大きい問題であって、国民経済にも関心が深い、そこで、これの扱い方については私も大きな問題だけに慎重に対処してまいりたいという前提のもとに、したがって前から申し上げますように、食管制度の根幹を直ちにどうということではなくて、根幹は根幹なりにあります。三条、四条のような精神はありますが、運営については、改善、合理化というものはまだまだやり得る余地がある。特に国内の米の需給事情もかなり変わってきております。緩和というような事情になっておりますので、それらの事情というものも十分対処いたしまして、同時にまた、これに対して運営改善と申しましても、各方面の意見もございます。そうして食管制度の中では、当然生産者米価、消費者米価というものが、それぞれ一つの基準できまるわけでありますが、その関連の正常化という問題等も考えながら、食管制度を考えてまいりたいと思うのであります。  それから補正なしの予算と申しますか、総合予算、これは四十三年度の予算編成にあたりまして、こういった、たとえば公務員であるとかあるいは米価でございますとか、そういうもので急に大きな補正要因を生んで、補正というものが従来行なわれてきた。そういうものを年度中では補正はしないでいくということで、今回の予算は期待されたわけです。ただ御質問の趣旨は、おそらくその間に米価というものがいじられた場合にどういうふうな形になるのかという御質問じゃないかと思います。ただその場合に、年度途中で米価改定等の事情の変化があっても、これによって補正をしないようなくふう努力をしながらという考え方で予算は編成をしておる。こういうふうな考えであることをまず最初に申し上げておきます。
  191. 林百郎

    ○林分科員 あなたはそういう意味のことは予算委員会でも述べておられます。そこで、食管会計というのは、非常に補正要因の多い会計なんですね。それをあなたは補正を組まないでやろうとすることは、実際できるかどうかという問題です。一つはまず生産者米価ですけれども、これはあなたも予算委員会で資材費や労賃が上がれば考慮する、考慮せざるを得ないというようなことを言っています。これはまた食糧管理法の中で、当然そのことは義務づけられているわけですね。「生産費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ米穀ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」とありますから、経済事情は、物価が値上がりするということは、政府自体が言っているわけです。そういう要因がある。生産者米価をどうしても上げざるを得ない要因がある。しかもこれは例年の実績を見ましても、もうここのところ四十年、四十一年、四十二年といずれも九%以上上げているわけですね。これは大臣承知ですね。これはそれぞれそういう要因がなくなるということはないわけですね。  それからもう一つの問題は、本年度の国内米の買い入れ見込み計画は七百六十八万八千トンで、約七百六十九万トンと見てもいいと思いますが、これは四十三米穀年度の需給計画の見込みです。予算には八百五万トンとありますが、計画には七百六十八万八千トンとありますね。これは実は昨年の計画よりも下回っている。昨年の当初計画は七百九十二万トンですから、計画自体が昨年よりも下回っている上に、ことしの二、三月ごろまでには買い入れ実績はおそらく九百六十万トンくらいになるんじゃないか。そうすると、これは不当に少ない買い入れ計画を立てている。こんなことで済むはずはないわけです。例年の実績を見ても、一挙に百数十万トンも買い入れ量が減ったという例はないのですから、おそらくことしの米穀年度の終わりには九百七、八十万トンの買い入れ実績になるんじゃないですか。それが見込みが七百六十九万トンということになりますと、百数十万トンことしの実績より下回った計画を立てたことになる。こんな数字はとうてい通りっこない。そういうところから、どうしても本年度食管会計に補正を組まざるを得ない要因が出てきているわけですが、そういう要因があっても絶対に補正予算は組まないという方針なんですか。
  192. 西村直己

    西村国務大臣 基本的には私からお答えして、最後は数字にわたりますから食糧庁長官からお答えするのをお許し願いたいと思いますが、米価につきましては、まだ具体的決定の段階には入っていないわけであります。ただ、予算の際にこういう補正を組まない——米価自体が食管会計の中に占めているウエートも大きい、しかし同時に、買い入れ済みもありますし、その他の要因もいろいろ食管の中ではございます。そこらを見合わせ、言いかえますならば、改定等の事情の変更があっても補正財源は必要としないという努力目標のもとに、補正をしないという方針のもとに総合予算制というのをとっております。これが政府の考えでございます。
  193. 林百郎

    ○林分科員 それからもう一つの問題は、本年度の売買損益を千百一億として、昨年より約二百五十億も少なく計算している。これはどういうところから出てきているのですか。六七年度の実行見込みで売買損益は千三百五十二億だというのに、本年度では千百一億と約二百五十億少なくしている。だから、二百五十億損益を少なくした勘定で買い入れのほうをするから、むしろこれは逆じゃないですか。大口さんなんか盛んにしゃべりたいような顔をしていますけれども……。要するに、食管会計の赤字を五年なら五年で漸次なくしていくということで本年度から損益を二百五十億減らした。そういうことから逆算していくと、大体七百六十八万八千トンという数字が出るということじゃないですか。ここからも非常に大きな補正要因があると思うのです。  そこで大臣にお聞きしますが、そうすると、私の言うそういう補正要因——生産者米価の値上がり、買い入れ見込みの非常な過小なこと、そういう要因の中で、たとえば生産者米価の値上がりは毎年毎年九%上がる、そういう例年生産者米価を上げていく要因がことしになってなくなるということは考えられない。これも明らかに補正要因があるのに対して、総合予算主義で補正は組みませんといってもそれはできないことじゃありませんか。もし補正予算を組まないとすれば、それは消費者米価はスライドしていく、あるいは当然上げるべき生産者米価を上げないでいくと、生産者か消費者か、どっちかに犠牲をかけなければ、この食管会計に補正を組まないということはできないのではないでしょうか。率直にお聞きしたいと思います。
  194. 西村直己

    西村国務大臣 もちろん生産者米価を上げていく要因というものはあるでございましょう。しかし、食管会計全体の中でどういう形で米価をきめるか、八百五万トンになっているが、どういうふうに買い入れ数量をきめるかというようなこと、さらにもう一つは、この一部が消費者のほうにかかっていくこともまた全然考慮していないわけではない。全部これは食管会計の中で生産者をおさめていくのだということも、われわれとしてきめているわけではないのであります。消費者米価は絶対にいじらぬときめているわけでもないのであります。
  195. 林百郎

    ○林分科員 そうすると、生産者米価の上がった場合、消費者米価も上げるということを考えてはいるのだ、こういう意味ですね。考えないことはない、そう聞いておきます。ところが、このことについて閣内の意見が全くてんでんばらばらなんですね。宮澤経済企画庁長官は、いわゆる宮澤構想の中に、あなたも御承知と思いますが、米価審議会が明年当初から米の管理制度全般について基本的な検討を始めることにかんがみ、その結論が出るまで生産者米価は据え置く、消費者米価も右に同じ。これは生産者米価、消費者米価は、そのまま食管法からいって値上げをしなければならないどんな要因があっても据え置くという意見を述べておる。ところが、水田大蔵大臣は、生産者米価が上がれば消費者米価の値上げは起こると予算委員会で言っております。また、佐藤総理も、参議院の本会議ですけれども、米価については、生産者米価が上がれば消費者米価も上がると考えるのが当然だと言っております。宮澤経済企画庁長官とも違う。それから倉石前農相は、一月十四日の宇都宮の記者会見で、ことしの消費者米価は生産者米価の引き上げを上回る値上げになると言っております。要するに、本年度の逆ざやを漸次解消していく必要があるので、かりに生産者米価が上がっても消費者米価はそれ以上上げて、これを漸次なくしていくのだという意見です。これはまたスライドもスライド、オーバースライドの意見を出しておる。それから私が言うまでもなく、あなたが農林大臣になる前だと思いますけれども、これは閣議決定もあるわけです。昨年の十二月二十九日、これは御承知のように、会計繰り入れについては、年度途中における米価等事情の変更があっても、これによる補正財源を必要としない方式を確立する、こうある。これは御承知ですか。そうすると、宮澤経済企画庁長官意見は、生産者米価、消費者米価を据え置く、総理と水田大蔵大臣は、スライドする、それから閣議決定も、途中で補正要因が出ても補正予算の財源を必要としないような方式をとる、それから西村さんは、何とどっちつかずの、どっちについていいかわからないような御意見で、食管制度の根幹は守るが、補正予算も補正要因もこれは考えざるを得ない、あるいはスライドするというようなことも言っておられる。それからさらに倉石前農相。これは一体政府の統一した見解はどこにあるのですか。
  196. 西村直己

    西村国務大臣 私は政府の統一した見解は、日にちは覚えませんし、多分に私の意見でありますが、予算のきめられましたときの補正財源を必要としない方式の確立を期する、これが一つの基本方針だと思っております。それの説明のしかただと思うのでございます。  そこで宮澤構想というものは、これは正式に閣議で取り上げられたものでもなし、あくまでも一つの私案として発表はしてみただけであって、これ自体が直ちに閣議その他で取り上げられて論議されたものではない、こうお受け取りをいただきたいのであります。そこで、この方式の確立の中で説明のしかたに多少のニュアンスがあるかもしれません。私も、したがって、再生産を確保するという一つの生産者米価は、それから家計を安定させるという四条でありますか、四条のほうのその方式の中で食管制度をやっていかなければなりません。しかし、いろいろな要因が積み重なった場合に、消費者米価もそれによって影響を受けるということもないことはない。言いかえれば、逆にとれば、消費者米価というものに波及する場合もある、こうお受け取りいただけば、総理の意見、大蔵大臣意見、私の意見というものは同じだと思います。それを逆ざやを全部埋めるというオーバーのオーバーのような表現は、今日まで私閣内に入っても聞いてない、こういうことであります。
  197. 林百郎

    ○林分科員 そうすると、倉石前農相の言うように、生産者米価の値上がりを上回った消費者へのスライドということはないにしても、生産者米価の値上がりという要因が出た場合は、それを消費者にスライドしていく。少なくとも本年度はとんとんにしていく、そういうことなんですか。本年度の生産者米価の値上がり分はそのまま消費者にスライドして補正予算は組まない、こういうことに聞いておいていいのですか。
  198. 西村直己

    西村国務大臣 補正は組まない、とにかく補正財源を必要としない方式の確立を期待する、この中でもって食管法の考え方を私は生かしていかなければならない、こう思うのでございます。
  199. 林百郎

    ○林分科員 だから、率直にひとつ言ってくださいよ。補正は組まない、しかし生産者米価の値上がりという要因は、これは否定できないし、確率が非常に多いわけですね。これは物価も上がるんですから、毎年毎年九%上げております。そうすると、生産者米価が上がるという要因が強くて、そこから補正の要因が出るけれども、それを補正予算を組まない総合予算主義という閣議決定もあるから、そうすると、生産者米価が上がった分はそのまま消費者にスライドしなければ、あなたの言うことは通らないことになるんじゃないですか。何か違う道があるんですか。
  200. 西村直己

    西村国務大臣 それは食管会計全体として考えていかなければなりません。米の価格もありますし、量もあります。それから他の要因もあります。それから家計費のあり方も問題でございましょう。そういうふうな関連の中で具体的決定をしていきたい、こういうことです。
  201. 林百郎

    ○林分科員 それじゃどういう要因があるのですか。補正予算は組まない、生産者米価はそのまま消費者にスライドさせないで、どういう要因があるのですか。
  202. 大口駿一

    ○大口政府委員 いま大臣の申されておりまするのは、食管特別会計の損益に影響が及ぶ要因は、米価をどういうふうにきめるかということはもちろん大きな要因であることは間違いないわけでありまするので、これは否定されておられないわけでありまするけれども、食管の予算の中に、先生が先ほど御指摘になりました売買損益のほかに、一千億以上の経費がございます。これは実際に米の需給操作をやった上で、最終的に運賃、保管料、金利その他が実際の予算の姿とは変わった場合には、やはりこれは損益には影響があるわけでありまするから、それらを総合した上で最終的に損益がどうかという問題があるという趣旨でお答えになったものと思います。
  203. 林百郎

    ○林分科員 そうすると、西村さん、政府経費が下がればいいですよ。下がってそこからプラス要因が出てくればいい。政府経費あるいは倉庫料、運賃、人件費、そういうものも上がるわ、生産者米価も上がるわ、こうなった場合はどうするのですか。操作するという要因、その全部が上がる方向に出てきた場合……。大口さんの言うようなことは現実にあり得ないことです。
  204. 西村直己

    西村国務大臣 私はいまお答えするのは、したがって補正財源を必要としない方式の中で生産者米価と消費者米価のあり方をきめていきたい。したがって、食管全体を考えた場合、あなたは全部上がるんだという前提で議論を進められますが、具体的決定はまだ数カ月先のことでございます。その際に十分考えていきたい。
  205. 林百郎

    ○林分科員 それは西村さん詭弁ですよ。それじゃ下がって当初予算よりプラスになる要因と——ここでは、本年度政府経費やそれから売買損益も入れて、二千二百九十五億というものを見込んでいるわけですが、この中から当初予算よりは下がってプラスが出てきた。これは内地米のことで、輸入米ははずしていますが、そんな要因がどこにあるのですか。だから率直に、総合予算主義をとり、補正予算を組まない限り、これは消費者米価ヘスライドするのです。こうお答えになったほうが正直じゃないですか。どうですか大臣、正直に、率直に言ったらどうですか。
  206. 西村直己

    西村国務大臣 私は正直に申し上げているのですが、なお説明としては、こういうものを専門にやっている大口君に聞いてもらいたいと思います。
  207. 林百郎

    ○林分科員 いや、私は大臣に聞いているのですから。私はきょう大臣と一問一答するつもりでいるのですからね。  そこで、大臣、ことし新しく任命された米価審議委員の中で、昭和四十三年度の政府と与党上層部の間の食管会計の処理方針は次のものだということを公然と発表しているのですよ。名前を言えと言えば言いますけれども、言うまでもなく、農林省の役人さんたちはおわかりだと思いますが、こう言っているのです。「財政硬直化と米価決定の矛盾をさけるために、来年度以降は、食管会計の赤字くりいれについて限度をもうける。もし今後生産者米価の引き上げその他で食管赤字がふえる場合には、消費者米価の引き上げによって赤字の増大しないような措置をとる。いわゆるスライド方式をとることとする。」ということが、政府と与党上層部の間に処理方針が決定したと言っているのですよ。ただし、西村さんは参議院の選挙があるし、こんなことを言って票が集まらなければ困るといって苦しい答弁をされているのではないかと思うのですが、これは政府が任命された米審の委員が言っているのですよ。名前を言えと言えば言います。こういうことをきめるためにこの改定を米審に求める。だから米審が問題になる。どうしてもスライド制に賛成する米審委員でなければ入れておくわけにいかないということになっているわけです。この政府与党の食管会計の処理方針決定は、あなたは御承知ですか。
  208. 西村直己

    西村国務大臣 具体的には知りませんが、私は予算の一つの組み方としての考え方で受け取っているわけであります。
  209. 林百郎

    ○林分科員 そこで、そういうスライド方式をとるための米審だというのですが、米審をあなたはどうするつもりですか。これは御承知のとおり、生産者代表、消費者代表国会議員は出てしまって、まるでもぬけのからになっている。これはあなたの責任で処理しなければならない問題ですが、どうするのですか。
  210. 西村直己

    西村国務大臣 米価審議会の委員から、おっしゃるように、国会議員は一応いま議論の場に入れないとしましても、生産者代表、消費者代表を除いて発令した、この問題につきまして非常な議論が起こっていることは私も重々存じておるわけであります。それで、これを抜いてきたいきさつにつきましては、過去のいろいろな経緯から今日の委員が発令になったと思うのでございます。そこでこの間うち予算委員会等を通しまして各党の方々からこれを改編するかどうかという激しい御質問等があったわけであります。これはもう経緯は林さん御承知のとおり。私といたしましては、いま各党間の協議で米審の構成についてやろう、そしてそれについては十分ひとつ尊重してくれというこの間のお話も出ておりますから、私としてはそれを見届けて考えてまいりたい、こういう考えでございます。
  211. 林百郎

    ○林分科員 わかっているじゃないですか、野党の諸君の言うのは。社会党、民社党、公明党は、生産者代表、消費者代表、国会議員を入れろ、従来のとおりにしろということを言っているのです。共産党もまたそういう立場です。米審を民主化しなければならない。ことに、米価をきめるというのに、売り手の農民代表、買い手の消費者代表がいないところの米価のきめ方なんということは、これは無意味ですから。これは全く両者の利益を犠牲にしなければならないものだから、犠牲にされる者が出ていてはめんどうだということ以外の何ものでもないと思うのです。もうわかっているんです。野党の皆さん方のそういう意向について、あなたは積極的に、私はこうしてこの野党の皆さんの要望にこたえたいと思う、そういう答弁は出ないのですか。あなたは改組をしないと言っているんですね、いままで。そこで問題になったわけです。要するに倉石前農相が任命した米審委員というものはそのまま通すのだと言われたので問題になったのです。そこであなたは、いまの答弁では、野党の皆さんの意見をお聞きして、そして善処したいと言っているわけです。野党の諸君の言うことはもうわかっているわけです。しかも自民党の参議院の皆さんもこれと同じことを言っているんですよ、西村さん。そうしたらあなたの行く道はもう一つしかないじゃないですか。やはり前へ戻すということじゃないのですか。そうはっきり言えませんか。それとも、もう絶対に現状をそのまま維持していくんだ、それをはっきり言ってくださいよ。
  212. 西村直己

    西村国務大臣 私は、その現状を変えるとか変えないかとかいう問題を離れまして、いま各党間で協議をされています。その結果を尊重したい。これがこの間うちから私が申し上げている結論でございます。
  213. 林百郎

    ○林分科員 あなたは、新聞記者会見で言ったことでだいぶ痛い目にあっているものだから非常に慎重ですが、それじゃ答弁になりませんよ、あなた。あなたが、それじゃもとへ戻しますと言うところを見なければ、これで突っぱっちゃうというようにとっていいですか。それが一つ。  いま野党に伝えられておる米懇なるものですね、これは一体何ですか。法制上何か根拠があるのですか。どういう性格を持った組織になるのですか。
  214. 西村直己

    西村国務大臣 これも与党のほうで一部、かりの一つの考え方としてやっておられたので、その性格その他は、その結論が、与野党の間でいろいろ折衝されているように思いますので、出たところで私のほうは考えていきたい、こういう考えでございます。
  215. 林百郎

    ○林分科員 そうすると、米懇というこの方式にはあえてこだわらない、こう聞いていいですか。必ずしも自民党案として出された米懇の中で生産者代表の意見や消費者代表の意見を聞く、こういう構想は、あなたは一応白紙に戻した、そう聞いていいのですか。
  216. 西村直己

    西村国務大臣 米懇の案は政府のほうから出しておる案じゃありません。自民党のほうから出しておる案であります。そして、野党の間で、どういう形で生産者、消費者の意向を反映するかという一つの考え方としてくふうされているのじゃないか。したがってその与野党間の意見の合致したところを私は尊重して、その上でいろいろなことを考えてまいりたい、こういうことでございます。
  217. 林百郎

    ○林分科員 与党自民党のほうは米懇方式を出しているわけですね。野党のほうは、生産者代表、消費者代表、国会議員も入れて民主的な米審にしろ。もうこれはわかっているでしょう。そういう状態の中であなたはどういうようにこれを改善していく考えなのですか。もうあなた回答する時期も来ているわけでしょう。あなた何かもう少し積極的な答弁を出なければ、私はちょっと引き下がれないですな。そんないいかげんなことだけでは。
  218. 西村直己

    西村国務大臣 私は先ほど来予算委員会で正式に申し上げましたとおり、与野党の間で協議をする結果を尊重する、その協議が成り立つように努力をしたい、こういうふうに言っておるのでございます。
  219. 林百郎

    ○林分科員 じゃ、もし成り立たなければどうなるのです。両方の意見が並行してどうしても成り立たない、そういう事態ができた場合にはあなたはどうするつもりですか。
  220. 西村直己

    西村国務大臣 私はその結果を見てから判断をしたい、こう申しております。
  221. 林百郎

    ○林分科員 意地が悪いようですけれども、あなたが逃げていることが明瞭だから私は追いかけたくなるのでね。もしこのままいけば、あなたは三月末までには責任ある回答をしなければいけないことになっているのじゃないですか。それなのに依然として与党と野党の間の米審についての意見は並行線にいるわけです。そういうところであなたは責任を持ってあなたの方針を明確にしなければならないという事態が来た場合にはあなたはどうなさるつもりですか、こう聞いているのです。
  222. 西村直己

    西村国務大臣 今日の時点におきましていま答弁を求められますれば私は同じことを申し上げる以外にないのでございまして、与野党間で協議をしている結果を尊重していきたい、こういうことでございます。
  223. 小山省二

    小山(省)主査代理 時間ですから結論に入っていただきます。
  224. 林百郎

    ○林分科員 それじゃ、もし与野党の間で前のとおり戻す、生産者代表も消費者代表も任命して入れる、国会議員も入れるということの意見になれば、あなたはそれを尊重しますか。
  225. 西村直己

    西村国務大臣 与野党の協議の結果を尊重するということは明らかです。
  226. 林百郎

    ○林分科員 そういう協議の結果ならあなたは尊重されますね。
  227. 西村直己

    西村国務大臣 ですから私としては与野党の協議の結果を……。
  228. 林百郎

    ○林分科員 だから結果がそういう結果になった場合はあなたは尊重しますかと聞いているのです。あなたは結果を尊重すると言うから、与野党の話し合いの結果、これはやっぱりもとに戻したほうがいいという結果にまとまれば当然あなたはそれを尊重するのですねとあたりまえのことを聞いているのです。それがどうして答えられないのですか。
  229. 西村直己

    西村国務大臣 私はそれは当然のことだと思います。党の間でおやりになることを私のほうで尊重すると言っているのですからね。
  230. 林百郎

    ○林分科員 最後にもう一、二点。  もう一つ重要なことは、閣僚の意見、ことに宮澤経済企画庁長官もそうですけれども、米審に食管制度自体を討議させるのだ、こう言っているわけですね。念のために申しますと、米価審議会が明年当初からの米の管理制度全般について基本的な検討を始めることにかんがみと言っている。これは同じ国務大臣、あなたとも連帯の責任がある宮澤経済企画庁長官のかりに私案といえども、こういうことは許されないのじゃないでしょうか。あなたも御承知のとおり農林省設置法の中に食管制度の法律的な規制がありまして、これは当然米価をきめるのだ。食管制度自体をここで審議する機能はないわけですね。農林省設置法の五十三条。この宮澤経済企画庁長官意見というものは不当だ、これは農林省設置法できめられている米価審議会の機能をはみ出すものだ、こうあなたはお考えになりませんか。
  231. 西村直己

    西村国務大臣 宮澤君の私案そのものを、文章はここでは覚えておりませんが、少なくとも米審というものは米価の基本に関することを諮問を受けて決定するわけでありますから、その限度内においてやっていくべきことだと考えております。したがって、宮澤君の表現がはたして農林省設置法の米審の性格を知っておられてやっておられたかどうかちょっと疑問に思います。
  232. 林百郎

    ○林分科員 それじゃこれで私の質問を終わりますが、最後に輸入前の問題があるわけです。御承知のとおり今米穀年度から来米穀年度への持ち越しの古米は大体二百万トンくらい、約三ヵ月分くらいあるだろうという見通しで、非常に需給関係が改善されてきているわけです。それにもかかわらず依然として三十三万トンくらいの輸入米がある。これは主としてカリフォルニア、それから開発地域の米の輸入です。問題は、そういうことをなぜそんなに続けるのか、需給関係が改善しているにもかかわらず。それが一つと、それからもう一つ、加州米の徳用上米ですか、これをパッケージにして、一キログラム詰めにして、大きな精米所から直接デパートやスーパーマーケットにいく、これで間接統制のてこにしようとしている。こういう状態も輸入米の機能として見えるわけですけれども、この輸入米を、国内米穀の需給関係が改善された今日、これは断わってもいいものだと思いますが、これはなお継続していく方針ですか、どうですか。
  233. 西村直己

    西村国務大臣 御存じのとおり、加州米、それから今回は中国からも二十万トン入れるという大体下話をわれわれのほうで申し上げておる。その他、台湾からも多少入る。しかし昨年よりはずっとワクは小さくなっておることは御承知のとおりでございます。いわゆる国内需給の関係で入れざるを得ないのは、やはりその面に対する需要というものもあるということも考慮に入れて操作されている、こういうふうに私は解釈しております。
  234. 林百郎

    ○林分科員 その面というのは何ですか。
  235. 大口駿一

    ○大口政府委員 輸入米の三十三万トンと仰せられたものの中には、準内地米、普通外米、砕米等がございます。砕米は砕米としての需要があるわけでございます。それから準内地米も、現在の消費者に対する配給の品目は内地米に比べて著しく割り安に定めております。徳用上米なり徳用米そのものに対する需要があるわけでございますから、内地米の在庫が非常に大きいということでありましても、需要に必要な分だけは輸入せざるを得ない、ゼロにはできない。しかし、全体の米の需給が、非常に持ち越し米がふえている状態でありますので、輸入米の輸入量全体は非常に少なくなっておる、こういうことを大臣は申されたのだと思います。
  236. 林百郎

    ○林分科員 これで終わりますが、大口さん実情を知らないですよ。あなた輸入米を好んで買う人はいないのです。みんなやはり内地米がおいしくてそれを優先的に買うのですよ。だから輸入米を内地米にまぜて売っているのですよ。それはあなたの言うカリフォルニア米がうまくて、あるいは安くて日本人の口に合っているから買うのじゃなくて、それはやはり日本の政治自体がアメリカに従属されているという形から、やむを得ず買わされているのが真実じゃないですか。もう断わったって何の差しさわりもありませんよ、二、三十万トンの加州米なんか。それを計画的に買おうとしている。ことに民間ベースでは円粒米をわざわざ加州に持っていって作付して計画的にそれを買い入れる計画を立てている。現に宮澤経済企画庁長官はこう言っているのですよ。準内地米——加州米ですね。準内地米を長期的に安定的に買い付けるために、民間ベースで契約栽培してそれを輸入したらどうかということを、九月一日の物価対策閣僚協議会で言っているのですよ。だから大口さんも含めてあなた方の農政は、一つは生産者米価を引き下げて、農村から労働力を流出するような構造改善政策も含めて、そういうことを非常に強行されている。一方では米価を上げて消費者に犠牲を払わしておる。一方ではアメリカに従属して膨大なアメリカの農産物を入れて、自給率をますます引き下げている。こういうように、ほんとうに日本の農民を自主的に繁栄させていくという道をとっていないのじゃないですか。あなたにもう一度そのことを考えてもらいたいし、西村農林大臣もその点私の意見をよく考えられて、そして検討されることを要望して、私のきょうの質問を終わります。
  237. 小山省二

    小山(省)主査代理 以上をもちまして、昭和四十三年度一般会計予算及び特別会計予算中、農林省所管に関する質疑は終了いたしました。  午後三時から再開することとして、暫時休憩いたします。    午後二時三十五分休憩      ————◇—————    午後三時七分開議
  238. 植木庚子郎

    ○植木主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十三年度一般会計予算及び特別会計予算中、通商産業省所管を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。山中吾郎君。
  239. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 私は、最近の石油鉱業から発生したいわゆる回収硫黄の出現に基づいて、従来の鉱山硫黄鉱業が非常に苦境におちいっておる、これについて、政府としてどういう対策をお立てになっておるか、今後どういう対策をお考えになっておるかを中心としてお聞きいたしたいと思うわけであります。  まず第一に、硫黄の需給バランスはどうなっておるか、それをひとつ、簡単でいいから報告をしてください。
  240. 両角良彦

    ○両角政府委員 硫黄のわが国におきまする需給バランスでございますが、昭和四十二年度について見ますと、需要が二百五十二万トンでございまして、これに対しまして供給が二百五十三万トン、ほぼ均衡を保っておるわけであります。このうち、ただいま御指摘の回収硫黄は、四十二年度八万三千トンという数字に相なっております。
  241. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 現在はたいした需給アンバランスはないのですが、四十三年、四十四年、四十五年という数カ年を見通すと非常な過剰になる。そういう関係から、価格の問題を中心として、貴重な国内資源の硫黄鉱山のほうが非常に苦しい立場に立っておるということですね。そういうことからこの問題が起こっておるわけでありますが、これについてすでに通産省においては現実を直視していろいろの対策をお考えになっておると思いますが、現在までにどういうことをお考えになっておるか、お聞きしておきたいと思うのです。
  242. 両角良彦

