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1968-02-28 第58回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年二月二十八日(水曜日)    午前十時九分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 小川 半次君 理事 北澤 直吉君    理事 正示啓次郎君 理事 二階堂 進君    理事 藤枝 泉介君 理事 加藤 清二君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 広沢 直樹君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    上村千一郎君       植木庚子郎君    小沢 辰男君       川崎 秀二君    小坂善太郎君       坂田 英一君    田中 正巳君       登坂重次郎君    中野 四郎君       野田 卯一君    野原 正勝君       福田  一君    船田  中君       松浦周太郎君    松澤 雄藏君       松野 頼三君    森山 欽司君       山崎  巖君    大原  亨君       川崎 寛治君    北山 愛郎君       久保 三郎君    阪上安太郎君       田中 武夫君    楢崎弥之助君       畑   和君    森本  靖君       山内  広君    山中 吾郎君       横山 利秋君    竹本 孫一君       浅井 美幸君    正木 良明君       矢野 絢也君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 赤間 文三君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 園田  直君         農 林 大 臣 西村 直己君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 中曽根康弘君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 小川 平二君         建 設 大 臣 保利  茂君         自 治 大 臣         (国家公安委員         長)      赤澤 正道君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田中 龍夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増田甲子七君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      鍋島 直紹君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制次長  吉國 一郎君         警察庁長官   新井  裕君         警察庁長官官房         長       浅沼清太郎君         警察庁警備局長 川島 広守君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁教育局長 中井 亮一君         防衛庁人事局長 麻生  茂君         防衛庁経理局長 佐々木達夫君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛庁参事官  鈴木  昇君         防衛施設庁長官 山上 信重君         防衛施設庁総務         部長      財満  功君         防衛施設庁施設         部長      鐘江 士郎君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省入国管理         局長      中川  進君         公安調査庁次長 長谷 多郎君         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省条約局長 佐藤 正二君         外務省国際連合         局長      重光  晶君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         厚生省薬務局長 坂元貞一郎君         厚生省援護局長 実本 博次君         農林大臣官房長 桧垣徳太郎君         水産庁長官   久宗  高君         運輸省航空局長 澤  雄次君         海上保安庁長官 亀山 信郎君  委員外出席者         参  考  人         (日本赤十字社         副社長)    田辺 繁雄君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月二十八日  委員矢野絢也君辞任につき、その補欠として浅  井美幸君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十三年度一般会計予算  昭和四十三年度特別会計予算  昭和四十三年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算昭和四十三年度政府関係関機予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。楢崎弥之助君。
  3. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、まず冒頭に、人道問題と考えられる問題の提起をしまして、総理関係大臣のお考えを聞きたいと思います。それは懸案の朝鮮人帰還の問題であります。在日朝鮮人帰還問題について、まず最初園田厚生大臣にお伺いをしたいのであります。  在日朝鮮人帰国問題を討議するために、先般コロンボで開かれました日朝赤十字会談は、日本側会談打ち切りを表明したことによって決裂をしたことは御案内のとおりであります。このため多くの在日朝鮮人は非常に困惑をいたしました。すでに家財道具まで売って帰国準備をした人々は不安におののき、路頭に迷っており、いま大きな社会問題となっておるところであります。いまから九年前に在日朝鮮人祖国に帰ることを要求し、帰国運動を起こしましたときに、当時の岸内閣は、わが国朝鮮民主主義人民共和国との間には国交関係がないので、これを人道上の問題として政治問題と切り離して認めることにしたのであります。そうして岸内閣はこの問題を日赤にまかせまして、日朝赤十字間で帰還協定が結ばれ、以後八年間帰国事業は円満に進み、八万八千余名の人々希望を持って帰国していったのであります。ところが、政府は昨年十一月限りでこの協定を一方的に打ち切りました。これは韓国政府との政治的関係によるもので、政府人道上の問題を政治目的の犠牲にしたことは明らかであります。聞くところによりますと、帰国協定によりまして申請した在日朝鮮人で、まだ帰国できないでいる人は現在一万七千名以上もおり、現在も引き続き帰国希望者はふえているということであります。人道人権から見まして、このような大ぜいの在日朝鮮人帰国できないでいるということは重大な問題であります。政府はこのような事態を重視し、在日朝鮮人日本に居住するに至った事情や生活状態などを考慮して、これらの人々を緊急に帰国させる措置をとるべきであろうと思います。政府もこの問題を何とかしなければならないとの観点から、日赤をしてコロンボにおいて両赤十字会談を開かせたものと思いますけれども、この点はどうでありましょうか。また同時に、大ぜいの帰国希望者がとほうにくれておる今日、政府はこの問題を国際政治問題と切り離して、あくまでも人道上の問題として解決をはかるべきであろうと考えますが、園田厚生大臣見解はどうでありましょうか、お考えをお聞きしたいと思います。
  4. 園田直

    園田国務大臣 この問題は、政府といたしましても人道的立場から処置をいたし、日赤にその交渉を一任しておったものでありまして、政治問題あるいは国際政治の問題とは全然切り離して処理をいたしております。今後につきましても、この問題については人道的立場から国際政治問題と切り離して善処したいと考えております。
  5. 楢崎弥之助

    楢崎委員 善処するという前向きの答弁であると思います。  次に、日赤の副社長おいでいただいておると思いますが……。
  6. 井出一太郎

    井出委員長 見えております。
  7. 楢崎弥之助

    楢崎委員 田辺社長にお伺いをしたいのでありますが、日赤政治問題にもちろん左右されないで、人道問題はあくまでも人道上の問題として貫いていかなければならないことは当然であります。事実、いま日本生活方途のない在日朝鮮人が家財を整理して帰る日を待ちわびているのでありますから、日赤赤十字精神においてこれを誠意をもって処理しなければならないのではないかと思います。政府在日朝鮮人帰国一般外国人並みの出国にするなどといっておりますが、生活保護を受けている人々が一人十数万円も出してナホトカ経由で帰るなどということは不可能である。これは一番日赤が御存じであろうと思います。また、老人や婦女子やあるいは病人が病院船で帰るということはなかなかできません。いままでだって、船の中で病気になった人、お産をした人、たくさんあります。ちゃんとお医者さんがついておるわけです。朝鮮側は従来どおり船もよこしますし、日本国内帰国者の費用がかかれば、それも一切負担するといっておるのであります。これは従来なかったことで、従来は日本側が負担しておったのであります。結局のところ帰国者は、従来どおり朝鮮側帰国船で帰る以外に具体的には道はないのでありますが、この点は一体どのようにお考えになっておるのか。したがって、わが国朝鮮との間に国交関係がない今日、日赤がこの事業を推進し、帰りたい人々を引き続き帰国させなければならないと存じます。日赤人道上の問題として、あくまでもこの問題解決のために前向きに努力すべきであると思いますが、日赤の御見解はどうでありましょうか、この際お伺いをしたいと存じます。
  8. 井出一太郎

  9. 田辺繁雄

    田辺参考人 在日朝鮮人帰還問題につきましては、日本赤十字社といたしまして今後とも人道主義的立場に立って、政府とも十分協議いたしまして善処してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  10. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これも私は善意解釈をしておきたいと思います。  そこで、最後に、総理に一言お伺いしたいのですが、御承知のとおり世界人権宣言は、何人も自国に帰る権利及び居住地選択の自由をうたっております。在日朝鮮人帰国問題も、この国際通念に基づいて解決されなければならないと思いますが、総理の御見解はどうでありましょうか。また、大ぜいの在日朝鮮人帰国できないでとほうにくれている現在、政府はこの問題を政治問題と切り離して人道上の問題として処理し、日赤を援助して、従来の方法によってこれらの人々を早急に帰国させるべきであろうと思います。一体政府は、今後在日朝鮮人帰国問題にどのように対処する具体的方針なのか。以上の二点について総理の御見解をお伺いいたします。
  11. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま楢崎君の言われるように、国際人権宣言、それから申しまして、帰国自身は、これはもう私どもがとやかく言う問題ではございません。もう申すまでもなく帰国は自由だ。その方法一体どうするか、こういうことで、今回の日赤中心にしての交渉、これは成功するだろう、成果をあげるだろうと、実は非常に期待したものであります。私はいま、この話がどういうわけでこわれたとか、かようなことをせんさくするつもりはございません。また、今日もなお、日赤が在来から、政治とは別に、人道上の見地から話し合いを続ける、こういう立場に立てば、また相手のほうも協議する、こういうことであれば、私は協議をして、ぜひそういうものをまとめたい、かように思っております。ただいまこれが不調になったこと、まことに私残念に思っております。
  12. 井出一太郎

