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1968-04-25 第58回国会 衆議院 法務委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月二十五日(木曜日)    午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大竹 太郎君 理事 田中伊三次君    理事 高橋 英吉君 理事 濱野 清吾君    理事 猪俣 浩三君 理事 神近 市子君       鍛冶 良作君    河本 敏夫君       千葉 三郎君    中馬 辰猪君       馬場 元治君    成田 知巳君       横山 利秋君    岡沢 完治君       山田 太郎君    林  百郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 赤間 文三君  出席政府委員         法務政務次官  進藤 一馬君         法務大臣官房司         法法制調査部長 川島 一郎君  委員外出席者         議     員 横山 利秋君         法務省刑事局総         務課長     伊藤 栄樹君         外務省条約局国         際協定課長   村上  謙君         最高裁判所事務         総局総務局長  寺田 治郎君         最高裁判所事務         総局刑事局長  佐藤 千速君         専  門  員 福山 忠義君     ————————————— 四月二十四日  委員有島重武君辞任につき、その補欠として山  田太郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十五日  委員岡田春夫君及び西村榮一辞任につき、そ  の補欠として横山利秋君及び岡澤完治君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員横山利秋君及び岡澤完治辞任につき、そ  の補欠として岡田春夫君及び西村榮一君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 四月二十四日  刑事補償法等の一部を改正する法律案横山利  秋君外七名提出衆法第三一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  刑事補償法等の一部を改正する法律案横山利  秋君外七名提出衆法第三一号)  刑事補償法の一部を改正する法律案内閣提出  第九三号)  公海に関する条約の実施に伴う海底電線等の損  壊行為の処罰に関する法律案内閣提出第九四  号)  下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出第一〇二号)      ————◇—————
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  横山利秋君外七名提出刑事補償法等の一部を改正する法律案議題といたします。     —————————————
  3. 永田亮一

    永田委員長 まず、提出者提案理由説明を求めます。横山利秋君。
  4. 横山利秋

    横山議員 提案者を代表いたしまして、いま議題になりました刑事補償法等の一部を改正する法律案提案理由を申し上げます。  改正趣旨は、現行法においては、無罪裁判が確定した場合、国は被告人であった者に対し、拘束中の期間のみについて、今回一日六百円以上、千三百円以下の補償改正にとどまっているが、これをさらに非拘束中の期間補償並びに裁判に要した費用をも補償する制度を設けようとするものであります。  以下、改正の必要と理由を申し上げます。  人が刑事訴追を受けるのは、その人の人生最大の不幸であります。罪なくして刑事訴追を受け、幸いに裁判において無罪となった場合でも、その人の受ける精神的、物質的損害はほとんど無限であり、ためにその人の人生大半が失われる場合も決して少なしとしません。  民主国家においては、国家は、みずからの権力において国民訴追し、しかも罪なきことが裁判上確定した場合、その国民がこうむった最大の不幸に対し、相当の補償をなすべき義務を負っています。けだし、たとえその誤った訴追が、捜査官故意または過失によるものでないにしても、およそ、生命、自由及び幸福追求に対する国民権利については、立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とすることを憲法十三条に明記されておるからであります。  しかるに、現在の刑事補償法によれば、無罪裁判を受けた者が刑事訴訟法等により拘束をうけた場合に限り、国に対して抑留または拘禁及び刑の執行による補償請求することができるとしています。したがって、無罪裁判が確定した場合でも、非拘束中の損害に対しては補償する規定がございません。  また、現在の刑事訴訟法によれば、検察官のみが上訴をした場合において、上訴が棄却されまたは取り下げられたときは、当該事件被告人であった者に対し上訴によりその審級において生じた費用補償をするが、第一審から上訴審を通じ無罪になった場合の裁判費用、これは公判出廷旅費及び日当弁護人費用印刷費用等でありますが、これを補償する規定がありません。  現在の法制及び日本の一般社会的取り扱いのもとにおいては、国民刑事訴追を受けたことのみによって、拘束、非拘束の差にかかわらず、裁判期間刑事被告人としての汚名を着せられ、信用を失墜する精神的苦痛のほかに、身分上、不利益の取り扱いを受けている事実を看過すべきものではありません。  無罪裁判確定に至るまでの間裁判に要した費用も、一般国民平均収入から見れば決して少なしとしないのであります。  しかるに、現行刑事訴訟法はさきに申しましたとおり、検察官のみの上訴があり、これが棄却された場合の当該上訴審における費用補償しか規定していないことは、著しく不均衡かつ不十分であって、全審級を通じ、無罪が確定した場合の裁判費用補償すべきものであります。  以上の点よりすれば、現行刑事補償法及び刑事訴訟法は、前記憲法第十三条の精神にかんがみ、著しく不備であることは、何人も肯定せざるを得ないところでありまして、よって次のとおり改正する必要があると思います。  改正の要点は、第一に、無罪判決が確定した場合には、公訴提起があった日から、無罪判決が確定した日までの期間、第二に再審または非常上告手続により無罪判決が確定した場合には、公訴提起があった日から原判決が確定した日までの期間、この二つ期間のうち、未決の抑留もしくは拘禁または懲役、禁固もしくは拘留の執行、もしくは拘置を受けなかった期間にかかる補償として五十万円以内で裁判所の相当と認める額の補償金を交付することができる。ただし、補償金の額は千三百円に当該期間の日数を乗じて得た額の二分の一以内とする。  また刑事訴訟法を一部改正し、無罪裁判が確定したときは、それまでに要した費用補償をする。その範囲被告及び弁護士公判準備及び出頭旅費日当宿泊料弁護士報酬とする。  右は裁判所が決定で行なう。  以上、提案理由を申しました。  憲法は、人権について特に尊重すべきことであるとしております。この趣旨を生かしたものであり、すでに日弁連をはじめ各方面におきましても、この改正法案に多大の賛意を表していること、各位御存じのとおりであります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに賛成あらんことをお願いいたします。
  5. 永田亮一

    永田委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  本案に対する質疑は、後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  6. 永田亮一

    永田委員長 次に、内閣提出刑事補償法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。横山利秋君。
  7. 横山利秋

    横山委員 端的に二、三点お伺いをいたします。  いま提案をいたしました法律案と、政府提案をいたしております法律案とは、その根底においては矛盾はいたしておりませんけれども政府現行法金額を上げるにとどまっておるわけであります。私といたしましては、提案者を代表いたしまして並行審議を望んでおるのでありますけれども、事情がございまして政府提案は本日採決の運びとなりました。したがいまして、採決の前に二、三点を確認をいたしたいと思います。  提案者提案いたしておりますことにつきましては、すでに本委員会において前田中法務大臣から、また本国会予算委員会におきましては赤間法務大臣から、それぞれこの提案者趣旨に対して原則として賛同する旨の御答弁があったわけであります。もちろんその内容がいろいろな問題がございますので、慎重に検討をいたしたいという趣旨はございましたが、決してこの改正案趣旨に反対をされるわけではないということは承知をいたしておる次第でございますが、あらためて提案に際して確認をいたしたいのでありますが、政府側はこの改正案趣旨に賛同しておられると見てよろしゅうございますか。
  8. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 ただいまの御質問につきましては、前回同様の御質問大竹先生からございまして、その際にもお答えしたのでございますが、あらためて法務省として考えておりますところを御説明申し上げてみたいと思います。  御指摘のように、非拘禁者に対しても補償をする、あるいは無罪となった場合の訴訟費用補償するということは、十分検討する余地のある事柄であろうと思います。しかしながら、これを実現しまするにはいろいろ問題点があるわけでございます。たとえば、もともと刑事補償と申しますのは、国に無過失責任を認めた特別の制度でございます。すなわち、諸外国の立法例を見ましても、刑事補償制度を認めた国自体が少ない上に、制度を設けておりますものも、ほとんどが身体拘束に対する補償に限っておるわけでございます。一方、国内法の分野を見ましても、刑事補償は国の公権力の行使によって国民損害を与えた場合におきます国家補償の一種であると考えられるのでございますが、たとえば国民権利義務に重大な影響を及ぼしますところの海難審判でありますとか、特許審判、あるいは許認可の取り消し等行政処分によって国民に不当な損害をこうむらしたというような場合につきまして、さてそれでは今後どういう政策をとるべきか。現在は、御承知のように、直ちにその損失を国が補償するという制度はとられておりませんで、公務員故意過失があった場合に限って国家賠償法による賠償請求が認められておるわけでございます。したがいまして、起訴が適法に行なわれたという場合に、裁判の結果たまたま無罪になった、そういう結果を見まして、それだけの理由当該公務員故意過失を論じないで直ちに国が補償するという政策をとりますことは、これら一般行政処分等の場合と権衡を失するおそれはないかどうか。かりにその補償の問題が解決されたといたしましても、次には補償範囲をどの程度とするのが適当であるか。これは横山先生はじめ数名の先生方が今度御提案になりました法案でも御苦心が払われておるところでございますが、一体補償範囲はどの程度にすべきかという問題は、相当慎重に考えてみなければならぬことだろうと思っておるわけでございます。  それからこの補償をいかに定型化するか。補償する場合に定型化してまいりませんと、いたずらに手続が煩瑣になるというような問題もございまして、無過失責任に基づいて補償するからには、一応補償定型化することが必要であろうと思うのでございますが、その場合に、たとえば軽犯罪法というような軽微な犯罪で訴追されたものであるか、あるいは殺人というような重罪で訴追されたものであるか、あるいは長年かかってやっと無罪裁判があったというものであるか、あるいは一回の裁判無罪になったものであるか、そういう諸般の要素をすべて含めました定型化というものは、なかなかむずかしい問題をはらんでおると思うのでございます。およそ身体拘束という点について補償するといたしますと、どんな人でありましても、身体拘束に伴う苦痛というものはある程度平均的な要素があると思うのでございますが、非拘禁の場合は、ただいま申しますように、非常に苦痛程度損害程度も大なものから小なものにわたってたいへんなバラエティーに富んだものがあると思うのでございます。補償定型化するのはどういうのが適当であるかというのは、一つの問題点であろうと思うのでございます。  さらに、補償を行なうといたしましても、財政当局との協議政府といたしましても要することはもちろんでございますが、他のたとえば公害対策でございますとか、あるいは社会福祉の諸施策、こういうものとこの刑事手続における無罪者に対する補償制度バランスがとれているかどうか、こういう点は、やはり政府全体として慎重に検討を要する問題じゃないかと考えておるわけでございます。  それから費用補償の点について申し上げてみますと、ただいま申し上げました一般的な非拘禁者に対する補償の問題、ここで申しました問題は、費用補償の点につきましても通ずるわけでございますが、特に現行法では、一審で裁判がございまして、この裁判に対して被告人は納得して、争う態度を示しておらない、そういう場合に、検察官のみが国家公益立場から争う。その結果、検察官上訴がいれられない、こういう場合におきましては、被告人としてはもともと一審の裁判で承服しようと思っておりますのに、検察官側の都合によって、どうしてもいやおうなしに訴訟上の防御を迫られるわけでございます。そういうしいて防御を迫られたような場合につきましては、いわゆる公平の原則上これを補償してあげるのが相当であろうというふうに考えられるわけでございますが、一般的に無罪になりました場合に費用補償するかどうかということは、若干これとは質を異にいたしまして、先ほど申しますように、他の行政処分等におきまするいわゆる俗にいう出訴費用、こういうものとの関連を考えていかなくてはならないんじゃないかと思っているわけでございます。  このようにいろいろ検討すべき問題点がございまして、それらを慎重に検討してまいりたいと思っておるわけでございまして、最高裁判所当局とも協議を続けておるわけでございます。ただ、率直に申しますと、御提案にかかる二つ補償のうち、後者の分、すなわち費用補償につきましては、他のいろんな、まあ国におきます社会福祉その他の措置とのバランス比較的とれやすいものに属するのではないかと考えて、特に鋭意検討をいたしたいと思っているわけでございます。
  9. 横山利秋

