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1968-03-14 第58回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月十四日(木曜日)     午前十時七分開議  出席分科員    主査 植木庚子郎君       小山 省二君    坂田 英一君       二階堂 進君    福田  一君       山崎  巖君    加藤 清二君       阪上安太郎君    田中 武夫君       中谷 鉄也君    永井勝次郎君       広沢 賢一君    細谷 治嘉君       竹本 孫一君    吉田 賢一君       近江巳記夫君    中野  明君    兼務 川崎 秀二君 兼務 石野 久男君    兼務 八木 一男君 兼務 島本 虎三君  出席国務大臣         通商産業大臣  椎名悦三郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      木村 俊夫君  出席政府委員         外務省経済局長 鶴見 清彦君         通商産業大臣官         房長      大慈彌嘉久君         通商産業大臣官         房会計課長   井上  保君         通商産業省通商         局長      宮沢 鉄蔵君         通商産業省貿易         振興局長    原田  明君         通商産業省企業         局長      熊谷 典文君         通商産業省化学         工業局長    吉光  久君         通商産業省繊維         雑貨局長    金井多喜男君         通商産業省鉱山         局長      両角 良彦君         通商産業省鉱山         保安局長    西家 正起君         工業技術院院長 朝永 良夫君         特許庁長官   荒玉 義人君         中小企業庁長官 乙竹 虔三君         中小企業庁次長 沖田  守君         消防庁次長   山本  弘君  分科員外出席者         外務省経済局外         務参事官    田村  豊君         大蔵省関税局監         視課長     鈴木 邦一君         大蔵省国際金融         局次長     奥村 輝之君         通商産業省企業         局参事官    橋本 徳男君         通商産業省公益         事業局技術長  藤井  孝君         消防庁予防課長 高田  勇君     ————————————— 三月十四日  分科員阪上安太郎君、田中武夫君、麻生良方君  及び正木良明委員辞任につき、その補欠とし  て広沢賢一君、永井勝次郎君、内海清君及び松  本忠助君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員永井勝次郎君、広沢賢一君、内海清君及  び松本忠助委員辞任につき、その補欠として  中谷鉄也君、阪上安太郎君、吉田賢一君及び有  島重武君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員中谷鉄也君、吉田賢一君及び有島重武君  委員辞任につき、その補欠として細谷治嘉君、  竹本孫一君及び中野明君が委員長指名分科  員に選任された。 同日  分科員細谷治嘉君、竹本孫一君及び中野明君委  員辞任につき、その補欠として田中武夫君、吉  田賢一君及び沖本泰幸君が委員長指名分科  員に選任された。 同日  分科員吉田賢一君及び沖本泰幸委員辞任につ  き、その補欠として河村勝君及び近江巳記夫君  が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員河村勝君及び近江巳記夫委員辞任につ  き、その補欠として麻生良方君及び正木良明君  が委員長指名分科員に選任された。 同日  第二分科員川崎秀二君、石野久男君、八木一男  君及び第三分科員島本虎三君が本分科兼務とな  った。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十三年度一般会計予算通商産業省所管  昭和四十三年度特別会計予算通商産業省所管      ————◇—————
  2. 小山省二

    小山(省)主査代理 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  主査が所用のため指名により私が主査の職務を行ないます。  昭和四十三年度一般会計予算及び特別会計予算中、通商産業省所管を議題といたします。  まず、通商産業省所管について説明を求めます。椎名通商産業大臣
  3. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 昭和四十三年度の通商産業省関係予算案及び財政投融資計画説明はお手元にお届けしてありますが、要点のみ簡単に御説明申し上げます。  まず、昭和四十三年度の通商産業省所管一般会計予定経費要求額は、八百六十八億六千五百万円でありまして、前年度の補正後予算額に比べ九十四億三千三百万円の増加でございます。  次に、重点事項別内容を御説明申し上げます。  第一に、企業体質強化産業構造改善促進につきましては、繊維工業構造改善事業推進に必要な経費といたしまして、織布業設備近代化融資のための資金を含め九十三億一千七百万円を計上いたしております。  第二に、中小企業対策拡充強化をはかるため、二百七十三億七千五百万円を計上しております。このうち、中小企業振興事業団につきましては、百六十二億七千五百万円を計上して事業規模拡充することといたしております。また、共同研究所設置助成等中小企業技術水準の向上をはかるための施策を格段と拡充いたしますほか、中小企業に対する指導事業強化小規模事業対策充実等、従来の施策につきましても一そうの推進をはかることといたしております。  第三に、技術開発力の培養と技術的最先端産業振興をはかるため、百七十億一千八百万円を計上しております。このうち、大型工業技術研究開発費につきましては三十九億円、重要技術研究開発費補助につきましては十二億円を計上し、国際競争力の根幹をなす技術開発促進いたすとともに、さらに、電子工業技術振興YS−11に次ぐ民間ジェット輸送機開発に取り組むことといたしております。なお、特許行政につきましては、出願等の迅速な処理をはかるため二十二億八千四百万円を計上しております。  第四に、貿易振興経済協力推進につきましては、二百三十九億一千八百万円を計上しております。これにより輸出振興機関拡充経済協力実施等をはかることといたしております。また、万国博覧会につきましては、昭和四十五年の開催を控えて準備を早急に進めるため百五十八億二千九百万円を計上しております。  第五に、産業立地適正化公害防止対策推進につきましては、六十五億八千百万円を計上しておりますが、特に公害防止対策につきましては、産業公害対策費を一億三千四百万円に増額するほか、大型プロジェクト脱硫技術等公害防止技術開発費として別途十三億八百万円を計上する等の措置を講じております。  第六に、総合エネルギー政策推進資源開発促進をはかるため、二十六億一千万円を計上しております。このおもな内容は、天然ガス基礎調査拡充国内地下資源探鉱促進等でございますが、新たに金属鉱産物の安定的かつ低廉な供給に資するための海外払物資源開発及び金鉱業探鉱促進のための基礎的鉱床調査を実施することといたしております。  第七に、流通酒興消費者拡充強化につきましては、消費者のための商品テスト網新設等消費生活改善対策拡充いたしますほか、液化石油ガス保安確保及び生産流通対策火薬類保安対策等を充実することとし、合計一億二千五百万円を計上しております。  以上の通商産業省所管一般会計のほか、特別会計といたしまして、アルコール専売事業特別会計につきましては、歳入七十八億四千九百万円、歳出六十四億八千九百万円、輸出保険特別会計につきましては歳入歳出ともに百二十七億九千七百万円を計上しております。機械類賦払信用保険特別会計につきましては、歳入歳出ともに十三億円でございますが、歳入のうち一億円は一般会計からの繰り入れを予定しております。  また、石炭対策特別会計につきましては、歳入歳出ともに五百九十六億八千三百万円を計上し、石炭鉱業合理化及び安定、保安確保鉱害総合的処理産炭地域振興等の諸施策拡充をはかることといたしております。  次に、当省関係財政投融資計画について御説明いたします。  昭和四十三年度の当省関係財政投融資計画総額は、八千五百五十五億円でありまして、これを昭和四十二年度当初計画に比べますと一千二百四十億円の増加となっております。  以下機関別にその概要を御説明いたします。  まず、日本輸出入銀行でありますが、船舶等輸出経済協力拡大等をはかるため、貨し出し規模を三千三百五十億円に拡充し、二千六百三十億円の財政投融資計画しております。  次に、中小企業関係金融機関につきましては、中小企業金融円滑化をはかるため運用規模を七千五百九十六億円に拡大し、また、昨年発足した中小企業振興事業団につきましては事業規模を二百六十億円に拡大いたしました。  日本開発銀行につきましては、従来の施策拡充強化をはかるとともに、国産技術企業化を強力に助成するため、従来の融資制度を改善し、新たに九十億円の国産技術振興資金ワクを設定することといたしました。また、繊維工業をはじめ乗用車工業アンモニア工業等を対象とする構造改善金融ワクを百二十億円に拡充いたしました。  電源開発株式会社につきましては、石炭火力発電所の建設と水力電源開発の工事を推進するため財政投融資二百七十八億円を予定しております。  石炭関係機関につきましては、石炭鉱業合理化事業団整備資金に十億円、産炭地域振興事業団に四十二億円、鉱害基金に十九億円の財政投融資予定しております。  金融鉱物探鉱促進事業団につきましては、従来からの国内探鉱業務推進するとともに、新たに海外探鉱開発業務を実施することとし、二十三億円の財政投融資計画しております。  また、昨年設立された石油開発公団強化をはかるため、財政投融資として六十億円の出資を行なうこととしております。  公害防止事業団につきましては、五十五億円の財政投融資を計上するとともに貸し付け金利の引き下げをはかる予定であります。  最後に、日本航空機製造株式会社につきましては、中型輸送機YS−11の量産事業本格化に資するため、六十億円の政府保証つき長短期市中借り入れ助成措置をとっております。  以上通商産業省関係予算案及び財政投融資計画につきまして簡単に説明申し上げました。何とぞ十分御審議の上すみやかに可決されますようお願い申し上げます。
  4. 小山省二

    小山(省)主査代理 以上で通商産業省所管についての説明は終わりました。     —————————————
  5. 小山省二

    小山(省)主査代理 これより質疑に入ります。  質疑に先立ち、分科会の皆さまに申し上げます。  議事進行の円滑をはかるため、質疑を行ないます方は、あらかじめ政府委員等を御要求の上、主査に御通告をお願いいたします。  質疑の持ち時間は、先例により一応本務員原則として一時間、兼務員もしくは交代で本務員となられる方は原則として三十分にとどめていただきたいと存じます。  質疑通告がありますので順次これを許します。川崎秀二君。
  6. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 万国博の運営については、当初から大阪という土地の反映もありまして、非常にうまくいくだろうという面もあるし、商業主義的になりはしないかと心配をしておりました。   〔小山(省)主査代理退席主査着席〕 しかるところ、この会場にいち早く参加を申し込んだ大手企業が、陳列物あるいは面積の取り方、すべて商業主義的であるとBIEでありますか、パリの万国博本部から注意をされたということであります。これに対して通産相はどういうお考えを持っておるのか。警告を発したりあるいは将来注文を発するところの企業に対しまして、それぞれきびしい警告を発しておられると思うけれども、具体的な措置と将来の対策を聞きたいのであります。
  7. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 BIE勧告はまことに適切な勧告でありまして、それを厳正に守っていきたい、そういう意味で現地のほうにも警告を発しております。
  8. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 大阪見本市を一番先にやった土地であります。見本市が成功しておるその感覚が残っていないかと私は非常に心配をするのです。この際、率直にいって、もうかりまっかというような考え方、あるいは見本市的考え方を捨てて、産業文化シンボルのような万国博をやるべきだと思いますが、通産大臣はどうでありますが。
  9. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御指摘のとおり、すでにモントリオールの博覧会においても、日本がどうも商業主義に傾き過ぎておるというような批判もございましたので、この点はもう非常に戒心をいたしまして、博覧会実施当局のほうにも十分にその趣旨を伝えてあるわけでございます。
  10. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 その答弁でけっこうであります。  そこでこういう趣旨を生かすためにこの際一つ提案があるのであります。万国博の際に世界各国から集まる青少年学生の数は相当なものだと思われますので、この機会世界青年文化祭というようなものをやったらどうかということを、昨年の夏ごろから私個人も考えておりましたし、関係青年団体が案を練っておったのであります。そして青年学生のことでありますから、総理府文部省等にも連絡をいたし、さらに本日は午前八時半から行なわれた自民党万国博特別委員会にも出席をいたしまして、その趣旨を述べ、概略の原則的了承を得たわけでありますが、これはこういうことであります。青少年学生国際交流が盛んになることは世界の平和と各国の親善のために最もよい具体的な実行方法であります。しかしながら、わが国は近来一九六四年の東京オリンピック大会、あるいは昨年度におけるユニバーシアード学生スポーツ大会、そして一九七二年札幌冬季オリンピック大会におきまして、若人のシンボルであるスポーツを中心にした交流が行なわれておる。けれどもこれは一面であって、行動と若さを象徴はするが、これから先の世界各国青年交流一つの面である文化あるいは芸術、産業というような面におけるところの青少年のアクチビティというものを象徴しているわけではない。そこで文化的な探求をし、世界青少年学生と交わろうというのが世界青年文化祭の構想である。これにはすでに具体的な考え方も出ておりますけれども、やはり原則として万国博開催するところの万国博協会うしろだてになっておる通産大臣の御賛成をいただかなければならぬ。先般個人的にはすでに訪問をいたしまして原則的な賛成を得ておりますが、この席上を通じて、かような計画は非常にタイミングのいいものだという意味で、ぜひ通産大臣から公的な御答弁を得たいというので私は発言をいたした次第であります。
  11. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 万国博開催機会世界青少年一大交歓の場をここに求めるということは、私は万国博の精神というものを生かす上においてまことに大切な、最もふさわしい催しである、かように考えておりますので、ぜひひとつ盛大にこの機会を利用して世界青少年交歓を行ないたい、まことにけっこうなことだと思っております。
  12. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 たいへん明快な御答弁を得まして、これが発表されれば、日本青少年学生に大きな刺激を与えると思うのであります。内容につきましては、これからそれぞれ関係機関を通じ、また青年団体が結集しまして案を出してくると思うのでありますが、中青連事務当局が持っております素案などにはなかなかおもしろいものがあるのです。たとえば、国際青少年美術祭をやりたい。絵画、彫刻、写真等のものをやる。あるいは民族舞踊会、それから世界未来展、夢の未来展というのもやりたい。あと小さいものがいろいろありますが、たとえば青年国連をやりたい、つまり国際連合青年討論会というようなものもやって、世界平和を課題にした具体的な前進を、次の世紀に向かってマーチするというような考え方もありまして、これは非常に大きなうねりになっていくと私は思うのであります。ただ、これだけの大会をやりますと、実はいま私が会長をしておりまする世界青少年交流協会に対して、万国博開催当時に来日を希望しておる国がアメリカ、イギリス、ソ連、西ドイツ、フランス等を筆頭といたしまして二十四カ国あるのです。いま万国博に出品を了承しておる国が三十五、六カ国と思うのですが、こういうことが行なわれまして、当然参加するだろう東南アジア、中南米、アフリカ等に呼びかけますと、五名以上を代表団と見て八十カ国以上参加すると思うのであります。問題は宿舎の問題でありまして、東京でありますれば、代々木の青少年センターが四千人近くの収容能力を持っておりますので規定によりましてそういう代表団は一挙に収容することができて十分でありますけれども、大阪ではそういう点がありません。この大会の費用は、私の目の子算用ではそんなにはかからぬ。もちろん十億円以内の金でこれらの大会がまかなえると思うのですが、ただ宿舎が若干心配であります。これについては通産当局などのごあっせん総理府のごあっせんも得なければ解決しないと思いますが、そういうような場合にこれについて御協力を得られるかどうか、ちょっと御質問をしておきます。
  13. 橋本徳男

    橋本説明員 いまの世界青年宿舎につきましては、他の観客もあわせまして現在その宿舎対策専門機関協会内部につくろうとしておりますので、そこらで十分ごあっせんするようにしたいと考えております。
  14. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 万博関係質問を終わります。  日中覚え書き貿易協定は、同僚の古井君、田川君等の努力によりまして、とにかく将来の日本中国あるいは世界との関係を考えるときに、何としても日中関係のきずなを切断してはならないという非常な熱情から、ついに細い線ではつながったのでありますが、御存じのように一年の協定ということで非常に先行き不安である。これには内閣政治姿勢ということが一番問題であって、向こうは政治原則などということを言っておりますけれども、これはそう大きな問題ではないわけであります。彼らの考え方に従えというなら、日本は当然政治上対抗しなければなりませんが、イデオロギーを越えて日中の友好をやろうというのでありますから、ひとつ前向きで取り組んでいただきたい。  その考え方に立ちまして、通産大臣に御質問いたしますが、前向きで、しかも拡大していこうと思えば、どういうやり方がございましょうか。むしろまずお教えを願いたいと思う。
  15. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いまの貿易やり方は、まだ国交が正常化されておりませんから、勢い政経分離という原則のもとに行なわれておるわけでありますが、その政経分離ワク内においても拡大する方法はいろいろあると思います。一番大きい問題は、輸銀資金の活用ということにあると思いますが、これは申し上げるまでもなく、相手国に対してフェーバーを与えるものではなくて、輸出するものに金融の便宜を与えてやる、こういう意味でございますから、中共との貿易政経分離原則のもとにますます拡大しようという方針がすでにあるのでありますから、当然輸銀資金使用ということは認めなければならぬたてまえになっております。ただ、外交上の理由からなかなかそうもいかぬというので、いまこの問題が行きつかえておる、こういうことでございますが、そういう点をときほぐしていきたい、かように考えております。
  16. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 そこで私は、中国だけの問題でなしに、実際にいま四十二年度以内で諸外国との間に延べ払い、あるいは輸銀使用というものをやった一番大きなケース、あるいはそれに次ぐものを二、三あげていただきたいと思うのです。
  17. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 担当局長が、いまちょっとおくれておりますので……。
  18. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 実は、それは私も知っております。  それで私、日中貿易にしぼりますが、非常に残念なのは——ヨーロッパ各国が、ことに西独というのは、反共の固まりみたいな国なんですけれども、これまたざっくばらんに、共産主義だけれども、自分のほうは共産主義諸国とつき合う。ことにキージンガー内閣になってから政策の大転換を行なっておる。それまではベルギー、オランダ、フランスなんというものが西欧側からいうと中国貿易の主柱であった。それをずっと抜いて、昨年の暮れに至ってトップに躍進をした。これには西独グラント外務大臣などの考え方もやはり出ておるようであります。実は驚いたことには、きのう——これはいずれ表面化してくると思うのですが、ロイター電によると、ことしの末までに西独はあるいは中国を承認するかもしれぬ、そういう声明を発するかもしれぬという観測が出ておる。こういうことになってくると、日本輸出競争相手というものはヨーロッパ各国ですが、工作機械にしても、あるいは肥料にしても、西独中国進出ということが相当われわれに打撃を与えやしないか。その中には延べ払い七年というようなものもあるわけですね。これは中国側にとって非常な魅力のある提案である。中共は、その払いはなかなか固いです。けれども、やはり資金も枯渇をしておるし、延べ払いでなければ困るという国の考え、現状でありますから、非常に強敵になってくるので、日中貿易がいま細い線でつながっても、延べ払い方式というものを考えない限り、大きな拡大というものは望めない。そういう意味での内閣政策がここに前進、転換しなければならぬと思うのですが、通産大臣の所見を承りたいのであります。
  19. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 もうすでにどの国とも仲よく、そして貿易を盛んにする、こういうたてまえでございますから、そのためには延べ払いも大いにやらなければいかぬ、こう思うのであります。しかし、いまは、さっきも申し上げたような事情によって拘束を受けている、こういうのが現状でございます。なるべく延べ払いを認めて、そしてますます貿易量拡大していくという線に沿うて進んでいかなければならぬ、そうは考えておりますけれども、外交上の理由によって制約を受けているというのが現状でございます。
  20. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 そこでケース・バイ・ケース輸銀を使うという場合もあり得るというのですが、たとえば日立造船などが造船で近く申請をしようとしておりますが、これは十分検討しますか。中曽根運輸大臣は認めたらいいという考え方を持っているし、通産大臣もどうもそうらしいが、外務省官僚が反対している。ここはもうちょっと、もう一息のところですから奮発してもらいたいと思うが、どうでしょうか。
  21. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ほかの所管の問題ですから、とやかく言いにくいわけですけれども、官僚が反対しているわけじゃないのです。
  22. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 どうやらそうかもしれない。私は二、三日前古井君が帰ってまいりまして総理大臣に会ったときに、陪席しておりましたが、黙っておりましたが、輸銀の問題はここだとばかり思って、これは総理大臣の腹だけだと言ったら、それだけは黙っておりました。どうもそうらしいから、あなたはがんばってもらわなければいかぬ。  今度は、具体的な問題として、岡崎嘉平太氏が、きのうわれわれがやっている自民党の中のアジア・アフリカ研究会中国問題小委員会で語ったところによりますと、中国側はいまの商品から拡大する気持ちがなかったと思ったら、やはり貿易はしたいようであって、新商品を買う用意がある、また出す用意もある、出すのには非常に困難なものもあるでしょうけれども、そういうようなことを言っております。通産当局では、その場合にどんな品目を見込んでおられますか。——調べておるうちに一緒に答えてもらいたいが、たとえば鉄鋼が、昨年ごろから貿易の上で一つずつ切って各社と交渉した結果、ずっとずれていっているんですね。これは新商品ではないのです。しかし大手の業界などでも、ずっと先行きの長いことを考えると、覚え書き貿易のルートに乗せてもらいたいという考え方が出てきたわけです。この十日間くらい特に出てきていると思います。そういう問題とあわせてその新商品の問題が答え得れば、答えていただきたいと思うのです。
  23. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢(鉄)政府委員 日本側としてぜひたくさん買いたいと思っておりますものは、たとえばトウモロコシでありますとか、コウリャンだとか、鉄鉱石なんかにつきましても、買いたいと思っておりますけれども、ただ、いまなかなかうまくまとまりませんのは、向こうはどうも供給余力がないというようなことでなかなかまとまりませんけれども、われわれのほうとしては、そういうものは非常にふやしたいという気持ちは持っておるわけでございます。
  24. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 鉄鉱石の問題ですが、これはまとまれば非常に大きなものと思うのですが、八幡製鉄の藤井副社長などに言わせますと、オーストラリアの品質から見ると非常に劣るというようなことも言うておられます。しかしその劣る程度は、最近の改良によって、非常にわずかの差だというふうにも聞いておりますので、これは将来、覚え書き貿易一つの大きな伸びをする拠点とするならば、重要なので、お尋ねしておるわけです。その点はどうでしょう。
  25. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢(鉄)政府委員 日本側といたしましては、その他の地域から入っておるものが大体六二%ぐらいの品位のものでございますので、できるだけそれに近いものを入れたい、こういうことでございますが、現在のところ中共のほうでは五五%ぐらいしかとても出せないというようなことでございますので、品位の点でなかなかいまのところ十分折り合いがつかないという状態が続いておるのでございます。
  26. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 日中貿易はその程度にいたしておきます。  時間も制約されておりますが、これは通告をいたしておきましたからお答えを願えると思いますが、共同石油という会社は、これは大きな石油会社三社が融資をしてやっておるわけですが、四十三年度の財政投融資を入れると、二百九十億という開発銀行の融資ですな。ところが、これだけ使っていながら赤字である、無配である、それから石油会社の成績としてはランクが一番下だ、これはどういうことでしょうか。
  27. 両角良彦

    ○両角政府委員 お答えいたします。  共同石油は御承知のように三社の販売のほうの集約をいたしておりますが、現在までは、この経理につきましては損益ゼロのたてまえをもちまして、一切の共同石油の運営は予算制度のもとで行なわれておる次第でございます。したがいまして、現在までのところ、利益計上はこれを行なえないという状況でございますが、本年の四月からはあらためて損益の折半制を採用いたしまして、今後は自主責任によりまする経営を行なっていきたい、こういう予定であります。
  28. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 共同石油の経営の状態あるいは利子の問題などで、大蔵省から非常に強い注文が予算編制のときにあったということは事実ですか。
  29. 両角良彦

    ○両角政府委員 共同石油を将来いかなる方向に持っていくか、また、参加しておりまする精製業との関係をどう考えていくか等々につきまして、将来のビジョンを提出してもらいたいという要請を大蔵側からは受けおります。
  30. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 名前ははばかりますが、理財局関係におきまして、共同石油の実態運営について非常な不信を持っておられる人が多いのです。多いけれども、表へ出てこない。これは私は与党議員ですからあまり詳しくは追及しませんけれども、共同石油は将来の大きな禍根になるような形をはらんでおるということだけは指摘しておきたい。  それからもう一つは、この会社の社長は、これだけの、二百九十億という融資を受けておるわけですから、もっと社業に専念しなければいかぬ。しかるに、四つ、五つの会社の社長や重役を兼ねておる。通産大臣に伺いますが、これだけの大きな融資を受けておる会社の社長ですから、その任に専念させたらどうですか。
  31. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 何でも、業態のいかんを問わず、兼任ということはどうもあまり好ましくないけれども、兼務しているのがいずれも石油の企業なんですね。ですから、これはまあ他の企業の長になっておるからといって、そう私は支障はないものと、こう考えております。でありますから、そういう面からどうこうということはなさそうに私は考えております。
  32. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 社長個人のいろいろな公私にわたる風評もわれわれは聞いておる。目に余るものがあるという人もあるのです。けれども、そういうことは私はあまり取り上げない。ただ、国鉄でも石田総裁は命がけでやっておる。あの姿は世間から大きく評価されておる。国鉄ほどではないけれども政府から融資を受けて、本年度のものを入れて二百九十億、しかも成績は非常にふるわない。それで自分は各社の社長を兼ねておる。これはきょうはただ警告だけにいたしておきます。  最後は、アメリカの輸入課徴金の問題について対策をぜひ聞きたいと思うのです。これは福田さんもこの席におられて、非常に関心を持って御奔走中であることを、われわれは同僚として敬意を表しております。しかし、アメリカが日本に強い措置をとられたことは、昨年の暮れ、アメリカの上院の財政委員会でラッセル・ロング氏が発言をして、繊維、鉄鋼を主体としたものに輸入税を取ろうとして、十六か十七かの法案がかかっておったことは御案内のとおりです。当時はジョンソン大統領は、自分の在任中はそういうことはしないということを言うて、行政部から圧力をかけてくれて、議員の中にもマンスフィールド議員等の有力な親日派が活動してくれて、不発であった。しかし、ことしは選挙がある。その後ドル防衛あるいはポンドの不安というものも加わってきて、どうしてもその一般の空気をささえ切れないというところまできて、ホノルル会議から今日までの形勢になったと私は思うのであります。これは今日の情勢ではなかなか輸入課徴金を全然取らぬというわけにはいかぬと思うのですが、しかし一%あるいは一%半と思ったのが五%になったのは、何か通産省の対策にも原因がありませんか。
  33. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 別にそれを誘発するようなことをした覚えはございません。
  34. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 誘発した覚えがないか知らぬが、どうもあなたのところの貿易振興局長、それから通商局長、この人とアメリカの係官との折衝の過程において意見が相当に食い違ったという情報もある。私はそれを最近知って、非常に憂慮しておるのです。輸入課徴金は取られなければならぬけれども、もう少し下で押えられる成り行きもあったのじゃないかというふうに思うのです。私はもうそれ以上申しません。これは椎名通産大臣との年来の友情から申さない。よく監督してもらいたい。  そこで申し上げたいのは、椎名さんは、通産省というよりは、昔からの商工省の大本山である。そしてだんだん根をはやし、先般来外務大臣という、それもたいへんうまくこなされた形にはなっておりますけれども、しかし元来はやはり通産畑なんです。それで今度通産大臣になって、ちょっと安堵をして、部内のことを知り過ぎておるものだから、人事の刷新というものが全然断行されてない。調べてみると、佐橋通産次官がやめたときに多少の入れかえがあっただけであって、あとはさみだれ的に二、三の人事をいじったというだけであって、非常に通産省の内部の空気はよどんでおる。あまり知っておると人事には手をつけないものですけれども、それではいけないと思う。通産省は元禄ムードに酔っておるといううわさがある。事実だと私は思う。通産省が、今日、日中問題にしてもまたアメリカの輸入課徴金の問題にしても、あるいはその他の問題にしても、今日非常に重大な段階に到達しておるのですから、思い切ってここで人事を刷新して、そしてこのきびしい国際環境に備えなければならぬ。そういう考え方に対して、椎名通産大臣はどういう御所感を持っておられるか、承りたい。
  35. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大体人の使い方は金づちの使い方と同じようなもので、曲がったくぎでも、金づらの使い方でまっすぐなくぎよりもぴしゃっとくぎの役を果たさせるようにやれるものだと私は思っております。要するに問題は、金づちを持っておる私が——すべていい悪いの責任は全部私にある、かように考えております。
  36. 植木庚子郎

    ○植木主査 川崎君に申しますが、持ち時間が終わりました。簡潔に。
  37. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 わかりました。  最後に、通産省はこの数日来の国際環境、きょうはロンドンやヨーロッパの各地で金の買い占めが非常に盛んだということが報ぜられてきております。それから意外に輸出の増がとまりそうな形勢である。一月の初めには輸出ドライブがかかったけれども、先行きは非常に不安だということです。これは的確に答えてください、最後の質問ですから。一体、宮澤長官やあなたが昨年の十二月二十八日に閣議できめた、ことしの輸出増の一五%というのは、一番しんはどこにあるのですか。どこの地域に伸びるのか、また大きな品目としてはどういうものが期待されるのか、それが私はくずれてきておると思う。これは野党議員でなくても、われわれ与党の内部からも指摘をしておかないと、重大なことになる。どういう地域へ伸びるのですか。伸びるところはなくなった形になっておる。輸入課徴金の問題もあるが、やはり日本貿易の支柱は対米貿易であって、次は東南アジアである。第三番目はヨーロッパ、共産圏ということに大別をされると思うのですが、どこで一番伸びると思いますか。
  38. 原田明

    ○原田政府委員 先生御指摘のとおり、来年度輸出を一五%伸ばすということはたいへんなことであるということでございます。特に、輸出の約三〇%がアメリカでございます。昨年は米国及びその他があまりふえませんで、豪州、東南アジア等に若干増加をしておりますが、当初の輸出目標にははるかに及ばない、低い輸出の伸びでございます。今回も、世界の各地に伸ばさなければならないと考えておりますけれども、御指摘のアメリカにおきましては、課徴金その他の非常に強い動きがございます。また低開発、発展途上国からもかなりの特恵その他の問題も控えております。したがいまして、私どもとしましては、やはり一番大宗であるアメリカに所期の輸出を伸ばしてもらわなければならぬ。しかし、その他豪州とかあるいはニュージーランド、その他昨年もふえました地域にはさらに一段とふやしたい。それからことしはヨーロッパ地域は、去年あたりまで特にドイツあたりが経済が沈滞をいたしまして、そのためにアメリカやその他日本等からの輸出がなかなか伸び悩んだ。ことしは各国からの非常に強い要請もございまして、ヨーロッパの諸国が景気を上げて、したがって輸入をふやすような政策に転向するというようなこともいわれております。そういう地域にも大いに力を入れてまいりたい。これらの地域も全部合わせまして、また中共その他共産圏貿易につきましても、去年はシェアが減っておりますが、ソ連、中共、LT貿易も妥結したことでもあります。世界の各地につきまして、たいへん困難がありますけれども、できるだけの努力をして所期の目的を達成したい、かように考えております。
  39. 植木庚子郎

    ○植木主査 次は、阪上安太郎君。
  40. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 明三月十五日は、大阪でもって盛大な立柱式が万博協会の主催で行なわれるわけであります。聞くところによると、シンボルゾーンの予定地の中へ内外の名士を三千人集めて行なわれる。同時に、万博記念の夕べ、これが東京大阪、名古屋の三大都市で行なわれるわけであります。また全国の主要な都市におきましては、やはり万博の記念行事が行なわれる、こういうようなことで万博の準備、PRが進められていくわけであります。私は昨年の五十五通常国会で、ちょうど四十二年の四月二十五日でありました。分科会で万博の質問をいたしております。そのときの主要なテーマというのは、当時ああいった速度でもってはたして万博は間に合うかどうか。当時、そのときからでもおそくはないからいま少し万博に対する体制を整えて、そうして準備を促進せよ、こういったことを実は質問したわけであります。当時を振り返ってみますと、用地買収がまだ十分に行なわれていなかった。これを促進しなさい。それからあと地利用計画というものが非常におくれておる。だからこれをやはり先行させなければ、計画が立たぬじゃないか。同時に基本計画、事業計画、これが全然確定していない。また万博関連事業、これについても当時まだ確定していなかった。やみくもである。こういったものについても十分な予算化をしなさい。さらにまた会場建設費の国、地方の負担、同時に地方の団体間の負担、これも明確になっていないじゃないか。ことに国と万博協会、それから地方、この三者の責任分担というものが明確じゃないじゃないか、こういうことで実は質問いたしたのであります。その後最近に至りますまでの間で、かなり予算化もされております。それから事業計画というものも基本計画はもうできておる。それから会場の建設につきましてもまあまあ順当に進んでおる、こういうことでありまして、どうやらこの調子でいくならばという気持ちがなきにしもあらずであります。しかしながら、ただ一つおそるべきことは、万博に対する国民あるいは国民大衆の盛り上がりというものがない。そして政府と万博協会関係、地方公共団体がひとり相撲をとっておるような感じが非常に強いわけであります。私が前に質問いたしましたときと同じような気持ちがまだ薄められていない。ことにあすの立柱式でありますか起工式でありますか、依然としてああいったお祭り騒ぎをやっておる。国民の関心というものは薄らいでいるばかりでなく、最近は万博無用論というようなものまでが台頭してきておる。御案内のように、昨年国はフィスカルポリシーを導入し、ポリシーミックスでありますか——しかしながら、その際におきましても、万博関連事業というものあるいは万博事業というものについては繰り延べの対象から除外して、この問題に力点を置いておるにもかかわらず、国民の盛り上がりというものが一向に上がってこない。この万博というものは世紀の祭典であります。これがこのような国民の盛り上がりがない中で行なわれるということについて非常に心配をいたしておりますし、同時にそういうことでは、計画そのものがおくれております関係上、はたして万博を成功さすことができるかどうか、非常な懸念を実は持つわけであります。私は何かいままでの万博の進め方に欠陥があるのじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。  そこで大臣にお伺いいたしますが、十五日から万博は余すところどのくらいの時日があるわけですか、何日あるのですか、御存じですか。
  41. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ちょうど二カ年です。
  42. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 七百三十日ないし七百三十一日になります。ところが、この間には、もう私から言うまでもないと思うのでありますが、祝祭日が入ってきますし、雨も降れば風も吹く、こういうことで工事その他につきましてもかなりな日数が空費される。実際問題として建設準備を進めていくための日数というものはどのくらいだと推定されますか。
  43. 橋本徳男

    橋本説明員 七百三十日のうちで大体五百日程度だというふうに考えております。
  44. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 そのようにいたしますと、相当なスピードをかけなければどうにもならぬということになる。これだけの国費といいますか金を使ってやる万博でありますし、万博関連事業等を含めてあるいは施設参加等を含めて、会場建設費並びに運営費は一体総額どのくらいになるのですか。
  45. 橋本徳男

    橋本説明員 会場建設費が五百二十四億でございます。それから関連事業が六千三百億でございます。それ以外に政府館並びに庭園関係で百億ほどございます。したがいまして、全体で大体七千億円程度というふうなことになるわけであります。
  46. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 それ以上の金がかかると思うのですが、ほぼ八千億に近いところの金を投入しなければならない。一方、国の財政は硬直化している。そして公共投資につきましては大きな犠牲を払って抑制されておる。こういう段階でそれだけの金を投入してこの大事業を行なうわけでありますが、しかも期日は実際に五百日ぎりぎり一ぱい、こういうところまで来ておるのでありまして、これはよっぽどふんどしを締めてかからぬとたいへんなことになると思います。国民生活が非常に苦しい状態に入っておるし、圧迫を受けておりますし、鉱工業生産の伸びがありましても、経済成長というものをまのあたりに体験しながらも国民はそわそわしている。こういった中でこの仕事をやるのでありますから、よほどの決意がなくてはいかぬと思うのであります。  そこで、そのためにも、私がいま一番おそれておりますのは、万博に対するナショナルコンセンサス、国民的な合意というものができるだけ早く形成されなければいかぬと思う。そこへもってきて、これは私から申し上げるまでもなく、通産大臣は御存じだと思いますが、ポンド危機、ドル防衛、国際経済は非常に悪化しておりますし、そういったことから考えましても、そういったものを克服してやっていくためにも、国民的な合意というものが非常に強固に形成されていかないとこの事業の完成は期せられない、こういうふうに考えるわけであります。ところが、先ほど言いましたように、万博に対する国民の理解というものはきわめて薄いのであります。知っているのは国と地方の公共団体関係者あるいは財界の参加する人たち、万博協会、これだけであります。こんなことではとてもじゃないが国民のそういった合意というものをつくり上げることはできないだろう。  そこで、通産大臣にお伺いいたしますが、なぜ国民的合意が万博に対していまのような状態できわめて低いところにあるか。合意などというものではありません。その原因はどこにあるかお考えになったことがあるか、そしてどう考えておられるか承りたい。
  47. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まだ国民の関心なり理解というものも高揚はない、それは御指摘のとおりであろうと思います。ちょうど明日で満二年前ということになりますから、政府としてもあらゆる努力を傾注いたしまして、関心、理解の高揚をはかってまいりたいと存じております。
  48. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 例によりまして通産大臣のばく然とした答弁を受けたわけでありますが、私はこれはほんとうに真剣に考えておるのであります。少なくともこれは自民、社会、民社三党が共同提案いたしまして、万博を持ってこいということで三党が非常な責任を感じておるのです。こんなものは自民党だけでやる仕事ではありません。それだけにナショナルコンセンスサが形成されないということにつきまして私は非常に心配をいたしておりますし、政党責任も感じております。その原因をいろいろ私なりに考えてみたのでありますが、時間の関係上私の考え方を一ぺん申し述べてみたいと思う。  その一つはこの建設計画が、私はその内容を言いませんが、いろいろな点でごたごたしておって、そしてそれが非常におくれた。万博はいまだ日本が経験したことのないものです。またPRが非常におくれております。したがって、その中心となるところの建設計画というものが確定されて、早期に着工されて、だんだんとそれが実現されていくという姿を地元の者が見ながら、あるいはそれが報道されながら、そういった実際の姿によって国民が万博に対するイメージというものを持つ、ああこんなものかという考え方を持つことによって、やはり国民の理解というものは進められる。ところが建設計画はおくれておる。何回もやり直しをしておる。ひどいのになると建築博覧会のようなものの考え方に立って、万博というものの第一種一般万博としての理解というものが全然なかった。これは関係者の中にもおる。そういうことのためにこれが非常におくれて、そしてしかも空白を生じておる。国民は万博というものはどんなものか全然つかむことができない。これが私は一つの原因であったと思う。  それからいま一つは、関連公共事業というものがなかなか確定しない。ようやく最近になって確定して、六千五百億であります。大体総ワクがきまった。しかし年度の予算化につきましてもおくれがちである。これは近畿圏整備計画と関連するものでありますけれども、その中から拾い上げて、万博に間に合わすというものを取り上げておるわけであります。こんなものがおくれておるところにも、やはりいま言ったような地元民の関心というものがむしろ逆にいっている。そして用地の造成であるとかいろいろな面から、あるいは自然的な災害とこれが一致いたしまして、中小河川その他のはんらんが起こった。それに対する手当てがおくれておるために、何が万博か、むしろわれわれにとって害があるものだというような考え方にまで落とし込んでしまった。私はこれがやはり一つの原因だと思う。政府はほんとうに万博に力を入れるならば、万博協会のやっておる仕事そのものにバックアップしてやるためにおいても、思い切ってこういったものを早期に着工するような措置をとってやらなければいけないのですよ。これがおくれておった。これが一つ理由だと思う。  それから三番目には、これは非常に大きな問題だと思うのですが、PRのやり方に問題があるのじゃないか。先ほど言いましたように、あす立柱式を行なう。内外三千名の者を集める。そして数千万円の金を使ってああいった式典をやる。きわめて芸のない話だと私は思う。そういう間抜けたものの考え方で万博をやろうとしておるから、これはいつまでたっても国民の合意というものは得られないのだと思う。いよいよ満二カ年、七百三十日、これから本気になってPRをやるのだといって、その最初の出発が依然として何かかぐらをやる、清めていくというようなああいった儀式、形式的なものばかりにとらわれておる。実に情けない話だと私は思うのです。  そこで、伺っておきたいのは、そういったやり方をやる原因は何かということをじっくり考えてみると、やはり先ほど言いました一種万博、一般博覧会というものに対する考え方の根底が間違っておるのじゃないか。先ほど川崎君からも若干の指摘があったのを私聞いておりました。それはもう世間で言われておることでありますので、私はこれ以上申しませんけれども、この間モントリオールでもって開かれた万博の中の日本館でありますが、これはいろいろな見方がありまして一がいには言えません。いろんな視察団の帰ってこられた報告、あるいは通産省のほうからも出ていって、報告書がかなりまとまったものが出ております。その中で、モントリオール博覧会が成功したのは、主題はもちろんであるけれども、それよりもその主題に基づいて概念がはっきりと規定されておった。コンセプトがはっきりとしておった。初めに哲学があった。日本は初めにコマーシャルがあったけれども哲学がない、こう言われておる。私はこのことが非常に大きな原因をなしておるのじゃないかと思います。他党のことは言えませんけれども、私どもの政党の中においてもやはり万博を見本市程度にしか考えてなかったかもしれない。はっきり言って政府もそうであったかもしれないし、財界もそうであったかもしれませんが、しかしこれこそいまからでもおそくないからはっきりと考え方を改めて、そして概念をはっきりつかんでいかなければならぬ。  そこで私は伺いたいと思うのでありますが、通産大臣あなたはこの担当大臣でありますから、日本万国博覧会のテーマはわかっておりますが、「人類の進歩と調和」ですね。しかし、一体この万博の特徴、概念づけというものをどういうようにしておられるか、どういうものを持っておられるか、これをひとつ伺っておきたい。
  49. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 なかなかむずかしい問題でございますが、結局日本が明治に新しい段階を踏んで近代国家としてここまでまいりました。日本によって東西文化の融合というものが達成されたということを言っても過言ではないと思うのであります。そういう日本において万国博開催されるということは、そういう点からいうと非常に意義の深いことであると考えるのであります。東西文化の融合というものを日本がここまでとにかく築き上げたという点を十分に世界に認識させる、そして今後の世界文化の発展に相当な指針を与えるというところまでいけば、万国博の成功ということが言えるのではないかというふうに考えておりますが、これはいろいろ人によっていろいろな考え方があるだろうと思います。別にこうでなくてはならぬというものではないと思いますが、私はそんなところを考えております。
  50. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 決してそのこと自体はずれた考え方ではないと私は思いますが、もっとはっきりしたものがほしいのですよ。ただ「人類の進歩と調和」、これは茅さん自体が言っておられますように、われわれにはわかるけれども国民にはわからぬと言っておる。したがって、それなりにやはり概念というものをはっきりしておかなければいけなかったのじゃないか。いまさらこれは言ってもしかたがない。しかしながら、いまからでもおそくはないと私が言いたいのは、そこをはっきりきめてかかってもらいたいということなんでありまして、モントリオール博のときには「人間とその環境」でありますか、そういったテーマのもとに、これに対してカナダは概念を明確にいたしまして、そしてこの博覧会の概念としては、たしかカナダは一つである——開発、発展途上の国々の人々が集まってあの国を形成したのではなくて、母国はそれぞれりっぱな文明国でありますから、それなりになかなか調和がとれないし一本になれない。そこでそれを打ち出したのだと思う。このことが非常に国民的な情熱をわき起こして、そしてモントリオール博覧会に対する国民的な合意というものが得られた、そのことが成功のかぎだと私は思う。そういったものと対比して考えなければならぬのは、今回の万国博覧会は、明確に出ておりますように、アジアで開かれる最初の博覧会だ、ここのところをひとつ概念として持つべきではないか。ところがサブテーマを見ますと、ろくでもないことばかり書いてある。だれがつくったか知りませんけれども、抽象的なわけのわからぬことばかり書いてある。あれではとても国民の合意を得られない。いま一つは、二十世紀末の世界的の課題というのは宇宙開発ともう一つは海洋開発であるといわれている。さらにいま一つは都市の再開発であるといわれている。そういったところからわれわれはやはり概念というものははっきりしていかなければならなぬ。さらに忘れてならないのは、人類の進歩と調和ということをいっております。人類の進歩というものは高く評価し、われわれも自負心を持っておる。けれども調和の点においてはこれは保たれていない。これは今日の平和問題であろうと私は思うのであります。われわれは広島において原爆の被害を受けております。長崎においても受けております。私は、こういった平和の問題なんかもはっきりと概念づけていくことが必要だと思う。こういったものを概念づけてそれを実現していく、拡大していく、表現していく、万博というものを進めていく、またそういうことを国民に訴えていく。そのことによって、とかくあれは財界の一部がやっておるとか通産省だけがやっておるとかいうような非難から、はっきりとそれが当たらないものである、きわめて崇高なものである、われわれ今日の世界人類として、日本国民として、これはきわめてとうとい博覧会であるということを認識させることができると思う。そのことが今日まで欠けておったのではないかと思う。でありますので、この際ひとつそういった点に一ぺん頭を切りかえていただいて、そして万博協会その他に対して思い切った援助をしてやるということが私は必要だと思いますが、私だけしゃべっておってはおかしいのでありますが、これについての担当大臣の感想を伺っておきたい。あとからさらに質問いたします。
  51. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 非常に貴重な御意見を拝聴いたしまして非常に有意義であったと思います。そういうような万博の使命というものがどこにあるかというようなことを国民に徹底するように今後進めてまいりたいと思います。
  52. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 そういうことでありますので、ぜひそのほうへの配慮を集中していただきたい。  そこで私は質問いたしたいのですが、そうなりますと参加国が非常に少ない。特にアジアで開かれる万博という概念、ここからまいりますところの危惧というものは、全体的に参加国が少ない中で、さらにAA諸国の参加が少ないということが致命的な欠陥になるのではないか、このように考えるわけですが、現在参加国は、あるいは諸外国の企業は、政庁を含めてどれくらいが申し込みをしておるのですか。
  53. 橋本徳男

