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1968-02-29 第58回国会 衆議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年二月二十九日(木曜日)    午前十一時三十六分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 小川 半次君 理事 北澤 直吉君    理事 正示啓次郎君 理事 二階堂 進君    理事 藤枝 泉介君 理事 加藤 清二君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 広沢 直樹君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    上村千一郎君       植木庚子郎君    小沢 辰男君       上林山榮吉君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    坂田 英一君       鈴木 善幸君    田中 正巳君       登坂重次郎君    中野 四郎君       野田 卯一君    野原 正勝君       福田  一君    船田  中君       松浦周太郎君    松澤 雄藏君       松野 頼三君    森山 欽司君       山崎  巖君    大原  亨君       川崎 寛治君    北山 愛郎君       久保 三郎君    阪上安太郎君       田中 武夫君    楢崎弥之助君       畑   和君    森本  靖君       山内  広君    山中 吾郎君       横山 利秋君    麻生 良方君       中村 時雄君    浅井 美幸君       正木 良明君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 赤間 文三君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 園田  直君         農 林 大 臣 西村 直己君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 中曽根康弘君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 小川 平二君         建 設 大 臣 保利  茂君         自 治 大 臣         (国家公安委員         長)      赤澤 正道君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田中 龍夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増田甲子七君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      鍋島 直紹君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制次長  吉國 一郎君         総理府特別地域         連絡局長    山野 幸吉君         警察庁長官   新井  裕君         警察庁長官官房         長       浅沼清太郎君         警察庁警備局長 川島 広守君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁教育局長 中井 亮一君         防衛庁人事局長 麻生  茂君         防衛庁経理局長 佐々木達夫君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛庁参事官  鈴木  昇君         防衛施設庁長官 山上 信重君         防衛施設庁総務         部長      財満  功君         防衛施設庁施設         部長      鐘江 士郎君         科学技術庁原子         力局長     藤波 恒雄君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省入国管理         局長      中川  進君         公安調査庁次長 長谷 多郎君         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省条約局長 佐藤 正二君         外務省国際連合         局長      重光  晶君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         厚生省環境衛生         局長      松尾 正雄君         厚生省薬務局長 坂元貞一郎君         農林大臣官房長 桧垣徳太郎君         水産庁長官   久宗  高君         通商産業省鉱山         局長      両角 良彦君         運輸省航空局長 澤  雄次君         海上保安庁長官 亀山 信郎君         自治省選挙局長 降矢 敬義君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月二十九日  委員竹本孫一君及び塚本三郎君辞任につき、そ  の補欠として麻生良方君及び中村時雄君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十三年度一般会計予算  昭和四十三年度特別会計予算  昭和四十三年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 井出一太郎

    ○井出委員長 これより会議を開きます。  昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算昭和四十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。  楢崎弥之助君の質疑を続行いたします。楢崎君。
  3. 楢崎弥之助

    楢崎委員 昨日来審議が中断されましたことは、私自身もたいへん遺憾であります。同僚皆さんにも御迷惑をおかけいたしました。  しかし私が残念に思いますことは、われわれは国の重大な四十三年度予算審議する責任を持っておりますが、その予算基礎となるものについて、大蔵省の役人やあるいは兵器を生産するメーカー等はこれを知っていながら、肝心な予算審議するわれわれにはマル秘事項がある、これを私は非常に残念に思ったわけであります。しかし、本日、理事会において増田防衛庁長官からいただきましたこの資料なるものは、非常に簡単なものでありまして、おそらく同僚皆さん方も、お手元に本日渡されました資料で何を審議したらいいのかおわかりにはならないと思うほど、まことにずさんなものであります。しかし私は、理事会の御決定により、私が持っております資料に対比しながら、審議を続行したいと存じます。  そこで、これは直ちにとは申しませんが、本予算委員会が終わるまでの間に、三次防五年間にわたる予算国防会議によって二兆三千四百億、上下二百五十億、そのような決定を見ておりますが、その二兆三千四百億に基づいて大蔵省は各年度の五年間の予算を出していかれるわけでございますから、当然二兆三千四百億の基礎というものは、国防会議から提出されておるはずであります。したがって、当委員会が終了するまでに、二兆三千四百億の各年度の、大蔵省が考えておられます防衛費資料として提出をいただきたい、そのようにお願いをいたします。  そこで……(「答弁答弁」と呼ぶ者あり)いまの点、確認をいたしたいと思いますが、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  4. 水田三喜男

    水田国務大臣 全体計画査定はいたしましたが、この各年度予算というものはできておりません。その年度年度で根幹をくずさないような予算の編成をやっておりまして、昭和四十四年度幾ら、四十五年度幾らというような査定はやっておりません。
  5. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは国防会議議長である佐藤総理にお伺いをいたしますが、二兆三千四百億という三次防の予算総額決定されたわけであります。その二兆三千四百億の基礎となった材料があるはずであります。それはございますか。
  6. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 ただいま大蔵大臣お答えいたしましたように、おそらく大蔵省で折衝したそのことを、いま基礎になる数字じゃないか、かようなお尋ねかと思います。私どもは、いま問題にしておりますのは、決定されました二兆三千四百億、さように考えております。
  7. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは大蔵大臣にお伺いをいたしますが、二兆三千四百億というのは、ただ漫然と、その基礎数字なしに、あるいは基礎材料なしにおきめになったのでありましょうか。
  8. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは計画全貌査定してきめた数字でございます。
  9. 楢崎弥之助

    楢崎委員 だから私は、二兆三千四百億の基礎にした計画全貌資料としてお出し願いたい、こういうことを申し上げておるのです。
  10. 水田三喜男

    水田国務大臣 きのうから申しておりますように、財政当局防衛庁から提出された要求査定してその金額をきめるということはやっておりますが、その基礎になっておる資料を公表していいのか悪いのかということは防衛庁がきめることになっておりますので、それによって私どものほうは提出できるかできないか、これは防衛庁意見によってそういうふうにしたいと思います。
  11. 楢崎弥之助

    楢崎委員 昨日と同じようになったわけでございますが、それでは佐藤総理が求められております自主防衛力の増強、それの基礎になる第三次防衛計画について、あなたは国民的な合意を求められておりますが、その内容国民の代表たるわれわれは審議できないのでありましょうか。審議材料を出さない、それで審議せよとおっしゃるのでしょうか、国防会議議長としての佐藤総理の御意見をお伺いします。
  12. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 私は、いま楢崎君の言われることはどういうことかちょっとわかりかねますが、私は、国力国情に応じて予算を編成し、その予算皆さん方に御審議をいただいて、そうして二兆三千四百億、この第三次防計画、これができ上がったと、かように理解しております。ただいま言われますように、これを審議するためには、すべての最初の構想から何から全部出せ、そうせなければ審議できないとおっしゃるのは、私にはどうもわからない。私は、むしろ、いま言っているように、この二兆三千四百億をもうすでに決定された、そのときに一体どういうような御審議をなさったか、その材料で十分であったんじゃないか、かように私は思っております。いまおっしゃることは、もっとその原案の査定ができるまでの関係資料を出せ、こう言われることはややどうでしょうか。私は、ただいま言われますように、大体の国力国情に応じて予算をつくっておるし、また防衛計画もそういう意味でつくっております。その点では、私は、十分皆さんの御審議をいただいた、かように思っております。
  13. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私はかつて、公債発行問題に関連して、これが軍事費に流用されるのではなかろうか、その証拠には、なくなられました池田さんが大蔵大臣のときに、二十五年でございましたか六年でございましたか、財政法改正に関連をして継続費の問題が論議になりました。御承知のとおり、継続費は、改正理由にありますとおり、公共事業土木、そういった多年度費用を要する事業についてここに継続費というものを置かなくてはいけない、こういう理由でありました。しかしわが党の先輩諸士は、この継続費公共事業とか土木費とか言うけれども、やがて軍事費に使われるんではなかろうか、昭和二十年代ですから。それを追及しましたが、当時の池田さんは、いや継続費は軍艦なんかには使いませんとおっしゃったんです。ところがどうですか。いま継続費が計上されておるのは防衛庁だけですよ。ほかには各省継続費はありません。国庫債務負担行為に至っては、これまた防衛庁がほとんどであります。そのときにあなた方は、継続費なり国庫債務負担行為自衛隊装備を入れるのはなぜかというと、これは多年度にわたるから債務負担行為あるいは継続費にするんだとおっしゃいました。それほどこの装備という問題は多年を要する内容であります。したがって、単年度年度でそれを審議しても、これは近視眼的な見方しかできません。だからこそあなた方は防衛計画について五年という期間を策定しておられるではありませんか。そうして、そのためにいろんな装備材料を想定をして二兆三千四百億、こういう金額を組まれたわけであります。だから、われわれはもちろん毎年毎年出されてきました防衛費の検討をすると同時に、これが積み重なって全体的に姿をなすところの三次防計画とはどういうものかというものを同時に頭に描きながら、その各年出てまいる予算を検討せざるを得ません。したがって、三次防の二兆三千四百億というこの費用は一体どういう内容なのか、それをはじかれた基礎となる資料を、いまとは申しませんが、この予算委員会が開かれておる間にひとつお出し願いたいと、こういうことを言っておるのであります。  総理は——少し私の説明が足らなかったかもしれませんが、そういう気持ちであります。それはだめだとはまさかおっしゃられないと思うのです。
  14. 水田三喜男

    水田国務大臣 さっきお答えしましたように、たとえばこの五カ年計画では、航空機を何機あるいは対空兵器をどうする、艦船をどうするという、五カ年間にこれだけの装備をしたいという計画めどがございます。このめどが二兆三千四百億ということでございまして、このめどをきめるに至った資料というものは当然政府は持っておりますが、これが、さっき申しましたように、どれが公表していいか悪いかという決定防衛庁でございますので、御相談いたしまして、出せる範囲のものはお出しいたします。
  15. 楢崎弥之助

    楢崎委員 その御相談はいますぐそこではできないのですか。時間を要するわけですか、出すか出さないかは。どの部分がマル秘で出せないかという相談は別としてですよ。
  16. 増田甲子七

    増田国務大臣 大蔵省それから国防会議議長に御質問でございますから私は控えておりましたが、あの五カ年計画の大綱というものが一昨年の十一月二十九日に決定されております。それに基づく主要項目というのが昨年の三月十四日の閣議決定できまっております。その前の日は国防会議でございました。それに対する経費というものがまたきまっております。その経費はおおむね二兆三千四百億円をめどとし、上下幅二百五十億円とするという総理の裁断できまったわけでございまして、これは五カ年計画であることは御説のとおりでございます。  そこで、両大臣相談をいたしまして、差しつかえない限り予算審議のための参考資料として提出いたします。
  17. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ありがとうございました。ただし、私は、昨日来要求しております資料がこのような形で、大事なところだけは、まさに国民が知りたいと思っておる一番肝心なところだけは抜けて出されるような、こういうマル秘扱いの問題について私が了解をして審議を進めると思われたら、それは間違いであります。そのマル秘扱い、われわれの予算審議をコントロールするような、制限するようなそのような扱いについては別途の問題として、これははっきりさせたいと思います。だから、それは納得し、賛成した上で進めるわけではございませんから、念のためにまずそれを申し上げておきます。  そこで、お出しになりましたこの資料でございますが、この資料は——簡単に問題点に入るために結論だけ申し上げますと、私が国民の前に明らかにしたい一番肝心な点が抜けております。そうしてこの資料の一番最後に出されております経費計画の概要四百八十九億、このうち一番上から申し上げますと、技術研究開発項目費試験研究費及び開発試験費研究用機械器具費、この三点の中にはんとの計画よりも意識的に抜けられておる項目があるし、それに伴う金額も正確に抜けてここに出されております。その作業をするために、あなた方は昨日、お気の毒ですが、徹夜をされました。そういうことをしないならば、すぐ出せたはずのものであります。金額も、ちゃんと抜けておる金額も、本来の計画案と完全に一致しております。  そこで、私が持っております資料によりますと、このいま申しました上から三番目までの費用総額、すなわち、技術研究開発項目費三百三十二億、試験研究費及び開発試験費五十億、研究用機械器具費二十二億、合計四百四億円になっておりますが、私の持っておる資料では、それは合計四百八億になっております。四百八億とあなた方が出された資料の四百四億と、なぜ四億の差が出てきておるか。この四億の分が実は私が昨日来国民の前に明らかにしたい兵器研究内容であります。以下私は審議を通じてそれを明確にいたします。  増田長官は先刻の理事会におきまして、本資料に載っていない分については質疑を通じて明らかにできるものは明らかにしたい、そういうお答えをいただきましたから、以下私は内容についてただしてまいりたいと存じます。  まずミサイル関係でありますが、短距離SAMつまり地対空であります。このSAMとは一体どういうものでございますか。
  18. 増田甲子七

    増田国務大臣 事務当局をしてお答え申し上げさせます。
  19. 蒲谷友芳

    蒲谷政府委員 ただいまの御指摘SAMでございますけれども、大体一万メートルぐらいの射程を考えました地対空ミサイルを考えてまいりました。現在実はホークナイキの導入もございまして、その技術も入ってまいりますので、その技術等を勘案しまして今後も検討したいということで、四十三年度予算ではむしろその関係予算を控えまして、ホークナイキ勉強のほうに重点を置きたいということで考えております。大体一万メートルぐらいの射程を考えました地対空ミサイルでございます。
  20. 楢崎弥之助

    楢崎委員 防衛庁は四次防の中で、ホークハーキュリーズ大隊以外に新しくSAM大隊を新設される考えがあるのではないですか。
  21. 増田甲子七

    増田国務大臣 お答え申し上げます。  地対空ミサイル研究はいたしておりまするが、ホークナイキ研究が主でございまして、ことにナイキ非核用のものにするために一生懸命研究するわけでございまして、SAM部隊を置こうとする意思はございません。
  22. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは長官お尋ねをしますが、このSAMはいつごろから試験に着手をして、そして、いっこの試作を終わっておられますか。
  23. 増田甲子七

    増田国務大臣 事務当局をして答弁せしめます。
  24. 蒲谷友芳

    蒲谷政府委員 ただいま基礎研究をしようという段階でございまして、現実のものはございませんし、そういう計画になってございません。
  25. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これは一応研究開発を終わって、三十八年に新島試射をしておるのではありませんか。そういう事実がありましょう。長官はこういう事実を御存じないのですか。あなたは、新設する予定もないし、研究しておるだけだとおっしゃいましたが、そういう答弁をなさっちゃいけませんよ。あなたは事実を御存じないのですか。
  26. 増田甲子七

    増田国務大臣 研究しておるという事実は知っておりまするが、部隊を設けるということは三次防の中には全然ないのでございます。  それから、SAMといえばホークSAMですし、ナイキハーキュリーズSAMでございます。
  27. 楢崎弥之助

    楢崎委員 長官、あなたはさっき局長が言ったことを聞かれておりましたか。あなたはそういうことを言っちゃいけませんよ。あなたはいつも要らぬことを言うのですよ。いいですか。局長は何と言いました。私は、このSAM−Dというものは、おそらくいまアメリカ開発間近にあるSAM−Dではなかろうか、SAM−Dを目ざしたものではなかろうかと思うのです。それはアメリカでは一九七〇年までに開発を完了する、七三年に実戦配備をねらっておるこれはミサイルであります。そして、いま一部局長が言われましたように、このシステムが他のABM、問題のABMシステムと異なる点は、SAM−Dの場合は四つあるのです。一つは、戦術用弾道ミサイル低空侵入有人機の双方に対応できる。第二は、核、非核両弾頭の切りかえが可能。第三に、数目標に同時に対処できるほど精巧である。しかも軌道がたいへん容易である。つまり、ナイキハーキュリーズホークミサイルにかわって、一つシステムで高空と低空、防空の役を果たす。そして、射程距離は一万メートルとおっしゃいました。違うのです。ナイキホークと違うのです。それをあなたは何でナイキSAMです、ホークSAMです、そういうことをなぜ言うのですか。そんなことは知っておりますよ。いま私が問題にしておるSAMは、局長お答えになっておるSAMですよ。わかりましたか。時間を浪費しないようにしてください。
  28. 増田甲子七

    増田国務大臣 そこでSAMということは、おわかりでございまするが、楢崎さん御指摘SAM装備局長の答えたSAM、これは研究過程でございまして、部隊を設けんとする意思はないのでございまするし、三次防にも入っておりません。
  29. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたは一番最後に何とおっしゃいましたか。三次防に入っていないという意味はどういう意味ですか。三次防に部隊をつくる意思はない、それは知っていますよ。そうではなしに、三次防で試験研究をしておる、こういう意味なら三次防に入っておるのですよ、三次防の計画の中に。そういう誤解のあることを言わないでください。どうですかいまの点は。
  30. 増田甲子七

    増田国務大臣 三次防に部隊を設置せんとする項目は入っていないのでございます。
  31. 蒲谷友芳

    蒲谷政府委員 お答えします。  いまのSAM関係研究につきましては、四十一年度から開発研究に着手しまして、予算としましては四十一年度に三千六百万円つけました。ただ先生のおっしゃいました試射という問題につきましては、このSAMではなしに、基礎的なものとしまして、実験はしたことはございますが、SAMとしましての開発を考えましたのは四十一年から入っております。
  32. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私が聞いておるのは、私はでたらめを言っていないのです。三十八年に試射をやったのです。それは全部完成したものではありません。新島試射をやっているのです。そうして現在はホーミングの装置を研究中であるはずです。間違いありませんか。
  33. 蒲谷友芳

    蒲谷政府委員 どうも失礼いたしました。そのとおりでございます。
  34. 楢崎弥之助

    楢崎委員 では私が言ったとおりではありませんか。そういうことははっきりされたがいいのです。何も隠す必要はないのです。私は新島にも行ってまいっておるのです。そういうことを言うことが国民の疑惑を解くことになるのです。  そこで私は次に移ります。  次に、航空自衛隊から要求のあっておりますASM、つまり空対地、これの開発研究を三次防中に行なうことにしておりますか。
  35. 蒲谷友芳

    蒲谷政府委員 所内研究として、いま基礎的な勉強をしつつございます。
  36. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この空対地ASMは、四十四年度委託メーカーにさせて、四十四年度は二千万円です。そして四十五年、四十六年は、これはいよいよ試作することになる。四十五年は二億二千万円、四十六年度は三億五千万円、合計メーカー委託が二千万円、試作費が五億一千万円、そのようになっておりますが、間違いありませんか。
  37. 蒲谷友芳

    蒲谷政府委員 現在では所内研究でございまして、予算はついてございません。先生のおっしゃったのは……。
  38. 楢崎弥之助

    楢崎委員 だから私は四十一年、四十二年、四十三年のことは言っておりませんよ。四十四年から始める……。
  39. 蒲谷友芳

    蒲谷政府委員 そういうことでございます。
  40. 楢崎弥之助

    楢崎委員 では、私の資料は正確であります。  この計画を言いますと、四十七年、試作、いま申しました四十六年と同じく五億一千万円、四十八年が試作、四億七千万円、四十九年が技術試験段階、五十年に実用試験段階に入る、こういうことであります。一体いま空対地の代表的な兵器は何でありますか。二つぐらいあげてください。長官にお伺いします。あなたはたいへんよく何でも知っておられますから。あなたはさっき私に答えるとおっしゃったではありませんか、何でも言えることは。言えないならいいんですよ。
  41. 増田甲子七

    増田国務大臣 空対地といえば、たぶん航空機からのものと思いますが、航空機からのものは機関銃もございますし、それからF86Fは爆弾投下の練習もしておることは昨年石橋委員お答えしたとおりでございます。そのあとのことは政府委員をして補足答弁させます。これが空対地でございます。
  42. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 お答え申し上げます。  私どもの承知している限りにおきましては、代表的なものは、アメリカ航空機に搭載可能でありますところのブルパップ、これがあげられると思います。
  43. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたは詳しいんでしょうが。アメリカの飛行機に搭載可能のブルパップなんと言っちゃいけませんよ。エンタープライズの入港の問題のときに、積んでおる飛行機の核問題を論じたときに、ブルパップというのは問題になったではありませんか。アメリカの飛行機に搭載可能のブルパップ、何を言うんですか。現に搭載しておるじゃありませんか。そのアメリカの飛行機の名前を言ってごらんなさい。エンタープライズに載っておった……。
  44. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 アメリカ航空機でブルパップを搭載できるものとしましては、スカイホーク、イントルーダーあるいはファントム、こういう各種の飛行機がございます。
  45. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ブルパップは、いまアメリカの第一線機についておる代表的な空対地ミサイルであります。性能は、御存じのとおり、全長が約十・五フィート、マッハ一・八、射程七マイル、対地攻撃用、核、非核両用になっております。このブルパップ・クラスのものをあなた方は考えておられるのでしょう。おそらく私はそうであろうと思います。
  46. 増田甲子七

    増田国務大臣 他の委員会においてもお答えいたしましたが、防衛庁といたしましては、ブルパップを備えようとする意思は全然ございません。
  47. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、載せるか載せないか、実際に使うか使わないかをいまは聞いておりません。あとで聞きます。試験研究をしておるものについて聞いておるんですよ。
  48. 蒲谷友芳

    蒲谷政府委員 先ほど申し上げましたように、ただいま研究をしております。先生の先ほどの御質問の数字は、四十一年度代の資料数字でございますが、現在の三次防では研究段階でございまして、その点につきまして、先ほど大臣お答えになりましたように、大蔵とのこまかい数字はまだ詰めてございませんでございます。
  49. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたは最初答弁されたことといま変えられましたね。向こうに戻られて島田さんから何か言われたんじゃありませんか。私がこまかく数字をあげて申し上げましたら、そのとおりですとさっきおっしゃいました。これは議事録を見たいと思います。そしていまは不確定の数字、あたりまえです、将来のことですから。しかし計画としてはこうなっておるでしょうがと私は言ったんです。それが大蔵省との結果どうなるかわからぬというぐらい、私もわかっておりますよ。そうでしょうが。そうまぎらわしいごまかしを言ってはいけませんよ。そしてあなたは私の質問に明確に答えていない。ブルパップ・クラスのやつをねらっているんですねと言ったら、あなたは否定しないから、おそらくそうだと思います。そのとおりなんです。そしてこれは四次防で予定をされておりますFXと関係が出てまいります。あなた方が予定をされておるFX、どれだってこれは搭載できるですよ。また搭載しておるでしょう、現在あるものは。そうじやありませんか。
  50. 増田甲子七

    増田国務大臣 FXは、前国会においても申し上げましたが、もっぱらいまの104あるいは86Fよりも迎撃能力が高いということを目標にせっかく選定中でございまして、対地攻撃というようなことはおそらく考えない、われわれは迎撃能力の向上という見地からFXを目下選定中でございます。
  51. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたは答弁をすればするほど自分でわからなくなっておるのではありませんか。F86ですらあなたは爆撃機にしておるのですよ。そうしてさっきSAMと言ったじゃないですか。そういう意味ではF86はSAMを持っております。爆撃機だから、さっきそうあなたは答えたんですよ。それをFX、いまあなた方が考えておられます機種をそれじゃいまあげてごらんなさい。たしか二つ、多くても三つです。二つと私は思いますが、二つぐらいにもう限定されてきておるのですよ。私はその性能をここで言ってもよろしゅうございます。これは戦闘爆撃機なんです。そしてF86よりいま持っておるF104がさらに性能がいい。そしてこのFXは現代の戦争に合った、つまりベトナムでも実戦機として使われておるやつなんです。それが迎撃用でございまして、空対地なんかつけません、そんなことを言ったってあなた通りませんよ。現に研究しておるではありませんか。どうしてそういうことを言うんです。じゃ、つけもしないやつを研究するのだったら、これは予算は削りますよ。何のために研究費を出しておるのですか。あなたのお金じゃないんですよ。国民の税金なんですよ。こんなことはいまさら言いたくありませんが、そうではありませんか。なぜ使う気持ちもないものを研究をわざわざしているのです。それはむだ金です。それはもうお捨てなさい。そうして三次防を全部変更するのだ。修正しなくちゃいけません。どうですか。
  52. 増田甲子七

    増田国務大臣 FXをどんな方針で選定するかということは、もっぱら迎撃能力を高めるという見地から選定するのでございまして、具体的問題について他の委員から種々御質問がございましたけれども、迎撃能力が高まりましてもわれわれは爆撃装置は施しませんということを総理大臣も私もこの機会においてたびたび申し上げておることは、楢崎さん御承知のとおりでございます。爆撃装置を施さない、迎撃能力をいまよりも高いものを選定する。それが具体的にどういうふうに機種がございましょうとも、われわれが国産によって生産せんとするFXはもっぱら迎撃能力、向こうから侵略者が参りまする場合の航空機を撃墜する、こういうことを主眼としてやっておるのでございまして、SAMというようなことは、おそらくSAMでなくてASMじゃないかと思いまするが、そのASMなんというようなことは全然考えの外でございます。ただし、研究はいたしております。
  53. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたはこれから先何年、防衛大臣をされるかわかりませんが——それは佐藤内閣だってわかりませんよ、どのくらい続くか。しかしこれは、先ほどからも申し上げておりますとおり、防衛計画というものは四十六年までで一次、二次、三次とこう進んできておって、当然四十七年から第四次に入るのですよ。将来を展望した計画を立てていくのですよ。そしてそのために、私がこのASM空対地の問題について先ほど申し上げましたとおり、五十年までの計画を現実に持っておるのですよ。そしてそれに基づいて、三次防というものはそれを含んで決定されておるのですよ。あなたはこれを全然つけないと——私は五十年までの計画をさっき言いましたが、つけない、しかし局長は、計画としては持っておりますが、大蔵省と折衝する段階でどうなるかわかりませんとさつきはおっしゃったのですよ。その点でも答弁が食い違っておるし、あなたの考えておられる答弁が正しいならば、つけないものは研究する必要はなしです。三次防の修正をしてください。ごまかしてはいけませんよ。佐藤総理は昨年アメリカに行って以来、お帰りになって、この防衛問題は堂々と考え方を国民の前に明らかにして国民的合意を求める、いわば挑戦をされておるわけです。展望を言ったらどうですか。なぜそんなにごまかすのですか。
  54. 増田甲子七

