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1968-03-01 第58回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月一日(金曜日)    午前十時十三分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 小川 半次君 理事 北澤 直吉君    理事 正示啓次郎君 理事 二階堂 進君    理事 藤枝 泉介君 理事 加藤 清二君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 広沢 直樹君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    上村千一郎君       植木庚子郎君    内海 英男君       小沢 辰男君    上林山榮吉君       川崎 秀二君    小坂善太郎君       坂田 英一君    鈴木 善幸君       田中 正巳君    登坂重次郎君       野田 卯一君    野原 正勝君       橋口  隆君    福田  一君       松浦周太郎君    松澤 雄藏君       松野 頼三君    森山 欽司君       山崎  巖君    大原  亨君       川崎 寛治君    北山 愛郎君       久保 三郎君    阪上安太郎君       田中 武夫君    楢崎弥之助君       畑   和君    森本  靖君       山内  広君    山中 吾郎君       横山 利秋君    麻生 良方君       中村 時雄君    浅井 美幸君       正木 良明君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 赤間 文三君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 園田  直君         農 林 大 臣 西村 直己君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 中曽根康弘君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 小川 平二君         建 設 大 臣 保利  茂君         自 治 大 臣         (国家公安委員         長)      赤澤 正道君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田中 龍夫君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官北海道開発庁         長官)     木村 武雄君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増田甲子七君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      鍋島 直紹君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         内閣総理大臣官         房陸上交通安全         調査室長    宮崎 清文君         総理府賞勲局長 岩倉 規夫君         総理府人事局長 栗山 廉平君         総理府恩給局長 矢倉 一郎君         総理府特別地域         連絡局長    山野 幸吉君         総理府青少年局         長       安嶋  彌君         警察庁交通局長 鈴木 光一君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁教育局長 中井 亮一君         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         経済企画庁総合         計画局長    鹿野 義夫君         経済企画庁総合         開発局長    宮崎  仁君         科学技術庁長官         官房長     馬場 一也君         法務省訟務局長 青木 義人君         法務省人権擁護         局長      堀内 恒雄君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省条約局長 佐藤 正二君         外務省国際連合         局長      重光  晶君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         大蔵省理財局長 鳩山威一郎君         文部省初等中等         教育局長    天城  勲君         文部省大学学術         局長      宮地  茂君         文部省社会教育         局長      木田  宏君         文部省文化局長 安達 健二君         厚生省環境衛生         局長      松尾 正雄君         厚生省医務局長 若松 栄一君         厚生省社会局長 今村  譲君         厚生省年金局長 伊部 英男君         農林大臣官房長 桧垣徳太郎君         農林省農政局長 森本  修君         農林省農地局長 和田 正明君         農林省畜産局長 岡田 覚夫君         農林省園芸局長 黒河内 修君         食糧庁長官   大口 駿一君         林野庁長官   片山 正英君         水産庁長官   久宗  高君         通商産業省企業         局長      熊谷 典文君         運輸省海運局長 堀  武夫君         運輸省船員局長 河毛 一郎君         運輸省鉄道監督         局長      増川 遼三君         運輸省自動車局         長       鈴木 珊吉君         運輸省航空局長 澤  雄次君         海上保安庁長官 亀山 信郎君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君         労働省職業安定         局長      有馬 元治君         建設省計画局長 川島  博君         建設省都市局長 竹内 藤男君         建設省道路局長 蓑輪健二郎君         建設省住宅局長 三橋 信一君         自治省行政局長 長野 士郎君         自治省財政局長 細郷 道一君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       石田 禮助君         日本国有鉄道副         総裁      磯崎  叡君         日本国有鉄道常         務理事     井上 邦之君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 三月一日  委員荒木萬壽夫君、船田中君及び楢崎弥之助君  辞任につき、その補欠として橋口隆君、内海英  男君及び堂森芳夫君が議長指名委員選任  された。同日  委員内海英男君、橋口隆君及び堂森芳夫辞任  につき、その補欠として船田中君、荒木萬壽夫  君及び楢崎弥之助君が議長指名委員選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十三年度一般会計予算  昭和四十三年度特別会計予算  昭和四十三年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 井出一太郎

    ○井出委員長 これより会議を開きます。  昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算昭和四十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。山中吾郎君。
  3. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私は、政治国民教育関係、したがいまして憲法国民教育関係を中心にして、政府の御所見をお聞きいたしたいと思うのですが、私は、最近の佐藤総理大臣自主防衛強調並びに灘尾文相国防教育に関する強調、それに便乗して増田防衛庁長官灘尾国防教育賛美論、こういう政府の一連の談話の中で、にわかに政治教育矛盾対立の度を深めてきたことを非常に憂えておるものであります。  私は、一国の問題として、政治教育矛盾対立をすることは、民族エネルギーを浪費する最大のものである、この政治国家目標と国の教育目標一致をするかしないかということが、その国の発展のかぎを握っておると確信をいたしております。そういう立場に立ちまして、現在の自民党並び佐藤内閣の中で、ことばはどんなに表現をされましても、憲法軽視体質があって、その体内から流出する国家論あるいは国防論教育観、そういうものが現在の世相の混乱を来たしておるのではないかと非常に深い疑問を持っておるので、政府の所信を出していただいて、国民がどう判断するか明確にしていきたいと思うのであります。私は大胆に私の意見も提案いたします。そういう意味において、総理大臣においても、たてまえと本音を分けないで御答弁を願いたいと思います。  その前に、私はこの憲法についての私の考え方を申し上げておきます。私は現在の憲法を高く評価いたしております。ことに国民教育立場からいいまして、この憲法の示しておる人類不変原理教育原理と合致するものであるから、ある意味においては教育憲法である。教育立場から私は、この憲法日本民族発展のために貴重なものであるという確信を持っておる人間であります。そういう立場でお聞きをいたしたいと思います。  まず、佐藤総理大臣にお聞きをいたします。  あなたはこの憲法をどのように評価をされておられるのか、お聞きいたしたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま山中君の御議論、私もこの席から拝聴いたしておりました。その前段、ものの考え方といいますか、その発想、構想については私も同一に思っております。申すまでもなく憲法こそ私ども生活の基盤をなすもので、その中に教育も入っておるし、防衛も入っておるし、何もかもみんな人っておる、憲法をかように評価して初めて憲法の意義があるのだ。基本法だと言っているのはそこだと思います。それに基づいてすべてが考案され、くふうされ、政治が進んでいく、また、そういう観点からは政治目標教育目標もそれは同一でなければならない、私はかような思っております。  いま私ども考え方が、あるいは右寄りだとか、あるいは憲法違反だとか、こういうことをしばしば言われます。これは表現の自由はございましょうが、それにしてもあまりに政府をきめつけられて、憲法違反だ、右寄りだ、こう言われますが、一体どういう点が右寄りなのだとか、どういう点が憲法違反なのだとか、こういうように御指摘を願うと非常に説明がしいいように思うのです。私はいずれの連中、いずれの国民にしても、これはひとしくこの国を愛し、この国を守り、この国に尽くすという、それは国民基本的な考え方だと思います。教育基本もそこにあるのだと思います。私はかように申したからといって、かつてありましたような極端な国家主義論者ではございません。私の考える国家というものは、これは一つ民族が、当然その民族の利益を守るためにつくり出すであろうそういう国家を考えておる。いわゆる国家至上主義だとかさようなものではございません。まして、ただいま主権は国民にあるのでございますから、そういう意味で考えていく。私はその基本的な考え方には、これはもう社会党皆さんもわれわれも、これは変わらないように思うのです。ただ、どうも自民党右寄りだとか、自民党憲法違反だと、こうきめつけられるところに問題があるように思うのですが、私は、そうたいへんきめつけられることは——もっと対話で、もっと話し合えばおそらくわかるのじゃないか。私は、社会党皆さんが国を愛するというようなことを考えていないというような、そんな極端な議論はしません。だからこそ、せんだっても社会党加藤委員から、愛国心は自民党だけの専売特許じゃないといってしかられました。私はそのとおりに思いますが、だから、こういう基本的な目標が同じなら、それから出てくるいろんな具体的な対策、それについての相違というもの、これはもうだんだんかけ離れてはおりますが、もっと対話で話をしたら、もっと国民として判断を下すのに楽ではないだろうか、かように思います。ただいまも、自分のほうも具体的な問題をあげて話し合うから、総理もそのつもりでおれと、こういうお話、私、たいへんけっこうだと思います。
  5. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私は、右寄りとか左寄りという表現は好んでおりませんから、そういう観念は少しもありません。ただ、現在の憲法について考えなければならぬと思うのは、この第二次世界大戦あとで、敗戦国分裂国家にされないで、統一国家として、一応民族が一体になって次の発展を考える国際的地位を持っておるのが日本である。したがって、世界がイデオロギーに分かれておるけれども分裂の姿で二つの世界——ドイツのように分裂をした姿で出ておるのではなくて、一つの国の中にあって、そのかわりに政党肩がわりをして、自民党社会党切磋琢磨をして分裂国家を免れたあとの代償として努力をしておる、こう私は見ておるのです。したがって、その場合に、この現在の世界の大体の最大公約数の思想を盛ってきた憲法共通広場として、ここからそれないで、保守党も革新党も日本政策を論じ、将来を論じなければならぬ、そういう分裂を免れた唯一の日本の国の共通広場としての評価総理大臣がしていなければ、これはいつまで論議をしておっても、答える者は適当に答え、また倉石農相のような暴言も出、ふまじめな状況だけが残るでしょう。総理大臣、そういう意味においての評価をあなたはしておるのですか。右寄りとか左寄りというような問題じゃないのですよ。どうです。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、憲法を、先ほど申しましたように、これは基本法だ、またこれによって私どもが行動する、そういうことで、その認識は別に山中君と変わっているとは思いません。
  7. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それではお聞きいたしますが、加藤委員の質問に対して、最初から、自民党の結党当時の政綱の中に改憲方針がある、その改憲方針については、われわれは憲法改正は考えておるが、総理大臣としては矛盾がない。どこかの政党もそうじゃないか——社会党のことをさしておると思いますが、お読みになったことはありますか、社会党綱領を。個人の問題は、あなたのほうでも愛知揆一氏、その他でも個人改正論憲法調査会速記録にもずらっと載っている。それで、他の政党と同じように考えておる。論理はまことに粗雑で、幼稚で、いま私に答えるような憲法についての見解をお述べになっている。これでは何の意味もないと思うのです。どこか違うところがなければならぬ。  私はいま一度申し上げます。押しつけられた憲法だという、そういうことだけに拘泥をして、その内容日本の進む道として妥当であるかどうかという評価をされないで、あの改憲方針が出ておる。この憲法というものに違反をしないと同時に、内容を完全に実施しようという線で、憲法の実施の延長線改正をしようとする方針と、出発点改正を考えておる政党とは、基本的に性質が違うでしょう。自民党政綱が、出発点において改正を目的とした政綱ならば、そこからは何が生まれてくるか説明をしてください、わかるように。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 憲法調査会調査をいたしまして、そうして一応結論が出ている。これは御承知のとおりでございますね。私どもは、その憲法調査会の趣旨もございますが、また、ただいまの状態において、私が憲法改正しないという、このことも再三繰り返しましたので、これはただいまの状況のもとにおいて改正論が支配していると、かようにお考えになることはない。これはひとつ御理解をいただきたい。  私が他の政党引き合いに出したこと、これは社会党引き合いに出したんだと言われますが、私は、綱領のうちにはないようですが、社会新報等ではっきり言われたことが、まだただ単にこれが個人的意見なのか、あるいはちゃんと一つ研究部会部会長の報告か、これまた個人的意見と、かように言われれば何をか申しません。それは私が他の政党のことを出したことは、この機会に取り消してもけっこうです。(山中(吾)委員「けっこうじゃない、取り消しなさい」と呼ぶ)それは取り消してもけっこうですが、しかし、私はいま言うように、この憲法論議自身は、ただいま改正手続まで規定しておるのですから、憲法永久不変憲法だ、かように考えないで、やはり前進する、国益のためにそれを考えていくということ、これは私は望ましいことじゃないかと思います。したがいまして、ただいまの状態、ただいまの政治でどういうことをするかが問題だ、かように考えますから、その点でひとつものごとを判断していただきたいと思います。
  9. 山中吾郎

    山中(吾)委員 佐藤総理大臣は、憲法のことを少しも御理解にならない。改正手続があるのはあたりまえのことなんですよ。明治憲法のように不磨大典永久不変真理だなんてだれも思っていません。憲法改正はあたりまえじゃないですか。そうでなくて、むしろ不磨大典、永遠の真理といえば思想不在になる。思想も無思想になるので、そうではなくて、いろいろの経過があっても、七十日の国会審議を経て、国民合意でできたこの成文憲法を、九十何条によって尊重義務を持つという立場に立つときに、改正手続があるから論議もしていいというのは、無理解そのものを示しておるのです。そんなことでは少しもない。その政党自身最初から憲法改正基本方針で党をつくったという、そのことが問題なんだと私は言うのです。民主主義平和主義というものを実現する方向で、この憲法の土俵の中で政党切磋琢磨をして、延長線改正するというならば、それはわかる。その意味があの改正手続ですよ。あなたは何を理解しておるつもりでおっしゃっておるか。私は、それが憲法理解憲法無視という表現をされておると思うのです。私は、憲法改正手続は当然わかっております。時代とともに憲法の解釈も進み、ある時代が進んだ限度においては、さらに改正をしなければならぬ。それは憲法最初からの性格ですよ。しかし、ヨーロッパの政党を見ても、一つ政党が政権を握っておる期間は十年、二十年と長くなっておる。そのときに、一たんつくった憲法は少なくとも四十年、五十年、いわゆるその政治最高の規範、約束として守っていくという立場に立たなければ、憲法に基づいたいわゆる国民価値観などは混乱をして、自分個人の幸福と国の最高目標に向かってエネルギーを使うという共同目標がないから、優秀な者は、それは個人のエゴイズムに入るでしょうし、あるいは虚無主義になる、あるいはふうてん族になる。国の目標というものは、成文憲法の中からそれを総理大臣国民に示し、教育目標一致するような努力をしなければならないのである。したがって、憲法尊重するということは、憲法違反をしないという義務じゃないですよ。同時に、完全に実施する義務尊重義務なんです。それは憲法のどこの学説だってもう常識なんです。そういう意味において、いまこれほどいろいろ問題が混乱をしておるし、自民党改憲という政党体質の中に、どこかに憲法軽視、軽く見るという思想があって、それが言動にあらわれ、政策にもあらわれ、そうしてこういう混乱を来たしておるので、憲法改正という出発点からの方針をお変えになったらどうですか。それでなければ防衛論だって出てきませんよ。国民合意は得られないと思う。いかがです。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまお話がありまして、山中君も、憲法不磨大典ではない、だから改正条項があるのは当然だ、こう言われる。したがって、個人的にそういうことについてのいろいろの議論をするのも、これも自由だ。その辺までは私どもと大体同一だ。したがって、私は、倉石発言というものについて、あれは改正を云々したものでもないということで弁護してまいりました。しかし、皆さん方は、あれはけしからぬと、個人表現の自由まで実は奪われた。そういうことで、倉石君はそれで責任はとらなかったけれども、とにかく空白にしたということでやめた、かように思います。だから私は、社会党の方も、おそらく、これはもう一切批評してはならぬ、こうは言われないだろうと思う。また、研究をしてはならぬ、こうは言われないだろうと思う。この辺は私どもと一緒だろうと思う。ただ、私どもがいま綱領を設けておりますのは、これはもう御承知のように憲法制定の当時のいきさつですね。これは御承知のように、占領下においてあの憲法ができたわけで、私ども国民がほんとの自由意思であの憲法をつくったとはたして言えるかどうか、そういうことは言えると思います。私どもは、あの占領下においてこれがつくられたということ、これは社会党の方もお認めだろうと思うんです。そういう意味からいろんな議論が出てくる、ここに問題がある。(「自民党が反対すればできはしない」と呼ぶ者あり)これは不規則発言ですから、一々答えることはございませんが、自民党が反対するだろうとか、そんなことはよけいなことです。私はあの占領下の現実を申し上げるのです。占領下国民の完全な自由意思のもとにつくられた、かようなことはなかなか言えないのではないか、かように私は思います。そういう意味から、この問題について、政党によって、独立した国家なら、国民自由意思による憲法を持つのが当然だという、これは私は本来の民族基本的な主張じゃないかと思います。そういう場合に、どの条項改正するとかいうような問題になると、これはいろいろ議論がございます。だから、いま自民党がこういう綱領を掲げたからといって、それが不都合だ、かように言われることはどうかと思う。これはもう皆さん方も御記憶に存することだ。でありますから、この自民党が掲げている綱領という問題と、現内閣が一体この問題をどう扱うかという問題と、これは別でございまして、私は、自民党綱領を掲げたからといって、それを不都合だとは思っておりません。また、私自身総理として、現内閣は今日の状態においては憲法改正などは考えません、これはもうはっきり言っている。ことに憲法のうちでも第九条、これは国民の血となり肉となっている。こういう問題を改正するような考え方は毛頭ない。これはもうたびたび申し上げたところです。だからただいまのように御了承をひとつ願いたい、かように私は思います。
  11. 山中吾郎

    山中(吾)委員 どうも総理大臣のおっしゃることは、日本民主政治前提条件を無視されておるのですよ。この憲法を制定したのは、この国会において七十日の審議をして——もちろんアメリカの最初の草案もある。しかし、各党論議をして、各党一致をして——共産党だけ除いて、この憲法が承認された。この前提条件を無視して、いまさら、この憲法はわれわれがつくった憲法でないと言う。一国の総理大臣がそんなこと言えるのですか。何ですか、それは。だから、内容について反対するので、手続について反対は何ですかと言っている。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はわれわれがつくったのではないということは申しません。占領下でこの憲法ができた……。
  13. 山中吾郎

    山中(吾)委員 占領下であろうが、国会がきめたのです、これは。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 占領下でできたということははっきり申し上げている。これは皆さん方も否定はなさらないと思う。その形は、いま言われるように共産党を除く全会一致——これは全会一致でできた、そういうことは私も認めないわけじゃありません。しかし占領下でつくられたということだけは、これは現実ですから、事実の問題なんです。これを否定するわけにはいかない。
  15. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私は歴史的事実を論議しておるのではありません。この憲法の成立は、この国会において審議審議を重ね、数カ所の修正もし——速記録を見なさい。そして論議論議を重ねて、その当時の総理大臣もこれについていろいろと賛成の論議を、あなたの先輩の吉田さんも言い、できた。この民主的手続を無視して、占領下で人がよこした憲法だということで出発しておるところに憲法軽視思想があるのです。この前提条件を無視されてどうしますか。国民は、旧憲法と新憲法の中に価値観の断層がある、断層があるので、新しいこの憲法に原典としてものを考えていくという価値観が成立しないために、いま世相の退廃がある。そしていまさら、二十何年もたって、アメリカから押しつけられた憲法だからと言う。自分で食ったまんじゅうがうまくないから、おれによこしたのはけしからぬと、子供みたいなことをおっしゃるのはどういうわけですか。そんなばかなことはありません。それならば総理大臣、一番大事なことは、この憲法国民のしあわせになるかならないか、内容において論議をしなければならぬ。手続は、この国会において慎重審議をしてきめた憲法なんです。そういう考え方憲法軽視で、憲法尊重するというあなたのことばは魂のない、うそなんだ。たてまえと本音が違うということを歴然といま証明しているわけなんですよ。どうですか。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 山中君の御議論も、そう私は間違っているとは思わない。私が申し上げるように、とにかく占領下、独立前に、サンフランシスコ条約前にこの憲法ができたというその事実も、これは間違いないことなんです。これはまさか否定はなさらないだろうと思う。私は、皆さん方の御議論をこの状況のもとにおいて否定しようとするものでもありません。これは事実の問題ですから、また皆さん方がその次の発展——これはもういい。そこで問題は、そういう憲法、いろいろな問題を持っておる憲法、それが一体どうなるか。いまの内閣でそれを改正するのかどうか。私はしばしば申し上げますように、現時点でこれを改正する考えはないと言っている。それでもういいのじゃないですか。だから、そこらの議論を前にさかのぼらして、そうしてやっていることがいろいろ問題を紛糾させておる。だから、いまのこの事態、このもとにおいて一体これはどう考えるか、こういうことこそ国民が考えるべきなんでしょう。私どもここでいろいろ御議論しておりますが、このマイクを通じ、このテレビを通じ、国民皆さんも必ず聞いておられる重大な論争だと思う。しかし、私は山中君の言われることが全部間違いだなぞということは、どこにも言っていない。私は、この憲法が制定されたのは、そのときはこういう状態だと、日本の独立前だったということを申し上げておる。したがいまして、私はそれについて国民の中にいろいろ議論されること、これはもう当然だろうと思います。またそれが、共産党を除く他の党の全会一致でこれができた。その間にはいろいろ修正もされたという、そういうことを私は否定するものでもない。だが、そういうことはこれはもういいんだが、いまこの憲法をどうするかということが問題なんだ。また、現在のわれわれがやっていることは軽視、軽視と言われるけれども、軽視ということは、これは感じの上の問題でしょうから、さらにこの内容無視あるいは憲法違反、こういう問題をやっぱりこの場合に追及されるというなら、私は正しい態度だと思う。私はそういう意味で幾らでも御議論する、かように思っております。
  17. 山中吾郎

    山中(吾)委員 どうも総理大臣の偏見が、やはり全体が憲法軽視につながっておるものだから、この問題を論議してばかりはおれないのでありますけれども、これだけは明確にしておきたいと思う。独立以前と言っておりますけれども、アメリカと平和条約を結ばなかっただけで、日本は依然として独立しておった。それなら中国とも平和条約を結んでいないから、中国との関係では独立していないということになる。占領政策というものがもちろんあることは明らかだ。したがって、アメリカの助言があったことは明らかだ。しかし、それを受け入れたのは、敗戦の反省とやはり日本民族の伝統の中で受け入れる土質があったのです。そうしてこの国会論議を重ねて、悩みながら、あらゆる思想を持った者が悩みながらこの憲法ができておる。形式上は天皇の名における改正手続をとって、中身は君主主権から国民主権の革命的内容を持っている。断絶はある。連続と断絶を含んで、そうしてどこかに日本国民合意の中に生まれたこの厳粛な事実を軽視をして、そうしてその事実がこうだった、こうだったという思想は、現在この憲法のもとで総理大臣として政治をしておるあなたは、一体九十何条による憲法尊重の精神に合っていると思っているのか。大体そういうものの考え方というものが総理大臣にあるから、日本政治というものは混乱をし、問題にすべからざるものさえ問題になる。その点は、もう少しこの憲法考え方について、内容というものから入って、手続というものから入って、もっとしっかりした憲法観をお持ち願わないと、国民が気の毒です。国民は、との成文憲法のもとに教育基本法があって教育されて育ってきているのですよ。ところが、為政者のほうがそういうふうな思想にあるものだから、個人目標国家目標が合うはずはないじゃないですか。私は、そういうことを論議しても、いま直ちに結論は出ないと思いますが、改憲保守党から少なくとも護憲保守党に転換をされなければ、これから国民合意を得られませんよ。自民党のほうは結党の政綱改憲を入れているのだから、改憲保守党なんだ。それを世間では反動というのだ。反動というのです。それをお変えになる、変えられる意思はないのですか。社会党は、憲法の完全実施の中で、民主主義の徹底をする中で理想を実現しようとする護憲革新党なんだ。そんな改憲保守党と違うのですよ。どうですか。全然次元が違いますよ。もう少し認識を深めていただきたい。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ自民党綱領等を御批判で、あるいはそれが気に入れば自民党に入ってもいいようなお話のように聞けるのですが、とにかく、それぞれの政党にはそれぞれの考え方があります。ここで問題になりますのは、とにかく現内閣がどういう処置をとるか、憲法九十九条を忠実に履行するかどうか、憲法を順守する、その責任を果たしておるかどうか、また同時に、これから今日どういうように改正するとか、そういうことが問題なんで、私がもうたびたび申し上げておりますように、現時点では憲法改正しません。これはもうはっきり申し上げておる。だから、その点はやはりそのまま受け取っていただきたいのです。やはり自民党にどういう綱領があろうと、現時点では改正しないということをはっきり私申しておるんですから、これはひとつそのままとっていただき、また、自民党綱領についての批判は、また適当なときにひとつやっていただいたらと思います。  私は先ほど来言うように、とにかく憲法占領下でつくられたということだけは、これは何としても曲げることのできない事実だ。これだけは重ねて申し上げます。同時に私は、こういう事柄があるから自民党憲法軽視をするのだ、かようなことを言われますけれども、私はさようなものじゃないと思います。私はそれぞれの考え方があっていいんだと思います。そういうところに進歩もあるだろうと思います。また、そういうものは最後に国民自身が決する。これはもうただいま主権在民ですから、その政党がいろいろなことを申しましても、最終的な審判者は国民だ、これはもうはっきりしておるわけです。私は、今日までこの自民党綱領皆さん方からも指摘され、あらゆる選挙でこの自民党綱領は批判されたと思う。しかし、国民はわが自民党に多数を与えておる、こういうことを考えますと、大部分はやはり私のいままでの主張をそのまま承認しておるのではないでしょうか。支持しておるのではないでしょうか。私はそういうことまで言いたくなる。ただいまのような話になればですよ、そのことを言いたくなる。しかし、私はいまそのことを申しません。
  19. 山中吾郎

    山中(吾)委員 次に移りたいと思いますが、ただ一言私の考え方を申し上げておきます。憲法を重視しないという体質から、心理の錯倒というものがたくさんあると思う。倉石さんのああいう——失言はいつも本音が出るものですが、漁業の安全操業というものが問題になったときに、憲法尊重する体質を持った閣僚の場合には、何とかしてこの危険な操業によって損失を受ける漁民には、漁業補償法をつくって守らなければならぬという思想が、政策が流れてくるのです。ばかばかしい憲法という発想は出ないのです。出るはずがないのです。一体この憲法はばかばかしいんだ、あなたは占領下につくった憲法——国会が真剣に論議をしてできた、敗戦の反省と、そうして何とか戦争しない方向に、平和と民主主義を基調にしていこうといってできた憲法に対する価値観がなくて、ばかばかしい憲法だという発想から出発すれば、軍艦でも持って何とかするという発想で、憲法無視のいわゆる思考しか生まれてこない。どうしてこういう海上の不安の中で漁民を補償する法案の制定を農林大臣が考えないか。これは憲法軽視自民党政権から流れてきた心理の錯倒なんです。おめかけ、おめかけということばを使って、これも憲法軽視につながりますが、金力と武力で日本をかかえておるめかけ契約というものは、安保条約じゃないですか。安保条約に批判をするならばわかるが、また憲法に批判が戻ってくる。憲法軽視体質から出てきた佐藤内閣の閣僚の本音でしょう。私はその失言を論議するのではない。それほど日本の閣僚に、憲法軽視思想から流れてくる心理の錯倒がある。おそるべき政治現象だと私は思うのです。それを、もう少し憲法に対する考え方を変える御意見が出るかと思ったら、依然として倉石農林大臣を弁護してみたり、どうしてそういう言辞が出るかという、現在の政権の体質を反省されない。そこに私は、総理大臣の言われておることばの中にあなたの反憲法体質があると思う。体質がありますよ。そういうお立場から全部錯倒してくるのです。だから、あとで九条の問題についても御意見を聞きたいと思いますが、なお各新聞の、この正月の毎日新聞、読売新聞、朝日、あらゆる新聞の中で、この憲法を守るという世論調査というものはもう絶対的になっている。そこから出発をして総理大臣政策を考え、発想しなければ、占領下憲法だからというところから発想すれば、これは国民無視でしょう。国民不在の内閣総理大臣思想になるでしょう。考え方を改むべき段階にきておるのじゃないかと私は言うのです。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この席でたびたび申しますが、倉石発言なるものは、倉石君も申しておりますように、軽率な、また不用意な発言でありまして、私はこの上責められることは——彼が軽率であり不用意な発言をしたから、これは当然だと思います。しかし、私はもうすでに皆さん方のお許しを得たのじゃないか、かように思っております。でありますから、まあ同僚でもありますし、どうかそういう意味で、この不用意、軽率な発言について彼が考えておる点をひとつ御了承願いたいと思います。  もう一つの点で、私自身体質、これは山中君が名医で御診断をなすって、私の体質憲法違反だと言われるようですが、しかし、私はただいまの国民の世論もよく知っておりますから、ただいまの状態において改正しない、現事態において改正しないという、これはもうはっきり世論を尊重した結果でございますから、そういう点も御了承いただきたいと思います。
  21. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それでは次に移りたいと思いますが、私は、いままでの憲法論議は、国防論だけから憲法論議をされてきておるのですが、国家論というものが抜けておると思うのです。また、人権という第三章の関係からも、私は憲法が不在になっておると思うのですが、いずれにしても、国民形成、人間形成の立場から、やはりこの憲法というものは心の底から尊重しなければ、日本民族の浪費というものが無限に出てくると思うのです。文部省と日教組の対立の中にもう具体的にあらわれておるのですが、この問題を通じて、総理大臣に具体的な問題に入ってお聞きしておきたいと思うのです。  いま、国の考え方についていろいろ論議をする中で、施政演説の中にも具体的に出ておりますように、明治百年祭の計画をいまされておられる。その明治百年祭についての意図について、非常に疑問がございます。  そこでまず、総理大臣が施政演説の中で、最初に明治百年の年を強調されておられるので、その百年間といいますか、明治百年に対する基本的な考え方をお聞きいたしたいと思います。
  22. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 明治百年を記念するという行事をいろいろやっておりますが、そこでいまの、ことばの問題ですけれども、百年祭という、祭りということばは実は使わないように特に気をつけておりますから、どうかこれだけは気をつけていただきたい。いまもう申すまでもなく、宗教的なものはいろいろ政府は考えるわけにはまいりませんから、そういう誤解を受けるようなことはしないようにというので、百年祭とは実は百年の行事あるいは百年を記念する事業、こういうように申しております。だから、まあその点は、これはほんとうにつまらないことばの問題ですが、こういう事柄がしばしば大きくなって間違いが起こるようであります。私たちは、ことし明治百年になるわけであります。この百年間の歩みを見ますと、ただいま言われますように、かつての封建時代から民主主義国家に出ていった、しかもこれだけの大変革がほとんど流血の惨事というような、いわゆる革命というような形でなしに、日本の場合はこれは完遂された。そうして積極的に開国、さらに西欧文化取り入れ、追いつき追い越せという、他の国に負けないようにひとつしよう、発奮しようという非常な努力をして、そういうところに今日の発展の基礎ができた。また今日戦争に負けましても、これだけ経済発展ができる。また思想的にも非常な柔軟性があって、時代に即応するようなことにもなってきておる。私は、過去を顧みて、ただ単に復古主義、回顧主義、そういうものにふけるつもりはございません。しかし今日は、やはり過去百年の結果、所産だ、かように考え、また今日が今後の百年の一つのスタートだ、かように考えますと、この意味で、過去を顧みることも、またそうしていいことは取り入れるし、悪いことは反省していく、こういうところも非常に意義のあることじゃないか、かように実は思っておるのです。まあ人間は一つの区切り、区切りでそういうことを反省するものでありますから、百年というものは——あるいは長過ぎると言う人もあります。もっと、反省をするのなら毎日やればいいじゃないか、こういう考え方もあるようですが、民族的な反省等からいうと、ちょうどいい一つの仕切りではないか、かように私は考えております。
  23. 山中吾郎

    山中(吾)委員 ごく簡単に総理大臣は考えておられるようですが、この明治百年についての総理大臣の施政演説の中にも、「わが国はことしで明治改元百年を迎えました。国民各位とともに、明治の輝かしい経営のあとをしのび、国家民族の長い将来にわたる発展のため努力する決意を新たにしたいと思います。」栄光の明治百年をたたえておられるのですが、明治百年の中に明治八十年と戦後二十年の断絶があるのです。この憲法のもとにおいて明治百年をお祝いなさる場合には、その明治百年の行事を行なうことに続いて、新しい憲法についての価値観国民に浸透させるという一そういう意図をお持ちになっておるかいなかということが、重大な憲法に対する総理大臣考え方の分かれ目なんです。何もそういうお考えはないようですね。あればお答えください。
  24. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん御指摘になったような点もございますし、各界の方々の御意見も聞いて、委員会を設け、そうして記念行事などもいろいろ計画いたしました。その詳細を一とおり総務長官から説明させますから、その上でただいまのような点についてもいろいろ質問を続けていただきたいと思います。
  25. 山中吾郎

    山中(吾)委員 総務長官にお聞きする前に——記念行事、事業をたらたら長く言われちゃ時間がないので困るので……。私は、全部知っております。知っておりますが、たとえば森林公園あるいは歴史博物館、明治の森、明治天皇紀の編さん、植樹祭、青年の船、こういうものが一連にある。そういう行事と、今後この憲法というものを、明治百年のいわゆる昔のいいところと悪いところを厳粛に反省をして、平和と民主主義を基調とした憲法の精神を高揚するという、その趣旨と何の関係もない。植樹祭というのは営林署の行政を応援するだけだ。私は、そこは説明しなくてけっこうですから、次にお聞きいたしたいと思うのです。  一体、明治のあの近代化、世界が驚くようなスピードアップした近代化は、どこにその大きい原因があるのか、大東亜戦争を破局に持っていった失敗はどこに原因があるか、それを総理大臣にお聞きしたい。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 とにかく明治百年、これはたいへん長い期間でもあり、その間にいろいろなできごとがございました。一々やっていると、それはたいへんだと思います。先ほど私が申し上げますように、この明治百年のうちに、いい点は私どもはこれを取り入れる、また、まずかった点は反省の材料にする、今日はやはり過去百年のそのもとに築かれた今日だ、現状だ、またこれからの百年は今日をスタートにするのだということを申しましたから、その点を御理解いただけば、いまの一々どの点はどうだった、こうだったということはやや詳細になり過ぎる、また他の機会にでもひとつまかしていただきたいと思います。
  27. 山中吾郎

    山中(吾)委員 どうもその辺、憲法をものの考え方の基点として十分に分析をして考えておられないようで、思いつきで明治百年を考えられたように思うのですが、それ以上は私はかれこれ言いせん。ただし、厳密にいったら、ことしは百一年ですから、明治百年じゃありませんよ。改元の年が明治元年ですから、百一年。まあいずれにしても、この明治百年の中で、私は総理大臣に、いまでもいいから考えていただきたいのは、明治の、あの封建社会から近代化に持っていって、あれだけの、いわゆるアジアにおける唯一の独立国の道を歩んできたのは、政治における国家目標教育目標を一体化するに成功したことにある。ただし国家目標については誤りがあったから破局にいったが、政治の少なくとも要諦というものは、国の掲げる目標国民が納得をして教育目標に転化することができるときに、その政治というものが、民族エネルギー共同目標に持ってきて、青少年が退廃しないように、企業家がエゴイズムに入らないように、何か自分個人目標を越えたものと、自分のためと国家のためが一つになる秘密があると私は思うのです。そういうことを考えて明治百年を回顧されるならば、あの国家目標に誤りがあるなら誤りを改めて、少なくともどこにああいう政治教育の一体化というものができたかということを考えてくるならば、現在つくった成文憲法というものは、人を殺してはならない、平和思想と、治める者と治められる者が一つという国民主権という人類普遍的原理に基づいた、そういうものを基調に持った憲法である、占領下にあろうが何にあろうが。それは教育目標に転化ができる。人の命、人権尊重教育原理に合ってくる。人間を手段に用いないという思想政治目標が入ってくるので、この憲法というものを教育的価値からながめたならば、これを国民教育原理に持っていく努力をして、その中で教育をされた国民で、資本主義を選ぼうか社会主義を選ぼうかは、国民にまかすべきである。これはイデオロギーの教育ではないでしょう。そういうことを明治の歴史の中で先輩に教えを請うならば、そういう考えを持って明治百年をやるならば、私は賛成します。何もないじゃないですか。  総務長官の担当だそうでありますから、お聞きいたしますが、一体この明治百年というものについての着眼、意図——ごく簡単でいいですよ。行事なんか並べないでください。
  28. 田中龍夫