    井出委員長 楢崎君、田辺参考人はよろしゅうございますね。
  13. 楢崎弥之助

    楢崎委員 はい。
  14. 井出一太郎

    井出委員長 この際、田辺参考人に申し上げますが、御多忙中おいでをいただいてありがとうございました。楢崎君の質疑は済まれたようでありますから、どうか随時お引き取りくだすってけっこうであります。
  15. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ありがとうございました。  ただいまの総理の御答弁は、善意を持った責任あるおことばであると今後期待をいたしたいと存じます。よろしくお願いをいたします。  そこで、お願いを済ませましたから、これから追及のほうに入るわけでございますが、まず最初に、これは私意外に思ったのでありますが、けさの新聞を見ますと、沖繩立法院の方が総理にお会いになっていろいろな問題について陳情された。そこで総理が、B52の問題もアメリカは常駐する気がないんだから、ひとつ皆さん方も帰って説得してもらいたいということを言われたらしい。これに対して沖繩人民党古堅書記長は、その発言は重大な発言だと言ったところ、総理は、抗議に来たんなら帰りなさい、まあ出ていけと言われたように書いてあります。そういうことを言われたという報道が載っておるわけです。私は、沖繩の問題がこれほど国会の内外で日本国民の大きな関心を買っておる、沖繩人々も重大な関心を持ってこれを見詰めておるときに、抗議に来たんなら帰れという総理のおことばは、私はそのときの雰囲気は知りません、知りませんから、いろいろあったろうと思いますけれども、しかし、結果として国民が知るのはこの新聞報道であります。だから、私はこれを見まして、まず一番に感じたことは、総理は、沖繩方々日本同胞である、日本と早く一体化したいと口では言われておるが、しかし、いざ具体的な問題がこう出ると、つい本土沖繩人々を差別する、区別するような態度がそこにあらわれておるんではないか。これは私は、そういう意味では非常に重大な、これは国民感情として許せない態度ではなかったろうか、このように思うわけです。先ほど申しましたように、そのときの雰囲気がありましょうから、この点だけはひとつ総理、間違いなら、そういった違和感は持っていないんだ、ほんとうに沖繩日本国民であるし、同胞であるという、そういうあなたの信念があるならば、この際きのうのこの問題に関連して、ひとつ見解をお伺いしておきたいと思います。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはただいまお尋ねがありましたが、当時の話といたしましては、まあ全体としてはたいへん話が順調にきていたように思います。しかし、そのうちにことばの行き違いがありまして、ただいまのようにおこったこと、また私が激怒したという表現、これはたいへん私自身もおとなげないことであった、かように思っております。これはもうそういう意味で、私もただいまたいへん平静になっております。また、いま楢崎君の言われるように、まあそのときの空気はどういうことであったか、それは別だから、その点は自分も触れない、こういうことですが、ただいま言われます、まあ大事なことは、とにかく昨日のいきさつは別といたしまして、ただいま言われます本土沖繩同胞との間に差別的な待遇があるとか、そこらに違和感があるとか、こういうようなものでは実はございません。私がいつも沖繩問題と取り組んでおる真剣の問題は、やはり沖繩同胞百万、同時にまたわれわれ日本国民一億、これが一体となって念願しておる本土への復帰、それを実現したい、こういう意味で私の気持ちはよくわかっていただけると思っておりますが、今日も私は、そういう点ではこれはもうはっきりこの機会にも申し上げ得るように思います。そういうような差別的な考え方は毛頭ないということ、これを申し上げます。そうではない、私は沖繩方々が今日まで異民族のもとにあるということ、さぞ苦労が多いだろう、一日も早く祖国復帰が実現するように、これを実は念願しておるものでございまして、その点ではどうか誤解のないようにお願いしたいと思います。  重ねて申しますが、昨日の私の発言はまことにおとなげないものであった。ことにはるばる沖繩から来られた諸君に対しまして、かような待遇あるいは言辞を弄したこと、これは私自身も反省すべきものだ、かように思っております。
  17. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私はいまの総理のお答えは率直で非常にいいと思うのです。ぐあいの悪い点は悪いというようなことを率直に言われることがやはりいいのではなかろうかと思うのです。できれば、いまどうされておるかわかりませんが、私に対する答弁でございましたけれども、何らかの形であなた自身からそのような気持ち相手に通じるように、はるばる来られた沖繩立法院方々にぜひそれは具体的に伝えていただきたいと思うわけです。  そこでいま一つ、この問題で、B52の点については、昨日でございましたか、触れられまして、三木外務大臣は、抑止力という観点からこれの撤去を申し入れる気持ちはない、このように言われたわけです。そこでこのB52の抑止力という点、これはチェックできない、沖繩の場合はチェックできない。しかし総理が言われておる核三原則は、これは一つの抑止力チェックであります。一体本土沖繩とそんなに区別して考える、これは沖繩の核つき問題とも関連します、いままでの議論とも。そこでその抑止力チェック限界、どこに一体限界を置くのか、これは重大であろうと思います。私はこれから二時間ほど質問しますが、抽象的な論議はいたしません。見解相違ということで分かれるようなことは私はいたしません。具体的な問題を中心にしてひとつ見解を明らかにしていきたい、このように考えるわけであります。  そこで私は、一番最後の私の質問に関連しますので、冒頭に資料の提出をひとつお願いをいたしておきます。できなければできないでけっこうです。——ちょっといまどこへ書いておいたかわかりませんから、あとで言います。  それじゃ質問に移りますが、臨時国会以来今日までのわが国安全保障に対する論争を聞いておりまして、非常に残念ながら、政府と私ども野党の間には大きく見解相違があるようであります。大別をして、一体憲法体制でいくのか安保体制でいくのか。これは私ども考えからそういうふうに思われるのです。しかし、こう大きく分かれるということは、決して国益の点からプラスにはなりません。われわれだって国民的な合意ができることを望みます。しかし、こんなに分かれておる以上、どこかにこれを求める可能性はないものであろうか、こうも私たちは考えます。  そこで私は、この国民的な合意基本になるものは一体何であろうか、まずその基本が一致すれば、だんだんその合意可能性が出てくるのではなかろうか。そこで私どもは、国の安全保障に対する国民的合意、あなたが求められる国民的な合意基本は、私ども憲法であると思います。しかし、どうもいままでのあなた方のおっしゃっておることを聞くと、あなた方はそうではなしに、憲法基本を置くのではなしに、昨年十一月、ジョンソンとの間に結んでこられたあの共同声明の線に国民的な合意基礎を置く、このように努力されておるように私どもには国会の審議を通じて考えられるわけです。それは私は間違いであろうと思います。まず国民的な合意基礎は、基本は、道しるべは、わが日本国憲法である。この点は、ひとつ総理と私の間に合意をしたいと思うのですが、どうでしょう。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はいまの設問がちょっとわからないのですが、憲法体制安保体制かと、憲法安保が矛盾し相反するもの、あるいは対立するもののようにお考えのようではないのか。私ども憲法のもとにおいて政治をしておる、これはもう御承知でございます。憲法のもとにおいて条約を結んでおる。また、私ども憲法のもとにおいていまの自衛隊も持っておる。とにかくそこが、私は、いま言われますが、たいへん合意がしやすいことであると考えながら合意ができておらない。どうもたいへん皆さん方と私どもとがそこで違う。皆さん方のほうのその非武装中立論、こういうものが、私は憲法違反とは申しませんよ。申しませんが、同時に、私どものいわゆる安全保障体制、そして自衛力を持つというもの、これは憲法違反だ、憲法体制じゃないんだと言われること、これは私困ります。だから、これはお互いに憲法体制、このもとにおいて政治をする、これはもう確認していいことで、ただその場合に、憲法立場に立ちましても、それぞれがどういうような方法でいこうかという、そこに相違がある、そこで分かれておるので、これは憲法体制がくずれておる、かように私は思いません。
  19. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、国民的合意基本憲法である、あなたもそう思われますか、それでいいんですよ。そうでなかったら、これは私は問題にしますけれども、まあそう言いたいんだろうけれども、何か枝葉をつけられましたから。しかし、私はそうであろうと思います。だからこそ、あなたは先日来、平和憲法は守る守ると、まあ口と腹と合っているかどうか知らぬが繰り返し言われておるところです。しかし私は、やはりこの国民的な合意基本憲法である、だからこそ、ここで憲法を侮辱したり非難したりするような人があれば、もはや国民的な合意に達する可能性は失われる、そういう点でわれわれはせんだっての倉石発言なり、引き続いて行なわれました増田発言なり、あるいは牛場発言なりを問題にしておるのはそこであります。  そこで私は、まずこういう観点から増田発言を問題にしたいと思うのです。私がなぜ増田発言を問題にするかというと、どうもいまの佐藤内閣のもとでは、いろんな憲法の問題を拡大解釈する傾向がある。それがあるから、したがって国内法についても拡大解釈をする傾向が出てきておる。その大きな問題として、私は増田さんのせんだっての発言を取り上げたい。これは小さな問題じゃないのです。私はいまからその点を明らかにしたいと思うわけです。  そこで、まず、これは一連の——突如として出ていった問題ではない。これはまず佐藤総理が昨年アメリカから帰られて、すぐ記者会見をされた。佐藤総理はその記者会見の中でこういうことを言っておるのです。日本憲法を持っておる。しかし、日本国憲法が拘束するのは日本国民だけであって、ソ連や中国、よその国まで拘束するものではないとあなたはおっしゃいました。これです。これが今度倉石発言になるとどうなるかというと、幾ら日本国憲法を持っておっても相手のあることだから、この前文はすでに無意味になっておると、以下、例の日本国憲法はめかけだというように続くわけです。あなたの発想倉石さんの発想は同じなんです。そうして、その次に倉石さんと増田さんの発言はどういうふうに関連をしてまいっておるかというと、倉石さんは、大砲軍隊の三十万くらいなくちゃだめだとおっしゃった。原爆もおっしゃった。ところが軍艦大砲や三十万の軍隊はあるのですよ、いまあるのですよ。三次防でもう正規の軍隊は二十六万になる。予備自衛官を合わせると三十万ですよ。現在あるんです。じゃ、どこがあなたと違うかというと、倉石さんは、その現在ある軍隊を使えないのがくやしいということなんです。あなたは、いやそうじゃないんだよ、軍艦は使えるんだよと言った。言ったんです。そこが違うだけですよ。もとは同じなんです。あなたのほうが悪質なんです。  そこで私は、以下それを明確にしていきたいと思うのです。倉石さんは口で違憲のことを言ったのです。あなたは行動で違憲のことをやらかそうとしておると私は思わざるを得ないのです。あなたは漁船保護のために自衛隊法の八十二条を適用できるとおっしゃいましたね。そしてそれが問題になって、いろいろ発言の後に、二、三回記者会見をして、さらに深みにはまるような発言をなさいました。  そこで私は、法制局長官に一番にお伺いをしておきたいのですが、この自衛隊法の八十二条と、七十六条の防衛出動、七十八条の治安出動、この関係はどうなっておるか、簡単に言ってください。
  20. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  簡単に申し上げますが、八十二条は海上における警備行動、これは申すまでもなく警察目的からする行動でございます。そのほか御指摘の点は防衛出動、これは自衛隊として本来的任務といいますか、わが国を自衛するという機能から出る出動の問題でございます。
  21. 楢崎弥之助

