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1968-03-02 第58回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月二日(土曜日)    午前十時九分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 小川 半次君 理事 北澤 直吉君    理事 正示啓次郎君 理事 二階堂 進君    理事 藤枝 泉介君 理事 加藤 清二君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 広沢 直樹君       相川 勝六君    愛知 揆一君       上村千一郎君    植木庚子郎君       大村 襄治君    上林山榮吉君       川崎 秀二君    小坂善太郎君       坂田 英一君    田中 正巳君       登坂重次郎君    中野 四郎君       野原 正勝君    福田  一君       船田  中君    松浦周太郎君       松澤 雄藏君    松野 頼三君       森山 欽司君    山崎  巖君       大原  亨君    川崎 寛治君       北山 愛郎君    久保 三郎君       阪上安太郎君    田中 武夫君       楢崎弥之助君    畑   和君       森本  靖君    山内  広君       山中 吾郎君    横山 利秋君       塚本 三郎君    小川新一郎君       正木 良明君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 赤間 文三君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 園田  直君         農 林 大 臣 西村 直己君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 中曽根康弘君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 小川 平二君         建 設 大 臣 保利  茂君         自 治 大 臣         (国家公安委員         長)      赤澤 正道君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田中 龍夫君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官北海道開発庁         長官)     木村 武雄君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増田甲子七君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      鍋島 直紹君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         総理府人事局長 栗山 廉平君         総理府特別地域         連絡局長    山野 幸吉君         公正取引委員会         委員長     山田 精一君         警察庁警備局長 川島 広守君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁教育局長 中井 亮一君         防衛庁人事局長 麻生  茂君         防衛庁衛生局長 浜田  彪君         防衛庁経理局長 佐々木達夫君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛施設庁長官 山上 信重君         防衛施設庁総務         部長      財満  功君         防衛施設庁総務         部会計課長   春日敬太郎君         防衛施設庁施設         部長      鐘江 士郎君         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         科学技術庁研究         調整局長    梅澤 邦臣君         法務省刑事局長 川井 英良君         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         外務省経済協力         局長      上田 常光君         外務省条約局長 佐藤 正二君         外務省国際連合         局長      重光  晶君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         大蔵省主税局長 吉國 二郎君         大蔵省理財局長 鳩山威一郎君         大蔵省国際金融         局長      柏木 雄介君         文部省社会教育         局長      木田  宏君         厚生省薬務局長 坂元貞一郎君         厚生省社会局長 今村  譲君         農林大臣官房長 桧垣徳太郎君         農林省畜産局長 岡田 覚夫君         食糧庁長官   大口 駿一君         水産庁長官   久宗  高君         通商産業省貿易         振興局長    原田  明君         工業技術院長  朝永 良夫君         運輸省鉄道監督         局長      増川 遼三君         運輸省航空局長 澤  雄次君         海上保安庁長官 亀山 信郎君         気象庁長官   柴田 淑次君         郵政大臣官房長 溝呂木 繁君         郵政省郵務局長 曾山 克巳君         郵政省電波監理         局長      石川 忠夫君         郵政省経理局長 上原 一郎君         建設省道路局長 蓑輪健二郎君  委員外出席者         日本電信電話公         社総裁     米沢  滋君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 三月二日  委員小沢辰男君、中村時雄君及び浅井美幸君辞  任につき、その補欠として大村襄治君、塚本三  郎君及び小川新一郎君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員大村襄治君辞任につき、その補欠として小  沢辰男君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十三年度一般会計予算  昭和四十三年度特別会計予算  昭和四十三年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 井出一太郎

    ○井出委員長 これより会議を開きます。  昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算昭和四十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括議題といたし、総括質疑を行ないます。森本靖君。
  3. 森本靖

    森本委員 私は、憲法第二十一条によりますところの表現、報道、こういうものの自由について、さらに通信の秘密、そういう観点からおもに質問をいたしたいというふうに考えておりまするが、その本題に入ります前に、二、三聞いておきたいと思います。  まず最初に、問題になっておりましたところの例の米審の問題について、さらに非核原則の問題について、この二つについては、予算委員会総括質問が終わるまでに回答いたします、こういうことになっておるわけであります。きょう一応ここで総括質問が終わることになるわけでありますが、この回答については、いつ行なわれるか、ひとつ御回答願いたい、こう思うわけであります。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは党の問題だと思いますけれども、私は、きょうじゅうには出す、かように伺っております。ただいま党におきましても、そういうことで、成案を得べくたいへん努力している最中であります。
  5. 森本靖

    森本委員 それでは、本日中に出るというふうに解釈をしてよろしゅうございますね。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 間違いないように思います。
  7. 森本靖

    森本委員 その問題については、回答が出ましてから党は党としての協議をし、それぞれの折衝に入ると思いますので、私は次に質問を進めてまいりたいというふうに考えます。  まず……。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ちょっと待ってください。——ただいまのは米審に関することだ、また非核のほうはまだもっとおくれているのじゃないか、かように私思いますから、その問題として私お答えした、かように御理解いただきたい。
  9. 森本靖

    森本委員 米審の問題についても、さらに非核原則の問題についても、本日の総括質問が終わるまでと、こういうことになっておりますから、その点については総理もお間違いないようにひとつお願いしたい、こう思うわけであります。  それで質問を進めてまいりたいと思いますが、まず最初に、簡単なことではございませんけれども質問は簡単に行ないたいと思いますが、過日新聞ですでに発表されておりますところの、これは日本としては画期的な大事業になると思いますが、本州四国を結ぶところの架橋問題について政府閣議決定をいたしまして、一応の発表をいたしております。その内容についてはすでにわれわれも新聞紙上で十分に承知をいたしておりますので、その発表内容を私はここでお聞きしようと思いませんけれども、今後この発表されたものがどういうふうな形をとって具体的な方向に進んでいくか、そのいわゆる行なう順序、そういうものを一応建設大臣のほうから御説明を願いたい、こう思うわけであります。
  10. 保利茂

    保利国務大臣 昭和三十四年以来調査を進めてまいっております本州四国連絡橋の問題につきましては、土木学会等に御委嘱をいたしまして、技術的な精査を願いまして、昨年に至りまして土木学会結論も出てまいっております。その結論に基づきまして、御案内の五つのルートにつきまして、それぞれのルート別に、現在の施工法によって安全確実にこれを実施してまいるとするならば、どのくらいの経費と時間がかかるかということを技術的に積み上げられたものができ上がりましたので、先月二十七日の閣議に御報告をいたしました。これは閣議決定というようなものではございませんで、ただそういう中間的な一つ資料が整いましたので、御報告を申し上げました。  そこでおおよそ、この各ルートについてどのくらいの経費とどのくらいの日時を要するかという一応の目安はついておりますけれども、何さま四国、中国にとりましてもたいへん大きな問題でございますから、しかもかりにいま取りかかりましても、十年以上の年月を要するというような非常な長期の工事でございますし、そうすれば、十年後は一体四国経済各般の状況がどういうふうになっているか、それからもたらされる経済的な価値効果というものはどういうものであるかということも冷静に慎重に見きわめてかからなければならない。したがいまして、ただいま建設省としましても、各ルートごと経済効果調査を進めておるわけでございます。できるだけ早くこれを建設省段階では取りまとめをいたしまして、しかしながらやはり国土の総合計画という見地からももう一度見直しをしていただいて、それで経済効果資料が整いましたならば、ひとつこれを正式の議題として関係閣僚の御相談をいただきたい、こういうふうにお願いをいたして、閣議には御了解をいただいているような次第でございます。まだ相当の時間を要する。要しましても、慎重を期してまいりたい。いささかも間違いのないような方向結論を見出していきたいというのが私のいまの気持ちでございます。
  11. 森本靖

    森本委員 私が聞いておりますのは、いま建設大臣が言われたことは常識のことでありまして、具体的にこの計画というものが一体いつごろでき上がり、いつごろ着工するというふうなめど、さらにそれはどういうふうに決定をされるか、そういう具体的な計画、コースというものをどういうふうにお考えになっておるか、こういうことであります。時期、方法
  12. 保利茂

    保利国務大臣 ただいま申し上げましたように、経済効果等資料が整いますれば、それとあわせまして、工費、工期経済効果あるいは船舶の航行条件等各般からながめてみまして、そして落ちつくところに落ちついていただいたら、できるだけ早く着手をいたす。着手をする段階におきましては、今日の進めております道路五カ年計画の一環としてでも取り上げてまいりたい、こういう考えでおります。
  13. 森本靖

    森本委員 私が聞いておりますのは、およそものごと計画をし、そして実行をするということについては、その一応のめどを持たなければならぬと思います。そこで、いま建設大臣が言われましたことについては、その内容でございます。だからそういうふうな内容については、具体的に一体いつごろそういうふうに進めていくのか、時期それからその方法、こういうもののいまのところにおきまするめどであります。将来それは変わるかもわかりませんけれども、それがないとわかりません。
  14. 保利茂

    保利国務大臣 年内には各般資料取りまとめまして、結論を急ぎたいと考えております。
  15. 森本靖

    森本委員 そういたしますと、年内には各般のいわゆる資料取りまとめ、そうして結論を得たい。さらに来年にはこれが着工できるようにいたしたい、こういうように解釈をしてよろしゅうございますか。
  16. 保利茂

    保利国務大臣 取りまとめをいたしまして、結論がつきましたならば直ちに実施調査に移る所存でございます。
  17. 森本靖

    森本委員 これは今回の場合は閣議に単なる報告をしただけでありますが、最終的には閣議決定というような形で行なうわけでありますか。
  18. 保利茂

    保利国務大臣 法的の手続はどういうことでございますか、私としましては閣議の御決定を願いたいと思っております。
  19. 森本靖

    森本委員 そういたしまして、現在の段階までは、これは鉄道公団が十六億三千五百万円、さらに建設省が二十五億五千六百万円というかなり膨大な調査費を使って今日まで行なっておるわけでありますが、しかし、最終的にこれが道路橋になるか併設橋になるかということでいろいろいわれておりますけれども、ここまで調査をいたしてまいったということについては、この橋がいずれのところにかかるにいたしましても、これは鉄道さらに道路併用橋を当然行なうのが一番いい道であるというふうに考えておるわけであります。この点については、一応政府としても併設橋をかけたいと、こういうことですか。
  20. 保利茂

    保利国務大臣 建設省としましては、道路橋だけの調査を進めてまいっておるわけでございます。しかしながら、一方において鉄道建設公団鉄道橋に関して御調査を同時に進めておられますから、それを総合勘案して、単独道路橋を持つべきであるか、あるいは併用橋でいったほうがいいかというようなことが大きな問題であろうかと存じますから、私のほうだけでなしに、関係閣僚の御相談をいただいて、最終的には閣議の御決定に仰ぎたい、こういう考えでおります。
  21. 森本靖

    森本委員 それは建設大臣としては鉄道についてあまり関係がないわけでありますが、しかし、今日まで鉄道公団そのものが十六億円もの調査費を使ってきておるというふうに考えてまいりますと、さらにまた本州四国を結ぶ橋ということでございまするならば、当然これは道路単独橋よりも鉄道併設橋が一番経済効果その他についてもよろしいということは、これは常識考えられるわけでありまするから、いわゆる経費あるいはまた工期その他いろいろな客観的な条件が許されるとするならば、これはやはり鉄道併設橋をつけるのが一番よい道であるということについては、これは間違いないと思いますが、その点どうですか。
  22. 保利茂

    保利国務大臣 閣僚間の協議段階になりますれば、そういうことが当然おもなる議題になると存じます。森本議員の御意見は、そういう際における有力な貴重な御意見として承っておきます。
  23. 森本靖

    森本委員 私はこの問題であまり時間をとりたくないと思いますので、次にまいりたいと思いますけれども、ただ私は、総理に特にこの問題について申し上げておきたいと思います。  私も選挙区は四国でありまするけれども、私はこれをどこにつけい、あそこにつけいというようなことは言いません。また政治家がそういうふうな内容について立ち入っていくべきではないと私は思います。だからこの問題については、何といたしましても経済効果、技術的な問題、さらにそれに要するところの予算の問題、そういうものの総合的な検討からいたしまして、そうして、よりよい、一番よい道ができ上がったならば、その方向において早くこれをつけるという方向に進んでいくべきであるというふうに私は考えるわけであります。これが地元のそれぞれの運動によって曲げられるとか、あるいは政治活動によってこれが曲げられるとか、あるいは延びるとかいうことがあってはならぬと私は思います。巷間伝えられるところによりますと、三木外務大臣あたりは、明石−鳴門に政治生命をかけておるというふうなことも言われるらしいのでありますが、場合によっては、大平政調会長あたりは今度は瀬戸大橋に政治生命をかける、これは両方が政治生命をかけられたならば、おそらく総理はなかなか裁断に苦しむというふうに思うわけであります。いまから私はそういう点を非常に心配をしておるわけでありまして、そういうふうに理屈で、いわゆる自分のところの我田引水を行なうということでなしに、もっと政治家は大局的な見地からいわゆる日本全体と、本州四国を結ぶについては一体どこが一番よろしいかということを科学的に検討し、そうして経費も十分に検討し、経済効果検討し、その上に純技術的にこういうものはきめて、そうして早急にこれは着工にかかるべきである。これは世界的な大きな事業でありまするから、そういう観点から、総理統率力のある総理でありまするから、そういう点十分にひとつ閣内を統率をして、これはより早く、しかも正規のルールに乗せて、そうしてひとつ間違いのないようにやっていただきたいということを総理に望んでおきたいと思いますが、総理のこれに対する決意をひとつ聞いておきたいと思います。
  24. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 森本君の見識に敬意を表します。ただいま言われるように、世界的な大事業であるし、またわが国にとりましてもたいへん大事な使命を持つ橋でございます。もちろん、こういうものが一つだけでなしに、さらに二つあるいは三つもかけ得るような財力になればたいへん望ましいことですし、またそういうような経済的必要があるという、そういう時期にはまだなかなかならないと思います。したがいまして、ただいま言われるように、大局的な立場に立って、そうしてこういうものをきめる、決定した以上できるだけ早くこれを実現する、かような決意でございます。
  25. 森本靖

    森本委員 それでは次に移ります。  総理は、過日の施政方針演説の中におきましても、「行政機構簡素化、さらに合理化をはじめとするこれら諸制度の改善が実施されて、初めて将来にわたる安定成長への基盤が確立されるのであります」という施政方針演説を行なっております。で、今回、総理が指示したといわれておりますところのいわゆる一省一局削減というふうな、総理の指示に基づいた行政機構簡素化が、今国会に一応総まとめいたしまして、設置法の改正という形において出てきておるわけでありますけれども、私は総理にひとつ聞いておきたいと思いますことは、総理は、この一省一局削減ということを、頭ごなしに各大臣に命じたかどうか知りませんけれども、命じたようであります。これは、荒療治をするという面については、そういうこともある程度私はうなずけぬでもないと思います。しかしながら、元来、官公庁というものは国民サービスをするためにあるわけでありますから、本来ならば、今日これほど社会経済が発展をしてまいりますと、官公庁におきましても、国民サービスをし、利益を供与するというたてまえから、これはやはりふやさなければならぬ官公庁もあろうと思います。さらに不要になって削減をしなければならぬところもあろうと思います。そういう観点からいくとするならば、総理の言う一省一局削減ということは、荒療治にしては少し乱暴過ぎるのではないか。もう少しこれは詳細に検討をいたしまして、減すべきところは一局だけではなしに二局でも三局でも減し、ふやさなければならぬところはやはりふやしていく、こういうやり方行政機構簡素化というものはやっていくのが至当ではないか。何か総理やり方は、行政機構というものは——まあ総理もこれは官僚育ちでありますが、官僚がどうしても言うことをあまり聞きそうもないから、ひとつこの辺で荒療治をやって、何とかしてこの行政機構簡素化をやりたいというふうな意向が見えるわけでありますけれども、今回のやり方は、やらぬよりはやったほうがましであると言えばそれまででありますけれども、必要なところまで削減をするということは私はどうかと思う。必要でないところは二局でも三局でも削減をする、こういう形をやるのがほんとうではないか、こういうように私は考えるわけでありますが、総理のこれに対する見解を聞いておきたいと思う。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは答えるとだんだん長くなりますが、少し時間を拝借いたします。  おそらく森本君もそういう御経験がおありですから、よく官僚組織というものに御理解があると思います。ただいま仰せのごとく、必要なものはふやし、必要でないものは減らす、これは非常にわかり切ったことで、そうあるべきでございます。しかし、なかなか必要なもの、それをふやすこともずいぶん、どこまでが必要かという尺度はなかなかむずかしゅうございます。また不要になったといいましても、なかなか整理するということもいままでは行なわれておらない。私、考えますのに、まずひとつこの際に、新しい近代的な行政管理、そういうものを考えるべきじゃないか。まあ背のようなそろばんの時代ともう違っておりますから、そういうこと一事を考えましても、近代化ははかれる、また組織自身ももっと国民サービスする、その点に置けばもっとものの考え方もあるのじゃないのか。最近は、もっと国民にすべての仕事をひとつまかしていく、役所はできるだけ簡素にしていこう、こういう方向でございますから、この仕事が大事だ、そういう意味でだんだん役所をふやしていかなければならぬと必ずしも実は思わない。そういう議論はいまここでやっていると長くなりますから一応やめますが、とにかく新しい行政機構行政制度考えるべきだ、そういう時期に来ているだろう。それにはひとつ思い切ってこの際にその第一歩、スタートをきめる、こういう意味から一省一局削減をきめよう。御承知のように、これではただいまあまり効果はない、しかし消極的には、今回はふやすことだけはやめました。あるいは公社、公団を新しくふやすこともやめました。さらに、それの整理統合等がいろいろ計画されておることも御承知のとおりであります。私は、今後三年のうちにさらに積極的に行政事務整理をしていく、そうして不要になりましたような、あるいは目的を達したような法律、これを廃止していく、その他の整理によりまして、ほんとの国民のためのサービス、そういう行政機構を打ち立てる、これが実はねらいでありまして、ただいま、まだ第一歩を踏み出したばかりであります。確かに森本君の言われるような点があると思います。これからは、必要なものを残し、必要でないものを整理し、さらに新しいものについてもそれをふやしていくというそういうような考え方で取り組んでまいるつもりであります。
  27. 森本靖

    森本委員 総理が最後に言われました点については、私もこれは同感でありますが、ただ今回の行政機構簡素化については、これはどう考えましても、少しお笑いぐさではなかろうかというふうに私は考えるわけであります。これを一つ一つ見てまいりますと、全く一方で、たとえば郵政省なら監察局長を廃止をした。ところが官房に監察室長ができた。その下における上席監察官さらに各課はそのままである。何ら関係ない、こういうふうな実情であります。ところによっては、逆に官房長がふえておる省もございます。こういう点を考えてみますと、今回の行政機構簡素化というものは単なるゼスチュアにすぎない。ただ総理が言われるところの、毎年毎年新規にひとつふやしてくれ、公団をふやしてくれということを押えた点については一つ効果があるということは、私も率直に認めます。しかしながら、現状の行政機構簡素化をし、これを合理化していくという点については、全くなってないというふうに私は考えておるわけであります。  そこで大蔵大臣にちょっとお聞きいたしますが、今回の行政機構簡素化によって、一省一局削減によって、どの程度の経費削減になりましたか。
  28. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 一省一局の削減ということは、本来ならば、下から課の整理をやってきて省内の整理をするのがほんとうでございますが、そうじやなくて、頭から一省一局の削減をやったということは、今後の行政改革に対する政府の決心と姿勢を示したものでございまして、これからこの姿勢を前提にして内部の簡素化に入るということでございます。そのために、この一省一局削減をきめてからすぐに、行政管理庁におきましては、今後すべき行政の簡素計画について各省に六月三十日までに計画を出せということになって、各省ともこれに基づいたほんとうの部局の合理化案、それから法令の整備、それに伴った一連の行政機構の事務の簡素化というようなものを六月三十日までにつくる準備をしておる最中でございます。したがって、今回の場合は、一省一局の削減による経費というものについては、予算のそう大きい減額というものはございません。これからこの六月三十日までに出される計画に基づいて来年度から大幅に予算削減が行なわれるだろうと思います。  それともう一つ、今度の場合におきましては、定員の縮減——従来なら毎年一万何千人というものがふえておりますが、今回はとにかく絶対額において人をふやさなかった。六百人以上の定員の減というものを立てましたので、この定員の縮減が行なわれるのと行なわれないのでは、ざっと計算しますと、私は予算には約百億円をこす一つの節約になっているんじゃないかというふうに考えております。
  29. 森本靖

    森本委員 私が聞いておりますのは、その定員の削減その他ではございません。今回の一省一局削減によるところのいわゆる経費削減というものについては、どの程度であるか。一省一局削減ということは、単に機構をいじるというだけではいきません。その根本は、何といっても、予算的にいわゆる経費削減をしたいというところに根本があるわけでありまするから、今回の一省一局削減についてどの程度のいわゆる経費が節約になったか、これを聞いておるわけであります。
  30. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき申しましたように、一省一局を削減しましても、その下の課の整理とか人員の整理を伴っておりませんから、予算においては大きい節約になっておりません。
  31. 森本靖

    森本委員 大きい削減はないと言うならば、小さい削減はありますか。
  32. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま言いましたように、一省一局の削減についての、それに伴った経費については計算ができておりませんが、全体として今度の百五十億節減した経費の中には、三十億円の人件費の節約が立っております。
  33. 森本靖

    森本委員 その百五十億円云々というのは、これは定数の削減によるところの、定員減によるところの削減でありまして、私が言うところの総理じきじき命令をいたしました一省一局削減によるところの経費というものは、どの程度削減になっておるか。それはなければないでいいですよ。私は何も突き詰めてやろうとは考えておりませんが、ただその実態の内容国民に明らかにすればいいのです。
  34. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき申しましたように、その点の計算はできておりません。
  35. 森本靖

    森本委員 その点の計算はできておらぬというよりも、実質的にはこれはゼロなんですよ。全部局長が入れかわって、新しい室長とかあるいはその他の名前に変わって出てまいってきておるわけでありまするから、実質的にはこれはほとんどないと私は解釈をしておるわけであります。何もこの問題によってあなたを追及しようとは考えておりませんが、ただ総理のPRほどこれは経費削減にはなっていないというところをひとつ私は明確にしたい。ただ総理が言いましたように、新しい局を新設をするとか、公社、公団を新設するとかいうことに対する押えには確かになった。しかし肝心の経費削減という点については、これは何らない、こういうことを私は言いたかったわけであります。  なお、この問題については、いずれまた内閣委員会等において、私も出張いたしまして質問をしたいというふうに考えておりますので、次に移りたいと思います。
  36. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも私は専門のほうの担当でありませんので、担当の大臣の説明もひとつお聞き取りいただきたい。
  37. 木村武雄

    木村(武)国務大臣 森本さんにお答え申し上げます。  総理の委託を受けてこの問題と取り組んでおりまする私の所信を一言申し上げておきたいと思いますが、何としてもいまの行政は、森本さんのおっしゃるような国民に対してサービスのできる行政にしてみたい、こういう考えで取り組んでおります。したがって、何としても行政の改革だけはまともにやってみたいと、こういう気持ちを起こしました関係上、それと取り組む私の姿勢だけは主体性を持ってみたい、こういうことだったのであります。やはりもとと取り組んでおりますものに主体性があるとないとでは、そこにでき上がってまいりましたものは天と地の開きがあると思います。あなた方も御質問をなさいまして、主体性を持っておるものを相手になさいましたと主体性を持たないものを相手になさいましたとでは、そこにおのずから大きな開きが出てくると思います。そうでありまするから、今度の一省庁一局削減の問題は、御批判は森本さんのおっしゃるとおりであります。だが、これを完全になし得たとなし得ないとでは、そこに主体性を持ったか持たないかという点について大きな開きが出てくる、私はこういうように考えまして、この問題だけは額面どおりにやってみたのであります。したがって、行政改革に対する限りは主体性を確立し得たと私は確信を持っております。そうでありまするから、今後三カ年間にわたるほんとうの行政改革をやってみたいと思いまして、現場で働いておいでになりまする各省庁に対して、体質改善の内容についての報告を六月三十日までに求めたのであります。もちろん行政管理庁といたしましても、管理庁自体で具体的なものは持っております。そして、それとにらみ合わせましてりっぱな答案をつくってみたい。そのつくりましたものをほんとうに調整いたしまして、はたしてこれが国民サービスにこたえ得られるものであるかどうかをもう一度そのときに考えてみたいと、こういう気持ちなのであります。  行政は何も個人のものでもありませんし、一党一派のものでもありません。国民のものでありまするから、その途中におきましていろいろなお考えがありましたならば、ぜひぜひ御教示くださったならば非常に幸いであります。
  38. 森本靖

    森本委員 私は、行政管理庁長官に対しましてもまだいろいろお聞きしたいと思います。いま答弁をせられた内容についても、これは論争すればかなりおもしろい問題もありますけれども、長官が病気でございますから、私は病人に対してあまりしつこく質問をするのは人道上好ましくありませんので、この問題は一応この程度にいたしまして、次に進んでまいりたいと思います。  次に、私は日本海あるいはインドネシア、フィリピン海域におきますところのいわゆる漁業権の確保の問題について質問をしたいと思いますが、その前に、日本の漁業という問題が、今日、いわゆる遠洋漁業におきましては、国際間の規制が従前よりも非常に多くなっております。さらに近海漁業、それから沿岸漁業、こういうものについてもたとえば公害その他、あるいは近海漁業についてもいろいろの支障が起こっております。これはすでに政府は御承知のとおりであります。今日こういうふうな日本の漁業のいわゆる危機、存亡といいますか、昔の日本漁業から見ますと、今日の日本の漁業というものは非常に困惑をしておるというふうな情勢であります。今日のこういうふうな日本の漁業に対しまして、私は、他の産業に対するほどに政府はあまりこれに対して救済の手を伸べていない、また政策が行き届かないという点があるのではないかというふうに考えまして、日本の漁業の将来を考えますと、非常に心配な点があるわけであります。この問題について論争すればかなり時間がかかりますので、私はここではひとつ農林大臣から、今後の日本の漁業の振興策について、遠洋、近海、沿岸、こういうものにおけるところの基本的な農林大臣の政策というものを、簡潔に、要を得て御説明を願いたい、こう思います。
  39. 西村直己

