運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1968-02-27 第58回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年二月二十七日(火曜日)    午前十時十一分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 小川 半次君 理事 北澤 直吉君    理事 正示啓次郎君 理事 二階堂 進君    理事 藤枝 泉介君 理事 加藤 清二君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 広沢 直樹君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    上村千一郎君       植木庚子郎君    小沢 辰男君       川崎 秀二君    小坂善太郎君       坂田 英一君    鈴木 善幸君       田中 正巳君    登坂重次郎君       中野 四郎君    野田 卯一君       野原 正勝君    福田  一君       船田  中君    松浦周太郎君       松澤 雄藏君    松野 頼三君       森山 欽司君    山崎  巖君       大原  亨君    岡本 隆一君       川崎 寛治君    北山 愛郎君       久保 三郎君    阪上安太郎君       田中 武夫君    楢崎弥之助君       畑   和君    森本  靖君       山内  広君    山中 吾郎君       横山 利秋君    竹本 孫一君       塚本 三郎君    正木 良明君       矢野 絢也君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 赤間 文三君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 園田  直君         農 林 大 臣 西村 直己君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 中曽根康弘君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 小川 平二君         建 設 大 臣 保利  茂君         自 治 大 臣         (国家公安委員         長)      赤澤 正道君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田中 龍夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増田甲子七君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      鍋島 直紹君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制次長  吉國 一郎君         公正取引委員会         委員長     山田 精一君         警察庁長官官房         長       浅沼清太郎君         警察庁警備局長 川島 広守君         行政管理政務次         官       森部 隆輔君         行政管理庁行政         管理局長    大国  彰君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         防衛庁衛生局長 浜田  彪君         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         経済企画庁総合         計画局長    鹿野 義夫君         経済企画庁総合         開発局長    宮崎  仁君         経済企画庁調査         局長      矢野 智雄君         科学技術庁計画         局長      武安 義光君         科学技術庁原子         力局長     藤波 恒雄君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省人権擁護         局長      堀内 恒雄君         公安調査庁次長 長谷 多郎君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         外務省条約局長 佐藤 正二君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         大蔵省主税局長 吉國 二郎君         文部省大学学術         局長      宮地  茂君         厚生省公衆衛生         局長      村中 俊明君         厚生省環境衛生         局長      松尾 正雄君         厚生省保険局長 梅本 純正君         社会保険庁長官 熊崎 正夫君         社会保険庁年金         保険部長    中村 一成君         農林大臣官房長 桧垣徳太郎君         食糧庁長官   大口 駿一君         通商産業省通商         局長      宮沢 鉄蔵君         中小企業庁長官 乙竹 虔三君         運輸省自動車局         長       鈴木 珊吉君         労働省職業安定         局長      有馬 元治君         建設省計画局長 川島  博君         建設省都市局長 竹内 藤男君         建設省住宅局長 三橋 信一君         自治省行政局長 長野 士郎君         自治省選挙局長 降矢 敬義君         自治省財政局長 細郷 道一君         自治省税務局長 松島 五郎君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総         裁)      宇佐美 洵君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月二十七日  委員田中武夫辞任につき、その補欠として岡  本隆一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員岡本隆一辞任につき、その補欠として田  中武夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十三年度一般会計予算  昭和四十三年度特別会計予算  昭和四十三年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 井出一太郎

    ○井出委員長 これより会議を開きます。  昭和四十三年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三案を一括議題とし、総括質疑を行ないます。阪上安太郎君。
  3. 阪上安太郎

    阪上委員 私は、きょうは主として国民生活問題、これを都市問題並びに地方行財政のサイドから質問申し上げたい、このように考えておりますが、いままでの調子から、若干憲法問題に触れませんとどうも入りにくいので、この際きわめて簡単に総理にお伺いいたしたいと思います。  過般のこの委員会における質疑の中からいろいろと考えておったのでありますが、倉石発言、それから引き続いての福田発言、これに対する総理の御答弁を伺っておりますと、総裁総理分離論と申しますか、そういう観点から御答弁をいただいておるようでありますが、どうも私には納得できない。申し上げるまでもなく議会制民主政治というものは、その実際の運営政党政治である。したがって、政党姿勢を正し、その責任を明らかにしなければならないことは言うまでもないと思います。ことに内閣は、その政党責任を持って編成いたしまして、国会に対して連帯して責任を負うということになっております。したがって、政党姿勢がくずれてまいりますと、国会審議をいたしましても、これは当然多数決をわれわれは尊重しなければならないので、したがって、そこに政党姿勢がくずれておるという前提があるならば、その審議が正常に進まないのではないか、こういうふうに考えるわけでありまして、過般からこの問題が論議されておるわけであります。  きわめて簡単に私は総理の御意見を伺いたいと思いますが、総理総裁の法的な分離は、これはわかっておりますが、やはり実際の運営政党政治であって、政党責任を持っていかなければいけない。その政党がかり改憲論を持っておるということであるならば、一体総理はこれに対して、それと分離して総理は別の立場でやっていくんだという考え方がはたしていいのかどうか。その点ではっきりとした、やはり統一された主張をなさるのが当然ではないか、こういうように考えるのでありまして、この点をお伺いいたしたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  ただいま言われますように、ただいま政党政治だ、民主政治のもとにおきまして政党政治が行なわれておる、同時に議会政治ともいわれておる、そしてそういう場合には、ただいま言われるように、多数決原則をこれは認める、こういうお話でございます。私はたいへんそうなくちゃならないと思います。私は同時に総理でありますが、申すまでもなく総裁でもございます。ただいまのところ総裁総理になるという、これは国会の多数の推選によりまして私が総理になっておるのであります。で、ただいま御指摘になりましたように、総理としての話はわかったが、総裁として党をまとめておらないじゃないか、党のほうに食い違いがあるのじゃないのか、こういうような御指摘のように聞きましたが、私は総裁として党をまとめておりますので、私の言こそが他の党員の言よりも優先するものだ、これが党のおもしであること、これをひとつ御了承いただきたいと思います。  そこで、党の綱領があり、そうして私が現時点においては改憲というようなことを考えておらない、かように申しましたからといって、これは別に矛盾はしないのです。おそらくいずれの政党といたしましても高い理想を掲げておるだろう。高い政治目標、それに向かって進んでいく、こういうことだと思いますが、しかし現実現時点においてはどういうようにするという、これは政治の当然のあり方じゃないか、私はかように思います。ただいまのようなお話がありましたので、私も率直に申し上げました。ただいま私は党の総裁としても党の意見をまとめておる、さような立場におりまして、また私が総理としてただいま発言しておること、これも党内におきまして、ただいまの時点においてはこれが支持を受けておると、かように御了承いただきます。
  5. 阪上安太郎

    阪上委員 大体そういう御答弁をいただくと私は思っておったわけでありまして、大体それでけっこうでありますが、この際特に私申し上げておきたいと思いますのは、もしかりに社会党が政権をとったという場合に、われわれの党は、やはり党の考え方と完全に一致した立場をとっていくであろう、こういうふうに考えるわけでありまして、この場合別に内政干渉ではございませんが、政党政治の実態からいって、いま少しくやはり党内意見というものを調整なさって、そうしてその意見と同じものを総理として一体の形でもって国会責任を負うという形がとられたら、私は満点だと思う。私はそういう方向へやはり進むべきではなかろうかと思うのであります。内閣総理大臣はああいうことを言っておるけれども、おれは別に内閣に列席しているわけでもないのだから、何を言ってもさしつかえないんだというようなことでは、やはり私はいけないと思うのでありまして、この点私は私の意見として申し上げておきたい、このように思うわけであります。  これでさっそく本論に入っていきたい、かように思います。  まず最初に住宅政策についてお伺いいたしたい。そこで、質問内容はたくさんございますのではしょって御質問申し上げますが、住宅建設五カ年計画というものは順調に進んでおるのかどうか。この点につきまして私は、いろいろな資料から順調に進んでいない、このように考えておりますので、この点について、総理は順調に進んでいるとお考えになっているかどうか、これを伺っておきたいと思う。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一世帯住宅、これは私ども国民に公約した政策でございます。したがいまして、これについて最善の努力を払ってまいっております。今回の圧縮予算の際におきましても、昨年よりも戸数をふやしたのもそういう意味でございます。詳しくは建設大臣から説明をいたさせますが、私はまず、なかなか困難はありますけれども、軌道に乗っておると、かように考えております。
  7. 阪上安太郎

    阪上委員 いずれ建設大臣からお伺いいたしますが、この建設五カ年計画というものは法によって定められておるものであります。そこで、政府計画として昭和四十五年までに六百七十万戸を建設する、これが一世帯住宅に当たるのだ、こういうことだと思うのであります。その中で二百七十万戸、これはいわゆる政府施策住宅でございます。ところが、いままでの実績をながめてみますと、そこまで実はいっていないわけであります。目標達成までにはなお二百六十五万戸というものが四十四年度以降建設されなければならぬ、こういうことであります。今回の住宅の四十三年度計画を見ましても、その半数にまで達していないという状態でありますが、これでもって順調に進んでおるというふうにお考えになるかどうか、建設大臣からひとつお答え願いたいと思います。
  8. 保利茂

    保利国務大臣 住宅問題にできるだけ一応のめどを立てたいということで、今年度、御承知のような予算の中におきましても、住宅については、私どもとしましては、何とか政府施策住宅を五十万戸まではお願いしたいということで、だいぶ強調いたしました。結果は、四十九万六千戸、ほぼ五十万戸に近いものを確保することができたわけであります。これによりまして、ちょうど四十三年度が御案内のように中間年度になりますので、この年度の成否というものは、全体計画達成する上におきまして非常に重要な年度であります。これで五〇%をわずかながらこえるというところになって、私は一〇〇%の達成ということは一段の努力を要することとは思いますけれども、これでまあ大体五カ年計画めどは立て得たんじゃないかと思っております。のみならず、この住宅問題はもう阪上さんのほうが詳しいわけですから、申し上げることもないと思いますけれども、ちょっと足りないという不足感があれば非常な摩擦を生ずるし、ちょっと余るということになれば不足感が解消されるということになれば、住宅問題というものはおそらく一挙に解決されるというようなことになってまいりましょうし、そこまでぜひ五カ年計画の中において持ち込みたいというのが私の強い念願でございます。四十三年度でとにかく五〇%以上を確保することができましたということだけは御了承を得ておきたいと思います。
  9. 阪上安太郎

    阪上委員 先ほど総理がおっしゃいましたように、確かに四十二年に比べて四十三年度で八%ばかり伸びております。しかしながら、全体計画から考えた場合、その二分の一にようやく達しようとする程度でありますから、四十四年、四十五年に相当思い切った伸び率をぶっつけないと、これはいま建設大臣がおっしゃったようなところまではどうしても持っていけない、こういうことだと私は思うのでありまして、しかも民間自主住宅がどの程度にやっていくかということがやはり問題になってくると思うわけであります。こういった点から、私はどう考えても、四十四年度以降に相当思い切った投資をしないと、これは伸びない、目的は達成できない、このように考えるわけであります。この点につきましてなおもう一度、建設大臣からでけっこうでございます。ひとつお答え願いたい。
  10. 保利茂

    保利国務大臣 お答えいたします。  政府施策住宅は右のようでございますが、民間自主建設のほうは、幾らか政府施策よりも伸び率が高くなっております。来年度予定いたしております建設戸数は百二十七万九千戸ほどでありますが、これは政府施策伸び率よりも高くなって、これは両方含めてのことでございますけれども、それを含めますと、五カ年計画達成率は五二・八%ぐらいになると思っております。なお税制面金融面から、民間自力住宅に対しましても強く助成をしてまいっております。これを続けてまいるつもりでおります。
  11. 阪上安太郎

    阪上委員 かりに四十四年度以降思い切って住宅建設投資をする、こういうことになることを私は大いに期待しているわけでありますが、いま一つの問題点はその住宅内容であります。この場合、先ほどお話がありましたように、民間自力住宅というものは非常に大きな幅を占めておりまして、これ自体がどの程度まで進むかということも問題でありましょうが、同時に、この住宅内容、ことに政府施策住宅内容でもって公営住宅改良住宅公庫住宅公団住宅、その他の住宅がありまするが、一体このようないままでのやり方でいいのかどうか、これが問題になってくると思うのであります。政府は在来とも持ち家主義をとっておられますが、一体持ち家重点施策として設定せられておるその根拠は何でありましょうか。何がために持ち家主義をとっておられるか、これを建設大臣から伺っておきたいと思います。
  12. 保利茂

    保利国務大臣 これは持ち家政策重点を置くということでなしに、家を持ちたいという念願は、私はもうどなたでも同じだと思うわけでございますけれども、ただ持ち得る環境条件にあるかどうかということが問題であろうと思います。したがって、家を持ちたくても持ち得ない条件環境の中にいる人たち持ち家政策をおすすめするというようなことは、これはもうナンセンスでございますし、そういう方がまた非常に多いということに着目をしなければならぬところだろう。したがって、私どもとしましては、持ち家政策重点を置くあるいは賃貸住宅重点を置くということでなしに、需要に応じて、できるだけどの階層の方にも住宅問題というものを満足していただけるような方向に持っていくということが大事じゃないか。したがって、持ち家政策重点を置くという考え方は、私は必ずしもとっていないのであります。
  13. 阪上安太郎

    阪上委員 必ずしも持ち家政策重点を置くという考え方は持っていない。しかしながら、現実にあらわれている姿として、公営住宅の数がやはりこの計画の中で見ましても少ないのではないか。なまじ五十万戸や六十万戸でもって、二百六十万戸のうちそれだけでもって公営住宅を建てていくんだという考え方は、やはりひっくり返して考えてみると、あまりにも持ち家政策重点を置いているといわざるを得ないのではないか。今日あなた方も御存じのように、あらゆる政府諮問機関である審議会等からは、この際やはり公営賃貸住宅に徹すべきであるという強い答申が出ているはずであります。これをなぜ実現するように努力をなさらないか、私は非常にふしぎでしょうがない。  そこでお伺いいたしますが、建設省としては、持ち家所有関係として、持ち家に、現在の国民大衆が可能な住宅建設に、家計の中から、賃金の中から一体どの程度にこれを支出する限度があるかということについて、あなたのほうで調査をなさったと私は思うのでありますが、一体どの程度にこれを見ておられるか、ひとつ示していただきたいと思います。
  14. 保利茂

    保利国務大臣 私も、単に机上だけでなしに、実際働いておられる中堅どころの方々にも直接お会いをしていろいろ話を聞いてみますけれども所得水準いかんにもよりますけれども、家を持ちたいということが最終の希望であるということは、もうこれは間違いのないことでございます。わずかばかりのあるいは国の間接的な援助なりがあれば家が建てられるというような人には、やっぱりそれにこたえていくことをとることがほんとうじゃないだろうか。しかしさらばとて、持ちたい希望はあってもどうしても持てないという階層は非常に多いわけでございますから、それについてはやはり政府施策住宅をもってこたえていくという基本的な考え方をとるべきであるという阪上さんの御意見には、私は同感でございます。そういうことで進めてまいりたい。
  15. 阪上安太郎

    阪上委員 建設省計画局の試算によりますると、たとえば東京都民所得の三分位を例にとって考えてみますると、年間所得が八十八万二千円、この場合に住宅関係に支出の可能な額というものは幾らかというと、あなたのほうで出しているのですよ、年間十三万二千三百円。そうして住宅関係充当可能額というものが百九十八万六千二百円。これは利率を五分五厘で計算いたしまして、償還年限を三十五年とした場合であります。そうしてその場合の住宅建設に要する限度というものは、これから計算してまいりますと百五十四万円になる。宅地関係充当可能額というものが四十四万六千二百円だ。そこで適正の宅地単価というものを出しておりますが、かりに四十坪程度を購入するということになりますると、坪当たり一万一千円というのが限度だ、こういうことに出てきておるわけであります。ところが、あなたも御承知のように、東京近辺で一万一千円の土地というものはどこにもない。八十分ないし六十分の距離を考えてみましても、少なくとも四万円以上になっておる。そうしてこれがネックになりまして、どうしてもこの程度土地では建物を建てることができない。こういう中で持ち家重点を置かれて——持ち家はやはり人情のしからしめるところやむを得ないんだ。何とかして持ち家もつくらしてやりたいというところで、そちらのほうに投資をされて、そして公営住宅というものをもっと伸ばさなければならないのに伸ばしていないということは、やはりどこか政策の誤りがあるんじゃないかと私は思うのであります。なぜもっと思い切って公営住宅をお建てにならないか。時間がありませんから簡単に伺っておきたいと思いますが、将来この住宅建設五カ年計画というものをやり直す考え方はないか。それから調整戸数が二十七万戸あるはずでありますが、これを思い切って公営住宅建設に投入する、こういう考え方をお持ちかどうか、これをはっきり伺っておきたいと思います。
  16. 保利茂

    保利国務大臣 大体は阪上さんのお考えに近い線に沿うてやっております。建設省住宅行政を預かっている事務当局におきましても、やはり公営住宅に力を入れていきたいということを強調いたしておりますし、とにかく持ち家にしろ賃貸にしろ、住宅の量をふやして住宅不足感を解消するということがもう何よりも先決だというように私は考えておりますから、ただいまの調整戸数等扱い方につきましては、あなたと同じような考えでひとつ努力していきたいと考えております。
  17. 阪上安太郎

    阪上委員 そこでさらにお伺いいたしたいのでありますが、予算編成の段階でもって、用地費については、これはこの際補助をしないんだ、いずれ土地当該公共団体である市町村の所有になるのであるから、そういうことはやる必要はないんだということを大蔵省で強く主張されておった、こういうことでありますが、これは幸いにして取りやめになったので、私は非常にけっこうだと思いますが、今後こういう考え方を依然として大蔵当局としては持続されるのでありますか。そういう考えをいつまでも持っておられるのでありますか。これを伺いたい、大蔵大臣
  18. 水田三喜男

    水田国務大臣 私ども考えたのは、住宅政策をもっと推進しようという考え方でございまして、と申しますのは、土地起債の対象にしてやって、一般会計の余裕を全部従来の住宅対策費にすれば、そのほうがはるかに戸数を多く建てられるということから考えたのでございますが、もしそうするというと、家賃が非常に高くなるということになりますので、この起債の利子の補給というようなことを国がやるのならそういう心配がないんじゃないかということを考えたわけでございますが、今年度予算編成ではこの話がとうとうきまらないで、従来のとおりにやるということになったのですが、これは住宅政策を推進しようというために考えたわけでございまして、まだ将来研究の余地はあるものじゃないかというふうに考えております。
  19. 阪上安太郎

    阪上委員 建設大臣はこれについてどうお考えになっていますか。
  20. 保利茂

    保利国務大臣 予算編成の過程におきまして、補助を融資に切りかえたほうがいいんじゃないか。結局それはその公共団体の財産構成にもなってくるわけであるから、考え方としては、私はあるいはそのほうがほんとうかもしれぬと思うのでありますけれども、ただ、公営住宅につきましてはいろいろ検討されなけりゃならない問題があるようでございますし、そこだけを抜き上げて補助を融資に切りかえるということは、どうも少しやり方はおかしいじゃないか。かりに融資に切りかえるにいたしましても、それが家賃にはね返るような形では困る。それは絶対に私どもとしても納得ができないことでございますから、それは財政当局においても、家賃にはね返るようなことなしに融資措置に切りかえてもらいたいという強い要望があったわけですけれども、関連する問題が公営住宅にはいろいろあるようでございます。それらをあわせまして少し検討をさしていただいて、来年度予算編成までに結論をつけたい、かように考えております。
  21. 阪上安太郎

    阪上委員 この問題と関連して、いま建設大臣から、何か来年度において公営住宅法の改正等を考えておるというような意味の発言があったのでありますが、その点もう少し明らかにしていただきたいと思います。もしそうだとすれば、どういう方向考えておられるか。
  22. 保利茂

    保利国務大臣 お答えいたします。  まだどういう方向で改正しようというような方向はきまっていないんですけれども、ただ実際、現実公営住宅は——家を持ちたくても家を建てるわけにもいかないし、そうかといって所得は低い、そういう方にひとつ緊急に政府施策として入っていただいておる。ところが、入って五年、十年たちますと、所得が入居資格をはるかに上回っている。一方においては、きょうにも公営に入りたいという方が殺到しておられる。入った方は、所得は非常にたくさんになっておるけれどもそこを動かないというような状態は、これはそこをどういうふうに考えていくべきであるかというようなことを、これは私も少し皆さんのお知恵を拝借して、そこらの不合理は何とか解消できないものだろうか。私はいまこうしたいということは実は持っておりませんのですけれども、お知恵を貸していただきたいと思っております。
  23. 阪上安太郎

    阪上委員 公営住宅法によると、これは公団住宅も同様でありますが、低家賃住宅を供給するんだ、こういうことになっておるのであります。したがいまして、元来こういった公営住宅賃貸住宅はきわめて低家賃になるように持っていかなければいけない。これはもう理の当然でありまして、民間自主住宅と違う。ここから金もうけを地方公共団体がやるわけでも何でもない、こういうことなのであります。この場合、先ほどから、入居の年次その他によりまして住宅の家賃にかなりな開きがあるということを私は認めます。それだからといって、直ちにそれによって追い出していくというものの考え方をとられるということは、これは間違いでありまして、御案内のように第一種住宅は入居資格が月収三万六千円ということになっていますね。二種住宅は二万円ということになっている。それから今度は公団住宅というものは、一定のやはり最下限を引いているわけなんでありまして、これ以上でなければ入れないということになっておりますね。公営住宅はこれ以上のものは入ってはいけないという線を引いておる。その中間にあるものは一体どうなるか。公営住宅公団住宅の中間にある者は、政府政策住宅の恩恵を受けることができないのではないか。これらのかなりな層に対するところの配慮というものを一体政府はどう考えておられるか、この点について伺いたいと思います。
  24. 保利茂

    保利国務大臣 これは私が説明申し上げるよりも、ひとつ住宅局長の御説明を聞いていただきたいと思います。
  25. 三橋信一

    ○三橋政府委員 御説明申し上げます。  ただいまのお尋ねの公団住宅、これには家賃の何倍所得がなければいかぬということになっておりますし、それから公営住宅のほうは入居の資格の限界がある。お尋ねのとおりでございます。これにつきまして、従来、家賃の五倍以上所得がなければいかぬというようなことで、公団のほうの入居資格をきめておりました。そこで確かにお尋ねのようなギャップが出てまいりました。そこで、公団のほうの入居資格を、つまり所得の額と家賃の関係を下げて、四倍以上のものは入居できるということでただいまやっておる次第でございます。ただいまのところは、その方法によりまして一応すり合わせばきいておりますが、この点につきましては、お尋ねのように、今後いろいろと経済情勢等が変わってまいりますとまたギャップが出るんじゃないかという点は、おそれはございます。そこで、これらにつきましては、先ほど来大臣から御説明申し上げておりますように、公営住宅の制度の検討とあわせましてこれを検討してまいりたい、そういうふうに考えておる次第でございます。
  26. 阪上安太郎

    阪上委員 私の試算でありますけれども、公営一種でもって上限を、所得の面から入居基準を定めておりますが、この場合、夫婦と子供二人の標準家族で年収六十六万六千六百六十六円、こういうことになるわけであります。一方、公団の二DKにおきましては、家賃の一定倍率の所得を下限と定めておる。いまお話がありましたように、昭和四十二年度における東京近辺の建築予定団地では家賃が一万四千七百円となっておりますので、その四・五倍以上の月収、すなわち年収計算では七十万五千六百円以上、これがなければ入れない。そこで、この六十六万六千六百六十六円と七十万五千六百円との中間に取り残されている世帯数というものは、東京、横浜近辺だけでも六万世帯もある。これに対する措置を一体どうするかということを私は伺っておるのであります。あまりひどいじゃありませんか、こういうやり方は。  そこで、私は気の早い男でありますので、簡単に結論から質問したいと思いますが、こういった矛盾をはらんでいる制度というものについて、住宅建設の組織といいますか、そういったものをひとつこの際整理統合して、もっともっと一本化していくという方向考える必要があるのじゃないか、このように考えるわけでありますが、この問題はひとつ総理から伺っておきたいと思います。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまあります住宅の形、これはもうそれぞれがそれぞれの目的を持っておるのであります。ただいまお話しのように、一本化すればたいへんいい、見やすいじゃないかというような便利もございますが、しかし同時に目的がぼけるということもあります。私はただいまの制度でいいのじゃないかと思いますが、いま御指摘になっている、ここで問題になっているその救われない階層のもの、それを何とかしなければならない、かようにもいまお話を聞きながら考えていたのであります。こういう点も事務当局にもう少しよく検討させたい、かように思います。全部をまとめることは、私必ずしもそれがいい、かように思っておりません。
  28. 阪上安太郎

    阪上委員 さらに住宅関係でお伺いいたしておきたいのは、最近入居の決定につきまして、公団にしても公営住宅にいたしましても抽せん方式というものを用いております。私はこれほど人をばかにしたやり方はないのじゃないかと思うのであります。何か弓で矢を射てぶつかったらそのナンバーのものが当せんする。これは結局は非常に住宅政策が貧困であるからこういう結果になる。私はもっと真剣に、住宅建設計画との関連において、こんな抽せん方式などというようなものは廃止してしまうことができるような方向に持っていってもらいたいと思うのですよ。そのために私は、まず量をふやすこと、これは必要でありますが、実際問題として、いままでは建設計画法に基づいて、どこそこ地方は何ぼ、どこは何ぼというような割り当てをして住宅を建てさしておられるけれども、これをもっと合理的な方向へ持っていく必要がある。たとえば英国のニュータウン建設なんかでやっておりますような方式をやはりとる必要があるのではないか。何といいますか、住宅あるいは入居登録制というようなものをしいて、そして各地方公共団体ごとにそれを集めて、そして、建設計画によると昭和四十何年の何月にあなたの住居を与えることができますというような、きわめて人権尊重の、しかも高いものの考え方に立って、住民登録制度というものと同じようなやり方によって入居の登録をやらす。その者が何かの都合でAなる町からBなる町へ移動したというならば、移動証明を持っていってそこでまたランクをつけてもらうというようにして、ほんとうに緩急序列というものをつけてやって、そしてその人間は、その年限が来たならばおれは入居することができるのだというような希望を持たす、そういう入居方法というものをすることができるような建設計画というものを立ててもらいたい。それをただ単に抽せん方式でもって、何かくじ引きで当たったらそれでいいのだというような、そういう考え方というものは、あまりにもこれは国民をばかにした考え方ではないかと私は思うのであります。この点につきまして、これは建設大臣がいいでしょう、あなたからお伺いします。やる気があるかどうか。
  29. 保利茂

    保利国務大臣 私もそのように実は感じまして、事務当局に、何とか登録制にでも持っていくわけにいかぬのか、抽せんというような形で入居者をきめていくとか、あるいは公庫の融資をきめるというようなことでなしに、それぞれやはり緊急度合いがあることだろうから、その緊急度に応ずるくふうはつかないものだろうかということを、公営住宅のほうにつきましても検討を続けております。住宅公庫の融資につきましては、少なくともいままでやっておりました抽せん方式はもうとらない。そして、これは何といいますか、先願順といいますか、あるところまではそういうことでさばいていくようにすることのほうが、幾らかでも合理的じゃないだろうかということで、公庫融資のほうにつきましては、具体的に改善の措置を講じておりますけれども、公団の、いまの登録制につきましては、話を聞きますと、なかなか踏み切れるかどうか、検討は続けております。御趣意の線は私も同感なんですけれども、なかなか実際的にこれはたいへんなことを伴うような感じがいたしております。しかし、もう少し検討を続けさしていただきたいと思っております。
  30. 阪上安太郎

    阪上委員 保利さんは、問題意識は持っておられるようでありますが、これはやはり実行に移さないと何にも意味がないのであります。いまおっしゃった、公庫の最近の融資の決定のやり方を変更したことは、私はいいと思います。しかし、ここでもやはり問題になるのは、自己資金の準備のできた者から先着順ということになるわけなんです。これはとても、先ほど言いましたような低所得者層に対しては適用することができない。かえって逆行するんじゃないかというおそれすらあるんじゃないか、こういうふうに思うわけであります。これはひとつよく検討していただきたいと思いますが、総理は、こういう小さな問題には答弁なさらぬかもしれぬけれども、これは私は、国民にとってはたいへんな問題だと思うのでありまして、ああいう楽隊入りでもって、それから矢を射って、それで当たったらわっと喜んでいる、反面に泣いている者がある、こういったところに、やはりもっと愛情のある政治が行なわれなくちゃいけないと思うのでありまして、どうですか、この登録制あたりは、思い切って総理から、こうやれと言って命ずることがいいんじゃないかと思うのですが、ひとつお答え願いたいと思います。
  31. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま建設大臣が、この点についていろいろ苦心しておる点もお話しをいたしました。私は、建設当局は全然無視しているわけでもないようでございますから、さらに検討さすようにしたいと思います。
  32. 阪上安太郎

    阪上委員 住宅問題につきましては、この程度にとどめまして、次に、土地利用計画と都市化対策、これにつきましてお伺いいたしたいと思います。  総理は、四十三年度の施政演説で、この都市化対策の緊急性、そのための土地利用計画の先行というようなことについて非常に強調されておった。私は、非常に力強く実は拝聴しておったのであります。  また、さらに、第十二次の地方制度調査会、これの懇談会での——これは私が質問申し上げたのでありますが、やはり土地利用についての先行性について、総理は非常に力強い発言をされておったわけであります。また、過去、土地収用法の改正等に関する建設委員会での総理の発言等々から考えてみましても、総理は機会あるごとに同様の趣旨の発言をしておられます。しかし、一向にこれが具体化されない。私は、ここに問題があるのではないかと考えるわけであります。  そこで、総理にまずお伺いいたしたいと思いますのは、今日、非常な勢いでもって進んでおりますところのわが国の都市化現象、これをどう総理は認識しておられるか。  それからいま一つは、都市化の本質というものについてどう考えておられるか。なぜ都市化が起こるんだ、こういったことについて、総理はどういうお考えを持っておられますか、これについてまずお伺いいたしたいと思います。
  33. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 最近の日本の都市化現象、これにつきましては、施策演説、また、その他の機会にもしばしば私の所見を述べております。私は、この二十世紀後半の各国の悩みは都市化現象だ、かように思っておりますが、特にそれが日本の場合には非常に急激にその方向へいっておる。今日にしてそれに対する対策を立てなければ、これはとんでもないことになるんだ、かように実は思っております。  すでに政府は、かねてから、国土の総合開発計画というものを立てておる。都市の再開発、さらに、地方の開発計画、これは山村、農村にまで及ぶ計画が実は立てられております。また、その具体的なものとして、あるいは地方産業都市計画、新産都市計画、あるいは工業整備都市計画、あるいはまた最近東京付近において計画されたように、学園都市の建設等々がございます。しかし、なかなかこういうような都市化現象に対する対策、それだけでも実は目的を達しないように思う。こういう総合開発計画とあわして、現存、また現在その方向に進んでおる都市化現象に対して生ずる幾多の弊害、また、生活を圧迫しておるそれらの面について真剣に取り組んで、それはそれなりにして事態を解決する、こういう方向でいきたいと思っております。  先ほど阪上君がまず第一に住宅問題を取り上げていろいろ御議論になりましたが、これも都市化現象の解決の一つの大きな問題であります。この形において考えられておる具体的な方向が、いわゆる副都心計画あるいはベッドダウンの建設等々でございます。しかし、これはただ単に住宅だけの問題ではなく、そこに新しい町ができる町づくりでございますから、学校、道路、上下水道その他すべてに及ぶいわゆる公共投資になっておる。かように考えますと、口でこそここに都市化の問題と表現はできますが、その中身は、たいへん多岐にわたって、この上ともわれわれが不断の努力をしなければならない、かように私は思っております。
  34. 阪上安太郎

    阪上委員 都市化の本質といいますか、なぜ都市化が起こるんだというところを総理はどう考えておられるか、これをさらに明らかにしていただきたいと思います。
  35. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 最近の都市化のその本質は、どうも都市のほうが、経済活動でも、あるいはまた生活にしても、ただいまのところ便利だ、便益がある、こういうことであります。そういうところに都市化の傾向がある。けれども、これは必ず一つの限度がある。それが大きくなれば必ず弊害が生ずる。だから、これを適当に押えていかなければならない、かように私どもは思っております。  ただいまの都市化現象で一番私どもが困りますものは、一つは、交通問題、もう一つは、公害問題、この二つは、目に見えて、今日ほうっておくわけにいかない問題だ、かように思っております。
  36. 阪上安太郎

