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1968-04-26 第58回国会 衆議院 法務委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月二十六日(金曜日)     午前十時十三分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 田中伊三次君 理事 高橋 栄吉君    理事 中垣 國男君 理事 濱野 清吾君    理事 猪俣 浩三君 理事 神近 市子君       河本 敏夫君    千葉 三郎君       中馬 辰猪君    馬場 元治君       河野  密君    横山 利秋君       岡沢 完治君    有島 重武君       林  百郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 赤間 文三君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         公正取引委員会         事務局長    柿沼幸一郎君         法務政務次官  進藤 一馬君         法務省民事局長 新谷 正夫君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省入国管理         局長      中川  進君         大蔵政務次官  倉成  正君         大蔵省証券局長 広瀬 駿二君         大蔵省銀行局長 澄田  智君  委員外出席者         外務省アジア局         外務参事官   金沢 正雄君         外務省条約局法         規課長     大塚博比古君         大蔵省証券局企         業財務第一課長 安井  誠君         専  門  員 福山 忠義君     ――――――――――――― 四月二十六日  委員岡田春夫君、西村榮一君及び山田太郎君辞  任につき、その補欠として横山利秋君、岡沢完  治君及び有島重武君が議長指名委員に選任  された。 同日  委員横山利秋君及び岡沢完治君辞任につき、そ  の補欠として岡田春夫君及び西村榮一君が議長  の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月二十五日  佐世保における暴力行為規制に関する陳情書  (第二二九号)  法秩序維持確立に関する陳情書外一件  (第三一二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件  検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ――――◇―――――
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件、検察行政に関する件、及び人権擁護に関する件について、調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。猪俣浩三君。
  3. 猪俣浩三

    猪俣委員 日通事件天下を騒がしましたが、あれは昨年私が予算委員会分科会で、米穀の輸送問題について質問をしたのがきっかけであります。それは、あの方法会計令その他の法令に違反していることを指摘いたしまして、どういうふうにして米の輸送賃をきめるのであるかと質問しましたら、満足なる答弁は得られなかった。その後あの問題が発展いたしまして、全くでたらめな会社であることが明らかになりまして、世人はあ然としておるわけであります。どういうふうにして会社経理というものをやっておったのであるか、これにつきまして、前々から私ははなはだ疑問を持っておったのでありますが、なおさらその疑問と必要性が痛感せられてきたわけであります。私が最も自分で体験いたしましたのは、この会社経理につきましての監督官庁である大蔵省が、はなはだ監督がルーズであるのみならず、商法違反に対して捜査しなければならぬ検察庁が、はなはだ怠慢である。それは、私が大阪に本社があります近江絹綿株式会社に対してタコ配ありとして告発したのに対しまして、大阪地検の示した態度であります。二回告発したにかかわらず、いずれも不起訴にしました。その彼らの言い分は、これは大会社であるし、この会社にはりっぱな公認会計士がついておって、その会計士がちゃんと監査をして証明書がついておる。だから問題があまりないのである、というようなことを言って、不起訴処分にした。その後、会社内紛が起こりまして、重役が二人やめた。その重役がわれわれに新しい材料を提供されるのみならず、みずから検察庁に対していろいろのことを申告した。そこでようやく検察庁起訴に踏み切ったのであります。しかし、この内紛を起こしてやめました重役の提供した資料、そんなものは、検察庁捜査しようと思えば朝めし前に手に入るものです。珍しいものでも何でもない。われわれの手になかっただけのことだ。しかし、それを突きつけなければ、公認会計士があるからいいじゃないかというようなことで全部取り上げない。さようなことをいままで繰り返しておる。それが今日、日通その他の会社に見られるような、まことに不健全なる事業形態を生み出したと私は考える。この粉飾決算がはなはだ盛んに行なわれておるということは、あらゆる経済雑誌がみな指摘しています。私が目についたものだけでも、昭和四十一年十二月にはダイヤモンド社でもって粉飾決算のことに対する記事を書いているし、また四十二年の一月二十五日には、日本経済新聞社で「加速度がついた粉飾」として、これまた大々的に報道されておる。そうして四十二年の四月には「傷だらけ名門日東紡の行方」と称して、これまた「財界」という雑誌に載っておる。かように新聞雑誌に大々的に報道せられているにかかわらず、一体大蔵省当局並びに検察庁は何をやっておるのかということに対して、私どもは疑問を感ぜざるを得ないのであります。  そこで、こういう前提の上に立ちまして、二、三の具体的実例をあげましてお尋ねしたいと思います。それは、いま申しました日東紡績株式会社のことですが、これは驚くべき粉飾決算をやっておる。そうしてタコ配をやっておる。この実情につきまして、大蔵省証券局から御説明願いたいと思う。
  4. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 日東紡粉飾決算内容でございますが、昭和四十一年十二月に日東紡株式会社より提出されました訂正有価証券報告書によりますと、昭和四十年四月現在で累計六十二億七千七百万円の利益過大計上が記載されております。昭和四十年十月期の決算では、この金額が是正されております。概要そのとおりでございます。
  5. 猪俣浩三

    猪俣委員 私の調査によりますと、いわゆるタコ配いたしたことは第八十八期——これは違っているかどうか、違っておったら否定してください。昭和三十七年の四月期、タコ配が二億一千万円、第八十九期、同年の十月期一億四千万円、第九十期、これがやはり一億四千万円、九十一期がやはり一億四千万円、あと九十二期、九十三期、九十四期同じく一億四千万円、合わせて十億五千万円のタコ配をやっておる。この事実はどうですか。
  6. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 そのとおりであります。
  7. 猪俣浩三

    猪俣委員 いまあなたがあげた数字でありますが、私の調査によれば、累積粉飾額水増しの財産が第八十八期から九十三期までの間に実に六十四億一千万円ある、こういう事実はどうですか。
  8. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 貸借対照表によりますと、資産過大計上合計は六十四億五百万円であります。
  9. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこで、これが発覚いたしました動機でありますが、この日東紡公表利益金を公表した。それに対して税金申告書提出を命じた。そうしましたら、一ぺんに手をあげて頭を下げてしまった。配当するときに膨大な資産があるようなことを天下に公表して投資家を迷わし、税務署に対して赤字であるという申告をしておる。だから、税務署申告を取り寄せれば一ぺんに暴露してしまう。こんな簡単なことを大蔵省はやらなかった。みんな粉飾決算みたいなそういうやり方をやっているから、税務署と両方調べればすぐわかることなんです。それを検察庁大蔵省もやらない。しかもなお、お尋ねするのであるが、こういう公表利益金と税の申告書調査なさったのは、国税庁であるか、大蔵省であるか、それをお答え願いたい。この粉飾決算の暴露した動機です。
  10. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 粉飾の問題につきましては、三十九年の後半から四十年の初めにかけましていろいろわれわれのほうでも問題にしまして、重点審査ということを実施するようになりました。その一環としまして、この御指摘の問題も出てまいりました。税金申告との関係につきましても、われわれのほうの調査でもわかりまして、この日東紡に対しましては、自発的な訂正報告書提出を懲悪するという措置をとったわけであります。
  11. 猪俣浩三

    猪俣委員 いま重点検査をやったのは五十社あると聞いているが、その検査の結果を発表してください。どういう状態だったか。
  12. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 重点審査をいたしました件数は、五十件以上でございまして、百件あるいは百件以上だったと思いますが、その中で自発的に直したもの、あるいはすでに直しておったもの、あるいは自発的に直すように懲悪したもの等々合わせますと、四十件から五十件くらいあったと思います。
  13. 猪俣浩三

    猪俣委員 百件あったとすれば半分なんですが、五十件だとすればほとんど大半だ。そんな簡単にわかることをいままでおやりにならなかった。なお、ついでに聞きますが、そのときに、これはまことに申しわけありませんでした、訂正いたしましたといって出頭したのは、日東紡重役にあらずして日本興業銀行理事であったということの事実はどうなんですか。
  14. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 その事実は、私存じておりません。
  15. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは重大な問題なんだ。あなた知らぬのですか、調べていないのか、いやそういうことはないというのか、どっちなんだ。あやまりに行ったのは興業銀行重役だ。それは記憶がないのか、知らぬのか、そういう事実がないというのか、どっちかなんです。
  16. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 私、昨年の十一月に証券局長になりましたので、当時はおりませんでしたが、この事実につきまして概要報告を受けましたが、そこまでのことは聞いておりません。ただ、当然のことでございますが、この日東紡につきまして、日東紡自身謝意を表していると思います。
  17. 猪俣浩三

    猪俣委員 もう少し調べてください。謝意を表しに来ているか知らぬが、大蔵省に了解を求めに行ったのは興業銀行重役だという、そういう事実があるわけです。あなたが聞いておらないなら、調べてください。知らぬものを責めたってしようがない。そこにこれからの私の質問の端緒が出てくるわけです。  そこで、法務大臣はお急ぎのようでありますので、少し質問の順序を変えて大臣の御意見を承っておきたいと思うのですが、先般新聞の報ずるところによれば、法務省でもこの事業会社経理監査については取り締まりを厳重にするという方針を決定されたやに聞いているのですが、これははなはだおそきに失していると思うわけでありますが、粉飾決算不正経理刑事責任を追及、こう大きな見出しで発表されておる。いままではなはだルーズであったことの反省だろうと思うのです。そこで、監査を強化される方針につきまして、一体どういう方法をとられるのであるか、その具体策を御説明いただきたいと思います。
  18. 赤間文三

    赤間国務大臣 この会社経営者の不正をできるだけ防止するということが必要であると考えまするので、経営者から独立した機関業務及び会計について充実した監査を行なうことが、この監査制度強化の上において非常に有効じゃないかということを目下私は考えております。現行の商法上の株式会社につきましては、取締役の会が業務監査を、監査役会計監査を行なうことになっておるのでございます。こういう監査制度は、必ずしも十分にその機能を発揮しておるといわれない部面も、私は相当あるのじゃないかと考えるのでございます。日通のような事件も、やはりいまの制度だけでは監査が不十分であったという一例になるようなふうに思われます。で、法制審議会商法部会におきましても、監査制度をひとつ合理的に強化する必要があるということを認めまして、目下いろいろな方面から審議中であると私は考えておるのでございます。私はこういう点については、真剣に、いまお述べになりましたような事件が起こらないような監査機能が強化せられることが非常に必要じゃないかということを考えて、今後ひとつ徹底的に監査制度そのもの注意をしていきたい、かように考えております。  しかし、何といたしましても、これはやはり経営者の健全な経営者倫理というものが確立せられるということが、もとをなす次第でございます。(「どうするか」と呼ぶ者あり)やはり経営者が放漫な経営をやる、好ましくない経営をやるというようなことを根絶するのには、企業経営者間に健全な経営者倫理が確立することが大もとで、この方面もひとつ十分それができるように努力をいたしていきたいと考えております。  なお、私利私欲をはかって違反行為をやるというような事実に対しましては、将来ひとつ厳然たる態度でもってそういうことのないようにこれを防ぐということを徹底させていきたいと考えている次第でございます。どうするかという御発言がたびたびございますが、かねてこういうことに注意をいたしまして、経済関係検事など集まったときには、十分いま私の申し上げましたようなことが徹底するように指示をいたしておるような次第でございます。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 どうもあなたの答弁は、朝日新聞に出た記事よりもなおまた抽象論で、さっぱりわからない。倫理道徳を説くことはいいでしょうが、これは法務大臣の任務ではないかもしれないね。私どもはそんなことをお尋ねしているのではない。これは法制上改める点が多々あると思う。法務省はそれに着手したと私ども考えておったのだが、どうもあなたの話を聞いてみても、倫理を説くようなお話で、経営者ほんとうに良心的であるというようなことは、これはもう問題にも何もならぬことなんだ。ただ、法に携わる者は、いかにして彼らが逸脱しないようにするかということの、その具体的な案がほしいわけです。ただいま私は、日東紡には気の毒ですけれども、具体的な事例をあげませんとぴんとこないから日東紡の問題を持ち出したのですが、相当粉飾がある。そして資産水増しがあるということを大蔵省自身お認めになっておるわけであります。これは私は商法規定違反するものだと思うのですが、こういう事実があった際に、大蔵省検察庁はいかなる連絡をなさったのであるか。みな何か内々で、財界のお歴々が中へ入ってこれをうやむやにしてしまうような傾向があるわけですが、それに対して検察庁もはなはだ弱腰だ。相手の会社が大会社だと、はなはだ弱腰だ。ほんとうの株主の利益を守り、財界の健全な発展ということに対して実に消極的です。そこで、この新聞法務省は大いに奮起するように書いてあるから、もっとあなたから具体的な案をお示しいただけるかと思って質問したのだが、これが新聞以下だから、問題になりません。  そこで、いまのこの日東紡の件については、どういう処置をとられましたか。それから大蔵省は、法務省とどういう連絡をとられたか。これはやはり脱税事件のように、国税庁から法務省告発するとか、通告するとかしなければ、こういう事件というものは法務省としては捜査困難だと私は思うのだ。大蔵省は、どういう連絡法務省ととられたか、それを明らかにしてください。
  20. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 日東紡の問題は、当時は、先ほどの御指摘もございましたように、大蔵省といたしましては有価証券報告書重点審査をいたしまして、その結果数多くの粉飾が見つかったわけでございます。ところが、私どものほうに有価証券報告書提出されている会社は、全体で二千三百ございます。本省で所管しているものが、そのうち千ある。その中で重点審査を、先ほどの御指摘のように百以上のものについてしぼってやったわけでございます。そうしましたら、先ほども申し上げたように四十ないし五十近い粉飾経理会社があることが指摘されましたが、当時の情勢から判断しますと、とにかくできるだけ早く全般的に粉飾経理を一掃する必要があるというふうに考えております。と申しますのは、この四十、五十のほかにも相当会社がなお粉飾経理を行なっているのじゃないかというふうに予想されまして、したがって、できるだけ早く全般的にこの粉飾経理を一掃することが、投資者の保護のためにもぜひ必要だというふうに考えておったわけでございます。そこで、この発見された会社を含めまして、すみやかに各会社が自主的に粉飾是正をする、そういう措置を講ずるということにしたわけでございます。  そこで、この発見された会社につきまして、刑事訴訟法に基づく告発ということを当然考えたわけでございますけれども、一方、ただいま申し上げましたように、速急に粉飾経理を一掃する効果をあげるためには、自発的に粉飾是正をこちらから要請し、また会社側もこれに従って処理するという方法を講じたのでございまして、こういう考え方につきましては、当時法務当局にも御連絡を申し上げたわけであります。
  21. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、そういう問題が起こったときに、検察庁大蔵省はどういうふうにやっていらっしゃるのか。この事件については、連絡を何にもしなかったわけですか。
  22. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 当時法務当局に対しまして、刑事訴訟法の公務員の告発義務解釈上の問題もございましたので、ただいま申し上げましたように、私ども考え方につきまして、そういう考え方処理したいという旨の御連絡を申し上げたわけであります。
  23. 猪俣浩三