    橋本説明員 現在の参加国は、二十八カ国と一政庁でございます。しかしそれ以外にも相手国が参加を決定しておるのが数カ国ございます。これはあと向こうからの通知だけだろうと思います。これを入れますと大体三十五カ国程度になるというふうに考えております。
  54. 阪上安太郎

    ○阪上説明員 最近いろいろな万博に対する意見あるいはマスコミ等にあらわれております批判等を伺っておりますと、中には、参加国が少しでもいいではないか、実際万博を理解し——あるいは特にはなはだしきに至っては、日本と非常に親しい関係にあるようなそういう国が充実した内容で参加してくれればそれでいいじゃないかというような説をなす人もおりますけれども、私はそうではないと思う。この場合やはり参加国が少ないようではだめじゃないかと思うのです。外務省はたしか百二十五カ国に外交ルートを通じて招請状を出したと私は思う。二十カ国や三十カ国の参加で万博と私は言えないと思う。いま聞くところによると、まだ二、三カ国がちゅうちょしておるということでありますが、外務省に伺いたいのですが、一体何カ国に招請状を出しておりますか。
  55. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 政府は昭和四十一年九月以来、全部で百二十八カ国に招請状を出しております。さらにそのほか二十三の国際機関と、それからEECというものに対して出しております。
  56. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 そこで、いま参加を申し込んできた、契約が成立しておるのはどれくらいですか。
  57. 橋本徳男

    橋本説明員 二十一カ国でございます。契約といいますか、契約はまだ確定しておりませんが、正式に協会と話し合いができておる国が二十一カ国でございます。
  58. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 けさの新聞を見ますと、椎名通産大臣、三木外務大臣、それからたしか保利建設大臣、万博に対する非常な決意のほどが出ておるわけです。これは椎名さんではありませんけれども、三木さんが、七十カ国の参加はぜひとも確保したい、可能である、こういうふうに実は言っておるわけです。はたして可能だということが言えるかどうか。ただ口先だけでそういうことを言っておってもどうにもならない。いまのような二十三カ国一政庁、それからカナダの二州、アメリカの大企業三、これだけが出展の意図を持って申し込んできておるという段階です。モントリオールはたしか六十カ国、これを上回る七十カ国というのが大体目途であったと思う。私は、とてもじゃないがそれは可能性がないのじゃないかと思うのですが、この点についてはどうでしょうか。
  59. 橋本徳男

    橋本説明員 招請国でございますが、一九七〇年にちなみまして七十カ国を予定いたしております。これも全然根拠がないわけではございませんでして、実はモントリオールで出展いたしました国が六十一カ国でございます。したがいまして、その六十一カ国は日本の場合にもぜひとも出展していただきたい。それ以外にモントリオールの場合には南米は全然出展しておりません。したがいまして、そういった国を入れますと七十には達し得られるのではなかろうかというふうなことでそれに向かって努力しております。それからいまのお話でアメリカの企業それからカナダの州は、実は二十八カ国一政庁のほかにございます。現在の国は二十八カ国一政庁のほかに国として数カ国出展を見込まれておりまして、それ以外にカナダの州それからアメリカの企業の出展がございます。
  60. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 カナダの場合は、万博協会当局が非常な情熱を傾けていろいろな手だてを講じて招請につとめた、これはなみなみならぬ苦労があったということをわれわれは伺っております。ことにあそこの会長は、あれはたしか政府代表を兼務しておった。そういうたてまえから。外交ルールを通じ、自分が全責任を持って各国をかけずり回って参加を招請して、ようやく六十カ国を確保してきた。そのほかに、金がないので参加できないというような開発途上国に対しましてもあたたかい手を差し伸べて、共同館をつくるとかあるいは連合館をつくるとかいう形でもってどんどんこれを推し進めていった。そういう涙ぐましい情熱が傾けられたために、あるいは各州に対しまして——万博は三つの州に分けております。一つはヨーロッパ、それからアメリカ、その他の地域というふうにして分けております。それぞれ担当官をつくって常時張りつけにして、出品しようとする、招請されようとする国の側に立って、万博協会の中でその利益を代表してどんどんと主張し、彼らが参加することができやすいように持っていった、こういうことに私は報告書等を見まして感じたわけでありますが、そういう努力があったからこそ、六十カ国を確保した。日本のいまのような政府の体制で、はたしてそれが確保できるか、非常に私は不安に感じます。  そこで、伺いますが、こういったことがやはり国民的合意というものができ上がっていかないところの大きな原因になっているのだから、この場合、特に伺っておきたいと思いますが、日本の政府代表はいま一体だれですか。官房長官、あなたは御存じですか。
  61. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 現在奥村勝蔵さんでございます。
  62. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 その奥村政府代表が辞表を出しておる。外務省、それは確かですね。
  63. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 私の了解しておりますところでは、辞意を表明しているわけです。
  64. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 なぜ辞意を表明しておられますか。わかっている限りひとつ知らしていただきたい。官房長官、御存じだったらひとつ伺いたい。
  65. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 私が直接聞いておりますところでは、奥村代表はかねてから健康状態が必ずしもすぐれていないということでございまして、この際、ひとつ新しい方にかわってもらいたいということで辞意を表明したというように聞いております。
  66. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 そういう答弁をなさると、本来ならばわが党はここで大きな声を出さなければならぬ、そういうはめに入るわけです。しかし、私はそういう大きい声を出すのは得意じゃありませんのでやりませんが、これはごくありきたりの答弁だと思います。新聞が報道するところ、私が調べたところでも、奥村さんがやめた理由というものは、日本国内におけるところの政府代表の地位といいますか、身分といいますか、そういったものが確立されていない。それに非常な不満を持った。健康がすぐれないというけれども、あの人はずいぶんあっちこっち世界国じゅうかけ回っているのです。与えられていない権限、知らされていないところの万博、そういった中で、いままでの外交官としての顔をきかしてあちらこちら招請して歩いている。健康がすぐれないなどというのはおかしいと私は思う。  そこで、そういったことを言っておったってしかたかないので——しかしながら、これはたいへんなことだと思うのですよ。日本の万博の政府代表は、国際条約できめなければならぬことになっておる。一日もこれは空虚にしておくべきポジションじゃないのです。いろいろないきさつがあって、外務と通産との関係でいろいろとイニシアチブをとる関係もあったのかもしれないけれども、つまらぬところで感情を対立さしている。しかし、そういうことは別といたしまして、これが空白になっておる。辞表を出しておる。それに対して処理ができない。一方において政府代表の身分を確立するところの法律案がもうすでに出ておる。いまごろ何をやっているのですか。このことについて、これは通産大臣に対してあまり強く言うべき性質のものでなかったかもしれませんけれども、しかし、あなた担当大臣ですから、この点について、いま少しくいままでの経過につきましてはっきりした——過去のことをあまり語ってもらいたくないが、これからどうするということについて、ひとつ御意見を伺いたいし、同時に、これは通産大臣がいけないというならば、きょうは木村さんおいでいただいたのはそのことなんです。どうしてくれるか。
  67. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 奥村代表がどうも健康上の理由で、こういよいよ迫ってきて、そして仕事がふくそうする——政府代表の仕事はおのずから範囲がきまっておるのでありますけれども、しかし、対外的な責任を十分に果たす意味においても、内部のことに精通していなければならぬ。これから非常に繁劇を加えてくるわけでありますから、そういうことにはどうもたえられないというようなことで辞意を表明しておることがわかりました。それからもう一つは、法制上の地位がまだはっきりしておらぬというようなこともございましたので、いずれにしても、こういう問題ははっきりさせなければいかぬというので、政府内で折衝いたしまして、総理府内に推進本部をつくる、そして私がその長として、各省から兼任者を迎えて、それからまた副本部長をつくって、そうしてそれに政府代表もできるだけ常勤のような形で出てもらって、外部に対する責任を十分果たし得るような立場で万博の仕事を見てもらう、こういう体制をつくったわけでございます。いずれにしても、どうも非常に辞意がかたいので、場合によっては認めざるを得ないかもしれないという外務大臣からの話もございまして、御本人は、やはり機構上の問題を自分の在任中に確定して、しかる上に自分はやめたい、こういうような意向が動いておるやに考えられますので、その点につきましては万事——私は奥村君を個人的にも知っております。仕事が忙しいといったって、そう走り回る仕事じゃないので、結局最終の判断なり認識をしてもらっていればいいのであります。奥村君がもしできればその職を引き続いてやってもらうということを希望しておったのでありますけれども、どうも非常にむずかしそうなので、もしもそういう場合には、後任等についても外務省のほうにお願いをしておるわけです。それで、いよいよ機構がはっきりいたしますと、店開きも数日のうちにやろうかと思っております。そして政府代表の問題もはっきりさせたい、かように考えております。
  68. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 御案内のように、あす立柱式が行なわれる。万国博デーの第二回目が出発する。それから五月末には、参加国の政府代表会議が京都で開かれる。これを招集するのは政府代表だと私は思う。それから七月には、各国のパビリオンの起工、その他いろんな計画をしておりますが、こういった段階で政府代表が辞意を漏らしておる。実際は、辞意を漏らしておるだけではなくて、もう全然出てこないのじゃないかと私は思う。それじゃいままで奥村政府代表が何をしたかということを私は実は質問したいのですが、これはやめておきます。何もできなかったというのがほんとうじゃないかと私は思うのでありますけれども、これはやめておきましょう。しかしながら、この政府代表というものは、国際条約でもって設置しなければならぬというふうにきめられておる。そうして、この代表にはやはりいろんな仕事があります。この点について、御存じだったらひとつ聞かしていただきたいのですが、政府代表というのはどんな仕事をするのですか、お聞かせを願いたい。
  69. 橋本徳男

    橋本説明員 政府代表の仕事を二つに分けまして、国際的な業務と国内的な業務というふうに分かれるかと思います。  国際的な業務に関しましては、外国の参加者に対します約束の履行の保障が第一にございます。それから外国参加者がわが国の地理的名称を使用する場合の承認を与える、それから外国参加者がわが国の原産物を展示する場合にその承認を与える、それから政府代表者会議を招集する、それから国際機関でありますBIEへ報告をする、これが条約並びに一般規則に盛られた政府代表の対外的業務であります。  それから、対内的業務としましては、展示物品の損害に対する保護のための措置をする、それから一般の分類表の最終的な解釈者である、それから会期中の展示物品の搬出入の許可を与える、それから食堂設置の承認をする、それから催しものの開催に関して異議申し立てを受ける、それから特別規則の制定の承認をする、それから諸規則の最終的な解釈を行なう、それから諸規則の違反者に対する制裁を行なうというのが、条約並びに一般規則で盛られた政府代表の国内的な業務であります。
  70. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 いま読み上げられましたように、決してこれは名誉職でも何でもない、実際相当な仕事をしなければならぬ、こういうことなのであります。そのほかに、二十五条の、開催国としていろいろな展示品の運送上のいろんな便宜を与えるような役割りなども実は与えられておる、こういうことであります。非常に重要ないろんな万博関係の仕事をしなければならぬようになっておる。それだけに——辞表を出してからもう何カ月かたっておるのであります。それをほったらかしにしておいて、一方でもって、最初から任命するときにきめておかなければならぬ身分上の確保というものをいまごろになってからやっておるということは、私は明らかに失敗だと思う。こういう問題を一つ二つ例にとってみましても、万博に対するところの政府のバックアップといいますか、責任といいますか、これが、体制が非常に明確でないという気がします。やはりもっともっと真剣にこの問題と取り組んでやらなければならぬ、こう思うのであります。先ほど椎名大臣からお話がありましたが、そういうことのためにということで、総理府の中に推進本部を設けてやるのだ、こういうことであります。それも一つ方法でありましょう。しかし、私は、へたをすると、それは、いまの段階からそういうものをつくってやっていくということになれば、屋上屋を架すことになってしまうのじゃないか、かえってまずい結果を起こすのじゃないかという危惧を実は抱いております。  そこで、私、端的にお伺いいたしたいのでありますが、この政府代表と万博協会との関係は一体どうなのか、このことについて、一点伺っておきたいと思います。
  71. 橋本徳男

    橋本説明員 政府代表は、日本政府を代表いたしまして、外国政府と協会、すなわち、協会の会長でございますが、この間の調整をするのが基本的な立場でございます。たとえば、具体的に申し上げますと、博覧会を管理運営する場合に、いろんな特別規則がございますが、その特別規則を協会がつくりました際に、それを承認し、また、運用するにあたっていろいろの紛争等が生ずる場合が多いのでございますが、そういった場合に、協会と参加者との間に起きますいろいろな紛議を政府代表は裁定するというのが、おそらく大きな仕事になるかと思っております。
  72. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 それと関連いたしまして、万博協会がいろいろな計画、立案、策定をやっている。そのことについて、政府に対し報告の義務が実はあるわけであります。それはどこで受けるのですか。それは代表のほうに報告されるのですか、それとも担当大臣である通産大臣のほうへ報告されるのか。事業の内容によってはいろいろな場所に来るだろうと思いますが、原則として、それは一体どういう形になっておりますか。
  73. 橋本徳男

    橋本説明員 これは現在両方で受けております。ただ、手続的な形としましては、通産省が受けて、通産省から政府代表に御連絡をとっておるというふうな形をとっております。ただしかし、政府代表は理事会等に出席して意見を述べる形になっておりますので、そういう意味におきましては、政府代表にも直接協会からの連絡があるというふうに考えております。
  74. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 私は、万博協会の責任者から伺ったことでありますが、そういった連絡等につきまして、非常に繁雑であるし、時間がかかるし、一々伺いを立てなければ仕事ができないということであります。あと七百三十日でありますか、この段階にきて、しかも準備が非常におくれておるという段階で、しかもなお、国民の好意が十分に求められないという状態の中で、この万博をぜひとも成功させなければ、これは国辱であります。そういう段階の中で、一方において推進本部ができた。大ぜいの人が集まってくる、総合的にものを考える、こういうことはけっこうであります。そんなことはとっくにやっておかなければならぬ。いまごろになってそれをやるというのでは、かえってじゃまになるのではないか、私はこう言っておるわけでありまして、その点が一点。  それからいま一つは、これはさかのぼって言ってもしかたがございませんけれども、なぜ万博協会長と政府代表とが一体の一人のものとしてその役割りがきまらなかったか。いろいろあると思いますけれども、そういった点について、私は実はふしぎに思っておるわけでありますが、もう済んだことであります。  そこで、この際、いまのことと関連いたしまして、幸か不幸か、奥村さんがおそらく辞表を出して、これは引っ込めないと私は観測しておる。そうなりますと、この仕事をスムーズに運んでいくためにも、担当大臣が代表になるということはいけないことかどうか、これはあなたではぐあいが悪いのですか。別に法律上問題がないと思いますが、その点どうですか。
  75. 橋本徳男

    橋本説明員 万博担当大臣と政府代表の一体という問題は、これは国際的に考えておらない形なんであります。つまり、BIEの一般規則の項に基準がございまして、政府代表は担当大臣を代理して職務を行なうというような形になっておりまして、各国とも担当大臣と政府代表とは一体という考え方はとっていないわけでございます。
  76. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 担当大臣というのはどこできまっておるのですか、国際上。
  77. 橋本徳男

    橋本説明員 担当大臣と申し上げましたが、専任大臣、それを専管しておる大臣と政府代表との関係は、いま申し上げたとおりでございます。
  78. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 ですから、日本の担当大臣がここにおられる椎名さん、どこで確保されておるのですか。そういう身分なり地位はどこできめられておるのですか、条約上ですよ。
  79. 橋本徳男

    橋本説明員 担当大臣といいますのは、これは日本での制度でございまして、世界各国別にやっておるわけではございません。ただ、条約では、それぞれ博覧会を専管する大臣と政府代表というふうな形になっております。したがいまして、万博担当大臣は、万博に関するいろいろな事業が各省にまたがりますので、それを推進、調整するという形において、日本で設けられておる制度でございます。
  80. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 そういたしますと、これはいまから変えることはできるのです。官房長官に伺いますけれども、たてまえとしては、専任大臣を置くことが考えられておる。担当大臣というのは日本で発明したものだ。ところが、万博条約の中において、運営事務局は一般規則をつくらなければならぬ、こうなっていますね。その一般規則の中に、日本は担当大臣というのを入れていますね。これが国際事務局の承認を得ておりますでしょう。そういう形を実はいまとっておるわけなんでしょう。だから、考え方によると、条約上の付属文書といいますか、それに基づいて、やはり日本ではその地位はきまっておる、今回の日本万国博に対しての担当大臣というものはきめられておる、こういうことになっておる。そこで、いろいろな問題が出てくると思いますが、この場合、もしそういう条約上の趣旨からするならば、専任の大臣を置くということであるならば、なぜ専任の大臣を置かないか、私はこういうことを言いたいのであります。それを置かずして、そして推進本部を設けて、そこで何とかいままでの欠点を補っていこうと努力されることは、わからぬことではないけれども、なぜ思い切って専任大臣を設けなさらぬか、こういうことであります。そうすれば、事は非常に円滑にいくのじゃないか。椎名さんは、きょうの新聞を見ますと、担当大臣という形でやっていけないことはない、そのかわり、推進本部その他の総合的なものをまとめていくのだ、こういうふうにおっしゃっておりますけれども、私は、先刻来から言っておりますように、何かいきなり通産大臣が担当大臣になったところに、万博を一般博覧会とし、あるいは第一種の博覧会としての出発点における考え方があって、そこに何か錯誤があったのではないか。したがって、世間では、いまだに何ぼあなた方が努力されましても、これは見本市的なものから国民大衆の頭は脱却できないのですよ。そういう意味から考えても、やはりこの際専任大臣を設けるという考え方を持つべきではないか。椎名さんは、自分で自分が不適当だということであるならば別だけれども、私は決して不適当だとは思わない。あなたは偉い人ですから、そんなことは何でもこなしていくだろうと私は思うのです。しかし、そういった点を配慮して、ほんとうに国民にPRしていくためには、専任大臣を設けてやっていくということのほうが、推進本部を設けられることよりも、はるかに前向きの形じゃないか、私はこういうふうに思うのですが、木村官房長官の御意見をひとつ伺いたい。
  81. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 いまお話がありましたとおり、私は、最も理想的な形としては専任大臣がいいと思います。しかしながら、現時点で——将来必要に応じて置くことになるかもしれません。かつてオリンピックの際にも、国務大臣の中からオリンピック担当大臣を設けたことがございます。これはある場合には、科学技術庁長官である佐藤現総理がオリンピック担当大臣として兼務したことがございます。また、特別の事情もございまして、河野一郎さんがオリンピック担当のまさに専任大臣として国務大臣であったこともございます。そのおりおりに応じてその運営をはかってまいりましたが、将来は別といたしまして、現在までは、やはりこの万博を担当するにつきましては、通産省の行政実態と非常に関係が厚いということから、通産大臣が担当大臣として、いよいよ会期も切迫いたしまして、将来ある時点においては、必要に応じて専任の大臣を置くこともあるかと思います。
  82. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 ぜひひとつそういう方向で前向きに御検討願いたい。しかも、その時期は早いほうがいい、私はこういうふうに思うわけであります。しかし、椎名さんはこんなものにこだわらぬと私は思っておりますから、実際やりよい方向に早く持っていっていただきたい。そういうことがやはり整いませんと、いつまでたっても政府はくつの底から足をかいているような感じを与えてしまって、政府責任というものが明確にならない、こういうことだと私は思うわけであります。同時に、国会の中でもおそらく特別委員会を設けなければならぬと私は思いますが、これは国会のことであります。われわれ各党がこれは善処すべき点だと思っております。そういった形でどんどん整えていく。  それから、先ほど言いましたように、万博というものは、単なるオリンピックでもない、またユニバーシャードでもない、札幌冬季オリンピックでもない。その規模におきましてもきわめて大きなものでございまして、あんな簡単なものではない。ところが、オリンピックをこなしたから、ユニバーシャードをこなしたから、また札幌大会をこなすことができるからというような簡単なことで、この万博というものを見ておったら、それはあまりにも甘過ぎるのじゃないか。そういう意味においても、やはり先ほど言いましたように、専任大臣体制を整えていくことが私は正しいと思いますし、そうしていただかなければ、国民に対してはメンツが立ちません。申しわけありませんよ。もし失敗するようなことがありますと、開催したけれども、成功しなかったということになれば、どんなことになるか。苦しい財政の中から多額の投資をいたしましてやっていく問題でありますし、ことに最近では、これは、ものの考え方一つのイデオロギーの上に立った人の考え方でありますけれども、政府は何か万博を盛んに宣伝して、一九七〇年におけるところの安保問題の目をそらすのじゃないかというようなことまで実は言い出しておる。そういう中で国民的な合意を求めてくるということになれば、もっともっとしっかりした政府の責任体制というものを整えていかなければならぬ、こういうように思うわけであります。  これは繰り返して言いますけれども、三党が率先して提案して力を入れている問題でありますので、各党の責任がありますから、ぜひひとつそういったことも頭に置いて体制を整えていただきたい、こういうように思うわけであります。  このほかに、なおいろいろな難問題が目の前に迫ってきております。たとえば物価対策というようなものが、いま早急に導入しなければならぬ問題になってきております。ところが、あと地利用計画というものがまだ十二分にこなされていないために、これが対処できない。たとえば、あそこに大量に集まってまいりますところの物資につきまして、あと地利用計画が確立して、あそこに流通センターをつくるという計画を持っておる。それから先に手をつけてこの問題を解決して、開催時におけるところの諸物価の値上がり等も押えていく、そういうような手は私は講じられると思うのであります。どんどん貨車輸送でやっていく、身近な生鮮魚介類等を地元におけるところの卸売り市場を通じて——そのことが直ちに、大きな需要の増大によりまして物価が上昇するというようなことを押えることができる。それはあと地利用によって押えることができる。あと地利用を一部先行さすことによって、そういう非常にむずかしい問題に対処できるのじゃないかと思う。そういうような点につきましてもなお私は不十分だと思う。  それからいま一つは、万博協会の問題でありますが、きょうはここへ呼べなかった。来てはいけないそうでありますが、これはまた予算本委員会等において場合によっては聞きたいと思っております。あまりにも単価が安くて、そのために、工事関係の下請中小企業というものが倒産しているというような例が出てきておる。また一方において、労務の不足から、賃金の値上がりが非常に急激になっておるというような問題もあります。それから、先ほど言いましたように、あと地利用につきましてもまだ十分な解決ができておりません。そのほか、宿泊施設の問題であるとか、いろいろな問題がまだ山積しておりますので、くどいようですが、早く政府の責任体制というものを確立してやるという形をひとつつくっていただきたいと思います。  そこで、時間がきましたので、もう一問で終わりますが、最後に、実は前回の分科会で、菅野通産大臣のときに、あと地利用と関連して、大阪府が百八十五億でありましたか、買い上げましたところのあの土地、このあと地利用計画はだれがやるのかということを伺うと、それは政府がやるものでありますという。私は正しいと思う。しかし、政府がやるとして、その土地を持っているのが地方公共団体である。これは理屈が合わぬじゃないか。したがって、いままでの手続としてはしかたがないとしても、これの元利償還を含めた二百五十億円程度のものについては、国が思い切ってこれを買い上げて、そうして地方公共団体と連絡を密にしながら、りっぱなあと地利用計画を立てるべきではなかろうか、こういうことを申したのでありますが、私はそれが正しいと思うし、そのように持っていきたいと思う、こういうふうに答えられたので、しかし、政府のことであるので、また途中で変わってはいかぬと思うから、もう一ぺんだめを押したところが、私はそう思っている、こういうことで逃げた。いま地方公共団体は、やはり万博のために相当な地元負担というものがあるわけなんです。こういったものを考えていくときに、ことにあと地利用というもの、ほんとうに二十世紀の世界における最高の文明をあそこで温存し、あるいは将来とも展示していくというような考え方に立つならば、むしろ、国の仕事としてあと地利用をやらなければならぬ。そのためには、地方団体が非常に財源不足をしておりますので、この程度のものは、日本の将来をになう青少年のためにも、あそこに存置してやる必要があるのであり、それが一地方団体の簡単なものの考え方ではいけないのであって、国家的な見地からこのあと地利用をしなければならぬと思う。そういった土地を買い上げてやるとか、そうしてそういったことによって、思い切って国の施策として、日本国民全体の万博のあと地利用というものを考えるというやり方をやるべきだと私は思うのでありますが、ここで通産大臣のこれに対する御答弁をお願いしたい。
  83. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 あと地利用を、広く国家的な見地で、最も有効にこれを活用するという御意見に対しては、全く同感でございます。ただ、その手段として、国が一たん買い上げて、そして地方公共団体とかあるいはその他の団体にまた交付するというような、その手段の問題については、いまここではっきり明言することはちょっと支障がございますので、その点はお預かりしておきますが、広い国家的見地で最も有効にこれを利用するという御意見については、全く同感でございます。
  84. 阪上安太郎

    ○阪上分科員 以上でもって質問を終わります。
  85. 植木庚子郎

    ○植木主査 次は田中武夫君。
  86. 田中武夫

    田中(武)分科員 本日は、貿易を中心に若干お伺いしたいと思います。きわめて時間に制限がございますので、こちらもできるだけ簡単にお伺いしますので、答弁者のほうも簡潔でかつ要領を得た御答弁をお願いいたします。  まず最初にお伺いいたしますが、ニューデリーにおける国連の貿易開発会議がだんだん終わりに近づいてきておりますが、いよいよ新特恵が七〇年あるいは七一年度から実施せられるというような見通しは確実であります。そこで、私はいつも言うことですが、南北問題は、国際間における経済の二重構造の問題である。日本は先進国だといわれておるが、その中にあって、やはり中小企業等国内の二重構造、すなわち、南北問題が国内にある。したがって、新特恵を実施する場合には、そのしわ寄せは中小企業にくる、すなわち、中小企業輸出が困難になる、あるいは輸出市場において低開発国との競合が行なわれて、その結果——現在でもすでに繊維、玩具等々が開発途上国から相当追い上げられておる状態です。そのような状態で、一方に関税がかからない、こういうことになると、ますます困難になると思います。  そこで、まず、新特恵の実施にあたっての中小企業対策、ことに中小企業製品の輸出対策についてどのように考えておられますか、簡単にお伺いいたします。
  87. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本中小企業者に対する非常な不当な圧迫にならぬように、極力これを緩和してまいるという方針で、あらゆる努力を払ってまいる、そういうつもりでございます。
  88. 田中武夫

    田中(武)分科員 国内的に何らか対策を立てる必要はありませんか。中小企業政策をもあわせてひとつ御答弁願います。
  89. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いろいろなそれに対する特恵が行なわれた場合に、日本中小企業者に非常に不利になるというような状況にもしなった場合には、いろいろなこれに対する助成政策というものが考えられますが、いずれにしましても一番望ましいことは、早く体質を改称して国際的にも強化する、こういうようなことにいくのが本筋でございますが、なかなかそれも間に合わないという場合には、とにかくこれに対して日本が除外例をひとつ主張するとか、その除外例が十分でなかった場合には、これを補完する意味においての政策を考える、そういうことがいろいろ考えられると思います。
  90. 田中武夫

    田中(武)分科員 対外に対する対策とともに、対内における対策を急がねばならないと思います。  次に、日中貿易について、若干お伺いいたします。  御承知のように、LT協定貿易が今度は覚え書き貿易と変わった。一年ごとに更新をするというようになったわけです。すなわち、中国貿易については、将来が明るいというよりか、むしろ暗くなった、こういうようにも感じられるわけですが、中国貿易について、その拡大についてどのようにお考えになっておりますか。
  91. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本といたしましては、申し上げるまでもなく、これは貿易が何といっても経済政策の中核でございます。これを拡大することによって、日本が初めて繁栄するというわけでございまして、この貿易拡大については、もうどの国を問わず、あらゆる機会をつかまえて、この拡大の方向に進めていかなければならぬ、そういう意味におきまして、日中貿易またしかりであります。一切のイデオロギーを超越して、ただいま言ったような方向において拡大をはかってまいらなければならぬ。その方法はいろいろございますが、いま問題になっておるのは、延べ払いの問題について輸銀資金を活用すべきであるということでございます。いやしくも貿易拡大していくという以上は、それに相応した施策というものをともに考えていかなければならぬ。そういう意味において、輸銀資金の活用ということは当然なことなんです。当然なことなんだけれども、特殊な対外的な政策による制約を受けておるというのが現状でございます。こういったような問題はなるべく早くそれを解きほぐしていかなければならぬ、かように考えております。
  92. 田中武夫

    田中(武)分科員 私がどうせ吉田書簡のことを聞くと思われたかしらぬが、あらかじめ吉田書簡についての御答弁が行なわれたと思うのです。私はそういうことをいま聞こうとは思っていなかった。吉田書簡についてはあとで触れますけれども、と申しますのは、まず第一点としては、古井さんたちが行って覚え書き協定をやった。そのときに、その前提として政治原則を確認した。これは自民党の代議士です。それに対して政府は、従来の政府の態度と変わりはない、こういうふうに言っておられるわけですね。そういう点が少し矛盾しておるのではないか。やはり政府としては、政経分離ということをばかの一つ覚えのように言っておる。そのこと自体を申しません。しかし、もっと前向きに中国を考えていく必要があるんじゃないか、こう思います。いかがでしょう。
  93. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 前向きというのはどういうことか、よく内容がはっきりしませんが、とにかく貿易の相手としては、将来とも非常に有望な相手方であるということを十分に念頭に置いて、この問題を進めていく、こういうことが必要だと思います。
  94. 田中武夫

    田中(武)分科員 時間の関係であまりしゃべらないようにしようと思ったのですが、前向きとはどういうことか、こういうことですから、私の考えを申し上げます。  日本とアメリカとの関係日本中国との関係、どちらが重要であるかと考えた場合、さしあたって短期的にいった場合は、それはアメリカのほうが私は重要だと思います。しかし、長期的展望に立った場合は、中国との関係のほうがより重要ではなかろうかと私は思っております。しかも、中国の今日のああいう態度は、中国共産主義国家であるからというより、むしろアヘン戦争から第二次世界大戦の終結に至るまでの百年間の、中国が受けた歴史的な屈辱に対する怒りが出ておると思います。今日日本中国との関係は、過去における日本中国にとった態度からあらわれておると思います。将来の中国日本に対する考え方は、いまの日本がどのような態度をとるかということにかかってくるのではなかろうかと思います。これ以上申しましても、これは議論になるだけだと思いますので、私の考え方だけを申し上げます。  そこで、そういうことを考えながらいったときに、いわゆるいままでの二本立ての貿易だったところのLTと友好貿易、ところが、LTが覚え書きということで、一年更新ということになる。あとは友好商社によるところの貿易、これを拡大していかねばならないのではないか、このように思うわけなんです。過去五年間の中国との貿易の実績を見ますと、最初はLT貿易のほうが輸出入とも多かった。最近は、数字をあげてもよろしいですが、友好貿易のほうが多くなってきておる傾向にあります。したがって、今後は友好貿易に対してもっと積極的な態度をとるべきではなかろうかと思いますが、いかがです。
  95. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 友好貿易というものがどういうふうに覚え書き貿易と違うかという本質は、私実ははっきりわからない。とにもかくにも中国貿易強化してまいる、こういう線に両方とも沿っているものであることは疑いないと思います。でありますから、いずれの方法でも、とにかく貿易拡大するというその点だけを見て、そうしてそれを進めてまいる、こういうことになるのではないかと考えております。
  96. 田中武夫

    田中(武)分科員 一九六三年の中国との貿易の実績を見ましたときに、LTの線に沿って行なわれたのが八千三百万ドル、率にして六一%、それに対して友好商社によるところの貿易が五千四百万ドル、三九%だ。それが一九六六年になりますと、LTが二億五百万ドル、三三%、それから友好商社のラインで行なわれたのが四億千六百万ドル、六七%、そういうように比率がずっと逆転してきているわけです。また、いま言ったように、覚え書き協定として、このワクが一億ドル程度だ、こういうことでしぼられてきますと、友好商社によるところの貿易拡大しなければいけない。そのためにはじゃまになるのが、先ほど話が出ました吉田書簡とか、ココムとかいう問題が出てまいります。そういうことはあとで触れますが、この友好商社による貿易に対して、どういうように推進というか、考えておられるかをお伺いいたします。
  97. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 従来のLTの貿易推進拡大するという方針でございまして、その方針はいまだに変わっていない。LTが覚え書き貿易になりましたので、覚え書き貿易拡大していくというねらいは、従来と変わらないと思います。友好商社による貿易ということは、別に政府としてはこれに力を入れておらなかった。今後どうするかという問題については、十分に研究してきめていかなければならぬと思います。
  98. 田中武夫

    田中(武)分科員 いままでLTと友好との二つの線でやっておった。政府はLTを拡大していく。それが覚え書きになった。そこで、福田さん等もかつて発言しておられたのですが、それを中心に考えると、こういうことです。その裏は、友好商社が苦労をして輸出の道を開いた。ところが、それを切ると言っちゃ語弊になるかもしれませんが、それを定めて、一方の、これは政府協定ではございませんが、政府のより干渉しやすい面を広げようとするところに、政府の態度が少しおかしいのではないか。苦労して道を開いてきたのですから、友好商社によるところの貿易についても、やはり十分な推進と保護的な考え方を持つ必要があるのじゃないかと思うのですが、どうです。
  99. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢(鉄)政府委員 先生御承知のように、LT貿易につきましては、その開かれる前には、友好の取引しかなかったわけでございますけれども、そのときには、友好貿易商社を中心とたいしまして、わりに小規模な取引が行なわれていたわけでございます。そこで、LT貿易ができましてからあとは、一応向こうは国家貿易と申しますか、窓口一本化になっておりまして、いままではどっちかと申しますと、個々の友好商社が非常にばらばらに向こうの中国の国営貿易機関と取引するということになっておりましたものですから、契約条件でありますとか、あるいは紛争の処理の面等につきまして、実質的に非常に不平等な立場に置かれていたようなこともいろいろあったわけでございます。LT貿易の話が一応できましてから、化学肥料の輸出でありますとか、あるいは塩でありまとか、米でありますとか、こういうようなわりに大量物資につきまして、少し長期的な観点からこの取引が行なわれる。結局、LTをきっかけにしまして、こういうものを中心にしまして、非常に貿易量も伸びたというようなこともあるわけでございまして、そういうような観点からいたしまして、LT貿易というのは、日中貿易拡大のためには非常に好ましい貿易形態であるというふうに考えております。したがいまして、LT協定の継続等につきましても、政府としては非常に積極的にこれを支援すると申しますか、そういう態度で臨んできておるわけでございます。
  100. 田中武夫

    田中(武)分科員 そういう態度で私は臨んでいただきたいと思うのです。しかし、自民党内の一部では、ともかく友好商社による貿易が好ましくないというような考え方の人もあるようですが、そういうことに屈することなくやっていただきたいと思います。  そこで、覚え書き貿易ということになったわけですが、その中における細目はまだきまっていないかと思いますが、料肥の輸出はどのくらい見込まれておりますか。
  101. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢(鉄)政府委員 肥料につきましては、いまこれから具体的に話し合いが進められるように聞いておりますけれども、私たちの聞いておりますところでは、昨年より若干減るのじゃないだろうかということですが、それほど大きくは減らないだろうという程度に聞いております。
  102. 田中武夫

    田中(武)分科員 ことしは昨年よりか若干減る。そうとして、将来どのように考えられるかということ。これは化学工業局長にお伺いしますが、実は通産省は一月二十二日省議をもって「アンモニア工業の構造改善について」ということで、いわゆる「大型アンモニア設備調整要領」ですか、これをきめられたわけなのです。こういう考え方を持たれるのは、一口に言うなら、生産の合理化といいますか、あるいは国際競争力強化といいますか、そういう上に立たれたと思うのです。そうするなら、将来の肥料あるいはアンモニアの需要をどのように見てこのような要領をつくられて、それによって大型化していこうとするのか、この基礎をひとつお伺いします。
  103. 吉光久