    ○両角政府委員 硫黄、特に山硫黄と回収硫黄との競合が問題の中心でございまして、今後わが国におきまする回収硫黄の生産は逐年非常な高率で伸びてまいることが予想されます。したがいまして、全体の需給バランスで申しますと、昭和四十五年度におきましては回収硫黄五十万トンの生産が見込まれまするが、全体の需給においてまさにその同量の供給過剰の状態が想定をされておるわけでございます。したがいまして、これに対する対策といたしましては、第一は山硫黄の合理化、いわゆる松尾鉱業を中心としまする山硫黄鉱山業の合理化を既定方針に従いまして推進をしてまいるということであろうかと思います。また第二に、硫黄の国際的な需給関係にかんがみまして、硫黄の輸出体制を強化いたしまして、わが国における過剰部分を対外的に振り向けるということに努力をいたしたいと考えております。さらに第三に、石油業界並びに山硫黄業界との相互の協調のもとに、不当な価格の低落を見ることのないように、国内の輸出体制というものについて、所要の措置を検討してまいりたいと考えております。  以上でございます。
  243. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 大臣にお聞きしたいと思うのですが、国内の硫黄鉱山については、岩手の松尾が一番最大のもので、そして現在あらゆる努力を払って合理化計画を立てておる途中でありますが、現在の鉱山硫黄の不況の原因というものは、いわゆる経済的な原因ではなくて、いわゆる石油工業の公害対策の一環として一酸化炭素を少なくするというために、そこから苦肉の策として生まれてきた回収硫黄、必要経済的な原因においてこれが出てきておるわけで、それのしわ寄せを受けて、今度は国内の主要な硫黄鉱山が圧迫を受けておるという関係で、いわは第二次公害現象——公害である、こう見るのが正しいと思うのです。したがって、それについてはいわゆる自由経済のおのおのの競争の中から生まれてきたのではなくて、第二次公害対策の性格を帯びて、こういう現象が出てきておるので、政府としても、この点については政治的責任を持って処理をしてやるという性格のものだと思うのですが、これはいかがでしょう。
  244. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 その原因のいかんを問わず、とにかく結果において非常な余剰が出てきておるわけでございますが、幸いグローバルにはまだこれは輸出の余地が残されておりますので、そういう点を着目して石油業、山硫黄の企業業者間の協調と申しますか、これは役所も入りまして、適当な対策を立ててまいる。そういうことによって、この急激な変化による打撃を薄めていくように考えたいものである、かように考えております。
  245. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 松尾鉱山を例にとりますと、椎名大臣岩手ですから御存じだと思うのですが、戦争中から学徒動員その他で、あそこは戦争協力のためにずいぶん政府から増産政策を要求されて、学徒動員もずいぶん出して、私もそれを監督に行ったことがあるのですが、それから終戦後いわゆる食糧増産で、硫黄が足りないというので、通産省から生産割り当てを命じて、そうして向こうでは設備を改善をしてコストを下げるという対策を立てることができなくて、労働者をうんと入れたのですね。大体一番多いときは六千人をこえて七千人ぐらいだったと思うのです。そのために、今度はこういう回収硫黄があらわれた結果コストを下げるという対策を立てるひまもなく——通産省の指示に基づいて最も忠実に守った鉱山と私は思っているのですが、そのあとのしわ寄せを受けて、いま千百十七名しかいない。労働者が五分の一に減っておる。労働問題が起るたびに労働者にしわ寄せされて、ぎりぎり現在一千名程度になってしまって労使ともに苦しい。あらゆる努力をして現在合理化に奮闘しておるような現実であります。そういう意味において、おそらく通産行政の立場からいいますと、食糧危機のときにはあらゆる指示を発して増産に協力をさせ、鉱山が協力をした結果労働者がふえた。今度それを縮小するのに、鉱山の責任だけに放任するという行き方をとることは、私はもう政府としてはできないのじゃないか。そういう歴史的な事情もあるところなんです。それで、現在千名ほど残っておる人たちは、おじいさんの代からその山へ住みついて、もう他に転業できないぎりぎりの人が残っておると思うのです。ほとんど生命の最後の生活線を守っておる。いままでに下山をした人と違うのです。したがって、あそこの状況を見ますと、労使がお互いの生命線であるというので、労働者も経営者も一丸となってこの山を守るという、そういうぎりぎりの線にあります。労働者の立場、経営者の立場なんというのを越えた状況にある、これが現実だ。そういう中で、私は、いままで増産増産でしりをたたいておいて、あと始末はそっちにせいというような行き方はとれないのじゃないか、そういうことを考えて、政府責任を持って、融資の問題あるいは回収硫黄の輸出に対する行政指導というものをもっと積極的にやるべきであると思うのですが、その辺大臣は十分認識をされておられますか、お聞きをしておきたい。
  246. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私の選挙区じゃないけれども同じ県でございまして、大体従来の経緯は存じておるつもりでございます。
  247. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 それからいま一つ、この機会に大臣に認識をしていただきたいと思っておるのは、いわゆる出光さんあたりの、ああいうことを中心とした石油業の発展というものは、大体原料はみな輸入ですから、原料輸入のため支払われた外資を、生産された回収硫黄の輸出によりその外資を補てんする責任は、おそらくあると思うのですね。全部日本の外貨を使うことによって原料を入れて、そしてできたものの中で、しかも公害関係から、生産コストに関係なく硫黄生産を始めたのであって、江戸時代からずっと国内において国の発展に貢献をしてきたところのいわゆる鉱山硫黄を圧迫するおそれがある。国内にかってに売りつけるよりも、そとに出していくという性格があると思うのですね。そういうことも考えて、石油業に強力な行政指導をやってもらいたい。外貨によって発展をした石油工業ですから、その結果出たものは、やはり外資をさらに補うために輸出の方向に努力をせしめる。企業においてもそういう責任の立場もあるでしょうし、政府もそういう立場で強力に指導すべきである。いままでも指導されておったと思うのですが、その点ある程度の効果があるのかどうか。これは企業ですからむずかしいと思いますが、今後の、それについてのお考えを局長のほうから聞いておきたいと思うのです。
  248. 両角良彦

    ○両角政府委員 まことに御指摘のとおりでございまして、今後とも、回収硫黄業界すなわち石油業界と鉱山硫黄業界との両者の利害の調整をはかりながら、できるだけ、余剰の硫黄分は対外市場へさばきをつけまして、国内の需給バランスをとりまして、松尾鉱業をはじめとする国内硫黄山の合理的な稼働を保障するような方向で検討いたしたいと考えております。
  249. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 なお、松尾の合理化計画を見ておりますと、すでに露天掘りというふうなものがある程度目的を果たす程度に達しておって、ただそのあと製錬施設というものが必要で、その製錬施設というものを完成すると、回収硫黄に対応して、価格についても大体二万以下において供給できるという見通しを持ってやっておる。したがって、合理化計画において見込みのあるものについては政府が融資その他において協力をする、いわゆる経済的な立場においてもそれを援助するだけの根拠が十分あると思うのです。そういう点を考えると、政府のほうにおけるまず当面の問題として、現在の合理化計画が完成するまでさらに積極的に融資を進めていくという姿勢と具体的な政策が現段階において一番大事な問題であると思うのですが、その点は十分見通しをつけてお考えになっておられますか。
  250. 両角良彦

    ○両角政府委員 松尾鉱業の合理化計画の推進につきましては、特に金融機関側から今後の金融の継続につきまして相当難色を示しておる向きがあるように私ども伺っております。本件につきましては、先ほど申しました、わが国全体といたしましての硫黄対策の将来の方針の策定を持ちまして、全体計画に対する金融機関側の理解と協力を求めた上で、松尾に対する具体的な金融問題を解決をしてまいりたいと考えております。
  251. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 将来の見通し、考え方ということを抽象的に言われたのですが、その辺を明確にされないと、また金融機関においても、政府の考えがどうかということについて疑惑を持つと思うのですが、それを明確にしてください。
  252. 両角良彦

    ○両角政府委員 将来の見通しと申します点は、輸出体制の整備、それに伴う輸出見通し、また石油精製業界との価格、生産数量等を通じました硫黄業界の調整内容等々の明確化を基礎といたしまして、石油精製業界からの回収硫黄と山硫黄との長期的な利害調整というものの見通しを立て、それに基づきまして松尾の合理化計画の推進の具体的な展開をはかってまいりたい、かように存じております。
  253. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 松尾というのは一番大きい鉱山ですから例をあげたのですが、これは全体の国内資源の問題としていま私質問しているわけですが、一つの方法として、政府が回収硫黄及び鉱山硫黄を一括して買い上げるとか、価格統制をするためのいわゆる調整機関の設置ということについても考慮されるべきであり、また通産省においても検討されておると聞いておりますが、その点いかがですか。
  254. 両角良彦

    ○両角政府委員 国内販売並びに輸出につきまして、山硫黄と回収硫黄との合同いたしましたプール的な機能を営む組織につきましては、確かに一つの検討に値する御提案かと存じます。さような御提案をも含めまして、両業界を合わせた意見を十分加えまして、輸出並びに国内市場の合理化に役立つような何らかの新しい方策を打ち立てたいと考えます。
  255. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 この点について椎名大臣になお認識を深めていただきたいのは、国内資源保護という一つの大きい国の政策がありますね。そして、いま国内の鉱山資源のうちで、一応自給自足の可能性のある資源は、日本は火山国であるために、たった一つ硫黄だけである。硫黄だけは自給自足の可能性のある資源である。そういう関係で、政府も、食糧増産という立場から、硫安その他をつくる原料として非常に増産政策を立ててきた。ところが別に全然無関係のいわゆる石油工業の公害対策として回収硫黄が出てきた。そのときに、もう国内資源保護という立場を捨ててしまって、そういう企業というものはそのままばたばた倒れるままに放任されると、おそらく他のいろいろの資源開発に協力する企業その他も政府に対する不信感ができて、全体として私は非常に大きい影響を与えると思う。だから、この現在の鉱山硫黄というものに対して政府責任のある対策を立てるか立てないかは、その他のあらゆる地下資源に対する企業の努力に対して、努力意欲というか、そういうものを阻害する大きい影響がある問題だと思うのです。そういう日本の国内資源開発全体に大きい影響を与えるものとして、その一環としてこれに対する対策をお考え願うべきじゃないか、こういうふうに思うのですが、どうですか。
  256. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いまあなたの言われるような御趣旨で、目下鉱業審議会において審議を進めております。そして両者の長期的な調整体制を確立することも、その研究、審議の内容になっておるはずでございます。
  257. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 この機会ですから大臣にひとつお聞きを願っておきたいと思いますが、将来の問題として、世界が騒然となって——戦争にはならなくても、いまでもアメリカの第七艦隊が日本海あたりに遊よくしていることで漁民の安全操業が政治問題にもなっておるのですが、そういうふうに、島国である日本がこの周辺の公海において危険な状況になったときには、石油その他の資源は完全にとだえてしまう。そういうことについての国家的な考え方も持つ必要があると思う。そういうときの地下資源というものの保存も、これは長期的に見ると一つの問題だと思うのですが、少なくとも国民の食糧保持という立場に直接関係のある硫黄資源の保存というものは、石油工業から出てくる回収硫黄だけ、それがあるから国内の鉱山硫黄資源はもうどうでもいいんだというふうな考え方は非常に危険ではないか。したがって、将来こういうものを保存するという立場において対策も立てるべき性格のものではないかと私は思うのです。したがって、一方に合理化努力を払ってある程度の国の調整をとったならば、輸出入含んで一定の価格で経済的にも成り立っていくという見込みがある場合については、そういう長期的な国益という立場に立っても、一つの保護政策の対象として考えるべきではないか。そういう性格を含んでおるということも十分に認識をして、積極的な態度をもってこれにいろいろの検討を加え、あるいは業界に対する指導もしていただきたい。  そこで、結論的に私は端的に大臣からお答えをもらって終わりたいと思うのですが、一つの見通しを立て、合理化計画を持って努力しておる国内の硫黄鉱山に対しては、その完成の見込みのある限りについて、融資については関係金融機関その他に対して積極的努力を払って、通産大臣責任においてその融資が挫折をしないように最大の努力を払うことについての大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  258. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 十分に検討を加え、そして十分に将来のめどをつけまして、金融機関に働きかけまして、そして立ち行くように考えていきたい、こう考えます。
  259. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 局長、松尾鉱山については、その見通しは私は十分もう出ておる、あると見ておるんですが、それはどうですか。補足的に答えてください。
  260. 両角良彦

    ○両角政府委員 現段階におきましては、先ほど申しましたように金融機関側に相当問題の指摘を受けておりまするので、それらの点の十分な説明と申しますか、解明を行ないました上で、われわれといたしましても金融機関に対しまして適当なアプローチをいたしたいと考えております。
  261. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 そうでなくて、金融機関に対する働きかけは、いま大臣が言ったように積極的に努力すると言われたが、現実にいわゆる診察、判断をする一つの職務を持っておる通産省としては、現在の松尾鉱山の合理化計画ですね、もうほとんど露天掘りが完成して、いわゆる精錬施設さえつくれば大体二万あるいは二万以下の価格でやれるという見通しを山は言っているんですね。だから通産省もそれについては間違いなくそういう見通しはあるということをお考えになっておれば、その点はっきりしておいてください。そうでなければやはり金融機関だって十分な、やはり企業ですから、通産省の行政指導に対してこたえる立場は出てこない。それを明確にしてください。
  262. 両角良彦

    ○両角政府委員 少なくとも今日までの松尾の合理化努力というものはそれ相応の成果をあげてまいってきていると考えます。したがいまして、今後とも目標である一万五千五百円というコストを達成するために従来と同じように合理化努力を継続すればさような目標の達成は可能であろうかと考えております。
  263. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 あと二点だけ。大臣にお聞きしますが、調整機関設置についての努力、これについては回収硫黄も、鉱山硫黄も含んで、政府の一手買い上げその他を含んだ調整機関の設置について努力をすることについての所信をお聞きしておきたいと思います。
  264. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 大体御趣旨はよくわかります。その調整機関として十分に機能を発揮して、しかも実情に適合するかどうかということは具体的にもっと研究してみないとわからぬ点がありますけれども、その点は十分に研究いたしたいと思います。
  265. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 もう一点。これで終わりますが、そこで完成をした場合に、完成をして、さらに技術革新の時代ですからいろいろ予想せざる問題も出ると思うのですが、最後の一点として、松尾鉱山のような場合には六千人の労働者が、一千人の労働組合も経営者も血みどろの主張の中でぎりぎりに生きてきた残りの人は、これはどこにも行くことのできない、もうおとうさんの代から山に生まれて育った人たちばかり、そして山に宿舎を建ててそこで生まれたときから住んでいる人たちが大部分なのです。したがって、その企業と労働者をそこで立ち行くようにあらゆることを、いかなる経済的な事情があっても考えてやらなければならない。そういう状況なので、あるいはあそこで八幡平の有料自動車道路、観光道路の建設だとか、いろいろそれに関連した事業というものも計画して、あの山の中で生きるという体制も考えながら努力をしておるようでありますから、この鉱業の合理化と同時に、そこに住んでおる労働者と企業がそのままでとにかく生きていけるような体制について、常に特殊の事情のある山として通産省においても認識を持って考えておいていただきたい。それは岩手の椎名さんですから、その点は十分御認識になっておると思いますが、この点は通産省において、大臣が更迭をしても十分特殊性を考えて今後とも考慮を払っておいていただきたい。これを申し上げて私の質問を終わります。
  266. 植木庚子郎

    ○植木主査 御協力を感謝します。  次は、大原亨君。
  267. 大原亨

    大原分科員 私は万国博の政府館の中に原爆館あるいは原爆資料展示場を設置するかどうか、こういう問題を中心にひとつ質問をいたします。  通産大臣は万国博の担当大臣でありますが、本論に入る前にお尋ねするのですが、政府出展懇談会というのがありますね。茅さんやあるいは吉永小百合さんや坂本九あるいは学者やいろんな、これは集めた構想としましてはなかなか新奇なところがあるわけですが、この政府出展懇談会の性格ですね、これは一体どういうものですか。
  268. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 お答えいたします。  政府出展懇談会は通産大臣の諮問の機関でございます。しかしこれは法律等に基づくものではなく、大臣がいろいろその場においてお知恵を拝借するというための諮問の機関でございます。
  269. 大原亨

    大原分科員 担当大臣がお知恵を拝借する諮問機関だ、こういうことですが、これは一部に報道されましたが、その委員のメンバーである五島昇さんから、この万国博の政府館を見ると、アクセントがなくてどうもぴりっとしたところがない、この際原爆館でも設けたらどうだ、こういう提案があったということで、二、三の発言があってそのままになっているやに聞いておるわけですが、わが社会党のほうもおそらく、これはここにおられる田中委員も一緒で、椿特別委員長また一緒で申し出られておると思うのですが、その後この問題の処理の経過はいかが相なっておりますか。
  270. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 その話につきましては、先生の御説のとおりに、社会党のほうからもお話がございまして、それで一つには、政府部内におきまして、政府の出展内容につきましての各省の連絡会がございますが、そういったところでいろいろ検討といいますか、意見を聞いておりますが、それ以外に、この問題につきましては非常にむずかしい問題でございますので、特に専門の——専門というのはございませんが、やや日本におきましてそれに近いような会社に対しまして委託調査をお願いして、もしこの原爆というふうなものを政府館の中において取り上げるとすれば、どんな形でどういうふうにやればよいかというふうなことを出してほしいということをお願いして、近くその結論が出るかと思っております。
  271. 大原亨

    大原分科員 どのようなところに意見をお求めになったかということが一つ問題だと思うのですが、いろいろ話によると、もう答申が出ておる、こういうことも聞きます。私は、これはお話しのように、やはり政府館の性格をきめるような、きわめて重要な質的な問題を持っておるものだと思うわけですが、もう少しこまかに、どういうところに御意見を求めて、そして最近そのほうから答申が、意見が出ておるかどうか、こういう問題を含めて、また内容についても、支障がなければひとつお話しをいただきたいと思います。
  272. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 これをお願いいたしましたところは四社でございましたが、そのうちの二社は、内容につきましてなかなかむずかしいというふうなことでことわってまいりまして、結局、引き受けましたところは、東急エイジェンシー、日本シネセルというこの二社でございます。  この二社から中間的な報告が来ておりますが、われわれのほうでこれを出す場合の条件をいろいろ掲げておりまして、政府館で出すという場合に、それがふさわしい、またその他の展示との間に融合性があるというところを十分解明して、答えをいただきたいというふうにしておりますが、現在の段階では中間的に来ておりまして、最終的な、他の展示物との融合の問題とか、あるいは展示の具体的な手法の問題とか、こういったようなものにつきまして、まだ最終的な結論を出すに至っていないわけでございます。
  273. 大原亨

    大原分科員 東急エイジェンシーとか日本シネセルというふうな、その会社、あるいは団体の性格はわからぬわけですが、私はもう少し高度なものじゃないか。高度と言ってはなんですけれども、もう少し別の角度でこの問題を取り上げて、意見をまとめるべきではないかと思うのですよ。こういう段階で議論をしてもなかなかむずかしいのじゃないかと思う。大臣、あなた担当大臣ですが、非常に適格者だと思うのですよ。あなたは外務大臣もやられたし、通産大臣でもあるし、次の総理大臣候補の一人でもある。非常に候補者はたくさんある。別にあなただけを持ち上げるというわけじゃない。外務大臣をやったし、いろいろ適格者だと思うのですよ。それで基本構想ですね、展示の基本構想の中にも、非常に格調の高いものがあるわけです。日本の政府館は、万国博の顔であり、会場全体のかなめだ。その中で、日本万国博覧会の統一主題である人類の進歩と調和の理念にふさわしいものを展示することが必要だ、こういうふうなことも書いてあるわけです。この人類の進歩と調和というのは、どういうことでございますか。
  274. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 むずかしく考えると幾らでもむずかしく考える人もあります。読んで字のごとく、人類の進歩、しかも最後にはやはり調和を持った進歩でなければならない、こういうことだろうと思います。それ以上のことは、私は考えたことがない。
  275. 大原亨

    大原分科員 私は、五島昇委員に、どういう発言があったのかといって聞いてみたのです。そうしたら、政府出展の懇談会で、やはりいま申し上げたように、アクセントがないじゃないか、どうも日本の特色がないじゃないか、あるいは万博らしいイメージが出ておらぬじゃないか。そこで、日本は唯一の被爆国だから、やはり原爆の問題を持ち込んで、そうしてイメージを盛り上げてはどうだ。どうもアクセントがないということの批判の中から、そういう発言をされたらしいのですね。私はこれはいろんな角度からの検討は、むずかしく考えることもできるし、あるいは学問的な、あるいは政治的な見識の高い人々が集まって議論をしてやれば、非常に意味のあることじゃないか。というのは、何といってもこれからは原子力の時代ですね。ですから、原子力を戦争に利用すればこうなるんだ。原爆被害の実相といいますか、日本で行なわれるのですから、日本は世界における唯一の被爆国ですから、そういう事実を展示をする。それと対比して、原子力平和利用の可能性、展望というものを展示する。そうしてここに斬新な取りつけをする。こういう構想を持っていくことは、万国博の考え方からいえばきわめて適切な提言ではないか、私はこう思うわけですが、大臣がいうなれば全部をやられるわけではないのですが、こういう政府出展懇談会で出た発言、提案を受けて、一つのイニシアチブを持って構想を盛り上げていくということは、私は担当大臣責任ではないかと思う。こういうことについて、ひとつ大臣は積極的に動いていただきたいと思うのですが、私のいま申し上げた所見ですが、大臣としてどういうふうに御理解になっておるかという点をお答えいただきたい。
  276. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 まあこういったような問題を展示するということになると、問題が問題だけに、これはいろいろくふうをこらさなければならぬ点がずいぶん出てくると思います。いたずらに凄愴、無残な情景をそこへ描き出して、そうしてびっくりぎょうてんさせるというようなことも可能であろうと思います。そうじゃなしに、最後の、平和利用のすばらしいイメージを与えるようなところに力点を置いた展示のしかたもあるだろうし、なかなか、いろいろむずかしいだろうと思います。いずれにしましても、唯一の被爆国として、この問題に対してどういうふうに世界人類に訴えるかというその構想は、私はなかなかいい着眼だとは思います。そんな程度であります。
  277. 大原亨

    大原分科員 いい着眼であるというふうに大臣から見解が述べられたわけですが、万博の中の部門として、第一の部門は昔ですね。第二の部門がいま、第三があす、とこうあるわけです。日本を中心として、人類的な合意という、その人類の進歩と調和という点に焦点を置きながら輝かしい未来を考えていこう、私はそういう構想があると思うのです。基本テーマもこういうことですし。ですから、私は事実を事実として述べる、事実は事実として知っていく、こういうところに中心を置くならば、凄惨に過ぎるとか、そういうことはないと思う。原子力という巨大なエネルギーを戦争に利用すればこういうふうになる、これは平和に利用すれば——われわれは平和に利用しなければならぬし、平和憲法を持っているわけですが、こういう輝かしい未来を持っているんだ、産業のエネルギーとしてこういう輝かしい未来を持っているんだ、こういう点において、私はやはり日本の政府館において原爆の展示をやっていくということは、非常に積極的な意味があるだけでなしに、日本において万国博をやる際には、これはアクセントの一つ、強調すべき一つとしてぜひ力点を置いて考えていくべきじゃないだろうか、こう思うわけです。もう一歩進めて、ひとつこういう構想というものを積極的に取り上げて、各部門で検討しよう、こういう点について、ひとつ担当大臣としての所見を明らかにしてもらえば、私はこの際いいのではないか、こう思うわけです。
  278. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私も十分な、的確な、人の前に発表し得るような意見を、まだ持っておりません。それぞれの担当があるようでございますから、そういう人たち意見を十分に聞いてまいりたい、こう思っております。
  279. 大原亨

    大原分科員 いろいろ各方面で多数の意見があるということは私も理解しておるのですが、たとえば先般も、広島の山田市長がこの構想に対して反対だということが、新聞に出たことがあるのです。どうも慎重にやらなければいかぬ、こういうことらしいのです。それはいろいろあると思うのですが、たとえば広島の市長とすれば、万博の原爆資料館に観光客その他の参観者がとどまって広島に来ない、そういうことでは困る。広島を舞台にして原爆の資料館やそのほかの広島を見てもらいたい、こういう希望があるんでしょう。しかし、私いろいろ話をしてみましたところが、私が言うような考えならば、これはだれでも常識を持った人は反対ではない、そういうお考えのようです。特にいま広島、長崎における原爆の資料は、資料館その他に展示をしてありますが、それ以外にも、民間にもたくさんそういうものを持っている人があるわけです。ですから、この際私は、そういうささやかでも建設的な協力委員会等ができれば、そう予算を食うわけじゃないですから、そういう展示を科学的に分類して、原子力の戦争利用によるそういうひどい事実というものはこうなんだ、こういうことを展示することが、私はできると思うわけです。そうして一方では、やはり原子力の平和利用については、科学の部面でいろいろと議論され、進んでおるわけですし、そういう未来の輝かしい展望についてもこれを展示することになれば、私は原子力時代の万国博の一こまとして、日本の万国博が果たす役割は大きいのではないだろうか。これはだれも異議はないのではないか。特に、政府が構想を聞くために各方面の多面的な意見を聞きたい、こういうことでなされた万国博の政府館の出展懇談会では、貴重な意見も出ておるわけですから、私はそういう基本構想を持って各方面に積極的にやられたならば、それを技術的にどのように修飾をしていくか、あるいはどのように展示をしていくか、こういうことは、それぞれの専門のそういう中でやればよろしいのではないか。こういうことは、党派を越えて、言うなれば国民的な合意というか、平和憲法を持っているし、唯一の被爆国ということは、保守、革新を問わずだれでも言うことですから、そういう構想で基本的な考え方を具体化してみる、こういうことは、私は積極的な意味があるように思うわけです。重ねてしつこいようですが、ひとつ大臣の見解を申し述べていただきたいと思います。
  280. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 この点につきまして、原子力の平和利用祭のほうは、たとえば民間の企業間においてある程度のものを考えておるようでございます。したがいまして、もしこういうものを考えるとしましても、その辺との調整をどうやっていくかという問題があるわけでございます。  それからもう一つむずかしい展示上の問題としまして、実はブラッセルの万国博のときに、日本はかなりなまなましいといいますか、広島の被爆の実態を展示した経緯がございます。このときにも、これをどういう形において出すかということで相当の問題があったようでございますが、それでやった結果の反響というものが、必ずしもよかったというふうな好評がないわけでございまして、したがいまして、この問題につきましては、どういう方法によってやるかにつきまして、専門的立場あるいはそれ以外の国民の一般的立場からもしまして、相当検討が必要であろうと思うので、研究を今後やっていきたい、こういうふうに考えております。いうふうに取り扱うか、これは専門家にまかせて、とにかくそういう問題を取り上げてみるということは、私は一つの着想だろうと思います。
  281. 大原亨

    大原分科員 そういう方針でひとつ強力に進めてもらいたいと思うのです。ただ、事務当局だけにまかせておきますと、やはりいろいろな意見が出るのです。出るのですが、やはり日本において万国博をやる際に、人類の進歩と調和という基本テーマを掲げてやる際に、それを事実に基づいてやる場合には、一面的なことをやるわけではないわけですから、一つのダイナミックなそういう構想を具体化していくことが、私は必要であると思うのです。事実をひん曲げてこれを誇張するというようなことは困りますが、そうでない場合には、私はいいと思うし、そういう点については通産大臣、担当大臣がイニシアチブをとって、せっかくこういう意見が出ておるわけですから、積極的に各方面の意見を聞かれ、あるいは各方面の協力を求めて、ひとつこういう構想を具体化するように努力をしてもらいたい。せっかく前向きの御答弁ですから、私はそのことを強く要望しておきたいと思うのです。  それに関連をして、私は、一つの具体的な提案というものがあるわけですが、きょうは文部省の大学学術局長にも出席していただいておるわけですけれども、問題となっておりましたアメリカから返った学術的なフイルムで、まぼろしの原爆映画というのがあるわけです。これは二時間余りですから少し長いので、いろいろ再編集されて、今後国民にそれぞれ見せる、当然のことですけれども、私はこの点二つの点についてひとつお話をしていただきたいと思うのだが、まぼろしの原爆映画の処理はどういうふうになっておるか、これが一つ。それから万国博のそういう構想の中に、これは編集のしかたによれば三、四十分か一時間ぐらいで、きわめて鮮明に当時の実態が、各国語を通じてわかるような方法があると思うのです。私は、そういうことも事務当局で十分検討してもらいたいと思うし、それについて積極的な見解がなければよろしいが、文部省の大学学術局長のほうで見解があれば、ひとつ発表をしてもらいたい。この二つの点について御答弁をいただきたい。
  282. 宮地茂