    猪俣委員 一体法務省は、検察庁がこういう連絡大蔵省から受けたとき、どういう処置をなさったのか。
  24. 川井英良

    川井政府委員 いまあげられましたような会社についての粉飾会計をめぐっての刑事事件について、直接具体的な連絡を受けたわけではありませんで、刑事訴訟法に定めてある官吏、公吏が職務の遂行上犯罪のあることを知った場合には告発をしなければならない、こう書いてあるけれども、この規定解釈として細大漏らさずいかなる場合においても必ず告発をしなければならない、こういうふうなこれは強行規定で、義務規定であるのか、裁量が認められるものかどうかということについて、法務当局大蔵当局のほうから相談を受けたことがございます。それに対する私ども考え方としましては、これはしなければならないと書いてあるけれども解釈としては必ずしも義務規定あるいは強行規定というふうには読めないので、判例の中にもこれは訓示規定である、こういうことを言っているものもございます。そこで問題は、この行政機関がそういうふうな会社経理監督する立場にあるものが、その監督趣旨からいって、告発をして刑事事件にするよりは、告発をしないで行政指導によってまかなったほうが、社会的、国家的な立場から見ればかえって妥当である、こういうふうに判断したわけであります。言いかえてみれば、告発をすることによってかえって本来の行政目的が阻害されるというふうな特別な事情がある場合においては、これは裁量が認められるものであろう。絶対に告発をしなければならない、こういう趣旨規定ではない、こういう考え方を回答したことがございます。
  25. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは大蔵省検察庁法務省の全くのなれ合いなんだ。それをみんなでやっているからいけないのだ。その大蔵省なるものは、今度は大会社に圧迫されておるのだ。いわゆる実業家の大ものなんというものが入り込んでもみ消しをやる。そういう連絡大蔵省でしたときに、これは一体親告罪じゃないでしょうが、なぜ検察庁は独自の見解でもって捜査を始めないのです。商法違反親告罪ですか。そうじゃないでしょう。大蔵省がそんな連絡をしてくる以上は、くさいと思って捜査を始めるのが当然ではないか。また、そういう連絡をしたときに、あなた方が回答なさる前には、どこの会社でどういうことだか、内容を聞いた上でそれはこうだ、あれはこうだと言うならわかる。そのとき、何のことについてそういう刑事訴訟法規定解釈を求めてきたのか、その具体的事実について聞いたのですか、聞かぬのですか。
  26. 川井英良

    川井政府委員 検察庁のこの種の事件についての取り調べの、あるいは処理態度でございますが、たとえば昭和四十年度には、粉飾会計をめぐっての刑事事件を百三十三件処理しておりますが、その百三十三件のうちの六〇%に当たる八十件は、検察官の認知であります。告訴、告発その他何もなしに、本来の涜職事件その他のほうから入ってまいりまして、粉飾会計によって商法違反ないしは刑法違反があるということで処理した事件でございます。四十一年度には百五件を処理しておりますが、そのうち四六%に当たる四十八件は、同様検察官がみずから認知して処理した事件でございます。それから先ほど大臣からもちょっと申し上げましたが、三十八年の七月十八日の財政係検事会同における刑事局長指示以来、ほとんど毎年にわたりまして、この訓示ないしは刑事局長指示におきまして、会社倒産をめぐっての最近の経済界の状況にかんがみて、この種事件については適切妥当、厳正な処理をやるべしということにつきまして、非常に強い態度を持っております。いまのようなものから申しまして、必ずしも数字が十分とはいえないかもしれませんけれども、この種事件に対する検察庁態度というものは、かなり積極的であるということは、私は言えると思うのであります。  そこで、問題は、この種の事件について、先ほど証券局長からお述べになりましたように、細大漏らさず一切のあれがあった場合において、すべてこれを刑事事件として処理するということが妥当かどうかということにつきましては、私どもやや異なった考え方を持っておるわけでございまして、このようなものにつきましては、まず行政取り締まり監督官庁がございますので、その監督官庁におきまして第一次的な責任を持って行政指導によって誤りなきを期していくというふうな方法前提といたしまして、それをもってなおまかなえない場合に初めて刑事罰が出ていくというふうなところが、基本的な方針としては妥当ではないか、私はこういうふうな考え方を持っておるものでございます。それで、本件の場合におきましては、そういうことが非常にやかましくなったということで、一斉に監督官庁におかれまして重点審査をやられた。何千件もあるうちから百件を選んで重点審査を行なって、その結果、そのうちの何割かにおいて違反があるということが明白になったという取り締まりの実態にかんがみまして、その場合に、行政当局においてこれは行政指導をもってまかなうのが妥当だというふうに判断いたしまして、あえて告発をしないということでありますれば、これは行政当局考え方を優先せしめるのが妥当ではないか、こういうふうに考えたわけでございます。
  27. 猪俣浩三

    猪俣委員 いま起訴された事件件数が発表されておりますが、資本金どのくらいの会社がどのくらい検挙されておるのであるか、そういう比率の調査がありますか。なかったら、それはあとで出してください。とにかく小さな会社には非常に厳重だが、大きい会社はみな免れて恥なしという状態、その最も極端なのは日通ですよ。あなた方幾らえらいことを言ったって、日通のようなああいうような状態をいままで許しておく、ぼくはそこに大蔵省も、通産省も、法務省も、はなはだ怠慢があったと思うのです。検挙された会社は、どの程度の資本金会社なんですか。それは統計があったら、言ってみてください。
  28. 川井英良

    川井政府委員 いま申し上げました数字の全部についての資料はただいま持ってまいっておりませんけれども、たとえば大阪土木、資本金七億、山陽特殊製鋼七十億、富士車輌三十億、こういうふうな会社がこの中に入っております。
  29. 猪俣浩三

    猪俣委員 それじゃわかりませんから、検挙された会社全部の資本金のパーセンテージを、あとでもいいですから調べて出してください。
  30. 川井英良

    川井政府委員 調査してみたいと思います。
  31. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこで、その行政指導にまかせるというところに非常に欠点があるのです。だから、法務省でも今度は厳重にやらねばならぬというふうに決意を固められたと思うのです。行政指導にまかせるというようなことは、いいようであってはなはだルーズなんだ。日本の事業家というのは、どうもアメリカの事業家に比べて相当良心的じゃない者が多い。だから、やはり制度的にこれを厳重にしなければ、日通事件みたいなことが次々に起こります。この日東紡なんというのは、日本十大紡績会社の一つであり、相当の大会社、由緒ある大会社です。しかも六十億円からの水増し財産をつくって、タコ配当をやっておる。それでもこれは行政指導にまかしたほうがよろしいというような態度をとった裏には、日本興業銀行が非常に働きかけたという事実がある。さっき私がちょっと触れましたが、大蔵省にあやまりに行ったのは、興銀の重役があやまりに行った。  そこで興銀と日東紡との関係でありますが、これは私は公正取引委員会の御意見を承りたいと思うのです。興銀は、日東紡の第一の株主である。四百数十万株持っておる。そうして二百数十億円の融資をやっております。これは間違いないことだと思いますが、大蔵省どうですか。
  32. 澄田智

    ○澄田政府委員 日東紡に対する興業銀行の持ち株でございますが、これは四十二年十月末で四百四十一万二千株、全体の株数のうちの六・三%を保有しております。一番保有の割合の高い株主でございます。それから興業銀行の同じく日東紡に対する融資でございますが、四十二年十二月末で、全体で日東紡の全部の借り入れ長短合わせまして百七十億円でございますが、そのうちで興業銀行からの融資が七十八億円ばかりでございます。
  33. 猪俣浩三

    猪俣委員 昨年の二月まで日東紡の社長を十数年つとめておられた島田英一という人は、日本興業銀行の常務取締役であった。それをやめて日東紡に入ってきて、ついに副社長から社長になって、十数年日東紡経営しておった。それからやはり興業銀行の融資第一部長であった周布公兼という人物、これも興業銀行をやめて日東紡の取締役になって、後に常務になる。これも十年近く日東紡で勢力をふるっておった。なお現在の取締役であり、繊維企画本部長をやっておる秀島侃という人間、これは日本興業銀行の中小企業部融資第一課長、これが日東紡に入ってきまして、現在やはり繊維企画本部長という重要な職にある重役である。それから現在常務取締役の長島武夫、これも興業銀行の人事部の参事役をつとめておった。これがやはり日東紡に入ってきていま常務をやっておる。現在社長の柿坪精吾という人物、これは通産省の通商局輸出振興部長をやっておったそうでありますが、これも興業銀行の頭取である中山素平の旧友ということで興業銀行からここの社長に押し込んだ。みずから株を有し、みずから金融しておるということによって、この日東紡の人事権は興業銀行に握られている形である。これは片倉製糸の後身でありますが、その当時のはえ抜きの重役というものは、ほとんど首になってしまった。そうして業績はどうかというと、名門である日東紡が、今日十大紡績会社の最下位で、しかも無配当、おびただしいタコ配をやり、水増し資産をやっておったのは、全部この興銀から来た社長、重役たちである。一体こういう金融機関が、金融しているということを奇貨として、その人事権に容喙し、ほとんど幹部の大部分を興業銀行からの派遣人事によって占めるというようなことは、ぼくは独占禁止法の違反だと思うのであるが、公正取引委員会の御見解を承りたい。
  34. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 私的独占禁止法は、第十九条におきまして不公正な取引方法を禁止しております。で、何が不公正な取引方法であるかということにつきましては、一般指定をもって規定をいたしておりますが、現在御指摘の事実が一般指定のその条項に該当いたしまするとすれば、私的独占禁止法の違反になると存じます。ただ金融機関もと在職した者が事業会社に就職いたすという場合におきましても、その個人の経営能力あるいは専門的能力によって事業会社経営に参画するという場合があるわけでございます。独占禁止法に常に違反するというふうには申せないのでございます。
  35. 猪俣浩三

