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1968-03-29 第58回国会 衆議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月二十九日(金曜日)     午前九時二十七分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 小川 半次君 理事 北澤 直吉君    理事 正示啓次郎君 理事 二階堂 進君    理事 藤枝 泉介君 理事 加藤 清二君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 広沢 直樹君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       上村千一郎君    植木庚子郎君       小沢 辰男君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    小山 省二君       坂田 英一君    塩谷 一夫君       菅波  茂君    田中 正巳君       登坂重次郎君    中川 一郎君       野田 卯一君    野原 正勝君       船田  中君    松浦周太郎君       松澤 雄藏君    松野 頼三君      三ツ林弥太郎君    箕輪  登君       湊  徹郎君    森山 欽司君       山崎  巖君    吉田 重延君       大原  亨君    北山 愛郎君       久保 三郎君    阪上安太郎君       田中 武夫君    楢崎弥之助君       畑   和君    堀  昌雄君       森本  靖君    山内  広君       山中 吾郎君    横山 利秋君       麻生 良方君    佐々木良作君       鈴切 康雄君    正木 良明君       林  百郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 赤間 文三君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 園田  直君         農 林 大 臣 西村 直己君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 中曽根康弘君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 小川 平二君         建 設 大 臣 保利  茂君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     赤澤 正道君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官北海道開発庁         長官)     木村 武雄君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増田甲子七君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      鍋島 直紹君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         人事院総裁   佐藤 達夫君         総理府総務副長         官       八木 徹雄君         総理府人事局長 栗山 廉平君         公正取引委員会         委員長     山田 精一君         警察庁保安局長 今竹 義一君         防衛庁経理局長 佐々木達夫君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛施設庁総務         部会計課長   春日敬太郎君         防衛施設庁施設         部長      鐘江 士郎君         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         法務省民事局長 新谷 正夫君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省入国管理         局長      中川  進君         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         外務省経済協力         局長      上田 常光君         外務省条約局長 佐藤 正二君         外務省国際連合         局長      重光  晶君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         大蔵省理財局長 鳩山威一郎君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         農林大臣官房長 檜垣徳太郎君         農林省農林経済         局長      大和田啓気君         食糧庁長官   大口 駿一君         水産庁長官   久宗  高君         通商産業省通商         局長      宮沢 鉄蔵君         通商産業省貿易         振興局長    原田  明君         通商産業省企業         局長      熊谷 典文君         中小企業庁長官 乙竹 虔三君         運輸省鉄道監督         局長      増川 遼三君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君         建設大臣官房長 志村 清一君         建設省計画局長 川島  博君         自治省選挙局長 降矢 敬義君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 三月十九日  委員斎藤実君、伏木和雄君及び谷口善太郎君辞  任につき、その補欠として石田幸四郎君、浅井  美幸君及び林百郎君が議長指名委員選任  された。 同月二十一日  委員小沢辰男君、田中正巳君及び横山利秋君辞  任につき、その補欠として黒金泰美君、重政誠  之君及び野口忠夫君が議長指名委員選任  された。 同日  委員野口忠夫辞任につき、その補欠として横  山利秋君が議長指名委員選任された。 同月二十三日  委員上村千一郎君、小山省二君、中野四郎君及  び松澤雄藏辞任につき、その補欠として益谷  秀次君、岸信介君、前尾繁三郎君及び一萬田尚  登君が議長指名委員選任された。 同月二十六日  委員森本靖君、横山利秋君及び林百郎君辞任に  つき、その補欠として石橋政嗣君岡田春夫君  及び谷口善太郎君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  委員石橋政嗣君及び岡田春夫辞任につき、そ  の補欠として森本靖君及び横山利秋君が議長の  指名委員選任された。 同月二十七日  委員田中武夫君、森本靖君、塚本三郎君及び浅  井美幸辞任につき、その補欠として勝間田清  一君、山本幸一君、西尾末廣君及び正木良明君  が議長指名委員選任された。 同月二十八日  委員勝間田清一君、山本幸一君、横山利秋君、  西尾末廣君及び谷口善太郎辞任につき、その  補欠として田中武夫君、森本靖君、堂森芳夫君、  塚本三郎君及び林百郎君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員堂森芳夫辞任につき、その補欠として横  山利秋君が議長指名委員選任された。 同月二十九日  委員相川勝六君、愛知揆一君、一萬田尚登君、  岸信介君、黒金泰美君、小坂善太郎君、重政誠  之君、福田一君、前尾繁三郎君、益谷秀次君、  松野頼三君、川崎寛治君、塚本三郎君及び石田  幸四郎辞任につき、その補欠として中川一郎  君、塩谷一夫君、松澤雄藏君、小山省二君、小  沢辰男君、吉田重延君、田中正巳君、三ッ林弥  太郎君、中野四郎君、上村千一郎君、菅波茂君、  堀昌雄君、佐々木良作君及び鈴切康雄君が議長  の指名委員選任された。 同日  委員中野四郎君、堀昌雄君及び佐々木良作君辞  任につき、その補欠として箕輪登君、川崎寛治  君及び塚本三郎君が議長指名委員選任さ  れた。     ————————————— 三月二十六日  昭和四十三年度一般会計暫定予算  昭和四十三年度特別会計暫定予算  昭和四十三年度政府関係機関暫定予算 は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十三年度一般会計暫定予算  昭和四十三年度特別会計暫定予算  昭和四十三年度政府関係機関暫定予算      ————◇—————
  2. 井出一太郎

    ○井出委員長 これより会議を開きます。  昭和四十三年度一般会計暫定予算昭和四十三年度特別会計暫定予算昭和四十三年度政府関係機関暫定予算、以上三案を一括して議題といたします。     —————————————  昭和四十三年度一般会計暫定予算  昭和四十三年度特別会計暫定予算  昭和四十三年度政府関係機関暫定予算   〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 井出一太郎

    ○井出委員長 この際、大蔵大臣より発言を求められておりますので、これを許します。水田大蔵大臣
  4. 水田三喜男

    水田国務大臣 本予算成立の前に、国鉄定期運賃引き上げを行ないますことは、今回の暫定予算の性格にかんがみ、遺憾であります。今後これを先例とすることはないものと考えております。     —————————————
  5. 井出一太郎

    ○井出委員長 次に、昭和四十三年度暫定予算三案について政府より趣旨説明を求めます。水田大蔵大臣
  6. 水田三喜男

    水田国務大臣 昭和四十三年度暫定予算の概要について御説明いたします。  昭和四十三年度予算は、年度内に成立を見ることは困難であると思われますので、本予算成立いたしますまでの間、国政空白を避け、その運営支障を来たすことのないよう、四月一日から四月十六日までの期間について、暫定予算編成することといたしたものであります。  まず、一般会計暫定予算について申し上げます。今回の一般会計暫定予算歳出総額は四千三百九十億円、歳入総額は八百九十四億円でありまして、三千四百九十六億円の歳出超過となっておりますが、国庫資金繰りについては、必要に応じ、大蔵省証券を三千億円まで発行できるよう措置することといたしております。  今回の暫定予算におきましては、暫定予算が本予算成立までの応急的な措置であることにかんがみ、人件費事務費等の経常的な経費のほか、既定の施策にかかる経費は、法令に基づき国の義務となっている経費等必要最小限度のものについて所要の額を計上することとしております。なお、新規の施策にかかる経費は、原則として計上しないことといたしておりますが、教育及び社会政策上の配慮等から、暫定予算期間といえども放置することが適当でないもの、すなわち、生活扶助基準引き上げ失業対策事業賃金日額引き上げ及び大学生増募等につきましては、特にこれを計上することといたしております。  また、公共事業関係費につきましては、災害復旧緊急性にかんがみ、所要の額を計上するほか、直轄事業について、人件費工事雑費維持修繕費等経常的経費を計上いたしております。  歳入につきましては、租税及び印紙収入八百七十九億円、その他収入十五億円と、暫定予算期間中に見込まれる額を計上することといたしております。  以上、一般会計暫定予算につき申し上げましたが、このほか、特別会計政府関係機関につきましては、一般会計に準じて暫定予算編成いたしております。  なお、財政投融資につきましては、暫定予算措置に即応して運用いたすこととしております。  最後に、地方財政について申し上げます。  今回の暫定予算におきましては、地方交付税交付金について、四月の概算交付額財源等に充てるため、二千三百七十二億円を計上することとするなど地方財政運営支障を来たすことのないよう配慮いたしております。  以上、昭和四十三年度暫定予算について御説明申し上げました。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛同いただきたいと存じます。     —————————————
  7. 井出一太郎

    ○井出委員長 大蔵大臣説明は終わりましたので、これより質疑に入りますが、本日は、理事会の申し合わせにより、質疑者各位におかれましては時間を厳守されますように申し添えます。なお、政府側の答弁も簡潔にお願いをいたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。北山愛郎君。
  8. 北山愛郎

    北山委員 私は日本社会党を代表して、暫定予算を中心として財政経済政策について若干の質疑をいたしたいのでありますが、最初に申し上げたいことは、いままでの本予算審議を通じまして、わが党の態度というのは、単に政府のあげ足取りをするとかそういうことではなくて、積極的に提言を申し上げ、具体的な政策要求をいたしておるわけであります。これは、すでに昨年の暮れに予算編成にあたりまして、十二月の二十七日並びに一月の八日と、二回にわたって予算編成過程においてわれわれの要求政府に申し入れをしました。また、この審議過程においても、各議員からそれぞれの部門において要求をいたしまして、最後には、過般の本会議あるいは委員会において本予算を再編成、組みかえをして再提出をするようにという動議の中でわれわれの見解をはっきりさしておるわけであります。そういう趣旨から、きょうは、さらにそれを深める意味において総括的なお尋ねをしたいのでありますが、最初に、暫定予算について若干お伺いをしたいのであります。  きょう拝見いたしましたこの暫定予算ですが、いまの説明によりますというと、歳入総額が八百九十四億、歳出総額が四千三百九十億ということで、三千四百九十六億円の歳入の不足、歳出超過になっております。これを政府は、この説明では、大蔵省証券三千億円を発行するということでまかなうということでありますが、これでいいのかどうかですね。三千億のぎりぎりまで大蔵省証券あるいは一時借り入れをいたしましても、さらに四百九十六億円が不足するわけであります。こういうふうなつじつまの合わないような予算編成をやっていいものかどうか、まず、最初大蔵大臣にお伺いいたします。
  9. 水田三喜男

    水田国務大臣 前々年度剰余金を五百億円以上持っておりますので、したがって大蔵省証券の三千億円の限度内の発行で、その剰余金がございますので、これによって暫定予算期間中しのげるというふうに思っております。
  10. 北山愛郎

    北山委員 その金は、確かに政府にはたくさん剰余金もあるでしょう。しかし予算上は、暫定予算としては四月一日からこの予算によって執行するわけです。ところが歳入予算の中には前年度剰余金というような項目がないわけです。受け入れる項目がないわけです。したがって一時借り入れというのは、これは経理上の、出納上の操作であって、予算上の項目ではないのですから、やはり予算歳入に、いまお話しのような前年度剰余金なり前々年度剰余金があれば、それを受け入れる項目があって初めて運用ができるのじゃないか、このように私考えるのですが、どうですか大蔵大臣
  11. 村上孝太郎

    村上(孝)政府委員 北山さんの御質問、もっとものようでございますけれども、一般にこの剰余金が発生しましたときには、財政法四十一条によりまして翌年度に組み入れることになっております。そこで、いま大蔵大臣の申しました五百十七億の前々年度剰余金は、四十二年度剰余金一緒になって四十三年度に繰り越されてまいるわけでございます。これが六月三十日の決算が結了いたしますと、そこで主計簿締め切りまして、その際に国庫金振りかえ書を発行いたしまして、大蔵省所管歳入に受け入れるわけでございます。そこで、実際にそれだけの現なまは持っているわけでございますけれども、前例に従いまして、これを主計簿を締め切って国庫金振りかえ書によって大蔵省所管歳入に受け入れるまで歳入には計上しておらないという前例を踏襲いたしておるわけでございます。
  12. 北山愛郎

    北山委員 それは少しおかしな前例だと思うのです。確かに本予算の中には前年度剰余金五百十七億ですか、あるわけですよ。それは四月一日から発効してない。したがって暫定予算にはその項目がなければならぬわけです。ですから剰余金を予定しない、そういうことは当てにしないならば、むしろ一時借り入れ金のワクをふやして、やはり収支が合うようなかっこうにしなければおかしいじゃないか。もう明らかに歳入歳出が一時借り入れ金を加えましても四百九十六億も穴があく。その金はどこから出てくるかという説明予算上どこにもないのですよ。ただ、実際は金がありますから使います、こういうことなんです。こういう形式はまずいのじゃないですか。もう少し政府も、こういうふうな悪い前例がたくさんあるわけですが、この悪い前例は直したらどうだ、こういうふうに考えます。
  13. 村上孝太郎

    村上(孝)政府委員 暫定予算というのは会計年度一定期間に関する予算でございまして、予算健全性歳入歳出バランスというのは一会計年度を通じて達成されればよいわけでございます。したがって暫定予算歳入歳出というのは、一般会計におきましても特別会計におきましてもアンバランスで組まれておるのでございます。あと資金繰りの問題でございますけれども、資金繰りの問題は、先ほど申し上げましたように四十一年度剰余金というものが確かに手つかずで残っているわけでございまして、ただそれを歳入に計上するかどうかは、会計制度上の一定手続に従って、歳入として受け入れらるときにこれを計上すればよろしいわけでございます。  先ほど申し上げましたように、大蔵省所管歳入として前年度、前々年度剰余金を受け入れますためには、国庫金振りかえ書を発行いたしまして大蔵省の主管の歳入に受け入れる手続が必要なわけでございます。ところが先ほど申し上げましたように、前々年度剰余金は四十二年度剰余金一緒になりまして四十三年度に繰り越されるわけでありまして、その中で四十一年度剰余金大蔵省所管歳入に受け入れますためしは、七月三十一日の主計簿締め切りによりまして、そこで初めてそういう手続が可能になってくるわけでございます。そこで四月の一日から十六日までの間にはそういう会計制度上の手続ができませんので、これは単なる資金繰りの問題として、利息のつかないお金を使うほうが国庫としては経済的であるわけでございますから資金繰りをつけます。しかし歳入としてそれを受け入れますためには、いま申し上げましたような会計制度上の手続を終わったあとで、要するに七月三十一日の主計簿締め切り以後において受け入れることにいたします。こういうことでございまして、これは私は少しもさしつかえないことではないかと思っております。
  14. 北山愛郎

    北山委員 どうもここで大蔵省帳簿のことを言われても困るわけです。ここでは予算のことを言っているのであって、その帳簿をこちらへ移しかえるとか、そういう事務的なことでたてまえをくずしてはいかぬですよ。やはり歳入歳出というものはバランスをとらなければおかしいじゃないかと思うのです。確かに暫定予算はその収支が合わない、その金は一時借り入れで埋めるということになっている、一時借り入れを足してもまだ合わない、その金はどこから来るかというと、それはどこか前年度か何かの金があるんだ、こういうことでは、非常に大事な予算形式上、そんなまずい、ずさんなことじゃだめじゃないか。  私はこういうことで時間をとってはまずいので、先へ進みますけれども、このやりとりを聞いただけでも、大蔵大臣、私はおかしいと思うのです。だれでもおかしいと思う。ですからこういうことについては、さらに政府としても検討してもらいたい。  それから次に、暫定予算の中には国立病院特別会計、いわゆる国立療養所経費一般会計の中に組んでおるわけです。本予算成立をしますというと、それが本予算特別会計にかわるのですね。かわる見通しなわけです。ところがそのことは何もうたわれてないのです。本予算成立をしますと、暫定予算は当然その日でもって失効して、それが本予算の中に吸収されるということになると、特別会計に行くのかどうするのかというつなぎ合わせ説明がここにはない。しかも、もう一つ問題は、別に国立病院特別会計法改正案という法律が出ております。法律はそのことの趣旨を書いているわけですが、その法律がその日までに通らなかったらどうなるか、どういうかっこうになるのですか。その辺は大蔵大臣、どういうふうに考えておられますか。
  15. 村上孝太郎

    村上(孝)政府委員 これはそのときまでに通らないと非常に困るわけでございます。そのときまでに通していただきたいということで努力をいたしておるわけでございます。
  16. 北山愛郎

    北山委員 それは法律予算は違うわけです。暫定予算と本予算との関係は——確かに本予算のほうは一定の、一月なら一月かかれば自然成立ということもありますから、大体成立の日取りがわかるわけですね、現在の本予算は。ところが法律というのは決定の手続が違いますから、その日までに通らぬ場合だってあるんですよ。そういうときはどうするんですか。
  17. 水田三喜男

    水田国務大臣 暫定予算は本予算成立するまでの応急措置でございますので、これが通らないということでございましたら、いまの憲法上、この国政空白を埋める措置というものはない、憲法もそこを予定してないということでございますので、これはひとり政府責任じゃなくて、国の最高機関である国会責任ということ、憲法も予定しているということでございますので、これは通らないことはあり得ない、必ず通るものという前提で御審議をお願いしている次第でございます。
  18. 北山愛郎

    北山委員 私は暫定予算が通るとか通らないとか言っているんじゃないのですよ。暫定予算は通るだろう、本予算も通るだろうし、また自然成立もあり得る。しかし法律というものは、これは手続が違うのですから、その日の前に、十六日前に通るとは限ってない。その後に通るかもしれない。そういうときに、一般会計国立療養所予算というのは行くえ不明になっちゃうのじゃないか。どこへ行ったらいいのか、行き場所がないじゃないか、こういうことになるのじゃないですか。ですから、それは何かどこかにうたっておかないとおかしいじゃないかと思ってぼくはさがしたんだが、どこにもないからお聞きをするんです。
  19. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、いま主計局長の言いましたように、この法律は通していただくということを前提としておりますので、これが通らなかったというような場合は、またその事態において適切な処置をする以外に方法はないと思います。
  20. 北山愛郎

    北山委員 通してもらいたいということでございますが、しかし(「願望だけじゃだめだ」と呼ぶ者あり)願望があるならもっと早く措置をすべきなんです。今度の暫定予算だって、衆議院を一日であげようなんていうのはとんでもない話ですよ、従来の例からいったって。一週間は両院でもって審議をするのがあたりまえで、もっと早く暫定の決意を政府は固めて、早く暫定予算を出すべきなんです。もう二日や三日で暫定といえども両院をあげよう、しかも年度末ぎりぎりに迫ってあげようなんというような提案のしかたが間違っているのです。また、いまの国立病院の問題にしても、こういう際に、ああいうふうな一般会計から特別会計に移すなんというようなおかしな操作をする、あぶなっかしい操作をするところに問題がある。ですからこういう点は、先ほどの問題と含めて、政府としてもやり方について、ただ通してもらうのはあたりまえだとかお願いするとか、そういうことじゃ少し見識がなさ過ぎるのじゃないかと思う。
  21. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま暫定予算がおそ過ぎたというおしかりでございますが、政府としましては国会審議にどうこう注文をつけるわけにはまいりませんで、私のほうとしましては、三月三十一日に国会予算を通過していただきたいとお願いしている立場でございますので、最後までそういう立場で私どもはおるのがほんとうでございまして、政府が途中から国会審議を無視して、どうもおくれそうだからこっちは早く暫定予算出しますからというような態度は、むしろ国会に対して失礼な態度である、最後の瞬間まで政府は本予算成立をお願いするのが私は筋であろうというふうに考えております。
  22. 北山愛郎

    北山委員 それは気持ちは一応わかるのですけれども、しかしこういうぎりぎりのところにきて、しかも暫定予算がもしも期日までに成立をしないなんということになったら、あとの処理についての規定が憲法上ない、財政法上ないというふうなことをよく考えて、そして政府は間違いのないような、万が一のことが起こってもそれに対処し得るような措置を講じておくのが政府のやり方であって、そのようなことは一応の言いわけにしかすぎないと私は思うのであります。少なくとも暫定についてはその他いろいろ問題がございます。しかしこれにだけ時間を費やすわけにまいりませんので、先にいきます。  次に、この委員会でも大きな問題になった国際通貨をめぐる情勢の問題であります。ワシントンの金プール会議の結果として、一時小康状態という状態、そういう中で、アメリカもイギリスも国際収支の改善のためにいろいろな努力をしている。きょうはIMF十カ国の蔵相の会議が開かれるというふうな、非常に重大な情勢であります。小康状態にあるとはいいながら問題は解決をしておらぬので、さらに第三、第四の金恐慌が起こるかもしれぬという、楽観を許さない状態だと思うのであります。そういう中で、アメリカの例の輸入課徴金問題が出てきておる。このことを考えたときに、私どもはドルと円の関係は、必ずしも総理がかつて言ったように、ドルと円は一体である、ドルを守ることが円を守ることであるというふうな、あるいはドルを守ることによって円を守るんだというふうなことは、この輸入課徴金問題で、そうじゃないんだ、やはりドルと円との間には矛盾がある、輸入課徴金というのはアメリカの国際収支の危機を改善してドル防衛には役立つかもしれませんが、円の防衛には役立たない、むしろ非常な脅威を受ける、こういう関係にあるのであって、政府に対して社会党から再々にわたって、日本はいまや自国の円の価値を維持することに努力を集中すべきであって、ドル防衛に協力するなんということは、これはおこがましいんじゃないかということを申し上げたわけなんです。この輸入課徴金問題はまさにその現実をずばりあらわしていると思うのですが、この際、総理の御見解を承りたい。
  23. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が、ドルを強化することがひいては円の強化、そのことにも役立つということを申したのは、北山君御承知のように、いま国際決済基軸通貨、そういうものはドルかポンドだ、こういうことでございます。その国際決済の基軸通貨というものが強化されなければ、国際決済ができない、国際経済というものが成り立たない、こういう観点でございます。ただいまはもちろん一国経済ではない。一国経済の場合だったら、円が独立して、円だけで強化する方法もございましょうけれども、いま国際経済の観点に立つと、やはり基軸通貨というものがはっきりしていないと困る。いろいろ金の問題が起こりましても、あるいはドイツのマルクが基軸通貨だ、あるいはフランがどうだとか、そういうことにはなっておらない現状から見まして、この国際経済を安定さす、そのための基軸通貨、これが強固でなければならない、かような意味をひとつ御理解いただきたい。これは北山君も百も御承知のことで、ただいま申し上げますように、われわれは一国経済だけじゃないんだ、国際経済のもとにおいて経済の繁栄をはかっているんだ、これに目を注いでいただきたいと思います。
  24. 北山愛郎

    北山委員 国際経済の中で円とドルがつながっておることぐらいは、これは言わなくてもわかっていることです。問題は、そうじゃなくて、いまの日本の国際収支の事態なり外貨準備の状態、そういうものをまずわれわれは考えなければならぬのだというのが、われわれの主張だったわけです。まさに輸入課徴金は、そのことずばりあらわしておると思うのであります。  そこで、私は、実は二十七日の新聞の夕刊を見てあ然としたわけです。今度の輸入課徴金をやめてもらいたいということで、自民党使節団が行っております。その使節団が持っていきました総理の親書、アメリカのジョンソン大統領に対する親書の内容が二十七日の新聞の夕刊に出ておりまして、その内容を見て実は驚いたわけだ。私は一応この内容を、これは要旨ですが申し上げますと、こういう内容です。  ワシントンの二十六日共同のニュースでありすすが、「親書の内容は次のとおり。一、日本経済の繁栄と成長は貿易拡大を通じてだけ可能であり、貿易の縮小は日本にとって破滅を意味する。」第二は、「引締め政策をとるさい特に問題は中小企業である。中小企業は依然前近代的な状態にあり、倒産が続出している。これが度を越すと社会不安を生じ、大きな政治問題となる。」こう書いてある。その次に安保条約まで書いておるのですね。「安保体制をめぐって国論は割れ、社会党など野党は一貫して反対している。野党は七〇年の改定期を目ざし、すでに安保体制の打破に精力的な活動を開始している。今国会における論戦の大部分がこの問題に集中され、また一般国民の中に展開された沖縄返還、エンタープライズ佐世保寄港、東京・王子の米軍病院反対運動の取上げ方などはいずれもその意図の現われであり、しかもこれら野党勢力は各地において徐々に力を得つつある。一、もちろん自民党は健全にして保守的な多数国民の同調を得て現体制を維持していく自信をもっている。一、今回理解を求めたのは自民党がよって立つ基盤である。大企業の労働者はおおむね左派である。自民党の支持者は農民および中小企業者である。野党が「米国の輸入課徴金のために中小企業がどんどん倒産していくのだ。自民党では救われない」と叫ぶのに対して、自民党はほとほと困惑するのである。政治は勢いである。ことに七月には参議院議員選挙があり、課徴金をきっかけに国民感情が不測の事態に発展することを恐れる。」最後に、「一、日本はドルを通じて米国と一体であり、協力者である。したがってお互いに繁栄する道を見出し、課徴金のごとき制度を採用しないよう強く要請する。」もちろん、これは内容の要旨でありますが、これが共同のニュースとして伝えられておるわけです。これを見て、おそらく多くの国民の方々もあ然とし、あるいは憤激をしたと思うのであります。これは、内容をいま読みましたとおりに、日本の国民の代表という立場ではなくて、明らかに自民党の立場、輸入課徴金をやられますというと、自民党が困るんだ、参議院選挙にも影響するんだ、社会不安や不測の事態が起こるんだと——こういうようなことはあり得べからざることではあるけれども、こういうことがはっきりとニュースでもって伝えられ、新聞に報道されておる。これについて、私は総理の弁明を求めたいのであります。   〔発言する者多し〕
  25. 井出一太郎

    ○井出委員長 静粛に願います。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これが親書そのものであれば、いろいろな御批判があると思います。親書はさようなものではございません。はっきり申し上げておきます。
  27. 北山愛郎

    北山委員 とにかくこういうふうに報道されている以上は、この問題を明らかにする——こういう内容のものでないとするならば、親書を明らかに国民に示しなさい。
  28. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 親書は封をいたしまして、そうして面接出したのであります。そしてこれは、福田君といえども親書の内容を知ってはおりません。また、その親書が公表されるようなものでない、これはもうはっきり申し上げておきます。共同通信はその記事をどこでとりましたか、その出所もはっきり出していただきたい。私は、そういうような公の親書が——いや、はっきり、それがどこで出たか確かめたい。そういうことはございませんから、御安心をいただきます。
  29. 北山愛郎

    北山委員 では内容的に聞きますが、いま読み上げた新聞に報道された要旨全体なんですね、どこが違うんですか。こういうことはなかったんですか。たとえば野党に、米国の輸入課徴金のために中小企業がどんどん倒産していくのだ、自民党では救われないと叫ばれると自民党は困るんだというような、そういう趣旨のことはなかったわけですか。内容についてはどうです。
  30. 三木武夫

    ○三木国務大臣 総理の親書には外務省も関連をしたわけですが、もうそれは全然違います。そういう、いま北山君がアクセントをつけて言われたようなことは、常識から考えても——総理から大統領への親書としてそういうことを書くということは常識にも反しまして、いま読み上げられましたようなことは、内容には入っておらないことは申すまでもございません。
  31. 北山愛郎

    北山委員 それならば、二十七日の夕刊でこれが報道されたときに、政府はどういう措置をとりましたか。こういう報道がされた。私が言うんじゃないですよ。私はその報道を伝えただけなんだ。二十七日の新聞に大々的に出ていますよ。「社会不安の恐れ」とある。政府はどういう措置をとりましたか。
  32. 三木武夫

    ○三木国務大臣 親書の内容というものは、国際的な慣習からいっても公表をいたさない、それが親書の性質でありますし、あまりにもまたその内容も、総理大臣が大統領に言う親書——選挙のことがどうとかこうとか、そういうことはおよそ親書の常識にも反しておりますので、その新聞には抗議は申し込まなかったのでございます。
  33. 北山愛郎

    北山委員 これは公式に報道機関でもって伝えられたわけですよ。国民はこれを見ているわけですよ。これを政府が単に黙殺をしていいですか。事実無根であるならば、新聞報道機関に対してその取り消しを要求するとか、そういう措置をとるのが政府として当然だと思う。とらない以上は、いま言ったようなことばでもって黙殺するというようなことでは、これは半ば認めたようなかっこうに結果はなると思う。はっきりとした態度をとりなさいよ。   〔発言する者多し〕
  34. 井出一太郎

    ○井出委員長 静粛に願います。
  35. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん意外なお話ですから。私、共同の二十七日の記事というのは実は読んでおりません。しかし、さっそく、ただいま読まれましたから、これは共同に対しまして、その出所その他についてはっきりひとつさせろ、こういうことを申し込みます。これはたいへんな記事です。ただいま申し上げますように、親書というものは公表するようなものではございませんし、また、私がジョンソン大統領といかに話が何でもできるといっても、ただいま申し上げるような国内の事情まで訴えた、そういうような親書を出すことはございません。先ほど外務大臣が申したとおりであります。もう絶対に親書というものは公表されるものではございませんし、また福田君自身がそういうものを出すことはございませんし、またアメリカ側からその親書が公表されたと私は信じません。したがいまして、十分とっちめて調査いたします。——まあとっちめるというのはことばが不適当でありますが、これは十分調査いたします。調査いたしまして、善処いたします。その記事に責任がないことを重ねて申し上げます。
  36. 北山愛郎

    北山委員 親書の内容ですね、政府は公表しないし、また見せもしないかもしれない。しかし、どこからかやはり、それはつくった人があるのですから、関与した人があるのですから、そういうソースからニュースとして流れ得るわけなんです。ですから、決して火のないところに、これは共同でも新聞でも、捏造したわけじゃないと私は思うのです。もしもそうであるならば、政府ははっきりと正式の態度を表明して談話を出すとか、そういう措置を早急にとるのがあたりまえであって、また、いま総理の言ったようにニュースソースを突き詰めるなんということは、過般の防衛庁の話と同じことですね。これはくだらないことですよ。むしろ堂々と、否定するなら否定するというようなことをすべきですよ。どうですか。
  37. 三木武夫

    ○三木国務大臣 総理も答弁されましたように、この記事は、そういう誤解を北山君のみならず国民に与えたとするならば、真相を伝えないわけでありますから、共同通信に、調査して正規の手続をとることにいたします。
  38. 北山愛郎

    北山委員 私も、政府の親書なるものは、こういうことは内容的に見てあり得べからざるものだと実は思うのです。けれども、とにかくはっきりと新聞に報道が出、これがワシントンからの報道として伝えられているという以上は、報道機関としても根拠のないことを報道するわけじゃない、ことに事柄がこういうことですから。ですから、私どもはまだほんとうは釈然としないし、私だけじゃなくて、多くの国民は釈然としないと思うのでありますが、とにかくこういう親書の際にはこういう内容のものがあってはならないし、やはりこういうことを言われるようなことではならないと思うのですね。ですから、ただ事態を究明するとかなんとかいうことじゃなくて、もっとき然たる政府の態度を明快に国民に知らせるというようなことが必要ではないか、こう思うわけであります。  次に、私はこの前の予算委員会でいろいろ防衛庁関係国庫債務負担行為についての質疑をいたしまして、その際の問題点が実は結論を得ておりません。問題は二つあるわけであります。  国庫債務負担行為は、防衛庁のみならず、一般会計特別会計、たくさんありますけれども、その中で防衛庁の分についてだけ言うならば、本年始まる防衛庁関係国庫債務負担行為が、千五百八十億でありますが、その一部がさらに歳出予算に九十三億円計上されておる。ですから、予算案がそのまま通りますと、その九十三億分は、歳出予算の面で財政権限を与えられると同時に、債務負担行為においても債務負担権限が与えられる、いわゆる二重に与えられるという結果になる。九十三億がよけいに財政権限を与えられる結果になるわけです。大蔵省の事務当局は、これに対して契約上の便宜とか事務上の問題をたてにしていろいろ陳弁をされましたけれども、それじゃ通らないと思うのであります。この問題が一つ。  それからもう一つは、予算の第二分科会で私が大蔵大臣等に質疑をしたわけでありますけれども、この国庫債務負担行為、いわゆる財政法第十五条の国庫債務負担行為というものは二種類ある。いわゆる特定議決というのと非特定議決、第一項と第二項があるわけです。その第一項の特定議決の債務負担行為というのは、その事項が特定されてなければならぬ。防衛庁以外のものを見ますと、国会にしても法務省にしても、大体ある建物をつくるとか、そういうふうに特定されておるわけです。問題は、防衛庁において、千三百十一億という膨大な、中身のわからないものが一緒くたに一括されて、器材整備という中で債務負担行為の権限を与えるかっこうになっておる。包括的なんで、特定されておらないのですよ。これは財政法第十五条の、いわゆる特定された債務負担行為という第一項に私は違反しておると思う、そういう論議をしたわけであります。  この二点について——特にあとのほうの一点については、分科会でも大蔵大臣は検討するという答弁をされたわけであります。この二点をあわせまして、特に財政法関係国庫債務負担行為のやり方について、今後政府としては再検討して、いまのようなやり方を改めるというような御意思があるかないか。これは大蔵大臣からひとつ総括的に見解を承りたい。
  39. 水田三喜男

    水田国務大臣 もう歳出予算のほうで、国会の御審議を願う場合に、項に区分して御審議を願うということになっておりますので、それと大体合わせたような形で債務負担行為の御審議を願っておったのでございますが、しかし、目的をはっきりするために、いまのように二つの項にまたがったものの御指摘を受けましたので、今後その点については政府としても十分考慮しようということで御返事申し上げた次第でございまして、この点については今後十分改善したいと思っております。
  40. 北山愛郎

    北山委員 このことは分科会でもお話をしたとおりです。私はいろいろ財政法の本も調べてみました。前に財政法が、昭和二十三年ですか、成立をしましたときの大蔵省の主計のほうの担当の平井さんの著書、あるいは明治憲法時代のいわゆる会計法でありますが、清宮四郎氏の著書、あるいは杉村章三郎教授の著書、みないろいろ見ましたが、やはり財政法第十五条の一項の国庫債務負担行為というのは、具体的な事項に特定されてなければならないんだというのが通説なわけです。それを、ほかの省庁では大体その趣旨に従っておるのに、防衛庁についてはものすごいですよ。器材整備なんというものは項にまたがっておる。防衛本庁と研究開発費両方にまたがったものを一緒くたに何十件もやって、そして千三百十一億という一本のものでもって、一つの事項としてあげておるわけです。それを私調べてみたところが、これは調査しなければわからぬのですが、器材整備本年度の分が千三百十一億、その中にナイキが三百十八億、ホークが三百九十五億、三十五ミリ高射機関砲が百十億、航空機関係が二百四十八億、研究開発費が九十二億、その他百四十六億、その他というのは戦車、小銃、バッジ関係もありますよ。そこで、この委員会でもこのバッジの問題なり研究開発費の問題が出まして、増田防衛庁長官は、一つの契約の金額というものがどんどんふえていく、百三十億が二百五十三億に、契約した金額がだんだんふえていくしかけになっておっても財政法違反ではないそうだ、こういったような珍答弁をやったのです。防衛庁長官自身がそんなことを言っているのです。それは、しかけはここにあるのですよ。結局バッジが百三十億だという議決をとっておれば、これを改める際にはさらに議決をしなければならぬ。ところが、それを器材整備という膨大なワクの中でやりますから、内訳がないわけですから、国会の中じゃわからないのですよ。ですから、研究開発費をこっちへ持っていったり、ナイキをホークへ持っていったり、そういうことがされてもしようがないような仕組みになっているのですよ、この予算形式が。われわれが追及をし、調査をすれば、やっとこういうことがわかってくるわけです。まだ研究開発費にしてもバッジにしても、あのようにこの委員会でわれわれの同僚議員が追及すればやっとその数字が出てくる、こういうことであってはいけない。こういう国庫債務負担行為というやり方がそういう問題の温床になっているわけなんですから、そういう点は大蔵省でも防衛庁でもよく考えて、そして今後は、予算の重要な形式の問題でありますから、財政法を正しく守って予算案をつくる、十分な説明資料もつけるというような形で、今後政府としても従来の悪い慣行というものを改めてもらいたい、こういうことをさらに要求いたしておきます。  それからなお、この際、予算委員長にお願いをするのでありますけれども、この委員会でも、私だけじゃなくて、各委員の方々から財政法に関する問題がたくさん出たわけであります。単に問題は、国庫債務負担行為だけではありません。そのほか繰り越し明許、いわゆる財政の繰り延べですね、これなんかについても、はたして現在のあの繰り越し明許の制度を利用するのが合法的かどうかという問題もあります。予備費の問題もあります。いろいろ——あるいは添付資料の問題もありますから、これは単に政府側で直す問題だけではなくて、やはり国会として予算委員会の中での審議に重大な関係があるわけであります。したがって、国会の立場からも、予算委員会の立場からも、従来の予算審議のあり方、やり方というものをもっともっと改善する、ほんとうに国会が国民に負託された職責を果たす、重要な予算審議を正しく行なう、しかも財政民主主義というものを実行するということで、政府にも改めてもらいたいのでありますが、国会審議としても今後改善を要する点がありはしないか。これはどこでやるわけではなくて、やはりこの委員会で、このやり方についてはお互いに相談をしてきめるべきじゃないか、こう思いますので、ひとつ理事会等でこの問題をお取り上げを願って、常設の調査委員会をつくるなり、そういうことでひとつ予算制度並びに国会予算審議の改善のために、委員長としても御努力を願いたいということをお願い申し上げておきますが、いかがでしょうか。
  41. 井出一太郎

    ○井出委員長 ただいま、北山君のような御意見は理事会においてもすでに話題となっておりますので、御趣旨を尊重いたしまして、今後十分に検討をいたします。
  42. 北山愛郎

    北山委員 次に、海外経済協力の問題であります。  これは、いま例のインドネシアに関する新年度の経済援助が問題となっておりますが、また昨年もこの委員会で、インドネシアに対する円借款のことを私、質問したわけであります。問題はたくさんあると思うのであります。ただし、これはあとで同僚の議員からもお尋ねをするはずでありますから、そういう具体的な海外経済協力の内容については、私は触れません。  ただ問題は、政府の、ないしは日本の海外経済協力の基本的な方針の問題だと思うのであります。これが、どうもいままでぐらぐらしておるというか、どこに基本方針があるのかはっきりしないということなのであります。問題はいろいろありますけれども、私どもが要求しておりますのは、これがアジアなりわれわれの近隣の国家、民族の、ほんとうにその国の経済の発展とまたその国の住民の生活、福祉の向上につながるような形の経済援助でなければならぬ。したがって、自由陣営であるとか、あるいは共産圏、あるいは中立とか、そういうふうな色分けをした、政治的な背景を持ったような援助はすべきではないのじゃないか。これから先の、われわれ日本というものの長い目で見た外交ということを考えた場合に、自由陣営を守るためのある特定の政府のてこ入れをするなんという援助はすべきではないのじゃないか、こういうふうにわれわれは考えております。この点は多少政府と意見が違うかもしれませんが、われわれとしてはそういう方向で要求をしておるものであります。  なお、財政的な側面であります。これは大蔵大臣に伺いたいのですが、最近におけるわが国の対外債権債務の状態を見てみますと、これはもちろん政府が正式に発表しておりませんけれども、いろいろな資料で調査をいたしますと、長期債権がふえる、一方では短期債務がふえるというかっこうになっておる。要するに、日本は現在短期の借金をじゃんじゃんして、極力外資を短期、長期ともに入れて、そうして貸すほうは長期の資金を貸しておるわけですね。これは数字にも出ております。長期債権は、昭和三十五年に八億四千九百万ドルであったものが、四十二年六月には三十五億四千五百万ドルというふうに急速にふえておる。約二十七億ドルもふえておるのです。その反面では、短期債務のほうは、昭和三十五年には十六億三千万ドルであったものが、四十二年六月には五十億二千四百万ドル、三十三億ドルもふえておるのです。要するに短期の借金をして長期の金を貸す。これでは、企業経営でも同じことでありますが、国民経済としても成り立たぬのじゃないか。こういうことをやっておったのではもう破産状態になる、行き詰まるということは明らかだと思うのです。その辺は、大蔵大臣としてはどのように考えておりますか。
  43. 水田三喜男

    水田国務大臣 それは非常にむずかしい問題でございまして、今度UNCTADの会議においてもきまりましたように、やはり先進国の義務が、後進国に対して国民総生産の一%を目標としてお互いに義務を果たす、そういう目標に努力しようということは申し合わされましたが、そういうような問題に処しまして今後私どもが考えなければならぬということは、国内政策との調和という問題がございますし、いまおっしゃられたような長期の援助を日本が義務として努力するというようなことになりましたら、この対外債権における長期、短期の関係というようなものについて、やはり援助の体制をこれから整えていかなければならぬ。いままでのように必要に迫られて積み重ねてやるような援助ではいけませんで、こういう問題について一つの方針をきめ、体制を整えてこれをやらなければいけない問題である。そういう必要に直面しておるというふうに私どもは考えますので、まず今年度、いま法律改正の御審議を願っておるのでございますが、経済援助のしかたというようなものについての法律の改正から今度始めようというわけでございますが、いまおっしゃられたような問題は、これからひとつ方針を立てて根本的に考える問題だというふうに私は考えます。
  44. 北山愛郎

    北山委員 これはわれわれとしても、いま申し上げたようなほんとうに正しい援助であるならば、やはりできるだけやるべきだというふうには考えます。しかしながら、現在の日本の経済の実態は、いま申し上げたように、外貨準備にしても、国際収支の状態にしても、あるいは債権債務のポジションにしても、いまのように非常に悪いわけです。先にいって行き詰まるようなことを無理をしてやるということは、大蔵大臣としても慎重に今後検討していただきたい。  それから次に、これは総理にお伺いしたいのですが、一体、海外経済協力の仕事というのは、どこがまとめ役になっておるのか。外務省もやっておる、通産省もやっておる、大蔵省もやっておる、それから経済企画庁、また運輸省とか農林省も関係している。予算を見ると、ずっと各省ごとにあるわけですね。一体、どこが中心なんですか、その海外経済協力の。
  45. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この海外援助は、やはり総合的に各省が関係ございます。しかし、総まとめといたしましては私がいたします。同時に、これは外交チャネルを通じてやられますので、その総まとめをいたします前の段階におきましては、外務省がそれぞれの官庁の間の調整をいたしまして、そして最終的に私のところへ持ってきて、私が決定する、かような仕組みでございます。
  46. 北山愛郎

    北山委員 いま総理の言われる意味においては、あらゆる行政は最終的には総理がまとめるということになるでしょうが、しかし、それぞれ担当がある。問題は、各省がみんなそれぞれ似たようなことをやっておって、どこが担当だかさっぱりはっきりしないということなんですね。たとえば海外経済協力白書というのが毎年出ておりますが、それは通産省が出しておるのです。私は通産省が主管だと思ったら、たとえば今度の海外経済協力基金というのは、経済企画庁が中心で、経済企画庁が海外の経済開発計画までやるのかどうかわかりませんけれども、みなそういうふうにちょっと受け取れない。さっぱりどこが中心なのかわからないのですね。  そこで、私は総理に伺うのですが、先年、昭和三十九年ですか、臨時行政調査会がこの問題について答申を出している。答申というか、提言を出しているのですね。そのことはお読みになっていますか。
  47. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま行政管理庁長官もおりますから、一応説明させますが、先ほど来申しますように、外国との交渉をそれぞれの役所が単独に折衝いたしますことは、外交上いろいろな問題を起こすのであります。たとえば農業関係があるからといって農林省がやる、あるいは漁業関係だから農林省だけでやる、こういうことになりますと、いろいろ外交の一貫性がこわれてくる、さように思いますので、必ず、農林省の専門の漁業交渉にいたしましても、外務省がやはりタッチしている、窓口がそこにきておる。漁業交渉の場合におきましては、農林関係が主たる官庁でございますけれども、やはり外交交渉としての折衝は外務省がタッチする。したがって、国内における問題と、それから対外的な窓口、そういうものが二重になっていることはやむを得ないように思っております。
  48. 北山愛郎

    北山委員 そんな程度の考え方でしかないわけですか。これは臨時行政調査会はちゃんとした意見を出しているのです。いろいろ各省にまたがっているこの海外経済協力の矛盾をいろいろ洗って、そして結局、外務省というのが中心となるのが適当だという答申を出しているのです。これは政府として検討したことはないのですか。どうなんですか、外務大臣、知っていますか。
  49. 三木武夫

    ○三木国務大臣 各国でも北山さんの言われるような弊害があって、これを機構を一元化した国もあるわけです。日本においても、私は、将来やはりこの機構というものは検討しなければならぬと思っております。しかし、現在、いま総理もお答えになっておりましたように、窓口としては一本化しておるわけです。その内容がいろいろ各省にまたがるようなことがあるから、お互いに連絡をとり合って、対外的には窓口を一本にしてやっておるのですが、しかし、いろいろな弊害が御指摘のようにないとはいえないと私は思う。将来の機構として検討すべき課題だと考えております。
  50. 北山愛郎

    北山委員 農業のことは農林省が関係するとか、あるいは通産関係のことは通産省が関係する、それは常識ですね。ただ問題は、経済企画庁が海外経済協力基金をやり、輸出入銀行は大蔵省の管轄だといったような、しかも似たような仕事をやっている。その輸出入銀行は商業ベースの民間の金融の補完的な仕事だけをしているかと思えば、むしろ政府の決定した取りきめに基づいて、外国の政府に対する借款をやっている。まるでめちゃめちゃなんですね。その辺はどのように交通整理をされるのか、大蔵大臣からお伺いしたい。
  51. 水田三喜男

    水田国務大臣 先ほど申しましたように、援助のしかた、この交通整理をしたいということで、今回この改正案を出したというようなことでございまして、この輸出入銀行を通じてする援助と、海外経済協力基金を通じてする援助というものの整理を今度の改正によっていたしたい。これを本年度全部解決するというわけにはいきませんでしたので、まず、当面問題になっており、昨年特に一千万ドルのグラントというようなことを加えてやった輸銀を通じての援助というような、こういう形をやめることから、まずインドネシア援助や中心にして、ことしは法の改正をする、これによって、今後来年度以後のやり方をどうやるかをこの一年間に関係省で研究しようということで、今度の法の改正をやったという次第でございますので、この交通整理というものは、今年度一年私どもは研究して、来年この本格的ないろいろな改正をしたいというふうに思っております。
  52. 北山愛郎

    北山委員 どうもこのインドネシアの問題を考えても、政府はその場当たりで考えている。今度の海外経済協力基金法の改正にしても、そういう直接な必要からものを考えている。いわゆる政府借款みたいな政治的なもの、特に贈与的というか、そういうふうな援助のものはたとえば協力基金でやる、輸出入銀行は商業ベースの補完をやるというふうに機能的に分けるなら、一方では海外経済協力基金法を改正すると同時に、輸出入銀行の中の対政府借款というものはずすというようなことをしなければならぬ。インドネシアに低利の金を貸したいものだから、援助したいから、その必要に迫られて海外経済協力基金法を改正する、そういうふうな行き方じゃ、まるで一貫性がないじゃないですか。  それから、私が疑問に思っているのは、経済企画庁がなぜ海外経済協力基金の主管庁でなければならないのか、これをひとつ、総理大臣でも企画庁長官でもいいからお伺いしたい。
  53. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは沿革がございまして、御指摘のように、各省の主張がなかなか一致しない、しばしば衝突するような案件でございますために、比較的中立的な経済企画庁が預かった、こういう経緯のように存じております。
  54. 北山愛郎