    増田国務大臣 まず、FXにはブルパップは全然考えていないということを私は申しましたし、三次防においては、ブルパップを部隊化するということはおそらくございません。研究は若干いたしておるということは事実でございますが、その程度でございます。
  55. 楢崎弥之助

    楢崎委員 研究というと、ことばは、ただ設計したりするだけのように聞こえます。そうじゃないのですよ。試作をするのですよ。メーカーにも金を出して頼むのですよ、税金の中から。そういう答弁では困りますよ。だめですよ、そういう答弁では。
  56. 増田甲子七

    増田国務大臣 まず第一に、研究開発関係における昭和四十一年四月の書類というものは、はっきり申しまして二兆六千九百億という要求大蔵省にいたしたことがございます。そのときの基礎書類でございまして、その後はっきり確定いたしましたのは二兆三千四百億プラスマイナス二百五十億でございまして、したがいまして、研究開発計画というものも違ってきておる。でございまするから、数億の相違はございます。  それから、ブルパップはこの三次防中には委託もいたさないということで、所内研究の程度ではないかと思っております。
  57. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そういうことをおっしゃったってだめですよ。もしあなたのようなことであれば、本日出されました四百四億という数字は狂ってくるのですよ。何を言っているんですか。もう一ぺん、それじゃきょう出した資料を変えてきなさい。だから私は正直に全部お出しなさいと言っているんです。これでは時間がかかるだけですよ。きょういただいた資料は、これはまたごまかしということになります。   〔発言する者あり〕
  58. 井出一太郎

    ○井出委員長 御静粛に願います。
  59. 増田甲子七

    増田国務大臣 アメリカがいま使用いたしておりまするブルパップ等をわがほうで備えようとすることはないということは、先ほど申したことを再び確言いたします。  それからわが国におきまして、空対地ミサイル的なものを研究せんとすることはございまするが、所内においてもっぱら研究中でございまして、三次防の最後段階において、委託するかどうかということは、これはまた財政当局、つまり財政経済の関係国力国情に応じて三次防をきめるものとするというこの制約があるわけでございまして、数百万の委託経費ということを考えないわけではございませんけれども、ブルパップという名のつくものではないのでございます。
  60. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたは御年配だからよく耳が聞こえぬのかもしれませんけれども、私はブルパップを備えるかとは言っておりませんよ。ブルパップ・クラスのやつを考えておるのではないかということをさっきから言っておるのです。そうしてさらに、先ほど私が明らかにいたしました委託費二千万円、それから試作費五億一千万円という金は、きょうあなたが出されました資料の四百四億円の中に入っておるのです。もしそれが違うんだったら、この四百四億円を変えてきなさいと私は言っているのです。
  61. 蒲谷友芳

    蒲谷政府委員 本日お出しいたしました資料の中には、いまのASM費用は千八百万円ほど組んでございますけれども、ほかは入っておりませんです。大体所内研究で人頭割りの基礎研究を四十五年まで続ける、それができました段階で、もし可能であればもう少し金をかけたい、今度は項目開発にしたいという考えでおりますけれども、現在は四十五年までは人頭割りの基礎研究をするということで、きょうお出ししました資料の中には、一応予定としましては千八百万ほど組んでございます。
  62. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまになってそういうことを言ってはだめですよ。あなたは、冒頭私が申し上げた数字計画としてはありますけれども、将来の問題ですから、大蔵省と交渉することに確定はいたしておりませんとおっしゃったではありませんか。あなたはいまそういうことを言ったってだめです。もしそれなら、私は出しなさいと言うのです。あなたのきょういただいた四百四億の資料でけっこうだから、これの中身を出しなさい。合わないですよ。空対地費用を千八百万円としてこの中へ計上しておるのだったら、四百四億円にはならないんです。もしなるんだったら、その中身を全部出しなさいと言っているんです。私の言っていることが無理ですか。このASMというのはもう実際にこの中にあるのですよ。隠していないんです。いまから先何が出てくるかわかりませんが、それは別として、いま私が言っているのは現にあるんですよ。
  63. 増田甲子七

    増田国務大臣 お答え申し上げます。  ASM研究はいたしております。しかしながら、昭和四十五年までは予算はないのでございまして、昭和四十六年に数百万あるいは数千万かもしれませんが、その点はまだわからないのでございまして、一応われわれが草案の草案のまた草案というわけで、おそらく資料楢崎さんお持ちでございましょうが、その案では正確を欠くわけでございまして、昭和四十六年の数字のことまで大蔵当局をわれわれは拘束はできない、われわれはただ研究をいたしておる、これだけのことでございまして、予算化をこれこれするのだということを、一省である防衛庁がここで確言することはできない立場ではないか、こう考えております。
  64. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは、本日出された五項目の四百八十九億というお金は、これはいまおっしゃったような意味なんですか。
  65. 蒲谷友芳

    蒲谷政府委員 いまの先生の、そうですねという意味は、三次防として四百八十九億を予定しておるけれども、それは年次別に大蔵省と交渉し、この委員会の議を経て予算化されるのだという意味で、そのとおりでございます。
  66. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私が言っておる意味がわからないでしょうか。きょういただいた四百八十九億というこの計画はあなた方の計画である。いいですか。そしてその中に空対地ASM費用は、計画として五億三千万入っておる。そうですねと私が言ったら、いや千八百万とおっしゃる。そうすると、四百八十九億の基礎は狂いますよ、書き直していらっしゃいと私は言っておるんです。もしそうでないならば、全部出してもらわないと、私はそれを明確にすることはできません。
  67. 蒲谷友芳

    蒲谷政府委員 私のほうの出しました資料は、三次防の計画資料化したものでございますが、いまの先生のおっしゃっておられます五億がもし入っていなければ資料が違う、四百八十九億が違うであろうという意味でございますけれども先生の昨日御指摘のときの資料、四十一年四月のものでございますと、大体五百三十億くらいになるような当時の資料でございました。それの中の五億でございます。私のほうの四百八十九億は三次防として考えておりますもので、もうその段階で四十億強のワクが違ってございます。これは三次防の開発計画というふうに御了解いただきたいと思います。
  68. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そのあなたの資料、そんなにおっしゃっても、全部出してもらわぬとわからぬではありませんか。しかし、私はいまその点だけを追及しようとは思っていないんですよ。そうではなしに、私の質問の本来の主題は、空対地、いわゆる核、非核の最高級の空対地を、つまり、現在あるものでいえば、アメリカの実戦機に使っておるブルパップ・クラスのやつを、研究としてあなた方はねらっておられるのでしょうねと言っておるのですよ。私の主題はそこなんです。そうしたら、あなたは、全然使うつもりはないのだとおっしゃる。使うつもりのないものならば、国民の税金を使う必要はないじゃないですかと私は言っておるのです。私の質問の主題は、実はそこなんです。数字であなた方をとっちめようという気は本来はないのです。しかし、あなた方がそれを固執されるから、それだったら数字を全部お出しなさいと私も言っているのです。おわかりになりましたか。
  69. 増田甲子七

    増田国務大臣 私どもは、空対地研究はいたしておりますが、ブルパップ的なものはどうかと思う、その威力、その他に照らしてみて、これはいけないと思うということを、衆議院の内閣委員会において私は先般お答えいたしております。そのことも御参照くださいまして御了解を得たい、こう考えております。  そこで、ASM研究はいたしますが、そのASMというものは、ブルパップ級ではないという範囲のものを研究する、その費用昭和四十六年に千七百万円要求する予定であるということで、四百数十億を一応出しましたけれども、これは大蔵当局の了解を得ていない数字でございます。ただし、昭和四十六年には千七百万くらいの要求をいたしたい、こういうことでございまして、全然いまから、備えないならば、どんなものになるかこんなものになるかわからないのに、研究費用もやめておけというようなことはどうかと思います。昭和四十六年の問題として御考慮願いたいというときにひとつ御検討願いたいのでござ  いまして、本年は昭和四十二年度予算審議を願っておりますが、四十三年、四十四年、四十五年、すべて予算のことについては、要求も何もしていないのでございます。
  70. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は何回も言うように、本来計画自体を問題にしておるのであって、大蔵省査定を受けたかどうかを問題にしているんじゃないんですよ。いいですか、それは明確にしておきたいと思います。  そこで、私は、この中に数々のこの種の問題がたくさん含まれておりますが、これを言っておると時間がありませんから、いずれ詳細については、資料が出てまいって、それを果たしたいと存じますが、冒頭申しました、私が一番問題にしておる研究項目、つまり、金額でするならば四億のこの問題であります。  そこで、まず、昨日お伺いをしたわけですが、中国の核脅威に備えて、アメリカではABM体系、当面薄いABM体系を設置する。費用は約五十億ドル。これは完全に重いやつにすれば五百億ドルということがいわれております。  そこで、このABM体系は、御承知のとおり、ミサイル弾頭、それからレーダー、それから電子計算機のコンピューター、この三つからなって初めて効力を持つものであります。すなわち、その三つよりなっておるものがABM体系というやつであります。レーダーには二種類あります。大陸間弾道弾が、ICBMが飛んでいく、発射された、それをまず探知するレーダーであります。それから今度は、立ちらからアンチミサイルミサイルを発射し、それを追っていく、誘導するレーダー、これが大きく分けて二つ要ります。そして、このアンチミサイルミサイルアメリカで最初に開発し、すでにクエゼリン島で実験を済まして成功したといわれております。例のナイキジュースがAMMというやつであります。そして、それがさらに改良されて、大気圏外用のスパルタンがいま開発中であります。大気圏内用のスプリントはこれはすでに実験段階であります。スパルタンはまだ開発中であります。そして、このAMM、ナイキジュースもスパルタンもスプリントも、あるいはより短距離のやつも、いまちょっと私名前を忘れておりますが、それもすでに開発中であります。すべてこれ核弾頭であります。核弾頭でなくては役に立たないのです。なぜならば、これは飛んでくる核兵器、ICBMなりIRBM、これを途中で迎撃をするミサイルでありますから、ちょうど都合よく会うならば、こちらだって、迎えるほうだって普通の弾頭でいいかもしれないが、いまの技術では、そういうことはできないのです。だから、この弾道弾の三キロ以内にアンチミサイルミサイルが飛んでいって、そこで核爆発をすることによって迎撃しようという兵器なんです。核兵器なんです。これを、飛んでくるほうは核弾頭であって、迎えるほうは普通弾頭を考えますなんてよもやあなたはおっしゃらないと思いますけれども、そういうことを言ったって通じませんです。AMMが核そのものであるというくらいのことは、もうどこに聞いたってはっきりしておるのです。  それを私が問題にしましたこの計画の中であなた方は出しております。AMM、これは四十二年からいわゆる所内研究に入る、そして四十六年度に初めて研究試作に入る、この費用は一億、四十七年以降はこの所内研究の経過を待って決定する、こう計画ではなっておるのです。そして、先ほど申しましたように、これはたまだけでございますから、体系としてはレーダーが要ります。コンピューターが要ります。それに必要なレーダーあるいはコンピューターが用意されております。申し上げましょう。これは低空域レーダー、見通し外の約四百マイルから千マイル、効用はある飛しょう体を探知する早期警戒用レーダー、高性能のレーダーであります。これは現在アメリカで用意されつつあるABM体系で言いますならば、これはPARに相当するものであろうと私は思います。そしてさらに、このAMMを飛ばすところの高性能のエンジン、これも研究の中に入れられております。そして私の計算によると、問題になりそうな、いま言ったようなABM体系、AMMに関係するものは、本日出てまいった資料から故意にこれを除外し、除外したものの費用の総計が四億になるのです。そして、私が明らかにしたような、いままで指摘しましたように、この研究はあなたは先ほど何とおっしゃいましたか。ASMの場合に私が指摘した金額局長が言っておる金額と違うというのはなぜかというと、いいですか、あなたがさつき言ったとおり言いますよ。つまり、四十一年の四月段階のものは二兆六千九百億の三次防の金額であった。それを大蔵省と折衝したら二兆三千四百億に削られた。だからその金額の相違が出てきたんだとあなたは説明なさいました。したがって、四十一年四月の段階決定されたこの計画は、核兵器たるAMM体系を入れて二兆六千九百億、こういう計画の中に入っておったということではありませんか。いまさら、きのう徹夜をしてその分だけ抜けてきたってだめです。国民の疑惑はそれでは晴れませんよ。絶対に晴れませんよ。いまさらあなたは、AMMを、核弾頭でないやつを研究するなんというようなばかなことはおっしゃらないと思いますが、どうですか。
  71. 増田甲子七

    増田国務大臣 私が初め申し上げましたのは、私は大蔵省から削られたなんということは申しておりません。二兆六千九百億の当初の計画がございましたが、総理大臣や私の見識において二兆三千億円台がよろしい、こういうわけで政府は一致いたしておるわけでございます。そこで、昭和四十一年四月に、あなたがお持ちの材料等は草案の草案のまた草案の草案ではないかと私は考えております。その数字を根拠とせられていろいろ数字に狂いがあるとおっしゃられても、これは困るのでございますということを、まずこれは国民も聞いていらっしゃいますから申し上げておきます。  それから、AMMの研究等は当初研究しょうかという説があったかもしれませんけれども防衛庁内におきまして、そういうことはだめだということで、これは財政当局国防会議等をわずらわしておりません。全然ないのでございます。また、アメリカ開発せんとしておるスパルタンとかスプリント等に対しましては、われわれは関心を持っていないということを昨日は言明いたしましたが、本日もそのとおりでございます。
  72. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたはそういうことをいまさら言ってもだめですよ。ちゃんと計画の中に入っておるのです。それを、それが出たら困るから——入っていなかったらどうしてきのうすぐ出さないのですか。それが直ちに出ると困るから、あれほど出せない出せないと言って、暫定予算を組むか組まないかというこのせとぎわに、一日をあなた方自身が空費したのですよ。そして徹夜をして、その分だけ抜けて数字を合わして、本日ここにこういうでたらめなものを出してきた。これは許しませんよ。私は許しません。そういうことでは、佐藤総理幾ら非核三原則なんて言われたって、国民はどうして信用できますか。きのうあなたは、ABM、AMMなんか関心もないし、いまも言われましたが、毛頭考えていない——何を言うんですか、あなたは。総理国防会議議長であります。また三次防の決定の責任者であります。そして総理は、本国会の冒頭の本会議において、非核三原則を一つの大きな理想として、あるいは理念として高々と所信表明で掲げられました。私はその点を聞いたときには、ああ、あの点はいいな、私自身も思ったのです。国民もおそらくそう思ったでしょう。しかし、一たん国防会議議長としては、部下が表になかなか出せない極秘の事項として、こっそり核装備研究試験をしている、装備研究を許しておるのであります。最初は非核三原則を理念として国民に訴えた。そこで、わが党の山本書記長が、それはいいことだと言って国会決議を迫ったわけであります。そうすると、今度はそれこそ突如として、核の抑止力というものを非核三原則にくっつけて、離せない一つのセットとして、そして、両方のまなければだめだと言ってわれわれに迫ってまいりました。これでは、われわれ野党なりあるいは国民に対して、佐藤総理は、牛乳と青酸カリを一緒に飲みなさいということと同じではありませんか。何というこれは欺瞞じゃありませんか。また、あなたの非核三原則というものは、何というそらぞらしさではありませんか。私はたいへん情けなく思います。一体、総理としての佐藤さんと、国防会議議長としての佐藤さんは、私から言わしめるならば、まさにジキル博士とハイドであります。そういう態度で、口で言われることと実際にやられておることが違うようでは、私は、いかにこの委員会の場で質問をし、お答えをいただいても、納得することはできないのであります。  そこで、私は委員長にお願いをしたいのでございますけれども、事は非常に国民の、あるいは国の命運にかかわる重大な核装備の問題でありますから、直ちに臨時閣議を開いていただきまして、核装備を疑わしむるような兵器研究開発をやめさせ、その部分の予算の削除を含む三次防計画の修正、並びに三原則の国会決議を含む宣言方法を明確にして、国民の間に起こっておりますところの疑惑を晴らす措置を直ちにとっていただきますようにお願いをしたいわけであります。そのために、当委員会は一たん休憩をしていただきまして、理事会で、ただいま私が提案いたしましたその取り扱いを検討されるようにお願いをいたします。(拍手)  委員長、念のために言っておきますが、私が持っております四十一年四月十四日の……(発言する者あり)黙んなさい。やめるまで待っておきます。——私が指摘をいたしております昭和四十一年四月十四日決定のこの計画案は、ちゃんと五段階に分かれた判を押すところがある。全部決裁済みであります。これがまやかしの、草案の草案の草案というような、増田長官、そういうでたらめを言ったってだめですよ。判こがりっぱに押してあるのです。だから現物を出しなさい。違っておったらだめです。   〔「現物を出したらいいじゃないか」と呼び、その他発言する者あり〕
  73. 井出一太郎

    ○井出委員長 静粛に願います。  内閣総理大臣
  74. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 委員長から発言を許されましたので、私がお答えをいたします。どうかひとつお聞き取りいただきます。  ただいまいろいろ四十三年度予算審議にあたりまして、その四十三年度予算、その中身を形成するであろうという一つ計画事項、それについてのいろいろの論議がかわされました。私も国防会議議長といたしまして、こういう事柄について関心がないわけではありません。もちろん、私責任を持ってこういう事柄をきめるその立場でございます。そこで、ただいま問題になりましたように、一体核兵器についての研究をしておるかどうか、こういうことでありますが、さようなことは絶対にございません。研究はいたしておりません。どうかその点は御安心をいただきます。また、将来さような予算が出てくれば、ただいまの楢崎君の御主張のごとく、その立場において御批判いただくことも、これもけっこうだと思います。しかし、ただいま私が責任を持ってお答えいたしますのは、さような研究はいたしておらないということであります。また、さような予算が計上されておらない、これもはっきり申し上げておきます。  また、ただいまのいわゆる非核三原則についての問題でございますが、これは過般の国会におきましても、この予算委員会において、私の態度を最終的に申し上げました。国会においてそういうものが審議され、それが決定されれば、私もそれに従いますということを申し上げました。ただいまいろいろの御議論がございますけれども、これこそは各人のそれぞれの立場の、それぞれの意見だ、かように伺ってひとつ御了承いただきたいと思います。  以上のような点から、ただいま臨時閣議を開いて、その程度を明確にしろ、こういう御要望でございますが、私はその必要がないということをはっきり申し上げておきます。
  75. 楢崎弥之助

    楢崎委員 何を言うのですか、総理。これはちゃんと判こが押してあるのです。五つ判こが押してありますよ。何を言うのですか。そして、これは一九六七年の「装備年鑑」、これにも、もう業界は知っておるのですよ、公表されておるのですよ。何と書いてありますか。「三次防計画には、」途中を省きます。「ミサイル迎撃ミサイル基礎調査は一応計画されているため、同研究と併行して次期ミサイルシステム研究に着手することを期待している」と書いてあるのです。研究は既定の事実になっておるから、もうそうなっておるのです。なっておるのです。だから、私はこんなに心配をしておるのです。これは簡単な問題じゃないのです。計画があるから私は言っておるのです。もし総理御存じなかったら、部下がやっておるのです。国防会議議長たるあなたがもし知らないんだったら、知らざるところで、防衛庁技術本部でやっておるのです。だめです。そういうことをおっしゃったって国民の疑惑は晴れませんよ。もし私が言っておることが間違いならば、この資料の全部をなぜ出さないのです。出せないのでしょう。
  76. 増田甲子七

    増田国務大臣 まず、原案の原案の原案と申し上げましたのは、最初は二兆六千九百億ということをわれわれは考えておりました。その次には二兆五千六百億ということを考えておりました。その次には二兆四千六百億という数字を考えました。その次は二兆四千億という数字を考えました。最後には二兆三千六百億という数字を考えまして、そのつど各種の、幕僚部に関することのみならず、防衛研修所にいたしましても、あるいは技研にいたしましても、開発計画は違ってくるわけでございまして、ある段階におきましては、いまの文書は公文書として存在いたしております。しかしながら、これは草案の見地から見れば六、七回変わった草案でございます。  それから、このアンチミサイルミサイル、AMMということは、私のときの段階ではございませんが、前の前の防衛庁長官段階でございますが、その防衛庁長官が、すでに一応は原案としてそういうものがございましょうとも、まずいというわけで、五月ごろ、四月の次の五月ごろやめさせたわけでございます。昭和四十一年五月、一カ月後にやめさせております。したがいまして、大蔵当局に要望するとか、国防会議の議題にするとかいうことも全然なかったのでございます。しかしながら、これは秘密書類でございまして、申し上げかねる、こういうわけでございます。
  77. 楢崎弥之助

    楢崎委員 出せない、秘密書類といいながら、そういうことはないんですと言ったって、だれが信用しますか。やめたんなら出しなさいと言っているんですよ、その資料を。あなたは草案の草案の草案とおっしゃいました。それじゃその草案の草案の草案を全部出してごらんなさい。それがどんなに変化していったか、あなたのいま言っていることを聞いておると、二兆六千九百億の段階では入っておったということになるじゃありませんか。何を言っているのですか。だめですよ、そんなことを言ったって。(「休憩だ、休憩だ」「出さなければだめだ」と呼ぶ者あり)
  78. 井出一太郎

    ○井出委員長 楢崎君に申し上げますが、約束の持ち時間がたいへん超過してきておりますから、結論にお入りください。
  79. 楢崎弥之助

    楢崎委員 こういう重大な問題の中で、たかが時間の問題でこの審議を打ち切るんだったら、打ち切りなさいよ、あなた。疑惑は残ったままになりますよ。(「はっきりした資料を出せよ」と呼び、その他発言する者あり)私はいたずらに審議を中断させたり、混乱させたりする気はないんです。問題は、少なくとも沖繩の問題を含めて、いま核ということが国民の関心事であります。そして、佐藤総理非核三原則を言っておられるけれども、はたしてほんとうであろうかということを心配しておるんです。だから、事態が明白になれば、私はそれで十分なんです。国民の疑いが晴れれば十分なんです。それで、国民の疑いを晴らす方向で、いま理事の方が相談されました方針で、資料が出るまでこの問題は保留をさしていただきます。  そこで、時間もたいへん経過しました。私はこの資料の中にありますCBR、これは化学、生物、そして核の兵器であります。それもここに予定をされておるんです。そのうち、特にC、ケミカルの分は、化学兵器の分は、これは今回の佐世保で使われましたガス放水、クロルアセトフェノンと関係があるんです。自衛隊はCBR作戦において、警察の指導をやっておるし、そして佐世保で人体実験を初めて——これはあのクロルアセトフェノンを水にまぜて使ったのは、私は世界で初めてだと思います。アメリカでもベトナムで使っておりますが、まだガスの段階であります。これは非常に重要な問題が、私が要求しておりますこの資料との関係においても出てまいるわけであります。そういう点で、私は、この佐世保で使われましたガス放水の問題、どこからそれが入手されたか。アメリカ自衛隊と警察のこの化学兵器に関する関連を私は明確にしたいと思っておるんです。そして、これは国際法に違反し、刑法百九十五条に違反し、毒物劇物取締法に違反し、自衛隊法に違反し、警職法に違反する重大な行為であろうと私は思うのです。私は、その質問の時間を得たいが、理事の皆さまのおすすめによって、いまは一時、資料が出てくるまで保留をしておきますけれども、私が言っておるこのことばだけでは、あるいは国民皆さんはおわかりにならないかもしれません。私が持っておりますこの資料は、第三次防衛力整備計画、それの技術研究開発計画昭和四十一年四月十四日決裁の分であります。この表紙には、先ほど申しましたように、五つちゃんともう判こが押されて決裁済みであります。そうして、この計画書は一章から五章までになっております。私は本日ここに持ってきておるのは、その第二章の分だけ私はここに持ってきております。三章から五章まで資料を持っております。全部私は明らかにしたいのであります。この中の、たとえば先ほど申しましたAMMのこの資料は、昭和四十二年からすでに所内の研究に入っておる。四十六年で研究試作に入る。この昭和四十六年の段階で一億それに予定をされております。そうして先ほど指摘をいたしました超低空のレーダー、これはアメリカが設置予定のABM体系のうちのPARに関係するレーダーに匹敵するものであります。千海里のかなたを探知するレーダーというものは、これは非常に高性能のレーダーであって、ABM体系で初めてこれは意味をなすのであります。それが現にレーダー関係の問題として研究の課題になっております。これらの資料を含めて、さしあたって三次防にはAMMの弾頭が一億、レーダー関係あるいは高速のロケットもこれに入っております。それらの資料を含めて四億、そういう計上になっておるのです。しかし、先ほど申しましたように、理事会資料を提出されましてからさらに事態を明確にしたいと思います。  一応これで質問を留保さしていただきます。
  80. 井出一太郎

