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1968-03-08 第58回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月八日(金曜日)    午前十時十三分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 小川 半次君 理事 北澤 直吉君    理事 正示啓次郎君 理事 二階堂 進君    理事 藤枝 泉介君 理事 加藤 清二君    理事 中澤 茂一君 理事 広沢 直樹君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       上村千一郎君    植木庚子郎君       小沢 辰男君    上林榮吉君       川崎 秀二君    小坂善太郎君       小山 省二君    坂田 英一君       田中 正巳君    登坂重次郎君       中野 四郎君    野原 正勝君       福田  一君    船田  中君       松浦周太郎君    松澤 雄藏君       松野 頼三君    湊  徹郎君       森山 欽司君    山崎  巖君       石田 宥全君    岡本 隆一君       川崎 寛治君    北山 愛郎君       久保 三郎君    阪上安太郎君       田中 武夫君    中村 重光君       楢崎弥之助君    畑   和君       森本  靖君    山内  広君       山中 吾郎君    麻生 良方君       塚本 三郎君    浅井 美幸君       正木 良明君    松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 赤間 文三君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 園田  直君         農 林 大 臣 西村 直己君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 中曽根康弘君         建 設 大 臣 保利  茂君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     赤澤 正道君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)木村 俊夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         局)      鍋島 直紹君  出席政府委員         近畿圏整備本部         次長      井上 義光君         公正取引委員会         委員長     山田 精一君         警察庁交通局長 鈴木 光一君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         経済企画庁総合         開発局長    宮崎  仁君         経済企画庁水資         源局長     今泉 一郎君         法務省刑事局長 川井 英良君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         文部省大学学術         局長      宮地  茂君         厚生省環境衛生         局長      松尾 正雄君         厚生省社会局長 今村  譲君         農林政務次官  安倍晋太郎君         農林大臣官房長 檜垣徳太郎君         農林省農政局長 森本  修君         農林省農地局長 和田 正明君         食糧庁長官   大口 駿一君         水産庁長官   久宗  高君         通商産業省通商         局長      宮沢 鉄蔵君         通商産業省化学         工業局長    吉光  久君         通商産業省鉱山         局長      両角 良彦君         運輸省鉄道監督         局長      増川 遼三君         建設政務次官  仮谷 忠男君         建設大臣官房長 志村 清一君         建設省都市局長 竹内 藤男君         建設省河川局長 坂野 重信君         建設省道路局長 蓑輪健二郎君         建設省住宅局長 三橋 信一君         自治省財政局長 細郷 道一君         自治省税務局長 松島 五郎君         消防庁長官   佐久間 彊君  委員外出席者         建設省計画局宅         地部長     播磨 雅雄君         会計検査院事務         総局第五局長  小熊 孝次君         参  考  人         (日本住宅公団         総裁)     林  敬三君         専  門  員 大沢  実君     ――――――――――――― 三月八日  委員上林榮吉君、大原亨君、山中吾郎君及び  横山利秋君辞任につき、その補欠として湊徹郎  君、石田宥全君中村重光君及び岡本隆一君が  議長指名委員選任された。 同日  委員石田宥全君岡本隆一君及び中村重光君辞  任につき、その補欠として大原亨君、横山利秋  君及び山中吾郎君が議長指名委員選任さ  れた。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十三年度一般会計予算  昭和四十三年度特別会計予算  昭和四十三年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算昭和四十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  この際、西村農林大臣より発言を求められておりますので、これを許します。西村農林大臣
  3. 西村直己

    西村国務大臣 申し上げます。  五日の記者会見での米審問題に関します私の発言によりまして、関係者に誤解を与え、多大の迷惑をかけ、まことに遺憾に存じます。  米審の構成につきましては、四日の衆議院予算委員会におきます発言のとおりでありますが、特にその構成については、御趣旨に沿うよう努力し、各党間の協議の結果を尊重いたします。     ―――――――――――――
  4. 井出一太郎

    井出委員長 これより一般質疑を行ないます。石田宥全君
  5. 石田宥全

    石田(宥)委員 私は公害の問題を中心に質問をいたしたいと思うのでありますが、きのうの新聞、けさの新聞を見ますと、富山県の小矢部川では川魚からメチル水銀が検出され、第三の水俣病のおそれありという――見出しだけ申し上げます。さらに、百年戦争といわれた渡良瀬川報告書がようやく出てまいりましたが、経済企画庁はこの審議会を九年も引き延ばしてまいっております。また、対馬にもイタイイタイ病が発見されて、近く学会で発表をする予定になっておるという記事が出ておるのであります。さらに、きのうの新潟地方裁判所においては、阿賀野川中毒訴訟の第二回公判で「タスキ論争で一時中断」という大見出し記事が載っておるのであります。日本経済高度成長をする陰に多くの人民が犠牲となり、政府企業の側に立って生命身体を軽視する、こういう行政の姿勢をとっておることは争う余地のないところであり、許しがたいところであると思うのであります。私は三年間これと取り組んでまいりましたが、本日は具体的な事実に基づいてこれを追及せんとするものであります。  まず第一に、昭和三十一年当時から発生してまいりました熊本県におけるいわゆる水俣事件についてでございますが、食品衛生調査会は諮問にこたえて、昭和三十四年十月二日「水俣病水俣湾及びその周辺に棲息する魚介類を多量に摂食することによっておこる、主として中枢神経系統の障害される中毒性疾患であり、その主因をなすものはある種の有機水銀化合物である。」という答申をいたしたのであります。ところが経済企画庁は、この答申は不十分であるという理由のもとに、昭和三十四年中にも疫学的には結論をつけることができたにもかかわらず、これを経済企画庁が取り上げて、昭和三十五年二月から三十六年二月にかけまして、一年間四回にわたって各省庁連絡会議を持ちながら、政府工場排水による有機水銀中毒と公認をしなかったのであります。なぜこれを公認しなかったのか。ここで政府結論が出ておれば、第二の水俣病は起こらなかったであろうし、また、第三の水俣病の発生も避けることができたであろうと信ずるのでありまして、その責任はきわめて重大であると考えまして、その理由を明らかにしてもらいたいと思います。  同時に、経済企画庁八代海水域水質基準を設定しなかったのでありますが、その理由をあわせて説明をいただきたいと思います。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御指摘のように、各省――通産省厚生省経済企画庁でございますが、連絡協議会を開きまして、仰せられましたように、昭和三十五年から昭和三十六年に四回協議をいたしたわけでございます。しかし、この協議によっても原因の究明が最終的に確定できなかった。他方で、その後世論も喚起されました結果もあって、新たに害毒が発生するということはとまった。そうして救済措置についても、不十分ではありましたが、ある程度のことができた。また、新規に罹病する人もなくなった。こういうことになりましたので、そこで、この本体が何であったかということは、これは学術的に研究をする必要がある、各省行政的な協議の対象よりは、学術的な研究のほうがより正確な結果が出るであろうということで、予算措置をとりまして、文部省から熊本大学にこの研究を委託いたしたわけであります。したがって、その段階で、行政庁としての連絡はもはや必要がなくなった、こういう判断をいたしましたし、その後協議会は開かれておらない。  八代湾水質については、したがって、この原因が究明されるまでは水質基準を置く必要はなかろう、こういう判断をいたしたように聞いております。
  7. 石田宥全

    石田(宥)委員 はなはだ納得しがたい答弁であります。熊本大学医学部では、三十五年から六年の一月ごろまでに実験資料がほぼ出そろっておったのであります。熊本大学の学術的な結論が定着しようとする時点で、突如としてその協議会解散さしたということは、何らかの意図と謀略があったものであろうといわざるを得ないのであります。いまの経企庁長官答弁によれば、学術的な結論を待ちたいということであるが、その学術的な結論はすでに出ておった。疫学結論ならば昭和三十四年でもできたと専門家は言っておるのであります。また、この「水俣病」という赤木には明らかにそのことが指摘されておるのであります。そういう時点で突如として解散したという理由を聞きたい。これを言っておるのです。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 熊本大学結論がほぼ最終的に出ましたのは昭和三十九年から四十年と承知しております。連絡協議会が四回の会議をいたしましたのは三十五、六年の時点でありますが、先ほど申し上げましたように、行政として解決すべき問題は解決をいたしましたので、それで解散をするというよりは、以後協議会が事実上開かれずに至った、こういうことでございます。
  9. 石田宥全

    石田(宥)委員 これは許しがたいことでありまして、私は、この問題で別の機会にもっと掘り下げた議論をいたしたいと思いますが、それならば長官、いまの答弁趣旨からいえば、この熊本大学医学部でつくったいわゆる「水俣病」という論文集は、これは国際的にも論議がされ、認められており、国内的には定説であるといわれておるので、今日の段階においてこれは当然行政的な結論を下すべきであると思うのであります。今日からでもおそくない。渡良瀬川は九年間あなたのところであっためておいた。ようやく審議会結論が出ておる。今日からこれを追認してもおそくはない。小矢部川でまた水銀が検出されておるという段階において、メチル水銀に対する取り扱い、これに対する通産省経済企画庁の指導、監督という面からも明らかにすべきであると思うのでありますが、いかがですか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 渡良瀬川につきましては、御指摘のように、ようやく〇・〇六PPMと流水基準を決定いたしたわけでありまして、今後はその流水基準を順守するために、政府並びに当該企業がしなければならない仕事があるわけでございますので、それを推進していくことになります。  御指摘小矢部川でございますか、私の承知しておる限りでは、厚生省が暫定的な調査をしてみて、これはメチル水銀にきわめて近似したものを検出した由でありますが、おそらくは正式に各省調査団を組んで、さらにそれを究明することになるであろう、こう考えております。
  11. 石田宥全

    石田(宥)委員 質問に答えなさい。私は、もはや学術的には国際的にも国内的にも定説となった今日、すみやかに行政府結論を出すべきであろう、こう言っておるのです。顧みて他を言うような答弁はやめなさい。質問に率直に答えなさい。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 メチル水銀が有害であるということについては、これは説が一定しておると思います。しかし、メチル水銀を検出するかどうかということについては、調査をして確定しなければわからない、こう申し上げておるのであります。
  13. 石田宥全

    石田(宥)委員 メチル水銀のことについては、あなたも学術的な結論を待ちたいというので、一年四回の会議を開いてそれで解散をした、その責任は重大ですよ。けれども、学術的に明らかになった今日の段階においては、これの結論がつけられるじゃないですか、つけられないですか。つけられますよ。あなたいまわかっておるのですか、水俣周辺の状況が。はっきりしなさい、はっきり。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 メチル水銀が有害であるということについては疑いをいれないわけでありますが、その当該河川メチル水銀が検出されるかどうかということは、これは調査をしなければわからない、こう申しておるのであります。
  15. 石田宥全

    石田(宥)委員 それは明らかですよ。あなた資料取りなさい。県庁の資料でも、あすこの保健所の資料でも、ちゃんと分析資料がありますよ。あなたは私が予告しておるのにちっとも勉強して出てこない、ちっとも勉強していない。そんなことだから次々と公害が起こるのです。これからでもいいから検討をして、そうしたはっきりした結論をつけなさい。つけることができないということはない。はっきりしなさい。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはどの地域のことをおっしゃっておられますのか、そのメチル水銀が有毒ということは明らかでございますが、それがなお水俣地区に出ておる、こう言われるのか、あるいは小矢部川に出ておると言われるのか、そのどちらを言っておられるのでございますか。
  17. 石田宥全

    石田(宥)委員 それは水俣川周辺、百間港周辺、あの地域がことごとく出ておりますよ。それを指摘しておるんです。わからなかったらこれから検討しなさい。そうして結論を出しなさい。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その水俣地区で新たにメチル火銀が発生しているという事実はないように承知しております。
  19. 石田宥全

    石田(宥)委員 さっそく調べなさい。ちゃんと私のほうは調べておる。私は資料を持っておる。  農林大臣に伺いますが、水俣周辺昭和二十五年から三十年までの漁獲量、今日その漁獲は規制されておるが、規制される前の漁獲量はどれぐらいですか。
  20. 西村直己

    西村国務大臣 数字の問題でございますから、水産庁長官からお答えさせます。
  21. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に、私は阿賀野川水銀中毒事件について質問をしたいと思うのでありますが、これは昭和四十年六月以来関係省庁連絡会議が開かれ、九月からは科学技術庁予算決定が行なわれまして、厚生省臨床班試験分析班疫学班、この三班を編成し研究に当たってまいりました。この班員の編成にあたっては、すでに先ほど申しまするように、国際的にも国内的にも学界の論争を呼んだ問題であります。わが国では、水俣事件で五年余の歳月を経てようやく学術的に定説となった等の経緯もあり、ハイクラスの学者をもって選任すべきものと考えるが、厚生大臣はその選任基準をどういうところに置かれたか、お伺いをいたします。
  22. 園田直

    園田国務大臣 各界の学識者、特に水俣病等について十分な経験を持っている人、こういうものも考慮をしまして、学問的に綿密に調査できるという人々を考えて委員に選定したわけであります。
  23. 石田宥全

    石田(宥)委員 おそらくそうであろうと思うし、そうなければならないと思うのでありますが、そこで、この三研究班は四十一年の三月二十四日に結論を出そうとしたのであります。ところが、その結論を出そうとしたにもかかわらず、一部資料を追加すべしという意見が出されまして、この結論をつけるに至らなかったのでありますが、それはどこの省のだれが横やりを入れてその結論を押えたのか、これは通産大臣にお尋ねをいたします。
  24. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 お答えします。  四十一年の三月二十四日に、特別研究班合同会議関係各省庁も同席をいたしまして検討がなされ、通産省からも担当官出席をいたしました。各省から質疑を行なった旨の報告を受けております。
  25. 石田宥全

    石田(宥)委員 そんな答弁に満足しませんよ。どこの省のだれが主張したかというんですよ。通産省じゃないですか。通産省横やりを入れたんじゃないか。通産省のだれです。明らかにしなさい。大問題だ、これは。通産大臣答弁しなさい。
  26. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 横やりを入れたということは聞いておりません。
  27. 石田宥全

    石田(宥)委員 通産省のだれがそこに出たのですか。通産省が、資料が一部不足だといって、その結論を押えておるのですよ。だれがそこに出席したか、名簿を読み上げなさい。明らかになりますよ。大臣、はっきりしなさい。――そういうふうに時間をかせがれると、私の持ち時間がなくなりますから、その分はひとつ延長してもらいますよ。
  28. 井出一太郎

    井出委員長 石田さん、政府委員でいいですか。――政府委員でいいですか。
  29. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 化政課、それから化学一課の職員でございまして、松村技官河野技官でございます。
  30. 石田宥全

    石田(宥)委員 自来、阿賀野川水銀中毒事件結論に対して、これを抑制してきたのは通産省であります。通産省はその後数回にわたってこれを抑制をし、圧力を加えてきております。通産省はいろいろ意見も、見解も明らかにしております。通産省には臨床班とか分析試験班とか疫学班とかいうような、全国の医学界ベストメンバーを持っておりますか。また、そのメンバー試験研究をするような施設を持っておりますか。そういう基礎に基づいてものを言うなら国民は納得します。あなたのほうにはそんなものはありませんか。
  31. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういうものはございません。
  32. 石田宥全

    石田(宥)委員 そこで問題は、先ほど申し上げたように、三研究班が四十一年三月二十四日に結論を出そうとしたが、それに対しては通産省圧力で、ついに一年余の時間かせぎをやられて、四十二年四月十八日に疫学班結論部分が出されたわけであります。あとでまた、これは法務大臣文部大臣その他に関連して質問を申し上げますが、ここで私は、一年間通産省に押えられてきたけれども、とにかく四十二年の四月十八日に出された疫学班結論部分と、あわせて八月三十日に出された食品衛生調査会答申の中の要旨を、厚生大臣から読み上げていただきたい。
  33. 園田直

    園田国務大臣 事務当局に朗読させます。
  34. 松尾正雄

    松尾政府委員 お答えいたします。  疫学研究班が出されました答申結論部分だけを朗読いたします。結論といたしまして、「以上本事件阿賀野川メチル水銀化合物汚染を受けた川魚を多食して発生したメチル水銀中毒事例で第二の水俣病というべきである。すなわち、その汚染源阿賀野川上流鹿瀬地区にある昭和電工鹿瀬工場汚染機序アセトアルデヒド製造工程中に副生されたメチル水銀化合物工場排水によって阿賀野川に流入し、アセトアルデヒド生産量の年々の増加に比例してその汚染量も増し、それが阿賀野川川魚体内に蓄積され、その川魚を一部沿岸住民が捕獲摂食を繰り返すことによってメチル水銀化合物が人体内に移行蓄積し、その結果発症するにいたったものと診断する。」これが疫学研究班報告でございます。  それから、食品衛生調査会昭和四十二年八月三十日に厚生大臣に出しました答申の要点も、第一の点は、ただいま申し上げました点をほぼ繰り返しておりまして、「かかる川魚を常に多量に食する阿賀野川下流地域住民体内水銀保有量が異常に高められたことが、基盤をなしているものと考えられる。」あとは、そういう状態だけでも水銀中毒患者が発生する可能性があるが、三十九年八月から定型的な症状を示すような患者が集中したということの理由が何かあるだろうというような点、及びそれらについてのいろいろな、地震、あるいは集中豪雨、あるいは鹿瀬工場操業停止前後における状態というものについて検討した。しかし、それらについては、調べ得る限りの資料では、必ずしも十分に解明ができなかったということでございます。
  35. 石田宥全

    石田(宥)委員 ただいまお聞きのとおりでありますが、このような高度の学術的な分野で、しかも、国際的に定説化された問題を、通産大臣に言わせれば、そういう研究をするスタッフも持たないし、施設も持たないところの行政官が、これに対してかれこれものを申し、そうしてそれを抑圧するというようなことは、学問冒涜であると思うが、文部大臣所見はどうですか。
  36. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 通産省がどういう御意見を出されたのか、私はつまびらかにいたしておりませんが、もちろん、その根拠があって御意見をお出しになったものと、さように心得ております。
  37. 石田宥全

    石田(宥)委員 厚生省が出したことを聞いておるのではないのです。通産省がこの問題に大きな役割りを果たしておるが、通産省では医学的なスタッフも持たないし、施設も持たないと大臣は言っておる。そういうところがこれを押えておいて、厚生省結論に歯どめをかけておるというようなことは学問冒涜ではないか、真理の探究を妨げるものではないか、文部大臣所見を伺いたいというのです。
  38. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 このような問題は、もちろん、専門的な学問研究の結果によって判断せらるべきものと思います。したがって、ただ単に行政事務の立場に立ってかれこれ言うことはもちろんないことと、私は信じております。通産省におかれましても、十分各種調査を遂げられた結果、そのような御意見が出たものと考えます。
  39. 石田宥全

    石田(宥)委員 文部大臣答弁は、またあとで伺います。  そこで、それがために水俣では四十二名の生命を断ち、新潟でさらに五名の犠牲を出しまして、おそらく一千名以上の患者被害者を出しておるのであります。しかし、政府結論が出ないために、検察当局はあえてこれを傍観せざるを得ないのではないか。法務大臣所見はどうですか。
  40. 赤間文三

    赤間国務大臣 この問題につきましては、その原因について、国の権威ある意見が、お述べになりました工場排水説と、農薬説と、この二つに分かれて対立して、まだ一致を見るに至っておらぬのであります。捜査機関といたしましても、なるべく早くこの意見が一致して、これをもとに立件いたしたいと考えておるのであります。結論が出次第すみやかに適切なる方策を講じたい、かように考えております。
  41. 石田宥全

    石田(宥)委員 法務大臣に重ねて伺いますが、水俣では四十二名の死者を出して、数百名の患者並びに被害者を出しておる。しかるに法務省は、これを一応立件したけれども、処置猶予にしたといっておる。一体、適切妥当な措置であるかどうか、いまの法務大臣の心境はどうですか。  もう一つ重ねて伺いますが、この事件のために死んだ人たちは、わずか三十万円の見舞い金という補償金をもらったにすぎない。死んだ人間に三十万円の見舞い金を出したから、一体法務大臣は、これでわが国の人命が尊重され、人権は守られたとお考えになりますかどうですか。この二点を承りたい。
  42. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答えをします。  検察当局といたしましては、やはりその原因がはっきりしないと、なかなか立件がいたしにくいと私は考えておるのでございます。基礎的な調査については新潟県警等やりますが、いよいよの立件になりますと、排水からきたのか、あるいは農薬によるのかということが、やはり権威ある決定ができないと、検察当局としては立件することが困難だと、私はかように考えております。そういう点から、一日も早く権威ある決定がなされることを期待しておる。  なお、その死者に対する金員がどう思うかということでございまするが、そういう問題につきましては、私はよく当時の事情を知りませんので、その金が非常に少な過ぎるとか多過ぎるとかというようなことは、調べてみないとはっきりと申し上げにくいと考えております。ただ、人権擁護からいえば、そういうことの起こらぬようにやるし、また起こったならば、いろいろ財政の事情もあろうが、できるだけたくさん金をやるというふうに努力していくことが当然であると、これは私、一般的にそういう考え方を持っております。
  43. 石田宥全

    石田(宥)委員 端的に答弁してください。死んだ人間に、殺された人間に、三十万円の見舞い金という補償金が出されれば、人権は擁護されたとお考えになるかどうか、これを聞いておるのです。
  44. 赤間文三

    赤間国務大臣 重ねての質問にお答えしますが、やはり人権擁護からいいますと、金額の多いほうがいいと私は考えております。幾らであれば人権の擁護にならぬとか、幾ら以上は人権の擁護になるとかというようなことは、専門的に調べてみないと、抽象的に私は申し上げにくい、かように考えております。
  45. 石田宥全

    石田(宥)委員 法務大臣に対しては、また別の角度から伺いたいと思います。  ここでひとつ伺いたいのでありますが、通産大臣、一月五日に通産省は、阿賀野川の有機水銀中毒事件の究明にあたっては、疑わしきは罰せずの刑事的立場に立つべきであるといっておるのであります。これは通産省の中に、やはり刑法、民法等の専門家研究機関でもあって、通産省の法務関係の機関の結論としてそのような意見をお出しになったのか、あるいは裁判所を牽制しようという意図のもとに行なわれたのではないかと考えられるのでありますが、どうですか。
  46. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 通産省といたしましては、刑事的な立場に立つべしというような、そういう見解は持っておりません。
  47. 石田宥全

    石田(宥)委員 通産省はそういう見解を出しておりますよ。これは明らかに文書を出しておるじゃないですか。刑事の原則で、疑わしきは罰せずということで処理すべきであるという文書を出しておる。あなたは知らないですか。民事の場合では、被告が加害者である疑いが、そうでない可能性よりも濃厚だということが明らかにされれば足りることになっておる。民事の一般原則によらず刑事裁判の原則でいけということは、これは問題であります。刑事でも、消却法あるいは消去法によって、疑わしきものも処罰した判例も出ておるわけであります。そういう問題に通産省はあまり出過ぎますよ。どこへでも出しゃばって圧力をかけておるじゃないですか。許しがたいことですよ、これは。
  48. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 刑事理論でやれというような文書はどこにも出しておらぬ、こういうことでございます。
  49. 石田宥全

    石田(宥)委員 大臣に教えないだけで、ちゃんと出ております。私は、別の機会でゆっくりこれは徹底的にやりますよ。  そこで官房長官、いまお聞きのように至るところに公害が出ておる。しかし、なかなかそれに対する適切な措置をとっておらない。行政措置をとっておらない。また、裁判所を牽制するような行為をやっておる。こういうような点を見ると、佐藤内閣が人間尊重の政策、スローガンをおろしたのではないか。これらの経緯から見て、憲法に保障された人権が無視されていると断ぜざるを得ないのでありますが、佐藤内閣の人間尊重に対する基本的な姿勢をお伺いしたいと思います。
  50. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 佐藤内閣の人間尊重に関する考え方は、毛頭変わっておりません。ただいま問題になっております公害の問題にいたしましても、昨年成立を見ました公害基本法の理念に基づきまして、今国会に、公害関係の関連法案を提出いたしまして御審議を願いたい、こういう段階でございます。
  51. 石田宥全

    石田(宥)委員 通産大臣通産省の見解では、これもあなたは知らないとおっしゃるかもしれぬけれども、原因は複数であるということを指摘しておるのです。先ほど伺ったところによれば、そういうものに対する調査研究の機関は持たない、こう言っておられる。厚生省並びに研究班、それから食品衛生調査会は、昭和電工の廃液が基盤々なしている、ほかに地震、洪水など何らかの影響を及ぼしていると思われると、こういっておるのであります。これは環境衛生局長が朗読したと偽り。しかも、それに対しては、農林省、経済企画庁はこれを支持しておるに対して、通産省だけがこれに異論を唱えるからには、明確な実証が必要であると思うのでありますが、明確な実証をお示し願いたい。
  52. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 通産省の独自の調査でございませんで、厚生省特別研究班報告にありますとおり、本事件に関する水銀汚染源として考えられるものが複数である、こういうふうになっておりますので、それによったのでございます。
  53. 石田宥全

    石田(宥)委員 人のふんどしで相撲をとるといわれるが、全く人の調査資料で文句をつけるとは何事です。厚生省は確信を持って出したし、農林省も経済企画庁もこれを支持しておる。通産省は自分で何ら独自の機関を持たないで、研究もしないで、そうしてこれに文句をつけるとは何事だというのです。文句をつける資格はない。厚生省案をすみやかに支持すべきではないか。はっきりしなさい。
  54. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 何がゆえに複数であるかというその説明を求めましたところが、それは鹿瀬工場、それから日本瓦斯化学松浜工場及び農薬でございますと、こういうわけでございます。でありますから、明らかにこれは汚染源は複数である、こういうふうに了承したわけであります。
  55. 石田宥全

    石田(宥)委員 人の主張をあっちこっち継ぎはぎにして、そうして政府結論を押えるとは一体何事だというのですよ。あなたがいま言われたところの、たとえば日本瓦斯化学の松浜工場、この問題は私は現地を一番よく知っておる。絶対にこれは出ておらない。絶対に阿賀野川へは水は出ておらない。また、スラッジの処理方法をごらんなさい。昭和電工は三百トン山に積んでおいて、雨ざらしにして阿賀野川に流しておったんですよ。松浜工場は出るたびにドラムかんに一つ一つ詰めてそれを売っておったんですよ。どうしてそんなものが原因になりますか。また、文部大臣がさっきはっきり言ったんだけれども、学問的にそれこそ四年もかけてそうして分析の結果、患者にも、魚の体内にも、農薬から出るところのフェニル水銀のような、あるいはエチル水銀のような、農薬に含まれておる水銀は検知されない。メチルだけしか出ていないのです。解剖所見で明らかですよ。学問的に明快な判断が下されたのです。それを、通産省があえて複数であるなどと言うことは、全く言語道断と言わなければならない。どうですか、すなおに答弁しなさい。自信がないなら自信がない、引き下がるなら引き下がる、はっきりしなさい。
  56. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 通産省といたしましても、この事件原因物質が有機水銀であり、また、昭和電工の鹿瀬工場からもメチル水銀が排出されていたという点については、決して異論を唱えるものではございません。ただ、一定期間内に患者が多数発生したことをどのように理解すればよいかということについて、確信を持って断定することができない、こう申したのでありまして、その旨を科学技術庁に進達したわけであります。目下、科学技術庁において総合的に、学問的にこの問題と取り組んでおりますので、その結論を待っておる次第でございます。
  57. 石田宥全

    石田(宥)委員 時間がないから、これ以上深追いをしませんけれども、これは、その後、科学技術庁の井上という事務次官が、身元を洗ってみたら、ずいぶん官庁と民間会社とを行ったり来たりしておるから、昭和電工と何か関係があるだろうと思って、もうちょっと調べようと思っているんだけれども、この井上という事務次官がそういうことを言っておるのですよ。同じことを言っておるのですよ。どうしてあの時期にたくさん出たか、どうして出なくなったかわからないと、こう言うのです。魚を食わせなくなって、アセトアルデヒドの製造をやめたら、患者が出なくなるのはあたりまえじゃないですか。小学生でもわかりますよ。そんなことがわからないようにしらっぱくれて、そうして科学技術庁圧力をかけておる。これは許せないというのです、私は。まだその他たくさんあるけれども、きょうは時間の関係でこの程度にいたしますけれども、あとでみっちり油をしぼってあげますわ。  建設大臣を要求してありますが……。じゃ河川局長でいいです。もう一つ通産省が主張していることで、阿賀野川の流量は三百トンだ、こう言っておる。しかし、私の調べたところによると、昭和三十年以来百十トン以下の日が相当数あるし、百四十二・一六トン以下の日がかなり日数がありますが、最近時までの百十トン以下の日数と、百四十二・一六トン以下の日数がどれだけあるかを明らかにしていただきたい。
  58. 坂野重信

    ○坂野政府委員 お答えいたします。  阿賀野川の馬下地点でございますが、馬下地点の水量は、昭和二十六年から昭和三十九年までの統計によりますと、一年間の平水量が約三百トンでございます。それから、渇水の場合で大体百四十トン程度でございます。ただいまの御質問に対しまして、百四十トン以下の大体の日数を申し上げますと、昭和二十九年に三十七日、昭和三十五年で四十六日、昭和三十六年がゼロでございますが、三十七年が四十一日……。
  59. 石田宥全

