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1968-01-31 第58回国会 衆議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年一月三十一日(水曜日)     ―――――――――――――  議事日程 第四号   昭和四十三年一月三十一日     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑                 (前会の続)     ――――――――――――― ○本日の会議に付した案件  議員請暇の件  国務大臣演説に対する質疑                 (前会の続)    午後二時五分開議
  2. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) これより会議を開きます。      ――――◇―――――  議員請暇の件
  3. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) おはかりいたします。  議員田川誠一君及び同古井喜實君から、海外旅行のため、二月一日から十五日まで十五日間請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。      ――――◇―――――  国務大臣演説に対する質疑                 (前会の続)
  5. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) これより国務大臣演説に対する質疑を継続いたします。八木昇君。   〔八木昇登壇
  6. 八木昇

    八木昇君 私は、日本社会党を代表いたしまして、昨日の江田副委員長質問に引き続き、おもに政府経済財政政策につきまして、強くこれを批判しつつ、佐藤総理及び関係閣僚の所信をたださんとするものでございます。(拍手)  戦後早くも二十三年を経過いたしましたが、今日政府経済財政政策は、そのいずれの時期よりもきびしい国民批判の前に立たされておると思うのであります。そして御存じのように、このような国民の空気は、各新聞の激しい政府批判の論調となってあらわれておるのであります。最近の新聞は、いずれも筆をそろえまして、一斉にこれまでの政府経済財政政策はもちろん、今後に臨む政府姿勢につきましても、実に痛烈にこれをたたいておるのであります。戦後の日本政治におきまして、外交、防衛治安等に対する問題で世論が沸騰いたしましたことはしばしばございましたが、事、経済財政に関しましていまほど世論が騒いでおることはかつてないのであります。私は、この点から見ましても、佐藤内閣はまさに戦後最悪内閣であると思うのであります。(拍手)  もともと、経済財政道理は、一般国民大衆や家庭の主婦にはわかりづらいものでございます。これをよいことにいたしまして、歴代保守党政府は巧みに国民を惑わしてきたのでございます。物価が上がるのは、労働者が毎年賃上げ闘争をやるからだ、農民米価闘争をやるからだ、あるいは、日本経済は米国、すなわちドルと結んでおれば安全だ、こういう論法がそれでございます。しかしながら、皆さん、このような論法はいまや通用しなくなってきたのであります。深い道理はわからないまでも、国民大衆の目の前に現に展開されておる事実そのものが、政府説明のぺてんを雄弁に物語るのであります。この十年間の経済高度成長を通じまして、目ざましい発展を遂げましたものは大会社設備であっ七、労働者農民中小商工業者生活ではなかったという生きた事実そのものであります。世界の二十二位にとどまっておる生活現実から、国民は、これまでの政府御用学者説明のごまかしを、みずからのはだで読み取ってきたのであります。(拍手)  ともあれ、いまや佐藤内閣は、これまでの経済財政政策の大転換をきびしく国民大衆より迫られておるのでありまして、この観点から私は、以下、大きくは問題を四点に分けて、政府見解をただざんとするものであります。  質問の第一点は、政府経済見通しの誤りと経済財政政策失敗及びその政治責任についてでございます。  すなわち、これまで政府は、日本をめぐる内外経済情勢のきびしさを甘く見てきたのでございまするが、これが大きな誤算であったのであります。このことは、さきに本年度経済見通し改定試算を発表いたしました経済企画庁が、十二月二十八日、再び再改定試算を発表するという醜態を演じたのでございまして、この一事をもってしても明らかであります。  もともと、佐藤内閣経済財政政策は、昭和三十年代の高度成長から四十年代の安定成長へというのが基本であったはずでございます。しかるに、現実には、この路線を踏みはずしたのであります。すなわち、年々、多額の公債発行を含むインフレ予算を組んだこと、景気過熱の主犯である民間設備投資行き過ぎ抑制するどころか、むしろこれをあおったこと、物価情勢を楽観して、有効な物価抑制策を怠るどころか、消費者米価を連続三年にわたって値上げをやったのであります。(拍手)さらに悪いことがございます。イギリスポンド切り下げ大幅金利引き上げを予想せず、ドルのかさのもとで安閑としておったのであります。非常の事態に備えまするどころか、皆さん、昨年十一月十五日の日米共同声明によりましてドル防衛協力を約束したたった三日後の十人目、どかんとポンド切り下げが行なわれたのであります。  このような結果、事態はどうなったでありましょうか。物価上昇を続けております。金融筋の見方からしましても、来年度物価上昇は四・八%におさまりそうもございません。政府のいわゆる七、五、三計画は早くもくずれ去ったのであります。一方、わが国国際収支は戦後最悪危機状態であります。昨年政府は、この壇上におきまして、ことしの国際収支はとんとんと説明をいたしましたが、事実は何と七億ドル赤字であります。政府は一体何をやっておるのかと国民が叫びたくなるのは当然でございます。  このような戦後いまだかってなき経済政策の大きな失態について、政府最高責任者として佐藤総理は一体どうお考えになっておるか。はたして総理は率直にこれまでの失敗を認めて今後に処するという謙虚な気持ちと決意を持っておられるかどうか。この際、佐藤総理の心境をお聞かせ願いたいのであります。(拍手)  なおこの際、当面する二つの緊急課題である物価上昇設備投資抑制策について答弁をお願いいたします。  物価の値上がりを押えるには、国債発行大幅削減日銀買いオペ制限、都市への企業集中規制土地価格適正化企業投資抑制中小企業近代化独占物価引き下げ等、各般の措置強化が必要でございますが、具体的に政府はどのような手段を考えておるか。また、政府は来年度物価上昇を四・八%に押えるというけれども、この数字消費者米価値上げを予想したものであるかどうか。この点は企画庁長官からも答弁を得たいのであります。  景気過熱の元凶であります設備投資行き過ぎ規制につきましては、政府金融引き締め中心考えておりまするが、ばく大な利益金をもってみずからの金でどんどん設備投資をやっております大企業現状において、それでは十分目的を果たせないのではないか。むしろ弱い企業には貸さないという選別融資となりまして、記録的な倒産を続けておりますところの中小企業に対する追い打ちとはならないか。何はさておきましても、いまこそ政府景気調整税の発動をやるべきでございます。なぜこれをやらないのか。政府は真剣に投資抑制をやる気があるのであるかどうか、明確にお答えをいただきたいのであります。(拍手)  質問の第二点は、いまや、わが国経済最大課題となりました、危機におちいった国際収支をいかに改善するかという問題でございます。  私は、いま危機におちいっておるのは、実はドルよりもむしろ円であると考えるのであります。わが国国際収支が、鉄鋼、繊維をはじめとする輸出の伸び悩みと貿易外収支赤字のため近年著しく悪化し、この数年間わが国外貨準備が二十億ドル前後に停滞し、輸入規模のわずか五分の一にすぎず、さらにますます悪化の傾向にあることは御承知のとおりであります。しかも、現在十九億ドル外貨準備のうちで、いつでも使える状態にあるドルは数億であります。金保有高に至ってはわずか三億ドルであります。しかも、米英によるドル防衛引き締めは、さきホノルル会談で明らかでありまするように、今後ますます強化される形勢でございます。  また、二月に行なわれるニューデリー会議におきましては、特恵関税問題がおそらく本ぎまりするでございましょう。加えまして、ベトナム戦争が終結するかもしれないということを考えますると、事態は実に重大といわなくてはなりません。いまや、国際収支改善は、すべてに優先するわが国経済のまさに至上命令であります。  この観点から、私は、以下四点について質問をいたします。  まず最初に、いまの国際経済危機に対する政府の認識であります。この危機は、国際通貨金融の一時的な危機ではありません。IMF体制そのもの危機でございまして、いわば資本主義的世界経済危機でございます。にもかかわらず、政府経済企画庁あたりにおきましては、いまなお情勢を楽観して、基本的には景気循環にすぎぬと見ておるようでございます。これに対し、日銀筋はもっと深刻にこれを考えておるようでございまするが、政府見解を承りたい。なお、この点は企画庁長官からも答弁を得たいと思うのであります。  二番目に、ホノルル会議日本政府の弱腰についてでございます。まさにはだ寒い思いの日本外貨事情のもとにおきまして、対米貿易赤字の上に、しかも大金持ちのアメリカに、日本がさいふの底をはたいてまでドル協力をやらなければならぬという理由が、一体どこにあるでありましょう。(拍手)しかるに、会談内容新聞の伝えるとおりであるといたしまするならば、まことに遺憾であります。しかも、帰国した日本の代表は、会談は成功であったかのごとく言い、また、アメリカは対日国境税輸入課徴金制度のいずれかを二月ごろにきめるだろうと、まるでよそごとのように言っておるのである。  そこでお伺いいたします。ホノルル会談の全貌を明らかにせられたい。その中で、中期債話し合いをあらためて八月か九月ごろにやるのであるかどうか、海外援助肩がわり問題はどういう話し合いになったのかをお答え願いたいのであります。  なお、国境税等アメリカの理不尽なる措置に対しましては、日本政府として断固たるところの対抗措置をとるという、そういう決意日本政府にあるかどうか、お答えをいただきたいと思うのであります。(拍手)  三番目は、金の問題でございます。いわゆる金・ドル体制がいよいよ追い詰められておりまする現在、EEC六カ国の金の保有高アメリカをすでに上回りまして、百五十億ドルという膨大なる額に達しておるのに、わが国はたった三億ドルしか持っていないというのはどういうことでありますか。これは自分の足元を固めることを忘れて、ドル一辺倒でやってきた政府責任ではありませんか。(拍手)私は、いずれ遠からず、アメリカは必ず金価格引き上げドル引き下げをやると思うのであります。ベトナム戦争がかりに終わったといたしましても、これは避けられません。もともと、世界的に金は不足しており、南ア連邦ですら一オンス三十五ドルでは生産費を償えないといわれておるのであります。わが日本におきましても、あの三井金属の串木野金山経営難から第二会社となったではありませんか。去る十一月二十一日の朝日新聞座談会におきまして出席した二人の銀行家は、では結局は、最終的には金価格引き上げにいくほかないということかという記者の質問に対しまして、そうだと断定をいたしておるのであります。  政府は、ほんとうドル切り下げはないと考えておるのであるか。また政府は、状況の許す限り、わが国金保有の増加につとめ、また国内金増産対策をとるという、そういう積極的なる姿勢を持っておるかどうか、お答えをいただきたいと思うのであります。  四番目は、貿易拡大日中貿易についてであります。申すまでもなく、国際収支改善のためには、貿易拡大しなければなりません。また、ドル依存から脱却するという点から考えましても、対ソ連、中国及び対アジア貿易拡大というのは、いまや日本貿易政策の柱でなくてはなりません。わけても日中貿易は、いまや重大なる時点に立っておるのであります。先日、福田幹事長の発言が報道されましたが、これは私だけではないと思う。率直に申しまして、何を言っておるのかわからぬじゃありませんか。相手の国も堂々たるところの大国でございまして、ことばのあやなどでごまかせるものではないのであります。(拍手)  いまや、吉田さんの時代はすべての点で完全に去りました。吉田書簡は、LT関係者が強く要求をしておりまするように、もう時効です。完全に破棄すべきであると思うのでありますけれども、これは総理御自身から、だれにでもわかるようなことばで御答弁をいただきたいのであります。(拍手)  なお政府は、来年の輸入はこれを大幅に制限をいたしまして、しかも輸出は二八%も増大するというのですが、一体どこからその輸出の増大をはかるのですか。この点につきまして、通産大臣お答えをいただきたいと思うのであります。  質問の第三点は、来年度予算編成に対する政府姿勢と、いわゆる財政硬直化問題であります。  私どもの直面しております情勢は、国内情勢行き詰まりだけではなくて、これが国際経済の不安と重なり合いまして、まことに深刻です。これを切り開くためには、この際、政府は、平和と民生安定を主眼とする方向において、政策の大転換をはかるべきでございましょう。しかるにもかかわらず、来年度予算編成は、この方向をとることなく、基本的には従来の方向と変わらず、かえって軍備強化国民生活の圧迫をさらに強めるという反動予算です。  時間の関係上、問題を三つにしぼって申し上げますが、まず第一は、政府財政硬直化宣伝と民生安定に関するものであります。昨年九月ごろより、にわかに政府財政硬直化という新語を出しまして、盛んに宣伝を始めました。しかも、その硬直化原因は、三十年代の高度成長に基づく財政の膨張になれて、国民が何でもかんでもすぐ財政に依存する風潮が強まってきたことにあるというのであります。しかし、原因国民におっかぶせた政府のこの説明はおかしい。私は、日本財政はいまだ決定的には硬直化の段階に入っていないと思うのであります。国民総生産に対する予算規模割合税負担割合を見ますると、米、英、西独よりもはるかに少ない。しかし、すでに硬直化の徴候を、あるいはその初期的症状を示しておることは事実でありましょう。  では、なぜそうなったか。一つ原因は、申すまでもなく無理な国債発行です。もう一つ原因は、第三次防衛整備計画による予算を先取りした上に漸次軍事費を増加してきたことでございましょう。そうしてもう一つ原因は、実は歳入面財政投融資面にひそんでおるのであります。高度成長政策によりまして一番もうけたのは大企業でしょう。皆さん、この大企業から税金をどんどん取るべきじゃないですか。こういうことをやらないところに硬直化の第三の大きな原因があるのであります。(拍手)しかるに、政府は、自分責任を回避いたしまして、国民にその責任を負わしておるのでありまして、まことにもって遺憾であります。  私は、政府硬直化宣伝本質を次のように見ておるのであります。  すなわち、今後政府は税の自然増収をいままでのように多く見積もることはできない。さらに、すでに発行した国債元利返済に追われてくる。しかも三次防は絶対にやらなければならない。しかも、この三次防は、物価上昇自衛隊員人件費上昇、さらに兵器を国産化するというのでありまするから、生産コストアメリカから買うよりは高くつく。こういうことを考えますると、三次防はとうてい二兆三千四百億ではおさまらない、こういう情勢から、早目硬直化宣伝を始めまして、将来の軍備の増強に備え、早くも教育、社会保障生活関係予算引き締めにかかってきた、これが硬直化本質であると私は考えるのであります。(拍手ほんとう硬直化しておるなら、圧力団体にこびて、ばらりと出す金などあるはずがないじゃありませんか。この私の見解に対し、政府答弁を求むるとともに、少なくとも、この際、政府は、会社交際費の課税の強化法人受け取り配当の非課税及び利子配当優遇措置の廃止ぐらいのことは絶対にやってもらいたい。この私の考えに対して御答弁をいただきたいと思うのであります。(拍手)  第二は、増税問題であります。多くを申し上げません。今度の予算は、事実上は増税となっておるのであります。政府の言う所得税減税のからくりにつきましては、私が言わなくても、各新聞が大きな紙面をさいて、こまかく数字をあげてこれを説明しておるので、この壇上では申し上げません。毎年物価が上がっており、名目の所得が上がれば累進税率をかけられるのでございますから、本年程度の減税では実質的には減税とはなりません。酒、たばこの増税分だけ負担は重くなったという世間の言い分は正しいのであります。  また、公約の百万円免税は、物価上昇のおりから生計費には課税しないという政府のたてまえなら、本年直ちにこれを実施すべきであると思うが、これについてお答えをいただきたいのであります。(拍手)  第三は、いわゆる総合予算主義についてであります。このねらいが生産者米価公務員賃金値上げを押えることにあるということは、もうだれしも見抜いております。農業の生産性の向上は鉱工業のようなわけにはいかない。一反のたんぼから米が二十俵とれるように簡単になりはしないじゃありませんか。そうだとするならば、当然物価も上がるし、本年度生産者米価も上げなければなりません。その場合に、この生産者米価引き上げ分は、あげてこれを消費者米価におっかぶせるというつもりであるか、政府の御答弁を得たいと思うのであります。(拍手)  時間があと少なくなってまいりましたから、最後に、石炭産業の問題についてお伺いをいたしますが、佐藤総理は、通産大臣のころに産炭地を訪れまして、「この惨状の解決こそ政治家責任である」と申されたのであります。また昨日出ましたように、「沖縄問題の解決なくして戦後は終わらない」これは数多くの佐藤総理名言集一つでございましょう。問題はその実行であります。その後炭鉱の閉山は相次ぎまして、生き残りの炭鉱も、経営悪化のため保安が悪くなり、三池災害をはじめ、近くは美唄炭鉱災害など、地上災害の十二倍の災害率を生んでおるのであります。険悪なる国際軍事情勢からしましても、ドル不足日本現状からしましても、石炭五千万トンの生産体制は守らなければなりません。また、これまでの個別企業中心とする対策失敗した以上、もう石炭産業は全国一社化以外にないじゃありませんか。そして年々数百億の国費をつぎ込む政府の立場からいたしましても、石炭は私企業の限界を越えておるのであります。ヨーロッパ各国のように、いよいよ炭鉱国有化のときがきたと私は確信をするのでございますが、総理及び通産大臣よりお答えをいただきたいと思うのであります。(拍手)  最後に、一言総理警告をいたします。  御承知のごとく、イギリスにおきましては本月の十六日、ついに第二回目の緊縮政策を打ち出しました。その内容たるや、社会保障費の若干の削減を確かに含んでおりますとは言え、軍事費大幅削減中心とする実に思い切ったものでございます。七万五千人にも及ぶところの極東、ペルシャ湾からの軍隊の総引き揚げ、アメリカ違約金を払ってまでも超音速ジェット機五十機の注文を取り消すというような内容を持つものでございます。アメリカ最大のパートナーでありましたところのイギリスのいまのこの苦悩の姿に、政府は学ぶところがなくてはなりません。(拍手)去る臨時国会におきまして、わが党の平林君はこの壇上におきまして、西ドイツエアハルト内閣退陣の例をあげまして総理警告をしたのであります。当時、西ドイツにおきましては、すでに予算の二六%を軍事費が占め、その行き詰まりエアハルト内閣退陣に追い込んだのであります。ころばぬ先のつえと申しますけれども佐藤総理は、すでに自分の国の国民の支持すらも失いかけておりますところのジョンソン大統領にのみ学ぶべきではございません。平和と民生安定のため、日本日本として、自主的にみずからの道を歩むことを佐藤総理に強く要求いたしまして、私の質問を終わる次第でございます。