    ○井出委員長 ただいま楢崎君から要求のありました資料の点、並びに質問を留保されました点、これらにつきましては、後刻、理事会においてあらためて協議することといたします。しこうして、この際、楢崎君の質問はこれで一応一段落、こういうことにいたしまして、この際、休憩いたします。  午後は二時から再開することにいたしまして、公明党浅井君の質問に入ることにいたします。    午後二時十八分休憩      ————◇—————    午後二時十九分開議
  81. 井出一太郎

    ○井出委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  総括質疑を続行いたします。浅井美幸君。
  82. 浅井美幸

    ○浅井委員 私は、国民が治政献金について種々疑惑を持っておる昨今の情勢から、国会議員として必要な政治姿勢を正すためにも、最も近道である理想的な政治資金規正法の成立を心から望んでおる一人として、ここに一番卑近な例としてタクシー汚職をめぐる問題点を提起し、法の盲点をただしたいと思うものであります。  総理にお伺いしたいのでありますが、昨年の夏以来国民の関心を集めたLPガス税法案をめぐるタクシー汚職でありますが、この事件は、去る一月の二十日、検察側の発表で捜査の終結を見たのでありますが、本事件の意外な幕切れに国民の大多数は数多い疑惑と不信を抱いておるのであります。なぜかならば、本タクシー汚職問題は、外国特派員の間でも、昨年日本の十大ニュースの中でもベストファイブの中に入っておるといわれております。さらに、本件は、わが国の政治のあり方に大きな反省と、政治家としてのモラルを強く要求される問題として、根本的な政党の腐敗体質をさらけ出した事件であるからであります。法律を金で買ったとか、一億円の献金で国家財政に三百七億円を失わしめたといわれておりますが、これはまさに現代日本の政治のひずみを象徴するものとして注目されます。  さらに、本事件は、特定の業者と一部の政界の結びつきによる黒いうわさが現実に浮かび出たものであり、国民の政治家に対する不信感をますます増大させ、政治献金のあり方に強い警鐘を打ち鳴らした重大な事件でもあるからであります。  本問題は、多数党が長期政権の上にあぐらをかいた権力をもって何事も無理を通そうとする姿勢と、その綱紀のゆるみから生ずる怠慢と堕落から、起こるべくして起きた事件であり、それこそ、日ごろ総理が口にしておられる積年の病弊そのものであります。捜査の結果、公判請求された人たちの黒白はいずれ今後の裁判に待つとして、あの大々的な事件に対し、その捜査の終了が龍頭蛇尾に終わったことに対して、国民は、何かしら割り切れない印象を持ち、そうして疑惑を持ったことはいなめない事実であります。  そこで、国民の代表として選ばれた議員は、いやしくも国民からいささかの疑いも持たれないように、厳正公平なる行動と態度を堅持していかねばならないと思うものでありますが、この点について、総理の所見をまずお伺いしたいのであります。
  83. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 いわゆるLPガス汚職につきましては、他の機会にも、私、しばしば私の所信を表明いたしましたとおり、まことに残念なことのように思っております。とにかく、ただいまもお話にありましたように、国民から不信を買うような政治、さような状態であってはならないと思います。ただいま、主権者国民、その負託にこたえる、こういう意味で、いやが上にも私どもの責任は重いし、その意味において、みずからこういう事柄について厳重なる心がまえで取り組んでいかなければならない、そうして政治に対する信頼を高めるように努力しなければならない、かように思っております。これは他の機会にもしばしば申したことでございますので、私簡単にお答えいたします。
  84. 浅井美幸

    ○浅井委員 いまお答えをいただいたわけでありますが、非常に抽象的であります。総理、あなたは、このタクシー汚職の教訓とそれに対する反省をどのように考えておられるのか、一つ国民の前にはっきりとお示し願いたいと私は思うのであります。一国の総理として、国民の前に政治姿勢を正す具体的なその約束を明確にすべきでありますし、また、それが国民に対する信託にこたえる総理の責任でもあると思うのであります。官僚の綱紀粛正の通達も再三お出しになっておるようでありますが、その前に、まず、みずからにもきびしく範を示し、もって与党たるその姿勢を是正することを強調されてはいかがであるか。また道義的に許されざる不潔きわまる献金を受け、平然としておる、そのような姿勢を改めていく、そういうふうな決意について、総理のお考えを重ねてお聞きしたいのであります。
  85. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申しますように、この種の事件が不幸にして起きたということ、これはまことに残念なことに思います。ただいま、この種のものが、それぞれの法規によって処断される、検察庁が公正に、また厳正にこれの処置、捜査をはじめ、その後の処置にまで取り組むということ、これは当然のことでありますが、また一部におきまして、あるいは政府がそういうことに関与するのではないかという、これはとんでもないことであります。そういうような誤解を受けないように、この事件が起きまして以来、私は、検察当局に対しましても、これを厳正に捜査するように、そのことを心から期待をいたしまして——期待というのは、私自身が指図したということではございません。これはどこまでも検察陣、検察庁にまかされた行為として、これの適正なる処断を実は待っておるというのが、私の気持ちであります。また、私自身は、ただいまお示しになりましたように、みずからが姿勢を正すことはもちろんのことですが、党、さらに公務員全体におきまして、この種の事柄から政治の不信を買うようなことのないように、厳正に私注意を喚起しておるというのが、現状でございます。これはしばしば通牒その他におきまして私の発言等をお調べいただけば、私がこの機会にその場限りの話をしておるものでないということがおわかりがいただけるだろう、かように思います。
  86. 浅井美幸

    ○浅井委員 では、これからこの事件の具体的なことについて触れていきたいと思うのであります。  まず、自治大臣にお聞きしたいのでありますが、次に申し上げる献金について、届け出があったかなかったか、その点についてお答え願いたいと思うのであります。  最初に年月日、献金を受けた団体名、その次に金額、献金をした氏名、団体を申し上げますので、よろしくお願いしたいと思います。  四十一年九月十三日、蛟竜会、百万円、相互タ  クシー。  四十二年一月十四日、蛟竜会、三十万円、相互  タクシー。  四十年六月二十二日、越山会、百万円、相互タ  クシー。  四十二年三月五日、越山会、五十万円、相互タ  クシー。  四十二年三月五日、越山会、五十万円、大タク  協会。  四十一年四月二十日、新政策研究会、百万円、  大タク協会。  四十二年一月十一日、藤田会、三十万円、相互  タクシー。  四十二年一月、新政策研究会、五十万円、大タ  ク協会。  四十年六月三十日、三興会、百万円、相互タク  シー。  四十一年四月二十日、日本政治経済研究会、百  万円、大タク協会。  四十年八月十日、原健三郎後援会、五十万円、  大タク協会。  四十一年四月二十三日、原健三郎後援会、五十  万円、大タク協会。  四十年五月十七日、木村睦男後援会、二百万  円、大タク協会。  四十年十二月十四日、睦山会、二十万円、相互  タクシー。  四十一年七月十六日、睦山会、二十万円、相互  タクシー。  四十二年六月十五日、江西会、五十万円、相互  タクシー。  四十二年一月十四日、荒松後援会、五十万円、  相互タクシー。  四十年八月十日、徳安会、百万円、大タク協  会。  四十二年一月十一日、徳安会、五十万円、相互  タクシー。  これらについてはどのようになっておるかお伺いしたいのでありますが、御答弁をお願いいたします。
  87. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 手元に資料は持っておりません。これは御案内のとおりに、それぞれの政治結社から届け出のありましたものを受理いたしまして、官報に掲載することになっておりまするので、官報の写しであれば、そのとおりでございますと申し上げるほかございません。
  88. 浅井美幸

    ○浅井委員 私は、これらの献金は、一般の政治団体に対する献金あるいは選挙の際に献金されたと思うのであります。それで、あなた自身が掌握をされていないという御答弁なので、これ以上この問題については私は追及いたしません。  そこで、法務大臣にお伺いいたしますが、昨年の臨時国会で私がこの問題を取り上げて、いろいろあなたにお伺いいたしました。そのときには、現在捜査中だからというので、いずれ捜査が終結した暁には詳しい答弁をと約束されておりました。そこでまず、遺憾なことではございますが、同僚議員の間から逮捕者を出しました。国会議員の逮捕というものは、国会の権威にかかわることでありまして、關谷議員に対して検察当局は公判を維持して有罪判決をとるという確信をお持ちなのかどうか、お伺いしたいのであります。
  89. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答え申し上げます。  このたび起訴せられましたものにつきましては、検察庁は公判にあたりまして十分証拠が維持できるという確信を持っておるものと信じております。
  90. 浅井美幸

    ○浅井委員 一般に国会議員の収賄事件は無罪となる率が他の事件に比べて非常に高いのでありますけれども、それは証拠関係がそろわないからだというふうにいわれております。いやしくも国会議員を逮捕する以上は、検察当局としては有罪の裏づけとなる立証のきめ手というものを持っておられると思うのでありますが、いま公判において維持できるというお話でございましたが、この事件で關谷議員に対する公判維持の証拠は、一体どのようなものを準備しておられるのか、具体的に教えていただきたいのであります。
  91. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  關谷代議士に対する公判というものは、まだ始まっておりません。しかしながら、いずれ裁判になると思いまするので、その裁判に影響を及ぼすようなことは、私はこの際申し上げぐることを遠慮したいと考えております。御了承願います。
  92. 浅井美幸

    ○浅井委員 では、あなたが遠慮をなさるのでありましたならば、起訴状は一体どのようになっておるのか、具体的にお示し願いたいと思います。
  93. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  起訴状は私は拝見をいたしておりませんから詳しいことは知りませんが、關谷代議士は百万円の収賄をしたというかどで起訴せられたものと私は承知をいたしております。
  94. 浅井美幸

    ○浅井委員 私は起訴状のことを聞いておるのであって、そのような簡単なことの承知を聞いておるのではないです。起訴状について明確にお答え願いたい。
  95. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 刑事局長から答弁をさせます。
  96. 川井英良

    ○川井政府委員 關谷代議士は、問題になりました石油税法案の取り扱いについて業者から有利な取り扱いを受けたい趣旨のもとに百万円の金額を収賄した、こういう趣旨で公訴を提起したものであります。
  97. 浅井美幸

    ○浅井委員 私は起訴状のことを聞いておって、起訴事実を詳細に答えてもらいたいと言っております。
  98. 川井英良

    ○川井政府委員 まだ第一回の公判も開かれておらないわけでございまして、起訴状も訴訟記録の一部でございますので、その要旨を申し上げるということは許されると思いまするけれども、起訴状そのものの内容にわたりまして詳細に申し上げることはお許しをいただきたい、こう思うわけでございます。
  99. 浅井美幸

    ○浅井委員 では、新聞等によって起訴事実がきちんと示されておる。しかるにこの国会において私が質問をすることにおいて答えられない。その理由について明確にお答え願いたいと思います。
  100. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  關谷代議士の公判はこれから始まるのでありまして、まだ公判は始まってないのでございます。そういう場合におきましてその起訴状をここで申し上げるということは、私は現在のところ適当でない、かように考えております。ただ骨子といたしましては、ただいまも申し上げましたように、業者から百万円のわいろを収受したということが骨子になっておることは間違いないと考えておりまするので、その点で御了承願いたいと思います。
  101. 浅井美幸

    ○浅井委員 寿原氏に対してはどうでしょうか。
  102. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  寿原前代議士も、百万円の金を業者から収賄したという嫌疑によるものでございます。
  103. 浅井美幸

    ○浅井委員 私は先ほどから言っておる、こんな不親切な答弁はないと思うのです。新聞に対してちゃんとその起訴事実が発表されていながら、国民の代表としてこのことを真剣に討議し、そうして将来のあり方に対して私は問うておるのであります。そのための起訴事実あるいは起訴状について聞いておるのです。それを答えられないということはどういうことか。もう一度法務大臣お答えを願いたいと思います。
  104. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  公判に影響を与えるようなことは、私は公判前においてはお答えすることを差し控えることが適当である、かように考えております。御了承願いたい。
  105. 浅井美幸

    ○浅井委員 ではやむを得ませんので、これを読みますが、  多島太郎は大阪府下のハイヤ、タクシー業者百十四社をもって組織する大阪タクシー協会会長、多田清は同協会理事で相互タクシー株式会社社長、關谷勝利と寿原正一はいずれも衆議院議員として法律案の発議、審議および表決等をなす職務に従事していたが  一、多島と多田は同協会理事等でハイヤー、タクシー業を営む会社の役員である沢春蔵、坪井準二、口羽玉人、高士良治と共謀のうえ關谷勝利および寿原正一に対し、さる四十年二月十一日、内閣から、衆議院に提出されたL、P、ガスに課税することを内容とする「石油ガス税法案」について、国会における同法案の審議、表決に関しハイタク業者に有利になるよう尽力されたいと請託したうえ、さる四十年八月十日、東京都千代田区永田町二、衆議院第一議員会館三一五号の関谷の事務室で関谷に対し請託に添う尽力を受けたことと、こんごも同じ尽力を受けることについての謝礼の趣旨で多田清が現金百万円を贈り、関谷の職務に関しワイロを供与した(贈賄罪)  同じ日、同区霞ケ関三の七、東京グランド・ホテル三一二号の寿原の事務室で寿原に対し謝礼の趣旨で多田清が現金百万円を贈り、寿原の職務に関しワイロを供与した(贈賄罪)二、關谷は多田清らから前記のような請託を受けたうえ、同じ趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら多田から百万円を受取り、自分の職務に関しワイロを収受した(収賄罪)  三、寿原は多田らから同じ請託を受け、同じ趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら多田から百万円を受け取り、自分の職務に関しワイロを収受した(収賄罪)  このような内容で起訴事実が新聞に公表されておりますが、法務大臣、このことについて間違いはございますか。
  106. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 大体いまお読みになりましたように、私は考えております。
  107. 浅井美幸

    ○浅井委員 あなたは検察庁の総括の責任者として、このような重大な事件の報告も受け、一切の事件の内容について御存じであるはずであります。今後公判に持ち込まれる重大な事件であります。それを大体このような、あなたのおっしゃったようなことに間違いはございませんというのか、少しも間違いがないというのですか、どっちですか。
  108. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げますが、法務大臣は個々の刑事事件について、起訴がどうなっておるか、経過がどうなっておるかというようなことにつきましては、承知をいたさない場合が多いのでございます。ただ、検察の方針あるいは全体としてのものにつきましては十分指揮監督をいたしますが、個々の刑事事件について一々指揮するということは考えておりません。そういうふうにすることは、また私はよくないと考えております。その点、御了承を願いたいと存じます。
  109. 浅井美幸

    ○浅井委員 私は、あなたの指揮を聞いたのではないのです。あなた自身が、最高の責任者として、この事件に対する報告を受け、了知しておるかどうかということを聞いておるのです。
  110. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  ただいまお読みになりましたことに、大体そういう趣旨だと記憶しております。
  111. 浅井美幸

    ○浅井委員 あまり繰り返してもなんでありますから、収賄の対象といわれておりますいまの百万円に対しては、關谷氏の場合は正式の領収書が出されておると言っておりますけれども、この点については、法務大臣いかがですか。
  112. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 刑事局長答弁させます。
  113. 川井英良

    ○川井政府委員 たいへん残念でございますが、關谷さんの公判は間もなく開廷されると思います。その際に、検察側がそういう事実がありますれば、証拠としてこれを公判廷に提出する、こういうふうな内容のものになっておりますので、具体的な事件の具体的な証拠の内容について答弁することは、お許しいただきたいと思います。
  114. 浅井美幸

    ○浅井委員 私は、このようなことについて明確にしていただかなければ、非常に質問として困るわけであります。いまの百万円についても、關谷氏は政治資金規正法によっての届け出もなされております。しかも、このほか關谷、寿原両氏は同じ業者から多額の政治献金を受け取ってもおりますし、さらに、この關谷、寿原両氏のほかにも、同じ業者から、先ほど申し上げましたように献金を受け取った十数人の国会議員もいるとうわさされております。こうした一連の政治献金の中にあって、關谷氏が受け取った百万円だけをどうしてわいろだと区別できるのか、この点についてお伺いしたいのであります。
  115. 川井英良

    ○川井政府委員 政治献金は、御案内のとおり、すべてわいろの疑いのあるものではございません。問題は、わいろ性があるかいなかということできまるわけでございまして、しからばわいろとは何ぞやということになりますが、これは刑法の概念としてわいろの概念がきまっているわけでございます。そこで、いろいろ問題になる、先ほど指摘されましたような金の動きがあったようでございまするけれども、それをしさいに検討いたしまして、その中から、証拠に基づいてわいろ性を認定することができるというものにつきまして公訴が提起されたものでございます。
  116. 浅井美幸

    ○浅井委員 寿原氏あるいは關谷氏が受け取ったこの百万円について、先ほどの起訴事実になっております。したがって、四十年の八月十日に受け取った百万円が、両者とも起訴事実にうたわれておる。その受け取った百万円——ほかにも数多くの献金を受け取っておる。關谷氏も、ほかにも同じ業者から金額を受け取っておる。であるのに、この四十年八月十日の百万円が、治政資金規正法によっても届け出もしてあるし、あるいはまた成規の領収書も出してある。それが今回起訴事実の中にあらわれてきておる。それならば、一体どれが正式な、正当な政治献金であり、どれがわいろなのか、私たち国民は判断に苦しむのです。したがって、その百万円の違い、あるいは他の人たちが同じ業者から受け取った金額について、それはわいろにならないと断定した根拠をここで明確に教えてもらわなければ、私は黒い霧が晴れない。だから、その点についてここで明確に答えてもらいたいということを先ほどから要求しておるのであります。
  117. 川井英良

    ○川井政府委員 刑法のことばでわいろと申しますのは、公務員の職務行為と提供される金品とが給付と反対給付の対価関係にある場合に、これを刑法上のわいろというのだという考え方、また解釈が一定しているわけでございます。そこで、問題は、中元でありましょうとも、あるいは政治献金でありましょうとも、また、かりにたとえ御指摘のように領収書が出ておりましても、その実態を検討いたしまして、いま申し上げましたような条件に該当する場合には、これはわいろ性がある、こういうことになるわけでございます。抽象的に申し上げると、そういうことでございます。
  118. 浅井美幸

    ○浅井委員 私は、そのような抽象的な話をお伺いしておるのではないのです。赤間大臣、このことについてどのような違いがあったのかをしっかり教えてもらいたい。政治献金か、わいろか断定できない問題について、私たちは非常に苦しんでおります。ですから、今後の政治献金のあり方に対する大きな示唆を、この事件は持っておる。だから、この席において、明らかにこの場合はわいろでなかった、この場合は正当な献金であって、そうしてわいろ性を持たない、このような場合においてはこれはわいろである。そのように教えてもらいたいと言っておるのです。
  119. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  政治献金は、御承知のとおりに、一般に政治家または政党の団体が、その政治活動のため他から寄付を受ける一切の資金をいうものとわれわれは定義をいたしております。政治家または政党の団体がその政治活動をするために他から寄付を受ける、こういうための寄金を政治資金、かようにわれわれは考えております。わいろとは、ただいまも申し上げましたように、職務に関する不法な報酬を受けるのが、これがわいろでございます。なお、わいろを言いかえまするならば、職務行為と提供される金品とが、給付と反対給付の対価関係にある。それで、政治献金という形でありましても、あるいはその他の形でありましても、私は、このわいろの、さきに言いました定義に当てはまるときは、わいろとして処断せられると考えております。名前には関係はないと考えておるのであります。
  120. 浅井美幸

    ○浅井委員 何のことを言っているんだか、さっぱりわかりません。  では、關谷氏の後援会であるところの二十日会に、四十年の八月四日に相互タクシーから五十万円を届けられております。この五十万円、あるいは、四十一年の九月十三日に五十万円、同じく相互タクシーから届けられております。これはなぜわいろにならなかったのですか。
  121. 川井英良

    ○川井政府委員 いろいろ金の収受があるようでございますが、その一つ一つにつきまして綿密な検討が行なわれました。その結果、たとえば金の収受がありましても、それは対価関係にないというふうな場合、あるいは金の収受があるように伝えられているけれども、具体的な証拠によって金の収受を認めることはできなかったというふうないろいろな事情によりまして、その他のものについてはわいろ性がない、こういうふうな認定がなされたわけでございます。
  122. 浅井美幸

    ○浅井委員 では、幾らやっても押し問答になりますので、この問題はおいて次に進めますが、問題は、こうした政治献金のわいろ性の立証にあると思うのであります。特にこれまでの裁判所の判例を見てみますと、百万円を關谷議員が受け取ってから具体的にどのような行動をしたのか、法律上の対価関係及びその証明までも求められると思うのであります。したがって、關谷、寿原両氏は、当時衆議院の運輸委員でありました。LPガス課税法案については直接の審議の権限はなかったわけでありますが、この点についてはどうでしょう。
  123. 川井英良

    ○川井政府委員 国会議員の職務権限は、御存じのように、たいへん広範で、多岐にわたっているわけでございます。そこで、国会議員の場合に、ただいま申し上げました収賄罪を適用するにあたりましては、職務権限が問題となるわけでございます。そこで、職務権限の法律上の解釈でございますが、公務員の職務権限は、まず第一に、法令によって定められた本来のその公務員の職務権限をいうわけでございます。したがいまして、法令で定められた本来の職務関係につきまして金品の収受があった場合においては、そこに収賄の疑いが生じてまいります。ところが、長い間の大審院時代からの裁判所の判例によりまして、本来の職務行為のほかに、これと密接に関連のある行為についても、収賄罪の場合においては、その職務に入るんだと、こういうふうな判例の解釈が今日確立しているわけでございます。そこで、主として公選による議員の場合におきましては、本来の職務行為よりやや収賄罪の関係におきましては職務権限が拡大している、こういうことでございます。
  124. 浅井美幸

    ○浅井委員 何だかさっぱりわかりませんけれども、検察庁がお考えのように、百万円の献金が、この法案審議をめぐってわいろ性があるとするならば、両議員は、権限のある衆議院大蔵委員会に対して工作しなければならない。いわゆる職務に密接に関連した行為であったというものを示さなければ法律上有罪にすることは困難だと思うのです。先ほど申し上げましたように、両氏は衆議院の運輸委員でありまして、大蔵委員ではなかった。ですから、それに対する問題について答えていただきたいということを言ったわけです。  それにつけても、關谷、寿原両氏は、同僚の議員に対して積極的に説得や勧誘をしたという事実があったのかどうか、この点について赤間大臣からお答え願いたいと思います。
  125. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  そこで、この国会議員の職務について考えてみました。国会議員は、御承知のように、憲法とかあるいは国会法、議院規則等の規定によりまして、その職務権限が定められておるのであります。おもなるものは、本会議及び委員会における議案等の審議、表決でございまして、これはその本来の職務権限というふうにわれわれは解しております。したがいまして、国会議員が、たとえば委員会または本会議において審議中の法案の取り扱いについて金品を収受したときは、本来の職務行為に対するわいろとなるものと思います。この点において、学説上の判例は異論がないと承知をいたしております。  次に、国会議員が、たとえば委員会または本会議において審議中の法案の取り扱いについて他の同僚議員を説得、勧誘したこと等に対して金品を収受したときは、本来の職務行為ではないが、職務と密接な関係がある行為としてわいろとなる、これも通例の判例で認められておるのであります。職務に直接関係のある場合と、それと密接なる関係のある場合が含まれておるとわれわれは承知をいたしておる次第であります。
  126. 浅井美幸

    ○浅井委員 先ほど關谷、寿原氏に対して公判維持の確信があるかと申し上げたら、公判維持の確信があるとお答えをいただきました。したがって、いま言われておるいろいろの法律解釈のことが、具体的に、今回、關谷氏あるいは寿原氏の場合に立証できておるのかどうか、この点だけお答え願いたいと思います。
  127. 川井英良

    ○川井政府委員 大阪地方検察庁は綿密な捜査を遂げました結果、公判維持を十分にする確信があるという確信に到達いたしましてこれを起訴したものでございます。
  128. 浅井美幸

    ○浅井委員 そのような抽象的なことを私はお聞きしておるのではなくて、いま言った対価関係あるいは密接な関連行為、そういうものは具体的に今回、重要なこの事件に対して、また、ゆゆしい、国会議員の逮捕まで見た、その国会議員の名誉に対して、必ず公判を維持できるその能力、その裏づけ、それがあるかということを聞いておるのであります。したがって、いま御答弁になっておるところのそういうものに対して、具体的に証拠としてあなた方はつかまえておるのかどうかということをはっきりと御答弁願いたいと思います。
  129. 川井英良

    ○川井政府委員 先ほどお読み上げになりました起訴状の内容にそれぞれ即応しました証拠があることはもちろんでございます。ただ、具体的に、こういう職務権限についてそういうふうな便利な取り扱いをしたんだ、それについてこういうふうな金額が対価関係として贈与されたんだ、それについてはこれこれしかじかの人の証言がある、それについてはこのような物的証拠がある、こういうことを一つ一つ申し上げなければならないことになると思いますけれども、そうなりますと、これから裁判所によりましてこの事件が、純司法事件として審理が開始されるわけでございます。その審理の過程におきまして、裁判所に向かって検察官がその証拠を提出する、こういう筋合いに相なっておりますので、今日せっかくの国会における御要求ではございまするけれども、公判開廷前に私どもの立場から逐一具体的な証拠の内容について御答弁することをお許しいただきたいと思います。
  130. 浅井美幸