    石田(宥)委員 いや、全体のトータルでいいのです。
  60. 坂野重信

    ○坂野政府委員 大体、百四十トン以下というのは、年によって変わってまいります。そういうようなことで、いまちょっと全体のトータルを出しておりませんが、平均的に言いますと、百四十トン以下というのは、大体渇水量程度の流量を示しております。それから、百十トン以下でいきますと、昭和二十九年に七日、昭和三十五年が十八日、昭和三十七年が八日でございます。全体のトータルは出しておりません。
  61. 石田宥全

    石田(宥)委員 どうも不勉強で、時間かせぎをあなたにやられちゃかないませんよ。委員長、注意してくださいよ。むだな答弁ばかりしておる。  通産大臣、こういうことですよ。通産省は、平均流量三百トン、これはいいでしょう。しかし、百十トン以下の日が相当たくさんある。百四十トン以下の日も相当たくさんあるんです。雪解け水の一時点、あるいは集中豪雨のときには一時たくさん出るけれども、河川改修をしてからは、私はあの敷地にたんぼを持っていますから、一体どれぐらいの時間で引くかということをちゃんと知っておる。集中豪雨のときには、馬下地点のちょっと下の私のたんぼをつくっておる地域では、大体五時間か六時間で水は引いてしまうんです。三百トン、三百トンと通産省は言っておるけれども、平均流量の話であって、それ以外はきわめて少ない日数が多いのであって、そこで、メチル水銀の排出量がきわめて少ないからと言っておるが、水俣病というのは、メチル水銀の排出量が多ければ、濃度が高ければ、一定の時間で魚は死んでしまうんです。ごく微量だから起こる病気なんです。よく聞いていてくださいよ。そういう病気であるのに、いま申し上げるように、必ずしも年じゅう三百トンで流れておるのではないんだというそういう問題を、あなたはだれか部下からメモをもらって答弁しておるけれども、それは事実に相違するんです。その統計というものを巧みにあなたは使っておるけれども、私は阿賀野川のほとりに住んでおって、阿賀野川の水を飲んで育った男です。いま阿賀野川のほとりに住んでいますよ。あなた方に一体何がわかるんです。これは通産省の陰謀以外ではない。  まだいろいろあるけれども、そういう点で問題があるのです。しかも、昭和電工という会社は、無機水銀患者が出ておるけれども放置して省みない。社宅の従業員の健康診断をやろうとしたら拒否しておる。これは一体何ですか。これは別に答弁をいただく問題ではございません。  それから、通産省昭和三十四年十一月に、アセトアルデヒド製造のような水銀の化合物を使うところの工場に対しては、排水処理設備の完備を指示しております。水銀処理の状況について調査するよう文書を出しております。私は資料を持っておりますが、昭和電工だけは報告しておらないのです。新潟県は県条例で、排水の水質報告を義務づけられておるが、三十五年以来、水銀含有量が微量だということで報告していない。これは、官房長官よく聞いていてくださいよ。総理大臣や三木外務大臣や、さらに皇室にまで閨閥を持っておることが、政治的背景を意識しているところに問題があると私は考えるんです。そういう政治的背景を意識して、通産省に対する報告もしていな汗れば、知事に対する報告もしておらない。これは許しがたいことであると思うのであります。これも指摘にとどめておきます。  さらに、次に、熊木の水俣事件では、熊本大豊の医師団は、窒素工場に対しては二年間も立ち入りを拒否されてまいりました。最後には通産大臣の許可証を持参しなければならないと言われて、通産大臣の許可証を持って初めて工場に入ることができたのであります。阿賀野川事件では、厚生省研究班が二カ月半も立ち入ることができたかったのであります。本年の一月二十四日に千華の三井ポリケミカル工場の火災にあたっては、警察も、労働基準監督署も、消防車も、二時間も立ち入りを許されなかったことは明らかであります。工場が機密保持もあると言うけれども、証拠隠滅をはからんとするものであることは明らかであると思うのでありまして、いやしくも先ほど官房長官答弁されましたように、人命を尊重するという立場に立つならば、これを押えて、直ちに立ち入り調査をすることのできるような特別立法を必要とするのではないかと考えられるのでありますが、官房長官並びにに厚生大臣所見を承りたい。あわせて通産大臣所見をも伺いたいと思います。
  62. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 問題がたいへん重要でございますので、政府部内でよく検討してまいります。
  63. 園田直

    園田国務大臣 立ち入り検査はありませんが、しかし問題が問題でありまするから、立ち入り検査に対して通産省が心から協力されるように希望いたすものであります。
  64. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 災害発生後間もなくの場合は、災害がまた進行するかもしれない、その他いろいろ人命保護の見地から立ち入りを差し控えてもらうということをやっておりますが、それは決して工場の秘密保持とか、そういったようなものではないと私は考えております。
  65. 石田宥全

    石田(宥)委員 これは通産省の所管でありまして、こういう化学工場などに対する監督権、そういうものはあなたのところにあるのです。証拠隠滅の時間かせぎを意識的にやらせようとしておるじゃないですか、そう思いませんか。
  66. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さようには思いません。
  67. 石田宥全

    石田(宥)委員 これは答弁にならないが、時間の問題もありまして、次に科学技術庁長官にお伺いをいたします。  科学技術庁は、厚生省案が固まりましてから九月二日にその説明を聴取し、九月の八日には各関係省庁に対して、文書をもって意見を提出されるように要請をしております。すでに六カ月を経過しております。あなたのところにもやはり通産省と同じように専門の学者も施設もないはずです。前の長官は、ここにおられますが、厚生省の案が固まれば直ちにこれを政府の案とすると言明しておられました。あなたは六カ月あたためておるが、これは一体何をいままでやってこられたのか、まずそれを承りたい。
  68. 鍋島直紹

    ○鍋島国務大臣 ただいま御指摘のとおり、厚生省からは九月に報告が出ておりますが、各省意見は年内に出ませんで、一月五日通産省報告を最後に全部出そろったわけでございます。それに基づきまして、このそれぞれの内容につきまして慎重に討論、研究をして科学技術庁としての見解をまとめにかかっております。私としましては、率直に申し上げまして、一月末は無理でございますから、二月一ぱいにはぜひこれの見解を科学技術庁としてまとめるようにということを申しておったのでございますが、中には異論のある省があり、特に通産省厚生省との御意見が違うような点もございまして、それらの点の研究、それからこの前の予算委員会でも申し上げましたように、この件につきまして一、二専門家意見を聞く等、慎重にこの取りまとめをいたしておりますので、私は三月一ぱいにはこの見解をまとめるようにということを指示いたして、そのことに進みたいというふうに考えております。
  69. 石田宥全

    石田(宥)委員 もう一度確認をしておきたいと思いますが、法務大臣、これはもう二、三カ月結論を出しませんと、阿賀野川の場合も時効になって、刑事責任は問われなくなる、こういう問題です。私は、先ほど申し上げたように、佐藤総理や三木外務大臣や皇室にまで閨閥を持つというような政治的な背景で、ことに科学技術庁長官は自民党の中の派閥の関係もあって今日まで押えてきたのではないかといわれておる。一体今日までどういう研究をしてきたかということを私は聞いておるのだけれども、それを言わない。間違いなく三月末日までに結論を出す自信があるか。事務当局はすでに検討済みであって、政治的な処理の段階にあると私は承知をいたしておるのでありますが、三月中に確実に出せるかどうかをもう一度確認をいたしたい。
  70. 鍋島直紹

    ○鍋島国務大臣 私は、派閥そのほかについて政治的に動くことは絶対にいたしません。あくまで科学技術的に、その結論を公正に出す予定でございます。その内容といたしましては、大体二月前後までに各省から出た報告の内容につきまして、数カ項目あるいは数十カ項目に分けて、その一つ一つについての見解をまとめつつございまして、大体これらの見解がまとめ上がって、さらにそれを慎重に現在整理中でございます。したがいまして、私としましては、少なくとも三月一ぱいにはこの見解をまとめるようにと強く指示いたしておる次第でございます。
  71. 石田宥全

    石田(宥)委員 時間が迫ってまいったようでありますから、次にイタイイタイ病についてお伺いをいたしたいと思います。  科学技術庁は、先般六百万円ほどの資金を出して、イタイイタイ病に対する調査を進めるということにされたようであります。この問題はすでに過去四年間にわたりまして、厚生省におきましては、いわゆる重松研究班というものがあらゆる角度から検討を進めております。しかも、今度の研究は、神通川のカドミウム化合物の種類、含有量を調べるために、同川の百二十カ所で採水、八十カ所で採泥分析汚染源がどこかと、その寄与率などを調べるために、三井金属鉱山神岡鉱業所を含む鉱床地区の排水口に螢光物質を流すなど、調査をいたしまして、三月末には結論が出されるといわれております。学術的には完璧なものであろうといわれておるのでありますが、このときにあたりまして私は厚生大臣に対して、この結論なるものがいかなるものであるか-私がいま指摘いたしましたように、ほぼ完璧に近いものであろうと学界ではいわれておる。これに対して科学技術庁が六百万円ほどの調査費を出すことによって、阿賀野川における水銀中毒事件のように、あるいは熊本における水俣事件のように、その原因の究明をあいまいにし、引き延ばし、企業側を有利に導こうとする陰謀以外のものではないと考えるのでありますが、厚生大臣並びに科学技術庁長官の所見を伺いたいと思います。
  72. 園田直

    園田国務大臣 四月中に結論が出ることは大体間違いないと思いまするが、いままでの厚生省並びに関係省のいたしました研究調査の結果を見ましても、私はこの結論は大体間違いのない結論だと考えております。しかしながら、正式にはやはりその結論を待って、さらに検討する必要があるかどうかは検討しなければならぬと考えております。
  73. 鍋島直紹

    ○鍋島国務大臣 イタイイタイ病につきましては、厚生省において、ただいま石田委員が言われましたようなことで研究中でございます。科学技術庁としましては、この予防対策の確立というものに重点を置きまして、特別研究調整費から約六百万円を出して、厚生省及び通産省において御研究を願っておるのが実情でございます。特に今後の予防対策という点に科学技術庁としてはできるだけ重点を置いて御研究を願い、その御報告をいただきたい、こういうことになっております。  その研究の主要項目は三点ございまして、いわゆる河川におけるカドミウム化合物の変化その他の解明、それから汚染の自然発生と鉱山の操業による発生の関係においての研究、それから堆積物による変化及び堆積物からのカドミウム化合物の形態別変化挙動の解明、それで第一が厚生、通産両省の御研究、それから二、三が通産省独自の御研究にお願いをしております。
  74. 石田宥全

    石田(宥)委員 厚生大臣、大体今度まとまるであろうところの研究がほぼ完璧に近いものであろうという御見解のようでありますが、科学技術庁から二百三十万円ですか、配分された調査費によって別個の研究調査機関をお持ちになる御意思があるかどうか。さらに今度の場合は食品衛生調査会などで時間かせぎをする必要のない、そういう性質のものだと考えるのでありますが、食品衛生調査会等にまたおかけになる御意思があるかどうか。この二点を伺いたいと思います。
  75. 園田直

    園田国務大臣 両者ともその必要はないと考えております。
  76. 石田宥全

    石田(宥)委員 厚生大臣の明快な答弁がございましたから、私もこれをひとつ信頼いたしまして今後見守ってまいりたいと思います。  次にカドミウムの問題でありますが、農林大臣に伺いたいと思いますが、このイタイイタイ病関係調査は、昭和十八年以来専門家がこれにタッチしてまいりました。昭和二十七年以来神岡鉱業所はそれぞれ農作物被害に対する補償を出してきております。したがって神岡鉱業所はそのカドミウムあるいはその他の鉱害というものは認めておることは明らかでございまして、この点は今後農林省としてはどういう対策をお考えになっておるのか。農業補償はあまりにも少な過ぎる。面積が大きいのに二百五十万ないし三百万というわずかな補償にすぎない。スズメの涙ほどのものでございますから、これに対する農林省の農業補償についての考え方、並びに今後この水田に客土をするなどの措置が必要であろうと思うのでありますが、これは普通の客土ということでなしに、災害に対する補償のように、国庫負担というものを、相当に高い国庫支出をすることによって救済をすべきであろうと考えるのでありますが、農林大臣所見を承りたいと思います。
  77. 西村直己

    西村国務大臣 この地域におきまする農業被害でございますが、ただいまのところ地元の富山県からの報告によりますと、過去において認められたような被害は現在ではほとんど認められない、こういう報告をもらっておるわけであります。したがって、関係地域に対する対策として、県のほうは特にいまの段階では考えてない。しかしこれも当然私らのほうでは、県のほうから特にこういうふうなことをしたいという希望がありますれば、一般土地改良事業、こういったようなことの中で地元が取り上げてくるいろいろな考えがありますれば、それによってこの農業対策というものは受けとめていきたい、客土等もその中で受けとめていきたい、こういう考えでございます。
  78. 石田宥全

    石田(宥)委員 次にこのイタイイタイ病関係でありますが、自治省にお伺いをしたいと思います。  自治省は先般の委員会で、さきに医療費を県と市町村が全額を負担をした場合には特別交付税で考えたい、こういう答弁をしておるのです。ところが富山県知事は、国から、国と県と二分の一ずつ負担するようにという案が示されておる、こういうふうに県議会で答弁をしておるのでありますが、自治省としてはどういうふうにお考えになっておるのか。並びに、いわゆる医療費に対する負担の関係については厚生省はどのようにお考えになっており、また予算が計上されておるか。それぞれ御答弁を願います。
  79. 細郷道一

    細郷政府委員 イタイイタイ病の関係の財源措置といたしましては、それが特殊な地帯であります関係上、特別交付税によってその一部を処置いたしておりまして、四十二年度につきましても、富山県の市町村分といたしまして七百万円の処置をいたしております。
  80. 松尾正雄

    松尾政府委員 四十二年度におきましては約六十三万八千円という公害研究費を現地に出しまして、医療研究という名目でいろいろの手を打っております。それから四十三年度になりましては、これがいわゆる公害病であるという結論を得るに至りましたならば、公害医療研究補助金という二千万円のものを来年度計上することになっております。これを現地等とも十分相談をした上で支出をしてまいりたい、かように考えております。
  81. 石田宥全

    石田(宥)委員 厚生省のとりあえずの医療費に対する措置については局長から答弁がありましたが、さらにいまの答弁の中で明らかにされなかったようであります。何か疑問符のついたような答弁でありましたが、大臣に伺いますが、イタイイタイ病というものを公害基本法に基づく公害として取り扱うべきであると思いますけれども、どうでしょうか。  それから二番目には、医療費は全額国で負担すべきが当然である、こう考えますが、どうですか。  三番目には、緊急に簡易水道の施設をしなければならないと思います。これは国の監督不十分によるところから起こった問題でございまするから、当然国の負担の特例を認めてすみやかに実施すべきであると思いますが、いかがでしょうか。  さらに被害者救済基金はどれだけ予算化し、とりあえず何ヵ所ぐらいを予定しておるか、どれぐらいイタイイタイ病に回すことができるか、これをお伺いをいたします。
  82. 園田直

    園田国務大臣 第一の問題は、イタイイタイ病を公害に認定するかどうかということは、先ほど申し上げました研究班結論が出ました上で認定すべきである、こう考えております。  それから水道につきましては、ただいま御指摘地域調査が終了いたしておりまするから優先的にやりたいと思いまするが、その補助、それからイタイイタイ病の国庫の全額負担、こういう問題は特殊な問題でありまするから、なかなか困難であると思いまするので、事務的に研究をいたさせます。
  83. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に、これは文部大臣に伺いますが、先ほど来問題にしてまいりました熊本県における水俣事件では、東京工大教授の清浦雷作氏が熊本大学医学部研究中に、アミノ説という異説を唱えて調査を混乱せしめたのみならず、政府結論を出すあたわざらしめているのであります。これはほかの委員会で私に対して厚生省答弁をいたしております。さらに阿賀野川事件では、横浜国立大学の北川徹三教授は、国会において全く事実を曲げるのみならず、すりかえた写真を提示し、証人としての出席ならば罰則が適用されるような行為をあえてなし、その調査を意識的に妨害するようなことをやっております。イタイイタイ病についても、かつては河野稔博士が、鉱毒説を唱えておる者があるが、これは何ら根拠のないものである、などと学会で意見を述べております。それがために研究は停とんして今日に及んでおるのでありますが、さらにイタイイタイ病については今後また企業側に立った御用学者があらわれないとは言えないのであります。こういうふうな場合に、私は、文部省としてはき然たる態度をとるべきではないか、手続やその他いろいろございましょうけれども、少なくとも無責任な御用学者ぶりを発揮して調査を混乱させるような者の学位は剥奪すべきだ、国立大学の教授ならば教壇から追放すべきだ、それぐらい措置は当然なさるべきであろうと思いますが、文部大臣所見を伺いたい。
  84. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 問題とせられておりますような事柄に対しまして、学者がいろいろ研究をするということは十分あり得ることでございます。私は、御指摘になりましたような意見の発表は、それぞれ専門的な研究の結果として意見を発表したものと考える次第でありますが、これが御用学者であるとか、何か非常に非良心的なことをやっておるとかいうことになりますれば、これはそれぞれ各大学におきましても十分検討せらるべき問題であろうと存じますが、一般的に申しまして、学問的な研究の成果としての意見発表につきましては、たとえそれがどのようなものでありましても、これを文部省がかれこれするということはいかがであろうか、そのように考えます。
  85. 石田宥全

    石田(宥)委員 この点は、私はさっき具体的な例をあげたのでありますが、でたらめな写真を、すりかえたようなものを国会の委員会で提示しておるのです。証人なら当然これは罰則適用なんです。そういうような、言いかえるならば詐欺罪を構成するような行為が行なわれておるのです、国会の中で。そういう者に対しては適切な処置をやるのが当然ではないですか。
  86. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 その事実につきましては私は存じませんので、何とも申し上げかねる次第でございますが、その学者自体が事実を曲げて何かやったとかというようなことがありますれば、これは学者としての品位に関する問題でございます。また良心に関する問題であろうと私は思うのであります。そういう者につきましては、各大学におきましてそれぞれ適当な措置をとるものと考えますが、一般的に申し上げまして、意見はいろいろ出ることと思いますので、その意見がいかようなものでありましても、これについてかれこれ文部省が指図をするということはいかがであろうか、このように考える次第であります。
  87. 石田宥全

    石田(宥)委員 それは学者の品位に関し、権威に関する。だから私は指摘をいたしたわけであります。  いよいよ時間がないようでありますから、厚生大臣にお伺いしますが、昨年公害基本法が制定されましたが、これはいわば宣言立法であります。実体法について、大気汚染並びに騒音防止等に対する法案、特に緊急を要する問題としては紛争処理及び被害救済基金法、これらについては、これまた企業側の反対があり、通産省の反対があるので、提出困難ではないかといわれておるのでありますが、提案の時期あるいは今後の見通しを伺いたいと思います。
  88. 園田直

    園田国務大臣 御報告申し上げておりました三法案のうちの大気汚染と騒音規制は、近く今国会に提出するよう各省意見を調整中でございます。  紛争と救済の問題は御指摘のとおりに、問題だけにややおくれておりまするが、これも各省意見を調整する一方、各界の意見を聞くために、中央公害対策審議会にその御意見を求めております。その結論を待って早急にやるわけでありまするが、三法案について、おのおの各省意見はありまするが、決して一省の圧力であるとかあるいは反対とかというわけではなくて、法案成立のための各省の立場の意見が出て、その調整中でございます。
  89. 石田宥全

    石田(宥)委員 特に救済基金法の問題については、企業側が八分の五を負担するということに対しては反対であるということで通産省側に働きかけをし、通産省はそのような意向になっておると聞いておるのでありますが、これはひとつ厚生大臣、自信を持って、勇気を持って、通産省に押し切られないようにがっちりやってもらいたいと思います。  最後に、小矢部川メチル水銀の問題でありますが、富山県では、これは小矢部川だけではございませんで、その他数川が目下対象になって調査が進められておるようでありますが、今日までの調査の模様を簡単に御説明を願いたいと思います。
  90. 松尾正雄

    松尾政府委員 厚生省のほうでは四十二年度から、具体的な川の名前はちょっと資料を持っておらないのでございますけれども、小矢部川をはじめといたしまして十幾つかの河川について、水銀の汚染という問題の調査を実施しておるわけでございます。その一端といたしまして、最も早く結論が出てまいりましたのが小矢部川でございまして、あのどろの中に水銀が発見されましたけれども、私どもの立場では、やはり健康保持という観点に立ちまして、同時に魚の中にどれぐらいあるかということを押えてまいりませんと阿賀野川のような問題、水俣病の問題が起こってくるわけでございます。したがいまして、至急そういう魚の調査をいたしました結果、魚の中にメチル様の物質があるということが明らかになりましたので、そういうものの漁獲あるいは多量に食べるということを自粛していただくような方向へ進んでおるわけでございます。
  91. 石田宥全

    石田(宥)委員 厚生省に要望をしたいのでありますが、これはいま局長答弁されたように、五川ほど指摘されておる。この調査はやはりすみやかに完了をし、同時に水俣阿賀野川のように、いつまでもはっきりした結論が出ないようでは困りますので、そういうことのないように、これは科学技術庁にも要望をしておきたい。  それから科学技術庁には、去年の予算委員会で私は水銀の許容量というものを設定すべきであるということを主張しておきました。当時長官は、その準備をします、こういう答弁をしておったのでありますが、許容量というものが明らかになりませんと、今後のこれら数河川に対する対策もまた万全を期しがたいものがあると考えられるので、これはひとつはっきりしていただきたい。要望をしておきます。  それから農林大臣に伺いたいのでありますが、実は私は阿賀野川水銀中毒で経験をいたしておりますが、メチル水銀が検出されたということになりますと、もはや魚を幾らとってもだれも買い手がございません。そうすると、漁獲を業としておる漁民の諸君が直接非常に深刻な打撃をこうむることになるわけであります。しかも小矢部川も、これは自主規制ということのようであります。阿賀野川の場合も禁止したのはほんの一部でありまして、大部分は自主規制をさせられておる。これはいずれにいたしましても漁獲はできませんし、そして生業は成り立ちません。阿賀野川のごときは毎年二百八十万尾の稚魚の放流を義務づけられながら、今度は漁獲ができない。ほとんどこれに対して補償が行なわれていないのです。県がわずかの見舞い金を出したにすぎないのでありますが、小矢部川の場合は非常に貧しい漁民が多いようでありますので、これに対してはやはり、自主規制だから政府責任がないなどという無責任な態度はおとりにならないであろうと思いまするけれども、一体農林省としてはどういう措置をお考えになっておりますか、承りたいと思います。
  92. 西村直己

    西村国務大臣 阿賀野川の場合におきましては、十分ではございませんけれども、短い期間でありましたが区域の規制等もありましたので、指導助成等の費用あるいは融資等を行なっておりました。小矢部川の場合におきましては、現在私どものほうで、状況によりましてやはりそういうような問題をよく検討いたしましてまた考えてまいりたい、こういう考えでございます。
  93. 井出一太郎

    井出委員長 石田君、時間がきております。
  94. 石田宥全

    石田(宥)委員 約束の時間がまいったようでありますから、まだ不十分でありますけれども、この程度で協力をいたしたいと思いますが、ただ、いままでの答弁を承っておりますと、必ずしも誠意のある答弁が行なわれたとは言いがたい。農林大臣の最後の答弁なども何ら具体性を持っておらないようであります。これらは官房長官の手元で、今後大気の汚染やら騒音やら、いろいろな公害がございまするので、それに対してはやはり政府全体の問題として善処をされるように要望を申し上げて、ちょうど時間がまいりましたので、この程度にいたしたいと思います。(拍手)
  95. 井出一太郎

    井出委員長 これにて石田君の質疑は終了いたしました。  次に岡本隆一君。
  96. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 先日の予算委員会で、地価問題につきまして総理から、地価の抑制のためには私権の制限もやむを得ない、また同時に、建設大臣から、土地利用計画を策定するだけでは地価は押えられない、むしろ暴騰する地価を抑制するためには他の適切な手段が必要である、税制改革が必要である、こういうふうな御答弁がございました。そういう前提に立ちましてきょうお尋ねをするのでありますが、とにかく地価の抑制問題というのは、昭和三十九年に国会で地価抑制の施策を強化せよということを院議できめまして以来すでに四年になるわけであります。したがって、政府といたしましても、当然何らかの地価抑制についてのプログラムが立っていなければならないと思うのであります。どういう方法で、いつごろまでに地価を抑制するのか、そういうふうなプログラムを、少なくとも構想としては描いておられなければならないと思うのでございますが、まずそういうふうなプログラムについて、企画庁長官からお答えを願いたいと思います。
  97. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昭和四十年の末に、地価対策閣僚協議会というものを開きまして基本方針をきめたわけであります。それらは幾つかの問題にわたっておりますけれども、一つは宅地を、結局供給面の問題としては、大量を計画的に供給する、それから既成の市街地を高度に利用する、それから土地取得制度についての改善、これは御承知のように土地収用法などでございますが、それから土地に関する税制をどういうふうに改善したらいいか、それからただいま御指摘の土地利用計画を確立する、これは御審議中の都市計画法のいわゆる新法の関係でございます。それから地価形成の適正化、この問題は、たとえば政府、公共団体が公共用地を取得いたしますときに、取得のしかたがばらばらでございますが、何かそれを統制する、統一する方法がないかといったような、ほぼそれらの問題でございます。
  98. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 いろいろ方法を並べていただきましたが、それをどの程度の期間で、どういうふうにしてやるかということを、もう少し具体的にお示し願いたいと思います。
  99. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず宅地の供給の問題でございますが、これは、四十二年度にも、また御審議いただいております四十三年度予算においても、公団等で相当大幅な供給計画をつくっておるわけであります。  それから既成市街地の高度化につきましては、すでにこれは御審議中の市街地再開発の法案、これによりまして法律問題を整理いたしまして市街地の高層化をいたしたいと考えております。  土地取得制度の改善につきましては、すでに土地収用法の改正案を御可決いただきましたので、これは間もなく実施に移るわけであります。事業認定時の価格をもって価格をきめる、こういうことでございます。  税制につきましては、税制調査会で審議をいたしております。これはおそらくことしの秋ぐらいまでかかるのではないかと思っております。  土地利用計画は、幸いにして都市計画法の新法を御可決いただきますと土地利用計画がかけるという権限を得ることになるわけであります。  地価形成――公共団体による取得の問題については、物価安定推進会議から提案がございまして、各省の間で協議をいたしております。
  100. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 いまから十日ほど前でございますけれども、建設省は東京周辺の地価を公表されました。それを見ますと、とにかく通勤一時間以内で六万円以下の土地はないというふうなことが出ておりました。同時にまた、一昨年の秋から昨年の秋にかけて、その辺の地価は二〇%上がっておるということが書いてございます。そういうようにいたしまして、政府の施策がきわめてマンマンデーに進んでいる間に地価はどんどん上がついっているのであります。国民が期待しておるのは、とにかく一日も早く地価が安定して国民の住生活が安定するということでございますが、いまの企画庁長官の御答弁では、こういうふうな方法を講じて目下やっておりますというふうな程度でありまして、いつごろまでに地価はきちっと押えてみせるんだというような政府の決意のほどというものがちっともないのです。まあ上がっていくものはしようがないでしょう、しかし、やいやい言われるから何とか手を打っております。こういうふうな程度より私には受け取れないのでございますが、官房長官にお伺いしますが、一体政府全体としてどういうふうな考え方で地価対策を進めておられるのか、皆さんの御意見を聞きまして各方面で納得されるようにして、なるようになるでしょうというふうな形で進めておられるのか、あるいは、ここ少なくとも二年ないし三年のうちにはびしっと押えてみせるんだ、そうして地価はそれ以後は上がらないようにしてみせるんだ、これくらいの決意があるのかないのか。きょうは総理からそういうことを伺いたかったのでございますが、政府としてのそういう考え方を官房長官から聞かせていただきたいと思うのです。
  101. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 御承知のとおり地価対策、非常にむずかしい問題でございまして、政府においてはもちろんいろいろ決意を持ってやっておりますが、ただ土地の問題にいたしましても、その供給面あるいは取得また造成面、と同時に、先ほど岡木委員がおっしゃいましたような税制制度の改善を通ずる問題、いろいろございますが、それらを総合的に検討いたしまして、二年三年という期間でなしに、もっときわめて慎重に扱わなければならぬ問題もございますので、できるだけ早く安定するように努力したいと思います。
  102. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 二年三年というような期間でなしに、もっと慎重にやりたい、そういうふうなゆうちょうな御答弁では私は満足できないのです。すでにもう地価安定施策の強化の必要があるということを院議できめまして四年になるのです。それがいまになって二年三年というような気の短い話でなしに、もっと慎重にということであるとするなら、これは国民の側からいたしましたら、いつになったらという気持ちがするわけでございます。そういうふうな御答弁では満足できませんが、しかしこれ以上あなたに話をしておっても、のれんに腕押しになると思いますから、この程度にいたしておきまして、その次、地価安定の施策の方法として今度は都市計画法が出てまいりました。その都市計画法を出してきたねらいの一つといたしましては、政府としては公共投資の効率化ということを考えておられると思うのですね。しかしながら私どもといたしましては、これが地価の安定に大きく役立つから、こういうふうな考え方に受けとめて、国会でまじめに審議していくつもりであります。そこで、この地価安定施策といたしまして、先般建設大臣は、税制に期待するところが大きい、こういうふうな御答弁でございましたが、それより、建設相自身として、建設大臣みずからが直接に、こうすれば地価は安定できるはずだがという何らかの構想というものがなければならぬと思うのでございますが、それについて建設大臣からお答えを願いたいと思います。
  103. 保利茂