    ○西村国務大臣 ただいまお説のように、漁業におきましては、沿岸におきましても公害その他の問題もございます。それから遠洋漁業におきましては国際的な制約と申しますか、規制、きびしい環境に立っておる。一方需給におきましては、需要が非常に強く、供給がそれに伴わない。たん白資源としてはこれを確保してまいらなければならぬ。こういう中における漁業政策、水産政策を推進いたしてまいる。  そこで第一は、何と申しましても政策の基本としては基盤の整備、まあ漁港振興でございますね。そこで、おそらくことしも国会において、新しい第四次の修正計画、漁港振興計画というものを立てることになって、御承認を受ける段階にいくと思います。もちろん、漁業、漁港を通じ、あるいは魚礁を通じ、それからその他経営改善等いわゆる漁業の近代化、こういうようなことを基本にしてまいりたいと思います。そして経営の安定をはかる。  かたわら、国際面におきましても、予算面におきましてもすでにあらわれておりますような、漁業の資源に関しまして科学的な調査、こういうようなものを相当推進してまいるかたわら、各方面に起こっております国際間の漁業規制問題につきましては、外交交渉を通じて十分わがほうの実績等に基づいた権益を確保して伸ばしてまいりたい、こんな考え方でございます。
  40. 森本靖

    森本委員 この問題はまだ論議をすれば非常に長くなりますので、私は本日この問題を論議するのが本旨でございませんのでこの程度でおきたいと思いますけれども、声が非常に小さいところのこの漁業問題については、ややもいたしますと置き去りにされ、なおざりにせられるという傾向が今日の政治の中に多いわけであります。日本の漁業というものは、伝統的に日本の中心産業であるわけであります。近年、いま農林大臣が言われたような現状からいたしまして、外国からの水産物の輸入等についても前よりは相当ふえておるというふうな状況からいたしまして、この日本の漁業の振興ということについては、政府としてもより一そう真剣に考えていってもらいたいということを強く要請いたしまして、具体的な問題として、これは昨年総理もインドネシアに行かれたわけでありますけれども、インドネシア、フィリピン海域、特にインドネシアのバンダ海域におけるところの向こうの内陸宣言、こういうところから、今日まで日本の漁船が数十隻拿捕せられまして、そのつど外交交渉を行なって、船舶の安全、さらに返還、こういうものを交渉いたしておりますけれども、これは基本的には、何といたしましてもインドネシアと日本における、いわゆる漁業問題に関するところの基本的な取りきめが行なわれなければ、依然としてこの付近に出漁いたしますところの漁船の安全は確保されません。そういう観点から、総理が昨年インドネシアに参りましたときに、おそらくこまかい問題は総理は話をしなかったと思いますけれども、こういう問題が起きておるから、ひとつ両国国の間における折衝によってこれを早急に解決をつけてくれないかということを、総理がおそらく言われたと思う。それを受けまして、今日外務省と向こうとの間において折衝をされておるというふうに考えておるわけでありますが、この進展の内容については、過日朝日新聞がちょっと簡単に触れておったようでありますけれども、その後これに対する内容が明らかにせられておりません。もっとも、これは今日外交折衝をいたしておりますことでありますから、その内容については、ここで事こまかく報告するということはできないかもわかりません。しかしながら、私は、こういう問題については日本の国会が大きな関心を持っておる、そうして日本とインドネシアの将来における友好関係からいたしましても、こういう問題については早急に解決をつけるべきである、これが日本国民の意思であるということを私はここで明確にしておきたい、こういう観点から質問をするわけでありますけれども、こまかい問題はさておきまして、これをひとつ具体的に早急に解決をつけるということについては、総理は外務大臣も督励をし、さらに内部については農林大臣とも十分に相談をして、ひとつ早期にこれを解決をつけるように全力をふるってやってもらいたいというふうに考えるわけでありますが、総理決意を聞いておきたいと思います。
  41. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 インドネシア水域で問題が起きていることは、ただいま御指摘のとおりであります。私が過般参りました際にも、インドネシア政府にその点について円満解決方を交渉してまいりました。ただいまも森本君もお話しでしたが、これはただ日本の漁船ばかりではございません。同時に、おそらくお話のうちにもそれを含んでと思っておりますが、琉球の漁船も同様でございますので、日本並びに琉球漁船、これらの問題を解決すべくあらゆる努力をしておることでございます。その詳細でただいま答え得ること、これは外務大臣からお答えさせます。
  42. 三木武夫

    三木国務大臣 森本君御承知のように、三千も島があるのを結んで内水宣言をしておるわけであります。これは国際法上認められないというのが日本の立場である。そうなってくると、やはり非常に両国の意見の食い違いがあるわけで、それで昨年末から交渉を始めておるわけであります。しかし、日本とインドネシアとが友好の関係にありますから、インドネシアも何とか漁業紛争を解決したいという意図は持っておるわけです。日本もまた、ときどきこういう問題が起こって、そして外交ルートを通じて釈放方を要請したりしなければならぬようなトラブルがしょっちゅう起こるものですから。しかし、まだ実際問題として相当の開きがあるのです。しかし、これはどうしても日本とインドネシアとの関係からいって、漁業問題ぐらいは両国で解決されなければならぬ、こういう立場から今後外交交渉をできるだけ促進いたしまして、そして早く漁業上の取りきめを行なって、いわゆる領海の問題は別として、その原則は曲げるものではないけれども、現実的な解決をいたしたいという所存でございます。今後外交交渉に力を入れていきたいと考えております。
  43. 森本靖

    森本委員 これは、いま外務大臣総理大臣が言われましたように、ひとつ全力をふるって外交交渉によって解決をつけるという方向にやっていただきたい。特に総理はわざわざインドネシアに行かれておるわけでありまするから、ひとつぜひこれはやっていただきたい、こう思うわけでありますけれども、ただ、ここで私は外務大臣にちょっと聞いておきたいと思いますが、外務省にはそれぞれの在外公館にそれぞれの専門家が、二等書記官とか、いわゆるそれぞれの書記官というような名目で駐在をしておるわけであります。これは外務省の人間に一応なり切った形において駐在いたしておりまするが、今日、この水産業関係におきまするいわゆる外務省所属として在外公館にある者は、世界的に、いわゆる在外公館の中でどう程度おられますか。
  44. 三木武夫

    三木国務大臣 外交交渉の中で、漁業交渉というのは、かなり各国との間に問題が起こっておるわけです。だから専門家というのではないのですけれども、漁業交渉というものがやっぱり外交交渉の重要な題目になっておりますから、相当専門家が養成されております。どれだけという人数は、私ここでは覚えてはおりませんが、外務省の中にも漁業問題の専門家が相当養成されて、外交交渉というものについては相当やっていける能力を持ってきておるということがいえると思います。もちろん、専門家の必要に応じて意見を徴す必要があるのですから、全部が全部外務省だけでやるというわけではなしに、漁業の専門家が入って会議をやりますから、そういうことの外交を進めていく能力においては、今日外務省は持っておると考えております。
  45. 森本靖

    森本委員 外務大臣はそういうふうに言われますけれども、私は、外務省の中には、そういうことをかなり詳細に知っておるというのはあまり少ないじゃないか。それは、たとえば日ソ漁業交渉というふうな大きな問題になれば、確かにある程度常時研究しておるということがありますけれども、それより、たとえばアフリカにおける日本の漁業、あるいはまたこういうインドネシアというところ、こういう問題でそれぞれの各国と漁業紛争が起こったときに、やはり農林省の係官その他の意見を十分に聞かなければ、なかなか事が運ばないという点が非常に多いわけであります。そういう点からいきますと、いま水産庁並びに農林省から外務省に出向し、そうして外務省の書記官として海外に駐在をしておるというのは、私はないんじゃないかと思いますが、農林大臣、いま一人もおらぬでしょう。
  46. 西村直己

    ○西村国務大臣 一般的に申しまして、水産庁から特に常駐に行っておるという者はないと思いますが、しかし、たとえば日ソのような場合には御存じのとおり、それからインドネシアにつきましては、実は総理がおいでになりますときに私も同行いたし、事情をよく存じておりますが、専門家の会議を現に現地でやっておりまして、そこには水産庁自体も私のほうから派遣をしてたんねんな会議を続けておる、こういう状況でございます。
  47. 森本靖

    森本委員 私が言っておりますのは、そういう内容についてはわかっておりますけれども、たとえば郵政省においてすら、一人か二人のいわゆる書記官を在外公館に外務省の人間として発向いたしておる、そういうふうなところからいきますならば、各省ともそれぞれいわゆる書記官として出ておるわけであります。ところが、この水産関係だけはほとんど——ほとんどといっても一人も出ておりません。ひとつこれは政府部内におきましても、全部が全部というところに置くわけにはまいりませんけれども、そういうふうな専門的な書記官というものを在外公館に、重要な部門は置く必要があるのではないか。たとえばアフリカの西海岸における日本の有力な漁業基地がございます。ポルトガルとかスペイス、こういうところにおきましては、まるっきりそういう漁業関係における専門家は在外公館におりません。これは私も行ってつぶさに見てまいりましたけれども、そういう点におきますると在外公館にこういう水産行政の専門的なものを、全部とは言いませんけれども、きわめて重要な場所には置くことを考えてもいいのではないかというふうに考えるわけでありますが、これはひとつ宿題として、悪いことではありませんから、外務大臣、農林大臣相談をして検討していただきたい、こう思うわけでありますが、外務大臣、ひとつどうですか。
  48. 三木武夫

    三木国務大臣 一つの御意見でございましょうが、方々に、漁業問題というものが世界各地にいろいろ問題を起こしておるときでありますから、何か必要があったときに、水産庁などの専門家の意見を聞いて処理するというのが実際的でないでしょうか。わずかな人数でも、インドネシアもあれば、フィリピンもあれば、あるいはアフリカもあればということで、相当多数の者をいま森本さんの言われるようならば置かなければならぬということで、これはしかし、日本の漁業の保護ということが主眼でありますから、外務省の都合でどうこうと言うのではないですが、いまの御提案は検討はいたしますけれども、どうも実際的には、わずかの水産庁の方が来ても今日の漁業問題の要請にはこたえられないのではないか。必要に応じて水産庁と外務省とが緊密な連絡をとって、問題を処理するほうが実際的ではないかという感じがいたしますが、いまの日本の漁業保護に対して万全を期せという御趣旨からの御提案だと思いますので、そういう点はわれわれも検討をいたしたいと思います。
  49. 森本靖

    森本委員 次に、日本海方面でありますが、日本海方面のいわゆる漁業の安全確保という点については、総理がまとめて答弁をせられております。しかしながら、そういうことでは、現実に日本海の安全操業ということは、今日の国際紛争におきまするいわゆる日本海の波が荒い、こういう現状においてはなかなかむずかしい。特に日本海における漁業のいわゆる操業がむずかしいということについては、これを完全にいいますと、とにかく軍艦が急速力で走り回っておる、さらに軍艦が完全に灯火管制を行なっておる、それから場合によっては誤認によって銃砲撃が生ずる場合がある、さらに軍艦により包囲、追跡をされるという場合もある、あるいは場合によっては触雷の危険が発生することもある、こういうふうに、おもにこれはいわゆる外国の軍事行動によるところの操業の安全が脅かされておる。こういうふうな現状になっておるわけでありますが、そういう現状に対しまして総理からこの間まとめて答弁があったわけであります。  その中で、私は、特に私の専門であります電波関係についてお聞きしたいと思いますけれども、要するにいろいろの措置をとることは必要でありますが、その中で、できるならば向こうの軍艦がどの辺に、どういうふうに動いておるということが日本の漁船にわかれば、これは非常にいいわけであります。   〔委員長退席、北澤委員長代理着席〕 たとえば、エンタープライズが佐世保を出て日本海に行ったということはわかっておりますけれども、日本海の一体どこらあたりを遊よくしておるということについてもわかれば一番いいわけでありますが、これがわかる方法日本政府としてはございませんか。これは運輸大臣だな、防衛庁長官と。——運輸大臣、聞いておったか。
  50. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いまちょっと陳情を聞いておりましたので。
  51. 森本靖

    森本委員 私は、こういうふうな、いま言いましたように日本海におけるところの漁業の安全確保という点については、いま一番問題になっておりますのは、外国の軍艦によるところの軍事行動が、操業安全にとっては一番大きな脅威になっておるわけであります。できるならば一番いい方法として、そういうふうな外国の軍艦あるいは艦艇というものがどういうふうに動いておるか、きょうはどの辺におるか、きょうは大体どの辺にどの程度おるかということが日本の漁船にわかれば、一番いいわけであります。そういうふうなことを行なう方法はないものか、こういうことを聞いておるわけであります。
  52. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 外国の軍艦の動静は、必ずしもはっきりはよくわかっておりません。ただ、運輸省の保安庁としましては、ビーチクラフトという小型の飛行機を出しましてときどき上空から漁船の状況を見ておりましたり、それから松江にかなり大きな気象用のレーダーがございます。それで日本海一般をレーダーで探察しておりまして、その状況を把握しておる程度でありますが、先方の移動がきわめて激しいようであります。そういう意味で朝いたものが昼はいなくなるという情勢もありまして、なかなか的確な情勢を把握しにくいのであります。しかし、大体のそういう状況をのみ込みまして、漁業組合その他とも連携をとりまして、事前の注意や情報は多少与えておるのであります。こまかい一つ一つのことは与えておりませんが、どの方面はどういう状態であるという程度の情報は与えておるのでございます。
  53. 森本靖

    森本委員 これは、たとえばいまあなたがおっしゃったところの松江のいわゆる気象台のレーダーというものは、かなり広範囲にレーダー網によって艦船の動向というものをつかまえることができるわけであります。たとえば過般のいわゆるエンタープライズなんかは、この松江の気象台のレーダーにはっきり鮮明にのっておるわけであります。そういう点から、これは大体半径三百キロは十分に可能性があるわけであります。ここでこのレーダー網によるところのいわゆる艦船をつかまえて、そしてその艦船の動向というものを知らせば、いわゆる半径三百キロということになりますから、かなり広範になります。そういう点の情報というものを、いわゆる漁港の母地、いわゆる寄港地、そういうものに知らしておるかどうか、ひとつ御答弁を願いたいと思います。
  54. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 ただ気象用のレーダーをそういう気象以外の目的に使うということは、必ずしも適当ではないのであります。したがいまして、それだけを専門に見るというわけにもまいりません。したがいまして、いま哨戒艇が三そう出ておりますが、それからの情報とかあるいはビーチクラフトによる情報とか、そういうものも総合いたしまして、これは必要あると思う場合に漁業組合等に通知させることにいたしております。
  55. 森本靖

    森本委員 この日本海沿岸の美保基地の航空自衛隊の対空レーダーは、どの程度の性能を持っておりますか。
  56. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 はっきりとわかりませんが、二百キロ前後と承知しております。
  57. 森本靖

    森本委員 この美保基地の対空レーダー、さらにこの松江の気象台におきますレーダー、こういうものを使って日本海における三百キロ範囲内の沿海の漁船に、いわゆる軍艦の動向というものを承知をしてこれを流せば、その三百キロの範囲内における行動というものはおよそ漁船にははっきりするわけであります。そういう点について、運輸大臣はやっているというふうに言われましたが、やっておりますか。
  58. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 気象用の電波を実はそういう方向に使うことは、電波法で禁止されておるのであります。したがいまして、松江のレーダーをそういう目的に使うということは、これは適当でないと、いまもちょっと申し上げたのであります。しかし、部内的な問題といたしまして、やはり漁船の動向には非常にわれわれも注意しなければなりませんので、ほかの諸情報とも総合いたしまして、これは必要であるという場合には、保安庁の出先から漁船に対していろいろな注意を与えるようにはいたしております。
  59. 森本靖

    森本委員 この松江の気象レーダーというものは四十一年の七月に設置をされたわけでありまして、これについては、日韓共同水域に至るところは半径三百キロでありますから、かなり遠方まで見えるわけであります。これは今回のいわゆる日本海のプエブロ事件が始まってから、実はエンタープライズあるいはヨークタウンなどという艦艇が日本海に出没をしたときには、初めのうちは、この気象台がこの情報を的確に流しておったわけであります。ところがどういうわけか、これを途中で流すことをやめてしまった。さらに、それまではこの気象庁におきますところのレーダーについては、新聞記者等も自由に出入りすることができた。そうしてこれは、しろうとが見ましてもレーダーに映るやつはわかりますから、エンタープライズがおる、ここに何がおるというぐらいのことはすぐにわかるわけであります。そういうことがわかっておったところが、どこからどういう命令が出たのか知らぬけれども、そういうことは一切まかりならぬ、この部屋の中には報道関係記者も一切入ってはならぬ、それから今後こういうような報道をしてはならぬ、こういうことになっておるわけであります。そこで、これはせっかく気象庁のレーダーがあるわけでありますから、そういうものによってこれを認定をし、そうしていわゆる漁業家に知らすということは、私は、総理が言うところの万全の措置におきます一番いい方法じゃないか、こう思うわけでありますが、いままでやっておったのを途中でやめたのですか、運輸大臣
  60. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 台風や低気圧や、そういう気象上の問題が起きましたときには、新聞記者の皆さんも入れて見てもらったことはあるのです。今回も、雪とかそのほかの問題もあって、初めのうちはお入れしておったようです。しかし、入れたこと自体は、これは適法ではないのであります。電波法では禁止されていることなんです。そこで、禁止されていることであるからあまり過度ではいかぬというので、ある一定の時限からはお断わりしているというのが実情なのであります。
  61. 森本靖

    森本委員 電波法で禁止されているというのは、運輸大臣、電波法のどこで禁止されておりますか。
  62. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 条文につきましては、係員に説明させていただきます。
  63. 柴田淑次

    ○柴田政府委員 電波法の第五十二条に無線局に関する規定がございます。気象レーダーはその中に該当するものだと考えられるので、その五十二条によって禁じられるべきものだという見解でございます。
  64. 森本靖

    森本委員 確かに五十二条では、目的外通信というものは一応禁止をされております。しかしながらこの場合は、目的外通信に使うも使うまいも、レーダーによって気象を測候しようとしておったならば、そのレーダーに艦船が映るわけですから、その艦船だけを映そうというように故意にやるわけじゃないでしょう。要するに、気象測候をやるためにレーダーをやっておれば、その中にエンタープライズもあるいはその他の艦船も映るわけでありますから、これは目的外通信じゃないでしょうが。目的外通信というものは、いわゆる自分の目的以外の通信を行なうことであって、それは通信じゃないですよ。どうですか。
  65. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そのレーダーは気象用のために設置されておるものでありますから、その結果が気象以外のものが出てきたという場合でも、その以外のものに使うということは適当ではないのであります。
  66. 森本靖

    森本委員 以外のものに使おうとしなくとも、現実に映るわけですから。そうでしょう。その艦船を故意にとらえるためにレーダーを発射するわけじゃない。気象測候を行なうためにレーダーを発射したら、たまたまそこへ出てきておるから、それを親切に漁業家に教えてやれば、それだけ漁業家は危険が少なくなる。これは政府としてはやるのが当然じゃないですか。
  67. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 ですから、それは内部的な問題といたしまして、海上保安庁のほうとも多少の連絡はありまして、そして、漁船に警告したりなんかする必要がある場合には、適時、海上保安庁を通じてやっておるわけであります。ただ一般の新聞記者や皆さんにそれを公開してお使い願うとか、そのためにそれをごらんいただくということは、適法でないからやめておるということであります。
  68. 森本靖

    森本委員 新聞記者その他に云々ということになりますが、いわゆる漁業従事者に対しても、このごろは知らしてないですよ。知らしておりますか。
  69. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それは第七管区、第八管区の海上保安本部におきまして、いろいろ情報を収集しておりまして、その中に入っていくわけです。したがって、そこから直送されるということはございません。
  70. 森本靖

    森本委員 そういたしますと、このレーダーによってわかる範囲内のことについては、いま全部漁業従事者に知らしておりますか。
  71. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それは海上保安本部の、そのつかさつかさの官署を通じまして、お知らせしておるのであります。
  72. 森本靖

    森本委員 そのつかさつかさの人によってやっておるにしても、これは常識考えて、とにかく要するに漁船の安全を確保するということは、総理は万全の措置をとるというわけです。だから万全の措置の中には、相手方の艦艇その他がおるということが、どこにおるということがわかれば、それを避けて操業に行くということがあるわけでありますから、これはやはり私は親切に知らしてやるのがほんとうだと思います。ところが、現実にはこれは知らしてない、こういうことになっておるわけであります。これはひとつ現状をよく調べてもらって、そしてやっていただきたい。レーダーというものは相当膨大な金をかけてやっておるわけでありますから、こういうふうに使えるものなら、十分に私は使っていいと思います。  そこで、使っていいということの一つの具体的な例として、たとえば電波を使うということは、国民常識の範囲内において使うということについては、私はいいと思います。法律に若干の疑義はありましても、そのことが国民に利益になると考えるならば、私は考えるべきだと思います。たとえばこの電波法という問題は、いろいろきめておるわけでありますけれども、たとえばそれならば、過般のライフル銃の金嬉老の事件におきまして、放送局が、それぞれ警察の者をして、この金嬉老個人に対してテレビ放送をやっております。しかしながら、現行の放送法からいきますと、ある程度これは疑問があります。それは、放送というものは、国民の不特定多数に対するところの放送というものが放送法によって一応きまっております。しかしながら、いま申しましたところの目的外通信というものがありますけれども、その目的外通信が除去される場合は、これは、いわゆる緊急事態、人命の救助、安全、こういうときについてはかまわないという一応の除外規定があるわけです。そういうところからいきますと、今回の、いわゆる金嬉老事件のライフル魔の謝罪放送というものは、明らかに現在の放送法と電波法からいっても、私は合法であるというふうに考えておるわけであります。今後も——こういう事件は、これは起こらぬほうがいいわけでありますけれども、起こったときには、しかしテレビの威力というものは非常に大きいわけです。だから、こういう場合にこれを使用するということは、郵政省あたりの頭のかたい官僚が、これはどうも放送法の違反であるというようなことで調べておるようでありましたけれども、私は、これは明らかに放送法の違反ではないと思う。将来もこれはあるかもわかりませんので、この点については、ひとつ担当の郵政大臣から、例のライフル魔の事件におきまする謝罪放送というものは、現在の電波法、放送法からいたしまして、私は合法である、法律というものはそうかたく解釈をするものではない、国民の利益に合致する方向において法律の解釈をすべきである、こういうように考えておるわけでありまするが、ひとつ郵政大臣の御意見を聞いておきたいと思います。
  73. 小林武治

    ○小林国務大臣 ただいまの問題は、お話のように疑義がある、いわばすれすれの問題である、こういうふうに考え検討いたしておりまするが、しかし事態も事態であった、こういうことも考えていかなければならぬと、お話のように考えております。
  74. 森本靖

    森本委員 そういたしますと、電波法のいわゆる目的外通信、それについては、電波法の施行規則において、それの除外規定というものをきめておるわけでありますが、この除外規定で、これは明らかに合法である、こう解釈をしてもいいのじゃないですか。
  75. 小林武治

    ○小林国務大臣 電波局長に答弁させます。
  76. 石川忠夫

    ○石川政府委員 電波法施行規則によりまして、人命の救助または人の生命、身体ないしは……。
  77. 森本靖

    森本委員 何条ですか。
  78. 石川忠夫

    ○石川政府委員 電波法施行規則の三十七条の二十一項によって、これは合法である、こういうふうに言えるかと思います。
  79. 森本靖

    森本委員 電波局長が合法であると言っておるのに、郵政大臣は、まだ合法か非合法かわからぬが、いま検討している。これは全く省内不統一ということになって、部下の意見をあまり聞いておらぬということになろうと思いますが、これは明らかに合法であります。このことはひとつはっきりとこの予算委員会を通じて行なっておきたいと思います。将来こういう問題はあり得ると思いますから。だから私は、このことによって一応あれだけの人間が救われたということについては、やはりテレビの効果だ、こういうようにも考えておるわけです。そういう点からいきますと、先ほどのいわゆる松江の気象台におきまするところのレーダーについても、これは解釈をすれば、この二十一条が解釈されないことはない。「人命の救助又は人の生命、身体若しくは財産に重大な危害を及ぼす」ということからいくとするならば、いまの金嬉老事件と同じように、この気象庁のレーダーを、いわゆる艦艇の問題に使うということは、これはあながち私は悪いことじゃない、こう思うわけでありまするが、運輸大臣どうですか、いまの郵政大臣の答弁を聞いて……。
  80. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それはお説のとおりであると思います。内部的には大いに活用してしかるべき問題であるだろうと私は思います。しかし、外部的に、新聞記者の皆さんをお入れすることは、気象庁としては適当でないと思います。
  81. 森本靖

    森本委員 それは、政府は、そういう報道関係その他に悪口を書かれたりなんかするのがいやだから、そういうことを言っておるんだろうと思いますが、しかし、われわれは、新聞記者であろうと、何記者であろうと、大いに公開をして、国民に報道してもらうことが一番いいというふうに考えるわけであって、これまた、そういう点が、新聞で、エンタープライズがあの辺におるということを書かれるのはいやだというのもどうかと思いますが、その点はその点として、とにかくせっかくこういうような気象台があるわけでありますから、使えるものは使って、総理が言いましたところの安全の万全の措置をとるという方向については、ひとつぜひやっていただきたいと思うわけであります。  私は、まだこの問題についていろいろ論じたいと思いますけれども、次に論点を進めます。  次に、これは簡単な問題でありますけれども、国家公務員並びに地方公務員、公共企業体職員、さらに農業、漁業団体の共済組合、これはすべて共済組合といっておりますが、この共済組合におきまするところの年金のスライド制という問題が、前々から大蔵委員会を通じて問題になっております。これは、官公庁労働者百七十万の関係をする問題でありまするけれども、これについては、特に年金のスライドという問題が前々から問題になっておりますし、前国会におきまする大蔵委員会におきましても、附帯決議がつけられておるというふうなことでございます。これを要約いたして言いますると、「国民の生活水準、国家公務員の給与、物価その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情を総合勘案して、すみやかに改定の措置を講ずるものとする。」というように、これはわれわれの要求によってこういうふうに法文が改正をせられたわけでございまするけれども、具体的に一体どの程度変動があった場合にこれを改定するかということが載っていないわけであります。これについては、前々から、それぞれ国会で論議をされておりまするけれども、いわゆる労働者災害補償保険法等におきましては、これは毎月勤労統計における全産業の労働者一人当たりの平均給与が二〇%以上変動があった場合については、これを考えなければならぬというふうにはっきりあるわけであります。ところが、いま申しました百六十万以上の関係をいたしておりまするこの共済組合の年金のスライド制については、そういうふうな明確な線がございません。これは明確な線を決定をしろということが前々から論争されておりまするし、その線に従って、大蔵委員会等におきましても、論議をせられ、そういう方向政府検討しろ、こういう附帯決議がついておるわけでありまするが、これに対する大蔵大臣のその後の検討、さらに、今後これをどういうふうにしようとしておるか、ひとつ大蔵大臣から、いい答えを明確にお願いしたいと思います。
  82. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この問題は、恩給から始まりまして、各制度の均衡をとらなければならぬということから、総理府の中に連絡協議会ができて、この問題を検討しておって、まだ結論が出ていないというところだと思います。
  83. 森本靖