    阪上委員 都市化現象については、私は、いろいろの説があると思うのであります。一つは、やはり資本主義経済の発展段階で必ずこれは避けて通ることができないものである、こういう考え方があるわけであります。しかし、それだからといって、自民党が、あるいは政府が、この問題を避けて通ることができないからしかたがないんだと放任されるべきじゃないと思う。これは何とかその弊害を除去していくという考え方が、当然出てくべきだと思うのであります。  それからまた、都市化の本質については、これはその意義は、やはり農村が都市化することだ、こういうことではっきり言えると思うのであります。そうなってまいりますと、やはり都市化問題とか都市問題とかいう形が出てくるのは、結局は、考え方によると、過密、過疎の関係だということになるわけでありますが、この中で、特に過疎対策として考えなければならぬ点は一体どういうものであるか。これはやはり私は、地域開発だろうと思うのであります。それから、過密現象としてその対策を講じなければならないのは、都市再建の構想である。あるいは、都市再開発とも言われておりますが、そういった構想でなくちゃならぬと思うのでありますが、この地域開発の構想というものにつきましては、在来から新産都であるとか、あるいは低開発地域工業開発促進であるとか、いろいろな手が実は出ているわけでありますが、これは魂が入ってない、そのことのために地域開発の構想というものはやりかえなければならぬ段階にきているのじゃないかというようにいわれておりますが、これに対して、総理はどう現状を認識しておられるか、そしてその対策は、一体過疎対策としての地域開発に対してはどう考えるかというところをひとつ明らかにしていただきたい。
  37. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 別に議論するつもりで私申し上げるわけじゃありませんが、この都市化傾向が資本主義経済では当然だ、かような御指摘でありますけれども、今日都市化傾向を来たしておるのは社会主義の国においても同様だ、この点をはっきり申し上げておきます。(「そんなことない」と呼ぶ者あり)そんなことないという不規則発言がありますが、これはソ連でもその他でもみんな同じようにそういうことであります。ことに最もひどいのが日本だ、かように御了承いただきます。この点は別に議論するわけじゃありませんが、さように私思っております。  そこで、ただいまのお話でございますが、地方開発、これはなぜ十分効果をあげないのか、こういう問題であります。これは私は、やはり地方開発にも一つの経済的な経済性の限度がある、かように思います。このやはり経済性の限度、その限度を越してというわけにいかないというところに悩みがあるのではないだろうか、かように理解しております。いま、しばしば他の方向で説明されるのは、労働の移動だということをいわれておる。労働の移動がなぜ行なわれるのか。これはただいまのように経済性のあるところに労働が移動する、これは当然の形であります。そういう意味で、ただいまの地方の開発というものに限度なしに私どもが積極的に投資すれば、これは可能かもわからない。しかし、そこに経済性の限度があるのだ、かように私は理解しております。
  38. 阪上安太郎

    阪上委員 現在の地域開発、いままで自民党政府がとってこられた地域開発というものが十二分に実っていないということは、これはお認めになっておると私は思うのであります。しかしながら、そのためには思い切った公共投資をしなければならないが、それには限度がある、こういうことでいま総理答弁されておるわけでありますが、しかし、公共投資についての限度といいましても、いままで地域開発にぶつけてきた投資の額というものはきわめて少ないじゃありませんか。あんなものでもって地域開発をやろうという考え方を持っておること自体にやはり矛盾があるのじゃないか。一体、どのくらい公共投資をぶつけられたか、こういうことなんであります。これについては、いろいろと長期の五カ年計画その他に織り込んであるという逃げ方をされるのでありますが、実際的に地域開発に援助をされたものは、法に基づいて若干の援助をされておる例の四十億程度の融資じゃないかと私は思うのであります。そういう点で、地域開発は非常にいま行き詰まっておりまして、地域開発の転換期だと、こういわれておるのでありますが、これについてさらにひとつ今後とも御検討を願って、やはり地域開発を思い切って推し進めていかなければならない、こういうことにやはりもっと重点をしぼられる必要があるのじゃないか、このように思うわけであります。  そこで次に、いま一つの面であります過密の問題でありますが、これは都市の再建構想というものをやはり進めていかなければならない、こういうことであります。先ほど私は、都市問題というものは、資本主義経済の避けて通ることのできない宿命だというような意味のことを言ったら、社会主義経済にもそういうことがあるじゃないか。おっしゃるとおり、これはあります。ありますが、わが国のようなひどい状態にはなっていないということなんであります。  そこで、この都市再建構想の中で問題になりますのは、自民党の考え方というものが一体どこにあるんだということがやはり問題になるわけであります。それは何かといいますると、いろいろと企画庁等においても計量化されて、今世紀末の見通しあるいは二十年先の見通し等を立ててこの問題と取り組んでおられるようでありますが、しかしながら、根本的な問題として、一体都市化は避けられるか避けられないかという問題がやはりネックになりまして、なお議論が続けられているようであります。したがって、政策が十分に定着しないということになっておると思うのでありますが、一体政府考えとして、都市化は避けられるか避けられないか、そしてそれに対する対策として、どういう対策を基本的に持っておるか。たとえば分散方式か。あるいは、現在の都市はなおこれ以上に都市再建をやることによって、なお人口と産業をさらに集積することができるんだというお考えを持っておられるのか。分散方式か、あるいは集中方式かという根本的な問題についての見解をひとつ承っておきたいと思うのであります。
  39. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 結論から申せば、望ましい姿は分散方式だと思います。しかし、現在におきましても、さらに集中方式として現状を打破することのできるものも多数あると思います。たとえば、高層建築の問題が一つの例であります。さらに、いまの公害等と取り組めば、この集中方式も、いわゆる弊害のみ出てくることなしに、もっと住みいい町もつくれるのではないかと思います。しかし、やはり基本的には分散方式というものを絶えず頭のうちに置いて取り組むべき問題だ、かように私は思っております。
  40. 阪上安太郎

    阪上委員 きょう初めて実は総理意見を伺ったわけであります。総理としては、非常にはっきりしておられるのでありますが、しかしながら、これらの問題と取り組んでいる各省の中では、依然としてそこらのところでまごついておる、意見が調整できないというふうに実は伺っておるわけであります。しかしながら、総理としては、都市化は避けられない。しかし、その集積の弊害というものは排除していくんだ。したがって、都市再建の構想として、やはり分散方式をとるべきである、こういうような考え方を持っておられるわけであります。  そこで、建設大臣に伺いたいのでありますが、そういうことになりますると、分散方式というものを原則として考えていくということになりますと、都市再建の実際のあり方はどうあるべきか、こういうことについて伺っておきたいと思います。
  41. 保利茂

    保利国務大臣 これは、割り切ったものの言い方は私はできないと思っています。たとえば、例を東京に引きますならば、東京を、もっと都市計画を進めて、高度利用等が進んでいきますならば、ニューヨークあたりでも東京の人口密度の倍以上のものを持っているようでございますから、もう少し現在の市街地域を開発していく余地は十分残されておる。それがまた都市再開発法等を結論づけて御審議を願っているところでございますが、しかし、同時にまた、先ほど総理が申されておりますように、各官民を通じての管理中枢機能というものは、どうしても都市に寄ってくる。したがって、都市におらなければ業務ができないというようなもの以外は、できるだけまたこれを分散していただくというような方向に誘導すべきではないか、そういうふうに考えて施策を講じていくべきであろう、そういう意味で、新都市計画法であるとかあるいは都市再開発法をお願いいたしておるのはそういう趣意であります。
  42. 阪上安太郎

    阪上委員 おっしゃるところをまとめてみますると、分散方式をとるのであるけれども、しかしながら、なかなかこれは容易なことではない。したがって、そこで分散方式をやると同時に、やはり現在の市街地その他の開発をやっていくのだ、こういうことだと思うのであります。  そこで、問題になりますのは、その市街地の開発の方向が、さらに集積の弊害というものを伴うような開発の方式であっては、これは意味がない。そうなってまいりますると、都市の再開発というものをやっていく場合に、何かそこに、そういった配慮というものが働かなければいけないのであります。現在の都市は過密だ、過密だというけれども、使い方によっては過密じゃないじゃないか。したがって、超高層ビルを建てることによって、もっともっと集積をさすことができるであろうというような、安易な考え方で都市の再建をやっていこうということであるならば、これは大きな誤りをおかしてしまう。この場合、超高層ビルがあちらこちらに建ち始め、また美観論争と関連して、宮城前の超高層ビルの問題も出てきております。超高層ビルについてどういうふうにお考えになっておりますか。
  43. 保利茂

    保利国務大臣 市街地の高度利用と、現在の高度の建築技術とをもってしますというと、できるだけ超高層ビル等ができ上がるということは、私はけっこうなことだと思っております。しかし現状はどうなっているか。現在の交通状況はどうであるか、あるいは消防等の施設がどうなっているかというようなことを考えずに、ただ高度利用さえすればいいんだという考え方には、私はくみするものではありません。したがって、それにつきましては、やはりそれが建って初めて都市機能が改善されていくという方向で指導せらるべきであろうと、こう考えております。
  44. 阪上安太郎

    阪上委員 非常にけっこうだと思います。ただ、そういう問題意識だけではいけないのでありまして、実際にどうするかということがやはり問題になってくると思います。いま起っておる都市問題というものは、私から説明するまでもないと思います。住宅問題、あるいは公害問題、あるいは交通問題というような形で、非常に強くこれが出ているわけでありますが、要は、都市問題とは、結局都市に住む人間の生活問題だ。かつては、都市問題は労働問題として出発し、いまなおこれが解決されておりませんが、さらにそれに加うるに都市に住む人間の生活問題。そうなってまいりますと、都市問題の解決は、生活空間をつくり上げていく、こういうことでなくちゃいけない。ところが、超高層ビルは建った、いま政府の継続審査になっておりますところの都市の再開発法等を見ましても、何か民間の恣意にまかしておるという傾向があるわけであります。そうすると、何人か寄って——これはほかに方式も持っておられます。都市開発公団の考え方もあるし、それから地方公共団体がこれをやるというものも出ておりますが、同時にその土地を持っておる人、建物を持っておる人が、数人寄って組合をつくればそれでいいんだ、これは少し安易な考え方じゃないかと私は思います。都市に住む人間の生活空間をつくってやる、それがまた分散方式を原理とする都市再開発の原理だと私は思うのであります。  そうなってまいりますると、超高層ビルを建てた、その隣にあき地ができたから、そこへまた超高層ビルを建てていくんだ、こういうことを繰り返しておったならば、何のために超高層ビルを建てたか、わけがわからない。そうして一方において日照権の問題が起こり、電波障害が発生してくる。そして緑地はだんだんだんと、やはり依然として姿を消していく。こういうことであったら、何の意味もないと私は思うのでありまして、この場合、都市再開発法の問題については建設委員会その他で論議されると思いますけれども、やはり基本的な方向として、現在の都市、過密都市におけるところの建物その他につきましては、十二分にこれを配慮されて、自然に増加していくところの人口増に対処するためには、現在のものを、それらのものの限度内において、これを収容するという考え方を持ち、外から流入してくるところのもの——これはなかなか避けられませんが、これは周辺において副都心をつくるとか、あるいはニュータウンをつくるとかいう方法によって、外でもってこれを受けとめていく、そういうような方向というものを明確に打ち出すべきではなかろうかと私は思うのであります。  ニュータウンについても角本構想その他がありまして、何か時速百五十キロから二百キロ近いところのスピードでもって、これを結ぶなどという構想が出ておりますけれども、私はそういう意味のニュータウンというものは意味はないと思う。そんなことは簡単にできるものではありません。今日の新幹線のヘッドなんかを考えてみましても、それだけの超高速のものをそう簡単に動かせるものではない。結局はニュータウンというものは職場と住居を同時に与える形のものでなくちゃいけない、私はそういうことを考えるわけでありまして、都市再建構想につきまして、いま少しもっとはっきりしたところの政府の態度というものを打ち出していただきたいと思うのであります。この点につきまして、もう一度建設大臣から伺いたいと思う。
  45. 保利茂

    保利国務大臣 問題意識だけではだめだ、全くそのとおりでございますが、私の問題のとらえ方は、阪上さんと同様にとらえておるつもりでございます。ただ、イギリスでやっておりますニュータウンの実態を見ましても、なるほど初めは、親の代はそれでよかったですけれども、現在はどうかというと、そのニュータウンからやはりロンドンに向けて通勤していくというような状態が出てきておる。非常にむずかしい現象がやはり起きておるようであります。しかし、私は超高層とは申しませんので、この都内にしましても、もう少し高度利用を考えるべきである。しかし、それはあなたのおっしゃるように、市民生活を守るという上でやるべきであって、土地の利用度を高くする、だからあき地ができたらまた建てるというようなことなら、これは全く意味をなさないことになるのではないか、そういう考え方で勉強してみたいと思っております。
  46. 阪上安太郎

    阪上委員 いま建設大臣からお話しがありましたように、そういう趣旨であるなら私はけっこうであります。ただ、地方公共団体が一手でもって都市建設をやっていくのだ、これもなかなか資金面で無理があるだろうと思うのであります。したがって、民間資金というものを導入しなければならぬこともよくわかりますが、それだからといって建設組合をつくらせて、それでもって、しりぬぐいは地方公共団体がやるけれども、彼らの手によってやらすのだという野方図なものの考え方では、結果は、結局また超高層ビルの隣に超高層ビルが建つ。そして通勤は、昼間人口の増加に伴って、ますます混雑を来たしていくということを繰り返していくおそれがある、こういうふうに私は考えるわけであります。  なお、いま英国ニュータウンにつきまして、再びまたロンドンに通う者があるというお話でありますが、これは私も現地に入って数回にわたって調査もいたしております。結局はやはり彼らにミスがある。これは生産年齢というものを、若い世代の出生率というものを誤って計量しておった結果がそういうことになったということをいわれておりますので、再びこの点は反省されまして、さらに働く場所というものを周辺にいま急遽建設中である、こういうことでありまして、そのこと自体によってニュータウン建設というものが、住居と職場を同時に与えるニュータウンというもの——いまのベットタウンではありませんよ。そういうものが失敗に終わったと断定することは、私は早計ではないかと思います。  そこで、なお伺いたいことがありますが、時間がありません。こういった過疎対策としての地域開発、こういった過密対策としての都市再開発、これをやっていくために、やはり一番大切なのは、私は公共投資の量だと思うのであります。この点につきまして、何かフィスカルポリシーを導入して、景気調整のために財政を抑制して、そして今年は、特にその点で一番大きな働きを持つ公共投資というものを抑制されておる。前年度よりは伸びておることは私は認めますよ。これは総理もきのう言っておられたが、ほんとうのことを言いますと私は伸び率が気に食わぬ。こんなものでもって過密対策、過疎対策、あるいは地域開発計画ないし都市の再開発をやろうとしたって、これはできるものではない。こういう点についても大蔵大臣に聞きたいのでありますが、きょうは時間がありませんので、これは割愛いたします。  そこで、いま一つの前提条件として、総理も言っておられる土地利用計画、これが都市問題解決のために、あるいは地方におけるところの地方都市の問題も含めて、土地利用計画というものが先行しない限りはこれは手がつけられないじゃありませんか。この土地利用計画については、もう総理は前々から建設委員会その他におきまして、土地税制と関連して数回にわたってやはりこの点を強調されております。あらゆる関係諮問機関におきましても、土地利用計画を先行させいということを口をすっぱく勧告しているわけでありますが、これは一向に総理はおやりにならない。これに手をつけないでもって、いま言ったような都市再建をやろうとしたって何やろうとしたってできるものじゃありませんよ。なぜこれに対して、これこそほんとうに問題意識ばかりじゃなくして、思い切って総理は断を下されないのですか、この点についてひとつ総理考え方を、現在の心境を伺っておきたい。
  47. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この土地利用計画が立たないと何もかもみんな進行しないということ、それはお説のとおりであります。私はもう土地利用計画を立てようということで、これはしばしば私の意見を発言しておりますし、またそういう意味ではすでにもう調査にもかかっております。しかし、これはなかなかたいへんな問題ですから、そう簡単にすぐ結論は出ません。ただことしの施政演説にも私申しましたように、土地の公共性という、そういう点から、やはりこの土地問題と取り組むという、そういう一つの姿勢も出しております。これあたりの問題も、建設省でどういうように取り扱うか、これは公用徴収その他の点にいろいろ関係を持つものでございます。しかし、ただいままでのところ、非常に私権の保護、これが中心になって、ただいまの全部のたてまえができておりますから、公共優先と口でこそ申しましても、実際にはからを破っていくことはなかなか困難であります。ただいまの利用計画にいたしましても、ただペーパープランだけではこれは何ら意味をなさないのでありますし、そういう意味でやはり調査実行に移し得るような、そういう意味のものをつくりたいと思います。ことに、この土地利用計画になると、一番中心をなすものが同時に農地との関係の問題が非常に深いのでありますから、ただいま言われるように、結論を急ぐだけでは十分のものはできないように思います。私がこれをまだ手をつけないで放っておるわけじゃありません。しかし、なかなか問題がございますから、慎重な態度でこの問題と取り組んでおる、かように御了承いただきます。
  48. 阪上安太郎

    阪上委員 問題意識は十二分に持っておられます。そして、これが先行しなければすべてのそういった問題が解決しないんだということを、はっきりつかんでおられるのでありますが、いま伺っておりますると、どこでそれがまごついておるのか、こういうことになりますると、くしくもやはり私有財産制の問題が出ているわけであります。憲法が保障する私有財産制、これについてどうお考えになっておりますか。この種の問題は、研究といってもこれは限度があると思うのであります。調査といったって、こんなもの調査する必要はないのでありまして、憲法の私有財産制というものに対する解釈、これをはっきりなさればいいんじゃないかと私は思うのであります。  公共の福祉のためならば、私有財産が制限されることは、これは憲法二十九条においても明白になっております。その他の条文の中にもこれがございます。ただ、やたらに公共の福祉という名のもとに乱用されることは、これは慎まなければならぬと思いますけれども、しかしながら天賦人権のように、私有財産、ことに土地というものは、これは絶対的に個人の私有財産である、こういうふうに考え考え方はもう古いのじゃないか。近代の憲法というものは、先進国の憲法というものは、やはり資本主義体制の中におきましても社会的な法治国家としての方向というものを示しておると私は思うのであります。それが証拠に、やはり公共の福祉というものを持ってきて、そこで社会的法治国家への方向というものを進めようと考えておるのです。この場合に、日本ほどこの土地に対する執着の強いところはないのであります。しかしそれを何とか打破しなければいけないと私は思うのであります。ことにこれをするためには土地利用計画というものを策定いたしまして、土地の利用区分というものを明確にするというような方向でこれを推し進めていかなければ、いつまでたったってこの考え方というものは国民の脳裏から捨て去ることはできないんじゃないか。  そこで総理に伺いますが、私有財産制度につきまして憲法解釈なりに対する考え方をひとつ伺っておきたいと思います。
  49. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、阪上君のいま御指摘になりました点、たいへん共感を覚えておるのであります。私の考え方も、ただいま公共の利益のために私権の制限はこれはある程度あるんだ、かように私は思います。しかし、何と言いましても、いまの私有財産制あるいは個人の権利、これが現憲法は非常に強く前面に押し出しております。そうしていわゆる公共の福祉というものはややその裏に隠れておる、かように私は考えております。ただいま、きのうから問題になっておる成田の空港の問題をごらんになれば、これは非常に如実にわかる。あるいはいままでの道路建設の場合に、各地で問題を起こしておる。これなども今日までの私権あるいは私有権の保護というもの、土地の私有権、土地所有権その他私権の保護というものがいかに徹底しているか、これはおわかりだと思う。私はこういう状態ではなかなか社会秩序の維持もできないし、また進歩もないんじゃないかと思います。きょうはいみじくもそういう点を社会党の皆さんからお尋ねをいただく。私は実はたいへん感激を覚えておるわけでございます。とにかくただいまの成田の問題にいたしましても私はそう乱用しておるとは思いません。しかし、こういう事柄が全然問題にならない、そういうような意味で取り扱われておる。現状をごらんになればいまのお話がおわかりになるんじゃないか、かように思います。  私は、ただいま成田空港の問題を申しましたが、その他道路建設の場合に、大なり小なり同じような問題が引き起こっておる。鉄道の建設の場合も同様であります。私はこういうような点をもっと国民が理解し、国民の協力を得るようにしたいものだ、かように考えております。
  50. 阪上安太郎

    阪上委員 この問題を検討する場合、わが党としては、やはりいま総理が引用されたような方向へ持っていかれるのではないだろうか、こういうことで実は非常に問題があるのであります。あなたのほうの党の中でもやはり問題がある。なかなかまとまらない。私のほうでもこれは問題がある。ことに土地の社会的利用の問題について、これを強調することによって、いま言ったような総理のような方向へ持っていかれるおそれがある。しかし、歯どめは公共の福祉なんであります。公共の福祉に適合するように土地利用されなければいけない、こういうことなんでありまして、これを都合のいいように解釈されるということにつきましては私は問題があると思うのであります。しかしながら、そういう問題があるにもかかわらず、われわれとしては今日の置かれておる都市問題というものを考えたときに、ほんとうに純粋にこれを考え土地利用計画というものを推進し、そのことのためには私有財産というものについて制限が加えられてもしかるべきじゃないかというふうにわれわれは踏み切っておるわけでありまして、そういう点をあなたはやはり十二分に考えて持っていかなければいけないのではないか、こういうふうに思うわけであります。そこで政府土地利用計画をいま鋭意考えておる、こういうことであります。少し長過ぎると私は思うのでありますが、考えるということにいたしましてもどういう方向考えられておるか、ひとつ伺っておきたいと思います。  それは一つは土地の価格の問題であります。これは時間がありませんのでもうきょうはこの点であまり論議をかわすひまはありませんが、土地価格をいかにして抑制するかという問題、それから先ほど言いましたように土地税制の問題が入ってくるわけであります。しかしながら、土地税制を幾らやったといたしましても、それだけでもって土地の価格を抑制することは私はできないと思う。場合によっては逆効果が出てくるだろうと思う。それならばそこで一つの歯どめが必要になってくる。それは土地利用区分だと思うのであります。特定の地域において土地民間売買を禁ずるくらいの思い切った政策を出さなければこの問題は解決しない。それを総理は、いままでそういう問題があるので、税制問題についても、収用法の改正のほうは食い逃げして、租税特別措置法のほうは食い逃げしてしまったという例があるのですよ。したがって、私は、やはり土地利用計画内容としてこの土地利用区分というものを明確にする、このことが必要だと思うわけであります。  それからいま一つは、土地の公的な保有制度というものをこの際導入し確立する必要があるのじゃないか。一体いまの日本は何ですか、都市問題都市問題と悩んでいながら、そうして土地がないために公共事業を執行するのに非常に手間どっている。また、土地の価格が高いために建設費に非常に大きくこれが食い込んでおるというような問題も出てきておるわけであります。こういった土地の公的な保有制度、これは私から言うまでもなく、諸外国では、それぞれの地方公共団体というものは膨大な土地を持っておる、保留地として持っておる、土地収用の場合には代替地としてこれを提供するという考え方も持っておる、やり方もやっておる。  私は、これら一連の土地利用計画というものをどうしても明確にしなければならぬと思うのであります。しかしながら、政府は一体何を考えておるのかよくわかりませんので、この際、土地利用計画内容というものは一体どういうふうにいま作業を進めておるか、それを承りたいと思うのであります。建設大臣
  51. 保利茂

    保利国務大臣 数年前から政府はこの問題と取り組んで、土地収用法の改正であるとか、ただいまの御質問の点にこたえるためにはどうしても都市計画法の立て直しを、全面改正をやらなければいかぬ。都市計画法の改正もようできないということでは実際お手あげせざるを得ないということはもう御案内のとおりでございます。都市計画法をひとつぜひ成立さしていただいて、これによって利用計画を急速に進めさしていただきたい、かように思っておるわけであります。  もう一点は、国なりあるいは公共団体が相当の土地を持っておらないと、先ほどお話しのようなことで実際弱っておるのじゃないか、そのとおりなんであります。今日のように公共事業に用地費がばく大な部分を占めてまいるということになりますれば、市街地において、あるいは都市近在において行なうところの公共事業というものは、その面から非常に制約を受けるわけでありますから、したがって、私は、都市再開発法等の運用によりまして、できるだけ公共団体なり国なりが土地を持って、そしていまの代替措置を講ぜられるようにしなければ間に合わないようになるのじゃないか。そういう点では来年度予算は必ずしも満足すべきものではございませんけれども、そういう熱意を込めて予算折衝もいたして今日のような予算がつくられておるわけでございます。
  52. 阪上安太郎

    阪上委員 土地収用法だとか、あるいは新たに都市再開発法であるとか、あるいは建築基準法の改正であるとか、いろいろなことを現行の法体制のままでものを考えておられるところに大きな誤りをおかしておられるのじゃないか。そんなことではだめなんでありまして、この都市問題とかあるいは地域開発問題とかいう問題を解決するためには、やはり国土総合開発の観点に立っていかなければだめなんであります。そうして、総合性を持たないところに今日のもたもたした政府のこの問題があるわけなんであります。でありますので、これは総合性を持って考えていかなければならぬ。そのためには、私は、土地利用計画というものをどうしても先行させなければいけないということを実は言っておるわけであります。それを都市再開発法であるとか、あるいは土地収用法であるとか——それも大事です。大事ですが、そんな程度にとどまっておるから、やはり依然として都市問題が解決できない。もっともっと総合性を持たすべきであると思うのであります。この点について、宮澤さん、あなたのほうは研究されておると思うのでありますが、どうですか。
  53. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは昨年、たしか四月でございましたが、阪上委員から御同様なお尋ねがございました。その続きになると思いますが、やはりいま建設大臣の言われましたように、都市計画法を、今度の新法をひとつ御審議、可決をしていただきまして、それによって、私ども、おそらく都道府県知事に土地利用計画を書く権限を与えることになると思います。そうして、それによって市街化地域と調整地域というものをまず大都市の周辺につくるということになると思います。その際の、先ほどからのお尋ねのいわゆる私有権との問題については、はっきり全部明文に出ておるわけではございませんけれども、期待利益というものについてやはりある程度制限する考え方があの法律案の中にあると思います。一つは、積極的な意味での開発利益、これは期待利益になりますが、これについて都市計画税のような形でそれを徴収するという考え方だと思います。もう一つは、土地利用計画ができました結果、たとえば工場用地になることを期待しておった部分が工場用地にならないという、期待利益が失われるという部分があると思いますが、これは補償の対象にしなくてもいいのじゃないか。その程度までは私、私有権との問題が進んでおるというふうに思います。それで全国総合開発計画は今年の秋ごろには書き直したいと思いますけれども、この場合、総合開発計画がうまく現実の各地方の土地利用計画と結びつくというのには、時間的に少し無理がございますから、そこで総合開発計画では、やはり大まかに農業を含めました産業立地、それから住宅地域といったような分け方をすることになるのではないかと思います。
  54. 井出一太郎

    ○井出委員長 岡本隆一君より関連質疑の申し出があります。阪上君の時間の範囲内においてこれを許します。岡本隆一君。
  55. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 いまちょうど都市計画法の話が出てまいりました。都市計画法が今国会に提案された理由は、一つには土地の合理的な利用というものをこれから制度化していくということもございますが、もう一つには、地価の安定ということが大きな目的であったはずであります。地価の安定につきましては、昭和三十九年の国会におきまして、地価安定施策の強化に関する決議を四党共同で提案いたしまして、可決され、院議になっておる。それ以来、政府は地価安定施策を進めなければならないのに、何らそれをとってまいりませんでした。そこで、われわれから強い要求をいたしまして、ことに土地収用法が強化され、土地収用権を強化するなら地価の安定がまず先決問題であるというわれわれの要求に従って、一昨年の通常国会には租税特別措置法の改正案が出てきて、その中には譲渡所得税に対するところの特別措置を講じて、それでもっていわゆる開発利益を社会に還元するという考え方に立って、土地の値上がり分に対するところの税をより強くかけることによって一応架空需要を押えよう、こういうふうな改正案が出たわけであります。ところが、そのときに土地売買業者、いわゆる土地ブローカーのほうからものすごい反対があり、そのために与党の大蔵委員がくずれまして、結局、それはその年には衆議院は修正されて参議院に参りましたが、参議院でつぶされてしまった。こういうふうな経過があるわけであります。私は、こういうふうな政府のなまぬるい、私有権を押えるからいかぬとか、あるいはまたそういうふうなことをやれば土地の動きが押えられるというふうな小さなことにとらわれておったのでは決して日本の地価は安定しない。どんどんどんどん地価が上がっていくから公共事業が困難になる。同時にまた、国民の住生活というものがますます窮迫していく。だからここらで地価安定施策としての土地利用というものを確立していかなければいけません。  ところが、今度の都市計画法には一応土地の利用区分は確立しようとする態度が出ております。いわゆる開発地域、市街化地域と開発抑制地域、市街化を抑制する地域と二つに分けようというふうな都市計画法は出てまいりました。しかしながら、それではその市街化される地域につきましては、いままでどんどんどんどん農山村へ開発がスプロール化していった、どんどんどんどん無秩序に広がっていったところの開発行為が、今度は市街化地域に集中することになるのです。市街化地域に集中いたしますと、そこの地域に開発エネルギーが集中した結果、そこの地域がべらぼうに地価の値上がりが起こってくる、これは当然であります。これをどう防止するかという手が何ら今度の法案の中にはうたわれておらないし、同時にまた、それを他の面でどう防いでいくかということも何ら配慮されておらない。したがって、そういう施策がなければこの都市計画法というものは都市におけるところの地価の暴騰法案になる。こういうふうに私は思っておるのでございますが、総理はこれに対してどのように対処していかれるおつもりでございますか、それを伺いたいと思います。
  56. 保利茂

    保利国務大臣 都市計画法だけで全部の目的を達するか、これはもうお話しのように税制面に期待するところ非常に大きいものがあると思います。そこで、税制調査会の土地部会でこの夏までには結論をつけられるだろうと思うのですけれども、まず私の感じからいたしますと、また、いたしておりますことは、この地価の暴騰は第一次産業から第二次産業、第三次産業に急激に集積した産業の集積、人口の集積、それによる土地の需要が爆発的に起こっておるということが地価暴騰の原因だと思う。そういう観点から問題をながめていって、その上に地価騰貴を来たしておるもう一つの理由は、やっぱり投機の対象に扱われている向きがないとはいえないのじゃないか。少なくとも社会性、公共性の高い土地については投機の対象として扱われるようなことのないような制度を仕組まなければいかぬじゃないか。それはいまお話しのように、土地ブローカー等によってつり上げられるものを抑制していく。それには短期の所有での譲渡所得等に対しては相当高率の課税をすることによって抑制していくということが大事じゃないだろうか。そういうことで税制調査会に対しては、短期譲渡所得については高率の課税ができるような税制を仕組んでもらいたいという強い要望を建設省としてはいたしておるようなわけでございます。これは、私は税制調査会で必ず取り上げていただけるものだと期待をいたしておるわけであります。都市計画法それ自体で全部片づけるということは私は不可能だろうと思います。
  57. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 関連質問でございますから簡単に終わりたいと思いますが、いずれまたゆっくり、私が時間をいただきますときに総理にも出ていただいてお答え願いたいと思うのでございます。  いま建設大臣は、都市計画法では土地利用計画をきめるだけだ、地価の安定というものは税制に期待するよりほかしかたがないというふうなお答えでございました。私もそのように思っております。必ずしも都市計画によるところの土地利用計画の樹立だけではなかなか地価を押えられない。それにはやはり税制の改正が伴わなければだめだ、こういうふうな建設大臣のお答えでございました。そこで、これは毎年予算委員会で私はこの問題について総理大蔵大臣とも意見をかわしておりますのですが、とにかくいままで出ております税制といたしまして、政府のほうで芽をふかしてきたのは、いわゆる開発利益の還元、譲渡所得税の何だけでございます。しかしながら、それは思惑買いを押えるだけであります。もう一面でやはり売り惜しみを押えるという、これを何か方法を考えていかなければならぬ。そこで、いわゆる土地利用計画を立て、市街化される地域におけるところの空閑地ですね、これをやはり公的に早く提供させるというふうな方法を講じなければならない。二つの面におけるところの税制の改革がどうしても必要なんです。この税制改革なしには地価の安定ということは考えられない。  そこで、いま建設大臣は税制調査会の結論に待つ、そうしておそらくいい方向へ結論が出てくるだろう、こういうふうなお考えでありますが、こういう面につきましてはむしろ政府が指導的な立場をとる、私はこのことのほうが大切であると思うのであります。しかも今日こういう審議機関というのはいわば政府の御用機関のようなものなんです。ていよく審議会、審議会といつも言っておられますが、審議会は政府があやつっているのです。だから政府姿勢が何よりも私は大切であると思うのであります。そういう意味におきましては、どうしても地価を安定さすんだ、こういうふうな総理の決断が一番私は大切であると思います。それなしには地価の安定はありません。だから私はこの機会に、どのようにしてでも地価を安定さして、そのことによって土地の有効利用を行ない、国民の住生活を安定さすのと同時に、また公共事業の促進をはかっていく、こういうふうなことをはっきりこの機会に総理からここで所信を御表明願いたいと思います。
  58. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 総理の決意で地価が安定すればたいへんけっこうですが、そう簡単なものでも実はないと思います。私はたびたび申し上げておりますが、地価を安定さすということが諸物価の実は基幹だ、かように思っておりますから、地価が安定しない限り、物価の騰貴を押えるわけにいかない。そこでいろいろな対策を立てておる。いまの土地の利用区分の問題もそういう意味で一つ問題です。そういたしますと、利用区分を立てると、いま岡本君が御指摘になりましたように、この地域が土地利用開発区域だ、こうなれば土地が限られるのですから、それは高くなるというのは自然の現象であります。それではせっかく利用区分を設けたというその趣旨にも反しますから、そういうことのないように私どもしなければならない。そこで同時にあわせて税制ともいろいろ関係を持つ、これはもう税を高くするだけが能ではございません。場合によりましては特別な便宜をはかることも、これも一つの方法だろうと思います。そういうような税の問題もこの問題では取り組まなければならない。税制調査会、これも非常に結論を急いでおります。私は八、九月になればおそらく結論が出るのではないか、かように期待をいたしております。こういう点もあわせていまの地価の安定、それに役立つようにいたしたいと思います。  また、先ほど阪上君からお話がありました公有の土地をふやせ、国有の土地をふやせとか、これも一つの問題であります。過去におきましていろいろ払い下げという問題がございました。いまも問題になっておるものがあります。問題になっておるというのはいわゆる汚職ではございませんが、そういうただいま進行中のものもあります。しかしながら、まあこういうことを大体最後にいたしまして、しばらく土地の払い下げだとかいうことはしないほうがいいんじゃないか。また、阪上君の言われるのも、おそらくいろんな場合に公有の土地をだんだんふやせというのだろうと思いますが、私はそういう意味で公有の土地をふやしていくことがこの土地問題を解決するゆえんではないか。かっては、土地を払い下げること、土地限度があるからうんと払い下げれば地価は安くなるんだというような議論もあったようですけれども、私は、土地の売買、そういうものがひんぱんに行なわれることによって地価がどんどん上がっていく、これは所有権を持たなくても、利用権を持つということで満足していただくような、そういう方法を考えられないか、かように私は思って、公有や国有の土地についても、いまこの払い下げ等については慎重にするという態度で臨むつもりであります。とにかく、ただいまお尋ねをいただいております土地の問題こそは諸物価の根本だ、かように私考えますので、この上とも政府を鞭撻願いたいと思います。
  59. 阪上安太郎