    田中国務大臣 明治百年の行事は何を祝うかということであろうと存じます。これは過去百年におきまして、日本が非常に繁栄をした、その繁栄を喜び、お祝いをするのでございます。
  29. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私は、情けなくて、再び質問する気にならない。大東亜戦争で三百万の同胞を犠牲にして、明治百年の反省の上にこの憲法ができておる。何ですか、明治百年をたたえて何だ、それで終わりですか。あなたはおとうさんと違いますよ。だから自民党の各閣僚はみんな憲法無視体質が出てきておる。——答えたければ答えてください。
  30. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま申し上げたとおりに、そういうふうなものの考え方から、一定の主観とか一定の思想とかということを基本にお祝いをいたすのではございませんで、かような意味で、一つの事件とかなんとかというものを対象としてお祭りをするわけでもございません。かような次第で、われわれは静かに過去を顧みまして、同時にまた過去の教訓を反省し、そうして今後百年の思いを新たにする、覚悟を新たにするというところに大きな意義があると私は存じます。
  31. 山中吾郎

    山中(吾)委員 長官、こういう考えに基づいてと、こういう考えをあなたは言わないじゃないですか。何だかわからない。一体そういう考え方——これは国民の税金で明治百年をやっているのですよ。この憲法下における政府が取り上げているのですよ。これは民間でやらしているのではないのですよ。そんなあやふやな、識見のない立場で明治百年を予算に計上して政府の主催でやる。憲法というものをわからないでやるから、こうなる。何ですか、いまのは。この考えって、あなた、この考え、聞いたことがない。
  32. 田中龍夫

    田中国務大臣 明治百年のお祝いをするということは、これはほうはいとして国民各層から起こってまいりましたその気持ちをくみ取りまして、政府におきましてはこの行事をいたすことにきめたわけでございます。かような次第で、われわれは特にいま申し上げたような特定の目的、特定の理念というものを持たない、同時にまた、それは国民一人々々の経験と胸にあることでございます。かような次第で、この百年の繁栄をお祝いして、そうして新しい百年を、思いを新たにするというところに非常に意味があると私は存ずるのでございます。
  33. 山中吾郎

    山中(吾)委員 長官自身がおわかりなくてしゃべっておられるから、私がわかるはずがありません。閣議の中で行管長官が、「五箇條の御誓文」のような格調の高いものを明治百年に出したらどうかと言ったという新聞のニュースが出ておりましたが、それにこたえて、新聞の「天声人語」に、それよりも政府は「五カ条の謝罪文」を出したほうがいいという批評がある。その謝罪文の一は、「物価の上昇をとどめえず、上昇をはばむ努力も十分につくさず、国民に多大の被害を及ぼしたる点、まことに申訳これ無く」。(拍手)「二、政治と金のくされ縁を断ち得ず、政治資金の規制も公約をホゴにして国民をあざむき、政界の粛正と浄化を怠りたる点、まことに申訳これ無く」。(拍手)「三、積年の不手ぎわにより財政の硬直化をまねき、来年度の減税も実質ゼロとせざるをえず、重税にあえぐ国民に、いちだんと重い負担を強いる点、まことに申訳これ無く」。(拍手)「四、綱紀のゆるみ、退廃を生じ、公務員の汚職傾向増大したる点、まことに申訳これ無く」。(拍手)「五、脱皮なく進歩の意欲なく、政権の座を守るために圧力団体にひきずりまわされ、“政治不信”の気持をさらに国民に植えつけたる点、まことに申訳これ無く」(拍手)こういう世論の批判もある。お祝いという感じのムードを出して明治百年を国民の税金でおやりになるという考え方はふまじめである。やはり明治八十年の歴史と、そのあとに反省でできたこの憲法後の二十年というものを謙虚な気持ちで分析をして、そうして明治百年間を確立しておやりになる。そうでなければ私は思いつきになると思うのであります。そこで私は、この機会にお互いに反省をいたしたいと思うのですが、外からはどう見ておるか。朝鮮民族からは、日本においては明治百年をお祝いするそうであるが、われわれ民族から言えば屈辱の百年であると言っている。中国からは侵略の百年だと向こうでは受け取っておる。沖繩の人々もどう考えているか。返還がまだ実現しないうちに明治百年をたたえる内閣——これは民間ならいい。内閣のこの催しをどう考えておるでしょう。北ベトナムの人々も、人の気も知らずと言っておるのではないでしょうか、アジア民族として。そういうことを考えて真摯にこういうことは考えるべきである。それを考えない着意、そういう考える着意をお持ちにならないところに私は体質論を出しておるのであります。私はそういうことを考えてこの明治百年というものについて提案をして、総理大臣及び関係閣僚の御意見を聞きたいと思うのです。  まず、この間、金という朝鮮人がああいう大騒ぎをした。あれにもやはり民族の恨みというものが個人の異常性格の中にあらわれたと私は解釈をいたしますが、そういう問題はそれとして、こういう明治百年の間に明治時代に大陸進攻した、侵略をしたという反省は、民族の誇りを打ち立てるためにわれわれは反省すべき問題である。そういうことを考えて明治百年をおやりになる、私ならばこういうことを考える。  大蔵大臣にお聞きしたい。日本の紙幣の中に、五百円札の肖像は岩倉具現、千円札は伊藤博文、一万円札は聖徳太子、みな旧憲法のイメージの上に立っておる人である。それは私はいい。歴史の中の先輩であるからいい。思想の変遷もある。しかし、伊藤博文も国会発展史の中でもし一つ立場で価値評価をするならば、外国にも通用するところの紙幣の中の肖像において表彰するには不適当である。伊藤博文が初代の日本の朝鮮植民政策における統監なんだ。日韓条約を結ぶときに私は質問の機会をとらえたけれども、文化財を返せという大部分の向こうの要求した文化財は、伊藤博文が持ってきた文化財である。そうして伊藤博文に民族的な恨みを持って暗殺をした安重根は、ソウルの中に銅像として建っておる。そういう人をあえて、百円札紙幣の肖像に持ってこない。国内的な場面にするのは正しいと思うが、そういう無反省な中に、アジアの一つの先輩としての考え方の中に非常に軽率なものがある。  大蔵大臣、千円札をせめて伊藤博文はほかにかえて、この平和憲法をみずからマッカーサーに要求してつくった幣原さんとかえるぐらいのお考えはないですか、どうですか。
  34. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 昭和三十八年に新しい千円札を出すときのいきさつは御承知だと思いますが、日本銀行は東大の心理学教室にこれを依頼してこの選定をいたしました。そのときの調査の結果でございますが、兌換券に印刷する肖像人物としてはどういう人がふさわしいかということについて、明治二十年に一応日本政府が選定した候補者がございました。それから終戦後新しい民主日本ができ、新憲法ができてから、どういう人物がふさわしいかというようなことについての選定も行なわれました。そこで文化人、政界、宗教界とかいろいろな各層から候補者を選び、名前だけあげて意見を求めた結果、十人の候補者が選ばれました。その十人の候補者を今度は写真をつけてまたさらに再調査した結果、これは御承知と思いますが、第一位が伊藤博文、二位が野口英世、三倍が岩倉具現、四位が和気清麻呂、五位が夏目漱石、渋沢栄一、内村鑑三、本居宣長、柿本人麻呂、樋口一葉、こういう人たちが選ばれて、これが第一位になったために日本銀行もこれを採用したということでございますが、これを発行以来すでに年月がたっておるのに別に大きい問題はなくて、すでに国民になじまれて広く普及しているのでございますから、ここでこれを不適当として特にかえる必要というものは私はないんじゃないかというふうに考えます。
  35. 山中吾郎

    山中(吾)委員 何も識見をお述べにならないので、まずこれは内閣体質であると思って次に移ります。  総理大臣、北山委員があなたに、憲法尊重という精神をことばでなくて具体的に示す一つの方法として、憲法記念日の政府主催におけるところの行事を復活したらどうかというときに、考えはありませんとお答えになっている。私は、前々回の国会において、建国記念日を強行採決されるくらいならば、同時に新憲法の精神を高揚する五月三日の憲法記念日を途中で廃止をしたが、復活されたらどうか。初めて民族に対する伝統というものを考慮すると同時に、新憲法というものを国民の心の中に定着をせしめるという尊重の精神が事実にあらわれるゆえんだということについて検討をしてもいいとおっしゃった。この間はそういう考えはないとおっしゃっている。明治百年をやる場合については、この何か憲法を高揚する一つの行事を同時にお考えにならなければこういう誤解が出る。検討されるべきじゃないのですか。
  36. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 明治百年のほうは、私、各界の方々の意見を徴して、そうしてこれの行事、事業等をきめたのでございます。これは私が、政府あるいは独断でというものではございません。国民の各界各層から意見を徴して、そうしてただいまのような行事並びに意見を私きめた、こういうものでございます。  その次の問題、これは元の総理である片山哲さんがたいへん熱心でございまして、これは片山さんからもたびたび御意見を伺っております。おそらく民社の方が中心になってやっておられるのじゃないかと思いますが、非常に御熱心に憲法記念事業をやっておられる。私、これらの点も伺いながら北山君の御意見もここで拝聴いたしたのであります。そういう点について私十分伺っておりますから、伺ったということに、ひとつさしておいていただきたい。
  37. 山中吾郎

    山中(吾)委員 伺ったということなら、だれでも伺ったでできるんですが、検討されることはどうです、検討されることは。
  38. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいま検討するとお約束するのは、まだ、ただいまの状態では早いように思っております。しかし、皆さんの御熱心な御意見を拝聴いたしております。
  39. 山中吾郎

    山中(吾)委員 もっと総理大臣の本音を聞きたいんですが、時間がないので、まことに残念でありますけれども、具体的な問題に入りたいと思います。  教育憲法の問題について具体的な質問に入っていきたいと思いますが、その前に、これももう一つだけ総理大臣に提案をして御意見を聞きたいと思うが、明治百年の中に青年の船というのがある。そして三百名の青年を海外に出すということは、愛国心というものが育つだろうという意図のようであります。ところが、明治意識というものは教育の力だということを、また演説にしばしば言われておる。私は、その点は間違いないと思うのですが、一方に、灘尾文部大臣ばかりではないが、歴代の文部大臣が使命感とか、あるいはいろいろの点、聖職感とか言って、政党のほうの幼稚な考えから、教師に対して外からものの考え方を押しつけるようなことをされておりますが、ほんとうの国を愛するという気持ちが、押しつけでなくて、自分で生まれてくるのは、自民党の代表として福田委員が言われたように、外を見ることである。それに総理大臣も同感をしておる。そして、明治というものが教育の力で発展をしたという識見があるならば、そこから流れてくる行事というものは教育の船であろうと思うのです。日本の教壇に立つ諸君に免状を与える前に海外を一度見てもらう。そして教壇に立ってもらう。あと自民党の古い人たちが勤評でやっつけるとか、学力テストをどうなんて、もうすでに大学を卒業した独立の人格に、物理的な力で誇りを傷つけ、子供を教えるというプライドを傷つける中で、何の役にも立たないことばかりに力を入れられておる。それならば、教壇に立つために一度外国を見てもらって教壇に立てて、あと教育の自由でまかす。このくらいの識見をお持ちにならなければ、何のために政治をしている。人権じゅうりん、権力を行使することに喜びを感じておるような、そういうことにしかならないじゃないか。特に、私は思うのは、大体教育の年間の給与は、国税で百万である。百五十万くらいかもしれない。大学を卒業して二十四歳、定年の六十歳までの三十五年間には一人の先生に国税は三千五百万円を払うことなんです。三千五百万円の金が要るんです。そこでその三千五百万の国費を投じて、教育国民形成をしてもらう先生に、尊敬とプライドを持ってもらうということが大事であるし、それ以前に、その人の人生観において、自然にこの日本の国に対する愛着を持つように、養成過程において考えることが政治の要諦だと思うのです。三百名の青年を乗せて、女の子を乗せないからと文句をいわれて、取り消して総理大臣が入れている。三百名の人に外国を見せて何になる。選挙区で、その青年を推せんしたといって、国会議員が選挙運動に利用する程度に終わる危険のあるものだと思うのです。一人の先生は、一年間に自分の担任を一クラス四十名とすると、三十五年間に千五百名の国民形成の仕事をし、影響力を与えておるのですよ。千五百名の国民形成を担当し、何らかのその人の人生観に影響を与えておる先生——もし三百名の先生になる人を乗せれば、一生の間にその人は日本国民に対して、何万という人に精神的影響を与える金の使い方なんです。むだ使いをどこからか要求されれば、圧力団体であるかどうか知らないが、簡単に思いつきで明治百年の行事がずらっと出ておる。長官のように、明治百年間に何らの識見がないからそうなるのです。青年の船をつくるくらいなら、なぜ教育の船をつくり——勤務評定であれだけくだらぬようなエネルギーを浪費して、超勤手当について変なところでこせこせするような識見のない政治は、何だ、これは。もし教員養成の過程において、一人に五十万、三十万の金を出せば、世界漫遊させられるじゃないか。教壇に立った人間に国税三千五百万を使うだけの大事な人ならば、教員養成のためになぜ力を入れない。明治百年は、その憲法には神話に基づいた天皇信仰が入って、最後には破局に持っていった失敗はある。それは別として、国の目標教育目標一つにして、そして共同目標エネルギーを吸収したところに、あの力が出ておるのです。まず閣僚になった人間は、占領下につくった憲法だなんてくだらぬことを考えないで——普遍的原理にならっておるこの憲法は、理性に対する忠誠の心と一致できる普遍の原理を持っているのです。生命を尊重する。他民族をやっつけてはいけない。そして治める者われわれが、政治の主人公である。旧憲法のように、自分はゼロでだれかの個人のために尽くすという愛国心でなくて、政治の主人公であるから、この国の運命は自分にあるという人格的な自覚の中に、愛国心というものが出てくる。教育原理に転化できるじゃないか。憲法そのものの価値というものは、国民思想形成にどれだけ役に立つかどうかという価値評価を持たないで、占領下において押しつけられた憲法——何ですか、それは。ここからは、民族エネルギー一つ目標に持っていけるはずはない。私は明治百年という問題を考えるならば、この船というものを考えるならば、船で一カ月、二カ月外国を見てくる、その船の中で専門教育をすればいいでしょう。そうして教壇に立てる。そのために一人三十万、四十万の金を使う。あとは監督をしないのだ。そういう着眼の記念行事を私は考えるべきだと思う。そういう着眼を、いまからでもおそくないと思うのです、持つべきだと思うのですが、総理大臣いかがですか。——総理大臣の識見をお聞きしております。長官に聞いたってわかならい。
  40. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はただいまの、たいへんいい着想だと思います。私は青年の船を設けたのは、青年、これは各界から実は出しております。その中には先生になる方もありましょう。また農家の方もあるし、また現に働いておる人もあります。ただいまの国力からいたしまして、全部あげて教員養成、そういうところに持っていくわけにいかない、こういうようなのが現状でございます。ただいま山中君の言われるように、そういうように青年の船、これをつくりましたことは、出かけて、そうして広く知識を求めるというか、こういうような考え方でございます。私は、日本だけに小じんまりと閉じこもる、こういうようなことはよろしくないのじゃないか。それがときに愛国心になるかもわかりませんし、さらにまたもっと人道主義的になるかもわからない。そういうことはもうまかしておいていいのです。でありますから、いまの選ばれた人たち、これが特別な選考をされている。そこにも弊害があるじゃないか、こう言っておしかりを受けましたが、そういう弊害を生じないように十分注意をいたします。これもできるだけ、ただいまのような御趣旨も一つの材料といたしまして、青年の船が成果をあげるようにいたしたいと思います。
  41. 山中吾郎

    山中(吾)委員 具体的に文部大臣に移りたいと思いますが、いま気にかかることばがあります。  愛国心が育たなくても人道主義が育つ——人道主義と愛国心と相反するような思想を持っておられる、何ですか、それは。人間愛と結合した愛国心にして初めて民族愛にもなれば、国民の命を大事にする愛国心になるので、愛国心が育てば人道主義がなくなるというような二律背反の考えですか。(佐藤内閣総理大臣委員長」と呼ぶ)いいです、いいです、もう時間がかかってしょうがないから。そう言われたから——情けないじゃないですか、そんなことは。
  42. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それは、そんな二律背反あるいは二者択一、そんな考え方じゃございません。御了承いただきます。   〔発言する者あり〕
  43. 井出一太郎

    ○井出委員長 静粛に願います。
  44. 山中吾郎

    山中(吾)委員 灘尾文部大臣にお聞きいたします。  あなたが国防教育について論議をなされましたが、私は国防教育とお使いにならなかったことは承知いたしております。国を守り、国を愛するというのは当然だ、こう言われたということは新聞の解説その他で聞いておるのですが、私は、国防というのは政治で、教育というのはこれは純粋の人間を育てるという仕事であって、簡単に国防と教育をくっつけられては困る。小さいときからということの中になお大きい問題があるのですが、時期が非常に悪い。総理大臣が日米共同声明をして帰り、そうして第三次防と関連をするがごとき雰囲気を持っておるときに、自主防衛を主張したとたんに、そのときこそ、文部大臣は現実に左右されないで、教育は百年の大計であるから、交通事故その他を含んで生命を尊重する教育こそ一番大事だと言えば、これはやはり偉大なる文部大臣だと思うのです。ところがしり馬に乗ったようなかっこうで国防教育を主張して、そこへまたよけいなことですが、増田防衛庁長官が、大いにいいことだと奨励をするようなかっこう、それがあの結果出たことなんです。灘尾文部大臣の弁解の機会になると思いますが、あなたの気持ちをここで述べてください。
  45. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お答えいたします。  昨年の暮れに新聞記者の諸君と対話をいたしました際に出ました私のことばが、あるいは国防教育強調であるとか、あるいは防衛教育強調であるとかというふうにでかでかと実は伝えられまして、私の真意ではなかったのであります。しかし私は弁解を申し上げようとは思っておりません。私の新聞記者諸君に話したことばは、平素から私の考えておる点があらわれたにすぎないのでありまして、格別これが間違ったことを言ったとも思っておりません。現在わが国の教育で、山中さんはどういうお気持ちでお使いになっておるか私は存じませんけれども国防教育とかあるいは防衛教育というようなものを取り立てて言うがほどのものを現在の学校教育ではやっていないと思っております。またやるつもりもございません。ただ、いやしくも独立国の国民といたしまして、りっぱな国家をつくり上げ、これが発展をはかっていこうという場合には、いろいろな資質が要求せられておると思うのであります。その中に、やはり自分の国のために尽くしていくとか、自分の国を守っていくとか、こういう心持ちはぜひとも必要な資質ではないかと思うのであります。そういう意味におきまして、このような資質を幼いうちからつちかっていくのがよろしいのではないか、これに対しまして、どういうふうにやるのだ、小学校の一年生や二年生にでも国防教育みたいなことをやるのかと、こういう御質問もございました。そんな気持ちはさらさらないと私は申した。こういうことはやはり専門家のくふう、努力によって、適切な配慮のもとに行なわれなければならぬ問題でございますし、同時にまた、その生徒、児童の心身の発達段階に応じて適当にやってもらわなければならぬことでございます。そのような点までかれこれ私は申そうとは思っておりません。ただ、山中さんも御承知のように、現在の学習指導要領等を見ておりましても、私の申し上げたことと何ら矛盾するものは私はないと思っております。当然国民の資質として備えてほしいというものは子供のうちから適切な方法によってだんだんとつちかってもらいたいということを申したにすぎないのであります。
  46. 山中吾郎

    山中(吾)委員 ここで論議をすると長くなるので省略しますが、私から言えば、時期が悪いことが一つ。それから幼時においてというが、子供の世界はインターナショナルな世界ですよ。人間を大事にするとか命を大事にするとか、そうしてお互いに助け合うとか、そういう国境を越えた人間として育て、そこに力を入れることが幼児教育の要諦なんです。小さいときから国防、国を守ること——国を守る延長線は人を殺す技術が入るのですよ。あなたはもう少し識見をお持ちになる必要がある。  それから方法は、小さいときにそういう国防教育をするということは、国を大事にしろ、国の中身を教えなければならぬでしょう。いまこの憲法について、政権を持っておる自民党、そうしてその文部大臣は、この憲法というものの中に示す平和と民主主義内容とした国というものを、この価値観を確立することが先でしょう。まだ国について価値観というものを、総理大臣占領下につくった憲法なんということを言いふらしている、それを固めないで子供にどんな国の中身かわからぬのに、国を守れというようなことを、不親切なことを言えますか。私はそういう意味において、文教の府についたときには、まず平和と民主主義——国の示す平和、民主主義を愛することが結局国を愛することで、そういう理念というものを、もっと理想から入って現実に戻すというのが教育の要諦なんです。あなたは現実からと言っている。私は、そういうところにやはり発想に大きな誤りがあると思うので、国防教育と言わなかったことはわかります、しかし、そういうことを言う前に、もっとなすべきことがたくさんある。  しかも私は聞き捨てならぬことは、諮問機関がどうあろうが指導要領に私は織り込むというふうなことまで、権力的な体質を出しておられる。私はその点についてもう少し、ほかの人々が時々刻々の国際情勢に対処するという政策論があっても、文部大臣の場合については、それに動揺しないで——一体、教育目標というものを数年ごとに変えて子供がどうなる、かわいそうに。私はそういう意味において異議を申し上げておきます。論議をするひまがないので困るのですが、なおお聞きしましよう。(発言する者あり)かってなことじゃありません。
  47. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 だいぶ誤解があるようでございますから申し上げておきます。  私はどうも弁解がましいことは言いたくないものですから申さないのでございますけれども、あの発言は、いわば記者会見後の雑談の中で出たものであります。まずそういう話し合いということを御承知を願いたい。  それから学習指導要領について手を加える意思があるかないか、こういう話も出たわけでございます。それはそういうこともあろうということを申しました。と申しますのは、学習指導要領は文部大臣の責任において出すものでございます。したがいまして、万一それが文部大臣として責任のとれないものである、こういう場合には何かいわざるを得ないということになってくる、これは筋道の話であります。しかし、現実問題としまして、山中さんも御承知のとおりに、あれだけの多数の専門家あるいは権威者、この立場の人たちが長い時間をかけて検討したものであります。これを文部大臣が尊重するのは当然のことであります。まさかそういう事態には私はならぬと思います。けれども、ものの筋合いといたしましては、すべての責任は文部大臣が負わなければならぬということを私は申したつもりでございます。そういうふうにひとつ御承知を願いたいと思います。
  48. 山中吾郎

    山中(吾)委員 今後そういう政治の問題が、ぎりぎりの論議が出たときには、私は逆に、文部大臣は理性に戻って静かな立場で、同じ閣僚の中で文部大臣は、子供の教育という立場で、違った角度の表現があることを望みます。  次に、教育行政の自主性の問題で、私は聞き捨てならぬ一つの問題をここで灘尾文部大臣と論議をしなければならぬのは、端的に申し上げますが、京都府の教育長の承認問題であります。これは、ここで一々経過は説明をしなくてもおわかりだと思いますけれども、まだ京都府の教育長の承認はされておられないようでありますが、これについて今後どうされるのか、文部大臣の御意見をお聞きしておきます。
  49. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 京都府の教育長の任命について文部大臣の承認を求めてきておられるわけでございます。この問題につきましては、いろいろと批判もあり、議論のある問題でございますが、文部省は文部省といたしまして、間違いのない行政をやってまいりたいと思いますので、慎重に検討いたしておるところであります。
  50. 山中吾郎

    山中(吾)委員 教育委員会の法律を改正するときに、教育長を文部大臣の承認事項にした。私はその前に県の教育長をやめておるのですが、そのときには地方の教育委員会の主体性を守る、それで教育長の資格をなくして自由任用にしたから、その点で、資格任用でなくて自由任用にしたかわりに一応承認の姿をとったので、教育長としての資質、資格のある者については、これはもう当然承認をすることを前提としてであるという立法の趣旨の説明でこの法律が出ておるわけです。今度の京都の教育長の不承認、いま保留をされている理由は何ですか。
  51. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 教育長の地位がいかなるものであるかということは、これは山中さんがよく御承知のとおりでありまして、地方の教育委員会におきましては、教育長の占めておる地位というものは決して粗末なものじゃないと私は思うのであります。また、それであるがゆえに、都道府県の教育長の任命にあたりましては文部大臣の承認を受ける、こういうふうな仕組みにもなってきたかと思うのであります。もちろん、地方の教育委員会の自主性を尊重するという基本的態度においては、私ども、そのように考えておるわけであります。ただ、それだけ大事な職でありますために、文部省としましては、その任命にあたっては、地方においても十分に慎重にやっていただきたいと思いますし、また、われわれとしましても——いろいろとこれは個人的なことになりますので、私、申し上げたくないのであります。したがってそれは申し上げませんけれども、いろいろ批判もある人であります。それだけに、われわれとしましては、大事な職責を果たすべき人について、私どもの安心のできる、信頼のできる人になってほしい、こういう意味におきまして、その人がいかなる人であるか、いかなる考えを持っておる人であるか、こういうことについても慎重に検討をいたしまして、最後の結論を出したいと思っております。いま事務的検討の段階でございます。
  52. 山中吾郎

    山中(吾)委員 京都府においては管理条例その他をつくっていないから、それをつくる条件にして、承認権を乱用されておるように聞いておるのですが、それは事実ではありませんか。
  53. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 従来、京都府の教育委員会は、たとえば管理規則の問題でありますとか、あるいはまた、勤務評定の問題でありますとか、このような教育行政上の重要な問題として文部省が考えておるものに対しまして、違った考え方を持ち続けてこられたのじゃないかと思うのであります。したがって、願わくは、われわれとしましては、このような問題について中央と地方と考え方が違うというようなことでないようにいたしたいと思うのであります。そういう意味におきましても、京都府の教育委員会についてもお考え直しを願いたいと思いますし、また、この任に当たる教育長がどんな考え方を持っていらっしゃるかというようなことは、私どもとしては知りたいところであります。
  54. 山中吾郎

    山中(吾)委員 いまの文部大臣のお考えは非常に間違いがあると思うのです。管理規則をきめるとかなにかというのは、合議機関である地方の教育委員会の決定によるのです。教育長はそれについて権限はございません。したがいまして、もし文部大臣が地方行政と中央行政のある程度の一体化を、自主性を守りながらはかるというならば、助言、指導という権限が文部大臣にあるのだから、教育委員会になすべきである。任命権を有する地方教育委員会の任命権のまっただ中にメスを刺すような——人事で助言をする権限があるのに、教育委員会に助言権があるのに、人事権に干渉するのは何ですか、これは。
  55. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 京都府の委員会に対して指導、助言をするということは、これは当然のことであります。(山中(吾)委員教育長の人事権に関係ないのですよ」と呼ぶ)教育長の人事権につきましては、その職責の重要性にかんがみまして、文部大臣の承認を受けることになっておるのであります。その承認を適正にやっていこうというのが私の考え方でございます。
  56. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それは答弁にならないでしょう。教育長の承認権というのは、これは、この法をつくったときの沿革の中にこの立法精神がきまっているのです。教育長としての資格条件というものが前提としての承認権であって、教育委員会の決定事項と関連をして承認権を使うのは、これは明らかに乱用なんです。任命になったあと先に関係なく、あなたが対話をして指導権を活用して、京都府の教育長と教育行政のあり方について助言をされたらいいのであって、特定の人間を承認するかしないかについて、一体助言権でたすべきものを人事権に持ってくるのは、非常識もこれほど非常識なことはない。私は経験の立場からいって、そんなことで教育長の承認権をお使いになるようなことでは、そんなら最初から教育委員会を廃止されたらどうですか。ほんとうに非常識です。なぜそういうふうな聡明なる灘尾文部大臣がお持ちになるか。やはり政党などからの、いわゆる外からのいろいろのことがあって、教育基本法十条の全体に奉仕をするという精神がほかのほうから曲がってきておるのだから、そういう非常識が常識であるように錯覚を起こされておる。私はいま直ちとは言いませんけれども、そういう筋をお立てにならないと、教育行政はどこに行ってしまいますか。私は、要するに、この承認というものは一定の時期がかかっても承認をしなければ、あなたが不承認であるということは、地方の教育行政の精神をゼロにすることと同じなので、この考えは改められなければならぬ。日本全体の教育教育行政のあり方に関係する問題であると思うのです。どうです。決定権はないのですよ、教育長には。
  57. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 もちろん教育長に決定権があるとは私も思っておりません。しかし、教育長というものが教育委員会において占めておる地位というものも、決して軽視すべきものじゃないと私は思うのであります。それでありますだけに、できるだけとかくの批判のない、各人が信頼のできる人になってほしいと思うのであります。いろいろ時間がかかっておりますので、かれこれと外部にも話が出ておるようでございますが、時間がかかっておるということは、つまり私は外部の圧力によって事柄を二、三にしていない、こういうふうに御承知を願いたいと思うのであります。文部省は文部省として、文部省の見解において最終的な結論を下すことにいたしたい、このように考えておる次第であります。御了承願いたいと思います。
  58. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それではいま一度お聞きいたしますが、教育委員会の決定事項については、文部大臣の助言によって、教育委員会に助言権の行使をして解決すべきものである、教育長の承認権の条件にすべきものではない、これは間違いないですか。
  59. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 助言とか指導とかいうことを行ないます場合の筋道としては、おっしゃるとおりだと思います。文部省としては、教育委員会が相手であります。ただ、その教育委員会において重要な地位を持つ、役割りを持っておりますところの教育長というものの重要性にかんがみて、自主性はもちろん尊重いたしますけれども、文部大臣の承認という手続が要るわけであります。その承認をいたす場合に、間違いのない承認をいたしたい、こういうふうに考えておって、慎重な検討をいたしておるところでありますから、そういうふうに御了承願います。
  60. 山中吾郎

    山中(吾)委員 半分筋はおわかりになったようですが、あとのただしのほうがわからないのです。それは、教育長は教育委員会の監督を受ける立場ですよ。法律を読んでください。県の教育委員会の監督を受ける教育長なんです。そうしてその教育委員会で、あなたが気に食おうが食うまいが、条例、規制その他を決定をするのである。教育委員会のいうことを聞かなければ、教育委員会に教育長は罷免されますよ、どんなに助言をしょうが何しようが。そういう関係のある教育長に、教育委員会がよろしくないから教育長の承認権のときにいたずらをするなんという子供のような、筋の通らないことを、それが非常識とお考えにならないところを見ると、灘尾さんのような聡明な、冷静な、理性的な人がそれをぐずぐずしておられるので、何らかの特別の勢力によって支配をされて、非常識が常識だと思っておられるのではないかということを言うのです。筋ははっきりしてください。これは教育行政の基本ですよ。教育委員会の決定そのものについて、中央行政と地方行政の不統一があるならば、文部大臣は教育委員会に助言をし、あくまでも委員会の決定権を握ったものにやるべきです。委員会の監督のもとにある教育長を人事権でいじめるという手はどこにありますか。そんな間違いを起こされたら困ります。
  61. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 別に教育長の候補者をいじめておるわけでも何でもございません。ただ、教育委員会から承認を求めてきておられますので、その承認をすべきやいなや、あるいはいかなる指導、助言をすべきやという問題について検討いたしておるところでありまして、もしこの人事について文部省が消極的な考えを持つといたしまするならば、これを申し上げるのは京都の教育委員会に対して申し上げるわけであります。
  62. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それでは承認については、そういう教育委員会の決定事項であることによって左右されていないので、教育長の承認についてはその人の教育的知識その他によってのみ判断をするのだ。しかしすでにその人は、教育次長をずっとした人で、それは教育職務について適任であることはもう事実が証明しているんです。個人的なことが何か出ておりますが、それは過去のことなんです。その点は明確にしてください。一定の時期はあっても、これは承認をすべき事項である。いわゆる管理条例その他には関係なくきめるべきものであるということは間違いないですね。
  63. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 承認をいたします場合には、その承認の対象となる人物についていろいろ検討することは、私は当然だと思うのであります。そして、その結果といたしまして承認なら承認、不承認なら不承認あるいは再考を求めるなりやることは、京都の教育委員会に対して文部省が申し上げることでありますが、人物について、その適否等につきましての検討ができないとするならば、承認ということは意味をなさないということに私はなると思います。
  64. 山中吾郎

    山中(吾)委員 あなたはそういう一般論を言われますが、先ほど言われたように、いわゆる教育委員会の決定事項が気に食わぬからというところからきている。それはいけない、間違いじゃないかと私は言っている。だから、そういう点について教育行政の自主性を——みずから地方教育委員会の自主性を守ってやるのがあなたじゃないですか。地方の教育行政機関というのは、その自主性をたてまえとしてあの法律ができておる。文部大臣の職責は、地方教育委員会のそういう一番大事な任命権を守るためにこそ承認ということもあり得る。他のほうから干渉されたり、あなたが地方の教育行政組織法を無視するようなことでこういう機会に乱用されるということは、文部大臣としてむしろ反対の方向にいっておるというその非常識はおわかりにならないわけですか。私が言うのは、だから地方教育行政の主体性を守るという立場——確かに事実は、ここでこういうことを言われても、向こうの教育委員会のあり方について問題がある。しかし教育長の任命のときの承認条件に使うのは不適当なんだ、そういうものでないんだ、この点だけは明確にしないと、一体教育行政というものはどうなるんですか。一体地方で教育長というものは、そんなことによって左右されるような位置じゃないですよ、文部大臣。だからこの問題については、筋だけはきっちり明らかにして対処してくれなければ困るので、口すっぱく言っておるのです。そういう教育委員会の助言によって指導すべき問題を承認権に転用して、乱用しないということだけ明確にしてください。
  65. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は別に乱用しているとかいうような心持ちはございません。教育委員会の自主性はもちろん尊重すべきものであります。しかしながら、その教育委員会と文部省との間というものも、これまた、よく緊密な連絡のとれた姿でありたいと思っておるのであります。従来の京都の教育委員会のやり口というものは、その点において私は必ずしも満足すべきものではないと思っておるのであります。これはぜひ京都の教育委員会においてもお考えを願いたいことだと実は思っておるような次第であります。その問題は、もちろん仰せのとおりに教育委員会と文部省との間の問題であります。ただ、だれを教育長にするかという問題は文部省の承認にかかっておる、こういうことでありますから、私は間違いのない決定を下したい、これで調査をいたしておる次第であります。その教育委員会の方が——京都の教育委員会の従来のあり方というものにつきましては、私は、何とかもう少し文部省とも協調していただきたい、こういう気持ちでおるわけであります。そういう意味におきまして、今度の教育長がどんなお考えの方であろうかということは、文部省としては知りたいところであります。そういうふうな意味で選考の、承認するかしないかという問題を検討することの中にあるいはそういうものも入ってこようかと思いますが、いずれにしましても、教育長というものは文部省は大事にしたいのであります。そして文部省とよく協調のとれる人にぜひ教育長はやっていただきたい、こういうような考え方をいたしておる。これは文部省の希望であります。したがって文部省が、文部大臣が自分の権限でないこと、権限を乱用するというような心持ちはさらさらございません。ただ、文部省としましては、地方の教育委員会と文部省の間が、何と申しますか、協調のとれない、あるいは疎遠なというふうな関係はなるべく是正したいと実は思っておるわけであります。この気持ちはわかっていただけるものと私は思うのであります。そういう意味で問題を考えておるわけでございますから、さようにひとつ御了承を願いたいと思います。
  66. 山中吾郎