    ○宮地政府委員 ただいまの御質問でございますが、まず原爆被災の記録映画の取り扱いにつきましてお答えいたします。  この映画は、御承知のような経緯でアメリカから、いわゆるオリジナルなものではございません。オリジナルなものではございませんが、それの複製といいますか、複写ですかをしたものがわが国に送られてきました。しかしそれは、それからなおかつ複写ができるわけでございます。これをいかなる方面に利用するかということにつきまして、当時、終戦直後この映画を撮影いたしました関係の方々——この中には学者が相当ありますが、その他学識者等にお集まりいただきまして、この映画を見ていただくと同時に、数回にわたりまして、この利用方法について御検討願いました。今日まで、御検討の結果一応の結論として出ておりますのは、要するに、これは学術的な記録映画だ。したがって、その利用については学術研究用に供することを主眼とする。しかしながら、ごく少数の学術関係者、いわゆる学者、研究者のみに利用させるということもこれは狭きに失するであろうということから、その他適当な利用者の利用に供することにするということになっております。ただ、先ほど御指摘のように、二時間四十数分の映写時間を要するものでございますが、その中に人体部分がございます。これは、広島、長崎に居住しておられた方、あるいはたまたま原爆の当日に広島、長崎に来られた方がありますが、大部分が広島、長崎にゆかりのある方々でございます。この人体部分が非常にクローズアップされて写されてある場面がございます。この映画を撮影いたしますときには、非常に極端なことを申しますと、頭髪が抜けるとかあるいはからだに被爆をしておるということで、被写体となった方々には撮影されることを非常にきらわれた方もあったようです。しかし、これは学術的な記録映画だということで御了解を得て撮影をした。その御当人は、すでに故人になっておられる方もございますが、中には生存者もありますし、その遺族の方もおられる。そういったようなことから、そういう方々に対する十分な配慮をする必要がある。原爆を受けて非常に醜い——人道上むごいという観点ではなくて、むしろ人格的というか、人格権というか、いろいろな人権的な面から、一目で何ぴととわかる部面はカットしたほうがいいであろうということで、これは映写時間にしますと十分余りでございますが、その点は除きまして、その他の部面につきましては適当な利用に供するということで、そういう方針のもとに、いま私のほうでその複製を急いでおりますので、大体四月の中旬ごろにはできょうかと思います。これにつきましては、できました暁の借用願い等いろいろ出ておりますが、この利用につきましては、学術的なものはカットしないもの、そのものを利用に供する。しかし、学術。プロパーでない利用方法については——教育的な意義やいろいろな観点がございますが、そういう場合には、人体部分を除いたものを利用に供するということで準備をしております。以上がその取り扱いでございます。  もう一問は、それを三、四十分のものに縮めて万博等で利用したらというお尋ねだったように存じますが、たとえば、これはテレビ会社等から申請が出ております。いろいろ利用について御検討いただきました三十名ばかりの委員の方々の結論でございますが、これを部分的に利用したのでは、何かいろいろ意図をもってやろうとすればいろいろな意図で利用ができるが、これではいけない。ともかく映すのであれば初めから終わりまで全部映さなければ、部分部分を映しますと、見た人によっていろいろな意味にとられる、これは趣旨ではないというような話もございまして、かりにこれを教育的な催しで映す、あるいはテレビ等も、営利的でないスポンサーのつかないものであるならばいいのではないかという意見も出ておりますが、その場合でも全体を映していただくというような結論になっております。したがいまして、これを三、四十分に縮めるということは、私どもとしては適当でないと思っております。  それから、それは一応別としても、先ほど来おっしゃいますようなわが国で行なわれる万博にこうした映画を利用に供するということは、私まだ万博の関係者からお話も聞いておりませんので、ただいまお聞きするだけで即座にいいとか悪いとか申しかねるのですが、一応のただいま承ったところでの私の感じといたしましては、万博のような行事に二時間余りもかかるものを終始見ていただく人がどれだけあるであろうか、興味本位に見られたのでは、これは非常にまずいわけでございます。それから、もともと学術的、せいぜい教育的というくらいな利用ということになっておりますので、万博そのものは、もちろん教育的な意味もあろうかと思います。その他非常に広い意味の万博に、そういった狭い限定された利用方法を考えているこの映画を行事の一つに取り入れることはどうであろうかというような感じがありまして、率直に申しますと、恐縮でございますが、消極的な感じを持つわけでございます。しかしながら、万博そのものは、これは国をあげての事業でもございますし、また、万博のやり方、中身につきましては、いろいろな関係者が衆知を集めて御決定になることでございましょうから、今後、私どもだけの考えではなく、広い立場から検討する必要があろうかと考えております。
  283. 大原亨

    大原分科員 宮地局長の話は、たとえば学術用と一般用を分ける、これも一つの考えであります。しかし、学術的といっても、あまり学術的ではないんですよ。学者が見ても参考になりませんよ。あれくらいのことはわかっております。それから文部省が持っているフィルムをほかにも隠して持っておるわけだから、粉飾する、あるいは説明することばが非常にイデオロギッシュであったりその他であったりすれば問題があるかもしれませんが、事実の場合にはカットして映写しても、私は関係ないと思う。  それから、いまはこまかな議論はしませんけれども、それは専門家にまかせて、率直に事実が出ることが一つの感動を呼び起こすことになる。そういう意味で、フリーな気持ちで——これも当時の一つの広島、長崎の被爆の実相を最もリアルにフィルムを通じて映写したから、わりあい分析的にやってあるわけですから、しかも、たくさんの学者が協力をし、あるいはスタッフが協力したわけですから、民族的な遺産だと思うわけであります。したがって、これはもう日本人の手によって世界の人々に見せるということは、意味があることであって、アメリカが日本に返したのも、そういう意味であろうから、そういう点で、とらわれないで、十分各方面の意見を出し合ってもらいたい、こういうふうに私は思うわけでございます。  以上のことで、ひとつ担当大臣に、この万博の原爆展示については前向きで積極的に構想を練って、督励をして、これが実のあるものになるように努力をしてもらいたい。これは強く要望しておきます。担当大臣に最後にひとつ……。
  284. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 先ほど申し上げたように、この原子力の明暗は、これは何らかの方法によって、調和のある展示の雰囲気をこわさない限りにおいては、私は一つの着想として取り上げて、みんなの意見を聞いたほうがいいんじゃないか、こう思っております。
  285. 植木庚子郎

    ○植木主査 次は、大出俊君。
  286. 大出俊

    大出分科員 きょうは少し皆さん方に、中小企業のために、特に商店あるいは小規模の共同事業のために、お骨折りをいただきたいと実は思いまして、二点につきまして御質問をさせていただきたいと思います。一つは、ボランタリーチェーンの問題でございます。もう一つは中小企業振興事業団そのものの予算等に関する問題でございます。  ボランタリーチェーン等につきましても、今回は、四十二年七月に中小企業振興事業団法ができましたから、このワクの中に入ってきているわけでありまして、小売り商業連鎖化という項目に入ってきているように思います。そこで昭和三十九年ごろに盛んになりました、これは中小企業基本法制定以後でありますが、旧来の流通過程を何とか短縮をしようというねらいを持って、仕入れのための共同機構などができましたが、あの当時は、実は法律的に規定がありませんでしたから、千葉の共同仕入れ機構等がつぶれたいきさつなんかでも、法的には何らこれを助成する、あるいは行政指導するという方法はなかったわけです。つまり大メーカーが大きな問屋さんに圧力をかけられて、共同仕入れ機構に品物を流さないというようなことがありましても、あるいはその共同仕入れ機構が商店に流す品目を問屋さんがキャッチしまして、同種の品目をわざわざダンピングをするというふうなことでつぶしにかかっても、何ら手の打ちようはなかった。しかし今回は、そうでない時代になっていると私は思うわけであります。そういう意味でまず承りたいのは、四十二年の七月の十三日に法律第五十六号ということで、中小企業振興事業団法ができておりますが、ボランタリーチェーン、つまり自由連鎖店なるものは、この法律の「業務の範囲」等の中のどこに含まれているかという点を、まず承りたいと思います。
  287. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 振興事業団の事業を大きく分けまして、工場共同化、それから公害防止が一つの項目、それから織布が一つの項目、この二つが特殊項目でありますが、これを除きまして、一般案件という中に項目が分かれております。その項目の中にボランタリーチェーンは、一つの項目として、小売り商業店舗、ボランタリーチェーンという項目があるわけであります。
  288. 大出俊

    大出分科員 事業団法の何条にありますか。
  289. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 施行政令が四十二年政令第二百五十四号で出ておりまして、その施行政令の第三条に指定がございます。そこでございます。
  290. 大出俊

    大出分科員 政令は法律を受けるわけでありますから、したがって、法律の何条に基づいてその施行政令は出ておるわけですか。
  291. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘の法律の第二十条に「業務の範囲」がありまして、その「業務の範囲」の第一項に委任規定がございます。
  292. 大出俊

    大出分科員 したがって、私が冒頭に御質問をいたしましたのは、この中小企業振興事業団法の「業務の範囲」というところのどこに含まれているかということを聞いたのです。つまり「業務の範囲」というのは、いまおっしゃる二十条の一項ですね。したがって、それを受けた政令ができている。その政令の中にボランタリーチェーンという規定がある、こういうことですね。ここでは「店舗」ということばを使っておりまして、法律ではボランタリーチェーンということばはない。したがって、私は念のためにはっきりしなければいけませんから確かめたわけであります。したがって、今度は明確に自由連鎖店というものについては規定がある、こういうわけですね。そうしますと、旧来の三十八年から九年に岡山であるとか、尼崎であるとか、金沢であるとか、千葉であるとかいうようなところに、中小企業基本法を受けて流通機構の短縮ということをねらって共同仕入れ機構がつくられました。尼崎では市内六千店のうち三千店が入っておるわけでありまして、そういうところはまだいいのでありますが、千葉のような場合は、六千万の負債を残してつぶれたわけです。さっき私は二つの例を申し上げました。メーカーが問屋に押されて品物を出さない。それからこの共同仕入れ機構が下部末端の商店へ流すのをキャッチしてダンピングをする。それが一番大きなつぶれた原因です。もう一つは資金がないということです。だから、資金の回収を繊維品ならどのくらいの期間で、食料品ならどのくらいの期間でということで、金がないということで、回転を早めるために非常に短縮をしたわけです。それが個々の商店の資金繰りに影響を与えた。この三点です。これは私はいまの外務大臣の三木さんが通産大臣のときに、ボランタリーチェーン・システムというものを西ドイツのまねをしてやろというふうに打ち上げられたときに、この共同仕入れ機構の例をあげて何べんも念を押しておるわけです。だから、そういう行政指導というものを相当緻密にやらぬと——ボランタリーチェーンをおつくりくださいといって、林信太郎さんあたりが商務課長のときにずいぶん苦慮された。あの方は学者でございます。博士号を持っておられる方でございますし、非常に学問的な詳細な理論をお立てになって指導をされた。相当な反響を呼びましたが、その後のボランタリーチェーンというものは、チェーン協会もありますけれども、実際にどうなっておるかという点について相当気を配っていただかぬと、法律規制までしておるのですから、これが今度うまくいかぬというようなことになると、一体政府はやれ、やれと言っておいて、やった結果がこんなことになったのじゃ困るじゃないかということになりかねないので、そこのところを私は特に御配慮をいただきたい。そこで四十三年一月現在のこの中小企業振興事業団の「四十二年度高度化資金貸付等希望状況」という表がございます。これをながめますと、この中にボランタリーチェーン、自由連鎖店なるものは七件、こうなっておるわけですね。したがって、三木さんの通産大臣時代から歴代の大臣が指導されてまいりましたこのボランタリーチェーンというものは、時間がありませんのでこまかい御回答は要りませんけれども、うまくいっていると見ておりますか。そして皆さん方としては相当の協力をしてきている、そしてうまくいっている、こういうように見ておられるかどうか、まずそれを聞いておきたい。
  293. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 ボランタリーチェーン、小売り商業連鎖化という項目でございますが、そこで数件出てきておりますが、まだ所期の目的を達しているとはわれわれ考えておりません。これはまだ非常にいろいろ問題があるというふうに思っております。
  294. 大出俊

    大出分科員 時間がありませんからなるべく簡単に申しますが、私も実は当時三木さんが鼓吹をされたこの方針に賛成でございまして、英国の例も調べたり西ドイツの例も調べたりいろいろさしていただきまして、私の住んでいるところでございますが、横浜でお菓子屋さんの小売り店のボランタリーチェーン組織というものを、当時の商務第一課長の林さんたちと協力し合ってつくってみたわけです。これは一昨年の五月に発足をいたしましてやっておりますが、ところで最初二割ぐらい仕入れは下がっております。そして百店舗足らずで当初は始めたのですが、店舗もふえつつあります。横浜市内にいま七百軒のお菓子屋さんの小売り店舗がございますけれども、五万円なら五万円という金を支出できない小店舗がありますから、入りたくても加入できない。したがって、そういうところにも安く仕入れたものは流していくようなシステムでやっているわけです。これは実は本来ならば政府がそういうところまで助成をしなければいけないわけですけれども、おやりにならない。これは私は当時こまかく質問をいたしましたが、実はできる限りそういうところまでやってもらいたいのだというのが、当時の通産省、中小企業庁の考え方でした。そこでそういう指導もしてそうやっている。だから、非常に喜んでおって、入ってくるところもぼつぼつふえている、こういうわけです。ところで、毎月十六日に理事会をやって、そこで共同仕入れをやる。もちろんボランタリーチェーンは共同仕入れだけじゃありません。業務管理から納税まで全部計算事務、計算センターの役割りも果たすわけでございます。あるいは店舗の飾りつけ、札入れなんかの指導もやるわけでありますけれども、何といっても仕入れが一つの中心にはなる。現在でも非常に下がってきて、非常に喜んでおります。中問屋あるいは小問屋という方々も、比較的協力的であります。これは前の共同仕入れ機構なんかとは非常に違う。清新な空気であります。それからメーカーが、中メーカーまでは参加してきております。たとえばお菓子屋さんのサクマ製菓株式会社というようなところ——新高はつぶれましたが、かつてはドロップはサクマか新高かとやっておったところでありますが、ここらも非常に協力的であります。ところが、さて大メーカーとなりますと、きわめて冷淡というのが現状であります。おそらくどこのボランタリーチェーンでも、そういう傾向が一般的にあるのだろうと私は思っております。したがって、こういう大メーカーというところは、たとえばチョコレート一つ例にとっても、これは農林大臣の所管ですけれども、二十円売りが六十入っておるのが、一ボール建て値九百円。そうすると、これはとにかく中間の問屋さんにまとめておろす。この組織ががっちりできているわけです。そこで、リベートというやつが——公正取引委員会の取引課長さんあるいは委員長に私何べんも質問しても、原案のときには三分から一割二分のリベートが私的独占禁止法に触れるのだといってはずしてあったのが、出てくるときには載っかっちゃったということまであった。このシステムがくずれない。だから、いつまでも入ってこない、こういうかっこうになっている。そうすると、さっき私が御指摘を申し上げたように、せっかく今度は法律的に規制があるし、公布政令でも明確になっている。しかも、この資金計画の中でも明確に小売り商業連鎖化という項目をつくっておる。とすると、残されている中小メーカー以上のところの大メーカーと言われるところの隘路、これをもう少し皆さんのほうで分析をされ、お考えをいただき、御指導賜わらぬと、これがまた一つの隘路になっている。ここのところを、お気づきだろうとは思いますけれども、ひとつ思い切った手をお打ちいただくように御検討いただきたい。いまここでどういう手があるかと承ろうと思っても無理でしょうが……。  それからもう一つは、通産省が直接その方々のところへ行って、現地指導までやってつくっておられるところがたくさんある。私が手助けをしてこしらえてまいりましたその小売り商の場合でも、林さんにみずから御出席をいただいて、バスでこの小売り店舗の方が一ぱい集まってきて、三時間にわたる林さんの非常に熱心な話を、それこそみんなメモをとって、一人も帰らない。それだけこの小売り商店の店主というのは苦心惨たん、苦しんでいるのが現状です。そういう状態で、いまそこに手を入れてつくり上げた。それが皆さんの助成がない。入れない小売り店舗にまでものが流れていっている。それから今度は、卸屋さんがそのチェーンに入っていないところにおろす場合も、安くおろさないと、チェーンのほうに入っていってしまうからというので、こっちが二割引いているものは、やはりそっちでも二割引いてチェーンに入っていない小売り屋さんにもおろしているわけです。それだけ消費者には安く売れているわけです。林さんは、小売り商品というものは、かくて完全なチェーンシステムを各業種全国につくれば、物価は二割下がると明言しておりますけれども、まさにその現実はあらわれてきております。それだけ卸は安くなっている。そういう現状がありますから、そういう意味で、どうしても大メーカーのところは押えていただきたいのと、せっかく指導されたのなら、指導されてつくったところが、通産省認可と書いていいかどうか別ですけれども、通産省の指導を受けてやっているのだということで、十分それが世の中にものが言えて、そうして町も信用するし、問屋あるいは大メーカーもそこに持っていかざるを得ない、流ささるを得ない、そういう雰囲気を一これは何もお菓子屋さんに限らぬわけです。めがね屋さんだって、質屋さん、くつ屋さんまでボランタリーチェーンをつくっているのですから、そういう指導のしかたをさせて、君のところはおれのところで指導してやったのだからといって、何かお墨つきくらいはやって、そうして助成していく。そうしてだんだん入会する店舗をふやしていく、やはりそういう努力をある程度なさらぬといかぬ。これはなかなか一生懸命やっているんですよ。もう真剣ですよ。どんどん下がってきておりますよ。  実は、このチェーンが始まって間もなく、計画が立てられて、何十軒か入った店舗が、月額三百万の売り上げができればというので最初やったら、一ヵ月二百五十万、このチェーンから流す品物の売り上げがですね。それがいまになりますと、もう三百万を突破しちゃって、五百万です。最初の一ヵ月の倍ですよ。そこまで伸びてきているわけです。そうして入ってきている店舗がふえてきているわけですから、ぜひいま申し上げた  私は地元にいるのでよくわかっているので、現にものが下がっている。したがって、そういうことで、この両面から、大メーカーに対する対策、でき上がって一人歩きしているやつに対して外からバックアップしてやる。金だけが能じゃないので、中小企業庁の指導を受けて、タイアップして一生懸命やっているのだという姿を表に出せるような形で、ひとつ指導していただきたいということなのです。時間がありませんから私のほうからしゃべってしまいましたが、ここらあたりで大臣に、せっかく始めた問題ですから、ボランタリーチェーンについての今後の助成方針という意味の御見解を承っておきたいわけです。
  295. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 今後従来の実績というものをさらに拡大する意味において、力を入れていきたいと思います。
  296. 大出俊

    大出分科員 けっこうでございます。どうかひとつ前向きで御指導賜わりたいと思います。これはもう消費者全体のことにも関連いたしますので、お願いしたいわけです。  次に、せっかくこしらえましたこの中小企業振興事業団なるものが、私は一つ間違うと——事業団の福井理事長さん以下皆さん方が一生懸命熱心に各県をどんどん歩いておられる。この間理事の安達さんのお話を承ると、安達さんは二十一県歩いたと言ってましたが、たいへんな努力です。副理事長の馬場さん、あるいは総務課長の保阪さん、あるいは業務部長の勝岡さん、皆さんの御意見も承ってみましたが、ずいぶん苦労して各県を歩いておられる。ここに私は一つの悩みを持っているのではないかと思う。なぜかというと、中小企業振興事業団ができたのだからいらっしゃい、いらっしゃいということで、国がこの方針なのだからといって各県を指導されたりいろいろしている。それで中小企業振興事業団が非常にアピールされている。しかもこれは実績がありまして、たとえばボランタリーチェーン協会だとかなんとか、いろいろな関連があることは、これは前からも要望書を何回か大臣あてに出してきておる。私は事こまかにこの席でも中身を御質問し、私のほうから御指摘も申し上げたり、足らぬ点もつけ加えさしていただいたりしたのですけれども、こういう経過があるだけに、この要望する重要施策という中に、中小企業振興事業団というものを創立をして、これに基づく商工対策強化の一環としてやってくれということが一ぱい書いてある。だから、相当浸透していた。私は前に、四十年、四十一年当時御質問してきた中で、こういうものをつくったら、旧来高度化資金というのは金が余った、余っているなどとのんきなことを言っておると、経済情勢も変わっている、たいへんな需要を押しかけたときにせっかくの需要に対して資金ワクがなかったということで、立てた計画がつぶれてしまって、逆に、振興ではなくて、中小企業をつぶすようになったらたいへんだ。だから、そこを十分に調整できるような規模と予算措置を考えていただきたいということを申し上げておいた。そうしたら、旧来余っておりまして、これから出てくればありがたいのですという皆さんの御答弁でした。ところが、私が心配して調べてみたら、何のことはない、資金需要のほうは、皆さんが予算を用意されたことに対して二二二%、二・二倍というたいへんな数字が出てきているわけですね。もちろんこれは固まった数字ではないかもしれません。これから、たとえばこの中にあるところの工業団地とか商業団地とかいうふうなものについては、土地の問題もありますから、まだ減ってくるのかもしれませんけれども、ともかくしぼったにしたって、間違いなく一・五倍や六倍になる。そういたしますと、さあ今度手一ぱい計画を立てて共同化の方向でやっている事業体なんかだと、共同して資金を出し合ってやっと土地を確保した。建物については借りられるからということになっている。ところが、金が出ない、あるいは半分に減った、三分の一になった、法律的には六五%以内になっているのですから。そうすると、これは成り立たないのですよ。振興じゃなくて、一とんざしたら、その企業は成り立たなくなる。これは法律趣旨に反することになる。したがって、まずそこらの資金需要を皆さんのほうがどうおくみ取りになって、どう見ておるかということでございます。これを伺いたい。
  297. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 最初に概括的に申し上げまして、先生御指摘のように、この事業団の前身でございます高度化資金特別会計のときに、非常に金が余っておった。ところが事業団は、これはやはり制度が非常に改善されたのだと思いますが、先生御指摘のように、現在のところの希望数字は、予算規模に対しまして約二・二倍であります。それはまだ公式、非公式のものを合わせてでございますけれども、事実ございます。その中で特に工場団地、それから特に卸商業団地に殺倒しております。この制度は府県の持ち分があるわけでございますので、府県の議会で予算を決定するということが別個に行なわれるわけで、われわれ非常に心配しておりますのは、事業団のほうの予算のワクが限られておる。ところが、府県のほうでどんどん決定をされるということになりますると、そこのさいふと県の決定の計画と合わないということが、心配になるわけであります。その辺のところは、いま事前に各当局と事業団及び私たちが入りまして一生懸命調整しているわけでございますが、二・二倍というのは、おそらくこれは相当縮まるであろう。縮まりますが、どうも予算のワクの中には、率直に申し上げまして、おさまりそうもない。若干ははみ出すのではないか。そうなりますと、それをどうするかという問題があるわけでございますけれども、非常に急ぎますものから、それから繰り述べられるものは若干来年に伸ばしてもらうというふうなことで、ことしは急いでいくということよりしかたがない。しかし、これは先生のおことばではございますが、高度化資金特別会計を改善いたしました。これだけ喜んでいただけているということでもあるのじゃないかと思っておるわけでございます。
  298. 大出俊

    大出分科員 御指摘のように、実際たいへん喜んでおるのですよ。予算をながめて見ましても、これはいろいろなものを入れて——事業団の予算ワクがここにございますが、織布なんかは二百六億ですか、別ワクになっておりますね。それで、そうでないほうをずっと集計いたしまして百三十六億一千九百万という数字があがっておりますが、これは、私いま持っておりますのは「昭和四十三年度高度化資金貸付等希望状況」なるものの四十三年一月現在、これはおそらく振興事業団のほうのものだと思いますけれども、そうですね。中小企業庁計画部計画課、おたくの所管のようであります。事業団からとった数字だと思います。これで見ましても、予算書をながめてみたのですが、目の子計算でいきまして、予算的にはおおよそ一八%増くらいですね。そういう状態なので、実は喜ばれているのですが、一つ間違うと、その喜びがまた逆にがっかりする。来い来い、さあ助成するというから、一生懸命申し込んだ。これは県も含めて努力した。さて、ところが、金が足りないでけられた。二回けられた。これはえらいことになりやせぬかと実は私は心配するのです。例を申し上げますと、私、神奈川ですから、神奈県のことしかよく知りません。これは決してわが田に水を引く意味でなくて申し上げるわけですが、神奈川県には最近、比較的若い入江さんという商工部長さんがおられまして、県の段階ではずいぶん努力をされた。そして、その予算をつくるにあたって、各部局いろいろな計画がある中で、私が耳にしたのは四億六千万くらいの、県としては最大限の努力のワクをとった予算を組んだ。いま予算県会です。出ています。これは県段階でも、予算県会で予算を修正するということはない。大体通るだろうと思います。そうすると、他の部長さんは、私も知り合いが多いのですけれども、ことしはどうも商工部長に少しやられたわい、理論負けしたりあるいはあんまり熱心だったので、というのです。中小企業振興事業団というのができたんだ、県で選別をして、これはいいと思ったものは認めるべきなんだという主張で、そこまでいったわけですね。さあところがふたをあけてみると、振興事業団のほうと連絡をとってみたら、どっこいこれは二十二倍にもなっているので、これは商工部長、とてもじゃないけれどそういうわけにいきませんよ、こういうことになってきて、商工部長自身ががくんときているわけです。神奈川の場合には、御存じのように、かつては工業団地その他もつくっております。不況のさなかにつくって、予定どおり入ってこなかったところへ、そこに給食センターをつくりましたが、給食数が足りず苦労を続けました。最近は非常に土地が高いですね。土地が高過ぎるものですから、商業団地だとか工業団地だとかいうところまでなかなかいかない。だから、非常に多いのは、共同施設、共同化という形のものなんですね。企業合同というような形のものあるいは共同施設の問題、それから事業協同組合をつくって共同化していくというような問題が、非常に多いわけです。横浜という特殊性もかかえておりますから、それだけに深刻なんです。したがって、いまのお話はわかるのですが、その事業体をそのことによって左前にさせるなどということは、事業団法の精神からいってもやるべきでない。何らかそこのところを皆さんのほうでいまから計画を検討されて、そういうことのない形におさめていくための方法——いまおっしゃるような、県のほうにやめてくれなんということをいまから言ったって、予算組んで県会に出しちゃったのだから、いまごろやめようという要請なんてしようもないでしょう。しかも、それにはおのおの付随した事業体がついているのですから。そうでなくて、足らぬ分をどうするかということを考えていただかなければならぬ。だから私は、ここで大臣のおられるところで質問をしようという気になったのですが、そこらのところ、全く案なしとするならば、これは別に私も考えなければならぬと思うのですが、そこらはどうですか。
  299. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 国庫の財政が非常に苦しいときでございます。これは予算要求をいたしまして、先生御指摘になっておられるような非常に小さな数字のようでございますが、実は要求どおりほぼこれは認めてもらった、こういうことでございます。ただ、これは、これほど共同化、協業化の意欲が強いということは、実はわれわれ予想しなかった。この点は、私たちのほうに読みの浅かった点は確かにあったのではないか。特にいま中小企業の非常時でございますので、思い切った措置をこれはやはり講じていかなければいけないと思います。したがって、一応この予算案が御審議賜わりまして確定予算になりました場合には、財務当局としも無理をしてつけてくれた金でございますので、これを生かして使っていくということを考えなければいけない。といって、また地元の中小企業、特に県当局のそういう御熱意に対してわれわれもこたえていかなければいけないということになりますと、先ほど申し上げましたように、一応いま二・二倍という数字が出ておりますけれども、これはまた相当不確かな県のものもございます。それから神奈川県の問題も、私実は聞いておりますけれども、この問題についてもいろいろ詰めていくと、いろいろな問題もまだ若干あるようでございます。その辺のところをこれから一生懸命誠意を持って詰めますので、その辺のところはひとつがんばってやりますということをきょうは申し上げる程度にいたしたいと思います。
  300. 大出俊