    阪上委員 岡本君の関連質問でだんだんと政府考え方というものがわかってまいりました。  そこで、先ほどから触れられております土地利用計画というものが、まあそう簡単には出てこないような印象を私は受けておりますが、せめてこの際、市街化区域等特定の地域におけるところの悪徳ブローカー等に対するところの措置もあわせて考えて、民間の売買についてはやはり一定の制限を加えていく必要があるというふうに考えます。この点。  それからいま一つは一土地の公的保有制度、これはいま総理が進めるべきだ、こういうふうに言っておられます。これと関連いたしまして、私質問しようと思っておったのでありますが、国有財産の払い下げ、これはもうやめるべきだ、この点はけっこうでございますが、この保有制度を確立するために相当な資金が要ると思うので、これに対してやはり思い切って——現在のような財政投融資のワク内における百五十億程度のものでは、これはどうにもならない。この場合、やはり土地基金等を設けてそうしてこれに対処していく。  いま申し上げたような諸点についてひとつ御答弁を願っておきたいと思うのであります。
  60. 水田三喜男

    水田国務大臣 先ほどから税の問題が出ておりましたが、私はやはり税制は結局補助的な政策であって、地価抑制の本来はやはり土地政策を主とすべきものだというふうに考えております。税制についていろいろ研究いたしましたが、結局土地問題の主役となるものではない、土地政策を補完する性質のものであるというふうに考えておりまして、いま税制調査会に土地に。いての税制を一括して諮問して、特別の部会を設けて研究しておりますので、八月ごろまでにはこの結論が出ると思っております。  そこで、もう一つは土地保有の問題でございますが、この先行保有ということはどうしても必要だと考えておりまして、今年度予算でも財政投融資を相当強化しておりますが、今後さらにこれは強化する方向をとりたいと思っております。  それから国有の土地につきましては、いままで公団に現物出資をしたり、あるいは地方公共団体に減額譲渡したりして、住宅の敷地として利用するということをやっておりましたが、ひとり住宅だけではなくて、今後やはり公有地の利用というものはいろいろの部面においてこれは必要となってくるものと思いますので、これをただ無秩序にどんどん売るというようなことについてはこれから慎重な考慮を払うべきものというふうに考えて、そういう方向でやっていきたいと思います。
  61. 阪上安太郎

    阪上委員 土地問題はこの程度で終わりまして、かけ足で財政硬直化と地方財政の問題についてお伺いいたしたいと思います。  最初に、簡単にお答え願いたいのですが、二十四日に北山委員からも質問がありましたが、四十二年度における財政執行の繰り延べについてであります。このことについては相当論議が戦わされたのでありますし、まだ未解決のようであります。私、ここでお伺いいたしたいのは、この種の財政執行の繰り延べ、これについては当然私は補正予算を出すべきだという考え方を持っているわけなんであります。それは財政法上とやかくの問題ではありませんで、憲法の趣旨からいいましても、こういったものは、しかも事前に執行繰り延べを決意し、そうして計画まで立てることができるような問題について、なぜ補正予算を出さないか、この点について私は非常な疑問を持つわけであります。財政法上そのことは許されておるので繰り越し明許でかまわないのだ、これだけでは私は理屈が通らないのじゃないか、こう思うわけであります。戦時中の問題を引き出すわけではありませんけれども、何か戦時中の実行予算とか、あるいは緊急財政措置というようなものと同じようなやり方が行なわれておるように考えるわけであります。  そこで大蔵大臣にお伺いいたしますが、財政民主主義の原則に立って、憲法のたてまえからこの問題を考えるときには、当然これは、そういった国会の承認は事前に経たって差しつかえない問題である。それならば、財政法上許されておるからといって繰り越し明許のような形でもってこれを処理されないで、補正予算をなぜ出さないか、この問題についてお伺いいたしたいと思うわけであります。そこで、これは限度に触れますと、また大蔵大臣まごつくと困るのでありますが、歳入のときは一億程度ということになっておったのでありますが、三千億に近いものをやっていいのかどうかということでありまして、これにはおのずから限度額というものがあるのじゃないか、こういうふうに私は考えるのであります。無秩序に何でもかんでもどんどんと繰り延べをやっていく、あるいは公共事業の大部分を繰り延べをやったって文句は言えないというような状態で、はたして国民の利益というものが守られていくかどうかということが非常に疑問でありますので、この点についてひとつ大蔵大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  62. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のとおり、今回の公共事業の繰り延べ措置は、これは予算の減額でも修正でもございませんで、予算執行の時期的調整にすぎないものであって、その結果、当該予算の執行時期が翌年度になったとしても、これは財政法及びそれに基づく国会の議決に従って適法に繰り越されたものにすぎません。したがって、国会の議決を経た予算を大幅に変更するというような昔の実行予算というものでもございませんし、また、国会議決主義の例外となっておる緊急財政措置というようなものとも、これは性格が違っておりまして、すでに国会の議決を経た予算の執行の調整ということでございますので、国会議決主義に反するものではない、したがってこれは補正を要しないというふうに私どもは解釈して、また、現にそのようにいままでも運営してきている次第でございます。  それから、限度というお話でございましたが、確かにこれはそうむちゃなことをできるわけではございませんで、おのずから限度はあると思います。三千億と言われますが、これはひとり一般会計の公共事業費だけではございません。ほかの会計にわたった全体の数字でございますが、経済情勢によって事業を抑制するというような国のフィスカルポリシーをするという場合に、七%前後の繰り延べ措置というものは決してそうむちゃな繰り越しではない。いままで繰り越されたこともございますし、いろいろありますが、七%前後というものは大体適当なものではなかったかというふうに考えています。
  63. 阪上安太郎

    阪上委員 この問題については、なお残っておるようでありますが、これはあとでまた同僚から質問があろうと思います。  次に、地方交付税の今回の四百五十億円の減額の問題であります。これはおそらくわが国の国会始まって以来だと私は思うのでありますが、国が地方から四百五十億円借りるという問題であります。しかも、この四百五十億円を借りることによって、一方において地方交付税の総額が減るので、したがって預金部資金から二百五十億円を今度は逆に地方が借りる、そしてその借りる二百五十億円というものは使途が明確になっている。減債のためにこれを使うのだ、こういうことになっているのです。地方交付税の本来の趣旨からいって、これは大きな逸脱をやっているのじゃないかと私は思うのであります。この場合、四百五十億円から二百五十億円を引いた二百億円という措置が当然の措置であったかもしれないと私は思うのであります。自治省のほうでは、これを何か大蔵省から鬼の首でも取ったように考えられておるということでありますが、筋を間違えておるのじゃないかと私は思うのであります。しかもこの四百五十億円というものは、これは国が借金するのでありますから一種の国債です。大蔵大臣は、国債を今度は押えた、景気調整のために押えたと言うけれども、四百五十億円という実際のやはり借金をしておる。こういうことにも実はなるわけでありまして、何かそこで国民をごまかしたような感じもしないわけでもない。何でこんな怪しげなる方法を講じられたか、これについて自治大臣から御答弁願いたい。
  64. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 例の四百五十億円につきましては、前国会でもずいぶん論争がございました例の出世払いという表現の四百八十二億の部分であろうということでございましたが、ただいま阪上委員は国へ貸したのだろうとおっしゃいましたけれども、そういうつもりはございません。地方財政法にも、やはり地方財政も国の政策に反しないようにということをちゃんときめられてあるわけでございまして、ことしはことに経済的にきびしい国際環境でもありますし、国が抑制型の予算を組みます以上は、私どもとしてもやはり協力をしなければならぬ立場にあるわけでございまして、貸したということばでなくて自発的に減額したというふうにひとつおくみ取りをお願いいたします。
  65. 阪上安太郎

    阪上委員 しかし、この四百五十億円というものは、三カ年度にわたって百五十億円ずつ返すのでしょう。借りたものでなければ、なぜ返すのですか。これは返さないことになっておるのですか。その点、ちょっと明らかにしていただきたい。
  66. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 やはり将来にわたって百五十億円ずつ交付税に加えて算定することにきめております。
  67. 阪上安太郎

    阪上委員 時間がありませんから、こういった問題でしんみりやりたかったのでありますが…。  いま一つの二百五十億円というものは、これは起債の償還、繰り上げ償還に持っていく。交付税というものはそういった使途を明らかにして使うものですか。そうじゃないでしょう。これは一般財源でしょう。それをそういう特定財源に用いるというのはおかしいじゃありませんか。第一、利子の安いところのほうへ先に金を返して、不良債その他債務で困っておる地方団体が、なぜもっと多額の金を借りている方向へこういった金を回さないか。それをなぜそういうふうに持っていったか、こういうことなんであります。そういう点についてもう一度お答え願いたい。
  68. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 あの二百五十億円の繰り上げ償還は、御案内のとおりに地方公共団体も現債額が四兆円に近いわけでございます。一般会計債が一兆八千億、その中で災害債が三千億円もあるわけでして、これには御案内のとおりに非常に古いものもあるし、各団体がばらばらであって、非常に不均衡で、これをどう整理するかということは、いつもわれわれとしては地方財政健全化のために考えておったところでございます。ちょうどこういう機会でございましたので、災害債の古いものを一つの年度に区切ってそれを償還してもらって、そしてさらにそれを交付税に加えて、新しいいろんな行政需要がございますので、そういった方面に使っていくということは、決して地方の財政の健全化を破るものではないという考え方に立っております。
  69. 阪上安太郎

    阪上委員 私がいま伺っておるのは、その用途を指定しておるというところに問題がある、こういうことを言っているわけなんであります。それは地方交付税の趣旨に反し、こういうことをやると、地方自治体が自主的に財政を運営していくための大きな障害になる。この点を私は言っているわけであります。こんなことはあなたもわかっているはずなんです。わかっていてそういうことを言っている。しかも、こういうことをやりますと、何かいかにも地方財政というものが好転しているような印象を与えておる。私は今日の地方財政というものは決して好転してないと思う。あなたがいまくしくも言われたように、四兆円からの現債額があるじゃないか。地方財政が今日歳入面においてようやく均衡を保っているというのは、一方において仕事はやらない、やれない。そうして一方においての歳入の大部分を占めておるのは、いま言ったように、現債額が示しているように借金でもってやっている。借金でようやく首をつないでいる。これに対して巷間、ことにこれは大蔵大臣のほうから出ているのだろうと私は思うのだけれども、いかにも地方財政が好転している、好転していると言いふらしている。そうして国の財政硬直化の真因を確かめずして、硬直化に籍口して、国の財政に調子を合わしていかなければならぬとか、そういうような言い方をされるわけでありますが、私はこういうものの考え方で自治大臣をやっておってもらっては困るのじゃないかと思う。地方公共団体はあなたをたよりにしているのですよ。三千三百九十七の地方公共団体はあなたを非常にたよりにしている。こういうことでは私はいけないのではないかと思うわけであります。この点はひとつ大いに反省してもらいたいと思う。ことに財政硬直化であるとか、景気の調整だというような短期のものの考え方に立って、長期の公共投資を抑制してみたり、ことに地方財政というものは、総ワクにおいては、今度の財政計画において国の予算に匹敵するほどの規模は出ております。しかし、これは四十六の都道府県と、三千三百九十七でありますか、市町村の総額がそうなるというだけであって、一体この地方財政の中にフィスカルポリシーを導入するだけの余地がありますか。個々の団体をつかまえてみなさい。小さな財政規模の中で運営しておるのであります。そんなものに国と同じ調子によってフィスカルポリシーを導入するのだというような考え方を持っておるというそのこと自体が誤りじゃありませんか。この点についてもう一度自治大臣の御答弁を願いたい。
  70. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 地方財政は、国のフィスカルポリシーとは全然関係はございません。これはあくまで住民の福祉中心に行政需要をまかなうべきものであると考えております。
  71. 阪上安太郎

    阪上委員 時間がありませんので、この問題についていま一言聞いておきたいと思いますが、どうもこの方式が将来定着化するおそれがある。このことは私はたいへんな問題だと思う。そういうことについて、四十四年度以降こういうことはやりませんか。
  72. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 これはきわめて異例の措置でございまして、交付税制度の根底をくずすようなことは絶対にいたしません。
  73. 阪上安太郎

    阪上委員 次に、公共事業費の超過負担額についてお伺いいたします。  これはもう毎国会ごとに問題になっている問題でございます。これにつきまして、超過負担額の調査を実施し、三年計画でこれを解消をはかる、こういうことに実はなっております。そこで大蔵省がこれを実態調査をやっておられるようでありますが、実態調査の結果についてひとつ御報告願いたいと思います。
  74. 水田三喜男

    水田国務大臣 四十二年度に行なった実態調査内容について御報告いたします。  調査いたしましたものは、超過負担に関連して非常に問題があるとされております農業改良普及員の人件費等六項目の補助金の実態について調査いたしましたが、その結果、四百十一億円という数字が出てまいりました。この補助基礎額に対する超過負担率は二四%。その内容を見ますと、補助単価もしくは補助金の配分方法の改善または地方財政計画への計上によって措置することが適当なものというものが一二%、金額にして百九十六億円。それから一定の水準をこえるもので地方単独事業と考えられるものが一二%、金額で二百十五億円となっております。  そこで、いままでこの超過負担については地方団体の自発的なつけ増し、いわゆる単独事業によるものが多いとか、あるいは補助金の配分にあたって薄まきを行なうことによるもの、あるいは補助単価が実情に即しないものといろいろございますので、実態がわかりませんでしたが、この調査によって、大体補助金の配分方法の改善とか、あるいは補助単価をやはり直さなければいけないとか、あるいは地方財政計画に計上すればそれで措置ができるんじゃないかというようなものの金額が、四百十一億のうちで百九十六億円。それから、やはり最初から考えておりましたつけ増しと思われるもの、水準をこえて地方でかってに単独事業としてやっておるというようなもののほうが、金額としては多いという結果が出てまいりました。  それによりまして、昭和四十三年度予算編成におきましては、この実態調査に基づいて、解消の予算を三百二十億円、事業費ベースで三百二十億円計上してこれを解決することにいたしております。(「解決するの」と呼ぶ者あり)そうです。  それをもう少し詳しく申しますと、いま言った最初のほうの百九十六億、この金額は、これは措置する分というふうに私ども考えます。それから、地方のつけ増しの単独事業で処理することを要しない分というのが全部で二百六十七億になります。補助対象外の経費で地方財政計画に計上する分と合わせて、二百十五億円と五十二億円、二百六十七億円というものは、国の責任でこれは見ない、地方の責任においてこれを措置するというふうに考えまして、国の責任の分は本年度予算に計上してこれを解決するつもりでございます。  で、いま申しましたのは、この六項目は全体ではございませんで、全体の相当部分ではございますが、そのほかにこれに類したものがございますので、これも推定いたしまして、この金額以上の超過負担の改善策をとりました。全体として国費ベースで百五十四億円になると思います。  いままでなかなかこの実態がわかりませんでしたが、ようやくこういう実態がわかってまいりましたので、今後国の責任で措置する分と地方が責任を持って措置する分というものがわりあいに明確になってきたのではないかというふうに考えております。
  75. 井出一太郎

    ○井出委員長 阪上君に申し上げますが、本日は本会議が午後一時より開会される予定でありまするし、すでに持ち時間も経過しておりますから、簡単にお願いいたします。
  76. 阪上安太郎

    阪上委員 そこで、大蔵大臣が言われたように、今回の超過負担額の調査はサンプリング調査ですね。したがって、われわれの推定するところによると、まだ依然として一千億程度の超過負担額が残っておるということが言えると思います。そのうち今回予算で措置された分等を差し引きましても、かなりな部分はまだ残っております。なお、大蔵省がいつも言うことでありますが、一定の水準をこえるものであるとかいろいろな理屈をつけております。したがって、この実態調査の結果は、できるだけ早く集約してひとつ委員会に出してもらいたい。そして三年の解消計画というものをつけてひとつ出していただきたい、このように思うわけです。これは必ず三年間でやりますか。解消できますか。  それからいま一つ、既往の超過負担額、これは相当あると思うのであります。地方財政は好転したとかなんとかいわれながらも、こういったもので一方で取られてしまっておる、こういうことなんでありますが、これについていま訴訟が出ております。やろうといたしております。こういう行政訴訟を起こさすということはきわめて不手ぎわだと私は思うのであります。これらの点について、この超過負担額に対するところの国の責任、いままでの累積に対して一体どう措置するかということについて、これは赤澤自治大臣からひとつ御答弁願いたいと思います。
  77. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 お答えします。  超過負担の解消については 与野党こぞって長年努力をしてまいりまして、やっと実態調査ができて精査が終わったという段階で、その処理につきましては、ただいま大蔵大臣が述べたとおりでございます。それは六事業だけやりました。保健所の職員あるいは農業改良普及員の給与、また年金の事務費等六つを選んだわけでございます。  ただ、分析してみますと、超過負担と計算されました中には、ただいま大蔵大臣が申しましたように、それぞれ市町村が単独事業として負担しなければならぬものも確かにあった、半分ずつということにくしくもなったわけでございまして、これは年次的にちゃんと埋めていただく。それから、そのあとのことがたいへん気になるわけでして、ただいま阪上さんも一千億円残っておるとおっしゃいましたが、私どももそういうふうに判断をいたしております。これは一々どういうものが残っておるかということは、時間がかかるからここで申し上げませんけれども、たくさんあるわけでございまして、こういうことにつきましても、私どもは関係各省と協議をして、この精査はことしぜひやっていただいて、超過負担というものは完全に消してしまうという決意を自治省としては持っておるわけでございます。  この過去の分についての訴訟云々ということは、私、詳しいことは聞いておりませんけれども、まあここまで努力をしておるということはぜひお認めを願いたいと思います。
  78. 阪上安太郎

    阪上委員 行政訴訟が行なわれるなどという事態は、非常に私はこれは残念なことだと思っております。しかしながら、これについては、もう長い間放てきされてきた問題でありますので、おそらく訴訟を起こそうとする地方公共団体の人々はもうがまんができなくなってやり出したのだ、私はこういうように思うわけであります。国保関係等を考えてみましても、あの事務費などにつきましては全く不合理だ。全額国庫負担のたてまえをとっておりながら、精算払いもしないでもって、そしていままで負担をかぶせておる。そして一方においては国保の料金を値上げしろと、こう厚生省は指導する。自治省のほうでは、いやこれは委任事務であるから、そんなものは補てんする必要はないのだ、抜本的な健康保険の改正ができるその段階においてこれは結着をつけようじゃないか、こういうように指導をしておる。この問題は出先のほうでは非常に困っておるのですよ。こういった問題について、過去のことはまあまあしかたがないからというようなことで泣き寝入りさすということは、非常に同情心がないだろうと私は思うわけであります。この問題については、いずれまた分科会等においてもさらに質問をいたしたい、かように思います。  そこで、委員長にお願いいたしたいのでありますが、この超過負担額の実態の調査、この調書をひとつ全委員にお配り願いたい、そういうふうにお願いいたします。  それから最後に一つ、ほかにも問題がありますが、お伺いいたしたいと思いますが、一つは、自動車取得税の都道府県と市町村の配分は一体どうなるのか、これをひとつ簡単に伺っておきたい。
  79. 井出一太郎

    ○井出委員長 赤澤自治大臣。同時にただいま要求の資料のことにもお触れください。
  80. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 資料は提出いたします。  自動車取得税の配分は、徴税費を引きましたあと、都道府県三割、市町村七割、それから指定市は、やはりその指定府県の三割の中から必要額を配分する、かように考えております。
  81. 阪上安太郎

    阪上委員 その根拠をひとつ示してください。
  82. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 根拠は、市町村のほうは、いままで全然目的税の配分にあずかっておりません。それでも道府県のほうは御案内のとおりに配分にもあずかっておりますので、いろいろなそういう数字を勘案いたしましたし、また今度の道路五カ年計画の新しいものは六兆六千億円、この地方分の持ち出しが二兆一千億円もあります。それから、四次の計画に比べまして、地方の持ち出しが六千七百億円にもなる、その中をいろいろ分析いたしまして、やはり町村に多くの負担がかかるということをいろいろ勘案いたしまして、こういう配分をいたしたわけでございます。
  83. 阪上安太郎

    阪上委員 まだ本ぎまりのようでないと私は思うのでありますが、もともとこれは地方の市町村道の道路財源というものが非常に不足しておる。いままでは、通過道路その他について、国道その他について非常に投資が行なわれた。しかし、市町村道をあのままにしておくわけにはいかない。諸外国が非常にこれらの道路がよくできておるわけでありますけれども、その大前提として、数百年にわたって、地方道というものは、市町村道というものが完備されておる。完備された上に立って高速道路ができ、それからバイパスができていくというかっこうをとっておるのでありまして、日本はそれとは逆なんであります。したがいまして、もっともっと市町村道に力を入れなきゃいけないという認識のもとに、今回この措置がとられたものと私は思うのであります。したがって、われわれとしては、本来ならば、これは道路譲与税等において分配すべきであると考えるのでありますけれども、いろいろな物価値上がり等の関係もあり、いろいろ配慮されたことと私は思うのであります。しかしながら、この程度の財源で市町村道の整備をやっていこう。わずかに八%しか舗装できていないところの市町村道に対し、この程度のものでは十二分じゃないと私は思う。そういうやさきに、都道府県に対してこれを分配する必要は私はないと思う。だから、徴税費の三%か何かを取ったあとは、全額配賦税方式等によって当該市町村にこれは分配してやるべきじゃないか、私はこういうふうに考える。それをまたあやしげな方式でもって、残った部分の七対三とかなんとかいうのが出てきたというのは、私はおかしいと思う。今日のこういう問題を論じていくと、都道府県と市町村の財源配分の問題が出てまいりますから、いろいろとむずかしい問題があると思いますけれども、この点は、ひとつ自治省においてももう一ぺんその考慮のし直しをしてもらいたい、このように考えるわけであります。  それから最後に、一つお伺いしておきたいのは、最近問題になっております。また長い間の懸案でありました地方事務官の身分の移管の問題についてであります。これは私はもうくどくどと理屈は言いません。附則にちゃんと入れられているという程度のものであります。暫定措置であったということは、これは間違いないのであります。それが同じ役所につとめながらも、給料は全然別の方式によってそこに甲乙ができてきておる。それから、知事の指揮監督を受けながらも、実際問題としては裏街道から本省に指令を仰ぐ、こういうようなきわめて不明朗な行政が行なわれておるということなのであります。これについて最近新聞等が報じておるところによると、やれ中曽根運輸大臣はこれに対して反対をしておる、中曽根さんは、初めは、やはりそういう機能というものはこれはやはり地方に移すべきである、この間の大阪タクシーの黒い霧事件、そういったものと関連しても、これは移すべきである、こういうふうに初めのうちは言っておられたが、最近になっていよいよ分身を移管しようということになったら、肝心かなめのこの問題については、今度は反対の態度を示しておる。そればかりでなく、何かダンプカーの運転手の数をふやしてみたり、いろいろなことをやっておられる。厚生省は一番多くの地方事務官を持っておられるのでありますが、これについても何か賛成でないような御意見もあるように私は思うのであります。自治大臣は、ここの新聞にも出ておりますが、むくれる赤澤さん、こういうことになっておりますが、こういった情勢の中で非常に赤澤さんはむくれている、こういうことになっておるわけなんであります。この点につきまして、いま申し上げた各大臣から、この地方事務官の身分移管について、一体やるのかやらないのか、この点をひとつはっきりしてもらいたい、こういうふうに思うわけであります。
  84. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 総理はたいへん行政改革に熱意を持っておられまして、御案内のとおりに、いきなり一省庁一局削減などという御提案がありまして、各省ならったわけでございます。これはただ省庁が一局減らせばそれでいいというだけの問題でなくて、それを口火として、中央地方を問わず一大行政改革をやろうという御決意のように私も感じておりますし、また全閣僚とも、たしか六月の末日までにそれぞれ改革案を提出する運びになっております。  自治省といたしましては、一番関係がありますというか、中心は、各都道府県にあります社会保険課が厚生省関係、それから労働関係が職安、失業保険課、それからまた、庁内にありませんけれども、例の陸運局でございます。対象はこれが中心になるわけですけれども、やはり行政改革本部もございますし、総理もそういったものについて再検討をやれという意味も含めてのこの間の一省庁一局削減というおことばであったと感じておりますので、自治省は自治省なりに思い切った提案をいたしたい、かように考えております。その中にはもちろん地方事務官制度を大幅に廃止するという方向を選びたいと考えております。
  85. 阪上安太郎

    阪上委員 運輸大臣、それから厚生大臣から御答弁を得たいところでありますが、私はあまりそういう行き方は好きじゃありません。この際私は割愛いたしますが、ただ、総理に、もうここまで来たのでありますから、こんなものはおやりになったらどうですか。この点をひとつはっきり御答弁を願いたいと思う。
  86. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 行政機構の改革につきましては、私、実は臨時調査会の答申等をもいただいておりますし、積極的にこの問題と取り組んでおります。その場合に一番大事なことは、役人を減らすとか、あるいは中央の命令が十分徹底するとか、あるいは地方住民がどういうようになるとか、地方自治体の長がこれを指揮監督するとか、こういうような問題でなくて、国民にほんとうにサービスするのはどういうことがいいのか、こういう観点に立って物事を考えたらどうだろうか、これで初めて結論が出るのだろう、私はかように思います。したがいまして、ただいまの問題になっております厚生省関係のもの、あるいは運輸省関係のものも、ただ地方事務官がなくなって知事の指揮下に入ったとかいうようなことでなしに、それがほんとうに国民のためになるならそのような方法をとりますが、とにかく国民の利益になるような、そういう方向でこの問題と取り組んでいきたいと思います。
  87. 阪上安太郎

    阪上委員 ちょっといまの御答弁では私は満足できないのです。これはもう長い間の懸案でありまして、もうほとんどの審議会その他からも、こうすべきである、それからこの附則にこれを入れたときの事情からいいましても、あくまでもこれは暫定措置なんでありまして、私は、もうこういうふうにしなければ住民のためのサービスにならぬと思います。これはもう一度ひとつ、そういうふうに、事務官をやめさすとか移譲するとかという問題じゃないというような考え方でなくして、これはやはりぜひひとつおやり願いたい、こういうふうに思うのであります。
  88. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 あるいは答えは必要でないかわかりませんが、ただいまの御意見は、御意見として伺っておきます。
  89. 井出一太郎

    ○井出委員長 これにて阪上君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  90. 井出一太郎

    ○井出委員長 この際、公聴会の件について御報告いたします。  公聴会開会に関する諸般の手続につきましては、さきに委員長に御一任を願っておりましたが、理事と協議の結果、公聴会は、来たる三月六日水曜日午前十時より開会することといたします。  午後の会議は、本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十一分休憩      ————◇—————    午後一時二十三分開議
  91. 井出一太郎

    ○井出委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  総括質疑を続行いたします。竹本孫一君。
  92. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、国政全般について御質問をいたしたいと思います。  まず最初に、先般倉石発言に問題が起こりまして、これがきっかけになりまして国会が非常に長期間審議がストップいたしましたことは、われわれとしてまことに遺憾しごくに存じます。また、国民各位に対しましてもまことに申しわけのない仕儀であると存じております。このおくれを取り返すためには、与党、野党を問わず前向きに真剣に協力して、国民の期待にこたえなければならぬと思うのであります。(拍手)  ところで、民社党といたしまして、先回の倉石発言を機会とする審議のストップの過程において、非常にきびしい態度をとってまいりました。これに対しまして一部に誤解もあるようでございますので、この際一言触れておきたいと思うのでございますが、先般NHKのテレビの座談会におきまして、唐島、長谷部両政治評論家が議論をいたしておりました。一部には、民社党までがどうしてああいう態度をとったのであろうかという疑問が出ておりました。私は、これに対しまして、この際、民社党までがああした態度をとらざるを得なかった過程、経過について一言触れておきたいと思うのであります。  問題は、結論的に申し上げますけれども国会審議以前の問題、国会審議以上の問題、あるいは多数決で表決すべき以上の重大な問題というものが、政治の過程においてあるのではないかということであります。私どもは、民社党といたしまして、もちろん議会民主主義を信奉いたしております。どこまでも議会政治のワクの中ですべての論議を尽くしたいと思います。しかしながら、最近における政府政治姿勢の中に、私どもはまことに理解しがたい、ふんまんを覚える遺憾な点が多いのであります。それはいわゆる権力姿勢といわれております。あるいは右寄りの姿勢ともいわれております。しかし、端的に申しますと、多数を握っておればあとは問答無用である、権力の座にすわっておれば、あとは国民あるいは野党はついてくればいいんだといったかのごとき印象を与える政治姿勢が、数々われわれには感ぜられたのであります。民主主義は対話の政治でなければなりません。アメリカのハンフリーも言っております。お互いに立場の違うことを認め合うのが民主主義だとも言っております。まことにそのとおりでございまして、どうかひとつ今日以後の日本の政治の中では、総理をはじめ政府与党におきましても、対話の姿勢政治の論議を進めていただきたい。対話がなければ協力の余地はありません。民社党といえども、対話のない議会政治というものは考えることができないのであります。私どもは、そうした意味において、一々こまかい点は触れませんけれども、最近における政府のあり方には、全く対話を拒否したような態度がとられておるということを非常に遺憾に思うわけであります。たとえば非核宣言の問題にいたしましても、私どもの西村委員長が本会議において質問をいたしました。これに対しまして総理は直ちに、そういうものは必要がない、全くにべもない御返事でございました。さらに本委員会における質疑応答の過程におきましては、総理国会の意思を尊重して考えるという御発言がございました。直ちに拒否し、反対する態度と、国会の意思を尊重して考えるという態度の中には、明らかに矛盾があります。そういう意味で相手が、野党がそれぞれまじめに考え、真剣にお訴えをして一つの案を出していこうとするその案を、十分検討し、論議し、分析をして見ないままに、それはだめだ、それは反対だという結論を早く出されたのでは、全く論議の余地はありません。私どもは、どうかひとつ総理に対話の姿勢政治は続けていただきたい。権力姿勢、右寄りの姿勢といわれるような対話なき姿勢は、今日以後一切おやめ願いたい。そうして対話の政治の中で健全なる日本の民主主義を伸ばしてまいりたいと思います。多数決、これがあれば万能であるというような考え方は間違いでございまして、私どもには、審議以上に、民主的な基本的な人権を尊重するとかあるいは平和を守るとかいう、多数決にかからない、それ以上の重要な問題がある。われわれもその使命を感じたわけでございまして、この点についての総理の御所見を伺いたいと思います。
  93. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 竹本君にお答えいたしますが、十七日近くのこの空白、国民不在の国会であったこと、私はまことに残念に思います。ただいまのような御議論をなさると、私も言わなくてもいいことを実は言わなければならないように思います。私は、審議以前の問題だから国会審議に入らなかったのだ、こう言われますが、国会こそそういう問題を究明する場所ではないでしょうか。私は、国会を開かないでただいまのようなお話をなさることは、これは逆だと思います。ことにただいま主権者は国民であります。国民に実情を話しないで何の国会ぞやと私は言いたいのです。だから、ただいま言われるような御主張は、国会を通じて初めてそれが明確になるのじゃないか。いま対話を要求されました。私は、与野党が対話の形において話を進めること、これは賛成であります。しかし、絶えず主権者国民の前で対話を続けるということが望ましいのであります。それこそ、公式の場といえば国会でございます。皆さん方はしばしば、一つの問題が起これば国会を開けと要求されるじゃありませんか。そういう皆さん方が、国会を開かないで、そうして国会外において、あるいは討論会を開かれる。しかしながら、国民としては何がゆえにただいま国会が空白しているのかわからない。これは国民不在の政治だ、かように私は思います。私は、ただいま言われる、自民党は権力主義だ、あるいは右寄りの思想だから国会を開かないのだ、これは一体何ということですか。私は、この国民不在の国会、かような状態を生じたのが自民党だけの責任だ、かように言われることに非常なふんまんを持つのです。さようにお考えなら、権力主義であり、右寄りの姿勢ならば、なぜ国会でこれを究明なさらないのですか。それが皆さん方のお仕事じゃありませんか。私は、まことに残念に思うのです。そして今日の多数、その多数は、明日はたしてこの多数を維持できるのか、これはまた別の問題であります。皆さん方の主張が正しければ、国民は、主権者として、審判者として、自民党を支援するようなことはないでしょう。自民党は多数、その上にあぐらをかいておる、こういうことであれば、国民は必ず批判する。私は、国会が三度手続をきめたのは、そういう意味だと思う。幾ら多数がこれに勝ちましても、少数必ずしもその場だけの勝負ではないのです。最後の審判は国民がするんだ、このことを考えないと、私はできないように思う。私は、いずれにいたしましても、いまこの機会に、ただいま与野党の責任を云々するつもりはございません。ただ、私は、国会こそ国民に訴える場所だ、かように考えますので、ただいまのようなお話でお尋ねを受けると、私も言わざるを得なくなる。私は、そういう意味でただいま発言をしております。もうすでにこの問題は、ただいま審議に入っておる状況であります。私どもは、社会党の皆さんのお尋ねに答えまして、与野党ともに国民に対して空白であったことをおわびをしようじゃないか、こういうことを私は申し上げております。また今日も、今後とも、ただいま申し上げるように、国会審議を通じて主権者の審判を受けるということ、そういう態度でありたいと思います。よろしくお願いします。
  94. 竹本孫一

