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1968-04-23 第58回国会 衆議院 法務委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月二十三日(火曜日)    午前十時三十分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大竹 太郎君 理事 田中伊三次君    理事 中垣 國男君 理事 濱野 清吾君    理事 猪俣 浩三君 理事 神近 市子君       鍛冶 良作君    河本 敏夫君       瀬戸山三男君    千葉 三郎君       馬場 元治君    河野  密君       横山 利秋君    有島 重武君       林  百郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 赤間 文三君  出席政府委員         法務政務次官  進藤 一馬君         法務省民事局長 新谷 正夫君         法務省入国管理         局長      中川  進君         公安調査庁次長 長谷 多郎君         厚生省援護局長 実本 博次君  委員外出席者         法務省刑事局総         務課長     伊藤 栄樹君         法務省刑事局参         事官      吉田 淳一君         外務省アジア局         北東アジア課長 野田英二郎君         最高裁判所事務         総局刑事局長  佐藤 千速君         専  門  員 福山 忠義君     ————————————— 四月二十三日 委員岡田春夫君及び山田太郎辞任につき、そ  の補欠として横山利秋君及び有島重武君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員横山利秋辞任につき、その補欠として岡  田春夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件  検察行政に関する件  人権擁護に関する件  裁判所司法行政に関する件      ————◇—————
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件、検察行政に関する件、人権擁護に関する件、及び裁判所司法行政に関する件について、調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。林百郎君。
  3. 林百郎

    林委員 それでは、公安調査庁の方、見えていますね。去る三月二十九日に当委員会で、三重県の上野市の市役所で、公安調査庁の吏員が戸籍調査して、そして共産党社会党、あるいは部落解放同盟方々の身上を調査した、これが憲法に違反して著しく私権を侵害するものではないかという質問が、社会党中井徳次郎委員から行なわれました。そのときあなたも出席されていましたか。
  4. 長谷多郎

    長谷政府委員 長官が出席しております。
  5. 林百郎

    林委員 長官が答えておるようですね。そのときの答弁で、きわめて聞き捨てがたい答弁がされているわけですけれども長官の吉河氏が、「この調査の筋は、日本共産党関係調査でありまして、日本共産党員である疑いのある方々につきまして、個人確定のためにいろいろな調査をした。」こう答弁しているのですけれども、「日本共産党員である疑いのある方々につきまして、個人確定のためにいろいろな調査をした。」これはどういう意味ですか。
  6. 長谷多郎

    長谷政府委員 前回長官からお答え申し上げましたのは、そのとおりの趣旨であったように考えております。公安調査庁では、御承知のように、日本共産党破防法に基づく破壊活動容疑のある団体といたしましてこれが調査を進めておるところでございまして、それの役職員構成員等につきましては、逐次調査をいたしております。その過程におきまして、それらの各個人がどういうような人で、あるいは戸籍上どうであるかというような点をはっきり確定いたす作業も含んでおるのでございます。このような調査を進めておるということを申し上げたのだと考えております。
  7. 林百郎

    林委員 日本共産党破防法容疑団体だという点については、あとでまた詳しくお聞きしたいと思います。だから、ここにある「日本共産党員である疑いのある方々につきまして、個人確定のためにいろいろな調査をした。」個人確定のためにいろいろな調査とは、どういうことをしたのですか。
  8. 長谷多郎

    長谷政府委員 この場合は、これは三重局におきまして、これらの疑いのある方々について、それが住民登録票上どんな記載のある方であろうかということを調べたのにとどまるのでございます。
  9. 林百郎

    林委員 住民登録票上どういう記載があるかということをどうして調べる必要があるのですか。そういう本人以外の妻がだれで、子供がだれで、生まれたばかりの子供のことまで調べる必要がどうしてあるのですか。
  10. 長谷多郎

    長谷政府委員 御承知のように、個人を特定いたします上におきましては、それぞれどういう家族を持った方であって、氏名はどういう方である、あるいは生年月日はどんな方であるということを特定いたしませんと、同名の場合もございますし、また御承知のようにこれらの調査対象者はしばしばペンネームなどを使いまして、ほんとう戸籍がどのようなものであるのかというような点を判定いたすのにしばしば手数を要するところでございまして、これらを解明する手段として、このような住民票の閲覧とかあるいはそれの写し取りをやるということがあるわけでございます。
  11. 林百郎

    林委員 共産党破防法容疑団体だということは、どういう根拠からそういうことを言うのですか。
  12. 長谷多郎

    長谷政府委員 お答えいたします。日本共産党は、過去におきまして暴力主義的な破壊活動を行なった容疑がございまして、これに対して公安調査庁破防法に基づく調査を行なうことは、しばしば国会でもお答え申し上げたとおり当然でございまして、このことは、現に昭和三十六年九月十四日最高裁上告棄却判決におきまして、いわゆる石川六・二〇事件と称されておりますが、この事件判旨の中でも、公安調査庁がこのような容疑に基づいてこれを調査することは相当であるという趣旨の判断を示されております。このような事例をあげましてもその点は御了承願えるのではなかろうか、かように考えております。
  13. 林百郎

    林委員 破防法刑事事犯として共産党員破防法罰則で起訴をした事案がありますね。それを知っていますか。何件あって、その結果はどうなっていますか。
  14. 長谷多郎

    長谷政府委員 詳細の件数はあげかねますが、数件あったと考えております。現在まで有罪判決を受けた共産党関係破防法事件は、承知いたしておりません。
  15. 林百郎

    林委員 そうすると、有罪判決がないということは、全部無罪判決、こういうことですね。そこで、あなた自身の考えを聞きます。最高裁判決か何かはまた私はよく検査をしますけれども、あなた自身共産党がこうやって選挙国会議員国会へ出てきて、そしてこういう国会議員として他の党とともに活動をしているのに、どうして共産党破防法被疑者団体として当然だと言えるのですか。どういう根拠ですか。あなたの公安調査庁見解をここで述べてみてください。
  16. 長谷多郎

    長谷政府委員 先ほど申し上げましたように、日本共産党は過去におきましてしばしば破壊活動を行なったということの容疑がございます。当庁ではそのような疑いが合理的にある、かように考えております。それらの結果が判決の形であらわれたのを、先ほど申し上げたわけでございます。
  17. 林百郎

    林委員 だから、共産党として、党としてあなたの言うようなそういう事態がいつ、どこにあったのか、説明されたいと言うのです。  それから、あなたは共産党綱領を御存じですか。容疑団体だと言うが、綱領のどこにそういうことが規定されているのか、私に明示していただきたいと思います。
  18. 長谷多郎

    長谷政府委員 個々の事件内容につきましては、先ほど申し上げました判決等詳細に読むのもいかがかと考えますから、必要があれば後ほど差し上げたいと思います。  それ以外の規約綱領等関係につきましては、この点若干お答え申し上げますと、まず現在の日共規約等で常に行動の指針としておるのは、御承知マルクスレーニン主義でございます。このマルクスレーニン主義は、御承知のように暴力革命手段を常に秘めておるということは顕著な事実である、かように考えております。なお、そのほかに、日共は、現在その革命手段につきましては、綱領その他についてもできる限り公にすることを避けておると考えております。それは暴力革命手段に訴えるということは、これを公表すれば、直ちに政府による弾圧を受けるのである、かように党として考えておる旨の表明がかつてなされた党の文献もあるわけでございます。これは御承知と考えますので、出典を省略させていただきます。また、日共暴力革命論を否定していないことは事実でございまして、これを否定するような表現をとる場合におきましても、これをしさいに見ますと、当面これを否定するというふうに限定いたしましたり、あるいは戦術的な考慮からいたしましてこのような表現をやっておるのにすぎないと、私どものほうでは認めておるのでございます。また日共は、その暴力革命論は当面これを秘匿しておると認められるのでございますが、少しく注意を払いますと、その暴力革命論片りんは御承知のいわゆる日共の「敵の出方論」の中にも、はっきりとこれを認めることができると私どもは考えております。また、昨年のいわゆる四・二九の「赤旗」論文の評論におきましても、その最後のほうに、当面武装闘争スローガンはこれを掲げないけれども、将来変革の一般的条件が成熟し、大衆の激高と行動への決意とがはっきりとした形であらわれ、外的な事情が明白な危機に至った場合におきましては、その武装蜂起スローガンを提起することもしかねまじきことが暗示されていることは、御承知のとおりでございます。  以上のような点をとりあえずあげましても、公安調査庁がこのような見解をとって調査をいたしておることは正当である、かように考えております。
  19. 林百郎

    林委員 そんな抽象論を私は聞いているわけじゃないのですよ。第一あなた、共産党綱領規約が秘匿されているなんて、どうしてそんなことが言えるのですか。われわれは第八回の党大会決定綱領を「前衛」にちゃんと載せて、これを公に売って、この中に、共産党綱領はこうで、共産党規約はこうだと言っているじゃありませんか。だから、そんな百年も前に死んだマルクスの理論がどうだこうだということを、ここであなたから説教を聞かなくても、具体的に各国の共産党がどういう綱領に基づいてどういう行動をしておるかということが、いま問題になるわけです。そこで、日本共産党日本共産党綱領規約によって行動するのですから、規約のどこにあなたの言うことが規定されておるか、明示してもらいたいと言うのです。
  20. 長谷多郎

    長谷政府委員 先ほどお答えした中に尽きておると考えます。
  21. 林百郎

    林委員 先ほどは、私の質問にあなた答えてないですよ。綱領のどこに日本共産党暴力革命をやるのだということが書いてあるか、示してくれと言うのです。それなら、われわれが何で国会に出ておるのですか。われわれが選挙をして国会に出るということは、国会において全力を尽くしてわれわれが戦いたい、こう思うから、われわれは選挙を行ない、国会に出てき、他の党と一緒にこうやって審議しておるときに、どうして公安調査庁だけが、いやあれは暴力容疑があるのだということをかってにきめて、しかもこういう共産党員であるかどうかを調べる、これは昔の特高と同じではないですか。しかもそればかりではない、戸籍簿調べて、どこから嫁に来ておるか、何歳の子供があるか、そんなことまで調べることがどうして許されるのですか。綱領のどこにそういうことがあるのか、はっきり示してください。
  22. 長谷多郎

    長谷政府委員 先ほど申し上げましたように、規約綱領暴力革命手段についての表現を、これを秘匿しておると認めておることは申し上げたとおりであります。ただ、若干の片りんは全然なくはございません。たとえば日共綱領の中でも、民族民主統一戦線の上に立つ政府をつくることは、アメリカ帝国主義日本反動勢力のあらゆる妨害に抗しての闘争であるということを書くにとどまっており、また革命平和的形態をとるか、非平和的形態となるかということについては、記述をいたしておりません。しかしながら、このことは、日共綱領一般政治権力獲得のところだけを述べて、その獲得方法を規定しないのであるということにいたしておるのでありまして、このような選択はわれわれが——党の方がおっしゃるわれわれでございますが、正確に規定することのできない未来にかかっておるからである、かような形でレーニンの命題を引用して御説明になっておるのがあるのであります。しかし、また先ほど申し上げましたように、党の文献によりましても、この点を秘匿する理由として、これを書くとすれば、弾圧をねらう敵に口実を与えないように、具体的に正確に定式化することは困難である、かような説明もされておるのでありまして、御承知のような綱領規約面に正確に暴力革命の具体的な方式を出すといたしますと、当然取り締まりを受ける、かような形でこれが表へ出せない、かようなかっこうになっておるのでありまして、実態につきましては、その背後に先ほど申し上げたようなものが炳乎としてあると、われわれは考えておるのであります。
  23. 林百郎

    林委員 共産党のことをあなたがどうしてそんなかってな解釈ができるのですか。綱領には暴力革命をやるとは決して書いてない。しかし、それは本性を隠しておるのだ——隠しておるなら、隠しておる証拠がどこにあるのですか。そんなこと、あなたのほうがかってに嫌疑をかけて民主的な権利を侵害することが、何で公安調査庁だからといって許されるのですか。綱領にこう書いてあるけれども、事実は暴力革命を意図しておるのだということを出したらいいじゃないか。党のどこの公式の文書にそれがあるのですか、出してください。  それからあなたのいま読んだ、民族民主統一戦線アメリカ帝国主義日本支配に対して日本主権を回復するときに、いろいろの妨害を受ける、——いろいろの妨害を受けると書いてあるのが、何で暴力革命になるのですか。常識ではないですか。たとえばポラリス原子力潜水艦が佐世保や横須賀に来てはいかぬ、こうやってわれわれがあそこで集会を持とうとすれば、その集会がいろいろ妨害されたり、あるいはそう望んでおるにもかかわらず、どんどんポラリス原子力潜水艦が来る。B52が沖縄へ来ることは日本の国を戦争に巻き込むことになるから、原爆や水爆を搭載するB52が沖縄に駐留しないようにしてもらいたいと言っても、これもなかなかアメリカは言うことを聞かない。アメリカ軍事基地があれば、その電波の障害を防止するためと称していろいろな私権が侵されている、こういうことで、日本国民ほんとう民族の完全な主権を回復しようと思っても、なかなかアメリカが言うことを聞かぬ、これをさしていろいろの妨害を受けると言うのが、何で暴力革命ですか、はっきり説明してください。そんな昔の特高みたいなことを、新しい憲法のもとに絶対できるはずはないですよ。
  24. 長谷多郎