    猪俣委員 これはあなた方も具体的に調べなければ、抽象論としてはあれですが、私は、少なくともいま私が申しましたような事実というものは、独占禁止法及び公正取引委員会が告示として出しておる不公正な取引方法として指摘されておる第九号に相当違反しておると思う。あなたの言っているように、それは銀行から来たといって直ちにこれだと言えないけれども、いま申しましたように、この島田という社長は全くの独裁権をふるっていた。そしてあらゆることを興銀と相談してやっておった。だから、さっき申しましたように、タコ配のことに対する大蔵省の摘発に対しても、興銀から陳弁に行っている。この興銀という会社は、興和不動産という会社、あるいは共立株式会社というような会社、一〇〇%興銀が株を持っておる会社です。こういう会社で、不動産の売買から、広告の取り次ぎから、保険業から、ありとあらゆることをやっておる。しかし、これは日通と同じやり方です。まるでタコの足があるように、多角経営といえばいいかもしれぬが、日本興業銀行なるものは、これは戦前と戦後は性格は違ってきたと思いますが、しかし、普通の市中銀行と違うと思うのです。大蔵省、どういうふうに違うのですか。
  36. 澄田智

    ○澄田政府委員 戦前の日本興業銀行は、御承知のように、これは特殊銀行で、全面的に政府の監督と特別な法的地位を持っておったわけでございますが、戦後、通常の民間金融機関に興銀が一度変わりまして、それから長期信用銀行法ができましてから、長期信用銀行ということになりまして、銀行法による普通銀行とは違いまして、長期信用銀行として、債券を発行して、そして長期あるいは中期の金融を行なう、こういう性格の銀行になったわけでございます。これは御承知のように、興業銀行のほかに、日本長期信用銀行、日本不動産銀行等が、いずれもこの長期信用銀行法に基づく銀行、こういう形になっております。そういうふうに、金融機関としては、銀行法でなく、別の専門銀行の法律によって営業を営んでおりますが、金融機関としては全く純粋の民間のものでございます。
  37. 猪俣浩三

    猪俣委員 そういう市中銀行とは特別なる一つの特典を持っておる銀行ですが、こういう銀行が多角経営のようなことをやって、ありとあらゆる事業に手を出すというようなことは、一体銀行局長としていいことだか、悪いことなんですか、銀行の本来の任務の上からいって。これは、わが党の只松委員からも大蔵委員会質問された点だと思うのです。その点詳しく言いませんけれども、不動産会社——興和不動産と申しまして、そのほかに共立株式会社、全部一〇〇%興銀が株を持っておる。こういうところに、一体こういう特別な特典を持っておる銀行が、こういう保険業から、取り次ぎ業から、土地の売買から、ありとあらゆることをやるというようなことは、大蔵省から見て、これはどういうことなんです。
  38. 澄田智

    ○澄田政府委員 いまお話しのように、過日もその点只松委員から御指摘があったわけでございますが、銀行がたとえば担保物件として持っておる担保の物件に対して、それに保険をかける、これは通常担保にとった場合やることでございますが、あるいはまた、担保物件の管理、処分、あるいは銀行の固有の営業用の不動産の有効利用といったような見地から、別働会社を持って——しかし、これは銀行の固有の業務に密接不可分である、こういうようなものについて別働会社を持ってこれに当たらせるということは、広く行なわれておりますし、また、銀行の営業上も必要なことであると思うわけでございます。ただ、いま御指摘のように、そういった範囲を越えまして、一般の不動産業を営む、それから保険の代理付保といったような関係、当該銀行の担保物件というだけでなくて、一般の保険代理業等も営む、こういうような会社については、これは銀行の経営と別なことでございますし、そういう点について銀行が支配している会社を持っていろいろ事業を広げていくというようなことは、これは銀行の性格からいっても慎しまなければならないという場合があるわけでございます。この点につきましては、銀行の業務の密接不可分なものについては、むしろ一〇〇%持ち株でもって完全に自己の別働隊としてこれを経営する。それ以外の一般の不動産業務、あるいは保険代理業務、広告取り次ぎとか、そういったようなものについては、これはそういう自己の支配という形ではなくて、一般のコマーシャルベースで銀行としては取引先としてやっていく、こういうふうに、その間のけじめをはっきりするようにというような点につきまして、四十年にそのうちの不動産関係については通達も出しましたし、その後、銀行の監督等を通じて逐次そういうふうに是正をせしめてやってきておるところでございます。興業銀行についても、そういう線に沿ってやっておるわけでございます。  なお、興和不動産及び共立株式会社は、これは一〇〇%持ち株でございませんで、たとえば共立株式会社で申し上げますと、興銀の株式保有率が九・六%と、かようになっております。
  39. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、興銀のやり方については、大蔵省としては、現在のやり方はよろしいということでありますか。何かそれに対して、興銀に大蔵省の意見を通達したことがあるのか。その実態を調査されたのですか。それで、いまあなたがおっしゃるように、あまりに銀行業務とかけ離れたようなことは、これは不相応というふうな御意見なんだが、この興銀のやり方について、実態を調査なさったか。そうしてなさった結果、何かの勧告を発したのか、発しないのか、あるいは実態調査の結果、よろしいということになったのか、どっちなのか。
  40. 澄田智

    ○澄田政府委員 先ほど私申しました一般の方針は、各金融機関にこれは徹底をいたしまして、その後、銀行検査その他の指導監督の機会を通じて、そういう趣旨に基づいて是正すべき点があれば是正させるということでまいってきておるわけでございます。興業銀行の場合は、興和不動産も持ち株比率は一〇%以下でございます。それから、共立株式会社も、先ほど申しましたように九・六%というようなことで、なおその運営の状況等は今後も十分よく注意をいたしまして監督をしてまいらねばならないと考えておりますが、興業銀行が支配権をこれに完全に及ぼして、そうして興業銀行の意思でこれを動かし得る、こういうような形が逐次是正されて、一般のコマーシャルベースで銀行の融資対象というような形に切りかえられつつあるものと、現状においてはそういうふうに見ております。
  41. 猪俣浩三

    猪俣委員 公正取引委員会に聞きますが、これはやはりだれかが報告なり申告しないと、活動しないのですか。公正取引委員会が事実関係を耳にしたならば、調査なさるのですか。どっちなんですか。
  42. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 公正取引委員会は、申告に基づいて活動をいたします場合と、独自の判断によって活動いたします場合と、両様ございます。本件につきましては、現在調査いたしておりませんが、もし具体的事実について御申告がございますれば、調査をいたす準備はございます。
  43. 猪俣浩三

    猪俣委員 昭和二十八年九月の公正取引委員会の不公正な取引方法というものが例示されておる、その九号に「正当な理由がないのに、相手方である会社の役員」——「第二条第三項の役員をいう。」とあるのですが、「の選任についてあらかじめ自己の指示に従い、または自己の承認を受くべき旨の条件をつけて、当該相手方と取引すること。」この疑いが興銀と日東紡の間に十二分にある。実績もそれを証明して余りある。中枢部はほとんど全部興銀出身者で占められてしまっている。こういう実情があるから、あるいは近く申告するものがあるかもしれませんが、公正取引委員会としては調査に入っていただきたい。というのは、あなた方、新しい意味じゃないでしょう。普通の日本経済新聞、あるいは「財界」、あるいはその他の雑誌相当興銀のことが暴露されています。そうして日東紡との関係なんかも、時間がありませんから一々申しませんが、私たちだって相当持っている。こういう新聞雑誌にみな明らかにされている。それを公正取引委員会が独自の見解でお取り上げにならぬということは、ぼくは怠慢だと思うんだが、これはひとつ検討してみていただけますか、どうですか。
  44. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 検討いたしてみたいと存じます。
  45. 猪俣浩三

    猪俣委員 検察庁に要望があるのです。日東紡については抽象的な法解釈について質問を受けただけであるようでありますが、こういうふうに事実が明らかになって、タコ配をやり、そうしてはなはだ水増し財産を持っておるということが明らかになっている。これはもうあらゆる新聞雑誌に全部報告されている。これに対して法務省はそのままほうっておかれるのですか。法務省としては、ここに何らかの新たなる、国会でそういう質問が出たことを契機にして、捜査されないのですか。これはひとつ大臣のお考えを聞きたいのです。
  46. 赤間文三

    赤間国務大臣 政府委員刑事局長から答弁をさせます。
  47. 川井英良

    川井政府委員 法務省としては、そういうふうな相談を受けたにとどまりますけれども、具体的に行政当局告発をするとすれば地検だと思いますので、地検のほうには、まだこの点について私話を聞いておりませんので、捜査を開始していないようでありますから、告発はされていないものと思っております。
  48. 猪俣浩三

    猪俣委員 このタコ配に関する時効は、刑事訴訟法上一体何年ですか。
  49. 川井英良

    川井政府委員 商法のあれは、法定刑は五年ですから、公訴時効は五年だと思います。
  50. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすれば、日東紡のやったタコ配なんというものは、十分時効にかかっておらぬと思う。あれはあるいは告発は出るかもしれませんが、十分に御検討願いたい。これはやはり将来の日本の企業を健全ならしめるために必要だと思う。  そこで、公認会計士の問題につきまして伺います。公認会計士大蔵省監督なさっていると思いますが、大蔵省公認会計士に対してどういうふうな監督をなさっておるのであるか、御説明を願いたい。
  51. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 公認会計士法に定めております大蔵大臣公認会計士に対する直接の権限を申し上げますと、第一は、公認会計士業務の適正な運営を確保するための報告または資料の徴取、第二は虚偽証明、信用失墜等法令違反を行なった者に対する懲戒処分、この二つございますが、このほか会員の指導監督を行なっております日本公認会計士協会に対しましても一定の監督権を持っておりまして、間接的に公認会計士監督を行なう仕組みになっております。なお、このような権限を背景にしまして、公認会計士監査水準の向上と公認会計士制度が適正に運用されるよう、行政指導を行なっております。
  52. 猪俣浩三

    猪俣委員 公認会計士の懲戒処分というのは、どこでやるのですか。
  53. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 大蔵大臣公認会計士審査会にはかって行ないます。
  54. 猪俣浩三

    猪俣委員 さっきの大蔵省で重点主義で検査をなさって、相当の不正があるというようなことがわかる、それには公認会計士はみな監督しておるのですか。
  55. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 公認会計士が関与しておりまして、公認会計士監査に不十分なものがある場合、あるいは虚偽の証明を行なった者につきましては、それぞれ懲戒処分を行なっております。
  56. 猪俣浩三

    猪俣委員 十五、六人懲戒処分になったようでありますが、この日東紡公認会計士小西という人物、これは会計士仲間でも相当定評のある人物ですが、この人物について懲戒処分がたいへんおくれて、ほかの会計士はみな懲戒になっておるのに、この人物だけが一年間も懲戒にならないで済んだ。それはどういう理由ですか。
  57. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 小西会計士責任追及が問題になりまして、私のほうも当局としましてもすぐ調査に着手いたしたのでありますが、ちょうど当時は小西会計士は病気療養中でございまして、主治医にも相談しましたが、公認会計士法上の調査、審問及び聴問には耐え得ないという状況でございましたので、病気の回復するまで調査の手続を延期いたしましておくれました。なお、同人はことしの一月二十日に死亡しております。
  58. 猪俣浩三

    猪俣委員 先ほど申しましたように、タコ配配当をして、告訴しても、検察庁は、公認会計士監査証明があるからいいじゃないかというふうな、それほど公認会計士というものを検察庁は重んじているようだが、これははなはだ私は不都合だと思うのです。その前に山陽特殊製鋼の事件があって、公認会計士を懲戒処分に付した。公認会計士なるものは一体いかなる働きをしているか、天下に暴露されたにかかわらず、なお大阪の地検はそういうことを言うておりました。近江絹絲のタコ配について。とにかくこの昭和三十何年の新聞を見ましても、公認会計士が十六人も一ぺんに懲戒処分になったと書いてある。だから、公認会計士制度というものに対して、これは相当検討をする必要があると考えますが、これはいまどこかの機関公認会計士制度について改正なり検討なさっておるでしょうか。これは法務省でやっているのですか、あるいは大蔵省でやっているのですか。
  59. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 公認会計士制度につきましては、公認会計士審査会というものがございまして、大蔵省の付属機関でございますが、そこで検討しております。それで、公認会計士の資質の向上ということについては、御指摘のようにいろいろ問題がございますので、いまいろいろ努力をしておるところでございまして、一昨年公認会計士法の一部改正をいたしまして監査法人になっております。それから、先ほど申し上げましたように、日本公認会計士協会というものを法的根拠のある特殊法人といたしまして、公認会計士のレベルアップ、監査水準の向上、監査法人の設立、そういう形をもって公認会計士の資質の向上ということに努力しておる最中でございます。
  60. 猪俣浩三