    ○竹本委員 最後は国民の審判にゆだねることにいたしまして、この論議を特に続けようとは思いませんが、私は次の問題に入りますけれども国民不在ということを総理は御指摘になりました。審議をストップすることは、確かにそうしたきらいはございます。われわれは、その点については先ほど申しましたように、非常に遺憾に思っております。しかし、私がここで次に申し上げたいことは、国民不在と言われるけれども、実はあれは憲法不在であったのではないかということであります。われわれは、今日の憲法を離れて日本の国民の生活、国民政治的な路線を考えることはできません。その憲法に挑戦されるかのごとき御発言がありましたので、問題が非常に複雑になったものと思います。  そこで、憲法の問題について一言だけお尋ねをいたしたいと思うのであります。日本の憲法につきましては、沿革上もいろいろな議論が確かにございます。さらに法律専門的に論じますならば、この憲法にもいろいろと問題があるでありましょう。さらにまた政治的に考えてみますならば、あるいは民族的な立場、要求というものがどの程度考えられておるか、あるいはわれわれの陣営から申しますならば、社会主義的な要素がどこまで織り込まれておるか、確かにいろいろな議論があります。しかし、私がここで総理にお尋ねしたいことは、憲法は、いろいろと議論がございますけれども、今日やや国民大衆の中に定着をし始めておるのではないかということであります。一体、憲法を改正しなければならぬというような御議論が先日の国会討論にもありましたけれども、この憲法は国民の中にそれなりに定着をしておると政府はお考えになるのか、あるいはまだ定着をしていないとお考えになるのか、この点が問題であります。  次に、第二にお伺いしたいことは、この憲法ではわれわれの考えておる日本の政治路線から考えてまかなえないものがあるのか、まかない切れないものがあるのかどうかということであります。もちろん、各党それぞれの主張があり、綱領があります。われわれもわれわれの主張、綱領、政策を持っております。しかし、われわれが考えることは、おおむねこの憲法でまかなうことができると私は考えておる。おそらく各党ともに、右の向き、左の向きありましても、大体この憲法で日本の当面の政治課題は十分に消化をしていくことができるのではないか、かように私は思うのであります。その意味において、憲法は定着しつつある。第二の問題として、この憲法でわれわれが持つ政治課題は大体において解決ができるというお考えであるのかどうか。いま憲法改正を論じましても、昨日来御議論もありましたように、三分の二の多数で衆議院、また三分の二で参議院、さらに国民投票、いろいろな経過を考えると、簡単に憲法改正なんというものは、法律技術的に見ても行なえるものではありません。そうしてみますと、国民にすでに定着をしておるじゃないか。大体この憲法で、政治の課題も、外交の課題も、経済の課題も、解決し得るではないか。その憲法を、何を好んで改憲論議をして、改正しなければならぬ、本来改正をする意図であるというようなことを言って、いわば平地に波乱を巻き起こすのであるか。およそこのくらい愚なる政治はない。何を好んで、何をあせって、何をあわてて憲法論議をするのであるか、私には理解できません。その意味において総理に、第一点、憲法は国民に定着しつつあるとお考えであるかどうか。第二点、今日の政治課題で、この憲法では消化できないものがありとお考えであるか。ありとするならば、どの点がそうであるか、伺いたいと思います。
  95. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現在の憲法、これが国民の間に定着しておるかどうか、これはしばしば言われますことは、第九条の平和主義、平和憲法、この点は、確かに私は国民の血となり肉となっておる、かように考えております。したがいまして、いわゆる改憲論者といえども、九条を改正するというような意見は、私は聞かない。私は、そういう意味で、この点が国民の皆さん、国民の骨肉となっておる、こういうことをひとつ御理解いただきたいと思います。  また、第二の問題としてのお尋ねでありますが、ただいま憲法自身は、九十六条、やはりこの改正の手続をちゃんときめております。したがいまして、私は改正の手続がある限りにおいて、また国民各人を現行憲法に全部縛りつけるというような、さようなものでないとは私は思います。だから、したがいまして、いわゆる個人的な意見の発表あるいは思想、そういうことまで厳禁しているとは、私は思いません。同時に、改憲論がただいま具体化していない、私はかように思っております。したがいまして、ただいま具体的に改憲論が提案されておれば何をか申しませんが、さようなものはない、かように御理解をいただきたい。
  96. 竹本孫一

    ○竹本委員 私がお尋ねした点は、たとえば自民党なら自民党の立場において、現在の憲法でこの課題を解決するのには不十分であり、あるいは逆行しておるから困るという問題があるならば、憲法改正論議を巻き起こされるのも一つの理由があってわかる。しかし、特にこの問題を解決するという問題があって、それにはいまの憲法がじゃまになるという問題がありますかということを聞いておるのです。
  97. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現在さような危険は、自民党の中にもございません。
  98. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで総理にお伺いをいたしたいのです。憲法はおおむね定着をしておる。そうして自民党のいま考えておられる政策も、大体この憲法で消化、こなしていけると総理がいまおっしゃった。それならば、何を好んで平地に波乱を巻き起こすような改憲論をところどころで爆発させたり、行なったりされるのであるか。しばらく憲法論議よりも、それこそ平和の問題、経済の問題にでも真剣に取り組むことにして、必要のない、わざわざ波乱を巻き起こすことは、当分自民党さんでもお慎しみになったほうがいいのじゃないかと思いますが、政治家としていかがでございますか。
  99. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいまの倉石君の発言というもの、これがこの種の場において堂々と論議されれば、非常に明確になるだろうと思います。私自身が倉石ではございませんから、これは弁護的な立場であると、かような印象を持たれるかわかりません。しかし、倉石君は、具体的に改憲論を提案したようなことはございません。この点はやや行き過ぎで、彼がいろいろな意見を申したからといって、これが改憲論の提案でないこと、これだけははっきりしておるだろう、どうか御了承いただきます。
  100. 竹本孫一

    ○竹本委員 総理は誤解しておられます。私は、倉石さんが改憲論を言ったとか言わなかったとか、そんなことは全然問題にしていません。ただ、自民党の綱領にも書いてあるということから、福田さんもNHKの討論会で改憲考えておるんだと言われておるけれども、何を好んでいますぐ必要のない問題にそんなに取り組まれるのであるか。そういうことはむしろお慎みを願って、もう少しそのほかの基本的な当面の課題、社会開発の課題に取り組まれたほうがいいんじゃないかと思いますが、その点を聞いているのです。倉石さんの問題じゃありません。
  101. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、倉石君のことかと思ったのですが、倉石ではない。けさ、午前中に私、私の考え方を申し上げました。私は総理として、また総裁として、ただいまの時点ではさようなものを考えておらないと、はっきり、明確に申し上げました。
  102. 竹本孫一

    ○竹本委員 考えておられないという総理の御答弁でございますから、どうかひとつそういうところに無用な波乱を巻き起こさないように願いたいということであります。  次へ進みます。  一つはプエブロ情報艦の問題でございます。これは私どもの西村委員長の質問に答えまして、政府のほうでは、そういう民社党の考え方では甘いのではないかという御議論がございましたから触れるわけでございますけれども、御承知のように、プエブロ情報艦が北朝鮮沖合いで拿捕された。そのときは救援方を、私どもの聞いている情報では、横須賀の基地司令官に出した。ところが、横須賀の基地司令部には救援におもむく飛行機がない。そこで、在日空軍に問題を依頼した。ところが、在日空軍は、ある事情があって空軍は使えないということになって、ついに日本本土からは、自国の軍艦が拿捕されるんだけれども、どうすることもできなかったというのであります。そのある事情があってというのが何の意味であるか、私はよくわかりません。政府は、その後この問題につきましてどういう情報を入れておられるか、現在どういうお考えに立っておられるのか。私どもは、アメリカが自分の国の情報艦がつかまるときに、それを救援と申しますか、救出と申しますか、することができなかったということは、日本国民にとって、あるいはアメリカにわが国の安全を最終的に依頼しておるといった今日の姿勢の中で、非常な不安を与えておると思うのです。自分の国の情報艦さえ、第七艦隊もおり、在日空軍もおっても、救うことができない。一体日本の問題があったときに、アメリカはどういう援助、協力をしてくれるのか、またその能力があるのかといった問題がありますので、その間の情報について、どういう情報を入手しておられるか、政府の判断を願いたいと思います。
  103. 三木武夫

    ○三木国務大臣 在日米空軍に対して救援をプエブロ号から依頼したけれども、ある事情で行かなかったという、そういうことは、われわれは聞いてない。プエブロ号は、御承知のように武装してないわけでありますから、したがって戦闘行為をするというような装備はないわけでございます。小さな機関銃を二丁くらい持っておるということでありますから、したがって、そういう場合に戦闘行為を行なって、そして自分を守るというような装備ではないと承知いたしております。いま御承知のように、板門店で拿捕された乗り組み員の釈放に対するアメリカ政府と北鮮との間の話し合いが、行なわれております。これは秘密会談でありまして、詳細なことはよくわかりませんが、まだ解決に到達するような一つの解決案は、出ていない様子であります。しかし、この種の問題は、外交機関を通じて、そういうふうな話し合いによって解決をすることが好ましいし、また北鮮側の言い分もいろいろありましょうが、とにかく乗り組み員が一日も早く釈放されて、いろいろな問題はその後においていろいろ話し合われることが適当である。乗り組み員の一日も早い釈放を、われわれは希望するものでございます。
  104. 竹本孫一

    ○竹本委員 外務大臣の御答弁を聞いておりますと、戦闘行為をやることのできない情報艦であるから、まあ心配はなかったんだ、したがって、アメリカは助ける意思と能力はあるけれども、そんな必要がないと思っておったのだというような御解釈のようでありますが、この点につきましても議論があると思いますけれども、特にこの情報艦が、日本の政府においては、公海の中だけ歩いておるということも一つの前提になっている。だから、そういう問題は起こらないという御解釈のようでございますが、それに関連をしてひとつお伺いをいたしたい。  日本の政府の、どういう形で出されたかよく存じませんけれども、少なくとも新聞紙の伝えるところによれば、米国の情報艦プエブロは公海上で北朝鮮側に捕獲されたという米国の主張を全面的に認めたことを意味するものだという考え方で、官房長官がお話しになったというか、発表されたという。私もゴールドバーグ・アメリカ大使の国連における演説の速記録を読んでみました。この話を読めば、いかにもこの情報艦は北朝鮮の領域内に入ったことはないように説明されておる。しかし、私でも、その速記録を読んだときに、これが全部であるかどうかということについては慎重に、あるいは反対の意見はないのか、反対の情報はないのか、確かめてみたいと思いました。特に日本政府が、いまこの国会でもしばしば論議されますように、アメリカの言うことなら何でも聞くんだというような印象を与えておるということが、いろいろ議論になっておる。そういう際に、アメリカの情報艦が越えてはならない一線を越えて他国の領域内に入ったか入らなかったかというようなことは、私は軽々に論議すべき問題ではないと思う。もし新聞記者から聞かれた場合でも、それはノーコメントでいくか、あるいは少なくとも調査した上で、検討を加えた上で政府意見を出すということにしたい、こう言っておけばいいと思うのです。それをわざわざ、アメリカのほうの船は公海以外には出ておらない、他国の領域内に入っていない。アメリカの情報あるいは宣伝、それと同じことを、まともに日本が一月三十日にさっさと声明される。だれかが申しました。これはあまりあわてた先物買いじゃないかと言った人がおりますけれども、とにかくその態度は、日本の政府として非常に遺憾である。非常に慎重を欠いておる。やはり日本の民族の自主性の立場からいっても、海の線を越えて入ったか入らなかったかは、調べなければなかなかわからぬ問題でございますので、軽々に結論を出すということは誤りであると思いますが、いかがでございますか。
  105. 三木武夫

    ○三木国務大臣 プエブロ事件に対する公式の政府の見解を表明したのは、大平君の質問に対する総理大臣の答弁の形においてなされたのでございます。そのときに総理答弁は——日本は海洋国家として、公海における自由というものに対しては、どこの国よりも関心を持っておるわけであります。そのことが頭にあった。したがって、もしアメリカの言うがごとく、公海においてこれが拿捕されたという事実があったならば、遺憾である、こういう条件をつけて政府の見解を述べたので、初めから、アメリカの言うとおりである、けしからぬ、こういう発言を総理はしていないのであります。これが政府の公式の発言であるとお受け取りを願いたいのでございます。
  106. 竹本孫一

    ○竹本委員 外務大臣の御答弁、弁護士的にはなかなか要領を得た答弁かもしれませんけれども政治的に考えれば、もし公海であるならばとか、そんな条件をつけなければならぬほど確実なる証拠がなければ、なぜそれを言いますか。言わなければならない理由がどこにあったか、それを聞きたい。
  107. 三木武夫

    ○三木国務大臣 確かに、そういう条件をつけなくて発言をできるまで待つというお考えも、それは否定はいたしません。しかし日本の場合は、海洋国でありますから、公海における自由というものに対しては、これはもう国の致命的な関心事でありますので、これは政府としても、公海でそういう事件が起こったならば遺憾である、こういう発言をすることが、格別私は早まった発言だとは思いません。しかし、そういう前提条件をつけずに発言できるときまで待ったほうがよかったという御意見については、御意見として承っておきます。
  108. 竹本孫一

    ○竹本委員 御意見だけじゃない。もし公海であったならばというなら、もし公海でなかったならばということもあわせて述べてあるなら、これは公平な態度だし、誤解も受けないと思うのです。とにかく、ソ連の大使がキューバの問題のときに、かってなことを言ってあとで取り消さなければならないで大醜態を演じました。それと同じように、日本はどうもアメリカの言うことなら何でも——新聞社はわざわざ断わっているのです。アメリカ政府のほうから早く日本政府の態度をもっとはっきり示してほしいと言われたのでやったと書いてある。これは新聞の間違いかもしれませんけれども……。私は深く追及しませんけれども、しかし、少なくとも今度の態度は、外務大臣が巧みに説明されておりますけれども、軽率であったということだけは深く反省をしてもらいたい。それが日本の国民感情からいって、あるいは世界における日本の立場の上においてあまりプラスにはならない、むしろマイナスであるということだけははっきり申し上げておきたいと思います。  次に、これは倉石発言に関係がございますが、日本海における安全操業の問題、本委員会においても、総理をはじめ、安全操業については大いに努力をするということを言われたのであります。ところが、私が調べてみますと、日本海における安全操業のためにその後とられた措置というのは、大体必要なところにそれぞれ海上保安庁が巡視艇を一隻ずつ合計三隻配置しただけ、さらに漁民に対しては日の丸の旗をよく見えるように掲げろという御注意があっただけ、それ以外に日本海における安全操業のためには特に強い手が打たれたとは聞いておりません。一体そんなことでいいのかどうか、ひとつ関係大臣から御答弁を願いたい。
  109. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは各関係諸国——アメリカ、ソ連、韓国等にも、政府を通じて、日本の漁船の安全操業に対しては、十分な協力、配慮を要請をいたしたのでございます。
  110. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その後の事態を見ておりますと、その後は特異な事態は特に発生しておりません。しかしながら、あまり過剰の警備力と申しますか、巡視力と申しますか、警戒力を出すこともまたどうかという気もいたしまして、いつでも即時対応できる情勢になっておるのが現状でございます。
  111. 竹本孫一

    ○竹本委員 運輸大臣は過剰の警備力もかえって逆効果になりはしないかという御心配のようだけれども、実は過小ではないのですか。あるいはないのではないのですか。私の調べておるところによれば、海上保安庁は、今日持っておる飛行機については、長距離、千マイル以上出て何時間か捜査をする、あるいは情報をとって帰ってこれる、そういう気のきいた近代的な機動力のあるYS11はたった一機しかない。それもことしの十二月にできるのです。そうじやありませんか。
  112. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 航空機はそのとおりであります。
  113. 竹本孫一

    ○竹本委員 十二月になって千マイル飛べる飛行機が一機入ります、そうすれば漁船も見守ってあげることができます。これで一体予算委員会に対する総理答弁で、安全操業にはだいじょうぶということになりますか、総理にお伺いしたい。
  114. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、日本海の今回のプエブロ号拿捕をめぐっての一時騒然たるものはようやく——まだ全部解決したとは申しませんが、順次平静になった。私はたいへん慎重な態度が好ましい結果をもたらしたのだ、かように思って喜んでおります。しかし、ただいまいろいろ具体的にお尋ねがございます。私ども現在の力におきまして最善を尽くすという態度はとっておりますが、ときにあるいは時期を失するようなことがある、そういうこともございますから、この上とも注意をするように一そう努力いたします。
  115. 竹本孫一

    ○竹本委員 YS11はことしの十二月に一機だけで大蔵大臣、御承知のように、ことしの予算は削られました、飛行艇は目下PXについて検討中であります、こういうような姿勢で、漁民に安心して日本海に出ていきなさいと政府が自信を持って言えるかどうか、私は非常に問題だと思いますので、この点はひとつまじめに検討していただくように要望をいたしておきたいと思います。  さらにもう一つ、トピックスの問題になりますが、金嬉老ライフル事件の問題であります。  今回の金ライフル事件につきましては、これもまことに史上まれに見る重大事件でございました。私は、警察が人命尊重第一主義の立場に立って、非常な御苦心をなさった点については、むしろ心から敬意を表したいと思います。  しかし、これに関連して二、三伺いたい。国民もおそらくその点を心配しておると思いますので伺うわけでございますが、第一点は、ダイナマイトやライフル銃といったようなものがそう簡単に手に入るように取り扱いができておるのかどうか。一体取り締まり規定はどうなっておるのか。どこの責任、だれの責任考えられておるのかということが一点。  第二番目は、今回の人質事件というものはまことに重大な問題でございましたが、この人質事件からいかなる教訓を学び取って今後の警備、警戒をされるつもりであるか。  第三点は、この問題にも関連いたしますが、一般的に今後の韓国人との友好親善についてはいかなるお考えであるか。  この三点を伺いたい。
  116. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 お空目えいたします。  先般の静岡県下の事件は、まれに見る特異なケースでございまして、これをどう扱うかということにつきましては、ずいぶん鳩首協議をいたしました。射殺することはわけはありませんけれども、また、犯人を殺してしまったということでは、それ相当な問題も起こるわけでもございますし、隠忍自重いたしまして、そして円満に逮捕できて、ここに人質になっておる方々に被害が及ばなかったら一番いいわけでございまして、いろいろ考えて手配した結果、ああいう措置になったわけでございます。  しかし、それに伴って、将来ああいうことをまねをする者があるじゃないかという御心配があっちこっちから出ております。ということは、人質を取ってやればああいう芸当ができるということを考える者がありますと、次々またああいう種類の犯罪が生まれてまいることを実は憂慮はいたしております。しかし、あのときに、警察が振り回された形になりましたけれども、しかし、いずれに理があるかということは、良識ある国民の方々はよく御判断いただけたと思いまするので、この人質問題が将来の悪例になるということは私は考えておりません。  それから、ライフル銃の扱いでございますが、これは一般のやはり猟銃でございまして、五十五万丁も猟銃がありますうちライフル銃が三万もある。その三万のライフル銃は、分析して言いますと、クマだのシカだの、こういうものを撃つという狩猟に使うものもありますが、これは意外に少なくて、それからオリンピックの競技にも射撃があるわけでして、こういう標的にライフルを撃ち込むということを趣味としておる方々もずいぶんあるわけでございまして、こういう方々は事故を起こすような人は少ないわけでございまするけれども、先般の事故にかんがみまして、すぐ緊急手配をいたしまして、近く全国の三万丁のライフル銃を調査いたしまして、そして眠り銃その他そういうものはしかるべき処分をする。そして、こういう事故が起こらないように十分事後措置を考、にていきたいというふうに考え、すぐ処置をとっております。  ダイナマイトは、これは御案内のとおりに、火薬にいたしましても、所管は通産のほうになっておりまして、ただ、保管庫を調べました場合に、案外事故はないわけです。ところが、使う現場、ここで案外こういう危険なものを手軽く扱う癖があるものですから、使っております事業所となると、全国で二万数千件ございますが、そういうところも今回全部手配いたしまして、こういうことの保管、取り扱いにつきましては、さらに法規を厳重にいたしまして、また指導もしなければならぬ、かように考えております。
  117. 三木武夫

    ○三木国務大臣 人種的偏見について御言及をされましたが、かつて日本人もそういう経験を持っておる民族であります。その当時いかにわれわれが不愉快な思いをしたかということは、いまだ記憶に新たなるところであります。したがって、その行為自体に対しては、いろいろこれは取り締まる場合もありましょうけれども、人種としての偏見というものは、これはもう国民各位が、日本が、ことに今日の日本、世界的に影響力を持つこれだけの日本になったときに、これは恥ずべきことであります。人種的な偏見を持たないようにわれわれとしてつとめてまいるように、政府としてもあらゆる機会にこれは努力しなければならぬことだと考えております。
  118. 竹本孫一

    ○竹本委員 私はこれから経済問題に入って伺いたいと思います。  まず、ポンドの切り下げ、ドル防衛、国際経済が非常に緊迫をしております。非常にむずかしくなってまいりました。この問題は、しかしながら機会をあらためて私は十分論議をしたいので、きょうは時間の都合であまり触れないでいきたいと思いますが、ただ一つ、国際経済のささえである国際流動性の問題について一言お伺いをしておきたい。  政府は、今後いかなる世界通貨の供給体制を創造すればいいのか、どういうお考えに立っておられるかを伺いたいのであります。と申しますのは、今日ドルの宿命、金・ドル矛盾、いろいろのことばでいわれておりますように、世界経済はドルを一つのささえの柱にして立っております。ところが、ここに困ったことに、たとえば今日ドル債務は三百八億ドルあります。この三百億のドルをアメリカが引き締めてしまうということになれば、各国はドル不足で不景気になります。しかし、アメリカが逆にドルをどんどん出していけば、アメリカ自身のドルの採算があぶなくなって、またドル防衛をしなければならぬという問題になる。ドルがなければ世界が困る、ドルを出していけばアメリカが困る、これは全く致命的な矛盾をする関係に立っておる。また、ドルがどうしてそういうことになるかということになれば、これはまた金と世界の貿易の関係であります。  きょうは簡単に結論だけ申し上げますけれども、最近十五年間の動きを見ておりますと、金の供給量というものはわずかに一・三%ずつしか年にふえておりません。ところが、貿易のほうは年々大体五・六%ふえておるのであります。そうしますと、金とドルとのバランスからいうと、四・三%ずつ開きができていくわけなんです。これを  一体どうして埋めていくかということについては、これは世界の経済の上から真剣に考えなければならない問題でありまして、SDRその他いろいろの問題ができておるわけです。そこで、政府は、まず第一に国際流動性不足問題についてはどういうお考えに立っておられるかということを伺いたい。
  119. 水田三喜男

    水田国務大臣 国際流動性の問題に対処するために、世界の各国はこの四年間IMFを中心にして研究しました結果、ようやく昨年結論を得て、新しい準備資産をつくるということに話がきまりました。この新しい準備資産は、国際決済手段である金・ドルを補完してつくられるというものでございますので、そういう意味から、この流動性解決の問題にこういう新しい準備資産が必要だということについては世界が一致しておりますが、これにいろいろ反対が出てきましたのは御承知のとおりフランスの見方でございまして、もしアメリカがいまのように国際収支の改善をしないでアメリカのドルが世界の各国へ行くというようなことだったら、少しも国際流動性の不足という問題はないのだから、この問題に早急に踏み切る必要はないのだ、まずアメリカ自身が自分の国際収支の均衡を保て、こういうことができたときに初めて国際流動性の不足という問題が欧州の諸国には起るのだから、そのときにはわれわれはそれに対して賛成するというようなことで、アメリカの態度がまず先であって、それを見てからというような気持ちがフランスにあったために、これを中心としていままでいろんなことが行なわれてきましたが、私はそのとおりだと思います。アメリカもああいうふうにドル防衛政策をはっきりとるという決心をしました以上は、欧州が今後やはり流動性の不足という問題に直面してくるでございましょうし、日本においても同じでございますから、私どもは、せっかくできたこのIMFの新しい準備資産制度、これを守り、育成していくという形で国際流動性問題を解決することがやはり本筋であろうということでこれに十分協力するつもりでおります。
  120. 竹本孫一

    ○竹本委員 本筋がSDRの線にあるということも大体了解できますが、そこで大臣に伺いたいのは、第一は、このSDRの発動の時期はいつであるかということであります。  第二番目は、発動していよいよ実現された場合でも、たかが二十億ドルか三十億ドルでは、現在の国際貿易情勢から考えてみてあまり問題にならない、解決にあまり大きくプラスにならない、ただ盆裁趣味みたいなものじゃないかということでございますが、その点に十分であるかどうか。  第三点、これは金との結びつきがない、ないところに意味があるのですけれども、しかし今日のように金選好あるいは国際通貨不安が激化してまいりますと、やはり逆に金に結びついていないものは、それなるがゆえにかえって信頼をされない、それがSDRが出てくれば逆に金選好が一そう激化するということになりはしないか、これが第三点。  第四番目は、いま御指摘がございましたが、フランスをはじめEECが拒否権を発動してくるような場合は一体どうなるのか。この四点についてお伺いをいたしたい。
  121. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のように、EECの発言権が非常に大きくなってまいりました。と申しますのは、EEC諸国が持っておるドルの量が多いからでございますが、したがってIMF体制は、いままで英米を中心とする体制であった、ですから今後は欧州、EECの発言を認めろという要求を基礎にしていまいろいろ問題が起こっております。これがIMFの協定改正の問題でございますが、この三月中に結論を得るということになっています。  そこで、いつ発動するかという問題も、結局いままでのような議決のしかたではなくて、この発動については八五%の多数決でなければこういうものをきめられないということをいま欧州諸国は主張しております。これは従来のような形で、アメリカ、イギリスの意向でこのIMFの議決がなされない、欧州がノーと言ったらやれないということになるのでございますので、この問題を中心に昨年日本も参加していろいろ相談しておりますが、これはいま何らかの形でこの成案を得るときに解決する見込みでございます。こういうものが解決して、そこで初めて何億ドルの新しいSDRができるかということもきまるのでございまして、そういう点はまだいま一切金額もきまっておらないということでございます。三月中にこの改正の成案が得ればこれを各国が批准し、批准が終了したときに初めてこの発動がいろいろできるということになるので、大体早くても来年の春までかかるのではないかというふうに考えております。
  122. 竹本孫一

    ○竹本委員 早くても来年の春というようなことでは、当面の国際通貨危機には、あまり役に立たないのではないか。政府はそんな、来年の夏あるいは春、その辺の問題にあまり期待をかけないで、やはりこの問題についてはもう少し積極的な建設的な考え方を持たなければならぬのじゃないか。特にEECのノーと言う危険性がある。それに対しては何らかの形で問題が解決するだろうということでございまして、これはその何らかの形が出てこないときには何にもならないということでございます。せっかく大蔵大臣も非常に力を入れておられる問題でございますし、私も原則的には賛成でございますが、もう少し積極的に建設的な手を打たなければこの問題は解決しないのではないか。大体IMFを将来は世界の中央銀行にでもするといったような構想がいろいろ出されておりますが、ひとつ世界通貨の問題については、総理もよく言われる日本の社会的、経済的地位がこれまで上がってきた現階段において、もう少しリーダーシップを持った発言なり行動なりがあってしかるべきではないかと思いますので、要望を申し上げておきます。  ただ、この点で私が非常に遺憾に思う点が一つあります。それは、SDRの各国の割り当て額について、大蔵大臣は非常に得意になっておられるけれども、日本はあまりにもさんたんたるものではないか。三%でしょう。これはどういうことであるか。私に言わせますならば、日本の貿易がいま、たとえば輸出について見ましても大体五%。将来は近く一〇%に昭和五十年にはなるだろう。また、しなければなりません。そういうように、二%なんというものは戦前の話です。われわれが世界貿易の中で占めるウエートは二%もしくは三%というのは戦前の話、いまや経済も復興いたしまして、とにかく世界で五、六%、現に貿易でそれだけの比重を占めておる。しかるにSDRにおける待遇はわずかに三%だ。半分にしか待遇されていない。これは一体どういうことですか。
  123. 水田三喜男

    水田国務大臣 IMFへの出資割合によって配当されるということでございますので、出資割合によって日本への比率がきまりますが、もしこれをいま各国で保有しておる金の量によって配賦されるというようなことになりましたら、日本は非常に困る。金と結びつかないSDRということで終始一貫主張してきた私どもの主張は、大体これが通ったということで、日本にとっては非常に有利なことだと思っております。この割り当てにつきましては、日本のいまの力に応じて、今後この出資割合というものを変えることによってこれを変えていくということが可能であろうと思っております。
  124. 竹本孫一

    ○竹本委員 出資割合は三%。なぜ三%にきまったか。また、三%ということは、あまり大きくても負担がふえるでしょうけれども、日本の経済実力から見てこれは不当に低いではないか。世界的な一つの位置づけにおいて、日本は三%だということは、全く情けないような感じを持ちますが、総理大臣、いかがですか。
  125. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えしますが、いまの実情、実勢力からいろいろ議論されると、ただいまのようなお話になるだろうと思います。これから先また機会もございましょうから、そういう点も順次直していくということが望ましいのではないかと思います。私は、これについては、IMFで日本がやっぱり三カ国、他のタイ、ビルマ、セイロンと一緒になりまして理事を出した、それらの時分から、ただいまはもう単独で理事を出し得る状況になった、それらの進歩のあとを静かに考えてみると、現状におきましても、またこれから先におきましても、日本の果たすべき役割りは大きくなるのじゃないだろうか、かように思いますから、あらゆる機会にただいまのように努力するようにいたしましょう。
  126. 竹本孫一

    ○竹本委員 いま申しましたように、五%、六%貿易をやっておる。あまり遠くない将来において、きわめて近い将来において、世界貿易の一〇%を日本はやろうとしておる。この実力相応の待遇を国際社会において要求すべきだと思うんですね。これはぜひひとつそういう意味で検討し、善処していただきたいと思います。  なぜまたこれがこうなったかということについては、私どもはきびしく反省をしなければならぬと思うのです。それは、よくいわれるように、日本の外貨準備あるいは日本の金の保有といったようなものが不当に少な過ぎるということであります。私は今日時間がないのでこの問題はあまり触れません。機会をあらためて論じたいと思いますけれども、日本の外貨準備というものが、百億ドルの貿易をしておる日本としては、三分の一として、三回転と見ても三十億ドルなければならぬというのに、二十億ドルと言いたいけれども、間もなく十七億ドルになるかもしれないということでございまして、不当に少ない。しかも、それをふやす努力をするということになると、あまり努力をしておられないようにわれわれは見受ける。特にドル防衛の場合でも、日本は特に金は買わないとかなんとかいうようなことで、フランスは五十二億ドル持っておる。ところがフランスは、ドル債務は御承知のように十億ドルしか持っていないでしょう。全く日本とフランス、フランスがEECを背景にしていろいろ言っていること、アメリカに対して批判しておること、主張しておることは、われわれは一応うなずけるところがある。しかし、その背後には、フランスの経済力、フランスの保有外貨といったような問題が背景にあると思うのです。日本が一〇%に近い貿易をしようという体制になっていても、三%しか待遇をされないということ、あるいは主張ができないというところに、やはり保有外貨の問題が無関係でない。大いに関係がある。ひとつ総理にお願いしたいことは、そういう意味において、単に貿易採算あるいは決済の都合上だけの問題ではなくして、日本が国際経済社会において日本らしき発言権を正当に持つためにも、保有外貨あるいは金の保有ということについても、政府はもう少し前向きに考えていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  127. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 過日もお答えいたしたのでありますが、現在の保有外貨がこれで十分だとは申しません。私もできるだけもっとふやしたい、しかも、まあ多ければ多いほどがいいというようなそういう見方でなしに、ただいまもお話にありましたように、三十億程度はぜひ持ちたい、かように考えておりますし、また、金自身にいたしましても、いまの程度では残念のように思いますから、ただいまのような御意見が出ておる際でありますので、十分できるだけ注意してまいるつもりであります。しかし、直ちにいま金を買うということは得策なりやいなや、これもよく考えてまいらなければなりません。全体としての抽象的な議論として、現状には私も満足しておらぬというそのことを御理解いただきます。
  128. 竹本孫一

    ○竹本委員 さらに、この問題に関連いたしまして、円価値の維持という問題について一言お尋ねをしておきたいと思います。  どうも政府は経済問題にもよくムード的なことを言われますので、われわれよくわかりませんが、円価値の維持とは一体どういうことを意味しておられますか、それをまず伺いたい。
  129. 水田三喜男

    水田国務大臣 円価値の維持とは、円の価値を動揺させないで強いものにするということでございまして、結局、日本の生産力を背景とする国際収支のあり方がこの円の価値をきめていくということになろうと思います。
  130. 竹本孫一

    ○竹本委員 円価値の維持とは円の価値を維持することだという御説明でございます。はなはだ科学的な説明でおそれ入るわけでございますが、問題は、物価の水準を維持して円の価値を維持するという対内的な要件と、国際収支の面において一ドル三百六十円のバランスを維持するという意味と二つあると思うのです。そこで、あとで物価問題は検討を加えたいと思いますが、最近のように物価が毎年毎年上がっておる。われわれはこれをインフレと呼んでおる。インフレということは円の価値が下がるということである。政府はもちろんインフレでないとおっしゃるでしょう。そこで宮澤長官にもちょっと伺っておきたいのですが、インフレとは政府はどういう場合にどういう意味で使っておられますか。
  131. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私どもは通貨の将来の価値に対する国民の信頼が失われて、そしてその結果通貨を持つよりはその他の物を持ったほうが有利である、いわゆる換物運動のようなものが累積的に起こる、そういう場合をいうと考えております。
  132. 竹本孫一