    楢崎委員 なかなか遠慮して言われておりますけれども、そのとおりなんですね。いうならば八十二条というのは、これは警察活動です。それが証拠には、九十三条は、警職法の武器の使用について、八十二条で海上自衛隊が出動したときに、もし武器を使う際には警職法の七条を準用しておるわけですね。ところが七十八条の治安出動の場合にもやはり警職法を準用しておるのです。そうすると九十三条から考えるならば、この八十二条の海上警備というものは、まあ範疇の点からいくならば国内問題なんです。国内問題の出動をこれは予想しておるのです。かねてわが党が言っておるとおりなんです。たとえば漁業権の問題で争いが起こる。あるいはいままであったかどうか知りませんが、海上でギャングが出て、海上保安庁ではどうしようもないというようなときに出るのであって、国際漁業に軍艦を出すなんていうようなことはこれは想像してないですよ。あなたは八十二条でできると言っている。そういうことはできないのですよ。  そこで私は、時間がありませんから一々聞きませんが、国際漁業に八十二条を適用するという問題はどういう問題が起こるかというと、これは外務大臣も農林大臣も聞いておってください。国際漁業というものは、すぐれて外国との利害関係が常にあるところなんです。常に問題の、紛争の起こりやすいところです。したがって、そういう紛争のあるところに軍艦をもってその紛争を防ぐとか、あるいはその解決に当たる、こういうことは明らかに憲法前文にいう、国際的な紛争を武力で解決したりあるいは武力で威嚇する、そういう条文にこれは触れるようになるのですよ。外務大臣、どう思われますか。
  22. 三木武夫

    三木国務大臣 外務大臣としては、国際紛争を武力で解決することはいけない。しかし、この問題は自衛隊としての問題でありますから、増田長官の答弁が適当であろうと思います。
  23. 楢崎弥之助

    楢崎委員 じゃ増田さん、お考えをこの際はっきりしてください。
  24. 増田甲子七

    増田国務大臣 楢崎さんにお答え申し上げます。  楢崎さんのおっしゃっているとおり、海上等でギャングが出て、海上保安庁ではどうにもならないときに警備行動に出るのだとあなたはおっしゃいましたが、その範囲のことでございまして、海上における警備行動、すなわち八十二条を誤解があってはいけませんから二度読み上げただけでございます。悪質なる憲法違反なんてことは、あなたの御質問はたいへん悪質でございますから、御修正を願いたいと思います。
  25. 楢崎弥之助

    楢崎委員 増田さん、私の何が悪質なんですか、もう一ぺん言ってください。私はわかりませんでした。
  26. 増田甲子七

    増田国務大臣 私は、金沢において、自衛隊法八十二条を二度新聞記者諸君に読み聞かせまして、その解説を求めると言いましたから、解説は加えたり引いたりすることになるからいけない、八十二条は日本語で書いてあるからもう一ぺん読みますと言って読み上げました。すなわち、八十二条は、長官は、海上における人命の保護、財産の保護もしくは治安維持のため特別に必要ありと認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に行動を命ずることができる、それを解説しろと言いましたから、これは日本語で書いてあるから、日本語でお読みのとおりであるということを言っただけでございまして、八十二条は憲法違反ではないと、私はこの際皆さまに申し上げます。
  27. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたは私の質問を聞いておるのですか。八十二条が違憲だなんてだれが言っておりますか。私は八十二条を国際漁業の紛争の場に出すことが違憲行為に通ずると言っておるのですよ。何を言っておるのですか、あなたは。あなたは記者会見で言っているではありませんか。漁船保護に、これはプエブロ事件と関連をして、倉石発言と関連をして、そしてああいう紛争の場に自衛艦を一応出すあれはないかと記者が聞いたのですよ。それに対して、日本海の漁業紛争のところに自衛艦も出し得るのだ、その根拠は八十二条であるとあなたは言った。だから、国際漁業のようなああいう紛争の場に自衛艦を出すことは、憲法の前文に違反する行為を犯す危険があると私は指摘をしておるのです。それがどうして私が悪質な質問なんです。これはひとつ委員長、取り消させてください。だめですよ。二時間もあるのにいまからあなたがそういう発言をしておったら、これから続きませんよ。   〔「どこが悪質だ」「取り消させろ」と呼び、その他発言する者多し〕
  28. 井出一太郎

    井出委員長 この際、増田防衛庁長官から発言を求められました。これを許します。
  29. 増田甲子七

    増田国務大臣 私の、あなたの質問が悪質だという点は取り消します。あなたも、私が悪質なる憲法違反をしているということはどうぞご修正を願いたいと思います。私は憲法順守については、きわめて厚くこれを順守し、これを擁護するという点は総理大臣と全然同様でございます。
  30. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私はつまらぬ問題でこういうところで議論したくありません。私が悪質と言ったならば、私は取り消します。しかし、私が言っているのは……(「確かに言った」と呼ぶ者あり)いいです。取り消したと言ったじゃありませんか。まだこだわりますか。  だから、私が言っておるのは、八十二条を漁業保護に出すことは憲法前文に触れる可能性があるのですよ。総理、あるのです。だから私は、八十二条を発動することはよろしくない、国際漁業に発動することはよろしくない、これを言っておるのです。  そこで問題は、そしてあなたは何か社会党が国際法を知らぬというようなことをおっしゃったそうですね。あなたは国際法が詳しいかもしれぬが、じゃお聞きしますが、国際漁業の紛争に軍艦を出した例があるかどうか、あなた言ってください。
  31. 増田甲子七

    増田国務大臣 新しい御質問ならお答えいたしますが、私の従来の発言は、八十二条というものが存在いたしております。八十二条はこういうものですということをいつも言っておるだけでございます。  それから、新しい問題として国際漁業云々のことは、外務大臣にも関係いたしますから、両方にお聞き願いまして、さらに検討してお答え申し上げます。これは新しい御質問でございます。従来の例があるかどうかということの新しい御質問といたしまして、従来私はそういうことを発言したことはございませんが、従来は李ラインその他について、これは行動というのでございます。警備行動でございまして、出動という字と行動という字と、派遣という字と、きわめてわれわれは厳格に区別して考えておるのでございまして、新聞等に出動出動と書いてありまするし、あなたもときどき出動とおっしゃいまするが、出動という字は厳に私どもは避けたいのでございます。出動というものは防衛出動治安出動以外はないのでございまして、八十二条は警備行動という行動でございます。その行動をとることを命じたことは過去においてはないのでございます。
  32. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、国際的に——全世界ですよ。日韓の問題じゃないのですよ。全世界的に軍艦を漁業紛争に出した例があるかどうか、あなた、国際法詳しいそうだから、それを聞いておるのです。
  33. 三木武夫

    三木国務大臣 政府委員からお答えをいたすことにいたします。
  34. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、増田さんがわが党を侮辱したようなことを言ったからはっきりさしておるのです。国際法を社会党は知らぬというようなことを言ったそうだから、だからどのくらい国際法をあなたが知っておるか、聞いておるのです。私はあとで明らかにします。
  35. 増田甲子七

    増田国務大臣 記者会見のことは、国際法を社会党は全然知らないなんということを言っておりません。(「何と言った」と呼ぶ者あり)自衛隊法八十二条をよく読んでいただきたい、そうすればいろんな私の発言に対するあなたの発言もないでしょうし、ほかの発言もないでしょうと、つまり誤解した発言です、誤解した発言はない。自衛隊法八十二条を改正しろというなら、これは立法論で別にございますよ。自衛隊法八十二条を読んでいただきたいということを発言しただけでございます。
  36. 楢崎弥之助

    楢崎委員 漁業問題で軍艦を出した例を私は一生懸命調べました。あなたがあんなことを記者会見で言うから一生懸命調べました。一つだけ例を私は見つけました。  それはいつかというと、御承知のとおり、一九五八年に第一回の国際海洋法会議がジュネーブでありました。第二回目が六〇年です。外務大臣御承知のとおりです。そこで接続水域に関する問題、公海に関する問題の論議を行ないました。これが日韓条約のときの、例の十二海里の専管水域の問題です。そうして、日本はそのときに、小委員会では賛成しながら採決に加わらなかったのです。そして今度の国会に外務委員会にかかるでしょう。やっとこの接続海域に関する条約、公海に関する条約日本は批准をする段階にきておるのです。この問題のときに、第一回目の一九五八年、専管水域が問題になったときにアイスランドが一いいですか、アイスラントが一九五八年の六月三十日に十二海里の専管水域を宣言したのです。そして引き続いて九月一日から実施に移ったのです。このときは了解は十分できていなかった。しかしながら、いままでアイスランドの海に関係をしておったソ連や東独、デンマーク、ノルウェー等は承認をいたしましたけれども、ほかが承認をしなかったからもめた。そこで、いよいよこれが発動されるや、ほかの国は全部十二海里から外に出たけれども、イギリスだけが軍艦をそこに置いて保護に当たる、この例があるだけです。しかし、この例はそういう異常な問題のときに行なわれ、しかもイギリスは日本と違って平和憲法を持ちません。だから、国際漁業に軍艦を出すなんという例はないのです。ましてや、あなたがただ条約解釈の問題として国際漁業に八十二条を発動し得るなんて——私は出動と言っておらぬのですよ。発動ですよ。発動し得るなんというあなたの考えは明らかに間違いであります。  国際漁業の紛争の処理は一体どうなっておりますか。農林大臣、日韓漁業を例にとって言ってください。どういうふうに処理するようになっておるか。軍艦を出すようになっておるかどうか。農林大臣、これははっきりしておかなくちゃいけません。あとから総理大臣にもお伺いしますからね。あなたは増田さんを激励したそうだから、あなたにはあとで聞きます。
  37. 西村直己