    横山委員 私が改正の必要と理由で申し上げましたのですが、考え方が少し、というよりも、たいへん審議をする考え方が違うようであります。私は少なくとも裁判無罪になった、国家から訴追を受けて裁判で争ったところ無罪になったという、その人の心境を考えますと、たいへんな目にあった、信用上も財産上もたいへんな目にあった、そこで心から青天白日を喜ぶ、こういう状況にあると思うのであります。国家としては、また国家公務員としては、それが故意過失でなかったにしても、青天白日の人間について権力を発動して被疑者立場に追い込み、そして結果として誤りを犯したということであるならば、その人に対する補償は当然出なければならぬ。先般も申しましたのですが、拘束中の期間におきましても、戦前は五円でございましたか、その当時の物価と比較をいたしますと、今日におきましての、今回千三百円になるといたしましても、これは雲泥の差と言ってもいいほどの違いであります。つまり新しい憲法人権を尊重しておるといいながら、実際裁判上においては憲法の示す人権というものが尊重されていないと痛感をされるわけであります。いまあなたから指摘をされた二、三の点を一々私が反駁をする必要はないと思いますけれども、たとえば行政処分との公平論は、行政上において国民が非難を受けた問題と、裁判の上で被疑者として訴追を受けた場合とは、たいへん違うのでありますから、行政処分との公平論は、私は質において違いを考えなければならぬと思うわけであります。  それから補償範囲につきましても、あなたも御理解をくださいましたように、先般参考人を呼びまして、そして与党の皆さんの質問状況も考慮いたしまして苦心をいたしたところでございますから、これは御理解が願えると思うのであります。  また、いかに定型化するかという問題につきましても、先般も質疑応答の中で私どもも、また参考人立場を明らかにいたしましたように、身がわり犯人だとかあるいは酔っぱらいとか、こういうものについてはこれは補償する必要もなかろう。それから非拘禁の場合におきましても、大小、すぐに無罪になった者、あるいはまた長年かかって無罪になった者、確かにバラエティーに富むものはあります。けれども、国が権力を発動し、訴追をし、そうして裁判無罪になったということにつきましては、一回であろうと数年かかった問題であろうと、無罪はあくまで無罪だ、そういう点については、私は姿勢を正しくする必要があろうかと思います。  財政的な問題であります。私も本法案を作成するにあたりまして、財政上いかなる状況になるだろうかということを判断をしたわけでありますが、平年度におきましても、今日までの無罪になった裁判実情並びにこの補償実情等から考えまして、さまで大きな金額にはならないと思うのであります。したがいまして、他のお話のような公害その他のバランスというようなことにつきましては、むしろ私は公害よりも個人に帰属する人生上の最大の問題であるから、むしろ公害よりもさらに大きく考えてもよろしいのではないかと思います。  費用補償につきましては、これはいまお話がございまして、他との比較がとれやすいから鋭意これは検討ができるというお話でございますから、多くは申しませんが、結局最後に無罪になったものが、一審において被告が承服したのであるからということは、これは私の理論からいうならば枝葉末節の問題である。国家訴追をしたのであるから、初めからこの補償をすべきであると考えるわけであります。  念のためにお伺いいたしますが、政府提案によるこの千三百円以下の補償改正に伴いまして、平年度はどのくらいの金額が予想されておりますか。
  10. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 申し上げます。今回の政府提案改正案を考慮いたしましたところの予算額といたしましては、六百二十一万六千円というものが計上されております。
  11. 横山利秋

    横山委員 平年度でございますね。
  12. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 従前の実績をもとにいたしましたところのものでございます。
  13. 横山利秋

    横山委員 まだ試算ができておらないかもしれませんが、私ども提案をいたしました改正によりますと、平年度どのくらいになると推定されますか。
  14. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 先生方提案の案によりまして、これはまだ非常にラフなものでございますが、ざっと試算いたしましたところを申し上げますと、この御提案の対象となる事件で、全員請求があって一番高い額で補償をすると、かように考えました場合には、ざっと一億三千三百万ぐらいというふうに現在試算いたしております。
  15. 横山利秋

    横山委員 一億三千三百万、これが無罪全員請求、しかも一番高い額というわけでありますから、私の案によりますように、裁判所の相当と認める額、しかも千三百円の二分の一、なおかつそこで私が申しますように、酔っぱらいだとか身がわりだとか、そういうものを引きますと、私の推算をもっていたしましても、一億に達しない、こういうふうに判断ができるわけであります。こういうような重要な人権の問題が、さほど国家財政影響のない方式において行なわれるということは、たいへん意義のあることでありますから、ぜひ関係のところにおきましても、百尺竿頭一歩を進めて、短期間の間に十分に検討を願いたいと私は思うのであります。  この機会に二、三伺っておきたいと思いますのは、最近、歴史的な裁判であります松川だとか青梅だとか、いろんな問題から国家賠償請求が出ておるし、今後も出る模様であります。松川事件賠償要求はどうなっておるか、御存じでございますか。
  16. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 お答え申し上げる前に、ちょっと先ほど私の申し上げ方が悪かったかもしれませんが、一億三千幾らと申し上げましたのは、横山先生方提案の案というものを実施する場合にはどうかということで試算した額でございます。  それからただいまの御質問についてお答え申し上げますと、松川事件でございますが、十七名の方に対して補償がございまして、補償額は合計いたしまして一千五百十二万九千六百円、かように相なっております。
  17. 横山利秋

    横山委員 戦争が済んだ直後から本年に至るまで実に十数年の歳月を天下の耳目を集め、そうして無罪になったという十七名に対して千五百十二万、一体この人たち人生はどうなってしまうのでありましょうかということを考えますときに、私どもは、無罪になった人々に対する国家補償というもののいかに不十分であるかということを痛感せざるを得ないのであります。もちろん松川事件はだれかがやったのであろう。そのだれかがやったその真犯人の追及も、私どもも声を大にして叫んできたはずでありますけれども、それが間違われて被疑者として、被告として扱われ、人生大半、一番大事な人生を十数年烏有に過ごしたというこの人々に対して千五百十二万、十七名で平均に割りましても、私はまことに相済まぬことである、こういうふうに考えるわけであります。  関連をいたしまして、唐突ではありますが、先般青梅事件について無罪判決がございました。これもやはり同様になると思うのですが、この青梅事件の中で二人ばかり、病気のためにたしか裁判がそのままになっておると私は記憶しておるわけです。他の被告は健康のまま裁判を受けて、そして無罪になったわけですが、二人の被告病気のために裁判が行なわれずにそのままになっておる。一体これはどうなるのであろうかということで、各方面で同情と関心が集まっておるわけであります。この病気のままの裁判は、おそらく進行ができないであろう。だとするならば、いろいろなことがあるけれども検察陣がこの際取り下げをすべきではないか、それが順当な常識に沿う道ではないか、こういわれておるのでありますが、いかがでございますか。
  18. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 御指摘のように、いわゆる青梅事件といわれます事件につきましては、病気公判停止中の者が二名ございまして、それを除きます人たちにつきましては無罪判決があったわけでございます。この公判停止中の二名につきましては、御指摘のように、まだ第一審で公判停止中でございますので、法律公訴取り消しということが可能であるわけでございます。これらの事柄十分前提といたしまして、現在検察当局におきまして、どういう態度をとるべきかを検討しておるようでございます。まだ、その結果についての報告は受け取っておりません。
  19. 横山利秋

    横山委員 一人はたいへん精神的にも問題がある人のようであります。どう考えましても、もう一回、病気回復を待って裁判を一審から最高裁まで継続するということは、いろいろ法律上の問題はございますけれども常識的に、極端に言うならば、国費のむだ使いになるおそれすらあるという極言された意見もあるわけでございまして、この際御善処を望みたい。しかもその近親者は、一刻も早くそれが行なわれることを望んでおる次第でありまして、私ども国会議員としても、法律論の前に、常識的に当然ではないかと思っておるわけであります。これは、私もしろうとでございますから法律論よりも常識論で申し上げておるわけでありますが、この病状その他については詳細に御存じでございますか。
  20. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 病状等につきましては、検察庁において掌握しておるはずでございます。先生の御指摘の点につきましては、前回も松本先生から御質問がございまして、その際、赤間法務大臣からも、御趣旨はよくわかるので検察当局判断に期待するという趣旨の御答弁があったと思いますが、その後大臣の命を私受けまして、検察当局へは当委員会におかれましてこの問題について関心を寄せられておるということを連絡いたしております。したがいまして、検察当局でも、十分当委員会における御議論の趣旨を踏んまえまして処置するものと考えておるわけでございます。
  21. 永田亮一