    長谷政府委員 お答えは、ただいまの設例がそれに当たるとは私申し上げておりません。しかしながら、すでにいま申し上げた日共暴力革命方式をうちに秘めて、われわれとしてはこれに対して破壊活動団体容疑を持っておるということにつきましては、先ほど申し上げておるところに尽きておると考えます。
  25. 林百郎

    林委員 あなたは裁判所無罪判決をみんな見たでしょう。無罪判決がかり——私たちは、破防法憲法違反法律で、これは効力を生じておらない違法な法律だとは考えておりますけれども、しかし、かりに破防法立場に立ったとしても、いま公安調査庁の言うようなことは、全部判決で紛砕されているじゃないですか。無罪判決になっている。共産党員破防法で起訴して、有罪になったという事実は一つもないじゃないですか。それをあなたはなお維持しようとしている。私がここで言うまでもなく、判決をあなたよく読んでごらんなさい。あなたの言う民族民主主義統一戦線民族の完全なる独立を獲得しようとする場合に妨害があるだろう、そんな論議は自由にやりますよ。思想信条の自由、言論の自由は憲法で保障されているのですよ。何でそういう政治的な討議をすることが、公安調査庁によって被疑団体として調べられなければいけないのです。それこそがいま憲法で保障されている。そういうことが保障されてこそ、日本の国の民主主義的な政治移行について、民主主義的な移行政治的にやれるわけでしょう。あなた方がそういう暴力的な方法民主主義を破壊することは、そのこと自体破壊行為ですよ。あなた方がそういう違法なことをすれば、どうしてわれわれは自分の身を守ったらいいのですか。百何人のリストアップをしている。上野市へ行って、公然とそんなことが何でできるのですか。社会党中井徳次郎代議士秘書調べている。共産党ばかりじゃないですよ。そうして部落解放同盟三重県連委員長調べている。それから朝鮮総連幹部調べている。民青労音、新婦人の会の幹部まで調べている。共産党員であるかどうかということを理由にして、何でこんな人の身分をみんな調べることができるのですか。どの政党に所属しようと、どういう政治信条を持とうと、憲法で保障されているのを、おまえは共産党員じゃないか、おまえは共産党員じゃないかといって市役所に行って戸籍簿を出させて、百何名の名簿を公然と人の出入りするところで調べ権限が、公安調査庁にあるのですか。何で調べ権限があるのですか。考えてごらんなさいよ。それで起訴すれば、全部無罪になっているじゃないですか。公安庁こそが日本民主主義を破壊しているじゃないですか。  それじゃ聞きますが、公安調査庁人員は何人あるのですか。ここで見ると二千人といっていますが、ちょっと人員から言ってください。
  26. 長谷多郎

    長谷政府委員 人員の点だけお答えすればいいのでしょうか。
  27. 林百郎

    林委員 人員だけでいいですよ。
  28. 長谷多郎

    長谷政府委員 法律上の定員は二千十五人になっておりまして、現在若干欠員で減っております。おおむね二千人と考えればよろしゅうございますが、そのうち公安調査官は千七百人余りでございます。
  29. 林百郎

    林委員 公安調査庁は、年間の予算は幾ら使っているんですか。
  30. 長谷多郎

    長谷政府委員 大ざっぱに申し上げて、約三十億でございます。
  31. 林百郎

    林委員 その三十億で、こういうもっぱら共産党党員であるかどうか、そういう調査を年三十億の予算で、約二千人の人員調べているんですか。
  32. 長谷多郎

    長谷政府委員 さようでございます。約二千人の人員で、約三十億の予算を要しまして、日共関係はもとより、また極端なる右翼であるとか、その他の破壊活動容疑のある団体についても、調査を進めておるわけでございます。
  33. 林百郎

    林委員 破壊活動容疑団体というのは幾つあるか、ここでちょっと名前を出してください。いま公安調査庁破防法容疑団体として指定している団体名前を出してください。
  34. 長谷多郎

  35. 林百郎

    林委員 三重県の上野市で公安調査庁調べたのは、これはそうすると共産党関係ということで調べたんですか。
  36. 長谷多郎

    長谷政府委員 さようでございまして、共産党員ないしはその疑いの濃い方々というものをリストアップした人数を、調査対象にいたしております。
  37. 林百郎

    林委員 調べることを合理化する何らの具体的な理由もないのに、その人の政治信条所属政党が何党であるかということを市役所に行って百何名も調べることが、いまの憲法のもとであなたはやれると思いますか。具体的に申しますと、この上野市で調べたのは、調査対象としてあげたのは、共産党松原和夫会議員中村治伊賀地労働組合議長歴代地区労議長社会党中井徳次郎代議士秘書山岡徳郎氏、部落解放同盟三重県連松井久吉委員長、同上野支部執行委員二十一名、朝鮮総連幹部民青労音、労演、新婦人の会の幹部など、上野市内政党、労組、民主団体のおもな活動家のほとんどの人の名前があがっているんです。労働組合歴代議長まで調べているんですよ。こういうことができると思いますか。しかも、公安局長わび状を出しているんですよ。あなた方は、こういうことをやれといって奨励しているんですか。わび状が出ているけれども、そのわび状はいまどうなっているのか、それをここであなた責任ある答弁をしてください。
  38. 長谷多郎

    長谷政府委員 人数は御承知のように百六名がリストアップされたようでございますが、この調査は、一応日本共産党員ないしはその疑いのあるということについて、理由のある資料に基づいてリストアップがなされた、かように承知いたしております。で、この点について住民登録票を閲覧し、これを写したのはけしからぬというお説でございますが、この点は、実は住民登録票はだれでもこれを閲覧し、だれでもこれを写し取ることもできるものでございまして、決してこれを秘密をおかして調べたりなぞいたしたりしたものではございませんので、その点は必ずしもそれを見たことはとがめる理由はないと考えます。ただ、問題は、できるだけ穏当に、騒ぎにならないように調べるのがわれわれ相当な方法だと考えておりますところ、結果においてあのような紛議を出すということは、いい調べのやり方ではなかった、かような点に反省いたしまして、なるべくこのような騒ぎは起こさないように、今後調べを指導していきたい、かように考えます。  なお、先ほどお説の最後に、局長がこの件についてわび状を出しているが、これをどうするか、かようなお尋ねでございます。私のほうでこのわび状内容を取り寄せて見ましたところ、結論から申し上げますと、その内容には、まことに不自然でございまして、あやまるべき理由が必ずしも考えられないことを羅列して、これをあやまっております。このような内容でございますので、このわび状自体は、実は正当にわびるほどのひどい理由でないことを取り上げてわびた内容でございまして、なぜこのようなものを書いたのかという点、当方で調査いたしました結果、これは局長現場の状況にかんがみてやむを得ずその真意に出たものではなくてこれを書いたという結果を調査上得ておりまして、しかも、このわび状につきましては、去る三月七日であったかと思いますが、当該局長から相手の方々に対し、真意に基づくわび状ではないということで、これの取り消しの申し入れをいたしてございます。さよう御了承願います。
  39. 林百郎

    林委員 現場局長が、現状から見て申しわけなかったとわび状を出しているのに、上のほうのあなた方が、公安調査庁の権威にかかわるから取り消せと言って取り消さすなんということは、これはまことに恥ずべきことですよ。私は、その取り調べ方法が云々ということじゃないですよ。御承知のとおり、憲法には「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」「信教の自由は、何人に對してもこれを保障する。」「集會、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」破防法関係事件無罪にしておる判決も、みなこのことを言っておるわけでしょう。かりに破防法立場に立っても、具体的に何ら暴力革命の危険というものを感じないときには、いろんな論議がされても、それを処罰することは憲法思想の自由、表現の自由を侵すことである。それは破防法罰則は適用にならないのだ。むしろそういう論議が十分にかわされてこそ、政治的な変革というものは暴力なくして行なわれるということを保障することになるんだ、こういうことを言っているじゃありませんか。私は、徹底的にこの質問をあなたなり吉河長官と続けるつもりですが、次には、共産党破防法の何条によって容疑団体とされ、そしてそのことがいかに不合理かということを質問するつもりですけれども、この上野市でも、あなたは、上野市の共産党員破防法違反でかつて起訴したことがあるでしょう。それが三重県の破防法事件無罪になっているでしょう。あなた方、その責任をどうとったのですか。あなた方はこういう横暴なことをしておる。この上野市の共産党員破防法罰則の被告として起訴した。それは無罪になっていることをあなた知っているでしょう。どういう責任をとるのですか。三重事件といって有名ですよ。
  40. 長谷多郎

    長谷政府委員 現在、お説の事件判決は手もとに持っておりませんが、公安調査庁といたしましては、これを起訴した当事者ではございませんし、また、ましてやあの事件個人破防法違反行為を起訴いたしたものでございまして、それが証拠関係無罪となったやに聞いておりますが、これの争点をただいまのところへ持っていらっしゃる所論については、いささか了承いたしかねる点がございます。私どもが申し上げているのは、そのような個人破防法違反行為ではなくて、団体破壊活動容疑に基づいて、その構成員、役職員等の調査を進める、かようなことを申し上げておるわけでございます。
  41. 林百郎

    林委員 なお悪いよ、あなた。団体容疑団体容疑を持っているからといって、労働組合幹部や新婦人幹部の人や、あるいは労音だとか労演だとか、そんなことを言えば、一切の人を調べることができるじゃないですか。共産党破防法被疑団体だ。だから、あなたが共産党員であるかどうか調べますといって、だれでも調べることができる。そんな権限公安調査庁が何で持っているのですか、あなた。そうしてこの調査はどうですか。調査のメモを見ますと、活動家の娘の嫁入り先まで調べている。生まれたばかりの赤ちゃんの名前まで書いている。そんなことが、新憲法下にあなたできますか。本気に考えているんですか。しかも、この調査官は、身分証明書も持っていかない。そして戸籍係のみんなの見ているところで、この人が共産党員であるかどうか調べているんですと言って、百何名のリストアップをしている。家族まで全部あげている。わび状を出すのはあたりまえじゃないですか、あなた。それをあなた方があとになって取り消させている。こういうことがあなた、新憲法下でできると思いますか。そんなことを言えば、公安調査庁なんていうのは、昔の特高よりなお悪質ですよ。あなた方こそが民主主義を破壊しているんじゃないですか。真剣に考えてください。私は、この問題については、またいずれ公安調査庁と本格的な質問をしますけれども、真剣に考えてくださいよ、あなた。やたらに市役所へ行って、戸籍簿を出さして、人の出入りするところへ行って百何名の名前をあげて、あなたは共産党員ですかどうですか、まず名前をはっきりさせなければならないから調べます。この家の娘はどこへ嫁に行ったか、嫁入り先まで調べる。生まれた赤ん坊は何歳かまで調べる。そんなことは、昔の特高以上の悪代官のやり方ですよ。あなたはそれをまだいつまでも続けていくつもりですか。全然反省しないですか。現場局長は、ちゃんとわび状を出している。どういうわび状を出したかというと、市民が出入りする戸籍係の窓口で行なったことは適当でないと考える。家族の構成までリストアップしたことは適当でなかった。係員に身分証明書を提示しなかったのは慎重を欠いた。まあわれわれは破防法は認めないし、また、破防法のこういう調べ方を認めないけれども、しかし、それにしても、あなた方の言う立場に立っても、慎重を欠いたといってわび状を出しているんじゃないですか。このわび状趣旨を、そういうわび状を出した事情もあったと思うと、そういうようにあなたは認めないのですか。そうして今後こういうことを一そう続けるのですか。それを聞いて、きょうの質問はこれで終わりたいと思いますね。
  42. 長谷多郎

    長谷政府委員 ただいまの御質問の前提には、やや誤解があるかと考えます。三つの理由をあげて調査の不当を指摘されたのでございますが、第一点の、市役所内のみんなが見ておる場所で調査書類を広げてこれを調査した、かような点を指摘されておりますが、これは実はそうではない。その市民課の一角におきまして、当該市民課員に閲覧の要求をいたしまして、市民課員が指定した当該事務室内——公衆の出入りするところではございません。事務室内でいわばボックスでございますか、一応仕切られたところへ着席いたしまして閲覧しておったのでございます。しかも、これは本来申し上げると、公安調査庁としては、調査上必要な場合、当該市役所住民票の謄本の請求をすることができるわけでございますが、謄本を請求することによって、だれを調べたかということが少なくとも市役所方々にもはっきりあとに残った形でわかりますので、その形を避けようという配慮から、謄本のかわりに自分でこれを写していくというかっこうをとった、これがどういったはずみですか、たまたまその場所へ数十名の方が取り囲んでこれを取り上げるといったような事件が起こったのでございまして、この第一点はさほど不当な行動であったとは、本来思っておりません。  第二点は、家族や無関係な人々、嫁入り先まで調査いたした、かような御非難でございますが、これはそうではなくて、当該調査対象者自体の、日共党員ないしその疑いのある方の住民票記載を確認しただけでございまして、それらの嫁入り先について調べる、かようなことではございません。その点一つ御了解願いたいと思います。  また第三点は、身分証明書を持たずにかってにやったんじゃないかという点の御指摘は、これは誤解でございまして、彼らはこの際身分証明書は持参いたしております。破防法の規定に基づきまして、御承知のように、身分証明書は相手の要求があるときにこれを呈示するわけでございます。本件では、実は閲覧の要求をした当該市役所の係の方は、公安調査官であることをよく御承知の上で、特定の場所まで指定してその閲覧の場所をつくっていただいたようないきさつもございまして、身分証明書をお示しするまでもなくその身分が相手方によくわかっておって、しかもそういう御配慮をわずらわしておる、こういった間柄でございますので、このような場合、相手方の要求がない以上、身分証明書をわざわざお見せするようなことはいたさないのが通例でございます。  以上のような三つの点に基づきまして、このわび状については、その内容がたいへん合点がいたしかねるものである、かように私どもは考えたということを先ほど申し上げたわけでございまして、そしてこれは私どもではなくして、現地の局長の判断におきまして、事後にこれを取り消した、こういうことは、まことにもっともな措置であると考えます。  しからば、今後このような形を奨励してやらせるのかという点については、これは極力避けたいと思います。私ども調査は、できるだけこういったトラブルを起こさないで、こういったものについては強制力も用いないでそっとやるのでございますから、なるべく人さまを騒がせないように、穏当な方法でできるだけ進めるように指導していきたい、かように考えております。
  43. 林百郎

