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1968-02-06 第58回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年二月六日(火曜日)     午前十時十一分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 小川 半次君 理事 北澤 直吉君    理事 正示啓次郎君 理事 二階堂 進君    理事 藤枝 泉介君 理事 加藤 清二君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 広沢 直樹君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    上村千一郎君       植木庚子郎君    小沢 辰男君       上林山榮吉君    川崎 秀二君       坂田 英一君    鈴木 善幸君       田中 正巳君    登坂重次郎君       中野 四郎君    西村 直己君       野田 卯一君    野原 正勝君       福田  一君    船田  中君       松浦周太郎君    松澤 雄藏君       松野 頼三君    森山 欽司君       山崎  巖君    石橋 政嗣君       大原  亨君    川崎 寛治君       北山 愛郎君    久保 三郎君       阪上安太郎君    田中 武夫君       楢崎弥之助君    畑   和君       森本  靖君    山内  広君       山中 吾郎君    山本 幸一君       横山 利秋君    麻生 良方君       曽祢  益君    塚本 三郎君       浅井 美幸君    正木 良明君       松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 赤間 文三君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 園田  直君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         運 輸 大 臣 中曽根康弘君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 小川 平二君         建 設 大 臣 保利  茂君         自 治 大 臣         国家公安委員長 赤澤 正道君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田中 龍夫君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官北海道開発庁         長官)     木村 武雄君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増田甲子七君         通商産業大臣         臨時代理         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      鍋島 直紹君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         科学技術庁原子         力局長     藤波 恒雄君         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         外務省条約局長 佐藤 正二君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         大蔵省国際金融         局長      柏木 雄介君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月六日  委員畑和君、山内広君、塚本三郎君及び中野明  君辞任につき、その補欠として山本幸一君、石  橋政嗣君曽祢益君及び浅井美幸君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員石橋政嗣君山本幸一君及び曽祢益辞任  につき、その補欠として山内広君、畑和君及び  塚本三郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十三年度一般会計予算  昭和四十三年度特別会計予算  昭和四十三年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算昭和四十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。  この際、加藤清二君より議事進行に関し発言を求められております。これを許します。加藤清二君。
  3. 加藤清二

    加藤(清)委員 お許しを得まして、議事進行について一言だけ提案したいと存じます。  第一番、政府側答弁質問者の要求するものに限ってお願いしたい。質問者の希望または指名しない者は答弁に立たないよう、特に委員長において御留意願いたいのでございます。  二番目、特に総理答弁国民注視の的でございます。その総理の高姿勢は自由でございまするけれども、国会の質疑に見まする総理の姿勢は、物価とともにとみに上昇の一途をたどっているのでございます。さきの補正予算における春日君に対する答弁、先日の本会議における川上君に対する答弁、ともに国民の心配しているところでございます。問答無用方式ではなくて、国民によくわかるように親切丁寧、堂々の答弁をお願いしたいのでございます。(拍手総理の見解をお願いしたい。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま仰せになりましたとおり、よく注意してまいるつもりでございます。
  5. 井出一太郎

    井出委員長 それでは質疑に入ります。山本幸一君。
  6. 山本幸一

    山本(幸)委員 私は、日本社会党を代表して、主として佐藤総理に数点のお尋ねをいたしたいと思います。  もちろん総理と私との間には意見相違がたくさんあることは存じております。しかし、違いは違いとしてぜひとも国民のだれでもわかるよらな御答弁をいただきたい、これがまず第一であります。  それから、私が言うまでもなく、日本はいまたいへん重要な段階に来ております。いわば戦後最大危機に直面しておると私どもは認識しておるのでありますが、その一つは、ベトナム戦争をめぐる日本危機であります。すなわち、沖縄はアメリカ核兵器基地でありますばかりか、ベトナム戦争への発進地になっております。佐世保、横須賀をはじめとする数多くの軍事基地もまたベトナム戦争と重大な関係にあることは言うまでもありません。したがって、佐藤内閣のかじのとり方いかんによっては取り返しのつかない事態を迎えることになろうと思います。  その二つは、戦後資本主義諸国の矛盾がようやく露呈いたしまして、加えてアメリカベトナム戦争をはじめとする海外の軍事援助による膨大な軍事出費は、ポンド切り下げを契機としてドル不安が急激に表面化してまいったのであります。アメリカ経済に依存する日本経済も大きな打撃をこうむっておることは間違いありません。状況発展いかんによっては、円不安すら予想されるのでございます。戦後日本経済最大危機に当面しておると申し上げても決して私は言い過ぎでない、こう考えておるのであります。しかしながら、佐藤内閣は残念なことには、依然としてアメリカベトナム戦争を支持しております。ドル防衛協力のために国民生活を圧迫し、それどころか、日米共同声明以来、急速に防衛力の増強、客観的には軍事体制の必要を強調し、国民全体にかってない不安と危機感を与えておることは言うまでもありません。私はこの重大な危機打開のために、国民の持つ不安と危機意識を、総理からぜひ解明していただきたい、本委員会を通じてその意味において私は率直にお尋ねをいたします。  そこで、昨日総理福田君との間に相当トレーニングをされたわけですから、したがって、ひとつ自信を持ってお答えいただきたい。いま加藤理事からいろいろ要望がございました。総理は注意をする、こういうお答えでしたが、その要望の中に、親切丁寧ということばがありました。丁寧ということばは長い答弁をさしておるのではありません。簡潔に、わかりやすくおっしゃっていただきたい。あなたが答弁が時間がかかればかかるほど、時間に制限を受けておりますから、そういう点を前提にしてぜひわかりやすいお答えをいただきたいと思います。  そこで、私はまず最初に、問題のエンプラ事件、いわゆるエンタープライズの問題についてお尋ねをいたしたいと存じます。エンタープライズ佐世保寄港したことは、日本人が原爆被災者なるがゆえに、非常に大きなショックを受けておることは間違いないと思います。冒頭私が申し上げたとおり、日米共同声明以来、佐藤総理や一部閣僚の発言は、ことごと日米共同責任論を主張し、国防意識を強調しております。アメリカベトナム戦争支持態度を一そう強めてまいっております。このため国民の不安は高まりつつありまして、このやさきにエンタープライズ佐世保寄港ということになったのであります。したがって、国民はやっぱりそうか、佐藤総理は、一体日本の政治をどこに持っていこうとするのか、こういう恐怖感で一ぱいであったと私は考えております。マスコミもそれは筆をそろえて連日書き立てておったことは御承知のとおりであります。これほどの国民の不安を歯牙にもかけずに、エンタープライズ寄港を、政府寄港理由として、補給休養、そういうことをあげておられるのでありますが、アメリカ側は、私が言うまでもなく入港日の当日、十九日エンタープライズの艦上における記者会見の際に、新聞記者質問に対しまして、一体何の目的寄港するのか、この質問に対して艦長の言っておりますのは、すなわち第一空母司令官答弁は、補給休養ではない、いわば今後も日本に自由に寄港できるようにするためである、あるいは第七艦隊に配備された艦艇日本寄港するのは習慣である、こういうふうに答えております。さよういたしますと、政府の言う補給休養と、第一空母司令官のこの答えとは、全く大きな違いがございますが、その違いについて総理お答えをいただきたいと思います。
  7. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろな問題が起こりまして、ただいまのお尋ねの結論としては、エンタープライズはなぜ入ったかという非常に簡単なことのようでありますが、しかし、前提となります事柄について、まず国民皆さんの御理解もいただきたいと思います。また、山本君はその点はよく御承知のことだと思いますが、いまのようなお尋ねだと国民に与える影響等もありますから、私はわが国基本的方針、これを重ねてこの機会に申し上げてみたい。  私どもは、自由を守り、平和に徹する、いずれの国とも仲よくするという、いわゆる平和国家としての日本、これを念願しております。その意味におきまして、平和憲法を守るが、しかし、平和憲法そのもの自衛権は否定しておらない、したがって、わが国は国力、国情に応じて自衛隊を持つということ、そうしてただいまの平和国家の安全を確保しようとしております。しかし、単独に日本だけでは安全確保できない、こういうことでございますから、ただいま日米安全保障条約を結んで、いわゆるアメリカの核の抑止力のもとに日本の安全を確保している、これがいまの現状でございます。また、日本を取り巻く国際環境、それはただいま御指摘になりましたベトナムというような戦争がございます。また最近は、日本海におきましてプエブロ拿捕事件など起こってなかなか騒然たるものもございます。しかしてベトナム戦争につきましては、いままでしばしば申しておりますように、日本は軍事的に介入は一切しない、これはもうはっきりいたしております。また、米国自身ベトナム関係で、日本の本土において武器を調達するというようなことはございません。したがいまして、ただいま戦争が行なわれておることはまことに残念でありますが、このベトナム戦争に何もかも結びつけて解釈しようとする、こういうことは、実は政府は非常に迷惑であり、また、日本国自身も非常に迷惑なことだ、かように思いますから、ベトナム戦争とはひとつはっきり分けていただく。  そこで、このエンタープライズがなぜ入ってきたか、日米安全保障条約、この条約によりまして、私どもは、日本の施設、区域をアメリカ艦隊が使う、いわゆる寄港する、こういうようなことについてはそれを許す義務がございます。したがいまして、当時の、エンタープライズが入ってきたときの国論、世論等を見ましても、これはどうも望ましいことではないが、ただいまの安全保障条約のもとにおいては寄港を認めざるを得ないという、こういう意見もずいぶん出ております。頭からこれは反対だという意見もありますが、さような状況のもとに行なわれておると思う。この点でエンタープライズが入ってきたことは、これはエンタープライズ自身原子力推進力にしておる。したがって、他の航空母艦と違うようでありますが、この推進力原子力であるというだけの相違で、その他の点では航空母艦と同じような用途、目的を持っておるわけであります。したがいまして、一般の軍艦、航空母艦寄港すること、それと同じでございます。そこで……(山本(幸)委員「それはいいのです。」と呼ぶ)いや、これらの点は一応よく説明しておかないと親切な答弁にならないだろうと思いますので、ひとつまあがまんしてお聞き取りをいただきたいと思います。  そこで、日本に寄ってきた。そこで、これは一体どういうわけなのか。これは正式の書面でははっきり補給休養、そのために寄港する、こういう書面で申し出てきております。これは私ども外交ルートでその書面をいただいておりますから、ただいまエンタープライズ艦長がどう言おうと、その目的ははっきりしておる。したがって、私はただいまのこのエンタープライズ艦長一言そのものをとやかく申すことでなしに、私ども政府として、アメリカから申し出たその書面によってその目的をはっきりさせればいい、かように私は考えております。
  8. 山本幸一

    山本(幸)委員 佐藤さん、あなたの親切丁寧な答弁はけっこうですがね、要するに、抑止力依存問題等は後ほどまたお尋ねしますから、私がお尋ねしたことだけお答えいただければけっこうなんです。あなたの演説を聞くために予算委員会を開いたわけじゃございませんから、その点は前もってお断わりを申し上げたいと思います。  いま総理は、明らかにアメリカから来た文書によれば寄港理由補給休養だ。私は、先ほど御指摘したように、第一空母司令官は、そうじゃない、要するに自由に寄港できるような習慣をつけるんだ、また、第七艦隊に配備されておる艦艇はいつでも日本寄港できる習慣をつくるんだ、こう言っております。そうすると、あなたのおっしゃったこととたいへんな違いがあるわけですね。そこで、私はくどく申しませんよ。くどくは申しませんが、アメリカから文書で来たという文書を、一ぺんこの委員会に出してくれませんか。いまじゃなくたってよろしいから、後ほど出していただく。そうして、なぜ、その文書があるにもかかわらず、第一空母司令官があのような答え新聞記者諸君に言ったのか、これは問題があると思います。もし第一空母司令官がそういう全く違ったことを言っておるなら、これは相当責任があると思うのですよ。そういうことにしたら、一体政府はどうするのですか。それだけまずお聞きして、次に入ります。
  9. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの書類が必要だ、これは理事会でよく御相談願って、その上で扱い方をきめていただきたいと思います。  また政府自身は、ただいま申しますように一々艦長と話し合ってきめるわけではございませんので、私どもアメリカ政府からのその申し出によって、その目的寄港を許すのでございます。したがいまして、私は艦長がいまどう言ったということをせんさくするよりも、政府責任のある書面、これではっきり申し上げるというのが適当だ、かようにお答えしたのでございます。
  10. 山本幸一

    山本(幸)委員 まあそのことはよろしゅうございます。  それでは伺いますがね、エンタープライズ核兵器を積んでいるかどうか。きのうの福田君の質問に対して政府側は、積んでいない、わが党の江田副委員長が本会議で、核兵器を積んでいるということはいまや常識である、こう質問しました、これを、それは全く違っておる、軍事専門家は積んでいないことが常識だ、こういうように政府はきのうお答えになっております。それでは一体積んでいない証拠はどこにあるのか、その証拠をひとつ裏づけていただきたい。そうすれば私どもは一番納得すると思います。(拍手
  11. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはまあいわゆる軍事評論家の議論、これがただいまの通説だということを申し上げたのであります。皆さん方もいま積んでいるのが通説だ、こういうお話でございますから、まあそれに対する対抗だと思います。いま証拠を出せというお話でございますが、ただいまエンタープライズ日本海に出かけております。その後これが別に変わった状況に置かれているとは思いません。しかし私は、日米安全保障条約、その事前協議対象になっておらない、そのこと自身が、これを積んでない証拠じゃないのか、もしも積んでおればこれは事前協議対象になるんだ、かように私は考えておりますので、その点に意見相違しておりますから、材料の使い方が違うように思いますので、その点御了承いただきたいと思います。
  12. 山本幸一

    山本(幸)委員 意見相違じゃないと思うのです。証拠を出せば意見は一致するわけです。証拠がないから意見相違があるので、政府はむしろ進んで証拠を明確にすべきだ、私はこう考えております。たとえば一九五九年ですか、アメリカ上院外交委員会で、当時の太平洋司令官フェルト大将はこう言っておりますね、第七艦隊はいかなるときでも対応できるよう核兵器で武装されている、こういうことを上院外交委員会証言しております。この証言によっても、エンタープライズ核兵器を積んでいるということは、これはもう明らかな常識なんです。そういうアメリカの権威ある上院外交委員会フェルト大将が言明しておるにもかかわらず、政府アメリカの一方的な通告を信じておる。これでは国民は納得しませんよ。したがって、政府アメリカの一方的な通告のみならずに、政府自体がもっと確信を持って証拠を裏づけることにしませんと、国民は了解しません。さらにお尋ねいたします。
  13. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 重ねて聞くのはたいへん恐縮なんですが、いまの証言は何年のことでございますか。
  14. 山本幸一

    山本(幸)委員 一九五九年。
  15. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一九五九年。私どもは最近の事情で申し上げている。一九六二年以後、かような状態でございます。
  16. 山本幸一

    山本(幸)委員 そういうのは詭弁というのですよ。詭弁ですよ。第七艦隊全体をフェルト大将は言っているのですから。だからそれは年数が違ったとか時間が違ったことによってあなたは言いのがれしようとするが、そういう態度によろしくないですよ。まあそこのところは、あなたがそうおっしゃるならそれ以上申しませんが、そうすると、お尋ねしますが、なぜその事前協議を申し出ないのですか。事前協議を申し出て事前協議なさるならば、私は疑いが多少でも晴れる、こう思うのです。きのう三木外務大臣は——ちょっと私も聞いておってひっかかったのです。これは速記を見ませんからわかりませんけれどもエンタープライズ寄港の問題について、昨年十月の覚え書き、これによって事前協議がなされているかのような発言でした。そう私は受け取ったわけです。これは速記を見ていませんから正確ではございませんが、私だけでなく、みんなそう思っております。あれは何か間違いがあるのじゃないですか。これはちょっと三木さん、恐縮ですが答えてください。
  17. 三木武夫

    三木国務大臣 安保条約にいう事前協議は、アメリカ政府イニシアチブ日本政府とやるわけです。だから、日本イニシアチブではない。それはなぜかといえば、米軍配置変更であるとか、装備変更であるとか、作戦基地として使うとかいうことでありますから、これはやはりアメリカ日本政府と相談するたてまえです。したがって、われわれは、安保条約の第四条の規定によって、常時アメリカ協議することは可能です。だから、このエンタープライズの場合においても、安全保障上の諸問題がありますから、したがって、われわれは、原子力委員会などにおいて十分検討を加えたので、こういう協議はするわけだけれども、その日本の言うことが、日本から事前協議を請求するというものではなくして、それは常にアメリカのほうから、アメリカの軍隊に関係することですから、イニシアチブアメリカがとるという性質のものでございます。
  18. 山本幸一

    山本(幸)委員 外務大臣、私お聞きしておるのは、十月の覚え書きで、エンタープライズ寄港事前協議ができたかのような御答弁であったと伺っておるのです。それは間違いじゃないんですか。それは、要するに、安保条約四条の随時協議をいっているんじゃありませんか。事前協議は六条によって、そのケースケースにおいてやることになっているんですから、それは間違いじゃありませんかと聞いているんで、間違いなら間違いだと言っていただけばいいんですよ。
  19. 三木武夫

    三木国務大臣 これは安保条約事前協議アメリカがする必要はないのです。それは核兵器を積んでいないし、それから重大な配置変更でもないし、作戦行動に使うというわけでもないわけですから、初めからこれは事前協議対象にならないというたてまえですから、その向こうから持ってきた覚え書きは、安保条約にいう事前協議という性格のものではないということでございます。
  20. 山本幸一

    山本(幸)委員 あなたはきのうののを取り消されたことになったのです。取り消したって、そういう追及をするものじゃないですよ。あなたのお間違いだったと私は理解しておる、こういうことです。  そこで総理、きのうも聞いておりますと、アメリカ核政策はこれは秘密であって、そういうことを何人でも口にすれば厳罰に処せられるのだ、こういうことが、やりとりでございましたね。その旨を言っておるのだと思いますね、あの第一空母司令官は。十九日の記者会見の際に、記者諸君の、核兵器を積んでいるのか、いないのか、こういう質問に対して、これはアメリカのポリシーとして、つまり核政策としては言えません、こういうことを、第一空母司令官が言っております。ところが、いまいみじくも、あなたの御答弁によると、アメリカからは、核兵器を積んでおりません、こういうことは明らかにしておる、こういう御答弁でしたね。これは外務大臣も、あなたも、そういう御答弁です。アメリカは、核兵器を積んでいないことを日本政府に明らかにした。そのことは世界の何人にも公にしているわけですね。公にしている。公にしているものなら、第一空母司令官秘密にする必要はないんですね、もはやそれは秘密のワクから出ていることですから。したがって、そのときに、第一空母司令官答弁は、これは言えません、秘密だから言えません、そんなことを言う必要はないんですね。それを、あえてそれを言うところをみると、核兵器を積んでいるというように思われる。また意思は、あなたが言う核アレルギーの解消と同じような意見で、なるべく日本国民核兵器になれさせようとする意思である、そういうことも言えると思いますね。私は、アメリカ政策上の秘密だということは、私も理解しております。しかし、これだけ公になっておる、日本政府に正式に通告があり、国際的に公になっておる。それはもはやその時点については秘密じゃないはずです。そのことに関しては秘密じゃないはずです。それを、第一空母司令官が言えない。やはりくさいんじゃないですか。国民はくさいと思っておりますよ。それはどう思われるか、ひとつお尋ねいたします。
  21. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはちょうど公明党の竹入君から本会議でも質問があったのです。実はそれを私お答えしませんで、公明党の方にたいへん御迷惑をかけたのですが、ただいま言われると同じような趣旨で、公明党も聞かれたと思います。確かに原子力法というものはアメリカにありますし、アメリカの法律では、みだりに機密を漏らせば死刑だとか、極刑に処す、こういう法律がございます。したがいまして、みだりに情報を提供すれば極刑に処せられる。しかしながら、御承知でもありましょうが、事前協議をする、あるいは政府機関が、事前協議でなくとも、随時協議をする、こういう場合は、政府機関はちゃんと権限があるのであります。権限のないものと権限のあるものは、区別して扱わなければなりません。山本君は、そんなことをまさか混同されるとは思いません。したがって、軍司令官とか、あるいは艦長だとか、こういうものと、いまの政府機関——政府を代表して権限があって話し合うものと、これは明らかに区別すべきであります。したがいまして、原子力法はありますが、すでに事前協議につきまして、これが事前協議、いわゆる安全保障条約の話し合いを妨げるものでないということを、はっきり大使も申しております。そういう点では、区別してひとつ御理解いただきます。
  22. 山本幸一

    山本(幸)委員 私もそれを言っておるんですよ。アメリカ政府が、日本に向かって、核兵器を積んでいないと、権限を持って答えておる。これはもう国際的に公になっておるのだ。したがって、第一空母司令官がなぜそれを隠さなければならぬか、おかしいじゃないか、こう言っておるんですよ。だから、政府が権限があることを言っておるなら、それに同意したらいいんですよ。同意しないと、これはやはりくさいと、国民が見るのはあたりまえじゃないですか。そう言うのはあたりまえですよ。  そこで、ひとつお尋ねしますが、佐藤さん、あなた、笑っちゃいかんよ。笑わずに目をむいてしゃべっておったほうがいいよ。  政府は、立ち入り検査はどうしてもできないのですか。
  23. 三木武夫

    三木国務大臣 軍艦に対しては立ち入り検査はできません。ただ、いま総理との問答を聞いていますと、やはり向こうの司令官の言を山本さんは引用になって言われますが、アメリカの軍規のたてまえから、軍人が装備について、これは核を積んでいますとか積んでいませんとか、いろいろな装備に対してこれを公表することは、軍規上できない。だから、ノーコメントと言ったので、それは軍人として当然であって、われわれとしては、アメリカの正当な権限を持つアメリカ大使館と約束をし、いろいろ話をしておるで、司令官はそれを言えないたてまえです。どこでも私はそうだと思う。この軍艦の装備をいろいろ、こうですと公表することは、軍規のたてまえ上、言えないので、持っておるから言わなかったのではなくして、軍規上、言えない。それがノーコメントといろ意味でございます。
  24. 山本幸一

    山本(幸)委員 立ち入り検査はできないとおっしゃったのですね。立ち入り検査を申し入れて、アメリカがよろしいと言った場合、どうなるんですか。
  25. 三木武夫

    三木国務大臣 軍艦は、やはり立ち入り検査をよろしいとは言わないことが、国際的慣習でございます。
  26. 山本幸一

    山本(幸)委員 寄港当日、どなたでしたか、名前は忘れましたが、自民党の議員の皆さんが、飛行機でエンタープライズの艦上へおりられて、そして何か祝賀会かパーティか知らぬが、参加されて、たいへんサービスをなさったそうですか、それができて——立ち入り検査は国際法上できなくとも、相手が許せばできると思うのです。一度でも申し入れたことがありますか。立ち入り検査を申し入れたことはないのですか。全然ないのですか。
  27. 三木武夫

    三木国務大臣 日本政府は、そういう国際常識に反するような申し入れは、いたしたことはございません。
  28. 山本幸一

    山本(幸)委員 結局いまおっしゃったように、日本政府は要求を何もようしないのだ。私に言わせれば、申し入れをすることぐらい、何もおそれることはないんですよ。申し入れもようしないというようなことは、すべてアメリカのおっしゃるとおりに日本は従っている、こう見る以外にない。したがって、立ち入り検査の申し入れもしない、立ち入り検査もできない、エンプラが核兵器を積んでいるか積んでいないかの実証もできぬ、こういうことでは、国民はとても納得しません。こういう不明確のことでエンタープライズが来るなら、政府は、たとえ一度でもエンタープライズの来ることを、国民感情からいって断わってみたらどうですか。そういう勇気があるのですか。断わる勇気をお持ちになったらいいと思うのですよ。佐藤さんにお尋ねいたします。
  29. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 山本君にも申し上げますが、日米安全保障条約、私どもは権利もありますが、同時に義務もあります。やはり国際条約は、忠実にこれを守らなければいけない、かように私は思いますので、ただいま言われますように、それらの点は、親善友好を害するようなことはやりたくはございません。
  30. 山本幸一