  22. 山田太郎

    山田(太)委員 この刑事補償法改正問題点については、大竹先生あるいは横山先生等諸先輩の方々の質疑にて大半は尽くされたとは思います。しかし、私は私なりに、しろうとらしい質問ではございますが、数点についてお伺いしてみたいと思います。  まず、現行法において無罪裁判が確定した場合は、国は、被告人であった者には抑留または拘禁の日数に応じて、一日四百円以上千円以下の割合による額の補償をする、とありますが、この補償の額の算定基準ですね、改正には「六百円以上千三百円以下」の割合になるというわけでございますが、その改正金額を見ても、一般の労務者よりも金額が低いような感じさえ多々あります。この算定基準というものは、どのような基準をもって行なわれておるか。ただ、先ほど横山先生質問にもありましたように、行政処分の場合と刑事処分の場合とこれは非常に違うのじゃないかという御質問もありましたし、それに関連したような質問でありますが、この算定基準をどのようにして出されておるか、これをお伺いしたい。
  23. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 およそ無罪になりました場合に、無罪裁判を受けられた方に何ほどの補償を差し上げるのが適当かということにつきましては、いろいろな考え方があり得ると思うのでございますが、一応、昭和二十五年にこの法律ができましたときには、当時の労働者に対する賃金、給与、こういったものを踏んまえましておおむねこの程度が妥当であろうということで「二百円以上四百円以下」という数字が出されたわけでございます。その後、この補償金額と申しますものは、必ずしも経済変動に応じてスライドしなければならぬというわけのものでもないと思います。けれども、やはり一般の賃金水準あるいは物価指数等が上がってまいりますと、これに伴いましてある程度補正を加えるということが相当であろうと思われますので、前回昭和三十九年には、昭和二十五年から昭和三十九年までにおきます賃金、物価の伸び率というものがおおむね二倍になっておるということ等を勘案しまして、現在の「四百円以上千円以下」というふうに改められたわけでございます。今回は、この昭和三十九年から現在までにどの程度の指数の伸びが出ておるかということを見たわけでございます。それはお手元に参っておるかと存じますが、一枚の紙を二つに折っただけの簡単な表でございますが、「刑事補償法の一部改正に関する参考資料」というのがございます。これにあらわしておりますように、昭和三十九年におきまして常用労働者の一日平均の現金給与額が、統計によりますと、一千百九十二円であった。これが昭和四十二年におきましては、一千六百二十四円になっておる。また、日雇い労働者について見ますと、三十九年が七百六十七円、四十二年が千十円ということになっておるようでございまして、それぞれの伸び率を見ますと、常用労働者におきまして一三六・二、日雇い労働者におきまして一三一・七、こんなような数字が出てまいるわけであります。かたがた物価指数につきましても、卸売り物価指数、消費者物価指数、小売り物価指数、これらをとりまして、それらの平均値を求めます。賃金の平均値と物価の平均値、この二つ平均値をさらに平均いたしまして出てまいりましたのが、一二二・五という指数でございます。この指数を念頭に置きまして、一応前回の昭和三十九年の改正で定められております四百円から千円というのを、おおむね三割程度引き上げた六百円ないし千三百円、こういうふうにいたしておるわけでございます。その結果を見てみますと、最近におきまする常用労働者あるいは日雇労働者、これらに対する一日平均給与額の両者の中間の線くらいになっておる、こういうことが申し上げられると思うのでございます。以上のような考え方で今回の数額を出しておるわけであります。
  24. 山田太郎

    山田(太)委員 先ほどの御答弁で、物価指数あるいは賃金指数等々を基準としての算定であるという点は了解いたしますが、この刑事補償のもう一歩深く掘り下げた根本の意味といたしまして、本人の精神的な負担、あるいは家族の精神的な負担、あるいは本人の対外的な信用を害する負担、先ほどのお話では、その算定の基準がむずかしいというふうな御答弁もあったわけですが、むずかしいからといってこのままで済ますべき問題ではないという気もいたしますが、その点についてどのようなお考えであるかを、あわせて御答弁願いたいと思います。
  25. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 確かにただいま御指摘のように、千三百円という額で十分ではないのではないかというような考え方も成り立ち得るわけでございます。およそ無実であった、あるいは後に無罪であったとされた人が、いやおうなしに身柄の拘束をされて、家族からも隔離されておったわけでございます。その間の苦痛あるいは財産上の損害というものは、人によって非常な差がございます。極端な場合、何ものにもかえられないような損害を受ける方もあり得ると思います。そういうすべての場合を全部補償をするということも一つの行き方ではございましょうけれども、一応現在の刑事補償考え方は、国家機関に従事する公務員故意過失を論じないで、もうそういう客観的に事実があったというだけで補償を差し上げよう、そのためにはなるべくこれを定型化していごう、いろんな要素をある程度捨象して一定の額に含めて補償しようという考え方でできておるわけであります。その定型化をいたします場合に何を根拠にするかと申しますと、やはり一般の方の平均賃金というようなものが一つの尺度になるというふうに考えられるわけでございます。個々具体的にはもっと多大の損害をこうむられた方があるということは、予想されるわけでございます。さような場合に、国家機関の故意過失がそこに介在しておるということでございますと、国家賠償法に基づきまして刑事補償額を上回る分について賠償請求をしていただいて、そして裁判の結果、国が支払うべきものと認められる場合は国が支払うということに、現在なっておるわけでございます。
  26. 山田太郎

    山田(太)委員 次にお伺いしたいことは、非拘束無罪になった者に対しての補償を考えるべきである。この点については重複するとも思いますが、これは当然なされなければならない問題だと思います。これについて、どのようなお考えであるか。またやろうとすれば、いつごろからやろうとするのかという点について、御答弁願いたいと思います。
  27. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 非拘禁者に対しても補償をすべきじゃないかという問題につきましては、先ほども説明申し上げましたところと若干重複するかと思いますが、あらためてもう一度申し上げてみますと、横山先生外の御提案にかかる法案の中に盛られておりますような思想と申しますものはやはり一つの考え方であろうということは、従来法務大臣からも申し上げておるわけでございます。ただ、しかしながら、実現をかりにすべきものといたしましても、そこにいろいろな問題がある。さらには非拘禁者一般に対して補償をするということが、この際適当であるかどうか、他の行政分野、あるいは諸外国の立法例、さらには国の財政規模、こういうようなものを十分勘案しまして慎重に検討を要するものである、かように考えておるわけでございます。
  28. 山田太郎

    山田(太)委員 質問が前後するようで恐縮ではございますが、国家機関の故意過失による責任の場合は国家賠償法でやればいいじゃないかという先ほどの御答弁とかね合わせて、いま現在の刑事補償法の欠陥は、ただ単にそれで補えるものではないという気がします。もう一度申し上げますと、やはり先ほど御答弁の中にもありましたように、本人に対しての精神的苦痛とか、家族に対する苦痛とか、あるいは実質的な損害とか、そういうものは国家機関の故意過失の責任による場合以外の場合は、これは定型的にやる以外にないじゃないかというふうな答弁にも聞こえたわけですが、それで済ませる問題でもないというふうに思うわけです。その点についての判断といいますか、御意見といいますか、それをもう一歩深く聞きたいと思います。
  29. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 御指摘のような考え方というのは、確かに一つの考え方であろうと思っておるわけでございまして、先ほど来申し上げましたように、最高裁判所当局とも御相談しまして検討をいたしておる段階でございます。
  30. 山田太郎

    山田(太)委員 次に逐条的にお伺いしますが、死刑の執行を受けてそれが無罪であった場合、現行刑事補償法では百万円以内で裁判所の相当と認める額の補償をするとあります。この補償額の基準となるものを、あわせてお伺いしておきたいと思います。
  31. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 刑事補償法の御指摘の部分は、きわめて不幸なできごとを想定した部分でございます。幸いにしてこの法律ができましてから一度もさような事態はないわけでございますが、もしかりに不幸にしてそういう事態があったといたしますと、現行法で申しますと、死刑が執行されました後に再審等で無罪だということが判明いたしますと、原則として百万円以内の範囲内で刑事補償裁判所が決定して差し上げる。もっとも、死刑の執行によって財産上の損害を生じたということが証明されました場合、たとえばその方がさらに生きておられれば得べかりし収入でございますとか、あるいは非常に卑近なことを申しますと、なくなられたことに関連して必要となりました葬式費用というようなものも入るでございましょうが、そういったもろもろの財産上の損害が証明されました場合には、その財産上の損害額に百万円をさらにプラスいたしまして、その範囲内で裁判所がきめることとされておるわけでございます。これをこのたびの改正によりまして三百万円というふうに改めたいというのが、この法案の当該部分の趣旨でございます。  不幸にしてさような事態が生じましたときに、裁判所としては何を基準に全額をきめるかということでございますが、まず第一には、ただいま申しますように、実際上の財産上の損失額、これはまるまる考慮すべきであろうと思うわけでございます。その他の事項といたしましては、刑事補償法の第四条第四項に書いてございますが、本人の年齢、健康状態、収入能力その他の事情を考慮しなければならないわけでございまして、そういった諸般の事情を考慮して裁判所がおきめになることと存じますが、おそらくもし万一このような事態が生じますれば、おそらく法律で定めます最高限のほうで補償金額がきめられるというようなことになるのではないかと考えているわけでございます。
  32. 山田太郎