    林委員 私の言うのは、基本的にはその調べ方がうまいかへたかというような、そういうことを、そんな本質的でないことを言っているわけではないですけれども、しかし、張籠という局長——三重の公安調査局ですか、この局長が、私がいま言ったようなことでわび状を出しておるではないか、局長もそういうことを認めているんじゃないかということで質問しておるのであって、本来このような、公安調査庁共産党員であるかどうかというようなことで、一つの市へ行って百六名もの身元を調べるなんということは、絶対許されないことだ。そのことが、その調べられた人の思想や良心の自由をいかに侵しているかということ、憲法の十九条にある思想及び良心の自由をどんなに侵しているか、結社や言論表現の自由というものをいかに侵しているかということを、あなたはよく考えろ、私はあなたに、基本的にそういう立場質問している。しかし、さっき言った、調査のしかたについては、張籠公安調査局長はそう言っているという立場で私は質問している。  この問題については、委員長、私のいま言いましたこのわび状を資料として提供してもらいたい。それからあなたが言われた、共産党綱領の裏にこういう文書が党として出ているという資料を、委員長を通じて私に資料として出してもらいたい。この質問を継続するために、出してもらいたい。抽象的なことを私とあなたで言っていたってしょうがない。具体的に、いついっかのどういう文献にどうあるということで質問していかなければ、かみ合っていきません。出してください。  それから、これは委員長と相談しますが、三重県の上野市で、事実あなたの言うようなことだったか。直ちに大ぜいの人たちが集まってきて、何をしているのだというので公安調査庁局長に抗議をしているわけですから、この取り調べ方については、場合によっては上野市の市の関係吏員に参考人として来てもらって、あなたの言うことがほんとうか、現実に現場調査の担当の吏員がどういうことをしたか調べたいと思いますが、これはいずれ委員長と相談します。とにかくあなたがきょう言われた資料は、私のほうへ出してもらいたい、このように思います。  それから、こういうことは全国各市でやっているのですか。こういう市役所へ行って戸籍簿を出してもらって、だれは共産党員であるかどうかというようなこと、その地方の、われわれから見ると、あらゆる民主的な諸団体幹部の人たちのリストアップをしている、こういうことは全国でやっているのですか。
  44. 長谷多郎

    長谷政府委員 日共党員調査につきまして、その特定の方法は具体的に本庁としては指示いたしておりませんが、このような住民票を閲覧するような形は考えられると思います。全国どこでもやっているかどうかは、これはお答えする資料がございませんけれども
  45. 林百郎

    林委員 この問題は時間の関係がありますから、この程度にして、次にまた質問を継続します。  刑事関係の方は見えておりますか。——これは訴訟中の事案ですから非常にデリケートな点もあると思いますが、これは事が非常に大きな国民の疑惑を呼んでおる事案ですから、できるだけ説明願いたいと思いますが、いわゆる日通事件です。日通事件で、福島敏行氏の次男の福島秀行という人が、地検の参考人として呼ばれて、そして地検の建物から飛びおりて自殺した。これはあなた方が直接現認しておることなんですけれども、この事実関係をまず報告してもらいたいと思います。
  46. 吉田淳一

    ○吉田説明員 福島秀行氏が、四月十八日の夜十時過ぎごろ、東京地方検察庁の屋上から飛びおりて自殺をされたということにつきましては、東京地方検察庁におきまして、どうしてそのようなことになりましたか、その状況などについて、現在詳細調査中でございます。  この経緯につきまして簡単に要点だけ申し上げますと、当日東京地方検察庁におきましては、いわゆる日通事件につきまして、福島秀行氏を参考人として事情を聴取する必要があるということで、呼び出しをした上で任意の取り調べをしていたわけでございます。夜十時過ぎごろに至りまして、本人が下痢ぎみなので便所に行きたいということで、主任検事も了承しまして、本人がその部屋を出たわけでありますが、その後このような事故が起きたわけでございます。このような点につきまして、その原因等いろいろ詳細な点について、現在東京地方検察庁において慎重に調査中でございます。
  47. 林百郎

    林委員 私の質問の基本的な立場は、検察庁のこの事件に対しての捜査に何らかの影響を与えるような考えは毛頭ありませんし、むしろこれは国民が大きな疑惑を持った事案ですから、徹底的にこの問題は捜査してもらいたい、こういう立場質問しているわけですから、どうぞ私の基本的な立場を理解してもらいたいと思うのですが、そこで、この日通事件というのは、どういう——内容はいいですよ、何の被疑事案としていま捜査しているのですか。
  48. 吉田淳一

    ○吉田説明員 日通事件といいましても、関係人が何人かにわたっておりますので、一つの事実だけというわけではございません。簡単に申し上げますと、当初日通の管財課長を所得税法違反により逮捕いたしまして、三月十三日に公判請求、起訴したわけでございます。その後、その当該管財課長につきまして業務上横領の容疑が出てまいりまして、本人を再逮捕して取り調べをした、そういう状況でございます。さらに、その過程におきまして、元日通の社長及び副社長の両名につきまして業務上横領の疑いが生じまして、本人を四月八日に逮捕して、現在勾留延長の上取り調べ中である、そういう経過になっております。さらにそのほかに、大和造林という関連会社がございますが、その会社につきまして法人税法違反の容疑がございましたので、役員二名を逮捕して取り調べをした上、三月十三日同じく法人税法違反により公判請求をしておる。いわゆる日通事件と申しますのは、このような事件をさしておると思います。
  49. 林百郎

    林委員 これは捜査中ですから、われわれはもちろんそのことをよくのみ込んで質問しておるつもりですが、この業務上横領というのは、ごく大まかでいいですよ、何をどういうように横領したということですか。
  50. 吉田淳一

    ○吉田説明員 この業務上横領につきましては、先ほど申しましたように、日通の管財課長にかかる業務上横領と、それから元社長及び副社長両名にかかる業務上横領と、二つあるわけでございます。最初の管財課長の事件につきましては、金額は約数億円にのぼる業務上横領でございまして、関係会社のリベートなどの金員を横領した疑いが主たるものでございます。それからさらに元社長及び副社長につきましては、合計約一億数千万円にのぼる業務上横領の容疑でございます。それにつきましては、現在その詳細の内容を申し上げるわけにまいらないわけでございますが、要するに本来日通の会社の金員、資金をほしいままに自己の用途に使用したという疑いでございます。
  51. 林百郎

    林委員 関係会社のリベートというのは、関係会社からリベートが戻るような契約をいつもしている、契約の内容の中でリベートがくるようなシステムになっているのですか。それとも、任意にお礼だといって戻ってきたものが業務上横領されたのですか。そのシステムはどうなっていますか。
  52. 吉田淳一

    ○吉田説明員 その点につきましては、まことに申しわけないのでございますが、現在捜査の内容にわたり、事実関係にわたりますので、もうしばらく御猶予を願いたいと思います。
  53. 林百郎

    林委員 それから夜の十時十九分というのですが、常識から考えて夜の十時ごろまでということは、ちょっと異常なように思うのですけれども、どういう事情で夜の十時十九分ごろまでして、そして外へ行きたいというので自由に出してやって——これは問題が東京地検の屋上から飛びおりたということだから、私は聞いておるのです。やっぱり地検としてはちゃんとしたこういうことをしたのだけれども、本人が自殺するならしたで、これは本人がやったことをこまかく一々そういうことまで地検も配慮するわけにいかぬですけれども、それはちゃんと説明がつくことかどうか、ちょっとここで答弁してもらいたいと思います。
  54. 吉田淳一

    ○吉田説明員 福島秀行氏に対する取り調べは、当日の四月十八日取り調べを続行したわけでございますが、午前十時ごろからお昼ごろまで取り調べをいたしまして、その後一たん取り調べを中止しまして、夕方になって六時ごろから取り調べをした模様でございます。したがいまして、十時ごろまでの調べと申しましても、それからの時間といたしましては、さほど長時間にわたっている、あるいはおそくまで調べたというような非難を受けるものではなかったというふうに考えております。御指摘のように、東京地方検察庁の屋上からの事故でございますので、その辺の点についても、東京地方検察庁において、その原因がどこにあるか、さらにその動機はどこにあるかということの関連で現在詳細調査中でございます。
  55. 林百郎

    林委員 時間がありませんのであと二、三点でとめたいと思いますが、新聞紙などを通ずるところによると、盛んに怪電話が、しかも地検の木村特捜部長室へも直接くる。たとえば「福島を消しますよ」というような怪電話がくるとか、あるいは秀行氏が自殺したあと、その兄の恭行氏のところへ「今度はおまえだぞ」という怪電話がくるとか、それから参考人や関係者宅に怪電話がしばしばきて、検察庁としてもこんなに脅迫や怪電話の多い事件は初めてだ、こういうことが新聞に報道されているわけですけれども、これは事実ですか。国会答弁できる範囲のことでいいです。これはゆゆしいことだから……。考えようによっては、こういうことによって検察庁の捜査に対して一種の圧力を加えてくるとも考えられます。これは聞き捨てならないことだと思うのですが、これはどうですか。
  56. 吉田淳一

    ○吉田説明員 お尋ねの点につきましては、新聞報道等につきましてそういう事情があるやに聞いております。詳細なことは、なお東京地方検察庁からまだ報告がきておりませんので、具体的にどのような怪電話なり何なりがあったのか、それは承知しておりません。しかし、そういうような点がもしあるといたしますれば、当然御指摘のように検察庁におきましても、この事件及び福島秀行氏の自殺の原因等々の関係で十分調べをして、その真偽を確かめたいという方針でございます。
  57. 林百郎

    林委員 こういう怪電話がくると、たとえば東京地検の木村特捜部長室へきているというのですが、これは部内で当然わかることなんですけれども、そういう事実はあるのですか。これほど具体的に新聞に発表されているのだから、事実ないことはないと思うのですけれども、そういう事実はあるということは耳にして、しかし、その内容についてはなお正確なことを調査中だということですか。それとも新聞に書いてある、こういうことは事実無根だというのですか。
  58. 吉田淳一

    ○吉田説明員 お尋ねの点につきましては、あるいは私がまだ承知してないのかもわかりませんけれども、具体的にどういう電話が特捜部長室にあったかないかという点、ちょっと私まだ確認しておりません。しかし、それ以外にも、いろいろ関係者等にも何か本人に対する脅迫めいた電話その他があったような情報もあるようでございますので、そういう点も含めて、先ほど申しましたように調査をしていくということで御了承願いたいと思います。
  59. 林百郎

    林委員 それではそれでけっこうです。  それから前社長は、以前からある思想団体関係者と交際があったと言われている、これは事実どういうことですか。
  60. 吉田淳一

    ○吉田説明員 その点は、全くいまのところは私ども報告を受けておりませんし、具体的な内容、そういうことがあったかどうかについては、承知しておりません。
  61. 林百郎

    林委員 この関係質問して終わりたいと思いますけれども、検察庁も御承知だと思いますが、日通の本社から政界へ献金がたくさん行なわれているわけですね。この関係については、検察庁は将来、業務上横領されたという数億の金がどこへ使われていったかという関係で、政界のほうも何らおそれることなく捜査をやられる腹かどうか、まずここで聞いておきたい。これは政治に対する国民の信頼の上からいって、事がここに行ってしまったら、検察庁の捜査がどうかなっちゃった、LPガスで大騒ぎしたんだけれども、結局事件はうやむやになったと同じで。将来、この点については検察庁はどう考えておりますか。
  62. 吉田淳一

    ○吉田説明員 お尋ねの点につきましては、参事官である私から申し上げるのもいかがかと思うのでございますが、違法な政治献金があったのではないかというような点について、新聞等もいろいろ報道しておりますが、さらにそういう角度から、国会におきましてもいままで御質疑があったわけでございます。もしそういうような事実がかりにあるといたしますれば、検察当局といたしましては、その真否を確かめて適確に事件を処理するということで従来やってきておりますし、本件についてもそのような態度でやるものだと信じております。
  63. 林百郎

    林委員 政務次官にお尋ねします。あなた、自民党出身の政務次官だけれども法務政務次官だから、検察の公正と権威を維持することのためには、場合によっては党派を越えて奮闘しなければならない場合がありますけれども、このことが政党の献金に及んでくるというような場合に、それを押えるとか、実質的には指揮権発動のようなことをしないという約束を、あなたできますか。
  64. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 法律日本国民のためのものでありまして、私は、法務政務次官といたしまして、絶対にこういうものの真否をはっきり徹底的に追及いたしまして、公正にやるべきものである、それに政治的な配慮その他一点も加うべきものじゃないとかたく信じており、またさようにいたす所存でございます。
  65. 林百郎