    ○吉光政府委員 需給想定の御質問だと思うわけでございますけれども、内需につきましては、大体従来とも堅実な伸びをいたしておりまして、年率三%程度というふうな状況でございますので、内需の伸びにつきましては、その率を採用いたしまして、年率三%程度の伸びで四十六肥料年度を見たわけでございます。それから、輸出のほうでございますけれども、輸出は時によりましてはらつきがございますが、最近約二〇%程度の伸びを示しております。しかし、将来におきます輸出市場の動向というふうな点から判断いたしまして、大体年率八%程度というふうな伸びを想定いたしました。以上合計いたしまして、肥料用では年率六%程度の伸びというふうなことで想定いたしたわけでございます。  なお。工業用のアンモニア等がございますので、これにつきましては、従前一〇%程度の伸びを示しておりますけれども、需要見通しといたしましては、少しかた目に九%程度の伸びというふうなことを予想いたしまして、それらの集計で新しく四十六肥料年度の需要を想定いたしたわけでございます。
  104. 田中武夫

    田中(武)分科員 たとえば肥料用を見た場合、四十六肥料年度では千百三十六万二千トンを基礎として算出しておられるわけなんです。しかし、いま通商局長が申しましたように、中国だけではありませんが、中国ではむしろ去年より悪い。じゃ来年はどうか。これまだはっきりわからない。そのことは、今後の覚え書き貿易の交渉にかかる。その根本は、やはり政府の中国敵視の姿勢がどう変わるか、こういうことにも大きなつながりがあると思うのです。  そこで、四十六肥料年度のこのケースですね。このときの輸出量をどのように考えて——輸出は上に出ていますね。この輸出というのは、アンモニア自体の輸出ですね。肥料の輸出ですか。——七百五十四万トン。そうすると、五百五十三万トンに比べて、七百五十四万トン、これだけふえるとするならば、一体、この肥料の輸出はどこへもっと出るのか。中国がむしろ十分に見通しがつかないということであるならば、一体どこに肥料の需要を求めようとしておるか。
  105. 吉光久

    ○吉光政府委員 いま御指摘ございましたように、四十六肥料年度におきましては、輸出量の全体といたしましては七百五十四万トンというものを想定いたしておるわけでございます。これを市場別に見ました場合に、肥料の輸出市場として一番大きなウエートを持っておるのは、やはり何と申しましても中国ではないかというふうに考えるわけでございます。したがいまして、この四十六肥料年度における見通しにおきましても、市場別構成といたしましては、中国が約五〇%というふうな構成でございまして、その他の東南アジアがさらに中心になるわけでございますけれども、インドで二〇%、その他の地域で二五%というふうな構成でございまして、何と申しましても、中国市場というものは、日本の化学肥料の輸出市場としては相当重要な地位を持っておるもの、このように判断いたしておるわけでございます。
  106. 田中武夫

    田中(武)分科員 大臣、いまお聞きのとおりなんで、これは大臣のもとで省議として決定した大型アンモニアの設備調整要領なんです。やはり、中国に対する肥料の輸出がどうなるかということがこの計画に対して大きなウエートを持っているのです。したがって、もっと中国貿易拡大さす方向において御検討願わなければ、あなたのもとにおいてつくられたところのこの設備要領自体が間違っておったということになるわけです。いかがでしょう。
  107. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 全く御指摘のとおりであります。
  108. 田中武夫

    田中(武)分科員 ついでですから、このアンモニアの設備調整要領についてお伺いしますが、この第四によりますと、設備計画あるいは生産計画等々は化学工業局長へ提出することというふうになっておりますね。この要領に基づいての新たな計画、設備計画等がいままで幾らほどあなたのもとに申請が出ておるのか、お伺いします。と同時に、今後どのような見通しなのか。いわゆるこの要領と実際の業界の動きについて、簡単にお願いします。
  109. 吉光久

    ○吉光政府委員 現在の動きでございますけれども、この調整要領に基づきまして、四十六肥料年度までに設備増強余力と申しますか、これぐらいのものを増強いたしたいというふうなことで考えました数字が、大体七千五百トンないし八千トン・パー・デーでございますけれども、そのうち、スクラップによってまかないますものを大体四千五百トン程度というふうに考えておるわけでございます。したがいまして、実際問題といたしまして、いまのスクラップを含めまして七、八千トン程度のものが、増強計画の中に入ってくるというふうなことであろうかと思うわけでございます。現実の業界等のほうで自分で判断いたしております増強計画のトータルは、大体約九千二百トンパー・デーでございます。したがいまして、そういうふうなものについて、そこらの全体の需給の関係から供給力を一応調整する必要があるのじゃないか、こう考えておるわけでございます。これは全体の動きでございまして、個別的な問題としまして、現在手元に出てまいっておる計画でございますが、これは、すでに出てまいってこれでよろしいというふうに申しましたのが、東洋高圧の堺計画の一計画のみでございます。あとその他、現在三菱化成の黒崎計画でございますとか、あるいは鹿島アンモニア、これは三菱油化と日東化学の合弁会社でございますが、この二つの計画が手元に現在まいっております。また、近く出される予定として聞いておりますものに日本化成の計画があるように、これはまだ予定でございますが、聞いておる段階でございます。
  110. 田中武夫

    田中(武)分科員 時間がないので急ぎたいと思うのですが、この調整要領の五項に(1)から(5)までの要件があげられておる。私は、この設備調整要領に基づく認可ということはちょっとおかしいと思うのですが、これは法律上のことでないので、許可認可ではないが、行政指導といいますか、まあそういうことですが、この許可認可の問題については、私ちょっと疑問を持っておりますが、それは別といたしまして、ともかく通称法律的な意味でないが認可をする場合に、この五つの要件が満たされることが前提になるのであろう、こういうように理解いたします。したがって、たとえばスクラップせられる個所におきましては、相当な労働者が余ってくる、人員整理が出る、そういうことも予想せられるわけですが、この条件の(5)には、「設備の廃棄に伴う余剰人員の吸収等について適切な見通しがあること。」こうなっておりますが、これは完全雇用をうたっておる、このように理解してよろしいですか。ということは、そうでなければいわゆる許可をしない、このように理解してよろしいですか。
  111. 吉光久

    ○吉光政府委員 御指摘のように、今回の構造改善計画に伴いまして余剰人員という問題が生じてまいりますことは、御指摘のとおりでございます。したがいまして、特にこの調整要領の中に、雇用問題についての配慮と申しますか、これを一つ入れたわけでございまして、実際問題といたしまして、まず第一に、現在の企業経営者が自分で他の仕事の部門にどの程度人員を吸収できるかどうか、あるいはまた自分自身の同系会社等にどの程度吸収できるかどうか、具体的な計画を、それぞれの余剰となるであろうと思われる人員数を想定いたしまして、それに対しましてどういう態度で臨んでいくかというふうなことを一々個別的に審査さしてもらっておるわけでございまして、その過程におきまして、そこらの計画があいまいであるというふうなものにつきましては、さらに会社側の再検討を求めるというふうな態度で臨んでおるわけでございます。その間そごのないように、あくまでも慎重に対処してまいりたい、このように考えております。
  112. 田中武夫

    田中(武)分科員 またこの問題については同僚議員が質問するだろうと思いますので、この程度にしておきますが、労働問題が起こらないように十分気をつけてもらうことを重ねて要求をしておきます。  次に、これは大臣、先ほどで答弁が半分なされたようなことですが、たくさんの人が同じような質問をしておりますので、私はあまり深入っては伺いませんが、吉田書簡というものはなくなったのだ、輸銀を使うことについては何ら支障がないのだ、このように理解していいですね。
  113. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 もともと、吉田書簡は個人的な書簡でございますから、ただその当時の日本貿易政策というものにのっとって書かれたもので、そういう意味において、吉田書簡ということを盛んに口に出すようになったのであります。もともと、あれは別に政府を拘束するものじゃございません。  それで、中国との貿易を大いに拡大していこうということであれば、もう当然輸銀資金によって輸出業者の金融を楽にするという政策が伴っていくべきものでございますが、しかし、外交上の理由でそれがはばまれておったというだけにすぎない問題であります。
  114. 田中武夫

    田中(武)分科員 確認しますが、吉田書簡は、もちろん法律的効果は何もございません。したがって、輸銀法の第一条の外国ということばの中には、中国を差別して考えない、間違いございませんね。
  115. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 純粋の経済、輸出貿易拡大していこうという国の方針から考えて、当然これは輸銀資金を使って差しつかえないものであるということをわれわれは思っております。
  116. 田中武夫

    田中(武)分科員 日中貿易といいますか、これの決済はポンドでなされています。そこで、昨年十一月のポンドの平価切り下げで、商社は合計して十二、三億ドルの損をした、このように伝えられております。  そこで、ポンド建てで決済をするとしても、この決済方法としてポンドの平価変更調整条項等を入れよ、こういうような動きが商社間といいますか、にあるようなんです。そこで、これは大蔵省になるのではないかと思うのですが、一そう踏み切って、この中国との貿易の決済方法をポンド建てにせずに、日本銀行あるいは日本銀行の中に中国との決済勘定を置くといいますか、あるいは日本の為替銀行とバンク・オブ・チャイナとの間に円勘定預金コルレスを結ぶ、こういうようなことによる円取引、円建ての取引というようなことは考えられませんですか。
  117. 原田明

    ○原田政府委員 中国との貿易は、先生御指摘のとおり、ポンドで行なわれております。ポンドの動揺につきまして、特に中小の方々にリスクがあって、ややもすれば円滑にいかないおそれがあるということをわれわれも心配をいたしております。ただ、これをどのようなたてまえ、どのような決済方法でやるかということにつきましては、向こう側の立場あるいはこちら側の立場、世界通貨の立場、いろいろあるようでございます。これは大蔵省の御所管でございますので、私どもといたしましては、決済面から日中貿易というものに支障が起こらないように、特に中小輸出専業者というものについてそういう面から起こらないように、ぜひ御配慮を願いたいというお願いをしているということでございます。
  118. 奥村輝之

    ○奥村説明員 日中貿易に決済面から支障が起こらないようにしてまいりたいという気持ちは、私どもも同じでございます。ただし、先般来の交渉の段階におきまして、ポンドを使用したいという先方の希望に対して、わがほうからは、私どもが伝え聞いておるところによりますと、円建てでやりたい、円決済をやりたいということを重ねて主張せられているようでございます。したがって、そういうふうな日本側の業界の御主張に対しては、私どもは理由があることであると考えておりますので、これをサポートするつもりはございます。内部的にはサポートして、私どもは反対を唱えるという立場ではございません。
  119. 田中武夫

    田中(武)分科員 そうしますと、覚え書き貿易では一応そういうことが議論になった、今後円建てだというような話が進み、その方向にいったときには、大蔵省として別に異議がないということですね。
  120. 奥村輝之

    ○奥村説明員 異議ございません。
  121. 田中武夫

    田中(武)分科員 先ほど申しましたように、ポンドの切り下げで十二、三億ドルの損をした、こういわれている。ポンドが再危機だともいわれている。ドル必ずしも安全とはいえない。今日のヨーロッパにおけるゴールドラッシュの状態を見ておると、ドルもあぶない、こういうことが予想されるのですが、いわゆる外国の通貨の平価切り下げ等によってこうむるところの輸出業者の損失は、輸出保険法の第三条第六号に該当するものとして保険対象になりませんか。あるいはそれをそうする考えはありませんか。
  122. 原田明

    ○原田政府委員 保険は保険法の定めに従ってやられておりまして、相手国がキャンセルをしたとか、その他非常危険、信用危険に基づくリスクをカバーするというたてまえになっております。ポンド切り下げという為替相場の変動によるものをそのまま保険で救うということは困難ではないか。ただし、いかなる理由によりますとを問わず、相手がキャンセルをいたしまして、それによって取引上実損が起こったというような場合には、保険法によってその定めるところに従って救済されるというように考えております。
  123. 田中武夫

    田中(武)分科員 輸出保険法の三条六号ですが、「前各号に掲げるものの外、」これはいまあなたが言ったいろいろなことがあるわけです。「本邦外において生じた事由であって、輸出契約の当事者の責に帰することができないもの」は対象とすることになっておるでしょう。この条文の上からいって、それを考えるということは、輸出振興という上に立っても必要ではないか。ことに今日のようにキーカレンシーの危機状態だといわれているときには、そのような考慮が必要だと思うのですが、どうですか。
  124. 原田明

    ○原田政府委員 おっしゃるとおり、為替相場の変動とかそういうことは、輸出を不能にするというような原因になる場合が非常に多いと思います。したがいまして、それによって輸出が不能になったということによりまして損害が起こるというものは、十分に保険でカバーされると考えます。
  125. 田中武夫

    田中(武)分科員 ここで直ちに全面的にそれを保険対象にするということの答えはとれないと思いますが、これは六号を読めば、別に異議なくいえるんじゃないか、私はこういうように思いますので、議論はいたしませんが、大臣、これは輸出振興からいっても、今日のようにいわゆるキーカレンシーがあぶないというか、動揺しているときには、ある程度考える必要があると思うのですが、どうです。
  126. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 困難な問題でございますが、十分ひとつ研究はしてみます。
  127. 田中武夫

    田中(武)分科員 そのくらいにしましょうか。  その次に、ケネディラウンドの実施によって、ガットに加盟している国、これは全部関税の一括引き下げをやる。そしてガットに加盟していない国でも、日本との間に最特恵条約のある国は全部これを実施する。ところが、そうでないところ、たとえば中国、北ベトナム、北朝鮮等々はそれに入らない。そしてそれは日本政府のほうで必要だと考えたやつには適用するというようなことで、大豆とか銑鉄等は、関税の一括引き下げについて中国との間にも考慮せられているように聞いております。また、それに基づくところの関税定率法の改正案が本国会に出されておるわけなんですが、こういうことによって中国からの輸入が阻害せられていますので、それが高くつくわけです。関税をかけるだけ。したがってまた輸出もしにくくなる、こういうように思うのですが、ケネディラウンドの実施と、中国その他の、いま政府が適用しないと考えておるところの諸国との貿易についてはどのように考えますか。どうしますか。
  128. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢(鉄)政府委員 中国について申しますと、ケネディラウンドの実施に伴いまして関税が下がった場合に、それに当然均てんすることになっておりませんので、非常に大ざっぱに申しますと、八〇%は大体カバーできると思いますけれども、あとの二〇%につきましては国定税率が適用されて若干格差が生ずる、こういうことになる見込みでございます。
  129. 田中武夫

    田中(武)分科員 なる見込みでございますでは、どうも答弁にならぬと思うのですよ。それから、私のほうで調べたところによると、二〇%ではないのですがね。中国から輸入しているのは、品目にして六百三十五品目ある。そのうち、まず関税一括引き下げを適用しようと考えておられる大豆とか鉄、あるいは今回の処置に関係のないもの、いわゆる無税据え置きとか有税据え置きを除いて、なお三百四十九品目、これが関税がかかるわけなんです。関税がかかるといいますか、このケネディラウンドの一括引き下げの適用を受けないものです。それは五五%です。そういうような計算が出ておるのですがね。
  130. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢(鉄)政府委員 昨年の実績を見ますと、中共からの輸入が大体三億七千万ドルくらいでございますが、この中で関税上の格差を生じないものが八〇%、先ほども申し上げたわけでございますが、そのうち、銑鉄、大豆で約二〇%でございます。関税格差のありますものは二〇%でございまして、従来からの格差のあるものが約六%、それから、今度ケネディラウンドの結果生ずるものが約一四%という一応の資料を持っております。
  131. 田中武夫

    田中(武)分科員 金額の比率と品目の比率の違いではないかと思いますが、私のとった資料は、現実に貿易をやっておる人たちから集めた資料なんで、若干数字が違うかもわかりません。いずれにいたしましても、ケネディラウンドの実施によって不利益をこうむる、あるいは従来からすでに不利益をこうむっているものがあることは事実なんですね。そのことが、中国貿易との間に大きな一つの支障を来たすといいますか、そういうことになっていることも事実なんです。そこで、ガットに加盟しておるとか、あるいは最特恵条約を結んでいないとかいうだけで差別待遇をすることをやめるという方向で検討はできませんか。いかがです。
  132. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ややこしい関税上の国際的な約束があるようでございまして、ちょっと研究してみないと即席で申し上げかねますから、御了承願います。
  133. 田中武夫

    田中(武)分科員 ここで大臣と関税上の、ガット協定だとか、いろいろなことを議論してみてもしようがないし、なんでしたら、私のところにおいでになったらお教えしてもよろしい。いずれにしても、そういうことがなるべくなくなるように、ひとつ政治的な配慮のもとに検討をする、その程度の答えはできませんか。
  134. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 非常にややこしい約束になっているようでございますが、とにかく、そういう方向で検討してみます。
  135. 田中武夫

    田中(武)分科員 前向きの答弁があったと理解いたします。  次に、昨年来通産省と私の間に懸案になっておるココムリストの問題ですが、いまここで、あらためてさかのぼっての論議はいたしません。しかし、昨年商工委員会で相当私が質問で詰めまして、そのあと内閣に対して文書質問をしたその回答、この事実の上に立ってのみお伺いいたします。  内閣からの回答は、私が指摘したように、ココムは、従来法的な根拠も何も持たない。直接に国民を縛ることができない。そこで、多国貿易管理法及びそれに基づく管理会による、そういうことです。それで見てみますと、管理令の別表をごらんになれば、そういうことでは通らないと思うのです。というのは、甲地域にはこれこれのものは出してはいけない、となっている。一体甲地域というものは何かといえば、これは全部読むとだいぶかかりますが、いろいろな国が全部書いてある。これはほとんど世界じゅうの国が書いてあるんですね。中国とか何とかということを別に扱っていないのですよ。したがって、内閣の私に対するココムに関する答弁は間違っておる。限られた時間でこのココム問題の法律的な論議はいたしません。しかし、いままで政府なり通産省がとってきたココムリストに関連する態度は誤りであったということだけは、はっきり言えると思う、法律的に言うならば。そこで、ココムリストの品目を減らすということで検討が進められておると聞いております。新聞によると、五十品目ほど減らすという。ところがアメリカは、むしろそれにミサイル等を追加するような考え方を持っておる。こういう点から見まして、ココムに対して通産大臣はどう考えるのか、はっきりとお答え願います。法律論議になったって、これはあなた勝てませんので、政治的な配慮についての決意を言ってください。法律論では勝てませんよ。
  136. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 戦略物資の輸出規制は、自由主義諸国間の申し合わせでございますので、その一員であるわが国として、協調態勢を保持してまいる、こういう方針でございます。しかし、技術革新の進展であるとか、これら諸国の動向等を考慮して、できるだけ、その約束のなにができておりますけれども、輸出拡大をはかるというねらいで進めてまいりたい、こう考えております。
  137. 田中武夫

    田中(武)分科員 具体的に言うならば、ココムリストの中から五十落としていくのだ、そういう考え方を持っておるということも聞いておるのですがね。というのは、当時と違って、技術の進歩で、もうそういうことをココムリストで禁止する必要がなくなったものもたくさんあるんですよ。かりに、ココムの八カ国ですか何カ国かがやろうとしておることが、これはよくないことだと思いますが、それを是認したとしても、当時とは違って、技術的進歩によって改良が加えられて、もうあれでは何にもならない、そういうことを禁止する必要のない品目がたくさんあるのですよ。そういうものを洗いかえる必要があるんじゃないですか。秘密でもなければ戦略物資でもないし、中国だってそんなことはできる、こういったような時代になってきておるのですよ。これはきょうはできませんが、何でしたら商工委員会かどこかで一つ一つ品目に当たって検討してみてもいいと思うのですが、どうでしょう。
  138. 原田明

    ○原田政府委員 確かに、技術の進歩その他大臣の申されましたような事情がございますので、私どもは輸出拡大の見地から、現在鋭意検討をいたしております。  それから、ここで先生の御指摘に異議を唱えるつもりはございませんが、甲地域と申しますのは、ただ承認を要する地域でございまして、ここに掲げてある地域に全部出さないという意味ではございませんので、この点だけちょっと申し添えさせていただきます。
  139. 田中武夫

    田中(武)分科員 いま私の言っているのは、あなた、去年の内閣の文書、私の質問に対する答弁、御存じでしょう。貿易管理令によって答えたわけです。私の質問に対して。管理令には、中国を別扱いにしておるところはどこにもない、これこれのものは承認を求めなければならないとなっておる。その承認を求めるという甲地域というのは、ほとんど世界各国が掲げてある。したがって、共産国に対して、この貿易管理法も管理令も区別をしていないということを私は言っておるのですよ。したがって、ココムが法律的効果を持たぬものであるならば、当然日本の法あるいは政令の上に立っては、中国も自由主義国も同じだということです。そうでしょう。区別のある条文は一つもないのですよ、そのことを言っておるわけです。どうです。秀才。
  140. 原田明

    ○原田政府委員 おっしゃるとおり、承認を要する地域ということで羅列されておりまして、令自体の中で区別はされておりませんで、先生のおっしゃるとおりでございます。
  141. 田中武夫

    田中(武)分科員 だから、これは法律、政令も含めて、たてまえでは何ら区別をつけていない、そういうことなんです。これはココムリストという自由主義諸国の約束事だからということで、行政の上でやっておられるのだと思うのです。それから、これも先ほど来言っておるように、もはや再検討も再々検討もせねばならぬ段階にきておるということ、それを申し上げておるわけです。と同時に、いざの場合は、いま申しましたように、一方は行政的措置なんです。立法的な措置においては何ら区別がないわけです。そういう点について、私は法律的に言うなら、ココムの問題は、大臣でも秀才局長でもこれは答えられませんよと初めから言うておるのですよ。だから、ココムリストについて、削減の方向について再検討し、あるいはアメリカその他の国にも十分にそういうことを要請しますと答えたら、それでいいのですよ、どうなんです。おっしゃるとおりですと言うたら、それでいいのだ。
  142. 原田明

    ○原田政府委員 おっしゃるとおり、輸出拡大の方向で検討いたします。
  143. 田中武夫

    田中(武)分科員 そういうことで、これ以上申しませんが、また何か疑問があれば、私はこれだけでも二時間ぐらいもらって、一つ一つ検討していってもいいと思うのです。  そこで、あまり町間もなくなったので、次に日ソ貿易についてお伺いしたいのですが、六六年からのソ連の経済発展五カ年計画ですか、それと六六年から七〇年の貿易支払い協定に基づく年次交渉というのが、いまもう終わったのですか、行なわれておりましたね、その経過と方針といいますか、どういうようになったか、ひとつお伺いをいたします。
  144. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、日ソの五カ年協定に基づきます第三年、——本年がそうなりますが、年次計画作成のための交渉も二月の八日から始めております。だんだん煮詰まってまいりまして、現在輸出及び輸入の計画の作成のほとんど半分以上まではやってまいりました。今後非常に力を入れまして、でき得ればこの十日間以内くらいのうちにはまとめ上げたいと考えております。  それから、方針につきましては、先生もよく御案内のとおり、昨年通関ベースで日本輸出が約一億六千万ドル程度、輸入のほうが四億五千万ドル程度、非常に片貿易になっております。そういう関係もありますので、本年の計画におきましては日本の主張に持っていくように努力いたしておる次第でございます。
  145. 田中武夫

    田中(武)分科員 昨年は、対ソ貿易では入超になっておることは確かなんです。しかし、最近船舶あたりはだいぶん注文があったということを聞いております。明るい見通しになっております。さらに北樺太とかシベリアの開発というのは、日本協力しなければできない、といえばソ連はおこるかもしれぬが、ともかく、日本協力する問題だと思うのです。そういう問題についてどうお考えになっておりますか。
  146. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 日ソの通常貿易のほかに、ただいま先生の御指摘のとおり、シベリア開発の件及びそれにも関連しますが、北樺太の天然ガスの問題がございます。ただ、北樺太の天然ガスの問題につきましては、主として価格問題を中心といたしましてなかなか先方との話し合いがまとまらないという状況でございます。  もう一つ、シベリア開発のほうにつきましては、御存じのようにウドカンの銅とか、あるいはチュメンの油田とか、木材というようなものがございまして、木材の問題につきましてはかなり話が煮詰まりつつある状況でございまして、私どもといたしましては、政府関係各省と協力をいたしましてそれを進めていきたいと考えております。
  147. 田中武夫

    田中(武)分科員 対ソ貿易について、通産大臣いかがですか。
  148. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いま鶴見局長からお話がございましたが、私も同じような認識を持っております。樺太の天然ガスなどもまだ打ち切ったわけじゃない、ペンディングのままでございます。むしろ、それよりもあとから持ち上がった木材の開発は案外順調な進行を見せております。これによって日ソ両国間の貿易が漸次拡大していくものと期待しております。
  149. 田中武夫

    田中(武)分科員 時間がないので次に入りますが、案外忘れられておるのに東欧貿易があると思うのです。あまり日本との間に活発ではないが、将来相当な輸出が見込まれる地域だと私は思うのです。ジェトロ等で見本市開催するような計画もあり、あるいは経済使節を送るとか、あるいは向こうから来るとかいろいろあるようです。あるいは通商航海条約を結ぼうという機運の国もあるようです。しかし私は、案外いままで貿易という問題で東ヨーロッパ、東欧諸国が忘れられておると思っておるのですが、もう時間がないから簡単でよろしい。東欧貿易の実態と現状と将来の見通しを簡単に言ってください。
  150. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 ただいま先生の御指摘のとおり、従来、とかく東ヨーロッパの諸国に対する貿易というのは若干看過されておる向きがございました。しかしながら、最近、先生も御存じのとおり、昨年の初めごろから先方からの知名人等の来訪が多くなりましたし、日本側からの往訪も多くなりました。実績は、たしか一昨年八千ドル程度両面交通があったものが、昨年になりまして一億七、八千万ドルと、倍以上に伸びております。御案内のとおり、ポーランドなどはさらに非常に伸びておりますが、ブルガリア、ルーマニアは両面交通でそれぞれ約四千万ドルくらいになっております。今後、その他の国ハンガリー、ユーゴ等につきましてもさらにその努力を続けてまいりたい。ただいま先生御指摘のとおり、経済調査団の派遣とか人の往来、あるいはその対策ということで努力してまいっておるところでございます。
  151. 田中武夫

    田中(武)分科員 東欧あたりは、私は将来いい商売の相手になると思うのです。一、二例はございますが、その各国の経済発展を見ておりますと相当有望な市場であると考えます。積極的な関係者の取り組みを望みたいと思います。  そこで、時間もいよいよ参りましたので結論に入ります。  もう何回か予算委員会分科会等を通じて問題となっておりますが、アメリカの輸入課徴金、あるいはたな上げにはなっておりますが、各種の輸入制限法案、こう考えたときには、もうアメリカばかりにたよっておれる状態ではない。総理は、往復三〇%くらいだからアメリカ依存ではない、こういうように言われますが、三〇%はアメリカにたよっておる。そこで、こういうときを機会に、いわゆる貿易の構造改善をすべきではなかろうか、このように思います。そのためには、中国をはじめ、対共産圏あるいは東南アジア、そしていま申しました東ヨーロッパ等に対してどんどん市場を開拓するとともに、原料、資源等を他国に求めるという意味からも、そういう輸入先を変えていく必要があるのではないか。ちょうどアメリカの輸入制限とか輸入課徴金が問題になっておるときだけに、日本としてその貿易構造を転換していくのにいい時期ではなかろうかと思うのです。  最後に、通産大臣から、そういうことについての政府の考え方をずばり言っていただきまして、終わりたいと思います。
  152. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは人為的に急激に転換するということは不可能でございますが、とにかく漸次新しい市場を開拓いたしまして、あまり一国に片寄らない、そういう状況にだんだん推し進めてまいることが適切であろう、かように考えております。
  153. 田中武夫

    田中(武)分科員 人為的に急速にということですが、それもあるでしょう、相手のあることですから。しかし私は、政府が決意することによって貿易の構造転換はいつでもやれると思うのです。重ねて要望いたしまして終わります。
  154. 植木庚子郎

    ○植木主査 午後一時四十分より再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時八分休憩      ————◇—————    午後一時四十八分開議
  155. 植木庚子郎

    ○植木主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十三年度一般会計予算及び特別会計予算中、通商産業省所管について質疑を続行いたします。  広沢賢一君。
  156. 広沢賢一

    広沢(賢)分科員 私は、同和対策、部落産業の問題について御質問するのでございますが、その前に、先ほど田中委員が触れました関税定率法改正の問題、日中貿易の問題について、通産大臣に一言申し上げたいと思います。  これはきのうの晩もおそく大蔵委員会で問題になりましたが、先ほど田中委員が説明しましたから説明は簡略に省くとしまして、中国並びに北朝鮮等について、ケネディラウンドの実施に伴う関税率引き下げが不当にそういう国交未回復の国には適用されない、したがって三百五十品目が格差を受けるからという問題で御質問しました。このことの重要性を通産大臣に一言私のほうで御説明申し上げたいと思うのです。  通産大臣輸銀延べ払い融資については各閣僚に先がけて非常に理解あるいい御答弁を率先して何回も繰り返されているということについて、私どもは心から敬意を表します。そういう形でもって一段一段と日中貿易拡大しなければならぬし、古井さんも非常に努力を重ねました。ところが、今度大蔵委員会提案されたこれの中には、ただ品目で、では大豆、銑鉄を解除したらいいだろうということでなくて、あと残っているものとしては生糸、絹織物、それからエビ、魚類、ずいぶん入ってきていますが、そのほかの品物にも響いてくるわけです。その響いてくるのは、あと差の残るのは三百五十六品目、貿易拡大するにつれてさらにぶつかってくるものがあります。そうすると、これは日中貿易にとって非常に障害になる。それじゃ生糸を品目としてあれしたらどうだ、大豆、銑鉄のようにしたらどうだという御答弁がございました。ところが、よく突き詰めていくと、生糸については国内養蚕業の上からなかなかむずかしいということで、すったもんだございました。そうすると、品目別に拡大するということは一つ一つそういう形でぶつかります。そこで、行政措置としてこれが残って、またいろいろややこしい問題がココムと同じように起こってくるということです。そこで、もう一つ方法として、便益関税国として引き下げ措置を政令によって定めたらどうか、こういう質問をしました。そうしたら、大蔵省の関税局長は、これは政令としてやり得るかどうかという私の質問に対しまして、いろいろことばを濁しておりましたが、私どもが感じるところは、第三国が騒ぐとやはりそれがやりにくくなる、政令事項に中共ということばを書けないというんで、それでもってずいぶん問題になりました。そういう重大な問題でございますから、大蔵委員会では大体与野党一致してこういう問題については何とかしなければならぬという意見が圧倒的でございます。そこで、この問題は大蔵委員会、大蔵省所管からいろいろ閣議とかその他に話があった場合には、せっかく輸出入銀行で拡大しようとして前向きに取り組まれておりますから、そうしたときにはひとつ理解ある態度をとって援護射撃をしていただきたいと思いますが、どうですか。
  157. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 貿易拡大の大精神から割り出すと、すべてこういったような障害になるようなことはできるだけ払いのけて貿易拡大推進してまいらなければならぬ、こう考えますので、そういう場合には善処いたしたいと思います。
  158. 広沢賢一

    広沢(賢)分科員 どうもありがとうございました。ひとつお願いします。  それで、本論の部落産業の問題ですが、この部落産業という問題についてはもう通産大臣もよく御承知だと思います。予算委員会八木一男代議士がこの問題と夢中になって真っ正面に取り組んで以来大体十年たちまして、ようやく同和対策促進法という名前ですか、ほかの名前になりますかわかりませんが、単なる基本法ではなくて、同和対策促進法という名前で今国会に準備でき次第提出するよう全面的に努力するということを総理から御答弁いただいております。もうこの問題は、いわれない差別を百年来、明治以来続けてこられて一その前は徳川時代から続いていますか、徳川の分割支配の封建的な遺制の犠牲になって、明治の解放でも十分その恩恵にあずからず、事実上はたいへんな状態になっていると思うのです。その部落民の生活問題、それが総理府で設置された同和対策審議会の答申によると、部落差別というのは観念の幽霊ではないので実態があるのだ、その実態というのは何かというと、非常に貧しい状態に置かれている。同和地区は全国で四千百六十地区です。それから世帯数は四十万、人口は百十一万となっていますが、俗に三百万と言われているほどです。その人たちの部落産業というようなことでございますが、その部落産業はくつ、はきもの、その他ですが、くつはどんどん部落以外の大きな会社が大量生産する。非常に部落産業が衰微していく。そういう中にあって、失業するのはこれは差別失業で、なかなか一流とか——一流はおろか失業対策すら就職だという、失業対策に就職する、こういう状況の方々です。したがって、数年来同和対策関係予算というものを組んでまいりました、徐々にその数字が上がっておりますが、通産省としては今度の予算で大体どのくらいの予算をお組みになっておられるか。
  159. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 お答え申し上げます。  同和対策につきましては。いま先生御指摘のような非常な零細企業の方々が多いわけでありますので、零細対策そのものが全部いわば同和対策ともなるわけでございますけれども、特に私たちが予算面で同和対策として特掲いたしまして今度お願いしようとしているものが二つございます。  その一つは、まず何を言っても実態をつかまえなければ施策はできませんので、同和地区の産業の実態調査費ということで、六十万七千円予算に要求いたしておりますが、これは四十一年度から引き続いて四十一、四十二と調査を進めておりまして、さらにしっかりした調査をしたいということが、第一でございます。  それから第二が、小規模事業対策の中で、特に同和対策費といたしまして二千百十五万円ばかりを予算案の中に計上しておりまするが、これは経営指導員——私たち零細企業者に対しまして商工会または商工会議所に経営指導員制度というものを設けまして、そして個別に零細企業の指導をいろいろし、または金融あっせんをしておる経営指導員制度がございますけれども、特にその経営指導員の中で同和部落で専門にその方面の仕事をしてもらうという専門指導員を五十一名ばかり乗っけております。それに関します経費が、この二千百十五万円ということでございます。  この二つが特に同和として特掲いたしました費目でございまするが、それ以外に当然、最初申し上げましたように一般の零細企業に対します諸対策、すなわち近代化促進のための補助金制度でございまするとか、あるいはまた中小企業金融機関を通じます金融制度でございますとか、あるいはまた技術対策として試験研究費に対します補助でございますとか、こういうふうなものは一般の零細企業に対する施策として計上いたしておる次第でございます。
  160. 広沢賢一

    広沢(賢)分科員 「同和対策長期計画の策定方針に関する意見」というのがある。これは同和対策協議会会長堀木鎌三さんが各大臣にあてて出した意見でございますが、それは御承知でしょうか。御承知だとすれば、この意見書によりますと、長期計画を立てなければならない、同和対策特別措置法を今国会でなるべく早く制定するということになっておりますから、制定するに伴って、四十二年の三月から各省庁における調査項目案の策定を始め、それを総理府でまとめまして、五月から十月調査の実施、結果の分析、十一月から十二月各省施策の策定、四十三年の一月から二月長期計画の検討、それから二月から法律を制定するに伴ってこの意見を総理大臣に具申し、各省予算要求の確定を六月にやるということになっておりますが、こういう計画に基づいて通産省としては去年も大体同じくらいの実態調査費を組んでおりますが、どういうような結果が出たでしょうか、お聞きいたします。
  161. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 私たちのところで調査予算を組みましたのは四十一年度が最初でございまして、四十一年度六十万円ばかりの経費で調査をしたわけでございます。これは大体同和部落の多い千二百の市町村に対して依頼をいたしまして、市町村を通じて調査をいたしましたのでございますが、調査は最初のことでございますし、また調査項目が項目でございますので、なかなか調査は難航をいたしまして、市町村に依頼をいたしました調査が、約半数ちょっとでございますが、半数以上程度しか調査が回収できなかったわけであります。特に同和関係の方が多いといわれております大阪とか京都とか神戸、福岡、北九州等、この各都市におきましては、事実上どうも調査ができませんということで、四十年度調査においては遺憾ながら調査結果が、いま申し上げました町だけについては得られなかったわけでございます。  調査ははなはだ不十分なものではございまするが、そこでわかりましたところによりますると、一応回答のありましたものを集計いたしますと、企業が一万七千五百であります。その企業数で、先生御指摘のように非常に零細の方が多くて、うち製造業が五千四百、約三割になっております。それから商業者が八千八百ということでこれは約五〇%それからサービス業が二千百ということで一二%に当たると思います。非常に零細の方が多くて、家族だけでやっておるというのが全部を通じまして六三%でございます。若干使用人を使っておる——五人以下の使用人を使っておる企業が一八%ということでございます。したがいまして、五人以下の使用人及び家族だけというのをパーセンテージを合わせますと、約八割という数字になります。  このような四十一年度の調査は非常に不十分でございましたので、引き続いて四十二年度に先生御指摘の各省庁間合同で全国同和地区実態調査を実施いたしました。その一環といたしまして中小企業庁でいたしました調査は、ただいま集計中でございます。集計の結果はまだ出ておりませんけれども、調査の回収率は四十一年に比べますとはるかによくなっておりますので、私たち調査結果を期待しておるわけでございます。
  162. 広沢賢一

    広沢(賢)分科員 そうすると、この数字は、いわば三百万人といわれておる未解放部落の人たちですね、堀木さんのあれでも、大体地区として四千百六十地区あるのですから、それから比較しますと、いま申されました従事者一万七千人というのは、日雇労働者とかそれから失業対策に就職するのもありがたいという方々がずいぶんいますから、だからそういう数と比較しますからあれですが、それにしてもこれはちょっと少な過ぎるんじゃないですか。
  163. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 確かにいま申し上げました数字は、同和の方々三万という数字から非常に開いておるわけでございます。私、最初に申し上げましたように、一応最初の調査でございますので、とても完ぺきを期し得られなかったわけでございます。一応千二百の市町村に調査を依頼したわけでございますから、当然この千二百の市町村外の市町村は全部はずさざるを得なかった、これが一つでございます。  それから第二は、千二百の市町村から報告が返ってまいりましたのが遺憾ながら半分ちょっとしかなかったということで、しかも先ほど申しましたように、大阪、京都等の多いと思われるところからの報告がなかったということ、これが第二でございます。  そういうことで一万七千五百という数字でございますが、これは企業数でございますので、頭数、人数に直しますと相当ふえるのかと思います。そういうことでございます。
  164. 広沢賢一

    広沢(賢)分科員 わかりました。企業数ですね。だから五人以下とか十人とか家族で働いているとかを含めますと、これが三、四倍になると思います。いまのお話によると、四千百地区の中で大体千二百、そうすると、さらに予算をいろいろ組むときには、どうしても千二百でなくて、その約四倍を組まなければならぬと思います。その点どうですか。
  165. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 千二百と申しますのは市町村の数でございますので、当然市町村の中にも数部落ある、こういうことであろうと思うわけであります。
  166. 広沢賢一

    広沢(賢)分科員 これについて調査したら、六月に各省の十カ年計画を立てて、その十カ年計画で各省がずっと予算を立てることになっています。そうすると、もう日が近いと思いますが、大体いままでの予算というのは、同和対策特別措置法やその他が成立しない前の予算でございますし、見ますと、非常にわずかな金額です。それは四千地区で割ってみればおわかりになります。ほんのわずかな予算ですから。そうすると、通産省としては項目別に——私かこれからあげてもよろしゅうございますが、どういうものにどのくらい出すということについての見積もりはございますか。計画はもうできておりますか。
  167. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 四十四年度の予算要求でございまするので、先ほど申し上げましたように、まだ調査の集計もできておらないものでございますから、集計をいたしました上、また本年度までの施策の浸透度、効果及び先生御指摘のように、各省と連携をとって基本的な態度をきめていくわけでございますから、その辺の熟しぐあいを見ました上で来年度の予算を作成いたしたいと思っております。
  168. 広沢賢一