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  7. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) 八木君にお答えいたします。  たいへん広範なお尋ねでございますが、私からは二、三の点についてお答えをいたしまして、他は所管大臣説明に譲ります。御了承いただきたいと思います。  四十二年度経済見通しの問題でありますが、この見通しが狂った、かように仰せられます。しかし、私どもは、四十二年の経済見通しを立てました際に、大体実質成長率を九%にしよう、しかし、たいへん現時の経済情勢はむずかしい状態で、きびしい状態だ、したがいまして、この経済基調の変化というものに絶えず注意して、途中におきましても必要なる対策は立てよう、かように申してまいりました。したがいまして、御承知のように、なかなか経済拡大基調は強いものでありますから、途中で金融引き締め等をいたしてまいったのであります。また、国際金融情勢も、必ずしも私ども考えたとおりに円滑には推移しておりません。そういう点で、わが国経済の実情に合わして、これらにそれぞれの施策、対策を立ててまいったのであります。この点は御承知のとおりであります。したがいまして、経済の予想を上回るような拡大があり、国際収支の面についても悪化を来たした、これは私、たいへん心配しておるような次第であります。したがいまして、今日、この大事な状況下にあって、何が必要なのか、これはやはり景気調整策を積極的に講ずるととが必要なのであります。これが、昨年末から本年の初めにかけましても、すでにとった処置でございます。私は、今後の経済運営にあたりましては、国際収支動向物価動向につきまして絶えず注意をいたしまして、そして経済政策弾力的運営をはかって、成長路線に乗せていくように考えて努力するつもりでございます。いろいろその調整的な面から、物価あるいは経済設備投資等についての具体的なお尋ねがございました。これらにつきましては、それぞれ担当大臣からお答えしたいと思います。  ドルよりも円が大事ではないか、こういう御指摘であります。そのとおりであります。わが国といたしましては円が大事であります。円を大事にしない、さような日本総理はおらないはずであります。その点では御安心をいただきます。しかし、今日の国際通貨、それは申すまでもなく金であり、ドルであり、あるいはポンドである、こういう意味でございます。私ども経済も、アメリカと実はほとんど一体になって運営されております。したがいまして、ドルを強くしてくれろというアメリカの主張もありますが、そのために円を弱くするような政策は絶対にとりません。円がもしも弱くなるならば、ドルの足を引っぱることになるのでありますから、それらの点は御心配になるまでもなく、私は、十分日本総理として円を守っていくことに気をつけてまいります。  そこで、ただいまお話がありましたホノルル会談であります。このホノルル会談というものは、特定の問題について妥結をはかるというような会議ではございません。まず第一に、ホノルル会談目的を、そこを御理解をいただきたいのであります。これは日米両国にとりまして、重要な経済会議、事務的な打ち合わせの会議でございます。その席におきましては一重要な経済やあるいは金融問題につきまして意見の交換をし、お互いに理解を深めるというのが目的であります。ただいま申すように、具体的な問題でこの会談を開いたのではありません。申すまでもなく、さような重大な会議を開くなら、必ず大臣がその先頭に立つはずでありますが、そういうことのないことでこの会議の持つ意義を御了承いただきたいと思います。  国際収支問題につきましては、この国際通貨体制の安定という観点から、先ほど申しましたように、わが国アメリカに協力するということでございます。  なお、しばしば問題になっておりますボーダータックス、これは国境税とでも申しますか、こういうものをアメリカにつくろうとする意思があるやにうかがわれるので、これについてはもちろん強く反対をいたしております。また、かような事態がもしも起こるとすれば、ケネディラウンドやあるいはIMFの会議と逆行するように国際経済が縮小の方向へいくのではないかと私ども心配いたしますので、この種のものについてははっきり反対であります。また、これにかわる輸入課徴金等がもし考えられるとするなら、こういうような問題については私ども対抗措置をとり、十分の考え方を練らなければならない、かように思っております。ただいまのところ、アメリカ自身におきましても、こういう点はまだ具体化している、はっきりしている、こういうものでないことを御了承いただきます。  次に御指摘になりましたように、これから金の問題だということでありますが、私は、金が必ずしも全部の――いまの国際決済の面から見ましてその中心ではありますけれども、これが全部だ、かようには私は考えません。いずれIMF等における会議の結果等については大蔵大臣からお答えをします。  また、この際に私ども必要なのは、貿易拡大をしなければならない、お互いに輸出競争も激化するのでありますから、そういう際に日本は十分国際的に弱みを出さないように、この国際競争にも勝ち抜く、かような状態で取り組まなければならないと思います。  そこで、御指摘になりましたように、中共貿易という問題があります。私は、昨年来LT貿易、これが行き詰まった、期限切れがした、こういうことで実は心配をいたしておりましたが、近くLTの代表の古井君や田川君等も出かけるような状況になりました。これらのことは、LT貿易の再開ということに必ず役立つだろう、かように私は期待をいたしておるものであります。こういう点が道が開けたということだけで明るくなったような気がいたすものであります。  中共への延べ払い輸出に対する輸銀資金の使用は、これはわが国といたしましてケース・バイ・ケースで処理していく、かような態度をはっきり持っております。今日出かけます方々も、との政府の態度を了解されて十分伝えていただきたいと思います。  また、来年の輸出目標について一五%云々、これは大きいのではないかということであります。確かに、この輸出目標を一五%増にするということ、これはなかなか困難な状態だと思います。しかしながら、国内経済政策がだんだん引き締めも効果をあらわしてまいります。したがいまして、外国に対して伸展する、いわゆる輸出に重点が置かれる、かような情勢にもなると思いますので、問題は、外国も競うこの輸出競争、これにおくれをとらないように努力すべきではないか、官民ともに一致してその方向に進みたいと思います。  次に、財政硬直化について種々議論がかわされました。私は、この財政硬直化、こういうことこそ前広にこういうものと取り組まなければならない。最後の問題として、私にるる注意されましたイギリスの例、あるいはドイツの例、これに学べと言われましたが、学ぶのでは実はおそいのでありまして、こういうことを例にいたしまして、今日財政硬直化、これと取り組む、そしてドイツやイギリスのようなむずかしい状態を引き起こさないようにしたい、これが私ども決意であります。(拍手)さような意味で十分努力してまいるつもりであります。また、公債発行も、今日はそういう意味で縮減もいたしました。また、増税等につきましても、いずれこれは大蔵大臣からお答えいたします。  今回の予算編成にあたりまして重要なる点は、総合予算主義というものであります。これは何ぶんにも新しい問題でありますから、あるいは公務員の給与、これを前もって押えるつもりではないかとか、あるいは米の問題等についてもいろいろな憶測があるようでございます。しかし、私は、年度の中間において多額の補正をするというような予算の組み方は、これは間違っておると思いますので、今回総合予算主義に踏み切ったことは大英断であったと思います。  次に、石炭政策についてお触れになりました。石炭政策、これは確かにたいへんな問題であります。私は、通産大臣、大蔵大臣あるいは総理大臣といたしまして、この問題にはたいへん頭を悩ましております。しかし、ただいま言われましたように、依然として石炭の産出を五千万トン、かような高い目標に立てられますと、この問題はなかなか解決しないと思います。私は、今日労務者も足らないという、また、他のエネルギー源もどんどん発見されておる、そういう際に、この石炭が採算がとれるようにするために、もっと本質的にこれを検討して、対策を立てるべきだと思います。ただいま言われておりますように、あるいは一社案、あるいは国有論、これなどもそう簡単にかような結論に達してはならない、かように思っております。今日、私は、石炭問題につきましては、特別会計の制度ができ、そうして、ただいまこれと取り組んでおりますが、各界の意見をよく聞きまして、そうして調整をはかって、基本的な対策を立てるべきだと、かように思います。  最後のわが内閣に対する御忠告は、先ほど話の途中で申し上げましたように、ドイツやイギリスの例にならわないように私はするつもりでございます。(拍手)   〔国務大臣水田三喜男君登壇
  8. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) もう総理から大部分お答えになったようでございます。  設備投資規制には金融引き締めだけでは効果がない、そして、中小企業をいじめることにならぬかというお話でございましたが、昨年度のように、大企業の手元資金に余裕があるというような場合には、確かに、金融引き締めの効果がすぐにあらわれることはございません。しがたって、中小企業へのしわ寄せが先に来ないように私どもは非常に苦心いたしました。昨年九月の財政繰り延べのときにおきましても、繰り延べ措置の対象から政府関係中小三機関の貸付事業をはずす、除外するということをやりましたし、さらに、十一月には下期の貸し出し計画に千六十億円を追加する、ただいまこれは実行に入っておりますが、金融のワクを非常に大幅にふやすということをいたしました。また、公定歩合の引き上げは二回にわたって行ないましたが、そのつど、民間の金融機関に、中小企業に対する金融に特別の配慮を要請いたしました。一面、この金融引き締め強化していながら、また、他面、中小企業に特に犠牲が来ないように金融の特別の配慮をするというところに、この引き締め政策の私どもの苦労が存していることをひとつぜひ御了解願いたいと存じます。  それから、ドルは結局切り下げになるだろう、金の値段は上がるだろうということと、日本保有高についての御質問、御意見がございましたが、アメリカ政府は、再三、金の値段を上げない、ドル切り下げはやらぬということを繰り返し声明しております。また、一月の大統領声明、過般の大統領教書にも見られますとおり、この点についてのアメリカの決心は非常に強いものでございますし、また、欧州を中心とする主要国の協力体制というものもできておりますので、私は、結局、ドル切り下げはあり得ない、金の値段の引き上げというものはないというふうに考えております。  わが国の保有量が少ないということは、これはもう再三申し上げましたとおり、外貨準備が十分な水準に達しておりませんので、金を買う余裕がございませんでした。また、かりに、余裕が若干あったとしましても、ドル資産の形で運用するほうが外貨の収益を得るし、また、対日信用の確立に役立つという積極的な理由もございましたので、金の保有が非常に少ないのでございますが、問題は、国際収支改善するほうが急務でございますので、いま直ちに金を買い急ごうというような気持ちはございません。  それから、ホノルル会議についての御質問でございましたが、国際収支の問題を含めて、日米両国にとって重要な経済及び金融問題について意見の交換をして、お互いに理解を深めるという目的で開いた会談でございまして、特定のことについて妥結する、話をつけるというような会議ではございませんでした。国際金融体制の安定という点から考えまして、わが国は、今後、米国に依存しておった金融をできるだけ欧州にこれを移行させる、一部転換させる、こういう問題の可能性についてもいろいろ相談をしたのが今度のホノルル会議でございます。また、その際、米国から、いわゆるボーダータックスの問題について、いま検討しているというお話も出ました。これは、国際経済の縮小を来たすほうに大きい影響がございますし、こういうことはやるべきじゃないといって、日本は終始これに反対をして、米国の考慮を促すというようなことをこの会議ではいたしまし、たが、決しておっしゃられるような弱腰ないろんな話をしたというような会議ではございませんで、非常に両国の理解を深めるに、ことに日本現状説明するには一番いい機会であって、非常に成果があったと信じております。(拍手)   〔国務大臣宮澤喜一君登壇
  9. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど総理大臣答弁をされましたように、昭和四十二年度経済がかなり大型になるであろう、その場合にどうするかといったようなことは私ども考えておったわけではございますけれども、ただ、この分野を特に所管するように命ぜられております私といたしましては、予想外に設備投資が大きくなったということについては、自分の見方を反省いたしております。昭和四十年代の日本経済には、三〇%に近い民間設備投資の増があるというようなことはあり得ないというふうに一般にいわれておったわけでありますが、現実にはそういうことが起こりましたわけです。おそらく、これは企業の規模の国際化でありますとか、あるいは人手不足といったよろなものに大、中、小、すべてが対応するための設備投資であったと思われますが、なかんずく、私どもいまになって最初の見通しで見落としておりましたのは、そのような設備投資中小企業に意想外に大きかったという点でございます。この点は、八木議員が御指摘なさいました大企業中心云々といろのと事実は多少違っておるように思います。私ども、最初、昭和四十年、四十一年が不況の年でございました、大企業設備意欲がなかったこともあって。そのときに、中小の設備更新がかなり進んだので、四十二年度は横ばいになるであろうと思っておりましたが、これが意想外に中小、それも商工業通じてでございますが、設備の更新が行なわれております。この点は、見通しを誤ったことは恥じておりますけれども、起こったこと自身としては、私はいいことが起こっておる、しかるべきことが起こっておるというふうにただいま見ております。  そこで、過去十数年、今日に至ります成長ということでございますが、国民経済が単純再生産をやって、したがって安定をしており、物価も落ちついておる、他方で、しかし相当の失業をかかえておるという状態と、いろいろ問題があっても、成長しながら今日のようにともかく人手不足が云々されるほど雇用が進んだという状態と、いずれが政治としてよろしいかということになれば、私は問題なく後者であろうというふうに考えております。また、それが経済政策目的でもあると思います。このことは、今日世界各国、先進国はもちろん、いわゆる発展途上国においても成長ということがいかに困難であるか、政府がどれだけしりをたたいても成長をしないという国がほとんどであることを考えますと、私どもは、問題は処置をしながら、生活程度あるいは国内生活環境から考えて、わが国は、成長の動機というものがあれば、やはりできるだけこれを伸ばしていくということがまだまだ大切なのではないだろうかというふうに基本的には考えております。  次に、物価のことでございますが、今年度四・五がほぼ達成できそうで、来年度四・八とはどういうわけかということでございます。これは多少複雑な御説明になりますので、詳しくは別の機会に譲らせていただきたいと思いますが、結局、今年度の消費者物価上昇が後半が非常に高くなっておりますために、来年度を出発いたしますときに、根雪の上と申しますか、床の上のようなところから出発をいたすわけです。来年度が全部横ばいでも、床の高さが三%ほどあることになっております。したがって、四・八というのは、実はそれを引きましただけの上昇許容しかないということで、これはかなりつらい、相当努力を必要としなければならない幅でございます。けれども、本来こういう見通しに、奥現不可能なことを申すことは一切いたしません。いたしたこともございません。しかし、他方で余裕のある見通しを立てますと、やはり私ども自身が行政の上で心がゆるみますし、また、それなり便乗を誘いやすいということもございます。で、ぎりぎりのところを四・八と見ておるわけであります。今年度の四・五についても、とてもできないのではないかという御批判が、いまから一年ほど前にしきりにございましたが、ともかく、国民各位の御協力を得て、四・五はます達成できそうに考えております。同様な心がまえをさらに強めまして、この四・八というものの以内で、来年度の消費者物価を処理してまいりたいと思っております。  国際通貨体制について、特に御指名があって、意見を言えというお尋ねでございましたが、基本的な見方は、先ほど大蔵大臣の言われたとおりだと私は思います。ドル切り下げであるとか、円の切り上げであるとかいうことは、遠い将来の学者の議論としてならともかく、私は当面の問題としてはあり得ないというふうに考えております。むしろ、社会主義経済政策をお持ちであろうと思われます八木議員が、かなり金というものを重くと申しますか、相当それについて重視をしておられますことに、多少意外の感を持っております。(拍手)この国際間の決済は、結局は信用で決済がなされるのであって、金を持っておるということはその信用の一部であり、また現在の慣行では相当大事なことではありましょうけれども、やはり一国の経済の信用は、実際は金をどれだけ持っておるかということよりは、どれだけの生産性があるかということに、私は本質的にはかかると思います。こういうことから、IMFなどでも特別引き出し権というようなものが創造されつつあるわけでありまして、結局はこの点ではやがて近代経済学の考え方が、古い重金主義、メダリストというものの考え方にとってかわっていくであろう、私はそう思っております。(拍手)   〔国務大臣椎名悦三郎君登壇
  10. 椎名悦三郎

    国務大臣(椎名悦三郎君) 実は、ほとんど総理、大蔵、経企長官から御答弁がございましたので、私としてはほとんどないと言っていいくらいであります。  ただ石炭問題について多少補足して申し上げますが、実は審議会の答申のあったのは一昨年でございましたか、それに基づいて実施案というものをつくって、そして四十二年度からその実行に入ったわけでありますが、入ったばかりで、また国有案であるとかあるいは一社案であるとかというようなきわめて抜本的な案が飛び出してきておるような始末でございまして、これは要するに自然条件が急速度に悪化しておる、それから炭鉱労務がどんどん減って補充がつかぬ、こういうような情勢に急激に追い込まれておる、こういうためでございます。われわれは、従来の審議会の答申の線に沿うた案に従って本年度も実施する体制をとっておりますけれども、いま申し上げたような非常な急激な変化がございまして、これはまあどうしてもさらに再検討をしなければならぬというのが現状でございます。ただ国有化につきましては、炭鉱が経営が苦しくなったから、それ国有だ、苦しくなった、苦しまぎれの国有、国営というようなものは、これはよほど考えなければならぬ。ただいたずらに国家の財政に依存するというような、依頼心を高めるということじゃございませんけれども、とかくそういうことに流れやすい。それからまた、労務管理の面についてもいろいろ問題があるのであります。国有、国営というようなことになりますと、労務管理の面においても相当な問題がある。この点は十分に検討しなければならぬ問題である。そうかといって、それじゃ一社案についてはどうかということでございますが、これまた、能率その他の面において十分に検討をする必要があるということを申し添えて、私の答弁にかえたいと思います。(拍手)     ―――――――――――――