    山本(幸)委員 事前協議事項があるのですから、したがって、確証を握る方法についても、当然あるべきなんですよ。ただ、あなたは、国際条約を尊重しなければならぬとおっしゃるが、何も相手がまだ断わったわけじゃないので、日本国民は非常に不安に思っております。たいへん心配しておりますと、したがって、確証を握る行為を日本政府が要求したって、何もふしぎじゃないんじゃないですか。私は、そのくらいの誠意をお持ちになっていいと思うのです。いけなければ、事前協議日本から一ぺん要求してみたらいいと思うのです。どちらもおやりにならぬから、国民は納得しかねるということですね。  そこで、政府の統一見解をお聞きすると、要するに、佐世保なり横須賀なり、そこが母港でなければよろしい、母港でなければ、いわゆる配置変更ではない、こういうことをおっしゃってみえるですね。一体、母港とはどういうことなんですか。まあ、三木さんの説明によると、いわゆる常時常駐しておる、こういうことをおっしゃる。そういう議論を発展させると、第七艦隊全部来ても、短期間ならいいんですか、十日や二十日や一月なら。寄港なら、第七艦隊全部が来てもいいのですか、そういう議論を発展させれば。どうなんですか、その点は。総理お尋ねします。私の指名した人が答えてくださいよ。
  31. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま山木君御自身が御指摘になりましたように、寄港と常駐、これはもうはっきり違っておる。これはだれもこの観念を混同なさるとは思いません。寄港の場合は、これが母港でないということ、ここを母港にしてないということ、そういう常駐のものでないということ、これはもうはっきりするのであります。そういう意味で、これは区別したらいい。これは事前協議対象にならない。
  32. 山本幸一

    山本(幸)委員 だから、政府のおっしゃることは、常駐しなければ、第七艦隊全部が寄港してもよろしい、そういうことに私は理解します。そういうふうにお認めになったと思います。  そこで、ひとつお尋ねしますが、私どもが非常に疑問を持っているのは、アメリカ核兵器を積んでいないということは、単に軍艦だけでなしに、航空機においても、世界各国で言っております。ところが、皮肉なことには、先般の本会議で、江田副委員長質問いたしましたが、一月の二十三日の新聞報道によると、デンマークのグリーンランド、ツーレ、この付近にB52が墜落した。そのときに、新聞の発表によると、二十メガトン級のものを四個積んでおった、搭載しておったということが明らかになったわけです。そこで、アメリカ側はたいへんあわてて、これはデンマークの領空を飛んでおったんじゃありません、たまたま事故が起きて、基地に行く途中で墜落したんだ、したがって、デンマーク領ではない、こういうことを言っております。事故のためにデンマーク領へ入ったんだ、こう言っております。ところが、デンマークの外務大臣は、これを否定するように、デンマーク領内を飛んではいけないということになっておるのに、デンマーク領内に入ったんではないか、こう言って、厳重な抗議を申し入れておることは、総理も御承知だと思うのです。私は、何といっても、アメリカの今日までのいろいろな行為から察しますと、デンマークの外務大臣の言うことを信じたいと思います。そればかりではありません。一昨年の一月、スペインでも、やはりこれと同様な事件を起こしておるわけですね。ここでもやはり核兵器の搭載が明らかになっておる。こういう事実から見ると、総理が何とおっしゃろうと、エンタープライズ核兵器がないとは、どうも私どもは信じかねる、こう私ども思うわけです。  そこで、日本は、アメリカの一方的な通告、報告だけを信用なすっていらっしゃるが、もう少し、アメリカの一方的な通告、報告だけでなしに、日本みずからが何とかこれを確認する方法がないのですか。ぜひ総理、その確認する方法について、あなたの明快な答弁を聞きたいと思います。これは国民がたいへん心配しておりますから、したがって、私は、あえてこれをくどく申し上げるわけです。
  33. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アメリカ安全保障条約に違反するかどうか、こういう問題です。アメリカはたびたび、安全保障条約に違反するというような考えは毛頭持っていない、また、日本政府の意向に反するようなことは絶対にいたしません、数回これを言明しております。この日米安全保障条約を結んでおる相手方でございます。その言明を信用しなくなりますと、これは安全保障条約も実は守れないというのが両国の関係だと思います。したがいまして、私は、ただいま言われますように、最終的にまでこれを確かめろ、確かめろとおっしゃいますが、ただいまのアメリカ側の数度にわたる言明、これを信頼するのは当然のことだ、かように思っております。したがいまして、現実に私自身が見ましてもわからないような問題を、これは技術的な問題ですから、はっきり政府が声明し、また、外交ルートでしばしばそのことを明言しておる、それを信頼することは、もう当然のことじゃないかと思います。  ただいま、ヘビーボンバー、これがスペインあるいは欧州で事故を起こしたということを取り上げて、エンタープライズもまた核武装しておるんだ、こういうような類推をしておられますが、いま専門家の常識では、ICBM、SLBM、同時にHB、このスリーBが核装備をしておるということでございます。いわゆる大陸間弾道弾、その次はポラリス潜水艦、同時に、ただいまの航空機の、特に52等のその一部、こういうことではっきりいたしておりますので、これがもう専門家の常識でございますから、それを信頼する以外にない、かように思っております。
  34. 山本幸一

    山本(幸)委員 私は了解できませんね、そのために事前協議があるんですから。  アメリカを信用してはいけないと私は申しません。申しませんが、私どもの見解では、先ほど申し上げたように、アメリカを信用することはできぬ。これは、いまデンマークの例、あるいはスペインの例で申し上げたように、信用することはできぬ、こう私は申し上げておるが、政府アメリカを信用されることについて、私はそれをとやかく言おうとは思いませんよ。思いませんが、そういうために、核兵器があるかないかということをチェックするために事前協議があるんでしょう。だから、私は、方法がないかというのは、せめても日本側から、そういうことに対して事前協議の申し入れでもしてみたらどうか、こういうことを強調しているんです。私は、百歩譲って、あなたが答弁をそうなさるのじゃないかと期待したのだけれども、あなたは全然そういう答弁をなさらぬ。これでは国民の期待に反します。依然として、やはり日本政府アメリカの一方的なことのみ以外は信用しない、こう国民が考えるのは、私は当然だと思います。  そこで、問題を進めますが、いまいろいろやりとりしたように、核兵器を積んでいるかいないかということは、政府は積んでいないと思うが、まだ少なくとも国会においては確証できない。国民においても確証できない。ところが、あの佐世保の事件をごらんなさい。これは、私が言うまでもなく、もう当時新聞等で十分御承知だと思いますが、この怪しげなエンタープライズ核兵器を積んでいるかいないか確証のないエンタープライズ、これの寄港のおかげあるいはアメリカのおかげで、日本人同士が連日血を流しております。あまつさえ病院の患者から、市民から、新聞記者からカメラマンまで、なぐる、けられる、放水される、こういう状態がずっと続きましたね。ところが一方においては、アメリカの兵隊は、上陸してドルで日本の女性を支配して、血で血を洗う状況を横目で見て冷笑しておる。こんなことは、総理日本人の感情として許せませんよ。しかも政府は、そのために警備費として一億とか二億とかいろ金を使っておる。国民の血税を使っておる、そういうさんざんばかにされたことをアメリカにされて、しかも何らの抗議もできぬ、事前協議の申し入れもできぬ、そんなことは、総理国民は絶対納得しませんよ。私は、総理日本人として、日本政府の代表として、もっとき然とした態度を持ってもらいたい。そうしなかったら国民は納得しませんよ。
  35. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、日本総理として、き然たる態度をとっておるつもりでございます。いろいろの御批判があるようでございますが……。  そこで、ただいまの事前協議の問題でありますが、事前協議対象になる事項、これは三つばかりはっきり——もう耳にたこのできるほど、その話は御承知だと思います。そうしてその事前協議は、あの書き方から見ましても、相手方、アメリカから日本に持ちかける話でございます。アメリカ側にそういうようなことがない限り、持ちかける筋のものではありません。日本側からは、この事前協議を必要とするかしないか、こういうような点について意見を述べることは自由であります。したがいまして、私どもは、そういう意味意見は、これは過去におきましても、大平外務大臣当時もすでにその発言をしております。しかして私は、この機会において、事前協議責任のある相手方が、日本政府の意向にも反せず、また安全保障条約にも違反しない、そういうはっきりした意図を示しておる限りにおいて、ただいまこれが核武装しておる、かように疑うことはいかがかと思います。私はそれをとらないのであります。しかもただいま、佐世保において血で血を流したというお話でございます。しかし私は、どんなことがありましても、暴力は否定しなければなりません。ましてや青年、学徒、そういうものの一部が暴力を事前に使う、これなぞは、私は絶対に反対であります。(「警察はどうなんだ」と呼ぶ者あり)警察はいまどうだと言われますが、警察は……(山本(幸)委員「警察は聞きませんよ」と呼ぶ)いま不規則発言がございましたが、とにかく社会の秩序を維持する、民生を確保する、これが警察の仕事でございます。したがいまして、ただいま申し上げるような一部の暴力行為を取り締まる、これは警察の職務でございます。これは当然のことであります。さようにひとつお考えいただきます。
  36. 山本幸一

    山本(幸)委員 いまの総理ことばでわかりましたよ。第一は、事前協議アメリカがイニシアをとっているんだ、こういうことではっきりしました。事前協議というものは、全く愚にもつかぬものであり、安保条約をつくるための手段にすぎなかった、いわゆるおためごかしだということが総理答弁で明らかになりました。  続いて聞きますが、これははなはだ失礼ですけれども木村官房長官に関連することです。一月二十二日に、木村官房長官記者会見でこういうことを言っております。よく聞いてくだざいよ。一つは、今回のエンプラ寄港日本国内にもたらした反響は、アメリカにもわかってもらえると思う。——これは重大な発言ですよ。私がさっきから言っていることと関連しております。二つは、警備問題以上に、この国民感情を日米両国政府とも慎重に考える必要がある。三つ目は、さらに市民が警備陣に投石などをしてある程度の動きを示したことなど、政府国民感情を推しはかる意味で重視したい、こう申しております。これは木村官房長官記者会見。ところが、この発言に対して——率直に言うならば、まだまだ不満足ですけれども木村官房長官にしてはやや良心的なことをおっしゃった、こう私は判断しております。ところが、翌二十三日の閣議では、ここに御出席の中曽根運輸大臣が先頭に立って、木村官房長官を袋だたきにした、この袋だたきを総理も認められた、こういうように新聞は伝えております。全くこれはあきれた事項ですね。総理をはじめ関係閣僚の諸君は、もっと良心があってほしい。せめても木村官房長官程度の良心と良識を私は持ってもらいたい。(拍手総理は、この木村官房長官発言程度は、これはまあ良識なんだ、これが良心なんだ、こう思われますか、それともあれは間違っていると思われますか。
  37. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 木村官房長官発言、それは真意を全部新聞で必ずしもそのとおり伝、えたとは私は思いませんが、しかし、まず第一に、この問題は、御承知のようにアメリカ自身も、日本人が被爆国民として持つ原子力に対する嫌悪の情、そういう点もありますから、推進力原子力であるというために、それについて事前にも原子力委員会の了承をとるといいますか、安全性を確認してもらう、こういう点はアメリカも十分気をつかったと思います。  第二の問題並びに第三の問題、木村長官の言っておること、これは、私はいわゆる政治家といたしまして、政治家が国民の意向を無視するというようなことがあってはならない、そういう意味で反省するということは、私は率直にあっていいのだと思います。私ももちろん政治家でございますから、十分反省もいたします。しかし、私はこの機会にはっきり申し上げたいのは、警察官とあるいは一部の暴力行為と、この二つを同じ立場に立って批判することは私はいたしません。警察官は当然社会秩序を維持する職務がございますから、その職務を遂行するについて十分自信が持てるようにしてやらなければならない。もちろん私どもは政治家でありますから、国民が非常に好まないことをやるようなことがあったら、これは私どもの支持を失うゆえんである。またしかし、暴力はどこまでも排撃する、そうして自由を守る、そうして平和に徹する、そういう国民でありたい、かように私は思いますので、やはり反省すること、それはもちろん考えるべきだ、かように私は思います。だから、節度のある職権の扱い方、これはもう当然のことでありますが、そういう意味の率直なる官房長官発言だろう、かように私は理解しております。
  38. 山本幸一

    山本(幸)委員 まあ私はあなたと議論はしたくありませんが、えらく学生の暴力行為を強調されますが、あなた方、原因を探求せずに現象だけをとらえることはおかしいのですよ。それはお互い、私ども若いときもそうでしたが、青年が一番やはり戦争危機感を持ちますよ。その青年、学生が、要するにエンタープライズに対して大きな疑問を持って、これに反対するような状態に立ち上がらざるを得なくなった、そういう原因は一体どこにあるのですか。私は思想の問題じゃないと思うのです。問題は、そういうところに追い込めてきた、追い込めてきたところに問題がある。だから、私は、先ほどから言っているように、そういう原因をつくらないように、なぜ断わったりあるいは事前協議をしないのか、こういうことを言っているんですよ。そうすれば、あのようなことは起きなかった。私は、こういう点を先ほどから強調しているわけです。  そこで、続いてお尋ねしますが、この木村さんの、いわゆる良心的な発言は、木村官房長官だけじゃなかった。これば二十三日の夜ですね。新聞ですよ、これは新聞。私は見たんじゃありません。しかし、あなたはさっき、新聞の言うことではちょっとわからぬとおっしゃったが、都合の悪いときになると新聞の言うことはうそだ、こうおっしゃるけれども、これも新聞によりますと、木村官房長官発言を中心にして、急遽藤山さんをはじめ川島派、前尾派、三木派、松村派に所属する各代表者らしき諸君、それから袋だたきの先頭に立った中曽根派といわれる議員まで加わって会合しておられる。その席上で藤山さんがこういう発言をしておられる。単に日米安保条約の義務だから原子力空母の寄港を認めるということは、国民感情は納得しない。国民感情が寄港に批判的なら、そのことをアメリカに伝えて善処してもらう方法があったと思う。私と同じことを言っておる。これが良識なんです。私と同じことを言っている。善処してもらう必要があったと言っている。こう藤山さんは発言しております。しかもその会合では、佐藤総理福田幹事長の高姿勢より木村官房長官発言のほうがより正しい、こういう意見が会合で出された、こういうことを言っております。私は、これは政党政派の問題じゃない。政党政派を乗り越えて、この程度のことを考えるのは、私は常識人の考えだと思っております。一体総理は、この常識的な各派の集まった会合、この会合の意見交換、その結論、新聞に出たものはどういうように受けとめられますか、念のために伺います。
  39. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  いろいろ党内の事柄にも御心配をいただいて、ありがとうございます。厚くお礼を申し上げます。  私は、平和に徹する国民、いわゆる戦争を否定する国民、その戦争を否定する国民がなぜ暴力を使うか、暴力だけ肯定するということ、これは私にどうしても理解できないのです。この点を皆さん方にも申し上げる。皆さん方も、平和に徹せられるという、そういう意味戦争を否定される。どうかそういう意味で、戦争がこれは最大の暴力だとしばしば言われております。したがって、小さな暴力も、やはり同じような立場に立って否定していただく、このことを私は強く要望いたします。   〔発言する者あり〕
  40. 井出一太郎

    井出委員長 静粛に願います。
  41. 山本幸一

    山本(幸)委員 総理は、党内のことに御心配をいただいてという御答弁でしたが、これは私は、自民党内の問題としては受けとめていないのです。私は、日本人の持つ良識として受けとめてもらいたい、そういう点でお尋ねしたんで、何もあなたのところの派閥をかき回そうなんということを考えていませんよ。そういうことじゃない。日本人全体が持つ良識をこの人々が会合しておっしゃったんだ、こう私は認識しておる。それをあなたは、今度、私が質問もしない学生の暴力とか、つまらぬことで答弁して、そうして問題をすりかえる。あなたは純真さを失っていますよ。もともとなかったかもしらぬけれども。全く失っていますよ。  そこで、それじゃお尋ねしますが、アメリカのスパイ船プエブロ事件が起きると、日本寄港中のエンタープライズが急速元山沖に出動したことは御承知のとおりです。これはエンタープライズだけでなしに、日本基地にある第五空軍、これも韓国に集結したことも新聞は伝えております。私、事実だと思います。加えてアメリカの在韓空軍、これも一そう強化した、こういうことも伝わっております。さらにまた、太平洋航行中の対潜空母が三隻ほど元山沖に出動、急行した、こういうことも伝えられております。そうすると、いまでは、日本海に集結したアメリカ艦隊は、二十以上ないしは三十以上にふくらんでおる、こういうことが私どもに伝えられておりますが、そうなると、たいへんな状況になっておると思います。私ども率直に言うと、うっかりすると本格的な戦争の様相が感じられるような気もするわけです。いま言ったように、エンタープライズの出動といい、第五空軍の出動といい、これらはいずれも日本基地から出ているわけですね。アメリカの持つ日本基地から出ているわけです。そうすると、国民の受ける感情としては、日本みずからが戦争の当事者のような感じを受けておるわけですね。私が冒頭に申し上げたとおり、そういう意味において日本は重大な戦争危機に直面しておる、こういう判断ができると思います。  そこで、私はお尋ねをいたしますが、今度のプエブロ事件に関連して、アメリカのフルブライト上院外交委員長が、二十六日にこういうことを言っております。この事件とトンキン湾事件とは大体同じようなものだ、こう言いまして、次の発言をしております。一つは、トンキン湾事件に関し、当時アメリカ政府からの報告を受けた。フルブライトが報告を受けたというのです。その当時私どもの理解は正しくなかった。当時の理解は正しくなかった。すなわち、われわれは米艦艇が公海上にいたと聞かされた。ところが実際には、北ベトナムの領海に入っていたことがその後明らかになった、こういうことを言っております。トンキン湾事件ですよ。二つは、これらの艦艇はスパイ行為だけが目的でない、事態はきわめて込み入っている。これは重要な発言だと思います。スパイ行為だけが目的でない、事態はきわめて込み入っている。三つは、トンキン湾事件、それに今回のプエブロ事件はいずれも関連がある。これらの場合、いずれも関連がある。スパイ行為をしていたことだけは明確である。こう言明しております。二番目に、スパイ行為だけでない、きわめて込み入ったものである、こう言って、三番目には、込み入ったことはともあれとして、スパイ行為だけは、トンキン湾事件も今回のプエブロ事件も同様である、こういう言明をしております。御承知のように、このフルブライトという人は、アメリカ上院外交委員長であると同時に、時によってはジョンソンと常に会談をして、アメリカ政策について話し合いをしておる重要な人物です。こういう人物が発言したのですから、したがって何人も、プエブロが北朝鮮の領海に入った、こう認めておるわけですね。ところが政府は、幾日でしたか私、覚えありませんが、アメリカの要請によって、急遽その翌日アメリカの言うとおりこれは公海上におったのだ、こういうことでアメリカの要請をそのまま支持しております。一体政府は、先ほどエンプラでお尋ねしたり、あるいはあらゆることについて、アメリカのおっしゃることだけはそのまま正直に受け取られるが、今度もやっぱりアメリカから要請があったから——要請というのか押しつけというのか、あったから、その結果、突然翌日アメリカの言い分を支持なすってみえる。これまた全く追従ですよ。相手の言うなりですよ。一体何のために支持したのですか、それをお尋ねしたいと思います。
  42. 三木武夫

    三木国務大臣 この経過には私が関連したので、お答えするほうが適当だと思います。  大平君から、たまたま本会議質問があったわけです。アメリカの要請によってこれを言ったというわけではありません。日本として重大な問題でありますので、これは本会議において質問が出ることは当然だと思います。そのときの総理答弁は、もしアメリカの言うがごとく、これが領海外で拿捕されたということならば、そのことが事実であるとするならば、まことに遺憾であるということで、アメリカの言うことを全面的に支持したものではない。もしアメリカの言っておることが真実であるとするならば、この領海外のこういう事件が起こることは遺憾であるということであって、日本のような海洋国が、やはり公海の航行の自由ということは日本としてきわめて重要なことでありますので、そういう事実があったら遺憾なことであるということで、アメリカの言うことをそのまま支持したということではありません。もしアメリカの言うことが事実であったら遺憾であるということが総理答弁でありますから、その点は全面的にアメリカの言いなりになったという山本さんのことばは当たらないと私は思います。
  43. 山本幸一

    山本(幸)委員 三木外務大臣はルール違反を一つやったわけです。私はあなたに聞いたわけじゃないのだけれども、まあ大臣だからしようがないからがまんしましょう。  ところが、総理大臣、当日の新聞はこういうことを書いておりますよ。これはひとつ聞いてもらいたいと思いますね。「首相はプエブロ捕獲は、公海上のようだと言明した。その根拠は、「国連での米大使の報告」「政府が入手した情報」の二つである。ところが外務省は独自の調査による情報はないと言い、官房長官は事実調査の方法なしと語った。言明の根拠の一つは、完全なウソ」だ、こういっていますね。「ありようは政府が駐日米大使から「明確な態度」を要求されて、公海上の捕獲という米側の主張に追随、いや盲従した結果だろう。」新聞は「盲従した」と、私は、追従と、まだ品のいいことばを使っている。「公海か領海かは、公平に見て謎で水掛け論である。アメリカは身内だ、北朝鮮は縄張り荒らしだ、だから身内の言い分が正しい——これはヤクザ的三段論法である。」と、こういっております。身内の言うことは、どんな不正なことでも承認するが、身内でなければ、他人のことについては、どんな正しいことでもやっつける、これはやくざの三段論法だ、こういって新聞は書いておりますが、これは新聞だけじゃない。この新聞の記事は、やはり国民の思いをそのまま代表しておると私は思います。  そこで、いま三木外務大臣がおっしゃったが、アメリカの言うそういうことなら、その範囲において支持したのだ、まあ突き詰めていえばそういうことです。私は、三木外務大臣と官房長官のいずれを信用してよろしいかわかりません。しかし、少なくとも官房長官は、政府を代表して記者会見をやり、政府を代表して、政府全体をまとめたものを結論として発表しておられるわけですね。その任務は間違いありませんね。その木村官房長官が、いま新聞で読み上げたとおり、事実の確認の方法はない、アメリカの報告を信用する以外にはない、こういうことをおっしゃってみえる。しかも、アメリカを信用するその理由としてあげられたのは、北朝鮮は日本と国交未回復である、こういうことを言ってみえる。国交未回復の国はどんな正しいことを主張しても信用しない、アメリカの言うことなら信用する、こういうことをあなたはおっしゃってみえるわけですね。あなたに聞くのじゃないですよ、あなたに、おっしゃってみえると、こう言っているだけです。  なお、私けしからぬと思うのは、政府はその前後でしたか、ソ連に向かって、ぜひプエブロ事件について平和解決のあっせんをしてもらいたい、こういう要請をしているのです。そういう要請をしておきながら、とたんにアメリカの考え方を支持する。全く確証のないアメリカ意見を支持する、一体どういうことなのですか、これは。国際信義上どうなるのです。おかしいですよ、これは。その点について総理のひとつ御意見を承りたいと思います。
  44. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 本会議の大平君の質問に対して私が答えたのがただいま問題になっております。当時、プエブロ事件が起きたばかりのその直後でございます。そうして安保理事会アメリカのゴールドバーグが発言をしたのが唯一の材料でございます。これを確かめ、それをゴールドバーグがどう言っているか、そういうことであるならばというので実は私は答弁をいたしたのであります。これがただいま、アメリカの言いなりになった、盲従だ、こういうように言われますが、とにかく当時、私どもは材料として用い得るものは公式の席上で発言されたものを、それを材料として用いる以外にはございません。また、北もこの問題については何ら触れておりませんから、そういうところで、どうも私がとったのが非常に片寄った材料収集だ、こういうような批判は、それは当たるだろうと思います。しかし、私はただいま申し上げるように、それで断定はいたしておりませんから、かくかくであるならばという、そろいう条件で説明をいたしております。  それからまた、ソ連に対してその仲介の労を頼んだ、こういうお話でありますが、これは私、外務大臣ともいろいろ相談いたしまして、とにかく日本海で問題が起これば一番迷惑するのは、この日本海に面しておる日本並びにソ連じゃないか、お互いにそういう立場にあるのだから、これがぜひ大戦争にならないように、また火をふかないように、事前に平和的な解決をすべきじゃないか、そういう意味日本も積極的に協力するが、ひとつソ連も考えてくれないか、こういうことで、ソ連大使を外務省に招致して、外務大臣から日本政府の意向を伝えたわけであります。この点はソ連も十分、ひとつ本国へさっそく連絡します、そしてその返事を伝えます、こういうことで受け取ってくれたのであります。私は、とにかくプエブロ事件が今日になりましてもまだくすぶっておる、こういうことはまことに残念に思います。一日も早く平和的に解決することを心から望んでおります。また、そういう意味ではあらゆる努力をいたします。ただいま一部国民がたいへん心配しておると言われます。これはもう国民ばかりじゃありません、私ども政府自身がこれはたいへんなことだと思って実は非常に心配をしておるのであります。しかし、幸いにいたしまして、ただいままでのところは平和的解決の方向で関係国が努力しておる、この努力は私どもも認めますから、これに期待をかけておるというのが現状でございますし、またこの上とも努力をするつもりでございます。
  45. 山本幸一