    ○竹本委員 通貨を持つよりも他の物を持つほうが有利である、銀行に預金をするよりも物で持ったほうが有利であるということだろうと思うのでございますが、そのめどは一体どの辺に置いておられますか。たとえば、定期預金の利子よりも物価が上がり始めたならばインフレというのか、どの辺にめどを置いて言っておられますか。
  133. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは消費者物価の上昇が定期預金の利子を上回るということは非常に好ましくないことだと思いますが、しかし現実に換物運動が起こるというようなことはわが国の場合に御承知のようにないわけでございます。それは工業製品の価格は逐年下がってきておるということを国民が知っておりますし、サービスあるいは生鮮食料品のようなものは退蔵がきかないということも事実明らかであるためにそういったようなことは起こっていないと思います。
  134. 竹本孫一

    ○竹本委員 国民は今日確かに換物運動をやっておりません。しかしこれは与党の皆さんでもいなかへ行って国会報告会でも持たれればすぐわかりますが、今日農村においてもあるいは都市においても、銀行に金を預けておってもはたして得であろうかどうであろうかということについてはみな深刻な悩みを持っております。換物運動は起こっていないけれども、物にかえなければいかぬのかなという不安を持っております。この点はひとつ警告をいたしておきたい。特に私はこの円価値の問題について、国内的な問題のほかにもう一つの国際的な問題でございますが、たとえば、大蔵省局長あたりではロンドンタイムズ等が日本の円価値の切り下げがあるのではないかということを言ったとか言わなかったとかいうことで非常に問題にしておられるようなことを新聞で拝見いたしました。これは私、国際収支の問題だと思うのです。日本の政府に言わせると、イギリスがポンドの切り下げでまいってしまっておる、貧すれば鈍するで、よその国のことまで引き合いに出して要らぬ世話をやく、こういうような御説明があったようだけれども、しかし私はロンドンタイムズが必ずしも根拠のないことをでたらめに言っておるとも思わない。と申しますのは、やはり日本の国際収支に不安がある。政府は今度の経済見通しにおきましても三億五千万ドルの赤字だろうなんと言っておられますけれども、私はこれに賛成できない。おそらくその倍に近いのではないかと思っておる。その理由をここで議論をすると非常に時間を食いますので結論だけでございますけれども、国際収支の不安というものは、たとえばポンドが切り下げられたということになりますと、ポンドは一四・三%しか切り下げなかったけれども、さらにもう一回切り下げがあるかもしれないほどイギリスの経済はまいっておる。金利は八%も高い金利を持っておる。イギリスはデフレになります。日本からの輸出は非常に困難になります。イギリスの国際競争力は非常に強められてくる。ポンドの切り下げと関係がないと思ったアフリカあたりでも、実はイギリスに品物を売ってその金で日本の品物を買うという関係がありますので、イギリスに売れなくなればアフリカ地域に対する日本の輸出だって困難がふえてくる。もちろんアメリカについても話がむずかしくなってくる。去年は御承知のように、ドイツが競争力を発揮して、日本はドイツに追いまくられてアメリカへの輸出は減ってしまった。アメリカの不景気の問題もありましたでしょうけれども、それ以上にドイツに追いまくられたのであります。今度はイギリスの品物も投げるみたいな形で入ってきて日本品と競争する、こういうことになりますと、日本はポンドの切り下げ一つとってみても国際貿易上たいへんな困難に直面しておる。さらにドル防衛がある。このドル防衛をあらためて私は論議をいたしますけれども、このドル防衛の強化のためにどれだけ日本の貿易に影響があるかわからない。いま問題の輸入課徴金、繊維一つとってみても、へたをすれば一億八千万ドル、アメリカへの輸出が大体半分になるじゃないかということを繊維業界のトップレベルで非常にいま心配をいたしておる。特にまたアメリカでは増税がなかなか困難です。増税ができなければドル防衛に行く以外にない。ドル防衛の施策を強化する以外にない。そういう点を考えてみると、二重、三重に日本の輸出は困難であります。しかも御承知のように日本の輸入はいま何とか減らすでしょう、減らしたい努力をしておりますときっと答弁されるでしょうけれども、そんななまやさしいものじゃないのです。輸入構造が変わっております。従来のように、単なる在庫をふやすので、これを少し押えれば輸入が減って、何とかなるといったようなものではないのです。輸入構造は変わっておる。しかも取引条件は原毛が上がり、原油が上がり、原綿が上がり、みんな上がっておる。取引条件は悪くなっておる。一体貿易のどこを見れば楽観論が出るか、私はふしぎでしょうがない。しかもOECDでさえびっくりするほどの高い、日本の輸出は一五・二%ふえるとか弾性値は二・三四であるとか、全く数字を合わせるための経済見通しをやっておられる。この問題だけでも二時間かかりますから私はこれ以上言いませんけれども、全く希望的観測によって日本の国際収支を出しておられる。その点を日本がそこまで輸出ができるか。日本の輸入がそこまで防げるか。設備投資はさっぱり減らないでしょう。鉄鋼も電力も合繊も石油化学もみないまどんどんふやしておる、あとで触れますけれども、輸入は減らない、輸出は伸びない、国際収支は決してうまくいかない、そのことをロンドンタイムズなんかはちゃんと見てとってて国際収支の面から日本の円価値維持が困難になるのではないかということを言っておるのです。そのことについて政府は何らの反省もしないで、貧すれば鈍する、イギリスはかってなことを言うというだけのようなお考えでは問題にならないと思うのです。私は、円価値の維持ということは国内においてインフレを来たしてはならないという至上命令があるとともに、国際収支の面において日本が危機的な困難に直面しないように配慮するのでなければ、他国の新聞の悪口を言っただけでは問題は解決しないと思いますが、いかがでございますか。
  135. 水田三喜男

    水田国務大臣 仰せのとおりだと思います。したがって私どもは、何をおいても国際収支の改善をすることが円の価値を高めることだというのでいま努力をしておるところでございます。これがほんとうの傾向になってくれればいいと思うのですが、まだ一カ月やそこらではわかりませんが、御承知のように一月を境にしていろいろ貿易の問題にも新しい徴候が出てまいりました。一月は赤字といわれましたが、これは季節調整をやってみますと、一月の貿易収支は一億六千万ドルの黒字ということで初めて輸出が伸びて輸入のほうが減ってくるという現象が出てまいりましたし、これがまた信用状のベースにおきましてもそういう傾向が出てきましたし、また先行指標である機械受注とか各種の指標に一月、二月を中心として動きが出てまいりましたので、もしこれが一つの傾向化していくということになると、いま想像したよりももう少しいい方向へ国際収支を持っていくことができるのじゃないかということを考えております。  さらに従来の施策に加えて、今年度予算編成を中心とする新しい財政の運営によって、私は必ず今年度の下期までには国際収支を均衡させるということはできるんじゃないかというふうに考えております。ただ国際環境というものはいまおっしゃられましたように相当きびしゅうございますが、これがまたいろいろ動きが出てまいりまして、もしポンドやドルがああいう態度をとったからといって、世界の各国がこれに追随する政策をとったら、世界経済は縮小の方向へ行く、これを避けなければならぬということから、ドイツ、フランスを中心とするEEC諸国はここで経済の成長政策をはっきりとるという方向へ動いてきました。そうしますと、国際環境は、輸出競争はきびしいとはいいながら、私ども考えたよりもまた違う情勢の動きも出てまいりましたので、問題はそういう世界情勢の中に処して日本の輸出圧力がどれだけ高まっていくかという国内政策に根本があると考えますので、いまの政策を推し進めていったら私は必ずこの輸出圧力というものは出てきて、困難なそういう世界情勢の中でも日本の輸出をいま経済見通しで予想しているところまで持っていくことはいまのところ不可能ではない、まだそういう自信をいま持っておるところでございます。
  136. 井出一太郎

    ○井出委員長 竹本君にこの際ちょっと申し上げますが、ただいま参考人として日銀総裁宇佐美洵君が御出席になっておられます。その点もお含みの上で質問をお願いいたします。
  137. 竹本孫一

    ○竹本委員 国内問題はあとで触れますが、輸出の関係は、国際情勢はまだ大蔵大臣とは私だいぶ認識が違いまして、むずかしい情勢だと思いますけれども、これ以上論及いたしません。いずれにしても国際収支は非常な困難に立つ、そのことをロンドンタイムズその他が指摘しているのだということをひとつ十分御留意を願いたい。  そうすると、わが国の保有外貨に響いてまいります。ところが、日本の保有外貨は、これまた本日十分論議をする時間がありませんけれども、まことに内容が悪いのです。私も一通り知っております。金が幾らあって何が幾らあってと。しかし、これはデリケートな問題でございますし、時間もありませんのでこれ以上述べませんが、日本の保有外貨が少な過ぎるので三十億ドルまでは持っていきたいと総理の御答弁がありましたので、一応了承することにいたしますが、ちょっと一つだけお伺いをしておきたい。  日本はアメリカのドル防衛の際に金を買わないと政府はおっしゃった。これはアメリカに対する政治的な協力の面でしょう。しかし、私はこれを経済的に分析してみると、金は買わないのではなく金が買えないのではないかと思うのです。金を買おうと思えば買う金はあるのですか。
  138. 水田三喜男

    水田国務大臣 いままで日本の金の保有量がふえなかったのは、やはり金を買おうとしても買う余裕がなかったということが一番の原因だろうと思います。
  139. 竹本孫一

    ○竹本委員 もう一度念を押しておきますが、わが国の為替銀行の持っておる債務、その他いろいろの点を考えてみると、大体あれこれ合わせて十八億ドルぐらい借金があるのです。日本の保有外貨その他ドルを持っておるものから見て、バランスから考えて、買おうと思っても日本は買えないのだという点を、総理、十分御認識いただいておりますか。
  140. 水田三喜男

    水田国務大臣 買う余裕がなかったということが一つと、それからもう一つは、いつも申しますとおり積極的な理由がございまして、これは対日信用のために金で持たぬほうがいいという部面がありましたために、預金そのほかで運営するほうが得であるという積極的な理由からも買わなかったわけですが、やはり根本的には金を多く買う余裕がいままで日本にはなかったということでございます。
  141. 竹本孫一

    ○竹本委員 ただいまお聞きのように、日本の保有外貨の実態はきわめて悪いのです。私はこの具体的数字を暴露して快をむさぼろうとはいたしませんけれども、そういうきびしい情勢に立っておる。しかも国際情勢はますますきびしくなるのだ、このことをどうも当局はごまかして、日本の経済は世界第三位になったというそのほうだけを言っておられるきらいがありますので、特に買う余裕がなかったのだと大蔵当局みずから言われるということだけはひとつ認識を深めていただきたいと思うのです。  なお、これに関連して日銀総裁もお見えになっているからちょうどよろしい。御苦労さまでございました。ひとつお尋ねをいたしますが、スワップ協定あるいはIMFからの借り入れといったような形で、六月になるかあるいは早くて四月になるかわかりませんけれども、日本の保有外貨の状態と国際収支の実態から見て、スワップ協定の発動を促しあるいはIMFからの借金まで考えなければならないということを考える必要があるのではないか、あるいはその必要は絶対ないのであるか、いかなるお考えを持っておられるか伺いたい。
  142. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまの御質問にお答えいたしますが、先ほどからお話しのとおり、日本の国際収支はなかなかむずかしい問題でございます。ただ、最近の情勢を見ますると、むろん楽観を許しません。しかし、昨年の九月以来、さらにことしの一月以来とりました政策がようやくここにきて改善のきざしを示したところもございます。たとえば、ことしの一月の——これはまだ速報の段階でございますけれども、生産の伸びはやや落ちてきております。また機械の受注も頭打ちのようであります。またそのほか、物価にいたしましても、卸売り物価は、いろいろの理由はございますけれども、総括的に申し上げますとやや落ちつきを示してきているように思います。鉄を中心にいたしまして落ちつきを示してきておるように思うのであります。こういう状態はさらに貿易面におきましても、これもまだきざしでございますけれども、輸入信用状、輸出信用状などを見ますると、ややいいのではなかろうかというような数字も出てきております。しかしまだ、これが総体の状態かどうかということはもうしばらく見ないといけないのでありますけれども、ややそのきざしが出てきておるというふうに考えてよかろうと思います。私ども念願しております来年度の生産・設備計画等につきましても、まだ数字が出てきておりませんのでわかりませんけれども、しかし気分的には相当落ちついてきているように、警戒的な感じが出てきているように思うのであります。こういう状態が今後四月−六月の間に定着してまいりますと、だんだん国際条件はよくなりはしないかと思うのでありますが、ただ、先般来からお話しのとおり、海外の情勢はきわめてきびしいものがあるようであります。これらの成り行きも考えまして私としてはできるだけの手を打っていかなければならぬと思っておりますが、しかし、いまあらわれておるいろいろな経済指標等を見ますると、決して悪いほうには向いていないというふうに考えております。まだいつごろどうということは言えませんけれども、四十三年度中に国際収支は均衡のめどがつくのではないかという点は、いまでもさように考えております。
  143. 竹本孫一

    ○竹本委員 もう一度総裁にお伺いいたしますが、四十三年というのは四十三年か四十三年度か、その点をはっきり聞きたいのが一つ。それから私がお尋ねしましたのは、国際収支がこれだけ悪化してまいりますと、スワップの問題あるいはIMFからの借り入れといった問題を取り上げなければならないところに追い込まれると私は見るのだけれども総裁はその必要なしと見ておられるかどうか、そのことを結論だけ伺いたいと思います。
  144. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 いまの情勢でございますと、私どもは年内にそういう状況が出てくることを待っておりますけれども、これはまだはっきり申し上げかねますので、どちらかとおっしゃれば年度内、こういうふうに申し上げたいと思います。  それから今後、たとえばスワップであるとかあるいは外国から、あるいはIMFから金を借りることをやるかやらぬかということはいま私は必要はないと思っております。しかしこういう情勢でございますので、先は——いまの段階においては全く必要がない、かように考えております。
  145. 竹本孫一

    ○竹本委員 必要のないことを望んでおりますけれども、私は若干の心配を持っておるということだけ申し上げておきます。  なお、これに関連して借金をする必要があるかないかという問題だけでなくて、そういうきびしい情勢の中でドル防衛に日本はあくまでも協力する、私自身協力に反対ではありませんが、協力するという、協力のしかたの問題でございます。  一つは、日本のドル防衛に対する協力は何だかアメリカさんに無条件に協力をしていくというような姿勢かのごとくに思われる。これはおかしい。アメリカは日本に対しましては輸入制限はやりたいほうだいといってもいいくらいにやっておる。資本の自由化では、沖繩にも石油が四社か二社かは別として上陸してくる。いろいろな形でどんどんやってきておる。さらに、ベトナム戦争は今日論議いたしませんけれども、みんなが早期休戦を望み、アメリカの北爆停止をきっかけにして問題を解決すべきだといっても聞かない。そういうことに対して、日本がそのしりぬぐいのドル防衛協力にだけは無条件でやるということはどうも納得できないと思いますが、その辺が一つ。  それから、さらにそのドル防衛の協力のしかたの中でガリオア、エロアの早期返還が日本に要求されたという情報も聞いておりますけれども、はたしてそうであるのかないのか。また金利平衡税の対日免除、これの撤回をアメリカが要望しておるという話も聞いておるけれども、そうであるのかないのか、その点を伺っておきたいと思います。
  146. 水田三喜男

    水田国務大臣 ガリオア、エロアの早期仮還ということを言われたことは、これは全然ございません。  それから、日本のドル防衛の協力でございますが、協力の必要は十分ございますが、これには限度があるということを前から申しております。結局、黒字国を中心にして日米両国がいろいろお互いのドル、円を防衛することに協力する以外にはないというふうに考えておりますが、いま日本の長短資の調達の場を欧州に求めて、私どもは逐次その方向に向けてやっておりますが、これは結果から見ればやはり米国の負担を軽くすることになるのだろうと思っております。そういう程度の協力は日本としてできることだと思いますが、そのほかの問題では、いま別におっしゃられたような問題を要求されているという事実はございません。
  147. 竹本孫一

    ○竹本委員 政府は、いまお述べになったごとく誠心誠意アメリカのドル防衛に協力されておる。私も、先ほど申しましたように協力自体には反対ではありませんからこれ以上追及はいたしませんが、しかし、そうした協力の総決算としてアメリカのお返しが輸入課徴金であってはたまりません。  そこで、最後にひとつ輸入課徴金、あるいは国境税の問題についてお伺いをいたしたい。  これらの問題は、第一アメリカは御承知のように大体五十億ドルあるいは少なくとも四十億ドル、恒常的な黒字国なんですね。貿易の黒字国。その黒字国が資本勘定その他で調整をするというならまだわかるけれども、自分は五十億ドル近くのものを輸出超過で黒字をかせいでおきながら、日本やその他がアメリカに輸出するというのは片っ端から押えていこう、輸入課徴金をかけていこう、これでは話の筋が通らない赤字国が輸入を制限するというなら話はまだわかります。五十億ドルに近い黒字をかせいでおるアメリカの貿易の実態の中で、しかもドル防衛にこれだけ協力したお礼として輸入課徴金を課するというようなことは全く納得ができない。私はこの輸入課徴金は明らかにガット違反であると思うが、通産大臣はいかがお考えでございますか。
  148. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 輸入課徴金なりあるいはボーダータックスといったようなものがはたして実現するかしないか、またかりに実現するにしても、どういう内容、どういう実質でこれが実行されるか、その点はもちろんのことまだわかりません。これは世界の貿易というものを縮小させる手引きになるようなものでありまして、これはどの方面にとっても決して益にはならぬ、害があるだけであります。そこでわれわれは、この問題に対してはあらゆる機会にこれに対して反対を唱えておるわけでございますが、もしかりにこれが実現するということになれば、これは輸入数量の制限ということになりますので、明らかにIMFの違反であり、ケネディラウンドの精神に逆行するものである、かように考えております。
  149. 竹本孫一

    ○竹本委員 ケネディラウンドの精神に反する、もちろん問題はありません。私が聞いておるのは、むしろガットのルールにも反しておるではないかということを聞いておるのです。  そこで外務大臣にもう一度お伺いいたしますが、これはガット違反ではないかということが一つ、もう一つは、アメリカがかりに課徴金をかけるということになれば、アメリカとしては当然手続としてこれはIMFの判定を受けるとかあるいはガットの特別な認可——特認を受けるとか、やるべきことであると思いますけれども、外務大臣はいかなるお考えを持っていらっしゃいますか。
  150. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御指摘のとおりガット違反になる、どういう形になるか知らぬけれども、それ自体としてはガット違反の疑いありということでございます。
  151. 竹本孫一

    ○竹本委員 あと半分残っております。
  152. 三木武夫

    ○三木国務大臣 それはイギリス等の例もありますけれども、やはりこれはガットの——イギリスでは何か黙認のような形になったけれども、しかし今回の場合は非常に広範な影響も与えますし、これはガット違反になる一つのことになるのではないか、こう思います。
  153. 竹本孫一

    ○竹本委員 特認のほうは……。
  154. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これはやはりガットのほうとしても大問題になりますから、これはガットの承認を、特認を受けるというような手続も必要になってくるのではないか、こう考えております。
  155. 竹本孫一

    ○竹本委員 ちょっと最後のところがはっきりしませんでした。特認を受けるべきであるか、IMFの判定にまつべきであるか、その点……。
  156. 三木武夫

    ○三木国務大臣 ガットの条項に違反する疑いがありますので、これは手続を要すると思いますが、この点については経済局長から答えさすことにいたします。
  157. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 お答え申し上げます。  輸入課徴金の場合でございますると、これはガットの規約上の違反という形になります。前の一九六四年のイギリスの例あるいは一九六二年のカナダの例によりますと、IMFが国際収支上の理由ありと一応認定いたしまして、その上でカナダあるいはイギリスがガットの理事会にそのことを申し出まして、そこではっきりとした二十五条のウエーバーをとるかとらないかという問題でございますが、結局前の例によりますと、両方とも特認といいますか、ウエーバーをとりませんで、結局先ほど外務大臣が御答弁なさいましたごとく、非常に遺憾ではあるが黙認をする、しかしながら常にそのやり方についてレビューをして、なるべく短い期間に終わらせる、そういう措置をとったわけでございます。
  158. 竹本孫一

    ○竹本委員 とにかくアメリカの国際経済あるいはその他の政治分野におきましても、何だか態度が傍若無人なようなところがありますので、自主防衛を言われる佐藤総理においても、自主外交で、アメリカのこうしたルール違反ということについてはきびしく追及し、きびしく抗議を申し込んでいただきたいということを要望いたしまして、次の問題に入りたいと思います。  予算の問題でございますが、御承知のように財政法第二十七条は、常例として大体十二月中にこの予算を出すということになっております。ところが最近におきましては、これまた総理承知のように、年が明けて予算編成されることもあります。さらに今回のような突発事故が起こりますと、四月から予算は実行するということになっておるが、一体審議の期間は幾らあります。とんだ大臣の発言でもあると、ほとんど予算の実態については、これは与党、野党ともに反省もしなければならぬ点は先ほど申し上げたとおりでございますけれども、しかし少なくともこの大事な大きな予算を二カ月足らずの間に審議して結論を出せということは無理だと思う。御承知のようにアメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス、どの国を見ましても、大体予算は提出してから審議、結論が出されるまでに半年余裕の時間が置いてある。日本は二カ月ありません、最近においては。このくらい国会軽視はないと思うのです。六兆円に近い予算を二カ月、参議院は大体一週間か十日、これで論議し、審議し、結論を出せ、こういう乱暴な話はないとぼくは思うのです。したがいまして、政府はこの際財政法第二十七条を改正をして、たとえばフランスでやっておるように——フランスも大体四月からですね。しかし大体フランスはもう夏、半年以上の余裕をおいて予算を出しておる。少なくとも日本においてもそのくらいの期間をおくように財政法を改正する必要があるのじゃないか。何よりも、政府の心がけも改正してもらわなければならぬが、何しろ二カ月で予算に結論を出せ、参議院の場合は十日間で五兆八千億の予算はいいか悪いか結論を出せ、こんな乱暴な話はないと思いますが、いかかでございますか。
  159. 水田三喜男

    水田国務大臣 この審議期間がどのくらいあるかも調査がございますが、米国で見ますと、これは会計年度の時期が七月でございまして、百五十四日間予算審議の期間がある。英国は会計年度が四月から始まる。日本と同じでございますが、これは日本よりももっと短くて、国会予算を提出してから三月末まで期間が四十四日。それから西独とフランスは会計年度は一月から始まるわけでございますが、西独は百二日、フランスが九十日、日本は一月の二十六日に提出しましたから六十六日ということになっております。そこで、できるだけ予算審議は私はやはり長いほうがいいというふうに考えておりますが、ただ日本の場合を見ますと、結局翌年度の経済見通しをもとにしてこの予算をつくるということになっておりますというと、できるだけ予算編成がおくれるほうが実際は経済の実情に合うということがございますので、ここに日本のむずかしい問題がございます。御承知のように十二月と一月では、もう経済がいつも変わりますので、十二月に見通しを立てたものは三月までは狂うということがあるくらいでございますので、できるだけそこらは正確を期そうとしてこの予算編成が日本ではおくれがちだということは、これはやむを得ないことと思っております。しかし将来会計年度を直すというようなことでしたら、もう少し長い審議期間がとれると思いますが、そうでないで、四月から翌年の三月三十一日ということになりますと、いい予算をつくるというためには、やはり十二月ぎりぎりにいったところのほうが経済見通しの正確なものがつくれるというようなことで、そこらはなかなかむずかしい問題だと思います。
  160. 竹本孫一

    ○竹本委員 経済の見通しをある程度まとめるためにはおくれたほうがいいという、まあ負け惜しみみたいなことを言っておられますけれども、こんな無責任な話はないと思いますね。経済の見通しというものは、いつ切ったって一年分見通さなければいかぬのだから、同じことじゃないですか。特に一月になって編成すればその年の経済の見通しが正確になるというような理由も根拠もありません。どこで見たってある一年間を区切って見なければいかぬ。したがって、それは全くこじつけの理由である。第一、日本の経済の見通しは当たったことはないじゃないか。そういう見通しのために引き延ばして、国会審議は二カ月で、参議院は十日間でやれということは、たてまえとしてどうしてもこれはおかしい。やはり国会審議というものは、われわれも誠実に御協力を申し上げるつもりだから、もっと審議期間を十分おくということについて、総理いかなるお考えでございますか。
  161. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ことしの予算審議につきましては、これはもう異例だとひとつお考えいただく。ただいま、少なくとも年内に予算案を提出すると、大体ここ当分そういうような慣例になっていたと思います。しかし今回の審議を伺っておりますと、あるいはもっと早目につくらなければならないのじゃないのか、いろいろ問題を提起されたように思います。ここで大蔵大臣と話しながらも、もっと早く編成しなければならないのじゃないのか、こういうような話をしております。しかし現状におきまして、いま直ちに、そう早く編成ができると私は申し上げるわけじゃありませんし、それには、ただいまいつの時期をとっても一年は一年じゃないかと言われる、そのとおりでありますが、データを集めるにはそれぞれの機関の働きもありますから、適当な期間というものが自然にきまる。そういうことを考えて、とにかくもっと早目に予算編成を終えてそして提出するようにすること、これはいまの努力目標でございます。ただいまその具体的なものとしてこの法律の改正など提案されましたが、私はまだそこまではいかないで、もっととにかく、今回の例のようなことを考えないで、できるだけ早く編成を終えて、そして提案をする、こういうことをすべきだ、かように私は思っております。
  162. 竹本孫一

    ○竹本委員 さらにこの機会に、もう一つ決算の問題でございますが、決算の案件の国会提出、また国会における審議、これもどうもおくれ過ぎて、一体四十一年度の決算がいつ結論が出て、何年度予算編成に参考になるのか。決算についてはいろいろな問題点指摘されます。それができるだけ近い機会に参考になるような形で出さなければ、たとえば現状を申しますと、御承知のように決算が出ていろいろ問題点指摘される、そのころはもう役人はとうの昔かわって、どこかの公団の総裁になっているなんというようなことになっておる。こんなことでは全く責任を明らかにすることにならぬじゃないか。決算は何のためにあるのか、こういうことを考えた場合に、決算案件の国会提出についても、予算審議を十分期間をおくと同じように、決算の案件についても国会の承認を得る結論を一つは早く出すべきである、これについてのお考え。もう一つ、いままでの、最近のは特にそうなったようでございますけれども、決算についてのいろいろの意見が出されますが、その出し方がきわめてばく然と、金額と件数を指摘する程度になっておる。これは以前には、こういう不当なところがある、こういう改善事項がある、きわめて具体的に指摘されておった。確かに予算が膨大になりましたから複雑にはなったでしょう。しかし、何かけしからぬことがたくさんあるようだといったような決算報告では意味ない。どの省にはどの問題があるんだ、たとえばわれわれがその報告をめくって調べてみれば、なるほどこういう問題があるんだということが具体的はサゼスチョンが与えられるような出し方をしなければ、不当なところがたくさんあったとか金額が幾らあったというようなことでは、決算本来の意味にならない。意義をなさない。これについて総理、いかなるお考えでございますか。
  163. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 決算につきましても、提出をもっと早くしなければならないと思います。御承知のように、ずいぶん関係のところを督励いたしております。しかし、どうもまとめ上げるのもおくれておるようであります。そのために、法律で規定しておる期間すれすれというようなのがいまの提出の状況じゃないかと思います。これはできるだけ、たしか十一月となっていたと思いますが、それより早目にそれを提出するようにぜひしたいと思います。同時にその中身について、ただいまのような御要望もございますから、決算の御審議に十分役立つような、ただ提出したという書面、形式だけではなしに、皆さんがごらんになるのによく事情がわかるように、その要望にこたえるようにこの上とも努力するようにいたしましょう。
  164. 竹本孫一

    ○竹本委員 財政硬直化の問題について次にお伺いしたいと思う。  私は、財政硬直化は、いろいろいわれますけれども、一番大きなものは物価騰貴であると思います。財政の硬直化は、政府がいろいろ御指摘になっておるし、大蔵省の「ファイナンス」がいろいろ書いておるような問題ではなくて、ほんとうの硬直化は物価にある。私が調べてみますと、たとえば政府の財貨サービスの購入、このデフレーター、修正変数を調べてみると、大体一七〇から一八〇に近づいておる。そういたしますと、たとえば昭和四十一年には一七二・六でございますが、それで割ってみると、四兆三千億の四十一年度予算は三兆一千億になって、物価のふくれというのが一兆二千億あったことになる。来年度予算について大体の推定をしてみますと、五兆八千百八十五億円の予算をわれわれはここで審議しておるわけだけれども、デフレーターで修正をしてみると、その中に物価による水ぶくれがたくさんある。大体一兆五千億ある。したがいまして、ほんとうの予算は四兆三千億である。政府は財政硬直化を言われるけれども、この物価問題にメスを入れなければ、五兆円になろうが六兆円になろうが、全くナンセンスであると思う。この物価問題が財政硬直化の一番大きな原因であるということを、一体大蔵大臣どう見ておられるか、承りたいのであります。
  165. 水田三喜男

    水田国務大臣 物価問題が財政硬直化の一因をなしておることは事実でございます。特に、この物価上昇にからんだ人件費の上昇というものがこの硬直化の一番大きい原因になっておる。いま言われました政府の財貨サービス購入のデフレーターの問題でございますが、これも物価の問題と人件費の問題があって、人件費のほうが非常に大きい要素をなしておるというようなことでございまして、物価問題がこの財政硬直化に関係があるということは事実でございます。
  166. 竹本孫一

    ○竹本委員 運輸大臣に一つ伺いたいのでありますけれども、国鉄の総工事費の中に占める土地の買収費、こういうものも最近におきましては全く驚くべき上昇を示しておる。国家財政だけではない。国鉄財政においてもこの用地費の値上がり、物価の値上がりが実は致命的な制約条件になっておると思いますが、いかがでございますか。
  167. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 お説のとおりでありまして、場所によりましては六割から七割ぐらいに及ぶのもございます。
  168. 竹本孫一

    ○竹本委員 時間がなくなりましたので結論に急がなければなりませんが、そういう意味でこの五兆円、六兆円に近い予算を組みましても、一兆五千億も物価の上昇によるふくれ上がりがあるのだということを十分認識して、政府は物価政策に対してもう少し真剣に取り組まなければならぬ。  宮澤長官にお伺いしますけれども政府は経済成長率あるいはいろいろな見通しを考えるといったような場合に、物価の値上がりということについて、あるいは経済白書なんかも、労働力が不足したから経済の成長が、伸びがむずかしくなったのだというようなことは指摘されたことがあります。しかし、物価の上昇そのものが日本の経済成長を制約することになっておるのだという認識は、経済白書に書いてありません。ありますか。
  169. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういう指摘はおそらくないと思います。そういうことは簡単にまた申せないと思います。
  170. 竹本孫一

    ○竹本委員 国際収支が日本の国の経済成長を制約するのだ、これはよく書いてある。労働力の不足、これが経済の成長をいまや押えるような条件になったということも書いてあります。しかし私の読んだ限りにおいては、物価の上昇自体が日本の経済の成長を制約しておるのだという御指摘はあまりない。しかし、そういうことはむずかしい、あるいはできないことではないかというような意味の御答弁がいまあったようでございますけれども、そうじゃない。ドイツあたりにおきましても、経済の成長を最終的に一番力強く制約するものは物価の上昇なんです。これは要するに政府の物価問題に対する認識がなっていないのだ。物価こそが財政硬直化の原因であり、いまの段階においては、日本の経済成長を制約する一番大きな制約条件であると思います。総理、いかがでございますか。
  171. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ちょっと御議論がむずかしくなっているようですが、いま財政の硬直化、これは一つは、支出の面から見る場合と収入の面から見る場合と、その二つがあって初めてその硬直化現象が説明できると思うのです。御承知のように日本の場合、各国ともですが、経済の成長率が非常に高い。そういう状態だと、自然増収がどんどん行なわれておりますから、自然増収がありますから、いわゆるこの財政の硬直化ということはあまり問題にならない。しかし、この経済の成長はあるところへいくと鈍化せざるを得ない。これが鈍化する場合に、歳入は鈍化する。しかし支出のほうは、物価、人件費その他すでに既定の支出というものがあるとしたら、そのほうの縮減はできない。そこで財政の歳入歳出がアンバランスになる。そこで硬直化が実は問題になるのであります。私は、先ほど来いろいろ議論を聞いておりまして、いま物価、これはまあインフレの議論が先ほど出ております。悪性インフレは、これはいかぬ。これはだれも議論のないことだと思います。ところが、ただいま経済成長、ある程度の成長、そういう場合の人件費や物価の上昇というものは、これはある程度あるんじゃないかと思います。生産性が向上し、そうしてその人件費が上がらないというわけのものでもないだろう。また物価自身もそういう意味の移動があるだろう。だから純然たる物価というものと、いわゆる生産による物価あるいはサービスのような場合の物価のあり方、こういうものが問題になると私は思います。したがいまして、いまの硬直性というのは歳入、歳出、それを両方やはり比べてみないとなかなか説明がつかぬのじゃないか。私はかように理解しております。ただいま言われますごとく、物価が経済の成長を制約するのだ、こう断定をされますが、これはおそらく成長と物価、それは因となり果となり、お互いにあざなえるなわのような状態ではないだろうか、かように私は思っております。この硬直化の問題も一方的に考えないで、歳入、歳出、両面からひとつメスを入れることが必要だろう、かように思います。
  172. 竹本孫一

