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1968-04-04 第58回国会 衆議院 法務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月四日(木曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員   委員長 永田 亮一君    理事 大竹 太郎君 理事 田中伊三次君    理事 中垣 國男君 理事 濱野 清吾君    理事 猪俣 浩三君 理事 神近 市子君    理事 佐々木良作君       上村千一郎君    内海 英男君       鍛冶 良作君    河野 洋平君       佐藤 文生君    千葉 三郎君       中馬 辰猪君    馬場 元治君       広川シズエ君   三ツ林弥太郎君       成田 知巳君    横山 利秋君       山田 太郎君    松本 善明君  出席政府委員         法務政務次官  進藤 一馬君         法務省人権擁護         局長      堀内 恒雄君  委員外出席者         法務大臣官房司         法法制調査部長 川島 一郎君         国税庁直税部審         理課長     大塚 俊二君         最高裁判所事務         総局民事局長  菅野 啓蔵君         最高裁判所事務         総局刑事局長  佐藤 千速君         専  門  員 福山 忠義君     ――――――――――――― 四月四日  委員河本敏夫君、瀨戸山三男君、綱島正興君、  中村梅吉君、村上勇君、山手滿男君及び岡田春  夫君辞任につき、その補欠として佐藤文生君、  内海英男君、広川シズエ君、上村千一郎君、河  野洋平君、三ツ林弥太郎君及び横山利秋君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員上村千一郎君、内海英男君、河野洋平君、  佐藤文生君、広川シズエ君、三ツ林弥太郎君及  び横山利秋辞任につき、その補欠として中村  梅吉君、瀨戸山三男君、村上勇君、河本敏夫  君、綱島正興君、山手滿男君及び岡田春夫君が  議長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第八五号)  旧執達吏規則に基づく恩給年額改定に関す  る法律の一部を改正する法律案内閣提出第八  六号)      ――――◇―――――
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  ただいま本委員会において審査中の内閣提出の旧執達吏規則に基づく恩給年額改定に関する法律の一部を改正する法律案及び刑事補償法の一部を改正する法律案の両案について、それぞれ参考人出頭を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  なお、両法案についての参考人出頭日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  5. 永田亮一

    永田委員長 次に、内閣提出訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。横山利秋君。
  6. 横山利秋

    横山委員 本案に関連いたしまして、二、三お伺いしたいと思います。  最初は、国選弁護人の問題でございます。私のようなしろうとは事情がよくわかりませんから、少し根っこから簡潔に伺っていきたいと思うのですが、国選弁護制度というものは、何法に基づいて行なわれておるものですか。
  7. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 御質問制度のことでございまするから、便宜裁判所のほうからお答えいたします。  国選弁護人制度の根拠という御質問でございます。憲法三十七条には「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する辯護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、國でこれを附する。」かような規定がございまして、この後段の被告人がみずからこれを依頼することができない場合に国で付するところの弁護人国選弁護人と呼んでいるわけでございます。その憲法規定を受けまして、刑事訴訟法の三十六条では「被告人貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判所は、その請求により、被告人のため弁護人を附しなければならない。」かようになっております。それからなお、職権弁護人をつけることができるという場合がございまして、これは刑事訴訟法の三十七条でございまするが、それは「被告人未成年者であるとき。」「被告人が年齢七十年以上の者であるとき。」「被告人が耳の聞えない者又は口のきけない者であるとき。」「被告人心神喪失者又は心神耗弱者である疑があるとき。」「その他必要と認めるとき。」「裁判所は、職権弁護人を附することができる。」かようになっております。なお、この規定に関連いたしまして、刑事訴訟規則の二百七十九条では「少年の被告人弁護人がないときは、裁判所は、なるべく、職権弁護人を附さなければならない。」かようになっております。それから刑事訴訟法の二百八十九条という規定がございます。これはいわゆる必要的弁護事件でございまして「死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない。」かようになっております。弁護人開廷の要件でございますが、このような場合に、弁護人出頭しない、弁護人がついていましても、期日に「出頭しないとき、又は弁護人がないときは、裁判長は、職権弁護人を附しなければならない。」かようになっております。これらの諸規定に基づきまして「裁判所又は裁判長が附すべき弁護人は、弁護士の中からこれを選任しなければならない。」ということに刑事訴訟法の三十八条がなっているわけでございます。選任の手続等は後ほどまた御質問があれば申し上げますが、基本的なところは以上のとおりでございます。
  8. 横山利秋

