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倉石国務大臣 お答えいたします。
事柄が昨日のことでありますから、私はきわめて
記憶は明らかだと思いますが、ただいまお読み聞けの中には、だいぶ誇張と粉飾があるようでありまして、私の
真意を伝えておりません。
昨日、
内閣の
閣議が済みましてから、衆議院の
食堂において行なわれておりました
記者会見に臨みましたが、私の所管の
農林関係の
事項がありませんでしたので、きょうは何にもありませんでしたと……。しかし、いつもあの
食堂でやる
記者会見には、
ミカンや
コーヒーも出ておりますので、まだ時計を見たら
予算委員会の始まる前でありましたので、例によって
雑談をいたしておったわけであります。
そこへ
水産庁長官が、報告の
事項がありまして、ちょっと顔を出したのを見て、ある一人の
記者が、
日本海のことについてはどうなりましたかということでしたから、
農林省は、
外交ルートを通じて、
ロシア、
アメリカそれから韓国、この三カ国に向かって
申し入れをいたしておる、こういうことを申したのでありますが、そのときに私はこういうことを申しました。
大体私は
農林大臣になる前からたいへんふがいなく思っておりますのは
——終戦後の
わが国においては、昔はかってなかったような、北方においても南方においても、あるいは
李承晩ラインというようなものをきめられて、そうしてその中に入るものは、
わが国の
漁船がどんどん拿捕されるというような、国益を侵害されておるようなことについて、
軍事力を伴わない国の
外交というものには
限度があるんだなあと私は思っておりました。そのときに私が
——柳田さんも御
承知のように、われわれが
青年時代に、
国際連盟というものがありました
時代に、
チェコスロバキアのベネシュという有名な
外務大臣がありまして、かなり
大国を手玉にはとりましたけれ
ども、やっぱりそのバックが
チェコという国であるので、彼の手腕にも
限界があった。したがって、いま
国際連合の中でも、
大国といわれるのは
アメリカであり、
ソビエトロシアであり、そういう国々が
大国と常にいわれておるのだ、われわれはそういうことを
考えてみると、いま申しましたように、
軍事力の伴わない
国家の
外交というものは
世界歴史の上においてやっぱり
限界があるんだなあと、こういうふうにも思い、そのようにも話しました。
しかし、そこで、いま
お話の中にありました
憲法でございますが、たとえば、
日本の
憲法でも、
先ほど柳田さんの
お話しのございましたように、
憲法の前文には、「平和を愛する諸
國民の公正と
信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と、こう書いてあります。つまり、このわれわれの持っておる
憲法を守ってまいりますためには、その前段において、諸外国の公正と
信義が守られるということが前提である。そこで私は申したのでありますが、たとえば
親鸞上人の言われるような
他力本願、またはキリストの教えのあるように、右の
ほおを打つ者あらば左の
ほおを打たせよという、そういうやり方も、人間としての
人生哲学にはあるいはそういう
考え方も成り立つかもしれないけれ
ども、
国家の存立のためには、私
どもは十分
考えなければならないのではないだろうかと、こういうことを申しました。
そこで、いまの世の中は、私
どもが働く、われわれのしかばねを越えて将来
日本民族の発展のために
日本をリードされるのは、あなた方若いインテリゲンチアなんだから、しっかり勉強してくれよ、こういうことを言って
食堂を退出したわけでありまして、私は
原爆云々とか三十万とかなんとか、そういうことを申したわけではありませんが、いまのような大事な
国政審議の途中で、
内閣に席を持っております者が、たとえ
会見後の
雑談でお
茶飲み話でありましても、とかく
物議をかもすような御心配をおかけいたしましたことは、私はまことに恐縮に存じておる次第でございます。それが私の
真意でございます。