    大出分科員 例をもう少し、時間がありますからあげておきますが、私が知っている範囲で二つばかり神奈川県で申請しているところがあります。ほかのを知りませんので、これは決してわが田に水を引く意味じゃないのですが、これまた切実なんですね。小さなトラック運送をやっているところ、これは一ぱいありますが、集めましてね。これは聞いてみると、道路の狭いところに大きな荷を積んだりおろしたり、車庫から出たり入ったりする、あるいはバリケードみたいなものをちょっとやって、そこで土地を借りておる。何で陸運局がこんなところを許可したんだろうかと思うようなトラック置き場もある。そうすると、そこは出入りの地響きがある。近所の家は振動する。道路の側溝はつぶれる。水道の管は破裂する。雨が降ったらどうにもならないという、もう直してもすぐそうなる。どうにもならない。そういうところは、ある意味では公害だと町の人は言うんですね。そうすると、これはどこかに集めて、被害がないところに車庫を共同してつくるべきだということになるのはあたりまえなんです。そこでたまたま埋め立てということがありますから、多少無理をして、横浜市の埋め立てをしたのを、世の中の公害を除く意味を含めて、ひとつ車庫の土地を確保する。そうすると、小さな車庫をそこらに借りている人も、安くなるから一括してそこへ集まるという形を考える。そこで、一生懸命それらの地域のものが集まってきまして、結局横浜陸運事業協同組合というのが一つまとまった。ここで一つサンプルをつくってやれば、ほかのほうもそうなっていく、大きな、高いところから見て政策的に考えれば。そこで無理をして横浜市の埋め立てをそこに確保させて——そうしたら市のほうは金がないんで、すぐ金を払ってくれと言う。無理を言ってまとめたので、しょうがないというので借金をして金を払う。そうすると、借金して払ってしまったら、助成しないという話が出てくる。それをやっと切り抜けて、県当局も事情はよくわかったということで認めて、それであがってきている。建物は、だから皆さんのふところ勘定で助成してもらって建てようというわけですね。そうすると、こういうふうなものを切られますと、とにかく集まって入ってくる車のほうはきまっていますから、そうすると、これは根本的に計画変更しなければならぬということになるんですね。そうかといって、おまえさんのところは今度入らぬ、そうはいかない。そうなると、これは深刻な問題ですね。金がないということを聞いて……。そうかと思うと、建材関係の商業組合がある。建築材料です。砂利、砂から始まって、ブロックから、これは小さい、昔からの歴史ですからしようがないのですけれども、道ばたに置いてある、護岸のところに並べてある。それが、交通量が横浜ですからふえてくる。そうすると、警察が今度はものを言ってどけさせる。かつては使用料を警察が取っておった。それを今度は舗装させるんだからといってどけさせる。そうすると、生活ができなくなる。争いが起こる。それを私ども調整しながら、こっちへ移しあっちへ移す。こういう何十軒とある組合ですから、これは横浜中央建材協同組合といっているわけですが、だからおまえさんたちいいかげんに埋め立てのほうへ共同で保管場をつくって、そこへ置け。横浜市にも専門の砂利埠頭というものを別につくらせる。そういう例をずっと踏まえて、埋め立てにこれまた土地を確保して共同使用をするということで、そうすれば町の中の道路にやたらに置いてあるやつがみんなきれいになる。ところが、これなんかもやはり横浜市は金がないから、埋め立てをして払い下げるからすぐ金を払えという。しょうがないから各企業が借金して払う。そして建物のほうは県に入ってくる皆さんのほうにいく。さあそれがまた今度切られるようになると、また道路争いを起こしながら、警察との争い、住民との争いを起こしながら置いておかなければならぬということになる。これは私が知っているのは二つしかありませんが、大なり小なり皆さんのところにあがってくるというのは、それ相当の理由がほとんどあると思うのですよ。それが二十二倍ある。これは私、念のために事業団にお伺いしまして、理事長さん以下皆さんに聞いてみたいのです。どういうふうにしぼったらなりそうですかというと、それでも一・五倍欠けることはないだろう、いまのようなものが。そうすると、その一・五倍ということになれば、〇・五倍はみ出すのですから、そうすると、三分の一は切られることになる。そうすると、三分の一というと相当な数なんですね。そうすると、乗れるものはあるかもしれませんけれども、大多数はいま私が申し上げたようなことになっているのではないかと思う。だから、県の商工部長、無理をして予算を確保したのだろうと思うのです。そうすると、それがずばり切られていくことになると、十六以上、皆さんのところに求めていくところは、宮城県だとか、あるいは千葉だとか、あるいは東京だとか、名古屋だとか、大阪だとか、あるようです。それなりの大きな団地なんか考えているのでしょう。あるようですけれども、そっちのほうだって、それらしい理由は私はあると思う。私がいみじくも心配して言ったことがある。ここまで皆さんがおやりになろうとすれば、私ども協力しなければいかぬけれども、相当な需要が出てくるのじゃないか、経済的な変動もあるから。その場合に、受け入れられないからということになってくるとすると、えらいことになりますぞということを私は前に言ったことがある。しかし、そんなことはないとおっしゃった。私が心配したとおりに結果的になっている。そこでなぜいままでに皆さんが——それは事業団が八月にできたから、その中間の期間があったかもしれませんけれども、まだ予算を組む時期じゃないから、県ともう少し密接な連絡を最初からしていって——県では二種類ある。当初予算でこれだけきめておく、あと補正予算でこれだけ出していくという二つある。そこらも含めて県当局ともっと皆さんのほうで打ち合わせをして、事業団のほうだって、旧来県が認めたら通るのだから、県が認めればそれでやれやれなんです。そうでしょう。今度そうじゃないということになっているわけですから、突如として問題が起こるわけですから、なぜもう少しそこらあたりの連絡をうまくやって、せっかくいまの意欲に燃えてやろうというのを冷やすようなことをさせるのか。これはまだわかりません、何かの手当てをしていただければそれでいいわけですからわかりませんけれども、そうなっては困るので、実情をいま申し上げて、もう一ぺんそれらに対する御回答をいただきたいのです。
  301. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 県当局と実はいままでも相当密接に連絡を事業団はとっておったようであります。ところが、たくさんの県の中で、事業団と非常に連絡のいいところと必ずしも十分でなかったところが、どうもいま私たち調べてみますとあったようでございます。その理由は、先生御指摘のように、高度化資金の場合には、県が先に立って県が金を出す、業界を指導するということなら、あと東京へ持っていけば金が出る、こういうことであったのが、振興事業団制度によれば非常に条件が有利になったということを、私は、県のほうはあまり気づかなかったという点もあったのではないか。しかし、もちろん私たちは責任を回避するわけではございませんので、私たちのどうもPRのしかたも必ずしも十分でなかった。しかし、いずれにいたしましても、そんなことをいまとがめ立ていたしてもしょうがございませんから、やろうとすることは非常にいいことがみな多いわけでございます。しかしさいふは限られているということでございますし、しかも全国の計画を集めてみて、これをコンクリートさした場合には、そう突拍子もなくはみ出るということではないのではなかろうか。そこのところは何とかやりくり算段をしてことしはつないでいくということで、それで地元の熱意、県当局の熱意に報いていくという知恵をしぼってまいりたいと思っております。
  302. 植木庚子郎

    ○植木主査 だいぶ時間が超過しておりますから、簡潔に……。
  303. 大出俊

    大出分科員 最後に大臣に御答弁いただいて終わりにしますが、一番中に入って困っているのは中小企業振興事業団ですよ。これは一生懸命県に行って督励をする、説明をする、PRをするということでやったわけでしょう。それで上がってきたやつを、今度はそれはありませんと言わなければならぬということは、これは想像ですが、非常につらいところがあるのだろうと私は思うのです。それと今度は県当局自体ですよ。したがって、ここのところは、やはり大臣、いま前向きで一生懸命御努力いただくのですから、それはやっていただいて、それでもなお残る、しかも緊急度が非常に高いということについては、これは政府機関その他——確かに利息は違いますよ。この表でいくと、倉庫運送業の集団化というところまでで六五%ですが、これで二分二厘でしょう。それ以下のところは無利子ですからね。そうなると、これはたいへんな開きがありますから、何らかの形でかっこうがついて、がまんして一年間は仕事をやっていけるようにはしていただく御配慮は、これは大臣の分野ですから、していただかぬと、これは仏つくって魂入れずどころじゃなくて、逆になる。ここのところを最後にひとつお答えをいただきたい。
  304. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 それが期待を裏切られて非常にがっかりしているだろうと思いますが、もちろん事業の内容のいいところだろうと思います。そういうものは、ひとつ商工中金その他の金融機関に十分によく話をして、そして応急につないでもらうということをあっせんしたいと思います。
  305. 大出俊

    大出分科員 たいへんどうも……。御努力願います。
  306. 植木庚子郎

    ○植木主査 次は吉田泰造君。
  307. 吉田泰造

    吉田(泰)分科員 きょうは、特に万博のことについてお伺いを申し上げます。  この前の五十五国会であったと思うのですが、五月二十五日に菅野国務大臣橋本事官に御質問を申し上げたことがございます。そのときに、たしか私の記憶では、現在の万博の組織ですね、その当時の組織ではいけないのじゃないか——なるほど、その後、政府代表の問題でも椎名通産大臣が非常に御努力をなさっておるとか、あるいは推進本部が設けられたとか、そういうことはございますが、大きくながめて、現在のような組織でいいのかどうか。私が申し上げたいのは、前のオリンピックとの比較で、仕事量においてもたいへんな仕事量だと思うのですが、そういう認識の上に、あるいは専任大臣を置くとか、そして推進本部が果たそうとしておる機能をもっと積極的に果たすような段階にきておるのじゃないか。まず第一点、冒頭にそのことにつきましてお伺いいたします。
  308. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 万博の推進体制でございまして、先生御指摘のように、一昨年におきましては、政府の機構といたしまして閣僚協議会はございましたが、各省間にその連絡会というふうな形において、政府部内で進めておったわけでございます。ところが、現在の段階では、会場におきましても関連公共事業におきましても、地元と精細な詰めをいたしまして、これだけあれば、こういう形になれば万博がうまくいくというふうな形をきめてまいりました。それからまた、協会サイドといたしましても、基本的な構想も大体まとまってまいりました。したがって、これからはその計画がおくれることなく、そごをしないで、かつまた、その計画相互間においてうまくバランスがとれて実行されることが最大の急務であろう、それと同時に、これから発生するいろいろな問題、たとえば労務不足の問題とか、開会時におけるいろいろな生鮮食料品の問題とか、あるいは資材輸送の問題とか、それから付帯する諸般の環境の問題を調整して促進していくことが最も必要であろうという考え方に立ちまして、それを推進する体制としては、いままでの連絡調整というだけでは十分ではないと思いまして、先般、御承知のように推進本部というのを設けました。これは、本部員はそのことに関する限り本部長の指揮を受けて動くわけでございますので、各省の職員、同時に本部の職員という二つの看板におきまして、既定の計画を実施してまいりますので、十分体制としてできたであろうというふうに考えております。
  309. 吉田泰造

    吉田(泰)分科員 いまの橋本事官の御説明で、なるほど現在の時点はそういう形で見てもらえばいいのです。ただ、もう少し角度を変えて、一元化を徹底して進めるためには、専任大臣を置くとかそういうことでやらなければ、あとで私御質問申し上げますが、工事の進捗状況なり、現在の時点を通産省ははたしてどういうふうにごらんになっておるか。  続いて質問申し上げますけれども、この間の政府代表の奥村さんの問題でも、国民に与える印象というものは、何か非常に足並みのそろわない、たとえばセクト主義といいますか、外務省と通産省とのすっきりしない形、そういう形が、両省だけではなくて、あらゆる意味で建設省なりほかの各省にばらばらになった姿で国民の目に映る、それは私はいなめないと思うのです。いまの時点の組織をこれでいいんだといった、そういう言いわけの説明ではなくて、もう少し前向きに、オリンピックのときには専任大臣を置いて非常に成功したから、その仕事量よりもっと仕事量の大きいこの万博に対して、取り組み方としてもう少し考える必要があるのじゃないか。それによって、工事の状況なんかでも進捗度が早くなり、りっぱな会ができるのではないか。出展国の問題にしても、参加国招請の問題にしても、あらゆる問題が、そういう一元化がおくれているということから派生して起こっておると私は思うのです。したがって、これは椎名通産大臣に特にお伺いいたしたいのですが、この間の政府代表の問題にしても、これから新しく万博をやり抜こうとするときに、現在の進捗状況をどういうふうに見られるか、現在の組織のままでいいのか、そのことについて御答弁を賜わりたいと思います。
  310. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私も兼務で、どうもほとんど最近は国会に縛りつけられて何も見るひまもございませんので、やはり専任を置いたほうがもう少し動きがいいと思います。しかし、現状ではそういうことになっおりますので、最善を尽くす以外にはないと思います。  それで、工事の進捗状況というのは、ことしの正月に初めて大阪に参りまして、あの敷地の状況を詳しく説明を聞いたのでありますが、あのときは、予定計画よりも実際は少し進んでおるということを言っておりました。それで、これから敷地造成を完了して、いよいよ工事に着手するので、大体七月ぐらいから非常に繁劇になってくるだろう、そういう状況で、この分ならばと思って実は帰ったのでありますが、その後、どうも土地の獲得なんかに意外に手間をとるというようなことになって、まあそれも大体めどがついたようでございます。そういうことで、何の事業でもそうでありますが、まず土地問題で行きつかえるのですね。それが片づくと、ほとんどもう仕事は峠を越したようなもので、あとは非常に順序よく進めていかれるような状況になるのが例でございますが、最近の状況は、その点意外なくらいにどうも計画よりおくれておる。馬力をかけて取り戻すようにしなければならぬ。同時に、もう少したつと、現場のほうの仕事がおもになると思いますが、いまのところ、やはり中央のさばき方いかんによって進捗度が幾らか違うかもしれませんので、そういうことのないように、推進本部もできたことでありますし、できるだけあそこへ関係者が集まって鋭意検討して推進につとめたい、こう思っております。
  311. 吉田泰造

    吉田(泰)分科員 いまの通産大臣の御答弁でございますが、現状は、もちろん現在ある姿でやるよりほかにしかたがない、それは当然そうなんです。私が御質問申し上げたのは、そういうことよりか、現状の御説明ではなくて、オリンピック当時と比較してみて、あらゆる面から見て、専任大臣を置くという考え方に立って前向きに解決してもいいのじゃないか。特に通産大臣、最近、非常に経済的な変動期にたいへんだろうと思うのです。したがって、そういうことを私は要望もし、意見訴えたかった。いま進捗状況のことで、これから追い込みにかかるのだ。これは日本人の悪いくせでございまして、せっぱ詰まらなければやらない。追い詰められて、これは何とかこなせると思うのです。しかし、それがはたしていいかどうかということは言えぬけれども、国民の税金を食うのですから、追い上げられてせっぱ詰まって仕事をする、突貫工事、突貫工事でするという、そういう形は妥当じゃない。少なくとも政府の相当な膨大な予算を食ってやるのですから、計画的な仕事が望ましいのです。一例をあげて言えば、私は橋本さんのほうに伺いたいのだが、きょう立柱祭が行なわれた本部ビルは、まだ受注者はきまっていないのじゃないですか、これをちょっと伺います。
  312. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 具体的にはまだきまっておりません。
  313. 吉田泰造

    吉田(泰)分科員 きまらないその原因は何ですか。
  314. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 本部ビルにつきましては、協会としまして一番最初に建てる建物でございますので、普通の方式といいますか、いわゆる競争入札方式によりまして、この競争入札によります場合は、審査をいたす関係で、審査委員を選定するとか、あるいはその実際の競争入札の結果を審査するとかいうふうなことで、実は相当手間どっております。そういうふうな関係で、最終的な発注が現段階においてはまだできないというふうな状況で、近くやることになっております。
  315. 吉田泰造

    吉田(泰)分科員 これはあとで関連事項として御質問いたしますけれども、なぜできないかといういまの橋本さんの御返答を伺って、私は違った感覚を持っております。これは業者はもうからないと言うのですね。きのう建設業協会、自民党の代議士がたくさん行かれたと新聞に出ていますけれども、これは現実に値上げをしてくれということだと思うのです。私は大阪でございますが、大阪の業者の意見を聞いてみますと、もうからぬ、だから、応札しても、本部の予算と全然値段が違う、相当な開きがあるということを私らは聞いております。したがって、組織論に私は前もって前段で触れましたけれども、それは結局は冒頭の質問の組織論に返るのです。なぜかならば、そういうはっきりした見通しと計画がないから、たとえばいまの応札の場合にしてみましても、あらゆる物価が、おそらく予算が編成されたときに、一年前に組まれていますね。一年後の現在の値上がり、これは橋本さんどのくらい値が上がっておると思いますか。たとえば、そういう検討をなさったことがございますか。
  316. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 物価全般につきましての万博との関係というのは、実ははっきりつかめません。それで、いろいろ大阪の物価とか賃金とかいったようなものを調べておりますが、たとえば賃金等にしましても、毎勤統計のような従来からの統計資料によりますと、実は上がっていないのでございます。ところが、それをもう少し具体的な業者あるいは具体的な方面からとりますと、ある程度の値上がりが見られる。これはおそらく、私たちも、限界賃金の上昇等が一般の統計には薄められる関係で出てこないのであろうというふうに感じておりまして、むしろ、それをできるだけ低位に安定させるように、賃金にしましても、労務対策にしましても、物資にしましても、現在いろいろな手段を講じております。
  317. 吉田泰造

    吉田(泰)分科員 いまの御答弁ですが、私はどうも納得できないのです。なるほどいろいろなことで上がっていないという答えでございますが、これは現実に上がっております。よくお調べになってごらんなさい。だからこそ、きょう立柱式をやる本部ビルの落札者が決定しないのです。そんなことを差しおいて、値段が上がっていないというところに問題がある。私は、決してきのう建設業者が集まったその旗持ちをしているわけじゃないのです。国家の事業だから、もう少し政府責任を持った計画の上にこの工事を進めるべきであろう、こう私は考えて申し上げておるのです。  一例を参考ですから申し上げますが、木材なんかでも三〇%、ひどいところでは、小売り業者、中堅業者なんかに渡っていくのには五〇%も値上がりをしております。工賃の場合、けさの産経新聞の商工興信所のデータを見ても、大体千四百五円から千六百十一円と一四・七%上がった。これは現実に新聞に載った商工興信所のデータなのです。ところが、実際はもっと上がっています。千二百円が、二千円ないと労務者が雇えない。ひどいところは、突貫工事で頼もうと思うと一万円もするというのが現状でございます。これはそういう現状認識の上に一元化した政策がないからなのだと私は申し上げたいのです。  物価対策とか、あらゆる広範にわたる政策をいまのままの姿では、私は組織論に触れて、椎名さんが通産大臣になられて非常な御努力をなさって、しかも連絡推進会議が持たれた、本部が持たれたという現状ではたしていいのかどうか。突貫工事になったらやれるでしょう。やれるからいいんだというのでは私は適当じゃないと思うのです。はっきりした計画がないといけないのじゃないか。  しからば、もう一回追加して私質問しますが、この間の七日の朝日新聞に一部載りました万博倒産ですね。私はここにも持ってきておりますが、万国博覧会の関連倒産が中小企業にふえておる、この記事についての所感を通産大臣橋本さんにお伺いしたいのです。
  318. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 実はその記事を見まして、私さっそく状況を調査いたしました。調査いたしますと、あの倒産した会社があまり下の企業に発注をしておるために、非常に下に御迷惑をかけておるというふうな実態はつかめたわけでございました。しかし、その倒産した会社が万博の協会から発注をもらっておりますものは、その倒産企業の全体の業務量のきわめてわずかでございまして、調べた結果、どうも倒産した会社が万博から仕事をもらったことによって倒産したという形はとれないのではないか、言えないのではないかというふうに考えておりますが、しかし、そういうふうなことが将来あってはいけないということのために、先般、協会に対しまして、本来建設業法によりますれば、一括下への受注というのは法律上もいけないというふうなことになっておりますし、協会としてはそれ以上の強い制約をつけまして、ああいった中小企業に迷惑のかからないようにと、たとえば下請を出す場合に、その相手方の信用調査等を十分行なった上で、下請等をやっていくようにというふうに指導しております。しかし、また一面、この万博の事業というものが、特定の企業、大企業にその仕事が集中するということ、これはおもしろくないのです。十分信用調査をして、国ができるだけ中小企業にも仕事量として潤すようにというような片面も指導しておるわけでございます。  それから、資材の問題につきまして、この点はおっしゃいますように非常に重要な問題でございます。したがいまして、何回も現地で検討いたしまして、たとえば鋼材にしましてどの程度要るか、あるいはセメント、骨材、木材ということで、いろいろ検討を現地におきましてわれわれやってまいりまして、特に問題になるのは骨材で、骨材につきましてこれの確保をすることは、周辺の河川の公害との関係で非常にむずかしくなりつつあるということで、採石業者に対する特別の融資等を考えまして、その設備を整備することによって、何とか骨材の需給をバランスさしたいというふうなことで、現在大阪通産局を中心にそういった指導をやっております。あと、労務につきましても、いろいろな労務確保対策をやっておる次第でございます。
  319. 吉田泰造

    吉田(泰)分科員 いまの御答弁で、朝日新聞の三月七日の夕刊に載った記事は、いわゆる万国博の関連倒産ということに見出しがなっておるけれども、その会社そのものは特異のケースであるというような御答弁でしたが、私はその説に私の意見を述べたいのです。なるほどおっしゃるとおりでございます。経済的な活動でございますので、万博そのものが影響した、間接的に影響した——これはいま大阪の建設業界の中堅どころですね。これはみな万博は逃げます。おたくは中小企業にも出したいというお考えをお持ちのようですが、それはおそらく将来の推移をごらんになったらわかります。おそらくなかなか集まりますまい。なぜなら、いま申し上げましたように、採算が割れるということなんです。この採算の割れる原因は、協会のほうは大手会社へ発注したほうが楽だ、大手はもうからないから、下請をたたいて出す、孫請に出す、これが現在の状況でございます。したがって、会社の内容の悪いところが仕事をしておるわけです。大手はもうからないから、たたいて出す。現金も三割くらいで、あと台風手形、二百十日くらいの手形を出して仕事をさしておるという現状認識が、はたして通産省の中あるいは協会の中にあるのであろうかということが、まず第一点です。なるほど、新聞記事は一部しか報道しておりません。ところが、もっと例を出されるようになれば、もっともっとひどくなる。私は逆の見解なんです。もっとひどくなるのは、業者の声は、そういう信用力のある大手以外には泣かして発注するだけの力もないというんですね。したがって、万博は大企業の専門請けになるだろう。そのときに、大企業は、国家的な大事業であるという認識のもとに最初は食いついた。しかし、だんだんもうからなくなる。いまの本部ビルはきょう立柱式で、普通の常識でいえば、立柱式のときには、おたくは慎重に審査しておるというようないいかげんな返答をしておりますが、こういう立柱式をやるようなときには、工事者は決定しておるべきはずだろう。そうして、それが決定しなかったのは値段が合わないんじゃないか。何回も応札しておるかどうか知りませんよ。私の聞いたところでは、なかなか値が合わない。こういう事態をとらえて、工事の進捗状況は予定どおりいきます。いっていますというような返答がはね返ってくるところに、私は非常に疑問を感じるのです。したがって、万博の大阪業界に与えた影響は、中小企業の金融基調が変わったこの時点に、さらに拍車をかけている。したがって、決して朝日新聞のこの記事は大げさな記事じゃないと思うのです。ほんとに万国博覧会倒産がこれから続くんじゃないか、そういう見解を持っておるのです。この問題について、通産大臣、どうですか、私はそういうことが起こるんじゃないかと思うんですが……。
  320. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 よくそういう点は十分に用心してやるように協会のほうに話しておきます。
  321. 吉田泰造

    吉田(泰)分科員 よく協会のほうに話をしておやりになるといういまの通産大臣の御答弁でございますが、話を積極的に解決しなくて、そんな御答弁のような状況ではたしてうまくいくのかどうか、国民の大多数は危惧を持っておると思うのですよ。奥村さんの件にしても、政府代表がいろんなセクト主義でおかしいじゃないか、ちょっと関心のある人には、みんなそんな話が話題になっていますよ、大阪では。きょうの立柱式でも工事者がきまっていないじゃないかということは、みんなおかしいと思っておるんです。これは橋本さんどうですか。
  322. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 おっしゃるように、現在協会の仕事のしかたないしはわれわれのその指導のしかたについて、反省すべき点はたくさんあると思います。そういう点は十分反省しながら、国民の期待にそむかないようにやっていきたいと思います。ただ、政府代表の問題にいたしましても、やや実態から拡大された報道等もございまして、必ずしもあの報道のとおりではございません。しかし、われわれのほうの態度といたしましても、政府代表の問題について、あれでいままで万全であったかというと、必ずしもそうではない。しかし、これが必ずしも役所のセクショナリズムだけでそうなっているものでもございませんで、事態がこうなってまいりましたので、立法措置を講じてさらに事態を明確化し、従来の制度として確立してなかった点につきましては十分反省をしながら、今後邁進していくような体制を整えておるというところでございます。
  323. 吉田泰造

    吉田(泰)分科員 私は、きょうこの分科会に出席してお伺いを申し上げたいのですが、現在のままで、本部ビルもそういう段階である、将来の工事はどうなるだろう。おそらく一年前に起算されたデータでは、そういう物価でいま施工することは不可能であろうということは、大多数の人が常識的に知っているのです。したがって、いまの予算のままではたして——先ほど通産大臣の御答弁でもスムーズに工事が進んでいるということでございますが、そういうことがはたしてできるだろうか。国民が一番心配するのは、いわゆるそれやれ、あれやれという突貫工事で非常に予算がふくらんでくるのじゃないか。非常に一元化していないようないまの指導体制ではそういう形になるのじゃないか。とっぱなからできないじゃないか。将来それに対してますます値上がりがひどくなるし、関連倒産も起こるであろうという環境のもとに、はたしてどういう施策を打ち、どういう手を打とうと政府はしておるのか。これは前向きにひとつ御答弁願いたい。このままでいけるのかどうか。いけるなら本部ビルもできるはずじゃないか。
  324. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 本部ビルが現在の段階におきまして発注できないというふうなことで、われわれも協会からいろいろ聞いておりましたが、いままでわれわれの承知しておるところでは、協会としまして第一回目の建物でございますので、最も斬新であり、かつまた、一般公募によるだけに、審査委員等で数カ月の日時を要したために、思わざる時期を失したというふうに聞いておりますが、さらにいま先生の御指摘のような点につきましては十分調査いたして、今後こういうことのないようにしていきたいと思っております。それからまた、全般の計画につきまして、われわれとしましては、一応こういう姿ならば十分やっていけるというふうなことで計画を立てております。しかし、それが将来物価、賃金等によりましてなかなかできないというふうな事態が生じないように、賃金等につきましても、従業員の労働者の確保というふうなことで手を打ってございますが、さらにそれ以上の問題が生じるようなことはまずないとは思いますが、あるような状態になりますれば、十分各施設館の検討を進めまして、それにそごを来たさないようにやっていきたい、このように考えております。
  325. 吉田泰造

    吉田(泰)分科員 いまの答弁でどうしても私は納得できないのですがね。いわゆる本部ビルは大切な最初の工事だから、審査に時間を要した。おそらく私は、発注を受けるであろうと想像されるような会社は、それほど審査を必要としない、そんな長い年月は要らないと思うのです。私の知る範囲では、あくまでやはり契約金額が、政府の、いまの協会の予算ではできないということが大きな原因だと思うのです。相当な開きがある。この事態を政府がまじめに考えて、審査に要したんだとかそういう言いわけじゃなくて、もう少し考えていただかないと、これはたいへんなことになるのじゃないか。たとえばいま言う労務者の問題もあるでしょう。しかし、私は、もっと根本的に、最初冒頭で組織に触れましたけれども、そのことで特に申し上げたいのは、この計画を遂行していく上において一番ネックになってくるのは、私は値上がりだと思うのです。現に、一年前と現在、おたくがいまの本部ビルを設計された時点の物価と、いま応札がきまらないという時点で、相当の値開きが現実にございます。業者に聞いてごらんなさい。全部そう言います。したがって、みな逃げたいのだ。したがって、みなきまらない。国家的な事業であるからやりたいんだけれども、できないのだというような現状なんですね。これはやはり政府が労務対策、いろいろな一元化した対策、そういう政策がなかったならばできないだろうと私は思う。  最後に、もしそれを予算の範囲内で強行した場合の弊害はどういうふうに出てきますか。いま朝日新聞の例を取り上げましたけれども、必ず大企業は受けます。自分の信用力で下請、孫請、ひ孫まで、その下請を泣かせていって、どんどん関連倒産が起こるということは、もう目に見えて明白です。こういうことに対して何ら手を打っていないということが、万博の行なわれる大阪ではもっぱらの評判ですよ。人気よくないのです。実際言って、万博というものはわれわれの首を絞めているという考え方、政府も協会も、風聞によれば財界もまとまっていないというような状況、椎名さんが通産大臣になられて、やっと推進対策本部ができた。こういうことではたしていいのかどうかということは、国民が危惧を持っておると思うのです。この点について、再度明確な——言いわけを聞いておるのじゃないのです。国民は、現在の予算よりかもつと、国家的な事業でわかるのだけれども、はたして施策がそれについていっているのかどうかということに、非常に大きな疑問を持っておると思いますので、特にきょうは大阪で立柱式が行なわれているときだけに、いろいろなことを言うけれども、できてないじゃないかという現実の声があると思うのです。どうか倒産を起こさせないように政策を打ってほしい。どうですか。
  326. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 実は、昨年は土地の造成をいろいろやりました。このときは予算を組んでおりましたが、現実に施行いたしましたら、実は予算が余ったわけでございます。しかし、本年度予算を組む際には、従来から一応計画をしておりましたものを再修正いたしまして、若干いろいろな状況の変化を織り込んで予算をつくったわけでございますが、いま先生の御指摘のような、ほんとうにこれでは引き受け手がないのかどうかというところまで承知はしておりませんが、若干私の感じといたしましては、この万博というムードが受注の際にも反映しかけておるのではなかろうか。ほんとうにコスト計算をしてそういうものであるのかどうかという点は、十分両側のサイドから検討して、この点につきましては、協会とも十分打ち合わせた上で、そういうそごを来たさないように、かつまた、それからくる関連の中小企業に御迷惑のかからないように十分注意をし、また再検討をしていきたいと思っております。
  327. 吉田泰造