    ○浅井委員 公判維持のために答弁ができないそうでありますが、今後の公判についての結果を待つ以外にない。どうしようもありませんので、次の問題に移りたいと思います。  では、一月の二十日、処分発表のときに、大阪地検の天野検事正は、司法記者クラブでの会見の席で、タクシー汚職で調べを受けた国会議員は三十数名と答えておるそうでありますが、詳細については最高検の指示で大阪地検では言えないと言っておりますが、この点は指示をしたかどうか、法務大臣から答弁をいただきたいと思います。
  131. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 そういうことは法務大臣答弁することに適当かどうかと、私は迷うのでございます。私の考えを率直に申しますと、大阪タクシー事件に関して検察庁で取り調べた国会議員の氏名を述べるというようなことは、私は適当でないと考えております。その理由を申し上げたほうがよろしゅうございますか。
  132. 浅井美幸

    ○浅井委員 どうぞ。
  133. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 大阪地検の報告によりますれば、關谷、寿原両氏以外に、被疑者として取り調べた国会議員は一人もありません。本件捜査の過程で若干名の国会議員を取り調べたことは事実でありまするが、これは被疑者でなくて、純然たる参考人としての取り調べであります。それら参考人として取り調べられた国会議員についてその氏名を明らかにすることは、私は次の理由で適当でない、かように考えております。  まず第一の理由は、かりにこれを公にすれば裁判官に予断を抱かせることになりまして、現に公判係属中の事件の審理に影響を及ぼすおそれがある、これが第一点。  第二点は、かりにこれは公にすれば、犯罪の容疑がないとされたこれら関係人の名誉を傷つける結果になるということ。これは非常にわれわれ注意をしなければならぬ。容疑も何もない、被疑者でもない純然たる参考人の名前を公表するということは、名誉を棄損することになりはしないか、そういうことで私はしないのであります。  それから三番目には、参考人として捜査に協力をした者の取り調べ結果等を公にもしするようなことがあると、検察に対する信頼が裏切られて、今後検察に対して協力をするという人が少なくなる。検察に対する協力というものが今後得にくくなるというようなことになって、これまた非常に困ったことが起こる。こういう三点からいたしまして、私はそういう方の名前を申し上ぐることは御遠慮申し上げたい。御了承願います。
  134. 浅井美幸

    ○浅井委員 すでに新聞紙上でも一部議員の名前が出ております。やはり国会としても、その名前の出た議員に対して、容疑がなければないと、はっきりした態度を私は示してもらいたいと思っております。いま、参考人であって、ないというふうに言われました。であるならば、その真相を明白にして——その疑いを持たれた議員にとって非常に残念なことである。だからその人たちのために、その疑問を晴らすために——真相を不問に付したままでおくことは国民に言いようのない疑惑を残していくのではないかと私は思うのであります。ですから、新聞紙上やあるいはいろいろとうわさをされた人たちに対して、一人一人、法務大臣が、実際にこの人とこの人とこの人とを調べましたが、これは何もございませんでしたということを、ここで、国民の前で明白にしたほうが、霧が晴れると私は思うのです。実際に何名調べられたのか、あるいはどのような人が調べられたのか、はっきりしていただきたいと思います。
  135. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げますが、起訴せられた者あるいは起訴猶予になった者以外——これは起訴猶予は国会議員の方にはないのでありまするが、そういうふうで、捜査がすっかり一段落を告げて打ち切りになったのであります。それにあらわれてない方々というものは、これは犯罪の容疑がないということは、これでもう天下に非常にはっきりしておるのであります。それで、私らは人の権利というものを守るとともに、名誉を重んじなければなりません。今度の事件におきましても、検察当局がその捜査線上に浮かんだ人を発表したことは私はないと考えています。全然ない。たとえ新聞に出ましても、それは検察当局から発表したものではない、かように私らは考えておりまするから、お述べになりましたようなことをすることはかえって余弊があるぐらいのことで、利益がない。そういう意味で、私は参考人として呼ばれた方々の名前を発表するようなことはいたしたくない。その理由は、さきに申し上げました三つの理由で御了承を願いたい。
  136. 浅井美幸

    ○浅井委員 いまあなたは、国会議員の名誉に関することでもあるし、またいろいろの今後の協力を得られないようになるというようなお話でありましたが、これは個人の名誉に関することであるとともに、神聖な国会全体の重要な問題であります。容疑者の寿原氏は、おれたち小ものだけをどうしていじめるのだ、不平等ではないかと嘆いていたといわれております。事実LPガス法案をめぐり、業者の前で種々約束をし、胸を張り、業界代表を激励して反対運動を約束した大もの議員もおったということは、タクシー業界の議事録等によっても明白にわかる事実であります。私は事実は事実として明らかにし、関係議員に疑いがなければそれをはっきりさせ、その潔白を証明することによって、国会の権威というものが保持されるのではないかと思うのです。このような問題をあいまいにしておくことは、国会議員全体が国民の信頼を失う大きな原因になるのであり、この際われわれ国会議員全体の名誉のためにもはっきりしてもらいたいのであります。  私は、このように新聞に報じておることをここでお読みしたいと思うのであります。一月二十一日の毎日新聞には、「「いま關谷代議士ら四人の起訴手続きをとりました」−天野武一検事正は静かにきり出した。昨年夏以来の長い捜査。国会議員の職務権限、政治資金規正法、關谷代議士の入院…幾多の山や谷を乗り越えて、やっとたどりついたタクシー汚職の終結であった。天野さんは、淡々とした口調で語りつづけたが、参考人調をべうけた三十数人の国会議員の氏名はついに発表されなかった。「疑惑の国会議員の氏名を公表しろ」「せめて人数でも」と迫る報道陣の質問には、あくまでノーコメント。政府筋に“口輪”をはめられたのか、第一線捜査を陣頭指揮してきた“沈着勇断の人”の表情は、世論との板ばさみに苦悩の色さえにじむ幕切れの記者会見だった。」「記者会見は、二十日午後四時半から大阪地検検事正室で行なわれた。天野さんは、關谷代議士ら四人の起訴を告げたあと、ただちに用意した「検事正談話」を読み上げた。被疑者二十人の処分を含めた約千字に及ぶもの。「今後は公訴維持のため、慎重な努力を国民の前につづける」と結んであった。このあと天野さんは説明した。「贈賄業者のうち二人だけを起訴したのは、リーダーシップをとっていたのが多田で、多島は協会長としてまとめ役の地位にあったから。他は共謀しているが主導的立場でなかった」「運輸官僚を起訴猶予にしたのは、犯罪は成立するが情状による。運輸省が反省し行政処分するといっているので、それに期待する。せん別をもらっても時効の人もあるのでバランスも考えた。だが三十万円もらってもいいというのとちがう。三十万円ならよいと考えたら大間違いですよ」「安富大阪陸運局長は嫌(けん)疑なしだ」話はよどみなく進んだ。だが、国会議員のことになると一変した。「国会議員についてはノーコメントです。こんどの捜査で調べた被疑者、参考人は国会議員や秘書、前秘書、業者ら含めて二百人を越えるが、国会議員の名前はいっさいいわないことにしている。ここ(大阪地検)だけの判断ではいえない」ここで報道陣から質問がとんだ。「せめて人数くらいいえないか」「それもだめだ」「共和製糖事件では発表したが」「そんなはずはない」「調べをうけた国会議員は二十数人とも三十人を越えるともいわれるがどうか」「二十数人ということはない」「純粋の参考人扱いの国会議員を含めるとかなり多い」「純粋の参考人でありながら容疑線上に浮かんいでると見られて迷惑している議員もあると思うので発表したほうがよいと考えるが」「そうでしょうなあ。とくに“シロ”といってほしい人がいると思うが……」「発表しないという最高検の指示か」「まあ早くいえばそうだが検察の統一見解だ。時期がきたらいえるかもしれないが……」二十五分間の記者会見で関谷代議士、寿原前代議士以外の氏名は、ついに聞かれなかった。」このうち、十数人の議員については、全く純粋にLPガス課税法案の審議経過などについて事情を聞いたとうわさされております。確かに、あなたが先ほど参考人として聞いたということは、ここで出ております。残りの十数人については、業者から受けた献金について、この新聞紙上では、被疑者、参考人は国会議員や秘書、前秘書と、この場合、明らかに被疑者ということばを使っておりますよ。その点についてはどうでしょうか。真相はどうなのか、お答え願いたいと思います。
  137. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 真相を明確に、はっきりと申し上げます。  大阪地検が報告をしてまいっておりまするが、その報告によりますれば、關谷、寿原両氏以外に被疑者として取り調べた国会議員は、報告には一人もありません。これは二人以外に被疑者として調べたものは一人もない。ただ若干の国会議員を取り調べたが、これは事実において調べておる。これは純然たる参考人——被疑者じゃなくて参考人として取り調べた。これが正式の報告でございまして、私はこれを心から信用をいたしております。半年にわたりまして、あらゆる材料、あらゆる角度から、ほんとうに心血を注いで捜査をやった。その結果がここに明確に出てまいって、この二人は起訴を——前議員と關谷現議員とが起訴せられましたが、その他国会議員で被疑者として取り調べるということはない、純然たる参考人として調べた、こういう報告でございまするから、御報告を申し上げておきます。
  138. 浅井美幸

    ○浅井委員 若干名というふうに発表がございましたが、その国会議員の若干名は何名でしょうか。
  139. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 参考人として調べられた者が若干人あるように報告を受けております。
  140. 浅井美幸

    ○浅井委員 若干名というのは何名と解してよいかということなんです。若干では数字がわからない。数は何名かということをはっきりしてもらいたい。
  141. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 純然たる参考人、協力を願うための参考人、しかも被疑者とは全然関係のない者が若干名、こういうことでございます。それを何名やったかとかどうとかいうことは私は必要がないと考えまして、調査をとっておりません。被疑者とかあるいはその他の者であれば厳重なる調査をいたしますが、協力者の数を一々私は正確にとる必要はないと思って、若干名という報告を受けただけであります。
  142. 浅井美幸

    ○浅井委員 先ほどの新聞報道によっても、「とくに“シロ”といってほしい人がいると思うが……」そのようにしるされてありましたが、それらの人に対して私たちは疑惑を持って、そして見守っておったわけです。また、国民もそのような新聞紙上に出てきたいろんな国会議員の名前に対して疑惑を持っております。ですから、その名前が出ておる議員もいるから、これら同僚議員はさぞかし迷惑をしておると、私は推察するのです。そこで、すでに名前が出ておる議員について、任意に取り調べをされたのかどうかを私はお聞きしておるのです。先ほどの金銭の授受の問題も若干出ております。したがって、その他の議員に対してのその授受に対する疑惑は全然なかったのかどうかということを、お聞きしておるのであります。
  143. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 寿原、關谷、前代議士、現代議士以外の方々は、全然被疑者としてのあれはない、疑いがなかったわけであります。非常に潔白であるということをここにはっきりと申し上げます。  参考人としてのことをお聞きになりますが、この参考人というのは、検察庁に協力をする、捜査の、何と言いますか、援助をしてもらうという協力者の意味で参考人でありまするから、その点も御了承願いたい。二人以外は全部疑いがなかったということが明確になっておりまするので御了承願いたい。
  144. 浅井美幸

    ○浅井委員 では、何人かの人たちが参考人ということで任意にいろいろのことを、事情を聞かれたそうでありますけれども、私は、その人たちの氏名をここではっきりと法務大臣が明かされて、そして、この人たちは純綻な参考人でございました、国会職員は実は三十数名いろいろと事情を聴取いたしましたが、全部参考人でございましたと、明らかに天下に公表したほうがいいということを、先ほどから繰り返して言っておる。ところがその点明らかにしていただけません。どうしてその点について明らかにしないのか。私はその理由をお聞かせ願いたいと思うのです。
  145. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 あらためてまたお答えをしますが、寿原、關谷、前代議士、現代議士は、御承知のように起訴せられました。その他の国会議員において疑いを受けた者はない、非常に潔白であった、こういうことをはっきりとこの機会に申し上げておきます。  それから参考人として呼ばれたことに非常に何か意味があるようにあれでありますが、これは意味がありません。ただ捜査するときに検察庁への協力者、こういう意味で参考人として——何も参考人自体のことについての問題ではない。要するにこの事件の捜査についての協力をしてもらう、こういうことでございまするから、さよう御了承を願いたい。
  146. 浅井美幸

    ○浅井委員 それでは、こちらからお伺いいたします。山中貞則氏、田中角榮氏、藤田義光氏、中村寅太氏、江崎真澄氏、原健三郎氏、木村睦男氏、山下元利氏、荒舩清十郎氏、徳安實藏氏、これらの人々については任意の出頭を求められ事情聴取はなかった、この際、これらの人々の潔白を証明するためにも詳しく発表し、国会の権威を守り、同僚議員の名誉を守るために、私はあえてお聞きしたいと思います。率直に法務大臣答えてもらいたい。
  147. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 寿原、關谷以外の方は潔白な方ばかりである、かように承知しております。御了承願います。
  148. 浅井美幸

    ○浅井委員 私の聞いたのは、いま名前を発表した人たちの任意の出頭を求められて事情聴取はなかったかあたっかを聞いているのです。
  149. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 刑事局長答弁させます。
  150. 川井英良

    ○川井政府委員 かなりの数の国会議員の取り調べをいたしたということは申し上げておりまするし、また事実でございます。しかしながら、起訴されました二人以外の方につきましては、純然たる参考人の立場で調べをしたということですので、これはいろいろの事由からその氏名を明らかにすることはお許し願いたい、こう申し上げておりますので、ただいまこれはどうか、あれはどうかというふうに名前をあげられましてその事実を問われましても、それにつきましてお答えすることは、結局最初に私どもお答えしてきたことと矛盾することになりますので、残念なことでございますが、調べたことがあるかいなかについてお答えすることはできません。
  151. 浅井美幸

    ○浅井委員 どのような点が矛盾をするのかわかりませんが、少なくともいま名前をあげたその人たちに対する国民の疑惑を解くために私は申し上げておる。だから任意の出頭があったのかどうか、事情聴取があったのかどうかということをここで聞いているわけです。明らかな参考人であるならば、この点はっきりと明確に答えたらどうですか。なぜ将来の公判に対してこの人たちを発表したならば影響があるのか、明確にその理由を答えてもらいたいのです。
  152. 川井英良

    ○川井政府委員 起訴しましたのは贈賄側二名と収賄側の二名の四名にすぎないのでございますけれども、御承知のようにこの事件は、国会にかけられた法案をもぐっての贈収賄事件ということで、非常に深くかつ広範な内容を持っているものでございます。したがいまして、この公判が進捗するに従いまして、その公判の証拠立証の過程におきましてその全貌がやがて公判において明らかになる、こう思うわけでございまして、私ども、繰り返して申しわけございませんけれども内容についてはなるべく公判開廷前にこれを明らかにしたくない、それは司法裁判というものを認めて、国がそれに具体的な司法事件の処理をまかせておるということからくるものだと思うわけでございますので、せっかくの国会における御要求でございますけれども、公判開廷前まで、なるべくその具体的な点についてはお答えを差し控えさせていただきたい、こういうのが基本的な態度でございます。
  153. 浅井美幸

    ○浅井委員 司法事件ということについてのお話でありますけれども、では、この純粋な参考人のことについて、いま発表したならばどうして司法事件に対して影響があるのか、私はよくわからないのです。私は、この人たちが少なくとも被疑者ではない、犯罪の事実はなかった、純粋な参考人であった、被疑者でない人たちの名前を発表して、どうして今後の公判維持に影響があるのか、赤間さんお答え願いたいと思うのです。
  154. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  この大阪タクシー事件は、御承知のように半年にわたって捜査をやり、非常に複雑多岐にわたっておる問題でございます。これからようやく公判が始まろうとするときにあたりまして、私はそれに影響を及ぼすようなおそれのあることは申し上げられない。私は影響があるとするのであります。その点どうぞひとつ御了承を願いたい。いまお述べになりましたようなことは、公判が開かれてくれば自然と明るみに出てくる問題であって、その公判前にとやかくと申し上ぐることは影響を及ぼすというふうに私は考えておりますので、御了承を願いたい。
  155. 浅井美幸

    ○浅井委員 いま法務大臣は、これらの人たちの名前を出したならば影響があるとおっしゃったのですが、どのような影響があるのか、理由を具体的に説明願いたい。だから、純粋な参考人であるならば、どうしてはっきりとこの点に対して、その任意の調べを受けたということについて言えないか、私ははなはだ理解に苦しむのです。国民は、数多くの議員の名前が出てきて、そして金銭が動いておった、いろいろなことについて疑惑を持っておる。だから、この人たちが一体どうなのかということを聞いておる。しかるに、人数は言えない、若干名だ。名前はノーコメントだ。そしてあなたは、実際そのことについて最高検の指示があったのか、大阪地検に対して指示をしたのか、それは私は知らない。都合のいいことは知らない、言えないでは、この黒い霧の事件に対する国民の疑惑は晴れない。私は最小限の質問をしておるのです。ですから、この点についてもう一度お答え願いたいと思います。
  156. 川井英良

    ○川井政府委員 お説のように、およそ疑いを受けたというふうなことが世間にいわれておるものについて、捜査の結果を明らかにすることもなるほど一つの方法かと存じます。しかしながら、私どもは以下に申し述べるようないろいろな理由に基づきまして、さようなことは適当でないという考え方を持っているものでございます。  やや詳しく申し上げますと、おそらくこの公判は、御存じのようにかなり物的証拠もございますけれども、多くは証人によってその正否が決せらることになるものだ、かように考えられるわけでございます。そういたしますと、この事件をさばく裁判所はもとよりのこと、原告、被告双方にわたりまして、この公判のこの部分について、この事実のこの立証についていかなる証人が用意されているかということが非常に注目の的になるわけでございます。したがいまして、私は国会議員をも含めまして、その他の人につきましても、何人、だれそれについてこの事件の関係において検察庁が取り調べをしたということを、公判の開廷の前に公にすることは、私、裁判の公正のために、裁判官に予断を抱かせるという意味から申しましても適当でない、こういうふうに考えるものでございます。その意味におきまして、氏名を公表することは、現に係属中の裁判に影響を及ぼすおそれがある、これが第一点でございます。  それから、大臣からも先ほど申し上げましたけれども、何と申しましても、犯罪の容疑なく、単なる純然たる参考人、関係人として供述を聞いたのだ、こういうことに相なっておりますので、その人たちは主として検察庁の捜査に協力をし、検察庁の今後のあり方に信頼をして協力をしてくれた方々でございます。このような方々の氏名を明らかにするということは、その人たちの名誉のためにも適当でない、こういうふうに考えておるものでございます。
  157. 浅井美幸

    ○浅井委員 私は、国会議員のほうだけ名誉が守られたり、あるいはこの権威のためにということで発表がなかった。業者やあるいは陸運関係の職員関係の人たちの処分発表は、これは過酷をきわめるほど発表しております。しかるに、国会議員のほうの発表については、いわゆるノーコメントという深いベールの中に隠された、国民の疑惑の晴れないままに、このまま押し切ってしまおうという、何かしら不可解な姿勢がうかがえる。ですから、法の平等のもとにおいて、いわゆる個人ということについては平等でなければならない。したがって、このような関係から、私はこれらの人々の名誉を守るためにはっきりと言えということをさっきから繰り返しているわけです。ですから、どうしてもいま言った人たちが事情聴取が、あったのかなかったかということを明確になるまで、私は次の質問を続けるわけにはいかないと思うのです。委員長、善処してもらいたいと思います。
  158. 川井英良

    ○川井政府委員 検察庁が被疑者として事件を立件したもの、純然たる参考人ではなくて、容疑が濃厚だということで、起訴は別問題でございますけれども、被疑者として立件をしたものにつきましては、検察庁が積極的に発表した次第であります。しかしながら、議員であると、あるいはその他とを問わず、被疑者にあらざる者について検察庁が積極的に発表した事実はございません。しかしながら、人間を検察庁へ呼び出したり、あるいは検事が出張いたしまして取り調べをするということは隠せない事実でございますので、いろいろな観点からずいぶん慎重な態度をとったつもりではございますけれども、その間において若干のものが不本意に漏れたということが真相でございます。
  159. 浅井美幸

    ○浅井委員 純粋なる参考人であれば国民は疑惑を抱かない。したがって、いま私がお聞きしておることについては、純粋な参考人であるならば、なぜこれらの人たちをこのような理由によって、純粋な参考人として呼んだんだということを、明確にここで国民の前に言えないのか、一体取り調べたのか、取り調べないのか、あるいは事情聴取があったのかなかったのか、なかったらなかったということをお答え願いたいのです。あったならあったと率直に答えてもらいたいということを言っているのです。お答え願います。
  160. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 重ねての御質問にお答えをします。  純然たる参考人は、たびたび申し上げますように、その本人の犯罪とか本人の容疑ということに全然関係がないのであります。この点をひとつ御了解願いたい。ただ、検察庁に御協力を願う、こういう意味の参考人でございますので、その点御了承を願いたい。
  161. 浅井美幸

    ○浅井委員 この辺はどうしてもあなた方に発表してもらえないし、また答えてもらえない。やむを得ませんので次に進みますが、私はその他に十分なる資料は持っております。いろいろの影響を考慮して、本日はこの点については触れませんけれども、これは重大な反省と自粛を私は期待しなければならない重要な問題だと思います。いかなる業界も献金をするときに、ただ理由もなく出すわけはないのでありまして、一般的にいって、業者と政治家の間には、もし何の約束もない場合でも、もらったほうには一種の義務感が生じてくるもので、結局金の力によって支配されることになるのであります。タクシー汚職に見られるがごとく、政治献金によってLPガス課税法案を曲げられたといううわさを聞くについても、政治資金授受の際に第三者を介入しておったから、これはわいろではない、そのような言い方の、言い抜けのできるざる法の政治資金規正法及び公選法、刑法の抜け穴をフルに利用しているのであります。政治資金の収入及び支出を不明確にし、政治活動の不明朗化をはかり、そうしていろいろのこのような不明朗な姿は、すべての汚職、疑獄のその胚芽は、実にここに存在するのであります。このように、法の規制なくして政治献金の規制はできないのであります。昭電事件、造船疑獄、共和製糖事件、陸運局汚職、タクシー汚職、さらに最近におけるところの都庁の汚職等々の一連の汚職、疑獄事件等は、政治資金規正法が改正されない限り今後もあとを絶たないし、事件があいまいにされてしまうおそれがある。総理は、この現状を見て、汚職事件の根絶のために規正法をどのように改正しようと考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  162. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 政治資金規正法につきまして、たびたびこの委員会あるいは他の委員会でもお答えいたしましたように、私は過去の経験、審議の苦い経験にかんがみまして、今回はぜひ成案を得るように、ただいま関係のところでいろいろ案を練っておる最中でございます。
  163. 浅井美幸

    ○浅井委員 かつて佐藤総理は、規正法改正案について、国民にまことに申しわけない、理想と現実のギャップが大きく、現実に即した案をつくらなかったのが失敗であった、今度はその方向に切りかえるというふうに述べられたことがございます。これから現実に即した法律をつくりたいというふうに言っておられますけれども、この点については、どういうことであり、また現実に即すということはどういうことか、まずお答えを願いたいと思います。
  164. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 私は、中身についての指示を一切しておりませんが、ただいま与党並びに自治省の間におきまして、成案を得べくいろいろ議論をいたしております。案を練っておる最中であります。今度はぜひ成立さすように、これがねらいでございます。
  165. 浅井美幸

    ○浅井委員 巨額の政治資金は選挙や政治を腐敗させていくところの大きな原因になりまして、政治資金規正法を改正し、規制を強化することは国民の願うところであります。ところが、現状はどうかと見てみますのに、自民党において現在検討されつつある素案は、第五次選挙制度審議会の答申はおろか、前回の政府案に比べてみましても、大幅に後退するかの印象を受けるのでありますが、それは政治資金の寄付制限を緩和するために、政党に対する寄付と政治団体、個人に対する寄付を別勘定にして、寄付可能額をふやそうとしたり、また選挙のときにおいて特例措置を設けて制限に抜け道をつくり、事実上規制の意味をなくすことなどがいま素案の中に出てきておりますが、総理は、この特例措置については、あなた自身はどのように考えておられますか。
  166. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 まことに不勉強だといっておしかりを受けると困りますが、それぞれのところでただいま議論している最中でございまして、まだ私が指図する段階になっておらない。したがいまして、ただいまのような件について私がお答えができないことは御了承をいただきたいと思います。
  167. 浅井美幸

    ○浅井委員 いま総理は、まだ特例措置について勉強していないそうでありますけれども、選挙のときにおいては、また政党に対して二千万という話が出ております。これに対してあなたは、現実に即してということばと、いまの政党に対するところの特例措置の関係性についてあなた自身の考え方、決意はどのように考えるかをお答えを願いたいと思います。
  168. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申しましたように、中身につきまして十分まだ研究しておりません。しかし、この前の審議の際におきましてこの二千万円云々が非常に反対を受けたものであるという、そのことは私も記憶しております。
  169. 浅井美幸

    ○浅井委員 記憶をしておるのはわかりますけれども、あなた自身その問題についてどのように処理されようとしておるのかを聞いているわけです。
  170. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 いま私は具体的に、どういうように処理するかということを申すだけの材料を持っておりません。しかし、私はぜひとも今回は成立させたい、かように思いますので、ただいまそういう意味で抵抗の少ない方法を考える、かように御理解をいただきたいと思います。
  171. 浅井美幸