    林委員 これは政務次官とそれから参事官にお尋ねしますが、公職選挙法の百九十九条の一項には、特定の寄付が禁止されている。要するに衆議院及び参議院の選挙に関しては、国または公共企業体と請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者は、当該選挙に関して寄付をしてはならないという事項があるわけですね。御承知のとおり、日通は、米の輸送問題についても、これはもう全く独占で契約をしている。国の事業を請け負い、その他利益を伴う契約をしておる当事者であることは明らかである。これが衆議院、参議院の選挙関係して寄付をするということは、額のいかんにかかわらず、禁止されているのですね、それにもかかわらず、三十八年、三十九年、四十年、四十一年と、ずっと選挙のある年も、表に出ているだけでも——これは氷山の一角だと思いますけれども政治献金がなされている。これは明らかに百九十九条の一項「特定の寄附の禁止」の条項にも触れてくると思いますが、この点についても将来捜査をされるつもりかどうか、次官と参事官の両方にはっきり聞いておきたいと思います。
  66. 吉田淳一

    ○吉田説明員 仰せのとおり、選挙法百九十九条一項でございますか、国または地方公共団体と請負その他特別の利益を伴う契約にある当事者は、それぞれの選挙について寄付をしてはいかぬ、それについては罰則が設けられております。日通がいわゆるそこでいう、通称特定会社といっておりますが、その特定会社に当たるかどうか、この点につきましては、これは明確だとおっしゃっておりますが、私どもそれは事実内容、証拠関係にわたりますので、その点についてはただいまお答えする限りではないというふうに考えておりますが、特定会社でありましても、さらに選挙に関して寄付をするということが、構成要件として必要でございます。はたしてそういう事実関係にあるのかどうかということによって、お尋ねのような犯罪が成立するかどうかということでございます。かりにそのような事実関係にあるといたしますれば、そういう事実を適確に処理をする、そういう方針で検察当局はいるし、また今後もそういう方針で臨むであろうということを申し上げておるわけでございます。
  67. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 ただいまの御質問の、公職選挙法に触れるものであるかどうか、そういう点も十分に検討させまして、公職選挙法に触れるものであれば、法によって適確に判断し、処置すべきものだと信じております。
  68. 林百郎

    林委員 参事官に申しますけれども、日通が国との関係で特定の利益を伴う契約の当事者であるという点を、あなたみたいに非常に何か動揺的な解釈をすることは、私は非常に不満です。これは明らかだと思うのですね。選挙に関してという点についても、三十八年、三十九年、四十年、四十一年、四十二年全部これは届け出たわけです。上期、下期全部届けてあるのですから、これは御承知のとおり、衆議院の選挙はいつあったかということを調べてみればわかりますから、この点についても、これはやはり国民に対する責任として徹底的に検察庁は追及をし、事態を明らかにすべきだ、確信を持ってやるべきだ、このように私はあなたに勧告して、いまのあなたの最後答弁は私ははなはだ不満ですので、その点を補足して、時間が参りましたので私の質問を終わります。もし答弁があったら聞かせてもらいたいと思います。
  69. 吉田淳一

    ○吉田説明員 私が申し上げたのは、日通が特定会社には当たらないとかいうようなことを申し上げておるわけでは決してございません。現在進行中の、捜査中の事件でございますので、そういう事実関係内容にわたることについては、この際はごかんべん願いたいという趣旨で申し上げただけでございます。事件がそういうものがございますれば、検察当局としては適確に処理をすべき責務を持っているというふうに考えております。
  70. 林百郎

    林委員 私の質問は終わります。
  71. 永田亮一

  72. 横山利秋

    横山委員 大臣があとでいらっしゃるので、別の問題から始めたいと思います。  最初は入国管理の問題でありますが、どうも私ども法務委員といたしまして、入国の問題についてあまりにも法務省の態度がシビアーである、いろいろ問題があることは承知しておるが、角をためて牛を殺すといいますか、ほんとうに事情お気の毒であるものに至るまで、本能的に入国管理についてはシビアーにやるのだ、いろいろ言っていることは実はうそではないかという感覚が、どうも強過ぎるような気がするわけであります。私がこれから申し上げる二、三の例を引用いたしまして、その措置並びに考え方を伺いたいのであります。  最初は、九つになる女の子と六つになる男の子の問題であります。洪光姫、洪性秀という二人の子供は、日本にいる父親の洪斗杓さんと別れて南朝鮮にいたが、二年前の一九六五年十月に正式の旅券で日本に入国した。それいらい百八十日ごとに旅券を更新してきた。ところが、南朝鮮駐日大使館は、父親の洪斗杓さんが韓日協定による永住権申請をしないことを口実に、昨年の四月三日以降の旅券更新を拒否した。日本の東京入国管理事務所は、このことを理由に、姉弟が不法在留者になったと断定して、異議申し立てをしたおとうさんの訴えも二月二日に棄却された。そこで入国管理事務所はきょうだいに強制退去令書を発付した。いつ大村収容所に収容されるかわからぬ。おとうさんがきょうだいを日本に呼び寄せたのは、親として当然であるが、その後もおとうさんは子供たちの将来を考えて、去年の八月に共和国——つまり北ですね、共和国へ帰国申請も済ませた、こういう状況だそうであります。子供二人にまず強制退去令書を発付するということは、このような子供については特別に特別在留が認められる制度もあるわけでありますから、おとうさんがいかぬから子供もすぐ帰れという、九つの姉と六つの第にちょっとどうもしゃくし定木な話ではないか、こう思うのですが、事前に御連絡をしておきましたので、事情おわかりと思うのでありますが、御説明を願いたいと思います。
  73. 中川進

    ○中川(進)政府委員 御説明いたします。御指摘の洪光姫及び洪性秀、九歳と六歳のきょうだいでございます。両名は、昭和三十八年十月三十一日、在日の父をたよりまして同居のため入国いたしました。この際、私どもは百八十日の滞日許可を与えたのでございますが、こういうのは、百八十日と申しましても、百八十日切れたらぽっきりで追い出すわけではございませんで、六回期間延長を認めてまいったのでございます。ところが七回目のときに、いま横山委員御指摘のような事情があったかとは思いますが、ともかく法務省から見ます限り、本人、と申しましても実際には本人の父親でございますが、本人の父親からこの二人の子供日本における滞在延期の申請が出なかったのでございます。したがいまして、これは現在の出入国管理令からいたしますと、昭和四十二年四月十三日以降、不法残留ということになっておるのでございます。不法残留という事実が発生しました以上は、やはり現在の出入国管理令に基づきまして、行くところまで行く、すなわち退去強制というものを出すということになったのでございます。しかしながら、この退去強制を出しましたことは事実ではありますが、何と申しましても、御指摘のとおり九歳と六歳という子供二人をそのままで韓国へ帰すとかいうことは、別に考えておるわけではございません。これは先ほども横山委員御指摘のごとく、この父親の洪斗杓という人がございますが、この人が昭和四十一年の七月に北朝鮮へ帰還したいという申請をしております。さらにまたそれに追っかけまして昨年の八月、昨年の夏にもやはり同じ申請を繰り返しております。したがいまして、私どもといたしましては、この父親が遠からず北鮮へ引き揚げると、かように考えておりまして、そのときにこの洪光姫及び洪性秀、この二人のきょうだいも一緒に父親とともに日本を去ってもらうもの、かように考えておる次第でございます。
  74. 横山利秋

    横山委員 そうしますと、事実問題としては、このおとうさんが北へ帰国するときに二人のきょうだいもおとうさんと一緒に行くから、この退去令書が出たからといって父並びに二人の子供に対して強制措置は事実行為として行使しない、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  75. 中川進

    ○中川(進)政府委員 さように心得ていただいて差しつかえございません。
  76. 横山利秋

    横山委員 そういうことがわかっておって、しゃくし定木に法令は法令だといって強制退去令書をすぐ出すということは、いかにも本則と実態とが違うことを承知の上でおやりになる。事情がわかっておるならば、もう少し人情味のあるやり方は、何か方法が私はあると思うのでありますが、法令の解釈について、そういうようなわかりきったことをやらないで、何か方法がないのですか。
  77. 中川進

    ○中川(進)政府委員 これはその父親が実は私ども初めに——初めにと申しますか、この裁決をやりましたのがことしの春でございますが、父親がいつ日本を去るかということが不明でございまして、実はもう早急に日本を出ていくものと考えましたので、そこで裁決、退去ということで、事実上父親が出るときに出ると考えましたから、別にそれで差しつかえないと考えておったのでございまして、何もこの二人の幼い者を退去命令が出てまだ日本にいるから、直ちにこれを収容所に入れるとかなんとかということを考えているわけではございません。
  78. 横山利秋

    横山委員 私の申し上げているのは、退去命令を出したからこれを執行するわけではないという趣旨はわかりましたけれども、退去令書を出すときに、あなたのお話しのように、いずれはこれは帰国するのだ、したがってきょうだい二人、おとうさんと一緒に北へ行くのだということがわかっておって、しかも実際問題として逃げたり隠れたりするようなおそれはないのに、しゃくし定木に子供二人に退去令書を出すことのやり方が、少し官僚的ではないか。もう少し方法があるはずだ。法令の運用においても、何か方法がありそうなものだと私は言うのです。そういうあり方について御意見を伺っておるのです。
  79. 中川進

    ○中川(進)政府委員 先生の御指摘の点もごもっともではございますが、私どもといたしますというと、とにかくこの日本に滞在を認められた期間が過ぎますと、先生には釈迦に説法でございますが、不法残留になるわけでございまして、不法残留になると、法令の運用上退去を命ぜざるを得ないということで、退去命令を出したのでございます。しかし、その執行にあたりましては、先ほどから申し上げますように、幼い子供二人をこのまま親から離して韓国へ送還するというようなことは、別に考えておりません。これは父親が出るまでの一つの違法状態を認めるわけにはいかぬから、違法状態を排除したいという私どもの希望、現実と法令というそういうものとかみ合わせて、こういうような結果が出ておる状態でございます。
  80. 横山利秋

    横山委員 本人たちは合法に入国し、合法に処理をしておる。つまりあなたは申請が出ないというけれども、北へ帰るという意思表示も明白にしておるのですから、本人たちに違法の行為があったと私は思わないのですよ。あなたのほうはもう退去令書を出したというけれども、退去令書が執行できないことはよくおわかりのとおりだ。執行できないけれども、かっこうだけはやっておかなければいかぬ。そういう感覚が、私はおかしい。出入国管理令の五十条においても、こういうような問題については、条件つきの特別在留が与えられても自然ではないか、私はそう考えるのでありますが、この点はこういう扱いについてもう少し実際に即した扱いをなさるべきだと私は思うのです。  その次の問題としては、これは執行停止申し立てで裁判所は訴えを受理して執行停止をした問題でありますが、これによりますと、申し立て人は弄仁周、東京都荒川区の人なんでありますが、申し立て人は昭和八年一月一日に大阪で生まれて三十五歳、かばん製造業をしておる。昭和二十五年連合国最高司令官の承認なくして本邦に入国したとの理由で入管の取り調べを受け、そして申し立てを棄却する旨の裁決処分を受け、あわせて主任審査官から退去令書の交付を受けた。しかし、この問題は、二十年の七月空襲を避けて一時朝鮮に疎開していたが、昭和二十五年ごろ来日、苦難の道をたどって申との間に子供も生まれ、それぞれずっと生活をしておる。要するに、これは二十年の七月に空襲を避けて一時朝鮮に行った、その後帰ってきたということが問題であるようであります。これは私も日韓協定の際に十分審議をしたのでありますが、なるほど昭和二十年の九月二日でありますか、現在に日本におるということが問題であったということは、十分承知しておるわけです。しかし、この人の経歴その他を見ますと、終戦直前に空襲を避けて一時朝鮮に行って、そして日本へ帰ってきた。本来日本で生まれ、日本でやっておるわけでありますから、この点についても、強制退去という点についていささか不穏当ではなかろうか、実情参酌をする余地が十分あるのではないか。日韓協定の際に、私ども審議をしましたときに、政府側の答弁も、この辺のことはそうしゃくし定木にしないという答弁を承っておるのであります。その点はいかがでございますか。裁判では一応仮処分の執行をして、あなたのほうが強制退去をするのを停止しておる事案です。どうですか。
  81. 中川進

    ○中川(進)政府委員 尹仁周の事案でございますが、これは私ども調査によりますと、昭和二十五年十月ごろに高松付近で不法入国をした、こういうふうになっております。また、ただいま横山委員から御指摘の日韓協定締結の際の法務大臣の声明その他の読み方の問題でございますが、確かに御指摘のような点があるのでございますが、とにかくこの人は御承知のごとく配遇者がおりまして、そしてこの配遇者が例の昭和二十七年法律百二十六号というものの適用を受ける人でございます。ところが、この配遇者が——従来、こういうような配遇者を持って、つまり配遇者の夫が百二十六であって、その奥さんが不法入国というような場合におきましては、私ども確かにおっしゃるとおり特別に在留を許可したのが非常に多いのでございますが、この場合におきましてはことごとく夫が協定永住を取得しておる事例でございます。ところが、尹仁周さんの場合は、百二十六の夫ではございますが、まだ永住はとっておりません。そこで、従来の先例にないということで、今回はこの人を退去ということになった。そういう裁決が出た次第でございます。しかしながら、横山委員御指摘のごとく、本件は訴訟になっております。私どもといたしましては、裁判所の御決定を仰いで、そのとおりに処置したいと思っております。
  82. 横山利秋

