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石川次夫君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、
佐世保港
入港の
原子力潜水艦による
汚染問題の
調査報告に対し、若干の
質問をせんとするものであります。
佐藤総理は、本国会の
施政方針演説にあたりまして、
現代を
核時代と規定し、まず第一に、「
平和利用と
科学技術の面における貢献によって、
核時代における
わが国の
威信を高める」と申しておりますけれども、
わが国が
先進国に追いつき追い越して、
国民の
繁栄をもたらすためには、
科学技術の
振興が何よりも重要であるということは言うまでもないのであります。しかし、われわれは
現代を
原子力時代と名づけてきたのでありますけれども、それをことさらに
核時代と言いかえておるということは、
原子力という
ことばは、
原子力平和利用と密接に関連をするものであります。
核時代という
ことばは、
核装備、
核武装につながるものであります。したがって、この核という字句に、
国民になれさせるという
意図を持つものでありまして、
佐藤総理が、いかに
平和利用を強調しようとも、衣の下によろいがむき出しに見えておるといっても
過言ではないのであります。(
拍手)さらに、
科学技術の
振興によって
国民の
繁栄をもたらすのだとは言わないで、国の
威信を高めるという
ことばは、
小学生程度の子供じみた
国威宣揚意識のあらわれであります。
科学技術の
振興に何より大切なことは、
基礎研究の充実であります。そうして、
国民のしあわせと安全を
ほんとうに願うという信念であります。
たとえば、
原子力の
科学についていいますと、基礎的な
研究は
原子力研究所に集約されておるというのが現実でありますけれども、
従業員の
思想傾向が気に入らない、こういうことで、
原子力研究所は極端に冷遇され、極端に弾圧を受けておる。そうしておいて、一方では
国威宣揚のための動力炉・核燃料開発
事業団において、
事業の促進をはかっておるのでありますけれども、かくのごときは、いたずらに砂上に楼閣を築こうとする以外の何ものでもないのであります。(
拍手)
また六万件からのテーマを持った基礎的な
科学研究費の
予算が、本
年度予算はわずかに五十億円であります。未開国以下であります。これはF104のジェット機十機分に相当するにすぎないのでありますけれども、一方では防衛庁の
軍事研究開発費は幾らでありますか。実に七十一億円であります。ここに、この
内閣の平和よりも
軍事を愛好する性格というものを露骨に知らされて、りつ然とすると同時に、この
内閣にはたして
国民のための
科学技術振興を呼号するだけの資格があるかどうか、はなはだ疑わしいといわなければなりません。(
拍手)
このような事実に目をおおいまして、
巨大科学の
推進を通じて、大企業、特に
軍事産業に奉仕しようとする
意図が、はしなくも
施政方針演説にあらわれておるわけであります。そして
軍事産業では特に多くの利潤を得させることができます。そうして大骨も小骨も抜かれて、かまぼこに調理をされた
政治資金規正法によって、多くの献金が期待できる道理であります。
もともと
原子力潜水艦は
原子力兵器でありますけれども、その
議論は一応おくといたしましても、この
軍艦に核弾頭の魚雷、
サブロックを搭載しておることは、
世界周知の事実であります。
アメリカが搭載しないといっておるから、搭載しないと信じておるというのは、世界中で
日本の
自民党政府だけであります。さらに
戦闘用あるいは作戦上の必要から、この
原子炉の
操作はきわめて簡易化されておりまして、構造上に非常な手抜きと
危険性があります。そのため
安全性の上で多くの問題があるということは、
専門家がひとしく指摘しておるところであるにかかわらず、
政府はわれわれの
質問に対してどう答えておりますか。それだけ簡便化できたというのは、それだけ
アメリカの
技術がすぐれている証拠であると答えたのであります。こういう開き直り方をするというのは、あきれ果てた詭弁というよりは、
ほんとうにそう思っているとすれば、
政府の知能指数は白痴同様であるといわざるを得ません。(
拍手)
そもそも
日本の
原子力基本法は、厳然として
平和目的に限るということを明らかにいたしておりますけれども、
軍事目的の明らかな
軍艦であってしかも
原子力推進機関を持つところの
原子力潜水艦の
寄港を認めるということは、どう強弁いたしましても、
原子力基本法の明らかな違反であります。一体、
原子力基本法の存在を
佐藤総理大臣は御存じなんでありましょうか。この点についての