    山本(幸)委員 いまの総理答弁は少し前向きのところがありましたね。これは私、おほめしていいと思います。一方的な情報に片寄り過ぎた、これは反省する、これは総理としてはまことにヒットですね。最近にないヒットです。  ただ、私はここでちょっと念を押しておきたいのですが、板門店会議をいま開いておりますね。私も総理のおっしやるように、何とか平和的にこれが終息することを念願しております。ところが、この板門店会議がまだ最終的結論に至っておりませんが、少なくともニュース等々を拝聴すると、マクナマラ国防長官は一〇〇先公海上にいたとは認めがたい、こういうことばを使っておりますね。したがって、新聞はもちろん、あらゆるマスコミ、ニュース等を拝見すると、要するに、解決の条件として領海内にいたことを認めるような方向である、こういう状況でありますね。そこで、万一、マクナマラ長官が言っているように、北朝鮮の領海内に侵犯しておる行為をアメリカが認めた場合、あなたはアメリカを支持したことを取り消しますか、これはやっぱり取り消していただきたいと思いますね。いまあなたの御答弁によっても、一方的な情報に片寄り過ぎたという御答弁があったのですから、したがって、当時の支持は取り消す、こうおっしゃっていただくと一番すっきりしているのですがね。どうですか。
  46. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は断定的に答えておりません。速記をよく読んでいただけば、その点では私断定しておりませんから、取り消す必要はないんじゃないか、かように思っております。しかし、もちろんただいまのような御注意がございますから、もう一度よく読んではみますけれども……。
  47. 山本幸一

    山本(幸)委員 じゃ検討してくれますね。これは私は、総理、理屈じゃなしに、あなたが何とおっしゃろうと、国民全体は支持したと思っておりますからね。したがって、あれは断定ではないけれども、当時の発言は、これは白紙になったんだ、こうおっしゃることが私は正しいと思うのですね。それはそうなんですよ、それにあなた首を横に振ることはないでしょう。  それじゃ次に入りましょう。  これは先ほどあなたから御答弁の中にあったことに関連するのですが、エンタープライズが二十三日に佐世保からコースを変えて元山沖に出動した。これは私どもは疑わしいのですがね。どうも、場合によれば、元山沖波高しとなれば、戦闘作戦行動に加わる意思があったんじゃないか、こうわれわれは判断しております。  そこで、一体、エンタープライズ日本を離れるときに、作戦行動の命令を受けていたのかいないのか、この点について伺いたいと思います。  第一は、アメリカが事実上日本寄港中出動命令を与えたかいなかをどうして政府は立証できるのか。日本寄港中命令を与えたかどうか、あるいは日本を離れてから一定の水域で命令をもらったものかどうか、それはどういうことで確証されるのか、それを第一にお尋ねいたします。  時間がございませんから、続いてやります。  第二番目は、私は日本政府が、おそらく私の想像では、残念ながらわかりませんという御答弁があると思います。そうなると、いつの場合でも立証する方法がない。これはやっぱり安保条約に関連する問題ですから、念のため私は伺っておかなければならぬ。いわゆる日本からの作戦行動であるかどうか、この点を明確にするためにぜひひとつ総理の御答弁をいただきたいと思います。
  48. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 エンタープライズ佐世保を出港した後にプエブロが拿捕された、こういう事件になっております。時間的にもその間に差がございます。したがいまして、ただいまの作戦行動云々は当たらない。御了承いただきます。
  49. 山本幸一

    山本(幸)委員 そうすると、政府は確信を持って、日本寄港中に命令を受けていない、こういうことですね。その確証はどういうことですか。
  50. 三木武夫

    三木国務大臣 確証を言いましょう。  私は、この事件が起こってからは、アメリカ大使と常時協議をしたわけです。日本政府が言ったことは、この事件が拡大することのないように、この問題をすみやかに平和的に解決してもらいたいと、強くアメリカ大使に対して日本政府の意向を伝え、またアメリカ大使は、この事件を拡大する意思はない、平和的に解決するということがアメリカ政府の方針であるということを繰り返して述べておるのであります。したがって、エンタープライズ佐世保から朝鮮の海峡に向かっていく場合において、その場合に作戦の命令を受けるというようなことはあり得ないことで、証拠というものは、やはり客観的な環境的証拠というものも証拠として考えなければならぬわけで、いわゆるサーカムスタンシャル・エビデンスということで、私はやはりこういうことはあり得ないことであるということを信じます。作戦の行動というのは結果的に見ればわかるわけです。そういうことで、この安保条約の重要なる規定である事前協議というものを、結果的にわかるようなことで破るようなことは、両国の関係から考えられないと考えております。
  51. 山本幸一

    山本(幸)委員 三木外務大臣、うまいことをおっしゃった。作戦の行動というものは結果的にわかる。結果を見なければわからない。そういうことになると思うのですね。そうすると、日本はぺてんにかかる場合がたまたまあるということですね。そういうことも言えるということですよ。いわゆる戦闘作戦行動ではないと思っておった。ところが結果において戦闘作戦行動になった。そうなったら、どうなるのですか。だから、そういう議論はだめなんですよ。そういう議論を何ぼ積み重ねてもだめなんです。作戦行動であるかどうかということを事前に確証を握らなければ、何人も納得しないといろことです。私は、これはそれ以上申しません。  それでは続いて申しますが、アメリカの空軍や艦艇が緊急突発事件ですぐ出動を必要とする場合、アメリカ側から日本政府に向かって事前協議の緊急要請があった、そういう場合は、私の常識では、もはや時間的には不可能と見ております。したがって、事前協議はうやむやだ、事後承諾協議になる、こうしか思われませんが、そういう場合、政府はどういう措置をとられるのですか。
  52. 三木武夫

    三木国務大臣 事前協議は、やはりこの条項は——山本さんは、事前協議というものはほとんど空文ではないかという。私はそうは思わない。安保条約における事前協議の条項というものはきわめて重要な条項だと私は思っておる。したがって、日本政府は、これは厳重に守らなければいかぬ。事前協議というものは、これを軽く考えてはいけないと私は思っています。したがって、緊急な事態においても、やはり事後承諾というのでなくして、それは事前という時間的な問題はありましょう、緊急な場合には、それでも事前協議は事後承諾であっては断じていけない、事前に対する協議であるべきであるというのが政府の見解でございます。
  53. 山本幸一

    山本(幸)委員 まあ時間がだんだんと迫ってまいりますからあまり議論しませんが、そうすると、三木外務大臣お答えによると、日本事前協議を、そういうときには真剣に考える、こういうことでしたね、総理。ところが、私の言ったように、実際には時間的には不可能なんです。そうすると事前協議は、常に無視されがちなんです。日本がどう思おうと、緊急出動を要する場合の事前協議というものは無視されがちなんです。そういう、いわば全く意味のない事前協議、そういうものをあなた方は、安保条約アメリカの行動を歯どめにする最大の武器として今後もそれがいいと思っておられるのですか。私はそういうことはないと思う。おそらく間に合わぬと思うのです、事前協議は不可能だと思いますね。総理は不可能でないと思われますか。
  54. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま日本基地を使って作戦行動、発進基地にという、その問題についていろいろな議論をしておられます。いままで実はそういうことが一度もございません。したがいまして、ただいま、絶対に間に合わないと山木君が言われることも私は当たらないのじゃないかと思う。とにかくそういう事態はございませんよ。したがいまして、先ほど、もしもそういう事態があるなら、この日米安全保障条約から見て、日本事前協議、これは事後承諾じゃないのだ、事前協議はぜひ必要とするのだ、こういってはっきり申しておるのですから、それをそのまま信用されて、山本君みたいに、それは間に合わないのだと、こうおきめになることはいかがでしょう。私は、これからあるだろうから注意するとおっしゃるならわかります。(「あとの祭りだ」と呼ぶ者あり)注意すると言うならわかりますが、これはあとの祭りだと、こう言って断言されることはやや当たらないのじゃないか、かように思います。
  55. 山本幸一

    山本(幸)委員 まあ総理はそういう事態じゃないのだ、いままでそういう事態は経験しておらぬ、そういうことはないとおっしゃった。ところがそうじゃないのですよね。安保条約はそういう事態を幾つも予想して私はつくっておられると思うのですよ。だから事態に当面しなければわからぬというようなことはあり得ぬと思います。まあしかしそれはやめましょう。  そこでひとつ進めますが、私は、先ほど指摘したとおり、プエブロ事件によって、アメリカは海軍、空軍の兵力を日本海に結集させておる、こう申しました。いわゆることばをかえて言うと、ジョンソンの危険なせとぎわ政策、そういうことも、いまはそうじゃないが、当時は考えられた。それで、西日本の漁民はたいへんな被害を受けておる。これは政府も昨日あたりから急遽対策を講じておられるらしいが、そのことはけっこうなことだと思います。ほとんど出漁ができぬ、こういう状況にあることは私が言うまでもない。  そこで、私はまずお尋ねしたいのは、日米安保条約並びに吉田・アチソン交換公文において、朝鮮国連軍の義務づけをされておりますね。これは御承知ですね。万一朝鮮水域に、あるいは三十八度線に、非常に憂慮すべき問題が起きたときに、一体吉田・アチソン交換公文によって日本の自衛隊が出るようなことがありますか。
  56. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ありません。
  57. 山本幸一

    山本(幸)委員 ありませんならありませんとはっきり答えてください。
  58. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ありません。これは自衛隊法もはっきり国外派兵は禁止しておりますが、この国連軍の場合も、申し合わせではっきりそのことはない、かように御了承いただきます。
  59. 山本幸一

    山本(幸)委員 それでは、エンプラ問題はその程度にしまして、あなたが昨日から答弁なすってみえる核問題で伺いたいと思います。  総理の一月二十七日の衆議院本会議の施政方針演説の中で、きのうも強調しておられたのですが、核兵器は絶滅する、絶滅する念願だ、こう言っておられますね。私ももちろん賛成です。核兵器を絶滅する方針、念願、これはいずれも賛成です。しからば、絶滅を期するために、一体どういう行動や行為を起こされるのか、今後どういう行動、行為を起こされるのか、それをまず私は基本的な問題として伺っておきたいと思います。
  60. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本自身が持たない、製造しない、持ち込まない、こういうこともきめますが、同時に、国際世論をそこへ持っていかなきゃなりません。核軍縮会議などはかっこうの場所でありますし、また核拡散防止協定、これなどもりっぱな方向づける一つの場だ、かように思いますから、特に私どももそれに力を入れておるわけであります。
  61. 山本幸一

    山本(幸)委員 三十日でしたか、自民党の政調会長の大平君の質問で、総理はきのう言われたように、核問題について四つの原則を述べられておりますね。四つの原則、そのうちの三番目は、「わが国安全保障については、引き続いて日米安全保障条約に基づくアメリカの核抑止力に依存する。」こう言っておられます。ところが、施政演説では、核兵器の絶滅を期することを念願とする、これはたいへんな矛盾があるんですね。なぜたいへんな矛盾があるかというと、わかりやすく言うならば、アメリカの核抑止力に依存するということは、究極的にはアメリカの核使用によって日本が守ってもらうということになるわけですね。それとあなたのおっしゃる核絶滅の念願とはどういう関連があるか、全く私は矛盾していると思うのですが、その点はいかがです。
  62. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 理想あるいは目標としての大方針と、足元を見たときの現実の問題、この二つを政治家として調整をするのが私どもの考え方でございます。私どもやはり現実に眼を閉じてはいけない。現実はとにかく核兵器はあるのであります。私ども幾ら絶滅を期しても、現にあるのであります。そういう状況のもとにおいての安全確保、現実の問題としては、アメリカの核の戦争抑止力にたよる、かような状況であります。
  63. 山本幸一

    山本(幸)委員 現実は抑止力にたよる、しかし心の中では絶滅を念願している、こういうことですね。わかりやすく言うとそういうことですね。そうすると、絶滅を念願する、現実は抑止力で守ってもらうが、絶滅を念願する、その現実と絶滅を念願することとのギャップをどうして埋めていくんですか。具体的にどういろ行動を起こすのか。
  64. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申しますように、核拡散防止も一つのその場であります。核軍縮、これがまたその方向であります。私は、アメリカ自身が、やはり国際世論から、この核兵器というものを持つことはあまりりこうな方法でないということに気がつけば、各国とも核兵器をなくする、こういう合意が成立するものだと思います。そのときに私がアメリカの核抑止力にたよる、そういうことはナンセンスであります。アメリカ自身ももう核兵器を持たなくなるのですから……。しかし、現実としては、ただいまの状況ではそこにはいかない。これがただいま私が考えておる現実の問題としての安全確保の方法。これはアメリカの核の戦争抑止力にたよる、こういうことであります。
  65. 山本幸一

    山本(幸)委員 私は、総理のおっしゃることが非常に矛盾だと思います。たとえば沖縄問題で、わが党の成田さんが質問した際に、日本は非核三原則に立ってという答弁をなすって、その結論として、小笠原にもし核があり、核基地があるならば、当然返還の際には撤去する。沖縄はどうかという質問に対して、沖縄は三年以内にめどをつける、したがって白紙だ、こうおっしゃってみえる。これは白紙だということは、沖縄は核基地つきあるいは核自由使用つき、そういうことの返還もあるということに国民はとっておるわけですね。そうすると、あなたの現実の行動の中における、いわば核絶滅の念願とは全く違うのですね。違うのです。だから、沖縄も当然核基地撤去で返還を求めるということがあなたの念願に一致するのですね。その点はどう思われるのですか。
  66. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまので——幻想ではどうも政治はやるわけにはいかない。やっぱり現実の問題と取り組まなければいけない。私は、日本の安全を確保するための現実を見た場合に、いまの安全保障体制、これは絶対に必要だろう、かように考えております。したがいまして、今後もそういうような体制を続けるでありましょうが、しかし、将来国際事情も変わるし、科学兵器もよほど変わった様相を呈する、こういうようなことになれば、これはその状態をいつまでも続けるわけでもありません。しかし、いま沖縄の問題が出てまいりました。沖縄について私はまず考えなければならないことは、沖縄同胞、これは祖国復帰を心から念願しておる。また、私どもの一億の国民も、沖縄の祖国復帰を心から念願しておる。だから、まず祖国復帰を実現するように考うべきではないか、かように私は実は考えておるのでありまして、そのときに、基地に対する考え方、これは日米間に必ず相当の相違があると私は思います。その話を詰めなければならない、復帰がきまらないという状況だと思います。したがいまして、私、まだ基地のあり方について日米間で話を詰めるという、そういう段階にいまないと思っておりますから、私自身まだ実は何にも触れておらないのです。だから、佐藤は一体沖縄が帰ってくるとき、核つきなのかどうなのかといっていろいろ聞かれるのですが、私何にも表現しておりませんから、これはおわかりにならないのがあたりまえだと思います。ただ、私は、いろいろな事情の変化があるから、それらの変化を今日から予想することはいかがかと思う。したがって、この沖縄返還をまず考えるという場合に、基地に対する考え方を直線的な考え方、一つの前提をもって考えるということは、返還を促進するゆえんではなんじゃないか、かように思いますので、私は、そこらに流動的なものがあってしかるべきじゃないか、かように思っております。したがいまして、山本君ただいまお尋ねでありますが、私は核基地つき返還を考えておるわけでもありません。また全然さような考え方はないんだ、かように断言もできない。私、何にもまだ申しておらない。ただいま白紙の状態でございますから、その点を御理解いただきたいと思います。
  67. 山本幸一

    山本(幸)委員 あなたの御答弁ではだれも了解しませんね。私はもっと率直にお尋ねしますが、アメリカとの間に、沖縄の返還条件についてはまだ詰めていない、こうおっしゃった。しかし、あなたの腹の中にあるものは、沖縄の核基地つき返還は許さない、こういうものがあるのですか、あるいは自由使用は許さない、こういうものはあるのですか。なければならぬですよ。銀行から借金してみなさい。借金するときに、利息やあるいは償還の期限を相談せずに、そういう条件を相談せずに借りられるわけないですよ。だから、やはり返還のときには当然条件の話に入らなければ、一体でなければならぬわけですよね。だから、当然あなたの腹の中に条件があるわけです。白紙ということはないですよ。そういうことは言えませんよ。そんなことはない。それは絶対ないですよ。だから、三年間のうちにめどをつける、そのめどをつける場合の条件は、あなたの腹の中にあるものは、核基地つきで返還させるのか、それはだめなのか、自由使用で返還させるのか、それはいななのか、私はその腹を聞かしてもらいたいのですよ。
  68. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 端的に申しますが、ただいま基地についての考えはまとめておりません。これではっきりおわかりだ、お答えになると思います。なぜ私がまとめておらないか。また、山本君がいま御指摘になりましたように、この話が煮詰まらない限り返還のめどはつかないのじゃないか、かように私も思います。だから、必ずそのめどをつけるためにはこの話をもっと煮詰まらせなければならない、これは私にもわかっております。しかし、ただいまそれではその煮詰まらす方向はこちらだとか、右だとか左だとか、かような考え方でない、これははっきり申し上げておきます。
  69. 山本幸一

    山本(幸)委員 佐藤総理は、客観情勢の発展、そのときの情勢によって考えるべきことであって、いまから核基地つき返還であるかないかということを言うべきでない、こうおっしゃってみえる。そうなると、あなたのおっしゃる非核三原則は非常にあやしいものになってきた、私はそう思います。  そこで、総理お尋ねしますが、総理は、去る十一月の日米共同会議において、ジョンソン大統領との間に、中国の核開発に注目し、アジア諸国が中国からの核脅威を受けないようにすることに合意している。このことは、総理の言うアメリカの核のかさで守ってもらうこと、これをさすものだと私は思っております。日本の置かれておる地理的な現状等は、アメリカの核のかさだけではないはずです。ソ連、中国の核のかさの中にもあるわけです。しかし、御承知のように、この三つの核のかさ、そのうちの二つ、つまり、ソ連、中国は、いかなることがあっても他に先んじて核兵器を使わない、こういって言明しております。これはもう私が言うまでもなく、国際的に明らかであります。両国ともその点は言明しておりますから、明らかであります。ところが、アメリカはそうじゃない。朝鮮戦争の場合には、核を使うがごとき言動によって、ついに問題が起きて、マッカーサーは辞任せざるを得なくなった。あるいは今度のベトナム戦争を通じてみても、核を使わないとは言わない。場合によれば核使用もあり得る、こういうことをたびたびアメリカの議会でやっております。そう私どもは考えておるわけですね。これはあなたが否定されようとされまいと、そのことはすでに伝わっておるわけです。そうすると、日本の核の脅威というものはアメリカにあるということですよ。日本危機アメリカの核脅威にある、こういうことを私どもは考えなければならぬ。そこで、私が先ほど申し上げたように、総理の核絶滅論と、アメリカの核抑止論にたよる、つまり核のかさ論とは、全く矛盾していることがここでも明確になってきたわけです。両国は他に先んじて使わないというのです。アメリカは使うこともあり得る、そういう態度ベトナム戦争でも出しておりますし、また朝鮮戦争ではそれで問題を起こしておりますから、そういう点を考えると、日本みずからが、アメリカの核のかさにたよっている現状から、私どもは非常に危険だ、こう考える。だから、むしろ日本アメリカの核のかさから抜け出る、このことが核絶滅のために必要ではないか、絶滅のための具体的な行動として必要ではないか、こう私は考えております。このことは、私だけでなく、日本人全体が被爆国であるという立場からいっても、私と同じような考え方を持っておると私は思うわけです。  そこで、私は総理お尋ねしたいのですが、ひとつ総理、この際、あなたの核絶滅論を国際外交に移してみたらどうなんですか。日本を代表して佐藤総理が核絶滅論を国際外交として呼びかける、これは私はあらゆる諸国が支持し、賛成すると思います。たとえて言うならば、そのためには佐藤・ジョンソン会談を開いてもいいじゃないですか、佐藤・周恩来会談を開いてもいいじゃないですか、佐藤・コスイギン会談を開いてもいいじゃないですか。そういう核絶滅の決意、信念を持ってあなたが国際外交をおやりになるなら、これは日本人ばかりでなく、全世界の人々があなたを支持すると私は思うわけです。だから、口先だけで核絶滅論を言っているのでなしに、行動に移すためにそのような国際外交をおやりになったらどうです。そうなれば、社会党はあげてこれを支持するにやぶさかじゃない。そこでやってみたらどうですか。日本平和憲法を持っているんです。そうして核兵器についてはこりごりなんです。したがって、あなたがその外交をおやりになれば、国民はあなたに熱列な支持を与えることは間違いありません。これをおやりになってはどうです。ぜひ私はその点をあなたに御要求し、あなたの腹がまえを伺ってみたい、こう思います。
  70. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申しましたように、日本の非常な決意、唯一の被爆国としてのそれから出た念願、これはもうすでにしばしば申しておりますから、どこからも誤解はないと思います。しかして、ただいま核拡散防止条約、これにも実は入らない国もございます。そういうところに私ども一つの心配を感じております。やはり核というものは人類の敵として絶滅を期するということで、各民族とも協力願いたい、そういう意味で、ただいま御提案がございましたそういう点、またよく考えてまいります。私は、軍縮など、あるいは国連会議等におきましても、すでに外務大臣などは核についての発言をいたしておりますから、日本態度はよほどわかってきている。今度はやはり核拡散防止条約、あるいはさらに、いまメンバーでございませんが、軍縮会議等におきましてこれが取り上げられる。この核拡散防止条約におきましても、まだ核兵器の縮小というような点に  つきましては明文化されておらない、これはたいへん私は不満に思いますから、そういうところで努力すべきじゃないかと思います。  ただ、私、この機会に申し上げておきたいのは、アメリカ戦争抑止力にたよるということを申しました。ただいま核はアメリカもソ連も中共もみな持っておるじゃないか、そして核のかさは、日本はそういう意味ではソ連や中共のもとにもあるじゃないか、こういうことを言われました。私は、アメリカだけが戦争抑止力、こういうことを特に申し上げておるわけではありません。ソ連や中共がみずから先に進んで使わないとおっしゃるなら、これもたいへんけっこうなことでありますが、先に進んで使わないものをなぜ持たれるか、そういうことを考えますと、私は、これは持たなくてもいいんじゃないだろうか、だから、日本と同じように、むしろ核を持たないということにもう一歩進められて徹せられたらどうか、私は、中共もソ連もしかるべくそういう方向に行かれる筋じゃないか、かように思います。アメリカ自身に私はそう申します。  それからもう一つ、ただいまの山本君の発言で、たいへん重大な事柄がございました。いまのベトナムについて、アメリカ核兵器を使う危険が多分にある、また、そのことをしばしば国会でも言っておる、こういう話でありますが、これは違っております。何年のことか知りませんが、私の持っている材料、一九六六年一月下旬、二月上旬、マクナマラ長官上院の軍事及び歳出委員会秘密聴聞会ではっきり言っている。米国は南ベトナム核兵器を使用する考えを持っていない、また、北ベトナムに対する軍事作戦では、核兵器を使用したり、または核兵器を使ったほうがよさそうな形の作戦を進める意図もない、これをはっきり申しております。また、その翌年、一九六七年五月四日、下院外交委員会で、ラスク長官も同じようなことを申しております。米国は、北ベトナムに対し核兵器使用を内容とする最後通告を行なうことは一切考えていない、この点について、決して誤解がないように願いたい、かように申しております。
  71. 山本幸一