    森本委員 結論は出ていないことはわかっておるわけでありまするが、大蔵委員会その他において、これは与野党が満場一致で決議されております。私がいま言ったような方向においてこの問題を処理し、検討していくという、そういう方向において進めようと考えておるかどうか、大臣考え方を聞いておるわけです。だから、大臣が、その方向で私は検討いたしておりますと答弁すれば、次に行きます。
  84. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはもう御承知のとおり、このスライド制というものは、全般にわたってこれが施行されるということになりますと、膨大な財源を要する問題でございますので、したがって、そういう形にすぐに移行するということは、非常にむずかしい問題だと思います。しかし、現実においては、こういう物価その他経済情勢の変化に応じて、何らかこれが改善されなければならぬという要請はございますので、たとえば今度の恩給で見られましたように、いろいろの情勢を考えまして、若干の引き上げをやるというようなことで、現実的にはいろいろくふうした措置をとっていかなければならぬと考えておりますが、これが一律にスライド制というようなものを各部面にわたって実施できるかどうかということについては、非常に慎重を要しますので、いま検討中でございまして、何とも申し上げられません。この物価との関係、経済情勢において改善を加えなければいかぬという方向では、私どもも考えていますが、これがスライド制というものであるかどうかということについては、なかなか問題がございます。
  85. 森本靖

    森本委員 これは物価の上昇その他において社会情勢の変化、そういうものによってこれを検討していかなければならぬということは、これはすでにもう大蔵委員会においても論議をせられておりますし、さらに、附帯決議もつけられておりますので、賢明な大蔵大臣でありまするから、私の言ったことはよくわかると思いまするから、そういう方向において、どうも顔つきが検討しそうな顔でありますから、ひとつ質問を次に進めていきたいというふうに考える一わけであります。  次は、本論の、私は、憲法二十一条によるところのいわゆる言論、報道並びに放送、こういうものに対するところの表現の自由、この二十一条によるところの問題は、近代国家として、民主主義の国家としては欠くべからざる問題であります。こういういわゆる言論、報道の自由ということは、各国におきましても、人民と権力者とにおきますところの今日までの争いによって、ようやく今日のこういう言論、報道の表現の自由というものは出てきておるわけであります。われわれが振り返ってみますると、たとえば大東亜戦争のときに、日本放送協会の放送が高らかに軍艦マーチを放送し、そうして戦果かくかくと報道した。それを信用しておったところが、ふたをあけたところが、連合艦隊は一つもおらなかった。こういうふうなことによって、当時われわれは、言論、報道の自由を持たなかった。よって、政府が行なうところのいわゆる戦争政策その他に対しても、批判をするところの材料があまりなかった。こういう点からいきましても、少なくとも今日、この憲法二十一条にいうところの言論、報道あるいは表現の自由ということは、私は、あくまでも守り抜いていかなければならぬ至上命題であろうと考えるわけであります。こういう点について、ややもいたしますると、総理が、みずからの国はみずからで守る——守るということについては、これは国を守らぬ人はだれしもないわけであります。ただし、守り方については、いろいろの意見があるわけであります。だから、総理が言うように——どうも総理の言うことは、戦うこと、戦うことが守ることだ、どうも昔の新撰組みたいな言い方をするようなことがあって、政府の言っていることが国民に誤解を与える点も私はあろうかと思います。だが、とにかく、日本の国を守るということについても、その守り方については、私はいろいろの考え方があろうと思います。そういうふうな点については、各界、各層が、とにかく総理の発言に対しましても、それぞれの自由な批判を加え、また、それぞれの意見を表明をし、そうしてやはり国論が一つ方向に統一をされていくということが望ましいわけです。そういう点から、あくまでも憲法の二十一条によるところのこの報道の自由ということが、私は確保されなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでありますけれども、その真相はともかくとして、このごろややもいたしますると、たとえば政府が、いろいろの新聞、ラジオあるいはテレビ、そういうものに対して、陰に陽に圧力を加えるというふうなことがなきにしもあらず、というふうなことがよくいわれておるわけであります。私は、その一番いい例として、政府がやったという証拠はございません、証拠はございませんけれども、これはあなたの大先輩であり、あなたが非常に尊敬をしておるところの故吉田茂さんの国葬の当日であります。私も同じ選挙区であるし、あの人とは一緒に三回選挙をやっておりますので、よく承知をいたしております。個人的には、吉田さんそのものについては、私は尊敬をいたしております。しかしながら、吉田さんが考えておりましたところの政治的な感覚、行なった政治の方向、そういうものについてはまたおのずから考え方が別であります。個人を尊敬するということと、またその人のやった業績を批判するということとは、これはおのずから別であります。ところがあの国葬当日というものは、まるっきりこの吉田さん一色にテレビ、ラジオ、新聞が塗りつぶされてしまった。そうして歌舞音曲も、だれが禁止をしたか知らぬけれども、禁止をされてしまった。吉田さん個人をほめることについては、何ら私は差しつかえないと思う。しかしその業績ということになりますると、これは政治行動であります。いま問題になっておりまする沖繩の問題についても、サンフランシスコ平和条約にこれは由来するわけであります。そういう点ではおのずから意見の分かれるところであります。私はそういう点のいわゆる個人の問題とその人の行なった政治業績というものは、おのずから分けて考えなければならぬと思うわけであります。ところがそういう点も、みそもくそも一緒くたにいたしまして——吉田さんが偉いことには間違いありませんが、とにかく偉いんだ、やったこと全部正しいんだという方向に、あの報道機関というものが一色に塗りつぶされたということについては、私は非常におそろしいものを感じます。これは政府はおそらく命令しなかったと言うと思います。命令しなくしてそれだけ統一をされるとするならば、もしかりに政府が命令したならば、一体日本の言論報道機関というものはどういうことになるか。私は、そういう点からいたしましても、この言論、報道というものの自由については非常に関心を持っておるわけでありまするけれども、ひとつ総理のこういう点についての見解を明確にしておいていただきたい、こう思うわけであります。   〔「これは基本だ」と呼ぶ者あり〕
  86. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 憲法二十一条−ただいま基本だと言われる、これはもうそのとおりです。私がもうしばしば申しますように、憲法、その原則、この基本、これは守らなければならない。ただいまいろいろお話しになりましたが、私がたいへん戦う態勢だ、こういうことを言われますけれども、私別に、社会党のその本領をとったつもりはございません。皆さん方のほうこそ、もう何ごとによらず、戦い取らなければならない、戦う、戦い取るという、これはいつも戦うということばが出ます。私どもはあまりそれは出しておらぬのです。それは、その元祖は絶対に取り上げておりません。私が申し上げますように、国を愛し、国を守る、国に尽くすというこれもやはり私は憲法のねらっておるところだ、かように考えております。  ただいままた、吉田さんの国葬についての御批判がございましたが、これは政府は何もタッチしておりません。おそらくもし政府がタッチしたら、ああいうことでなしに、必ず反発を買ったと思っております。いまの言論機関は、政府の意思でとやかくできるようなものではございません。それはおそらく政府が命令したら統一ができるだろうというようなお考えだったら、それこそ言論機関を侮辱とは申しませんが、たいへんにその権威を無視することだろう、かように私は思っております。私は、実は森本君のただいまのお話、たいへん胸を打つものがございました。あれは期せずして吉田さん一色で塗りつぶされた。これはほんとうに期せずしてああいう状態になった。さすがに私は、森本君の先輩、高知の生んだ大なる偉人だ、かように考えております。
  87. 森本靖

    森本委員 総理は、いま言ったように、言論機関に対してはいろいろのいわゆる圧力その他は加えないということを言われますけれども、これはやはり総理あるいはまた自由民主党の役員の方々が、いわゆるラジオ放送、テレビ、こういうところの放送会社の社長なんかと茶飲み話をいたしまして、いろいろ懇談をし、その問にいろいろのことを要請するということも、やはりこれは一種の圧力である。なぜかならば、これは新聞とラジオ、テレビとの違いがあるわけであります。  総理に、それではひとつ聞いておきたいと思いますが、新聞、雑誌、演劇、映画、そういうものとラジオ、テレビとの相違はどういうところにありますか。
  88. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 紙に印刷するものと目で見るものと、その相違です。
  89. 森本靖

    森本委員 この点は、総理考え方を今後ひとつ明らかにしてもらいたいと思いますが、たとえば新聞とかあるいは演劇、映画あるいは演説、集会、こういうものは、それぞれその人の自由によってできるわけであります。それからその人の資力、財力があればできるわけであります。いついかなる場合でもできるわけであります。自由民主党の自由民主新聞も、社会党の社会新報も新聞であります。だから、これはそれぞれの社説その他について明らかに書くことはできるわけであります。しかしながらラジオとテレビというものについては、言論報道機関でありましても、おのずから違うわけであります。なぜ違うかといいますと、電波であります。電波というものは有限のものであります。そうして全国民の共有の財産であります。だから全国民の共有の財産でありますところの電波を使って行ないますところのラジオ、テレビについては、これは憲法二十一条にいうところの表現の自由がありましても、そこに一つの制約があるわけであります。その制約というのは、御承知のとおり、これは政治的に中立でなければならぬ、政治的に公平でなければならぬ、さらにラジオ、テレビというものは、新聞のように社説を持ってはならぬ、さらに、反対の意見があれば賛成の意見もこれを適当に報道して、公正中立でなければならぬ、これが一つのいわゆるテレビ、ラジオの違いであります。そういう点で、私はこのテレビ、ラジオというものについては、いわゆる政治的に中立である、これが一番大切ではなかろうかと思います。  ところがややもいたしますると、総理はこのテレビの威力ということを相当承知かどうか知りませんけれども、これから先はテレビの世界だ、テレビを何とかしないとどうもならぬというようなことを、言われたとか言われぬとかいうようなうわさがあるそうでありますけれども、そういうことかどうか知りませんが、このごろどうも、政府がこういうテレビに対するところの圧力といいますか、陰から操縦するといいますか、そういう点が非常に多いような感じがするわけであります。総理は、いま言いましたように、そういうものについては圧力を加えない、こういうように言いますけれども、これは政府が免許するところの問題であります。文句を聞かなかったら免許しないぞと言えば、これはやはりなかなか脅威であります。特に総理が、そんなことを言うのだったらもう免許しない、こういうように言うとするならば、これは受ける側にとりましては、きわめて重大な脅威であります。こういう点で、憲法二十一条にいうところの表現、報道の自由ということが束縛ぜられるということを私は非常におそれております。  たとえば、閣議において防衛庁長官が、どこそこの放送はけしからぬ——まあ言いそうなことです。そういうことを言ったとか言わぬとか、あとから官房長官が、その問題については何も閣議の正式の問題ではない、こういうことを言いますけれども、どうも防衛庁長官はそれを言いそうな気がいたしまするけれども、本来そういうことは閣議の席上においても言うべき筋合いのものでない、また閣僚たるものが、そういうことは絶対に言ってはならぬ、そういう点をどうも佐藤内閣の閣僚の中にはごっちゃくちゃにして、自由に言ってもかまわぬというふうなことを考えておるのじゃないか、そういう点について、総理、こういう点のマスコミに対するところの批判、特にこういう政府が免許権を持つところのテレビ、ラジオ等に対するところのいわゆる介入、こういうものは、私は厳に慎んでもらいたい、こういうように考えるわけでありまするが、総理の見解をひとつ聞いておきたいと思います。
  90. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 原則論については異存ございません。ことにただいま言われるように、電波は国民のものだという、これはたいへんな問題です。この趣旨で電波が国益に使われること、これはもう望ましいことである。私はその意味で、電波を使う人たちはよほど責任が重い、かように思います。これはまた、国民のためにならないようなこと、国民とともにこれが使われぬということなら、これは批判を受けること、もう目に見えることです。そういう点では、いろいろ批判もあるだろうと思います。私は、閣議でどういうことが問題になったということは一々申しません。しかし、防衛庁長官も名ざしされて、防衛庁長官が核のことを言いそうだと、かように言われれば、これは文句があると言われるだろうと思います。私は、やはりこれは説明もお聞きとりいただきたい。ぜひ、電波が国民のものであるということ、これをよくひとつ考えられて、これは一党一派のものではないということ、また一党一派のために使われてはならぬ、そういうことをはっきり申し上げておきます。
  91. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 森木さんにお答え申し上げます。かかる事実はございません。
  92. 森本靖

    森本委員 防衛庁長官、そういたしますと、この新聞記事が、これはうそになるということになりますが、たとえば増田防衛庁長官は昨年十月でありますが、十月一日の閣議で、最近のテレビ放送番組に触れ、TBSの佐藤首相の南ベトナム訪問に関する報道が好ましくなかったと発言、さらに、終戦記念日にNHKが放送した番組の一部にも言及し、こういうこともけしからぬ、こういうふうに言われた、こういうふうにいっておるわけであります。それから木村官房長官は、この発言を受けて、新聞記者から聞かれて、それは防衛庁長官その他の発言は個人的な見解を閣議で述べたものであって云々と、こう官房長官が言っておるわけでありますが、これは全然うそですか。
  93. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 官房長官のことは、官房長官に聞いていただきます。私のことはございません。
  94. 森本靖

    森本委員 私のことはございませんということでありますから、これは新聞記事がそれじゃ間違っておるということになると思いますが、本来なら、これは新聞記事が私は間違っておるとは思いません。思いませんけれども、いまあなたがそういうことを言うとするならば、これはまた、へたをしたら倉石発言の二の舞いになりますが、私はそれほど人が悪いわけではありませんので、一応この問題についてはまたゆっくり調査をいたしまして、内閣委員会あるいは逓信委員会等において追及をしたいというふうに考えますが、   〔北澤委員長代理退席、委員長着席〕 ただ、その場のがれその場のがれで答弁をしておっても、事実あったことはやはり問題になろうと思いまするので、その点、しかと念頭に置いておいてもらいたいというふうに考えるわけであります。  それから、総理は、いま言いましたように、そういうふうに報道関係については、これは極力憲法二十一条を尊重してやらなければならぬ。そういうものの統制その他については考えておらぬ、こういう話でございました。  そこで私が特に聞いておきたいと思いますることは、郵政大臣新聞紙上を通じまして——この人は大体放言する癖がありますので、いろいろのことを好きかってに言いまして、ときたま、またこれを修正するということもあるわけでありますが、いまわれわれが一番大きな問題にいたしておりますることは、いわゆるNHKの会長を政府の任命制にしたい。さらに、NHKの放送受信料についても政府の認可制にしたい。さらに、NHKの経営委員の報酬についても政府がこれを支払うようにしたい。さらに、民間放送のいわゆる事業免許制をとりたい。さらに、全国一本の番組審議会をつくり、そうしてこの番組審議会において、それぞれの番組をチェックしよう、こういうふうな意向があるやに聞いておるわけでありまするが、これは郵政大臣に聞きましたならば、またちぐはぐな答弁をいたしますので、総理、こういうふうな郵政大臣考え方は、いま総理が答弁をせられた点からいきますると、私は、だいぶ反するような方向であろうと思いますが、総理どうですか。
  95. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも郵政大臣がただいま何を考えておるか、私一々聞いておりません。これは郵政大臣からひとつ答えさせたいと思います。
  96. 小林武治

    ○小林国務大臣 お答えいたします。  いま森本委員がいろいろのことを言われましたが、私たちがこれらの問題について意見を持つということは当然でありまして、放言放言というふうな——黙っておってやるほうがいいか、やはり世間の声を聞くことのほうがよいか、こういう問題もありまするし、いまのような問題は、これはすべて郵政省の一応の試案だ、こういうことでありまして、政府意見でも何でもありません。これらの問題については、われわれ、与党とも十分相談の上で政府案をきめなければならぬ。ことに、NHKの会長を任命制にするなどということは、そういう考えもあるからして、これの是非を事務的に検討してもらいたい、こういうことを事務当局に指示したのにすぎないのでございまして、いろいろの問題が、意見があれば、これを検討するのは当然なことである、こういうふうに私は考えております。それが世論の支持がなければ、これはもう当然国会その他においても承認さるべきでない、かように考えておるのであります。
  97. 森本靖

    森本委員 そういたしますと、これは非常に重大な問題でありまするので、今日ラジオ、テレビは民間放送、さらにNHK放送、この二本立てによって行なわれておるわけでありますが、全国ネットワークという観点からいきまして、全国すみずみまでいくということを考えてみますると、NHKの影響力というものはきわめて重大であります。そのNHKというものは、今日放送法に基づいて、いわゆる政治的には絶対中立であります。これを管理監督するということは、国会だけしかできません。政府も今日できません。これは御承知のとおり、経営委員というものが生まれます。この経営委員も、国会の承認によって経営委員ができる。そうしてその経営委員によって会長、さらにその下部の者が任命をされて運営をされる。そしてその予算、決算というものは国会に提出をして、そうして国会の承認を受ける。その場合に、政府はこの予算案については修正することもできません。ただ単に意見をつけるだけであります。こういう点は、私は現在のいわゆる立法下におきましては、一番民主的なやり方であろうと思っておるわけであります。これが、政府がこの予算案に対してこれを修正し、あるいはこれを編成するということになれば、もはやこれは政府の機関であります。さらにNHKの会長の政府任命制ということになりますると、これはもう昔のNHKと全く同じ結果になるわけであります。こういう点を考えてみますると、いまのNHKのあり方というものについては、私はやはり政府から独立をし、国民のいわゆる公共放送として独立をした考え方に基づいて、そうして放送法に基づいて不偏不党、中立の段階においてやっていくのが一番至当であろう。しかし、こういうふうなものを政府が意のままに動かしたいという希望があるということは、当然であろうと思います。それは政府権力を伸ばし、国民に宣伝をし、野党を弾圧し、自民党のいいようにするというためには、それは、こういうものを使うのが一番手っとり早い。これはいま御承知のとおり、「旅路」あたりは三千万人の聴視者が見ておる。あるいは夜のドラマにしても、日本の大半が見ておる。あるいは「紅白歌合戦」あたりにおきましても、日本国民の半分が見ておる。これだけ影響力のあるものはありません。だからこそ、そういうものについては、きわめて慎重な扱いをしなければなりません。そういう点からいくとするならば、私は、こういうふうにNHKというせっかく公共放送というものが、しかもこれは外国にあまり例を見ない制度であります。いま世界じゅうでこれに似たような制度はカナダがあります。非常にこれは進歩いたしましたところの制度であります。この制度政府関係機関にするということについては、もはやそうなりますと、われわれはこういうテレビ、ラジオというものに信頼を置けません。何かニュース放送をしたら、ああまた政府の宣伝、軍艦が十沈んだといえば二十沈んだというふうに解釈をしなければならぬ、こういうことになってくるわけであります。そういう点からいくとするならば、このいわゆるNHKを政府の機関にするということは、絶対にこれは排撃をしなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでありますが、郵政大臣は、いまだにこのNHKの会長については政府任命にしたい、こういうふうに考えておりますか。そうなると、これはもうきわめて反動な郵政大臣で、郵政大臣の地位から去ってもらわなくてはならぬ、こういうことになろうと思いますが……。
  98. 小林武治

    ○小林国務大臣 NHKを政府機関にしようなどという意向は毛頭ありません。  また、いまの会長の問題も、そういう考え方があるから、それの是非を検討するように、そういうことを言うただけで、われわれのいわゆる郵政省の試案にはいま入っておりません。
  99. 森本靖

    森本委員 そういたしますと、NHK会長の政府任命ということについては、郵政大臣としては毛頭考えておらぬ、こう解釈をしてよろしゅうございますか。
  100. 小林武治

    ○小林国務大臣 検討をさせただけで、いま考えておりません。
  101. 森本靖

    森本委員 そういうところはなかなか率直でありまするが、NHK会長の政府任命ということは考えておらぬ、ところが、放送受信料の政府認可、あるいはまた民間放送の事業免許、全国一本の番組審議会というような点については、私は、こういうものを統制強化していこうという方向に法律を改正するということについては、やはり憲法二十一条から見ましても好ましくない、こういうふうに考えるわけであります。大体あなたは内閣総理大臣の一番お気に入りだそうでありますから、こういうようなことについては、大体総理相談をしながらやっていると思ったところが、あにはからんや、ときどき自分だけの意見でぽんぽんと発表して、あれはやめました、これはほんとうのところ、何が何だかさっぱりわからぬという場合があるわけでありますので、せっかくこういう予算委員会でありますので、私は、ここで一つ一つこの際明らかにしておきたいと思うわけであります。  いま言いましたように、会長の政府任命制については考えておらぬ、そういうことが出ましたので、次に、それではこういうふうに放送受信料の政府認可、経営委員のあり方についての変え方、民間放送の事業免許制、全国一本の番組審議会、こういう点について大臣はどうお考えですか。
  102. 小林武治

    ○小林国務大臣 先ほど申し上げたように、これは郵政省の試案であって、まだ与党との調整もできておらない段階でございます。したがって、これらはいずれもお話しのように立法事項でありますから、国会にお考えをいただかなければならぬ問題であります。ただ私どもは、いまのNHKの予算等を政府が修正しようとかどうしようとかいう考えはむろんありません。  ただ受信料だけは、その性質上、いまのように国会で予算が承認されたならば、その裏において受信料がきまるなどという間接的な方法は、いまの受信料が国民一般の大きな負担であるというような点からいって、必ずしも私はこれが適当であるかどうかという非常な疑問を持っておるのでありまして、受信料として取り出して、これを国会で検討してもらう必要があるのではないか、こういう考え方を持っておるのでありますが、これもいずれも皆さんがこれはならぬといえばならぬことでございます。そういう考えがいまある。受信料のいまの扱い方は必ずしも適当でないということを私は考えているのでありますし、また、いまの、たとえば全国の番組審議会は、各放送局がお持ちになっておるのでありますが、これはもうそれぞれの放送局が個々におやりになっておるだけでありまして、テレビとかラジオとかいうものは、おのずから全国的共通の問題がいろいろあろうと思うのでありますから、これらについて、自主的に各地方放送局の番組審議会が共同して、全体として共同の問題を検討する、あるいは一般的な向上をはかる、こういうふうな必要がありはせぬかと私は考えておりますが、これらについても広く皆さんの御意見を承らざるを得ない、こういうことでございます。
  103. 森本靖

    森本委員 この放送法の改正というものは、元来これは政府・与党の考え方によって、多数によって押し切るというふうなものじゃありません。できるならば野党の了解も得て、全党の了解を得て満場一致でこれは通過さすべき一つの性格を持っております。これは四十一年のときに政府が提案をいたしまして、与野党が約一カ月間折衝いたしまして、最終的に与野党の共同修正案というものが出てまいったわけであります。このままでいけば満場一致でこれがすらすらと通るところでありましたところが、当時自由民主党の内部において反乱軍が起きまして、これが通らぬということになった。だから、元来こういう放送法の改正というふうなマスコミにおける言論立法の唯一のものであるこういうものについては、少なくともできる限り与野党が調整し、そうしてできるならば満場一致で通る、満場一致で通らなくても、とにかくある程度野党も納得をする形においてこの放送法の改正というようなものは考えていくべきであるというふうに私は考えるわけであります。これは普通のいわゆる安保条約とかあるいは外交問題とかいうような問題とは事柄が違います。だから、そういう点からいくとするならば、少なくともこの放送法の改正というような問題については、大臣というものは、いま少し広範な意見を聞いて、そうして、これならばある程度国民も納得をし、さらに国会も納得をするという成案を得るまで努力をすべきである、こういうように私は考えるわけでありまするが、どうも郵政大臣に聞いておりますと、先が進みませんので、総理にひとつ……。こういうマスコミにおきますところの唯一の言論立法であるような放送法改正というふうな重要問題については、できる限り時間を置いて、そうして野党の意見も聞いて、あるいは言論界、報道界の意見も聞いて、そういうものを総合して判断をして、そうしてできる限り国民の合意が相当多数に達する形において改正すべきであるというふうに考えるのですが、これは常識問答でありますから、総理どうですか。
  104. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま森本君は放送法だけに限られるけれども、放送法だけではありません。これは安全保障条約であろうが、その他の条約案であろうが、これは全部——これはもう国会というところは、十分審議を尽くして、そうして国民的合意が成立すること、それに最大の努力を払う、これは当然のことです。これは、私の意見を徴されるまでもなく、そういうことでございます。(「放送法はどうなんだ」と呼ぶ者あり)放送法ももちろんそのうちの一つでございます。
  105. 森本靖

    森本委員 どうも放送法と何と一緒くたにされますけれども、私の言うのは、この法律の内容というのは、その他の法律の内容とはだいぶ違う、そういうことを言っているわけであります。だから、こういうものについては——たとえば外交防衛問題については、基本的な思想の違いによって争う場合があります。だから、基本的な思想の違いによって争う場合は、これは大いに論争を戦わして、最終的には多数決になるということはやむを得ないと思います。しかしこういうふうな言論立法というふうなものについては、少なくとも与野党が調整できる余地があると思います。たとえば一度は野党と与党が合意に達したことがあるわけであります、案でありますけれども。だから、そういう努力を政府・与党はできる限りすべきではないか、こういうことを言っているわけであります。与党の諸君の中にも、この法律については相当そういう意見があるわけであります。どうも大臣は独走し過ぎるという意見が与党の中にも相当あります。たとえば過日の自民党の通信部会では、私の聞くところによると、NHKに対する郵政大臣意見書については総スカンを食った。やり直してこい、だから、総スカンを食ってまだいまやり直しをしている、こういうような状況もあるわけであります。だから、郵政大臣というものは、いま少し度量を大きく持って、そうしてこういう言論立法というふうなものについては、できる限り超党派的に話し合いができるような場を持って推進をしてもらいたい、こういうことを言っているわけであります。
  106. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 基本的な問題をただいま申しましたが、特に言論立法については、話し合いができそうなただいまの御意向でもございますから、一そう努力いたしまして、国民的合意が成立するようにこの上とも努力をいたしましょう。
  107. 森本靖