    横山委員 そうすると、この問題につきましては裁判所の決定があるまでは強制退去その他の措置はなさらぬ、こう理解してよろしゅうございますか。
  83. 中川進

    ○中川(進)政府委員 さように理解していただいてけっこうだと思います。
  84. 横山利秋

    横山委員 重ねて申しますが、申し立て人は、昭和八年大阪市に生まれ、日本国民であった。大阪市の国民学校五学年に在学のところ、終戦直前であった昭和二十年に空襲を避けて一時朝鮮に行った。この経歴からいいますと、私は日韓協定のときの状況を勘案するならば、当然これは了承さるべきものであると考えます。いまここで裁判にゆだねられておるものを直接あなたのほうに申し上げるのもいかがかと思いますから、この際、御答弁のように、裁判の判決のあるまでは強制措置をなさらないということを了承しまして、次へ移りたいと思うのであります。  次は、長崎県の孫基華という人であります。この人は、当初昭和二十七年法律第百二十六号によりまして在留できるものとして本邦に在留していたが、昭和三十八年春、終戦前後一時朝鮮に帰国したことが発覚し、所轄官庁の調べを受け、従来の在留が取り消されたが、翌年から一年切りかえの特別在留の許可を得て、家族とともに暮らしてきた。ところがこの人に問題があった。その問題というのは、昭和四十二年二月ごろより廃品回収業を始め、どうやら営業が軌道に乗りかけてきたやさきに、支払いが困難、奥さんが病気ということで生活扶助を受けた。その生活扶助を受けたまではよかったのですけれども、その後生活が安定してきたにかかわらず、まだ扶助を受けておったことが発覚したのです。それで法令に違反するとして強制退去ということのようですね。この点については、なるほど生活扶助を不当に長らく受けていたことについては、確かに問題のようではある。しかしながら、この家族の状況、おとうさん並びに奥さん、それから三人の子供日本において、すでにもうその後は、もちろん指摘を受けてから生活扶助はやめておるし、安定した生業を営んでおる。その経歴からいいますと、生活扶助を一時受けておったということだけで直ちに強制退去というのは、これもまたいささかシビアー過ぎるのではないか、こういうふうに思うのです。この点はいかがですか。
  85. 中川進

    ○中川(進)政府委員 ただいま御指摘の孫基華でございますが、これは私ども調べによりますと、昭和二十四年六月釜山から下関地区に不法入国した、こうなっております。そして御指摘のごとく、昭和三十五年七月から特別在留を認められまして一年切りかえで延ばしてまいったのでございますが、昭和四十二年八月に更新が不許可となったその理由は、横山委員御指摘のごとく、昭和四十二年二月から生活保護を受けるようになったからでございます。なぜ生活保護を受けるとその期間の更新を認めないかと申しますと、これは入管令第二十四条の退去事由に、四号のホというのがありまして、「貧困者、放浪者、身体障害者等で生活上国又は地方公共団体の負担になっているもの」というものについては、強制退去を命じろということが書いてございます。そこで私どもといたしましては、それ以後日本に置いておく、すなわち在留を許可する根拠なしということで、滞在の延期を切ったのでございまして、昭和四十三年の二月十五日に退去強制命令を出した次第でございます。こういうような、ごく形式的と申しますか、法律にがちんと当たるというものは、例外を認めるということはなかなかむずかしいということが一つございます。それに加えまして、横山先生御存じかと思いますが、本人の本妻というものは韓国におるのでございます。それから長男も韓国におります。したがいまして、昭和二十四年の不法入国以来日本に生活してきた事実はございますが、やはり本妻のおるところへ帰すというほうが、人権から考えてみましても正当じゃないか、かように考えまして、私どもとしましては退去強制令書を発した次第でございます。
  86. 横山利秋

    横山委員 この生活保護を受けるに至った事情については了承なさるけれども、しかし、その後受けるべき事由でない事実になったにかかわらず受けたことがけしからぬ、こういうわけでございますね。その点は変わりありませんね。
  87. 中川進

    ○中川(進)政府委員 生活保護にいきました事情ということでございませんで、私どもとしましては、その事実でございます。
  88. 横山利秋

    横山委員 生活保護を受けたのは約六カ月間、そうして大体十五万円くらいだと推定されるわけでありますが、その生活保護を受けるに至った事情ないしは受けたこと自身については、違法ではない。その後生活状態が改善をされたにかかわらず、引き続き受けておったことがいかぬ、こういうふうに私どもは理解をしておるわけです。そういうことは、市井において必ずしもなしとしない。それは一般的な生活保護の事情を私もよく承知しておるのですが、給料が少しよくなった。よくなったけれども、まあちょっとと思う気持ちは一般的人情としてあり得ることなんです。単にこの人ばかりではない。多くの事実がそれを証明しておる。言われて初めて、それならしようがないということで生活保護は遠慮する、こういうことなんで、この人ばかりの問題ではないのであります。しかも総額でいきまして十五万円であります。あなたは本妻が向こうにおるとおっしゃるのだけれども、この人の経歴を見ますと、一九二五年に向こうで生まれて、そうして日本に炭鉱労働者として徴用され入国した。十九年に帰国して、二十年ごろは旧日本陸軍兵士として満州で兵役に服していて、二十四年ごろに再入国して、日本でずっと働いておって、もういまでは社会的信用も得ておる。最近四、五万円の収入もあるわけでございますから、かりに生活保護で、一般的によくないことではありますけれども、わずかの期間受け取ったからといって、これを——日本の奥さんもあるわけであります。奥さんは三十三ですか、長男は十一歳、長女は九歳、次女は三歳、そうして奥さんのおとうさんとの関係その他からいいましても、いまとなっては健全に日本の社会の中で生活をしている人なんです。その点についてはもう少し考える余地はないかと思うのですが、これは御存じのように裁判で係争になっていますね。執行停止申請書をもうじき出すということでございますが——もう出ておるんじゃないかと思いますが、この点は強制措置をなさるおつもりですか。
  89. 中川進

    ○中川(進)政府委員 横山先生最後に御指摘になりました訴訟、何かきのうですか、出ましたようなことでございますから、結論だけ申し上げますと、私どもとしましてはもちろん裁判所の御決定に従いますが、ただ考え方を一言御説明させていただきます。  確かに一般の社会におきまして、生活の困窮したある期間国ないし公共団体からいわゆる生活保護を受けるという状態はございまして、私は何もそれ自体、不幸なことではあるけれども、それで特にどうこうしようということはないと存じます。ただ、外国人に対してまで生活保護をやるかということになりますと、これはやはり問題でございまして、単に日本が、ただいま申し上げました二十四条の退去強制事由にあげておるだけでなくて、外国にもやはり生活保護を受けるような人ならば自分の国におってくれるなという立法例が、かなりあると承知しております。それから、しかしそうは申しましても、日本におる外国人の非常な大部分が例の法律一二六で、韓国人、台湾人、要するに終戦までは日本人であった方でありまして、こういうような方が生活扶助を受けることになったからと申しましても、その情状にいろいろよりますから、一がいに申し上げかねますが、ことに孫さんのような形におきます場合に、あまり問題にしないで、なるだけ大目に見ると申しますか、そういうふうに私どもできるだけやっておるのでございますが、この孫基華さんは、これは不法入国者でございます。すなわち一二六で終戦前から引き続き合法的に日本におった人じゃございません。したがいまして、不法入国者でございますから、なるほど入国歴は古くはございますが、しかし、本来ならば不法入国というだけで実は御退去願うというても、本人としてはあえて異議は申し出るべきではないと思うのであります。その不法入国者の上に加えまして生活保護を受けたというようなことがございますので、これはやはり私どもとしては退去していただくほうが至当である、かように考えた次第でございます。もっとも、冒頭に申し上げましたように、訴訟になりましたので、これは私どもとしましては裁判所の御決断を仰ぎまして、それによって善処したい、かように考えます。
  90. 横山利秋

    横山委員 大臣がお見えになりましたからはしょって申し上げますが、不法入国につきましても、きのうやきょう来た者については別としまして、これは昭和二十四年に来ておりますし、戦前は徴用され、また日本軍の兵士として活動したものでありますから、一般的な不法入国とは断じがたいと思うのであります。善処を望みたい。  大臣がお見えになりましたので、わずかな時間でありますが、端的にお伺いしますが、いつも私この委員会で申し上げております帰還協定の問題であります。不幸にしてコロンボ会談は決裂をいたしまして、あのままになっております。自来、予算委員会なり外務委員会なり法務委員会で、私どもが要望を含めて帰還協定の再開をしばしばお願いしておる。今回の当面の問題は、少なくとも日本政府の一方的な判断で打ち切り、そしてそれによって募集、一万八千人に近い人たちが帰国したいという希望がある。そこまでは北朝鮮の問題ではなくて、日本国が自分の責任においてやるべき問題だと思う。少なくとも一万八千人の人たちは、日本国としてすみやかに返す義務がある、こう思うのであります。しかし、いずれにいたしましても、話し合いをしなければ、これは一方的に返すといってもそうはいきませんので、協定の会談の再開というものは、人道上からも望まれておるわけであります。この間私が申しましたのは、きっかけはいかなる条件でできるかということでありました。その点について予算委員会におきまして、政府側のしばらく待ってもらいたい、今後やらないという意味ではないという答弁がありました直後、北朝鮮のほうではいつでも再開に応ずる用意があるという声明を発したことは、御存じだと思うのです。つまりどちらが先に言い出したかという点になりますと、政治的な問題でありますから問題があろうかと思うのです。しかし、向こうはいつでも再開に応ずる用意があると言っておるのでありますから、日本側としてもすみやかに再開をして、日本政府の責任である一万八千人を含めて、帰りたい人を返すということが必要ではないかと思うわけでありますが、大臣の御意見を伺いたいのであります。
  91. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 コロンボのいろいろな協議が成功しなかったということは、これは私非常に残念に考えておるのであります。なおまた、いわゆる戦後一万五千人か幾らかの帰国するはずであった人が残っておる。こういう人もなるべく希望があれば早く北朝鮮にお返しするということは、これはもうわれわれ非常に望むところでございます。私は、こういう重要な問題は、あくまでも人道的な立場日本と北朝鮮とがよく話し合いをやって、そうして話がまとまるように心から希望をしているのであります。これは私のほうの考え方で、いずれ北朝鮮と日本でまたこういう問題についての人道的な上に立った話し合いが行なわれるであろう、かように期待をしております。
  92. 横山利秋

    横山委員 期待というのは、何となく天から何か降ってくるのを待っているという問題でなくて、主観的に、自分のほうも実は会談を受け入れる用意があるという意思表示と受け取ってよろしゅうございますか。
  93. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 この問題は、ただ法務省だけの問題ではなくて、御承知のように、主としていままで赤十字が現実にいろいろな交渉をやっておるようなわけで、厚生省、外務省、関係省もありますので、私はこういう関係省とひとつ十分な連絡をとってやる。ただ考えますことは、やはりなるべくやれば成功をさせたいという気もいたしますので、何とか成功するような方法を講ずることが必要じゃないか。この間のコロンボの会談においても、おそらく成功するだろうというのでわれわれは非常に期待もしておったのであります。それが成功しなかったのであります。何とかひとつ成功するような方法で、人道的な立場からこういう会議が行なわれることを法務大臣としては希望をいたしておる、これが実際のわれわれの考え方でございます。
  94. 横山利秋