    山田(太)委員 幸いにしてこれまでなかったということはほんとうに幸いなことでございますが、私の聞きたいことは、先ほど御答弁にありました財産上の損失だとか、あるいはその方がもしそのような誤った処置がなされなかったならば当然受けるべかりし金額、これは当然だと思うのです。その上に百万円、あるいは改正しようというのは三百万円ですが、それの基準はどういう基準でしょうかということをお伺いしたいのです。
  33. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 現行法で百万円とされておりますのは昭和三十九年の改正以来でございまして、この法律ができました昭和二十五年には、五十万円ということであったわけでございます。これを三十九年の改正の際に、先ほど申しました拘束に対する補償の場合と同じような考え方で、二倍に引き上げておるわけでございます。今回これを三倍の三百万円に引き上げることといたしますのは、この死刑に対する補償につきましては、特に何を基準にすべきかということはいろいろな考え方ができるわけで、いわば無限大とも見られるようなものでございますので、非常に基準というものが見つけにくいわけでございますが、一応の考え方としましては、最近交通事故によります民事訴訟が相当ふえておりますことは御承知のとおりでございますが、それらにおきます裁判で認められております慰謝料の額が、おおむね三百万円以下の程度で認められておるということを念頭に置いて、この際三百万円にするということにしておるわけでございます。なお、先刻御承知と思いますが、自動車損害賠償保障法によります賠償額の最高限も、現在三百万円ということになっておるのでございます。
  34. 山田太郎

    山田(太)委員 少ししろうとらしい観点で恐縮かもしれませんが、そうなりますと、算定基準はそれも参考にしているということですが、その自賠責による金額がもし変わってきた場合、当然変わってこなければいけませんが、われわれは現在でさえも六百万円以上でなければならないんじゃないかという算定もしております。まあそれはそれとして、その三百万円の金額が変更された場合、この金額も当然変更されるべきものだというお考えでしょうか。
  35. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 刑事補償法による刑事補償の日額、あるいはただいま御指摘の死刑執行の場合の補償金額というものは、やはり経済変動等の推移を見ながら、実態に合ったような額に逐次改めていく必要があると思います。その時期が来年でありますか何年か先でありますかわかりませんが、そういった改正をいたします機会には、いわゆる自動車損害賠償保障法に基づく賠償額、こういうようなものも念頭に置きながら考え、改めていくということになろうと思います。特に、いわゆる自賠法によります補償額が変わってまいりますと、民事裁判による慰謝料の算定額も次第に上がってまいると思います。それらのことは十分考慮に入れまして、必要のつど改めさしていただく、また、法案として御審議いただく、こういうつもりでおるわけでございます。
  36. 山田太郎

    山田(太)委員 その点は、了承いたします。  もう一つその点についてお伺いしたいことは、国家機関の故意でなくても、過失として誤判によって死刑の処断を受けてしまった、こういう場合と、それから交通事故等によって不幸にもなくなるということとは、まず根本的な差が——実情においても、また責任の分野においても、非常に違うと思います。この点について、先ほどの御答弁にありました、自賠責の三百万円というようなことも判断の資料にしていくという答弁では、これでは事実いままでなかったんだからいいじゃないかというわけにもいかないと思うのです。将来ないとは言えません。その点について、やはりこの法律が生きるわけですから、その三百万円を同じ金額にしたということについては、これは非常な異議がある。国民も納得できないのじゃないか。交通事故と同じに考えてくる、これでは根本的に、そこに考え方の根底が違っていやしないかというふうに思うのですが、どうでしょうか。
  37. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 御指摘のとおり、交通事故による死亡の場合と誤判による死刑の執行の場合と、同列に論じることは適当でないと存じます。私ども三百万円という数字を出しますにつきまして、三百万円といういわゆる自賠責の関係を考慮いたしましたのは、少なくともそれよりも下がっちゃおかしいのじゃないかという意味において考慮に入れたわけでございます。あるいはこれは一千万円であるべきだ、あるいは一億であるべきだという御意見は、十分あり得ることと考えております。
  38. 山田太郎

    山田(太)委員 したがって、いまの御答弁にもありましたように、現在の三百万円では適当ではない、将来もっとはるかに大きな金額に引き上げられるべきである、こう思いますが、どうでしょう。
  39. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 私どもといたしましては、一応先ほど来御説明しましたようなことを勘案いたしまして、現行法で百万円となっておりますものをこの際三百万円に改める。現時点としてはこの程度金額が相当であると考えておるわけでございまして、将来また事情が変わってまいりますれば、再検討の必要が生ずるかということも考えておるわけでございます。
  40. 山田太郎

    山田(太)委員 もう一ぺん、くどいようですが、その勘案した根底の考え方が間違いであるというふうな御答弁もあったわけです。答弁の責任を追及する意味で言うのじゃないのです。そういう意味で言うのじゃない。したがって、現在三百万円では、現行法としていまのこれを云々する、現在で言うているわけじゃない。将来これはもっと、そういう考え方からいっても変えられるべきじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  41. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 お説のとおり、将来は改められる必要が生ずるものと考えます。
  42. 山田太郎

    山田(太)委員 では次の質問に移りますが、先ほど横山先生の御質問にありました青梅事件ですが、病気のために公判停止になっておる方は、先ほど御答弁でよくわかりました。そこで、この無罪の判定があった方たちに対しての補償も当然考えられなければならないと思いますが、これについては、松川事件と同じような、当然これで改正がされますが、ただこの改正されたとおりにやっていかれる予定ですか。
  43. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 いわゆる青梅事件被告であった方々、無罪が確定したわけでございますが、それらの方々から刑事補償請求裁判所に出ますれば、裁判所において法律に照らして相当な補償をされることになるだろうと思っております。
  44. 山田太郎

    山田(太)委員 相当な補償というその考え方の根拠は、どのような算定の根拠になっておりますか。
  45. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 具体的に申しますと、青梅事件につきましては、ただいま御審議いただいております法案が御承知のようにまだ成立しておらないわけでございますので、裁判のありました時点の法律補償することになっておりますから、現行法範囲内で裁判所が決定されると思うわけであります。
  46. 山田太郎

    山田(太)委員 これはしろうとの質問でございますが、十五年、十六年と本人の方々ないし家族の方々も有形、無形の言い尽くされないほどの被害を受けたわけです。それについて、いまのこの改正案がもし成立して、それを適用する、それはわかります、成立すれば。それ以外に特別の方法を講じて補償をする、その便法はありませんか。
  47. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 それらの方々の無罪に至るまでの御苦労というものについては十分了解できるわけでございますが、先生指摘のような刑事補償法以外の分野におきます何らかの補償というものは、残念ながら現在のところ考えられておらないのでございます。
  48. 山田太郎

    山田(太)委員 もう少々時間をいただきまして……。ここに一審が有罪で二審が無罪の調査表を手元に持っております。これによりますと、昭和三十六年は九十三件、三十七年も九十三件、三十八年が八十九件、三十九年が五十二件、それから四十年においては七十件、このような調査が私の手元にあります。この現実の裁判の姿から見て、あまりにも誤審が多いのじゃないかという気もするわけです。したがって、まず一審の裁判官の質といいますか、ここに問題があるのじゃなかろうか。外国の例は寡聞にしてまだ調査しておりませんが、もしそれもあればあわせて御答弁願うとして、この一審の裁判官に問題があるのじゃないかという判断もできるわけです。これについてはどうでしょうか。
  49. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 裁判所のほうからお答えいたします。一審で有罪、二審で無罪という例をおあげになったわけでございまするが、結果的に見ますると、それは一審がおかしかったということになる、そこに疑問があるということであろうと思うのでございますが、これは訴訟というものの本質を考えますると、非常にむずかしい問題が根底にひそんでいるわけでございます。訴訟と申しまするのは段階を経まして発展していくものでございまするので、この訴訟の発展性ということも考えなければなりませんし、それから現行刑事訴訟法は自由心証主義という原則をとっておるわけでございまして、証拠能力を積極的にまたは消極的に法できめてしまわないで、これを裁判官の自由な判断にまかせる、それが結局硬直した裁判ということがなくていい、こういう原則がとられているわけでございまするが、そういうこととの関係において考えてみなければならないと思うのでございます。もちろん自由心証主義と申しましても、経験法則、論理法則というものを無視することはできないのでございます。でございまするので、一審と上訴審判断が食い違った場合に、それが一審のほうが違法な裁判であったか、裁判に違法があったかということの問題は、実はしかく簡単には考えられないところなのでございまするが、まあそれはそれといたしまして、第一審の裁判を強化せよということは、まことに仰せのとおりでございます。従前、最高裁判所におきましては、第一審強化という方針を打ち出しておりまして、第一審の審理というものを充実させるという観点から、各地方裁判所におきまして裁判官、検察官及び弁護士の方が定期的に会合を開きまして、裁判の改善について、その運営につきましていろいろな協議、打ち合わせをいたして、それを実行に逐時移していく、こういうことをいたしているわけでございまするが、これも先ほど仰せのとおり、第一審裁判所の重要性ということに着目いたしまして、従前から行なっていることの一つでございます。確かに第一審におきまして十分に争うべきものは争い、調べるべき証拠は調べるということがございませんと、それを素通りにいたしまして幾ら上訴審で手厚く審理をいたしましても、事の真相はなかなか把握することは困難であるということがございまするので、確かに仰せのとおり、第一審の強化ということが必要であると思うのでございます。先ほど来申し上げましたような第一審強化の方策というものもとっているということを申し上げた次第でございます。
  50. 山田太郎

    山田(太)委員 それではお伺いしますが、昭和四十一年それから四十二年、一審の判決が有罪で二審の判決無罪の数をお聞きしたいと思います。
  51. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 御指摘の事項は、最高裁判所でつくっておられます司法統計年表によって把握するより方法はないわけでございますが、たいへん残念でございますが、四十一年、四十二年につきましては裁判所の司法統計がまだできておりませんので、もし調査いたしますと、何か全国的な特別調査でもしないと出てまいらないわけでございます。たいへん申しわけないことでございますが、そういう状況でございます。
  52. 山田太郎