    広沢(賢)分科員 その予算をつくる上で一もう大体項目は御承知だと思いますが、いろいろ堀木さんの十カ年計画要求項目にあるのをまず申し上げます。  大体部落産業は、銀行からはほとんど金は借りられない。もちろん担保もほとんどありはしない。そういう零細な状況ですから、国民金融公庫の融資、各種中小企業対策資金の融資で特別にワクをつくってやらなければならぬじゃないかというのが堀木さんの案です。ところがそのほかの同和会とか、部落解放同盟とか、そういうところでいろいろと団体がつくっておる案がございます。そういう案には、特別に金融公庫をつくってほしいという案がございます。これは大蔵省に聞きますが、そういう金融の問題について、中小企業は、大企業に比較して政府の施策の中では次の位に置かれておる。これはどこに基準を置くかできまりますが、大体五千万円以下の資本金であるとすれば、国の富の生産付加価値の半分を占め、流通の半分以上を占めておるのが中小企業、それが大企業に比して冷遇されておる。さらにまた、その中小企業の中でも、われわれが大蔵委員会や商工委員会中小企業中小企業といろいろ議論しますが、それは主として一億円とか、五千万円とか、一千万円という中小企業が多うございます。零細企業というのはきわめて——中小企業白書なんかで見ても零細企業ということばがわずかしか出てこない。そういう点で、零細企業に対する金融の方向は大蔵省へどういうように要求されるか、特別にいろいろなさるか、お聞きしたいと思います。
  169. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 まず第一に申し上げなければいけないのは、政府の三金融機関でございまするが、この中で先生御指摘の零細企業に対しましては、国民金融公庫からの融資が零細企業者にとって一番大事なことでございます。したがいまして、これに対しまして、来年度は前年度に対しまして約二割の増加の貸し付け規模要求をいたしております。これは一般の財政投融資の伸びが一三%強でございますから、これに比べると非常に大きな伸びである。もちろんこれも先生御指摘のように、決して十分ではございませんので、さらに多々ますます弁ずでございますけれども、現状としてはまあまあの数字かと思います。これが一番大きなものでございます。  それから第二は商工中金、これは組合金融ということになりますと、商工中金の金が当然借りられますし、特に運転資金については商工中金を活用していただきたいわけでございますが、これも同じく貨し付け規模においては一九%アップの財投計画に今回なっております。  以上が金額的にはおもなものでございますが、次に政府がじかにやっておりますと申しますか、補助金形式と申しますか、現実はこれは金融に近いのですが、いわゆる府県から近代化の金が零細企業に流れております。この府県に対しまして、中央政府としては設備近代化資金の貨し付けを行ないまして、同額を府県が支出をいたしまして、そして所要資金の半分を供給する、これは補助金といっておりますけれども、返還してもらいます。ただ、無利子でございます。こういう金がございます。この貨し付け規模におきましては、四十二年度が二百十一億円でございましたが、四十三年度が二百二十四億円、貨し付け規模で十三億円はかりの増ということになっております。これは特に小さな規模の方、したがいまして補助対象と申しますか、融資対象も六百万以下の設備に限るというふうなことで活用をしていただいております。たとえば、四十一年度の兵庫県の製革業に対する数字でございますけれども、三十五件出ておりまして、総額四千三百五十九万円という金が出ております。それから中小企業金融公庫から、近代化計画かできておます業種——製革業は近代化計画ができておりますので中小企業金融公庫から融資ができるようになっておりますが、これは四十三年の三月から四十二年の九月までの数字でございますけれども、二十一件、一億五千八百万円、これは特利七分七厘の金でございます。  以上申し上げましたのが金融、補助金——一部補助金とも言っておりますが、大体金融の、特に零細な方々に対するあれでございます。ただ、こういうふうな金融制度を政府がつくりましても、非常に零細の、特に先生御指摘のような、差別に泣いておられるような方々では、あたたかくお世話をしてあげる人が絶対に必要だということで、先ほどもちょっと触れましたが、四十一年度から部落専門の経営指導員五十一名を置いております。五十一名の方々が非常に献身的に努力をいたしまして金融あっせんをした数字がここにございますが、四十一年の七月から四十二年の八月まで約八百件金融あっせんをいたしまして、金額におきまして三億八千九百万、うち決定されました、つまり貸し出されましたものが二億九千三百万、こういうふうな数字になっております。
  170. 広沢賢一

    広沢(賢)分科員 金融の問題については大蔵委員会で聞きますが、いま申しました中小企業経営の経営指導員というのは非常に大きな仕事をしておると思います。ところが十カ年計画に基づいて四千地区に及ぶところを技術指導していく、ことに皮革産業とかヘップサンダルにしても、そういう企業は先ほど申しましたとおり、大きいいいところは大企業がやってしまうし、下請でうまくいかない先行き伸びない産業もずいぶんあると思うのです。そういう産業について、これを変えていく。いまおっしゃった近代化資金とかその他ですが、そういう構造改善をやるについて、技術経営指導が、いま言われましたが、これだけではほんとうに規模が小さいと思うのですが、十カ年計画として年当たりどのくらいの人がいれば完全になくなるという計算はいたしましたか。
  171. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 まだ、申しわけございませんが、十カ年計画の具体数字ははじいておりません。
  172. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 あと要求としては、大型共同作業場、これは厚生省との共催になりますが、地区住民の経済的、文化的水準の向上を保障するような基盤を確立するため、近代的企業として存立し得る条件を持つことに対しては、みんなが集まってやれる、事業協同組合の組織化ですね。これもそれと関連すると思いますが、そういうことで、ヘップサンダルとかその他輸出産業も若干あります。そういうものについての指導等が必要なわけです。いままでのあれでは、経営指導員わずか五十一名では無理なんで、これは調査に基づいて本格的に取り組むというやり方ですね。それについて、今後の十カ年計画を取り組むについての長官のお考えを示していただきたいと思います。
  173. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘のように、わずか五十一名の経営指導員では、これは幾ら寝食を忘れましても、四千地区の方々の指導はもちろん不十分でございますので、私たちといたしましては、まず第一は、御指摘のように組織化を進める必要があるということで、協同組合、企業組合等の組織について、非常に力を入れております。幸いに、四十年の八月答申以降でも三十弱の組織ができまして、現在百九十ばかりの組織が政府の助成指導のもとに組織化が進んでおるわけでございますけれども、さらにこれは強力に進めてまいりたいと思っおります。  次に、御指摘のように、この組織ができますと、この共同作業場、共同施設に乗ってくるわけでございまして、これは例の中小企業振興事業団をおかげさまでつくっていただいて、非常に張り切って事業団は仕事をしておりますので、この事業団のほうの共同施設にすぐつないでいくことが可能であるし、これは十分つないでいきたいと思っております。  ただ、問題は、先生御指摘のように、ヘップサンダルもそうでございますし、人造真珠等もそうでございますが、輸出廃業に依存をしておる部落の産業が相当ございまして、これが私たち非常に心配しておるのでございますが、内外とも中小企業の構造問題を真正面から受けておる。労働力が欠乏し、労賃が高くなり、外側からは後進国が追い上げ、また国境税、輸入課徴金というような激しいことで追い詰められておるということで、何とか産地産業ぐるみでこの問題を考えていかなければいけないということで努力をしておるわけでございますが、現在までのところ、このヘップサンダル等のはきもの製造業につきましては、近代化促進法にこれを指定しようという努力をわれわれいたしました。ところが、遺憾ながら、まず業界がまとまらないといけませんのですが、これが昨年はまとまりませんで、さらに私たちとしては業界をまとめて近促法の対象業極に持っていくという努力をいたしたいというふうに思っております。それ以外に、先般、輸出産業を中心とする産地産業問題といたしまして、私たちはいまここで日本中小企業の最大の問題ではないかということで、中小企業政策審議会も実は開きまして、鋭意勉強をしておるところでございますが、本年の夏ごろには一応の成案を求めて、そして輸出に依存しておる産地産業のリバイバルと申しますか、これの生き返る方策を考えたいと思っております。  方向としてはそう別にとっぴな話もあるわけではございませんので、近代化、高度化をはかっていくという方向と、製品の高品質化、高級化という方向と、どうにもならぬものはやはり製造品種の転換も考えていく、この辺を柱にして施策を考えていきたいと思っております。これがちょうど十カ年計画につながっていくと思います。
  174. 植木庚子郎

    ○植木主査 広沢君、だいぶ時間が超過しましたから、簡潔にお願いします。
  175. 広沢賢一

    広沢(賢)分科員 これで終わりますが、通産大臣は東北の御出身でございます。これは東北ではちょっと見られない形で、なかなか理解されないのです。うちの議員の人でも東北出身の方でも十分理解しておられないのですが、これは実際百年以来のとてもたいへんな状況で、東北には名子制度というのがございますが、こういう差別ではないのですね。その生活は、共同便所は三十軒に一つしかなくて、もう狭い地区にかたまっていて、川筋者とよくいいますが、川のところにずっといて、いわれない差別で、この間、壬申戸籍が問題になって、これは全面的に閲覧禁止になりましたが、そういう状態が生まれるのはどうしてかというと、いまは全然いわれがないのにそういうふうになるのは、生活がものすごく貧乏だからです。さっき私が申しましたように、就職するにも、失業対策事業に雇われるのが一生の就職の人もいます。しかし、そういうたいへん貧乏な人たちでも、最近、希望を持って前進している人もある。最近、朝日新聞その他にも出ていますが、近代的なアパートに入って、近代的な共同工場で作業したりなにかすれば、目立って変わってくるし、長期欠席児童も、小学校や中学校もずっと変わってくる。目立って生活が変わってくるのです。総理も非常に力を入れています。だから、何とかして、十カ年計画を立てて、それでこの問題に本格的に取り組む。そのための予算というのは——いままでの予算というのは準備段階で、十カ年計画が立って本格的に組むとなれば、いま中小企業庁長官が言われた一つの方向ですが、その方向をしっかりと予算づけをするために、いままでの予算の伸びでいいのだとか、それに比較したらこれは非常に恵まれているじゃないかということでなくて、新しく取り組むという点についていろいろとあたたかい御配慮をいただきたいと思います。  終わります。
  176. 植木庚子郎

    ○植木主査 次は、竹本孫一君。
  177. 竹本孫一

    竹本分科員 最初に、通産大臣に簡単にお伺いいたしたいのでございますけれども、それは、けさほども新聞をにぎわしておりますが、ヨーロッパにおける金戦争、ゴールドラッシュであります。これがためにポンドもドルも大騒ぎしておるし、欧州市場は一大混乱におちいっているというわけであります。きょうは時間がありませんので、この問題に立ち入ってやろうとは思いません。また私自身はポンドをもう一回切り下げることがないように実は願っておる。また、ドルの切り下げに追い込まれることのないようにも希望をいたしております。しかし、これは希望であって、はたしてそれに成功するかどうかは、今後の各国の動き、特にアメリカの努力に多くの問題が残されるわけでございますが、一つのこれからの動きとして考えられるのは、いわゆる金プールの脱退問題、これはイタリアがやるとかアメリカがやるとか、いろいろありましょうが、そうした問題、もう一つ考えられる方法は金の売却停止あるいは交換の停止といったような問題、さらに情勢が悪化すればいまの問題も直接つながっておりますけれども、公然たる金価格の引き上げだとか、あるいはドル切り下げというようなことに追い込まれるかもしれません。いずれにいたしましても、情勢は非常に悪い。ポンドは一四・三%切り下げましたけれども、何しろイギリスにおける英国病というのはたいへん深刻な病気でございます。しかも、為替が上がれば、原料が上がり、労賃が上がるということでございますので、差し引き一〇%の効果しかないが、一年くらいの間にイギリスの経済が一〇%のてこ入れで立ち直る可能性はまずほとんどない。したがいまして、最近における貿易収支は二月は一月の倍とかになったということが出ておりまするけれども、さもありなんと思います。イギリスがそういう調子でありますが、アメリカ自身も国内において増税案はごらんのように行き悩んでおる。各国協力も必ずしもアメリカが期待するような簡単なものではない。非常に渋いものがあります。ベトナム戦争もアメリカが予定するようにはなかなか動いていかない。これは私はあるいは一、二カ月のうちに急変するような情勢があるかとも思っておりますけれども、いずれにしましても、アメリカのドルの流出、金ドル情勢というものがますます悪化をする。したがいまして、いま御指摘をいたしましたように、あるいは金プールの脱退あるいは金の売却停止といったような問題をきっかけとして、またそういうことをやらないならばやらない形において、ますます高金利政策に出ていくのか、あるいは輸入制限という形に出ていくのか、どういう形に出てくるか、逆睹すべからざるものがありますけれども、いずれにしましても、日本の経済は、一方においては世界経済のデフレ化として、一方においては世界の高金利として、一方さらには日本の輸入制限という形において非常にわが国産業に重大なる影響があると思っております。  そこで、通産大臣に二つほどお伺いをいたしたいのでございますけれども、まず金ドル戦争の問題ですけれども、一体、ポンドやドルはアメリカやイギリスが期待しているような方向に動くという見通しを通産省は持っておられるか。深い議論は今日はいたしませんが、結論として持っておられるのか。またそうでない場合、そうである場合、ドルの切り下げなんかやらないためには相当渋い手を打ってくると思いますが、いずれの場合も含めて、日本輸出産業あるいは日本のこれからの産業構造に重大なる影響があると思いますけれども、それに対してはいかなる対策を準備しつつあられますか。この二つをお伺いしたいと思います。
  178. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本としては国際通貨の急激な変動は極力避けてまいりたい、そういう趣旨において当面のドル防衛に協力をする態度をとっておるのでございますが、おのずからしかしそれにも限度があるということは申すまでもないことでございます。いずれにいたしましても、この情勢を十分に注視いたしまして、財政金融当局と協力して善処してまいりたい、かように考えております。
  179. 竹本孫一

    竹本分科員 大臣の御答弁はちょっと抽象的過ぎますけれども、この問題の論議はあらためて別の機会に深めてまいりたいと思います。  次に、中小企業の問題を中心にお伺いをいたしたいと思います。  通産大臣並びに乙竹中小企業庁長官中小企業の問題について非常な御努力をいただいておるということに対しましては、私は常日ごろ敬意を払っております。いろいろと御苦心をいただいておることに感謝をいたしておるわけでございますけれども、しかもなお中小企業問題は解決いたしません。  そこで、きょうは若干具体的な点を二、三承りたいと思うのでございます。  第一は、池田内閣以来高度成長経済をやれば中小企業問題は解決するであろうといわれたし、期待をされました。しかし、御承知のように好況でも不況でも企業の倒産は毎年あるいは毎月新記録をつくっていっております。こういうことに対して、まず私お伺いしたいことは、高度成長政策のおかげで大企業中小企業との間の格差は一体縮まったのであるかどうか、中小企業の立場は優利に展開してきつつあるのであるかどうか、これについて大臣並びに長官のお考えを伺いたいと思います。
  180. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 高度成長経済政策の結果、格差は、ちょっといま数字を置いてまいりましたけれども、大企業中小企業の生産性、物的生産性及び賃金の格差は明白に縮まっております。  ただ、昨年の数字がちょっとまた開いておりますけれども、大体ずっと縮まってきております。  それから次に、高度成長政策中小企業に及ぼした影響でございますけれども、これは一面あると思います。  一つは、成長政策の結果、中小企業のマーケットが非常に大きくなったということは否定ができないところでございますし、特に新しい所得の増大の結果、新しい市場が開けたために、新しい市場に対して中小企業がどんどん転進ないし増大が可能になった。この面が確かにあると思います。  しかしもう一面、成長政策の結果、賃金格差が縮まりましたために、日本中小企業のよって立っておりました存立基盤である大企業との賃金格差、これが競争力のもとであったわけでありますけれども、このもとを奪われてきて、中小企業としてはどうしても脱皮をせざるを得なくなってきた、こういうところに追い詰められてきた中小企業が非常に多いということが申し上げられると思います。
  181. 竹本孫一

    竹本分科員 きょうは議論をいたしませんが、ただ、最後にいま長官の御答弁がありました、確かに賃金はだいぶ追いついてまいりました。格差が縮まってまいりましたが、そのことと生産性の格差が縮まったこととの割合が非常に違うんですね。ですから、表面的には非常に好転しておるようにも一応見えるでしょう。生産性も確かに上がりましたが、賃金の上がり方と生産性の上がり方が非常にテンポが違う。したがいまして、中小企業の実態からいえば大企業との関係においては競争力を中心にして強くなったか弱くなったかというと少しも情勢は好転していない。むしろ格差は、賃金がうんと上がったためにかえって企業としては苦しくなっておるという点があると思いますけれども、これはあらためてまた議論したいと思います。  次にお伺いしたいことは、中小企業はたくさん倒産をいたします。統計によれば、倒産したもののうち四割くらいは組織を変更して、再出発をしてまた営業を継続しておるという数字になっておるようでございますけれども、この点を一体どう見られるか、これは私は日本産業政策の根本に関する問題ではないかと思いますので、特にお伺いをしておきたいと思います。
  182. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 私のほうで実は事後調査をまだ開始したばかりでございますので、私の手元の調査としてはございませんが、政府三金融機関、特に国民金融公庫の調査等によりますと、先生御指摘のように、再出発と申しますか、看板をかけかえて再起した企業が相当あるようであります。これにつきましては、債権者がとにかく債権を確保するためにもう一ぺんとにかく看板を掲げさせようというものと、それからほんとうに転進をしようとしたものと二つあるようでございますけれども、倒産した企業がまた起き上がったということは、これはうまくいけば非常にけっこうではないかというふうに思うわけでございます。
  183. 竹本孫一

    竹本分科員 これは大臣にお伺いしたいのですけれども、私はいまの長官ほど楽観的であり得ない。結局は、農業の人口が今度は二〇%を割りました。かつては五〇%、少なくとも四〇%であった。それがだんだん減ってまいりました。これはいろいろ議論がありましょうけれども、中小企業の分野についても、やはり日本全体の経済構造のあり方として考えた場合には、少し全体として多過ぎるのではないか。しかも、個人的にいろいろ債権者などの都合をいまおっしゃったけれども、むしろ業者自身からいって、その中小企業がよそへ行って何ができるか、何をなし得るかということを考えてみると、やはり小さな資本でいままでの業をやりかえて、看板をかけかえてやるか、あるいは隣の産業に転身するか、いずれにしても中小企業の範疇から外へ飛び出していく自信も能力もないのだ、こういうことじゃないかと思うのです。そういう意味から申しますと、やはり日本の労働力も不足しておる今日でございますから、大きな産業構造の変革、その中における中小企業のシェアの再編成というものをもっと組織的計画的に考えなければいけないのじゃないか、それがないとやはり右でつぶれて左でまた再建して出発しておるというようなことばかり繰り返してみても中小企業問題の解決にはならぬのではないかと思うのでありますけれども、大臣のお考えを承りたいと思います。
  184. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 やはり結局手をつけておる構造改善をもっとテンポを早めるとか、規模拡大してこの計画推進してまいるということに尽きるのではないかと私は考えます。
  185. 竹本孫一

    竹本分科員 大臣のただいま御答弁になりましたとおりだと私も思いますので、ぜひ大臣にお願いしたいことは、それを計画的に組織的に進めていただく、これがこれからの中小企業庁の一番大きな課題ではないかと思いますので、本日は希望だけを申し上げておきます。  それから次に金融の問題でございますけれども、二つあわせて伺いますが、一つは、いわゆる全国の金融機関中小企業に対するシェアというものは合計して四二・五%程度である。それから都市銀行なんかの場合は二九・八%ぐらいであると思いますが、今度のように金融引き締めが始まります。また倒産が非常に激化する、こういう情勢の中でこのシェアは、最近の数字で聞きたいのでございますけれども、維持されておるか増加しておるか、縮小しつつあるか、これは中小企業にとってはたいへん生命線の問題でございますから、その点を伺いたい。あわせて大体銀行は、この間私は予算委員会において一言言いましたけれども、資し倒れ準備金は都市銀行だけでも二千四百九十九億円持っておる。全国銀行を合わせれば四千七百五十億円。五千億円の金を中小企業に貸して、つぶれても銀行としては何とかやっていけるように準備金として持っておる。しかし、われわれが聞いておるところによると、その準備金なんかが生かされるような場合はほとんどない。これはあぶなくなったら貸さないから貸し倒れ準備金を取りくずす必要はない。そういう意味で大銀行のあるいは地方銀行でも、要するに金融機関一般が中小企業を親切にめんどうを見てやる、もちろん預金の金でございますからある限度があるのはわかりますけれども、しかし、貸し倒れ準備金が四千七百五十億円、五千億円ある。それにしてはもう少し思い切って——中小企業と心中しろとは申しませんけれども、あたたかい思い切った手もたまには打っていいのじゃないか。大体銀行はそのシェアを二九・八%あるいは全金融機関四二・五%を拡大しつつあるか減らしつつあるか、それから貸し倒れ準備金も場合によっては生かして積極的に金融をするようなめんどうを通産省は見ておられるのかどうか二つだけ伺いたい。
  186. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 手元にあります数字、実は一月のはまだつかまえておりませんのですけれども、全国銀行の中小企業向け貨し出し比率でございますけれども、四十二年八月が三二・八%であります。これが十二月に三三・三%という数字になっております。私たちその後日銀総裁に、いま先生御指摘の問題についてお願いに行きましたときに、総裁としては、全国銀行の中小企業向け貨し出しの比率はぜひ落とさないように私はがんばるということでございましたので、特にこれはお願いを申しますということで帰ってまいったわけでございます。その後悪化したという数字はまだ聞いておりません。これが第一であります。  それから第二に、全国銀行、市中銀行の中小企業向け貨し出しビヘービアでございますが、御指摘のように好況時、金融緩慢時におきまして中小企業に特に貸し進んだことは間違いございません。したがいましてこの貸し進みが今回の引き締め時に日銀総裁の言われるように維持できれば非常にありがたいと思うわけでありますが、私たちこの全国銀行のビヘービアについて調査したところによりますと、いままでの過去数回の引き締めにおきましては、引き締まるとすぐ中小企業向けから引き上げたのでありますけれども、今回は、日銀の指導もあると思いますけれども、それを全国銀行のビヘービアとして極力中小企業についての貸し出しを維持したい、こういうことのようであります。その理由は、全国銀行のお得意先である大企業はだんだん自己資本の蓄積なり社債なりこういうふうな市中に迷惑をかけない、かからないというふうになってまいったので、全国銀行としては中小企業は将来のいいお得意であるということが相当強く認識されてきておるようであります。ただ心配しておりますのは、これは中小企業の上の部でありまして、中小企業の弱いほうの部については必ずしもそうではない。したがってこの辺につきましては、私たちは信用補完制度等の活用によって何とかこの全国銀行の中小企業向けのビヘービアを変えないように、さらに拡大するように努力をしたいと思っております。
  187. 竹本孫一

    竹本分科員 十二月にはちょっとふえたことは事実でございますが、これは年末金融であり、また政府の特別なる措置がありましたので特殊な事情があると思います。一月以降は特に問題だと思うけれども、これはいま手元に数字がないのもよく事情がわかりますのでこれ以上申し述べませんが、気をつけていただきたい。おそらく一月以降については下がってくるのではないか。  それからいま御指摘にありました大企業の手元流動性の問題につきましても、確かに一時は八〇%をこえて八一%に近い手元資金でやっておりました。これもだんだん締まってまいりまして、二月三月は動きが変わっておるようでございますので、銀行も十二月のころとはまた情勢が変わりました。その動きを注目してもらいたい。  貸し倒れ準備金については御答弁がなかったようでございますけれども、あれはへたすると脱税になってしまう。特別に税法上は措置を受けておる。そして四千七百五十億円積み立てておる。資金コストが若干下がるというメリットはありますが、そういう形でうんと積み立ててはおるけれども、中小企業のあぶないやつには絶対金を貸さないということをやっては制度本来の趣旨にも反しますので、これはひとつ中小企業庁の立場で鋭い目をもって見張っていただきたいと思います。  次に参りますが、いまお話にも出ましたが、次の問題は関連倒産の問題でございますが、去年の倒産の三割近く二千五百件以上のものが関連倒産でつぶれております。もらい倒産でつぶれております。そういうことに対してお伺いをしたいのでございますが、一つは制度の根本の問題として関連倒産の中小企業者に対する資金の融通について、御承知かと思いますけれども、中小企業金融公庫に三十億円くらいの金を出させ、さらに日銀からも五百億円くらいの金を出させてそれで関連倒産だけは思い切って救ってやる、こういう制度を考えたらどうかということを私どもは主張しておりますけれども、そういう点について通産大臣はどういうお考えであるかが一つ。  なおもう一つ、これは制度より運用の問題になりますが、御承知の中小企業信用保険臨時措置法、この中にあります特別小口保険の問題でございますけれども、何しろ現在のワクが二百万円、これでは少な過ぎると思うのです。これを五百万円くらいに拡大する御用意があるかどうかということをお伺いしたい。
  188. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 第一点でございますが、関連倒産防止に対しましては、一応現在の制度といたしましては、中小企業信用保険制度を活用いたしまして、別ワクとして特別小口なり無担保なり普通保証なりということを別ワクでやっておるわけでございます。ただ、倒産の悲惨時にぶつかりますと、倒産した人は、いわば世の中も悪いけれども、自分の経営もあまり上等ではなかったという面もあるかと思うのでありますけれども、関連して倒れた人はほんとうにお気の毒でありまして、いま御指摘のような案、私たちも、そういう案そのものとしては別といたしまして、関連して倒産する人に対する対策は何とか勉強してまいりたいというふうに考えております。  それから、第二の特別小口保険、いわゆる無担保無保証保険、これは現在五十万円ということになっております。それから、無担保保険が三百万円ということになっております。この五十万円の無担保無保証保険は百万円までは特別に担保も徴求しないし、保証料も引き上げないという運用をいたしまして、事実上、無担保無保証に近い扱いを百万円まではできるということで、近く実施をしようということになっておりまするが、さらにこれを引き上げることにつきましては、実は無担保無保証の危険率等の資料もまだ十分積んでおりませんので、この辺はしばらく必要資料が集積されるのを待って検討してまいりたいと考えております。
  189. 竹本孫一

    竹本分科員 この点は早急に、こういうふうに倒産が激化しておりますので、善処されんことを強くお願いをしておきたいと思います。  最後に、中小企業構造改善の問題についてお伺いしたい。  今回の政府の中小企業予算が三百八十二億円、三十六億円ふえたというんだけれども、中身を見ますと、振興事業団が四十四億円増加をして、ここに非常に力を入れておられると思うのでございますが、これに関連をして、私ども、一、二お伺いしたい点があります。  一つは、業界ぐるみの構造改善、特に繊維につきましては、繊維産業の新々法といったようなもので、基礎法もありますが、これからは一体どういうふうに展開していかれるのであるか。事業団の二百五十九億八千万円の予算を見ましても、百二十三億円までは繊維その他ということはどういうことを考えておられるのか。百十六億円、よくわかりませんが……。先ほど、構造改善についても、あるいは産業構造自身の変革についても、私は大きくお尋ねをいたしましたけれども、そういう観点から、繊維産業についてのみやるということは、繊維はありがたいことだけれども、ほかの産業に対してはフェアでなくなるし、また国の経済政策産業政策としてもおかしなことになります。  そこで、時間がありませんので、急いで三つ合わせて伺いましょう。  繊維産業の次にはいかなる戦略目標を持っておられるのですか。いかなる産業をねらっておられるのか。もっと具体的に聞くならば、雑貨についてはどうか。洋食器についてはどうか。あるいは機械や鉄鋼の中小企業分、周辺の中小企業分についてはどうか。印刷についてはどうか。その次にはどこへ向かってこのねらいをつけていかれるのであるか。  伺いたい第二は、繊維の場合には、いま申しましたように、基礎法がありますので、運用がうまくいくだろうとまだ期待するわけでありますけれども、その他の産業については基礎法がありません。この基礎法をどういうふうに考えておられるか。私たちの立場で言うならば、中小企業構造改善臨時措置法といったような全般をひっくるめての基礎法が要るのではないかと思いますが、その点についてはいかがお考えであるか。  第三点としてお伺いしたいのは、構造改善事業の推進については、自己資金といいますか、自己負担というものがあります。それらをいろいろ計算してみると、おおむね百七十三億円くらい要るようでございますけれども、これは、来年というか、ことしのこれからの金融梗塞の事態を考えますと、中小企業にとっては、その頭金でまいってしまう。これがなければ中小企業振興事業団はまた見てやらないということになれば、結局その頭金のところで制度はストップしてしまう。これをどういうふうに解決をされるお考えであるか、この三点をお伺いしたいと思います。
  190. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 中小企業の構造改革、繊維、特に綿・スフ織布と、絹・人繊織布をまず取り上げたわけでありますけれども、これは、一面におきましては、あの業種は、日本中小企業産業全部をひっくるめましてもたいへんなボリュームを持っておりまして、しかも非常に緊迫度がある、ほうっておけぬということが一つでございますが。第二には、この繊維をモデルケースとして、突破口といいますか、一つケースメソッドといいますか、としてやっていきたいということであったわけであります。  私たちの次の戦略目標になるわけでありますけれども、目下、中小企業政策審議会に小委員会、さらにその下に専門委員会を置きまして、月に二度ないし三度という頻度でもって猛勉強をしておるわけでございますけれども、大体のところ、中小企業に対しまして、従来は、取り上げ方が、ある意味では業界が非常にまとまったものだけを取り上げていくとか、特に問題が海外から起ってきたものだけを取り上げていくとかいうことであって、先生御指摘のように、これは不公平である、また、日本産業構造の中に占める中小企業の重要性から見れば、もう少し別の取り上げ方があるのではないか、という反省が目下行なわれております。現在のところまだ、非常に素案といいますか、でございますけれども、さしあたり急ぐもの、しかも性質の違うもの、これを性質ごとに中小企業を分けて考える必要があるということで、一番急ぎますもので、しかも非常に影響力の大きいのは産地産業であって、特に輸出に依存している産地産業、これが大部分は織布であったわけでありますが、先生御指摘のような、織布を除く雑貨関係にも非常に多いわけであります。こういうような産地産業で、しかも輸出に生きているという産地産業は一刻も放置できない、この一つのグループを取り上げなければならないというふうに考えております。  それから第二は、むしろ成長産業の中の一環をなすものではあるけれども、非常に近代化がおくれておって、したがって、その近代化のおくれが成長産業全部の成長力の足を引っぱっているというものが大きくある。これは具体的に申しますと、機械工業の下請部門あたりはそうであるわけでございます。この部分は、日本経済の成長のためにぜひ急速に取り上げていかなければならないものである。それから、第一の産地産業とは全然性質が違うものであるというふうに考えております。  さしあたりのは、この二つの問題は焦点もわりにはっきりしております。問題ははっきりしております。ただ、これをどういうふうに取り上げてまいるかという取り上げ方が問題で、みな非常に勉強している段階でございます。取り上げ方ということに関連があると思いますが、先生の基礎法はどうするかという御質問はそれだと思います。現在、近代化促進法という法律がございまして、実は、本年度もこれを改正しようかという案もあったわけでございますけれども、先ほど申し上げましたような、基本的に中小企業構造対策にとっかかろうという勉強を始めましたので、基本的な勉強ができた上で、どういう道具が必要であるか。近促法の改正がいいのか、あるいはそれ以外にも、現在の中小企業施策はたくさんの種類の道具があるわけでございますが、このたくさんの種類の道具の中でどれが使えるのか、ないしはどれとどれとを併合して使ったらなお強力であるか、というような考え方もできるのではないかと思うのでありまして、中小企業施策を見直しまして、それによって立法が必要であるならば立法をし、改正が必要ならば改正をするというふうに考えてまいりたいと存じております。  それから、第三の頭金の問題でございまするが、繊維の構造改革につきましては、その点もございまするので、産地の組合は所有権を持って、しかも産地の組合に対しましても特別の保証制度を設けたわけでございまするが、その旭のものにつきましては、そこまでの施策が打っておりません。したがいまして、自己負担分につきましては相当多額にのぼりまするけれども、商工中金あたりを極力活用してまいるということで、この辺は中金当局とも密接に連絡をしております。
  191. 竹本孫一

    竹本分科員 これで終わります。  最後に大臣のお考えを承りあるいは大臣に要望しておきたいと思うのでございますが、いまの一つは頭金の問題でございますけれども、どうもいままでの制度というのは、この頭金制度で制度を殺してしまうというような傾向が多いので、この点については、特別な御配慮を願いたいと思うが、いかがでございますか。  それから第二の点は、いま御答弁の中にありましたけれども、基礎法の問題でございますが、近促法の改正を見送られた。これは、見送られる見送り方がもっと気のきいたりっぱなものをつくるという意味ならば私は賛成です。それならば、もっとりっぱな、私どもが申しました中小企業構造改善臨時措置法というものがなければうそです。なければ、振興事業団が思いつきで恣意的に今度これやってみようかといったようなものでは、大きな構造変革には役立たないと思いますし、繊維にもあるのですから、ほかの産業を特別差別する必要はありませんので、右へならえということができるならば、その右へならえの基礎法をやはりつくられるのがほんとうじゃないかと思いますが、大臣のお考えを伺いたい。  最後に、中小企業問題は、わが国におきましては、何だか中小企業というものに対する一つの社会保障みたいな考え方でよく議論がされておると思うのだけれども、それは私は間違いだと思う。日本輸出産業の半分は大体中小企業が担当しておる。生産分野においても、五割もしくは六割は中小企業がやっておる。中小企業の構造改善事業は、すなわち日本の経済構造の改善である、改革である。すなわち、これなくしては、日本の経済政策は成り立たないのだ、こういう認識のもとに、日本の経済の体質改善、能率化、組織化、こういう大きな流れの一環として中小企業は見るべきであって、それを離れて社会保障の対象として考えるということは時代おくれであると思いますが、いかがでございますか。  以上三点であります。
  192. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 頭金のために制度全部を殺すというようなことになっておることは非常に遺憾でございますので、この点は十分に考えてみたいと思います。  それから中小企業問題は日本経済というものの中で非常に重要な地位を占めており、これの持っていき方いかんということが、やがて日本経済の死活に関する問題があるということは、全く同感であります。したがって、この構造改善の最終目標というものにもつと大きな手を打っていく、こういう意味において、その根拠法が必要じゃないかという御意見には、これは全面的に賛成いたすわけでございますが、はたしてどういうものがこの際必要であるか、そういった問題は、なおよく研究を続けてまいりまして、できるだけ早くその成案を得たいと考えております。  それから、中小企業問題を何か社会救済的な気持ちをまじえてこれを取り扱うことは間違いであるということは、これはもう私も全然同感でございます。これは日本の経済そのものに対するきわめて重要な問題であるという認識に立っておる次第でございます。
  193. 竹本孫一

    竹本分科員 ありがとうございました。これで終わります。
  194. 植木庚子郎

    ○植木主査 ありがとうございました。  次は永井勝次郎君。
  195. 永井勝次郎

    ○永井分科員 私も引き続いて中小企業の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  けさのNHKのテレビに中小企業の倒産の問題が扱われております。けさの朝日新聞にも中小企業倒産の問題が扱われております。テレビ、ラジオ、新聞等は頻発して起こっておる中小企業の倒産問題を相当重視して取り扱っておるようでありますが、この倒産の実態をどのようにおつかみになっておるのか、これを大臣から伺いたいと思います。中小企業の倒産は構造的なものであるとか、あるいは不景気である、あるいは放慢な経営である、あるいは労務不足であるというような、紙に書いた一般論的なお答えでなくて、もう少し倒産の実態というものに触れた分析を示していただきたい。また、数字であるとか、あるいは負債金額というようなものは、興信所の調べで、明らかになっておるのでありますが、これは負債額一千万円以上というもうについてのみの調査でありまして、そのほかにはもう相当の数にのぼっておると思います。これはどこでも調査しておらないので、正確にはつかめないと思いますが、大きな流れとして、展望的につかめると思うのでありますが、そういう調査。未調査の部分における、やみからやみにほうむられている倒産の分野について、どのようにこれを把握されておられるのか。その点をまず明確にしていただきたいと思います。
  196. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 中小企業といいましても非常に千種万態、と言うと少し言い過ぎかもしれませんが、とにかく非常に業態が違うのでありますから、一がいに中小企業はこうだということはなかなか言いにくいと思うのであります。最近は、日本の重化学工業の非常な高度の進歩によって、中小企業界において、機械なり機械の下請企業として非常な発展が見られるのが一つの特徴であると思いますが、この部門に関してはかなり組織化されて、親企業と非常に秩序正しく組織が行なわれておる。こういう方面はあまりに倒産がなかったように思われます。機械工業でも、系列に食い入ってないような部門ではあるいは倒産も見られたかもしれませんが、とにかくあまり目立った倒産現象はない。どっちかといったら、建設業であるとかあるいは繊維の方面、そういったような製造関係では繊維、建設、それからまた商業のほうにも相当の倒産が見られるようでございますが、結局企業の乱立のために非常な過当競争が行なわれる、こういうようなことが一つの大きな原因ではないか。それにもってきて労力が非常に不足して、おる賃金がどんどん高騰する、こういったような構造的と申しますか、経営のよしあし、そういうような問題で倒産原因が起こっておる、こういうふうに考えられるのでございます。そうしてこのことは、緊縮政策とかあるいは世の中の景気いかんというのにあまりかかわりがない。景気のいい場合でも倒産がどんどん出ている。そういったような数字からいいましても、景気不景気によって倒産が支配されるというようなことはないのではないかというような観測がなされると思うのでございます。  いずれにいたしましても、これらの問題に対しては、やはり近代化あるいは構造改善の施策というものを強力に施行してまいりまして、なるべくそういったような現象の起こらないように気をつけてまいるつもりでございます。
  197. 永井勝次郎

    ○永井分科員 要するに大臣のお答えは、景気不景気にかかわらず倒産はふえてきている、これは構造的なものだ、こういうことに尽きると思うのですが、そうだとすれば倒産は必然的なものでこれは避けられない。そういう一つの過程を通らなければ、中小企業の近代化なり高度化なり構造改善は進められないんだ、構造改善を進められない不可避の条件だ、こういうふうに理解してよろしいわけですか。重ねて。
  198. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 大臣が申しましたのは、業種によりましていろいろ原因がある。たとえば、建設業あたりが非常に多い。それから繊維が多い。これはおのおの原因が違うと思うのでございます。私たちのほうで調べたところによりますと、建設業の倒産が多い。特に建設の中小と申しますか、下請、二次、三次、特に三次の下請の倒産が多いようでございまするが、これは一つには賃金といいますか労賃の値上がりが一番激しくショックを受けているということは、ほとんど機械も使っておりませんので、コストの中で占めておりますのはほとんど労賃であるというようなことのほかに、契約が非科学的であります。経営も非科学的である。  こういう面が中小の建設業に倒産が多いということであろうと思います。こういう場合に、それならば中小の建設業というものが、これからの日本経済においてどういう地位を占めていくべきかということになりますと、大きな建設業だけで日本の国土づくりはできませんので、これは当然小さな建設業が必要である。したがって、建設業の繁栄する地盤は十分あるわけでありますけれども、ただ、あまりにも経営なり契約方式なりが非科学的、前時代的である。こういうことが倒産に誘うわけでありますから、したがいまして、この辺の体質改善をすることによりまして、その繁茂する地盤に中小の建設業が十分栄えていく、こういうことになるというふうにわれわれは考えるわけであります。
  199. 永井勝次郎

    ○永井分科員 与えられた時間が三十分ですから、建設関係に倒産が多いということは、これはもう万々承知しているところです。そういう現象面を一つ一つ取り上げて、これはああだこうだというのではなくて、建設業が倒れるのはこうだ。繊維関係が倒れるのはこうだ。こう大きな分類で、この関係はこの累計に入る、これはこのカテゴリーだ、こういうふうな分析で、ひとつ要領よく短時間にお答えを願いたいと思ます。  とにかく建設業ばかりでなくて、いろいろ倒れておることは事実でありますが、その倒れるものにはいろいろあります。だから、そういう実態を正確に把握して診断が確立されなければ、倒産に対する正しい対策というものは立たないと思うのです。めくらめっぽうに倒産だと批評しているようなことではいけないと思うので、そこで聞くのですが、負債一千万円以上の規模の倒産、それから調査の対象になっていない分野における倒産、こういうものを分けまして、どのように見ておられるか。
  200. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 倒産の件数、原因は、私たち興信所の調べ等を実は借用しておるわけでございまして、これは負債金額一千万円以下のものは載っておらぬわけであります。これは私たち自分のところで調べるだけの実は力がございませんので、この一千万円以下の部分については相当数の倒産があるというもちろん予測、推定はしておりますけれども、数字的にはつかんでおりません。
  201. 永井勝次郎