    北山委員 そういうくだらない沿革なわけですが、総理大臣、一体どういうふうにお考えになりますか。
  55. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのは、対内的、国内的な問題としての率直な実は表現でございまして、イージーゴーイングだというおしかりを受けておりますが、とにかく過去の経過、これをただいま宮澤君が答えたとおりでございます。
  56. 北山愛郎

    北山委員 答えたとおりだでは済まないのですよ。長いこと海外経済協力ということをやり、いまや非常に重大な問題になってきている。輸出入銀行だけでも三千三百億、経済協力基金を入れれば、米ドルにして十億ドル以上、これは国民の税金であり、また貯蓄なんですよ。郵便貯金とか厚生年金あるいは簡易保険の掛け金、こういうものが積もった中から、何十億というものを輸出入銀行その他を通じて外国に出しているでしょう。そういうものを、いま言ったようなつまらない沿革だとかごちゃごちゃした官庁の縄張り争いでそのままにほうっておいて、長いことそのままのやり方でやっておって、それでいいのかどうか。しかも、臨時行政調査会ではちゃんと答申というか、提案を出しているのですよ。いろいろ分析をして、各省にまたがるものもあるでしょうけれども、その主管はやはり外務省でなければならぬのだ、外務省が一番適当だという結論を出している。これについての政府の研究もなければ対策もないじゃないですか。一体それでいいのですか。
  57. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それでございますので、先ほど大蔵大臣が言われましたように、やはりこれを一元化すべきではないかということで、すでに今年研究を始めたわけでございます。経済企画庁といたしましては、一元化ができれば、喜んでひとつそこへ所管を移したい。そうすることが能率的であるという考えを持っております。
  58. 北山愛郎

    北山委員 企画庁長官はわりあい率直に言われて、非常にその点はうれしいと私は思います。しかし、これは各個の大臣の見解の問題じゃないと思うのです。いま言ったように、これから、統一した一つの方針と、ちゃんとした脈絡のある、統制のとれた機構のもとに——やはり重要な仕事なんですから、それをいまのままにほうっておいて、必要によって法律を直していくのでなく、今度の海外経済協力基金というものを法律として直すなら、やはり輸出入銀行のほうから、あのような政治借款をやるような、ああいう変則的な姿を直さなければならない。おかしいでしょう。政府が外国と交換公文を結んで借款の約束をする。それを輸出入銀行に持っていって、おまえこれやれという。輸出入銀行はどだいそういう機関じゃないのです。それはあの法律の中に、外国の政府に対する借款という条項があるからです。そういう仕事を与えてあるからです。それを取って別なしかるべき機構のほうへ移すとか、やはり筋の通ったことをやるべきだと思うのです。この点はもう少しまじめに取っ組んでいただきたいということを強調しておきたいと思います。  時間が進んでまいりましたので、次に、財政硬直化の問題にちょっと触れたいと思うのであります。  これはもういろいろな角度から論議されましたが、私どもの見解は、いまの財政の状態は、ほんとうの意味というか、致命的な、国際常識としての意味の硬直化ではないのではないか、こういうふうに考えております。というのは、防衛費も、幸いにしていままでのところではそれほど財政を圧迫しておらぬ。国債費もそうだ。社会保障は世界が二十七番目だ。これだって全体の水準から考えるならば、まだまだ低いのです。人件費はどうだ。よく世間では、公務員がふえて人件費がふえるから財政硬直化になる、そういう非常に通俗的なことを言いますが、大蔵省の財政統計を見ると、公務員の人件費の割合は年々減ってきているのです。戦後高いときで歳出の一二・五%、いまは九%に下がっているのです。これは戦前水準と同じですよ。大蔵大臣、これについてはどういうふうに考えておりますか。そういう状態だということは知っておりますか。
  59. 水田三喜男

    水田国務大臣 絶対額は上がっても、比率というものは下がってきておると思います。
  60. 北山愛郎

    北山委員 これは、地方財政にしても、ここ数年来はそういう傾向なんです。地方財政計画の中の人件費というものは、やはり比率としては下がっているのですね。これも硬直化の原因ではない。何が原因かというと、いろいろと直接の問題はあります。たとえば国債発行の政策が失敗した、あるいはまず物価が上がった、しかも毎年毎年恒常的に上がった、あるいはまた、いわゆる高度成長による社会変動のために社会資本需要というものがふえたとか、道路その他都市施設、住宅、そういう財政需要がふえるのは当然なんですから、それが財政を圧迫することはあたりまえですよ。  しかし、それ以外に私どもが指摘したいのは、歳入の硬直化なんです。日本の租税負担率、国民所得に対する租税総額の割合というものは低い。四十三年度でたしか一九・六%、それから四十二年度で一八・五%、アメリカなんかは二七%以上、ヨーロッパに行くと三〇%以上なんですね。そういうふうに、いわゆる国民所得に対する国税、地方税を足した租税負担率は低いのですが、ところが、同じような所得階層で比較してみると、日本は重い税金の国だ、こういう相矛盾したことがあらわれている。これも大蔵省の発表でありますが、たしか去年の秋ですね。日本は重い租税の国であるという発表をされて、そして、同じ標準の世帯、五人世帯でもって百六十二万円とすれば、その平均水準の標準家庭を、イギリスとかアメリカとか、そういう国々と税金を比べてみると、日本の税金はアメリカの五倍であり、フランスの四倍であるというようなことで、大蔵省自身が日本は租税の重い国だということを言っておる。ところが、租税負担率のほうは安いわけだ。低いわけだ。この矛盾は一体どういうふうに考えているか。総理大臣は、参議院の物価の委員会で、日本は税金が軽いのだということをたしか言われたと思う。このことについて、大蔵大臣でも総理大臣でもいいから——租税負担率は低いけれども、同じ階層の税金なんですね。所得税や住民税、そういうものを納める階層の税金は外国よりずっと何倍も重いという、この矛盾した現象をどういうふうに解釈をしているか。
  61. 水田三喜男

    水田国務大臣 負担率の高い低いという問題と——先般総理は軽いということばを言って問題はなりましたが、税の負担の軽い重いという問題は、これはまた別の問題だと私は思います。と申しますのは、負担率は同じであっても、国民の所得水準が低いという場合には、これは非常に税が重いということになりますし、負担率が同じでも、所得水準が高いという場合には、税の負担はわりあいに軽いということがいえるので、その所得水準との関係で比較しなければならぬと思います。そういたしますと、いままでの日本の国民所得の水準から見て、租税の負担率は日本はわりあいに低いということがいえるのですが、実質的には、負担が他国に比してそれじゃ軽いか重いかといいますと、日本はまだ重いということだったろうと思いますが、最近ようやく日本の国民所得も欧州に相当格差を縮めてくるというようなことになってきましたので、そうしますと、日本のいまの租税の負担率、国民の負担率が重いか軽いかということはなかなかむずかしい問題だと思いますが、しかし、いずれにしましても、どこまで税金をかけるかという、いわゆる課税最低限の比較で見ますと、日本は外国との格差は相当縮めてくるということになっていますので、問題は、今後税の率を上げるか、あるいは国民の所得水準に応じていわゆる社会保険の負担料をもう少し上げていくかというようなのが、これからの国民負担の問題だというふうに私は考えています。
  62. 北山愛郎

    北山委員 とにかく庶民感情からすれば、所得税にしても、住民税にしても、非常に重い。しかも、数字的にも、いま申し上げたとおり、大蔵省の発表でも、アメリカとかあるいはフランスに比して、諸外国に比べて高いわけです。庶民の税金は重いわけです。ところが、統計数字で見ると、租税負担の率は非常に低いのだ。ということは、要するに、ある種の所得が捕捉されないといいますか、国民所得の中のある種の所得、率直にいえば、資産所得であるとか、あるいは法人所得であるとかいうものの税が軽いということも大きな現象じゃないか。こういうことで、いわゆる租税特別措置を中心とした政策減税、これの非常な大きさ、これを外国に比べてみると、日本の場合は非常に至れり尽くせりの特別措置をやっているわけですね。この委員会でも毎年毎年問題にするわけですが、お尋ねをしたいことは、政府から、今年度の租税特別措置の金額二千六百何十億、この資料をいただいたわけですが、この影響でもって地方税にはね返っている部分は幾らなのか、これをわかったらお知らせを願いたいわけです。大蔵省でわかりませんか。
  63. 水田三喜男

    水田国務大臣 約百億だそうでございます。——いや、千億です。
  64. 北山愛郎

    北山委員 千億と百億を混同するようですから、大ざっぱなんですが、私の聞いているところでは、去年の場合でいえば、国税の租税特別措置が二千四百十六億ですか、それに地方税関係が七百八十七億ですね。それからさらに、地方税自体の特別措置も約八百二十九億というふうに去年でもあるわけですね。ことしも同じようにあると思うのであります。約千億というのですが、その千億というのは、国税の租税特別措置のはね返り。それ以外に地方税の政策減税がある。それをプラスすれば、この租税特別措置関係だけで、中央、地方を通じて四千億以上のばく大な減免税があるわけですね。それ以外に、租税特別措置に出ないところの、たとえば個人の受け取り配当のいわゆる税額控除であるとか、あるいはその他のいろいろな特別措置が、租税特別措置以外にあるわけです。そういうものを入れますと、私どもは、中央、地方を通じて大体一兆円ぐらいになるのじゃないか、こういうふうに考えられる。この整理を部分的な整理でもすべきじゃなかったのか、社会党はこのことを要求しているのです。今度のいわゆる財政硬直化の解決というのは、こういうふうな、言うならば、高度成長の中でもうけた連中から——しかも、いままでばく大な減税をやっている。その減税の一部を整理して、そうしてその金でもって財政硬直化のいわゆる財政の窮迫に充当すべきであって、それを、酒、タバコを値上げしたり、あるいは国鉄運賃を上げるというような方法で、いわゆる大衆に負担をかけるというのは大間違いだ。ここが社会党といまの政府との考え方の非常な違いなんです。やぼなことを言うようですけれども、もう一ぺんこの点について突き詰めたお考えを聞きたいのです。  ことにことしの政府の資料を見ますと、例の配当所得者の標準所帯に対する課税の最低限がまた上がったですね。二百三十六万三千八百六十六円です。ですから、五人所帯で数千万円の株を持って、その配当金だけで二百三十六万三千八百六十六円、そのところまで配当金所得があっても、一文も所得税がかからないのです。住民税には四万九千円ぐらいかかるだけですよ。もしもこれが事業をやった事業所得であるならば、事業税を入れて六十万円かかる、これが大蔵省の数字にちゃんとある。こんなことをやっていいものかどうか。これはもう即刻こういう不公平なやり方を取っ払わないと、税金を納める国民は承知しないですよ。大半の人はまだ知らないから黙っておるけれども、こんなばかばかしいことをやっておっていいのですか。仕事をしたもの、かせいだものには重い税金をかけるが、何もしない、財産の上にあぐらをかいて、その配当金だけで暮らしているようなものには——しかも何千万円も株を持っている、家屋敷も当然持っている、堂々たる資産家ですよ。それには所得税が一文もかからないというような、そんなやり方を積み重ねて、いま言ったような一兆円の租税特別措置、そういう歳入欠陥が毎年あるから、財政硬直化になるのですよ。取れるところから税金を取っていれば硬直化にならないのだ。われわれの考え方はそうなんですが、この点について、総理大臣でもいい、大蔵大臣でもいいから、ひとつもっと率直な意見をお聞かせ願いたい。
  65. 水田三喜男

    水田国務大臣 いまの問題は、御承知のとおり、法人擬制説からきておりまして、個人の配当所得に対する税金を法人税が先払いしているという考え方から、株式の配当についての控除をきめておる。二重課税を避けるというような考えから、こういう制度になっておるのでございますが、昭和二十五年でしたかからのこの考え方は、ここでやはり変えなければならぬだろう。税制調査会もこの問題とは取り組んでおりますが、非常にむずかしい問題で、法人という性格をどう見るかということによって解決するよりほかございませんので、いまこれと取り組んでおる最中でございますので、この問題は、いまの法人税というものの改正と同時に解決される問題だと思っています。  それから、この特別措置でございますが、御承知のように、日本が自由化を控え、またさらに特恵関税というようなものを控え、常に経済が国際化していく過税において、政策上必要が起こってくるという問題が非常に多うございまして、毎年これはやはり政策の必要上ふえていくという傾向がございますので、今度はそれと反対に、すでに政策の目的を果たしたものはやめていくという流動的な改廃を行なわないと、この制度は固定化してしまうということを考えますので、まず、御承知のように、配当所得、利子所得、交際費というようなものについて、昨年度第一歩の改正をいたしました。そうしてこれを、あと二年期間がございますので、この二年間において次にどういう措置をとるかの検討をするというふうに、逐次従来の措置について見直しをやっております。本年また輸出を振興させるというようなことから新しい措置ができると同時に、既存のものも一部はこれを廃するというようなことで、常にこの問題だけは流動的に見直しをやって改めるべきだと私は考えています。従来、大企業のためといわれておりましたが、いま、御承知のように、やはり資本の蓄積ということのための減税が一番多い。二千大百億の半分以上はこれである。あとのものは、いろいろ産業政策からきているというような問題が多いのでございますが、これはもう大資本のための特別措置というような性格からいま脱しつつあるということも御承知のとおりでございますが、いずれにしましても、これはもう私どもは固定化したり特権化したりすることはさせない、一つ一つ今後これを吟味し洗い直していきたいと思っております。
  66. 北山愛郎

    北山委員 日本の国はそういう企業の上に成り立っているのじゃないのです。日本の経済をささえているのはやはり働いている人なんですからね。そういう人が価値を生んでいるのですから、そういう人たちが納得できないような税制を、やれ国際競争力がどうのこうのといって、しかも、多少のことは資本主義の社会だからしかたがないとしても、いまの日本みたいなのは外国に比べてもどこから見ても至れり尽くせりですよ。いまみたいな日本のこんな、特に大企業、資産階級を擁護しているような税制を持っている資本主義国はないですよ。いま大蔵大臣は法人擬制説を言われた。もうこんなものはカビがはえているですよ。どこの国で一体法人擬制説でもって税制をやっている国がありますか。もうイギリスだってあのとおり労働党政権のもとで新しい実在説というか法人利潤税を導入してやっておるですよ。日本だって法人擬制説をとっているといいながら、擬制説に当然やらなければならぬようなキャピタルゲイン、有価証券課税であるとか、あるいは資産の再評価の益であるとか、そういうものに課税しない、財産税もやめてしまう、そういうことをやって、いわゆるシャウプ税制の法人擬制説の都合のいいところだけは残しておいて都合の悪いところはやめてしまう、そんな筋の通らないことをいままでやってきている。それは大蔵省だってよくわかっているはずなんです。もう少しこの点は勇断をもって、いまのような、われわれからいえば、金持ち天国で働く者地獄の税制と、こう言うのですが、この税制の実態を総理なんかよく見て、ただ委員会で答弁すればいいというものじゃないですよ。それを見て、これと取っ組んで、税制調査会なんというものにまかせるのじゃなくて、もう少し政府が乗っかかってこれを改めるというふうな姿勢をとってもらいたい、私は率直にそう思うのです。だれが考えたってそんなばかばかしい税制はないです。どうですか総理。
  67. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん理論的なお話のようですが、しかし、ものにはそれぞれ段階がございます。私ども政府自身が独断専行するということは避けたい。これは各方面の御意見を聞くという、そういう意味で税制調査会は役立っておると思います。また税制調査会がいわゆる金持ちだけの保護だ、かように言われます、あるいはそれを代弁すると言われますけれども、一体日本にいわゆる金持ちといわれるような金持ちがおるでしょうか。私はそれらの点が、大体いまの国民総生産は、これは世界で第二、第三だといわれていて、そうしてそのパーキャピタとなると、二十一番、二番だといわれている。こういう実情を見ると、私は日本の財産構成あるいは所得構成というものがずいぶん変わっていて、特別な国から批判するわけにいかないのじゃないか。国民大衆ははだしで歩いていても、もっと日本の場合よりも高いところにある国が幾つもございます。私はそれらを考えると、日本は総体としてわりに均斉こそとれているということがいえるのじゃないか。二十一番目であることはそういう意味じゃないだろうか。したがって、いま、何でも基準所得百万円までを無税にしようという、ここに最大の力を入れている、その方向であらゆるくふうをし、努力をし、その点では皆さんからも鞭撻を受けていると思います。ただ、そういう場合に、日本が税の特別措置をある程度とらざるを得ないのだ。これはもう特別措置でございますから、本来税の基本であるべき、公平であるその姿を特別措置という名前でこわしている、これは御指摘のとおりであります。したがって、私は、これがいいといって、これをいつまでも弁護するつもりじゃございません。したがって、先ほど来言われるように、これは硬直しないように、この点でこれが特権化しないように絶えずくふうをし、流動してこれを改正していく、だから、昨年も皆さま方の御要望をいれ、また政府も勇断をもってそれと取り組んで所要の改正をいたしたのでございます。そのことは御承知のとおりであります。私は今日の状態をいつまでも守っていくつもりはございません。しかし、これはやっぱりそのときどきの経済情勢に応じた措置をとらざるを得ない。その目的を達したものをなお存しておくというようなことは私はやめたいと思います。ただいまの配当所得についてずいぶん御批判のあること、これは御意見は御意見として十分拝聴し、また税制調査会等におきましても、そういう観点に立ってもう一度よく検討することはこれはお約束いたして差しつかえないと思います。
  68. 北山愛郎

    北山委員 残念ながらこの問題はいま始まったことではない、長い間の問題なのです。段階的に整理をすべき時期もあったわけです。それをやらないで、むしろ租税特別措置はだんだんふえていくのです。金持ち減税、大企業優遇の税制というのはますます硬直化しているのです。これは言うならば高度成長型の税制だとも言えるわけですね。しかし、四十年代というのは、やっぱり日本の経済全体の成長のしかた、型としても、やはりそんな高度成長型というようなことではなくて、新しいパターンに変える必要があるでしょう。そういう点からしても、あらゆる面において、税制の面においても思い切ってここで改革をする時期がきているのではないか、こう思うので、いつもながらの法人擬制説は聞き飽きましたけれども、ひとつ世界の大勢なり日本の実態をよく考えて思い切った改革を税制の上でもやってもらいたい。  時間が少なくなりましたから、最後に申し上げたいことですが、いま総理は日本における貧富の差といいますか、そういうものがだんだん詰まっているのではないかと言うのですが、私どもはそれはむしろ逆だと思っているのです。たとえば株の保有にしても、戦後株式の民主化ということ、いわゆる大衆資本主義、株はみんな大衆が持つのだといっていたのですが、いまの株の分布配置というものを見ると、もう大株主に集中しているじゃないですか。半分以上は法人が持っている。三五%は金融機関が持っておるのですよ。五万株以上の大株主というのは、おそらく六割以上持っておるのですよ。これはもう少数ですよ。その少数のものが日本の株の大部分を持っているのですよ。株の半数以上持っておればその企業が支配できるのですから、この産業の全体の株の半分以上を持っている少数の連中というのが日本の全産業を支配していると言ってもいいくらいです。そういうふうに集中されているのです。しかもそれを加速しているのは物価の値上がりですよ。毎年毎年五%、六%値上がりを続けている。いわゆる恒常的な物価の値上がりですね。昭和三十五年を一〇〇とすれば現在は一五〇をこしているでしょう。そうすると、三十五年のときに百万円であったものは、現在では六十五万円の値打ちしかないわけです。名目はあるけれども、実質は三十五万円だけはだれかが寝ているうちに盗み取っている、完全犯罪をやっている。いわゆる金融資産、国民の貯蓄あるいは保険とか信託、そういう積み立て金、それから有価証券、そういうもののいわゆる金融資産と称するもの、個人が持っているものは今日で約三十兆円あるわけです。どんどんふえているわけです。これがある年次でかりに二十五兆円とするならば、いま言ったようにこの八年間でもって三割五分というものはなくなっているのですから、約八兆円ぐらいのもの、大衆の貯蓄というものがみんなが知らないうちに忍術使いが盗み取っている、そういうかっこうになる。ですから、毎日毎日の乗りもの代とかあるいは食糧品、こういうものに台所が圧迫をされるだけではなくて、大衆の貯蓄というものが減価されていく、収奪をされていく。これはみんなそういうわけじゃないのですね。その金を借りて投資をした連中は得をしている。昭和三十五年に百万円をそのまま預けた人は今日は六十五万円の値打ちしかないけれども、その百万円を借りて土地を買えば、今日三倍になって三百万円になっているのです。
  69. 井出一太郎

    ○井出委員長 北山君、時間が来ましたから……。
  70. 北山愛郎

    北山委員 要するに、物価の値上がりというものは、一方これによって得をする連中と損をする連中とを分けているのです。これはものすごい富の偏在というものが物価の値上がりによって起こっているということをよく知っていただきたい。  さらに、地価対策ですね。そういう意味で、地価対策の怠慢についても私は追及したかった。私この委員会で地価の問題を取り上げたのは、岸内閣、ちょうど菅野さんが経済企画庁長官のときでありましたが、そのときに取り上げたことがございます。それから十年ぐらいたつでしょう。少しも地価対策が進まないのですね。建設省は宅地審議会をつくったりいろいろやって、いろいろな研究を出したり答申を出したりする。大蔵省もやっている。各団体がいろいろな答申を出される、研究を出されるけれども、これが政策の中に具体化されない。土地税制しかりですよ。そしてこの委員会国会でいろいろ論議が出ると、それは今度でいえば、土地税制は一般的な土地政策がなければ、それが前提とならなければ、税制だけが先行してもだめだなんというような口実でもってまた先に延ばされる、こういうことであってはいけないと思うのです。一年におそらく数兆円の取引がされ、そしてその中でやはり一兆、二兆の所得がこの土地の取引によってあがってくる。そのもうけが表にあらわれないで、一部の連中のふところへ入っていくというところに、いま申し上げたような富の偏在が起こり、またそれがインフレの原因になっているのです。時間がないから残念ながらこれで終わりますけれども、決して総理の言うようななまやさしいような現実ではない。税金においてしかり、物価においてしかりです。そういうふうな単に現象的なことじゃなくて、経済という側面からもものを考え、税金を考え、物価を考えて思い切った施策を、いままでの悪い政策あるいは悪い慣行というものを思い切ってここで断ち切るというふうな姿勢をとってもらわなければ、佐藤内閣の支持率はますます下がるばかりだ、こういうようなことを最後に申し上げて私の質問を終わります。
  71. 井出一太郎

    ○井出委員長 これにて北山君の質疑は終了いたしました。  この際、外務大臣から発言を求められております。これを許します。三木外務大臣。
  72. 三木武夫

    ○三木国務大臣 北山君の発言に関連して、総理の親書、あまりにも見識はずれのような内容を御披露になりましたので、新聞、親書のコピー等を調べた結果、全く新聞紙上にいわれておるような親書の内容ではありません。親書の内容については、公表をいたすことは国際的な儀礼にも反しますので申し上げられませんが、主たる点は、輸入課徴金のごとき貿易制限的措置は世界貿易の縮小を招くおそれがあるので、ケネディラウンドの関税譲許の繰り上げ実施のような貿易拡大の方向で解決さるべきである、またわが国の対米貿易が、課徴金のようなことが万一実施されればその影響は大きい、ことに中小企業に与える影響が大きいので、こういう措置はとらないよう強く希望するというような内容でございまして、北山君の御指摘のようなものは全然ありません。国民に総理の親書に関して誤解を与えますことは非常に好ましくないので、特に発言を求めた次第でございます。
  73. 井出一太郎

    ○井出委員長 次に、田中武夫君。
  74. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、きょうは世界経済の動きを中心に御質問をいたしたい予定でございますが、その前に緊急と思われる二つの点についてお伺いいたします。  そのまず第一点は、本日の新聞にも大きく報道せられておりますが、去る二十七日の東南アジア太平洋地域ジャーナリスト集団説明会で、米戦略空軍のある高官が、嘉手納の基地はB52作戦基地の一つであり、タイのウタパオ、グアム島のアンダーソン両基地と同じ性格を持つものである、こういうことを言いまして、暗にB52が沖縄に常駐することを明らかにしております。もしそうだとするならば、政府は今日まで国会を通じ国民にうそをついてきたことになる。B52は臨時的な駐在である、こう言ってきたわけなんです。したがって、このことが事実とするならば、政府はうそをついてきたのか、それともこの種の問題については常につんぼさじきに置かれて、全然事実を把握していないのか、このいずれかと言わねばならないと思うのです。その点について明らかにしてもらうのと同時に、もし常駐するとするならば、当然B52は水爆を搭載している。すなわち、アメリカの3B戦略といいますか、これの一つであると見るべきであると思いますが、いかがでございますか。
  75. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私ども外交の衝に当たる者は、アメリカ政府の言を信頼するものでございます。いろいろ新聞に出ましても、しかし、政府の言というものを信頼しなければ外交はできないわけであります。  アメリカの政府は、恒久的なB52の基地にする意思はないという意向を伝えてきておりますので、いま田中議員がお読み上げられましたような、永久のB52の基地にするというようなことは、私どもは信じていないのでございます。  また、B52が水爆を搭載しておるのではないかということでございますが、私は見たわけではございませんが、極東に水爆、原爆等は使わないということを繰り返しアメリカは言っておるのでありますから、使わないものを搭載して、もしも何かの事故でも起こったときは、これはアメリカの世界的な信頼を失うことになりますので、私はさようなことは信じていないのであります。水爆は搭載してないと信じておるわけであります。
  76. 田中武夫

    田中(武)委員 先日のこの委員会で、わが党岡田委員が指摘したように、たとえば松前・バーンズ協定、これが事実あった。政府は条約なり、あるいは協定等で政府間に約束をしておく。ところが事実はそうでなくして、制服と制服とがいろいろな、その協定あるいは条約とは違うことを現にやっておる。今日にいたしましても、いま三木外相は、政府の言うことを信じておる、こうおっしゃるのですが、政府はそう言っておっても、事実軍のほうでは着々とそういう方向に進んでおるということが、先日の委員会でも明らかになったと思うのです。したがって、それはもっと、政府がこう言うから私は信じております。そういうことでなくて、実態を調査してもらいたいと思いますが、いかがですか。
  77. 三木武夫

    ○三木国務大臣 実態調査というと、われわれはやはりこれはいろいろな関係を持つわけでありますから、絶えず関心を持つわけでございますが、われわれとしてはやはりアメリカ政府の言というものを信頼し、その上に立って外交を進めるということが常道でございます。また、アメリカの政府が、意向に反するような行動をすれば、これはアメリカの不信行為でありますから、これはまた別個の問題で、外交を進めていく者としてはアメリカの政府の言を信頼する、これが基本的な立場でございます。
  78. 田中武夫

    田中(武)委員 政府はそう言っている。だがしかし、現実に政府の間にはいろいろなことが、政府が知らないことが行なわれている。これもその一つではなかろうかと思うのです。したがって、これは十分外交ルートを通じて事実を確かめてもらう必要があると思います。いかがでしょうか。   〔委員長退席、北澤委員長代理着席〕
  79. 三木武夫

    ○三木国務大臣 政府間の、政府の意向、それを信頼しつつ外交をやっておるのですから、それに反するようなことがないということは信頼であると同時に、絶えずわれわれが関心を持つことは当然のことだと考えております。
  80. 田中武夫

    田中(武)委員 本題でないので、私はこれであまり時間をとりたくないのですが、これは、ただアメリカの政府がそう言っておるから盲目的に信頼をするということではなくて、これは常にそういう事態に対しては申し入れをし、あるいは実際に調査をするような方向をとってもらいたいことを要望します。  もう一つは、きょうの新聞にも大きく社会面に出ておりますが、問題をあちこちに起こしております王子の野戦病院についてであります。これはもう総理御承知のように、地元住民はヘリコプターの発着の騒音あるいは伝染病だとか、風紀の問題だとか、さらに教育上大きな支障がある等々で、これに対してはあげて反対をしておることは御承知のとおりであります。地元の区会あるいは都会、保守党の人も含めて全会一致でこれの反対を決議しております。また美濃部都知事は、そのことについて政府に対して申し入れをし、あるいは米当局にも申し入れをしたと聞いておりますが、政府はこれに対して一体どのような措置を考えておられるのか。さらにどこの世界をみても、首都の都心に野戦病院があるというようなことが考えられますか、こういう事実はどこかありますか、お伺いいたします。
  81. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、病院は野戦病院ではないようでございます。これは総合病院をつくった。総合病院にしろ、ただいま町の中である。そういうことで、なかなか理解がしにくいということですが、私のほうの政府がとりました処置、その詳細につきまして、厚生大臣から、お答えいたさせます。
  82. 園田直

    ○園田国務大臣 いまの病院の件につきまして、伝染病が私の所管でありますので申し上げます。  地元住民の伝染病の不安と、この開設の問題とは、とりあえず別個に、伝染病をどう阻止するか。ただいままでの覚え書きでは、周期的に情報を交換することになっておりまして、実際の現実を確認することができません。それでは不安でございまするから、外務省を通じて、二十一日の午前十一時に、米陸軍の軍医総監と、私のほうの公衆衛生局長と、現地の病院長と会談をいたしまして、次のような申し合わせをし、さらに、この申し合わせば、昨日の日米合同委員会で正式に了承されたものでございます。  その際、まず、ただいま問題になりました野戦病院であるかどうかということは、看板には野戦病院とは書いてございません。(「書いてある」と呼ぶ者あり)書いてございません。ただし、これは軍病院になっております。  そこで、その申し合わせを見ますると、これは文書をもって正式に了承されたものでありますが、第一は、「王子陸軍病院は、いわゆる野戦病院ではなく、完全な病院機能を有する総合病院である。ベトナムで負傷した軍人等は、野戦病院及び中間病院を経て当病院に搬送されるものであって、直接ベトナムから王子陸軍病院に運ばれるものではない。」、軍人軍属等もともにこれは入院をいたしております。  二番目、「厚生省防疫担当官又は地元保健所長は、随時王子陸軍病院長を訪ね、防疫対策について協議できること。」、これは協定によって立ち入り検査という名目はとれませんので、病院長をたずねるという形式をもって病院内の確認をすることになっております。  三番目、「今後も必要の都度、王子軍陸病院問題について、本日のメンバーで会合をもち、防疫上の諸問題について、その解決にあたるものであること。なお必要ある場合には、地元保健所長を加えることに同意する。」病院の規模は、四百ベッド、隔離病棟、いわゆる伝染病用の病棟は置かない。  四番目に、前もって文書を取りかわしてありまする国際衛生規則に基づく検疫法の伝染病患者、ペスト、コレラ、発しんチフス、天然痘、黄熱、回帰熱、これは搬入をしないことをさらに確認をする。  なお念のために申し上げますが、王子の病院は、看板が野戦病院になっていないばかりではございません。あれはアーミーホスピタルで、これは軍病院、その軍病院の出先が基地病院、これは空軍基地あるいは海軍基地、その先に野戦病院、野戦病院の先が帰還収容所、その先が第一戦戦揚の収容所、その先が救護所、こうなっております。
  83. 田中武夫

    田中(武)委員 野戦病院とはどんなものか、総合病院とはどんなものか、そういうことについて論争をしようとは思っておりません。そこで、これは政治的判断として、総理に一言でよろしいから答えていただきたいのですが、御承知のように、とかく問題を起こしておる。しかも、地元はあげて反対をしておる。総理は日本の総理であるならば、日本国民がこれだけ反対をし、これだけ危惧の念を持っておる問題について、どう対処せられようとするのか、それだけをお伺いしておきます。
  84. 三木武夫

    ○三木国務大臣 地元が非常に不安に思っておるということは事実であります。しかし現在は、地元民の不安、衛生上の不安あるいは騒音、風紀上の不安がある。これは厚生大臣もいまお答えしましたように、最善を尽くしたい。しかし病院は、条約土地位協定によって四十年の末から病院を置くことにしたわけであります。建設にかかったわけです。したがって、病院のことでありますから、いますぐにこの病院を移転するということは、実際問題として合理的な解決だとは私は思いません。しかし、やはりアメリカの施設が都心にあるということは——できるだけ都心を離れていくようにアメリカと話をするということは、私は方針としてはそういう方針で臨まなきゃならぬ。だんだんと整理をしたのでありますけれども、王子などは、まあ残っておる数少ない施設の一つであります。もし王子の病院が移転をするということになれば、これはやはり代替地の問題も起こってきますし、相当な時間をかけなければなりませんので、やはり将来の方針としては、できるだけアメリカの施設は都心を離れるような話し合いをアメリカとの間にしていきたい。これは方針。  現在のところは、住民に対して非常な不安を与えないような衛生上とかその他の最善を政府は尽くしていきたい。これが現在の政府の考え方でございます。
  85. 田中武夫

    田中(武)委員 ともかく、地元住民の人たちが、あるいは国民が納得のいくような方策を講じていただく、そのことを要望しておきます。総理、いいですか。
  86. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 地元住民の不安を除き、同時にまた、皆さん方が納得のいくような処置をとる。かようなことにおいて政府が善処する、これは当然でございます。
  87. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは本題に入っていきたいと思います。  まず第一に総理にお伺いしたいのは、暫定予算をいま審議しておるわけですが、暫定予算を提出するということは、これはもう例外中の例外です。しかも、前例を見れば、国会解散とかそういったような政治的変動があったときだと思うのです。今回はこういうことについて初めてだと思うのですね。これは本来なら内閣は総辞職でもするくらいの重大な政治的責任を負わなくてはならぬような問題ではなかろうかと思うのです。この暫定予算を組まねばならないような事態に立ち至った政治的責任について、総理はどのようにお考えになっておりますか。
  88. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は戦後かような事態はなかった、また、さような事態を起こしてはならない、これはもうはっきりしておる。ことに与党が多数を制しながら、この種の事態が起こるということ、さようなことがあってはならない。ただいま言われるごとく、政府は、そういうような事態が起こる、これについては総辞職を考えたり、あるいは解散を考えたり、そういうような重大なる決意を持って臨むべきものだ、その御趣旨には私も賛成でございます。しかし、今回暫定予算を組まざるを得なくなったその理由を考えてみますと、与野党ともたいへん熱心に御審議をいただいたにかかわらず、どうも国会空白を生じた。私は国会審議が停とんしたとは申しませんよ。しかし、とにかく空白だったことだけは事実です。しかし、その事柄は、ただいま申し上げますように、皆さん方も何とかして審議を進めようということでずいぶん御心痛なすった、かように私は理解いたしておりますので、そういう意味でこのことはやむを得なかったんではないか、かように思います。そういう意味で、この種の事柄は憲法でも予定していないような事柄だ、私はかように思います。私の責任を責められることも当然でありますが、同時に、この種の問題を起こさないように、今後ともはっきりした態度でその審議第一に、国民の信頼を深めるように一そうの御協力を得たいと思います。さような意味におきまして、今回のこの予算審議、これは前例になるような事柄ではないと、かように私は思いますので、十分それらの点も御勘案願いまして、今回の暫定予算の御審議をお願いする次第でございます。
  89. 田中武夫

    田中(武)委員 こういうことになった大きな一つの原因は、閣僚の憲法否定の暴言だったと思います。それはそれとして、こういう事態になるならば、政府は総辞職するか、あるいは国会責任があると思うならば解散をすべきだと思うのです。まあしかし、(発言する者あり)法制局長官と言うておるけれども、法制局長官が答弁するなら、財政法三十条に暫定予算の規定があります、だからこういうことはあらかじめ法は予定しています、くらいなことしか言えないと思います。そんなことで時間をとりたくないので、こういうことだけを申し上げておいて、今回は例外中の例外である、したがって今後は、ちゃんとした政治責任のルートに従って処置をしていく、そういうことで次に進みたいと思います。いいですか。   〔北澤委員長代理退席、委員長着席〕
  90. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一言お答えしておきます。  ただいまのような暫定予算審議せざるを得なくなった、これは政府責任だ、かように言われますが、国会法は政府責任を追及するはっきりした手続をきめております。その点も十分御理解いただいて、その手続のもとにおいてその信不信をはっきりさすべきだとかように私は思います。
  91. 田中武夫

    田中(武)委員 いま私は国会法を取り上げて総理と問答する考えはございません。しかし、総理、法律論でやるのですとお相手つかまつりますが、国会法のどこにどんな規定がありますか。お相手つかまつります。
  92. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは田中君がたいへん法律の専門家だからただいまのような御発言をなすったと思いますが、私はただいま田中君といわゆる法律論をしようとは思いませんが、ただいま申し上げるように、政府不信任だ、かようならば、これは堂々と国会において不信任案を提出して、しかる上でその不信任の所在をはっきりさす、これが本来の筋だ、かように私考えるのでございます。これは別に田中君と法律論を申し上げるわけじゃなく、むしろ政治論を申し上げておるような次第でございます。
  93. 田中武夫

    田中(武)委員 内閣不信任案、こういうことだと思うのですが、何も国会法は政府責任あるときはそうしろというようなものじゃないのです。まあこれはそれでいいでしょう。  そこで、次に質問に入っていきますが、この前に、二月二十四日ですか、当委員会において世界経済の問題について若干の質問をいたしました。その後、御承知のようにほんとうに激動を続けたというか、あるいはまた、いままで世界経済が体験しなかった未知の状態に入ったといいますか、そういうような激動の中にあって、日本の経済を守り円の価値を維持していくことは、究極のところは国際収支の改善であろうと思います。そこで国際収支の問題につきまして若干お伺いいたします。  政府は、当初一月二十六日に、来年度、四十三年度の国際収支の見通しを立てられました。それでは貿易収支が一五・二%輸出が伸びて二十億ドルの黒字になる、貿易外収支では赤字幅は四十二年度並みで十二億ドルだ、そうして経常収支で六億ドルの黒字、長期資本収支で四十二年度を若干上回る九億五千万ドル、そしてそれの総合いたしました積算の上に立って四十三年度末には総合収支は三億五千万ドルの赤字にとどまる、こういうように立てられたわけなんです。その後いろいろ問題が起こり、あるいは、その立てられるときに当然その積算の基礎になったと思われる問題について逐次お伺いいたします。  そのまず第一点は、四十三年度中に、すなわち来年度中にベトナム戦争は終結するという上に立って積算せられたのか、あるいは終わらないという上に立って計算されましたか、お伺いします。
  94. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は、いずれを考えてみましても不確定要素でございますから、不確定のまま考えております。
  95. 田中武夫

    田中(武)委員 しかし、ベトナム戦争が年度内に終わるか終わらないかによって日本の国際収支に大きな影響を与えると思うのです。したがって、その積算のときには、終わるであろうか終わらぬであろうかということについては、閣僚間である程度の討議が行なわれ、そして(「仮定の問題だ」と呼ぶ者あり)仮定であります。もちろん仮定でありますが、その見通しを立てるためには、これはこうであろうということになったのじゃないのですか。これはもう全然見通しなしですか。
  96. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはいい要素も悪い要素もございますので、必ずしもどちらということは申せません。私ども、したがって、これは終わる終わらないということは不確定のまま見通しをいたしました。
  97. 田中武夫

    田中(武)委員 総理、これは不確定要素ではあるけれども、日本から見て、早く終わるのがよかろうとかなんとかというような見通しを持って、そして、同時に、そのために総理みずからが努力をする、そういうことが基礎にならなければ、国際収支の改善ということについての第一の問題にひっかかってくると思うのですが、どうでしょう。
  98. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま私、田中君と宮澤君の質疑応答をそばで聞いておりまして、両方とももっともなことをおっしゃる。ただいま申し上げますように、私どものベトナム問題についての希望、これはぜひ和平へと、こういうことはもう率直にたびたび申しております。しかし、経済見通しの上で、これがやんだらどうなる、また、続いておればどうなると、こういう一つの幅のある見方はもちろんいたします。しかしながら、これは最終的な問題として取り上げた場合には、不確定の状態だし、また、いま率直に申しましたように、プラス、マイナスの両面がございますから、一応それらのものを除いて、そうして経済見通しを立てた、かように御了承いただきたいと思います。
  99. 田中武夫

    田中(武)委員 少なくとも特需がどうである、終わったならば、特需がどうなる、そのかわりにベトナムの復興のためにどういうことになる、そういうことを一応計算をしてやらなければ、見通しの積算の基礎というものはあいまいであろうと思うのです。まあそれはその程度にしておきます。  その次に、この見通しを立てられてから、いわゆる金プールの停止といいますか、金の二重価格制というのが起こってきました。こういうことは、もちろんその当時は予定をしておられなかったと思うのです。したがって、この金二重価格制というものは、これは相当長く続くと見ておられるのか、それともほんのしばらくの間の緊急措置だと見ておられるのか。そのことが日本の国際収支に対してどのような影響を与えるかということについてどう考えておられます。
  100. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 十一月十八日でございますか、ポンドの切り下げがございましたところまでは見通しに立てております。したがって、四十三年度は支払い手段がかなり不安定であろう、そのことは貿易成約にとっては決していい要因ではない、こういうことは見通しておりました。まあ二重価格ということをおっしゃいますが、ああいうことは私は支払い手段のやや不安定要素として、契約をやりにくくはいたしますけれども、しかしアメリカ、ドイツ、フランス等々が相当の経済成長を四十三年度はいたすと思われますので、その力のほうがやはり強いだろう、大まかにはそういう考え方で見通しを立てました。一五%余りの輸出も、その上に立っております。したがって、当面起こっております問題、成約をやりにくくするという環境であることは確かでございますけれども、私は一五・何%の見通しをいま変える必要はない、努力をすればできるという考えでおります。
  101. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、このような金価格の二重制あるいは金プールの停止、こういうことは日本経済に対して何ら影響は与えない、そのように把握しておられるわけですね。
  102. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これはポンド切り下げ以来起こった一連のキーカレンシーに対する不安でございますから、悪い要因であることはもう間違いございません。ただ、それでもおそらくアメリカ、ヨーロッパの経済成長はするであろう、したがってわが国の輸出は伸びる、こう考えておるわけです。
  103. 田中武夫

    田中(武)委員 そういたしますと、このキーカレンシーの禁止といいますか、それを切り抜けるための時間かせぎとしての金の二重価格制、それによってますます、アメリカのドル防衛は締めつけてくると思います。そういう中にあって、世界は今後デフレ傾向をたどると見ておられますか。インフレに参ると見ておられますか。このことが日本経済に大きな影響を与えると思いますが、いかがです。
  104. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは学者の議論としては私いろいろあると思います。私はそういうことが起こるとは思っておりませんが、学者の論ずるところでは、金の評価がえでもすれば、それは終局的にはやはりインフレになるのだという見方が強いように思います。ですけれども、私はそういうのを当面の問題と思いませんので、やはり一九六八年の世界貿易は六%ないし七%伸びるであろう、そういう見方でございます。
  105. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、これは最初一月二十六日に国際収支の見通しを立てたときからあまり変わらない、日本経済には影響を与えない、そういうふうに把握しておられるわけですね。また、現にきょうからですか行なわれるストックホルムの先進国十カ国蔵相会議、ここでおそらくSDRの問題も出るだろうと思います。これがうまくSDRの発動へつながると考えておられますか、いかがです。ドゴール提案をも含めて、ひとつ見通しをお伺いいたします。
  106. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはさだかではございませんけれども、まずかりにいわゆるオプティングアウトの問題が起こるといたしましても、それについては妥協をすることが可能なのではないかというふうに、私は自分としては想像するわけでございます。期待もいたしておるわけであります。しかし、いずれにしてもこのSDRの発動というのは、六八年年内の問題ではなかろうと思いますので、これが発動される体制になるということでこのキーカレンシーの問題が落ちついてくる。六八年内における影響は、私はそういう種類の影響ではないかと思います。
  107. 田中武夫

    田中(武)委員 このSDRがかりにうまく話がまとまったとしても、それは来年度中には発動しないことははっきりしております。しかしながら、そのこといかんがやはりキーカレンシーのピンチにかかわる、ドルの危機ともいう問題との関連において日本経済に相当な影響があると私は思うのですがね。いかがですか。
  108. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、IMF加入の各国が努力をした末SDRというところへたどりつこうとしておるわけでございますから、もしこれができないということになれば、その影響は非常に大きいと思います。
  109. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、この十カ国蔵相会議で、おそらく日本とかあるいはスウェーデンですか、そういったいわゆる金プール会議に出席をしていないというかできない国——日本は蔵相はここにおられますが、次官が行っておられますけれども、そういう国に対して同じような要求、提案がアメリカからなされると思います。すなわち、通貨当局は自由市場から金は買わないでくれ、こういうことだと思うのです。それはのむだろうと思います。いかがですか。そういう提案があると思うのです。その場合はのまざるを得ないと思うのですが、どうですか。それとも自由市場で金を買いますか。
  110. 水田三喜男

    水田国務大臣 この十カ国蔵相会議は、もっぱら今度はSDR中心の会議であると思います。フランス、日本、参加しなかった国にいま言ったような要望があるかどうか、この会議を通じてあるか、個別にあるか、これはまたわからないと思います。
  111. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、この会議でなかったかあるかは別として、日本は金市場から金を買いますか。自由市場から買いますか。
  112. 水田三喜男

    水田国務大臣 工業用金というようなものは、今後二重市場ができましたら自由市場から買うよりほかしかたないと思います。しかし貨幣用金は、これはアメリカが従来と同じように一オンス三十五ドルで売るということでございますので、これのほうは心配ございませんが、工業用は自由市場から買うよりほかないと思います。
  113. 田中武夫

    田中(武)委員 自由市場から通貨当局というか政府が金を買わないでくれという提案がおそらくアメリカからあると思うのですよ。ところが、あなた買うのですね。ここをはっきりしておいてくださいよ。買うのですね。
  114. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは産業用の問題は別でございまして、貨幣用の金を市場から買わないというのは、この間のプール加入国の決議でございます。
  115. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、十四トン来年度買うことにしていますね。それはいままでの国際価格、グラム四百五円に基礎を置いて計算をしている。これから自用金市場でそのような価格で十四トンの金が買えると思いますか、いかがです。
  116. 水田三喜男

    水田国務大臣 当初予定した金の価格は、自由市場から買う場合には変更になりますので、したがって必要量を確保するというためには予備費とかそのほかの問題が出てまいりましょうし、そうでなくて数量を調整して買うということでしたら、いまの予算の中から買える。これはもう少し先にいって実情を見てきめる問題だと思います。
  117. 田中武夫