    山田(太)委員 いまできていないということは非常に残念でありますが、もしここにおいて大きな変化がないとするならば、先ほど御答弁がありましたような第一審強化という方針は、ただの方針であって、現実には生きてないのじゃないか、第一審強化はうたい文句だけで終わってしまうのじゃないか。また、それが当然予想されるところでございます。もう一歩具体的に、第一審を強化するため裁判官の質が大切じゃないかという点について、確たる御答弁をいただきたい。
  53. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 まさに仰せのとおりでございます。それで第一審強化の方策といたしましては、先ほど申し上げたようなことがその一つでございまするが、もとより各裁判官の研修、会同、そういうものは、ことに事実認定あるいは捜査指揮というものを中心にいたしまして、最近におきましては熱心に行なわれているという状況でございます。  それからもう一つ、これは第一審の強化という観点から当然関連する問題でございますが、現行刑事訴訟法は弁護人が関与する程度が多くなっておる。つまり必要的弁護の事件が非常に多くなったということは、その面からも第一審が強化されているということにも相なるわけでございまして、弁護人が被告人の利益のために第一次的にいろいろ活動なさるということと相まちまして、第一審の強化というものを今後強力にはかっていかなければならない、かように考えております。
  54. 山田太郎

    山田(太)委員 いまの御答弁では十分満足するわけにまいりませんが、松川事件あるいは青梅事件のみでなく、ほかにもあります。したがって、第一審の裁判官の質の向上をはかるという点については、もう一度機会をあらためて質問したいと思いますが、現在までのやり方では、これはまだ不十分だと思います。ただ答弁のための答弁だけになっておると思います。そこで、この質問はここで打ち切りますが、時をあらためてお伺いしたいと思います。まず、死刑の誤判などということがあったのではとんでもないことでございますし、人命尊重あるいは人権尊重という立場から考えたときに、金や物では解決できないのであります。人間のつくった法律は時代によって幾らでも変化していくであろうし、人の解釈によって相当の開きも出てきましょう。しかし、その人為的な法律を高く正しい次元から運用し、人間的なあたたかさを持つと同時に、厳正にして公平に適用していく根本法はもちろん必要でありますが、裁判官の質の向上をはかり、誤判をより一そう少なくすべきであるという主張を申し上げて、この質問はここでとどめておきます。  そこで最後にお伺いしたいことは、被疑者補償規程についてお尋ねしたいと思います。被疑者補償規程は大臣訓令であると思います、法律ではないと思います。そこで法律でないものに国の金を出すということは、原則として許されないのではないかというふうに考えますが、この被疑者補償金はどこから出されているのか、どういうたてまえから出されているのかについてお伺いしたいと思います。
  55. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 御指摘のように、裁判まで至りませんで、捜査の段階で不起訴になりました者の中で、明らかに証拠がない、あるいは犯罪を犯していないという人につきまして行なっております補償につきましては、現在法務大臣訓令でやっております。しかしながら、これの補償の原資となります金額につきましては、予算案の中で国会で御審議をいただいて御決定願っておりますので、これに基づいて支出をいたしておるわけでございます。  さて、この被疑者補償規程に基づきます補償は、ただいま申しますように、無実であったと認められます被疑者につきまして、身柄の拘束を受けました日数に応じまして一定の金額を差し上げておるわけでございます。その基準となります額は、現在一日につきまして一千円以下ということになっておりますが、現在御審議いただいております刑事補償法案が成立いたしました暁には、直ちに大臣訓令を改めまして、千三百円以下ということで歩調を合わせたいと考えておる次第でございます。  なお、被疑者補償の実態を見てみましても、昭和四十二年に補償いたしましたものにつきましては、すべて最高額の一日千円の割合で補償いたしておりますので、この刑事補償法改正が成立いたしますと、被疑者補償のほうも千三百円ということで運用がなされることになろうと存じます。
  56. 山田太郎

    山田(太)委員 もう一つお伺いしますが、この被疑者補償規程によって出される被疑者補償金は、大臣訓令で出されているのである、これには疑義ないとおっしゃるわけですね。
  57. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 必ずしも法律がなければ金が出せないというわけのものではないと考えております。と申しますのは、予算案の中に明示されまして御審議をいただいておりますので、予算の執行としていたしておる、こういうことでございます。
  58. 山田太郎

    山田(太)委員 この被疑者補償規程によって出されておるのは、昭和三十七年が二人、三十八年が二人、三十九年が二人、四十年は一人、四十一年が二人、合計で約四万円くらいにしかなっていないわけです。この点は間違いですかどうですか。
  59. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 御指摘の数字には間違いございません。なお、一年付加いたしますと、昭和四十二年度におきましては、補償いたしました人員は四名でございます。額におきまして一万五千円でございます。これらのものにつきましては、およそ被疑者補償規程の補償の要件に当てはまりますものが発生いたしますと、検察官は常にそれらの人に対して補償を求めるかどうかということを尋ねております。ただいま申しますように、四十年の補償人員一人、それから四十一年補償人員二人、四十二年の補償人員四名、合計七名は、いずれもすべて検察官が申し立てを待たないで職権で補償するということをきめまして補償金を差し上げたものでございまして、拘束日数が短いこととも相まちまして、案外御本人からの申し立てがございませんので、実際の運用としては、検察官が職権で補償を相当と認めて差し上げておるというのが実態でございます。
  60. 山田太郎

    山田(太)委員 一人も余さず検察官の職権において補償をしておることになっておるかどうか、あわせて御答弁願います。
  61. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 この規程の要件に当てはまるものにつきましては、すべて検察官において被疑者補償事件というものを職権あるいは申し立てによって立件いたしまして、検討いたしております。検討の結果補償をしようと考えましても、御本人において辞退される場合もございましたりいたしますので、ただいま御指摘のように、条件に当てはまるものはすべて補償を受け取っておるかとおっしゃいますと、必ずしもそうでない場合があろうかと思いますが、御本人が希望される限りにおいては、すべて差し上げておるはずでございます。
  62. 山田太郎

    山田(太)委員 もう一つお伺いしたいのは、この被疑者補償規程は、先ほどの御答弁にありますように、ことばをかえていえば検察官の恩恵的な処置になってまいります。したがって、裁判をしてでも補償を求めることはできない筋合いになっておる。これは、当然裁判してでも補償を求めることができるという法律にきちっと改正する必要があると思うのです。その必要は全くないとおっしゃるならば、これは大きな間違いだと思うのですが、どうでしょう。
  63. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 私どもといたしましては、必要性の有無という観点もさることながら、現在の刑事手続の中ではたいへん実現が困難だと思っております。と申しますのは、無実の被疑者被疑者補償請求権を認めるということにいたしますと、たとえば検察官はおよそ捜査の途中で、かりにこれがほんとうの犯人であったとしても、起訴価値がないと認めますと、とことんまで捜査をしないで打ち切ってしまいます。そこで、まずもって権利を認めるということになりますと、検事は白黒がつくまですべて捜査をしなければならぬ、そういうたてまえをとらなければならぬと思うのでございます。それからもう一つは、検察官がたとえば嫌疑なしという理由で不起訴にいたしましたような場合に補償が行なわれるわけでございますが、これをたまたま御本人が見ると嫌疑なしであるはずなのに、検察官は起訴猶予ということで不起訴にした。これはけしからぬということになってまいりますと、おのずから裁判所へ持ち出しまして、これは嫌疑があるのかないのかということの判断を仰がなければならない筋合いだと思うわけでございますが、そうなりますと、現在ございます検察審査会制度のほかに、すべて検察官のした不起訴処分について裁判所でその当否を判断していただくという方法を考えなければならぬことになりまして、現在の検察官のいわゆる起訴便宜主義をとっておるわが刑事手続、さらには検察審査会制度が設けられておりますそういう制度上の実態、これらからしますと、きわめて基本的な変革をいたしませんと、被疑者補償権利として認めてやっていくということはたいへん困難であろうと思うのでございまして、そういう観点から、必要性の有無もさることながら、実現が当面はむずかしいというふうに考えておるものでございます。
  64. 山田太郎

    山田(太)委員 人権尊重は一番大切な問題です。そこで、先ほど申し上げましたように、いまの被疑者補償規程は恩恵的なものである、その恩恵的なものであるということに疑義があるわけです。ことばをかえていえば、恩恵的なものにしかすぎないともいえるわけです。これについてはどうでしょう。
  65. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 御本人に請求権がないということを恩恵的と考えれば、それもそうでございますけれども、やはり被疑者補償規程は、法務大臣が訓令いたしまして、そういう要件に合う方が生じた場合には必ず補償をして差し上げろということをいっておりまして、検察官はそれによって義務づけられておるわけでございます。そういう面に着眼しますと、これは必ずしもやってもいいしやらなくてもいいというような恩恵的なものではないという見方もできるのじゃないかと考えております。しかしながら、御指摘のように人権の尊重ということは何にも増して必要なことでございますので、今後とも検察官全体に対しまして、この被疑者補償の運用の適正に行なわれますように、おりに触れて指示をして、適正を期してまいりたいと思っておるわけでございます。
  66. 山田太郎

    山田(太)委員 終わります。
  67. 永田亮一

    永田委員長 林百郎君。
  68. 林百郎

    ○林委員 私は二、三点質問したいと思います。これは松本委員がすでに質問をしておりますので、ごく簡単な問題だけにとどめたいと思います。  世間で非常に関心を集めた事件に、三鷹、松川青梅、芦別というような事件があるわけです。いま私があげた事件で、本法が適用になる事件がありますか。これらの事件は、すでに刑事補償は全部決定し、支払い済みですか。
  69. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 御指摘事件の中で、青梅事件はまだだと思いますが、ほかの事件につきましては、請求がありましたものはすべて決定済みだと存じます。
  70. 林百郎

    ○林委員 そうすると、三鷹、松川、芦別は本法の適用はない、こう聞いていいですか。
  71. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 ただいま御審議いただいております改正法案によって改正されました後の刑事補償法の適用はございません。
  72. 林百郎