    吉田(泰)分科員 もうあまり時間がございませんが、いま御答弁の中で、万博の現在のコストは、いろいろな点であまり検討なさっていないということでございますが、現に大阪でいろいろな業者が、中堅どころの建設業者が倒れております。これはおそらく協会に言わしても、通産省の橋本さんにお伺いしても、それは万博の影響はないとおっしゃると思うのです。しかし、いずれにしても、木材が上がり、骨材が上がり、工賃が上がっていることは、現在の事実なんです。したがって、万博以外の仕事をする場合に、万博による高波を受けているというのが、中小企業の金融基調変化に伴う金詰まりに拍車をかけて、まず第一番目に建設業者がその犠牲になっている。大阪に多いのは万博の影響なんだという見方が非常に強うございます。したがって、その事実は、もう少し、採算に合うか合わないかということよりか、立案をされたときに物価対策を立ててない政治のやり方、それについて現実にどのくらい値が上がったかということぐらいは、この席上で御答弁をいただくような責任のある政府の態度を私は望みたい。調べてないからわかりませんとか、コストがわかりませんとか、立柱式ができないのはよく審査しているのだとか、そういうことでなくて、現在どのくらい値が上がってどうなっているかということぐらいは、はっきりした答弁を国民の前にすべきだと私は思うのです。そういう角度でしなければ、いまの橋本さんの答弁では現在時点の言いわけだけで、これは国民は何も納得しないと思うのです。私も納得できません。そういう意味で、関連中小企業がいま万博の大きな波を受けて倒れようとしております。現に倒れております。きょうも大阪の岡組が倒れました。六十億の負債で倒れました。たまたま私、二、三日前にそのことでお目にかかったのですが、それはたいへんなものです。そういうことを考えてみますと、はたしてこれは一元化しなくていいのかどうか。  これは通産大臣にお伺いしたのですが、現状のままというような先ほどの御答弁でしたが、いわゆる閣内で大物閣僚なんだから、何か、いままでの現状を糊塗するのじゃなくて、一歩進んで、オリンピックのときにも持ったのだから、そういう意味でおやりいただくようないわゆる前向きの配慮を国民は望んでおると思うのです。これはどうでございますか。
  328. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 現状のままでお引き受けいたしまして、十分にひとつ責任を尽くしたいと思っておりますが、どうも勤務中思うように動けないで弱っているのです。とにかくここにきまして、計画よりも実際がおくれておる、こういうような状況で、そのまま推移したのでは、これは全くたいへんです。でありますから、おくれはおくれとして、これをどうすれば取り返すことができるか、再びかようなことのないようにするにはどういう点とどういう点を考えなければならぬかというようなポイントは、そうたくさんはないと思います。それをひとつ十分に現状を把握している連中に直接聞きまして、そしてこれはもうとても専任大臣を置かなければいかぬということになれば、その意見を具申することになるかもしれませんし、あるいは、もう少しこの体制でやれるところまでやるよりしょうがない、また、やりようによってはやれないこともあるまい、一人で何もかもできるものじゃありませんから、十分にチームワークをとって、そうしてそれぞれの部署部署において的確な認識、判断というものを下し得る人間を要所要所に配置しておれば、それで大体仕事というものはうまくいくものだと思いますが、とにかくそういう点を十分に点検をいたしまして、自分も十分に考えてみたいと思います。
  329. 吉田泰造

    吉田(泰)分科員 もう時間がありませんので、一点だけ要望して質問を終わります。世紀的な非常にりっぱな博覧会の催しでございますので、その陰にたくさんの中小企業者の倒産犠牲を出したというような歴史の残らないように、ひとつ格別の御配慮をお願い申し上げまして、質問を終わります。
  330. 植木庚子郎

    ○植木主査 次は細谷治嘉君。
  331. 細谷治嘉

    細谷分科員 私は、主として大型プロジェクトの問題について、若干質問したいのであります。  その前に、日本の科学研究費というのは、先進国と比べますと非常に少ない、こういうことがいわれております。さらに、日本の頭脳の流出というのは非常に激しいのだ、こういうことも指摘されております。今日、イギリスがああいう斜陽の国になった一番の大きな原因というのは、有能な若い頭脳がアメリカに流出したということが決定的な原因なんだ、こういうことがいわれておるわけですね。たとえば、原子力を解放いたしましたフェルミという人も、もともとこれはイタリアの大学の教授であったわけです。それが追放されてアメリカに亡命して、アメリカで原子力を解放した、こういうこともあるわけです。日本もやはり相当の頭脳が出ていっておる。特に基礎的な理論物理学あるいは数学方面においてそれが著しいように思うのであります。そういうようないろいろな状態が積み重なって、今日、日本の技術が輸出されるよりも、技術を輸入するということでたいへんな外貨を払っておる、こういうような状況にあるわけです。そこで、政府の技術の元締めになっております技術院の院長さんに、私が考えているような事態だとあなたは御認識になっているかどうか、この点をまず承っておきたいと思います。
  332. 朝永良夫

    ○朝永政府委員 ただいま御指摘のとおり、日本の工業技術につきましては、おくれている面がたくさんございます。特に自主技術の開発ということが非常におくれておりまして、外国の技術の導入にもっぱらたよっていた面が従来あるということを認識しております。
  333. 細谷治嘉

    細谷分科員 おくれているということは認めたのですが、おくれた原因というのは一体どこにあるとお思いですか。私はいま幾つか理由をあげましたね。研究費が少ないということもたいへん大きな理由なんだ。そういうために、朝永さんとか湯川さんは、紙と鉛筆があればノーベル賞をもらえたけれども、金のかかるものについては、ついぞ日本人はノーベル賞をもらった人がないといわれているのです。これは研究費が足らぬという一つの証拠でしょう。あるいは数学方面では優秀な人がおりますけれども、そういうほかのほうではなかなか育たぬ。しかも、そういう人たちは、若い頭脳、優秀な頭脳としてどんどん外国に出て行っている、こういう傾向があるわけです。これは一体どういうところに原因があるとお思いなんですか。
  334. 朝永良夫

    ○朝永政府委員 原因はいろいろな面があると思いますけれども、戦争のために非常に空白状態がございまして、そこに技術のおくれが非常にあったということ、それからその後の復興が非常におくれたということ、それからただいま御指摘のとおり、科学技術関係の予算が必ずしも満足のいくようなものではなかったというふうに私は考えております。
  335. 細谷治嘉

    細谷分科員 そこで、私はあなたの答弁に満足しているわけじゃありませんけれども、そういう現状の中で、やはり何としてでも基礎的な研究、それを工業化していくためには、多大のリスクも伴うのだ、危険負担も起こるのだ、そういう点で、ひとつ国費でそういうものをやっていこう、こういうことで大型。プロジェクトというのが生まれてまいったと思うのでありますけれども、四十一年からことし三年目を迎えようとしている今日までの経過はどういうふうになっておりますか。二ヵ年間の経過。
  336. 朝永良夫

    ○朝永政府委員 昭和四十一年度に発足いたしました大型プロジェクト研究開発制度は、四十一年度に十億円、四十二年度に二十七億円の予算を計上いたしまして、MHDの発電、超高性能電子計算機、脱硫技術及びオレフィン等の新製造法の四つの。プロジェクトの研究開発を進めてきております。それぞれのプロジェクトは、計画といたしまして、四年から七年にわたる長期の研究期間を計画しておりまして、おおむね予定どおりの順調な進捗を見せております。なお、四十三年度におきましては、ただいまの四つのプロジェクトについて、三十九億円の予算を計上して研究開発の拡充強化をはかりたいという考えでおります。
  337. 細谷治嘉

    細谷分科員 いま主として四つの点があげられましたけれども、四十一年度のときはいわゆるMHD発電というものと電子計算機についての問題と、それからもう一つは、ガスの脱硫という問題が取り上げられたわけですね。言ってみますと、三つであったわけですね。いわゆる産業公害の問題として、脱硫の問題のうちの一つとして、ガスから、煙突からひとつ硫黄をとっていこう、こういうことでありましたね。昨年はそれに、直接重油からひとつ硫黄をとってしまおうじゃないか、こういうことが一つ入りましたね。それから、ひとつオレフィン等の新しい製造法を研究しょうという二つが加わったわけですね。そうでしょう。それで、予算も確かに十億、おととしはたしか三十億円くらい要求したのだけれども、十億に削られた。もっとよけいだったかな。つかみの十億円で削られた。去年は二十七億円程度になった。ことしは三十九億というけれども、事務費を除きますと、実質研究費は三十七、八億ばかり。ことしは新しいものが加わっていませんね。去年は二つ加わったわけですね。私は、もうおととしこの問題をやったときに、ガスの中の亜硫酸ガスをやるということも重要であろうけれども、当時一%を下げるためにはトン当たり五百円かかるといわれておった直接脱硫の方法というのが、むしろ重要じゃないかということを指摘しておったのですが、その翌年、四十二年度に新しくプロジェクトとして取り上げられた。それに新オレフィンの合成法、これが取り上げられた。ことしは何もない。何もないという理由は何なのか。あなた方のプロジェクトの予算は確かにふえております。ふえておりますけれども、新しいものが取り上げられなかったという理由は、技術的な評価が停滞しておるのか、財政硬直化からきたのか、どっちなんですか。
  338. 朝永良夫

    ○朝永政府委員 昭和四十三年度におきましては、すでにいまあげられました四つのプロジェクトの中だ、とりわけ電子計算機と脱硫問題が二年目ないし三年目に入りますので、予算的にも非常にピークに達します。したがいまして、これらの計画の円滑な推進を確保するということが、予算面では重点にいたさなければならないわけでございまして、そういう意味で、新規プロジェクトの着手については四十三年度としては見合わせざるを得なかったわけでございます。
  339. 細谷治嘉

    細谷分科員 四十三年度については、新規のプロジェクトは全然要求なされなかったのですか。
  340. 朝永良夫

    ○朝永政府委員 新規プロジェクトといたしましては、海水の淡水化とアンモニアの製造法、それからジェットエンジン、三つのプロジェクトを要求いたしたわけであります。
  341. 細谷治嘉

    細谷分科員 私は、いまお答えを聞いて、海水の淡水化の問題あるいはアンモニアの大型の問題等、新規のプロジェクトも要求いたした。しかし、通らなかった。財政硬直化か何かが理由でしょうね。そうなんですか。私が申し上げているのは、そうばかりでなくて、たとえばオレフィン等の新製造法というものも、去年も一億だったのですよ。ことしも一億ですよ。ほかのプロジェクトを見ますと、やはりある程度計画に基づいて予算額もふえていっているのだ。そうしますと、どうもこの辺の問題として、プロジェクトの具体的な内容が足踏みしているのではないか、あるいは所期の目的どおり進んでいないのではないか、こういう感じ。こういう感じだから、新しい問題じゃなくて、いままでのところを何とかおさめよう、こういう技術的な頭打ち、壁打ち、そういう要件もあったのではないか、こういう気がいたすのでありますけれども、大臣が見えましたから……。大臣、この三つばかり新しく要求したのですが、それは全部カットされたのですね。金額はふえましたけれども、カットされた。そうして、四十二年度から始まったものも横すべりの予算額だ。こういうことはどうも財政硬直化ということばかりでなしに、やはりプロジェクト自体にどうも頭打ちがしているんじゃないか、壁にぶつかっているんじゃないか、そういう感じがするのでありますが、いかがお考えになっておるか。
  342. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 そうではございませんで、新しい大型プロジェクトが認められなかったのは、やはり財政の硬直化といいますか、とにかく財政上の余裕がなかった。それで、若干新しい予算がつきましたけれども、それは中型のほうに振り向けて、大型のプロジェクトはしばらく見合わせる。そして従来の研究も引き続き——全部というわけではございません。新しいものじゃございませんけれども、まだ残されている問題もありますので、従来の研究を続ける、そういうことになったわけでございます。
  343. 細谷治嘉

    細谷分科員 結局財政事情からのようでございますが、一つ気にかかることがありますから、お尋ねしておきたい。そうしますと、オレフィンの新合成法、いわゆる重油からナフサをとって、ナフサを分解してオレフィンをとっていこうという方法でなくて、原油から直接とっていこう、こういうような新しい方法をやっておるのですが、予算は変わらぬということは、どうも技術的な内容が足踏みしているのじゃないか、どうも壁に突き当たっているのじゃないかと思いますが、これはありますか、ありませんか。
  344. 朝永良夫

    ○朝永政府委員 ございません。
  345. 細谷治嘉

    細谷分科員 そうしますと、さらにお尋ねしたいのでありますが、四十三年度の要求として、海水の淡水化という問題とか、アンモニアの大型化についてのプロジェクトを要求したのだけれども、予算が通らなかったのですね。もう一つ何でしたかね。
  346. 朝永良夫

    ○朝永政府委員 ジェットエンジンでございます。
  347. 細谷治嘉

    細谷分科員 通らなかったのでしょう。あとで詳しくその辺の質問があとの質問者から出てくると思うのでありますが、一点だけひとつ通産大臣お尋ねしておきたいのでありますが、アンモニアの大型化というプロジェクトが通らないで、これはやはりもっとしっかりと研究しなければならぬといっておりながら、四十年に新しい通達を出したかと思うと、今後は、通産省は四十三年の新春早々には超大型化といわれる千トンプラントなんていうものを指示しているわけですね。そうでしょう。前のあれは大体七百五十トンのを十グループというものだったのですけれども、今度は千トンだ、七百五十トンのは例外なんだ、こういう指示を出しておりますね。そういうことでアンモニアの再編成をしようとなさっておるわけですか。それとこの予算の通らなかったプロジェクトというのとどういう関係があるのですか。
  348. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 技術院長から……。
  349. 朝永良夫

    ○朝永政府委員 アンモニア原料ガスの製造は材料の問題でございまして、いまの御指摘の再編成とは関係ございません。
  350. 細谷治嘉

    細谷分科員 原料問題であろうと何であろうと、いままでやってまいった世界の第三位にランクされておるアンモニア工業というものを抜本的に大型化し、再検討しようという段階で、あなた方が、原料ガスの問題とかなんとか含めて大型プロジェクトでやっていかなければいかぬ、その予算が通らぬのに、ことしになって二年前の通達をやめて、そして一気に大型化をやるというのは、これはいかがかと思うのですよ。この問題はあとでまた詳しく質問があると思うのでありますが、これはやはり通産大臣、一技術者の発言、工業技術院長のあれじゃなくて、やはり大臣の政治的な問題です。これはそんなばかなことありませんよ。何のために大型プロジェクトの予算要求をするのですか。問題はたくさんあるでしょう。そういう問題を、大型プロジェクトで民間にリスクをおかさしてはいかぬから、ひとつ国の費用でやってやろうということでやるわけですから、技術的な問題が解決すると同時に、そういう問題を民間で消化してもらう、こういうのがあたりまえのコースじゃないですか。通産行政がちぐはぐじゃないでしょうかね。
  351. 吉光久

    ○吉光政府委員 お答え申し上げます。  いまアンモニア一日千トン計画を推進しつつあるわけでございます。けれども、これはアンモニア工業におきます工業自身の企業体の体質強化と申しますか、全体の産業構造としての体質強化を目ざしておるわけでございますけれども、先ほど来御指摘いただきました大型プロジェクトとしてのアンモニア関係の技術開発の問題でございますけれども、これは長期的に見ました場合に、技術開発をすることが必要であるというふうなことでございまして、現在進めております構造改善と、そしてもちろん長期的に見ました場合、新しい技術が日本で開発されることに非常に重要なわけでございますけれども、取り上げ方の問題といたしまして、二つのテーマとして関連いたしておるわけでございます。
  352. 細谷治嘉

    細谷分科員 アンモニアの千トンの大型化ということは、長期的展望に立った上でそういう再編成をやろうとすることです。そういう長期的な展望に立った場合、やはり大型プロジェクトとして、原料の問題なりいろいろな問題についてひとつ十分に検討しておかなければいかぬということで、プロジェクトを要求したのでしょう。その予算が流れたのに、長期的展望に立ったアンモニアの大型化だけやっていくということは問題がありますよ。それこそ、私は、大型プロジェクトか何か知らぬけれども、技術者のアカデミックな象牙の塔式のプロジェクトにしかすぎないですよ。あなた、そんなこと許されませんよ。それでは納得できない。——これは大臣の答弁でなければだめだ。
  353. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 どうも技術のほうはよくわかりませんから、もう一ぺん局長から御説明申し上げます。
  354. 吉光久

    ○吉光政府委員 御指摘いただきましたように、いずれも長期的な問題でございますし、いずれも重要な事項であると私ども判断いたしておるわけでございます。ただ、これが同時に解決されるほど密接不可分か。方向といたしましては、同時解決が望ましいことは御指摘のとおりでございますが、現実の問題といたしまして、現在進めております構造改善計画は、四十六肥料年度を目標にいたしまして計画を取り進めておるわけでございます。他方の大型プロジェクトの関係でございますけれども、これは実は将来五ヵ年計画くらいで新しい技術を開発いたしまして、そしてそれを日本の化学肥料業界の一つの新しい技術としてのてこ入れをしてまいりたい、こういう構想で出発いたしておるわけでございまして、私どもいずれも重要なことであるというふうに認識いたしておりますけれども、先ほど工業技術院長からお話しございましたように、本年度におきましてはこれが採用されなかった、こういうふうな事情でございまして、重要性におきましては、私どもも御指摘のとおり重要な問題であるというふうに判断いたしております。
  355. 細谷治嘉

    細谷分科員 もう時間がありませんから、私は、この点はこれ以上あまり言いませんが、四十年の春、大体七百五十トンという基準で再編成しようとしたわけですね。その後二年したことしの春、今度は千トンでございますときたわけです。それは何か変わったかというと、諸外国のほうだって全部そういうふうに大型化したかというと、そうでもないですよ。にもかかわらず、千トンというのは、一体何か根拠があるかというと、大型プロジェクトによって長期的観点に立った原料のいろいろな心配も片づいたのだ、だから自信があるからひとつ千トンでやりなさいという根拠なら別だが、その予算がぶった切られた。ただ二年月日が流れたということだけで、四十三年の春になって、四十二年の七百五十トンを打ち切って、そして千トンにしたということについては、つじつまが合わないじゃないか、何かに動かされておるのじゃないか、科学的じゃないじゃないか、合理的じゃないじゃないか、通産省らしくないじゃないか、何のために工業技術院が存在しているのか、何のために大型プロジェクトがあるのか、こういうふうに言いたくなりますから、私は申し上げておるわけです。時間がありませんから、あとでまたその問題についてはさらに質問があると思うのであります。  そこで、もう一点、私は緊急な問題として申し上げておかなければいかぬ問題は海水の淡水化の問題です。これは昨年の七月、日本の権威者といわれます。かつての工業大学の学長をしておりました、化学工学の有名な内田俊一という人が会長をしておりますね。その人がもう日本のありとあらゆる権威者を集めたもので、海水淡水化の技術開発に関する報告という分厚いものが出されているわけだ。言ってみますと、この問題についてのいろいろな研究すべき技術的な問題というのはほぼ片づいたのです。この内田さんの報告にも、もはや大型プロジェクトによって問題を前進させる以外にないと書いてあるのですよ。それですから、あなたのほうも、大型プロジェクトのテーマとして、四十三年度の予算要求の中の重要な一つとして取り入れたのでしょう。私どももあの一月中旬くらいの予算の煮詰まる段階において三つ要求しておるけれども、最後の最後まで通産大臣は、海水の淡水化だけはどうしても今度は予算を確保しておかなければ長期的展望に立って困るのだ、こういうことで粘ったように新聞に書いてありますけれども、何もない。一体これはどういうことなのか。何もなくてよろしいのか。海水の淡水化についてはどういう展望をお持ちなのか、これをお尋ねしておきたい。
  356. 朝永良夫

    ○朝永政府委員 御指摘のとおり、海水の淡水化につきましては、私としては、大型プロジェクトに取り上げる機が熟していると考えてはおりますが、今回の予算の中には入れることができませんでした。従来から工業技術院所属の東京工業試験所におきまして基礎的な部門を数年間やっております。試験研究をずっと引き続きやっておりますので、昭和四十三年度にはとりあえず特別研究費を大幅に増額いたしまして、これは四十二年度には千七百万円使っておりますが、四十三年度は三千万円にふやしまして、この研究をさらに続ける。そして、なお解明を要する点については所要の研究開発を進めていきたい、かように考えております。
  357. 細谷治嘉

    細谷分科員 それはお茶濁しであって、大体もう、海水の淡水化というのはいろいろな方法があり、そのいろいろな方法というのは、グルンドの点はほとんど研究し尽くされているのです。内田さんが言っているように、あとはどうしてこれを実用化していくかということです。今日、日本は細長い島国ですから、雨はよけい降りますけれども、水は足らない。降ったらどんどん流れて、海へ流れちゃうのです。この東京の、あるいはこの辺の水を五年先、十年先にはどうすべきかというたいへんな問題もあるわけだ。そういう問題も考えてみたり、あるいは日本のこの問題についての研究というのはかなり歴史も古く、進んでおるわけですから、将来やはりこういうもののプラント輸出なんというのは、日本の外貨獲得にとっても非常に有利だと私は思うのだ。日本人の飲料水等を確保するばかりでなくて、あるいは将来の原子力発電等が起こってきた場合には、これはそういうエネルギーを高度に活用するという意味においても非常に有効適切なものであって、いまにして大型プロジェクトに取り組まなければもう意味はない。もうグルンドのものは済んでいるのですよ。それなのに、これはやはり落とされたということになりますと、私は、財政硬直化といいますけれども、たった千七百万円が三千万円になりました、従来のとおり研究を続けますというのは、これは言ってみれば意味はないのだ。もはや大型プロジェクトで相当の大きなプラントでやっていく以外にないのだ。これは今日の重要な課題だと私は思っているのです。どうでしょうか、通産大臣
  358. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 大体御説の情勢であろうかと存じますが、これはぜひ明年度において予算獲得に努力したいと思っています。
  359. 細谷治嘉

    細谷分科員 私も、工業技術院等では一つのパイロットプラントという計画も具体的にあるやに承っております。ですから、それを早くプロジェクトで取り上げていく。その取り上げていき方に、これは研究は簡単なようでありますけれども、実用化していく場合には、かんにつくスケールというものを一体どういうふうに解決していくのか、いろいろな問題があります。ですから、私は、六年とか七年とか計画の年数がかかるにしても、実用化にあたってはいろいろな問題がありますから、しかも水の問題は非常に急がれる問題でありますから、いま大臣の決意表明のように、ひとつ早急にこの問題は具体的にプロジェクトとして取り上げていただきたいということを強く重ねて要請いたしまして、私の質問を終わっておきたいと思います。
  360. 植木庚子郎

    ○植木主査 次に、加藤万吉君。
  361. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 いま細谷議員から、アンモニアの大型化の問題が提起をされました。私は、アンモニアの大型化による肥料の生産と、最近締結をされた日中覚え書き貿易について、最初に質問を申し上げてみたいと思います。  最初に、日中覚え書き貿易で協定内容が新聞で報道されておりますが、特にその中で重要な地位を占める肥料の輸出について、どういう経過になっておるのか、これがまず第一点であります。  第二点には、聞くところですと、米の輸入の問題をめぐって日中間にまだ問題が残されているというふうに報道されております。すなわち、中国側からはおおむね十五万トンないしは昨年度程度の米の輸入、わが国の農林省のほうでは十万トン前後の輸入ということで、問題がまだ将来に残されているかのように見受けられるわけです。もし米の輸入が日本の政府が言うような形になった場合には、たとえば従来のLT貿易から見て、肥料の輸出の量が相対的に減る、そういう状況が起きるかどうか、これが第二点であります。  第三点は、中国の肥料輸出について、昨年度もそうでありましたが、特に肥料価格の問題が、ヨーロッパの中国市場への進出の問題と関連して、わが国にたいへんな問題を提起した。今回のこの締結をめぐって、日本から輸出をされるであろう肥料の価格が、たとえば覚え書き貿易あるいは友好貿易に限らず、昨年度の価格の維持ができるものかどうか、これが第三点であります。  第四点は、これは大臣に答弁を願いたいと思いますが、実は肥料の中国輸出問題をめぐって、かつての吉田書簡等々からくる中国との貿易、中国側が言う政経分離反対といいましょうか、そういうやや政治的角度からの日中貿易の課題が幾つか残されておるわけですが、今回の覚え書き協定は、御承知のように一年協定であります。だとすれば、政経分離という立場の日本の政府の方向が、この貿易協定を一年間にしたのではないかというようにうかがわれるわけです。  さらに私は、先ほどの細谷議員の質問がありましたように、アンモニアの大型化という問題は、当然国内、国際の輸出市場と関連があるわけです。硫安の肥料のおもな輸出先であります中国がもしも失われていくということになりますと、実際のアンモニアの大型計画が市場の面で制約をされる。また、それに日本の財政投融資が行なわれるわけでありますから、いわば資金の面でも国民被害を与える、こういうようになりますので、一体、この一年間の覚え書き協定と、今日まであった日本と中国とのいわば外交関係、さらにいま一つは、その市場が狭められるではないかという懸念を、これからの日中間の貿易協定、貿易の中でどう解消されていこうとするのか、これはひとつ大臣にお伺いしたいというふうに思います。
  362. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢(鉄)政府委員 LT貿易につきましては、御承知のように、先般一応一年限りということでまとまったわけでございますが、その金額につきましては公表されていないわけでございますけれども、昨年よりも若干減るというような感じに聞いております。それとの関連におきまして、肥料につきましても、これは具体的にこれから交渉するわけでございますから、その段階でまたいろいろ具体的にはきまるものだと思いますけれども、全体の規模が昨年より若干縮小ぎみであるということとの関連におきまして、見通しといたしましては、おそらく若干は減るのではないか、しかし、肥料業界としてはできるだけ努力いたしまして、できるだけ昨年並みくらいには持っていきたいということで努力しておられるように聞いておりますが、見通しとしては、LTのワク内では若干減るのではないか、こういうふうにいわれております。  それからなお、米の問題でございますが、米につきましては、当初こちらといたしましてはせいぜい六万トンくらいしか買えないということであったわけでございますが、この日中貿易の関係では、こちらが買いませんとなかなかこちらのものも輸出できない、こういう関係にもございますし、まあだいぶ農林省には無理をお願いしまして、とにかく十万トンという線までは持っていったわけでございます。ただ、それにつきましては、入ってくる米の種類につきまして、やはり二種類ばかり、常熟米とか小站米とかいいますか、何かあるようでございますが、やはり日本のほうで希望するような品質のものを入れてもらいたいということと、それからその値段につきましては、一応国際的に当然通るような相場のものでなければ困るということが農林省からつけられた条件でございますので、当然そういうことを前提にして、十万トン引き受けてもよろしいということを言ったわけでございまして、向こうとの話し合いでは、できるだけそれ以上に努力するというようなことにはなっておるようでございますけれども、一応日本サイドとしては、いまの段階では、十万トン以上買うことはむずかしいというのが実情でございます。
  363. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 それが肥料の輸出に影響は起きてこないかという問題です。
  364. 吉光久

