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1968-03-17 第58回国会 衆議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月十七日(日曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 小川 半次君 理事 北澤 直吉君    理事 正示啓次郎君 理事 二階堂 進君    理事 藤枝 泉介君 理事 加藤 清二君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 広沢 直樹君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    上村千一郎君       植木庚子郎君    小沢 辰男君       大村 襄治君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    小山 省二君       坂田 英一君    佐藤 文生君       田中 正巳君    登坂重次郎君       野田 卯一君    野原 正勝君       福田  一君    船田  中君       松浦周太郎君    松澤 雄藏君       松野 頼三君   三ツ林弥太郎君       湊  徹郎君    山崎  巖君       大原  亨君    岡田 春夫君       川崎 寛治君    北山 愛郎君       久保 三郎君    阪上安太郎君       田中 武夫君    楢崎弥之助君       畑   和君    森本  靖君       山内  広君    山本 幸一君       山中 吾郎君    横山 利秋君       麻生 良方君    塚本 三郎君       斎藤  実君    伏木 和雄君       谷口善太郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 赤間 文三君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 園田  直君         農 林 大 臣 西村 直己君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 中曽根康弘君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 小川 平二君         建 設 大 臣 保利  茂君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     赤澤 正道君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官北海道開発庁         長官)     木村 武雄君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増田甲子七君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      鍋島 直紹君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         総理府総務副長         官       八木 徹雄君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁教育局長 中井 亮一君         防衛庁人事局長 麻生  茂君         防衛庁衛生局長 浜田  彪君         防衛庁経理局長 佐々木達夫君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛庁参事官  鈴木  昇君         防衛施設庁長官 山上 信重君         防衛施設庁総務         部長      財満  功君         防衛施設庁総務         部会計課長   春日敬太郎君         防衛施設庁施設         部長      鐘江 士郎君         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省条約局長 佐藤 正二君         日本専売公社監         理官      前川 憲一君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         大蔵省理財局長 鳩山威一郎君         大蔵省証券局長 広瀬 駿二君         農林大臣官房長 桧垣徳太郎君         運輸省航空局長 澤  雄次君         自治省選挙局長 降矢 敬義君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 三月十七日  委員大村襄治君、三ッ林弥太郎君、森山欽司君、  吉田重延君、久保三郎君、岡田春夫君及び石田  幸四郎君辞任につき、その補欠として植木庚子  郎君、中野四郎君、佐藤文生君、福田一君、山  本幸一君、畑和君及び斎藤実君が議長指名で  委員に選任された。 同日  委員佐藤文生君及び山本幸一辞任につき、そ  の補欠として森山欽司君及び久保三郎君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十三年度一般会計予算  昭和四十三年度特別会計予算  昭和四十三年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算昭和四十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き、締めくくり総括質疑を行ないます。  この際、岡田委員に申し上げますが、あなたの昨日の質問中、前段にお述べになりました演習想定に関する文書は、防衛庁に照会しましたところ、存在するということでございました。この点、委員長から御報告を申し上げます。  なお、後段において岡田君御要求の資料の取り扱いにつきましては、昨夜来理事会において協議いたしました結果、今後理事会において専門家等意見を聴取するなど、引き続き検討し、提出が予定されている暫定予算審査開始までに適切な結論を出すということに決定いたしましたので、さよう御了承願います。  岡田春夫君。
  3. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ただいま委員長の私に対する御報告は、私はきわめて不満であります。  第一点は、はやぶさ、菊演習想定状況に関することは、これはあるということでございますが、あるということは、私の提出した仮想敵国の事実ということをお認めになる、そういう意味に了解してもよろしいですか。どうでありますか。  第二点、理事会においてということは、理事会というものはこれは非公開が原則であり、理事だけが出席するのであります。したがって、私が資料提示をいたしました場合においても、その理事会において、私は理事ではございませんので、出席することはできないわけであります。当然これは理事会において、理事懇談会等その他適宜な措置をとる、こういう意味に了解してもよろしゅうございますか。どうでございますか。
  4. 井出一太郎

    井出委員長 お答えいたします。  前段演習想定文書は、私としては存在するということを確認したということだけを申し上げるわけであります。  なお、後段理事会と申し上げましたのは理事懇談会、こういうことで御貴意に沿うように運営は扱ってまいるつもりでございます。
  5. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ただいまの御答弁では私はまだ了解をいたしません。しかし、理事会決定でもございますので、私はその決定の線の中で話を進めなければならないわけでありますが、特に私に割り当てられております時間というものはきわめて僅少でございますので、最後に、昨日取り上げました松前バーンズ協定内容について私は若干意見を申し述べて、私の発言を終わりたいと思います。  昨日もこの問題についていろいろ私は問題点を提起をいたしたのでありますが、一九五九年九月の二日に制服軍人アメリカ制服軍人の間に結ばれた秘密軍事協定である。この協定に基づいて安全条約事前協議条項は実質的に全く形骸化してしまって、その内容がなくなってしまっている。私は昨日、日本防空を危うくする場合に云々というこの文章の一部分を取り上げて質問をいたしたのでございますが、これに対する満足な御答弁はなかった。しかもそれだけではありません。この文章後段には、第五空軍要撃機太平洋空軍交戦準則を守るものとする、このように書いてある。太平洋空軍交戦準則、この中に事前協議条項が入っているわけはない。この事実を考えても、明らかに事前協議条項というものはこの秘密協定の中においては完全に底抜けになっている。国民に対しては政府は、事前協議があるから日本の国は心配がないということを言いながら、実際においては制服軍人がこの事前協議条項を無視して実力で行動することになっている。われわれはこういう点において、国民の命を危うくするようなこのような協定を断じて許すわけにはいかない。しかもそれだけではない。このように日米間の権利義務を拘束するような協定は当然国会にはかられなければならない。それにもかかわらず、昨日の答弁によると、マーフィー大使岡崎外務大臣交換公文に基づいて、その交換公文に基づく秘密協定である、その事実を認めているではないか。それではマーフィー岡崎交換公文国会にかけられているか。全然かけられていないではないか。これをもってしても明らかにこれは秘密という、私がことさら秘密と言っていることを立証することになるわけである。秘密協定である。私はこのような事実を絶対に許すわけにはいかない。問題はそれだけではない。昨日も取り上げましたが、戦時緊急計画存在を明らかにしている。この戦時緊急計画なるものは明らかに憲法違反である。このような秘密協定の中に戦時緊急計画のことが書かれているということは、この緊急計画内容があるはずである。当然これは明らかにじなければ、国権の最高機関である国会としては、その権威を確立する意味においてはこれは許されないことである。また、それだけではない。航空警戒管制組織、全国二十四のレーダー並びに府中のCOC——COCというのはコンバット・オペレーションズ・センターです。戦闘作戦指揮所です。このCOCから、あるいはまたADCC、ADDCから、そこにいる米軍がこのレーダーを使って——このレーダー日本専管です。日本専管レーダーを使って、米軍に対して戦闘命令を発令することができる。しかもその戦闘命令は、韓国並び沖繩、すなわち第五空軍管轄地域内に対してもこの戦闘命令を出すことができることになっている。しかも、この航空警戒管制組織というのは、日本専管である限りにおいて、日本専管するこの組織自身が、韓国並び沖繩に対して防空情報を送受しなければならないという義務を負っている。日米間の協定に基づいて、第三国の韓国日本との関係権利義務として規定しているということは、明らかにこれは重大な問題である。これは明らかに日本韓国アメリカ共同作戦計画の一環である。日韓条約の場合においては、日本韓国の間には軍事同盟はないし、軍事関係はないと佐藤総理大臣答弁している。にもかかわらず、明らかにここにあるではないか。それだけではない。この中には「双方部隊共通運用手順にしたがい」、このように書いてある。「双方」とは日米である。日米部隊共通運用手順というのは、これはアメリカ空軍行動日本航空自衛隊行動が連動して不可分の関係行動するということである。安保第五条の規定以前において共同防衛共同作戦をやるということが明らかになっている。このことは、同時に、在日米軍管轄下にある韓国米軍並びに韓国軍、これとの間においても共通運用手順があることになっている。それならば、共同作戦日本韓国アメリカ共通運用手順によって行なわれることになっている。これは明らかに共同作戦ではないか。増田防衛庁長官先ほどから盛んに横に頭を振っているけれども、これはよく知らないからだ。知らないからそう言っている。これがシビリアンコントロールの実態なんだ。制服軍人がやっているのを知らないから防衛庁長官は頭を横に振って、そんな事実はないといってだまされている。  具体的に一つ例をあげましょう。佐藤さんの前だ、池田総理大臣のときだ。キューバで事件が起こった。あのときにアメリカは全世界の米軍に対してアラート体制をしいた。アラート体制ナンバースリーであった。それと同時に、日本自衛隊アラート体制に入っている。これはその当時の国会答弁している。日本自衛隊が連動的に共通運用手順に基づいて、この秘密協定に基づいて、アメリカ軍隊と同じように戦時体制に入った。この事実をその当時の総理大臣がお知りになったのは、航空総隊がアラート体制に入ってから四時間後である。四時間後になって初めてその当時の総理大臣池田総理は知ったのである。これは明らかに制服軍人間における黒い秘密協定に基づいて行なわれているのである。われわれは、国民の一人として絶対このような事実を許すわけにはいかない。この秘密協定がある限り、安保条約それ自体はまさに骨抜きである。われわれはこのような秘密協定を断じて許すわけにはいかない。私がここに出している協定の全文は、私が出している限りうそではない。これはうそだというなら言ってみたらいいと思う。現にきのう麻生人事局長文書があると言っているではないか。あなたは文書がないと言ったのに、文書があったではないか。防衛庁長官はそのようにだまされている。政府というものは全く制服軍人のやることを野放しにしている。このような防衛庁状態については、われわれは絶対に承服するわけにはいかない。日本防空という名目のもとにアメリカ侵略政策認めているような、このような秘密協定は絶対に反対である。  私は、これらの問題について、今後適当な議員において、あらゆる機会において、社会党の議員諸君とともに、公明党、民社党その他野党諸君とともにこの秘密協定存在を追及する。なぜ私は民社まで含めてその他の全野党と言ったかというと、これは国民が無視できないからである。自民党もこれに協力をして審議したまえ。できないようならば国民の希望に反することである。  私は、こういう点において私の意見を申し述べまして、質問を終わります。(拍手)
  6. 井出一太郎

    井出委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次に伏木和雄君。
  7. 伏木和雄

    伏木委員 公明党を代表いたしまして、総理並びに関係閣僚に若干の御質問をいたします。  昨年の佐藤ジョンソン会談以来、佐藤内閣右傾化国民がひとしく心配をしている点でございます。本国会予算委員会におきまして取り上げられましたあの倉石前農相の発言の問題、あるいは灘尾文部大臣国防教育の問題といい、相次ぐ政府右傾化は、国民をして再び戦争危機を味わわせているのでございます。  そこで、今日の日米安保体制は、政府においては、日本の安全を保障するためだ、日本の平和を保障するためだ、このように主張をされております。しかし、この運用を一歩誤まれば、これはたいへんな問題になってまいります。すなわち、この運用を誤ったときに、一歩間違えばわが国戦争に巻き込まれなくてはならない。このことについては、総理は、事前協議が歯どめになっているからその心配はない、事前協議条項があるからがっちりとその点は押えられる、このように絶えず発言をされております。しかし、本予算委員会におきまして、公明党矢野書記長がこの事前協議の問題を取り上げましたときに、政府の説明は、ついに国民を納得させるような答弁はなかったのでございます。したがって私は、締めくくり総括といたしまして、再びこの事前協議を取り上げてまいりたいと思います。しかも昨日来、この事前協議をめぐっての論議が岡田委員からございましたが、完全に形骸化、空洞化された事前協議になっているんではないか。さらに国民の不安はつのってきております。この歯どめであるべき事前協議——すでに制服の人々によって秘密協定がつくられておる。一方、政府はこの事前協議イニシアチブを完全にアメリカにゆだねてしまう。政府みずからが事前協議イニシアチブアメリカに渡し、制服軍人が陰で秘密協定を結んでいる。これでは一体事前協議というものは、総理が言うように安保条約によってわが国戦争に巻き込まれない、この歯どめであるという主張が、実際そのとおりになっているのかどうか。これはいままでの予算委員会議論を通して冷静に判断してみれば、もう総理の言う歯どめはついにはずされているんではないか、このように私どもは感ぜざるを得ないのでございます。したがって、総理自身事前協議につきましてどのように理解をされているのか、総理の明快なる御答弁をお伺いいたしたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 伏木君にお答えいたします。  私、別に伏木君とここで論争するつもりではございません。私の姿勢が右傾化している、こういうことを指摘されました。そうして倉石あるいは灘尾発言というものが右傾化一つの証拠だと、かように言われます。祖国を思い、独立を進めることがなぜ右傾化ですか。はっきりそのことを知ってもらいたい。これこそ正しい政治のあり方だ、かように私、確信しております。そういう点を、ただ右傾といって政府をどなりつければそれで事が済むように考えられることは、私まことに残念だ。私はそういう点を正確に把握してもらいたい、まずそのことを申し上げます。  そうして、最近の状態戦争への危機がひしひしと感ぜられる、かように言われます。私はさような状態ではないと思う。私ども戦争危機は全然ないと思う。私はこの点を、これまた公明党を代表しておられる伏木君にさらに申し上げておきたい。  そうして、いま言われましたように、安保、これが安全保障ではなくは、運用を誤ればと言われる。しかし、これを運用を誤るような処置がとれますか。私どもはちゃんと平和憲法がある。そうして核についても私ども主張がある。そうして私どもは、これはもう防衛だけの問題であります。それをただいまのような戦争危機であるとか、運用を誤る心配があるとか、かように言われることは、非常に私は論理の発展だと思います。そうして先ほど事前協議の話が出ております。ただいま事前協議について、これは空洞化している、無意味だ、これは歯どめの役をしない、こういうことを言われております。この点については後ほど外務大臣から詳細にお答えさすつもりでおります。  私はただいまのような、先ほどいろいろ論議されたようなそういう問題につきまして、急迫不正な場合にわが国の安全を守る、そういういろいろの処置があるんじゃないかと私考えます。そういう点も全然無視して、そうして一様に云々することは、事前協議が空洞化していると、こういうことは私は当たらないと思う。これはよく考えていただきたい。
  9. 三木武夫

    三木国務大臣 ただいま事前協議の問題についてお触れになりましたが、新しい安保は、事前協議というものはきわめて重要な改正点であります。従来旧安保になかったのです。したがって、この事前協議というものが空洞化しておるという野党諸君の見解には、われわれはこれはもう絶対に承服できない。これは事前協議というものが、第六条によってアメリカイニシアチブをとると言われますが、御承知のように、この事前協議条項にかかる三点は、軍隊装備であるとか配置であるとか戦闘作戦行動とかいうものが事前協議対象になりますから、アメリカがそういう点についてはイニシアチブをとることが、これは自然の形であります。しかしながら、われわれは第四条によって常に日本からも事前協議することが言えるのであります。ところが、六条によってアメリカも言える、四条によって日本も言えるというのでありますから、常に事前協議が一方的にアメリカだけのイニシアチブとは言えない。やはりわれわれとしても、必要があったならば四条によって常に事前協議を要求できるわけでありますから、常にアメリカイニシアチブをとって日本は何も言えないのだといういまの御発言は、事実に相違するということを申し上げておきたいのであります。
  10. 伏木和雄

    伏木委員 事前協議の問題につきましては、もうちょっとあとに触れてまいりたいと思います。  そこで、総理がただいま、国を守ることを主張してどこが悪い、このようにむきになって言われておりました。私どもはそれでは国を守ること、国を憂えていないのか、こう言いたくなってまいります。国を守るということは国民において一向変わらない。佐藤総理国民であるならば私ども国民であります。国を守るという、国を憂うるという点では変わりはない。ただその国を守る守り方が、再びあの戦争の悲惨を起こしてはならない、われわれはこの点を申し上げておるのであります。誤りのないようにしていただきたい。何も、私どもが軍備の拡張を否定することは、わが国が滅びてもいいということを言っているんではありません。この点ははっきりしておいていただきたいと思います。  そこで、事前協議のことが出てまいりました。昨日以来の議論によりますと、明らかに事前協議対象となるべきものが、こうした松前バーンズ会談において協定が結ばれて——これは長官があるということを認めております。こういうものがすでに交換されておる。この上に立ってわれわれはいま事前協議が空洞化されている、形骸化されている、この点を申し上げておきたいのです。先ほどもお話がありましたが、防衛庁長官、これは、日本防空実施に関する取り扱い、もう一度確認いたしますが、この協定はありますか。
  11. 増田甲子七

    増田国務大臣 昨日申したとおり、文書はございます。
  12. 伏木和雄

    伏木委員 あるということは問題です。もうすでに事前協議対象となるべきものが、制服軍人によって協定が結ばれている。事前協議というものは一体どうなるのか。先ほど三木さんも総理も、事前協議歯どもはくずされていないというように言っておりますが、事実こうある。そこで私は伺っておきたいんです。この文書があるということをお認めになった以上、戦時緊急計画、この実施以前においてと、こううたわれておりますが、戦時緊急計画というものはございますか。
  13. 増田甲子七

    増田国務大臣 先ほど来御発言戦時緊急計画なるものはございません。その前の警ら行動パトロール行動についての協定でございます。  それから、事前協議事前協議とおっしゃいますけれども日本国内を守る場合には事前協議というのはないのです。国内を守る第四条の協議でございまして、日本基地として海外へ出る——海外といってもこれは極東でございまするが、何でも事前協議というとえらい大きなことのように思いまするが、日本を守るために日米安保条約はあるのでございまして、日本基地として防衛行動をとる場合には、国内においては内閣総理大臣命令によって原則として国会の決議、それから、できなければ事後において国会の承認、アメリカにおいては大統領の命令によって戦闘行動が共同的にとられるものである。それは日本国を守り、国民を守るものでございまして、きょうのマスコミ等にも事前協議事前協議とございますけれども日本基地として海外へ出る場合というのは、これは極東へ出る場合でございまして、その関係をはっきりと区別してお考えを願いたい次第でございます。
  14. 伏木和雄

    伏木委員 時間がありませんから次へ進めてまいります。  それでは、「要撃準則を守り」このようにございます。この要撃準則というのはありますか。これはあるはずです。
  15. 増田甲子七

    増田国務大臣 「共通の」ということをさっき岡田さんがおっしゃいましたけれども、「共通の」というものはございません。わが国わが国の準則でやっておりまするし、またアメリカアメリカの準則でやっておるのでございまして、「共通」ということはございません。
  16. 伏木和雄

    伏木委員 私が言っているのは、「要撃機航空自衛隊要撃準則を守り、」とこうありますね。ですからこの要撃準則はあるかと、こう伺っているのです。
  17. 増田甲子七

    増田国務大臣 自衛隊法にスクランブルの規定はあるのでございます。
  18. 伏木和雄

    伏木委員 それでは、時間がかかりますので、あとやることがたくさんありますので、その要撃準則を提出願いたいと思います。
  19. 井出一太郎

    井出委員長 伏木君に委員長からこの際申し上げますが、ただいま資料の御要求がございました。これにつきましては、前にも同様なことがございましたし、理事会において十分に御貴意に沿うように対処してまいりたい、かように考えます。
  20. 伏木和雄

    伏木委員 いま委員長からのせっかくの御発言ですが、理事会で検討されるということですが、これがまたいつまでに御返事がいただけるか、これがはっきりしないことには私どもも非常に困るのです。したがって、長官はあると言われているんですから、ですから時間のかかる問題ではないと思います。したがって理事会の取り計らいも早急に願いたいと思います。   〔発言する者あり〕
  21. 井出一太郎

    井出委員長 伏木君に申し上げます。  先ほど岡田君についてもお答えをいたしましたように、理事懇談会をそのために特に開催をいたしますから、あわせて処理をいたしますから、さよう御了承を願います。
  22. 伏木和雄

