○菅野
最高裁判所長官代理者 前回の当法務
委員会に、私やむを得ない事情がございまして出席できませんために、寺田総務
局長が参りまして、執行官汚職の点について答弁を申し上げた、その直後に
事件が起きたではないかという御指摘の
事件は、
東京地裁の寺田浩という執行官についての被疑事実のことであろうと思うのでございます。この事実はただいま、三月二十二日に逮捕されまして、引き続き勾留中で捜査が続けられておるようでございまして、その詳しい、もし被疑事実があるとすれば、そういう事実が今後の捜査の進行によってもっとはっきりしてくるのではないかと思いますが、ただいままでにどういう被疑事実で逮捕されたかということにつきまして、私
どもが聞いておりますところによりますと、強制執行について特別の便宜な扱いをしたということで相当額の現金――この相当額ということで、その
金額までが逮捕の段階でははっきりしていないようでございます。そういうことで、要するに収賄の嫌疑で逮捕せられ、勾留中であるということでございます。
それから執行官法
施行後その執行官の犯罪、不正事実というものが変わってきたということを寺田
局長が答弁しておるのを速記録で私も読んだわけでございますが、この言っておられる趣旨は、こういう趣旨であろうと思います。元来、執行官法
施行前の執行官に関する不正
事件というものは、大体二種類ございます。それは横領
関係とそれからいわゆる汚職
関係――詐欺等もございますけれ
ども、主として横領と収賄のいわゆる汚職
事件でございます。横領
事件と申しますのは、執行官が手数料の予納を受けあるいは競売代金を保管中にこれを横領するという
事件が非常に多かった。執行官法
施行後は数件の不正
事件が起きておりますけれ
ども、この中で横領
事件というのは一つ浦和にございましたけれ
ども、しかし、これは形の上でいえば横領になるような、ならないような
事件であったものございまするから、これは起訴猶予になりました。ほかの目下
裁判が進行中である、あるいは起訴されたという
事件は、すべて収賄の
事件です。したがいまして、執行官法
施行後は横領の
事件が現在のところまだないということが言えるということでございますが、これはなぜかという点は、やはりこの
制度の改正ということが響いてきておる。
制度改正の最重点は、不正をなくすということであったわけでございます。その不正の原因である金銭の保管、手数料の予納金の保管であるとか、競売代金等の保管金の管理であるとか、そういう面が執行官だけの、執行吏役場だけの手で
制度改正前はやられておったものでございまするから、そこにどうも金銭の扱いには不明朗な点がある、これはぜひ他の官庁がすべてやっておるような、いわゆる会計法規に乗ったような
制度に近いものにしていかなければその点は明朗にならないという点で、執行官の金銭の扱いというものはこれをやめて、すべて
裁判所の会計のほうでこれを取り扱うという方法で――もちろんこれは
裁判所のほうの受け入れ態勢、それに要する人員というものは必要でございますから、一挙にはできないけれ
ども、年次計画でだんだんそういう体制に移していくということにいたしまして、
施行の年から漸次可能な
裁判所につきまして会計の事務を執行吏役場から
裁判所のほうに取り入れるということにいたしてまいったわけでございます。そうして現在までにすでに全国の四十九の
地方裁判所のうち十の
地方裁判所において、会計事務を
裁判所に取り入れるということを
施行したわけであります。さらに、もし今年度におきまして、ただいま御審議を願っております増員
要求というものが認められますれば、昨年度行ないました
程度の
裁判所への会計事務の取り入れということが、実施できることになるわけでございます。そういたしますと、四十九のうち約二十の
裁判所は、そういう体制になる、執行官が金銭を取り扱わないという体制になりますので、これを推し進めてまいりますれば、絶滅するということは申し上げられないかもしれませんけれ
ども、執行官役場で金銭を取り扱っておって、そのために生じた不祥
事件というものはこれを防止することができるという体制になったわけであります。その現のあらわれが、執行官法
施行後の不正
事件というものについて、横領
事件は非常に減った。不幸にして汚職
事件はございましたけれ
ども、そういうことで、犯罪の、不正の体型が変わったということを申したのは、そういう意味であったのでございます。