    山本(幸)委員 総理、問題を進めますが、あなたは施政方針演説で、核保有国が核脅威を与えたり、あるいはこれを使用することを不可能にするために国際世論を喚起する、ころ述べておられます。そのことに関しては全くそのとおりです。これはだれでも賛成するでしょう。  そこで、私は総理お尋ねしたいのですが、何といっても当面一番重要な問題は、核使用をやめさせること、核使用を禁じること、このことが、一番私は当面重要な問題だと思います。だから、総理お尋ねしたいのは、こういう核使用の何らかの国際条約ができることを期待されますか。
  72. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 簡単に期待するわけにいかない。いまの現状はなかなか複雑で、なかなかむずかしいんではございませんか。そういうことができればたいへんけっこうだと私は思います。
  73. 山本幸一

    山本(幸)委員 だから期待しているわけですね。
  74. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 期待までは……。
  75. 山本幸一

    山本(幸)委員 期待ですよ、あなた。そういうことができたほうがいいんでしょう。
  76. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 できたほうがけっこうです。
  77. 山本幸一

    山本(幸)委員 そうすると、昨年国連で核兵器の使用禁止に関する決議が出ておりますね。まあ正確な名前は覚えておりませんが、核兵器使用を禁止をする要請の決議ですか、何かそういうものが出ておりますね。日本政府はこれに棄権しておりますね。なぜ棄権なすったのです。
  78. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 当時の状況、私よく存じませんが、いろいろの政治的意図があって、いろんな決議が出ますから、そういう政治意図をよく判断しないと、簡単にその結論だけを出すわけにいかぬと思います。なお、この点では外務大臣からお答えいたします。
  79. 山本幸一

    山本(幸)委員 いや、外務大臣答弁は要りません。政治的意図、私にはわかりませんが、どんな政治的意図があろうと、どんなに諸国がそれぞれの思惑を持っておろうと、核使用を禁止するということそのものはいいわけですから、だからそれに棄権なさるということがおかしいですよ。それはおかしいですよ。どんな意図を持っておろうといいんじゃないですか。要するに、そのものが核使用をやめようじゃないかという決議なら、あなたの信念からいけば当然賛成すべきです。その当然賛成すべきことを棄権なすっていらっしゃるんだから、これにも国民が大きな疑問を持つことはあたりまえです。そこで、きのうもたいへん福田君との間に議論——議論というより、何というのですか、なあなあの質疑応答があったのですが、総理は、要するに非核三原則、持たない、持ち込まない、つくらない、この非核三原則は私の信念である、こうおっしゃってみえる。信念なら、どうですか、きのうのようなああいう答弁をなさらずに、国会で、この信念を支持する、あるいはこの信念を権威づける、そういう議決をしてはどうですかな。
  80. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 昨日も予算委員会でるるその間の事情を説明いたしました。私は決議に簡単に賛成いたしません。私は、やっぱり核政策に対する四原則、そのもとにおいて初めて私の核兵器を持たないということが効果があるのでありますから、分離しての決議は私は賛成しません。
  81. 山本幸一

    山本(幸)委員 総理、私は、どうもその点が総理の口と腹とが違うように思えるのは、そういう点だと思うのですね。総理国民合意、それを唱えてみえる。けっこうなことです。そうすれば、国会というところは国民を代表しておるんですね。御承知のとおり代表しているわけです。国会と政府が合意することはなぜ悪いのですか。国会と政府が合意したらいいじゃないですか。政府のいうことを権威づけるためにそういう決議をするというんだから、合意して差しつかえないんじゃないですか。
  82. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国民の合意、また国会の合意、これができればたいへんけっこうであります。私どもは、安全保障条約が承認されて、そうして核に対する三原則を決議しよう、さようにおっしゃるのなら、たいへんけっこうであります。
  83. 山本幸一

    山本(幸)委員 それはおかしいですよ。私は、少なくともあなたのおっしゃった非核三原則、この非核三原則を総理がせっかく宣言されたんだから、これを国会が権威づける、差しつかえないじゃないですか。どうして差しつかえがあるんです。私はその点がどうしても理解できぬのです。
  84. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 核兵器に対する三原則は、核政策の四つの柱の一つでございます。   〔委員長退席、二階堂委員長代理着席〕 そういう意味で、この四つの政策でナショナルコンセンサスができるなら、それは決議してちっとも差しつかえございません。私は、ただいまようやく核政策についての議論が始まったばかりである。核兵器と核平和利用との間にもずいぶん間隔があるようでございます。こういう点はまだもっと国民の間で論議されてしかるべきじゃないか。またもう一つは、核兵器自身につきましても、これからの科学技術の進歩はすばらしいものだろう、かように想像いたしますから、いまこの時期で、ただいま核兵器に対する三原則を打ち出されること、しかも、それが核政策の四つのうちの一つだけをとられると、これは私は時期尚早でもあるし、そういうことには賛成しない、かように申しておるのであります。
  85. 山本幸一

    山本(幸)委員 どうも総理の言うことは、私どもはどうしても納得できません。私は、先ほどからるる申し上げておるように、総理がせっかく宣言されたのだから、その部分については野党全部が賛成なんです。その部分については賛成なんです。したがって、それを裏づけるために国会が議決することは差しつかえないじゃないか。しかも、国会と総理の言質と合意させることは必要なことじゃないか、そう言っているわけですね。問題は、一致点があれば一致点を国会が議決することは当然のことじゃないですか。それをいろんな理屈を言って拒むことはおかしい。いまあなたがおっしゃったように、きのうもこのことを言ってみえる。いわゆる非核三原則、核兵器の絶滅、平和利用、米の抑止力依存、この四つが自分の強い意思である、国民が私と同じ意思になるまでは、国会議決は時期尚早である、こうあなたはおっしゃってみえる。冗談じゃないですよ。あなた、冗談じゃありませんよ。これらは、あなたの意見国民に押しつける、国民があなたの意見をうんというまでは議決しない、このことになるわけですよ。そんなことは、あなたはもうあまりにも思い上がりです。ひとりよがりです。国民は、持ち込んだり、持ったり、製造することはごめんこうむりたいと、こう言っているのですから、なぜそれがあなた、国会で議決して悪いのです。あなたは総裁として自民党をまとめる義務があると私は思う。あなたが言明されたんだから、当然まとめるべきだと私は思う。あなたがそういう答弁をなすってみえると、国会の審議はできませんよ。そんな四つの問題にひっかけてきて、そうして何だかわけのわからないような答弁をなすっても、われわれはそういうことは承認できませんよ。   〔二階堂委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、もう一ぺんこれは明らかにしてもらいたい。あなたの意見が、自分の意思国民が近づかなければそれまでは時期尚早だ、そういう答弁でした、きのうの答弁は。まことにあなたは国民を侮辱しておりますよ。また国会を侮辱しておりますよ。そんなことはありませんよ、あなた。民主主義の政治というものは、国民意思を、多数の意思に基づいて行なうべきですよ。それを自分の意見を押しつけるまでは尚早だというような言い方は、何びともこれは納得しませんよ。もう一ぺんお答え願います。
  86. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、核政策に対する四つの柱ということをいままで申してきております。そのうちの一つが核兵器に対する三原則であります。したがいまして、核軍縮、第三が平和利用、第四が、そういうもとにおいては、現実に日米安全保障条約、この四つを実は申しておるのであります。したがいまして、ただいま第一の核兵器に対するところでは一致はできる、それだけはひとつやろうじゃないか、かように仰せられましても、私の考えとは実は違うのであります。しかし私は、国民に、全体に私の意思を押しつけるというような考えではございません。私は、必ず国民は私のいま言っていることについて支持を与えてくれていると思います。私はさように思っておりますので、ただいまのところその説——(発言する者あり)さっきも言っている不規則発言がございますが、つまみ食いするといろ考え方にはどうも私ども賛成しないのです。だからその一つだけ取り出しまして、それで決議をしようと言われても、それは私はよくないということを実は申しておるわけであります。
  87. 山本幸一

    山本(幸)委員 私は納得しません。それはできませんよ。  それでは総理にもう一ぺん聞きますよ。総理のおっしゃる三原則、私はこの三原則を、国会は総理の宣言を支持する、その支持は国会の意思である、こういう決議を出そうと思うのです。野党四党、これは出します。これに対して総理は反対されるのですか。もしこれに反対されるなら、それはとても審議できませんよ。
  88. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はいろいろ問題を含んでおると思います。いわゆる非武装中立をとっておっておられる社会党の方々、私どものように安全保障条約のもとにおいて、この核兵器の三原則を守り抜いておる者と、これが同一に決議ができるものかどうか、どうもこの点だけは一緒だから一緒になろうじゃないかと言われましても、国民はたいへん迷惑するのじゃないか。その決議ができたために、一体どちらへ持っていくのだ、私はたいへんなことだろうと思います。したがいまして、核政策に対する四つの柱、これについて十分の相談ができて、そして国民の間にその方向がきまれば、それはそれできめていいだろう。その問題がきまらないうちに、ただいまやることは時期尚早だということにもなるのであります。
  89. 山本幸一

    山本(幸)委員 そんなのは矛盾ですよ。たとえて、例をとりましょうよ。対中国問題で社会党の考え方と政府・自民党の考え方とは違いがありますよ。あっても、貿易拡大する点については、あなた反対じゃないでしょうな。だから、基本的な問題の違いはあっても、その部分部分で一致すればやるべきですよ。それは当然なことですよ、あなた。それをやらないということは、あなたは核四原則に藉口して、アメリカの核抑止に依存しておるからその問題でやれないのだというお答えですよ。それは明らかにあなたの腹の中には、三原則がうそだということなんですよ。そういううそをわれわれは聞いて国会の審議はできませんよ。そんなばかなことはないよ、あなた。じょうだんじゃないよ、あなた。   〔発言する者多し〕
  90. 井出一太郎

    井出委員長 静粛に願います。
  91. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、山木君のお尋ねお答えをしておるのです。山木君もまた山木君の考え方を私に押しつけられようとしていらっしゃるわけでもないでしょう。だから、それは御意見としてただいま出されましても、私は、安保条約のもとにおける核三原則、これでは一致しないのじゃないか。それは皆さん方安保条約を賛成なさればそれは問題ございません。だけれども、私はそれができないんだろうと、かように考えておりますから、私の主張を言っておるのです。私が考え方を国民にしいるものだ、こう言って私を批判されますが、ただいま山木君のお話を聞いておれば、山本君の考え方を私にしいられようとするのじゃないか。私は、そういう点は答弁として私の意見を申し上げておる。それで判断をしていただければいいのです。それより以上私いまここで議論いたしましてもそれは無理だ、かように思います。
  92. 山本幸一

    山本(幸)委員 現実に安保条約があっても、政府は先ほどから非核三原則は守るのだ、こう言ってみえるのだから、現実にあることは私ども知っていますよ。現実にあることは認めていますよ。反対であろうと賛成であろうと、認めていますよ。そのもとで、私ども総理の言う三原則というものを、これを支持することが国会の意思である、こういう決議案を出そうというのに、それに賛成できなければ——こんなばかなことはあるものですか。そんなことはないですよ。それは許せません。断じて許せません。   〔「委員会審議できぬよ」と呼び、その他発言する者、離席する者多し〕
  93. 井出一太郎

    井出委員長 理事以外の方は御着席を願います。当面、理事の諸君で話し合っていただきますから、理事以外の方は御着席を願います。   〔「理事以外は議席に着こうじゃないか」と呼び、その他発言する者多し〕
  94. 井出一太郎

    井出委員長 静粛に願います。とりあえず理事の諸君で話し合いを続けますから……。   〔「もっと誠意ある答弁をされなければ続けられませんよ」と呼び、その他発言する者多し〕
  95. 井出一太郎

    井出委員長 理事の諸君で協議をいたしてもらいますので、山本君には質疑を続行願います。   〔発言する者多し〕
  96. 井出一太郎

    井出委員長 ただいまの問題につきましては、理事会において協議することといたしまして、一時まで休憩いたします。    午後零時十四分休憩      ————◇—————    午後二時五十五分開議
  97. 井出一太郎

    井出委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  先ほどの非核三原則の国会決議に関する問題については、理事会協議いたしましたが、あらためて山本幸一君より総理に所信をただすことにいたしましたので、御了承願います。  質疑を続行いたします。山本幸一君。
  98. 山本幸一

    山本(幸)委員 私、先ほど非核三原則の決議案でいろいろ申し上げたわけですが、私は、この問題は政府、政党とも真剣に取り組むべき重要な課題である、こういう認識でおるわけですから、したがって、その佐藤さんのおっしゃる三原則を国会が議決をして一そう権威づける、同時にそのことは、先ほど申し上げたように、国会と政府とのいわば合意である、国民合意である、こういう見地に立っておるわけです。特に内閣は、それは佐藤総理はいつまでもおやりになるかもしらぬけれども、いつ交代するかもしれません。国会はこれは永久不変です。そういう意味においても国会で議決することが国民にこたえる道である、こう考えておるわけです。  それからいま一つは、三十日の本会議でわが党の江田副委員長質問した際の総理お答えは、こういうことに触れておりませんね。先ほどおっしゃった四項目の核政策には全然触れられておらない。言うならば、私どもは、何となしにきのうごろからこれがくっついてきて、そうして非核三原則を事実上薄めるというのか消すというのか、そういうふうに印象づけられておる。これはたいへん私どもは心配することです。したがって私どもは、核政策と、核政策の中にもちろん核兵器の問題も入りましょうが、やはりあなたがここ一年の間、常に口ぐせのようにおっしゃった、持たない、製造しない、持ち込まない、この核兵器そのものに関する三原則を、ひとつぜひあなたのおっしゃるものを決議にしたい、こういうことなんです。だから、要約して言うと、私どもは、むしろ百歩譲歩して、佐藤総理のおっしゃった、持たない、持ち込まない、製造しないという非核三原則を支持する。その支持することを国会の意思とする、こういう決議案を出そうというのですから、これはまことに私どもは——各政党それぞれ意見を持っておりますが、この際、総理発言を支持して、それを国会の意思にしたい、こういうふうに、言うならば、かなりまとめるための努力をしておるつもりです。したがって私は、ぜひこの際、総理もそういう方向に向かってひとつ御答弁をいただきたい、こう思うわけであります。
  99. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  先ほどいろいろ山本君からも御意見を交えてのお尋ねがございました。私もまた、政府としての、総理としての所信もいろいろ申しました。しかし、いずれにいたしましても、国会が国権の最高機関であること、これは私も尊重するところであります。当然国会の意思として決議されたことは、私は尊重するのがあたりまえでございます。さように御了承をいただきたいと思います。
  100. 山本幸一

    山本(幸)委員 そうすると、私から念のために確認しておきますが、いまの御答弁をこう理解していいのですか。国会の非核決議に対しては、国会の意思として尊重いたします、なお総裁として民主的に党議をまとめる努力をする、こういうふうに理解していいですか。
  101. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、国権の最高機関である国会の決議というものは、私は当然尊重する、これはもう間違いございません。同時にまた、私が総裁として私の職責を忠実に果たす、これは御指摘になるまでもなく当然のことでございますから、さような意味の最善の努力をすること、これは私の仕事でございます。
  102. 山本幸一

    山本(幸)委員 大体はっきりしました。最善の努力をされるとおっしゃったんだから、よろしいでしょうう。  そこで、実は、次の質問者関係もありますし、せっかくの委員長の運営になるべく協力したいと思います。私は、実は、まだベトナム問題で、ベトナムのジュネーブ協定の経過を明らかにする、そのことが、いずれが侵略であるかということが明確になる。同時に、それが明確になりませんと、将来ベトナム平和を求めるためには非常に大きな要素になりますから、そういう点でベトナム問題を、実は詳細にただそうというっもりでおりましたけれども、それも割愛いたします。それから、いま一つは財政問題で、これまたかなり大筋だけを御質問するつもりでおりました。これも時間の関係で割愛いたします。したがって、ほんの三十分程度、結論的に、そのものずばりを私はお尋ねしたいと思いますので、ぜひひとつ率直にお答えをいただきたいと思います。  その一つは、これはベトナム問題に関連して——委員長、中途でえらい恐縮ですが、いま私が申し上げたことに、確認いただけますか。いわゆる国会の非核決議に対しては、国会の意思として尊重します、なお自民党総裁として、民主的に党議をまとめるよう努力いたします——これは理事間のお約束だそうですか、よろしゅうございますか。
  103. 井出一太郎

    井出委員長 ただいま山本委員の御発言は、当委員会のただいまの審議の経過にもかんがみまして、委員長としても、理事会の経緯もありますから、これを確認、了承いたします。
  104. 山本幸一

    山本(幸)委員 それじゃ継続いたします。  いま申し上げたように、そのものずばりを御質問いたしますが、昨年の十二月一日に、御承知のように下田駐米大使が妙なことを発言しておりますね。これはやはりどこかの委員会質問があったことを私は記憶しております。たしか予算委員会じゃないかと思います。下田発言を要約すると、日本国民の大多数は、アメリカベトナムで達成しようとしていることを理解し、これを静かに支持している、彼らは、北爆は南への兵力増強を阻止するため結局は必要だと理解している——彼らとは日本人多数をいっているわけですね。私は、これは非常に重要な発言だと思うわけですが、政府は、一体、このベトナム戦争について、アメリカの考え方を国民の多数が支持しておるのかどうか、そういう確証があるのかどうか、下田発言の内容は、総理として、もっともだと思われるのか、それは違うと思われるのか、この際明確にしておきたいと思います。
  105. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 結論をずばり申しますが、下田発言としては穏当なものだと、かように思っております。
  106. 山本幸一

    山本(幸)委員 その穏当という根拠はどこにあるのですか。国民の多数がアメリカベトナム戦争を静かに支持している、これは穏当ですか。
  107. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはいろいろ議論がございまして、国民は支持しないとか支持するとか、かように申しますが、いずれにしても、両方が水かけ論だろうと思いますが、そこでこういう問題をどういうふうに見るかと——皆さん方国民は支持しないと言われるでしょうが、私はこれは支持すると、かように申すので、その意味において穏当だ、かように表現しております。
  108. 山本幸一

    山本(幸)委員 なるほど、国民の多数が支持しておるということじゃなしに、私はその発言を支持する、その意味ですか。
  109. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国民の大多数は支持するであろうと私は考えますと、こういうことでございます。
  110. 山本幸一

    山本(幸)委員 おかしいですね。国民の大多数が支持するであろう——あろうということは、あなたも確信がないということ。そうすると、下田駐米大使が、総理でも大臣でもないのに、それを断定的に、国民は静かに支持していると言っているのですよ。いると言っているのです。そういうことを支持できますか。
  111. 三木武夫

    三木国務大臣 下田大使の発言は、テキストも十分検討を加えたのでございます。そうしたら、下田大使が支持すると言っておることは、アメリカベトナムにおいて達成しようとすることに対して、日本国民は静かなる支持を与えているというふうに述べておる。だから、アメリカが達成しようと努力しておることを支持しておるので、個々の戦闘行為というものを、いろいろ全部ベトナム戦争を支持しておるというような発言ではない。アメリカベトナムで達成しようとしておることは、結局は日本政府にも、ベトナム戦争に対するアメリカの意図というものを、ハンフリー副大統領、また、それに対してハリマンも説明に来まして、ベトナム戦争に対する十四ポイントというものを政府に持ってきておるのであります。それは結局はどういうことかといえば、アメリカの達成しようとしておることは、ベトナムの安全と独立を守るのが一つ。そして、それが達成できるならば、アメリカ基地を置かない。アメリカの軍隊は撤退する。そしてベトナムの将来はベトナム人みずからがきめるべきである、こういうことが、このアメリカが達成しようという中の注目すべき項目であります。こういうことに対しては、日本国民は、こういうアメリカが南ベトナムで達成しようとする目標に対しては、むろん反対もありますけれども、多数の国民はこれを支持しておるというのが政府の判断でございます。
  112. 山本幸一

    山本(幸)委員 三木外務大臣は、非常に御都合のいい解釈をなすっていらっしゃるように私は思う。下田大使は、あなたのような発言はしておりません。きわめて簡潔に、アメリカが達成しようとしている事実を理解し、静かに支持している、こう言っているのです。この中にはいろいろなものがあるのですよ。あなたのおっしゃることだけの側面じゃありませんよ。アメリカが北爆することも支持しておるということです。アメリカが南のベトナムの国内でもどんどん爆撃しておることも支持しているのです。南の人民を毎日毎日殺戮していることも支持しているのです。全部入っているのですよ。それをあなたは、一方の側面だけで、アメリカの達成しようとすることを支持しているのだというその考え方は私は独断だと思いますね。私は、もっと百歩譲歩してあげて、これは日本総理大臣の言明でもない、三木外務大臣の言明でもない、こういう抽象的なものは、下田大使の言明にすぎないのだ、こういう答弁を期待しておりましたよ、実際問題。ところが、まるきりアメリカの達成しようとすることを支持するのは一切を言うのですからね。部分だけの側面をあげてもらっては困るということですよ。そんなことで国民をごまかそうたって、ごまかされませんよ。ですから、問題は、私の期待していることは、少なくとも外務大臣なり総理大臣が言ったのじゃない、下田君はちょっと軽率な発言をしておる、こういうことを私は聞きたかったのですがね。どうなんですか、一体。どうしてもわからなければ、私は下田を呼んでいただきたい。少なくとも、国の政策に関して、役人がまるきり総理大臣か外務大臣になったようなつもりでかってなことを発言する、そんなことが許されますか、あなた。一介の役人が、そういうことが許されますか、それなら、私は国会に呼んでもらいたい。呼んでもらわなければ承知しませんよ、そういう答弁なら。あなた方が、あれは軽率だ、われわれの意見じゃない、こうおっしゃることをわれわれは期待しておったんだ。役人がそういう意見をかってに言うことはいかぬ、今後注意するとでもおっしゃると思ったら、まるきりあなたは逆のことを言っている。これじゃ承認しませんよ、私は。私は、冒頭申し上げたように、日本はいま重大な危機に入っているから、お互いに政党政派を越えてこの危機を何とか打開しなければならぬ、こういう立場で、イデオロギーを越えてぼくはしゃべっているつもりです。それを何のかんの言って、ある側面だけを取り上げて擁護するという答弁答弁になりませんよ、それは。
  113. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、全部のテキストもここに持っているわけです。そして読んでみたのですが、これは個々の戦闘行為、ああいう戦争が行なわれておるのに、その軍事行動を全部支持するという国家の立場は、私はないと思う。だから下田君をここで述べておることは、「トライング ツーアコンプリッシュ イン ベトナム」、こう言っているので、ベトナムで達成しようとするアメリカのこの目的に対して支持するということで、個々の戦闘行為に対してそれを日本が支持する、そんな政府の立場はない。達成しようとする目的は、ベトナムの安全、独立というものが、これが維持されるならば、アメリカは兵隊を引く、基地も求めない、基地も置かない、こう言っておる。このアメリカ目的に対しては、日本人は理解しておるということであって、個々の戦闘行為全部に政府が支持を与えるというような立場はとり得るものではないということでございます。
  114. 山本幸一