    ○西村国務大臣 日韓の漁業権の問題がありますれば、あくまでも外交処理によってまいりたいという考えでございます。
  38. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は四十年の日韓条約の審議のときに特別委員でありました。日韓漁業の問題の担当でありました。一生懸命勉強して、そういう点を明らかにする準備をしておったところが、私にくる前に強行採決して、ついに私がいま言ったようなことは言われなかったのです。はっきりしなかったからこういうところに問題が起こるのですよ。だから増田さんのような問題が間違いを起こすのですよ。  そこで、いまおっしゃったとおり、日韓漁業は九条によってこの紛争の処理のしかたをきめております。国際漁業法というものは全部そういうふうに外交上の手続をもって処理するようになっておるのです、ちゃんと紛争処理機関を設けて。軍艦を出すなんということは考えられないのですよ。私はこの際この点を明確にしたいと思いますが、総理大臣は、この増田さんの問題が非常に刺激したときに、あなたは増田さんから説明を受けて、こういうことを言われた。向こうから攻撃を受けて逃げ帰ってくるようなことじゃ自衛艦はだめだ、そういうことをおっしゃったそうですね。そして激励されたそうですね。どうですか、これは大事な問題なんですよ。
  39. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は当時どう発言したかはっきり覚えておりません。ただいま何か記録があるようですが、私はその記録を承認するわけでもございません。ただ、増田君からいろいろ報告を受けました。そして、八十二条のあることも、これはもうはっきり言われました。私自身が、自衛隊のいわゆる出動ですか、行動ではない、出動というようなことについては、私の指揮命令がなければそういうことはしないのですから、そういう意味で、私に対しましても、そういう心がけや用意がちゃんとできておるかどうか、こういうような意味だろうと思いますが、私は、ただいまの状況のもとにおきましては、ただいま言われるような事態にはこれは発展しない、かように思っております。ただいま増田君の言いましたことも八十二条のその域を出ていない、かように御了承をぜひいただきたいと思います。
  40. 楢崎弥之助

    楢崎委員 総理は誤解なさっておられますね。八十二条を逸脱しておる問題を言っているじゃないですよ。八十二条を国際漁業に発動するのが間違いだと言っておるのです。  なぜ間違いかというと、法制局長官もおられますが、八十二条は——もし武器を使用する際は、正当防衛、緊急避難、それから七条の逮捕した者、脱走した者、こういった者のときは現地司令官の判断で武器を使うことができるのですよ。それ以外はその現地の指揮者、船の指揮者ですね、それ以外は現地の指揮官の許可が要るのです。だから、もし総理大臣が、攻められたら逃げ帰るようなことであってはだめだというようなことを言われますと、もし国際漁業に自衛艦を出した際に、ああ、総理があんなに言っておるからといって、すぐその船の司令官、艦長がこれを発動しかねないのです。たいへん危険な問題です。そうして、この八十二条が国際漁業にこれを発動した際には、もし問題が起こったときには、治安出動なりあるいは防衛出動に直ちに発展しますね、もし交戦状態になったらです。そのときには国会の承認が要るのですよ。これほど重大な問題です、国際漁業に出動するという問題はですよ。この八十二条を発動するということはそれほど重要な問題だから、軽々に条文解釈で、増田さんが国際漁業に八十二条が発動できるのだと、そういうことを考えておられたらたいへんなことになるということを私は言っておるのですよ。これはひとつ、国際漁業に八十二条の発動はしないということをここではっきり言ってください。
  41. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはたいへん問題を起こす危険がある。したがって、ただいま言われるように軽々に発動してはいかぬ、これはもうお説のとおりであります。私はそのことをはっきり申し上げておきたい。
  42. 楢崎弥之助

    楢崎委員 国際漁業に発動できないということです、私が言っておるのは。わかりませんか。軽々も重々もないのですよ。国際漁業に発動してはいけないというのですよ。そうなんですよ。これは国内問題なんです。
  43. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどのお話でもこれは警察行為だという、そういうように私も理解し、楢崎君も言っておられる。いま私が軽々にというのは、楢崎君が特に声を大にして、軽々にこんなものを発動してもらっては困る、誤解を受ける、こういう御注意でございますから、そのとおりだと、かように申しております。
  44. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは、そこまではとっちめませんから、国際漁業には八十二条の発動は考えていない、こう理解しておってよろしいですね。——ふんと言われましたから、よろしゅうございましょう。  そこで、もう一つここで重要な問題は、増田さんがこの問題に関連して、ちらっと記者会見で言われたことに重要な問題があるのです。  それは、あなたは漁船どころか、客船もタンカーもと言われておるのです。これは重大なんです。いいですか、まず客船からいきましょうか。  私はなぜこれを重要視するかというと、われわれは、わが党は従来から日本の防衛の範囲、自衛権の範囲ということを非常に問題にしておったのです。一体総理大臣、あなたは日本の防衛の範囲、自衛権の及ぶ範囲をどう考えておられますか。総理大臣にお伺いします。
  45. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままで抽象的にお答えしておりますのは、日本が侵略された場合にその侵略を排除する、こういうことばでいつも説明しております。
  46. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ということは、施政権の及ぶ範囲内という意味ですね。
  47. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 施政権の及ぶ範囲、それはもちろんです。ただいま言うように、侵略、そういう行為がなければ自衛権は発動しない、かように御了承いただきたい。
  48. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いま法的には詳しいあれはありますけれども総理がおっしゃっておるのは、侵略ということは、わが国の領土、領空、領海に侵入したとき、つまり日本の施政権の及ぶ範囲が自衛権の範囲だ、これが従来からの政府の統一見解なんですよ。それはいいですね。
  49. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのような侵略行為というものは、お説のとおりです。領土、領空、領海、そういうものが侵害された、こういう場合に侵略がある、かように思います。
  50. 楢崎弥之助

    楢崎委員 つまり、防衛の範囲ということですね。だから、せんだっての臨時国会でわが党の成田委員が小笠原の防衛の問題について聞かれたときに、小笠原の領土、領空、領海とあなたはおっしゃったわけですよ。ところが増田さんのあの発言からいくと、客船それからタンカー、これが問題なんです。いま海上自衛隊の三次防から四次防に至る装備の傾向を見てごらんなさい。かつての帝国海軍のように、タンカー、すなわち中近東間のオイルロード、これをいかに守るかというのが海上自衛隊の非常に大きな懸案事項なんですよ。つまり、広域の防衛、遠洋の防衛、これを考えておるのです。だから、三次防で航空母艦を持ちたかったが、それがいれられずに、やっとヘリコプターを載せる四千七百トンの護衛艦に、一応二隻に落ちついているのです。四次防になるとさらにこれは空母型になる可能性があるのです。いわゆる生命線という名のもとに、オイルロードを守るということで広域の防衛に発展する可能性があるのです、あなたの発言は。増田さん、どうですか。タンカーの護衛ということはそういう意味ですよ。どうですか。
  51. 増田甲子七

    増田国務大臣 あなたの先ほどおっしゃったとおり、海賊等にやられて、海上保安庁の力ではどうにもこうにもならぬという特別な場合に海上における警察行動を、長官は総理の承認を得て命ずることができる。この範囲のことでございまして、ケースのことについてはあまり触れないのでございます。ケース、ケースをあなたが取り上げて言われれば、私どもでもケース、ケースについてお答えいたしますが、あらゆるケースというものは森羅万象たくさんございまして、とにかく八十二条の範囲の具体的なケースが起きてきた場合で、しかも、海上保安庁の警察行動というものは、領海もあれば、領海以外の公海においても警察行動はしております。つまり、日本の領域というふうには考えられませんが、日本の主権が及ぶことは明瞭でございまして、でございまするから、タンカーにしても、パッセンジャーボートにいたしましても、船長の警察権というものは、日本の主権の一部である司法警察権の一部が船長によって行使されるものである、また、これを保護するために海上のパトロールを海上保安庁がいたしておるのでございまして、その力の不足の場合に、特別の必要があるときに、総理大臣の承認を得て、長官が海上における警備行動を命ずる、こういうわけで、一つ一つの例をあげれば切りがございませんから申し上げませんけれども、公海上における日本の船舶も日本の主権は及ぶのであるということだけをこの際申し上げておきます。
  52. 楢崎弥之助

    楢崎委員 何を言われたかさっぱりわかりませんが、要するに、自衛隊は三次防から四次防にかけて遠洋防衛を考えていると思わざるを得ません。総理もそうです。これは本日の主たる議題ではありませんから、私は問題の提起だけにとどめておきます。  そこで、以下私は非核三原則の問題に移りたいと思うのです。  この非核三原則を総理が言われて以来、私どもは双手をあげて賛成したのです、これはたいへんいいことだ。こういう点は、国民が全部合意できると私は思うのです。だから、わが党の山本書記長が、総理が言われたことをそのままひとつ国会決議にしようじゃないかと言ったのはそこなんです。だから、この非核三原則というものがほんとうのものであるかどうか、これが私は重要になろうと思います。そこで、これに中身を盛らせる、実効性を持たせるいろいろな歯どめが必要であろうと思います。その歯どめの一つが国会決議であろうと存じます。しかし、国会決議がなぜ必要であるかはこの前山本書記長がおっしゃいました。私は、いまから具体的に問題を提起して、最後に、いかに国会決議が必要であるかという点に入りたいと思います。  そこで、この三原則の実効性を持たせる一番大きな問題の一つは、やはり事前協議であろうと思います。だから、公明党の矢野書記長もこの事前協議の空洞性というものを指摘されました。日米安保条約に賛成をする人でも、日本日本関係のない紛争に巻き込まれるのはいやだということは全部一緒であろうと思います。総理もそう思っておられると思います。それを保障するのが実は事前協議であります。その点は私は一致し得ると思います。だから、日本関係のない紛争に巻き込まれる、これを防ぐには、事前協議がほんとうにアメリカとの対等性、平等性を持つものでなくちゃいけない。そして、積極的にこれを活用するものでなくちゃいけないと私どもは思うのです。ところが、政府の現在の考え方は、なるたけこれを消極的に扱おう、これを狭めて運用しよう、こういうふうに思われてなりません。だから、私はその具体的な例をいまからあげていきたいと思います。  まず第一番に、この非核三原則を総理が適用されようと思っておられる、その適用の範囲は一体どこなんでしょうか。日本の領域と考えてよろしゅうございますか。
  53. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の考えは、別に中共やソ連ではございません。日本本土でございます。
  54. 楢崎弥之助