    ○林委員 青梅事件については、旧法で計算してかりに最高の支払いがあるとして、旧法と本法では総金額はどういうふうに違ってくるのですか。
  73. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 この事件につきましては、現在事件が確定したばかりでございまして、当然記録も裁判所でお持ちでございますので、勾留日数の計算を一々いたしておりませんのではっきりしたことが申し上げられなくて申しわけございませんが、(林委員「大体でいいです」と呼ぶ)要するに、単価において最高額が千円と千三百円との違いが出るはずでございます。最高額を千円としております現行法補償を差し上げるということになると思います。
  74. 林百郎

    ○林委員 それはどういうわけですか。補償が決定する時点で本法が通過されておれば、本法で適用すべきだ、最高額を支給するかしないかは別としてですよ。そういうことになるべきじゃないですか。
  75. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 御指摘考え方も一つのお考えだと思いますが、この御審議いただいております法律案の附則の第二項をごらんいただきますと、「この法律の施行前に無罪裁判又は免訴若しくは公訴棄却の裁判を受けた者に係る補償については、なお従前の例による。」という規定を置いておるわけでございます。と申しますのは、およそ刑事補償請求権は無罪裁判等が確定したその時点において生ずるというふうに考えられますので、その請求権発生の時点において施行されていた法律によって補償をしようということになっておるわけでございまして、本法制定以来そういう考え方で行なわれておるのでございます。
  76. 林百郎

    ○林委員 補償の決定がまだないのに、補償の決定する時点で補償額の新たな算定の法案が通っているとすれば、この被害者に対する十分の補償をするという趣旨からいえば、これは新法で計算してやるべきではないか、こういうように思うのですが、どうですか。
  77. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 刑事補償がたとえば恩恵的なものであるというようなことでございますると、御指摘のように、後にもっと有利な法律改正が行なわれたという場合には、その有利なほうで見てあげるということもあろうかと思いますが、やはり請求権というふうに権利として確定いたしました以上は、たとえば相続問題とかいろんな問題がそれに伴って生じてまいる場合もございますし、そういった点を考えますと、やはり請求権が発生した時点はいつかということを見まして、はっきりそこの時点できちっとしたほうがいいのじゃないかというふうに思われるわけでございます。
  78. 林百郎

    ○林委員 そうすると青梅事件をかりに現行法の千円で計算すると、大体総額幾らになるのですか。大体の計算でいいですが、それと新法だと幾ら違ってくるのですか。
  79. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 的確なお答えができませんけれども、最高額をかりにとってまいりますと、八人で延べ四百何十日かのようでございますので、約四百万円ということになるのじゃないかと思います。
  80. 林百郎

    ○林委員 そうすると、新法ですと千三百円ですからその三割増しで約百二、三十万違ってくる、これはごく大ざっぱなところ、そう見ていいですか。
  81. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 そのとおりでございます。
  82. 林百郎

    ○林委員 そういう点について、われわれ非常に問題があります。私は、この法案には基本的には大体賛成の立場をとろうと思いますけれども、そういう点でははなはだ遺憾だと思うのです。そうすると、この新しい法律が適用されると予想される事案というのは、現在の時点では考えられておらない、こういうことですか。
  83. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 日々に裁判が行なわれておりますので、その間には無罪になる事案もあると思いますが、極端なことを申し上げれば、きょうにもそういう裁判があるかもしれませんし、きょうこの法律案法律として成立すれば、きょう行なわれたものに適用されるかどうか、そういう問題が起きてまいります。具体的にどの事件がたとえば無罪になりそうだとかというようなことは、私どもとしては把握をいたしておりませんので、御了承願います。
  84. 林百郎

    ○林委員 刑事補償の性格に関して次に質問したいと思いますが、刑事補償があっても、たとえば慰謝料——長い間死刑の判決を受けて、あるいは非常な長期の有期懲役の判決を受けていたのが無罪になったという場合に、当然慰謝料の請求あるいは国家賠償請求ができるはずです。この国家賠償刑事補償との関係は、どう考えておりますか。
  85. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 刑事補償のほうは、御承知のように、故意過失を論じないで支払われるわけでございまして、国家賠償のほうは公務員故意過失があった場合に支払われるわけでございます。どちらも並立して請求することができるわけでございます。先ほど先生が御指摘になりましたものの中から一つ例をあげますと、たとえば松川事件につきましては、先ほど最高裁のほうから御説明いたしましたように、千五百万円の刑事補償が行なわれております。別途、国を相手としまして国家賠償請求が出ております。その額は、現実に被告人であった方に関する部分だけをとってみますと、約一億八千万円という国家賠償請求が出ております。現行法のたてまえとしましては、刑事補償刑事補償国家賠償国家賠償でいたしますが、その場合に先に受け取った分がありますと、あとのほうの分から差っ引くということになっているのです。したがいまして、仮定の問題でございますが、たとえば松川事件につきまして何がしかの国家賠償裁判で認められますと、刑事補償で先に受け取りました千五百万円を差し引いてその額が計算される。逆に国家賠償が先に行なわれておりまして後に刑事補償が行なわれます場合には、国家賠償でまかない切れなかった金額だけを刑事補償のほうで支払うということになっております。
  86. 林百郎

    ○林委員 請求の要件があなたの言うように違うわけですから、一方では故意過失の証明が必要でない、当然支払われるべきものである。一方は故意過失が構成の要件になって支払われるのだから、それを差し引くというのはおかしいのじゃないですか。構成要件の違う請求権に基づいて支払われるものが、一方を一方から差し引くというのはおかしいと思うのですが、どうですか。
  87. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 刑事補償が先に行なわれてあとから国家賠償が行なわれるという場合をひとつかりに考えてみますと、最初行なわれました刑事補償というものは、一応定型化されたものであり、金額が一定されてはおりますが、その中身と申しますのは、やはり財産上の損害でございますとか精神的な慰謝料、こういうものをひっくるめて定型化して定額を支払っておるわけでございます。後に国家賠償裁判が出ました場合の国家賠償と申しますのは、財産上の損害精神的な苦痛に対する慰謝料というものを内容とするのが国家賠償の賠償額でございます。したがいまして、かれとこれとの間には、財産上の損害精神的な慰謝というものが重複して計算されておるわけでございますので、これを重複した分を除き去るということになっておるわけでございます。
  88. 林百郎

    ○林委員 この刑事補償の適用の場合に、執行停止を受けているという例がある場合、その執行停止の期間はどうなるのですか。
  89. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 お尋ねは、勾留の執行停止あるいは刑の執行停止だと思いますが、執行停止の期間は、この法律にも書いてございます抑留拘禁の日数と見られませんから、その分につきましては、遺憾ながら補償の対象になりません。
  90. 林百郎

    ○林委員 先ほど横山委員から質問があったかと思いますが、検察官上訴の場合の費用補償は、非常に制限されたものですけれども、あるわけですね。どうして検察官上訴の場合だけ無罪になった場合に一定のこういう金額だけが補償されて、あとの費用について補償がされないということになっているのか、非常にその点は不合理だと思いますけれども、将来こういう点を改善する意思、あるいはそういう点を検討する意思があるかどうか、聞いておきたい。
  91. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 先ほども横山委員の御質問に対しましてお答えしましたように、最高裁事務当局とも連絡をしまして検討をいたしております。
  92. 林百郎

    ○林委員 検討するというのは、立法化の方向を考えているということなんでしょうか。要するに、こういう長い間の精神的な苦痛、家族の苦痛、多大の物質的な支出に対してみずからが上訴してみずからの権利を守るということのほうが、検事の上訴の場合よりはさらに困難ないろいろの事情があるのに、みずからが上訴してみずからの権利を守る、そしてその結果明らかに無罪になり、検察側の責任の次第が明確になった場合に、その実費を見てやらない、検察官上訴した場合だけを見てやるというのは、はなはだ不合理だと思いますけれども、すみやかにこのことは検討して立法化し、刑訴の改正を試みるべきだと思うのですけれども、そういう方向で検討しているのですか。ただ学理的に検討しているという段階ですか。
  93. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 立法化しないために検討するということはあり得ないわけでございまして、そういう趣旨検討しておるわけでございます。
  94. 林百郎

    ○林委員 私の質問はいいです。
  95. 永田亮一

    永田委員長 これにて本案に対する質疑を終了するに御異疑ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  97. 永田亮一

    永田委員長 次に内閣提出公海に関する条約の実施に伴う海底電線等の損壊行為の処罰に関する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、これを許します。大竹太郎君。
  98. 大竹太郎

    大竹委員 まず第一にお伺いしたいのでありますが、これは公海に関する条約の実施に伴うということで、条約がまず前提になると思うのでありますが、その公海という観念は、領海に関するものに対応する考え方だ、こういうふうに考えるのでありますが、ただ、ここでお聞きしたいのは、領海の範囲というものは各国によって相当違うように聞いているわけでありまして、たとえば日本では三海里説をとっている。四海里、六海里、十二海里、極端なのになると二百海里というようなのもあるというふうに聞いているのでありますが、そうなりますと、ここで問題になりますこれらの施設についても、一体公海にあるのか、領海にあるのかという解釈の問題も生ずると思うのですが、これはいかがですか。
  99. 村上謙