    田中(武)委員 そうしますと、国際価格のグラム四百五円では買えない。そうすると、もうすでに予算が開始する以前にあの貴金属特別会計では数字を変更しなければならぬことになります。そのことが一つ。  それからIMF加盟国の百十七カ国のうちで、アメリカが希望しておるようなことばかりやるという国ばかりとは限らない。したがって、その加盟国の中の特定のある国がドルとの交換を迫る。そうして手に入れた金を自由市場に売って利ざやをかせぐという、こういう状態が起きてきたときに、かりにもしそういうことであるならば、金とドルとの交換はお断わりしますとアメリカが断わったときには、ドルと金との交換は停止ということになります。そういうことは絶対ないという確信は持てないと思うのです。百十七カ国の中にはいろんな考え方を持っている国があると思うのです。現に金が二重価格制をとらねばならぬという状態に立ち至ったのは、いわばドルの部分的の——一部分ではあろうが部分的の切り下げであります。そこで、四十三年度中にドルの切り下げ、すなわち金価格の引き上げ、さらに、そのための、あるいはそうしないためのドル防衛の締めつけ、これが今日以上に重くならないという確信はお持ちでしょうか、どうでしょうか。そのことが国際収支に大きな影響を与えますが、いかがですか。
  118. 水田三喜男

    水田国務大臣 最初の問題でございますが、御承知のように四十四ドルまでいってこれが三十七ドルまでまた下がって、四十九ドル、四十ドルというふうに金の価格は浮動しております。したがって日本がこれを買うという場合には、この値段の推移を見て買えばよろしいので、二重価格ができたとはいいましても、今後いろんなことが予想されています。案外金が下がるのではないか、もし貨幣用金を各国が買わないとする場合には、相当供給過多の現象が起こるのじゃないかということもいわれておりますし、したがって、今後日本が必要な産業用金を買おうとする場合には、この価格の推移を見て善処すればいいのじゃないかと思います。  それからもう一つの、はたして七カ国のこういう決定が世界各国によって守られるかどうかということは、これは実際大きい問題でございまして、いろいろな国際会議を通じて今後この相談はいろいろ始まると思いますが、これはまだ世界全部が歩調をそろえていくというようなことを早計に楽観するわけにもまいらない問題で、ここにまだそういう意味でいろんな問題が残っておるというふうに私は考えております。
  119. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、私の言っておるのはそういうことであるので、四十三年度中にドルの平価切り下げというようなことは行なわれると見るか見ないのか、ポンドの再引き下げということはあると見ておるのか、ないと見ておるのか、それが先ほど言ったような特定の国が、金プール会議の決定に従わず、アメリカに対してドルと金の交換を迫る。そこでアメリカがそれを断わるようなことがあれば、これはドルと金との交換停止になりますね。しかもそれをやった国が自由市場へその金を売り出す、そうして差益金をもうけるという国がぼくは必ずあると思うのですよ。そういうことをも含めてドル防衛は可能であると見ておるのか。そのためにはもっとドル防衛のための締めつけというか、これが日本の輸出その他に大きな影響を与えてくるのではないか。そういうことを総合的な判断の上に立って、最初立てられました国際収支の見通しと今日の状態においてはどうなんですかと聞ているのです。
  120. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、ポンドはこれで落ちつくと思います。と申しますのは、最初からいわれていましたように、一四・四%の切り下げ方が少ないということでポンド不安は残っておりました。しかし今回この問題を解決するために、イギリスに対して、特に国際協力による援助が大きくきまりました。と同時に、またアメリカが国際収支の対策から——実際はアメリカももう少し公定歩合を上げる必要があったと思います。しかし、これはポンドに響きますので、こういう点の考慮から、アメリカが公定歩合をあの辺でとめたという事情もございますので、この国際協力と、それからアメリカのポンドに響かないような対策というこの二つの処置によって、一応ポンドは私は落ちついたと思っております。したがって、ポンドの相場も安定しておると思います。  問題はドルでございますが、ドルも結局はアメリカの国内政策の問題でございまして、この対策がきちっとできて、アメリカの国際収支の赤字解消策がとられるなら、これはドルの安定ということはもう世界の通説でございますが、いよいよアメリカはこの問題に真剣に入ったということは事実でございますので、先般の七カ国の会合、その場で示された英米の態度——すでにイギリスのほうは予算を通過させておりますが、イギリスの態度も明確になりましたし、アメリカの方向もはっきりしてきましたので、ドルもいまおっしゃられるような今年度切り下げというような事態が起こることは絶対にございません。
  121. 田中武夫

    田中(武)委員 そのためにはドル防衛の強行施策というものが必要なんです。したがって、たとえば繊維の輸入制限法が抜き打ち的に、日本の保守党がよくやる手ですが、上院を先日通りました。これは保護貿易主義者の台頭です。さらにまた、増税ということに関連を持つ、すなわちドル防衛に関連を持つ旅行税は否決せられましたね。アメリカはことしの秋に大統領あるいは下院の選挙を控えて、そういった国内的な増税その他の締めつけの政策はあまりとれない。そこで輸入課徴金等々外に向かっての締めつけをしてくるわけです。その場合、日本は経済的にどういう影響を受け、それがひいては国際収支にどのような関係を持ってくるかをお伺いしておるわけなんです。
  122. 水田三喜男

    水田国務大臣 この影響は、私どもはこれはいろいろ配慮しております。正確な数字を申し述べる段階ではございませんが、アメリカがたとえば輸入を普通にしておけば今年度二十五億ドルくらいの輸入がふえるであろう。これをせめて五億ドル縮めたいというような考えであるとするのでしたら、アメリカ貿易に占める日本のシェアというようなことから考えても、日本にどれくらいの影響があるかということも想像されますが、しかしそういう想像だけではいかぬ問題が国際経済の中にはたくさんございます。普通ならアメリカがそういう措置をとったら世界貿易は縮小の方向へ行くのでございますが、そういう方向で解決してはならぬというのが欧州を中心にする諸国の最近の考え方でございまして、要するに赤字国を助けるために、赤字国が他の国にデフレ波紋を起こさせるような形では何にもならない。よその国に影響させないで全体の拡大をはかるというためには、黒字国が自分が赤字になる覚悟をしてこの赤字国の赤字を埋めるということが一番いいのだ。(発言する者あり)いや、これはそういう割り切り方をしており、またこの間の金プール諸国の会合でも、この方針をはっきりきめたということで、欧州はおそらく金利を上げない、そうして拡大政策をとってくる、そうして国際収支の赤字を覚悟するということでございますから、こういう方向の形でいまの問題が解決されるという、いわゆるほんとうの意味の国際協力が行なわれるのでしたら、日本のアメリカで失ういろいろなマイナスも、これを埋める方法はあるというようないろいろなことを考えまして、当初見積もった見通しを変える必要があるかないかというのは、これは始終私どもは考えておりますが、いまのところまだこれを変える必要はないというのが、私どもの考え方です。
  123. 田中武夫

    田中(武)委員 答弁を聞いておって、まあせいぜい長生きしなさい、こう申し上げたいと思うのです。あなたといま議論をする時間がございませんから先へ進みたいと、こう思うのですが、しかしどうですか、あまりにも甘い考え方じゃないですか。黒字国、すなわち西欧諸国、EEC、これがあげて協力をすると思われますか。EEC諸国は、アメリカのベトナム道楽をやめてくれ、財政支出に対してこの間の金プールでも二百億ドルの削減を要求しておる、そういう状態なんですね。それでなおかつあなたはそのように甘く見ておられるとするならば、私は、大蔵大臣として世界経済の見通しがあまりにも楽観過ぎる、こう申し上げて、次にまいります。  それでは次に、貿易外収支に大きな関係を持つと思うのですが、スエズ運河の閉鎖は、本年度中に解かれるという上に立たれましたか、それとも相当長期にスエズ運河の閉鎖は続くという上に立たれましたか。かりに直ちにスエズ運河の閉鎖が解かれたといたしましても、中に沈んでおる船とかそういうものを引き揚げるためになお数カ月は必要だ、こういうのです。したがいまして、スエズ運河封鎖によるところの運賃その他の貿易外収支に対しては、どのような積算をなされましたか、お伺いをいたします。
  124. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは確かに計算をいたしました。ただ、こういう要素がございます。つまりスエズが封鎖されているという状態がある程度常態と申しますか、ややノーマライズされてまいりましたために、それに対処する対処側のいろいろ施策が進んでまいりまして、ある程度のマイナスはあろうけれども、昨年のような、昭和四十二年席のような一億八千万ドルほどの支払い増加にはなるまい。おそらく五千万ドル見当であろう、こういう出与え方をしております。
  125. 田中武夫

    田中(武)委員 それは、スエズの閉鎖は続くと見た上でですか。
  126. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは実はいろいろ説がございましたのですが、私は、これは不確定要素で置いておけ、わからないじゃないかというふうに決断いたしました。
  127. 田中武夫

    田中(武)委員 わからないことを聞いてもしようがないですから、次へまいりますが、この四十三年度は、本年度四十二年度に比べて、いわゆる国際協力といいますか、国際経済協力、東南アジア等に対する援助、これはふえないという上に立って積算をせられましたか、いかがですか。日時に、ホノルル会議、あるいはいまスハルト大統領も来ておりますが、そういう問題も含めて、四十三年度は四十二年度よりか東南アジア等々に対する国際援助はふえない、こういう上に立っておられますか、いかがです。
  128. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国際援助といいますと、まず次本収支の負債の部、本邦資本の流出のところに入るわけであります。そこで、四十三年度は直接投資が三千五百万ドル、借款が九千五百万ドル、証券投資ゼロ、一応の計算でございますが、本邦資本は、延べ払い信用を、一応私ども積算の根拠としては四十二年度よりかなり多い、数千万ドル多いという計算をしております。借款もやや多い。直接投資は多少多い。こんな計算をしております。実数を申し上げますと、四十二年度の場合は申し上げてよろしいのではないかと思いますが、直接投資が一億余り、延べ払い信用が五億余り、借款が二億数十万ドルでございます。
  129. 田中武夫

    田中(武)委員 それにプラス数千万ドルを積算した、こういうことですか。
  130. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 さようでございます。
  131. 田中武夫

    田中(武)委員 こういうような激動を続けておる中にあって、日本の国際収支がどうもうまくいってない。さらに低い外貨準備、こう考えたときに、国際収支の改善についてはもっとシビアにものを考えていくべきではなかろうかと思います。さらに外貨準備が薄過ぎる、天井が低いということは、常にいわれております。しかし、三十二年から三十五年のこの間にかけて、日本は外貨準備を十四億ドル近くふやしておるわけです。今日のいわゆる成長をそう犠牲にしなくても、私は外貨準備をふやせる可能性はあると思うのです。それができないところに一つの問題がある。これがいわゆるドルのかさの中にある円だということだと思うのです。  そこで、こういう機会に政府は経済政策としてひとつ思い切ってやらねばならぬ問題が出てくると思うのです。そのまず第一点は、外貨補強のためにどういう施策をとるべきか、と同時に、それに関連するところの設備投資については、どういう考え方で臨むべきか。すなわち経済の安定を先にすべきか、成長をとるべきか、あるいは成長安定の半ばをとってどのような政策をとるべきか、こういうようなことが、一つの大きな問題になると思いますが、これは総理から、今後の外貨準備、国際収支の改善、あるいは国内的に設備投資の規制ですか、そういうような問題についてどのような方針でまいらねばこの激動する世界経済を乗り切ることができないかどうかということをお答え願いたいと思います。
  132. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来、田中君から各方面にわたってのお尋ねでございます。いま国際経済そのものとして今日予見されないような幾つかの問題がございます。それらの問題はただいまの質疑で一応この際は触れないことにいたしまして、そうして次に進んで、ただいまのわが国の外貨、これはいま私どもの内閣として一番の問題で、国内では物価安定、同時にまた国際収支改善、この二つが課せられた大課題だ、かように思っております。そこで、両方がお互いに因となり果となりつなぎ合っておる問題でもございますが、その立場でものごとを見ますと、国際収支改善と取り組んでいく場合に、いままでの外貨保有、これは適当なりやいなやという議論がございます。また、その場合も、ドルでなくて、金の保有が一体適当かどうか、こういう問題もございますけれども、それらの点も含めていまの外貨総保有量、これが二十億前後では少ないだろう、日本の経済力から見てもっとふやすことを努力しなければならぬだろう、これにはしばらく時間をかしていただきたい、こういうことを申しております。というのは、一面におきまして経済は成長してまいりましたが、なお今後とも経済の成長に、国内の成長に努力していかなければならない。そして輸出を振興して、そのいわゆる国際収支を改善していくという努力を払うということでございます。  そこで、設備投資を抑制すればこれですべてが鎮静するじゃないかという簡単な考え方もございますけれども、同時に私どもは、設備投資は経済成長上どうしても必要だ、かように実は考えておりますので、一方的にこれだけを抑制するというわけにもいかない。今日そのとっている態度が非常に不徹底じゃないかといっておしかりを受けますのも、同時に経済成長ということも考えざるを得ない、そしてそのもとにおいて輸出を振興していく。産業の国際競争力を強化するが、同時にまた、一面で輸出に適当するような、国内消費等についても勘案をしながら、ただいま改善をはかっていく、こういうような考え方であります。たいへん抽象的な、基本的な考え方だけ申しまして失礼でございますが、一応御了承いただきたい。
  133. 田中武夫

    田中(武)委員 こういうような事態の中にあってこそ、私は日本の経済外交といいますか、それを変える一つの好機ではなかろうかと思うのです。すなわち、貿易面では出入りともに三〇%以上をアメリカに依存しておる。資本面においても六〇%以上をアメリカに依存しておる。このアメリカ依存型、言いかえるならば、よく安保体制と言われております。これは政治的、軍事的な意味に使われておりますが、この円がドルのかさの中にあって、そういった日本の経済がアメリカに寄りかかっておるというか、アメリカまかせの経済の点が、私は安保体制の経済の問題だと思うのです。したがって、貿易構造を転換する、あるいは借金で成長を続けてきた中におけるアメリカ依存型を改めていく、この必要があろうと思いますが、いかがです。
  134. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは私そうだと思います。貿易の先にしても、長短期の資本の取り入れ先にしても、やはりこれは分散化するということが大事なことだと思います。
  135. 田中武夫

    田中(武)委員 それではここで経済協力の問題についてあとお伺いいたしたいと思いますが、まず最初に、憲法七十三条三号で言うところの条約とは、どういうものですか。
  136. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 これはむしろ私からお答えするよりも、法制局長官からお答えしたほうがいいのじゃないかと思いますが、私のほうでお答えいたしますと、大体あそこに申します条約と申しますのは、財政事項、法律事項等も含みました国際約束でございまして、行政権の範囲内では締結し得ないような国際約束だというふうに了解しております。
  137. 田中武夫

    田中(武)委員 憲法七十三条三号の条約は、国連憲章百二条によって国連事務局へ報告し、国連事務局によって公表せられるものと一致しますか、どうです。
  138. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 国連憲章に申します条約と申しますのは、一般に国際約束を言っておりまして、憲法で申しますいわゆる条約と申しますのは、憲法上で条約と言っておりますから、必ずしも一致しないと思います。
  139. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは経済協力協定のすべては、国連事務局へ国連憲章百二条によって報告しておるのですか、していないのですか。
  140. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 これは私全部が全部をチェックしてみませんからはっきりお答えできませんが、しておらないと思います。
  141. 田中武夫

    田中(武)委員 そのしておらないというのは、それでは同じ経済援助協定、形は、タイプはいろいろありましょう。そのうちのどういうものが憲法七十三条の三号で言うところの条約であり、国連憲章百二条に基づくものですか、報告しておるのですか。国連憲章では、すべての国際協定と書いてあるのです。二国間においてあるいは数国間において結ばれたすべての協定、これは報告し、事務局において公表するとなっておるのです。
  142. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいま御質問の条約は、先ほど条約局長が答弁したところと同じでございます。いずれにしましても、条約は国際間の国家としての権利義務の関係、これが発生し、消滅し、変動を加えるようなものが、根本の考え方であろうと思います。これから御発展になる論議の過程の問題かもしれませんが、行政権が法令の範囲あるいは予算の範囲においてやるというようなものは、必ずしもそこには入らない、そういう意味で、国連憲章の条約協定等には、やはりおのずから国際間の取りきめという広い意味ではそういうことになりましても、国連憲章との間で関係を生じるものはそのすべてではないと言ってかまわないと思います。現実にどうしているか、これは私不案内で申しわけございませんが、御説明できません。
  143. 田中武夫

    田中(武)委員 時間の関係がありますので前に進みますが、この憲法七十三条三号の条約とは、その名称のいかんにかかわらず、これは条約と言おうと、協定と言おうと、交換公文と言おうと、その名称のいかんにかかわらず、二国間において文書をもって約束したものはすべて入る、これが憲法の通説であります。そしてその前の二号ですね、二号でいうところの外交関係、これはいまあなたがおっしゃったように行政権の範囲であります。これは通常の外交関係を指さしておるわけです。したがって、私は二国間が文書をもって意思の交換をする。これはすべて七十三条三号の条約である、これは佐藤功さん等でございますが、この通説に従いたいと思います。いかがでございますか。
  144. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 いま御指摘の佐藤功教授の見解も私は大体承知しておるつもりでございますが、いまおっしゃいました二国間の取りきめというものはすべて憲法七十三条の条約に入るのではないかというお話でございます。事が法律問題でございますので、ややもう少し精細にこれを言わないとぐあいが悪いと思うのでありますが、要するに二国間の政府間でやるもの、これを御指摘になっているかどうかは存じませんが、その政府の間の権能の範囲内でお互いの政府が約束をするということであれば、これは政府が法令上与えられた権限の範囲内、あるいは予算でいえば予算の範囲内ということでございますから、それは憲法の条約、国会の承認を得べき条約ではないと考えております。外交事務の処理としてやって差しつかえないものだと心得ております。
  145. 田中武夫

    田中(武)委員 文書による二国間の合意、これはすべてここで言う条約であるというのが佐藤さんの学説——私は何も学者がこう言ったからどうとは言ってないのです。  そこで、具体的に見ますと、いわゆるこの援助協定、いろいろな型がございますが、あるものは国会の承認を得、あるものは政府だけで国会には全然わからないうちにそれが行なわれるというようなこと。そこで二国間協定等について若干調べてみますと、その中に文書の上に幾らかのニュアンスの違いがある。その国で定められた法律の範囲内だとかなんとかというようなことが書いてある。したがって、これをもって七十三条三号で言うところの条約でないから国会の承認は必要でないと、こういうような逃げ方をするであろうとは考えますが、結局は同じことなんです。そのことによって、交換公文であれ、協定であれ、日本が義務を負う。それが国である、あるいは国でなくして、国の機関である——だから、機関であるからということで逃げると思うのですが、いずれにしても国民の血税である。それを支払うところの義務があるならば、当然国会の承認を得べき条約であり、さらに憲法八十五条でいう国の債務負担行為であろうと思いますが、いかがです。
  146. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 田中先生のおっしゃる趣旨はよくわかります。よくわかりますが、何でもかんでもこの協定を遂げた場合に、すべて条約として国会の承認を要するかどうか。これはいま始まった問題ではございませんが、私どもといたしましては、たとえば法令の範囲内においてある種のことを約束をするという場合には、国会法律を改正すれば、実は行政権としては何ともしかたがない、そういう限度内の事項についての約束でございます。したがって、国会はその法律をいかように改正しようと自由で、そこには国会を拘束する何らの意義はないわけでございます。したがって、その法令の範囲内、つまり政府としてできる範囲のこと、それについて相手と約束をしていることでございまして、先ほどもお話がありましたが、新たに債務負担行為をするということになりますと、これはいわゆる予算で認められたもの等でなくして、後年度に及ぶようなことになりますと、それは国会の承認との間で関係を持ちますが、そうでなければ、いわゆる予算の範囲内であれば、先ほどの法令の範囲内と全く同様と心得て、承認を受けておらないわけでございます。
  147. 田中武夫

    田中(武)委員 具体的にお伺いしますと、たとえば昨年の六月九日にジャカルタで交換せられたインドネシアの対日延払債務に対する再融資に関する交換公文、これは国会の承認を得ておりませんね。この条文を見てみますと、なるほど「日本国の関係法令に従って供与される。」とかなっておりますが、これによって日本は四千五百万ドル、円にして百六十二億円をともかくインドネシアに貸しましょうということの義務がここで発生しておるのと違うのですか。これによって発生するのと違うのですか。そうなら、これが七十三条三号でいうところの条約であるのかないのかということと、もう一つは、この文書によって日本が負担したところのこの行為は、憲法八十五条でいうところの国の債務負担行為ではないのか。外務大臣、どうです。あんたがやっておるのですよ。
  148. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま法制局長官がお答えいたしましたように、予算の範囲内または法律の範囲内では、条約として国会の承認を受けないで、行政処置としてやっておるわけでございます。このインドネシアの借款においても、あるいは延べ払い等においても、もとの資金については国会の御承認を得ておるわけであります。その範囲内で政府が、たとえば輸銀あるいは基金等によって借款契約を結んで、輸銀自身あるいはまた基金が直接にやるわけで、政府は借款の場合においても大ワクをきめて、総額とか、あるいはプロジェクトの種類であるとか、あるいはまた通貨であるとか、こういうものをきめて、実際の契約は輸銀とか基金がやるわけであります。したがって、全般としていろんな例の場合においても、行政処置としてできる範囲内というものは、政府自身が法令あるいはまた予算の範囲内でできるという解釈のもとに、国会の承認を得ていないというのが例でございます。
  149. 田中武夫

    田中(武)委員 予算においてとか法令の範囲内でとかいうことばを入れることのみによって国会の承認を素通りいたしまして、そういうことが何でもできるというような考え方に、私は抵抗を感じます。しかし、ここでこまかに法制局長官を相手にやっている時間がございませんので、これはあらためて海外基金法の改正のときでもじっくりとやらしていただきます。  そこで、総理、きょう国賓としてインドネシアのスハルト大統領が見えております。このスハルトさんが見えました意図は、よくわかっていると思う。これは少なくとも一億ドル以上の援助がもらいたい。佐藤さんは去年インドネシアに行って、三分の一くらいは持たねばならぬだろう、こういうようなことを言っておるのですね。したがって、ことしは三億二千万ドルをインドネシアは予定しておるですね。その三分の一というから一億ドル以上ということが、これは佐藤公約ととられておる。ところが、予算の範囲内と、こういうが、予算ではいまのところ六千万ドルを考えておるのですね。これをどういうように処理せられますか。
  150. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 けさほども、約一時間ちょっと皆さんにも御迷惑をおかけしたような状態でございます。ただいまインドネシアに対して経済援助を幾らできるか、これは官民合わしてどういうようになるだろうかと、いろいろくふうしておる最中でございます。ただいま御審議をいただいておりますものが、経済基金としての六千万ドル、そうしてまたそれについての法律改正もございますから、ただいまの状況で政府はまだ、先ほど来ここで御議論なさいましたように、法令の範囲できめるといたしましても、きまらない状況でございます。それらの点を実はスハルト大統領にもよく話をしておる。ただいま政府自身が気持ちがありましても、きめかねる状況にある、この実情は十分述べておるような次第でありまして、その点は順次わかってくれるのじゃないだろうか、かように私は理解しております。  なお、滞在中、まだ一両日ございますので、さらに重ねていろいろ交渉を持つだろうと思いますけれども、これも主としてインドネシアの実情を聞くことが主体になるだろうと思います。  ちょっと長くなりまして恐縮ですが、実は私、昨年インドネシアを訪問いたしました際に、スハルト大統領代行——当時は代行でありますが、国外に出たことがないというような話でありますので、大統領になられた上外国を訪問される、こういうようなことがあれば、そのときにはイの一番に日本をぜひ訪問してください、こういうようなお話をした経緯もございます。今回大統領に正式に指名を受けた、その最初の外国訪問、これが日本になったというその意味におきましては、スハルト大統領は私との約束をそのまま実行に移している、かように考えますし、友好関係におきましては依然として変わらない状況でございますし、今回のこの訪日を機会に両国の親善関係を一そう深めたい、かように思っております。そうしてただいま御指摘になりましたような経済援助の問題、これの実情等もいろいろ話し合いますけれども、ただいまの状況におきましては、日本政府予算のまだ成立しておらないこの段階におきまして、これらの問題に触れることのできないことを、よく実情をお話しするつもりでおります。
  151. 田中武夫

    田中(武)委員 予算の範囲内といって、六千万ドルは一応考えておる。したがって、六千万ドルの上になるのか、その範囲内なのか、そのことについて腹づもりはお持ちですか、いかがですか。こういうことをいまこの段階で聞くのはいかぬですか。
  152. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 六千万ドル、これも今回はふやしておりますけれども、経済基金のこの問題、その範囲内というものは、これは一国に対するだけの問題ではございません、基金が相当ございますから。それらの点がそう余裕のあるものでもございませんけれども、他の国に対する援助と、そこらに融通ができるものかどうか、成立した後にとくと考えてまいるということでありまして、ただいま六千万ドル、六千万ドルと、かように申しておりますが、特に増加分が六千万ドルだ、かように私理解しておりますので、さらにこの点は成立の上十分考えていきたいというのであります。
  153. 田中武夫

    田中(武)委員 少し時間の関係で飛ばしますが、通産大臣、輸出保険特別会計といいますか、輸出保険の会計を見ましたときに、四十二年度から急激に回収金あるいは保険金の支払いが増加しておる。なぜかと調べてみますと、これはすべて——すべてというか、大部分が、インドネシア輸出に対してその代金が焦げついて取り立てできない。それを国がかわって商社に輸出保険で支払っておる。ところが、それに対する回収金がどうなっておるかを調べると、先ほど読み上げました再融資に関する交換公文によって、輸銀から四千五百万ドルの金がインドネシアへいく。その金がくるくる回って、今度は回収金として輸出保険の会計へ入ってきておるわけです。言うならば、先ほど私が言っている、国会を素通りしたところの交換公文によりまして、やはり日本の金、国民の金、これが輸銀から出て行って、それが回り回って保険会計へ入る。その金は、業者に保険として支払ったものの回収金として入る。日本の金がくるくる回っておるだけなんです。そういうことで国民が納得するでしょうか。しかも、輸出保険法一条の四ですか、これは、輸出保険は、この保険料率の中で独立採算制をとるということがうたわれておるわけですね。ところが、そういうことで、保険金を支払ったから金がなくなったということで、昨年の補正予算で三十億という金を一般会計から輸出保険へ入れておりますね。そして、それが商社に払われておるわけなんです。しかも、その回収金は、先ほど言ったように、この国会を素通りしたところの交換公文によって、輸銀から出た金がずっと回って、また日本の保険会計に入るということ、そういうやり方はどうなんです。これは国民が納得すると思いますか。しかも商社は、親方日の丸、絶対に損をしない。そういうことで、経済援助だといって怪獣映画を輸出したりしておるのですよ、そうでしょう。そういうのも経済援助だといって、法令の範囲内だとか、予算の範囲内だとかいって、国会を素通りしたところの交換公文で裏づけをしていくということはいかがですかな。
  154. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 インドネシアが外貨不足で、国際債権国会議が開かれまして、日本もそれに参加しておることは御承知のとおりです。それで、急にああいういろんな政治上の動乱のために、したがって経済関係も非常に混乱をいたしまして、いま外貨不足で払うことはできない。そこで、各国で相談をして、これにリファイナンス、借りかえを認めよう、そして結局は、弁済期日を延ばすということなんです。それは、ただそれをやるわけじゃない。そういうことで、一部リファイナンスをしてこれを繰り延べて、そして期限の到来したものについては、保険事故として届けられましたので、それを輸出保険特別会計のほうで、国家のほうで支払っております。
  155. 田中武夫

    田中(武)委員 いま、ああおっしゃって、日本の法令の範囲内と言っているが、その法律をぐるぐる持って回って、結局は日本の商社を助ける。そして、インドネシアの焦げつき債権を日本の金で払ったり、国民の金で払ってやって、それがまた日本へ戻ってくる、こういうからくりといいますか、これを問題にしておるのです。そういうことが総理理屈はともかくつきましょう。しかし、国会を抜きにしてやられていいと思われますか、どうです。
  156. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この点につきましては、皆さん方も見のがしてはいらっしゃらない、あらゆる機会にそういう点を追及されておる、かように私は理解しておりますが、ただいま申し上げますように、基本的には、その法令の範囲内でやるのでございまして、それを逸脱してはやらない。しかして、十分その目的を達しておるかどうか、こういうことが問題で、そういう点についての説明がしばしば要求されれば、政府は忠実に、また誠実にいたします。
  157. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、法律を悪用しておる、まあ、こう言いたいのです。いま効果とおっしゃいますが、インドネシアにいままでにやった援助等についてはどうなっております。インフレがどんどん進んで、十分に民衆のためには絶対なっていないのですよ。少なくとも、日本の国民の金で援助するんです。したがって、インドネシアの民衆のために使われなくちゃならない。いままでは、私は時間がないから飛ばしますが、一部の商社とか、一部の人たちの私利私欲のために、この賠償とか援助が使われなかったとは言い切れないと思うのです。したがって、ひとつどうなんでしょう、この援助のあと、協力のあとを追跡し、その効果を調べるといいますか、そういったような機関を置く必要があると思いますが、どうです。
  158. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま田中君から御指摘になりましたその点が、実はたいへん大事なことだと思います。今回も、スハルト大統領と私が相談をいたしまして、日本も力相応の、あるいは相応を越しての実は援助をするのだ、したがって、この援助が十分効果をあげるように、いわゆる経済の成長並びに安定に役立つように使われたい、これはインドネシアばかりじゃございません、後進開発途上の国に対する援助が、しばしばただいま御指摘になったような批判を受ける、そういうことは、たいへん本来の筋から申して違うから、こういう点、十分効果あらしめるような方法をひとつ考えようじゃないか、それで、両国の事務当局の高級官吏、それらの会合によって、こういう点がさらにトレースされる、計画の当初から十分取り上げられ、そうしてそれがトレースされること、さようなことが望ましい、こういうことを申しました。これについては、スハルト大統領も気持ちよく聞いてくれて、なかなか言いにくいことをよく言ってくれた、そういう意味で、向こうももらっているわけじゃありません、借金でございますから、その借金が国民の負担になるという、そういう関係において十分効果をあげるようにしたい、かように申しておりまして、その大筋においては、ただいまのところ、日イ両国間の首脳者の間では意見の一致を見ておるわけであります。私は、こういうことが最も大事なことだ、かように思いますので、率直に実は申し上げ、また、田中君がただいまお尋ねになるこのことも、ただいまスハルト大統領が来ているその際に、この点を国会でも明らかにしろ、かようにおっしゃること、私は、時宜を得たもっともな事柄だと、かように思います。
  159. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、三十三年の二十八国会では、インドネシアに一億八千万ドルにのぼるところの焦げつき債権をキャンセルする決定をしておる。その後、総額で幾ら出ておるのか。もうこまかいことはお伺いいたしませんが、相手は——これはスハルト大統領が来ておるときにちょっと失礼かもわからぬが、会計、いわゆる国の財政に頭から海外援助ということを見込んで組んでおるのですね。六七年には三五%、六八年には二三%をもう海外援助で組んでおる。しかも、そのやり方といいますか、日本から援助する、先方からいえば輸入権ですね、これを、IMFの勧告で、BE、すなわちボーナスエクスポートという制度によって、いわゆる一つの輸入権を売りつける、そのことによって財政の収入金にするといったようなこのやり方等については、こういう中から、私は、いろいろなうわさなり、いろいろな勘ぐりが出てくるわけなんです。そういうように、相手国の受け入れの状態というものを十分見なくちゃならぬと思うのです。少なくとも、財政硬直とかなんとかおっしゃいまして、国内におきましては国民に耐乏生活をしいております。物価はどんどん上がっております。その中で血の出るような金を援助するのですから——私は、東南アジア諸国に対して援助はいけないとは言いません。援助をするんなら十分に効果のあるような方法でやってもらわなくちゃならないし、あるいはそのあとは十分効果をあげたかどうかという追跡と確認が必要だ。そして、その結果は国会に報告すべきであろうと考えますが、いかがでか。
  160. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのインドネシア援助、これはIMFの勧告により、各国共同してこの援助をするということでございますから、一国対一国、こういう関係でないことは御了承がいくだろうと思います。したがいまして、ただいまも、アムステルダムにおける三億二千五百万ドル、これを日本はそのまま承認したという状態でもございません。さらに、これらの点につきましても、日本には日本の立場もございますから、この見方についてさらに検討を必要とするものもございます。またスハルト政権のもとにおきましては、インドネシアにおきましても、これらのものが国民大衆の利益になるように、そういう意味で、これは真剣に取り扱おうということでございますから、ただいま一がいに過去の状況だけで批判することもどうかと思います。私は、過去は過去、将来の問題は将来の問題として、その誠意にこたえたいし、またお互いに協力するという、そういう状況でこの問題を解決したいと、ただいま真剣に取り組んでおるような次第でございます。
  161. 井出一太郎

    ○井出委員長 田中君、時間が迫っております。
  162. 田中武夫

    田中(武)委員 インドネシアに対してだけ、どうも特別扱いというか、特別な考え方を持っておられるように見受けるわけなんです。たとえば、昨年、総理は二度にわたって東南アジアへ行かれました。それぞれの国で共同声明というものを出されました。しかし、他の国と比べて、現に戦っておる、戦争をしておるところの南ベトナムとインドネシアだけでは、その表現が違うのですね。インドネシアの安定が極東の平和に直接つながるというような意味の文章を出しておられます。またホノルル会議でもこれが問題になったという。これというのはインドネシアの賠償です。さらに今度は、インドネシアに商品を援助するために、輸銀ではできないので、基金法を改正しようというようなことをいま国会に出しておられます。こう考えてくると、なぜインドネシアのみをそう特別扱いするのか。これはインドネシアがアメリカの東南アジアにおける一つの大きな拠点となる、戦略拠点になる、そういうことではなかろうかと勘ぐります。  時間がないので、さらに続けます。インドネシアの豊富な天然資源、これはいろいろありますが、もう申しませんけれども、これは財界からも大きな魅力だと思います。しかしながら、まず第一に、七一年からはイギリスが東南アジアから撤兵する。この財政硬直の中にあって防衛費だけがまかり通っておる。そういうような点、あるいはまたホノルル会議で、先ほど言ったように特別扱いにせられておる。こういう点を考えてみたときに、資本主義の中にあって、資本が裸で進出することはないのです。このような点を考えてくると、何だか東南アジアに対して、われわれが知らないうちに、憲法の上からいって、どうも困るようなことが既成事実として起こるのじゃないか、こういうような心配をしておりますが、そういうことはないのだとはっきり言ってください。資本が裸で出ていくということは、資本主義下では絶対にないのですよ。
  163. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 結論から申しますが、軍事的な問題に、さらに私どもは、憲法を越えて軍事的な行動に出る、さようなことは絶対にございません。  そこで、さらにつけ加えて申しますが、今日まででしたら、経済援助をいたしますと、相手の国からしばしば経済侵略ということばを使われたものであります。しかし、今日、日本の援助を心から望んでおりますのは、もう日本が新しい国になった、昔のような軍国主義の国ではない、したがって、もう経済侵略というようなことばを使う必要はなくなった、こういう日本国に対する信頼のあらわれでもあるのでございます。その点を日本国民にもよく理解していただきたいし、また社会党の皆さん方にもまず理解していただきたい。そうして、ただいまの問題について私もう少しつけ加えたいのは、インドネシアにはずいぶん未開発の資源がある、そういうものが産業界や財界から希望されておる、確かにそのとおりであります。私は、言いかえるならば、これは一部の産業界やあるいは財界が希望しておるだけではない。日本の国益からも、日本の国の経済繁栄のためにも、この未開発の資源は、日本のために役立つのだ、そういう大きな国益の観点から問題を見るべきだと思います。そうして、いろいろ御指摘にはなりましたが、私どもがいまやっております東南アジア諸地域に対する経済援助、これはマレーシア、シンガポール、さらにタイ、ビルマ、インドネシア等が中心である、この点をよくお考えをいただきたいし、さらにインドやパキスタン、さらにまたカンボジア等も、すべてが同じような観点に立ちましてこれに当たっておる、かように御理解をいただきます。
  164. 田中武夫

    田中(武)委員 答弁は、あれば伺いますが、求めようとも思っておりません。一つの提案をいたします。  アメリカ国民、ことにジョンソン政権は、少しおごり過ぎ、自己過信におちいったと思います。ドルの神話はもう消えております。通貨戦争といわれておるのは、これはやはり経済だけの問題でなく、政治問題であります。そこで、どんなに日本の優秀な、たとえば宮澤企画庁長官のような人が経済政策の粋をこらしたとしても、こういう中においては、私は限界があると思うのです。そこで、結局日本が将来どのようなビジョンを持つのか、それは、ベトナム問題あるいは安保体制の問題も含めて考えていくのかということをはっきりさせることが、私は円価値の維持あるいは日本経済の自立性につながると思うのです。日本の、まあ政治指導者といいますか、保守党の方々は、戦前と戦後の二回にわたってアメリカに対しての評価を誤っておる。戦前、戦中においてはアメリカを過小に評価しておる、その結果があの状態になった。戦後はまた過大に評価をしておる、その結果が、今日のように、ドルとあるいは核のかさにおいて身動きができない状態に立っておる。こういう状態をこそ改めるべき好機だと私は考えます。  これをもって私の結論といたしますが、ひとつ、こういうふうに世界が流動し、世界経済が動揺しておるときこそ、あらためてここに日本の経済政策を反省し、そして薄い外貨の信用を高めていくとか、あるいは国際収支の改善をはかっていくとか、経済自主性を取り戻すときではなかろうかと思います。  以上、総理に提案をいたしまして、終わります。(拍手)
  165. 井出一太郎

    ○井出委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。  午前の会議はこの程度にとどめ、午後は一時十分に再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後零時四十九分休憩     —————————————    午後一時二十一分開議
  166. 井出一太郎

    ○井出委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐々木良作君。
  167. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は、民社党を代表いたしまして、現在の国際通貨危機の問題に焦点をしぼりまして質問をいたしたいと思います。  ただ、その前にちょっとだけ……。御承知のように、本予算案が本委員会において審議中に、例の日本海における漁業の安全操業の問題で相当な波乱が起こったことは事実でございまして、私は、いま日本の漁民というものが右から左から縦から横から、いろんな意味で苦悩にあえいでおると存じます。ちょうどモスクワにおきましては、日ソ漁業交渉がまつ最中でありますので、ほんとの質問に入る前に、ちょっとだけ私はこの問題について政府の決意をお伺いをいたしたいと思います。  第一の問題は、御承知のごとく、ソ連の大陸だな宣言に伴いまして、いわゆるカニ操業の抑制問題が関係漁民の間に相当重要に問題視されておるところでありますが、まず第一に、西カムチャツカ水域の大陸だな宣言があったといたしましても、昨年の日ソ漁業委員会におきまして、四年間日本の自由操業が取りきめられておることは御承知のとおりであります。したがいまして、昨年取りきめられたこの約束は、十分に今度の交渉に当たってもわが国の立場の基本になることでございまするから、自由操業の確保をはっきりと約束され得ると思うのでありまするが、この点に対する政府の決意を承りたいと思います。  あわせて第二点といたしまして、ベーリング海の西岸、それから沿海州の東岸、それから樺太沿岸、千島列島沿岸等につきましては、ソ連の大陸だな宣言もございませんが、従来は全くこの地域は自由操業水域であったのでありまするけれども、今回ソ連側から、この水域について完全な操業停止を提案してきたというふうな話が伝えられておるように承ります。これらの問題は直接に中小漁業者の死活に関する問題でございまするので、私は従来の方針を堅持して政府は交渉に当たっておられると思いまするが、念のために決意をまずお伺いをいたしたいと思います。——農林大臣でしょうか。
  168. 西村直己

    ○西村国務大臣 日ソの漁業交渉でございます。ポイントはおっしゃるとおりの問題が出ておるわけでありまして、簡単に経過を申し上げますと、日ソの漁業委員会の第十二回の定例会議が三月一日からモスクワで開かれておりまして、サケ、マス、カニについて、例年のとおり資源状態の検討を相互に検討する。これは漁獲量それから規制措置について審議を行なっておりますが、ただいまお話しのように、ソ連側からサケ、マスの休漁区の設定、沿海州等の海域におきます日本のカニ漁業の操業停止、きびしい規制措置を言い出してきたのであります。われわれのほうとしましては、この点は日ソ漁業条約の規定に準拠いたしまして、科学的な基礎に立って、資源の保存には十分考慮を払うという点はもちろんでありますが、審議は尽くしまして、わが国の漁業の実績、これを中心といたしまして、漁業の利益を最大限に確保してまいるという決意でございます。  第二の点は、大陸だなの点でございます。これもただいまお話しがありましたように、簡単に申し上げますが、経過は簡単でありますが、このほどソ連側から、日ソ漁業委員会におきまして言及をしてまいりました。しかし、わが国といたしましては、カニはあくまでも公海の漁業資源であるとの従来の立場に立ちまして、本問題を現行条約のワク内で処理するかたい決意でございますことを申し上げます。
  169. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 さらにもう一点だけお伺いをいたしたいと思います。  私がこれから質問をしようといたしておりまする通貨問題と関連をいたしまして、昨年の暮れ、イギリスのポンド切り下げが行なわれましたが、これに伴いまして、これはいろいろなところに影響が出るものだと思いますが、北洋漁業、特にカニ、サケのかん詰め輸出がイギリスに向けられておる分が非常に多かった現状から、大きな影響を受けつつあるように承っておるわけであります。  この問題についてまず第一点は、母船式の漁業におけるいまのやり方でありますと、独航船からの売魚方式のその際の交渉価格が、言うならば母船の大企業のほうに圧迫をされ過ぎて、したがって、その犠牲が中小企業の形でありまする独航船側に出てくる、こういう感じがだんだんと強まるようでありまするので、政府においては、独航船側の組合組織を充実することによって、そのような弊害を改めるように指導をされるべきだと思いまするが、その方針について承りたい。  さらに、同じ意味でもう一点だけ。いまの組合方式に改めるといいましても、現在はまだそのような状態になっておらないわけでありまするから、現在母船側と独航船側との価格交渉に、言うならば大企業の圧力が中小企業に加わり過ぎておる状況にかんがみられまして、その売魚価格に対しましては政府が適正なる基準をつくって、そして、その価格の適正基準に従った交渉が行なわれるような指導を行なわれるべきではなかろうか、こういうふうに思うのでありまするが、あわせてお答えをお願いいたしたいと思います。
  170. 西村直己

    ○西村国務大臣 まず最初に、イギリスのポンドの切り下げで、イギリスに相当出しておりますことは事実でありますが、これの影響でありますけれども、これは簡単に申し上げます。  サケ、マス、カニ、これのかん詰めでありますが、サケとそれからカニにつきましては、四十二年度はすでにポンド切り下げ前に成約されておりますので、影響が比較的少ない。  それからもう一つはマスでございますが、マスかん詰めのほうは、これにつきましては生産量がふえてきている、こういう点も一つございますので、現在国内に在庫が増加している。しかしこれも消費が比較的固定しているから、非常に憂慮すべきような状況ではないけれども、今後の市場の需給状況等、十分われわれは気をつけてまいりたい。  それから、第二の、母船式のサケマス漁業におきます売魚価格でございますか、これにつきまして、母船式の業者と独航船業者とが売買する場合に値段がたたかれやすいじゃないか、こういう御質問だろうと思います。それに対してめんどうを見たらどうだろうか、簡単に申し上げますとそういう御趣旨と思うのでありますが、今日の段階では漁法上いずれもそれぞれが御存じのとおり独立の漁業者である。したがって、独立した経済主体の中での相互取引で、価格におきましても自主的にいろいろな経済事情の中からこれが折衝のもとに毎年取りきめが行なわれておる。したがって、政府の立場から申しますと、自主的な交渉というような点は尊重をしていかなきゃならない、これに直接介入ということはできないのでありますが、ただこれに対してはわれわれは相当関心は強く持ってまいりたいという気持ちでございます。
  171. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 この問題は残した問題のままで先に行きたいと思うのでありますが、しかし、農林大臣は御承知置きをいただきたいと思います。漁業法の第二条におきましては、漁業というのは「水産動植物の採捕又は養殖の事業」、漁業者というのは「漁業を営む者」、こういうふうに規定されておるはずであります。したがいまして、いわゆる母船式漁業というその母船というものについては、われわれが率直に感じるところでは、この漁業法第二条のワクの中に入り得るものかどうかということも、私は非常に疑問に思っておるわけであります。先ほど申し上げましたような意味で、国際的なあおりを価格の面においてこうむり、さらに安全操業の面においても同様なあおりをこうむりつつあるいまの日本漁業に対しまして、格段の注意を払われて適切なる指導を行なわれることを特に要望いたしておきたいと思います。  それでは本論に入りまして、私は現在の国際金融通貨の問題を中心としてお伺いをいたしたいと思いますが、念のためにまず官房長官にお伺いをいたします。(「まだ来ていないよ」と呼ぶ者あり)それなら大蔵大臣、かわってお答えいただいてもけっこうです。総理大臣のほうならなおいいのでありますが、私ども民社党は、三月十六日に、例の問題が起こりました直後、「国際金融危機に関する申入書」というものを総理大臣あてに私が持参をいたしまして、官房長官を通じて申し入れを行ないました。簡単でございますからちょっと朗読いたしますと、「国際通貨危機は、今や加速度的に深刻化し、金融恐慌直前の重大なる段階に突入するに至った。わが党は、ここ数年来、ポンド、ドルの不安、わが国金準備の不足等、国際金融情勢について警告を発し、その対策を要請してきた。にも拘らず、ドル過信の歴代政府は、無為無策に終始し、今日の危機を迎えるに至った。歴代自民党政府責任まことに重大である。」これが最初の見出しでありますが、「わが党は、その政治的責任を追及するとともに、取敢えず次の緊急措置を要請する。」こういたしまして、三つとりあえず並べておきました。第一は、「国際通貨危機は、わが国の円価値に重大な危機を招来しつつある。政府は緊急に国内金融恐慌にそなえる総合的かつ基本的政策を確立し、いやしくも中小企業及び勤労国民等の経済弱者に対する犠牲転嫁にならざるよう、特段の配慮を払うべきである。」これが第一点であります。第二点は、いま新予算案が国会審議中でありますが、この新予算案はこのような事態の以前に編成をされた予算案でありますがゆえに、特にこの「新予算の執行に当っては、今後のこの国際的な経済情勢の推移に対処いたしまして、財政支出の繰りのべあるいは補正予算編成等の弾力的な措置を十分に考慮すべきである。」というのが第二点であります。第三点は、「政府は、アメリカの政府に対して、その国際収支の回復と国際通貨危機対策として、ベトナム和平の早期実現、アメリカの自国内のインフレの抑制、さらに輸入課徴金等のような、従来ドル防衛に協力した友好国に責任を転嫁するような措置は断じて排除するように申し入れ、善処を行なうべきである。」こういうアメリカに対する要請を含めた三点の申し入れを行なったわけであります。十六日当時、私が使いをいたしまして、官房長官を通じての総理に対するわが党の申し入れでございますが、その当時官房長官は、趣旨は十分了承いたしました。緊急に政府関係閣僚並びに日銀総裁等の関係の方々のお集まりをいただいて、この問題については総合的な対策を検討するつもりである。そしてその際には十分民社党のお考えもその中に取り入れて検討させていただきたいと思います。こういう返事でございましたが、その後、この問題についてどういう段取りでどういう相談が行なわれ、わが党の要望がどのように受け入れられておるか、まずその概略を承りたい、こう思うわけであります。
  172. 水田三喜男