    森本委員 次に進めたいと思いますが、いま郵政大臣はUHFのテレビを全国的にだんだん許可してまいったわけでありますけれども、私は今回のUHFのテレビについても、現在までの単数局についてこれを複数局にしていくということについては了解ができます。了解ができますけれども、どうも、いまのように話し合いがついたところから順次免許をしていくというふうなやり方については、いわゆる日本の放送体系というものをいかように持っていくかという基本的なこの政策というものがないのじゃないかというふうに考えるわけでありまするが、大臣として、今日のいわゆる日本のテレビの現状について、これを将来どう持っていこうとしておられるのか、その基本的な政策について聞いておきたいと思います。
  108. 小林武治

    ○小林国務大臣 森本委員は、もうこれらの問題については非常なベテランでございまして、私どもも常に適切な御意見を拝聴しておるのでありますが、UHF、こういうものは、長い間とにかく日本の放送の格差が強い。地方においてもいまのVはもう行き詰まっておるから、どうしてもUの開発をしたいということが国民的な要望でありまして、それに従って実験を重ね、また実用に適することになったということは御承知のとおりでありまして、現在やかましくいわれておることは、全国二十五局の民放の単数局をぜひ複数局にして、自分たちも複数の番組を見たいということは、どこの地域においてもこれは変わらない要望であるから、電波に余裕のある限りはこの要望をできるだけ満たしていこう、こういうことは御承知のとおりでございまして、現在、先般十局免許をいたしましたが、他の残る地域についてもできるだけ客観的情勢が許すならば、これを免許する方向に持っていくべきであるというふうに私どもは考えておるのであります。しかし、一方テレビのVの波の問題については、このことが一方において、いま問題になるFM等にも非常な影響があって、いまはU、V併用でいくが、将来はどうなるべきか、こういうふうなことについても、世界的にもいろいろな問題があり、日本としてもできるだけUの方向に行くべきであるというふうなことを考えておる、こういうことでございます。いまの地方の単数局については、できるだけ早い機会に、できるだけこれらの要望を満たすような方向に持っていきたい、こういうふうに考えておるのであります。
  109. 森本靖

    森本委員 だんだん時間が迫ってまいりましたので、肝心の大事なところになりまして非常にかけ足になりまするが、大臣は過般の新聞記者会見で、Uのキーステーション局をもう一つぐらいふやしたいという談話を発表したそうでありますが、それは事実でありますか。
  110. 小林武治

    ○小林国務大臣 お答えいたします。  私は、東京あるいはその他における一般局としてのテレビ局は、すでに、あるいは人によっては少し多過ぎる、こういう議論もありますので、一般局としてのU局、キー局を免許するということは、政府考えるべきではない、こういうふうに思っておりまするが、ただ、いまのところ、御承知のようにUを普及するためにはオールチャンネル、こういうものがふえなければならぬ。しかし、それを逆に言えば、東京、大阪においてUの電波が一つもないということはオールチャンネルの普及上非常に大きな欠陥がある。したがって、いまのような一般局でなくて何か考えられないか、Uの電波を出すことも考えられないか、こういうふうな一応の意見を私は言うたのでございます。
  111. 森本靖

    森本委員 いま大臣は、一般、いわゆる総合局というものをこれ以上ふやすことは私は考えておらぬと言われましたが、私も全くこれは同感でありまして、いまの東京、大阪、こういう方面に娯楽番組を中心とするところの一般放送局をこれ以上設けるということは国益に反する、それから日本の経済状態からいってもむだであるというふうに考えるわけであります。しかし、将来の教育放送その他について考えていく場合については、いろいろこれは考えなければならぬ問題があろうと思います。しかしながら、その場合においては、UHFあるいはVHF、また現在の既設放送局というものを総合的に勘案をして考えていかなければならぬ、こういうふうに考えるわけであります。  さらにいまFM放送について、東京、大阪に大臣は音楽専門放送局を置きたい、こういうふうな新聞談話を発表いたしておりまするが、これはどうですか。
  112. 小林武治

    ○小林国務大臣 これは簡単に申し上げますが、私よりも森本委員のほうがよく御存じで、FM電波というものをすでに昭和三十三年から実験にこれを使っておる。十年も実験をしておって、この必要な技術的な問題はほとんど解決をしておる、こういうことであるから、私は、もう実験などと言わないで、国民の電波であるFMを実用局としてできるだけ早く開放すべき時期に達しておる、こういうふうに思っておるのでありまして、NHKが現在百数十局のFM局を持っておるが、これも実験局と称しておる。これも私は実用局として木免許をできるだけ早くしたい。したがって、これらの実験等はもう大方目的を達したから、この際実験はこれで打ち切って、そして実用局として免許をしたい、こういう考え方を持っておる。それは政府の責任でもあろう。早くに国民の待望するFMを開放するということは政府の責任でもあろう、私はかように考えております。
  113. 森本靖

    森本委員 このFM放送を開始するということについては、私は少なくとも現在の中波放送と関連をして、中波放送はいかにあるべきか、さらにその過程としてFM放送はいかにあるべきか、同時に短波放送はいかにあるべきか。そういたしますと同時に、その中におきまするラジオの電波を使って教育放送をいかにしていくべきであるか、そういう総合的な電波政策の上に立って、個々のFMならFMというものを免許していくという方針が望ましいわけであります。ところが、いまの大臣がやっておりますることは、UHFはUHF、FMはFM、とにかく大臣の在任中に免許をおろせるところはぽつぽつとおろそう、こういうふうなやり方になっておるわけでありまして、私は電波政策の百年の大計から見ましても、いまのやり方については残念なところがございます。  時間がありませんので、この点はいずれまた別の機会に論争いたしますけれども、はしなくもいま大臣の答弁で出てまいりましたところの東京にFM放送を許可したい、ところが現在十年以上も実験局をやっておるところがあるので、それについてはそれを切りかえたい、こういう意向がいま出てまいったわけでありますが、それは具体的にどういうことでございますか。
  114. 小林武治

    ○小林国務大臣 これは御存じのように、FMの電波が東京にたくさんあれば、これはまた処置のしようもあるが、いまの段階においてはきわめて限定された数しかない。したがって、限定された数をいかに国民のために有効に活用するか、こういうことが問題になってくるのでございまして、私どもが音楽などというていることは、御存じのように、FMの電波というものは音楽に非常に適しておる。したがって、将来においても私は音楽の専門局が当然あり、いまから設けても、将来のじゃまにはならない、かような考え方を持っておるのでございまして、いま外に出ているものは、あるいはこれを免許する、あれを免許する、こういう問題になりますが、私は、森本委員のお考えのように、これらはすべて総合的に勘案して、そうして一つ一つがただそれが具体化する、こういうことでございまして、われわれはお話しのように、すべて総合的にいろいろの準備検討をしておる、こういうことをはっきり申し上げておきたいと思います。
  115. 井出一太郎

    ○井出委員長 森本君、ちょうど持ち時間がいま尽きるところでございます。
  116. 森本靖

    森本委員 総合的に検討しておるというふうに言われますけれども、総合的に検討し、そうしてチャンネルプランをつくり、その上において免許するのが免許のあり方でありますが、ややもいたしますと、いまの免許のやり方は、それぞれの免許申請者に対して、ぽこぽこ気に入ったところから免許をしていくというふうなかっこうが目につくわけでありまして、これは非常にわれわれとしては望ましくないというふうに思うわけであります。  委員長、若干、五分くらい超過いたします。  そこで、いまのFM放送の問題でありますけれども、現在FM東海が実用化実験局として教育放送を今日まで十年間やってきておるわけでありますが、これを取り上げて、免許をなくして、そうして新しく音楽放送を許可するというふうな大臣の言い分でありますけれども、本来こういうFM放送については、そういうふうな教育放送にこそ最重点的に使うべきである、私はこういうふうに考えておるわけでありますが、大臣はそれを免許を取り消して、新しいいわゆる音楽放送という商業放送局を許可しよう、こういうことでありますが、こういう点については、私は文部行政という観点からいきまして、文部大臣としては、こういうFM東海というような教育放送を主にしてやるようなFM放送局があったほうが私はいいと思いますが、文部大臣としては、これについてどういう見解を持っておるか、聞いておきたいと思います。
  117. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は、この技術的、専門的なことは全く暗いわけでございますが、テレビの放送が、一般社会教育の上にとりましても、また学校関係の教育にとりましても、きわめて意義のある、効果のあるもの、さように存じておる次第であります。今後、そういう方向において電波がぜひ確保せられたいものと念願をいたしております。したがいまして、文部省としましては、社会教育審議会におきまして、これらの問題に関連していろいろ御検討を願っておるところであります。その答申を得ました上で、郵政省はじめ関係の皆さん方とよく御相談をいたしまして、われわれの願うところが達成せられるようにいたしたいものと、こういうふうに考えております。
  118. 森本靖

    森本委員 文部大臣としては、こういう教育放送というものは当然残されていくということを、私は希望すると思いまするが、ひとつ、時間が迫ってまいりましたので、委員長に私は協力をいたしまして、質問を終了したいと思いますけれども、本来ならば、このFM東海の問題については、私はまだまだやらなければならぬ点が多いわけであります。しかしここで——大臣、これは聞いておらなければだめだ。  最後に、大臣に言っておきたいと思いますが、たとえこれが実用化試験局でありましても、今日まで十年間というものは一応郵政大臣が許可をしてやってきておるわけであります。そういたしまして、これが相当、数億円というものを投下をしていままでやってきておる。ところが、松前君のやっておるFM東海は気に食わぬからあれはまあやめた、こういうふうなやり方は、電波行政についてはあり得べき問題じゃない。それから、もしこの問題が許されるとするならば、確かに実用化試験局というものは一年の免許期間であります。一般の放送局については三年間の免許期間であります。しかしそういう問題については、一応再免許をしないということは、著しく電波法に違反をするとか、放送法に違反をするとか、放送の内容最初の免許のときと著しく違うとか、そういう場合には伝家の宝刀を抜くということもあり得るとは思います。しかし、そういうことはいままでやったことは一度もございません。だから、こういう点が、FM東海がかりにそういうことで大臣意見が通ったとするならば、先ほど総理大臣は、いわゆる放送局というものについては大いに言論、報道の自由を尊重すると言いましたけれども、免許は三年間、そういうことであるとするならば、四チャンネルにしても、六チャンネルにしても、八チャンネルにしても、十二チャンネルにしても、三年たった場合に、理由は明示をせずして、おまえのところは気に食わぬから免許をしないということはやり得るということになります。確かに律律的にはそういうことはあり得ても、現実にはそういうことをいままでやったことはないわけであります。だから、そういうことをやるということは、いかに答弁をいたしましても、直接間接を問わず、報道機関に対しましての権力を使っての介入ということにこれはなりかねないわけであります。そういう点で、郵政大臣としては、実用化試験局であるから一般放送局とは違うという意見も出てこようかと思いますけれども、しかし、このFM東海の問題については慎重に慎重を重ねてやっていかなければ、他の一般放送局にも重大な影響を及ぼすということになるわけであります。だから、そういう点では日本の放送界にとってもこれはきわめて重要な問題でありますから、私はこの問題については慎重にひとつ取り計らってもらいたいというふうに考えておるわけでありますが、大臣、最後にこの問題については各界各層の意見を聞いて、慎重に納得のいく方向において検討するという答弁を願えれば、これで一応終わります。
  119. 小林武治

    ○小林国務大臣 いろいろここで申し上げたいこともありますが、これらはもう時間もありませんから私もやめます。しかし、お話しのように、やはりこれは慎重に扱うのが当然なことでありますから、御意見に沿うように慎重に扱います。
  120. 井出一太郎

    ○井出委員長 これにて森本君の質疑は終了いたしました。  午後は一時から再開し、正木良明君の総括質疑を行ないます。  この際、暫時休憩いたします。    午後零時十五分休憩      ————◇—————    午後一時十五分開議
  121. 井出一太郎

    ○井出委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  総括質疑を続行いたします。正木良明君。
  122. 正木良明

    ○正木委員 私は、公明党を代表いたしまして、総理以下関係閣僚の皆さん方に御質問を申し上げたいと思います。  まず、第一に、財政問題についてお伺いをいたしたいわけであります。すでに世間でもやかましくいわれておりますが、財政硬直化、大蔵省がちょうど去年の八月の末から九月の初めにかけまして、財政硬直化ということを盛んに鳴りもの入りで言い出した。この財政硬直化のよってきたるところのゆえんは、所得倍増時代の膨大な自然増収を当てにして安易な予算編成を行なったというところに根源があると思うのでありますが、それはまた後ほどお聞きするといたしまして、日本経済の将来を考えると、新規政策が入り込む余地のないこの財政硬直化は、何とか早々に解決しなければならぬ。総理もそのような御決意を御表明になっておったようでありますが、大蔵省は、この四十三年度の予算につきまして、その財政硬直化の解決の第一歩、このようにしようとおっしゃっておったようでありますが、現実に四十三年度の予算において、この財政硬直化打開のためにどのような処置をお取りになったのか、お聞かせ願いたいと思うわけであります。
  123. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まず、財政硬直化の一つの原因をなしております法律、制度、慣行というようなものに基づいたものは、これは短期間の間に解決できませんので、これらの問題は全部ただいま財政制度調査会に移して、三部を設けまして、この問題と徹底的に取り組む、そうして将来の解決案を得たいということでまず取り組んでおりまして、本年度は、間に合う範囲内において、まずその一歩を踏み出そうということで、いろいろなことをいたしましたが、まず、何といっても、将来のために、また当面の必要からも、財政規模を伸ばす、膨張させるということを防がなければなりませんので、財政規模の圧縮には今度の予算編成で非常に苦心いたしました。それと、やはり将来の財政硬直化の大きい原因をなすと思われるものは、また現になしてまいりましたが、やはり国債の発行でございますので、国債の依存度を思い切って下げる。税制そのほかで非常に無理が伴いましたが、何としてもこの問題は着手しなければならぬと考えまして、公債の依存度を下げるということをやりました。  それから、御承知のように、成長期において自然増収が中途で確保されるということがございましたので、大きい補正要因をそれにたよって残したまま当初予算を組んでいくということが、これはまた大きい問題でございますので、この際、そういう予想される補正要因というものは全部当初予算において並べて、この均衡をはかって、公平な適正な予算の配分をするということを、いまにしてやらなかったらこれはたいへんだと思いまして、こういう点で、編成方式においてそういう、いわゆる総合予算主義をとったということが一つでございますし、そのほか、やはり硬直要因としては、いわゆる行政機構の問題がございますが、これもきょう午前中に申し上げましたように、まず一省一局を削減するということから関連させて、六月三十日までに具体的な案を政府はこしらえるということにしまして、ほんとうはそれによった予算の編成が間に合いませんでしたので、もっぱらいま既定経費の節約、それからほうっておいたら相当の増員になることをとめて、定員を押えただけじゃなくて、六百何十人という実際の絶対数を減らすということによって経費の膨張を避けるということだけ、本年度においてはまずこれをやるというようなことで、そのほか予算の編成のしかたにおきましても、大蔵省の査定というだけじゃなくて、各省に、一定の予算の範囲内において、新規政策と、もう古くなった削減してもいい既定経費との置きかえというようなことについて、自主的な編成を各省別にやっていただくというような新しいやり方も今度は加えるというようなことで、予算の硬直化対策の第一歩を踏み出したということでございます。
  124. 正木良明

    ○正木委員 いまのお答えは、予算規模の圧縮とか国債の発行の依存度を低めた、また、これは非常に特色があると私も思いますのは、三番目の総合予算主義をとったということだと思うのであります。そのほか行政機構の改革、定員の減等、いろいろおっしゃいましたけれども、これを一つ一つお尋ねしたいと思うのであります。  まず、非常に特色があると私が考えますのは、この総合予算制だと思うのでありますが、さてこの総合予算制をとる、いわゆる補正予算要因をすでに当初予算において見込んでおる、これは一つの見識だとは思いますが、しかし、はたしてそのような当初のお考えが最後まで貫かれるかどうかということは、はなはだ疑問な点もたくさんあるわけであります。その一つは、昨日も御答弁があったようでありますが、いま物価の上昇期にあたって大衆の生活を一番苦しめておる物価の高騰の主軸をなすものに米価の問題がございます。これは、生産者米価並びに消費者米価のスライドということしか考えられない、きのうの御答弁でもそのように私は受け取るわけでありますが、片方では、政府は経済見通しとして、消費者物価の高騰ということを明らかにうたっておられる。したがいまして、米の再生産に必要なところの経費、また農民の生活を確保するところのそのような条件が満たされるべきでありとする法律的な根拠によるところの生産費、これは当然上がるものであるというふうに考えられるわけです。したがいまして、生産費が上がれば、この上がった分をもし補正予算で手当てしないという限り、これは当然消費者米価に直接はね返ってくる。これはもう当然だれが考えても考えられることでありますが、こういう点について、そういうスライド制をとるのか、いわゆる生産者米価の値上がり分は直ちに消費者米価にはね返ってくるという考え方でお進みになるのか、こういう点、きのうもほぼ明らかにされたようでありますので、なお明らかに確認したい、こういう意味でお尋ねを申し上げたいと思います。
  125. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 との生産者米価と消費者米価の二つの米価の正常化をどういうふうにはかっていくかというようなことについての政府結論は、まだいまのところ出ておりません。しかし、御承知のように米価は、生産者米価のきめ方と消費者米価のきめ方は別々の基準によってきめられるものですから、これは事実上は二重米価ということになろうと思いますが、そうかといって、もしこの米価がいまよりももっと離れていくというようなことで、逆ざやがもっと大きく出てくるというような形でいったら、この食管制度というものは財政的に崩壊せざるを得ない、こういう危機に直面しておるのでございますから、ここで食管制度というものを維持するという考えを持つ以上は、その中でやはり両米価の正常化というものを考えて、食管制度を維持できるような方式というものをここで考えていかなければいけないというふうに考えます。そういう意味におきまして、私どもは昨年、食管制度については赤字の大きい繰り入れをいたしましたが、とりあえず昨年程度の繰り入れを当初予算においてもう準備をしておく、そうして今後これが——主管官庁がそれぞれの機関と御相談もいたすでございましょうが、その過程において、これを生産者米価を上げない、したがって消費者米価も上げないというようなことで財政的な措置をとっていくのか、そうじゃなくて、やはり生産者米価は上げなければならぬということにいけば、それに対応して消費者米価をどういうふうに扱うかというようなことは、スライドと申しましても何も機械的にそのまま上がるわけじゃございませんで、食管制度の損益は、この米価の決定以外に、また外国食糧を輸入するとかいろいろな要素によって相当操作される問題でございますので、その辺の調整をどうとるかということは今後の政府やり方でございまして、そこまでは私どもはいままだきめていないということでございます。
  126. 正木良明

    ○正木委員 確かに考え方としてはそういうふうな幾つかの考え方ができると思うのです。それは米審の問題もありましょう。しかし、いまお話しの中にあったように、生産者米価が上がらない場合も考えられるというような御答弁は、どうしても納得できない。もし生産者米価が上がらないというような考え方で、そういうふうな結論が出るかもしれないなんということを大蔵大臣がまともにお考えになっているというならば、これはもう完全に食管法違反を犯さなければならぬのじゃないかというように私は考えるわけです。そういう意味で、生産者米価が上がらないというような考え方をしていると、やはり生産者米価は上がる。しかし、その生産者米価が上がった分だけが直ちに消費者米価のほうにスライドしてくるということは考えられないかもしれない。しかし、消費者米価に生産者米価の値上がり分がそのまま直接はね返らないとしても、値上がりすることは事実だ。この消費者米価に当然転嫁されなければならない結果になるということは、お認めになりますかどうですか。
  127. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は財政当局でございまして、この米価の問題の主管官庁は農林省でございますので、こういうふうにするという意見を私は述べるわけにはまいりません。したがって、たとえば上がらない場合はとか上がる場合はということを言っているのでございまして、私がそう言ったからといって、上げないということを前提としているというようなことではございません。やはり主管官庁との相談の上におきまして、そういう生産者米価を上げた場合に消費者米価をどういうふうにするかというときには、やはり当初に予定してある二千四百十五億をこすこの繰り入れ分との操作においてどういうふうに値段をきめるかということが合理的にきめられるのだろうというふうに思っております。
  128. 正木良明

    ○正木委員 そこで、輸入食糧によるところの黒字がある。これは確かに黒字はあるでしょう。しかしこれはもう知れたものです。そういうこともこの中へ入れて考えてというふうなお話がございましたが、当然私は生産者米価が上がるものという前提のもとに話を進めていきたいと思います。そうなると、どうしてもやはり二千四百億以外に補正要因が必ずあるというふうに私考えるわけです。その補正要因をどのような形で財源的に埋めていこうとするのか。これは仮定の話だから答えられぬというふうに逃げられてしまうと困るのでありますが、逃げないで、議論の上として、もしかりにそれで補正要因がふえた、赤字が出る、それを何らかの手当てをしなければならないというふうに考えた場合、どういうような方法をお考えになっておりますか。
  129. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 買い上げ数量の問題もまだ四十三年度は未定でございますし、一応そういうことを考えておりましても、実際はどうなるかも、これはまだはっきりわかっておることではございませんし、そういう問題を全部勘案して、何とか補正がなくて済むような方式の確立を私どもは期待しておるということでございます。
  130. 正木良明

    ○正木委員 何らかの方法で米価については補正なしでやっていこう、こういうふうに確実にあなたはお考えになっていらっしゃいますね。これは当然五年も十年も先に結果が出るのじゃなくて、ことしじゅうに、いまはごまかせたって、何カ月かのちにはこれはごまかせない。その点はどうですか。補正しないでそのことはやっていけるということを、ここであなたは確信を持っておっしゃることはできますか。
  131. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私どもはそれをいま期待しておるところでございます。
  132. 正木良明

    ○正木委員 いいでしょう、もうこれで。これ以上問答しても押し問答にすぎぬと思いますからね。しかし、そのほかに公務員のベースアップの問題があるんですね。五百億、予備費の中に当然ベースアップ分として組み込んであるから、これで何とかまかないたいというふうなお話が出ております。しかし、きのうもそのことで質問があったようでありますけれども、これははたして、この五百億というものが、人事院に対して、五百億以内のベースアップの勧告しかできないというようなワクをはめてしまわないかということ。それともう一つはガイドポスト政策、いわゆる民間企業に対する所得政策につながってくるのではないかというような懸念も非常に強いのでありますけれども、との点、大蔵大臣どうでしょうか。
  133. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 所得政策とは関係ございません。もし所得政策を考えるんだということでしたら、当初予算に盛らないで、いわゆる総合予算主義をとらないで、従来どおりやっておくということにしましたら、おそらく四十二年度は中途で人事院勧告に対処し得るだけの余裕というもの、自然増というものの期待はできないで、もっとひどいことになるんじゃないかというふうに考えるんですが、所得政策を考えていないがために、そういう事態が起こってはたいへんだから、私どもは当初予算においてぎりぎりに財源を見て、そうして一応予備費を相当充実させておいて、勧告にも対処し得る道をつくったということでございます。
  134. 正木良明

    ○正木委員 五百億の財源として予備費の中に組んでおる。そこで、ほんとに所得政策をやるつもりならそれを組まない、五百億を組んであるだけでもましだ、こういうお考え方のように私は受け取るんですよ。そういうことになりますと、確かにこの五百億のワクというものは、これは非常に強力な影響を与えるということは事実なんです、これはだれが考えたって。したがって、これによって人事院の勧告というものが、この五百億という一つのワクに制約を受けるかどうか。私は受けるのではないかというふうに考えます。もし受けないとしても、政府はもうしょっちゅう人事院の勧告を値切っている。いわゆる実施期間をずらして値切っている。したがって、人事院がこの五百億を上回るようなベースアップの勧告をしたとしても、五百億の範囲内におさまるような形であなた方はこれを値切るということだって考えられる。いいですか。これは当然だれが考えたって、常識的に考えたってそうなんです。いままでの実績がそれを示している。したがってこの五百億というものは、それはないよりもましだということは確かです。確かではありますが、補正を全然しないという立場から言うならば、この五百億というものは動かすべからざるものだ。そうすると、五百億の範囲内における人事院勧告しかできないというような一つのワクを与えるか、もしくはそのワクをこえて人事院が独自の勧告をしたとしても、それを上回った分はあなた方は実施をおくらせるということで値切るということだって考えられる。この点どうです。
  135. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 千二百億円という予備費は、あらかじめ予測できない補正要因に備えたものでございますので、別にこの千二百億円は災害に幾ら、給与費に幾ら、そのほかの事務経費の精算に幾らというようなことをいまのうち区分してあるわけではございません。千二百億全体の予備費をもって、そうして不測の、予測しない予算不足に充てる準備ということでございまして、私は千二百億円という予備費をもっていくのでしたら、人事院から、これからどういう勧告があるかわかりませんが、私どもの努力によってこれは補正をしなくても何とか対処できるのではないかというふうに私は考えておるところでございます。
  136. 正木良明

    ○正木委員 これはそういうふうにお逃げになるということは大体予想はしておったわけです。しかし七百億の予備費なんというのは通常組んでおるわけです。こういうふうに総理に申し上げると非常に失礼でありますけれども、最近事が多過ぎる。これは極端なことをいえば、もう佐藤総理の福運がお尽きになりかけてきたのではないかと私は想像するわけでありますが、それは地震があり豪雪があり台風があり、災害というものはおそらくこの四十三年度にもさかまくであろうというふうに私は予想している。まあ願うことではありません。ないほうがけっこうです。ないほうがけっこうでありますが、あるということは私は大体予想できると思う。そうすると、七百億の予備費なんというものは通常そのほうにいってしまうものであるというように考えていいです。そのためにわざわざあなた方は、その通常の、いわゆる例年組み込んでおるところの予備費の上に五百億を積み重ねて、この五百億はいわゆる公務員のベースアップ用として準備された。この五百億を対象にして話をするのに何のふしぎもない。そこで、いまあなたから答弁をちょうだいいたしましたが、その答弁をまじめに私は受け取って、それでは本年の人事院勧告のベースアップ分については、五百億をオーバーした場合にもほかの予備費を流用して、いわゆる七百億の分に食い込んで、値切らないという約束ができますか。
  137. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは予備費は全体のための予備費でございますので、人事院の勧告がどういう勧告があるかわかりませんが、勧告を得てからこういうものの対処のしかたは考えるということになろうと思います。
  138. 正木良明