    ○竹本委員 物価の問題については、まだどうも政府の認識が甘過ぎるようであります。時間がありませんが、各国とも物価の急激なる上昇ということが、たとえばドイツでもフランスでもその他の国でも、物価のこの上の上昇が行なわれるようならば、しかたがない、経済成長そのものを落とそうということを考えておるのです。そういう議論は幾らでも出ておる。むしろこれは常識になっております。日本のように労働力だけが、あるいは国際収支だけが制約条件ではないのです。この点をひとつ十分御認識をいただいておきたいと思います。  最後にもう一つ、行政機構の改革の問題について伺いたい。  財政硬直化は行政機構の改革を断行しなければ打開できない、法律の改廃ももちろん必要である、私どもはかような考え方でございますし、また臨時行政調査会はその答申をいたしております。しかし政府の取り組み方を見ておると、全く問題にならない。なぜかと申しますと、主管大臣御病気だとかいうことを聞きましたから、私のほうから一とおり説明を申し上げますが、今回の行政簡素化と能率化をはかるために、総理府本府ほか各省庁においては、それぞれ内部部局一局を整理することにした云々の行政改革は、一体血が出たのか出ないのかということです。金額が幾ら倹約になったのかということなんです。局長を参事官と名前を呼びかえただけで、名刺代が必要であったかもしれぬが、それ以外には一体何が行なわれたかということを考えてみると、全然人が減ったわけでもない。予算の金額が減ったわけでもない。ナンセンスです。ただ総理がせっかく言われたので、各省しぶしぶちょっと名前変えをして、衣がえをしてごまかしたというだけで、国民の目から見ると、役人の数が一つも減っていない。全くこれは国民を愚弄するものであるといわなければなりません。  そこで、私がもう少し具体的な例を申し上げましょう。たとえば五%減すというのは自衛官や現業官庁、五現業のものは除いているのでしょう。百十七万人のうちから自衛官、自衛隊関係二十五万人、五現業三十七万人を除いて、かれこれ五十万人残っておる。その五十万人について五%ということをいまいっているようなんです。これもおかしい。国民からいえば全体の役人を減してもらうのが目的なので、あれを省きこれを省き、この中で五%ということ自身が全く人をばかにしたような考え方です。さらに私が調べてみると、定員と実働人員とは違います。その欠員が、不補充の関係でいままで七千人ほど浮いておる。その七千人を切った、整理した。これが五十万人掛けの五%、二万五千人ですか、その中に七千人が入っておるらしい。事実関係をこまかくここできょうは論議する時間がありませんが、そういうことを言うと、全く何のための行政機構改革をやっているかさっぱりわからない。人が減らない。今後三カ年間に五%減すとかなんとかいってみても、これも欠員を少し削ってみるだけ。しかも、いままでためた七千人をこれから先の二万五千人の中に押し込んで計算をしようという。さらに追及してみると、これから必要やむを得ないでプラスアルファで人数をふやさなければならぬというところはそれはまた別だと、こういう。一体何をしておるのか私にはわかりません。総理、いかがでございますか。
  173. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあ一省一局整理、これは実際に実現をいたしました。こういうことが消極的には、今回はふやさないで済んだ、新しい公社、公団をつくらなかった、機構の膨張を来たさない一つの歯どめになった、かように私は思います。そうしてさらに今後引き続いて行なうところのその内容でございます。ただいま、今後三年間に五%減らすという、これは過剰人員もその他の者も、とにかく欠員不補充で人を減らしていくのだ。いま、不補充だけでは足らぬ、もっと積極的に首切ったらどうかと、こういうような御意見が述べられました。ただいまの状態では、積極的に整理をするということはたいへんです。そうじやない、合理化の案すら実はいま組合から反対されている。いわゆる合理化というものは、ただいまのような積極的な整理じゃございません。それでも実は反対される、こういうような実情でございますから、人員の整理というようなことについてはもっと慎重でなければならぬと思います。私は、ただいまお尋ねがありましたからさらにお答えしたいのですが、いまの法律制度、法律そのものがすでに過剰なのではないか。そういう中身を整理しない限り私のいわゆる一省一局整理というものは、これは実現しないのであります。したがいまして、これらの点をさらに事務の整理をする、こういう方向へ進むつもりであります。大体臨調の答申等もございますので、それを骨子にいたしまして、こういう問題と真剣に取り組むのであります。どうか、ただいままでのところで全貌を批判しないで、これから進む方向、これにひとつ御協力、御鞭撻を賜わりますようお願いします。
  174. 竹本孫一

    ○竹本委員 法律の改廃のことを私も触れましたし、総理も触れられました。しかし私が言いたいことは、法律以上にいまの行政組織、行政機構をもう少し簡素化しなければだめだと思うのです。ところが案を見ますと、今回まあ農林省がわずかに蚕糸局その他について少しくふうをしておられる。あとはみな落第だ。名前を変えただけだ。行政機構の根本的な改革とあわせて法律の改廃がなければ、ほんとうの意味の行政機構改革にはならない。この点は総理も御認識のようでございますから、特にひとつ積極的に取り組んでいただきたい。  さらに審議会の問題にいたしましても、まあ二百六十あるというのですね。今度四つほど整理するというのだけれども、一体審議会は、私も企画院時代に調査したことがありますけれども、本人がその審議会の委員であることを忘れているような審議会が実に多いのです。本人も知らない。今度問い合わせがいって初めて思い出した程度なんです。そういうようなでたらめな審議会を二百六十つくろうが三百つくろうが、問題にならない。だから、これは思い切ってもう少し前向きに整理をされたらどうか、要望をいたしておきます。  時間がありませんので、最後に、ちょうど日銀総裁もお見えいただいたので、三つだけお尋ねをいたしたい。  一つは、きょう十分に指摘ができませんでしたけれども、日本の財政は、総理承知のように、池田さん時代から毎年毎年ふくれてきておるのです。毎年毎年膨張してきておるのです。一回も収縮したことはありません。設備投資には、不景気のときにマイナスのパーセンテージが出ることがあります。しかし日本の財政は、毎年毎年膨張に次ぐに膨張なんです。この財政インフレ政策といったようなものが、また先ほど申しました財政硬直化の大きな原因でございますけれども、今日それを究明する時間がありません。そのしりぬぐいと申しますか、しわ寄せが金融にかかり過ぎておる。大体日本においては、財政金融一体だとか、財政新時代だとか、ポリシーミックスだとかいうことばばかり流行いたしますけれども、ほんとうの意味で、財政と金融がほんとうにその分野をそれぞれ責任を持って、しかも一体になって協力するという姿勢が非常に足らない。ぼくは日銀総裁に伺いたい。財政のしわ寄せが金融に寄り過ぎておるのではないかということが第一点です。日銀総蔵は人がいいのか、あるいは政府協力されることをたてまえにしておられるのか知りませんけれども、日銀総裁が、今回たとえば予算編成があったあとに、大蔵大臣であったと思いますけれども、申し入れをされた。なぜあれをもう少し前に、さらにもう少し強力に申し入れされないのであるか。財政のしわ寄せが金融に寄り過ぎておる。これは一体、金融に責任を持っておられる日銀総裁としてもう少し強く政府に当たるべきではないかと思いますが、金融にしわ寄せが多過ぎるという点についてどうお考えになっておるかが第一。時間がありませんから全部申し上げます。  第二は、公債の発行でありまするけれども、今度六千四百億ということになっております。私はこれは千億円多いと思うのです。この論戦を張れば、これだけでまた二時間かかるでしょうから、私は結論を申し上げますが、一体、政府が公債を六千四百億、そして民間によろしくということで、金融機関も協力するということになっておる。けっこうなことでございますが、一体できるか。本日の新聞も、公債の消化がうまくいかない。市中消化は一〇%を割っております。あれだけ条件を変えて、何とか政府も誠意を示してということになっておりましても、なおかつ八億円削っちゃったでしょう。公債の消化はもう限界にきておるのです。この経済の実態について、六千四百億円の公債を出すということにはたして可能性と自信があるのか。私は貸し出しの問題を考え、日銀のオペレーションを考え、コールの動きを考えた場合に、とてもこれは無理である、絶対にこれは無理であると思いますが、日銀総裁にお尋ねしたいことは、金融機関として六千四百億円の公債を、自分のほうでその割り当て分を引き受けるだけの自信があるのかないのかということをひとつ伺いたいと思います。これが第二点。  第三は、問題がこんがらがってまいりますけれども、中小企業の問題についてひとつお伺いをしたい。それは、あるいは三月危機といわれ、あるいは六月危機といわれておりますが、この中小企業の危機はわれわれ民社党としても特に頭を悩ましておりますが、この危機は、政府答弁あるいは御説明によれば、何だか中小企業の責任であるようなことをしょっちゅう言われるのです。これは非常に間違いであります。私は、これも時間がありませんから私のほうから結論を申し上げる。景気がよくても不景気になっても、中小企業は倒産するでしょう。それを一体何と見ておられるか。これは重大な問題です。私どもの見るところによれば、中小企業の体質改善は全然できていないです。一体、政府も外に向かっては、御承知のように特恵関税の問題が出る、そうすると、日本は中進国で、あまりかってなものを入れてもらうと中小企業がまいってしまうというようなことで、中進国になり下がられる。内では世界の三番目だとかいうことになっておる。こういうふうにして、外に向けて言うときと国内に向けて言うときとは、どうも政府の御説明も違うのでございますけれども、特恵関税の問題で政府がこれから非常に悩まなければならぬ一番大きな原因は、中小企業の近代化ができていないということなんです。あるいは中小企業も賃金が上がったからよかろうとか、あるいはだいぶ中小企業は高度成長のおこぼれちょうだいで内容がよくなったというような御説明も多いのでございますけれども、実態を調べてみると、たとえば、数字が少し古いけれども昭和三十二年と四十年を比較して、資本装備率で見ると、かつて三十二年に一六・八であったものが四十年には二三・六になっておる。これもたいした改善ではありません。特に問題なのは、賃金格差は、かつて五〇・三であったものが六五・七まで上がった。しかるに付加価値生産性というものは、下請工場が値切られたりするものでありますから、下請単価を切り下げられるものでありますから、四五・九が四七・八、たった二ポイントふえただけなんです。中小企業の実態に対して、血液は二ポイントふえただけ、しかも賃金のごときはもう一五ポイントも上がっておる。また上げなければ——上げても中小企業には人は来ません。こういう実態になっておるのだから、その中小企業の体質を政府のお力で基本的に組みかえてやる、こういう親切な近代的な構造改革政策がなければ、幾ら景気がよくて中小企業はよくなっただろうといっても、よくならないのです。この構造的な矛盾がありますから、中小企業は好況であっても不況であっても倒産が多い、新記録をつくる、こういうことであります。これはひとつ通産大臣に十分御認識をいただいた上での御答弁を願いたいと思います。  しかし、そういう本質論だけではありません。当面はいまの三月危機あるいは六月危機という問題がありますので、危機の問題にしぼって、特に金融の問題が重要でございますから、私はこの三月危機の問題を日銀総裁に特に伺っておきたい。  その一つは、三月危機あるいは六月危機に対する対策としての第一は、これは政府にも関係がありますから、政府に関係のところは政府から御答弁を願いたい。輸出産業で今日金融に困って投げ売りを始めておる。電球その他です。ところが、これは輸出産業でございますから、一ぺん投げ売りを始めると、今度は国際市場において半永久的にその投げ売りの条件を押しつけられることになるので、非常に苦しい立場に立つ。これを救うためには、窓口規制のワクから除外してやるという程度のことは考えてやらないと、将来日本の輸出産業にまで重大な影響があると思いますが、どうでありますか。政府あるいは日銀は、金融政策としてどういうお考えであるか。  それから次に、これは政府にお伺いするのでございますが、中小企業、国民金融、商工中金の三公庫は、四−六期にはいまのままでいきますと金融が非常に締まります。そこで、これは七−九期のものを繰り上げてでも、この一番きびしい四−六期の危機を切り抜けるための努力をしなければならぬと思いますが、それをお考えになるかどうか。  さらに日銀の総裁にお伺いしたいのでありますけれども、あるいは政府にもお考えを伺いたいのでありますけれども、金融引き締めのためにこれから黒字倒産がふえると思います。黒字倒産だけは絶対にさせないというだけの親切をお持ちであるかどうか。  次に、銀行は、今日全国銀行で中小企業向けのシェアは大体二九・八%であります。今日貸しておるものを借りかえには応じないというような形で金融を引き締められると、中小企業はつぶれてしまう。だから少なくとも、今日の不十分なシェアである二九・八%のシェアは、当分は引き締めにもかかわらず中小企業についてはシェアを落とすということはしないという約束ができるかどうか。  さらにもう一つ、コールの運用についてでございますけれども、コールのレートが御承知のように最近五厘かれこれ上がりまして二銭四厘になった。そうすると、採算上からいえばそちらに回すほうがいい。しかし、そういうことをやられてはたまりません。一体、コールに運用するということで過当にコールに回すということは、ひとつ取り締まって監督をしてもらうというお考えがあるのかどうか。  また、本委員会においても非常に問題になっておりました歩積み両建ての問題も、この金融が苦しくなるにつれましてますます盛んになってきました。これを一体取り締まるお考え政府にはあるのかどうかということも、あわせてお伺いをいたしたい。  最後に、日銀総裁にお伺いをいたしたいのですが、四千七百五十億円銀行が貸し倒れ準備金を持っております。貸し倒れ準備金というものは、私の理解するところでは、これは中小企業が気の毒だ、この際助けてやろうといって貸してやったために、これがだめになった、それを取りくずしでカバーしていこうというのが貸し倒れ準備金だと思うのです。ところが、この制度を悪用して、税金のがれだとは申しませんけれども、結果において税金はかからない四千七百五十億円の金がある。けれども、中小企業が申し込んだならばそれには応じない。一体、貸し倒れ準備金が今日までどの程度活用されてまいりましたか、また活用されるように銀行を指導してまいられましたか。あぶなくなれば金は貸さない、貸し倒れ準備金はしたがって一つも使わない、蓄積に蓄積をされて四千七百五十億円、こんなばかげたことはありません。一体、銀行というものはだれのために存在するのか。私は、銀行というものは、中小企業のこれからの危機に及んでは、身を殺して仁をなせとは申しませんけれども、積み立ててある貸し倒れ準備金の範囲内くらいは思い切って中小企業のために融通すべきである。一体どういうお考えでおられるかということを伺いたい。
  175. 井出一太郎

    ○井出委員長 それでは、まず宇佐美参考人から御答弁を願います。
  176. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 お答え申し上げますが、第一の問題は、財政が年々膨張しておる、そのために財政が金融にしわ寄せしているのではないか、こういう御質問だろうと思うのであります。確かに、財政は、国の経済、国の力が大きくなるとともにだんだん膨張していることは事実でございます。これに対しまして、私どもも、財政が金融にしわを寄せられるということは、これは去年のIMFの総会においても、列国そういう傾向があるのだという警告がIMFの当局からも言われておるのであります。また事実、財政が金融にしわを寄せまして、そうして金利が非常に高くなっているということで各国が悩んでおる実情があったことも、そのとおりでございます。したがって、私どもとしては、財政が金融とともに力を合わせてこの問題を解決していかなければならぬ。ポリシーミックスということは、口ばかりで言って事実ないじゃないかということもありましたが、現に私どももそういうふうにならないように常に政府と相談をいたしておるわけでありまして、九月私どもが公定歩合を上げ、窓口規制をいたしましたときも、政府が財政上からこれを援助してくれたことは御承知のとおりでありまして、極力私どもとして財政が金融にやたらにしわを寄せないように警戒していかなければならぬということはおっしゃるとおりであります。その点は十分注意してまいっておるところでありますし、政府もそういう理解をし、努力されておるものと信じております。  それから、国債が多過ぎるのではないかという問題でありまして、これがはたして四十三年度に消化できるかという御質問でございます。この問題につきましては、政府に対しましてもなるべく国債発行を小さくしていただきたいということをお話ししておりまして、現に昨年度よりはことしの国債発行の予定は減っておるのでございます。しかし、六千四百億という数字がはたして消化できるかどうかということにつきましては、私どもも相当の努力を要する、いまの金融情勢あるいは株式の市況から見ますと、かなり困難が率直に申してあるのではないかと思います。これにつきましては、私ども政府と常に連絡をとりまして、場合によっては、四十二年度もそういう処置をとられたのでありますが、こういうふうに弾力的にやっていただきたいということを強く申しておるのであります。そうしてまた、政府もさようのお考えのように承っておるのであります。これは今後の日本の金融情勢あるいは証券市場の状態によって変わってくる問題でございますが、そういう非常に無理なことになっては何にもなりませんので、十分注意して弾力的にやってもらいたいと考えておるのであります。  それから、中小企業の問題でございますが、これは、日本におきまして中小企業の体質改善というものはなかなか困難でございますが、しかし、私どもが見ておりますところでは、確かに倒産は相変わらず高い水準で続いておりますし、心配にたえないのでありますが、一方において改善のあともないわけではございません。そうして非常に堅実な経営をされている中小企業もだんだんふえてきているように思うのでありますが、しかし、内外の情勢は中小企業をこのままでほっておいていけないことは確かでございますので、これについては政府努力されておると思うのでありますが、われわれも政府と協力して、ひとつこの点をさらに体質改善という点からやっていかなければならぬと思っておるのでございます。  なお、黒字倒産はいかぬ、これはもう申すまでもないのでありますが、黒字倒産の中にもいろいろの内容がございますので、その内容をよく検討しまして、援助すべきものは当然援助してまいらなければならぬと思っております。  なお、コール市場に前回そういう問題がありまして、非常に異常なコールレート高になったことがございます。そのときに、非常にコール市場で金融機関が高い金利を利用して収益をあげるようなこともあったのでございますが、これにつきましては、現在は金融機関も相当自覚いたしておりまして、やはり地元の産業といいますか、あるいはまた中小企業全体につきまして、その重要性をかなり私は認識してまいったと思うのであります。したがって、そういう金融機関がやたらにコール市場に走ることはございませんし、私としましても、これは注意深くひとつ見ていきたいと思っております。  なお、歩積み両建てにつきましても御承知のように、先年来いろいろの方法によりましてこれの改善をはかっております。いろいろ第一ラウンド、第二ラウンドというふうに分けまして、大蔵省も懸命に努力されておりますし、われわれも機会あるごとにその内容を点検しておるつもりでございます。しかし、何ぶんにも数が多いことでございますし、なお決して監視をゆるめてはいかぬと思っております。この問題は絶えず国会でも問題になっておりますけれども、われわれとしましても、一日もゆるめてはいけない問題だと考えておるのであります。  なお、もう一つ、貸し倒れ準備金のことにお触れになりました。これは確かに銀行にだんだんたまった貸し倒れ準備金があるわけでありますが、むろん、これは読んで字のごとく、いろいろな問題がある場合に出すものでございますけれども、しかし、根本的に言いますと、銀行の資金というものは預金者のものであります。したがって、預金者に、どんな場合でもこの銀行は安全なんだということのために、そういう資金もたくわえておくことがやはり重要だと私どもは思うのであります。何といいましても、銀行の信用が大事でございまして、したがって、貸し倒れ準備金があるからといって、これは、あなたがおっしゃったことはそういう意味ではないと思いますけれども、貸し倒れ準備金があるからそれを出せという指導はむしろいけないのでありまして、貸し倒れ準備金というものは、銀行の信用として持っているものでありまして、やはり本質的にはその中小企業自体の改善が必要であります。貸し倒れ準備金があるから安易な貸し出しをしていいということにはならぬと思うのであります。ただ問題は、そういうようなことを考えながら、何といいましても、先ほどおっしゃいましたとおり、体質改善が一番大事だと思っております。いまはなかなかそういう目先のことでなくて、中小企業をほんとうにりっぱなものにしていくというために銀行が協力すべき時期だ、かように考えておるのであります。
  177. 水田三喜男

    水田国務大臣 政府関係の中小企業金融機関の貸し付けについての計画のワクは、昭和四十三年度は、環境衛生関係の資金も入れて大体八千億円ぐらいがいま予定されております。この四半期ごとの配分はまだいまのところできておりませんが、対民間収支から見まして、四−六月期が大体散超期でございますので、こういう情勢ともあわせ考えてこれから四−六の配分をしようと思いますので、いまおっしゃるような中小企業の問題が起こらないように十分注意して四−六の配分をしたいと思っております。
  178. 竹本孫一

    ○竹本委員 終わります。
  179. 井出一太郎

    ○井出委員長 これにて竹本君の質疑は終了いたしました。  宇佐美参考人におかれましては、御多忙中再度にわたっておいでをいただき、まことにありがとうございました。  次に、畑和君。   〔委員長退席、小川(半)委員長代理着席〕
  180. 畑和

    ○畑委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、まず、佐藤総理政治姿勢の問題について、基本的な問題について先に触れ、それから具体的な批判をしてみたいと思うのであります。  この間、加藤委員のほうからも指摘がございましたけれども佐藤総理政治姿勢は右寄りだというような批評が圧倒的だ。多い。この点についての加藤委員総理とのやりとりを聞いてはおりましたが、さらにこの点を重ねて総理に伺って、私の考えを述べてみたいと思うのです。一体、そうした佐藤総理政治姿勢が右寄りだというような批評を佐藤総理は聞いておられますか。
  181. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の右寄りだというのは、いま畑君からも聞くし、加藤委員からも聞きました。どういう点か私にはわかりません。
  182. 畑和

    ○畑委員 佐藤総理は、右寄りであるということを加藤委員からも聞き、私からもいま聞いたけれども、しかし、どういうわけで右寄りであると言われておるのか、その点はわからない、こういうお話でございますけれども、ともかくそういう世論があることは、これはいろんな新聞、それからその他のマスコミでもいろいろ言われておることでありまして、総理はどういうわけで右寄りと言われておるかわからないと言われるけれども、とにかくそういう右寄りだという批評があることだけは、総理、認めますね。そういう批評があることだけは、私たち二人だけでなくて……。
  183. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はそのほかのことは知らないのです。ただいま申しますように、あなたと加藤委員から言われておる。ひとつ教えていただきたいように思っております。
  184. 畑和

    ○畑委員 よろしい。まあ、そういった右寄りであるという批評、これはもう世論であります。私とそれから加藤委員だけの二人の考えじゃない。それはなぜじゃ右寄りであると言われるかということについて私も考えてみた。総理のためにもと思って、いろいろ考えてみた。なぜ佐藤総理あるいは自民党が最近急角度に右寄りになってきたと、こう言われておるのだろうか、一体それは何を基準として右だ左だと言うんだろうか、こういうふうにして考えてみたのでありますけれども、これは結局は、われわれのこの日本の基本法でありまするところの日本国憲法、この日本国憲法を基準として、その憲法の定めてある日本の国の進むべき道、この差し示す道よりも右であるということだと思うのであります。この点どうですか。
  185. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん重大なる発言のように思います。私が憲法を守らないとでもおっしゃるのですか。
  186. 畑和

    ○畑委員 総理は、先ほど私の考え方に対して、私は憲法を守らないとは言っていない、守っておるんだ、したがって、私は憲法を基準としても右寄りではない、憲法をそのまま実行いたしておるんだ、忠実に守っておるんだ、こういう趣旨だと思うのです。ところで、しかし、やはり依然として右寄りという世論はあるんでありまして、これはやはり総理が言われており、また自民党のほうでいろいろ申しておりますることが、常にたてまえと本音が違うということになるのではないかと思うのです。この国会におきましてもずっと問題になりました一連の外交問題あるいは防衛問題、そういった問題がございます。あるいはさらにまた、国内的には灘尾発言だとか、あるいは倉石発言だとか、あるいは米価審議会の問題とか、こういった問題がある。外交問題といたしましては、沖繩の返還問題、あるいはエンプラ寄港の問題、プエブロ事件、ベトナムの問題、中国問題、あるいはまた非核宣言の問題、こういった問題一つ一つ、この国会におきましても、われわれとの間の一問一答がかわされておるのでありますけれども、この経過を見ましても、どうもこういう点でたてまえと本音というのが違っておる。いいですか。このたてまえというのは、憲法を守ります、私は憲法からそれてはおりませんというのが総理のたてまえだ、確かに。それはわかっておる。ところが、本音がやはり違うのですね。本音が違う。結局やはり本音がときどき出る。それでいろいろ問題になってくる。私はそう思うのです。だから、本音とたてまえというものを一致させなければいかぬです。私は、そこにやはり非常な国民の不安もあるし、不信も出てくるのではなかろうかと思うのです。口では憲法を守る、こう総理もおっしゃいました。倉石問題の決着のときにも、総理は、平和に徹し憲法を守る、こうはっきり言われておるのでありますけれども、倉石問題の結末の処理の問題につきましても、そこでまた本音とたてまえがどうも違うようだ、こういう感じがわれわれには払拭し切れない。  大体、その前のいろんな例をあげますと、先ほど申しました外交問題にいたしましても、非核宣言の問題等についても、その点が私は言えると思うのです。総理は、本会議におきまして非核三原則ということをはっきり申された。この限りにおきましては、私も総理に全然同感なんだ。非核三原則、われわれもろ手をあげて賛成する。ところで、われわれが、そうならばひとつ与野党一致して国会で非核三原則の決議を、総理が言ったとおりのことをお互いに一緒になって共同提案で本会議で議決をしようじゃないか、こういうことになりますと、総理は、どうもその点はっきりしない。この間うちのほうの山本書記長とのやりとりのあれを見ましても、そういう感じが強いのです。そうして、今度は予算委員会のほうになってまいりますと、非核三原則も三原則だが、それも含めて四つの柱があるんだ、そのうちの一つがアメリカの核抑止力にわれわれはたよる、こういう一つの大きな柱がある。この大きな柱と核禁三原則の柱、こういう二つの相矛盾するような柱があるんだからというようなことで、この間山本書記長の質問をそらされようとしたけれども、そらし切れなかったというような感じがわれわれには深いのでありますけれども、そういったことも、やはり私は、さきに私が申しました本音とたてまえの食い違いだと思うんです。本音は結局、やはり核抑止力にたよるというようなこと、そしてそういうことがあるから、非核三原則は言うけれども、それは国会の決議にしたくはない、こういうことなんじゃないか。それで、たてまえは非核三原則だ、こういうことであろうと思うのです。したがって、表は憲法に従います、しかし本音はどうもそうはいかぬ、こういうことじゃなかろうかと思うのですが、その点どうですか。
  187. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも私の考え方について憶測をしていらっしゃるようです。たてまえと本音が違うとおっしゃる。これは畑君がさようにお考えになるならお考えになってもいいのですが、これはしかし、私の本音もまたたてまえも同じでございますから、もしさような点で誤解がないように、この際にお願いしておきます。  どうも先ほどから私が右寄り右寄りと言われる。私は、別に右寄りあるいは左寄りでもございませんし、憲法そのものを実は守っておるつもりです。したがいまして、ただいまのお話だけでは、どうも私が右寄りだということにならない。いまのような考え方で、社会党と同様な考え方というなら、あるいは左寄りかもわからない。どうもお話がよほど違っている。だから私は、もっと具体的にお話し願って、そして具体的にはいま非核三原則、これを引き出されました。しかし私は、核に対する政府の態度といいますか、これはもうはっきりしておるのですから、その核政策の一つにいまの非核原則が、核兵器についての三原則があるわけです。しかし、これで私は、きょうの午前中にもいろいろ議論いたしましたが、どうも核兵器がある限りにおいて日本の安全を確保するためには、核の抑止力、これが必要なんだ、だから日米安全保障条約を必要とするということは、非常に明快にお話しいたしたのであります。私は、まさか、こういうことを言うからおまえは左だ、右だ、かようには言われぬだろうと思うのです。私は、憲法にでも反しておるという御批判なら、これはもう私も頭を下げます。しかし、私は憲法には違反しておりません。また右でも左でもない。その点はひとつよく御理解をいただきたいと思います。   〔小川(半)委員長代理退席、委員長着席〕
  188. 畑和

    ○畑委員 時間がありませんから飛びますけれども、沖繩返還問題についても同じようなことが言えると私は思うのです。核つき返還かどうかというような問題につきましても、総理は、ともかくいまのところはその辺白紙だ、こういうようなことを言われたり、あるいはまた、エンプラの寄港の問題の際におきましても、寄港の目的は何かというようなことについて、だいぶ政府のほうの見解とアメリカ軍のほうの考え方とが違うようだ。それからさらに、それが核兵器を積んでいるか積んでいないかというような問題等にもいろんな食い違いがある。ベトナム問題につきましても、早く戦争をやめてもらいたい、こういうことを総理はいつも言われている。そのとおりだと思うのです。ところが、実際にはどうもやめさせるような努力をたいしてしていないような気がする。しかも、それどころではない、実質的におきましては、アメリカのベトナム戦争に加担するようないろんなことをやっておられるとわれわれは思う。そういう点が、やはりこれまたたてまえと本音が違うような気がする。これを一々総理答弁をあれしておりますと時間がかかります。したがってこれはやめますけれども、ただ最後に申し上げたいのは、倉石発言の問題に関連してでございます。  倉石前農相はあのような形でおやめになった。そして総理は、その前に、平和に徹してそして日本の憲法を守る、こういうことを断言して、それに関連して、倉石問題については善処をする、こういうことで、この間予算委員会が再開をされた。ところが、その後倉石さんは、おやめになったときに、総理は憲法を守ると言っているけれども、心の中じゃくすぐったいだろう、こういうようなことを言ったということが新聞紙にも載っておる。また、福田自民党幹事長は、この間のテレビの国会討論会におきまして、自民党は改憲を立党の政綱として持っておって、時あらばということでうかがっておるが、残念ながらいまその勢力は三分の二までなっておらぬ。しかし、究極の目標は、総理といえども総裁としてやはり憲法を自主憲法につくり変えるということに考えがあるに違いない。こういうような発言をして注目をされております。  こうした先ほどの倉石さんの最後の話、しかも倉石さんは、やめたあとの記者会見におきましても、私は憲法を自主憲法に改正をして、そうしてその運動の先兵になるのだ、こういうことを堂々と言っておられる。自民党員としての見解とすれば、それも了承されないでもないのですけれども、しかし、例の憲法九十九条というのは国会議員も拘束していますね。単に政府だけではありません、国会議員も拘束して、やはり忠実でなければならぬ、憲法を守らなければならぬ、尊重してそれを擁護しなければならぬ、こういう義務も課せられておる。ところが、そうした堂々たる発言をされておる。この福田発言と、同時にまた、この倉石さんのやめた弁、こういう関係で、総理のほうでは、憲法を守る、こう言っておられますけれども、この辺がどうもわれわれまたたてまえと本音と、こういうことになるような感じがするのです。総理は、そう表面は言っておられるけれども、いま言ったあなたを取り巻く人たちがそういった発言をしておられるのです。この点はどうしてもわれわれは理解できない。これだけひとつ総理の御見解を承りたい。
  189. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 倉石前農林大臣、これは辞表を提出されました。これは私が実はやめてくれと言ったわけではございません。倉石君は自発的にやめたのであります。そのときに私に申しますのは、とにかく私は憲法違反の言動はしておりません。しかし、何といっても十七日間も国会を空転させたという、私の言動が原因でございますから、その意味において私はいさぎよく職を引きたい。こういうことを申しまして、私はそれを了承して、倉石君がやめたのであります。したがいまして、これは何だかいまのように畑君あたりは、倉石君が憲法違反の言動をした、そういう意味で私が馘首したようにでもお考えだったら、これは違います。私は一応善処するということをお約束いたしました。しかし、この善処しようとした際も、皆さん方なかなか国会審議を始めてくださらない。そこで実情を皆さん方におはかりしました。倉石君の進退について倉石君からも相談を受けております。そこで私は、善処するつもりであります、かようにお答えをして、そこで審議を開いて、そうしてこの席でそのとおりを声明して、そうして後に倉石君が辞表を出して、そうしてその辞表を出したことも官房長官から委員会に報告して、そうして審議が始まったのであります。したがいまして、私は、倉石君自身どこまでも憲法九十九条、これは忠実に守っておる、かように考えておりますし、また皆さん方も、皆さん方お互いに同僚でございますから、同僚諸君のこの立場については、私は御理解をいただきたいと思います。やはり大臣であることが何もかも一番いい栄誉だと私は申しません。また、皆さん方に同情を押し売りするつもりもございませんけれども、おそらく皆さん方も、われわれの同僚がかようなことで引いた、そういうことについては一掬の涙はあるだろう、かように私は思う。だからその点は、あまりもう言いたくございませんけれども、ただ、根本的に間違いがあるようですから、私ただいま明確に申し上げたのであります。  次に、福田幹事長の発言であります。これについてはけさほどもお尋ねがありまして、その際に詳細申し上げました。そして私が総理総裁として別に矛盾してないことも、その際にお答えをしたのでございますから、それでひとつ御了承いただきたいと思います。
  190. 畑和

    ○畑委員 議論しておると長くなりますから、これ以上答弁を求めませんけれども、しかし、あの倉石さんがやめたことが、憲法の問題には関係ないのだ、こういうようなおっしゃり方のようだ。しかしこれは、どうもそれでは済まぬと思う。もしそれだったら、なぜ堂々と単独審議でも何でもかんでもやって、そして解散にでも何でも持っていったらどうだ、そういうふうに私は思う。そういう点がどうもわからない、そういうふうに私は思うのです。これはもう時間がかかりますから……。  それから次に、具体的な問題二、三、やはり政治姿勢に関する問題を申し上げ、それから最後のほうになって、やはりこれは政治姿勢に関係があるけれども、佐世保事件をめぐる警察のいわゆる行き過ぎ、これも一つの佐藤政府政治姿勢だと思う。警察とは違うかもしらんけれども、一応そんな形になっている。その辺について質問をひとつ、こういう考えであります。  まず最初に、簡単に触れたいのは、政治腐敗に対する根本的な反省が、われわれから見ると足りないようだ。根本的な反省がない、かように思う。いろいろ中央、地方を通じましていまや汚職が花盛り、はんらんをしておる。これはもう総理も認めるところだと思う。中央の問題においては、御承知のように例の昭電疑獄あるいは例の造船疑獄、それから、さらに最近では、吹原事件とか、また共和製糖事件、さらに最近はあの大阪のタクシー汚職、LPガス問題、ああいう問題が次々と起っておるわけであります。  この前の私の質問に対し、総理も、こういった点についても非常に反省はしておる、こういう姿勢を正さなければならぬ、こういうふうに考えておるというような御答弁がございましたけれども、オーバーかもしれませんけれども、戦後の自民党政治、これは—————だ、こういうふうに言えないこともなかろうと思うのです。これをぜひともひとつ、やはり総理自身が……(「取り消せ」と呼ぶ者あり)姿勢を正して、そして汚職の根絶ということにつとめなければいかぬと思うのです。この点、簡単でよろしゅうございますが、総理の決意のほどを伺いたい。   〔発言する者あり〕
  191. 井出一太郎