  11. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 山内広君。   〔山内広君登壇
  12. 山内広

    ○山内広君 私は、日本社会党を代表して、国民生活に最も関係の深い諸問題を中心に、総理並びに関係大臣にその所信をただしたいと思います。(拍手)  昨年十一月、総理アメリカを訪れて以来、政府の方針は大きく方向転換いたしました。このことが、国民の上に、平和に対する不吉な予感となり、ざらに、国民生活に対する不安となって、重くおおいかぶさっております。この国会の論議を通じて、この暗雲を一掃していただきたいと思うのであります。  さて、最初に、新年度予算に触れてお尋ねいたします。  この予算案は、国民生活に強い抑圧を加えている点をまず指摘せざるを得ません。政府は、軍人恩給や、ドル防衛協力等の対外援助、さらには警察費などを大幅にふやしている反面、受益者負担をたてにとって、社会保障費や、文教予算には圧迫を加えております。特に、大衆には、減税どころか、大幅な増税となっておるのであります。政府は、四十三年度は、所得税で一千五十億円減税をする一方に、酒、たばこなど、間接税その他で一千五十億円増税になるから、実質減税はゼロだと説明しておるのであります。この財政硬直化原因につきましては、先ほど、八木議員から詳細に述べられましたので、これを省略して、私は、政府が行なおうとしておる対策について触れてみたいと思います。  政府は、西ドイツのやり方をそのまま、まねようとしております。その内容は、三百で申し上げますと、国民大衆を犠牲にしたやり方だと言えるのであります。しかし、ただ一点、この西独方式と相違している点は、思い切って軍事費を九十億マルクを削減した西ドイツに反して、わが国防衛費は、聖域のよろいをつけて、大手を振って増額いたしました。今度の財政硬直化対策がなぜ国民大衆の犠牲となっているのか、以下、その内容について明らかにしてまいりたいと思います。  国民税負担がプラスマイナス・ゼロどころか、事実は、主として次の点で大衆収奪の増税となっているのであります。  その第一は、これまで例年行なわれてまいりました物価調整を必要とする減税が、来年度は行なわれてはおりません。一体これはどういう理由であるのか。税制調査会は、物価が五%上昇した場合、個人所得税の自然増収の三割は増税になると答申しておるのでありますから、この数字を借用しますと、四十三年度物価が、かりに五%騰貴にとどまったとしても、実質増税は八百六十二億円ないし六百六億円となるのでありまして、この点が隠されておるのであります。次に、酒、たばこなどの間接税は、所得税を納めることのできない低い所得者にとっては、そのまま増税となるのであります。さらに、税制の不公平は、配当所得分離課税に最も露骨にあらわれていると思います。大蔵省の試算によりますと、これは四十二年度を基礎として計算したものでありまして、夫婦と子供三人の標準家庭であります。この人が株を持っておる、公債を持っておる、そういうことで、配当でぬくぬくと遊んで暮らせる非常に恵まれた人は、二百二十六万五千五百二十九円までは税金が一銭もかからぬ。ところが、この金額を働く者、すなわち勤労所得であれば、四十万五千二十円の税金がかけられるのであります。さらに、事業所得税に至りましては、五十八万三千二百八円の税金を取られる。こういう税負担の不公正が、この民主主義のもとにおいて許されていいものでしょうか。(拍手)こういう不公正をいつまで続けていくおつもりか。これらの諸点について政府見解を承りたいと思います。  次に、新年度予算物価に及ぼす影響についてお尋ねいたします。  政府は、消費者物価上昇率を四・八%見込まれると発表いたしましたけれども、実は国民一般は少しもこれを信用してはおりません。昨年末の都市銀行十一行の経済見通しでも、消費者物価は五・五%から六%になると見込んでおるではありませんか。政府は、昨年十月に一四・四%の消費者米価値上げを決定し、また、来年度は補正なし予算による米価値上げを予定しております。さらに、政府の酒、たばこ、国鉄運賃等の一連の公共料金の値上げのプログラムを見ますと、私は、政府主導型の物価上昇が起こっておるのであって、この物価上昇の犯人は政府そのものだと断定せざるを得ないのであります。(拍手)  佐藤総理は、一連の値上げ計画が盛り込まれました四十三年度予算原案が決定されました直後に、物価安定の指示をいたしております。政府みずからが値上げをきめておいて何の物価安定の指示でありますか。政府物価安定対策は口先だけのスローガンにすぎず、全くの無策といわざるを得ないのであります。政府物価安定の意思ありやいなや、意思ありとすれば、その具体的対策を示していただきたいのであります。  次に、社会保障に対する総理見解お尋ねいたします。  新年度社会保障関係費の伸び率は一〇・三%で、このことは、昭和三十四年以降における最低の伸び率でありまして、政府社会保障に関する熱意の冷却を示したものといわなければなりません。昭和三十七年八月になされました社会保障審議会の勧告がそのまま実施されておったとすれば、昭和四十二年度予算において、すでに社会保障関係費は一般会計の約二〇%、つまり一兆円の大台に乗せられていなければならないはずであります。しかるに、四十二年度において一四・五%、四十三年度においてはさらに後退して一四%、八千百五十六億円にとどまっていることは、わが国社会保障の後退を示すものといわざるを得ません。これが人間尊重と社会開発を説く佐藤内閣のもとに組まれた社会保障予算の姿であります。総理は、常に、わが国世界有数の先進工業国と説き、わが国経済の奇跡的繁栄を誇っておりますけれども、しかし、その先進工業国は、わが国を除いて、繁栄とともにその社会保障制度の確立につとめておるのであります。わが国はそれら先進工業国の昭和三十七、八年の水準にも及ばないというのが現状であります。この事実を総理はどう判断されるのか、憲法第二十五条の精神にはなはだしく違反するものであるとはお考えにならないか、御所見を承りたいのであります。  次に、児童手当制度についてお伺いいたします。  総理は、しばしば国会におきまして、児童手当制度を四十三年度より実施すると言明されてまいりました。しかるに、今回も日の目を見なかったことは、公約違反といわざるを得ないと思います。(拍手)児童手当は、子供の教育に対する社会的責任と、それを児童の側からいえば権利であるとの観点に立って、すみやかに実現すべきものと考えますけれども、その実施時期を政府はいつになさろうとしておるのか、お伺いいたしたいのであります。  次に、国立病院特別会計についてお尋ねいたします。  政府は、新年度予算抑制予算に見せかけるために、最も弱い立場にある国立療養所費百四十一億円を特別会計に移しかえて、一般会計を縮小いたしました。この対象となる方々は、結核、精神病、重症心身障害児、成人病、交通災害後遺症等、最も国の責任で手厚く保護されなければならない人たちであります。この無謀な措置は、すみやかに断念すべきものと考えます。総理、厚生、大蔵大臣答弁を求めます。(拍手)  次に、国民生活環境の問題であります。  総理は、重要な政治課題一つとして、地域社会の変化に対処することをあげられました。しかし、現在、人口流出による農村地域の衰退と、都市の半身不随の老人化の矛盾は、著しいものがあります。まさに国民総生産は世界第三位、国民一人当たりの所得は第二十一位というわが国経済と同様、繁栄の実態は実に貧困にほかならないのであります。そこで、まず、この過密と過疎の解消について、今後どう進めようとしておられるのか、具体的な対策お尋ねいたします。  次に、国民生活の最も緊急課題となっております住宅問題についてお尋ねいたします。この点は、きのう江田議員の質問で触れておられましたけれども、御答弁がなかったので、再度ここにお尋ねいたします。  佐藤総理は、しばしば住宅対策を強調されてまいりました。最近の総理の発言は、この公約がじゃまになってきたのか、精神論にすりかえてきております。住宅建設を量に置くか質に置くかの議論はさておきまして、五カ年計画は三年目でようやく目標の半ばに近づいたばかり、住宅難はますます深刻化してまいりました。一世帯一住宅の実現を見るのは、一体いつになるのか。さらに、この計画遅延の大きな原因は、多くの人々が指摘しておりますとおりに、土地の不当な値上がりを押えることのできなかった政府の無為無策にあると私は思うのであります。(拍手)このことは公共事業の遂行にも大きなガンとなっておるのでありますが、政府の所信を伺いたいのであります。  次に、公害問題についてお伺いいたします。  去る五十五国会におきまして、公害対策基本法が成立したのでありますが、政府はこの基本法に基づき、今後いかなる施策を具体的に進めようとしておるのか、明らかにされたいのであります。大気汚染、騒音、水質汚濁等の公害は、今日加速度的に被害を増大しています。富山に発生したイタイイタイ病をはじめ、公害問題は、各地に、裁判によってまで争われるほど、大きな社会問題となって重大化しつつあります。総理が年頭明らかにされました公害の被害者救済基金二億円は、産業界の反対の声に押されて、ついに見送りになった。そんな弱腰で何ができますか。人間尊重を説く総理のもとでの政府の公害対策について、誠意ある答弁をお願いいたします。  次に、労働問題についてお伺いいたします。  政府は、本年度予算の編成にあたり、いわゆる総合予算主義を打ち出し、補正予算は行なわないとして、公務員給与改定に備えて予備費に五百億円を計上しておるのであります。言うまでもなく、労働三権の代償機関たる人事院が、しかも、民間給与実態調査に基づき、いわゆる民間追随方式のもとに行なう人事院勧告は、当然に完全実施さるべきものであります。はたして、この予備費計上方式だけで勧告の完全実施ができるでありましょうか。逆に人事院の勧告権に圧力を加える結果とはならないか。さらに勧告がこの予備費を上回って出された場合、補正予算を組まないで、この不足分をどうして補正しようとするのか。さらに公務員賃金が押えられた場合、わが国の賃金事情から、それにならって、公共企業体、公団、公庫、ひいては民間賃金まで押えられる、いわゆる所得政策が実行されるということになります。政府は、すでに経済社会発展計画の中にも、はっきりこのことをうたっております。この点、態度を明確にしていただきたいと思います。  さらに、勤労者の定年制と失業対策についてお伺いいたします。  勤労者の定年制は、退職後の保障制度の確立が前提となるものであり、わが国のように社会保障制度の不完全な現状においては、定年制の実施はきわめてゆゆしい問題といわなければなりません。さらに、失業対策事業の縮小、打ち切り等にりいては、雇用や生活保障の不十分なことを深く認識して、かかる措置は絶対にとらないという強い政府の決断を求める次第であります。  次に、農業問題についてお尋ねいたします。  今回、政府は、米価審議会の新たな構成にあたりまして、国会議員及び生産者、消費者代表を除外し、学識経験者と称し、政府の方針に同調しやすい者のみを集めて委員を任命いたしました。米価の決定は、生産者たる農民にとっても、消費者たる国民一般にとっても、生活の上で重大なかかわりを持っておるものであります。しかも、委員の新たな任命にあたりましては、担当常任委員会にはかり、協議することを確約していたにもかかわらず、一方的に委員を任命したことは、議会制民主主義に反し、さらには国会を軽視したことであり、まことに遺憾にたえません。(拍手政府は、今後、米価の決定にあたっては、国会にはかろうとでもお考えになっておるのか、それとも委員の任命をし直そうとしておるのか、その点を明らかにせられたいのであります。  また、政府は、今国会において、新構造改善政策に基づいて、農地法改定を提案する予定といわれておりますけれども、その内容は、一定限度の不在地主が認められ、あるいは農業資本が農業労働を搾取する時代逆行の道を開こうとしておるのであります。農地改革の精神は、農地は耕作する農民が所有することであったはずであります。日本農業の弱点が経営規模の零細性にあることは言うまでもありませんけれども、農地の流動化、経営規模拡大を農地法改悪による小農切り捨てによって促進しようとすることは、絶対に反対であります。(拍手)  農業を改革するためには、土地基盤整備等に思い切った措置がとられ、生産性を高めるとともに、農畜産物の価格支持制度を確立して、農業と他産業との格差を縮小する方向で進めらるべきものであります。この点、政府見解を明らかにしていただきたいのであります。  次に、中小企業対策についてお伺いいたします。  帝国興信所統計によりますと、昨年暮れの倒産は戦後最高を記録し、政府財政政策に見られる金融引き締め強化と、ドル防衛をめぐる国際環境の悪化から、倒産はざらに激増して、三月危機説すら巷間伝えられておるところであります。政府は、倒産の原因は放漫経営に基づくものであるとして責任を回避してまいりました。しかるに、国民金融公庫の詳細な分析によりますと、放漫経営は一〇%にも満たない。倒産を単なる個人的な経営手腕のみに帰することはできないのであって、その責任は、政府中小企業の切り捨て政策、大企業中心高度成長政策にあると思うのであります。  昨年九月以降の金融引き締め政策は、さらに中小企業に犠牲をしいたものであります。本年一月、再度公定歩合を引き上げ、一段と引き締め強化したことにより、中小企業金融はますますきびしくなりました。また、資本自由化の本格的な進行、ドル防衛のためのアメリカ輸入制限措置、発展途上国による特恵関税要求、さらには親企業の下請企業に対する系列化、再編成の締めつけ等、必然的に中小企業の整理、倒産をもたらし、事態はきわめて深刻なものになってきておるのであります。しかし、このような中小企業を取り巻くきびしい内外情勢にもかかわらず、政府の来年度予算案における中小企業対策費の一般会計に占める割合は、わずか一%にも満たない〇・六五%にすぎません。この激増する中小企業の倒産を救う具体的対策を示していただきたいのであります。  次に、文教問題についてお伺いいたします。およそ、思想、文化、教育など、価値観に関するものは権力の統制すべきでないことは、近代国家の基本理念でもあり、日本国憲法、教育基本法にも明らかなところであります。しかるに、近年、政府は教育課程を改悪し、小学校の教科書に、建国神話、伝承を復活させ、皇国史観を押しつける等、教育思想統制の強化を企図しておるのでありますが、これは全く総理の言われた、民族のすぐれた伝統にささえられた人間形成とは似て非なるものであります。また、昨年来、灘尾文部大臣は、四十六年から改定される小学校学習指導要領にも、安全保障問題を織り込ませると発言を行なったのでありますけれども、このことは、ベトナム戦争協力、核持ち込み、軍事力強化を目ざす佐藤内閣が、国民の平和思想を麻痺させようとする重大な発言であり、断じて認めることはできないのであります。(拍手)  さらに、総理も、国際社会は教育競争の時代と指摘しておきながら、年々増加するPTA会費、私学授業料等の教育費負担を一体どう考えておられるのか。教育費の父母負担が増すことは、経済的に差別をすることであり、教育の機会均等を破壊し、憲法に保障されている義務教育無償の原則にも逆行するものといわなければなりません。また、文部省は、新年度より実施を計画していた教職員の超過勤務手当制度を自民党文教部会の圧力に屈して断念し、特別手当制度の創設でごまかそうとしております。京都地裁の判決にも示されたごとく、教師はまさしく近代社会における典型的な労働者であって、超過勤務手当の支給をめぐって、いたずらに紛争を惹起させる必要がどこにありますか。教師を聖職という名の中に閉じ込め、労働基準法に違反して、超過勤務手当を支払わないというのは、絶対に許せないことであります。いかなる給与改善を行ない、新年度に盛られた十五億円を使おうとしておるのか、その方針を伺いたいのであります。  以上、私は、国民生活関係の深い諸問題について見解をただしてまいりましたが、最後に、総理の平和憲法についての所信をあらためて承りたいのであります。  申すまでもなく、わが国の憲法は、その前文において示されておるとおり、国民に多大の犠牲をもたらした戦争の惨禍の反省の上に立って生まれたものであります。しかも、総理はじめ、各大臣、われわれ国会議員、各公務員等は、第九十九条にうたわれているごとく、この憲法を尊重し、擁護する義務を負っています。しかるに、最近の佐藤内閣は、アメリカへのドル防衛ベトナム戦争協力を明らかにし、国内的には軍国主義化と国民生活圧迫を強めてきております。特に、明治百年にこと寄せて、いたずらに復古的ナショナリズムを強調し、みずからの国を守る気概を説くことによって、一そう軍事力を強化しようとしておることは、断じて許すことはできません。この平和憲法のもとにおいては、佐藤内閣は、すでにその資格を失ったものというベきであります。(拍手)明治百年を鼓吹するよりも、憲法制定二十年を経た今日、憲法制定の初心に立ち返り、あくまで平和憲法を守ることこそ真に民族の恒久的な繁栄の基礎を築くゆえんであり、国際社会における枢要な国家としての地位を保つことになるゆえんでもあります。  特に、最近の極東における緊急激化を目の前にして、まことに憂慮にたえません。ここに、総理の平和憲法を守る決意を、口先だけではなく身をもって実行する、この強い反省を求めて、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  13. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  山内君のお尋ねはたいへん多岐にわたり、かつ専門的、細部にわたるものでございます。一々お答えしたいと思いますが、なかなか困難でございますので、私はその大綱についてお答えいたし、その他は大臣に譲りますから、御了承のほど願います。  そこで、まず第一に予算の編成についてのお話であります。今回の予算はとんでもない予算だ、国民負担を増したいわゆる増税案だ、かような御批判でございます。御批判は御自由でございますが、いずれ、近く予算委員会も開かれることでありますから、その内容について十分御検討の上、その上で判断を下していただきたい、これをお願いしておきます。ただいまのお願いをすることによりまして、私の答えとしておきます。  次に、所得減税につきまして初年度は千五十億いたすわけでありますが、これを物価の調整減税と比べてみますと、大体、調整減税では三百四十億円、これが必要だといわれております。千五十億も減税するのでありますから、はるかにこれを上回っておると、かように御了承いただきます。  また、配当分離課税についてのいろいろの御批判がございました。しかし、こういうような制度は流動的に絶えず改廃をしていくのでございますから、今日の状況で、いつまでもこれを守っていくというものではありません。これは検討することについてはやぶさかでございません。  次に、物価問題について、この四・八%が守れるか、とても守れないだろう、こういうお話であります。経済企画庁長官はたいへん正直に答えております。四・八%はなかなか困難だ、これは手をこまねいていて、かようなものができるものではない、最善の努力を払って、総合的な施策により国民の協力を得て、初めてこれができるのだ、かように申しております。この点も十分玩味していただきたいと思います。財政措置は、結局、長期的に見ますると、物価に好影響を与えるだろうと私はかたく信じております。  次に、社会保障制度の問題でありますが、わが国社会保障制度が欧米先進国と比べまして、たいへんおくれておるということは御指摘になるまでもございません。したがいまして、ますますこれを拡充すべき考えでございます。したがいまして、来年度予算におきましても、きびしい財政事情の中で、特に社会保障関係予算は、重点施策の一つとして、極力配意し、対前年度比で一般会計予算総額の伸びを上回るようにしております。これは平均以上であるということであります。