    ○正木委員 私たちは予算を審議して、そしてそれを議決して、あなた方にその執行を委任するのです。何でもかんでもまかしてくれ、そのときそのときでじょうずに絵をかいていきますなんというまかせ方ができないから予算の審議をしている。したがいまして、あなたは、人事院の勧告が五百億以内であるかもしれない、それはそういうことも考えられるでしょう。私はそれをオーバーした場合にはどうするか、それじゃこの千二百億を、全部を一つのワクとして、その中で人事院の勧告分を、ベースアップ分をあなた方は値切らずにちゃんとお出しになりますかということを聞いているのですから、それにまじめに答えてもらわなければいかぬ。
  139. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 だからいま申しましたように、たとえば五百億と予定しているわけではございませんが、この人事院の勧告があった、その場合に、今年度の災害がわりあいに少なかったとかいうような問題も起こるでしょうし、他の補正要因とのからみ方によって、私どもはその勧告に対処するというふうに考えておるわけでございまして、少ない場合もありましょうし、多い場合もありましょうし、いま予定はできませんが、要するに他の補正要因との関係でもこれは考えなければなりませんものですから、私は千二百億円の準備によって、われわれの努力によって十分これは対処できるのではないかというふうに考えています。
  140. 正木良明

    ○正木委員 私の議論とかみ合っていただきたいのですね。要するに私は補正予算をするだろう、補正をするだろうなんといってあなたを責め立てているわけではないのだ。いま千二百億というワクの中での話なんです。したがって五百億用意されておる人事院のベースアップ分以上に上回った場合に、それをあなたは、その千二百億という一つのワクの中からちゃんといわゆる手当てをいたしますか、値切りませんかということを申し上げているのです。大蔵省の立場で……。
  141. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは、私どもが人事院に勧告をいまからどうこうと縛るわけにはまいりませんので、この勧告を見てから対処する以外にはしかたがないと思います。
  142. 正木良明

    ○正木委員 縛るとか縛らないとかの話じゃないですよ。いいですか、だから、私も五百億以下の場合だってあり得るということを言っている。五百億以下ということは、ほんとうはあり得るはずはないと思います、民間給与ベースの差が五%以上でないと勧告しないんだから。この原則どおりいくと五百億をこすでしょう。もしこした場合どうするかという——このことで私は時間をとるつもりはなかったんです。やれなくなってしまう。だからちゃんと答えてくださいよ。人事院の勧告を尊重する、あたりまえです。尊重した上で、その人事院の勧告が五百億の財源を上回った場合、その手当てを大蔵省でちゃんと千二百億の一つのワクの中からされますかという質問に対して答えてもらわなければいかぬ。
  143. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 かみ合わない原因は、あなたが五百億円ときめているからかみ合わないのでございまして、私どもはあらゆる起こり得る補正要因に対して、不測の要因に対して千二百億円をいま準備しておるのでございますから、それによって最大限の努力をするということでございます。
  144. 正木良明

    ○正木委員 五百億にはこだわらない、千二百億という予備費のワクの中で十分に人事院の勧告どおりの財源的な手当てをいたしますというふうに私は受け取って次へ進みます。話がかみ合わぬ。いいですね。
  145. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いや、さっき申しましたように、これだけならよろしゅうございますが、他の要因とのからみ合いでどうなるか、これは調整の上きめるよりほかございません。
  146. 正木良明

    ○正木委員 だからぼくの議論が起こってくるんだ。それを言ってもらっては困るんだ。ぼくの言うとおり、そうですと言ってくれれば話が進む。だってそうでしょう、七百億の予備費なんというのは例年組んでいるのですから。その七百億の予備費の中には人事院のいわゆるベースアップの財源なんというものはほんとうは考えてないでしょう。それはいままではちゃんと補正でやってきたわけでしょう。それを補正でやらないから五百億を上のせして千二百億にしたのだとあなた方は発表しているんじゃないですか。そうなれば、われわれはどうしてもこの五百億というものは人事院のベースアップ分だと考えざるを得ないじゃないですか。もしこれを上回った場合には、あなたのおっしゃったように千二百億という大きなワクの中で操作する、それでははみ出したものもちゃんとおやりになりますね、いわゆる人事院の勧告どおりちゃんとあなた方はおやりになりますね、ということをいまだめを押しているんだから、それをちゃんと答えてください。
  147. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 別に問題はないと思います。私どもは五百億円ときめているわけじゃございませんので、他の補正要因とのからみ合いでこの人事院の勧告は十分尊重して実現するようにつとめるということでございます。
  148. 正木良明

    ○正木委員 したがいまして私は、先ほど申し上げましたように千二百億のワクの中で操作をしていく、そして人事院勧告のとおりベースアップの財源の手当てをいたしますと受け取って次に進みましょう。  そこで宮澤長官にお尋ねしたいのでありますが、消費者物価の問題でございますが、例の四・八%。三・四%げたをはいておる、したがいましてあとは一・四%だ、こういうお話がこの前もございました。したがいまして酒、たばこ、国鉄の定期の値上げ等を含めますと〇・四%、あと一%くらいしか残らない。この一%で他の誘発されるところの物価上昇を吸収していけるかどうかということに私たちは非常に疑問を持っているわけです。四・八%の見通しというものについて非常に不確定なものがある、もっと上がるのではないかというふうに私は思うのでありますが、その点ひとつ長官から御答弁をお願いしたいと思います。
  149. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今年度の四・五%の御説明を昨年申し上げましたときにも、実は同じような御質問を受けました。ともかく今年度は、ただいまの時点でやれそうに思っております。来年度は今年度に比べますと、ただいま仰せられましたいわゆるげたの部分が高うございますから、許容される幅は確かに昨年よりは苦しいのは事実でございます。しかし消費者物価というのは毎月棒上げをするというふうに考える必要もないわけでございまして、今年度の初めのように、かなり下がったという場合もございます。したがって、そういう公共料金、きまりましたものを除きまして、一%程度の余裕があるということであれば、努力をいたしますと不可能ではない。相当つらいことは確かでございますけれども、努力目標として私どもやっていけるだろう、いきたい、こう考えております。
  150. 正木良明

    ○正木委員 去年消費者米価を一四・四%値上げをした。これはほんとうは一四・四%でなくて、品等が落ちておりますから二〇%以上になるのですが、こういうことになるとまた議論がかみ合いませんから、御発表のとおり一四・四%で話を進めてまいります。この一四・四%消費者米価が引き上げられて、これによって他の食料品関係の値上げが誘発された。また食料品関係以外の値上げも誘発されまして、これが一%を上回った、こういう実績がございます。したがいまして、米及び米に関連するところの食料品関係だけでも一%の消費者物価の値上がりがあったということでありますが、それだけでも私は、去年の実績に照らして一%はもうなくなってしまう、いわゆるそれ以外の物価騰貴はそれ以上の消費者物価指数の上昇になるというふうに考えておるのでありますが、長官の御見解を承りたいと思います。
  151. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 したがいまして私どもは、四十三年度消費者米価がどのように形成されるかということに非常に深い関心を持つわけであります。
  152. 正木良明

    ○正木委員 あなたは深い関心を持っただけで済みますけれども、実際に毎日毎日生活をしておる庶民というのは、深い関心だけでは済まない。したがって、物価の値上がりを押えるということに積極的な姿勢を示してもらわなければならないわけです。どうなるだろうと深い関心を持って見守っておるだけでは物価は下がらない。おそらく企画庁長官は、そういうふうな無責任なことでそうおっしゃったのではないと思いますが、しかしここでやはりその発言に対して、あなたはこのような形で物価を極力押えて、せいぜい四・八%の努力目標にしたい、それ以上上回らないようにしたいと思っていらっしゃるならば、そのあなたの対策なりお考えを承りたいと思う。
  153. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 やはり何といっても御指摘の中心になりますのは、四十二年度の場合を考えましても消費者米価の問題でございますから、これが適正に形成をされるということが問題の大部分、と申せば過言でありますけれども、であろう。私ども、その他のことは四十二年度も一生懸命やってまいったつもりでありますが、四十三年度も同様にしてまいりたい。また予算関係でも相当な施策ができるようになっておりますので、それを進めてまいりたいと思います。やりは中心は米価でございます。
  154. 正木良明

    ○正木委員 もう一度財政硬直化の問題に移りますが、先ほど財政硬直化の問題について大蔵大臣から種々お答えをいただきました。確かにおっしゃるとおりこれは短期間で解決できるものではないと私は考えております。その点については同感であります。しかし、財政硬直化を打開しようとするならば、それはそれなりの決意が必要だし、計画が必要であると私は思うわけであります。片方では財政硬直化をやかましく言いながら、片方では圧力団体の予算ぶんどりに負けてしまうようなことであるならば、これはたいへんなことであろうと私は思うわけなんです。したがいまして、このまま推移すると——四十三年度ではこのような計画があるというのを幾つかおあげになりましたが、それは、私は、あまり効果的なものではないし、成就はいたしておりません。したがいまして、次の回に移され、すなわち、昭和四十四年度の予算に移されていくのであろうと思うのでありますが、このためには、大蔵大臣にまかせておくだけではなくして、総理がこの財政硬直化に対する異常とまでの決意が必要であると私は思うわけなんです。したがいまして、この財政硬直化打開のためにどのような決意で臨み、どのようなスケジュールでこれを解消しようとていくのかということについて、総理から御見解を承りたいと思うのであります。
  155. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 財政硬直化は、先ほど大蔵大臣からお答えいたしましたように、いままでのような自然増収の増によって、そして支出予算を組むというわけにいかない、これは必ず経済成長にもその限度がある、これをまず第一に考えて、限りある歳入、こういう観点から、支出の面でもひとつ縮減していこう、圧縮していこう、こういうことで実は取り組んだのであります。もちろん、過去のいろいろのいきさつもございますし、またセーブもございまするから、一朝一夕でできる問題ではございません。これにはたいへん忍耐強くこの問題と取り組む、ただいま御指摘になりました決意が必要だ、かように私は思っております。ことに民主政治のもとにおきましては、私どもは各界、各団体と密接に連携をとりまして、そうしていわゆるそれらの方々の実情に対する、これの妥結の要望等も十分聞きまして、いわゆる民主政治、それを進めてまいるのでありますが、時にこのことが過ぎますと、いわゆる圧力団体に屈したと、かようにも非難を受けることにもなります。それかと申しまして、どこまでも一切外部の団体と交渉を持たない、こういうようなことでは、民主政治、政党政治はできるわけのものではありません。でありますから、それらの点では、よく実情を話をして、そうして国民が納得いく、そういうところで予算を編成してまいるわけであります。しばしば非難されますのは、圧力団体に屈した、こういうことを声を大にして言われますが、私は、そういう点は、いわゆる政党の独善に流れず、十分謙虚に国民の皆さん方の御意見を聞いて、そうして予算を編成する、こういう考え方でございます。しかし、これはとにかく御指摘になりましたように、勇断、同時にまた、時に決断力によりましてやっていかなければならないものがございます。これは国家のたいへんな問題でありますから、一党一派の興隆、隆盛だけを考えて、そしてこういう問題と取り組むべきではない、この点は御指摘のとおりに私も考えております。
  156. 正木良明

    ○正木委員 大蔵省がにわかに財政硬直化の問題をやかましく喧伝した、この一つの理由はどういうことであるか。実際には硬直化であるというふうな現象も見えておりますが、同時にまた、これはいまにわかに財政硬直したのではなくて、硬直は過去にもやはり徐々にそのきざしが見えてきておる。現にあの経済成長時代にたくさんの自然増収がございましたけれども、それを全部予算の膨張に使ってしまったという形、それを四十二年の八月、九月ころからにわかに言い出したのは、一つは、大蔵省の自民党の政調会に対する牽制だという説が広く流布されておる。そうして、西独の轍を踏むぞ、経済危機がやってくるぞ、したがって、こういう点については十分考慮をしてもらいたい、いわば与党の手に移っておるところの予算編成の主導権を大蔵省が奪い返したいために、硬直化を鳴りもの入りで言い出したというふうにいわれておるわけであります。現に、いま総理決意をお述べになりましたけれども、その決意はぜひとも実行していただきたいと思いますが、しかし、その決意は、すでに四十三年度の予算編成のときにおいてあなたもおっしゃっておったのにもかかわらず、多分に財政硬直化をますます硬直させていくような要因が四十三年度の予算の中にふえております。恩給費の問題にしろ、地方交付税の問題にしろ、また国鉄の利子の補給、海運の利子の補給、国庫債務負担行為の増大等、これは数えあげれば相当な額にのぼる新しい硬直化要因が四十三年度の中に見られるわけであります。したがいまして、こういう問題について、総理決意を述べられた、そのいわゆる舌の根もかわかないうちに、このような現象が出ておりますので、私は、この四十三年度並びに次の予算であるところの四十四年度の予算等について、この硬直化打開のための決意というものは、なまなかの決意では乗り切ることができないと思うわけであります。そのために総理決意を聞いたのでありますが、こういう新しい硬直化要因等が出ておる。これは一般の常識でありますが、そういう点とかみ合わせて、もう一度この点についての総理決意をお聞きしておきたいと思うわけであります。
  157. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 予算の硬直化、これはできるだけ避けるということですが、私どもはやはり新しい支出需要に対してこたえなければならない、それらの点は御了承いただきたいと思います。その大筋、その方向、これは申すまでもなくはっきりしておりますから、そういう意味で一そう努力するつもりでございます。
  158. 正木良明

    ○正木委員 四十三年度の予算が刺激型か中立型か抑制型かということが大いに議論されておりまして、私は刺激型であろうと思うのであります。先ほど、硬直化の問題について、大蔵大臣が国債発行を減額したというふうにおっしゃった。四十二年度は当初八千億の国債発行を予定いたしておりましたが、年度途中で七百億の減額をいたしましたね。したがいまして、七千三百億の国債発行でございますが、このうち、未発行額が相当額にのぼっておるというふうに聞いておるのでありますが、幾らほどございますか。
  159. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まだ一千億円ございます。
  160. 正木良明

    ○正木委員 七千三百億のうち一千億の未発行額がございますから、現在まで発行したのは、六千三百億ということになります。したがいまして、この一千億の未発行国債についてはどのような処置をなさるかということが非常に重要な問題になってまいりますが、その点どのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  161. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 もう少し年度末にならないとまだはっきりいたしませんが、そこでこの歳入の最後の見通しもつきますし、予算の不用額も出てくると思いますので、そういうものを差し引いたあと、これをどうするかということでございますが、これは資金運用部資金で一部は引き受けるということになると思いますし、一部はこの整理期間内の発行ということで三月中に契約はいたしますが、あとは市中で消化してもらうというようなことになろうと思いますが、この正確な数字はまだ今月の末にならないとはっきりいたしません。
  162. 正木良明

    ○正木委員 ちょっと聞こえにくかったのですが、今月のいつになるというお話でございますか。
  163. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今月の末にならぬというと、この不用額がどれくらい立つかとか、あるいは税収がどうなるかというので、もし予定よりも多かったら、それだけ国債の発行額は減らせますので、そういう意味から、まだ数字がはっきりしないということでございます。
  164. 正木良明

    ○正木委員 このように了解してよろしいでしょうか。今月の末にその一千億の未発行額の処置をきめるということは、この一千億のうち——今月末ということは年度末ということですね。したがいまして、不用額だとか自然増収というような数字がはっきりしてくるから、その分は減額するが、その残りは四十三年度に繰り延べて発行するという意味でございますか。
  165. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 繰り延べではございませんで、年度内の発行でございます。
  166. 正木良明

    ○正木委員 そうすると、今年度末ぎりぎりにその残りの分を——いわゆる不用額だとか自然増収とか、これは未発行額で落とされるのだと私は了解いたしますが、その残りの分につきましては年度末ぎりぎりで発行する、こういうことですか。
  167. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 年度末にシンジケート団との契約ができますれば、それは今年度発行したということになりますので、金は四月になって入ってきても年度内の発行ということになります。
  168. 正木良明

    ○正木委員 この間、日経の報ずるところによりますと、この一千億のうち、自然増収が大体二百億ぐらいあるだろう、不用額が二百億ぐらいあるだろう、差し引き六百億が発行され、四百億が減額されるであろうというふうな観測をいたしております。その六百億のうち、資金運用部資金で三百億引き受けて、あとの三百億は四十三年度に繰り越し発行するのではないかというふうな観測が行なわれておりますが、ただいまの大蔵大臣のお話を聞きますと、この数字がはっきりしていない。しかし、これが十月ごろに年度末のことを予想するのではなくて、もう三月に入っておる現在において、ほぼ見通しはおつきになっておるだろうと思いますので、それは大蔵省だけではなくて、ほかのものの観測だって大体ほぼ当たるのではないかと思いますので、四百億ということになりますと、この六百億はこの年度内に全部発行される、いわゆるシンジケ−ト団との話し合いがつけばという前置きがついておりますが、まあいままで話し合いはつくよりも、つけてきたわけでありますから、おつけになって六百億発行するというふうに考えてよろしゅうございますか。
  169. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この六百億という額が現在きまりませんで、不用額がどれくらい出るか、それを差し引いた額を発行する場合に、その一部は資金運用部資金で持つつもりでございますので、この最後の数字がまだはっきりしておりません。
  170. 正木良明

    ○正木委員 そうすると、数字によれば一千億、そのうち一部資金運用部資金で引き受けたとしても、そのあとは全部市中消化のほうに回すというふうなお考えだととってもよろしゅうございますね。
  171. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そのとおりでございます。
  172. 正木良明

    ○正木委員 そこで、自然増収は全然ないというふうには私たちには考えられないわけでありますし、もしかりに自然増収もない、不用額もないということになって、これは一千億まるまる運用部資金が引き受けるなんということは考えられませんから、そのごく一部に限られるのではないかというふうに考えておりますが、そういたしますと、そのような形で国債を市中銀行が引き受けるということ、これについては確信がございますか。
  173. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 大体確信がいまのところ持てる状態でございます。
  174. 正木良明

    ○正木委員 これは先ほど申し上げましたように、これから先のことを話しているのですから、そういうふうなお答えになっても私はいたし方ないと思いますけれども、しかし、これはその見通しを誤ったということになりますから、責任を持って答えていただかないといけないと私は思うわけであります。その点、責任を持ってそのようにお答えいただけますか。私は一千億と言っているのですよ。
  175. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま申しましたようにその一千億のうち、もう発行しないで済む分と、それからあとは市中消化と運用部資金で引き受ける分と、こういうことになりますので、これはいずれにしても、私はこの発行にはもう心配はしておりません。自信を持っています。
  176. 正木良明

    ○正木委員 それでは、この一千億のうち大体減額しようと思っておる——それは自然増収や不用額の問題がからんでまいりますが、減額する場合もあり得るということはお考えになっていらっしゃいますか。
  177. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 不用が出たり増収があった場合には、それだけは減額し得る計画でございます。
  178. 正木良明

    ○正木委員 そこで、この国債発行ということについての基本的な態度でありますが、私は結論的に申し上げて、最近では国債発行が完全に赤字国債というふうな考え方になっているのではないかというふうに考えているわけです。私は自民党ではありませんので、その内部のことはよくわかりませんが、伝え聞くところによると、このたびの予算編成時におきましても、財源が足りないときには国債を発行してまかなえばいいじゃないかというような声が盛んに上がったということを聞いておるわけであります。当初四十年度におきましては、特例法によりまして赤字国債が発行されました。四十一年度から、財政法第四条に基づくところの建設公債というような形で発行されてきたわけであります。特に四十一年度につきましては、景気を刺激してその当時の不況を打開するという、それはそれなりの理由もあり、名目もあったわけでありますが、四十二年度につきましては、現年度でありますが、非常に景気が立ち直って、これ以上刺激すると景気の過熱が起こる、そのために、金融の引き締め、二回にわたるところの公定歩合の引き上げもやりましたし、フィスカルポリシーとして財政支出の繰り延べまでやった。それまでして、なおかつ国債を発行しなければならないか。しかも四十三年度におきましては、先ほども申し上げましたように、一千億の発行残がある。これはいまの大蔵大臣のお話では、不用額並びに自然増収分を差し引いた分は年度末までに発行するというお話でありますけれども、しかし、それでも年度途中で七百億の減額をしなければならなかった。また、自然増収や不用額に見合っただけを減額するというよりも、減額しなければならないというような状況に立ち至っておる。こういう状況から考え、なおかつ四十三年度の立場を考えてみたときに、この公債というものが、もはや建設公債というらちを越えて、財源補てんのためだけに使われる赤字公債であるという性格が強まっておると私は考えるのでありますが、この点の御見解をお聞きしたいと思います。
  179. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 絶対そういうことではございませんで、もうはっきり建設公債、しかも市中消化というこの原則をくずした公債ではございませんで、公共事業を中心とする建設事業に支弁する公債でございまして、赤字公債では全然ございません。
  180. 正木良明

    ○正木委員 なお、この財政の調整手段、これは財政支出の繰り延べがそのおもなものであろうと思いますが、そのほかに、四十二年度の税制改正で法人税の延納利子税率引き上げ制度というのをおつくりになりましたね。それと並んで、特別償却停止制度、これを景気調整税制として創設されたわけでありますが、四十三年の一月の公定歩合の引き上げとともに、大蔵省はこの発動を準備したけれども、通産省の反対にあってついに断念したということが伝えられております。いわゆる国際競争力を増進するためには、合理化投資が必要だ、こういう趣旨で通産省が反対したのでありますが、それならば、景気抑制のために必要だというので設備投資を押えようというこの制度、これは事実上現在では有名無実になっているということでありますが、この点について政府はどのようにお考えになっているか、大蔵大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  181. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この問題は、やはり産業政策と非常に関係することでございまして、産業的に見まして、この法律が発動することによって、これこれの設備投資はいけないからこの際これを抑制しようというふうに予防的な効果を持つものならまた別でございますが、そうじゃなくて、法律自身のたてまえが、過去にやってしまったものへの特典を停止するということでございますので、この点にも問題がございますし、また、一律に適用されるものでございますが、たとえば通産省というふうに産業を管理している官庁から見ますと、どうしてもこれは必要だから、この際この合理化をやらせなければいかぬというために入れた機械もありますし、また押えてもいいというふうに、いろいろ機械についての重要度というものが違っておりますので、これを一律に押えないでやる方法はないかというような意見も出てまいりました。いろいろそういう点を考えまして、これは最初はおっしゃられるような目的でつくったものですが、この発動についてはまだいろいろ検討すべきものがあるというふうに私ども考えまして、今日までまだ発動していないという実情でございます。
  182. 正木良明

    ○正木委員 これは、延納利子のほうは去年の九月に発動されているようでありますが、この特別償却停止制度については発動されていない。この点について、いま御説明があったわけでありますが、どうも私は納得がいかないのであります。せっかくこういうふうな景気調整手段としてのりっぱな制度をつくっておきながら、それをいま有名無実のままに終わっておるということについては、はなはだ合点がいかない。それはそれなりの理由をお述べになったわけでありますが、これはそれじゃあなたの判断で景気動向によっては発動することもあり得るということをいま仰せになることはできますか。
  183. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それはそのとおりでございます。
  184. 正木良明

    ○正木委員 物価の問題をこまかくやりたいと思ったのですが、最初に時間をとり過ぎてどうもまずくなってきたのですが、物価の問題に関連して、ひとつ再販制度のことについてお伺いしておきたいと思うわけであります。  総理は、去年の七月十一日の物価問題の特別委員会で、再販制度のことについてお約束をなさっておると私は受け取っておるわけであります。「再販価格の問題、これはもう私がいまさら申し上げるまでもなく、政府そのものは在来の考え方に変わりはございません。いわゆる消費者保護の立場から、いままでの行き過ぎたものについてこれにメスを入れる、その考え方には変わりはございません。」再販制度を抑制することに賛成ですね。「きょうも公取の委員長もこの席にいますが、法律ができない限りにおいては、やはりいまの現行制度のもとにおいて公取にもうんと活動していただいて、そうして効果をあげていきたい。かように思います。ただ私はこの国会では、非常に時間的な余裕がないために提案をいたしませんけれども、必ずこれは法制化すべきものだ、かように思っておりますので、次の機会まで待っていただきたい、かように思います。」ということをおっしゃっているわけであります。ところが、この総理の「次の機会」に——私は、この次の機会というのは、臨時国会もしくはこの通常国会をさすものであるとばかり思っておりました。新聞も出されることを報道いたしておりましたが、にわかにこれが出されないということになったのでありますが、総理はこの去年の七月に委員会で言明されたとおり、御決意は変わりませんか。
  185. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの再販価格についての取り締まりを厳重にする、この弊害をなくするように努力する、これには変わりはございません。ただ、いまのお読みになりましたうちの立法措置ということ、それを直ちにやれという、これはたいへんおくれていて申しわけございませんが、私は、立法措置よりも、現公取の制度でどの程度やれるか、公取委員長もいろいろ努力しておりますので、そのほうをまずお聞き取りいただきたいと思います。
  186. 正木良明

    ○正木委員 それでは公取委員長にお願いしましょう。
  187. 山田精一

    ○山田政府委員 当公正取引委員会といたしましては、昨年来、わが国におきます再販行為が、流通段階におきまする不当な価格拘束を通じまして、小売り価格の硬直化をもたらしました。消費者物価の下げざさえの一因と相なりますばかりでなく、消費者の利益を無視いたしました流通段階におけるゆがめられた競争をもたらす要因となりました。公正な競争を阻害するという弊害が顕著となってまいっておりますので、当面再販行為の規制を強化いたしますることに決意をいたしました。いかなる方法でこれを規制いたすのが効果的でございますかということについて、慎重に検討を続けてまいりました次第でございます。私どもは、まず再販行為に関する過去の審決例とか審査事件に基づきまして、禁止すべき再販行為の類型につきまして検討いたしました結果、現行の独占禁止法のもとにおきまする運用の強化をはかりますことが、当面最も有効適切であるとの結論を最近得ました次第でございます。  次に、独占禁止法第二十四条の二によりまして適用除外と相なりますところの再販行為につきましては、現行指定商品が指定以来すでに十数年をけみしておりまするので、現時点において法律上の指定要件に適合いたしておるかいかがかということをさらに掘り下げて検討いたします。特殊な用途に使用される品目とか、現在の制度が有効に利用されていない品目等につきましては、大幅にこれを削除をいたしますことに決定をいたしました次第でございます。さらに再販行為が許容されます商品につきましても、たとえば流通段階における過大なリベートの提供等によりまして、一般消費者の利益を不当に害するような場合には、その再販行為を適切に規制するよう十分監視をいたすことにいたしたいと存じます。このように、当委員会は、再販行為規制に関する当面の措置といたしましては、新しい立法を行ないまするよりも、独占禁止法体系のもとにおける運用の強化につとめますことが急務であるとの結論に到達いたしました次第でございます。また、再販許容品目を大幅に整理をいたし、さらに再販行為が許される品目につきましても、その監視をきびしくいたしてまいりまするならば、一昨年の物価問題懇談会の提案の御趣旨にも沿い、また一般消費者の御期待にも沿い得るものと確信をいたす次第でございます。今後は違法な再販行為の取り締まりと、再販許容商品における個々の再販行為の監視に万全を期しまするとともに、あわせて再販行為規制に関する基本的な制度のあり方につきましても、常に検討を怠らないようにつとめたいと存じておるものでございます。  なお、昨年七月総理から法案を御審議を願うように提出するというお答えがございました由でございまするが、その点において、私ども公取の総理大臣に対する補佐に欠けるところがございましたといたしまするならば、まことに相済まぬことと存じておる次第でございます。
  188. 正木良明