    猪俣委員 いまあなたの申しましたような監査法人、これは日本には現在四つしかない。しかもあまり利用されておらぬ。アメリカあたりは、ほとんど監査法人であって、ここが厳重なる監査をやっている。そこに日本の事業家とアメリカの事業家の非常に違うところがぼくはあると思うんだが、そこでいま聞きたいのは、たとえば八幡製鉄と富士製鉄がいま合併問題が起こっている。一体八幡製鉄なんというマンモス会社は、一体どのくらいの公認会計士がどのくらいの日数をかけて監査しているか、大蔵省は検討なさったことがあるか。
  61. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 ただいま御指摘の八幡の例につきましては、ちょっと私数字を存じておりません。ただ、全般的の監査の水準でございますが、これは御指摘のようにかなり低いという状況でございます。平均的に申しますと、資本金百億円以上の会社で百日足らずというような状況でございます。先ほどお話しのございましたたとえば日本通運なんかも、監査の日数は延べの百五十日ぐらいというように承知しております。
  62. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは個人の公認会計士監査には、力の限度があると思うのです。しかも会社重役が良心的であって大いに監査しやすいようにすればいいけれども、そうじゃない。逆で、公認会計士に対してなるべくごまかすようなことばかりやっていることは、私も実例をたくさん知っておる。これを何とかしなければ、いつまでたってもこの粉飾決算なんてものは解消しないと思うのですが、それにはやはりいま会計士協会、監査法人というような組織を奨励するとともに、何とかこういうものによって、少なくとも資本金何億円以上の会社監査を受けるというようにしなければ、私は日通みたいな事件が今後も起こると思うのです。これに対しては皆さんも御同感のようですから、ただどういうふうに具体的にやるかということについていろいろお考えがあると思いますが、何か具体的なお考えはないでしょうか。
  63. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 ただいま御指摘の点まさにそのとおりでございまして、私どもといたしましても、監査法人が法律改正後四件できたにすぎないということは、非常に寒心にたえない状況でございます。しかも一方、粉飾経理はなお四十二年におきましても出ております。そこで私どもといたしましては、この二月の二十九日に大蔵省から財務局長へ、もう一つは公認会計士協会へと二つの通達を出しましてこの粉飾経理の一掃に一そう努力したい、そして重点監査をさらに続行し、強力にやっていきたいということが一つと、それから公認会計士協会に要請しましたことは、監査法人の設立を大いに促進してもらいたい。それから監査水準の向上、先ほど申し上げましたような資本金百億にも及ぶような大きな会社につきましても百日前後しかやらないということでは、とうてい満足な監査ではないので、そのレベルアップのために基準を設けて監査していただきたいということを慫慂し、努力中でございます。監査法人につきましては、その通達の末尾にも私のほうで書いたわけでありますが、今後おおむね二年くらいの間に、資本金五十億程度の会社につきましては全部監査法人でもってやれるように私のほうとしてもやっていきたいから、そういうつもりで監査法人の設立を促進してもらいたいということをつけ加えております。
  64. 猪俣浩三

    猪俣委員 いま八幡について調査なさっておらぬようでありますが、八幡とか富士とかいう大会社に対しまして、公認会計士は一体どういう監査をやっておるか。監査役というようなものは、全く意味がないのです。まさに重役の下請機関になっております。これは重役が選ぶというような組織になっておりますから無理もないが、こういうものを根本的に変えなければだめだと思います。そこで、たよるところはいま言ったような監査法人というようなものだと思うのですが、八幡、富士なんかがどのくらいの公認会計士を入れてどういう外部からの調査をやっておるのであるか、少し調査をしていただきたい。それと申しますのは、八幡、富士が今度合併するという話が出ておる。そうなると、ますますもって膨大なものになってしまう。これは公正取引委員会出ておりますが、この八幡、富士の合併というものは、独占禁止法の精神に非常に違反しておるような点があるのじゃないか。独占禁止法では、合併についていろいろの条件を出しておる。だから、八幡、富士というような大会社が合併して独占価格を樹立するということに対しては、消費者としても容易ならぬことだと思う。対外競争力を強めていくということだけでかような全く大独占をどんどん許していくということになりますと——いま経済界の一つの傾向のようでありますが、そうすると、この独占禁止法の法律は全然意味をなさぬようになると思うのですが、公正取引委員会ではこの問題について調査研究をなさっておるのかどうか、御意見ありませんか。
  65. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 公正取引委員会といたしましては、一定の取引分野の競争を実質的に制限するようになる合併は、私的独占禁止法をもって禁止されておりますので、世上伝えられております八幡、富士の合併につきましては、十分慎重に、かつ厳正な態度で審査に当たりたいというふうに、委員長が国会でも答弁いたしております。ただ、本件につきましては、まだ両者から何らの申し出がございません。
  66. 猪俣浩三

    猪俣委員 いま一点法務省にお尋ねしますが、さっきの公認会計士の問題ですが、この懲戒処分された者はみな官報か何かで公告される。しかし、どの会社監査についてこれが懲戒処分を受けたか。少なくとも会社と共謀であるか会社から押しつけられてやっておるわけでしょう、公認会計士会社から報酬をもらっているんですから。だから、公認会計士の名前だけ出して、その彼を使った、彼をして懲戒処分を受けしめたその会社の名前まで発表されるのか、されないのか、それを説明していただきたい。
  67. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 公認会計士法上の懲戒処分につきましては、公認会計士の氏名を官報等に登載して発表されますが、会社のほうにつきましては、これは証券取引法に基づきまして訂正命令が出ます場合、当然これは明らかになるわけでございます。
  68. 猪俣浩三

    猪俣委員 私どもは、その懲戒を受けた人の名前のみならず、ちょうど裁判所の判決みたいに、どういうことで懲戒を受けたか公表する。そうすると、会社の名前が出てくると思うのだ。それを公表なさるようになれば、会社でも注意するようになると思う。それを公表しないでいる、そういうところにもやはり会社がルーズになる点があると思うのですが、御考慮を願いたいと思うのです。  政務次官がおいでになっておりますから、大蔵政務次官にお尋ねいたしますが、いま事務当局からいろいろのことを聞いたわけですが、最後の締めくくりとして、一体大蔵省として銀行その他の証券会社、そういうものに対する監査調査及びいわゆる商法違反、証券取引法違反——みな商法違反、証券取引法違反をやっているわけです。こういうものに対しては、相当——行政的措置なんて、これはあいまいなんです。それだから、大会社、大銀行にはみんな圧迫されちゃうんです。現に法務省の、あるいは大蔵省監査についてきびしい態度が発表されますと、経団連あたりからそれに対して猛烈な反対運動が大蔵省なりあるいは法務省に出てくるというふうに聞いている。そういう運動に押されましてこれをうやむやにいたしますと、日通みたいなことがしょっちゅう繰り返されることになる。今日大企業の合同が相当盛んに唱えられておりますが、これを一体無制限に許していいかどうかというようなことに対しても、十二分な配慮が要ると思うのです。無制限に大会社をつくるなら、ますますその勢力が膨大になり、政府といえどもこれに引きずり回されることに相なる。監査なんというのはなかなか容易じゃない。もし大企業の合併を許すといたしますならば、これは徹底的な監査制度を樹立しなければならぬと思うのです。そうして法務省と密接な連絡をとって、悪いやつはどしどし検挙するという材料を法務省に提供していただきたい。政務次官として御答弁をいただきたいと思います。
  69. 倉成正

    ○倉成政府委員 最近の会社粉飾決算あるいは世上言われております不正経理等、まことに遺憾に存じます。一般論として申し上げますと、大蔵省がやれる権限は、有価証券について有価証券届け出制度に基づいてこれを監督する。それから先ほど証券局長からお答えいたしましたように、公認会計士監督、これを通じて会社経理が適正であることを監督するということ、それから銀行に対しましては、銀行に対する検査という制度がございます。したがって、一番基本になるのは、法務大臣も申されましたけれども、やはり会社経営者の自覚ということでありますが、同時にこれをチェックする制度としてやはりきめ手となるのは、公認会計士制度を充実し、またこれに対する監督、指導ということをしっかりしていくことではなかろうかと思うわけであります。先ほどから猪俣委員の申されましたように、公認会計士制度がまだ日本で取り上げられましてから日もなお浅いものでありますから、三千有余名の公認会計士がおられますが、まだまだ十分この機能を発揮していないという点がございます。したがって、アメリカにありますような監査法人——個々の公認会計士であればやはり会社の力に押される、あるいは独立性を失うということがございますから、できるだけ監査法人の制度を充実していって適正な監査ができるようにしていく、また不正の場合がありましたら信賞必罰をはっきりしていくという態度でまいりたいと思うわけであります。また同時に、ただいま財界その他からの圧迫で大蔵省の行政等が曲げられることがないかというお話でございますが、さようなことは絶対にございません。やはり大蔵省としましては、その使命に基づいて厳正に行政を行なっていく所存でございます。
  70. 猪俣浩三

    猪俣委員 私は、大蔵省及び公正取引委員会に対する質問を終わりますけれども、同僚の横山委員からの関連質問がございますので、それが済みましてから、入管に関する問題に移りたいと思います。
  71. 横山利秋

    横山委員 端的に三、四点伺いたいと思うのでありますが、粉飾決算、先ほどお話がございましたが、百社ですか、先ほどおっしゃった総件数並びにそれによって粉飾決算と見られる額の総額は、どのくらいに昨年度はなっておりますか。
  72. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 先ほど御説明申し上げましたのは、四十年に行ないました重点審査の場合のあれでございまして、総額等はちょっといまわかりません。
  73. 横山利秋

    横山委員 粉飾とは、申すまでもなく粉で飾る決算である。つまり赤字を黒字に、黒字を赤字に、多様性があると思うのですが、いずれにいたしましても山陽特殊製鋼の際に、税金は損したと申告し、粉飾決算はもうけたと申告をする、その矛盾が生じまして、本委員会並びに大蔵委員会で、粉飾決算税金の問題について、大蔵省内部で、両局によって、片方は赤字、片方は黒字というばかげた受け付けをする方法があるかと強く指摘をされまして、そうして統一性を連絡をして行なうようにという指摘をされたことは、御記憶のとおりであります。今回摘発をされました粉飾決算は、その粉飾されたとおりに税金が出されておるのでありますか、確認をいたしましたか。
  74. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 担当の企業財務第一課長が見えておりますから、そちらからお答えさせます。
  75. 安井誠

    ○安井説明員 粉飾決算のケースによりましては、税金を納めないで粉飾利益だけを公表しまして、税務申告を赤にいたしておりますケースと、それから税務のほうも、同時に粉飾利益に基づいて税金を納めておるという二つのケースがございます。
  76. 横山利秋

    横山委員 税も粉飾どおりに納めた場合、税務は赤だ、粉飾は黒だという場合と両方ある、おっしゃるとおりであります。それではまず最初に、税務も粉飾して赤を黒とした場合に、納め過ぎですね、事実からいうならば。今度粉飾が摘発されて赤となったら、そうすると税務の場合返戻をしますか。
  77. 安井誠

    ○安井説明員 国税庁ないし主税局の問題でございますけれども、私の存じておりますことを申し上げたいと思います。従来どのように返すか、つまり税務調査というものが調査したところに従って更正等を行なうということに法律上はなっておりますので、返すべきではないかという議論があったわけでございますが、昨年の法人税法の改正によりまして、税務署長は、粉飾経理に基づいて過大に利益が計上されているときは、確定決算においてその粉飾経理処理されるまでは税金を返さないことができるという規定が入っております。
  78. 横山利秋

    横山委員 これはその法律をぜひ励行してもらいたい。  その次に、いまのもう一つの分、つまり赤と黒、税務は赤、粉飾は黒ということがいまもってあるということは、どういうことでありましょう。だれの責任でありましょう。
  79. 安井誠

    ○安井説明員 先ほど来お話しのございました事案は、昭和四十年ごろの事案でございまして、最近私どもが扱っております事案には、大体なくなってきているという感じがいたしております。
  80. 横山利秋

    横山委員 そうしますと、両方とも粉飾どおりに行なっておるということですね。
  81. 安井誠

    ○安井説明員 そのような事案のほうが大半といいますか、もともと全体として数も少なくなっておりますけれども、その中でもそういうケースが多いようでございます。
  82. 横山利秋