    ○浅井委員 けさの新聞の報道によれば、あなたは今国会において政治資金規正を出されるとは言っておられるけれども、事実上成立はむずかしい、見送りか、というようなことを書かれておりますけれども、あなた自身、いまの問題を含めて、確かに今国会に提出し、このようなタクシー汚職にまつわるいろいろの政治献金について規制をしていこうという考え、決意をお持ちなのかどうか、お答えを願いたいと思います。
  172. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 私はこの国会でぜひ成立をしたい、かように考えております。そういう意味で、あるいは二月中にもそれを出さなければならない、かようなことが皆さん方の御意見でもありました。大体二月中に出さないと間に合わないぞ、こういうようなお話がありました。もうすでにきょうが二月末でございます。今日これを提案することはできない。昨日もこれについてお答えしたのですが、やや私、おくれておるのじゃないか、かように思いますけれども、成案を得たら必ず、私、これが成立するだろう、かように期待をしておりますので、どうか提案されましたら御審議のほどお願いをいたします。
  173. 浅井美幸

    ○浅井委員 さて、質問を変えて、法務大臣にまたお伺いしたいのでありますけれども、前回この委員会において法務大臣は私の質問に対して、検察事務は正しく法律を適用し、明るい、不偏不党で正しい仕事をし、検察陣営がすべての国民から信頼を受け、信用を高める努力をすると答えられました。今回の事件捜査の経過から、検察のとった態度は法務大臣のことばに反しては、なはだ不明朗であるとの国民の声があります。これは、検察の正義の具現という使命に対する国民の信頼を裏切ったことになると思うのですが、この点についてどのように考えておられますか、御答弁をお願いいたします。
  174. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  今回の大阪タクシー事件につきましては、検察当局は非常な厳正な立場で、しかも約半年にわたりまして徹底的にあらゆる角度から、しかも慎重に検討をいたしました。そうして、集めました証拠だけでも、実にたくさんな証拠を検討をいたしたのでございます。検察陣は実によく勉強をしてくれ、しかも他からの力というようなものは一つもなく、検察の良識に従いましてこの大事件というものを処理いたしたのでございます。私は、この大阪タクシー事件に対する検察当局の努力、また不偏不党の態度、厳正公正に徹底的に熱意を持って勉強したことについては、検察陣の栄誉を高めたものと考えておるのでありまして、敬意を表しておるような次第でございます。
  175. 浅井美幸

    ○浅井委員 これまでにも法務大臣の指揮権発動ということがございました。すなわち造船疑獄に関連して、当時の自由党の幹事長の佐藤榮作氏が危殆に瀕したときに、時の犬養法相がとった強権発動が唯一の表面に出た指揮権発動でございました。このことによって、ゆゆしい汚点を捜査史上に残したわけでありますが、今回の捜査で実質的な指揮権の発動を行なったのか、または行なわなかったのか、明確にしていただきたいと思います。
  176. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 形式的並びに実質的、両方面から見て、何ら指揮権を発動したというようなことはありません。検察陣の良識に従いまして公平無私に徹底的に捜査を遂行した、かように考えておりますので、御了承を願います。
  177. 浅井美幸

    ○浅井委員 昨年の七月、大阪においてタクシーの冷房料金値上げが国民の反対の中で強行されました。大阪地検は、この冷房料金値上げの認可をめぐって大阪陸運局とタクシー業者の間に贈収わいがあることを確認し、七月の二十七日、大阪タクシー協会の銀行調査を開始し、使途不明金を発見いたしました。そうして八月の十二日、大阪タクシー協会並びに多島会長宅などを強制捜索し、多島日記をはじめ多数の証拠品を押収し、さらに十六日には相互タクシー本社並びに多田社長宅、十七日には京都の相互タクシー、また二十一日には神戸の相互タクシーなど矢つぎばやの強制捜索を行ない、各紙は一斉にこのことを報道し、国民は検察陣の正義の戦いに意を強くして成り行きを注目しておりました。しかるにそれ以来捜査は暗礁に乗り上げたごとく、ぷっつりと音さたがなくなりました。なぜそうなったのか調べてみますと、八月二十一日の最後の第四次強制捜索を終えて八月二十七日、大阪地検特捜部は検討会を持ち、汚職と断定し、その後最高検の捜査方針の指示を待っておったわけであります。すなわち、九月五日と十日に大阪地検より最高検に報告するために上京することを要請し、事件の内容を文書で詳しく報告したのであります。この点については、その事実はあるのかないのか、またそのことについてお答え願いたいと思います。
  178. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  今度の半年にわたる大阪タクシー事件につきましては、最高検それからまた地元の大阪の検察関係、一致協力しまして私はこの捜査を遂行した、かように承知をいたしております。中断をするとか、あるいは意見の相違があったとか、あるいは他からの力が入ったとか、あるいは一部の指揮があったとか、そういうふうなことは全然聞いておりません。検察が一致協力してこの捜査に当たった、かように承知をいたしております。
  179. 浅井美幸

    ○浅井委員 しかし、大阪地検では再度の上京要請、すなわちこの強制捜索によって得た資料を持って、そうしてその実情を最高検に説明しようということの要請を二回にわたってやっておりますけれども、何ら返事が最高検からなかった。そこで大阪高検からまたさらに上京を要請したのでありますが、最高検はこの要請を押えて上京を許さない、そうして捜査方針についても何ら指示を与えなかった。第一次強制捜索より、すなわち第一次強制捜索は八月の十二日でありますが、この約三十日間、何らなすことなく手をこまねいて態度決定を遅延させておった最高検の姿があるのですが、この点について法務大臣、どのように解釈したらよろしいですか。
  180. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  大阪タクシー事件は、御承知のように非常に重大な問題でありました。最高検と地元と十分打ち合わせをやってこの大事業をいたしたように承知をいたしております。その間にいろいろな打ち合わせのために時間がかかったとかいうようなことはあったと思いまするが、何か意見が違って停滞をしたとかいうようなことは一切承知をしておりません。
  181. 浅井美幸

    ○浅井委員 いま法務大臣から、意見が違ってとかそういう事実はなかったというお話でありますけれども、この八月十二日の第一次から九月十三日に至って、最高検から、大阪地検は来るに及ばず、大阪高検の関係のみ出頭せよと連絡があった。これによって九月十四日に大阪高検の横幕刑事部長、門司次席検事が上京、事情説明を行なったのでありますけれども、なぜ大阪地検関係者から直接説明をしたいというのに聞かなかったのか、お答え願いたいと思います。
  182. 川井英良

    ○川井政府委員 先ほど御指摘のように、昨年の夏から捜査が始まりましてことしの一月捜査を終結したわけでございますが、この約半年の間に、先ほどお述べになったような経過をたどりまして捜査が進んでまいりました。その間におきまして、事件が重要かつ重大な事件でございますので、高等検察庁はもとより、最高検察庁にも相談の上で、検察が一体となってこの事件を処理したわけでございまして、その間に、あるいは最高検から地元の担当者を呼び出したこともありまするし、逆に最高検から指示がなかったけれども、地元のほうから最高検の意見を求めるために進んで上京して協議があったというようなことがあるわけでございまして、半年の間における検察相互間の連絡というのはしばしばあったわけでございます。
  183. 浅井美幸

    ○浅井委員 私は、この問題について、検察庁の捜査の進展状況を申し上げておるのです。一括してその半年間の話をしておるのではないのです。いま捜査の当初の話をしておるのです。そのときの最高検の態度がいろいろと問題にされるから、この点について聞いておるのです。  八月十二日から八月二十一日までにいろいろと家宅捜索をして多島日記等の押収を終わって、八月二十七日に大阪地検の特捜部で検討会を開いて汚職と断定をしておるのです。その汚職と断定をしたことについて、最高検に上京したい旨をたびたび申請をしておる。それを十三日に至って、大阪地検は来るに及ばず、高検だけ出てこい、この姿について私は聞いておるのです。これは一体どういうことなんですか。
  184. 川井英良

    ○川井政府委員 ただいま仰せのような点は、私ども検察、法務の組織の中におります者が報告を受けたりいろいろ見たりしておるわけでございますが、したがって、私の申し上げることがより事実に即するものだ、こうお聞き取りをいただきたいのでありますけれども、最高検察庁が、この事件の処理について必要があって、地検はよろしい、高検だけ来ればよろしい、こういうこともあったと思います。逆にまた、高検は来るに及ばないけれども、現実に調べた地検の検事だけが来てくれ、こういうこともあったと思います。また、最高検察庁の検事が大阪方面に出張したときに、大阪の地検ないしは高検に立ち寄りまして、この事件の進捗状況を聞きまして、またいろいろな指導助言を与えた、こういうこともあったわけでございまして、もし地検の検事は来るに及ばない、高検だけがよろしい、こういうことがかりにあったといたしましても、そのこと自体は特別な意味を含むものではございません。  なお、最高検察庁がこれを押えたのじゃなかろうかというふうな御疑問からの御質疑のようにも拝聴しておったわけでございますけれども、この事件は、すべての点について非常にむずかしい法律上、事実上の問題点を含んでおりますし、事は夏における法案の審議をめぐっての贈収賄という、きわめて重要な事件でございますので、検察の知能を傾けまして、間違いのないように万全を尽くしたい、こういう立場から、慎重な検討を重ねたということが真相でございまして、決して上級官庁が下級官庁を押えたというようなことは全くございません。
  185. 浅井美幸

    ○浅井委員 ごまかしの答弁をしてもらっては困るのです。九月の五日と九月の十日に、最高検に大阪地検が上京したいという旨を再度にわたって要請しておる。それを九月の十三日において、大阪地検は来るに及ばずという返事だった。事件によっては大阪高検を呼んだりあるいは地検を呼んだり、そういういろいろな話を言うけれども、これでは、地検は呼ばないで大阪高検を呼んだその理由は何ということを聞いておる。
  186. 川井英良

    ○川井政府委員 そういうふうな場合があったとしますならば、それは地検の検事を呼ぶ必要がなかった、こういうことだと思います。
  187. 浅井美幸

    ○浅井委員 あげくの果てには、九月の十八日、最高検の片岡平太検事から、高検を通じ、LPG汚職の追及はやめて、まず陸運関係の供応をやれと指示してきた。このことは重大問題だと思うのです。先ほどの新聞の天野検事正のことばどおり、「最高検の指示か」「まあ早くいえばそうだ」ということばが思い当たる。国会議員の名前を言わなかった、あるいは捜査に対する圧力を加えた、このことに対して類推できるわけです。赤間大臣、この点についてどうですか。
  188. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  検察庁に対しまして圧力を加えたというような事実は全然ありません。  それから第二に、検察は一体でございまして、こういう重大な問題については、全力をあげてみんなの力でこの捜査が行なわれておるのでございます。それで、大阪で言えば、地検もそう、地検のうちの特捜部が特に力を——その上には高検がありますし、東京には最高検がありますので、これはおのおの情報を得、しかもいろいろな研究をいたしまして、この問題の研究に当たった。しかも、ただいまもお話しいたしましたように、国会議員にも関係のあるような問題でございますので、いろいろな調査研究が行なわれたのでございますが、筋は、あくまで検察が一体となって真剣にこの問題に取り組んだ、かように私は考えております。
  189. 浅井美幸

    ○浅井委員 答弁をごまかしてもらっては困るのです。八月の強制捜索によって汚職と断定した大阪地検の捜査希望を裏切り、圧力を加えた最高検の処置です。だから、LPG汚職の追及はやめておいて、陸運汚職をやれと言ったじゃないですか。さらに、九月二十四日には、高検の門司次席検事と大阪地検の河田主任検事の二人が上京して、法務省の指定旅館の「かつら」で、馬場検事総長、渡部次長検事、大沢刑事部長と会合したのでありますが、その席上、大阪地検から初めて上京したこの河田主任検事に対して、馬場総長から、今回のこのLPG汚職に対する捜査についてきびしい面罵があったといわれております。この事実について、一体法務大臣はどのように考えておりますか。
  190. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げますが、いまお述べになりましたようなことにつきまして、法務大臣は聞いておりません。私は、検察庁から承ったところによると、重大な事件だから、地元といわず最高検といわず、力を合わせてほんとうに徹底した捜査をやらなければならぬ、それで全力を尽くして一糸乱れずやったという報告を最高検から受けておりまして、いまお述べになりましたような、何か意思の疎通があるとか、あるいは妨げたとか、そういうふうなことは、一切私は報告を受けておりません。それからまた、検察庁としましては、事件がいろいろありますときに、どの事件から先に捜査するとか、あるいは先にするかあとにするかとか、あるいはいろいろやるということは、これは検察庁の考えによってやられることでありまして、私はそれについてとやこう言う考えを持ってなかった。その点御了承を願いたい。
  191. 浅井美幸

    ○浅井委員 いま私は、九月十八日の最高検の指示、あるいは馬場検事総長らの大阪地検に対する、河田主任検事に対する、そのタクシー汚職をやろうとしておる若い主任検事たちに対する最高検の態度が、どうしても不可解なんです。そうして、この事件に対する圧力が加わったという事実、その裏づけに対してあなたは知らないとおっしゃった。これは調査して、この点について明確にお答え願いたいと思いますが、委員長、取り計らっていただけますか。
  192. 川井英良

    ○川井政府委員 ただいまお述べになりましたような、検察の首脳と現場の責任者とが会合したという事実はあります。しかしながら、その会合においてどういうふうな内容のことが議論されたかということにつきましては、遺憾ながらお述べになるような事実はございません。
  193. 浅井美幸

    ○浅井委員 いま刑事局長からの話は、遺憾ながらそんなことはなかったというお話でありますが、私は、ここで発言する以上、責任を持ってこのことについては調査しております。いまは事実がなかったと言う。私はあったと言う。この点をはっきりしてもらいたいと思います。
  194. 川井英良

    ○川井政府委員 現場と最高の指揮官である最高検察庁との間には、ただいまおあげになりましたような機会ばかりではなくて、もっとしばしば連絡をしているわけでございます。なお、大阪の地検が上京します際には、たくさんの報道関係者がついてくるというようなこともございまして、捜査はあくまで密行を要するというふうなことから、非常に苦心を重ねまして、大阪、東京以外の地で会見をしたということも実はしばしばあるわけでございます。その間の事情につきまして、私、逐一最高検察庁から報告を受けておりますけれども、その間におきまして、証拠関係の吟味の過程において意見が対立したり、あるいは法律関係の解釈において意見の対立があったということはもとよりございます。これは検察陣といたしまして、重要な方をつかまえて公訴を提起するというふうな、人権にきわめて大きな影響を及ぼす事務でございますので、内部におきましてあらゆる角度から真剣な検討を加えるということは、私どもの職責として当然のことであると思います。したがいまして、そういうふうな職務上の意味におきましての意見の交換ということはございましたけれども、事件になるものを事件にさせない、こういうようなことにつきまして、上級機関が下級機関に圧力をかけたというふうな事実はございません。
  195. 浅井美幸

    ○浅井委員 私は、最高検の態度は非常に不可解である、そのように思って、このことについて質問をしておる。それを検察一体の原則という通常なことばでごまかされては困ると思うのです。  では、その捜査経過の次に移ります。  九月二十六日に、田中法務大臣が、前法務大臣でありますが、何かの名目で大阪に来て、記者団に対し、LPG、タクシー汚職事件の質問に答えて、政治的圧力は加えぬと発言しておりますが、法務大臣が来阪する前々日の二十四日に至ってやっと大阪高検が上京しておる事実を見ても、私は、すでに政治的圧力は加わっておったのではないかと疑いたくなります。この点について赤間国務大臣どうでしょう。
  196. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えします。  政治的圧力は、大阪タクシー問題には一切加わっていないと確信をいたしております。
  197. 浅井美幸

    ○浅井委員 十月三日に、馬場検事総長がやはり大阪にやってまいりまして、新大阪駅で記者会見をして、タクシー汚職事件については知らなかった、これからじっくり捜査すると、最高検の態度を記者団に表明しております。そのときの録音が大阪のテレビ局にあったので、証拠として持ってきてはございます。少なくとも検事総長がこの十月三日の時点において何にも知らなかったということは、これは絶対にないはずであります。もし馬場検事総長が知らないならば、最高検の幕僚が報告をしなかったか、それとも故意にうそを言ったか、もしうそを言ったなら大問題であります。このことについて明快な答弁を求めるものであります。
  198. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  私は、いまさっきからお述べになりましたようなことは好ましくないと考えまして、就任以来最高検にたびたび当時の事情から全部事情を承ったのであります。何となれば、大阪タクシー事件というものは大問題であるから、何かその間にいろいろないきさつがあったのかどうか……。ところが、検察庁の話では、一切いろいろな好ましくないようないきさつはない、あくまで、さきにも言いましたように、検察一体の原則でこの問題と取り組んできておる、こういう報告を私は受けて、非常に喜び、また私も督励をして、この事件が片づいた、かように承知をいたしております。
  199. 浅井美幸

    ○浅井委員 では、時間が切迫してきましたので、少し続けて申し上げます。この圧力の経過をよく赤間大臣は聞いておいてもらいたいのです。  このじっくり捜査するといった表現の中に、今後の捜査に関する政治的圧力を示すものであり、十月九日に最高検は天野検事正と別所特捜部長の上京を断わった事実が、何よりもそれを物語っております。なぜかならば、馬場検事総長は十一月に退職し、そうして十一月二日の井本臺吉新検事総長就任に至るまで、馬場検事総長が事件に関して指示しておりました。そうしてその指示してやらせた事件は、十月十八日に贈賄容疑の多田相互タクシー社長、多島大タク協会の会長、井上専務理事等に対して任意の出頭で取り調べをやらしただけであります。この点についてあなたがいろいろと断わったり、またはやっておる事件が非常にスローモーである。重大な事件だから時間がかかった、そういうお答えでありました。今回の事件は、最初に八月二十七日に大阪地検で汚職と断定して、十月十八日に贈賄容疑で任意出頭をようやくさせた。それが今回の事件の大きな遅延の状態であります。また、その強制捜索によって完ぺきな傍証ができた。俗に言う筋のいい事件、これほど筋のいい事件は珍しいといわれるほどの傍証固めができたという献金事実がありながら、なおかつ十月十八日に任意捜査でやれというように指示したことについては、一体どういうことなのか、お答え願いたいと思います。
  200. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えをいたします。  法務大臣といたしましては、任意捜査をやれとか、強制捜査をやれとか、そういうふうなことは一切指揮をいたしておりません。検察陣のお考えで任意捜査をやられたものと考えておるのであります。
  201. 浅井美幸

    ○浅井委員 十月十七日に、最高検が、大阪高検を通じて大阪地検に対して、明日から任意捜査を始めるようにと指示したのです。いまあなたは指示したことはないとおっしゃった。大阪地検は、この事件に対して、八月の音初から最高検に報告をし、あらゆる文書や、また再三上京してこの事件に対しての概要を説明しておる。しかるに、さらにまた十月十七日にいまのこの指示があった。いまあなたはなかったとおっしゃいますけれども、ほんとうになかったですか。
  202. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えをします。  法務大臣は、任意捜査とか強制捜査とかいうようなことには一切関係をしてない、こういうことを言ったのです。それで、最高検と地元の検察庁との間においてはよく話し合った上でやったものと私は考えておるのであります。これはどうしても重大な問題になれば、地元の検察庁と最高検とがよく打ち合わせをして、どういう方法でやることが望ましいことかということをよく研究してやるようになっておるのでありまして、私は、その研究の結果処置がとられたものと考えております。
  203. 浅井美幸

    ○浅井委員 十一月五日に、新しい井木検事総長就任後の最高検に対し、大阪地検は最終的な上京をまた要請しておりますけれども、最高検が大阪地検と合同捜査会議を開いたのは十一月二十二日です。これが八月の強制捜査以来初めて持たれた会合であります。そして二日後の二十四日に、タクシー業界の大手の四理事と多島大阪タクシー協会会長に出頭を求めて取り調べを行ない、翌二十五日に逮捕に踏み切った。実に八月十二日から四カ月問かかっております。これらの経過を見るとき、いま幾つかのことを申し上げましたけれども、重大な問題点が伏在しておることを私は見のがしてはならないと思う。そこで、最高責任者の法務大臣はどのように考えておるのか、聞かせていただきたいと思います。
  204. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えします。  これはさきに申し上げましたように、非常に重大な問題で、国会にも一部関係があるような大きな問題でありまするので、非常に慎重にやったものと考えております。そのために相当の日時を要したのは、これはやむを得ないことで、私は、この半年間における大阪地検の努力というものは非常に高く買っておる次第であります。
  205. 浅井美幸

    ○浅井委員 この最高検の不可解な態度によって、事件が非常に延びてきた。そうして、大阪地検はこの事件に対して熱意を持ってやろうとしておるのにやれなかったといういろんな問題点が出てきておるわけです。このように事件が延びてきたのでは、事件関係者に証拠隠滅の期間を十分に与えて、さあどなたもすみやかに関係証拠は消してください、あるいは関係のある者に対しては十分話し合いをしてつじつまを合わしてください、そう言っておるのと同じであり、もうこれはだれが考えても、その捜査に対する圧力が加わったということは推測できるわけです。表面に出た指揮権発動は造船疑獄のときでありますけれども、それ以外は、表面に出ない圧力によってあらかたこの種の事件が重大であるからということばのもとに消されてしまっておるのではないか。私がただいま長々と述べましたこの捜査の経過も、この点について深い疑問を持ち、そうして、今回の事件がわずかに氷山の一角だけがあらわれて、一切のものは証拠なしに消えていってしまうという、この国民の心からの怒りに対して、私はここで法務大臣に対してお聞きしたいわけであります。この点について、あなたは先ほどから厳正公平であった、そのように言っておられますけれども、私は納得いかないのであります。  法務大臣にさらにお聞きいたします。  あなたは、一月十九日に最高検でタクシー汚職の最終処分決定会議をしておったときに、まだ結論の出ていない午後四時過ぎに、首相官邸の玄関に集まっておった記者団に、起訴は四人だよと指で数を示し、事前に処分結果の内容を発表されたということですが、このことは、法務大臣として軽率であったと言って済まされない重大な意義を持っております。さらに重大なことは、最高検で最終結論の出ない前に、その捜査に関連して法務大臣がそのようなことを発言しなければならぬ理由は何かということであります。この点についてお聞きしたい。
  206. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  私が記者団に申したときは、すでに最高検と地元のほうからおいでになった方々と共同の会議決定をしたあとでございます。決定をした結果を聞いて私は新聞に発表した。別に早過ぎるとかその他の理由で非難を受けることはないと考えております。正式の決定がありました後に記者団に発表をいたしました。
  207. 浅井美幸

    ○浅井委員 最高検の会議がまだ続行中でありました。当時のことについて、やはり新聞が出ております。「検察当局の処分発表が意外に早かったのはなぜだ。」「あれは赤間法相の“放言”が原因だ。大阪地検によると処分の公表は、早くても二十三、四日ごろの見通しだった。ところが十九日の午後四時すぎ、赤間法相が佐藤首相へ処分の報告にいき官邸入り口で記者団に「起訴は四人にきまったよ」ともらした。そのとき最高検は首脳会議中だった。会議の中途で、しかも最高検をだし抜いて大臣が異例の発表をしたというので、関係者は怒ったり、あやまったり、あきれ返っていた。」「大阪の検事も「しろうとの大臣にはかないませんよ」とその“無定見”を非難していた。処分内容を当局の公表前にもらすことは一極の「不当介入」で、検察の中正性を傷つけるものだ。中には「エンプラ騒ぎの最中に発表すれば大きく報道されないだろうと予定を早めた」とみるむきもある」このように書いてあります。あなたは先ほど答弁の中で、個々の刑事事件については指揮しないと言われたが、そのことばと、いまの最高検の首脳会議が終わらない前にその処分決定を先に発表されたことはどういうわけですか。
  208. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 別に先に発表をしたわけでも何でもありませんで、正式に最高検の会議において壽原氏と關谷氏が起訴に決定をした、業界は二人起訴になったということ、正式の報告を法務大臣として受けたので、これは非常に重要な問題でございまして、国会議員に関する問題でありまして、私は、法務大臣がそれを新聞に報告をすることにおいて何も差しつかえはない、かように考えて発表いたしました。御了承願います。
  209. 浅井美幸

    ○浅井委員 あなたが何の気なしに発表したということの背後に、今度の事件に対する政府与党や法務省当局の姿勢がうかがえるから、私はその点について聞いているのです。最高検の結論の正式発表は、一月二十日の午後四時三十分に大阪地検と同時に発表しております。この時間は、あなたが放言なさった時間からまさに二十四時間たっております。正式の順序からいけば、最高検会議の結論が出て大臣に報告があり、その後であなたが閣僚に報告するというのが普通じゃないですか。それを最高検の会議のさなかにのこのこと総理のもとに出かけて、そうして官邸の入り口でもって非公式に発表したということは、あなたが事前に最高検に、今度の事件の処分は四人にしぼり、焦点を四人に合わせろということをひそかに指示しておったのではないか、そのように疑えるわけです。あなたは単なる事前発表のミスをおかしたものではなく、明らかに指揮権を側面的から発動したものであると断定せざるを得ないけれども、どうですか。
  210. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えをします。  私は、指揮権をやるとかあるいは外部の力で検察に力を加えるということが一番きらいなものであります。絶対にそういうことをしない、神聖な検察の働きを十二分にひとつ信頼してやってもらうというたてまえをとってまいっております。そういう点からいたしましても、いまお考えになるように、私が何かこう指揮するかのごとき意思があったというような誤解は解いていただいて……。絶対にそういうことは私は考えておりません。発表をいたしましたのは、ただいまも申し上げましたように、最高検において会議決定をした、こういうふうに決定をしたという正式の報告を私は受けましたから、それを発表した次第でございますので、どうかひとつ誤解のないようにお願いを申し上げたい、かように考えます。
  211. 浅井美幸