    横山委員 この旧憲法当時の官選弁護人と新憲法下における国選弁護人とは、端的に言うと、ものの考え方にどういう違いがあるのか。
  9. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 まず、新憲法におきましては、憲法でそれが保障されているということが大きな点であると思います。そして、その規定を受けました刑事訴訟法におきまして、この趣旨を体しまして、貧困その他の困窮状態にある被告人のためにできる限り弁護人の援助というものを厚くする、こういう考え方をとっておるものでございます。
  10. 横山利秋

    横山委員 貧困ということが主軸になっておるようでありますが、憲法のいっておることは、私は基本的人権という立場が強いのではないかという感じがいたしますが、そういう思想はないのですか。
  11. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 仰せのとおりだと思います。
  12. 横山利秋

    横山委員 基本的人権をもって憲法国選弁護制度というものが設けられ、刑事訴訟法等でいろんな具体的なことがきめられておりますが、私がこれからいろいろと質問をする過程で――私の勉強する過程で感じたことなんでありますが、憲法でそれほど明記されておりながら、国選弁護制度については具体的に法律で太い筋が貫かれていないような気がするのですが、国選弁護法とでも申しますか、国選弁護ということが新憲法できわめて強く打ち出されているにかかわらず、なぜそれに基づく単独的な立法がなされていないのでありましょうか。私は、勉強しながらそういうことに疑問を感じたのであります。現状において、国選弁護制度は円滑に十分に憲法の示しておることが守られておるとお考えでありましょうか。
  13. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 制度の問題にお触れになった御質問でございますので、あるいは法務省からお答えいただくのがいいのかもしれませんが、私の理解するところを申し述べさせていただきます。  刑事訴訟法は、先ほども御説明申し上げましたように、憲法規定を受けまして、旧法に比較いたします場合、その点の格段の手当てをしていると考えるのでございます。また、先ほど申し上げました「心要的弁護」というものの幅も広くなっておりまして、現に裁判所に係属しておりますところの大かた事件とおもなる事件は、いずれも強制弁護事件に該当するというようなわけでございまして、単行法でそれを一元的に規定したほうがいいか、あるいはいま申し上げましたような現行の姿のままでその機能を十全に発揮させるほうがいいかということは、立法政策の問題であると思うのでございまするが、要は貧困その他困窮状態にある被告人を援助し、それを代弁するという役割りを単に法曹だけがやるのでなくて、その問題はやはり法曹の手から社会の手に大きく移っていったんだということが、根本的な問題であると思うのでございます。そういう考えに基づいて、いまのような刑事訴訟法規定に基づきまして運用されるということでありましても、その運用がよろしければ、実質的には必ずしも仰せのような単行法でなくてもいいのではなかろうかと私は考えておるわけでございます。
  14. 横山利秋

    横山委員 いま国選弁護とそうでないものとの比率は、どんな状況でありますか。
  15. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 申し上げます。毎年、一審におきましては全被告人の約半数が国選弁護人の立ち会いを得て審理を受けている、こういう状況でございまして、たとえば東京大阪の場合で具体的に申し上げますると、東京の場合、地方裁判所において昭和四十年に――私選国選割合を申し上げます。これは私選が四八・九%、それから国選が五〇・七%ということでございます。それから東京地方裁判所管内簡易裁判所について私選国選割合を見ますると、同じく昭和四十年でございまするが、この場合は国選割合が非常に多くて六一・二%、私選が一五・六%、かようになっております。それから大阪について見ますると、同じく昭和四十年でございますが、大阪地方裁判所について私選国選割合を見ますると、私選が五五・五%、国選が四三・四%、大阪地方裁判所管内簡易裁判所について見ますると、私選が二六・九%、国選が五九・八%、かような割合になっております。
  16. 横山利秋

    横山委員 圧倒的に過半数国選の模様でございますが、国選私選とで弁護士に対する報酬比率は、簡潔にいいますと、どんなことになりますか。
  17. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 国選私選報酬比率ということでございまするが、私選の場合につきましては、日本弁護士連合会報酬基準というものが定められておるわけでございます。それから国選弁護人の場合につきましては、請求権刑事訴訟法規定してございまして、報酬の額の算定につきましては、刑事訴訟費用法裁判所の相当と認めるところの額、かように規定されておるわけでございます。
  18. 横山利秋