    山本(幸)委員 そういうことをおっしゃるなら、私はベトナム問題におのずから触れなければならぬ、どちらが一体侵略しているかという実態に触れなければならぬ。私は運営に協力する意味でそれを省略すると先ほど申し上げておる、割愛すると申し上げておる。何のためにアメリカが一万キロも先からよその国に軍隊を送らなければならぬのです。何のためにそんなことをしなければならぬ。南ベトナムのかいらい政権が要求したといっているが、ジュネーブ協定の経過を見れば、明らかにアメリカが要求させたんじゃないですか。必要なら私は何時間でもかけて、これからジュネーブ協定の内容を言いますよ。冗談じゃないですよ、あなた。何のために一万キロ先からよその国に五十何万という軍隊を送るのです。そのこと自体、アメリカが意図していることは一体何です。そういうことを無視して、単にアメリカベトナムの平和を望んでおるからという外交的な発言、そういうことだけをとらえて、そうしてあなた方答弁なすっても、今日の世界の人々は、そういうことじゃ承認しませんよ。だから、少なくとも下田発言は軽率である。そういう発言なら外務大臣やりなさい、総理大臣がやりなさい。何であなた、一役人が、小なまいきに日本政策を言うとは一体何です、それは。その責任はどうするのです、下田の責任は。
  115. 三木武夫

    三木国務大臣 いま、ベトナム戦争の性格、これは山本さんとわれわれの考えは違います。したがって、ここでこれを論議ということは、非常に考えの開きが出てくると思います。しかし、われわれはアメリカが、ベトナムの独立、これが維持できるならば基地も求めぬ、兵隊も撤退する、そして民族自決の原則を求める、こういうアメリカの立場は世界に公表しておるのであります。そういう意味において、南ベトナムの独立、安全というものを維持したならば、それだけが目的である、こういうアメリカの立場というものはわれわれは理解をするものでございます。その点に触れて下田君が発言したということが非常に日本政府の考え方と違ったことを発言したとは私は思っていないのでございます。
  116. 山本幸一

    山本(幸)委員 それじゃ具体的に資料を出しましょう。内閣総理大臣官房広報室で、要するに世論調査を依頼しております。この世論調査の文献を私は手に入れております。これによると、いろんな調査をしております。調査をしておりますが、その調査の結果、「そのように今のところ、両者の折り合いがつかないので、アメリカはベトコンとの作戦を続ける一方で、南ベトナム政府に対して社会改革と経済建設に大きな援助を与えようとしていますが、……あなたはそのようなアメリカベトナム政策をどう思いますか」その前段には「ベトナム問題の平和的解決のために、アメリカは無条件の話し合いを主張し、北ベトナム側は四条件をアメリカがのむことを主張して、折り合いがつかないでいることをご存じですか。」引き続いて、いまのことを問うているわけです。これは政府が依頼した中央何とか調査社ですから、よほど政府の誘導的な世論調査のテーマになっていることは間違いない。そういうものであっても、その結果、アメリカ政策を支持するというものは一三%、支持しないというものは一八%、わからないというものは一六%、もしこれをこの率で倍に伸ばせば、支持するというものは二六%、支持しないというものは三六%、わからないは三二%です。国民の多数は支持していないのです。アメリカの意図する政策ですらも支持していないのです。こういう具体的な証拠が内閣官房広報室から依頼して出ている世論調査ですよ。私は、三木外務大臣はそこまで詭弁を言ってはいかぬと思う。あなただって将来があるんだから、そこまで詭弁を言ってはいかぬと思う。やはり認めることは認めなければいかぬと思うのです。どうですか、もう一ぺん言ってください。
  117. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、下田君の発言というものは、政府の考え方と違っておるとは思っていない。実際思っていない。そのいろいろの個々の世論調査については、戦闘行為の一つ一つをとれば、いろんな世論調査は私は出てくると思う。しかし全体としてアメリカベトナムに対する戦闘目的というものに対してはわれわれは理解できるという考え方にこの政府は立っておるわけでございます。それならば、こういう戦争がいつまでも続いていくことがいいのかというと、そうは思っていないわけであります。思っていないなればこそ、一日も早くこの平和達成のためにあらゆる努力をわれわれ日本政府はしておるわけであります。したがって、いまのところアメリカが達成しようというこの目標は理解できる。しかしこのことがいつまでも続いていくことがいいとは考えていないわけです。何とかこの戦争を早く終わらせられないかと努力しておるということでありまして、いろんな世論がこの問題について出ることは、むしろ当然だと私は思っています。
  118. 山本幸一

    山本(幸)委員 三木外務大臣の御説明を私は承認して申し上げておる、個々のケースに触れないで。この世論調査は、アメリカの平和的解決に対して、北ベトナム側は四条件を出しているので、折り合いがつかぬ。こういうことを前提にして、その両者の折り合いがつかないが、南ベトナム政府に対して社会改革と経済建設に大きな援助を与えようとするアメリカ政策、言うならば、アメリカが求めておる平和政策——私に言わせれば、それはインチキだが、平和政策を支持するのかどうか、この世論調査に、支持しないというのが多いというのですよ、私は。あなたのおっしゃることに百歩譲歩して言っているのです。しかし、これ以上言うと時間がかかるからやめますが、これは留保します。留保して、あらためて予算委員会中に瞬間を十分とってもらって、私もさらに一切の調査をしてやってみましょう。きょうは留保します。したがって、これは結論がついておりませんよ。  委員長、私は委員長にお願いしたいのですが、ぜひひとつ予算委員会理事会で——私はやはり今予算委員会開会中に下田大使を召還してもらいたい。召還されることを委員長に強く要求する。委員長はこの旨を早急に理事会にはかっていただきたい。こういうことを申し上げて、一応これは打ち切ります。
  119. 井出一太郎

    井出委員長 ただいまの山本委員の御発言は、理事会にはかって協議をいたします。
  120. 山本幸一

    山本(幸)委員 なかなか委員長、姿勢よろしい。  そこで、この際ひとつ貿易問題に簡単に触れます。  いろいろ申し上げたいが、結論だけ言うと、わが国アメリカ依存貿易だけでは経済そのものが必ずしもよろしくない。したがってもう少し貿易構造を変えなければいけない、貿易はもっと多角的にやってもらわなければいけない。そのことは別にアメリカの貿易を減らせということじゃありませんよ。誤解のないように。多角的にやってもらうことは、むしろアメリカと対等貿易ができて日本は有利になるということを含んでいるのですから、私はアメリカの貿易を制限しようなどと思っておりません。そういう多角的な貿易をやる関係では何といってもやはり隣の中国との貿易、これは単に中国だけの貿易でなしに、中国の貿易を中心にしてアジア諸地域にいわゆる互恵平等における貿易の拡大になる、日本経済の拡大になる、こう私どもは理解しておりますから、どうしてもその中国の貿易の拡大をしなければならぬ。  そこで、この中国の貿易を拡大しようとすると、従来の経緯からいけば、輸銀融資が一番障害になっております。私はそういうことを考えるときに、いま自民党のどなたでしたか、岡崎さんをはじめ古井君、田川君、こういう方々が中国へ御足労を願っておる。これは御承知のように、わが党の石野代議士が中国へ参りましていろいろその話をした結果、ことづけを伝えて、それがきっかけになっていらしてみえる、私はこれはたいへんな問題だと思います。これを総理は成功さしたいのですね。いいですね。——そうすると、さしたいとおっしゃるならお尋ねしたいが、やはり輸銀融資の問題です。それに関連して吉田書簡の問題です。この間、総理発言は、吉田書簡は超越するとおっしゃってみえる。福田幹事長はこだわらないと言っていらっしゃる。総理の言う超越と幹事長の言うこだわらない、これは同意味だと解釈してよろしゅうございますか。
  121. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 吉田書簡にだけお尋ねのようですが、ただいまの貿易構造、これはできるだけ多角的に広い範囲で、また貿易を拡大するという、そういう方向が望ましいことは御指摘になるまでもございません。アメリカ依存、依存と言われますけれども、別にアメリカに貿易は依存してはおりません。日米間の貿易は大体三〇%程度だ、だから他の七〇%はアメリカ以外のところでやっている、このことははっきり申し上げておきます。  そこで、いまの中共との貿易でございます。これは御承知のように、政府が政治的に承認している国ではございません。しかし、前から中共との間に政経分離で経済交流あるいは文化交流、こういうことをいろいろやっております。したがいまして、その関係においては民間の方や各党の方々がそれぞれやってくだすっている。政府自身はそういうものについて別にとやかく申すという立場でない、これはもうはっきりしております。しかし、今回はわが党の二人の代議士も出かけたのでございますから、私は、それらのものが成果をあげるように、かようには願っておりますけれども、これは政府としてではございません。そういう関係が両国の間にあることが望ましい、かように思っております。  そこで、輸銀の問題は一体どうなるのか。これは私がしばしば申しますように、輸銀のこれはケース・バイ・ケース、そのつど考えればいいことだ、かように考えておりますし、またしばしば問題になります吉田書簡というもの、これはもう申すまでもなく政府がどうこうしたものではございません。したがいまして、吉田書簡がいまどういうことになっている、こういうような議論をすることはあまり実益のないことのように実は思っているというのが幹事長並びに私どもの考え方であります。したがいまして、ただいまの点、御懸念になるようでありますけれども、私は、中共との貿易、過去におきましてLT貿易というものが一つの大きなパイプであった、かように思います。これが昨年にLT貿易が期限がきて、それがとまるようだ、こういう意味で各方面が心配した、かように思っておりますので、それがまた再開されるという、そういう意味の、ただいまわが党の二人の代議士、岡崎君もそういうことで出かけたのだ、かように理解しております。
  122. 山本幸一

    山本(幸)委員 いま理事から注意がありまして、時間が超過しちゃいかぬということですからやめたいと思いますが、どうも総理答弁ではすっきりしませんね。吉田書簡は政府のやったことじゃないからそれは超越しておる、しかし台湾政府はこれをたてにとってとやかく言っている。全くこれは食い違っているわけです。だから、あなたは——私はもう一言だけ言います。言って、なおこの問題も今後やるように留保しておきますが、吉田書簡は政府のやったことでない、台湾が何と言おうとそれは政府としては政府独自でやるのだ、吉田書簡というものはもう古証文で、死物だ、こういうふうに理解していいのですか。
  123. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、この吉田書簡を、いまさら、山本君の言われるように、取り上げること、こうなるとこれはたいへんだと思います。これ、取り上げないところに味がある、かように御理解いただきます。
  124. 山本幸一

    山本(幸)委員 それでは留保しておきます。留保して、あらためてやります。  最後に、これはむしろ総理に御忠告を申し上げる意味であえて申し上げたいと思うのですが、例の政治姿勢の問題で、政治資金規正法が文字どおりまた骨を抜かれる。総理は小骨一つも抜かぬと言っているが、さんざんこの前抜いて、また今度抜く。これはもう小骨も大骨も何にもない。コンニャクみたいになっちゃう。コンニャクかとうふみたいになる。そういうものをお出しになる。あまつさえ、選挙制度審議会で一番骨抜きをし、政治資金規正法に反対せられた人が、いま自治大臣になっておる。この政治資金規正法は、自治大臣の所管案件である、こういうことですね。国民は全く疑っておりますよ。私は、総理は小骨を抜かぬ、大骨も抜かぬとおっしゃるが、事実二回にわたってさんざんずたずたにされているのです。こんなことで、あなたが政治姿勢を正すなんとおっしゃったって、それはだれも信用しませんよ。私は、総理は勇気をもってこの際せめても制度審議会が答申したあれを原案にしておやりになることがいいと思う。われわれ野党は、野党のそれぞれの主張がございますが、とりあえず野党の主張は一歩後退さしてよろしい、せめても制度審議会が出した答申、これによって野党はぜひ政府に要求したいし、また、そういう大体趣旨、方針に基づいて野党が提案して、これがいま継続審議になっております。私は特に総理にこの点を強く要望しておきたいのは、あなたが真に政治姿勢を正すとおっしゃるなら、せめても骨の抜かない、国民の納得をする政治資金規正法をおつくりになることを特に要求します。  これは繰り返して申し上げますが、あなた方はあるいは答弁されるときには——ここで答弁を求めておりませんが、されるときには、その頭の中にあるものは、自民党は多数党である、したがって多数の国民の支持を得ておるとおっしゃるかもしれない。ところが昨年一月の総選挙は、全野党が五〇%をこえて、政府自民党は四八%七でしたか、八でしたか、五〇%を割っているのですよ。したがって政府の出す原案は国民が支持しておるとは言いがたいのであります。私は、そういうことを、もし総理に良心があるなら十分念頭に置いていただいて、この政治資金規正法に関しては国民要望を達成するように、国民の要求を達成するように、そういう努力をされんことをこの際特に強調いたしまして、本日の質問を終わります。引き続いてまた次の機会に、いまの留保しました二つの問題についてあらためて御質問をする機会をつくりたいと思っております。  以上、終わります。(拍手
  125. 井出一太郎

    井出委員長 これにて山本君の質疑は終了いたしました。  次に、曽祢君の総括質疑を許しますが、この際、内閣総理大臣より発言を求められておりますので、これを許します。佐藤内閣総理大臣
  126. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 曽祢君にお断わりいたしますし、また予算委員会皆さんにお断わりいたしますが、この機会に、西村君の本会議における質問で私の答弁漏れがあるようでございますから、その点、私の答弁をしたいと思いますので、ひとつお許しを願いたいと思います。  第一点は、北朝鮮のプエブロ拿捕事件質問中、日本基地を発進基地に使用しないかどうか、これが一点であります。御承知のように、アメリカ軍艦の拿捕事件、これはできるだけ平和裏に解決するようにということで、政府もあらゆる努力をしてまいりました。また、関係国もそういう方面で平和的に解決しようというあらゆる努力をされてまいりました。ただいまのところ、突発いたしました際の空気よりもよほど緩和されたと思います。したがいまして、ただいまとなりましては、この事前協議問題等はあまり具体的にそういうことが起こるというようには私も考えません。そこで、日本基地を発進基地として作戦行動するようなことはないかどうか、こういうお尋ねでありますが、そういうような事柄が万一あれば、政府はもちろんこれに対して善処するということを申し上げておきます。  第二の問題は、核拡散防止条約質問のうち、過去同条約についていかなる努力を払ったか、こういうことであります。これは御承知のように、私どもは特使を派遣したり、また外交ルートで、核拡散防止条約の案ができ上がることについていろいろわがほうの要望を伝えてまいりました。そうしてある程度その目的を達したように思います。しかしながら、西村君の御指摘になりましたように、過去の努力にもかかわらず、まだまだ核拡散防止条約案のうちに入らないものが、特に大きいものといたしまして、核軍縮の方向が不明確であるとか、あるいは非核国に対する核保障が取りつけられないでいること、あるいは査察につきまして核保有国と非保有国との間に実質的に差別があるとか等々があげられるのであります。これらの問題についても、さらに詳細にそれぞれお答えのできることでありますが、必ずしも私どもの主張そのものが今日ずばりと実現しておるわけじゃありません。今後これらの点について、さらに関係各国が納得のいくような、そういう方向で努力すべきだ、その点を申し上げましてお答えといたします。
  127. 井出一太郎

  128. 曾禰益

    曽祢委員 ただいまの総理の御発言に関しては、私の質問の中で触れてさらに御質問したいと思います。  私は、民社党を代表いたしまして、政府政策、なかんずく外交、防衛を中心としながら、しかし国際経済の問題並びに政治姿勢の問題についても、十分ではございませんが、第二陣、第三陣の同僚委員に多くを譲りますが、若干触れてみたいと存じます。  最初に経済問題でございますが、どうも私どもの考えでは、政府の四十三年度予算編成の前提となっております経済成長率を名目一二・一%、実質七・六%に見込んで、国際収支については四十三年度の総合が赤字三億五千万ドル程度と見込んでおられるようでございますが、しかしこれはどう考えましても、私はこの見通しは甘いと思うのであります。その理由として、特に政府は十二月二十九日に発表いたしました経済見通しを一カ月足らずで相当根本的な修正をしております。たとえば四十二年度の赤字は最上限においても六億九千万ドルと見ておったのを、これは七億ドルにする、四十三年度の赤字は最高限である三億五千万ドルにもう変えてしまう。このような、言うならば朝令暮改で、一体四十三年度全体の見通しがこれで済むかということが当然国民の疑いの的になると思うのであります。  第二に、四十三年度の輸出の伸びは一五二%と見ておるのでありまするが、これも十二月の前の計数では一四・一%ないし一四・五%ぐらいに見ておった。これが世界の輸入の伸びを六・五%と見て、わが国の輸出弾性値を二・三、四%というはじき出しをしたのでございまするが、これは宮澤経済企画庁長官の経済演説の中にも言っておられるように、これはどうも輸出の増進に格段の努力が必要だぐらいではとても済むものではない、ほとんど達成不可能の数字ではなかろうかと思うのであります。特にポンドの切り下げの影響、ドル防衛の影響、ヨーロッパの景気の後退、アメリカ経済の引き締め等の関係上、輸出目標の達成は至難でございまして、貿易収支二十億ドルの黒字の予想は全く甘いのではないか。また貿易外収支あるいは長期資本収支の赤字の予想も、アメリカのドル防衛策の強化等から見て、これまた非常に甘い、内輪に見積もった数字ではないか。  結局において、総合収支の政府予想の赤字三億五千万ドルは、これは全くの非現実的なものであって、幾らかは、これはなかなかむずかしいことでございましょうが、少なくとも五億ドル以上の赤字が予想されるのではないか。またこれをもし避けようとするならば、これこそ非常に深刻なデフレに転換を余儀なくされるのであって、政府が今度の経済運営の基本条件としてあげておられる国際収支の均衡を回復する、もう一つ物価の安定を必ずやるのだ、この運営の二本柱は、どうしてもこれはどちらも困難、特に国際収支の均衡回復はその根底からくずれるのではないかと思うのでありますが、以下私の質問全般について、特に私が各省大臣を御指名しない以外は、あまり詳細に入っている時間もございませんので、総理大臣から直接簡潔にお答えを願いたいと思います。
  129. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 曽祢君のただいまの日本の経済の見通しについて政府の見方が甘いんじゃないか、こういう御注意でございます。確かに、ことし四十三年度の国際経済環境はまことにきびしいものがございますから、私どもよほど腹をきちんときめて取り組まないと、なまやさしいものでないことは御指摘のとおりであります。しかし、政府といたしまして、一応の見積もりを立てないわけにはいきません。むずかしいからというので、全然お先まつ暗というわけにはいきません。  そこでまず、国際収支の赤が前半において三億五千万ドル程度、しかし後半においては大体とんとんになるようにわれわれが経済運営をしていこう、こういうことをいま考えておりますし、また最近の引き締めその他から見まして、輸出の伸びもただいま言われるように、なかなか困難だろうとは言われますが、だんだん国内に引き締めの効果があがりつつありますから、そうすると、やはり輸出に出ていくようであります。一般にこの国際環境では、国際経済では七%程度の輸出の伸びがあるだろう、貿易の伸びがあるだろう、かように申しておりますが、日本の場合にこれを弾性値で直してみると、大体二・三あるいは二・四、弾性値がこういうような数字になりますから、そこで輸出の伸び、これが国際収支もよくするだろう、こういう見通しにも実はなるわけであります。しかし、いかにも日本の場合はこれが大き過ぎる。したがって政府といたしましても、輸出振興のために税制、金融あるいは産業別にやはり強化する、競争力をつちかうような政策をとらなきゃならぬことは当然であります。また貿易外の収支におきましても、資本収支においては、いろいろドル防衛その他でむずかしいこともございますけれども、ことしのアメリカ日本との関係においては、在来からの六五%程度考えようということでございますから、まずこれも何とか切り抜けていけるのじゃないだろうか。  ただいま御指摘になりましたうちに、非常にわれわれが気をつけなきゃならないことは、輸出が伸びたが、国内に非常なデフレ現象を生じた、こういうことであります。これがいま、私ども、国際収支の改善をはかると同時に、国内の物価動向を見、経済の質の面を実は見てまいるつもりであります。したがいまして、国内経済の動向、これは過去におきましても、行き過ぎであった場合に引き締めをいたしました。また、落ち込むようなことがあれば、途中におきましてもこれにささえをするような対策を立てる。これが政府態度であります。たいへんきびしい国際環境のもとに、非常にむずかしい日本の経済を進めていく、それにはただいま御指摘になりましたような点を十分考えまして、最善を尽くしていく、私はかような考え方でございます。
  130. 曾禰益