    ○保利国務大臣 非常にむずかしい問題であります地価の騰貴をとらえられまして、国会におきましても共同決議をされておられます。先ほど経済企画庁長官が申し上げましたように、政府といたしましても、四十年の十一月の閣議決定以来、決してゆうちょうなかまえで扱っておるわけではございませんけれども、行政指導だけの面でこれに対処するということは事実困難な面が多うございますので、この上とも国会の御審議をわずらわして、できるだけひとつ国民の御期待に沿うような安定方策を立てていかなければならぬではないか。そこで平たく私の考えを申し上げますれば、たとえば都市計画法をかりに成立させていただくとすれば、これは実施運用上に非常に注意を要するところだと思うのですけれども、市街化区域と調整区域を分けるその分け方というものによって、ある土地の値段は押えられて、ある土地の値段は非常にまた上昇のかまえをとるようなことになる心配があるのではないか。そういうことで、言われますところの開発利益というもの、これをどう公共還元といいますか、社会還元方策をとるかというようなところはどうしても税制の上に期待をしなければならぬのではないか。そこで私としましては、先般も申し上げましたように、ただいま御審議をいただいております税制調査会の結論、その点に非常に期待をかけるわけであります。  もう一点は、全体といたしまして土地に対する需給の異常なアンバランスが上昇を来たしている大きな理由でもありますが、それに乗じて土地がいわゆる利殖といいますか、投機、思惑の対象に扱われ過ぎた。それがまた火に油を注いだような形になっておりますから、これに対しても抜本的な税制を打ち立てなければ、少なくとも土地に対する思惑、投機というようなものが抑制されるということでなければ地価の安定ということをはかるということは不可能だろう、かように考えて、何とかやらしていただきたい、そうしてできるだけ早くその達成をいたしたいと考えております。
  104. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 私のお尋ねしているのと少し的がはずれているのです。私が申しておるのは、そういうような意味におけるところの税制改革だけでなしに、それはもう人頼みになるわけであります。いわゆる他力本願、ことばが違うかもしれませんが、とにかく人頼みになるわけで、そんなぬれ手でアワということじゃだめなんです。建設省自身がこうするという考え方を持たなければだめだと思うのです。  私どもはかねてから地価対策といたしまして、土地売買は公営にすべきである、こういうことをわれわれは主張しておるのであります。こんなことはとつくからあなた方のほうも御承知であろうと思うのであります。とにかく都市計画法が出てまいりました。市街化地域と市街化抑制地域とに分けられます。しかも地価対策が行なわれなければ市街化地域にどんどん開発エネルギーが集中いたしますから、市街化地域の地価は暴騰するのが当然であります。だから市街化地域の土地の売買というのは完全に公営にすべきである、公的機関にすべきである。私どもは土地公団とでもいうべきものをつくって、土地を売りたい人は全部その機関へ売る。今度はその機関が必要な人に売り渡す。あるいはまた使わない人があって、売るのはかなわぬ、財産として持っていたい、それじゃ貸してくれということで土地公団が借ります。借りた土地をどんどん開発して、そこへ住宅を建設していく。適正な、物価にスライドしたところの地代を払っていけば、それで住宅建設ができるわけですね。そういうふうな公的な土地売買や、あるいは土地の権利の移転の公営というようなことをやるべきである、こういうことを私どもはかねてから主張しておるのです。ところが、一週間ほど前に、こうすれば土地は安くなるというところのパンフレットが参りました。これは全議員にいっていると思うのです。ごらんになったと思うのです。これを書いておる人は保守系の土地ブローカーです。不動産業者です。不動産業者でも、地価安定のためには農地法の改正をやらなければいかぬ、さらにまた、土地の売買の公的な国家機関をつくれ、こういうことを言っておるのです。まじめに土地問題を考える人はこういうふうな方向へどんどん進んでおる。そういうふうな構想が、政府の中にもわかっておりながら、そういう方向へ少しも進めようとされない。このパンフレットは一、二年前にも来たことがあります。前にも一度これを見ました。この人はずいぶんこの問題を熱心に説いております。こういうふうな意見がすでに出ておりながら、また、こういうものを出してこられたら野党もすぐ協力するのです。にもかかわらず全然それを出してこられない。建設大臣、あなたは、ひとつあなたの代に地価問題を解決したという一つの大きな功績を残すために、こういう問題を検討してみられるお気持ちがあるかないか、お伺いいたしたいと思います。
  105. 保利茂

    ○保利国務大臣 岡本さんは長い間土地問題と取り組んでおられ、いろいろな貴重な御意見を持っておられるので、お伺いしながら私も勉強しておりますが、市街化区域の土地はみんな公的機関によって買い上げて、それを再配分していくというような考え方は、考え方としてはりっぱに成り立つと思うのですけれども、私はまず、ただいま実施準備をいたしております地価公示制度を実施することによりまして、そこに土地取引のおおよその目安が立ってまいり、一面において私有財産制度を尊重しつつ、しかも土地の持っている社会性、公共性に妥当な値段で取引が行なわれれるようになればいいんじゃないかという程度に考えております。
  106. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 そういう地価の公示をやられても、むしろそれはある姿、ある地価を評価していくだけありますから、だから逆にそれはつり上げになるのです。現にこの間公示されたのでも、そういうようなことを意識していない人でも、おお、そんなにどんどん上がるのか、そんならちとおれらも子供のために買うておかないかぬな、あるいは買うておいたらもうかるだろうというようなことで、投機意欲を起こさせるだけでありまして、決してそんなものは地価の抑制に役立たないのです。むしろそれよりも土地を現実に有効に使っておらない人は、とにかく全部、市街化地域の中では有効に使わしてください、買わせてもらってもけっこうです、貸してもらってもけっこうです、土地公団の手でもって土地の有効利用をやっていきます。こういうふうな積極的に土地の供給をはかっていくための機関として、しかも地価の安定をさせるための機関として、そういう施設をやらなければならぬと思うのです。それをあなたのような、そんなのんきなことを言うておられましたら、地価はぼんぽこ上がっていく一方ですよ。私はいまからやれと言っておるのじゃない、ひとつまじめに検討してみてはどうか、こういうことを言っておるのでありますが、それをやってみようというふうな御答弁もないということでは、これは引き下がれないのです。
  107. 保利茂

    ○保利国務大臣 私は、いま私の考えを申し上げましたけれども、岡本さんから出ております御意見につきましては、これはもう真剣に検討をいたしていきます。(「それ以外にないんだよ」と呼ぶ者あり)いや、それ以外にないとおっしゃいますけれども、私は必ずしもそうも思わないのでございますから……。しかし、十分これは慎重に検討してまいりたいと思います。
  108. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 もう一つ、その土地の取得の問題にからんで、私は土地の公的な借り入れ制度というものを土地取得の制度の中にもっと入れるべきじゃないか。これは、たとえていえば、農家から土地を買います。そういたしますと、やはり将来の生活保障ということを考えますから、相当な価格でなければ手放さないのです。しかしながら、損失補償をする、そうしてその人の生活をある程度保障するというふうな地代を出します、それは物価と一緒にスライドさせてだんだん地代を払っていこういうふうな形でもって、住宅公団にいたしましてもあるいは土地の保有機関をつくりまして、そういう保有機関がそういうような公的な借り上げをやっていくということによりまして、一応政府の出資は要らないわけでありますし、同時に、相当な広い宅地開発の用地を取得することができたら、どんどん住宅事情というものの緩和に役立っていくであろう、私はこう思うのであります。それはあとあとめんどうだというようなこともありますが、いま日本で――こういうことを、私から大蔵大臣のかわりのようなことを言わなくてもいいですが、しかしながら、財政的ないろいろな見地からいったら、土地の公的借り入れ制度というふうなものも土地の得取制度の中へ入れていく、織り込んでいくということも考えてみるべきではないかと思うのでございますが、御所見はいかがですか。
  109. 保利茂

    ○保利国務大臣 もろもろの御提案でございますから、御提案につきましては、慎重に検討いたしてまいります。去る臨時国会の予算委員会の御論議の際にも、民間の私権を保護しつつ開発をはかっていく手があるじゃないかという御提案もいただいておりまして、そのことも住宅局ほか関係当局で検討いたしておるわけでございますが、あわせて検討させていただきたいと思います。
  110. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 建設大臣は、税制調査会の審査の結果を期待しておるというふうな御答弁が先ほどございましたが、これは大蔵省や自治省の協力がなかったらできないと思うのです。   〔委員長退席、小川(半)委員長代理着席〕 したがいまして、先ほど話に出ておりました開発利益の吸収であるとか、あるいはまた投機的売買を抑制するための税制改革というふうな面につきまして、大蔵大臣はどのようにお考えになりますか。  また、自治省でも、先般、自治省の官房長をやっておられる、宮澤さんの弟さんが書いておられる土地利用制度についてのパンフレットがございましたが、かなりわれわれと似たような考え方を持っておられる。ああいうようなことをやられるなら、われわれも政府のやり方にたてつくことはちっともないのです。大いに協力できる面がずいぶんあるのです。その中に、固定資産税とかあるいは都市計画税というふうな形で、市街化地域について、しかもそれが有効に利用されるような方法でもって税制を変えていくことができるというふうなことが書いてございましたが、しかしながら、あれは公的なものでなしに、どうも研究した成果を自治省のほうで一部のなにが発表されかという程度のように私は理解しておるのでございますが、あれは公的に発表されたのか、同時にまた、どういう資格でああいうものが出てわれわれに提示しておられるのか。そしてまた、自治省としてはああいうふうな考え方で大いにやりたいという意欲を持っておられるのか、その辺を承り方いのです。
  111. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私のほうでは、いわゆる土地秤制に関した勉強はしております。そこで、むずかしいと思いますことは、何といっても、この需給の逼迫を緩和して地価の上がらないようにするということがやはり土地問題の要諦でございますので、そういう意味から申しますと、やはり本来の土地政策というものを樹立しなかったら土地の問題は解決しない。たとえば、いま農地の売買は自由化されておりませんが、都府周辺の農地のあれについてはどうかというような、需給の逼迫をどう緩和するかということが中心になるだろうと思います。そういう点から言いますと、税がどれがけの役割りを果たし得るかという問題でございますが、たとえばここは都市化の地域だというふうになりますと、いまおっしゃられましたように、そこは暴騰する。だから、開発利益を吸収しようということで、税においてこれを強化するということをやりますと、これは売ったら税金が多く取られるということで、ほとんどみんなが売らないでこれを持ってしまうということで、需給の梗塞化、むしろそういう傾向を起こすほうに税が働いてしまうというようなこともございますし、空閑地税の問題もありましたが、何が空閑地であるかということが利用計画において明確にならなければいかぬということで、一時停滞しておりましたが、ようやく土地の利用計画というものが政府において立てられてきましたので、それと関連してこの問題もいま検討の事項になっております。これも早く売らせて、そうして需給の緩和をさせようという方向へ税制が働くのかどうかということについてはいろいろ問題がございますので、結局いまみたいに土地のほんとうの私有制度を認め、自由だという立場に立ちますと、税制をひねくればひねくるほど土地の値を上げるような方向になるので、あなたのおっしゃられるような、そこに土地に公的な性格を持たせて、そこでどういう対策をするかということによって、抑制することによって、税の優遇をするというような逆の方向で解決しなければいかぬじゃないかという問題も出ておりまして、これはむずかしい問題でございますので、私どもは一括して税制調査会に移して、特別の部会を設けてもらいまして、土地税制部会というものをつくっていまこれを研究してもらって、八月ごろまでには結論を得たいと思っております。
  112. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 私の役所の宮澤官房長のことに触れられましたが、言うまでもなく、秀才ですから、この問題にも非常に執心いたしまして、グループをつくって研究したものを発表いたしたようでございます。私も知っております。ただいまお読みになりましたパンフレットも十日ばかり前に私のところにも参りまして、興味深く読んだわけでございます。この土地制度の問題は、私たちも重大関心を持っておりますが、政府与党だけの問題でもありませんし、こういう問題こそ皆さん方とも議論をし尽くして、名案を考えていく筋合いのものだと思います。  さっき固定資産税のことがちょっと出ましたので、それは私の所管でございますが、この面から考えましても、結局事実土地の価格評価をいたします場合に、農地と宅地と並んでおりましても、農地法があのとおりでございますし、そういたしますと、一応宅地の許可を得て変換ができました時点で評価いたしませんと、どこにある農地を宅地並みにするかといった問題につきましても非常にむずかしい。さっきも大蔵大臣や企画庁の長官が申されましたように、土地利用計画というものを十分考えなければならぬし、むずかしければこそ、税調の中にただいま大蔵大臣が言われました小委員会もつくって、懸命にいろいろな検討を加えていただいておりますので、遠からず結論が出ることを私どもも期待いたしております。
  113. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 土地の値上がりの一つの理由には、いま大蔵大臣言われたように、なるほど税制をいじれば値がりするというふうな面もないではないですが、しかしながら、土地をじっと持っていってもあまり金がかからない。腐りもしなければ、費用もかからない。そういうことが、結局じっと持っていって値上がりを待つのに非常に都合のいいものだ。だから、そういう意味では、市街化されて、当然公共投資が行なわれて、相当道路もでき、下水もでき、ガス、水道も通っていくというふうな公共事業の開発が行なわれたときに、そこを遊ばしておるということによって、相当金がかかってしょうがない。それは税制でしょうがないのですね。だから、そういうような形で公的に、公共の用に供してもらうというふうな形におけるところの税制というものは、これは当然あってもいいと思うのです。だから、そういう意味における税制改革というものは配慮すべきだということを私どもは申しておるのであります。  それから、農林大臣にお伺いいたしますが、都市計画法が出てまいりますと、農業振興地域の整備に関する法律というものが農林省の中で計画されておる、こういうことを聞いておるのでございますが、この法律というものは、都市計画法が出たので、それに対抗しておれのところも農地の確保のために出そう、こういうふうな意味で出てきたというふうなものではなくて、これは都市計画を補完するための法律だ、私はこういうふうに考えておるのでございます。先般も農業団体の人が出てまいりまして、市街化地域ができます。それから調整地域がでそうすると、その調整地域というのは、農業投資も行なわれない、また都市化のための公共投資も行なわれない、政府の対策の谷間になるのではないか、こういうことを言って非常に心配いたしておりましたが、そういう点について、振興地域の整備に関する法律というのはどういうふうな役割りを果たさせるつもりなのか、またその大体の考え方というものをお伺いいたしたいのと、もう一つお伺いいたしたいのは、市街化地域の中の農家は、十年くらいの間に当然都市用の土地として提供してもらわなければならぬというふうなことになるわけでございます。したがって、それらの人たちは、転業するか転地をするかというふうなことを余儀なく宿命づけられるということになるのでございますが、こうした農家に対するところの対策を農林大臣はどのようにやっていきたいとお考えになりますか、その二点についてお伺いいたしたいのであります。
  114. 西村直己

    西村国務大臣 確かにおっしゃるとおり、農林省におきましても、農業振興地域整備に関する法律案というのを立案、かつ、各省関係で調整をいたし、この国会に提案をいたしたいという意図を持っております。これは都市計画の新法が出ますのに対抗的に出すというよりは、むしろ、ただいま岡本さんがおっしゃったように、農業と、それから無秩序に発展する市街地化関係とを相互に調整し合っていこうという、いわゆる国土の高度利用と申しますか、総合利用の観点から、私どもは私どもなりに一体的に考えて立案をいたしておる。そこで、新都市計画法におきましては、市街化地域、調整区域という、いわゆる抑制区域と市街化区域ができますが、私どものほうで中心にしますのは、農業の立場から、現状あるいは新都市計画法以外の地域あるいは新都市計画法の中の抑制区域等におきましても、その地元、地元の市町村等が、全行政と申しますか、総合的な中でいろいろものを農業中心に考えていく、同時に、それをまた町村単位だけでいいかげんに考えられては困るから、知事においてその区域を指定する。したがって、おそらく法案の骨子は、知事がそういう地域を指定して――市街化地域はもちろん入りません。振興地域のある程度が入る。同時に、都市計画地域外の地域も入りましょう。そうして町村が計画を立てて、年次を追うてこれを順次指定しながら、土地の総合利用と申しますか、それから環境の整備、いわゆる農業の自立経営にふさわしい環境整備をつくってまいる、そういうような考え方でございます。  それから第二の点は、あるいは御質問の要点がちょっとつかめなかったのでありますが、両者の谷間になるようなところとおっしゃったかと思うのですが、両者の谷間になるようなところも具体的には出てまいる、あるいは地域指定いかんによっては出てまいる。元来、市街化地域を指定するときには、すでにここまでは市街化地域で指定するぞというときには、農林大臣に建設大臣協議をしていただく。両者協議でございますから、十分そこには農業の立場、将来の市街化の現象を見通しながら、調整し合って区域をきめる。それから、それ以外に、調整区域等で谷間になるところにつきましては、将来の農業の展望等も考えまして、農林省が十分にそれにふさわしい、また実際に適したような指導なりを考えてまいりたい、こんなことで農業の面からもやってまいりたい、これが趣旨でございます。
  115. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 農林大臣に私のお尋ねの趣旨が十分理解していただけていなかったのではないかと思いますので、もう一度お伺いいたしますが、市街化地域になったところの農家は、これは十年ほどのうちには転廃業するか、あるいはとにかく農業をやめんならぬ。だから、そういうふうな地域の農家に対してどういうふうな措置を講じられるかということが第一点。  第二点は、市街化地域と調整地域がありますね。いま市街化地域についてはもう振興地域に指定しないということをおっしゃいましたから、よくわかりました。そうすると、振興地域というのは、調整地域とあるいは都市計画外のところとについて行なわれるということがわかりましたが、それじゃ市街化調整地域、市街化抑制地域で、振興地域には指定されない、また都市化のための市街化地域にも指定されておらないというふうなところが、公共投資の谷間になりはしないかということを農業団体が心配しておるということを申したのでありまして、それについて、それが農業に適地であれば、調整地域をどんどん振興地域に指定していくんだというふうなお考えが明らかになれば、農業団体の人の不安も一掃されるであろうと思うのでございますが、これはかわりに、何といいますか、こちらがサゼスチョンをなにするような形になって失礼でございますけれども、ちょっとそういう点についてお伺いしたいのです。
  116. 西村直己

    西村国務大臣 あるいはお答えがまた十分でないかもしれませんが、漸次、時間をかければ明らかになると思いますが、要点を申し上げますと、市街化区域の中で農家として残るものがまずあります。それに対しましては、われわれのほうから積極的な農業指導ということはしにくいでございましょう。将来十年のうちには市街化する、しかし、それでも農家をやっていこうという場合においては、積極的にはやらないにしても、いろいろな面から、農業が、その土地にふさわしい蔬菜とかいろいろな園芸とかの面でやっていけるような面から考えていく。それから、抑制地域の中においても、振興地域に入るものは問題でありませんが、谷間になっているものにつきましては、やはりそれに準じたようないろいろな、市街化地域ではないし、農業の全体の地域ではないけれども、地形あるいはその環境に応じた指導ができると思います。  それから第三点が、転廃業をしていきたいという人につきましては、われわれはそれに応じまして、他の職業へ転廃業したいという人がありますれば、これは労働省関係もありますが、農家の労働力対策といいますか、農家労働力対策事業というものの一環として、職業安定所あたりを中心に職業転換給付制度というもの、あるいはこれを活用いたしまして、転職の円滑化というものをわれわれはばかって御相談に応じてまいりたい、こんな考えでございます。
  117. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 いろいろ農林省として考えていただけると思いますが、もう一つ、私は、やはりそういう人たちが農業を希望する場合には、できるだけもよりで、林野とか山林とか、そういうふうな地域政府の力で開発して、農地をかわりに提供するというふうなことを真剣に検討をしていただくようにお願いをいたしておきたいと思うのです。  それから、住宅問題に入ってまいりたいと思いますが、西村建設大臣の時分には量より質へということがいわれておりました。ところが、保利さんになりまして、今度は質より量だ、こういうことを言い出されてまいりましたが、建設大臣にお伺いいたしますが、いま住宅建設五カ年計画の進行中で、ことしが三年目でございますが、この進行は順調に行っておりますのでしょうか。その辺をお伺いいたしたいと思います。
  118. 保利茂

    ○保利国務大臣 私は、質よりも量だというようなうたい方はいたしておらぬのでございまして、ただ、問題は量でございますが、とにかくこれだけ努力をしてまいっておりますけれども、住宅難と申しますか、なかなか解消されない。どうしても住宅難から来る国民生活の焦燥感を一日も早く解放するということが、当面何よりも大事じゃないだろうか。しかし、もちろん住居水準もきめておりますわけですから、その住居水準にのっとって二月でも多くふやしたい。それで、四十三年度はせめて施策住宅を五十万戸だけを何としてもこぎつけたいということで努力をいたしましたが、御案内のような財政事情でございまして、ほぼその達成にはかかっておりますけれども、しかし、それでも、全体計画からしますと四十三年度をもってして五〇%をやっと上回るという程度でございます。残るは二カ年間でございます。達成は容易ではないと思いますけれども、政府としましても、とにかく重点中の重点施策としてとっておりますから、ぜひとも五カ年計画は達成をいたしたいという考えでおるわけでございます。
  119. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 ぜひとも達成いたしたいという御信念のほどはまことにけっこうでございます。しかしながら、政府昭和四十年、四十一年、二カ年の建設状況を見ますと、いずれも政府の計画は、四十年には百四万四千戸であったのが八十四万二千戸より建設されておらない。それから四十一年には、これも百四万四千戸の計画でありながら八十五万六千より建設されておらないというふうに、実績が非常に下回っております。   〔小川(半)委員長代理退席、委員長着席〕 また、四十二年、昨年一年の建設数にいたしましても、計画は百十六万であるにかかわらず、百七万、十万け込んでおるのです。したがって、いま政府が四十一年から四十三年、今度計画されておるなにでも、かりに、四十三年に政府が民間建設となにを合わせて百二十七万予定しておられますが、それが百二十万程度であると仮定いたしましても、五カ年計画の前の三カ年間に三十五万五千の不足がもう出てくる、こういうふうに私どもの予想  これは相当甘く見た予想でございますが、そういうことなんです。こういうことでは、これは量より質へという方向が、質より量だというふうに建設大臣があわてられる理由が、ここにあるのではないかと思うのでございますが、いまそういうことになってまいりますと、これは建設大臣はどうしてもやってみせるんだ。そうすると、現在五カ年計画の前三カ年でもって三十五万五千戸不足しておる。この不足は民間自力建設戸数の見通しの誤りに基づくものであります。だから、そういう見通しの誤りというものは、当然公的建設で補わなければ六百七十万戸建設できないわけなんです。だから、それじゃ今度四十四年、四十五年の二カ年でもって、見通しの誤りに基づくところの民間自力建設が少ない、その分は公的建設でもって補わなければなりませんが、そういうふうな考え方を持っておられますか。また、大蔵大臣は、そういうふうな財政的な運用というものに御協力願えるのかどうか、こういう点をお伺いいたしたいと思うのです。
  120. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この五カ年計画はどうしても私どもはやりたいと思います。で、御承知のように、今年度はこういう経済情勢のために公共事業の抑制ということをいたしましたが、しかし、実際においては住宅だけは私どもは別扱いをしたつもりでございまして、財政投融資のできる限りのものもこれに投入いたしましたし、一般の公共事業費とは別に、本年度においてもこの住宅政策を重視してやった次第でございますが、経済が立ち直ってまいりますれば、今後さらにこれは強化できると思いますので、あと二年で私は一応政府の計画を実行するということはできるんじゃないかというふうに、またそれだけ力を入れるつもりでございます。
  121. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 大蔵大臣、非常にけっこうな御答弁でございますが、あまり話がうま過ぎる。ちょっとすらりとおっしゃって、あまり話がうま過ぎるので心配いたしますが、しかと間違いございませんね。とにかく民間自力建設戸数は政府の予想をはるかに下回っておる。だから、下回っておる分を現在政府が予定しておられるところの政府施策住宅の上に上積みして、建設戸数を増してでも五カ年計画をやり遂げる、こういうふうにいまお答えを私は承りましたが、もう一度念を押しますが、間違いございませんね。
  122. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ちょうど三年間で約半分ということでございますので、あと二年で半分ということは相当つらい仕事だと思いますが、これはやはり年々日本経済が伸びておりますし、財政力の伸びに応じて後年度ほど――最初の計画の出発点よりは、後年度に必ずこの計画的な事業は力が入るのが例でございますので、そういう意味から、あと二年においてできるだけの努力はしたいと思っております。
  123. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 大蔵大臣、ちょっとすれ違いだと思うのです。大蔵大臣は三年間に半分だと言われるのは、公的資金による住宅建設戸数を言っておられると思います。公的資金による住宅建設は、あと半分はこれは当然おやりになると思っております。しかしながら、民間自力建設が政府の予想ほど進んでおらないということなんです。年々十万ずつ足らぬのです。そうすると、年十万平均とすれば、五年で五十万戸民間建設が足らないから、だから、政府施策はなるほど二百七十万戸お建てになりましても、四百万戸建つはずだと考えておるところの民間自力建設が五十万戸ほど不足になるのです。その不足数を公的資金で建ててみせる、建ててみせられますか、こう尋ねておるのに対して、あなたはそうしてみせるとおっしゃったのでございますが、そうなってくると、ちょっと話が違うからやめやと言われますか、その辺を伺いたいと思います。これは大蔵大臣に聞かないとわからないのです。
  124. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、民間建設部門じゃなくて、お答えしましたのは、政府の計画で一応責任を持っておる部分のお話しをしたわけでございます。
  125. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 だから、そういう政府の計画についてはわかるが、しかしながら、私が最初からお尋ねしておるのは、民間自力建設が進んでおらない。その分をどうするんだ、こう言って尋ねておるのです。これは六百七十万戸必ずやってみせると言われる限り、政府が五カ年計画を立てて見通しを誤ったら、その分六百七十万戸――われわれは七百六十万戸でなければいかぬ、建設省の当初の計画どおりでなければいかぬと言っておったのを、五カ年計画のときに大蔵省が六百七十万戸に減らしたのです。それをまだ民間建設が進まない、その足らぬ分はさらに政府責任を負う、これくらいのことはあたりまえじゃないですか。それを、いや民間のほうはわしゃ知らぬでは困るのです。どうですか。
  126. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私の聞いております範囲では、民間のほうが政府のよりもむしろ進んでいるというふうに1政府のほうがまだ五カ年の三年かかって半分くらいですが、民間のほうは計画よりも上回っておるというふうに私は聞いております。
  127. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 これは、住宅統計年表というのを政府がずっと計画局から出しております。私はそれを見てきてやっているのです。だから、私はいいかげんな数字を並べていないのです。とにかく政府のほうはこの計画を立てておられるのに対してずっと毎年建設総数が少ないのです。時間がないから、こんなのを一々見て突き合わしていたんではちょっと困難ですが、この政府が出しておるところの統計を見て私はものを言っているんです。計画戸数よりはるかに少ないのです。十万ずつほどけ込んでいるのです。私の聞くところでは民間のほうが進んでおるなんて、そんなばかなことはないですよ。それはもうずいぶん少ないのですよ。そんないいかげんな答弁をしてもらったら困りますよ。
  128. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えいたしますが、岡本さんの数字のとり方がどういうふうになっておりますか、私のほうで見ておりますところでは、ただいま大蔵大臣が申し上げましたように、六百七十万戸のうち四百万戸を民間に期待をいたして計画を立てておりますが、その推移を見ますと、年度年度の民間期待住宅はやや期待以上に上回るという数字を示しておりまして、依然として民間の住宅投資に対する意欲は非常に強いようでございまして、来年度七十八万何ぼでございますか、その目的は十分達成できる、また、達成できるように、民間の住宅対策としてもできるだけ御援助をしていくというような考えでおるわけであります。
  129. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 とにかく、住宅統計年表で、四十一年が第一年度ですから、四十一年にいたしましても八十五万六千より建っておらないのです。これは政府施策も何もかも含めてですよ。建ったところのいわゆる確認書が出たものの統計が八十五万六千なんですね。それから、きのう建設省へ私が電話をして聞きましたら、四十二年は十二月三十一日までに、百七万三千確認が出ているのですよ。ところが、去年の計画は百十六万だったのです。百十六万の政府の計画が百七万より出てないから十万け込んでいるんですよ。だから四十一年は百四万のなにとして八十五万より出ておらないから、これは二十万近くけ込んがいるのですよ。だから、あなたはそういうふうなことをおっしゃっていただいては困るのです。局長、その点はどうですか。時間がないから簡単に答えてください。
  130. 三橋信一