    ○井出委員長 ただいまの畑君の発言中、不穏当なところありとしまするならば、委員長において速記録を調べました上に善処いたします。
  192. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも政治に汚職がつきものだというような言い方がされる、ことに、ただいまも汚職の花盛りだというような表現がされますが、私そういうことばのうちにも、汚職と取り組む政治家の態度がどうも真剣味を欠いているのじゃないだろうか、かように思うのです。私は、ただいまのお話総理として、また自民党の総裁として謙虚に伺ったつもりでございます。このことをどうしてもなくするといいますか、もう二度とそういう批判を受けることのないように、これが国民に対するわれわれ政治家の責任だと思います。そこで初めて国民からも信頼の置ける政治が行なわれる、また、初めてあの政党は信頼ができる、こういうことにもなるのだろうと思いますので、十分謙虚にお話も伺います。また、ただいまの所感、それも私がただいま表現したとおり、私まことに残念に思っておるような次第であります。
  193. 畑和

    ○畑委員 次に、それでは法務大臣に伺いたい。  この問いろいろ摘発を見ました大阪タクシー汚職事件、LPガス事件でございますけれども、あの事件は關谷、寿原、両前または現代議士、この二人、それから贈賄側の二人、この四名の起訴で終わったような感じがするのであります。しかし、これは氷山の一食ではなかろうかと私は考えております。もっともっと大ものが隠れておるのではなかろうか、こういう感じがしてならないのであります。また、そういうことを言うているマスコミもあるわけですが、一体あれはもうあのままなのか、そういう点。それから、私この前の予算委員会の質問の際にも申し上げたのでありますけれども、大阪地検の特捜部がわざわざ東京まで、幾ら新幹線で近くなったとはいいながら、わざわざ出張してきていろいろな捜査をされる、こういうようなことでは、舞台が東京に移っておるのだから、東京関係のほうの捜査ができないのではないか、大阪だけではなくて東京のほうにも相当の問題がある、こういうようなうわさがあったのでありまして、そういうために私は、この前にも、ひとつ法務省のほうで指示をし、そして最高検のほうで東京地検の特捜部も使って、合同捜査本部でも設けてこれを徹底的に洗ってみたらどうか、こういうような提言をしたのでありますけれども、まだそういう時期でないというような返事があったと私は当時記憶をいたしております。しかし、大阪地検の捜査にはやはり限界があったと思う。大阪地検があれだけやったということは私は多といたしておりまするけれども、東京方面がさっぱりされてないような気がする。一体、東京関係について、東京タクシー協会関係等について捜査をされたのか、全然されなかったのか、あるいは捜査をしたけれども、何もなかったのか、こういう点について、時間があまりありませんから簡単でけっこうでございますけれども、法務大臣の御答弁を願いたいのであります。
  194. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  大阪のタクシー問題は、この前の処置によりまして全部済んだのであります。あとに、氷山の一角ではないかとか、あるいは大ものが隠れておるのじゃないかというようなことは絶対にありません。あれは縦横、あらゆる面から捜査をいたしまして、あれが全部の処置が済んだものと御了承を願いたい存じます。  それから、東京関係につきましては、何か東京にも大阪と似たような事件があるのではないかというようなふうに聞こえたのでございまするが、東京関係におきましては、捜査を開始するに足るだけの犯罪の端緒というものをつかまえてないのでございます。私は、東京にはそういう問題はなかったのであります。その点を御了承願いたい。端緒がつかまるならば、正々堂々と、公平無私に、あらゆる力を排して捜査する用意はいつでもあるのでありまするが、いま言いましたように、確かな犯罪の端緒というものがつかみ得なかったためにやっていないのであります。  それから、なお、大阪のタクシー問題につきまして、東京のほうにおきましても相当の協力を願っておるのであります。捜査その他につきましては、東京地検が相当の応援をいたしたことは事実でございます。ただ、犯罪の捜査は、われわれが合同でやったがいいとか、あるいは単独でやったがいいというようなことは、一切操作をいたしません。捜査当局の自主的な判断にのっとりまして、正々堂々と公正にやるたてまえになっておりまするので、その点御了承をお願いします。
  195. 畑和

    ○畑委員 東京関係については捜査の端緒がつかめなかった、残念ながらつかめなかったというのか、つかもうとしなかったのか。どうも、うしろの、つかもうとしなかったというほうに当たる、それが本音じゃなかろうか、こういうような感じがするのです。私がちょっちょっと聞いたところによりましても、あるようですよ。それをさっぱりやっておらぬ。だから私は聞くのです。それは端緒がなかったということを言うことこそ、それこそいま言った本音じゃないか、こういうような感じがするのです。まあしかし、これで時間をだいぶ長くかかってはいけないですから……。  それから、もう一つ聞いておきたい。特に東京関係については、この前公明党のほうから前の予算委員会のところで質問がございましたが、あのときにも、東京関係では相当タクシー関係で金が集まって、約一億ぐらい集まっておる。ところが、それが政治献金として届けられておるのが、全部調べても一億ぐらいだ、こういうようなことでございました。その点、大阪関係のほうは、比較的政治献金というベールだけはまとっておる、ところが、東京関係はその金額がだいぶ食い違う、こういうようなことも指摘をされたのでありますが、そういった政治献金の行くえ、こういうことにつきましても、東京関係についても調べてみたかどうか、これを一点聞きたい。
  196. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 東京関係につきましては、ただいま申し上げましたように、捜査を開始する端緒がつかめてないのでございます。したがいまして、政治献金があるとかないとか、そういうことは一切申し上げられません。わが検察当局におきましては、実に公正に、しかも正しく、不偏不党の精神でやっておるのでありまして、必ず端緒があるならば、いかなる力にも屈せずこれを捜査する勇気と努力を惜しむものではない。しかしながら、端緒も何もないのに、いたずらに想像をしたり、捜査を開始するようなことは一切いたしませんので、その辺とくと御了承をお願いしたい。
  197. 畑和

    ○畑委員 法務大臣うまいことを言うけれども、われわれは得心しない。  それから、次に進みます。政治資金規正法の改正問題について一言触れたい。  これは私、この前の予算委員会におきましても御質問申し上げたことがございます。この間、総理は、予算委員会において、政治資金規正法の改正案を今月の末までに提案したい、すると、こういうことを言っておられたと思う。その点、もう今月の終わりというと幾らもないが、そのとおり提案する見込みがございますか。
  198. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まことに残念ですが、少しおくれておるようです。今月のうちにというのはちょっと無理なようです。お許しを得たいと思います。
  199. 畑和

    ○畑委員 次に、御質問をいたします。  御承知のように、この政治資金の規制の問題は政界の汚職と非常に関連がございます。われわれ社会党のほうでは、これは率先して答申を尊重してやるべきだという考えでありまして、総理も答申を尊重するというふうに言われました。そのとおりやられれば、それこそ自民党にとりましても党の近代化に非常に役立つと私は思う。それを思い切ってやらなければならぬのじゃないか。それだのに、いままでの経過を見ると、どうもその点がわれわれは納得できない。世間も、世論もやはり同じであります。世論も、一体政府はどうしたのだというような非難が非常に多いと思います。これは総理も認めるところだと思うのでありますけれども、最近、御承知のように例の前の案がこの前の特別国会で廃案になった。あれは、われわれの目からすれば、答申の線から後退はしておるものの、答申の線をある程度尊重をしてやられた節が見えるのです。ところが、それが総理のほうの自民党の議員のほうからずいぶん長いこと引き延ばし戦術がありまして、与党、野党所を異にするというようなかっこうの引き延ばしの結果、とうとう廃案になった、御承知のとおりであります。そして、その後まだ次の案が出ておらぬけれども、最近新聞紙の報ずるところによりますと、自民党の調査会のほうで自治省のほうに申し入れをしたという話がございます。その申し入れも受け入れなければなるまい、こういった選挙局長の談も新聞で見たところでございますけれども、これによりますと相当大幅にそれが後退をしようといたしておる。その内容も長くなりますから一々申しませんが、新聞紙上で報道しておるところがそのとおりだと思うのでありますが、これによっていまいわゆる政府案を固めつつあると思います。これによりますれば、もう大骨小骨どころではない、もうコンニャクになる、こういうような状態だと私は思う。これを一体、総理は近いうちに提案すると言っておられるが、おそらく予想されるものは、そういったものに大後退をしたものになる、かように私には想像されるところでありますけれども、ところで総理、伺いたいのは、そういうことになりますると、いわゆる答申の線からはるかに後退をする、答申の精神を完全に踏みにじった、こう言われてもしかたがないと思うのですが、総理もかつて選挙制度審議会におきまして、答申は尊重すると言い、また選挙制度審議会設置法にも、政府はこれを尊重しなければならぬ、こういう規定が明瞭に書かれてあります。そしてまた総理も、選挙制度審議会にいつか臨んで、勇断をもって処置する、こういうことも言われたはずであります。ところが、どうもそれが廃案になったということで、これに関係せられた選挙制度審議会の島田委員長どもかんかんだ、こういったような状態で、さらにそれが後退しようといたしておるのでありますけれども、これに対して総理はどういう考えでおられますか。総理のその責任というか、その点政治姿勢にも関する問題でありますので、明確な御答弁を願いたい。
  200. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政治資金規正法案、ただいま自治省並びに党におきましていろいろ審議中でございます。私まだ一々伺っておりません。とにかくこの種の法律案は早く成立さすことだ、かように思っております。それにいたしましても、過去苦い審議の経験がございますので、この経験から私は成案を得るべくただいま努力中であります。いずれ成案を得ました上は国会に提案いたしますから、その際に十分ひとつ御審議をいただきたいと思います。
  201. 畑和

    ○畑委員 総理のさっきも言われた、通りやすいような案というような趣の話がありましたが、これが私はいけないと思うのです。総理総裁でありますから、ひとつ総理総裁の指導性を発揮されて、政党の近代化、日本の政治の浄化というような観点から党内を指導してもらいたい。ところが、どうもそれに迎合するようなことがあっては、私は、指導性の欠除といわれてもいたしかたない、かように考える。  そこで、この間赤澤さんが自治大臣に任命された。この赤澤さんは、かつては、その直前までは、この前の案について急先鋒になって反対されておった人だ。この方を藤枝さんの後任に——藤枝さんは、私の高等学校の先輩だけれども、ほめるわけじゃないが、しかしよくやりましたよ。ともかくあの自民党の仲間の人たちが、なんだかんだと言って難くせつけて引き延ばした。藤枝さんはそれを一々ごていねいに答弁をされておった。とにかくよくやったと思うのです。まじめな人だと私は敬服しておるのです。ところが今度は赤津君を、急先鋒をそのあとがまにすえた。急角度にキャップがかわるんですね。これじゃもう法案の行くえも私はわからないと思ったのだが、はたせるかなどうもおかしい。赤澤さん、ひとつ答弁してもらいたい。一体どういうふうなことをいま計画しているのですか。奨励法になっちゃいますよ。
  202. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 私は、決して反対の急先鋒でもないし、この前の衆議院での演説のことでございましょうけれども、よくお読みをいただきたいと思います。政治姿勢を正すということにつきましては、総理先ほど決意を述べられましたが、当然のことでございまして、私も非常にきびしい考え方を持っております。しかし御案内のとおりに、法案を提出します以上は成立しなければ意味がありませんので、非常に苦慮をいたしながら一日も早く成案を得たいと思って努力しております。今月末までに準備をせよという総理のおことばでございましたが、思わぬ空白などができまして、党の幹部もなかなか頭が回りかねるという面もございまして、少しおくれましたけれども、鋭意努力をいたしまして成案を得次第、皆さんの御審議の対象といたしたい、かように考えております。
  203. 畑和

    ○畑委員 赤澤さん、さっきも私、総理にも申しましたが、選挙制度審議会の答申ですね、これはもう非常に後退をしておる。これはこういうことになりそうだね。これじゃもう非常な責任だと思うのですよ。これで一体通りますか。世論が許しますか。そういった案を、あなた自治大臣として、幾ら自民党の圧力が強いといいながら、それをそのとおりやろうというのは……。その点にもう戻ると思うのですが、どうですか。
  204. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 何か案が出たような口ぶりのように承って驚いておるわけでございますけれども、まだだれにもその案も言ってもおりませんし、固まってもおらぬ階段でございます。
  205. 畑和

    ○畑委員 総理から、今月一ばいに出すなんて言ったが、少しおくれるだろう、といま弁解がありましたが、自治大臣の話を聞くと、畑さん、どういうところで聞いたのですか、そういうことは何もまだ固まってもおりません、こういうような返事だけれども、これこそまたおとぼけというか、ここだけ通ればいい、いずれは案が出るからということだろうと思うのだが、こういうずるい答弁はもうやめてもらいたい。しかし時間がかかるから先に進みます。この点はこれで打ち切る。  その次に申し上げたいのは、これまた政治姿勢に関することであります。  国会周辺のデモの規制の問題、この問題は、御承知のように去年の六月九日護憲連合のデモの申請、それから七月十一日の春闘共闘委員会、これは総評関係のデモ、それからことしの二月三日、これは共産党系の安保破棄中央実行委員会関係のデモ、これはいずれも国会の周辺をデモしたいという願いを公安条例に従って出した。ところが経路の変更等をさせられた。これに対して取り消しの訴訟を出すと同時に執行停止の申し立てをして、いずれも杉本決定が出ております。ところが、それに対して政府のほうでは、いずれもこの三つの案件に対しまして、いわゆる行政事件訴訟法二十七条の規定に従って総理の異議権を行使した。異議申し立てをした。異議申し立てをしたので、結局これは、同じ決定を下した裁判官が取り消ししなければならぬというようなことになって取り消した。こういう行政事件訴訟法の規定があって、その規定によってやられた。この経過は御承知のとおりでありますけれども、一方御承知のように、憲法には表現の自由の権利が明確に書いてあるのでありまして、こういう点で、そうした公安条例による経路変更等の条件をつけたのは表現の自由を侵すものだ、公共の福祉とはいえないというようなことで杉本決定がなされたが、それに対してこれだけ公共の福祉に関係があるのだからという理由を付して総理大臣が異議を出してストップになった。もとのとおりデモが規制された。最近のデモで許可されたのはベ平連のデモだけだ。あとは全部国会周辺のデモは許されておらぬ。あるのはいままでもあったけれども、これはデモでないデモだ。すなわちデモでない請願だということでいままで許されておったのだが、そうではなくて、正面切ってこういう申し立てがなされて、しかもいずれも異議が出されたのです。理由とするところは、公共の福祉にもとるということ、しかもこういうのを出す場合には、やむを得ない場合でなければならぬというまたもう一つの歯どめがあるわけです。よほどでなければこういう異議申し立てをしてはならぬというふうに行政事件訴訟法二十七条にも書いてあるわけです。ところが、こうして次々とおきまりのように三つも異議を出しておられる。これはもう明らかに私は二十七条の乱用であろう、かように思う。司法権に対する行政権の不当な介入だとわれわれは考えておるのでありまして、この周辺をデモしたところがたいした影響はなかろうと私は思うのです。もちろん三派全学連あたりは別ですが。いろいろ対象によってやはり考えるべきだと思うのです。それを一律にいかぬ、こういうことです。これじゃ、私は表現の自由が侵されておる、こういう決定が正しいと思うでありますが、デモでないデモ、請願の場合にも、警視庁のほうでわあわあ、声を出しちゃいかぬとかなんとかいうような、あれのほうがかえってうるさいんだ。デモの叫び声より、片方のそれのほうがよほどうるさい、そういう経験をわれわれしておるのでありますけれども、こういったことを続けてやるということは、実質上のデモ規正法じゃないか、こういうふうな感がするわけです。この点について、私は、憲法原理を党派的な偏見でそのもとに従属させようとするところの政府政治姿勢が問題だ、かように思うのであります。要するに権力側を批判するデモは、国会の周辺に関する限り全部だめなんだ、こういった姿勢は私は問題だと思うのです。この点ひとつ、これは法務大臣ですかな、法務大臣がいろいろ相談にあずかるんだと思うんだが、まず法務大臣の見解を聞きたい。時間がかかるから短くてけっこうだけれども、私は国会は聖域ではないと思うのです。諸外国にも例がないわけじゃないけれども、日本はほかの国にないところの平和憲法を持っておるんだから、その点をひとつ。これは自治大臣かな。
  206. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 私の所管でございますので、私から申し上げます。  畑さんは法律家ですから、今日の警察法というものは十分御承知の上で御質問になっていると思います。これは東京都公安委員会が、東京都には公安条例もございますので、条件つきで許可をいたしました。この間のも、決して不許可ではなかった。ただその経路変更と申しますか、距離にして二百メートルばかり縮めたということでございます。公共の福祉との関係でございますが、外国でもみなそういう扱いをしておりますことは御承知のとおりのことと思います。総理が異議陳述をいたしました全文は、「国会は、国権の最高機関であり、国政審議の場であるという本質にかんがみその審議がいかなる妨害、圧力をも受けることなく、公正に行なわれるよう常に静穏な環境が保障されていなければならないものであって、開会中の国会周辺の静穏の保持は、高度の公共の福祉の内容をなすものである。」というふうに述べられておりまして、これは何も本訴に関係ありません一つの行政処分でございますので、東京都の公安委員会のおとりになりました措置に対しまして、私も賛成の意を表しておるものでございます。
  207. 畑和

    ○畑委員 それは公安条例の関係ですね、それも私は不当だと思うのだ。この間の三件の場合は、いずれもほとんど国会が事実上ないときなんだ。開かれてはおっても、ほとんどやっていない、土曜日だとかなんとか、何もないときだ。それであるのに通り一ぺんの——国権の最高機関だ、静謐を旨としなければならないのに、それがデモで阻害される、一片のそういった文句で排除する、こういうことは、私はけしからぬと思う。  それから次に、それに関連をして、こうした行政措置による司法権に対する侵害が次々となされておるのでありますけれども、これを、いっそのこと法律によって国会周辺のデモだけを規制しようという、そういった企図があるやに聞いております。その点はどういうふうな、構想か何かあるのかどうか、法務大臣ですか、これは。法務大臣、簡単でいいからそのデモ規制の法律立案のあるなしについて……。
  208. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  自治大臣が一応お答えをしましたが、法務大臣としてもさきの御質問にお答えしておいたほうがいいと思います。  行政事件訴訟法の二十五条による執行停止の裁判は、これは本来の判決ではなくて、判決前の暫定措置と私らは承知しておるのであります。要するに行政処分であると考えておるのであります。こういう点からいたしまして、これに対して内閣総理大臣が異議の陳述によって制約を加える、これをもって行政府が司法権に不当に干渉するとか、あるいは憲法違反だというような解釈は一切とってないのでございます。私らは適法なものであると考えております。  なおまた、国会周辺のデモ規制を法律によってやるかやらぬかということは、目下研究中でございます。御了承願います。
  209. 畑和

    ○畑委員 いま法務大臣は執行停止だから、仮処分だからというようなことを言われたけれども、これは、何月何日にデモをするということは、その日一日しかないんだよ。その時間しかないんだよ。それの執行停止で、ちゃんと通らしてくれ、国会周辺を通らしてくれという仮処分なんだ。訴訟そのもので争うのは争うんだ。争うんだけれども、それを待っておっちゃ不測の損害がある、結局やれなくなっちゃうから、そこでいわゆる仮処分の申し立てをしてその決定をもらう。そんないいかげんなことを言ったってだめだよ、私は法律家だからわかっておるんだ。とにかくそれだけで済んじまうんだから、その仮処分こそ問題なんだ。それをとめるということになると、そのデモはできないということになる。そのことですよ。いいかげんにごまかさんでくださいよ——議論してもしょうがないからその次に進みます。  それから次に、アメリカの原子力航空母艦のエンタープライズ佐世保寄港の問題に関連するいろいろな問題についてお伺いしたい。  まず、アメリカの原子力航空母艦エンタープライズ寄港の問題については、いままでいろいろ議論もなされました。事前協議の問題だとか、あるいはまた寄港の目的というものがどこにあるのか、こういった問題等について、いろいろ政府考えと、それから艦長の言うたことが違ったりなどして、いろいろな問題もあったのでございまして、政府としては、またアメリカとしても、核アレルギーを解消しようというようなことでの一つのあらわれというふうにいわれておるわけでありますが、ともかくいままでの原子力潜水艦の寄港の際と今度の場合は、非常に量的、質的に相違があったと思う。前には安全性の問題、こういうことが一番大きな問題であったようでありますけれども、この間の原子力航空母艦エンタープライズの場合には、それよりもむしろ核兵器の持ち込みとベトナム戦争の基地化というようなこと、こういうことに対する国民の懸念、こういったことが大きく取り上げられておったのであります。その反対運動の重点もそこにあった。そうしてまたこの間のあの佐世保の事件については、公明党も民社党もおのおの街頭参加をいたしております。こういう量的な問題でも、前の原子力潜水艦の場合と今度の場合はずいぶん違っておるわけでありまして、さらにまた、三派全学連の問題等も入ってまいりまして、前には羽田事件等では非常に孤立したようでありますけれども、今度の場合は逆であって、非常に市民の同情を買った。その同情というのが、もとをただせば警察官の過剰警備にあった。こういうふうに一般にいわれておるわけです。ところで、この問題につきましては、いろいろこのエンタープライズの入港の問題につきましては、その直後に市民あるいは国民の潜水艦寄港の問題に対する反応の調査がなされておる。産経新聞の二月一日の朝刊に載っております。これを見ると非常に私はおもしろいと思うのであります。これによりますと、「あなたは今回のエンタープライズ佐世保寄港をどう考えますか」という問いに対しまして、「佐世保にとって好ましい」というのが四・九%。「好ましくないがやむをえない」が四八・五%。「ともかく好ましくない、反対」というのが三八・九%。こういう数字になっておる。それから「学生のとった行動をどう思いますか」という問いに対して、「まったく行きすぎ」というのが一五・二%。「考えはわかるが乱暴すぎる」というのが四九・七%。「同情できる、気持ちはわかる」というのが二七・七%。「これにたいしての警察官のとった処置をどう感じますか」という問いに対して、「かなり行きすぎ」というのが三〇%。「いくらか行きすぎ」というのが四三%。「当然」というのが一七・七%。「もっと断固取り締まれ」が一・八%。「わからない」が七・二%。こういうふうになっておる。これで警察官と学生のあれが大体わかるような感じがいたします。それからまた、「原子力艦艇の寄港は『核の危険はないし核兵器も乗せていない』という意見がありますが……」という問いに対して、「そう思う」というのが一一・九%、すなわち政府のとおりに考えるというのが一一・九%。「そうは思わない」というのが五四・八%もある。こういう状況でございます。「一方、原子力艦艇の寄港は『日本への核持ち込みの第一歩、核武装に進む方向だ』という意見がありますが……」という問いに対して、「そう思う」というのが四二・七%。「そうは思わない」というのが一六・三%。それからさらに「一口に原子力艦艇といっても潜水艦のような小さい艦艇は問題ないが、エンタープライズのような空母は問題だという人もありますが」という問いに対して、「空母は問題だが潜水艦なら問題ない」が三・六%。「原子力艦艇はすべて問題がある」が五九・一%。「艦艇の大小に関係なく問題ない」というのが一四・五%。「あなたはこうした騒ぎになるのはまったく困ったことだと思いますか。なるのが当然だと思いますか」この問いに対して、「まったく困ったこと」というのは五二・三%。「なるのが当然」というのが三八・三%。こういったような世論調査の結果が産経新聞に発表されておりますけれども、これを見ましても、「警官は行き過ぎ、学生に同情的」こういう見出しがついておるわけです。いずれにいたしましても、この世論調査の結果、市民、国民の名やえ方というのがわかるのでありますが、この点、政府のほうでは、この間のエンプラ寄港の問題が、一体政府考えておられるところの評価として、これを成功だったと思うのか、また日米親善のために役立ったと思うのか、そうでなかったと思うか、こういった点をひとつ、これに関連をして見解を述べてもらいたい。ひとつ外務大臣どうですか。
  210. 三木武夫

    ○三木国務大臣 エンタープライズの寄港は、いまお尋ねは日米親善のために役立ったかということですが、日米親善というそういう角度からわれわれは考えてないわけです。やはり日米安保条約によってアメリカが、あらゆる攻撃に対して日本を防衛しておる、責任を持っておる。また日本はそういう意味においてアメリカ艦隊の寄港を安全保障の一環として認めておる。そういうことでエンタープライズが寄港した。それが日米親善に役立つとか、あるいはよかったことをしたとか、そういう角度の評価ではなく、安全保障上の見地から考えておる次第でございます。
  211. 畑和

    ○畑委員 この間のエンタープライズの問題は、いろんな面で相当波紋を巻き起こしたことは事実であります。それをどういうふうに評価するかというような問題もございますが、ともかく政府は日米安保条約を受け入れるからには、その条約に従ってエンタープライズの寄港を認めるのは当然だというような考えからあの処置をとられた。しかし、おそらくは政府といたしましても見込違いではなかったのだろうか、かように感じます。政府は非常にそういうことで高姿勢であった。したがって、その高姿勢のもとに一連の警察の過剰警備がなされた。三派全学連への市民の同情というものがわいてきた。そして、それを契機にしていろいろ市民が寄港の持つ意味の重大性、平和に逆行する危険な道、こういったようなことについて真剣に考え始めたというようなことではないかと私は思うのであります。  そこで木村官房長官、あれから間もなく、国民感情を考えてみなければならない、警察に対してやじ馬的な気持ちも手伝ったのであろうけれども、一部の市民がある特殊な行動をしたというようなこと等についても、これは反省をしなければならぬ、こういったようなことを発表されておりますが、この点はどうですか。同時に、またあとで閣議でだいぶこてんぱんにやられたそうだが、私はあなたの言うことはそのとおりもっともだと思うのだ。率直にその点を、気持ちも言われておると思う。この点は木村官房長官、そういった言われたこと、あるいはお取り消しになったこと、この辺のひとつ心境を聞きたい。
  212. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 私が会見で申しましたのは、先ほど世論調査でお示しになったとおり、国民の理解が非常に足りなかった、それは政府としても反省しなければならぬ、こういう点でございます。特に広報関係を預かる私としての責任から出た発言でございます。
  213. 畑和

    ○畑委員 政府はPRが足りなかった、こう盛んに言われております。そういうことでそんな弱音を吹いちゃいかぬのだということで、官房長官がだいぶしかられた。その急先鋒は何か一部、中曽根さんあたりらしいが、そんなことでこてんぱんにやられて、結局PRが足りなかったというだけだ、間違っておらなかった、こういうようなことで意思統一されたようでありますけれども、しかし、それはあれだけのことではなかなか納得はいたしません。PRが足らなかったのじゃなくて、政府のほうのあれが間違っておるのじゃないかというふうに私も考えるわけです。  そこで、その次に一つ問題にいたしたいのは、この一連の佐世保事件にあらわれた警備警察の行き過ぎの問題でございます。この問題についてまず最初に申し上げたいのは飯田橋事件。この飯田橋事件というのは、佐世保へ行こうとする学生が法政大学から飯田橋の駅まで行って、電車に乗って、それから東京駅を経由して佐世保に行こうとした、そのときに飯田橋の駅のすぐ手前で、あそこで実力行使をされて、二百人くらいの学生のうち、約十分間に百三十一名の検挙者を出したということなのでありまして、しかもそれが、その根拠法規が公務執行妨害もあるけれども、大部分は、全部が凶器準備集合罪ということで検挙されておるのであります。私は、これは非常に問題だと思うのです。その当時も新聞からもいわれておりましたが、これは明らかな、いわゆる旧行政執行法の予防検束の復活である、かように新聞でもいわれておりました。またそういった専門家の意見が強いのでありまして、これは非常に問題だと思うのです。この点につきまして木村官房長官にひとつ承りたい。木村官房長官は記者団との会見のときに、直後にどんなことを言っておられるかというと、要するに暴力的な学生は厳重に取り締まる、こういうことですか、「角材などで武装した学生に対しては凶器準備集合罪を適用し、事前検挙したのは、警官、学生双方の犠牲をなるべく少なくし、市民に迷惑をかけさせないという政府従来の方針どおりの措置だ、今後もこうしたおそれのある場合は徹底的に摘発していく」、こういうふうに述べられたということが新聞にも出ております。双方の犠牲をなるべく少なくする、こういうこともあるかもしらぬけれども、ともかく凶器準備集合罪を適用して事前検挙をした、こう言っております。一体この事前検挙をしたというのは、どういう根拠に基づいて事前検挙というのですか。この点を聞きたい。
  214. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 私はあまり法律的に詳しくございませんので、ただ常識的な意味において、紛争が起こる前に検挙をされたという意味で申したのであります。
  215. 畑和

    ○畑委員 これは常識的に言ったと言われますけれども、これは問題なんですよ。事前検挙ということが問題なんです。犯罪が起きなければ検挙はできないのですよ。そこが問題なんです。だから、これがファッショといわれているのです。これは予防検束、例の行政執行法の代用だ、こういわれているゆえんはここにあるのです。幾ら三派全学連が暴徒のような連中であっても、そういう場合であっても、法治国であるのですから、日本はいま憲法で衣がえしたのですから、その憲法に従ってやはりやってもらわなくちゃ困る。幾ら佐世保にやりたくないといったって、それを飯田橋でとっつかまえる。学生は全部切符を買っているのですよ。切符を買って、そしてわずかの間でありますけれども法政大学から飯田橋まで行っているのです。いままで何度も行ったことがある。そのときも何のことはなかったのです、まとまって行っても。しかも持っていったのはプラカードだ。プラカードを持っていったのです。それで、その前にも所持品検査などされたから、みんなまとまって行ったのです。そうしたら前からとうしろからとはさみ打ちにして、それで一挙に十分間で百三十一人も検挙をした。そして何を使ったのだ、根拠法規は何かといったら、先ほど言ったように凶器準備集合罪だ。凶器準備集合罪というのは、これはもう御承知のように昭和三十三年ですか、十年前に例の暴力団の事件があったときに、そのために、それを防遇するために予備罪として新たに設けられたのです。そういう法律なんです。しがたってこうした法律を学生運動に適用する、政治運動に適用するということはしないというふうに議事録でもはっきり書いてある。ここにも議事録は持ってきてありますが、衆議院と参議院の議事録、附帯決議もあるのです。それで小野さんだとか島田さんだとか、そういった人たち、学者も出て、そして意見も述べているのです。それによると、とてもとてもプラカードなどはこの場合の凶器ではありません、こん棒もそうではありません、こういうふうに明確に言っている。しかもまた、その当時竹内評平さんが法務省の刑事局長だ。長いこと刑事局長をされておったけれども、この人もちゃんと法案の趣旨の説明をしている。それにも、とてもそういった労働運動や政治運動に適用する考えは毛頭ないのだ、しがたって、プラカードなどはもう問題外です、そういうものは凶器になりません。凶器の中にも二色ある。一つは性質上の凶器、そのままずばりの凶器です。すなわちピストルだとかそれから日本刀だとか、これはそのものずばりで凶器だ。それはいわゆる性質上の凶器というのです。それから同時にまた、用法によっては凶器になるという用法上の凶器というのがある。使いようによっては、なたや何かは普通は何かを断ち切るのに使うのだが、殺しにも使える、こういうことで、ああいうものは用法上の凶器というのです。だけれども、何でもかんでも凶器になるとはいっても、外見上見て、だれが見ても凶器とは言えないようなものはだめです、こういうことになっておる。しかもこれは予備罪だから、予備罪を処罰するにはこれは狭義に限定しなければいかぬ、予備罪なんだから。したがって、石もだめだ。これは、石ころはただそれだけじゃだめだ。だからこれは用法上の凶器にもならぬ。そういうものにならぬ。それでそのものずばりの性質上の凶器だけがこの準備集合罪における凶器だ、こういうふうに言われておるのであります。しかもそれに見合うような当時の速記録もある。附帯決議もちゃんとして、それでやっておいて、幾ら法律がひとり歩きすると言いながら、そうわれわれの立法権が侵害されるのじゃ困る。竹内壽平さんはいま東京高検の検事長ですよ。それじゃ一体自分の言うたことはどういうことになるのか。まことにどうもわれわれとしては納得できない。こういうことを堂々と、今度ひとつ一網打尽にやってやるにはということで考えついたに違いない。むしろこうして一網打尽にする一つの手段として凶器準備集合罪というのを使ったのだ。これは凶器を準備していくことですから、準備しあることを知って集まった者はやられるのですから、自分が持たないといっても、集まっていることを知って集まった者は準備葉合罪だ、こういうのですから、だから何でもひっくくれる。これが非常に私は問題だと思う。これを許すようじゃしようがない。それで、百三十一人のうち結局はみんな大体釈放された。さすがに裁判官はちゃんとしている。そうして最後に三十人勾留された。だけれども、結局起訴になったのは最後にはわずかに五人。しかもいままで法務省のほうでは問題があるということで、起訴はいままで羽田事件でもしなかった。ところが今度は起訴に踏み切った。しかもプラカードだ。この写真にもいろいろありますけれども、プラカードなんだよ。プラカードを持っていったやつは、それが凶器だ。それで警官隊と一緒になった。そうしたところが、そのとき一瞬にして凶器準備集合罪でやろうというふうに決意した、こういうことになっている。佐世保の準備じゃない。やはり警官とぶつかり合ったとき、警官との間で準備集合罪があったのだ、こういうのですね。ちょいとどうも、佐世保の準備ならまだわかるのだけれども、そういうことはわれわれでは理解ができない。それで、しかももう解散地点なんだ。そこは電車に乗ってしまえば、それで行ってしまうのだから。それだのに解散地点でわざわざ規制をして、それで、それは無届けデモだというのです。いままで何度もそういうことをやって無届けでもそこでは取り締まられたことはない。それを、無届けデモだ、それを制止をした、ところがそれによって打ってかかったのでやったのだというのだ。肝心な傷害の程度はどうかというと、学生は、えらいたくさん負傷したりなどしている。ところが一方警官のほうはどうかというと、わずかに負傷は一名じゃありませんか。これは非常に問題ですよ、ここに破片がございますが、これはそのときになぐられてこわれたあれですよ。これがプラカードのあれです。こういうことは非常に問題だ。これじゃ私は納得はとうていできない。われわれはこの点を徹底的に究明しなきゃならぬ。そこで国家公安委員長あるいは法務大臣と、両方聞きたい。まず最初国家公安委員長に警察のほう。それからあなたのほうは起訴の問題。先に警察のほうを聞きたい。
  216. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 お答えします。  先ほどのデモ規制のときに、畑さんも、全学連は別だと、こうおっしゃいましたね。これは、きのうもたいへんな騒動を三里塚でやっております。ですから、そういう常習的な暴力行為に訴えるこういう一部の学生諸君を、どうしてそこまでかばわれるか、私はこういった問題につきましてはお互いに冷静に考えてもらいたい。いいですか。あのときは、あなたのおっしゃることが事実と違いますから、その点を申し上げる。お互いに、あなたもいま宿舎をおかわりになったかもしれませんが、私ども九段におりまして、あそこの法政大学はほんの近所でございまして、あのときのことは私もよく知っております。(「見ているか」と呼ぶ者あり)見はいたしませんけれども、しかしそこに住んでいるわけですから、情報はすぐ周辺から耳に入りました。そのときは無許可のデモをやった。しかも、プラカードとおっしゃるけれども、いまなかなかあの諸君は非常に知恵がありまするから、御承知のとおりに、柄は、プラカードをぱっと割れば、すぐそれが例の角棒になって、そしてそれを持って至るところで戦っておることは、これは事実でございます。こういう無軌道なことを常習する団体でございまするので、警察としては非常に憂慮いたしました。しかも無届けで、飯田橋へ向かって喚声を上げて、かけ足で通行しようといたしました。そしてあらかじめ偵察を出しておいて、警官がおることを知って襲いかかったわけであって、これはあくまで現行犯でございます。何も戦前の、行政執行法などにいってある、つまり公安を害するおそれがあるとか、そういうことじゃなくて、明らかに現行犯、公務執行妨害の現行犯。さらに学校でいろいろな準備を整えて、ヘルメットをかぶって、そしてそういういろいろなこん棒みたいなものを持って襲いかかったのでございまするから、私は当然凶器準備集合罪が適用になるというふうに判断をいたしております。
  217. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げますが、飯田橋事件は原子力空母の佐世保入港に反対するいわゆる三派全学連の学生が約二百名ほど、警備に当たる警察官に共同して危害を加える目的で角棒などの凶器を準備し、かつ現に警察官に向かって角棒でなぐり飛ばした、こういう事件であります。これはいま申し上げましたように、共同して危害を加える目的で角棒などの凶器を準備して、現に警察官に向かって角材でなぐりつけたという、この事実は現実にある。これはとりもなおさず凶器準備集合罪に適合するものであります。凶器準備集合罪にりっぱに適合するのみならず、あわせて公務執行妨害罪の犯罪をも構成するということはこれは明らかでございまして、別に疑いはないと思う。お述べになりました戦前の行政執行法一条にいう予防検束、これは何も犯罪も起こっておらぬのに、犯罪が成立しないのに予防のために身柄を拘束するというのであって、これは全然性質が異なるものでございます。  なおまた、この問題は過去におきましても例があるのでございます。凶器準備集合罪というのは、御承知であると思いまするが、まず第一の例といたしましては、いわゆる早大事件というものがございまして、三十九年の七月二日に学生約百名が早大の二号館の教室で会議中の他派の学生四十名を教室から追い出そうと企てて、杉の角材でもって準備をしておった。そういう点からいいまして、ここに例があります。なおまた、清水谷の事件にも凶器準備集合罪という例がございます。凶器は御承知のように、いまお述べになりましたように、本来性質上の凶器もあれば、こん棒とか角材のような用法上の凶器も含まれておる。用法上の凶器というのは御承知のように、もう先生は専門家で非常にお詳しいからあれだろうと思いますが、社会通念上に用法上のものを考える。大きさ、形状、効用等のいろいろな社会上、用法上からされる。準備といえば、必要に応じていつでも加害が加えられるような措置においておくということ。それで私は、この飯田橋の事件はりっぱに凶器準備集合罪に適合するものと考えておりまするので、御了承を願いたい。
  218. 畑和