    ○正木委員 公取に一番しっかりしていただきたいというのが、これが一般消費者の願いである。私はここで法律論を展開しようと思いません、法律論を展開したらたいへん時間を食ってしまいますから。しかし、二十八年の改正のときに、独禁法の根本的な基底であるところの、柱であるところの第四条、第五条は削られておる。それでいて適用除外ということがいわれている。何の条文の適用除外なのかということが非常に問題なんですが、これを言ったって時間をとるばかりだからおいておきます。  ここであなたは、この現在の法規で、いわゆる単独法をつくらずに、現在の法規でこの再販制度というものを規制していこう、こういうふうな御決意をいま長々と述べられた。そこで、この特殊な用途に使用される品目、または現在この制度を有効に利用されていない品目、こういうものについては大幅に洗い出すと言っている。それは何をさすのか。そうしてその決意のほどはどうなのか。簡単でいいですから返事してください。
  189. 山田精一

    ○山田政府委員 ただいまも申し上げましたごとく、指定をいたしました当時におきましては、法律に定める要件を具備しておったものに違いないのでございますが、従来における分類方法が適切でなかった等によりまして、法律の定める一般消費者の日用に供するもの、あるいは自由な競争が行なわれておるもの、その他特に消費者の利益を害することとなるような場合はこの限りでないという法律の条項がございますが、これを忠実に適用いたしまして、これに合わないものはことごとくこれを除外いたす、かような意味合いで作業をいたしておる次第でございます。
  190. 正木良明

    ○正木委員 品目、内容……。
  191. 山田精一

    ○山田政府委員 内容につきましては、近く約一カ月うちには全部の作業を終わりましてこれを申し上げたいと思います。
  192. 正木良明

    ○正木委員 いま作業しているのは何ですか。
  193. 山田精一

    ○山田政府委員 現在作業しておりまするものは、指定中の品目全部について洗い直しの作業をいたしております。
  194. 正木良明

    ○正木委員 これは言いたくないので言わないのでしょう。しかし、もうこの適用除外の品目なんというものはきまっている。六つしかない。そのうちで一番関係のあるのがいわゆる厚生大臣の所管のものです。これについて私はこういうことは言いたくないが、総理がそのように単独法を出そうというふうに決意し、それを言明したにもかかわらず、公取は出さなかった。これは補佐の任が足りませんでなんておとなしいことを言っているが、一般に流れている風説は、それに関係する各省が所管する業者からの圧力によって公取に圧力がかかって出せなくなったのだということが、これはもう一般の風説です。非常に何というか真実性のある風説だと私は思うのですがね。これについて関係大臣にひとつ、そういうことはございませんでしたらございませんでしたということを言っていただきたい。まず厚生大臣、それから通産大臣、それから農林大臣
  195. 園田直

    ○園田国務大臣 私の所管する医薬品の再販制度メーカーは四十二年の一月三十一日現在で四十二社、品目にして六百十三、これをさらに再検討して洗い直すことには私のほうは賛成でありまして、私が就任以来、その陳情を受けたことも公取に反対したことも全然ございません。また事務当局に問いただしたところ、反対をいたしたこともございません。
  196. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 一切陳情も何も受けたことはありません。
  197. 西村直己

    ○西村国務大臣 現在のところ農林物資につきましては、再販売価格維持契約の対象品目はございませんです、指定はもうやめておりますから。
  198. 正木良明

    ○正木委員 私はあとに大きな問題を残しておりまして、ちょっと時間がありませんのでこれで終わらなければならないのですがね、やりたいことはたくさんあるんだが。  そこで、公取委員長、いまのお話では再販制度の一番大手筋は厚生省なんですが、厚生大臣はいままで圧力をかけたこともないし、同時にまた、洗い出しには賛成だということでありますから、どうかひとつ勇気を持ってやってもらいたい。そうして、あなたは、流通過程が整備されたらこの単独法をやろうなんということを方々で言っていらっしゃるらしいが、こういうものは流通過程が整備されてからじゃびくとも動かない。やるならいまなんです。いまの独禁法では、完全にこの再販制度の規制はできません。これは理由を言いたいのだけれども、時間がないから言いませんけれども、あなたはそれが専門家だからよく御存じだ。どうしてもやはり単独法が必要です。したがって、この単独法を立法するということに総理は賛成なんです。また、関係大臣も賛成なんだから、あなたもどうかひとつこの問題について真剣に考えていただいて、もう全消費者がつえとも柱とも頼んでおるところの公正取引委員会が、勇気を持って消費者保護の立場を貫いていただくように私はお願いしたいと思うのでありますので、その点の御決意を承りたいと思います。
  199. 山田精一

    ○山田政府委員 ただいま力強いお励ましをいただきました。私どもといたしましては、十分皆さまの御期待に沿い得るようにいたしてまいりたい、かように存じております。
  200. 正木良明

    ○正木委員 さて問題をかえますが、最近の佐藤内閣の右傾化現象が非常に著しい。これはもう世論であります。例の倉石発言を一つのポイントといたしまして、佐藤総理の去年の秋の訪米後、非常に右傾化現象が激しくなってきた。いわゆる国防の気概を持て——しかし国防の気概を持てというのは、それは私たちも国を守ることにはやぶさかではありません。ありませんが、しかし、あなたのうしろには、再軍備ということが隠されているということはみんなもう本能的に感じている。同時にまた、核兵器の持ち込みということも、また沖繩の核基地を残しておこうという考え方も、ほぼ明らかになってきた。そういう意味で、私どもは、世論が佐藤内閣に対してきびしい批判の目を向けておるということをやはり率直に認めていただきたいと思うし、感じていただきたいと思います。そういう意味から、いよいよ一九七〇年は安保の改定時であります。この一九七〇年を一つの点といたしまして、非常に私たちは国内の問題についておそれる事態が生じるのではないかというふうに心配をいたしております。佐藤内閣が現在のような考え方をずっと持ち続けていかれる限り、その激突は避け得べくもないと私は考えておるわけであります。そういう意味から、一九七〇年、おそらく国民は、佐藤内閣の姿勢に対して重大な反省を求めるために大規模な大衆行動も行なわれるのではないかというふうに私は考えております。したがいまして、その時点における問題について、私どもは種々心を痛めておるわけであります。ところが、けさ新聞にも発表されましたが、自衛隊の出動について非常に懸念がございますので、こういう点について防衛庁長官にお尋ねをいたしたいと思うわけであります。自衛隊が治安出動をするという場合、どういうことが考えられますか。
  201. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 自衛隊が治安出動する場合は、自衛隊法七十八条の所要の要件が満たされたる場合に限る、こう考えております。
  202. 正木良明

    ○正木委員 その所要の要件というのを御説明願いたいと思います。
  203. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 七十八条の所定の法文は、多少文章が違うかもしれませんが、内乱、暴動、騒擾等であって、警察力をもってしては鎮圧しがたいと内閣総理大臣が認めたる場合に、長官に命じて治安出動をする。治安出動を命ずることができる。その治安出動をした場合には、二十日以内に国会の承認を得ることが必要である。国会の承認を得られなかったならば、事後においてその効力を失う、こういうふうなことが七十八条から、待機命令、それから承認のこと等が書いてあるように記憶いたしております。
  204. 正木良明

    ○正木委員 条文には明らかに「間接侵略」と「その他の緊急事態」というふうに分けて書いてありますがね。そういう意味だということでおっしゃったのでしょう。でしょうが、この間接侵略というのは何をさすのか、また、その他の緊急事態というのは何をさすのか、その区別というのはどこにあるのか、これをひとつ答えていただきたいと思います。
  205. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 間接侵略とは、一勢力もしくは数勢力の——これは正確に申せば、旧安保には一もしくは二以上の外国と書いてありまするが、これは両方とも正文でございますから別段誤訳はないと思いまするが、一勢力もしくは二勢力の外国の勢力の扇動あるいは支援に基づく暴動、騒擾等をいうと、こう考えております。
  206. 正木良明

    ○正木委員 その他の緊急事態——私がお尋ねをしたのは三つ尋ねた。もう二つ。もう一回言いましょうか。いま、あなたは間接侵略のことをおっしゃったですね。その他です。
  207. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 間接侵略のことをお聞きでございましたから、間接侵略をお答えいたしましたが、その他の緊急事態とは、外国の——外国というのはほんとうはことばが不正確でございまするが、外部の一勢力もしくは数勢力の支援あるいは干渉に基づく暴動、内乱、騒擾等をいうと思います。しこうして、その他の緊急事態とは、外部の勢力の干渉あるいは支援に基づく暴動、騒擾ではない内国だけの、国内だけの暴動、騒擾その他治安撹乱現象の重大なるものをいう、こう考えております。
  208. 正木良明

    ○正木委員 もう少し具体的に——この問題は非常に重要な問題です。武装した自衛隊が出動するということは、国民に対する考え方、いわゆる影響というものは非常に大きい。したがって、そういうあいまいな抽象的な説明ではなくて、あなたのお考えになっていらっしゃるこういう場合だという場合が具体的に研究されておるし、また、研究されていないとするならばたいへんなことでありますから、その点を具体的に御説明を願いたいと思います。
  209. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 お答え申し上げます。  それぞれのケース、ケースによって具体的にはきまることでございまするが、やはり法文の上からいって一応きまるわけでございまして、いま申し上げましたような暴動、騒擾、内乱であって警察力をもってしては鎮圧しがたいもの、こういう条件がつくわけでございまして、そういう場合に治安出動の対象になる、こういう制約があるわけでございます。
  210. 正木良明

    ○正木委員 そうすると、あなたの判断ではなくて、これは総理大臣が出動命令を出すわけですが、大体直接にはあなたが判断するでしょう。あなたの判断ではなくて、警察のほうの判断で、これは助からないから出てくれというふうなことが言われて、そうして総理が判断して出るということになると私は了解するのですが、そういうことになると、これは警察の判断がだいぶ大事になってくるのだが、ひとつ国家公安委員長、この点についてお答え願いたいと思います。
  211. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 警察の出動は警察法によってきめられてあるわけでございまして、いずれにいたしましても、天災の多い国ですが、人災と申しますか、少なくとも暴力がふるわれる場合においては、それがどういうものであれ、われわれはそれを制止し、そして社会不安を与えないということを常がね考えておりまするので、そういった意味でいろいろな取り締まり出動をいたすわけでございます。
  212. 正木良明

    ○正木委員 公安委員長、私が聞いているのはそうじゃなくて、あなた方がもう手に負えないから自衛隊に出てくれと頼むのはどういう限界があるか。
  213. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 大体警察法にきめてあります緊急事態の布告は、これは国家公安委員会の勧告によって総理大臣が行なうわけでございますが、しかしながら、常時いろいろな治安関係の機関とは密に連絡をすることになっております。ただ、そういう緊急事態が起こりました場合を想定いたしまして、警察また防衛庁との間にそれぞれ協定が締結されてあるわけでございます。
  214. 正木良明

    ○正木委員 防衛庁長官、両方から話を聞いたが、非常に不明確です。どういう場合に出るかということについては、そのときそのときの判断によるというような御答弁のように私は受け取れるのでありますが、こういう場合、こういう場合、こういう場合というふうに具体的には考えてない、自衛隊が治安出動するというような重大な問題について、そういう点があいまいであるということは、私ははなはだ国民として怒りを覚える。しかも、そういうあいまいな判断のもとに総理大臣が出動の命令をするということになればたいへんなことだと私は思う。こういう点についてもう一度防衛庁長官並びに国家公安委員長からはっきりと答えていただきたいと思います。
  215. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 正木さんにお答え申し上げます。  軽々に出動はしないわけでございまして、七十八条所定の要件が満たされた場合、内閣総理大臣が命令を下すわけでございまするが、大規模の暴動、騒擾等でございまして、一般警察力をもってしては治安維持が困難なる場合、そういう場合でございまして、しかも防衛庁長官国家公安委員長との間において協定が結ばれてございます。こういうときにはこういうことをするのだというその協定は、ずっと前の国会にも申し上げたことがございまするから、この機会にあらためて申し上げるという御指示がございましたならば申し上げてもけっこうでございまするが、非常に限局された、きわめて希有な場合であるということだけははっきりいたしております。
  216. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 内閣総理大臣が出動命令を下します場合のことは、ただいま防衛庁長官が申したとおりでございまして、これは自衛隊法八十五条には、その際には長官国家公安委員会相互の間に緊密な連絡を保つということがございまするので、そのときは総理大臣からいろいろな要請があると考えております。
  217. 正木良明

    ○正木委員 じゃ話を進めましょう、これはまたあとのほうに譲って。  そこで、七十八条の治安出動については、間接侵略またはその他の緊急事態におけるものであるということにして話を進めてまいりますが、その治安出動のために、自衛隊では治安出動の訓練、いわゆる治安行動訓練といいますか、それはおやりになっていらっしゃいますか。
  218. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 お答え申し上げます。  一年に十二時間ないし十五時間の訓練をいたしております。また、首都におきましてはその二、三倍の訓練をいたしております。
  219. 正木良明

    ○正木委員 この訓練についてはどのような教範によって訓練を行なわれておりますか。
  220. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 お答え申し上げます。  教範のことがけさの新聞に出ておりますが、私は、きわめて希有な場合でございまするしいたしますから、平素から教範をつくるということは絶対に反対でございまして、昨年の国会におきましても、教範をつくる意思ありやいなやというような御質問が、たしか参議院だったと思います、ございましたが、私は絶対反対である、部下にも厳重にそのことを指示してある、こういうわけでございます。  そこで、何らかの基準がなければその訓練はできないじゃないかというようなもし御質問があればまたお答え申し上げまするが、そのことは保留いたしておきます。
  221. 正木良明

    ○正木委員 教範がなくて訓練をするなんて、言いのがれのきわみといわなければならぬと思うのであります。全く困ったものですね。  昭和三十六年の三月の六日か七日でしたか、参議院で治安行動草案のことが質問されました。そうしてその資料の提供を要求されました。そうして、この同じ予算委員会において、防衛庁はその資料を提出いたしました。何が書いてあるかわからぬ——わからぬといっては失礼でありますが、全然体をなしていないような「治安出動時における行動の基準について」という政府資料が提出されております。そこで長官、この最後に、聞いてくださいよ。「おおむね以上の要領を骨子とし、治安出動に際し部隊運用の一般基準となるべき教範、治安行動草案を検討している。」これは当時、いまの農林大臣防衛庁長官のときですね。こういうふうにお答えになっている。草案を検討しておると国会に報告しておる。あれからもう七年たつのですが、草案はおつくりになっていないのですか。草案というか、行動教範はおつくりになっていないのですか。
  222. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 正木さんにお答えをしていいような段階になりましたら、お答え申し上げます。  まず「自衛隊の治安出動に関する訓令」というものは、昭和三十五年の五月四日に出ております。これがまず基準でございます。このことは国会にも申し上げてございますから、あらためてまた申せといえば、正木さんに申し上げてもよろしいのでございます。  それから、さらに昭和三十六年の三月十五日に参議院の予算委員会の岩間正男君に提出いたしましたものがございまするが、おおむねこういう要領でやっておるのでございまして、私は教範というものをつくってはいけない、検討しておるという答えにはなっておりますが、それぞれそのときの長官が全責任があるわけでございますから——もちろん総理大臣の命は受けてやりますが、そういう治安出動教範というようなものは穏やかならぬものである、いけないということをいって教範をつくらせないことにいたしております。しからばどういう基準でやっておるかというと、良識によって各種の場合を想定してやる。検討した時代もございまするが、私は、教範というものはおもしろくないからやめろということをかたく指示しております。
  223. 正木良明

    ○正木委員 行動教範もなくて治安出動をしようとしているのですか。
  224. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 まず警察力をもってしては治安維持が困難なる場合、こういうわけでございまして、普通の場合は、私は公安委員長ともしょっちゅう連絡しておりまするが、機動部隊の行動教範というものはないようでございまして、その補充的な意味において、きわめて希有の場合にしか出動しない。しかも皆さま方の承認を得なくてはいけないといったようなそういう場合に、第一次的に働くべき警察の機動隊すら教範がないのに、こちらが教範があるなんてことはとんでもないことである、やめておけということをかたく指示するだけの私は責任があると思います。また権限があると思いまして、教育局長に対しましても、また幕僚長に対しましても、教範はいけない——ほかの教範はございますよ、治安出動教範というものはいけないから、検討するなということをかたく命じてございます。
  225. 正木良明

    ○正木委員 あなたのおっしゃっておることは完全に矛盾しておるのですよ。あなたは、きょうは、朝日新聞に出たから必ずこの問題が聞かれるだろうというので、ずいぶん準備をなさって、もうこれはおれはつくるなと言うのが一番手っとり早くていいとお考えになったに違いないと思うのだ。あなたはいま非常に希有な場合だとおっしゃった。これは希有な場合でいいです。そんなもの常時出動されちゃかなわない。希有な場合というのは、軽々に出動すぺからざるものであるということで希有の場合とおっしゃったのでしょう。その軽々に出動すべき場合でないが、どうしても出動しなければならないというので治安出動が行なわれるのです。そのときに、何の基準もなくて、ただばく然と自衛隊が治安出動するなんてことは、このほうがよほどおそろしいじゃないですか。どうなんですか。
  226. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 お答え申し上げます。  十二時間ないし十五時間各種の治安出動の場合の演習をいたしておる、訓練をいたしておるということは申し上げました。それは、たとえば栃木県、たとえば青森県、たとえば東京都、それぞれ態様が違うのでございまして、それを通ずる普遍的な教範なんというものは大体非常識なものであって、私は見やしませんけれども、そんなものはだめだ、よせとこう言って、いまあそこに教育局長いますけれども、私からきょうもしかりつけられたのです。とんでもないことである、教範の検討なんということはいけないということを、昨年はっきり言っているじゃないか、この一年間何をぼやぼやしているのだ。そういうことで、検討検討はいたしませんから、どうぞ御安心願いたいと思います。
  227. 正木良明

    ○正木委員 はしなくも、いまのあなたのおことばから、あなたはつくる必要はないと思っておるが、あなたの下僚がそれをつくっておるからしかりつけた、こういうことになると、下僚のほうではつくっておる。防衛庁の中ではそれをつくっておるということになります。これはG5でつくっておるのだ。だから防衛局長、教育局長、順次その点について答弁してください。
  228. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 私の答弁不足を政府委員が補うものでございまするから、私がお答えいたします。  検討もするなということでしかりつけているわけでございます。検討はしないのでございます。
  229. 正木良明

    ○正木委員 ことしの二月の九日と十日、十一日、この三日間、富士学校で重要な会議が持たれる予定でありました。これに参加する人たち、また命令書、こういうものも私のほうに全部わかっております。「陸自五」の発翰番号がついて、陸幕長命令で三部長会議が開かれることになっていた。三部長なんというものはどういう職務かというのはおのずから明らかでしょう。ここであなたは否定しておる陸自教範、治安行動案が検討された。どうです。聞いていますか、そのこと。——いや、あなたじゃない。防衛庁長官はいい。
  230. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 政府委員は私の補充でございますから、私がまず申し上げます。それから、何も防衛庁が分離しているわけじゃございませんから、政府委員をいじめられないように、とくと陳情申し上げます。  そこで、各種の演習はしておるのでございましょう。演習に対しての基準というようなものもございましょうが、それは私の下の下の下部の部隊がやっておることでございまして、それを一々出せと言われてもそれは困るのでございまして、要するに草案等は、私は決裁は絶対いたしません。
  231. 正木良明

    ○正木委員 長官、あなたの想定問答の答えは進み過ぎている。私は出せなんて言ったですか、いま。二月の九日、十日、十一日に富士学校で重要な会議が行なわれておる。これを防衛局長、教育局長に聞きたい、こう言っている。何もあなたの下僚をいじめておるわけじゃありませんよ。重要な問題だから答えろと言っているんです。ですから一いい。私は政府委員指名したんだから。  委員長質問者が指名した答弁者にやらせてくださいよ。
  232. 井出一太郎

    ○井出委員長 中井教育局長。(発言する者多し)——防衛庁長官
  233. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 いま教育局長から聞きました。三部長が集まって各種の演習をしておる、そこで、各種のうちにはいまの治安出動の演習のことの打ち合わせもございましたということでございます。
  234. 正木良明

    ○正木委員 あなた、私の聞いておることに答えてほしいのですよ。それをあなたが、私はそんなものは検討もするなと言ったんだからというふうにおっしゃるから、わかる人に答弁をしてもらおうとしているんですよ。いいですか。その私が指名した者に答えさせないで、そしてあなたが何とかごまかそうとしている。よくないと私は思います。その九日、十日、十一日、富士学校で確かに三部長が寄ったということをおっしゃいましたね。寄ったのですね。そうしてここで治安行動教範が審議されたのですね。答えてください。
  235. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 三部長というのが大体どの部長だかよくわからないのですから、教育局長から答えさせます。
  236. 中井亮一

    ○中井政府委員 お答えいたします。  三部長というのは各師団等の三部長でございますが、これは作戦とか演習とか訓練とかこういうようなことを担当している部長でございますので、そういう仕事に関連をしたことでお互いの意思の統一をはかる、あるいは、普通どこでもあることでございますけれども、中央とのお互いの連絡をはかるというようなことでございます。
  237. 正木良明

    ○正木委員 私は、三部長——第三部長ですよ、三部長の職務はどういう職務かということを聞いているのじゃないのだ。直接この治安出動に関して治安行動草案を検討する立場にある人であるから、この人たちが富士学校でこれを検討する予定であったでしょうと聞いているのです。そのことに答えてください。
  238. 中井亮一

    ○中井政府委員 師団にあります第三部長——師団には一部長から四部長までございますが、その第三部長が、方面におります第三部の関係の人たちと陸幕におりますその関係の人たちとで意思の統一をはかるというようなことで集まりをした、こういうことでございます。
  239. 正木良明

    ○正木委員 治安行動草案はあるのですよ。あるのです。そのためにわざわざ富士学校で、九日、十日、十一日に、これを担当するところの全国の各師団の三部長がメンバーとして寄ることになっておったのだ。これは私のほうにちゃんとわかっている。この行動草案というものがそのときに検討されることになっておったのだ。だからこの行動草案というのは、長官はお聞きしたところ非常に平和主義者でそういうことを押えられておるが、下僚のほうではその行動草案というものは現に検討されて、そうしてもう次には参事官の段階までこようとしておる草案があるのです。これがなくては訓練ができないのです。防衛庁のいわゆる識者といわれる人たち、防衛庁に詳しい人たちは、一九七〇年に間に合わせるためには早く訓練を開始しなければならぬ、そのためにこの行動教範が必要なんだ。あなたがおっしゃったように、その三十五年の赤城長官の時分の訓令なんかで訓練ができるわけがないのです。また同時にこの教範があって訓練をされて初めて統制された行動ができることになる。佐世保でもそうだったでしょう。私も佐世保に参りましたけれども。佐世保でもいわゆる政府の首脳が認めたように警官の過剰防衛があった。この過剰防衛の原因は何かといろいろいわれておりますが、その一つは、非常にそのデモ隊に対する訓練のない者が各県から集められた、それが過剰防衛になったのだということがいわれている。訓練が必要です。治安出動するためには訓練が必要です。その治安出動をするために日ごろから訓練をしなければならない。その訓練をするのにやみくもに訓練のできるわけがありません。したがってその教範は必要なんです。あなたの下僚では、そういうことがすでにもう検討が始められているのは当然なんです。それをあなたは検討までやめてしまえ、あなたがそう言っているだけの話なんです。ちゃんとそれが進められている。ざら紙で五十枚。説明してあげてもいいですよ。横書きです。そうして右の肩に「取扱い注意」の上へ四角い「秘」が押してある。そうして左側の上に「陸自教範」と書いてある。そうしてまん中に「治安行動(案)」と書いてある。そうしてその下に「陸上幕僚監部」、いいですか、その下に「昭和年月日」、これは日付が抜けておりますが、「昭和年月日」、いいですか、そういうものがちゃんとあるのです。いいですか、「治安行動(案)」はちゃんと防衛庁で用意されているのです。それを認めなさい。
  240. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 正木さんにお答えいたしますが、官庁というものは独任制官庁と合議制官庁とがありますが、官庁はやはり長官が官庁でございまして、防衛庁防衛庁といって長官と違った存在があるようにおっしゃいますのは、はなはだ行政法上不本意でございます。  それから、マル秘のものがあれば、自衛隊法五十九条として直ちに司法処分にしたいと思っておりますから、参考に見せていただきたいと思います。どうぞ見せていただくことを要請いたします。
  241. 正木良明

    ○正木委員 そんなかってなこと。自分のところにあるのを出さないで、何言っているんですか。あなたのところにあるんじゃないか。聞いてごらんなさい。出しなさい。それじゃ、それを資料として委員長出さしてください。出してください。   〔発言する者多し〕
  242. 井出一太郎

    ○井出委員長 静粛に願います。
  243. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 私がつくるなと言って、しかもつくっておるならば、これは官紀紊乱でございますから行政処分にします。しかしながらマル秘という書類があるならば、見せていただけば処置いたしたいと思います。それから防衛庁としては、長官決裁という書類はないのでございます。私は断じてつくるな、検討もするなと言っておるのに、あるということは妙な話でございます。そこで、マル秘というものであるならば、司法処分にすべきものでございますから、どうぞ正木さんにおいて提示せられんことを要求いたします。
  244. 正木良明