    横山委員 わざわざ税金を余分に納めて粉飾をする。なぜそうするか。一つはぼくは金融上の問題だと思うのです。金を借りるために、税金をわざわざ余分に納めても粉飾決算をする。そうして金融上、政府の財政投融資なりあるいはまた開銀なり輸銀なりの金を借りるときにインチキをやっておる、こういうわけでございますね。
  83. 安井誠

    ○安井説明員 どのような目的でやっているか、ちょっと私存じかねるのでございますが……。   〔委員長退席、田中(伊)委員長代理着席〕
  84. 横山利秋

    横山委員 存じかねるとはおかしいじゃないですか。少なくとも粉飾をやっている理由というものは、一つには社会的にその会社の信用を保持する場合もあるだろう。それは首肯できる。しかしながら、それだけではないはずです。そういう会社の社会的な立場というばかりではなくて、株主の利益、また同時に私の言うような金融上の利益、何か利益がなければ、それは行なうはずがないのです。私は、むしろ社会的にたとえば某大会社がことし赤ではどうもぐあいが悪いというだけの目的でやっているはずはない。毒食らわば皿まで、どうせ税金を余分に納めるならば見返りに何かいいことを考えるのはあたりまえなんだから、その意味において金融操作上は、この粉飾を、つまり赤であるものを黒として開銀なり輸銀なり財政投融資をみついでもらっておる、こう考えるのが適切ではないかと思うのですが、銀行局長はどう考えますか。
  85. 澄田智

    ○澄田政府委員 いろいろのケースがあり得るとも思いますが、金融機関から借り入れをしやすくするために粉飾をして利益を計上するというようなことも、やはりあるかと思います。ただ、いまお話しのように、開銀等の政府金融機関からの借り入れという場合よりも、これは民間金融機関からの従来の借り入れを継続したい等のために、経営面をよく見せるというような場合が多いのではないか、これは推定でございますが、さように考えております。
  86. 横山利秋

    横山委員 いずれにしても粉飾決算が金融上において相当の役割りをしておることは、見のがせない事実だと思う。そこで私は、先ほど猪俣委員からおっしゃった、粉飾をした会社の扱い方について、各関係省並びに関係局はもう少しシビアーになってもらわなければ困る。刑事局長は、この粉飾したものに対しての刑法、商法、そのほかの措置については、「ねばならぬ」と書いてあるものを「することができる」というような解釈、極端にいえばそういう解釈がとれるのだ。そしてまずもって行政措置でやってもらって、その結果を見て刑事訴訟法なりその他の追及をする、これは私はもうけしからぬと思っておる。そんなものは何も関係がない。行政措置関係がないと思うのであります。同時に、行政措置のあり方、証券局のあり方も、証券局だけでとどめるべきではない。これは国税庁の問題であり、銀行局の問題であり、それから法務省の問題である。それを一々やらないで——これはこの際公表すべきだと思う。この際一罰百戒をしなければ、法務大臣が行ってしまっていかぬけれども経営者の道義的責任と言っておっても、私はだめだと思う。この際、粉飾決算をした会社はすみやかに公表をして、その公表を手がかりにしてあらゆる関係機関税金なりあるいは金融なりあるいは法務省なり、それぞれがそのような立場で対処するようにしなければだめだと思う。証券局長、どうお考えですか。
  87. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 ただいま御指摘のとおりだと思います。先ほど来の四十年の重点監査の結果、かなりの粉飾が出て、その後これの一掃につきまして努力をいたしましたが、四十二年は、当初われわれのほうの検査の結果は、二つの会社粉飾経理をやっておることが明らかになりました。かなり少なくなっておる。かなり経営者の自覚が高まったというふうにわれわれは考えております。昨年の年末になりまして二十六億にのぼる粉飾経理をやっていたという会社が出まして、われわれも非常にがく然として、これではいかぬ、本年からもっと重点監査をしっかりやらなければ、そしてその上の措置も厳重にやらなければならぬということで、先ほども申し上げましたような二月の二十九日に……(横山委員「公表しなさい」と呼ぶ)通達を出しまして、その結果、もしそういう事態がございますと、訂正命令等を発しますれば、公表ということになるわけであります。
  88. 横山利秋

    横山委員 訂正命令ばかりでなくて、問題のあるものはちゃんと公表制度を設けるべきである。そして社会的な責任を追及すべきである、こう考えます。  その次の問題としては、商法の問題であります。先ほど法務大臣商法の改正点について触れられて、公認会計士制度の強化、監査役を単に会計監査でなくて業務監査を付加するというようなお話であります。問題は、いま私ども追及いたしておりますのも、主として大企業であります。ただ、私どもが考えなければならぬなとは、株式会社といってもピンからキリまである。うどん屋株式会社から八百屋株式会社で、専務何やっているかといったら、裏でおむつの洗たくをしておる、こういう会社まであるわけであります。そこで、一般の政策行為においてお互い与党、野党ともに考えておりますのは、中小企業政策であります。いま商法がうどん屋株式会社から八百屋株式会社まで適用されて、役員の改選も株主総会を開いて、そして税理士なり公認会計士なりが株主総会をやったと法務局へ届け出ておるけれども、中小企業のうどん屋あるいは八百屋で株主総会をやるといったら、茶の間でやって、専務が裏から茶わんを洗って飛んでくる、そういうようなばかなことはちっともないのであります。事実問題としてはないのであります。そういううどん屋株式会社に至るまで商法の全面適用をされておって、もしも法務大臣の言うような、公認会計士制度は一億以上でありますから別といたしましても、監査役会計監査のみならず業務監査までするように商法改正するとなったら、専務がおむつを洗っておいて、今度はどんぶりが幾つ要った、私は監査役だというようなことになる、こういうことは考えられないのであります。この際、私は率直に言って、株式会社法を二つに分けて、きわめて常識的な言い分をするわけでありますが、中小株式会社法、一般株式会社法、そうすることによって実情に合わせるべきだ。そうして一般株式会社法におきましては、監査制度その他について十分にシビアーにやるべきだ。そして中小株式会社法においては、現行商法を極端に簡素化し、実情に合わせるような運営をさせるべきだ。これはすべての経済立法におきましても中小企業については特別な計らいをして実情に合わしておるのでありますから、この商法改正にあたっては、当然そういうことが爼上に上がらなければ、一般的に大会社のことばかり考えていろいろやってみても、これは絵にかいたもちである、実際問題としては実行できない、こういうふうに考えるのでありますが、いかがでございましょう。
  89. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 株式会社監査制度、あるいは現在の株式会社法を規模の大小を問わず、すべての株式会社に適用するのがいいか悪いかという問題でございますが、この点につきましては、一昨年商法の一部改正を御審議いただきました際に、横山委員からも御指摘のあったところでございます。法務省といたしましては、昨年会社更生法を集中的にやりました関係で、商法の改正に実質的に手をつけることができませんでしたが、昨年の春から再び商法の改正に取り組んでおる次第であります。さしあたっては、御指摘のように、株式会社法なるものをすべての株式会社に適用するのがいいか悪いかという、きわめて基本的な問題がございます。しかし、審議方法といたしまして、その問題にいきなり取り組むというよりは、さしあたって緊急性ありと認められます監査制度についてまず検討を加え、さらに引き続いて、いま御指摘のような問題についても検討しようという方針もとに、ただいま商法の改正について法制審議会を中心にして検討を重ねておる次第であります。  特に、この際申し上げておきたいと思いますことは、株式会社監査制度でございますが、これにつきましては、現行法上業務監査につきましては取締役会が行ない、会計監査監査役が行なうということになっておりますけれども監査役の地位が必ずしも十分確保されていないといううらみもございます。そういうことを考えまして、監査役の権限をさらに充実強化し、また地位を確固たるものにする必要があろうと考えまして、いろいろ検討いたしているわけであります。まだ結論を得たわけではございませんけれども猪俣委員の御心配の面もございますように、この監査制度をさらに充実するためには、業務監査も将来監査役の職務の範囲に取り込んでいったらどうかというようなこととか、あるいはそれに関連して必ず実現しなければならないと思いますのは、監査役の地位を強化する、独立性を確保するということであろうと思います。そこで、監査役の任期をいまのように一年というふうな短期のものでなく、さらに長期のものにするとか、あるいは選任、解任について監査役の意見を十分反映させるように、さらにその経費とかあるいは報酬につきましても、取締役会に左右されないような確固たるものをつくったらどうか。さらに、公認会計士制度の充実強化と相まちまして、大会社につきましては、監査役監査のほかに公認会計士監査をも行なわせるようにしたらどうかといった点をおもな問題といたしまして、現在監査制度の検討をいたしているわけでございます。まだ結論を得たわけではございませんけれども、昨年、一昨年あたりのいろいろの経済的な事情も頭に置きまして、できるだけすみやかにその方向で検討を進めていきたいということで努力を続けております。
  90. 横山利秋

    横山委員 両政務次官にお伺いをしたいのであります。  経営者責任という問題で、先ほど法務大臣経営者責任について言及をされました。私は思わず「何をするのだ」ということを言うたわけです。今日、日通をはじめ、日大をはじめ、古くさかのぼれば山陽特殊製鋼をはじめ、そうして年々歳々の粉飾決算で、これが経済界の混乱の一つの原因にもなっていると私は思うのであります。労働者が違法行為の疑いがあると、すぐ政府声明が出ます。しかし、労働者はきわめて素朴に、率直に、自分の訴えをぶちまけているわけであります。労働者が違法の疑いがあるといえば、これらのいま指摘をされた日通、日大、あるいは猪俣委員指摘されたような各個の経営者の問題は、明らかにこれは違法の問題であります。労働者に対して違法の疑いがあるというときに政府が談話を発表するならば、これほど経営者が各方面において経済の混乱行為をやっております際に、なぜ一体政府は態度を明白にしないのか、こういう法務委員会で談たまたま話が出たのであって、何か法務大臣は逃げ口上のように経営者責任を言及なさるということは、私はその気持ちがあって言っているのではなくて、回避答弁の材料に使っておられるにすぎないような気がしてなりません。ほんとうにそう思われるならば、この際、満天下経営者粉飾決算相ならぬ、そうして金の延べ棒を取り込むようなことは経営者道義に反するものであると、明白に経営者に対して頂門の一針を政府としても天下に対して明らかにすべきだと考えるのですが、御両所はいかがお考えでございますか。
  91. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 横山委員のおっしゃるとおりでございまして、そうした経営の不正ということが国民精神に非常な害毒を流している、そういう点において、私ども政治姿勢としてもそういう点についてはっきり態度を示すべきだと思います。そういう御趣旨十分にくみまして、政府にも伝えたいと思います。
  92. 倉成正

    ○倉成政府委員 企業が利潤を追求すると同時に、その社会的、公共的使命があるということは、御指摘のとおりであります。したがって、社会的、公共的な立場から責任を問われるような経営者態度というものは、十分反省すべき問題である。これに対して政府がどういう意見の発表をするかということは、やはり適時、適切な機会をとらえてそういった経営者の自覚を促すことを、政府の意見として出すべきであろうと思います。しかし、ただ抽象的にお説教をするだけでは何の効果もございませんから、やはり実質的に制度の面あるいはその他の点についていろいろな問題をさらに反省して、十分深めていくことが大事なことではなかろうかと思います。
  93. 横山利秋

    横山委員 御両所とも同感のようでございますが、大蔵政務次官のおっしゃる適時、適切というのは、いまが適時、適切だと私は判断している。御両所が御同感であるならば、しかるべく政務次官会議なりあるいは関係大臣に私どもの意見を伝達してくださいまして、何らかの措置をとってくださるように要望いたしたいと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  94. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 横山委員の御趣旨を十分にくみましてよく相談しまして、適当な方法を講じたいと思います。
  95. 横山利秋