    山中(吾)委員 繰り返すようで申しわけないのですが……。   〔発言する者あり〕
  67. 井出一太郎

    ○井出委員長 静粛に願います。静粛に願います。
  68. 山中吾郎

    山中(吾)委員 教育問題として、これは地方問題でなくて日本教育行政全般にわたるたいへんな問題であるので、念に念を押しておるわけです。地方教育委員会のいわゆる一番大事な自主性の柱というのは教育長の任命権であります。その任命権に対して特定のごく例外の場合に考えてきたのが承認権でありますから、承認権が地方の教育長に対する任命権の上位にあるというふうなイメージができてはたいへんである。だから、この文部大臣の承認権の行使については最も自制すべきである。拡張解釈をすべきでなくて最も狭く解釈すべき性格のものである。これはおわかりですね。そういう線に沿うて文部大臣が努力をして、地方の教育委員会の権限の一番大黒柱である教育長の任命権ということを侵害しない方向で、その任命権というものを守る立場において最大の努力をされるという、それだけの所信だけは明確にしてください。
  69. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 都道府県の教育委員会の任命権というものは、もとよりこれは尊重いたします。もとよりこれは尊重いたしますが、同時に文部大臣はいわゆる承認権を与えていただいておるのであります。その点もひとつ考えていただきたい、かように私は考えます。原則論としましては、あなたのおっしゃるとおりであります。
  70. 山中吾郎

    山中(吾)委員 原則論はおわかりだと思いますが、こういうことなんですよ。地方の教育長の任命権は、これは尊重する、それはわかりました、ただし、ということですが、その場合に教育委員会の決議できめるべき事項に関連をしては承認権を使うべきものではない。承認権を使う場合には、教育長の専属権限に関することについて問題があるとか、あるいは最初の立法理由において国会にも説明し、文部省の各局長、課長が地方に説明したとおりに、教育長の資格要件を排除して自由任用にしたのであるから、資格のある者については無条件で、承認権を発動しないのだ、無資格の者を採用するようなことでは教育行政というものが低下をするのでという説明の線で出発したこの制度を守って、いまのような教育委員会の決定事項というものに関連をして不承認という、こういう承認権を乱用すべきものでない。これだけは明確にしてもらいたい。それは原則も例外もない。そうでなければ、教育委員会の一番大事な任命権を侵害——それは任命権というものを空白にするということになる。教育委員会の一番大事な任命権のうちの最高最高教育長なんです。それが合議によって全員一致できめた者について、文部大臣が、しかも教育委員会の決定事項で教育長がどうにもならないことを、関連をして承認権を不行使、承認権を乱用するということは、これは例外も原則も含んでできないことである。その識見は明確にしてください。そして私は質問を終わります。
  71. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は、まだ承認するともしないとも決定をいたしておらないのであります。その点はひとつ御承知を願いたいと思います。また、承認をいたします場合に、問題となるのは、その候補者の、その人が問題となるわけであります。その候補者についていろいろあらゆる角度から検討を加えてみるということは当然のことじゃないでしょうか。私は教育委員会の任命権というものに対して決してこれを粗末にするつもりはございません。ございませんけれども、しかし同時に、私が承認をいたします場合においては、やはりその承認ということも粗末にすべきじゃないと思うのであります。問題の対象となるのはその人の問題でございます。その人の問題に関して、いろいろな点から検討してみるということは当然許されるべきことじゃないか、私はかように考えております。しかし、決して原則論的に権利を乱用するとか悪用するとか、そういうような気持ちではございません。   〔発言する者あり〕
  72. 井出一太郎

    ○井出委員長 静粛に。
  73. 山中吾郎

    山中(吾)委員 これは、灘尾文部大臣はどこか目に見えないものから押されて心ならずも何かしゃべっているというふうな感じがするのですが、あなたは日本教育行政の筋を立てる責任のある、最高の行政の責任者ですから、こういう問題で不承認にするようなことでは、私は絶対承服できない。日本教育行政のあり方で承服できるものではないのです。一つ個人の問題ではないのですよ、これは。  そこで再び、私は先ほど申し上げましたが、教育委員会の決定権限に関する事項については、正面から文部大臣は、京都に行ってもいいから、向こうの教育委員と論談をしてわかるまで話をしてきめるべきものであって、教育委員会の最高の任命権で一番大事な教育長の任命権をそういうことによって何だかんだと引き延ばしするようなことは、これは絶対やってはならない。これは当然民主政治における行政の鉄則なんです。  そこで私は、総理大臣は、いま文部大臣と私のやりとりの中で大体お聞きになっておると思いますが、こういう小さな地方の問題によって日本全体の教育行政を曲げるようなおろかなことは避けるようにするのが、私はこういうときの行政の識見だと思うので、佐藤総理大臣の御見解を聞いておきたと思います。
  74. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどからいろいろ御意見を聞いておりました。私、別にそれぞれが違ったことは言っていないのじゃないか。山中君にしても任命権、さらにそれの承認権、そういうもののあることもちゃんと否定はなさらないし、また文部大臣もその任免権についてとやかくは言わない、自分は承認の権を持っているのだ、こういうことのようでございますから、別に食い違いはない。ただ当該事件をどういうように処理するか、こういう問題で、あるいはいまのところ結論が違っているのかと思いますが、私はこの点が最初申しましたように、十分ただいま手続でいろいろ調査中ですとか、あるいはいろいろ話し中ですと、こういうことを申しておりますから、そういう点でおまかせをいただいて、いま結論に、おれのほうは承認しないとか承認しろとか、こうなるとやや話が行き過ぎる。だから私は原則論はしゃんと承認して、その間に別に食い違いはないように思っております。
  75. 山中吾郎

    山中(吾)委員 その原則は、日本全国の教育行政に対する原則なのであって、京都府だけの問題ではないので、承認の方向においてこの問題を検討させる、これだけは明確にしてください。
  76. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま承認権は文部大臣にある、それでただいま言われるように承認の方向でと、こうなると、その承認権を拘束することになる。これも御意見としてお述べになることは、それは御自由ですが、ただいまのように文部大臣とすればそのたてまえが大事なんだろう、また山中さんもそのたてまえが大事だ、かように言われるのだと思います。私よく御趣旨はわかりました。
  77. 山中吾郎

    山中(吾)委員 文部大臣、これはいまかりに、先ほど繰り返し繰り返し言っているのですが、教育委員会の決定事項に関する文部大臣の見解の相違があるときは、教育委員会そのものに助言をして助言権を行使する問題であって、人事に関する承認権に影響する問題ではないという原則はお認めになる。それで、そういうことをつぶすのでは、私はこれは承服できないので、われわれはあらゆる立場で、この教育行政のたてまえを守るために、文部大臣に対してあらゆる抗議を続けるということはもうどうしてもやらなければならぬ。その点について、日本教育行政のあり方の大事な問題ですから、個々の特定の教育長だ何だの問題じゃないのですから、そういう意味において、このたてまえを明確にいま一度答えていただき、私はそれで次のことを見守ることにいたします。
  78. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 どうも話が少し食い違うような気がするのでありますが、教育長の任命は、もちろん教育委員会がきめられて、文部省に持ってこられるわけであります。もしその教育長が、私としまして承認しがたいとか不適当であるとか、こう考えます場合には、また教育委員会とお話し合いをする、こういう問題になるわけであります。その教育長たるべき人がどんな人であるか、どんな考え方を持っておるかということは、その人に関する問題であります。そういう意味におきまして、私は、その教育長たる人たちのものの考え方というものにつきましても、もしそれが日本教育行政の上において不適当である、こういうふうな結論にかりに達したとしまするならば、にわかに承認するわけにはいかぬと思うのであります。そういう問題であるということを御承知願いたい。問題は教育長たる個人に関するわれわれの検討でありまして、その結論を持って、あるいは京都の教育委員会とお話し合いをするということもあり得る問題だ、このようにひとつ御承知を願いたいし、また現に京都の教育委員会との間にはいろいろ接触もございますので、話し合いをいたしておるところであります。さように御承知を願いたい。ただし承認するかしないかは、まだ決定した問題ではございません。
  79. 山中吾郎

    山中(吾)委員 決定していないことがわかっておるから、論議をしておるのです。そういうことではなくて、何回言っても——灘尾文部大臣、あなたは、教育委員会の決定事項については助言権の行使の対象であって、人事に関する教育長の承認の問題ではないのだ、これは間違いないですね。それだけ明確にしなければならない。承認権があるから、私はいやだというならしないでいいと言う。一定の、立法の精神に基づいて、この承認権を、地方の教育委員会の自主性をそがないように自制をしながら、拡大解釈をしないで、最小限の覇束をされた行政処分として行使をするというたてまえが明確でないと、地方の教育委員会制度廃止の法案を出してください、それなら、あなた。そういう私の好き好でやれるというなら、教育委員会法を廃止されたらいい。一番の中核なんですよ、地方の教育委員会の教育長の任命権は。五人が審議審議を重ねて論議をしてきめる。しかも五人の委員が責任を持ってきめる。これが任命権なんですよ。文部大臣は一年か二年で交代をするから、そんな無責任な問題じゃないですよ、これは。その点を明確にしなければ、私はこの質問はやめられない。はっきりしてください。
  80. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 教育委員会の自主性を尊重するということはすでに申し上げたとおりであります。できるだけこれを尊重してまいりたいと存じております。しかし自主性は尊重いたしますけれども、少なくとも従来の京都府の教育委員会と文部省との間は、必ずしも親密な関係ではない。文部省としましては、こうしていただきたい、ああしていただきたいという問題もございます。これも御承知だろうと実は私は思うのでありますけれども、自由かってきままな教育委員会がもしありといたしますならば、これは教育行政上としても考えなければならぬ問題でございます。われわれとしましては、京都の教育委員会に対しまして、従来からも十分いろいろ御相談をしておる問題でありますが、なかなか実現しないのであります。そういう点では、文部省としては教育委員会がもう少しひとつ考え直していただきたい、この気持ちは持っております。そういうふうなことでありますが、それはしかし、教育委員会の自主性を侵すとかなんとかというような問題として取り上げられる問題ではない、かように私は考えるものであります。   〔発言する者多し〕
  81. 井出一太郎

    ○井出委員長 静粛に願います。——静粛に願います。
  82. 山中吾郎

    山中(吾)委員 灘尾文部大臣は大学の秀才で、行政法をみな勉強されてきた方なので、それを前提として論議をしておったのです。教育委員会の最高の決定事項である教育長に対する任命権を、いまのような形で、いわゆる教育委員会の決定事項に関して、文部省と意見が合わないからその任命権に対して横やりを入れるということは、行政法の基本原則に反するのだ。そこでそのたてまえだけは明確にしてくれないと、管理条例を京都府の教育委員会がきめなかったから、ある教育長を任命するときに、権限を持っていない管理規則を、おまえが今度一生懸命やることを約束しないと承認しないぞというふうな実態を持った行使のしかたは、教育行政をつぶすものだ、これをすっぱく言っておるのです。私は自分の体験からいって、地方の教育委員会における教育長の職制をみな知っておるのです。そうして教育委員は知事の任命に変わって、私は公選制のときであるが、知事の任命で教育委員が任命をされておる。そして教育委員の合議によって教育長を任命しておるのである。その任命権について、あなたが相当の権力を発現し、承認権を行使する場合は重大な問題であって、これはほとんど伝家の宝刀として慎重にすべき問題なのである。ところがあなたは、私の質問に、その原則をあいまいもことしてやっておるのでは、私は承服できない。それでよろしゅうございますということは、日本の地方教育行政の基本原則に反するので、おそらくこれは全国の府県の教育委員会協議会においても、教育委員は黙っていないと思います。それでは教育委員は辞表を出すしかないのです。これは全国の教育委員会はそうやりますよ。この問題はそういう重大な問題なのであって、いまのようなあいまいなおことばでは引き下げることはできない。私のいう原則を言えないのですか。そういうことは行政法の一ページじゃないですか。
  83. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 どうも御了解をいただけないのをまことに遺憾といたします。私は、教育委員会の自主性は尊重する、また教育委員会の決定というものも原則としてはこれを尊重するのは当然であります。そういうことでありますが、同時に、この問題については、少なくとも文部大臣の承認を受けるということになっておるわけです。だからその承認を慎重にやりたい、この問題を慎重に検討したいということを申し上げているわけであります。そのように御承知を願いたいと思います。
  84. 山中吾郎

    山中(吾)委員 慎重の内容について明確でないので、くどくどと論議をしておるのでありますが、私はこれは保留をいたします。この問題については承服はできません。承認権を行使するケースではない。これはあくまでも、非常にむずかしい問題であっても、文部大臣が、京都府の教育委員会という合議制の行政機関と論議して解決すべき問題であって、教育長任命権そのものに影響を及ぼすことは、これは承認することができぬ問題である。私はこれについては承服できません。全国の教育委員会に訴えても、こういう問題は解決すべきであるということを、ここで私は私の気持ちを申し上げて、保留をいたしておきます。  ただもう一点、まことに遺憾で、文部大臣にとってはあまり楽しくないことでありますが、もう一点だけ……。  教師の超勤手当のことについて、いろいろのいきさつというものがいままであって、私はああいうことで政治家がエネルギーを浪費するのはまことにくだらぬことだ、残念でしかたがないのですが、すなおに超勤手当を出すというそういうことと、根本的に、教師の重要な職務から、給与体系を別にして、一般職から特別職にという根本問題と、それを検討するということは、あなたのほうでやっておればわかるのだが、それまでにまたそこへいろいろの混乱を入れて、現在の給与体系から、あるいは各地方裁判所も例外なく支給命令が出、県の教育委員会も決議し、県の人事委員会も例外なく、支給すべきであると言い、それから各省の考え方も、超勤を出すべきだ、労働省その他全部そう言い、なおかつ文部大臣だけがそれを曲げていくというほど非常識がどうして通用するのか。その点をここでいま一回お聞きしておきたいので、超勤手当をすなおに出すことになっておりますか、どうなっていますか。
  85. 井出一太郎

    ○井出委員長 山中君、山中君、持ち時間が経過しておりますので、結論をお急ぎ願います。
  86. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 教職員の時間外の勤務について何らかの措置を講じたい。これは前々からの問題でございますことは、私よりもむしろ山中委員のほうがよく御承知だろうと思います。いろいろ検討いたしました結果、いわゆる従来から言われておる一般職に対する超勤手当、このような方式よりも、別の方式でやったほうが妥当であろう、こういう結論を得ましたので、それによって法案を作成して御審議を願いたい、このように考えておる次第であります。
  87. 山中吾郎

    山中(吾)委員 その中身がわからないのですが、超過勤務というものをお認めになっての考えですか。
  88. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 時間外の勤務ということを考慮に入れまして、特別な手当を出そうとするのでありますが、これを出すことによりまして、一般職に対して従来から言われておりますような超過勤務手当は出さない、こういう方式でもって、御審議を願いたいと思っておるわけであります。
  89. 山中吾郎

    山中(吾)委員 いまどういう出し方をされるか、私は明確でないのだが、何かの手当という名前でしょうが、それは超勤手当と異質のものなのですか、どうですか。超勤手当との関係はどうなんですか。
  90. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 異質であるかどうか、これはいろいろ議論もあろうかと思いますが、少なくとも、いわゆる超過勤務手当を吸収するに足る制度である、このようにひとつお考えを願いたいと思います。
  91. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうしますと、前の中村文部大臣——私、いきさつをみな知っておるのですが、超勤手当の実態を知るために、国会で承認を受けて、二カ年の調査をして、そして超勤の実態が明らかになり、小学校、中学校、高等学校においては週に二時間ないし三時間の超勤の実態が出た。それを算出の基礎として大蔵省に要求をして、超勤手当の算出の基礎として出した。そういうことからきたものであって、時間外勤務として、超勤手当ということから出発してきておることは間違いない。それはいまお聞きいたしましたが、そうしますと、これは現在の給与体系からいって、拘束時間がある、無定量にただ酷使をしてはいかぬという給与体系から、拘束時間があって、それに超過したのは、教師間に関係なく、給与の公平の原則で、それに応じてその人に対する報酬を考える制度ですから、そういう点については、あなたは御理解の上に考えておられることは、私ここでわかりましたが、そうしますと、いわゆる定員がだんだん少なくなる、あるいはまたいろいろの教育問題がふえてくる、また実態を調査したときに、現在よりも、いわゆる拘束時間より超過勤務というものが増加した場合には、それに応じてこの額を増額するお考えですか、間違いないですか。
  92. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 手当の程度と申しますか、額と申しますか、こういう問題は、何も変更をしてならないというものでもないと思いますから、実情に応じまして、将来給与の改善を必要とする場合には、それは考えていかなくてはならぬ問題だと思っております。  なお、この問題につきましては、これも山中さん御承知のとおりだと思いますが、教職員の給与という問題については、もっとよく調べて、基本的に一ペん考えてみる必要があるのじゃないかというような構想を持って進んでいこうか、このように考えて、若干の予算もお願いをいたしておるわけでございますが、それまでの措置としまして、教員の時間外勤務というような実情を踏んまえて、この際特別な手当を出したほうがよろしいのじゃないか、こういう考え方のもとに、実は出しておるわけであります。したがって、超過勤務手当としては出さない、こういう考えでございます。
  93. 山中吾郎

    山中(吾)委員 論理がどうも、透徹しておるのでしょうが、私はわからないのですが、いわゆる根本的な調査をするために調査費を出している、それまでは現在の法体系に従って出しておく、これはわかるのです。それは間違いないのですね。間違いないですか。
  94. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 そのとおりでございます。
  95. 山中吾郎

    山中(吾)委員 いま一度確認をいたします。  根本的な教員の給与体系は、予算も計上してこれから調査をする段階だから、それまでにおいては、現行法の精神に沿うて給与の問題は処理をする、それはいいですか。
  96. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 根本的な調査をしたいということは、いまも申し上げましたとおりでありますが、これは何年かかりますか、十分調べた上で、結論は出さなければならぬ問題だと存じます。そこで今度出します手当の問題は、これを超過勤務手当として出すべしとか、あるいは出すべからずとか、いろいろ議論はございますけれども、私どもいろいろ検討しました結果、教員の時間外勤務の状況等も十分勘案いたしまして、あるいは教員の職務の性質、内容等を十分勘案いたしまして、特別な手当として、一般的に給与することがよろしいのじゃないか、こういう考えのもとに、特殊な手当制度をつくったわけである、このようにひとつ御了解願いたいと思います。
  97. 山中吾郎

    山中(吾)委員 超勤、いわゆる拘束時間より超過した勤務をしておることを確認をして手当を出した。したがって、そういう超過した関係のものが多くなれば、それに応じて考えなければならない、これは当然の論理だと思いますし、さらに県庁あるいは国家公務員その他でも、超勤手当というのが出ておるけれども、実際はお互いの了解のもとに、平均して出しておる、事実において。だから教員についても、研究会その他は量的に計算をすることは少し困難だから、同じように出す行き方をとった、こういうことですね。間違いないですか。  それから、そのうち、二、三年のうちに、基本的な体系をつくるというのですから、それはそれで、それまでにおいては現在の法体系に従う、そういうことだと思いますが、これはいずれ文教委員会その他でさらに論議を重ねると思うので、あまり言いませんけれども、その基本的な考え方だけ、法律という体系を守る、文部大臣が法律無視したら、順法精神は教育できないのだから、一番大臣、あなただけは、こういう法体系から来る法律を尊重する、尊重する順法精神だけは模範を示してもらわなければ——理屈は別です。そうでなければ教育できないでしょう。原則だけは明確にしてください。いま申し上げた原則は間違いないですね。
  98. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 法律を守るということは当然のことでありますので、法律に反したことをやるつもりはもちろんないわけですし、法律に反したことをやれば、皆さんが御承認になるはずもない、私はかように考えるわけでありますので、今度出します特別な手当を創設しようという制度も、法律に矛盾したものは出さないつもりでおるわけでございます。ただ私どもとしましては、従来のいわゆる超過勤務手当の支給方式というふうなものは、必ずしも教員の勤務の状況その内容等から考えまして適切でないというので、特殊の手当制度を創設する。この場合には他の法律との関係はもちろん調整して出すわけでございます。
  99. 山中吾郎

    山中(吾)委員 法律をつくる話をされましたけれども憲法二十七条の規定から現在の給与法ができて、その体系で一般職の給与の原則を定めておる。そういう線に沿うて、根本的な解決をする前には、暫定的には現在の法律によって従うという言い方をとらないと、教員は文部省行政については不信感を持つので、法律を今度つくることを、立法論の話をされてはそれは困る。そんな論をしているんじゃないのです。現在法律はないのです。そうして一方に、基本的な問題を調査する調査費を出しているんじゃないですか。出しているのなら、現在の法律に従ってやるというすなおな教育行政をおやりにならないと——一方にまだ憲法自体に安定したものがない中で、個々の問題の不安定を積み重ねていくから、日本教育界のエネルギーは浪費ばかりしておる。そういうことで混乱におとしいれないように文部大臣はしてもらいたい。その点を間違いなく私は要望いたしたいと思います。いいですか。
  100. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御要望でございますから、特にお答えを申し上げる必要はないと思いますが、ただ私ども、立法として新しい手当制度を創設しようといたしておるのであります。私はこれが憲法あるいは現行法等に矛盾するような、抵触するようなものを出すつもりはございません。現行法との間の調整は十分とって出すつもりでおります。
  101. 山中吾郎

    山中(吾)委員 文部大臣、先ほど説明されたように、超過の勤務労働に応じてこの手当を考える、それなら、勤務状況がさらに加重されてくると、その手当も考える、これは間違いないですね。
  102. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私どもは、この制度は、やはり教員に対する給与改善の一方策と考えておる次第であります。この点は実情の変化に応じまして、将来いろいろまた検討せられる時期もあろうかと思います。
  103. 山中吾郎

    山中(吾)委員 この問題も保留、またこの国会中に論理を展開しないと、承服できません。  そこで私、最後に申し上げて、質問を終わりたいと思いますが、きょうは、私は、現在の憲法日本国民教育というものにギャップがあっては、民族エネルギーが浪費をするので、これは政権を持っておる内閣のほうで、教育原理というものと——普遍的な原理でなければ子供は教育できないのです。特殊的な原理ではできないから、その線に沿うように政治の姿勢を正してほしい。それは現在の成文憲法の普遍的原理というものの政治原理教育原理に転化する努力を惜しまれてはどうにもならないのだ、そういうことで申し上げたのであります。したがって、憲法九条の問題にしても、私は憲法九条を設定した敗戦当時の思想の次元において、そこから現実に下がってもらわなければ——現実から上がっていくから改憲になると思うのです。やはり平和を守る、生命を尊重する、人間を尊重するという原理、これは教育に転化できる。そういうところから、私はすべてのものを論議しなければならないし、第九条の第一項は、私は、日本民族世界に影響を与える偉大なる不戦国家としての国家規定ができていると思う。外交方針でないと思います。国家の規定だ。不戦条約があるが、憲法自身で不戦というものを定めた、日本世界的に影響を与えるところの偉大なる不戦国家の道を歩む出発点である。そういう立場から論理を展開して、そうして誇りを持つ日本の国、国に誇りを持ったならば、国を愛するという者が出てくるのであって、国の内容を確定しない前に、灘尾文部大臣のように、国防教育で押しつけるようなムードを出すことは逆なんだ。そういうことを明確にしたいと思って申し上げたので、現在の青少年の問題にしても、これはやはり国に対する目標を確定しなければ、優秀な者は絶望的になる。また低い者は、やはり自分のエゴイズム、反社会的行動に出るのは当然なので、政治目標教育目標を一体にする。しかもそれは普遍的原理に応じて、思想不在にならない方向で検討してもらいたい。しかしきょうの総理大臣以下のお考えを聞きますと、何だかその点について明確なる価値観が確立されない。まことに遺憾でありますので、今後とも、他の機会においても、私は論議を深めたいと思うのであります。したがいまして、たとえば青少年局なんというのがありますけれども国会の図書館において、不良少年の根本原因を調べて、不良少年の農業の工業化社会の中に世界共通した原因があるけれども日本の戦後の青少年の不良、世相の退廃の原因は、旧憲法と新憲法の断層からきた、いわゆる臣民の道徳から国民主権を有する道徳への価値転換の混乱の中からきていることを、資料をもって出しているわけであります。そういうならば、内閣に青少年局を置くなら廃止をして、憲法教育局にでもすれば、青少年の不良化はなくなります、価値観が統一するから。そのくらいの着眼をもって、日本国民の未来に間違いのないような灯台守の灯になってもらいたい。どこへ行ったかわからぬようなことをされては困るのです。私はイデオロギーの立場で言っているのではない。一たんきめた成文憲法は、少なくとも半世紀くらい国民価値観の基準にして、そうして徹底的に政治教育も一体となってやるという体制をきめない限りは、民族の浪費がある。
  104. 井出一太郎

    ○井出委員長 山中君、結論にお入りください。
  105. 山中吾郎

    山中(吾)委員 したがって、灘尾文部大臣の方向においても、何だか自民党改憲方針があるが、それを言うと、日教組の倫理綱領があるからというような、ことばについてかれこれ拘泥しないで、この憲法共通広場で、文部大臣と現場日教組と語る、PTAも含んで語るという積極的な論理の発想というものがないと、私は間違いであると思うので、そういう趣旨で申し上げたのでありますが、全体として、政府の御答弁は不満足である。もう少し憲法に基づいた哲学を持っていただきたいと思います。秀才である佐藤さんに何の哲学もない。私はまことに残念でありますが、次にまた佐藤総理大臣の新しい独創的な哲学が生まれることを期待して、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
  106. 井出一太郎

    ○井出委員長 これにて山中君の質疑は終了いたしました。  午後は一時半から再開することとし、中村時雄君の質疑を行なうことといたします。  暫時休憩いたします。    午後零時三十八分休憩      ————◇—————    午後一時四十五分開議
  107. 井出一太郎

    ○井出委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより中村時雄君の総括質疑に入る順序でありますが、麻生良方君より発言の申し出がありましたので、理事会において協議の結果、これを許すことにいたします。麻生良方君。
  108. 麻生良方

    ○麻生委員 ただいま委員長からお話がありましたように、理事会並びに委員会の皆さんの御賛同をいただきまして、先般の竹本議員の質問に対する総理の御答弁の中に、わが党といたしまして若干了解しがたい事項がございますので、それに関連をいたしまして再質問をさせていただきたいと思います。  総理、私は総理とだいぶ年齢が違いまして、総理から見ると、まるでむすこのような間柄であります。ですから、むすこから言われると、総理はかっとするかもしれませんが、しかし議員として考えれば、私も数万票の支持を得てここに当選しておる。総理もまたしかりでありますから、どうかひとつその意味では対等に、と同時にまた、先般の臨時国会の中でお話ししましたように、リラックスに、かたくならずにお聞き取りをいただきたいと思いますから、あらかじめひとつそのことだけを申し添えさせていただきまして御質問したいと思うのです。  時間があまりございませんし、同僚議員もあとでおられますので、私は特に竹本議員の質問に対して、その一つ対話のある政治と議会政治の根本的なあり方の問題、それからもう一つは、憲法第九条に関しての総理の御答弁、この二つに限りまして御質問を申し上げたいと思いますので、ひとつ総理の率直なお答えをお願いをしたいと思うのです。  竹本代議士が総理にお伺いをしたことは、倉石問題のてんまつについてではなかったんですね。もっと根本的に、国会が多数決原理で運営されているということはだれでも周知の事実であります。しかし、この多数決原理で運営されている背景には、やはり多数党が少数党の意見を受け入れる姿勢を初めから示しておかなければ、議会政治というものは、単なる形式的な多数決主義になってしまうではないか。その意味において、最近における総理並びに佐藤政権の姿勢は、どうも当初から野党側の意見を全く受け入れがたいような姿勢を示しておる点について、竹本議員は総理にその見解を求めたんですね。ところが、総理は何を勘違いされたか、たいへん激情されまして、一方的に、今度の空白はおまえたち民社党が悪いんだ、かような言い方で御答弁されておる。これははなはだしく質問の真意を総理が誤解をされたとしかわれわれには受け取られておらないわけであります。私は、やはり議会政治というものは、少なくても三分の一野党の勢力があるということは、政府立場に立てば、行政面において、三分の一の野党を支持している国民の意向を入れて行政を行なうということが基本的な原則である、こういうふうに私どもは解釈しているんですね。自民党だけの政府ではない、国民を代表する政府なのでありますから、やはり初めから御姿勢の中に、三分の一の野党の意見はそのまま国民の三分の一の意見である。これを行政の上にどう反映させるかということについて、相当細心の御注意を総理大臣及び内閣は示しておかなければならない。ところが、この点について、どうもこの国会における総理の御態度ははなはだ遺憾なのであります。たとえばでございますよ、本会議においてわが西村委員長並びに江田さん等々の非核三原則の質問に対しまして、総理はかような答弁をされておる。「私はこの際、この機会に国会においてかような決議をされる必要はないように思っております。私はそういう意味で反対であります。はっきり申し上げておきます。」と、こう御答弁されておる。このときの本会議における提案は、わが党の西村委員長にしても、江田さんにしても、要するに総理の言われている非核決議案をおやりになりませんかという意味である。その後民社党からは、単独でこの決議案の内容が目下議院運営委員会に提示をされておる。また、その後他の野党三党も同じ趣旨の提案を議院運営委員会でされておる。その提案の内容総理は一体ごらんになったのかどうか。相手側の提案の内容を吟味せずして、冒頭に本会議の席上においてかような答弁を言ってしまうということ自体が、私は野党側との話し合いを総理みずからがシャットアウトしている、こういうように考えるのですね。少なくとも総理みずから言われまするように、非核三原則あるいは非核決議は賛成であるがと、こう言われておる。とすれば、野党側の案をごらんになった上で総理みずからが態度をおきめになるのが、これが議会政治の上に立つ総理のあり方でありますよ。相手側の意見を聞かずして、提案の内容を見ずして、これを初めからシャットアウトするようなことをされるから、野党は倉石さんの首でもとる以外には道はないではございませんか。そういうことになってしまうのだ。こういう点を竹本委員は事実をあげて総理に御質問を申し上げたのですね。だから私は繰り返し申し上げます。われわれ野党だけがすべていいとは思っておらない。しかし、やはり議会政治を健全にしていくためには、まず総理みずからが謙虚に、野党を支持している国民の意向を行政の上にどう反映されるかということについて、もっと真剣にお考えをいただくべきではないか。かようなことを私ども民社党は考えておるし、竹本委員もその点を御質問を申し上げた。どうかひとつこの点について総理のそれこそすなおな御見解をもう一度御答弁を願いたい、こういうふうに思うのです。
  109. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  私もすなおに、また私、人柄からたいへんすなおなんですが、そういう意味お話しをいたしたいと思います。  ただいま言われますように、国民主権者、それがもう最後の審判者でございます。したがいまして、今日多数だといって多数の上にあぐらをかけば国民はどう考えるか。今日の多数、明日の多数とは限らない。また、今日の少数、明日の少数と、かようなものではないのです。そこに国会というものがあり、国会を通じて国民が審判する、そうして国民の信頼にこたえるような、信頼のできるような政党、それには支持を与える、これが実は国民だと思います。ただいま麻生君、いろいろ御遠慮なさいまして、若い立場だが、しかし同じ代議士だ、こういうことを言われます。私は別に年とっているからおれの言うことを聞けとか、かようなことは申しませんし、また、世の中には老いては子に従えということもありますし、ましてただいまのような議会政治の面から見れば、これは当然私が謙虚にものごとを聞かなければならぬ、これはもうそのとおりであります。で、この私の態度について、そういう点で誤解があれば、私はこの上とも改めてまいります。また、私は大体努力しておるつもりでございます。しかし、ときにはことばの行き違い、あるいは論争、論点を明確にする、こういうような意味で大きい声をすることもあります。その例としてただいま非核三原則の話が出ております。しかし、この非核三原則というものについては、私はもう最終的に態度を申しましたから、私の考えがどうあろうと、しかし国会で決議を得れば、その決議を尊重する、これはもうはっきり申しております。  ただ、いま不規則発言もございましたが、私の目の玉がときどきどうこうだと言われますけれども、こういうことはひとつ個人的な問題ですから、これはお許しを得たい、お願いしておきます。
  110. 麻生良方

    ○麻生委員 いまの総理の御答弁で、ひとつ今後とも議会政治の運営については、何でも多数決であるということではなしに、われわれ野党の意見を十分に御反映になるような行政上の措置、これをお願い申し上げたい。  そこで、私はもう一つだけこの問題について総理に詰めておきたいのですが、総理は本会議でかような答弁を明確にされておる。ところが、聞くところによれば、議院運営委員会においては、自民党の議院運営委員長の御発言によりまして、自民党も何がしかこれに関する案を出すかもしれないという御発言が出ておる。また、四日には——自民党も党内においてこれを出すべきではないかという御意見が出ておるやに私は聞き及んでおります。とすれば総理は、総理であると同時に自民党の総裁でございますから、かようにはっきり本会議において答弁をされてしまっていた事実がそのまま残っておりますと、自民党の同僚の議員の方々が、出そうにしてもこれがひっかかってなかなか出しずらい。総理の本会議の答弁と食い違ってしまうということを私ははなはだ遺憾に思うのであります。私は別にこの問題について総理の発言を取り消せとか修正せよとかということをここでは申し上げません。しかし、総理の最終的なお考えがここにあるということになると、これは自民党は出せないということになる。これはひとつ私は、お取り消しをいただいておいて、国会においてすべての政党合意に達することを総理としては願うべきが当然であろうと思いますが、この点についてはいかがでございますか。
  111. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  冒頭の問題でもう一つ、これは大事なことを落としたようですから……。国会の正常化、これはもうすでに皆さんと、また公明党、私どもいろいろ相談をして、前国会に、少数党の意見尊重するような、そういう特別なくふうをひとつしようじゃないか、こういう申し出があったこと、これは私先ほどお答えをいたしませんでしたが、はっきり頭に残っておりますから、こういう事柄で何かいい方法があれば、さらにその点も考えるべきだ、かように思います。  それから、ただいまの決議案の問題でありますが、自民党の総裁であり、同時に総理であります私に、まだ連絡がありません。どういうようなことになりますか、そういうような考えがあれば、党の考えをまとめることについて私はやぶさかでない。したがいまして、前言にとらわれるというようなことはいたしませんし、ことに結論として皆さんとお約束したように、決議ができれば尊重するという態度でございますから、そういう意味で十分審議を尽くしていただきたい。
  112. 麻生良方