    ○村上説明員 お答え申し上げます。領海の幅につきましては、今回国会に御承認をお願いいたしまして出しました領海及び接続水域に関する条約の中に領海の幅を定めようという動きがありまして、実はこの領海条約が採択され、海洋法会議、これは一九五八年にジュネーブで開かれた会議でございますが、この会議提出されました国際法委員会の原案には、領海の幅を三海里から十二海里の幅できめるというような条文が入っておりましたけれども、結局この五八年のジュネーブ会議では、領海の幅について各国の意見がまちまちで、その条文それ自体が落ちたような経緯がございました。そこで先生の御質問に直接お答えさしていただきますと、いま申し上げましたように、領海の幅につきましては各国まちまちの意見できまっていない。そこで私どもといたしましては、領海の幅に関する国際法の規則は、やはり慣習国際法として成立してきた三海里であるというふうに考えております。  この三海里と考えておりますことに関連しまして若干付言さしていただきますと、実は先ほど申しました五八年の海洋法会議の次に、一九六〇年に領海の幅をきめることを中心とした第二回海洋法会議がジュネーブで開かれまして、この際六海里というような案が米国、カナダを提案者といたしまして出されまして、これにはわがほうも賛成の態度を表明いたしましたけれども、やはり採決しましたところ、六海里説に賛成する票がわずかの差で少なかったために、この六海里とするという案も否決されたわけでございます。でございますから、そのような観点から、私どもといたしましては三海里と考えております。もともと領海の幅について各国ばらばらのことを言っていたのでは、先ほど先生から御質問のありましたように、公海の範囲も確定しない。そこで国際的には統一した幅が必要ではないか、統一した幅としては、かりに六海里あるいは十二海里ということに大勢がなりましたら、やはりそのようになるかと思いますけれども、そういう国際的な統一した幅についての各国の制度もまちまちでございますので、私たちとしては一応三海里というふうに考えております。
  100. 大竹太郎

    大竹委員 この条約に日本が今度入るわけでありますが、一体これができた一九五八年当時のあれはわかっておりますが、現在何カ国ぐらいこれに入っており、そしておもな国はどういう国が入っておりますか。
  101. 村上謙

    ○村上説明員 この条約の現在の当事国は、四十カ国でございます。これは四十三年、本年一月一日現在の時点でございます。おもな国といたしましては、アメリカ、イギリス、ソ連邦、それからソ連圏の諸国、オーストラリア、フィンランド、イタリア、オランダ、そういうような国でございます。
  102. 大竹太郎

    大竹委員 次にお聞きしたいのですが、これはこのあとで出てきます海底電信線保護万国連合条約罰則とも関係があるのでありますが、これをちょっと見たところでは、海底電信線保護万国連合条約のほうは海底電信線だけがこの客体のようになっておるのですが、そう了解してよろしいのですか。
  103. 村上謙

    ○村上説明員 一八八四年条約のほうは、海底電信線及び電話線を含むというようにわれわれ理解しております。
  104. 大竹太郎

    大竹委員 次に、これは法務省のほうにお伺いしますが、このあとにできた海底電信線保護万国連合条約罰則のほうは「布設又ハ修繕スルニ付已ムコトヲ得サルニ出テタル者ハ此ノ限ニ在ラス」ということで、この罰則を除外しているのですが、今度のこの公海に関する条約のほうにはこの規定はないのでありますが、これはどう解釈したらよろしいのですか。
  105. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 確かに御指摘のとおり、この古いほうの万国連合条約罰則のほうには、ただいま御指摘のような文言がありまして、御審議いただいております法案にはございませんが、これはその後わが現行刑法の解釈といたしまして、たとえば緊急避難あるいは正当防衛行為ということで、当然さような場合には刑事責任を免除されるものと解釈されますので、蛇足にわたるので書かなかったわけでございます。
  106. 大竹太郎

    大竹委員 次に、今度のこの条約に関する罰則規定でありますが、これに該当するものが一体日本の近海にあるのかないのか。あればどういうものがあるのかということをお聞きしたいと思います。
  107. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 結論を申しますと、ございません。似たようなものは、たとえばわが国とアメリカ合衆国とを結んでおります海底電信線でありますとか、わが国とソ連邦とを結んでおる同様海底電信線がございますが、それらはいずれも海底電信線保護万国連合条約のほうで措置されますので、この法律案の適用を受ける、さようなものは、現在のところないわけでございます。
  108. 大竹太郎

    大竹委員 それならば、いままでありましたこの海底電信線保護万国連合条約罰則、これによって処罰されたとでも申しますか、この罰則規定によって処罰された例があるのですか、ないのですか。
  109. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 戦前のことにつきましては、資料が焼けておりまして確かなことは申し上げられませんが、調査の結果、一件もございません。
  110. 大竹太郎

    大竹委員 次に、これはもちろん条約に入っている国があれになるわけでありますが、それならば、この条約に入っていない国のものを損壊したというような場合にはどうなるのですか。
  111. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 古いほうの連合条約におきましては、保護の対象になります電信線、電話線を条約当事国にどっちかの端が陸揚げされているものと限定しておりましたが、今回の条約におきましては、そういう制限がございません。これは国際慣習法を成文化したというような観点でございますために、そういう制限が置かれなかったものと考えるのでございます。したがいましていま御審議いただいております法案は、たとえばこの条約に加盟していないある国とまた条約に加盟していない他の国とを結んでおる海底電信線等を損壊しました場合にも、適用があるということでございます。
  112. 大竹太郎

    大竹委員 次に、これは公海で行なわれるわけでありますが、一体こういうことをだれがいつやったというようなことは、相当各国がよく連絡をとらなければわからないわけでありますが、それらについては各国間に協定その他はあるのですか。
  113. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 その点についての特段の協定はございませんけれども、この公海に関する条約におきましては、損壊した船なら船、人なら人の属する国がなるべく処置するというようなたてまえができております。たとえば、損壊されました電信線を持っておる国から直ちに、損壊の事実が発生しました場合には、いわゆる船の旗国あるいはその者の国籍国に通知がなされてくると思います。通知を受けました場合に、捜査権を発動して裁判を行なうということになろうかと思います。
  114. 大竹太郎

    大竹委員 次に、今度の法律案の附則で、いままであった海底電信線保護万国連合条約罰則(大正五年三月七日法律第二十号)を改正しておるというのでありますが、もちろんこの法律改正するのに法律をもってやっておるのですから、私は大きな意味においては差しつかえないように思うのですが、これはやはり大正五年の法律第二十号は一つの単独法でありますので、今度の新しい法律をつくる機会に単独法の罰則を附則で何だかごまかしたようなかっこうで改正するということは、私は不法ではないと思うのですけれども、何とも不都合ではないかと思うのです。その点どうお考えでありますか。
  115. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 その点御指摘いただいて恐縮でございますが、実は連合条約罰則のほうを今度改正いたしますのは、この公海条約の実施に伴うこのたびの法案をつくりますと、どうしてもそれに伴って手直しが要るという関係になっておるのでございます。すなわち、この法律が成立いたしますと、連合条約罰則のほうをそのままほうっておきますと、日本の沿岸からたとえば三海里の中と外とで法定刑が極端に違うというような不都合が生じます。そこで、この法律の成立に伴って必要な手直しだという観点から、今回のように附則で改めさしていただくということにしたわけでございますので、ひとつ御了承を賜わりたいと思います。   〔委員長退席、田中(伊)委員長代理着席〕
  116. 大竹太郎

    大竹委員 最後にもう一つ聞きたいのですが、この海底電信線保護万国連合条約改正を見ますと、懲役のほうはたしかいままで七年であったものを五年にしたようでありますが、罰金のほうは今度は反対に十万円以下のものを五十万円に上げておるのです。これらは何か不均衡な気もするのですが、説明してください。
  117. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 御指摘のような結果に結論的にはなっておりますけれども、先ほど申し上げましたように、本法の第一条におきまして、全く同じような行為に対する法定刑として、五年以下の懲役または五十万円以下の罰金というのを定めるわけでございます。こう定めます理由は、わが国の既存の国内法でございます公衆電気通信法というものに平仄を合わせてそうするわけでございますが、そういたしますと、懲役刑のほうだけを合わせるというわけにもまいりませんし、罰金刑のほうだけを歩調を合わせるというのも変でございますので、この際そのいずれをも本法の第一条の法定刑に合わせてまいりたい、こういうことで連合条約罰則のほうを一致させる。その結果、一方が上がり一方は下がるという、一見妙な結果になっておりますので、附則をお読みいただきますと、何となく目ざわりな観を呈しておるわけでございますが、そういうわけでございます。
  118. 大竹太郎

    大竹委員 終わります。
  119. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員長代理 林君。
  120. 林百郎

    ○林委員 この配られた資料に、グアムから二宮への海底ケーブルの図面があるわけです。これが損傷された場合は、万国連合条約のほうで処罰されるんですか。それとも今度新しく審議している法律で処罰するのですか。どっちですか。
  121. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 御指摘の図面は私どものほうでお出ししたものじゃないと思いますが、グアムと日本でございますか。——そういたしますと、日本の国にその一端が陸揚げされておるわけでございましょうから、その電信線を切断、損壊いたした場合につきましては、旧法、すなわち海底電信線保護万国連合条約の罰則の適用があるケースでございます。
  122. 林百郎

    ○林委員 そうしますと、どこのケーブルでも最後にはどこかの国へ陸揚げされるわけですから、あなたの論理から言うと、本法の適用される場合というのは考えられないんじゃないのですか。どういうことを考えておりますか。
  123. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 本法で書いておりますのは、電信線のほかに海底パイプラインあるいは海底高圧電線というのもあるわけでございますが、海底電線だけにとって申し上げますと、たとえばデンマークとオランダとの間を結んでおる海底電信線があるはずでございますが、これを損壊した場合には、本法の適用があるということになります。と申しますのは、デンマークもオランダも海底電信線保護万国連合条約に加盟いたしておりませんので、同条約罰則の適用を見ることがないわけでございます。さようなものは、この御審議いただいております法律で処罰をするということになろうかと思います。
  124. 林百郎

    ○林委員 そうしますと、これは公海に関する条約を締結したからこういう法律国内法としてつくるんだということは一応は考えられましても、日本の国の場合、この万国連合条約に加盟しているわけなんですから、これの適用をされるような場合に、少なくとも日本に関係する限り——日本に関係する限りということは、日本の本土、領海、太平洋ですね、何かあるのですか。さっき大竹さんの質問では、ないと言っているんですね。
  125. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 現在、日本の国と他の国を結んでおるので本法の適用を受けるものはないわけでございますが、海底パイプラインにおきましては関係が出てまいります。と申しますのは、御承知かと思いますが、アラビア石油株式会社が昭和三十四年以来サウジアラビアとクウェートの中立地帯の沖合いに、ペルシア湾になるのだと思いますが、カフジ油田というのを開発しておりまして、その油田と集油所を結びまして海底パイプラインを相当キロ数敷いておるようでございます。このものはわが国と直接関係のあるものではないかと思います。
  126. 林百郎