    横山委員 公認会計士の問題について先ほど論及がございましたが、監査法人が四件しかない、あるいは二年後には五十億以上は監査法人でやらせるようにしたいというお気持ちを承りました。本件につきましては、すでに大蔵委員会なりあるいは当委員会においても重ねて附帯決議その他で言及をしておるところでありますが、当時から問題になっておりますのは、いま数千の公認会計士がおりながら、その八、九〇%までが公認会計士の実務をしておらない、実は税理士の仕事をしておるということであります。なぜそういうことになるのか。一つは、練達の士に公認会計士本来の仕事が集中をしているきらいがある。第二番目には、監査日数があまりにも少な過ぎて、いわゆるマーケットが少なくなる、こういう問題があると思うのであります。したがいまして、すべての公認会計士が非常に困難な公認会計士試験を突破いたしまして資格を持っているにかかわらず、いささかもそれが経済の近代化に寄与する機会を得られないということは、私はきわめて残念なことだと思っておるわけであります。大蔵委員会は、すでに私学なり、あるいは宗教なり、経済的に、経営的に、会計的にいろいろ問題があるところ、また政府の財政投融資が多額に流れるところは、公認会計士監査のワクの中に入れるべきであるという趣旨の附帯決議を国会の意志として出しておるわけであります。しかるところ、この問題が遅々として進まないような気がいたすのであります。国会の意思が十分に行なわれていないような気がするのであります。そこへ日大の二十億の脱税事件というものが発生をいたした。したがって、この際、証券局のみならず、政府全体として、この遊休な——遊休というのは、遊んでおる知識でありますが、公認会計士全体に、いい意味で競争をさして、経済の近代化、会計の合理化、監査制度の発展のために働く機会を得させることが必要だと私は痛感するのでありますが、その後の進展、今後の方向はどういうふうになっておりましょうか。
  96. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 ただいま横山先生御指摘の問題のうち、学校法人による大学等の新増設の場合に公認会計士が関与するように運営上なっておりまして、これはかなりの成果をあげておることと存じます。しかし、全般的にまだ不十分じゃないかということは御指摘のとおりで、その点はこれから十分検討してまいりたいと思っております。
  97. 横山利秋

    横山委員 答弁が簡単ですけれども、私の趣旨に対してはどうお考えでございますか。
  98. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 証券局としましては、基本的に全く同感でございます。
  99. 猪俣浩三

    猪俣委員 大蔵省関係には私の質問はありませんから、どうぞお帰りください。  入管にお尋ねいたしますが、先般、柳文卿なる台湾独立青年同盟の青年が強制送還をされましたとき、これは国連の精神、世界人権宣言の精神、そういうものに違反するのではないかという質問をしましたとき、いや、これは台湾側が十分な保障をしておるから、人道的な見地に立っておるから心配がないのだという御答弁がありました。その保障なるものは、駐日中華民国大使館から法務省入国管理局に対する覚え書きであります。これがどういう効力のあるものかについてははっきりしないのでありますが、こういう一体外国の大使館から日本の一局へあてた覚え書きと称するようなものは、どういう効力があるのですか。
  100. 大塚博比古

    ○大塚説明員 外国の大使が日本の外務大臣にあてました覚え書き、そういったものでございますれば、これは覚え書きの内容にもよりますけれども、国家間の行為の文書として有効であるということは申せると思います。
  101. 猪俣浩三

    猪俣委員 私が聞いているのは、大使館から日本の法務省の入管局あての覚え書きなるもの、こういうものが外務省から見てどういう効力があるか、こういうことです。
  102. 大塚博比古

    ○大塚説明員 厳密に申し上げまして、そういった文書には、国家間の約束としての効力はないものと考えます。
  103. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは入管局長、どうですか。
  104. 中川進

    ○中川(進)政府委員 この席でもかねて申し上げましたように、正式の外交文書というものでないということは申し上げたとおりでございますが、法務大臣からここで御答弁申されましたごとく、いやしくも一国の大使館が相手国の政府機関に対しまして書きもので約束したということは、それ相応の意味があると存じます。
  105. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは一九六一年の外交関係に関する条約なるもの、これに日本も入っている。これには、外交交渉は外務省を相手にするか、もしくは外務省を通じてのみ行なうということになっている。しかるに、外務省を全然はずして入管局なるものにこういうものを出している。これに違反をして外交交渉をやることは、この条約からはちっとも出てこない。これはどうなんですか。たとえば柳君がどういう処置を受けたとしても、それはあなた約束が違うじゃないかと、こちらで抗議ができますか。
  106. 中川進

    ○中川(進)政府委員 できると思います。
  107. 猪俣浩三

    猪俣委員 どういう根拠ですか。この一九六一年の日本も参加している外交関係に関する条約の中には、外務省というものを通ずるか、外務省を相手にしなければできないというふうになっているんじゃないですか。それに日本は参加しているんですよ。そうすると、外務省を全然通じない大使館と入管局の約束なんていうものは、外交交渉としては、これはたてにしてはできないんじゃないですか。私どもは、それをお互いの道徳的なことでどうこういう意味じゃないのです。要するに、法律的に見てこれは効力がないんじゃないか。これに違反した場合は、外交交渉をする際の材料にならぬのじゃないか、これをお尋ねしているんですよ。どうしてあなたはなると言うのですか。
  108. 中川進

    ○中川(進)政府委員 元来、不法滞在の外国人をその本国へ帰すということは、日本政府独自の権限でございまして、必ずしも先方から特に何の保障ないし帰ってからどうするというような、将来の見通しというようなことに関して通知を受けることは、必要ではないのでございます。私どもがこの中国大使館からそういう書類をいただきましたのは、しばしばここで申し上げましたごとく、柳文卿が万が一帰って何か生命、身体に危険があるということでございますと、私どもも入管令の実施について二の足を踏まざるを得ない。そこで、その点に関しまして私どもの心証を得る。すなわち、彼を台湾に帰しましても生命を奪われる危険はないという心証を得まして入管令の執行をしたいということを考えていたしたわけでございます。その限りにおきまして、これは大使館が判こをついてその心配はないと言うておるのでございますから、正式な意味におけると申しますか、厳密な意味における外交文書ではございませんが、やはりこれは中国大使館の公の文書でございますので、中国が全然これに無責任で、何をしてもかまわないということにはならない、かように考えます。
  109. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは全く効力のないものを——外交上効力のないものです。それを受け取って、そうしてこれを送還なさる。送還した際に、われわれのようにこれは人道主義に反するじゃないかという非難が出たときの隠れみのにこれをおとりになっておる、こういうふうに私どもは考える。あなたも外交官出身でいらっしゃるならば、この外交関係に関する条約を御存じないはずはないんです。こういうお互いに外務省を通ぜざる文書については責任を持たぬということは、この条約の中にはっきり出ているわけです。それを御存じの上でなおこういうものをおとりになってやっておるということは、これは私は台湾に向かって抗議をする文書としてよりも、対内的の、われわれの非難に対しまする隠れみのとしてこういうものをおとりになった、こういうように考えるよりしようがない。何の効力もないものです。台湾政府に対して、この覚え書きに違背しておると責めることはできない。それはその人間、違法に日本におる人間に対する支配権は日本政府にあるでございましょうが、しかし、これはほとんど国際慣習法として成立しておる。自分の本国に帰りたくないと言うものを無理に帰してはならないことは、国連憲章からいっても、世界人権宣言からいっても、あるいは難民亡命に関する国際慣習法からいっても、これは定立されておるものですよ。それだから、こういうものをおとりになったんだと思う。もしそれならば、ちゃんと日本の外務省を通じて、効力があるものにどうしてなさらなかったのか。なぜ外務省を通じて、外務省と中国の大使館との間のそういうものにして、そうして送還なさらなかったか。こういうものをあらかじめとっておいて、そうして帰される。そうして非難されると、これを持ち出す。しかし、これは何の効力もないものだ。これじゃ、私どもは納得できないんです。もしあなたが言うように、向こうに行って迫害を受けてはいけないので、人道主義に立ってこういう一札をとったというならば、外務省を通じてどうしておやりにならなかったか、それをお尋ねします。
  110. 中川進

    ○中川(進)政府委員 個人間のいろいろな約束にもいろいろな形式があると思いますが、たとえばいわゆる印鑑証明をとりました正式の実印を押して約束をしたことなら有効であるが、認め程度の判こを押した書きものなら責任を負わなくていい、そういうようなものじゃないと私は思います。これはやはり少なくとも向こう側のとにもかくにも公文書でございまして、それを日本側の政府機関提出しておるものでございますから、これは全く何らの効力がないとおっしゃるのは、やや行き過ぎじゃないかと思うのでございます。私どもはなぜ実印をついた正式のものをとらなかったかと申しますと、これは先生よく問題にせられます日本に来ておりますところの亡命的要素のある人々がかなりおるわけでございますが、そういう人々を送り返す場合におきまして、一々相手方の外交機関を通じて正式の国家間の約束を取りつけないと日本の入管令の執行ができないということでは、たいへん煩瑣なことになるわけでございまして、私どもとしましては、先ほど申しましたように、執行機関におきまして本人の生命が侵されることのないという具体的な心証を得て、そして私どもとしてはこの入管令の執行を行なう次第でございます。その私どもの心証を得るための一つの手段として、こういう書きものあるいは大使の約束をもらったにすぎないのでございます。
  111. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたは心証と言うけれども、私どもの心証ははなはだよくないのですよ。なぜならば、裁判を受けるすきを与えないように送還なさった、そういう事実があるはずだ。今晩収容して翌早朝帰してしまった。裁判所から仮処分の申し立てがあるという通知を受けても、もう飛行機に乗せてしまった。本人は舌をかみ切って血だらけの姿で乗せられたというわけで、帰し方が異常なんです。だから、外務省などを通じているひまがなかったでしょう。なかったかわりには、これは無効ですよ。日本の憲法によれば、外国との条約を非常に尊重するということになっているじゃありませんか。効力のあるものは外務省を通じなければならぬと、ちゃんと条約になっている。じゃ、向こうから、そんなものは入れたかもしれぬが、外務省あてじゃないんだから拘束されないと言われれば、それきりじゃないですか。だから、こういうものをあらかじめとっておいて、そうして裁判を受けるひまのないようにして、送還された。しかも、その文書を見れば、覚え書きを見れば、これは思想の転向を条件としているのです。思想、信条の自由をうたっておる世界人権宣言とおよそ違う。過去においてどういうことを言っても、思想さえ転向すればこれは過去のことを問わぬと、こういう意味のことなんです。転向しなければやるわけですよ。そういう思想、信条の自由を奪うことになれば、転向を条件にして送還するというようなことは、大体間違っているじゃないですか。確信を持って彼らは独立運動をやっておる。転向しなければ、彼らは死刑にされるかもしれない。向こうにそういう法律がある。この覚え書きは、転向した場合の覚え書きですよ。転向を条件にして送り返すということそれ自体が、すでにもう思想、信条の自由を阻害していることだとぼくは思う。これを私どもがやかましく言うゆえんのものは、この柳君と同じような立場の人が四十人もあるのですがね、これらを一体——こういう送還をしたのは二人で、アヘン密輸業者六十人引き取ってもらったそうですから、一人引き取るごとに三十人という約束をなさったということだが、ほんとうだと思う。ちょうどいまそういうことになる。二人に対して六十人引き取った。そういう取引に使われるというようなことも、これ私は非常な問題だと思うのですね。それはそういうことをやったとおっしゃるまいから、これ以上言いませんが、ちょうど比率は、そうなると二人強制送還して六十人引き取ってもった、こういう一対三十ということはほんとうの話だといま思うわけですが、そこで私どもしつこく言いますのは、それであなたは台湾へ帰っても幸福にやっている人間のことを報告をなさっておるのですが、その真偽のほどはわかりませんけれども、一体、この柳文卿がいまどうしているかなんということについては、入管ではこの覚え書きを信用されてお帰しになったというんですが、どういう調査をなさっていますか。私ともの——これは確報でありません、なお調査はしておりますけれども、どうもうちに帰っておらないという情報が入っておる。これは、入管でどういうふうな情報になっておりますか。
  112. 中川進