    ○麻生委員 次の第二点の憲法九条の問題について、竹本委員の質問に対する総理の答弁に対して再質問をいたします。  総理はこう答弁をされておるんですね。「いわゆる改憲論者といえども、九条を改正するというような意見は私は聞かない」、こう答弁されておる。私は実はこの答弁をうしろで聞いておりまして、はて、これは意外なことをおっしゃるな、若干ことばの行き違いではないかと思ったのであります。総理は当時激情しておられましたから、ついかようなことばをお使いになったのであろうと思ったのでありますが、しかし、これは事速記録に残るということになると、はなはだこれは妥当ならざる答弁だということになります。私は以下、総理が御存じかどうか存じませんけれども憲法調査会における自民党に所属をする各議員の方々の九条についての発言の内容をここで公表をさせていただきたいと思います。このことは、私は決してこのことを主張された議員に対して言うことではございません。思想は自由でございます。したがって、どういう意見をお持ちになろうと、そのことを私はとがめだてする気はございません。ただ、憲法の上に成り立つ閣僚の中にかような意見をお持ちになると、倉石さんのようなことになることだけは肝に銘じてお聞き取りをいただきたいのでありますけれども、たとえば昭和三十九年七月憲法調査会報告書付属文書第一号に明確に記載されている「愛知揆一委員意見」、要約して申し上げます、この点だけ。「現段階における国際情勢をすなおに考え国連憲章第五十一条などの定める軍事的措置への協力の道ぐらいはひらいておくべきである。この点で現行の第九条第二項が支障となり、または、少なくとも疑義があるとするならばそれは改正されねばならない。」これは愛知議員の御意見でございます。  さらに、全部を読み上げる時間がありませんから、重要な問題だけ読み上げさせていただきます。田中伊三次委員意見が開陳されております。「現行憲法における平和主義の高い理想には魅力を感ずるが、自衛権は国家の属性であり憲法といえどもこれを否定することはできないことを考えると、この平和主義には合理性がない、すなわち、自衛の戦力の保持は第二項の冒頭の「前項の目的を達するため」という文字の解釈から認められ解されるとしても、第二項後段の「交戦権はこれを認めない」という規定は独立の規定であって、これにより、自衛権は否定されていると解されるのである。この不合理な規定を存置しておいて、小手先の解釈にたよることはやめ、改めるべき点は堂々と改めるべきである。」これが田中委員の御意見でございます。さらに「フォーリン・アフェアーズ」という外国の雑誌に、総理のおにいさんであります岸委員が堂々たる論文を掲載されておる。昭和四十年九月十五日の掲載でございます。「保守党は派閥闘争をやめ、憲法第九条(戦争放棄)を削除することで大同団結すべきである。私は日本が正式に軍備を維持することを妨げている同条項改正を提案する。保守党は一九七〇年の安全保障条約の更新についても団結すべきだ。」これは明確な訳語でございます。誤りはないと存じます。さらにもう一つ、重要なことは、自民党の安保調査会の保科試案、昭和四十一年五月九日に提出されておる。「憲法第九条は、憲法調査会最終報告書の改正意見にもあるとおり「自衛のため、および国際平和組織、とくに国連その他の集団安全保障制度に協力するため、自衛軍を保持」できるよう国民の大多数の同意をえて改正の必要がある。」と明確な答申をいたしておる。  私は、これらの御意見の内要の誹謗をいたしておるのではございません。これらの御意見国会議員としてお持ちになることは、総理、これは当然でございましょう。当然というよりか、思想の自由でございます。しかし私は、総理の御答弁はかような御意見に全く耳をふさいでおられる御答弁としか承れない。なおかつそれでも総理は、第九条を改正するなどという意見は聞いたことがないとおっしゃるのか。そうおっしゃるなら、私は現閣僚の中でこの意見を堂々と公表している方々の名前を列挙をいたしますが、それでもよろしいか。
  113. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  たいへんおしかりを受けたようですが、あるいは私の表現、これが十分でなかった、こういうことは私も認めますが、私の申し上げたいこと、また私どもが耳にしておるところ、これは第九条の平和主義、これを否定する者はないということ、このことを実ははっきり言いたいのです。ただいまのようにお話をちゃんと第一項、第二項とお分けになりましていろいろ御議論なさいました。私はそのとおりだと思いますし、また党内にもそういう意味のことを言っている発言、これは私否定をするものでもありません。あらためてこの際も読み聞かされて、よくわかります。しかし、ただいま九条のいわゆる平和主義、これを否定する者はおらないということ、これは自民党といえども一人もおらない、このことを実は申し上げておきたいと思います。
  114. 麻生良方

    ○麻生委員 最後にもう一言だけ。総理の御答弁でまあ私はそれをすなおに解釈をいたしますが、私はここで最後に明確にしておきたいことがあります。  私は、憲法思想の自由、これを認めておる、したがって国会議員であろうと閣僚であろうと、思想としていかなる思想をお持ちであろうと、これは自由であるということをこの委員会において明確に認めておく必要がある。しかし現閣僚、現政府憲法の上に成り立つのでございますから、憲法改正思想をお持ちの方は、私は、平和憲法に徹する佐藤内閣にはお加わりになるべきではないと考えます。この点について、総理、今後もし閣僚の入れかえ等を行なうならば、十分に御配慮を願い、この委員会においても、さような思想をお持ちの方は、むしろ節を全うされて、閣僚のいすなどはゆめこれを追うことなかれということをつけ加えまして、私の再質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
  115. 井出一太郎

    ○井出委員長 次に、中村時雄君。
  116. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私は民社党を代表いたしまして、先般来、外交方針で曾祢外交委員長、さらには一般経済論で竹本委員等々によりまして、一応の方向というものの定め方が出ていったわけですが、それに加えまして、今般農林行政一般に対して質問をしていきたい、このように思っております。  ただその前に一、二点、農林大臣並びに総理にお尋ねをしておきたい。それは先般の二月十五日以降の暴風雪の雪害の問題でありますが、これに伴いまして実質的に非常に大きな額としての災害があった。たとえば、四国においては百四十八億、九州においては六十九億、これらすべて温暖地区において行なわれたという特異性を持っておるわけです。そういうような立場から、今次の雪害に対して天災融資法を発動することになるかどうか。さらにまた範囲の問題からいって激甚災害指定地になるかどうか。その問題をひとつ考慮に入れながら農林大臣にお尋ねをしていきたい。  まず第一点は、自作農創設維持資金——創設は近代化資金のほうに入りましたから自作農維持資金、これは在来本質的には五十万円までを貸し付けることなっております。ところがその五十万円は在来ほとんど借りております。そこで、このように先般の干害と相並行して雪害が起こってきたわけですから、そういう立場をとって、この五十万円というものを七十万円あるいは大きいところは百万円というふうにお考え方があるかどうか。このことは三十九年の新潟の雪害においてそういう事柄があったのであります。だからそういう立場をとって、ひとつぜひともお考えを、また配慮を願っておきたい。  さらにまた農業近代化資金、農業改良資金あるいは農林漁業金融公庫資金等の制度融資の借り入れ、これをひとつ償還期限の延期をやってもらいたい。これが第二点であります。  さらにまた、現在施設園芸、たとえばよくいわれるビニール・ハウスでありますが、それらの施設などの復旧資材に対して補助金を交付するかどうか。あるいは災害復旧の旧造林に対するところの補助率が、被害が五〇%以上となっておるのです。それを三〇%以上を対象にすることができるかどうか。さらに雪起こしのために、現在までは年輪が大体八年以下になっておる。今次の雪害では十五年生あるいは二十年生、これらの山林がやられておる。そこでこれらの規模を拡大して、年輪の八年以上は拡大資金の貸し付けの対象にしていただきたい。  これらに対して、時間がありませんので、一括御返答願いたいと思うのです。
  117. 西村直己

    ○西村国務大臣 先般例の台湾坊主といわれますものから起こりました雪害が、漸時私どものほうには統計調査関係で集約をいたしておりまして、県報告を集めましたものでも、現在の段階で林野関係を除きまして一応二百九十七億、そのうち樹体関係を含めて農作物が二百八億、それから施設で八十九億となっております。それから予想外に林野関係、これが官行造林はもちろん、民有林におきましても多いわけであります。これがおそらく三百億あるいはそれ以上になるかもしれません。これらの統計をいち早く集めまして、被害を受けられました農業あるいは林業が一日も早く正常な状態あるいは将来のために回復し得るように措置をとりたい。  そこで、その対策でございますが、天災融資法の発動、これはもうできるだけ早く統計の結果を持って処置をしたい。  それから、自作農創設維持資金の特別ワクの設定と申しますか、こういうことについてもその被害額に応じて検討を進めてみたい。  それから、延納と申しますか、それらの問題等、こまかな点の御意見あるいは御要望等がございましたが、法規の範囲内におきまして処置をしたいと思います。  なお、必要に応じましては、さらに細部にわたって事務当局から御答弁させたいと思います。
  118. 中村時雄

    ○中村(時)委員 時間がないから、詳しくはまた委員会でやるといたしまして、ただ一点、いま申しましたように、林野の関係が三百億とおっしゃいましたが、おそらく調査をすれば四百億以上になるのじゃないか、このように思っております。そういう点を考えて、激甚災の方向の指定ということも至急にひとつ考えていただきたい。  その次に、第二点で、これは総理にひとつ。総理はそのような方向でやっていただけるかどうか。
  119. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今回の災害は意外に甚大でございまして、したがいまして、調査を大至急取りまとめるようにいたしまして、その調査の結果に基づいて、それぞれ必要なる処置をとりたいと思います。
  120. 中村時雄

    ○中村(時)委員 次に、もう一点、農林政策に入る前にお尋ねしておきたい。それは、先般も国鉄のストやいろいろな問題がありました。そこで、よくこういうことがいわれておる。これは電通はじめ農林、いろいろなところに出ておりますが、いろいろなスト、あるいは職場放棄をやる。それにはそれなりの考えがあってやられると思う。その後においてその処分が出てくる。ところがその処分に対して、二、三年たつと、いつの間にか慣行だといって、この問題があやふやにされ、そして職権の復権となってあらわれてきておる。これは国民を欺瞞するもはなはだしいと思う。少なくとも佐藤内閣において、政治姿勢という姿の中から、このような管理職の一つのあり方というものは、国民をごまかすことなくして、ほんとにすっきりとした姿の上に立ってこれらの解決をはからなくちゃならぬ。そのことが、国の基礎になる。また行なった人たちもそれだけの責任は当然とるべきであり、そういうような姿の中に立って佐藤内閣としての政治姿勢は一体どういうお考え方を持っているか。
  121. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま中村君から御指摘になりました、いわゆる法規違反、そういうものについての処分の問題、これは、ただいまのお説、述べられたことに、中村君が全部そのお考えだと、かように申すわけではありませんが、私どもも、法規は守らなければならない、その法律の命ずるとおりの処置をすべきなんだ、その後の処置が、なぜ処分したかわからないようにうやむやになるというようなことがあってはならない、かように思います。ただ、私この機会に一言それにつけ加えさしていただきたいことは、やはりお互いに情愛の問題もございます。人情的な問題もございます。なかなかこういう事柄が法規一点ばりでもいかないものがある。そのために情的な働きをすると、ただいまのような、いつの間にかなぜ処分したか、その目的も明らかにならない、こういうような非難を受ける事柄もあります。したがいまして、今後のあり方といたしましては、法規はどこまでも法規として守っていく、また同時に職場を同じくするもの、それが一体としての情愛の問題は情愛の問題として、別途の問題としてこれを考えていく、こういうことでありたいと、この上とも実は努力し、またその点を直すこと、すでに直そうとして一、二取り組んだ例もございます。そういう意味で、御賛成がいただければ、政府のいまの処置を御鞭撻を願いたいと思います。
  122. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そういう国の一つ基本姿勢だけがある。それだけに私は真剣に取り組んでいただきたいと思います。  次に、私はいよいよ本題に入っていきたい、こういうように思いますが、私の質問する前提としての考え方をまず訴えておきたい。それは、四十三年度予算編成は、全体としての景気調整、いわゆるフィスカルポリシーに重点が置かれて、総合予算主義をとり、年度内補正は行なわない方針とされているために、予算規模の抑制と財政硬直化打開が表面に出過ぎて、政府の各種政策、特に農業諸施策の実施が時期的に機を失して、全体的に調和が失われ、農政の内容をゆがめることになっているんではないか、このように考えられるわけです。そういう観点から、私は以下、食管制度の問題、米価審議会の問題、食糧問題、すべてをひっくるめて、最後に構造政策の問題へと、若干の質疑をしていきたいと、このように考えております。  そこで第一にお尋ねしていきたいのは、政府昭和四十三年度予算の編成にあたって総合予算主義を採用する方針をとられておりました。そこで、年度内においては補正予算は行なわないということを明らかにされてまいっておりますが、現在でもその考え方には間違いはないですか。
  123. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 間違いございません。
  124. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そこで農林大臣にお尋ねしますが、それを基本に、頭の中に入れておっていただきたい。そうして次にお尋ねをすること、すなわち米価の決定は、食管法のたてまえからいって、どのようにきめられておるか、御説明を願いたい。
  125. 西村直己

    ○西村国務大臣 米価の決定は、食管法にのっとりまして政府がこれを決定いたしておりますが、決定の過程におきまして、審議会等十分な意見を徴しまして、決定をいたしております。
  126. 中村時雄

    ○中村(時)委員 審議会というものは政府の諮問機関でありまして、こういう方式がたくさんあるが、そのうちのどれを考えたらいいのかということを聞くのが審議会であります。私のいま質問しているのは、米価の決定の方式じゃないのであります。米価の決定をするのは一体何を基準に、たとえば食管法によってどうしているとかいうことがあるはずであります。その決定の方式を私は聞いているのであります。
  127. 西村直己

    ○西村国務大臣 食管法にございますまず第一には、生産者米価をきめるにあたりまして、生産費並びに所得補償、こういうことを中心に、経済の諸事情をあわせて生産者米価を決定し、また消費者については別途の家計費というようなものを中心に基準を設けて、決定いたしております。
  128. 中村時雄

    ○中村(時)委員 食管法の第三条で、生産者米価をきめる場合には生産費所得補償方式によってきめる、しかもそれは一つの過程であります。ほんとうの目的は、再生産を確保することが目的なのであります。その一つの過程の中から生まれてくる一つの方式なのであります。だからそういう方式の中で、それではお尋ねいたしますが、生産費というもの、すなわち生産資材というものは今後高騰するかどうか。所得費におけるところの所得、すなわち労賃というものは上がるかどうか。農林大臣はどうお考えになっていらっしゃるか。
  129. 西村直己

    ○西村国務大臣 これは政府全体のとりますところの各政策、それから経済の発展の、いわゆる経済成長の動向、これらの中から生まれてくるものでございますが、政府全体としては安定成長の中で、できる限り価格というものを安定さしていきたい、こういうふうな考え方のもとに、その基礎をとってまいりたい、こういう考えでございます。
  130. 中村時雄

    ○中村(時)委員 だから成長率を八%なら八%にして、生産資材というものが上がるのか、あるいは労賃というものが現状なのか、一体何%上がるのか、あるいは下がるのか、そのことを聞いているのです。上がるとお思いになるのか。下がるとお思いになるのか。
  131. 西村直己

    ○西村国務大臣 ものによっては、たとえば肥料のように下がるものもあるかもしれませんが、しかし労賃その他につきましては上がらざるを得ない、こういうものもあると思います。
  132. 中村時雄

    ○中村(時)委員 下がるという意味は、労賃の中で機械化が入った。そこで労働生産に伴うところの問題からいって、投下労働日数が減るという意味における下がり方はあるでしょう。しかし生産資材というものは上がってくるし、労賃も上がってくる、私はそう考えるが、どうですか。
  133. 西村直己

    ○西村国務大臣 お説のとおりであります。
  134. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それじゃお尋ねいたしますが、年度中途において生産者の米価の値上げに伴うところの財政負担増しが、おそらく当然問題になってくる。その場合に、政府は一体どのように処理するつもりなのか、まず第一点お尋ねをしておきたい。あなたはいま言ったように、生産材料も上がる。労働賃金も上がる。上がるとすれば、当然米価は上がってくる。上がってくる場合において、補正予算を組むなりいろいろな問題が起こってくるが、実際の問題として、その財政負担はどのような処置をしようとされるのか。
  135. 西村直己

    ○西村国務大臣 私の基本は、食管法のいわゆる基本、これはもう守ってまいる、このことだけははっきり申し上げておきます。なお一方におきまして、お説のように補正予算を組まない、総合予算主義というものをとっていく、これは十分に念頭に入れていく姿勢でございます。その中において、物価抑制策も行なわれるでありましょうが、しかしまた上がらざるを得ないものもありましょう。それらの中において、正常な価格というものを求めていきたい、こういう考えでございます。
  136. 中村時雄

    ○中村(時)委員 どうも歯にものがはさまったものの答え方なんですが、考えてごらんなさいよ。生産財が上がる、あるいはまた労働賃金が上がる、あなたもそれは承認された。さすれば財政上からいってこれはどうするのかということをお尋ねしている。もしも上がらぬということになれば、現在の一万九千五百二十一円ですか、そのことを据え置くということになるんですよ。あなたはいまこの問題を据え置くという方向で打ち出していきますか。一体どうなんですか。生産者にとっては非常に大事なことなんですから、もう一度お聞きいたします。
  137. 西村直己

    ○西村国務大臣 具体的な米価の決定は、まだ十分御存じのとおり時間がございますので、その間に諸般の事情を見て考えてまいりたいと思うのでございます。
  138. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私は、米価の決定に対してあなたに云々しているのじゃないのです。一つのこの問題に対して、私は食管法に基づいてあなたに質問をしているんですよ。米価だということになれば、これは審議会を開こうとかいろんな問題があるでしょう。そういうことを私は言っているんじゃないのです。食管法に基づいてあなたにどうなるんだということを聞いている。そのことが大事なことでしょうが。それをごまかすところに問題がある。だからそういう点はやっぱり明確にしておいていただきたい。もしかりにあなたが生産者米価を上げないということになれば消費者米価も上げないということになるんですが、一体どうなんですか。
  139. 西村直己

    ○西村国務大臣 私は、繰り返して申し上げるようでありますが、食管法に基づいての米価決定という方向へ行くという原則ははっきり申し上げておきます。ただ、具体的にそれではどういう方向をとるかというのは、まだ時間がございます。時期もございます。そこでその間のいろいろな経済動向なり食管法に基づくいろいろなデータというものを考え合わしていかなければならぬ、こういう考えでございます。
  140. 中村時雄

    ○中村(時)委員 あなたは、だから言っているでしょう、現在の労働賃金も上がるとおっしゃった。私もそうだと思う。生産資材も上がる、私もそうだと思う。そうすると、上がるということは明確になってきたんです。私は米価を幾らにせいということを言いよるんじゃないのです。基本原則を言っているのです。そのことが明確にならなかったら生産者だってだれが米をつくりますか。毎年その意味において上がってきておるのでしょう。しかもあなたは基本原則は守るとおっしゃる。守るなれば生産費所得補償方式という方向を守るということでしょうが。生産費所得補償方式を守るということになれば、一体どうなるんですか、これは、財政上からいって。これはおそらくどんな子供でもわかると思う。ただ言いにくいことはよくわかりますよ、私は。あなたが言いにくいことはよくわかるけれども、その点はおそらく農民全体が聞きたい。消費者側からいえば、消費者米価を押えるということになれば、生産者米価というものを押えられるのです。そういう観点からこれは消費者も生産者もすべてが聞きたがっている唯一の観点だと私は思う。そういう立場に立って——ほかの議員諸公でも、くにに帰って、まだ上がるやら上がらぬやらわかりません、そういう答えはできないと思う。一体どうなんですか。
  141. 西村直己

    ○西村国務大臣 米価そのものは、具体的に決定するのはまだ、御存じのとおりずうっと先のことでございます。したがって、米価の決定のいわゆる道筋としては、さっき申し上げたような食管法の原則で参ります。これ以上はちょっとお答えにくいわけであります。
  142. 中村時雄

    ○中村(時)委員 お答えにくいと言うことはどこがお答えにくいのか、はっきりしてもらいたい。ただ、私の言うのは——道筋としては私の言うとおりだとおっしゃるんでしょう。それでけっこうなんです。そうすると、道筋としてはそういうことになれば、その道筋が頂点に達していけば米価というものが出てくる。そのときに上がってくる。上がってくる場合に補正予算は組むんですか組まぬのですか、その場合の時点になったら。
  143. 西村直己

    ○西村国務大臣 もちろん補正を組まないという政府の態度、これはもう御存じのとおりであります。ただ、食管の会計全体を見まして、米価——もちろん生産者米価そのものは大きな要素でありますけれども、他にもいろんな要因が食管会計には御存じのとおりございます。したがって、そういうものを見てまいりますと、私どもは補正予算を組まないという姿勢の中で正常な米価決定というものを食管法に基づいてやってまいりたい、こういう考えでございます。
  144. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それじゃ逆に尋ねてまいりましょう。それでは数量に対してはどうですか。四十三年度のこの予算買い入れ量八百五万トンに規定してある。そこで食管法の第三条の第一項には、政府の買い入れ量の制限はできなくなっている。全部買わなくちゃならない。そうすると、八百五万トンという数字の中からもっと時と場合によればオーバーになると私は思う。あなたの逃げ口上は、一つはおそらく予備費の問題を言っているのだろうと思うのです。予備費の問題というものは千五百億ですよ。千五百億で一体どのぐらいのものが買えますか。農林大臣、お答えを願いたい。
  145. 西村直己

    ○西村国務大臣 私は、まあいま申し上げましたように、食管会計の中において決定されました米価以外にも、いろんな経費というもの、金利であるとかあるいは保管料その他諸経費というものがあると思います。その中で相当考えられていくいわゆる運営上の改善というものも考えていかなければならぬ、こう思っておるのでございます。
  146. 中村時雄

    ○中村(時)委員 運営上とおっしゃいましたが、運営上は二千四百億の中の幾らぐらいありますか。
  147. 西村直己

    ○西村国務大臣 これは食糧庁長官からお答えさせます。
  148. 大口駿一

    ○大口政府委員 ただいまお尋ねになっております二千四百十五億というのは食管会計の最終的な損益を埋めるための繰り入れ金額でございますが、米を買います買い入れ費というものには弾力条項がございまして、数量がふえました場合には国会の御承認を得ることなく買い入れ費をふやして買い入れに支障のないような規定が予算総則にきめられております。
  149. 中村時雄

    ○中村(時)委員 だから、数量がそれでは多くなった場合に、たとえば予備費にしても、運用上は別としても、数量がどんどん入ってきます。事実米の売り渡しはここ数年来農地の耕作面積は変わらなくても毎年毎年ふえてきているのです。必要があったら全部私は数字をもってお話をいたしますが、買い入れ数量というものは毎年ふえているのです。そういう姿の中で買い入れ数量がいま言ったように予定よりもオーバーをしてきた場合、一体予算としては補正をやはり組まないというお考えなのか、どうかということを明確にしておいていただきたい。
  150. 西村直己

    ○西村国務大臣 四十三年度のいわゆる予定されている八百万トン、これが非常に伸びることがあるか。四十二年度がたしか九百七十ですか八十ですか、非常に異常な豊作でございましたから大きな数字を予定しているのじゃないかと私は思います。そこで今年度少し下がっている。大体四十一年度の平年状態を想定したような形でやっていると思います。理論的には私は確かにふえるということも想像できますが、一応八百五万トンという買い入れ数量を予定してやっていることが政府が予算編成の際の妥当な数字だ、こういうふうな考えで立っておるわけであります。
  151. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それは、農林大臣、こういうことですよ。いまあなた、政府の手持ちの古米が幾らあるかといえば、二百万トンからあるのですよ。すなわち、昨年度は特に豊作であった、そういうような立場から考えていくと、実際の天候に支配されるのです。天候に支配される農産物だけにその予想は立たないわけです。そこで数量が昨年度のようにふえてきた場合にはおそらく支出というものはうんと大きくなる。そうでなくして、消費者米価というものを押えるのだ、それは硬直化という予算のたてまえからスライド制にするかあるいは押えるか、そういうことになってくるわけです。補正予算を組まぬとするなれば。すなわち、いま言ったように、総理おわかりのとおり、生産者米価というものと消費者米価というものは二重のたてまえになっていることが食管法のたてまえになっている。生産者のほうはどうかといえば、その米価の決定が生産費所得補償方式ということは何を意味するかといったら、米価をつくっていく一つの過程だけなんです。方式だけなんです。ほんとの目的は再生産を行なうということなんです。再生産を行なう場合にはそれだけの生産費米価というものが上がってくることはお聞きになったとおりです。消費量のほうも、すなわち数量の買い入れはこれはとめることはできない、食管法では。全部数量は買い入れなければならぬことになっている。そこでその間に逆ざやという問題が起こってくるわけです、配給というものをやると。その逆ざやの解消ということは私もよくわかる。その逆ざやの解消ということが運営という問題で逃げようとされておる。それもけっこうであります、方法があれば。しかし、いま言ったように、基本的に消費者の米価を上げないということになれば生産者に犠牲がある。生産者のほうを上げれば消費者のほうに犠牲が出てくる。こういう意味におけるスライド式の逆ざや解消ということがもしどうしても必要として行なわれるということになるなれば、その前提としては食管法を変えなくちゃできぬということになってくる、そういう立場だと思うのです。そこで、食管法を変える、そういう立場をとられるのか、あるいはどうしても万やむを得ぬときには補正予算を組まざるを得ないというお考えなのか、その点をひとつ明確にしておいていただきたい。
  152. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、必ずしもそう思いません。別に食管法を変えなくても、消費者米価の立て方と生産者米価の立て方が違っても、これがかりにスライドする場合であっても、立て方が違うのですから、機械的にスライドするということは考えられません。その間におけるいろいろな運用のあれによって、あれだけの繰り入れをしておれば、その範囲内において補正をしなくても済むいろいろな方式が確立されることを私どもは期待しておるということでして、これは期待しても、今後の食管制度の運用においては期待できることだというふうに私は考えております。
  153. 中村時雄

    ○中村(時)委員 ちょっと食い違いが起こってきたのですがね。あなたがいまおっしゃっている事柄の中は、スライド制を是認するものの考え方ですよ。そうでしょう。そうすると、農林大臣はその基本は変えないと言う、これは食管法のたてまえからいっている考え方ですよ。そうでしょう。一体どうなんですかこれは。総理、その中はどう取り持っていきますか。
  154. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いや、スライド制の是認というのではなくて、生産者米価と消費者米価の両米価の関係は、やはり正常化されなければいかぬと私は考えております。特にひどい逆ざやというようなものは、これはやはり価格体系のあり方としても考えなければならぬということになりますので、したがって、もし生産者米価を上げるという事態がさましたら、これに伴って機械的に上げるというのではなくて、消費者米価が若干上がるということは予想しなければならぬだろうというふうに考えます。そういう考え方もありますし、またほかのやり方もあるでしょうが、いまスライド制ということが出ましたから、かりにそういう場合にも、別に機械的なスライド制ということを考える必要はないじゃないかということを言っただけでございます。
  155. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、これは大蔵大臣のほうに話が飛んでしまったのですが、大蔵大臣にお尋ねしますよ。あなたはいま、生産者米価が若干上がった場合においては消費者米価のほうに若干はね返るであろう、しかし、全面的にそれがスライド制の方向ではないとおっしゃった。そうですね。いまそのとおりおっしゃったでしょう。間違いないですね。そういう方法があるとおっしゃったですね。
  156. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この米価の決定ということは、食管会計の損益に大きな影響を持っておることは間違いございませんが、しかし、損益に影響する要素というものは、まだ食管会計の中にはかにもあります。こういう問題とのからみ合いの考慮というものが食管会計の操作には残されておりますから、この辺はいろいろなやり方があろうと考えております。
  157. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そこで、あなたのおっしゃるようなことをもう一回私ははっきりさせておきたい。あなたはいま言ったように、食管制度の中で生産者米価がある程度上がった場合、ある程度は消費者がかぶる、それ以外のものにはまた何らかの方法がある、こうおっしゃるわけです。そうすると、生産者米価が十上がったとする、そうすると消費者米価をある程度少なくするから八にしたとする、一体二の財政上の出し方はどういうふうにして出されますか。
  158. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま言いましたように、損益勘定には大きい影響を持つものでございますから、したがって、生産者米価が上がるというときには、やはり損益計算額から見ましても、ある程度消費者米価がこれに伴って上がるという事態は自然に起こるのじゃないかということを言ったわけでございます。
  159. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、もっとはっきりしましよう。いま言ったように、あなたも確認しているんですよ。生産者米価というものと消費者米価というものは別の角度できめるんだとあなた自身もおっしゃった。そうすると、いまの食管法のたてまえからいくと、その間における逆ざやというものは一般会計からいままでは出しておったのですよ。そうでしょう。ところが今度はそれを、いま言った財政の硬直化に伴って、総合予算を組んだから補正は組まないのだと言うから、ここにネックが出てきたわけなんです。そうでしょう。私の言うのは、そういう観点で考えていった場合に、それが必ず先ほどから言っているようにオーバーになってくる。オーバーになっていったのに、実際には補正を組まないで済むか済まぬかという問題です。済まないということになれば、あなたのおっしゃった逆ざや解消という名目が財政硬直化という、赤字に伴ってスライド制にならざるを得ないと私は考える。あなたのおっしゃるのは、一部は方法論だけを言っている、そういうふうに私は考えられるのです。どうしてあなた方は補正を組まぬというその問題だけを取り上げられるのですか。  そこで、それだったら田中長官にお尋ねをしたい。災害がうんと大きくなってしまって、予備費ではどうにもならない、あるいは公務員の給与、ベースアップの問題が出てきた、どうにもならない、そのときにはあなたは、しかたがない、補正を組む場合もあり得る、こういうことをおっしゃった。一体どうなんですかこれは。内閣の不統一ですか。私はそれにこだわる必要はないと思うのです。補正ができなければできぬでけっこうですよ。そういう立場であなたは一生懸命でやられるのはけっこうです。しかし最悪の場合にそういうことになった場合にはなったで処理すべきで、何もそのことによってその姿勢をくずしたらいけぬというメンツの問題ではないと思うのです。
  160. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それはこだわることはおっしゃるとおりございません。ただ、御承知のように、本年度は九百何十万トンという買い上げ米が非常に多いときでございまして、この多いときの赤字というものは、これはいままでの食管制度ができてからの最大の赤字でございますので、これはむしろ異常な赤字だと私どもは考えております。いままでの供出米の例を見ますと、過去何年かのうちで一番高い八百五万トンというものをことしの供出量に見ておるようでございますが、そうしますと、一番多い赤字のときの繰り入れ額を今回は予定しておりますので、はたして買い入れ米がどのくらいになるかわかりませんが、そこには若干のいろいろのくふうをこらす余地があると思いますので、そういうことから見まして、できるだけこれを補正予算のないような一つ方針の確立を私どもは期待する。これは政府だけではぎあられませんで、今後米審においても十分研究していただく事柄だろうと思いますが、とにかくそういう形で私どもは補正予算をなくしたいということを期待していると言っておるわけでございます。
  161. 中村時雄

    ○中村(時)委員 あなたはよほどことばに注意してものを言ってくださいよ。米審というのは米価を決定する建議をするだけですよ、その内容は。そういう財政上の問題なんか、米審の中に云々というものはないはずです。それを米審に期待するだなんて、とんでもない間違いを起こしますよ。そのことは申しません、ここでは。申しませんけれども、よほど注意に注意してことばづかいをやっていただきたい。  それからもう一つ、あなたはあくまでも——私はいいと思うのです。逆ざや解消ということは当然だと思うのですよ。また、すべきだと思っている。しかし、いつまでも固執してその問題にとらわれて、補正は組まないのですということになれば、あなた方がおっしゃっている別の便法としての具体的な例をここにどんどん出していかなければならぬ。何もそれにこだわる必要はないじゃないか。いま言ったように、農林大臣も基本の姿勢はくずさないと言っている以上は、もしかりにそういうことが起こって、逆ざやを解消せんならぬということが起こっている場合には補正を組んだっていいじゃないか。しかし、組まないように政府内で努力をして、組まなかったら組まないでそれでいいのじゃないか、私はそう思うのです。それをあなたは、どんなにしても補正は組まないのだ、どんなことがあっても組まないのだ、こういう姿勢なのかを聞いているのです。総理、どうなんですか一体。
  162. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ことしの予算は、御承知のように、あらゆる歳入源、そういうものを洗いざらいかき集めて、そうして大体考えられる予備費も多額のものを計上しておる。だから通常の状態においては補正を組むということは考えない。異常の事態があれば、財源があろうがなかろうが、それに対する対策を立てる、これは政府の責任ですから、それはもうそういうことははっきり割り切ってものごとは考えたがいい。しかし、とにかくわれわれは通常の状態においては補正を組まないようにあらゆる努力をするというのが現在のたてまえであります。
  163. 中村時雄

    ○中村(時)委員 たてまえはよくわかるのです、私も。だから私の言うておるのは、そのたてまえだけに固執して、メンツにこだかって一定の限度で押え込んでしまってどうにもならないというような、ものに固執していった考え方、そういう必要はないじゃないか、なかったらなかったでけっこうじゃないか、しかし災害やいろいろな問題でどうにもこうにもならぬときには、国はやはり責任者ですから……、そうすると一般の国民は、どんなにしたって組まないのだといえば、これはお手あげですよ。希望もなければ何にもないですよそれは、そうなったら。そこで私は、そういうような場合には補正を組まれますかと、こう言ったわけです。だから、組むとおっしゃるのですか。
  164. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 異常な災害が起こった場合、そうして予定した予備費をもっても足らないというような事態が起こったら、この予算の組みかえとか、そういうような補正の必要というものは出てくると思います。これを否定しているわけじゃございません。
  165. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それじゃ組むということで了解をいたします。  次に農林大臣にお尋ねしたい。農林大臣は先ほど、食管法の根幹を守ると、こうおっしゃった。一体あなたの食管法の根幹というものは何をさしているのか、明確にしておきたい。
  166. 西村直己

    ○西村国務大臣 米の需給というものを確保しながら、同時に、特に米食というものはまた国民生活の中心でもあります。その両面から食管法に規定しております再生産の確保、それから家計の安定、この両面をよく守ってまいりたい、これが根幹を守る、この原則を守ってまいりたい、こういう処置です。
  167. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、抽象的なことじゃなくて具体的に言いましょう。あなたの言う食管法というのは、その三条を言っているのか四条を言っているのか。三条はこう書いてありますよ。「米穀ノ生産者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ生産シタル米穀ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノヲ政府ニ売渡スベシ」「前項ノ場合ニ於ケル政府ノ買入ノ価格ハ政令ノ定ムル所ニ依リ生産費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ米穀ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」第四条は「政府ハ其ノ買入レタル米穀ヲ第八条ノ二第二項ノ販売業者又ハ政府ノ指定スル者ニ売渡スモノトス」「前項ノ場合ニ於ケル政府ノ売渡ノ価格ハ政令ノ定ムル所ニ依リ家計費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ消費者ノ家計ヲ安定セシムルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」この三条、四条というものが米価決定の基本をなしているのですが、その基本である規範を守る、こういうことに受け取っていいのですか。
  168. 西村直己