    ○吉光政府委員 ただいま概括につきまして通商局長からお答えいたしたとおりでございますけれども、化学肥料のいまの個別的な輸出の関係でございますが、LT関係につきましては、全体が縮小いたしておりますので、若干減少する見込みである、こういうお話でございまして、同時に、中国との関係におきましては、友好貿易によるものも最近だいぶふえてまいっておりますので、私どもといたしましては、LTと友好と込めまして、最低少なくとも昨年並みくらいまでに持っていってもらいたいというふうな希望を持っておるわけでございます。ただ、これは先方もあることでございますし、また、いまから代表団が出発いたすわけでございますので、いま確信を持ってそこまで確保できるというふうにはまだ申し上げられる段階ではないわけでございます。  それから、肥料価格の問題でございますけれども、先ほど御質問の中にございましたように、昨年はヨーロッパのいわゆるニトレックスの安値攻勢によりまして、相当安い価格で契約が締結されたわけでございますが、これもいまから代表団が参りました上で価格交渉をいたすということになるわけでございますけれども、昨年ニトレックスが中国で安値契約をいたしました後におきます国際的な肥料価格でございますけれども、それ以上のところにおおむね落ちつきつつあるという状況でございます。したがいまして、これもいまから予想することはできないわけでございますけれども、昨年より上回った線で何とか交渉をまとめていただきたいというふうな気持ちを私どもは持っております。いまここで、これもまた輸出価格がどういうところで落着するかという点につきまして、交渉ごとでございますので、確信を持って推定いたすわけにはまいらないわけでございますけれども、先ほども申し上げましたように、昨年の輸出価格以上のところで最近におきます国際的な輸出価格がきめられておりますので、できるだけそれに近い線で妥結していただきたい、こういう気持ちを私どもは持っておるわけでございます。
  365. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 古井代議士一行が向こうに参りまして、共同コミュニケを発表いたしまして、その中で、政治三原則あるいは政経不可分といったような考え方に大体同意をしてきておるようでございます。これは政府といたしましては、これに直接タッチをいたしませんで、側面からその成立を望んでおったわけでございますが、あの程度の理解を先方に示すことは、それはそれとしてやむを得なかったのではないか、かように解釈しております。  それで、中共との貿易に関しては、日本はやはり従来の方針のとおり、政経分離の原則のもとにどこまでも貿易を拡大していきたい、こういう考え方をいま変えておるわけではございません。ただ、いやしくもどの国に対してもイデオロギーを越えて貿易を拡大強化する、そういう方針がすでに立っている以上は、その輸出貿易に従事をする業界の人々の輸出金融というものをなるべく楽にしてやって、そして貿易の拡大発展を進めていくということは当然のことでございます。しかしながら、その当然のことが行なわれていない。輸銀資金の活用ということについては、まだそこまで運んでおらない。これは吉田書簡のせいではなくて、吉田書簡はただその当時の日本の方針に合致してつくられたものでありますから、便宜上吉田書簡といわれておりますけれども、吉田書簡そのものは何ら政府を拘束する力はない。従来の方針がそのまま順奉されておるという現状でございます。これは、本来のあり方からいうと、決して正常な姿ではない。輸出しようとするものに対して輸出金融の恩恵を与えて、そして輸出を拡大していこうという日本の本来の貿易の方針がここで実現をされておらない。実現をはばんでおるのは別に外交上の理由があってはばまれておる、こういうことでございますので、本来の姿に返すために、関係各省と十分に連絡をとって、かようなことはできるだけ早くなくしたい、こういう考え方を持っております。
  366. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 この問題はあらためて外務委員会等でいま少し詰めたいと思いますが、大臣、これは特にお願いしたいのは、大型化の進行に対して、各企業がそれぞれ相当な投資を行なうわけです。したがって、国際的にも、国内的にも、需要市場の問題がある程度の見通しと確定がなければ、非常に企業の側に危険が起きるわけですから、一年間の貿易協定というのは、どうしても私どもはそういう意味で日本の外交姿勢に問題があるのではないかという気がしてなりませんので、将来閣内における対中国の外交の方向について、格段の配慮を通産大臣という立場からもお願いを申し上げておきたいと思います。  二番目に、いま大型化がずっと進んで、各企業側では検討されておるわけですが、通産省側から、あるいは各企業の側から出されておる第二次大型化、十グループでございますか、これの進行について、どういう経過になっておるか、お聞きしたいと思うのです。全部聞いてはたいへんでありますから、特別に当面問題になっておりまする幾つかの企業について、お聞きをします。一つは東洋高圧であります。これはもう御承知のように、一月三十日に千トンプラントの計画を認可をされておりますが、この東洋高圧の内容を見てみますと、実は通産省に出されてその認可を受けた内容と、企業の中で労使間で話し合われている内容と、多少そごがあるわけです。特に労働組合の側からいいますと、通産省が指導要領で出されましたいわゆる完全雇用の方向というものについて、多少差異があるわけです。一体この辺のところについて、どういう見解をお持ちかというふうに実は思います。東洋高圧に限らず、これから起きるであろう各企業の場合でも、この労使間の問題は残るわけでして、いわゆる政府が認可をする際に受けた企業側の提出の、特に雇用関係の問題、私どもが労使間の中で得る資料との差がどうしてもあるわけです。したがって、労使間の紛争が起きることは決して好ましいことではありませんから、国の立場から、何か企業の側が通産省に出しておる資料と、私どもが入手をするいろいろな資料との差、どこに問題点があるかを実は知りたいわけです。東洋高圧の一つの例をとって、そういう場合には、通産省側から適切な資料が私どもの手刀に入るであろうかどうか、これについて御見解をお聞きをしたいと思います。  それから二番目に、三月一日に日本化成という会社が発足をしました。これは御承知のように、千トンプラントの新しい会社の設立ということでございまして、労使間では、日本水素にいたしましても東北肥料にいたしましても、転勤問題、配置転換の問題等をめぐってすでに話し合いがされておるのですが、一体これについてどういう見解をお持ちでしょうか。この問題に関連して、実は業界の新聞はこういうことをいっておるのであります。すなわち、肥料の専業メーカーは、この千トンプラントによって相当深刻な影響を受けるのではないか。たとえば新設備の原価あるいは廃棄設備の余剰費用等を含めると、通産省がいわれているように、尿素の原価が約七千円あるいはアンモニアトン当たりが六千円以上の格差が出て、必ずしも通産省が指導されているような形になっていかないのではないか。したがって、そこには通産省が、これからアンモニアあるいは尿素の設備の過剰化、この防止、あるいは企業収支のバランス等について、適切な指導をしなければいけないのではないかということを指摘しておるわけですが、一体この点に対してどういう指導と、どういう観測をお持ちであるのか、お聞きしたいと思います。  また一部の業界の新聞では、この日本化成の新しい計画について、通産省がいわゆる計画の練り直しを要求したといわれておりますが、どうもこれは先発各メーカーのいろいろな面の気がね、あるいは新しい千トンプラント、全体で十グループが行なう総合的なアンモニア増産プラントに対する指導方向というものが明確になっていない結果からきたのかどうか、この辺をお聞きしたいと思います。  三番目に、この千トンプラントと関連して、御承知のように工業用アンモニアの問題がいろいろ問題になっております。そしてこの工業用アンモニアのワクの認定については、あるいは全般を通じてそうでありますが、通産省がその各社別のワクを認定する、こういっておりますが、一体工業用アンモニアを含めて、現在各社に対するワクの認定はどのくらいになっているか、明らかにしていただきたいと思います。
  367. 吉光久

    ○吉光政府委員 御質問の順序に沿いましてお答え申し上げます。  最初の東洋高圧に関連する事項でございますが、御指摘のとおり、労働問題というものは、今回の大型化計画にとりましてきわめて重要な意味を持っておるものだと私ども理解もいたしておるわけでございます。したがいまして、先ほどお示しございましたように、調整要領の中にはっきりした基準といたしまして、そういう問題についての方針を明記いたしたわけでございます。先ほどお話しのございました具体的なプロジェクトについてでございますけれども、一応会社側の計画によりますと、労務者の余裕の発生が予想されるものといたしまして、大牟田工場、砂川工場、両工場合わせまして約八百二十人というふうになっておるわけでございまして、その八百二十人の受け入れのためといたしましては、第一には第二次のこのアンモニア計画、あるいはまた堺で石油化学コンビナートを計画いたしておりますが、そういうアンモニア関係あるいは石油化学関係あるいは硝酸、そういうふうな関係の新設部門に対しまして二百五十人を吸収いたします。そういう点が一つでございます。第二に、既存の事業を増設、拡張する部門に百五十人を充当いたしたい。三番目に、各事業所の欠員補充あるいはまた関連工場等への配置転換というふうなものによりまして、四百二十人というふうな人数を予定しておるようでございます。この関係につきましては、会社側も相当慎重に練ってきたものというふうに私どもは判断いたしておるわけでございます。ただ、先ほど御指摘ございましたように、この労務問題というのが大型化計画を実行いたします上に非常に重要な意味を持つものでございます。したがいまして、そういう点につきまして、これを各社ごとに、いわゆる一般的に公にするというふうなことはなかなかむずかしい問題があろうかと思うわけでございますけれども、個別的な問題につきましては、何らかの形で相互意思交流ができると申しますか、そういうふうなことが考えられないか、もう少し検討さしていただきたいというふうに考えます。  それから第二の日本化成に関する問題でございます。実は肥料の専業メーカー、これはいずれかといえば、企業形態がほかに比べまして、兼業メーカーに比べまして小さいほうでございますけれども、私どもはやはりこの肥料の専業メーカーが、あるいは共同投資あるいは合併等によりまして大型化計画を遂行いたします場合には、何らかの形でそういう意味での応援をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。ただ、先ほど御指摘ございましたように、これが設備過剰になるというふうなことになりますと、やはり償却残の負担の多い工場もございますので、そこいらにしわが寄るというふうなことになっては困る問題でございます。実は全体の計画の問題の調整段階でございますけれども、私どもは実は需給見通しを立てました場合に、全体としての新しい設備余力というふうなものにつきまして、これは四千五百トン分のスクラップ分を前提に置きました上で、大体一日当たり七千五百トンから八千トンの新設余力ではないであろうかというふうに見ておるわけでございます。これは先ほどお話ございました業界だけの計画によりますと、実は一日当たり九千二百トンというふうに非常に大きな数字が出てまいっておるわけでありまして、したがいまして、そういう意味で需要見通しをわりあい引き締めて見ておりまして、いまの業界計画がそのとおりだけそのまま認められるというふうなことになりますと、設備がだぶつくというふうな懸念もございますので、そういう点につきましては慎重に配慮してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。ただ、需要見通しでございますので、状況によりまして変わってまいるということもあろうかと思いますけれども、そういう場合におきましても、やはり全体の需給計画というものは重要な問題でございますので、その状況に応じまして、完成時期の調整と申しますか、そういうふうなことも加えてまいりたい、このように考えておるわけでございます。  それからその同じ日本化成につきまして、通産省で計画の練り直しを要求したということが一部の新聞に出ておる、一体どういうことであるかという御質問であったかと思うわけでございますが、実はこの日本化成につきましては、計画につきまして、こういうことでやりたいという正式の意思表示がまだ受理いたしておらないわけでございますが、内々の御相談が実は今年の二月にあったわけでございます。この御説明を受けましたところ、あるいはアンモニアの利用計画でございますとか、原料の入手見込みでございますとか、あるいは人員の配置計画でございますとか、こういう点につきましてまだ明らかでないという点があったわけでございまして、実は却下し、練り直しを要求したと申しますよりか、むしろそういうふうな問題につきましてもう少し内容を固めていただきたいということを申したわけでございまして、会社でも、そういう点につきまして会社内部で現在計画を調整いたしておるという段階でございます。  それから工業用のアンモニアの問題でございますけれども、実はこれも各社別計画によりますと、相当大きな伸びを見込んでおったわけでございます。ところが、私ども計算してみますと、過去の伸び率は大体年率で一〇%程度というふうな伸び方を示しておりますけれども、EEC諸国等における工業用アンモニアの伸び方等を参考にいたしますと、過去の伸び率をそのまま適用するのはいささか危険ではないかということで、実は全体といたしまして一ポイントだけ率を下げまして、九%程度くらいの伸び率を見込んだわけでございます。そういうふうなことで、全体のほうの需要の見通しはできておるわけでございますけれども、この工業用のアンモニアをどういうふうに各社別に分配するかというふうな点につきましては、実は現在まだ検討いたしておるところでございまして、まだ最終的な結論を出していない状況でございます。
  368. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 いま一番重要である労使間の問題については、各社が通産省に提出するものを私どもと個別に検討できるものは検討してみよう、こういうお話ですが、これは東圧に限らず、その後起きてくるであろう三菱油化と日東化学との新しい鹿島の建設、これについても起きるわけですから、当面は先発グループの計画内容を私どもにそういう意味で御提示を願って個別にいろいろ検討さしていただく、こういう機会はつくっていただけるわけですね。
  369. 吉光久

    ○吉光政府委員 人員配置の問題につきまして、これが円滑に進めることができるような方向につきまして、御相談申し上げたいと思います。
  370. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 まだたくさん問題がありますけれども、とりあえず外郭を聞きまして、商工委員会でいま少し詰めてみたいというように思います。  新しい工場をつくる場合に、旧設備は稼働のまま新しい設備が竣工するわけです。そして新しい設備に人員なり物が移動をしていくわけですが、新しい設備は御案内のように、きわめて少数な人数によって稼働が可能なわけです。そうしますと、旧設備から新しい設備に移行する場合に、配置転換を含めて、いわゆる人員を新しく充足することはできません。そこで、旧設備の人員の中から新しい設備の建設計画あるいは試運転の計画へ移行していくわけですが、この際にどうしても起きるのは、いわゆる旧設備における労働強化の問題です。私は、新しいこの計画の内容について、労使間の紛争が起きないかどうかという問題についての指摘はいま申し上げましたけれども、同時に、移行過程に相当問題が起きてくる。いま言いましたように、労働強化の面が出てくる。したがって、私は通産省がこれから認可を与えられる過程で、新設備への移行の過程における労使間の問題、これをしっかりと検討して、その上でいわゆる新設備における人員の問題あるいは認可の問題を検討していただきたいというように思うのですが、いかがでしょうか。
  371. 吉光久

    ○吉光政府委員 御指摘のようなことも起こり得ようかと思っております。これはもう私よりか先生のほうがお詳しいわけでございますけれども、新設備を建設いたします場合には、あるいはエンジニアリング会社からの応援でございますとか、あるいは会社自身の持っております企画開発のための職員の充当でございますとかいうふうな手段で、できるだけ旧設備に残る職員について労働過重負担が起こらないような配慮がなされなければならないということでございますけれども、ただいままた新たな観点から問題の御指摘をいただいたわけでございまして、各社間の個別計画を検討いたします場合に、そういう点につきましても十分配慮を加えさせていただきたい、このように考えます。
  372. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 時間がありませんので、最後に大臣にひとつ要望しておきたいと思うのです。  御承知のように、新産都市計画がありますし、工業整備特別地域の問題があります。さらにいま通産省では長期工業の立地計画について、いろいろ調査をされているようです。いまのアンモニアの大型計画に基づきますと、たとえば東北の秋田あるいは青森の八戸、それぞれ新産都市あるいは工業整備特別地域に指定されている地域が、事実上工場廃棄処分に等しい形になっていくわけですね。したがって、工業の分散、公害の排除、あるいは後進地域の開発という面から見て、この計画は相当慎重を期さなければいけない。政治的にも慎重を期さなければいけない、こういうふうに思いますので、これに対する大臣の見解をお伺いしたいのと、いま一つ資料請求でありますが、大型化のメリットの問題、先ほど細谷代議士が申し上げましたけれども、アメリカあたりでは五百トン程度の計画で問題が進められ、二、三年前には御承知のように七百五十トンの計画で通産省は指示をされたのですね。したがって、私どもいろいろ検討するのに、やはり諸外国の大型化のメリットの問題を含めて資料がほしいと思うのですが、これは提出が願えるでしょうか。  以上、大臣の御答弁と資料請求のお答えをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  373. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 新しい大型化工場の設備場所につきましては、慎重に考慮して運びたいと存じます。  それから資料につきましては、入手いたしておりますものにつきましては提出いたします。
  374. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 終わります。
  375. 植木庚子郎

    ○植木主査 次は、岡本富夫君。
  376. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 私は、最近の公害問題で世論が沸騰しておる、そういうときに、通産省が業界に働きかけて、業界の出資で公害救済基金をつくろうという動きがある、この詳細について、またその構想をお尋ねしたいと思います。これは公益事業局長ですか。
  377. 井上亮

    井上(亮)政府委員 通産省としましては、公害問題につきましては、企業局に立地公害部がございますので、そこが主管しておりますから、あとで総括的にお話があると思いますが、御指名でございますから、私どもに関します問題点をお話ししたいと思います。  私どものほうといたしましては、先生の御承知のように、電力、ガスの業種を担当しておるわけですが、これについての公害対策としましては、それぞれの発電所の性質によりまして、たとえば水力あるいは火力——火力といいましても重油専焼もありますし、石炭火力もあるというようなことでございますが、それらにそれぞれ適切な公害対策を立てたいということで業界を指導しております。たとえば火力につきましては、煙突の高さとか、あるいは集塵装置をつけさせる。都市の様相によりましては、煙突を高くするというような制度を設けまして指導いたしております。
  378. 矢島嗣郎

    ○矢島説明員 ただいま先生から財団法人による被害者救済措置について御質問がございましたので、その点を中心としてお答えいたします。  先般の新聞にも出ておると思いますが、公害による被害者の救済については、原因究明が非常に問題になるわけですが、そういう原因の究明を離れて、その前に迅速かつ円滑に救済が行なわれなければならないという点は、通産省全体としても深く認識しておるわけでございまして、そういうような認識のもとで、いま先生御指摘のような考え方が通産省の部内で検討されておるわけでございます。そういう関係で、これは民間の財団法人ということだものですから、おのずから業界の協力がなければならぬことは当然の話で、業界の意向をサウンドしてやらなければならぬということで、非公式に業界にも呼びかけてその意見を求めているわけでございます。このねらいといたしましては、産業界として具体的問題の企業の責任の追及も大事でございますが、そういうことに一応触れないで、それはあとにしまして、自主的に業界が所要の資金を供出する、業界全体のペースとして供出してやる、そういうのが基本的なねらいでございまして、これは当然のこととして人道的見地から促進すべきものだと、私どもは思っているわけでございます。  具体的構想といたしましては、まだはっきり固まっているわけじゃないのですが、現在地方公共団体が、たとえば四日市問題あるいは新潟の問題その他で、医療費やそれに関連する費用を出しておるわけですが、その二分の一程度、要するに、地方公共団体が出したものの半分程度をこの財団法人が負担するという、そのやり方等については、さらに具体的に詰めていかなければならぬと思います。それから財源としては、公害関連業種といいますか、主として公害の原因となる亜硫酸ガスその他を量的に多量に出すような業態が中心になって供出する。そして財団法人を設立して、その基金の果実でもっていろいろな負担金に充てる、かようなことでございます。  ただ、ここで申し上げたいのは、こういうものは本来国費を中心としてやるべきでございまして、来年度予算においても厚生省が相当額を要求しておったわけでありますが、不幸にして機が熟さなかったということで、四十三年度は別途中央公害対策審議会等で研究しておりますけれども、おそらく四十三年度中には間に合わない。四十三年度は、国費ベースではできない、法律もつくりたいけれども、法律もなかなかできないというような状況においては、四十三年度は何もできないで空費してしまう。しかし、先ほどから申し上げましたように、被害者の救済は一刻も早くやらなければならぬ、こういう認識に立っておるわけですから、四十三年度におきましては、そのつなぎということで、四十四年度以降、これが国費その他と結びついていかなる形に発展していくか、これはまた別途その段階で法律問題ともあわせて研究しなければならない問題じゃないかと思っております。  以上が構想のおもなものでございます。
  379. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 つなぎということで一応構想を練っている、こういう話でありますけれども、民間側、要するに業者側は、それに対して協力的であるのか。もう一点は、時期はいつごろを考えておるか。もう一点は、地方公共団体が出す額の二分の一ということだったら、非常に少ない、私こういう面も考えておりますけれども、この三点について明確にお答え願いたい。
  380. 矢島嗣郎

    ○矢島説明員 簡単に申し上げますと、業界のリアクションは、全面的にまだやっているわけではございませんが、基本的には趣旨に賛成で、前向きに考えておるのでございます。ただ、いろいろ業界によって、それぞれお家の事情もあるし、技術的な問題その他もう少し研究しなければならぬというような状況でございます。  第二点の御質問は、時期の点でございます。先ほど申し上げましたように、四十三年度のつなぎということですから、できるだけ早くやらなければならぬと思っておるわけですが、私どもの希望といたしましては、早ければ五、六月ごろには発足することを期待しているわけであります。  それから第三点の、二分の一じゃ不十分だという点もありますが、この点は一応そう考えているわけでございまして、今後さらに詰めたいと思いますが、これはやり方について私どもはなはだしろうとでございまして、どういう費用をこの対象にするかという点をまだ詰めてないので、とにかく都道府県がおやりになった半分、こういう大ざっぱな考え方でやっているわけで、その辺はさらに詰めていかなければならぬと思っております。
  381. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 この基金は、大体金額はどのくらいを目標にしておるのか、ひとつそれだけ明確にしてもらいたい。
  382. 矢島嗣郎

    ○矢島説明員 これもまだ非常に大ざっぱなわけでございますが、その基金による果実をもって当てるということになっておりますので、数億円程度は必要なんではないかと考えております。
  383. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 これは通産大臣に特に念を押しておきたいのですけれども、いまこうして通産省で前向きな手をいろいろと打たれる、私はこれはいままでと違って非常によいと思うのです。つなぎであれば、これは被害者がいま非常に困っておるわけですから非常によいことだと思いますが、これは熊本県の水俣病やあるいはまた阿賀野川の水銀中毒事件、こういうものが発生してもう五年になります。また渡良瀬川の銅の鉱毒事件を見れば、これはもう相当に長い期間です。この被害者の救済になぜもっと早く通産省としても手を打たなかったか、こう私はその責任を追及されてもしかたがない、こう思うわけであります。こと業界に対するところのものでありますから、これは通産大臣が本気になって取り組まなければできない、こう思うのですが、通産大臣の確固たる決意を発表してもらいたいと思います。
  384. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いま御質問によってお答えしたのは神通川の問題でございますが、水俣あるいは阿賀野川、さらに足尾の渡良瀬川の問題、これらの問題も同じ状況に置かれておるのでありますから、この辺もこれに準じて考えてまいりたいと思っております。
  385. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 大臣、私が言っているのは、今度の公害基金につきまして業界がこういうような意向も示したし、通産省の意見にもだいぶ沿ってきた、こういうところでありますから、大臣が率先してこの公害基金をつくって、そうして早く被害者に渡してあげよう、こういうような考えがあなたにはないのかあるのか。
  386. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 積極的に努力いたします。
  387. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 この問題はこれで一応おきます。  次は、新潟県の阿賀野川の流域に起こりました水銀中毒事件で、厚生省と通産省との見解の相違がある、こういう醜いところの政府の実態を国民の前に呈しておる、こういうように聞いておりますけれども、厚生省の結論をまず簡単に聞きたいと思うのです。
  388. 野津聖

    ○野津説明員 厚生省といたしましては、阿賀野川の水銀事件につきまして、臨床研究班及び試験研究班、それから疫学研究班、三つの研究班の研究結果に基づきまして、いわゆる食中毒事故の特殊なものというふうな考え方で、厚生大臣の諮問機関であります食品衛生調査会に慎重審議していただきまして、その答申を得まして、それを厚生省の意見ということにいたしまして、昨年の八月の末に科学技術庁に通報したものでございます。
  389. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 この前の意見では、阿賀野川のこの問題は水銀中毒によるのだ、こういうようにはっきり出ているということを私は報道機関から聞きましたが、どうですか。ちょっと答えが違いますね。
  390. 野津聖

    ○野津説明員 メチル水銀によります水銀中毒事件ということは、明らかになっておるわけでございます。
  391. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 通産省は……。
  392. 吉光久

    ○吉光政府委員 通産省といたしましても、原因物質が有機水銀でありますこと、また昭和電工鹿瀬工場からもメチル水銀が排出されていたということにつきましては、全然異論はございません。ただ、この種事件の発生を未然に防止いたしますためにも、またこの種事件の原因者を早期に確定いたすということのためにも、さらに有機水銀の物性その他につきまして、研究を進めていくことが必要ではないであろうかということを考えたわけでございます。それと同時に、今回の事件につきまして、ある特定の期間に多数の患者が集中的に発生したということにつきまして、これをどのように理解したらよいかという点につきまして、実は確信を持ってお答えすることができなかったわけでございまして、その旨を科学技術庁のほうに進達いたしたわけでございます。
  393. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 そこで、これは私がいろいろと考えましていま書いて持ってきたのですが、この阿賀野川の流域の近くについて若干説明しますと、阿賀野川のこの渓谷というのは昔から非常に急流で、この辺が阿賀野渓谷で名所であります。そして非常に水が早かった。そのために、ここが鹿瀬ですが、ここで少々水銀を落としても、この流れが急でありますから問題がなかった。ところが、これは電発、それから東北電力、この辺に大体二十八年から二十九年、こういうところにダムがだいぶんできたわけです。こっちも二十七、八年くらいにできております。そのために、この渓谷はもう名所でなくなってしまった。聞くところによると、昭和の初めなんかは大川にはマスがずっと上がってきて、この辺に若松市があるのですが、その付近で大きなマスがとれたということを考えますと、このダムができて治山治水が完全になってきたところが、今度はこの辺は水がゆるやかに、そしてよどむようになってきて、そのためにここから出てくるところの水銀が沈でんするようになった。それを魚が食べるようになって、そして大きくなってそれを人間が食べた。大体期間的に言いますと、地震があったのは三十九年ですか、この水銀中毒、イタイイタイ病の問題も、これから調べてみますと、食べてすぐに出るものじゃない。大体三年か四年か五年というような潜伏期間がある。または蓄積されてくる期間がある。魚もそういうことになる。そういうことを見ますと、ここの流れがゆるやかになって、そして水銀がたまった。そしてそれが原因で三十九年に多発してきた、こういうように一つ考えられるわけです。そこで、こういう学説はありませんけれども、私の申し上げたいのは、今後この一本の川でもダムをつくるときは、通産省関係、あるいはこちらのほうには農業用水があるわけですが、せきとめておりますので、これは農林省、それから川のほうは建設省、これらはよくお互いに計画を話し合ってやらないといけない。昔は川は自然にきれいになった。ところが、いまはよどんできれいでなくなった。また、聞くところによると、この辺は水量は変わらないようだけれども、建設省の試験の結果では水量は変わっていませんというけれども、現実に見ますと、非常に水量が少なくなっている。こういうことを考えるときに、やはり各省がばらばらでやらずに、治山、治水は、いろいろな問題を全部各省が寄って総合計画をすべきである、こういうように私は提案したい。時間がありませんから、簡単にそれについてお答えいただきたいのですが、まず水資源の一番大事なところを握っている経企庁の水資源局長から……。
  394. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 いま阿賀野川の事件につきまして、先生の図解入りの御説明、非常に興味深くお聞きしたのですが、ダムにつきましては、先生ただいま御指摘のとおりの電気のダムであれば電源開発法、また農業のダムなら土地改良法、あるいはその他特定多目的ダム法等によって、建設省が主管としておやりになるものもある。それぞれの法規、法令によりますというと、およそ一つのダムをつくる場合には、先生ただいま御指摘のように、その水流、水系全体に対しまして相当大きな影響を及ぼすことになるわけでございますから、必ず電気をやる場合でも河川の治水方面を忘れてはいけない、また農業方面を忘れてはいけない、こういう意味でまず各関係大臣に相協議しますとともに、それぞれ専門の各分野の先生方のお集まりをいただいております審議会にかけることといたしまして、そういう悪い影響が多方面に出ないように心してまいっておる。これはそれぞれの根拠法がございますが、すべてこれが一貫した一つの考え方、思想ではないかと思っております。  簡単でございますが、現行法はそういう仕組みになっておりまして、今後ともそういう点につきましては、十分悪影響のないように心してまいりたい、かように思っております。
  395. 佐々木四郎

    ○佐々木説明員 農業関係の川におきます水銀の状況は、非常に古くから言われておりますが、新しいダムをつくる、あるいは河川に何らかの開発を行なう場合に、古くからある農業用水にはマイナスの影響を起こさないように慎重なる検討、計算等を行ないまして、そういうものが納得されない限りには開発がなかなかできていかない。いままですべての地点におきまして、そういう調整された結果において仕事がされておる、こういう実情でございます。
  396. 橋本道夫