    楢崎委員 中共やソ連のことを何で私が言いますか。日本の領域ということは、日本の領土、領海、領空ですね。間違いありませんね。  そこで、次に、事前協議の場合にあなたは、これは従来の——従来といって、ここ最近です。ここ最近の外務省の態度ですが、アメリカ側にしか申し出権がない、一貫してそう言われております。それに対して矢野書記長は、三十九年ですか、大平外務大臣のときの例をあげて、大平さんも、当時の中川条約局長も、いや、双方にあるのだ——増田さんは、雑音か知らぬが、双方にあるのだとりっぱなことをおっしゃったが、この前打ち消されましたね。あれは惜しいことでした。  そこで私はお伺いをしますが、第四条の随時協議の協議機関は一体何でありますか。外務大臣。
  55. 三木武夫

    三木国務大臣 第四条による随時協議は、これは双方がどちらからでも申し出て、いつでもできる性質の会議でございます。
  56. 楢崎弥之助

    楢崎委員 時間がありませんからね。そんなことを聞いていないのですよ。第四条の協議機関は何かと聞いているんです。
  57. 三木武夫

    三木国務大臣 これは外交ルート、外交機関によって行なうものでございます。
  58. 楢崎弥之助

    楢崎委員 第六条の事前協議の協議機関は何ですか。
  59. 三木武夫

    三木国務大臣 これはやはり政府政府——事前協議を申し込まれて、アメリカ政府から申し入れがあって、政府政府で協議をいたすものでございます。
  60. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私が聞いているのは、何か特別の協議会があるかと聞いておるんですよ。そこまで言わなければわかりませんか。
  61. 三木武夫

    三木国務大臣 特別の協議会はありません。
  62. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それではお伺いをしますが、一九六〇年ですね。一月十九日の日米安全保障協議委員会の設置に関する往復書簡、岸首相・ハーター国務長官の往復書簡は、これは消えたんですか。なくなったんですか。
  63. 三木武夫

    三木国務大臣 第四条については、いま言われる日米協議委員会も第四条によってやることができるわけでございます。
  64. 楢崎弥之助

    楢崎委員 外務大臣、あなたはそんなでたらめを言っちゃいけませんよ。あなたはさっきは何と言いましたか。四条は外交機関だ、六条は何かまた政府政府——そんなことを言っちゃいけませんよ。事前協議というのは重大じゃありませんか。それを、あなたは知らないんですか、こういう外交文書を。冗談じゃありませんよ、あなた。
  65. 三木武夫

    三木国務大臣 何も私の言っていることにでたらめはありません。第六条は、政府の申し入れによって事前協議は行なうのでございます。随時協議も外交ルートで行なう。
  66. 楢崎弥之助

    楢崎委員 外交ルートというここを聞いてないのです。外交ルートはあたりまえの話です。特別の協議会がありましょうが、と聞いているのです。この往復書簡は消えたんですかと聞いておるのですよ。あなたは使う気がないから、こういうことを知らないのだ。何を言っておるのですか。
  67. 三木武夫

    三木国務大臣 そんなに大きい声を出さなくてもわかることです。  要するに、第四条は、一つは外交ルートがある。しょっちゅうわれわれとしてやる機会があるわけです。その上に、いわゆる安保協議会も第四条の規定を適用してやっておる協議会でございます。
  68. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この日米安保協議委員会の設置に関する往復書簡というのは、これは生きておるわけですね。そうすると、これによると——私がここでまた読むと時間が長くなりますよ。この往復書簡は、第四条の随時協議の場合も、第六条の事前協議の場合も、協議機関はただ一つ、特別の委員会を設けましょうやと書いてあるんです。そうしてあなたたちはオーケーしておるのです。これが日米安全保障協議委員会です。あるんです。そしてこれにはどう書いてありますか。全部は読みません。この委員会ですよ。第四条を協議する場合も第六条を協議する場合も、この日米安保協議委員会はいずれか一方の要請があるときはいつでも会合すると書いてあるじゃないか。
  69. 三木武夫

    三木国務大臣 これは私が申しておるように、両方で、第四条は普通の外交ルートでもできるし、またいま協議委員会も第四条の規定による。両方が可能であるということでございます。
  70. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この日米安保協議委員会は四条もできるし、六条もできる。そしてこの日米安保協議委員会はいずれか一方の申し出によってできる、こうなっておるのです。だから、事前協議もいずれか一方の申し出でできる、こうなっておるのです。だから、三十九年の大平外務大臣、中川条約局長答弁が正しいんですよ。それをあなた方は使う気がないから、ことさらに自分たちでかってにそういうふうにつくっておるのです。はっきりしてください。
  71. 三木武夫

    三木国務大臣 私ども解釈は、藤山外務大臣、大平外務大臣の国会答弁も私は読んでみました。しかし事前協議の条項は、アメリカの配置、装備、作戦行動というわけでありますから、やはりイニシアチブはアメリカがとるべきである。しかし、日本が第四条の規定によって日本からも協議をしようではないかという申し出は、これはできるわけです。しかし、その協議自体が事前協議条項にかかる一つの提案はアメリカがするべきで、これに対してやろうではないかという申し出は四条によって可能でしょう。しかし、それを事前協議という、第六条による協議というものはアメリカがイニシアチブをとるべきものであります。それは交換公文の中にも、日本政府と協議をするということになっておることを見ても明らかであります。
  72. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この交換公文を協議する際の委員会と書いてあるんですよ、これは。そしていずれか一方の要請があるときは会合ができると書いてあるんです。あなたはどうしてそれをそんなに、いや、うちはないのだ、日本はないのだと言わなくてならぬのですか。往復書簡というものは外交の一つの文章ですから、効力があります。それをあなたは、根拠があるのにどうしてそんなに遠慮するのですか。これはあるんです。やる気さえあればあるんです。だれも文句言いません。アメリカは文句言いません。これは往復書簡ですから、どちらもコミットしておるのです。
  73. 三木武夫

    三木国務大臣 しかし事前協議にかかるのは、アメリカが装備の重大な変更をするとかあるいは日本を戦闘作戦基地にするとか、やはりアメリカの軍事行動に伴って日本と協議する必要が起こるわけであります。したがって、日本がやろうではないかという申し出をすることは可能であります。しかし、第六条による事前協議というもののイニシアチブをとるものはアメリカである。日本の軍事行動ではないのですから、アメリカの軍のいろいろ装備とか配置とか作戦行動とかいうのでありますから、事前協議のイニシアチブをとるものはアメリカであることは明らかであります。
  74. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまの答弁はややニュアンスが違ってきたのですよ。私は、あなたの答弁が、権利はあるのだ、権利はあるけれども、実際問題としては、事の性質上アメリカが言うてこないとわからないというような解釈ならわからぬでもないのですよ。あなたは実情とこの権利があるかどうかを混同されちゃいけませんよ。私が言っているのは正しいでしょう。権利はあるけれども、実際事前協議の性質上アメリカが言ってこないとなかなかわからないのだ、そういう意味ではアメリカのイニシアということが考えられるというふうなわかるのですよ。そうでしょう。
  75. 三木武夫

    三木国務大臣 アメリカの軍事行動という、こういう変更をしよう、こういうアメリカの意図があって事前協議というものがあるのでしょう。こちらのほうからアメリカにどうしろこうしろという性質のものではないわけです。したがって第六条にいう事前協議というものは、アメリカがイニシアチブを持っておるわけです。これに対して、日本からひとつやろうということは、言うことはできますよ。しかし、その第六条による事前協議というものは、アメリカの何らかの軍事的行動というものがどういう考えを持っておるのか、あるいはまたそういうことをアメリカ考えておるのかということは、これはアメリカ日本に対して相談をするというのが六条の規定でありますから、日本がどうだということを申し出ることはあくまで四条による日本の申し出であって、六条による事前協議そのものではないというのが私ども解釈でございます。
  76. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたはそういう解釈をしてはいけませんよ。これはあなた読んでください。これを読みましたか。私が助け舟を出しておるのに、どうしてあなたこだわるのですか。権利はあるけれども、実情としてはなかなかアメリカが言うてこないと事の性質上わからないのだというならわかるけれども、権利がないのだというのだったら私は引き下がれないのですよ。これはこの往復書簡というものをあなたは無視しているのです。対等性をこれは保障されておるのに、どうしてあなたはそんなに卑下するのですか。私は二つ言っているのです。これはひとつ認めていただきたいと思います。
  77. 三木武夫

    三木国務大臣 私は卑下とは思っていない。アメリカに対して重大な制約を加えておるのですから、装備とか配置とかあるいは戦闘作戦行動に対してはやはり日本の同意がなければしてはいけぬという重大な制約を日本は加えておるのですから、これをアメリカが言い出す、アメリカがイニシアチブをとることをアメリカに認めるということが、非常にこれは一方的なものだとは思わない。日本が制約を加えているのですから、かってにアメリカはしてはいけない、こういう制約のもとにこういうことはやっておるのですから、それを卑屈とか一方的だとかそういう感じは持っていない。重大な制約は日本が加えておるのである。しかし、それをやる意図があるかどうかということはアメリカのイニシアチブによるべきものであって——日本がそういうものをやろうではないかということを申し出ることはできますよ。しかし、六条による事前協議はやはりアメリカが議題を出さなければならぬ。そのイニシアチブはアメリカがとるというもので、これが卑屈だとは私は思わない。むしろ日本は重大な制約をアメリカの軍事行動に加えておるのがこの事前協議であると  いう解釈でございます。
  78. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私はたいへん残念に思います。対等にし得るその権限が往復書簡で保障されておるのに、それを放棄している。だから、私どもが事前協議が空洞化されておると言うのはそこです。  では次に移ります。いいですか、事前協議は三つ想定しておりますね。配置の変更と装備の変更と戦闘作戦行動への出動。しかしそれだけでは何のことかわかりません。具体的にその内容が重大であります。そこでその内容は何かというと、これは時間がありませんから、私のほうから言います。陸と空の場合は一個師団以上、海の場合は一機動部隊以上、装備の変更については主として核——作戦行動はあとでやりますけれども、そういう問題ですね。これが一番大事なんです。これこそ私はアメリカと十分コミットし、条約的な効果を持たなくちゃいけないと思うのです。ところが、これをきめておるのは一体何ですか。何です。条約はないんです。口約束でしょう。ゼントルマンズ・アグリーメントとあなたはおっしゃっておる。紳士協約です。口約束ですから、こういう重大な問題を、口約束だから忘れました、いや、そうじゃなかったと言えばそれでわからぬようになります。それが証拠には、あなた方は軍艦、艦船の問題について先月の終わりに統一見解を出した。かってな統一見解を出した。これはこのゼントルマンズ・アグリーメントが文書化されていないからです。そうでしょう。一体このゼントルマンズ・アグリーメントというのは、いつだれとだれとできめられたか、外務大臣はっきりしてください。
  79. 三木武夫