    曽祢委員 これは見通しでありますけれども、私はここに深刻な警告をしておきたいと思います。  さらに、私の第二陣の竹本委員から突っ込んだ御質問を願うこととして、次に国際通貨の安定とわが国との関係でございますが、これは昨年のポンドの危機が始まって、国際通貨の危機はついにポンドの切り下げと、イギリスの耐乏経済体制並びにドル防衛のための米国の国際収支改善、国内緊縮対策、なかんずく金の法定準備制度の撤廃と、一オンス三十五ドル堅持の決意にもかかわりませず、まだ通貨の危機の乗り切りができた、あるいは解消ができたという見通しではないと思うのであります。なおポンドの再切り下げの可能性も、これはとうてい否定し得ない、そこら辺に低迷しつつあるようであります。ベトナム戦争終結の見通しもついておりません。したがってドルについても、金買い上げ価格の引き上げとか、あるいは場合によっては兌換停止の危険もなしとしないのではないか。したがって、従来安易にドルに依存してまいりましたわが国の経済体質、特に貿易構造、国際金融制度、国際通貨制度についても、この際わが国の自主性と自律性を回復する努力が肝要だと思うのであります。またそういう観点から、アメリカという一国のわがままかってな流動性に依存しておった問題、これも相当この辺で考え直して、単にIMFの特別引き出し権の活用にとどまらず、将来の見通しとしては、健全かつ安定した新しい国際通貨制度に移行すべきもりと考えるのでありまするが、この点についても、次の同僚委員質問にゆだねることといたしまして、私はもう少しわが国に直接関係の深いドル防衛に対するわが国態度についてお伺いをしたいと思います。  言うまでもなく、わが国の経済を犠牲にしてまで、ドル防衛にうき身をやつす理由はございません。ドル防衛については、むしろわが国は優等生であって、ヨーロッパの、たくさんドルをかかえ込んだ、しかも金選好の非常に強い国のスペキュレーションのほうこそ取り締まるべきであって、まあわが国は不幸にしてまだ蓄積がないからでもございましょうが、円価の地位、わが国の経済を脅かしてまで、ドル防衛に不当なる協力をするいわれはございません。同時に現実から見るならば、わが国においても、わが国の経済の安定、円価の安定のために自主的にやるべき通貨安定策については、これは当然にやるべきでございまするが、先般来のホノルルにおける日米経済合同委員会委員会等の経緯を見て、まあ三億ドル程度の、しかも大体において輸入ユーザンスを欧州系のユーロダラーに切りかえることを主にしてやったのだから、まあまあこの程度で大体もういいのだというような甘い考えを持っておられるとするならば、これは非常に問題ではなかろうか。今後ともさらに中期債を買い上げてほしい、あるいは自動車関係の輸入の制限の緩和、撤廃、あるいは自動車関係の資本自由化の問題、さらには東南アジア等に対する援助の肩がわりといいますか共同出資といいますか、この問題、特に私どもが断じて承服し得ないと思うのは、自由貿易のチャンピオンであったはずのアメリカが、EECのあの悪名高き国境関税といいますか、国境調整税、つまり輸出のリベート制と輸入税とを一緒にやるとか、あるいはイギリスでやって袋だたきになった輸入課徴金をやろうというような動きに対しては、われわれは断固として反対すべきだと思いまするが、このこまかい点は別として、基本線において総理の御所信を伺いたいと存じます。
  131. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 基本線におきましては、曽祢君のただいまの御意見と大体私、同じでございます。  ただいま詳しいことは私、申し上げませんが、ホノルル会談等におきましても、いわゆる事務当局双方で日米双方がたいへん困っているような問題について話し合って理解を深めたということでございます。したがいまして、ただいまドル防衛に三億ドル云々というお話が出ましたが、さような金額をきめたようなことはございません。また基本的態度といたしまして、ドルもドルでありますが、何といっても円が強くなければならない。円を弱くするようなことは、私、総理として考えるわけにまいりませんし、またドル防衛の場合でも、円が弱くなればドルの足を引っぱることになりますから、そういうようなことはやるべきでないので、これは日米とも共通の利害関係に立つ、かように思いますので、その辺は、お互いに事情を話し合えばよくわかるわけであります。  そこで、いまいろいろの対策を立てられました。しかし一応いままで私自身は、中期債の話はジョンソン大統領からも聞いておりませんし、また財務長官からもそういう話は聞いておりません。したがって、いわゆる中期債の話は政府自身が交渉を受けたということじゃございませんけれども、しかし、どことなしに中期債の話が出ておりますから、おそらくあるいは事務的な間でそんな話があろうかと思いまするが、ありました場合でも、基本的に円を弱めるようなことは私は絶対にしない、かように申すのでありまして、この点は日本政府の主張は、国会を通じての私の発言でありますから、もう昨年来のことでありますから、アメリカにもよくわかっておるようであります。  しかして、ただいまおあげになりました自動車関係の部品等の貿易の取り扱いの問題、あるいは自動車完成品の関税の問題、あるいはまた資本自由化の問題、これなどはもうすでに自動車関係の業者間のミッションも日本に参りまして、お互いに日本の自動車工業のあり方について実情を調べておりますので、これはなかなか簡単に問題が解消したとは私も思いません。おそらくまたあらゆる機会に出てくるだろうと思います。日本の自動車産業は、ただいま世界第二位だ、かようにいいますけれども、まだまだ弱い状況でありますので、自由化、資本の自由化やその他の問題等についても、もっと慎重であるべきじゃないかと私は思います。  それから、その次のボーダータックスの問題あるいは課徴金の問題、これはお説のとおりでありまして、ケネディラウンド以来の自由貿易のチャンピオンが、そういう方向にいって、貿易を縮小するようなことがあってはならない、私はまた、そういうような処置をとるならば、必ず相手の国も報復的な処置をとるものだ、かように実は思いますので、日本の場合におきましても、日本の品物に対してアメリカがボーダータックスをかけるとか課徴金をかけるとかこういうようなことがあれば、日本も必ず対策を立てるよ、こういうような話が率直にしてありますので、アメリカ自身としてもそれらのことも考えて、今後のあり方については十分考えるというようなことで、ホノルル会談は別れたようであります。しかし私は、この問題はそう簡単なものではないので、今後の変化に対しまして十分監視する必要がある、かように思います。そういう場合に、あらゆる場合に、私は円の地位を守るという、そういう立場でものごとを考えていかなければならないし、またわが国の産業、これの拡大を考える、こういう意味であらゆる努力をするつもりでございます。
  132. 曾禰益

    曽祢委員 総理は、今度の施政方針の中で、いうならば、長期展望に立った政治課題の第二項として、アジアの南北問題の解決、アジアに対する経済協力を日本の責務だと書っておられる。また外相もこの点について、国内の問題はあろうが、ひとつこの重要性を国民に理解をしてくれと訴えておられるのであります。私は原則としてこのことに賛成であります。元来日本は、アメリカから頼まれたから東南アジアに肩がわりしてやるとか、イギリスがスエズ以東から撤退したからそのかわりというような、第三者から言われてやるのではなく、あくまでわが国の主体的立場からこの南北問題、アジアの発展途上の国に対する援助問題を取り上げるべきだと思います。しかし現実にはわが国の経済はいろいろな、国内的にも構造の問題を持っておる。世界通貨不安の際でもございます。そこで、二月一日から開催されました第二回の国連貿易開発会議に対するわが国態度は一体どうなのか。私はこの点について一まつ以上の危惧を持たざるを得ないのであります。つまり、第一には、わが国が国際的な水準である直接援助をやっておらない。いわゆる、その総領においても国民所得の一先ぐらいまではというのでありますけれども、現実には六六年度においてたった五億三千八百八十万ドル、〇・六九%という姿であります。これでは国際的に大きな顔はできない。しかも、発展途上の国は、国民所得でなくて国民総生産のしかも元利引きのネットで一%ぐらいよこせという、この問題に対してどう対処されるのであるか。さらにまた、この直接援助の金額だけでなくてその条件、いわゆる年利三%以下、期限二十五年以上という、この国際水準にははるかに及ばない日本態度で、一体わが椎名代表はどういうふうにこの国連貿易開発会議に臨んでおられるのか。  加えて、ここに一番やっかいな特恵関税の問題が起こっております。わが国はこの問題についてもいままでのような消極態度はできない。そこで今度は条件つきで特恵関税制度に立ち向かうという態度を示されたようでありまするが、その基本条件について、やはり私どもはこれは一般的、どの国に対してもやる、しかも暫定的なものでなければならぬ。加えて、英連邦あるいはEECとアフリカ諸国のような、従来の一部の特恵制度を廃止するということが当然の条件でなければならぬのではないか。さらに輸出国、いわゆる借款を与える先進国の中において、輸入の面においても輸出の面においても平等な待遇がなければならぬと思うのでありまするが、現実にこの問題は、わが国の特に対米輸出の多くの品物、なかんずく一部の繊維製品、雑貨、軽工業品その他、約総額十一億ドルにのぼる商品の問題については、これは深刻な問題を起こしております。これらのおくれた企業に対して、その近代化のために特段の金融上、税制上の待遇をも与える決意なくしては、この問題は乗り切れないのではないか。私はこの点をひとつお伺いするとともに、特にこの際声を大にしたいことは、政府国民に対しては、いろいろ経済問題があるけれども、対外的な援助もしなければならないから少しがまんしてくれと、中小企業、農林漁業、労働者には耐乏をしい、そして今度は外に対しては、いや日本の経済はまだ中進国なんだから目一ぱいの応援ができない。言うならば両方に結果的にうそをついている。国民に対しては、まずやるべき国内的な経済体制の改善、二重構造の解消ということをやらずにおく。この態度は根本的に間違っておる。そのことは、国民と、発展途上の国、双方に対する空手形に終わるのではないか。これは私はきわめて重大なことだと思うので、特に総理の御所信をお伺いしたいのであります。
  133. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この海外援助の問題につきましても、いろいろな問題が引き起こされております。私はこのお答えをいたします前に、ただいま最後に曽祢君が指摘されたもの、いわゆる国内的に対内的に、いままだ国民生活はずいぶん窮乏しておる、そういうものに対する手当てが十分できてないじゃないか、そういう際に対外援助をするとは何事だ。また対外援助をするという場合に、今度は外国側から、国内ばかり書って条件その他にどうも希望に沿ってくれない、こういう問題があるということを御指摘になりましたが、実はこの点にたいへんな悩みがあります。しかし私いま考えますのに、今日の日本の国内事情というものは、なるほど考えてみると万全ではない。しかし、アジアにおける先進工業国であることには間違いございません。そういう意味において、アジアに対しては積極的に経済援助をすべきだ、その意味において国民の皆さま方にもぜひ納得をしていただきたい。私は、いわゆる耐乏をしいるような考えではございませんが、いましばらくごしんぼう願う、そういうことで、この対外援助をすることを御了承いただきたいと思います。  そこで、いまUNCTADの会議がちょうどニューデリーで行なわれております。椎名君が出かけております。御承知のようにDACの会議国民所得の一%までひとつやろう。これは共同決議で私ども賛成したのであります。しかし、なかなか一先にまで達しておりません。その点はただいま御指摘になりましたように〇・六あるいは七、その辺のところで対外援助がなされております。でありますから、さらに今後とも私どもは事情の許す限りDACの決議に忠実になるように、この上とも対外援助の額をふやしていく。額ばかりではございません。御指摘になりましたように、その条件もできるだけやさしい条件といいますか長期の低利のもの、こういうことでくふうをしたい、かように考えます。それで、大体の方向は曽祢君の御指摘になったような方向にある、かように御了承いただきたいと思います。  そこで問題になりますのが特恵関税の問題であります。特恵関税の問題は、過去におきまして、特殊の地域においてブロック経済のような形ですでにきまったものがございます。しかし今回の特恵関税の問題は国際的な視野に立って各国とも共通なもので、公平にして地域ブロックを使わないような方向でこれはきめようじゃないかということでございます。私はその方向で必ず相談はまとまるものだと思います。したがいまして、それがまとまれば、既存の特恵関税といろものは新しい関税ができるこの機会に整理さるべきものだ、かようにも考えております。しかし、いずれにいたしましても、これは今回の会議の重要なる課題だろう、かように思いますので、会議の経過をひとつ見なければならないと思います。  わが国の場合におきましては、御指摘にもありましたように、この特恵関税を設けたその結果がわが国の産業に幾多の影響を与えると思います。ただいまは輸入の問題でなくて輸出の面でしばしば後進国と競争の立場に立つ。したがって、特定の織維であるとかあるいは軽工業であるとか、そういうような特殊のものがたいへん苦しい立場に立つのじゃないか。それに対する十分の援助、開発計画を立てないで、ただ特恵関税だけ進めるととんでもないことになるぞという御注意があったように私伺いました。この点が、特恵関税を設けることによって引き起こされるであろうわが国の輸出の面に与える影響、いわゆる競争の激甚さが増す、そういう場合における特殊な産業、これは多く中小企業でもありますが、そういうものに対しての特別な強化対策を立てないと、いまの経済援助、対外援助は必要なことだと言うだけでは済まされない、かように私も考えますので、こういう点では一そう万全を期するように対策を立てていくつもりでございます。
  134. 曾禰益

    曽祢委員 時間の関係で、中途はんぱではありますけれども、外交問題に移りたいと思います。  最近総理が、昨年の秋にワシントン会談から帰られてから、にわかに国民に対して自主防衛の決意を求める、あるいは日米安保体制の再認識を求める、あるいは沖縄の基地の評価を求める、つまり防衛論争に火をつけられたのは実は総理であります。さらに総理は、沖縄返還問題に関連し、まあお互いに承知しているように核つき返還の可能性を否定しない、白紙である、こういう態度をとったために、国民核アレルギーを実はみずから大きくそそる、ということばはいいかどうかしりませんが、起こさしておいて、核アレルギーの退治という、私は、こういったようなことそれ自身が、実は過般のエンタープライズ寄港が、従来原潜の反対がやや先細りになったといわれているのに異なって激烈な闘争に高まった、この背景は、私は、総理並びに内閣、与党がこの自衛論争をいどんだことにあったと言わなきゃならぬと思うのです。私は、総理のこの自衛論争に対する態度はさか立ちの態度だと思うのです。なぜさか立ちかというと、元来わが国の領土を外国から返してもらおうというのですから、返ったとたんにわが国の領土としてこれを守る、いわゆる自衛の決意をし、足らざるところはアメリカとの協力によるというような、これは沖縄返還を求めるとたんに自衛問題は起こっており、安保問題が起こっておったと思うのです。ところが、このことを国民に告げず、政府の意向、与党の意向も告げずに、そうしてますアメリカに行ってしまって、帰ってきてから今度は自衛問題を取り上げた。私は、順序が逆だと思うのです。行く前から領土返還に関連する当然のうらはらとしての自衛問題、防衛問題があった。  第二には、政府が案を出すべきものを国民に決意を求めるということは、これも私は、筋違いの議論だ、何のために政府があるのかということを疑う。  第三には、アメリカと交渉して帰ってきてから自衛論争と言えば、これは自衛論争ではなくて、アメリカのための防衛論争だという誤解を少なくとも与えたことは否定できない。加えて、さっき申し上げたように、核アレルギーを沖縄返還の問題から起こした。私は、こういう意味で、エンタープライズが非常に大きくなったと思うのです。  実は、昨年一年じゅうに横須賀、佐世保、両港に寄港したアメリカの軍艦の数は、私ははっきり知りませんが、おそらく四百隻以上にのぼっておるのじゃないと思うのです。そのアメリカの軍艦の中で、たとえば航空母艦でも、今度のエンタープライズではなくて、あるいはコンステレーションだとかキティーホークというのが来たことがある。エンタープライズと同様に地対空ミサイル・テリアを搭載しておる。第七艦隊の旗艦のプロビデンスという巡洋艦その他の巡洋艦は、テリアよりも一そう明確に核兵器、非核兵器両用のミサイル・タロスを搭載しておる。その他多くの駆逐艦、フリゲート艦はアスロックという対潜ミサイルを持っておる。スレッシャー型の原潜は、本委員会においてもしばしば議論になったように、サブロックというこれまた核、非核両用の対潜ミサイルを装備できるということなんです。したがって、アメリカ艦船の核兵器持ち込み問題あるいはその可能性の問題は、何もエンタープライズに始まった問題ではない、前々からあった。なぜそれにもかかわらず今度エンタープライズ寄港がこれほどまで、炉の安全の問題はどこかにすっ飛ばして、と言っては語弊があるけれども、そんな問題を飛び越えて、核兵器持ち込み、日本の核基地化の問題として最大級の問題になったのか。その背景、原因というものは、私は、政治姿勢といいますか、政府の自主防衛、安保論争のいどみ方、また、あとで申し上げますように、ベトナム戦争に対する国民のもやもやとした反対的な空気、それに沖縄の核基地問題を政府総理自身ことばで取り上げたことの、この三つの背景によってのみ解釈できると思うのです。したがって、私どもは、また私は、国民全体がこの国会に非常に望んでおることは、どうかここまできてしまった安保論争であるから大いに議論をしてほしい。そうして、お互いに建設的な議論をして、野党もなし得る限り建設的な代案を示す。だがしかし、特に政府・与党であり、また総理大臣のあなた自身が従来の態度をもっと反省して、独善的態度でなく、国民の声を聞き、そして野党の批判を建設的に取り上げる、こういう態度が最も望ましいと思うのです。それなくしてこの防衛論争は、へたをすれば世論の対立に終わり、一九七〇年の危機を深める結果にしかならないとするならば、こんな不幸なことはない。そこで私は、以上の観点に立って、これは総理の決意をその点で伺ってもいいのですけれども、具体的に防衛問題についてのポイント・バイ・ポイントで、ひとつ総理の御意見をとくと拝聴いたしたいのであります。  私は、この自主防衛と外交というものは表裏一体でなければならない、防衛というものは、平和的自主的共存外交と不可分である、こう考えております。ところが、どうも政府のほうは、まあアメリカ追随、ベトナム政策。中共政策にも無批判に盲従しているのではないか。国民に対しては武力を偏重し、自主防衛を説く。この姿は、防衛問題だけあって外交のなきちんばな姿だと思う。また逆に、防衛を完全に否定し、外交だけでいこう、アメリカを攻撃しながら共産圏に対してはもみ手外交に終始するというのも、これまた私はアンバランスだと思います。したがって、私は、政府に対する質問ですから、政府の外交軽視の姿勢では自主防衛は片ちんばになるということを特に声を大にして言いたいのでありますが、その具体的な事例はやはりベトナム戦争と中国対策ではないかと思うのであります。  ベトナム戦争こそは、何といっても何よりもまして現存するわが国に対する最大の脅威である、わが国の安全に対する最大の脅威はベトナム戦争の継続である、このことを一番はっきり示したのが、最近の南北朝鮮間の緊張、プエブロ事件だと思うのです。プエブロ事件がもたらした日本海の緊張は、これはもともと主として北鮮内部の強硬路線に端を発した模様ではございまするが、その原因が那辺にあるにせよ、結果的にはある種のベトナム戦争の第二戦線的な性格を帯びている。したがって、結局においては、ベトナム戦争の継続なかりせばこういう問題すら実は派生しなかったのではないか、こういう点を一つ考えても、いかにベトナム戦争を早くやめることがわが国の安全と不可分であるかということがわかると思うのです。また、エンプラ問題がいわゆる一種の国民の政治危機にまで盛り上がった原因も、先ほども言ってきたように、ベトナム戦争を何とかせぬか、この国民の何とも言えない不満、政府に対する不信感、あるいはアメリカ政策に対する批判というものが、エンプラ問題を大きくした最大の原因の一つだと私は思います。  そこで、もともとベトナム戦争は、戦争ですから、戦争と紛争は片方だけが悪いということはめったにないのであります。戦争をやめるのには、両方がやめなければ、これは戦争は終息できない。アメリカだけ不名誉な撤退をしても、東南アジアの安定をかえってくつがえすおそれもございます。一方だけを非難するのでは済まない、こうわれわれは思っております。しかし、ベトナム戦争においては、軍事的勝利はいずれの側にもあり得ない、またあってはならないと私は思います。緊急の問題はまず戦闘の縮小と停戦であることは、これは意見の一致するところだと思うのです。そのためには、強大な、強いほうのアメリカがまず北爆停止を実行することによって双方の戦闘縮小、停戦へのきっかけをつくれ、これは私はどこに出しても間違いのない議論だと思うのです。しかもいま北ベトナムは、十二月三十日にグエン・ドイ・チン外相がいままで以上にはっきりと北爆停止等に関連した和平の座につくということを言った。なるほど、最近の二週間ぐらいの事情は、いかにも戦争が激化しているようであるけれども、私は、そういうことはある意味では話し合い解決への、場合によってはきっかけとすらなり得るのであって、その現象の表面にだけとらわれないで達観するときに、いまこそ総理大臣はベトナム戦争に対する根本的態度をはっきり、従来以上はっきりひとつしていただきたい。従来、私は、悪いけれどもベトナム問題については、アメリカに対して忠告もしない、注文もしない、行動もしない、要するに無為無策であったと思うのです。特に十一月の佐藤・ジョンソン会談の共同コミュニケは、まことに国民としてもあきれ果てた、まあことばはお気に入らないかもしれないけれども、北爆の停止にはハノイによるそれに対応した措置がとらるべきである。これは日本が要求することと、アメリカの、実はこうなんだ、そこは考えてくれという弁明と一緒に言っておるのであって、全くこれは私は外交文書としては屈辱そのものだと思うのです。これは世界の失笑とわが国民の憤激を買ったものではないか。話は変ですけれども、十二月末にローマ法王が——ローマ法王と総理大臣と比べてはローマ法王のほうに失礼かもしれないけれども、パウロ六世とジョンソン会談において、法王庁はこう言っておる。法王は現状に直面して抱いている深刻な懸念を表明し、紛争解決のための幾つかの要請と前進した提案を行なった。私はりっぱなものだと思うのです。政治に関与しなかるべきローマ法王さんが、これだけの平和への提案を——だれが見ても一方的に加担していない、ほんとうを言えば共産主義は大きらいな人だろうと思うのだけれども、これだけの態度をとっておる、私は非常に残念でならない。  この施策方針演説において、三木外相はなかなかいいことを言っておられます。たとえば、北ベトナムの友好国側が北爆の停止に対応する北ベトナム側の戦闘縮小を保障する、一方アメリカの友好国側は和平達成後の米軍の撤退を保障する、そういうような相互保障のもとにアメリカの北爆停止をやらせようという趣旨だと、私は思うのです。そういう相互保障方式を提示しておられます。私は、着想としてはいい、少なくとも一歩前進だと思います。しかし、問題は、そのやり方、方式もあるが、問題は基本です。日本政府日本総理が、アメリカに対し、率直にまず無条件に北爆の即時停止を勧告する、この基本的態度がなければ、すべての和平へのあっせんも——わが党の西村委員長が非常にいい案をあっせん案として出している。三木構想も決して悪くない。問題はしかし、この根本の精神、それは日本アメリカの友好国のアドバイスとして、強いほうが一手をやめろ、これをきっかけとして停戦の条件をまずつくれ、これがなしには、私は国民も外国も日本政府ベトナム和平に対する積極的態度があったとは評価しないと思うのです。ワシントン電によれば、クリフォード国防長官候補の上院軍事委員会における証言等を見れば、アメリカのあのジョンソン大統領のサンアントニオ演説も、必ずしもアメリカが北爆を停止した間に北からの平常の程度の軍事輸送を禁止しないんだということを言っておるようであります。私はこういう意味からいっても、北爆停止による和平への条件は、決してそのつどの軍事表面だけでなく、底流としては動きつつある。問題は総理大臣の決意にあると思うのですが、総理の決意を伺いたい。
  135. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 曽祢君の御高見をただいま静かに拝聴いたしました。曾祢君は、まず北爆をやめさすことが和平への道だと、かように言われます。実は私はそうは思わないので、しばしば政府の考え方を表明しております。とにかく北爆もやめる、同時にまた北からの南への浸透もやめる、そこで初めて和平への道が開けるのだ、そこで話し合いをすればいいじゃないか、こういうことをしばしば申しておりますので、ただいまたいへん熱弁をふるわれましたので、私は感動は受けましたけれども、どうも結論としては、その点では、あえて異論を立てるのではございません、かねてからの主張どおり、私は北爆に見合うやはり停止が必要だ、かように思っております。
  136. 曾禰益