    ○永井分科員 そこで数字はつかまないが、どこで生まれてどこで死んでいくのか全く政策の対象外だ、こういう切り捨て方は、現実にありますからできないと思うのです。そういう部分に対する対策はどうしているのか。それから件数的に的確につかめる領域についてはどういうふうなかまえであるか。紙に書いたようなことを口上的に並べることは、大体のことはわかっていますから、そうでなくて、今度の倒産の特徴はどうだからどうするのだ、こういうふうな要点をひとつお答え願いたい。
  202. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 小さな負債金額一千万円以下の倒産も相当多いという推定をいたしますが、この一千万円以上の倒産と中身は似ているというふうに推定をせざるを得ない、またそれで大体いいのではないかと思います。  それでこの倒産原因でございますが、これは結局構造的なものと申しますか、世の中が変わってきたことによる体質の弱化、これが金融の引き締めを契機にして倒れているものも出てきているということであろうと思います。したがいまして、世の中が変わってきたことに対する対策をつくらなければいけない。それがイコール体質改善策であり構造改善対策、これは基本的な対策であると思います。したがいまして、経営の近代化、合理化を土建業に対して行なう。繊維に対しましては市場の科学的な把握を行なう。輸出産業に対しましては競争力の強化措置を行なう。機械産業の下請につきましては、公正なる親企業との取引関係の確立をはかるというふうな各種の体質改善策を講じますとともに、さしあたり金融の引き締めで、もともと体質が弱くなっておったものが倒れるとわれわれは考えまするので、この金融の引き締めで倒れるのを極力金融面から倒れないような防御措置を講ずる、防御措置を講じておきながら体質改善策を実施していく、こういうことをねらっておるわけであります。
  203. 永井勝次郎

    ○永井分科員 そういたしますと、長官の考えておられる倒産というものは、企業者の努力の足りないところ、力の足りないところ、要するに、本人の不始末から倒産するのだ、だから、そういう点は補強して強めていく、こういう対策を立てることが中小企業倒産に対する政府の対策だ、こういうのですか。それとも、中小企業の基本法に基づいて、二重構造をなくすのだといっているのだから、そうそれば、現状中小企業を分析すれば規模が小さ過ぎるのだ、あるいは数が多過ぎるのだ、そういうところに二重構造が固定的になっており、それを上のほうへ上げて二重構造をなくさなければ中小企業のほんとうの安定はないのだ、こういうことになると、これは構造的に手をつけていかなければならぬ、そうすると、数が多いのだから減らすということは、中小企業基本法に基づいておやりになるのだが、そういうところから倒産が出てくるというのは必然的なものになってくるし、あるいは規模を大きくしていけば、そこからはみ出したものは競争の中で倒産していく、だから、構造的に強力に進めていくということの中からは必然的に倒産が生まれるのだ、こういうことなのですか。それともそうではなく、本人が悪いから倒れるのだ、こういうことなのですか。その点はひとつ明確にしていただきたい。
  204. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 私は、中小企業を含めまして日本の経済の構造が大きく変わりつつある、また変わっていかなければならないというふうに考えます。しかし、変わっていくからといって、倒産がなければならないということには結びつかないと思います。経営者が賢明でありさらにその上に、そこから先が私たちの責任でございますが、政府が必要な施策をこれに対して与える、すなわち、これからの中小企業の生きるべき道、繁栄するマーケットはこういう方向である、また、経営のしかたはこうである、また、設備についてはこういうやり方があり、技術についてはこういう方法があるという施策を政府が講ずることによりまして、この構造の変わる時期を中小企業が乗り越えていって、そして繁栄をすることが十分可能である。日本の経済が変わっていくときに、中小企業が倒産するのは当然だというふうに考える必要はごうもない。税に日本中小企業者は、倒産もいたしておりますけれども、毎年ふえてきております。毎年ネットの増で十万ずつ大体ここ二、三年はふえてきております。そのおのおのの中小企業者の、規模はもちろん不十分ではございますけれども、しかし、平均の所得は増大をしてきておるわけでございますので、中小企業者の努力と政府の施策とよろしきを得れば、倒産は相当程度避けられるというふうに考えます。
  205. 永井勝次郎

    ○永井分科員 中小企業基本法では二重構造をなくすというのが戦略目標です。そうすると、その出発にあたって、規模は小さ過ぎる、それから数は多過ぎる、こういう現状から出発している。それにもかかわらず、いま長官の言うようにどんどん毎年数はふえていく、たいへん中小企業は繁栄してけっこうだ、そういうものを整理しないで、網羅的に全部発展できるのだ、そして、そういう数がふえて、そういうものの発展していく中で、二重構造との関係はどうなりますか。二重構造を解消するということとどういう関係でそれらがみんな発展できるか。日本の経済は数がふえるほど規模拡大し、すばらしく成長しているわけじゃない。そういう関係が、一体基本法でいう二重構造の解消ということと、どんどんふえていくことの実態とどういうふうにこれを理解しておられるか。そういうところをことばの上のあやでごまかしている。そんなに数がふえるほど、どんどん日本の経済が発展できるような、そういう分野が残されていてそこに人が行くのでなくて、吹きだまりのように、落ち葉が吹きつけられるように、失敗をした者がまず中小企業にとっついてなにしていく。だから吹きだまりみたいなものだ。そういうところに中小企業のいまの本質的な問題があるので、そこにメスを入れないで、これをみんな網羅的に高度化し、近代化していくのだ、そんなことができるのなら、ひとつ具体的に、理論的にわれわれが納得できるように説明していただきたい。
  206. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 私たちは、先生のおっしゃいます吹きだまりと申しますか、中小企業、つまり企業者として一人前の企業でないと申しますか、そういう非常に多数の企業者があるということを否定もいたしませんし、また、それに対します対策中小企業対策の非常に重要な対策であるというふうに考えます。しかし、先生最初におっしゃいました、日本の市場がそうはふえぬはずだし、現に非常に多数の中小企業者がおるんだから、それが規模が大きくなったら、またその吹きだまりに落ちていくものがあるはずではないか、そういうふうに考えられないかというお話がございましたが、私はその点は、日本の経済はどんどんこれは成長をしていっており、市場はどんどんふえつつある、その成長し、ふえつつある市場に対して適応できる新しい中小企業がどんどん発生をしていけるというふうに思っておるわけであります。現在ございます中小企業がそのままそっくり新しい市場に適応していけるのではもちろんない。現在ある中小企業規模の利益を追求し、したがって協業化、合併もせなければいけませんでしょうし、構造改善もせなければいけないでしょうが、しかし新しい市場がどんどん発生しつつあるので、その面に変容と申しますか、姿が変わっていって、中小企業者が発展をしていくのだろうというふうに思っておるわけであります。
  207. 永井勝次郎

    ○永井分科員 長官がほんとうにそう思って中小企業対策をおやりになるなら、私はとんでもない間違いと思いますよ。たとえば、資本金一億円以上の企業は全体の数の〇・四%。わずか〇・四%の数であるにかかわらず、それらの企業の資本金は全体の六八%、それから資産は五七%、固定資産は七二%、こうなっているのです。中小企業のほうは全体の九九・六%というような大きな数であるにかかわらず、資本金五千万円以下のものは全体の一八%、資産は二四%、固定資産は一九%、こうなっているのです。もう比較にも何にもならないのですね。だから、そういうように規模が小さくて数が多いから一企業当たりの所得、収益性が低過ぎるということが、これが問題になっているのでしょう。低過ぎるのにもかかわらず数がどんどんふえてくる、そうして、それでは、このどんどん繁栄した大きな総ワクがふえているかというと、こういう数字にあらわれてくるところは、もうほんとうに零細だということがこの数字でわかるのです。どこに、二重構造を解消し、そうして近代化し、あるいは高度化していけばこの全体を網羅的に二重構造をなくしながら繁栄する中小企業の分野の開拓ができる、そういうことが言えますか。私は、中小企業の中の零細小規模企業は、これは経済ベースだけではいけない。これはやはり社会政策的な対象分野だ。あるいは中堅以上の力のあるところについては、それを補完的に、技術が足りないのをどう、資本が足りないのをどう、下請関係はどう、輸出関係はどうと、それぞれの業態、それぞれの地域、それぞれの業種に適応した助長政策をして、そして単に大企業に従属して奴隷のように生きるだけが繁栄の道ではなくて、中小企業の分野で独立の企業として働いていけるように、そういうふうにしむけていくことが、これが対策であろう。そうして、その中には建設関係はどうだ、織布関係はどうだ、こういう業態別のいろいろなこまかい政策が必要でありましょう。とにかく、全体としていけば、この分野には国の投資が非常に少ないのです。そうして数がこんなに多くて、同業者同士過度の競争に明け暮れしている。その中からどんどん倒産が行なわれていくわけです。その上に、上のほうにもどんどん吸い上げられていっているわけでありますから、そういう劣悪な環境というものをほんとうに整備して、そうして、中小企業庁が言っているように、適正規模というものの基準をそれぞれの業態、業種に応じて指導していく、こういうようなことをやらなければならぬ。どんどんふえることが中小企業の繁栄だというような、中小企業の白書に書いてあるような、あんなものの考え方では、私はとんでもない間違いだと思うのです。その意味において、私は、ほんとうに中小企業としての適否というものを、その分野で低所得で食えればいいというだけでなくて、企業として成り立てるという最低条件を一つの底辺として考えるならば数が余ってくる、あるいは発展的によそへ回さなければいけないということで、誠意を持ってこれらの中小企業に取り組むならば、そういう態度が出てこなければいけない。そういう態度が出てくれば、そういう転廃について、あるいは転業についてもっと積極的に、単に綿業の分野でそれを買い取るとかなんとかいうことを一業種についてだけやるのでなくて、そういう一つの発展的な構造改善というものに国が責任を持って取り組むということができてくるわけです。ところが長官の言うように、それは本人の責任だということで突き放すならば、これは国の政策としてそういうものが出てくるわけはありません。おまえが悪いのだからということになるわけです。大臣、この点についてどうお考えになりますか。もう中小企業はいまでも多いというのに、どんどん毎年十万ぐらいふえる、たいへんけっこうなことだ、こう長官は言うわけです。そして所得はうんと低い、過度の競争はある、だから、どうしてもこれは適正規模にまで上へ上げなければいけないといいながら倒産は必然的なもので、構造的なものもあるけれども、本人の経営も悪いのだ、こういうように本人の責任にほったらかしておいて、それで倒産に取り組む政府の具体的な政策というものがそういうところから生まれてきますか。ひとつ大臣の所見を伺いたい。
  208. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御主張の点は、もちろん十分に傾聴に値するものがございます。これをどういうように理論的に解釈するかは、この場では議論になりますので、私どもはしばらく控えさせていただきますが、結局いまの近代化、それから構造改善というものを力強く推進いたしまして、そして一つの業種について構造改善という事柄をつくりあげて、そして、それが日本のこの段階における一つの新しい中小企業の姿である、こういうものが生まれてくるように進めたいと思うのであります。
  209. 永井勝次郎

    ○永井分科員 先年イギリスで「驚くべき日本」という特集をエコノミストがいたしております。それは、日本でやっていることはイギリスでやっていることのみんな逆だ、イギリスでは弱いものに助成政策をする、金融の面でも税金の面でも、いろんな助長政策をやる、強いものは自力でやれるのだから、ほったらかしておいても心配はない、こういう政策をとるのに、日本では弱いものはほったらかしにしておいて、強いもののところに金もどんどん回す、税金もまけてやる、国家的ないろんな至れり尽くせりの助長政策をやる、こういうことは驚くべき日本やり方だ、こういうことを言っているのです。私は、イギリス側から指摘されるまでもなく、日本国自身の中で国内の経済を分析して、そうしてそれの実態に合うような対策をほんとうに立てていくことが必要だと思う。倒産の問題一つ考えたって、これだけ明確になっている問題でも、倒産に対する価値評価がこんなに違いがある。それから、中小企業の数がどんどんふえていくということに対する価値評価が、またたいへんな違いがある。中小企業は個人の力が弱いからつぶれていくのはしかたがないのだ、こういうのですから、これに対して国の正しい施策が出てこない、ほったらかしにするという政策が生まれるのは、私は当然だと思う。だから、本人の犠牲にしわ寄せをしないで、国の大きな産業改革であるとか、構造革命であるというならば、国がその責任を負って、本人の犠牲でなく転換させるものは転換させる、適正な中小企業規模に再編成をする、こういうような積極的な取り組みというものが国の責任であると考えるならば、そして、個人の企業ではどうにもできない現実だというならば、私は、国がそれだけの力を貸していくという政策がそこから生まれてこなければならないと思うのです。これだけやかましくなっている倒産を、おまえの責任だ、個人の責任だということでほったらかされることはいけない。それに対する、たとえば事業団があるにしても何にしても、それはモデル的なもので、全体の中小企業対策になるような内容規模のものではない。そういうことで、たとえば、全部力を弱くしていって大企業に隷属させて、大企業が収奪するに都合がいいような構造に組み立てていく、口で言うこととやっていることとが違うという点について、われわれは特に指摘しておかなければならないと思うのです。
  210. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 ちょっと一言、どうも私の答弁が非常にまずかったのだと思いますが、私の考えておりますところと先生違うようにお話があって、ちょっと弁解させていただきたいと思います。  私は、倒産が個人の責任であって、ほったらかしておいていい、それから十万も毎年ふえるのだから、政府は手をこまねいておいていいということは全然考えておらない。むしろ、いまの倒産の原因が、個人の放漫経営と表面いわれておりまして、経営がまずかったのが個人の責めに帰すべき事由だと表向きいわれておりますけれども、それよりも、むしろ世の中が変わってきておるので、これに対して政府としては非常に責任を感じておるわけでございまして、必死に対策をやる、その一番大事なのは、本質の構造改善をやらなければいけないということで、政府施策をそれに集中いたしておるわけでございまして、決してこれを放置しておいていいというような考えではなく、むしろ逆なんでございます。
  211. 永井勝次郎

    ○永井分科員 まあ、放置しておらないことはわかります。  最後に、こういうような、たとえば所得税の関係からいえば、四十年度における農村の所得税は三十六億、中小企業は四千億所得税を納めておる。それに対する国の施策は幾らかといえば、農業関係は五千億、全体の予算の一割くらい、中小企業に振り向けられる予算は幾らかというと五百億前後、そういうところから見たって、国は中小企業に対する施策を一生懸命やっておると言ったって、中小企業長官のところの手持ち予算というものはわずかなものでしょう。そんなものではさか立ちしたって二階から目薬で問題にならない。だから、国全体の中で中小企業をどう位置づけて、そしてこれにどう適切な対策をしていくかということは、もっと正確な分析ができなければ、私は施策が適切にいくわけはないと思う。ですから、たとえば請負関係なんか、大きなところが請け負って、一割くらいピンはねして第二の下請にやらせる、その第二の人が、また一割ピンはねして第三のところにやらせる、倒産するのはあたりまえで、こんなことを許しておく。これは中小企業なんかの責任でなしに、構造の問題でなしに、こういうひどい、野蛮な請け負いのやり方の面にある。こんなでたらめなことはない、倒産するのはあたりまえだ。だから、こんなのは構造的なものでも何でもないのです。内容に入ればもっともっといろいろな議論がありますし、問題の指摘はできます。三十分の中で私はいろいろ当面の倒産問題をもっと明確にしたいと思ったのですが、私の聞き方が悪いのでなくて、私は正確に聞いておると思うのですが、当局の大臣の答弁も何だかわからぬし、長官も、中小企業のほんとうの倒産の実態はつかんでいない、こう思うのです。ですから私は、単に中小企業庁とか通産だけじゃなくて、国全体がもっと中小企業の今後の構造改善について取り組まなければならない問題だ、こう思うのです。いずれまた、これはホームグランドで論議することにします。
  212. 植木庚子郎

    ○植木主査 次は中谷鉄也君。
  213. 中谷鉄也

    中谷分科員 電気事業法の若干の問題と、それにいわゆるコンビナートにおける防災の問題を最初にお尋ねをいたしたいと思います。  質問の前提として、消防庁の次長に次のような点のお尋ねをいたしたいと思います。  最近社会の注目を集めているものに、旅館、ホテル、病院、百貨店等の火災がある。昭和四十一年度においては旅館、ホテルの火災が四百四十六件、病院の火災が二百二十五件、百貸店火災が百五十二件となっておって、旅館火災での死者が四十四人、負傷者が百一人、病院の火災では死者七人、負傷者三十一人、百貨店火災では死者三人、負傷者二十二人という状況だということが消防庁の資料によって明らかでありますが、昭和四十二年度は、はたしてこれらのホテル、旅館、病院、百貨店等の火災はどのような状況になっているか、この点をお答えいただきたい。いわゆる傾向としてお答えいただければけっこうです。
  214. 山本弘

    ○山本(弘)政府委員 最近の傾向として、御指摘の業態における火災、それに伴う被害あるいは人命被害がふえてまいっております。御指摘の数字は昭和四十一年の数字と思いますが、昭和四十二年におきましては、大体四十一年と同じ件数の数字があがっております。
  215. 中谷鉄也

    中谷分科員 そこで大臣にお尋ねをいたしたいと思うのです。実は十三日、東京の有楽町サウナというサウナぶろが火災を起こしまして、社会にたいへんな不安を与えました。死者三人、こういうことであります。そこで、こういうふうなサウナぶろは、当然自家用の電気工作物を施設いたしておるわけでございますが、全国で電気工作物の施設をいたしておる数が十一万三千七百五十六件、通産省の資料によりますとあります。ところが通産局において、いわゆる電気事業法の百七条の立ち入り検査をいたします検査官、この数が全国で四十七名。そういたしますと、簡単な算術でありまするけれども、一人が二千二百件以上を担当しておる。そうして、自家用電気工作物が今後一件もふえないなどという、きわめて非常識な前提に立っても、一人で大体一日二件ぐらいを検査されるそうでありますから、日曜、祭日を休まずに検査をいたしましても一年に大体七百件、そうすると、六年たたなければ検査が回ってこないということに相なると思う。電気事業法のたてまえからいって、このような検査官といわれる職員の数は、防災の観点からはなはだ少ないのではないか、こういうふうに私は考えまするけれども、大臣の御所見を承りたいと思います。
  216. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 最近、かような事故が発生することはまことと遺憾でございますが、これに対する監督機構がきわめて不完備であるということを痛感いたしております。
  217. 中谷鉄也

    中谷分科員 何らかの形においてこれに対する対策が早急に樹立されなければならないと思います。いわゆる電気事業法の七十二条の主任技術者の問題をどのようにするか。本来、第一義的な自家用電気工作物に対する責任は主任技術者が負うておる、同時に、立ち入り検査をし得る職員の数も対策強化すべきだと思うが、大臣の御所見を承りたい。
  218. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この検査官の人員増加も確かに  これは緊急であると考えます。
  219. 中谷鉄也

    中谷分科員 次に、次のような問題について、ひとつ最初に消防庁にお尋ねをしておきたいと思います。  本件の、いわゆるサウナぶろの火災の原因は電気関係にあるということが報ぜられている。その点は、いまの対策によって一応質問をこれ以上いたしませんが、死亡の原因、被害の原因が、いわゆる煙による被害だということが言われておる。これは万国博を控えて、こういうふうな被害が続出することはたいへんだと思うのです。こういう問題について、特にホテル、旅館、百貨店あるいは病院等のそのような煙による被害というものについてどのように考えるか、防止の対策をどう考えるか、これが一点。特にこのサウナぶろの火災の場合には、壁に新建材の合成樹脂系統の発泡スチロールが使われておった。それが燃焼していわゆる有毒のガスを発生したということがいわれておる。こういうようなものは消防庁の立場からどのように規制できるのか、あるいは規制すべきではないのか、これについてはどういうふうにお考えになるか、これをまず通産省にお尋ねする前提として、消防庁にお尋ねしたい。
  220. 山本弘

    ○山本(弘)政府委員 サウナぶろの場合は、御承知のように、いま公衆浴場ということでもって業態の規制はされておるわけであります。たまたまそれがああいった無窓の建物の中にあったというところに問題があるわけでございます。したがいまして、発生しました火災において、煙が充満して、そのために窒息死をいたしたということが考えられるわけでございますが、これは基本的には構造上の問題でございまして、構造上におけるああいった建物の排煙設備その他につきまして、建築基準法関係において密接な連絡をとるとともに、消防自体のたとえば消火活動におきまして、排煙活動を同時に行なう等の方法をもって消火活動に対処していかなければならないものだというふうに考えておるところでございます。  また、いまちょっと先生がおっしゃいました薬の名前、私よく承知をいたしておりませんが、その薬が塗ってあったために、発火をいたしまして有毒ガスを発生して、それが今回の大きな死亡事故の原因だということでございますが、消防の立場からいたしますと、ああいったいわゆる避難に困難を生ずるような建物におきましては、たとえば超高層ビルとかあるいはまた地下街等の場合もこれに入るのでございますが、そういう場合におきましては、その中で使われる内部塗装だとか、あるいはカーテンだとか、あるいはじゅうたんだとか、いろいろなそういったもの等につきましては防煙処理をする、あるいはまた有毒ガスの発生しないものを使うというふうにすべきである、かように考えておるのでございます。
  221. 中谷鉄也

    中谷分科員 そこで、この機会にお尋ねをしておきたいと思うのですけれども、この種の発泡スチロールというものが燃えるということを予想して、このJISマークを与えるかどうかというふうなこと、これはむずかしい問題だと思うけれども、いわゆるJISマークの法の一つの目的が、消費者の保護というところにあるという観点からいたしますと、院長にまず最初お尋ねをいたしたいと思いますけれども、JISマークというものの消費者に対するPR、ことに本件の発泡スチロールというものが燃えたときに有毒なガスを発生するのだということとの関連で、どこまでJISマークというものが責任を持つというか、消費者のPRについて責任を持つのかというふうなこととの関連において、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  222. 朝永良夫

    ○朝永政府委員 ただいま御指摘の保温材につきましては、これはJISでは、仰せのとおりホームポリスチレン保温材ということで規定されております。この保温材の試験方法はいろいろございますが、その中で燃焼性の試験というのがございます。これはある一定のろうそくの炎を当てまして、三秒以内で炎が消えるという、いわゆる自己消火性というのを規定しております。しかし、これは燃えにくいということでございまして、そのあたり全体の温度が上がりますと、保温材そのものの材料の性質上、これはガス化するわけでございまして、これが有害なガスになるということは、いかにしても防ぎがたい、これは規定をいかにしても防ぎがたいものでございまして、むしろ、こういうものをどういうところへ使うかということが問題であるかと思います。保温材の用途といたしましては、いろいろな用途がございますが、先日の火災のような場合に、空気の流通の悪い密室のようなところに使うということ自体がぐあい悪いのでございまして、JISではそこまでは現在のところ規定はしかねておるわけでございます。
  223. 中谷鉄也

    中谷分科員 そこで、そういうふうなサウナぶろが燃えて市民にたいへんな被害を与えるということも、われわれたいへんな不安を感じますけれども、先日の三井ポリケミカルの千葉工場の事故、これは文字どおり、われわれの生活している生活環境の隣に、ゴジラとかドラゴンというような怪獣がおるのと同じような状態を現出したと思うのです。こういうふうなコンビナート、ことに石油化学コンビナートの防災ということについては、特にコンビナート推進の立場にある通産省としても、十分な措置をおとりいただかなければならないと思うけれども、三井の事故発生後、十数社について二月二十六日から立ち入り検査を行なわれたということであるけれども、立ち入り検査の結果、どういうような点が欠陥として指摘されたか、今後少なくとも住民の立場から、国民の立場から、そのような事故を起こさないのだ、起こさないためにこのような措置をとるという大臣の御答弁を私はいただきたいと思います。
  224. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 所管局長から申し上げさせます。
  225. 吉光久

    ○吉光政府委員 お話がございましたように、二月二十六日から三月の十三日までにかけまして、高圧ポリエチレン工場について一斉点検を実施いたしております。実はまだ最後のところまでの報告がまいっておりませんけれども、高圧ポリエチレン工場につきまして、二度の引き続く大きな事故が起こったということを深く反省しているわけでございますが、その事故例にかんがみまして、ほんとうに日常検査が励行されているかどうか、あるいはまたその施設全体のレイアウトが適当であるかどうか——これは災害対策との関係もあるわけでございます。あるいはまた保安設備が現実によく作動いたしているかどうか、これはいろいろと自動装置になっておりますけれども、これを一々その場に応じまして点検いたしまして、ほんとうに作動するかどうかという点についてのテスト検査をやっております。と同時に、あるいはまた工場によりましては、内部を分解いたしまして、当初の機能どおりのものになっているかどうか、こういうこともやっております。それと、さらに緊急措置の場合における訓練状況がどうであるかというふうな点等が大きな着目点でございまして、いままでやりましたところにつきましては、おおむね順調に進んでいる。ただし、まだこれは最終報告をまとめているわけではございませんで、近く取りまとめることになると思いますが、大体そういう報告が入っております。
  226. 中谷鉄也

    中谷分科員 そこで、大臣にお尋ねいたしたいと思います。  いろいろ事実関係についての問題点はあったようでありますけれども、三井ポリケミカルの事故について、何か企業の秘密保持というふうなことが、人命尊重、特にコンビナート工場周辺の住民の不安を除くということよりも、優先するのではないかというふうな若干の印象を消火活動について与えたことは、私はいなめないと思う。こういうふうな事故防止という観点から考えて、企業の秘密保持ということは、それ自体としては大事なことだろうけれども、防災という観点から、人命尊重ということが最優先することは、言うまでもないことだと思う。ひとつ大臣の御見解を承りたいと思います。  いま一つ、要するに、コンビナートがどんどん新設されていくと思いますけれども、コンビナート新設については、公害防止あるいは防災等の措置が並行して行なわれない限りは、新しいコンビナートの建設などということは認めるべきでないとさえ私は思うけれども、この点についての大臣の御所見はいかがでしょうか。
  227. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 企業の秘密保持が人命に優先するなんというようなことは、これはとんでもないことでございまして、さような印象を世間に与えたということは遺憾でございますが、調べてみると、必ずしもその報道は正確ではなかったようでございます。  それから、かような災害の生じやすい工場に対しては、もちろん十分な防災の施設を厳重に励行するように従来も指導してきておりますが、今後一そうその点は心得てやってまいりたいと存じます。
  228. 中谷鉄也

    中谷分科員 次に、午前中阪上委員のほうから万博についてお尋ねをいたしましたが、重複しないように二点だけお尋ねしたいと思います。  一点は、いわゆる入場料の値上げの動きがあるということを報ぜられておる。たとえば地方の農業協同組合員等は、すでにもう入場料を、報道された金額を前提として積み立て貯金等をいたして、楽しみにいたしておる。これは、入場料の値上げというようなことがどういうふうに現在推移しているのか、入場料値上げというふうなことがほんとうにあるのか、この点いかがでございましょう。大臣のお立場から……。
  229. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 博覧会協会の運営費については、博覧会の収入をもってまかなうという原則に立っておるので、基本的に収支相償わなければならぬ、こう思うのでございます。入場料金を幾らにするかということは、主としてその運営費の規模、入場者数ともみな関係を持ってくるのでありますが、まだこの点ははっきり結論を得ておらない。世間でうわさされておるようなことも根拠のないことではございませんが、まだ正確にはきめておらないのでございます。
  230. 中谷鉄也

    中谷分科員 入場料を値上げしない、すなわち、おとな六百円という方向を堅持するという立場で、この問題については努力されるという趣旨にお伺いしてよろしいでしょうか。
  231. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いま申し上げるように、まだきめておらないのです。
  232. 中谷鉄也

    中谷分科員 次に、お尋ねをいたしたいと思いますけれども、社会党の田中委員——党の特別委員会委員長ですが、要するに独立採算なんということは、一体どこでどうしてきめたんだというふうな有力な主張もあるわけです。そこで、特に運営費の問題について、お金の要ることはわかりますが、いわゆる競輪、競馬の益金の寄付をもって充てる、しかも、その金額はずいぶん多額のものだということがいわれておるけれども、これは一体どうなんだろうか、この点についてはいかがでしょうか。
  233. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この点もまだきめておらないのです。
  234. 中谷鉄也

    中谷分科員 万博のテーマが、人類の進歩と調和、午前中の質問では、そういうふうなテーマに向かって国民的な合意を必要とするという主張がありました。私のことばをもってするならば、全国民的な支持を得なければならないというふうに私は思う。いわゆるギャンブル、公営のばくちの金が導入されるというふうなことは、万博というようなものの基本的な精神、人類の進歩と調和という、そういう人類の祭典の趣旨と矛盾するものではないか。これはもう導入するしないの以前の問題としてお答えいただけると思うけれども、いかがでしょう。
  235. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 その点も、十分御意見は尊重してまいりたいと思います。
  236. 中谷鉄也

    中谷分科員 これはひとつもう少し聞かしていただきます。  入場料を上げるという問題とは別だと思うのです。同じ質問の繰り返しになりますけれども、一体、そういうことは、要するに、人類の祭典というその万博の一番の眼目、万博のテーマ、人類の進歩と調和ということに触れるのか触れないのか、競輪、競馬の益金を導入するというようなことが矛盾しないのだろうかということは、当然考えられてしかるべきだと思いますが、検討されるというのだけれども、一体、そうすると、どういうふうにそれを検討されますか、どのように、どこで、だれが検討されるか、大臣、いかがでしょうか。
  237. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 万博協会が運営の衝に当たるわけでございまして、万博協会とも十分に協議してきめたいと思います。
  238. 中谷鉄也

    中谷分科員 総理はみずからの国を守る気概というふうなことを言われ、あるいは文部大臣は国防教育の必要を強調しておられる、あるいは愛国心というものを盛んに自民党政府は強調しておられるけれども、まさに国民的な行事として万博をやらなければならないということであるならば、そのような国防教育であるとか、みずからの国を守る気概というふうなことを強調される以上に、人類の進歩と調和ということ、現実の問題としてばくちのテラ銭は導入しないということだけは、ひとつ佐藤内閣においても明確にさるべきじゃなかろうかと思います。ひとつそういう点もあわせて御検討いただきたいと思います。大臣の御答弁をいただきたい。   〔主査退席、小山(省)主査代理着席〕
  239. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 よく検討いたします。
  240. 中谷鉄也

    中谷分科員 じゃ最後に、一、二点だけお尋ねをいたしたいと思いますが、最近、特に関西を中心として、労務賃の上昇などを原因に中小企業建設業者の倒産というものが目立っていると私は思うのです。このことが万博を中心とする事業の影響であるということは、直ちに現在言えないかもしれないけれども、今後あと七百日に万博を控えて、特に中小企業建設業に対する影響というものが非常に大きいと思う。また同時に、公共事業への影響、学校、道路等の建設への影響も私は出てくると思う。これらの問題について、ひとつ対策をお聞かせいただきたいと思います。
  241. 橋本徳男

    橋本説明員 おっしゃるとおりに、この万博を契機にいたしまして、労務需給関係からする相当な影響が一応懸念されておるということは事実でございます。したがいまして、特に労働省並びに大阪府におきまして、労働者の確保といいますか、そのために、予算その他の面におきまして万全の措置を現在とっております。たとえば、この四月から二十四の府県に労務の確保をお願いするとか、あるいは労務者のための住宅を建設するとかいったようなことで、何とか労務の確保をはかることによりまして賃金の安定をはかっていきたいというふうに考えておりまして、その面からできるだけそういった問題の発生しないようにやっていくと同時に、また万博協会といたしましても、先般の倒産もこれは直接万博のためではございませんが、ああいった事件の起こらないよう、今後発注についても十分信用調査その他を的確にやるように指導していきたいと思います。
  242. 中谷鉄也

    中谷分科員 労働省を中心としての二十四府県に対する手配などというのをおやりになっていることは十分承知している。しかし、万全の措置を講じておられるというほどのものなんですか。ほとんど何らの効果を発揮していないと私は言わざるを得ない。労務賃上昇をそういうことによって防げますか。また労務者倒産というふうなものはそれで防げるか。こういうふうなことで関西の中小企業、ことに建設業者の諸君に万全の措置を講じたから、それに見合う万全の効果が出たなどということをほんとうに言えるのかどうか。現在の体制きわめて不十分だと思うけれども、いかがですか。
  243. 橋本徳男

    橋本説明員 おっしゃるとおり、現在の時点におきましては不十分であろうと思うのでございます。しかし、先ほどのようないろいろな措置を四十三年度予算におきましても——また、現地とのいろいろな連絡を緊密にいたしまして、できるだけの措置はやってまいりたいというふうなことで、各省その方向でいろいろ措置を講じてもらっておるわけでございます。
  244. 小山省二

    小山(省)主査代理 中野明君。
  245. 中野明

    中野(明)分科員 石灰採掘等の鉱山事務所に対する設備並びに作業に関連して起こってまいります鉱害について、管理監督の責任は通産省にある、このように思うわけであります。  そこで、大臣にお尋ねしたいと思いますが、監督官庁の指示、勧告に従わない業者に対する処置、それから起こった鉱害についての賠償、補償の責任というものはどうなっておりましょうか。もしおわかりにならなければ、保安局長でもけっこうでございます。
  246. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 保安局長にお答えいたさせます。
  247. 西家正起

    ○西家政府委員 先生がおっしゃいましたように、石灰石鉱山の監督は通産省がやっておるわけでございますが。これらの法規違反事項に対しまして、鉱業権者が通産省の指示を聞かなかった場合におきましては、鉱山保安法によりまして、まず第一に、鉱山保安監督部長、これは地方出先機関におる長でございますが、出先機関の鉱山保安監督局部長がその施設の使用を停止する、停止命令をすることができることになっております。なおまた、特に災害が重要な場合におきましては、通産大臣もこれを禁止することができるように法律上なっております。  なおまた、紛争が起こりました場合の賠償責任等につきましては、これは鉱山保安関係ではございませんけれども。鉱業法によりまして鉱業権者の無過失賠償責任というものの規定がございまして、それによって賠償させることに相なる。こういうふうに考えております。
  248. 中野明

    中野(明)分科員 それでは、監督指導の責任にある通産省には、ここから起こってきたいろいの鉱害被害、これについては一切責任がないのでしょうか、どうでしょうか。
  249. 西家正起

    ○西家政府委員 監督の責任はあると考えております。
  250. 中野明

    中野(明)分科員 具体例を申し上げてみないとわかりませんので、話だけでは大臣にもなかなかわかってもらえぬようでありますから、ここに写真を持ってまいりましたので、ちょっとこれをごらんいただきながら質問したいと思います。  高知県の南国市に亀岩というところがございますが、そこに昭和三十五年ごろから石灰石及びドロマイト原石の採掘を始めた事業所が、採掘した石灰石に付着しておりましたところの泥土を洗浄しまして、その粉じんまじりのどろや土を国分川の支流である領石川の上流に放流し始めたわけでございます。それまでこの地域は非常に風光明媚な有名なところでございましたが、このために、この地方はいまもう見る影もないあわれな姿となって、日々流される土水のために、川の魚はもう死滅いたしました。そうして被害をこうむっている地域は非常に大きな地域に及んでおります。過去十年近い間、地元の人たちが関係方面に陳情してまいったわけですが、何ら具体的な措置もされず、会社側にも誠意は見えません。そうして今日まで過ぎ去ってきたわけでありますが、この被害状況並びに現在の状態について、保安局のほうでどこまで掌握しておられるか、お答え願いたいと思います。
  251. 西家正起

    ○西家政府委員 高知県の亀ケ森鉱山でございますが、同鉱山は先生おっしゃいましたように南国市にございまして、領石川、さらにその支流の外山川の上流にある鉱山でございまして、この鉱山が採掘を始めましたのが昭和三十五年の一月でございます。堀りました石灰石は、石灰石の中にはいろいろな石灰石がございますが、そのうちの製鉄用に使いますものにつきまして、先生御指摘のように、水洗いをいたしまして、それを製鉄用の石灰石として出荷をいたしておるわけでございます。この水洗いの設備がやはり山元に現在あるわけでございます。この水洗を始めましたのは昭和三十六年の十月でございまして、この設備並びにその設備に付随しまして、処理に伴いまして出てまいりますどろを沈でんさせる沈でん槽の設置認可を三十六年十月にいたしておりまして、その後、三十七年の十一月にさらに沈でん槽の増設を見ておるわけでございます。鉱山から出ました石灰石を水洗いしたどろは、この沈でん槽を通りまして、沈でん槽に沈でんさせた上澄みを川に流す、こういうことで施業認可いたしておるわけでございます。鉱山保安局といたしましては、出先の監督官をして、大体当鉱山は年に三回程度、これは坑廃水施設ばかりでなくて、鉱山の安安操業につきましても監督をいたしておったわけでございますが、山元におきます当時の水のぐあいは、この川は先生御指摘のとおり、昔は非常にきれいな川であったようでございますが、炭鉱が水洗をし始めてから若干の白濁水が出ておる。しかし、監督官が参りまして、検査をいたしまして、山元の施設から出ておる水を見たところでは、一応、完全に清澄ではございませんけれども、そうたいして濁ってもいない、こういう状態であったわけでございます。昭和四十一年の八月に南国市の助役さんから四国鉱山保安監督部のほうに陳情がございまして、直ちに監督官を派遣をいたしまして水の調査をやったのでございます。鉱山から出る排水口から、外山川、領石川の合流地点に至るまでの間の水質を調査したわけでございますが、そのときの結果では、鉱山から出ております水のPPMでございますが、大体七〇、八〇、多いところで一カ所二三〇ぐらいのPPMでございまして、外山川と領石川の合流地点におきましては、六PPMという非常に少ないものであったわけでございます。そういう結果に照らしまして、大体現在の沈でん池を確実に管理をいたしまして、上澄みを流しておれば、これは確かに昔ほどきれいじゃありませんけれども、一応支障がないということでやっておったわけでございます。ところが、その後、四十一年から四十二年にわたりまして監督官が検査をしたわけでございますが、監督官のまいりましたときには、やはり同じような状況でございましたので、一応管理規程を確実につくらせまして、管理規程どおり水を処理するということを強く指示してまいっておったわけでございます。また、昨年の十二月に、現地におきまして問題が起きたわけでございます。結局われわれの考えでは、平素管理規程どおり水の処理をしておった場合には問題がないのでございますが、どうもその後の川の調査によりまして、かなりなどろが川にたまっておるということから考えまして、これは夜間その他におきましてかなりのどろを流したのじゃないか、こういうことがほぼ確実にわかってまいったわけでございます。ことしの一月になりまして、管理規程を順守するように、もし順守しない場合は鉱山保安法第二十五条により操業停止をする、そういう厳重な通達をいたしますとともに、現地の関係者の間で、いままでたまりましたどろを浚渫するように現在話を進めておる段階でございます。
  252. 中野明

    中野(明)分科員 局長、前にも四国におられたわけですが、この問題は数年前から騒いでおります。そういう問題でございますが、おそらく現地に行かれたことはないと思うのでございますが、私は現地に行ってまいりました。その状況から見ますと、いまのおお話では私は満足できません。すなわち、うわべだけの報告であるように思います。直接被害をこうむっておりますのは、その地域六部落で一千五十一戸、これは三千人からの人がおります。また、その下流地域全域は大なり小なり被害を受けて、南国市三万人はこの被害下にある。特に農業におきましては、たんぼにどろが流れ込むために肥料がききません。反収二俵は少なくなったと口をそろえて地元は推定しております。その被害面積が二百町歩に及んでおります。その他園芸農産物の被害も甚大であり、いま話が出ておりますように、昔は非常にきれいな川で、海に遠い子供たちも非常に喜んでそこで泳いでおりました。あるいは魚釣りもできました。そしてまた、地域の住民は洗たくのすすぎその他十二分にこの川を活用し、恩恵を受けてきたわけですが、いまではもう、その写真で大臣がごらんになってもおわかりのように、おそるべき状態で、もう飽和点です。川の水面まで泥土が来ております。そして、そういう状態になっておりますから、住民の川に対する愛情もなくなって、ごみ拾て場と間違うような場所もできてくるというようなありさま。特に私が最も心配しますのは、数年にわたってこのようなままで放流されてきて、普通水面までどろが来ております。そうしますと、御承知のとおり、高知県は台風その他が非常によく来る場所でございます。幸いにしてここ数年大きな被害を出しておりませんが、もしも台風になって豪雨が参りますと、この川のはんらんすることは、もう地域の人はみんな心配しております。おそれているわけであります。そういうような災害を引き起こす心配がある。  その上になお、これは大臣にも申し上げたいのですが、先ほど局長からも答弁が出ましたけれども、私が、一月だったと思いますが、現地へ参りました。そうしたならば、それから後に話を聞きますと、会社のほうであわてまして、そして何とか対策をというようなことで、地元にも話にきたというようなことでありまして、これでは一体何のために通産省の保安局があるのか、いままで何を監督してこられたのか。いま局長のお話では、過去一年に最低三回は行っている、こういうお話ですから、十年間でも三十回。私はたった一回しか行きません。それで、あまりにもひどい実情に驚いて帰ったわけですけれども、いままで三十回も現地に行かれて、そしてこの川のどろに気がつかなかったのかと思う。地元ではもう大騒ぎをしているような問題であります。これは監督不行き届きであり、ある意味からいえば、職務怠慢とも言われてもしようがないと思うのです。私たちが一ぺん行っただけで、向こうがうろたえて対策を考えようというのに、過去十年に近い間何回も何回も監督に行き指導に行っておって、何の動きも出ないというこのことについて、大臣は一体どうお考えになるか、御返事願いたいと思うのです。
  253. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 一応状況の把握が不十分であったことは認めざるを得ないと思います。
  254. 中野明