    横山委員 向こうは返させたい、こちらは返したいという根本的な問題については異存がない。したがって、コロンボ会談は、何人といえどもおそらく成功すると思っておった。それが成功しなかった原因は何か。私は内容に立ち入るのは実は避けたいと思うのですけれども、ほんのちょっとしたことだと私は思うのです。そのちょっとしたことを政治的に解して、韓国に気がねをしたゆえんではなかろうかと思うのであります。私の言っていることが間違いであるならば御指摘を願ってもけっこうでありますが、何人も話はまとまるものと思っておったのが、ああいう、協定にするか、覚え書きにするか、判こをつくかつかないかというようなことで蹉跌をしたというのは、きわめて意外だと思うのです。こちらは返す、向こうは受け入れる、それじゃ船はどうするか、あるいはこうするかというようなことを取りきめるならば、結局合意なんですから——形式のいかんを問わずこれは合意なんですから、事実上の合意として、あとで問題が起こらないように処理をしておくということは当然なことで、それを政治的に理解して判こをつかない、覚え書きはしない云々といっておるほうが、むしろおかしいのではないか、私はこう思われるわけであります。しかし、それをいま理詰めで議論いたしますとどうかと思いますので、あまりその点は理詰めでは申しませんけれども、私の要望したいのは、いま大臣のおっしゃったように、各省の問題だからということでありまして、したがって、各省の問題だから、どこも積極的にこの問題をいまの時点で推し進めておるところがないということであります。これは私は不幸なことだと思う。あなたのおっしゃるようにやるならば、成功させたいから、今度は成功し得るようなヒントを得てからやりたい。ごもっともであります。それならば、そのヒントを得るような方法を何かやらなければならないのではないか。それすらも天から何かが降ってくるということでは、お粗末ではないか。各省でもう一度よく相談をされ、そしてその接触をするについての前提条件というものがもしあるならば、その前提条件を満たすような行為をしなければならぬのではないか。向こうは再開に異議はないと言っておる。こちらもそれでは再開に異議はないと言ってアドバルーンでもあげて、そうして前提条件についての非公式な接触をやはりやってみるのが、必要な段階ではないか。あえて申しますけれども、一万八千人の人は、協定によって送り返すのではないのですよ。政府が一方的に——一方的にというと語弊があるかもしれませんが、日本政府の閣議で打ち切りだといって、向こうの承諾も得ずに打ち切りだといって、帰りたい人はないかといって募集して、応募された人が待っているわけなんです。だから、これは人道上は日本政府の責任なんです。それを考えなければならぬ。だから、もう一度聞きますけれども、受け入れ態勢があるというならば、各省でもう一ぺん相談をされて窓口をきめて、そうしてあなたのおっしゃるような態勢づくりをしていただく必要があると思うのですが、いかがでございますか。
  95. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 この問題は、お述べになりましたように、政治とかいろいろなことでなくて、あくまで人道的な立場から解決せられることが、私は望ましいと考えておるのであります。私もいろいろ話は承っておりますが、どうして長い間協定ができなかったかということについては、もっと私個人もいろいろ調べてみたいと思う点があるのであります。私はどちらがいいとか悪いとかいうようなことは一切申し上げないが、何とかひとつうまく人道的な立場でこの協定ができて、帰りたい人は向こうに帰れるような方法を講ずることが、両国のために望ましいのじゃないか、こういう考えを持っておりますし、そういう方向で今後努力をしてみたいと思います。
  96. 横山利秋

    横山委員 外務省、厚生省お見えになっておりますが、いま私の大臣との質疑応答で、何か実はということなり、お答え願うことがございましょうか。私の言うのはこの際積極的に、向こうは、予算委員会や外務委員会のあとでよろしいという談話なりなんなりを発表しておるのだから、こちらからもそれではというあれを出すべき段階ではないかという意見でありますが、お答えを願うことがございますか。——ありませんか、同感ですか。——それでは同感と承ってよろしいのですね、外務省から御答弁願います。
  97. 野田英二郎

    ○野田説明員 各省十分協議いたしまして、この問題につきまして対処していきたいと思っております。
  98. 横山利秋

    横山委員 厚生省は、一万何千人の人がいま申請をして、もういつ帰れてもよろしいということで準備をしておる実態をお調べになったことがございますか。
  99. 実本博次

    ○実本政府委員 いまの一万七千人の問題でございますが、これは前協定の時代に、前協定の有効期間中になるべく帰りたい、また帰らしてあげたいということで、赤十字社が最後まで努力したわけでありますが、それが実現できなかったものですから、コロンボ会談ではこの人たちの帰国について六十日かけて会談をやったわけでございまして、それが不幸にして先ほど法務大臣からもお話しのような結果になったわけであります。ですから、その実態といいますのは、協定の有効期間中に申請されたときの人たちの実態として赤十字が把握したものは、いまでもそのまま残っておるということでございます。
  100. 横山利秋

    横山委員 外務省についでにお伺いしておきたいのですけれども、外務大臣は予算委員会で、それはケース・バイ・ケースで相談に応じようと言われたことが二点あるのです。一つは、あなたの所管ではないかもしれませんが、輸銀の使用の問題。朝鮮については輸銀の使用については総理大臣も中国よりはちょっとシビアーかもしれぬけれども、ケース・バイ・ケースで認めるというお話、外務大臣も相談に応ずるというお話だった、もう一つは、朝鮮との貿易が非常に伸展をしておるのですが、入国がすべてソビエト回り、あるいは香港回りなんです。これはまあしかたないにしても、せめて帰りは香港回りないしはソビエト回りではなくして、平壌から船も来ているのだから、平壌から帰してやれ、こういうふうに言いましたところ、まあそれもひとつ別途相談に応じましょう、こう言っておるわけであります。この間入管に意向を聞きましたら、入管としては、私のほうの問題ではありませんというお話であります。それはそのように受け取っていいと思うのですが、外務省として、毎年毎年朝鮮との貿易でソビエト回り、香港回りと言っていることは間違いない。またその同じコースを帰ってくることも間違いないのです。日本人が平壌から日本に直接船もあるのだから帰ってくることによって数十万円違うし、日程も少なくとも一週間くらい違うんじゃないかと思うのです。このくらいのことは認めてやってもいいではないかと言ったら、外務大臣も、それは一ぺん相談に応じようというお話であります。最近も商用で行く日本人が多いのでありますが、この点について具体的に配慮してやったらどうかと思うのですが、いかがでございますか。
  101. 野田英二郎

    ○野田説明員 この問題につきましても、法務省その他と十分協議したいと思います。
  102. 横山利秋

    横山委員 善処してくださるわけですか。
  103. 野田英二郎

    ○野田説明員 この問題につきまして、具体的に実はまだ検討いたしておりませんので……。
  104. 横山利秋

    横山委員 法務大臣、お聞きのとおりなんです。法務省は関係ないと思っておったのですが、関係があるのでしょう。関係があるならばお答えを願うついでに、前の法務大臣以来、貿易に関連をする北朝鮮の純技術者の入国の問題については、法務省としては、前の問題のときにもうよろしかろうという決心をしていただきました。その決心が、貿易に関連する純技術者が、北朝鮮の人が日本に入国するについては、引き続き法務省としては差しつかえないというお考えかどうか。  それからもう一つは、いまの平壌から直接帰国する商売上の商社の日本人については、善処をしていただけるかどうか。その二点をお伺いしたいと思います。
  105. 中川進

    ○中川(進)政府委員 御質問の第一点でございますが、これは昭和四十一年の六月ごろでございましたか、北鮮から技術者を孔という人ほか三名入れる話がまとまりまして、そうして閣議で一応よかろうということになったと承知しておりますが、その後二カ月ほどしましてから、まだその時期にあらず、時期が熟さないということで、一応見送るということになったように承知しております。したがいまして、今日ただいま北鮮から経済関係で入国の申請があったらどう取り扱うかという御質問かと思いますが、これはやはり私どもといたしましては、慎重にその具体的な事案につきまして詳細よく検討した上でどういう態度をとるべきかをきめるべきであって、一がいに原則的に必ずいいとか、そういうものは絶対だめだとか、いま申し上げるのはいささか過早に過ぎると思いますので、具体的な事案が起こりましたら、そのときに十分検討し、そして上司の御決裁を仰ぎたい、こう考えます。  それから、北鮮から帰るときになぜよそを回って帰らなければならないかというような御質問かと存じますが、私どもに関します限りは、何も北鮮からまっすぐ帰ってはいけないというような規則なり取り扱いをしておるとは承知いたしませんのでございますが、なぜそうなっておるのか、むしろ私どもといたしましてはわからないわけであります。
  106. 横山利秋

    横山委員 そうですか、わかりました。私は、法律上じゃなくて常識的にいいじゃないかと思っておったのですが、私の感じますのは、最初旅券がたしかソビエトなりあるいは香港へ行くということによって旅券の交付を受け、そこから北朝鮮に入るわけです。そのことを外務省としては認めていないということだと思うんですね。だから、それを平壌から直接帰ってきたら、おまえは旅券で認めたところ以外のところに行ったからけしからぬということになって、帰ってきた者を追い返すわけにはもちろん日本人ならできないけれども、その次に旅券を交付するときには、前科者ということになるのではないかと心配をして、わざわざまた前の道を通って回ってくるわけです。それはむだなことだ、お金も日数もむだなことだから、初めから平壌へ行かしてもらいたいと思うのだけれども、これがさしあたりいまいけないのなら、せめて帰りだけはやってやれという、きわめて常識的な言い方をしておるわけです。これは局長おっしゃるように、なぜいけないのかわからないという御答弁なら、まことにけっこうな話であります。外務省も少しその辺利便を計らってやったらどうですか。
  107. 中川進

    ○中川(進)政府委員 ちょっと誤解があられるといけないのでございますが、私が申し上げましたのは、北朝鮮に正式に行くという許可を受けて北朝鮮に行った人が、いわゆる特日船なんかに乗りまして、元山でもどこからでもよろしゅうございますが、そこから帰ってきた場合に、私どもの役所としては日本人の帰国を認めないということはない、こういう意味でございます。
  108. 横山利秋

    横山委員 それはあなたの勘違い。北朝鮮へ行けないでしょう。どうですか、外務省、直接旅券で……。
  109. 野田英二郎

    ○野田説明員 特殊な場合以外は認められておりません。
  110. 横山利秋

    横山委員 ですから、大臣、私の言っているのは、何とかして利便を計らってやりなさいよ。わざわざ商用で行って、初め行くについても私は何とかしてやれという意味ですけれども、さしあたりそれがいかぬにしても、帰りくらい、船もきちんとあるのだから、それで飛行機賃も数十万円も違うし、日程も一週間くらい違うんだから、日本人が商売に行って、帰ってきたあとになって、それはうるさいぞということはどうかと思うのですが、何とかしてくれませんか。これは常識的な問題ですよ、法律上にいかぬということはないですよ。どうですか、大臣。
  111. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 よくわからぬ、そのいけないという意味が。
  112. 横山利秋

    横山委員 事実行為はわかったでしょう。
  113. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 事実行為はわかったが……。
  114. 横山利秋

    横山委員 法律的の行為にあなたは疑問を感ずるわけでしょう。
  115. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 それが何でいかぬかということが……。
  116. 横山利秋

    横山委員 それはあなたと私と一緒だ。何でいかぬかわからぬ。私もわからない。ただ、私の推量するところは、行くときに北鮮に行くと言ってないんですね。みんな中国に行くの、北朝鮮に行くのと言ってないわけです。香港に行く、ソビエトに行くと言って旅券をもらってから、そこから許可を得て入っていくわけです。そしてそれに日本政府は目をつぶっておるわけです。ところが、向こうから、日本人が平壌へ行って日本へ帰ってくるのに、わざわざソビエトへ行ってまた帰ってくる、形式的過ぎるから、この辺のことくらいは考えてやれというのです。どうです、あなた、そんなものは常識的な問題だと言っているのですよ。何でいかぬのかわからぬとあなたもおっしゃることは、まさに私もそう思っておる。だから、善処を前向きにひとつ考えてくれませんかね。
  117. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 その点はひとつよく研究をいたしましょう。
  118. 横山利秋