この点を御了承いただきます。  次に、児童手当についてのお話がございました。私は、この点については確かに公約をしております。しかし、ただいま懇談会を開いての、その懇談会の結論がまだ出ておりません。したがいまして、懇談会ができるだけ早い機会にこの結論を出す、そうしてその結論が出た上で、この実現に私は努力をしてまいるつもりであります。ただ、この機会に、弁解ではございませんが、わが国にはいわゆる児童手当なるものはありませんけれども、扶養手当制度等の給与関係あるいは税制上の控除等の措置もございますので、これらの点もこの児童手当の一部だ、こういうように十分御理解おき、念頭に入れてこの問題と取り組んでいただきたいと思います。  次に、過密過疎対策の問題であります。首都圏、近畿圏等の対策をただいま立てております。各種公共施設の整備であるとか、公害の防止につとめるとともに、都市の再開発、都市計画法等の法案を国会に提出して、審議をお願いするつもりであります。これらの点を十分に御審議をいただけば、政府の過密対策、過疎対策等がおわかりになるだろうと思います。  なお、過疎のほうでございますが、山村振興法であるとかあるいは離島振興法であるとか、こういうような辺地対策の法律がございます。また、産業振興あるいは生活環境施設の整備等も今後積極的に行なっていくつもりであります。  基本は、総合的な国土開発についてのマスタープランをつくって、各種施策、たとえば産業立地計画であるとか、あるいは農業地帯、あるいは道路、通信施設であるとか、こういうようなものを総合的に計画を立ててこれを行なうことにあると思います。そのために、本年度中には総合国土開発計画を再検討いたしまして、新しい時代に対応した青写真をつくって、この計画に基づいて前進を遂げてまいるつもりでおります。このことが、お尋ねになりました、あるいは住宅政策であるとか工業対策、公害対策等にも通ずるように思いますので、これらの点につきましては担当大臣からの説明をお聞き取りいただきます。  次に、労働問題についてのお話がございました。今回総合予算主義をとりましたが、これは別に、人事院に対して一つの圧力を加えたつもりではございません。もちろん人事院の勧告が行なわれれば、公務員の給与等につきましても、この予備費の範囲内におきまして、他の追加財政の問題と勘案いたしまして、しかる上に、これが処理について最善を期してまいるつもりであります。  次に、定年制並びに失業対策についてのお話がありました。五十五歳の定年制は、私も確かに若過ぎると、かように思います。定年の延長が円滑に行なわれることを期待してやみません。また、失業対策費等につきましては、今日は、たいへんしあわせなことには、完全就労に近い状況でございますから、失業対策費として多額のものを計上する必要はないように思いますけれども、こういう状態ばかりでもないだろうと思いますので、その制度そのものについては、十分検討することを必要といたします。  次は、農業問題についてのお尋ねであります。今回、米審につきまして、国会議員の委員を委嘱することをやめましたが、これは、三十九年の臨調の勧告もあることでありますし、また事柄は、米価というような、国会できめることでなくて、これは行政府できめる事柄でございますので、その行政機関の諮問機関へ、国家の最高機関である国会議員の方々を参加させることはいかがか、かように考えまして、これはやめた次第であります。御了承いただきます。  また、農地法の改正等も、いま一応予定しておりますから、これが出ました際につきましては、十分御審議をお願いすることにいたします。  次に、中小企業の倒産防止の問題であります。中小企業は、昨年はたいへん苦しい状況にあったと思っております。私もまことに憂慮しております。しかし、幸いに十二月とことしの一月は、その件数も減少しておりまして、幾ぶんか、明るい方向に向かっておるのではないかと思います。しかし、油断をするわけではありません。公定歩合も引き続き引き上げがされる、環境は依然としてきびしい、かような状態でありますので、この上とも、中小企業対策、救済につきましては最善を尽くしてまいる考えであります。  次に、文教問題についてのお尋ねがありました。小学校や中学校の教育課程の改定、これは文部大臣の権限によりますいわゆる学校教育法の定めるところでありますので、お話しになりましたような憲法や教育基本法違反、こういうような問題ではありません。  また、次の授業料の趨勢、ことに私学の授業料が高くなるという、そういう負担の増加であるとか、あるいはPTAの会費等の問題につきましては、私も非常な関心を持っております。これらにつきまして、学校側におきましても、十分合理的な方法、経営にひとつ切りかえていただいて、いたずらに学費の高騰を来たさないように、負担を増加させないように御協力を願いたいと思います。  最後の超勤の問題につきましては、文部大臣からお答えさすことにいたします。  そうして、私は、私にお話しのありました憲法の問題、平和憲法に立ち返れというお話、これをありがたく伺っておきますが、この機会に、声を大にして申しますが、私自身は、ただいま憲法改正なぞ考えておりませんし、また軍事的な強化考えておりません。私はどこまでもいま今日政府が置かされておるその立場におきまして、平和国家として日本を進めていくつもりであります。その点を御了承いただきます。(拍手)   〔国務大臣水田三喜男君登壇
  14. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 税に対する御質問お答えいたします。  国際収支の均衡回復ということを主眼にして、景気調整をして、総需要を抑制しなければならぬという必要に迫られておるわが国経済現状から見ますと、今年度予算編成におきましては、むしろ増税をしても、ここで国債発行を大幅に削減する、こういう必要に迫られておるというふうに私ども考えておりましたが、しかし、所得税の減税政府・与党の公約でもございますし、また中小所得者の現状から見まして、標準世帯で課税最低限を少なくとも十万円くらい上げる必要があると考えましたので、所得税の減税を行なうことにいたしました。そうして、その反面、酒税の税率、たばこの定価を引き上げて、不足財源を充足するという措置をとりました。また、一方、地方税におきましては、所得税を課せられない人たちのためを考えまして、七百億円に及ぶ住民税の減税ということもやりましたので、全体としては国民負担増税にはなっていないというふうに考えております。  それから配当所得課税についてのお尋ねでございましたが、これはもうすでに山内さんも御承知のとおり、法人と個人との二重課税を避けようとするシャウプ税制によったものでございまして、問題は法人の性格をどう見るかということによってきまるむずかしい問題でございます。そこで、税制調査会ではこの問題の解決のためにただいま取り組んでおるところでございますので、この結論を待ちたいというふうに考えております。(拍手)   〔国務大臣宮澤喜一君登壇
  15. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 四・八%の中には、消費者米価の変動は含まれておりません。それから、今回のたばこ、酒、国鉄鉄道運賃などの消費者物価に及ぼす影響は、計数の上では全部合わせまして〇・四ほどと見込まれます。なお、これらが波及いたしませんように関係大臣に協力を要請いたしております。(拍手)   〔国務大臣園田直君登壇
  16. 園田直

    国務大臣(園田直君) お答えを申し上げます。  最初の社会保障関係に対する予算でありますが、欧米先進国の水準並びに生活に困った方、病気の方々の立場からいえば御指摘のとおりに不十分でありましょうが、今日の財政硬直のおりから、きびしいもとで、一般会計の総額の予算の伸びは一一・八%、厚生関係予算の伸びは一二・四%で、一般総額の伸びを上回るということは、これは政府が水準に近づこうとして一歩踏み出したものとして御了解願えればけっこうであります。なおまた、総理の上回ったと言われることと、山内議員の下回ったと言われる数字の食い違いは、昨年度の一般会計の数字から、今年度一般会計から特別会計に繰り入れた数字を差し引いた数字を加算しているかどうかによっての差であると考えております。  次に、児童手当の問題でございまするが、これは総理の言われたとおり、審議会の答申を待って早急にやりたいと考えております。  なお、国立療養所を一般会計から特別会計に繰り入れる問題は、御指摘のような御懸念が十分ありますので、最後まで慎重に検討いたしましたが、御承知のとおり、全国にある百六十カ所の施設は老朽し、設備等はきわめて古いものであり、患者も職員等も非常に困窮しており、年々赤字が累積いたしております。したがって、これをいまの一般会計のままの姿で早急に整備することは困難でありまして、これを何とかしなければならぬことは意見の一致するところであります。したがいまして、いま御指摘のような御懸念を十分考慮しつつ、まず第一は、しわ寄せが患者等に来ないように、独立採算制はとらない。いままでの結核対策の最終拠点である使命の上に、新しく出てまいりました心身障害児、あるいは筋ジストロフィーなど、いろいろ長期慢性の病気が出てきております。こういう対策の拠点としての新しい使命を加えることを考えますと、独立採算制にいたしますると、当然これは患者、職員、治療の面にしわ寄せがまいりまするから、歳入歳出の不足の面は一般会計から繰り入れることは当然でありまして、本年度も総経費の四百二十億のうち、二百五億、約四九%は一般会計から繰り入れております。なおまた患者の待遇につきましても、負担が増加しないよう割引制度は存続することとし、新しい患者についても自己負担を伴う患者については、十分配慮したい。なお、統廃合の問題、あるいはその他の問題についても大事な問題でありますから、その結果並びに移行の円滑については、各議員の御指導を賜わりつつ円滑に進めていきたいと考えております。(拍手)  なおまた、公害対策は、御指摘のとおり、きわめて重大な問題でありまして、基本法ができて以来、大気拡散の調査、産業公害の調査等を逐次やり、中央公害対策審議会を発足せしめて、その整備につとめております。すでに申し上げましたとおり、大気汚染、水質汚濁、騒音あるいは紛争処理救済等についての法律案も、各関係省と検討いたしておりまするが、予算の折衝中、二億の基金が実現できません原因は、それは一部の圧力ではなくて、いまなお関係各省との調整が不十分である関係でありますから、これはすみやかに各省と検討して、この立法の実現につとめる所存であります。なおとりあえず、それまでは、御承知のごとく、予算に御相談いたしました公害医療救済の助成について一部準備をいたしております。そのほか公害防止事業については、金利を引き下げる、緩衝緑地帯の増設あるいは重油の脱硫の技術開発、学校公害に対する助成等を考慮いたしておりますので、今後とも御協力をお願いする次第であります。(拍手)   〔国務大臣保利茂君登壇
  17. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 住宅、宅地の関係についてお答えいたします。  四十一年度から進行いたしております住宅五カ年計画は、来年度がちょうど中間年度になりますし、この中間年度の成果いかんが、五カ年計画の成否を卜するというような関係もございますので、非常な財政困難の中でございましたけれども、特段の御配慮をいただきまして、予算及び財政投融資、合わせまして、今年度三千七百八十七億、資金で出ておりますが、来年度は四千三百六十三億という資金計画をもちまして、約五百八十億の増額になっております。これによりまして、来年度の公的住宅の建造予定は、四十九万六千五百戸と想定いたしております。これによりますれば、大体五カ年計画の五〇%以上に達する見込みであります。したがいまして、たいへん住宅難の、不足感がきびしゅうございますけれども、四十四年度、四十五年度計画を遂行いたしますれば、住宅の欠乏感と申しますか、不足感からやや解放されるのじゃないか、そうなりますと、大体衣食の状態まではいかぬにしましても、住宅から来るところの国民生活の圧迫というものは、よほど楽になるのではないか、ぜひそういうふうに達成をいたしたいと思うのでありますが、お話しのように、そこで最後にぶつかりますのがやはり土地の問題でございます。地価の問題でございます。すでに総理からも御答弁がありましたが、国会に御審議を願っております都市計画法でありますとか、あるいは都市再開発法でありますとか、ぜひひとつ御審議をいただきまして、成立させていただきまして、何とか土地が、特に都市並びに都市周辺の土地がこういうふうな時代の状態からしまして投機の対象となる、投機の対象となりて金もうけの道具になるようなものではないという、国民の良識が養われるということでないと、どんなに法律を整備いたしてもむずかしかろうと思います。そういうことで、総理が言われておりますように、土地の持つ公共優先的な性格でひとつ検討いたし、皆さま方の御理解と御協力を仰ぎたいと願っておる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣椎名悦三郎君登壇
  18. 椎名悦三郎

    国務大臣(椎名悦三郎君) 山内さんが、中小企業の急場に比較して、一般予算が非常に少ないということをお述べになりましたが、一般予算もさることながら、中小企業の現段階における対策といたしましては、金融問題が重点であると考えます。そこで、四十二年度の年末から年度末にかけまして、倒産の状況がひどかったものですから、資金ワクを千六十億拡大いたしました。御承知のことと存じます。それで、さっき総理が言われたように、十一月をピークとして倒産者数がずらっと減ってまいった。これは十二月、一月の数字でございますから、二月、三月はどうなるか、まだ予測はしませんけれども、相当年末の金融がきいたのではないかと私は考えております。四十三年度の財投では、この金融三機関の資金ワクをさらに拡大いたしまして、四十二年度に対して一九%の増加をしておるわけであります。(「自己資金が入っているのだ」と呼ぶ者あり)もちろん自己資金も人っておりますが、その大部分が政府の財投のワクからこれを出したのであります。  そろいうわけでありますが、年初、金利の再引き上げ等、環境はまた一段ときびしくなっております。それで、これに対処するために、地方通産局等を通じて、金融のあっぜんであるとか、あるいは受注のあっせん等をいたしまして、この対策に万全を期してまいりたい、かように考えております。(拍手)   〔国務大臣小川平二君登壇
  19. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) お答えいたします。  民間企業の定年は、最近、延長されていく傾向にございますけれども、まだ五十五歳というのが大半を占めております。しかし、公的老齢年金との関連からいたしましても、また近年寿命が延びてきておるという点から考えましても、さらにまた、若年労働力を中心として労働力の需給が非常に逼迫しておる。したがって、高年齢層の能力を十分発揮してもらう必要があるという観点からいたしましても、五十五歳というのは実情に合いませんので、定年を延長するという問題は、前向きに検討してまいりたいと考えております。民間企業における労使間のそのような努力に対しましては、政府としても援助していきたい考えでおります。  それから、地方公務員に定年制を設け得るようにするため、公務員法の改正を自治省で検討していることは承知いたしておりますが、そのこと自体、私の所管ではございませんけれども、定年制一般との関連において、関心を持っております。私としましては、地方公務員に定年制を設けまする場合にも、諸般の事情を十分に考えまして、弾力性を持ったものにすることが望ましいと、かように考えております。  それから、失業対策事業については、総理から答弁申し上げたとおりでございまするが、失業対策打ち切りというおことばがあったかと存じまするので、補足をいたしますが、これは私の関知いたしておらないところでございます。御承知のとおり、緊急失業対策法の規定によりまして、五年ごとに雇用、失業の状勢を調査いたしまして、その推移に応じて検討するということになっております。ことしがその年でございますから、私といたしましては、白紙で検討を開始しようと思っております。当然のことでございまするが、その際、現に失業対策事業に就労しておる人たちの生活の実情ということには、十分の考慮を払いたいと存じております。(拍手)   〔国務大臣倉石忠雄君登壇
  20. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お尋ねのございました米価審議会委員の任命につきましては、御存じのように、すでに二年間にわたって無答申であります。それから最後には、何が書いてあるのか、片方は白とすべきである、片方は黒とすべきであるというふうな、どういうふうに参考にしたらよいかわからないような答申を出さざるを得ないようなことになっておりますのを見て、私は、これはやはり大事な米の値段をきめる審議会としては、もっとやり方はないだろうかということについて、各方面の意見を聞きましたし、また、私の考え方をもとにいたしまして、今回のような任命をいたした次第であります。  御存じのように、いままでは一年にたった三日間だけ審議会を開いてやっておりました。私は、米価のような日本の食糧の基本になるようなものを決定するには、一年じゅう勉強してもらう必要があると存じましたので、ます年間を通じて勉強させるようなシステムにいたしたわけであります。したがって、その間においては、いままでと違いまして、各方面の意見を十分に調査、研究する時間を審議会に与えた次第でありますから、おそらく私は、生産者、消費者に対して一番親切なやり方ではないかと、こういうふうに思っているわけであります。  農地法の改正につきましてお話がございましたが、山内さん御存じのように、いまおっしゃったように、基盤整備であるとか、構造改善のような財政投資を農業にいたすことによりまして、生産対策、構造政策を進めていくことももちろん大事でありますけれども、そういうふうにやってもなおかつ効率があがらないのは何であったかということであります。そこで、われわれは、経営規模を広げることが必要であるという農基法の考え方に基づきまして、思い切って農地法の改正に踏み切ったわけでありますが、農地法を改正する趣旨は、第一次の農地改革の趣旨を没却するわけではございませんので、やはり農業それ自体として経営してまいるものを中心として日本の農業を推進してまいるということでございますので、いずれ予算委員会等で御審議を願うことになりましょうけれども政府考えは先ほど御指摘になりましたようなことではなくて、規模拡大であって、農業というものが他産業に比較して劣らない経営体というものに育て上げたいというのが、農地法改正の本旨でございます。(拍手)   〔国務大臣灘尾弘吉君登壇
  21. 灘尾弘吉