    ○三橋政府委員 ただいまいろいろ伺っておりまして、先生のおっしゃいましたのは、届けのあったと申しますか、正式に届け出のあったものだけを申しておられるのでございまして、それに漏れ補正をするのが普通でございます。そして、その漏れ補正をいたしたものからさらに規格以下のものを差し引きます。そういたしますと、四十一年には六十四万という予定をいたしておりましたものが、六十九万建っておるということになるわけでございまして、届け出のないものの漏れ補正を除いた数字を言っていらっしゃるのじゃなかろうかというふうに察せられます。
  131. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 そういうことをおっしゃるとたいへんですよ。とにかく、規格以下のものというのは、この統計の中に入っておらないのは十平方米以下は届け出の必要がないというので届け出がない。十平方米といえば三坪ですよ。こんなものが戸数の中に入らないのはあたりまえでしょう。その次に届け出がないものというのは、やみ建築ですよ。やみ建築を計算の中に入れて、いや、あなたの言うところの数字はやみ建築を計算に入れておられませんよ、こういうふうな答弁政府がしていいのですか。建設大臣どうですか。そんな答弁で、私は、はいそうでございますかとは申せませんよ。やみ建築を計算に入れて、あなたの勘定はやみが入ってないんだ、こんなばかな答弁で満足できませんよ。建設大臣、どうですか。これは委員長、時間が足りなくなりますよ。こんなくだらぬ答弁でなにをしていますと……。
  132. 三橋信一

    ○三橋政府委員 ただいま先生からおしかりを受けましたが、確かに、届け出がないというのはおかしいじゃないかという点をおっしゃられると、そういう問題は肯定せざるを得ない点でございますけれども、実は、従来から統計上の漏れというのがございまして、そしてこれで漏れ補正ということをいたしまして、それから九畳以下のものを差し引きまして、そうして六十九万戸という数字が出ておるわけでございます。
  133. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 ああいうことでは、やみの補正ができてないから、だからあなたの数字が違います――そんなばかなこどじゃ私は引き下がれません。建設大臣どうですか、大蔵大臣どうですか、いまの答弁を聞いておられて。そうでしょう。あなたのおっしゃるところの、思ったよりちゃんと民間建設は進んでおりますというふうなお答えですが、それはやみを勘定に入れてない。やみ建築というのは、これは日照時間がとれないとか、あるいは廊下が非常に小さいとか、これはいろいろ居住水準としてはもうコンマ以下のものだ、そんなものは住宅の中へ入れることができないというふうなものなんですよ。そういうふうなものを建設戸数の中へ入れるということは許せないと思うのです。だから、政府としてきちんとこうして統計が出ておる。この統計に従って私はものを言っている。それが年々十万戸平均け込んでおる。そうすると、五カ年で五十万戸け込んでくる。六百七十万戸に対して、政府が、なるほど施策住宅については責任を負われても、民間の建設が思うように進まなければ、それについては最初の見通しの誤りなんだから、あるいはまた、やみ建築というようなものを見のがしていられるのがいかぬのですよ。そんなものは、ぴちっぴちっと合法的な規格によった建築に指導していかれたら、やみ建築はなくなるんですよ。りっぱな数字になって出てくるんですよ。この統計の中へ出てくるんですよ。それを怠っておって、それで、あなたの勘定はやみが抜けております――やみするのがあたりまえ、やみの横行があたりまえのような考え方で、これは、汚職の横行はあたりまえというのが今日の日本の政治なら、やみの建築もあたりまえだとおっしゃるのなら、話はそれで通じますが、それでいいのですか、そういう解釈で。
  134. 保利茂

    ○保利国務大臣 御指摘のようなことがあるようでございますから、まことに遺憾に思います。したがいまして、いやしくも住宅計画と銘打って進めております以上は、施策住宅にしましても、民間住宅にしましても、政府の数字に載せ得るものにつきましては、十分指導を誤らないようにこれからしてまいりますから、どうぞ御了承いただきたいと思います。
  135. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 それでは大蔵大臣どうですか。そういうふうなことで、やみ建築を勘定に入れなければ政府の計画は進まないのですが、そうすると足りない分はどうされますか。あなたは財源のなにをどう責任を負われますか。
  136. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、建設省のほうから民間建築の進み方を聞いていましたので、そのとおり申したのでございますが、いまお話を聞いておりまして、届け出がないというのがいわゆるやみであるかどうか、私は、いまの実情からいいまして、最初届け出をしなくてもやがて必ず最後にはこれは届け出して相当はもう捕捉されるものだというふうに考えております。
  137. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 まあ、あまり御答弁が、何といいますか、私から言わすとピントがはずれているので非常に不満足でございますけれども、時間を限定されておりますので、この辺でまた別の機会になにいたします。  そこで、私もう一つ住宅問題について、一番重要なことでぜひ大蔵大臣にお尋ねしたいと思うのでありますが、総理は、先ごろ三Cよりもマイホームということを言われました。三Cよりマイホームと思ってみなが一生懸命貯金いたしましても、そのお金は企業のほうに回って、それが民間投資に回る、工場その他の土地の買いあさりに回る、地価を上げていく、マイホームと思って金をためていても、それがみんなそういうふうな地価の値上がりにつながっていって、結局ウサギとカメの競走のように、金をためてもためても向こうが先にとつとつとつとつ走っていく、こういうことになっておるのが現状ですね。だから、三Cよりマイホームと思ってまじめに一生懸命金をためておるところの庶民のそのお金が、直接住宅建設につながるように、マイホームにつながるような方法、施策というものを、佐藤内閣が三Cよりもマイホームといわれた限りは、そういう方向へ施策の道を開くべきじゃないか、こう思うのでございます。したがって、国民の住宅建設意欲を住建設へ結集させていくというふうな意味から申しますと、やはり住建設に対しまして特定財源を与える必要があるのではないか。道路財源としてはガソリン税がございますね、だから住宅建設に対しては特定財源として、国民がそういう気持ちで積み立てておる金は全部そっちへ向くようにしてやる。そういう意味では住宅公債の発行です。なるほどいま公団から特別住宅債券が出ております。あれはくじが当たった人だけですね。しかしながら、公開されたところの住宅債券を発行して、割商とか割農とか割不動とかいうのがございますね。そういうような形で割住を発行する。その割住は全部住宅資金に向けていく。だから、現在の住宅資金のほかに、そういうふうな、国民の気持ちを住宅建設に結集していくというふうな公債発行の制度をお考えになってはどうか。私どもは、もちろん公債というようなことにたよるより前に、政府出資がもっと多くなければならぬということは当然考えております。住宅の財源としてあまりにも  たとえばことしは政府出資は七百億です。この七百億は、いわれるところの公営住宅に対する家賃を薄めるための低家賃政策として出ているものである。だから、そういう低家賃政策として七百億出しておる以外に、もっといろいろな形の企業減税であるとか、そんなものを住宅のほうへ回してもらいたいということは、もちろんそういう考え方の前提の上に立ってですが、さらに、国民がほんとうにマイホームと思って積み立てておるお金を、ほんとうにストレートにそのままずっと住宅の中へ流し込んでいくという方法を、政府としては考えていただかなければ、佐藤さんの三Cよりもマイホームという考え方は、政策の上に生きないのではないかと思うのでございますが、大蔵大臣いかがお考えになりますか。
  138. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 道路のように、特定財源を住宅に設けるということは非常にむずかしいことだと思います。したがって、やはり住宅建築を促進させるということになりますと、特定財源というものではなくて、やはり一番住宅に関係のある民間財源を動員するということが一番合理的じゃないかと思うのです。そういう意味からいいますと、やはり保険の金、それから簡保の金、国民の零細な資金の集積でございますので、したがって、国民生活に最も密着している住宅へこういうものが使われることが望ましいと思うのですが、そういう意味から申しますと、いま簡保資金は五百億円近く住宅の貢献をしておりますし、民間の保険会社は本年度でも、住宅については住宅公団への貸し付けとか、そういうようなものを通じて一千億円前後の貢献をしておりますし、こういうものがもっと拡充されていけばいいんじゃないか。最近保険会社の中では住宅保険というものを発売しておりますが、これなどは、たとえば住宅資金を貸し付ける、貸し付けた額だけを保険金額とする、こういうふうにしますというと、もしかの場合があっても、相殺されて遺族には負債が残らぬというような保険でございますが、こういう構想も一つの構想でございましょうし、やはり民間の保険類の動員ということが、住宅政策を促進させる一番ふさわしい資金じゃないかというふうに考えます。
  139. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 そういう意味で私は、もっといろいろ住宅建設に特定財源をつくる制度を考えろべきだ。たとえばイタリアでは、INA・CASAという制度がありまして、住宅建設に非常に秤立ちました。それがいまはGESCALという制度になって、労働者住宅公団として現在でも事業を続けてやっております。とにかく、国民にいろいろな形で拠出させ、あるいは貯蓄させ、蓄積させ、その蓄積がストレートに住宅に流れていくという制度の中から、国民に、自分が積み立てている金はほんとにおれたちの住宅にいつかつながるのだという気持ちで積み立てさせるということが、ほんとうに三Cよりマイホームという考え方につながるものであるということを申し上げて、そういう方向で、また別の機会に委員会でなり、あるいはその他で提唱したいと思いますから、ひとつまじめに検討していただきたいと思うのです。  それから、道路でございますけれども、いまの日本の道路行政というものは考え直す必要があるのではないか。国土縦貫自動車道が北海道からずっと九州までできます。それにたすきにかけて横断の自動車道ができます。将来はそれをまたずっと連絡させるような、結局カメの甲のよう丸形に自動車道路ができていかなければならないと思うのでございますが、そういうふうにできていくところの自動車道は全部有料制である。一般道路はもちろん無料でですが、そういうような刑で、いま日本の道路行政が行なわれております。そういうことでありますと、自動車道は長距離を走るのは全部有料だというふうな形の有料道路制は、考え直す必要があるのではないか、こう思うのでございますが、建設大臣は、いかがお考えになりますか。
  140. 保利茂

    ○保利国務大臣 ごもっともなお考えだと思いますけれども、何さま一般道の整備に非常に忙殺されておるものでございますから、採算的に成り立ち得る主要幹線につきましては有料道路の制度を続けて、そして開発を急ぎたい、こういう考えでおります。
  141. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 急ぎますので、議論めいたことは申せませんが、とにかく、そういうことでは、有料道路ができても、有料道路が十分効率的に使われないで遊んでおるという面も出てくるわけであります。しかも、東北道であるとか、あるいは九州縦貫道というようなものがかりにできましても、償還が非常におくれますから、おくれておる地域ほど、いつまでも金を払っていかなければならぬ。名神とか東名なんかは早く開放されるということになりますと、これはまた後進地域がよけいおくれるということになります。だから、いまプール制というものが考え出されておりますが、プール制になりますと、これは何十年先に無料開放されるかわからぬという問題が出てくるわけなんです。だから、これだけ大きな自動車道路網をお考えになった場合には、もうそういう自動車道は無料開放すべきであると私は思います。無料開放するための財源としては、たとえば四十三年の道路関係三公団の料金収入は五百四十五億です。この中には駐車場とかいろいろなものがありますから、約五百億でしょう。だから、五百億料金徴収するよりも、これは一般会計から回すなり、その他の財源を見つけたらいいのではないか。  たとえて言えば、昨日も出ておりましたし、けさのテレビでも出ておりましたが、租税特別措置法で二千八百億の減税が行なわれておる。それがまた地方税にはね返ると千八百億であるということは、きのうの本会議でのお話でございました。そういうことになると、四千六百億の企業減税があるのなら、そのうちの五百億くらいを、これは企業がどんどん道路を使うのですから、それを道路に回すというふうなことは、これは当然できることだと思うのです。  また、問題になったプロパンガスですが、あんなふうな汚職につながったプロパンガスの減税なら、この際一挙に、早くガソリン並みの税金にして、それをまた財源に充てて、道路はそのかわり無料開放するというようなことも可能であると思うのです。あるいはまた、ガソリン税がかりに五%上がったとしても、むしろ道路が無料開放されることによって一般道路がすいてくる。すると、それだけ一般道路を走っている自動車もガソリンが節約できますからね。だから国民全体がそういう料金を払うというふうな形に切りかえてもいいのではないか。だから、もうこの際、高速道路の無料開放というものは考えていただくべき時期がきておるのではないか、こう思うのでございますが、建設省にそういうことを前向きに検討される御用意がありますか。
  142. 保利茂

    ○保利国務大臣 来年の四、五月ごろには名神をつなぐ東名も開通供用になりますから、ただいま道路審議会の料金部会で、お話のような点等を含めまして、料金のあり方については慎重に検討を進めておりますが、日本の道路の現状におきまして、直ちにただいまやっております有料道路を無料に開放するということは、ちょっと踏み切りにくいのじゃないかと思いますけれども、十分料金部会のほうで検討しておりますから、さよう御了承願います。
  143. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 一日も早くそうしてください。せっかく膨大な投資をした道路でございますから、できるだけ有効利用することを考えていただくように、私お願いいたしたいと思うのです。  もう一つ、本州・四国架橋がいま問題になっておりますが、私はこの機会に、どういう観点から本州・四国架橋をやられるのかということをお尋ねしておきたいと思うのです。  まず第一に、これは鉄道と併用橋にするか、あるいは道路専用にするかということでございますけれども、急ぎますので結論を言わしていただきますが、明石・鳴門ラインをとりますと千二百六億違うのです。それから児島・坂出のラインをとりますと七百十七億違うのです。かりに児島・坂出をとるとするなら、七百億くらいの違いなら鉄道併用橋にしたほうがいいのではないか、こういうふうに私は思います。  それからもう一つは、道路問題についてもう少し論議をしたいと思っていたのですが、できなかったのでやむを得ませんけれども、とにかく道路というのは、輸送機関としたら非常に効率の悪いものです。自動車ですと、ある程度の間隔はあけていかないと、急ブレーキ踏めばすぐ追突が起こりますから、ある程度の間隔をあけて順繰りに走っていく、そういうことであれば、せっかくつくられた公共用地が非常に使われる効率が悪い。鉄道でありますと、車をぴしっと並べて、しかもうんと人を積んで一気に走りますから、大量輸送がきくわけです。だから、車というものでなしに、道路と鉄道というものを輸送機関として考える場合には、鉄道のほうが道路よりはるかに効率が高い。だから、そういう意味において、本州・四国をつないだときには、必ずそこに車が集中するのですから、相当ラッシュが起こりますから、私はこれは鉄道併用橋にしておくべきである、こういうふうに思うのでございます。運輸大臣にお尋ねをいたしますが、運輸省としてはどういうお考えを持っておられるのか、併用橋にしたいと思っておられるのか。さらにまた、そこに技術上何らかの困難性が残っておるのかおらないのかということを、運輸大臣にお尋ねをし、あわせて建設大臣及び大蔵大臣から、財源あるいは建設の方向、道路行政のあり方というふうな方向から見て、どういうふうな考え方を持っておられるのか、お伺いいたしたいと思います。
  144. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 費用については先般算出ができましたが、併用橋にするかどうかという問題は、経済効果、社会的影響、あらゆる部面を検討いたしまして、内閣としていずれ決定したいと思っております。私は、個人的には、どうせつくるなら併用橋のほうがいいというお説に同感であります。かりに併用橋にする場合にいたしましても、将来は新幹線が通れるくらいの容量のものにしておく必要があるだろうと思っております。
  145. 保利茂

    ○保利国務大臣 私ども建設省としましては、単独道路橋の場合を想定して調査を進めておったわけで、お説のように大量輸送ということになれば、これはもう鉄道であるということは、全くそのとおりだと思うわけです。どこへどういうふうにかけるかということは、まだ資料が整っておりませんから、資料が整いました上で、ひとつ慎重に、ただいまの御意見等も伺って、決定をさしていただきたいと考えております。  なお、着手をいたすということになりますれば、建設省のほうとしましては、ただいまの道路五カ年計画の中に織り込んで事業を進めてまいるというようなことでいたしております。
  146. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いままでは技術的な調査段階で、ようやくこれを終わりましたので、これから建設省もどの案が一番効率的であるかという研究に入っていくという段階でございますので、この調査ができましてから、関係各官庁で協議会を持つということになっておりますので、この調査を見てから私どもは協議にあずかるつもりでおります。
  147. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 その次に、どこにかけるかというのが問題になってくると思います。時間を急ぎますので結論的なことを申しますが、近畿圏整備法は御承知のように阪神が過密になって困る。だから、阪神の経済を疎開させなければいかぬ、こういう考え方に立ってつくられておる法律ですね。だから、いまそういうような国の方向で政策が行なわれておるときに、もう阪神と四国経済を直接結びつけてしまったら、私は阪神の過密がもっとひどくなる、こう思うのです。私は近畿圏の人間です。近畿圏の中にいる人間がこういうことを申しますと、近畿圏の他の諸君にしかられるかもしれませんが、私は、長い日本の国家的な将来を考えて――将来はできてもいいですよ、いま直ちに阪神に四国経済を結びつけてしまうことはよくない。むしろ中国と四国との間に一つの経済圏をつくらせる。そして過密しておるところの阪神の産業が、ある程度そこへ疎開していってもらう。そこに一つの経済圏をつくって、それでもって国土の均衡のある発展を考えるべきではないか、私はこう思っております。そうでなければ、阪神と結びつけてしまったら、阪神は過密になった、金をかけて橋をかけたが、さらに阪神の経済はずっとまた他の地方へ疎開させなければならぬ、こういうような二重投資になってくる危険もあります。だから私は、そういう意味においては、費用の問題だけでなしに、これは将来の長い展望の上に立って、中国・四国架橋の方向に政府は進められるべきである、こういうふうに思います。また、ある意味では、財界の強い圧力があるかもしれませんが、そういうものは押し切って、日本の長い将来的な展望に立って施策を進められるべきであると思うのでありますが、建設大臣のお気持ちをこの機会に承っておきたいと思います。
  148. 保利茂

    ○保利国務大臣 ただいま経済企画庁で全国総合開発計画を見直す作業を進められております。四国、中国等は重要な地帯でございますから、もちろん全国開発計画の上で重要な地点でございます。ただ、お説のように、どこに結べばどうなるかということにつきましては、そういうことが全部整いました上で慎重に決定をさしていただきたい。ただ、関係閣僚がおりますから、ただいまの御意見は十分伺わしていただきます。
  149. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 きょうは引き続いて医療問題で、看護婦不足の問題あるいはまた医学部卒業後の研修の問題等をお尋ねいたしたいと思っておったのでございますが、もう時間が十分余りより残っておりませんので、大蔵省関係の所管であります国立療養所の特別会計制度の問題についてだけお尋ねいたしまして、あとはまた分科会でお尋ねをいたしたいと思います。  そこで、特別会計制に国立療養所をされました理由でございますが、いままでの一般会計の中でまかなっておる財政規模を縮小するというようなことは、姿を変えるだけで、実質変わらぬわけでありますから、これを特別会計に持っていかれたほんとうの理由は何ですか。
  150. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 国立療養所は、御承知のように、設備がもう非常に老朽化しておりますので、急速な整備をする必要があると思います。そういたしますと、いままでのようなやり方でいくのがいいのか、あるいは特別会計に移して、たとえば不要財産の処分によってこの整備を進めるとか、あるいは特別会計に移れば、今度は金を借りることができますので、そういう形によってさらに設備の整備が進められるということもございますし、また弾力条項によって経営の合理化もやれるというようなことで、いろんな便益ができてくるということを考えて、この会計を移すほうがいいと私どもは考えた次第でございます。
  151. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 別に特別会計にしなくても、たとえていえば、残っておる土地を処分するとかいうようなことを直接やって、それをそういう考え方で運営していかれれば、運用の中でそういうことはやっていけるわけでございますし、また老朽しておるものを建て直すというなら、政府のほうがその気持ちで投資をされたらそれでできるわけでございまして、特別会計として運用していくとかいうふうなことは必ずしも必要でないのではないか。そういうことをされると、いろんな疑惑を生んで騒動が出てくるわけでありまして、このごろ毎日のように入院患者からわれわれのところへ手紙がまいります。特別会計制度になりますと独立採算制にそれがつながるのではないか、だから、さしあたりは資金を投入して設備をよくしてもらえるかもしれないが、しかしながらそれは、設備投資に金を入れますよ、だからひとつ診療収入をうんと上げなさい、それでもって差し引きバランスのとれるような運営をやれということを国立療養所が要求されるのではないかということを心配しておるわけなんですね。  大蔵大臣にお尋ねいたしますが、国立病院と国立療養所の性格の相違は御承知でしょうね。
  152. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 短期的な患者の治療ということと、国立療養所のやっておりますものは相当長期的な療養でございますので、これを一緒にした場合は一やはり区分経理をしてそこをはっきりさせて、しかも一方は精神病とかあるいは重度身障というようなものの治療という、社会的な一つの義務を持ってもらうというようなことから、これは独立採算制じゃなくて、そうでなくてもやはり国費で持つべき仕事で、本来そういう仕事でございますからして、独立採算制に押し込めてやるというような考えは全然持っておりません。現にことしでも四百億のうちの半分国費で持つというので、将来も差額は一般会計から繰り入れるというようなことを考えておりますので、やはり私はいままでのようなことでやったらあの老朽化はなかなかうまくいかない、特別会計になることによって急速に進むだろう、そして患者にとって少しも悪いところはないだろうというふうに考えております。
  153. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 なるほどことしは二百五億の設備投資を投入される、そうして借り入れ金の制度の道も開かれる、その金額はことしは四十五億ですか、わりあいに少ない。しかしながら将来はだんだんこの設備投資の資金を借り入れ金に振りかえていかれるのではないか。これは当然われわれだってははんと、そういうような考え方を持たざるを得ない。そういうことになってまいりますと、借り入れ金に対しては利息もつけば償還も迫られる。勢いいろいろな形におけるところの経費の引き締め、あるいはまたサービスの悪化というものが起こってくるのではないか、こういうことをわれわれは心配するわけです。大蔵大臣は、いま、借り入れたりあるいは財産の処分なんかに便利だから特別会計にしたんだ、こう言われますが、私どもにいたしましたら、別に資金の投入は一般会計のままで、金をつぎ込むのに別に不自由も何もないわけで、長い間そういうふうにしてやってこられたわけです。あなたも指摘しておられますように、長期療養を要する、いわば医療保険よりも医療保障の対象になるべき患者群なんですね。だからそういうふうな長期療養を要するところの入院患者に、あまり不安や焦燥を起こさせるような施策はおとりにならないほうがいい、こう思うのに、あえてそれをとられた。しかもいま言われたような御説明では、私どもはそれでもって十分なものと満足するわけにはまいりません。  さらに今度は、いま入院している人はいい、しかし新たに入院する人に対しては、二割引きの制度はやめた。現在国立療養所については、長期療養だと、社会保障的な見地から割引制度をとっておられる、その割引制度をやめた。やめられる理由は何ですか。
  154. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いままでの国立療養所の設備そのほかのあり方から見て、ああいう制度をとっておりましたが、これがほんとうに設備が完備され、そして治療の合理化が行なわれるということになりましたら、特にいままでと同じような特殊な例外的な扱いをするという必要はないので、むしろ一般の患者と同じような方向へ持っていく、それだけ給付を完全にしていくという方向へ努力するのが本筋であろうというふうに考えております。
  155. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 矛盾しているじゃないですか、さっき言われたことと。そうでしょう。特会制にすることと患者へのサービスの悪化ということとは無関係でございます。そういうことはいたしませんとさっきおっしゃったでしょう。にもかかわらず同時に始めておられるじゃないですか。いままでの割引をやめて、今度は入院患者からは金を出してもらいます、それでは全然御趣旨が生きてないじゃないですか。それじゃ、この二割引きを取りやめるということだけでもお取り消しになりますか。
  156. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今度はいままでと違いまして、看護、給食等、患者サービスの改善をはかる、基準看護等の加算制度を実施するということにいたしますので、そういう問題ともからみまして、従来のような取り扱いをすることのほうがむしろ例外である、特に国立療養所にいる患者を二割割引いたということは、昔からのいきさつの問題でございまして、これはまた割り引いてもいいだけの設備、いろいろでございましたが、今後そういうんじゃなくて、いろいろな基準というものを厚くするという措置が加わるんですからして、これは将来直してもいい。ただ、いま当分、すぐに設備などが新しくなりませんので、従来の患者に負担が加わらぬようにというようなことで、いま入っておる人にはこの割引はそのまま継続するというような措置を考えているわけでございます。
  157. 井出一太郎

    井出委員長 岡本君、時間がまいっております。
  158. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 これは健康保険の本人であれば、まだそれは保険のほうから払いますからいいですが、しかし家族でありますと、この割引制度がない場合には、半額負担でありますから相当な負担になる。しかも長期療養なんですね。精神病であるとか結核であるとか、あるいはこれからだんだん国立療養所が、脊損あるいはいまのリハビリテーションとかあるいは重症の心身障害者とかいろんな方向へ――まあ結核患者が減ったわけじゃないのですね。現在でも結核患者は多いのですね。また、在宅療養者も相当多いのです。そういう人もこれからはもっと吸収して、国立療養所の中に含んで入院させていくようにしなければならぬ。にもかかわらずこういうふうな長期療養の患者に対して負担を――従来二割引き制度をつくっておられたということは、長期療養の患者であるから非常に負担が重かろう、そういう見地に立って行なわれておった割引制度ですね。建物が古いから、医療内容が悪いから、サービスが悪いから、こういう理由で負担の軽減が行なわれたんじゃないでしょう。また、国立の機関がほかの病院よりも割引せねばならぬほどサービスが悪い、そんなばかなことは理屈として成り立たないのです。私どもはそのような理解をしておりません。だからそういうふうな、とにかく長期療養だから負担の軽減をしてやろう、その制度が、これからなくなるということであるとするなら、特会制にする、即サービスの悪化、こういうことにつながるではないですか。先ほど最初におっしゃいました特別会計制度にするということと患者へのサービスということは何ら関係がないんだ、こうおっしゃっておりながら、そのしりからこういうふうなことをぬけぬけとあなたはおっしゃいますが、これは取り消されたらどうですか、こういうことは。
  159. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 自己負担の患者には二割引きは置くんですから、これは自己負担はふえないと思います。
  160. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 それでは、自己負担の患者の二割引きはそのまま存続する。それから健康保険その他の一部負担、そういうふうなものも、これは患者からは従来のとおり二割引きで徴収する。その次には、生活保護法の入院患者についても一部負担がございますね。それについても従来どおりの配慮をする、こういうことでございますね。間違いございませんね。
  161. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 一部負担の患者だけは別でございます。
  162. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 話が違うじゃないですか。それじゃサービスの悪化はしないということで、一部負担はやっぱり割引制度は廃止するんだということで、話が違うじゃないですか。国家的にも、国の経済から見たらそんなにたいした金でもないのですよ。なぜそんなに長期療養でこれから一それじゃそのことは、結局国立療養所へは入院しないでください、長期療養を要するような重症心身障害者であるとか、そういうふうなものは国立へは入ってくださるな、こういうふうな締め出しの意味なんですか。
  163. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 従来からも一部負担の患者は二割は引いておりません。したがって、従来から一部負担の患者でなくて入っている方はそのまま、自己負担の患者は二割引きをするという措置を今後とる、そういうことにする……。
  164. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 私が尋ねているのは、今後入院する人に割引制度を廃止をするということについてお尋ねしておるのでありますから、だから、それではお話が違うではないか、こういうことを言っておるわけです。サービスの悪化じゃないですか。
  165. 園田直

    園田国務大臣 一般会計から特別会計への移行について、患者に負担がかからないようにしなければならぬことは御指摘のとおりであると考えております。したがいまして、将来とも経営の収支は一般会計から繰り入れるべきであると考えております。なお、割引制度が廃止になりましたのは、医療保障制度が、公費の負担の拡充あるいは皆保険の制度の充実等によって飛躍的に充実をはかっておるところでありまするが、一方の制度を廃止をして、そちらのほうでカバーしていきたいという方向ではあります。しかし、ただいまの段階ではそれが十分できておりませんから、継続患者はそのままにし、新入院患者及び外来患者は自己負担のあるものはこれを免除する。自己負担のあるものだけ。なお生活扶助その他のことはこの割引制とは関係ございません。そういうことでございます。
  166. 井出一太郎

    井出委員長 岡本君……。
  167. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 わかりました。  それではもう一つだけ。そういうふうなことで、とにかく患者へのサービスの悪化につながっておるということ。その次には、独立採算制というようなことに、運営するものはやはり独立採算的な考え方に縛られがちでございますから、勢いかなり強い経費の節減をやろうとする。たとえて言えば、いままで病院の中でやっておったところの給食であるとかあるいは寝具のなにであるとか、そういうふうなものを下請機関に外注に出すというようなことがどんどん始まっております。その寝具の下請に関連いたしまして、非常に入札にいろんな疑惑を持たれるような事件が起こっております。それは療養関係新聞が報じておるところでございますが、東北のほうの病院でもって、一たん入札しておきながら、いや、予定の価格よりも少し高いからもう一ペん入札し直せというのでもって、全国的な規模を持っておる大手業者に入札をさしておる。しかもそれが日本寝具協会という協会のメンバーであって、会長は前の厚生省の児童局長をやっておった黒木君だということでございます。いま参議院に出ておりますね。黒木君が関係しておるところの団体で、そういうふうな厚生省の国立療養所と、何といいますか、悪く言えば結託をして、それで一たんせっかく入札が入ったところの地方業者に……。
  168. 井出一太郎