    横山委員 外務大臣も予算委員会の席上で、わかりましたから一ぺん検討します、こう言っているところですから、ひとつぜひこれは考えてやってもらいたい。大臣、ありがとうございました。向こうで呼んでますからどうぞ。  政務次官とそれから民事局長に少し変わった問題で御意見を伺いたいと思います。私ども国会議員として歳費を毎月会計課でもらうのですが、その会計課でもらうときに、捺印でもよろしい、署名捺印でもよろしい、または署名でもよろしい、こういうしかけになっておるわけであります。私はそれは非常に民主的であるというふうに考えましたが、最近ある判こ屋さんに聞きましたら、印鑑製造機械というものができた。つまり自動的にオートメーションで横山という判こをずっとたくさんつくる機械ができた。それから考えまして、一体いまの日本における印鑑というものは、どういう法律的な根拠を持ち、どういう形式になっておるかということを専門員室で調べてもらいました。そうしますと、ここに膨大な資料を専門員室で調べてもらったのでありますが、法律によりまして、署名の場合、それから署名捺印の場合、それから捺印の場合、あらゆる法律が区々にわたっておるわけであります。その印鑑というものは、通常私どもが何かをする場合には、法律的な根拠のある場合には印鑑証明を区役所でもらうのですけれども、この区役所でもらう印鑑証明の事務というものは、法制的にきまっていないのであります。わずかに東京都やそのほかのところで条例を定めておるところがございますけれども、結局法律根拠がない。法律的な根拠のないことを、全国の市町村は印鑑証明事務をしておる。それならば、印鑑証明をした印鑑はにせものがないかというと、いまのように印鑑自動製造機というものがあって、幾らでも、印鑑の偽造でなくして、本物がたくさんあるという事実に直面をいたしました。印鑑証明をするときに、区役所はこの印鑑は横山利秋の印鑑に間違いがないということを何で念査するかというと、何もしていない。届けられたから印鑑を証明してやるだけの話です。印鑑証明した判こと全く、機械でありますから、同じ印鑑がたくさん製造機によって販売されておるとなると、一体印鑑証明とは何だ。法律根拠はなし、同じものがたくさんある、念査をされたものでもないということになりますと、この署名捺印ということについて、常識的、慣習的にはあるけれども法律的にはきわめてばかげたことではないかという感じがしてきたわけであります。こんな日本のような印鑑制度は、世界各国を回りましても、おそらく一、二カ国しか印鑑制度はないのであります。どういうふうに一体これは考えたらよろしかろうか。少なくとも印鑑製造機械というものが市販され、どんどん同じ印鑑が出ていく状況について、そのまま放置しておいていいものであろうかということを考えるのでありますが、いかがでございますか。
  119. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 印鑑の問題につきましては、私も専門家でございませんので、十分なお答えができるかどうかわかりませんが、いろいろの文書に使用されます印鑑、あるいは署名とか、あるいは記名とかいうものがあります。これはいずれもその文書の真正を担保するために行なわれておる制度でございます。とりわけ日本におきましては、古くから印鑑を使うということが慣行として行なわれております。署名よりもむしろ印鑑のほうが大切であるというふうな観念が、国民に浸透してきておるのであります。そこで先ほどお話しのございましたような印鑑証明制度というものが市町村にできまして、これによって印鑑の真正を確保しておる。さらに印鑑の真正を確保していくことによって、その印鑑を使用した人が当該の人に間違いがないであろうか、いわばその人の同一性を確認するという手段として使われておるわけであります。印鑑証明制度につきましては、これはお話しのように、各市町村の条例に基づきましてやっておるのが現状でございます。これは市町村の固有事務として、現在市町村が扱っておるわけであります。これは古くから、寄留法のございました当時から、寄留地あるいは本籍地におきましてこの印鑑証明をやってきたのでございます。現在は寄留法はもちろんございませんが、それにかわるものとして自治省で所管いたしております住民基本台帳法というものがございます。これがその人を登録いたしております。人を登録しておりますので、当該人についての証明というものは、この台帳によって本来なさるべきものでございます。しかし、台帳の謄本、これは正確には住民票の謄本でございますが、住民票の謄本を持っているからということだけで必ずしもその人の同一性は確定できません。と申しますのは、住民票の閲覧、あるはこの謄抄本の交付の請求は、何通でもできることでございます。そこに問題がございますので、やはり印鑑証明制度というものは、各市町村で必要であるということで行なっておるという実情であろうかと思うのであります。  そこで、その印鑑証明制度なるものはどういうしかけで現在やっておるかと申しますと、住民基本台帳法に基づく住民票に登録した者、その者について印鑑を届け出をすれば、さらにその印鑑がその本人のものであるという証明を市町村がやっておるわけであります。いわば住民票を土台にいたしまして、その上に乗っかった制度として、これに結びついて印鑑証明制度というものを行なっておるのであります。   〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕 これはかつての寄留法時代の寄留地における印鑑証明とその軌を一にするものであろうと思います。  そこで、その証明の方法でございますが、これは届け出の際に、御承知のように、すでにその市町村で印鑑登録を受けておる保証人を二人以上必要としまして、その本人であるということの確認をまずそこでやっております。さらに登録した印鑑と同じものの証明を得る場合も、これは本人出頭をたてまえといたしております。必ず本人が出ることということになっております。さらにその印顆でございます。印鑑と申しましても、印影ではなくて、いわゆる判こといわれておる印顆そのものを持参する必要があります。それを現認いたしまして、印鑑簿には印顆の形状とか材質とかいろいろなものが記入されております。それを係の人が確認いたしまして、さらにまたその持ってきた人が本人であるかどうかということを質問したり、いろいろの方法で確認いたすのでありますが、私どもも印鑑証明をもらいに参りますと、本籍を聞かれたり、住所を聞かれたり、いろいろなことを聞かれまして、間違いないということを確認いたしまして印鑑証明の手続をとっておるのが、実情でございます。そのように慎重な手続をいたしておりますので、印鑑証明書を交付する際には、申請者がまさにその届け出た印鑑の所持人であるということを実質的に確認いたしました上で、その証明書を交付しておるのであります。したがいまして、その証明書を持っておれば、その判をついた人と間違いない同一人であるということの証明が一応できる、こういう仕組みになっております。ただ、御指摘のように、これを統一的に規制する法規がございません。従来長い間の伝統の上に立ちまして、市町村が条例に基づいてこれをやってきておる。しかし、その間におのずからそういった印鑑証明の取り扱いの手続に統一が保たれてきておる、これに信頼しましていろいろの取引上印鑑証明書が利用されておる、こういうことになっておるわけです。  ただいまお話しのように、印鑑の多量生産の場合に問題が起きるじゃないかということでございます。これはまさにそういう問題も起き得ると思います。思いますが、その印鑑を持っておる者、これは同じ田中なら田中という同じ材質、形状の印鑑を多数の人が持っておりますけれども、その人自体はいずれもこれは違うのであります。同じ印影をあらわしておる印鑑にいたしましても、その人であるかどうか、住民基本台帳法上の登録をしておる当該の田中という人であるかどうかという確認の手続は、印鑑証明の際に必ず行なわれるのでありまして、単なる印影だけによって同一人であるかどうかということの判断をするのではございません。その本人であるかどうかというところに印鑑証明の真の意味があろうかと思うのであります。そういう手続をとってやりますので、印鑑の多量生産の問題は確かにこれからの検討の余地はございましょうけれども、それによって印鑑証明制度そのものが直ちにくずれ去ってしまうというものではあるまいというふうに考えられます。
  120. 横山利秋

    横山委員 あなたは自分も印鑑証明をもらったことがあるとおっしゃるのだけれども、印鑑証明は、実際の運営上、本人でなくてもどんどんやっておるわけです。そしてあなたのおっしゃるように、印影を役所の窓口で実際そういうシビアーにやっておらない。光電式印判彫刻機、約五十万円くらいで買えるわけです。それが同じ印鑑がどんどんと出回っていく過程で、なるほど同じ印鑑であるけれども、本人が所有しておるかおらぬかで違うとおっしゃっても、実際にこの経済社会の中で、こういう彫刻機によって出回った印鑑による犯罪というものは、おそらく私は近い将来に問題になると思うのです。では盗用であるか。いや盗用じゃない、これはおれの判こだ。そういうような印鑑による犯罪というものが出てくると思う。   〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕 少なくともこの光電式印判彫刻機、オートメーションの機械というものは、いま私は、この法律的な根拠がない、いろいろなことがあるからおかしいと言っているけれども、その上になおかっオートメーションの彫刻機の出回りというのは、印鑑に関する従来の概念とかあるいは何かをぶち破って、犯罪行為を形成する要素を伴う。したがって、これは何とかしなければいかぬのじゃないかという気がするわけです。本来、伝統と習慣に基づくものであるけれども、印鑑ということについて少しおかしい、考え直してもいいのではないか。印鑑を使っているのは、外国でほんの一、二しかない。条例は、あなたが多くの市町村だとおっしゃるけれども調べたところでは、印鑑条例というのは東京都以外にはあまりない。そうしますと、きょうあすの問題ではないけれども、印鑑の問題についてすぐに考え直してみる必要があるのではないか、こう思うわけです。私の所管ではないとおっしゃるのですが、こういう問題はだれにほんとうは聞いたらいいのですか。
  121. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 私も実はよくわかりません。実は公務印の場合でございますが、役所で使っておる判でございます。これは古い閣令でございますが、内閣でその規格とかいろいろなものがきめてございます。しかし、一般の私人が使いますその印鑑についての所管庁はどこかと、こうおっしゃいますと、法務省の設置法も、私、わかり切ったことでございますけれども、たんねんにどこかにひっかかりがないかと思って実は御質問があるというので調べてみましたけれども、どうも印鑑の所管が法務省だということはちょっと言えないような感じがするわけでございまして、かつて条例に基づくいろいろな伺い、あるいは条例制定の報告とか、そういったものが法務省にきたかということも調べさせたのでございますが、そういうこともかつて一回もございません。現在の地方自治法によれば、条例を制定すれば、都道府県知事なり自治大臣に報告をするということになっております。ことにこの印鑑証明の問題は、これは印鑑そのものの問題ではございませんけれども、同一性確認の問題でございますので、別の問題とも言えるかとも思うのでございますけれども、その条例そのものの所管ということになれば、これは自治省ではあるまいかという感じもいたしますし、ことにいま実際行なっております印鑑証明制度というものは、住民票に登録したものに限ってやっております。そういう意味から言っても、どうもちょっと法務省のほうで所管だと申し上げるだけの自信はございません。しかし、一体どこが所管しているのかわからぬということになりますと、総理府の所管かということにも考えられるわけでございます。
  122. 横山利秋

    横山委員 時間がございませんので、ついでに民事局長に二つばかり簡潔にお答え願いたいのですが、地方を回っておりまして、法務省関係の法務局の合同庁舎ができ上がっていくことは、私はたいへんいいことだと思います。ただ、その司法書士関係から移転に伴って非常に片一方で苦情、片一方ではけっこうです、ということがあるのは、御存じのとおりであります。合同庁舎の中には、おつくりになるときには、むね割り長屋でもつくって、司法書士の諸君がそこで仕事ができるように、また国民が法務局を利用するのに簡便になるように、合同庁舎の建設計画の中に常にそういうものを付設しておくというふうにお考えになるべきではなかろうかというのが一つです。  それから同じく司法書士の問題で、先般附帯決議をつけましたが、いいかげんに国家試験にしてもらわなければ困る。民事局長が適当に、とは申しませんけれども法律によらざる試験をおやりになって、受かったか受からぬかということはおかしな問題である。すみやかに国家試験制度にすべきであるといって国会の決議になっておると承知しておりますが、この二点について、どういうふうに進んでおるか、承りたい。
  123. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 法務局の合同庁舎の問題について、まずお答えいたします。御指摘のように、国民の利便という観点から申しますれば、法務局の庁舎にそういうものを織り込んで、あちこち足を運ぶというようなことのないようにするのが、最も利便に沿う方法ではあろうと思うのであります。しかし、庁舎を建設いたします際に、司法書士にそれを使わせるということで、それだけのスペースをとった設計をし、その予算を計上するということは、現状ではこれは不可能であります。(横山委員「家賃を取ればいいじゃないか」と呼ぶ)そこで、いろいろ私どももそういう構想をかつて持ちまして、財務当局とも話し合ったことがございますけれども、現段階ではとても無理だということでございますので、庁舎の近傍にできるだけ司法書士の事務所が建設できるように、そういった努力をいたしておるわけでございます。少なくともそういうことによって法務局の近くに事務所をかまえることによりまして、国民の不便はかなり避けられるだろうということであります。現に名古屋の場合にもそういう問題がちらほら出ておるようでございますが、これにつきましても、新しい予定敷地と司法書士の事務所の関係、これは私ども真剣に考えなければなりませんし、従来も、ほかの場合にも同じようにその点は配慮してきたつもりでございます。今後もそういう方向で努力いたす考えでございます。  それから司法書士の選考制度をやめて国家試験にすべきであるという御意見でございます。これはまさに前回司法書士法の改正をお願いいたしましたときに、決議事項としておきめになった点でございます。その際にも申し上げたことでございますが、現在司法書士の数は、約一万二千でございます。土地家屋調査士が一万六千、これが地方に分散いたしておりますけれども、やはり都会地に集中いたしておるのが現状でございます。しかし、地方の末端に行きますと、司法書士がおりませんためにいろいろの公共事業をやるについても非常に不便があるというようなことで、地元の住民なりあるいは公共団体の側から、司法書士をぜひ置いてもらいたい、こういう要望が出るわけであります。その際に、国家試験で一律に年一回やっておりましたのでは、いろいろの面で不都合がございます。やはりある程度、従来の選考によってそういう場合にも進めていく方法を残しておく必要があろう、こういうことを申し上げた次第でございます。確かに国家試験によってきちんとした制度にするということが理想だと、私どもは考えております。その方向に向かって努力すべきであろうと思いますけれども、いま直ちにそれを実施することが、はたして一般にとって利便であるかどうかということも考えなければなりません。そのことは、裏を返せば、司法書士制度にとってはマイナスであろうということになろうかと思うのでありますが、いろいろそういった面を考えながら、時期を見ましてそういう国家試験の方向へ持っていくということを検討させたいと思うわけであります。
  124. 横山利秋

    横山委員 国会の決議を割り引きなさる御答弁には、不満でございます。誠実に国会の決議を履行されんことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  125. 永田亮一

    永田委員長 神近市子君。
  126. 神近市子

    ○神近委員 いまの横山さんの御質問に関連するかもしれませんが、委員会を見ても、こうやっていつもひっそりしたのが法務委員会、よその委員会へ行ってみると、わあわあとずいぶんたくさんの人がおいでになる。こういうことからも、日本法務行政というものがある程度欠けているということがいえると思うのです。大臣がおいでになればいろいろ私は準備していたことがあっんですけれども、御質問ができなかったのです。  ことしの裁判官の希望者が激減しているということが新聞にあったようですけれども、これはどういうところに原因があるとお考えになりますか。第一、この間法務委員会を通りました法案を見ましても、一番低い人たちは三万円以下というようなことがたくさん出ているんです。判事補とかあるいは副検事という——検事のほうは一番低いのは三万三千百円。これから税金取られたりなんかしたらば、大学を出て二年研修所にいて三万円かそこそこの金では、生活ができないと思うのです。こういうような不評というか、あるいは予算の不足というか、これは横山さんもいますけれども、前年私どもは、法務省はもっとこの予算をお取りになるべきだということ、どうして年間予算の中の二%か三%か、その程度のことでおさめていらっしゃるかということを問題にしたことがあったのですけれども日本の行政の中で法務行政が一番評判が悪い、一番仕事の停滞が激しいというような問題が出ているのです。これはどこに原因があるか。人口は倍になっても、役人は依然として少なかった明治時代の数からちっともふえていないということ、次官はおそらくこういうことをお考えになったことはないだろうと思うのですけれども、この実態はどういうようにお考えになりますか。役人が非常に少ないということ、人口増にちっとも伴っていないということ、そして裁判のケースは年々ふえていっている。事件によっては三年も五年もかかる、こういうことが文明社会にあっていいことかどうか。これは根本的に大臣なり次官なりがお考えにならなければならないことだろうと思うのですけれども、これはどういうふうにお考えになりますか。
  127. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 国民生活に非常に関係の深いこの法務行政でございます。私どもは、国民生活が適正に円滑にいくようにということで、いろんな予算の増加あるいは人員の増加を主張し、努力いたしておりますが、従来からの例が常に引き続いてきておりまして、財政逼迫のこういう時代にはなかなかむずかしいのでございますが、ことし四十三年度は、昨年よりもほかの役所に比較しますとよかったという程度でありまして、私どもも実際は不満でございますが、まだこれから今後も十分にそういう国民生活の利便を考えて、適正に、円滑に進むように努力していくつもりでおります。御了承願いたいと思います。
  128. 神近市子