    ○西村国務大臣 おっしゃるとおり、私は三条、四条の原則は守ってまいりたい、こういう趣旨でございます。
  169. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それじゃはっきりしてきた。はっきり先ほど言ったように生産者は、第三条を考えていった場合、生産資材は上がる、労働賃金は上がる、これははっきりしてきたわけなんです。そうすると残ってくるのは消費者米価なんです。消費者米価というものは一体どう考えておるのか。いまの消費者米価というものをそのまま据え置くという考え方なのか。あなたは原則を守るというのだから、家計に影響を及ぼさないというところの原則を確立していこうとしているのかどうか。
  170. 西村直己

    ○西村国務大臣 まあ私も勉強が足らないかもしれませんが、三条、四条を私もよく研究いたしますと、両者一応たてまえは違って立っておりますが、同時に共通の分野があります。物価その他経済事情を参酌しながら再生産を確保する、同時に片方は家計安定をする、そういうような中で、いわゆる諸般の経済情勢の中で両者をやっていくという意味では全然両者が別個のものではないという中でわれわれはやってまいりたい、こういう意味で三条、四条を受け取っておるわけであります。
  171. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうじゃないですよ、あなた。片一方は再生産を確保することが旨となっているのですよ。生産者のほうは再生産を確保することを旨とすることが基本になっているのですよ。片一方の消費者のほうは家計の安定が基本になっているのですよ。全然違うのですよ、あなた。物価の安定という度合いは政治的には考えられることです。それはけっこうなことです、私もそれは賛成ですよ。賛成だけれども、この法のたてまえからいったら、あなたの言っていることはこれは違っている。よくそこのところを明確にしておいていただきたい。
  172. 西村直己

    ○西村国務大臣 私は違っているとは思わないのでございます。と申しますのは、お読みいただきましても、三条にも明らかにこれは再生産確保、これは確かなことでございますが、それに対しては「物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ」こうなっています。また家計費のほうにおきましても「物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ消費者ノ家計ヲ安定セシムル」こういうふうになっております。
  173. 中村時雄

    ○中村(時)委員 物価その他を参酌しということは意味が違うのです。物価その他を参酌しているからこそ生産者米価、消費者米価と分けているのです。あなたのは、それは法律のこじつけになるのです。生産費所得補償方式というものは再生産をすることが目的なんです。物価の参酌は、そういう物価の参酌をしていった結果、再生産をするためには生産費所得補償方式が必要なのではないか、いまの経済実情から見ていったらどうしても消費者を擁護せんならぬ、擁護せんならぬから、それを高くしていったのじゃ困るから、それらの経済情勢からいって、実際の消費者を擁護しようというたてまえをとって、家計に影響を及ぼさない、こういうことなんですよ。どうです、あなたのとは全然違うんだから。
  174. 西村直己

    ○西村国務大臣 まあ私としてはやはりその基本は、あなたのおっしゃることもわかります、しかし同時に生産者米価というものは再生産確保、しかしそれには、さっき申し上げましたようにものによって上がるものもありましょう、ものによって下がる要素のものも多少ありましょう。それから同時に家計費におきましても所得の上がる部分もありましょう。こういうものの経済事情を参酌しながら、正常な形で、両者関連のもとにそれぞれの目的を果たしていきたいというのが食管の原則ではないか、こう思うのでございます。
  175. 中村時雄

    ○中村(時)委員 これはお互い水かけ論になるけれども、大臣、このことは今後におけるところの消費者、生産者に対してたいへんな問題を起こすのですよ。だから、いま言ったように経済情勢を参酌する、そこで問題が、経済情勢が非常に何というか急角度に困難な状態になったときに、そのしわ寄せが生産者のほうにしわ寄せされたら困るというたてまえがあるからこそ、生産費所得補償方式というものが生まれてきておる、またそれがなかったら国の台所をあずかる農民の方々が再生産の意欲をなくする、そこでそのたてまえというものが明確になってきた。消費者のほうにおいてもそうです。物価がどんどん上がっていく、それに連なってどんどん消費者米価が上がったのでは困る、家計に影響を及ぼす以上に上がってきたら困るということから、家計に影響を及ぼさないということになっている。それは経済情勢のいかん、どういうふうになるからということによって、いま言った二つの基本原則だけは守らなくちゃならぬという、そのたてまえが食管法ですよ。あなたのおっしゃるように、経済原則がいろいろ変わるから、そこで米価がどうなるこうなるという問題とは基本的には意味が違うのです。どうですか。
  176. 西村直己

    ○西村国務大臣 再生産を確保する、言いかえれば生産費を割るというようなことはわれわれは考えてない。同時に、家計の安定ということも考えて安定させる。その中で経済事情というものを当然参酌しなければならぬということも、法律に書いてあるそのとおり守ってまいりたい。なお、立法のきわめて大事なことでございますから、必要がありますれば食糧庁長官にさらに補足させます。
  177. 中村時雄

    ○中村(時)委員 その次に、最後にそれじゃお尋ねしておきたいのは、いま言ったように二重価格制を認める。その基本状態が明確になったということになってきますと、常識的に見て生産者米価は上がると見なくちゃならぬ。生産者米価はまず上がると仮定しなければいかぬ。あるいは消費者米価をそのままに持っていこうとするなれば、逆ざや解消を完全にやろうとするなれば、スライド制という行き方になってくる。そうすると、そのスライド制というものは、財政硬直化に伴って単にスライドを行なうんだという考え方になる。あなたのように、経済実情に即応して第三条、第四条を考えていくと、どうしてもそういうふうなスライド制という線が生まれてくるんです。そこで逆に生産者米価、消費者米価という二重構成を承認していくと、そのスライド制というものはなくなっていく。一体どちらにウェートを持っていこうとされますか。
  178. 西村直己

    ○西村国務大臣 この点は大事な点ですから、はっきり申し上げておきたいのですが、私どもは三条、四条のいわゆる守る目的、再生産確保、それから家計の安定、これはもう当然だ。ただその前提に「参酌シ」という両方の同じような経済事情、物価というものがございますね。そこであなたのほうから、二重米価というのは当然だ、こういうふうなたてまえのような解釈をされておるが、私らのほうはそういうような、当然二重米価をこれがぴしゃっと機械的にこの立法はいっているんだという趣旨ではない、その点だけは明らかにしておきたいと思います。
  179. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでは一体どういうことになるのです。どういうことになるのです。その二重米価というものだけではない、経済を参酌するということになれば、その米価の一つのきめ方の基本というものはどういうところになるんですか。何があるのですか。じゃ、何があるのですか、一体。
  180. 西村直己

    ○西村国務大臣 なお食糧庁長官、専門家でございますから、御答弁させます。
  181. 中村時雄

    ○中村(時)委員 あなたは、はっきりとした態度を出しているんじゃないですか。原則としては私はその本質は変えませんということを言ってるんだ。そうでしょうが。それで私の言うのには、原則は変えないと言うなれば、生産費所得補償方式による再生産確保か、あるいはそうでなくて、消費者米価というものを家計の範囲内においてとどめるのか。そこで二重米価になっているんだ。だから経済の参酌ということは、そういうたてまえをとってやっているんだと、こう言った。ところがあなたは逆に、経済の参酌というものはほかにも方法があるんです、こういうお考えだから、それじゃどういうようなものがあるのかと、こう聞いているのです。あなたは、あるんだとおっしゃったのです。そうでしょう。違いますか。一体どういう方法がありますか。たとえば方法というのは、具体的に言うとスライド制があるとか、安い食糧を買うてくる、それを消費者に還元してあげる、そういうような方法もあるでしょう。そういう内容の方法というものは一体何だということを開いているんです。
  182. 西村直己

    ○西村国務大臣 この点は食糧庁長官からお答えさせます。
  183. 大口駿一

    ○大口政府委員 ただいま大臣が申しておられまする食管法の第三条並びに第四条を要約をいたしますると、何べんもお答えになりましたように、生産者米価を決定をいたしまする場合の最終的なきめ手は、再生産の確保を旨としということだと思います。したがって、これを端的に申しますれば、三条では最低限の基準を法律できめておるということだと思います。四条のほうは、家計の安定を旨としと、すなわち実際上は家計米価の範囲内で決定をするということでございまするから、ことばをかえて申すならば、四条は消費者米価をきめる場合の最高限度が法律の基準できめられておるというふうに端的に理解ができるのではなかろうか。そこで、そのような基準の範囲内においても、物価その他の経済事情を参酌をして両者の関連性については配慮する余地があるのではないかということを繰り返し大臣がお答えになっておられるのだと思います。したがいまして、三条、四条の基準に従うということが当然に恒常的な姿での二重米価というものを肯定するものではないということを最後に申されたのだと私は理解いたしておりまするので、補足して御説明を申し上げた次第でございます。
  184. 中村時雄

    ○中村(時)委員 いともはっきりしているじゃないですか。大臣より、いまのことばははっきりしていますよ。よく聞きましたか、大臣。重ねていまのとおりあなたに答弁させましょうか。いま言っているのは、生産米者価というものを最低にして消費者米価というものを最高に考えていく、そのことの限界は明確なんです。そうしてその間において経済のしんしゃくを考えてみましょうと、こういうことなんです。だから基本というものは、生産費所得補償方式が基本になり、消費者の中においてはいま言った家計費が基本になり、その二つの中を中心にして、このことの原則はくずしません、その中の範囲内において経済のしんしゃくを考えてみましょう、こういうことなんですよ。あなたのは反対でしょうが、いままで言いよったのは。答弁やり直しますか。あなたのは、参酌をして、まるで生産費所得補償方式も変えることができる、あるいは消費者米価も変えることができる、ある程度の幅がとれるのだというものの答弁のしかたですよ。基本がはっきりしてきたんです。だから、私が言っていることが正しいということをあなたは認識されますか。
  185. 西村直己

    ○西村国務大臣 いや、私の申し上げておったのもその趣旨で、要するに再生産確保を守り、それから家計費の安定、その中での経済事情その他は参酌という余地は両方に書いてあるじゃないか、こういう趣旨なんでございますから……。
  186. 中村時雄

    ○中村(時)委員 時間がありませんから、この問題は一応問題として残しておきます。ただ、結論だけ申しておきますよ。いま言ったように、米価というものをきめるところの第三条、第四条は食管制度として守っていくという基本原則が打ち出されてきたこと、その基本原則は、食管法に基づいて生産費所得補償方式、この問題を明確にして再生産を行なうということ、消費者米価は、消費者の家計を守っていくということ、もし経済上のいろいろな観点があるなれば、その範囲内において問題の解決に入るということ、こういうことが明確になってきたわけですね。本来なればもう一度これを展開させて、私は一つ一つの労働賃金の問題、生産資材の問題、そこからくるところの生産米価の向上に伴ってそれが消費者米価にどう影響していくかというところまで問題を展開させたいのでありますが、ほかの問題もあるので、一応これで食管制度の問題は打ち切っておきます。しかし、そのことは忘れないようによく脳裏に入れておいていただきたい。  次に米審の問題に入っていきたいと思います。  米審の現在の機構というものはどういうふうになっているのか、農林大臣からお答え願いたい。
  187. 西村直己

    ○西村国務大臣 御存じのとおり米審は、農林省設置法にございます米価の決定の基本に関する事項の諮問をやるということでございますが、ただいま米審委員というものは、発令にはなっておりますが、諸般の事情からまだ開会に至っていないというのが現状でございます。
  188. 中村時雄

    ○中村(時)委員 いや、発令はわかっているんです。私の聞きよることをよく答えていただきたい。私の言っているのは、構成はどうなっているかということを聞いたんですよ。どうもあなたの御返答聞くと、どうやって逃げようかという気持ちのほうばっかりが先に進んでいるように見えて、ほんとにここで話し合ってみようという、先ほど総理のおっしゃった対話一つの方向というものがちっとも見えない。どうやって逃げたらいいのか。そういうことじゃないのです、私は。何もここで対決ムードをつくろうなんてちっとも思っておりやしません。よりよきものをつくっていこうという考えです。それが国のためでしょうが。だから私の質問もよく受け取って聞いておっていただきたい。私はもう時間がないのですよ。
  189. 西村直己

    ○西村国務大臣 米審の御質問の趣旨が、私については、一応米審はどうなっているかと言われますから、すでに委員が発令になっておって、それが現在まだ開会には至っていない、こういう状況を申し上げたわけであります。御質問の趣旨……。(「その構成」と呼ぶ者あり)それでその仕組みは、現在二十二名で発令になっておりますから、現状においては、その発令は当然委員として受け取ってまいりたい。
  190. 中村時雄

    ○中村(時)委員 その二十二名というものの内容は、どういう内容ですか。
  191. 西村直己

    ○西村国務大臣 これは学識経験者として任命をいたしておるわけでございます。
  192. 中村時雄

    ○中村(時)委員 その中には、学識経験者のみで、生産者、消費者は入っておりますか、おりませんか。
  193. 西村直己

    ○西村国務大臣 この発令後におきましていろいろ御意見が方々にありますことは、私も十分承知しておりまして、生産者としての代表、消費者としての代表は入ってない、学識経験者として一応迎えておる、こういうかっこうであります。
  194. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでは次にお尋ねしますが、そうすると、その中には利害者は入ってないということなんですね。——利害者は入ってなくして、学識経験者だけが入っているとおっしゃるのですね。この際はっきりさせておいてください。
  195. 西村直己

    ○西村国務大臣 利害関係者は入っておりません。
  196. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それではお尋ねしますが、農林省の中において畜産振興審議会、蚕糸業振興審議会、あるいは厚生大臣にお尋ねしたいが、医療審議会、社会保険審議会の構成は、利害者が入っておりますか、おりませんか。
  197. 西村直己

    ○西村国務大臣 農林省の具体的な内容を私は知りませんが、一部の審議会には利害関係者が入っているものもあると思います。
  198. 園田直

    ○園田国務大臣 私の関係審議会は全部入っております。
  199. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、お尋ねしますが、米価審議会だけにその利害者を除いたという理由はどこにあるのか、お尋ねしたい。
  200. 西村直己

    ○西村国務大臣 これはもうすでに皆さん御存じのとおり、利害関係者としてではなくて、従来学識経験者として利害関係者の代表が入っておられたことは御存じのとおりであります。ただ、残念ながら、過去におきまして何回か対立答申が出、その後において無答申というような状態を続けました結果として、利害関係者は別の方法で十分意見を米価決定の際に反映するような前提のもとに発令をされておる、構成をされておる、こういうことでございます。
  201. 中村時雄

    ○中村(時)委員 別の機会にどうとかこうとかいま言いましたけれども、その別の機会というのは何かということを一点お尋ねしたい。  それからもう一つは、あなたは学識経験者とおっしゃったが、学識経験者という基本的条件はどこにあるのか、まずお尋ねしたい。
  202. 西村直己

    ○西村国務大臣 まあ、米価決定に関して学識ある者、こういう意味でございましょう。そこで、学識経験者として、従来は利害関係のある者も入っておられたわけであります。   〔発言する者あり〕
  203. 井出一太郎

    ○井出委員長 静粛に願います。
  204. 西村直己

    ○西村国務大臣 それは、その利害関係の代表として入ったのではなくて、学識経験者としてやはり経験あり、あるいはいま別の機会と申しますのは、あるいは米審において、あるいはその他の方法において、いずれにせよ、これに対して議論がありますことは私も承知しております。また、生産者というものは特に物の売り手でございますだけに、利害に強い関係を持っておられることはわかりますので、何かその意見を十分反映する方法は考えてみたいと思っておるわけであります。
  205. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでは、あとの学識経験者という問題に関して、学識者と経験者というのは、意味が違いますよ。同じですか、あなたは。学識者というたらすぐに経験者なんですか。それでは聞きますけれども、あなた、一体、売春審議会において経験者ということばがありましたか。ということは、全然異なっているということをいっているのでしょう。違いますか。はっきり答弁願いたい。
  206. 西村直己

    ○西村国務大臣 非常にむずかしい問題でございますが、いずれにしましても、その学識あり、かつ、従来、米価決定の基本に関して経験とか、そういうものを一括して学識経験者と、こういうふうに呼んで発令したのだと思います。
  207. 中村時雄

    ○中村(時)委員 経験者というものが米価決定に関して云々しているだけだったら、農林省の連中のほうがよく知っていますよ。要りはせぬですよ、人は。農林省の官僚のほうがはるかによく知っていますよ。そうでしょう。違いますか。これはほんとうの経験者です、それだけからいえば。何代も何代もそのために苦労してきておる。その人のほうがはるかに、あなたの言う経験なれば、そういう経験者のほうがはるかに多いのです。ほかの者は要りはせぬですよ。そうすると、学識者だけだということになりますよ。学識者だけだということになれば、これは研究会ですか、一体。何の場合でも生産者が価格はきめている。そうでしょう。私は原則を言っているのですよ。それが多いとか少ないとか、そんなことを言っておるのじゃないのです。基本的に言っているのですよ。しかも、あなたは先ほどどうおっしゃったか。生産者米価というものは生産費・所得補償方式によってきめるのです。すなわち、生産者が中心になっている。生産者が中心になっているということは、ほんとうをいえば生産者が価格をきめるべきだけれども、現在の配給の関係からいって、完全統制に入っている。その完全統制という姿の中から、当然の発言というものが、いま言った価格をきめる発言が封じられておる。その封じられているものが、一体どこでそれじゃ法律的根拠に基づいて発言ができるのですか。あなたのおっしゃる学識経験者という問題は、少なくとも経験というその意味は、私は、生産者であり、消費者であろうと思う。違いますか。その数が多いとか、入れるとか入れぬとかいうことは別問題です。この内容から考えていった場合におけるところの一つの方式というものは、経験者というのは、少なくともいま言ったように生産者であり、消費者である。学識者ということはけっこうでしょう。しかし、この学識者にも問題がある。私が一人一人、これがどこでどうということは申しません。たとえば稲葉さんにしてみたって、馬場さんにしてみたって、みんなこれは間接統制論者でしょうが。わからなければ私が全部ここで資料を読み上げてもけっこうです。そういうふうな者をもって学識者とおっしゃるのですか。一つ考え方を規定づけている人たちです。ならば、この人たちは農林省の役人ともいろいろ話し合いもあり、折衝もあり、そのことの意識は知っているはずなんです。そういう者をもって学識者——あなたの発言は、学識経験者ということを言わずに、中立委員ということばを就任当初使っていらっしゃる。そういう姿を持った者を中立委員あるいは学識経験者と言うのか。そこらのところを明確にお答え願いたい。
  208. 西村直己

    ○西村国務大臣 学識経験者のことばの解釈の問題もありますが、問題は、従来の御存じのとおりの経緯から、利害の関係の非常に強い対立の結果、元来あるべき姿の米価審議会というものが残念ながらそこに限界にきている、いわゆる答申ができないというような状況を何とかして正常化しようという結果、今日の発令になっておる、こう御理解をいただきたいのであります。
  209. 中村時雄

    ○中村(時)委員 答申ができないからこうなったのですか。その点はっきりしておいてくださいよ。答申ができないから、生産者あるいは消費者を除いたのですか。私はこの際はっきりさしておきたい。私は、在来から、国会議員がその中に入ることには反対であります。なぜなれば、審議会というものは、少なくとも政府の諮問機関であります。そこに国会の中において審議をする権利を持っている者が入るのは、それを放棄するかっこうになる。私は、そういうたてまえから、これは明確にしておった。ところが、いま言ったように、生産者、消費者となると別問題であります。そういう姿をあなた方が軽々しく、ただおれたちは多数だから何でも思いどおりになるのだとか、あるいは勇み足でそういうことになったのだとか、そういうような問題とは問題が違いますよ、この基本は。どうなんですか。あなたはそれでも学識経験者で——意味のことはどうでもよろしいけれども、それでは、そういう姿の中に立った生産者、消費者というものをどう取り扱おうとしておるのか、その問題を明確にしておいていただきたい。
  210. 西村直己

    ○西村国務大臣 従来の米審の実際の運用から見ましても、ほんとうに生産者あるいは利害関係者の意見が十分そこに反映されたか。むしろ、われわれとしては、米審の中へ利害関係者が加わること自体によって生産者の意思が十分反映できるとも必ずしも言えない面もあると思うのでございます。これは、実際米審委員などをなさいました方々にもよくそういう御意見も出ております。そこで、今回のような発令の形をとったのであります。
  211. 中村時雄

    ○中村(時)委員 農林大臣にお尋ねしますけれども、それは農林大臣の気持ちはわかるのですよ。以前にきめられているもので、あなたが以前から農林大臣であったらそうであったかなかったかは知りませんけれども、そこで情的に、前の倉石さんがこういうことをきめられた、そこで、それを受け継いだあなたが、ひとつ倉石さんもやめられたんだから、これだけはせめて守ってやろうじゃないかというお考えになるかもしれない。私は、この問題は、倉石さんとほんとうはひざ詰めでほんとうにやってみたいと思っておった。おそらく倉石さんであれば、ほかの問題は別としても、それだけの根性のある人だと思っている。だから、お互いに私がこのことを話しすれば、当然消費者も中に入れてくれるだろうと思っておった。生産者も中に入れてくれるだろうと思っておった。ところが、不幸にして、私は、あのりっぱな方がその意味においてやめられたことは遺憾に思うけれども、そのことは別として、私は、少なくとも彼であればそれだけの根性を——いけぬものはいけぬ、いいものはいいという判断をつけられる方であったと期待しておった。ところが、あなたは今度は逆に、あとから来られたから、情において忍びないから、このことだけは守らなくちゃならぬというお考え方もあるでしょう。あるいは、総理がいないから、あなたあとで横から言っておいてくださいよ。総理が一たんきめられたことを自分がひっくり返すことはいやだという考え方もあるでしょう。そういう気持ちもわからぬことはない。わからぬことはないけれども、道理というものはやはりまっすぐに立てなくちゃならぬ。それが常に姿勢を正すんだという考え方基本にならなくちゃならぬと私は思っている。そういう意味で、西村農林大臣はどういうふうにお考えになっておるか。
  212. 西村直己

    ○西村国務大臣 私といたしましては、米審の構成を変える考え方はございません。
  213. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それは、あなた自身がみずからの発案によって変える考えはないとおっしゃるのですか、それとも前任者がそういう考え方であって、決定をしておったものであるから、これは変えるわけにはいかぬとおっしゃるのですか、どちらなんですか。
  214. 西村直己

    ○西村国務大臣 もちろん、これは私の着任前にあった事柄でもあります。同時に、その後において、私自体も農林大臣の職責において判断も加えました。
  215. 中村時雄

    ○中村(時)委員 大臣、よく聞いておいてくださいよ。  そうすると、あなたはいまの生産者、消費者をどういうふうに考えておるのですか。(発言する者あり)ちょっと待ってください。それを一点だけ聞きますよ。これは非常な重大な問題をあなたは持っておるのですから、一点だけ聞きますよ。それじゃ、生産者と消費者というものは、一体どういう立場で扱おうとしているのか、その一点だけを聞きたい。それからたいへんな問題を起こしますから。
  216. 西村直己

    ○西村国務大臣 もちろん、これらの問題は、党におきまして、あるいは予算委員会からすでに各党の段階におきまして、すなわち、国対委員長の間におきましても話し合われている事情も聞いております。そこで、これらを含めまして、党において近く回答をなさるという中で解決はされていくと思います。
  217. 中村時雄

    ○中村(時)委員 あなたのおっしゃることは、非常に私は奇々怪々だと思う。こういうことですよ。先般ここの予算委員会が問題になった、もめ出した一番最初基本は、この米審なんです。よくその過去を振り返っておってくださいよ。そこで、その米審の中に生産者を入れなさい、消費者を入れなさい、これが第一点。国会で米価をきめていただきたい、これが第二点。社会党さんのほうからは特別委員会をつくりなさい、これが第三点。このことが問題になって国会対策委員長会談にそのげたを預けた、そうして、ここは二日目に開会になったわけなんです。その回答は誠意を持って各野党に御報告をいたします、こうやった。そうでしょう。ところが、先日の農協の大会の中で——期日はちょっと私もはっきりしませんが、農協の大会の中で、生産者を入れよと——十四日ですか、十四日の日の大会の際に、その回答を行なっておる。さらに、いまあなたはどうおっしゃった。私は、前任者の意見によって云々したのではないのですよ。あなた自身が自発的に、生産者あるいは消費者の代表は入れません、そういう確信を持っております。こういうことなんですよ。その回答はここですべき回答じゃない。少なくともその回答は国会対策委員長会談において討議をされて、その結果、各党におけるところの特別委員会があるかどうか知らないが、そこで判断をして、その結論をもって云々すべき筋合いのものであり、あなたがそれを越してここで云々すべき筋合いのものじゃないと思うが、その検討をどういうようにしているか、お答えを願いたい。それによって私はこれからにおけるところの質問を続けていくし、あるいは打ちやめるかもしれません。
  218. 西村直己

    ○西村国務大臣 私自体は、この間の予算委員会でもお答えいたしました。この問題は、予算委員会の理事会等を通し、国対委員長岡で、野党から申し入れがあったに対して、総括質問の済むまでにはこれら諸般の問題を回答をする、そこで、私はそういう姿勢で根本はまいっております。ただ、御質問の中に、おまえはどうかとおっしゃいました御質問がありましたものですから、触れたのでありますけれども、もしそれが筋が違うとおっしゃれば、私はその面は取り消して、本来の国対委員長間の会談の中できめていただく、こういう考えであります。
  219. 中村時雄

    ○中村(時)委員 触れたということになれば、触れたら、あなたの答弁は、国会対策委員長会談の返答を待って云々しております。これなら話はわかりますよ。ところが、あなたのおっしゃったのは、みずからが生産者あるいは——総理に言うたのじゃないですよ。あなたはいなかったのですよ。生産者並びに消費者というものは入れませんと、こう言った。私は、少なくとも倉石であれば、憲法論は別にして、これにもいろいろな問題があるでしょうが、ともかくあの人の根性からいったら、この話し合いはできる。それだけのど根性を持った、私は、その意味においてはりっぱなものだ、こう思っておった。だから、やろうと思っておったけれども、それがいまはいないから、あなたはそれを受け継いだのですか、こう聞いた。そうしたら、あなたは、受け継いだのではない、私の気持ちの上からいって、両者は入れないのだ、こうおっしゃった。そうでしょうが。入れないということになれば、それはあなた方が党と相談をして国会対策委員長会談に出してくるべき筋合いなんです。そうでしょう。答えとしては、いま国会対策委員長会談に出すべく検討しておりますということなら、私はいまのことばは納得する。ところが、あなたは明確に言ってしまった。一体どうなんですか。取り消しますか、取り消しませんか。
  220. 西村直己

    ○西村国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、はっきり申し上げておきますが、あなたのほうからお尋ねがありまして、倉石前農相の意見によっておるのか、こうおっしゃいますから、それもあるが、しかし、こういう考えもある、ただし、それが行き過ぎでありますれば、私は、現在国会対策委員長間の問題になっているから、その部分については私は取り消しをいたしますと、はっきり申し上げたわけです。
  221. 中村時雄

    ○中村(時)委員 総理にお尋ねしますよ。  総理は、民主主義ということばをよく言われる。私は、民主主義ということは、先ほど麻生委員からも言いましたように、やはりお互いの場で話し合いをする、そうして、それには私は時間がかかると思う。総理も常にそういうことをおっしゃっていますね。私は、民主主義の原則はそのとおりだと思う。どうなんですか。
  222. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの御意見は、大体私賛成のようでございます。
  223. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、もう一度もとへ返りまして、先ほどからお聞きになってあなたはおわかりでしょう。米価というものが非常に重大であるということ、私は各閣僚の皆さんにお聞きしたい。いま米の配給は一体幾らしているか、知っていますか。どうですか、知っている者はひとつ手を上げてみてください。——どうです、総理、このとおり一人も知らなのいです。これで米価を算定してどうしよう、こうしようというのはおかしいことないですか。まあ、下を向いて、みんな何も知らないから、これ以上申しません。しかし、せめて農林大臣くらいは知っておっていただきたい。私は真剣に思う。いま食管の長官があわてて、一生懸命でその説明をしよるようですけれども、そういうことはけっこうです。しかし、問題は、そうなってきたら、あなた自身も農業というものにあまり関心がないのかあるのか知りませんが、少なくともいま言った中でおわかりでしょう。食管法に基づけば、生産費・所得補償方式をやるのです、そこで、消費者のほうの消費米価は、家計に影響を及さないことを旨とする、こうなっている。そういたしますと、あなたはその審議会の中に生産者、消費者を入れて、そうして生産者価格はこのくらいですよ、これで再生産ができましょうか、あるいは消費者に対しては、消費者米価はこのくらいですが、それで実際に家計に影響はないでしょうかということを聞くことが、民主的であり、話し合いの場所であり、そういうことがあってこそ、私は審議会のほんとうの姿があろうと思うのですが、総理はどうお考えですか。
  224. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん予算委員会、適当な場所だ、かように思います。
  225. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私の聞いているのは、予算委員会のことを聞いているのじゃないのですよ。審議会というものは、そういうたてまえがあるからこそ、各審議会の中においていま言ったように利害者がいろいろおって、そこでこれはどうだ、これはどうだ。いま言ったように、農林であるなれば、消費者米価はどうなんだ、家計に影響はないのですか、生産者に対しては、生産者米価はこれで再生産ができるのですかということを話し合うことが大事なんだ。事実、あなたは以前にこういうことがあったでしょう。医療審議会の中がもめたときに、あなたはみずから出向いていって、その中を取り持って、非常に苦しい立場ではあったけれども、何とかまとめようという努力をされた。私は大いに敬意を表します。ところが、米審がもめている最中にあなたは行ったことがありますか。——ということは、米審とほかの審議会とは格差があるのですか。私はもっともっと重大な問題だと思っている。どうですか。
  226. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私も大蔵大臣をした経験がございまして、米審でいろいろもめたとき、大蔵大臣がその米審に参りましたり、あるいは大蔵大臣のその立場から生産者の代表に押しかけられたこともございますし、いわゆる民主主義時代ですから、それぞれの関係者の意見を十分聞く。いわゆる官僚統制、そういうようなことはいたしておりません。したがいまして、今回の審議会も、そういう意味でこれを設けようということでいままでも設けられ、またそういうような運営を果たしてきている、私はかように確信しております。  ところで、ただいまのその審議会の構成について、ただいま議論になっておる。あまりいろんなことを申しますと、約束とまた違うことになって、私も踏みはずしたことを申しますから、これは先ほど来言われるように、国会対策でお話をするようになっている、各党で話をするようになっている、かように理解しておりますので、また、先ほど来農林大臣との質疑応答で、その点も明確になっております。別に私の意見を申し述べなくてもいいかと思います。とにかく、民主主義民主政治、そのもとにおきましては、各界、各方面の意見を十分聞いて、そしてしかる後に政治を行なう、こういうことであるべきです。
  227. 中村時雄

    ○中村(時)委員 ある意味では非常によくわかり、ある意味ではわからぬことがわかっただけである、こういうことになりますけれども、私はそれじゃもう一点お尋ねしたい。  いまここで私と農林大臣の話を聞いておって、いろいろな食い違いがあることがおわかりでしょう。食い違いがあるということよりも、おそらく農林大臣の言っていることが無理だなということのほうがよくおわかりになったと思う。そこで、一つお尋ねしたいのは、このように錯綜されていって、非常に紛争をしているこの米審の中にあなたはひとつ入って、あなたのいま言った民主主義の人柄をもってぜひともやっていただきたい。もしそうでないとするなれば、それは民主主義は口で言っているだけで、能率主義的な——西村農林大臣がそれをあくまでも押し通そうとするなれば、私は、合理主義的な、能率主義的なことだけしか考えてない、こういうふうに見て、民主主義に挑戦するのじゃないかというくらいにまでその感を受けるわけなんです。だから、せめて総理が中へ入ってもう一回この問題を具体的に考えてみよう、これは総理の権限でありますから。私は、いま西村大臣が言っている任免権を言っているのじゃないですよ。これは西村さんの一つの権利ですから、だれを任免しようとそれはかってであります。私はその基本を言っているのですよ。そこで、基本的の食い違いがあるというところに対して、ひとつ総理がその民主的な一つの大きな立場の上に立って、中に入ってそれをあっせんするとか、そういうお考え方を持っていらっしゃるかどうか。
  228. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまや、この問題は各党のたいへんの関心事であります。私は直接その会議に出ておりませんけれども、きょうも、自民党の中でもいろいろ総務会を中心にして、この問題について審議を重ねたように伺っております。最終的に結論も非常に近いのじゃないか、自民党としての態度が決定する、そういう段階だと思います。ただいまのお話も、ただ単に予算委員会だけの話でなしに、これは私ども自民党の諸君もみんな伺っておりますし、そういう意味でとにかくこの問題を解決する、そういう方向へ臨まなければならぬ、かように私は思っております。私ども別にいままでの行きがかりだけをとやかく申すわけではございません。ただ、この種の審議会が十分効果をあげるような、そういう仕組みでありたい、かように思います。たとえば、ただいま言われるように、国会議員は、すでにもう民社党としても必ずしも強く賛成はしない、こういうようなお話まで出ております。どういう方向がいいのか、さらにいま各党で知恵を持ち寄れば案外いい案も出るだろうと思いますから、その方向を見守ることにしたいと思います。
  229. 中村時雄

    ○中村(時)委員 なかなか含みのあるおことばなんで、私も含みのあることを一つ一つ詰めていこうとは思っておりませんが、ただ一つ言っておきたいことは、答申の出ることのみに重点を置いてものの考え方をつけられないようにしていただきたい。あくまでも民主主義の上に立って、それぞれの利害者すべての人が集まって話し合いをつけるという民主的な一つの方向の確立をはかってもらいたい。  そこで、農林大臣に一つお尋ねをしたい。それは一つの具体的な問題、これは総理にもお尋ねになるわけですが、たとえばあなた方が任命権を持っているのです。それは先ほど言ったとおりです。その任免権に対して私は一つもとやかく言っておりません。そこで、食管法じゃなくして、これはたしか農林省設置法によって、私は委員というものはきめられていると思うのです。そこで、農林省設置法では二十五名になっておる。それをかりに三十名にして、八名の消費者代表、生産者代表を入れるとか、これは私はおそらく全会一致で通ると思うのです。問題なしに通ると思うのです。そういう考え方もあれば、あるいは設置法によるいまの二十五名を——実際には農林省の関連者が五人なり六人、審議委員の中にはおるのです。その人たちに対して、そのかわりに生産者を入れてもらうような努力をするとか、あるいはいろいろの話し合いの場所はあると私は思う。そのことが決定的なものじゃないですよ。これは一つの例ですよ。そういうようないろんな方法なりいろんな手段が、私は民主的にはあろうと思う。そういうことを勘案しながら、ひとつ努力をしてもらいたい。どうですか、これは総理と農林大臣にお尋ねをしておきたい。
  230. 西村直己

    ○西村国務大臣 かねがねそういうような御意見を出してくだすっている方もございますし、事柄はきわめて大事なことでありますし、国会対策委員長の間でもお話が進んでいるようであります。やがて済むと思いますから、十分われわれもその御意見を拝聴したいと思います。ただ願わくは、効果のある米価審議会なりが構成されることを望んでおるわけであります。
  231. 中村時雄