    ○林委員 いまちょっと途中で話をしていたのですが、そうすると、パイプラインの場合は、日本へ陸揚げされるというものはないですね。
  127. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 日本の沿岸に、ことばは悪いのですが、くっついているパイプラインというものはございません。
  128. 林百郎

    ○林委員 これも先ほど大竹委員質問したかと思いますが、どうもはっきりしなかったのですが、万国連合条約で日本の船で処罰されたものはないと聞いたのですが、そのとおりですか。
  129. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 ございません。
  130. 林百郎

    ○林委員 そうすると、万国連合条約が適用された例もない。それから日本の本土に陸揚げされあるいは日本の本土の領海に通ずるというような電話回線、ケーブル線、パイプラインは本条約の適用はない。そういうことになりますと、大体本法律案の適用はない。   〔田中(伊)委員長代理退席、委員長着席〕 そうすると、本法律案が適用される事例というのは、いままで万国連合条約も適用された事例はないわけなんですから、大体あり得ない。絶対にないとはいえないけれども、本法が適用される事例というのは、ちょっとここのところ考えられない、こういうことになるのですか。
  131. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 たとえば電信線で申しますと、先ほどの例で言いますと、デンマーク−オランダ間の電信線を日本の船が航行中に何かのはずみに損壊してしまったというような場合には、損壊された当事国から日本へ通知がありますから、日本で裁判を行使する必要が生ずるだろうと思います。それからまた、ペルシア湾にありますアラビア石油等のパイプラインを日本の船舶がひっかけた、あるいは非常に不心得な者がおりまして、たとえばもぐっていってこわしたというようなことがありました場合には、この法律の適用があるわけでございます。
  132. 林百郎

    ○林委員 そうすると、私が最初に聞いた二宮−グアム−ミッドウェー、それからアメリカ本国、この線でもし損壊行為が起きたとすれば、万国連合条約の適用を見るべきだ、こう聞いておいていいですか。
  133. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 そのとおりでございます。
  134. 林百郎

    ○林委員 それでは私の質問は終わります。
  135. 永田亮一

    永田委員長 これにて本案に対する質疑を終了するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  137. 永田亮一

    永田委員長 次に、内閣提出下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、これを許します。大竹太郎君。
  138. 大竹太郎

    大竹委員 この簡易裁判所の設立、管轄の改正は、通常国会でいつも問題になるのであります。この前においても、ほかの委員からも私からもたしかお尋ねしたと思いますが、未開庁の簡易裁判所はまだ相当あると思うのでありまして、これを早く成立すべきだということが問題になっておるが、いつもそのうち、そのうちということで延びて、ことに前回の通常国会のときには、地方選挙等もあるので、地方の意見等を聞く上においてもちょっと時期的にうまくないということだったと思うのでありますが、その後どういうようなことになっておりますか、この際にお聞きしておきたいと思います。
  139. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 いわゆる未開庁の整理の問題につきましては、当委員会におきまして過去にしばしば問題がありましたし、また昨年先生から御質問をいただいております。こういうことで、私どもといたしましてはなるべく早く解決をはかりたいという考えでございますが、いろいろ事情もございまして、今回も遺憾ながらその措置がとれなかったわけでございます。  その理由でございますが、先生承知のように、この未開庁の整理につきましては、法務省といたしましては、簡易裁判所の全体の立場からその配置の適正、合理化をはかる、こういう見地で検討をしてまいったわけでございます。そこで、そのためのいろいろな調査、これは最高裁判所の事務当局のほうの御協力をいただきまして、大体完了しておるわけでございますが、この調査の結果に基づきまして整理を行なうにあたっては、その整理の規模をどの程度にするか、それから時期、方法などについてもいろいろ検討すべき問題があるわけでございます。ことに、私のほうでこれは整理してよいと思われる簡易裁判所につきましても、地元の市町村のほうではかなりそれに反対があるらしいという情報もございますので、これをいつ実施するか、どういう方法で実施するかということが、かなり問題になるわけでございます。そこで、反対のございましたところにつきましては整理を行なわないということになりますと、せっかくの整理が中途はんぱなものに終わりますので、その整理の方針を実は目下検討しておるところでございます。  そのために一、二検討している関連問題点を申し上げますと、一つは、本年の二月二日に行政改革の今後における推進について閣議決定がなされております。この閣議決定は、中央官庁の地方出先機関の整理に関する項目も含んでおります。この問題と簡易裁判所の整理の問題とはお互いに関連性を持っておりますので、この均衡を考えたいということが一つの問題点でございます。  それからもう一つは、本年の七月から、道交法の改正によりまして反則金制度が実施されることになっております。その結果、現在簡易裁判所で処理しております道交法違反事件がかなり減少するのではないかと思われますので、その結果も見ました上で確定的なことを詰めたい、こういうふうに考えるわけであります。  そういういろいろな事情がございますので、いましばらく様子を見た上でやっていきたいということで、今回はその措置をとらなかったわけでございます。一応お答えをいたします。
  140. 大竹太郎

    大竹委員 いまの反則金の問題は、その次に私は言おうと思っておったのでありますが、これはもちろん地元との折衝、了解ということは、私は大事だと思うのでありまして、私は、こんなことを言っていながらも、今度は地元の統合なんという問題になりますと、必ずしもすぐ賛成できるかどうかというようなことでちゅうちょするわけでありますが、この簡易裁判所の問題と並んで、高裁あるいは地裁の支部の統合整理という問題も、臨時司法制度調査会等でも問題になっておりますし、この委員会等においても審議されたこともあると思うのであります。その辺どうお考えになっておりますか。
  141. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 お話しのとおり、いろいろ臨司では提案されておりますが、これはかなり相互に関連を持つ問題でございますので、実は二年ばかり前から日本弁護士連合会と定期的に連絡協議をいたしておりまして、昨年の九月ごろから特に第一審のあり方について御協議をして、そういう御意見等を参酌しながら、たとえば簡裁の事物管轄の問題でありますとか、あるいはいまお話しの支部の整理統合の問題であるとか、そういうものについて結論を得たいと考えております。ただ、日弁連の内部の御事情でいろいろ手間どっておりまして、まだ実質的なお話し合いに入っておりませんが、近いうちにそういうことになるものと期待をしております。
  142. 大竹太郎

    大竹委員 次に、本案には直接関係がないのでありますが、簡易裁判所に関係があるのでお聞きしたいのですが、簡易裁判所の民事事件に関係のある司法委員制度ですね。調停委員はなかなかよく活用されておりますが、この司法委員というのはほとんど活用されていないやに私は思うのでして、臨時司法制度調査会等においても、消極的な意見もあるように聞いておるのでありますが、これについてはどうお考えですか。
  143. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 確かに調停委員に比べますと司法委員が関係します事件は少のうございますが、御承知のとおり、調停の場合には、調停委員が加わりまして委員会を構成することになっております。司法委員は、民事訴訟法の第三百五十八条の四にございますように、裁判所が必要ありと認むるときは司法委員を審理に立ち会わせる、あるいは和解について補助させる、こういうことでございまして、「必要アリト認ムルトキ」という条件がございます。そうして実際、現在は三%弱の程度しかついておりませんが、これも中身をよく見てみますと、たとえば土地、建物の事件等につきましては五%以上、都市によっては、一割近い事件についておるわけでございます。そういうことで、件数だけから一がいに活用されていないとも言えないと思います。臨司でもいろいろ議論がございましたし、部内でもいろいろ議論があるわけでございますが、私どもとしては、これはすべての事件というふうには申せませんし、またいたずらに件数の多きを望むわけにもまいらないと思いますけれども、やはりしかるべき事件、司法委員の御協力をいただくのにふさわしい事件につきましては、極力活用してまいりたい、かような方向で話し合っております。
  144. 大竹太郎

    大竹委員 最後に相川の問題であります。これは相当長くかかったのですけれども、新築を機会に移転をされ、地元も了解したようでありますが、やはり簡易裁判所の統合というような問題は、新築その他を機会にああいうような処置をとられるということが、手数はかかるかもしれませんけれども、一番合理的なんじゃないかと思うのでございますが、ほかにもああいう事案があるとお考えになっていらっしゃるかどうか、ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  145. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 相川の場合にも、大竹議員つとに御承知のとおりいろいろ問題がございましたが、地元の格別の御協力によりましてきわめて円満に移転ができるようになりましたことは、私どもとして非常に喜びにたえないところでございます。現在のところ一、二支部等につきましてそういう空気があるところもないではございませんが、まだ相川ほど正式の問題になるというようなところはございませんし、今後とも御意見を体しまして、できる限り地元と十分話し合って実施してまいりたいと考えております。
  146. 大竹太郎

    大竹委員 質問を終わります。
  147. 永田亮一

    永田委員長 これにて本案に対する質疑を終了するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  148. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  149. 永田亮一

    永田委員長 これより本案について討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  150. 永田亮一

    永田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。      ————◇—————
  151. 永田亮一

    永田委員長 次に、内閣提出刑事補償法の一部を改正する法律案議題として、審査を進めます。  本案の質疑は、すでに終了しております。     —————————————
  152. 永田亮一

    永田委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  刑事補償法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  153. 永田亮一

    永田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。      ————◇—————
  154. 永田亮一

    永田委員長 次に、内閣提出、公海に関する条約の実施に伴う海底電線等の損壊行為の処罰に関する法律案議題として、審査を進めます。  本案の質疑は、すでに終了しております。     —————————————
  155. 永田亮一

    永田委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  公海に関する条約の実施に伴う海底電線等の損壊行為の処罰に関する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  156. 永田亮一

    永田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  157. 永田亮一

    永田委員長 ただいま可決いたしました三法案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  158. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  159. 永田亮一

    永田委員長 次回は、明二十六日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十五分散会