    国務大臣(灘尾弘吉君) 第一の御質問は、教育課程の改定に関連しての御質問と承ったのでございます。現在、文部省におきましては、教育課程審議会にはかりまして、小学校、中学校の教育課程の改善の作業を行なっておりますが、これらの教育課程の基準は、御承知のように、学校教育法に基づきまして文部大臣の権限において定められるものでありまして、私どもとしましては、従来の教育課程の実施の成績いかん、あるいはまた時代の進展の状況いかん、こういう点を十分検討いたしまして、これらの事情に即応いたしまして、適切な基準の改定をはかってまいりたいと思うのでありますが、教育内容の刷新、向上をはかる以外に、ほかの考え方はございません。また、ただいま申しましたように、学校教育法によって与えられておる権限でございますので、憲法や教育基本法に違反するものではございません。  なお、神話につきまして一言いたしたいと思いますが、中学校、高等学校におきましては、現在においても社会科の内容として取り扱うこととなっておりますが、神話や伝承は、申すまでもなく、遠いわれわれの祖先の人々の生活やあるいは考え方などを知る上におきまして、まことに貴重な文化遺産でございます。わが国の古い文化や伝統につきまして、生徒の理解を深めるということは、私は、人間性の涵養の上から申しましても、あるいは民族性を豊かにする上から申しましても、きわめて適切なことではないかと考えるのでありまして、今後ともに十分配慮してまいりたいと存じます。(拍手)もちろんこのことは、神話はあくまでも神話として教えるのであります。神話と歴史的事実を混同して教えるようなことはないということは、申すまでもございません。  また、御質問のいわゆる国防思想云々のことでございますが、昨年の暮れに私が発言いたしたことが、かなり問題化いたしておるようでございます。私は、学習指導要領の改正に直接関連して発言いたしたことではございません。このことは、事実を明らかにいたしておきます。  現在の小学校、中学校あるいは高等学校におきまして、特に取り立てて国防教育とかなんとかいうようなことはいたしておりません。ただ、社会科あるいは道徳、あるいは国語等の科目を通じまして、国家に対する理解と愛情や国民的自覚を高めることをいたしておるわけでございますが、このことは、当然に国家の独立や、国を守るという意識や心情をつちかうことにも通ずるものと考えるのであります。(拍手)いやしくも独立の国民であります以上は、他の諸要素はもちろんございますけれども、国を守るとか、国を愛するとか、国に尽くすとか、このようなことは当然備えなければならない大事な資質であると私は考えるのであります。(拍手)したがいまして、それがそうであるといたしまするならば、このような心情は幼いうちからつちかっていくのが適当ではないかということを私は申したのであります。今後におきましても、私はその意味におきまして、適切な教育の手段、方法を通じまして、このような心情を児童あるいは生徒の発達段階に応じて適当にやってもらいたいと期待をいたしておる次第であります。(拍手)  このようなことは、もちろん児童の平和を追求する心、あるいは民主主義あるいは自由主義あるいは国際親善、そのような心をつちかうことと何の矛盾もないことと私は思うのであります。(拍手)そういう立場におきまして、平和主義の後退でありますとか軍国主義の復活というふうなことは、全然意図せざるところであるということを御承知を願いたいと存じます。  次に、私学の授業料の値上げでありますとか、あるいは教育費の父兄負担の問題についての御心配でございます。私も、同じような心配をいたしておる一人でございます。私立学校の授業料等学生納付金は、人件費上昇でありますとか、施設の拡充、物価上昇等によりまして、年々値上がりを続けております。そして学生父母の負担を増しておりますことは、いかにもお気の毒と私ども考えておる次第でございまして、深い関心を持っております。政府としましては、御承知のように、現行制度上直接に授業料等の額を規制することはできないのでありますが、臨時私立学校振興方策調査会の答申に基づきまして、私立学校に対する助成をさらに拡充強化することによりまして、多少なりとも値上がりの抑制に資することといたしたいと存じております。また、学校教育費にかかわる父兄負担の軽減、解消につきましては、国としても従来から関係補助金、負担金の増額、地方交付税措置の拡充等によって努力してきたところでございますが、来年度予算の計上にあたりましても、義務教育諸学校について教科書無償給与の全学年完全実施をはかるとともに、教材費その他につきましても、各種の助成措置の拡充をはかり、対処いたしておる次第でございますが、この問題につきましては、なお今後ともに努力してまいりたいと存じます。  第三の御質問でございますが、教職員を聖職として閉じ込めるというようなおことばがございましたが、聖職ということばにつきましてはいろいろ御批判もあろうかと存じます。ただ、このことは、教育という職務がきわめて大事なことである。またこれに従事する人は尊敬すべき人である。このような国民の心持ちからあらわれたことばと私は思うのでございます。そういう国民の心持ちから来たことばでありまして、特に他の労働をべっ視するとか、そのような考えから出ておるものではないと存じます。なおまた、教師は労働者であるという御発言でございましたが、私は率直に申し上げますれば、労働者ということばの感じというものは、必ずしも教職員に対する国民の心持ちとはなじまないものがあるのではないかと思うのであります。(拍手)  いずれにいたしましても、先般来教職員の時間外の勤務等とも関連いたしまして給与の改善の問題が検討せられておるわけでございます。この国会に、成案を得まして御審議を願うつもりでございますけれども、教職員の職務の性質、内容、形態等を考えました場合に、超過勤務手当という方式は必ずしも適当でないという考え方のもとに、何か適当な成案を得たいと、いま急いで準備をいたしておるような次第でございますので、さよう御了承願いたいと存じます。(拍手)   〔国務大臣田中龍夫君登壇
  22. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) すでに総理からお答えがございましたので、簡潔に担当者といたしましてお答えを申し上げます。  御案内の人事院に対しまする政府考え方でありますが、人事院を、その公平保護の機能につきまして、あくまでも尊重いたします。同時にまた、ひいてはその勧告権に対しましても十分尊重いたしております。総合予算主義をとりました今日、予備費の中にこれを繰り入れてございますことは、むしろ人事院の勧告を円滑に処理しよう、これを十分に尊重しようという善意のほとばしりでございまして、これを圧迫しようとかなんとかいうことは断じて考えておりません。なおまた、もし不足がございまするような場合におきましては、当然予算の補正をいたします。  以上でございます。(拍手)     ―――――――――――――
  23. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 西村榮一君。  〔副議長退席、議長着席〕  〔西村榮一君登壇
  24. 西村榮一

    ○西村榮一君 私は、民主社会党を代表いたしまして、財政、内政、外交の三面にわたって、佐藤内閣質問いたします。(拍手)  私は、質問に先立ちまして、要望いたしたい緊急事態がございます。それは、北朝鮮政府によるアメリカ情報艦の拿捕事件であります。  本件は、あくまで平和的外交交渉によって解決すべきであって、かりそめにも武力を用いることのなきよう、米国並びに北朝鮮政府に要請するとともに、万一の場合といえども日本をして作戦前進基地としないよう、十分配慮すべきであります。(拍手)  私が、何ゆえ政府にこのことを警告するかと申しますならば、この際、安保条約第六条の事前協議をあいまいにすることによって、わが国の基地がこの紛争の足場として利用される可能性がきわめて大きいばかりでなく、場合によっては、この険悪なる事態を口実といたしまして、核の持ち込みさえ強行される危険が存在するからであります。私は、この際、政府に対して、いやしくもそのような事態を招来することのなきよう、万全の措置を講ずることを強く要望いたす次第でございます。(拍手)  さて、私の質問に入りたいと存じますが、今日、わが国が取り組むべき重要課題は、真に自主的な外交姿勢の確立と、国際経済の動きに動揺しない自主経済体制をどう確立するか、さらに、この二つを基礎といたしまして、今後わが国がアジアの中でいかなる使命と役割りを果たすべきか、この点について確固たる方針を早急に確立することにあると存じます。この見地に立って、以下具体的に私は質問いたします。  質問の第一点は、財政経済政策についてであります。  私は、総理大臣の施政方針演説並びに昭和四十三年度予算案を拝見いたしまして、失望を禁じ得ざるものがございます。その理由は、昨年秋以来最大課題とされてきた、内における財政硬直化、国際的にはポンドドルの不安から来る経済危機の予測、並びに不況下の物価高に直面する国民生活防衛について、何らの考慮と準備が払われていないからであります。(拍手)特に、佐藤総理が、物価抑制国民の前に再三公約されながら、今回の予算案においては、国鉄運賃、たばこ等、一連の公共料金の値上げをはかり、物価抑制の任にある政府みずからが、物価上昇の突破口を切り開き、一方、また、財政硬直化対策については、これまたみずから問題を提起しながら、これが解決のための強い決意と具体策を何ら示さなかったことは、国民に対する背信行為と申さねばなりません。(拍手)  私は、財政硬直化に対処する政府の使命は、まず行政機構の改革に英断をふるい、緊縮予算の範を政府みずからが実践することによって、国民の協力を求めることにあると考えます。  すでに昭和三十九年九月に、臨時行政調査会の答申は政府に提示され、同時に調査会長は、本院予算委員会の答弁において、最大限一兆円の行政費節約が可能であると証言されました。また私自身、第四十八回国会の予算委員会において佐藤総理に対し、行政機構改革についての決意をただした際、あなたは、「政府自身は答申実現のために真剣に取り組む態度をとっておりますが、ただいままで準備がおくれておりまして、これは何とも申しわけないことであります。」と答弁せられておりました。それからすでに三カ年を経過いたしましたが、この約束は一片のから手形に終わり、本年に至って初めて一省一局削減方式が提示されましたが、その実態は同僚議員が指摘したごとく、局長一名のいすを削減するという糊塗策にすぎなかったのであります。(拍手)  いまや多年にわたって批判の対象となっている膨大な補助金並びに不急不要の行政機構の整理は、国民経済上緊急の課題であります。もし、政府が真に答申実行の意思をお持ちになるならば、最低、予算の一割程度の冗費削減は十分可能であると確信いたします。これを実行いたしますならば、国債依存の財政政策解決したと私は思います。佐藤総理がみずからの政治的言明に責任を負われるならば、何ゆえこれを実行しなかったのか、明快なるお答えをいただきたい。(拍手)  すでに世界の先例が示すごとく、イギリスそして西ドイツは、安易なる財政経済政策をとり続けた結果、今日未曾有の経済危機に直面したのであります。そして日本は、いままさに前車の轍を踏まんといたしております。佐藤総理は、この段階で西ドイツ財政硬直化打開に対してとったきびしい政治姿勢を何とごらんになっておられますか。すなわち、この問題については先ほど来述べられたそうでありますから、私は簡潔に要点だけ申し上げますが、キージンガー内閣は、一九七一年までの四年間に、予算の一割、三百億マルク、日本円にして二兆七千億円の歳出削減を断行し、同時に公債依存からの脱却を実行したのであります。周知のように、今日、西ドイツの手持ち外貨は六十七億七千万ドル金保有高は四十二億九千二百万ドル輸出日本の倍額であります。かくのごとくわが国に比べて圧倒的な経済力を持つ西ドイツが、その将来をおもんぱかってかくのごとき思い切った手術を断行たしのであります。  しかるに、甘木は、各位御了承のとおり、手持ち外貨わずかに二十億ドル、外国借り入れ金を除くと、実質的には七億ないし八億ドルであります。金準備に至りましてはわずか三億三千万ドル前後、かくのごとき底の浅い日本経済のもとで、財政硬直化対策を回避し、これからの深刻なドル不安の激流の中に身をさらそうとしているのが、日本経済であります。(拍手佐藤総理は、このドル不安の将来をどのように予測し、底の浅い日本経済をして、このドルショックから将来いかにして円価値を防衛せんとするのか、具体的に政策を御説明いただきたいと存じます。(拍手)  次に、私は、外交問題について質問いたしますが、当面するわが国の外交国策は、次の三点に帰すると存じます。  その第一は、対米関係の再検討であります。第二は、対中共政策の調整と日ソ間の政治経済の緊密化と友好の促進であります。そして第三は、ベトナム問題の和平解決へのわが国の努力をいかにたすかという、この三点であろうと存じます。  戦後二十三年の歳月は、国際情勢日本の地位を大きく変化させました。二十三年前廃墟の中にあって見る影もなかった日本は、いまや世界の第三位、四位を争う工業国として発展し、日本動向を無視して、いかなる国家といえどもアジア政策は成り立ちません。いな、今日の国際政局に重要なる比重を占むるに至ったのであります。第一の問題たる対米関係の再検討も、まさにこの客観情勢の変化に即応して検討せねばならぬ課題であろうと存じます。  しかるに、いま日米関係を振り返るとき、残念ながら二十三年前の無条件降伏の遺物がなお存在し、(拍手)著しく両国国民の感情と政治的食い違いを生ぜしめているのであります。その第一は、沖縄の占有であります。その第二は、安保条約に基づく駐留権と基地の保有であります。これらのすみやかなる清算こそ、日米両国間の真の友好親善のためには、絶対必要条件となったのであります。(拍手)  かくのごとき見地に立って、わが国アメリカに要求せねばならない点は、二点ございます。その第一は、沖縄をすみやかに返してもらいたいということ、その第二は、日米安保条約の改定を通じて、わが国における米国の治外法権的特権を撤廃することの二つでございます。(拍手)  しかし、日米安保条約の取り扱いについては、現在三つの政治的意見が対立していることは、すでに同僚各位の御承知のとおりであります。  その第一は、現行安保条約の長期固定化、すなわち自動延長論であります。第二は、安保破棄論であり、そして第三は、現在の国際環境から考えて、日米安全保障条約は原則として肯定するが、アメリカ軍の常時駐留はもはや必要としない。すなわち、駐留なき安保条約に改定すべしという三つの意見であります。(拍手)  周知のように、現在の日本は、残念ながら安保支持、安保絶対反対という両極端の議論が対立いたしております。国防という国家存立の基本命題について、国論が分断し、かつこれを放置している国は、工業先進国では日本以外には見当たりません。(拍手)国防の問題は、相互不信あるいはイデオロギーの対立意見の先鋭化ではなくして、いかにしてわが国の平和と安全を確立するかという国家的見地に立って、合意と協力の方向に各党が努力を傾注すべきであります。(拍手)  私は、今日の現状のもとで、対米関係の絶縁を決意することなしに日米安保条約を破棄することは不可能であると考えます。同時に、他方、二十三年前の敗戦の遺物をそのまま内包する日米安保条約を、今後十年あるいは二十年そのままの形で長期固定化することは、もはや日本現状国民感情は許しません。(拍手)私の判断では、今日の内外の諸情勢からいって、日本本土においては、もはや外国軍隊の常時駐留と基地の保有は必要としないと存じます。現に、かつては二十六万人駐とんしていた米軍が、現在では陸軍わずかに八千四百人、かくのごとく在日米軍は激減しているのであります。しかるに、政府は、いまなお占領政策の遺物を踏襲し、アメリカ軍に常時駐留権を与えることによって百四十三カ所の基地に治外法権的特権を認めるというのでありますが、それは名実ともの独立国家とは言えません。かかる屈辱的にして独立主権を侵害する条約を長期固定化して、佐藤首相が提唱せられる自主防衛国民感情は承認するでありましょうか。(拍手)  言うまでもなく、自主防衛は、独立国家としての主権を全与する基本的、本質的な問題であります。これに比して、他国との安保条約は、そのときどきの国際情勢によって移り変わる第二次的な防衛体制であり、一種の国際条約であります。この基本認識を欠いて防衛論議は成り立ちません。  かかる見地に立つとき、わが国における自主防衛の核心は、米国依存の安全保障体制からの脱却が先決の課題であります。戦後二十三年間、米国にもっぱら依存してきた防衛体制の主客の転倒を正し、占領政策防衛からの脱却を目ざして、この際安保条約を根本的に改定することが、自主防衛の基本課題であると私は存じます。(拍手)  しかるに、佐藤総理は、一方に自主防衛を唱えながら、他方では日米安保条約の長期固定化を主張しておられることは、大きな矛盾というべきであります。今日、世界の四十数カ国は米国との間に相互援助条約を結んでおりますが、これらの国々は、自国防衛の主体性を自主防衛の努力に置いて、米国との条約はこれを補完的なものに位置づけております。自民党の各位もよく御了承いただきたい。また、東欧共産圏諸国も、ソ連との間に相互援助条約を結びながらも、ソ連の基地と駐留はこれを排除し、自国防衛のかぎは決してソ連に与えておりません。(拍手)ルーマニアしかり、フィンランドまたしかり、その他数多くの例がこれを実証しておることを、同僚諸君は御理解いただきたいと存じます。(拍手)  このように、東西を問わず、他国のほとんどがなし得ることが、大国日本をもって任ずるわが国に何ゆえなし得ないのでありましょうか。これこそ日本外交の怠慢というべきでありまして、先人いわく、「なんじなし得ざるにあらず、なさざるなり」。佐藤総理は、いまこそこの教訓を肝に銘記していただきたい。  私は、以上の見地から、佐藤総理が真に日本の戦後を終わらせ、かつ日本の自主的立場をアジアに確立しようとするならば、この際、日米安保条約の根本的改定をアメリカに提案すべきであると思いますが、佐藤総理の御所見を承りたい。(拍手)  さらに、この安保条約の取り扱いにつきましては、安保長期固定化論か、あるいは安保破棄論か、はたまた駐留なき安保への改定論か、そのいずれを是とせられるかということは主権者たる国民がおきめになることでありまして、したがって、私はこの際総理に提案したい、安保改定期前に、以上三案のいずれが正しいかということを主権者たる国民の審判を受くるために、議会を解散して民意に闘われる御意思なきやいなや。(拍手)  外交課題の第二は、日中両国の平和共存とベトナム和平に対する努力であります。  今日アジアに求められるものは、米中の緊張緩和とその平和共存の実現であります。アジアに位置するわが国の外交努力が、この米中の平和共存の促進に置かるべきことは論ずるまでもありません。私は、そのために日本が直ちに着手すべき問題は、次の二点にあると考えます。  その第一は、日中関係改善であります。日本の置かれた国際環境並びにアジアの工業先進国としての政治的使命からいって、日中関係の調整は、単に日本と中共だけの問題ではなくして、アジア全体の平和に関連する問題であります。真に友好の姿勢と平和政策をもって忍耐強い外交折衝を中共との間に持ち、日中共存を一歩一歩前進させるとともに、硬直化したアメリカの中共政策に、自主的な立場から反省を求め、これらを通じて米中の和解と平和共存の橋渡しをすることが、今後の日本外交の基本的使命だと確信いたします。(拍手)  もし日本がいまこの努力を怠るならば、ヨーロッパにおいて米ソの平和共存がドイツ問題の犠牲においてなされんとしたごとく、将来、米中は、日本を乗り越えて両国共存の時代を切り開くことは、むしろ歴史的要請というべきでございます。もしそれ日本は、中共問題については、アメリカのあとからついてくればよいのです、こういうアメリカの中共政策に唯々諾々として盲従してまいりますならば、アジアにおける信頼と権威と外交的発言権は、決定的に喪失すると思います。(拍手)  自主性なき外交の苦杯は、現に核防止条約においても痛切に味わされておるのであります。三木外相は、今回の米ソ案にいち早く賛意を表されました。しかし、この案にわが国の主張がどれほど取り入れられておるのでありましょうか。世界において人体実験のきかない核兵器において、歴史上初めて人体実験の悲劇の体験著たる日本が、世界のいかなる国よりも核兵器についての発言力を持っているはずだと存じますが、これに対してわが国の主張と発言はどれだけ取り入れられましたか。保有国の核軍縮に対する義務づけはどこにもありません。非核保有国の核攻撃からの安全保障はどこにもございません。