    ○中村(時)委員 もう一点だけあなたにはっきりさせておきたいのは、あなた自身の先ほどの発言の中で、国会対策委員長会議に云々ということばがありましたが、あなた自身のほんとうの腹の中では、生産者代表、消費者代表をあくまでも入れぬのだということを言明されましたけれども、そのことは取り消したわけですね。これは最後に……。
  232. 西村直己

    ○西村国務大臣 それ自体は、事柄が党と党の間になっていますから、その部分は私は取り消します、あなたから御質問があったけれども、その部分は取り消すということは、さっきも何回も申し上げておるわけですから……。
  233. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それだったら、いま言ったような問題の事柄というものは、あなたはあくまでもそのことを堅持するという——これはいまの問題とは別個ですよ。堅持するという立場なんですか。それとも、そこにはいろいろ民主的に考えて、それにこだわらず、いい方法があればそのことは除いてもよろしいというお考え方を持っていらっしゃるのか。
  234. 西村直己

    ○西村国務大臣 はっきり申しますが、効果のある米審が運用されるように望みたいということは、どなたも異論ないところだと思います。ただ党のほうへお願いをいたしておるわけでございます。
  235. 中村時雄

    ○中村(時)委員 どうも歯切れが悪いですね。党のほうに云々することはけっこうなんですよ。私はそのことは非常にいいと思うのです。これはお互いの党と党の立場だから、それは非常にいいことなんです。だからそのことは賛成なんです。ただ、あなたが先ほど個人的におっしゃったように、生産者と消費者の代表は入れないのだということじゃなくして、いま言ったように、党のほうとも相談され、党のほうでも、なるほどこれは民主的にこうしようじゃないか、一応一年くらいはこうしてみようじゃないかということがあるかもしれない。あなたに聞きよると相談をしていないようだから、あるかもしれない。そういう幅のあるものの考え方をしていらっしゃるのか、あるいは個人としてはあくまでもこれに固執するのだという考え方なのかをお聞きしているのです。
  236. 西村直己

    ○西村国務大臣 私はここで個人の見解を述べるわけにまいりませんで、農林大臣といたしまして米価審議会が効果のあるように念願をいたしておりますと、こういう御答弁を申し上げます。
  237. 中村時雄

    ○中村(時)委員 ところが、あなたは先ほど、いま言ったように、出しませんということを個人としておっしゃったのですよ。だから、それを取り消したという意味は、いま言ったように、そのことが一番大事なことですから、それだけの幅を持ってほんとうにあなたは農林大臣としてやっていくのだということなのかどうかということを、もう一度最後に明確にしておいていただきたい。
  238. 西村直己

    ○西村国務大臣 この問題の処理にあたっては、農林大臣に対しましても各方面から各様のいろんないい御意見は承っております。ただ、できれば、できるだけ米審が効果があるようにひとつ動いてもらいたい、これをお願いしておるわけであります。
  239. 中村時雄

    ○中村(時)委員 次に、それじゃ、いまの米審の中からくる問題として、あなたのおっしゃる中立委員あるいは学識——経験者ということは私は省きます。学識者と称される方々のほとんどの方々が間接統制論をやっていらっしゃる。   〔委員長退席、北澤委員長代理着席〕 そこで、御承知のとおりに、経済同友会が昨年末に、こういうことを言っていらっしゃる。「当面の米価対策と食管制度改善への提言」と題して、四十四年十月末までに米の間接統制への移行条件を整え、食管法の改正によって米の間接統制へ踏み出すべきだとしている。そこでまた、宮澤経済企画庁長官が、物価問題懇談会において、一番、準内地米の自由流通、二番として、小売りその他の流通合理化、三番として、アメリカとの米生産特約契約及び長期輸入契約の締結、これらの構想を出しておる。この構想と間接統制との問題について一、二点お尋ねしておきたい。  宮澤さんのおっしゃっておるこのことは一体何を意味するのか、その点をひとつ宮澤さんにお尋ねをしたいのです。
  240. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは私が申したのではなくて、物価安定推進会議なり物懇でそういう提案があったと、こういうことをおっしゃっているのでございます。
  241. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それじゃそのことを肯定されますか。
  242. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題を全部、これから各方面で議論をされる上に、一つの参考意見としておそらくは皆さんがお考えくださるであろうと思っております。
  243. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それじゃひとつお尋ねしますが、私はその場合に一つの前提が要ると思うのです。たとえば国内における豊凶、非常に豊作であった場合と凶作の場合、そのときにおける自給度というものをどういうふうに見ているのか、あるいはまた、国内におけるところの自給度によって、国内生産を基本にこれだけの豊凶の自給度があるのだということがお示しができるなればお示しを願いたい。  それからもう一点は、そうでないんだ、外交上からいってどうしてもある数十万トンのものは——いまLT貿易でもやっています。十万トンにきまったか二十万トンにきまったかわかりませんが、そういうどうしても外国から物を入れてこなくちゃならぬのだというようなものの考え方なのか、あるいは安い米を入れてきて、日本の消費者に少しでも安い米を食べさそうじゃないか、こういう前提があるのか、一体どこに前提があってこういういろいろなものの計画なり判断をされているのか。そういう点に関して農林大臣並びに経企庁長官にお尋ねしたい。
  244. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 経済社会発展計画をつくりましたときに、これは決定ではございませんが、あの決定をいたします裏の資料として検討されましたことは、昭和四十年ごろにおける米の自給率を九三%としておりまして、四十六年にはこれが九七に自給度が高まるということを頭に置いてあの計画は書いてございます。
  245. 西村直己

    ○西村国務大臣 主食の自給度というものは、さらに高めてまいりたいという考えのもとにやっております。
  246. 中村時雄

    ○中村(時)委員 主食の中身と言いますけれども、ということは何ですか、食糧としての自給度というものはまだ確立されてないということを意味するのですか。
  247. 西村直己

    ○西村国務大臣 食糧といっても、かなり物によって違います。たとえば全体の食糧を考えますと、牛乳といったようなものにつきましては、まだわれわれは相当自給度を高めていかなければならぬし、それから飼料もございます。いろいろな面がございますが、総合自給率としてはたしか八一%ぐらい四十一年度はとっておると思いまして、やはり絶えずこれを維持していく、こういう考え方で動いております。
  248. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、そのあなたのおっしゃる自給度というものは、生産量からくる自給度なのか、あるいはカロリー量からくる自給度を中心にして考えようとしておるのか、その点をはっきりさしておいていただきたい。
  249. 西村直己

    ○西村国務大臣 価格で計算をしております。
  250. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、価格の自給度というものは現在幾らかというと、大体七八%ぐらいです。しかし、私は、ほんとうの自給度を出そうと思うなれば、カロリー計算がほんとうだと思う。カロリー計算ですると、大体それに伴って一〇%減、こういうことが大体の通り相場だ。そうすると、六七、八%というところがその確率の一つの方向になるというふうに私は考えている。しかし、いまの趨勢からしていきますと、大体六八%から六五%のいま言ったカロリーの自給率からいきますと、これはいまのように供給が少なくて需要がどんどん——これはあとから話しますが、需要がどんどんふえていく。しかも、たん白質資源というものが穀物から今度は肉類にどんどんかわっている。こういう状態の中で、おそらく時間の問題で私は五〇%内外にまで下がってしまうんじゃないかというふうに、これは少しオーバーになるかもしれませんが、ある程度下がってくるんじゃないかというふうに考えているが、その自給率のめど、要するに下がっていくかいかないかというめど、それをどの程度に置いているのか、お尋ねをしておきたい。
  251. 西村直己

    ○西村国務大臣 食糧庁長官からお答えさせます。
  252. 大口駿一

    ○大口政府委員 お答えいたします。  自給率につきましてはいろいろな数字がございますが、総合自給率、すなわち、食用農産物全部では、ただいまの八一とかいう数字でございますが、米につきましては九五ぐらいの数字に最近はなっております。  それから、摂取熱量による自給率というのは、先ほど御指摘のとおり、いまの計算の数字よりは低いものになると思います。
  253. 中村時雄

    ○中村(時)委員 実はその自給率でもう少し突っ込んでいろいろ話をしたいのですが、私の持ち時間がだんだん迫るので次に飛んでいきます。  私がなぜそのことを基本的に言うたかといいますと、それは現在の日本の食糧というものが供給が非常に少なくなっている、だんだん減ってきている。逆に需要のほうはどんどん伸びている。そこで、生産のほうがそれに伴わなくなっておる。そこで、生産が伴わないというところの原因はどこにあるのかという問題を、実はその中から私は質問として出していきたかった。しかし、時間がありませんのでその問題は別にして、今度は畜産の面からその一点をやっていきたい。それは、一つは物価の安定とのからみ合いが出てくるわけです。  そこで、お尋ねしたい。大臣諸公は毎朝牛乳を飲んでいますか。どうですか。飲んでいらっしゃるからうなずいていらっしゃる。そうすると、その味はどうです。全然わからない。(「うまいよ」と呼ぶ者あり)うまいと言う人がいらっしゃれば、それはほんとうの生乳の味を知らぬ人が言うことです。なぜなれば、いまの牛乳というものは脱脂粉乳がほとんどです。専門家からいえば三〇%ぐらい入っている。ところが、専門家でなくて農林省あたりに言わしたら、一〇%くらいでございますと逃げるに違いない。農林大臣、一体何%入っているか御存じですか。
  254. 西村直己

    ○西村国務大臣 畜産局長から御答弁申し上げます。
  255. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 一定の方法で計算をいたしますと、大体七%程度であるというふうに想定をしております。
  256. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私の言ったとおりでしょう。農林省に答えさしたら、必ず一割ぐらいですと、こう逃げる。ところが、識者のほうでは、もうすでに三割以上であろうといわれておる。それはなぜでしょう。よく考えてごらんなさい。牛乳というものは加工原料乳と市乳とがありますよ。加工原料乳というものをいまの状態で考えてみた場合に、なぜ牛乳がどんどん入ってこないかということなんです。業者に言わせましたら、要するに、市乳が入ってこないために、しかたがないからこれを入れているんだ、こう言っているのですよ。それではなぜ入ってこないのか。いまの牛乳の一つの制度としては、冬場においては牛乳の消費量が少ないんだ、そこで、その開において加工原料乳のほうに重点を置くんだ、そういうたてまえをとってやっている。ところが、やってみた結果は、市乳のほうの出回りが非常に少ない。少ないので、しょうがないから脱脂粉乳を入れざるを得ない。そういう状態になっている。それは政策の貧困でございますと、こうなってくる。そうでしょう。そこで、これが夏場になったら一体どうなります。いまですらこうですよ。いまですらこうなんですから、夏場になっていけば五割ぐらい粉乳を入れなければならぬ。あるいは白の牛乳はなくなっているかもしれぬ。どうなんですか。それまでに間に合うという確信がありますか。夏場になったら、いまよりはるかに大きく消費量がふえてまいりますが、農林大臣どうなんですか。手の打ちようがありますか。
  257. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 御質問にお答えいたします。  国内で牛乳の生産振興につとめておるわけでございますが、一方で国民の食生活の構造の変化等に伴いまして、牛乳、乳製品の需要が非常に増大しております。そういう関係から、現在のところ十分生産がこれに対応しておらないという事情がございまして、脱脂粉乳、バター等の乳製品について輸入をいたしておるわけでございまして、国内で生産されたもの、あるいはまた輸入されたものの一部が環元乳として飲用乳の中に混合されておるというわけでございます。一方で市乳化促進というふうな政策をとっておりまして、できるだけ市乳に生乳が回っていくことにつとめておるわけでございまして、今後もできるだけそういう努力をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  258. 中村時雄

    ○中村(時)委員 あなたの答弁は、それだから官僚答弁になる。私の聞いているのは、八月の夏場までに間に合う責任がとれるかということを聞いている。とれますか。現在一人が飲んでいるのが三勺ですよ。一本を飲もうと思えば、実際には幾ら増産しなければならぬのか。そういうようなことが時間的に問う合うかどうか。合わなければ合わないとはっきりしておいてもらいたい。
  259. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 従来から牛乳につきましては、たとえば夏場には生乳の生産がやや減少する、冬場にはふえるというふうな事情もございまして、その間に、時期的な調整として、脱脂粉乳なりバターなりが使われておるというふうなことがあるわけでございます。したがいまして、夏場におきまして全部生乳をもって供給をするというふうなことは、現在の日本の酪農の生産事情から申し上げまして非常にむずかしいことであるというふうに考えておるわけでございます。
  260. 中村時雄

    ○中村(時)委員 むずかしいということじゃなくして、これはできないんですよ。そこらのところを、むずかしいことばのあやで隠さないようにしてもらいたい。できないのです、正直言って。それは一〇〇%できる道理がないのです、いまの頭数からいっても。そこで、牛を飼うにしたって五年、六年期間がかかりますよ。できないのです。大臣、それはどういうことかと言ったら、生乳が少ないということなんです。あるいは草地造成がおくれているということなんです。それらのことはすべてが草地造成につながってくるのです。  そこで、お尋ねしておきたい。いま不足払いをやっておりますね。不足払いというのは加工原料乳に対して行なっているのです。それをひとつ全生乳に対して不足払いをやるだけのお考え方はあるかどうか。これをやれば、要するに、現在農家一戸として平均が四頭くらいですか、それらの方にいま不足払いを全生乳に対して行なうとすれば、五頭なり六頭、七頭、八頭と可及的に頭数がふえてくると思う。あなたは全国に対して不足払いを行なうとか、あるいは、時間がありませんからついでに聞いておきますが、運賃に対して、その払い方を一般会計から金を出すとか、そういう方向によって一つの裏づけ体制の政策を考えているかどうか、そういう二点をお尋ねいたします。
  261. 西村直己

    ○西村国務大臣 御質問は、加工原料乳に対しまして不足払いをやっておる、それを生乳全体に不足払い制度を広げたらどうかという御趣旨だと思います。御質問の趣旨わかります。しかしながら、生乳につきまして、いわゆる飲用乳につきましては、地域的な価格と申しますか、需要のほうが非常に強いですから、価格も相当高くなっていく傾向である。そこで、加工原料乳のほうは、御存じのとおり少し特殊な状況がございます。国際的な競争がそこへ入ってきている。こういうような面から不足払い制度をこれにくっつけている。したがって、いま全体に広げるという考え方は、私どもはまだとれる段階でないと、こういうふうに申し上げたいのであります。
  262. 中村時雄

    ○中村(時)委員 いまはとれる段階でないということはよくわかるのです。しかし、いまの生乳を国民一人当たり一合配給しようとしても——現在は三勺しかやっていないのです。そういうような立場からいって、いまあなたのおっしゃったとおり、需要が非常に伸びてきている、この際にてこ入れをするだけの基本原則だけはお考えになっていただきたい、こういうことなんですよ。意味はおわかりだと思うのです。というのは、かりにいま草地造成をやっても、実際の問題としては、一千億ですよ、出しているのは。これをほんとうに一合にしようと思うたら、五千億ぐらい出さないと、ほんとうの姿が出てきやしませんよ。これは具体的に私は一頭の価格から投下労働賃金から何から全部言ってもいいですけれども、時間がありませんから申しませんが、そういう立場に立って大きく転換する一つの方向を考えていただきたい。これはいただきたいということにしておきましよう。  それからもう一つ、これは厚生大臣にお伺いしたいのですが、先ほどの牛乳の問題で脱脂粉乳が入っているということを言いました。二月の二十七日の東京の各夕刊には、還元牛乳としてヤシ油を混入する点はさすがに業界も断わったようです。やめたようです。そこで、厚生大臣はこのような品質検査をやったことがあるかどうか。また、やろうとしているかどうか。
  263. 園田直

    ○園田国務大臣 御指摘のとおりに、牛乳に他物を入れますことは、食品衛生法の成分規格違反でございまして、いまのヤシ油その他のこともございまして、検査の実施を数回やっておりまして、この点は中止したようでございます。その後、各都道府県に対しても厳重に指導をして、検査を入れるように注意しております。  なお、先ほど言われました粉乳の件については、十分いっておるものと思っておりましたが、これはもし粉乳が入っておれば加工乳の表示をしなければならぬことになっておりますので、これについては処理施設の立ち入り検査をやっておりますが、今後十分注意をして厳重に検査をいたします。
  264. 中村時雄

    ○中村(時)委員 次に、土地政策について私はお尋ねをしていきたい。私は現在まで農基法農政には幾つかの見通しの誤りがあったと思います。その中で特に指摘したいのは、都市政策と地価政策に対して根本的な判断の誤りがあった、このように考えております。農基法をつくるときに、基本問題調査会でいろいろな議論がなされたはずです。ところが、その当時農林省の中においては、地価問題は完全にお手あげだったはずです。だから農地価格の問題を完全にたな上げにしておいて農政を行なおうとしたところに今日の農政の失敗の第一の原因があった、私はこのように考えております。したがって、農民は農地を財産価値として保有しながら、兼業だ、出かせぎだという形で所得をふやそうとするに至っておりますが、地価の二重価格制度や農民年金制度を創設して、せめて農民の老後の保障を考えなかったのかということが一つ大きな問題になってあらわれてくる。  もう一つの失敗の原因というものは、都市政策ないしは国づくりの政策を誤ったために、人口と産業との大都市集中が始まり、農山漁村地域から人口の流出が起こり、農業労働者が女性化し、あるいは老齢化して、いわゆる三ちゃん農業となってしまった。そこで、この第一の土地利用計画に関してお尋ねをしていきたい。  まず名前から言いまして失礼ですが、総理にお尋ねをする。土地政策については、国土の高度利用の総合的見地から土地利用計画を作成して、その計画に基づいて三十七万平方キロのこの狭い国に対して、一つのそういう総合的な法律を私は行なうべきであろうと思うが、そういうものはまだできておりません。そこでそれらに対してあなたのお考え方をひとつお伺いしておきたい。
  265. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もののねらいは当然だと思いますが、ただ、現状におきまして直ちに法律をつくることが解決できる方法だ、かようにはまだ結論を出しておりません。ただいままだ利用計画ができてない、こういう実情でございます。御了承いただきたいと思います。
  266. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それではお尋ねしますけれども、池田内閣時代に全国総合開発計画と所得倍増計画が同時に執行されましたね。御承知のとおりに、所得倍増計画というのは自動車で言ったら一つのアクセルですよ。ところが、片一方の全国総合開発計画というものは都市分散なんです。だからこれは、一種のブレーキなんです。それを同時にやってのけたために、どっちかといえば進め、進めのほうのアクセルのほうが先にばあっと出ていくことは間違いない。その結果、いろいろな不況も、そういうような高度経済成長とかいう名前によって一応乗り切っていった。ところが、中期安定経済を立ててみた。しかしそれがいつの間にかアクセルに——やはりアクセルのほうが強いから進められて中途で消えてしまう。そこで、あなたのほうは、今度は成長安定経済ですか、安定成長経済ですか、ことばのあやはちょっと間違うかもしれませんが、それによって一つの方向を確立しようとされた。ところが、その内容はやはり都市政策になっておるのですね。どっちかというと都市集中という方式を是認した行き方になっておるというふうに私は受け取っておる。これは一体どういうことなんですか。いま言ったように、片一方では国土総合開発計画というものがあるんです、現に生きて。ところが、片一方のほうでは、あなたのおっしゃる一つ考え方がある。この二頭の馬がおるわけです。一体この二頭をどうやって乗りこなしていくか、片一方のほうを考えてある程度是正をされるとか、そういうようなものの考え方をされるかどうか。
  267. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、国土総合開発計画、これを立てて新産都市あるいは工業整備地域、さらにまた山村漁村の振興方策等々を立てております。これがあるいは道路計画になり、あるいはその他の各種計画になっておることは御承知のとおりであります。しかし、一方で、これはほうっておきましても都市集中の傾向は出ている。この都市集中の問題に対して何らの手を打たないというわけにいかない。だから、したがいまして都市に対しては公害、交通問題その他万般の施策をいま講じておる。いま二頭立てとおっしゃるが、そのとおりのような状況であります。しかし私は、いまの集中政策は好ましい姿ではないと思っております。したがって、さらに国土総合開発計画を積極的に進めるべきだ、かように思っております。
  268. 中村時雄

    ○中村(時)委員 時間がないから一つずつの反論はいたしません。  そこで、ひとつその問題から発して農林省と建設省に私はお尋ねをしたい。  農林省が今度、要するに農業構造政策ですよ。構造という問題は構造改善事業、構造政策というふうにいろいろありますけれども、そのうちで今度の構造政策基本条件の中で、農業振興地域整備法というものをつくっている。また、つくろうとしている。まだ提案されておりませんが……。ところが、一方建設省は、都市計画法に基づいてこれを行なおうとしてこれは提案されている。厚生省は、先ほど総理のおっしゃったように、公害だ、通産省は工業立地適正化法だというふうに、同じような政府の機関からいろいろなものが出ている。そこで、かりにいま建設省のほうから出している都市計画法などは、少なくとも農地の六〇%まで含んでいるわけですね。ところが、農林省のほうから出している法律のほうは三千市町村を対象にして考えている。完全にこれはダブる農地が出てくるわけです。ところが、いま言ったように、一つもそれの調整ができていないのです。ちょうど土俵の中に相撲取りばかりほうり込んで行司なしの相撲をとらしていると、これはけんかになります。一体行司が出てくるまでけんかをしているのだという考えなのか、あるいは、そうではなくして、総理みずからが、いまの発言から見ると、総合土地計画法というものを考えてみたいとおっしゃっているのだから、ひとつその中に行司として乗り出していく、そういうお考え方があるかどうか。もしもそういう考え方があるならば、先ほどの米価審議会にも乗り出していって、ひとつ行司になっていただきたい。
  269. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それぞれの所管省がそれぞれ計画を立てることは、これは当然のことです。しかし、それがお互いにかみ合う、関係し合う、こういうことで各省にまたがるものでございます。そこで総合開発計画が必要だ、そういうときに必ず政府として一つのまとめた案をつくる、これが私どもの仕事でもある。したがって、ものによりましては、関係閣僚の協議会を開いている。また、ものによりましては、主務官庁ができていて、そうして関係官庁と相談をする、こういうことになるわけです。でありますから、そういうことが内閣の責任だ、かように言われるのはこれは当然だ、かように私は心得ております。
  270. 中村時雄

    ○中村(時)委員 だから、あなたが調整の役を買って出る、こういうことですね、内閣総理大臣の責任において。ちょっとそれをはっきりさしてください。
  271. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 内閣総理大臣というものはそういうような仕事が大部分の仕事ではないかと思います。
  272. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでは、前提によく知っておいていただきたいのは、建設省で前に土地収用法をつくられた。その土地収用法によって契約と一緒に価格はきまった、そこでそれだけの重大なことをするのだったら、もっと計画的なものが必要ではないかというのでこれができ上がってきた。そこで、農林省のほうは追い込まれた形ですよ、逆に言うたら。いつも農林省というものは追い込まれている。追い込まれた形でいま言ったような問題を取り上げてきた。そこで市街地の市街化調整地域というのが、その中に、要するに建設のほうの地域と農林の地域とそういうものがダブってくる。そのダブってくるものを市街地調整区域とこういっているのですが、その場合に、建設省のほうが必要になってきて、この土地がこれだけ必要なんだということになれば、農地法の適用除外という形でそれを認めていくのかどうか、非常に重大な点だから一点お聞きしておきたい。   〔北澤委員長代理退席、委員長着席〕
  273. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 従来調整をしておりますので、その立場からお答えいたします。  ただいまおっしゃった中で、国会に現実に提案されておりますのは都市計画法だけでございます。いわゆる新法でございます。そこで、この法案では、市街化地域の中では農地の転用の許可を事実上廃止するというたてまえになっております。そういたしますと、おっしゃるように、市街化調整地域について開発許可、これは都道府県知事がやることになると思います。それと農地との競合が起こるわけであります。それからもう一つ、別途に市街化地域と通産省で考えております工業立地の適正化の法律、それとの調整がもう一つ出てまいります。  それからもう一つ厚生省で考えております公害防止、これは音と空気と水でございますけれども、その許認可がやはり競合するわけでございます。これらのものは全部調整を必要といたしますので、国会に現に御審議願っておりますのは都市計画法の新法だけでございます。いま特段のお尋ねの点は、これは市街化地域についてだけ農地転用の許可を廃止するわけでありますから、市街化調整地域については当然農地転用の許可というものが残るわけでございます。
  274. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それから第二点、次にお尋ねいたします。  先ほど言った地価問題でありますが、私は、地価問題の解決というものがなかったら農地法を幾ら改正しても、流動的にはいま構造改善政策をやってみてもできないと思っている。そこでそれほど地価問題というのは非常に大きなファクターを占めておる。その地価問題の抑制の一つの方向として私は提案をしていきたい。それは住宅建設の問題です。  一つの行き方として、建設省は五年で六百七十万戸ですかを建てようという計画を持っていらっしゃる。以前建設省があれを出したときは、たしか七百六十万戸だったと思うのですが、一夜明けたら大蔵省からの問題で六百七十万戸という、数字がひっくり返ったようなかっこうになってしまっておる。そこで一々くどいことを言いよったって時間がありませんから、建設大臣にお尋ねしたい。  私は、地価の抑制というものは、少なくとも住宅が中心だと思う。私は、この住宅が云々できれば少なくとも地価の抑制は三〇%は解消ができたと思うのです。それほど住宅問題というのは重大な問題だと私は思うのです。大体いまホワイトカラーの連中は郊外に向かって住宅を建てている。ところが、実際にブルーカラーの連中はどうかというと、夜中でも働かなければならない。どうしても市街地に入らなければならない。その市街地に入ってくる人たちをながめておると、少なくとも六畳の間に五人であるとか六人であるとか、そういうような姿の中からほんとうの教育もでき得ない。そこで、市街地に少なくとも二百万戸ぐらいは高層ビルにすれば建つであろうということを識者は言っておる。そういう方向にどんどん一千万戸ぐらいにして家を建てていってもらいたい。しかも保利建設大臣は佐藤さんの片腕だといわれている。一期ぐらいで大臣をやめさせるのじゃなくして、せめて国のためですから、あなたの続く限り四期でも五期でも責任を持たして、これだけはしてしまおうじゃないかというぐらいの熱意を持って私はやっていただきたい。どうですか建設大臣。総理大臣はどうですか。
  275. 保利茂

    ○保利国務大臣 住宅の問題につきましては同様の考えを持って——いろいろ意見は、考え方はあるようでございます。まだまだ、たとえば東京都内にしましても、二十三区内にいまお話しのようなことを円滑に実施していくことをすれば相当の収容力があるんじゃないか。そして職場と住居とができるだけ接近するところに考えていくことが通勤対策の上からいっても好ましいことじゃないかというようなことは、強い貴重な御意見として伺っております。そういう点につきましては特に力を入れてまいって、いわゆる都市再開発法といいますか、市街地の利用度を高くしてまいる、そして高層といわないまでも四、五階ぐらいには利用できるような住宅を相当多量に考えていきたいものだと願っておる次第であります。
  276. 井出一太郎

    ○井出委員長 中村君、時間が参っております。
  277. 中村時雄

    ○中村(時)委員 あれだけの熱意を持っておるのですからひとつ十分検討をして、最後の成果をあげてもらいたい。  最後に一点だけお尋ねしておきます。  それは構造改善事業、これは非常に重大な問題ですが、残念ながら時間がないので一応打ち切りますが、これは農林大臣よく聞いておっていただきたい。あなた方の考えている構造改善事業というものは大体七万戸ぐらいの流動をやっているのです。そのうち半分が北海道なんです。そこでこの労働力がよそへ出ていくために、それを、労働の生産性を高めようじゃないか、そこで出ていったものの農地を何とかして集約して農地の拡大をはかろうじゃないか、こういう考え方に基づいて農地管理事業団というものをつくろうとした。そうして一隻だけで戦艦大和のように出ていったところが袋だたきになって撃沈してしまった。そこでこれではいけないからというので巡洋艦からいろんなものをつくって、今度は草地造成だ、年金だ、そういうものをずっと配列していって今度は構造政策というものを打ち出した。ところが、打ち出して金看板でがんがんやっておるけれども、その内容を検討してみると、何のことはない、やっぱり前と同じように七万戸くらいのものを何とかしようという耕地の拡大の問題である。そこでこれを大きく取り上げるためにはどうすればいいか。もう一つは補助をどのように整理していったらいいのか。もう一つ大事なことは、先ほど言ったように、いま穀物からだんだん畜産に移行しようという状態の中でへ作目の変換ということは三つのことが柱にならなかったらこの問題はほんとうのことはでき得ない。その点を十分に頭に置いて農政の方向に取り組んでいただきたい。  それからもう一点、農民年金の問題。この農民年金は佐藤さんが選挙の際に松山に来て公約をされていらっしゃった。その後予算委員会でもやられていらっしゃる。ところが不幸にしていまだに実現しない。予算のほうも昨年と比べると三分の一くらいに落ちている。もう調査の段階ではない、執行の段階にきている。農林省の中でもすでに検討は済んでいる。その一つの問題の焦点だけを私はお願いをしておきたい。それは農民年金というものは少なくとも農林の関係においては厚生年金と同等の立場をとっていただきたい。それは農業政策の一環としてのものの考え方、そういう姿の上から農林省の中でも検討しているはずですから、十分これを御検討の上で速急にやっていただきたい。おそらく厚生省のほうでは国民年金の方向というものの考え方があるでしょう。しかも四十四年度において五人以下の労働者もそれを入れるために法改正を行なうというたてまえから、そこまで引っぱられるというおそれがある。そういうような観点を十分勘案の上でお考えを願いたい。  あとのこまかいことは、私は委員会において十分検討もし、ともに話をしてみたいと思っておりますが、本日は私は五分までしかありませんので一応これをもって打ち切りますけれども、いまの構造政策の問題、それは農業の中心というものが、労働力が出ていくから、すなわち土地と労働という問題に関連して、その投下労働の再生産をどのようにしていくかというところに基本があるのですから、そういう立場に立って農業政策基本を樹立していただきたいことを要望いたしまして、一応私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
  278. 井出一太郎

    ○井出委員長 これにて中村君の質疑は終了いたしました。  次に、久保三郎君。
  279. 久保三郎

    ○久保委員 私は主としてじみな問題をお尋ねするわけですが、その前に、来年度予算案は一口で言うなら総合予算というようなことで組んだ、こういうことを言われておりますが、総合予算というのは一口で言うならどういうことを意味するのですか。大蔵大臣から……。
  280. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 予算編成はもともと私はやはり総合予算であるべきものだというふうに考えております。歳出の需要を全部並べて、そして各施策間の均衡をとって経費の配分をするということがほんとうでございますが、いままではそうではなくて、後年度において、たとえば食管とか公務員の給与のように大きい補正要因というものを当初予算の編成のときに除いて予算を編成するということが、ほんとうは本来の姿ではなかったと思うのですが、不幸にしてこういうことがずっと行なわれておりました。なぜそれが可能だったかと申しますと、御承知のように年度途中において増収が期待される——昭和三十年代からの成長期においてこういう税収が途中で期待されるということがありましたので、わかっておる補正要因を残して当初予算を組むということが例でございましたが、いよいよ四十年代になりますと、成長がもとのように高度の成長を望むことはできませんし、したがって、年度の途中で大きい予算補正要因を満たす、それに対処するということはできないということがわかりましたので、本年度はもう予算をぎりぎり一ぱい、この歳入も目一ぱい見て、そうして全部の経費を最初は並べて、均衡をとった予算の編成をするという仕組みに今度いたしましたが、これはこの前、社会党の方から御質問ございましたように、本来そうあるべきものが途中でそうでなかった。それをもとに戻したということでございますが、それでもやはり予算の組み方としては、ここ何年かと違った一つの画期的な組み方だということが言えようと思います。
  281. 久保三郎

    ○久保委員 いまのお話だと、いつもやっておることが総合予算なんですね。そうでしょう。予見し得られるものは全部歳入歳出で予算としてこれはやる。補正予算というのは、まさに予算成立の決定後において、歳出いわゆる支出、あるいは収入全体をくるめて変動があるときにやるわけだ。だから今度の総合予算というのは、変わった点というならば、いままでもお話のありました、たとえば公務員の給与あるいは米価が、これからそれぞれの機関からどういうふうにかきまってくる、そのきまってくるというのは予見し得られる。しかしながら、その額はわからぬということだと思うのですね。そこで、あなたがおっしゃる総合予算というのは、そういうあいまいであるが、まあ大体予見される。大体というのは額じゃなくて、そういうことが起こり得る。だからそれを予備費である程度受けとめるというのが、言ならば、いままでの予算の編成とは違った点であります。それをしも総合予算というと、たいへん、何か間違ってきやしないかと私は思うのです。というのは、総合予算というのは予見し得られるものは全部入るわけですから、そうすると、いままでの御説明では、公務員給与も、あるいは米価も予備費に組まれた範囲内においてのみこれは処理するのだという固いことになる、これはいわゆる最近はやりの硬直ですよ、硬直型予算ですね。だから例年になく固い。もうニュートラルでない、全然あと政策もへったくれもない。全部予見し得られるものはやってきてしまった。そうすると、佐藤内閣はこの予算を議決すれば、あとは官僚にまかせて昼寝を一年間していればいいというふうにも、あるいはなろうかと思うのでありますが、そういうふうにはとってはいけないだろうと思うのですが、どうですか。
  282. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも佐藤内閣が楽を見ようという予算ではございません。これはもっと、いま大蔵大臣が申しましたように、ことしの歳入のとにかく考えられるものを歳入財源に全部計上いたしまして、そうして所要の政策も盛り込んで、またその上でただいま御指摘になりましたように、公務員給与であるとか、米価であるとか、こういうものが一応は考えられるが、またその災害もですが、幾らの金額になるかわからない。しかし財源を全部洗いざらい出したのだから、その中でまかなっていこう。こういうような気持ちでただいまの予算を組んだわけであります。しかし、先ほど来いろいろ議論がありますように、絶対にそれでは補正は組まないのか、こう言われれば、異常なる要求に対しましては、これは当然、私どももこれに対処しなければならぬ。それだけのことは政府の責任としてやる。これは別に遊び、あるいは居眠りをする、こういうものではございません。
  283. 久保三郎

    ○久保委員 総理のおっしゃることは、これから、たとえば人事院勧告あるいは米価の決定、そういうものが現実にきたときには、これはまた別であるという意味の総合予算だと思うのですが、そうですね。それじゃないと、やはり昼寝になりますが……。
  284. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大体、私はそういうようなものも、たいへんな多額の予備費が計上されておりますから、そういうことでまかなえるだろうと、かように考えております。
  285. 久保三郎

    ○久保委員 予備費は大蔵大臣、全部で幾らございます。
  286. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 千二百億円であります。
  287. 久保三郎

    ○久保委員 それで四十二年度で、公務員給与は人事院勧告の完全実施ではございません。それで大体補正は幾ら組みました、あるいは米価は幾らにあとから補正したのですか、お伺いいたします。
  288. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 四十二年度の補正の金額もございますから、こういうものを一応従来の予備費にも加え、勘案して、できるだけの予備費を見ておく。千二百億見たということでございますし、食管のほうは、去年赤字の繰り入れを食管会計に一般会計からやりましたが、このやったほとんど同額を、ことしは予定して、当初予算の中にもう最初から予定しておるということでございます。
  289. 久保三郎