    中野(明)分科員 そこで、お尋ねしますが、この会社に対する鉱業権はいつ許可になりましたか、おわかりであれば……。
  255. 西家正起

    ○西家政府委員 鉱業権の許可につきまして、ちょっといま資料がないのでございますが、鉱山を採掘を始めましたのは三十五年の一月でございます。
  256. 中野明

    中野(明)分科員 約二年余り前に、現在の採石場から上流に向かって三キロほどのところにあらためてまた採石場を設けておりますが、そのときの許可、これは重ねてなさったものですか、それとも最初からなさっておったでしょうか。そこのところ、おわかりになりますか。
  257. 西家正起

    ○西家政府委員 新しい奈路鉱山につきましては、あとで別途に施業案の認可をいたしました。
  258. 中野明

    中野(明)分科員 そこで、私はちょっと疑問を持つわけですが、おそらく三十五年以前に鉱業権は許可を受けておると思いますが、それで作業を始めておった。その事業所にいろいろと不備な点があり、問題になって、地元のほうで騒いでいるというような状況の中で、またあらためてその事業所に対して鉱業権を許可するということは、これはいいことか悪いことか、だれが考えてもわかることなんですが、その点について大臣のほうはどうお考えになるでしょうか。現在問題になって非常に騒がれている事業所に対して、その上わずか三キロほど離れた上流に同じ会社の鉱業権を与える、そういうことは通産省として大きな間違いじゃないか、私はこう思うわけであります。大臣のほうからお返事願いたいと思います。
  259. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 その間の事情につきましては、担当の局長から……。
  260. 西家正起

    ○西家政府委員 新しい奈路鉱山につきまして施業案を認可いたしました段階では、新しい奈路鉱山の鉱石も、同じ亀ケ森鉱山のほうに持ってまいりまして、そこで水洗をする、こういうことで許可したわけでございますが、当時はおそらく、これは推定になってはなはだ恐縮なんでございますが、現在問題になっております亀ケ森鉱山も、当初はたいして生産量も多くございませんし、また、水洗を始めましたのも三十六年の十月ということでございまして、あまり川にそういう大きなどろがたまっておるという状態は、当時では十分に把握し得なかった、そういうふうに考えております。
  261. 中野明

    中野(明)分科員 これはもう、地元のほうで対策委員会というのですか、陳情運動を起こしましてから、きのうやきょうの歴史じゃないわけです。地元の人たちは、十年越しだということを口をそろえて言っておるわけです。そのような問題のところへ再び許可を出したということを私は非常に疑問に思うわけです。そういう点をいまのお話では、資料がありませんのではっきりした答弁がいただけないわけですが、私は鉱業法をあまり読んでおりませんが、おそらく法律にもその規定はあると思います。たしか、そういうふうな条件で、いろいろと影響を与え、迷惑を及ぼしておるところには、再び範囲を広げたりするような許可を与えてはいけない、そういうような規定もあるやに私は伺っておりますけれども、その点、もしもこれが事実であれば、重大な通産省の手落ちであり、責任だと思うのです。その点、大臣のほうでどうお考えになりますか。三十五年から操業して、そして三十六年から水洗いをして問題になっている。そして地元で騒いでいる。そういうふうな事業所、誠意のない事業所に、再びいまから二年余り前に鉱業権を——鉱業権というのですか、範囲を拡大することを認めている。そんなばかな話があるわけはないし、そのためにこのような大問題になってきたのじゃないかと私は思うわけでありますが、大臣、その辺はっきりしてもらいたい。
  262. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 鉱区設定の際には、県にも相談をしておるようでございます。事後の施業の監督が十分でなかったことは、これは認めざるを得ないと思います。
  263. 中野明

    中野(明)分科員 県に相談しておるといって、責任を県に転嫁されるようなお話でございますが、最終的に許可を与えるのは、やはり私は通産省の通産局長あるいは通産大臣の責任になると思うわけです。その辺、十分責任をお感じになるかどうかということをお尋ねしておるわけであります。前に県に相談したんだから、県も悪いじゃないかというような意味にとれるお返事は、私は納得できないわけですが、もう一度大臣のほうから……。
  264. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 土地の実情によく詳しい県にも相談をしてやったのでございますが、もちろん終局の決定は当方でございますから、責任は当方にあるわけです。
  265. 中野明

    中野(明)分科員 それで、とにかくそういうことを押し問答しておっても、責任がたとえどうあろうと、現実の問題というものは、これはたいへんな騒ぎでございます。この問題について、まだほかにもございます。小さいことを言えばきりがございませんが、地域住民が濁水のために困って、洗たくものもできないということで、南国市は乏しい中から財源をひねり出して、水道の工事までして、十七カ所か二十数カ所か洗たく場もつくった。ところが、その水道代が現在三十八年から滞納になっておる。相当の額にのぼっております。南国市もほとほと困っている。こういうような問題から見まして、地元では相当な損害であり、被害であり、これはこのままでほっておいたら相済まい問題になってきております。  そこで、結論として、今後通産省としてどのように指導し——そしてまた、そういう事態になってきた責任の一端は、私は通産省にもあると思います。理由のいかんを問わず、これが半年や一年のことなら、私はこういうことは申し上げません。五年も六年も、事業所ができてから足かけ十年になるようなところで、今日まで放置されておったということは、とりもなおさず、通産省にも責任の一端がある、ところが、その川の問題として、ここには、いま写真を見られたように、この川はどころが二メートル以上もございます。誤まって泳いだら、ほんとうに足をとられて死んでしまうような、そういうどろ沼でおります。その川のどろをさらえということになりますと、これはばく大な費用がかかります。おそらく私のしろうと考えでも、一億数千万円という金が要ると思います。会社側はおそらくそんな能力はないんじゃないか。そのときに、会社に能力はない、だからわしは知らぬのだと通産省のほうで言われたら、地元の住民は一体どうなるかということです。この点、通産省もその責任の一端はあるわけですから、責任を感じて、そして今後の交渉の問題になってくると思いますが、会社にその能力がないような場は、通産省のほうでも、この川の堆積された泥土を取り除いて災害に備える、あるいは今後たんぼに流れ込むことを防ぐ、これに要する経費は、ばく大なものでありますので、そういう点大臣も責任を感じ、そしてまた事情を静かに考えていただければ、監督官庁の手落ちというか、見落としということが十分にうかがえます。その点で私は申し上げるわけですが、通産省として、今後この川ざらいその他のことについて、費用の面でも応援されるような考えを持たれるかどうかということをお尋ねしたいわけです。
  266. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 根本的対策としては、洗鉱場の移転を促進するということにあるのでありますが、これの実現までの間は汚濁水を流出しないように、万全の措置を講ぜしめるように監督をしてまいりたいと思います。  それから、すでに堆積しておるどころにつきましては、高知県当局と協議をいたしまして、早急にしゅんせつするように運びたい、かように考えております。
  267. 中野明

    中野(明)分科員 通産省のほうでも少しは応援する、そういうお考えです。もう一度お聞かせ願います。
  268. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 きわめて乏しい財政でございますが、応分の協力はしなければいかぬと考えております。
  269. 中野明

    中野(明)分科員 いま大臣から答弁をいただきましたが、いずれにいたしましても、これからつゆ時期にも入りますし、いまの大臣の御答弁にもありましたように、県当局とも早急に合議していただいて、一日も早く地域住民の災害に対する不安——高知県の場合は非常に敏感であります。絶えず私どもはやかましく言われておりますし、また今度の場合は、現地に帰って無理やりにそこへ連れていかれまして、私も行ってみて驚いたというような実情でありますので、いまの大臣の答弁にもありましたように、川のどろさらいその他について、あるいはそれから起こる被害補償その他につきましては、会社のほうも考えることでしょうが、通産局長その他の方々が仲介の労をおとりになるような会議もあるように聞いておりますので、その辺も十二分に配慮をお願いしたい、このように思います。  私、これで質問を終わりたいと思いますので、最後に、大臣のほうからもう一度、補償その他の問題で、通産局が協議の中に仲介に入るということをおっしゃっていただきたいと思います。
  270. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先ほど申し上げたように、通産局と県とよく協議をさせまして、善処したいと思います。
  271. 中野明

    中野(明)分科員 以上で終わります。
  272. 小山省二

    小山(省)主査代理 細谷治嘉君。
  273. 細谷治嘉

    細谷分科員 私は、二、三点御質問をしたいのでございますが、まず第一点は、最近たいへん新聞やテレビをにぎわしました例の静岡県のライフル銃の金嬉老の事件、あるいは昨年の少年のひかり二十一号の事件というのが発覚いたしたのでありますけれども、その場合に、いずれもダイナマイト等火薬類というのが、いとも簡単に入手されておるわけですね。こういうことではあぶなくてしようがない、こう思うのです。  そこで、考えてみますと、いろいろな管理上の不十分さ、あるいは盗まれておることがわかっておっても、上司に報告するとおこられるからということで報告せぬで、適当に帳簿をごまかして使ったことにしておった、こういうことで、上司の監督不行き届き、こういうこともございますが、反面、主務省であります通産省当局のこの問題に対する監督上の責任が、たいへん大きいんじゃないかと思うのであります。この点についてまずお伺いしておきたいと思います。
  274. 吉光久

    ○吉光政府委員 お話しございましたように、昨年の羽田空港事件以来、次々と火薬類を悪用いたしました形での犯罪が起こったわけでございまして、私どもも非常に遺憾に思っておるわけでございます。  昨年来の問題につきましても、私たち非常に反省いたしておるわけでございますけれども、監督体制を強化いたしますという意味で、実はいろいろと手段を講じてまいったわけでございます。ただ、こういう情勢になりますと、通産省だけでやるということには一応の限界がありますので、警察庁ともよく御協力申し上げまして、従前の立ち入り検査に対する検査監督等につきまして、さらに一段と厳重にやるよう、地方におきましては、公安委員会と都道府県知事、それぞれ県別に御相談申し上げた上で、具体的に立ち入り検査等によりまして違反を摘発してまいる。それからさらに法令上の不備があれば、それを通じましてさらに法令改正をやるというような立場に切りかえたわけでございまして、御指摘の点、監督が十分でなかったんではないかという点につきましては、私ども深く反省いたしておるところでございます。
  275. 細谷治嘉

    細谷分科員 監督不行き届き、不十分であったということは認めたんですが、私は、根本的には通産省の行政に対する姿勢にあると思うのです。全般的にそうでありますが、特に通産省の行政の指導のたいへんな特徴といいますと、がめつく何でもかんでも本省に権限を集めてしまう。都道府県も信用しない、出先の通産局も信用しない、こういう形で、がめつく何でもかんでも法律で本省が握る。言ってみますと、三十六階の屋上から、下をちょろちょろネズミが走っている、そのネズミを見ているような形の行政が行なわれている。こういうことからこういう事件が頻発しておるんではないかと私は思うのです。  昨年あなた方数回にわたってこのチェックをしたんでしょう。その場合に、相当ばく大な違反件数が発見されたはずですね。その結果をちょっとお聞かせいただけませんか。
  276. 吉光久

    ○吉光政府委員 違反件数につきましては、ただいまデータを集めております。いまの権限関係でございますけれども、すでに先生御承知のように、火薬類等につきましてそれを現実に消費いたす場合でございますとか、譲り渡します場合でございますとか、そういうふうな点につきましての権限は、現在都道府県知事ということでやっておるわけでございまして、中央集権的に本省ですべてそういう許認可あるいはまた立ち入り検査等を実施いたしておるたてまえにはなっておらないわけでございます。件数につきましては、昨年警察庁でも立ち入り検査をいたしましたし、警察庁で立ち入り検査いたしました悪質分につきまして、さらに都道府県で追跡の検査をいたしたわけでございます。昨年の十月一日から十一月十五日までにやりました検査によりますと、立ち入り検査の対象の消費場所、火薬庫その他でございますが、それが三万一千六百七十一に対しまして、法令違反の件数が四千三百四十三件、非常に高率な違反状況を発見いたしたわけでございます。
  277. 細谷治嘉

    細谷分科員 ずいぶんの違反ですね。私も何かの記事で見たのでありますが、昨年四月、七月、十月に立ち入り検査したところが、一万件以上の違反が出てきた。いまあなたもおっしゃったように、たいへんな高率の違反が起こっているわけですね。  ところで、あなたのほうでは、最近そういういろいろな事件が頻発しましたので、火薬類の取り締まりの強化についてとか、二月二十三日の化学工業局長、化学工業課からの通達とか、いろいろなものが出ておりますけれども、その中には、施錠を強化しろとか、見張り場を設けろとか、警鳴装置を設置しろとか、いろいろなことが指示されております。あるいは親企業が下請企業の監督体制を整備しろとか、あるいは保安協会等をつくってやれとか、あるいはいまあなたがおっしゃったように警察庁と協力してとか、何か事故が起こると、あなたのほうの責任をのがれちゃうわけですね。この辺に私は問題があろうと思うのです。たいへんな高率な違反件数が見つかっておるわけですが、その後、その通達によりますと、三月一日から今度は全国一斉の厳重な検査をやる、こういう通達もあるわけでありますが、もう始められたんですか。あるいはその始められた結果の中間的な状況等はわかっておりますか。
  278. 吉光久

    ○吉光政府委員 今回実施いたします立ち入り検査につきましては、やはり昨年と同じように、警察庁との共同の立ち入り調査ということにいたしておるわけでございまして、すでに三月に入りましてから警察庁のほうでそれぞれ地区別に立ち入り検査を開始されたわけでございます。それぞれの公安委員会でやりました立ち入り検査に続きまして、さらにそれがどういうふうにどう措置されるかという点検検査を兼ねまして、近く都道府県はそれぞれの公安委員会と連絡をとりました上で、実際の立ち入り検査を行なうという形でございまして、きょう現在におきましては、各県その準備を整えておる段階でございます。
  279. 細谷治嘉

    細谷分科員 そういう違反者に対しては、私はやはり処分も聞いてみれば、ダイナマイト一箱盗まれた、一箱盗まれたままほったらかされてあった、それで、例のひかり事件という形になったいきさつもあります。しかし、そうなってまいりますと、責任者という資格がないわけですから、そういうものについての行政処分をどうするのか、あるいは監督者に対してどうするのか、そういうものについての処置というのが非常にうまくいっていないんじゃないか、私は、これがルーズな状況を生んでおるんじゃないかと思うのですが、どうなんですか。
  280. 吉光久

    ○吉光政府委員 先ほどお示しになりましたひかり号事件につきましての関係でございますけれども、当該工場、事業場につきましては、残火薬につきましてすでに消費許可を県のほうで取り消しておりまして、したがいまして、その工事会社は実は現在火薬を消費することのできないと申しますか、消費許可の取り消しを行ないました。それから、作業主任者につきましては、現在、そこの事実関係についてさらに最終的な確定か出てまいると思いますので、その上で、はっきりいたしますれば、主任者免状について取り消しの措置をやるよう県のほうに指示いたしております。
  281. 細谷治嘉

    細谷分科員 この点はきちんとやりませんと、幾ら通達を出しても出しっぱなし、こういう形になるかと私は思うのです。実効があがらないんじゃないかと思う。事故が起こるたびに、むしろそういうダイナマイトの不正流出がふえてくる、こういう傾向にあるんじゃないかと思うのです。その辺は、ひとつ監督官庁としてきらんとした体制をとっていただきたい、こう思うのです。  そこで、私はお尋ねしたいのでありますけれども、火薬類取り締まりについては、いろいろな罰則規定がございますね。たとえば火薬というのは、一つの店に行きますと五百グラムまではいける。Aの店へ行ってから、またBの店へ行く、幾らでも買える、こういうような問題もありますが、罰則規定については、たとえば銃砲刀剣等と比べますと、バランスしてないんですね。言ってみますと、火薬類の取り締まりのほうがはるかに軽いですよ、銃砲刀剣の不法所持よりも。そうじゃないですか。この辺はやはりアンバランスがありますところに問題もあると思うので、そういう不正不当な所持あるいは監督の不行き届きというのは、やはり厳罰に処していかなければいけないのではないか、こう私は思うのでありますが、大臣、そういう点では法令の改正をぜひ早急にやらなければならぬと思うのでありますが、いかがですか。
  282. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 最近この種の問題がひんぱんとして起こる事情、情勢にかんがみて、ただいまこれの取り締まり強化のために法務当局と相談をしている段階でございます。
  283. 細谷治嘉

    細谷分科員 相談をしているということは確かにわかりますが、やはりアンバランスがあることははっきりしておりますね。直されるのでしょう。どうなんですか。直すということを前提にして法務省と相談しているのでしょう。相談した、しかし、このままだということではいかぬと思うのです。具体的な例をあげたいと思うのですが、時間がありませんからあげませんが、おわかりになっていると思うのですがね。
  284. 吉光久

    ○吉光政府委員 御指摘いただきましたように、所持につきまして、特に銃砲刀剣類との関係で、不法所持に関する罰則が、火薬類のほうが低いという状況でございます。したがいまして、何らかの形でその線に合わせるよう、そういう方向で実は現在法務省と御相談申し上げているわけでございます。
  285. 細谷治嘉

    細谷分科員 これはたとえば不法所持にいたしましても、ダイナマイトの場合ですと、一年以下かあるいは十万円以下の罰金、ところが、銃砲刀剣ですと、同じような不法所持で、ピストルなり猟銃ですと、五年以下とか、あるいは金額にいたしましてもその倍になっているわけですね。たいへんな差がありますよ。こういうところに問題がある。ダイナマイトというのは、十分管理されてあれば、警察だってこの間金嬉老の事件であんなにまで世間を騒がせなくていけたと私は思うのです。これはぜひ早急にやっていただきたいと存じます。大臣よろしゅございますか。  それでは、次の点をお尋ねしたいのですが、一月二十四日の日に三井ポリケミカルというポリエチレンの会社、高圧ポリエチレンですから、たいへんな高圧で作業しているわけですね。言ってみますと、二千数百気圧ということでありますから、大砲のたまを前に置いて作業しているようなものなんですね。それが事故を起こしたわけです。まあ、なくなった人がなくて、重軽傷者五十四名ということであったわけですが、同じようなポリエチレンの事故が、昨年大竹工場でも同じ系統の会社で起こっているわけです。この場合に、新聞等を見ますと、たとえば消防関係が消防に行こうとすると入れなかったとかいうので、どうも警察も消防もあの工場だけは治外法権だというような表現もあったのでありますけれども、私がきょう質問いたしたい点は、今後もいろいろな技術導入という形で、ノーハウという形のいろいろなものが入ってくると思うのですが、これもその一つですね。そして爆発を起こした。同じような原因で起こっている。こういうことなんです。  そこで、お尋ねしたいのでありますが、これにはさっそく調査団というものを出したわけですね。その調査の結果は、どういうところに原因があったのか、まず明らかにしていただきたいと思うのです。
  286. 吉光久

    ○吉光政府委員 調査団の報告によりますと、反応器に設置されております攪拌機の回転軸にとりつけられておった部品が運転中にはずれまして、これが長期間に回転軸を切削摩耗していきまして、ついにこれを破断させ、その破断した部分から外部に高圧ガスが大量に移動いたしまして、これに着火し、爆発したというのが原因だというふうに報告されております。
  287. 細谷治嘉

    細谷分科員 同じような事故の、大竹の工場の事故の原因は何だったのですか。   〔小山(省)主査代理退席主査着席
  288. 吉光久

    ○吉光政府委員 昨年大竹工場で起こりました事故の原因でございますが、これは圧縮器と反応器の間の配管内におきまして自動分解反応が起こりまして、配管の中の温度が上昇いたしまして、配管がゆるみ、そこから多量のエチレンガスが漏れて、着火して爆発した。このように当時の報告書は書いております。
  289. 細谷治嘉

    細谷分科員 そうしますと、大竹と千葉工場の場合の原因は違っておったわけですね。  そこで、私はお尋ねしたいのは、こういうノーハウの技術が入ってきた場合に、機械が導入された場合に、通産省はどの程度までタッチなさるのですか。たとえば、ポリエチレンのような二千数百気圧という高圧の反応をやる機械に対して、どの程度までタッチなさるのですか。
  290. 吉光久

    ○吉光政府委員 現在、高圧ガス取締法というのがございまして、これが製造事業をやります場合の高圧ガスでございますが、その際に、これは一応の書類による審査をいたします。それからさらに現実に工場が設置されて、そこで運転を開始いたします前に、運転の完成検査をやるわけでございます。完成検査に合格しないと、これは運転させることができない、こういう仕組みになっておりまして、それぞれの段階において検査をいたしてまいる、こういうふうな状況でございます。
  291. 細谷治嘉

    細谷分科員 アメリカからプラントが入ってきますね。中は点検せぬのでしょう。この場合も中は点検してないのですね、アメリカのデュポンから送ってきた機械のまま、中を点検せぬで据えつけて、そして使ったのですね。そんなことでよろしいのですか。どうです。
  292. 吉光久

    ○吉光政府委員 今回の場合におきましては、部品で入ってまいりましたので、部品ごとの点検は行なっておるわけでございます。ただし、いま御指摘ございましたように、それが部品輸入の形ではなくて、あるまとまったものとして、組み立てられたものとして入ってまいります場合に、一々それを分解して点検までは、おそらくしていなかったのではないであろうかというふうな感じもいたすわけでございますが、ただ、実際にそれが完成されまして、運転開始前の運転状況について、それがどういうふうにメーターのほうにあらわれてまいるかという点につきましては、常時検査をいたした上で、その完成検査の合格証を渡す、こういう仕組みになっておるわけでございます。
  293. 細谷治嘉

    細谷分科員 私は、詳しくその調査団の報告書を読んでおるわけじゃありませんけれども、いま局長さんおっしゃった、今度の場合の原因というものは、その調査報告書の一部に、「回転軸にとりつけられていた一部品がその構造と内部流体との力学的関係等の原因により運転中にはずれ、これが回転軸にひっかかったり、長期間にわたって、高速回転する軸部を次第に切削摩耗して行って、遂に破断するに至ったものであり、極めて稀な現象によるものである。」と、この報告書には書いてあるのですよ。問題が二つあるのですね。  一つは、一体「その構造と内部流体との力学的関係」というのは、二千数百気圧という高圧の中でやるということは十分検討されて、そうして内部構造というのは決定されているはずですよ。理由にはならないですよ。そういうのが原因になって一部品がはずれた、こういう機械を内部も検査しないで、送ってきました、信用しました、ノーハウでございますということで使わせたということは、たいへんな問題ですよ。  第二の問題は、「回転軸にひっかかったり、長期間にわたって、高速回転する軸部を次第に切削摩耗して」という状況から、相当長時間にわたっておるはずですよ。機械的な何らかの故障による音とか、そういうもので、この種のものについては、これはたいへんな高圧反応器なんですから、自動停止装置、異音調査、こういうものが当然なければならない。にもかかわらず、なくて、長期間にわたって摩滅して、そうして爆発したんだといっても、そういう不備な機械を調査もせず、信用したままで運転させたというところに、工場も悪いけれども、監督官庁もたいへんな責任があると思いますが、それはいかがですか。
  294. 吉光久

    ○吉光政府委員 御指摘の点につきまして、先ほどお答え申し上げましたように、これは完全に組み立てられたものが持ち込まれておるわけではないわけでございまして、当該部品につきましては、部品として持ち込まれまして、千葉工場を建設いたします際、あそこで組み立てられておるわけでございます。したがいまして、その組み立て当時の事態から判断いたしますと、その組み立ての行為自身にそごがあったというふうには調査団は判定いたしていないわけでございまして、これがどういう事情によって部品がはずれたかという点につきましては、各種の意見があったようでございますけれども、現在、その部品が摩滅してなくなったのか、現場で発見できなかったのか、そのはずれた態様については、はっきりとわかっていない点もあるわけでございますけれども、ただ、相当長時間かからなければこういう切削破断は起こらないであろうということでございまして、そういう点で、そういうものについて、まさに自動停止装置というふうなものが途中の段階で発見できるものがあれば、非常に便利であり、また災害防止上有意義であると思うわけでありますが、この装置の場合には、これが切削破損いたしましたその瞬間に、装置が自動ストップする、こういう形での自動停止装置であったわけでございます。
  295. 細谷治嘉

    細谷分科員 これと同じような状態が、一つは異常反応であります。一つは機械の故障です。その故障したものが長い間そのままになって運転されておったために、切削摩粍して、そうしてとうとう吹き出したのでございます。これは確かにその部品が落ちるような構造ということもさりながら、内部はとにかく検査してないらしいですね。私も直接調べたわけではないのですが、私は、この種の超高圧の反応器を扱う工場としてもきわめて不用意な話だし、監督官庁としても、あまりにもやはりノーハウという形に監督官庁としても、あまりにもノーハウという形で、監督官庁としての責任を果たしておらないのじゃないか。少なくとも、報告書に断定しているのですから、一部品が磨耗して落ちて、とうとう折れてガスが吹き出すということになるということになれば、かなりの時間が必要ですよ。あなたのおっしゃるようなことなら、この報告書が違っているということだ。この報告書をそのとおり読みますと、どこかが悪い、徹底しておらないということです。この報告書からいきますと、いろいろ問題点が技術的に出てきております。工場の責任もありますが、監督官庁の通産省の責任もやはりある、こう申し上げなければならぬと私は思うのです。  そこで大臣、私はこう思うのでありますけれども、この種の超高圧の事故というのは、これはこの程度で済んだからいいほうですよ。たいへんな事故になるわけですね。そういうことからいいまして、いろいろな問題点を含んでおるわけです。しかも、言ってみますと、高圧事故において、この会社の系統にかなり事故率が高い、こういうことも、いろいろな要素が重なっておりますけれども、機械設計上の問題、あるいは運転操作上の問題とか、いろいろな問題点があろうかと思うのであります。そういう点で、監督官庁としての通産省としてはもっとやはりしっかりとやらなければならぬ点があるんじゃないか、こういう印象を強くいたしております。この点、ひとつ通産大臣の御所感を承っておきたいと思います。
  296. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 かような事故の発生にかんがみて、この種の、一面からいうと非常に危険な装置、かようなものにつきましては監督を厳重にしなければならぬのではないかということを考えております。
  297. 細谷治嘉

    細谷分科員 通産大臣、ちょっとたよりない返事ですが、これからのノーハウというものはたいへん大きいと思うので、その場合は、どうしても国と国という関係になりますから、通産省はあまり企業のほうにばかり顔を向けないで、労働災害をいかに少なくするか、しかも、この種の高圧災害というのは、事故を起こしますと、たいへんな災害になる。こういう点をよくお考えいただいて、企業側の、いつまでやらにゃいかぬとか、そういう方面にばかり通産省は顔を向けておりますが、労働災害絶滅、こういう決意を持って、こういう技術導入等にも対処していただかなければならぬ、こう私は思うのであります。  大型プロジェクト等の問題については、いずれまた次の機会質問することにして、きょうはこの二点だけで終わっておきます。
  298. 植木庚子郎

    ○植木主査 御協力ありがとうございました。  次は、島本虎三君。
  299. 島本虎三

    島本分科員 私も、大臣に決意を伺って、それから本題に入らしてもらいたいと思いますが、先般産業公害対策特別委員会においでになりました際に、大臣のほうからその決意の一端を表明されました。   〔主査退席、小山(省)主査代理着席〕 それは「発生源である企業等に対しては、規制措置等を一段と拡充強化する必要があります。このためには、基本法」公害対策基本法でございまするけれども、「基本法に基づく環境基準の策定を行なうほか、ばい煙規制法、工場排水法等に基づき、逐次規制措置強化をはかるとともに、騒音、悪臭等未規制公害の防止対策拡充強化することといたしております。」こういうように言っているのを御存じだと思います。私は、これはなかなかりっぱだ、こうでなければならないのだ、こういうふうに思うがゆえに、その決意を伺っておる次第なのでございます。したがって、この方針に基づいて現在立法過程中の公害関係の大臣所管の法律が幾つございますか。
  300. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 工場立地適正化法、これはただいま立法の途中でございます。  騒音規制法は厚生省と共管でございます。それからばい煙規制法、これも厚生省と共管。  それから、公害防止事業団法、これは事業団の……。  それから砂利採取法、これは通産省専管で、ただいませっかく法律を準備している最中でございます。
  301. 島本虎三

    島本分科員 わかりました。そういうような、通産省から、大臣のほうから出す法律、または厚生省との共管、その他建設省との共管にかかるいろいろな法律を準備されているようでございます。私は、一日も早くこれを国会に提出してもらいたい。このことを心から願ってやまないものであります。しかしこれは、大臣がそのように考え、一生懸命に努力されておるようでございまするけれども、なかなか提案の運びにならないかのように承っておるのであります。たとえば、御存じであろうと思いまするけれども、あの全害対策基本法ができました際に、三つの条件が総理によって言明された。したがって、この言明は、今後の実施法でこれを取り入れるのだという含みで言明されました。それは企業責任の問題、無過失責任の問題、被害者救済の問題この三つは直接基本法の中に盛り入れ、法を改正しないけれども、実施法の中でこれは行なえます。これが御存じのように、基本法ができるときの総理の言明でございます。私はいま、大臣が準備中の公害関係の通産省関係のいろいろな法案を見まして、なるほどこれは決意を要する、決断も要する、こういうふうに思った次第でございます。  まず第一に、厚生省との共管にかかるという大気汚染防止法、それと騒音規制法でございます。ばい煙排出規制法は、今度の法律では名前が変わるのでございます。そういうような状態でございますから、これはやはり許可、届け出の関係や、一元化する指導、取り締まり、これはどこで行なうか、こういうようなことで、各官庁の間でも、相互間に相当のなわ張り争いと申しますか、権限争いと申しますか、これがあるのじゃないか、こう思うのでございます。この大気汚染防止法と騒音規制法、この二つにつきましては、厚生大臣は、各省間の意見をまとめて早く出したいし、できれば今月の中旬ごろまでには出せるのじゃないかという希望的な観測さえも漏らしておったのでございます。この点について、やはり大臣も決意の表明の中にはっきり言っておりますから、これはもう大臣としては厚生大臣の考えと違わないものである、こう考えますが、この点いかがなものでございますか。
  302. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 主管の分界をどこに引くかという点が問題になっておりますが、この問題は、つまらぬことにあまり固執しないで、できるだけ早く、ひとつ大局的に取り扱ってまいりたいと思います。
  303. 島本虎三

    島本分科員 そのつまらないことを言わないでという、つまらないのはどっちがどうなのか、それもやはり問題になるのじゃないか、こう思います。たとえば、ばい煙を規制する場合には、これはいろいろと方法もあろうが、火力発電所のばい煙規制、これは電気事業法ですか、これによって通産省がかってにやるから、いかに一元化の名においても、厚生省のほうでその中に立ち入ったり、または監督、検査、こういうようなことに対しては快しとしない、こういうようなことがもしあるとするならば、一元化という方針から見ると、やはり厚生省のほうがその意に沿うているのじゃないかと思うのですけれども、しかし、企業第一主義に考えるならば、所管の通産省のほうをもってよしとする、こういうようなことに相なろうかと思います。基本法ができたのですから、今後の行政指導は一元化、一体化、それのほうが望ましいのでございます。私は、当然そういうふうにしてこの大気汚染防止法、騒音規制法、これはもう提出される運びになっておるものである、事務段階においても、大臣間においても意思のそごはない、こういうように思っているわけなんですけれども、これに対して、何かいままで未決定な状態がありましたら、この際解明を願いたいと思います。
  304. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 所管局長から答弁させます。
  305. 熊谷典文

    ○熊谷(典)政府委員 御趣旨のように、公害問題は各省が歩調を合わせて取り組むということが大事だろうと思います。そういう観点から、現在調整いたしておりますばい煙規制法の問題では、御指摘のように電気、それから先ほど来、問題がございました鉱山保安関係をどうするか、これも別々にやるというのではなくて、そのつなぎをいかにしてつけたならば総合的にやれるかというようなことを前提にして、検討をいたしておるわけでございます。それから騒音の問題でございますが、これも御承知のようにだいぶん詰まってまいりまして、ほとんど問題点は残っておりません。電気の問題、鉱山保安の問題をこの法律に取り込むかどうか、それをどういうふうにしたら総合的にやれるかというような点を検討しているわけでございます。現在、騒音規制法は法制局にも審議に参与していただいて、できるだけ早く解決の方向を打ち出したい、こういうことで努力中でございます。大気汚染のほうは、ばい煙規制法の改正ということでございます。それから工業立地のほうは、立地規制あるいは分散の促進法ということでございまして、これは通産省のほうと運輸、建設、厚生省と、それぞれ関係がございますので、そういった面を総合的に調整している、こういう段階でございます。
  306. 島本虎三

    島本分科員 いまいろいろと皆さんのその段階も承りました。鉱山の関係についても、いろいろばい煙排出規制法等の関係で問題がある、こう聞きましたが、鉱山の関係で問題があるのはそれだけじゃないのであります。川の問題でも問題があるわけでございます。もうすでに新聞等によってもはっきりされておりますけれども、これは通産省側の監督、指導の点において今後重大なる決断を要するのじゃないか、こう思われる点があるのです。富山県の神通川の流域で多発しているあのイタイイタイ病の問題です。これは死者さえも出しておるような次第でございまして、もう訴訟問題になっております。四十三年三月九日に、この問題に対して三井金属鉱業所を相手にして六千百万円の損害賠償を請求しておるようでございます。しかし、これが民法七百九条によらないで、鉱業法百九条によった、これはどういうことでございましょうか。われわれとしては、これは民法によって損害の賠償を当然請求してくるのがいままでのわれわれの常識であったと思いますけれども、この場合には鉱業法百九条によった。これは結局もう過失がはっきりしている。この前提に立ったのじゃないかとわれわれは思量するのであります。そうすると、もしそれが認められたならば、これはそれをはっきり監督する立場の皆さん——煙のほうはやっても、肝心の川のほうに対しては手放しで何でも流しておった。まさに、これは県管理の川であります。国じゃない、県管理の川。しかしながら、県のほうではどうしたのか、これに対して私は存じません。しかし、患者が出ていのは事実でございます。要入院患者がもう十六人、それと受療しているのが五十七人、計七十三人、患者の総計が百五十一名をこえ、二百名くらいに至っている。こういうようにいわれているわけでございます。これはいろいろ調査団がそれぞれ調査しているはずでございまけれども、この問題に対して、通産省としては監督不行き届きの点があるのじゃないか、単に公害としてだけの問題じゃないのじゃないか、こう考えられますが、大臣、これはいかがでしょう。
  307. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 公害を起こしておりますから、当然これは通産省の監督行政の中で監督をしていかなければならぬ性質のものでございます。ただいま原因を調査しております。厚生省が主となってやっておりますが、万一鉱山の排水によるカドミウムということであれば、無過失賠償責任というものによって賠償の責めを負う問題が生ずる、そういうように考えます。現在では危険な排水状態ではないということはわかっておりますが、すでに病人が出ておりますので、その原因を探求して、そうして問題の結着をつけたい、かように考えております。
  308. 島本虎三

    島本分科員 現在は微量なんです。しかし、以前においては多量のカドミウムが検出されているのです。そして、その坑口の排水溝の近くと、川底のどろの中にもありますから、過去においては相当なものであり、現在やってなくても、過去におけるそういうような蓄積が、すなわちイタイイタイ病の原因になったのだというように言われるわけでございまして、訴訟になっておるわけでございます。したがいまして、その結着はいずれ時間を要しますけれども、なさるだろうと思うのです。しかしながら、十年訴訟をやりまして、その訴訟に勝ったとたんにもう人が死んでしまった、こういうようなことでは、まさに健康第一、人命第一主義ではございませんし、公害対策基本法の第一条の精神に反するのであります。したがいまして、これはもう御存じだと思いまするけれども、修正されたその公害対策基本法の修正点の中で、紛争に対しては仲介、調停の処理制度をつくる、こういうようなことがあるのであります。私は、それからして、公害紛争処理及び被害者救済法がいままで準備されておったところが、意外に、どうしたのか、通産省のほうが腰が重くて、いまだ成立する段階にはなっておらない、こういうようなことを聞くわけでございます。もしこれが事実だとするならば、許されません。こういうような事態が起きている。そして訴訟にまでなっておる。基本法によってこれは当然やらなければならないことになっておる。関係法、実施法をやる場合には、被害者の救済、無過失賠償、企業責任、こういうような点も明らかにするような法律はつくります。これは総理の言明であります。しかるに、現に被害者が出ておるのに、法案を立案化する段階に至ったと聞いておる公害にかかる紛争の処理及び被害の救済に関する法律案、これが通産省との間の意見の一致を見ず、いまだ成案の段階に至っておらないと聞くことは、まことに残念です。この理由をつまびらかにしてもらいたい。大臣から言ってもらって、それでなければ、事務段階一人一人、知っている人からこの段階を明らかにしてもらいたい。
  309. 熊谷典文

    ○熊谷(典)政府委員 御指摘のように、公害の原因関係をはっきりいたしますためには、ある程度、いままでの体制では時間がかかると思います。そういう意味におきまして紛争処理とか救済の問題、羅災者が出ておりますので、急ぐ問題であることはわれわれも十分承知しています。先ほどの御指摘で、何か通産省がこういう問題についてうしろ向きというか、腰が重いので今回提案がおくれているのではないかという御指摘でございますが、われわれはそういう気持ちは持っておりません。前向きに対処したい、こういうように考えております。今度の国会で、あるいは予算関係で問題になりましたが、予策で十分な手当てが実はできなかった。それから、いわゆる置き場所とか、あるいは置く場合に、民法との責任がどうなるかという法制的な問題もあったわけでございます。そういうことで、法律的にも詰める必要があるということで、公害対策審議会におきまして小委員会をつくりまして、そこで至急詰める、こういう体制になっておるわけでございます。通産省としても、これに全面的に協力してまいりたいと考えております。  なお、通産省といたしましては、これは政府、公共団体の予算だけでなしに、救済問題になりますと、業界の姿勢の問題もあろうかと思います。そういう意味合いにおきまして、われわれとしては業界にすでに呼びかけまして、これにできるだけ協力していただくようにムードづくりを懸命にやっておる段階でございます。
  310. 島本虎三

    島本分科員 これはもう立場上、大臣、あなたの姿勢、あなたの所信表明はよくわかりました。しかし局長、あなただけではございません、そういうような別々な所管事務を持つ他の人が、おそらくは財界の反対によってこれを思い切ってやらせないような、やれないような仕組みになっておる。あなたたち無視されておるか、同調しておるかどっちかなんです。たとえば、この内容であるところの現在のイタイイタイ病患者、これがどうにもできなくて放置されている。これが妊婦であり、多産系の女性が多いそうでございますけれども、骨がばらばらになって死んでしまうんだ、こういうような、入院を要する人が七十名近くもいるんだ、放置されているでしょう。そうような人たちを今度救済するための法律ですけれども、この場合、やはり企業が八分の五を持ち、国も都道府県も市町村もそれぞれ一ずつ負担し、そういうようなことが起きても困らないように、紛争処理と被害者の救済のために手当ての万全を期しましょうということは、いいことであっても、何一つ悪いことはないじゃありませんか。これがなぜできないのです。私にはわからない。もしこれができない重大な理由があるとしたら教えてもらいたい。どこが悪いのですか。
  311. 熊谷典文

    ○熊谷(典)政府委員 御指摘のように、そういう制度が確立することが好ましいと思います。そういう意味で、われわれとしても、せっかく公害対策審議会でこの問題を、先ほど申しましたように、専門的に至急まとめようということになっておりますので、それに全面的に協力してまいりたい、かように考えております。特に通産省といたしましては、企業局が公害問題についての窓口行政をいたしております。その意味で、各省とも十分連絡して責任を持ってやってまいりたい、かように考えるわけであります。
  312. 島本虎三

    島本分科員 責任を持ってやってもらいたいし、それがやはり国民のためにはりっぱな行政であろう、こういうように思います。ただ、法律によって企業が八分の五を負担することはいやだけれども、企業企業で、そういうような場合に対処するように基金を積み立てておいて、国民経済的にならこれを実施してもいい、こういうような動きがあり、こういうような行動が実現しつつあると聞くのでございますけれども、法律ではいやだ、法律でなければやれる、これだったら賛成なんじゃありませんか。皆さんの説得が弱いからじゃありませんか。窓口になって企業局が説得するといいながらも、法律でやるのはいやだということは、自分らに責任があるということを認めるからだ。おそらく、その背景があるからじゃありませんか。しかし、自主的にならやります。それなら全面的に協力できる、この辺が皆さんのいわば指導のコツじゃありませんか。これはやはり大臣、あなたもやらなければならない問題だと思います。自主的にならやる、法律的に強制されるならいやだ、こういうような見解があるとしたら、私は許されないと思います。こんなばかなことがありますか。
  313. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 法律ではどうも少しおそくなるので、それを待たずに業界の協力を得たい、こういうことでやっております。
  314. 島本虎三