    伏木委員 それでは次にまいります。  先ほど事前協議イニシアチブの件につきまして、外務大臣は、第四条の随時協議がある、そこでやっておるから、たとえイニシアチブはなくてもだいじょうぶだ、こういう答弁があったわけでございますが、私はこれは問題ではないか。矢野委員質問にもこれはあった点ですが、これは三十九年の二月十八日、予算の第二分科会におきまして、当時の大平外務大臣はこの点を明らかにされております。「事前協議の申し出は、当方からもできると承知いたしております。」このようにはっきりしております。なぜ四条にからませるのか。いつこれが外務省の見解が変わったのか、政府事前協議に対する考え方が後退したのか、これは納得できないのです。明らかにこの答弁は第六条に基づく事前協議、これは当方からも発議することができる、このようにはっきりと答弁されております。この点明らかにしていただきたい。
  23. 三木武夫

    三木国務大臣 伏木君は大平君の速記録をお持ちになっておると思いますから、ごらんになったらわかりますように、どうもこれは事前協議にかかるような条項があって怪しいと思ったときに、日本から事前協議をやろうではないかと申し出ができますかという質問に答えたのが大平君のその答弁であります。それは私も言っておるように、できるのであります、四条によって、どうもこれは事前協議にかかるような事態が起こっておると思うから、ひとつ事前協議をやってもらいたい、こういうことを常に四条によって日本が言い出すことはできるわけでありますから、大平君の言っておるのもおそらく私と同じような意味だと思うのであります。したがって、いつでも必要があったら四条によって事前協議をやろうじゃないかという、日本イニシアチブをとって言うことはできるので、そのことをあまり重視する必要はない。しかし条約上のたてまえとしては、事前協議というものは米軍軍隊装備とか、あるいは作戦行動であるとか、あるいは配置とか、そういうものに関係するから、アメリカイニシアチブをとることが自然であるけれども、必要があったら四条によっていつでも事前協議しようではないかと日本が言えるのだから、そのことをあまり大きな意味をお持たせにならないほうがいいと私は思うのでございます。
  24. 伏木和雄

    伏木委員 これは大きな問題です。この議事録を見ますと、外務大臣に対して、「日本のほうから向こうに、お前のほうは核兵器を積んでおる心配があるから、ひとつ事前協議をやろうじゃないか」ということに対して、われわれも「事前協議の申し出は、当方からもできる」、これはもう明らかに六条の問題について議論が展開されているのです。これを四条というのはまことに私たちは理解できない。はっきりと六条の問題で、核を持っているからやろう、それに対して、それはできます、こういうことじゃないですか。
  25. 三木武夫

    三木国務大臣 それは四条によって、どうも核兵器を積んでおるのではないか、疑わしいからやろうという申し出は六条の事前協議でありませんよ。六条は、どうしてもやらなければならぬ、核を持ち込むというような、こういうアメリカの意思があって、どうしてもやらなければならぬ——どうも積んでおるようで、怪しいからやろうではないかという申し出は、四条によるやはり協議だと私は思います。
  26. 伏木和雄

    伏木委員 そうするとよけい疑問が出てまいります。  随時協議におきまして事前協議をやろうではないか、こういうことを言った場合に、発議権が向こうにある、六条の発議権が向こうにあるという以上は、これは必要ないと向こうに言われれば、もう六条は、全然六条へ入る以前に立ち切られる。六条の事前協議は拒否権を持っているわけです。わが国は、装備の重要な変更、これは事前協議とする、それである以上、核の持ち込み等については拒否することができるわけです。四条の場合はこれは随時協議であって、安保条約の体制に基づいて随時行なわれている。おのずから内容が違っておる。それが一つ。それから先ほど申し上げたように、四条で、随時協議の場合に、事前協議をやろうと言っても、発議権が向こうにある以上は、向こうでノーと言えばそれでその先、事前協議には入れなくなる。ですから四条と六条はおのずから性格が違う。それを一体にして、あたかも四条があれば六条の事前協議ができるというような答弁はこれはもうごまかしだ、これはもうはっきりしている。
  27. 三木武夫

    三木国務大臣 少しもごまかしでも何でもないわけで、ノーと言えると言われますけれども事前協議にかかる条項というのは明白になっているのですからね。ですから核兵器を持ち込むという意思がアメリカにあって、そして事前協議をやろうじゃないか、ノーということになれば、アメリカは条約に対する重大な違反である。それはある。だからノーと言うといっても、持ち込むということになったらノーと言えないというのが条約のたてまえである、これは。だから持ち込む意思がないのに、あやしいということで日本協議をしようとするのは、これはやはり四条の協議ではないか。アメリカが持ち込むという意思を持ったときには、それが事前協議にこれからなってくるわけで、何にも、意思も何にもないのにあやしいというだけで事前協議がやれるとは私は思わない。事前協議には事前協議をやる条件というものが、三つの場合が書かれているのですから、その条件が何もないのに、あやしいというだけで、それが六条による事前協議であるとは私は思わない。だから、あやしいと思うときはいつでも日本が申し込んで事前協議ができるんですから。しかしやるときには、アメリカが実際に持ち込むという意思があって、そして六条による協議になるのですから。しかし、持ち込む意思があるのに、それをアメリカが隠して拒否したらどうする、そこまで疑ってかかれば、条約というものはもうすでにどの条約も成立の基礎を失うものである。条約はやはり信頼の上に立たなければ、そんなに持ち込むのに隠して、かけないのだというふうに疑ってかかれば、もうこれは議論百出で、これはやはり世の中の、世界の秩序というものは成立しない、こういうふうに考えるのでございます。
  28. 伏木和雄

    伏木委員 外務大臣は何か言うと信頼のもとにということになるんですが、それはあなた方、信頼するのはけっこうです。しかしこの事前協議が歯どめになっているということに対して不安を持っている国民がいるわけです。その人々に信頼せいと、これでは条約のたてまえがくずれるんではないか。こうこうこういうふうに条約にある、だから心配ないのだ、これが国民を納得させるものである。それをただ一方的に信じろ信じろ、こう言ってみましても私はこれは納得できない。したがって、この議事録によりますと、あくまでも大平さんは第六条に基づく事前協議をここで議論しておる、あなたは四条とすりかえておる。大体大平さんとこの問題で打ち合わせやったんですか、大平さんと打ち合わせをやりましたか。
  29. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、信頼、信頼と言って国民が非常に不安に思うと伏木さん言われますが、これは隠してできることではないのですよ。核兵器を持ち込んだり、戦闘作戦行動日本基地を使ったり、それから大部隊の移動を行なったり、国民の目に見えるんですよ。隠してやることではないのですから。そういう意味で、アメリカがこめ事前協議という重大な条項に対してこれを無視するような条約違反をやるようなことは、私はそういうことは信じられない。そういう意味において、条約は厳正に守るという日米間のこの信頼の上に安保条約は成り立っておるというので、この点で国民が非常に御心配なさる必要は私はない、目に見えることですから。そういう意味心配は要らぬと思うのでございます。また、大平君は現在閣内にもおりませんから、これを打ち合わせたことはないが、私は大平君の答弁も私の言っておることと違いはないものだと考えております。
  30. 伏木和雄

    伏木委員 外務大臣事前協議対象になるべきものは目で見えるから心配ない、こう言われましたが、それではあなたは沖繩の核装備は全部御承知でしょうか。
  31. 三木武夫

    三木国務大臣 目に見えるということばは少し適当でないかもしれない。しかし目に見えるというか、人に知らさずに、やはり核装備といったら予算にも関係するでしょう、アメリカの予算にも。またそれが人の目に触れる場合もありましょう、あるいはまた人に知られる場合もあって、とにかく秘密で核兵器を持ち込むうといことは今日のような場合にはできない、したがって、これはアメリカが第一この条約の重大なる違反を犯すというようには考えない。その信頼がなければ安保条約というものは道義的基盤を失なうわけですから。それとまた、それをいつまでも隠してそういう秘密のようなことをすることは、今日のときにできるものでもない。これは野党諸君だって、いろいろなことに対して徹底的な究明が国会を通じて行なわれて、いまの事前協議にあるような三つの条件をいつまでも国民の目に隠してするようなことは、近代のようなこういう民主主義の時代で私は考えることはできない、その上に日米間の信頼がある、こういうことで、国民の皆さんがあまりこのことに対して御心配をなさる必要はないと私は信じています。   〔「全然答弁になってない」と呼び、その他発言する者あり〕
  32. 井出一太郎

    井出委員長 静粛に願います。
  33. 伏木和雄

    伏木委員 全然答弁になっていない。私が信頼だけではだめだと言えば、目に見えると言うんです。目に見えるのはどういうことかと言えば、予算等に見える、こう言う。アメリカの核装備のことが予算でわかりますか。そんなばかなこと言うものじゃありませんよ。アメリカの核装備日本へ持ち込まれたのはどこの予算を見ればわかるのですか。そんな答弁ではこれはよけい疑わしくなる。結局あいまいだ、こう言わざるを得ないと思うのです。  そこで、この大平元外務大臣発言三木さんの発言には大きな食い違いがある、どちらが正しいかひとつ総理、明らかにしていただきたい。
  34. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど外務大臣がお答えしたとおりでございます。私は外務大臣答弁を心から実は支持しております。たいへんわかりのいい話であります。御承知のようにこの第六条、これでは三つの事項をする場合には、アメリカ日本協議をしなければならない、こういう書き方がしてある。日本事前協議をしなければならない、そうしてまた、事前協議した場合には、日本政府の意向を無視しない、これが向こうの言い分であります。  そこで、たぶん伏木君はこちら側からも事前協議の問題としてこれが提案できれば、必ずその日本政府の意向を無視しない、こういうことになるだろう、だから、こちらも協議するということでなければ困る、こういう場合だと思います。しかし、日本の場合は、いわゆるこちらのほうで大部隊を日本に送り込んでくれとか、あるいは核の持ち込みをしてくれとか、そんなことを言わないことはもうはっきりしていますね。でございますから、こちら側から申し込むことはないように思う。しかし、条約があるんですから、随時協議、これはいつでもする。日本は、これからの防衛体制はどういうふうにあるべきであろうか、君のほうの安全保障条約にたよるにしても、君のほうで一体どうしてくれるか、近海にどんな状態のものを配置するかというようなこともいろいろ相談するだろうと思います。その結果が、さっき言うように、日本国内に持ち込むような、あるいは部隊の移動するような、そういうことになると、向こう側と、今度いわゆる事前協議という形になる、こういうのでありまして、私は最初から第六条の事前協議という形はとりませんけれども、随時協議の結果必要があればそういうことになる。  そこで心配なのは、伏木君も言われるように、最初からこちらから随時協議を持ちかけたら向こうで断わったらそれっきりじゃないか、こういうことがいま問題なんです。それを三木外務大臣は説明して、この第六条の規定によってアメリカがこれこれのことをする場合には事前協議をせざるを得ないんだ、もしそれをしないで断わったら、それこそアメリカが重大なる条約違反なんだ、こういう国と日本安全保障条約は結べなくなる、これが先ほど言っておるところでございます。でございますから、最初から第六条の問題ではない。形式的にはどこまでも随時協議日本の場合は四条の問題である。しかし、それがその次の第六条に発展する場合はもちろんあります。また、発展しない場合がある。それは、発展しない場合は第六条に該当するような事項がない場合、かように私は考えます。
  35. 伏木和雄

    伏木委員 どうも私の聞いている点が御理解いただけないようですが、安保条約運用面で説明をされているようです。私がいま言っているのは、六条の法的解釈、ここに日本の発議権は六条の上では完全に抹殺されているんではないか。それを運用面でできるからだいじょうぶだ、こういうように盛んに言われているようですが、法解釈の上で、事前協議わが国には発議権がない、向こうの一方的なものだ、こう私たちは理解しております。この点はどうでしょう。
  36. 三木武夫

    三木国務大臣 法的解釈は、事前協議条項に掲げられておる三つの行動、いわゆる配置とか装備の変更とか戦闘作戦行動日本基地を使う、このときには事前協議にかけなければならぬ。それからまた、この条約そのものにはありませんけれども、全体として日米間の合意しておるいわゆる合意事項は、アメリカ日本国民の、日本政府の意思に反して行動しない。これはやはり大きな背景をなしておるわけでありますから、条約によって、第六条によってアメリカの軍事行動は重大なる制約を受けておる。これは運用面でなくして、条約の面においても重大な制約を受けておる。また、イニシアチブは、六条によってではないけれども、四条によって絶えず日本はとることが可能である。こういう意味においてこの条約の事前協議というものが、このイニシアチブが常にアメリカにあるという解釈は、これは当たらない。事前協議をやろうではないかという発議権は、日本もまた四条によって持っておる、これが解釈でございます。
  37. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 伏木君、いまの問題は、法制局長官が答えるとなおその根拠がはっきりするだろうと思いますから、法制局長官に答えさせます。
  38. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 御命令によりましてお答え申し上げます。  御承知のこの例の交換公文でございますが、これはあらためて読むまでもなく、こういう事項については「日本国政府との事前協議の主題とする。」ということがございます。で、「事前協議の主題とする。」というのは、先ほど総理大臣並びに外務大臣がおっしゃいましたように、あるいは外務大臣がおっしゃったほうかも存じませんが、この協議がありますと、日本の意に反して行動することはしないという別個の共同声明がございますし、それはわれわれとしては実はこの交換公文の解釈そのものであると思っておりますが、事前協議がありました際にわが国がこれを同意しない場合に、それをしいて入ってくることはいたさない、つまりいわゆる歯どめでございます。歯どめでございますから、わが国としては、歯どめをはずさないことが利益を持つわけで、そのはずすほうについて利益を持つもの、つまり、この事前協議の主題としてわが国に入れたい、あるいは、わが国からの戦闘作戦行動をしたいというものが、実はわが国の同意を得るために事前協議をしてまいるわけです。したがって、その事前協議そのものの協議日本側からするというのは字義の上からはなはだおかしい。これはおかしいんで、やはりこの歯どめをはずしてほしい、つまり同意をしてほしいという国が、事前協議の主題としてくるのは理の当然だろうと思うわけでございます。ただ、しばしば御指摘になりますように、大平国務大臣が前にお話しになった例をあげておられますが、これは先ほど来お話がありますように、事前協議制度の運用について申し出をするということ、これはむろん四条でできないわけではないと思いますが、そういう趣旨であればそういうことは考えられますが、事前協議そのものを歯どめをしているわが国から、イニシアチブをとって申し出るというのは何としてもおかしいんではないか、それが率直な考えでございます。
  39. 伏木和雄

    伏木委員 事前協議と随時協議とは私どもは根本的に違っているものだ、あまりにも混同し過ぎる、われわれはこう解釈するわけですが、これまでの政府答弁を確認するような意味で、事前協議と随時協議では本質的に異なっているという点で二、三伺っておきたいと思います。  事前協議の場合は、アメリカ日本に反した行動をとらない、こういう前提に立って、つまり事前協議については日本側に拒否権があるというふうに理解をしておるのですが、この点は間違いないでしょうか。
  40. 三木武夫

    三木国務大臣 アメリカのこの条約の批准国会において、ハーターも明白に拒否権を持っておるという証言を行なって、われわれとその意見は違わない、日米間において、これはノーと言える権利を持っておるということであります。
  41. 伏木和雄

    伏木委員 それでは随時協議については、日本側に拒否権があるかどうか、この点も明確にしておきたいと思います。
  42. 三木武夫

    三木国務大臣 随時協議は、協議をしようというのですから拒否権というものではない。やはり六条の場合にだけ日本がノーと言うことであって、随時協議は、協議をやろうというのに、ノーと言い——まあ拒否権ではなくして、やめましょうということは言えるでしょうけれども、拒否権ということではございません。
  43. 伏木和雄

    伏木委員 いま外務大臣からお話しありましたように、四条と六条はそうした異なりがあるわけです。  次に、協議機関の点ですが、安保条約の付属文書である安全保障協議委員会の設置に関する往復書簡で、随時協議事前協議もこの委員会を通じて協議できると解されております。しかし昭和三十五年の四月二十人目、衆議院の安保特別委員会において、岸総理は、事前協議日本の場合は常に総理であり、アメリカの場合は大統領である、このように述べております。この点についていままで変わらないはずでありますが、この点はどうでしょう。
  44. 三木武夫

    三木国務大臣 私、その速記録を存じておりませんが、それはおそらく総理と言ったのは政府という意味で私は言われたものだと思います。
  45. 伏木和雄

    伏木委員 それはとんでもない違いです。またここで事前協議に対する解釈が変わってきた。明らかにこの議事録では、はっきりと総理であると、このように答弁されております。
  46. 三木武夫

    三木国務大臣 私のほうの事務当局の話では、総理そのもの個人というのでなくして、総理またはその権限を受けた者というふうに解すべきであって、常に総理が出ていかなければならぬというのではなくして、協議は両国政府でやるのですから、総理個人というのではなくして、総理またはそれを代表する、やはり政府と解釈するほろが私はいいと思います。
  47. 伏木和雄

    伏木委員 議事録を読みましょうか。「通常の場合、事前協議の方式は、時間的余裕があるときは大統領と日本の岸総理、余裕がないときは現地の米軍の責任者と、日本の場合は常に総理かどうか。」こういう質問です。これに対しまして、「日本の場合におきましては常に総理であります。」このようにはっきりしておるじゃありませんか。また変わったじゃないですか。
  48. 三木武夫

    三木国務大臣 その場合も、私が言っておるように、政府を代表ずる者という意味で、総理個人というよりかは、総理大臣というものは、政府の代表者として総理という意味に解すべきだと思います。
  49. 伏木和雄

    伏木委員 この議事録をはっきりしていただきたいと思うのです。ここではっきりしているじゃないですか。日本の場合におきましては、常に総理、常に総理とはっきりしておるじゃないか。
  50. 三木武夫

    三木国務大臣 おそらくこういう答弁というものの中には、最終決定をするものは総理という意味でしょう。いろいろ協議に対しては政府がやって、最終決定を下すものが総理である、こういう意味に解すれば、その答弁と私どもの考え方に食い違いは私はないと思います。
  51. 伏木和雄

    伏木委員 だめですよ。そういうことを言っていると時間がかかってしようがない。ここでは代表者はだれが出るかという問題ですよ。だれが協議に出るかという……。その場合岸総理——日本の場合におきましては常に総理ですと、ここではっきりと出ているのがまたこう変わったのでは、政府の見解がそう変わったのでは、われわれは事前協議については全く信じられない。総理どうですか。
  52. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま外務大臣が言われたとおりだと思います。岸総理がどういう——いまその速記のとおり答えただろうと思いますけれども、何もかも総理自身がみずからやるというものでないこと、これはひとつ御了承いただきたい。しかし、最終的決定は必ず総理がやる、かようにお考えをいただきたい。もうそのために私はあらゆるスタッフをたくさん持っているのです。キャビネットはそういうわけのものですから、こういうことは、事柄の性質上、それだけはどうも自分が専決しなければならない、こういうものがございます。それを言っておるのがその答弁だと思います。したがって、この事前協議の問題で、あるいは核の装備をするとか、あるいは重大なる兵隊の増置をするとか、こういうときに、それは私自身がきめなければ、そのスタッフはいろいろの交渉をいたしましても最終的決定総理だ、これはもうはっきりしております。
  53. 伏木和雄

    伏木委員 また答弁の変更があったわけです。私たちはこの点は了解できません。  次に進めたいと思います。先日わが国の領海内の無害航行について政府は見解を述べておりました。一般論としての無害航行は、もちろんこれは国際法で定められている。これは私たちも理解します。軍艦については各国によってその考え方が違うようでありますが、わが国は軍艦の領海内航行の無害航行を認めるのかどうか、この点をもう一回明らかにしておいていただきたい。
  54. 三木武夫

    三木国務大臣 今回国会で御審議を願うことになっています領海及び接続水域に関する条約でも、沿岸国の平和、安全、秩序を害さない限り、軍艦においても無害航行権があるというのが一般原則であります。しかし、そのためには、それは日本の領海内に入ってくるのじゃない、通過ですね、無害航行ですから。それと沿岸国の自由、平和、秩序、これを害さない、こういう条件のもとにおいて無害な航行であればこれを認めるという方針でございます。
  55. 伏木和雄

    伏木委員 そうしますと、たとえばソ連の軍艦でもこれは適用されるわけですね。
  56. 三木武夫

    三木国務大臣 国によってこの区別をつけないというのが原則でございますが、沿岸国の自由、平和、秩序という見地からこれが無害であるならば、国によっては区別をしないというのが原則であります。
  57. 伏木和雄