    ○中川(進)政府委員 これは本委員会におきましても、先般、本人が台湾の飛行場に着きましたときの両親の出迎え及び一緒にとった写真をお見せいたしましたが、その後、本人から大使館にあてまして、自分はいま放免になっている——と申しますのは、帰りました直後、二日ほど取り調べられたそうでございます。自由になって家族と一緒におるという通知が来ておりますし、それからついきのうでございますか、私のところにあてまして、日本語でりっぱに書きまして、自分はいま家族とともに何ら障害なく安穏に暮らしておるということを言ってまいりました。もし猪俣委員御要求がございましたら、後刻でもお見せいたしますが、これはきょう持ってまいっておりません。それとともに、母親及び妹二人ととりました写真が二枚入っておりまして、私どもといたしましては、本人は無事に暮らしておる、かように考えております。
  113. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなた方としても、それ以上しようがないと思うのだ。それを本人が任意で書いたものであるかどうかも、もう調べようがないでしょう。私は、おどかされればどんなことでも書くと思うのです。死刑になるようなことでも自白するんですから。しかし、日本政府としてはしようがないと思うのだな、ああいう約束をしたものだから。そういう手紙を、私は舌をかみ切ってまで強制送還された人間が、入管に感謝みたいな手紙をよこすということは、異常だと思うのです。彼がほんとうに、本心からそういうものを書いたのか、書かせられたのか、非常に疑問だと思うんですよ。しかし、いまあなたと議論しても、あなたもどうしようもないし、私もどうしようもないのですが、その彼の手紙は、後日お見せいただきたいと思います。  それからなお一つお尋ねしたいことは、これはこの前ちょっとお尋ねしたのですが、陳玉璽という、二十九歳になる人物、これはハワイ大学の経済学部を出て、そこの助手をやっておった、マスター・オブ・アーツの資格のある人物ですが、これが昨年の八月日本へやってきた。これは観光ビザで来たらしい。それで、期限が来たので、三月までビザの延長手続を済ませておったそうですが、本年の二月八日午後一時に仮放免の手続をするからといって、東京入管に呼び出されて、そのまま収容されて、これも柳と同じように翌日の朝九時半の飛行機にもう乗せられてしまった。ただ、ここには弁護士会の長老でありまする宮崎龍介氏が身元引き受け人になってちゃんと入管へ届けてあるはずでありますが、この身元引き受け人に対しても何も言っておらない。やはりこれも、それを知りまして直ちに異議申し立てに裁判所に行ったのですが、もう帰されてしまって、あとになってしまった。そのときも、やはりあなた方は、こういう中華民国の出した覚え書きによって決して心配がないからということでお帰しになったと思うのだが、この人物は、この前私質問したときに、彼が東京にいたとき寄留しておった川田泰代という人のところに、いまだにせがれが帰ってこないという父親からの訴えがあったと言いましたが、最近また手紙が参りまして、彼は台北の軍法所——日本の軍法会議みたいなものだろうと思うのだが、軍法所の留置場に監禁されているということがわかった。そうして家族が行っても、一切面会禁止になっているそうであります。これは台湾青年独立連盟へ入っておった人物でないようでありますが、とにかく強制送還されて、現在監獄へぶち込まれておる。これは一体どういう理由で、どんな保障でお帰しになったのか。
  114. 中川進

    ○中川(進)政府委員 陳玉璽は、ただいまお述べになりましたごとく、昭和四十二年八月十七日、私どもの入管の四−一−四というビザで入ってまいったのでございます。日本に参りまして、将来台湾大学の講師になって就職したいということで、そのためには日本の経済の勉強をしたいということで、日本におらしてくれということがございました。普通でございますと、この観光ビザで入ってきた人にまたそういうように延ばすということはなかなかやらないのでございますが、まあとにかくしばらく置いてあったのでございます。しかるに、昭和四十二年、昨年の十二月十五日、期限が切れますにかかわらず、本人はこの期間更新を申請いたしませんでしたので、そこで、昨年の十二月十五日以降不法残留、こうなったのでございます。御承知のごとく、不法残留になりますと、これは私どもとしましてはやはり強制退去というところにいくわけでございまして、本人に対しましても本年の二月八日に退去強制を命じたのでございます。本人は台湾へ帰りたいということを申しておりまして、そして自費で出国したのでございまして、私ども入国管理官署の現場の係官が、お前はほんとうに台湾へ帰りたいのか、ほかへ行きたいのじゃないのかと申したのでございますが、本人は、いや、私は台湾へ帰って台湾大学の先生になりたいのだから、台湾へ帰してくれということで、自費で出国したのでございまして、先生のいま御指摘のような点は、私はこの前先生がここで言われましたとき初めて承るわけでございまして、ほかに何ら本件に関してこういう問題になろうというようなことは、全然考えておりませんでした。
  115. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、この陳玉璽がいまどういう立場にいるかは、あなたのほうは調査なさっておるのか、なさっておらぬのか。
  116. 中川進

    ○中川(進)政府委員 調査しておりません。
  117. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこで、調査しておらぬというのですが、台湾へ私は帰りたいということに非常に疑問があるのです。軍法会議へ回されて監獄へ入っているんですよ。一切面会禁止なんだ。だから、あなた方の言うことは、どうも信用ならないのだ。そういうことが、この人物がわからぬ道理がないのだ。みずから台湾へ帰りたいなんて言う道理はありませんよ。だから、どうもそこがはなはだ私どもは遺憾だと思うのです。  これは、私どものいま考えておることは、この難民あるいは政治亡命というものに対して日本の法令が非常に不備であり、だからこれは入管だけ責めてもしょうがないと思うので、根本的に改正しなければならぬと思うのです。いま出入国管理令の改正をなさっておるそうですが、どういう点を改正なさっているのか、改正の要点をお知らせ願いたい。
  118. 中川進

    ○中川(進)政府委員 御指摘のごとく、私どもは、この出入国管理令がポツダム政令によるものでございまして、非常に体裁もよろしくございませんし、内容も若干時勢に合わない点が出てまいりましたので、改正したいと存じております。その改正の私どもが考えております案の大綱は、要するに短期旅行者——いま国際交通が非常にひんぱんになりました。この入管令ができたときには予想もしなかったほど国際交通の量がふえまして、たとえば昨年の日本における出入国の総数というのは三百万をこえておるわけでございますから、そういう短期の出入国者に対する便宜と申しますか、手続と申しますか、そういうようなものをより簡易、容易にするということが第一点。第二点は、それだけふえたということは、結局日本の中にいる外国人の数がふえたことでございますから、その在留の管理をより適正ないし厳正にすると申しますか、にしたいということが第二点でございます。詳細に関しましては、まだ局限りの案でございまして、法務省としては案が固まったという、そこまではいっておりませんので、詳細の説明は御容赦願いたいと思います。
  119. 猪俣浩三

    猪俣委員 私まだ質問がありますけれども、同僚の質問あとに続くようですからこれで切り上げますが、最後、これは要望でありますけれども、少なくともことしは世界人権年の年でありますが、世界人権宣言の精神にのっとって、少なくとも本人がいやがるところへ帰すについては、どうしても帰さなければならぬ事情があるにしても、日本の裁判を受ける期間だけ置いてやってくださいよ。その裁判を受ける——まるで裁判所を避けるようにして送還されるというようなことは、幾ら陳弁なさっても、われわれは納得できない。だから、とにかく裁判を受ける——いま日本において最も信用されているのは裁判だと思うのです。この日本の裁判を受けたいという外国人に裁判を受けさせてやるということは、最も大いなる人道主義だと思うのです。それでやむを得ないものは、これはやむを得ないと思う。だから、私どもは裁判を受ける時間だけ置いていただきたい。そうしてまたどうしても帰さなければならぬような場合には、この一九六一年の国際条約に基づきまして、多少時間がかかっても、外務省を通じて大使館と外務省の話にしていただきたい。そうしないと、それは効力がありません。その点について入管局長及び外務省の方も、送還に対しては関与していただきたいと思います。それについて御意見を承って、私の質問を終わりたいと思うのであります。
  120. 中川進

    ○中川(進)政府委員 先生の御要望の点、十分尊重してやっていきたいと思います。
  121. 金沢正雄

    ○金沢説明員 ただいま先生のおっしゃった点を考慮して、検討いたしたいと思います。
  122. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員長代理 岡沢完治
  123. 岡沢完治

    岡沢委員 ただいまの猪俣委員質問とも関連させてもらい、また柳文卿事件の背景ということも考えて、これから二、三の問題について質問したいと思います。  第一点は、在日台湾人の法的地位の問題。外務省としてもお答えをいただきたいと思うのでございますけれども、柳文卿事件が起こったのもやはりそれと結びつくと思うのでございますが、御承知のとおり、在日韓国人につきましては、日韓基本条約、またそれに付属する協定等で特別の地位が与えられておるわけでございます。ところが、台湾と朝鮮はいずれも過去の日本の歴史において悲しい過去を持っているわけでございますけれども、朝鮮の場合は三十五年間の統治、台湾はむしろそれよりも長い五十一年間の日本の統治があったわけでございますし、私の友人にも台湾人で日本の士官学校を卒業した同期生もおりますけれども、同じ日本人として、日本の国のために、あるいは天皇陛下のために、あるいは大東亜戦争で戦死をした人員、あるいは空襲で死亡した人員、軍属として徴募に応じた人々、死亡者だけでも五、六万人にのぼると聞いておるわけであります。そしてまた、先ほど申し上げました日韓条約に結びつきます特別の協定でうたわれた精神と申しますか、「多年の間日本国に居住している大韓民国国民が日本国の社会と特別な関係を有するに至っていることを考慮し、」それと同じような前提が、いま申しましたような理由から、在日台湾人にも当てはまると私ども解釈するわけでございますが、そういうことも考慮した上で、政府として在日台湾人の法的地位を在日韓国人並みに変更する意思はないか、あるいはもしないとすれば、その理由はどこにあるか。私は、当然に在日韓国人並みに処遇する義務と必要性があるような感じを持ちますので、お尋ねをしたいと思います。
  124. 金沢正雄

    ○金沢説明員 在日台湾人の法的地位でございますが、まず、戦前と申しますのは昭和二十年の九月二日以前でございますが、そのときから引き続いてわが国に在留しております台湾人と、それから昭和二十年九月三日から平和条約発効の日でございますところの昭和二十七年四月二十八日までにわが国で出生しましたその子、この者につきましては、平和条約の発効によって日本の国籍を失って新たに外国人となったわけでございますが、その戦前からの特殊の事情をも考慮して、別に法律で定めるところによりその者の在留資格及び在留期間が決定されるまでの間、引き続き在留資格を有することなく本邦に在留することができる。」ということになっております。これは昭和二十七年法律第百二十六号、第二条の法文でございます。  それから次に、右のようなもののあれで、昭和二十七年四月二十八日以後にわが国で出生いたしました者につきましては、在留期間として三年が認められておりまして、その在留期間の更新、それも認められる、こういう状況でございます。政府といたしましては、これらの者については、当分の間この関係の法律を存続させまして、従来どおりの処遇を与えていく、こういうふうな方針できておる次第でございます。   〔田中(伊)委員長代理退席、委員長着席〕
  125. 岡沢完治

    岡沢委員 私から指摘するまでもなしに、先ほど申し上げました「日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定」によりますと、いわゆる永住権の問題、強制退去の問題につきまして、在日韓国人は特別な法的保護を受けているわけであります。具体的に永住権の問題、特にいまの柳文卿とも結びつきますけれども、強制退去の問題について、せめて在日韓国人並みの法的保護をなさる御用意があるか、あるいはそれについての今後の外務省としての御方針等について、具体的にお答えいただきたいと思います。もしそれができないとおっしゃるなら、その理由をおっしゃっていただきたい。
  126. 金沢正雄

    ○金沢説明員 退去の問題につきましては、これはむしろ法務省のほうからお答え願ったほうが適当じゃないかと思います。ただ、先ほどの御質問にお答えしなかった点申しわけないのでございますが、韓国人について認めている待遇を在日の台湾人について認めたらどうか、認めるべきではないか、そういう御意見であったわけでございますが、この点につきましては、韓国の人たちにつきましては、御承知の日韓交渉の際、国交回復の問題でございますとか、それから請求権の問題でございますとか、経済協力の問題でございますとか、そういういろいろなあらゆる案件を含めまして一括してその中に在留の問題というのが規定されたわけでございまして、それはいわば韓国人の場合は特殊な状況からできたものじゃないかというふうに考えておりますので、台湾人につきましては、その取り扱いはさっきも申し上げましたようにそれほど問題はないわけで、現実の面でそういう取り扱いを続けていけばいいのじゃないか、しいてこれを新しい取りきめその他結んでやらなくてもいいんじゃないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  127. 岡沢完治

    岡沢委員 私は、いまの答弁はきわめて不満足でありますし、今度の柳文卿事件の背景とも結びつきまして、いわゆる台湾人の中で台湾独立を標榜される方が相当あるということから、要らざる配慮を国民政府あるいは中共に対してなされる、そういうことから、結局事なかれ主義で一時を糊塗されておるというふうにしか解釈できないわけであります。なるほど、国民政府からも喜ばれず、中共からも喜ばれない台湾独立運動をなさる方々の存在かもしれませんけれども、私は、新しい憲法を持ち、また国連憲章の精神を考えましたときに、自由に生きる日本人としては、あるいは日本民族としては、ことに過去の歴史上大きな責任と反省を持たなければならない朝鮮民族の方々あるいは台湾人の方々に対する態度としては、いかにも外務省のお役人らしい通り一ぺんのいまの御答弁は、私は非常に不満であります。大きな問題でもあるだけに御答弁しにくいということはわかりますけれども、ぜひ前向きで今後検討いただきたいし、われわれも今後の政府の態度については引き続いて注目をしてまいりたいと思うわけであります。  関連するわけでございますけれども、第二次大戦、大東亜戦争の際、先ほどちょっと触れました、台湾人で日本の軍人、軍属として戦死をしたりあるいは負傷をしたりされた方も相当あるわけでありますが、その補償問題に対して政府はどういうふうに考えておられるか、お尋ねいたします。
  128. 金沢正雄