    横山委員 大体どのくらいの比率だとお考えですか。
  19. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 これは率直に申し上げますと、現実比率はわかりません。日弁連基準というものはわかるのでございますが、基準との比較においてでございますれば申し上げることが可能でございます。
  20. 横山利秋

    横山委員 どうぞ。
  21. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 現在の姿を申し上げます。日本弁護士連合会報酬等基準規程によりまするところの刑事事件の手数料、これは各裁判所ごとにそれぞれ規定されております。そして昭和三十九年四月一日に施行になっておりまするが、その中身は、最高裁判所におきましては三万円以上、高等裁判所におきましては同じく三万円以上、地方裁判所におきましては二万円以上、家庭裁判所におきましても同じく二万円以上、簡易裁判所におきましては一万円以上ということで、以上平均いたしますると、二万二千円ということになっております。
  22. 横山利秋

    横山委員 けっこうです。これに見合う国選弁護人報酬は、統計をおとりになったことはありませんか。大体どのくらい支払われておるのですか。
  23. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたように、裁判所の相当と認める額、かようになっておりまするが、裁判官がそれを決定いたしまするための参考といたしまして、またその額が不当に区々にわたらないためもございます、それから予算執行上の問題もございまするので、当初よりこれは裁判所のほうで一応の基準というものを定めまして、裁判官が具体的な事件において報酬を決定されまする場合の参考に供しているわけでございます。その基準について申し上げますると、現行の額を申し上げますと、最高裁判所におきまして一万一千円、高等裁判所におきまして一万二百円、地方裁判所におきまして九千四百円、家庭裁判所におきまして九千二百円、簡易裁判所におきまして六千八百円、かようになっておりまして、この平均額が九千三百二十円、こういうことに相なっております。これが一応の基準でございまして、あとはその弁護活動に応じまして、具体的事件において各裁判所が定めるということになっておるわけでございます。
  24. 横山利秋

    横山委員 ここ数年の国選弁護に関する予算は、どの程度になっておりますか。
  25. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 報酬につきましての予算を申し上げますると、実は正確なところ、四十年、四十一年の二年の資料しか持ってまいらなかったのでございまするが、四十年の予算額をまず申し上げますると、二億四千六十三万八千円ということでございます。それから、四十一年の予算額が二億八千二百万九千円、こういう予算額に相なっております。そして支出のほうを申し上げますると、昭和四十年におきましては、予算額をややオーバーいたしまして、二億八千六十八万一千円余り、こういう支出実績でございます。それから四十一年におきましては、これも予算額をオーバーいたしまして、二億二千二百四十六万八千円余り、かようになっております。
  26. 横山利秋

    横山委員 国選弁護の場合、私ども戦前からずっと感じております点、及び庶民の世界で感じております点は、どうしても国選弁護ですと、弁護士さんは報酬が少ない。そして頼まれてやることであるから、どうしても適当なやり方をなさるのではないかという心配が、常に庶民の中にあるわけであります。そういう点について日弁連のいろいろな資料を読みますと、そういうことではない。それはそのようにやっておるとは言うものの、やっぱりこのいまの統計を見ましても、大体私選の場合の報酬国選の場合の報酬とは、三分の一強ということになるわけです。戦前ではこの比率はどうでありましたか。この比率のようでありましたか。私の承知いたしておりますのは、国選私選もほとんど報酬は変わらないように承知いたしておりましたが、どうですか。
  27. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 戦前の旧制度でございますると、いわゆる官選弁護人というので、これは無料の奉仕であったわけであります。
  28. 横山利秋

    横山委員 しばしば法務省と大蔵省との間に予算折衝が行なわれており、国選弁護人に関する予算要求がされておるやに聞いておるわけですが、明年度予算状況を説明してほしい。
  29. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 四十三年度の予算の額は、報酬につきまして三億六千八百八十万八千円ということに相なっております。
  30. 横山利秋

    横山委員 それは確定した予算……。
  31. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 現在国会において御審議願っておりまするところの予算でございます。
  32. 横山利秋

    横山委員 要求はどんなものです。
  33. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 実は、申しわけないのでございますが、資料を持ってくるのを忘れましたけれども……。
  34. 横山利秋