    水田国務大臣 民社党の御意見は伺いました。こういう国際通貨の不安のときに処してどうすべきかという一番重要な問題は、やはり日本の国際収支を均衡させて、円の価値を守るということが一番大事なことでございますので、従来政府のとってきたこの政策を続ける、そうして新予算を発足させて、情勢を見て機動的な運営をするということが、やはり一番大事な政策であるというふうに私どもは考えております。と同時に、先ほど金融問題がございましたが、こういう政策を続けていくというときに当然考えられることは、中小企業へのしわ寄せを金融政策において避ける、これが重要だと思いますので、これに対する対策は万全を期すということで、この対策をいろいろやっておるというのが現状でございます。
  173. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま官房長官が来たようでございますが、私から一応お答えいたします。  ただいま一、二、三と分けてお話しになりました。その一は政府の国内に対する施策でございます。この点につきましては万遺憾なきを期するといいますか、そういう意味で経済関係閣僚の間で対策をそれぞれ慎重に作案しておる状況でございます。第二の問題は、今後予算ができ上がりました後に、もちろん四十二年の予算執行にあたりましても臨機応変の処置をとってまいりましたが、四十三年は特にまたそういう意味においての対策が必要だ、かように思います。したがって一と二はまず御希望どおりになるんじゃないか、かように思います。  第三の問題としては、米国に対する各種の注文であります。これについては米国自身がどういう態度をとるか、一つの問題でありますが、しばしばこれについては他の機会にすでにお答えもしておりますように、米国自身が本来の自分たちの問題として真剣に取り組んで、早期に対策を立ててくれないと、これに協力したものが非常に困るんだ。ことにいま御指摘になりましたように、今日まで国際基軸通貨を強化する、こういう意味で積極的に協力したもの、こういうものがその突然のドルの異変に、変化を来たすような政策をとられた場合に特に不利益をこうむるような事態が起こらないように、これはぜひとも注意してほしいとか、あるいはまた、貿易、中小企業に対する影響等、ただいま課徴金あるいはその他これに類似のもの、これについての成り行き、米国がとる対策、これを十分注視しておるというのが現状でございます。特に私、いま佐々木君も御指摘になりました、今日まで日本はドルにも協力してきた、そういうものが置き去りになって非常な不幸を見ないように、こういう点を御指摘になりましたが、その点については大蔵当局におきましても特に注視しておるつもりでございまして、すでにそういう意味の点の連絡といいますか、これは十分万遺憾なきを期しておる、かように私は考えております。
  174. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 わが党はこの問題は非常に重要な問題だという意味で、党をあげて取り組んでおる問題であります。とりあえず十六日の、いま申し上げました申し入れ書を政府に提出いたしますと同時に、三月二十一日付をもちましてわが党の政策審議会の会長である竹本孫一君の名前をもちまして、「国際金融危機に備える政府施策に関する質問主意書」というものを成規の手続を経ていま提出をいたしております。これは従来に例を見ないほど私ども党内でずいぶんと検討をいたしました内容をここに盛り込んでございます。時間がございませんから省略いたしますが、その中には、第一に政府の政治責任について伺い、第二には政府の国際金融不安の現状の認識について伺い、そして第三番目には国際金融不安の打開の対策について伺い、第四番目には特にその中の当面の国内の緊急対策につきまして、一、二、三とこうわれわれのほうから三つの内容を提案をいたしながら政府施策を伺っておるわけでありまするし、第五番目には、先ほども申し上げましたように、昭和四十三年度の新予算成立と相まちまして、財政金融政策の弾力的運営について、これも具体的な内容一、二と内容をあげてその政府側施策要求をいたしておるわけであります。第六番目には、さらに、国際収支悪化に伴うIMFからの借り入れ問題について触れ、第七番目には、国際収支赤字の見通しと円価値維持についての政府の決意を促す内容をもって、それには三つからなる内容を具体的に羅列いたしまして、特に私どもは党をあげてこの問題に対しては明確に、言うならば代案も掲げて政府施策要求し続けてきておるわけであります。この問題に一つずつ入っておりますと時間がございませんから、私は端的にお伺いをしながら、この問題に対する政府の決意、認識、対策等を重ねて伺いたいと思うわけであります。  総理は三月十九日の参議院の予算委員会におきまして、社会党の羽生議員の質問に答えられて、従来の見通しを反省した、こういう意味のことを述べられたように伝えられております。ひとつ端的に、従来の見通しの甘さを反省されたという、従来の見通しというのはどこからどこの部分を具体的にさされておるのか、ひとつ直感的にお伺いいたしたいと思います。
  175. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ポンド危機、こういう問題について全然政府が見通しもなしにその場にぶつかった、こういうものでは実はございません。しかし、その深刻度についての認識が、私どものほうが、問題の所在はわかっておりましたが、その深刻度についての認識が足らなかったんじゃないか、そういう意味の反省をしている、こういうことでございます。率直に申し上げたのでございます。
  176. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そういたしますと、大体こう感じてよろしゅうございますか。ポンド切り下げはあのときに行われ、そうして正月早々にジョンソン大統領による緊縮政策が打ち出された。その近所から一挙にあのようなゴールドラッシュとなって、そうして売買停止に至った。少なくとも、言うならば、ことしの年初からこの間の金プール会議に至るあの段階の異変というものについて見通しが甘かった、こういう感じで受け取ってよろしゅうございますか。
  177. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大体変わらないようです。そのとおりです。
  178. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そういたしますと、いま総理がお触れになりましたけれども、昨年のポンドの切り下げについてはある程度考えてもいたし、したがって、甘い見通しの外にあるわけでありますから、大体対処もしてまいった、こういうふうにやってきたというふうにわれわれは判断してよろしゅうございますか。
  179. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大体昨年の予算編成並びに予算の執行にあたっての運営方針なども意向をはっきりいたしておきましたが、そういうような点で、ただいまのように、昨年の状態は一応御了承いただけるかと思います。
  180. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そういたしますと、ポンドは切り下げられてもドルはだいじょうぶだという認識に立って見ておられて、したがって、ゴールドラッシュが来てもたいがいこれは適当に売り向かっていけば事が済むだろう、こういうふうに見ておられたというふうに解してよろしゅうございますか。
  181. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ポンドを切り下げると必ずドルに影響がある。しかし、ドルはいわゆるゴールドラッシュというような形において心配をしなくても済むだろう、かように私どもは考えた。まあその程度の問題でございます。
  182. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は昨年十二月八日の第五十七回臨時国会における衆議院の代表質問におきまして、私自身この問題について非常に不安を持っておりましたがゆえに、ドル不安の問題について、ポンドが切り下げられて、したがって、言うならば裸で防衛の第一線に立たしめられておって、すでに第二次のドル売り金買いの白兵攻撃を受けておると伝えられるこのドルに対して、なお信頼感をそんなに強く持ち続けられておりまするか、こういう質問を私は行ないました。これに対しまして実際は、速記録をずっと調べてみましても佐藤総理はうまく答弁をされて、ぐるぐるっとこう回られて、まともな答弁は回避されておるように承ります。しかしながら、水田大蔵大臣は、ゴールドラッシュはおさまりましたと、そして、今後もドルの基軸通貨たるの地位は不変だと思いますと、こういう非常に強い言い方で昨年の暮れの私の質問にお答えになっております。それからもう一つ、宮澤企画庁長官、たいへんごりっぱでございまするが、宮澤企画庁長官は一番はっきりと第一に、ドル売り金買いはおさまると、こういうふうに予見をされました。それから二番目には、さらなるゴールドラッシュは起こらないだろう、こう予測されました。これは必要がありましたら全部速記録に書いてありますから申し上げますよ。したがって、三番目には、今後ドルにも不安なしと答弁をされました。しかしながら、宮澤企画庁長官、たいへん頭がよくて、よく読んでみますと必ず条件づきなんです。第一の問題は、ドル売り金買いはおさまるという前提には、アメリカは金の売り向かいを行なうであろうし、売り向かいは行なわれる、したがってこれでおさまるだろう。それはしろうと一われわれがさらっと聞いておりますと、必ずアメリカが金を売り向かいますよ、だから必ずゴールドラッシュは終わりますよ、こういう印象しか受けないのであります。ところが、そのお話になっておる内容は条件づきで、アメリカが売り向かうならばというふうなことばにはなっておるが、国民はそうは受け取らない。少なくともあなたも政治家で、しかも大臣の衝にあられる方でありますから、私は評論家的な立場は許されないと思うのです。その意味ではっきりとあなたは、金の売り向かいということが行なわれるから、ドル売り金買いはおさまる、こういう印象をはっきりと与えられておる。  それから二番目のゴールドラッシュの問題についても、なかなか話はうまいのでありまして、金を上げない、ドルを下げない、こういう姿勢を明示するならばと、こう書いてあるのだ、あなた。そうしてアメリカはたびたびそれを明示しておるではないか、だからそれはおさまるべきであり、そういうことはありっこないではないか。こういう言い方です。私は実にこれは知能的だとこう思いましたがね。  さらに三番目には、今後の不安はなしということの前提に対しまして、国際協力体制がうまく続くならばという前提がある。これはまさにそのとおりだ。これはせっかくですから、焦点を宮澤長官にひとつしぼりましょうか。ここのところ代表選手でなかなか答弁技術で腕を上げられたらしゅうございますから、私はここで総理にもお聞きを願いながら、質問いたしたいと思うのです。  先の予測というものははなはだ困難であります。同時にまた、経済問題というものは衝にある者があまり心配な放送をするということが、そのことが原因になって、経済界に対して問題を起こすことを十分承知いたしております。しかしながら、いまや民主主義の世の中で、何もかもおれにまかせておけ——経済のことはおれにまかせておけと言われた池田さんのあとがこの状態になっておるのだから、私はある程度率直に国民にも問題を投げ出しながら、そして秘密にすべきところは秘密にする、こういうことでなければならぬと思います。格別私は、経済の問題に対する大臣答弁が、条件やそれから仮定をいろいろ積み重ねておいて、そして結論だけは間違いなかろうという答弁に聞こえますというと、一般にはその結論だけしか聞こえないわけだ。そして答弁技術としてはじょうずかもしれないけれども、私は非常に政治家としては問題が残る、こういうふうに思うわけであります。宮澤企画庁長官、いまの三つの内容の答弁と、それからその条件が整わなかったためでございましょうけれども、多少見通しが甘かったといって総理さえもあやまらなければならない状況になったのでありまするが、どういうふうに御答弁をなさいますか、伺いたいと思います。
  183. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 たいへん思いやりのあることを言ってくださいましてありがたいと思っております。責任のある者として云々と言ってくださいましたのは……。それで私も率直に申し上げますけれども、確かにあんなに金を買ってくるだろうということはあのときに思いませんでした。私はいまの事態を決して楽観いたしてはおりませんが、まあこれは処理のできる事態だと、ほんとうは腹の中で思っておりますのですが、どうも昨年の暮れからつい先ごろにかけて私の期待していたほど利口でなかった動きがあったというような感じがしております。
  184. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 宮澤長官は盛んに逃げちまうのだが、私は決して責任を追及しようと思うのじゃありません。ただし、これは将来に対してものをかまえようとすれば、率直なる反省がなければ私は将来の対策を誤るものだ、こう思うからであります。私どもは、いまのような総理自身が多少甘過ぎたという認識でものを言われなければならなくなった状態のもとに、私どもはたび重ねて、たびたびといわゆるドル過信というものに対して忠告し、忠告し続けた。先ほど同僚の社会党の田中議員は、まさにうまいことを言ったと私は思うのであります。戦前においてはアメリカの力を過小評価し、戦後においてはアメリカの力を過大評価しておるのではあるまいか、こういう発言さえあったと思います。私はたびたび繰り返すようでありますが、多少見通しが甘かったというその内容をきちっと吟味いたしますと、ことしになってからの変化がちょっとわれわれの思っておるより過ぎたということであり、その前にはそうするとポンドが切り下げられてもドルはだいじょうぶだと思ったということであり、まさにドル過信、こういうことに落ちつかざるを得ないと思います。程度の問題はあるかもしれませんけれども、ドルに対する過信がこのあやまちを来たしておるような感じを私は持ちまするが、総理、いかがでございますか。
  185. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど私が申しましたように、国際経済としての動きについて私どもの見方が少し甘かったという、これは率直に認めたのでございます。しかし、先ほども田中君にもお答えいたしましたが、わが国の経済、その国際経済の分野において果たしておるドルの意義、これについてはやはり正しく認識しなければならない。私はいま金買い、金売り、金市場がたいへんな混乱をしておりましたが、しかしあれだけ金プール諸国をはじめとし全体が国際基軸通貨をひとつ守ろうという、これは重大なる決意をしている。そういう意味においては私は別に認識を誤っているとは思いません。ただいま言われますドルを過信したというのはどういうような意味なのか、私ちょっとつかみがねますけれども、この点ではやはり基軸通貨としての意義をいまなおずっと続けて持っている、かように感じております。
  186. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 これから先の問題の見通しとその対策についてはやがてだんだんと進めてまいりましょう。ただ私は、過去の問題についての認識の甘さということに対してちょっと総理が触れられておりまするから、そこでもう一ぺん反省を求めたという意味であります。同時に私は、この際ちょっと総理に申し上げておきたいと思いますことは、現在の国際通貨問題というのは、少し大げさなものの言い方をするならば、われわれ人間一生の中で三度とはあるいは経験することのできないほどの国際経済上の、あの意味においては同時に国際政治上の転機を象徴する最大級の問題だ、こういうふうに私は考えておるわけであります。したがいまして、最近におきましては、総理の周辺もわれわれ議員も同様でありますし、国民一般も同様で、緊急要務のかん詰めみたいになってしまって、ほんとうに考えるいとまがないのが、私は最近の日本国全部の常識のようなかっこうだと思います。しかしながら、いまやまさに一生の間に三回と経験することができないと言われるほどのこの重大事件に対しまして、これと四つに組む姿勢が、日本の政界においても、日本国民の中においても、欠けておるのではなかろうか、こういう心配を非常に持つわけであります。  いま佐藤総理が言われましたように、あるいは基軸通貨としてのドルの地位を保つ、こういうふうにこれからうまくいくといたしましても、その前提に立っても、アメリカのジョンソン大統領は直接国民に呼びかけて、いまの緊縮政策に対して必死のがんばりを見せながら、国民に協力を要請いたしております。さらにまた、イギリスのウィルソン政府は、御承知のように、完全にもうすっ裸になってしまいまして、背水の陣をしいた姿で国民に耐乏を要求をいたしておるわけであります。御承知のように、私は日本の円という通貨がポンドやドルよりもはるかに安全であり強いとはどうしても考えられない。そのアメリカにしてもそれからイギリスにしても、政府の取り組み方はそのように真剣そのものであると思います。私はこの際、佐藤総理に決してジョンソンやウィルソンのまねをせいというわけじゃありませんけれども、もっと率直にこの問題の重要性とわが国の直面しておるこの事態を国民の前に明らかにして、難局切り抜けのためにもつと積極的に国民の協力を呼びかけられるべきである、こう考えるものでありますが、御所見を承りたいと思います。
  187. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま当面しておりますポンドあるいはドル、国際基軸通貨、これはたいへんな問題だと思います。ただいま言われますように、あるいは私どもの時代にこういうような問題に当面するとは思わなかった。しかし一方で、きょうちょうど会議をやっておりますようにSDRの問題が新しく登場してきておる。この一事を見ましても、今回の問題がなまやさしい問題ではない、いままでのものの考え方に大変革を加えるものだ、これはもう御指摘のとおりであります。したがいまして、私はそういう立場でものごとを見ていかなければならない、かように思っております。おそらくしかし、ただいまの状態ではその基幹的な本筋は変わらないんだ、またそれに変えないんだ、こういうことであらゆる努力が払われるものだ、かような予想を一応立てております。日本の産業界におきましても、今日の見方はそういう見方をしておるじゃないか。大体こういうような事柄に一番鋭敏だといわれる株式市場なども、たいへん冷静な態度で見守っておる。また金融機関あたりも、金利の取り扱い等につきましても、たいへん冷静な状態であると思っております。したがいまして、これらのことを考えると、こういうことを甘く見たら、私がこの席で過去は少し見方が甘かったといって反省するような、ただいま警鐘を乱打されることは、そういうことは二度と起こらないだろうと思いますから、これはたいへんけっこうなことだと思いますが、しかし事柄の性質上、やはり堂々とした落ちついた歩み方をして、そしてこの問題と取り組まなきゃならない。これも先ほど佐々木君がたいへん御理解のあるお話をしていただきましたが、そうした意味における重大なる問題ではあるが、特に危機感をもってこういう問題と取り組むのでなしに、重大なる問題であるがゆえに、建設的な方向において堂々とした足取りで、また基礎固めをして、そしてこの問題と取り組む、そういう態度でありたい。政府はそういう意味。また日本銀行等もそういう意味で協力をしておりますし、また産業界自身も、あるいは課徴金問題について示されたその態度のごとく、佐藤ミッションがアメリカに行って、いろいろ話し合っている。その態度等を見ましても、やはりこの問題はなまやさしい問題ではないが、しかし周章ろうばいすることなく、堅実な態度でこの問題と取り組んでいこう、これが実は望ましい姿ではないか、かように思っております。
  188. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 堂々とした態度で取り組まれるというおことばは、まことにけっこうだと思います。私は決して過去のことを言おうと思いませんけれども、佐藤総理も御承知のように、昭和三十三年の、言うならばちょうど十年前、あなたが岸内閣の大蔵大臣をされた時分から、私はこの問題について追及し続け、警告をし続けてまいっておるものであります。したがって、私はこのことをいま重ねて言おうとするものじゃありません。その間の、過去十年間における自由民主党内閣のたどった道は、決してそう堂々として自慢をされるほどのものではなかったのではなかろうか。私はむしろ、いまの状態はそのようなとがめが、日本経済においても相当に出つつあることを心ある者は非常に憂えておるのではなかろうかと思う。いまこそ胸襟を開いて国民に協力を呼びかけられるべきだ。  同時に、私はここで重ねて総理にあらためて伺いたいのでありますが、中央政界においても、この問題はこの公開の論議だけでは、おそらく売りことばに買いことばか、あるいは外に聞こえてはならないという意味の答弁しかできないことがあるかもしれません。しかし私は、いまの自民党政府に対しても、この問題については、各野党に対してむしろ超党派的な協力をこそ求むべきものだ、こういうふうに思います。そしてそのためには、それに適当なる手段をお考えになりまして、たとえば、野党間の党首会談みたいなものをきっかけにして、どういう超党派のやり方があろうか、相談のしかたがあろうか、こういう意味で、私は超党派的な形でこの問題に取り組まれるべきではなかろうか、こう思うのでありまするが、そのような御意思はおありになりませんかどうか、伺いたいと思います。
  189. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいまの状況で、直ちに野党の党首とこの問題について会議をする必要あり、かようには思っておりません。ただ、先ほども御指摘になりましたように、民主社会党では、すでに竹本君の名前で政府に対して意見を述べつつ政府の所信をただしておられる。私はこういう事柄は政府もまじめにそれに答えるべき趣旨だと思っておりますので、御満足いきますかどうかは別といたしまして、必ず政府はまじめな答弁書をつくる考えでございます。また、ただいま政府自身が、きょうの段階で、大蔵大臣は当方に残っておりますが、十カ国蔵相会談にはそれぞれ代理を出して、そしてその模様も十分把握して帰ってくる考えでございますから、これらの問題について、ただいま政府がとっておる点で特に欠いておるとは私は思いません。したがって、国内の姿といたしましては、比較的動揺なしに推移しているのじゃないか。国民はもっとこの問題に真剣に取り組んでおる、取り組んでいるが、いわゆる動揺というような状態はない、かように確信しております。  また、アメリカの国内においてとった各種の態度、これはもう政府また国会筋との間にもいろいろ意見の相違があるようでありますし、また本来の貿易拡大の線を守ろうというものもありますし、また保護貿易へ向かおうというものもありますし、ただいまのところたいへん国論が一致してないのがアメリカ自体の問題ではないか。さように考えますと、基軸通貨の本尊であるアメリカなんだ。そういう意味でアメリカ自身が取り組むべきことで、政府が一そう真剣にこれらの問題と取り組まれるように政府にも要求しておりますが、どうもそういう点で、ジョンソン政府自身ははっきりした態度でこの問題と対処している、かように見受けられますから、いま言われますような国際不安、これから非常に心配だから、この際何か態度をとる、こういうものではないように思います。しかし過去の経過から見まして、いまたいへんな大変換期に来ている、先ほどかように御指摘になったのだと、私は佐々木君の発言を理解したのでありますが、確かに大転換期に来ている、その転換期に備えるだけの十分の検討ができているかどうか、こういうことになりますと、これはまだやや不十分ではないかと思います。したがいまして、そういう意味の大転換期に対処する、そういう態度の問題が、これから政府をはじめ、また産業界におきましても考うべきことではないだろうか、かように思います。各党ともそういう意味の検討はさるべきだと思いますが、いま非常に緊急に何か処理しなければならない、こういう問題ではないように私は思っております。
  190. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 問題があまりにも大き過ぎ、しかも長期の問題でありまするがゆえに、緊急要務でかん詰めになっておられる、いつでもの日本政府並びにわれわれでは、いまそれは考えなければならぬというふうには見えないままに、結局問題の焦点がわからずに、群盲象をなぜるのような形で、従来この問題が日本の中で取り扱われてきたような気がするし、ほっておくと今後も似たようなことになるのではないかとおそれておるわけであります。その場合にはたいへん失礼なことばであるかもしれないけれども、わが国においては基本的な十分に考えるいとまも考える状態もなしに、あなたまかせで推移していった、こういうことにならざるを得ない結果になるのではなかろうかということを心配いたしておるわけであります。わが党でもいま一番大事なものは参議院選挙です。したがって、それに目がけてきりきり舞いをしなければならぬのは、どこでも同じです。しかしながら、日本国民のために大事なものは、いままさにこの問題だ、私はこういうふうに思うわけであります。  重ねて総理に伺いますが、先ほど私は、大蔵大臣から伺いましたわが党の申し入れに対する御処置は、適当に聞き流しておきましたけれども、決して的も射たものではない。私は決して満足いたしておりません。それから竹本改政審会長の名前で出しました質問主意書に対する答弁書も、いまようやく配付中で、ここにまいりました。しかし、この中を見ましても、ざっと見ただけでも、これは、ははあ、事務官さんが書かれたな、こういう感じのおざなりの感じであります。私はむしろやはり本気になって、四つに組んで、——われわれはわれわれなりの意見もありますから、政府と四つに組んで相談もいたしたい、こう思うわけであります。それならば、総理のほうから会談を求められないとするならば、私どものほうからこの問題について会談を求めれば応ぜられますか。
  191. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 十分善処いたします。
  192. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 善処ということは肯定だと私は了解をいたしたいと思います。  先に進ましていただきます。これはもうすでに反対の答弁ばかりを田中同僚議員にもされてしまっておるし、水田大蔵大臣も企画庁長官もものが言いにくいだろうと思うのですが、しかしどう言いましても、現在の国際通貨危機というものは新しい国際通貨、新しい信用を生み出すための悩みの状態であることは、これはもう間違いないことだと思います。従来ならば、一九二九年から三〇年代に至ったあのような恐慌が来そうな状況もあったのにもかかわらず、これは私の独断であるかもしれませんけれども、いわゆるケインズ構想を中心とするような景気調節がこれまでは適切にだんだんと行なわれ得たから、大過なく本日まで来ておる。しかしながら、いま当面しておる国際通貨不安の問題は、その通貨論の本質に取り組まなければならぬ状態にまで来ておる。通貨論の本質に取り組んでいって、言うならば貴金属という金を中心とする信用から、別な意味の経済力をバックとした信用通貨にかわらなければならない状態に来ておる。そのことは、日本政府の方々といえども、その大局的な見通しはノーと言われますまいと私は思うのでありますが、総理、御所見を承りたいと思います。
  193. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来私、いまたいへんな転換期へ来ているということを申しました。それを具体的に中身は申さなかったのですが、ただいまのような点が指摘されるのではございませんか。私は、そういう意味でこういう問題と真剣に取り組まなきゃならない、かように思っております。  いま、なるほど金為替自身は存続しております。金為替は存続いたしておりますが、国内においてはすでに金の兌換は停止しております。したがって、国内においてはもう二重価格なんだ。だからその点で、お互いに日本人が考えれば、戦後の通貨のあり方について非常な変化のあったこと、これはもうわれわれはなれているから、何にもふしぎに思っておりませんけれども、昔の札を見れば、ちゃんと金貨にかえられるということが書いてあった。いまはそんなものはない。二重価格に現に日本はなっております。これが今度は国際的な問題になろうとしておる。だからそこに非常な変化がある。これは一体どうしたらいいのか、こういう問題と真剣に取り組むべきことだ、かように思います。ことに私が先ほど申しましたのは、それかといって、国際決済をする、それにポンドやドルがその地位を失ってかわったものができるかというと、これはまだそういうものは生まれてはおらない、かように思っておりますので、ただいまのように大変化を来たしつつある、金為替というものは一体どこへ行ったのか、もう昔のような議論、われわれの学生時代のような議論は聞こうとしても学校でも聞けないような状況になっておる、かように私理解しておるわけです。
  194. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 一国の権力が国民に対して、一国経済として非常に支配力、権力を持っておりますがゆえに、兌換銀行券から紙幣にかわり得た、それはだれも疑っておる者はございません。同時にまた、宮澤経済企画庁長官のどこかで吐かれた名せりふでありますが、黄色い金属に支配されるほど人類の英知は見くびったものでもあるまいという名言も私は適切だと思います。したがいまして、次に来るものは、そのような意味で、黄色い金属に支配されることのない、あるいはきわめて薄い何らかの信用でなければならないだろう、こう考えるわけであります。しかしながら、その前提になるものは、一国の中で兌換銀行券が紙幣にかわり得たと同様な意味の国際協力体制が整い得るかどうか、これが最大の眼目であり、その国際協力体制をつくり得るためには、いま総理といえども即断をもってだいじょうぶだとは言い切れまいと私は思う。そこに過渡的な非常に考えなければならぬ重大なる問題を含んでおる、こういうふうに私は考えるわけであります。  宮澤経済企画庁長官にお伺いいたしたいと思いますが、黄色い金属から解放される人類の英知によってつくり出される次の信用通貨というものに対しまして、どのような構想を持っておられましょうか。見通しあるいは個人的な御意見を持っておられましょうか。
  195. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま御指摘になりましたように、お互いの信頼感とか、それから各国が今度そういう信用で決済が行なわれますときには、おのおのの国それ自身の自制であるとかそういったようなものが基本にならなければ、新しい通貨は生まれ得ないと思うのでございます。それでやはりみんなが考えまして、いまつくろうとしておるところのたとえばSDRのようなもの、これが通貨であるか、つまりマネーであるかクレジットであるかということは議論があると思いますけれども、しかしそういうもので基準通貨の補助をしていこう、いわゆる第三の通貨をつくろうということは、私は正しい方向だと思います。その場合にも、まさしく御指摘になりましたように、それを使う各国が経済の運営についてお互いに自制をしたり協力をしていかなければ、この新しい通貨と申しますか信用と申しますかいうものは維持していけないであろうと思いますから、やはり根本的にはその運用のための協力、自制というものが必要であろうというふうに考えます。
  196. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 でありまするがゆえに、国際協力という、言うならば新たに非常に大きな前提がその前にあるわけだ。しかもその国際協力がうまくいくかいかないかのいませとぎわになっておる。それがベトナム戦争をめぐってもなかなか話し合いができないし、国際協調が非常に困難な事態にさしかかっておる。ここにそれこそ人類の英知さえも踏み越せるか踏み越せないかのせとぎわのむずかしい段階にいま来ておると私は思うわけであります。自民党だけで足りなくても、日本国じゅうの知恵を集めても私は決して集め過ぎることがないほどの重大問題として取り組まれるべき問題だ、こういうふうに思うわけであります。  私のほうからばかりしゃべっちまうとどうも困るのでありますが、私は繰り返して申し上げますけれども、先ほど佐藤総理は堂々とかなんとか言われましたけれども、ほんとうに私は過去十年間この問題に取り組んでみた。そうしてこの切りかえの際に、かりに新しい第三通貨ができるにいたしましても、この混乱を切り抜けるために必要なのは、どうしてもいま通用するところの決済手段をわれわれが十分に実力を持ってたくわえておるということであり、それから次の決済手段に対して信用力をはっきり持ち得るという体制だと思うのです。次の決済手段に対してという場合には、たぶん高度成長政策によって裏づけられました生産力というものは一つの大きな力になるでしょう。しかしならば、いまのこの混乱を切り抜けるためには、この貧弱な日本の保有外貨、さらに保有外貨の内容というものに対して、これはどう総理が言われたって、だれか心配しない者があるとするならばおかしいんで、これは心配せざるを得ないものだ、こう思わざるを得ません。そのことの心配は、口でこそ強気を言われても、お変わりないでしょうな。
  197. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは三十三年以来佐々木君から質問を受けている。これは私が大蔵大臣時分からだと思っておりますが、またその後通産大臣等におきましても、たびたび通貨についての、金についてのお尋ねがあった、かように思います。日本の場合をいろいろ考えてみますと、いまこれは弁解がましく申すわけではございませんが、日本が国際外貨保有高、これをもっとふやすことができた、そういう機会が過去にあったじゃないか、かように御指摘ができるだろうと思いますが、しかし私は、日本の経済のためには、外貨をふやすよりも、やはり国内の生産施設を整備すること、そのほうが急であったと、かように考えますし、したがってなかなか外貨保有がふえておりません。しかし私は、今日のような経済発展があり、今日のような信用力を持ち得たのは、やはりこれを外貨保有という方向にだけ考えないで、有効にその金を使ってきた、資本を使ってきた、かように思っております。したがって、悔いるべきものはないように思います。ことに、金そのものを持ったらどうか、こういうような意見は、いままで佐々木君、別に述べてはおられませんけれども、外貨保有がふえたということは、同時に金を持て、こういうことだろう、それにもつながるんだろう、かように私、想像いたしますが、しかし金はなかなか思うように——金は金であって、その価格に別に利子はついてまいりません。ちょうど一九三四年に今日の金の価格、一オンス三十五ドルがきまったと思いますが、これから三十四年たっておる今日、これに金利がついていたら一体どうなるのか。私は金の価格はずいぶん変わってきておると思う。五倍から八倍ぐらいになるのじゃないか、かように思います。金利にもよりますけれども、そういうような計算になるだろうと思う。しかし日本が金貨を保有していたら、その金貨は今日も同じようで、それに変わりはないだろうと思います。したがいまして、いま申し上げるように、大事なことは、やはり国際信用、その国の信用、これにはやはり生産力だ、こういうところへ、いかにも飛躍するようですが、目をつけてきた先輩、いわゆる池田君の高度経済成長理論、これは私はたいへん今日感謝すべきじゃないだろうか、かように思います。ただいま申し上げるように、金の価格は、金利がついてきたらおそらくたいへんなものになってきている、かように思いますけれども、金塊では金利がつかない。このことを考えると、ただいまのような議論も一応わかり得る議論じゃないだろうか、かように思います。
  198. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 その話は、総理、あんまり繰り返されないほうがいいと思うのです。あとから、いまごろになって、金を持っておったら利子がつかなかったものを、それをうまく運用したからなんていうのは、それはうそです。十年間の経緯をごらんになれば、ほんとうは外貨中の運転資金に差しさわりがない状態になれば、少しでもやはり金を買いたいという姿勢は、内閣はとり続けられておった。しかしながらなかなか外貨がたまらなかった。そして同時に、少しでもあればすぐ、言うならば生産力増強のほうに回したかった。したがって、運転資金にも事欠くような状態であったがゆえに、持っておるドルを金に、こっちの、自分のほうの状況からして、かえられなかった。同時にまた、少し手元に余って買おうかと思っているときには、もう向こうから断われて、市場から断わられるなり、あるいはアメリカに遠慮しなければならぬことが強過ぎて買えなかった。したがって、偶然に結果がよかったと言われるならいいけれども、それをいかにも意図して、それを功績のように言われることは、私はこれをちょっととるべからざる態度だと思う。お隣におられる水田大蔵大臣が、明らかに池田さんの内閣の時代の大蔵大臣として、私は少なくとも三〇%の金の保有を目ざしてやりたと思いますということを——ここに記録がありますよ、明言されておる。しかしながら、いまアメリカとの関係においても買いがたいんです、こう言われております。総理は、そしてまた、三十三年のときには、ドルというものはいつでも金にかえられるんだから、だからドルで持っておってちっとも差しつかえないんだ、こう強弁される。その次には、たぶん水田さんのときでしたか、買おうと思ったときには、今度は向こうから断わられて買いがたい。それから今度はあなたの内閣になられた際におきましても、佐藤内閣時代でも、私は最初田中大蔵大臣に、次の福田大蔵大臣に、いまあなたの両手みたいなそのお二人に対しても、同様な問題を引いて言った。田中大蔵大臣も似たような形で答弁をいたしておりますし、福田大蔵大臣は、やっぱり金はもっとふやさなければなりません、わが国の保有外貨の現状からいうと、もっと金はふやしたいのです、その方向で努力を続けたいと思いますと、速記録にもちゃんとあなたの大蔵大臣が答弁されておるのです。それがうまくいかなかっただけの話、それを、うまくいかなかったのを、いかにも手柄みたいに言われたのでは、それはちょっと総理、われわれとしても、幾らおとなしい民社党でも、それは黙っておれませんぞ。  水田さん、その辺の感じ、ひとつ率直にお答えいただけませんか、大蔵大臣
  199. 水田三喜男

    水田国務大臣 またお話をすると長くなるようでございますから遠慮しますが、私は、大体昭和三十年代の日本の設備投資、三十兆円に及んでおると思いますが、これは外貨をどれくらい犠牲にしておるか計算しますと、八十億ドルぐらいになると思います。八十億ドルの外貨犠牲の上に、いまの日本の経済、百二十億の輸出力というものがここで形づくられておるということでございますので、外貨を余裕を持ってためたほうがよかったか、日本の発展の生産力をここで準備したほうがよかったかと、こういう問題が、過去の政府の功罪として、評価すべき問題として残ると思います。この点は、日本は高度成長に追われたために、外貨保有が非常に少なかった、水準が低かったということが言えると思いますが、もしこの保有外貨に余裕があるのなら、そのうちの比率で、金はできるだけ、やはりこういう際でございますから、まだ金の役割りというものがあるときでございますから、これは少しずつ金の保有をふやしていきたい、こういうことは考えていましたが、さっきおっしゃられるように、なかなか余裕がなかったということは言えようと思います。しかし、これは余裕があったら金をふやすということはいいと思いますが、余裕のないのに金をふやさなければならぬという理由は、私はあまりないというふうに考えています。  で、今後も外貨準備はふやしたい。四十年度はもとのような成長力はございませんので、これは安定成長の時期に入ったと思います。成長が安定すれば、それに伴って日本の保有外貨というものは、外貨準備というものは、もう少し今後ふやせる、ふやすことが可能だと思いますが、その可能な範囲内において金をどれだけふやすかということは、私はまだこれからの問題であって、この間の各国の会議におきましても、いま通貨用の金はお互いにふやさないでいこうというような方向の相談ができたということは、ちょうどSDRの出発と同じように、金から離脱した新しい国際通貨をどうするかという模索への一歩、これと関係のあることだと思いますので、将来日本が金をどれくらい持たなければならぬかというのは、これからの問題として、もう一ぺんこれは検討し直す必要があるだろうと思っています。
  200. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 時間がありませんから、一緒に答えてください。  いまの金の問題、水田さんのお話もそうだけれども、それは考え方の一つでもありますし、答弁の一つではありますよ。しかし、国際常識というものがあるでしょう。国際常識から見て、そんなにきわどい、言うならば綱渡りみたいなことを、意識的にほんとうにやってうまく成功したという、そんなに計画的にあなた動いてはいませんよ。そんなことを強弁されるなら、あなたの言われた言を一つずつ私は速記録から見て、そしてもう一ぺんやり直します。いま金を買えなんてだれも言っていない。いまごろ金を買えなんといったって、買えるものでもないし、おかしな話になってくる。むしろ私が十年来主張しておったのにかかわらず、一つの反省もないことに対して、そのことを言うよりも、今後に対してアプローチするのに不安を感じている。今後の問題としても——いま金を買えと言っているんじゃないのです。逆に信用通貨になる。ケインズ構想をもとにするような信用通貨になるだろう。それを見ながらも、私はそのことを言っておるわけでありまして、その強弁はちょっと困るなあ。
  201. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私のさっきの答弁がたいへん誤解をされているようですが、その冒頭に、別に弁解するわけではありませんがということで断わって、当時、外貨保有よりも設備投資、このほうを非常に急いだ、そういう事情をひとつ理解していただきたい。まあそれについてはいまのような、金利のような話まであるのだという、そういう意味のことを申したのです。もうしばしばいままで指摘されましたように、日本の場合は外貨保有が少ない。だから、外貨保有を大体まあ三十億ドル程度は、いまのような経済状態なら必要じゃないか。三十億ドルも持つようになれば、そういう場合に金の保有は一体どうなるのか等々の考え方のあることは、私どもも百も承知でありますし、いまのような状態で、むしろ逆にこれはすばらしいことをやってきたのだ、こう言うわけじゃございませんから、その辺は誤解のないように願っておきます。別に佐々木君の意見と非常な食い違いがあるようには、私は思っておりません。
  202. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 いまの三十億ドルの話にしても、それは前に水田大蔵大臣も、三十億ドルぐらいは持ちたい、これがむしろ国際常識だというお話でありました。その意味は、たぶん貿易額が百二十億ドルとするならば、その三カ月分ぐらいは持ちたい、こういう意味のはずであります。そうすると、これはこっちから言ってしまったらおかしなことになるが、原則としては、その三十億ドルというものは運転資金として使い得る金ということが前提になる、私はほんとうはそう思うのです。ところが、いまあるわが国の二十億ドルのうちでほんとうに使える金は幾らありますか。五億か七億か知らぬけれども、その程度のものでしょう。したがって、運転にいま回し得る金というのはそのぐらいのものだと思うのです。いま規模の問題を言うわけじゃございませんけれども、その外貨の質の問題と量の問題というものは、いつでもパラレルに私は考えられなければならぬ。わが国のような借金準備と、それから、言うならばヨーロッパの連中が中心にしておるいわゆる所有準備とのその相違も検討しながら、国際常識から見て、国民の財産を管理するのでありまするから、自分の財産を皆さんあなた方管理される場合でも、三、三、三の比率というのがあるじゃないですか。不動産に三つ、それから現金は三つぐらいしか持たぬ、そして有価証券に三つぐらい、そういう原則さえあるぐらいだから、それはほんとうはうまくいった場合には、みんな株を買っておいたほうがよかったみたいな結果になることもあるかもしれませんし、不動産に投資しておいたほうがよかったみたいなことになるかもしれないけれども、国民の財産を管理するという意味では、大きく国際的な常識をはずれられてはならないのではないか、私はこういう意味の反省をお願いいたしたいということなのであります。  まあしかし、時間がございませんので、先に進みましょう。それよりもこれから先の問題。  十七日の金プール七カ国会議は声明を行ないまして、いわゆる金の二重価格制を採用いたしました。しかしながら、これは一応時間つなぎだ、こういうふうにいわれておりまするし、したがって、言うならば、現在の国際通貨体制の危機を乗り切るための冷却期間を与える役割りを果たした、こういうふうに言われておるのは御承知のとおりだと思うわけであります。したがって、だれもがかたずをのんで見守っておりまするのは、先ほどお話が出ましたように、今後どのように発展していくか、次のどのような通貨体制に発展していくだろうか、こういうことであり、その間のそのつなぎを、何とか損をせぬように、国際的な混乱をしないようにつなごうというのが、私はいまのだれもが考えておるところの基本的な問題だと思うのです。その一番一里塚みたいなことで、御承知のように、きょうストックホルムの十カ国会議が開かれておる。これに対して先ほどもお話がありましたが、私は簡単にお伺いしたいのですが、このストックホルムの十カ国会議には、御承知のようにSDRの問題、それから特にこれと密接不可分になっておるIMF協定自身の改正の問題、それからまた、ドゴールが提案をすることも含め、さらにまたもう一つ飛躍的な本格的な第三通貨という意味も含めての新しい準備通貨に対してどういうふうにかまえようかというのが、私は、自由な議題として討議されるのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。考えても、この三つのSDRの問題、IMF協定の改正問題、新しい準備通貨に対する問題、これらが議題になることは当然でありまするが、わが国の宇佐美代表、谷村代表に対して、基本的にはどういう方針を授けて派遣をされましたか、言われない部分は言われなくてもけっこうでございますけれども、ひとつ方針を承りたいと思います。
  203. 水田三喜男

    水田国務大臣 今後の世界通貨の安定ということになりますと、やはり基軸通貨であるドルがどう安定するか、そのためには、米国の各国から求められておる政策の断行にかかっておる。これがやはりドル不安を解消する一つの問題だと思います。  もう一つは、世界が、ここまできたSDRを一日も早く発足させること、この話し合いに成功するかしないかということもやはり国際通貨の今後の安定という問題とつながっておる。この二つの問題だと思います。したがって、今回の十カ国会議におきましては、何をおいてもSDRを発足させること、これに全力をあげて各国が協議をすることというのが、私ども代表の言った方針でございまして、いろいろ問題はあると思います。現実にいままで英米を中心とするIMFの体制でございましたが、EECの実力というものがはっきり出てきておるのでございますから、多数決のしかたとかというようなものにおいて、EECに譲歩するというようなことはあるかもしれませんが、そういう適正な譲歩は譲歩としても、問題のSDR、これだけは、昨年の大会で、三月末に成案を得るということでございましたので、この成案がまごつかないように、何としても各国協力して、今月にこの成案が得られるように、これが代表の言っておる方針でございます。
  204. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 第二、第三番目の問題もそれと関連をするという意味で、申し上げましたIMF協定の改定問題も、SDRを発足させるに必要な改正ならやれ、こういうふうに解釈いたしまするし、そして次の準備通貨の問題ということについては、ともかくSDRを発足させた後に考えたい、こういう方針で臨まれておる、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。  それでは、私は重ねて少しSDRについてお伺いいたしたいと思いますが、SDRといえども、これは先ほどの田中君の質問にもお答えにありましたように、これ実施されたとしても、私は、これでもって本格的なドル不安の解消にはそれほど役立ち得ないのではなかろうか、まず時期の問題、量の問題、その辺についてどうお考えになっておられるか、お伺いいたしたいと思います。
  205. 水田三喜男