さらに、核の平和利用についての差別の撤廃問題等、幾多の疑点を残していることは、天下周知の事実であります。  それよりも、この問題について私が最も疑問に思うことは、昨年夏以来、いわゆる十八カ国軍縮委員会において、この問題が討議し続けられていた段階において、日本は一体何をしておられたのか。みずからの意思と努力を傾注することなく、この大国エゴイズムの標本ともいうべき核拡散防止条約に賛意を表されたのは、思うに、アメリカからの要請があったからこの書に従ったと見るよりほかはないのであります。これぞ、日本外交の自主性の欠如と核時代に生き抜くための国家姿勢のきびしさに対する認識の欠如から生ずる政治の怠慢と無定見を暴露したものであります。(拍手)私は、歴史の名において深くそれを糾弾せねばなりません。  エンタープライズ並びに核兵器の問題は、すでに同僚議員が昨日述べられましたので、詳細は予算委員会の論議に移したいと存じます。  その第二は、ベトナム和平調停に対する積極的行動であります。  ベトナム和平の実現は、まず北爆の停止をスタートとして、双方の軍事行動の停止と国際会議による話し合い解決を求め、南北ベトナムの独立を国連が指定した関係国が保障する体制を確立し、将来住民の意思によってその統一が実現されるという基本方針によって解決さるべきでございます。日本政府は、アメリカの真のパートナーとして、いまこそ、米国政府に対して、北爆停止をきっかけとする和平行動を真剣に求むべきであります。これこそ、真に平和を念願する日本の自主外交の実践的態度と申すべきでございましょう。  同時に私は、ベトナム和平実現の一つ方向として、佐藤内閣に次の諸点の検討を要望いたします。  いまや、ベトナム戦争は、すでに戦争当事者にまかしておくことのできない危険な様相を示しつつあります。世界各国の首脳も、この認識に立って、今日真剣な和平への努力を続げておるのであります。昨年二月、コスイギン・ウィルソン会談で合意を見たベトナム和平提案が、いろいろの事情により実らなかったことは、まことに残念でございます。しかし、今日においては、前途の障害をおそれて和平への努力を怠ることはもはや許されません。日本は、いまこそ和平への具体的行動を起こすべきであります。(拍手)それについて私は二つの提案をいたします。  その第一は、もはやベトナム和平は、特定国家の和平あっせんに終始せず、多数国家による共同の和平努力が必要であります。その具体策として、わが国アメリカ並びにハノイを動かし得る国際的和平あっせん団の結成に乗り出すべきでありまして、この見地から、たとえば第一段階として、わが国もみずから入り、ソ連、イギリス、フランス、インド、カナダ、ポーランド等、ジュネーブ協定の共同議長国並びに監視国などからなるベトナム和平についての東京会談を提案すべきであります。(拍手)  さらに、第二段階として、アジア関係の諸国に対して、そのあっせん団のあっせんと仲介によって、ベトナム和平のための国際的和平あっせん団の結成を呼びかけ、もって、国際協力の力をもって和平実現に努力すべきであると存じます。  私の第二の提案は、ベトナム和平についての打ち合わせのため、佐藤総理は、御苦労ではございますが、ソ連を訪問し、ソ連首脳部と隔意なき懇談を遂げ、ソ連が和平に乗り出すための準備工作、あるいはそれらについての根回しのために、この際御足労を願いたいと思いますが、佐藤総理の御見解はいかかでございますか。  もとより、ベトナム和平の実現は容易ならざる難事業であり、軽々に扱い得ないことは論をまちません。しかしながら、むずかしいことではございますけれども、このことは、日本がなさねばならない歴史的使命でございます。私は、困難ではあるが不可能ではないと確信いたします。問題は、日本外交にこれを実践する誠意と方策があるやいなやにかかっておると存じます。(拍手)  以上、私は、内政、外交にわたる重要課題について政府の所信をただし、かつ、私なりの提案をいたしまいりましたが、最後に私は、佐藤総理に対して、将来のアジアに対していかなる御見解を持ち、政策をお持ちになっておるかということをお尋ねして、結論に入りたいと存じます。  いまやアジアは、貧困と戦争、非文明と大国の支配に苦しんだ過去の歴史から脱却して、平和と繁栄と真の独立に向かって、輝けるアジア創造の第一歩を踏み出さんといたしておるのであります。フランス、そして最近におけるイギリスのアジアからの退潮、ドルポンド経済的支配力の後退、そしてアジア諸国の相次ぐ独立と民主化の進展、これぞ変わりゆくアジアの象徴であります。いまアジアの諸国は、真剣に、平和と政治経済の新たなる体制を求めております。すなわち、核と武力を背景とした大国の専横をアジアから除去し、経済社会面では、これまた大国の支配を排して、経済、技術の真の友好的協力を求めて、自立と繁栄を達成せんと希望を抱いて努力いたしておるのであります。  第二次世界大戦争の貴重なる経験を通じて、平和国家として再出発し、アジアの唯一の工業先進国たる日本は、アジア諸国民のこの苦悩は、明治百年の歴史を通じても十分理解しておるのであります。その科学的技術と経済力をもって、アジア十七億民衆のよき友となり、その協力者たる条件を具備する世界における唯一の国家であると私は確信いたします。(拍手)  私は、世界の新しき黎明はアジアの再出発から始まると信じます。佐藤総理が施政方針演説で述べられた明治百年の自覚は、復古への百年でなくして、このような新時代の創造にわが国の献身的努力を傾注し、もってアジアと世界の平和に貢献することが、アジアに生きる日本の歴史的使命でると痛感するのであります。この点に関する佐藤総理の御見解は、一昨日抽象的には承りましたが、本日、きわめて重要でございますので、その具体的な方策と経輪をお示しをいただきたい。  以上をもちまして、私の質問を終わる次第であります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  25. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) お答えいたします前に、ただいま緊急のお尋ねがございました北鮮の米艦拿捕事件、また、三十八度線をめぐってのゲリラ、これなどは休戦協定、これが守られればかようなことはない、かように私考えておりますが、ぜひとも平和裏にこれらの問題が処理されることを心から願っております。それにつきまして、わが国自身がかような事件に巻き込まれるのではないか、かような心配があるのだというお尋ねでございます。御承知のように、わが国が自衛隊を創設いたしました際に、皆さま方とともどもに、自衛隊は海外に派兵しない、こういうことをはっきりきめております。衆議院ではございませんが、参議院ではその点の決議すらございます。また、この国連軍と日本との協定によりましては、日本国内の施設、役務、これを供する形で国連軍に協力はいたしますが、韓国にまで出かげて軍事的に協力するということはいたさないということにはっきりなっておりますので、その御心配はないようにお願いいたします。また、御承知のように自衛隊法でもこれをはっきりきめておりますので、外地に出ていくことはございません。その御心配のないようにお願いします。  次に、ただいまのお尋ねもございますが、核の持ち込みについては、私がきのう以来声を大にして持ち込みを許さない、かように申しておりますので、この答えでひとつ御理解をいただきたいと思います。  次に、ただいまの経済情勢国際経済環境等についてのいろいろのお尋ねがございました。そこで、私どもが、いわゆる予算硬直化を来たしておるからというので、この予算硬直化を避けるために、来年度予算を編成いたします際に、いずれは皆さま方から御審議をいただくことになっておりますが、その骨子は、総予算の規模を圧縮したということ、さらにまた、公債発行の度合いを引き下げた、さらに、総合予算主義の採用もいたした、また、定員削減、部局、公社、公団等の増設を認めない、一省一局削減、この点については御批判がありまして、やや小さいじゃないかというお話でありますが、三年間で、約定員の五%減を実は計画いたしております。ただいまざらに五年で一割、こういうような提案をすべきだというお話がございましたが、この点については、よく御意見を伺っておくことにいたします。  ところで、私は今回の予算は、たいへん困難な問題があると思います。ことに、今後その硬直化を直していくというためには、ほんとうに大決意が必要であります。したがいまして、不退軟の決意をもちましてこれらの問題と取り組んで、制度、慣行の改善、行政機構の簡素化等に一そうの力をいたすつもりであります。国民もまた協力していただきたいのであります。ことに、減税であるとかあるいは公共サービスというようなものも、今日までは所得税の減税もいたしておりますが、今後ともこれらの点が長続きするとは私は考えませんので、これらの点についての国民の御理解、御協力を切にお願いする次第であります。  次に、ドル防衛強化についてのお話がありましたが、この点は先ほど来いろいろ申し上げておりますので、私は、日本の国力以上のドル防衛への強化ということはいたしません。この点は、西村君もさような意味で、日本の円が強くなければだめなんだ、こういう点を御指摘になったと、かように私は理解しております。今後の問題で、国際収支をよくするためには、何としても輸出を増進しなければなりません。日本ばかりじゃありません。各国とも輸出に力を入れると思いますから、そこで輸出競争が激化する。私どもは力をつける意味で、輸銀やさらにまた財政面等におきまして、輸出増強に寄与するような政策をとってまいりたいと思います。  次に、物価安定についての態度についての御批判がございました。何と申しましても、物価の問題は経済を鎮静さすことだ、総需要の抑制にあると思います。私は、この四十三年度のきびしい財政――今回予算を編成いたしましたものは御審議をいただきますが、必ずやその抑制的な効果がある。したがって、長期的に見れば物価の安定に資するものだということが、御理解いただけるのではないかと思います。ただ、一時的な問題といたしまして、定期やたばこその他のものが上がりますが、こういうことはまことに残念なことであります。しかし、これは一時的な現象だと、かように御理解をいただきまして、総体としての経済安定成長には、これはその点ではりっぱな成果をあげるものだ、かように御理解をいただきたい。  次に問題は、西ドイツの教訓のお話が出ております。西ドイツばかりではありません。イギリスども、たいへん特段な措置をとっております。今日の硬直化状態をこれより以上長くほっておきますと、西ドイツイギリスのようなたいへんドラスティックな措置をとらざるを得なくなるのではないか。いわゆる事前に、今日私どもがこれに気づき、これに手を染めたということ、これは西ドイツイギリスのような措置をとらぬでも済んだゆえんではないかと私は思います。したがいまして、西ドイツあるいはイギリス措置を、私は非難するわけではありません。こういうことをいわゆる他山の石といたしまして、ころばぬ先のつえとする、御指摘のとおりに考えてまいりたいと思います。  次に、国の安全に責任を持つ者といたしまして、現在の国際情勢のもとにおきましては、わが国の安全を確保する、この点では、しばしば声を大にして申し上げておりますように、日米安全保障体制を堅持する、これがやむを得ない措置だと、かように考えております。沖縄の返還等につきましても、アメリカと友好と相互信頼、この関係においてこれを解決すべきものだ。日米安全保障条約も、日米相互間に友好と相互信頼がなければ、これは十分の効果をあげるものではないと思います。ただいま御指摘になりましたように、日本が戦争に負けて、そうして無条件で降伏した、そのときの遺物が残っておるのではないか、かように言われます。私は、その点ではよほど是正されてまいった、かように考えております。また日本国民自身も、戦後二十三年になりまして、ともするとあの苦い敗戦を忘れようとしておる、私はその心のゆるみがたいへん残念なように思うのであります。  そこで、この安保条約に対する民社党の考え方、これは私は一つの見識だと思います。私は、安全保障体制、これを全然無視する一部の政党とは違って、この安保体制について有事駐留ということを言われること、これは日本現状、自衛力の実情から見まして、私は一つの見識だと思う。しかし私は、この国際環境におきまして、有事駐留ほど実は甘くない、もう一つ民社党の諸君もきびしい国際環境に目を向けていただきたい、かように思うのであります。特に、今日の核時代に生きようとする、こういう際におきましては、何といたしましても、私が指摘しておりますように、また国民もそれをよく承知し、支援しておるように、米国の核抑止力、そのもとにおいて日本の安全は確保するのでありまして、私はこのことは必要だと、かように思います。私が声を大にして申すまでもなく、最小限の自衛力しか持たない、また安い防衛費でこの国の安全を確保しようというのでありますから、いまの日米安保体制というものは、きわめて有効だという現実面に目を向けていただきたい、この点を私、社会党の諸君に特に申し上げますから、あまりやじらないで私の話を聞いてください。  欧州各国がこの集団安全保障体制を結びましてそれぞれ基地を提供しているのも、やはりわが国と同じような状態に迫られての措置だと思います。先ほどは東欧諸国についての例をあげられました。しかし、西欧諸国におきましては、東欧諸国とは事変わり、やはりそれぞれが基地を提供しておる、こういう点を十分考えていただきまして、私の有事駐留論には賛成をしないゆえん、これをひとつ御理解いただきたいと思います。  次に、私が申します一人一人が独立心を持って国を守る気概がほしい、こういう点でありますが、これはただいまの点で、いまの西村君のお話とやや違うように思います。御承知のように、私はただいまの安保条約を改定する考えもございませんし、ただいま憲法を改正する考えもございません。またその必要もない、かように実は考えております。したがいまして、今日の状態を堅持することが最も望ましい姿であり、その形をどういうようにするかということは別といたしまして、安保体制を堅持することが必要だ、かように思っております。したがいまして、この期限が来た際に民意に問え、このことが、自民党のような考え方もあるし、社会党のような考え方もあるし、民主社会党のような考え方もあるのだから、そこで国民の民意を聞くことがいいんではないかというお話でございました。これはひとつただいまのお話を、そのまま御意見を私は聞き置き、私の胸のうちにとめておくことを御了承いただきます。  次に、中共問題についてお話をいたします。中共が現在のような硬直した姿勢をやわらげまして、共存の方向に進むことを私は期待いたしております。私は、お互いに独立を尊重し、内政に干渉しない、そこで仲よくできるんだ、こういうことで、ただいまもその態度で中共に臨んでおります。どうか、中共もそういう意味で共存の方向へひとつ進んでいただきたい、かように思っております。政経分離のもとに、文化や貿易の交流も進める方針であります。今日、LTの関係でわが党の古井君が向こうへ出かけるということ、これなどは、私は、明るいきざしだ、かように思いまして喜んでおる次第であります。  そこで中共の安定なくしてはアジアの真の平和はない、安定はない、これはもう御指摘のとおりであります。この認識に立ちまして、私どもも今後とも努力してまいるつもりであります。幸いなことには、米国の対中共政策も、一ころと比べてみますると、かなり柔軟になってきておるのであります。わが国考え方にだんだん近づいてきている。いわゆる政経分離の形で貿易をしたらどうかというのが、西海岸やあるいは東海岸にも、そういう考え方のものがございます。私は、これらの事柄はたいへんいいきざしでありますから、そのきざしを、だんだん成長するように、大きく育てていくことが必要だと思います。急速に米中関係改善されるとは私は思いませんけれども、相互に国際間の不信を緩和する方向で、できるだけの努力はしてまいるつもりであります。  次に、ベトナムの問題についていろいろのお話がありました。大体、戦争状態というものは、それ自体が一方的なもめではありません。片一方が北爆をする、片一方で浸透する、こういうようなことでありますから、これはやはり双方において戦闘行為をやめるということが必要であります。私は、北爆をやめろということよりも、もっと大きく考えて、なぜ戦争をやめろとおっしゃらないのか、戦争の一部である北爆だけをつかまえてそれをやめろということは、いかにも戦争の方法だけを制限するのであって、これは意味をなさないように思うのであります。しかし、今日、北ベトナムの外務大臣も発言しておりますし、したがいまして、これらの点で幾らかでもこの平和解決への曙光が見えますならば、これを育てていきたいと思います。  そこで、西村君から、この北爆停止ばかりではなく、さらに積極的な御提案がございました。いわゆる多数国家による国際協力で戦争をやめるような方法はないか、こういうことを御提案になりました。私は、その点についても、もちろんこれをよく検討する必要があると思います。政府自身といたしましては、今日まで、実はじみちな外交を続けておるのであります。平和招来へのじみちな外交を続けておる。西村君の御提案も、もちろん、私は十分検討に値すると思います。そこで、私がソ連に出かけたらどうかという御提案でございますが、ただいまの条件さえ整えば、私はいつでも出かけます。ソ連だろうがフランスだろうが、出かけるのにやぶさかでありませんけれども、私は、今日の状態で、いまの時点で、直ちに出かけるということは困難であります。  次に、アメリカとの関係におきましては、いま御提案になりましたように、どこまでも真のパートナーシップとして、アメリカにも言うべきは言う、その態度を持てという御叱正でございます。御鞭撻でございます。この御鞭撻はありがたくちょうだいしておきます。  最後に、アジアの各種の問題についてのお話がございました。私は明治百年ということを申しましたが、明治百年は、いたずらに明治百年を回顧する、あるいは復古主義、そういうものではない。明治百年の発展のあとを顧みて今後の百年にいかに処すべきか、これが大事なのだということを申しました。この点ではただいまの西村君のお話と全然同一であります。私は、そういう意味で非常な知己を得た感があります。御鞭撻を与えられたと、かように思っておる次第であります。  そこで、東南アジアを昨年巡歴いたしましたその気持ちから申しますと、アジアの多くの国々は、いわゆる植民地からこれが独立したのであります。したがいまして、この植民地支配から脱却した、そうして独立した、その途上にあるのでありまして、これらの国々は民族自立、独立達成というのを急ぐあまり、一時急進的な国づくりに走ったものもありますが、最近におきましては、真の独立はじみちに、ある程度時間をかけなければ、一朝一夕には達成できないということを考え、穏健な国づくりの道を歩もうといたしております。私は、これらに十分力をかすことこそ先進国である日本の責務だと思います。そうして、アジアの連帯感がなければ、民族の発展の基盤、これはつちかえないというのが彼らの意識であります。これらの点を十分考えまして、私は、必要なる力をかすということでありたいと思います。私が申し上げるまでもなく、わが国国内にも、政府国民のためにはからなければならない幾多の問題があります。これらの問題を留守にして、そうして国民考えでなしに、積極的に外国にだけ力をかすということは、いかにも行き過ぎた観があるというのが一部の考え方でもあると思います。しかし私は、現状から見まして、日本の国力相応の協力をすることは、これまた当然のことだ、かように考えますので、この意味において、私がこれらの開発途上国に対して積極的に協力すること、これをひとつ御理解をいただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)  核拡散防止条約についての答弁が漏れたということであります。これはたいへん失礼いたしました。この点につきましては、この趣旨について各党とも、共産党を除く以外の党は、趣旨は賛成だ、こういうことでございます。しかし、ただいままでのところ、私どもの要望が全部取り入れられておるわけでもありません。米ソ間で本最終的な原案ができたというわけでもありません。したがいまして、今後とも私どもの納得のいくような努力はいたしたいと思います。結局多数の国々が支持する、そういうところの見当がついた上で、私どもが最終的にこの問題に参加するかしないか、その態度をきめる、こういうことでございますから、御了承いただきます。(拍手)     ―――――――――――――