    ○浅井委員 私は誤解なんかしておりません。あなた自身が正式発表をしたのかどうか。また、あなた自身がその正式発表をする権限を持っておるのか。さっき、あなた自身が、個々の刑事事件に対しては私は関知しない、そのように答弁したではないですか。  そこで、総理にお伺いしたいのでありますけれども、私のきょうのこの質問を一貫いたしまして、捜査に対する疑問が非常に多い。また、処分発表の際におけるところの国会議員に対する、その結果に対する発表の仕方、国会議員の氏名を全然表に出さない、このような数多い疑問点を持っております事件でありました。日本の検察界に対する国民の期待を裏切らせたくはないので、私はこの質問をさせていただいたわけでありますが、このような検察の姿勢に対して総理の見解はいかがです。この点についてお答え願いたいと思います。
  212. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  私は、ただいま浅井君のいろいろの質疑を通じて、ただいまも、いまの日本の検察陣というものはたいへん厳正、公正である、かように確信しておりますが、この質疑を通じまして、一そう、これらの点において厳正であり、中正であり、また公平でなければならぬ、かように私考えます。ただいまの審議を通じていろいろ述べられた御意見、これなどは、十分検察当局に対しましてもいい参考になるだろうと思います。なお、政府自身といたしましても、私もよく謙虚に、また平静に伺ったつもりでございます。そういうことで、この権威のある検察陣、これをやはり私どもも盛り育てていかなければならない、かように思いますので、権威を持って、そして社会的な悪に対しては厳正にこれと取り組む、こういう態度で臨むようにしたいものだと思います。  ただいま、当時の捜査の内容等について、これを一々報告しないということ、こういう点についてだいぶん御不満がございますが、私は、むしろその点では、先ほど来法務大臣並びに刑事局長などが答弁をいたしましたように、事柄はやはり個人の名誉に関する事柄でもございますから、無用な摩擦は起こさないようにいたしたいものだと思います。問題は、検察陣が権威を持って厳正にこういうことと取り組んでいるか、その姿勢が大事だ、かように思います。ありがとうございました。
  213. 浅井美幸

    ○浅井委員 先ほどの答弁で、国民に対する疑惑を非常に深めた問題がありましたが、まじめな検察陣を冒涜することのないように、いま総理のことばにもありましたが、最後に、法務大臣に対して、いまあなたのお答えになった、その公式な発表を間違えてやったことに対する姿勢に対して、私は反省をしてもらいたいと思う。行き過ぎであると思うし、また、大きな誤りであったと私は思うのです。あえて追及はいたしませんが、今後このようなことのないように、あなた自身の決意はどうか、最後に承りたいと思います。
  214. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 御注意の点は、将来十分注意してまいりたいと考えます。
  215. 浅井美幸

    ○浅井委員 どうか、このようなことが——一番最初に申し上げましたように、政治資金規正法の適正な成立が早期に望まれることがこれは急務であると思うのであります。どうか総理も、この点について、今国会において政治資金規正法の成立を私は強く要望して、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  216. 井出一太郎

    ○井出委員長 これにて浅井君の質疑は終了いたしました。  次に、川崎寛治君。
  217. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 まず最初に、佐藤総理に、昨日楢崎委員に、沖繩の立法院の代表に対する行き過ぎたことばというものについて弁明をされたわけであります。そこで、私はお尋ねいたしたいのでありますが、差別をしない、決して差別をしていないのだ、こういうふうに総理は言われました。九十六万の沖繩県民にとっても佐藤総理総理であるかどうか、まずお尋ねをいたしたいと思います。
  218. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 法律的にいまの点を答えろといっても、御承知のように、沖繩は施政権がアメリカにございますから、私が総理としてこれらの方に接するわけにはいきません。しかし私は、沖繩の百万の同胞、これらの方々が祖国復帰をほんとうに心から願っておる、その祖国といわれる日本の私は総理でございますから、そういう意味で、私はたいへん親しみを持つというか、ことに私自身がこの前沖繩をみずから訪問いたしまして、そして沖繩の同胞諸君とも接しました。したがいまして、たいへんな苦労をしておられることは私にもよくわかる、私なりにわかるのでありますから、昨日の楢崎君のおしかりに対しましても、私がたいへん間違っておったことを率直に申し上げたのです。私はただいまもその考え方に変わりございません。したがいまして、川崎君が、沖繩に対しても総理かと言われると、これはもう法律的にはなかなかそういうものではないように思います。   〔委員長退席、小川(半)委員長代理着席〕
  219. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それではもう少しはっきりお尋ねいたしたいと思うのです。沖繩の県民を代表して参りました議長の山川さん、日本国民であります。日本国民である佐藤榮作さんとどこが違うのですか。そこを明らかにしていただきたいと思うのです。
  220. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 これは山川君が沖繩立法院の議長だ。また、そこらに一緒にいらした他の八名の方もそういうことだと思います。これはいい例かどうかわかりませんが、他の府県の県会の議長さん方が見えた、こういうものとは違うと、かように私は理解しております。
  221. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 倉石問題で長いこと国会の審議が停滞いたしておったわけでありますけれども、その間に写経をしておられた。たいへん真摯な姿だと思うのでありますが、私は、おそらく総理は、この写経は、日本国憲法を写しておられたのではないか、そのように理解をいたしたいのです。当然憲法問題でもめておったのでありますから、その間、再開をされますときに、総理が憲法を守ると、こういうふうに言われたのでありますから、私は、日本国民山川と日本国民佐藤榮作との違いは何かと、職制上のことではなくて、同じ日本国民でありながら、どこが違うのかということをお尋ねをいたしておるのであります。
  222. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 私がお目にかかりましたのは、立法院の代表山川君、私が日本の総理としての佐藤榮作、そういう立場でお目にかかったのであります。したがいまして、いわゆる同じ日本人じゃないかとか、こういうような俗っぽい表現ではなくて、それぞれの立場において会ったと、かように御理解をいただきます。
  223. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 私は、わざわざなぞをかけておるのでありますけれども、それがおわかりにならない。つまり、山川さんには日本国民としての憲法上の権利が一切奪われておるのであります。そのことを総理は御理解にならないし、あるいはそれをあえて言おうとしないのであります。私は、このことを以下幾つかの問題で具体的にお尋ねをいたしてまいりたいと思います。  日本国民として憲法上当然受けております権利というのが百万の沖繩県民は奪われておる。それは平和条約三条であります。その条約三条そのもののことを私はここではあらためて問いません。それを問えばまた議論がたいへん長く展開をいたしますので、そのことについては問いませんが、日本国民として憲法上差別を受けておる具体的な問題でお尋ねをいたしてまいりたいのであります。  二十年に長崎と広島に原爆を落とされました。たくさんの日本国民が犠牲になったのであります。具体的にいま問題になっておりますことを一つ取り上げてみたいと思いますが、いま熊本大学の付属病院に金城武雄さんという人が入院をいたしております。四十八歳。二十年の八月九日、長崎で被爆をいたしました。当時、金城さんは海軍の大村航空隊の監視所の機関兵長であります。日本の軍人であります。その金城武雄さんが、昨年ようやく原爆手帳をもらいましたので、神経系統をやられておるから本土に参りまして広島の原爆病院に入ったが、神経系統の治療ができない。そこで紹介を受けて熊本大学付属病院に参ったのであります。ところが、その原爆手帳で、自分は日本国民だ、日本の軍人として、同じ本土で原爆手帳のもとに治療を受け、手当をもらっておる同胞と少しも差別はされないものだと思っておったのでありますが、琉球政府発行の原爆手帳はだめだと、こう言って制度からはずされたのであります。総理、この点について、同じ日本国民でありながら、同じアメリカの原爆でやられて、その同じ日本国民が、どうしてこんな差別を受けておるのですか。このことについて、総理のお考えを述べていただきたいと思います。
  224. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 私が沖繩を訪問いたしました際に、原爆被爆者で沖繩に帰っておられる方があるが、沖繩の施設も不十分で、たいへん治療等にも困っておると、こういうようなお話がございました。それはもうたいへんなことだ、この被爆者については日本内地においてもいろいろの処置をとっておるから、至急その処置をとらせよう、こういうことを私約束して実は帰ったのです。その一つがいまの金城さんのケースじゃないかと思います。実際にただいまのように差別待遇されておるということにはたいへん私も不満でございますが、実情がどういうふうになっているか、総務長官から説明させます。
  225. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  原爆の被爆者の方々に対しまする救済処置はとっておるわけでございまして、なお、ただいまお話しのように、日本においでになっておられて病院においでになった、その原爆手帳の取り扱い等等につきまする詳細なことは、担当の局長が参っておりますから、それから詳細にお答えいたします。  ただいまの原爆の問題につきましては、日本といたしましては当然責任を持ちます。
  226. 山野幸吉

    ○山野政府委員 お答えいたします。  原爆被爆者につきましては、沖繩におられる人たちは本土とほぼ同じ程度の手当てが受けられるように、向こうの措置でやっております。そして、その経費は日本の援助費で見ております。たまたま本土へ来られまして、いま御指摘になりました患者につきましては、本土に住居の要件がないということで取り扱い上差別をしたように聞いておりますが、その件につきましては、厚生省とも話し合いまして、近く解決することになっております。
  227. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 本土であれば、鹿児島であろうが北海道であろうが、その差別はありません。沖繩は二十七度線でこのように差別をされておる。総理、いいですか。同じ戦争の犠牲者でも、戦傷病者戦没者遺族等援護法、これに基づいた遺家族援護金は同じようにもらっておるのですよ。引き揚げ者の交付金もあります。恩給もそうです。金鵄勲章の一時金十万円も出ておるのです。あるいは生存者の叙勲もやられております。ところが、この原爆患者というのはずっと差別をされてきておる。今度、原水協のたくさんの人たちが沖繩に国民大会に行こうとしたけれども、渡航の拒否をされたのです。なぜですか。  そこで私は、こういう同じ属人的な権利というものが守られていない原爆患者の問題については、すみやかに、本土の患者と差別をしない、全く同じ扱いをする、そのようにアメリカ側と交渉する、そのことを総理から明確に御回答いただきたいのであります。
  228. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいまお答えいたしましたように、最初からの経過を知っていますから、ぜひそういうようにします。ただいま、熊本に来た金城さんがたいへん差別的の待遇を受けている、こういうことを御指摘になりました。さっそく同様な処置がとれるように事務的に処理させます。
  229. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは次に移ります。  北海道出身の石黒由美子さんという二十八歳の女性、正式のパスポートを持って沖繩に渡りました。その後、残留手続をしなかったという理由で、布令百二十五号出入管理令の違反で裁判にかけられておりました。ところが、昨年の暮れ、十二月の二十七日、コザの簡易裁判所の浜川判事は、このことに対して無罪の判決を下したのであります。つまり、日本国民である。沖繩には憲法は潜在的に適用されておる。また、大統領行政命令の十二節からまいりますならば、関係国の国民と同じ基本的な人権は守られなければならないと、そういう観点からいたしまして、この出入管理令違反に対する無罪の判決を下しました。この記事を総理はお読みになられたか、あるいは読んで知っておられるかどうか、まずお尋ねをしたいと思います。
  230. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 不勉強ですか、知りません。
  231. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ある新聞によると、朝三十分ほど新聞を総理は読まれるそうでありますけれども、里子に出しておる沖繩の同胞についてはもっとこまかな配慮がほしいのです。憲法上の差別がある、渡航の自由というものが否定をされておる。このことについて浜川判事が、勇気をもって大統領行政命令に対して判決を下した。そのことを日本国の総理として総理はどう思われますか。
  232. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 私はもう裁判の結果は正しいものだと思います。
  233. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 正しいものだと思うならば、当然に渡航の自由、つまり現在総理大臣がパスポートを出しておる。日本国総理佐藤榮作の名前で出します渡航証明書、私が沖繩に参りますときにも佐藤総理大臣の署名入りでもらいます。しかし、この渡航証明書もアンガー高等弁務官の最終的なチェックがあるわけです。つまり、日本の総理大臣は一出先の弁務官であるアンガー高等弁務官によってチェックされておる。そのことが、今日の渡航の自由を阻害をしておるわけです。ただいま浜川判事の判決は正しいと言われた。すみやかに渡航の自由に向かって全力をあげるという決意として受け取ってよろしいですね。
  234. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 私は、それぞれの施政権下にあるそれぞれの国にはそれぞれの裁判制度がある、その裁判制度はそれぞれの法令のもとにおいて正しく行なわれるものだ、かように考えておるのであります。そういうものは尊重すべきだ、かように私はっきり申し上げておきます。ただいま、何か私自身が特別に意見を述べて、それに賛成したとかあるいはプッシュしていると、かように誤解されると問題が起こりますから、その点は誤解のないように申し上げますが、ただいまの法制下において、施政権下における裁判手続が行なわれて、そうしてその判決が下されればそれを尊重するという、これが私の考え方でございます。
  235. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、次に、さらに差別をされております具体的な例に入りたいと思います。  本土の駐留軍の労働者は、労働三法の適用を受けております。ところが、沖繩の軍の労働者は、労働三法をつくったときに一緒に公布をされました布令百十六号によって差別を受けておるのであります。具体的な例を申し上げますが、昨年の暮れの臨時国会に、この軍労働者の代表諸君、上原委員長やあるいは沖繩県の県労協の亀甲議長が参りました。そして本院の沖繩対策特別委員会においても、参考人としてるる事情を説明をいたしたわけであります。上原君は、昨年賃金交渉をしていたその実態というものを軍の労働組合の組合員に知らせるために——しかし基地の中で集会が持てませんから、道路の上で帰っていく労働者に対してチラシを配っておりました。ところが、このチラシを配っていた幹部が、一網打尽に憲兵に逮捕されたわけであります。つまり、沖繩は条約三条による施政権によって、全土にわたって絶対的な権限を持っておる。公の道路も軍用道路である。バスが通る、タクシーが通る、一般の通行人がおる、そこでこの上原君たちは逮捕されたわけであります。これは労働の基本権も守られていない具体的な例であります。特別委員会におきましては、総理府並びに労働省から出てまいりまして、具体的な点についてこれから検討するという回答もあったのでありますが、あなたが昨年の日米首脳会談で具体的成果としてあげられたたった一つの日米琉諮問委員会、これがいよいよ三月一日から発足をいたします。この中で、これらの労働者の権利を完全に守るために、諮問委員会における努力を指示されるかどうか、そのことが一つ。そして、ドル防衛の中で軍労働者の雇用もたいへんにいま制約を受けてまいっております。でありますから、沖繩の軍の労働者はたいへんにいま不安におののいておるわけであります。本土の軍労働者に対する離職者対策法というのが施行されておりますが、沖繩の軍労働者の離職者対策として、これらのものを本土政府として確立を急ぐかどうか、二点お尋ねをいたします。
  236. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 だいぶんこまかい問題でございまして、私間違うといけませんから総務長官お答えさせます。
  237. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま御質問の布令第百十六号といわれまする軍関係労務者の権利の問題でございますが、この問題につきましては、日米協議会の議題といたそうということも政府といたしましては申し上げておりまするし、また、先般私が沖繩に参りました際におきましても、この人権の問題につきまして強く主張いたしてまいった次第でございます。   〔小川(半)委員長代理退席、委員長着席〕  なお、後段の離職者対策の問題でございますが、この問題も日米琉の諮問委員会ができます今日におきましては、早急に解決いたさなければならぬ、かように考えております。
  238. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 早急にこの問題は解決をするようにお願いいたしたいと思います。沖繩の軍の労働者は、これから三月、四月にかけて、場合によってはたいへんなストライキにまでなってまいると思います。労働基本権を守り、生活の安定を守るために、本土政府としての格段の御努力をお願いいたしたいと思います。  次には、石油問題でありますが、ガルフやエッソ、アメリカの石油資本四社に対する認可が一月の二十日になされました。この問題の経緯については、参議院の本会議においても追及があったのでありますが、日米琉の諮問委員会が三月一日に発足をするという場合に、今後本土に復帰をする際に、沖繩経済と本土の経済との一本化という場合に、たいへん大きな問題が出るであろうこの石油問題について、なぜこんなに急いでやられたか、通産大臣お尋ねをいたしたいと思いますが、この問題はたくさんの問題がございます。あらためて別の委員会で詳しくは追及をいたしますけれども、政治的には核、経済的にはこの石油問題で典型的にあらわれました自由貿易圏の問題であります。そこで、通産省としていろいろと指導したようでありますけれども、私は一月十日から十四日にわたって現地に行っておりまして、責任者にも会いました。通産省の具体的な指導というのはないのです。新聞等ではいろいろ指導したようなことが書かれておりますけれども実際にはない。また、通産省と琉球政府の責任者がなぜ直接会ってこの問題について納得のいくように話し合わなかったのか、まずこの点から通産大臣お尋ねしたいと思います。
  239. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ただいまの状況においては、あまり立ち入った内政干渉は、これは差し控えなければならぬ状況でございます。ただしかし、施政権の返還、本土復帰ということが懸案になっておる今日の段階において、あらかじめ本土に復帰した際には、ただいま私どもが国内に行なっておる石油政策というものがそのまま全面的に適用されるのだぞということをお知らせをして、あらかじめそれに対する心の準備をしてもらうことが親切だ、かように考えまして、それとなくこの石油政策の現状を知らせることに努力いたしました。  それから近く発足をいたします諮問委員会、これらの活用等にもちろん石油の問題等も加えて、今後はもっと突っ込んだ考え方を反映させるということにしたい、こう考えておりますが、あらかじめこの四社の認可に際して向こうから相談があったわけでもない。これを議題として協議をするという機会がなかったわけです。
  240. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 フリーゾーンにいたしましても、石油精製は装置産業であります。労働力の吸収というものもたいして期待ができない。あるいは固定資産税以外にはないということになりますと、沖繩の経済にとってもはたしてプラスか、こういう点についてもたいへん問題があるわけです。私はアンガー高等弁務官が沖繩において演説をした演説の内容も持っております。それは積極的に外資を受け入れようという圧力をかけた演説であります。日米琉諮問委員会が始まる前にこうしたものが弁務官によって圧力をかけられて進められていく、そういうことがいま進みそうなんであります。  自由貿易のフリーゾーンの問題にいたしましても、沖繩全体がフリーゾーンになるのか、あるいはその工場一帯だけがいわゆる保税地域としてのフリーゾーンになるのか、それらの点もまだ未定ではありますが、この問題は今後自動車産業やあるいは電子工業や、こうしたものがどんどん入ってきたならばどうなりますか。ここを足場に日本に対する市場への攻撃ということも当然に行なわれるわけであります。でありますから、これらの問題についてはよほど腹を据えて——しかし一方においては沖繩の財界にいたしましてもあるいは沖繩県民にいたしましても、本土政府が施政権がないといってほったらかしておるからこういうことになってくる。沖繩の経済の展望というものを明確に示していない、具体的な発展の方向というものを示されないからこういうことになってまいるわけであります。  そこで総理お尋ねをいたしたいのでありますが、この自由貿易地域の問題についてもたいへん大きな問題がこれから出ます。でありますから私はここでは一つ一つこまかな点までは検討いたしません。ただ大きな方向だけについて総理の所見を伺いたいのであります。
  241. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように沖繩はただいまアメリカの施政権下にある。施政権下にあるとどうしても日本が積極的にこれと取り組むということはむずかしい状態だと思う。  ところで沖繩は今度は近いうちに返してくれる。二、三年のうちに復帰のめどをつける。これはジョンソン大統領と私との話し合いですが、したがってアメリカはとにかく日本に返してくれる、かように私は確信しております。早くめどをつける、めどをつけるためにどうしたらいいか、そういう問題が一つあるわけです。こういうような不安定な状況のもとにありまして、たとえば石油事業が進出する。これはなるほど、それがフリーゾーンであろうが何であろうが、とにかく石油業が施政権下にあるその地域に出てくること、これを防ぐ方法はないだろうと思う。しかしこれが自由にやられれば、日本に返ったその暁において日本本土の事業者と摩擦を起こしやすい、また起こすような危険のある問題だ。かように考えると、私どもは、今日これは施政権下にあるのだから何にも言わないのだ、こういうわけにはいかない。また一定の地域をフリーゾーンとして決定している、このこと自身だってこれはたいへんな問題だと思います。あるいはただ単にいま保税地域みたいなものだというようなことを言われておりますが、しかしこれが日本に復帰した、祖国に復帰したときに、こういう制度を長く存続させておくかどうか、どういうようにしたらいいのか、これはたいへんな問題だと思う。ところが現在の沖繩自身とすれば、いまのような石油事業が興るとかあるいは特別に物資がこの中に入ってくるとか、こういうことが沖繩の経済をささえておる、そのほうにも役立っておると思う。だからいまの状態を直ちにとやかく申しましてもこれはいかない。そこでいま通産大臣が申しますように、将来日本に返ってくる、日本に返ってきたときに摩擦が起こらないようにすべてをひとつ調整していく、そういう心組みがないとこれはたいへんな問題だ、かように実は思うのであります。  私が祖国復帰についてしばしば皆さんから言われて、この基地のあり方は一体どうするのだ、こういうことがいつも議論されます。また私がそれについて非常に明確な答案を出していないために、皆さん方も非常に心配しておられる。しかしいまのようなことを考えてみると、いま直線的な方向を打ち出して、そうして祖国復帰がおくれるというようなことがあっても困るんだ。私は、たいへんないまジレンマにぶつかっておる、これがほんとうの私の心情でもございます。でありますから、せんだって公明党の矢野君にお答えいたしました。比較的おわかりがいただいたかと思うのですが、私がいま白紙であるというそういう状態のものは、とにかく祖国復帰を早く実現さすことと、そうしてただいま言うような、将来に日本産業と摩擦を起こすことがないようにすること、さらにまた沖繩の同胞が長く異国民の施政権下にないようにすること。そのためにどういうようにくふうしたらいいのか、ここに私は全力を集中したいと思うのです。それは私は皆さん方のように、社会党の方のように一方的に言われることは非常にはっきりしてていいと思いますよ。しかしそのために祖国復帰がおくれるというようなことに、もし万一なったら一体どうなるのか。また皆さん方から鞭撻を受けて、そんな弱腰ではだめなんだ。だからこちらでちゃんときめて、それで真剣に取り組め。それならおれは鞭撻してやる、かように言われますが、これは何といったって、幾ら鞭撻を受けましても相手方のあることですから、相手方が了承しなきゃ困る。ここに非常な悩みがある。  いまお尋ねになりますような問題は、これは今日の現状においての問題と将来の問題とこれ二つを勘案してみますと、これはたいへん重大な問題でございます。ただいまこの席でお話しになるのももっともだ。その問題はすべてが祖国復帰にかかる問題だ、かように思っております。  この石油の問題が、最近進出するというので通産省の役人を特に現地に派していろいろ折衝さしてみました。しかし私どもがいま施政権を持たない、施政権下にないこの沖繩に対して、積極的に実情を申しましても、それがただ単に非常に苦しい状態、困難な状態だということを披露するにとどまります。今後日米琉諮問委員会が発足する。これは明日発足しますから、おそらく施政権の返還ができない前に本土との一体化、また将来本土との一体化に支障を来たすような事柄がないように、これは十分高等弁務官に対しまして助言、勧告をする、こういう働きをするだろうと思います。まあ問題はこれからの問題です。ただいま言われました点を、私は軽く見たり、あるいは等閑視しておるようなわけではございません。また、政府自身が全部そういう意味でこれらの事柄について真剣に考えておる、御了承いただきたい。
  242. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは端的にお尋ねいたしますが、いまるる述べられたのでありますけれども、では五年前あるいは十年前といまと、あるいは二年後と、本土と沖繩の経済を一体化をするについて、復帰について、どちらがしやすいですか。石油の問題が出てくる、フリーゾーンが出てくる、そしていろいろと基地に依存をする体質というものは深まっていく。五年前よりもいまのほうが、あなたがいま言われた復帰への道が近づく、復帰への条件ができると言えるのですか。決してそうではないのです。明確にしていただきたいと思います。
  243. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 これは川崎君どういうようにお考えなのか。たとえば、沖繩が占領された当時、これを考えてごらんになれば、おそらく復帰が考えられるような状況ではなかったろうと思う。これは二十年前ですね。だが、そんなことをいま申すわけじゃない。また、私どもがサンフランシスコ条約ができて以後の経過を見ましても、当時沖繩に米軍が出てくる、いわゆる潜在主権は認める、こういう形だったが、その当時はほとんど……(川崎(寛)委員「あまり長々とやらぬでください。時間がなくなる」と呼ぶ)時間——大事なことだから、お聞き取りをいただきたいと思います。どういうように考えるかというその御披露ですから。でありますから、私はその当時はこれはアメリカまかせのものが多かったと思う。しかし、潜在主権をはっきり認めるようになり、だんだんまた祖国復帰というものが近づくようになり、日本の資金援助ができるようになった。とにかく日本の、施政権下にある沖繩に対しての容喙といいますか、あるいはいろいろ話し合いを入れることが、昔とはよほど格段の相違ができていると思います。日米琉委員会ができれば、あそこに日本の常駐の機関ができる。そういう意味で、日本の政府の考え方を常時高等弁務官に映すことができる、かように思いますので、私は本土との一体化は一そう進むと思います。ごらんになりましても、皆さん方の御協賛を経たいわゆる資金の援助、この金額にいたしましても非常にふえていること、これはもう御承知のとおりであります。しかもこれが内政一般に——経済だけではありません、内政一般についてどんどん援助の効果があがっている。一番先に教育問題だと思います。教員の給与の半額援助、あるいはまた教科書の無料支給等、よほど進んできていると思います。昔はこんなことはなかったのです。  いま御指摘になりました人権侵害の状態が非常に多い。私は沖繩の方々、同胞がどういうことを一番痛切に考えておられるか、これはちょっと私もつかみかねておりますが、おそらくいまは人権侵害、そういうことのないようにという——経済方面は一応やや小康を得たというようなお気持ちじゃないだろうか、かように思いますが、これから私どもが努力する方向も、いろいろ実情に即して、いま欠陥を持っておるそういう方向に力をいたすべきだ、かように思います。
  244. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは北米局長お尋ねしますが、臨時国会で私は諮問委員会の性格、機能の問題についてお尋ねをしました。そのときに、大統領行政命令の十一節を変えなければ諮問委員会は無意味だ、単なる御意見をします、よし聞いておこうというだけの機関にしかすぎない、それに終わるのだ、そのおそれ十分ありということを私は指摘をいたしました。十一節を変える、あるいは変更を加えるということもあり得るということを、そのとき北米局長答弁をいたしておるのであります。でありますから、これは外務大臣から御答弁いただいたほうがいいのですかどうかわかりませんが、今回の諮問委員会の発足にあたって、その大統領行政命令十一節の変更は何らなかったわけであります。どうでありますか、今後諮問委員会の成果を期待できると断言できるか、ただ、よきにはかってくれるであろうと期待をするか、その点厳密に検討されておると思いますので、当時北米局長は変更、検討あり得るという答弁をいたしておるのでありますから、その点を明確にお答えいただきたいと思います。
  245. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 昨年暮れの委員会で、私、いまの行政命令第十一条に関して何と申し上げたか、ちょっとはっきり覚えておりませんが、むろん行政命令第十一条は、高等弁務官の沖繩の施政に対する、いわば非常の場合も含めての権限を規定したものでございまして、これに対して今回の諮問委員会は、三政府の代表をもって構成する委員会で、沖繩の経済・社会問題についての社会の分野における沖繩の施政についての監視で、勧告をするということになっておりまして、その勧告は三政府の代表が合意したものでございますから、それぞれの政府の訓令を受けた代表が合意したものでございますので、それを高等弁務官に勧告する、高等弁務官はアメリカ政府の機関でございますし、そのような勧告は、高等弁務官が必ず実施するのだという考え方でできておりますので、行政命令の十一条がどうありましょうとも、諮問委員会の権限に属しますことについてなされた勧告は、完全に実施されると確信しております。
  246. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 大統領行政命令の十一節には——今度主席は公選になります。しかし気に食わなければ罷免ができるんです、十一節で。そうしたら、罷免ができる主席の出す日米琉諮問委員会委員というのが変えられる可能性がありますよ。外務大臣どうですか、この点。
  247. 三木武夫