    横山委員 いいです。時間の関係上、日弁連資料からその要求理由を引用してみますが、第一は「国選弁護人の増大は私選弁護人の減少を来し、国選報酬の僅少なる結果、弁護士刑事事件における収入を激減させ、ひいては職域の減縮を生ずるに至っております。今日統計によれば東京地方裁判所管内簡易裁判所ではその七五%、東京地方裁判所では七〇%が国選弁護となっております。」第二「国選報酬私選報酬に比して、比較にならぬ程僅少であることは、社会一般に対し国選金額公定価格で、私選金額弁護士の勝手不当な額である如き観を与えて憂慮すべき弊害を生じております。」第三に「昭和三九年度における簡易裁判所の一件当り報酬は四千九百円(三開廷)、地方裁判所は六千八百円(三開廷)となっておりますが、大工左官等建設業従業員の日当が一日千五百円乃至二千円といわれている現在の経済状勢から見てそれと甲乙ない金額であることは、弁護士頭脳労働を全く評価しない極めて不当なものであります。」第四「最近の判例から見ても、国選私選においてその責任は全く同一であって、国選だから適当でよいということは許されません。われわれ弁護士は、こと人間に関することだけに当初よりその態度で事件の処理に当って居りますが、右の判例責任同一であることが確認されたわけであります。そこで同一責任同一報酬という経済原則が当然適用されねばなりません。」第五「今回の刑事訴訟法規則の改正により国選弁護人事前準備に要する時間と労力は誠に多大であり集中審理も亦同様であります。この点から考えても現在の金額は不当に低廉であります。」第六「現在程度国選報酬が将来も維持継続されるならば、弁護士が情熱を持って国選弁護を受任することは困難となることは火を見るより明らかであります。なお、東京弁護士会調査によれば、昭和三八年度の国選受任弁護士は約千七百六十人でその一年間国選件数平均一人当り約四・六件報酬は約二万四千円であります。この僅少なる金額を以て多大の労力と時間を要求することは無理を強いることになりはしないかと心配されます。」第七「いかなる国家でも国民にその唯一の職業を以て国家に奉仕させることは好ましいことではありません。しかし弁護士前掲①記載のような多数の事件について、極めて低廉な報酬国選弁護人として奉仕しております。日本刑事裁判はその大部分を弁護士の犠牲において運営されているといっても過言ではありません。」第八「見方をかえれば、現在、裁判所で定められている一件当り報酬金弁護士たるの品位に適合しない金額であり速かに改訂さるべき必要あるものと考えるのであります。」この理由はおととしの十二月のことでありますから、金額に若干の相違はあるといたしましても、今日の裁判過半数国選で行なわれており、しかも私選の場合と報酬があまりにも違い過ぎるということについては、考うべき点が非常にあると思うのでありますが、弁護士会の主張に対して、どういうふうにお考えになっておられるのでありましょうか。
  35. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 その前に、裁判所報酬額についての予算上の措置、どのくらいの上げ幅で逐年まいったかということを申し上げさせていただきます。三十七年から申し述べますると、三十七年におきましては前年度に比べまして一〇%の上げ幅、三十八年におきましては九%、三十九年におきましては一〇%、四十年におきましては一五%、四十一年におきましては一〇%、このように大体一〇%前後の上げ幅をもって逐年まいったわけでございます。確かに仰せのとおり、日本弁護士連合会報酬基準というものからいたしますと、低いことは明らかでございます。ことにこの弁護士会報酬基準は、昭和三十九年に一挙に二倍に改定されました関係上、さらにその距離があいたということに相なるわけでございます。現在国選弁護人をお願いしておりまするところの弁護人の方々は、非常に弁護活動を熱心にやってくださっております。率直に申し上げますると、施行当初の国選弁護人比較いたしました場合には、かなりのそこに充実した弁護活動というものが見られるのでございまして、これはおおむねの裁判官がそう見ておるわけでございます。それだけになお御指摘の問題があるわけでございまして、私ども従前日本弁護士連合会と御連絡申し上げまして、合理的な資料国選弁護人弁護活動に関する資料双方協力の上つくりまして、そういうものをもちまして予算要求資料としていくという努力をしたわけでございます。  ただ、ここで一言端的に言わしていただきまするならば、先ほど来お話に出ておりまするところの日本弁護士連合会報酬基準、これは基準であるわけでございます。現実にどの程度報酬というものをお取りになっているのかという実態は、私どもはわからないのでございます。必ずしもわからないのでございます。そこで、そういう問題もございまするので、現実私選の場合の報酬というものとの比較ということができないわけでございます。しかし、ただできないといって手をこまねいているわけにはいかないので、先ほど申し上げましたような調査というようなものも――これは国選弁護人弁護活動中身調査でございます、報酬調査ではないわけでございます。そういうものを昭和四十一年、日弁連とおはかりいたしまして、弁護人の御協力を得まして各種のデータも取りそろえ、それを予算要求資料にいたしたというようなことでございまして、私どもとしては、現在の国選弁護人報酬というものがこれで十分だというふうに思っておるわけではございません。弁護士会の強力なる御支援を、従前もいただいておりますけれども、なお十分なる連絡をとり、さらにいろいろなお知恵も拝借いたしまして、この報酬額増加ということにつきましては努力いたすつもりでおるわけでございます。
  36. 横山利秋