    島本分科員 いま聞きまして、大臣はじめ窓口の企業局長、やはりこういうような問題に対する関心は深いものであることを私は理解しました。そうであるならば、これは現実に阿賀野川の問題が訴訟に移されたまま残っております。現在、イタイイタイ病の患者の問題が残っております。しかし法制化は、依然として、皆さんの熱意にかかわらずできないようであります。しかし、皆さんの熱意がある場合には、できない法律なんかございませんぞ。たとえば四年後のオリンピックを目ぎして、いま札幌市では黒い雪、これが国辱ものである、こういうようなことで、やはり白い雪のためにタール性ばい煙を排除するために集中暖房を都心部に設け、公害防止事業団から今度はそれの融資をし、北海道東北開発公庫から出資をする、こういうようなところまでいっておる。その適用は、これはあくまでも都市公害です。しかしながら、それじゃ間に合わないから、法制局で、煙突が三百本出ているならば産業ではないか、第三次産業ではないか、したがって、これは産業公害の中に拡大解釈しても差しつかえないものであるということを、何ら異議なくすっぱり提案して、いまや通らんとしているのです。やる熱意さえあれば、こういうふうに人の命にかかわるようなことはできないわけないのです。もうできているのがあるのですから。これは何かにこだわりがあるからじゃないかと思うのです。大臣、せっかくこれをやっているとするならば、もうすでにできつつある法律案もあり、法制局のほうで、これならよろしいという、かつてないような解釈を施して提案している法律案も現実にあります。公害防止事業団法の一部を改正する法律案です。こういうふうにしてみますと、いま焦眉の急を告げる公害にかかる紛争の処理及び被害の救済に関する法律案、これがわざわざ法制局の手を経てやらなければならない。人の命にかかわるのに、そんなのんきなことを言っている段階じゃないと思うのです。おそらくメンツや何かの問題だと思います。大臣、これは大事ですから総理ともよく相談の上で、今国会中においてでも、出たならばすぐ通りますから、これは原案に近い線で出すように努力してもらいたいと思います。大臣の決意を伺いたいのです。
  315. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 きるだけ早く法律を通すようにいたします。
  316. 島本虎三

    島本分科員 いま同じような状態で困っておられるのが厚生大臣でもあるのです。いま同時に水の問題で困っておりますけれども、出す決意をしているのが宮澤企画庁長官、これは決意いたしました。いま重大な問題で残っておるのは、これ一つじゃありませんか。あと大気汚染防止法、騒音規制法、これはほぼまとまっているし、残るのはこれ一つ。一番大事なのが法制局の手続や何かでこれが審議会にかかっているとすれば、これは重大ですよ。大臣、これだけは関係大臣と話し合って、熱意のほどは提案することによって示されるのですから、これはぜひやるようにしてもらいたい。人命にかかわる問題です。他の大臣はこれをやってもよろしい、急ぐと言っているのです。大臣、これは急いで提案するように決意されますか、それともできてくるまで待っていますか。
  317. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いま公害対策審議会で検討しておりますので、早く法律の提案までできるように審議会のほうも督促してまいりたいと考えております。
  318. 島本虎三

    島本分科員 この問題では同じような立場にありますから、厚生、通産両省とも、大臣としては決意と熱意を持って当たらなければならないはずのものです。厚生大臣のほうでは、やはり同じように、この問題に対しては熱意を持ってぜひとも提案まで運びたい、こういうふうに決意の表明をされております。これは主管はあなたなんです。あなたのほうでも、できるだけ努力して提案の運びに至らさせたい、こういうことは言えるのです。言わせないのはだれですか、窓口ですか。それくらいなら言えるのです。できるだけ努力して提案の運びに至らせたい、これくらいできるのです。厚生大臣が言えて、あなた言えないわけないでしょう。
  319. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私は、そういうつもりでいま発言したのですが……。
  320. 島本虎三

    島本分科員 じゃ、これで終わります。
  321. 小山省二

    小山(省)主査代理 石野久男君。
  322. 石野久男

    石野分科員 大臣に質問いたします。  時間がありませんから端的にお尋ねしますが、いま世界経済がポンド、ドルで非常に動揺しておりますし、特に金の問題が非常に大きく騒がれておるときでございます。そういう時期に輸出を増強させるという問題を、各国ともに非常に熱意を込めて見守っているわけだし、また努力しているわけです。きょうらの新聞によりますと、ジョンソンは、特にアメリカの輸出が増強するかしないかということがドル防衛についてきわめて大事であり、アメリカの体制にとっても非常にたいへんなことなんだ、ドルの力と自由世界金融制度の健全さは、米国国際収支の立場のいかんにかかっている。それはすべて輸出の増強にかかっているんだ。こういうふうに言っております。日本でもやはり輸出の問題は非常に大事なことだと思いますが、つい先ほど、与党の古井、田川両氏が中国へ行きまして、日中の覚え書き貿易協定というものを結んできました。この貿易協定に対して、仄聞するところによりますと、通産大臣は積極的に協力し、それを推進するという方向のように承っておるのですが、この際もう一度、この貿易協定についての、いわゆる輸出面、貿易面を担当している通産大臣の所信を聞かしてもらいたい。
  323. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本の経済は、貿易特に輸出拡大ということを心棒にしてこれを進めていく以外にないのでございます。そういうような見地から、どの国とも貿易拡大してまいる、そういう方針に立っておるのであります。中国との貿易に関しましても全く変わりないのであります。輸出拡大強化していくという観点から、日本といたしましては、輸出金融によってフェーバーを与えて、そして輸出力というものを強めていく、こういう方針をとっておるわけでありまして、この点においては、その国の政情いかんにかかわらず、いやしくも輸出をするという以上は、当然輸出金融を見てやる、こういうことになるわけであります。ただ、特殊の外交上の理由によってそれがはばまれておるというのが現状であります。これを何とか調整して、それが輸出阻害の要因にならないようにしなければならぬと考えておるわけであります。
  324. 石野久男

    石野分科員 これも、大臣としてはそういうふうに考えるのはわかっておりますが、私がお聞きしたのは、古井さんたちが結ばれてこられました日中覚え書き貿易協定なるものに対して、通産大臣はどれだけの積極的な配慮を示されるかということを——私もやはりこの問題については、一応とだえていく協定を、微力ですけれども橋渡しした一人としまして、非常に関心を持っておるわけでございますし、でき得べくんば、従来よりもより太いパイプが日中の間に貿易という面でつながれることが大事だと思っております。そういう立場から、特に担当の大臣である通産大臣に、この日中貿易についての考え方を聞いているわけでございますので、その点についてのお考えを承りたい。
  325. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私は以上申し上げたように、もうどの国に対してもより一そう貿易拡大していくという熱意を持ってこの仕事を進めていく、こういうふうに決意をしております。
  326. 石野久男

    石野分科員 日本中国との貿易ということばを使うことを非常に通産大臣はおっくうがっているようでございますけれども、それはどの国もというのだから、今度の貿易協定に対しても積極的にそういう態度であるというふうに私はお聞きします。それでよろしいですね。それでは、そういうような立場で、中国との貿易を広げるのにはやはりいろいろな問題があると思います。今度古井さんや田川さんたちが行かれたときには、米の輸入問題でいろいろと折衝にやはりむずかしいところがあった。その米の輸入については大体十万トン限度ということが今年はきまったわけです。先般西村農林大臣からは、大体それ以上は入れられそうもないということを承ったわけでございまして、しかし貿易量をふやしていこう、またふやすためにどうするかということについては、米がそういうふうになるとすれば、どこかでまたふやすための努力をしなければならないと私は思うわけであります。貿易量をふやすための問題点はいろいろあると思います。それは従来からある吉田書簡の問題もありますし、あるいはそれに関連して輸銀をどういうように使うかという問題もあります。それからまた輸入されるべき品目について、やはりそれを入れるか入れないかの問題でまたごたごたしていることもあります。そのほかには、やはり関税の問題や何かでも問題がある、こういうように私は思うのであります。  まず最初に、端的に申し上げて、ことしの輸入の問題で米が十万トンだということになりますと、それを補うものとして、しかも日本の業界で非常に要請しているのは食肉の問題があるのですね。この食肉の問題は、これはもちろん農林省の担当でもございますが、通産当局としてはこの食肉輸入について、積極的にこれを打開していく、いま輸入禁止になっておるわけですから、その努力をする意図があるのかどうか、この点をひとつ大臣に聞かせてもらいたい。
  327. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 食肉の輸入問題については、南米のアルゼンチンからも非常に強い要請があるのでありますが、御承知のとおり最近イギリスで例の口蹄疫が非常に蔓延して、何十万頭という牛を射殺したというふうなことまで起こっておるようなわけでございまして、農林省にいかに働きかけても、農林省はうんと言わない。しいて輸入しようとするならば、煮沸した肉を冷凍か何かで持ってくる、こういう点以外には絶対に農林当局はこれに同調いたしません。そういうわけで、煮沸して持ってくるということになると、おのずから限度があって、非常に限定されて、幾らもないものになってしまうと思います。いまのところは食肉をなまで輸入するということはちょっと見当がつかない状態でございます。
  328. 石野久男

    石野分科員 いま農林省が、食肉について煮沸をさしたものを日本に入れさせるというたてまえをとっていることについてもいろいろ問題があります。私たちの聞き及んでいるところでは、フランスのシャロレー協会から入っている肉などについても問題がある。フランスは、口蹄疫については汚染地都だというふうに大体なっているところでしょう。こういうところからの肉は案外に簡単に入っているのです。中国におけるところの口蹄疫については、もうすでにほとんど心配がないということは、再三にわたって関係の諸君が規察をして報告もされているわけです。ただ日本にそれに対する資料が十分でないということだけで、これはそうなっているのでございますが、私はやはり農林省のそういう言い方に対して、もう少し通産当局はこの問題について積極的に通商の場から話を進める必要があるのじゃないかというふうに思います。もちろん口蹄疫については農林省がその責任官庁でございますから、そういう意見を出すのは私は一応は無理はないと思いますけれども、しかし農林大臣なりあるいは畜産局長が言うように、技術的問題だけだと私には思われないような面が、率直に申しまして、たくさんあるのです。たとえばいま煮沸の問題などもございますけれども、口蹄疫の世界的な汚染地区から来ているところの肉については、湯通しだけでずっと通っているのです。ところが中国から来るものについては、当初はどうかというと、百四十度でもって四時間煮沸している、こう言っているのですね。それをいろいろ折衝した後、百度の温度で一時間ということにした。しかしそうすると、加工されるから、結局それについて税金が二五%かかってしまうのです。これもはいれなくなってしまう。実際問題として入れられないのですよ。見ていると、こういう非常に手の込んだ押え方をしているわけですよ。これはただ単なる技術的な問題とは私どもは思われないのです。この点は通産当局でももう少し勉強してほしいと思うのです。私たちにとっては非常に不合理な問題です。  きょうは時間があまりありませんから、これは他日またこの問題を論議しますけれども、日本が今日世界的な経済混乱の時期において、これだけの高度な設備を持って、これから後輸出を増強しようと思うと、そう簡単にアメリカさんばかりたよっていられないと私は思います。どうしたってアジア——西欧もそうでしょうけれども、特にアジア、中国が大事だと思うのです。その中国に対して、貿易はします。入ってくるなというようなやられ方をされては、これは困るわけですね。私の言っているのが一方的な意見であるかどうか、これは御調査いただけばわかるのでございますから、通産大臣はひとつそういう問題について、もう少し関係者をして調査させてほしいと思います。  それに関連しまして、同じように中国から入るもので、当然入らるべきものをはいれなくするような方策が今度は関税定率法の中で出てくると思います。四月一日から関税定率法が公布実施されることになるはずです。そのまま国会を通れば。その場合、関税定率法によるところの中国産物品に対する適用範囲というのが、またこれ大蔵省によって押えられるわけですね。前にも田中委員からもそういう質問があったようでございますが、大蔵省の説明によりますと、中国から入るものの金額にして八割方は一応免除される、こういうのですね。一応ケネディラウンドによるところの適用を受けると、こういうわけです。二割だけが排除されるのだ。ところが品目にすると、六百数十種のうち三百五十種類、五五%というものが適用を受けられないのです。差別をされるわけですね。こういうような状態に置かれますと、とてもこれは、日中貿易を広げようといったって、広がる道理はありません。この金額にして非常に大きい八割ものものがケネディラウンドの適用を受けるのに、あと金額はわずかに二割のもの、品目にして五五%から六〇%に及ぶものに対してなぜケネディラウンドの適用を受けさせることができないのか、これは明らかに政治的な意図じゃなかろうか。こういう問題について通産当局は何らの配慮もしないとするならば、これは椎名さんは中国に対しては全く目をつむっていることになると思うのですよ。先ほどの、貿易拡大したいというようなことは、口で言うのと実際とは全然違うと思うのだ。だから通産大臣、ほんとうに貿易拡大しようという意図がおありになるのならば、もう少し通産当局の立場から、この問題に対する意見を出すべきじゃなかろうか、こう思うのですが、通産大臣はそういう問題についてどういうようにお考えになりますか。
  329. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 関税は御承知のとおり国定税率と、それから協定税率と申しますか、特別の関税の協定によってお互いの間に最恵国条項を認め合って、そうしてやっている。ところが中国は正常な国交関係にないために、これも別に政治的な特別な意図をもってするわけではないけれどもも、片一方ずっとKRで下がってくると、格差が出てくるわけでございます。しかし、食いものであるとかその他の農産物あるいは原料、そういうものについては大体国定税率を下げて、そしてこの格差をぐっと縮めていくという方針でございますけれども、全然格差がないというわけにはどうもいかない。これは関税の関係から出てくるもので、特別の意図を持ってこれを排除するような意味一つもございません。なおその点については関係局長から詳しく御説明申し上げます。
  330. 石野久男

    石野分科員 関係の方から聞いておると時間がなくなっちゃうからいいです。  問題は大臣、国定税率でやれるとかなんとかというのですが、私が聞きたいのは、大蔵当局が関税の問題を論議する立場と、それから通産省がやはり関税について貿易を広げようという立場は、必ずしも同じじゃない立場が多いだろうと思うのですよ。むしろやはり通産大臣のほうからすれば、いわゆる大蔵省がとっている態度に対してそれを切り開いて、なおかつ貿易を広げていこうというような意図があって、初めて私は通産大臣が国の貿易に対して、国際的な通商関係に対して熱意があるものだと思うのです。全然配慮もしないで、ただ単に大蔵省の言うままにというようなことじゃ困る。大蔵省は何と言っているかというと、こう言っているんですよ。国交の回復はないけれども、やはり中国には何か高い税率と低い税率と二つあって、その高い税率を日本にかけておって、どうも差別をしておるようだからうちもやるんだ、こういうような言い方をしているのです。この言い方はまさに報復課税ですよ。この報復ということになると、関税定率法の第七条の適用をやるのかな、私はそう思うのです。そういうような意図でこれをやっておる。大蔵省の説明はそういうことなんです。これは中国日本との間が、古井さんや田川さんが一生懸命になって打開してきた。佐藤内閣の敵視政策を排除しつつあれだけの努力をして切り開いた道を、また今度ケネディラウンドの適用をめぐって二重、三重に裏打ちをするような佐藤内閣の敵視政策をここで示すのと同じじゃないか。そういうことをする場合には椎名さん、もう少し通産省の立場でやはり意見を出すべきじゃないかということを私は申し上げているんですが、いかがでございますか。
  331. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 たてまえはどうもそういうふうになっておりますけれども、しかし現実問題として、軽減することができる範囲一ぱいひとつできるだけふやすよう配慮したいと思います。
  332. 石野久男

    石野分科員 大臣、私はもちろん、関税定率法の第五条には、国または産物、品目について指定するということになっておりますから、その品目の指定のしかたも一つあると思います。だけれども、現在その便益関税でいっているのがもう五十二カ国あるのですよ。中国を加えれば今度五十三カ国目なんだ。しかも日本の国に中国から輸入するもののうち、金額にして八割はもう便益関税を適用しているんですよ。あと二割のものだ。ところがその二割のものが、品目にすると五五%から五七、八%になるのですよ。言うならやはり零細なもの、零細な取引をしている品物については便益関税を与えないで、大口のものにだけは便益関税を与えている。これは全くこちらの日本側の便のためにだけ考えていることなんですよ。これでは日中の貿易を切り開くために努力をしてきた古井さんや田川さんたちのその誠意が政府によってみんな消されてしまうんです。そしてまたそのことは、私自身、周総理からあのことばを受けるためには、そんなに簡単に受けられたのではないのです。率直にいって。そういういろんな苦しい立場を越えてきている道をみんなふさぐと同じことになる。大蔵省はどちらから、どういうたてまえでこういう方針をとっているか知りませんけれども、通産大臣がほんとうに中小の貿易商社の諸君のことを考えるならば、こういう問題を放置しておいてはいけないと私は思うのです。ただ言われたものだけやるというふうなことになったら政治になりませんよ。むしろこのために中小の貿易商社はつぶれてしまうのですよ。同じ品物で他国から入るものはケネディラウンドの非常に低率の関税を適用される、中国から来るものは高い税率になるから、おのずから商売できなくなっていく、そういうような状態が目の前に見えて出てくるのです。四月一日から行なわれようとしているいわゆる関税定率法の一部改正の問題はそういう内容を持っているのだということを、通産大臣はもう少し真剣に考えるべきじゃなかろうか。この問題で通産大臣はひとつ、きょうどうということはなかなかできないと私は思いますけれども、四月一日までの段階で大蔵省と折衝して、もう大口の八割までのものが便益関税を受けるならば、一〇〇%やはり便益にしてもいいと思うのです。第五条の適用をすべきです。そのような努力をされる用意があるかどうか。
  333. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 わかりました。ただ格差の出ておる二〇%のものの中には、日本でやはり中小企業がやっているものが相当ありますので、国内の中小企業に対する影響も考え、いろいろ考慮して、できるだけ格差を縮めるようにやっていきたいと思います。
  334. 石野久男

    石野分科員 国内の中小企業者に対していわゆる競合するというものがあるからという理屈も、それはもちろん私は国内の中小企業者を守るということは大事なことだと思います。けれどもその口実の陰に隠れて、そうしていまのように六百二、三十品目のうちの約三百五十品目というものは適用されないのでございますから、しかもそのためにかえって国内のそれに関連する諸君が困ってしまうものがたくさん出てくるのですよ。むしろ国内の中小企業者が困るというのは、あまりそう多くはないのですよ。それは全然ないとは私は申しませんけれども。だから私はそういう問題については、国内でほんとうに立ち行かなくなるような事業者があるならば、これはまた別ですよ。そういうものはあまりありません。向こうの土産品のようなものが多いのですから。だからそういうようなことに籍口してやはり怠慢であってはいけないと思います。だからこれはできるだけ、やはり五十数カ国のほとんどが第五条の適用を受けているという事実にかんがみて、中国に対して、せっかく細いパイプであってもつながった、この日中間の貿易の体制というものを広げるような方向を、椎名通産大臣に通産行政の中で実施してもらうように、重ねてひとつ通産大臣の意見を聞いておきたいと思います。
  335. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 また繰り返すことになりますが、とにかくそういうことに籍口してなるべく便益を与えないとか、そういうけちな考え方ではなしに、ほんとうに抵触するものはやはり考えなくちゃいかぬ、そういう意味でまた前向きにこの問題と取り組んでまいります。さよう御了承願います。
  336. 石野久男

    石野分科員 時間もあまりありませんから、また問題はあとで論議することにいたしまして、日中の貿易の問題で、これはもう前々から問題になっていることでございますが、かげろうのようなココム協定というものが、これがいつでもじゃまするわけです。これは田中君からたびたび実は聞いているわけでございますが、ぼくはやはりこのココムの問題については、私は昨年実はココム委員会のほうにも行きまして、そうしてあそこでちょうど天津で機械展がありましたときに、ココム問題でずいぶん難航しました。あの時点で問題になったのは、結局持ち帰りの許可ということがあったのですよ。出品はして、持ち帰ることを条件にして許可する。こういうことを私はフランスの事務局に言ったら、笑われちゃったのですよ。そんなばかなことがありますかというわけですよ。機密だとかなんとかいうものを向こうで一月も二月も展示しておいて、持ち帰ってくればいいのだなんて、そんなばかなことがありますか。こういうようなことまでして貿易をとめるとかあるいは何とかするということは、これはちょっと噴飯ものですよ、実際問題からいって。しかし日本の業者はそれをまともに受けているですからね。こういうようなことを通産省がいままでやってきたのです。これは間違いだと思うのです。こういうようなことはもう今度はやめにしてもらいたい。通産大臣はどういうように考えますか。
  337. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 具体的に問題が起こった場合には、ひとつよく考えましょう。
  338. 石野久男

    石野分科員 ココム問題は非常に——いまココムということは言わないことになりました。それも田中君とぼくとの追及で、もうココムは言いませんということになったので、しかし実際には管理令で、それをうまく適用しながらココムと同じことをやっているわけだから……。しかしあのココム委員会にいくと、結局アメリカが一方的に押しまくって、そしてイギリスやフランスが同調するときには、日本の品物を出させないときにだけしか同調しないのです。実際には。だからこういうような場であまり卑屈にならないようにしてもらいたいということを、特に私はこの際通産大臣にお願いしておきたいと思います。  いろいろありますけれども、時間が中途はんぱになりましたから、 これで私の質問は終わります。
  339. 小山省二

    小山(省)主査代理 吉田賢一君。
  340. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 通産大臣その他に対しまして、少ししろうとの通産談義をお聞き願いたい、こう思うのです。  第一点は、例のアメリカの輸入課徴金問題についてであります。政府は本年度の輸出の伸び率を大体前年の一五%と見込んでおる、あるいは対米輸出については二〇%ほどの伸びを考えておられるようにも推測いたしますが、そこで、この対米貿易が非常に重要なことはいまさら私が申すまでもございません。六六年の統計を見てみますると、総輸出量の三〇%に当たりますし、また一月から十一月までに三十億ドルに該当する輸出があります。ことに労働集約財の軽工業品が非常に多いようでございますのと、それからもう一つは繊維、雑貨などが大きな特色をなしております。ことに繊維輸出につきましては、最近は七億五千万ドルほどの輸出がございます。こういうような貿易の状況のもとに、伝えられるアメリカのドル防衛対策の一環でありまするか、輸入課徴金の問題が果然日本の経済界に大きな波紋を与えておるようでございます。反面、非常に深刻な問題として、中小企業がうろたえておるというようなかっこうになっております。これにつきまして所管大臣の椎名さんから、この課徴金問題の最近の事情、その動機とか最近の経過、経緯等について、簡単でよろしゅうございますから、要点だけお答え願いたいと思います。
  341. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカはEEC各国に対して、ドル防衛に対して協力を要請するとともに、アメリカが検討中の制限的措置をかりにとった場合にどういう反応ぶりを示すであろうかということを見きわめるために、二月半ばから末にかけて交渉を行なったようであります。しかし、見るべき成果は必ずしも得ていないように思われる。他方、米国としては、貿易面における措置について早急に何らかの結論を出す必要に迫られておったのでありますが、最近に至ってEEC各国世界経済拡大の方向で、問題の解決をはかることに協力するためにケネディラウンドを繰り上げ実施をする、その可能性について検討することになったために、アメリカとしても、そういうことならひとつ結論を見守ろうじゃないかといったようなことでいまの段階になっておるようであります。EEC諸国の検討は約二週間かかると見られておりますが、どのような結論が出るか、現段階では見通しを立てることはできない。いずれにいたしましても、アメリカが何らかのやはり貿易制限の措置をとるであろうということは依然として緩和されておらないというのが今日の状況でございます。
  342. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 EECにおきまして、二週間ほどの期間に何らか相当なEECなりの結論を出すのをいま見守っておる、これがアメリカの立場だとしますると、二週間後にはどうなるだろうかということにつきましても、これは日本の立場としては深刻な課題が近寄るのでございますから注意していかねばならぬと思うのでございますが一体ドル防衛の立場からアメリカが国際収支改善につきまして何らかの相当な非常手段をとると、うことは、これは一月一日の大統領のメッセージがあったにもかかわらず、日本の国民は一斉に大きな注目をしておった次第でございますが、政府といたしましてこの課徴金が課せられるという場合を想定いたしますると、一体これはどのような対策を立てなければなるまいかということをあらかじめ用意することが当然であります。そうならば、アメリカが二週間の間見守っていこう——日本は二週後にどのように出るか。それが出てから対策を立てるのじゃおそい。直接の被害、深刻な打撃は、日本の特に繊維、雑貨の輸出産業者等にかかってくるのでありますから、いまにおきまして相当な将来の動向の見通し及び対策、こうなったらこうするという対策を立てておくことがしかるべき道ではないかと思うのでございます。その対策として立てるならば、もし課徴金を課するということになるなら、それはどのような範囲であろうか、五%であるのか二%であるのか、あるいはまた開発途上国は除外するのであろうかどうかということと、もしいずれの割合か課するとなるならば日本はどうするか、どのような対策を合法的合理的に立てておけばいいのかということは、所管大臣といたしまして、またこれは内閣の重要な国策といたしまして、いま用意しておかねばならぬ段階にきておると思うのですが、対策いかん、ここまでひとつ御説明をお願いしたいと思います。
  343. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この輸入課徴金問題はいま申し上げたような段階でございますが、はたして一体どういう形であらわれてくるのか、まだ一向、情報は入っておりますけれども、確たる通告を受けておるわけではないのでありまして、したがってそれを見きわめないで対策が立つわけがない。いずれにしましても、その政策をとるであろうということはほぼ確実になってきておりますので、とりあえず経済界のおもなる人たちが集まって、ぜひアメリカに渡ってそれぞれのルートによってこの問題を阻止する、どうしても阻止ができないような情勢ならば、一体どういう手で向こうが出てくるかということを見きわめて、そしてそれに対する対策をひとつ考えたいというので、今度日曜日に出かけて、一週間ぐらいで帰る予定になっております。帰ってからになるか、あるいは向こうの情勢を随時これらの人々によって通報を受けて、その対策を考えなければならぬ、かように考えておるようなわけで、いずれにいたしましても、もう具体的にどういう手を打つかということをきめなければならぬのでありますけれども、向こうの出方というものをまず的確に把握いたした上で考えなければならぬ、こう思っておるわけであります。
  344. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 いま国際電話がございますし、在外公館との間にも即時通話ができることになっておりますから、世界情勢は指呼の間に把握し得る実情でございます。常識化しております。伝えられるところによりますと、例のガット十二条の援用によりまして一時的に課徴金として実施せんとするらしいのでないでしょうか。すなわち、すべての国からの輸入品についてFOBの価格に一律に五%の課徴金を適用しようとするのが大体の筋ではないだろうか。もっとも若干の非課税品もあるようでございますけれども、そうなりましたら、勢いガットとの関係もあるし、またその辺が落ちでないかということも常識的に考えられるのでないだろうか。私は、正確な情報を得て、その資料を前提といたしまして政府が確たる対策をお立てになる、ごもっともだと思います。しかし事は流動しつつあるのでありますから、秘中の秘といたしましても、内閣はこれに対して対処する最上の方針をお立てになって、この場合ならこう出る、こうならばこう行くということは、そんなに無限に展開するたくさんの方法があるものじゃございませんので、われわれしろうとが推測し、いろいろな文献、人の話等々を総合いたしまして、あるいはそうであろうというふうに思うのでありますが、もしガット十二条の援用ということになりますならば一体どうするのでございましょうか。われわれとしての対策は一体どうあるべきなんであろうか、わが国もそれに対して輸入課徴金でも課すべきかどうか、輸出のリベートの制度でもしくのかどうか、こういうこともあろうと思います。あるいはまた先年、三十九年でしたか廃止いたしました例の輸出所得の控除制度、こういうものはどうだろうか、この辺のこともあれこれと論議されておるようでございますが、いずれにしても、当面しておる民間の業者、業者につながるところの関係者というものは、全く深刻な影響のもとにこの問題を見守っておるというのが実情でございます。したがって、政府はある程度は、仮定かもわかりませんけれども、何らかの具体的対策を、相当荒筋でも、この場合ならこうするということはお漏らしになってしかるべきでないであろうか、こういうふうにも思うのですが、どうでしょうね椎名さん。
  345. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いろいろな場合を想定して研究は怠らずにやっております。ただ、微妙な問題でもございますので、まだそう役に立つか立たぬかわからぬのに、だらだら並べてみるということはどうかと思います。慎重にしたいと思います。
  346. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 アメリカは自由貿易主義の国であって、そしてまたケネディラウンドの主唱者でもあるし、ガットの協定国でもある。こういうような世界的チャンピオンであるこの国がこういう輸入制限のような措置に出るということは、ガットの十二条やその辺の窓口から観察いたしまして違反になっておるのではないだろうか、こういう議論も可能じゃないか。先年、六四年でございましたか、イギリスにおきまして課徴金制度を援用いたしましたときに、ガット理事会におきましてやはり違反であるということを認めながら、一時的措置であるということで黙認した実情があるようでございます。こういうような取りきめ、条約、法制的な見地から考えまして、一応検討しておく必要があるのでないだろうか。もしそうとするならば、阻止体制を用意する上におきましても、重要な国際条約の侵犯でないかという議論も成り立つのでないだろうか。いずれにいたしましても、じっと手をこまねいて、役に立っても立たぬでも、そういうような浮き足じゃなしに、それは必死のかまえをもってこれに対処する用意がいまはできておらねばならぬと思うのです。二週間というと、もう目の前にまいるようでございますが、この辺は繰り返し議論で恐縮でございますけれども、私はやはり内容的に、方法といたしまして無限の広い分野があるわけじゃございませんから、そこにずばっと当たるべき対策が幾つか用意されてしかるべきじゃないか、こういうふうに思うのですが、どんなものでございましょうか。
  347. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ガット違反であることはもう明瞭でございます。ただそういう場合に、関係国の承認を漏れなくとれればそれも一応いい、違反は解除されることになりますが、とにかくガット違反であることは明瞭であります。そういうことをあえて米国がやるかやらぬか、もういまとなっては、必ずやるときまったわけじゃないが、やらないということも保証できない、どうもそれあるいはそれに似たような何らかの手段をとってくるということがほぼ確実になっております。その程度が一体どうなるか、まあいろいろに考えられるのでございまして、われわれとしてはその場合場合に応じた一つの対処の方針をいま十分に練っておるところでございます。
  348. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 繊維、雑貨が一番大きな影響を受けるようでございますが、一応繊維にしぼりまして若干質問をしてみたいと思うのです。ことに綿製品、たとえばギンガムでありますが、ギンガムは兵庫県の北播地域が全国の九割まで生産をいたしております。これがもし後進国が除外されて、五%課徴されるというようなことになりましたならば、これはもう決定的打撃をこうむる次第でございます。おそらく四割は輸出が減退するだろう、こういう推算がなされておるのでございます。あの地方は、御承知と思いますけれども、千三百以上の小さな工場を持った織業でございますが、これらの大部分が全国の九割もギンガムを出産して、これがまた同時に九割も輸出向けなんです。これを思いましたならば、そういう地方に密集いたしましたものは、この成り行き、貿易への打撃、したがって、企業自体の打撃は、もう立つ瀬のないようなところに追い込まれる危険がございますので、それを考えてみたいのであります。したがいまして、これらの問題につきましては、やはり将来も不安のないような相当なことをあらかじめ用意される必要があるのじゃないか。これが政治でございますから、成り行きにまかすべきではない、こういうふうに思われます。さりとて、はっきりしないものをいたずらに声を大にいたしまして事そこまで来てしまったというふうにしては、かえって子牛の角をためて子牛を殺すことになりますから、そうもいきますまいけれども、やはりその貿易への深刻な打撃を考えまして、その方面の手は特に考慮しておかねばなるまいと思いますが、お考え方はいかがでありますか。
  349. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御指摘のとおり、もしかような課徴金が実施されたということになりますと、やはり綿織物、それからその他の雑貨、こういう方面に深刻な影響を与えることになるわけでございまして、そういう場合にどうするか、これは容易ならざる問題でございますが、特に産地産業と申しますか、いまの兵庫県のギンガムなど、集中的に相当深刻に影響が起こってくるというような場合、相当これに対する対策をとらなければならぬ、こう考えております。しかし、はたしてそういうことになるかならぬか、あまり何かと騒ぐのもどうかと思いますけれども、その点は十分に考慮してまいりたいと思います。
  350. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 これは、椎名通産大臣のお人柄から見ましても、音なしのかまえでもって必殺の堅刄を御用意になっていく、こういうふうなことが最も上の上と私は考えております。声を大にして言うて行なわず、こういうふうこなとでなしに、黙って実をあげていくというのがあなたのお人柄でありますから、これは大きな御期待を申し上げているわけであります。しかし、逃げ場のないのが中小商工業であり、そして、いまの繊維産業は中小工業の典型である、雑貨しかりということにつきましては、この上とも十分な御配慮を願いたい、こう思うのでございます。  そこで、伺いたいのでありまするが、伝うるところによりますと、宮澤企画庁官が渡米されるとかいう話でございます。これはほんとうなんですか。
  351. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 どうもだれ言うとなく、そういううわさが立っておるようでございますが、まだ政府のほうから特に出かけていくというめどはございません。すべて民間の調査団が向こうへ行きまして、その状況によってまた考えることになります。
  352. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 やはりこの問題に対処しまするのは、議会と政府が一体となりまして対処する、全国民は議会において決意を表明する、政府は行政の施行者としまして、これらの阻止に万全の措置をとる、こういうことしか手がないもの、こう考えられます。そこで、民間の調査、それからあなたのほうの在外それぞれの連絡の調査等々がございますが、私は、一応阻止一本の対策しかないもの、こう考えられます。第二、第三の処理よりも、やはりこのような重大な深刻な影響のあるものでございますから、自由主義貿易国のアメリカといたしまして、このような措置をとるというのであり、被害国の日本、この見地から見まして、阻止対策が何よりというよりも、以外に道なし、二者択一という手ではないと思います。阻止一本です。そうして、こういう方法ならば認めようとか、一時的にどうしようとか、あるいは黙認しようとか、そういうようなものではございません。絶対的に阻止一本、これ以外に内閣としてとるべき道なし、これによって閣議決定していただく。そしてあなたは、その担当の最も中心の大臣でございますから、そういうふうに閣議を持っていくようにぜひせられんことを特に御希望申し上げておきたいのですが、いかがです。
  353. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 もちろん、阻止一本で鋭く切り込んでいかなければいかぬ、こう思っております。
  354. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 第二は、去年から通産省の重大国策となりました繊維の構造改善の推進の問題でございます。これは一番重要なことは、一たん方針がきまって、法律ができて、予算がとれて進行ししつつあるのでありますから、いろいろな面におきまして手直しも必要でありましょう、また、問題が起こりましたについて新しい対策も必要でありましょう。これらについて二、三ぜひとも伺っておかなければならぬのであります。  特に織業の構造改善の事業につきまして、三割の自己資金調達という問題がございます。この自己資金調達につきましては、私も、去年でしたか、たびたびあなたにも決算で申し上げて、そうしてお話し合いをしたわけでございまするが、協調融資のワク、そして仲間に入りますのが、商工中金が中心になり、地場銀行と組んでおったようでございますけれども、これはさらに広げて、政府金融機関が全部一本になるというような協調の形になる、そういうふうにすることが絶対に必要である。そしてまた、資金自体につきましても、県に持っておる資金もございますし、あるいはまた促進事業団の持っておる資金もございますし、使い道によりましてはそれぞれ使っていくというふうにいたしまして、かなりそこは流動性を持った協調融資をせらるべきではないだろうか、こういうふうに考えております。もっとも、これらの点につきましては、通産省も積極的なかまえで御指導になっておるようにも聞いておるのでありますが、要するに、この自己資金の調達の問題、それはビルド資金にしろ、運転資金にしましても、すべてでございますが、これが非常に重要でございます。その広い範囲における協調が確立いたしますようにぜひ御指導願いたいと思いますが、いかがですか。
  355. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御指摘の点はごもっともでございます。三割自己調達の分につきましては、政府関係金融機関はじめこれらを十分に督励いたしまして、なおまた、市中銀行、地元金融機関等の協力を得ることも相当つとめてまいり、この調達に事欠かぬように十分に配慮してまいるつもりでございます。
  356. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 さらに第三には、中小企業であり、零細企業にも類するところの織業におきましては、むしろ細分化の傾向に進んでおるのであります。これは憂うべき傾向でございます。  そこで、転廃業者の廃棄施設の設備の買い上げという問題でございますが、これを最もスムーズにやるということでなければ、これはかえって指にとげを刺したような結果になる危険がございますので、これを最もスムーズに進行せしめる手を一段とくふうすべきではないだろうか。全国的規模におきましては、綿工連なども相当積極的に処理対策に当たっておるようでありますが、さらに加えて、政府がこれはあらゆる機会を利用いたしましてスムーズに買い上げができるきっかけをつくる。たとえば上のせ廃棄の問題との組み合わせにいたしましても、全国的に需給の関係を調整していく、こういう手を御指導になることがしかるべきではないか、こう思っておりますが、いかがでありますか。
  357. 金井多喜男

    ○金井政府委員 指導の実態の問題でございますので、私からお答え申し上げたいと思います。  お話しのように、転廃業につきまして、率直に申しまして、必ずしも所期のとおり円滑にいっていないという実態でございます。その理由とするところは、国で半額負担いたしまして、産地でもって半額いただくことになっておりますけれども、必ずしも産地のほうの負担が意図したようにいっておりません。そこで、ただいま先生のように、政府もいろいろとくふうをこらしているということに相なるわけでございますけれども、私ども実際の指導といたしましては、まず根本の問題としては、そういう細分化の傾向を避けるために、できるだけ産地が共同で負担をするということをすすめております。  それから第二番目には、別途このたびの構造改革につきまして、上のせ廃棄をやることになっておりますので、できるだけそういった場合に工連なり組合のほうで指導いたしまして、それに充てんする。  それから第三番目には、構革の一つの大きな柱といたしまして、できるだけ協業化の体制をとっていく、そういうことになっておりすので、そういった線についても、つとめて細分化の傾向を防ぐように努力しておるつもりでございます。今後ともこういった三点を中心に十分気をつけて指導してまいりたい、このように思っておるわけでございます。
  358. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 最後に、私は、国際的に激しく流動しております国際経済の実勢を——絶えず、現地の業界の中堅の、むしろ若手のそういった人がこの実勢をつかんでいくということに大きな期待をかけたいのでございます。こういったところに、この構革がスムーズに遂行されていくかどうかの契機があろうと考えておるのであります。つきましては、たとえば例のジェトロの制度もございますようですが、ジェトロ制度の補助金などもございますので、去年でありましたか、十月にスイスのバーゼルで繊維機械の展示会がございましたときには、綿工連の若手があそこに行ったわけでございますけれども、そうじゃなしに、もっと全国的な視野に立ちまして援助して、人を抜てきして連れていって見てこらすというふうに、勉強の機会、調査、視察の機会を与えて進めるということが非常に大事なことじゃないだろうか。それほど国際貿易の流動性が激しいのでございますから、次の次の次に情報を受けるというのではいけません。直接具体的に情報をキャッチいたしまして、そして適切、正確な情報に基づきましてそれぞれの計画推進していくということが、自信に満ちた構革を推進するゆえんではないか、こういうふうに思われます。やはり万事横溢した自信と希望を持って推進せしめる必要がございます。六年に終わる次第でございますけれども、いまのような国際環境のもとに暗い面があらわれてきたときでございますので、一そう私は、そういう人間の能力の開発という面と、世界情勢を正確に把握するという面と、そういう辺を行政指導の面から財政的にもいろいろと措置を講じていくということが、非常に重大な時期であるというふうに思われますので、政府はひとつ積極的にこれらの手をお打ちになられんことを強く御要望申し上げます。大臣、いかがでございましょう。
  359. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 仰せのとおりでございます。なお、そういう若い経営者、技術者の層を積極的に海外事情の勉強に派遣するといったようなことも、非常に望ましいことであろうと考えております。
  360. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 終わります。
  361. 小山省二