    橋本(道)説明員 従来厚生省におきましては、水量の問題と国立公園の問題、ダムの問題に関連してまいりましたいろいろの経験を見まして、公害という観点から、非常に河川の形態が変わるということを頭に置いて今後注意をいたしたい、そういうぐあいに思っております。
  397. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ダム建設によりまして水力開発をいたしますに際しましては、先生も御承知のように、相当広範な影響がございますので、特に関係各省との意見の調整をとる必要がございます。この点は、先生が御指摘ありましたとおりだろうと思います。私どもといたしましては、電源開発促進法によりまして水力開発——火力も入りますけれども、特に大きなダムをつくります水力発電所、この建設に際しましては、電源開発調整審議会の議を経まして、十分ここで農林省関係のかんがい排水にどのような影響を与えるか、あるいは先生の先ほど御指摘がありましたように、水路によりまして魚族にどのような影響を与えるか、あるいは水温の変化というような問題もありますし、あるいは流量に対する影響というような問題もございますので、そういった点を関係省とこの審議会の場を通じまして——もちろんこの審議会だけではございません。審議会にかけますときには、事前に関係各省とも十分そういった諸点につきまして打ち合わせをしまして、その上でさらにこの審議会にはかりまして、各方面の諸問題につきまして遺憾のないような対策を講じまして、その上で工事計画を認可するというような扱いをやっておるわけでございますが、ただいま先生御指摘がありましたように、なお私どもとしましては影響が多方面に及んでおるというような性質の発電所の建設につきましては、おっしゃいましたような趣旨を体しまして、今後十分関係各省と連絡、協議を尽くして善処してまいりたいというように考えております。
  398. 渡辺隆一

    ○渡辺説明員 先ほど先生からお話がありました流量の点につきましては、私ども河口から約三十二キロの馬下という地点で測量いたしておりますが、そこの調査の結果では、場所は先ほど先生がおっしゃいましたように、だいぶ下流でございますが、そこの地点では、ダムをつくる以前と比べましてそう大きな差はないということになっております。なお、この点につきましては、さらに今後もいろいろ調査をさせていただくようにしたいと思います。  それから計画面その他での総合的な観点からの調整につきましては、建設省といたしましても、河川管理者という立場から、建設省でつくります上流の治水、利水のダムはもちろんでございますが、その他の発電のダム等も加えまして、計画面あるいは管理面から、各省とも十分今後とも協議していろいろやっていきたいというふうに考えます。
  399. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 最後に、通産大臣に、いまこの問題をなぜ引き合いに出したかと申しますと、昭和電工の鹿瀬工場ですか、ああいうものがあって、あそこから汚水が出ていたとはよもやみんなわからなかったと思うのです。これを一つの教訓といたしまして、今後の日本の総合開発に各省が取り組んでいただきたい、こういうように私は思うわけですが、通産大臣、決意をひとつ……。
  400. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 最近、新しい公害がだんだんあらわれてまいりました。それにつけても、川をいじくる際には、関係各省で十分に公害問題等についても協議して、弊害の起こらぬようにしてまいりたいと思うわけであります。
  401. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 最後に、富山県のイタイイタイ病の原因については、すでに厚生省がこの四月の初めに結論を出すといっております。人体障害については、聞くところによると、これは厚生省がいまやっておる。通産省はなぜ六百万もかけてそういう同じようなことをやるのか、この間の商工委員会で聞きましたところが、それは流出経路を研究しておるんだ、そして今後の予防のためにやっているんだ、こういう答えがありましたが、通産大臣、人体の障害についての厚生省の結論が出れば、これは通産省としてお認めになりますか。これをひとつお聞きしたいと思うわけです。
  402. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 医学上の結論につきましては、これはもちろん認めます。それから、将来の予防等のために必要でございますので、さらに水質調査あるいは文献調査の結果によりまして、理工学的見地から、いろいろな検討を行なっていきたい。そしてこれも十分に厚生省と緊密な連絡をとって公正妥当な結論を出す、こういうことにつとめるつもりでございます。
  403. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 それではよろしくお願いをしておきまして、これで私の質問を終わります。
  404. 植木庚子郎

    ○植木主査 次は内藤良平君。
  405. 内藤良平

    内藤(良)分科員 大臣もおられますので、ちょっと一言だけ大臣から御答弁いただきたいと思いますことは、ことしの四十二年度の予算編成で、地域格差の是正というようなことばはないのですよね。今度の重点施策の重点という中には、地域格差の是正とか解消ということばがないのです。私は秋田の出身ですけれども、この地域格差はまだまだあると思うのでありますけれども、これを是正するために大臣もひとつ御奮闘願わなくちゃならぬと思うのでありますけれども、一言お答え願いたいと思います。
  406. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私は、あなたのすぐ背中合わせの岩手県でございますから、全然同感でございます。
  407. 内藤良平

    内藤(良)分科員 それじゃ、そういうことでよろしくお願いしたいと思います。  私が聞きたいのは新産都市のことで、秋田湾地区ですが、これは一番最後に新産都市の指定になりましたが、これの工業用水の問題と、白竜号、いわゆる国内の地下資源開発のための、白竜号という特別なバージといいますか、機械があります。あの関係ですね、聞きたいことはこの二つです。  まず最初に、新産都市の関係で、秋田湾地区は着々やっておりますが、工業用水の建設事業につきまして地元からも強い要請があったはずでありますけれども、通産当局はどういうぐあいに取り上げられておりますか。経過なり見通しなり、ひとつお知らせ願いたいと思います。
  408. 熊谷典文

    ○熊谷(典)政府委員 全体的に申し上げますと、工業用水の確保の予算は、四十三年度の案としましては六十二億になっております。その中で継続事業が三十四地点、それから新規事業が六ヵ地点ということになっておりまして、その中に、秋田は重要性がございますので、新規事業として追加いたしたわけでございます。
  409. 内藤良平

    内藤(良)分科員 それでは、これは取り上げられて進むということでわれわれ理解してよろしゅうございますな。——そういうことでわかりました。  それから次に、地下資源の開発のこと外ございますが、昨年石油開発公団が発足いたしまして、地下資源開発にまた拍車をかけることになったわけです。その際、海外のことだけではなくて、国内の地下資源にもまだまだ大いに開発すべき点があるということが、大いに論議されたと思います。そこで、日本海の大陸だなを掘さくするため、現在白竜号という特殊な機械がございますが、これに次いで第二の白竜号をつくったらどうかという声があるわけであります。この点については、秋田のほうからも強い要請が出ておると思いますが、これの経過などもひとつお知らせ願いたいと思います。
  410. 両角良彦

    ○両角政府委員 第二日竜号の建造計画につきましては、ただいまお話がございましたように、秋田沖を含みます日本海の大陸だなの開発の重要性にかんがみまして、石油開発公団におきましては、その業務の一つといたしまして、かかる大型の掘さくバージを将来計画として建造いたしてまいりたいというのが基本的な方針で、その方針にのっとりまして現在までいろいろ検討を加えてきております。ただ、この点につきましては、第一に、四十三年度におきまして秋田沖についてあらためて本格的な物理探鉱を行ないまして、ボーリングを行なうに足る地点を見つけるということ、また第二に、第二日竜号のような大型の機械はきわめて多額の経費、約三十億円以上を必要といたしますので、秋田沖のみならず、他の地域においてもこれが活用が可能であるという見通しを十分つけるということ、この二つの前提がととのいますのを待ちまして、建造の具体化に着手をいたしたい、こういうふうに考えております。
  411. 内藤良平

    内藤(良)分科員 お話は、まことにそのとおりだと思います。ただ、これはあれなんでしょうね、いま白竜号がありましていろいろやっておりますけれども、あれだけでは手不足だ。そこで第二のものが必要ではないか。それだけ、また日本海の大陸だなにも見込みのあるところがある。これはいろいろ地震か何かの探知でやってわかっているわけですね。手不足だからやってもらいたい、こういうことでお願いしておることだと思いますが、いま、他の方面と併用して効果をあげる、というようなお話がございましたが、それは海外の開発のことですか。
  412. 両角良彦

    ○両角政府委員 第二日竜号の将来の活用地点といたしまして予想されまするのは、たとえば出光興産が現在行なっておりまする日本海大陸だな開発計画並びに今後シェル石油が三菱グループと共同して行ないまする壱岐、対馬を中心とする日本海大陸だな開発計画、これら日本海を中心とする各種の計画の中でいろいろと活用の余地が出てまいると思います。さらに可能ならば、インドネシア並びにカリマンタン沖の海底油田の開発というものにも活用の可能性があると考えております。
  413. 内藤良平

    内藤(良)分科員 そこで、私いまのお話もわかりますけれども、私の聞きたいのは、どっちつかずになるのじゃないかということなんですね。秋田は国内でも石油関係、ガス関係の資源は豊富と思われておりまして、それだけ期待も多いわけであります。開発にもスピードを加えてもらいたい、こういうことで第二日竜号という名前が出ておるわけでありまするが、いまのお話は非常に慎重で、効率をあげようということで国内もやる、日本海もやると同時に、ボルネオ方面にも行こう、こういうお話でしょう。それでは、私どうも少しく危惧の念を持つのは、別の角度から、じゃ、こういうことはどうでしょうか。第三次石油関係の五ヵ年計画を再検討するというようなことがいわれておるというふうに聞いておりますけれども、その内容はどういうことなんですか。どういうぐあいになっているか、これをお話し願えますか。国内の開発から見て前進なのか、後退なのか。
  414. 両角良彦

    ○両角政府委員 石油及び天然ガスの国内におきまする五ヵ年計画はもとより、現在まで続けてまいりましたわが国内におきまする原油及び天然ガスの開発努力というものも、将来当然その方向で継続をいたしてまいりたいということが前提になっておりまするが、ただ、周囲の状況と申しますか、客観情勢では、海外からのエネルギーの輸入その他海外原油開発に対するわが国の積極的な進出といった新しい事態も入ってきておりますので、これらの新事態を十分勘案しながら、しかも、わが国の国内資源を有効に開発をしていく、そのための具体的な計画というものを新しい見地から練り直してみたい、こういう見地で現在検討を加えています。
  415. 内藤良平

    内藤(良)分科員 ぼくらしろうとですが、率直にいいまして、やはり国内の開発という面から見まして前進なのか、後退なのか、そこら辺はどうですか。率直なところ、簡単でいいですから……。
  416. 両角良彦

    ○両角政府委員 私どもは、常に前進だけを考えています。
  417. 内藤良平

    内藤(良)分科員 そのことばで一応わかりました。ただ、私危惧するわけではありませんが、ことしは、石油開発公団に対する政府の出資金は六十億になりました。ところが私の聞いておりますのは、海外関係の海洋掘さくに意欲を燃やしている会社が、数えてみると八つくらいあるのですね。これは局長さんおわかりでしょうが、アラビア石油、北スマトラ石油、これはすでにあるのですね。それからアラスカ会社、丸善関係のやはりアラスカ進出、九州石油ですか南カリマンタン、アブダビ石油、これはペルシャ、今度の海洋掘さく会社、いわゆる事業本部という名前、その前の石開ですか、海外へ行こうという会社が八つくらいあるのですね。大体こんなものじゃないですか、そうでしょう。これが海外でやろうということで石油開発公団の資金というものを期待しておるのじゃないですか。そうしますと、そっちのほうへずっと金が行ってしまいますと、いまの国内の開発、第二日竜号なんというものは、やりたいという気持ちはあるけれども金はないということになるおそれはないのですか。そこらはどういうぐあいになりますか。
  418. 両角良彦

    ○両角政府委員 石油開発公団は、その業務といたしまして、ただいまお話がございましたような海外における石油の探鉱に必要な資金の供給ということが第一の業務でございますが、あわせまして、内外を通じまして石油の探鉱に必要な機材、設備等を保有し、またはこれを貸与する業務を営むことになっております。したがいまして、四十三年度六十億円の産投出資をお願いしておるわけでありまするが、その中の一部は石油開発公団の設備の充実ということに当然充当されると考えております。したがって、海外開発が非常に活発になるということと並行いたしまして、石油開発公団の保有する設備の充実を進めてまいりたいというのが私どもの考え方でございます。
  419. 内藤良平

    内藤(良)分科員 むずかしく考えないで、私は端的に聞きたいのですが、こういうぐあいにいろいろ海外の開発をやろうとしておる会社があるわけでしょう。それで公団から資金を借りたいという気持ちがあるわけでしょう。そういう中で、ぼくたち秋田で希望しておるような、第二日竜号のようなものをつくるということが可能かどうか。できれば、それはつくってもらいたいわけですけれども、そこらは、海外にも金を出されるのに、国内で第二日竜号のようなものを確実につくれるかどうか、そこのところですね。
  420. 両角良彦

    ○両角政府委員 第二竜号の建造方針が確定いたしましたら、当然そのために必要な資金は公団として確保いたします。
  421. 内藤良平

    内藤(良)分科員 それは、大臣もおられますけれども、六十億という程度の金で間に合うのですか。
  422. 両角良彦

    ○両角政府委員 先ほど申しましたように約三十億円の資金が必要でございますので、一年間でこれをつくるということは困難でございます。しかしながら、設計工事等に相当の期間がかかりまする設備でございますので、二ヵ年計画、三ヵ年計画をもって建造をいたしたいと思います。
  423. 内藤良平

    内藤(良)分科員 それから、これも仄聞するところでございますけれども、昨年の公団に対する政府出資は四十億でしたか、しかし、事実上はあまり使われてないというような話を聞いておりましたが、これはいかがですか。
  424. 両角良彦

    ○両角政府委員 昨年度の四十億につきましては、この資金の分配をきめまする基本原則として業務方法書というものを現在石油開発公団と私どもとの間で十分練りまして、将来ずっとこれが適用になるものでございますから、万全を期した案を検討してまいりまして、ようやくめどがつきましたので、これからきわめて短いうちに資金の分配が行なわれると考えます。
  425. 内藤良平

    内藤(良)分科員 そうしますと、昨年の四十億とことしの六十億で、百億くらいはことしは使えるのですか。
  426. 両角良彦

    ○両角政府委員 さようでございます。
  427. 内藤良平

    内藤(良)分科員 そういうぐあいに考えてまいりますと、ことしでも白竜号には着手できる場合もあるというぐあいに理解していいわけですね。どうでしょうか。
  428. 両角良彦

    ○両角政府委員 白竜号建造方針の確定を待ちまして、四十三年度予算におきましても、公団としては一部をこれに充当することは可能であると考えます。
  429. 内藤良平

    内藤(良)分科員 くどいような話を何べんも申し上げましたが、結局は、第二日竜号のようなものをつくっていただきまして、ざっくばらんなところ、秋田県沖にもまだ資源の見込みがあるところがあるわけであります。海中からガスがぶくぶく出ておるようなところもあるのでありますから、そういうところへどしどし掘さくをやっていただきたい、こういうことでありますが、ただ、今度の計画ではどのくらいの深さまでやれるのですか。そこら辺の設計はどういうぐあいになっていますか。
  430. 両角良彦

    ○両角政府委員 第一白竜号は水深三十メートルの能力でございますが、第二日竜号は少なくとも五十メートル程度の能力は持ちたい。なお、これを現在の固定脚式のものでなくて、より移動ができ、かつ、より深いところを掘れる浮上式の新しい方式を採用したらどうかということで、技術的な面からいま検討を加えております。
  431. 内藤良平

    内藤(良)分科員 そうしますと、現在の白竜号のように足が出て海底に固着してやるというのではなくして、船のようなかっこうの、そういうものですね、浮いたままでやる……。
  432. 両角良彦

    ○両角政府委員 さようでございます。
  433. 内藤良平

    内藤(良)分科員 そうですか、わかりました。白竜号関係もだいぶわかってまいりましたので、白竜号関係を終わります。  時間もなくなってまいりましたけれども、この件をひとつお聞きしたいと思っております。  通産大臣の諮問機関で、石油及び可燃性天然ガス資源開発審議会というのがございますね。これは最近どのように活動をされておるのか、最近の状況なんかをひとつ……。
  434. 両角良彦

    ○両角政府委員 石油及び可燃性天然ガス資源開発審議会は、先ほどお話のございました国内におきまする石油及び可燃性天然ガス開発の長期計画の策定をいたすという仕事が一つございます。さらに、天然ガスの探鉱補助金等を支出いたしますに適当な探鉱計画というものについて審査をお願いいたしております。さらに今後は、わが国の国内における石油及び天然ガスの開発政策の基本的な方針あるいは考え方というものについて、当審議会において御検討願うことを考えております。以上のような業務をこれからこの審議会にお願いいたしたいと思います。
  435. 内藤良平

    内藤(良)分科員 一つ要望だけ申し上げておきますが、少ない金を政府で出しまして地下資源開発をやられる。いろいろ海外のほうにおいても資本家の皆さんは意欲的で、いろいろ新会社を持ってやられておる。それで政府の金もそっちのほうに引っぱられるのではないか、こう心配するわけでありますが、私たちは、何とか国内の資源開発に一やはりせっかく石油開発公団もできたのでありますから、しかも、深く掘った場合はまだ国内にもあるのではないか、イタリアの例を取り上げるまでもなく、もう少し深く掘った場合は国内資源もまだ開発できるのではないか、こう思われますので、どうかひとつ国内の地下資源開発につきましては今後とも十分御努力願いたい。海外の開発だけに引っぱられないように、適当にバランスのとれるようにひとつお願いをし要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  436. 植木庚子郎

    ○植木主査 御協力を感謝いたします。  次は、加藤清二君。
  437. 加藤清二

    加藤(清)分科員 きょうの夕刊を見ますと、まさに、金融パニックの前夜のようでございます。ドル、ポンドの大旋風のようでございます。本件に関しましては、総括質問におきまして、すでに隣におられます田中委員、私等々が質問を試みたところでございまするが、その質問のときの予想通りに進んでいるようでございます。この際、政府の態度を宣明すると同時に、日本円をいかにして守り、日本の経済をいかに守るかという問題について検討を深めたいと思うのでございます。  したがって、この件については、その専門でいらっしゃいまする田中委員にお願いしたいと思います。
  438. 植木庚子郎

    ○植木主査 田中武夫君。
  439. 田中武夫

    田中(武)分科員 御了解を得まして、加藤委員の質問に関連をして、国際金融局長をはじめ、大臣を含めて二、三の政府委員に若干の質問をいたします。  言うまでもなく、私は関連質問でございますので、加藤委員の持ち時間内で行なうことを最初から申し上げておきます。そこで、国際金融局長にお伺いいたしますが、昨日第二分科会で、私は、貴金属特別会計の問題についてあなたにお伺いいたしました。その特別会計によると、本年金地金十四トンを輸入するということになっておる、その十四トンはどこから買い入れるのか、また、十四トン買い入れる自信はあるかということに対して、あなたは、それはロンドンから買い入れます。十分自信はございますと答えたわけです。ところが、本日の夕刊、もう御存じと思いますが、ロンドン金市場は停止をいたしました。こういうような状態の中にあって、なおかつあなたは、きのう私に対して答弁をなさいました答弁を変えるという気持ちはないか。あくまでも、ロンドンから、自信を持って十四トン買うと明言せられますか。
  440. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 来年度貴金属特別会計で十四トンの金を買うことになっておりますが、これは、海外市場で買うということであります。海外市場の一番大きいところがロンドンの市場でございまして、ロンドン市場には南アフリカの産金が売られておりますが、そのほかの産金国の金もだいぶ売られておりますパリ市場とかチューリヒ市場とかいろいろほかに市場がございますが、これらの市場の金というものは、究極するところロンドンから流れておる。そういう意味におきまして、昨日ロンドン市場において買うということを申し上げました。それが、日本で買う場合に、いま締まっておることは御承知のとおりですが、ついこの間まではロンドンで買うのが一番安かったということであります。  そこで、今後ロンドン市場がどうなるかということであります。これはイギリス政府の発表は、十五日をバンクホリデーにして休日にする、来週以降のことは全然わかっておりません。いつまたロンドン市場が再開されるかわかりませんということが一つ。とにかく、一年に千数百トンの金が産出され、市場に回っておるわけです。その千数百トンの金のうち、日本として当然しかるべき市場において十四トン程度のものは買えるだろう、そういうふうに考えております。
  441. 田中武夫

    田中(武)分科員 結局は、長ったらしい答弁は時間の関係があるから簡単にしてもらいたいが、ロンドンから買うと言ったその答弁には変わりありませんかと聞いておる。したがって、ありませんかと聞いたら、ありませんならありませんと答えたらいい。ありますか、ありませんか。きのうの答弁のとおりかどうかと聞いておるのです。
  442. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 先ほど申し上げましたように、世界の産金の流れが……。
  443. 田中武夫

    田中(武)分科員 いや、そうじゃない。きのうの答弁のとおりかどうかと聞いているのだ。そのとおりロンドンで買えるか、あなたロンドンで買う自信があるときのう言ったのですよ。何なら議事録を見ましょうか。
  444. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 ロンドンで買えば買えます。
  445. 田中武夫

    田中(武)分科員 もうすでに停止されておる。この停止が何年も続くとはぼくは言っていない。すでにあなたのきのう言ったことは、見通しがなかったことになる。さらに、世界において新しい産金が幾らある、こういうことを言っております。その八〇%を産出しておるところの南アでは、金の価格を上げない限り売らないと言っておるじゃありませんか。それでもあなたは予定どおり千数百トンの金が今後も出回るという確信を持っておりますか。
  446. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 南アフリカの国際収支を均衡させるというか、していくためには、どうしても南アとして金を売らざるを得ない、でありますから、必ずや南アは金を売るであろうと思います。その金がどこへ売られるか、それは今後の問題としてあるいは問題があるかもしれません。しかし必ず売るであろう。したがって、産業用金の供給というものは依然として続くであろう。その中において、日本としては十四トン程度のものは買えるのではなかろうか、そういうことを申し上げておるわけであります。
  447. 田中武夫

    田中(武)分科員 そういたしますと、きのうあなたは、ロンドンで買う自信があると言ったのですよ。それが、ロンドンというのは海外のいずれか、こういうことに訂正ですね。
  448. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 もし私がロンドンだけと申し上げたとすれば、それは海外ということで御了承願いたいと思います。
  449. 田中武夫

    田中(武)分科員 もちろん、南アは主たる生産が金とダイヤモンドである。したがって、それをどこかに売らなければ南ア自体の国際収支も持たないことはわかる。しかし、現に金の価格を上げない限り売らないと言っておるのですよ。それはいつかは売るだろう。しかし、いま当分の間そんなに金が出回るとあなたは思いますか。それからさらに、これはまあ、一ぺん言ったことを否定したような点もありますが、ロンドンでは売らないと言っておるのですよ。それであなたはロンドンへ行って十四トン買って来ますね。もし来年の予算委員会において、あなたロンドンへ行って買ってこなかったら、あなた責任とらすよ、いいですね。
  450. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 先ほど申し上げましたとおり、ロンドンだけと申したとすれば、それはちょっと言い過ぎでございまして、海外から買います。買う予定でございます。  それから、南アがロンドンでは売らない、パリでしか売らないというようなことは一部新聞にちょっと出ていましたが、すぐまた否定されております。実際の問題として、南アがどこで売る気持ちを持っておるのか、私どもまだ把握いたしておりません。
  451. 田中武夫

    田中(武)分科員 きのう私は、今日のこの状態を言って、そうして、まず金プールの金売却が停止せられるのではなかろうか、次にはドル、金の交換が停止せられるのではなかろうか、そうして、ついに来たるものはドルの切り下げといいますか、すなわち、金の価格の値上げである——そういうことはございませんと、あなたは答えたのですね。ところが、一日にしてすでにこの状態なんです。まさに金のパニックなんです。あなたは、まだきのうの答弁をそのまま堅持せられますか、いかがです。
  452. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 私、昨日具体的にどういうふうに申し上げたかよく覚えておりませんが、昨日のファウラー、マーチンの声明にありますように一オンス三十五ドルというのは一向変える意思はない、そのために今度関係国を国際会議に集めて協議するということを発表いたしております。
  453. 田中武夫

    田中(武)分科員 こうなると、手を打てば打つほどそれが逆に、裏目に出るのが世の常なんです。あすワシントンに金プール七ヵ国会議を招集したときに金プールの交換を停止せられるんだということで、ますます買いがあおられると思うのです。いかにだれが何と言おうとも、言えば言うほど、アメリカのあせりとなってドルの危機を招き、金のラッシュを招くのです。こういう状態になっても、まだアメリカのどなたがこうおっしゃったから心中いたします。というのが大蔵省の態度ですか。
  454. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 今日の金投機の原因がどこにあるのかということは、これはやはり何といってもアメリカの国際収支が均衡を回復しない、十数年も赤字を続けてきたということに根本の原因があるかと存じます。したがって、金に対するスペキュレーション、ドルの不安というものを根本的に解決するには、何といっても、そういう国際収支均衡回復の努力が具体的に出てこなければならない。それが今日の金不安の直接のというか、根本の原因だと思います。それについては、田中委員承知のように、財政金融政策の面においてアメリカの努力が不十分だというのがヨーロッパ側の批判であり、大方の批判であると思います。それに対して、アメリカとしては、それにこたえるために、公定歩合の引き上げを行なう、財政政策の面においては増税を行なう、その他のことを考えているようであります。その辺の努力がどこまで具体化するかという問題があろうかと思います。それからもう一つ、直接的な不安原因の一つは、田中委員承知のアメリカの金法定準備の問題でございます。これは流通通貨に対して二五%という金を持たなければならない、それを廃止するのかしないのかということが、この一月以来たなざらしになっていて一向はっきりしない。この問題に関しまして下院のほうは……(田中(武)分科員「それはわかっている」と呼ぶ)上院のほうの審議はさらにおくれて、ようやく昨日ですか、通っている。ですから、それによって金不安の原因の一つは除かれた。いま残っておる大きな問題は、何といっも、アメリカの財政金融政策が今後どうなるかという問題でございます。それについて、いま申し上げましたように、財政がいかなければ公定歩合をもっと上げて、もっと金融も引き締めなければならないということもありますが、いまのところは、アメリカの政策は、公定歩合を〇・五%上げる、あるいは財政のほうでやるということのようでございます。それを各国が注目して待っているわけであります。
  455. 田中武夫

    田中(武)分科員 わかったことはくどくど言わなくていい。時間つぶしの答弁はやめていただきたい。簡潔に願います。  私は次に、こういう状態はなぜ起こったか、その原因を聞くつもりであったのですが、あなたは言った。いろいろありますが、結局はアメリカの国際収支が不安であるから、こういうことをあなたは言ったと思います。そうするなら、そのアメリカの国際収支が不安である、いわゆる赤字が続いておるというこの原因は何か。あなたはいま増税だとかなんとか言った。しかし増税はできないのでしょう、アメリカは国内増税はできないのですよ。だからこそ、輸入課徴金にということで、いま大問題になっておるのだよ。そういうことをいまここで議論をしておると時間がかかるから、問題は金だけに、この事態だけにしぼっておるのですよ。あなたは、それなら原因はいつ除かれるか、その原因を除くためには一体どうしたらいいのか、わかりますか。ことにベトナム戦争、これがアメリカの国際収支の不安の大きな原因なんですよ。あなたはそんなことを言って、ベトナム戦争をやめるようにワシントンへ行って話をしてきなさい、できますか。そういう答弁をするものじゃないですよ。  その原因は何か、その原因に対するあなたの見通しはどうなんです。いつごろになればアメリカの国際収支は改善せられるであろうと国際金融局長は考えておるか、お伺いします。
  456. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 アメリカの国際収支の赤字原因はどこにあるか、これは非常にむずかしい問題だと思います。それはベトナムの軍事費の問題海外における投資の問題、貿易収支の黒字が減ってきた問題、貿易外収支の問題、いろいろございます。しかし、そのいろいろあります中で、一つアメリカ側でやっておりますのは、ジョンソンがこの一月に発表いたしましたいろいろの措置で、資本収支の赤字を削減する、それからもう一つは、全体の貿易収支を改善する、景気の調整をやっていくということでございまして、これは先刻からいろいろ申し上げております財政金融問題……(発言する者あり)ベトナム問題に対しましては、これは私から申し上げるのはちょっといかがかと思いますが、ベトナムの……
  457. 田中武夫

    田中(武)分科員 つまらぬことを言ってはいかぬですよ。あなたは、こういう状態は長続きしないと言ったのでしょう。そんなら、いつアメリカの国際収支は改善せられるという見通しをあなたは持っておるかを聞いておるのです。
  458. 植木庚子郎

