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小松幹君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま
趣旨説明のありました
政治資金規正法について、以下数点にわたって、
総理並びに
関係大臣に
質問をいたしたいと思います。(
拍手)
まず、冒頭、
政界浄化の
理想を放棄した
佐藤総理大臣にお尋ねいたします。
このたびの
政府提出政治資金規正法案は、
自民党の
党利党略をむき出しにした、
政治献金奨励法となって
提出されております。(
拍手)これは、本来の
規正法の
精神に逆行し、世論に挑戦してきたようなものでございます。このもと起こしであった
選挙制度審議会の
答申の
精神も無視しておる悪法になってしまっておるわけであります。この
法案を見ますと、
答申の線は全くくずれ去り、先般
ハゲタカの問題が出てまいりましたが、
ハゲタカならぬオオカミの群集によって食い荒らされて、まさに羊腸のみが残されたようなものになってしまっております。(
拍手)
総理は、しかしながら、この
法案を
現実に適したものだと、まさに居直っているようでございます。まさに無節操この上もなく、あきれ返る次第でございます。
総理は、
勇断をもって
答申を尊重する、あるいはこの席上から、小骨一本も抜かないと大みえを切ったのは、つい先ほどでございました。その舌の根もかわかないうちに、このような
骨抜き法を提案してきたことは、全く厚顔無恥もはなはだしいといわねばなりません。(
拍手)もしかりに、もしかりに、
良心も
理想もかなぐり捨てた
ハゲタカのごとき姿が、
現実の
保守政治家の実体であるとしても、
指導者たる
総理大臣は、なおかっこれに対して、
政治家の
良心を与え、金のかからない、
近代政治への
理想を教え、ど
ろ沼のような
金権政治への暴走をここで食いとめることが必要な
時代ではなかったかと思うのであります。(
拍手)そのことは
総理大臣の責任である。こういう次元の高い
政治家全般の問題、
日本の
国政の問題は、時の
総理という人の
政治姿勢に影響することが多いのであります。
勇断をもって実行するという
ことばは、この
理想を追求することに
勇断をもつべきであったのであります。しかし、あなたはその
理想を放棄し、
現実に即したと、こういう
ことばにすりかえてまいりました。私どもは
理想に近づきつつ、漸次、
近代政治へ脱皮していくことが一番現在の
政治に必要なことであり、また、これが
政治の筋であると思うのであります。(
拍手)
総理、あなたはなぜ
政界浄化の大きな
理想を捨てたのか、あなたの御答弁をお願いします。(
拍手)
次に、
ざる法を提案してまいりました
自治大臣にお尋ねいたします。
あなたは、
法案担当大臣として、第二次
改正案をここに
提出してまいりました。あなたは一体どういう基本的な
態度と
姿勢をもってこの
法案をつくられたのか、第五次
選挙制度審議会が、
政界浄化、
選挙粛正のためにせっかく
答申を出されたその意図を、あなたは正しく踏まえて、これを受けて立ったのかどうか、公明正大に忠実に取り組んできたのか、どのような反省を持っておられるか、お伺いしたいのであります。
法案を見ますと、相も変らず、
企業資本を
政治資金の大きなポケットとし、
あさり場として、少しでも多くの
献金を
自民党にかき集めようとする魂胆から、このような
答申無視の独善きわまりない
法案をつくってきのであります。第一次
改正案の
作成者であった藤枝前
自治大臣は、それでも
答申の線にまあまあ忠実に従おうと努力した
良心が認められます。しかし、第二次
改正案を
提出してきた
赤澤自治大臣に至っては、全く
与党自民党に振り回され、
答申の線を尊重するというよりも、
自民党のもっぱら御
意見拝聴に終始し、あさましくも醜いこのような
政治献金法を提案してきたのであります。まことに無定見もはなはだしいのでございます。(
拍手)
先日も本
会議のこの席上から、公明党の
質問に答えて、