    伏木委員 潜水艦の場合について明らかにしておいていただきたい。
  58. 三木武夫

    三木国務大臣 潜水艦の場合は、そんなにもぐって通ってはいけない。浮き上がって旗を立てて通らなければならぬということです。   〔発言する者あり〕
  59. 井出一太郎

    井出委員長 静粛に願います。
  60. 伏木和雄

    伏木委員 それでは外務大臣、もぐってきたときは、そのもぐってきた潜水艦に対してこれを探知することは海上保安庁においてできますか。わが国の沿岸にそれを探知できる設備があるでしょうか。
  61. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 技術的にはなかなかむずかしいと思いますが、日米間の友好関係にかんがみて、その前後の状況をよく話し合えば、話し合いでわかっていくだろうと思います。
  62. 伏木和雄

    伏木委員 外務大臣、そうしますと、アメリカ以外の潜水艦が入ってきた場合、アメリカは信頼できる、ではほかの国はどうですか。
  63. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それはやはり友好関係の度合いにもよると思うのでありまして、国際法規をよく守ってもらうようにやってもらう以外にはないと私は思います。
  64. 伏木和雄

    伏木委員 私が聞いたのは、アメリカは信頼関係にあるからいい、こう言うから、ではほかの国も全部外国は信頼のもとにそれを認めるのか、こういうことです。
  65. 三木武夫

    三木国務大臣 日本の平和、安全、秩序に無害である限り、国籍によって区別をしない。
  66. 伏木和雄

    伏木委員 ですから、私が聞いていることは、沈んで来た場合、それは確認はできないでしょう、こういうことを言っているわけです。どうするのですか。
  67. 三木武夫

    三木国務大臣 伏木さん、前回の質問とも関連するのですが、国際法規を守らないという前提では、なかなか実際問題としてむずかしいと思います。世界の秩序は、国際法規を守るという人類の善意の中に成り立っておるので、みな守らないのだという前提になってくれば非常にむずかしい。だからわれわれは、やはり各国が約束をした国際法規は守る、こういう前提のもとに立って考えなければ、守らなければどうするかといって、そういうことになればもう世界の秩序というものは維持できません。したがって、潜水艦が通るときには、必ず浮き上がって旗を立てて通らなければならぬというのが条約の規定なんです。これは御承知のように領海及び接続水域に関する条約の中の第五条でしたか、その規定の中であるのですから、やはりこの国際法規は守るという前提でなければ、世界の秩序は成り立たない、これはそう考えるよりほかはないのでございます。
  68. 伏木和雄

    伏木委員 時間がありませんから少し飛ばしてまいりますが、それでは、ポラリス潜水艦は、いままで明らかにしてきた一般の潜水艦や普通の軍艦とは違います。この点については公明党の竹入委員長が代表質問の際に、はっきりとこれは核兵器そのものであると、このように総理御自身も答弁されておったわけです。このポラリスがわが国の領海内に入域することを、無害航行ということで政府はお認めになるのか。
  69. 三木武夫

    三木国務大臣 無害航行という観念でありますが、これは日本の領海に入ってくるというのではないのですよ。それは公海から公海に通り抜ける場合に、領海をすっとかすめて通るような場合そういうのであって、日本の領海の中に入ってくることに対して無害航行権というのではない。公海から公海に通る場合に、領海をかすめて通るような場合における航行権でありますし、したがってアメリカのポラリス潜水艦が、いままではそういうこともございませんし、また、これからもそういうことはちょっと想像はできませんが、やはりたてまえとして、そういう場合については事前協議条項にかけないで認めたいと考えております。
  70. 伏木和雄

    伏木委員 ポラリス潜水艦の日本領海の航行を認めるというわけですが、ただいま説明のあった公海から公海、わが国の中においてはおのずから限界があると思うのです。すると、ポラリスが無害航行という名のもとにわが国の領海に入れるのはどこですか。
  71. 三木武夫

    三木国務大臣 領海に入ってくるのはいけません。入るのでないのです。公海から公海に通過をするということであって、領海に入ってくるという観念であれば、これはやはり事前協議対象になることは明らかです。ただ、その水路を、たとえば宗谷海峡とかあるいは五島列島とか、こういうふうな場合に公海から公海に通り抜けるために通過するということであって、日本の領海に入ってくるときには、当然に事前協議対象にならざるを得ない。ただ通過の場合である。そういうことで、これは入ってくるという観念とは違う、通り抜けるということであります。
  72. 伏木和雄

    伏木委員 そうしますと外務大臣、公海から公海に行くための通過ですね。安保条約によりますと、わが国の施設に入ってくる、もしくは施設から出る場合、それと公海から公海に通過する場合と、こういうようになっておりますが、したがって開港に入ってくる場合は無害航行では認めない、通過のみだ、こういうことになりますね。するとおのずから場所は限定されてくると思うのです。はっきりそういう地域は限定されると思いますが、それはどこですか。
  73. 三木武夫

    三木国務大臣 これはどこといって、地図の上で研究はしてないのですけれども、それは限られている地域だと思います。地図では研究してないし、また事実上通過でありますから、そんなにどこもかしこもということではないということでございます。
  74. 伏木和雄

    伏木委員 だれかわかりませんか。局長かだれかわかりませんか。
  75. 三木武夫

    三木国務大臣 最も典型的な例は宗谷海峡あるいは五島列島と平戸との間、そういうところは典型的な例でございます。
  76. 伏木和雄

    伏木委員 極端な場合ですが、瀬戸内海は通れませんね。
  77. 三木武夫

    三木国務大臣 そういう内水は、われわれは通ることは考えられません。
  78. 伏木和雄

    伏木委員 ポラリスの領海内の通過ということですが、通過という前提に立ったとしても、わが国の領海に船が入る、核が持ち込まれるということは、これは否定できない事実です。この場合、総理の言われた三原則、その関係はどうなるか。
  79. 三木武夫

    三木国務大臣 伏木さんの言われるのは持ち込みと言えるでしょうか。公海から公海に通過していくのですから、それはやはり持ち込みという観念とは私は違うと思う。持ち込みという以上は、日本の領海の中にポラリスが入ってくるということであって、ただ公海から公海を通るためにそこを通るよりほかにないというところで通過をする場合は、核兵器の持ち込みであるという観念とは違う、こういうふうに私は思うのです。
  80. 伏木和雄

    伏木委員 外務大臣、私が心配するのは、通過ならいいんだという点です。日本の領海に入って、また出ていく。次の船がまた日本の領海へ場所を変えて入ってきて出ていく。時間を変えてやったら——極論すればですよ、絶えず日本周辺には日本の領域内にはポラリスがあるということになるじゃないですか。
  81. 三木武夫

    三木国務大臣 これは出たり入ったりしたら事前協議にかけます、出たり入ったりすれば。ただ通過の場合ならいいけれども日本の領海に入ってきたり出たりして——それは公海から公海に通り抜けるための通過だとは思いません。日本の領海内に絶えず入ってきたり出たりしておるならば、これは事前協議条項にかかる。
  82. 伏木和雄

    伏木委員 しかし外務大臣、かすめていくということもできるわけです、その解釈は。かすめることもできるわけです。ちょっと迂回していけば日本の領海内は通っていける。それをAというポラリスがこちらであり、Bがこちらであり、時間を変えてやれば、日本のまわりは絶えずポラリスで固められる、こういう結果にもなりますよ。これでは核の持ち込みは否定できなくなるじゃないですか。
  83. 三木武夫

    三木国務大臣 まあ、どういう場合を考えるのですか、頭の中では考えられるかもしれませんが、日本の周辺をポラリスがいつも取り巻くなどということは、私はそういうことは現実的に考えられませんが、とにかく、ただ通過だけであって、日本の領海の中に入ってきて常に出たり入ったりするというのなら、これは事前協議にかけると言っておるのですから、国民に対して不安を与える必要は私はない。
  84. 伏木和雄

    伏木委員 私が言っているのは、出てきたのがまた戻るということを言っているんじゃないんですよ。迂回して領海を通って公海に抜ける、こういうことを言っているのですから……。
  85. 三木武夫

    三木国務大臣 迂回して日本の領海をかすめて通るような場合で通過するならば、事前協議対象にはなりません。
  86. 伏木和雄

    伏木委員 それでは外務大臣、いままでポラリスが日本の領海内に無害航行という名目で通告があったことがありますか。
  87. 三木武夫

    三木国務大臣 通告があったこともございませんし、またポラリスが領海に入ってきたということもございません。
  88. 伏木和雄

    伏木委員 そういう通告のないものを、わざわざわが国の領海内にポラリスは無害航行なら入ってもいいんだ、核が通り抜けてもいいんだ、こういうことを通告もないのになぜこちらがそういう態度をしなくてはならないのか。私はこういう点が疑問に思う。このようにして漸次事前協議形骸化していこう、これがわれわれの心配する点です。これははっきりしてください。
  89. 三木武夫

    三木国務大臣 伏木さんから条約の解釈というものに関連して御質問があるので私は答えておるのです。ポラリス歓迎のため私は述べておるのではないのであります。あなたが質問されるから、それに答えておるので、私の発言はポラリス歓迎の辞ではない。
  90. 伏木和雄

    伏木委員 歓迎の辞ではないということですが、それでは次に進めます。  それでは問題を変えますが、米軍航空機は無害、無着陸飛行は認めるかどうかです。
  91. 三木武夫

    三木国務大臣 アメリカの飛行機ですね。飛行機は日米安保条約によって日本の上空に対して飛行することはできます。しかし、核兵器を積んだ場合には事前協議対象にかかるということです。
  92. 伏木和雄

    伏木委員 これは安保条約に基づきますと、米軍機といえども施設の区域に至る空路、こういうことになっていると思います。それでは哨戒飛行はできないでしょう。
  93. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 御質問の趣旨があまりよくわかりませんが、哨戒飛行と申しますのは、日本から飛び立って哨戒するという意味でございますか。——それならば当然できると思います。
  94. 伏木和雄

    伏木委員 それでは日本を通過する場合はどうですか、哨戒のため。
  95. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 核を搭載してという意味でございますならば、これは事前協議対象になります。
  96. 伏木和雄

    伏木委員 核を持ってない場合は。
  97. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 持ってない場合は当然できると思います。
  98. 伏木和雄

    伏木委員 そうすると、B52がわが国の上空を通過することはできるわけですね。
  99. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 地位協定五条では、施設区域に出入するということになっておりますから、その意味での領空通過権はあるわけでございます。で、通過する場合にも現在は事前許可はとらないでいいという国内法になっております。
  100. 伏木和雄

    伏木委員 そうしますと、B52が通過できるとすれば、B52が核を持っておった場合、これはこちらでそれを知ることができるかどうか。
  101. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 核を持っておる場合には当然事前協議はあるべきものだと考えております。もしない場合には米側の条約違反になると思います。
  102. 伏木和雄

    伏木委員 それはどこで発見する。
  103. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 これは、そういう事実があれば、米側の条約違反になるということがございまして、発見その他は、これはわかりませんですね。
  104. 伏木和雄

    伏木委員 では、時間がありませんので結論的に申し上げたいと思いますが、日本の領海は無害通行であるならばポラリス潜水艦が入ってもいいんだ、日本の上空はB52の通過はよろしい、しかしそれが核を搭載しているかどうかということはわからない。これでは総理の言われた日本の領土、領空、領海には核を入れないと言っておりながら、領海にも領空にも核を持ち込まれる危険性が幾らでも出てきているじゃないですか。総理、どうでしょうか。
  105. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど外務大臣から答えた領海内の場合、これは核の持ち込み、こういうものではないというのが私どもの考え方です。もしも核の持ち込みがある場合は、これは明らかに事前協議対象になる、で、日本の意向をはっきりさす、こういうことであります。  次は、いまのB52、この場合、これはいまたいへんむずかしい問題になっておると思います。これは、先ほども条約局長が答えているように、万一核を搭載していたとすれば、そうして事前協議がなければ、これは重大なる条約違反だということ、私もそういうことになるのではないかと思います。今日B52が核を搭載して日本の上空を航空したということは、はっきり私どもはつかまえておりません。このことは申し上げます。また、B52は日本の国に一機あるいは数機で飛来したことはあるようです。その場合はいずれも核を持っておりません。はっきり申し上げます。
  106. 伏木和雄

    伏木委員 結局B52通過の場合はわからないということなんです。これはその可能性もあると考えられるということ、それで私ども心配するわけです。結局こうしてまいりますと、事前協議というものが非常にあいまいになってきていると、私ははっきりと申し上げたいと思います。  時間がありませんので、次に進めたいと思います。問題を変えまして、防衛庁長官にお伺いしたいのです。今日の日本の平和と安全のために、米国との安保条約を締結していると政府が考えておられますけれども、もしも安保条約にない武装集団が日本の領海、領空、領土に入った場合は、どのように処置をされるのですか、防衛庁長官
  107. 増田甲子七

    増田国務大臣 安保条約第五条に規定してあるわけでございまして、あらゆる侵略に対しまして対処するわけでございます。
  108. 伏木和雄

    伏木委員 あらゆる侵略に対処するとは、どういうことですか。
  109. 増田甲子七

    増田国務大臣 対処のしかたは、日米共同して対処するわけでございまして、日本自衛隊は、国防の基本方針に従って対処いたします。
  110. 伏木和雄

    伏木委員 それではお伺いしますが、これはアメリカの沿岸警備隊です。すなわちコーストガードでありますが、現在日本の北海道十勝、あるいは府中、あるいは横浜、神奈川県の瀬谷、こうしたところに駐留しております。しかし、安保条約の第六条には、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」このように六条にはうたわれておりますが、米国の沿岸警備隊は、現在来ておりますが、この六条以外のものである、われわれはこう理解します。防衛庁長官はどう理解します。
  111. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 沿岸警備隊は、これを設置いたしました一九一五年の法律及びその後改正になりました一九四九年の法律におきまして、沿岸警備隊は、常時米国軍の一部である、こういう規定がございます。また一九五六年の合衆国軍隊という法律には、合衆国軍隊とは、陸軍、海軍、空軍、海兵隊及び沿岸警備隊、こういう規定がございまして、その法律では、いまの陸軍、海軍、空軍、海兵隊及びコーストガードは、それぞれ英語では大文字で書いてございます。安保条約第六条には、合衆国の陸海空三軍、日本語ではそうでございますが、その字は大文字でございませんので、たとえば陸軍につきましては、英語を使って恐縮でございますが、アーミーとは書かないでランドフォーセズと書いてございまして、そういう点からいたしましても、安保条約六条における、日本語で申します陸海空三軍は、これは合衆国軍隊の総称というふうに解しております。したがいまして、安保条約第六条のアメリカ軍隊の中には、アメリカの法律にあります五つの軍隊、それぞれを全部含めて条約上はおるわけでございます。現在日本におります沿岸警備隊も、これは沿岸警備隊としまして、軍の一部としての沿岸警備隊として日本に配備されておるわけでございます。
  112. 伏木和雄

    伏木委員 局長は何か誤解しているんじゃないかと思いますが、この問題につきましては、予算委員会の一般質問あるいは分科会、それでわが党の伊藤議員がこの問題を過去二回にわたってやってまいりました。政府答弁では納得できないということで。沿岸警備隊が今日わが国に駐留できる、海軍の一部であるという証拠を明らかにせよ、こういう質問に対して、外務省から文書をもって報告がきております。これによりますと、これは一九六六年アメリカの法律によりまして、沿岸警備隊は運輸省に所属されることに決定されております。ただし戦時の場合または大統領から特別の命令があった場合、これは海軍長官の指揮下に入る、このように六六年のアメリカの法律にうたわれております。沿岸警備隊がわが国に来られるということは、戦時の場合と大統領の命令があった場合、この二つに限定されておるわけです。いまは戦時でしょうか。
  113. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 ただいま申し上げましたように、日本にあります沿岸警備隊は、海軍の一部として参っておるのではなくて、沿岸警備隊として参っておるわけでございます。沿岩警備隊の職務の中には、米国軍隊の海空の交通のための補助並びに通信施設の運営、こういう規定がございまして、それらの規定に従って合衆国軍隊の一部として日本に配備されておるわけでございます。
  114. 伏木和雄

    伏木委員 おかしいじゃないですか、それは。先ほど安保条約の六条に基づきますと、陸軍、空軍、海軍、こううたわれております。いま局長答弁によりますと、海軍ではない、陸軍でもない、空軍でもない。この沿岸警備隊は、装備をしているんですよ。機関銃も持っているんですよ。こういうものが、安保条約六条にない武装集団が、わが国に来ているということ、外務大臣はっきりしてください。
  115. 三木武夫

    三木国務大臣 いま局長答弁いたしましたように、日本政府の解釈は、陸海空というのは、アメリカ軍隊を総称して陸海空といっておる。したがって、海兵隊あるいはまた沿岸警備隊なども、そのアメリカ軍隊在日米軍の司令官の指揮のもとにいまあるわけですから、アメリカ軍隊の一部である。陸海空と分けていう中には、アメリカ軍隊を全部総称したというふうに解釈をいたすものでございます。
  116. 伏木和雄

    伏木委員 外務大臣、それはこっちがかってに解釈しているんで、アメリカでは軍隊ではないといっている。海軍ではないといっているのですよ。運輸省の所属だというのです。運輸大臣、何か運輸省に連絡がきているのですか、沿岸警備隊について。
  117. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 コーストガードは、アメリカ国内法規においては、アメリカの軍の一部であると思っております。日本にもおることは事実でありまして、ロラン局の管理等をやっております。しかし、運輸省は外交関係の官庁ではございませんので、われわれのほうへ直接そういう連絡があることはございません。
  118. 伏木和雄

    伏木委員 沿岸警備隊が軍隊の一部だということが、アメリカできまっておるかということなんです。それはないじゃないですか。一九六六年十一月の十五日、八十九議会、そこで明らかにされているのは、「コーストガードは本法律により運輸省に移された」とあるじゃないですか。しかも、このコーストガードは、「それに関連する機能、権限及び義務とともに、戦時においては、または大統領が命ずるときには海軍長官の命に服し」と、こうある。戦時もしくは大統領の命令があったとき、このようにアメリカでは法律ではっきりとしているのです。沿岸警備隊が軍に所属しているという根拠を出してください。
  119. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 ただいまの一九六六年の法律は、沿岸警備隊を米国の国内法の問題として財務省から運輸省に移管したときの改正法でございますが、それと並行しまして、先ほど申し上げました一九四九年の沿岸警備隊の基本法も存在しております。それには、軍隊の一部だ、こういうことに書いてございます。なお、一九六六年の法律には、どういう場合に沿岸警備隊が海軍のもとに置かれるかという規定がございますが、現在日本におります沿岸警備隊は、海軍長官の指揮下でなくて、沿岸警備隊として来ております。日本におります限り、在日米軍司令官の指揮に服するものでございます。
  120. 伏木和雄

    伏木委員 おかしいじゃないですか。安保条約に基づいては、海軍、空軍、陸軍と、こうあるわけです。海軍ではない。日本へ来たから海軍の一部に入る。じゃ、なぜ日本へ来たのだ。
  121. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 海軍の指揮下には入っておらないわけでございますが、日本におります限り、軍隊の一部として在日米軍司令官の麾下にあるわけでございます。先ほどから申しますように、アメリカ国内法によりまして、軍隊の中には五部門がある、一九五六年の法律によりまして五部門があるということになっております。また、安保条約六条に関しましては、先ほど申し上げましたように、字も大文字を使わないで、三軍と書きまして、これはアメリカ軍隊の総称である、こういう解釈になっております。
  122. 井出一太郎

    井出委員長 伏木君、持ち時間はあと四、五分でございます。お含みの上願います。
  123. 伏木和雄

    伏木委員 全く答弁になっていない。私は、どうした法的根拠に基づいて来ておるのか、どういう法律に基づいて来ておるのかと言えば、一九一五年とか、古いものを持ってきて……。私が言っておるのは一九六六年です。これが一番新しいのです。これでは「戦時かもしくは大統領の命令があったとき」と、こういっておるのです。ですから、沿岸警備隊がわが国に来ている法的根拠は何かと聞いておるのです。はっきりしてください。
  124. 三木武夫