    曽祢委員 北の対応する措置が必要であるということについて、だれも疑いません。問題はタイミングの問題です。どちらが先にイニシアをとるかということであることを強く言っておきます。平行線のようですから、次に中国問題にいきます。  私は、現在、中国大陸に吹きまくっている文化革命のあらしがどういうふうに収拾されるか、これは見通しは困難だと思います。また、中共の対外姿勢に不安を感じる隣国は、国民を含めて相当あると思います。しかし、中国の歴史を知っておりますわれわれ日本国民は、この中共の異常な精神主義が、必ずしもマルクス主義よりも儒教的画一主義のあらわれであり、西欧に対する敵意やナショナリズムの行き過ぎも、アヘン戦争以来のうっせきした屈辱感の変形ではないかと思うのであります。したがって、わが国の対中国外交というものは、むろん台湾の国民政府の存在と条約上の義務を踏まえつつも、大陸中国に対しては、これにおもねらず、批判すべきものは批判する一方、いたずらにその外面的な強硬な言動を興奮し、踊らされることではなくて、常に冷静と寛容を持し、長期的な展望に立って平和共存の道を根強く探究すべきものと考えます。なかんずく、中共の威信の表現であり、特に心理的武器と思われるそのみずからの核武装については、わが国はいやしくも衝動的にこれに対応しようとせずに——そのことによって衝動的に対応しようと思えば、わが国論を分裂する結果を招来する愚策だと私は思います。この意味で私は、この間の日米共同声明は、非常にまずかったと思うのです。アメリカ日本とは、中国問題については意見が違っていいのです。いわゆるアグリー・ツー・ディスアグリー、意見の違ったことを認め合っていいのです。日本がにわかにアメリカの中国政策と一緒になったといって喜んでいるのは、よっぽどどうかしていると思うので、今後ともむろん日本のペースにアメリカを巻き込むことはけっこうですけれども、軽々にアメリカと、この間のワシントン会談で意見が合って、特にアジアの諸国が中共の核兵器の脅威に影響されない状況をつくることが重要である、こういうことを言えば、だれが考えたって、これは中共に対しては軍事的な対抗手段をとる、完全にアメリカ・ペースだといわれたって、問題ないです。そういう態度を根本的に改めることを総理に強く期待し、簡単でいいですけれども総理の中共政策の基本を伺いたいと思います。
  137. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 前段は、私も曾祢君の言われるとおりであります。中共、これはたいへん大国でございますし、なかなか簡単に結論の出ない国であります。この中共につきましては、われわれは冷静に、衝動的な行動に出ないで、どこまでも寛容で、また平和共存の道、その立場で見るべきだと思います。  ただしかし、最後に言われました核爆発について全然関心を持つなという言い方は、私はちょっと意外に聞くのでございまして、隣の国が核武装している、ころいろことに私自身——これは脅威とか、あるいは日本を侵略する意図があるとか、かように申すのではありませんよ。しかし、私はこの事柄については重大なる関心を持っておりますので、このあり方については、いろいろこれも静かに今後の動静を見ている、こういう状況でございます。
  138. 曾禰益

    曽祢委員 次に、私は自主防衛と安全保障との関連についてお伺いしたいと思うのであります。  大体、自主防衛が主であって安全保障はそれを補完するものであるということについては、議論の余地がないと思うのです。安全保障の体系については、いわゆる中立型と集団安全保障型がございます。私は、中立型、そのうち非武装中立は現実的でなく、自分の中立すら守れないような結果になっては中立にすら反すると思うので、これはとるところではありません。わが国の武装中立ぐらい危険なものはないと思う。重武装のわが国の中立、私はこれもとるべきでない。そうなってくると、将来はやはり国連の集団安全保障わが国の自衛の補完とするのが望ましい。これも大体、世論の一致するところだと思いますが、当面そこにいかないから、現実には日米間の防衛協力ということが起こっておると思うのです。私どもは、そこまでは現実の問題としてこれを認めざるを得ない。しかし、問題は、それならば日米安保というものをそっくりそのままいつまでも認めていくのがいいのかどうか、これが私は問題の核心でなければならぬと思う。ところが、日米安全保障条約というのは、日本がいわゆる占領下から独立になる、しかも朝鮮戦争が起こった、そのどさくさまぎれと言うと語弊がありますが、そのときにつくられたものであり、したがって、そこに非常に占領的な古い不平等的ななごりがある。これを一九六〇年にあなたのおにいさんの岸さんが、形だけの平等化にあせってこういうものをつくった。ところが、現実にはまだその不平等な内容というものが、ちゃんといまの条約にも残っている。それは、一言にして言うならば、日本防衛のみならず、極東の平和と安全のために日本に兵隊を置き、基地を使用することができる——そういうことば、駐留権ということばは使ってないけれども、それが安保条約第六条にいわゆる施設及び区域の使用といううまいことばでオブラートに包んでいるけれども、駐留、基地使用の条項、しかも日本防衛のためのみでない、極東の平和と安全のため、さあこれが問題なんです。かつて日本が満州国に対して、駐留権をよこせ、そうしたら守ってやるという、日浦議定書というものをつくったことがあるのです。私はそれと日米安全保障条約が同じとは言いませんけれども、そういうにおいがないとは言えないこの安保条約で、いろいろ戦後二十三年の日本から見て、また今後の日米関係がどうしても協力友好関係でなければならぬという観点から見て、そのままでいいという議論には私はならないと思うのです。しかも、最近の現状を見れば、これまたエンプラに返って恐縮ですけれども、極東に緊張があるたんびに、この極東のための駐留問題、基地使用問題、事前協議の問題があるにせよですよ、これがいつでも問題を起こしている。何のための日米の協力だか、防衛だか……。安全保障条約というものは、両国民の間にしっかりと心が通い、間違って日本を脅かそうという国がもしあるとするならば、その国に対して抑止力として働くという、そういうはっきりした信憑性がなければ意味をなさない。危機が起これば日米関係ががたがたになり、一九六〇年のがたがた以来アメリカの大統領が日本に一ぺんも来られないという関係で、一体日米関係がこれでいいということがだれが言えますか。私は、この点を深くお考えになる必要があろうと思うのであります。ある外務省のこれは四十一年の文書であるけれども、これによると、まあ日本は憲法のたてまえから他の国のように海外派兵を含む対等の協力ができないから、米軍の駐留を認めるのは最小限度の集団保障の義務だ、こういうことを言っていますけれども、そんならアメリカと韓国の条約アメリカの台湾との条約はどうなっていますか。ちゃんとアメリカと韓国の条約では、韓国は太平洋区域における共同防衛を約している、台湾は西太平洋の共同防衛を認めているけれども、その国の都合によってはアメリカ軍の駐留を認めている。だから、共同防衛の最小限度の義務だから、極東の平和と安全のために日本の駐留を認めるのだ、その理屈は完全に成り立たない。また、国際的な安全保障の例から見て、一体どこに相互安全保障条約の本条約の中で駐留条項をきめた条約がありますか。総理は本会議の西村委員長に対する答弁の中で、やれ共産側がどうだとかなんとか言っているが、そんなものは、本条約のほうに駐留条項を書いた条約なんか一つもありませんよ。異例中の異例は、日米以外は、米韓条約、米国と韓国ですね、アメリカ国民政府条約ぐらいなものです。まさに異例中の異例です。しかもその国の防衛ですよ、その国の防衛でなくて、極東というような広い地域の防衛のために駐留権を認めている条約があったら、ひとつ教えてください。これは外務大臣でもいいですから、教えてください。
  139. 三木武夫

    三木国務大臣 条約局長からお答えいたします。
  140. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 お答えいたします。  曽祢委員のおっしゃるとおりでございます。ほかにはございません。
  141. 曾禰益

    曽祢委員 ほかにないんですよ。いかに異例であるかということは、国民の前に明らかになったと思うんです。非常に重要なことですね。総理、いまの条約局長の言っていることわかりましたか。答弁……。
  142. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、先ほど曾祢君が論旨を進められましたとおり、この自主防衛と平和外交、これはやはりつながるというか、そこに本来の姿がなきゃならない、これはそのとおりに思います。各党のいろいろの説明を聞いてみますが、それぞれ自主防衛と平和外交、比較的に私は論旨が一貫しているのが、共産党の主張じゃないかと思います。共産主義は私は反対でありますが、自主防衛論並びにこの平和外交論については、私はこの共産党の考え方に賛成というか——共産主義は別ですよ。それからさらにいまの非武装中立論というものを、いまそれは平和外交でないという、またその国を守るゆえんでもないという、こういうお話がありましたが、(曾祢委員総理、悪いけれども、ポイントだけ答えてください。」と呼ぶ)ただこの点を話をしないと、どうしてもちょっとぐあいが悪いように思うんです。私は、やはりこの自主防衛というか、その点はどうしても必要だ。それでいま、それじゃ極端な例が  これは異例中の異例だ、かように言われます。私は、確かにこれは異例中の異例だ、ここに実は問題があると思います。日本の場合は平和憲法があり、また自衛隊自身の自衛隊法がある。そういう意味で、これは日本の守る範囲というものは、しゃんと防衛範囲、守備範囲がはっきりしている。ところが、沖縄にアメリカが施政権を持ち、沖縄を領有しているその関係において、アメリカ自身の自衛体制というものは、その意味においてはこれをフルに使われておる、かように私考えておりますので、ただいま御指摘になりましたように、これはそこに食い違いがある、かように思っております。この点が今後のいろいろな問題にからんでくる、非常にむずかしいことだ、かように思います。いま駐留権自身は、本土における問題としては、本土の基地の使い方については、私は別に心配しておりません。事前協議問題等がございますが、それは積極的なものではないように思っております。
  143. 曾禰益

    曽祢委員 このように、だれが考えても——それはNATOの中にも、その国の状況によってはデンマークやノルウェーのように、NATOに入っていながらアメリカ軍を置かないとか、あるいは逆にフィンランドのように、ソ連からおっつけられた条約にせよ、平時はソ連軍を置かないとか、いろいろな各国それぞれのやり方はあると思うんですね。ですから、わが国が極東の平和と安全のための駐留をいつまでも認めているということで、どうしてイコールパートナーができますか。私は、十分にこの点をお考えになる必要があると思うのです。  そこで、総理大臣に伺いたいのは、われわれはお互いに国会議員として、一九七〇年を迎えて、わが国の防衛、安保論争がいまのままであったんでは困るのではないか。特に、一方においては安保を現状のまま固定しよう、はなはだしきに至っては向こう十年間くらいくぎづけにしておかないと心配だと言っていますけれども、そんなアメリカと自由諸国が結んだ条約の中で、一年の予告で終了する以外の——ソ連がつくっている条約みたいに、人が信用できないのかどうか知らぬけれども、十年たってもあと五年ずつ更新しようなんかという人を縛るような条約をつくっている例は、あまりないですね。そんな長期固定化論なんかというものをよもや保守党がお考えにならぬと思うけれども、私は、ナショナルコンセンサスが望ましいのなら、せめて長期固定化論は反対である、そのくらいのことをはっきりお言いになるお考えがないかどうか、伺います。
  144. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はいままで主張しておりますが、日米安全保障体制、これは条約体制は必要だ、かようにしばしば申しております。これについてはいろいろの議論がございます。しかし、いまのナショナルコンセンサスが簡単にでき上がると私は考えておりません。現実の問題としてこの条約体制を続ける、こういうことが今日私の仕事でございます。同時にまた、その方法としてどういう形がいいのか、これはいましばらく時間をかして考えさせてください、かように申しております。いままでの答弁と別に変わっておりません。
  145. 曾禰益

    曽祢委員 総理の立場から、安保体制ということばがいいかどうか知りませんが、正確に言えばアメリカとの防衛上の協力をやっていく、これを堅持するということはわかります。しかし、場合によったらほかの政党の内閣ができるかもしれぬから心配だからといって、国民を信用しないで長期固定化しようとか、相手国が信用できないからといってソ連とのほかの国の条約みたいに長期固定化する、やめてそういううしろ向きの態度はしない。しかし、日米協力は必要なんだというような、そのくらいなことが——何でも研究研究と言って、あともう二年ですよ。一九七〇年の六月二十三日になったらどうするかということを、その前におやめになるつもりならいざ知らず、どうもそういうことでない、相当欲望を持っておいでだとするならば、そのくらいのことを言えないというのは、私は情けないと思うのですが、だめですか。
  146. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 しばしば申しますように、私は、どういう形でこの方向を続けるのがいいのか、それはいましばらく時間をかしてください、かように申したのです。
  147. 曾禰益

    曽祢委員 私はその点残念だと思うのですが、私は先ほども申しましたけれども安全保障というものは、保障する国と保障される国、特に駐留の場合には、その外国の軍隊と国民との間の息が合ってなければ、これはマイナスである、そういうことをよくお考えになると、ほんとうに日米協力は必要だと——必要でない、アメリカは侵略勢力である、そういう考えの人は別ですよ。アメリカと友好問題を持ちたい、やむを得ずかもしれぬけれどもアメリカにある程度の防衛上のささえをやってもらいたいという多くの国民からいって、いまのままでいいということはどう考えても出てこない。あまりにもそれは安易に過ぎたやり方で、結局日米両国の関係すら悪くしている。さっきも言ったように、一九六六年、六七年に日本に来た元首がどなたかと思ったら、ビルマのネ・ウィン革命委員会議長さんとフィリピンのマルコス大統領が来ている。日本総理大臣は、参勤交代と言ったらしかられるかもしれないけれども、しょっちゅうアメリカにいらっしゃるけれども、これだけ友好国のアメリカの大統領が日本に来られない、こういうような状態が、正常な、永続的な安全保障体系であるかどうか。これはもっとよくお考えにならなければいけないのではないか。民社党の駐留なき安保という考えは、そういう点に立って、アメリカとの協力は必要である。だがしかし、その中でマイナス面をやめて、特に一方においては無条件即時破棄、他方においては長期固定化とかただ自動延長ならいいじゃないかという、国論の両極化を避ける一つの試みとして、むろんわれわれだけが成案を持っているなんかというふうに思い上がっておりませんが……。ですから私は、いわゆる駐留なく、原則として基地を設けない安保に変えたらどうかということを、いきなりここで賛成を求めませんよ。しかし、そういうものは内閣の態度にきまっているんだから考えないのだ、そういう態度で、一体総理大臣は、一九七〇年に対するナショナルコンセンサスを求める最後の努力として足りているものだと思われるのですか。いかがですか。
  148. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、先ほど申しますように、これからどういうようにしていくか、どんな形が望ましいか、これはうんと研究するつもりでございます。ただいまもそういう意味で民主社会党の御意見を曾祢君から伺った、かように私は理解しております。お説はよく拝聴しておきます。
  149. 曾禰益

    曽祢委員 私は、同時に、これは長期的な展望に立っての七〇年の問題をあえて出したのですから、これはやはり一挙にできるものじゃありません。世論形成と世論の探訪というのは二年以上の時間をかけるのが当然だと思うのですが、当面さしあたった問題があると思うのです。  そこで、一体、核兵器の持ち込み問題を——これはけさからもいろいろ議論もございました。これを事前協議制に入る、入らない、要するに簡単にいえば、事前協議制なり随時協議制でも何でもいいけれども、そのつど主義という態度に置いておくことは適当でない。片一方はアメリカを信用しろ、反対論者は個々に最後には検査してみなければ信用できない、これは私は水かけ論ではないかと思う。政治的にマイナスですらあります。しかも、兵器の発達の結果、きのうの防衛庁長官お話しのように、何もアメリカの艦船部隊は航空機だけ持っているのじゃない。先ほど私が言ったように、いろいろの核、非核両用のミサイル等を持っていることは事実なんです。しかし、現実にそういう核ミサイルを持っているアメリカの艦船部隊が、常時核兵器を積んでいるか積んでいないか、それを政府側も他方の人も軍事専門家意見にその責任を負わせて議論をしてみたって、私は、これは政治問題としては解決にならない。そんなだらしのないことで、軍事専門家意見だけできめる問題ではございません。ですから、私は、むろん安保条約がある限り、これは政府もそう答弁では言っておられますが、オール野党は、この事前協議の問題を最もシビアーに、厳重に、厳正に、援用、運用して、いやしくも国民に不安を与えないということ、これは当然のことだ。しかし、それだけで済む問題じゃない。きのうも与党の福田委員から言われたように、特にエンプラの問題が、さっき私が申し上げたような政府のますい姿勢や施策の結果、一番せり上がるような状態にくるというときに、国民に対して十分なる説明もしないでこれを受け入れた、これは私は根本的に政治論として間違いだ。今後の政治論は、そのつどまたこの水かけ論を——搭載している、していない、アメリカを信用しよう、いやいや自分で行ってみなければわからない、これは安保条約があれども、その条約の効果を減殺する以外の何ものでもない。なぜそんなことをしないで、総理は先ほどの山本委員質問に対する答弁を通じて、本院の意思が、政府の言っているように、核兵器をつくらない、保持しない、また持ち込ませない、これを総理としては守っていきたいという気持ちであることをわれわれは認めます。だとするならば、アメリカに大きな核の抑止力といいますか、これを依頼するということは安保条約の結果として当然としても、日本地域の中には一々相談するまでもなく、核兵器的なものは持ち込まないのだという、そういう政治協定をつくって国民に発表をなぜしないのです。それをしてもまだ信用しないというなら、これはまた何をかいわんや。それもしてないじゃないですか。事前協議事前協議とおっしゃいますけれども、岸さんがおつくりになった新安保条約のときの岸・アイク共同コミュニケによれば、核兵器の問題だけを取り上げているのではない。いわゆる兵力の展開、その中には核が入ってきている。あるいは作戦行動のための発進等々、全部入っている。言うならば、あいまいというか、あいまいもこたる約束だけでなく、核だけは日本が最も神経のいら立っている問題であるから、両国が日本地域の防衛につき長らく協力をしていくということが必要ならば、何を好んで日本のような狭いところに戦術核兵器になるかならないかわからないようなものを積んでくるかもしれないそのとき、日本政府がイエスといえば積んでこられるというような、なぜそういう事前協議制にまかせておくのですか。私はどうしてもこれがわからない。あなたが持ち込みを許さないという方針ならば、日米両国相そろって世界の前に、日本に対する安全保障には全世界のアメリカの核の抑止力を利用するけれども日本地域のような狭いところに小さな核兵器を持ち込みません、そういう約束をして何が悪いのですか。やったほうが政治的に大きくプラスだとはお考えになりませんか。ですから、私は、先ほどの御答弁でややあいまいなところはあると思うけれども、国会の意思がいわゆる非核三原則にきまったときには、政府はこれを尊重するのはあたりまえのことですよ。しかし、積極的にそれに努力するという点について、私は若干まだふん切れないような感じがしますが、それは善処を期待しつつ、しかし、それだけでなくて、持ち込まないということを、政府が、国会の意思がきまろうがきまるまいが、意思がそこにある以上は、アメリカとそういう政治協定をして、発表をなぜなさらないのです。私はそれをぜひやっていただきたいと思うのでありまするが、この点についてお答えをお願いします。
  150. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、日米間で条約を結ぶ、相互に信頼、その基礎に立っておる、ただそれだけでは不十分だ、したがって随時協議をする、こういうことでお互いに信頼を高める、信頼を深める、そういう処置をとっております。それだけでも不十分だというので、さらに事前協議という制度まで設けている。それで、これこれの場合は協議を必要とする、そうしてその場合においては、アメリカ日本政府意思に反してどうこうするということはしない、こういうエードメモワールまで来ている。こういう状況でございますから、ただいま非常にはっきりするのだと言われた御提案ではございますが、私は現状でいいのじゃないか、かように考えております。
  151. 曾禰益

    曽祢委員 私は、もう少し率直に、いままでの経緯にとらわれずに、新しい事態の発展とこれからの事態の予測を考えたときに、エンプラ問題等が大きな問題にならないように、日米両国の関係をよくするためには、ほかの一般事前協議の問題とは別に——ほんとうをいえば、これは事前協議にならないとアメリカはいっているのですからなお問題ですけれども事前協議に付することは、日本意思が合致すれば持ち込めるという余地があるわけですよ。これを日本地域には持ち込まないという両国の約束をして何が悪いのか。私はアメリカ人にもそれを言っているのです。そのくらいのことをもう一ぺん真剣にお考えになったらどうですか。民社党が言ったことが悪ければ、民社党の言ったことは取り消してもいいが、あなたがそういう気になるかならないか、もう一度御答弁をお願いいたします。
  152. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど私の考え方は申し上げたとおりでございます。さらにその上に考えろ、こういうお話でございますが、それはお話として伺っておきます。
  153. 曾禰益

    曽祢委員 まことに不満でございます。話は今後とも続けて、必ず総理がお考え直しになるように持っていきたいと思っております。その自信もございます。  さて、この自主防衛とナショナルコンセンサス、国民の世論の一致といいますか、合意ということがいかに重要であるかということは、しばしばもう私自身が述べたのでございまするが、特に私は、よく口では守るに足る国づくりが基本だということを言われまするが、一番いけないのは、何か人為的に防衛意識を上げようとか、上から押しつけるといろこの態度ですね。私は、国民をそうばかにしないでほしい。国民はみずから自分の文化と伝統を守り、共同社会を守るのが当然だ。しかし、なおかつ守るに足るような進歩的な、公平な社会が望ましいとは思っているけれども、私はそれを信用して——何ら押しつけて、そういう国防論の強調みたいな古くさいやり方、安保の効用ばかりを強調し、安保の私が申し上げた特異性とマイナス性は黙っている、そういうことで国民の共感を得ることは私はできないと思うのであります。  そこで、一番私が残念だと思うのは、総理は、安保問題では、たとえば社会党とはどうせ意見が合わないんだから、だから沖縄問題については云々と、別の道を行くとか、核問題についても、まあ先ほど訂正されたかどうかわかりませんが、三原則を認めるまるで条件みたいなものをあとから出しておいて、安保条約を認めるのなら非核三原則認めてもいいというようなかけ引きみたいなけちなことを言わずに、なぜ沖縄問題のような、核問題のような——これはどの政党といえどもこういう問題を党利党略の道具にしたら、その政党がみずからの生命を失う問題ですよ。そういう問題について、つまり言うならば、国民の悲願という問題については、これは当然にナショナルコンセンサス、国民的合意ができるものである。なぜそういう信念に立ってどこまでも努力されないのか。私は、これは非常に残念だと思うのです。先ほどのお話で、非核宣言等については、私は、それにプラス核持ち込み禁止協定を必要としますが、もしそれが賛成だというなら、それは私はたいへんにけっこうだと思いますけれども、もう一つ私が特に総理に申し上げたいのは、どうも非核宣言をいままでちゅうちょされた総理の気持ちの中に、やはり国内においても戦術的な核兵器は将来要るかもしれぬとか、沖縄が返ってくるときのこの条件を考えたとき、いまからこの核基地つきということは反対だという、そういうことをやっておくのは損だ、そういうような考慮がおありだとするならば、これはひとつもう一ぺん真剣にお考え直しを願いたいと思うのです。総理は、沖縄の返還の条件については、返還が先であるから、そうして基地の問題はまあ二、三年後に煮詰まるであろうから、それまでは国際情勢、兵器の変遷、国論の動向等を勘案した上で最終的にきめると言っておられますけれども、私は、その国論の動向云々ということは、これは相当くせ者ではないかと思うのです。私は、そういうことでなくて、むしろ国論を一致させるために、やはり沖縄についても、日本に返ってくるまでのプロセス、過渡期は知りませんよ、返ってきたとたんには本土並みの基地というのは、これはあたりまえではないか。少なくともそれがアメリカとの交渉の日本国民的一致に立った原案である、原則である、それをきめて交渉するほうが、かえって問題紛糾を避ける道であるとすら考えるのでありますが、どうかその点についてもう一ぺんひとつお考えを願って、沖縄問題についてはそう国民を信頼せぬというようなことなしに、核基地は設けない、返還すれば核基地はなくなるのだ、これをはっきりひとつぜひ国民の前に明らかにしていただきたいのであります。
  154. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 曾祢君はかつて外交官であったから、外交のコツというか、この点だというのはよくおわかりだと思います。ものによりましては、非常に態度をはっきりさして、そうして直線的に進むことがいい場合があります。しかし、ただいま核拡散防止条約案ができようとしている、そういう際に、日本態度をはっきりさして、この条約案に取り組むというのは、はたしていいのかどうか、そういうようなことを考えると、やはりそれは時期がなにがあるのじゃないか。私は時期尚早と言ったのもそういう意味もあります。さらにまた、いまの沖縄の問題も、この核拡散防止条約と同一にする考えではございませんが、私はただいま白紙の状態でありますから、これなどもやはり相手方のあることでありますし、また相手方が実現可能なもの、そういうものをやはりつかまなければならない。そういう意味で、私はもうちょっと慎重であるべきじゃないだろうか、かように思って、私はあえて直線的な行動をしないというのが、先ほど来から申しておるのでございます。
  155. 曾禰益