    井出委員長 岡本君、簡潔に願います。
  169. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 もうこれでやめますから。  せっかく入札の入ったところのなににやり直しさして、それでもってダンピングをやって、地方の業者をいじめておる。こういうふうな事例が出ておりますが、こういうふうに――それは安いほどいいに違いございません。しかしながら、もうべらぼうな価格でもって入札して地方の業者をいじめる。しかも同時に、何といいますか、独立採算制につながるようないろんな経費の節減をやっていくというようなことが行なわれておる。これは非常にやはり一つの悪弊のあらわれである。独立採算制になってくると、いままで一般会計の制度の中よりももっともっとそういうふうないろんな、いま日本政府機関の中で行なわれておるいろんな悪い傾向が一そう独立採算制の中に入って、結局は、まあいわば弱い患者の中にまでそういったダニのようなものが発生してくるということがおそれられる。だから、もっと明朗な運営を厚生省としてもやるべきである。こう思うのでございますが、厚生大臣いかがですか。
  170. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの意見は聞いておりますが、今後十分検討したいと思います。  なおまた、御指摘の各種の意見は、一般会計から特別会計に移行する場合に起こりがちなことであって、十分注意をし、検討して運営をしたいと思います。
  171. 井出一太郎

    井出委員長 これにて岡本君の質疑は終了いたしました。      ――――◇―――――
  172. 井出一太郎

    井出委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  昭和四十三年度総予算審査に関し、本日午後二時、日本住宅公団総裁林敬三君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  173. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  午後は二時に再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時三十一分休憩      ――――◇―――――    午後二時十七分開議
  174. 井出一太郎

    井出委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  一般質疑を続行いたします。広沢直樹君。
  175. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 まず、公取委員長にお伺いいたします。  最近国民の間に再販制度についての関心が高まってまいっております。これは、再販制度が物価高の大きな原因となっているからであると思うわけであります。そこで、再販制度について、公取委員長はこれを残すべきであるか、あるいは必要ないと考えるか、端的にお伺いいたします。
  176. 山田精一

    ○山田政府委員 御指摘の再販売価格維持契約につきましては、法律の二十四条の二に定められました要件を満たします最小限度におきましては、これを残す必要があるものと、かように考えております。
  177. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 それでは昨年の十二月の二十六日、公取の本に出ているわけでありますが、公取委員長室において日本経済研究センターの金森氏との談話があります。私もこれを読ましていただいて、これを読んだ時限におきましては、公取の姿勢というものに対して大きく期待をしておったわけであります。まず、部分的に中を抜きますと、解釈が間違ったらいけませんので、一通りこれを読んでみたいと思います。この再販価格維持の問題について、委員長はこのようにおっしゃっていらっしゃるわけです。まず一般論としては、流通秩序の維持ということを関係業界ではしきりと言っている。一体流通秩序の維持というのは、何でもって維持していったらいいのか。一つには不当な安売りである。またダンピングである。おとり廉売でありますとか、不当な安売り現象がどの程度あるものか、これは押えなければならないと思います。まさにそのとおりだろうと思います。これは逆の意味から申せば、不当な取引方法の禁止から、これは押えなければならないと思いますが、そうしたら、その他のことについて再販価格を維持しなければならないという理由は一体どこに出てくるのか、これが非常に大きな問題だろうと思うのですが、御承知のように、日本でもって再販売価格維持契約を独禁法の例外として認められたのは、昭和二十八年の改正のときであった。経済の実態の上からどうしても再販売価格維持契約というものが必然的に必要なものであるというならば、法律の改正が施行せられたときに、待ってましたと飛びついてくるはずである、というような意味を申されております。それがほとんど利用されていない。たとえば薬品業界などでは、たしか、あれを利用したのは一社だけである。――確かに大正製薬でありますか、一社だけであったと思うのですが、他の会社はどこも採用されなかった。それから公取委員会で指定しました業種で、全然使われずじまいに終わって、削除されたという業種もあった。それが三十九年になりまして一度に殺到してきたと指摘しておりますが、これを一体どう解釈していったらいいのか。大づかみにいうと、やはり昭和三十九年の一時的な不況で、購買力が減退して、流通段階におけるストックが非常にふえてしまった。それを、中には金融の担保にしたり、金融流れでもって非常に安く放出されたとか、そういうことがあの安売りというものを持ち来たらしたのだと思うのですね。それに対して産業界が、流通秩序を保つために自衛したという気持ちは、そこまでは容認できる。そうだったならば、こうおっしゃっておる。私に言わせれば、不況カルテルなり合理化カルテルなりで一時の安売りというものを押えようと、これは容認できると思う。不況で購買力が急激に減退して、というときに、それをある程度のところでささえようという努力は、これはもっともだと思うんでございますが、それを再販売維持契約の形でやりますと、これはずっと続いてしまいますから、不況から好況になって、購買力がどんどん上がって、電気製品のごとき、飛ぶように売れても、依然として再販売価格を維持しているというんでは、これは競争維持政策の立場からしますと、どうしても容認できない。このようにおっしゃっておられますね。そこで、これは国民経済の立場からは、そういう再販維持契約、これはやめてもらわなければならないと、まあこういうふうに考えるわけですがね、こういうふうにおっしゃっていらっしゃるわけです。私は、あとずっと一通り読ましていただいて、これは公取委員長が、再販売契約はよくない制度だ、ですから禁止すべきである、このように感じて――確かに最近の物価上昇におきましては、消費者から非常にそういった問題が起こってきているわけであります。ですから、公取委員長のこの対談を読みまして、非常に強い姿勢でこれを改めていこう、また禁止すべきであるという強い姿勢を持っていらっしゃる、このように感じておったわけでありますが、いまの答弁によりますと、残すべきであるというお話をなさっていらっしゃる。どういうわけでこういうふうに変かっていったのか、その点をひとつお願いしたいと思います。
  178. 山田精一

    ○山田政府委員 私の書きましたものを詳細にお読みいただきまして、まことにありがとうございます。私がそこで語りましたことは、二つの問題を含んでおりましたわけでございます。一つは、そこにはっきり書いてございますように、家庭用電気製品のような、法律の定めました要件は満たしておりませんもの、すなわち一般消費者が日常使用いたすものでない、いわゆる俗なことばを使いますれば、やみ再販に属するものでございます。これには、そこに申しましたとおり、きびしい態度をもって取り締まりをいたしてまいりたい、かような決意を持っております。ただ、一部の薬品でございますとか化粧品でございますとか、法律に定めました、一般消費者が日常使用いたすところのもの、これはただいまの流通過程の変動期におきまして、大型店だけが取り扱うようなことになりまして、零細な小売り店で当該商品を扱わないようなことがもし起こりますると、これは長い目で見て消費者の利益を害することになると思いますし、また、それは同時に零細な小売り業者を保護する最小限度の措置として必要ではないか、かように考えておりまして、私がそこに語りましたときとただいまと、気持ちは少しも変化しておりませんことを御了承いただきたいと存じます。
  179. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 少なくともいまは、全文を読んだわけでありますが、この全文を貫いていることは、だれが読んでも、これは再販売価格維持という制度、こういうものは一部の企業を守っていくだけである。ですから、国民、消費者の立場から考えていったならば、これは不当ではないか、あるいは、よくない、このように思うわけであります。どうしてそういう制度を残さなければならないのか、その点についてあなたも指摘されているように、これをつくったときには、ほとんどの業種というものは利用していなかった。削除されているものもある、こうおっしゃっていらっしゃるわけですね。ですから、あなたがいまここにおっしゃっていらっしゃったように、再販売価格維持契約というものは基本的には必要でない。しかしながら、現在どうしてもそれを残さなければならない、こういうふうに言っていらっしゃる理由を説明していただきたい。
  180. 山田精一

    ○山田政府委員 その雑誌の中では、私は三十九年当時の事情につきまして、やや詳しく申したわけでございます。その後ただいままでに起こりました変化は、一つ申し上げますと、当時は不況による安売りが横行したわけでございますが、ただいまは流通過程の変革に伴いまするとおり、廉売、この傾向がある程度あらわれております。これを最小限に防ぎます必要はあるものと、かように考えたわけでございます。
  181. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 おとり廉売については、ここにも指摘してありますが、おとり廉売であるとか不当な安売り現象が、どの程度あるものか、それは押えなければならない、これは当然であります。しかしながら、次にこう言っているわけですね。そういうことで、これは不公正な取引方法の禁止から、これは押えなければならないと思います。再販価格を維持しなければならない理由は、一体どこに出てくるのか、これが非常に大きな問題だ。いわゆるいまのおとり廉売の問題は、これは十九条の不公正な取引を規制していく、これを運用していくことにおいてこれは取り締まることができるのだ、このようにあなたはおっしゃっているわけですよ。不況によってではない、現在の経済情勢が変わってきて、おとり廉売をやっているからこうだ。しかし、あなたのここで述べていらっしゃることは、十九条で取り締まることはできるのだということをおっしゃっている。そういう理由で残さなければならないというのは納得がいかないわけですが、どうですか。
  182. 山田精一

    ○山田政府委員 おとり廉売につきましては、十九条に触れます行為は厳重に取り締まってまいりたい、かように私どもは決意をいたしておるのでございますが先ほど申し上げました一般消費者が日常使用いたすところのきわめて小口の商品、これにつきましては、一々おとり廉売のケースを取り締まってまいるということにも、あまりにも件数が多うございますし、また、日によって異同いたしますので、ある程度は販売業者に自衛手段、たとえば不当なおとり廉売をしたときに出荷を差しとめる、こういう方法を認めるために最小限度の再販維持契約を認めてまいりたいと、かような考えでございます。
  183. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 それでは、先日の物特等の議事録をずっと読ましていただきますと、現在の公取委員会の構成、その中に五人の委員がいらっしゃるわけですが、通産省出身の菊池氏、あるいは大蔵出身の亀岡氏、それから梅田氏、あと公取委員長ともう一名いらっしゃるわけでありますが、どうも議事録を読んでおりますと、再販擁護論を国会で言っている。対談の中で話していらっしゃる、歴然とここにも載っているわけですが、これはよくないという精神を貫いていらっしゃるわけです。ところが、この委員会の中でそういうふうな議論があって、いまこの五人の構成の中で三名の方々は、非常にこれを擁護しなければならないという答弁をなさっていらっしゃる、そういうような関係があったのではないか。私は、ここに貫かれている、あなたがおっしゃっている精神というのは、やはり基本的に考えていって、再販制度というものがあってしかるべきなのか、あるいはそうではないのか、この基本的な姿勢というものをはっきりここにうたいあげていると思っている。そういうふうにしかとれない。いま全文を読みましたから、お聞きいただいてわかっていると思いますけれども、そういうような判断しかできないわけです、このいろいろな情勢を考えてみまして。一般の消費者のほうからも投書がやってくる、あるいは新聞等にもこういうふうにいろいろ出ております。一通り読んでみますが、この投書には「今度も「再販規制強化法案」が国会提出を見送られたことに納得できないものを感じ、裏切られたような気持にさえなる。独禁法の運用だけでは再販価格を押えられないということで前の北島委員長時代に作られたこの法案が「現行の独禁法運用の強化で十分」という理由で提出が見送られたのは消費者のための前進の姿勢を、くるりと後ろ向きにして歩き出したようなものである。」そういったような意味の投書あるいは消費者の意味というものが巻き起こってきているわけであります。確かに、この法案を見送りにした、どうしてもこれを通していまの規制を強化していかなければならない、こういうような観点から出された法案というものを、運用の強化によってできるんだというふうに変えてしまっている、このようにしか受け取れないわけでありますが、こういった形におきますと、公正取引委員会というのは不公正取引委員会じゃないかという声も聞かれるわけであります。私は、そういうような観点から、いま御出席の各閣僚にそれぞれお伺いしたいと思います。  まず、厚生大臣にお伺いいたしますが、あなたはこの再販制度に対して、存続すべきであると考えるか、あるいはそうではないと考えるか、端的にお話しいただきたい。
  184. 園田直

    園田国務大臣 再販制度について各方面からいろいろ御批判が出ていることは事実でありまして、また御批判どおりいろいろな弊害も出ております。私の所管の医薬品から申し上げますると、そういう御批判はございまするが、流通段階における過当競争を防止をし、品質を維持して薬局の適正な配置をはかるためには、やはりこの制度を利用したほうがよろしい。ただし、この制度を利用するにあたっては、現状にかんがみて改善すべきものが多々あると思います。たとえば品目の洗い直し、あるいは価格の表示あるいはその他の指導等、留意すべき点が十分ありまするが、そういう点に留意をしながら再販制度の医薬品に対する目的を達成したい、こう考えております。
  185. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 具体的にこの再販制度を残さなければならないという理由をはっきりとおっしゃっていただきたいと思います。
  186. 園田直

    園田国務大臣 再販制度を全面的に廃止をしますと、不当な競争が出てまいります。具体的に一例をあげますと、スーパーマーケットにおける薬品の投げ売り、二割引の薬品ならけっこうでございますが、ひどいのは、今日までに八割引の値段をつけられた薬の販売等々がございました。そういうことを防止するためには、弊害を除去し、あるいは品目等に対して十分検討して、最小限度に切り詰めながらも、今日の医薬品の現状においては、これで保護したほうが適当であると考えております。
  187. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 いま理由を伺っておりますと、これは不当な安売りが行なわれている、あるいはまた薬品の品質等にも影響してくる、そういったような意味に受け取れるわけでありますが、先ほども公取委員長が言っておりましたおとり廉売の問題にしても、この安売りの問題にしても、十九条の不公正取引、これを取り締まることでこの効果をあげ得る、これをどう運用するかによって、これは十分効果をあげ得るはずであります。また、そういうふうな安売りが続いていく、あるいはダンピングが続いていくというようなことになりますと、どうしても品質自体が落ちてくる、こういう問題も指摘されておるわけでありますが、これも薬事法によって取り締まっていくことができる。いまおっしゃった中に、この再販売制度というものを残しておかなければならないという理由は、何も見当たらないわけです。どうでしょう。
  188. 園田直

    園田国務大臣 厚生大臣は、医薬品製薬等の監督等もありますが、その所管の中には、特に製薬業者の企業の育成指導という点も含まれております。したがいまして、今日のような事態においては、やはり製薬業者をある程度保護し、退潮しないように監督企業育成の両面の調整を行なっていくためには、再販制度というものは、適正な範囲において、ごく小範囲に縮めながらもあったほうがよろしい、こう考えております。
  189. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 そうすると、厚生大臣は、やはり再販制度というものは存続すべきである、存続論ということですね。  それでは大蔵大臣にお伺いいたします。大蔵大臣は、いまの問題について存続すべきであるか、あるいは必要ないか、端的にお伺いしたい。
  190. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 公取委員会は、現行法の運用強化によって再販規制を強めるという方針をいっておりますが、結局、全面廃止というのにもいろいろ問題があるようでございますし、当面、公正取引委員会の適正な運営に期待するよりしかたがないというふうに考えています。
  191. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 大蔵所管の中に、この再販売価格維持制度というものを適用している例がありますか。
  192. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ないようでございます。
  193. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の中に、再販売価格維持契約という条項があるわけであります。こういう条項はありますが、しかしながら、適用していないということになりますと、この条項は要らないと思うのですが、どうでしょう。
  194. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 私の所管内ではございませんけれども、あとでよく調査をいたしておきますが、現在の経済諸情勢のもとでは適用しておらないのでございますけれども、今後の情勢の変化におきましてもそれが全然要らないという結論検討の結果出れば、それは削除ということになろうかと思いますけれども、ただ、ここで申し上げられるのは、現在は適用いたしておらぬということだけでございます。
  195. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 いま問題にしているのは、再販売価格維持というこの問題が、大きくいま消費者に対して、国民に対して、物価の値下げを抑制している障害になっている、こういう問題があるわけです。確かにいま申し上げた中には、八十六条の三にこの再販売価格維持契約というものが残されているわけです。先ほども公取委員長の談話、話をちょっと読んだわけでありますけれども、その中にも、初めはそうじゃなかった、しかしながら、社会情勢の変化につれてどんどんとこういったものが出てきて殺到してきた、こういうふうに言っております。現実にそういう必要でないものがあるならば、この条項はのけておくべきじゃないか。でなければ、それに類似したようなものがもしも出てきて、この条項に基づいてこれを結べというような問題が起こってくるのではないか。そういうわけでこの条項は要らないのじゃないか、こう思うのですが、どうですか、大臣
  196. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま局長が言いましたように、実際において要らないというものでございましたら、これはもう削除していいと思います。
  197. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 この規定を読みますと、酒税の保全上必要性がある場合はというようなことが書いてあるようでございますので、もし今後いろんな経済条件の変動に伴いまして――酒税の確保ということは非常に歳入確保の意味からも大きな問題でございますので、したがって、現実の情勢下においては適用いたしておりませんけれども、そういう歳入確保の必要が将来において予想されるということは十分考えられますので、現在すぐ削除するというのは適当ではないのではないかと存じます。
  198. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 そうすると、現在適用してない。しかし、ここには再販売価格維持契約という制度がある。しかしながら、現実の問題として酒類――酒とかビールとかいうものについては、これは大蔵省が指示して、そして価格というものが大体きまっている。こういう制度がなくても、きちっとして、そういうふうに何もこの制度を必要としないような問題がある。ちゃんと現実にそういうことをやっていけるわけですね。であるならば、国民大衆は、こういったものに対して、これはやめなければならないんじゃないか、現実にあるあの二十四条の二、こういったものは強化していかなければならないというのが、いまの世論です。また、公取委員長も再々こう述べているとおりであります。したがいまして、そういった制度を残して、もし示そういうことが出てきたならば、これを適用していこうと考えている。やはりこの再販売価格維持契約制度というものをなくしていくべきではないのか。そういう観点に立っていくならば、現在適用しなくても事が済む法というものは、これは要らないのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  199. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま申しましたように、要らないというものならこれは削除いたしますが、これがはたして将来も要らないものかどうか、これは至急関係部局で検討させます。
  200. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 それでは次に農林大臣に……。
  201. 井出一太郎

    井出委員長 広沢君の出席要求の中に農林大臣はないのですがね。――それじゃ特に必要でございますならば、これから呼びます。
  202. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 じゃ通産大臣にお伺いいたします。  通産大臣、先ほどのように、必要かあるいは必要でないか、この点について大臣の考えを承りたい。
  203. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 やはりあったほうがよろしいと存じております。何となれば、いわゆるおとり廉売等を一つとってみても、これによって非常な混乱を巻き起こし、結局終局においては生産者を害し、消費者を害す、そういうことになりますので、やはりこの制度は、運用の面においては相当注意しなければならぬ点が多々あると思いますが、必要最少限度において制度を存続すべきである、かように考えます。
  204. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 いま農林大臣が来ておりませんのでなにしますが、やはり通産大臣も、消費者というよりも業者を優先に考えていく、そういう面から存続論だと思うのです。その理由として、厚生大臣もあるいは通産大臣もあげられておりました安売りの問題、おとり販売の問題、こういった弊害がある、こういうことを申されておるわけです。その問題について、公取委員長は先ほど読んだ続きにそれを書いてある。もっともだと思いますので申し上げておきますが、この安売りの問題というのは、これはその市場調査に立脚した在庫調整というのが、あまり行なわれていないのじゃないかと思う。不況になって購売力が減ったということを市場調査によって着実に早くキャッチすれば、自分で在庫調整すべきじゃないか。そしてそんなに不当にマーケットにストックがたまっていないようにすれば、何も好んで乱売する人はないと思う。安売りの原因というのは、やはりそういったところに原因があるのだ。それを改めないで、ただそういう安売りしていくために業者は困っていくから、そのためだけにこれを残しておかなければならない、こういう点は、どうも納得がいかない。また、おとり廉売の問題にしても、おとり商品にしても、これはずうっと長い間おとりをやっているというわけではない。やはり、これは事実そうでありましょうが、目玉商品といわれている。ですから、非常に客寄せのためにそれを使っていくわけです。ですから、一時的な短い期間の問題であるわけですね。そのためにおとり商品が多数に供給されるということは考えられない。そういった面から考えていくならば、この安売りの問題にしても、おとりにしても、その不公正な取引があるその問題については、十九条というものがあるじゃないか、それで十分取り締まっていけるじゃないか、こういうふうに公取の姿勢としてはあるわけです。ですから、いまあなたがおっしゃっていらっしゃる安売りだとかおとりの問題についてこれを存続しなければならないという考え方というものは、それがあるからどうしてもこの制度は必要なんだということは、成り立たないはずであります。ともかくもあなたも存続論の一人であるわけです。  それじゃ続けて経済の企画庁長官にお伺いいたします。あなたの御意見を承りたいと思います。
  205. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどから公取委員長並びに関係閣僚が答えておられますように、再販価格・維持契約というのは、これを認める法益がある、こう考えております。
  206. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 俗に物価の番人といわれている経企庁であります。したがいまして、現在、異常な物価の上昇が、好況のときであろうと、あるいは不況のときであろうと、一向に変わりなく続いてきておる現状でありまして、政府・与党としては、御存じのように物価の安定ということを看板に出している。物価を安定していくんだ、そのように、国民はいつ物価が安定し楽な生活ができていくようになるか、毎年毎年公共料金をはじめとしての物価上昇に対しては、非常に憤りを感じているわけであります。したがいまして、物価の番人といわれる経企庁が、いまの再販維持契約に起こってくる弊害というものに対しては、これはやはり存続すべきではない、こう考えていくのがあたりまえじゃないかと思うわけです。  これは半年前の参議院の物特でございますが、あなたはこういうふうにおっしゃっている。「本来、物価という観点だけから申しますと、再販価格維持契約というのは、どっちかといえば物価を下げないほうの役割りをしておる」こういうふうに言っているわけです。「ですから、その観点だけから言えば、こういう契約というものは本則として認めないということであれば、……それが一番望ましい」こういうふうにもおっしゃっておられますし、また、再販売契約というのは、あとずっと続いておりますが、それは何がしかの利益はあるだろうけれども、いま法益の上からとおっしゃいましたが、あるだろうけれども、それから起こってくる弊害のほうがもう圧倒的に大きくて、むしろ禁止すべきものではないか、このような意味のことを言っております。それに比べて、またその当時、物特の各党の決議があるわけです。この決議には、再販売価格維持行為規制法というものを各党の決議によって出しておるわけでありますが、それについて言っても、「消費者保護を目標に各省庁間の意見を調整し、可及的すみやかに成案を得て、次期国会に提案できるよう努力すべきである。」こういう決議案を出されておりますが、その決議に対しても「御決議の趣旨を体しまして善処してまいりたい」こうお答えになっていらっしゃるわけです。  きのうも衆議院の物特で、あなたはわが党の有島委員質問に対しましてこういうふうに答えていらっしゃる。「公取委員長の御裁断で新しい法律はこの際考えない。現在指定になっているところの六業種に関する品目をいわゆる洗い直しをするのだということになったわけでありますが、私はこの決定はきわめて時宜に適していると思います。」こうおっしゃっていらっしゃいますね。半年前においては、必ずそういったものは決議において善処する、こう言っております。また、発言を見ましても、物価を下げない役割りをしているのが、物価という面から見ていくならば、再販契約というものはそうである、こういうふうにお認めになっている。ですから、そういう観点から見るならば、原則としてこういったものはないほうがいい、こう言っていらっしゃるわけです。そういう議事録をずっと読ましていただきますと、半年前にはやはりその弊害が大きかった。ところが、先ほど法益とおっしゃいましたけれども、それが小さくてそして被害が非常に多い。ですから、こういうふうにその当時お考えになっておったのじゃないか。ところが、現在においては、先ほどからいろいろお話がありましたとおりに、その方向を変えてこれを強化していくということが、結局は現行法を残して、それを強化していくということになるわけでありますが、そういうことをお認めになっていらっしゃる。まだほかにいろいろそういった面で現在の再販売維持契約が必要である、いまも御答弁になったとおりでありまして、そういうことを言っておりますが、そういった発言から総合してみますと、やはり物価の番人といわれる宮澤経済企画庁長官みずから、物価対策を投げ出したと国民は考えなければならない、そういうふうに考えるわけであります。あなたは宮澤構想なるものを出しております。それは確かにこのような物価高の中で、どうしても、税金を多少上げたとしても公共料金のストップ、物価上昇にストップをかけなければならない、こういうふうにあなたは強い姿勢を示していらっしゃるわけであります。ところが、一面こういった再販制度に対しては、あなたは以前にはそういうふうに考えておったけれども、現在は残すほうが適当であると思うというふうに態度を変えているわけであります。私はそういう観点から考えてみまして、こういうふうに態度を変えていくというのは非常におかしい。まして大きな期待を持って見ている国民の側から見るならば、非常にこれは残念に思うことであります。そういった問題に対してのあなたの発言を取り上げていろいろ申しました。ですから、あなたのお考えというものを聞かしていただきたいと思います。
  207. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょうど御質問もございましたし、先ほど投書もお読みになりましたので、いい機会でございますからこの問題についての考え方を申し上げておきたいと思います。  先ほど御指摘のように、再販価格維持契約というものは、原則としてはやはり問題があるのであって、例外的にこれを認める必要がある場合に、一定の要件のもとに認めるというのがただいまのいわゆる独禁法のたてまえであります。私はこのたてまえはこれでよろしいと思っております。また、公正取引委員会行政もそのたてまえについてなされておると思います。なぜかと申しますと、それは価格というものは、はなはだ恐縮でありますけれども、安ければ安いほどいいというものではないと私は思います。やはり適正な価格というものがあると思います。適正な利潤というものもあると思います。したがって、もし消費者だけのとにかく安いほうがいいという立場であれば、そのダンピングというものは、消費者にとっては一見最も都合のいいようなものに思われるはずでありますけれども、しかし、ダンピングが継続して行なわれるということは、国民経済全体にとって決していいことではありませんし、最終的には消費者にとってもいいことかどうかわからないという場合が私はしばしばあるだろうと思います。これに対して広沢委員は、そういうダンピングは十九条で取り締まればいいではないかというのが先ほどからの御指摘でありますけれども、そういう零細な末端で数限りなく行なわれるであろうそういう行為に対して、一々十九条を適用するということは、私は実際問題としては可能でないと思います。  それからもう一つ、いわゆる法益として申し上げたいことは、先ほどおとり廉売云々もそうでございますけれども、商品の商標の信用と申しますか、そういうこともこれはただメーカーばかりでない、メーカー、消費者両方にとって商品の信用の維持ということは大切なことでありますし、さらには、もしそういうダンピングが進んでいくといたしますと、これらのものを扱っておる企業、中には零細な企業がたくさんございますが、その企業の維持がやはり困難になる場合があるであろう。実はそればかりでなくて、さらに進んで考えますと、そういう国民が日常使うような薬品、化粧品というものを、これはもうもうからない、損をするからうちの店には置かないということになるに違いない。そうなった場合には、消費者自身が非常な不便をこうむることになります。それらのことを総合的に考えてみますと、確かに弊害はございますから、指定はきわめて制限的にしなければならないと思いますし、現在の指定がすでに十年を経ておるということから考えますと、洗い直しをする必要があることは確かであると思いますが、公正取引委員会がこれを抜本的に見面して洗い直しをしようと言っておられるのでありますから、私はこれは適宜な行政だと考えておるのであります。
  208. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 洗い直しは適宜な行政と、こういうことであります。ちょうど一年前だと思いますが、ちょっと議事録は見当たりませんが、あなたはやはり同じようなことをおっしゃっていらっしゃるわけです。よく検討し、洗い直していかなければならないということを言っておるわけであります。ですから、現在それではそういった結果はどうなったのか、現在まだ洗い直しも何もせずにそのままやってきたのか、こういうことになるわけでありますが、その点はどうでしょう。
  209. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは正確には公正取引委員長からお答え願うべきだと思いますが、私の承知しておりますところでは、一月以内に根本的な洗い直しについて最終的な結論を公取が出されるというふうに承知しております。
  210. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 公取委員長にお伺いしますが、先日のお答えの中にも一カ月以内に洗い直しをする、こうおつしゃっておられます。六業種でありますけれども、その品目というのは非常に数が多い。約四千以下かもしれません。大体四千ぐらいだと承りますが、それが一カ月以内に全部洗い直しができるものかどうか、その時点できめたい、こういうお話であります。どうでしょうか。
  211. 山田精一