自治大臣は、こちらから半分の方の了承を得なければということを、得々と指さして言っておりましたが、行
政府の
長官として、まことに不見識きわまりない
態度ではないでしょうか。(
拍手)
法案を
提出した者が、この壇上から、
法案の示す
理想理念と
法体系を
説明する以外、何を語る必要がありましょうか。
理想を語らずして多数にこびを売っておる
大臣、これこそ三等
大臣以下ではないかと私は見るわけであります。(
拍手)
自治大臣にお尋ねいたします。
法案の
内容作成に最も基準となるのは、
選挙制度審議会の
答申でありますが、あなたが、この
答申をすっかり変えて、程度を下げてしまったその最大の理由は何でございましたか。
そもそも、この
政治資金規正法の問題は、一昨年以来たびたびの汚職事件の果て、企業と
政治のあくどい結びつきによって起こる
政治腐敗の悪弊を打破して、
政界浄化をはからんとする目的のもとに発起されたものであります。第五次
選挙制度審議会は、その
答申において、
政党の資金は
個人献金と党費でまかなわなければならない、これが本体であるということを明らかにしております。かつ、企業よりの
献金については、頂上を二千万円に押えてきておるのであります。
しかるに、
提出されたこの
改正案は、一体何たることでありましょうか。
政治と
企業資本との結びつきを
答申の線に
制限するどころか、さかさに企業
献金を主体として累進増加をはかり、天井なしの青天井の無
制限に引き上げてしまったのであります。さらに、この
政治寄付金には、税金は全額免除の
優遇措置を加え、なお、
会費という名目でされる
寄付金についても、
届け出を両三
年間にわたって免除する。
寄付金の公開を原則としてやると何回も公約しながら、三
年間目隠しをして、やみくもに
国民の前に閉ざされてしまう。このようないわゆる
政治の資金を不明朗にしてしまったということは、一体何たることでございましょうか。しかも、派閥資金までも別ワクに認めてきたに対しては、もはや言語道断でございます。
総理自身は、派閥解消を何べん言ったのですか。口では派閥解消を言いながら、銭このほうでは派閥にたんと資金を集めるようなことをして、二重人格ではありませんか。これこそ、企業からの
献金を、
自民党やそれぞれの派閥にきわめて入りやすくし、多くの資金を有利に集めるために、悪質なやり方で集めようとするに間違はないのであります。
政治資金規正法というよりも、むしろ
政治献金奨励法といったほうが筋が通りそうであります。一体
総理は、これらについてどのように考え、どのように理屈をつけているのでありましょうか、お尋ねいたします。
次に、
総理は、
政治活動には金が要る、だから現状、資金を集めることは、
政治資金は悪ではないと、こう言い放っております。しかしながら、いま世論が
政治に求め、私
たちに求めておるのは何でございましょうか。金のかからない粛正
選挙をしろ、
企業資本におんぶしない
政治資金規正法をつくってくれというのが、佐藤
総理に対して与えられた命題ではないでしょうか。佐藤
総理は、これを受けて、
日本一の
指導者としての責務として、これに対処するのが当然であります。企業からの
献金量を減らす、そうして自粛していくことが、あなたに与えられたる最高の使命である。にもかかわらず、世論の要求に逆行して、大骨、小骨、背骨まで抜き取って、悪銭をたくさん集めようとする魂胆、これは一体どうしたことでありましょうか。
日本における優位の企業とすれば、八幡製鉄、富士製鉄あるいは
東京電力など、一億数千万円の
献金を可能に今日してしまっているわけであります。営利を目的とする企業が累進一億円の
献金衣あえてする場合、企業が
政治に見返りを求めることはまた当然であります。結果は、
政治が企業に振り回される。
政治家は企業の手先となって、その下僕となる仕事をしていかねばならない。大阪タクシー汚職事件、共和製糖事件など数々、いわゆる
企業資本と
政治家との結びつきがいかなるていたらくであったかということは、われわれたぐさんもう例を知っている。
政治資金は善であると
総理は言われる。そのとおりかもしれない。しかし、その集め方次第では、最大の悪であるということを、佐藤