佐藤総理の
見解を伺いたいと思うのであります。
今回
佐世保に
入港した
原潜による
汚染が
国民の
関心を集めておりますが、いまの
監視体制と
測定方法では、ただ単にガンマ線とべ
ータ線を
測定するだけで、まことに通り一ぺんのものであります。そうして、ただ
国民に安心しろという
目的だけの
測定にすぎないのであります。さらに結局は、
汚染の
原因は不明であって、
アメリカの
原潜が
原因ではないんだという弁明に便乗し、同調して、またぞろ、
アメリカが
原潜が
原因でないと言うから、決して
原潜が
原因ではないんだと言うことができるような
監視体制をあらかじめ準備しておいたといっても
過言ではないのであります。
異常値が発見されますというと、あわてふためいて再
調査をしながら、一方では湾内の風波が高くて本日は
測定できなかった、こういって
科学技術庁は事の隠蔽をはかったのでありますけれども、さらにそのことが暴露されますと、
アメリカ側の言い分に従って、
レーダーの
影響だと言い始めました。ところが
レーダーの
影響ではないということがわかりますと、今度は、
アメリカ側が
工作艦の
溶接器が
原因ではないかと言っておるから、その裏づけをしようと思って、懸命に狂奔をいたしました。そうしてますます
国民の
疑惑を深めただけであります。
異常値が発見されたら、まず
原子力潜水艦の
影響ではないかということを疑ってかかるのが
最初になすべきことであるにもかかわらず、他の
原因を無理に見出そうとすること自体、本末転倒であります。
国民の安全を守る立場を全く忘れた
アメリカの
代弁者としての立場であるといわなければならないのは、まことに遺憾であります。(
拍手)
測定器というものは、元来
国民の安全を守るために、
放射能を
測定する器具なんであります。それが現実には、
アメリカのかわりに、
原子力潜水艦を
寄港させる裏づけをするための道具になっておる。まことに遺憾といわなければなりません。(
拍手)
いまになって
アメリカに対し
調査団の派遣を要求しておるようでありますけれども、一体何のために要請をしておるのですか。
日本はただ一つの被爆国であるという
関係もありますけれども、
放射能汚染の
研究については、
日本学界の実績は世界で一頭地を抜いておるのです。これはだれでもが知っております。それなのに、いまになって、時期はずれでもう
原因の
究明が不可能になった時点で、一体何を
アメリカに
調査をさせようとするのでありましょうか。思うに、
アメリカのおえらい
方々の御
意見なるものに耳を傾けて、時間をかせいで、
原因をあいまいにして、結局のところ、
原子力潜水艦の放出水ではないと言うための証拠固めに御
協力を申し上げようとするところの
政府の
意図以外の何ものでもないと断言せざるを得ないことは、まことに遺憾であるといわなければなりません。(
拍手)
わが国が必要なことは、
調査資料として、冷却水がいつどの地点でどのくらい放出されたか、放出前の
原子力潜水艦内におけるところの
放射能のチェックの状態は一体どうなっておったか、こういう正しい
資料を要求することが必要であります。また、ソードフィッシュ号の出港がおくれたというその事故の
原因が一体何であったか、その点、納得のいくような説明を求めなければならぬと思うのであります。さらには、
原子力潜水艦の
原子炉の構造をわれわれは知らなければ、
原因の探求には不十分であります。これらについて明らかにする交渉をする気持ちが一体あるのかどうか、
科学技術庁長官並びに
外務大臣に伺いたいと思うのであります。
さらに、ここでも説明されましたが、一昨年五月の末に、横須賀におきましてスヌーク号が
寄港いたしました際にも
異常値が検出されましたけれども、これは
レーダーの
影響であったというふうにただいまも
報告されております。しかし、これに携わった学者は、そのような断定はしてはおらなかったと私は伝え聞いておるのであります。いつ、どこで、このように結論が
レーダーというふうに変わったのか、どこですりかえられたのかを伺いたい。そして、同時に、
本件の再
調査を強く要望せざるを得ないのであります。
外務大臣は、さきに
施政方針演説におきまして、「
アメリカと
関係の深い国であってしかも
軍事的に圏外に立っている
日本こそは、
アメリカに率直に勧告できる立場にある」と言っております。
国民はこのことに心から期待をつないだと思うのでありますけれども、実体ははたしてどうだったでありましょうか。完全に裏切られたわけであります。
一例をあげてみましょう。先般審議されました
日米原子力協定におきましても、