    ○山田政府委員 ただいま御指摘のございました四千数百品目につきまして、一応洗い直しを一カ月以内に完了いたすつもりでおります。  なお、先般も申し上げましたが、今後公正取引委員会といたしましては、常時これらの指定されておりますいわゆる例外品目につきまして監視をきびしくいたしまして、経済情勢の変化等がございますれば、これを適宜はずすというような洗い直し作業を常時続けてまいりたい。今度が一ぺん限りではございませんで、今後常時続けてまいりたい、かように存じております。
  212. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 宮澤長官にお伺いしますけれども、先ほどの答弁の中で、安売りだとかあるいはおとりだとかいろいろな問題がある。しかし、それはまあ不況カルテルだとか、あるいは合理化カルテルだとかいう二十四条の三、四というのがあるわけです。ですから、そういったものでぴしっとやっていけば、何もそういうある業種に対して打撃を与えていくというようなことは考えられないのじゃないか。ですから、当然そういう一部の業種だけを保護していくために、この再販売維持契約というものが物価を下げない働きをしているとあなたはお認めになっている。もちろん物価を下げよう、あるいは上昇を押えようということには変わりないと思うわけでありますが、しかし、そういうようなことから考えてやっていけば、二十四条の三、四を適用したらきちっとやっていけるのじゃないかと私は考えるわけです。当然、価格というものが維持できないとかいろいろな問題があります。しかしながら、やはり自由経済の中にあっては自由な競争をやらしていく。その中でいま言ったような現象がある場合においては、いま言った二十四条の三、四というものを適用してきちっと守っていけるのじゃないか、十分にそれが適用されてなかったのじゃないか、このように考えるわけでありますが、どうですか。
  213. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 二十四条の三は不況の場合に特定の商品の生産をする者に対して不況カルテルを結ぶことができるということであります。そこで、この再販売価格維持契約というものをメーカーについて考えますと、確かに不況カルテルである程度処理できる場合があると思いますが、販売業者について、先ほど申し上げましたように、相当零細な、国民の日常使用するものでございますから、販売業者についてその経営が困難になる、あるいは、したがってそういう商品はもう店に置かないといったようなことになりますと、これはやはり消費者自身も不便をこうむるということになるのではないかと思います。
  214. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 ともかくも、いろいろ各閣僚のお話を聞くと、要するに、この再販売価格維持契約制度というものは残すべきである、そして、その制度によって起こってくる弊害というものは、いまの独禁法を強化運用していくことによって防ぐことができる、こういうふうにおっしゃっていらっしゃるわけです。しかしながら、やはり昨年においてこういった規制を強化していくための法案をつくっていかなければならない、こういった問題が持ち上がってきたということについては、あまりにもその被害が大きかったのではないか。消費者を圧迫していくような傾向が顕著にあらわれたと公取委員長指摘しておる。そういうわけであります。ところが、現在は現行でそれは運用ができるのだというふうにあらたまっていった。これは非常に疑義を感ぜざるを得ないわけです。総理自身も、これは次の国会まで待っていただきたい、非常に時間的な余裕がないために提案をしませんけれども、必ずこれは法制化すべきだ、このように考える、ちょうど一年前にこういうふうに言っておます。それが、現行法で運用の強化でやっていけるのだというふうにはっきりおっしゃっていらっしゃる公取委員長意見というものを承っておきたいと思うのです。
  215. 山田精一

    ○山田政府委員 私ども公正取引委員会といたしまして、現行の法律のもとにおいて再販売価格維持契約というものは原則的に禁止されておる、かような考えでおります。ただ、二十四条の二で例外的にあの条項で定められました要件を具備いたしました商品に限って除外が認められておる、例外として認められておる、かように考えております。先ほど投書をお読み上げいただきましてつつしんで拝聴いたしましたが、法律を出さなかったから公取の姿勢は後退したというような御理解をいただいたといたしまするならば、私どもといたしましては非常に残念なところでございまして、消費者の利益を害しまする部分は必ず除去いたします。今後きめこまかく監視をいたしまして、消費者の利益に反する部分は除去いたしてまいりますということをお約束申し上げたいと存じます。
  216. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 最後に、私はどうしても納得ができない問題があるわけです。というのは、冒頭に読み上げました公取委員長との対談の中での姿勢、そしてまた経済企画庁長官が約半年前におっしゃっておられるような態度、それが現在は存続すべきである、はっきりとそういうふうに切りかわってきておる。私は、いまここに国際粧業ニュースというのがあるのですが、この中にはなはだ気になることをいっておりますので、ちょっと指摘しておきたいと思うわけでありますが、これは書いてあるとおり申し上げます。「自民党切っての物価通であり、先に消費者基本法を発表して注目を集めている自民党ニューライト派の第一人者である砂田重民議員」が記者とのインタビューで言っておるわけでありますが、その中にこう書いてあります。こうおっしゃっておるわけでありますが、「再販契約を規制することについては、私は従来から反対である。」これは自由ですからそれでけっこうですが、「自由、公正な競争によって日本経済は発展するものであり、これによって資本は蓄積され、国際競争力が出来、国益も増大する訳である。再販契約が独禁法の例外措置として策定されたのは、あまりに値崩れが激しく、業界が疲弊の極に達した結果、これを救済する観点からオトリ商品に使われやすい商品について再販契約が認められたもので、再販契約は当該業界の利益だけでなく、国家の利益という点からも必要と考える。」これまではいま閣僚の皆さんがおっしゃっていらっしゃることです。「再販契約は誰にとってもマイナスになっていない。」非常にこの点も疑問に思うわけでありますが、あと「再販契約によって正出な利潤を確保し、それによって国際競争力が出来てくるとすれば国益にも繋がる。再販契約は必要であり、これは絶対規制すべきでないというのが自民党の再販規制に対する方針である。」また、「自民党や政府機関の一部にも再販規制に賛同する声が強いが……」という話に対しては、政府自民党の方針は一貫して変わらない、再販規制に反対である、こういうふうに話しておられるわけであります。また「公取の柿沼君に再販規制は慎重に考えてやるように言ってある。単に一般受けだけを狙って軽率に再販規制を出してくれば公取委の立場も無くなるぞと威しといた。」おどしておいたということは穏当でないと思います。「万一法案を出してきても絶対に成立する筈がない。自民党は全力をあげて法案成立を阻止する積りである。」こういった悪法には――規制していこうというそういう法案を出すことについては、「悪法には絶対反対である。」自民党政府の方針で、初めからそれは反対だ、こう言っているわけでありますが、きょうは総理がお見えになっておりませんので、これは再販を規制していくということは、政府・自民党の方針として反対である、規制するということは悪法である、ごう言っていることについて、残念ながら総理が見えていない、官房長官にもお願いしてあるけれども、時間が過ぎてもまだ来ておりませんので、経済企画庁長官に、この点について閣僚の一人として伺っておきたい。
  217. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまお読みになりましたものが、どういう環境においてどのような質問に対して言われたものかがはっきりいたしませんので、それにつきましては批評を申し上げません。ただ、ただいま現実にいわゆる独禁法は再販価格維持行為というものを例外として認めておる。しかもそれをかなりきびしい規制のもとにのみ認めておるわけでありますから、私どもはこの法律に従って行政をやっております。これからもさようでございます。
  218. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 私がこれを引用いたしまして聞いたのは、政府・自民党の方針として再販規制をするということはよくないということを決定しているのだ、こういうように発言している。これは政府・与党の決定事項なんだ。これを考えていくならば、先ほど申し上げたあの規制法案を国会に提出しよう、総理がこれは次期国会で取り上げると言ったことも、現実の問題としてはこれは取り上げられないで、現行法の強化だけでやっていける、こういうように態度が変わってきたことをはっきり裏書きしている文句じゃないか、そう考えるわけです。したがいまして、これが政府・与党の一貫した規制に対する――規制は悪法であるかどうか、その他について伺っているわけであります。
  219. 井出一太郎

    井出委員長 広沢君、ただいま農林大臣が来ております。
  220. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、再販には、これを寛大に認めるときには相当の弊害がある、これは御指摘のとおりです。しかし一定の法益もある。したがってこれは、一定の規制のもとに現行法に従って認めていく、こういうことでございます。これが私どもの方針でございます。
  221. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 これを否定されないところを見ますと、これは自民党総裁あるいは党の考え方であって、閣僚としてはそれはできないならできないとおっしゃってけっこうです。しかし、閣僚の一人として、政府・自民党と、政府と言っているわけでありますから、あなたが否定されないところを見ますと、これを肯定していると受け取ってよろしいですか。
  222. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 どういう環境のもとにどういう質問に対してそういう発言が行なわれたのかさだかでございませんから、それについてはコメントをいたしません。先ほど申し上げたとおりです。
  223. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 この問題については、深く入っていかなければなかなか理解できない問題もあると思います。しかし、ともかくも、いまの再販契約というものが非常に弊害を起こしていることは事実であります。したがいまして、われわれの考えとしては、この独禁法二十四条の二はなくすべきである。あるいは、先ほども大蔵大臣に申し上げましたが、制度だけあっていつでもそれができるようにしているけれども、現在適用がない、そういったものはもう削除すべきじゃないか、これらの行為を縦のカルテルとしてきびしく取り締まっていくようにしていくべきでないか、このように考えているわけであります。現在の規制法というものは、たとえば試験の問題に関して考えてみましても、公正な場において競争というものは行なわれなければならない。しかし、こういう抜け穴をこしらえてあるということは、やはり裏口入学とかそういったものを認めているみたいなもので、取り締まると言ってそれを抜けていく法律をこしらえているというのは、またそれを温存していかなければならないというのは、そのようにしか考えられないわけであります。したがって、この問題については、また具体的に掘り下げて次の機会にお伺いしてまいりたいと思います。  それでは建設大臣にお伺いいたします。  まず、先ほども質問がありましたけれども、最近非常に地価の高騰を来たしておるために住宅の建設が困難である。しかし、あなたは先ほど、五カ年計画というものは進んでいく、必ずできる、こういうふうにおっしゃっておられました。したがって、私がまずお伺いしたいことは、現在の住宅問題の最もガンになっているのがこの地価の高騰である。これに対する具体的な対策を立てていかなければならない。そういうわけで、現在の地価の推移について、三十五年を一〇〇とした場合にどのように上がってきているのか、この点をお答えいただきたいと思います。
  224. 保利茂

    ○保利国務大臣 年度のとり方にもよりましょうけれども、九倍とか十倍とかというような数字が出ておりますが、数字的には政府委員から説明させます。
  225. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 三十五年を一〇〇として本年までどれくらい上がっているか、わかりませんか。
  226. 保利茂

    ○保利国務大臣 地域によって違いますから、一がいには申せませんけれども、大都市特に東京のごとき九倍から十一倍になっておるのじゃないかと思っております。
  227. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 確かに地域によって違うわけでありますけれども、ちゃんと統計に出ておるわけです。  では、公共事業費の三十五年度を一〇〇としての推移についてはどうですか。
  228. 保利茂

    ○保利国務大臣 私は手元に数字を持っておりませんから、政府委員から説明させます。
  229. 播磨雅雄

    ○播磨説明員 お答えいたします。  全国市街地価格の調査がございます。これは不動産研究所で従前から調べておるものでございます。この指数は三十年三月を一〇〇といたしますと、三十五年の三月で二八〇になっております。いまおっしゃいました三十五年三月を二八〇といたしますと、四十二年の三月で九七五になっております。したがって三十五年に比べますと、四十二年は三倍強、こういうことでございます。
  230. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 それではもう一つだけお答えいただきたいのですが、この公共事業費のうち、用地費の占める割合はどうなっているのか。――それでは、こちらに推計したのがありますから申し上げますが、要するに三十五年を一〇〇として四十年度で一五%、それから四十年以降は大体二五%くらい、あるいは四十三年度予算では大体三〇%くらいになるのじゃないか。非常に上がってきているわけでありますが、大体でけっこうです、この線で間違いにありませんか。
  231. 保利茂

    ○保利国務大臣 建設省所管の事業費に占めまする用地費の割合は、三十五年の調べで一二・五%、三十七年で一五・五%、三十九年で二二・三%という調査があがっております。
  232. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 公共事業費は増大しても、このように用地費が上がってきているわけです。今日までの状態を見ましても、用地費に公共事業費というものは相当食われてきているのじゃないか。ですから用地費の実質的な効果というものは非常に減少してきている、また名目化してきているのじゃないかと思うわけであります。不況の三十九年度に赤字公債というのを発行している。しかしながら好況を迎えた四十二年においても、この赤字公債を建設公債と名前を変えて続けているわけであります。また予算に占める割合も非常に高いわけでありますが、こういったように公債を発行してきた、建設公債と名を変えていったとはいいますが。こういう地価の値上がりというものに対して何らの対策がない。それがために、やはり公共事業、すべての事業を進めていく上においてもこういう問題が置き去りにされてきたために、公共事業費というものが地価あるいは用地費、こういったものに食われてきていることをいまの統計は物語っているわけであります。これはやはり土地対策が完全にいっていない、土地対策がないということを物語っているのじゃないかと思うわけです。  そこで、最初に住宅の問題をいろいろお伺いする予定であったわけでありますが、先ほどの質問の中に相当詳しく出て、建設大臣も答えておりましたので、次の問題に入っていきたいと思うのですが、その土地問題で一番問題になってくることは、やはり住宅の建設である。しかしながらその土地対策について具体的な対策がないままにいまの住宅五カ計画というものが進んでいくのかどうか。あるいはまた、公団の宅地造成ということをやっております。そういった問題が具体的に進められていけるかどうか。こういった宅地造成の問題については、特に公団においてはいろいろな疑惑が起ってきているわけでありますが、まず公団の総裁にお伺いしたいと思うわけでありますが、公団の住宅建設五カ年計画における建設状況と今後の見通しについて、まず御説明いただきたい。
  233. 林敬三

    ○林参考人 日本住宅公団といたしましては、御承知のように、住宅五カ年計画の政府の決定に基づきまして、その重要な一翼をになうべく、大体五カ年間に三十五万戸ないし三十九万戸を建設する予定でございます。それで、四十二年度はそれが第二年度でございまして、六万一千戸を建設いたしますし、四十三年度は予算がもしお認めを願えますならば、六万九千戸を建設いたします。そして逐次累増していくわけでございますが、大体いまのところのカーブで見ますと、相当苦労はございますけれども、かろうじて五ヵ年計画を達成し得るという見通しでございます。
  234. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 いま公団総裁から、かろうじてあるいは達成できると思う、こういうお話があったわけであります。しかし最近私が承っているいろいろな問題が出てきておるわけでありまして、宅地造成というものが一つの障害にぶつかってうまくいかない、こういった問題も出てきているわけであります。  そこで、まずお伺いしておきたいのは、公団が一つの団地をつくるときに、その宅地造成、住宅建設計画を立案するにあたって、計画に基づいてあらかじめ予算を定めてきちっと行なうと思うのですが、たとえば建設費あるいは用地買収費、こういう計算をきちっと立てて、建設計画、宅地造成計画というものを立てられておる、その点はどうでしょうか。
  235. 林敬三

    ○林参考人 本年度六万一千戸、明年度六万九千戸を建てますにつきましては、それに必要な宅地はどれだけ要る、どこに大体どういう見当になるということは見当をつけております。それからまた制度といたしましては、次年度用地というのを買うことが認められておりますので、相当程度の次年度用地も買っておるわけでございます。それらを勘案いたしまして、大体一年に坪で申しますと百数十万坪、住宅を建設するためには買っておるわけでございます。そしてそのほかに六、七カ年計画から十年計画をもちまして、大きな規模の宅地を造成する、すなわち地面を切り開いて宅地をつくるということを別途にいたしておるわけでございます。
  236. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 そういたしますと、やはりそういう計画を立てて行なうということになりますと、大体積算というものがありますから、この地域に対する用地買収あるいは宅地造成については、買収費は大体幾らだ、坪当たり幾らになる、あるいは造成費は幾らになる、こういう積算はやっているわけでありましょう。用地の取得について、それであればどういう方法をとっておられるか。
  237. 林敬三

    ○林参考人 用地の取得につきましては、これが一番問題なんでございまして、用地が手当てがつきましたらもう八、九割団地はできたものといわれるぐらいでございます。しかしそれだけに、最近いろいろの困難な条件が重なってきておりますので、苦心惨たんをいたしておるわけでございます。やり方といたしましては、原則として直接契約、地主さんと直接契約をするというやり方をとっておりまして、なるべく間に人を入れないということでございますが、これはその団地に地主の数が少ないときは可能なのでございます。しかし、一団地百数十人、二百数十人というようなところがあり、かつ団地に非常な格差がございまして、それぞれの主張が非常に違うというようなときは、地主代表という人に代理をしてもらって取りまとめてもらう、あるいは契約代理人というものが出てまいりましてそして契約をするということも、やむを得ずいたしております。件数からいいますと、そういう地主代表と契約をするあるいは契約代理人と契約をするというのが、全体の四分の一から三分の一というくらいの件数の比率にはなっておりますが、やむを得ずといいますか、必要上そういうこともいたしておる次第でございます。
  238. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 それで、建設大臣にお伺いしますが、今日までこの公団用地の買収に関して、数々の疑惑を生んだ事件を御存じになっておりましょう。その疑惑が用地の取得についてひんぱんに起こっているという点について、その原因がどこに基因しているのか、あなたも関係あるわけでありますから、認識していらっしゃるか、それをお伺いしたいと思います。
  239. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えいたします。  とかく誤解を招きやすい仕事でございますから、建設省内部にもそういう誤解あるいは疑わしきことが行なわれないように、十分気をつけてやってもらいたい。私は以前のことは存じませんけれども、林住宅公団の総裁に対しては絶対の信頼を置いておりますので、これにこたえて間違いのないようにやっていただけるものと期待をいたしておるわけであります。
  240. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 こういう問題がずっと公団用地に対して指摘されているわけでありますが、大阪の光明池団地――これは問題が刑事事件にまでなっておりますし、あるいは千葉の花見川の団地、これもそうであります。また都下の清瀬団地あるいは栃木の深谷工業団地、また奈良の平城団地等については、すでにこれは国会で取り上げられている。まだここに申し上げない数々ありますが、そういった問題がやはり公団の用地造成に関して起こってきているわけです。これも国会で再々取り上げられておった問題でありますが、こういった用地買収に関して具体的にどういった問題が取り上げられているか。やはりこれは売買契約を結んでいくときにその一つの問題が出てきているわけであります。その点について具体的に、この用地買収時におけるこういった原因を生んだ時点というものはどういうところに問題点があったのか。これは済んだことでありますが、その点について公団総裁はどう感じていらっしゃるか、その点をお伺いしたい。
  241. 林敬三

    ○林参考人 現在、御承知のように、土地を買うことは非常にむずかしい仕事でございます。公団でも一番の精鋭をそちらへ充てておりますが、率直に申しますと公団の職員としてはなるべくほかのほうをやらしてくださいと言うくらいに困難をきわめる仕事でございます。  そのお尋ねの点は、これはどういうところに原因があるか、それはいろいろあると思いますが、先ほど御指摘のような異常なる土地の値上がりということからくるわけでございます。この都会地、すなわち公団で住宅をつくらねばならぬ都会周初というものが異常に値が上がりまして、さっき発話がありましたように十年間で十倍とか十二供とかいう値上がり、そして一般の物価は倍かあるいは〇・五倍というような状態でありますだけに、そこにいろいろと不平も起こり不満も起とり、またそこで利益を得ようという人も出てくるというようなことがいろいろあるわけで、売り惜しみということも非常に行なわれるわけですし、また投機的にそこへ入り込んでくるという人もございまして、千差万様でございます。  それで、まあしかしこういう状態のもとに、部会にはどんどん人が集まってまいりますし、ほうっておけばいわゆるスプロール化の現象になって、マッチ箱のような非常にごたごたの市街地になってしまいます。そこで整然とするために自治体と協力をしていいところ、適当なところを買って、そして市街地をつくっていくということをやっているわけでございまして、その間苦心をいたしておりますが、同時にできるだけ弊害のないように公平に、そしてまた代理人が入りましても、地主には平均して私のほうは幾らで買いましたという通知は必ずするように、それから総額は幾らで買ったという通知、また金を支払うときは立ち会い人を入れまして、そうして誤りのないようにいたし、また価格の決定については必ず鑑定機関を、以前は一カ所からとっておりましたが、必ず三カ所から公平な第三者鑑定機関に委嘱をしまして、そうしてそれの平均値をとって、それ以内というものでなければ買わない、こういうようなことにいたしておるわけでございます。しかし需要はどんどんふえてくる、供給のほうはいろいろの値上がりその他を考えながらぐっといろいろな主張をする人があるという中でやっておりますだけに率直に申して苦心をいたしております。
  242. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 いま公団の総裁がおっしゃっておるとおりにいけば問題はないわけであります。ところが、いまそういうふうにおっしゃっていらっしゃるので一つの例を申し上げますが、埼玉県の尾山台団地、あと田島団地とかいろいろありますが、その契約の相手方、あるいは契約価格、年月日、これをちょっと明らかにしていただきたい。
  243. 林敬三

    ○林参考人 埼玉県の尾山台団地は東大宮駅のごく近くにございまして、東京駅から約五十分の距離のところでございます。面積は十五万二千四百八十六平方米、すなわち四万六千百二十七坪でございます。当所の地主は七十九名おります。そうして契約を結びましたのは昭和三十九年の八月二十六日でございまして、価格五億円余りでもってこれを買収いたしました。坪当たり一万九百円でございます。そうして農地転用その他の諸般の手続を終わりまして四十年の十月に着工して四十二年二月から千七百六十戸をつくりまして入居を始めております。
  244. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 三十九年八月二十六日にこれを買った。そうしていま住宅建設が済んでおると言っておりますが、相手方小高偉義という人はどういう人でありますか。  時間がありませんので続けてお伺いしておきますが、この小高という人が地元の地主から坪幾らで入手しておったのか知っておられますか、その点どうでしょうか。
  245. 林敬三

    ○林参考人 契約代理人の小高氏がもとの地主から幾らで買ったかということはつまびらかにいたしておりません。しかしながら公団がこちらで買いますときは、不動産銀行の鑑定評価額をとりまして、その評価額は坪一万一千円でございます。そこでいろいろと折衝をいたしまして坪一万九百円で買収をすることにいたした次第でございます。
  246. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 売買実例はどこまでお調べになるのですか。やはりこの話をされるときには売買実例というものを当然もとにされると思うのです。どうでしょうか。
  247. 林敬三

    ○林参考人 第三者の不動産鑑定の評価を求めますほか、公団としても職員を使いまして、できるだけ信用のある付近の近傍類地の売買実例というものを調査いたします。この場合はそちらからいっても妥当な価格ということで、さようなことになったと思います。ちなみに、売買実例の近傍類地の価格の調査というのは非常に困難でございます。よほどはっきりした、いわゆる隠さないケースをつかまえませんと、たいていいろいろとむずかしいことで真実をつかみがたい点がございますが、できるだけ確実なところをつかまえて、近傍類地の価格というものの中の信用できるものをとりまして、それとこの銀行の鑑定価格というものと両方から攻めてまいりまして、そして相手方とのこれは取引でございますから、相手方の申し込みというものとをいろいろ比較して、折衝いたしました結果、この価格にいたした次第でございます。
  248. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 これは公団と契約代理人小高氏との契約が結ばれる前に、小高氏とそれからこのもとの地主である黒須という人ですか、との間の売買がなされているわけであります。ちょうど公団が契約を結ぶ三カ月前、三十九年の五月十二日にこの契約がなされている。そのときの価格は御存じでしょうか。
  249. 林敬三

    ○林参考人 ただいま私その資料を手元に持っておりませんし、また私の着任前のことで、あらかじめおっしゃっていただけばそれを調べたのでございますけれども、いまここに持っておりませんので申し上げかねます。
  250. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 それはここに契約書もありますけれども、大体坪当たり三千円、あるいはまた多少違う地点だろうと思うのですが六千円、この前後で売買されていることになっております。ところが三カ月たったあとでは、公団と代理人と契約を結ぶ場合においては、これは一万九百円、先ほど適正な額と申しておりましたが、一万九百円になっておる。約三倍くらいになっておるわけですね。三カ月間に三倍くらいあるいは二倍くらいになるということは非常に納得できないわけです。  会計検査院長お見えになっていますね。――会計検査院長にお伺いいたしますが、この四十一年の決算報告によりますと、不当事項としていろいろ公団用地の問題に関して報告が出されております。この尾山台団地も入っていると思います。どういう不当事項であったのか、その点をお伺いしたい。
  251. 小熊孝次

    ○小熊会計検査院説明員 お答えいたします。  四十一年中におきまして、光明池ほか四十七地区の土地買収につきまして、実地に検査をいたしました。その結果、九地区につきまして土地買収価格の評定方法に適切でないものがあるということで、公団総裁に改善意見を出しておるわけでございます。その改善意見の具体的な例として、ただいまお話がございました尾山台が一つの基礎になっておるわけでございます。  尾山台の例について申し上げますと、尾山台の場合は売買実例といたしまして九件を選んでおるわけでございます。そのうち二例が相当高価な売買実例になっておりまして、これは国鉄の駅に近い、もうすでに市街地化の相当進んだ宅地の取引実例であると認められるものがございました。このような売買実例を、本件のような大半がまだ農地であるこういうような土地の評定に、そのまま採用することは適当でないんじゃないか、このいうようなことで、類似性の乏しい土地を売買実例として使わないように、こういう意味での改善意見を申し上げておるわけでございます。
  252. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 鑑定評価の依頼あるいは売買実例の調査――いま私指摘いたしました非常に短期間の間にそういうふうな坪当たり二倍も三倍もの契約を結んでいかなければならない、そういった面についての不当事項として会社検査院は取り上げていないわけですか。
  253. 小熊孝次

    ○小熊会計検査院説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、四十一年中におきまして相当の件数を調べまして、ただいま尾山台の点について申し上げましたのは一つの例でございますが、その他相当数の件数を調べました結果、公団の価格評定の方法あるいはその執行体制というものにつきまして、もっと改善の余地があるじゃないか、こういうことで改善意見として総裁あてに出しました。国会にも御報告申し上げておるわけでございます。
  254. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 時間もありませんので、こちらからいろいろ聞きたいこともありますが、とにかくこういった、いま指摘いたしましたように、短期間に非常に値がつり上がったものを公団が買っているという、こういった問題が数々見受けられるわけであります。まあ会計検査院も、この検査報告によりますと、どこの地点ということはありませんけれども、総体的にこれは指摘をしております。ましてその尾山台団地の問題については、この小高という方はそれからちょうど一年目に自民党へ一千万円の個人献金をいたしておるようであります。これはどうでしょうか、自治大臣おわかりでしょうか。そういうわけで、十分時間がありませんので指摘はできませんが、土地売買に関して疑惑の持たれるような、こういったような売買実例も十分調査していない、あるいは評価鑑定等もすでに契約を結んでから評価鑑定等がなされておる、こういうような実例があるわけです。まして、このいまの坪数から考えていきましても、短期間の間に、公団との契約に際し旧地主との間に何億円という利潤が浮いてくる、こういう結果が出てきている。まして政治献金がそれからなされておる、いろいろな疑惑を生むわけであります。しかしこれは決算委員会で具体的にこういった問題は掘り下げていくべきであろうと思います。私はまだ数々の実例を申し上げたかったのでございますが、もう時間がありません。こういうふうに光明池から始まって、この問題がほとんど宅地造成に関しての疑惑です。その中に、契約代理人との間に問題があってあるいは刑事事件が起こってきた、そういったような問題が指摘されているわけです。  そこで、こういった例が物語っているように、国民むしろ、公団に対しての疑惑を持つかもしれませんが、それも当然のこととしても、根本的に考えていけばやはり土地対策というものが十分でない。ですから計画は立てた、その土地が急に値上がりをした、これはその周辺の土地が、公団が宅地造成を始めたら、あるいは契約を結んだその時限から急に値上がりをしてきているという例が数々あげられております。こういった問題を解決していくためにも、単にこれだけの問題ではありませんが、早急に土地対策というものを具体化していかなければならないのじゃないか。これは本院の各党の共同提案にもこのことは載っております。また行政管理庁もこの点を指摘して、早く公共用地取得の適正化をはかっていかなければならない、土地対策を立てていかなければならないということを指摘しておるわけであります。  そこで行管庁が指摘している公共用地取得に関する統計、整備あるいは統一的購入体制の整備、基準価格の設定あるいは開発利益の帰属の調整、先ほども話が出ておった地価の公示制度だとかあるいは空閑地税だとか、そういった問題でありますが、そういった指摘された問題についてどういうぐあいに進んでいるのか、簡単に建設大臣にお願いしたいと思います。
  255. 保利茂

    ○保利国務大臣 けさほど来御論議がございましたように、土地問題というものが、すべての事業遂行をしていきます上において非常に大きな障害になってきて、何とかしなければならぬというところに逢着いたしております。したがって、政府といたしましても、国会の決議あるいは四十年十一月の閣議決定以来、いろいろ行政措置としてやっていることはやっておりますけれども、特に都市計画法でありますとか都市再開発法でありますとかいうものを立案いたしまして、御審議をお願いいたしておるようなわけでございまして、これらを一日も早く成立願いまして、さらに強力な総合施策を打っていかなければならぬかと――なかなかこれだけ片づければこれでいいという性質のものではございませんので、関連するあらゆる総合施策を講じて、国民の期待にこたえていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  256. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 いつも答弁は同じことだ。一年前もあるいはいつも、こういうふうに決議案あるいはまた行管庁からの指摘だというようなことが行なわれているけれども、公共用地取得に関する統計あるいはまたいま申し上げた統一的購入の問題であるとか、これは具体的に詰めていかなければ、こういった問題はいつまでも続いていくと思うわけであります。ですから、この土地対策あるいはそういった一つの体制というものを一日も早くつくっていくべく努力していっていただきたい、そのようにお願いして、私の質問を終わります。(拍手)
  257. 井出一太郎