    ○植木主査 柏木君にちょっと注意しますが、なるべく簡潔に要領よく御説明願います。
  459. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 私は、国際収支の赤字は何かというお尋ねですから、私が考えております点を申し上げました。赤字がいつ直るか、これはなかなかむずかしい問題だと思います。
  460. 田中武夫

    田中(武)分科員 あなた、こういうゴールドラッシュ、金パニック、この状態は一時的のものだと言うたでしょう。そうして、やがてもとに復すると見ておるから、先ほどの答弁が出たのです。そうじゃないですか。それならば、その原因はアメリカの国際収支の不安だ、それじゃ国際収支不安がいつごろになれば解消できるか、この状態が戻るのか、それを言わなければあなた答弁にならぬでしょう。
  461. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 アメリカの国際収支の赤字は十七年間続いております。だから、その解決はなかなか時間がかかると思います。
  462. 田中武夫

    田中(武)分科員 それならば、この状態はまだ続くと見るべきじゃないですか。もちろん金プールの会議だとか、いろいろ国際協力によってドル防衛ということをやろうとする、しかしながら、もうフランスははずれていますよ。イタリアがのくと言っておりますよ。EECは全部批判的なんですよ。こういうものを、あなたこの状態が、今日ロンドンで起こっているような状態が一時的のものであると言い切れますか。それには原因はこうだ、この原因は何月ごろになれば、あるいは幾ら先になればのがれるから、こうなりますという答弁でなければ、あなた答弁になりませんよ。
  463. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 アメリカの国際収支が完全に均衡を回復するまではスペキュレーションはおさまらない、私はそうは思いません。アメリカの国際収支の均衡が回復すれば、それはスペキュレーションを押えるには一番効果的でありますが、むしろ、アメリカの国際収支がいずれは均衡するであろうという見通しが出てくれば、そこにドルに対する信頼が出てくるという問題かと思います。
  464. 田中武夫

    田中(武)分科員 それはあなたの考えではいつごろですか。
  465. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 それはやはりアメリカの今後の施策がうまくいくということが必要だと思います。
  466. 田中武夫

    田中(武)分科員 そのいくかいかぬかの見通しはどうですか。そして、いつごろかということがあなたなりの答弁ができなければ、先ほど来のあなたの——私の言っている三つの段階、金。フールの金交換の停止、ドル・金の交換停止、そして最後にはドル防衛ならず、ドルの平価切り下げ、すなわち金値上げ、こうなると言っておるのに、あなたは、ならないと言うのでしょう。それならばその原因は何かというと、アメリカの国際収支の不安だと言っておる。それでは、アメリカの国際収支の不安が、少なくともこの状態を回復さすような状態になるのは、たとえば半年先になる見通しですとか、あるいは三ヵ月先ですとか言わなければ、あなたの答弁にならぬでしょう。そうじゃないですか。
  467. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 それは、なかなか予想はむずかしいと思います。
  468. 田中武夫

    田中(武)分科員 それならば、アメリカのだれが最後の金の一オンスまで守るからドルは守り切りますとか言ったということだけで、あなたここでそれを言ったってだめですよ。アメリカのだれそれがどう言ったからといって、それだけを頭から信用して、あなたは大蔵省の国際金融局長として日本における国際金融の秘策を立てるのですか。自主性が一つもないじゃありませんか。そうでしょう。アメリカのどなたがこう言ったから金は守られますということでは、まさに、よく言われているドルのかさである。ドル、円の心中体制を国際金融局自体が進めておるのじゃないですか。そんなあやふやなことで国際金融の政策が立ちますか。責任者としてそんなことができますか、あなたどうなんです。アメリカのだれそれが言ったとか、あす金プール七ヵ国会議が招集されたからといって、これは金停止のことを相談するのかもわからぬですよ。しかも、私が先ほど言っておるように、こういう状態になると、よかれと思ってやったことがますます裏目になる。だから、ますますそういう心理状態が幾何級数的にふえてきて、ますます混乱するのがパニックの原因じゃないか、そうじゃないですか。あなたがアメリカのだれそれがこう言ったからということだけで守れますか。あなた、そんな見通しのないことで国際金融局長としての仕事ができますか。
  469. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 それはファウラー、マーチンが言ったからおさまるという問題じゃありません。それは何といってもアメリカの力のみならず、関係国の協力を得てやるという国際協力の問題が一つと、何といってもアメリカが口だけでなく、現実に国際収支をよくするというその実績を出すということによると思います。
  470. 田中武夫

    田中(武)分科員 あなた、先ほど言ったことと変わったでしょう。きのうから言っておるのは、彼がこう言ったからということをもって答弁したでしょう。ところが、だからそうじゃと言うと、そうじじゃないと言う。根本的な原因は何か、アメリカの国際収支だ、それじゃ、アメリカの国際収支が黒字になるとは言わぬけれども、こういう状態を避けるだけに改善できるのは一体いつごろだという見通しを持っておるのかと言うと、それも持たぬと言うでしょう。そして各国がアメリカのドル防衛に経済協力する、そのことを前提としておるのです。ところがフランスははずれた、イタリアも逃げ出そうとしておる。そういう状態になって、なおかつ国際協力云々と言うならば、あなたは一々回って各国の大蔵大臣でも説き伏せてきなさい。アメリカの国際収支が改善をされる見通しがなく、経済協力に対する見通しを持たない、そういうことで国際金融局長としての国際金融に対する政策が立ちますか。きのう言うたことが、きょうの夕刊では全然変わっておるじゃありませんか。その日暮らしじゃありませんか。きのう言ったことががらりと変わっておる。それじゃ、きのうの議事録を見て、あすもう一ぺん予算委員会においてあなたに質問いたします。いいですね、議事録を見てきなさい。主査、どうしてくれますか。
  471. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 私は議事録を手元に持っておりませんから……。
  472. 田中武夫

    田中(武)分科員 それじゃ、議事録ができてからやろう。
  473. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 四十二年はロンドンで買いました。四十三年度は……。
  474. 田中武夫

    田中(武)分科員 金をどこで買うかなんという話は済んでおる。ドル防衛なるかどうかの問題なんです。金価格が引き上げられるのじゃないかということに対することなんです。金をどこから買うかということは議論が済んで、ここまで来ておるのですよ。答弁にならぬ。——主査、お聞きのように、金をどこから買うかということは最初の議論なんです。それは済んだのです。そして、いまこういう金パニックのような状態が起こった原因は何か、その原因が除去せられるのはいつごろなのか、どういう見通しかということを聞いておるのですよ。しかも、そのことに対してあなたが答弁したことは、きょうの夕刊を見ればがらり変わっておるのですよ。だから、その日暮らしの政策しか立てられないじゃないかと言っておるんだ。そうでしょう。それをきのうの答弁と違わないということであるならば、議事録を見て、あらためてあす、もちろん委員会でやりましょうと言っているのです。もう一日分科会をふやすか、あるいはまた本委員会においてやるよりしょうがないじやありませんか。どうケリをつけてくれますか。
  475. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 昨日申し上げたことときょう申し上げたことと、どこが具体的に違うか記憶しておりませんが、基本的に、ドルの不安の問題は、金スペキュレーションのどこに原因があるかということにつきましては、ただいまいろいろ説明したとおりであります。
  476. 田中武夫

    田中(武)分科員 違います。あなたはマーチンとかなんとかがこう言ったと言うだけですよ。だから、それを信用しているということなんだ。だから議事録を持ってきて、それを突き合わせてやるよりしようがないじゃありませんか。だから議事録を持ってきて、あすあらためて質問します。
  477. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 もし私が、マーチンがこう言った、ファウラーがこう言ったということだけをもってドル不安がないと言ったということであれば、それは言い過ぎであります。
  478. 田中武夫

    田中(武)分科員 そう言ったじゃないですか。きのうは時間の関係もあって、きょうのようにアメリカの国際収支の改善の問題までは議論は出なかったのですよ。原因は何かとぼくは聞かなかった。聞かない答弁をあなたはするはずがない。私はただ、金プール、金売却停止、そうしてドル・金の交換停止、そうして来たるべき最後はドルの平価切り下げ、金の価格引き上げだろうと思う。それをマーチンだとかファウラーのことばをもって答弁しておるのですよ。何べん小首をかしげてみたって、それは出てきませんよ。あなたは頭いいと思ったが、案外そうでもない。おれのほうが記憶力いいですよ。だから、それならそれで議事録を見て、あらためて答弁するということにするのかしないのか、どうなんだ。
  479. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 昨日の御答弁で、マーチンがこう言った、ファウラーがこう言ったということだけで金不安が回復するということを申したとすれば、それは間違いでございます。それはやはり基本的には、いま申し上げましたように、一方ではアメリカの努力、一方では国際金融協力ということによっておさめる問題で、それでやはり基本的には、アメリカの国際収支を基本から直すというところに問題があると思います。
  480. 田中武夫

    田中(武)分科員 きのう私は、原因は何かという質問はしなかったのですよ。したがって、いま言われたような答弁があるはずがない。そこでアメリカの国際収支の改善、これがなくてはだめだと、こう言っておるのでしょう。それではアメリカの国際収支の改善はいつになるか、少なくとも、日本国の大蔵省国際金融局長としては、いかなる見通しを持って対策を立てようとしておるのかとお聞きしておるのですよ。ところが、それは国際協力だとか、アメリカの国内の云々とか言っておっても、それは対策にならぬですよ。増税と言ったって増税できないのです。アメリカが増税できないことは、もうはっきりしていますよ。来たるべき大統領選挙を控え、これに続くところの下院選挙がある。自民党でも、参議院選挙を控えて、選挙向けの公約ができないと言うておるじゃないですか。選挙する政党はどこも一緒ですよ。国内増税ができないから輸入課徴金にたよろうとして、五%、六%にしようということを言っておるじゃないですか。そのためにいま日本は大きな問題を起こしておるのです。それを、まだ国内の増税だとか財政の改善とか言っているが、ベトナム戦争をやめないで財政が改善できるのですか。国際協力とか言うが、フランス、イタリアもはずれてしまって、どこが協力するのです。あるいはまた、ジョンソン大統領の一月の特別教書なんて言うておるけれども、その三十億ドルの節約ができないじゃないですか。そういうことがはっきりわかっていながら、まだあなた何を言っておるのですか。そんなことで大蔵省の国際金融局長がつとまるかと言っておるのだ。どうなんだ。その日暮らしじゃないですか。きのうの答弁がきょうこれだけ変わっておるのですよ。あしたまたどう変わるかわからぬ。そういう見通しを持たずに、しばらくは静観するなんて、なんというおっとりしたことを言っておるのです。これは日銀総裁が言っておるのだけれども、あなたもそういう心境だろうと思うのですよ。そんなことじゃ済みませんよ。したがって、この件につきましては、自後の質問を留保いたします。衆議院の予算委員会の採決前に解決を願います。どうですか。
  481. 植木庚子郎

    ○植木主査 先ほど来の質疑応答を伺っておりますと、きのうの時点においての答弁者の答弁の内容が那辺にあったかということについて、やや正確を欠いているように私は聞き取りました。ついては、その答弁の内容をよく速記録によって調査をし、訂正すべきところあらば訂正する必要があるように思います。また、明日の予算委員会の本委員会において、この問題をさらに質疑にのせるかどうかにつきましては、各党の理事諸君の間において十分御審議を願って、その上でしかるべき方法によって善処するよりほかないやに感ぜられるのであります。つきましては、そういう趣旨においてしかるべく結論をお願いします。
  482. 田中武夫

    田中(武)分科員 ただいまの主査の御答弁、それにおまかせいたします。  そこで、アメリカは〇・五%の公定歩合の引き上げをしましたね。日本から外資が流出するという心配はありませんか。それに対する対策はどうですか。
  483. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 〇・五%の公定歩合の引き上げによって、アメリカの国内金融がその結果いわゆる円シフトが起きるというような事態はいまのところ予想されないと思います。これは一昨年、円シフトと申しまして、外資が出て行ったという現象がかなり出てまいりましたのは、その当時、日本の金利が下がり海外の金利が上がったということが原因になっておったわけでございますが、御承知の今日の引き締め状況のもとにおいては、アメリカにおける〇・五%程度の金利の引き上げによって外資が逃げていくというようなことはないのじゃないかと思います。
  484. 田中武夫

    田中(武)分科員 外資は逃げる心配はない、そういう見通しですね。もし逃げたときには、あなた責任をとってもらいますよ、いいですね。これから先は、あなたは停止せられない、こういう立場をとれば議論は行き違いになるのですがね。私は、金の値上げ、ドルの切り下げはともかくとして、少なくとも、金プールにおける金の交換停止、売却停止、これはあると思う。そうなれば、すなわち円売りの攻勢が強まると思うのですがね、どうでしょう。それの見通しとそれに対する対策。
  485. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 円売りの問題は、やはり何といっても日本の国際収支に対する海外の信用の問題でございます。でありますから、私どもといたしましては、日本の国際収支の基調をできるだけ早く均衡基調へ持っていくことが必要だと思います。
  486. 田中武夫

    田中(武)分科員 それでなくても、現在、円は海外では暴落しておるでしょう。売られているでしょう。その対策はどうなんですか。さらに、金交換停止あるいは金プール、金売却停止、ますますドルは危機におちいる。そのことによってドルは暴落すると思います。それ以上に円は暴落いたします。これがすなわちドルのかさ、心中態勢です。それに対する対策なり、あるいはそれに対するあなたの見通しはどうですか。
  487. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 要するに、日本の国際収支を均衡させるということ以外にないと思います。それは日本の国際収支が悪くて、それが日本の信用になっておれば、いかなる引き締め政策をとってもだめだ。やはり日本としては、この場合円のルーマを回復するために、何としても国際収支の均衡回復を早くする必要がある、かように存じます。
  488. 田中武夫

    田中(武)分科員 現に海外で円売りが行なわれておる。円価値が下がっておるということは、いま日本の国際収支はあまりよくないですね。それに原因がある、そういうことですね。金停止になったり、かりにドルが暴落しても、それは日本の国際収支だけがよければ関係がないと、こうおっしゃるのですね。はっきりしてくださいよ。
  489. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 海外における円売りというのは、昨年の十一月に一時かなり出まして、それからずっとおさまって、それからまた最近ぼつぼつ行なわれております。
  490. 田中武夫

    田中(武)分科員 行なわれておりますじゃないのだよ。それに対する対策なり見通しはどうなのかと聞いているのです。
  491. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 ただいまのところ、一部に円売りが出ておりますけれども、基本的には、日本の国際収支については、海外では、日本は過去四回の国際収支の危機をうまく乗り越えたという、国際収支調整過程に対する日本のカの評価がかなりある。それから日本の商品の競争力という問題についても評価が高いということから、基本的に日本に対する信用はある。これは先般の円切り下げルーマに対して、一斉に識者が、日本の立場とか日本の円の強さを高く評価しておる、それで一挙にルーマが解消したということがございました。したがって私は、日本の国際収支の均衡回復についての政府の努力を今後の予算の成立、金融引き締めの継続等を通じてやっていけば、必ずや国際収支の均衡回復ができる、そういう見通しを外に対しても示してもらえば、そこで問題が解決すると思います。
  492. 田中武夫

    田中(武)分科員 いまのあなたの答弁は議事録に残るのですから、今後どのようになるかは、そのときにおいて、あなたの見通しが誤っておったときに責任を追及します。関連質問ですから、これ以上議論はやめたいと思います。  そこで、最後に、これはむしろ通産省ではないかと思うのですが、こういうような金パニックのあおりを受けて、日本の町にもちょっとした金ラッシュが起こったのです。(発言する者あり)そして百貨店あたりから、金製品は売り切れになりつつある。小判なんかは売り切れておる。見てみると、なるべく彫刻の少ないものが全部出てしまっておる。彫刻の多い大黒さんとか、そんなものを置いておるのですよ。これは彫刻体と称すると思うのだけれども、その金の含有と価格を計算すると二千円から二千五百円になる、あるいは三千円にもなると思います。ある百貨店で私聞きましたら、あまり金を売るなというように通産省から言われておりますということを言う店員もあるのですよ。そういうことはおそらくないと思いますが、現に百貨店には金製品、ことに金小判等々の注文が殺到している。こういう状態に対してどう考えられますか。どうしようと思われますか。  さらに、不規則発言で横山君が言ったが、日通の幹部が——こんなことは言うつもりはなかったが、金の延べ板を買って分けたそうですね。ああいうものは市中に売っておるのですか。金の小判とか、少しでも細工したものならともかく、普通のところでその延べ板というものが売れるのですか。それに対して通産大臣どう考えられますか。
  493. 両角良彦

    ○両角政府委員 金の流通につきましては、精練業者と、それから金地金の卸商の段階まで金管理法によりまして把握いたしておりますが、それ以後の金の市中の流通につきましては自由にまかせられております。したがいまして、それ以外の段階におきます流通過程で加工が行なわれまして、地金的な形をとったり、あるいは小判的な形をとりましても、それは私どものほうといたしましては、いかんともなしがたい次第でございます。
  494. 田中武夫

    田中(武)分科員 金の細工のものはともかく、金そのものを売るというものは、なるべく売らぬようにというか、店頭に出さないようにということを言われているのですか。そんなことはないでしょうな。  それと同時に、ついでですから、そういう彫刻や何かで計算するとグラム二千五百円から三千円にもなっておるのだが、こういう状態についてどう思いますか。売り手、買い手だからやむを得ぬということなのかどうか。
  495. 両角良彦

    ○両角政府委員 特にそういうことを百貨店等に指示をいたしたことはございません。
  496. 田中武夫

    田中(武)分科員 金融局長どうなんだ。二千五百円から三千円もしているということをあなた知っているか。おれは計算したんだよ。——鉱山局長どうなんだ。
  497. 両角良彦

    ○両角政府委員 先ほど申しましたように、金の末端段階におきます流通は自由にまかせられておりまして、その価格についても特に規制を加えておりませんが、しかし、取引が適正に行なわれるということについては、われわれとしても関心を持って考えておるわけであります。
  498. 田中武夫

    田中(武)分科員 国際金融局長、金管理法はあなたのほうの所管ですね。貴金属特別会計もあなたの所管ですね。いま持っていませんが、貴金属特別会計法の第一条に、金取引の実態調査ということが書いてありますね。あの実態調査というのは、そういうのを調べるのと違うのですか。
  499. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 この問題は、たしか昨年の予算委員会田中委員からお尋ねがございまして、そのとき説明いたしましたとおりでございます。
  500. 田中武夫

    田中(武)分科員 だから、去年聞いて、だめじゃないか、やりなさいと言うたでしょう。やっているのかどうかですよ。
  501. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 たしかあのとき、私の記憶でございますけれども、金管理法に基づいて各省がそれぞれの所掌業種につきまして調査したものをもって実態調査いたしておるのでございまして、やみの金と申しますか、密輸金がどういうふうに流れて使われておるか、いまの小判が何枚できているかというようなところまで調査いたしておりません。
  502. 田中武夫

    田中(武)分科員 だから、関係の各省からそういうことの報告を受けましたよ。しかし、金取引の実態調査というのはそんなものじゃなかろうと思う。こんな記念メダルだってグラム千円も二千円もしておるじゃないか。あのときは二千円もしていなかった、千円くらいしておったと思う。そういうことを調べるのが実態調査じゃありませんかとぼくは言うておるのですよ。あなたよりは私のほうが記憶がいいです。それもまだやっていないのでしょう。これをいまから詰めようとは思いません。注文しておきます。あの法律の金取引の実態調査とは何ぞや、これをあらためて議論いたしましょう。  もうこれで終わりますが、ついでに申しておきますけれども、きのう第二分科会で、私が新産金の買い上げ価格と憲法二十九条三項との関係を留保しました。それに対して文書答弁が出た。これはなっておりません。全然なっておらぬ。私の質問に対して答弁になっておらぬので、これはもちろんお返しして、これも留保いたします。  関連質問ですから、これで終わります。
  503. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私は、この際、危機に瀕している日本円の価値の維持、同時に、同じく危機に瀕しておりまする日本の繊維産業、それを守り通して、アメリカが行なったごとく、イギリスが行なったごとく、繊維産業の再編成によりまして日本の繊維産業を世界に雄飛するようにしたい、そのために、質問を用意いたしましたのですけれども、もはや時間がございません。そこで、私はその要点を、いまここに筆頭理事もいらっしゃいまするので、これは特にさきの委員長であらせられまするいまの主査、私の尊敬おくあたわざる植木さんでございます。この御両所で御検討の上、いま大臣に贈呈いたしましたこの本の要点を記録に載せる、そうしてそれを実行に移す、これだけで、一問で私終わってもいい、いかがでございましょう。(「全部はたいへんだ」と呼ぶ者あり)不規則発言ではございまするが、全部とはえらいぜということでございます。それはごもっともな御指摘かもしれませんが、私は全部のほうがよりいいと思います。しかし、まあ、そこは植木前委員長と現二階堂筆頭理事とのお話し合い、同時に通産大臣との協議の上、それを行なっていただければそれでけっこうでございます。協議の時間もこれあると存じまするので、その協議の時間を拝借して、残り二、三分の質問をお許し願いたいと存じます。  そこで大臣お尋ねいたしまするが、この金融不安は、やがてニューヨーク株の暴落を来たしておるようでございます。ところが、金鉱株は上がっておるようでございますね。その影響か、ニューヨークの綿花相場も下がっておるようでございます。にもかかわりませず、日本の糸相場というものは下がっておらない。きょうの糸相場は一体いかほどでございましょうか。
  504. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 よく存じません。
  505. 加藤清二

    加藤(清)分科員 繊維局長はその道のべテランでございますから御存じかと存じますが、いかほどでございますか。
  506. 金井多喜男

    ○金井政府委員 私、綿糸相場については毎日非常に注意しておりますので、きょうもこの席へこうやって持ってまいりました。したがいまして、数字は正確でございますが、東京繊維取引所におきましては四十番手当限は二百二十二円三十銭、それから大阪の三品取引所の四十番手綿糸相場は二百二十六円四十銭でございます。
  507. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そのとおりでございます。さすが、よく勉強していらっしゃいます。きょうの前場の二回目を見ますると、東京相場で大体二百二十六円四十銭となっておりますですね。これを一コリに試算いたしますると十万五百六十円となります。この糸相場は、はたして妥当なものでございましょうか。大臣、どうですか。
  508. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これはやや高いのじゃないでしょうか。
  509. 加藤清二

    加藤(清)分科員 あなたはお金持ちで、糸を買って機を織る必要がないから、ややとおっしゃるのですが、これはべらぼうな高値じゃございませんか。それでは、適正値はいまの原綿相場からいって一コリ幾らがよろしいとお考えでございますか。
  510. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 二百円ちょっとくらいの程度じゃないですか。
  511. 加藤清二

    加藤(清)分科員 一コリ八万円前後、こう言いたいところですね。これはちょっと利益が多過ぎるじゃございませんか。
  512. 金井多喜男

    ○金井政府委員 ちょっと私から補足して御説明申し上げます。  仰せのように、本日の大阪三品の相場は二百二十六円四十銭でございますけれども、大臣が申しましたやや高い、こういった意味は、こういう意味を持っておるわけでございます。と申しますのは、綿糸の実際の取引というものは、先生はその道の権威者でよく御承知と思いますが、先物が中心でございます。そういった点から先物の相場を見ますと、八月限で二百十三円十銭、こういうことに相なっております。先ほど大臣が二百円余りということでございますが、大体私事務的に検討いたしますると、大ざっぱに言って二百五円から十円余り、そういう点からいたしますと、先物で見る限りやや高い。当限においてすらその辺が高い。度合いがやや高過ぎるというような表現ができようかと思います。
  513. 加藤清二

    加藤(清)分科員 この論争は他日に譲るといたしまして、私が心配いたしますのは、三品市場で現物がほんとうに取引されるのは全体の使用量のわずか二、三〇%ではないかと思われます。ごくわずかな取引の量、なおかつ、当月ものの月末に実物が取引される量はなお少ないのでございます。その少ないもののために全体の値が左右されるということはあまり好ましくないと思います。同時に、そのことがやがて海外市場への輸出不振、国内小売り繊維商品の値上がりと、こういうことに相なり、なおかつ、中小企業の原料高の製品安という結果を招きまして、これが倒産の原因にも相なっておるということにかんがみますと、この値は、いまの金相場と同じように、繊維局並びに通産大臣としては、大所高所からの施策を施される必要が十二分にあると思いますが、この点大臣の御所見を承りたい。
  514. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 生産段階なりあるいは取引所等での施策によりまして、健全な価格に鎮静させるように指導いたしたいと思います。
  515. 加藤清二

    加藤(清)分科員 鎮静させるとおっしゃられました。まことにけっこうなお考え方でございます。そのためには、何と申しましても三品市場のあり方を検討しなければなりません。この三品市場は大臣御案内のとおり、これは加工業者のつなぎの場のために設けられたものであります。すなわち、天然繊維でございまするがゆえに、先物まで用意をしないとコンスタントの生産ができない。したがって、こういう意味で設けられたものです。にもかかわりませず、今日は貯金をしておけば物価高で食われてしまう。証券に投資すれば、これまた食われてしまう。まあ土地に投資するか、三品に投資するかというてギャンブル的な考え方、同時に会員制度で、会員のみでなければならぬ。すなわち、業者でなければならぬ。業者とは機織り業者、加工業者だ。それしか相ならぬというその三品市場に、他の資本がどんどん流入してきて、需要と供給で糸相場を上げているというこのあり方については、業界のみならず銀行筋までがひんしゅくをしておるところなんです。これについて大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  516. 金井多喜男

    ○金井政府委員 仰せのように、当限を中心に三品取引市場に相当仕手筋を中心として糸価の高騰の原因になるような取引がございますので、その辺につきましては、仕手筋の介入を防ぐということを中心に、一月中旬よりマル代金等の措置を新規売買玉に講じまして、できるだけ仕手筋の介入を防いでおる次第でございます。
  517. 加藤清二

    加藤(清)分科員 もはや時間となったようです。あと余すところ六分しかございません。そこで、幸い名委員長と名理事の間で書物の取り扱いについて話し合いがついたようでございますので、私はこの質問を最後にいたします。  紡績業の構造改善は目下の急務だと存じます。それなるがゆえに去年膨大な法律を通しました。この法律は、自民党においても三年も検討されました。わが党におきましては、もう三年、四年どころではございません、さきに小室君が繊維設備制限法を提出して以来、営々十年の長きにわたって検討をしてきたのでございます。そうして、この法律を賛成で通したのでございます。与野党一致で通したわけでございます。その具体化については、一体どうなっているでございましょうか。紡績業の構造改善の進況状況と将来の見通しについて、大臣の所信のほどを承りたいのでございます。
  518. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 通産省といたしましては、昭和四十六年度を目標年次といたしまして、三交代制の導入、二百五十万錘をはじめとする近代化計画の促進につとめておるところでございますが、このため必要な開銀資金の確保については、さらに努力いたしたいと考えております。業界としては、昨年前半までは必ずしも積極的でない面も見受けましたが、人手不足等の要因も重なって、昨年の秋以降それぞれ真剣に近代化に踏み切っておる情勢にあると考えます。
  519. 加藤清二

    加藤(清)分科員 残余の質問は、いずれ当該委員会においてこれを行なうこととし、本日は、時間となりましたので、二、三分を残して、私は質問を打ち切りたいと思います。
  520. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 加藤委員の監修にかかるこの「日本の繊維産業」、たいへんりっぱな本のようにお見受けいたしますが、内容を十分に拝読いたしまして、採用すべきものは大いに採用してまいりたい、かように考えます。
  521. 植木庚子郎

    ○植木主査 おはかりいたします。  先刻、加藤清二君から御要望のございました、加藤清二君及び小口賢三君監修にかかる、社会新報発行の「日本の繊維産業」という印刷物の要点につきましては、通産大臣並びに通産当局とも協議の上、適当に取りまとめて会議録に参考掲載することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  522. 植木庚子郎

    ○植木主査 御異議なしと認めます。よって、さよう取り計らいます。  以上をもちまして、経済企画庁所管農林省所管及び通商産業省所管に関する質疑は、全部終了いたしました。     —————————————
  523. 植木庚子郎

    ○植木主査 この際、おはかりいたします。  昭和四十三年度一般会計予算中、経済企画庁所管、農林省所管及び通商産業省所管並びに昭和四十三年度特別会計予算中、農林省所管及び通商産業省所管に関する本分科会の討論採決は、先例により予算委員会に譲ることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  524. 植木庚子郎

    ○植木主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  これにて本分科会の議事は全部終了いたしました。  分科員各位の御協力によりまして、円満裏に本分科会の議事を終了することができましたことを、ここに深く感謝いたします。  これにて第四分科会を散会いたします。    午後八時三十七分散会      ————◇—————