    横山委員 おそらく今後国選弁護比率私選に比べて増加をする、そして国選弁護裁判におけるウエートを相当ふやしていくということを、私は想像するわけであります。そうだといたしましたら、当初新憲法並びに刑事訴訟法において予想いたしておりました国選弁護ウエートは非常に強くなるので、その意味からいいますと、もう一回国選弁護士制度現状について検討してみる必要があるのではないか。世間がいまなお国選弁護というものと私選との熱の入れ方が違うんだ、それはなぜならば報酬も少ないからであろう、また弁護士は国に依頼されてやるのであるから、そのようにしか働かないのであろうというような感触を持っておるわけでありますから、この際ひとつ国選弁護制度にもう一度光を当てて、私が申しますように、単独法国選弁護法とでもいうような検討をすること、並びに実情はおわかりにならないとおっしゃるんだけれども、しかし、これは調査の方法は日弁連とも相協力し、つぶさに調査をすれば、国選私選報酬実情ということもわかってくるだろうと思うのであります。この際、ひとつあらためて国選弁護判度現状分析を加え、そして根本的な一つの方向を見出すお考えがないかどうか、あらためて伺いたいと思います。
  37. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 ただいまの御発言の中に、現実私選弁護人の場合の報酬取得額と申しますか、そういうものがわかるではないかというお話もあったのでございますが、これは弁護人のそれぞれに私どものほうからあくまでもお願いするということでいかざるを得ない問題でございます。なお、今後もいま仰せの点につきまして日本弁護士連合会と緊密なる連絡をとりまして、合理的なるデータというものをつくりたい、かように思っておるわけでございます。そういたしまして、現状分析ということはまさに仰せのとおりのことでございます。それらの現状分析というものをいたしまして、そして現在の制度のもとにおいて欠陥があるんだということになりまするならば、その点は法務省とも連絡をとりまして検討をいたしたい、かように考えます。
  38. 横山利秋

    横山委員 これと相関連をいたしまして、法律扶助の問題について伺いたいのでありますが、法律扶助のほうで円山会長が、刑事被告人さえ国選弁護で保護されているのに、交通事故被害者のごとき善良な国民のこうむった被害をどうして放任しておくのかという点を盛んに書かれておる。この法律扶助のほうの問題点をいろいろ検討してみますと、弁護士の中で一番不評を買っておりますのが、扶助事件受任弁護士が受けた金額の一割ないし二割を寄付することによってまかなわれておるということであります。この点につきまして一、二の弁護士に聞きましたら、実際そのとおりです、こういうことでありますが、なぜそういうことをせざるを得ないのでありましょうか。
  39. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 ただいまお話のありましたように、法律扶助協会におきまして、依頼をいたしました弁護士の方々からその謝金の一部を寄付を仰いでいるということでありますが、そういう事実があるらしいのでございまして、その理由といたしましては、法律扶助協会の事務経費、これに充てるためにそのような寄付を弁護士から仰いでいるのだと思います。
  40. 横山利秋

    横山委員 事務経費は国庫で負担をしないのですか。
  41. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 国庫からはいわゆる扶助費という訴訟の扶助に充てるための費用だけを補助いたしておりまして、事務経費は補助いたしておりません。
  42. 横山利秋