    水田国務大臣 各国が批准しなければなりませんので、やはり順調にいっても今年一ぱいかかるのじゃないか、来春にならなければ発動というところまでいかないじゃないかということは考えられます。  量の問題は、これもいま議決権の問題とからんでおりますが、これが円満にいきますれば、量の問題も今後きまります。   〔委員長退席、正示委員長代理着席〕 かりに一年に十五億ドル、二十億ドルというような形で出発しましても、これがかりに十年もたつということになりましたら、いまのドルにほとんどとってかわれるようなところまできますので、これが順調に出発したら、これは将来の通貨制度においてはたいへんな問題をはらんでおるというふうに私どもは考えます。  もう一つの問題は、そういう新しい通貨ができたときに、さっき宮澤長官から言われましたが、これが通貨準備であり、資産であるかという問題、クレジットであるかという問題が、四年もかかってこれは論争されていました。結局最後の結論は、なかなかむずかしい結論でございますが、これは資産であるから、各国配分を受けたらこれは自由に使えるものだ、が同時に、これはクレジットであるので、一定限度において復元さるべきものだということで各国の意見が一致して、フランスもこれに賛成したという形で、昨年切りがついておりますので、今回はそれをもとにして、これが発足しても国際インフレは起こさないという形において、もう一ぺんの確認が行なわれることで、私は何とかこの問題の妥結がついて、円満にいくんじゃないかというふうに考えております。
  206. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 このSDRの性格というのはなかなか問題があろうと思います。しかしこれは通貨でないことだけは間違いないと思います。  これはひとつ宮澤長官にお伺いいたしたいのでありますが、いろんなむずかしい見方があろうかと思いますが、私の端的な理解のしかたは、これはいうならば借金証文だ、アメリカの国際収支で赤字になった分が相手方の、たとえば西ドイツなら西ドイツが黒字であった分であるとしますと、そのマルクをこれだけの限度において借りられる、こういうものでありますから、いうならば借金証文だ、こういうふうに解するわけであります。したがって通貨的な性格とはだいぶ違ってきて、話が違う、こう思うのですが、違いますか。
  207. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはいま大蔵大臣の言われましたとおり、いろいろ議論をした末に、これは冗談で申し上げるわけでもないのですが、結局これはシマウマのようなものである、ゼブラのようなものであって、白い地の上に黒いしまがあると考えてもいいし、黒い地の上に白いしまがあると考えてもいい、何かそういうような話になったわけであります。ですから、両方の性格を持っているということが、結局、一番比較的実態に近い解釈ではないかと思います。
  208. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 いろいろ苦しいようでありますけれども、むずかしければむずかしいほど、そのものの信用は、私はむしろたいしたことはない、こういう感じがするわけであります。時間がないようでございまするが、それよりも一番この問題の焦点は、SDRの発行が、アメリカの国際収支の赤字のしりぬぐいだけになるというような性質になるならば、断じてだめだというのがEEC側の考え方でしょう。ですから、ここに一つの限界が非常にはっきりとあるということだと思います。同時に、私はいまの量を、たとえば年間十億ドルとしても、あるいは二十億ドルとしましても、しかもそれはIMEの出資額に応じて配分するというんでしょう。IMFの出資額に応じて配分するのだから、たとえばアメリカならば、これは二二%ぐらいだったですか、まあそんなようなものでしょう。そうすると二億二千万ドルあるいはまた四億四千万ドル程度だ。日本にしてみれば、三、四%ぐらいなものですか。そうすると一年に三千万ドルか四千万ドル程度のものだ。しかもアメリカの国際収支の昨年の赤字は幾らであったか。三十五億から四十億ドル見当じゃないですか。だからいま一番問題にしているアメリカの国際収支の赤字の分量が三十五億から四十億ドルみたようなもので、今度緊縮政策をうんとやっても、けたがそういうものである。そのものの中に、しかも来年の秋くらいしか役に立たぬような、たとえば一億にしても四億にしても、しかもそれが通貨だか何だわけのかわからないシマウマみたいなものがどれほどの役に立ち得るか。だれもこのものをほんとうに信用して、いまの金の二重価格制から、このようなSDRの過程につなげて、そうしてそれがそのまま本格的な第三の通貨、新通貨、信用通貨にかわるというふうに考えておるものは、国際常識では、私はない、こういうふうに思うのでありますけれども、宮澤長官、いかがでございますか。
  209. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは確かにドルの発行額が四百億ドルあるわけでございますから、かりに十億ドル創設いたしましても、まことに小さなものであって、その限界のところの決済に使われますから、その限界的な作用は果たすと思うのでございますけれども、これはドルというものがなお基軸通貨で動くであろうと思います。そういう意味では、先ほど申しましたように、やはり自制が必要であるということを申し上げましたのは、このドルの主体であるところのアメリカの経済の運営というものは、今後ともうまくやってもらわなければ、SDRだけではとてもうまくいけるものではない、こう考えます。
  210. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 時間がありませんから、ひとつ宮澤さん続けてどんどん、あなたが簡単に返事されるようでありますから、やりましょう。  そうすると、金の二重価格制というものが現在しかれておりますが、これはさかさまに裏返して見るならば、私はそれだけドルの価値が下がっているものだ、こう判断してもいいと思うのです。言うならば、金の自由価格で上がっている分だけは、下がっている、こういう認識に立っていいんじゃないでしょうか。ドルと金との関係において、それからドルと各国通貨、特別EEC関係の各国通貨との関係においては、相対的にドルの実質価格がそれだけ下がっておる感じのものだ、私はこういうふうな感じでおるわけであります。したがって、そうすると、それはへたをすると、ドル安のやみ相場を出す危険性がここから生まれてくるのは当然ではなかろうか、こう判断いたしますが、いかがでございますか。
  211. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 学者の議論で、ものの値段が三十何年も同じだというのはおかしいではないかということは、私はあえて異論は申しません。しかし、たまたま小さな自由市場で金の価格が少し高い値できまったからといって、それでそれが金の価格の実勢だということは、やはり言えないのではないだろうか、そういう感じがいたします。
  212. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 いまはまだ新しい通貨ができておらないのであって、ドルもポンドも、いわゆる国際通貨は一応金との関係において成り立っておるものである。しかもそれは一オンス三十五ドルが、全部がそれで持てなくなって、半分はかってに上がりたければ上がれということになったのでありますから、相対的に価値は下がっているのだと見るのはあたりまえの話じゃないですか。理屈はおかしくないですか。そうして——まあよろしい、時間がないから。しかしその場合には、これはまた当たるも八卦当たらぬも八卦でよろしいけれども、私は警告を最も強くしておきたいと思うのです。  いまの状態でありますと、SDRの発行に合意いたしましても、私はその意味において、言うならばドルの不安というものはなお続く、そしてへたをするとドル安のやみ相場が出てき、ドル安のやみ相場が出てくれば、そのドルは一部においては金市場にもう一ぺん向かう公算なしとしない。同時に、私はもう一つの心配がありますることは、ドル不安とともに、アメリカからさえも資本の逃避がいま行なわれようとしつつある。この資本の逃避が行なわれようとしつつあるものと、いまの問題とが食いつきはしないだろうか、一緒になりはしないだろうか、ということを非常に心配しているわけであります。  それからもう一つ、三番目に、先ほど宮澤さんが言われました国際協力、国際協力というものの現在の限界をどこに求めたらいいだろうか。この間の金プールの会合におきまして、各国が為替平価の維持に協力しようという約束を取りつけましたですね。その約束の裏に、もしドル相場の維持のために、自国通貨で買いささえを行なって、その結果その国の中央銀行にドルがたまったような場合には、このドルに対しては、アメリカが公定レート一オンス三十五ドルで金とかえてあげますよ、こういう密約でもあるならば、これは相当しっかりしたような約束になるでしょう。そのような約束、裏づけがあなたはあるとごらんになりますか。そのような歯どめがあるとごらんになりますか、ないとごらんになりますか。
  213. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは非常に微妙でございますけれども、現在蓄積されておるドルについての交換は求めないという了解があったのではなかろうか、こう思っております。  それから、これからあとのことでありますが、たとえばすぐ頭に浮かぶある大国の場合、現在そんなに、操作に使われる以上のドルを持っておると思えませんし、また六八年はその国はあるいは国際収支が赤字ではないかと思われますので、そういったようなことはおそらく起こらないのではないかと私は思います。
  214. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は満足いたしません。  もう一つ問題を出しておきましょう。いまの問題と関連して、民間で持っておるドルがありますね。民間保有ドル、これは何ぼか知りませんが、一般にアメリカから外へ出ておるドル、全部で三百億ぐらいだと見当いたしますと、公的機関が持っておるものは百三十億ドルぐらいでしょうか。IMFか何かで持っているものを差っ引いて、まあまあ大ざっぱに言って半分の百五十億ドルぐらいはやっぱり民間の手持ちドル、こう見ていいんじゃないでしょうか。そうすると、民間の手持ちドル、これに、逃避してくる資本のドルも加わるかもしれない。このものがどういうふうに動くかということが、今後のドル不安の、これがまっすぐうまくいくかいかないかの境目になる。したがいまして、逆に言いますと、国際協調が行なわれると言われますけれども、かりに国際協調が相当うまく行なわれる状態にあっても、その国際協調の中の掌握下に入るものは、中央銀行を中心とするところのその国の持っておるドルである。したがって退蔵されておる、民間の中に入ってくるドルというものがどう働いていくかということは、私はこれは非常に大きな問題であると思う。これは水田大蔵大臣に、私は出過ぎたら悪いかもしれませんけれども、ひょっとすると、そのようなドルは、あるいは逃げ場を求めて世界じゅうさまよい回っておるかもしれないと思う。その場合には日本は案外、先ほどの禍を転じて福となすような形で、生産力旺盛な投資が日本の経済に行なわれておるのだから、ひょっとすると将来の信用通貨みたいなものを頭に置くと、案外日本はいい逃げ場になるとも考えられないこともないかもしれません。私は外貨問題について、保有外貨に心配をされておる段階においては、ほんとうは大蔵大臣の頭の中にもあるでしょうけれども、一つは考えてみてもいいことじゃないかと思う。しかしその問題を考えるとしても、もう一つの問題は、やはりこれが金市場目がけてゴールドラッシュに向かうという危険性は、私はどうしても否定することができない感じでおるわけであります。  したがいまして、時間がありませんから結論に入りますが、私は、SDRの発足に成功いたしましても、決してこのドル不安は解消しない。そして次に来るものは必ず金とドルの完全分離という、アメリカの一部で伝えられておられるような、言うならば完全な兌換停止、これか、そうでなかったならば、金価格の引き上げか、どっちかでなければならぬ。しかもこれは、私は、宮澤長官政府も御承知のように、第一の方法が選ばれる場合には、これはまさにIMF体制の崩壊でありまするし、深刻なデフレ、為替管理などを引き起こす危険を持っておりまするし、同時にまた、それこれ、ドル中心のアメリカ圏と、それから金を基礎とするヨーロッパ圏に分かれる危険性も持っておって、そうなれば、一九三〇年代の二の舞いを見ないとも限らない、こういう非常に危険な状態になると思う。したがって私は、むしろいまとり得べき方法というのは、逆にいま国際協調がやり得る、話し合いがやり得るこの時代において、スムーズに十分に準備を行ない、そして十分に摩擦を避ける行動をとりながら、スムーズな話し合いによって、金価格の引き上げを行なうことだ、私はそれが最善の道だ、そしてそこでドルの小康を得させて、一応そこでドルを安定させておいて、そこでそれから本格的な時間をかせいで、いわゆる第三の基本的な通貨になる、あるいはSDRがうまいこと発展すれば、それがうまく芽としてなるかもしれませんけれども、いわゆる新しい信用を基礎とするところの新しい通貨に通貨体制を築き上げていく、こういう経路をたどるべきものではなかろうか、こういうふうに思うわけであります。したがいまして、私は時間がありませんから、結論を急いで、こっちからの言いっぱなしにしておきまするけれども、いまいろいろ考えられておりまするが、このような世界的な国際通貨不安に対する対処方針といたしまして、外貨準備の問題を含め、それから国際収支の健全化を含め、国内政策を含め、いろいろな出し尽くされておる問題はたくさんございます。これらに対して真剣に取り組んでいただきたいと同時に、私は基本的な円防衛の本格的な、そして将来へのかまえは、むしろ佐藤総理がいつでも口にされるところの、アメリカとのパートナーシップを最も発揮されて、総理自身が、あるいは日本政府自身が、ほんとうにアメリカに対して、身をもって勧告をし、警告を発し、アメリカの政策の転換をはかることだと私は思います。  第一の問題は、この経済問題の一番基礎にありまするものはアメリカの国際収支だ。国際収支の一番基本になっておるものはベトナム戦争だ。私がこう言うと、またむずかしい顔してにらみつけられますけれども、それは間違いない事実だ。したがって、まず第一に私は、アメリカに対して、北爆停止を契機として、そうして戦争縮小の方向に踏み切られたことを、むしろ最もパートナーシップを中心として、あなたが説得される第一の問題。
  215. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 佐々木良作君、時間が参りましたので、結論にお入り願います。
  216. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 すぐやめます。  第二の問題は、いま申し上げましたように、必ず、見ておってごらんなさい、SDRだけでは私は成功そのものに行かぬと思いますから、いま申し上げましたごとくに、話し合いが世界協調の姿勢で行なわれる時期を逸せずして、この時期において、各国間のレートをバランスをとりながら、そのままの状態で、いま申し上げましたような意味で、金価格の引き上げを行なって、そしてドルに小康を与える、その後に第三通貨に対して本格的に取り組める状態をつくり上げる、この二つの勧告を行なって、そしてその方針をアメリカ自身がとろうとすることが、世界の平和と発展に処する最大の問題であり、日本の経済も救い、日本の安全も救い、そしてまたアジアの安全から世界平和、発展につながる道だ、こう私は信じておるわけであります。  時間がございませんので、中途はんぱになりましたが、残った問題につきましては、また時をあらためて、私は質問の形その他でお話をさしていただきたいと思います。佐藤総理の、この佐藤内閣の、現状に処しての基本的な姿勢に対してどうか反省を加えられ、そして円防衛に対しても、国際通貨危機に対する対処のしかたにいたしましても、具体的な問題のもう一つ次元の高いところに、いま申し上げましたアメリカに対する忠言がある、その政策転換がある、ということを強調いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  217. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。  次に、横山利秋君。
  218. 横山利秋

    横山委員 中小企業が私の問題の中心になるのですが、この間、こういう話を聞きました。  私の名古屋の近くに浜松というところがある。年に一回たこ上げ祭りをやるのです。一番高く上がったたこ、すぐ落ちたたこがいつも問題になるわけであります。一番高くいきなり上がっていったたこはどういうたこだったかと言ったら、物価と書いたたこが一番よく上がった、こう言う。上がってすぐ落ちたのは何だといって聞いたら、商売繁盛と書いたたこが、上がったかと思ったらすぐみんな落ちた、こう言うのです。私は、これは笑い話のようではあるけれども、現実問題を実によく諷刺をしておると思うのであります。  今度、おととい中小企業白書が出ました。名前は白書であるけれども、まさにここ数年間、中小企業の血書だと私には思われるわけであります。これを要約いたしますと、この白書にも、過当競争、大企業の中小企業の分野への進出、人手不足、高利金融、それから過剰設備、事業拡張、放漫経営を政府はあげています。しかし私どもは、それらの中小企業経営者に帰するような原因よりも、むしろ今日の経済構造の中で、資本自由化、ドル防衛、低開発国援助、高度成長政策等の政府政策の結果が、この基本的な課題であると考えています。最初中小企業白書を出しました当時は、非常に関心を持って迎えられました。最初、戦後最大の不渡り倒産が出たころは、これまた世間に非常な反響を巻き起こしました。けれども、いまやそれは慢性化し、政府も不感症になってしまって、むしろ言うならば、弱い者がふぶれ、体質の強い者が生き残ることを期待しておるかのような、政府の政治姿勢であります。  中小企業政治連盟は一月二十八日決起大会、四月二十六日には、全国のあらゆる中小企業団体が、日比谷の公会堂で、中小企業死守の総決起大会を開くというのであります。参考のために、その趣旨を読んでみます。「周知のように、昭和四十二年の中小企業倒産はまた記録を更新した。本年に入っても、増勢は止まず、たとえば二月中の東京手形交換所内における銀行取引停止処分の件数は八百四十一企業と、これまでの二月の最高にのぼった。今後金融引締め政策が浸透し、金融の梗塞とともに受注の激減が表面化すれば、中小企業の破局は明らかである。われらが直面する未曾有の危機に際し、政府と与党とが傍観的態度であるのは不都合である。よって中小企業界が総決起し、政府、自民党に対してこれまでごとき大企業優先の政策を直ちに転換し、中小企業対策の即時実現に努力せよ、」   〔発言する者あり〕
  219. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 静粛に願います。
  220. 横山利秋

    横山委員 こういう趣旨なのであります。そこで一体、まず総理にお伺いをしたいのですが、このような中小企業の基本的な状況に対して、どうお考えになっておられるかということであります。特に私が聞きたい焦点になりますのは、いまやとうとうとして不渡り倒産がふえていく、この増勢というものはとどまるところをいま知らない。不渡り倒産、職業転換、品種転換等々、現在の職からくずれいく中小企業に対して、政府政策が税なり、金融なり、組織なり、職業指導なり、あるいは大企業対策なり、そちらのほうからの総合的な対策が少しもないと私どもは見ているわけであります。なるほど近代化しろ、あるいは合理化しろという言い方はあるが、現実に政府施策によって落ちこぼれていくもののための、総合的な施策というものは、皆無である。総合的ですよ。総合的なかまえというものは全然ないではないか、こういう点が、私の、基本姿勢として聞きたい焦点であります。
  221. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま横山君が声を大にして指摘なさいましたとおり、金融引き締め下の中小企業、そうでなくても中小企業はたいへんむずかしい産業革命の時代に遭遇、際会している、そういう時期に出会っておると思います。したがいまして、ましてその金融引き締め下において、中小企業がいろいろの悪影響を受けること、これは御指摘になったとおりであります。したがいまして、それに対しては、税あるいは金融、ただそれだけではなく、やはり各種各般にわたっての総合施策が必要である、かように私も考えております。またそういう意味におきまして、出先機関、通産省、大蔵省等々も協議を持ち、そしてこの中小企業の総合的施策に遺憾なきを期しておるというのが現状でございます。この上とも、あたたかい、またきめこまかな手を差し伸べ、そしてそれが総合的に効果をあげるようにしなければならぬと私も考えております。
  222. 横山利秋

    横山委員 私の言うところの総合施策というものが、現在ないと、私は指摘しているのですよ。なるほど、金融については、地方においては財務局長を中心に、金融機関が集まってやっている。税については国税局があるいはやっておるかもしらぬけれども、全体的にそういう傾向に対して受けとめる、中央においては政府施策、地方においては対処、相談というものが、いまやっていないではないかと聞いているんです。あなたはやっていると言うならば、その証拠を見せてください。
  223. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 最近の倒産の数字は、一時低下したかと思いましたら、またふえてまいりました。これは引き続き、昨年から対策が——主として、当面の対策といたしましては、金融、政府関係の金融機関及び民間の中小企業専門の金融機関、一般の市中銀行、それらに対しても、中小企業に対して、極力金融の円滑化をはかるように指導してまいっております。それからまた、各地方地方にも、日銀、大蔵省の出先機関、通産省の出先機関と、これらの連携組織をつくりまして、そしてこの中小企業の緊急の対策について、絶えず連絡をとって、その対処方針を手早く進めるというように活動をしておる次第でございます。
  224. 横山利秋

    横山委員 ふろの中でへをこいているようなもので、ちっともわかりません。総理大臣が一番私の話をよく聞いてくださったのです。私の言うのは、たとえば税にはやはり廃業、合併に関する項目がある。あるいはまた、通産大臣のおっしゃるように、地方の通産局長はやっている。けれども、総合的にいまの激動する中小企業のために、立法を含む何らかの総合対策が必要なときではないか、こう申し上げておるのです。
  225. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 総合対策は、つまりいま申し上げるようなことを、総合して実行しておるのでございまして、これを手っとり早く言えば、中小企業に対する概括的な政府の方針が総合対策であって、それを、現象的に次々に起こってくる倒産等について、いかにこれを適用していくかということにあると思うのであります。
  226. 横山利秋

    横山委員 まことに、何といいますか、一軒の中小企業がつぶれても、それに伴うさまざまな、一家心中や、さまざまな涙をしぼるような問題がちまたに山積しておるときに、何というあなたの不親切な答弁でございましょう。私どもとしては、この中小企業の問題は、建設的な提案をしたい。そしてすぐに政府としても、全力をあげてやってもらいたい。四月二十六日は、全国の中小企業団体が集まって、総決起の大会をやるという予定でございます。したがって、事前に通告をしておるはずだ。私は、かなり具体的に質問も通告してあるはずだ。それにかかわらず、あなたは、私の質問に対して知らなかったし、そうして答弁はまことにわけのわからぬことでは、天下の中小企業の親玉だとあなたが自負される通産大臣と言えると思いますか。言語道断ですよ。  次に伺います。中小企業対策は、中小企業基本法の二つの柱があります。一つは、中小企業のいわゆる構造の高度化。二つ目は、中小企業の事業活動の不利の是正となっておるのであります。これが基本法の二つの柱であります。現在政府政策は、主として設備の近代化、技術の水準、協業化等、すべて構造改善に関する部門に中心が置かれております。すべての政府の改正法案あるいは予算  この第一の構造改善、近代化、合理化に中心が置かれておる。ところが、事業活動の不利補正に類する小規模対策、需要の確保、組織化の推進には、資金のみならず、施策の改善も行なわずにいる実情にあるといっても過言でない。特に下請の取引の改善には見るべきものがない。したがって、取引分野における中小企業の立場の不利の補正も行なわれない。現実の姿から見れば、今日の倒産の激増するというのも、企業倒産者の経営の怠慢だけで解決されないものがあると私どもは考える。  要は、基本法の中における事業活動の不利の補正に、基本法制定以来、熱意を持って政府が行なっていないところに原因があると思うのであります。法律としては、なるほど産業分野の中の中小企業という考えがある、下請の法律がある、官公需がある。しかしながら、ここ数年の基本法制定以来の政府の姿勢というものが、事業活動分野の不利の補正ということについて、格段な法改正がされたわけではない、格段な予算措置がされたわけではない。つまり、これは大企業に気がねをして、基本法の大事な二つ目の柱が放てきされておると私どもは考える。この点についてはいかがでございますか。
  227. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いま中小企業が置かれておる不利な環境、そういうものの是正対策としては、お述べになりましたように、下請取引の適正化あるいは官公需の増進、需要を高める、そういう方面、あるいはまた過度の競争の防止というような構造改善以外の方面における中小企業のとかくおちいりやすい欠点を是正してまいるという事柄につきましては、あなたも非常な努力をされておることを私も承知しておりますが、年とともに、これはだんだん伸展を見ておると私は考えております。十分ではもちろんないだろうと思うので、今後とも十分にこの方面に努力をしてまいりたいと存じます。
  228. 横山利秋

    横山委員 通産大臣は、一体数字をもって調べられたのでありましょうか。私が、わざわざ、時間を節約するために、下請も官公需も全然実績が上がっていないと言ったことに、あなたは確信をもって、数字を調べて、私にお答えになったのでありましょうか。  官公需の確保に関する法律は、四十一年六月制定されました。そうして、四十二年の対象予算総額は、これは全発注額になると思うのですが、二兆一千九百二十五億、その中で中小企業が六千二百六十四億、二八・六%です。それから四十一年の実績は一兆七千四百四十億中四千八百九十一億、二八%であります。わずか六%上がっただけだ。ところが、三十七年度、つまりこの法律が制定される以前はどうかというと、三七・七%、三十八年は政府の実績をもってしても二八%だ。私どもの計算によれば四三・九%である。つまり、法律が制定されても、法律が制定される以前といささかも変わりはない。かえって減っているのです。法律が制定されてから、中小企業の官公需は減っているのですよ。どう思いますか。
  229. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私の手元には、四十一年と四十二年度しかございません。なお詳しい数字は、事務当局のほうから説明いたさせます。
  230. 横山利秋

    横山委員 この数字の中に、あなたのほうからもらった表がある。私の調べもあるけれども、念のためにあなたのほうからもらったんです。あなたのほうの調査に、三十八年度実績二八%と書いてあるじゃありませんか。法律の制定される前のほうが、中小企業の官公需は多かったのですよ。法律が制定されてから、官公需は減ったんですよ。何ですかこれは。責任者はだれですか。
  231. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 数字の点につきましては、事務当局から説明させます。
  232. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 お答えいたします。  三十八年と四十一年は、ただいま先生御指摘のとおりでございますが、三十七年につきましては、実は法律施行前でございまして、的確な数字がございませんので、その辺のところは後刻調べましてお答えを申します。ただし、ときによりまして、確かに減っている点がございます。
  233. 横山利秋

    横山委員 わかっているはずですよ、あなた。三十七年は中小企業が三七・七%、三十八年は四三・八ですよ。   〔正示委員長代理退席、委員長着席〕 かりにいま長官の言われたのを見ても、三十八年は二八%です。そして四十一年が二八%と、ちっとも変わっていないのです。四十二年の実績はわからぬが、目標は二八・六です。法律が制定されてもいささかも変わっていない。減っているということをどう考えますか。だれが一体この官公需確保の法律を運用し、この法律を実行する責任を持つのですか。どなたですか。
  234. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 その取りまとめは通産大臣でございます。当面の責任の人間はここにおります。
  235. 横山利秋

    横山委員 私は、つぶさにこの法律の運用状況を調べてみました。本法の運用は全く形式的であります。ここに中小企業庁の「官公需契約の手引き」という本があります。きわめてりっぱな本であります。各地方出先機関の契約者の住所、電話番号から窓口まで全部書いてある。きわめてりっぱな本であります。しかしながら、全く形式的に流れてしまっておる。国、県、市の窓口では、本法の効果は全くないと言っても過言ではない。公社の窓口は、こういう法律があることを知らぬと言っている。建設業などでは、いまの談合制度の中で、これによって指名を受け、これによって入札を受ける新規な中小企業が皆無である。あの厚い建設業界の壁で、この本を持って、私も入れてくれといって、入れてもらったものは皆無であります。一体、本法によって新しく受注の機会を与えられた中小企業の数はどのくらいでございますか。
  236. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 お答え申し上げます。  この本法は、先生御指摘のとおり、政府が、計画努力目標をつくりまして、各省、各公社、公団等に要請をするわけであります。その後報告が出てまいりまして、その報告を集計いたしましたのが、先ほど先生御指摘の数字でございまするが、この法律によりまして、直接幾ら中小企業の受注機会が増加いたしましたか、ちょっと判定いたしかねる次第でございます。
  237. 横山利秋

    横山委員 そういう念査もできておりませんね。  次に、閣議できまった幾つかの問題があるが、特にその中で聞きますけれども、中小企業庁は、協同組合の組織化に一生懸命になっておられる。ところが、組織化して、つくれつくれと言っておいて、そして、この本法を利用さして、協同組合に仕事をやるという鳴り物入りで、本法によって協同組合が発注を増加させた事実があるなら説明をしてもらいたい。
  238. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 お答えを申し上げます。  法律によりまして、組合に機会を確保するということでありまして、協同組合、企業組合、商工組合等を指定をいたしております。この実施は、おのおの発注官庁でございます官省が担当いたしまして、そのように指導し、進めておる次第でございます。
  239. 横山利秋

    横山委員 これは中小企業庁長官に聞いたってしかたがないと私は思う。  総理大臣、おわかりだと思うのですが、結局、来年度どのくらい中小企業に発注するかという数字をまとめて、集めて、合計した数字が、いまの中小企業庁長官の話です。そして、あなたのところは幾らだそうだねと言って、また、一年たってから、どのくらい発注しましたといって、聞いて、まとめて合計するのが実績だ、こう言う。だれも責任を持って——この法律をやれと、こういうことに法律がなっているから、中小企業に、ないしは協同組合に、仕事をやれ、機会を与えろといって、責任を持っておる人が一人もいない。通産大臣は、私は通産省傘下ぐらいはやるが、建設省の仕事はわしゃ知らぬと言うに違いない。建設省も、あの厚い建設業界の壁を突破するほどの熱意は、私は聞いておらぬけれども、お持ちでないと思う。お持ちであったら、こんなばかな数字になるはずがないです。法律が制定される以前よりも以後のほうが受注が減るなんてばかなことがどこにありますか。しかも、この四十二年の目標たるや、四十一年度の実績からいって、二八・〇%が二八・六%、わずか〇・六%ふえるだけですよ。予算だって、一〇%から一二%ふえるじゃありませんか。予算がそれほどふえておるのに、なぜ去年と比べて〇・六%しかふえないという目標ができるのでありましょうか。ふしぎでならぬのであります。どうお考えですか。
  240. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 総理としても全部答えられるわけでもございませんが、しかし、いま横山君が御指摘になりますように、通産省——中小企業庁を持っている関係で通産省が取りまとめの官庁でしょう。しかし、それぞれの役所がそれぞれ中小企業に対して官需を発注しておる。防衛庁もしかり、通産省も、また運輸省も、さらにまた公社、公団の関係もございますから、郵政省も、また建設省も等々、各省にまたがって中小企業に対する請負の発注関係があると思います。で、それぞれの役所の連中、こういう工事あるいは物資の発注をしておりますその者から全部を調べあげてこないと、ただいまのような数字がまとまらないのじゃないか、かように思います。したがって、いま一応もっともらしく統計が出ておりますけれども、その数字自身にいたしましても、もっと精査すれば事情は違うのじゃないだろうか。私は、いまのような減っているような状況はどうも考えられない、かように思います。
  241. 横山利秋

    横山委員 これはみんな私のつくった数字じゃない、質問に際して政府からいただいた資料なのですから、部下のやったことだと言ったところであなたのほうが自分のほうから出していて、その数字が違うかもしれぬなんて無責任なことはいけませんよ。そんなばかなことだったら、ぼくはどうやって質問ができますか。私が、しかし、総理に言いたいのは、各大臣も聞いてもらいたい、これは超党派でできた法案ですよ。あの不渡り倒産が戦後最大ということになって、みんなで知恵を固めて、最初何だかんだと言っておったものを、みんなでやろうじゃないかといってできた法案ですよ。この法案が、実効があがっていないどころか、かえって数字が減っているという、少なくともこの数字からいうとそういうことが言えるのです。ということは、総理をはじめ各大臣が、中小企業のことについて熱心でないということだ。そういうことにならざるを得ないですよ。どこか一つの省が、おれのところはこの法律を守ってこういうやり方でやったんだ、横山君、これを聞いてくれと言う方があったら、ひとつだれか説明してください。——お答えがないようでございますから、この際、総理にもう一ぺんお願いをしておきます。一ぺん閣議で——閣議では毎年受注目標をきめるのですよ。そのときくらい、ひとつ総理から声を大にして念査をしてもらうようにしなければ困る。さしあたり、いまから直ちに、もう一ぺん本法運用の適正化をして、中小企業のための法律が効果があがるように、ひとつ御努力を願いたいと思いますが、いかがですか。
  242. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 横山君からおしかりを受けましたが、確かに、中小企業について、もっと真剣に各省がこの振興に取り組まなければならない。これはもう十分取り組んでおると思いますけれども、さらにこの機会に、御発言もございましたから、各省庁に対しまして十分趣旨が徹底するようにいたしたいと思います。
  243. 横山利秋

    横山委員 次は、金融の問題であります。  大蔵大臣にお伺いしますが、大蔵委員会において、中小企業金融機関の合併だとかあるいは合理化の整備法が二法出ています。私が心配することは、こういうことであります。金融機関が合併する、あるいは近代化する、この法律によって合併し、ないしは昇格し、あるいは資本金が引き上げられる、それは私は必ずしもノーと言うものではありません。しかしながら、この傾向によって、これらの中小企業金融機関が上を向いて歩く可能性が出てくる。相互銀行が普通銀行になる。信用金庫が相互銀行になる。そういう上を向いて歩く可能性があって、中小企業の上層部を対象として、零細企業がめんどうを見てもらえなくなりそうな可能性を私は心配するわけであります。私の質問はむずかしいのでありますけれども、一言で言えば、引き続き零細企業は——引き続きどころじゃない、いまよりももっと熱心に零細企業を見させるためのかぎはないかということであります。放置すれば当然、おれのところは相互銀行から普通銀行になったんだ、信用金庫から相互銀行になったんだということになりますと、どうしても中小企業の中以上のところのめんどうを見る可能性があります。下を向いて歩けというかぎを、どうしてあなたは立てますか。
  244. 水田三喜男

    水田国務大臣 今度御審議を願っておる金融機関の合併及び転換に関する法律案第六条に、「合併又は転換により当該地域の中小企業金融に支障を生じないこと。」という字句がはっきり入っておりますが、この合併によって、いまおっしゃられるように上のほうへ、こう上位の金融機関にシフトするということは避ける。土地の情勢によって、これは大蔵省において、この問題が起こったときにその情勢を見て、地域的なことを十分に考えて許可するということがはっきりしておりますので、そういう点におきまして、中小金融機関の三機関がそれぞれ今度は中小企業の分野を受け持って、その金融に定着する機関にするというのが今度のねらいでございますが、それをむやみに上位の金融機関にシフトさせて、そうして中小企業の金融が捨てられることのないように、この点だけは今回の法律によっても十分私どもは配慮するつもりでおります。
  245. 横山利秋

    横山委員 私の聞いておるのはかぎです。たとえば、金融機関を財務局長のもとに招集して、零細企業のめんどうを見よ、これによって上のほうばかり向いて歩くなと百ぺん言っても、これがどういうかぎになるかという点であります。自然に上を向いて歩きそうな傾向に対して、やはり何か一つかぎをかわなければだめだと私は思う。私どものかぎの一つは、これは普通銀行関係でありますが、積年言っておりますが、銀行法の改正であります。銀行は、少なくとも一定パーセントは中小企業に振り向けなければいかぬということを、法制化しろと言っているのであります。これにはいろいろ議論があることは承知しておる。承知しておるけれども、今日の金融機関の趨勢からいって、また中小企業のための金融をほんとうにやろうとするならば、もうこの際断行すべきだと私は考える。それと、専門機関におきましても私は数々のやり方があろうかと思う。この際、大蔵大臣として何か一つかぎを出して、この法律の制定と並行して、必ずそれが下を向いて歩くような方式を考えてもらいたいが、いかがですか。
  246. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のように、中小金融の貸し出し比率を落とさぬようにという銀行の指導をやっておりますが、これがその指導のとおりにいかない、そして中小企業が困るという傾向がはっきり出てきますというようなことがございましたら、またそのいろいろな規制ということを考える必要があるかもしれませんが、いまのところは中小企業への貸し出し比率というものは落ちておりません。今度の引き締めを通じてもこれは上がっておりますので、この点では、いま金融の引き締め下においても中小企業への貸し出し比率が下がっているという事実はございません。私どもは、その点はいまやや安心しているところでございます。
  247. 横山利秋

    横山委員 私の質問しているのは、引き締め下における中小企業金融ではない。この二つの法律が将来もたらすであろう点についての心配なんですから、誤解をなさらないように答弁が願いたいのです。  いま一つ問題にしたいと思いますのは、政府金融機関三公庫の問題であります。  政府は、中小企業金融といえば予算上三公庫の財政投融資をふやした、あるいは出資をふやした、こう言うのが常に政府の言い分であります。けれども、歴年三公庫が全中小企業金融中に占める比率は一〇%以下、四十二年三月現在で九・二%ですね。大体一〇%以下であります。こういうようなことで、いかに政府が、わずか一割以下の三公庫に出資をした、財政投融資をしたと言っていばっても、全体の中小企業金融をふやしたことにはなっていないのであります。しかも、ある場合には結局トンネルになって、政府金融機関がふやした分だけ市中金融機関が減らす、こういう結果を招いておる。だから、この際、この三公庫の補完金融的な性格を、もうぼつぼつ変えたらどうかと考えるのであります。この際、補完金融から指導金融あるいはモデル金融として——わずか一割以内という政府の金融機関が、中小企業金融の全般を動かすわけにはいかない。だから、せめて現在の倍、一割五分以上の立場を持てば、少なくともモデル金融、指導金融、こういうことに私はなると思う。補完金融の性格から、百尺竿頭一歩を進めて政府金融機関の力を強めるということは、おそらく市中金融機関から反発があるかもしれません。あるかもしれませんけれども、金融の姿勢を正し、正常化するには、政府の金融機関がまず前へ出ることだ、こう考えますが、どう思いますか。
  248. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、普通の金融機関から反発があるとは思いません。一般の金融機関ではやれない、貸せないものを、政府機関が供給するという立場でいままで補完機関でございましたので、したがって、この全体の中小企業の金融がこれにだけ負うということはございませんし、やはり一般金融機関からの金融が主体であって、政府関係機関はこの補完機関であるということでいいのでありますが、いままではむしろ量に力を入れておりましたが、むしろ政府機関は今後質の問題に入っていって、そうして一般金融機関ではそこまでやれないという、いわゆる特利的な問題の解決の機関になるというような方向へこれがいくのでしたら、私はいま程度の、一割程度のもの——民間の資金も進みますから、政府資金も率でついていこうとしたら、これはなかなか年々たいへんな量になりますので、私はやはり、民間金融機関のやれない部分をこの政府機関が果たすという方向で、これが質的な問題の解決機関になるという方向へいくのがいいのじゃないかというふうに考えています。
  249. 横山利秋

    横山委員 私の言っていることをよく聞いていただきたいのですが、いま大臣の言っているのは、補完金融という意味で言っておられる。私の言うのは、補完金融からモデル金融、指導金融のほうへいったらどうだ、もっと多くしたらどうだ、こう言っているわけです。金融機関三公庫の性格を少し変えろ、こう言いているわけですよ。三公庫は宣伝していません。宣伝したら需要がもっとふえるから、まあ適当にと言って、市中金融機関に仕事をやってもらって、落ちこぼれたものはわしのところでやるのが商売だ、こう言っている。私は、それだけではもうだめだと言っているのです。特に引き締め下においてはだめだ、こう言っている。だから、一割という線を突破して、少なくとも全金融機関の中で一割五分から二割ぐらいの力を持たせて、そうして金融の正常化をはかる。歩積み両建てなどのまずいやり方を、おれのところを見ろと、また国民のほうも、そちらのほうへいく。いけば、市中金融機関の歩積み両建ても漸減をおのずからしてくることになる、こういう意味で申し上げているのですから。いかがです。
  250. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま中小企業のための専門金融機関をとにかくつくるということをまず第一段の措置としまして、私どもはこれを考えてやっております。この次に、一般金融機関のあり方についていま検討を願っておりますので、答申を得てさらにこの問題に入りたい。そうして、日本の金融機関全体のあり方をここで是正したいというふうに考えておりますが、その過程の中において中小企業の金融というものは、やはり一般の、そういう民間の金融機関によってまかなわれるという方向へ指導するのが、今後の金融のあり方としては正しいんじゃないか。いたずらに政府機関の金融機関を大きくしていくという方向はどういうものか。結局、民間の金融機関でそこがうまくいっていないからそういうことが問題になるのでございまして、今後の方針としては、民間の金融機関自身が中小企業の金融を十分に見られる方向へ持っていくこと、また、現に日本の中小企業の体質がどんどんよくなってきますから、したがって民間の金融機関がこれを見ることは可能になるという方向に進むでありましょうし、やはり私は、政府の金融機関をだんだんに大きくしていくという方向については、少し考えなければならぬじゃないかというふうに考えています。
  251. 横山利秋

    横山委員 残念なことでありますが、大蔵大臣と私とはこの問題について意見が違うようであります。  次は、積年本予算委員会が全力を傾注してまいりました歩積み両建ての問題であります。  四十二年三月、中小企業向け比率は、全貸し出し中四二・五%でありました。全企業中で中小企業は九九・四%でしょうか、九九・四%が中小企業であるのにかかわらず、中小企業向け比率が四二・五%内外にいつもとどまっておるわけであります。しかも歴年の趨勢を見ますと、景気がいいときにはむしろ中小企業貸し出しがふえている。景気が悪いときには中小企業金融機関の貸し出しが減るわけであります。これは結局、大企業の手形サイトがおくれたものを中小企業のほうで負担をするというようなことやら、あるいは中小企業への選別融資によって犠牲になっている結果だと思うのであります。で、金融機関の姿勢の中にこういう考えがあります。おれのところだって自分の金じゃない、預金者から借りてきた金だ、それをあなたに貸すのだから歩積み両建てがある程度あるのは当然ですよ、こういう考えがある。驚いたことには、大蔵省の中にもそういう思想がある。二割はまああたりまえじゃありませんか、三割でもまあまあだ、とにかく四割、五割になったら文句を言ってくださいよと、こう言うのであります。ですから、こういう思想がある限りにおいては歩積み両建てはなくならない、拘束預金はなくならない。しかも、最近引き締め下においては重ねて再びこの傾向が出ております。この傾向は、この年、おそらく月を経るに従ってもっと深刻化するかと思います。この歩積み両建てに対して、大蔵大臣はどういう対処をなさるかを伺っておきたい。
  252. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のように、歩積み両建てについての第一ラウンドは、これは終わりました。いま第二ラウンドに入っておりまして、この拘束預金に見合う貸し金についての金利を下げることとか、貸し出しにおける比率を下げるというような指導をいまやって、各銀行にも報告を求め、この監督を十分いたしておりますが、おっしゃられますように、こういう引き締め下になってきますと、せっかくよくなってきたこれが、また監督をゆるめますともとへ戻るおそれが十分ございますので、いまそれを私ども警戒して厳重に監査をして、この歩積み両建てをもとへ戻さぬように、このことについてはもう万全の措置をとりたい、十分監督を厳にして、これをあと戻りさせないようにしたいと考えています。
  253. 横山利秋

    横山委員 次に、信用補完制度の現状について伺いたいと思うのであります。  私が窓口をずっと回って調べてまいりますと、こういうところがある。もう五回も六回も信用保証をしてもらいました。で、何か事故がありましたか。事故はありません。五回も六回も信用保証をしてもらう。しかも、事故がないのになぜあなたのところ卒業しませんかと言うたら、金融機関がもらってこいと言うのでしかたがありません。これはおかしいですよ。  第二番目に、これはもう徹底しておるはずでありますけれども、しておりません。金融機関が保証料を払って保証してもらった分ぐらいは、金利をまけるのが普通になっておるはずであります。それがちっとも実行されておりません。これは政府のお声がかりである、地方自治体も常にそう言っている。保証をした以上は、その銀行が、不渡りなり倒産になった場合において、いささかも被害を受けることはないと言ってもまあいいんでしょう。それにもかかわらず、保証をしてきてもらったにかかわらず貸し出し金利を少しもまけない。まけても全くていさいだけだ。こんなばかなことがありましょうか。私は、信用補完制度とはいいことだと思うけれども、信用保証協会が保証しなくてもいいところは保証し、保証しなければならないところは保証しない、こういうことをすればもうかるにきまっていますから。そういう弊害が生まれておる。信用保証協会なり信用保険公庫というのは、ある意味においては、言い方は悪いけれども、赤字が出てあたりまえだと私は思う。言い方は悪いけれどもですね。それが使命なんであります。それがもうかるように運用するとは何事でありましょうか。一回も事故がないのに、五回も六回もそこに保証してもらってこいという金融機関の態度は何でありましょうか。こういう現状を通産大臣は御存じでありましょうか。御存じだったら、どうしてこれを是正し、なくならないのでありましょうか、一言伺いたいと思うのであります。
  254. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 そういうことは前から聞いております。大蔵省を通じて金融機関に、しきりにその分だけは安くするようにということを要請しておりまして、現状では大体日歩一厘か二厘程度は引き下げられておるということを聞いておりますが、なお十分でなければ今後そういう方面に努力をいたしまして、もっと改善するようにいたします。
  255. 横山利秋

    横山委員 通産大臣、あなたはもう私どもよりも大先輩でございますから、信頼しておりますよ。私が大きな声をするのと、あなたの小さい声とは対照的でありますけれども、しかし議事録には大きい声、小さい声とは残りませんから、一たん言った以上は、椎名さんの政治生命にかけて、はっきりひとつこの問題が解決するようにお願いしておきたいと思います。よろしゅうございますね。  次に、融手について伺いたいと思うのであります。  この融手というやつは、最近の不渡り、倒産の中に何かの形で介在しておるわけであります。商取引の実体がない。けれども、資金操作のために融通手形を出すということについては、何らかの対策をこの際しなければならぬというのが積年の声であります。これは質問通告を、融手について責任追及をきびしくすべきではないかとちゃんと御通告してありますから、もう御検討のはずでございましょうから、大蔵か法務か、どちらかからひとつ御返事を願いたいと思います。
  256. 水田三喜男

    水田国務大臣 最近、融通手形の横行があることは十分承知しております。これが中小企業の倒産の一因ともなっておりますので、この点については十分関心を持っておるのでございますが、なかなかこれは取り締まりのむずかしいことでございまして、融手の法的な責任の追及というようなことは、大蔵大臣の仕事じゃなくて、大体法務大臣の所管ということになっておりまして、私どもはこれは——手がちょっと……。
  257. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 現行法上で融通手形の振り出しや割引そのものを取り締まる規定は、お述べになりましたように、ございません。融通手形の債務者が支払いの意思も能力もないのに、たとえばこれを商業手形のように見せかけて相手をだまして割引を受けたような場合は、これはとりもなおさず詐欺罪になる。現にこのように融通手形を悪用した事例は、検察当局においても比較的数が多く取り扱われております。厳正な立場でその刑事責任を追及しておる次第でありまするが、今後とも一そうこの種の事犯の取り締まりの徹底を厳重にしていきたいと私は考えておる次第でございます。  なおまた、融通手形についての責任追及を強化する方策の一つといたしましては、不渡り手形を出したことについて刑事罰を科することとすることも考えられないことはないのでありますが、当初から不渡りとする意思があったものと認められる場合は、これはとりもなおさず詐欺罪として処罰をされます。そのような意思がなくして不渡り手形を出したというようなものにつきましては、これは債務不履行におちいっても、私は、刑事罰としてこれを処置するということは現行の法制においてはできない、(発言する者あり)かように考えております。
  258. 横山利秋

    横山委員 いま加藤さんから不規則発言がございました点を私が一ぺん読んでみますが、大蔵大臣よく聞いておってください。あなたは全然手がないと言われた。田中大蔵大臣は、これについて一言言われておるのです。これが非常に反響を呼んだのですよ。反響を呼んだことについて、結局何もしなかったわけです。いま——これは三十九年でありますから、数年たった今日、実は前の大蔵大臣の言ったことは何の根拠もない、何の実行もできませんでしたということをここで証明するようなことになるのじゃないか。三十九年の二月三日の予算委員会ですがね。加藤さんの質問に答えて、手形法について、欧米では不渡り手形に対し窃盗あるいは詐欺罪を適用しているが、わが国では銀行取引停止処分を受ける程度で刑事罰はない。このため融通手形が横行し、中小企業のうち符に黒字経営のものでも倒産せざるを得なくなる。融通手形を手形の流通段階で摘発することは困難なので、不渡り手形に対する罰則をある程度強化、これが融通手形であることが判明した場合は欧米並みに窃盗あるいは詐欺罪の体刑を科することにする。今後、法務省と折衝し、改正点を煮詰めるが、できれば経済事犯裁判所も設置し、手形関係の裁判処理の強化とスピードアップをはかる。えらい具体的に言ったものだと思いますよ。けれども、あの当時の雰囲気としては、世論としては非常に、大蔵大臣のその決断といいますか、融通手形に対するものの考え方を明白に出されたものとして好感をもって迎えた。いまここで新しい大蔵大臣、法務大臣が全くこのことを打ち消して、大蔵大臣は手がございませんと答え、法務大臣は現行法でなるべくきびしくやりますということでは、予算委員会質疑応答は一体何のことだということになりますね。非常にこれは権威を失墜することだと思うのです。田中大蔵大臣の言ったことを、お二人とも当時閣僚でもございますまいが、一体あと念査をされたものかどうか。
  259. 水田三喜男

    水田国務大臣 いまの案は、これは実は十年くらい前の私が唱えた意見でございます。ということは、手形に対する信用がないということが日本のコストに対してどれくらい響くかということを、私は興味を持って研究しました。不渡りになるかもしれぬというために、単に利子やそのほかの計算じゃなくて危険負担のアルファがみな加わっている。これが日本のコストを高めて国際競争力を弱めている。手形というものはもう絶対に不渡りがないものだということになった場合には、私は日本の物価と日本の生産コストが相当下がるという計算をしまして、そうなりましたらこの問題は真剣に取り上げるべきだということを言って、まず弁護士会に相談して、ひとつ日本の弁護士会でもこういう問題を研究してもらえないか。やはり外国の例を見て刑事罰から出発しなければこれは直らぬというふうに思いましたので、刑事罰の研究を当時法務省にもお願いしてあったのですが、なかなかこの刑事罰に踏み切ることがむずかしいというようなことで、まだ検討しておってくれるとは思いますが、私はやはり何らかこれは処置すべきだろうと思います。これによって、私は日本のそれはどこのものでも、下請段階、あらゆる段階でみんな何%かはかけている。これは国全体として見たら競争力を非常に下げるので、私は日本の設備が国際水準になり、まだ日本の賃金というものが相当低目にあるというときに、日本の国際競争力というものがこれ以上どうこうしたらなかなか競争がむずかしいというふうによく言われているのですが、何かほかに原因があるのじゃないかということを考えて、この問題の解決がやはりあまりみんな気のつかない大きい問題じゃないかと思っておりますので、これは引き続き研究したいと思います。
  260. 横山利秋

    横山委員 当時はあなたは野にあったというか閣僚の中になかったお方で、いま少なくとも近代諸国の中の一方の旗がしらだと佐藤さんの御自慢になる日本なんです。そこの大蔵大臣ですよ。そうしていま不渡り倒産が一番やかましいときで、しかもその中における融通手形の存在というものは非常にやかましいときですから、本気であなたがおやりになるんだったら私ども協力をするにやぶさかでないんですから、真剣になってひとつこの措置をとってもらいたい。そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  261. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま事務当局からメモをもらいましたが、やはりこれは再三法務省においても研究されておりますが、結論がまだ出ていないという状態だというので、これはさらに考えたいと思います。
  262. 横山利秋

    横山委員 次は公取に移ります。時間の関係上簡潔に聞きますが、下請代金支払遅延防止法の実施の予算、本年八百四十三万八千円。それに対する中央の職員二十名。対象の事業所約二万。この数字に間違いありませんか。
  263. 山田精一

    ○山田政府委員 御指摘のとおりでございます。
  264. 横山利秋

    横山委員 二万の対象事業所を二十人、八百四十三万八千円でこの下請代金遅延防止法の実行を行なおうというのであります。先ほどのこの官公需と相並んで、少なくとも大企業に対する問題については政府法律について非常に不忠実である一つの証左だと私は思います。これはどうしてこんなに予算も人数も少ないのでしょうか。どうしてこれでやれるということになるのでありましょうか。どなたに聞いたらいいのですか。総理大臣いかがです。だれに聞いたらいいのですか。二万の事業所を八百四十三万、本省二十人で下請代金遅延防止法を運用しようというのであります。どうやってやらせておるつもりですか。
  265. 山田精一

    ○山田政府委員 御指摘のとおり、人数は少ないのでございますが、私どもといたしましては全能率をあげましてこの処理に当たっておるわけでございます。毎年五千五百社あまりの定期調査を実施いたしておりますし、また立ち入り検査をいたしまする件数も六百八十五件ございまして、十分とは申せませんが、そのほかかような立ち入り検査のほかに下請協力者及び下請協力者団体というものを委嘱いたしております。
  266. 横山利秋