  26. 石井光次郎

    議長(石井光次郎君) 竹入義勝君。   〔竹入義勝君登壇
  27. 竹入義勝

    ○竹入義勝君 佐藤総理は、施政方針演説において、核兵器の絶滅を念願し、みずからもあえてこれを保有せず、その持ち込みも許さない決意であると強調いたしました。しかし、日米首脳会談以後、つかれたように自主防衛論を鼓吹し、核アレルギー解消をたくらむなど、その他一連の総理のふるまいは、これが欺瞞であることを余すところなく裏づけているのであります。私は、公明党を代表し、国民がひとしく憂慮している核について質問をいたしたいと思うものであります。それは、これからの日本の内政、外交のすべての将来を決定する最重要問題だからであり、平和か再軍備かの岐路に立つ問題だからであります。  まず、最初に、エンタープライズの寄港問題について伺いたい。  政府は、核弾頭が持ち込まれる場合は、事前通告があるはずで、アメリカが核は持っていないと言っているから核はないとして寄港を強行しました。核持ち込みの深刻な国民の疑惑に対し、たったこれだけの説明で一体どれほどの説得力を持っていると総理考えておられるか、まことに無責任といわざるを得ないのであります。(拍手)たとえ核を持っていても、わざわざ持っておりますと言うはずはないではありませんか。  元来アメリカでは、アメリカ国内法である原子力法で、原子力の軍事利用に関する情報、つまり核兵器の装備や所在についての情報は厳重な機密事項とされ、公表されておりません。みだりに公表すれば、原子力法第二二四条によって死刑もしくは終身禁錮等の極刑に処せられるのであります。日米間には、核兵器の機密情報提供に関する協定はないはずであります。それゆえアメリカ側としては、日本に入国する軍隊、軍艦等が核装備をしている、このことを公表できないのであります。したがって、アメリカが核兵器の所在や装備を明示して、日本と事前協議を行なうということは、理論上あり得ないことなのであります。総理はこのことを御存じないはずはありますまい。承知の上で、一方的なアメリカの核抜き通告をみずからも信ずるふりをして国民に信じ込ませようとすることは、正常の人のよくなし得るところではないと思うのであります。まさに欺瞞の最たるものではないかと思うのであります。(拍手)この点について、納得のいく説明を求めるものであります。  次に伺いたいことは、総理の言う、核持ち込みを許さない核とは、一体何を意味するか、核の定義について明確にしていただきたいのであります。  御承知のとおり、核兵器は、核兵器体系と称せられる近代科学の粋を尽くしたそれぞれの部門より成立していることは、すでに御存じのとおりであります。すなわち、大別いたしますと、核弾頭、運搬手段、さらに発射と安全統御のための通信、計算機器による指揮系統、訓練された兵員によって構成されているものであります。すなわち、核弾頭は、ただそれだけでは、今日の核戦略上、効果的な働きをなし得ないのであり、核とは一連の核兵器体系全体をさしていわれるものであり、この程度の常識は総理ならずともおわかりのことと思うのであります。たとえば核軍縮が運搬手段のコントロールを基準としていることも、明らかにこれを物語っているのであります。  ここで大事なことは、核弾頭の持ち込みは、その発見と識別が困難であり、隠密裏の持ち込みが容易かつ手軽であるのに比べて、その反対に運搬手段その他は発見と識別が容易であり、隠密裏の持ち込みが困難であるということであります。総理の言う核とは、核弾頭だけを意味しているのか、あるいは核兵器体系すべての持ち込みを意味しているのか、率直に伺いたいのであります。  総理は、核とは核弾頭であることを強調し、運搬手段等の兵器体系から国民の目をそらそうとしておられる。核弾頭が持ち込まれていないから安心だとの錯覚を国民に植えつけようとするトリックであります。現在わが国は、事実上、核兵器体系が持ち込まれているといわざるを得ない状況にあります。  たとえば、一九五九年四月、当時のアメリカ太平洋軍司令官フエルト大将のアメリカ上院外交委員会の証言には、アメリカ日本、台湾、韓国との同盟の目的は、中共の全面戦争を抑制することに重点が置かれている、もし全面戦争が起こったら、日本からインド洋にかけてアメリカ太平洋軍は有効適切に戦う、第七艦隊と第五戦術空軍、第十三戦術空軍及びグアムの第三戦略空軍は核兵器で武装されているといわれております。これはきわめて重要な発言であります。アメリカ第五空軍のF105戦闘機は核搭載機であり、立川、横田、三沢などを基地としていることは常識であります。あるいは横須賀、佐世保に第七艦隊が寄港していることも周知のとおりであります。先ほどの証言から見ても、府中に司令部を持つ第五空軍その他アメリカの核戦略海空軍の行動範囲内に日本が重要な意味を持って組み込まれていることは明らかであり、核兵器が持ち込まれていることは疑うことができないのであります。(拍手)あるいは、総理は、それらの海空軍は日本にいるときは核弾頭を持っていないと強弁されるでありましょう。しかし、この強弁が児戯にひとしいナンセンスであることは、さきの証言に照らしても明らかであり、国民のだれしもが疑惑を持っているところであります。百歩譲って、そうであったとしても、運搬手段、指揮系統、兵器などの、弾頭を除く核兵器体系のすべては持ち込み済みであり、いわば半ば以上の核持ち込みは完了というべきでありましょう。(拍手)  さらに続けて、あなたの核の持ち込みを許さないとの決意が欺瞞であるとの例証を申し上げたい。  すなわち、総理の言う非核原則のことばどおりにいけば、沖縄返還の条件あるいは方式というものは、核基地は絶対に認められないということでなければならない。あなたは、沖縄返還の条件については、今日の段階では申し上げられない、白紙の状態であると言っておられるが、それは核の搬入、核基地の存在を否定できないということであります。沖縄の核つき返還を断固として否定しない限り、あなたの非核方針はまっかな偽りであります。(拍手)さらに非核方針に立つ限り、沖縄は白紙ではあり得ないはずであります。少なくとも核については断固とした方針、すなわち核の撤去ということがなければならないのであります。総理の非核方針と沖縄返還方式は明らかに二律背反の矛盾におちいるのであります。いずれにせよ、沖縄返還の条件として核基地は絶対認めないと国民の前に明言されるべきでありますが、総理の所見はいかがでありましょうか。  昨日のニュースによれば、横須賀港に従来からあった原子力潜水艦寄港に備えた放射能自動測定装置とは別に、大規模の増設計画があるとのことでありますが、これはエンタープライズをはじめとするアメリカ原子力艦艇の横須賀入港を想定し、それに備えようとするものであると報道されております。総理は、先日の佐世保の教訓にもかかわらず、エンタープライズの横須賀入港を将来強行されるつもりなのかどうか、この際伺っておきたいのであります。もしもそのような国民の意思を踏みにじり、核持ち込みをあえてする暴挙があるならば、私どもには重大な決意があることをこの際申し添えておく次第であります。(拍手)  原子力艦艇の反復寄港によって核兵器アレルギーをなしくずし的に解消しようとする総理の意図は明白であります。総理は、施政方針演説において、核エネルギーの平和利用の推進を強調しております。この核の平和利用に関する限り、何の異論も持っているものではありません。願わくは、民主、公開、平和の三原則に基づき、巨大科学の時代に立ちおくれのないことを期すべきであります。しかし、総理の核の平和利用の提唱がはたして何をねらっているのか。すでに国内には核エネルギーの開発が行なわれ、国民の核の平和利用に対するアレルギーは存在しません。だからいま、国民の核アレルギーは、核の軍事利用に対するものであります。総理は平和利用にこと寄せて、核の軍事利用に反発する国民の核アレルギーの解消こそねらいであると断定しても、決して言い過ぎではありますまい。(拍手)核の平和利用に対する総理ことばの空虚さを申し上げたい。  わが国の実情は、たとえば原子物理学など、多くの分野において高度の水準を誇りながらも、反面、政府の学者への待遇、研究環境の充実あるいは向上への冷淡さは、貴重な頭脳の海外流出を招いているのであります。このような皮肉な事態にありながら、科学技術の進歩に投ぜられる政府予算は、わずかに七百二十五億余円の科学技術振興費を計上しているにすぎないのであります。ちなみに西ドイツの科学技術振興費は、四十二年度予算において四・五%を占めております。わが国においては、四十三年度にわずか一・二六%を計上しているにすぎないのであります。研究環境の整備改善、特にあなたの強調する核の平和利用推進のための予算措置は、まことに微々たるものにすぎないのであります。これが総理の施政方針演説にいう「核エネルギーの平和利用にこん身の努力を払う」、また昨日の答弁の、「核の平和利用は最重点国策として取り組む」と言われた内容であります。このことは、他方では、核拡散防止条約案においてわが国の原子力平和利用がはなはだしく制約を受けるおそれがあるにもかかわらず、政府がこれを取り除くための真剣な努力を払っていない点をあわせて見ても、結局、あなたの言う核の平和利用への努力の決意は、事実の上で否定されているのであります。要するに、総理は、核アレルギーを解消するという名目のもとに、核兵器アレルギーを解消する意図であるとしか考えられないのであります。(拍手)私がここで申し上げたいことは、国民が持つ核アレルギーは、核兵器アレルギーであり、いわば私たちが第二次世界大戦の広島と長崎の血で色どられた反核兵器意識、これを、あなたは、なしくずしに解消しようとしておられるのであります。中国の核の脅威を強調し、それに対するアメリカの核のかさの有効性をことさらに宣伝し、エンタープライズの入港を強行し、そして、実体なき誇大な核の平和利用を鼓吹する、これら一連の事柄は、私たち国民に核兵器を公然と認めさせようとするあなたの野心が、あまりにも露骨であります。  事実を正確に申し上げるならば、核の実質的な持ち込みはすでに完了済みであり、安保体制とは、日本に核を持ち込む核安保であります。ただ、アメリカ日本政府の間に残された作業は、核の認知にすぎないという重大な事態であると思うが、総理の確たる答弁を求めるものであります。(拍手)  さて、六〇年安保のときに、このような安保のもとでは、私たちが全然知らないうちに、いやおうなしに戦争に巻き込まれてしまうとの国民の不安に対し、当時の岸首相は、これを否定し、事前協議の制度によって、国民日本政府の関知しないうちにそのようなことにはならないと説明したのであります。政府の言い分によれば、この事前協議こそ、六〇年安保の最大のメリットであるということでございました。このような事前協議の制度の趣旨から、政府の果たすべき責任は、アメリカに対してその解釈をよりきびしく、より厳重な方向に守っていくということに帰するのであります。しかし、自来、数多くの事例に対する政府答弁は、この事前協議の骨抜き対策に終始し、ついに史上最大、最強の第七艦隊の主戦力エンタープライズの寄港すら事前協議の対象にならないとする、いわば無限大にひとしい骨抜き解釈に至ったのであります。この事前協議の形骸化の政治責任はきわめて重大であります。  二十九日の政府内の事前協議の統一見解によれば、戦闘作戦行動とは、米軍が安保条約で供与されているわが国領水内の施設、区域から出る時点で戦闘命令を受けている場合をさすとあります。これはおそらく、エンタープライズの場合、施設、区域内で戦闘命令を受けることなくベトナム沖に、日本海に出動することは、事前協議の対象外であるとしております。しからば、空母より北爆のため航空機が発進して初めて戦闘行為になると解釈してよろしいかどうか、この点、しかと承っておきたいのであります。(拍手)  もしもそうであるならば、たとえていえば、軍艦は発砲するまでは戦闘行為にならず、極論すれば、ポラリス型原潜の場合、核ミサイル発射のキーを押すまではすべて戦闘行為ではないと推論されるが、この点についてはどうなのか、この点も伺っておきたいと思うのであります。  さらに、艦艇が日本の領海外に出てから戦闘命令を受けた場合も対象とならないとしておりますが、極端にいえば、三海里離れた目に見える場所でいかなる戦闘行為、たとえば艦砲射撃、核ミサイルの発射、核爆雷の投下などの戦闘行為が自由であるとすれば、これは実に重大な許しがたい事態であるといわざるを得ないのであります。つまり、領海三海里を一歩でも出た水域、いわゆる公海上に原子力艦隊が陣どりいかなる戦闘行為が開始されても、また、その被害が領土、領海、領空内に及ぶ事態になっても、安保条約の義務により、わが国はこれを黙認し、協力せざるを得ないとすれば、事実上の国内基地の自由使用であり、核持ち込みでもあり、さらに日本が戦争の場となり、事前協議の歯どめは全く有名無実となるではありませんか。(拍手)この場合、日本政府はどう対処されるか、総理の具体的な見解を承りたいのであります。(拍手)これは要するに、有名無実になり果てた事前協議は、単に歯どめがありますとの国民に対する欺瞞、宣伝の手段としか思えないのであります。  さらに、統一見解によれば、エンタープライズの原子力艦隊は、幾つものグループに分かれているうちの一つのグループにすぎない、単なるタスクグループであるとし、事前協議の対象となる重要な配備の変更には該当しないと説明しております。ところが、問題のエンタープライズの艦長は、現に記者会見において、みずからの機動部隊をワン・タスクフォースであると言明したではありませんか。この原子力艦隊がタスクフォースかどうかというアメリカ艦隊の編成上の呼び名の問題は、実はそれほど本質的な問題ではないかもしれないのであります。というのは、安保条約上事前協議の対象となる重要な配備の変更とは、地上一個師団以上及びそれに相当する海空軍部隊を対象とするとされてきたのであります。その戦力の規模から見て、世界最大の原子力空母といわれるエンタープライズを含む第一機動部隊が、地上一個師団にも相当しないとは何人も信ぜられないところであります。(拍手)この艦隊が第七十七タスクフォースのうちの一グループであるとするならば、事前協議の対象をタスクフォースの単位にきめること自体が不合理なのであります。日本政府が、第七艦隊の日本への寄港について、事前協議の対象となるべき艦隊の単位をことさらに対象外とすることは、米軍の日本基地の自由使用に協力することであり、事前協議制度をみずから進んで骨抜きにしようとするものにほかならないと思うのでありますが、この点総理見解を伺いたいのであります。(拍手)  次に、ポラリス潜水艦についてであります。木村官房長官は、一月二十四日付の読売新聞座談会において、「ポラリスとエンタープライズとは、どう違うのか。核を持っていないことがはっきりすれば、ポラリスでも別扱いはしない。」と述べているのであります。しかし、第四十八国会予算委員会において、椎名外務大臣は、「ポラリス潜水艦は常時核弾頭を装備しており、これが核弾頭を取りはずして行動することは常識では考えられない。ポラリスは約二ヵ月間どこにも立ち寄らずに行動し、そのこと自体が戦略的意味を持つものであるから、弾頭の部分だけ取りはずしてポラリス潜水艦が行動するということは、実際問題として絶対あり得ない。」との海原政府委員の答弁を肯定し、重ねて「核弾頭をはずして入港することはあり得ない。核兵器をつけたまま入港する場合しか考えられない。そういう場合は事前協議の対象になり、これを強行して入ろうとする場合は、それを許さない。」と答えておられます。また、去る一月十八日、本院内閣委員会で、増田防衛庁長官は、「ポラリスが核弾頭を抜いてきた場合でも事前協議の対象となる。日本政府としては、核三原則に照らして事前協議を申し出るべきである。」と答弁しているのであります。先ほどの木村官房長官の発言の真意は那辺にあるのか、答弁願いたい。このような木村発言は、かつての椎名発言に比べ大幅の後退をしているものであり、これはポラリス潜水艦寄港の事前協議を避ける地ならしをしているものとしか考えられない。この際、政府は、ポラリス潜水艦の日本寄港については当然事前協議の対象であり、かつ、いかなる場合も断固この寄港を拒否する決意である旨を国民の前に明らかにするとともに、進んでアメリカ側にもこの旨を通告しておくべきであると考えるが、総理の所信を承りたいのであります。(拍手)  かつてのシードラゴンをはじめとする原子力潜水艦の入港、原子力空母エンタープライズの入港、その背景にある核アレルギー解消論、これら一連の事柄の指向するところは、ポラリス潜水艦の日本寄港、沖縄の核つき返還、そうして究極的に核兵器の持ち込みによるわが国の核基地化の完成であると国民は危惧しているのであります。かつて、総理は、日米首脳会談後の記者会見において、わが国の安全にとって核のかさの重要性を強調されました。総理日本の安全のために必要であると考えられた核のかさとはいかなるものか、その意義をはっきりと本日は伺いたいのであります。(拍手)  いわゆる核抑止力には、相互の恐怖の均衡、つまり、やったらやられるとの相互の判断、双方の行動に自重と慎重な態度をとらしめているものであると判断いたしております。しかし、抑止力が効果を持つ相手なら、その抑止力は有効性を持つと言えるかもわかりません。しかし、その抑止力がくずれたとき、つまり、きかない相手があらわれたとき、双方の心理的な抑止力に期待できず、たとえば迎撃ミサイル網のごとく、物理的な防御力としての核兵器の使用が考えられるとされているのであります。総理ジョンソン大統領は、日米共同声明において、中共の核の脅威についての双方の合意を表明しておられるのであります。それは、日米安保体制は中共の核に対し、最初から心理的な抑止効果を期待し得ないとの判断が根底となり、その基本的な考えの上に立って、中共の核の脅威についての日米共同声明の合意となってあらわれたと思うが、総理の所見を伺いたいのであります。  そこで、六五年一月、佐藤・ジョンソン会談において、いかなる攻撃に対しても、アメリカはいかなる兵器を使ってでも日本を守ると言っており、また、六六年七月、国防長官マクナマラは、「日米安保は、適切ないかなる兵器をもってしても、つまり、核攻撃に対するものであろうと、他のいかなる攻撃に対するものであろうと、日本防衛のため使用する兵器の性格には何ら制限はない」という意味、すなわち、核攻撃には核兵器をもって対抗することを明らかにしております。これは、日米安保条約は、核には核をもって対抗するということであり、しかも、極東の現情勢から見て、核を使用することもあることを意味し、核安保以外の何ものでもないといわざるを得ないのであります。不幸にして、核には核の事態現実となったとき、日本人が全部死滅した後に相手をたたく抑止力、つまり、やられてからやってくれるものなのか、あるいは飛来する核爆撃機や核ミサイルが私たちの頭上で爆発する前に防御してくれる核抑止力、つまり、やられる前に防いでくれるものなのか、明確にお示しを願いたいのであります。(拍手)言うまでもなく、私たちが核のちりと消え去った後に、幾らアメリカが核を使って攻撃を加えても、私たちの安全保障にはならないのであります。あなたの強調されるアメリカの核のかさとは、このように、はなはだたよりないかさなのか、この点はいかがでありましょうか、国民の前に明らかにしていただきたいのであります。