    三木国務大臣 条約局長からこれは答えることにいたします。
  80. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 お答えいたします。  そのゼントルマンズ・アグリーメントと申しますものがいつきめられたかと申しますのは、新安保をつくりましたときにいろいろ米側と相談いたしました際にそういう話が出たわけでございます。しかしこれは例の六条の交換公文の重要なる装備の変更、重要なる配置の変更という、そこの解釈でございますから、重要なる配置、重要なる装備というような、それの解釈としてやったもので、もとはその交換公文になるわけでございます。
  81. 楢崎弥之助

    楢崎委員 局長、あなたは、これは条約的な効果はないんだとおっしゃったじゃありませんか。おっしゃったではありませんか、内閣委員会で。
  82. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 ゼントルマンズ・アグリーメント自体は、その条約よりもずっと少ないわけでございますが、それの重要なる装備の変更、重要なる配置の変更と申しますのは、条約条約的効果がございますから、これは両国を拘束しております。
  83. 楢崎弥之助

    楢崎委員 口約束がどうしてそんなに効力がありますか、口約束が。何か文書、たとえば議事録とか、あるいは往復書簡とか、あるいは交換公文とか、そういうものであれば効力がありますよ。口約束でしょう。何もないんですよ。口約束ですよ。それがどうしてそんなに条約的な効果を持ちますか。何でも契約するときには借用証書を取るでしょう。忘れたと言えばそれまでですよ、これほど重要な問題を。
  84. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 交換公文自体が条約的効果を持っておると私申し上げておりまして、その口約束の——口約束と先生おっしゃる部分はゼントルマンズ・アグリーメントと申し上げます。
  85. 楢崎弥之助

    楢崎委員 だから、条約的な効果を持つのは、文字から、条文からいうと、装備の変更ですね。配置の変更、戦闘作戦行動に出る場合、それだけですよ。では一体こういう場合どうするか、エンプラの場合はどうするか。われわれが問題にするときには、そのゼントルマンズ・アグリーメントが基準になるんです。具体的なそれは基準になるんです。交換公文があっても何にもならないんですよ。このゼントルマンズ・アグリーメントが条約的な効果を持たないと、具体的な問題の場合には何にもならないんです。私はそこを言っておるんです。交換公文がいかに条約的な効果を持っておっても具体的な問題の場合には役に立たない。事前協議は空洞化だというのはまさにそこなんです。だから、私はこれで議論はいたしません。  総理大臣にお伺いをいたします。  このゼントルマンズ・アグリーメントは八年前、いまの御答弁のとおり、だれとだれがきめたかも言わないんです。はっきりしないから言わないんです。いつそういうことをやったかも、日にちも言わないのです。言えないのですよ。それほどこれはあいまいなやつなんです。事前協議の内容というのはこういうものなんですよ。よく知っておってください。だから私はこれについて総理大臣にお伺いします。私は建設的に御提案を申し上げます。このゼントルマンズ・アグリーメントは八年前の国際情勢、科学技術の段階でつくられたものです。あなたは沖繩の問題については、両三年の間に——三つ条件をあげられたうちの重要な一つとして科学技術の変化ということをあげておられるでしょう。両三年でもあなたはあげておられるのです。であるならば、八年前につくられたこの種の重大な問題について、いまアメリカと具体的にこれを改定する、そしてそれを文書化する、そしてその改定の際には、あなたはいわゆる国民的な合意という線でわれわれの意見もいれて、これは段階的な問題です——やるという意思はありませんか。私ども安保条約破棄ということは言っておりますよ。しかしいま、現時点で、何とか安保条約があっても戦争に巻き込まれない歯どめをつくる、それをわれわれは念じております。そういう点で、このような事前協議の重要なポイントである問題について、あなたははっきりいま改定する意思はないか、お伺いしたい。
  86. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この日米間の安全保障条約、またいろんな問題等についてこれは一般的に申すのですが、まあ同盟——ただいまのような安全保障条約を結ぶとなると、やはり相互の信頼が条約の基幹をなすものであります。そこでただいま言われるように、この形がどうだとかいろいろ御心配のようで、それをもっと詰めろ、ただ信頼だけでは不十分だ、こういうお立場だろうと私実は伺ったのであります。しかしただいまいろいろ心配の点もあるだろうから、そういう点を実は総理なり外務大臣というものが国民に安心を与えるという立場で十分努力しなければならぬこと、これは御指摘のとおりであります。私はそういう意味の注意をする、かように思いますが、ただいま言われる、それでは具体的の問題についてどういうように考えるかと言われると、私はただいまのところ、いまの状態では必要ないのではないか、かように思います。しかしどうか御了解をいただきたいことは、私どもが信頼関係のもとだとはいっても、大事なのは日本の国、日本国民、これが大事でございますから、私はそれを中心にしてただいまの信頼関係を深めていく、こういう立場であることも、またこれ御了承をいただきたい、かように思います。したがいまして、ただいま言われた点について、あるいは向こうではっきり申しますのは、いままで不平等だ、こういうように言われますけれども、私は日本政府の意思に反してアメリカが自分で処置するというようなことはないという、いわゆる岸−アイゼンハワー共同声明、この基本的な条件、これがやっぱり守られておる、かように信じておりますが、そういうこともただいまのように疑ってかかれば別ですけれども、私は相互信頼の上に立ってこれだけは守ってまいりたい、かように思っております。
  87. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまは必要ないとなぜおっしゃるのでしょうか。いいですか。せんだってからエンタープライズのあの艦隊はダスクフォースかタスクグループか、問題になったじゃありませんか。そして八年前といまは違うんだ、いまやエンタープライズのあの艦隊はタスクフォースだ、こういうことが議論になったでしょう。ところがあなた方はゼントルマンズ・アグリーメントをたてにして、一機動部隊、一機動部隊というそのことばによって、事前協議の対象にならないと言ったではありませんか。現代に合わないのです。それを私は言っておるのです。あなたは両三年の間に科学技術の進歩がある、沖繩についてはあるとあれほど言いながら、八年前の状態できめたことをいま変える必要はないということはどういうことですか。ということは、あなたは、沖繩の場合も両三年もたっても科学技術の変化はないのだ、こういうことになりますよ。
  88. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 とにかく相互信頼の基礎に立つということ、これはひとつ御理解いただきたい。同時にまた、ただいまの事前協議あるいは随時協議、こういう問題でございますが、条約では二つの方法がきめられておる。ただいま議論になっておるのは、事前協議の場合に、日本側からその協議をする……(楢崎委員「そうではない、ゼントルマンズ・アグリーメントを言っておる」と呼ぶ)ちょっと私の言うことも聞いてください。  そこで、事前協議あるいは随時協議、こういうことで、相互の間に誤解が生じないように努力すること、信頼を深める立場からもこれは当然でございます。私は、そういう意味でさらに努力する。ただいまゼントルマンズ・アグリーメント、こういうことについていろいろ議論がされております。そういう点をただいまもいろいろと御指摘がありました。注意を喚起されておりますから、政府はそれらの点について御意見を伺っておりますので、十分善処するつもりでございます。
  89. 楢崎弥之助

    楢崎委員 善処するということは、私の言っておることを十分考慮して考えてみるということですか。
  90. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来ここでいろいろの意見が交換されております。ただいま楢崎君からこういう点は非常に不安じゃないか、こういうお話も私は拝聴いたしたのであります。これらの御意見も聞いて、その上で私は善処する、かように申しております。いわゆる国民的コンセンサスをつくるということ、これは社会党の方も協力しようとおっしゃる。そういう観点に立ちまして十分考えよう、かように申しております。
  91. 楢崎弥之助