日本の態度は、無担保で銀行に金を借りに行くようなまことに卑屈な態度であります。なぜなら、現在の部分核停条約においてすらも、査察を受ける側、その国に拒否権があるのでありますけれども、この
協定では
日本の拒否権というものは認められません。また、査察の対象が、この
協定のもとでは、核防条約で予定される査察の対象よりもはるかに広がって、ほとんど無制限に近い状態になっておるのであります。また
日本に輸入された
アメリカの濃縮ウラン、
原子炉あるいはその他の関連器具の故障などについては、
アメリカは一切責任を持たないということになっております。さらに重要なことは、この屈辱的な片務
協定の改定は、いまから論議されようとするところの核拡散防止条約に賛成するということが前提で初めて行なわれる約束になっておるわけであります。こんなことで、これから国際間に大いに
議論を戦わそうとしておりますところの核防条約、なかんずく問題の多い査察の問題について、堂々の主張を
日本ができるかどうか、はなはだ疑わしいといわざるを得ないのであります。これではたして自主独立外交といえるでありましょうか、
外務大臣の
所見を伺いたいと思うのであります。(
拍手)
佐藤総理は、この
事件の起こりました以後の決算
委員会におきまして、わが党議員の
質問に対して、
原因が不明であれば、
原潜を二度、三度と
入港させてみればよいと
答弁しております。
国民の不安に対しては、核アレルギーであるとあざ笑ったのであります。われわれは、この
ことばが
日本の
総理大臣の
ことばとはどうしても信ずることはできません。(
拍手)
アメリカ政府の代弁としか受け取ることができないのでありますけれども、いまも同じ
意見でありますか。事はきわめて重大であります。はっきりとした御
答弁を伺わなければなりません。(
拍手)
われわれは、
科学技術の
推進を心から念願し、また将来のエネルギー源であるところの
原子力科学の自主的な開発の一日も早からんことを心から念願いたしておるわけであります。そのためには、単に経済性にとらわれないで、あくまでも
安全性を確立することを通じて、積極的な
国民の
協力を得ることが不可欠の条件であることは言うまでもございません。今度
政府が、ことさらに事を隠蔽したり、結論を他に転嫁しようとするような態度は、いたずらに
国民に不安を増大させ、
原子力平和利用の
科学の
推進に大きな障害を与えた。その責任はきわめて重大だといわなければなりません。(
拍手)
私は、今度の件で、非常に多くの、世界のレベルを越えた公正な学者の
意見をいろいろと聞いてまいりました。そして、その
原因は
原子力潜水艦以外には
考えられないというのが、学者全部の一致した
見解であったことを
報告しなければなりません。(
拍手)
アメリカとの合同
調査に名をかりまして時間をかせぎ、
原因をあいまいにして、その
原因が
原子力潜水艦とは断定できないとするようなことは、断じて許すことはできません。(
拍手)
アメリカ政府の口上書に、「
測定し得る
程度の増加をもたらすようなことはない」と言い切っている以上、今後の
寄港は、約束違反でありますから、断固として拒否することこそが、
国民の期待にこたえるところの唯一の道であると信じてやまないのであります。(
拍手)
調査が済むまでは
寄港をやめてもらいましょうという卑屈な態度であったのでは、
国民は絶対に納得できません。すべて、このような混乱と、
国民の不安が醸成されたことは、
国民の意思に反して、
原子力空母、
潜水艦を
寄港させるところから出てきておるわけであります。
日本の
総理大臣である以上は、拒否するのが当然である、こういう立場に立って善処をしなければならぬと
考えるのでありますけれども、
総理大臣はどうお
考えであるか、伺いたいのであります。
佐藤総理は、沖縄の核つき返還の実現のために、公然と核兵器搭載の
原子力潜水艦、空母を
寄港させて、その地ならしをはかり、
原子力基本法の精神を明らかにじゅうりんしてまいりました。そのことによって、
日本の
国民は、戦争と
安全性に対する二重の不安におびえておるわけであります。一体、
日本には、
ほんとうに
国民の生命と安全を守るための
政府が存在しているのであろうか、あるのはただ
アメリカ合衆国
日本領事館ではないのか。
国民の心から憤激をし、下僕のように
アメリカに卑屈な態度をとり続け、
国民に対してはいたけだかの態度をとっておるところの現
内閣の退陣を望む声は、今回の問題を契機として、ほうはいとして高まりつつあることは事実であります。(
拍手)
私は、佐藤
内閣に猛反省を促して、私の
質問を終わりたいと思います。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