    井出委員長 これにて広沢君の質疑は終了いたしました。  林参考人には御多用中のところ御出席いただき、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。御退席いただいてけっこうでございます。  次に、中村重光君。
  258. 中村重光

    中村(重)委員 先ほど来広沢委員から再販の問題について質問をいたしておりましたが、公取委員長以下各大臣答弁を聞いていると、全く説得力がない。むしろ、この制度というのは、弊害があるのだということを認めておる。ただ、最小限度におとり販売ということを、委員長宮澤長官通産大臣申し合わせをしたように、そのことを盛んに強調しておられる。あなた方もよくお考えになってみなければならぬことは、この再販というものが非常に物価引き上げの温床になっている。大企業の利益を守るための制度だという強い国民的な批判があるわけです。それに対して、先ほどの答弁によって国民が納得するだろうか。あなた方は何とかして大企業の利益を守るために、この制度を温存していきたいという以外の何ものでもないと私は考えていたし、広沢委員質問に対する答弁を聞いても、その感を強くしたわけです。  御承知のとおり、北島前委員長が、ともかくこの再販制度というものはこのままではいけない、何とかこれを改善していくということでなければならぬ、そして小売り店の利益を守り、消費者の利益を守っていきたい、そのために、コストの公開であるとかあるいはその他の契約の内容等をここではっきりしていく必要がある、明らかにしていく必要がある、そういうことで改正を企図した。あなたも御承知のとおりでしょう。ところが、これはまずメーカーが大反撃を試みてきた。これによって各省も反対の意向を固めてきた。ついに提案の運びに至らなかった。そこで、北島前委員長としても、その職にとどまってまた再選されると五年になるわけですから、その五年の間には何としても改正案を出さなければならぬ。しかし、出してみたところで、これを改正するということはなかなかむずかしい。そういうことから、北島さんは自信をなくして退くということになったのでしょう。そのあとあなたが受けた。そしてあなたは、ともかくかつて提案の準備をした改正案の内容というのは、大きい魚を逃がして、ざこだけがかかってくるという結果になるのだ、そういう改正案は適当ではないのであって、むしろ現行法でやれるのだから、これを洗い直していくのだということをおっしゃった。私は全く不可解千万だと思っている。なるほどあなたは、公取の委員になられてからそう長くはなかったのだから……。しかし、ほかの委員人たちは、北島委員長当時からおられた委員であって、そしてこの提案に対しては、合議制なんだから、責任を持って改正案を出さなければならぬということで、五人の委員意見が一致して、そして作業に取りかかり、提案の準備をして、先ほど私が申し上げたような了解運動に入ったのでしょう。そして、あなたが委員長になるや、とたんにまるでもう忘れたかのように、あんなでたらめな、内容の乏しいものは適当じゃないのだと言うのはおかしいじゃありませんか。大体改正をしなければならぬということはわかっておるけれども、どうしても改正をするということはむずかしい、できないことだ。そこで、無理してつけた理屈が、現行法でやれる、これを洗い直すのだということになってきた。いろいろとあなたは私の質問に対して、 いや、そうではございませんと言って御答弁なさるだろう。だがしかし、私は押しつけるわけではないのだけれども、真相は申し上げたとおりだと思う。あなたもお考えになってみなければならないですよ。昭和二十八年九月一日からこの制度が実施された。十五年間どういう働きをこの法律がしてきたのだろうか。先ほどあなたは広沢委員質問に答えて、消費者の利益は絶対に守ります、私の責任において必ずそれを守りますとお約束になった。大体この法律は、この制度というものは、消費者ということは提案理由の中に一つも書いてない。いわゆる小売り業者の利益を守っていくのだ、メーカーと小売り業者の関係というようなことが提案理由になっている。だがしかし、十五年間たつと情勢が大きく変化してきた。経済構造が変わってきたし、生活環境も変わってきた。だから、これはもうどうにもならないのだ。だからして、これを改正することにするか、それからまた廃止するということ以外にない。  いま一つ、私が非常にふしぎに思ったことは、これほどたいへんな問題になっている、閣内でもおそらく議論もされただろうと思うのだけれども、先ほど水田大蔵大臣が、これが必要がないということであればやめなければならないのだから、各部局において相談をしたいというお答えがあったでしょう。ずっと並んでいる大臣は、これを置くというために適当な答弁をされてきたんだが、水田大蔵大臣は、私がいま申し上げたような意味の答弁をなさった。このこと一つとらえても、きわめてこの問題に対しては閣僚諸公においても問題を感じておられるということのあらわれだろうと私は思う。だから、どうしてもこの制度というものを存続していかなければならぬという積極的な理由がどこにあるのか。先ほどお答えになったおとり販売といったようなことでは国民は納得しないんだから、重ねてそういう答弁を二番せんじみたいに私は聞こうとは思わない。いままでこの制度というものが、小売り店の利益を守るために、あるいは品質をよくするために、あるいは消費者の利益を守るためにどういう働きをしてきたのか、それらの点に対して、ひとつ確信のある答弁をされて国民を納得させる、そういう形でお答えを願いたい。
  259. 山田精一

    ○山田政府委員 二十四条の二で独禁法のわずかなる例外として認めておりますところの再販適用品目でございますが、これはすでに御承知のとおり、一般消費者の日常の使用に供するものという限定が付されてございます。したがいまして、もしも大型店にその取り扱いが集中するようなことがございまして、消費者がもよりの零細な小売り店で容易に入手しがたいというようなことが起こりますと、これは結局消費者の利益にもならないことだと存じます。また、そのことは、同時に、零細なる小売り商を保護をいたす、これにも大きな法益がある、かように心得ております。したがいまして、公正取引委員会といたしましては、現行法の例外、これは十数年たちましたものでございますから、この際、徹底的な洗い直しをいたしまして、消費者の利益に反するような部分はこれをことごとく除去をいたしてまいりたい、必要最小限度にとどめてまいりたい、その上、事後の管理をきめこまかくやってまいりたい、かような考えでおります。
  260. 中村重光

    中村(重)委員 いまお答えになった、消費者の利益に反する部分はこれを避けていく、消費者の利益に反する部分というのは、どういうことなのかわからぬですね。それと、いまあなたが日常一般消費者の用に供するもの、こう言われた。薬一つ考えてごらんなさい。東京都内を見ても、薬屋さんは適正配置にはなっているが、何も買いに行くのにそう不便はありません。今度は農村部落に行きますと、そう薬屋さんはざらにあるものじゃありません。だから、そういう答弁は説得力がないのですよ。それと、日常消費者の用に供すると言われたんだが、化粧品を一つ考えてごらんなさい。いま化粧品といったら資生堂。化粧品というのはムード商品です。資生堂という名前だけで消費者は飛びつく。ところが、資生堂の化粧品、何とこれが高いこと。私は直接は知らないので、聞いておるのだけれども、クリーム一個千円以上というのですよ。そこいらのサラリーマンの人たちとか、それから一般庶民の人たちの奥さん方は、買いたくたってなかなか買えません。これは一般の消費者の日常の使用に供するものということとはちょっとほど遠いんじゃないか。  それから、いまあなたお答えになっていないのだけれども、この再販制度というのは、いま一つは、品質をよくするという、いわゆる有効な競争というものが行なわれておる、これを指定をしても、いわゆる独占性というような形になってこないであろう、だから、これを指定するのだということになっている。ところが、資生堂のシェアがいまどの程度あるのか私は知りませんが、有名商品というものに集中していく。そうすると、そのシェアは拡大をしていきますよ。拡大をしてくると、勢いこれは独占性になってくるような弊害が出てくるわけですね。だから、問題点というものはそういうところにある。だから、いまあなたは資生堂のシェアというものがどの程度になっておるのか御調査になっていらっしゃるでしょうから、お答えを願いたい。
  261. 山田精一

    ○山田政府委員 ただいま御指摘のございましたような、著しく高価な商品、これは私どもは一般消費者の日用に供するものとは考えないことにいたしております。したがいまして、おそらくこれは今回除外されることになると存じます。  それから、シェア、これは自由な競争が行なわれておる、これが法律の定めまする条件になっておりまするので、過去の例を申し上げますと、粉歯みがきがある業者が約八〇%を占めておりましたために、これは指定からはずれておるわけでございます。
  262. 中村重光

    中村(重)委員 これで時間をとっていけませんから、進めてまいりますけれども、この制度というのは、委員長、これはやみ再販の温床になる、管理価格制度というものをさらに横行させるという役割りを果たしていく。この点にあなたはどうして思いをいたさないのですか。あなたが委員長になられたら、無理にそういう大資本の利益を守るために後生大事にこういうものを守っていくのでなくて、一般の中小企業の締めつけに果たしておる役割りがこの制度は大きいのだ、いわゆる一般庶民層の利益には通じないのだ、そうお考えになるならば、断固として独禁法二十四条の二は削除なさい。どれほどこの制度というのがほんとうに市民層の利益になっておると確信をして先ほど宮澤長官はお答えになったのか、どうも長官答弁を伺ってみてもわからない。先ほど広沢委員から指摘がございましたように、長官も、物価引き上げの役割りをこの制度は果たしているのだということをかつて認めた。それなりの答弁はしておりましたけれども、そのこと自体は私は否定されないであろうと思う。私は、公取がいまやらなければならぬことは、こういうことを後生大事に守っていくということでなくて、ともかくそうした管理価格制度というものを打破していく、資本の集中度というものを打破していくということに全力をかけるべきだと思う。あなたが、この指定商品の中で――お答えのとおり四千数百あるのだけれども、これを生産をしているところのメーカーの生産の集中度というもの、そういうことについて十分な調査をなさったことはないでしょう。ありますか。そういうことが一番大事だとはお考えになりませんか。
  263. 山田精一

    ○山田政府委員 ただいま御指摘のございましたやみ再販の温床にこの制度がならないように極力注意をいたしまして、運用いたしてまいりたいと存じます。  それから、消費者の利益に反するようなことはどこまでも強く規制をしてまいりたいと存じます。  なお、最後にお尋ねのございましたメーカーのシェア、これは常時調査をいたしております。
  264. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、私は、問題点をここであげてあなたの見解を伺うのだけれども、昭和四十一年度の公取の事業報告というのが出されている。それの中で、管理価格の点について、こういたしましたという報告が出されたのですね。それには、バターと合成洗剤をやっておりますと、こういう報告になっておる。そこで、四十二年度の報告を読んで見たところが、全く同じなんだ。バターと合成洗剤の調査をいたしております。何ですか、これは。四十一年も四十二年も全く同じなんだ。これは調査をしたんじゃないんですよ。おそらく、これはだれかあなたのほうの職員にさせたのだろうと思うが、報告をしなくちゃならぬから、四十一年に書いておった報告書をまる写しさせたのでしょう。そうじゃないと言い切りますか。
  265. 山田精一

    ○山田政府委員 たいへん調査に日数がかかっておりまして、申しわけないのでございますが、実情はまさにそれだけの期間がかかっておるのでございます。それから、最近において、ただいま御指摘になりました以外の品目についても調査を始めております。
  266. 中村重光

    中村(重)委員 いまあなたが何ぼ答弁、されても、私が指摘したとおり、四十一年度の事業報告、四十二年度、全く同じだということだけは、これは資料を読んでごらんなさい。違ったことを私が言っているかどうか。私にもらったんだから間違いないのだ。  そこで、管理価格と集中度、この係に何名の職員が従事していますか。
  267. 山田精一

    ○山田政府委員 ただいま正確なところを記憶いたしませんので、あるいは一、二名違うかも存じませんが、管理価格のほうが七名でございまして、集中度の調査が十四、五角と記憶いたしております。
  268. 中村重光

    中村(重)委員 管理価格の係が三名、集中度の係が三名。あれもこれもほかの仕事をやらせておいて、七名おります。十五名おりますなんという答弁は、それはここではあなたは通し切っても、商工委員会じゃ通りませんよ、具体的な質問になるんだから。そこで、常時百社の資本集中度の調査をなさった。これに対して何名の職員でこれをやらせていますか。
  269. 山田精一

    ○山田政府委員 四名と記憶いたします。
  270. 中村重光

    中村(重)委員 それは一名。一人の職員に調査をさせて、それを取りまとめさせて、会議にかけて決裁をさせただけでしょう。あなたがそういうようにたくさんの人が公取にはだぶついておるように思っておるから、増員要求をしても大蔵大臣は聞いてくれないのだ。正直に言いなさい、正直に。足らないで手も足も出ないでいるんでしょう。下請の調査をしなければならぬ対象企業というのは、大体いま実数は約一万あるんですよ。いいですか。それに対して何名の係員がおると思いますか。もう時間がないから私が言う。四十名ですよ。五年に一回の調査なんだ。どうしてそれで公取の任務がつとまります。  大蔵大臣、お聞きのとおり、これほど問題になっている管理価格、あるいは生産の集中度、あるいは資本の集中度、あるいは下請企業と親企業との関係、これほど大きな、産業界の問題だけではなくて、社会問題にまで発展している問題、こういうことに対して、公取の委員長答弁と私の指摘とは違うのだけれども、これは私は押しつけるのじゃないが、私の申し上げたことが正しいと私は考える。こういうような人員で、あなたはこの重要な公取の任務がつとまるのだとお思いですか。それで、総員何名おるか。そしてある程度これらの問題に対して予算要求をして、これを審査をされるときは、それ相当な調査をしておられると思うのだけれども、あなたはこれが適当だとお考えになりますか。
  271. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 人員の問題については、直接査定に当たった主計局長から答弁します。
  272. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 お答え申し上げます。  最近、公務員の数のふえることにつきましてはいろいろ批判もございますけれども、しかし、物価という大きな問題に関連いたします公取につきましては、従来もわれわれとしては相当重点的に考えてきたところでございます。現在三百二十六名と記憶いたしておりまするが、それに対しまして来年度は八名の増員をいたしております。昨年度までは大体二、三十名ずつ増員をいたしておりましたけれども、しかし、その後の採用の状況を見ますと、ほんとうに中堅になりまする五、六等というところの人員は、定数だけをふやしましてもなかなか実際にはとれないのでございます。そこで、そういうことも考慮しまして、来年度は公務員の増員の抑制ということを非常にきびしくやりましたので、その中において実際に採用可能な中堅職員の数も勘案しまして、そういう査定をいたしたわけでございます。公取のやっておりまする仕事はいろいろ重要なこともございますけれども、そのときそのときの重点に応じて、機動的にその総員の中で割り振って仕事をやっていくというのは、これは行政機構全体にわたっての原則でございますので、われわれは、三百三、四十名の人員ではございますけれども、これを有効に活用していっていただきたいと存じております。
  273. 中村重光

    中村(重)委員 そういう機械的な答弁では納得できない。たとえば一局削減の問題にしても、二つの局を一つにした、局長を減したと、きのうは長官は本会議においてえらい自信のある答弁をしておったのだけれども、局長をなくした。全然あとは扱っていないのだ。そして新たに部長をつくった。減すということを約束しながら、そういうところは減してない。そして公取であるとか、あるいは会計検査院であるとか、ともかく政府にとって都合の悪いところはこれを削減することにつとめてきておる。それで、いまあなたは、公取は八名ふやしました。八名ふやしたのじゃない。欠員がおったのだから、欠員を埋めておれば五名にしかならない。答弁をここでしさえすればよろしいというような、そういう考え方ではだめなんです。  それで、この問題では結論に入りますが、ともかく山田委員長、いまあなたは十二件の審判をかかえておられます。非常に苦悶をしていらっしゃる。ちっとも進まない、抵抗されて。こういうこともこの再販制度というものが妨げになっている。問題の松下からどう言われています。松下の再販が進まないのは、資生堂が再販に指定されて、こういうことをやって、どうして自分のほうがやってはいけないのかと言われているのでしょう。どうにもならぬで困っているのでしょう。それで、先ほどあなたは、消費者の利益に反することは断固として排除いたしますという自信のある答弁をされた。ほんとうに自信があるならいいのですよ。よく調べてごらんなさい。生産はどんどん上昇してきたのだ、指定商品の場合でも。それだけ上昇したのだけれども、価格が下がりましたか。下がっていないでしょう。指定を受けておらぬところの家電なんというものは若干下がった。ところが、肝心かなめの指定を受けておる、こういう商品は下がっていないじゃないですか。これ一つとってみても、いわゆる管理価格制度というものを助長させ、大衆の利益をはかるためにのみこの制度というものが働いているということに対して、ほんとうにあなたは答弁できるのか。できないでしょう。これはまたあらためてやることにいたしますが、ともかく山田委員長、あなたは公取に対するところの国民の期待がいかに大きいかということを肝に銘じて、その任務を果たすために責任を持って当たるという態度があなたに要求される。そのためにあなたは公取委員長を追放されたっていいじゃありませんか。国民があなたを守る。私はそのことをあなたに強く要請をしておきたいと思います。これは宮澤長官にせっかく御出席を願っておるのだから、この問題に対しても、私がいろいろこの弊害について申し上げた、だからお答えを願いたいのですが、その前に、興味のある議事録が私調べておったら見つかったのでこれを読みます。経済安定委員会というのがあったのですね。これと農林水産委員会、通商産業委員会連合審査会で福田赳夫委員、現自民党幹事長です。この人が二十八年九月に実施されたこの制度の質問に立って、こういうことを言っている。この二十四条の二は、私はどう見ても百害あって一利なし、かように存ずるのであります。かような立法をしなければならぬという社会的弊害というか、実情は一体どこにあるのか。おとり販売の弊害が日本にあって皆さんの頭にこびりついている。どうもこの二十四条の二というのは、独禁法の精神日体を逸脱しているんじゃないか、かような感じさえする。独禁法は、申すまでもなく不公正な取引方法を禁止し、過度の集中を防止しようというもので、この二十四条の二のねらいは、法律全体の趣旨が違う。そこまで公正取引委員会が出ていって自由な活動に干渉しなければならないのか。私はこれに対してはなはだ不可解の念を抱くものであります。こう言っている。いいですか、現福田自民党幹事長ですよ。まだ言っているんだ。私はむしろ現在のような乱売なんかがあるような情勢のほうが望ましいのではないか、これはもちろん消費者の利益にもなりますし、今回のごとき規制をいたしますと、あるいは小売り業者の売れ行きが悪くなり、小売り業者自体にも重大な影響があり、回り回って生産者にも響いてくるのではないかと思う。経済上一連の関係者全部に不利な状態がくるのではないか。これが現在の福田自民党幹事長が当時の連合審査会において発言をした内容であります。当時すらこういう弊害が考えられたのです。いまは情勢の変化の中においてもっともっと大きな弊害がある。提案理由の説明の中に、消費者という一字一句さえ入っていなかったんだけれども、いまあなたは、そのことをここで強調しなければならぬというように、情勢の変化があるというこの事実を考えてみたとき、勇断をもってこの制度を廃止する、こういうことで取り組んでもらいたいということを強く要請をいたしておきます。宮澤さん、ひとつ先ほど来の私の指摘に対してあなたの考え方を聞かしてもらいたい。
  274. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これにつきましては、先ほど広沢委員にかなり詳しく申し上げましたので御理解をいただいたかと思いましたが、どうもさようではないようで、まことに残念でごまざいす。しかし、繰り返しては失礼でございますから、申し上げません。ただ一つだけ申し上げておきたいことは、何か法律を新しく出せばこの問題が片づくんじゃないか、それを出さなかったのは業界の圧力のためであって、そこに委員長の交代があってというようなことが御質問の底に含まれておるのではないかと思いますけれども、私は昨年からこの問題の経緯をかなり詳しく見ておりまして、そういうことは断じてないということを申し上げることができます。つまり、ちょっと常識論として、こういうものはなくてもいいじゃないかということは比較的俚耳に入りやすい、これは失礼な意味ではございませんが、そう考えられやすいのであります。しかし、やはり実態を見ておると、こういうものを非常に制限的なことではあるが、認めておかないと、結局は消費者自身の不利益になるし、また零細な小売り店の不利益にもなる。これは先ほどの繰り返しになりますから、これ以上申し上げませんが、そこで、むしろそういう法律を変えて、何か形をつくろうよりは、現在あるもの、指定されたものを大幅に洗い直しをするというほうが消費者のためになる、こういう決断をいまの委員長がされたということは、私は、勇気のある決断だと思っております。消費者の利益になる、こういうふうに私は考えております。
  275. 中村重光

    中村(重)委員 依然として説得力のない答弁、少しは前進した答弁があるだろうと期待をしたんだけれども、ない。何もないでしょう。あげたのは、おとり販売と消費者の利益だ。何が消費者の利益だ。二十四条の二をはずしさえすれば十九条で完全にやれる。おとり販売――薬屋さんのことをお出しになったのだ。薬屋さんというのは、御承知のとおり適正配置です。他の法律、制度によって――あなた方先ほど来厚生大臣が中心になってのお答えでしたが、それは十分弊害が防止できるし、いま特に強調されたおとり販売の問題も、これも十九条によって完全にやれるということは、これはもう何人も認めておるところです。これをぜひ存置しようとするあなた方が、これに抵抗しておられるだけのことなんです。まあ、これはこの程度にとどめます。  次に、外務大臣にお尋ねをいたします。  輸入課徴金は、アメリカが実施に踏み切るであろうという見通しを政府自身も立てておられるようであります。まあ、いろいろ日本は除外するとか、その他報道もされておりますけれども、確かなことはわからないわけでありまして、このアメリカが実施するであろうという見通しを政府がお立てになりました根拠はどこにあるのか、伺ってみたいと思います。   〔委員長退席、正示委員長代理着席〕
  276. 三木武夫

    ○三木国務大臣 中村さんのいま御懸念になっておる輸入課徴金、そういうことでわれわれも非常に心配をいたしておるのであります。ただしかし、まだ正式にアメリカが具体的に輸入課徴金制度を実施するという情報は来ておりません。各地からいろんな、どうも実施しそうであるという情報は来ておりますけれども、これに対して世界各国から反響も起こっておるわけであります。したがって、まだ実施という具体的な通知はアメリカの政府から受けてないのであります。ただしかし、これはいまのお話にもありましたように、もしこういうことが実施されるならば、アメリカの従来の自由貿易主義、このリーダー格であったアメリカの主張とも違いますし、このことが連鎖反応を起こして世界貿易の縮小に通じますために、アメリカに切に思いとどまってもらいたい。これはもうわれわれ外交ルートを通じて、御承知のように、ワシントンでも東京でも、日本政府が強くアメリカに要請をいたしておるのであります。したがって、いまの段階では、まず思いとどまってもらうということが一番賢明であります。しかし、これを実施されたような場合には、日本にどういう影響があり、日本はどういう対抗措置をとるかということについては検討せざるを得ませんから、いま政府各省間において、事務当局のレベルにおいて検討いたしておりますが、まだこれは具体的に申し上げる段階ではない。それまでに何とかしてこういう世界貿易の縮小に通ずる輸入課徴金の制度なんかをやはりアメリカが実施しないように、外交ルートばかりでなしに、民間からの代表も訪米することに私はなると思います。あらゆる努力を傾ける所存でございます。
  277. 中村重光

    中村(重)委員 当委員会で佐藤総理が、この問題に対する加藤、田中委員質問に対してお答えをしておられます。それによると、ロストウに対し、あるいはアメリカに行った際、あるいは日米経済委員会等において、こういう自由貿易そのものを破壊するようなやり方はやめてもらいたい、そういう反省を促してきたという答弁をしておられるようであります。まあ、当然なことであると私は思う。日本政府としては、日本はアメリカの友好国である、そういう考え方を持っておられるわけでありますから、また、そういう政治外交を進めていらっしゃるわけでありますから、こういう制度を実施しようとする場合、これを議会に提案する前に、影響が及ぶところの日本に対しては当然事前に何らかの形の了解というものを取りつけるような態度に出るであろうということが期待されるのであります。ところがこの問題は、相当前からそういうことになるのではないかというようなことで、日本政府としても機会あるごとにこの問題に対して反省を促してきた、こういうことでございましょうが、在米の日本大使館に対してでも何らかの非公式な話というものがなかったのかどうかという点と、それから二月の二十四日に下田大使がロストウ次官に口上書を出しておるということを伺ったのでありますが、その後どういう動きが出ておるのか、その申し入れに対して何らかの反応があったのではないかと思うのでございますが、その点、いかがでしょう。
  278. 三木武夫

    ○三木国務大臣 最初にこの問題をわれわれが聞きましたのは一月四日、ロストウが日本に来たときであります。こういうことも考えているのだというようなことを言ったので、これは強く日本が反対をいたしたのでございます。その後、御指摘のように、下田大使から申し入れをいたしましたが、そのときもアメリカは、まだこの問題については結論に達してないということで、これを実施する意向であるかという下田大使の申し入れに対しても、アメリカの応答はないのであります。だからいまは、世界各国の反響等も見ながら検討を加えておるという段階だと思います。しかし、これはただ検討だけではなくして、そういう場合もあり得るということでわれわれも対抗策を考えておるのですが、アメリカとしては、いよいよというときには、日本には事前に連絡があるものと私は思っております。まだ実際問題としてアメリカが実施しようという結論段階ではない、こう見ておるのでございます。
  279. 中村重光

    中村(重)委員 当初はボーダータックスを実施するのではないか、こういわれておった。ところが、どうも課徴金に踏み切るのではないかということのようであります。そうなってくると、このボーダータックスの場合は、国内の間接税というのがありますから、その範囲内であるならば、これはガットの違反にならないのではないか、こう思うわけですが、そうなのかどうか。そこで、ボーダータックスから課徴金制度にこれを切りかえたというか、これに固めつつあるということは、どういうことでそうなるのか。貿易を、いわゆる輸入を抑制するという働きも当然するでありましょう。それから、その収入自体がドル防衛に役立ってくるということにもなるだろう。いろいろ一長一短ということになるのだろうと思いますが、その点どのようにお考えになりますか。
  280. 三木武夫

    ○三木国務大臣 この国境調整税あるいは輸入課徴金、これはどちらかこれに踏み切って考えるというところまでもいっていないようで、両方がときどき出るのですが、いまはどうも輸入課徴金に重点を置いておるようであります。しかし、まだやはり全然消えたものでもないわけであります。おそらく国際収支の改善ということがねらいでありますから、輸入課徴金のほうが、われわれが考えてみましても、やはり国際収支の改善という見地から、それはアメリカとしては相当なプラスになるという判断もあるでしょうが、決定的な、いま言ったように、アメリカがこれに踏み切るというようなことを言ってまいってもおりません。政府が言ってこないばかりでなしに、まだわれわれはそういう情報も得ていないわけでありますから、どちらかということは言えませんが、どうも輸入課徴金に重点が置かれているようなきらいがあるということでございます。
  281. 中村重光

    中村(重)委員 この輸入課徴金ということになってまいりますと、ガット二十五条でウエーバーの申請をしなければならないのではないかと思います。その場合に、これが承認される方向に進むとお考えになっていらっしゃるかどうか、大蔵大臣、いかがでしょう。
  282. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 先ほどの、まず国境税の問題ですが、最初アメリカはそちらのほうを考えておったようでございます。これは実際問題として関税にからんだ問題で、ガット違反の範囲は非常に狭まるというふうに聞いています、二%以内とか……。また一方、たとえばカナダですが、カナダからアメリカへ輸出される商品はほとんど間接税がかからないものということになりますと、カナダ自身は国境税でくるなら何ら影響がないと言っているくらいに、やはり国別によってそういう問題も出てくるということから、輸入課徴金という方向へきたのだと思いますが、そうなりますと、いまおっしゃられたような、これはやはりガット違反ということになりましょうから、その点について各国の了解がとれるかどうか。アメリカはいまEEC諸国を、そういう点も含めて打診中だというふうに私は考えております。
  283. 中村重光

    中村(重)委員 かつて英国とカナダが課徴金制度を実施したことがあるわけです。そういう場合に、この締約国というのはどういう態度をとったのかという点、それから、承認されないとしてもこれを実施する、そういう場合は徴罰規定がないようですが、これは対抗手段というのが当然とられるわけだから、そこで懲罰規定というものを設ける必要はない。対抗手段そのものが懲罰に通ずるのだという考え方の上に立っておるのでしょうか。その点いかがでしょう。
  284. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、かりに懲罰されないからといって、国際間でアメリカが少なくともこういう制度をやるべきじゃない。イギリスも一ぺんやったんですが、やはりこれはやめざるを得なかったということもございますので、かりにそういう問題がなくても、これはアメリカとしてこういう措置をとるべきでないというふうに考えています。
  285. 中村重光

    中村(重)委員 そこでアメリカが、私は、これはあえて暴挙と申し上げるのですが、六日の商工委員会でも、通産大臣は、全くこういう乱暴なことをという表現をなさったのです。私も全くそのとおりだと思う。そうした乱暴なことを自由貿易主義の提唱者であるアメリカがみずからこういうことをやろうとするのは、単にドル防衛ということだけではなくて、何か国内的な取引というのか、思惑というのが働いておるのではないかという感じがいたしますが、その点、外務大臣どのようにお考えになります。
  286. 三木武夫