総理は身をもって知っておるはずであります。(
拍手)
政治の不明朗は
政治資金によって起こることが多いのでありますが、
総理のお考えをこの際承りたいと思う次第であります。
次に、
政治献金の税法上の減免措置は、
答申の中に考慮はされております。しかし、これは
個人の
寄付金の場合に限ってという条件つきであります。
会社、
法人の
寄付については、
答申は何本語ってはいないのであります。
政党献金は元来
個人のするもので、企業、
会社のすべきものではないというのが本体であります。今度の
改正案はそれでなくて、むしろ
会社や企業がするのが
政治献金の本体のようにしてしまっている。そうして税金は全額免除してしまっている。
会社の行なう
政治献金も、これは普通ならば損金算入の
限度額というのがある。ところが
政治献金だけは、その算入
限度額の別ワクで、別に積み上げていくという免除方式をとっております。
献金の額は天井なし、青天井にして、税金もまた全額無税とする。この
答申の
精神を踏みにじった、逸脱した暴挙であるともいわれるわけでございます。
今日、公共
団体やあるいは
日本赤十字社などに対する
寄付でも、
個人の場合でも、所得の一五%以下、
会社の場合だったならば、損金算入の
限度額以内に押えられて、それ以上した者は、日赤に瀞付しても税金をかけられておるのでありますが、
政治献金だけは全く税法上別口にするということは、これは税法上の一貫性を欠き、社会正義の上からもおもしろくない、こう思うわけであります。そうしてまた、企業にしてみれば、税金を取られるならば
政治献金をしたほうがいいんじゃないだろうか、税務署に納めるよりも、あの
政治家に、頭を下げてきたのだから、出したほうが得をしやせぬかと思うのが、企業の心でございましょう。昔から「テンがとらねばイタチがとる」という
ことばがございますが、税務署が税金を免除したところが、佐藤榮作さんをはじめもろもろの保守党の代議士諸先生が、これを見のがしてはくれない。イタチの臭覚はなかなかはずすわけにはいかない、しかたがないからと、被害者
献金が行なわれるようになるのではないでしょうか、皆さん。(
拍手)企業がむしろここまで安心立命して落ち込んでくることを期待しているのが、悲しいかな現代保守党の
政治家の魂胆かもしれません。だから、落ち込むようにこういろ
法律案をつくってくる。このような全く悪魔のささやきにもひとしい税法措置こそ、最大のねらいどころがここにあったのではないでしょうか。
総理大臣はこの点についてどのようにお考えになっておりますか。税の全額免除措置に対する理由を承りたいと思うわけであります。
次に、このようなはしにも棒にかからない
骨抜き法を出して、一番恩恵を受けるのは、
総理大臣佐藤榮作さん御自身でございます。この次、ことしのうちに総裁
選挙もありますが、総裁
選挙にはばく大な資金を用意せねばならないでしょう。しかし、これによって、いよいよ合法的に可能な線も出てまいりました。いままでは見え隠れして金を集めたが、今度は堂々と銭を集めることができるのかもしれません。かつて、造船疑獄に連座し、指揮権発動によって、かろうじて罪を免れた
佐藤総理大臣、あるいは時効になったと言うかもしれませんが、あなたが、その心の中に、
政治献金に異常な関心と執着を持っているのも、また過去の実績から来る当然の結論ではありましょう。(
拍手)時あらば、合法的にこの
政治献金を拡大していこうと考えるのも当然かもしれません。情けは人のためならず、やがてはめぐり来るわが総裁
選挙の
戦いの強化のために、ここは奮発して、
自民党各位の
意見に従って、
ざる法、
政治資金規正法をつくらねばと考えたのかもしれません。このことによって資金集めはやさしくなったとも考えられるわけでございます。
立ち入ったことを聞くようでございまして、まことに申しわけございませんが、
総理は、この次の総裁
選挙に、一体どこから、どれほどの金をお集めになる用意がございますか。これは、あなた
個人の
政治資金に一番
関係する問題であると思います。公開の原則に従って……