    楢崎委員 たいへんあいまいでありますが、私が言っておる意味はわかるでしょう。言っておる意味はわかりますね。  それで、次に装備の変更の問題、戦闘作戦行動の問題、全部私がいま言ったような抜け穴がたくさんあるのです。あなた方は積極的に活用するつもりならば大いに歯どめになるのをそうしてないんです。しかし残念ながら、あなた方の答弁が長いために時間を食われましたから、これは一応あとに保留をして、次に順番を変えて問題を先にやります。  そこで、佐藤総理は核三原則について国会で決議をなさらないと言う。われわれは必要であると言う。なぜかというと、事前協議の問題をあげました。  次に、私は、自衛隊の二次防、三次防、考えられる四次防、これについてどうなっておるか、総理に御認識をいただきたいのです。こういう装備状態であなたが三原則ということを言われても、はたして信用できるであろうか、それが心配なんです。もし心配でなかったら、あとで御所見を伺いたいと思います。いま日本自衛隊の装備の状態は、二次防から三次防にかけて私は有事核装備体制に入ったと思わざるを得ないのです。一たん緩急ある場合にはいつでも核装備ができるという体制に装備上は入っておる。ということはどういうことかというと、日本は核のランチャー、発射機を持つ。たまはアメリカが持つ。ボタンもアメリカが持つ。いざというときには、いつでもたまさえ持ってくれば核装備体制になるというその準備をしておると思わざるを得ません。  そこで、まず冒頭にお伺いをいたしたいと思いますが、これは昨年の七月七日の朝日新聞でございます。夕刊に出ました。「ナイキXで米打診」という表題であります。中を摘出して読んでみますと、「米国防総省と国務省筋は、日本政府が中国の核戦力増強に不安を深め、米国にABMに関する種々の情報提供を求めていることを明らかにし、これにともない日本側が核武装に対する考えを変えてきたことに注目している。」アメリカがです。そして「日本側は数ヵ月まえから、中国の核開発努力とその将来や、米国の弾道弾迎撃ミサイル・ナイキX体系について詳しい説明を受け、現在では広範な戦略問題について“率直な意見を”交換している、」そしてこのナイキXについて何やかや何回も行って日本政府が意見交換なりやっておるわけです。それで、彼ら——というのは米国です。この関心日本政府の最上層部まで及んでおることに非常に当惑しておる、こういうことが書いてあります。  そこで、私はまずお伺いをしたいのですけれども、このABMということは、いまのところは、具体的には中国の核に対するアメリカのいわゆる防御ミサイル体系になっておるわけです。防御という名前が——しかし、これはICBMとこのABMは剣のほことたての関係にありますね。区別はできませんが、その議論はしません。そこで、はたしてこういう事実があるのか。日本は、将来この種のABMなりAMMをあなた方は考えておられるのかどうか、まずこれをお伺いしておきます。
  92. 増田甲子七

    増田国務大臣 四次防等のことはまだ考えておりませんし、また、核装備をなし得るという楢崎さんのお考えは、私どもはなし得ない。防衛関係の防御武器を持っておるだけでございまして、核装備は、たとえば発射装置といえどもナイキハーキュリーズは核関係のミサイルを発射できないようにしておりまするし、ミサイル自身が非核のミサイルでございます。ランチャーもそうでございます。でございまするから、核装備を行なわんと欲すれば行ない得るというあなたの御質問には同意いたしかねるわけでございます。
  93. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私が聞いたことだけあなた答えればいいんです。  そこで、ではもう一度お伺いしますが、ABMもAMMも——AMMというのはナイキジュースですね。これはABMの体系に発展しましたね。そうしてスパルタン、スプリントになった。これは全部核ですね、そうですね。
  94. 増田甲子七

    増田国務大臣 AMM、アンチミサイル・ミサイル、ABM、アンチバリスティック・ミサイル、これはアメリカが五十億ドルで薄いものを備えようとしておるということを情報としては知っておりまするが、われわれは関心がないわけでございます。
  95. 楢崎弥之助

    楢崎委員 関心がほんとうにないんでしょうかね。いいですか。そういう御答弁をいましてよろしゅうございますか。まあよろしゅうございます。  総理大臣にお伺いをしますが、あなたは非核三原則を提唱されましたが、これは憲法に違反するから提唱されたのですか。それとも憲法には違反しないが、政策として提唱されておるのですか。
  96. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、憲法論よりも政策的な観点に立ってこれはきめたのでございます。
  97. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ちょっといまのはずるい答弁じゃなかろうかと思うんですよ、憲法に違反するから。では、この憲法との関連はどう思われますか。
  98. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは考え方のいろいろな問題があるだろうと思います。私は、別にこれを防御兵器だからそれはいいとか、かような意味で申すことではございませんが、いろいろ侵略兵器という、そういう立場のもの、いわゆる戦争を放棄した日本としてそういうものを持つべからず、こういうようなこともある。そういうものも場合によったらあるだろう、かように思います。
  99. 楢崎弥之助

    楢崎委員 戦争を放棄したということばを言われましたが、やはり総理も、これは憲法条項との関連において十分考えておられる、私は、そういま御答弁を承りました。それでよろしゅうございますね。——それでは確認をしておきますが、憲法に違反する可能性ありとして、しかも政策的にもこれを提唱した、これは最初明確にしておきたいと思うのです。  そこで、増田長官は私が聞きもしないことを言われましたけれども、いま一応ここで私ども——あなたはそうおっしゃいますけれども、私どもは、日本自衛隊は二次防、三次防において核、非核両用兵器の時代に入った、そういうランチャー、発射機を日本は用意する段階に入ったということを私は指摘をしたいと思います。  まず、空のほうからいくと、問題のナイキハーキュリーズですね。これは、いま二個大隊あるのに、三次防で三個大隊、百八十基になるわけであります。それからF86、これをBにかえられました。爆撃機にかえられた。これも装備しようと思えばできます。それから、問題の四次防で想定されるFX、これもそうであります。このFXは、あなた方がいましぼられておるどの機種をとってみましても、これは攻撃用の戦闘機であります。その性能を私は言ってもよろしゅうございますが、時間がかかるから申しません。あなた方がいましぼられておる二、三機種全部あげても、これは攻撃用の戦闘爆撃機であるし、核兵器をも積める戦闘機であります。  それから、海のほうにいきます。アスロックの搭載艦、これが二千五十トン級の「やまぐも」が四十一年一月に就航をしております。それから「まきぐも」、「あさぐも」、これはすでに就航しております。それから千四百五十トン級が四十三年度に着工艦三隻であります。これはアスロックの搭載艦であります。次にアスロックとDASHの搭載艦、これは三千トン級であります。これは昨年の二月に「たかつき」が就航をいたしました。「きくづき」は四十三年三月就航の予定であります。次にボフォーズとアスロック、対潜護衛艦、これが四十三年度建造着工艦が二隻であります。名称は進水するときにつけられるそうであります。これが四千七百トン、さっき言いましたやつです。それからターター搭載艦「あまつかぜ」、海のほうは、こういうふうな兵器はすべて両用の兵器であります。ただ、日本政府は、いまのところ、核は装備しないということになっておりますが、核、非核両用の兵器であります。  陸のほうは、R30型ロケット地対地、これが二個大隊、約五十基できます。これも小型の核弾頭装備可能であります。これらは世界的な常識から見れば、両用の兵器たり得るものであります。だから私は、有事核装備体制にすでに入っておる、このように思わざるを得ないわけです。そこで今度は、次に考えられる四次防で、私は、さらにこれが進むのではなかろうかと心配するわけであります。  そこでお伺いをいたしますが、防衛庁の技術研究開発計画というものがありますね。これは防衛庁の技術研究本部でつくられるわけでありましょう。どうですか。
  100. 増田甲子七

    増田国務大臣 楢崎さん、なかなかよく御勉強になっておられまするが、われわれの装着せんとしておる、また装着いたしておりますアスロックにいたしましても、DASHにいたしましても、ターターにいたしましても、核装置を施し得るしかけになっておりません。核、非核両用というおことばは、世界常識ではあるかもしれませんけれどもわが国自衛隊の装着いたしておりまするアスロック、あるいはDASH、あるいはその他ターターにいたしましても、非核用のものでございまして、核兵器を発射せんとするしかけになっておりませんから、そういう装置ではございませんということを、この際明瞭にいたしておきます。  それから、技研というものは、種々の衛生医学のことから始まりまして、航空関係、あるいは法律関係その他について真理の探求に従事しておるわけでございます。
  101. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなた、そんな答弁をしたらだめですよ。私は、真理の探求を研究しておりますかと聞いたですか。私が聞いたのは何だったですか。もう一ぺん言ってください、私が聞いたやつを。ばかにしちやいけませんよ。言ってください。
  102. 増田甲子七

    増田国務大臣 お答え申し上げます。  防衛兵器に関する、あるいは防衛医学に関する真理の探求に従事しておるわけでございます。
  103. 楢崎弥之助

    楢崎委員 困りますよ、ああいう答弁をされたんでは。私がお伺いしたのは、防衛庁の技術研究開発計画は技研でつくりますかと聞いたんです。真理を研究していますかと聞いていないのです。なぜそういう答弁をするのですか。私は時間でやめませんよ、そういう答弁をするなら。
  104. 増田甲子七

    増田国務大臣 御質問の要旨がよくわかりませんでしたが、防衛開発計画を研究しておるかといえば、防衛開発というのはどうかと思いまするが、防衛関係の兵器あるいは医学、航空関係から始まりまして、法の関係あるいは護衛艦の関係その他につきまして研究をいたしておることは事実でございます。
  105. 楢崎弥之助

    楢崎委員 どうも私が聞いたことにどうしてすなおに答えられないのですか。あなたは何か感情を持っているんではありませんか。  それでは具体的にお聞きしますよ。第三次防が始まる前年、つまり、あなた方が二兆三千四百億の三次防の予算要求をなさる、その計画を四十一年につくられたわけです。その中に——じゃ具体的に聞きますよ、真理とか言わないで——四十一年四月十四日に決裁をされました三次防における技術研究開発計画、これを資料として出せますか。
  106. 増田甲子七

    増田国務大臣 機密の関係以外のものは出し得ます。
  107. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これはありますか。
  108. 増田甲子七

    増田国務大臣 あるかどうか、その他のことにつきまして、機密にわたらざる範囲は政府委員をして答弁せしめます。
  109. 蒲谷友芳

    ○蒲谷政府委員 三次防の計画の中で、技術研究開発関係のものにつきましては、もちろん関係の検討はしておりますが、そのおもなものを申し上げますれば……。
  110. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いや、それを聞いていない。あるかないか聞いているのです。
  111. 蒲谷友芳

    ○蒲谷政府委員 もちろん機密のものもございます。
  112. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私が聞いたとおりに答弁してくださいね。  四十一年四月十四日決裁されました三次防における技術研究開発計画、これはある、ただし、マル秘だと、こういうことですね。
  113. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 ただいま御質問の日付の技術研究開発計画があるかどうかは、これは調査をいたしてみなければわからないのでございます。
  114. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたは、二、三年前の私の質問のときにもそういう答弁をしましたが、じゃ、あるかないかがわかるまで私は質問を保留をいたします。
  115. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 さっそく調査いたします。
  116. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは、それまで待たしていただきます。   〔「これからあるかないか調査すると言っている」「冗談じゃない、あるかないかわからぬようなものに予算をつけられるか」と呼び、その他発言する者、離席する者多し〕
  117. 井出一太郎