    ○畑委員 二人の答弁はもう私は非常に不満だ。とにかく話にならぬ。これが政府の高姿勢のゆえんなんだな。これでやっておるのだ。それは幾ら全学連であろうがなかろうが、何であろうが、そういった法律を拡大解釈してはいけませんよ。それでは、またおそるべきあの過去の時代がやってくる前兆だと私は思うのだ。一体この診断書を見なさい。これだけ集まっておる。三十も診断書がありますよ。ヘルメットを取って、そしてぶんなぐってやっておるのです。豚箱に入れられてしまうから、おとなしくして、わからずに済むかもしれないけれども、われわれがいるからこうして明らかになる。一方、警察官は負傷は一名ですよ。そういう権衡の問題もあるでしょう。それだけでもわかるでしょう。どちらが先にやったのかわかるですよ。そんな行かせまいとする——ほっておけば飯田橋から行ってしまうのですよ。行って向こうで犯罪があったら、つかまえるならつかまえたらいいでしょう。何も無理して飯田橋でいわゆる事前検挙で——傷を少なくするとか被害を少なくするとかいっても、とにかく佐世保に行かせたくないと、こういうことなんですよ。そのために飯田橋でとっつかまえたんだ。理屈づけだけは、佐世保の準備集合罪ではおかしいから、その襲いかかったとき、そのとたんに準備集合罪が成り立ったんだ、共同加工の意志がそこで発生したんだという、こういうおかしな起訴になっております。起訴状自体を見ましても。これはもうそんなごまかしはきかぬですよ。ともかく私は、そういう点で、二人の答弁は非常に不満だ。もうこれは保留するよ。これは、そんなばかなことはない。これは非常な不誠意だ。そういう姿勢でやるからこそ、学生の教育も何もできない。学生問題は、治安問題だけで解決すべき問題じゃ私はないと思うんだ。やはりあくまで教育問題ですよ。いま、なぜああして一部の学生が急進化するかということもよく考えてもらいたい。それは、やはり政府・与党のいわゆる高姿勢、あるいはまた、さっき言った右寄り、これがあんまりひどい。それと同時に、われわれ革新の側のほうの指導力の欠除もあります。それから、そういった停滞もあります。そういった点についてのやはりあせり、そういったものが学生をそういった急進化に追い込む。そういう点も、われわれ自身も反省していますよ。しかし、政府のほうでももう少しもっと教育的な面でやってもらいたい。この間の九大の事件なども、九大のほうは、学生をしょうがないから受け入れた。しょうがない、門を開いた。しかしながら、結局、結果においては、大学の自治がどうのこうのといっても、結局は大学の自治を守れたんだ、どうやらこうやらまがりなりにも。そして学生に対しては教育的な効果は少しはあったようだ。やはりそういう点で、警察のほうは逆なんで、それを私は問題にしようとしている。時間がありませんから次に進みます。  それから次に、博多事件、駅の事件といいます。これは時間があまりありませんから詳しく申しませんけれども、博多の駅へそののがれた連中が着いた。そうしたところが、それを待ち受けていたものはやはり警察の暴力だった。そしてコンコースのところで窓から外へ出ようと思っても、外の改札口のところで全部十重二十重に囲んでおる。そしてなかなか出られないで、そこでシュプレヒコールをやった。そうすると実力規制をされた。それで結局は、どうっとたくさんの何倍もの警官が入ってきて、そうして十三段もある階段を引きずりおろしたり飛ばしたり、そうして結局最後には、改札口から突き出して、そこで所持品検査をしたという。一体所持品検査をしたのはどういう根拠に基づくのか。警察庁長官いますか、国家公安委員長じゃわからないよ、警察庁長官。
  219. 井出一太郎

    ○井出委員長 国家公安委員長。
  220. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 飯田橋事件で、学生側の診断書をお持ちになったわけでして、警察官は一名の負傷だとおっしゃいましたけれども、実は私のほうの調査は違っておりまして、警察のほうもちゃんと診断書があるわけなんで、警察官は二十九名けがをしております。学生が十三名でございます。  それから、博多の駅のことでございますけれども、気になりましたので、当然私も、直接見はいたしませんけれども、いろいろ八方手を尽くして調査をいたしました。
  221. 畑和

    ○畑委員 それはもういいですよ、前の問題だから。博多事件。
  222. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 いや、博多の駅でございます。  まあ、とにかくあの急な階段のブリッジから、首をつかんで取っては投げ、取っては投げというような表現を漏らしておられる学者もあるし、いまそれに類することを畑さんがおっしゃいました。これはそういうことであったら、あすこでけが人が出ておるはずだけれども、一人もけが人も、足をくじいた者もすりむいた者もないわけで、私たちはそういったことはなかったと思っております。しかし、この問題は、いま人権擁護の点ですでに福岡の法務局に提訴されておりまするので、この正しい御判断を待ちたいと考えております。
  223. 畑和

    ○畑委員 根拠法は何なんだ。なんで所持品検査をした。
  224. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 職務質問。これは警職法にもございますし、もとは警察法に根拠がございます。
  225. 畑和

    ○畑委員 警職法は何条だ。警職法のその条文を示してくれ。根拠法規。
  226. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 もちろん法律は調査しております。で、職務質問は言うまでもなく警職法二条でございます。ここの場合は鉄道から要請があった。で、いろいろな不安な情報が入っておりますし……
  227. 畑和

    ○畑委員 いいですよ、そんなことは。警職法のことを聞いている。
  228. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 警職法二条でございます。
  229. 畑和

    ○畑委員 二条だと。二条にはそういうところはありませんよ。二条には、所持品検査をしていいという規定はないのです。かつて十年前に警職法の改正を企図したんだ。そのときには、そういうことをやりいいように改正案がなっていたけれども、反対でつぶれたんだよ。それで、いまはやはり依然として前の警職法が適用になっている。第二条には「停止させて質問することができる。」ということだけなんだよ。それで、所持品などを検査できるのは、令状によって逮捕された場合とか、現行犯によって逮捕された場合にだけその身柄を、中を捜索し、身体検査することができる、こういうことがあるだけであって、警職法の二条には「停止させて質問することができる。」ということしか書いてない。それなのに強制的に所持品検査をしたのはどういうわけかと、こう言う。
  230. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 お答えいたします。  強制的にはやっておりません。あの場で逮捕された者四人は、これは御案内の刑訴法二百二十条によるわけでございますが、その他はみんな丁寧に、ひとつ見せていただきたいと言っている。(発言する者あり)職務質問の際に、まあとにかくからだのどこかがふくらんでいるのをさわってみるぐらいなことは、これは常識ですが、所持品の場合は、大きな袋などを持っている方は、中をあけてみせていただけませんか。調べてみましたところ、見せないといって去った学生もありました。しかし、進んで、じゃ見てくださいといった学生の所持品をのぞかしてもらっただけであります。これはあくまで強制したものではございません。
  231. 畑和

    ○畑委員 さっきうしろのほうからも言われておったが、そういうことを一体だれが信用するか。相手は三派全学連ですよ。三派全学連が、どうぞ見てくださいとか、そういうことを言うはずがないんだ。また、現に、それを現認しておるところの井上正治教授もいるし、それから、朝日の岩垂記者もちゃんと見ているんだよ。それでまた、そのほかの報道陣もみんな見ておるんだよ。そのときの模様は、あんたが言ったような、そんな、どうぞ見てくださいなんという、それで断わった人はそのまま行っちゃったと、こういうようなことを、あんた、見たようなことを言うけれども、私も現地は行って聞いてきたんですよ。調査は全部してきたんですよ。その結果、これはやはり職権乱用だとこう思ったからこそ、全学連であろうが何であろうが、こういった過剰の警備はやっちゃいかぬ。やはりそう思う。だから私はこう言っているんだ。大体、井上教授にも私、会いました。井上教授は御承知のように刑法学者です。刑法学者が、朝、自分のところの学生の一部が出迎えに行っているから心配だということで行ってみた。そして一部始終を全部見聞きしているのです。その結果を聞きますと、彼の著述もございます。いま時間がありませんから紹介しませんけれども、それから、人権侵犯の調査の申し立て書にも書いてあります。それを見ましてもわかるのですけれども、そんなものじゃありませんよ。結局やはり有無を言わせずやったんです。それでしかも井上教援は、こう私に漏らしておりました。私は刑法学者として憲法を教え、刑法を教えております。人権がいまは尊重されているんだ、犯罪人といえども人権を守るようになっているんだ、こう私は教えてきている、ところが、目の前でその人権が侵されたのを見て、私はそのまま黙視することができなかった、そこで、福岡の法務局に対して人権侵犯の調査の申し立てを電話でとりあえずした。そのあと正式の申し立てをしたようでありますが、それも私の手元にありますけれども、学者ですよ。教育者ですよ。そういう人がそんなうそを言うはずはない。それだけではない。岩垂記者も同じようなことを言っているのです。岩垂さんもそのあとでまた佐世保でやられておりますよ。その人も博多でも見ていますよ。そういうごまかしは私はきかぬと思う。絶対もうこれはそういう答弁は許すことはできない。冗談じゃない。どうですか。
  232. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 九大の法学部長が書かれた中央公論もここに持っております。中央公論に論文をお書きになったのを持っております。よくこれも読みました。私はこの考え方はおかしいと思っておりますけれども意見は申しません。しかしながら、ただいま申し上げましたように、これは法務局にすでに提訴されてあるわけでございまするから、そういうことは公正な判断があると思いますので、その結果を私たちは待ちたいと思います。
  233. 畑和

    ○畑委員 警察庁長官来たかね。来ないんでしょう。来ないんですね。——これは長官よりほんとうは県警本部長を呼びたいのです。
  234. 川島博

    川島(広)政府委員 ただいまの御指摘の問題でございますが、博多駅におきます所持品検査あるいは職務質問等の問題でございますが、ただいま国家公安委員長が答弁されましたのが原則でございます。具体的に申しますと、あの日は事前情報といたしまして、御案内のとおりに、飯田橋の事件等もこれあり、さらにまた途中の駅々におきまして、たとえば静岡の駅におきましては、角材十二本を携行して乗車しようとしました学生に対しまして職務質問をいたし、彼らは角材をそのままそこに遺留をして乗車をしたという経緯があり、さらに加えまして、大阪の駅におきましても、七十名程度の学生が角材六十七本、これは後に領置をいたしたわけでございますけれども、そういうようなものを持って乗車をした経緯もございます。加えまして、事前情報といたしまして、きわめて信憑性の高い情報といたしましても、アンモニアでございますとか、あるいは硫酸等のものを持ち込んでくる、ペンキその他破壊道具等も持参をするというようなこともございまして、博多駅頭におきましてはいろいろな犯罪が予想されましたので、博多駅構内には、駅員はもちろんでございますが、いわゆる公安職員等も同時に待機をしておる。そういうところに下車をしてまいったわけでございます。したがいまして、直ちに学生等はその駅構内におきましていわゆる渦巻きデモ等の行為に及びまして、そこで、駅長はみずから紙に書いた警告文等を示し、あるいはまたマイクで駅構内から立ちのくようにという警告をしばしば発せられたようでございますけれども、全然学生らはこれに応ずる気配がなかったわけでございます。そのようなことがかなり時間続きまして、そこで、駅のほうから警察官にも応援要請がございまして、そこで警察官は駅構内に百名程度が入ったわけでございます。  ただいまお尋ねの所持品検査だけに限って申しますと、その根拠は、御案内のとおりに警職法第二条でございます。二条には、いまお尋ねのように、停止をさせて職務質問することができるというふうになっております。御承知のとおりに、警察が用います手段には強制手段と任意手段とございまするが、その中の、いま申しましたのは、所持品検査は、あくまでもこちら側から、中に何が入っておりますかというような形でお尋ねしたわけでございます。中には、そんなことかってにみんな見ろというふうなことで捨てぜりふを残して開いて見せた者もおりまするし、あるいはまた見せるものかと、こう言って見せないで行った者もございます。いずれにいたしましても、そのような経緯の中で、われわれといたしましては、任意手段による所持品の検査と申しましょうか、見せていただいた、これが実際の経緯でございます。
  235. 畑和

    ○畑委員 いいかげんなことを言いなさんなよ。そんなことでごまかされやしません。一体硫酸がありましたか。硫酸や何かあったのですか。大体そんないいかげんな情報で——その情報の確度なんていいかげんなものだ。それからこん棒なんかありましたか。こん棒や何か持ってないはずですよ、あのときの学生は。硫酸なんか等々はありやしませんよ。そういうことで、とてもわれわれ納得できないですね。どれだけあったんだい。何があったのかね。一つ一つ答えてくれ。何かそれを裏づけるようなものがあったかどうか。検査の結果、何を持っていたか。
  236. 川島博

    川島(広)政府委員 学生のほうで、いま申しましたように、任意に承諾を得て見せてもらった数は、ボストンバッグその他二十五個でございます。その中には何も入ってございませんでした。ただ、佐世保におきまして、実際にはアンモニアあるいは発煙筒が現実に使われております。御参考までに。
  237. 畑和

    ○畑委員 そんなことはどうもあれですよ、話にならぬですよ。  ひとつ、ここに井上法学部長の書いたあれがあるのです。ちょっと読んでみます。「間もなく午前七時一〇分前後、同警備部長の右手が一閃高く上るや、改札口から、待ち構えていた機動隊員は学生目がけて勢いよく突っ込んだ。学生の背後は公安機動隊員によっていつの間にかとり囲まれていた。凄惨な光景はそれから始まった。分断された学生は、一人ひとり出札口目がけて階段を投げ飛ばされ突き飛ばされて、ころがり落ちる者、報道陣にぶつかる者、荷物を奪われた者、この時の光景は、テレビ・ラジオ・新聞その他各週刊誌などで詳細に報道されたところである。そうしてころがり落ちた学生は、下に待ち受けていた機動隊員にエリ首や腕をつかまれて外に引きずり出され、数名がかりで所持品検査が始まった。彼らの手にした小さいバッグのチャックを無理やりに開き、そして中を点検した。「何をするんだ」「何も調べられるものは持っていない」というのが、彼ら学生の精一杯の抵抗だった。というのは、機動隊の背後には、公務執行妨害罪という強力な武器が用意されており、もしちょっとでも抵抗しようものなら、ただちに公務執行妨害罪ということで逮捕されるからである。現に四名の学生がちょっと抵抗したというだけのことで、本署で逮捕されている(しかし、勾留請求は却下された)。「ずい分ひどいではないか」とわたくしが幹部の一人に問いかけると、彼は「硫酸を持っている虞れがあるから」と答えていた。はたして、これほどのことをしなくてはならないほど、その情報の確度は高かったのだろうか。そばで他の機動隊員はさかんに一人ひとりの顔写真を撮っていた。」こういうようなことを言うておられるのです。これはとにかく大学の教授ですから、そううそのことを言うはずはない。しかも刑法学者だから。試みに私はあれしたんだが、とても納得ができない。  では、その次に進みます。  最後に、佐世保の事件です。との佐世保の事件もこれはひどい。私も現地へ行っていろいろ調べ、人に聞いたりなどしてきましたけれども、非常にひどいものだったようです。特にその中で問題だと思うのは、ともかくも抵抗力を失った学生あるいは市民、そういった人たちをめちゃくちゃに棒でなぐったり、足でけったりしておるのです。こういうことは明らかに過剰防衛どころじゃないと私は思うのです。それはもう逮捕してからあるいは抵抗力を失った者をやるのは、これは別の犯罪ですよ。明らかに特別公務員暴行陵虐罪に当たるとわれわれは判断しております。そのこと自体が犯罪である。とにかく警備の過剰というような問題ではないようです。そのうちの例が幾つかございます。その例を見てみましても、非常にその当時の模様はひどいものだったようであります。この点はひとつ十分に反省してもらいたいのです。そのおもなるものを申し上げます。  一つは、女子学生が十七日平瀬橋で全身打撲、特に腹部を、腹を機動隊員多数にけられてじん臓が破裂した。十七日夜は危篤状態、以後絶対安静で入院したけれども、奇跡的に回復した。これは岡山の女子大学生です。それから、男子学生一人、佐世保橋にて逮捕後、警官に両手を持って連行される途中、別の機動隊員によって正面からひざがしらで大事な局部をけり上げられた。そのために睾丸が二、三倍にはれ上がって、とうとう立ち居ふるまいが当分の間できなかったということです。これは警察に行きましたけれども、調べや何かでも全然横になっていた。それから、男子学生が警棒によって後頭部打撃を受けて、手の甲でこうやった。そうしたら手の甲を骨折した。これで手術して入院中。これはちょうど私も見舞ってまいりました。そういった状況を本人からも聞きました。それから、男子学生が十八日平瀬橋の上において逮捕された後に、有刺鉄線の上を引きずられて、肉が裂けて骨が露出した、こういう事実もあります。それから、これは新聞にも出ておりますけれども、朝日新聞の岩垂記者、これは朝日ジャーナルによく書いてあります。朝日ジャーナルをひとつよく読んでください。これは朝日の岩垂記者、この記者の場合も、記者であることを弁明しても、こうしてあれを示しても、それをかまわずに無視して警棒で乱打して、入院して加療した。これは明らかに学生じゃないですからね。それから、郵便局の局員がやはり、五十歳つの、六十歳近くの局員が、間違えられたのか、ともかく
  238. 川島博

    川島(広)政府委員 ただいまの御指摘の問題でございますが、博多駅におきます所持品検査あるいは職務質問等の問題でございますが、ただいま国家公安委員長が答弁されましたのが原則でございます。具体的に申しますと、あの日は事前情報といたしまして、御案内のとおりに、飯田橋の事件等もこれあり、さらにまた途中の駅々におきまして、たとえば静岡の駅におきましては、角材十二本を携行して乗車しようとしました学生に対しまして職務質問をいたし、彼らは角材をそのままそこに遺留をして乗車をしたという経緯があり、さらに加えまして、大阪の駅におきましても、七十名程度の学生が角材六十七本、これは後に領置をいたしたわけでございますけれども、そういうようなものを持って乗車をした経緯もございます。加えまして、事前情報といたしまして、きわめて信憑性の高い情報といたしましても、アンモニアでございますとか、あるいは硫酸等のものを持ち込んでくる、ペンキその他破壊道具等も持参をするというようなこともございまして、博多駅頭におきましてはいろいろな犯罪が予想されましたので、博多駅構内には、駅員はもちろんでございますが、いわゆる公安職員等も同時に待機をしておる。そういうところに下車をしてまいったわけでございます。したがいまして、直ちに学生等はその駅構内におきましていわゆる渦巻きデモ等の行為に及びまして、そこで、駅長はみずから紙に書いた警告文等を示し、あるいはまたマイクで駅構内から立ちのくようにという警告をしばしば発せられたようでございますけれども、全然学生らはこれに応ずる気配がなかったわけでございます。そのようなことがかなり時間続きまして、そこで、駅のほうから警察官にも応援要請がございまして、そこで警察官は駅構内に百名程度が入ったわけでございます。  ただいまお尋ねの所持品検査だけに限って申しますと、その根拠は、御案内のとおりに警職法第二条でございます。二条には、いまお尋ねのよう−に、停止をさせて職務質問することができるというふうになっております。御承知のとおりに、警察が用います手段には強制手段と任意手段とございまするが、その中の、いま申しましたのは、所持品検査は、あくまでもこちら側から、中に何が入っておりますかというような形でお尋ねしたわけでございます。中には、そんなことかってにみんな見ろというふうなことで捨てぜりふを残して開いて見せた者もおりまするし、あるいはまた見せるものかと、こう言って見せないで行った者もございます。いずれにいたしましても、そのような経緯の中で、われわれといたしましては、任意手段による所持品の検査と申しましょうか、見せていただいた、これが実際の経緯でございます。
  239. 畑和

    ○畑委員 いいかげんなことを言いなさんなよ。そんなことでごまかされやしません。一体硫酸がありましたか。硫酸や何かあったのですか。大体そんないいかげんな情報で一その情報の確度なんていいかげんなものだ。それからこん棒なんかありましたか。こん棒や何か持ってないはずですよ、あのときの学生は。硫酸なんか等々はありゃしませんよ。そういうことで、とてもわれわれ納得できないですね。どれだけあったんだい。何があったのかね。一つ一つ答えてくれ。何かそれを裏づけるようなものがあったかどうか。検査の結果、何を持っていたか。
  240. 川島博

    川島(広)政府委員 学生のほうで、いま申しましたように、任意に承諾を得て見せてもらった数は、ボストンバッグその他二十五個でございます。その中には何も入ってございませんでした。ただ、佐世保におきまして、実際にはアンモニアあるいは発煙筒が現実に使われております。御参考までに。
  241. 畑和

    ○畑委員 そんなことはどうもあれですよ、話にならぬですよ。  ひとつ、ここに井上法学部長の書いたあれがあるのです。ちょっと読んでみます。「間もなく午前七時一〇分前後、同警備部長の右手が一閃高く上るや、改札口から、待ち構えていた機動隊員は学生目がけて勢いよく突っ込んだ。学生の背後は公安機動隊員によっていつの間にかとり囲まれていた。凄惨な光景はそれから始まった。分断された学生は、一人ひとり出札口目がけて階段を投げ飛ばされ突き飛ばされて、ころがり落ちる者、報道陣にぶつかる者、荷物を奪われた者、この時の光景は、テレビ・ラジオ・新聞その他各週刊誌などで詳細に報道されたところである。そうしてころがり落ちた学生は、下に待ち受けていた機動隊員にエリ首や腕をつかまれて外に引きずり出され、数名がかりで所持品検査が始まった。彼らの手にした小さいバッグのチャックを無理やりに開き、そして中を点検した。「何をするんだ」「何も調べられるものは持っていない」というのが、彼ら学生の精一杯の抵抗だった。というのは、機動隊の背後には、公務執行妨害罪という強力な武器が用意されており、もしちょっとでも抵抗しようものなら、ただちに公務執行妨害罪ということで逮捕されるからである。現に四名の学生がちょっと抵抗したというだけのことで、本署で逮捕されている(しかし、勾留請求は却下された)。「ずい分ひどいではないか」とわたくしが幹部の一人に問いかけると、彼は「硫酸を持っている虞れがあるから」と答えていた。はたして、これほどのことをしなくてはならないほど、その情報の確度は高かったのだろうか。そばで他の機動隊員はさかんに一人ひとりの顔写真を撮っていた。」こういうようなことを言うておられるのです。これはとにかく大学の教授ですから、そううそのことを言うはずはない。しかも刑法学者だから。試みに私はあれしたんだが、とても納得ができない。  では、その次に進みます。  最後に、佐世保の事件です。この佐世保の事件もこれはひどい。私も現地へ行っていろいろ調べ、人に聞いたりなどしてきましたけれども、非常にひどいものだったようです。特にその中で問題だと思うのは、ともかくも抵抗力を失った学生あるいは市民、そういった人たちをめちゃくちゃに棒でなぐったり、足でけったりしておるのです。こういうことは明らかに過剰防衛どころじゃないと私は思うのです。それはもう逮捕してからあるいは抵抗力を失った者をやるのは、これは別の犯罪ですよ。明らかに特別公務員暴行陵虐罪に当たるとわれわれは判断しております。そのこと自体が犯罪である。とにかく警備の過剰というような問題ではないようです。そのうちの例が幾つかございます。その例を見てみましても、非常にその当時の模様はひどいものだったようであります。この点はひとつ十分に反省してもらいたいのです。そのおもなるものを申し上げます。  一つは、女子学生が十七日平瀬橋で全身打撲、特に腹部を、腹を機動隊員多数にけられてじん臓が破裂した。十七日夜は危篤状態、以後絶対安静で入院したけれども、奇跡的に回復した。これは岡山の女子大学生です。それから、男子学生一人、佐世保橋にて逮捕後、警官に両手を持って連行される途中、別の機動隊員によって正面からひざがしらで大事な局部をけり上げられた。そのために睾丸が二、三倍にはれ上がって、とうとう立ち居ふるまいが当分の間できなかったということです。これは警察に行きましたけれども、調べや何かでも全然横になっていた。それから、男子学生が警棒によって後頭部打撃を受けて、手の甲でこうやった。そうしたら手の甲を骨折した。これで手術して入院中。これはちょうど私も見舞ってまいりました。そういった状況を本人からも聞きました。それから、男子学生が十八日平瀬橋の上において逮捕された後に、有刺鉄線の上を引きずられて、肉が裂けて骨が露出した、こういう事実もあります。それから、これは新聞にも出ておりますけれども、朝日新聞の岩垂記者、これは朝日ジャーナルによく書いてあります。朝日ジャーナルをひとつよく読んでください。これは朝日の岩垂記者、この記者の場合も、記者であることを弁明しても、こうしてあれを示しても、それをかまわずに無視して警棒で乱打して、入院して加療した。これは明らかに学生じゃないですからね。それから、郵便局の局員がやはり、五十歳つの、六十歳近くの局員が、聞違えられたのか、ともかくした佐世保川の水でございますけれども、この水は、実は平瀬橋の場合には付近に放水に使います消火栓が全然ございませんので、やむを得ずあの水を使ったわけでございます。しかしながら、衛生研究所で検査をしていただきました水質検査の結果が手元にございますが、これによりますれば、いま御質問の中にも数字がございましたけれども、結論から申しますと、夏の江ノ島海岸の水よりははるかにきれいであるということであります。
  242. 畑和

    ○畑委員 そんな無責任なことを言うものじゃない。江ノ島の水と比べてはかなわぬよ、それは。そういうことで身をかわしては困る。それはそのままでよろしい。それじゃ、この催涙剤を混入した放水のことについては、いずれ楢崎委員から別の機会に申します。そのときに、私も状況によって関連しますことを申し添えます。  それから、最後に一つ、大体、警察というのは政府の警察であってはならぬ。警察法の第二条にもちゃんと書いてある。不偏不党、しかも人権の擁護に気をつけなければならぬといっておる。それが日本のいまの警察のたてまえでなければならぬ。しかも都道府県警察、それに国家警察も一部ありますが、そういうたてまえになっておる。ところが、今度の場合にはそれを逸脱いたしておるという点が非常に多いというふうに私は考える。単なる逸脱だけじゃない。先ほど言ったような特別公務員の暴行陵虐罪、こういう罪にすら当たると思うのであります。この点について、警察庁のほうでは調査をしておりますか。こういうようにいろいろ写真がある。こういった写真で、抵抗力を失ったやつをぶんなぐっておる写真があるが、こういう警察官じゃ、あれですね、背番号をつけなければならぬ。背番号をつければ、写真にも載る。ところが、背番号がないものだから、ちょっとなかなかわからない。やはりこれはダンプと同じだよ。ダンプと同じで、ダンプが信用ならぬから背番号をつけろ。いまの警官、特に警備の関係の人はこういう過剰があり得るんだ。したがって、やはり背番号をつけるべきだと思う。その点、国家公安委員長、背番号をつける考えはないかね。それではっきりわかる。言いのがれはできないのです。岩垂さんの犯人もすぐつかまる。
  243. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 そのアサヒグラフには、先般、全学連に機関銃を持たして警察を皆殺しにしたいというような漫画家の文章なども載っておりましたが、しかしながら、警察というものはたいへんな誤解を受けております。先ほど九大の法学部長は刑法学者であるということで御紹介いただいたわけでございますけれども、御案内のとおりに、新しい警察法は非常に民主化されておりまして、警察の運営は、また警察行政というものは、全部公安委員会が管理をいたしております。この公安委員は、いろいろ委員会審議会、調査会等がありますけれども、最も良識のある、見識の商い方々が参加して、五名で毎週寄ってこういうことを綿密に見ておられます。これはきめますときには、御案内のとおりに、何も与党側できめるわけではありませんので、国会で十分きめてお願いをして、五年間も任期を保証しておるりっぱな方々でございますし、中には野党の方々の御推薦になった方もいらっしゃる。そこで、私、公安委員長といたしまして、毎週その委員会にも出ますし、また懇談もいたしましたが、今回の経過につきましては、あれでよろしいという御判定をいただいております。
  244. 畑和

    ○畑委員 国家公安委員長、いままでいろいろお話ししましたけれども、この一連の問題で警察のほうに行き過ぎがなかったというふうに思われますか、幾らか行き過ぎがあったと思われますか、その辺ひとつ聞きたいのです。あなたはなかったと言っておられたり、少しあったと言っておられたり、その辺わからぬ。
  245. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 いろんなことが伝えられております。私もその場におったわけでありませんけれども、全体を通じてあれでよかった、当然であったというふうに判断いたしております。
  246. 畑和

    ○畑委員 全体を通じてあれでよかった、当然だった、行き過ぎはなかった、こういう話だ。これは驚くべきことだ。こういう態度で国家公安委員長がいるから、こういう過剰警備の問題が出てくる。大衆が迷惑をすることもある。  総理、最後にひとつ聞きたい。いま国家公安委員長はそう言われたが、総理も、この間の参議院の本会議ですか、あのとき、行き過ぎがなかったと言われておりますけれども総理はどう考えておられますか。いまの写真その他を見てどう思いますか。
  247. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、行き過ぎがなかったと確信を持ってお答えできます。
  248. 井出一太郎

    ○井出委員長 これにて畑君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  249. 井出一太郎

    ○井出委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  昭和四十三年度予算審査に関し、明二十八日午前十時、日本赤十字社副社長田辺繁雄君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  250. 井出一太郎

    ○井出委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  明日は、午前十時より委員会を開会し、総括質疑を続行いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十四分散会