    ○神近委員 大体において、行政面でほかの部門と比べまして法務行政が一番おくれている、あるいは評判が悪い、諸外国の例に比べて時間がかかる、誤審が多い、あるいは再審の要求が多い、こういうようなことが、いまの日本法務行政らしいのです。これはどの点で改善しなければならないかということは、私は他日もっと申し上げようと思いますけれども、いま時間があと十分か十五分しかございませんので、ほかの問題に移りたいと思うのです。  再審の問題の法案を私は提出しておりますけれども、死刑囚の人たちが二十年も二十三年も、あるいは短くても十五年、十七年というように置かれているということは、非常に悲惨なことではないかと思うので、この七人の死刑囚——駐留軍かいた間の裁判によって死刑を宣告されて、そして自分たちは無罪である、やっていないというようなことでひっかかっている、こういう人たちが七人ほど平和条約の締結までにいるんです。この人たちの無実であるのかあるいは誤審であるのかということを調べていただこうというのが、今度提出しているところの再審の法案でございます。先日、何人でどういう人たちかということをお尋ねしましたところが、それは人数は七人である、だけれども名前は言えないというようなことをおっしゃった。ところが、名前は幾らお隠しになっても、助命運動が盛んに起こっている。福岡事件なんという事件なんかは、二十万人の署名をとって歩いている。そしてこれがかなり進捗している。また平沢事件なんかも、何万人かの署名を集めている。こういうような事態であって、名前を隠す必要がどこにあるんです。みんな名前はわかっていますよ。たとえば西武雄、石井健治郎、免田栄、平沢貞通、佐藤誠、孫斗八、それから斎藤幸夫、こういう七人の名前があがっておりますけれども、これは間違いないでしょうね。
  129. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 先生のほうからお出しになっております法律案がございますので、先生とされましては、当然その対象になります七人の死刑囚の名前等は御承知のことと存じます。私どもといたしましては、死刑囚と申しましても、いろいろ家族その他の関係者もおりますし、またこういった公の席で、お尋ねのつど、だれがまだ執行されていない、だれは執行されておるというふうにお答えをしてまいりますと、結果的には大体いつごろだれが執行されたということが明らかになってしまいます。このことは、死刑というものはなるべくひそかに執行すべきである——ども死刑密行の原則といっておりますが、そういったものとの関係からしましても、また関係者等の名誉の観点からしましても、どうも適当でないように思っておりますので、具体的な氏名については、こういう公の席で申し上げることをぜひ差し控えさせていただきたいと思っておるわけでございます。  ところで、先生いま七名の者の名前をおあげになったと思いますが、私ちょっと前のほうを聞き漏らした点もございますが、最後のほうにおあげになりました三名につきましては、いずれも先生の御提案になりました法案の対象者ではないというふうにお答え申し上げます。
  130. 神近市子

    ○神近委員 佐藤誠は入るでしょう。
  131. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 入りません。
  132. 神近市子

    ○神近委員 孫斗八は入りますか。
  133. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 入りません。
  134. 神近市子

    ○神近委員 斎藤幸夫は。
  135. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 これも入りません。いずれも過去におきまして盛んないわゆる救援運動があった死刑囚でございますが、先生はじめ皆さんの今度お出しになっております法案の適用対象者の中には入らないのでございます。
  136. 神近市子

    ○神近委員 七名ということは間違いないですね。
  137. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 間違いございません。
  138. 神近市子

    ○神近委員 この人たちは、十五年とかあるいは二十年とか二十三年とか、同じところに入っているんですよ。この人たちは、そういう場合、一体どういう待遇を受けているんですか。普通の未決のようなところに入って、そして規制された生活をしているのか。あるいは読書をするとか、その他われわれが社会において生活するような、部分的な自分の生活が許されるのか。どういう生活をしているんですか。
  139. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 死刑囚につきましては、死刑の執行がされますまで、監獄法によりまして、刑事被告人と同じ程度の扱いをすることになっております。したがいまして、面会でございますとか、あるいは信書の発受とか、そういった点につきまして、いわゆる勾留中の被告人と同じ程度の扱いを受けておるように承知しております。
  140. 神近市子

    ○神近委員 やはり監獄にいる人と同じように、同じような着物を着、同じような粗末な食事をもらい、そして禁煙というようなこともみんな行なわれているんですか。
  141. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 一般的に刑事被告人につきましては、着ますものは、自分のものがあればそのものを着てよろしいわけで、もしなければ官で用意しております衣服を着てもらうことになると思いますが、原則として自分の着物を着る。それから頭なども、既決囚になりますと、御存じのように丸坊主にしておりますが、自分の好きな形にしておればよろしい。食事等につきましても、もし差し入れがございますればその差し入れの弁当を食べるということは、被告人と同じでございます。ただ、何ぶん現在の拘置所あるいは刑務所といったような施設におきましては、一般的にたばこを吸わせておりませんので、刑事被告人の場合でもたばこを吸わせておりませんので、たばこが吸えないということは、一般のいわゆる世間の生活とはたいへん違うところであろうと思います。
  142. 神近市子

    ○神近委員 たばこの吸えないのは日本だけだそうですね。ちゃんと喫煙室というものがあって、たばこもちゃんと吸える。今年は人権宣言の二十年の記念が行なわれるということが方々でいわれておりますけれど、監獄にいる人だからといって、その最低の喜びを奪うということができるかどうか。そして喫煙ということを一ぺんでもお考えになったことがあるかどうか、ちょっとそれを伺わしてください。
  143. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 たいへん申しわけございませんが、私、実は刑事局から参っておりますので、監獄内の処遇につきましては、矯正局からお答えするのが最も適当だと思いますが、ただ私も隣の分野におります者として承知しております範囲でお答え申し上げたいと思いますが、世界を見渡しまして、たばこを吸わせるところが多いか、吸わせないところが多いかと申しますと、刑務所の中で吸わせるところが多いのじゃないかと思います。私自身も若干そういった施設を見学したことがございますが、外国でも吸わせないところももちろんございます。わが国におきましては、おそらく昔から木造の建物が多いというようなこともありまして、たばこを吸わせないという方針で矯正当局がきておるのだと思いますが、先生御指摘のように、この問題は今日の時点で考えてみますと、はたしてそれが刑事政策的に、あるいは適切な処遇の面から、いい方法か、あるいは吸わせたほうがいいのではないかという議論も確かにあり得ますので、矯正当局においては、この問題も近時検討を続けておるというふうに私、聞いております。
  144. 神近市子

    ○神近委員 まあそれで納得しておきましょう。ともかく木造だからとおっしゃるけれど、今日喫煙室をつくるくらいのことは簡単にできるはずですね。それを結局やらないということが、こういう人たちを残酷に扱う一つの例だろうと思うのですけれど、もうちょっと、五分か十分時間をいただきます。  憲法第三十六条には、「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」ということがございますね。また、三十八条の三項には、「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。」と、こうあります。ところが、これは今日の裁判所では守られておりますか、おりませんか。自白によらない証拠でなければ刑罰は科せられないというようなこと、これはあなたは憲法がはっきりと守られているということを明言できますか。
  145. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 本来刑事裁判では、一審、二審あるいは最高裁判所と、三審制度で慎重な審理が行なわれて裁判がきまるわけでございますが、最高裁判所に至るまでのその間におきまして、どの審級の裁判所も、ただいま先生御指摘の憲法三十六条でありますとか三十八条、あるいはその前後にございます刑事手続における人権保障に関する諸規定、これは十分尊重して、と申しますよりも、十分この趣旨をくみまして、およそ憲法違反にわたらないよう、あるいは憲法違反疑いを招かないように慎重に審理をされておるというふうに、私ども検察法務の立場から裁判所をながめまして拝察しておるわけでございます。現在の裁判所において、これらの憲法の条章がおよそ無視されておるというふうな事例はないのではないかと存じております。
  146. 神近市子

    ○神近委員 私は、警察と検察との取り調べが非常に苛酷だということが、ずっと日本の旧刑事訴訟法の時代から続いてきて、まだあとを引いているように考えるのです。この間ありましたでしょう、愛知県の半田というところで、おまわりさんが殺された。そのときに、右翼ですよ、この風天会というのは。右翼の人がつかまって、そして殺したと白状して、検察庁に送られていたじゃありませんか。そうしたら、翌日だか、十七歳の少年が、私がやったと言って出てきた。そして洋服のきれ端とそれがぴたり合うものですから、指紋もその子供のものだったものですから、それで結局これは風大会は放免になった。たったあれ一つのことを考えてみても、あなた方の調査というものがどんなに過酷なものか。特に私はこの再審に関する法案を出しておりますけれど、今日でさえああいうことがあるのだから、今日以前、特に占領中、旧刑事訴訟法あるいは旧憲法の習慣がまだみんなの頭にあったときに行なわれたことが大体想像できるように思うのですけれど、その間の変遷というか、改善というか、それはどの程度に行なわれていますか。この間の半田の事件を見れば、取り調べというものがどんなに過酷で、ともかくここをのがれたいというような考え方で、ありもしないことをしゃべった。それが取り上げられて、二十年も二十三年も監獄にいる、死刑囚というレッテルを張られているということは、過酷だと考えませんか。
  147. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 御指摘の半田の警察襲撃事件でございますが、御指摘の風天会といわれますものの数名の者が警察でどういう調べを受けましたか、私必ずしもよく知りませんが、過酷であったというふうにも聞いておらないのでございます。いずれにしましても、刑事手続におきましては、たとえば警察官が検挙しました者が、検察官の吟味を受けまして、それから起訴されますと、一審の裁判所、さらには控訴審、それから最後には国民が信頼をかけております最高裁判所におきまして慎重に審理が行なわれるわけでございます。御指摘の半田の事件も、これは一番窓口のと申しますか、検察の段階で真犯人でないということが看破されたのでございまして、たまたま何かの都合によりまして誤った自白が行なわれる、あるいはそういうような事情が積み重なりまして不幸にも起訴されたというような場合におきましても、ただいま申し上げますように一審、二審、それから最高裁と参ります間には、真相というものが白日のもとにさらされまして、正義にかなった裁判が行なわれるという現在仕組みになっております。戦後、御指摘の占領中の期間でありますと、あるいは占領が解けました後の期間でありますとを問わず、およそ日本裁判所はその辺は十分公正にやっておるように思うのでございます。特に御指摘のように死刑囚等につきましては、だれしも死刑というものが極刑でございまして、軽々になすべきでないということは、十分承知しております。いわんや裁判官、特に最高裁の裁判官におかれましては、十分その辺は御承知でございまして、吟味に吟味を重ねまして最終の判決を確定するに至っておるわけでございますので、その辺は必ずしも先生の御心配は、あるいは杞憂ではなかろうかと存ずるわけでございます。
  148. 神近市子

    ○神近委員 もう時間がないからあと一問にしておきますけれども、いまあなたは半田市の問題で、そんなに簡単に自白するものじゃないというようなことをおっしゃったのですが、右翼ですよ、からだのじょうぶな二十七、八歳の人たちがそろっている。それで警察の調べで抵抗できなくて、やったといったんじゃありませんか。それで検察庁に送られている。だから、今日でさえこの憲法の条文の照らすところでどんな取り調べが行なわれているかということ、そしてその加えられる、暴力であるかあるいは何か知りませんが、そういうものに負けて、右翼のじょうぶな若盛りの人たちが、やったと言った。そういうことを考えれば、今日の裁判の基礎というものがどんなに不当なものかということを私は申し上げているのですけれど、時間がもう十五分過ぎましたから、私はこの問題はもっとゆっくりとお尋ねしたいと思いますので、きょうはともかくも序文に近いものをお尋ねして、私はきょうはこの質問を終わりたいと思います。  今日、数十万の国民がこの無罪と思われる死刑囚の救援運動を起こして、法務行政というものに対する不信というか、あるいは批判というか、こういうものが全国的に起こっている。これを私は容易ならない事態——さっき共産党方々とのやりとりをずいぶん聞いてみても、こういう法務行政が行なわれるということがその基盤にあるということを、私はつくづく感じながら聞いていたのですけれど、ともかくも行政の中でも最も正しくなければならない法務、それが今日、やあ予算は少ないわ、人は足りないわ、そしてまだ古い時代の頭を残しているわ、こういうふうな警察官あるいは検察官によってこれが動かされているということは、私はおそろしいことだと思うのです。私は次回にもっと詳しくお尋ねしようと思いますから、きょうは時間の制約がございますので、これをもって終わることにいたします。
  149. 永田亮一

    永田委員長 次回は、明後日、二十五日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時十八分散会