    ○正木委員 拒否します。拒否します。   〔発言する者、離席する者多し〕
  245. 井出一太郎

    ○井出委員長 理事以外の委員は御着席ください。——御着席願います。静粛に願います。  ただいまの防衛庁長官の答弁に関しまして、長官から言い直したいとの申し出がありますから、これを許します。増田防衛庁長官
  246. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 私が要求しますと申し上げました点が不適当でございましたならば、訂正いたします。どうかお願いいたしますから、あなたのお手元にマル秘の書類があるということは、私どもといたしまして、規律を防衛庁においていまきびしく取り締まっておりますから、どうぞ参考に見せていただくようにお願いを申し上げます。
  247. 正木良明

    ○正木委員 どのようにあなたは誤解しておるのか知らないが、私はいままでの問答の中で、私が持っているなんと言ったか。あると言っている、あなたのところに。あなたは検討もするな、あなたもないと言った。ところが下僚のほうではある。だから、その意見をちゃんと調整して、あなたが調べなさい。私に何を要求するのですか。要求する理由なんか何もないじゃないですか。ばかなことを言うのじゃないですよ。侮辱だよ。あなたが下僚を調べなさい。調べて答えなさい。   〔発言する者あり〕
  248. 井出一太郎

    ○井出委員長 この際、増田防衛庁長官より発言を求められております。これを許します。増田防衛庁長官
  249. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 正木さん御指摘の点は、調査の上、御報告申し上げます。
  250. 正木良明

    ○正木委員 増田長官と、実際に作成にあたって研究を続け、検討を続けておる防衛庁部内の方々との意思の疎通がうまくいっていないようであります。私はこの行動草案があるということを確信いたしております。したがいまして、この問題については資料が提供されない限り審議を進めるわけにいきませんので、この問題については保留をさしていただきたいと思います。同時にまた、この草案は必ずありますので、委員長に申し上げますが、この資料の提出を重ねてお願いを申し上げます。
  251. 井出一太郎

    ○井出委員長 ただいま正木君からの御要求にかかわる資料の問題につきましては、後刻理事会において協議をいたしました上、措置することにいたします。
  252. 正木良明

    ○正木委員 念のために長官に伺っておきますが、資料の提出はいつごろまでにしていただけるでしょうか。
  253. 井出一太郎

    ○井出委員長 正木君、先ほど委員長から申し上げましたように、これは一応理事会の協議にかけた上にいたしますから……。
  254. 正木良明

    ○正木委員 了解いたしました。  現に訓練は続けられておるということが増田長官のお話の中にもございました。これは従来からの増田長官の各委員会における発言から見ても、この訓練は当然やるべきであるし、義務であるというふうにおっしゃっていらっしゃいます。したがって訓練はなお続けられているであろうと思うわけでありますが、なおまたこの治安出動に関する訓練につきましては、二月の十三日と十四日に市ケ谷におきまして治安装具の総点検と展示が行なわれたはずでありますが、このことを長官御存じでございますか。
  255. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 正木さん御指摘の点は存じません。
  256. 正木良明

    ○正木委員 これは長官が御存じないようでありますので、防衛局長にお尋ねをいたしたいと思います。二月十三日、十四日、市ケ谷におきまして治安装具の総点検並びに展示が行なわれたと私は聞いておりますが、ございましたか。
  257. 中井亮一

    ○中井政府委員 お答えいたします。  二月の十三、十四日、市ケ谷において治安装具の総点検、展示を行なった事実はございません。
  258. 正木良明

    ○正木委員 私は日付を間違っておるのかもしれませんが、最近においてこの治安装具の総点検、展示を行ない、なおかつその場合、市ケ谷において催涙ガスの放射訓練をあわせて行なったと私は聞いております。その点について、もし十三、十四でないならば、最近においてこのことが行なわれたかどうか、防衛局長お願いしたいと思います。
  259. 中井亮一

    ○中井政府委員 お答えいたします。  私の調べましたところでは、二月の十三日に市ケ谷で放水の、消防の器具の点検のための分をやったことは聞いております。
  260. 正木良明

    ○正木委員 これは確かな筋から、治安行動に関する訓練が行なわれ、治安装具の総点検並びに展示が行なわれたということであります。現に昨年の八月の新聞でございます。八月六日付の新聞でございますが、すでに自衛隊においては治安出動のための装具が購入されたというふうに伝えられ、写真まで出ている。いわゆる警官が通常デモ隊等と対峙をいたしますときに使用する防石ヘルメット、これが自衛隊においても購入されておる。これは新聞の写しです。(「何新聞か」と呼ぶ者あり)東京新聞。したがいまして、明らかにこれは希有の事態に出動するというふうには考えられない。いわゆる通常警官隊が使用すべき装具を、すでにもう自衛隊においては治安出動のために装備をし、そうしてそのほかピアノ線それから有刺鉄線、角材、バリケード、これも全部資材倉庫の中に入っている。こういうことから考えますと、この自衛隊の治安出動ということにつきましては、長官がおっしゃいましたように希有の事態だけには限らないという危惧を私は持つのであります。そういう意味から考えまして、自衛隊の治安出動について、総理はどのようにお考えになっているか、お答えを願いたいと思います。
  261. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 治安出動、そのときの行動、これは慎重の上にも慎重にやれ、かように私は指示しております。
  262. 正木良明

    ○正木委員 総理は、いま、慎重の上にも慎重に指示をしておるとおっしゃいましたが、これは総理がおきめになることですよ。総理が命令をなさることなんです。だから、総理が治安出動をお命じになるという、そういうためのいわゆるシビリアンコントロール・チェックというのはどのような形でなされるのか、総理が御自身単独の意思でおきめになるのか、それとも御相談なさるような立場の者があるのか、その点をお伺いしたいと思う。
  263. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が抜き打ち的にきめるようなことはいたしません。
  264. 正木良明

    ○正木委員 ということは、抜き打ち的にきめないということは、自分個人の意思では決定しない、こういうことと了解してよろしゅうございますか。
  265. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の権限だとただいまおっしゃいましたが、私が一人で抜き打ち的にきめるようなことをしない、かように御了承いただきます。
  266. 正木良明

    ○正木委員 その点非常に抽象的で、私は了解に苦しむわけであります。国会にはかるということが規定をいたされておりますが、これとても事後二十日間のうちに国会の承認を求めたらいいのでありまして、もしかりにこれが閉会中であるならば、次の国会に報告をして承認を求めるということになっております。したがいまして、私は、総理がその治安出動を決意なさる手続としてどのようにお考えになっているのか、国会をお考えの中に入れていらっしゃるのか、それともそうではなくて、国会に事後報告だけをしようとしておるのか、その点を伺いたいと思います。
  267. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大体いま言われるこの問題ですね、これはたいへん緊急を要する突発的な事柄だろうと思います。事前に、前もって治安出動を必要とする、かような状態ならば国会に相談することもできましょうが、そういうものではないだろう。私を補佐するそれぞれの閣僚もおりますから、こういう事柄を私がただ単に総理としてきめるということでなしに、最高のスタッフに相談する。これも国務大臣として閣僚、まずそれらに相談しないできめるわけはございません。また、ただいま御指摘になりました、あるいは公安委員長であるとかあるいは防衛庁長官であるとか、直接そういう者が対象にもなりますが、さらに、私は、そういう事柄については慎重な上にも慎重を期する、かように考えております。したがいまして、手続の後において国会に承認を求める、これはもう当然のことであります。
  268. 正木良明

    ○正木委員 一九六〇年の安保騒動のときに、伝えられるところによりますと、相当強い要請が当時の赤城防衛庁長官にありました。いわゆる自衛隊の治安出動に関しての慫慂であります。しかし、そのとき赤城防衛庁長官はあえて治安出動に踏み切らなかった、自衛隊が国民の敵になってはならぬ、おそらく自衛隊員もみずから同胞に銃を向けることはできないであろう、そういう判断のもとに、断固として治安出動を拒否したと私たちは聞いております。これはほんとうに私個人といたしましても喜ばしいことであったと思うわけであります。治安出動というものはそのようなものでなければならないと思うわけであります。自衛隊の治安出動は、いかに警察の支援後拠として行動するのであるといっても、自衛隊の実質は警察と違って完全な武装部隊です。治安出動の場合、この武装部隊である自衛隊が治安維持の名のもとに国民に対して武器を用いて立ち向かっていくというわけでありますから、元来こうした出動を予想するだけでも私は問題であると思っているわけであります。これを制度化した治安出動は、本来憲法で保障された平和運動やデモ、そういうものの、善良な無華な国民の権利に重大な影響を及ぼすだけではなく、出動する自衛隊の権限、装備の規則は最も慎重でなければならないと思うわけであります。ところが一九七〇年を予想して訓練を続け、同時にまた訓練を確実にするための教範が必要であるという立場に立って、その教範が防衛庁長官の知らない間に防衛庁内で検討が進められているということに私は大きなおそれを抱いておるわけであります。こうした重大事が陸上自衛隊の一部でひそかに立案されておる。ある日突然に強力な自衛隊が国民の前に立ちあらわれてその行動を弾圧する、しかも武装部隊として立ちあらわれる、これはゆゆしい問題であると私は思うのであります。したがいまして、これは許さるべきではありませんし、同時にまた、国民の批判を受け、だれもが是認するような形のものでつくり上げられなければならないと思うわけであります。それをあくまでも秘密主義で、公開せずに、そうしてひそかに訓練を続けるということに私は大きな問題を感じているから、このことを長官に申し上げたわけであります。どうか真実のシビリアンコントロールというものを完成して、こういうものの決してないように、自衛隊が、そのような憲法で保障された大衆行動に対して軽々に銃を向けるような形の治安出動ということをやめていただきたい。これが私のお願いであり、私のきょうの質問の趣旨であるということを十分に御認識を願いたいと思います。
  269. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 正木君に申し上げますが、何だかだいぶん論理の飛躍がございませんか。私はいま、総理がこういう治安出動を命ずる、そういう立場にあることをるる申し上げ、また非常に平静に、そういう場合には非常に慎重にやりますと、こういうことを実は申し上げました。したがって、治安出動がどういうような結果をもたらすか、またどういうようなものであるかということはよく知っております。これは私自身が私の責任だと、かように思いますが、しかしそれを決定する場合にはあらゆる機関、いわゆる国務大臣の全部の意見も聞き、そして私は決定する、かように申し上げております。したがいまして、ただいま言われるように、いまやっていることが何だか治安出動はいつでもやるんだ、まるっきり私の命令も聞かないでやるんだ、かような誤解を受けるような発言があったことは、私ちょっと論理の飛躍ではないだろうか。私は、その正木君の言われるとおり、これはまことに重大なことだ、かように思いますから、したがって、先ほど来申しますように慎重な上にも慎重にいたしますと、こういってはっきり答えているのです。非常に簡単にそういう行動がとられるように思われると、国民にたいへんな不安を与えることにもなります。私はりっぱな国民生活を守るという、またそういう国民の味方だ、こういう立場で初めてこの治安出動というようなことも考えられるのでしょうから、それを最後のところの私の手中にあるもの、それが何だかちょっと聞きますと飛躍して、絶えずそういうことばかりやっているように思われて、たいへん危険なようにも思いますので……。
  270. 正木良明

    ○正木委員 それはね総理、草案が提出されて、その内容をここで一つ一つ論議をいたしますと総理もそのことが御納得いくわけであります。いかにたいへんなことであるかということも御納得がいくわけであります。その論議が、いま保留をいたしましたので、そういう点についてはやや私の論議が飛躍したようにお考えであるかもわかりません。私は、総理が軽々に治安出動をお命じになるとはつゆ思っておりません。またそうでなければならないと思います。そういう意味からいって、こういうものが秘密主義であるということ自体に私は大きな問題があると言っているのです。どうしても国民生活を守るという、いまごりっぱな佐藤総理のお話が事実であるならば、それを堂々とやればいいと私は思う。それを秘密主義のべールの中でそのことが着々として行なわれておること自体、それは訓練だからしようがない、それが義務だというならそうであるかもわかりませんけれども、最終のチェックを行なうところの総理がその御決意であればいいと思いますが、しかし、なおかつ、あなたが閣議を開いてそれを決定しようというふうな方法もあると仰せになりましたが、それに加えて、こういう場合野党の党首の意見も聞こうというお考えはありませんか、どうですか。
  271. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 慎重な上にも慎重を期しますから、最善を尽くします。
  272. 井出一太郎

    ○井出委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。  次に松本善明君。   〔委員長退席、二階堂委員長代理着席〕
  273. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は日本共産党を代表いたしまして、佐藤総理並びに若干の閣僚質問をしたいと思います。  質問に入る前に、一言総理に申し上げておきたい。ということは、私と総理とは、人世観もそれから世界観も根本的に異なっております。しかし、この異なった者同士の問で質疑を行なうというのが議会のたてまえであろうと思います。そういうことでありますので、私の質問を、国民に対する答弁として、誠実、率直に問うたことにお答えをいただきたいと思います。この意見を表明して質問に入りたいと思います。  私の最初質問は、国政の基本である憲法に対する佐藤内閣の態度の問題、とりわけ、いわゆる倉石問題についてであります。わが党は、倉石問題は単に倉石氏個人の問題ではなく、また倉石氏の辞任によって事が終わったものではないと考えております。これは佐藤内閣の問題であり、現在の政治情勢の中で、今後さらに明確にしていかなければならないきわめて重要な問題である、こういうふうに考えているわけであります。といいますのは、総理は本委員会におきまして、倉石君は十七日間の空白の原因をつくったというので辞任を了承した、倉石君を憲法違反で首にしたと考えるのは間違いだ、こう述べられました。これに先立って自由民主党の福田幹事長は、NHKのテレビ放送で、また佐藤総理も、幹事長とは多少違いますけれども、国会で自民党が三分の二の議席を獲得できれば憲法改正に踏み出すという趣旨を述べられたからであります。そして、倉石氏の憲法上の責任を問題にしないというこの総理考え方が正しいかどうかということ、また佐藤内閣が倉石氏と同じ考えを持っているのかどうかということは、日本国民の広く重大な関心事になっていると思うからであります。しかもなおその点につきましては、審議の中断前に行なわれました社会、民社、公明、三党の代表の質問でもごく短時間でありましたし、審議の再開後もこの問題を真正面から取り上げた質問はありませんでした。そういう意味で、私は、この点について十分な質疑をする必要があると考えております。  質問の第一は、わが党を含む自民党以外の各党が、いわゆる倉石発言は憲法を否定し、憲法を侮辱するものであるから罷免をせよと要求したにもかかわらず、佐藤総理が同氏を罷免をしなかったその理由は何であるかということを、明確に、わかりやすくお答えいただきたい、こういうことであります。
  274. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 松本君にお答えいたします。  倉石問題はもう各党に私説明をいたしましたし、私の心境ももう十分伝えてございます。(「共産党には説明ないよ」と呼ぶ者あり)もうその点では誤解がないだろうと——ただいま不規則発言がございますが、この国会を通じて、この委員会を通じてさような点を明らかにいたしましたので、これはひとつ御了承いただきたいと思います。
  275. 松本善明

    ○松本(善)委員 この点について佐藤総理の説明は納得ができない。だから私は質問をしております。そうしてまた、いままでの審議の中でも、佐藤総理は、佐藤内閣の右寄りの態度というようなことを言わずに、直接審議の内容でやってほしいということを何度も言われます。そういう趣旨で聞いておるのです。これは単なる一大臣の失言の問題ではなく、わが国の政局に重大な一石を投じた問題になっており、さらに発展をしようとしております。このような重大な問題について、どのような調査をされたか、倉石さんが発言をしたことの内容はどういうことだったのかということを正確に総理が答えられたことはまだ一度もありません。国会の場で、倉石氏の発言はどういうものだったかということを答えられたことは一度もないのであります。  すでに報道されているところによりますと、いわゆるこの予算委員会において問題になりました発言内容を取材をした記者の手記も発表されております。それからその場所には、いわゆる記者会見の席上には、水産庁長官が同席をしている。またその発言は、農林省の広報班員によってメモをされている。そのメモと照らし合わせて新聞記者が報道をしたのであります。この事実関係について、総理はどの程度の調査をされたかということをお聞きしたいと思います。
  276. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は倉石君に直接聞きました。どの程度の話をしたか、まあ新聞に出ているが、新聞のとおりではない、こういうことも申しました。またこの席で、委員会で、皆さんから倉石君に直接お尋ねでもございました。その際も倉石君は、全部が全部自分のしゃべったとおりではない、かように申しております。これはもうすでにこの予算委員会で一応お取り調べが済んだんじゃないか、私はかように理解しております。
  277. 松本善明

    ○松本(善)委員 予算委員会の質疑はまだ続いております。確かに倉石前農林大臣はここで弁解をされました。それから佐藤総理も、倉石氏から聞いた話をここで話されました。しかしあの記事が全部うそだったのかどうか、どこまでがほんとうでどこまでがうそだったのか、そのようなことは一言もここで審議をされていないのであります。これは個人の失言の問題で決してない。佐藤内閣の体質がどういうものかということを問題にしているがゆえに、私たちはこの事実をはっきりさせてもらいたい、こう言っておるのです。これを調べようと思えば幾らでも調べることができます。私が先ほど言いましたように、水産庁長官も農林省の広報班員もおる。それから直接に報道をした、取材をした記者もおります。こういうことについて内閣は調べたかどうかというのが私の質問であります。それについてもう一度明確にお答えをいただきたい。
  278. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 倉石君は、その中の一、二の点については自分は記憶がないと言っていますし、また自分ではっきりさようなことを言わなかったというのは、核兵器を持ってよろしいとか三十万の軍隊を持てとか、かようなことは言わない。これはもうはっきり申しております。
  279. 松本善明

    ○松本(善)委員 佐藤総理に私はかみ合うように質疑を行ないたいと思うのです。私がお聞きしたいのは、そのようなことはすでに総理がここで述べられていることで、十分承知の上で聞いておるのです。総理がどのような調査をされたかということを聞いておるのです。
  280. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのような点は私が倉石君に直接聞いたのです。倉石君を調べた結果がただいまのようなお話であります。
  281. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、倉石前農林大臣の弁解を聞かれたということ以上には何ごともやっておられない、こういうふうにお伺いしてよろしいですか。
  282. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 倉石君は別に、憲法を自分で侮辱した、軽べつしたとかあるいは非難したとか、こういうのではございません。また、改正的な具体的な意見を述べたわけでもありません。ただいま言うような点が皆さんが言われる体質に関する問題だ、こういって皆さんから批判を受けておる。私は、佐藤内閣の体質ということばが先ほどありましたが、名医といえども私の体質はわからないだろう、かように思っております。
  283. 松本善明

    ○松本(善)委員 問題を明確にするために、私のほうからこういうふうにお聞きしたいと思います。いわゆる倉石発言で問題になるのは、こんなばかばかしき憲法と言った部分です。それから、総理は平和憲法を守ると言っているが腹の中ではくすぐつたいだろうと言った部分です。こんな憲法を持っている日本はめかけのようなものだという趣旨の発言をした部分です。軍艦や大砲を持たなければだめだ、原爆や三十万の軍隊があったらというようなことだと思います。この中で、総理は、軍艦や大砲を持たなければだめだとか、原爆や三十万の軍隊があったらというようなことは言わなかったという趣旨の答弁をされました。そのほかの部分はあったという趣旨でありますか。
  284. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ほかの部分は、実はあまりばかばかしいから私は聞いておりません。ことに私のことについて、佐藤総理はくすぐったいだろうというような話があったとか、こういうような点は、実は私自身が憲法九十九条を守ると、これだけもう明確に申しておるので、これらの点はあまりばかばかしいから倉石君に尋ねておりません。
  285. 松本善明

    ○松本(善)委員 自民党を除くわが党も含むすべての党が、この問題を問題にしましたのは、あなたがばかばかしいと言った部分であります。これが現憲法を侮辱をしている。憲法を否定しているということで、自民党以外の党は全部問題にしたのです。それは間違いだということを言われるのですか、それはばかばかしいことだということを言われるのかどうか、お答えいただきたい。
  286. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はまあさように思っておるのですが、そこで、ただ、私のほうから聞くわけにいかないか知らないが、共産党は憲法改憲論者党ではございませんでしたかな。私は、やっぱりこれは問題だと思うのです。で、私は、そういう意味でも、やはりこれは対話の場でお互いにそういう意味で話し合ったらどうか、かように思います。いかがでしたでしょうか。
  287. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、総理はそういう態度に出られるということは間違いだと思います。質問に率直に答えていただきたいということを私が申し上げたのは、そういう趣旨であります。わが党は、これは安保条約が破棄をされ、日本が真に独立をしたときの問題についていろいろ論じております。それはわが党の綱領と政治方針を総理が勉強していただきたい。時間が十分あるならば、私は幾らでも総理とやりたいと思います。その時間がないので、その点については言いませんけれども、問題は、私たちの党が、佐藤内閣、現内閣が憲法を順守しているかどうかという、この憲法上の責任を追及することに少しも矛盾はないと思います。はっきりと総理の答弁をお聞きしたい。  私が聞きましたことは、要するに、この国会で十七日間あの自民党以外の党が問題にしたことはばかばかしいことだということを言っているのかどうかということです。
  288. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 さようなことは申しておりません。
  289. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうしますと、私は、佐藤総理は正確にお答えになっていないと思いますけれども、ここで否定をしなかった、総理が否定をしなかった、いわゆる倉石発言はあったものというふうに了解をしなければならないと思います。にもかかわらず、総理が罷免をしなかった。私たちは、この発言は決してばかばかしいものではなくて、憲法否定の発言であり、憲法を侮辱する発言だと考えているから問題にしているわけです。なぜ総理は罷免をしなかったか、こういう理由を聞きたいわけであります。
  290. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、この十七日間空白であったことがばかばかしいことだと、かようなことは申しておりません。これは誤解のないように願いたい。倉石君が佐藤総理もくすぐったいだろうとか、あるいはこの憲法がどうとかいうようなことを言ったという、おめかけだとかいうようなことばを使われたというようなこと、これは私はあまりばかばかしいから倉石君に聞かなかったと、かように申し上げておる。誤解のないように願いたい。
  291. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理が本委員会でも答えられたことがあります。倉石君の発言は軽率だった、不適当だった、不用意だった、こういう趣旨の発言は何度もされました。一体、倉石前農林大臣のどの発言が軽率であり、不用意であったのかということを明確にしていただきたい。
  292. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま皆さんが問題にしておられるような点は、まことに私は軽率であり、不用意だ、かように思います。
  293. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、総理の言われていることは、あの発言はあったけれども、軽率なものであって、これは憲法侮辱であるとか、あるいは憲法否定であるとか、そういうふうには考えない、こういう趣旨でありますか。
  294. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 憲法否定だとか憲法侮辱だとかいう、ずいぶんそこには論理の飛躍があるだろう、かように私は考えます。
  295. 松本善明

    ○松本(善)委員 もう一つお聞きしておきたいと思います。  このいわゆる倉石発言だけではなくて、倉石前農林大臣が本委員会において答弁をされたこと、これもまた問題があると思います。倉石氏が本委員会において答弁をされましたことは、軍事力を伴わない外交には限度があるということを言われたのであります。これは言うならば武力外交論であると思います。このような考え閣僚が持つことをあなたは認めておられるのかどうか。このような答弁を閣僚として国会において答弁をするということが、閣僚の憲法順守義務に違反しないと考えているのかどうか、この点についてお聞きしたいと思います。
  296. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一番大事なことは、これが憲法を守るということと矛盾するかどうかでございます。私はさようなことはないと思います。また、個人個人で、ただいまの状態で不十分だというようなことを考える、そういう人もいるだろう、かように私は考えております。
  297. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、倉石氏の委員会における答弁も、これは憲法違反ではない、こういうふうに言われたというふうに了解をしなければならないと思います。あなたの答弁をされておりますことは、結局いわゆる倉石発言は軽率であったけれども、この内容は非難すべきものではない、だから罷免をしなかった、こういうふうに理解する以外にないと思います。これはわが党が指摘しておりましたとおり、いわゆる倉石発言は佐藤内閣の本音だということを証明したものであると思います。単にこれは倉石氏を守ってやるというための発言ではありません。このような発言をした閣僚を断固として処分をするということは、佐藤内閣にとってできない。それは、この処分をすることが今後佐藤内閣のやろうとしていることに支障になるからであるというふうにしか考えられません。閣僚の憲法順守義務を厳格に解釈をすることのできない体質を佐藤内閣が持っているということの証明であります。わが党は、この責任を今後とも院の内外で追及をしていく考えであるということを述べまして、この点はこの程度にしたいと思います。
  298. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 別に私の答えは要求されないようですが、そこらになりますと、最初断わられたように、はっきり人生観、同時にまた考え方が違っておる、かように私は思います。共産党のお考え方を改めてくださいと、かように申すわけでもありませんし、また説得するつもりでもございません。
  299. 松本善明

    ○松本(善)委員 このことは共産党だけが言っているのではありません。いわゆる倉石発言というのは、社会党も、それから公明党も、民社党も、それから与党の中の一部においてすら、これは憲法に違反をしておる、あるいは憲法を侮辱しておる、否定をしておるというふうに言っておるのです。人生観や見解の違いでは決してありません。  それで、私は次に質問をしたいと思いますが、それは核の問題であります。御存じのように、わが党と社会党、公明党は、核兵器の問題で共同声明を発表いたしました。そして、日本非核武装と核兵器禁止に関する決議案を三党共同で本国会に提出をいたしました。私は、この決議案を基礎にしながら、総理に核についての考え方をただしたいと思います。  第一に、三党決議案の一つ内容は、こういうことであります。「日本はアジアと世界の平和に貢献するため、核兵器の使用、実験、製造、貯蔵の全面禁止の実現、当面核兵器使用禁止協定の締結を積極的に推進する。」ということであります。あなたはこの内容に賛成でありますか、反対でありますか。
  300. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、核兵器並びに核の時代にどういうように生きるかと、こういうことをはっきり申し上げております。そうして、日本は核兵器は持たない、核兵器は持ち込みも許さない、また製造しない、こういうことをはっきり申しております。これは核についての私の演説もございますし、同時に、私どもが核時代にどういうように生き抜くかということも、その際に明確に申し上げております。その一つだけではない、全体をひとつ総体としてお考えをいただきたい。
  301. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理、よく聞いておいていただきたいのです。私は、総理が先ほど述べられたことも知っております。それはあとで聞きます。いま述べたことをもう一度はっきり申しますから、よく聞いておいていただきたい。  三党決議の一つ内容は、国際協定の、核兵器使用禁止協定の問題なんです。そのことなんです。もう一回正確に言いますと、日本はアジアと世界の平和に貢献するため、核兵器の使用、実験、製造、貯蔵の全面禁止の実現——当面ですよ。当面核兵器使用禁止協定の締結を積極的に推進をする、これが一つ内容なんです。   〔二階堂委員長代理退席、委員長着席〕 もう一つ、核持ち込みの問題がありますけれども、もう一つ内容は別です。いま聞いておりますのは、この国際協定の問題について総理は賛成なのか反対なのか、この内容はどうかと、こういうことです。
  302. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その辺はどうもいいようでございますね。これはよくまた委員会で——委員会というか、いまの議運でも協議をし、各党間でも協議をしておるようです。これは、核の決議ができれば私もそれに従うということを申しておりますから、一々の問題よりも、むしろその協議のほうへ移したほうが時間の節約になりはしないか。
  303. 松本善明