(拍手)いや、そうではない、日本上空で爆発する前にこれを阻止するかさだと総理が言われるのであれば、具体的にどの線で防御してくれるのか、戦略論に基づき、国民の納得する説明をしてもらいたいのであります。  私たちの判断によれば、いかにあなたが強弁されようとも、あなたの信頼する核のかさは、私たちがやられてからやり返してくれるものにすぎないのであります。いわば、太平洋戦略体制に組み込まれた日本列島は、アメリカの最前線基地と言えるのではないか。私は総理にあえて申し上げたい。いたずらに核のかさから、わが国の安全にとって有効であるなどとの幻想を国民にばらまき、欺瞞することをやめよと言いたいのであります。日本国民がすべて死滅してからやり返してくれる、これが安保の限界であります。日本の安全にとって、やられてからやり返してもらうようなことよりも、危険な保障にたよることよりも、やられないような緊張緩和への努力を払うことこそ、最も重要であるといわなければならないのであります。(拍手)しかし、中国封じ込め政策を大方針とするアメリカのアジア政策に追随する限り、日米安保が、佐藤総理の説くように、長期堅持される限り、わが国は中国にとって常にアメリカと同様敵国として仮想され、われわれは常に核の脅威がつきまとい、日本海は常に波立っているのであります。このゆえに、私たちは、危険な核安保を解消し、完全中立への道を目ざすことこそ、国家百年の大計であると確信するものであります。(拍手)  以上、私は、核をめぐる諸問題について、いろいろとお尋ねをいたしました。今日、私たち国民にとって、核の問題は避けてはならない課題であります。しかし、この課題の取り組み方は、あなたが国民より疑惑を持たれているような、わが国の核基地、核安保の道では絶対にないはずであります。世界でただ一つの核被爆国であり、また、世界に誇る平和憲法の中に、あなたがいみじくも施政方針演説で申し述べられた、核兵器の絶滅を念願し、みずからもあえてこれを保有せず、その持ち込みも許さないとの決意を文字どおり忠実に、厳粛に履行することであります。  私は、ここで、総理に真情をもって訴えたい。あなたは、昨日の答弁において、非核宣言について、「私は非核三原則をしばしば発表している。したがって、このような決議をする必要はない」と、にべもなくこれを拒否されました。また、施政方針演説決意が事実上の非核宣言であると言われるかもしれない。しかし、国権の最高機関であるこの国会において、国民に対し、全世界に対し、わが国の平和憲法の精神に照らし、私たちは断じて核をつくらない、持たない、持ち込ませないと、非核宣言の決議こそ、わが国民の良心の凝集であると思うのであります。(拍手)くしくも、この非核方針は与野党が一致したものであります。私は、あえて、自民党の総裁たる総理に対し、この非核宣言に本院の多数党たる自民党を率いて参加される意思を表明されるべきであると思うが、御意見を伺いたいのであります。(拍手)  最後に、政治資金規正法の改正について伺いたいのであります。  政治資金規正法の改正案の本国会提出は既定のこととされておりますが、従来の経過から見て、提出時期、その改正内容等、国民は激しい憤りとともに強い関心を持って見守っております。総理演説に、ほんの申しわけ程度につけ加えられた政治姿勢の表明は、政治資金規正法改正問題への不信を一そうつのらせているともいうべきであります。総理は、この問題について、現在までの世論無視の態度を捨てて、かつ然その責任ある決意国民に表明すべきであり、私はそれを強く要求するものであります。(拍手)  以上をもって、私の代表質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  28. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  エンタープライズの入港問題につきましては、昨日来いろいろ議論いたしましたからもう重ねて申しませんが、ただいまお話しになりましたような心配はございませんから、どうか御安心なさいますようにお願いいたします。  次に、国内に持ち込まないという核兵器とは一体何か、こういうお尋ねでございます。それにはもちろん核弾頭、これはもちろんでございます。同時に、核弾頭の専用装置、核ミサイルのようなものですが、そういうような専用装置、これも持ち込みを許さない。また核装置の専用施設、これも持ち込みを許さない。いわゆる核ミサイルの基地のようなものであります。これだけをはっきり申し上げて、お答えといたします。  沖縄の核基地つき返還ということでいろいろ御心配でございますが、とにかくただいまは、沖縄はアメリカが施政権を持っております。私どもがとやかく言う筋ではございません。ただいま大事なことは、一日も早く返還を実現することであります。返還を実現することに全力を尽くす、これまた過日来この席において申し上げたとおりであります。  今日、エンタープライズが横須賀に入るような計画は、私はまだ聞いておりません。したがいまして、これは知らないというのがはっきりいたします。  原子力空母の反復入港の問題についてのお尋ねがございました。これもすでに申し上げましたように、事前協議の対象となるものではございません。  次に、核アレルギーの問題、これは竹入君もはっきり申されましたように、核兵器についてのアレルギーだということであります。私は、日本政府は核兵器を製造しないし、持たないし、持ち込みも許さない、こういうことをはっきり申しておりますので、国民も、総理の私のこの説明を御了承いただきたいと思います。  次に、事前協議並びにポラリスの問題についてのお話がございました。この事前協議というのは、たいへん、前回これが安保改定の際に持ち出された問題でありまして、ただいま、もちろん形骸化してはおりません。十分役立っておる。このことあればこそ、私ども日本政府の意向に反した行動はしないと、アメリカ政府が明言しておるのでございます。したがいまして、一部事前協議条項はもう形骸化しているという、これなどは事実に合わないことでございますから、どうかさようなことは、もう説明なさらないようにお願いします。  また、ポラリスの問題につきまして、いろいろ誤解があるようであります。これは、ただいまお話がありましたように、椎名外務大臣予算委員会ですでに説明いたしております。したがいまして、ポラリス潜水艦につきましては、この椎名君の答弁、これが政府考え方でございます。これは権威のあるものであります。いわゆる官房長官のお話でございますが、ポラリス潜水艦からいわゆる核が除かれるかのような印象、そういうような説明をしたことは、これはたいへんな間違いだったと思いますから、適当なときにこれは取り消しさすつもりでおります。  また、核のかさ、いわゆる核の抑止力、これは一体何だ、こういう話でいろいろお話がございました。私は、核の抑止力、アメリカの核、この抑止力は戦争を起こさないものだ、かように考えております。いわゆるアメリカが持つ核の核力、これがたいへん強大なものでございますから、真正面からアメリカを相手にして戦争をするというようなことはない。この核の抑止力は、いわゆる戦争にならないということであります。したがいまして、この抑止力にわれわれは信頼しておるということであります。  私は、竹入君のお話を聞きまして、どうも、どういう点が説明したいのであろうか、どういう考え方で一体この国を守ろうとしておられるのか、いろいろ実は心配しておりましたが、中立論だということをはっきり申されました。私は、中立論が意味をなさないことを、もうたびたびこの席で申しておりますから、中立論なら、私は賛成しないといろことをはっきり申し上げておきます。もちろん、公明党がその政策をおとりになる、これは御自由でございます。私はそれに反対だということでございます。  次に、非核宣言についてのお尋ねがありました。私は、はっきりとこの席で、わが政府考え方を打ち出しております。これ以上、国会におきまして、これらの問題に関する決議をする必要は認めないというのが、私の考え方であります。  その次に、政治資金につきましていろいろお尋ねがございましたが、これは今国会に提出する考えでございます。その上で十分御審議をいただきたいと思います。  その他の点につきまして、なお明確にする必要があれば、委員会等で十分お答えいたします。(拍手)   〔発言する者あり〕
  29. 石井光次郎

    議長(石井光次郎君) 先刻の竹入君の質疑に対し、答弁漏れがあるとのことであります。   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  30. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) たいへん失礼いたしました。私は、日本の法律を聞いておりまして、何か間違いではないかなと実は思っていたののですが、アメリカの原子力法についての御意見、お尋ねであったようであります。この点は、私も十分知りませんから、よく調べた上でお答えすることにいたします。(拍手)     ―――――――――――――
  31. 石井光次郎

    議長(石井光次郎君) 川上貫一君。   〔川上貫一君登壇
  32. 川上貫一

    ○川上貫一君 私は、日本共産党を代表して、佐藤総理質問いたします。  総理は、ジョンソン大統領との共同声明以来、国民に対して国の防衛を強調しました。また、施政方針演説においては、明治百年を謳歌しながら、独立の気概とか民族の発展などを力説しております。一体、佐藤総理は、国の防衛、これはどんなことだとお考えになっておるのでありますか。それは言うまでもありません。自国の独立と主権を他国の侵略から守り、人民生活の安定を保障し、平和を擁護することでありましょう。それ以外に防衛はありません。佐藤総理と自民党内閣は、この独立の道を堅持しておるとお考えになりますか。  今日、真に自国の独立と主権を守り、愛国の情熱と平和の念願に燃えて、敢然として立ち上がっているのはベトナムの人民であります。また、それを心から支援しながら祖国の独立と安全のために戦っておるものこそ日本人民であります。しかるに、日米安保条約の義務と称し、日本人民の意思をまつこうから踏みにじり、ベトナム人民に対する無法きわまるアメリカのみな殺し戦争に全力をあげて協力しておるのが佐藤内閣そのものであります。  また、あなた方は、核装備の米原子力艦隊の基地として喜んで日本の港湾を提供しました。しかも、この原子力艦隊は、今日、佐世保から朝鮮に出動して、朝鮮民主主義人民共和国に対し許すべからざる軍事挑発を行なっております。総理は、このようなことに協力するのが、国の防衛であり、国の安全であるとお考えになりますか。  それだけではありません。この戦争挑発の口実をつくり上げたスパイ艦プエブロ号は、神奈川県の上瀬谷を通信基地とし、佐世保から出動して、朝鮮民主主義人民共和国の領海に深く侵入し、スパイ活動を継続していたものであります。こういう挑発を行なっておいて、早くも警戒体制、すなわち戦争準備体制をとったのは在日米軍であります。もし、このアメリカの挑発と陰謀の一そうの拡大を許すならばどういうことになると総理はお考えになりますか。そのとき、日本が国をあげてそれに巻き込まれることは、日米安保条約第五条並びに第六条、三矢作戦、ブルラン作戦計画、さらに古くは安保国会のときの藤山外相の答弁、一昨年六月一日の椎名外相の国会答弁に照らしてみても、まことに明々白々であります。  これら一連の事実は、アメリカが、当面、ソ連、中国などの社会主義大国との対決を避け、ベトナム、朝鮮などの社会主義国を各個撃破する政策の端的なあらわれであると同時に、日本がすでにそれに深く巻き込まれている証拠であります。同時に、日本が、独立国としての基本的な権限、すなわち、戦争か平和かをみずから決定する権限さえ奪われておる何よりの証拠であります。しかるに、総理は、きのうの本議場において、一日も早くその平和的解決を切望すると答弁されました。総理は、真にそれを願うのであれば、こういう答弁のかわりに、アメリカの戦争挑発のための基地の提供を直ちに断わるべきであります。それさえ実行できないで、国民に対して自主防衛とか独立の気概とかを訴える資格があるでしょうか。  私は、ここで率直に申し上げます。総理が明治百年を云々しながら国民に国防を訴え、独立の気概などを強調するのは、ほかでもありません、日本のこのような対米従属を国民の目からおおい隠すためであります。さらに、アメリカの凶悪きわまりない侵略と戦争の政策を擁護し、それに国民を同調させるための売国的な欺瞞であると断言してはばかりません。これはまた、かつて天皇制軍閥、日本独占資本が、アジア侵略のために国民に押しつけた合いことばの現代版であるといって差しつかえない。もしそうでないというのでありますれば、総理は、ここでベトナム人民の戦いを支持し、米原子力艦隊などの入港をきっぱり断わると約束することができますか。同時に、ベトナム侵略をはじめ、朝鮮に対するアメリカの無法きわまる軍事挑発に、今後日本は何ものをも提供しないと言明することができますか。私は、ここで総理のまじめな答弁をお願いします。  第二は、沖縄の祖国復帰の問題であります。  総理は、前国会以来、沖縄の米軍基地の重要性を繰り返しておられます。一体沖縄の基地の重要性とは何でありますか。それは、アメリカのベトナム侵略をはじめとするアジア侵略にとってこそ重要なのであって、沖縄県民はじめ日本人民にとっては、重要どころか、危険、有害、無益、無用の基地であると断言して差しつかえありません。しかるに、総理は、沖縄の祖国復帰を願う人民の願望を逆手にとり、沖縄基地の本質について、人民を欺き、このおそるべき基地をそっくりそのままかかえ込もうとしておるのであります。だからこそ、総理は、施政方針演説で、沖縄の基地の取り扱いについては一言も触れておりません。反対に、安全保障の要請を踏まえ、現実的な解決策をとるなど公言されております。さらに、きのうは、わざわざそれは白紙であるとこの壇上から答弁されました。これこそ、沖縄の核つき基地をそのままかかえ込む意思を、総理みずから暴露したものにほかなりません。なるほど総理は、施政方針演説で、また、きょうもこの演壇から、核兵器の持ち込みは絶対に許さないと公言されました。しかし、施政方針演説で、来たるべき百年は核時代であると述べておられます。核の平和利用を強調して、国民に対して事実上核アレルギーの解消を訴えながら、繰り返してアメリカの核抑止力の必要性を強調しておるのは、佐藤内閣であります。これは明らかに核問題に対する国民の認識を混乱させるための陰険な態度であって、沖縄におけるアメリカの核基地つき返還、核兵器の持ち込み、さらには日本の核武装をなしくずしに国民に承認させるための陰謀であるといって差しつかえありますまい。  そこで私はこれを明らかにするために、あらためて二、三の質問をいたします。  第一に、総理は、核兵器の持ち込みは絶対に認めないというならば、ここで沖縄の核基地つき返還は絶対に許さないと、国民の前に言明してもらいたい。  第二に、わが党が提案している核兵器持ち込み禁止法を制定すると同時に、核兵器の全面禁止、とりわけ核兵器使用禁止の国際協定を結ぶことを全面的に支持する意思をこの壇上から明らかにしてもらいたい。  第三に、国連における核兵器使用禁止に関する決議案になぜ賛成しなかったのでありますか。その理由を明確にされることを要求します。  第四に、核拡散防止条約、この条約は、アメリカが他国に核兵器を持ち込むことを合法化する条約であります。総理は、この条約に賛成して、アメリカが自由に他国へ核兵器を持ち込むことに賛成するのでありますか。これは重要な問題でありますから、明確に答弁をしてもらいたい。このことは、総理の核に対するほんとう考え方を明らかにする問題でありますから、いたずらな答弁は納得できません。  質問の第三点は、四十三年度予算案にあらわれている政府財政方針についてであります。  それは、一口に言って、労働者、人民が多年にわたる戦いによってわずかにかちえた既得権を根こそぎ奪い去り、一方独占擁護の公共事業費の増額、反共国家に対する援助の優先、ベトナム侵略によって一そう深刻化したアメリカドル危機に対する数億ドルにのぼる協力をはじめ、民主勢力がこぞって反対しておる防衛五カ年計画などには一指も触れておりません。その上、警察機動隊は増強する、軍人恩給は増額する、このような政策こそ、財政硬直なるものを解決するどころか、さらに、それを一そう拡大するものであります。このような政策を、ますます推し進めることこそ、総理ジョンソン大統領に約束した日米共同責任体制を推進するための売国的な経済方針であり、人民生活破壊の上に、日本軍国主義の一そうの推進、日本独占資本の侵略的海外進出、これをねらう財政計画であるといって差しつかえありますまい。一体、総理は、このような政策によって、民族の繁栄、国の繁栄、こんなことを云々することができますか。  私は、最後一言総理に申し上げたい。同時に答弁を願いたい。  第一、日米安保条約に縛られている限り、真の日本の独立はあり得ないということであります。中には、日米安保条約を認めた上での折衷論もあります。それは、真に日本の独立と主権を保障する考えではありません。事実上、今日の従属状態の継続を承認するものであります。  第二に、真の独立なくして、自主防衛など、幾ら繰り返しても、真の安全、平和はなく、民族の誇りなどを云々することは絶対にできないということであります。  第三は、人民生活を破壊しておいて、民族の繁栄などを公言することは許されることではありますまい。  私は、以上総理の明確な答弁を求め、この短い質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  33. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) 川上君にお答えいたします。  まことに残念ながら、人生観、世界観を異にいたしておりますので、議論がどうしても食い合わない、そういう点で、私まことに残念に思いますが、その点をまず申し上げておきます。  私は、今日の日本のあり方、今日私がとっておる政策、これは最善だと、かように考えております。したがいまして、ただいま共産党からるるお話しになりましたような点については、私一つも賛成するわけにまいりません。このことをはっきり申し上げまして、私の答えとします。(拍手
  34. 石井光次郎

    議長(石井光次郎君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。      ――――◇―――――
  35. 石井光次郎

    議長(石井光次郎君) 本日は、これにて散会いたします。    午後六時二十三分散会      ――――◇―――――  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 赤間 文三君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 園田  直君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 中曽根康弘君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 小川 平二君         建 設 大 臣 保利  茂君         自 治 大 臣 赤澤 正道君         国 務 大 臣 木村 武雄君         国 務 大 臣 木村 俊夫君         国 務 大 臣 田中 龍夫君         国 務 大 臣 鍋島 直紹君         国 務 大 臣 増田甲子七君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君      ――――◇―――――