    三木国務大臣 こういうことでございます、アメリカの沿岸警備隊がアメリカ軍隊の一部である、アメリカ軍隊は五つの中に沿岸警備隊も入っておる。これは六六年においても変わってはいない。したがって、それが軍隊の一部である。安保条約にいう陸海空というものは、アメリカ軍隊を総称したことばである。したがって沿岸警備隊が日本におることに対しては、安保条約上の規定に抵触するものではないということであります。
  125. 伏木和雄

    伏木委員 もう一回言いますよ。一九六六年十一月十五日には「コーストガードは、本法律により運輸省に移された」とある。移されたわけです。したがって、コーストガードが、機能、権限、こういうものを行使する場合は、戦時の場合と大統領の命令のあったときだけ、この二つしか軍に所属することはできないと、はっきりしているじゃないですか。だから、法律的根拠を出してくれ、こう言っておるのですよ。
  126. 三木武夫

    三木国務大臣 所管が、もとは財務省、これから運輸省に移ったのですね。所管が変わったということだけであって、軍隊の一部であるというこの考え方には変化はない。しかも、日本におる在日米軍の陸海空というのは、軍隊を総称したことばである、こういう点で安保条約の規定——アメリカにおいても軍隊の一部であるということは、所管省が違っても変更はしていない、こういう上に立って考えられるのでございます。
  127. 伏木和雄

    伏木委員 そういう法律はありますか。外務大臣、ここではコーストガードは「それに関連する機能、権限」と、こうありますよ。「機能、権限は、すべて戦時か大統領の命令」と、こういうことになっておるわけです。これは、はっきり安保条約違反ですよ。安保条約違反じゃないですか。
  128. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 沿岸警備隊の機能は、平時におきます機能も一九四九年の法律に書いてございまして、その中には「海空の運航の補助並びに通信施設の運営」ということが書いてございます。それで、いかなる場合にしからば海軍に移管されるかというのは、戦時の場合あるいは大統領から命令があった場合。しかしながら、現在日本におります沿岸警備隊は、海軍のほうに移されているわけではなくて、沿岸警備隊として来ておるわけでございます。安保条約六条に基づいて日本におります軍隊の一部でございますから、在日米軍司令官の下に入るのは当然でございます。
  129. 伏木和雄

    伏木委員 私は、一九一五年の法律も持っているのですよ。これが六六年に変わっているのです。この新しい法律では、機能も権限も海軍にはないことになっておる。   〔「変わっていないという証拠を示しなさい。」と呼び、その他発言する者多し〕
  130. 井出一太郎

    井出委員長 静粛に願います。
  131. 伏木和雄

    伏木委員 だから、法的根拠を出してもらわなければ困る。そうでなければ、進みません。
  132. 増田甲子七

    増田国務大臣 お答え申し上げます。  アメリカ軍隊は、一九五六年の法律によって五つのものから成り立っておる。その一つにコーストガードがある。そのコーストガードは、従来は財務省の所管の軍隊でございます。大蔵省所管の軍隊でございまするが、一九六六年、すなわち事あるときには大統領令その他によりまして海軍長官の指揮を受ける、こういうことになっておりまするが、いずれにしても、五つの軍隊一つであることは明瞭でございまして、日本安保条約に陸海空軍と書いてございまするが、疑義があるときには両方の文章を読むわけでございまして、両方の文章を読みますというと、陸上それから航空、それから海のフォーセズと書いてあります。そういうわけで、五つの軍隊から成り立っておることは明瞭でございます。したがって、日本の駐日軍司令官の指揮下にある軍隊がコーストガードでございます。
  133. 伏木和雄

    伏木委員 そういうことはわかっている。それでは議論が進められないじゃないですか。どういう根拠で来ているかということを私は聞いているのです。はっきりと、コーストガードがわが国へ海軍の一部として来ているという法的根拠を出してください。   〔発言する者あり〕
  134. 井出一太郎

    井出委員長 静粛に願います。
  135. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 沿岸警備隊の基本法は、一九四九年の法律は、現在生きておる法律でございます。  それから、わが国におります沿岸警備隊は、これは海軍の一部として来ておるのではなくて、沿岸警備隊として来ておるのでございます。この沿岸警備隊は、通信施設の維持管理のために前から駐留しておりまして、その後御指摘の法律のできたあともその地位は変わっておらないわけでございます。
  136. 伏木和雄

    伏木委員 私たちは、この法律に基づいて命令系統ははっきりしておるわけです。「戦時もしくは大統領の命令、」こうあるわけです。ですから、だれの命令で来ているのか。だれの命令で、わが国安保条約に定めた以外の装備部隊が来ているのか、これをはっきりしてください。   〔発言する者あり〕
  137. 井出一太郎

    井出委員長 静粛に願います。
  138. 三木武夫

    三木国務大臣 もとをただせば大統領だと思います。しかし、運輸省からの命令で一もとはやはり大統領でしょう。それから、運輸省から日本へ来て、在日米軍の指揮下にある、こういうことでございます。
  139. 伏木和雄

    伏木委員 確認しておきますが、外務大臣、大統領ですか。そんなあいまいじゃ困る。
  140. 三木武夫

    三木国務大臣 アメリカの場合は、やはり一切シビリアンコントロールですから、アメリカのもとをただせば、根源的には大統領だと思います。
  141. 伏木和雄

    伏木委員 答弁じゃない、それでは。外務大臣、大統領だろうなんていうのでは、答弁にはならないですよ。   〔発言する者あり〕
  142. 井出一太郎

    井出委員長 静粛に願います。
  143. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 沿岸警備隊が日本におります命令を出したのは、究極的にはむろん大統領でございますが、アメリカ国内法におきましては、運輸省の所管でございますから、おそらく運輸長官から出ておるかもしれませんが、その辺はアメリカ国内の手続の問題でございます。いずれにいたしましても現在、戦時ではございませんし、大統領から命令も出ておらないので、日本におります沿岸警備隊は、海軍の管下ということではございません。日本におります以上は軍隊の一部としておりますので、在日米軍司令官の麾下にございます。
  144. 伏木和雄

    伏木委員 それでは全然外務大臣と言っておることが違う。これじゃ承服できませんよ。   〔発言する者、離席する者あり〕
  145. 井出一太郎

    井出委員長 着席願います。  この際、外務大臣より発言を求められております。これを許します。三木外務大臣
  146. 三木武夫

    三木国務大臣 お答えをいたします。  沿岸警備隊は、もともと法律により軍隊の一部と認められており、国防省の要請を満たすため日本に配備されるものであって、究極的には大統領の指示により派遣されるものである。一九六六年の法律にいう大統領命令は、沿岸警備隊を海軍省の指揮下に移す場合の命令であって、これは日本に派遣する命令とは別個の問題である。お答えといたします。
  147. 井出一太郎

    井出委員長 伏木君、これが統一見解でございますが、もしまだこれに御不満のようならば、他の委員会において御質疑を願うことにし、予算委員会はこれで進行させていただきます。   〔伏木委員「一言だけ言わしてください」と呼ぶ〕
  148. 井出一太郎

    井出委員長 それじゃ一問だけ。伏木君。
  149. 伏木和雄

    伏木委員 私がこの問題を明らかにしていただきたいのは、小笠原の返還計画に大きな問題があるわけです。現在、小笠原に沿岸警備隊は駐留しております。これがもしこのままになりますと、小笠原返還では無条件でこれが入ってくる、こういう可能性もあるわけです。したがって、この問題を明らかにしていただきたい、こういう立場から質問を続けておるのでありますが、ただいまの外務大臣の説明によりますと、大統領の命令によって海軍に所属する。それは六六年の法律によってきまっている。私が先ほどから言っておることは、事実命令が出ているのかどうかということ、これを先ほどから伺っているわけです。ですから、そこのところをはっきりしてもらわないことには——大統領からの命令が出ているのか、こういう点を伺っているわけですから、そこをはっきりしてください。
  150. 三木武夫

    三木国務大臣 御質問にお答えいたします。  大統領の命令は出ていない。沿岸警備隊として来ておるということでございます。
  151. 伏木和雄

    伏木委員 この答弁では私納得できません。したがって、安保条約にない武装部隊、私はこう理解するわけです。大統領の命令が明らかにされていない以上、それでは戦時か、こういう問題になってまいります。戦時でないということは明らかにされております。とすれば、安保条約にない武装部隊が、アメリカの沿岸とわが国の沿岸を混同したかのような処置がとられておる。これは全く納得できない。したがって、大統領の命令が明らかになるか、あるいは安保条約違反として撤去を求めるか、これしか私はないと思う。総理から答弁を承っておきたいと思う。
  152. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど外務大臣がお答えしたとおりでございますが、いま伏木君が言っておられるように、小笠原返還に際して、これがたいへん心配なんだ、こういうお話でございます。ただいままだ小笠原返還の問題については日米間で交渉中でございますから、御意見のほども十分頭に入れて外務大臣が交渉いたします。
  153. 伏木和雄

    伏木委員 この問題につきましては、あと理事会で十分協議をしていただきたいと思います。  以上で、質問を終わります。(拍手)
  154. 井出一太郎

    井出委員長 さように取り計らいます。  これにて伏木君の質問は終了いたしました。  この際、昨日の河野密君の質疑に関連して、山本幸一君より発言を求められております。理事会協議に基づきこれを許しますが、それに先立って三木外務大臣より発言を求められております。これを許します。三木外務大臣
  155. 三木武夫

    三木国務大臣 山本君の御質問に関連して、政府の見解を述べたいと思います。(山本(幸)委員質問してない」と呼ぶ)山本君ではございません。河野君の質問に答える意味において、政府の見解を申し述べます。  日米安保体制は、米国の核抑止力を含め、戦争抑止力としてわが国の安全に寄与している。この核抑止力は、わが国への核持ち込みを必要とせず、両者は別個の問題である。一方、このような安保体制のもとにおいて、わが国は核兵器の製造、保有——製造せず、保有せず、また持ち込みを認めないという政府の核兵器三原則が成り立つものである。したがって、外務省の見解と総理発言は矛盾するものではない、これは政府の見解でございます。
  156. 山本幸一

    山本(幸)委員 なかなか要領よく先手を打たれたわけですが、私は総理に二月六日の予算委員会の冒頭に御質問して、またここで質問をしなければならぬということは、非常に残念です。これはいわば政府答弁あるいは態度、そういうものはきわめてあいまいであり、何となく隠しておられる、そういうところから、結局われわれは再び関連質問に立たなければならぬ、こういうことになったわけです。そこでひとつ、きわめて限られた時間ですから、簡潔に、私もそのものずばりを質問いたします。ですから、答弁にあまり時間をかけぬようにお願いしたいと思います。  いま三木外務大臣から、昨日の河野副委員長質問に対して、統一見解というのか、外務大臣の見解が発表されたわけですが、そこで私は、まだ疑点があると思います。私はもうたびたび——非核三原則は、われわれにとって最大の重要課題だと思っております。したがって、これをぜひ国会の決議にして政府発言を権威づけたい。またこれが国民の願望でもある。政府は時によって交代いたしますが、国会は永久不変ですから、したがって、政府の言明を国会が権威づけることは当然のことですから、そういうことをたびたび申し上げたのですけれども佐藤総理は突如として核四政策なるあやしげなものを持ち出して、その中にいわばアメリカの核抑止力に依存する、これが前提でなければ同意できぬとおっしゃる。さらにまた、共産党の松本君の質問では、安保条約を拘束したり、アメリカの核抑止力を拘束することは許されません、こういう御答弁ですね。この答弁は、総理はいまでも変わっておりませんね。
  157. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  いままでの答弁は、私、変える考えございません。
  158. 山本幸一

    山本(幸)委員 そうすると、三木さん、いま、いままでの答弁は変えることは絶対ないと総理答弁なすった。あなたも同意ですか、その意見に。ちょっとここへ出てきて答えてください。
  159. 三木武夫

    三木国務大臣 総理が自分の答弁を変える必要はないと言っているのですから、これは同意も何も、それはそのとおりだと思います。
  160. 山本幸一

    山本(幸)委員 三木さん、内閣は一体ですからね。一体の原則があるのですよ。そういうあいまいな態度じゃなしに、総理答弁佐藤内閣の絶対のものですね。したがって、同意するとかせぬじゃなしに、総理答弁は正しいのですね。正しいと理解していいんですね。そんなところでしゃべらぬで、前でしゃべりなさい。
  161. 三木武夫

    三木国務大臣 そのとおりでございます。
  162. 山本幸一

    山本(幸)委員 そうすると、いま三木外務大臣がお読みになった見解、これは昨日もやや同じようなことをおっしゃってみえるわけですね。言うならば、簡単にいえば、核抑止力とそれから核持ち込みとは別個の問題であって、全く関係がない、こういうことですね。縮めて言えばそういうことです。核抑止力と核持ち込みとは別個の問題で関係がないとおっしゃるなら、それならば総理、あなたのおっしゃる非核三原則国会議決して差しつかえありませんね、関係ないのですから。
  163. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど外務大臣の統一見解は、これはもうはっきりしております。私は、しばしば申し上げますように、安保体制のもとにおける核兵器三原則だ、かように説明しておりますから、これは誤解のないようにお願いします。
  164. 山本幸一

    山本(幸)委員 私はこの間の質問で、日米安保条約の賛否は別問題だ。社会党は依然として反対していますから、そのことは別問題だ。現実にあることはわれわれとしても否定するわけにいかぬ、こう言っているんですから、安保条約下においても非核三原則はできるんじゃありませんか。国会議決をして何がいけないんです。そこの理由を明らかにしてもらいたいと思うんですね。
  165. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そこで、この前山本君の質疑に答えて、国会で決議なされば、私はそれに従うにやぶさかではございませんとはっきり申し上げております。
  166. 山本幸一

    山本(幸)委員 それでは佐藤さんに——先般の答弁ときょうは珍しく同じ答弁をなすったわけですから、態度はきわめて明確です。そうすると、国会の議決は尊重する。先般の御答弁では、総理、総裁として、民主的な取りまとめの努力をしたい、こういうことも含んでおるわけです。総裁として、この際自民党を国会議決ができるように御努力いただけますか。
  167. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 自民党の問題は自民党の問題として、私にまかしておいてください。
  168. 山本幸一

    山本(幸)委員 問題はそこなんですよ、総理。自民党の問題は自民党の問題として私にまかせてくれとおっしゃるが、私どもはいま申し上げたように、重要な政治課題ですから、せめてもやはり非核三原則国会議決をして、国民の不安をそこでブレーキをかける、このことが必要だと思うのですよ。だから、野党四党は、それぞれ、多少内容が違っても、決議案を手続しているわけですよ。だから、私どもは、あなたがそれは賛成なら、その決議案を国会で議決されるように取りまとめてもらいたい、その意思があるかどうかということを聞いているんで、自民党のことはおまえさんらから介入される必要はないんで、私にまかしてもらいたいというのは、木で鼻をくくったようなあいさつですよ。
  169. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお話は、私はこの予算委員会の問題で申すよりも、他の場所のほうが適当なことじゃないか、かように思います。私、予算委員会でこの話を対話的に話をされる、そして私の意見を率直に聞かれるなら、私は安全保障体制は絶対に必要だ、そのもとにおいて核兵器三原則というものが初めて承認できているのだ、このことをはっきり申し上げますから、これで皆さん方もみんな賛成だ、そのもとにおいて進むんだ、かようにおっしゃるなら、私は何をか申しません。
  170. 山本幸一

    山本(幸)委員 安保のもとにとはどういう意味なんですか、そのもとにというのは。
  171. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日米安全保障体制のもとでということです。これは私がはっきり、核の時代に生きる国是といいますか、国の基本的方針を施政演説でも述べました。これではっきりもうわかっていただけると思います。私どもは核兵器というものは、これは製造もしなければ、持ち込みもしないし、また持ちもしない、こういうことをはっきり言える。同時に、核兵器はこれはないことを希望する、これは第二の問題ですね。そういう意味で核軍縮にも努力するし、これからその理想に向かっての努力を続けていく。同時に、もう一つは平和利用という問題には、核についてもっと正確な知識を持っていく、それが進んでいくこと。それから第四として、現実の問題として世の中に核兵器というものがある限りにおいて、わが国安全保障、これを確保するためには、私は日米安全保障体制、そのもとにおけるアメリカの核の抑止力にたよる、この国の安全を確保する、かように実は申しておるのです。これはもう一貫した私の一つの考え方です。でございますから、これは私の党内におきましても、いろいろな意見がございます。また皆さん方のお話も、何かまとめろということでひとつやってくれという。私はこういうことで国民的な意向が、意思がはっきりすれば、こんなけっこうなことはないと思うのです。私はそういう意味で民主的に努力してまいります。私がいまのような考え方だからといって、いわゆる私の力で、権力的に押しつけるようなことはいたしません。それこそ民主的に私どもの党内がちゃんと結論を出すということである、かように私考えておりますので、この点はひとつ私のほうにまかしていただきたい、かように申すのです。そうしてただいまの決議の問題になると、これはもう山本君のただいまのお話にもありましたように、国会は最高の権威であります。政府だけの方針というようなものじゃない、国民を永久に拘束するものだ、これであると私思いますから、そういう事柄については、これはもう国会におきまして十分慎重にお考えになるのが当然、かように思います。
  172. 山本幸一

    山本(幸)委員 総理は核安保体制のもとにということばを使っていらっしゃる。私はその中身がわからぬですよ。もっと率直にいうならば、野党諸君日米安保体制を承認しなさい、そういうことですか、承認すれば同意する。現実にあることは、われわれも否定しておらぬ、政策的にはわれわれは反対なんですけれども、それを無理やり、野党が承認しなければ決議案には同意できぬ、こういうことなんですか。そういうことならちょっとおかしいですよ。
  173. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、野党の連中の考え方を縛る、これはございません。(「連中か」と呼ぶ者あり)あるいはことばが不適当なら、それは適当に速記を直していただきたいと思います。私はそういう考えではございませんよ。その野党諸君の考え方を縛るつもりはございませんが、私がただいま非核三原則を出しておるこのことは、いわゆる核兵器の製造もしなければ、持たない、持ち込みをしないという非核三原則は、日米安全保障条約というものがあるから、その説を主張しておるのだ、こういうことを私ははっきり申しておる。このことを御承認くださるならば、これは進み得ることだろう、私はかように思います。
  174. 山本幸一

    山本(幸)委員 ちょっとくどいようですが、あなたの野党の連中というようなことばみたいなものは、私どもも内閣の連中と言いますから、それほど気にしません。問題は、ともかく持たない、つくらない、持ち込まない、これがもういまや全国民の願望なんですよ。そこで、各党間にはそうした決議案を国会でつくり上げるためには、それぞれの意見がありましょう。意見があっても、最大公約数を選んで国民の願望にこたえなければならぬ。したがって、あなたのおっしゃる三つの問題をそのままそっくり決議案にすることはどうですか。その決議案について、自民党なり政府なりがそれなりの立場でそれぞれを解釈されることは御自由です。御自由ですが、少なくとも決議案には、あなたのおっしゃった三つの問題をぜひ成功させてはどうか、そのためにあなたに取りまとめてもらいたい、こう私は申し上げておる。あなたの自民党総裁とし、あるいは総理としての立場も、私どもは知っていますよ。主張も知っていますよ。そういうことを承知の上で、社会党は社会党なりの主張があり、公明党、民社党、共産党はそれぞれの主張があるけれども、非核三原則そのものについて一致できるなら、国会で議決したっていいのじゃないですか。そこを断わられるから、私どもは非常におかしい、こう言わなければならぬわけですね。ですから、総理、時間がないからもう一ぺん聞きますが、あなた、核製造は絶対しませんね、どんなことがあっても。核兵器の製造——平和利用じゃないですよ。核兵器の製造は絶対しませんね。
  175. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げますように、私ども日米安保条約のもとにこの国の安全を確保する、これが第一でございますね。そうしてその安全を確保する立場に立って、国民の悲願、念願を達成する。だから、戦争もしない。また戦争はしないが、自衛隊は持つ。しかし、これはもう自衛の範囲というものは限られる。同時に、兵器も核兵器は持たない。これはもうはっきりしている。そのことを私申し上げるので、皆さん方のほうから、この核兵器三原則だけは賛成だと、それだけを抽出して、政府並びに国民を未来永劫にわたって縛ろうという、そういうことは少し無理じゃないだろうかと私は考えます。したがいまして、この三原則というものは、これはとにかく政府は絶対につくらないと言っているし、また政府は持たないと言っているし、また政府は持ち込みを許さないと言っている。これはおそらく社会党の内閣になりましても同じでしょう。私はそういうふうに思う。だから私は、政府がそういうように言っていること自身で国民は安心していいのじゃないのか、かように考えるのです。そうしてこれを同時に国会の決議で国民を縛っていく、そういうことではたして安全を確保できるか。これはいまの核兵器というものは、これから先科学技術の進歩によってどんなに変わるかわかりません。たいへん軽いものになるかもわからぬですね。そういうことを考えますと、私は、いまから国民を拘束していくということを最高権威がやるというのは、いかがかと思う。だけれども、こういう事柄は、私はこの予算委員会において討論する、質疑をかわす、そういうのにはふさわしくない問題だ、むしろいま国会の決議をどうしようかという問題だから、これは議運の場におきまして十分協議される、それがしかるべきことじゃないか。これは社会党の書記長である山本君に、私からも申し上げたいことなんです。私はそういうことを考える、そういう意味です。
  176. 山本幸一