    ○久保委員 額はお示しになりませんが、同額だというから、およそわかりますが、そうしますと、総理がどうも先ほど——前の答弁はよかったのですよ。あとになってからおかしな答弁をしますと、何かこれはやはりひとしきり言われました、いわゆる財政硬直化という、これが何に原因するか時間もありませんから別段に申し上げませんが、そういう口実でそういうものに名をかりて、いわゆる硬直の原因であるといって——これは私が言うのではございません。政府そのものがおっしゃる。いわゆる人件費、あるいは米価、こういうものはひとつ先に組んでおいてやろうじゃないか、ところが、たとえばいま大蔵大臣からお話しの公務員給与、去年五百億大体補正した。それと同じ千二百億の中に五百億というのは、公務員給与の、いうなら、手当というふうにいまおっしゃるようであります。そうだとするなら、これはほんとうに何かだれもが関心を持っているやり方として、これは筋が通らぬではないか。先ほど米価のお話もございましたが、私は一どきにたくさん組んでは全体の予算、いわゆる総合予算ですね、その総合予算の中で、大体幾らかでも足し前といっては語弊がありますが、そういう意味一つのクッションとして、予備費の中に前年と同じくらいのものを一応入れておく、こういうことで事後においてそれぞれが決定をしたときには、これは補正その他の予算から削って、これは追加更正というか、そういうことで補正を組む場合もあり得るでしょう。しかしながら、どうもそういうこともあんまりおっしゃらないで、予備費のことだけでお話がありますと、予備費のワクでいわゆる給与あるいは米価、みんな押えていくんだ。そうしたならば、米価自身でも先ほど問題が出たようにございますし、人事院勧告は、いまだかつてといっては語弊がありますが、そのとおり完全実施したためしはない。それで四十二年度と同じような額を予備費に入れた、ほうり込んであるということは、それだけだというならば完全実施はまだしないということだ。それは制度上の問題もこれは大きくまた問題になります。だから、私は時間もございませんから聞くのでありますが、そういうやり方は、いわゆる一つのやり方ではあります。しかし、それで拘束するということは、これはお考えではないでしょうね。拘束することはないのでしょう。予算でもって人事院勧告をまずもって拘束していく。米価の問題も拘束していくということはないでしょうね。
  290. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま昨年と同じ額だけ予定してあるというお話でございましたが、そうではございません。昨年の実績も考慮して、できるだけの予備費をここにとってあるということでございまして、どの部分が幾ら、どの部分が幾らとこの予備費の中は分けてあるわけではございませんで、災害との関係で、また人事院の勧告のいかんによって、これを実現するように最善の努力をするということで、この金額は決して分けてあるわけではございません。
  291. 久保三郎

    ○久保委員 そうですよ。予備費に色がついているわけがないですよ。それを、色がついているような話をこの予算委員会が始まってからずっとおやりになっているのですよ。特に大蔵大臣はそうです。みんなの質問に対してそう答えているんです。  だから、最後に総理にお尋ねします。そういうことは絶対にないのだということでおっしゃるなら、それでけっこうなんですが、そうですか。
  292. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 予算の運用にあたりましては適正を期してまいります。
  293. 久保三郎

    ○久保委員 適正なんというそういうことばをお入れになると、また適正とは何だ、どうも疑えば切りがないような話になりまして、そういうことであってはいけないと思うのです。適正と言わぬでも、もう国民国会議員も全部、総理の意図は、拘束しないのであると、こう受け取れるように、これは信頼して、時間もありませんから信頼して先にまいります。  ところで先般政府、これは企画庁だと思うのでありますが、一人当たり雇用者の名目所得の伸びというものを四十三年度は九・八%というようなことで見込みを発表されたわけです。これは春闘に対して、すでに御承知のように、日経連のほうでは、政府に対しガイディングライト、いわゆる目安というものをひとつ立ててほしいというようなことを先般言っているわけです。だから、この九・八%というのは、まさにガイディングライトに、日経連の期待にこたえたのであろうかどうか。雇用者の所得の伸び、そういうものを数字によってあらわすということ、それは、さきに経済企画庁長官が所得政策とは言わなかったが、財政硬直化ということで一時波紋を投げたというか、問題を投げたその所得政策への導入ではなかろうかと見ている向きもあるが、これはどういうことなんでしょうか。
  294. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私どものほうで雇用者所得を一人当たり九・八%の増と見込んだことは実はないわけでございます。と申しますのは、雇用者所得と申しますと、常用はもちろんでございますが、日雇いも入っておりますし、それから国民所得の計算のほうでは、たとえば社会保険料を雇用者側で負担をする、企業側で負担をするといったようなものも計算上は雇用者のほうの所得になりますし、実物給与の住宅の家賃分もそうでございます。それから小さいものになりますと、チップなんといういろいろなものがございまして、統計が全部出ませんと、つまり実績として出ないと、一人当たり幾らであるかという計算ができません。したがって私どもは、推計の方法としては、一応国民総生産の中において雇用者所得が総体として占める割合が大体経験的に五五、六といったような割合があるものでございますから、それを使いましたり、成長率との関係で推定してみたりしておりますので、あらかじめ九・八とかなんとかいうものを出したことはございません。おそらく久保委員の言われますのは、それでも総体の雇用者所得を雇用人員で割りますと、やはりそういう数字が出るではないかとおっしゃるのかと思いますが、それはそういう結果になるかもしれないと思いますが、それは結果として出てくることであって、私どもがあらかじめ雇用者所得は一人当たりこの伸びだというふうな計算をしておるわけでございません。したがって、そのガイディングライト云々というようなことはないわけでございます。
  295. 久保三郎

    ○久保委員 そういう発表をしたことはないということでありますから、それは何かの間違いであろうと思いますが、私はそういうふうに受け取っておりました。しかしそれはないということでありますから……。  ただ、最後にだめ押しといってはたいへん失礼でありますが、いわゆるガイディングライトにこたえるということは、経済企画庁並びに労働省としてはございませんね。
  296. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 しばしば申し上げておりますとおり、そういう意思はございません。
  297. 小川半次

    小川国務大臣 お答えいたします。  賃金は労使間の話し合いによりまして、その際に労使とも国民経済全体に与える影響を十分考慮して自主的に決定されるという姿が好ましいものだと存じております。財界の一部にガイディングライトという議論があることは承知いたしておりますが、これを導入しようというようなつもりを政府は持っているものではございません。
  298. 久保三郎

    ○久保委員 労働大臣にもう一つ見解をお伺いしておきたいのでありますが、勤労者は、昭和三十五年以来所得というか給与、賃上げをやってまいり、かなりの伸びがあるといわれる。ところが実際には三分の二が物価に食われてしまって、吸い上げられて、実際の所得というか、その実収は三分の一が歩どまりである、こういうふうにいま勤労者は思っているという話でありますが、労働省はどう見ておられるか。
  299. 小川半次

    小川国務大臣 昭和三十五年以来日本の賃金水準、特に生産性の低い部門を中心にいたしまして、きわめて顕著な上昇を示していることは御承知であります。これが消費者物価によって何%食われているかということにつきましては、非常に正確なデータを私持っておりませんので、御希望でありますれば、事務当局から御答弁を申し上げさせます。
  300. 久保三郎

    ○久保委員 大臣は御存じないのかもわかりませんので、一言申し上げておきたいのでありますが、昭和三十五年を一〇〇として四十一年度の会計実収入は名目で一八四・四伸びているわけです。かなり大幅であります。ところが消費者物価上昇分を除いた実質収入では一二九・八、大体三分の一に歩どまりがなっているわけなんであります。こういうさなかにおいて労働大臣は、賃金は労使の間できめるものだという。それはそのとおりなんです。企画庁長官もガイディングライトをともす考えはない、こうおっしゃるから、問題は一応ないと思うのでありますが、いま世の中が春闘で騒然と言ったら語弊がありますが、そういう空気もこれから出ないとは限らない。その場合に、特にこれは総理に伺っておきたいのでありますが、騒然とすると、これはみんな不法のやつらだ——不法なやつらとはおっしゃらぬと思うのですが、どうも感じとしてはそういうようなことが間々出る場合が多いのであります。だから、総理大臣、たいへん説教がましいことで恐縮でありますが、総理大臣というのは、絶対の権力者なんですね、いうならば実際に。だから、その労働者や全学連と同じレベルに立って何か行動したり考えていたのではこの国はもたないと私は思うのです。ところが、話が横道にそれますが、どうも実際の場面になると、沖縄の人には暴言を吐いたようでありますが、本土のほうの国民には吐かないだろうと思うのですが、吐かなくても、行動というかものの考え方というのがやはり大事だと思います。そういう意味で、いま物価に吸収されている、だから、春闘というものについても、いま両大臣がお答えになったような線でやはりものごとを考えていって、その推移によっては、やはり総理大臣が始末をつけるということが私は大事だと思うのです。どうかそういう考えでおやりになることが一番いいと思うのですが、どうでしょうか。
  301. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 久保君はたいへん遠慮した言い方をされますが、かつて久保君と私がいろいろ折衝したこともございますから、そういうことを思い起こして、私がいわゆる独善主義の人間でもないし、また、特別に権力的な交渉もしない、よくお考えをいただきたい。そういう事柄がやっぱり労使双方におきましても、本来の社会秩序が保たれるというか、法律が守られるというか、こういうことでやっぱり労使双方の交渉が持たれること、これは望ましいことだと思うのですね。私は、ちょうど鉄道の出身であられる久保君がただいまのようなお話をなさる、今日展開されておる順法という闘争はどうも議論があるんじゃないだろうか、かように思いますが、とにかく法律が守られ、そうして話し合いのうちにものごとがわかるように、結論を出すようにしたいものだ、かように思います。
  302. 久保三郎

    ○久保委員 佐藤総理に一番あとでお尋ねをしたらと思っていたことが先に総理の口から出ましたので、簡単に私からも申し上げたいのでありますが、私が申し上げていることは、法律や何かの問題じゃないのです。総理大臣というのは、次元の高い立場でものごとを判断してもらうのが一番大事だという意味で申し上げているのです。法律や何かのことは、これは言うまでもなくそれぞれの担当の大臣なり、官僚がやることであります。総理……。   〔発言する者あり〕
  303. 井出一太郎

    ○井出委員長 この際、委員長より申し上げますが、ごらんのような事態で、出席者数が少ない場合はかようなる事態が生じまするので、どうか以後お気をつけの上、御出席を願う次第であります。
  304. 久保三郎

    ○久保委員 途中で中断しましたので、総理も何を聞かれているのかおわかりにならないと思う。それでは、総理のほうからお話があったので、あとから申し上げようと思ったんだが、いわゆる労働争議というか、そういうことで、あなたが、たとえば順法闘争などでと、法律に照らして云々というお話もしましたが、それはもちろんやっている者も、法律に違反するようなことを承知の上でやっているとは思わないのであります。ただ法律にも解釈、あるいは立場の相違、こういうのがございますから、そういう問題も私は佐藤総理——前は別ですよ、いま、身は総理大臣でありますから、私はそういうお尋ねをするのは失礼でありまして、言うならば、もっと、少し高い次元で問題を考えていただきたい、こういうふうにその問題は要望するわけです。  それで、ついででありますから、もう一つ私のほうから今度はお伺いするのでありますが、いわゆる三派全学連と称される学生諸君をあなたはどう思っていらっしゃいますか。
  305. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん困ったものだと思っています。ことに竹やりを用意するに至っては、これはもうほんとうに言語道断のような感じがいたします。
  306. 久保三郎

    ○久保委員 総理、その御返事だけではどうも——総理大臣、たいへん失礼な話になって恐縮でありますが、私は、それは一般世間の、市井の人がそういうふうにおっしゃるのは当然、あるいはそれでいいと思うのであります。しかし総理でありますから、どうお考えになるかというのは、私は、あなたはどういうふうになさろうとするのかということでお尋ねをしているわけです。法律に違反するとか、そういう問題でしたらお答えいただきたくない。
  307. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どういうように感じますかというお話ですから、総理として、別に市井の皆さんと変わった感じじゃございません。これは一緒です。ただ私は、総理としてその責任をどうするんだ、こういうお尋ねであれば、それはもちろん市井の方はそういう責任はないように思います。したがいまして、私はそういう立場に立ってのものの考え方、これをひとつしてみたいと思います。しかし、少し時間を拝借しないと、間違うと困ると、かように思っております。  御承知のように学生諸君であります。ただいま学校に籍を置く、そういう勉学途上にある方は、その全力をあげて勉学に励んでいただきたいと思う。したがいまして、私はそういう意味で実際行動、実力行動というものに学生諸君が関与することは、私はあまり好ましい状況ではないと思います。しかしそれにはいろいろの理由があるだろう、原因もあるだろう、またそういう点であるいは学生に同情すべき点もあるかもわかりません。そういうことについて、やはり事態を冷静に見ていく必要があるだろう。しかし、私は国民皆さん方に申し上げたいのです。これはひとり三派全学連だけではありません。法治国家のもとにおいて、法律はぜひ守っていただきたい。表現の自由、思想の自由、これはただいま保障されております。しかし実力行動、これだけは厳に戒めていただきたい、かように私は思います。いろいろな理由はございましょうけれども、それはエクスキューズにならない、かように私は考えております。
  308. 久保三郎

    ○久保委員 非常に大事な問題でありますから、ここで満足な答弁をお願いするというのも無理かと思うのでありますが、総理、あなたに反対する人もいます。あなたがいやな人もいます。そういう存在というものも、やっぱりあなたと一緒の日本の空気を吸っているし、あなたはそういうものを含めて責任を負う立場にございます。そういう意味で、全学連の諸君もその一人です。その是非の問題はありましょう。しかしどうしてそのなったかも、これは考えなければならぬ政治上の大きな課題だと思うのですね。時間もございませんから、法律、実力行使とか、そういう話をいま聞いていないのですよ。そういう話は聞かなくてもわかっているのですよ。全学連はわからぬかもしらぬ。私はわかっている。だから何をあなたに望もうとするのかおわかりでしょう。これはじっくり考えるおひまもないのかもしれませんけれども、やはり大事な点はじっくりお考えになったほうが私はいいと思うのです。  再度申し上げます。あなたが気に入る人ばかりはおりません。一億国民の中にはいやな者、きらいな者、反対する者、みんないるが、身は総理大臣であるということを念頭に置いてお考えをいただきたい、こういうことであります。  そこで次に、ことしは御承知世界人権年であります。一九四八年に世界人権宣言ができたことは御承知のとおりで、二十年目のことしが世界人権年。世界的にまず第一、人権を守ろうというのがことしの大きな世界的な行事ですね。また世界のだれもがそういうところに強い関心と、その目的を達成するために努力しなければならぬ。これは当然であります。  そこで、これは総理にお尋ねする前に、法務大臣、赤間さんにお尋ねしますが、あなたのところでは人権擁護のために、しかも世界人権年のために、どんな心がまえと、どんな運動を展開しようとするのか、簡単に御説明いただきたい。
  309. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  ことしは、お述べになりましたように人権宣言二十周年に該当し、いわゆる人権の年でございます。私はこの年を通じまして人権の擁護、尊重にずっと力を入れていきたい、かように考えております。施策といたしましては、われわれがやっておりまする人権侵犯調査どもさらに徹底をさしていきたい。なおまた、人権の相談等も今年は特に力を入れて能率をあげていきたい、かように考えております。なおまた、人権宣言の記念の年でありまするので、十二月の十日が人権宣言記念日に相当しますので、その前後にはひとつ盛大な記念式典を行なって趣旨の徹底をやりたい。記念切手とかそういうものも発行して、あるいは講演会、座談会というようなものも行なって、特にこの人権宣言がいかに大事であるかということをできるだけ日本国民に周知徹底させたい、かように考えておりまして、予算も大体八百八十三万円ほど心がまえ、用意をいたしておりますが、ひとつ特に効果のある方法でこの人権宣言の年の意義にふさわしい催しをやっていきたい、かように考えております。
  310. 久保三郎

    ○久保委員 これで人権が擁護できるんだろうかという感じを深くしますね、総理大臣。記念切手を発行したり——記念切手は、一億の人がみんな見て、ああ人権年かというようなことになりますかな、これは。ないよりはましです。講演会をやって、何人が講演会に集まりますか。人権に関心のある人だけ集まるんです、たいてい。人権擁護委員を頼んで、その人らに集まってもらって講演会をするぐらいが私は関の山だと思うのです。しかも予算は二百七十九万です。一億の人間の人権を守ろうという運動が、世界に向かって恥ずかしい次第だろうと私は思うんですが、法務大臣、これ以外にやりたいことは何にもないんですか、どうですか。
  311. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げますが、私が考えておりまする予算は、新規に二百七十九万円を計上しておるのはお述べになったとおりであります。しかしながら、重大な問題でありまするから、既定経費のうちから九十三万円、それから法務局から五百十一万円を差し繰りいたしまして、八百八十三万円で、でき得るだけ私は効果のあがるような方法をやりたい。さきにも申し上げましたように、人権侵犯の調査というようなものも思い切ってことしは能率をあげていきたい。それから年々ふえておりまする人権相談というようなことも、ことしは思い切ってたくさんの人権相談にあずかっていきたい。私は有効適切な方法を今日から研究いたしまして、効果があるように取り計らっていきたい、かように考えております。
  312. 久保三郎

    ○久保委員 その既定経費の五百十一万などは、これは別に何も人権年だから、こちらへ流用したわけじゃないんですよ。講演会なんていうのは毎年やっていることですよ。これは費用からいっても少ないし、もっと新規なものはたくさんある。最近はこれは何でもマスコミにのせなければだめなんです。新聞でも、一ページの広告に出せばみんなわかる。ところが、べた記事が載っかるような一段組みの広告を出しても、だれも見やしませんよ。あとから国鉄の問題を聞きますが、国鉄は一斉に各新聞に一ページの広告を出した。石田総裁がだれかと対談して。一国鉄が各新聞に出せるのに、何で人権年にあたってそんなものを出せないのか。人権というのは、人間の権利というかそういうものは地球より重いという、やはり同じだと思う。そういうものを考えれば、もう少し正気になって人権擁護はしてもらいたい。それ以上に、外部に宣伝するよりは、まず政府部内で考えてもらうことが先です。これは法務省からいただいた資料を見ましても、人権侵犯の事案、事件が、官憲によるものがどれくらいあるかというと、いわゆる受理された件数だけで一年間に千百四十一、毎月百件程度あるわけですね。ところが、官憲のうちでやはり警察が一番多い。もちろんそれが全部人権侵害されたという結論にはなっていないようであります。しかし、考えてみてもらわなければいかぬのは、人権侵害されまして、人権擁護局にあるいは擁護委員を通じて申請するような人はまだましなほうです。泣き寝入りしている者が非常に多い。  そこで、これは総理大臣に申し上げておきたいのですが、せめて世界人権年のことしぐらいは、あなたの手の届く範囲で、官憲が国民の人権を侵害しないための方策を私はとってもらいたいと思う。いままでの官憲による人権侵害は、すでに先般畑委員からそれぞれあったように、近くは飯田橋事件、凶器準備集合罪の容疑でというようなこと、あるいは佐世保の事件。それは総理にしても、法を守らぬやつがいるということで、考えは別かもしれませんけれども、いずれにしても佐世保事件一つとっても、これは問題があります。単に政府側の、この間の国家公安委員長とか法務大臣の答弁のように、警官のいわゆる職務執行には誤りはないということを断言できるものではないのです。だから、この官憲による人権侵害というものを新たな観点から見るべきだし、国家公安委員長というのは国務大臣である。一警察の署長ではない。法務大臣もしかり。そういう観点から警察官の職務執行をつぶさに点検しなければならぬ。  さらに、警察官ばかりではありません。私の手元にある資料によりますれば、ある職業安定所の窓口で職業紹介に受け付けてくれない。全日自労あるいは部落解放同盟の人たちが一緒に来たときには受け付けてはならぬという指令を上から流している。そういう案件もありました。全く奇怪しごくだと思うのでありますが、必要があれば、そういうのはここに持っていますから、出します。  しかし、その事件を一つ一つここで政府皆さんに質疑応答の中であからさまにしていくのが私のつとめではありませんから、これはやめますが、そういうのがある。あるいは税務職員が人権侵害したものもある。学校の先生がやったものもある。特にその中で多いのは、さっき申し上げた、官吏というか、公務員がやったものが千百四十一、その中で警察官によるものが五百三十九件あるというのです、去年一年間、十二月までの間に。  そこで、これは国家公安委員長にお尋ねしたほうがいいが、警察官というのはだれのためにあるものだか、お答えをいただきたい。
  313. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 もちろん国民のためにあるわけでございまして、先ほどから何か警察官の人権侵犯的なことばが述べられておりますけれども、警察法第二条には、警察の責務が第一項にきめられております。公共の安全と秩序の維持に当たることもその責務の一つ。第二項のほうに、「いやしくも日本憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない。」ということが明確にきめてありまして、警察といたしましては、始終厳重に教育もいたしますし、最近は教養水準も高まりまして、こういう事故の絶滅を期しておる次第でございます。
  314. 久保三郎

    ○久保委員 いま赤澤大臣の前段のお答えは、たいへんよろしいと思います。それは政府の警察でもないのですね。これはもう国民のための警察なんですよ。それがまず優先しなければいかぬ。それを優先しないで、何か国家権力を行使するその道具として警察が使われる。しかも警察というのは、一人一人がこれは独立して職務を行なう、市民生活の中に同化しながらやるというところに警察の本領があるわけです。そうでしょう。これは、あなた専門だから、私から申し上げる必要はないと思うのです。機動隊という警察がありますが、大体隊と名のつく警察は、これは警察じゃないのです。それから武器を持っているのも、これも警察じゃないのです。そうでしょう。ところが機動隊というのは、これは必ず一人での行動はないのです。これはまさに警察法の精神からいってもおかしい。だから、そういうものをまず第一に頭に置いて仕事をさせるというのが、私は今日一番大事だと思うのです。侵犯させないようにということでまず考えていかなければならぬ。  そこで佐藤総理にお尋ねします。人権を守るという第一義的な責任はどこにありましょう。
  315. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お尋ねの趣旨がよくわかりませんけれども、とにかく、私は、いずれにいたしましても政治の基調に基本的人権を守る、かようにしております。それが私の施政の態度でもございます。御了承いただきたい。
  316. 久保三郎

    ○久保委員 あなたはたいへん学問ができそうでありますから、あなたにお聞きしましょう。国民の人権尊重の責任ですね、これは第一義的にどこに責任があるか。憲法には——私が憲法を言う必要はないですね。憲法には、いわゆるこれは尊重しなければならぬ。各人の努力国民努力によってこれはやっていく。ちょっと読んだのではよくわかりませんから、まず第一にだれが責任を負うものでしょう。
  317. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  憲法には人権の問題について御承知のとおりにいろいろなことが書いてございますが、犯すことのできない永久の権利としてまず国民各自がそれを守らなければいかぬということ、それからまた国政の上で最大の尊重を必要とすること、そういうところから出てまいりますように、国民各人が守るというと同時に、国政の上で最大の尊重を必要とする。したがって、国政の衝に当たる者が、ただいま総理が申し上げましたように、立法の上においても司法の上においても行政の上においても、それについての十分な配意を加えるべきであるというのが憲法の精神だと思います。
  318. 久保三郎

    ○久保委員 そうですね、法制局長官だからあまり見当違いな答弁はやはりないですよ。肯綮に当たっていますよ。第一義的な責任は政府にありということですよ、簡単に要約すればね。それは政府というのはもちろん総理大臣はじめ各閣僚ですよね。それからもう一つは直接担当の大臣。警察官の親方じゃないですからね、国家公安委員長とか法務大臣なんというのは。これは違うのです。次元の高いところにいるのですから、おのれ自身の値打ち、そういうものを考えて、人権擁護に励んでもらわなければならぬ。  そこで、どうですか、これは総理大臣、人権についてあらためて政府部内全体に訓令を発して認識を改めるような措置はおとりになる必要はございませんか、ことしは人権年でありますから、あらためて……。
  319. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいま御注意ございましたが、何か特にこの際やらなければならないようにお気づきの点がありましたら御注意ください。
  320. 久保三郎

    ○久保委員 さっきから申し上げているように、官憲の人権侵害というのは一番悪質である。そうでしょう。第一義的には政府が責任を持たなければならぬという人権でありますから、少なくともまず第一、政府の雇用人であるところの役人、そういうものにもつと人権を尊重するために慎重であれというような訓令を出すのがほんとうじゃないか。なんなら総理がどこかに行く際に、あるいは各大臣が行く際に、必ずそこで訓示をして徹底を期するということが私は一番大事だと思うのです。ところが最近はどうも実力行使だとか不法な行為が多くて、そんなことはとてもじゃないがということですが、そういうときにこそ人権は侵害される公算が多いのです。だからそういう際に慎重に扱うべきであるというのが私の主張です。
  321. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お話の御趣旨は各大臣とも静聴しております。
  322. 久保三郎

    ○久保委員 それから、この間また畑委員からここで質問がありましたが、昨年東京都におけるデモ行進、これに対する裁判所の仮処分に対して、行政事件訴訟法でありますか、そういう法律の二十七条で、いわゆる仮処分の停止に対する異議申し立てをした。三件同じケースですね。これは裏を返せばやはり人権のじゅうりんにつながると思うのですね。そうでないというお考えかもしれませんが……。そうであるといったらおかしいでしょうね、やっちゃったんだから。しかも三件ですよ。これはやはり反省してもらわなければいかぬと思うのですね。  ここで時間がないからあらためていろいろなことをお聞きすることはちょっとできません。ただ二十七条というが、これまた法律には詳しいようでありますが、それだけですよ。総理ちょっと待ってください。いま法制局長官に聞きますから。行政事件訴訟法というのはどんな経緯でできたんですか、簡単に述べてください。
  323. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 非常に広範なお尋ねでございますが、行政事件訴訟法ができます前には、御承知のとおり、行政事件訴訟特例法という規定がございました。これは行政事件に関して、主として民事訴訟関係の特例を規定しているようなものでございましたが、それを昭和三十七年に法律で制定される以前、法務省の法制審議会でかなり長い間論議を重ねた結果できた法律でございます。むろんその経緯にはいろいろな議論がございましたが、ともかくもこれで一致をして案を国会に提出をして、国会で三十七年に成立をしたということでございます。
  324. 久保三郎

    ○久保委員 それはお述べになったとおりですね。この法律の前身は、行政事件訴訟特例法というものが昭和二十三年にできたわけです。これはあなたお述べになりませんが、占領下においてできているんですね。そこに特異な存在があるわけです。しかも長い論議の末ということをあなたからもお話がありましたが、そのとおりなんです。どうして長い論議の末にできたか、これは言うまでもありませんよ。特に第二十七条の問題が最後までこれは問題になったんですね。非常に大事なことなんです。真にやむを得ない限りやっちゃいけない、そう書いてあるんです。そういうものを、同じケースで、しかも昭和四十二年に続けざまに三件やったことについて、これははなはだしくこの法律を乱用したとわれわれは考えているわけです。そこで、これはいかなる理由でやったのか。この二十七条の末尾には、次の常会の国会に報告すべきことが書いてある。いままさに総括質問はもう一日で終わる。これは報告してあるかどうか。私は、国会議員の一人として報告はいままでもらっていない。国会に提出したかどうか。
  325. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 昨年の十二月二十七日に報告をいたしました。
  326. 久保三郎

    ○久保委員 どこへ出したか。国会ではその報告をわれわれ自身は受け取っていない。委員長からひとつ調査していただきたい。それがわかるまでひとつ……。
  327. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 内閣総理大臣から議長あてに提出をいたしております。御了承願います。
  328. 久保三郎

    ○久保委員 国会の担当の部長はだれか知らぬが、こういう席へ来て答弁する……。
  329. 井出一太郎

    ○井出委員長 議長あてに出たようにただいま法務大臣からの報告でございますから、これはさっそく調べまして、後刻御返事を申し上げます。
  330. 久保三郎

    ○久保委員 その控えを持ってきているかな、法務大臣。
  331. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  昭和四十二年六月及び七月における内閣総理大臣の異議陳述に関する報告書、こういう印刷物にして議長のところに提出をいたしております。御了承を願います。
  332. 久保三郎

    ○久保委員 この二十七条の異議を申し述べる担当大臣はどなたですか。自治大臣ですか。——それでは自治大臣にお尋ねしますが、異議の申し述べは国家公安委員長として出すのですか。
  333. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 異議の陳述は内閣総理大臣がするわけでございます。
  334. 久保三郎

    ○久保委員 それはそうですよ、内閣総理大臣と書いてあるのだから。ただ、職務分掌はだれになっているかと聞きたい。あなたですか。
  335. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 国家公安委員長の担当でございます。
  336. 久保三郎

    ○久保委員 法制局長官、これはそれでよろしいか。
  337. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 異議を陳述いたしますのは、むろん法律に書いてありますとおり内閣総理大臣でございますが、それについて、それぞれ手続の過程では事務的な処理が必要でございますので、その面につきましては、やはりそれぞれの問題の所在に応じて変わってくるのではないかと思います。いずれにしても、最終的には総理大臣の異議陳述という形で出てまいります。
  338. 久保三郎

    ○久保委員 これまた法制局長官に、これは学者だから聞いたほうがいい。同じケースで三回もやることはいまだかってない。そうなったら、新たな手段に出ざるを得ないと思うんだが、それはどうだ。二十七条を三回も同じケースで使うなんてばかばかしいことはどこにもありません。これは、慎重にやれと書いてあるのだ。それをやっているわけだ。
  339. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答え申し上げますが、行政事件訴訟法の第二十七条に規定をされておりまする権限に基づいて、総理が異議の申し立てをいたしたので、これは御承知のように、公共の福祉の擁護のためにやむを得ない行為として行なうものでありまして、年に一回行なうとか二回行なうという制限はありません。公共の福祉に害がある、これを守らなければならぬという場合におきましては、年に数回出すことも決して違法でない、憲法違反じゃない、かように私は考えておる次第であります。決して憲法の保障する表現の自由を侵害する問題ではないと考えております。御了承願います。
  340. 久保三郎

    ○久保委員 赤間大臣、あなたの職務権限の中には人権を擁護するというところがあるわけだ。その大臣が、いかに立場とはいいながら、いまのような答弁がよくできたと思う。三回同じ——何回やってもいいでしょう、法律の文言だけの解釈ならば。精神解釈はどうかというんだ。だから、法律の解釈は法制局長官のほうがいいから聞いているわけだ。政治家の解釈はそっちだ。ところが、あなたは逆だと言っている。そういう心がけをまず第一に改める必要がある。それが世界人権年にこたえる日本国のいわゆる立場じゃないかと思う。  時間がないから先へいきましょう。  次には、国際人権規約、これは十二年の長い討議を経て、一九六六年の国連総会で満場一致で決議しました。中身は、言うまでもなく、経済、社会及び文化的諸権利に関する国際規約、もう一つが、公民及び政治的諸権利に関する国際規約、この二つであります。政府は、これを批准する用意があるかどうか。これは担当の大臣でもいいでしょう。担当の大臣は外務大臣ですな。法務大臣か。
  341. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  この国際人権規約の批准の問題でございますが、ただいまお述べになりましたように、一九六六年の第二十一回国連総会で採決をせられて国際人権規約となっておりますが、これは国連憲章あるいは世界人権宣言の趣旨をふえんして、人権と基本的自由の尊重を締約国の義務としておりまして、国連がこの分野において達成した重要な成果の一つであるとこれは認められております。  しかしながら、御承知のように、本規約は、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、三十一条あります。なおまた、市民的及び政治的権利に関する国際規約が五十三条あります。市民的及び政治的権利に関する国際規約の選択議定書が十四条のこの三部から成り立っておりまして、きわめて広範かつ詳細にわたっておる人権、基本的自由の尊重を目的といたしております。  各国とも国内法制との関連上十分な検討を要しまして、現在までのところ、いずれの国もこれを批准しておる国は一国もありません。今後の見通しについても、まだ批准がいつ行なわれるかということは予測がつかないような状況にございます。  法務省といたしましても、本規約の特に重要なることを十分考慮いたしまして、目下これが批准の問題等につきましては鋭意研究中でございますので、御了承願いたい。
  342. 久保三郎

    ○久保委員 法務大臣、世界どこでもまだ批准してないから、そのあと研究中だという。研究中だけならいいけれども世界どこでもというのはよけいなことだ。そのことばからいえば、世界どこでもやらぬから、まあ一番あとでということはないだろうが、一番先に批准するようなことは考えていない、そういう意味でしょう、これは。法務大臣、あなたは書いたものを読むと長くなるから、結論だけ言ってください。
  343. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 ことばが足らなかったために……。決して世界の各国がやってないから日本の国も一番あとからやるとかいうような意義は持っておりません。ただ、さきに申し上げましたように、内容が非常に徹底的に複雑多岐にわたっておりまして、国内法との調整等がなかなかめんどうな部面が多いのであります。内容が非常に複雑であるために、各国ともやりたくともまだ批准ができてない、私はかように了解をいたしております。私らといたしましても、慎重に検討をして、できるものならなるべく早く批准の運びに持っていきたい、こういうことを念願いたしまするので、どうぞ御了承を願いたい。
  344. 久保三郎

    ○久保委員 赤間大臣、あなたこの規約二つ読んで、どこがその批准に支障があるのか。一つの例だけでいい、たくさん要らないから、一つだけ説明してください。何条と何条、どこでどういうふうになっているか、これはあまり長くなくてけっこうですからね。
  345. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 人権擁護局長が参っておりますので、詳細に御説明を申し上げます。(笑声)
  346. 久保三郎

    ○久保委員 法務大臣——法務大臣、ふまじめな答弁じゃないか。大きい声を出さなければまじめになれないのか。ふまじめじゃないか。あなたは規約を一条も読んでない。法務大臣、不見識な答弁をしなさんな。わからぬければわからぬとおっしゃい。私は時間がないから——局長、あなたの答弁は求めていない。ふまじめだ。時間がないから、きょうはこの辺でかんべんしておく。赤間大臣、局長、ぼくがいま質問しようという——意見を言う。聞いてください。人権擁護の任に当たる大臣が不見識もはなはだしい。しかも、ぼくはちゃんと質問要綱で出してあるわけだ。赤間大臣、ことしは人権擁護の年であるとするならば、あなたに言いたいことは、少しばかりの行事をやるより、あなたがその人権規約等を読んで、いかにこれを具現していくかということを方策を練ってもらったほうが、どれだけ国民のためになるかわからぬ。研究してください。  次に行きます。これは労働大臣と外務大臣だろうと思うのでありますが、ILOのモース事務局長は、一九六七年一月に、日本の外務大臣あて、人権関係基本的文書に関する措置というようなことで書面を送ってきているわけです。この内容は、われわれはまだよく承知していません。しかし、その中身は、国際人権年にあたってILOとしても何らかの寄与をしなければならぬということで、これは総会で決議になった文書であります。その中には、ILOは百五号以下七つほどの条約の批准を促進してほしいというのが、この要点のようであります。これについてはどういうような扱いになっているか、簡単にお話しをいただきたい。
  347. 小川半次