    曽祢委員 これはまあ最後には意見相違でしょうけれども、少なくとも核防条約の交渉上云々ということは私には全然わからないのです。そういうことでなく、やはり日本の基本条件はこれだということをはっきりしたほうが、アメリカとの話も早い。そこがぐらつき得るということになると、ある意味では沖縄返還の時期が早くなろうという、一種の、何かいい面といいますか、利点をお考えということもわからぬではありませんが、やはりこういう最高国策、国民の悲願の問題については、ぴしっとした基本態度のほうが、私は交渉をむしろスムーズにするゆえんだと思って、この点はぜひお考え直しを願いたいと思います。  時間の関係核政策に移ります。  総理は、施策方針演説の中における長期ビジョンの第一に核問題をあげておられます。私どももまことにそのことは賛成であります。しかし、現実には国内の核平和利用対策においても、あるいは核防条約をめぐる核兵器禁止並びに核平和利用を不平等待遇でならせないという、この問題についても、政府の施策は、先日の西村委員長質問に対する御答弁もありましたが、まことに私はおそまつの一語に尽きるのをはなはだ残念にいたします。核防条約の交渉について総理は特派大使を送った。外務省が軍縮が重要だ、核防が重要だといって、大使を特に任命されました。二回ジュネーブに行きました。あるいは若干の他の国にも行っている。ところが、昨年の九月の、核防条約が国連総会に提出されて、いよいよ通るか通らないかという一番ぎりぎりの際には、この軍縮大使はちゃんとパキスタンに転任され、日本は残念ながらジュネーブにおける十八カ国軍縮委員会にメンバーになっておりませんが、あそこに駐在する日本の大使は、非常に重要ないわゆるオブザーべーションポスト、観望する地位にある、あるいは内交渉の地位にある。この大使も九月半ばにしてベトナムに転任、一体政府は、核防条約の二つの面、核兵器の禁止と平和利用の権利の主張、この問題についてほんとうに熱心なのかどうなのか、熱心ではないじゃないか。あなたまかせ、他国まかせの姿を露呈しているというのは、ジュネーブやあるいは日本以上に核防問題で熱心なドイツあたりの偽らざる皮肉でした。私は、そういう事実をここであなた方にイエスと言ってもらわなくてもいいです。事実だから、はっきり私のほうから申し上げます。そういう態度では、総理がせっかくあげられた長期ビジョン第一が、看板倒れに終わるのではないかということを私は主張したい。たとえば核保有国による核軍縮の問題についてどこの国が一番熱心にやりましたか。私は日本よりもスエーデンあたりのほうが熱心だったのじゃないかと思う。あるいはソ連の同盟国ではあるけれども、この問題についてはソ連の言うなりにならないルーマニアなんかりっぱな態度だったと思う。核兵器の禁止について一番国際的に道義的な発言権のある日本の外交としては、どうも私は熱が足りなかったのではないかと思う。また、核の平和利用については、保有国、非保有国の間に一切の差別待遇を許さない。特に産業スパイなんかごめんだという点においては、ドイツは、ことばはまあどうかと思いますけれども、ややえげつないという批評をある国の外交官がしておりましたが、しかほどさように自分の国益を守るためには多角的な外交をやっている。日本とは違うから、それはEECの六カ国から、あるいはNATOの国からいろいろ便宜が得、ドイツだけの主張でない、日本みたいな孤立した姿でないというあれもありましょう。しかし、それにしても日本の外交はドイツにおんぶしたままではなかったか。その結果が、あとで申し上げるように、いわゆる第三条においてなるほど保有国と非保有国との平和利用に関する差別待遇は緩和ざれたけれども、今度はドイツ、EEC、ユーラトムと日本との間のこの差別があり得るという結果を生じた。これらのことを考えると、私は、ほんとうに政府は核防条約一つとらえても、その看板に偽りありといわざるを得ないことをはなはだ遺憾とするのです。  そこで、私は具体的にお伺いいたしまするが、まず今度の第二次案が第一次案より改善されたことは事実です。しかし、改善は他人のまわしで相撲をとった結果にすぎない。そこで第六条の保有国の核軍縮の義務を一そう明確にすること。私は全部羅列して申し上げますから一つ一つお答え願いたい。これをどういうふうにするか。これは御承知のように誠実に軍縮のために努力するとはなっている。はっきりした義務にはなってない。われわれはもっとこれを改善する努力を最後の最後まで、これは日本の主導権でやらなければならぬと思います。  第二に、非保有国が核攻撃またはその威嚇にさらされた場合のこの保障については、なるほど日本は同盟国といいますか、アメリカの核のかさがあるからいいじゃないか、私はその態度ではいけないと思うのです。当面アメリカの核のかさを利用しております。しかし、なし得るならば、ソ連もこのかさとして動く。非保有国、非同盟国に対して少なくとも共同保障、これは国連の決議でもけっこうであるから、これは条約に出ておらぬけれども、こういう点を日本が、インドにまかせておくのじゃなくて、日本自身の利益からはこういうものをもっと強く要求すべきではないか。  第三には、先ほど申しましたように、第三条の国際原子力機関の保障措置、つまり、簡単に言うならば、核兵器を製造してないなということを検証する措置については、これは条約上は遺憾ながら保有国と非保有国との間の区別がある。しかし、最後までソ連をして保有国としても同じ非保有国との区別のないような義務を持たせるように努力をする必要があるとともに、特に強調したいのは、日本はこれから核エネルギーの平和利用についてはどの国とも負けないというときに、国際原子力機関は大体包括的にEECの自己査察の権限を許す、わが国だけが、まあ優等生の中でわが国だけがいわゆる国際原子力機関のシビアな監督条件を受けるということになるとするならば、これほどわが国の核平和利用産業の将来を暗くするものはない、この点についてどうお考えであるか。  さらに、第八条の再検討条項でありまするが、政府の言っているように五年ごとに再検討する、そんなまだるいことじゃだめです。五年たって核保有国が核軍縮を現実にやらないようなときには、条約は、言うならば、場合によっては御破算だぐらいの強い態度で対処すべきではないか。少なくとも二十五年の期限をつけたということは、第一案よりはプラスだけれども、そんなものじゃ足りない。五年、かりに譲っても十年くらいで一応ピリオドを打つというような条件が必要だと思うが、これは外務大臣から伺った上で総理大臣の所信を伺います。
  156. 三木武夫

    三木国務大臣 曾祢君が、核拡散防止条約に対して日本の努力が足りなかったではないかということは、私は承服をいたしません。日本の外交として、これは単に特使を派遣したばかりではない、グロムイコあるいはラスク長官とも、数次にわたって、この核防条約というものは重要な外交交渉の題目であります。フォスターも日本にやってまいりまして、長時間にわたって日本の意図を伝えて、日本の考え方がこれがこの条約の中に反映をしなければ、日本は核防条約に無条件で賛成するわけにはいかぬということも強く伝えたのであります。したがって、曾祢君の言われたように、非核保有国の会議を開けという御提案に対しては採用しませんでした。各国いろいろこの核防条約に対する国家的な利害にも異なる点がありますからしませんでしたが、日本の外交機能としては、まずできるだけの努力をしたと私は考えております。しかも、この日本の主張が条約の中にあまり反映してないではないかといろ御批判でありますが、私は相当に反映しておると考えておる。たとえば、個条ごとにお答えをいたしますが、第一番に御指摘になった軍縮の義務、これは非常に強く日本が主張したわけであります。そうでなければ、核保有国と非核保有国との不公平、アンバランスが起こりますから、これは非常に主張したわけです。したがって、これは前文から本文の中に移されて、しかも義務はないではないかという曾祢君の御指摘でありますけれども、御承知のように第六条には誠実にこれを約束するということであって、軍縮交渉の義務を核保有国に対しては課しておることは明らかであります。これをもしこの核防条約の中に具体的な軍縮の規定を織り込むべきだという曾祢君の御意見であったら、私は無理だと思う。中共もあるいはフランスもこれにおそらく加入はしないでありましょうし、そういう核軍縮の問題ということは、均衡の問題もありましょ与し、一般の軍縮の問題もありましょうし、また国際的な管理の問題もあって、これから交渉する義務を核保有国に課して、これをスタートとして段階的にやることが現実的だと思うので、これを本文の中に入れて、そして義務を課したということは、相当な前進であると私は確信をいたします。しかも、これだけの約束を履行しないということになったならば、これは日本ばかりでなしに、ほかの国々が、これはあるいはレビューの機会においても各国の批判を呼ぶでありましょうから、この約束を簡単なものだとは私は思っていないのであります。  次に、非同盟諸国に対する安全保障の問題は、これは条約の中に入れることは無理だということを曾祢君も御指摘になり、安全保障理事会等において非核保有国に対する安全保障の問題は解決をすべきであるという御意見であります。私もさように考え、ラスク長官にもグロムイコ外相にもこの点は強く伝えて、これは安保理事会において、何らかの安全保障の処置が講ぜられることを私は確信しております。  次に、査察の問題については、日本は査察の問題について、核保有国と非保有国とを区別してはいけないという意見であります。この日本の主張に対して、イギリスとアメリカは同意をしました。したがってこの条約が効力を発生しても、アメリカとイギリスとは査察を受けるわけであります。残念ながらソ連が同意してない。しかし、条約がまだ実際に十八カ国軍縮委員会で討議されておりますから、これが正式な条約となるまでの間にはさらに努力を続けたいと思っておるのでございます。  また、EECのいわゆるユーラトムの査察と国際原子力機構との間に非常に差があって、日本が不利な条件に置かれるのではないかという御懸念に対しては、われわれはそういうことは絶対にしないように、EECのユーラトムの条件と国際原子力機構との査察の間には、非常な不利益をこうむることのないように、今後これは最善の努力をいたしたいと考えております。これは新たにユーラトムと国際原子力機構との間の協定ができるのでありますから、その条件と日本の条件との間に差異があることはいけないという強い立場を今後貫いてまいる覚悟でございます。  それからまた、最後に、この条約の期限について、二十五年というのは長過ぎるのではないかという御意見でありますが、日本政府は五カ年ごとのレビューというものを、これをまだ最後まで努力をしたいと思うのでございます。そうなってくると、そういうほうが実際は好ましいのではないか。このような条約が五年とかいうような、あるいはまた十年でも短いのではないか。むしろ条約の期限は二十五年であっても、五年ごとに再検討の機会を持つということが実際的ではないかというのがわれわれの意見でございます。したがって、この核拡散防止条約日本にも重大な関係を持っておりますから、これに対してわれわれは、これは各国との間にも、ドイツとの間にも、ブラント外相との間にも私は協議をいたしました。日本の外交機能としては、これは最大の努力を払って日本の主張も相当に取り入れられた、かように評価いたしておるのでありまして、その点は、曾祢君の評価とわれわれの評価とが違っておるということを率直に申し上げておきたいと思います。
  157. 曾禰益

    曽祢委員 それはまあ御自分でおやりになっているのですから、その評価はごもっともかもしれませんが、われわれは、客観的に見て必ずしも満足し得ないのではないか。たとえば非核クラブの問題をおっしゃいましたけれども、私は非核クラブという形を言うのではない。どうもアメリカとの交渉、アメリカに、お願いします、お願いしますという点は、これはあったでしょう。アメリカも自分の利益にもなることであるし、それは日本意見も相当取り入れる努力をしたかもしれない。しかし私は、外務大臣に対して失礼なのだけれども、やはり外交の多角性からいって、現に私がドイツの軍縮担当大使のシュニッペンケッター氏に九月の末にボンで会ったときにも、日本さんは第三条のこの査察問題についてアメリカ案に簡単におりたそうですねと、皮肉たっぷりに言われたことをいまでも思い出すのです。ですからドイツとも何も話をしなかったというのではありません。場合によってはやはりそういった——ドイツとは最終的には平和利用について競争の立場になります。それはユーラトムの査察、自主性の問題に関連して御承知のとおりです。しかし、少なくともその査察が保有国と非保有国の間に差別があっちゃいけないとか、あるいは査察がスパイ条項になってはいかぬとか、あるいは査察がなるべくというか、ほとんど核物質だけに限ってやっかいな施設を見るというようなことはやめさせるという点については、それはドイツとでも共同戦線を張れるはずです。それから保有国と非保有国とのいわゆる平等待遇というような問題については、あるいはスウェーデンとも共同戦線が張れるではないか。あるいは先ほども言ったように、日本に直接関係はないようだが、よく考えてみれば、アメリカだけの核のかさにのみたよるというのは、長い目で見るならば、私は必ずしも賢明ではない。そういう意味と、非同盟国のことを考えたならば、やはりこれは条約の中では保障することでない、国連の保障になるけれども、こういう問題でもそれらの国と非同盟国ともっと緊密に連絡する、こういうことがあっていいのではないか。  それから、人事問題について、私は一例をあげたのですけれども、何だかどこから見ても日本態度というものは、核拡散防止条約についてのほんとうの熱意がないではないかということがあらわれるような態度でやっているのはいけないのではないか。  それから、これはユーラトムとの非常に重大な問題ですけれども外務大臣はいみじくもこれから努力すると言われたんですね。それは指導原理は、一本の国際原子力機関の基準による査察でしょう。しかし、現実にはユーラトムの自己査察、仲間の査察。ところが、国際原子力機関の場合には、むろんソ連人はお断わりいたします。これは相互主義でソ連が認めないのですから。しかしアメリカにはフルに査察されるわけです。そういう点を考えると、現実にユーラトムと日本との差がないように、これはほんとうに真剣な努力をされて、そういうことにもし疑いがあるならば、日本としてはこれを拒否するぐらいの決意を持って努力される必要があると思うのです。  それから第三に、五年間の再検討というが、再検討の意味が大切なんで、再検討がただレビューしたけれどもしょうがありませんじゃなくて、再検討の結果重大なる事項がある場合には、たとえば核軍縮が全然進まない場合には、一国だけが祝福されないで脱退するのではない。これはもう一ぺん根本的に、条約終了ぐらいの覚悟の再検討となるなら、それは五年ごとの再検討でもいい。しかし、いまの条約にあらわれている再検討というのは、それほど重大な結果を伴う再検討とは書いてない。そこに私は、ただ五年だけ再検討すればいいじゃないかという政府の考えが甘いのではないかということを申し上げているのであって、詳細はもう一ぺん外務大臣から伺いませんが、いまのような重要点について、私は総理大臣から、これらの重要事項に関しては日本の正しい主張をあくまで貫徹する、いわゆる核軍縮については日本が先端を切る、平和利用についても日本が先端を切る、このために核防条約は前向きで、しかし執拗に最後まで努力をするのだという、こういう趣旨の明確なる御答弁をお願いしたいと思います。
  158. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 核につきまして具体的にいま取り組んでおる問題は、御指摘のとおり、核拡散防止条約、この問題であります。政府におきましても、政府のつとめ方は十分ではないというおしかりがございましたが、私ども最善を尽くして現実の問題としてこれと取り組んでまいっております。先ほども全般として申しました。いままで必ずしもそれが目的を達していないという面もあります。これらの点についてはさらに努力するということを申しました。ただいまは曾祢君から叱吃鞭撻を受けました。私は、そういう意味で、この問題とさらに真剣に取り組まなければならない、かように考えておる次第でございます。しかして、私弱音を吐くわけではございませんが、現実の問題として相手方もあることですし、私ども目的が必ずしも全部通るとも考えませんし、また最終的に、そういうような不十分な問題である場合に、それにわれわれが参加するかしないかというそういう問題もございますから、それらの点をあわせて考えまして、ただいまの叱吃鞭撻を受けたことを無にしないように最善を尽くしてまいるつもりでございます。
  159. 曾禰益

    曽祢委員 核防条約については、やはり軍縮への一つの足がかりという意味が如実に出てくるならば、また平和利用についてのわが国の不当なる阻害がない限りは前向きにわれわれは考えたいというこの見地から申し上げているのであって、この点に誤解のないように願いたいと思います。  核問題について、最後に、平和利用の国内対策でございますが、これについては、どう考えても日本が第六番目の発電国だとか、そんなのんきなことを言っているようじゃ問題にならないのでございまして、総理が今度お上げになったのろしはけっこうだけれども、いままでの対策と今年度の予算にあらわれた平和利用対策では、私はまことに言行不一致の最も典型的な例だと言いたいくらいであります。私は、元来、中共の核武装に対してわが国民が自信と冷静とを堅持する道は、政府が核と宇宙科学については非軍事化を絶対の条件とする一方、その平和利用の分野においては中共を凌駕する、まさるというぐらいなところにいっていることが、私は国民に対する自信であり、その自信が安全保障の根本であるとすら考えているのであります。この意味で、総理は、昨年四月に原子力委員会が決定いたしましたところの原子力開発利用長期計画、その内容は、御承知のように、大体において十年間に約二千億円の予算を——これはまだ予算に計上されておりませんが、プロジェクトとしては予定いたしまして、いろいろな原子炉の研究開発あるいは核燃料の開発等に従事しようというのでありまするが、こういうものをレビューし、再検討し、さらに補給し、特に軽水炉はもはや国産化の段階にある。すみやかにこの国産化を急がせる。同時に、新型転換炉と高速増殖炉にどのウェートで、どっちにどれだけの研究費を出していくかということは非常にむずかしい問題でありますが、少なくとも両方とも開発研究のために大きな努力を払っていく。さらに核燃料資源の確保と、わが国自身の手によって核燃料の一貫作業、そういう核燃料産業を確立する。このために物心両面の最大の努力を傾注すべきではないか。口で言っているけれども、その予算の現実を見るならば、四十一年の予算で、平和利用でたった百二十六億円、ドイツの三分の一ですな。四十三年の予算が幾らですか。予算で二百六億七千八百六十万二千円、債務負担行為を合わせたって三百十二億とはまことに総理の長期プランと比べてお寒い感じがするのは私だけではないと思うのです。これは予算の問題でもございまするけれども、私がいま申し上げているのは長期プラン、ただ原子力発電所ができればいいんだというようなことでは国際競争に負けます。その点について、国内的な平和利用対策に真剣にお乗り出しになる覚悟ありやいなや、これをはっきりと伺っておきたいのであります。
  160. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 原子力の平和利用、その第一のものが発電所だと思いますけれども、私は、発電用だけではございません。産業の各面においてこの原子力の利用が拡大されておりますから、これと真剣に取り組むこと、ただいま御指摘になりましたように宇宙開発、これまた平和利用の面において宇宙開発に乗り出すということ、これによって国民に一つの誇りを持たすという、これが私どもの考え方でもございます。したがいまして、予算が少ないというおしかりでございますが、これもやはり予算をこなしていく、消化するというその立場で、ことしなどもたいへんむずかしい予算でございましたが、以上のような非常な増加の予算を計上したのでございます。この上とも新しい産業、新しい分野、こういう方向へ進むつもりでございますから、御支援のほどをお願いします。
  161. 曾禰益

    曽祢委員 私は、いまの問題等については、われわれのほうにもエキスパートがおりますので、佐々木良作君もおりますし、これらの問題はさらに第二陣、第三陣等で大いに研究、検討につとめていきたいと思いまするが、最後に、政治姿勢の問題について、時間はございませんが、私は心を込めて佐藤総理お尋ねをしたいと思います。  総理は施政方針演説の末尾で政治道義と綱紀の粛正、清潔な議会民主政治の確立を訴えておられます。国民としてこのことに反対な人はないでしょう。またみずからの姿勢を正し、国民と相携えて進むと宣言されました。その言やよし。しかるに、すでにこの質疑応答でも明らかになったとおり、国の安全保障という最も重大な、しかも国民的な合意を必要とする問題について、総理の姿勢は独善であり、国民とともに語る率直さと、野党にも協力を呼びかける雅量とステーツマンシップが、私は失礼であるけれども、欠けていると思います。ことさら、言行不一致の一番顕著な実例は、議会制民主主義の確立と、政治道義の立て直しについてであろうと思います。  去る五十六国会の混乱に際し、自民、民社、公明の三党は、議長とともに事態収拾のため、議長委員会の採決を不適当、つまり、一方的な質疑打ち切り、強行採決などを認めた場合、その採決を無効とし、委員会に差し戻す権限を付与する趣旨の国会法の改正を、責任を持って近い国会で成立させること、並びに委員会、本会議における少数党の発言についてはできる限りの機会を与え、国会が正常な状態で審議が尽くされる場合には物理的抵抗を行なわない旨の申し合わせが成立いたしました。首相は、自民党総裁として、この申し合わせの実現を、あらためてここにはっきりと誓約する御用意ありやいなや、まずこれを伺います。
  162. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 議会民主制の確立、この三党で申し合わせをいたしました際に、私もはっきりこれを推進する、かように約束をいたしました。ぜひともこれは実現したい、かように思っております。
  163. 曾禰益

    曽祢委員 そのお約束の実現を期します。  私は、次に、わが国の議会政治の重大な欠陥の一つは、各種圧力団体や業者団体、それと官僚との癒着並びに議会各委員会を通ずる政党政治家と圧力団体、官僚との間の癒着であり、これが往々にして綱紀を乱り、さらにはなはだしきに至っては汚職の温床を提供しておることは、昨年来の黒い霧また最近の大阪タクシー疑獄がその氷山の一角であるけれども、このことを明瞭にしていると思うのであります。総理は、かかる際に、ただ運輸官僚だけの粛正ではなくて、このような悪弊を根治するために、いわゆるせんべつ官僚、こういうものを一掃するために、重大な決意を持ってこの粛正に当たられる御決意であるかどうか。せんべつ官僚とは、せんべつをもらう官僚です。  次に、かかる悪習のよって来たる原因の最大のものは、言うまでもなく、政界に関する限りは金のかかる選挙、金のかかる政治であろうと思うのであります。この意味から、同僚山本幸一委員も声を大にして言われましたけれども、やはり一番大切なことは、少なくとも昨年の第五次選挙制度審議会の答申をそのまま本国会に提案して、総理責任をもってこれを必ず成立させる、このことが国民要望だと思います。これに対する総理の明確なる御答弁を要求いたします。
  164. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 せんべつ官僚ということばは新しい事項のようでございますが、実は運輸官僚、運輸省でまず綱紀粛正の第一矢を放った。私は運輸省だけではないとかように考えまして、内閣が各省に対しましても、右へならえというか、綱紀を粛正すべきだ、かようなことで人事局長から通達を出し、そして各省でそれそれ適切なる処置をとらすことにいたしました。したがいまして、その効果がどういうようにあがってまいりますか、今後さらに注意をいたしまして——油断をするわけではありません。一片の通牒だけでこういうものが直るわけではございませんから、これを実際問題として処理してまいりたいと思います。  次に、政治資金規制の問題でございますが、これはすでに山本幸一君からもお話がございました。あえて私の答弁を求められませんでしたが、政治資金規正法はぜひこの国会に提案したい、かように思っております。ただいま過去の審議の経過なども考えまして、そして成立が期せられる、そういう案をただいまくふうしつつございます。したがいまして、成案を得次第、国会の御審議を仰ぐつもりでございますから、どうぞよろしくお願いいたします。
  165. 曾禰益

    曽祢委員 時間がまいりましたので、私はこれをもって同僚委員に譲って終わりますが、最後にいま申されたように、ただ政治資金規正法を政府、自民党案のような、小骨も大骨も全部抜いたようなものでなくて、まともな第五次選挙制度審議会の案そのものを出してこれを通す。このことをわれわれは強く要求いたしまして、私の質問を終わります。(拍手
  166. 井出一太郎

    井出委員長 これにて曾祢君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  167. 井出一太郎

    井出委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  昭和四十三年度総予算審査に関し、明七日午前十一時、日本銀行総裁宇佐美洵君、全国銀行協会会長田實渉君、商工組合中央金庫理事長高木元君に、また二月八日午前十時三十分に税制調査会会長代理松隈秀雄君に、それぞれ参考人として出頭を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  明日は、午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十四分散会