    横山委員 全国で何件ありますか。
  267. 山田精一

    ○山田政府委員 下請協力者団体が全国で五十何件であったと思いましたが、こういうようなものと随時会合いたしまして、その実情いたし、またあわせてこちらの方針をPRをいたしておるわけでございます。
  268. 横山利秋

    横山委員 本法の運用は、そういう人数でありますから、実際には全般的に立ち入り検査なり全貌をつかむことができない。一番手っ取り早い話は、下請が私のところは飛行機手当をもらいました、台風手当をもらいましたと言ってもらえればいいのですが、この間あなたが委員会で御答弁になったものによりますと、四十二年でわずか十件、四十一年でわずか十五件、四十年で二十三件、これが申告があったそうですね。年々減るばかりなんですね。下請からのおそれながらと訴え出るのは減るばかり。なぜ減るだろうか。言うまでもなく下請が親企業の悪口を言うことになる。そうするとあとがこわいということもあるけれども、実際問題として、いまの公取や本法の運用については、これでは政府を信用できないということなんです。この予算や人員で本法運用ができないということを如実に下請が証明していると私は思うのであります。ですからこれもこの官公需とあわせて法律はできたけれども、実効は全然といっていいほどあがっていない。不況下になればますますこの運用が困難になるというところですから、どこかでこれはたがを入れなければならぬ。これは公取委員長に言ったってしょうがない。銭でたがを入れるか法律改正でたがを入れるか、どちらかしなければならぬと私は思う。法律改正の問題では同僚諸君もほかの委員会で言っているのですが、これは修理と製造だけで建設業や運送業、流通産業を含んでおりません。こういうようなことではこのたがはまだ入らない。もっと拡張をすることと予算をふやすことによってたがを入れる。  もう一つある。もう一つは、下請の協同組合が組合交渉権がある。けれども、下請が親企業に団体交渉を申し込んだところで、親企業がそれに応じなくてもいいことになっている。応諾義務がないのです。だから法律はあれども実際運用はない。団体組織法や環境衛生法で大企業と団体交渉契約を結んだ事実がありますか。これは通産大臣ですか中小企業庁長官ですか。
  269. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 お答えいたします。二百五十組合調査いたしました結果、十六組合団体協約を結んでおります。
  270. 横山利秋

    横山委員 ここの白書にあるのですが、おとといもらって拝見をしたのですが、中小企業の団体組織法、環境衛生の適正化に関する法律の規定により商工組合、環境衛生同業組合が進出、大企業と特殊契約を締結することになっているが、現在まで同契約による認可申請は一件もないと書いてありますね。一件もない。時間の関係上そのあるかないかということを議論をするのは省きますけれども、少なくともこの白書ではそういう特殊契約は一件もないと言っている。私が整理してもう一回言いますけれども、私の要望は次のとおりです。第一は、この法律を改正して建設業、運送業、流通産業を含ませること、予算人員を増加すること、組合の団体交渉権に対して親企業に応諾義務を持たせること、公取はもっと大企業や金融機関への立ち入りを強化して実行すること等をしなければ、下請代金支払遅延等防止法は、いまやまた有名無実になりつつあるということでございます。いかがでございますか。
  271. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 関係方面と十分に協議をして、なるべく急いで検討をしてまいりたいと思います。
  272. 横山利秋

    横山委員 私の要望の四、五項目については、善処をしていただけるということでございますね。
  273. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 そういう趣旨で検討してまいりたいと思います。善処するというところまでまだはっきり……。
  274. 横山利秋

    横山委員 誠意がありませんな。誠意がありませんよ。私の言っておることが何か間違いがあるとか、政府としてはできないことだから研究してみるということならわかるのですよ、けれども、私の言っていることについてどこに支障がありますか。先ほどから声を大にして、私は中小企業の問題についてはそんなにあなた方と見解の相違はないはずだ、この不況下の、物価高の、不渡り倒産の多いときにやってやるべきだと言っておるのに、どうしてあなたはそんなに渋るのですか。
  275. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 たとえば、自動車産業とその下請との関係のように有機的な組織ではない建設業界なんかをとってみますと、自分でやればやれないことはないのだけれども、まあ相当値段からピンはねをして、下へこう二段、三段に落としていくというような関係でございまして、どうも普通の機械工業の親企業と下請企業との関係とは少し違うのじゃないかということを私ちょっと考えたものですから、検討いたします、こう申し上げたわけであります。
  276. 横山利秋

    横山委員 次に、大蔵大臣に庶民金融について伺います。  金融引き締めのときは、町の金融業者に対する需要が増大しています。私が町の金融業者と言うのは、いわゆる手形割引業者あるいは貸し金業者、ランニングなんとかというものであります。現在私の承知しておりますところによりますと、これによって少なくとも年間約一兆円の取り扱いがあると思われます、大は日証から、小さいのは千円貸してくれというような、それを日常業にしておる人たちを含めてみますと、全国で五、六万にわたります。中小企業金融を論議する際に、この問題に触れずして町の金融の実態に触れた論議をすることは、私はいまや架空な論議になると思うのであります。  で、先ほど大蔵大臣に信用組合から普通銀行に至るまでの議論をいたしましたが、大蔵省が中小企業金融を論議する際に、どうしていわゆる庶民金融、町の貸し金業のことについてことさらにお触れにならないか。ことさらにこれを回避しておるという点について、私は前から指摘しておるのですが、これはけしからぬことだと思っておるわけであります。不渡り倒産の場合には、大なり小なりこの町の貸し金業者が介在をしておるわけであります。一部には違法な日歩三十銭以上や、あるいは暴力金融が存在をしております。そして、これが警察ざたになっておることも御存じのはずであります。大部分は、よしあしはともかく、暴力金融や高利金融は別といたしまして、大部分は、こういう存在がいいか悪いかという前に、今日の日本の経済社会の中で一定の役割りをしておることは現実問題でございます。その現実問題を大蔵省が回避をしている。こういう点について私はきわめて遺憾の意をまず表しておきたいと思います。  いま、これらの業者に対しては、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律によっています。しかし、これは届けさえすれば、地方自治体がそれでうんといえば、もうそれでしまいであります。何らの指導もしておりません。届け出を要求しながら、それに対する何らの指導もしていないということは、これは何のための法律であるかということになるわけであります。日証のような大きなものと対象的に、先般も分科会で問題になりましたが、北九州では生活保護世帯に金を貸して、そうして生活保護世帯の人が金をもらってくると、役所の前ですぐその場で返済を迫る高利貸しがおります。役所の前でそういう連中がたむろしているのを役所が知らぬ顔して見ておるというのであります。こういうような状況を一体放置しておいていいものであるかどうか。自己資本の少ない手形割引業は、大証の例を待つまでもなく、経営不健全で危険であります。中には脱税の温床になっておったことは、この間国税庁の摘発で明らかになりました某大学教授の例であります。大蔵大臣御存じかどうかわかりませんが、最近この手形割引業者の中で相当なところが危険を伝えられておるわけであります。こういうことが、また大証の例が近く起こりますようなことがありましたならば、もうこれは大蔵省所管でないなんて言っておれませんよ。この際、これらの金融業者に対して、何らかの措置をしなければならぬと私は痛感をします。この際、業界を適正化し、自発的な組織を育成し、不正や暴力業者を区別する、そのために立法措置をすることが今日必要なことではないかと私は思うのでありますが、いかがでございますか。
  277. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは非常にむずかしい問題でございまして、私は、これを大蔵大臣の監督下に置くいろいろな措置については反対でございます。と申しますのは、貸し金業は個人的な営業でございますし、規模が小さい、その数がきわめて多い。いま六万と言われましたが、昨年の十二月末で大体七万二千以上あるだろう、届出の数は七万二千以上に達しておるというようなことでございまして、しかも毎月開業したり休業したり廃止して、出入りが非常に多いというものでございますので、このような状態にある貸し金業者を大蔵省が監督をするということは、もう事実上行政能力の範囲を越えるものであって、七万以上の、出入りの多いこれを監督するということは容易なことではございません。と同時に、かりにこれを監督するというようなことになりますと、大蔵省の監督だということになって、いろいろな個人の貸し金業が行なわれるということによって起こる弊害はたいへんだろうと思います。大蔵省は相当金融業についての監督がきびしいということになっておりますので、事実上監督できないものを大蔵省の監督というような体制の中へ入れることによって、これは非常に確かな貸し金業であるという信用を与えて、そこから起こる弊害というものは非常に多いだろうというようなことを考えますと、本来自分の金を貸している自由業でございますので、これの取り締まりはやはり別の形で、出資をよそから受け入れてはいかぬとか、あるいは預かり金の禁止とか高金利の処罰とかいう従来のこういう処罰を厳重にして取り締まってもらうというよりほかにいい方法はないのじゃないかと私は考えております。
  278. 横山利秋

    横山委員 大蔵大臣たいへん研究不足だと思います。私は、何も大蔵省の管轄といって、理財局が全部監督しろ、必ずしもそういうことばかり言っていない。いまの地方自治体の委任においてもまだできるはずだと言っておる。あるいはまた、あなたは自己資本だとおっしゃるけれども、大証だって日証だって自己資本なんかほんとの微々たるものですよ。手形を割ってやって、すぐそれを売って、売って買ってといって操業をしておるんですから。そんなものはあなたの認識不足ですよ。時間がございませんから多くは申しませんが、結局はあなたがお断わりになる理由は、大蔵省では監督できない、めんどうで困る、まあ、毛並みのいい銀行を相手にしておりたい、そんな妙なものは大蔵省はかかわりたくないというような御返事の模様であります。そんなことで一般の国民が納得するものでしょうか。この一兆円、そうしてあなたの言うところによれば七万、これらの人が今日の経済社会の中でよかれあしかれとにかく金を貸し、手形を割引をし、経済的な行為をし、一定の役割りをしておることは事実ですよ。その中から一部に暴力金融や高利金融が生まれて警察ざたになっているわけです。このまま進めばそれがさらにふえ、そうしてその弊害がさらに大きくなるのにかかわらず、あなたは、めんどうなりいやだで済ませるつもりでありましょうか。どうですか、総理大臣はひとつもう少し高い次元でお考えになれませんか。
  279. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま高金利の場合、いわゆる利息制限法でそれぞれ規定がございます。しかし、ただ単にこれは商法上、民法上の問題だけだ。なお、いまいろいろこれに何か刑事罰をかけるような方法があるのかということを、法制局長官の意向もいま聞いていたのでございます。まて、物価統制令の、いまなお残っておりますか、そういうものにはあったようです。したがいまして、私、ただいまのお話を聞いておりまして、この種のやみ金融、これはまず第一が自粛、自分たちでとにかく自粛すべきものだと思いますけれども、最初から自粛ができるようならかような高金利や暴力金融はしないと思います。したがって、国家的権力がこういう面にも介入することは当然ではないか、かように私ただいまの質疑応答を聞いていて思うのでありまして、ただ、立法上いろいろ困難な問題があるだろうと思いますが、そういう点ではなお皆さん方の御意見も拝借したいと思いますが、これらの取り締まりで実効をあげ得るようなそういういい方法をさらに検討することにいたしたいと思います。
  280. 横山利秋

    横山委員 次は社内預金であります。  社内預金は現在九千二百四十億円といわれています。これもやはり先ほどの庶民金融と同じくらいの額であります。田中大蔵大臣は、三十八年、社内預金は廃止すべきであり、総理の裁定を待ってでも私は廃止したい、こういうふうに明言をされたことがあります。山陽特殊鋼の当時からであります。中央労働基準審議会が四十一年に討議をいたしまして、いよいよ本年三月三十一日をもってあの当時の暫定措置は終わる、こういうことになっておるわけであります。三月三十一日までに労使の間で再協定をする、そうして、届け出をしなければ基準法上、十八条の合法性を失う、こういうことになると解釈をしてよろしゅうございますか。  そうすると、大蔵大臣にお伺いするのですが、出資及び預かり金の法律が適用されることになるだろうと思うのです。大蔵省としては再協定していない社内預金は多分にこの出資法に違反する疑いが生ずる、こう考えてよろしゅうございますか。イエス、ノーだけ……。
  281. 水田三喜男

    水田国務大臣 労働基準法の十八条に定める要件である協定を締結しないで預金の受け入れをするということが違法であるかどうかは、これは基準法の解釈によるものと思います。もし労働基準法によってこれが違反するものだということでございましたら、むろん出資法上違反というふうに考えます。
  282. 横山利秋

    横山委員 労働基準法十八条の合法性を失うことは、これは明白であります、再協定しないから。あなたに聞いておるのは、そうすると出資法によることになる、出資法では再協定していない社内預金は多分に違反する疑いが生ずる、こういう解釈になると思うのですが、いかがですか。
  283. 水田三喜男

    水田国務大臣 やはり違法であるというふうに考えます。
  284. 横山利秋

    横山委員 したがって、この問題は多分に尾を引きますけれども、時間がございませんから、いまの大蔵大臣の御答弁だけで、後日に譲りたいと思います。  ただ、この際大蔵大臣に伺っておきたいのは、労働大臣は、持ち家制度に籍口してこの高金利を温存しようとして、九分八厘の金利を考えているようだが、答申があの当時漸減の方向、つまり七分三厘七毛を考えておったはずであります。したがって、私どももあの答申を尊重するたてまえから言うならば、持ち家制度に籍口して九分八厘の金利を実施をしようとすることについて、いささか疑義を持つのでありますが、大蔵省のお考えを伺いたいのであります。
  285. 水田三喜男

    水田国務大臣 大蔵省はこの社内預金の問題を消極的な方向で考えておりますので、したがってそれは好ましい傾向ではないと思っております。
  286. 井出一太郎

    ○井出委員長 横山君、あと十分でございます。
  287. 横山利秋

    横山委員 人事院総裁おいでになっていますか。——簡潔に人事院総裁に伺います。御連絡をしておきましたように、総予算制度についてのお考えを承りたいのであります。  予算委員会並びに各分科会で何回もこの総予算とそれから人事院勧告、仲裁裁定についての論議が行なわれました。しかしながら、あなたの御意見をまだ聞いていないようでありますから、あらためて本委員会で詰めの質問をいたしたいと思います。私はこう信じたいのであります。総予算制度についての解釈はともあれ、人事院としては国家公務員の生活を守る義務がある、だから、予算がどうであろうと、あるいはまた総予算制度がどうであろうと、人事院としては国家公務員法の定めるところにより、物価の上昇その他を勘案して適切なる国家公務員の賃金勧告をなさるものだと確信をいたしておりますが、そう考えてよろしゅうございますか。
  288. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 おっしゃるまでもないことでありまして、われわれの基本態度はそのとおりでございます。
  289. 横山利秋

    横山委員 もう一つ念のために伺いたいと思うのであります。  仲裁裁定は、曲がりなりにもともかく、百点とはいわれませんけれども、まあ百点に近いような雰囲気が常に存在しておるわけであります。人事院勧告は、常に値引きというような傾向が常識化してしまっておる。慢性化してしまっておることについて、きわめて私どもは遺憾に存じておるわけであります。今回この総予算制度というものが、とかく五百億のワクだとか、あとは節約だとかいうようなことにして、予算の補正を考えないということによる心理的圧迫を、あなたをはじめ国家公務員に精神的影響、重圧を加えようとしておるように、みんなが心配をしておるわけであります。仲裁裁定と相並んで、人事院勧告が常に値引き状態である点について、いわんや総予算制度が一つの心理的圧迫を加えておるときにおいて、率直にあなたの人事院勧告の実行状態、あるべき姿、政府国会に対する要望を明白にしていただきたいのであります。
  290. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 心理的圧迫の面は、全然御心配の要らないことであります。  ただ、公労委の仲裁裁定との関係につきましては、私どもあらゆる場面において、国会においても訴えてまいりましたように、御指摘のとおりに、あちらはここ十年以上完全に実施され、私どものお預かりしているほうは遺憾ながら期日の点において完全というところまでまいっておらぬ、これははなはだ遺憾なことであるということを申しておるわけでございますが、今後はそういうことのないようにぜひお願いしたいという気持ちでおります。
  291. 横山利秋

    横山委員 大蔵大臣、よく聞いていていただけましたね。よく聞きましたとうい御返事をひとついただきたい。
  292. 水田三喜男

    水田国務大臣 心理的圧迫を感じないということをよく聞きました。
  293. 横山利秋

    横山委員 最後に、社会主義圏貿易について御質問いたします。  時間がございませんので、具体的な引用をいたしまして聞きますが、日朝貿易の状況を引例をいたします。四十二年中の日朝の貿易は、輸出が二十二億九千万、輸入が何と百六億五千万であります。まさにべらぼうもない片貿易、入超になっております。原因は、必ずしも朝鮮側にあるわけではない。これは積年の人事交流の問題、延べ払いに問題があるのであります。  私がお伺いしたいのは、とにかくドル防衛や何かで政府が全力をあげて輸出を強化しようとしておるときに、社会主義圏貿易だけは、武士は食わねど高ようじというような傾向が見えます。輸銀融資の問題が本委員会で問題になりました。長期延べ払い、この輸銀融資については、政府の本委員会における答弁は、日中を中心としてではありますが、ケース・、ハイ・ケースとして、吉田書簡に触れないで善処をしようというように返事をされたわけでありますが、この点については、日朝の貿易についても同様に考えよろしゅうございますか。
  294. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日朝の場合は、輸銀融資、これはケース・バイ・ケースで考えるということでございます。
  295. 横山利秋

    横山委員 いいんですか、それで。
  296. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日朝の貿易関係は、中共貿易の場合と違ってややむずかしい関係にございまして、中共との貿易は政経分離の形においてどんどん進めるという、そういう形でございます。しかし、その場合でも、輸銀についてはケース・バイ・ケースできめるということでございます。この北鮮の場合には、これより程度がもっときびしい、そういう状況下にございます。しかし、ケース・バイ・ケースで決定すること、変わりはございません。
  297. 横山利秋

    横山委員 きびしい状況下にあるけれども、いかぬとは言わぬ、こういうわけですね。北朝鮮における貿易の状況は、西欧諸国の進出は非常に目ざましいのです。北朝鮮からの日本に対する機械設備の引き合いは、きわめて大きいのであります。百六億と二十二億という片貿易は、何としても残念なことであり、しかも注文はあるのですから、なぜそれがうまくいかないかというと、輸銀の関係で四%くらいの金利差がつくわけであります。四%の金利差というものはコストに入ってくるわけでありますから、とても西欧諸国と太刀打ちができないというのであります。したがってこの際、この西欧諸国との競争のもとにおいても、まあ総理大臣が、私初めてだと思うのですけれども、輸銀についていかぬとは言わぬ、ケース・バイ・ケース、若干きびしいけれども、輸銀についてそういう方向にいこうと言われたことは一つのあれでありますけれども、もう少し日朝の問題について目を開くことは、単に商業上の問題でなくて国益の問題だと思いますが、この点はいま一歩前進をなさるおつもりはありませんか。
  298. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん私が前進したようにおとりになるようですが、いままでも一貫してただいまのようなお答えをしているのです。政府の考え方に進歩もございません。
  299. 横山利秋

    横山委員 朝鮮との貿易の問題については、先般来、向こうにこちらから品物を持っていく場合に、技術者も向こうについていかざるを得ない。向こうから受け取りに来るときにも、技術者も入国をしなければ実際の商談はできないという問題がございます。これはあの当時韓国の反対がございましたために、結局契約は無効となりました。こういうことで、いまの天の命題である輸出の促進ができないということは、きわめて残念なことだと思うのであります。少なくとも北朝鮮から商談について必要な技術者の入国についてはお考えなさるお気持ちはありませんか。
  300. 三木武夫

    ○三木国務大臣 共産圏貿易は、いろいろ具体的な問題については、そういう問題が起こったときに検討しようというのが政府の一貫した方針で、前に原則的にこれを認めよう、あれを認めようというのでなくして、具体的な問題として、具体的な問題ごとに検討しようという立場でございます。
  301. 横山利秋

    横山委員 ひとつ外務大臣に、こまかい問題で恐縮でありますが、検討願いたいのであります。それは、たとえば北朝鮮へ入りますには、ソビエトかあるいは香港回りであります。帰りもまたそうなんであります。純粋な商談で出国の場合にはそうやるのもやむを得ないと思うが、帰りに——清浄から船は日本へ来ておる。行き来しておるわけでありますね。そのことぐらいは、清浄から日本へ帰ってくるぐらいの便宜を——日本人の商社の問題ですよ。日本人の問題ですよ。そのことぐらいはひとつ考えたらどうかと思いますが、どうですか。もう一ぺん言いますと、北朝鮮へ、行きに香港から、ないしはモスクワから入る。そして商売を済ます。それでまた同じ経路で帰ってこなければならないのであります。ところが、清浄から横浜なりどこかへみな船が通じているわけですよ。そこで、大回りをするために少なくとも三十万円、五日ぐらい余分にかかるわけですね。帰りぐらいは——日本人だから、日本人ですよ、帰りぐらいは変えてやってもいいじゃないか。(「行きも戻りもだ」と呼ぶ者あり)行きもという声もありますが、少なくともそういう便宜ぐらいはばかってやったらどうかということです。
  302. 井出一太郎

    ○井出委員長 横山君、これで時間ですから……。
  303. 三木武夫

    ○三木国務大臣 そういう例というものはあまりなかったのですが、しかしいろいろそういう場合に、具体的な問題ごとにやはり検討せざるを得ないと思います。
  304. 横山利秋

    横山委員 具体的に相談に乗ってくれますか。
  305. 三木武夫

    ○三木国務大臣 検討いたすことにいたします。
  306. 井出一太郎

    ○井出委員長 これにて横山君の質疑は終了いたしました。  次に、鈴切康雄君。
  307. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 一昨二十七日の報道によれば、北朝鮮側地域に米軍が、武装人員が三十八度線を越境したと報じられているが、このような問題が、三十八度線で紛争がしばしば起こっている、そのように聞いておりますが、その状態についてお伺いしたい。
  308. 三木武夫

    ○三木国務大臣 どうも失礼をいたしました。いま話をしておったのですが、米軍が、ですか。
  309. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 紛争が、です。
  310. 三木武夫

    ○三木国務大臣 三十八度線を越えて紛争というものが、たとえば北鮮からやはりゲリラ部隊の侵入が、去年でも、国連に対しての報告でも四百五十件ぐらいあったと思います。そういうことは、やはり三十八度線が非常に安定したという状態とは言えないという状態であります。
  311. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこで総理、いいですか、このような極東情勢の緊迫した状態を総理はどのように判断されているのか、お伺いいたします。
  312. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、私ども韓半島において問題が起こることをたいへん心配しております。したがいまして、その一挙手一投足にも、ときに喜び、ときに悲しみ、ときに憂え、いまこういうような状況でございます。しかし、幸いにいたしまして大事に至らないで、ただいま小康を得ている、かように私考えておりますし、ぜひともそういう状態であってほしい、ここに紛争が起こらないように心から念願しておるような次第であります。
  313. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこで、このような紛争をはらんでいる朝鮮の問題についてお伺いいたします。  まず、朝鮮に対する国連軍はどのような性格を持ち、現在の配備状況についてどのようになっているか、お伺いいたします。
  314. 三木武夫

    ○三木国務大臣 米軍は、国連の決議によって、休戦協定の線に沿うて韓国における平和安定の維持に従事しておる。   〔委員長退席、小川(半)委員長代理着席〕
  315. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 非常に三木さんの答弁は抽象的でわからないわけであります。この問題につきましては、すでに三木さんのほうにも、大臣のほうにも通告してある問題でありますから、もう少し基本的にお伺いしたいと思います。
  316. 三木武夫

    ○三木国務大臣 韓国における国連軍は、国連から米軍が行って、そしてその韓国におる国連軍は、アメリカ軍ですが、しかし国連の決議によって行っておるわけですから、日本との関係は、やはりアメリカとの岸・ハーター交換公文によって、そしてアメリカ軍の安保条約による地位協定と同じような適用を受けておるわけでございます。
  317. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 去る三月二十二日の政府統一見解では、一九五〇年十月七日の総会決議における朝鮮に対する国連軍は、三十八度線を突破する権限を認められている軍隊である、そのように言われているが、それで間違いありませんね。
  318. 三木武夫

    ○三木国務大臣 その当時はそういう権限はありましたが、いまは休戦協定ができて、そして国境線というものはやはり北鮮あるいはまた韓国においても維持されなければならぬことになっております。
  319. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 政府は国連でこのことについての承認を与えているわけですね。
  320. 三木武夫

    ○三木国務大臣 当時国連の決議は二つありまして、一つは、北鮮側の代表を国連の総会に呼ぶという一つの形式的なものと、もう一つは、朝鮮の平和的統一をはかるという実質的な意味を持ったこういう決議というものに対して、共同提案国に日本はなったことはございます。
  321. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 要するに三月十二日の政府の答弁は、「一九五〇年十月七日の総会決議三七六(V)は、国連軍が三十八度線を越えて行動することの道義的な裏付けを国連総会が与えたものであるという関係を述べたものである。」そのように書いてあるわけですが、もう一度そのところを確かめたいと思います。
  322. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 お尋ねの決議は一九五〇年十月七日の総会決議だと思いますが、これは俗に三十八度線突破決議と申しておりますのですが、御案内のとおり国連の強制行動と申しますか、武力行使と申しますか、それの権限と申しますのはむしろ安保理事会にあるわけでございまして、安保理事会の決議と申しますのは、その前に一九五〇年六月二十五日、二十七日という安保理の決議がございまして、それで武力行使を認めたわけでございます。この安保理の決議自体が、三十八度線より上に——上と申しますか、以北に行くことを必ずしも排除していないという解釈でございますが、そのあとでこの総会の決議が出まして、朝鮮全体の問題を取り扱っているわけであります。したがって、武力行使自体は安保理の決議によって行なわれたと考えますが、総会としてもこれにサポートを与えたと申しますか、プレッシングを与えたと申しますか、そういうふうな関係になると思います。
  323. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 よく説明がわからないわけであります。すなわち、「国連加盟国が武力攻撃の撃退とこの地域における平和及び安全の回復とのため必要な援助を韓国に提供することを勧告しており、したがって、国連軍が前記の目的のために必要と認めた場合三十八度線を越えて行動することを排除したものではないと解される。」このように実は国連決議第三百七十六(V)の解釈に関する質問に対する答弁書がなされているわけですから、それに間違いないのですね、こうお聞きしているのですから、イエスかノーかでけっこうです。
  324. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま政府委員が申し上げたところは、やはり軍隊の三十八度線を越えた行動は、安保理事会の決議である、いま読み上げられた決議は、そういうことを特に排除するという条項はない、こういうことでございます。
  325. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それはあるということですね。
  326. 三木武夫

    ○三木国務大臣 特にそれが軍事行動を肯定してある条項とも言えないと思います。しかし排除もしてない。しかし、その軍事行動は、国連軍が朝鮮半島に出動したものの根拠は、安保理事会の決議であるということでございます。
  327. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 六五年までの朝鮮問題決議案には、日本は共同提案国にはなっていないのであります。ところが日韓条約ができた翌年の六六年から共同提案国になっている、その理由は何でしょうか。
  328. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御指摘のように、これは共同提案国になっておるわけでありますが、これが先ほど私がちょっと申し上げましたように、従来日本は、朝鮮問題については、国連の権威のもとで朝鮮統一を支持するという立場をとってきたわけです。一九六六年は国連においていろいろ朝鮮問題の議論が活発になった年であります。したがって、このわが国の立場を一そう明らかにするために二つの決議案に対して共同提案国になった。共同提案国になった一つの決議案は、韓国の代表が朝鮮問題の討議に参加をすることを招請する、また朝鮮問題に対する国連の権限と権威を認めるということを条件にして北鮮の代表も招く。韓国も招くけれども北鮮の代表も招くという意向であることを確認する、これが一つの決議案。これは形式的な、両方の代表を呼ぶという決議案で、もう一つは、内容について、平和的な手段によって統一された独立かつ民主的な朝鮮を実現するとの国連の朝鮮における目的を再確認する、また国連の朝鮮統一復興委員会の任務の継続を要請する。この二つの決議案は、従来のわが国が朝鮮問題の平和的解決をはかろうという立場と矛盾するものでもございませんから、この二つの決議案に対する共同提案国に日本がなったものでございます。
  329. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 十月七日の決議案とどのような関係があるのですか。
  330. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは従来の決議案とは無関係であると考えます。
  331. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これは十六年たってからですよ。十六年たってから共同提案国になっているわけです。それにしてはあまりにも重大な変化が起きたわけですが、これについてどういうふうにお考えになりますか。
  332. 三木武夫

    ○三木国務大臣 政府委員からお答えいたさせます。
  333. 重光晶

    ○重光政府委員 ただいま外務大臣から申し上げました、共同提案国になった決議案と申しますのは、一九五〇年十月の国連総会決議とは関係がないのでございます。その内容はいま外務大臣から申し上げたとおりでございます。そうして一九五〇年十月の決議は、これも大臣から申し上げましたように、純法律的に申しますれば、同じ年の六月の二つの安保理事会の決議、すなわち権限を持っておりますのは安保理事会でございますから、安保理事会はこの二つの決議によって朝鮮における侵略行為の存在を事実認定をいたし、そうして原状を回復して平和を維持するように、国連加盟諸国に援助するよう勧告した。この安保理事会の決議に基づいて国連軍その他が発足しておるのでございます。したがいまして、大臣から申し上げましたように、今回と申しますか、その後だいぶたってから共同提案国になったというものは、いま申しましたように、朝鮮における軍事行動に直接関係するものではございません。
  334. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま話を聞きますと、関係がないというようなお話でありますが、無関係ではないわけであります。三十八度線突破決議が入っているではないですか。
  335. 重光晶

    ○重光政府委員 仰せのとおり、全く無関係ということを申し上げるのではございません。朝鮮における事態に関連しておるということでは関係がございますが、いまおっしゃいました三十八度線を越える権限というのは、純法律的に申しますれば、これは安保理事会の決議から出ておると解釈する以外に方法はないのでございます。そういうことで御了承願いたいと思います。
  336. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 関係がないわけではないというふうにいま言われたわけですが、どういうふうに関係があるのか。関係がないのかどうか。
  337. 重光晶

    ○重光政府委員 関係がないわけではないと申しましたのは、同じ朝鮮における事態に関連した決議であるということでございます。
  338. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 朝鮮に対する国連軍の機関が日本にあると聞いておりますが、明確に答えていただきたい。さらに、在日米軍との関係、すなわち在日米軍は朝鮮に対する国連軍となり得るかという問題。
  339. 重光晶

    ○重光政府委員 国連軍で日本に現在駐とんしておるのは、アメリカ軍だけでございます。そうしてアメリカ軍に関する安保条約及びそれに関連する協定におきまして、日本にいる国連軍としてのアメリカ軍に関するいろいろな取りきめは、安保条約におけるアメリカ軍の取りきめで律することになっております。
  340. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 朝鮮に行ったら在韓国連軍になるわけですね。
  341. 重光晶

    ○重光政府委員 朝鮮に行けば、在韓国連軍というかっこうになるわけでございます。
  342. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 在日米軍と朝鮮に対する国連軍の指揮系統はどのようになっているか。
  343. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 在日米軍と在韓国連軍との指揮関係を御質問になったということを前提といたしまして、お答えいたします。  在日米軍が韓国へ参りましたときには、在韓国連軍に相なるわけでございます。しかしながら、在日米軍司令官はあくまでも在日米軍司令官でございまして、性質には変わりはございません。韓国へ参ったときには在韓国連軍の司令官の、おそらく第八軍司令官だと思いまするが、その機関に属すると思います。
  344. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日本の国から国連軍として出動するときには、どうなのですか。
  345. 三木武夫

    ○三木国務大臣 岸・ハーター交換書簡ですが、これによっても、事前協議、これはもう安保条約と同じような適用を受ける。またアメリカ軍も、国連軍も、やはり在日米軍と同じような地位協定の適用を受け、韓国に参りますときには事前協議の適用を受ける。
  346. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ではここで吉田・アチソン交換公文につきましてお聞きいたします。  この公文の中には、日本国における施設及び役務についてあらゆる援助を与えるとあるが、具体的にいかなる施設、いかなる役務を与えるものか、さらにどのような援助を与えるのか、お伺いします。
  347. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 国連軍の中の米軍については安保条約がかぶっておりまして、したがって地位協定によってこちらの便宜を与えております。それから国連軍自体と申しますか、米軍以外の国連軍でございますが、それにつきましては、国連軍の地位に関する協定という協定がございまして、それによって国連軍の地位が詳しく規定されております。ただ、この点は、その協定の中に、朝鮮における国連軍に対しては単なる補給の援助だけしか与えないということが合意議事録ではっきり規定されております。   〔小川(半)委員長代理退席、委員長着席〕
  348. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうすると、吉田・アチソン交換公文、日本における国連軍の地位に関する協定によって、日本にいる国連軍、すなわち米軍に基地を提供することを義務づけられているというのですね。
  349. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 日本におることを許可しております。
  350. 井出一太郎

    ○井出委員長 この際、正木良明君より関連質疑の申し出があります。鈴切君の持ち時間の範囲内で許可することにいたします。正木君。
  351. 正木良明

    正木委員 地位協定が、国連軍に対する地位協定と、いわゆる安保条約の第六条によるところの地位協定と、二つある。あなたのいまのお話では、国連軍の中でも、在日米軍とその他の国連軍と明らかに分けて、在日米軍については安保条約がかぶるから、これは事前協議の対象にしようというお話ですね。それ以外のものについては、いわゆる議定書によって兵たん基地の供与しか与えないというようなことになっておるような言い方ですね。そうすると、国連軍に対する地位協定というものは、米軍に対しては全く関係がないということですか。
  352. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 全然関係がございません。
  353. 正木良明

    正木委員 全然関係のないアメリカ軍の司令官と地位協定を締結したというのはどういうわけですか。
  354. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 これは、国連軍の地位協定を締結いたしましたときに、国連軍の統一司令官としてのアメリカの司令官が国連軍を代表いたしまして、この地位協定を締結したわけでございます。ただし、この中で規定しておりますのは、アメリカ軍以外の国連軍の地位を規定しておるわけでございます。
  355. 正木良明

    正木委員 そうすると、現在国連軍に対する地位協定の有効性というものは、どのような範囲、どのような性質のものとあなたはお考えになりますか。
  356. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 内容についてのお尋ねでございますれば、大体米軍の地位協定と非常に似たものでございます。それで、国連軍の動き方につきましては、先ほど申し上げました兵たん基地以外には使わないという議事録がございます。
  357. 正木良明

    正木委員 その範囲と性格を明確に言ってほしいということですよ。内容はわかっておるのだ。内容は同じようなことであるということはわかっております。
  358. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 適用範囲と申しますか、人的な適用範囲につきましては、先ほど申し上げましたように、一番初めの第一条に、派遣国、国連軍という定義がございまして、これは派遣国の陸海空軍と書いてございまして、この派遣国と申しますのが、この協定上はアメリカを除きました派遣国になっておるわけでございます。
  359. 正木良明

    正木委員 その点を明確にしてもらいたい。アメリカを除いての派遣軍に対しての地位協定だということを明確にしてもらいたい。そんなことではないでしょう。その署名国を見ればわかるじゃないですか。
  360. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 そのとおりでございます。アメリカを除いた派遣国の軍隊に対する地位協定でございます。
  361. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 少し原則のことを聞いておきます。日米安保条約は、国連憲章の原則で日米両国は協力することになっているが、日米両国の政策の一致が前提であると私は思うのですが、その点どうですか。
  362. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは、日米安保条約は大きく国連憲章の条章に従うということがあるし、また事前協議の条項もございますし、したがって、この安保条約の一つの精神は貫かれておると考えております。
  363. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうなりますと、日本が国連で行なっている外交は国連憲章に合致をしている、つまり、日米安保条約の上位に国連憲章があると認めているわけですね。
  364. 三木武夫

    ○三木国務大臣 上位といいますか、下位といいますか、とにかく安保条約というものは、やはり国連の精神の上にのっとってやるということでありますから、これは上下というよりか、精神である。
  365. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、日本にいる米軍が日本の施設、区域を使って朝鮮に出動した場合、事前協議の対象となるかどうか。
  366. 三木武夫

    ○三木国務大臣 当然に事前協議の対象になります。
  367. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 もしそのようになったら、拒否をされますか。
  368. 三木武夫

    ○三木国務大臣 事前協議は、やはり具体的ないろいろな条件、こういうもとで、政府が賛成する場合もありますが、拒否する場合もあるということで、あらかじめ拒否するか賛成するかということをきめてかかる性質のものではないと思っております。
  369. 正木良明

    正木委員 もう少し具体的にお尋ねしますが、もしかりに三十八度線で戦端が開かれて、国連軍が、いわゆる在日米軍が国連軍として出動するときに、日本の施設、区域を使って出動する、その場合、三つの場合が考えられると思いますが、その中での、直接戦闘作戦行動をもって出動するという場合です。その場合の問題について、もしそういう事前協議がなされたときに——具体的ですから答えてくださいよ。そういう場合に、日本側としては拒否をするのかどうかということを聞きたい。
  370. 三木武夫

    ○三木国務大臣 朝鮮半島にわれわれが願っておるものは、朝鮮半島の平和です。北鮮も、あるいはまた韓国自体も、アメリカも、戦争を望んでいない。したがって、朝鮮半島に平和が維持できるということがわれわれの願いであって、いろいろ具体的にこういう場合、ああいう場合ということを考えて、しかも韓国、いわゆる朝鮮半島の事態をあらかじめ日本でいろいろな場合を予定してここでお答えするのは、私は適当でない。しかし、一切のいわゆる戦闘作戦行動、これが日本の基地が使われるときには、厳重な事前協議の条項にかかることは明らかでございます。
  371. 正木良明

    正木委員 それでは、新聞にも一昨日報道されたのですが、やはり三十八度線で、米軍がそれを越えて戦闘行動をしておるという報道がありました。これは正確であるかどうかわかりませんが、私たちの耳にする情報の中でも、しばしばこの三十八度線で紛争が起こっておるということを聞いております。現在、休戦会談で板門店で会議が行なわれておると同時に、そういう三十八度線における紛争というものもしばしば耳にしておりますが、その点について、どの程度そういう紛争が起こっておるかということをあなたにお聞きしたいのです。
  372. 三木武夫

    ○三木国務大臣 ここに国連軍司令官から国連安保理事会に対する報告がございますが、わりあいに六六年、一昨年あたりは件数が少なかったのです。この非武装地帯における紛争、これが三十七件であります。昨年、一九六七年は四百四十五件、先ほど私四百五十件と申しましたが、正確には四百四十五件、こういうことで、そういう紛争が一昨年よりも約十倍近くになっている。これは安保理事会に対する報告の中から出したものでございます。
  373. 正木良明

    正木委員 そこで、外務大臣がおっしゃったように、われわれとても、朝鮮において戦端が開かれたり、いわゆる戦争の状態が起こるなんということを望んでいるわけではない。しかし、いまあなたがお答えになったように、このように三十八度線においてはしばしば危険な紛争が起こっておるということも事実です。だから、それがいつ拡大されるかわからない。プエブロ号事件もあったし、そういうことから考えて、私たちは、日本が戦争に巻き込まれる、そういう危険をなくするための歯どめだと政府が盛んに言うところの事前協議がどの程度実施されていくのか。あなたは事前協議の対象になりますという答えだけで、そういう問題が起こった場合に事前協議をされたときに、日本側の態度はどうであるかということまで言及しておられないから、それを具体的に答えてもらいたいというのが私の質問です。
  374. 三木武夫

    ○三木国務大臣 そういう紛争といいますか、非武装地帯の紛争の数字を申し上げた。これはおもに北からのゲリラ部隊の侵入ということが一番問題になっておるようであります。しかし、北鮮が戦争を望んでいるとは私は思わない。また、韓国も武力によって朝鮮の統一を考えてはいない。また、アメリカ自身も韓国において戦争を——ベトナムの平和的解決というものを念願しておるアメリカが、朝鮮半島において新たなる紛争が起こることを望むわけはない。したがって、いろいろ仮定の場合、こういう場合、こういう場合というものを考えて、だれも当事国同士が望んでない戦争というものに対して、どういう形で起こるであろうかということをここで予想して、いろいろ外務大臣から申し上げるということは、私は適当でない。ただ、お答えできることは、一切の戦闘作戦行動に出動する場合に際しては、事前協議の対象になるし、また、日本は日本の安全のために、アメリカが朝鮮に対して作戦行動をとる場合は、日本と極東の安全という角度から、事前協議というものに対して、その場合にノー、イエスを言うということ以上には、私はお答えすることは適当でないと思うのです。
  375. 正木良明

    正木委員 そうすると、いままであなたをはじめ関係者が答弁なさっておった事前協議ということは、主としてもう拒否を前提としたものであるということにはならないということですか、そういう考えではないということですか。いわゆる事前協議が、日本が知らない間に安保体制のもとで戦争に巻き込まれることの危険を防ぐ歯どめであるということ、これは拒否を前提としたものでなければならぬと私は思うのですがね。しかも、日本の施設、区域を使って直接戦闘作戦行動をとる場合に、それは拒否でなければ歯どめにはならないと私は思うのですが、どうですか。
  376. 三木武夫

    ○三木国務大臣 戦争に対して直接作戦行動をとる場合に——日本の基地を使う場合ですよ。日本の基地を使って、そうして出動する場合には、事前に日本政府と協議をしなければいけない。その場合に、日本政府は拒否権を持っている、こういうのですから、日本が同意できないような戦争に日本が巻き込まれるということは考えられないことでございます。事前にわれわれが協議をするわけですから……。
  377. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 事前協議の対象となっても、絶対拒否することはできないのです。なぜならば、一九五〇年十日七日の国連決議によって、三十八度線突破を政府は一九六六年共同提案国の一員として承認しているではないですか。それを無視して拒否できますか。
  378. 三木武夫

    ○三木国務大臣 その事態において御承知のような朝鮮半島におけるああいう——北鮮から侵入してきたわけでから、こういうふうな状態において、あのときの朝鮮半島の事態を背景にして国連の決議が行なわれたものである。それがずっと永久に日本を拘束するという性質のものではない。
  379. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 一九六六年の十月には、またさらにそれを強化するように、ASPACの共同声明で、尊重と実行することをあなたのところは誓っているじゃないですか。この点どうですか。
  380. 三木武夫

    ○三木国務大臣 昨年は、私はASPACに出まして、一切の軍事的性格を持たさないASPACにしよう、いささかも軍事的性格を持っておるということを疑わしめるようなASPACにしたくないと考えて、努力し、また、国民もこのASPACに対して疑惑を持たなかったのでございます。いま御指摘のは、昨年でなくして、一昨年でございます。一昨年の共同声明を私よく覚えておりませんが、しかし、今日のASPACというものは、そういう何か軍事的性格を帯びたようなものでない形においてASPACが育ちつつあるし、またそういうふうになると考えております。
  381. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 一九六六年十月のASPACの共同声明というのをあなたは知らないと言うのですから、それではだれかよくわかっている人にそのところをはっきりしていただきたいと思います。
  382. 小川平四郎

    小川政府委員 一昨年のASPACの一項目に、朝鮮の事項で、ただいまの決議を引いております。しかし、これは国連がずっと引用してある決議そのものを引用したわけでございまして、ただいま御指摘の決議も、これは三十八度線をこえろということは書いておりませんで、むしろ朝鮮統一復興委員会の設立及び朝鮮問題解決の基本的な決議でございまして、したがって、それをその後の国連でも引いておりますし、ASPACでも引用したわけでございます。
  383. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いまの共同声明で、尊重と実行するということを誓っているというふうにはっきりしているんですがね。その点、もう一度はっきりしてください。
  384. 小川平四郎

    小川政府委員 ただいまここにASPACの声明を持っておりませんけれども、ただいま御指摘の国連決議は、先ほど申しましたように、朝鮮統一復興委員会の創立及びその後の朝鮮の平和的解決をうたった趣旨の決議でございまして、したがって、その後も国連で引用しておりますし、ASPACでもその趣旨において引用しているものでございます。
  385. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日米安全保障条約は、大前提として国連憲章によることになっています。それによって日米が協力することになっているのだから、どこにそれを拒否する理由がありますか。
  386. 三木武夫

    ○三木国務大臣 むろん、国連の決議というようなことであれば、日本が協力しておるわけですね。ところが、いまの御質問は、将来起こるべき朝鮮半島の事態をいろいろ原則的にお考えになって、どうするかこうするかということで、私も原則的にお答えをしたわけでございます。
  387. 正木良明

    正木委員 関連して、アジア局長にもう一度伺いますが、ASPACで共同声明した、その支持をした決議というものは、この間あなたが、政府から出したところの統一見解に基づくところの決議ですよ。いわゆる三十八度線を越えてもよろしいという内容を含んだものであるという、それをあなた方は統一見解で示された。その決議がASPACの共同声明の中で支持をされているわけです。だから、問題にしているんじゃないですか。そうして、あなたは去年いらっしゃったときに、それは否定しましたと言いましたが、共同声明で発表したものを否定するのに共同声明をもってしましたか、どうですか。
  388. 三木武夫