    ○三木国務大臣 この日米琉の代表は三国政府が任命をしたわけであります。任命してこの日米琉の諮問委員会ができるわけですからね。政府が任命しておるものを高等弁務官が罷免するという、そういう矛盾したやり方は起こり得ないと信じております。
  248. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それはそういうふうに信頼をしたい。信頼をしたいのでありますけれども、最も大事な基本的人権であるその保障、たとえば選挙権についての友利裁判であるとか、あるいはサンマ事件裁判移送問題でたいへん騒ぎました。そういうことでさえも、これはもうたいへん騒いだから改正されてきたんですよ。黙っておったら改正されません。これにしたって、選挙違反あるいは大衆課税の問題、それがアメリカの利益、アメリカの国益に反するということで裁判の移送を命令するのですよ。それが行なわれたのはおととしですよ。ですから、北米局長が臨時国会で答弁をされましたように、私は、これは制度的にそうした点というのはきちんとしておかなければだめだ。こういう点については今後——いまここで言い合いをしておってもまた時間を食いますから、問題を指摘をいたしておきたいと思います。そしてそういうことのないように腹を据えてやっていただきたいと思うのであります。  そこで次に、佐藤総理が一九五八年九月、大蔵大臣の当時承認をされましたドル通貨への切りかえ、あなたの大蔵大臣のときにドル通貨に切りかえたわけですね。これは現地でもたいへん問題になりました。アメリカの沖繩完全領有の意思というものを政治的に誇示するのみならず、経済的にも完全に経済界に組み込もうというのがドル通貨への切りかえであったわけであります。このことにつきまして総理は、昨年の一月大津で、機能別分離返還がたいへんにぎやかに騒がれておりましたあのころ、それをやめる、全面返還だ、こういうことを言われたわけでありますが、そのあと、このドル通貨にしたことはたいへんまずかったという意味のことを漏らされておるのであります。これは新聞の記事でありますが、漏らされておる。いまでもそうお考えになっておるか。そしてドル通貨を円に切りかえることについて、あなたは早急に取り組まれるかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  249. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 施政権を日本に復帰するというか、祖国復帰が実現すれば、これはもう円に直ちにならなければならぬ。そういうのをいろいろ準備もしておるわけであります。だから、そういう場合にどういうような手続をとるかとか、またどういうようになるかといういろいろのことを研究しておる。こういうことを研究することを考えると、どうも前に、一九五八年にドルにしたことが手数をふやしているのだし、これはまずかった、かように私は思っておるのです。
  250. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 改正は。
  251. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 改正は、いま祖国に復帰すれば、これはどうしても改正しなければならぬ。だからその前にといってもなかなかそれはできないだろう。だからこういうものも含めて祖国復帰の準備をする。
  252. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 大蔵大臣にお伺いをします。沖繩では琉球政府の中に円切り替え対策委員会が設置をされております。当然大蔵省の中にも、琉球政府で円切りかえの対策委員会ができておるのだから、本土の政府としてその切りかえに応ずる、あるいはむしろ積極的にやっていくということについて対策委員会ができておるものと思いますが、できておるのですかどうですか。どういう作業をやっておられるか、お答えをいただきたいのであります。
  253. 水田三喜男

    水田国務大臣 まだそういう委員会はできておりませんが、奄美大島が復帰したときに円貨に切りかえておりますし、そういう経験を土台にして、沖繩が復帰したときには円貨に切りかえるいろいろな措置については研究しております。
  254. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 先ほどの石油の外資の問題と同じであって、沖繩では真剣に一体化しようと苦悩しておるのです。円の問題についても、だから琉球政府の中に対策委員会ができるし、また財界の諸君もそれなりに一生懸命やっておる。ところが本土のほうは施政権が返ってこなければだめだといって、いま大蔵大臣が御答弁のとおりに知らぬ顔をしておるのです。これでは結ばぬですよ。そして琉球政府が何かやると、それはけしからぬといって介入をしていくのではたまったもんじゃないのです。だから、早急に対策委員会を立ててこの問題についても検討してほしい。いまの大蔵大臣答弁というのは、現地の諸君が聞けば、なるほど本土政府というのは、自分たちが一生懸命帰りたい、だからその経済の体制について検討しようと思っておったって、少し巻本気で考えていてくれぬのだ、ちっぽけな沖繩の経済なんというのは念頭にないのだ、こういうふうに受け取りますよ。明確にしてください。
  255. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 これはそう簡単なものじゃございません。ただいま言われますが、昨年来、私がジョンソン大統領のところに出かける前に沖繩問題懇談会を設けて、そして各部会で全部検討したのであります。これは円をドルに切りかえたときにはいろいろ問題ございました。しかしながら今度ドルを円にするほうは比較的に問題が少ないのであります。でありますから、これはもう見通しさえ立てばただいまのようなことが直ちにできる。それは、これまた祖国復帰、それと同時にしなくても、もっと進んでできるならそれはやったらいいと私は思いますよ。だから、そういう点を別に甘く見たり、あるいは度外視はしていない。いま大蔵省自身もこういう事柄においてさらに積極的に取り組むことは、これはだいじょうぶです。それにはしかし何といってもまず祖国復帰のめどをつけなければならないと思うのです。だから、その点で私どもが、その中のうちに一つある、両三年内にそのめどをつける交渉を継続的にするという、この交渉が実を結ぶそのときにはドルを円にすることももちろん並行して考えます。だからその点は御心配なさらないように願います。
  256. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 少し先を急ぎます。  経済援助の問題で、先ほど総理はたいへん額がふえたことを言われました。なるほど四十一年に五十一億九千万、四十二年には百三億、四十三年には百五十三億とふえております。しかし、これは額がふえるだけで、沖繩の経済が円満に発展をするとはいえないのです。この点について少し明確にいたしてまいりたいと思います。  まず第一に、今回、財政投融資に関する法律案というのが出される予定でありますね。この法律は、資金運用部資金及び簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に関する法律というものをいじってやっていくわけですね。二十八億はこの法律に基づかなければ出せないのです。ところが百五十三億のうちのあとの百二十五億というのは、ほとんどが法律に基づかないで行政権で出されておるわけです。しかも、四十二年度でとりますならば、百三億のうち八十二億が四十二年度、そして二十一億は四十三年度に繰り越されておる。しかしこれは、債務負担行為としては、政府が責任を負わなければならない額じゃないのです。つまり施政権がない。施政権がなければ、インドネシアに対する緊急援助その他のものにいたしましても、施政権のない、よその施政権のものに対しては当然条約なり協定なりというものを結んで、それに基づいた年度別の金というのが出ていく。しかし沖繩に対しては、行政権の範囲内で、予算で議決されればそれでいいのだという形で多額の金が出されておるわけです。これは決して制度的にも沖繩と本土との一体化というものを進めるものではありません。日本国民としての差別をしないで、日本国民としての当然の権利に基づいた金の出し方、法律に基づいた金の出し方というのをすることが、制度的にも一体化を進めていくわけであります。でありますから、こうした多額の金というものを行政権だけで出すということ、これはたいへん問題がある。でありますから、援助費計上のあり方というものについては、これは社会党が沖繩援助に関する財政特別措置法というのを出しております。これは本土の法律というものをあげて、これに対して政府が一括して出すというやり方でありますけれども、こうしたことがとられなければいけないのです。しかも援助費がふえるからといって、それで沖繩の経済は円満に発達をしない。どういう方面にいくか、たとえば那覇空港に対して、四十三年、四十四年に三億六千万の金が出される。あるいは安謝港の港湾修築の金が出る。これらは米軍が那覇港なり那覇空港なりというものを押えておるから、結局県民が、民間の方が使えない、こういうことで、それらの金というのが本土側から出されなければならない、こういうことになってまいるわけであります。ですから、金がうんとふえればそれでいいのかといえば、そうじゃない。しかもアメリカと日本とがきめた金というのは、立法院は審議の範囲がなくなるわけです。きまった予算というものについては立法院は審議できない。それだけ審議権というものは狭められている。現在の日本政府の沖繩に対する財政援助というのは、それゆえに、日本側の援助額がふえても、一方、施政権者であるアメリカのほうの援助額というものはちっともふえてない。予算に組んであるだけは出ずに、減額補正をしなければならぬということがここ数年続いておる。施政権者以上に日本側が金を出していながら、その金に対する発言権というもの、権利というものを持っていない。アメリカは施政権者でありながら、出す金に対してはきわめて厳密な制限を加えております。それはタックスペイヤーがやかましい。プライス法にしても、あるいは予算の支出法案にしても、全部きちんとして出しておるのです。国会を通して出しておる。日本の場合には、それが内閣の行政権の範囲内でかってにやられておる。こうした点については、これはたいへん問題があるわけでありますから、法律に基づいた金の出し方に変えていくという点について、ひとつ大蔵大臣、いかがでありますか。
  257. 水田三喜男

    水田国務大臣 出し方についてはいままでのことで私はいいと思いますが、問題は、あなたのおっしゃられるように援助額をただふやせばいいというものではございません。沖繩がそれによって計画的に、沖繩の民生がよくなるような一つ計画の上に支出されることが必要であるということと、もう一つは、日本の府県の行政とはだいぶ違っておるところがございますので、将来日本に復帰する場合には、やはり行政水準がそろうことが一番いいことでございます。そういう意味におきまして、向こうのほうが内地の施策よりは進んでおるところもございますし、内地の施策より相当おくれているところがございますので、この均衡というようなことに気をつけて、日本の援助が効果的であるようにという点に、私どもはいま非常に骨を折って、いろいろ考えて、予算の計上をしておるということでございます。こういう点が一番重要であって、予算の出し方自身には、私はそう問題がないんじゃないかと思います。
  258. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これはいずれ分科会等でもう少しこまかに詰めたいと思います。  次には、B52の問題に移ってまいりたいと思いますが、B52の問題に入ります前に、総理に、これはおそらく小さいから知らないと言われると思いますが、沖繩で、米軍の飛行機による直接の死亡あるいは犠牲者が何人あるか御存じですか。
  259. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 飛行機事故で沖繩の人がどのぐらい死んでいるか、わからないようです。
  260. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それは、総理が一昨日の夕方、沖繩の代表の諸君と会ったときに、あなたは説得できると言った。しかし沖繩の代表の諸君は、説得できない、不安があるんだと言ったんですね。それは、これまでにあまりにもたくさんの人が死んでおるし、また重軽傷、たくさんの犠牲者が具体的に出ておるわけです。だから、なかんずく嘉手納の基地のある周辺の皆さん方にとっては、不安で不安でしようがないのです。だから、あなたが、B52こわくないのだ、心配するな、説得せいということに対して、納得ができない。その点があなたに理解ができないのは、いま、はしなくも、そんなことといわれるかもしれないけれども、しかし、同胞がこれまでに二十九人米軍の事故で死んでおるのです。二十九人これまでに……
  261. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 これまでにですか。
  262. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 はい。一年間にそんなに死んだらどうしますか。たいへんですよ。そうして、負傷しておるのが百三十数名です。特に、朝鮮戦争のときに、この嘉手納基地からB29が飛び立ちました。御記憶であろうと思うのです。そのときも問題になったのです。B29でも死んでおるのです。一昨年はKC135、いわゆるB52に対する空中給油機、この事故で嘉手納では死んでおるのです。KC135とB52というのは切っても切れない関係にあるわけですね。そういう犠牲が相次いでおる嘉手納です。その上に、私はここにいわゆる燃える井戸水という嘉手納の井戸水も、私一月に参りましたときに持ってきました。火をつけてみてもいいんです。井戸水全部が一滴残さず燃えるのです。飲む水はガソリン、上からはいつ落ちてくるかわからぬ。爆音で昼も夜も悩まされておる。これが嘉手納の人たちの今日の実態です。そこでB52に、嘉手納の村の当局をはじめ、黒い殺し屋立ち去れというその気持ちというもの、そのことについて四十年のときと今回のときとあまりにも違う扱い方について、私は次にお尋ねをいたしてまいりたいと思います。  四十年のときは、七月の二十九日、ちょうどここにおられます椎名さんが外務大臣の当時であります。七月の二十九日の朝、アメリカから通告があった。そして台風退避で沖繩に行くが、そのままべトナムに爆撃するかもわからぬ、こういう通告があったわけです。椎名外務大臣のとき、その午後にはアメリカの代理大使でありますエマーソン臨時代理大使を呼んでおるわけですね。それはライシャワー大使がやめて、ちょうど帰って、いなかった。朝通告がきて、午後は大使館を呼んで、困ると明確な意思表示をしております。私は当時のこの申し入れの問題のところを読んでみたいと思いますが、「もし避けられるなら台風避難で沖繩に移動している間に、ここから直接作戦行動に発進するようなことはさしひかえてほしい」とはっきり申し入れをしておるのです。抑止力というふうなことはこのときは一言も触れておりません。ところが今回のB52に対しては、三木外務大臣の話によりますと、二十六日通告があった、こう言うのですね。もっとも牛場外務次官は八日の記者会見では、B52についての通告はなかった、こういう言い方をいたしておりますが、実際には二月二十六日の三木外務大臣の発表によると、通告があったという。その通告をごまかしておる。そして、申し入れに対しても今回は、抑止力をまず認めた、配慮をしてほしいというだけの、おそるおそるものを言っておるわけであります。四十年七月というのは、総理が沖繩に行く直前であります。そしてまた、その一月には第一回の首脳会談をやられたあとであります。このときと今回の申し入れにあらわれておりますこの違いというのは、どこから出てまいっておるのでありますか、御説明いただきたいと思います。
  263. 三木武夫

    ○三木国務大臣 その最初の申し入れの場合は、板付に来ることになっておったんですねB52、が台風避難で。そして板付に来たものが沖繩に寄ってすぐベトナムに爆撃に行くということは、非常に誤解を生ずるという配慮があったからだと私は記憶いたしておるのであります。なばならば、直接作戦行動に日本の基地を使う場合には、これは明らかに事前協議の対象になるからであります。今度の場合は、まあこれは文書でなしに口頭で北米局長から先方に申し出たのであります。ちょうど向こうが、B52の移動についてアメリカから通知を受けたのは、御承知のように二十六日であります。その前に、二十一日にはゲリラ部隊が韓国の大統領官邸の近くまで侵入したという事件があった。二十三日には、プエブロ事件があった。こういうことで、朝鮮半島における三十八度線、非常な緊迫状態にあったことは事実であります。したがって、三十八度線を中心としてアメリカが軍事行動を起こす意思はないということを明らかにいたしておりましたから、明らかに移動の意図は抑止力、一応韓国における緊迫した状態に対する抑止力という点でB52の移駐というものが考えられたことは事実だと思います。そういうことの経過があって、口頭で北米局長が言ったときにまあそのことばを使ったのでありますが、しかし、北米局長の申し出の主たる点は、B52の移駐に対して沖繩の人々たちが非常に不安に思っているから、アメリカはこれに対して十分な配慮を加えてほしい、これが申し出の主たる部分でございます。こういう経過があったので申したのでございます。
  264. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それじゃもう少し詰めましょう。一月の二十三日の午前八時半にエンプラが佐世保を出た。その日の二時半にプエブロが逮捕された。そしてその夕方にはB52の通告があったという情報もあるわけであります。しかし、それはいずれにいたしましても、二十六日通告があった。それでは、この沖繩に行ったのは、北朝鮮のその緊迫で行ったのですか、ベトナムで行ったのですか、どちらですか。
  265. 三木武夫

    ○三木国務大臣 最初にB52の移駐を通知してきたのは、やはり朝鮮における緊迫状態というものが動機になっておると私は思います。その後いろいろ旧正月に対するベトコンの攻撃などもあって、ベトナムも非常に情勢が変わってはきておりますが、とにかくB52を移駐しようというアメリカの意図が生じたのは、私は朝鮮半島における緊迫状態だと考えております。
  266. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、これは安保条約の第四条による極東の緊張として、随時協議というのに入っておる、こういうことでございますね。
  267. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御承知のように、随時協議はいつでも協議できるわけですから、この第四条によって申し入れると言ってきたわけではありませんが、それは、これを何で申し出てきたのかということを、まあ四条だと言っても私はよかろうと思います。
  268. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、北朝鮮は極東の範囲に入るわけですね。
  269. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御承知のように韓国、北朝鮮といいますか、朝鮮半島における緊迫した状態というものがB52というものを移駐をさしてくる動機になったということで、これが先方から安保条約の四条によって協議をしたいという申し出ではないのでございます。外交機関を通じて言ってきたので、しかしそれを何で言ってきたのかということになれば、これはいま考えるのですから、四条という、外交ルートを通じていろんなしょっちゅう通報をしてくるのでありますが、まあ四条と言うことも差しつかえなかろうといま私は考えております。
  270. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 極東の範囲に入るのですね。
  271. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これはいま、あるいは条約に関することですから条約局長から答弁さしたらいいと思いますが、その当時その通報を受けたときには、条約の規定というよりかは、そういう外交ルートを通じてアメリカから情報を受けたということで、条約上に合わしてのことは、条約局長から答弁をさせます。
  272. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 四条の協議であるどうかというお話、これは大臣のお話のとおりだと思います。  極東の範囲に入るかどうかというお話、これは極東の範囲につきましては前々から統一見解がございまして、先生御承知のとおりだと思います。北朝鮮は入っておりません。ただし、極東の平和に関係があるというような話になりますと、あそこでいろいろごたごた起こってまいりますと、極東の平和に大いに影響のあることだと思います。
  273. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ただいま外務大臣は四条と言い、また条約局長もそれを認めたわけですね。当然入るわけですね。間違いないですね。どうですか。
  274. 三木武夫

    ○三木国務大臣 アメリカから言ってきたときには、これは四条の規定によって申し出るというわけではありませんが、そういう協議を四条の協議だと申して私は差しつかえあるまい。ただ、北鮮が安保条約のいわゆる極東の範囲に入るわけではない。しかし韓国におけるあのような緊迫した状態、われわれは、町の人たちも一体どうなるのかという非常な不安感をあの当時は抱きましたから、北鮮が極東の範囲に入るわけではないが、やはりあの極東情勢というものは非常に緊迫した状態であったことは事実です。しかし安保条約の範囲内に北鮮が極東の範囲という中に入るとは考えておりません。入りません。
  275. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 さっきの答弁と違うじゃないですか。明確にしてください。最初の答弁と違いますよ。
  276. 三木武夫

    ○三木国務大臣 違わないですよ、四条でけっこうです。ただ、四条の規定によって申し出得るということではなかったが、そういう申し出を四条における随時協議であると考えてよろしい。これは否定はいたしません。
  277. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 極東の範囲に入っていないわけですね。北鮮は。随時協議だ、四条による随時協議だということをさっき言われたわけです。統一見解と違うじゃないですか。
  278. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御承知のような朝鮮半島における情勢は極東の平和に関係を持つことは事実であります。北鮮が極東の範囲内に入るものではない、入らない。しかしあの状態というものが極東の平和に関係を持つことは、これは事実である。
  279. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 前の統一見解との関係はどうなりますか。   〔「政府の統一見解とは違うじゃないですか」と呼ぶ者あり〕
  280. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いや、統一見解と違わない、私の言っておることは。ああいう韓国の状態が極東の平和に関係のあることは事実です。北鮮は極東の範囲内に入らない、その申し出は四条による申し出であると解釈してよろしい。
  281. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 四条で……。先ほどの最初の答弁では、ベトナムの大使館等に対する問題等も言われた。そうすると、そのベトナムも極東の範囲に入るわけですね、四条に基づいて。
  282. 三木武夫

    ○三木国務大臣 ベトナムが極東の範囲内に入るわけはありません。極東の周辺であっても、いわゆる極東の範囲という中にはベトナムは入らない。北鮮も入らない。
  283. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 最近の情勢にかんがみ抑止力としての効果を意図したものと考える、こういうふうに抑止力という点について、たいへん抑止力というのを今度は出してきた。抑止力というものの実態は何ですか。
  284. 三木武夫

    ○三木国務大臣 戦争を起こしたり紛争を起こさせないように警戒をする、有効に警戒をするということであります。
  285. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ところが、この抑止力というのは要するに戦争抑止力、戦争を防ぐ力、起こさせない力、そうですね、総理大臣
  286. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 いま外務大臣がはっきりお答えいたしたとおりです。
  287. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ところが、沖繩に移駐をした  B52は、ここからベトナムに行っておるのですね。四十年のときにも台風避難で行って、ここからサイゴンの南方五十六キロのところを爆撃しておる。これは国防省の発表ではっきりしたわけです。そこで問題になってきたわけですね。今回も嘉手納からベトナムに対する爆撃をやっておるわけです。そうしますと、戦争を起こさせない抑止力、力、それが行動を起こしたら何になるのですか。明らかにしていただきたいと思います。
  288. 三木武夫

    ○三木国務大臣 戦争を起こした場合は、戦闘行為の場合は抑止力とは言えないと私は思います。
  289. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そういたしますと、明らかに沖繩に参っておりますB52は、抑止力と戦力と一緒ですね。その点をお尋ねいたします。
  290. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは私は、おそらくB52を移駐した背景はこうであったろうと申し上げたので、現在の軍事行動に、現在におけるB52の活動については承知しておりません。
  291. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 事実、毎日ここから出ているのですよ。四時間ないし五時間で帰ってきておる。それはベトナムとのちょうど時間が合うわけです。あるいは北鮮とも合うわけです。そしていま沖繩で言われておること、それは北朝鮮に対しては水爆積載でパトロールをやっておるだろう、こういうことも言われておるのです。どうですか、ここからの水爆パトロールについては、絶対ないと断言できますか。
  292. 三木武夫

    ○三木国務大臣 そういうことは絶対にないと信じております。
  293. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 一月の二十一日、グリーンランドで落ちました。デンマークの上空においても、B52の水爆積載のやつは通ってない、飛んでなかったはずです。落ちてからわかりました。あるいはスペインのパロマレスにおいても、落ちてみたら水爆積載だったというのがわかったのです。抑止力でしょう。その効果を認めておる。そして、いまヨーロッパからアジアにB52が配置がえになって、グアムと嘉手納とタイのウタパオと、ここからB52がいま飛び立っておるわけです。そういたしますと、水爆パトロールが日本の上空を全く飛んでないということが言えますか。断言できますか。
  294. 増田甲子七

    増田国務大臣 アメリカのB52は、東洋におきましては、いずれの場所におきましても水爆等は搭載しておりません。
  295. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 B52は、国防長官の国防白書にも明らかなように、十五分待機で全世界にわたっておる。そうして、十五分待機でありますから、千キロ範囲で、どこで問題が起きても、三十分以内に行ける水爆パトロールの体系にいま入っておるわけです。私は、いま防衛庁長官が言ったこの点については納得できないのです。確かめましたか。
  296. 増田甲子七