    ○金沢説明員 御質問にお答え申し上げます。戦時中に日本軍に召集、徴用された台湾人の俸給等の未払い分が、四万六千余件ございます。金額にして約六千万円ほどになります。それから死没されました方の遺族に支払うべき弔慰金のうち、在日遺族に支払った残り、これは総数九千九百余人分、その金額約一千百万円でございますが、これは現在中国側との間に話し合いがついておりませんので、東京法務局にこの金額は供託されておる、そういう状況になっておるわけでございます。この台湾人のもと日本軍に属しておられた軍人、軍属のこういう請求権の問題と申しますのは、日華条約の第三条に基づきまして、これで両国政府の間で特別の取りきめの問題になっておるわけでございます。政府といたしましては、この問題も含めまして、両国間の請求権の問題を協議によって早く解決しようということを、かねがね中国側に申し入れておる次第でございます。しかしながら、中国側のほうからは何ら今日まではっきりした回答はない、こういう状況でございます。
  129. 岡沢完治

    岡沢委員 いまお答えにもありましたように、まさに日華条約の第三条の問題だと思うのでございますけれども、この日華条約自体が昭和二十七年に締結され、すでに発効している条約であります。それから十五年もたっておりますのに、いまだにいまおっしゃいました特別取りきめがなされておらない。これは相手方のあることでもありますけれども、やはり現実にいまの補償の問題、十五年もたち、あるいは戦後二十年もたっていまだに解決されない。国と国との事情はあるにしましても、それに該当する当事者、遺族とか法人にとりましては、私はたいへんな不利益だと思うのでございます。先ほど来指摘いたしましたように、国民政府との問題、中共との問題、非常に微妙な問題があることはわかりますけれども、やはり日本政府としてもっと積極的に、いわゆる人権保護の立場から、あるいは過去の歴史に対する贖罪の立場から、誠意をお示しになるべきではないかというふうに私は感じます。  次に、この際資料を要求しておきたいのでございますけれども、たとえば日本に在住される朝鮮民族の方につきましては、大韓民国あるいは北朝鮮との関連におきまして、かなり詳しい国籍その他の資料があるようでございますが、在日台湾人の現状についての資料、人数、その中での、先ほど申しましたような意味で国民政府に国籍を移している者、あるいは台湾独立関係の運動に従事しておられる方々、あるいは中共政府に近い方々、そういう分析をした資料、あるいはその職業、それから留学生も含めまして、年齢の分布等につきまして、お調べ可能な範囲での資料を御提出いただきたいと思います。  この際、ひとつ法務省のほうにお聞かせいただきたいのでございますけれども、いま私が触れました在日台湾独立運動関係者に対する取り扱いについて、政府の対処方針と申しますか、法務省としてはどういう御方針をお持ちであるか、お尋ねいたします。
  130. 中川進

    ○中川(進)政府委員 第一の資料要求は、これはまあなかなか微妙な点も含んでおりますが、私どもとしましてはできるだけ努力いたしまして、極力御要望に沿うようにいたしたいと思います。  それから第二の御質問の点でございますが、これはしばしば申しておりますように、入国管理局といたしましては、台湾独立運動をやっておるから、日本から全部が全部出すのだとか、先ほど猪俣先生おっしゃいましたように、その他の退去強制該当者を引き取らすための、ことばは悪うございますが、引き出ものとして出すのだとか、そういうようなことを別に考えているわけではございませんので、とにかく台湾独立運動をやっておろうとおるまいと、入管令違反、退去強制事由に該当するということが起こりますと、退去強制を命じておる、こういう次第でございます。  ただ、台湾独立に対しましては、それに加えますに、柳文卿あるいはそれ以前にも問題がありましたが、万が一本人がその本国あるいはその他のところでもよろしゅうございますが、送還先におきまして生命の危険があるというような場合におきましては、これをその危険のある場所へは帰さないというふうにつとめたい、かように考えておる次第であります。
  131. 岡沢完治

    岡沢委員 いま中川局長の御答弁とも関連をして、これは外務省のほうでも入管のほうでもけっこうでございますが、現在の台湾における政治犯の処罰規定について資料をお出しいただきたい。私の知っております範囲では、蒋介石政権下の台湾においては、国民の政府批判や反政府的言動をきびしく取り締まり、そのために特別法が制定されておる。その特別法は、一九四七年に制定施行された懲治叛乱條例で、その二条一項において「刑法一〇〇条の規定する内乱罪に対する刑(有期徒刑七年以上、首謀者は無期徒刑)を加重してこれを死刑に処すると共に、第四條第七号叛徒を包庇し、蔵匿したものは死刑又は前期徒刑又は一〇年以上の有期徒刑に処する。」というような規定があるように承知しておるのでございますが、これは正しいかどうか。あるいはその十五条には「叛乱組織または集会に参加したものは、無期徒刑または一〇年以上の有期徒刑に処する」というような規定があり、第七条には「文字、図書、演説をもって叛徒に有利なる宣伝をしたものは七年以上の有期徒刑に処する」等を規定しておる、こういうふうに理解しておりますが、この私の理解が正しいかどうか、いまお答えいただければけっこうですが、もしできない場合は、あと資料として御提示いただきたいと思います。  それから、中川局長のいまの御答弁と関連して、また重ねてお聞かせいただきたいし、猪俣委員等の質問趣旨あるいは過去の当委員会での御答弁から大体理解はされるのでございますけれども、いわゆる政治犯罪人ないし政治難民を迫害を予想される本国へは送還しないということは、わが国の政府としても当然尊重されるというふうに解釈していいか。これは申し上げるまでもなしに、政治犯罪人不引き渡しの条約の精神でもありますし、世界人権宣言の第十四条第一項の規定からも、当然にそういう精神はわが国として尊重されるべきである。これは確立された国際慣習、国際法規と見てもいいかと思うのでございますが、その辺の解釈について、外務省と中川局長に重ねての御答弁を求めます。
  132. 中川進

    ○中川(進)政府委員 世界人権宣言とかそれから難民に関する条約とかいろいろございますが、難民に関する条約に対しましては、これはこの前ここで重光国連局長から答弁いたしましたごとく、わが国は加入しておりません。ただ、その精神を尊重するということは岡沢先生御指摘のとおりでございまして、私どもといたしましても、極力この精神を尊重してやっております。人権宣言も同様でございまして、御承知のごとく、この宣言は法的拘束力を持つものではないという了解のもとに、賛成四十八、棄権八をもって総会決議の形で採択された、こういうように承知しておりますので、必ずしも直接的な意味における実定法的な拘束力はない。しかしながら、やはり私どもといたしましても、人権の尊重ということが大切であることは十分承知しておるつもりでございますから、極力その人権宣言あるいは難民条約というものの精神にもとらないように処置したい、かように考えております。
  133. 金沢正雄

    ○金沢説明員 外務省といたしましても、いま中川入管局長がおっしゃったと同じ考えでおります。
  134. 岡沢完治

    岡沢委員 いまの局長の御答弁そのものは私も了解したいのですが、その精神はおそらくいま急に始まったことじゃなしに、過去においても同じ精神をお持ちになっておったはずなんでございます。しかし、柳文郷の強制送還においては、その精神とは全く違う行動が事実をもって示されたというふうに解釈せざるを得ない。これはいかに理屈をおつけになりましても、先ほど猪俣委員も御指摘になりましたが、むしろ日本における裁判の機会をことさらに避けるというような処置に出られたと解しても差しつかえないような現実の処置がとられておる。そのためにわれわれは、先ほど来申し上げておりますように、台湾独立を目ざす人々の、いわば国民政府からもあるいは中共からも喜ばれないという不幸な立場が政治的に反映をしてああいう措置になっていると解釈をせざるを得ないわけでございますが、むしろ先ほど御指摘の政治難民の条約なりあるいは政治犯罪人不引き渡しの原則、あるいは先ほど申し上げました世界人権宣言の第十四条の精神というのは、その逆であるべきなんであります。政治信条のために政治的な圧力がかからないように保護するというのが、こういう規定の精神であろうと私は思うわけでございますが、政治犯罪人不送還という国際法上あるいは国内法上の義務を、今後具体的な事例を通じて尊重するということを示していただく意味からも、私は重ねて猪俣委員と同じような趣旨で、たとえば柳文卿と同じような扱いで今後台湾独立関係の人々を送還するような処置はしない、少なくとも裁判の機会を与えるとか、あるいは現にいま東京地裁の民事第二部で係属中の御承知のように張君、林君の事件がございますが、こういう二人の事件につきましても、慎重な配慮をする。私は、この柳君の事件を通じまして、同じようなケースに該当する台湾人の方々はかなり大きなショックを受けておられると思うのでございますが、そういう人々に対して安心を与えるという意味からも、あるいは日本国憲法の精神から、日本の平和主義、自由尊重主義をここで鮮明にするという意味からも、三月二十六、七日に起こった柳君の事件は遺憾であり、今後こういうことを繰り返さないということをお示しいただきたいと思うのでございます。言いにくいかもしれませんが、私は中川局長に、抽象的なことばではなしに、具体的に、少なくともああいうケースは繰り返さないという趣旨のお答えを期待して御答弁を求めます。
  135. 中川進

    ○中川(進)政府委員 柳文郷の送還でございますが、これは私この前も参議院の予算委員会で稲葉誠一議員の御質問に対してお答えをいたしましたとおり、立場といたしましては、柳に対して裁判に訴える機会を奪おう、そういう機会を与えないようにやってやろうというようなつもりは毛頭なかったのでございますが、結果的に、稲葉先生に私があやまりましたように、飛行機の時間が非常に早いということを承知しておらなかった点は私どもの手落ちでございまして、それは私あやまったとおりでございます。したがいまして、いま猪俣岡沢委員がおっしゃいますように、私どもといたしましては、裁判に訴える人の権利を故意に奪うというようなことをするつもりはございません。それははっきり申し上げるつもりでございます。
  136. 岡沢完治

    岡沢委員 時間ですからもうこれで質問を終わりたいと思いますけれども局長がそういうふうにおっしゃるとまた触れたくなるのは、例の三月二十七日の午前八時ごろに地裁の民事二部の受付係から入管のほうに電話をさせてもらって、本件は審査中であるから送還の執行を見合わせるようということも要望しておる。局長がそれを御存じでないはずは実際問題としてないわけです。ほかに証拠もあるわけですけれども、そういう個々の具体例をここで論じようと思いませんけれども、またお立場上先ほどの御答弁のようなお答えにならざるを得ないかもしれませんが、現実には、具体的に送還をとめることが可能な時期に裁判所から連絡があったわけであります。それをことさらにお避けになるということは、いわばひきょうな感じを受けまして、私はむしろこういう具体的なことは局長に対して聞きたくなかったわけですが、局長がそんなことをおっしゃると、もっとこまかい、具体的な、局長が前の日にだれとどういうふうな話をしておるかというようなことまで触れることになるわけです。まあ過去のことは問いませんから、今後は、先ほど来繰り返しておる政治犯罪人あるいは政治難民、特に一般の政治難民とか政治犯罪人ではなしに、台湾の人に対しては、日本の過去の歴史があるだけに、私は特に保護すべき立場にあると信ずるだけに、先ほど申しましたような意味で、今後そういう方々の保護については、十分法的な手続に従った措置をとるというお答えをいただきたかったわけであります。  内閣法制局の真田第一部長もお見えのようでございますが、せっかく来ていただいて何でございますけれども、先ほど申しましたような意味で、最初の質問でございますけれども、在日韓国人の法的地位と関連して在日台湾人の法的地位、金沢参事官からお答えございましたけれども、今後法制局としても許す範囲で、私が質問いたしましたような趣旨で、この方々の保護に対して万全を期するような前回きな御検討をいただいて、まあ第一部は解釈の部であって、立法、政策の部ではないかもしれませんが、法制局としてぜひ今後の課題として取り組んでいただきたいということをお願いを申し上げまして、時間の関係もあって質問を終わります。
  137. 永田亮一

    永田委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後一時散会