    小川国務大臣 お答えいたします。  ILO百五号の条約でございますが、御承知の強制労働に関する条約でございます。日本におきましては、憲法で、何人も、裁判による刑罰として科される場合を除いては、その意に反して苦役に服せしめられない、こういう規定がございまするし、各種の法令で人民の基本的権利、自由が確保されておりまするから、趣旨においてはこの条約と合致いたしておるわけでございます。ただ、この条約が細部にわたりますると、非常に不明確なところが多いわけでございます。今日この条約を批准しておりまするのは西ドイツとイギリスでございますが、いずれも批准をした後において国内法との関連で問題が起こっておる。それでありまするから、批准に先立って、国内法との調整を慎重に検討する必要があるわけでございますが、肝心の条約自体にあまりにも不明確な個所が多いわけでございます。  そこで、日本政府といたしましては、この条約に関連のある国内法につきまして解説を付した文書をかねてからILOに送付いたしてあるわけでございます。各国から同様の文書がILOに提出をされておるわけでございまして、ことしの六月にILO条約に関しまする条約勧告審査専門家会議というものが開かれまして、条約の解釈について、さらに一歩を進めた統一的な見解が出てくると期待されるわけでございます。それに応じましてこの批准の問題をさらに掘り下げて検討していこう、かようなことになっておるわけでございます。  それから百十一号、人種、性別あるいは宗教その他の理由で差別待遇をしてはならないという条約でございますが、これもわが国においては国内法でこの趣旨が達成されておりますから、趣旨においてはこの条約を批准できないという理由はないわけであります。これまたこまかい点になりますると、きわめて不明確な点がございます。そういう点の調整にまだこれから若干手間どるという事情があるわけでございます。  残りまするのは、農業について工業労働者におけると同様の——内容は御承知と存じます。これまた趣旨において異存はないわけでございますが、さらに時間をかけて検討しなければならない。  大体、以上のような状況になっております。
  348. 久保三郎

    ○久保委員 時間もありませんから、いずれあらためて百五号等については質疑を重ねていきたいと思いますが、本日は次に移ります。  運輸大臣にお尋ねしたいのでありますが、同じILOの条約の批准で、最近というか、この国会あたりで百十四号、いわゆる漁船員の雇入契約に関する条約を批准する準備をされているそうでありますが、聞くところによりますれば、この内容は、二十トン未満の漁船船員については適用を除外していきたい、こういう御意向のようでありますが、大臣御存じのように、二十トン未満の船といい、二十トン以上の船といい、あまり区別がございません。同じ海域で同じ操業を二十トン以上の船と未満の船が一緒にやっているんです。そこで、船員法の適用も三十トンから二十トンにやっと——まあやっとというか、落としたわけでありますが、言うならば、二十トン以下の適用除外を撤廃すべきだというのが、最近の要求というか、国民的な要望になっているわけであります。でありますから、二十トン未満という区別、その適用除外という条項を、この際はことさらに百十四号の中で取り入れることについて、われわれは反対であります。これまた差別待遇でありまして、人権擁護を高揚する年にあたっての日本国のILO条約百十四号の批准には、少しくふさわしくないのではないかと思うのであります。いかがでしょうか。
  349. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 ILO条約第百十四号、漁船員の雇入契約に関する条約の批准手続は、いま準備を進めております。ただ御指摘の二十トン未満の漁船船員につきましては、本条約第一条第二項に、関係の船主団体、船員団体があるときは、これらと協議の上、一定の漁船を適用しないことができるということになっておりまして、この点について関係船主団体及び船員団体にその旨の協議を行ないましたところ、大部分の船主団体及び船員団体から、適用しないことについての用意がありましたので、今回はその状態で批准の手続を進めておる次第であります。
  350. 久保三郎

    ○久保委員 いずれ条約批准のときにまた意見を申し上げますが、再考をお願いしたいのです。二十トン未満の漁船船員の立場というのは、非常に一番弱い立場にあるわけです。必ずしも漁船船員の団体、そういうものの中で自分意見が十分に通り得る立場にはいまないと私は思っています。弱い立場です。しかも二十トン以上の漁船船員はあなたのほうのお調べでも十四万人あります。それに対して二十トン未満で雇用されている者は約九万人あるわけです。この数は必ずしも少ないものじゃないと私は思うのですね。だから、こういう弱い立場の者ももう一ぺん、国会に向って手続を進める前に、念のために、ひとつ実地調査その他を含めて御検討いただきたいことを要望しておきます。  次には、総理にお伺いするわけですが、ことしの一月一日の、これはたしか毎日新聞だと思うのですが、総理はごらんになっていなかったと思うのですが、これは全文読むと時間もかかりますから、総理のあなたに関係する部分だけ読ませていただきたい。いわゆる沖繩の人権問題です。これは沖繩特派員団として十人ほどの記者諸君が合同で報告をしたものであります。そこで、その中に「人権無視。そのとおりだった。人権を取戻すには「叫び」だけでなく「たたかい」が必要だと思った。」「だが、戦争でないたたかいだってあるはずだ。「おすがり」や「無為無策」とは正反対のものが。われわれは冷静にカルテを書くよう努力したつもりである。佐藤首相が真に「平和を愛し、平和に徹する」覚悟ならひめゆりの塔で涙する前に、まず平和憲法を沖繩に適用すべく肝をくだくことだ。これが首相への年賀状である。」書き方が最後のほうはちょっとおかしいと思うのでありますが、平和憲法を適用するということ、これは返還を願うということになります。しかし、その前に人権を守ることも、返還まで待っておられないのが沖繩の人権を擁護するということではないだろうか、私はそう思うのです。そこで、沖繩の日本復帰は、単に民族主権の復帰ではなく、人間の回復を意味する。人権、自由、平和という普遍的原理を日米両国政府が保障すること、こういうふうな断定をこの新聞はしています。まさに日本国民と沖繩県人の気持ちを端的にあらわしたことではないでしょうか。いまさら沖繩でいかような人権がじゅうりんされているかを事こまかに述べる必要はないと私は思うのですね。  まさにあなたは、昨年の五月十九日参議院の沖繩問題特別委員会で答弁されています。非常に冷静な答弁でありまして、私には不満足です。沖繩にはアメリカの施政権があるから、アメリカ、その下には琉球政府があるから、直接沖繩県人の人権を擁護するのはこれらの関係であるというふうにお述べになっています。やや明確ではございませんが、そういうふうにとれる。私は、残念ながらそういうことでいいのだろうかという気になった。そして、三木外務大臣は同じ委員会でこう答えています。次の日米協議委員会の議題にでもしましようかと。私は、しかし、その後調べたところによりますれば、日米委員会の議題には一つもなっておりません。また、この日米協議委員会、そういうところの議題にして目的が達成するものでもないだろうと私は思うのです。もちろん、すべての努力をすべきでありますから、そこの議題に持ち込んでいく熱意は必要だ。あきらめてはいけない。しかし、議題にもしていないというのでは、私は残念ながら真意を疑う。総理、この人権だけは守るくふうをあなたはすべきではないか。この間、B52の問題で沖繩から来ました。一つの側面はやっぱり人権じゅうりんですよ、これは。どうかこの問題について沖繩県人と日本国民が納得するような答弁をひとついただきたい。
  351. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ことしが人権尊重年、こういうわけで申すのではございません。私は、沖繩の同胞が異民族の施政権下にあり、そのうちには幾多の人権侵害事件が起きておる。たいへんお気の毒に思っております。前塚原君が沖繩に参りました際も、またこのたび田中総務長官が沖繩に参りました際も、直接アンガー弁務官にこれらの事件について率直に訴え、善処方を要望しております。もちろん、その他の場合におきましても、日本政府がアメリカに対しまして善処方を要求しておることはもちろんであります。ただいま申すように、具体的な問題としてこれらのことを申し入れ、アンガー弁務官も、これらについて善処すると、かように約束はしてくれております。しかし、このことは、ただ一片の約束あるいは抗議だけで済む問題ではないと思います。今度は日米琉委員会もできましたし、さらに、こういうような問題について、私どもが、沖繩同胞の人権侵害、これを擁護するのには一そう努力ができる、その立場にある、かように思っておりますので、一そう努力するつもりであります。
  352. 久保三郎

    ○久保委員 それは、総務長官が行ってお話しすることも一つの方法です。しかし、問題は一つも解決していない。だから、あせりと、ふがいなさというか力のなさに、この間はB52の問題で代表が来て、多少ことばが荒くなるのは私はわかる。そういう気持ちはわかると思うのです。いまの御答弁で、われわれはなるほどという気持ちにはなれません。何かどうもアメリカの問題になると、アメリカのきげんをそこねてはいけないという気持ちがあるのか−そんなことはないということでしょうね。しかし、そういう気持ち、そういうふうにどうもわれわれとります。B52の問題一つとっても、私は、一番味方にせねばならぬのは日本民族同士です。その中でかたきができたり、敵と味方に分かれるようなことが気持ちの上であったんでは、それはたいへんなことだう思うのですね。だから、これは水かけ論になるが、具体的にこの問題をどう扱うのか、お考えがありますればひとつ述べていただきたいと思うのです。  私は、残念ながら、今度できる三者構成の委員会でなかなか解決する問題じゃないと思う。私は、日本国民の一人として、アメリカの国民に言いたいことは、アメリカの中の人種問題というのが沖繩にはやっぱり気持ちの上でそのように適用されているのではないか。だから、平然として見るにたえないような人権じゅうりんが日ごとに起きている。あとを断たない、こういうふうに私は考えます。もしもノーと言うならば、有効適切な方策をとってもらいたい。私は、総理に、もっと具体的に、あなたは立ち上がるという気概をもって何か方策をお示し願えないのだろうか。
  353. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま、私がそれぞれとった処置を報告いたしまして、お話をいたしました。したがって、政府のこれに取り組んでおるその態度は、よく御理解がいくだろうと思います。私は、なおそれにつけ加えまして、ただいま一部で、あるいはアメリカだから遠慮しているんじゃないか、こういうお話がございますが、両国の親善関係を考えれば考えるほど、ものごとは率直にこういう事柄を申し出ることが、より友好親善関係をつくるゆえんだ、かように私は考えております。言わないで内向するぐらい両国の間を遠いものにすることはございません。したがって、悪いことは悪い、はっきりしたらいいと、かように私は思っております。そういう意味で、また皆さん方からも鞭撻を受けると思いますし、また、これがいわゆる人種問題だ、こういう意味ではないだろうか、かように私は思います。  ただ、この点で残念に思いますことは、異民族であるということ、さらにまた、そこにいろいろ問題がございますから、いまのような問題が次々に起こる。したがって、私どもがもっと絶えず監視して、そういうことについての積極的な解決方法を相談することが大事だ、かように私は思っております。
  354. 井出一太郎

    ○井出委員長 久保君に申し上げますが、先刻の議長あての報告書の件につきましては、昭和四十二年十二月二十七日、行政事件訴訟法第二十七条第六項の規定に基づく昭和四十二年六月及び七月における内閣総理大臣の異議陳述に関する報告書が提出せられ、同日、議長は全議員に配付いたしておりますので、この際御報告をいたしておきます。  久保三郎君。
  355. 久保三郎

    ○久保委員 沖繩の問題について、外務大臣は担当の大臣ではない。しかし、対アメリカではあなたが責任者ですから、一言お聞かせいただきたい。
  356. 三木武夫

    ○三木国務大臣 人権と申しますか、現地でアメリカ軍人と沖繩住民との間にいろいろなトラブルが起こっておることは事実であります。これに対して、われわれも、日米間の折衝の場合は、しばしばこれを議題にはいたしておるわけでございます。日米協議委員会等においてもこれは取り上げるべき課題であることは御指摘のとおりであります。ただ、現在、きょう初会合をいたします日本とアメリカと琉球との三者委員会は、現地で常駐してしょっちゅう会合を開くことになっておりますので、この場所は経済、社会、諸問題についてこれは助言と勧告をできる権限がありますから、しかも、現地で三人とも常駐するということでありますので、この場所もこういう問題を取り扱うのに私は適当の場所だと思うのでございます。とにかく一番、人権と申しますかそういうことが守られないということは、アメリカとしてもこれは本意ではありますまいし、日米両国のためにも、これはいい結果をもたらさないわけでありますから、こういう点でわれわれとしても、今後、あらゆる機関を通じて沖繩住民の人権が守られるような努力をいたす責任が日本政府にもあると考えております。
  357. 久保三郎

    ○久保委員 この問題は、なお政府の中で具体的に詰めてはしいと私は思うのです。いずれまた機会を見てお尋ねをしたいと思うのです。  次に、運輸大臣を中心にお尋ねをするわけですが、時間もございませんので、一つ、二つ抜き出してお伺いするわけですが、交通事故の問題で、いろいろ問題はございますが、先般来、交通事故にあって示談もできず、その結果、裁判、そうして裁判によって保障されても、実際には賠償がないというような問題も数多く見られるようになりました。  そこで、現在の自賠責の限度は三百万円であります。だから、これを六百万円に引き上げる、そうして、当面、被害者に対する要求をいれていってはどうか、かように考えます。  もう一つは、同じこの自賠責でありますが、御承知のように、ある一定以上の車を持っておるものは、この制度から自家保障制度に、許可を受ければできることになっておる。しかし、もはや、こういうふうになりますというと、適用除外なりあるいは自家保障制度というのは、法のもとで平等であるべき制度が悪用されるきらいがある。巷間伝えられるところによりますれば、自家保障の会社等では、専任の事故係を置いて、示談に手間を取らせる、あるいは、値切るといっては語弊がありますが、会社の負担を極力軽くしょうということで、被害者の立場にはなかなか立って解決されない面もある、かように聞いております。そういうことを考えますれば、やはりこの自賠責一本の制度の中で被害者救済対策はやるべきだろうと思うのです。これが第二点。  第三点として、訴訟を起こしたり、あるいは、この制度自体も国民大衆の中にはあまり徹底していない。だからこの制度を、もっと国民の中に啓蒙する必要もある。さらには、訴訟費用の立てかえ、あるいは被害者の生活更正資金、こういうもののために、この自賠責の一部の金を基金にして、これらの被害者の立場に立つ救済事業を行なっていってはどうか、こういうふうに考えますが、いかがでしょう。
  358. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 まず、最後にお尋ねの被害者救済基金を設けるということは同感でありまして、これはもうすでに部分的に実施いたしております。昭和四十二年度より事故相談事業、法律扶助事業、救急医療機関等への補助をやっております。今年度はさらにこれは六千万円にふやしまして、遺漏なきを期しておりますが、きめこまやかにこれが現実に被害者に及ぶように、さらに注意してまいりたいと思います。  第二に、自賠責の金額を引き上げる件でございますが、お説は私も同感な点がございます。ところが、昨年八月一日に百五十万を三百万に引き上げたばかりでございまして、またそれをすぐ動かすのはどうかという気がいたしておるのであります。しかし、最近、裁判所の判例を見ますと、損害として千五百万円とか二千万円払うというのが相当出てまいりまして、また飛行機の事故等におきましても、六百万円払うというのが相場になってきておるようであります。そういう点を見ますと、自動車の場合も金額を引き上げるのは時間の問題のようにも思います。一方においては、しかし保険料の問題もございますので、もう少し検討を加えまして、御趣旨に沿う方向に善処してまいりたいと思います。  それから、自家保障制度の問題、適用除外の問題でございますが、自家保障制度をやっておりますのは相当堅実な、資力のある企業でございまして、現在は約二百両以上の車両を持っているもの、あるいはバスの場合は百両以上の車両を持っているもの約五十八社、六万台であります。それから適用除外は、国とか府県とかあるいは在外公館あるいは駐留軍等、約二十万台ございます。これらは、いずれもわりあいに力がありまして、その保障の金額等を見ますと、保険よりも下回ることがないようであります。そういう点や、あるいは保障能力等を見まして、当分は現状維持でよいのではないかと考えております。
  359. 久保三郎

    ○久保委員 時間もございませんが、この自家保障というのは、先ほど申し上げたように、専門の事故係がおりまして、かなり被害者にとっては手ごわい相手でありまして、これはやはり適用除外、自家保障制度というものはやめていくのが一番いいと私は考えております。  それからもう一つは、任意保険の問題が、これは大蔵省の所管か知りませんが、任意保険が拒否されるということでありますが、いま、労せずしてといっては語弊があるが、自動車関係で、保険というか、自賠責が一番手っとり早い。しかもこれは収益が上がっております。相当なものです。だから、さっき運輸大臣が御答弁になりましたが、六百万の限度引き上げは、保険料率を目一ぱい上げなくても四割から四割五分ぐらいで私は可能だと思うのです。だから、これは早急に要望にこたえるべきだと思うのです。大体六百万に引き上げれば、九割何分、九十何%は救済できるようにわれわれは見ております。ぜひこれは努力してほしい。  それから、自賠責制度というのは、言うならば再保険を国がしている。あとは保険業あるいは共済組合というか、そういうものでやっているのでありますが、この代理店として保険業あるいは共済組合を使うことはいいとしても、それらに保険なり共済をやらせない。少なくともこれ一つぐらいは、末端まで国家の制度として確立していったほうがよろしいのではないかと私は思っておるわけです。大蔵省の保険部というか、そういうところでは反対があるそうでありますが、少なくとも保険屋に精一ぱいやってもらいたいのは、自賠責の中じゃなくて、自賠責の上に任意保険をやっていく、そういう方向にするためにも、私は、保険業とかあるいは共済組合からその自賠責の制度はとっていく、手数料はお払いして、従来どおりひとつやってもらうということがいいと思うのです。  それからもう一つは、これに関連して、いわゆる損害の査定をする査定事務所、これは御案内のとおり関係保険業者が金を出してそういう事務所をつくって査定をしてもらう。保険の制度からいけば、保険業者そのものが査定をして保険金を払うのでありますが、自賠責そのものは少しく違うのではないか。そういう意味からいっても、そういう制度を改めていくことと、査定事務所の中立性を保持するくふうをこの際はすべきであろう、こういうふうに思います。  さて、労働大臣に一つだけお伺いしたいのでありますが、去年の二月九日、いわゆる二・九通達、運転者に対するところの労働基準、こういう通達を出しているわけです。ところが、これが実際はなかなか守られていない。だから、これを厳守させるためには、処分権があるはずでありますから、これはきびしく取り締まってやらんければ事故はなかなか防げない。さらにもう一つは、自動車の運転者ばかりじゃなく、先般南海電鉄の運転者は、驚くなかれ、毎日超過勤務をしており、時間外勤務をしておる。これでは事故が起こらないほうがふしぎなくらいです。だから、こういうものについても適正な、いわゆる青空天井の三十六条協定というものでなくて、これは十分安全な方途を考えてやるべきだと思うのです。なお、二・九通達が守れないという業者に対しては、運輸大臣のほうからその業態について監査をし、適正な指導と処分をすべきだと思うのです。御答弁いただきたい。
  360. 小川半次

    小川国務大臣 通達の趣旨の励行にはこれからも極力つとめてまいりたいと存じます。  それから、南海電鉄につきましては、おことばにありましたように三六協定が結ばれておりまするので、労働基準法の違反ではございませんが、非常に長い時間の超過勤務が行なわれておるという事実がございます。このことも事故の原因の一つであったに違いない。そこで、あらゆる機会に、大阪を中心として一斉の調査もいたしておりまするし、基準の励行につとめてきておる次第でございます。今後も、さしあたりましては三六協定の適正なあり方について労使双方を指導してまいりたい、このように考えております。
  361. 久保三郎

    ○久保委員 時間がたくさんありませんから、なおその他の事項については別な場所でお尋ねをしたいと思うのです。  次には国鉄の経営の問題であります。これは、佐藤総理も前身は運輸省の経験者でありますから、あまり手前どもからよけいなことを申し上げなくてもおわかりかと思うのであります。現在の国鉄の経営というのは、御承知のように、いわゆる経常経営というか損益勘定が赤字になってきておるということ、第三次長期計画をやる場合には、まだ損益勘定の赤字ということにはならぬ情勢であります。そして、言うならば第三次長期計画の資金二兆九千七百二十億をどう調達するかが問題の大きな焦点でありました。もっともこの長期計画は、政府がこしらえて自分がきめた基本問題懇談会の結論を忠実に実行しないために、従来と何ら変わりのない経営悪化を続けているわけです。  話は前後しましたが、経営の悪化というのを一つの見方をいたしますれば、線別計算というか経営を見ると、黒字線と赤字線に分かれるものがある。最近国鉄は六千キロとか三千キロを撤去したいというような話、最近はまたやや違った構想を打ち出しておられるが、いずれにしても、赤字線、黒字線の区別が出てきている。  それからもう一つは、客貨の分野での見方をすると、これはなかなか原価計算の上で多少問題があると思うのでありますが、一応通俗的な見方からいけば、旅客はいわゆる原価以下である、貨物は原価をオーバーしているというふうなのが今日の国鉄の経営。だから、これの対策を考えないでいろいろなことを考えても、もちろんこれはまあ全部だめだとは言いませんけれども基本的には再建はできない。  一つは赤字線の問題でありますが、赤字線区のとらえ方にも問題がありますが、一応国鉄当局が言っているような形での赤字線、これは赤字であるからみんな撤去するとかやめてしまえということでは、これは政治じゃありません。それは小学校の子供の算数の公式論であります。この財産というものを有効適切にこれは働かせるということをまず第一に考えねばならぬ。  しかもこの赤字であるという原因は何であるか。言うならば、国鉄がその分野において独占的なものでなくなったということ、そこで対抗的な輸送機関が入ってきて赤字線になってくる。いわゆる競争の結果、競争に負けているということであります。でありますから、これは国家経済、国民経済の観点から言うならば、特に路面交通である自動車との関係、こういうものを総合的に輸送分野を確立するということが一つであります。そうして、あるところの輸送力を十分に生かしていくということ。だから国鉄が言うように、そういう分野の調整を抜きにして、赤字線を運営するというからには、国家でこれを補償するかいなかの問題になってくる。それでも、調整をしてもなおかつ赤字のものも出ましょう。その場合に、その存在を有効適切にするためには、その地域を含めて地域開発を考えていくということ、さらにそれでもだめなものについては、最終的に、これはどうあるべきか検討を要する、こういうふうな順序かと私は思う。  さらに、貨物の問題でもそのとおりであります。これはトラック輸送、さらには内航海運との見合いにおいて総合交通政策を樹立して、それぞれのシェアを確立しない限りは、国鉄は生きていけないだろうと思う。運輸大臣も御存じかと思うのでありますが、去年の十一月イギリスでは鉄道新政策なるものを議会に出しております。その中では、いま私が申し上げたような道路交通、トラックとの調整を貨物輸送の面で考えていかねばならぬというのが大きな柱の一つになっている。西ドイツは、すでに御案内のとおり、その調整を実施しようとしています。もちろん国情やその輸送の中身も違いますから、直ちにこれをもってきてどうこうの問題ではありませんが、やはり一つの問題を解決する方法としてそういう方法が必要だと私は思っています。  そういうことについて、これはまず第一に国鉄当局からお話を聞いたほうがいいと思う。時間もございませんから、総裁おいでのようでありますから、恐縮でありますが、結論だけお述べをいただければけっこうであります。
  362. 石田禮助

    ○石田説明員 お答えいたします。  御承知のとおり、国鉄二万千キロのうちで黒字線が約二千五、六百キロ、あとはすべて赤字線になっておるのであります。しかし、この赤字線のうちにも、幹線に対して培養効果をなしておるローカル線があるのでありまして、この千四百億の損すべてこれが赤字線の損というわけにはいかぬ。でありまするが、大勢から申しまして、赤字線というものは、もとプラスだったやつが赤字になったのもありまするが、建設するときから、これは地方開発のために犠牲を覚悟してやったものでありまして、いまの大勢から申しますと、赤字線というものの損は、私はふえればとて減らぬと思う。ということは、大体、赤字線のある地方というものは、人口が減り、そして貨物がふえるということは非常に少ない。そこへ持ってきて、経費というものは、人件費の増を主として非常にふえておる。プラスは減りマイナスはふえる、こういうことなので、これは今後の国鉄問題としては相当に重大な問題だろうと私は思う。とりあえず国鉄といたしましては、この赤字というものをできるだけひとつ少なくしよう、こういうことで、さっき久保さんが申しましたような、地域開発なんということは国鉄の仕事ではありません。とにかく、経費をひとつ減らそうということで、無人駅の非常に乗客数の少ないところにありましては、いわゆるCTCというものでやって、そして駅員の数を減らして、経費減でもってひとつ何とか合理化していきたいということでありまするが、しかし、どうしてもいけないものが私は相当にあると思っておる。これをどうするかということが問題でありまするが、この問題はすこぶるデリケートな問題で、私あんまりはっきり言うわけにはいかぬ。ですが、さっき久保さんの申されましたように、撤去ということは私は問題にならぬと思う。とにかく、一たん引いた以上は、たとえそれがはなはだ赤ばかり出して変な線であるといっても、地方の人たちというものは、相当これを利用しておるのでありますからして、これを赤字の解決をするために撤去ということにいくには、よほどの場合です。これは例外です。大体において、とにかくこれにかわる経済的の交通機関をもってして鉄道を取る、こういうことだろうと私は思います。ということで、この赤字の問題というものにつきましては、とりあえずわれわれとしては、できるだけ経費を少なくして、何とか継続していきたい、こういうように考えております。
  363. 久保三郎

    ○久保委員 私は赤字線を撤去せいとは言ってない。活用するべきだ、そのためのくふうをしなさいというのです。ところが、いろんな不合理がございます。せめて不合理ぐらいは片づけなければいかぬ。赤字線がたくさんあるのに、その赤字線があるところの地方自治体に百二十八億も出さねばならぬ。もちろん地方自治体に対してその財源を取りっぱなしというようなやり方は成功するはずがありませんよ。地方税制の問題と国鉄経営の問題は切り離して考えなければいかぬ。そういうものをおいて、利子補給でありますか五十四億、これは中曽根大臣が最後に取ったというか、要求して持ってきたそうでありますが、それはけっこうであります。けっこうでありますが、利子補給では残念ながら当年度であることしはいいが、後年度の荷やっかいものになるわけです、借り入れ金の増加は。だからそういう問題も含めて解決をしていかなければならぬ。それからもっと悪いのは、赤字線をどんどん建設するために国鉄は七十五億も出資しているわけですね。片方で五十四億の利子補給をもらっても、七十五億で今度は赤字線をやっている。われわれは鉄道建設公団ができるときに反対した。反対しただけではなくて、われわれのほうからも一つの方策を出してきました。われわれが思ったのは、少なくとも十線なら十線、経済的に見ても日本全体から見ても建設すべきものがあったはずです。いまでもあるはずです。これを早急に建設するというのが考えられたことであります。ところがずっと公団ができてからも旧態依然たるものだ。国有鉄道が新線建設をやってきたときと違う点は、いわゆる七十五億のほかに財投をもらってやっておる、あるいは利用債をもらってやっておる。ところが国鉄は従来どおり七十五億を赤字線のほうに、不採算線ができるところにのみ出しておる。政府の出資もそのとおり、そして採算のとれるところにはいわゆる財投と地元利用債でこれをまかなっている、これは矛盾じゃないか。私は新線建設も赤字だから全部やめろとは言わぬ。だけれども、あるその線をどうしようかという問題がいま当面の問題ならば、少なくともそういう線については、他の輸送機関で間に合うものはそれでやっていく。ある線はトンネルまで掘ってそれで舗装をして自動車を通して自動車にしようとした。ところが途中からその先今度はまた鉄道建設で金をつぎ込んでやっている。そういうケースもございます。ばかばかしい話だ。一貫した理念がなくてどうして国鉄が再建できるのだろうか。これはひとつ考えてもらいたい。運輸大臣いかがでしょう。  時間がございませんのでもう一つ申し上げておきますが、いま定期運賃の値上げでまあ三百億、今度の値上げは国民生活感情からいけば単なる波及、いわゆる物価上昇をゆり動かすというそういうもの以前に定期券そのものの、生活にずしっと重みがくるような値上げになっていることは御案内のとおりであります。もちろん運賃制度全体について見まするならば問題もあります。しかしながら、この際ああいうずっしりした上げ方がはたしていいのかどうかというと、たいへんな疑問があります。だから運賃値上げについても、しかも最近の、これから考えるそうでありますが、運賃制度全体をというのでありますから、全体の前に貨物の運賃についてわれわれは考えねばならぬ。ところが貨物の運賃については一指も触れないでいる。そこに問題がある。これはもちろん貨物の津賃を上げれば、鉄道からトラックあるいは内航海運に流れていく、だから現場の諸君はいまこれをどうして集めるかというために苦労していることも事実であります。しかしこれは正しい姿ではございません。だからそういうのを総合政策できめていかなければならぬというのです。私の考えじゃありませんが、ある人の批評を聞いてみますと、佐藤内閣というのは総合政策をやるのにはだめだ、総合政策はできないのだと、私もまあ疑問に思うのですがね。しかし見てみれば総合政策一つもないんですね。佐藤総理を前に置いてたいへん恐縮でありますが、一つ一つ政策はあるかもしれませんが、総合政策がない。たとえば物価一つをとってもないでしょう。片方で物価を上げません、上げませんといっているのが汽車賃は上がっちゃうのですね。酒もたばこも上がっちゃう。そういうことも私は国民の一人として言いたいのですよ。  もう一つ申し上げたいのは、さっき総裁からもお話がありましたが人件費の問題です。経費の中で占める人件費は比重はだんだん下がってきています。これはあなたのところで出している監査報告を見ますとよくわかると思う。しかし上がっているものは何かというと、いわゆる利子、あるいは減価償却費がどんどん上がっています。この問題をやっぱり解決することが先でありますが、われわれも近代化や合理化には正しい意味で賛成であります。そうですよ。ところが国鉄というのは、たとえば機関車乗務員一つとっても、総理、御存じのように、機関士と助士、明治五年からこれはっき合っているのです。これは話し合いができないままに強行することについて、機関士なり運転士が不安に思うのは私は当然だと思うし、そういう不安に思うことが国鉄職員の最後に残っておるモラルみたいに考えているのです。そういうふうに考えております。安全第一。  それからもう一つは、保線の仕事一つとっても、昔、夜中に雨が降れば、いまは線路工手というかどうかわかりませんが、だれの連絡がなくても起きていってカンテラ一つさげてその土砂くずれを防いだ。終戦のときに動いていたのは国鉄だけなのだ。ほかのものはみんな動かぬ。それは何によってささえられたかというと、そういうものだと私は思うのです。しかし近代化、合理化をはばんでいるものがあるとすれば、これは取り除かなければいかぬ。しかしそれには長い努力とやはり話し合いが必要だと私は思うのです。しかも長い百年近くの経験、それから技術、そういうものも今度は線路の仕事は外注するというのでしょう。人件費というか、表面上では国鉄予算の人件費は減るのかもしれない。しかし全体の労働頭数は減らないのですよ、外注するとか下請は。安くいくかといったら、これは独占でありますから競争入札で線路を直すことはできませんよ、そうでしょう。そうすればある特定の会社がどこの線区は直すということになる。そうなるとこれはどんどん値段が上がっていく、経営の上で必ずしも私はプラスだとは考えません。しかしそういう問題もすべて含めてこの問題を考えなければならぬ。それを考えずして合理化、近代化だけをやることについては、これは問題がある。それについてひとつ答弁をそれぞれお願いしたい。
  364. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私も鉄道の出身ですし、また久保君も鉄道の御出身、また多数の委員の方も鉄道の出身だ。ただいま久保君が鉄道についてのいろいろな御意見を述べられた。きょうは全部それらの方も関係者集まっていらっしゃる。まだ二、三いらっしゃらないようですが、しかし私はこの機会に申し上げますが、私の持っている知識は実は古いのです。実はもうたいへん古い知識です。先ほどここで総裁が出てきて最近の話についてされました。私もその一部わからないことはない。また、いま久保君の言われるような合理化、これもわからないわけでもない。先ほどの話を聞いていてたいへん合理化に賛成していただける。これはおそらく抽象的なものではあるが、おそらく国鉄の現管理者、それとも話し合いができるかな、かように思っていたのですが、どうもその合理化の進行方法ではそれぞれの立場においてそれぞれの御意見があるようです。なかなかむずかしい問題があるようです。私は古い私の知識をこの際に振り回そうとは思いません。  そこで大事なことは、とにかくただいま鉄道が非常な困難な状態に立ち至っておること、これはすべてが認めるところだと思います。それが新線の建設だろうが、また今日の営業であろうが、とにかく非常に困った立場だ、それも客貨両面において同一のことが言える。ただ単に運賃制度だけで問題が解決する、こういうものではないと思います。また、ただ単に人件費だけで解決するものではない。どうも佐藤内閣は総合政策がまずい、こういうことを言われましたが、この鉄道こそ、鉄道を立て直しをするためにはやはり総合対策を立てなければならない。各面からこれに解決のメスを入れて、そうしてりっぱな鉄道に建て直す。私ども政府も、そういう意味でこれにあらゆる検討を加えるつもりでございます。またそういう意味で、今回の定期の運賃を上げるということも実は決定したのであります。その他利子もまた資金の獲得等もしております。皆さん方もそれぞれの立場において名案を持っていらっしゃると思いますから、どうかひとつ出し惜しみをしないで名案を現管理者にも授けてやっていただきたいと思います。お願いいたします。
  365. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 専門家の久保さんの御意見は非常に傾聴いたしました。  赤字線建設抑制は、私も同感であります。  それから、合理化の問題は、実際電修場やその他で配転をやられる人たちの身を思いますと、身を切られるような思いがすると思いまして、同情にたえません。しかし、これらの点は労使の団交中の問題でございまして、お客さんに迷惑をかけないように、円満にすみやかに話し合いを進めていただきたいと思っております。  それから、定期値上げ及び財政問題につきましては御指摘のとおりでございまして、やはり国鉄の問題は、一つは人件費もございますし、それから利子負担の増高もございますし、運賃収入の伸び悩みもございますし、過度の公共負担もございますし、いろんな要素がございます。これらの点に一つ一つメスを入れまして、総合的に解決するように今後とも努力してまいりたいと思っております。
  366. 久保三郎

    ○久保委員 一言最後に、もうこれで終わります。終わりますが、たとえば合理化で、私はこの間大井工場に参りました。そうしたら、モーターの巻きかえをやっておる職員がいました。君はどこから来たと言ったら、大井の被服工場が廃止になって、それで三年前に来て、やっと一人前になりました。今度はそのモーターの巻きかえをする職場がいわゆる外注、下請ということになり、しかも二十年から二十五年ぐらい、こういう諸君を考えると、なるほど合理化、近代化は賛成だと一言に言っても割り切れないものが出てくることは、これは当然なんです。だから、そういうものを十分考えて、段階的に話し合いをしながらやっていくことがやはり国民の期待にこたえるゆえんだろうと私は思うのです。しかも大蔵大臣その他に申し上げたいのは、国鉄は労使ともそういう血のにじむような努力をしながらいまやっておるわけです。なかなかこれはうまくいっていない。先ほど来お話があった。幸い佐藤総理は、総合政策だってできるんだとこうおっしゃいました。私もできると思うのですよ。だからぜひ意欲を持って、この問題に取っ組まれて、中曽根運輸大臣はお若いし、やる気十分のようでありますから、ぜひこの問題は片をつけてほしい、こういうふうに要望して終わります。(拍手)
  367. 井出一太郎

    ○井出委員長 これにて久保君の質疑は終了いたしました。  次回は、明三月二日午前十時より委員会を開会し、総括質疑を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時三十四分散会