    山本(幸)委員 総理総理の演説はもうさんざん聞いているのですから、それは重ねておっしゃらぬでもわかっています。わかっていますから、私はずばっと聞くのです。核の製造は絶対になさらぬですね、どんなことがあってもなさらぬですね、これを聞いておる。その一言でいいのです。
  177. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 佐藤内閣はさようなことはいたしません。
  178. 山本幸一

    山本(幸)委員 そこのところがちょっとあいまいですが、それじゃ核の保有、核を持つことも絶対にいたしませんね。
  179. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 佐藤内閣は核兵器を持たない。
  180. 山本幸一

    山本(幸)委員 それじゃ、この二つがもし議決せられるなら賛成ですか。国会の議決ですよ。
  181. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 佐藤内閣のやることはもう一つあります。持ち込みを許さない、この三つをやる。
  182. 山本幸一

    山本(幸)委員 それは次に尋ねます。次に尋ねますが、二つを国会議決することは賛成ですかと聞くのですよ。
  183. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もう先ほどから申しましたから、それは国会の場でひとつやってください。
  184. 山本幸一

    山本(幸)委員 あなたは総理と総裁ですからね。だから私は、この問題は総理、総裁としてお聞きしているのですよ。自民党の最高責任者です。したがって、あなたが決意せられるならば、自民党の諸君を説得していただけると私は信じておる。その意味において聞いている(「タカ派がおる」と呼ぶ者あり)タカ派がおろうがハト派がおろうが、総裁が決意をすれば、ともかくその説得に努力をしてもらえる、こう思っているから聞いておるのだが、二つの議決なら、これはもう間違いありませんね。
  185. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、先ほど演説をしたと言われてだいぶ籍口令をしかれたが、私先ほど詳しく申しましたから、私の考え方をもう重ねて申し上げません。
  186. 山本幸一

    山本(幸)委員 結局私が見るところでは、やはり国会議決を避けよう、依然として国会議決を避ける。このことは、やはり非核三原則国民に対する一時的なごまかしの言動であって、本気になってそういう考え方をお持ちになっていない。そういうことを私は疑わざるを得ないのです。  そこでもう一点だけ聞きます。核抑止力に依存するとおっしゃる。それが核抑止力の限界を越えた場合に核兵器が使われることになる場合があるが、その点はいかがですか。
  187. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの質問は、どういうことか私よくわかりません。いま私どもが核抑止力にたよっているのは、アメリカの強力なる核兵器、これは戦争を起こさないといいますか、戦争をしかけられることを防いでおる、かように私思っております。こういうものに対してもし戦争をしかけたといろ場合に、核兵器による攻撃があったという場合、アメリカは必ず核の報復的な攻撃をするだろう、かように思います。それをいま超過的なものと言われるのか。私はアメリカ自身が先に核をもって攻撃するということは絶対にない、かように考えておりますし、また日本の場合もそういうことはない。また皆さん方も、どの国も先には攻撃しないと言われる。そこに私どもの信頼する核抑止力というものがあるのだ。戦争がこれなら起こらない、そういうもとでございますから、山本君がいま、これを何か越えた場合という、そういうときはどうだという……(山本(幸)委員「限界を越えたら」と呼ぶ)ちょっと私、その限界を越えたという場合がわからないのです。
  188. 山本幸一

    山本(幸)委員 あなたは一例をおっしゃったですよ。限界を越えた場合の解釈は、どこかの国が使った場合には、アメリカがこれを報復的に使うことがあり得る、こういう一例をおっしゃった。そうでしょう。その点は間違いありませんね。そうすると、その核兵器の使用が日本の領海や領空、領域で使用される場合もあり得るわけですね。
  189. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま私は、日本が持たない。日本に持ち込みを許さない、そういうところで、その御心配なさらなくていいんじゃないか。いまアメリカの持っている核抑止力、これはいわれておるとおり、いわゆる3B、そういう形でございますから、日本の本土そのものが必要ではない、私はかように思っております。
  190. 山本幸一

    山本(幸)委員 えらいくどいようですけれども、私にはちょっと理解できないのですよ。あなたはさっき——私は逆の考え方を持っていますよ。私はあなたとは違う見解を持っている。というのは、中国だって先に使うことは断じてないと言っている。あとには、ベトナム戦争の経過から見たって、一番危険なのはアメリカなんですから。私はそういう見解を持っている。しかし、そういう見解の相違は私は別にします。あなたのおっしゃったことを私はそのまま申し上げているわけだ。抑止力の限界を越えた場合、核の使用がありますか、こう尋ねると、あなたは、その限界はわからぬけれども、たとえていうならば、どこかが核兵器を使用したらアメリカが報復をする場合があります。したがって使うことがあります。あなたはこういう御答弁をなすったわけです。そうならば、その使用が日本の領空、領海、領域で行なわれる場合があるが、どうか。ないというのはどういう理由なんですか、ないというのは。
  191. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま仮定のお話ですが、先ほど三木外務大臣からお答えしたいわゆる非核三原則と、いま核抑止力にたよるということと、ここの間に矛盾がないという、これは冒頭に、河野副委員長に対する補足答弁でございますが、政府がしたばかりであります。これは山本書記長も十分御承知のことだろうと思います。したがって、私は、そういうことはないということは、ただいまはっきり申し上げておきます。
  192. 山本幸一

    山本(幸)委員 ないあるでやりましても平行線になりましょう。時間がたつだけで、これ以上私はやろうとは思いませんが、もう一ぺん最終的なあなたの態度を伺っておきます。その態度いかんによっては、これから私どもはその決意で国会に当たらなければなりません。私に言わせれば、非常に答弁があいまいで、そういう危険な方針のもとで国会をスムーズに運営させることはできぬ場合がありますから、これははっきり申し上げておきますが、だから国会をスムーズに運営しようとすれば、もう少し明快な回答をいただきたい。  最終的に申し上げます。あなたは、国会で議決されることについては、されれば尊重いたします、それから民主的に党内を取りまとめる努力もいたします、そういう御答弁ですが、この非核三原則国会議決にするために努力せられる意思があるかないか。これを最終的に申し上げます。先ほどのいろいろな説明はもうよろしゅうございます。安保の問題とか、そういうことはよろしゅうございます、私も、それについてはそれぞれ説明申し上げておるのですから。非核三原則国会議決にして、その解釈を自民党や政府がどうとろうと、そのことを私は言っているのじゃありませんから、各政党がどう理解しようと、私はそのことを言っておるのじゃありません。要は、その現象として国民の前に非核三原則国会議決になりました、これで政府の言うことを裏づけしました、これで一切の危険をチェックできます、こういって国民が安心することが必要なんですから、したがってあなたが独自の解釈をお持ちになることは別として、非核三原則そのものを国会の議決になさるために努力を願えるかどうか。願えなければ、私どもはその決意でこれから国会に当たりますよ。
  193. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ことばはたいへん穏やかなようですが、たいへんな何か……(山本(幸)委員「それはそうです。重要なことだ」と呼ぶ)自民党政府に対する挑戦のおことばと、私は聞いたのです。私はそれでけっこうですよ。それは、そういう挑戦の態度でおやりになることは、それはけっこうです。また私は、非核原則についてはしばしば申し上げたとおりであります。また国会できまれば、私は何をか申しません。国会は最高の権威ですかう、これに従うことは当然であります。また、ただいま言われるように、意見をいろいろ交換しております。だから、その意見の間に間違いないだろうと思います。私が好まないからといって、私が権力的に党内を押えつけるようなことは、絶対にいたしません。だから、そういうことにおきまして十分御理解をいただいたら、またさらに議運等におきまして、この問題は十分審議されるものだ。私は、その審議につきまして、慎重にそのあり方を見守るつもりであります。どこまでも私は、平和的にこういう問題が円滑に、またスムーズに処理されることを心から望んでおります。
  194. 山本幸一

    山本(幸)委員 えらい総理は自分かってな解釈をしていらっしゃるが、私はあなたが権力的に自民党を押えつけよなんてこと一言も言っておりませんよ。総裁として自民党の皆さんを説得し、取りまとめる努力をしてくれと言っておるだけであって、権力的に押えつけよなどと、一言もそんなことばは使っておりませんよ。それをあなたがことさらにそういう誤解をして、そういう発言をしていらっしゃる。  そこで、私はもう一歩下がって話してみましょう。あなたは国会で議決をするについては、もちろん手続的には議運でこれが協議されましょう。総理、その際にあなたは反対はしませんね。自民党総裁としてそういう議決には賛成できぬ、こういう意味で反対はいたしませんね。
  195. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 山本君も一歩下がられたから、私も一歩下がって、もっと二歩も三歩も下がったところで、総裁としての立場では、私はとやかくは申しません。したがって、議運のあり方にまかせます。
  196. 山本幸一

    山本(幸)委員 それはそれでもうしようがないでしょう。平行線だ。しようがない。が、しかし、努力をするということばの片鱗がやや出ています。  そこで、私どもはこれでやめます。これでやめますが、ともあれ先般来の国会における予算審議を通じての質疑応答の中では、まだまだ私どもが納得し、理解できない問題がたくさんあります。逆にいうならば、非常に大きな疑問を持つ問題が山積しておるわけです。したがって、私たちは、あくまでも政府が誠意のある答弁でこれから終始されぬと、国会がスムーズにいかない。そういうことを私は特に総理に対して御忠告申し上げる。たとえば資料を要求しても、資料があるという答弁がありながら提出をしない。そういう一例をとってみても、非常に私どもはその態度に納得するわけにはいかない。したがって、私たちとしては、あくまでもそういう態度で終始されると、今後国会がうまくいかない。こういうことを心配いたします。あなた方も、その意味において誠心誠意をもって国会答弁に当たっていただきたい。こういうことを申し上げて質問を終わります。(拍手)
  197. 井出一太郎

    井出委員長 これにて山本君の関連質疑は終了いたしました。  以上をもちまして昭和四十三年度総予算に対する質疑は、全部終了いたしました。  午前の会議はこの程度にとどめ、午後は二時より再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後一時十九分休憩      ————◇—————    午後二時十五分開議
  198. 井出一太郎

    井出委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昨十六日、加藤清二君外十三名より、昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算及び昭和四十三年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えすることを求めるの動議が、小平忠君外二名より、昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算及び昭和四十三年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が、また広沢直樹君外二名より、昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算及び昭和四十三年度政府関係機関予算につき撤回の与え編成替えを求めるの動議が、それぞれ提出されております。
  199. 井出一太郎

    井出委員長 これより、各動議について順次その趣旨弁明を求めます。北山愛郎君。
  200. 北山愛郎

    ○北山委員 私は、日本社会党を代表して、政府の四十三年度予算三案につき、これを撤回し、編成替えを求める動議の趣旨説明を行なうものであります。  動議の内容については、すでに議員各位に配付されておりますので、その要旨だけを説明いたします。  われわれの動議の基本的な考え方は、諸情勢のいろいろな変動によりまして予算の一部の部分的な手直しもさることながら、予算案の基本に横たわっておりますところの経済財政政策の基本方針を転換すべきである。新しい方針に基づいて組みかえをしなければならぬというのが根本の考え方であります。  すでに御承知のように、この予算の前提となる内外の経済情勢が大きく変動いたしております。数日来の金買い付け旋風、いわゆるゴールドラッシュがついに恐慌状態になって、イギリスの金融市場の閉鎖、アメリカの公定歩合の引き上げ、さらにはいま、世界の注目はワシントンで開かれておる金プール七ヵ国の緊急会議に集まっておるのであります。まさに世界資本主義の支柱であるドル・ポンドの重大な危機に向かっておるのであります。  特にわれわれが憂慮いたしますのは、わが国の円の価値維持の問題でございます。東京為替市場一ではドル買いと円売りが殺到いたしまして、すでに日本銀行はこのために三日間で五千万ドルの外貨を失っておるといわれておるのであります。西  ヨーロッパでは、ドルを売って金あるいはマルクを買うのに、その信用を失ったドルが日本では買われておる。円売り、ドル買いであるということは、すなわち、日本の円の価値というもの、円の信用がドルよりももっと低いということを示しておるのであります。(拍手)もしもこのような情勢が発展いたしますならば、流動性のない十九億ドルの外貨準備では貧血を起こすということが心配されるのでありまして、こういう点で、私どもはこの事態を心から憂慮いたしております。このような事態は、長い間われわれが政府に対して注意を喚起してまいりましたにもかかわらず、放漫な外資導入政策、ドル依存政策を続けて、日本の外貨準備の基礎を固めることを怠った歴代の自民党の政府に重大な責任があるということを私は指摘をしなければなりません。(拍手)  このように金恐慌をきっかけとして、戦後二十年、世界資本主義の安定時代は終わり、新しい変動と転換の時期が来ておるのであります。この予算がまだ成立をしておらないのに、こういう情勢を反映して、もう四十三年度の予算を大幅に繰り延べをしなければならぬというような意見すらも出ておるのであります。したがいまして、私どもは、この情勢を十分に再検討をして、新しい角度から経済財政の基本政策を再検討して、予算の再編成を要求する理由がこの点からも十分にあるのであります。  われわれの直面します第一の課題は、言うまでもなく国際収支の改善であります。この点についても、情勢は相当窮迫をいたしております。しかるに、政府の予算は、表向きは景気抑制型である。しかし事実は、インフレ景気刺激型であります。そこで当然、金融政策のほうによけいな負担がかかり、昨年の秋以来の金利の引き上げ、銀行の窓口規制、選別融資で罪のない中小企業を苦しめ、倒産をふやしておるのであります。四十一年以来ものすごくもうかった大企業の設備投資は相変わらず活発でありますが、また一方では、物価高と不況が共存して国際収支は一向に改善のきざしがございません。いたずらに犠牲と出血を多くするような、このようなマンネリ化した景気調整策は、この際再検討すべきであると思うのであります。輸出の伸長もさることながら、輸入を誘発する度合いの強い主要産業の設備投資を直接に規制するということ、七千万ドルの外国からの兵器購入を中止すること、高級ぜいたく品の輸入を押えること、六千億円に及ぶ法人会社の交際費への課税を強化して社用消費を抑制すること、このような直接かつ具体的な国際収支改善策というものをわれわれは強く要求するものであります。  第二は、防衛費を減らし、ドル依存の貿易構造を手直しして、中ソなど社会主義圏との貿易を大幅にふやし、多角的かつバランスのとれた貿易構造に直していくということであります。  防衛庁の予算は、表向きは三百五十億円だけの増加ですが、国庫債務負担行為と継続費において、実に千七百九十六億円を裏金として予算の先食いによって膨大な兵器の注文をやろうとしております。これは明らかに貴重な外貨を乱費し、国際収支を悪化させ、財政硬直化の原因をつくり、経済の軍事化と防衛庁並びに兵器産業との汚職の温床をふやすことであって、断じて認めることはできないのであります。  さらには、東からはアメリカの輸入課徴金、西からは開発途上国の特恵関税と、はさみ打ちの状態にあるときに、中国貿易を拡大するということは、国民的な至上命令であります。西ヨーロッパが中国貿易を数倍にふやし、アメリカすら中国との大使級会談を続けておるときに、吉田書簡どころか、政経分離のお題目は、この際即刻くずかごに捨てて、政府みずからが中国との外交交渉を開始することを強く要求するものであります。  政府海外経済協力はますます放漫になり、政治的色彩を帯びてまいっておることは許しがたいところであります。われわれもまた、開発途上国への協力、特にアジアの友人への援助には賛成であります。しかしながら、それには自由主義の国、中立国、社会主義圏などと差別をすることなく、まして、当該国の政府のてこ入れや、一部政商の利益になるようなことは絶対にこれは避けて、真にその国の平和的な建設、開発、住民の生活福祉の向上に役立つような、計画的な経済協力が行なわれることを要求するものであります。  第三に、いわゆる財政硬直化の問題でありますが、この解決には、政府案のように大衆負担をふやすことをやめさせて、経済成長によって大きく利益を受けた大企業や資産所得者階層の負担によって行なうことを要求するものであります。  財政の行き詰まりは、直接には物価の値上がり、赤字公債発行の失敗、放漫な財政支出、経済変動に伴う社会資本需要の増加などによるものでありますが、最大の原因は、年々一兆円以上に及ぶ大企業や金持ち階級に対する減税による歳入の硬直化であることは明らかであります。悪名の高い租税特別措置を中心とする金持ち減税を、この際大幅に整理して、酒、たばこの増税を取りやめ、所得税標準世帯百万円までの非課税その他の大衆減税を行なうべきであります。  国債の発行につきましては、これら税制改革の中から生ずる財源をもって、三年を目途として全廃することとし、さしむき、本年度は六千億円以内にとどめることが適当と思うのであります。  第四に、政府の公共料金主導型の物価値上げ政策をやめて、強力な消費者物価対策の確立を要求いたします。酒、たばこはもちろん、国鉄定期代、消費者米価の値上げも取りやめることを要求いたします。また、物価値上がりの大きな原因である地価対策として宅地課税を強化し、不労所得を吸い上げて土地投機を抑制すべきであります。  第五には、財政硬直化に名をかりた教育、社会保障、住宅、交通安全、公害などの対策の抑制に反対し、その是正を要求するものであります。高度成長から生ずる当然のゆがみ、不公平、格差、その是正のための予算を惜しんではなりません。生活保護基準、各種年金の引き上げと物価スライド制、原爆被爆者や同和対策の強化、交通安全施設の充実、水俣病、イタイイタイ病対策、交通事故被災者の自動車賠償保険の限度額の引き上げ、通勤通学大量輸送の拡充などについても十分な予算措置を必要といたします。また、教育費の父母負担の軽減、幼稚園や無認可保育所を含む保育施設への助成、僻地の振興などとともに、恵まれない、これら社会福祉施設や教育施設で働らく人々の待遇改善措置についても特別の配慮をすべきであります。さらには、都市、農村とも過密過疎問題等に苦しんでおるのであります。このための財政需要による負担が増大をしておりますので、十分な地方財政助成の措置を行なわなければなりません。  第六には、中小企業、農林漁業の対策であります。  中小企業に対しては、下請保護や零細企業に対する無担保無保証融資の拡充などを行なうべきでありますが、中でも、当面する金融窮迫を救うため、国の金融機関を中心として二千億円以上の緊急融資ワクの増大と、恵まれない中小企業労働者の福祉対策を促進すべきであります。  農業の中心課題は、食管制度の堅持であり、米その他の農産物の再生産を保障する農産物価格支持制度であります。また、土地基盤整備に対しては、全額国庫負担と経営共同化推進によって、日本農業を米と畜産と果樹の三本柱の新しい農業構造にこれを改革すべきであることを要求するものであります。  また、固定負債に悩む災害農民、漁民、あるいは開拓農民の負債整理の立法、財政措置を推進すべきであることを要求するものであります。  第七に、われわれは、政府の総合予算主義あるいは補正なし予算の名のもとに、米価のスライド制や公務員賃金の抑制の陰謀には強く反対をいたします。今日の変動する経済をそのままにして予算を固定化することは不合理でもあり、不可能をあえてしようとするものであります。もしも財政を固定化して、経済の安定を意図するということであるならば、これは犬のしっぽを持って頭の向きを変えるにひとしいナンセンスといわざるを得ません。  最後に、私は、政府に対して、憲法、財政法に明定する財政民主主義を守り、国の予算が国会を通じて正しく国民に公開されることを強く要望いたします。  この予算委員会の審議中においても、防衛庁の半自動警戒管制装置、いわゆるバッジの購入費が当初の百三十億円から二百五十三億円にふくらんだことについて、防衛庁長官自身が、契約金額がだんだんふえてもいいしかけになっているのは不愉快であると、当の責任者がひとごとのような答弁をされて、多くの人をあ然とさせたのでありますが、現行の財政法や会計法がこんなことを認めているのではありません。政府が財政法第十五条一項の、国庫債務負担行為を乱用しているところにその根本の原因があるのであります。どの品物をどれだけ買うかということを示さないで、バッジもナイキもホークも戦車も一括して、機材整備の名のもとに提案されたところに間違いがあるのであり、このような財政法違反は断じて許すことはできません。  政府が憲法、財政法を厳守し、国民の前に国の財政を公開するため最善を尽くすことを強く要求して、私の趣旨説明を終わるものであります。(拍手)
  201. 井出一太郎