    小山(省)主査代理 八木一男君。
  362. 八木一男

    八木(一)分科員 私は、通産大臣はじめ通産関係の政府委員、また大蔵省の主計官に対しまして、おもに同和問題に集中して御質問を申し上げたいというふうに存ずる次第でございます。  先般、この土曜日の予算委員会におきまして、一般質問内閣総理大臣もおられるところで、私はいろいろと質問をさしていただきました。通産大臣には、そのとき時間の関係でごくちょっとしか質問をさしていただいておりませんので、引き続きさしていただきたいと思うわけであります。  あの際に、佐藤内閣総理大臣は、前々国会、昭和四十一年からの約束を確認せられまして、昭和四十年八月に出ました同和対策審議会の答申の急速な完全実施をお約束になりました。その中の中心課題でございます国和対策特別措置法、この法律案が、本国会において成立の間に合う時期において、そのような十分の余裕を置いた早い時期に、十二分の内容を含んだものを提出することを総理大臣がお約束になったわけでございます。もちろん、関係各大臣も列席の上でございました。その点について前向きな答弁をいただきましたが、椎名通産大臣から、総理大臣同様あるいはそれ以上の熱意を持ってこの問題に当たられる前向きの御決意をぜひ承らしていただきたいと思います。
  363. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 通産省に関する限り、同和対策につきましては、熱意を持って対処する覚悟でございます。
  364. 八木一男

    八木(一)分科員 いまの御答弁に加えて、国務大臣として、国政全般の点について御協力をいただけるものと私は理解をさせていただきたいと思います。別に御答弁要りませんが、もし違いましたら御答弁いただきたいと思います。そのつもりで質問を進めさせていただきたいと思います。  そこで、実は昭和三十二、三年から私はこの問題に取っ組んでおりますが、ほかの、この問題に取っ組んでおられた先輩なり関係の政府の方々らにも共通な悩みがあると思うわけでございます。と申しますのは、この問題に関しては、地域的に現象の濃淡がずいぶんございます。たとえばりっぱな政治家であり、りっぱな公務員でおありになっても、その生まれや郷土が青森県であり、北海道である方々には、なかなかに実感がまいりません。そこまでまいりませんでも、関西と関東ではその認識に大いに差がございます。そういう点で、その実感のない方が政治あるいは行政の任に当たられるときに、それをのみ込むまでに二、三年かかりますから、その方としては悪意がないわけごでざいますが、問題の前進をはばむ要因になってしまうわけです。自分が実感がなくても、それに取っ組んでその席にある間は研究されて、たとえば東の方でも非常に熱心に取り組む方があります。ありますけれども、そういう方でも、一両年後にそのポストを転換をされてほかの方にかわられるというようなことが、問題の推進をこの十数年間おくらせてまいった。その点で、ぜひ通産大臣には、あらゆる通産省の関係者の方が同対審の答申を熟読をされ、そうして内閣の約束を確認をせられて、深き決意を持って当たられるように、御指導願いたいと思います。非常にりっぱな政治家として、また政党にも、経済社会にも影響力のある椎名さんが、あらゆる部面で、たとえば、はっきり申しますと、非常に大きな力を持っておられる。自由民主党という第一政党の中の同僚の皆さん方にも、そういう点で皆さんが理解を深められて推進していただけるような御努力を願いたいと思いますが、そういう点について、もう一回ひとつ前向きの御答弁をいただきたいと思います。
  365. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 微力でございますが、できるだけのことをやりたいと思います。
  366. 八木一男

    八木(一)分科員 前向きの御決意に敬意を表したいと思います。  ところで、今年度の予算の中で、通産省関係で同和関係の予算を組んでおられます。この組んでおられる要求額自体が、私は非常に不十分であると思うわけでございますが、これが幾ぶんではございますが、大蔵省の査定によってへずられているわけでございます。通産省以外の各省も合わせますと、七十八億円の第一次要求に対して、最終的に六十一億五千万円程度に削減をされているわけであります。通産省だけの現象ではございませんが、さっき言ったような事情がございますので、各省のこの同和対策のために推進する予算の一番最初の原局の予算が十分ではないわけです。不十分でございます。それから、それを各省の中で調整されるときに、理解のある人ばかりではありませんから、やはり不十分にされるおそれがございますが、そこで、出てきた不十分な予算を大蔵省が査定をされるということで、問題が縮んでくるわけでございます。大蔵省の人に言わせれば、予算一般の増大率よりも同和予算は三一%やったから、それをやったんだという認識を持たれ、また、通産省の同和対策要求をした方は、大蔵省のそういう説明を聞かれると、ほかよりも伸び率がいいんだから、まあまあしかたがないやというふうになりがちであります。ところが、これは、四百年間ほどの不当な国民の弾圧に対してこれを回復しようという問題、明治以来百年の民主主義を実現しなければならないときに、これに相反するような人権無視と猛烈な貧困、そういうものを解決しようとするのですから、特別中の特別の措置をやらないと、百年のおくれを取り返すことにならないわけです。その認識が全部にありませんので、前の年よりも予算全体の伸び率がちょっと伸びたから、これでも大蔵省は熱心にやったんだ、また要求するほうも、そのくらいやってくれたらしようがないということになりがちでございますけれども、さっき申し上げたことでいけば、むしろ、各省はもっと積極的にどんどん出さなければならないし、大蔵省は、出してこられた各省の問題について、これはやはり政府の政策では積極的に取り組むのに、予算の提出のしかたが少ないのじゃないか、もっと出されたらどうかという態度を大蔵省もとられるべきであって、少なくとも、びた一文も、一円の金も削減することは、内閣と国会を通じての国民との約束を、そういう無理解のため、あるいはいままでの短時間の近視眼的な、この数年間の予算編成の慣例というような間違ったものに押されて、国のほんとうの方針にブレーキをかけるようなことになろうと思うわけであります。そういう点で、ぜひ大蔵省に対しても強く対処していただきたいし、大蔵省の主計官の方々は、各地で申し上げておりますが、大蔵省のほうに全部そういう考え方を間違わないように浸透していただきたいと思うわけでございます。ことに昭和四十四年の来年度は、十カ年計画で飛躍的に問題を推進しなければならない年でございまするから、ことしの伸び率とははるかに違った大きな要求が出なければならないし、それはさらに大蔵省の手によってふやされなければならないという状態でありますることをどうか御認識いただいて、御推進をいただきたいと思うわけであります。こういうことを大臣に御答弁してもらうのは恐縮でございますが、最高責任者でございまするから、大臣が代表して決意を表明していただきたいと思います。
  367. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 同和関係の予算獲得については、十分な熱意を持ってこれに当たりたいと思います。
  368. 八木一男

    八木(一)分科員 一つの具体的な問題を申し上げたいと思います。  実は一般質問で申し上げましたように、同和対策金融公庫という問題が、同和対策審議会の答申の中にいわれておるわけであります。金融公庫という問題は、私は、いろいろの意味でみんな必要があると思いますが、先年、一番最近の金融公庫でございます環衛金融公庫の問題について、いろいろな観点からいろいろな議論が出ました。そういうことのために、金融公庫というものはうっかりすればいろいろな批判を受けるのじゃないかというような、政府全体の金融公庫に対するあとずさりみたいな傾向がある。そういうような一時的な傾向でこの問題をとめていただいては困ると思うわけであります。実は臨時行政調査会の答申、昭和三十九年九月の答申では、人権の擁護、それから後進地域の開発、それから低所得者層の生活の向上等々の文言がありまして、そういうものに必要な機関については、積極的に機関をふやさなければならないという項目があるわけであります。ところが、臨調の調査というのをみなはすかいに読んでおるようでありまして、何でも機構を減らさなければいかぬものだと思い込んでおられる向きが方々にあるわけであります。臨調は、同対審の答申が翌年に出ましたので、同対審の答申に従ってということは書いてございませんが、逆順にいって、当然臨調の文言に入る性質のものでございます。ですから、一般的に機構増大をいけないものだとされないで特別なものはしなければいけませんから、臨調のほうでは、中央政府の機関、政府関係の公庫公団、そういう問題を通じていっておりますので、そういう気持ちでひとつ御認識を強めていただいて問題に当たっていただきたいと思うのです。国和対策金融公庫については、私、先日土曜日に通産大臣と大蔵大臣に御質問申し上げましたところ、両大臣とも先ほど申し上げましたようなことの影響を受けておられるのではないかとそんたくいたしますが、やや消極的な御返事をされました。私がいろいろ申し上げましたところ、そういう同和対策金融公庫をつくることも含んで、同和関係の零細企業金融について積極的に取り組むということに、最終的にはそのような御返事をいただいたわけであります。前進だったと思います。ぜひこの問題を推進していただきたいと思います。大蔵大臣の御答弁では、実は中小企業金融機関はたくさんある、だから、それを平等に使っていただかないといけないのではないかということを言われました。それは当然にそうです。同和地区の零細企業は使わなければいけません。しかし、百年のおくれを取り戻すためには、それ以上の特別な特別な措置が必要であるということで、一般金融をもちろん受けるに加えて、このような同和対策金融公庫が必要であるという意味で、私ども御要請を申し上げておる次第でございます。どうか通産大臣、また局長さんから、それをひとつ前向きに検討、推進をしていただく御決意を伺っておきたいと思います。
  369. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 賤業的な零細企業が非常に多い同和地区の中小企業に必要な資金確保されまして、そしていろいろな事業を円滑に行なっていけるようにすることは、御趣旨には同感でございます。したがって、中小企業機関の融資等の活用を極力はかるなど、同和地区の中小企業に対する資金の円滑な供給があくまで確保されるという方策について、十分に検討してまいりたいと思います。
  370. 八木一男

    八木(一)分科員 いまの総括的に前向きの御答弁でけっこうであります。  そこで、いま私の強く要請したいことは、同和対策金融公庫というものをぜひ新設をしていただきたい、それから、法律ができるのに時間がかかりましたら、そういう一般ワクも借りられるほかに、それまでの間別ワクを国民金融公庫とか中小金融機関につくっていただく、そういうことをひとつ前向きにぜひ御推進を願いたいと思うわけであります。そういうことをしていただけるもの、全部いま申し上げたことを含めて、十二分に熱意を持って御推進いただけるものと私理解をさせていただきたいと思いますが、それでよろしゅうございますでしょうか。
  371. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御趣旨はけっこうだと思います。十分に必要な資金の供給が実現されますように、ひとつ大いに努力をいたしてまいりたいと思います。   〔田中(武)分科員「別ワクにすればいいんだ」と呼ぶ〕
  372. 八木一男

    八木(一)分科員 いま同僚の田中分科員が言われましたように、善意の不規則発言で言っていただきましたことは、ぜひやっていただきたい、  それからもう一つ、私が申し上げたようなことは、法律その他が要ると思いますけれども、これも至急に急いでいただけばできることであります。そういうことについて強力に御推進を願いたいというふうに御要請を申し上げておきたいと思います。  次に、実はただいまニューデリーで行なわれております国連貿易開発会議、UNCTADの問題についても、この前予算委員会の一般質問で少し申し上げましたけれども、ここで、開発途上国の要求によって、そこの製品、半製品等について、特恵関税を設けてほしい、そういう開発途上国の要求があり、先進国と称せられるほうは、それに対して、そういう方向でいろいろ先進国としての意見を持っておられて、協議中と伺っております。具体的ないろいろな問題については、七月、八月に及ぶというふうに伺っておりますが、その中で、日本産業の特性から、先進国並みに扱っても差しつかえない大企業もあれば、そうでない企業もある。特に零細企業で、後進国並みあるいはそれ以上に扱わなければならない企業もあるという点について、通産省も、また政府全体も十二分に認識をされて、その立場でやっておられると思いますが、事非常に重大でございまして、その点について、日本国内の零細企業中小企業を守っていただくことについて、日本国内の市場競合あるいはおもな輸出先のアメリカその他の国における市場競合で不利をこうむらないように、ぜひしていただきたいわけでございますが、その中で、特に部落産業のグローブ、ミット、ヘップサンダルというようなものについては、ほかにも同様のものがあると思いますが、私の乏しい知識では、非常にその点の悪影響を猛烈にこうなる業種だと思います。そこで、たとえば、後進国の中に近くの韓国あるいは台湾、香港等が入っておりますが、グローブ、ミット、ヘップサンダル等につきましては、日本の部落で一生懸命部落産業としてつくりまして、対米輸出日本の外貨獲得にもずいぶん役に立っておりますし、それから、その産業によって、部落の人たち、経営者もそうでございますが、その家内工業的な産業体制の中で、大ぜいの人がそれで生活をささえているわけであります。ところが、韓国や台湾や香港あたりで、その工程だけをまねをして、日本よりも低賃金で、しかも、そういう家内産業的なものじゃなしに、新しいところにその点だけは近代産業的に集約をして、そういう産業を起こしておるわけであります。そこでは、低賃金で集約的にやっておるから、実にそれ自体で競争能力を持ってきておるわけでございますが、そういうものがあるにかかわらず、それを後進国、開発途上国として、その品目を特恵関税に入れられましたときには、日本市場に猛烈にそれが出てきて、圧迫を受ける。それで、多くの中小企業の倒産、関係者の生活の圧迫ということが起こりますし、アメリカ市場でも猛烈にそういうことが起る危険性があるわけであります。日本産業を守るために、零細企業全般について日本の国民の利益を守るために、断固たる強い立場でやっていただきたいと思います。ことにこの部落の産業について、たとえば特恵関税をやるときに、除外品目に必ずなるように、また、日本で除外品目になるだけじゃなくて、アメリカにおいても、第三国の利益を害さないようにするという条項があるそうでございますから、同様に除外品目になって日本輸出がとまらないように、ぜひやっていただきたいと思いますが、その点についての通産大臣、また関係政府委員の方々からも一ひとつ強い決意を伺っておきたいと思うわけであります。
  373. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御心配はごもっともでございます。特恵関税がはきものや何かに認められたような場合には、内外において非常な打撃をこうむることになります。そういう場合には、十分にわがほうのそういう関係産業の保護のためにひとつ万全の努力をいたします。
  374. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢(鉄)政府委員 去年の秋に、OECDにおきまして、特恵につきまして先進国間の思想統一ができたわけでありまして、その際には、いまおっしゃいましたように、国際競争力のすでにあるものは、特恵の対象からはずしたらいいじゃないか、あるいはアメリカに日本と後進国のものが出ておりますときに、それを後進国に対して特恵を与えることによって、日本だけが全部かぶってしまうということになると、これは非常に不公平な負担になりますから、そういうことはしないようにしようじゃないかとか、そういうような一応の原則につきましては、申し合わせができておるわけでございます。  御承知のように、いまUNCTADにおきましては、先進国側は、その合意を先進国側の意向として提示し、かつまた、それに対しまして低開発国はいろいろ対案を出して、盛んにいま議論をしておる段階でございます。低開発国側の希望といたしましては、およそそういう除外品目はできるだけ少なくすべきであるということで、非常に強く主張しておりまして、まだその結果がどうなるかわかりませんけれども、いまのところは、先進国側でできるだけ歩調を一にして、自分たちのきめた原則をできるだけ守るように努力しておる最中であります。おそらく今月の末くらいには結論が出ると思いますけれども、そういうことでいま努力している最中であります。いまおっしゃいましたような具体的な品目について除外ができるかどうかという問題は、いまそういう国際会議で議論しておりますような仕組みがまずでき上がりまして、あとそれを実行に移す段階の問題でございます。実行に移す段階におきましては、日本に入ってくる場合は、当然日本できめればいいわけでございますから、いまおっしゃいましたような点については、できるだけ配慮を払いたいと思いますが、ただ、国際的には、低開発国がそういう除外をたくさん設けることは非常にけしからぬという気持ちもございますので、その辺は十分いろいろ実情を調べた上で、各国と納得のいくような努力をしなければならないというふうな感じがいたします。また、それをきめるのはアメリカがきめるわけでございますので、日本だけが非常にかぶりそうであるという場合には、そういう事情を十分説明して、アメリカに納得をしてもらう努力は相当してまいりませんと、なかなかそういうことになりませんので、先行きは困難でありますけれども、われわれとしてはできるだけの努力をしたいというふうに考えております。
  375. 八木一男

    八木(一)分科員 大臣と局長の熱意のある答弁で、非常に心強く思いますが、日本の零細企業中小企業のために、全体に開発途上国に——そこの開発推進するという世界の底流があることはわかっておりますが、日本の国の産業が二重構造であって、日本の低開発のほうの零細企業が圧迫されている事実は厳然としてあるわけでございまするから、その点については、ぜひ日本の零細企業、また関係労働者、関係家族の立場を考えられて、強くがんばっていただきたいと思います。  とともに、いま申し上げました部落産業のほうは、これをやるときに、日本の国内体制でおそらくこれに対応した制度をとられることになろうと思う。それはぜひやっていただきたいと思いますが、そこで、部落産業の特性で、実を言うと、ほかの商品に転換しにくいという点があります。そかれらもう一つは、家内工業的になっておりまして、そこの奥さんなり子供なりがほかの職業に行って、それで帰ってきた人が内職でやるという地域的分業体制になっておりますので、一般的な中小企業のようにぱっと協業化して、ぱっとものが片づくという状況ではないということであります。そういう点がございます。でございますから、一般的に対外的には協力をするが、国内体制を固めていくということが最も大事であると思いますが、国内体制を固める意味において、ほかの製品に転換すればいい、あるいは協業化すればいいというふうに単純に片づく問題ではございません。ただ、ヘップサンダル、あるはグローブ、ミットについては、その点でぜひ全部——これはたくさん入っていただきたいが、ぜひ除外品目に日本とアメリカ両方なるように、それから、そういう国内体制についても、そういう事情がありますので、特段の御配慮を願いたい。それをそうではない、ほかの産業をつくればいいんだというような割り切り方では困りますし、また、産業でやるためには、資金的や何かの点についても、特に御配慮を願わなければならぬ点があると思う。そういう点について時間が少のうございますから、意を尽くせませんけれども、非常に抑圧された中で、そういう産業がそれらの努力でできて、その部落内の人たちの大ぜいの生活をささえているものですから、その生活の基盤がなくならないように、ヘップサンダル、グローブ、ミットの産業が、さらに日本の部落の産業が伸展をするように、ぜひ御配慮を強く要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  376. 小山省二

  377. 近江巳記夫

    ○近江分科員 私は、万博のことについてお聞きしたいと思います。  いよいよ開催まであと約二年に迫ってまいりました。総額五百二十三億円、関連事業は六千三百七十八億円、そして政府民間の出展は六百ないし八百億円が見込まれております。総計いたしますと七千五百億円以上のものがつぎ込まれるわけであります。したがいまして、国民のすべては無関心でおれないわけであります。私もこの万博の開催される吹田にも住んでおりますし、特にいつも現場の進捗状況を見ておるわけでありますが、非常に進みがおそいように思います。その点で予算上から、さらにその実際の上から進捗状況をお聞きしていきたいと思います。  まず第一点は、四十二年度は八十五億一千五百万円の予算を組んでおりますが、この三月末、すなわち四十二年度分における工事の出来高、支出見込額は幾らであるか、さらに契約ベースで幾らであるかお聞きしたいと思います。
  378. 橋本徳男

    橋本説明員 お答えいたします。  契約額におきましては、八十五億一千五百万円に対しまして、六十二億八千七百万円の予定でございます。それから支払い見込額は三十五億三千五百万円でございます。
  379. 近江巳記夫

    ○近江分科員 あなたの数字と私の知っている数字とにちょっと食い違いがありますが、支出ベースで三十五億二千九百四十四万二千円、そうしますと、翌年度の支出予定額というものは四十九億八千五百五十五万八千円、これは繰り越しからいきますと、支出ベースで実に五八・六%、約六〇%近い繰り越しであります。契約額におきましても、残でいきますと、翌年度に回す契約は二十二億二千七百五十二万九千円、契約において七三・八%はいっておりますが、残る二六・二%は未契約である。特にこの年度内に支出が、これだけ膨大な六〇%になんなんとする額が残っておるということはたいへんな問題だと私は思うのです。特に私が不思議に思うのは、契約が七三・八%、二六・二%を残しております。この予算というものは八十五億一千五百万円組まれておるわけですが、これはその年度内に工事を遂行するための計画を行なっていく予算じゃないのですか、その点お聞きしたいと思います。
  380. 橋本徳男

    橋本説明員 確かに、おっしゃいますとおり、この八十五億はこの年度内において契約を完了するのがたてまえだと考えております。
  381. 近江巳記夫

    ○近江分科員 そうしますと、工事において実際に年度内では四〇%しかできていない。六〇%はおくれている。国民は、いまみな万博のことに関しまして、実際できるのかできないのだろうか、こういう不安を持っている。政府の高官筋でも、実際に建つのだろうか、そういうような無責任なことばすらささやかれておるのが現況であります。これはもうたいへんな問題だと私は思う。特にこの契約ベースの中においても、私、最近のことを聞かしてもらいたいと思うのですが、昨年の十二月までに何件で、総額幾ら契約したか、一月末、二月末、そして三月現在でどうなっているか、その点をお聞きしたいと思います。
  382. 橋本徳男

    橋本説明員 昨年末におきまして、契約額では三十六億百万円でございました。それから、件数におきまして、昨年末は六十七件という数字になっております。これが、先ほど御説明いたしましたように、三月末の契約では六十二億八千七百万円、件数では百二十二件になる見込みでございます。
  383. 近江巳記夫

    ○近江分科員 この一月、二月、三月の間に契約なさったのはどれだけやったのですか。
  384. 橋本徳男

    橋本説明員 十二月末が三十六億円でございまして、一月末が、累計でございますが、四十億六千九百万円でございます。それから二月末が四十四億一千七百万円。それから件数でございますが、十二月末は六十七件に対しまして、一月末は累計で八十三件、二月末で九十一件でございます。
  385. 近江巳記夫

    ○近江分科員 そうするとこの契約をなさった六十二億、このうちの三十六億は、年度末、一、二、三月の時点にこれだけ集中している。これは、実際にはこの契約にしても、繰り越しを何とかして少なくしなければならぬ。なるほど計画どおり追っているかもしれないが、しかし、そういうような意図もここに見えるわけです。私は、こういった点を、今後の工事のことを考えると、非常に心配するわけです。  次にお聞きしますが、どんな建設計画を見ても、いまだかって年度内に四〇%しか消化できないというこんなことは前代未聞です。なぜこんなにおくれたのですか。これでは計画倒れになる心配が多分にあります。その理由をひとつ簡潔に述べてもらいたいと思います。
  386. 橋本徳男

    橋本説明員 確かに、この計画の進捗状況は、先生のおっしゃいますとおり、あまり芳しいものということはできないのですが、われわれも全力を注いでやりたいと思っております。ただ、契約がおくれましたおもな理由は、用地の買収が当初の予定以上に若干長引きまして、そのために土地の造成等がおくれたというのが一つの原因でございます。  もう一つは、会場の基本的ないろいろな施設、基本構想といいますか、基本設計といいますか、こういったものをつくる過程において、最も効率よく、りっぱなものをつくろうということで、その間に若干の設計の変更が行なわれたというふうなことが累積いたしまして、契約段階に進み得なかったという現状でございます。
  387. 近江巳記夫

    ○近江分科員 これで見ますと、支出ベースにおいても、ガスなんていうものはわずか一・一%しか払っていない。道路整備費については三・七%、塔建設費にしても二八%、これは全然形もできていない。だけれども、二八%も払っている。基礎施設設備費が四〇・二%、上水道三〇・五%、電力ガス供給施設費二三・四%、一体こういう状況で——用地を買収するのがおくれましたとか、あるいは基本設計がおくれましたとか、若干の変更がありましたとか——若干の変更どころではない、二回、三回、四回、どれほどこの現場の近くの者がこれで苦しんでいるかわからない。やりかけたものを、また変更、また変更、これでは、実際政府は責任を持ってやっている——なるほど新しいことを創造していくのには変更のあることはわかります。だけれども、実際にそれを施行していくところの立場等を考えていった場合に、そんな安易に変更できるものではない。ましてや開催の日時も迫っております。全くずさんであるとしか言いようがないわけです。これだけの七千数百億という国民の金をつぎ込んだ万博です。何回も何回も血税をあなたは浪費するつもりですか。大臣、答弁してください。
  388. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 全力を尽くしておくれを取り戻すようにいたします。
  389. 近江巳記夫

    ○近江分科員 また、あと大臣にいろいろお聞きしますが、時間がありませんので次に進みます。  幾ら万博の会場だけできても、関連事業ができなければこれはどうしようもないのです。道路にしろ、鉄道にしろ、どの関連事業にしても、私の知る範囲においては著しい工事のおくれが見えるのです。ですから、そういう一連のものができ上がって、そして初めて万博の機能が発揮されるということにおいて、関連事業においてはいろいろ建設省なりそれぞれ各省があるでしょう、項目もいろいろありますが、そういった関連事業においていまどれだけおくれているか、それを各省別に、また工事別に、具体的にひとつ明確に教えてもらいたいと思うのです。
  390. 橋本徳男

    橋本説明員 関連事業につきましては、全体を把握するのはなかなかむずかしいのでございますが、一応今年度の予算額にございまする千六百億、これは道路、鉄道全部入れまして千六百億の関連事業計画になっております。これに対しまして、十二月末現在におきまして、大体千億程度の契約ができておりまして、率でいきますと大体六割が十二月末で行なわれておりますが、若干これもおくれておると思うのでございます。おくれておりまする基本的な原因は、やはり用地の買収、土地、道路並びにいろいろな都市計画、鉄軌道、それから下水道の整備、こういったものは、いずれも土地の買収との関係がございまして、たとえて言いますと、道路関係でも中央環状線におきまして二、三カ所の用地買収がどうしても難航しておるとか、あるいは御堂筋線においては非常に人家の密集しているところ、あるいは商店の密集しておるところにつけなければなりませんので、そういった関係でその買収にかなり手間どっておる。したがいまして、こういった関係事業は、用地問題が解決いたしますれば、あとの事業は時間を要しないでもできるのではないかというふうに関係省はみな言っておりますが、関係省並びに地元は、もっぱら用地の買収等の問題につきまして、現在力を入れておるような次第でございます。
  391. 近江巳記夫

    ○近江分科員 もう少し親切に言ってくださいよ。たとえば建設省においては道路あるいは街路、市街地改造、都市改造、道路公団、阪神公団、河川、下水道、公園、あるいは運輸省においては国鉄、大阪市高速鉄道、私鉄、空港、港湾、観光、農林省では老朽ため池、厚生省では公園等いろいろあるわけですよ。特にその中で、最高責任者は大胆ですが、あなたは参事官として特に著しく工事のおくれているものをはっきり全部答えてください。全部は答えられないとしても、なぜおくれているかという点を答えてください。
  392. 橋本徳男

    橋本説明員 それでは、やや、具体的に申し上げますと、一般道路関係に比べましてむしろ街路関係のほうが進捗率はよくないというふうに数字としては出ております。たとえば街路関係では十二月末現在で五〇%弱の契約高といった状況でございます。もちろん街路は、その土地買収等につきましての難点が多いという点であろうかと考えております。それから、あと国鉄関係につきましては、これは特定の場所を除きまして六〇%強の進捗状況でございます。それから、あと鉄軌道関係につきましても、先ほどのように特定の路線について二、三カ所の用地買収の問題を控えておりますが、四十二年末の状況としましては、大体六割というふうなことでございます。港湾関係は、比較的順調に進んでおりまして七割近くいっておるというような状況でございます。空港は、これは進捗してほとんど一〇〇%近いという状況でございます。
  393. 近江巳記夫

    ○近江分科員 そんなおもな関連事業でさえ五割、六割なんていう状況で、あなたはそれで実際万博はできると思っておるのですか。いままで項目別にいろいろなことを言ってくれましたけれども、国民みんなが、これじゃ万博はできない、日本は今度四十五年の万博の開催のときには、世界に対して大恥をかかなければならない状態に私はなると思う。たいへんな状態なんです。また、万博の会場自体の問題にしても、協会等においてもいろいろな問題があります。それはあなたもよく御存じのはずです。いろいろな出向社員、あるいは府、市、政府各省、協会だってがたがたしている。あなたが責任者としてよく御存じのはずだ。私も現場が近くですからしょっちゅう見に行っています。いまは若干増強されたかもしれないが、私が行った時点において、技術者だけでも二十七名しか行っていない。お茶くみの女の子を入れて十三名、全部で四十名しかいない。こんな貧弱なスタッフであれだけの会場の建設をしなければならない。その技術者が、たった二十七名です。協会のそうした問題についても、政府は、ただ金だけ出せばそれでいいんだ、そういう甘い状態であったのではとんでもないことだと私は思うのです。先ほどの変更、変更という問題も、実際に工事をおくらせている。根本的には私はほんとうに政府がこの万博をやる気があるのかないのかと私は言いたい。これは結果で私は言っておるわけでありますが、ほんとうに成功さす気ですか。私はその点を参事官と大臣に聞きたい。やめるのか、ほんとうに成功させたいのか、どっちなんです。
  394. 橋本徳男

    橋本説明員 先ほど御説明いたしましたように、協会並びに公共事業とも若干の工事のおくれはございますが、協会関係につきましては、御承知のように来年度の予算編成の過程におきまして、全体の資金計画も確定いたしましたし、それから、こういったいろいろな事業の基本的な構想もまとまりまして、こういったものを前提にいたしまして新しい進行管理のもとに、それぞれのスケジュールをつくって、それを厳格に実施するというふうな体制が、新しくきまりました全体の規模の上につくられましたので、今後はこのようなおくれはないものと確信しております。それから、関連事業につきましても、従来こういった土地に付着した問題は、どちらかと言いますれば、この用地の問題が基本的なネックでございまして、目下その問題の解決のために、それぞれ懸命の努力を払っておりますので、これさえ解決いたしますれば、十分所定の時期までにはできるというふうに確信しておるような次第でございます。
  395. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 非常に御心配いただいてまことに感謝しておりますが、ひとつ大いに鞭撻を受けたわけでございますが、全力を尽くしてやりたいと思っています。
  396. 近江巳記夫

    ○近江分科員 あなた、それでやっていくという意思を示されたわけでありますが、国民はみな不安に思っているのです。政府の部内ですら、できるのかどうだろうか——そんな無責任な発言がされておるじゃないですか。やるならやるで、国民がその答弁を聞いてほんとうに納得できる、安心できる、まかしておけばできるという、その具体策を聞かしてもらいたい。何とかやります。そんな口先だけのことを聞いたって納得できませんよ。それじゃ、具体的にどう推進していくのです。参事官と大臣から言ってください。
  397. 橋本徳男

    橋本説明員 会場の問題につきましては、先ほど御説明いたしましたように、全体の規模もきまり、この中に建てるいろいろな施設の構想もきまりましたので、そのもとに新しい進行管理の計画を厳格に実施していけば、完全にできるという自信を持っております。  それから、次は、関連公共事業につきましては、御指摘のように、いろいろなそういう問題がございますので、先般万博の推進対策本部を設けまして、そこで各省知恵を出し合って、これを推進していくというようなことになりましたので、われわれは十分やっていける、各省の協力を得てやっていける、こういうふうに考えております。
  398. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いま橋本参事官から申し上げたとおりであります。
  399. 近江巳記夫

    ○近江分科員 万博の会場において、計画どおりやっていけばいけますと言うけれども、計画がおくれているじゃないですか。本年度も、六割も金を残しているじゃないですか。何が計画どおりですか。一のことができなくて、何で十のことができるのですか。そんな夢みたいなことを言ってもらっては困る。しかも、今度は総理府推進本部ができたという。総理府推進本部は万能ですか。いままでこれだけのおくれが来るということは、あなた方はわかっているはずじゃないですか。総理府推進本部だって、どれだけほんとうにあなた方が腹がまえをして今後やっていくのか。日本はほんとうに世界に大恥をさらさなければならない事態にいま来ておるのだ。しかも、国民の血税を、ばく大なものをつぎ込んでいくんじゃないですか。国民に対しても、この点は、最高責任者としてほんとうに心から反省しなければならないと私は思うです。その点、国民に対して、これだけのおくれをどのように反省していますか。参事官、大臣二人答弁してください。
  400. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 全力を尽くしておくれを回復したいと思います。
  401. 近江巳記夫

    ○近江分科員 全力を尽くして回復したい、それはわかりますよ。国民に対して、あなたはどう思うのですか。これだけの心配を与えて、そんな答弁でいいのですか。責任者として、あなたは申しわけないと思わないのですか。
  402. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 とにかく、ただいまのところはおくれを示しておりますが、これをできるだけ早く取り返すようにいたします。
  403. 近江巳記夫

    ○近江分科員 大臣の態度が率直でないことは、私も委員会でよく知っておりますが、あなたは、計画どおりで、また、これからおくれを取り戻すと言いますけれども、それじゃ、工事が一時に集中することになるのと違うのですか。工事を集中させずに、早期に計画的な発注をすることが一番大事と違うんですか。たとえば、四十二年度においても、展望塔あるいに本部ビルは昨秋に発注の予定になっていた。これだって、四十三年に食い込んできている。これも、あげれば山ほどありますよ。工事を一時に集中したらどうなりますか。労賃にしても、資材にしても、運搬だって、そういうものもどんどん高騰してきますよ。そうなったときに、限られた予算でやっていたら、それらはどうなりますか。工事も粗雑な工事になってくる。思わないところで危険な状態だって発生するかもわからない。そんな不安な、集中した工事をやっていって、もしもこれで事故が起きたり、あるいは、世界から笑われるようなことになったらどうしますか。国民にどうやっておわびしますか。万博の規模は、あなたも御存じのとおり、非常に大きいものです。したがって、これはあらゆる点から見て、工事が集中するような仕組みであるとしますと、これは、単なる大阪を中心とした、あの付近だけの問題ではない。これは、日本の国全体に混乱と悪影響を起こしてきますよ。いまでも、いままでの単価でいきますと、周辺の市町村において、たとえば学校の講堂建設にしても何にしても、業者は渋ってくる。全国から見れば、関西は確かに上がっていますよ。いまですから上がっている。これが集中したらどうしますか。これは社会的な問題ですよ。単なる、計画どおりやりますという、そんなことで済まされる問題ではありません。政府全体として、あらゆる行政面にわたって、抜本的な、これに対する対策を立てなければならぬ問題だ。その点、推進本部としてどのように取っ組んでいかれますか。
  404. 橋本徳男

    橋本説明員 従来までのこういった発注等のおくれにつきましては、確かに、おっしゃるとおり、今後十分これについて計画的に進めていかなければならないということで、それを進めていく場合に、おっしゃいますとおり、確かに工事の集中ということは考えられますので、今後各省といろいろ相談をいたしまして、どの工事をどの段階でやっていくかということで、工事の集中をできるだけ平均化していくように努力をしたいというふうに考えております。
  405. 近江巳記夫

    ○近江分科員 大臣、堆進本部としての国内体制。
  406. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 推進本部をようやくつくりまして、そのうちに店開きをしようと思っております。
  407. 近江巳記夫

    ○近江分科員 推進本部をつくりまして——それはわかっていますよ。政府として、あなた自身が推進本部長として、あらゆる部門にどういう場合に対策を立てていくか。私は真剣ですよ。いいかげんな気持ちで答弁してもらっては困る。もう一度答弁し直してください。
  408. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 どういうふうに答弁すればいいか知りませんが、とにかく、一生懸命やると言う何外には、どうも答弁のしようがありません。
  409. 近江巳記夫

    ○近江分科員 そんな具体策も出せないようなことで、一生懸命やっていると言ったって、だれだって一生懸命やろうという気持はわかる問題だけれども、そんな無責任な、推進本部をつくったらできるというような、そういう甘い考えであってはならぬと私は思うのです。政府の最高首脳部が、万博に対して、そんな安易な気持ちで、何とか一生懸命やっていきますと言う、そんな無為無策で、これだけの膨大なものをほんとうに価値ある体制をつくっていくことができますか。私は強い反省をここで求めます。もう一度答弁してください。
  410. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 答弁は幾らでもやりますが、とにかく、ここであなたと論争してみたってちっとも進むわけじゃない。御忠告は十分にありがたく拝聴しているのです。
  411. 近江巳記夫

    ○近江分科員 いずれにしても、あなたは、先ほどは、必ずやるということを言われたわけです。いままでは、通産省の一部の手で、そういう準備室というところで、各省との折衝とかいろいろな点で苦労もあったでしょう。だけれども、推進本部が発足して、あなたは全面的にこれに向かっていくと言われた。その決意を聞いたわけでありますが、ここで時間があれば私はいろいろな問題をやりたいのですが、いずれにしても、今後の問題としては、国内、国外に関して、あらゆる面にまたがっております。参加国にしても七十カ国に及びますよ。これができますか。参加国の招聘にしたって問題じゃないですか。あるいは周辺にしても、いろいろな点でじりじりと上がってきている。あるいは治安対策にしても、あるいは労務者対策にしても、宿泊対策にしても、どうしていくか。解決をしなければならないことはほんとうに山ほどあるわけだ。あなた方もいろいろと案を練っていらっしゃるとは思いますけれども、いずれにしても、政府のそういう体制を強化していかなければならない。モントリオール博にはパートシステムという、建設工程を合理的に計算するシステムがあったわけです。コントロールオフィスが常にカウンセリングをやっておって、建設計画を検討しておったわけです。いま政府と万博協会との間においてどういう連携動作があるのですか。
  412. 橋本徳男

    橋本説明員 パートシステムは、実は万博協会におきましても、昨年来とっておるのであります。実は昨年、パートシステムをとっている段階におきましては、むしろいろいろな施設につきましての基本的な構想がきまらないために、そのパートシステムが必ずしも威力を出すことができなかったわけでございます。ところが、今度全体の規模もきまり、かつまた、主要な施設につきましての構想が固まりましたので、これからパートシステムがほんとうに生きてくると思います。そうなりますと、従来のおくれを取り戻す努力が十分実を結ぶであろうというふうに私は考えております。
  413. 近江巳記夫

    ○近江分科員 もう時間もないようですから、大臣にあとずっと聞いていきたいと思うのですが、大臣は推進本部長として、必ずこの万博をみごとに成功させる決意なんですか、どうなんですか。
  414. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そう無責任な気持ちでやっているわけじゃないのです。十分責任を持ってやっていきます。
  415. 近江巳記夫

    ○近江分科員 それじゃ、十分責任を持ってやっていく、やりましたけれどもできませんでしたという状態になったらどうしますか。最終の責任はだれがとるのですか。大臣、その点を聞かしてください。
  416. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういうことは考えていない。
  417. 近江巳記夫

    ○近江分科員 最後の責任をだれがとるという、そんなことを考えてない、そんな無責任な話がありますか。
  418. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 できないことを考えてない。必ずやり遂げるという決意でやっている。そういうできないときにどうするかなんて、そんなことは考えてない。
  419. 近江巳記夫

    ○近江分科員 それはあなたの言うことはわかりますよ。だけれども、いろんな不都合が生じ、外国からも笑われる。要するに、万博のそういう種々の問題が起き、いろんなことの起きたときに、最終の責任はだれがとるかというのです。大臣、聞かしてください。
  420. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 最終の責任をとるとかとらぬとかいうようなことはあとで考えればいいんで、とにかくもうどこまでもこれをやり遂げるということ、いまはそれで一ぱいです。それ以外のことは考えていない。
  421. 近江巳記夫

    ○近江分科員 全く無責任というか、私はもうあきれてものも言えぬわけですよ。私は前に商工委員会において菅野大臣にそれを言った。菅野大臣は、最終は政府が、国が絶対責任を持ってやります。そこまで言った。どうなんですか。菅野大臣はそんなように言った。大臣がかわったら、あなた言えないのですか。その点どうなんですか。
  422. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただもう必ず成功させるという決意のもとにやる。それだけしか考えていない。
  423. 近江巳記夫

    ○近江分科員 同じ考えなら、もっと責任を持ってお考えくださいよ。要するに国民のこの不安な気持ち、あなた方の答弁を聞いても、いままでの結果からして非常に不安なんです。一つも安心できないし、納得できない。  最後に、大臣として、推進本部長として、あなたの決意を国民の皆さんに披瀝してもらいたい。もう時間がありませんから、その点を、大臣のもとで戦っている参事官、それから大臣から、最後にそれを聞かしてもらいたいと思います。
  424. 橋本徳男

    橋本説明員 先ほど来いろいろ御指摘のありました点は、十分われわれも反省して、必ず成功させたいという覚悟でございます。
  425. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 繰り返しになりますが、必ず成功させる、そういう決意です。
  426. 近江巳記夫

    ○近江分科員 もう時間がありませんから終わります。
  427. 小山省二

    小山(省)主査代理 本日の質疑はこの程度にとどめ、次回は、明十五日午前十時から開会し、農林省所管及び通商産業省所管について質疑を続行することといたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後七時四十四分散会