    横山委員 その理由は何ですか。
  43. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 その理由は、おそらく沿革的な理由であろうと思われます。法律扶助協会は、昭和二十七年に日本弁護士連合会の事業団体といたしまして財団法人法律扶助協会が設立されまして、その年の四月から事業が開始されたのでございます。この設立にあたりまして、まず訴訟扶助の事業を民間の団体が実施をするということで出発いたしまして、そして国は社会保障の一環としてそれに対して援助をするというたてまえで出発いたしたものでございますので、事務経費は主として民間団体である財団法人のほうでまかなって、扶助費に充てる分だけを国が補助する、そういう線で出発いたしまして、その出発されました沿革的な事情が今日まで続いておるということでございます。
  44. 横山利秋

    横山委員 その沿革はわかるのですが、その法律扶助ということが積年非常に叫ばれて、先般賀屋法務大臣が非常に努力をされて、一挙に数千万円ということになった。調査いたしましたところ、この協会の成果が相当あがっておるにかかわらず、予算不足で弁護士が強制的に一割ないし二割を寄付することによって事務経費がまかなわれておるという点は、まことに私はおかしなことだと思うのであります。今日いま仰せのように社会保障の一環としてやっておるということであるならば、この性格がそういう性格ならば、当然事務経費を国庫が負担をしてやるべきではないか。先ほどの国選弁護人のような議論をいたしましても、それ以上に法律扶助のことが必要であるならば、当然なことだと思うのですが、法務省なり関係の省は、この問題についてどういう努力をされましたか。
  45. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 法律扶助協会の事務経費につきましては、国は主として扶助費を補助いたしまして、事務経費につきましては、地方公共団体あるいは日本自転車振興会からの補助金、その他日本弁護士連合会からの、あるいは各弁護士会などからの寄付金によってまかなうということでいままでまいっておりまして、私どもといたしましても、法律扶助協会でこのようにみずから資金を養成するという自己資金の養成につきまして、非常に協会に対して勧奨をいたしておりまして、国としてはいままで補助金だけを出すという方向でまいっておるわけでございますが、将来の問題としましては、その事業の重要性にかんがみまして、事務費の獲得につきましても努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  46. 横山利秋

    横山委員 法務省の扶助の平均単価の基準があるはずでありますが、それはどのくらいになっておりますか。
  47. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 予算要求に当たります積算の根拠といたした数字を申し上げますが、昭和四十二年度におきましては、訴訟費用といたしまして単価が一万二千二百円、弁護士の手数料といたしまして単価が二万一千五百円、弁護士の謝金といたしまして単価が三万四千八百円、そのほか保証金の単価といたしまして十万八百円という積算の根拠を持っております。それが協会での実際の実績を見ますと、訴訟費用の単価としまして一万七百一円、弁護士手数料といたしまして二万六千三百三十九円、弁護士謝金といたしまして三万一千六百六十四円、保証金といたしまして十万六千三十二円、そういう実績を示しております。
  48. 横山利秋

    横山委員 一年間における扶助の実績は、何件くらいですか。
  49. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 昭和四十二年の四月から昭和四十三年二月までの実績は、千七百五十三件でございます。
  50. 横山利秋

    横山委員 お話を聞いてみましても、非常に法律扶助の件数が少ないように思うのです。少ないということは、法律扶助の必要性がこの程度にとどまっておるとは思われないのでありますけれども予算が少ないから適用件数を少なくさせざるを得ない、こういう結果を私は招いておるというふうに思います。こういう分け方はむずかしいかもしれませんが、潜在的な法律扶助を必要とする件数というものを調査されたことがございますか。
  51. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 実際に扶助を与えております事件の件数の少なさにつきましては、お説のとおり、実際に法律扶助を要する事件数というものが少ないのではなくて、予算が乏しいために少なくなっていると思われます。私ども実際に法律扶助を要する事件というものの予想件数を十分に検討はいたしておりませんけれども、簡単に申しますれば、交通事故事件におきまして、年間一万六千人もの死亡者を出し、また五十万人をこえる負傷者を出すというような事件におきまして、その一割だけに法律扶助を充てるといたしましても、容易に五万件という数字を想像することができますので、その点だけからでも少ないということがわかります。また、法律扶助を求めてきまして、それに実際法律扶助が与えられる件数の比率は、現在約四〇%でございます。したがいまして、なお六〇%というものは、予算がありますれば与えることができるという状況にあるわけでございます。
  52. 横山利秋