    井出委員長 次に、麻生良方君。
  202. 麻生良方

    麻生委員 私は、民主社会党を代表して、昭和四十三年度予算三案について、政府案の撤回を求め、わが党の組み替え案に基づき、政府はすみやかに予算案を組み替えの上、再提出することを要求する動議を提出したいと思います。  すでに本委員会においても明らかにされましたように、わが国を取り巻く内外の情勢は、外交、経済ともにきわめて多事多難です。ベトナム戦争解決のめどはいまだにつかめず、また、それと関連して、ドル、ポンド危機はその頂点に達しつつある観があります。他方、内政に目を移しますと、国内経済は、物価上昇と相まっていまや不況寸前の状態にある。中小企業の倒産は膨大な数にのぼっています。この重大なときにあたり、一歩その対策を誤るなら、わが国の前途はまことに憂慮にたえない状態だといわなければなりません。  その意味において、私は、以下、政府予算案に関しまして二、三その重要と思われる点を指摘しながら、わが党の組み替え動議提出の理由を明らかにしたいと思います。  その第一は、一貫性を欠く政府の財政政策です。政府は、今回の予算編成にあたって、財政硬直化対策を最大の課題としたことは明らかです。ところが、政府は、つい二、三年前まで何を言っていたか。財政新時代の到来あるいは財政主導型の経済成長など、もっともらしいスローガンのもとに過大な国債発行を正当化して予算を年々膨張させてまいりました。ところが、今回は一転して、財政硬直化、宮澤構想等を喧伝して、減税ゼロという実質増税、民主的支出の圧迫などをはかろうと考えている。このように、その場の御都合主義で国家予算を私物化する政府の財政政策の無責任、一貫性の欠除は強く批判されなければなりません。  第二は、減税と物価についてであります。  政府は、国民の百万円減税に対する非常に強い願望を、今回またもや踏みにじってしまいました。課税最低限を八十三万円まで、わずか十万円諸控除を引き上げただけにとどまっている。一方、これによる減税額一千五十億円と同額の酒税、物品税、たばこ値上げを行なおうとしております。これは明らかに実質的な増税と同じことです。特に減税の恩典にも浴さない約二千万の低額所得者層にとっては、増税だけの犠牲をこうむることになることは、これもまた明らかです。  さらに酒、物品税の引き上げは、直ちに物価の値上がりにつながり、たばこ、国鉄定期、電話設備料の大幅値上げと相まって 一般消費者物価の高騰を招くことはもはや必至です。不況下の物価高を招く最大の原因は、政府の一連の公共料金値上げにあるといわざるを得ないではありませんか。  わが党が組み替えを要求する第三の理由は、民生的支出が著しく圧迫されている点にあります。  政府による財政硬直化打開策の犠牲は、住宅対策費、社会保障関係費、中小企業対策費等の民生安定的支出に強くしわ寄せが及んでおります。これらの対策費の伸びは、近年の伸びと比べて最低であるのみならず、いずれも全体の予算の伸び率をさえ下回っている。これは、佐藤内閣成立当初、総理の公約でもあった社会開発にも全くそむくものであり、また、社会的アンバランスの是正をうたった経済社会開発計画も、これも二年にしてすでに破綻し、またもや紙くずに化したと酷評せざるを得ないではございませんか。  私は政府案に対して、以上基本的な三点に立つ批判の上に、次のようなわが党の組み替え案の骨子をこの際説明させていただきたいと思う。  この組み替え案の基本方針は、国際収支の改善を最大の目標として、他の施策と相まって明年度予算を緊縮予算に編成して、景気の抑制をはかるとともに物価の安定、生活福祉の向上、中小企業、農林業の構造改善を長期的計画の一環として強力に推進するところにあります。また、総合予算主義は、現在の諸条件から見て多くの矛盾を含んでおり、かつ予算の機動的運営を阻害するため、補正予算を前提にした編成を行なっております。  以下、歳入予算からその特徴点を申し上げます。  第一は、歳入予算規模を、政府案五兆八千百八十五億円より一千八百二十億円削減して五兆六千三百五十五億円とし、はっきり抑制型といたしました。  第二は、公債発行額を、政府の六千四百億円より一千四百億円減少して五千億円にしたことで去ります。これは言うまでもなく、現在の民間消化能力を慎重に考慮した結果であります。  第三は、専売納付金を地方の自主財源として国から地方に移管したことであります。政府は、地方自主財源強化の一環として自動車取得税を新たに設けようとしているようでありますが、これは大衆の負担においてその強化をはかるものであり、わが党はこれを容認することはできないのです。専売納付金を地方に移管することこそ正しい政策であると考えます。この観点から、初年度として八百八十億円の専売納付金を地方に移管しております。  第四は、税制改正面において、標準五人世帯の免税点を百万円にまで引き上げて、いわゆる百万円減税を実現いたしていることにあります。このほか、中小企業の経営基盤を強化したり、近代化を強力に促進するために五百億円の中小企業減税を行ないました。  他方、現在国民から最も不公平、不平等なものと酷評されている大企業、富裕階級層中心の租税特別措置を大幅に整理するとともに、交際費課税の強化をはかって二千億円の増収をはかりました。したがって、酒税、物品税の引き上げ、たばこ定価の値上げを行なう必要は全くないのであります。  次に、歳出予算の特徴を申し上げたいと思います。  歳出予算の規模は、歳入予算と同じく五兆六千三百五十五億円にいたしました。しかし、その内容政府案と比較いたしますと、次のように違うのです。  まず、一般行政費四千五百億、また防衛費を昨年並みとして四百十億、それぞれ削減して、合計四千九百十億を減額いたしました。  行政機構の改革が叫ばれてからすでに久しいのですけれども、現状ではかけ声だけでその実効は遅々として進んでおりません。わが党は、臨時行政調査会の答申にのっとって公社、公団、各種審議会の整理統合、膨大な零細補助金の廃止等を断行して、四千五百億円程度の節約を実行することにいたしました。  また、防衛庁費につきましては、国を守る最小限の措置費に改変するため、明年度の新規増額分の計上を取りやめ、防衛本庁費の人員増加を中止して経費を削減したものであります。  政府案と比べまして、歳出予算の第二の特徴点は、この四千九百十億円の減額のうち、三千八十億円を社会保障制度の充実、政府施策住宅の建設戸数の増大、物価抑制対策等のために増額したことであります。そのおもなものは、国鉄への出資を三百億円見込みまして、国鉄定期の値上げを抑制することであります。また、消費者行政の徹底、野菜の計画生産、出荷体制の充実、コールドチェーンの強化対策費など、物価対策費を四百億円ふやしました。社会保障対策は、公害救済基金の設立、身障者対策の充実あるいは生活保護費の大幅引き上げ等のために、五百三十億円増額をいたしました。次に、生活環境整備対策としまして、政府施策住宅の建設を政府案より三十九万戸近くふやすことといたしました。したがって、上下水道、し尿処理場、道路等の整備を推進するため九百億円ふやしたのであります。このほか、中小企業、農林業対策の増額を約四百億円、文教対策費の増額を二百五十億、輸出振興対策費を百億、それぞれ増加をいたしました。  以上、わが党の組み替え要求動議の理由と組み替え案の骨子を説明してまいりましたが、最後に、予算案と関連して見過ごすことのできない重要な点を一つだけ指摘したいと思います。  それは、経済の安定化、計画化の問題であります。現在のドル不安、金戦争の根源は、国際経済、なかんずく国際金融の計画性、統一性の欠如からきていると考えなければなりません。もはや世界経済におきましても、その無計画性がその破綻を招こうとしているのであります。この自由放任の資本主義経済から計画性への過渡期こそ、われわれが現在歩んでいる道であり、ドル危機、金戦争はまさに過渡期の悩みの象徴だと言えるでありましょう。わが国が、流動する世界経済の中でいかにして計画性ある経済安定の方向を定め得るか、ここに予算編成にあたってのわれわれの心がまえを置かなくてはなりません。予算編成の基礎をなす予想経済成長率が毎年大幅に狂って、一体予算の安定とその目的が十分に果たされるでありましょうか。  以上、私は、政府に対しての率直な警告をも含め、わが党の組み替え動議の趣旨を説明いたしました。各位の御賛同をお願いいたしまして、提案理由の説明を終わります。(拍手)
  203. 井出一太郎

    井出委員長 次に、斎藤実君。
  204. 斎藤実

    斎藤(実)委員 私は、公明党を代表して、政府提案による昭和四十三年度一般会計予算、同特別会計予算及び政府関係機関予算案に対し、これを撤回して、公明党提出の組み替え案による予算の編成替えを求める動議について、その趣旨の説明をいたします。詳細につきましては、お手元に配付されております組み替え案のとおりでありますが、これを要約して申し述べたいと思います。  まず、予算組み替えを要求する理由について申し上げます。  昭和四十三年度の予算編成は、わが国が当面する国際経済環境のきびしさと財政硬直化の中にあって、国際収支の改善及び経済成長と国民生活の均衡をいかに安定維持させるかの課題をかかえたものでありました。しかるに、政府予算案によりますと、まず、景気の見通しの上では、十五日、世界的な金恐慌とドル不安に屈服したアメリカが、金プール協定の一時停止、ロンドンの金市場閉鎖あるいは公定歩合の引き上げ等の緊急措置をとり、国際経済の環境はきわめて深刻なものとなりました。したがって、政府の言う国際収支三億五千万ドルの赤字は、激動するドル防衛の波浪に対してあまりにも甘く、赤字は五億ドル以上を避けられない状態であると考えるものであります。  また、予算規模を見た場合は、抑制型予算を宣伝しながら、結論的には、国民総生産の伸び率をはるかに上回る景気刺激型予算となり、財政はすでに景気調整機能を失い、国際収支の改善は金融政策に依存する結果となって、そのしわ寄せは、すでに中小企業に集中されているのであります。  次に、財政硬直の打開を理由としてとられた総合予算主義は、生産者米価と消費者米価のスライド、さらに公務員給与の引き上げは、予備費内の制限を予定したものでありまして、国民不在のものというべきであります。  さらに、国債発行につきましては、すでに四十二年度において一千億円の未発行額を残しながら、なお六千四百億円を計上し、景気鎮静に逆行するとともに、その性格は財源不足を補う完全な赤字国債となって、インフレの要因となっているのであります。  また、酒、たばこ、物品税、国鉄定期代等、一連の値上げは、政府主導型の物価上昇を招くことは必至であり、所得税減税を実質的にゼロとし、なおかつ、低所得層にとっては実質的な増税にひとしい状態となることは明白であります。  このような予算編成の中で、特に目立つものは、防衛費のノーチェック計上であり、その反対に物価対策費、社会保障費、中小企業対策費等の大衆福祉関係予算は、財政硬直化の名のもとに冷遇され、さらには大企業優遇、租税特別措置の温存等とあわせ、国民生活無視の予算というべきであります。  このような国民不在の政府予算案の撤回を要求し、国民生活の安定向上を基盤としたわが国経済の発展と、大衆福祉の実現を目ざすわが党提案の予算に組み替えられんことを強く要求するものであります。  次いで、組み替え案の概要を申し上げます。  まず、歳入につきましては、本年度予算で六千四百億円の国債の発行が予定されておりますが、インフレ要因となる国債発行は、財源調達手段として極力避けなければならないのであります。政府は、財政法第四条による建設公債であることを強調しておりますが、その実態は、財源不足を補う赤字国債であるといわざるを得ないのであります。したがって、政府は、国債発行を取りやめるのが理想でありますが、現実に即し、少なくとも、その廃止の時期を明示し、順次削減の方向をとるべきであります。すなわち、国債償還期である昭和四十七年をめどとして、本年度から毎年一千億円の国債減額を実施することを主張するものであります。  税制につきましては、今回の政府案に示された所得税減税は、酒、たばこ、物品税の一部引き上げなど、間接税の増徴にその財源を求め、実質減税ゼロとしているのであります。この間接税の増徴は、現在の物価上昇に拍車をかけ、また、減税の恩恵に浴し得ない低所得階層をますます苦しめるものであります。さらに、実情は、物価上昇、累進税率に伴う課税として、実質的な増税であります。これらの点から、現行の税制が持つ過重かつ不公平の欠陥を除き、物価高と不景気から国民と中小企業を守り、均衡ある発展成長をはかるために、次のごとく税制の改正を行なうことを主張するものであります。  すなわち、所得税の課税最低限を、標準世帯で百万円まで引き上げることとし、さらに、中小企業の企業構造を近代化するため、その税負担を軽減する等の措置を講ずべきであります。その財源は、交際費課税の強化、租税特別措置の合理的改廃、高額所得者に対する課税の強化などによって十分確保できるのであります。  次に、歳出の組み替えに関し、増額分について申し上げます。  第一に、国鉄運賃の値上げは、通勤、通学の大衆の生活を圧迫し、物価上昇の大きな要因となることは必至であります。したがって、定期運賃値上げによって予定される増額分を一般会計より補てんすることを要求するものであります。ただし、これは本年限りとし、この間に国鉄赤字の解消に努力すべきであります。  第二に、物価対策として、生鮮食料品を安定供給するために、流通機構の合理化、特にコールドチェーンの充実、市場施設の整備をはかることを主張するものであります。  第三に、住宅対策につきましては、わが党が主張する政府施策住宅六割、民間施策住宅四割の住宅五カ年計画に沿って、四十三年度の公営住宅建設を政府原案の二倍、すなわち、十八万七千戸を建設するよう強く主張するものであります。  第四に、社会保障の充実についてでありますが、政府は必要以上に財政硬直化を強調し、それを理由として社会保障に対して後退の施策をとっております。わが党は、生活保護基準の大幅引き上げと母子福祉費、身障者保護費の増額をはかり、さらに、原爆被爆者の援護手当の増額と児童福祉のために、児童手当の全面実施を目途として、当面、児童扶養手当及び特別児童扶養手当の増額を強く提唱するものであります。  第五に、中小企業、農林漁業対策の問題でありますが、史上最高の倒産を記録し、苦境にあえいでいる中小企業の育成と健全化をはかるため、従来の財投依存の政府の中小企業対策を是正し、予算総額の一%を目途として、二百億円の対策費を増額すべきであります。また、農林漁業の振興については、構造改善施策を中心として三百億円の増額を要求するものであります。  第六に、文教対策として、まず教育の機会均等を実現するため、育英資金の増額と私学振興対策費の大幅増額を行なうべきであり、さらに、学校施設の整備充実並びに学校給食改善充実のための増額を行なうべきであります。  第七に、交通安全対策としては、踏切道の改良、立体交差、横断歩道橋の増設を強力に推進するため増額し、さらに自賠責保険制度の限度額を最高五百万円までに引き上げ、国庫補助の増額をはかるべきであります。  第八に、災害に対しては、国家が全面的に保障を行なうべきであり、人命尊重を中心とする強力な救助対策とともに、復旧にあたっては、全面的に改良復旧を行なうことを強く主張いたします。また、公害については、大衆福祉、人命尊重を基調として、公害基本法に基づく基本計画、事業計画等に伴う経費の大幅な増額をはかるとともに、さらに、公害救済基金助成費、騒音規制法施行費、特定害物による環境汚染規制施行費、国立大気汚染監視センター設置等の新規予算の計上を実現し、対策の充実をはかるべきであります。  以上による歳出予算の増額に対して、次のように予算減額を行なうものといたします。  まず、防衛庁予算については、人件費、旅費、庁費、被服費、医療費、食糧費以外の三次防予算を認めず、装備施設等については、四十一年度予算の範囲にとどめ、その差額を減額するものといたします。  また、補助金は、零細なものについてはこれを整理合理化して二%を減額し、行政の簡素化、合理化による物件費及び旅費については一割を減額、人件費については欠員補充をせず、首切りを行なわないで一%を減額、官庁営繕費については、民間設備、投資抑制を政府が垂範するという意味において、一割を節減することとしたのであります。  ざらに、産業の投資特別会計への出資は、その費用をむしろ中小企業に向けるべきであり、約二分の一を削減する等のほか、予算編成に含まれる予算調整的な要素をなくすることにより、三百億円程度の削減は可能であると考えるものであります。  なお、公共事業費については、例年財政調整のため繰り延べが行なわれている点から、四十三年度においては、必要順位を勘案して、比較的需要度の希薄な事業費の中から一千億円を削減することといたします。  以上が、わが党の組み替え案の概要でありますが、予算委員の各位におかれましては、わが党の動議に賛成され、政府案の欠陥是正につとめられるよう強く要望いたしまして、私の提案趣旨説明を終わります。(拍手)
  205. 井出一太郎

    井出委員長 以上をもちまして、各動議の趣旨弁明は終わりました。     —————————————
  206. 井出一太郎

    井出委員長 これより討論に入ります。  昭和四十三年度総予算 三案及びこれに対する編成替えを求めるの動議三件を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。正示啓次郎君。
  207. 正示啓次郎