    井出委員長 御着席を願います。  それでは政府側から答弁があります。島田官房長。
  118. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 これは三次防の技術研究開発の案でございまして、いろいろな段階におきましていろいろな案があったわけでございますが、御質問の四十一年の四月の計画案はございます。ただ、この中身につきましては、秘密の内容を持っておりますので、中身については申し上げることは差し控えたいと思います。
  119. 楢崎弥之助

    楢崎委員 二次防の技研の研究開発費が百三十億です。三次防は約五百億予定しておられるのです。年平均にすれば百億です。ことしの技研の予算は八十四億七千七百万、そのうちに研究開発費が七十一億二千四百万です。これをかけて計画書をつくっておるのです。そうしてその計画書に基づいて大蔵省に要求しておるのです。そうしてこの金がきまっておるのです。それがあるかないかわからぬというようなことでは、私は困ると思うのです。だから、私はこれほど、この点をはっきりしてもらいたい、そう思っておるのです。ところが、いまお聞きしますと、それはあるという。マル秘だから出せないというのかと思ったら、中身も一切言えない。大蔵省には言えても、国民の前に、国会で、予算委員会で予算を審議しておるわれわれには、七十四億を出したその内容について言えないのですか。審議できないのですか。総理大臣どう思われます。(発言する者あり)じゃ、大蔵大臣にお伺いします。あなたはこの査定をなさったのですから。われわれは審議できないのですか、この内容について。
  120. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 防衛庁の要求によって私どもは査定しました。その内容が秘密であるかないかというようなことは防衛庁自身がきめることでございます。
  121. 楢崎弥之助

    楢崎委員 じゃ、防衛庁長官でよろしゅうございます。われわれはそれを審議できませんか。
  122. 増田甲子七

    増田国務大臣 事柄によっては申し上げてもよい点があると思いまするが、機密にわたる、防衛秘にわたる点が、すなわち国家機密、国家公務員の守るべき秘密です、その秘密にわたる事項が相当多いということを申し上げておきます。
  123. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それはどういう根拠でしょうか。昨年の臨時国会から今国会にかけて、国の外交、防衛の問題は佐藤内閣のほうからいろいろな問題を提起されてきたんですよ。あなたのほうから。したがって、ただ一つこれだけはわれわれも合意し得るという非核三原則の問題について真剣に私は考えておるのです、合意がしたいから。ところが、こういうことで合意できるであろうかと心配があるから、それを出しておるのです。それを、装備については秘密だからできないというのは、どういう根拠に基づいてそれができないのでしょうか。審議ができないんです。
  124. 増田甲子七

    増田国務大臣 機密にわたらない事項は申し上げてもよろしいのですが、機密にわたる事項はいまの現行法といえども保護されております。すなわち、国家公務員法にもございまするし、防衛庁設置法にも、機密を保持しなくてはならない、公務員は。公務員というのは、これは国務大臣から全部が防衛庁員は公務員でございます。その公務員の守るべき機密に属することがきわめて多いということを申し上げておきます。
  125. 楢崎弥之助

    楢崎委員 機密、機密と言われますが、一体どういう秘密があるのか。法制局長官でけっこうですよ。秘密は四段階あるはずです。その第何段階目に属するのですか。
  126. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの御質疑の中で、秘密の四段階、確かにございますが、ただいまの防衛庁の機密事項といわれているものがそのどれに当たるか、それは私にはむろんわかりません。しかし、その秘密については、国会に対する関係では、すべて機密というものはないと言えるかどうかという問題がございますが、これはこういう問題が起こります際によく出る問題でございますが、例の議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律等に基づきまして、国会が証人等を求めることができるわけでございますけれども、それにしましても、その法律では、ぎりぎり一ぱいの事項につきましては、国会も強制的にこの秘密を暴露させることができない場合があり得るわけであります。これはこの法律の法理に照らしてそういうこともあり得るということを申し上げさしていただきます。
  127. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いま問題にしておるのは、総理の非核三原則の提唱と現実の自衛隊の装備が矛盾しておるではないかという点を私は明らかにしたいのです。つまり問題は核の問題です。アメリカにはマクマホン法という原子力秘密保護法があります。日本にはないのです。私はこの内容が国会でわれわれが審議できないならば、これは理事会を開いていただいてこの点を明確にしてもらわないと、国民の前に秘密裏に事が行なわれる可能性がある。あるのです。これはひとつ委員長、その審議できるかどうかは明確にしていただきたいと思います。   〔発言する者あり〕
  128. 井出一太郎

    井出委員長 御着席を願います。
  129. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それではいまの問題ですが、増田防衛庁長官、あなたが言い出したことです。秘密事項の四段階のどの段階にあなたは属すると思われるのですか。あなたは内容を知っておられる。法制局長官は知らないから、どれに当たるかわからないとおっしゃる。あなたは内容を知っておるから、どの段階に当たるのですか。
  130. 増田甲子七

    増田国務大臣 私は、秘密の四段階というのは、法制局長官から承らなければよくわからないのですが、防衛庁の扱いの「機密」「極秘」「秘」それから「取扱注意」というような段階がございます。法制局長官のおっしゃっておる秘密四段階というのはよくわかりませんが、ただ国会等で決議があった場合に、最後には内閣総理大臣が言明をして、これは機密であるから困ると言えば機密扱いになるということだけは承知いたしております。
  131. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたは秘密、秘密と、われわれの国会審議を制限するようなことをおっしゃいまして、みずからは秘密事項の何段階に属するか、法制局長官に聞かなくてはわからない、そういう答弁で私が納得できますか。納得できますか。そういう答弁ではだめですよ。いまのような答弁では、私は先に進めようと思うが、できないじゃないですか。質疑質疑で、私は内容についていまから質問するのです。できないじゃありませんか。
  132. 増田甲子七

    増田国務大臣 法制局長官のおっしゃる政府全体の四段階というのはわかりませんが、私のほうでは、「機密」「極秘」「秘」「部外秘」「取扱注意」こういうような段階を設けておりまして、いまの書類は機密という書類でございます。
  133. 楢崎弥之助

    楢崎委員 自衛隊員を縛るのはわかります。しかし、国会審議をあなたは縛れると思いますか、それで。われわれの審議を縛るつもりでございますか。これは私は重大な問題でございますから、ひとつ総理大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  134. 増田甲子七

    増田国務大臣 私のほうの関係だけを申し上げます。先ほど申したとおりでございます。  それから、根拠法規といえば、国家公務員法にもございまするし、自衛隊法の第五十九条で秘密保持の義務を自衛隊員並びに防衛庁長官国務大臣は背負っておるわけでございまして、これに反すれば刑法をもって処断されるわけでございます。
  135. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それではわれわれは審議できないというわけですか、いまの御答弁でいけば。審議できないのですか。何か機密事項について答えればあなたは刑法を受けるから答えぬという意味ですか。それでは私は質問できませんです。すべて総理大臣に聞きますよ。   〔発言する者、離席する者多し〕
  136. 井出一太郎

    井出委員長 ただいまの問題点につきましては、後刻予算委員理事会にはかりまして政府側から統一答弁を求めることにいたします。したがいまして、この点を留保されまして楢崎君におかれましては質問をお続けを願います。   〔発言する者、離席する者多し〕
  137. 井出一太郎

    井出委員長 御着席願います。  この際、審議を軌道に乗せる意味からいいまして、楢崎弥之助君にもう一度御質問をいただきまして、政府側から答弁がございます。楢崎君。
  138. 楢崎弥之助

    楢崎委員 防衛庁長官に重ねてお尋ねをいたします。  私がいま要求をいたしました三次防関係の技術研究開発計画ですね。これは、あなたは機密事項だとおっしゃいましたが、そうですか。取り扱いは何になっておりますか。
  139. 増田甲子七

    増田国務大臣 この際申し上げておきます。当該文書は秘密文書でございます。でございまするから、当該文書自身を提出することは差し控えたいと思いまするが、御審議を国権の最高機関として願っておるわけでございますから、技術研究開発計画の概要はでき得る限り文書をもって提出申し上げたいと思っております。
  140. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これは私は非常に重大な問題ですから、この際明確にしたいのです。  そこで、あなたはさっきは「機密」と「機」と言われましたね。「機」とおっしゃいましたですね。四段階というのはどういう段階がありますか。
  141. 増田甲子七

    増田国務大臣 「機密」「極秘」「秘」「部外秘」「取扱注意」等がございます。
  142. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、いまあなたは、さっきは一番シビアな「機密」とお答えになったと私は思ったのですが、それを変更されるのですか。「機」とおっしゃたのです。
  143. 増田甲子七

    増田国務大臣 「秘」の扱いが四、五段階ありまするが、そのうちの「機密」というふうではないかと私は申し上げましたが、なおよく取り調べをいたします。
  144. 楢崎弥之助

    楢崎委員 非常にこういう問題でああいうあいまいな答弁をしてもらったら困りますよ。あとで調べるならあとで調べてください。それまでできないではないですか。どうしてわからないことを、あんな自信を持ってあなたはお答えになるのです。   〔発言する者、離席する者多し〕
  145. 井出一太郎

    井出委員長 静粛に願います。御着席願います。  この際、暫時休憩をいたしまして、その間理事会を開いて本問題の取り扱いを協議いたします。その間に政府側におかれましても意見を統一されて、午後の審議が円満に軌道に乗ることを希望いたしまして、この際、暫時休憩いたします。    午後零時三十三分休憩      ————◇—————    午後十時十二分開議
  146. 井出一太郎

    井出委員長 これより再開いたします。  委員各位並びに政府閣僚には長らくお待たせいたしましたが、本日は都合によりこの程度にとどめ、明日は午前九時三十分より理事会、午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後十時十三分散会