    ○三木国務大臣 去年のASPACは私自身が出たのですから、去年には、そういうふうに軍事的な疑いを持たれるような決議は、これは入っておりません。(正木委員「六六年にあるのだから」と呼ぶ)六六年の決議というものは私は覚えておりませんが、しかし、日本は——日本ばかりでなしに、ASPACにはいろんな国が参加するわけでありますから、あのASPACが非常に軍事的性格を持ったようなASPACになるならば、これは健全に育っていかないわけでありますから、おそらく原則的に国連の精神というものにのっとって、アジアの平和とか安定というような、そういう言い方はしたでしょうけれども、ASPACというものが軍事行動に対してのいろんな発言をするというようなことはなかったのではないかと私は考えております。まだしかし、共同声明は私もよく読み返す機会がありますから、これに対して意見を申し述べる機会を持ちたいと思います。
  389. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 三十八度線突破決議に基づいて、これは六六年の六月十六日、ASPACにおける共同宣言で、それの尊重と実行を誓っているわけです。それが問題じゃないですか。
  390. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 その点、補足して説明さしていただきます。  引かれております決議は私も存じております。一九五〇年の総会の決議の三百七十六号でございます。これは先ほど私が御説明いたしまして、俗に三十八度線突破決議と言っております。それは、その第一項に、「全朝鮮にわたって安定した状態を確保するためにすべての適当な措置をとること。」この点をつかまえて三十八度線突破決議と言っておるわけであります。ただ、その第二項に、朝鮮統一振興委員会を設立する項目がございますし、その後もいろいろな項目が入っておるわけでございます。これは一九五〇年の決議でございますけれども、その後に、五三年に至りまして休戦協定ができましたわけであります。総会で休戦協定を承認するという決議が行なわれております。そういう形で、総会自体の意思がその休戦協定をかぶった形で表明されたわけでございます。したがって、その前の三百七十六号という決議も、その休戦協定という後の総会の決議によって、その分だけはやはり総会の意思としては修正されたと考えるべきじゃないかと私は考えます。したがって、現在その三百七十六号の決議をとってこれをサポートするということは、そういったその後の総会の決議を全部合わせた形での総会の意思というものをサポートするという形になっていると思います。  ちょっとつけ加えさしていただきますが、それも今後もし朝鮮で何らかの動乱が起こるような形になりますれば、おそらく総会としてはもう一度したがって何らかの措置をとらざるを得ないと思っております。
  391. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 六七年の国連総会でも、これまでの決議を再確認した決議の共同提案国になっておるではないですか。その点はどうですか。六七年ですよ。でたらめ言っちゃいけない。
  392. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 繰り返して申し上げるようになりますが、その決議をアプルーブしたということは、ずっとその決議が順々にきているものでございますから、休戦協定ができ、平和的な統一をやろうということを国連が意思表示をしている、そういう状態における決議を国連がもう一度再確認した、そういうふうに解釈すべきものであると私思います。
  393. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 三十八度線突破決議に基づいて、尊重と実行を誓ったその問題については、それは要するに、政府としては統一見解でいまそのように発言をされているわけですか。
  394. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま条約局長が申し上げておるのは、休戦協定ができて、国連もこれを承認しておるのだから、休戦協定というものは守らなければならなくなっているわけですね、国連の決議が。したがって、三十八度線をいま突破してどうこうということは、これはもし新たなる事態でも起これば別でありますが、考えられない、これは政府の統一見解であります。
  395. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 さらに休戦協定の直後、一九五三年七月二十七日、ワシントンで採択されました参戦十六カ国共同政策宣言は、次の朝鮮戦争が起こった場合、中国まで戦場を拡大できるというふうに判断できる宣言であると思われますが、その点はいかがですか。
  396. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 お話しのとおり、この決議には、今度新しい侵略が行なわれた場合には、その三十八度線ではとまらないというような意味のことが書いてございます。これはむしろ自衛の観念だと私は考えております。その後にいろいろ決議が行なわれておりまして、平和的な形で朝鮮統一をやりたいということはたびたび言っておりますから、こういう形は現在においてはもう考えられていないと思っております。
  397. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この朝鮮の休戦に関する共同政策宣言の中に、「敵対行為を朝鮮の境界内に限定することが恐らくは不可能となる程に重大なものとなるであろう。」というふうに言っているわけです。その点いかがですか。
  398. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 その、いまお読みになりました前に、「われわれは、国際連合の原則に再び挑戦して武力による攻撃が再開される場合には、」と、こういうふうな限定がございまして、向こうから攻めてきた場合にはということでございますから、これはまあ一種の自衛的な観念だと私は観念しております。
  399. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 米国の著名な戦略家シャノン、マッキーンが、その内容に関して、「朝鮮で再び侵略行為が行なわれた場合は、戦争は朝鮮半島から中国本土まで拡大することになるかもしれないという警告を記録にとどめたことは歴然たる事実である。」と述べてあるが、その点どうですか。
  400. 三木武夫

    ○三木国務大臣 そういうことは、われわれは願ってないわけですが、不法な侵略があった場合という前提で有名な軍事専門家がいろいろな意見を述べることはあり得ると思います。
  401. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いままでいろいろお話ししている中に明らかになったように、朝鮮における国連軍は、北朝鮮に対する攻撃だけでなくして、米中戦争の可能性を持った性格まで持っているわけです。そういう性格規定はほかならぬアメリカ自体がやっている問題であります。それに対して政府は、朝鮮問題を決議し、国連で共同提案国になり、しかも吉田・アチソン交換公文、日本国における国連軍の地位に関する協定によって基地を自由かってに使用させているわけです。そのため事前協議は国連軍という名において空洞化してしまっている。そうなった場合に、米軍が日本から朝鮮への行動が自由にできるようになるのじゃないですか。
  402. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま読み上げられました国連軍という名において事前協議が空洞化しておるという事実はありません。国連軍もやはり在日米軍と同じように、これは事前協議の対象になるので、国連軍だからといって事前協議を空洞化する特権は認められてはおらないのでございます。
  403. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それではいま話をしたように、非常に危険を生ずる三十八度線突破決議になぜ共同提案国になり、賛成をしているのですか。
  404. 重光晶

    ○重光政府委員 おことばではございますが、三十八度線突破決議とおっしゃいました国連総会の一九五〇年の決議は、いままでも申し上げましたとおり、休戦協定の成立によってその部分は変わられておるわけでございます。休戦協定の違反という事実を想定するならば別でございますが、そうでない限り、休戦ラインの突破は北からも南からもないというたてまえで、その後の事態が国連でも進んでおるわけでございます。  しかして、前からおっしゃいました、日本が共同提案国になった宣言の内容というものは、これもこちらから申し上げましたが、朝鮮における国連活動、平和な手段による両朝鮮の統一と、それのために努力するということについてのみ日本は共同提案国になっておるのでありまして、形式的にはなるほどその共同提案国になりました決議に前の決議が引かれております。しかし、引かれておりますのは決して一つの決議ではございませんで、休戦協定を認めた決議を含めて、いままでの決議を全部引いておるわけでございます。したがって、日本が共同提案国になりました決議案は、決していまの段階、すなわち、休戦協定ができました後の段階の話でございますから、日本が共同提案国になった時点において三十八度線を突破して北まで攻めのぼってもいい、そういう意味は全然ないのでございます。
  405. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その点の統一見解をひとつ聞きましょう。
  406. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いままで申し上げておることが政府の考え方を申し述べておるわけでございます。これをいま変更するという考えはございません。
  407. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それであるならば、国連決議第三七六(V)の解釈に関する質問に対する答弁書のとおりだと言われるわけですね。
  408. 三木武夫

    ○三木国務大臣 そのとおりでございます。
  409. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今度は総理に。  在日米軍基地がもし攻撃される危険があれば、それは日本に対する攻撃とみなして、自衛権を発動して相手基地を攻撃することも可能であるというのが、鳩山内閣以来の政府の統一見解であるとされているが、それに間違いありませんか。
  410. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 法制上は、私は、その鳩山、もう一人船田でしたか、その考え方でございます。
  411. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、こういうことになるんじゃないですか。海外基地爆撃に関する鳩山首相の答弁が——昭和三十一年二月二十九日、第二十四回国会の衆議院内閣委員会で言われたことですが、二月二十七日、船田防衛庁長官が自衛権の限界に関して受田新吉議員に答えて、自衛のためにほかに方法がないときは敵基地を攻撃し得る旨を述べたが、第二十二国会における鳩山首相の答弁と矛盾するということが問題となった。そこで、二月二十九日、次のような首相の答弁が船田長官によって代読された。それは船田長官による政府の統一見解であります。「わが国に対して急迫不正の侵害が行なわれ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行なわれた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。昨年私が答弁したのは、普通の場合、つまり他に防御の手段があるにもかかわらず、」云々ということが書いてあるのですが、それに間違いありませんか。
  412. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおり。ただいま間違いのないと言ったのは、ただいまお読みになったとおりでございます。それを申しておるのです。
  413. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうすると、こうなりますね、朝鮮にもし戦争が起こったとすれば、一九五〇年七月七日、アメリカ政府に主導権を委任した在韓国連軍は、一九五〇年十月七日、三十八度線突破決議によって三十八度線を突破するのみならず、一九五三年七月二十七日の十六カ国政策宣言により米中戦争にまで発展する可能性がまずあるわけです。日本は、一九六六年国連総会において、三十八度線突破決議の共同提案国になったということは、在韓国連軍を認めた。それは朝鮮戦争の参戦国と同列になったことを意味しますのですよ。一九六〇年吉田・アチソン等交換公文に関する交換公文と一九五〇年地位協定により国連軍に基地提供の約束なしている。朝鮮戦争のために日本の基地を貸借することはできる。ところが、事前協議は、いまも論じたとおり歯どめにならないような状態であります。たとえば北鮮、中国の基地を攻撃すれば、当然北鮮と中国が日本の基地をたたくことになる。そのときは日本の国が、いまあなたが言われたような鳩山首相の統一見解によると、完全な戦争となり得る危険を持っているということですよ。どうですか、この点は。(「前提が間違っているよ」と呼び者あり)
  414. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま前提が間違っているというような話もありますが、前提前提として、日本が国連軍と同列になると言われますけれども、さような状態ではございません。また、日本がただいまのような状態で直ちに攻撃を受ける、かようにきめてかかることは私はたいへん危険な考え方だ、かように思っております。同列になるというその御趣旨がちょっと私にもわかりかねますが、日本の行き方から見まして、積極的な攻撃姿勢を持つような日本でないことは、これは皆さんも御承知のとおりでありますから、私はちょっとただいまの説には納得いたしかねます。
  415. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日本にいる米軍に基地を使わせるということは、すなわち日本の国土の危険を呼び起こす。国土の危険というのは相手国の攻撃を受けることになるのですよ。自衛権の発動を行なわなければならなくなるということは、自衛隊の海外派兵ということにつながってくるのじゃないですか。これでは自衛隊の海外派兵ということを合理化することになり、憲法第九条はほとんど空文化するかっこうになるじゃないですか。
  416. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま鈴切君の言われるような論理、これは私は論理の相当飛躍があるように思いますけれども、そういうことをさせないのが日本の憲法であり、私どもの考え方であります。したがって、ただいまのような論理的にものごとを進められますけれども、よほどそこには飛躍があるように思います。
  417. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いまも言ったように、非常に危険な状態に日本が置かれるわけであります。そのときにおいて、鳩山首相の統一見解によると、完全な戦争になり得る危険を持っておるということです。万が一にもそういう場合が考えられるという、そういうことについて首相はどう思いますか。万が一です。
  418. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 万が一というのはどういうことですか。それはまず実現性のないことを万が一、こういう表現をするのでございますが、私はその御心配はあまりなさらないほうがいいのじゃないか、万が一そういうことはないんだ、かように私は思っております。  もうちょっとつけ加えておきます。ただいま言われますような韓半島で戦争が起こる、そういう場合に、日本が非常な危険な状態になる、これは御指摘のとおりであります。したがいまして、これは私、たいへんな危険な状態でございますから、そういう際こそ日本が慎重に本来の姿で平和を守っていくようにしなければならない、こういうものに巻き込まれないようなことをしなければならない、かように思います。したがって、私はそういう立場でございますから、まずそういう事態は起こらない、かように実は確信しておるわけであります。
  419. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 巻き込まれないと言ったって、要するに、たとえば北鮮と中国とが日本の国に攻撃を加えてくるようなことがもしあったとするならば、そのときにはただ黙って見ているのですか。
  420. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 鈴切君に反問いたしますが、中共や北鮮が日本に攻めてくるという、そういうことがあるのですか。万一あるのですか。それをひとつ御返答いただきたい。
  421. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私はあなたにお聞きしているのですよ。答弁してください。
  422. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はさようなことがないと言っているのですから、それで反問しているわけなんです。それをあるとおっしゃるのですから、そういうことがありますかと聞いておるのです。いかがですか。
  423. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それではあなたにお聞きします。「敵対行為を朝鮮の境界内に限定することが恐らくは不可能となる程に重大なものとなるであろう。」ということは、どこをそれは意味しておるのですか。総理、どこを意味しておるのですか。どこを……。——総理に聞いているんだ。きょうは総理に……。
  424. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ちょっと待ってください。私も何もかも知っているわけじゃありませんから、ただいま条約局長説明をさせます。
  425. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 私、ちょっと聞き漏らしましたのですが、国連決議の件でございましょうか。——十六カ国宣言の問題でございましたら、別にどこにということではなくて、朝鮮の域外にということだと思います。
  426. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そういうことは想定されるという仮定において一応話をしているわけですが、それについて政府との見解が違うわけでありますから、このことはこれだけにいたします。  次に物価問題についてお伺いいたします。  佐藤内閣は、一貫して物価の安定を最重点政策として取り上げてきているが、はたしてどれだけの実績が残され、また具体的にはどういう効果があったかをお伺いいたします。
  427. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 物価問題は、私どもといたしまして重要課題の一つだ、かように考え、この物価を安定さすようにこれと取り組んでまいりました。御承知のように、私が政局を担当いたしました際は相当高度の物価の上昇率でございました。しかしこの上昇率を最初からまず五%以内にとどめるということをお約束し、その方向で努力してまいりました。最初は七、八%のものが五%以下にとどまった。さらにことしは四五%ですが、それが来年は四・八%になるというやや上昇ぎみでございます。しかし、これとてもただいまのところ総合的な施策を集中しない限り四・八%にとどめることは困難だ、かように思っておりますので、総合的施策によりましてぜひその目的を達するようにただいませっかく努力中でございます。
  428. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 四十二年度の消費者物価の上昇を四・五%にして、四・五%に押えることができたということは、政府の物価安定対策のよろしきを得たためであると政府はお考えになっておりますか。
  429. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まず私はこれをもって満足だ、こういう考え方ではございませんが、一応まず第一歩だけはその方向に進んだ、かように思っております。
  430. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 四十二年度の上半期は天候に左右される四季の野菜、くだもの類が下がったことは事実です。それは物価指数にも出ております。四十年を一〇〇と見た場合の指数で、昨年三月が一〇八・八、四月は一〇六・九まで下がっている。特に食料品でいえば、三月の一〇八・八が六月の一〇二・五に下がっている。しょせんは自然現象による恩恵を受けて、たまたま四・五%におさまったにすぎないわけです。政府のいう物価対策の効果であると私は思えないのですがね。
  431. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御指摘になりましたように、たいへん昨年は天候にも恵まれ、しあわせした、こういう点もございます。しかし総体といたしまして私は効果があがりつつあるのだ、かように思っております。  なお、詳細は企画庁長官からお聞き取りいただきたいと思います。
  432. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いま総理の言われましたとおりでありますが、それとあわせましてやはり指定産地であるとか価格の安定対策であるとか、そういうものもだんだん徐々にではありますが、この何年かのうちに効果を持ってきたように思っております。
  433. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 あなたは、「昭和四十二年日本経済の回顧」の中に「四十二年の前半において消費者物価が落ちついた動きを示した主な要因としては、……とくに好天や豊漁に恵まれたため季節商品(野菜、果物、生鮮魚介)がかなり著しい騰勢鈍化を示したこと」と、経企庁みずから、偶然によるものであると指摘しているのではないですか。
  434. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはもう、まだまだおてんとうさまの力にはかないません。
  435. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 四十二年度の上半期は、まさに物価地獄という状態であります。それを数字で示すと、総合において、最も低かった昨年七月の一〇六・九と本年一月の一二二・三とを比較すると、六%もの上昇となっている。特に食糧について同様、最も低かった昨年六月の一〇二・五と本年一月の一一四・九とを比較すると、実に一二%強の大幅の上昇である。そんなひどいことありますか。
  436. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いま特定の二つの時点をお比べになりまして、ちょっと私、それを持っておりませんけれども、やはり食糧の価格は、年によりまして軽く一〇%ぐらいはどうしても変動する場合がございます。
  437. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 昭和四十二年度の上半期において、経企庁でも、政府主導型物価上昇と言っているじゃないですか。
  438. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、昨年、四十二年の九月、十月ごろから、いわゆる米などを中心とした消費者物価の引き上げということがいわれ、また、行なわれるようになりまして、そのときに、国民にそういう印象を与えるのではないかということを私ども心配いたしたわけであります。そういうことを確かに申しました。
  439. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そのとおりですよ。ここにあなたの、やはり同じく「昭和四十二年日本経済の回顧」という中に「これに対して四十二年八月以降かなり顕著な上昇を示している主因としては、まず第一に四十一年一月以来一年余にわたって据え置かれてきた消費者米価が十月から一四・四%値上げされたこと」である。「以上のような米価引き上げのほか、一部公共料金引き上げの影響が底積みされる」というふうに言っておるじゃないですか。その点、どうですか。
  440. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 はい、それを申しました。
  441. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 結局は、四十二年度というのは、たまたま上半期におけるところの、いわゆる好天における四季野菜の非常に順調なためにそのような結果になったわけであって、実際には、政府は何も物価対策としてはしていない。事実、物価が、公共料金を上げてからというものは、どんどんと上昇しているという現実を長官はお認めになりますか。
  442. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、どうしても放置しておきますと、消費者物価というのはやはり上がる傾向にあると思うのでございます。ですから、私どもの施策によって、その上がるテンポをどれだけ押えられるかということではないかと思うのでございます。したがって、いまのような仰せで、政府が何もしなくてもこうなったというのではなくて、やはりできるだけのことは御協力を得てやっても、なおこのぐらいの成果であるというふうに、私どもはそういうふうにものを見ていきたい、もっと努力をしなければならないと思っております。
  443. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 政府は、四十三年度物価上昇指数を一月二十六日の閣僚会議で、四・八%に押えることを決定いたしました。それに間違いありませんね。
  444. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そうでございます。
  445. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、三十九年度から四十三年度までの総合の対前年度上昇率と、げたの三・四%に見合う数字を年度別にお答え願いたいと思います。
  446. 井出一太郎

    ○井出委員長 鈴切君に申し上げます。あと十分でございますから……。
  447. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 三十九年度の上昇率が四・六であります。あなたのおっしゃるげたは、申し上げると、一です。四十年度、六・四、げたが三・三、四十一年度、四・七、げたが二・九、四十二年度は、ただいまのところ推定で四・五以内、げたは、そうしますと、二・二ぐらいでございます。四十三年度は、四・八と推定いたしますと、げたは三・四とかいうようなことになると思います。
  448. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、四十三年度は、年度内の上昇率は一・四%になるわけですね。少なくとも閣議決定できめられた以上は、責任を持って達成を国民に約束されるわけですね。
  449. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 閣議の決定ということにもいろいろな決定がございますが、これは私どもできるだけ達成したい努力目標として努力をいたします。
  450. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま政府の四十三年の三・四%のげたは、いま言われたとおりに、過去五年間の最高であります。四十二年の二・二%に比べればきわめて高いわけです。結局、米価を上げ、公共料金を上げた政府の下半期の主導型の結果でそのようになっているんじゃないですか。
  451. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 げたが高いということは、前半が消費者物価が下がりぎみで、後半しり上がりに上がった、その結果だろうと言われます、そのとおりであります。
  452. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 四十三年度は、このような高いげたをはいて出発するわけだ。四十三年度は、年度内は、いま言われたとおりに、一・四しか見ていないわけです。かりに過去三十九年から四十二年までの四年間の平均をとると、値上がり分は二・七になるわけですね。三・四に二・七をはめ込めば六二になる。また、最も近い四十二年の年度内の上昇率二・三を見ても五・七になりますよ。それでいて、あなたのおっしゃる四・八というのは、はたしてそれが達成できる数字であるかどうか。
  453. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その辺が一番私どもが検討したところでありまして、この年度内の許容幅を二ぐらいにするということがそもそもなかなかむずかしいわけでございます。困難が伴うわけであります。ただ、四十三年度の場合は、先般も申し上げましたとおり、主食を据え置きというふうに私ども算定をしておりますので、過去の平均二とかいうことになりますと、大体消費者米価というのは毎年上がっておりますから、その点に一つ問題があるのではないかと思います。
  454. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 宮澤長官は主食を据え置くというふうに言われたわけですが、大蔵大臣はどうですか。その点はっきりお答えください。
  455. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはいままだ方針をきめておるわけではございません。
  456. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 農林大臣、どうですか。
  457. 西村直己

    ○西村国務大臣 消費米価はいずれきめるので、ただいまはまだ決定する段階ではありません。しばらくたって決定したいと思います。
  458. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは、消費者米価をスライドをするということは、大蔵省と農林省とはすでに事務的に約束になっているのじゃないですか。その点どうですか。経企庁長官は、一応消費者米価は据え置く、また据え置きたいという気持ちである。ところが、実際には、大蔵省と農林省とはスライドをするという事務的な約束ができているのじゃないですか。
  459. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実はこの点はせんだって横山委員に詳しく申し上げたものでございますから、時間を節約する意味で簡単に申し上げたのでございますが、計算そのものは、米価というものは一応据え置きで計算をいたしておりますというふうに、そういう意味で申し上げたのでございます。  さて政策としてどうするかということになりますと、私ども、米価審議会がこれから米価のあり方について抜本的な検討をされるわけでございますので、その検討を通じて、長年いろいろな不合理を含んでおるこの問題が、新しい考えのもとに再検討されるのではないか、その研究の結果に私としては非常に期待をかけておるわけでございます。
  460. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 生産者米価、消費者米価の両価についての政府の考え方が予算上織り込まれてなければ、予算は組めないわけです。来年度は特に補正は組まないと言っているとすれば、いいかげんな考え方ではできないから、その点をはっきりしてもらいたいのですがね。
  461. 水田三喜男

    水田国務大臣 たびたび申しておりますとおり、食管会計には、政府の買い上げ米の数量が異常であった四十二年度、この期間に生じた赤字額だけ四十三年度に繰り入れを一応計上しておきまして、その範囲内において本年度はどういう買い上げ米の数量になりますか、いずれにしましても、補正をやらなくて済むような方式を考えるということになっておりますので、生産者米価を上げないで消費者米価を上げないのか、あるいは生産者米価もこれは上げなければならない、したがってそれに応じて消費者米価をどうするか、この両米価の関係の正常化を今後主管官庁がしかるべく機関と相談してこれからきめるということでございますので、まだこれをどうするかという方針はいまのところきまっておりません。
  462. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは結局スライド制じゃないですか。少なくとも予算編成上ではスライド制だと、そのようにはっきり言ったらどうですか。
  463. 水田三喜男

    水田国務大臣 この食管制度の損益には、ただ米価だけの問題でない要素を含んでおりますので、そういう点も勘案されるでございましょうし、しかし生産者米価を上げるという場合には、当然これは消費者米価も適当に変更されるというのでなかったら、当初予算にあれだけの繰り入れをしておいても、これはもっと大きい赤字を出すということになりますので、この点はやはり一応スライドするんじゃないかということも、私どもは考えには入れております。
  464. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 わかりました。スライド制だということがはっきりしましたので、これで質問を終わります。
  465. 井出一太郎

    ○井出委員長 これにて鈴切君の質疑は終了いたしました。  次に、林百郎君。
  466. 林百郎

    ○林委員 私は、二十五分間の時間は総理だけに質問したいと思います。あとまた他の閣僚にお聞きします。  私はインドネシアの賠償並びに経済協力、この問題について総理に聞きたいと思います。  昨年の十一月のアムステルダムのインドネシアに対する債権国会議で、昭和四十三年度におけるアメリカ、日本、ヨーロッパ諸国の援助総額を申し合わせているはずなんですけれども、先ほどの総理の答弁だと、このところを非常にあいまいにしておりますけれども、申し合わせがあったというのですか、ないというのですか。
  467. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これがはっきり結論を得た、かようにまだ考えておりません。
  468. 林百郎

    ○林委員 三億二千五百万ドルというのは話が出て、しかもそのうちの日本の負担分についての要請もあったはずじゃないですか。それを否定されるのですか。
  469. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アムステルダムにおけるIMFの一応の金額を集計したものが三億二千五百万ドル、かようになっております。また、前回といいますか、四十二年度日本がインドネシアに対して援助した金額、これはすでに皆さん方も御承知のように五千万ドル、さらにそれに一千万ドル出ておりますから六千万ドル、こういう金額になっております。そして、それが大体全体の三分の一程度の金額になっておるというような実績もあるわけであります。そういう意味から、ただいま言われる日本が了承したというものではございませんが、相当はっきりした期待をインドネシア側は持っている、かような状況でございます。
  470. 林百郎

    ○林委員 そうすると、あなたは、昭和四十三年度はインドネシアに対して幾らの経済協力をするつもりなんですか。
  471. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま予算を御審議いただいておりますものが、経済基金の法案の改正と同時に六千万ドルの増加要求をしている、これがいまの現状でございます。もちろん基金はインドネシアだけではございませんけれども、インドネシア分として特に増加したものがただいま六千万ドルということになって、これはすでに予算を出しておりますから御承知のとおりであります。ただ問題は、いろいろ御承知のことだと思いますが、民間の経済援助というものもございますから、政府の援助ばかりというわけにもいかない、かように私考えております。   〔委員長退席、小川(半)委員長代理着席〕
  472. 林百郎

    ○林委員 そうすると、あなたは民間の援助を考えておられる、この六千万ドルの基金会計からの援助のほかに考えておる、こう聞いていいのですか。
  473. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  474. 林百郎

    ○林委員 それはどのくらいのものをどのように考えているのですか。ただ考えているだけじゃわからない。
  475. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん民間の経済協力でございますから、ただいまの状態でははっきりわかりません。
  476. 林百郎

    ○林委員 民間の経済協力を、たとえば輸銀なら輸銀で担保するとか保証するとか、そういう形だとか、あるいはコマーシャルベースでやるということなんですか。
  477. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 コマーシャルベースでやる、さようなことです。
  478. 林百郎

    ○林委員 そうすると、輸銀の保証とか、輸銀がそれを裏づけするとか、そういうことは考えていないのですか。
  479. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ものによりましては輸銀を使う、こういうように……。
  480. 林百郎

    ○林委員 そうすると、あなたは六千万ドル以上の援助を何らかの方法でするのだ、こういう答弁をここでされたと、こう私は理解します。  そこであなたは、先ほど同僚委員も言われたのですけれども、昨年の十月、第二次東南アジア訪問で、ことし、つまり昭和四十二年の実績から言えば——去年の十月ですか、総額三億二千五百万ドルの三分の一を援助することになっているようだと、こういうことをあなたはインドネシア側に言われたと、そうしてインドネシア側のほうでは、一億ドル以上政府から何らかの形で援助を受けるということが常識になっている、こう向こう側の空気を伝えておるのですけれども、これはあなた、こういうことを言われたかどうか、ここで言ってください。もし否定して、国際的なあなたの信用に影響することがあると思いますから、ここではっきり言ってください。
  481. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この総額の三億二千五百万ドルといわれるものが、十一月程度、私がインドネシアを訪問した時分、その時分にはもちろんきまっておりません。今日もまだ三億二千五百万ドルについてはいろいろの見方がございます。ただいまそういう状況でございますから、いま言われるように、私が三億二千五百万ドルを承認したというようなことはございません。
  482. 林百郎

    ○林委員 私が言うのは、三億二千五百万ドルの三分の一、約一億ドルですよ。これはちょうどインドネシア側も言っている数額と一致するわけだ。たまたまあなたも第二次東南アジア訪問をして、総理みずからの口からこう言ったから、東南アジア側も、まさか佐藤総理がそれを食言するとは思っておらない、だからそれを信用して一億ドルという要請を出している、こういうことを伝えているわけなんです。あなたは、それじゃこういうことを言った覚えはない、これははっきり言っていいですね。インドネシア側へ行って、三億二千五百万ドルの昭和四十三年度の国際的な債務償還の額、この三分の一を援助するというようなことを言った覚えはないと、こうはっきり発表されてもいいのですか。
  483. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げますように、三億二千五百万ドル、そういう金が前提になっておると、ただいま林君も言われますけれども、私はその金額をまだはっきり知らない、今日でも問題でございますが、私がインドネシアへ行った当時は、もちろんきまっておらない、そういう状況でございます。
  484. 林百郎

    ○林委員 そうすると、あなたの先ほど田中委員に答えられた、気持ちがあってもきめかねると、こういうことをあなたは言っています。速記を見ればわかりますが、これはどういうことですか、気持ちがあってもきめかねるというのは。あなたが一億ドルというような約束を、あるいはそういう期待を持たせるようなことを言っているから、あなたも気持ちがある、しかし、いま国会開会中だ、ここで具体的な手は打てないということじゃないのですか。
  485. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、ただいまはっきりきまらない、私が法令の範囲内で問題を片づけようとしても片づける方法がない、そういうこともございます。しかし、私どもが日イ両国の関係におきまして友好親善関係を続けていく、またインドネシア側から経済援助はしてもらいたいというか、引き続いて行なってほしいという、そういう要望のあることも百も承知でございます。しかし、ただいまの状況のもとにおいては、いかんともすることができないというのが実情でございます。
  486. 林百郎

    ○林委員 インドネシア側からどういう要望があって、そうしてあなたは、気持ちがあってもきめかねるということを言い、そうして予算には六千万ドルしか組んでないから、六千万ドルよりほかしかたがない。しかし、民間借款とか、そういうような形でこれへ上乗せすることができる、こういう関係はどういうことなんですか。要するに、六千万ドル以上に上乗せしたい、こういう気持ちがあるんですか。そしてまた、インドネシア側もそういうことを要望しているということですか。要するに、あなたが気持ちがあってもきめかねる、その気持ちはどこから出てくるのですか。
  487. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日イ間のいろいろの貿易量というものがございますね。貿易額はその六千万ドル程度のものではございません。そういう点がこれから先に問題になるんだということでございます。六千万ドル、六千万ドルと言われますけれども、その六千万ドルも、ただいま私ども権限を与えられておらない、こういう状況であります。それ以外に一切貿易がないわけじゃありません。したがって、私がただいま申し上げるような、この日イ間の貿易、これは拡大されるだろう。六千万ドルといま言っているものは、これは特別のいわゆる借款というような意味だろうと思っておりますから、その辺のことを率直に申し上げた。おわかりになりませんか。
  488. 林百郎

    ○林委員 水田大蔵大臣に聞きますが、基金の予算四百四十億円ですけれども、そうですね、この相手国はわかっていますか。
  489. 水田三喜男

    水田国務大臣 特定はしておりません。
  490. 林百郎

    ○林委員 そうすると、基金は四百四十億円という予算が組んであるけれども、これをどこの国にどうするかわからぬ、その説明ができないと言うんですか。——いやいや、水田さんに聞いている。
  491. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これはなぜ私が申し上げるかといいますと、一応あの予算要求いたしましたときの積算の根拠がございますので、それとして決定したわけじゃございませんが、まあ幾らかの関連があると思います。   〔小川(半)委員長代理退席、委員長着席〕  これは一般案件としてこまかな案件がいろいろございますが、六十億円程度、それから直接借款で既定の分、きまった分は韓国、台湾、タイ、マレーシアなどございます。新しい分がインドネシア、フィリピン、アフガニスタンなど、大体こんなことで四百四十億円を積算いたしました。しかし、これはいつでも変更し得るものでございます。
  492. 林百郎

    ○林委員 そうすると、宮澤長官、いまのあなたの積算の中で、インドネシアに対しては幾らと組んであるのです。
  493. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは既定分と新規分を分けまして、新規分として二百数十億円と考えているわけです。
  494. 林百郎

    ○林委員 ドルとすると幾らですか。
  495. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 二百数十億円ですから、まあ、六千万ドルとか七千万ドルの辺でございます。
  496. 林百郎

    ○林委員 そうすると、経済企画庁長官は、予算には大体六千万ドルの予算が基金の四百四十億円の内訳として組んである。しかし総理はそれもはっきりここで責任が持てない。どうなるかわからぬ。(「予算が通らぬからだ」と呼ぶ者あり)いや、だから予算が通れば六千万ドルをインドネシアへ援助するということはそれは固まるということですか。あるいは四百四十億円の基金はどうにも弾力性があるんだから、インドネシアに対する六千万ドルという数字も、これもここでは四百四十億円の基金予算が通ったとしても、六千万ドルという約束をはっきりあなたの責任において明言するわけにいかない、こういう意味ですか。
  497. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへんおわかりがいいように思いますが、いま経済協力基金、その金額の間にはどこそこに幾らとこういってはっきりしたものではないという、宮澤長官がいま説明したばかりでございます。したがいまして、新しいものが出てまいりましても、適正なる援助金額をそのうちからきめるということであります。
  498. 林百郎

    ○林委員 そうすると、六千万ドルに基金の中からも融通をして上積みするという可能性もあり得ると、こう聞いておいていいのですか、そういう条件もあると。あなた盛んに逃げているけれども、そういう条件もある、基金の使い方については、こう聞いていいのですか。
  499. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 基金の使い方については、ふえることも減ることもある、かように考えております。
  500. 林百郎

    ○林委員 そこで、あなたも先ほど言われましたけれども、海外経済協力基金法の一部改正を、今度国会へ出して改正しようとしています。この目的はどこにあるのですか。何で改正する必要がありますか。
  501. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 幾つか点はございますけれども、主たる点は従来プロジェクトの援助をいたしておりましたけれども、国によっては商品援助を必要とする場合もある。現在の法律ではそれができませんので、今後に向かってそういう可能性を開いておこう、こういう考えでございます。
  502. 林百郎

    ○林委員 商品を要請する国がある。それは輸銀などのそういうきびしい条件よりは緩和した条件、今日の基金法も、さらに緩和しなければならない条件のある国もあるからだ、こういうような意味ととりました。そうすると、インドネシアはこれに入るのですか、総理答えてください。
  503. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 宮澤君にお答えいたさせます。
  504. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういうことを求めている国はたくさんあるようでございますが、やはりインドネシアもそういうことを望んでおるのではないかと思います。
  505. 林百郎

    ○林委員 そうすると、かりに物資の輸入というような形でインドネシアが援助されるという場合に、インドネシア側ではこれをどういうように使って、そしてインドネシアの予算編成、これはもう常識的にいって、IMFの勧告を受け、その予算の三分の一は外債によらなければ予算が組めないという形になっているわけですが、そういう場合に、日本の物資援助がインドネシアの予算編成とどういう関係になっている、こういうことは総理わかりますか。
  506. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 インドネシアの事情で、ちょっとわかりかねますが、とにかくそういう物資援助というような場合だと、私どもはいわれなく援助するわけじゃありませんから、十分それが安定、経済発展等に寄与する、こういうようなものでなければならぬ、かように思っております。
  507. 林百郎

    ○林委員 安定に寄与するということでなくて、これがインドネシアの予算に繰り込まれる、そういうシステムになっているのかどうか、こういうことを聞いているのです。たとえば、政府が日本政府から援助を受けてこれを売り渡して、売り渡した金を政府が握って予算編成に繰り込む、こういう制度になっているかどうかということを聞いているのですよ。
  508. 上田常光

    ○上田政府委員 お答え申し上げます。  わがほうからBEで出しますと、今度はこれをインドネシアでBEを売りますと、ルピアをインドネシア政府は得るわけでございますが、そのルピア貨はインドネシア政府予算の中で、しかも最近は特に開発計画のための特別の勘定の中に入れることになっております。
  509. 林百郎

    ○林委員 その特別勘定に組み入れられたものは何に使われるのですか。
  510. 上田常光

    ○上田政府委員 インドネシアの開発計画のために使われるわけでございます。
  511. 林百郎

    ○林委員 総理、いまお聞きのように、日本からの基金の援助は向こうの財政予算に編入されるわけですよ。したがって、あなたが昨年インドネシアへ行って、四十二年度の実績から言えば四十三年度は一億ドルくらい、まあ三分の一だ、になるだろうということを言ったと新聞は伝えています。そうすると、かりにあなたがそう言ったとし、あるいはそれと類似なことを言ったとすれば、向こうはその予算編成の不可欠な条件になっているのですよ。いいですか。あなたがいまこの国会でそういうあいまいな態度をとるということは、一つは国会を侮辱していることですよ。四百四十億の基金が組まれているのに、相手国へ、一応の試算をしてあるけれども、まだどうなるかわからぬ、そういう答弁。一方、インドネシアのほうには、いや私はそんな約束をしてきた覚えはありませんよ、まだ予算も通らないときに約束なんかできません。ほんとうにあなたそう言っているかどうか知りませんがね。ほんとうはもう少しスハルトと何か話ししているけれども、国会で質問されるのでやむを得ずこういう形で逃げていよう、こういうことかどうか知りませんが、全く両国に対して無責任な思想になるんじゃないですか、あなたのいまの態度は。私はそう思いますがね。向こうが予算編成上どうしても、佐藤総理がにおわした一億ドルの援助を、どういう形でもしてもらわなければ、予算編成できないんだ。(発言する者あり)黙っていてください。あなたうるさいな。しかも御承知のとおり、今度のミッションというのは普通のミッションじゃないですよ。大統領、マリク外相、セダ蔵相、ムルヤディ海軍総司令官、このほか四十五名が来ているのに、あなたのそんなあいまいな返事だけで帰れるかどうか。しかもスハルトは、大統領就任初めての外遊ですよ。しかも主たる任務は、日本からどのような海外経済協力を取り入れていくかということで来ているわけですよ。そういうときに、あなたがいま言ったようなことが新聞に発表になる、あるいは議事録で発表になる。それであなたはいいのですか。
  512. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は真実のお答えをしておるのでございまして、それはちっともさしつかえません。
  513. 林百郎

    ○林委員 次に、御承知のとおり、インドネシアの借款は、あなたの佐藤内閣が成立して以来、約一億九千万ドルくらいの援助をあなたはやられているわけですね。これは返済の見込みはあると考えていますか。これが具体的にあるというのなら——すべきのと、返済される見通しがあるというものとは違いますから、それをあなたは述べていただきたい。
  514. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、インドネシアと日本との間に、債権債務、そういうものは忠実にインドネシアは弁済する、かように確信しております。
  515. 林百郎

    ○林委員 あなたはそういうことを言われますけれども、昨年四千五百万ドルのリファイナンスをしているわけでしょう。これは、向こうが約束を守れなかったから、日本がその支払いを延期してやったのでしょう。昨年のそういう支払いができなくて、四千五百万ドルリファイナンスしてやった、その条件が将来改善される、あるいはそれが返還されるような新しい条件が出ていると、そういうことをあなたはここで説明できますか。あなたは誠実に履行すると思ったって、現実は履行できないでいるんじゃないですか。これはどうするつもりです。
  516. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 リファイナンスも、これは現実にそういうことをしたわけでありますから、リファイナンスしなかったらたいへんですが、リファイナンスをした。このこともやはり弁済の一つであります。
  517. 林百郎

    ○林委員 リファイナンスしたということは、インドネシア側が誠実に義務を履行したことになるのですか。あなた、もう少しまじめに答えてくださいよ。(「総理の答弁はまじめだよ」と呼ぶ者あり)黙ってらっしゃい。いいですか。あなたはこういう膨大な約二億ドル近くの援助をインドネシアへしても、インドネシア側は誠実に弁済の履行をすると考えると、あなたは言っている。ところが、その履行ができなくて、昨年現に四千五百万ドルのリファイナンスをしている。リファイナンスしているということは、インドネシア側が債務の履行ができないということの証拠じゃないですか。(「借りかえだよ」と呼ぶ者あり)同じことですよ、そんなこと。それがどうしてあなた、今後はこれが完全に履行されるという保証がどこにあるのですか。
  518. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、そういうことが条件どおり、最初の約束どおり、全部が完済される、かように私は必ずしも理解しておりません。各国の連中も、過去の債権の処置について一応話し合いの上できめたことでありまして、そういうものをしゃんとインドネシアが了承し、その責任を負っている。ここにインドネシアの誠意をやっぱり認めるべきではないか、私はかように思います。
  519. 林百郎

    ○林委員 あなたは、日本の総理大臣でしょう。われわれの大事な税金をこんなにたくさんインドネシアにつぎ込んでいる。それがはたして返済されるかどうかということは、これは日本国民にとっては重大な関心事なんですよ。ところが、あなたは誠実に返済できると言っている。しかし、昨年現実に返済できない有力な事態が発生している。これはあなたの責任問題ですよ。それをどうしてあなた、いまここでそういうことを無視して、履行できると口では言い、しかしいろいろの事情があるからどうなるかわからないと言い、それは一体どういうことなんですか。できないならできないとはっきり言ったらどうです。
  520. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは債権国会議でいろいろ相談した結果、これは結局長期にわたれば返せる、こういうことでこの借りかえを認めたわけであります。私は、債権を否定したというようなものでもないし、まだ踏み倒した、こういうようにきめることは早い、かように思っております。したがって、この点では、時限が最初到来したがそのとおり履行されなかったというので、それでもうこれは履行が全然できないんだ、かようにきめてかかることとは違いますから、林君とはちょっとその点では御見解が違うようであります。(「時間、時間」と呼ぶ者あり)
  521. 林百郎

    ○林委員 それは総理の都合じゃないですか。私の時間はあるのですよ。  あなた、そんなこと言ったって、前に二十四億ドルも債務があるわけでしょう、あなたも御承知のとおり。それへもっていって、またあなたが二億ドル近く貸し付けて、そうして昨年はそれが履行できなくて、リファイナンスしている。それにもかかわらず、相手方があることだから踏み倒す心配はないからと、そんな無責任なことを、日本の国民の大事な税金を使う海外経済協力に対して、一国の首相がそんなことを言っていいですか。  それで、私は時間がないからもう一問だけ聞いておきますが、現にアメリカは投資保証協定をしているわけですよ、インドネシアと、昨年一月。それ御承知ですか。それに対して日本の財界からは、これをしてもらわなければ困るという声もあるわけです。これは重大な取りきめなんですけれども、これについて総理、どう考えるのですか。
  522. 三木武夫

    ○三木国務大臣 アメリカが投資保証制度があることは承知いたしておりますが、日本は業界から林君の御指摘のようにそういう要望もあることは事実ですが、政府はいろいろと検討は加えておりますけれども、そういう政策をやろうという決定をするというような段階ではございません。研究の段階であります。
  523. 井出一太郎

    ○井出委員長 この際、総理の退席時間の関係から、林君の御了解を得て同君の質疑を一時中断し、総理に対する堀昌雄君の質疑を許します。堀昌雄君。
  524. 堀昌雄

    ○堀委員 実は当委員会でもたびたび論議になっておりますが、いま国民が非常に関心を持っておりますことの一つは、かねがね総理もこの国会に提出をお約束になっておる政治資金規正法は一体どうなるのだろうかということが、私は国民として非常に大きな関心の的だと思います。そこで、わずか十分間ではございますけれども、これは総理以外ではお答えのできない問題のように私考えますので、特にお願いをして質問をいたしたいと思います。実はお手元に簡単な資料をお配りをいたしておりますので——総理のお手元にいってないですね。ちょっとお渡しをしてください。  いまの日本の政治資金の状態を少し整理をしてメモにいたしました。最初の分が、「政党の収入−十年前との比較」というのでございます。三十一年の下期と四十一年の下期とを比べてみますと、当時自由民主党は四億三千三百七十九万円でございまして、社会党は一億四千五百十八万円、私どもと自民党は一対三の比率であったわけであります。ところが、この十年間に、自由民主党は五十九億五千六百七十四万円と、私どもとの比率は二八・三倍に実はふえておるわけです。昭和三十一年から四十一年というのは、日本経済の高度成長期に当たるわけでありますが、日本経済の高度成長は、自由民主党の経済をも高度成長さしたということが、非常に明らかになりておると私は思うのでございます。(「共産党は」と呼ぶ者あり)まあ私のほうは社会党が中心ですから、失礼いたします。その次に「政党収入の占める割合」これは古い資料で、正確なものが自治省にもございませんので、三十五年の下期と四十一年の下期、六年間で比較をいたしてみました。この中で自民党計とありますのは、自民党と国民協会を純計したものでありますが、三十五年には二十二億七千七百四十六万円、私ども社会党は二億一千九百三十七万円でありました。全体の寄付の中に占める比率は、七八・八%と七・六%でありました。今日、四十一年の下期になりますと、自由民主党の純計は七十二億五千八百八十六万円と、全体の比率では六九・八%と減ってはおりますが、私どもは二・〇%と、全体の比率では著しく減ってきておるわけであります。そうしてこの間における自民党の伸び率は三倍にふえておるわけでございます。  その次は、それじゃ自民党の収入はどういう形であるかというのを、自民党と国民協会と、それからその下に自民党の派閥がお集めになったものを加えて調べてみました。そうすると、三十五年下期には、自民党とその派閥は四十四億五千百七万円でありましたものが、四十一年下期には九十三億一千四百二十万円ということで、やはり倍にふえておるわけであります。もう一つ、最後に「派閥収入の実態」というのをあわせてちょっと出しておきましたが、これは新聞に伝えられるところでありますから、この会とそこに書いておきました派閥との関係が正確であるかどうかは、私の責任ではなく、新聞の書いたとおりをここに記載をして集計したものでありますが、時間がありませんから、四十一年下期に佐藤さんの関係のあるというところが三つございまして、その合計は四億三千五百八十四万円に実は達しておるのでございます。私ども社会党全体が四十一年下期二億一千万でありますから、一つの政党の倍の費用が実はある一つの派閥に集中をしておる。これが実は現在の日本における政治資金の実態でございます。昨年以来この政治資金の問題がはかばかしくいかない背景は、私は実はここにあると思うのです。どんどん収入のふえてくるものを、要するに政治資金で押えられたのではたまらない、おそらく自由民主党の皆さんが政治資金規制に御反対をなさるのは、この背景があるから私は反対をなさるのだ、こう考えるわけでありますが、総理はどういうふうにお考えになるかをちょっと最初に承りたいと思います。
  525. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 なかなかこの政治資金規制、これといろいろ取り組んでおりますと、そう簡単なものではございません。いま一つの理由もそういうところにあるかわかりませんが、たいへん複雑なものであって、なかなか困難な問題だということを申しておきます。
  526. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、私は、どこに原因があるかは、もう少し時間があればゆっくり伺いたいのですが、それを伺う時間がありませんから、要するにいまの状態で、総理は国民に向かっては、政治資金の規制は提案をするし、それから国会成立をさせたいとお約束になっておるのです。しかし、自由民主党の内部では、この実態のために抵抗があって前進ができていないというのが、私は現状だと思うのです。私はどうしても総理が総裁として先頭に立って、日本の政治を正しい路線に乗せるためには、こういう情勢があっても、政党の責任においてひとつ政治資金をやろうではないか、総理自身がお出かけにならなければ、松野さんにまかしておられたのでは、これは問題が解決しないと私は思っておるのです。ですから、きょうは特に総理から、総理の責任、総裁の責任として、国民が最も関心のある政治資金規制については、総理みずからが党内を説得をしてこの問題を解決をするというお約束をいただきたいわけです。
  527. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま私自身が総理であり、総裁でございます。さような意味で、この国民注視の的である政治資金の問題、これと取り組むということで、党と政府との間でいろいろ意見の調整をはかっております。ことに私どもは前国会におきまして審議の苦い経験をなめておりますので、ことしはそういうことのないように、その成案を得るように努力いたしております。ただ、たいへん残念に思いますことは、おそくとも二月じゅうには出したいと思ったものが、二月には出せず、もう三月も終わりになっております。これからのことを考えますと、ますます重大な責任を感じておる、こういうようなことで、ただいま一生懸命で調整をはかっておるその段階でございます。
  528. 堀昌雄

    ○堀委員 最後に一つお伺いをいたしますが、総理のこの問題に対するお考えだけをまず伺っておきたいのです。この政治資金規制の考え方は、総ワクを規制をするという問題が一つございます。それからもう一つは、政党と派閥と個人の関係については、派閥、個人は次元を下げて、政党を優先させる。それから公開の原則、要するに、現在会費という名前で入っておるものは公開されておりませんから、これを公開するという三つの問題が、特にこの政治資金の重要な柱だと思うのでありますが、総理はこの問題についてはどういうふうにお考えになって、どういうふうに党内をおまとめになるのかをお答えいただきたいと思います。
  529. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの段階で具体的に申し上げることは、たいへん困難でございます。しかし、ただいま御指摘になりましたように、政党の活動は、これは活発に行なえるようにぜひともしたいと思っております。したがって、党と個人との間に差等のつくのは、これはやむを得ないと思います。  もう一つ問題になりますのは、選挙というか、選挙時の問題については、これは比較的わかりいい問題でありますが、同時にいま御指摘になりました会費という問題、この場合にいわゆる個人会費のみに限るということ、これはどうも現状においては私はやや理想に走り過ぎてないだろうか、かように実は思っております。この点でおそらくいろいろの御批判を受けるのではないだろうか、かように私は思っております。  もう一つの問題といたしまして、いわゆる総ワクの問題、こういうことはもちろん考えていかなければならぬ、かように思っております。
  530. 井出一太郎