    ○正示委員 私は、自由民主党を代表して、昭和四十三年度予算三案に関し、政府原案に賛成し、日本社会党、民主社会党及び公明党提出の予算の編成替えを求めるの動議に反対の討論を行ないます。  まず最初に一言いたしたいことは、現下内外の情勢に照らして、われわれ政治に携わる者の責務がいよいよ重かつ大を加えつつある事実についてであります。  申し上げるまでもなく、今日の世界は政治的にも経済的にも文字どおり激しい展開と躍動を続けており、この間に処して日本民族一億のバイタリティーを十分に発揮させるためには、与党と野党たるを問わず、民族と祖国の平和と繁栄を希求するお互いの立場を十分に尊重するステーツマンシップに徹することの緊要なること、今日ほど切なるものはないと確信するものであります。もちろん、これはひとり日本だけの事情ではなく、人類全体が直面しておりまする今日の重大な試練と危局を打開するためには、人類の歴史に記録せられるほどの卓越したステーツマンシップに立脚する協調と協力こそ、何ものにもかえがたい貴重なかぎであると確信する次第であります。  さらに、この予算案審議の過程を振り返って、本委員会を含む国会審議のあり方についても深く反省せざるを得ないのであります。議会制民主主義を確立し、いよいよその健全な発展を期するために、そのにない手たるわれわれに要望せられるステーツマンシップについては、ただいま申し述べたとおりでありますが、この国会の審議のあり方があまりにも一般の常識からかけ離れているということについて、われわれ議会人一同がつつしんでえりを正し、真剣に考え直してみなければならないと存ずるのであります。たとえば、最も自由な言論の府であるべき国会の審議になごやかな対話の精神が十分に生かされていないこと、議長委員長理事会等、国権の最高機関の運営上、いわばチームワークのレフェリーたる権威を持つものに対して、その権威を十分尊重するというきわめて初歩的なルールさえ守られていないこと、いわゆる資料の提出要求が常識的な時間的余裕も与えられないで、貴重な審議時間が空費せられること、重大なナショナルインタレストを侵害する官庁機密の漏洩の事実があったこと等々、与野党あげて真摯な検討を加え、その改善につとめなければならないと深く信ずる次第でございます。  さて、わが国をめぐる国際経済情勢は、ポンドの切り下げ、ドルの防衛、さらには最近における欧州金市場の異常なゴールドラッシュ等、前途ますます困離さを加えようとしておりますが、わが国はあくまでも国際的な協調、協力の基本方針を堅持して、経済的な国際連合ともいうべきIMF体制を守り抜き、円の価値を維持することに全力をあげなければならないと信じます。こうした難局に処するわが国財政経済運営の基本姿勢は、何よりもまずつとめて低い姿勢をとりつつ、経済、金融、財政が一体となってこの激しい嵐を切り抜けることであると存じます。  そこで、予算の内容についてここでは詳しく論述する余裕を持ちませんが、特に重要な若干の特色について申し述べたいと存じます。  まず、四十二年度予算は構造的に三つの大きな特色を持っていると考えます。  その第一は、いわゆる総合予算主義のたてまえを確立しようとしていることであります。本来、予算は、その年度中におけるすべての財政需要を勘案し、その間における優先順位を検討、編成すべきものでありますが、従来公務員給与改定、米価改定に伴う追加財政需要が恒例的に大きな補正要因となってまいったのであります。この事実に対しまして、四十三年度においてはこのような多年の慣行を排し、総合予算主義のたてまえをとり、予備費を増額して、年度途中における追加財政需要の発生に備えているのは、まことに適切な編成態度であると思います。特に今後は経済成長率も従来ほど高きを期待することができず、したがって、年度途中において大きな自然増収を期待できないことをあわせ考えるとき、このような編成態度こそまことに英断であると信ずるものでございます。  昭和四十三年度予算の第二の構造的特色は、公債発行額を大幅に抑制し、その結果、歳入総額に占める公債金収入の割合は、四十二年度当初予算の約一六%から、四十二年度は一0%台へと一挙に大幅な低下がはかられておることであります。このことは、財政体質の改善に資するところきわめて大であると考えます。  第三に、税制の調整合理化がはかられたことも、四十三年度予算の構造的特色と考えられます。  政府は、中小所得者の負担の軽減に重点を置いて、平年度一千二百五十億円の所得税減税を行なうとともに、他方、来年度の経済の推移等を勘案し、所得及び物価の水準等の状況に応じた間接税負担の調整等を行なっております。これは、一方において、占領下の税制の特色であった極端な直接税偏重主義を緩和して、間接税併用主義への第一歩を踏み出したものとしても高く評価せられるものであると考えます。  次に、四十三年度予算の編成は、いわゆる財政硬直化打開の旗じるしのもとに進められたのでありますが、りっぱにその第一歩を踏み出し得たものと考えるのであり、政府の努力を多とするものであります。  第一に、一般会計予算の規模については、フィスカルポリシーの要請に即して極力抑制され、四十二年度補正後予算に対する伸び率は二・八%と、三十九年度を除けば、ここ十年来最も低い伸び率に押えられております。さらにこれを内容的に見ましても、特に景気に対する影響力の大きい公共事業費の伸びは、同じく前年度補正後予算に対する伸び率四・七%と、ここ十年来の最も低い伸び率となっておるのであります。また、財政全体の国民経済全体に及ぼす影響を包括的に見るためには、国民経済計算上の政府支出で見ることが最も適当でありますが、その伸びは一一・七%と、経済成長率一二・一%を下回るものとなっております。これまた、ここ十年来最も低い伸び率でありまして、財政の景気抑制的な性格を端的に示しているものと考えます。  第二に、四十三年度予算におきましては、積極的に行政コストの縮減をはかっていることについて賛意を表するものであります。すなわち、補助金の整理合理化等、経費の合理化をはかるとともに経費の節減につとめ、さらにまた機構縮減の第一歩を踏み出すとともに、公務員定数を計画的に削減する措置をとられたことは、財政体質の改善をはかるにあたり、政府みずからまず行政経費を縮減して公務能率の向上をはかる決意を示されたことと高く評価したいと存じます。  第三に、四十三年度予算におきましては、限られた財源事情の中にあっても、適正かつきめこまかい配慮が行なわれている点であります。たとえば原爆被爆者保護、重症心身障害児保護等の社会保障関係費、交通安全施設の整備のような人命の安全をはかるための経費も重点的に拡充されておるのであります。その他、私学の研究費の補助等、文教関係の施策、また宇宙開発、原子力平和利用等の科学技術振興費についても特段の重点が置かれていることは、政府の努力によるところ大であると考えるのであります。  以上、私は四十三年度予算の政府案について、その特色を述べ、賛意を表したいのでありますが、最後に、若干の要望を申し述べたいと存じます。  財政体質の改善は、四十三年度予算においてようやくその第一歩を踏み出したばかりであり、政府におかれては、本年以降引き続き検討を加えられ、財政体質の改善に努力せられるよう期待する次第であります。  さらにまた、冒頭に述べたごとく、国際経済情勢がますます深刻さを加えつつある今日、政府におかれては今後の財政金融政策の運営について、特に内外の情勢推移を的確に把握して、これに対処する適時適切な弾力的措置を誤らないよう強く希望するものであります。  最後に、各党の組み替え動議に対しては、以上申し述べました政府原案に対する賛成の理由をもって反対の理由といたします。  以上をもって私の討論を終わります。(拍手)
  208. 井出一太郎

    井出委員長 次に、阪上安太郎君。
  209. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私は、日本社会党を代表し、ただいま議題となっております政府提出の昭和四十三年度総予算二案に対しまして反対、加藤清二君外十三名提出の昭和四十三年度予算を撤回のうえ編成替えを求めるの動議に対し賛成の討論を行なうものであります。  なお、この際、民主社会党及び公明党よりそれぞれ提出されております政府予算に対する編成替え要求動議につきましては、にわかに賛成しがたい点もありますので、やむを得ず反対の表明をいたします。  さて、政府昭和四十三年度予算の致命的な欠陥は、何よりもみずからの失政によって招いた国際収支の赤字と財政の行き詰まりを国民生活の犠牲により打開しようとする態度であります。そしてそこには、深い反省がないばかりか、むしろ誤りを指摘されたものが往々にしてたどるところのいたけだかな態度となり、佐藤内閣は最近とみに高圧的な姿勢をとり、アメリカの核のかさとドルのかさのもとに対米従属と大衆収奪の様相を露骨にあらわしたのであります。そして、このことを反映したのがこの予算であり、明らかに正面切って国民に挑戦するところの反動予算であるといわざるを得ないのであります。このことはこのたびの政府の予算編成に明らかになっているのであります。  申すまでもなく昨今の内外経済の危機国民生活の貧困に正しく対処するためには、政府国民とともにうそ偽りのない道を歩まなければならないと思うのであります。すなわち、ここでも国民的な合意がきわめて決定的な役割りを果たすものと私は信ずるわけであります。しかるに、今日までの予算審議を通じて明らかになったように、政府は内外経済危機の実態をおおい隠し、もっともらしく秘密文書に籍口して、国会の審議権を踏みにじり、どこまでも真実から国民の目を奪う態度に終始したのであります。こんなことでもってこの昭和四十三年度予算が国民的合意により祝福せられるものでないことは火を見るよりも明らかだと思うのであります。しかし、幾ら政府がこの点をおおい隠しても、今日、わが国が置かれている内外情勢のきびしい現実と、そうしてその生活実感の中から、国民は、このような政府秘密政策を看破できないはずがないのであります。予算審議の進むにつれて、その馬脚が次々とあらわれ、そのからくりが明白になってきたものであります。  第一のからくりは、国際収支の赤字を解消するために、景気抑制型予算を組んだとしていることであります。しかしその実態は、すでに本委員会で指摘されたとおり、国立療養所の特別会計移管、あるいは昭和四二年度における公共事業費の執行繰り延べ額の昭和四十三年度積み上げ等を考えるならば、四十二年度当初に比べ二0%の膨張予算となり、実質的には、むしろ景気刺激型予算となっていることであります。  一方、ポリシーミックスを導入しての金融引き締めにより、年初以来の公定歩合の再度の引き上げ、銀行の選別融資ないしは窓口規制が強化されて、一そう中小企業の危機を深め、さらに勤労階層の生活を圧迫する結果を招いたのでありますが、景気過熱の真犯人である大企業の設備投資は野放しとなり、引き締め効果は一向にあがっていないのであります。その上政府は財政法の都合のよいかってな解釈により、予備費、繰り越し明許費、国庫債務負担行為等の執行を無制限に拡大し、かつ、しようといたしております。この政府の意図は、憲法の保障する財政民主主義のたてまえをくずすところの戦前の緊急財政措置に類する行為であり、特に国庫債務負担行為の乱用は、明らかに将来にわたる防衛関係費を増大し、核安保体制を強化するものであって、アジアと日本の平和を脅かすものであり、国民と憲法の断じて許さないところであります。  次に、第二のからくりは、財政硬直化という俗説を唱えて、公共投資、ことに国民生活に密着する公共事業を抑制し、一方、受益者負担の名のもとに国鉄運賃その他の国、地方を通ずるところの公共料金の値上げを強行して、国民負担を増大しようといたしておることであります。  今日のいわゆる財政硬直化は、当然増経費の増高により、新規政策財源が不足するといういわゆる財政そのものの硬直化ではございません。もしそうだとするならば、地方財政こそここ十数年来硬直化しているのであります。今日の国の財政硬直化の実態は、自民党政権の高度成長政策のもとでの物価値上がりによって代表されるところの各般の行政の硬直化であり、さらには圧力団体等の予算ぶんどりによって代表されるところの自民党政府の政治の硬直化であります。これを、ミクロに見るならば、資産所得優遇、大企業保護の税制のために、先ほど北山君からも申しましたとおり取るべきところから税を取っていないからであります。そして、直接には景気の見通しのつかないままにフィスカルポリシーを導入し、巨額の国債発行をし、放漫な財政運営を行なってきた政府・与党及び官僚の姿勢の硬直化であるとも言えるのであります。政府は、国債依存率を下げたと称しておるのでありますが、相変わらず六千四百億円もの国債を発行し、おまけに地方自治体から四百五十億円の借金をし、われわれの要求である減債計画のめどもつかない状態であります。  さて、わが国は、いまや交通化の激しい渦巻きの中にあります。これに対する対策は何よりも急がなくてはなりません。過密、過疎対策の急所は、とりもなおさず公共投資であります。見せかけの公共事業の長期計画では役に立ちません。しかるに政府は、過密、過疎の題目だけを唱えて、むしろ公共投資を抑制しているのであります。これはわれわれの断じて納得するところではありません。一体、いまごろになって政府が財政硬直化対策を打ち出してきた理由はどこにあるのか。それは国債政策の破綻と、きびしい国際経済情勢に対処するため、国民負担の増大により、大がかりな資本蓄積、海外援助、軍事力拡充の体制を立て直すことにそのねらいがあるのであります。  第三のからくりは、減税一千五十億円であります。  この所得減税は、酒、たばこの増税により差し引きゼロであるといわれているところのものでありますが、しかしこれは勤労者にとってはゼロではなくして、逆に実質的な増税であるということであります。確かに国庫収入はとんとんである。しかしながら、国民は国庫で生活しているわけではない。所得減税といっても、物価値上がりの中で、名目所得の増加に伴い、税金は急激に高くなっていくのみでありまして、来年度は物価調整減税すら採用されなかったのであります。しかも四十三年度の租税特別措置は三千百五十億円に及び、その穴埋めとしての酒、たばこの増税と見るならば、これは明らかに大衆の課税によって、高額所得者の減税をまかなうものであり、減税財源の大半は、所得税を納められない低所得者層の負担となるのであります。  このような増税と一連の公共料金の値上げによりまして、政府の言う四十三年度消費者物価上昇率を四・八%にとどめることはもはや困難であり、政府が、みずから立てた経済社会発展計画の最終年次の消費者物価上昇率三彩の目標に逆行するものでありまして、したがって、これは政府の物価安定の公約に違反するものであります。  第四のからくりは、いわゆる補正なし予算ないしは総合予算主義であります。  この総合予算主義は、もともと財政法の原則であります。それをいまさら麗々しく持ち出したのは、公務員給与の引き上げを、人事院勧告が出ても予備費計上のワク内で圧縮しようとするものであり、消費者米価につきましても、補正なし予算でスライド制を押しつけようとしていることであります。このことは、とりもなおさず将来における所得政策導入の条件を整えようとするものであり、また米価審議会の編成がえと相まちまして、食管制度の原則を骨抜きにしようとする意図はきわめて明白であります。  第五のからくりは、地方財政の好転説であります。  今日の地方財政は、国以上に硬直化している。すなわち懸案の行政事務の再配分は一向に進まず、数多くの国の委任事務を押しつけられ、公共事業の超過負担額に悩まざれ続けているのであります。一方、急激な都市化に伴う都市再建対策や地域開発対策を思い切って打ち出すこともできず、そのため国民は過疎の弊害と過密の弊害に悩み抜いておる状態であります。一時的に歳入が多少よくなったからといっても、地方公共団体は地方債の現債額四兆円をこえる始末で、地方財政はようやく借金でもってまかなっている現状であります。ましてや、その歳出の貧困を見ることなく、いたずらに単年度収支の帳じりをつかまえて黒字だとか赤字だとかの論をなすことは、全くこれは誤りであります。  いまや地方公共団体は、憲法二十五条が保障するところのナショナルミニマムを確保することは不可能といっても過言でありません。ましてや、それの基準を引き上げることはとうてい考えられないのであります。そのため地方公共団体では、最近住民意識がだんだんと薄れ、コミュニティーは崩壊し、民主主義の基盤はまさに失われつつあるのであって、おそるべき事態に直面いたしておるのであります。しかるに政府は、財政硬直化を理由に地方交付税率を引き下げようとしたり、四十三年度では交付税の法定額を四百五十億円も削減したり、あるいはまた二百五十億円の地方債の繰り上げ償還を交付税特別会計の中で強要するなど、地方交付税制度の根幹を危うくしようといかしておるのであります。また実質国税減税ゼロを肩がわりしているのは、七百億円にのぼる地方税の減税であります。しかしながら、何らその減価を補てんしようとする措置をとっていないのであります。かつて私ども戦時体制の中で、富国強兵の国家観のもと、戦費調達のため、極度に地方財政が圧縮され、臨時軍事費が国会審議無用でのさばり、国民生活の犠牲になったこと、及び中央集権制が強化されて、固定化した事実を体験したのであります。われわれは、この四十三年度予算がその同じ道をたどる端緒となり、秘密保持の名のもとに、防衛費が国会審議無用でまかり通り、その累増によって再び地方財政が圧縮され、財政中央集権制が強化されて、そのため国民生活が犠牲になることは断じて許してはならないことだと思うのであります。  われわれはこの四十三年度予算について、以上、五点のからくりを指摘したのでありますが、こればかりにとどまることなく非核三原則の問題、沖繩返還問題、ベトナム問題、日中覚え書き貿易問題、課徴金問題、円防衛の問題等々、各般の重要な問題が山積いたしておるのであります。一昨日来、ロンドン金市場は閉鎖されるという異状な事態に突入いたしておるのでありまして、内外の情勢は、まことにきびしいものがございます。日本はこの情勢に誤りなく対処しなければなりません。そのためには、これらの重要問題についてのそれぞれの国民的合意が不可欠であります。一党、一政府の力だけではどうにもならないのであります。言うまでもなく、この国民的合意への道は、まず日本国憲法の完全実施であります。ところが政府・与党は、倉石発言に見るごとく、また防衛問題に対する政府答弁、警察官職務執行に対する政府答弁等々、ことごとに憲法軽視の態度がちらつくのであります。このようなことでもって国民的合意などはとうてい得られるものではありません。国民的な合意が得られないような予算案を、日本社会党は承認するわけにはまいらないのであります。  政府・与党は、この際、憲法を尊重し、議会制民主主義のもとにおける政党の政治責任というものを自覚して、与党としての姿勢を正すことにより、内外政策を根本的に転換し、この昭和四十三年度予算を撤回するとともに、社会党の編成替え動議に基づき、この予算案を組みかえることを強く主張いたしまして、私の討論を終わる次第であります。(拍手)
  210. 井出一太郎

    井出委員長 次に、塚本三郎君。
  211. 塚本三郎

    ○塚本委員 私は民主社会党を代表して、政府提案の昭和四十三年度予算関係三案に反対し、ただいま提案いたしました小平忠君外二名提出になる編成替えを求めるの動議に賛成の討論を行なわんとするものであります。  なお、この際、日本社会党及び公明党提出にかかる編成替え動議には遺憾ながら反対いたすものであります。  わが党は、ただいま麻生委員より明らかにいたしましたとおり、政府原案については、わが国内外のきびしい経済情勢に対応し、国民生活の安定向上をはかり、健全なる経済の発展のため、この際抜本的な組替え案を提示いたしました。  私はこの立場に立って、以下政府原案に対する批判と反対論を述べんとするものであります。  わが党がまず第一に指摘いたしますのは、政府の財政政策が一貫性を欠いているという点であります。  予算編成が、事務レベルで進められていた昨年秋以来、政府は、財政硬直化を表面に持ち出し、この打開が新年度予算の最も大きな課題であると前宣伝しておりました。つい最近までは、財政新時代の到来、あるいは財政主導型経済成長など、もっともらしい理由を述べ立て、無責任なる公債発行を重ね、予算規模も年々に膨張させ、いたずらにインフレをあふってきたことは周知の事実であります。そして、このたびは一転して財政硬直化を理由に、実質減税ゼロ、大衆増税と民生支出の圧縮をはかろうとしております。このように、その場、その場の御都合主義で財政政策を切りかえる政府の無責任さと一貫性の欠如は、強く批判されなければなりません。  わが党は、財政政策の一貫性を強く主張するとともに、その進むべき方向は、国民福祉の向上と民間経済の計画的調整を効果的に果たすものでなければならないとかたく信ずるものであります。  第二は、このような無定見な財政政策によって、弱肉強食の経済体制を露骨化せしめていることであります。  申すまでもなく、わが国を取り巻く経済環境は、昨年九月の公定歩合引き上げ、続いて発生を見ましたポンドの切り下げ、ドル不安の高まり等々、国内外の経済要因が大きく変化いたしました。にもかかわらず、大企業を中心とする設備投資は依然として根強く、まさに四囲を顧りみないイノシシのごとき感を呈しているのであります。本年一月の公定歩合再引き上げを見まして、中小企業をはじめ、大衆には金詰まりが襲いかかりましたが、大企業は、さして受ける影響も少なく、いまなお投資は活発であります。したがって、従来いわれておりました国際収支の悪化、公定歩合の引き上げ、輸入抑制と設備投資の抑制といった循環形式がくずれたかの感を深くするものであります。  政府の予算編成にあたっては、何よりもこの景気調整、すなわち緊縮財政をもって国際収支の回復、安定をはかることが第一であるのに、政府予算案ではこれに対する配慮が全くなく、むしろ大企業の恣意的な投資を放任、助長するものといわねばなりません。  第三は、政府がとらんとしている総合予算主義の矛盾であります。  従来、補正予算計上項目のおもなものは、人事院勧告による公務員給与の引き上げ費と、生産者米価の引き上げに伴う食管赤字補てんが主であったが、政府は今回の予算案では、公務員給与の引き上げを四・五%程度の見込みで五円億円を計上し、食管会計では二千四百十六億円しか引き上げ分を計上していない。これは明らかに、所得政策の導入と生産者米価の強い抑制をねらったものであります。政府は、しばしばこれを否定しておりますが、米価をとってみても、最近の情勢ではすでに数%の上昇要因が見られるところから、国内米買い入れ費の増分は、政府見込みから、はるかに超過すると予想されます。また公務員給与は、民間の上昇と物価上昇を考えるとき、政府の予定を上回ることは必至であり、当然補正予算を組まなければならないのであって、総合予算主義は、明らかに矛盾したものであります。  反対の第四の理由は、実質的な大衆増税と大幅な物価上昇を必至ならしめているということであります。  政府は、財政硬直化を最大の理由として、所得税減税を千五十億円にとどめ、同時に酒税、物品税の引き上げ及びたばこの値上げをはかり、千九十一億円の増税で差し引きずるばかりか、実質的には大衆増税をもくろんでいるのであります。特に、国民の福祉向上を基本線としないこのような大衆負担を増大させる税制の改悪は、断じて許すことのできないものであります。またこのほかにも、国鉄定期代、電話架設料の大幅な値上げ、さらに四年連続して消費者米価を値上げする情勢も必至であって、これら公共料金の軒並み引き上げは、政府予算案によって政府みずから行なわんとするもので、まさに政府主導型の物価上昇といわなければなりません。しかるに政府は、希望的な観測数字である四・八%の明年度物価上昇率を、さも確定的なもののごとく言っているが、これはすでに無意味なものとなり、おそらく六%に近い物価上昇となることはいまや常識となっでおります。加えて、公債発行については、今年も六千四百億円と膨大な額となっており、政府の財政計画は、この公債を軸に組まれているといっても過言ではありません。言うまでもなく、政府の公債発行は、何ら長期的な資金調節計画に基づくものではなく、結局は、日銀券の増発に終始していることは明瞭であって、政府みずから財政破局の墓穴を掘っていると言っても誤りではありません。  以上のごとき事情からして、政府は、税制、物価対策及び公債政策を抜本的に再検討し、国民の期待にこたえ得る対策を樹立すべきであります。  最後に私は、窮乏化する地方財政を健全かつ安定化するがため、専売納付金の地方移転を実現させ、もって地方の自主財源確保をはかるよう提唱いたします。  政府予算案の編成に伴い、明年度の地方財政計画を五兆六千五十一億円として、その内容は相変わらず中央集権的性格を濃くしており、三割自治のワクを一歩も出ているとはいえません。また政府は、自主財源に名を借りて、新たに自動車取得税を設けようとしているが、このような手段に訴えることは誤りである。今日、すでに自動車は、ぜいたく品ではなく、便宜品となり、経済的には必需品となっております。大衆車や、中古車にまで新税を設けて大衆負担のみを増大せしめることをやめて、すみやかに、わが党の主張する専売納付金の地方移管によって地方財源を確立することこそ国民の待望するところであります。国の予算は、国全体の経済計画の一環として位置づけられてこそ、その役割りと効果を果たすものであります。  わが国の場合、経済計画そのものが変動常なきものであり、したがって予算が経済全体に効果的な役割りを果たすことは、現状では望み得ません。  私は、まず、経済計画を実際的なものとし、経済の安定を強力にはかることが国の予算を健全化する第一歩であると信じます。  この観点から、政府はあらためて、長期経済計画を作成するとともに、重要産業の設備投資を調整計画化する重要産業基本法を制定し、かつ銀行法も同様趣旨で改正を行なうことがますます必要となってきました。国の予算は、この経済計画に沿った長期財政計画に裏づけされて組むべきであると主張し、以上の五つの点を強く訴えて、民社党組み替え動議に賛成し、政府原案に対する反対の討論を終わります。(拍手)
  212. 井出一太郎