    増田国務大臣 いつもマクナマラが申しているのは3Bでございまして、すなわちポラリス関係のこと、これはもう常時核兵器を搭載しておるわけでございます。それからICBMがそうでございます。もう一つのBは、B52と言われておりますが、グリーンランド付近におきまして事故が起こったのにかんがみまして、自後、やらないということにアメリカ政府はなっております。いわんや、東洋においては、水爆を搭載して警戒遊よくするということは絶対にないのでございます。
  297. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 先ほどの抑止力の問題に返りたいと思いますが、戦争が起こらないようにする力、これは総理自身が言われたことです。そうしますと、戦争が起こらないようにする力というのは、破壊力が大きいほうがよろしいのですね。破壊力が大きいほうがよろしい。しかも、先ほど認められたように、沖繩に移されたB52というのは戦力である。行動しておるのですから戦力である。つまり、抑止力というのは、一方では相手に対して強い刺激を与える力です。そうじやないですか。ですから、抑止力は、直ちに戦力になる、そのことは相手に対して脅威を与える、その力です。ということは、沖繩のB52が、日本の領土である沖繩にありますB52というのが抑止力であるという、戦争をまるで起こさない力であるかのような言い方をしておりますが、現実には緊張を激化させる力であるということは当然ではないですか。いかがですか。
  298. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 川崎君、すなおにものごとを考えることをひとつしようじゃないですか。これはたいへん失礼な言い方のようですが、私どもは自衛力を持っておる。これはいわゆる核兵器を持たない、またそんなに強大なものだとはお考えにならないだろうと思います。とにかく自衛隊を持っておる。この自衛力は一体何か。これは日本に対する侵略、これに対する抑止力だ。同時に、一たも侵略があればやはり自衛隊が日本を守ってくれる、こういうものなんですね。だから、いわゆる抑止力というから、これは同時に攻撃力としても非常に強大なんだとものごとを考える必要なないのですね。だから、それはなるほど抑止力という、これはそこだけのもので強大ではないでしょう。私は、アメリカが持っておる核兵力というものはなかなか強力なものだと思いますね。したがって、これはやっぱりアメリカの戦争抑止力というものがある。とにかくアメリカを攻めれば、こういうものを攻撃すれば全面衝突だ、こういうことになるのですね。だから、そこに戦争に対する抑止力があるのだ。また、それが一たん爆発すれば、それは戦争防御の力ともなる。ちょうどこれは私どもが持っている自衛隊、自衛力と同じです。だから、そういうようにお考えいただくと、これがただいまのようにそういうものを一つ持つから、何かどこかに仮想敵国があるのだろうとか、そういうふうに考える必要はないのですね。私はもうしばしば申しますように、私ども、どこかに核戦力があれば、やはりこの国の安全を確保するためには最大限の考え方をする。だから、米国の核の抑止力、これにたよる、これが安全保障条約だ、かように説明しておりますから、どうかよろしくお願いいたします。
  299. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは総理、もう少し具体的にお尋ねします。  アメリカの核が抑止力だ、戦争が起こらないようにする力だ、こう言われた。では、なぜその強大な抑止力のもとにおいて、サイゴンのエレクトロニクスで防衛をされた鉄の要塞でちるアメリカ大使館に侵入されたのですか、あるいは科学の粋を集めておるプエブロがなぜ逮捕されたのですか。
  300. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 プエブロが逮捕されたからといって、それで直ちに戦争になっていない。まさか戦争にするつもりでプエブロを逮捕したのではないだろうと私は思います。それとも何かそういうような確証があるのですか。ただ、ベトナムでは現に戦争が行なわれておる。これは一進一退もありましょうし、いろいろなことがありましょう。むろんいま戦争が起きている。そういうところでどうしてアメリカ大使館が攻撃を受けたか、こういうことはちょっと私が答える筋じゃないようです。
  301. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、もう少しアメリカの核の抑止力の問題を進めてまいりたいと思います。  日本政府の政策として、アメリカの核のかさに入るということを明確にされたのはいつでありますか。
  302. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 私が四十年にアメリカに参りました際に、ジョンソン大統領は、日米安全保障条約、あらゆるいかなる攻撃に対しても日本を守る、こういう約束をしてくれました。  私は、日米安全保障条約は、特別な兵器を限って、そして通常兵器なら守るが、核兵器なら守らない、こういうようなものじゃないと思っております。そのはっきり言ったのは、前々回といいますか、昨年じゃなくて、その前にアメリカに行ったときに、私自身がこの耳で聞いて帰ってきた、こういう状況であります。
  303. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、四十年の第一回佐藤・ジョンソン会談でアメリカの核のかさに明確に入った、こういうふうに理解をしてよろしいの  ですね。
  304. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 おそらくその前に、アメリカは自分で核兵器を持つようになって、あらゆる場合に日本を守ってやる、ただ日米安全保障条約のその立場から、私にその点をはっきりまず説明してくれた、かように私は考えておりますが、そのときに初めていわゆるアメリカの核の抑止力にたよるようになった、かようには私は考えておりません。私どもいま、これはまあことばですが、アメリカの核のかさということばはあまり使わないようにしております。アメリカの抑止力にたよっておる、かようにしておりますから、その辺間違いのないように。
  305. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ところが、六六年の二月には、下田前外務次官は、日本はアメリカの核のかさに入っていない、こう言ったのですね。そしてそれに対して、二月十九日、椎名外務大臣が、核のかさというのはきわめてあいまいな意味を持つものだ、日本が核のかさの中に入るべきかいなかを断定的に論議することは適当でない、現在の国際情勢のもとにおいてアメリカの持っている核報復力が全面戦争の発生を阻止するきわめて大きな要素をなしているのだから、このような一般的な意味における核のかさのもとにあることを否定することはできないと考える、たいへんあいまいな統一見解でありますが、出しておる。ですから、あなたがジョンソンとの会談をやられたあとに、一ぺんは外務大臣が否定をし、さらにはあいまいな形での核のかさが言われておる。最近になって特にアメリカの核の抑止力というのが出てきたのはなぜか。先般来の非核三原則の問題に対しましても、四政策を出してまいったわけでありますけれども、これは要するに、アメリカの核のかさの中に入るという経過を振り返ってみましても、これまでの経過というのはあいまいでありますし、特に明確になるのは、おそらくは今回の佐藤・ジョンソン会談で明確に入った、こういうふうに私は思います。そしてそのことは、沖繩における核の抑止力というものをこの中に組み込むために、抑止力という問題が明確になってまいった、こういうふうに思います。いかがですか。
  306. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 川崎君が思われるのはいいですけれども、私はさようには思っておりません。私の考え方では、それは違っておりますから……。
  307. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、核の四政策について少し詰めてみたいと思います。  核兵器の絶滅を期するということですね、これは方針ですか、政策ですか。
  308. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 これは人類の悲願だと、私はかように思っております。
  309. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 単なる悲願ということであれば、政策ではまだないということですね。当然、政策であるならば、核軍縮という明確な行動が出なければなりません。そういたしますと、核絶滅というのは、非核三原則が基底にあってこそ到達できますね。
  310. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 ただいま核軍縮というお話がありましたが、そうなってはっきり政策として私どもがこれと取り組む。だから、核爆発実験といいますか、これも禁止するとか、あるいは核拡散防止条約についても私ども一つの方向を示しておる。さらに核兵器の絶滅を期するという意味で、この軍縮についても方向を示しておる。これは政策でございます。
  311. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、次には核の平和利用。日本はもうすでにいつでも原爆を持てる開発がなされております。少し力を入れれば持てる。これは政策の決定者の意思いかんであります。つくらず、持たず、持ち込まず、昨日来楢崎委員からいろいろと防衛庁の問題等も三次防の問題であったわけでありますが、平和利用ということを徹底させる根本は、つくらず、持たず、持ち込まずという、この非核三原則であるということについては御異論はございませんですね。
  312. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 核兵器に対するものと、核の平和利用、原子力船をつくるとか、あるいはまた発電所を設けるとか、さらにまた放射能医学あるいは放射能農業だとか、いろいろ使っておる。こういう事柄は平和的であれば、いま原子力基本法でもそれはもうはっきりいっているんですから、私どもは、これは平和利用することは何ら拘束は受けない。日本自身、皆さん方とともどもにそういう方向をきめたんです。しかし、核兵器についてはいまいろいろの問題がある、かように御了承いただきます。
  313. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうしますと、アメリカの核抑止力にたよる、それは沖繩に核基地を置く、それは具体的な日本の領土内におけるアメリカの核抑止力ですね。
  314. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 日本の政治、政策、施政権下にある、持っておるところと、アメリカ自身が施政権を持っておるところと、そこではアメリカはどんな考え方を持っておるか、これは日本の考えどおりではないと思います。そこでいまのような問題が起こるのです。私は、核を製造せず、持たず、持ち込みもしない、かように約束をいたしましても、現実に核兵器がある限りは、やはりこの国の安全を確保するために日米安全保障条約が必要なんだ、こういうことを実は申し上げております。私は、別にこれは矛盾だと思わないのですよ。とにかく片一方で核兵器がある限り、日本の安全が確保される、そのためには必要なんだ、だから、そのことを私は申しております。沖繩そのものは日本の施政権下ではございません。アメリカがどういうような力をここに持つか、これはアメリカがただいまきめていることであります。沖繩は、しかしいずれは私ども祖国に復帰する。だから、アメリカのいまの現状、基地の現状はどうであるか、これもよく知りたいし、また、今後の科学兵器の発達やあるいは国際情勢の変化からどんな基地の態様をアメリカが考えるか、それもよく相談して考えなければならないことだ。さらに私は日本の総理として、日本の世論、これの動向も考えなければならぬ。そこできめなければならぬ。これが私が公明党の矢野君にお答えしたところであります。でありますから、あの矢野君に対しての私の感じは、在来のものよりかさらに一歩進んでいると思います。ただいま言われますように、沖繩の問題は、これは施政権者がきめることです。だから、その意味において、これをもう少しはっきり私ども確かめる、確かめなければそれはできないだろうと思います。
  315. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 核兵器を持たないということについて、総理が、昨年の七月十四日、参議院の予算委員会でこういうふうに言っておられます。「ただいま言われますようにこの憲法、これは私は、はっきり国際紛争を武力によって解決しない、そこから出てくるもので、いわゆる他国に攻撃的な脅威を与えるような武器は持たない、こうだと思います。ただいまの核というよりも、今度はこれは運搬手段になるだろうと思いますが、そういう意味での制限はもちろん、核兵器そのものは、世界の唯一の被爆国としてもう核は絶対に持たない、軍事的な核兵器は持たない、これは国民と」いいですか、次です。「国民と誓ったものでございますから、そういう意味で御理解をいただきたい」こう言っておる。そこで、私は、最初に沖繩県民の憲法上における地位を言いました。いま施政権が沖繩にはないという。それならば、いま総理が誓った、この核兵器を持たないという中の、国民と誓ったというこの国民の中には、沖繩県民は入っていないのですか、入っておるのですか。
  316. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 私は、遺憾ながら沖繩には施政権を持っておりません。
  317. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、沖繩は差別をしていく、沖繩には、国民と誓った核兵器というのは抑止力として置かざるを得ない、こういう前提に立ちますか。
  318. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 私は、核兵器を置かざるを得ないというような結論を出しておるわけじゃありません。施政権者のアメリカがやることだ。それは置かないと言うかもわからない。置くと言うかもわからない。それは施政権者アメリカがきめることだ、こういうことを申しております。
  319. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、沖繩の返還に際して、総理は、先般の代表が参りましたときにも、代表はるる述べた。そのときに、沖繩の代表がたいへんに不満に思っておること、それは何か。核基地撤去を言うならば、諸君はいつまでも返らないでもいいのか、こういうことをあなたは言われましたですね。私は代表からはっきり聞いたのですよ。どうでありますか。
  320. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 現状においてそういうことを言うのはいかがかと、かように私は思っておる。御承知のように、これから国際情勢も変化するでしょうし、また科学技術の進歩もあります。そうして、陸上の基地は持たなくて全部ポラリスによるかもわからない。さらにまた、もっと後方基地で事足りるかもわからない。そういうことを考えれば、そうきめてかかる必要はない。だから、一方的にそういうことをおきめになるととんでもない話になるじゃないか。それよりも、やはり先にきめることは、何としてでも日本に祖国復帰が一日も早いようにしたらどうですか、こういうことを私は言いました。私はまた、皆さん方もそういうような考え方に賛成されるか、そうじゃないんだ、いまのような不満足の状態なら返らぬでもいいとおっしゃるのか、そこが私が皆さんからも聞きたいです。私は、何としても早く祖国復帰を実現すべきだ。そのためにはあらゆる努力をすればいいのだ。そうして、一方的にそれをきめる必要はないんだ。もっとアメリカの実情もよく聞いたらどうですか。どういうような状況にあるのか。だから、そのことを私はただいま直線的な交渉をすることはどうかと思う。もう少しわれわれが考えられる方法を考えたらどうか、こういうことを申しておるのです。
  321. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 核基地撤去を言えば返らない、なかなか返るのが困難だ、アメリカの言うことを聞いたらどうだ、こう言われますね。六日山本書記長がここで質問をされましたときに、施政権の返還について、日本とアメリカとの考え方はたいへんに違うということを言った。総理答弁をされたのですね。では、アメリカの言っておりますことと、日本の考えの違っておる点はどこでありますか。
  322. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 ただいまたいへん急いでいらっしゃるようですが、私はゆっくりしておるわけじゃありません。昨年ジョンソン大統領と話し合ったのは、二、三年のうちにこの復帰のめどをつけよう、そのために継続的な協議をしよう、こういうことで別れてきておるのです。そこで、私どもはまずいろいろ勉強しなければならぬ問題は、私のほうが急いでおるのですね。アメリカのほうが一日も早く返そうと言っているのなら、これはまたよほど違いますが、私どもは日本人として、沖繩はもう施政権下、異民族のもとに置くわけにはいかぬ、また、さきの戦争で失ったあの状態にいつまでもほっておくわけにはいかぬ、これはとにかく早く返そうじゃないか、それを返してくれ、こう言って私どもが実はいま非常にあせっておる状況です。そのもとでものごとを考えたときに、私どもだけの気持ちでものごとを取り組みましても、アメリカは何を考えているか、まだわからないじゃないか。いまようやく、二、三年のうちに沖繩返還のめどをつけよう、ここまで約束ができた。これをさらに進める場合に、日本だけの考え方でものごとをきめようと言ったってそれは無理じゃございませんか。だから、ここで別に引き下がる必要はないのです。われわれの希望するようなそういう状況を率直に申し上げることも、そういうことを発表することも一つの方法だと思います。しかし、相手方があるのですから、相手方が十分受け入れができるような方向でやらなければならぬ。ここでやはり私は、こちらが言い出しているだけに非常に慎重なんです。でありますから、いまのようにあせっておられる気持ちもわかりますが、私は、まだもう少し時間をかけて、もっとそこを研究したい。  一番先の問題は……(発言する者あり)いま不規則発言もありますが、これは何といっても、川崎君も御存じのように、沖繩の基地の取り扱い方だと思うのです。沖繩の基地の取り扱い方だ。アメリカの施政権下にあるアメリカの基地は、アメリカが自由使用できる。しかし、日本に返したその後のこの基地は、アメリカが自由使用をしようとしたってそれは許さない。それはできるわけのものじゃない。そこで、その基地そのものがどういうような態様で今後変化していくだろうか、これが、私どもアメリカと十分ひざを突きまぜて相談すべきことじゃないかと思う。たとえば、いまあそこにメースBというものがある。これはもうすでに核基地だといわれておる。しかし、メースBがもうすでに時代おくれであるということは、これはもう大体の軍事評論家の一致した意見でもあるだろうと思う。最近発表されたように、ヘビーボンバーB52が水爆を積んで哨戒するようなことはもうやめるということをアメリカは発表しておる。これで見ると、いわゆる3Bが核兵器を持つのだといわれたが、もうそうでなくなって、今度2Bだろうと思うのです。ポラリスだとかあるいは大陸間弾導弾だとか、そういうような時期になってくると、この沖繩の基地の問題もよほど考え方が楽になるだろうと思いますよ。こういうような点をアメリカとうんと相談する必要があるのじゃないですか。私自身が非常な弱気で交渉するわけじゃない。ものには相手があるのだ。それを考え、しかも私が申し上げますように、日本に一日も早くこれを復帰してほしいのだ、一体になりたいのだ。そういう際に、われわれの考え方ももっとゆとりを持たしてくだすってもいいのじゃないか。直線的な交渉だけでものごとが実現すると私は思わないのです。
  323. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 条約三条で施政権を全部、立法、司法、行政、一切の権限を放棄しておる。アメリカ意思アメリカ側の考え方、相手がるあのだ、こう言う。それならば、日本側に日本の主張というのをなし得る根拠があるのかどうか、アメリカの一方的な要望にこたえざるを得ないのであるかどうか、いかがでありますか。
  324. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 これは大ありですよ。だから、それはもうそんなことを遠慮することはない。潜在主権が認められている。そこに住んでいる人たちはみんな日本の同胞なんです。これは、私どもがそんなもの遠慮することはない。
  325. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、憲法の前文に、わが国全土にわたって自由の恵沢をあまねくし、政府の行為によって再び戦争の惨禍を起こさせないようにする、こう誓っておる。ところが、沖繩の同胞は核があることによって、また基地があることによって、戦争に巻き込まれるという危険性を感じておる。米軍の家族は現に毎日避難訓練をやっておるのです、沖繩において。差別をするつもりですか。それとも核基地の撤去ということについては断固として要求いたしますか。
  326. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 だから申すのです。だから、早く返して、そうしてそのときにその問題を片づければいい、かくかくでなければ返らないのだ、かくかくでなければ返しちゃならぬのだ、こういうのは、相手方のある交渉、外交交渉のおよそ——非常にはっきりはしますけれども、あまり上手な方法だと私は思いません。
  327. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 核抜きでは早く返りませんか。
  328. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 それがわかっておればたいへんけっこうなのです。それがわからない。だから、そこにもう少しこれを検討してほしいという——それがわかっておればそれは非常に楽ですよ。
  329. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、沖繩の基地は、アメリカの極東戦略の中において、南ベトナムを中心に考えてみても、タイのウタパオ、それから沖繩、そしてフィリピンのクラーク、本拠がグアム、こういう基地群になります。基地の体系になります。そのことが、沖繩がアメリカ戦略における基地の重要性として認識をしておるところでありますけれども、そういう基地の体系というものは、核基地を撤去をすれば変わるわけです。アメリカの戦略体系が変わるわけです。それはここ当分できないのですか。
  330. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 どう言ったらおわかりがいただけるか。とにかく軍基地というものが固定したものではあり得ないのです。これはいろいろ変わってくるだろうと思います。現にごらんになるように、私ども本土に、日米安全保障条約を締結したその直後はずいぶんアメリカの兵隊がおりました。そうしていまはだんだんそれらのものが変わってきております。こういうように、いわゆる軍事基地というものがだんだん変わってきているのですね。また、欧州の例を見ましても、トルコやイタリアやその他の軍事基地がだんだん変わってきておる。これはもうお認めだと思うのです。アジアにおきましてももちろん変わってくるという、変わることをまた私どもも希望しておるし、そういうことはあるわけなのです。だから、それは固定的なものだ、絶対にだめなのだ、かようにお考えにならなくていいのじゃないか、私はさように考えております。
  331. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 非核三原則について国会で決議をする、なぜできませんか。なぜいけないのですか。
  332. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 これは国会できめれば、私はもちろん従うと言っている。私の意見は一体何かと言われれば、私は、核兵器を持っておる国があると、日本自身がそういうものに対して全然無関心ではあり得ないのだから、やはりそういう場合の態勢と合わせて核三原則を一緒に考うべきがいいのじゃないか、かように私は主張している。これは私の主張ですよ。しかし、国会で、そんな主張だめだ、こういうことでおきめになれば、それはまた私は忠実に国会の決議は守る、その考えはもうこの前にはっきりいたしておりますから、御了承いただきます。
  333. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いまNATOにおいても、NATOの各国も、アメリカの核抑止力からは距離を置く方向に行っておるのです。日本のこれまでも、アメリカの核のかさについては距離を置いてきた。しかし、総理が、最近になってアメリカの核抑止力に依存をする。これは要するに、沖繩の核基地というものを処理できない。あなたがほんとうに核抜きで返還をできる、そうしてそれをやり得るという決意があるなら——それをあなたの諮問機関である大浜さんも言っておられる。総理の決意いかんだ、核の問題についてもこれは総理の決意いかんだと言っておる。相手もあるでありましょう。しかし、あなた自身の決意いかんなのです。あなたは、そのアメリカの核について、沖繩の核について、同胞がたいへん不安に思っておる今日、核抜きで返還をするということはどうしてもできませんか。
  334. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 私は、先ほどのように私の考え方を申しました。速記によく入っておりますから、お読みください。
  335. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 東南アジアを回られた。各国が中国の核に脅威を持っておるという、核絶滅の方向にいこうという、そういう中で日本が唯一の原爆被爆国として、先ほど国民と誓ったという非核武装、この決意というものをほんとうにアジアにおいて日本が先頭に立ってやるためには、非核三原則というものが、政策によって、時の為政者によって変わってはならない。だから、国会は、非核三原則を決議すべきでありますし、また、そういう方向に向かって野党は全力を傾注するわけであります。そこで、ほんとうにアジアにおける平和を守る、核の絶滅の方向にいくというためには、沖繩の核を撤去をさせるということがアジアにおける緊張を緩和をさせる、そういう方向であることをあなたは理解できませんか。
  336. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 一つのりっぱな御意見だとして、私も拝聴しておきます。ただ、私、いま言われるように、東南アジアを回ったその際に、中共の核兵器開発についてみんな脅威を感じているんです。これは事実なんです。また、日本の政府も、しばしば中共の核開発については遺憾だという意見を表明しております。ただいま、日本政府に対してただいまのようなことを要求されることたいへんけっこうですが、このアジアの状態をよくひとつお考え願って、私どもが関心を持たざるを得ない状況だ、これだけはひとつ十分御認識をいただきたいと思います。
  337. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 核の不使用協定、つまり、これから核時代だ、核時代に日本は入ったんだと、こういうことを総理は言われます。そうしますと、日本がほんとうにこれからの核時代において、核の絶滅を期し、アジアの平和を守っていくためには、核の不使用協定というのが結ばれなければならぬと思うのです。あなた自身が、被爆国として核不使用協定を核保有国に対して要求をする、あるいは核を持たない東南アジアの地域を設定をしていく長期の見通しについて、どのようにお持ちであるか、明確にしていただきたいと思います。
  338. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 これが、いろいろ外務大臣も苦心している核の不拡散条約、これすら現状ではできない。したがいまして、ただいまの核兵器がなくなるというか、核兵器不使用協定、これもたいへんだろうと思います。私は、一つの御提案ですから、そういうことも考えなければならぬかと、また、そういう見込みがあれば十分努力すべきだと、かように思います。そうじゃない、いま言うように、核開発もやめてくださいと言っても、まことに遺憾だと言っても、核兵器はとにかくこの世の中に生まれてくるんです。そういう時代に、あまり現状と離れたような提案をしてもいかがでしょうか。
  339. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 先ほど総理は、沖繩が返還をされたときには自由使用はないのだ、基地の自由使用はない、そのことは全面返還を言っておられると思います。でありますね。そうしますと、いま総理の言っている非核三原則は、日本の施政のもとにあるわけですね。施政下に適用されておる。つまり沖繩が適用に入っていないわけです。沖繩が返還になったときに、沖繩に核があるということであれば、その非核三原則はこの時点において廃棄になる、消滅をするというふうに理解をしてよろしいですね。
  340. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 理論的にはそうなるでしょう。しかし私は、いま沖繩が祖国復帰するときに、必ず核兵器があるとか、また、なくなるとか、さようなことを申しておりませんから、いま論理的にそこをお詰めになりましてもあまり意味がないですよという、そういう御注意だけを申し上げておきます。
  341. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、その返還をしたときに、沖繩に核があれば、論理的にはその非核三原則はその時点でくずれるということをあなたはお認めになられた。だから、国会でこのことを縛ることをたいへんあなたはきらっておられる。そうしますと、今日の非核三原則というのは、沖繩が返還をされたときに核をなくすということをあなたがやり通さなければ、非核三原則はその時点がくずれる、そういう運命にあることをあなたははっきりお認めになられるわけでありますね。
  342. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 いまその沖繩の核基地、軍基地、この問題はまだまだこれからの問題です。だから、いまそういう結論を出されることはあまり先走り過ぎる、かように御理解をいただきたいと思います。
  343. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いや、私は沖繩の政権運の返還のあり方、たとえばあなたがつけておる国際情勢であるとか、科学技術の進歩であるとか、あるいは国民の世論であるとか、こういった点についても詰めなければなりませんけれども、しかしこれはまたあらためてやります。しかし、いずれにしても、あなたは、沖繩返還の際に、沖繩に核基地があればその非核三原則がくずれるということだけは、理論的には明確になったわけです。そういたしますと、日本の非核三原則、あなたの言う非核三原則というのは、要するにここ数年の運命にしかすぎない。非核三原則というものをあくまでも貫くためには、沖繩の核基地抜きで返還をやらなければならぬわけです。非核三原則を貫く決意があるのかどうか、その点をもう一ぺん明確にしていただきたいと思います。
  344. 佐藤正二

    佐藤内閣総理大臣 私の決意は、先ほど来たびたびはっきり申し上げておきました。だから、これより以上私は申しません。ただ、川崎君の言われるように、私は、一つの前提で沖繩の祖国復帰についての交渉はいたしません。
  345. 井出一太郎

    ○井出委員長 これにて川崎君の質疑は終了いたしました。  明日は、午前十時より委員会を開会し、総括質疑を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時二十八分散会