    ○三木国務大臣 それはわれわれとして、いろいろな国内的な問題もございましょうが、まあ国際収支という面から政府は考えたんでしょう。昨年も輸入制限のいろいろな問題が国内的には起こっておりましたが、それと関連があるとも考えてはおりません。
  287. 中村重光

    中村(重)委員 まともに私は考えてお尋ねをしておるわけですが、いまのようなことであったといたしましても、御承知のとおりアメリカは増税案を出している。これはなかなか抵抗が強くて、これが難航しているというのですね。それからドル防衛のためのいろいろな法律案を出しているが、非常に評判が悪いから、これとても難航している。保守主義、保護主義というのがアメリカの議会は非常に強い。だから、そうした増税案というものを議会を通過させる、あるいはドル防衛関係のそうしたもろもろの法律案を通過させる、これと課徴金を抱き合わせる、そして保守主義の議会の同意というものを、そういう形でやったならばこれは成功するというような、そういう思惑というのか、取引というものが働いていないのかどうかということ、私はボーダータックスであると、その国内の間接税がどの程度であるか知りませんが、その範囲であると、これはいわゆるガットの違反にならない。あえてガット違反になるところの課徴金制度というものに踏み切る、これは単に国境税よりも課徴金制度というものがそれだけ収入があるとかなんとかというような、そういう形で片づけらるべきものではないのであって、むしろその他の要因というようなものがウエートを占めておるような感じもするわけなんですが、それらの点に対してはどのようにお考えになります。
  288. 三木武夫

    ○三木国務大臣 政治はきわめて複雑なものですから、いろんな国内政治というものも頭の中にはあるのでしょうが、私はやはりアメリカのドル防衛、国際収支という面からこの問題が取り上げられておる。また、日本に対しての影響というものも、国内政治がどうあろうとも、やはりそういうものが実施されれば一番影響を受けるわけでありますから、どうも国内政治はいろいろな考え方があると思いますが、この点では、的確に、国内政治でこれだからこれだというふうには言えないと思います。要は、やはりドル防衛の一つの手段として、国内政治のことも頭に入れながらこういう案を考えておるのに違いない、こういうことで、何か国内政治と結びつけて、いろいろ他国のことでもございますし、まだよくわからぬ点もあります。そういうこともいろいろ含めてこういう案を考えた。それはやはり、結局はアメリカの国際収支の改善に役立てようという目的のもとに考え出された案であることは間違いない。
  289. 中村重光

    中村(重)委員 先ほどお答えになったようでしたが、聞き漏らしたと思うのですが、どの新聞かで報道しておったようです。日本とカナダとイギリスは除外をする、だがしかし、EEC諸国との関係上これはむずかしいのではないかということだ。それと、低開発国を除外するということの問題等が報道されておったようでありますが、政府としても重大な関心を持ってこの点には対処しておられるでありましょうから、在米日本大使館等を通じてこれらの信憑性についていろいろ調査をなさったと思うのですが、どういうことですか。   〔正示委員長代理退席、委員長着席〕
  290. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 ただいまの御質問の点についてお答えを申し上げます。  在米大使館におきましても、そういうニュースがありましたのでさっそく調べまして、公電をもって知らしてまいっておりますが、このニュースのソース、もとはニューヨークにございますダウ・ジョーンズ、例の株式市場の速報でございますが、そのダウ・ジョーンズ速報の記者がそういうことを流したということでありまして、それの真相、アメリカ政府がそれを考えているかどうかということにつきましては、確定的なことは明白でございません。  それからもう一つ、後進国の問題を先生お触れになりましたが、この点につきましても、後進国を全部免除するのか、あるいは後進国の関心のある熱帯産品あるいは一次産品、そういうものを免除するのか、これについてもアメリカ政府の態席というものはまだきまってないというふうに、私どもはワシントンの大使館のほうから情報として受け取っております。
  291. 中村重光

    中村(重)委員 この低開発国を除外するということになってまいりますと、ガット一条の違反になるのではないかと思うのですが、これもまた日本に非常な大きい影響があることがわかりながら、これを除外をするということになってまいりますと、たいへん非友好的だと私は思うのです。この点どのようにお考えになります。
  292. 三木武夫

    ○三木国務大臣 ガットの問題も起こりましょうし、第一、ニューデリーでUNCTADでいまやっておるわけです。この国連の貿易開発会議で一番の問題が特恵問題ですから、それが国際会議で論じられておるときにアメリカが先に――性質的には特恵みたいなものですからね。こういうことはやはり先進国の歩調を乱して好ましいことではない。やはり結論が出るならば、せっかくそういう会議がニューデリーで開かれておるのですから、その会議結論として出ることが好ましいことは申すまでもない。ガットばかりでなしに、国際政治の常識からいっても、これは非常におかしなことだと考えております。
  293. 中村重光

    中村(重)委員 通産大臣にお伺いいたしますが、五%ということになってまいりますと、繊維を中心にいたしまして、あるいは雑貨であるとか、あるいは鉄鋼も影響があるといわれているし、その他軽工業製品に相当な損害がもたらされることは間違いないわけです。ところが、いろいろ報道されておりますけれども、かりに五%ということになったといたしましても、その貿易が減額をするということに対してまちまちのようであります。だから、この点に対して通産省としては試算をしておられると思うのでありますが、どういうように貿易の伸びが減少するというようにはじいていらっしゃいますか。
  294. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 要するにアメリカに日本の同種の輸出品の大部分がいっておるもの、すなわち鉄鋼製品でありますとか、あるいは繊維、毛織物あるいは食器のような金属製品、それからテレビ、ラジオといったようなものが、多いのは全体の輸出量の七〇%、それから少なくとも四〇%くらいのものでございます。しかしそのマージンが私はまちまちだと――いま記憶しておりませんが、まちまちでございます。ようやく五%そこそこの利潤で輸出をかせいでおる連中は、もう軒並みにみなやられてしまう。そういうことになりますが、なお詳しい調べがもしできておりますれば、事務当局のほうから申し上げます。
  295. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢(鉄)政府委員 現在内部でいろいろ検討しておりますけれども、まだ数字的にどのくらいということを申し上げる段階になっておりません。相手が、いま一応五%というようなことを言われておりますけれども、その場合でも、先ほど先生御指摘のように後進国の産品を除外する場合、それから関心産品を除外するのではなしに国別に除外してしまう場合ということによってずいぶん影響が違うと思いますし、繊維とかそれから雑貨の一部につきまして、もしも後進国対象、後進国を国別に除かれるというようなことになりますと、これは相当大きな打撃になるということが予想されるのでございます。
  296. 中村重光

    中村(重)委員 この問題は、報道機関において大きく取り上げられたというのは、ここ一週間程度というのが一番大きく取り上げられてきたんですが、相当前からアメリカが国境税かあるいは輸入課徴金か、いずれかの措置に出るのではないかというので、業界側も心配をし、通産省としても五%の場合どうだ、あるいは二%の場合にどうか、あるいは低開発国産品が除外される場合はどうか、もろもろの点で検討をしてこられたであろうと私は思う。また業界からの積極的な陳情というようなものも行なわれ、通産大臣も二日でありましたか、プリンスホテルにおいでになって業界といろいろ懇談され、また一応の考え方もお述べになっておる。したがって、いま少し詳しい報告があってしかるべきだと私は思うのでありますけれども、私、時間の関係がありまして、あらためてまたそれらの点に対してはお伺いをすることにいたしますが、ともかく低開発国が除外をされるということになってくると、御承知のとおりにアメリカの市場において、いまですら日本の中小企業というものは追い上げられてきている、追い詰められておる。ましてや今度課徴金によってこれが除外をされるということになってくると、壊滅的な打撃を受けるというようなことを私は感じる。したがって中小企業の問題というものは、これはきわめて深刻な問題になるであろう、こう思うわけであります。  いずれにいたしましても、これは宮澤長官にお尋ねをするのでありますが、これが実施された場合において、何%であったにいたしましても、少なくとも二億ドルなりあるいは四億ドル程度の貿易の伸びが、これは予定のとおりにいかない、それだけ縮まってくるというようになろうと私は思う。そのことは経済計画にも大きな影響がもたらされるであろうと考えるのでありますが、長官はこれらの点に対し、その影響をどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  297. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 相当な影響があると思っております。
  298. 中村重光

    中村(重)委員 いま加藤理事と話をいたしておりまして、肝心のあなたの答弁を聞くことができなかった。たしか相当な影響ということを言われたようであります。長官、相当な影響があるということがわかっているからあなたに質問しているのだ。少なくとも経済企画庁長官が、そういう答弁でもってわれわれの質問に対する答えだということになりますか。五%の場合はどの程度になるのだ、あるいは三%ならばどうだという、大まかな計画の狂いというようなことについてのお答えがあってしかるべきじゃありませんか。もう少しまじめに御答弁なさい。
  299. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま申し上げたことは、まじめさを欠いたつもりではなかったのであります。わが国もよかれあしかれ世界三大工業国の一つになっておりますために、この問題についてわが国がどう対処するか、どう考えておるかということは、実はこの委員会席上の御質問なりお答えというものは、もう各国がかなり注目をいたしております。したがって、そういうことを考えますと、ただいまのようにお答えするのが私は一番この際の国益に合しておるとこう思いまして、そう申し上げたのであります。
  300. 中村重光

    中村(重)委員 時間がありませんから議論はいたしません。  政府としてはいろいろ対策を講じておるということを、いろいろな機会においてそういうお答えをしていらっしゃるようでありますが、どういう対策が考えられるのだろうか。これを実施した場合に、対抗手段ということで何があるのか。これはアメリカと同じようなことをやるということにばなりません。と同時に、世界におけるわが国の立場から考えまして、こういう措置がアメリカによってかりにとられた場合に、それが俗語で申せばエスカレートするようなことでありますと、これは世界貿易全体を縮小均衡に導くおそれがあると思います。でありますから、わが国としては、そのことがやはり一番世界のためにもわが国のためにもよろしくないと思いますので、したがってわが国としてとり得る措置を考えます場合に、世界貿易でこれを契機に保護主義、縮小に向かわないような、そういうことをやはり基本に置いて考えることが大切であると思います。これ以上具体的に申し上げますことは、必ずしも現在のわが国の立場にいい結果を及ぼすと思いませんので、この程度でお許しを願いたいと思います。
  301. 中村重光

    中村(重)委員 私は、アメリカのこの課徴金制度を実施するという場合においてはきわめて暴挙だ、こう思うわけです。全く国際的に受け入れられないやり方だ。みずから自由貿易主義を破ってしまう。勢いこれはブロック経済という形に移行するであろうと考える、非常に重大な問題であると私は考えます。  それと同時に、私が受け入れられないであろうといういま一つの指摘したい問題点は、アメリカは貿易収支というものが黒字であるということですよ。大幅黒字だ。だからして、いまのアメリカの国際収支が赤字であるという要因は、言うまでもなくベトナム戦争である。ベトナム戦争をやめさえすれば、人殺しをやめさえすれば、一挙にこの赤字というものは解消してくる、こういう乱暴なことをやらなくて済むのだ、こう私は考えるのであります。まあしかし、これはあなた方と問答いたしましても、ここで意見は平行線でございましょうから、あえてこの点に対するお答えはいただきませんが、ただ、私は、これも加藤委員あるいは田中委員から指摘されておるところでございますが、ホノルル会議においてあるいはその他の会議において、あるいはロストウ次官等と話し合いをされたとき、どういう約束をされたのだろうか。何にも約束はしていないのです、そういう取りきめをするような会合ではございませんでしたと、総理も関係大臣もお答えになっていらっしゃいますが、経済企画庁あるいは外務省、大蔵省、通産省、農林省も行かれたと思うのですが、それぞれの局長がホノルルにおいでになった。まさかハワイの観光旅行でもございますまい。そこでいろいろと話し合いをされて、お帰りになって、テレビを通じ新聞を通じあるいはラジオを通じてその成果を大いに宣伝されたという事実は、お忘れにならないだろうと思います。そして、こういう結果が出てまいりますと、いや、あの会議はそんなことをきめる会合ではなかったんだと言われるならば、私は国民を欺瞞し、瞞着するもはなはだしいと申し上げなければならない。  それで、アメリカが今回この制度に踏み切るということになってまいりますと、当然これはドル防衛の一環ということでやるのでありますから、日本の国際収支というものが黒字になった場合、中期債を購入をするという約束をされたやに伝えられておるのでありますが、そういうような申し合わせというのか約束というのか、あるいはその他ドル防衛等に対するところの約束というものは、当然これは破棄されるべきものであり、これは無効になるのだ、このように考えるのでございますが、その点に対しては外務大臣はどのようにお考えになりますか。
  302. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御承知のように、ホノルルの会議は、国際収支に対して両国が問題をかかえておるわけですから、お互いに両国の事情を話し合って理解を深める、あの会議ではものをきめる会議ではなかったのでございます。また、きめたものが、そんな国民に隠してそれは実施できるものではありませんから、これは必ず何らかの行動をとるとすれば、それは明らかになるのでありますから、国民に隠してアメリカとの間にドル防衛の協力をしようなどという考え方は政府が持てるはずもないし、またわれわれは持つ考えもないのでございます。したがって、あの会議でいろいろな話し合いを国際収支という面から、日米あるいは世界の経済情勢あるいは金融情勢、そういうものを話し合ったということで、結論を出す会議でありませんでしたから、中期債の購入を約束したというようなことの事実はございません。これは明らかにいたしておきます。
  303. 中村重光

    中村(重)委員 私がいま申し上げた中に、アメリカがこういう無暴なことをやると、これは自由貿易主義というものは破壊される。そうしてブロック経済的な方向へ進むであろう、このことは、私は、自由貿易主義のいわゆる危機である、このように考えておるのでございますが、この点、外務大臣の受け取り方はいかがでございましょうか。
  304. 三木武夫

    ○三木国務大臣 何もいま申したように約束もしてきたわけでもないのですから、破棄するといっても、その種があるわけでもないのでございます。また、いま御指摘のような、こういう各国がみな各国とも経済事情というものを持っております。それがみなやはり自国中心で保護主義的な傾向に、各国がそういうふうな政策をとるということになれば、これはブロックといいますか、非常な、悪い意味の国家主義的な経済というものが生まれてきて、世界貿易の拡大という方向に逆行するということは、中村さん御指摘のとおりであります。そういうことはしてはならないし、やはり世界の繁栄のためにも、お互いに貿易は拡大していくという方向で政策は考えなければならぬ、それは時代逆行である。かように考えます。
  305. 中村重光

    中村(重)委員 明確なお答えでございましたが、官房長官にお伺いいたしますが、アメリカがこういう暴挙に出るということになってまいりますと、日本としても真剣に検討していかなければならぬことは、アメリカを中心としてきたいわゆる貿易構造というものが、ここに一つの反省期に入ってきたのではないか、もっと貿易というものは多角的であるべきだ。アメリカとの貿易も最大限の努力をして伸ばしていかなければならぬということは言うまでもありますまい。同時に共産圏との貿易にいたしましても、あるいは東南アジアその他の地域等におけるところの貿易にいたしましても、日本が援助をし、あるいはその他のいろいろな措置をとるようなことが必要といたしましても、やることはやる、そういうことで貿易を積極的に伸ばしていくということでなければならないのではないか。いわゆる貿易構造を変化する。転換するということについての官房長官のお考え方はいかがでございましょう。
  306. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 これはどうも外務大臣通産大臣からお答えしたほうが適当かと思いますが、私なりにお答えを申し上げますと、確かに多角的貿易をとる、世界的規模において日本の貿易構造を守るということは非常に必要でございますが、ただ現在の時点では、そう急にこれを転換するような必要は認め得ない、こう考えております。
  307. 中村重光

    中村(重)委員 通産大臣には、私の直接所属します委員会において十分お伺いをしたいということから、本日はできるだけ他の大臣にお尋ねをいたしておるところであります。ですが、ただいま私が申し上げましたこれらの問題にぶつかって、一つの経験として考えていかなければならぬことは、日本の今日までの貿易のあり方ということに対して反省をしなければならないのではないか。もっと多角的な貿易を伸ばしていく、こういうことが必要ではないかと考えるのでございますが、その点に対するあなたの所見をひとつ伺ってみたいと思います。
  308. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 別に反省というのではなくて、日本といたしましてはもう何が何でも輸出貿易を拡大することによって日本経済日本の繁栄というものをはかっていく、これがもう根本の原動力でございますから、これはこれでもう十分だということはないので、もう毎年毎年高率の躍進をして今日に至っておるのでございます。そういうわけで、ちょうど四十二年度でございましたか、対米貿易の伸び率が少し鈍ったのです。それから対ソ中心の共産圏貿易もやや横ばいという状況でありまして、新しい領域、たとえばヨーロッパの東、東欧関係であるとか、あるいはまた豪州、カナダその他の南米等、新しい地域の開拓がだんだん進んでまいりまして、そっちのほうが少し調子が上向いてきておる、こういう状況であります。これは一年ぐらいの傾向で将来をはかることはどうかと思いますが、いずれにいたしましても、あらゆる方面に向かって商圏を開拓していく。今後ますますそういうたくましい活動を続けていかなければならぬ、かように考えております。
  309. 中村重光

    中村(重)委員 課徴金問題に対して私の考え方をひとつ申し上げて、所見を伺いたいと思うのでありますが、ともかくこれを絶対にやらしてはいけない。あくまでこれを阻止しなければならない。そのためには政府としても強い姿勢を示さなければならないが、これは当然であるが、国会としても、これを各党一致のもとに反対決議をする必要があるのではないか、こういうことで、商工委員会においていまこの問題について話し合いを進めておるところでございます。外務大臣としては、ただいま私が申し上げましたように、政府も国会も民間も一体となってこの阻止のためにあとうる限りの最大限の努力をやっていく、決議もする、そういうことが必要であろうと思うのでございますが、その点政府の見解はいかがでございましょう。
  310. 三木武夫

    ○三木国務大臣 政府政府としてあらゆる努力を傾ける所存でございます。国会のことは国会自身の御判断にまかしたいと考えます。
  311. 中村重光

    中村(重)委員 中国貿易の問題についてお尋ねをいたしたいのですが、問題のLT貿易、今度は覚え書き貿易という形になったようでありますが、古井団長以下団員の方々が長期間にわたってたいへん苦労されて、ねばりにねばってようやく妥結の運びに至ったようであります。心からこれを歓迎したいと思うのでございます。ところが、官房長官は各紙を通じての報道によって考え方を明らかにされておるようでありますが、一応これを歓迎しながらも、政治三原則、政経不可分の問題に対しては、この点歓迎をしておられない、こういうことのようであります。しかも古井代表団というものは、これはあくまで民間団体であるということで、全く政府はこれに関与しないのだ、こういうようなことでございますが、民間の代表団とは申しながら、代表団は自民党の党員であります。しかも今日までのLT貿易というのは、準政府間貿易という形で進められてきたという点等を考えてみますと、民間団体がやることだから、これは政府としては何もこれに対して関与しないのだということで片づけられるべき問題ではない。もしそういうような態度であるといたしますと、せっかく苦心に苦心をして妥結いたしましたこの協定というものが、また非常に好ましくない結果に発展をしていくであろうということは十分予想されるわけであります。この代表団によって妥結調印されましたこの覚え書きの内容に対してどのような考え方を持っておられるか、所見を明らかにしていただきたいと思います。
  312. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 私は政府のスポークスマンとして、一応政府としての見解を申し述べたわけでございますが、まだ交渉当事者の古井さん、田川さんもお帰りになりませんので、帰国された上でいろいろお話を伺った上でその問題点について検討したい、こう考えております。
  313. 中村重光

    中村(重)委員 まだ政府として最終的な態度をきめていない、こういうことですが、ところがあなたは、政府のスポークスマンという形でございましょうが、見解を明らかにしておられる。それには重大な内容があるわけであります。私が指摘しましたとおりであります。具体的に私は、代表団の性格なり、いままで進めてまいりました貿易のあり方なりということについてお尋ねしたのでありますから、あれだけの責任ある談話を発表される以上は、この国会においていま少しく具体的な考え方というものを明らかにされないはずはないと私は思うのであります。その点いま一度もう少し――完全にまとまった答弁を私は求めておるわけではありません。おそらくそういう点は、代表団が帰られてからいろいろと話し合いをされた後に最終的な態度表明ということになるのであろうと思うのでありますけれども、まあ新聞に相当具体的な考え方が出ておるのでありますから私は尋ねておるのであります。いま一度お答えを願いたい。
  314. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 私が政府の見解として談話をいたしましたが、その内容につきましては外務大臣通産大臣とよく連絡の上発表したものでございますから、外交政策につきましては外務大臣からお答えをいたしたいと思います。
  315. 中村重光

    中村(重)委員 外務大臣にお尋ねをいたします。今回の交渉で政治三原則、それから政経不可分の原則を認め合ったということになったわけであります。ところがこの調印をされたことによっていわゆる政治三原則、政経不可分、これは前の話し合いの場合におきましては中国側も、これを要求しながらも、日本の代表団の要求をいれてこれを明記しなかった。しかし、今回はこれを明記したというところに重要な意義があるでありましょうし、当然また何らかの形において中国の具体的な日本に対する要求なり、あるいはいろいろな出方があるのではないかと思われるのでございますが、外務大臣はこの点どのように予想をしていらっしゃいますか。
  316. 三木武夫

    ○三木国務大臣 われわれはLT貿易が日中貿易の増大に役割りを果たすという点で、今回妥結を見たことは歓迎をいたす次第でございます。また、その三原則というものは、基本的には、日本は中国に対して敵視政策をとるものではない。これは、中国は日本の隣人でもございますし、これを敵だときめつける外交はあり得るはずはない。できるだけ関係を改善していきたいと考えておりますから、三原則のこの精神と日本の中国政策が矛盾することは考えておらないのでございます。ただしかし、いろいろ政経分離とか不可分とか、これはことばをスローガン的に解釈してとやかく言うということは、いろいろ問題がありますので、古井君も帰ってくれば交渉の経緯等もよく承ってみたいと思っておるのであります。ただことばだけで政経分離だ、政経不可分だと、スローガンみたいなことで問題を取り扱うことは非常にやはりいろいろな点で問題がある、本人から交渉の経緯をよく聞いてみるべきだと私は考えておる次第でございます。その、今回妥結を見たことに対しては歓迎をいたすものであります。
  317. 中村重光

    中村(重)委員 いままで政府は、いずれの国とも仲よくする、中国貿易は政経分離でもって貿易の発展をはかっていくのだということであったのであります。ところが現実にはそうではなかった。LT貿易のいわゆる積み重ね方式というものは、肉の問題しかり、あるいは米の問題しかり、いろいろな形において、むしろこれを阻害するという態度をおとりになった。一方、政経分離といいながら、むしろ政府自体が政治と経済を結びつけるという態度をおとりになったと私は思う。ジョンソン・佐藤会談における中国の脅威の問題しかり、あるいは中国を国際社会に入れることを阻害するという、一貫してとってきた日本の態度しかり、あるいはまた吉田書簡によって台湾に気がねをして輸銀の延べ払い融資ということを打ち切った問題しかりであります。これは経済問題ではございません。明らかにこれは日本自身が政治と経済をからみ合わせてきた、このことが指摘されると思うのであります。したがって中国は、日本が中国を敵視しているのだということから、日本に対する不信感はさらに高まり、LT貿易の問題にいたしましても、おそらく継続は無理ではないかということが予想されていた。だがしかし、今回これが妥結をしたわけでありますから、またここで官房長官からも関係大臣からも、この後は中国貿易を伸ばすために積極的な取り組みをしたい、今回の妥結はこれは歓迎をしたいとおっしゃったのでございますから、従来のようにみずから言うたことと逆なやり方をやるということを、この後はおとりにならないかどうか、ほんとうにこの妥結の精神を生かして、積極的に日中友好、日中親善、日中貿易の促進につとめられるかどうか、その点に対する見解をひとつ外務大臣から伺いたいのであります。
  318. 三木武夫

    ○三木国務大臣 日中両国には国交がございませんから、いろいろ不自然な関係であります。非常に不自然な関係である。したがって、これはなかなか普通の国交がある国のようなわけにはいかない。お互いに、これは日本ばかりでもいきません、中国側も努力しなければならない。お互いに、やはり隣国ができるだけ相互の立場を理解して、内政に干渉せず、相互にやはり理解し合って共存共栄の道を追求することは、これは日本もそうでありますが、中国側にも課せられた大きな使命だと考えております。
  319. 井出一太郎

    井出委員長 中村君、時間がもう過ぎております。
  320. 中村重光

    中村(重)委員 今回の妥結にとって、一番これから先問題点となってくるのは、いままでいわゆる吉田書簡なるものに拘束されて、輸銀の延べ払い融資ということを行なわなかったということにあるわけでありますが、今後は従来のやり方というものを清算をして、正常な形において輸銀資金の使用による延べ払い貿易を促進するという考え方をお持ちかどうか、この点もひとつ明確に外務大臣からお答え願いたい。
  321. 三木武夫

    ○三木国務大臣 吉田書簡は両国間の取りきめのような拘束力を持つものではないわけですから、いま従来の方針を取り消して、そうしてこれを方針を変えるとか緩和するとかいう性質の、そういうものだと吉田書簡を私は思っていないのです。具体的な問題が起こったときに、具体的な問題として政府が処理するという方針は、従来と変わらないのでございます。
  322. 中村重光

    中村(重)委員 外務大臣答弁は、三年前の答弁も、きょうの答弁も、全く同じであります。少しも前進もなければ進歩もありません。むしろ後退をしているような感じがする。あなたはケース・バイ・ケースでやるのだというお答えを通産大臣のときもおやりになった。お忘れではないでしょう。ケース・バイ・ケースでおやりになりましたか。輸銀資金というものは、決してこれは政治的に左右されるべきものではない。いまあなたがお答えのとおり、吉田書簡によってこれが左右されるべき筋合いのものじゃない。だがしかし、現実に吉田書簡に拘束されて延べ払い融資によるところの、いわゆる延べ払い貿易を促進させるために必要な輸銀資金を使わせなかったということは、これは否定することのできない事実であります。そのことに対して目をおおうて、吉田書簡に拘束されるものじゃないのだ、それでは問題自体の解決にはならない。その考え方を改めない限り、せっかく妥結をした今回の協定というものも、この後成果をあげるものじゃないと私は思う。少なくとも代表団の長期間にわたる交渉、この中には日本政府との間の何らかの形における連絡というものは、私はあったと思うのであります。したがって、いまのような一歩も前進しないところの答弁ではなくて、輸銀資金というものは、いずれの国であろうとも、これは日本企業というものを育成をして強めて、そして貿易力をつけてやる。そして貿易を促進をしていく。延べ払い貿易というものを、中国貿易の場合においては必要でありますから、積極的にこれが伸長をはかっていくというような答弁が、私は、吉田書簡に拘束されないというならば、あなたには明らかにそれがお答えができるはずでありますから、その点をひとつ明確にしておいていただきたいと思います。
  323. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは北京からは政府連絡をしてLTの貿易交渉をしたという事実はありません。連絡はないのであります。民間の貿易交渉であるという性格のものでございました。  それから第二点の、LT貿易は三年前とあまり変わらぬではないか、それはやはり政府の基本的方針ですから、しょっちゅう変わるはずはないのでございます。やはり政府は具体的な問題としてそれを処理したい、そのことでこういう問題が起こってくれば、具体的な問題として処理したいというのが政府の方針でございます。いまもそういう方針でございます。
  324. 井出一太郎

    井出委員長 これにて中村君の質疑は終了いたしました。  この際、加藤清二君より関連質疑の申し出があります。ごく短時間に限って、これを許します。加藤清二君。
  325. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 同僚中村委員質問の内容は、事きわめて日本経済並びに世界経済に重大な影響を持つ問題でございます。したがって、国会はこの際党利党略を超越して、米国の輸入課徴金制度を良識をもってやめていただくべく国会においてこれを議決する、国会代表団をかの地に送る、こういうことが予算理事会並びに商工委員会で寄り寄り下準備が行なわれております。また政府は、総理大臣は、大統領に親書を送って、ケネディラウンドに反するような行為はやめていただく、そのために親書を送る、こういうことについて、きのう通産大臣は参議院においてある程度前進したお答えを近藤信一君の質問についてなさっていらっしゃいます。ある程度前進したことを……。本日は、当の責任者でございまする外務大臣に、このようなことが起こったらどうするか、また今日のあなたのお気持ちはどうか、これをお尋ねいたします。
  326. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いろいろと示唆に富む御提案が加藤君からございました。いろんなことも頭に入れて、政府は最善を尽くさなければならぬ。この問題は日本経済にも大きな影響を与えるものですから、いろいろ御注意があれば、これは与野党問わず、いろいろと御提案を賜わりたいと思います。国会のことについては、やはり国会自身の御判断にまかすべきで、政府自身がとやかく言うべき性質のものではないと考えております。
  327. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 総理大臣の親書云々のことは全く無根でございますから……。(加藤(清)委員「いや、代表を送るということ。」と呼ぶ)民間のほうで代表を送る……。(「国会のほうだ」と呼ぶ者あり)国会のことは知らぬ。
  328. 井出一太郎

    井出委員長 明九日は、午前十時より委員会を開会し、一般質疑を続行いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十三分散会