    ○井出委員長 先刻に引き続き林君の質疑を続行いたします。林百郎君。
  531. 林百郎

    ○林委員 水田大蔵大臣にお尋ねします。  インドネシアの経済協力の問題ですが、かりに六千万ドルを上積みする。まあ三千万ドルか、五千万ドルか知りませんけれども、かりにそうするとして、この経済協力基金の中からそういう措置ができますか。要するに補正予算を組まなくて、基金の中の操作でそういうことができる条件がありますか。
  532. 水田三喜男

    水田国務大臣 先ほど申しましたように、この予算の内容を全部一つ一つ特定しているわけではございません。したがって、全体の予算の中からいろいろ調節する余地は残されておると思いますが、全体としてそうたくさんの調整の余地というものは、この予算の中にはございません。
  533. 林百郎

    ○林委員 そうすると、かりに三千万ドルから五千万ドルの上積みをしようというような場合は、この基金の操作としてはできない、こう聞いていいですか。
  534. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま国会に御審議を願っておるこの予算の範囲内では、ちょっとむずかしゅうございます。
  535. 林百郎

    ○林委員 先ほど総理は、コマーシャルのベースで援助をするという方法もある、こういうことを言われておりました。椎名通産大臣にお聞きしますが、総理のそう言ったことは、具体的にはどのようなことを意味するのですか。どういうことがあり得るということですか。
  536. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 まだはっきりきまったわけじゃありませんが、大体予定されておるのは、民間ベースの経済協力として、北スマトラの石油資源の開発の協力、それからカリマンタンの森林開発協力、これらは大体話がついておりまして、民間の力によって開発をするということになっております。それから、その他繊維、肥料等のいわゆる消費物資について、一、二年程度の延べ払い輸出が、大体予定をされておる中に入っております。そんなようなところです。
  537. 林百郎

    ○林委員 通産大臣、私が聞くのは、そういうものを基金で援助をすると同じように、政府がその対価を掌握して特別基金として組んで、そしてインドネシアの国家財政としてこれを掌握する、そういうことにできますか、民間ベースの援助というものが。
  538. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 それはできないと思います。
  539. 林百郎

    ○林委員 そうすると、通産大臣にお聞きしますが、もしスハルトが国家予算編成上、外国の借款あるいは経済協力に依存しなければ昭和四十三年度予算が組めない、そういう意味の援助、経済協力を日本に求めているとすれば、いまあなたの言ったような方法ではインドネシア側の要望にこたえるわけにはいかぬわけですね。それはもう当然のことですね。
  540. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これはできないと思います。
  541. 林百郎

    ○林委員 宮澤経済企画庁長官にお聞きしますが、インドネシアの最近の物価の値上がりの状況、インフレの状況、こういうものはどういう状態ですか。
  542. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは私はよく存じません。むしろ外務省に詳しい方がおられると思いますが、特に今年に入りましてから、米を中心にして相当の値上がりが、ことに都市部にあったように聞いております。一般に消費財が不足であって、かなりのインフレーションの様相を呈しておるというようなことを聞いております。
  543. 林百郎

    ○林委員 そこで水田大蔵大臣にお聞きしますが、先ほど総理は昨年のリファイナンスは債務履行を怠ったことにはならぬ、踏み倒したわけじゃないと言うのですけれども、これはもう御承知のとおり、あなたは専門家だからおわかりでしょうけれども、支払い期日の来ておる利息並びに元金の支払いができないので、それをリファイナンスという形で支払いの延期を操作したので、結局支払い期日に債務の支払いができなかった、こういうことでしょう。
  544. 水田三喜男

    水田国務大臣 そういうことでございます。
  545. 林百郎

    ○林委員 木村行管長官にお聞きしますが、あなたはことしの二月六日の閣議で、米や肥料を急いで送ってスハルト政権をささえるべきだということを発言しているというが、あなた記憶ありますか。
  546. 木村武雄

    木村(武)国務大臣 記憶があるどころじゃありません。大いにありますよ。
  547. 林百郎

    ○林委員 あなた、えらい胸を張って答えたのだけれども、そうすると、これは政府の経済協力の政策の具体化をあなた言ったつもりですか。
  548. 木村武雄

    木村(武)国務大臣 一切を含めて、自分のインドネシアに対する感情を発表してみたのです。
  549. 林百郎

    ○林委員 そうすると、あなたの言うこと、あなたはこう言ったというが、米や肥料を急いで送るのは、スハルト政権をささえるためですか、あなたはさっきこれを言ったと言っているのだから。
  550. 木村武雄

    木村(武)国務大臣 スハルト政権とインドネシアの国民が気の毒なものですから、何としても助けてみたい、こういう気持ちを起こしたのです。
  551. 林百郎

    ○林委員 スハルト政権はどんなように気の毒ですか。
  552. 木村武雄

    木村(武)国務大臣 一つは同じアジア人であることと、(林委員「政権のことを聞いているのです」と呼ぶ)そこに非常な重点を置いております。それからもう一つは、せっかく独立した国なんです。その後独立の歩き方が非常に困難を呈しまして、国民生活が非常に気の毒になっておるものですから、同情にたえないと思いまして、そういうことを言ったのです。
  553. 林百郎

    ○林委員 あなたは私の質問に答えなければならないのですよ。私があなたに聞いているのは、こういうことですよ。米や肥料を急いで送ってスハルト政権をささえるべきだ。政権をささえるということとインドネシアの国民が気の毒だということとは別でしょう。なぜ政権をささえるために米や肥料を送るか、こう聞いているのです。
  554. 木村武雄

    木村(武)国務大臣 それは政権をささえてやることが、直接、間接的にも国民生活をささえることになるのです。いまのスハルト政権は、昔のスカルノ政権と違いまして、軍事中心の政治をやっておりませんです。スカルノ時代には軍が百万おりましたけれども、いまは七十万削って三十万になったのであります。そして国民生活に重点を置いた経済政策を思い切ってやってみよう、こういう努力をやっておるものですから、スカルノ政権のときにはいやでありましたけれども、いまのスハルト政権は非常に好きになったものですから、私の感情を出してみたのであります。
  555. 林百郎

    ○林委員 もう一つ、それじゃ……。
  556. 井出一太郎

    ○井出委員長 もう一点許します。
  557. 林百郎

    ○林委員 そんなにスハルト政権があなたが同情する政権だというなら、その政権はどうして今年の七月やらなければならない選挙を三年後に延ばして、しかも総選挙で選ばれた国民協議会をさらにその二年後に招集する、五年も先にやる、こういうことは、全然インドネシア国民に支持されてない政権だ。そしてものすごいナチス以上の残虐なことをして、そして反共政権を打ち立てている。だから、選挙もできないじゃないですか。三年も先で選挙をやっても、また二年もたたなければ国民協議会ができないという、こういう状態じゃないですか。そんなに不安定な、人民から支持を失ったそういう政権に、何であなたそんな熱意を持つのですか。そしてこういうファッショ的な政権にあなたが全力を尽くすのは、佐藤内閣の性格なんですか。
  558. 木村武雄

    木村(武)国務大臣 選挙をどうして延ばしたかということは、インドネシアの国内事情ですから、私の関係したことではありませんけれどもね。選挙をやることが国民生活と結びつくかどうかということは、いまのインドネシアの国内事情から見て、そう日本のように簡単に判断するわけにはいかないと思います。  私は、いまのインドネシアのスハルト政権は、前と違ってほんとうに国民生活を何とかよくしてやろうと思って一生懸命になって努力しておる、そういう政権であると、こういうように思っているものですから、私の感情を大胆率直にあらわしてみたのであります。大胆率直にあらわしたことがそんなに悪いことじゃない、私はこう思っておりますよ。
  559. 林百郎

    ○林委員 そういうふざけた答弁はいいです。  結局、以上の私の質問を総括すると、佐藤内閣の経済協力というのは、第一にはベトナムの侵略戦争に完全に破綻した、そうして悩んでおるアメリカのドル防衛に協力するものである。そうしてアメリカのアジアにおける戦争と侵略の政策に加担するものである。そういう軍事独裁政権に——軍事独裁政権ですよ、どう弁解したって。五年も先にならなければ、選挙の結果を国民に責任をとることができないなんていうのは……。
  560. 井出一太郎

    ○井出委員長 林君、結論を願います。
  561. 林百郎

    ○林委員 第二は、日本国民のばく大な税金を支出して、この数年来アメリカに従属した、高度経済成長を遂げた日本の資本が、過剰生産の商品をインドネシアに送る、こういう市場獲得とインドネシアにある資源を獲得するため、こういう大きな資本家の利益のための経済協力だ。それからもう一つは、アメリカの指図のもとに、あなたの、木村長官そのほかの閣僚が言われるように、韓国、台湾、インドネシア等、こういう軍事政権と侵略的な軍事的な同盟の再編成の道につながる、このために対外経済協力なるものをしておるのだ、私はそういうふうに思います。木村行管長官のおっしゃることは全く事実に反するということを私は結論として言って、私の質問を終了いたします。
  562. 木村武雄

    木村(武)国務大臣 これはとんでもないあなたの独断であります。軍事独裁政権はアイジットにほんろうされたスカルノ政権だったのです。とんでもない間違いです。
  563. 井出一太郎

    ○井出委員長 これにて林百郎君の質疑は終了いたしました。  次に、堀君の質疑を続行いたします。堀昌雄君。
  564. 堀昌雄

    ○堀委員 皆さまにお配りをいたしました資料の中にちょっとつけ加えたいものがございますので、申し上げておきます。実は、四十一年下期のほうで三木さんの近代化研究会ですか、これが何か官報があとから追加として出してきたということでありますので、そこでその分が抜けておりましたから、たいへん三木さんに失礼に当たりますから、ちょっとつけ加えておきます。三木派近代化研究会九千三百六十八万円、これがいまの石井さんの蓬庵会の下に入りますので、それをひとつ訂正をいたしておきます。  引き続き、ちょっと赤澤自治大臣に、いま総理があまり時間がございませんでしたので十分なことが伺えませんでしたから、お伺いをいたしたいと思います。実は昨年の総選挙が終わりまして、第五次選挙制度審議会に設けられました緊急のための島田委員会には、社会党を代表しまして私が、自由民主党を代表して赤澤さんが御出席になったわけであります。この島田委員会における終始の経過については、現在自治大臣である赤澤さんは最もよく御承知になっておると思います。そうして現在の経過になっておるわけでありますが、あなたは自治大臣としてはもとよりでありますが、当時の審議会のこの島田小委員会委員の一人として、今日の政治資金の取り扱いについては一体どういうふうに考えておられたのかをちょっとお答えをいただきたいと思います。
  565. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 島田小委員会は、おととしの十二月からでしょう、去年の三月にかけて十回くらいじゃないかと思いますが、会議が開かれました。まあとにかくおととし非常に不愉快な事件が起こりました。だから、選挙制度審議会が結論を出すべき本来の問題を一時離れて、この資金の問題をまず扱おうということで数回会議を開かれまして、そうして一つの結論が出たわけでございます。もちろんこれにはまだいろいろ議論すべきものが残っておったとは思いまするけれども、とにかくあれだけの方々が熱心に御審議になりました結論が答申されたわけでございまするので、自治大臣といたしましては、十分この答申を尊重して、そうしてしかるべき成案を得たい、かように考えておる次第でございます。
  566. 堀昌雄

    ○堀委員 私、実はここで何といいますか、紋切り型の答弁をいただいてみたところで、国民は納得をしないわけです。私は、そういう意味で、これからあとの質問につきましても、私にお答えいただくというよりも、これは国民がみな聞いたり見たりするわけでありますから、どうか国民が納得をするように答えていただかないと、何とまあ大臣というものは冷ややかなことを答えるものだな、そういうふうなそらぞらしい答弁では私は実は納得ができないのです。私は赤澤さん個人については、たいへん良識のある方だと、審議会のいろいろな会合を通じて敬意を表しております。しかし良識があるならばやはりあるような答弁をしていただかなければ、いまの答弁では私は納得できません。あなたの人間味のある答弁をもう少しお答えを願いたいと思います。
  567. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 紋切り型でも何でもないわけでございまして、堀さんはその面のベテランでございますから、政治資金がどこの国でも扱いが乱れておりますものをどう、正すかということについて、世界じゅうでいろいろ苦心をしておりますことは御案内のとおりです。ですから、アメリカでもいろいろ議論を進めておるけれども、まだ結論が得られない。イギリスでもそうでございます。西ドイツは、先般政党法ができまして、これはたいへんばく大な金額を国で支出しておる。そして選挙の票によって各政党に案分するというようなことで結論が出ておりますが、それは日本ではちょっとやりがたいような大きな金額でございます。そこで私どもといたしましても、やはり私の党でもいろいろ議論はしておりますけれども、やはりその議論を通じて党内の考え方というものを、政治資金規正法のきめましたとおりにだんだん誘導していきたいという考え方で、新聞等で御案内のとおりに、党の選挙調査会でもいろいろ苦労をしてやっておるわけでございまして、きょうも開いたはずですが、明日もまた開くことになっておる次第でございまして、決してこの問題をゆるがせにしておるわけではございません。
  568. 堀昌雄

    ○堀委員 これまで総理は、さっきも御自分でおっしゃったように、二月中に出す、出せなかった。三月中には出す、出せなかった。ひとつ自治大臣、あなたは担当者ですから、この国会に出すのか出さないのか、それだけちょっと先にお答えいただきたい。
  569. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 私は幾たび御質問になりましても、いつまでに出すということは申し上げたことはございません。ございませんけれども、やはり総理も異常な決意を示しておりますし、私といたしましては、今国会には必ず成案を得て皆さんに御審議を願うという固い決意を持っておるわけでございます。
  570. 堀昌雄

    ○堀委員 成案を得て国会に出す、しかし時期はわからない。しかしあなたはやはり担当大臣として、ある程度の時期を党のほうにもお話しになって、このめどでやってもらいたいぐらいのことはあなたはおっしゃる必要ないのですか。あなたは、党がかってにやっているから党からまとまってきたらそれから引き受けよう、これでは、私は総理にもきょう伺ったわけですが、あなたももう少しこの問題については責任を感じていただかなければならぬと思うのですがね。どうでしょう。
  571. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 責任は痛感をいたしております。しかし御案内のとおりに、国会で一つの法案の成案を得ますためには、やはりいろいろな段階があるわけでございまして、ことに責任政党であるわれわれのほうにいたしますれば、やはり政調審議会の関門を通さなければならぬ、また総務会もございますし、さらに役員会もありますし、党の調整ができましたら次の段階は閣議でございます。何と申しましてもこういう関門を経る前提として、やはりこの法案を単に出したということでなくて、審議の結果これを成立させますためにはそれ相当な手続というものは必ず踏んでいかなければならぬ。そのために私どもといたしましては、日限を切ったとて、皆さんの御了承が得られなければなかなか法律そのものが日の目を見るというわけにまいりませんので、心ははなはだ急いでおりますけれども、とにかく党の皆さんの御理解を得るという努力を毎日しておるわけでございます。
  572. 堀昌雄

    ○堀委員 まあ私いまの答弁を聞きながら、評論家というと行き過ぎになりますけれども、何かどうも担当大臣としてはよそで何かものごとが進んでいるような感じで、私は非常に残念でございます。私が残念だけでなくて、国民全体が非常に残念に思っていると思いますし、そのことはやはり、私は単に自由民主党の問題にとどまらず、政治全体の不信につながるきわめて重大な問題でありますから、どうかひとつ自治大臣、もう少し性根を入れてやってもらいたいと思います。  次に、時間がございませんから。私どもの生活の中で一番関心のある問題は、やはりことしの物価はどうなるのか、米代はどうなるのか、いろいろな国民の聞きたいことが多くあると思います。そこで大蔵大臣、ちょっと伺いますが、東京でいまお米十キログラム幾らですかね。大蔵大臣ちょっとひとつお願いいたします。よそから教えることまかりならぬ。そんなもの教えに行くことまかりならぬ。大蔵大臣どうぞ。これはあなた大蔵大臣、財政をやっているのだから、補正も組まない何もやらぬという大蔵大臣が答えなければいかぬ。大蔵大臣、答えられないなら答えられないと言えばいいのですよ。わからないならわからないでいい。
  573. 水田三喜男

    水田国務大臣 十キロ千四百円。
  574. 堀昌雄

    ○堀委員 いまあっちのほうからちょっと声がかかったので……。お答えになったのは違うのです、実は。千四百十円なんです。私は実はこの前のときに総理以下当時の閣僚に、東京都における入浴料金を伺いました。ところが、御存じだったのは厚生大臣だけです。この前列全員、一人も東京都の入浴料金を御存じなかったわけです。いま物価統制会で残っておりますものは、米とか入浴料金とかごくわずかなんですね。そうして大蔵大臣は米価の問題でいろいろとこれまで予算委員会で長々と御論議をなすったけれども、一体国民が幾らで東京で米を買っているかさらに御存じなくてやられたのでは、私は国民としてはちょっとこれは納得できない、こういうふうに思いますので、どうかこれからは大蔵大臣は特にひとつ米の値段ぐらいは十分御調査をいただきたい。  そこで食糧庁に伺いますが、この前たしか食糧庁長官は、大体米は平年度千三百万トンぐらいとれるのは常識だというような答弁をしたと思いますが、ちょっと食糧庁長官、願います。
  575. 大口駿一

    ○大口政府委員 いま仰せになったとおりの字句で申し上げたかどうか記憶はございませんが、大体千三百万トン前後ということは申した記憶がございます。
  576. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで実は最近の政府の買い入れ数量と生産数量の差額をずっと調べてまいりますと、昭和四十二年にはその差額が四百六十三万トンぐらいです。まあそのことは農家保有米が大体四百六十三万トンぐらいだと見ていいわけです、年々だんだん減ってきておりますが。これを差し引きますと八百五万トンにならないのですよ。千三百万トンとしますとならない。だからこのことは大体土地改良その他が進んで、千三百万トンとれるという見通しの中で、実は八百五万トンを見込んだのは、三十万トン余り少し少な過ぎるのではないかと思うのですが、農林大臣どうでしょうか。
  577. 西村直己

    ○西村国務大臣 細部の数字につきましては専門の食糧庁長官から御説明申し上げますが、八百五万トンことしの予算に計上いたしましたのは、四十二年産米が御存じのとおり九百八十万トンですか、非常な豊作でございます。そこでそれ以前のところで一番の高いところをとって、たしかそれが四十一年産米が八百六万トンとなっておると思いますが、八百五万トンをとって一応計算した。
  578. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで食糧庁に伺いますが、食糧勘定で千五百億円、予備費が組んでありますね。これはなぜ千五百億円にしたのですか。
  579. 大口駿一

    ○大口政府委員 従来国内米管理勘定における予備費は、補正前の数字で七百五十億でございましたが、昨年も米の買い入れ数量が進むにつれまして、あるいは弾力条項等の予算総則の規定がございますけれども、それらの過去の経験等を勘案をいたしまして、予備費の増額をして計上いたした次第でございます。
  580. 堀昌雄

    ○堀委員 もちろん、そのことはいいですが、これは千五百億というのは計数的に根拠があるはずです。「国の予算」というのをずっとひっくり返して見ますと、ちゃんと、予備費をそこに計上したのには計算の根拠を明らかにあなた方の「国の予算」には出しておるわけですから。千五百億円の予備費を組んだ上限の買い入れの数量は幾らになりますか。
  581. 大口駿一

    ○大口政府委員 お答えいたします。  予備費に正確なる積算の基礎はないと思います。昨年の予備費のほぼ二倍に相当する予備費を組むということでございまして、このこまかい内訳はございません。
  582. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと主計局長に伺いますが、「国の予算」の四十二年、四十一年という厚いのがありますね。いろいろな主計局で出した説明。この中には、当時の買い入れ価格をもとにして、過去における状態から割り算をして大体何トンということで推計をしたから予備費を幾らに計上した、こういう説明がちゃんと書いてある。私が計算をすると、これによる上限は九百二十万トンになるのです。どうですか、そういうことはないなどと食糧庁答えておるけれども、そんなずさんな見込みで予備費を組んでおるのですか。何か根拠があるでしょう。「国の予算」に書いてある。
  583. 村上孝太郎

    村上(孝)政府委員 お答え申し上げます。  予備費というのは予見しがたい歳出の需要に充てるわけでございますから、それがはっきりした積算の根拠があればこれは予見できるということになるわけでありまして、われわれのほうとしては、予備費の積算の根拠というものは制度上ないと考えております。ただ、一体どの程度の予備費を組むかということになりますと、これはある程度、食管会計のような企業会計でございますと、過去における予定と実績との狂いというふうなものがまあ標準になるわけでございまして、先ほど食糧庁の長官は、去年の予備費では不足だったからその二倍程度のものを用意するというふうに答えましたけれども、そういう見方もございますし、それから昨年の予備費に補正で歳出権限を拡張しました分を足したくらいのもの、こういうふうな程度の根拠でその狂いを一応想定をするという程度のものでございます。
  584. 堀昌雄

    ○堀委員 実は「国の予算」にはちゃんとそういう計算の基礎が書いてあるわけです。もしいまの私の言っておることが間違いなら、これから「国の予算」のあの項は消しなさい。それでないと誤解を招くから。そこで、しかしそういう計算の基礎でおそらく九百二十万トンを上限と考えたのでしょう。これはとれるかとれないかわかりませんから、その議論はいいんですが。実はこの間参議院で村田さんの質問に対して、大蔵大臣が、米がたくさんとれても何とか予備費で処理したい、補正は組まない、こういう話です。私は補正を組みなさいなんという議論はしないのです。これは財政法からいえば、まずともかくいまの予算でやってみて、それでその次は予備費を使って、さらに経費に不足を生じたら、その組む組まないの議論じゃなくて、当然組まなければならぬのですよ。初めから補正を組むなんということをいま議論するのはおかしいわけですから。ですから、理論構成としてはややおかしいと思うのですが、大蔵大臣そうお答えになりましたね。そこだけちょっと確認しておきたいのです。村田君に参議院で答えたのをちょっと確認して……。
  585. 水田三喜男

    水田国務大臣 村田さんにはその予備費、千五百億円予備費があるので……。
  586. 堀昌雄

    ○堀委員 その予備費と違う。それは食管管理勘定のほうの予備費です。あなたの言ったのはそれですか。
  587. 水田三喜男

    水田国務大臣 そうです。そうしてなおかつというときに一般会計からもう一ぺん繰り入れるかどうか、この予算を組むかどうかということで、私は補正予算をいまのところ組まない方針だ、こう言ったわけでございます。
  588. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私が特に伺いたいのは、生産者米出価が上がればそれだけ損益勘定の差損が出ますから、その差損を消費者に持ってもらうというのなら私はこれは筋だと思うのですよ、いい悪いは別として、筋道としては筋だ。しかし米が百万トンたくさんとれた、そうしてそれによるところの差損が出て、百万トンたくさんとれた差損を消費者に持たすというのだったら、これはたいへんなことだと思っているわけですよ、実は。だから値上げ分については、こちらにこう動くことについては筋道はわかるが、米がたくさんとれればとれるほど消費者米価が高くなるなんというのは、幾ら何でも論理でない。だから私はひとつここではっきりさしておきたいのは、要するに増産になった分の買い入れ分については、これは消費者米価には転嫁をしないという考え方だけを明らかにしておいてもらわないと、これまではその分は必ず繰り入れで処置してきたのですから、それはたいへん筋道が間違うので、そこをちょっと大蔵大臣にお答えをいただきたいです。
  589. 水田三喜男

    水田国務大臣 私はそういう問題を一切含めて、今年度の生産者米価、消費者米価をどうきめるかということは、主管官庁がしかるべく機関とも相談してきめていただく、これにおまかせしているわけでございまして、こちらとしては、いまそういうものについてどういうふうなきめ方をするかという方針はいまのところきめてはおりません。
  590. 堀昌雄

    ○堀委員 農林大臣、主管官庁ということですから農林大臣のお考えを。ということはもうたいへん皆さん、何か米審に預けたら手品のようになって、ぱあっと空へ消えたり、木の葉がお金になったりするような話をしておられるが、やはり予算というものは数ですからね、数のワクというのは逃げられないのですよ。どこかへ負担をするか、どこかが損をするか、どうかなるのですから、あまりそうあいまいなことでなくひとつお答え願いたい。
  591. 西村直己

    ○西村国務大臣 お気持ちはわかります。ただ、実は御存じのとおり米価につきましては、まだ現実に組むには相当先のことでございます。それからもう一つは、食管の損益の中でどういう形で、もちろん私どもは生産者米価、消費者米価は食管法の規定に基づいてやることは間違いないのでございますが、問題は数量でございます。数量は八百五万トンというのは今年度いろいろなたてまえから妥当な数字としてはじいてきて、そうして補正は組まない、こういうような中で価格の正常化というようなものをはかりつつやっていこう、こういう形でございますし、同時に価格そのものだけではない、御存じのとおり食管の中の金利であるとかその他の要素を含めた食管の損益全体の中で考えていく、こういうふうに私はお答えを申し上げたいと思うのであります。
  592. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの食管内部でアローアンスのあるのは三、四十億だろうと思うのですね。そのぐらいは確かにアローアンスがありますが、それをこえたらアローアンスはないと思っているのです。ですから、いまあなた方お答えにならないのならしかたがないけれども、考え方として、そんなことはやらないということにしてもらいたいと思うのです。米がたくさんとれたら消費者米価が上がるなんて、そんなばかなことないですからね。生産者米価が上がったから消費者米価が上がるというのは、これはまた筋道としてわかりますけれども、そういうことのないようにひとつしてもらいたいと思います。  そこで、かりに八百五万トンちょうどうまいこととれたとしましょう。八百五万トンうまいこととれて——過去三年間生産者米価は九・二%ずっと上がったわけです。だから、ひとつ食糧庁長官、かりに九・二%ことし上がって一切繰り入れをしなかったら、消費者米価が幾らになって何%いまより上がるか、計算上の話でいいから答えてください。
  593. 大口駿一

    ○大口政府委員 お答えいたします。  ただいま大臣がお答えになりましたように、いろいろ食管会計の損益に影響を及ぼす要因はたくさんございます。したがいまして、いま申されたように、国内米管理勘定だけに限定をして、他の勘定は予算の損益と一分も違わないということになったとして、それからなおかつ生産者米価の値上げをした米の数量も消費者米価の値上げをする米の数量も同じであるという前提をすれば、これは単純なる計算の問題でございまするから、九・四%ちょっとになるかと思います。
  594. 堀昌雄

    ○堀委員 これは非常に厳密な前提がありますから、もちろんどうなるかわかりませんが、大体どっちにころんでもことしの米価は一〇%は上がるだろう。これはまあ八百五万トンということはなかなかうまくいかないだろうと私は思いますが、そこらへ落ちつくのじゃないか、こういうふうに実は思っておるわけです。  そこで、この問題についてはいろいろこれから制度の改編をなさるのでしょうけれども、さっき私が申し上げたように、どうしたってこの問題というのは、手品は使えませんから、だから多少の動きがあるでしょう。動きがあるでしょうから、その九%台が一〇%になるか七%になるか、それはこれからの皆さんの手品をいかにうまく使うかで動くかもしれません。しかし、少なくともこれまで皆さんはここでは上がらない前提でものを考えるとかいろいろおっしゃたのですが、結果は、私は、そのくらいは上がる、こういうふうに判断をいたします。  米価は以上でおきまして、その次はことしの予算の問題の中で、皆さんのほうで四十三年度予算編成方針というのをお書きになっておるわけですね。この予算編成方針の中にこういうことが書いてあります。「施策の重点」、「財源の適正かつ効率的な配分に努め、物価対策の強化」これが一番前へ来ているのですが、これは大蔵大臣、「物価対策の強化」というのがこの重点の一番前へ来ているというのは、順位でも高いということでしょうか。
  595. 水田三喜男

    水田国務大臣 国際収支の均衡回復と物価の安定ということを考えた予算でございますので、その物価の問題は編成方針としては比重を高く見ております。
  596. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと主計局長にお伺いをいたしますが、ことしの物価関係予算というのは大体幾らで、前年比大体どのくらいになっておりますか。
  597. 村上孝太郎

    村上(孝)政府委員 物価対策で一番大事なことは、物価というものはやはり経済全体、いわばからだの発熱現象みたいなものでございますから、したがって、まず第一には経済と財政の関係と申しますか、そういう意味におきまして、来年度予算につきましては、われわれとしては規模の増大を極力抑制する、そうしてこの経済見通しにもございますように、公経済の面から生ずるところの購買力というものが経済全体の総需給のバランスがとれるように押え目にするということが第一番目でございます。  それから第二は、諸種の対策を講じておりますけれども、その中でやはり最近における物価を、特に消費者物価を持ち上げておりますところの大きな原因というのはいわゆる低生産性部門の近代化という面でございまして、これは御存じのように農業基盤整備費に始まりますところの農業関係の構造改善であるとか、あるいは中小企業対策というふうなものがすべてこれに入るわけでございまして、そのほか財投面におきましても中小三機関の融資というふうなものがこれに入るわけであります。第二の問題としましては、流通対策であるとかあるいは生活必需物資の安定確保のために各種の施策をするとかということで、これを全部足しますと、財投及び予算の両方をかみ合わせて計をしなければなりませんので、そのこまかいものは資料をもって差し上げたいと存じます。
  598. 堀昌雄

    ○堀委員 時間がありませんから、私のほうが大蔵省に資料要求したものをこちらからちょっと申し上げます。これは大蔵省からいただいた資料だから間違いがないと思いますが、四十三年度の総計は一兆一千百七十五億ですか、こういうことになっておりますが、これを前年の補正後で比較してみると、この予算というのは五・四二%実はふえておるわけです。四十一年と四十二年を比較いたしますと一四・六九%、四十年、四十一年は一七・四一%、三十九年、四十年は一五・二三%、こうなっておるのですが、いま盛んに、今度大蔵省は、総合予算だから前年度の当初とは比べません、補正後とで見ます、こういう話になっておりますから、補正後で見ると五・四二%にしかならない。だからこれまでの三分の一ぐらいしかことしは皆さんのほうの対策費は組まれていない。いま大臣は、重点の上のほうにあげた、こうおっしゃったけれども、予算面ではそうなってないのですが、大蔵大臣これはどんなものでしょうか。
  599. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま主計局長が数字をあげましたが、この数字の中で一兆幾らというのはどういう数字ですか、大蔵省から出たんだそうですか、私ちょっと見ていませんのですが、私どもが計算して頭の中に入っておるところでは、いま言った低生産性部門の近代化投資、たとえば農業基盤の整備費、それから構造改善というようなものの予算と、これに関した中小企業、農林への投融資、これだけでも一兆二、三千億になりますし、そのほかやはり物価に関係するものとしましたら、住宅問題もございますし、いろいろな問題もございまして、これを計算してみますと、結局経済の集中的表現といわれておるだけございまして、国の予算のうち二兆円くらいは物価対策と言えば言えるという計算になろうと私は思っております。
  600. 堀昌雄

    ○堀委員 実は時間があればゆっくりとこれの中身を申し上げるのですが、時間がありませんから、私は大蔵省に資料要求をした資料を、ただ総計してないのを電子計算機で総計をし比率を出して申し上げただけですから、あとはどこかの委員会でまたゆっくり申し上げますけれども、実はこれはそういうふうになってないということはあとで資料をごらんいただければわかると思います。  そこでさっきの議論に返るのですが、米も上がるし物価も上がるということは、これまでの話で大体はっきりしてまいりました。さっき同僚の横山委員からも出ました人事院勧告の問題ですが、佐藤総裁は、ともかくそういうことにこだわらないで勧告をするんだ、こういうふうにお答えになっておるのですが、あとのがありますの…で、ちょっともう一ぺん人事院総裁、いまの問題についてお答えいただきたいと思います。
  601. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 勧告につきましては、基本的態度は従来どおりの態度を持って臨むつもりでおります。
  602. 堀昌雄

    ○堀委員 これはちょっと主計局で答えてもらいたいのですが、かりに八%公務員のベースァップをしてそれを八月実施、いままでそうですから、八月実施としたら一体幾らくらい財源が要りますか。
  603. 村上孝太郎

    村上(孝)政府委員 お答え申し上げます。これは算術の問題でございますが、八月実施として五百七十九億円でございます。
  604. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、お聞きのように、これは先のことですからわかりませんが、かりにそういう結果が出たら五百七十九億円要るそうです。そこで私は大蔵大臣の答弁、賛成なんです。これまであなた一生懸命、特定の費用を予備費に組んでおりません、こうおっしゃっておる。私はそれは正しいと思う。特定の費用を組んでいたらおかしいのでして、ともかく特定の費用が組んでないのですから、勧告が出たら当然それは予備費の中から取りくずす、こういうことになりますね。大蔵大臣いいですか。
  605. 水田三喜男

    水田国務大臣 あの予備費の中には、まだ予見し得ないいろいろなものに充てるためのものがございますので、結局、他の財政需要とのからみ合いがいろいろ出てくると思いますが、いずれにしましても、補正要因が出てきたというようなときには、この予備費でまかなうというつもりでございます。
  606. 堀昌雄

    ○堀委員 私はいまの答弁をいただければけっこうなんです。財政法の定めるところによって、費用が不足になったときに実は予備費は使うことになっているんですから。もし五百七十九億円という勧告が出て、それは八月実施にするかどうかは別でしょうが、かりに去年もそうだからというのでもしあなた方がするとすれば、五百七十九億というのは千二百億の内ですからね。外になっているんじゃだめですが、内だから、これは可能性があるから取りくずしてもらえばいい。これは総務長官がいませんから、官房長官にお答えいただきたいのですけれども、要するに、これまで私はこの人事院勧告と補正の問題というのはずいぶん議論してきたんです。そうして、いつも財政上の問題があるということでちょん切られてきたんです。おととし私はまだ二千億自然増収が出るぞと話をしたけれども、とうとうちょん切っちゃって、結局あとで実は二千億自然増収が出たわけですね。ことしはもう千二百億ありますから、私は安心しているわけです。少なくとも六百や七百億くらいはずばっと取れますから、私は安心しているのです。だから、その点、あなたは総務長官にかわって、公務員のためには、そういう勧告が出たら勧告に従って、当然それを尊重して実施するということをちょっと約束してもらいたい。
  607. 木村俊夫

    木村(俊)国務大臣 政府といたしましては、人事院の勧告が出ましたら、これを尊重して、かつ国民経済、財政事情を考慮して極力……。
  608. 堀昌雄

    ○堀委員 それでもう私はけっこうなんです。(「けっこうじゃない」と呼ぶ者あり)いやいや、けっこうなんです。それはなぜけっこうかといえば、いまの財政法はこういうことになっているのです。「内閣は、次に掲げる場合に限り、予算作成の手続に準じ、補正予算を作成し、これを国会に提出することができる。」要するに、費用が足らなくなったときには、予備費でまかなえなくてどうしても要る費用のときには、これは実は補正を組むことになっている。ところが、人事院勧告が出るのは十月なんです。十月という時期には——去年は八月に出ているのですが、皆さんが実施するのは大体十月ごろにやるのです。そういうときにはまだ予備費が実はたくさん残っているのです。その予備費がもうなくなっちゃっているときに出てきたら、もし勧告が三月ごろになって出たなんということだったら、予備費がなくなっちゃっていますよ。何かにいろいろ使っちゃうだろうからね。これでは困るのですが、しかし、まだ予備費が十分ある時期に出るのですから、だから、財政の問題というのは、その限りにおいては実はわりに問題がない時期なんです。だから、その点で、私は、財政の問題があると言われても、筋道としてはそれでワクをかけたことにはなっていない、いまの財政法のたてまえは。こう理解をしておる。いいですね。ワクをかけておるわけではないということだけ答弁しておいていただきたいと思います。
  609. 水田三喜男

    水田国務大臣 理論的にはそうでございますが、実際問題としましては、私どもはもう精一ぱい税の収入の見積もりをやっていまして、現に四十二年度の補正をやりましたあのときに見込んだ税収がこの三月末までに得られないということで、いろいろ苦心しておるようなことでございまして、おそらく四十三年度は当初予算で見られるだけの税収を見込んでおりますから、今年度中に自然増があるということは、いまのところは考えられません。
  610. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、私、自然増収のあるなしを言っているんじゃないのです。要するに、公務員給与にはワクはかけていないということを聞けばいいのです。特定の財源を組んでいないということは、ワクがかかっていないということですからね。そうでしょう。ワクがかかっているというなら金額を出さなければいけません。幾らのワクですと言わなければいけないけれども、ワクはない。それはともかく数はもうきめておりませんと言っているわけだから、ワクがないんですねと、こう私は言っているのです。ワクがないと言ってくれればそれでいいのです。どうぞ答弁をしてください。
  611. 水田三喜男

    水田国務大臣 ワクはありませんが、ただ、その次に言われたことばがちょっと気になりますので、ワクはないから、じゃ大きい補正でもことしは必要があればできるかというと、その点については、私は、当初予算でああ見ているから、ことしはそういうことができないだろう、したがって、当初予算において見るべきものを全部見る、こういう予算を組んだということでございます。
  612. 堀昌雄

    ○堀委員 もう一つ、それではちょっと先へ話を進めるのですが、公務員のほうをやりましたから、次は、これからちょっと問題になります春闘の中の問題を一つ申し上げておきたいのです。  実は私、大蔵委員会の中で、要するに、団体交渉、あっせん、調停、仲裁という問題をずいぶんやってまいりましたが、ようやく大蔵省なり公社の関係者が非常に努力をされた結果、昨年は幸いにも調停段階で話がつくことになりました。ところが、現在は、ともかくがんじがらめに、仲裁でなければ金は出せないぞという仕組みに実はなっているわけです。要するに、国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する特例法だとか、あるいは電電公社で申しますと、電電公社法の給与準則に関する項等で、いずれも仲裁でなければ、給与準則に最初に書いたものからはお金は出ません。予算総則も実はそう書いてあるわけです。  そこで、私は、実は一つ提案がありますのは、仲裁しかできない、お金が出ないとわかっているのに、団体交渉をやらせ、調停委員会で調停をしているということは、幾らやったって仲裁にしなければならないというこのきまり方は、私はちょっと問題があろうかと思うのです。だから、一ぺんに団体交渉によったものをすべて公労法十六条によって国会の承認が得られればいいということにするのには、皆さんもまだちょっと自信がないと思いますが、少なくともいま仲裁と書いてある字の前に、調停または仲裁によるというやり方を、ひとつ予算総則並びにいま申し上げたような各法律で改正をする必要があるのじゃないだろうか。労働大臣、この点についてひとつ御意見を承りたい。
  613. 小川平二

    小川国務大臣 お答えします。  調停案を受諾して協定を結ぶことは自由でございますが、その場合、給与総額との関連で、予算上、資金上、実施不可能という事態が起こることが多いわけでございましょう。仲裁裁定が下されました場合には、予算総額制度との関連ではそういう困難は起こってこない、そういう事情がございますので、当事者が調停の案に異存がないにもかかわらず、これを受諾しないで、形の上では裁定にゆだねるということがあり得ると思います。しかし、それにいたしましても、調停段階で実質的に事が落着するということは、いままでの労使の紛争のあり方と比べれば、好ましいことであるし、確かに一歩の前進だと存じます。昨年はおおむねそういう形で解決ができましたので、ことしもぜひ労使が調停段階で誠意を持って問題を煮詰めてもらいたい、私もそういう努力をしたいと思っております。いまの御提案は、さらに一歩を進めて、これを実質的にも、また制度の上でも、形式的にも、最終的な決着の方法たらしめたいという御提案だと存じます。そのお気持ちはよくわかるのでございますけれども、これはやはり国会審議権とも関連をいたす問題でございましょうし、研究をいたしてみたいと思いますけれども、やはり公務員制度審議会で御検討を願って、その上でないと結論がなかなか出しにくい問題ではなかろうかと思います。
  614. 堀昌雄

    ○堀委員 私が言っていることは、きわめて常識的なことを言っているのですよ。実は現在でも、要するに、臨時職員ならば調停ですでにみんなもう給与が出るわけです。ところが、そうでない者だけは形式的にどうしても仲裁に持っていかなければならぬ。それでは調停というものは要らぬじゃないか。どうしたって初めから仲裁にしかいかないならば、団体交渉も何も全部やめちゃって、全部仲裁でやるより手がない、そういう仕組みはおかしい。だから、お互いがいい労使慣行をつくっていくことが、今後の日本の発展に寄与することが大きいと思いますので、そこで、当事者が双方で、要するに、政府を含めて調停でよろしいとなれば調停でも動かせるということ、しかし、それがいかないときには、うしろまだ仲裁があるわけですから、私は、仲裁の前に調停を一字入れたらどうか。調停で全部が納得するときには調停でよろしい、仲裁まで形式的に持っていかなくともよろしいと、まことに常識的な議論をしているわけですから、これはひとつ関係各省みんな関係があるわけですから、少なくともそういう労使慣行等の問題については常識的な処理が行なわれるような道を開いて、もしそれがだめなら、何もそのときに調停でやらなくても仲裁にならざるを得ないでしょうから、調停で話が煮詰まらないでしょう。調停で煮詰まるということは、結論としては仲裁でやることと同じことが起こるんだというふうにひとつ理解をしていただいて、これは大蔵大臣を含めて、正常なる労使慣行をつくるためには、ひとつ前向きで検討してもらいたいと思うのです。大蔵大臣、財政担当の面から見て、ひとつ検討すると答弁してください。
  615. 水田三喜男

    水田国務大臣 給与総額を変更するということは、なかなか大きい問題でございますので、国会審議権との関係もございますので、これはやはり相当慎重に検討すべき問題だと思っております。
  616. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは時間がありませんから、ちょっと税金と国債のことを伺っておきますが、財政制度審議会でこういう答申があった。「従って公債依存度は、ここ数年の間に五%以下に引き下げることを目標とすべきであるが、」と、こういっているのですが、この「ここ数年」とは、一体何年くらいのことか、ちょっとこれを答えてもらいたい。
  617. 村上孝太郎

    村上(孝)政府委員 お答え申し上げます。  結局、公債依存率を下げることができるまで財政の体質を改善いたしますためには、現在硬直化しております財政の諸制度というものを直さなければなりません。したがって、財政制度審議会としては、この四月からさらに制度、慣行、法律、諸種の面におきまして、財政の硬直化をもたらしている諸要素を解きたいと思っております。したがって、それがいつ解けるかということでございますけれども、それが解けまして、財政が弾力性を回復しますれば、ここ四、五年くらいの間に何とか五%くらいまで持っていきたいというのがわれわれの考えであります。
  618. 堀昌雄

    ○堀委員 もう一つ大蔵大臣にお伺いいたしますが、さっきもちょっと税の話が出ておりましたけれども、四十五年に百万円まで標準世帯をひとつ免税にしたい、これは自由民主党のこの前の選挙の公約ですね。  そこで、お伺いをしたいのは、一体、皆さんが言っていらっしゃる百万円というのは、毎年いま税制改正をいたしますと、初年度と平年度と二つ出るわけです。よろしゅうございますか。ことしの初年度は八十万八千六十三円まで免税にしましよう、標準世帯で、こうなっているわけですね。ところが、毎年やっていますと、平年度というのは実はないのですよ。理論的な数値としてはあるけれども、毎年初年度しかいかないのですね。だから、私は、四十五年に百万円というのは、四十五年、初年度に百万円になると、こういうふうに理解をすべきではないかと思うのですが、大蔵大臣、どうですか。
  619. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま私どもの考えでは、四十五年でございましたら、百万円以上にできるのじゃないかと思っております。
  620. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、百万円以上はいいですがね、それは初年度の計算ですね。そこを答えておいてもらいたい。
  621. 水田三喜男

    水田国務大臣 平年度百万円を相当こすところまでは持っていけるのじゃないかと思いますので、少なくとも初年度として百万円へいくと思います。
  622. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、初年度百万円をやるためには、いま初年度八十万八千円ですからね、来年初年度九十万円をやって、再来年初年度百万円をやる。大体所要財源が約一千億くらいとしても、まだ要るわけですけれども——もうちょっと要るでしょう。そうすると、まずここで一千億を出ちゃうわけですね。じゃ来年の自然増収はどうかというと、あなたもさっきおっしゃったように、ことしの九千四百億という自然増収は、もし名目成長率が一二・一%を割れば、これまた重大な問題が起こると思うのですよ。私は、佐藤さんには二度と赤字公債は発行しないということをこの前約束してありますからね、絶対やれないわけですね。そうすると、ともかくよほど財政を圧縮してもらわなければいかぬということなるでしょう。そうして、いまの四、五年で公債依存率五%にするというのですが、ことし二%くらいまできたわけですね。一〇%ちょっとになった。一体これでうまくいくのかどうか。だから、減税とともに国債依存率も下げられるかどうかです。それだけ一つお答えいただきたい。これはまた上がったんじゃ意味ないですよね。一〇%にして、これがまた一三%になったんじゃ、いつになっても、四、五年で五%にいくなどということは夢物語になりますね。やはりことしよりは来年の国債依存度は下がるのかどうかですね。ちょっとそれも……。
  623. 水田三喜男

    水田国務大臣 国債依存度は年々下げていけるというとふうに考えております。
  624. 堀昌雄

    ○堀委員 実は時間がありませんから、あれですけれども、私はことしの経済の状態を見ておりまして、四半期別統計等から見ますと、どうも経済見通しは前年比一六・四%、名目というのは、やや内輪にすぎるような感じがいたします。経済企画庁長官、どうでしょう。大体一八%台になる。皆さんの資料を見ても、どうもそうなりそうですか、その点だけをひとつお答えをいただいて、私は質問を終わります。対四十二年度の実績です。
  625. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いま出ております四十三年度の設備投資計画がかなり高いものが出ておりますので、そういう感想をお持ちであろうかと思いますが、私どもは、こういうときには、達成率はやはりかなり割り込むと思っておりますので、まあ、見通したところで、いいところではないだろうかといまは思っております。
  626. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  627. 井出一太郎

    ○井出委員長 これにて堀君の質疑は終了いたしました。(拍手)  以上をもって昭和四十三年度暫定予算三案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  628. 井出一太郎

    ○井出委員長 別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  昭和四十三年度一般会計暫定予算昭和四十三年度特別会計暫定予算昭和四十三年度政府関係機関暫定予算、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  629. 井出一太郎

    ○井出委員長 起立多数。よって、昭和四十三年度暫定予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  なお、おはかりいたします。  委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  630. 井出一太郎

    ○井出委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  631. 井出一太郎

    ○井出委員長 本日は早朝より審査に御協力をいただき、委員長として深く感謝の意を表する次第でございます。  本日は、これにて散会いたします。    午後七時三十六分散会