    井出委員長 次に、広沢直樹君。
  213. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 私は、公明党を代表いたしまして、公明党提出による、昭和四十二年度政府三予算案の編成替えを求める動議に対し賛成意見を述べるとともに、政府の予算案に反対し、さらに、社会、民社両党提案の予算編成替えを求める動議につきましても、いささか意見を異にする点がございますので、あわせて反対の意見を申し述べます。  四十三年度予算編成に際しての世界経済の展望は、昨年十一月、英国の突如としてのポンド切り下げに端を発し、アメリカの公定歩合の引き上げ、それに続く欧州のゴールドラッシュ、その上ドル不安、この一連の国際通貨体制の動揺は、新年早々の米国のドル防衛政策の強化も及ばず、またもや公定歩合の再引き上げを行なうに至り、さらに英国においては、バンクホリディ、すなわち金融市場全面閉鎖という緊急事態を起こしております。  一方、わが国内にあっては、国際収支の悪化が原因となり、日銀の公定歩合の再引き上げなど、内外の経済環境は、きわめてきびしい場面に直面しているのであります。したがって、わが国の予算規模、国際発行額をどの程度にするか、また財政硬直化対策をどうするか、物価上昇をどうして押えるか、これらの基本問題は予算編成における重要な課題であったはずであります。  ところが、四十三年度のわが国の経済が、このようなきびしい国際経済環境下の不況をいかにして乗り切るかという大きな問題をかかえていながら、予算編成の基礎になる政府の四十三年度の景気判断、経済の見通しは、きわめて甘過ぎるといわねばなりません。  まず第一に、政府の予想する経済成長率、実質七・六%では、国際収支の赤字は三億五千万ドルにとどまらず、五億ドル以上の赤字は避けられないということであります。  なぜならば、ポンド切り下げが貿易に及ぼす第一次的な影響は、約二億ドル程度のマイナスが予想され、さらにアメリカのドル防衛強化が直接間接にわが国経済に及ぼす影響は大きく、政府の経済見通しによる四十三年度入輸出目標、約百二十一億五千万ドル、対前年度伸び率一五・二%増について、はたしてこの目標が達成されるか、はなはだ疑問なのであります。  特に今年は世界的輸出競争の激化が予想され、輸出価格の低下を生ずることも考えられます。さらに資本取引面でマイナス要因が加わると、国際収支の見通しは、政府の指摘する三億五千万ドル程度の赤字見込みではとうていとどまることはできないと見なければなりません。  一般会計五兆八千百八十五億円、財政投融資二兆六千九百九十億円となっておりますが、一般会計の規模は、前年度の補正後と比較して二・八%の増加となっております。しかし、国立療養所経費百四十一億余円を国立病院特別会計に移管しているので、実質、規模は補正後の前年度より一二・九%の増加となっております。そして財投は一三%と一般会計の伸びを上回る規模に膨張しているのであります。  これでは、四十二年度の伸び率とたいした開きはなく、予算額にしても六千百五十一億円の増となり、景気抑制どころか、この戦後最大の超大型予算は、財政による景気調整機能を全く失い、国際収支の均衡回復のためには金融政策の引き締め強化にたよらざるを得ない結果となっているのであります。そうなれば、当然中小企業等にそのしわ寄せがかかることは明らかであります。  歳入面においては、財政硬直化の原因の一つとなっている六千四百億円の国債発行は、景気鎮静をはからねばならない現況下に過大であるといわなければなりません。これは前年度当初より千六百億円の減額となっておりますが、補正後に比べると九百十億円の減額にすぎないのであります。  四十年に始まる赤字国債の発行は、財政政策の失敗によるものであって、戦後の均衡財政を破り、不況脱出という名のもとで組み込まれ、その後引き続いて安易に施策の財源として多額の建設国債が発行されましたが、その本質は赤字国債と何ら変わりないのであります。その累積高は約一兆九千九百八十六億円となり、四十三年度の分を入れると二兆六千三百億円となるのであります。この多額の国債発行は、財政規模を大型化し、物価上昇、インフレ化のガンとなっているのでありますが、不況期には再び容易に膨張する可能性も秘められているのであります。したがって、国債発行は、昭和四十七年度をめどとして毎年一千億円の削減をしつつ順次これをやめるべきであります。  次に、歳出については、政府は財政硬直化を理由に極力圧縮することを強調しながら、国防予算は第三次防計画に基づき、要求をほぼそのまま認め、四千百八十億余円を組んでおりますが、これは昨年の佐藤ジョンソン会談後、極度に右傾化した佐藤内閣の国防意識の高揚を反映しているものであり、その裏には、日米安保条約のもとで危険な再軍備強化に向かうことが危惧されるのであります。これに反し、社会保障をはじめ生活環境整備の予算の伸び率を押えるなど、国民生活の立場から考えると、きわめて遺憾な国民不在の予算であります。  以下、数点にわたり、具体的に、その問題を指摘しつつ、反対の理由を申し述べます。  第一に、減税についてであります。四十三年度の税制改正の焦点は、初年度千五十億円の所得税減税を行なう一方、間接税は、たばこ、酒税、一部物品税の引き上げなどによって千五十億円の増税をせんとするものであり、実質減税ゼロとなっておりますが、これは約九千五百億の税の自然増収が見込まれておりながら、所得税の減税財源をそのまま大衆課税的性格の強い間接税によってすりかえようとしているのであります。  その理由として、今日までたばこ、酒等の間接税については意図せざる減税が行なわれており、所得、物価水準と関連して税負担の適正合理化が行なわなければならないと説明しておりますが、これはまさに大衆をないがしろにする転倒した理論といわねばなりません。間接税が、所得階層別の負担において著しい逆進的な性格を持っていることは、申すまでもありません。この代表的な物品が酒、たばこであり、低所得者層まで生活に密接な関係を持つ嗜好品であります。これは階層別にはほとんど差異がないのであります。しかも減税というささやかな恩恵にもあずかることのできない国民大衆にしわを寄せ、その財源でもって所得税の減税を行なうことは、国民生活を欺瞞し、苦しみの中に追いやる大衆無視の政策といわざるを得ないのであります。  さらに、所得税の減税についても、標準世帯で課税最低限が八十三万円となり、約十万円引き上げられておりますが、これに伴う諸控除は、すべて最低生活費には課税すべきでないという基本的な考え方で設けられているのであります。  ところが、一例をあげるならば、基礎控除十六万円で、独身者は最低生活を送れるでありましようか。昨年大蔵省が出したマーケットバスケット方式によって年間生活費を算出してみると、二十一万九千八百十六円となるのであります。このように、憲法に保障された文化的最低生活を営む国民の権利を、税制は何ら保障しておらないのであります。わが国の所得税制は、課税最低限が低い上、さらに、累進税率の刻みが荒いこともあり、所得上昇に伴う税負担の増加が著しく、所得の弾性値は、過去四年間平均二・二という数字を示し、所得の上昇率を税負担率が上回る税制の累進効果は、比較的所得の低い階層に対してより強力に機能することになっております。これは課税最低限と並行して、累進税率の手直しをしなければならないことを示しているのであります。要するに、逆進性の高い間接税制の強化や、大企業並びに資産所得に対する過度の優遇措置によって、税負担の不公平は大きく、さらに大衆課税化を進めようとする税制改正には反対であります。  次に、物価問題でありますが、政府は、来年度より米価についてはスライド制をとることにしておりますが、そうなれば、生産者米価の値上げに伴い、四年連続の消費者米価の値上げは必至であります。これは政府の農業政策の無策を消費者に転嫁するものであります。昨年後半の物価の急騰を考えると、消費者米価の値上げは絶対避けなければなりません。また、国鉄の定期運賃の値上げは、私鉄にも波及し、家計への圧迫は、はかり知れないものがあります。消費者物価上昇の最大の要因が一連の公共料金の値上げにあるだけに、公共料金の値上げをストップするのは当然であります。ざらに、物価対策予算についても、ほとんど見るべきものはなく、政府の物価安定とはうらはらに、物価値上げ先導予算といっても過言ではないのであります。  次に、住宅問題についてであります。住宅予算は、一般会計、財投を合わせて四千三百六十三億円となっており、前年度の伸び率二0%に比べて、一五・二%に終わってしまったのであります。四十一年度一世帯一住宅のバラ色の夢に包まれてつくられた住宅五カ年計画は、四十三年度予算を組み入れてもいまだ計画全体の五0%程度しか進まず、計画達成の見通しは暗い状態であります。しかも、諸物価及び地価の上昇に加えて、土地利用計画も確立されていない現在、民間六、政府四の割合に見られるごとく、大半を民間自力建設に依存した建設計画では、今後政府施策住宅を増大し、抜本的に力を入れない限り、一世帯一住宅はおろか、国民の一人一人が政府に期待する豊かな暮らしへの夢は実現できない予算といわねばなりません。  次に、中小企業対策について見るとき、昭和四十二年度は、中小企業の倒産は八千件を突破し、史上最高を記録しております。この中小企業の現状は、国民生活の後退を意味し、わが国経済の向上と国民経済発展のためには、中小企業の健全な発展が先決問題であります。昭和四十三年度の予算では、中小企業庁の中小企業対策予算は、総予算の一%にも足らない二百七十二億円であり、通産省の中小企業予算のねらいは、協業化対策についていける、余裕ある中小企業を対象とした中小企業再編成であり、結局、零細企業を見殺しにする政府自民党の冷酷なる政策のあらわれであると断ぜざるを得ないのであります。わが国産業の圧倒的多数を占め、そして輸出振興や国内の生産に大きく寄与している中小企業を無視した四十三年度予算には、賛成することはできないのであります。  以上、本予算案に対し反対趣旨を概略申し述べた次第でありますが、いずれにせよ、大衆福祉を無視し、ただでさえ苦しい生活環境をますます貧困ならしめる国民不在の予算であるがゆえに反対するものであります。  なお、先ほど斎藤実君より提案趣旨の説明がありました公明党提出による昭和四十三年度政府予算案の編成替えを求めるの動議については、いま申し述べましたとおり、政府案のさまざまの重大な欠陥のうち、さしあたり解決の必要を迫られている、国民の切望している諸問題について、政府の緊急にして適切な措置を求める立場に立って提案されたものであります。ゆえに、公明党提案の昭和四十三年度政府予算案の編成替えを求めるの動議について賛成いたすものであります。  なお、社会党、民社党よりそれぞれ提案された動議につきましては、当面の国民生活の諸問題に関し、これを具体化する上において、いささか見解を異にする点がありますので、反対の意思を表明せざるを得ないのであります。  以上をもって討論を終りにいたします。(拍手)
  214. 井出一太郎

  215. 谷口善太郎

    ○谷口委員 私は、日本共産党を代表して、本予算三案に反対いたします。  一昨日、ドル不安によって、金市場が恐慌状態に達し、アメリカの要請でロンドン金融市場さえ閉鎖されました。この最大の原因は、アメリカのベトナム侵略をはじめとする侵略と戦争の政策にあります。西ヨーロッパ諸国の多くの首相は、アメリカに対し、アメリカのドル防衛政策について批判的立場をとり、アメリカのベトナム戦争を終結すべきだとの意見を出しております。佐藤総理は、さきの日米会談で、日米軍事同盟の強化、日本への核持込みと防衛力の増強、ベトナム侵略戦争への積極的協力、と同時に、ドル防衛に積極的に協力することを約束してきましたが、この政策の破綻は以上の事実によって、いまや明らかであります。しかるに、政府は、今国会において、依然としてこの共同声明の立場に立ち、ベトナム侵略、ドル防衛で対米協力を続け、軍国主義体制の強化を急ぎ、そこから起きる経済の矛盾の激化を、労働者、農民、人民に対する徹底した犠牲の強化、収奪で切り抜けようとしております。本予算三案は、その何よりのあらわれであり、これがこの予算案の基本的性格であります。したがってわが党の絶対承認できないものであります。  内容について具体的に指摘いたします。  第一に、歳入の面では、政府は財政経済の上で引き締め政策をとるといいながら、一般会計で五兆八千百八十五億円、財政投融資で二兆六千九百九十億円という膨大な予算を組み、その財源として、一兆円にも及ぶ赤字公債と政府保証債の発行、自然増収の名による九千億円の税の増徴、国鉄定期券、酒、たばこ、物品税などの引き上げを行なおうとしています。これはまさに人民収奪の予算といわざるを得ません。  第二に、歳出の面では、まず、核武装を含む自衛隊の増強費、アメリカの戦費の肩がわりである東南アジア経済援助費の拡大、軍人恩給、教員の反動的支配のための特別手当、明治百年事業などによる軍国主義復活のための経費等その他が計上されております。同時に公共事業費に至っては、前年度繰り越し及び財政投融資と合わせて二兆九千億円の巨額に達しておるのであります。その相当の部分は高速道路、港湾、工業用地、工業用水、地域開発など、独占資本の産業基盤の強化と、その市場と利潤を保障するために使われるのであります。  第三に、このように、独占資本の利益と、日米共同声明に基づく軍国主義、帝国主義復活のためには、惜しげもなく国家財政を支出しながら、他方では、財政硬直化と称して、人民の生活と権利に対する攻撃を一段と強めております。すなわち、総合予算主義ということで、公務員賃金、食管会計の赤字補てん、災害復旧費などを、本予算に組み込まれた一千二百億円の予備費でまかない、補正予算を組まないたてまえをとっております。これは人事院勧告制度、食管制度などを事実上取りくずして、公務員賃金と生産者米価を一方的に押えつけるものであります。これによって、労働者には、労働大臣の職権による最低賃金の決定と相まって低賃金を押しつけ、食管会計の赤字は消費者米価の値上げによって勤労人民に負担させようとするものであります。  さらに、受益者負担の原則や独立採算制ということで、すでに述べたとおり、各種公共料金の引き上げをするばかりか、国立療養所を特別会計制に移行して、国が義務として最も配慮しなければならぬ最低生活の長期療養者にまで、非人道的な攻撃を加えております。政府は生活保護基準と失対賃金を一三%余り引き上げておりますが、最近の物価高の中では、この程度の引き上げでは焼け石に水であります。しかも、失対事業では四千人、生活保護では四万八千人と、適用のワクを削減いたしました。住宅にしましても、低家賃住宅はわずかに八万八千戸にすぎず、公害救済制度の創設は、独占資本の反対を受け入れて見送ってしまったのであります。  要するに、この予算は、わが国アメリカ日本独占資本の要求に基づく、軍国主義と戦争の道に一そう深く引き入れるものであります。平和と独立、民主主義と生活安定を求める広範な勤労人民の要求と、全く相いれないものであります。したがって、わが党はこのような予算に絶対に反対であります。  日本共産党は、以上のごとき佐藤内閣戦争と反動の財政政策に反対し、真に日本人民の利益を守る財政政策として、すでに具体的な、抜本的な政策を発表しております。わが党は、現在のアメリカの支配を断ち切り、独占資本による国家財政の私物化に反対し、独占資本に対する必要な統制を加えることを中心に、国の財政、金融制度の民主化と、軍国主義、帝国主義復活を目ざす経費の全廃と、人民の生活と権利を守ることを基本とする財政、経済政策をとるべきことを主張します。そのためには、租税特別措置の廃止、勤労所得税、間接税等の大衆課税の廃止、高度累進課税を実行すべきであります。また、軍事費、人民弾圧費の全廃と、公共事業の民主化、教育、社会福祉事業費の全額国庫負担、社会保険制度の完備、賃金の大幅引き上げと最低賃金制の実施などによって、人民の生活と経営を豊かにすると同時に、すべての国との間に平等互恵の貿易を発展させて、日本経済を自主的、平和的発展の道に進めることを主張するものであります。このような政策こそが、日本人民の要求にこたえる唯一の道であります。  なお、社会党の組みかえ案に対しては、個々の項目には賛成できるものもありますが、政府の予算案に対する基本的な考え方においてわが党と相違するところがありますので、賛成できません。  公明党案にも同様であります。  民社党案には反対であります。  以上をもって私の討論を終わります。(拍手)
  216. 井出一太郎

    井出委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、加藤清二君外十三名提出の昭和四十三年度総予算につき撤回のうえ編成替えすることを求めるの動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  217. 井出一太郎

    井出委員長 起立少数。よって、加藤清二君外十三名提出の動議は否決されました。  次に、小平忠君外二名提出の昭和四十三年度総予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  218. 井出一太郎

    井出委員長 起立少数。よって、小平忠君外二名提出の動議は否決されました。  次に、広沢直樹君外二名提出の昭和四十三年度総予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  219. 井出一太郎

    井出委員長 起立少数。よって、広沢直樹君外二名提出の動議は否決されました。  これより昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算昭和四十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  220. 井出一太郎

    井出委員長 起立多数。(拍手)よって、昭和四十三年度総予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、おはかりいたします。委員報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  221. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  222. 井出一太郎

    井出委員長 これにて昭和四十三年度総予算に対する議事は、全部終了いたしました。      ————◇—————
  223. 井出一太郎

    井出委員長 この際、一言ごあいさつを申し上げます。  去る二月五日総予算の審査を開始いたしまして以来、本日までまことに長い道のりでありました。途中、審査中断という事態もございましたが、その後真摯なる論議を重ね、本日ここに審査を終了するに至りましたことは、ひとえに委員各位の御理解ある御協力によるものでありまして、委員長といたしまして心から感謝の意を表する次第であります。連日審査に精励されました各位の御労苦に対し深く敬意を表しまして、ごあいさつといたします。(拍手)  本日は、これにて散会いたします。    午後三時五十七分散会