    ○松本(善)委員 ところが、国連のこの趣旨の決議が出ましたそのときに、当の日本の態度は賛成をしていないです。棄権をしております。賛成をしていない。これはどういうわけでありますか。
  304. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 こういうところに問題があるのですね。やはり国際社会におきましては、いろいろの目的、いろいろの政治的な理由でこういう事柄が使われる。だから、すなおにそのまま採用されない。これも、どこもみんな反対のものはないはずのようなものがやっぱり政治的に使われる、そういうところに問題があるようです。
  305. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは正確にお聞きしたいと思いますが、この趣旨の決議については、国際連合で、第十六回、第十八回のそれぞれの総会と、それから第二十二回の国連政治委員会でこの趣旨の決議が採択をされております。これは佐藤総理御存じのとおりと思います。ところが、アメリカは常に反対をしております。いま総理が言われたように、だれでも賛成するというはずのものに、アメリカは常に反対をしてきました。日本は第十六回の総会では賛成をしております。その理由は、核軍縮の現実的、具体的な進展のために好影響を与えるとして賛成をしているのです。ところが、今度棄権をいたしました理由は、総理が言われたようなことは公式には出ておりません。外務省の情報文化局の発表した理由によりますと、こういうことを言っております。核兵器使用禁止問題検討の重要性は認識をするけれども、本問題を核兵器の生産禁止、削減、廃棄等の他の軍縮措置の裏づけなしに、これらと切り離して解決せんとする本決議案のアプローチのしかたは、実効性を欠き、非現実的であると考えるので棄権をする、こういうふうに述べております。これは総理考えと少し違うようであります。いま総理は、この内容はよさそうだということであります。これは、今後外務省やなんかでこの態度を検討する、間違いであれば改めていく、こういうことを総理はいまここで述べられたのかどうかということをお聞きしたいと思います。
  306. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の申したのは、松本君も御理解がいただけると思いますが、表面的にこう正しいことでも、いろいろな複雑な事情があるから、その方向に真一文字に進みかねるんだ、こういうことを申し上げた。ただいまお読みになりました情報局等の説明、これでそのときのわが国がとった態度は十分説明されておると思います。私どもはやはりそういう点も考えないといかないんじゃないか、かように思います。
  307. 松本善明

    ○松本(善)委員 先ほど言われたことから少し後退したように思うわけです。先ほどはよさそうだ、場合によっては検討しようということでありました。積極的にやるべきであると思いますけれども、いま総理が言われたことは、どうもなかなかむずかしいことなんだという趣旨のことを言われた。現実にすぐやるというのはむずかしいことだ、こういうような趣旨を言われたと思いますが、この点について私は質疑をしたいと思います。  毒ガスの使用禁止についての協定があります。ヘーグ宣言、議定書であります。これは現実的な効果をあげてきたのであります。毒ガスよりももっと非人道的な被害を及ぼす核兵器の使用禁止協定ができるということはいいことだというふうにはお考えにならないか、総理にお伺いしたいと思います。
  308. 三木武夫

    三木国務大臣 核兵器のいま問題にしておる国連の決議、日本は棄権したわけです。これは西欧諸国も、アジアでもビルマのような非同盟国までも一緒に棄権したわけです。核兵器を使用するということに対しては、だれも賛成はないだろう。ただしかし、核兵器の軍縮をやらないで、みな持つだけ核兵器を持って、使用だけ禁止するということは不徹底ではないか。やはり核軍縮も伴って、そして核の使用禁止ということでなければ、幾らでもつくっておいて、使用禁止だけでは不徹底だというので、反対ではなくして、みな棄権をしたわけです。日本もその棄権の中に入ったのでございます。
  309. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理に伺います。私は、いまの三木外務大臣の答弁は、少しも問いを聞いておられなかったのではないか。毒ガスの使用禁止についての国際協定との関係でこれはどう思うかということを、総理の所見を聞いておるのです。現実的な効果は、実際毒ガスの使用禁止の場合にはあげてきたわけですよ。核兵器についてもそういう努力をしなければいかぬじゃないか、これは一体どうなんだ、一国の総理としてどう考えられるかという見解を聞いておるのです。
  310. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私どもは、核兵器は一番人類の敵だ、かように思っておりますから、もう核の開発については、あらゆる機会にこれすら実は反対してまいっております。したがって、核兵器そのものが自由に使われるようなことは、これは困ることは申すまでもないことであります。
  311. 松本善明

    ○松本(善)委員 核兵器の使用禁止協定は、協定がつくられますれば、査察をする必要もありません。技術的な困難は全くないわけです。しかも、締結されました場合には、どの国も先にこの協定に違反をするという責任を問われないために協定を順守する、熱核戦争を防ぐ上で非常に効果がある、こういうものだと思います。総理はどう考えられますか。
  312. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そこになると、ただいま三木外務大臣が言われるように、使わないという申し合わせだけでは事足らないのではないかということになるんで、もうそこまでいけば、さらに使わないものをなぜ持つのかということになりますので、私は、そんなものは製造しないほうがいい、かように思いますが、だから三木君の言われたような議論になる。御了承をいただきます。
  313. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは、さらに問題を進めてお聞きしたいと思います。  ソビエトも中国も、先に核兵器の使用をしないと言っている。これは総理御存じのとおり。ここでも御答弁になりました。あなたは、この二月二十六日の委員会で、アメリカが核兵器を先に進んで使うような考え方はない、こういうことを答弁された。これは、アメリカのだれがいつ言明をしたか、これをお答えいただきたい。
  314. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 最近、ただいま申しておりますのは、ベトナム並びに北鮮、こういうところではっきり申しております。
  315. 松本善明

    ○松本(善)委員 ベトナムについては、逆に核兵器を使えという議論もアメリカにあるわけです。これはしかし、さておきます。このことを私は聞いておるのじゃないのです。私が聞いておりますのは、アメリカが最初に核兵器を使う国にならないというところまで言っている公式言明があるのかということなんです。ソビエトや中国が先に核兵器を絶対使わない、こう言って声明しておると同じようなことをアメリカは言っておるかどうか。アメリカは先には使わない、こういうふうに言った公式言明があると思われるかどうか。
  316. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ここらでは、だいぶん私、松本君と違うのだろうと思います。アメリカは侵略国家でない、侵略はしない、かように考えております。また、アメリカははっきりそれを言っておる。だから、この侵略ということは、これは積極性を持つものですが、侵略国家でないということ、そういう立場にちゃんと立っていれば、これは防衛的には自分たちがやる、その防衛はする、こういうことだと思います。この辺でやや相違があるのだろうと思います。これはアメリカは侵略国家だと言ってらく印を押されておりますけれども、私はさようには思わない。アメリカ自身もそのことを言っておる。自分は侵略国家ではない。
  317. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理がまともに私の質問にお答えにならないということは、公式言明がないからです。これは侵略国でないという総理意見を表明されただけで、これでは質問に答えたことにならないと思いますけれども、私はさらに先に進みたいと思います。  以上、佐藤総理との質疑の中で明らかになりましたことは、核兵器の使用禁止協定の障害はアメリカだということであります。アメリカが一貫して核兵器の使用禁止協定の成立を妨害しているというのは、これは国連でもそうです。反対なんですから。アメリカが核兵器をいつでも使えるようにしておきたいからにほかなりません。アメリカの核兵器はいつ使われるかもわからない危険なものであります。だからこそ、われわれはこのような核兵器が日本に持ち込まれることについて重大な関心を持っているわけです。  三党決議案のもう一つ内容——よく聞いておいていただきたいと思います。「日本は核運搬手段を含むいっさいの核兵器を、どんな名目でも、実験、製造、保有、使用しない。また、核運搬手段を含むいっさいの核兵器の日本への持込みを禁止する。」ということであります。これに賛成ですか、反対ですか。この内容、いかがでしょう。
  318. 三木武夫

    三木国務大臣 それは、日本政府の、核兵器を製造したり、あるいは持ち込みしたり、あるいは保有したりすることはしないという方針に合致いたします。
  319. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、この内容には政府は賛成だという趣旨だと思いますが、この委員会で総理は、これと同様の、総理が言った非核原則を決議することには反対だということを言われました。その理由として、核の四政策の中の一環としての非核原則なんだ、アメリカの核抑止力にたよる、すなわち、安保条約のもとでの非核原則だから、決議に反対だという趣旨のことを答弁されたと思います。私たちは安保条約の成立はもちろん認めませんし、一貫して破棄を主張してきております。しかし、好むと好まざるとにかかわらず、現実に安保条約下にあることはだれも否定できません。その状態で、なおかつ安保条約を認めなければ、このことを決議するには反対だと総理が頑強に主張される真意はどこにあるのだろうかということをお聞きしたいわけです。
  320. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはたいへん簡単なんですが、核があることなんですよ。核兵器が他の国にあることなんです。ただいま言われるように、先に使わないとかなんとか、これはもうあるいは約束もできるかもわかりません。しかしながら、過去において約束どおり守られなかったことは、これはもう歴史の示すところだ。そういうことを考えると、核が現実に存在する限り、私は、一切現実の問題として核抑止力にたよらないとこれは困る。だから、いま言われるような三原則をこの機会にやれば、日本国家の最高機関がきめる、そういう方針が非常にはっきりするわけですね。だから、そういう意味で、私自身は、私の自由を許されるなら、ただいま総理としてこの国の安全を確保する、こういう立場におると、ただいま核があるこの現実を無視はできない、これが私の主張でもあります。しかし、私はただいまさように申しましても、いま決議を皆さん方がしようとして、それが国会で決議が成立すれば、それにもちろん私従いますよ。従いますが、私がただいままで主張しておることは、一つの理想、目標はある、が同時に、現実に核はあるのだ、そうして、それがただ単に取りきめだけで、いままで守られなかったのが、いままでの歴史がわれわれに教えておることなんです。このことを実は申しておるのであります。
  321. 松本善明

    ○松本(善)委員 いま言われたことはわかりましたが、どうも質問には十分に答えられてないように思います。私のお聞きしたいことは、核持ち込みを許せないということと、安保条約を認めるか認めないかということとは、関係がないことじゃないかと言うのです。どこに関係があるのかということをお聞きしたいのです。
  322. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま直ちに日本に核を持ち込ます、こういうことを考えてもおりません。また、安全保障条約があるから日本に直ちに核兵器を持ち込む、こういうものでもございません。しかし、ただいまのような約束をすることは、おそらく安全保障条約の中身について拘束を加えることになるのじゃないか、かように私は思いますので、そういうことをただいまからすることは行き過ぎじゃないか、かように思っております。
  323. 松本善明

    ○松本(善)委員 安保の中身が制限がされると困るということはお答えいただいたわけですが、それじゃ、こういうふうに言いかえてまたお聞きしたいと思いますが、アメリカの核兵器が日本に入ることはいいけれども、それ以外はいけないという意見と、すべてもうどこの核であろうと一切入っちゃいかぬという意見は、もちろんこれは別の意見であります。だから、これは一致できないのだ、こういう趣旨を言っておられるのだろう。
  324. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現状においては、日米安全保障条約がありましても、アメリカは日本政府の意思に反したことをするつもりはない、かように約束をしておりますから、国民の皆さん方は、日米安全保障条約があるから日本に核が入ってくるのだ、かようにお考えになることはない、これはもうはっきり申し上げておきます。しかし、同時に、私どもが核兵器を製造せず、持ち込みを許さない、またそれを持たない、使わない、かように申しましても、核の抑止力にはよっておるのだ。アメリカがどういう場所で使うか、これは別ですが、安全保障条約に、アメリカ自身そんなものを使ってくれちゃ困る、こういうようなことにまで発展することは、これはアメリカの行動を制限することになるのだから、それはできない、こういう意味であります。誤解のないようにはっきりもう一度重ねて申し上げておきますが、国内へそんなものを持ち込むとか、国内で使うとか、こういうことはございません。それにいたしましても、これは日本政府の意に反したことをする考えはないとはっきり申しておりますから、そういうことはございませんが、しかし、アメリカが、安全保障条約に基づいて、日本が核攻撃を受ける、そういう場合に日本を守ってやろう、こういう場合に、アメリカ軍とすれば、軍の使うその自由な行動があるだろうと思いますので、それを拘束することは、これは安全保障条約にならないし、私どもが言うアメリカの核の抑止力にたよるという、そういうことにならないことになるのです。だからその点を申し上げている。直ちに日本に入る、私はかように申しておるのではございません。
  325. 松本善明

    ○松本(善)委員 先日の委員会で、同僚委員質問に答えて佐藤総理は、沖繩の核つき返還の場合には非核原則は消滅することは、論理的にはそうなると答えられました。本土の場合も同様に、このアメリカの安保条約の中身を制限することになってはいかぬ、だから本土の場合も同様に、場合によっては、あなたの言っている非核原則は消滅する、そういうような性質のものでありますか。
  326. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 幸いにして本土にはただいまございません。ございませんから、私どもが三原則を申しましても、これは完全に履行できます。ただいま沖繩は核基地があるといわれておる。メースBが現実に存在いたします。これが沖繩がどんな状態で返ってくるか。これはまだこれからの問題ですが、仮定の上ですが、このままの状態で返ってくれば、その範囲においてこれが論理的に変わるという、このことはこれは論理上の問題です。私はそれがいいという意味じゃないですよ。私はそれに賛成しているというわけじゃありません。しかし、日本の本土においてはそういう問題は起こりません、ただいまないのですから。これはもうそのない状態において三原則を立てる。したがってこれはございません。
  327. 松本善明

    ○松本(善)委員 私の問いになかなか合うようにお答えいただけないのですけれども、結局いま国会の決議によって政府が拘束をされるということは反対だ、結論的にはこういうことになると思う。これにいろいろ理屈をつけられたというふうにしか私は考えられません。この核兵器の使用禁止協定に反対だということは、結局、結論的に言えば、アメリカが反対をしているからだ。これはいままでの国連の経過をずっと見れば明らかなんです。それから今度、いま核持ち込みの禁止を決議しないということは、結局政府も縛られない、安保の中身が縛られないようにしようということは、結局アメリカの核の持ち込みを認める余地を残したものだと私は考えます。結局、あなたは、アメリカが自由に核を使えるようにしておくということだから、この三党の決議案に反対なんじゃないかというふうに思うのです。そうでなかったら、自由民主党あげてこれに賛成をしていただきたい。いまの答弁の中では、いろいろ賛成してもいいようなことも言われた点もある。もしそうでないと言うならば、私の言うことが違っていると言うならば、賛成をするようにやってもらいたい。  ところで、あなたがたよろうとしておりますアメリカの核抑止力というのがどういうものかということは、非常に大事な問題で重要な問題であります。言いかえますと、あなたは、アメリカの核兵器を含む強大な武力というものが戦争を抑止する力になっているということを言われました。したがって、これは平和的なものだということを言おうとしていられるのだというふうに思います。しかし、これが正しいか、それとも、アメリカの武力が侵略的であり、また脅迫のための武器だというのが正しいかということが、いまきわめて重要な問題なんだ、こう思います。アメリカの武力が平和的なものか侵略的なものかということを最も明確に証明する材料は、何といってもベトナムにおけるアメリカの行動だと思います。これが侵略的であるということは、いまや否定をすることのできない事実であります。アメリカ兵でさえそう言っているのです。このアメリカの侵略政策に日本国民すべてが深刻な不安を感じております。そういう事件が次々起こっています。B52の沖繩飛来、エンタープライズの寄港、あるいはプエブロ事件等々、これについて私は一つ一つお聞きしたいと思います。  あなたは、先日の委員会で、B52は核を持っていない、スリーBはツーBになったということを言われました。これは一体どういう根拠ですか。
  328. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アメリカが核を持つ、またそういうものをどういう施設でやるか、これが大陸弾道弾であり、もう一つは潜水艦ポラリスであり、もう一つはヘビーボンバーだといわれておるB52だ、こういうことですね。ところが、B52については、最近アメリカがそういうものは持たさないということを言っておる。これは声明でございますが、そういうことをはっきり言った、かように聞きましたので、私はいまやスリーBがツーBになった、こう申しております。  また、ただいまの危険だといわれるベトナムでは核は使わない、こういうことをはっきり申しておりますので、いまのベトナムに出かけているのには、これは別に危険はない、かように考えております。
  329. 松本善明

    ○松本(善)委員 そんな声明はないですよ。アメリカが水爆パトロールを一時やめた、そういう報道がありました。あなたの言われるのは特派員の報道だと思います。この報道も、アメリカの空軍機が核弾頭を積載しないことを意味してないといっているのです。警戒飛行の再開もあり得るということをいっておるのです。あなたの言われておることは間違いではありませんか。間違いでないというならば、アメリカの公式言明、いま言われました声明がいつだれの手によって発表されたのかを言っていただきたい。
  330. 三木武夫

    三木国務大臣 この国会でB52が問題になったのは……(松本(善)委員「問うたことに答えてください」と呼ぶ)沖繩の問題ですが……(松本(善)委員「どういう声明があったのか」と呼ぶ)それはしばしばマクナマラ長官、ラスク長官、ベトナムに対して原爆を使う意思はない、それはもう何回もあります。日にちを申し上げてもよろしい。だから、使う必要がないのにB52が核弾頭を搭載するということはあり得ないことである、われわれはそういうふうに信じておるのであります。
  331. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理がお答えになったので、総理がそういうように考えられたことをお聞きしたわけです。  総理がいまも言われたのですが、アメリカの声明があると言っておる。それはどの報道にもありません。特派員の報道なんです。もし考え違いだということなら考え違いだということを述べていただきたい。
  332. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 別に通知を受けたわけではありませんが、私は新聞でそれを見ましただけです。
  333. 松本善明

    ○松本(善)委員 だから、その報道がいま申しましたように、それは単なる報道なんですよ。声明ではないのです。しかもその報道ですら、これはアメリカの空軍機が核弾頭を積載しないことを意味しない、また、警戒飛行の再開もあり得る、水爆。パトロールの再開もあり得る、こういうことを書いているのですよ。だから、あなたの言われたことは勘違いではないか、こういうことを言っておる。もう一度お答えいただきたい。
  334. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、水爆。パトロールはこれでないのだと思っておりましたが、いま言われるように、公式な通知は私は受けておらない、これははっきり申し上げておきます。
  335. 松本善明

    ○松本(善)委員 問題になっておりますB52がいま沖繩に来ております。これは常駐でないのだという趣旨の答弁がありました。常駐でないということになりますと、これはいつ帰ることになるのでしょうか。
  336. 三木武夫

    三木国務大臣 常駐でないというのは、あまり長期にB52が沖繩の基地にいるということではないということで、その期間を幾らかということは、ちょっと申し上げられませんが、常識考えてそんなに長期にあそこにB52がおるならば、それはパーマネントな基地と見られることになりますので、常識的に考えるある短期間だと考えております。
  337. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、結局いつ帰るかということは全くわからない。ただ外務大臣がそう長くはないだろうと考えておるというだけのことじゃないですか。そういうことで常駐じゃないというようなことを言っているのは、これは正しくないと思います。これはB52の実際は沖繩常駐を認めさせるための布石だというふうにしか考えられません。この52の飛来の原因になりましたプエブロ号事件について多少お聞きしたいと思います。  このプエブロ号は上瀬谷で乗員の訓練をした。そうして横須賀、佐世保を基地として、しかも計画的に領海を侵犯をしたということが明らかになっております。プエブロ号の作戦将校のフレドリック中尉の自白によりますと、私たちのスパイ任務の中で最も重要なことは、朝鮮民主主義人民共和国の海軍基地として知られている四つの港を領海内で探ることでした、こういうふうに言っているのです。日本の基地がこのような侵略の基地として使われるということが許されているかどうか。政府はこれをとめることができないのかどうか、このことを総理に伺いたいと思います。  外務大臣でしたら問うたことにお答えいただきたいのです。先ほどからたいへん迷惑しているのですけれども、問うたことにお答えいただきたい。
  338. 三木武夫

    三木国務大臣 計画的に領海を侵犯したということは、これはやはり一方的な情報だと思います。われわれの受けておる情報では、計画的に領海を侵犯したというようなそういう情報は一つもありません。だから、今後この問題は、やはりプエブロ号の乗り組み員が釈放されて、十分な調査をするべきだと私も思っております。しかし、計画的に侵犯したということのあなたの情報は、あまりにも一方的情報に過ぎて、政府はさような情報は一つも受け取っていないということでございます。
  339. 松本善明

    ○松本(善)委員 これはまだ確認できないんだというような趣旨のことですけれども、それじゃ済まない問題です。なぜかといいますと、いま同じスパイ船のバナー号が日本に来ているのです。これが同様のことをしないという保証は全くない。こういうことがないように、もう一度、プエブロ号事件のようなことがないように、何か政府はそういう行動をとっているかどうか、この点をお聞きしたい。
  340. 三木武夫

    三木国務大臣 アメリカともしばしばプエブロ事件以後話をしておりますが、領海の侵犯ということはこれはよくない、そういうことがあってはならぬと考えております。しかし、スパイ船、スパイ船と言われると、いかにも不法なことをやっておるような印象を与えますが、情報艦はアメリカに限らず、ソ連だってたくさんに持っておるし、情報艦というものは、世界で持っておる国は相当にあるわけで、スパイというと何か不法なようなことをやっておるようでありますが、公海において情報をとるということは、世界各国ともやっておることで、何かスパイというような感じではない。そういうことでありますから、われわれとしては、公海内でいろいろ情報をとるということに対して、これはわれわれが文句を言えないわけです。しかし、領海の侵犯のごときことがあってはならぬということは、われわれとしても同意見であります。
  341. 松本善明

    ○松本(善)委員 私たちは、そういうスパイ活動が決して平和のためにならないと思っております。しかし、問題にしているのは、先ほど言いましたように、計画的にやっているのですよ。三木外務大臣は否定されましたけれども、それじゃ、この自白があった、それから朝鮮民主主義人民共和国がそういう自白を発表したということは、何としても事実なんです。プエブロ号の乗り組員がこういう自白をしたということを知っても、政府は積極的にその真偽を確かめるという行動をとらないのかどうか。そのことをお聞きしたいと思います。
  342. 三木武夫

    三木国務大臣 日本政府が願っておることは、プエブロ号の乗り組み員をできるだけすみやかに釈放する。釈放して、そうしてその事情は、航海日記もありましょうし、十分その事情というものを調査をする必要はわれわれも認めます。しかし、ただこの乗り組み員を逮捕しておいて、そうして調べるということだけでは、われわれとしては、それが正しい情報であるとは断定できない。すみやかに釈放して、そうして事実を徹底的に調査すべき必要はわれわれもあると思うのであります。
  343. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういう態度だから、プエブロ号が公海上で拿捕されたという発言について、ここで、委員会で問題になりました。そうして、あなた方は、これは一方的な情報によっていたということを認めざるを得なかったじゃないですか。そういう態度と同じ態度ではいかぬということを言っておる。政府のこの態度について、プエブロ号の乗り組み員はこういうふうに言っております。私たちのスパイの結果はもとより、艦船の航行の位置については、私たちが帰ってから報告する以前には、日本駐とんアメリカ海軍司令官もわからないようになっておる。だから、日本佐藤首相や三木外相が私たちの船の位置を知るはずがないと言っておるのです。そしてラスク国務長官も、プエブロ号事件について謝罪する用意があるということを言っております。あなた方が何と言おうと、プエブロ号が計画的に侵略とスパイ活動をしていたということは、日一日と明らかになってきておるのです。あなた方の答弁は、政府がアメリカの侵略とスパイ活動を一貫して弁護をし、そのための基地使用を認めていく方針だということを証明いたしました。プエブロ号事件後、エンタープライズをはじめとして、第七艦隊が日本海に出動し、いまにも朝鮮半島で戦火を引き起こすかと思われるような緊張した状態がつくられました。そうしていまB52によってなお続けられております。終わったのではありません。これはアメリカが侵略をし、なおかつ自分の主張を通すために、強大な武力で脅迫を続けておるということ以外の何ものでもありません。これはきわめて危険なことで、いつ日本を直接戦火に巻き込むかもしれないような行動であります。アメリカの核を含む強大な武力は、このような役割りを果たしております。これは戦争を抑止するというようなものでは全くありません。かえって、アメリカこそが、侵略と脅迫の政策をとっておるということの新しい証拠であります。あなたが核抑止力にたよるということは、このような危険な戦争への道であるということをきびしく警告して、私の質問を終わりたいと思います。
  344. 井出一太郎

    ○井出委員長 松本君の質疑は終了いたしました。  これにて総括質疑は全部終了いたしました。
  345. 井出一太郎

    ○井出委員長 この際、公聴会の公述人の件について御報告いたします。  公述人の人選等につきましては、さきに委員長に一任願っておりましたが、理事協議により、次のとおり決定いたしました。  すなわち、三月六日午前十時より意見を聴取する公述人の方は、日本経済研究センター理事長大来佐武郎君、東京大学教授川田侃君、国学院大学教授正木千冬君、午後一時三十分より意見を聴取する公述人の方は、第一銀行頭取長谷川重三郎君、慶応義塾大学教授加藤寛君、京都教育大学助教授関順也君の六君に決定いたしましたので、以上御報告申し上げます。  次回の開会日時につきましては、理事会において協議いたしましたが、結論を得ず、委員会散会後あらためて理事会で協議することに相なっておりますので、次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時四十分散会