    横山委員 時間の関係上結論に入りたいと思いますが、国選弁護士度制にいたしましても、法律扶助の問題にいたしましても、法律知識に乏しい国民、あるいは一生に一回、二回のこういう訴訟事件にぶち当たった国民にとってみれば、国家として救済するきわめて重要な制度であろうと私思います。ところが、国選制度がどんどん発展するにかかわりませず、年に一〇%くらいの予算の増というものにとどまっておる。法律扶助協会のほうにいたしましても、これだけ制度がありながら、全国でわずか千七百件ということでは、実効があがっていないということを痛感いたします。私は、法務へ参りましても、弁護士出身でもございませんし、全くしろうとの考えでありますけれども、体験でありますけれども、どうも法務省なり最高裁の仕事のあり方としまして、情勢に適応する弾力性が乏しいと日ごろから指摘をしておるわけであります。この際、国選弁護士制度あるいは法律扶助制度について、思い切って現状に合わせて検討を加える、そして改善をする必要があると痛感をされるのでありますが、政務次官はどうお考えでありますか。
  53. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 横山委員のおことばのように、そうした不公平があってはならないと思いますが、実態をよく調査しまして、現状に即して考えていきたいと思う次第であります。
  54. 横山利秋

    横山委員 法律扶助の件につきましては、賀屋さんがライトを当てたというて関係者はたいへん喜んでおるわけであります。そんなことは、法務大臣がだれであろうと、当然考えなければならぬことでありまして、先ほどの説明によりますと、訴訟費用がわずかに一万二千二百円、こんな金額裁判ができるわけではないのであります。やるとするならば、これはもう思い切って努力をしなければなりません。予算が参議院を上がる直前にこういうことを申しても、本年度の実際の効果はないと思うのでありますけれども、この際検討を重ねて、明年度、つまり本年末の予算折衝におきましては、格段の努力を、ひとつ大臣とも御相談をされまして、この種の問題については努力をされたい。要望いたしたいと思います。どうかお願いいたします。
  55. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 御意見十分に大臣にも伝えまして、今後の問題として努力する決意であります。
  56. 横山利秋

    横山委員 国税庁見えておりますか。――弁護士の収入となる報酬について一言伺っておきたいのでありますが、弁護士が依頼をされた場合に、まず着手金、そして最後に決着がつきましたときには報酬金ということに相なります。税制上、弁護士が申告をすべき時期、それから依頼者が弁護士に出しました損金、これはいつの期に計上をすべきことになっておりますか。たとえば裁判が三年かかった。最初の今期に弁護士に着手金として五十万払った。三年後に裁判を終わって百万報酬金を払ったとしたら、その全額を収受したときに弁護士報酬として計上すべきなのか。また弁護士に払った依頼者は、現金を支出いたしましたときに損金として計上すべきであるかどうか。この期の計算の方法についてはずいぶん議論がございまして、税務署との間にとかくの問題があるようであります。税法上はどういうふうに規定をされ、どういう処理をされておりますか、この機会に伺っておきたいと思います。
  57. 大塚俊二

    ○大塚説明員 弁護士の方が事件を引き受けられたときに収受されます着手金につきましては、その性格によっていつの収入かということが変わってくるかと思います。と申しますのは、いわゆる事件を引き受けられたという形で、引き受けるということの対価というふうに考えられます場合は、これは着手金を収受したその年の収入金額というふうに扱うことになろうかと思います。ただ、今後いろいろ仕事をやっていただく費用の前渡しというような性質のもので、それが着手金――着手金と申しますかどうか私ども詳しく存じませんが、あとで精算されるという性質のものでございますれば、これは前受けという形で処理してしかるべきかと思います。  それからいま先生例でお話しいただいた最初五十万払って三年後に裁判が終わって百万払った場合は、着手金のほうは、いま申しましたとおりに、その性格によりましていつの分の収入金額によるかということがきまるものでありますし、報酬金のほうは、これはいわゆる委任の報酬でございますから、仕事を完成して報酬を受ける、その二年分の収入ということになろうかと思います。  それから支出をいたしました、要するに弁護士事件を依頼いたしました側の経費、あるいは損金の問題でありますが、損金あるいは必要経費に算入する時期の問題は、ちょうど受け取られた弁護士のほうの収入金額にいつ見るかといううらはらの問題があります。  それからもう一点申し上げておきますが、依頼者の訴訟費用と申しますか、弁護士に支払う費用を含めまして、これが個人の場合には、訴訟の目的によりまして、必要経費になるものとならないものがございます。なるものであれば、いま申し上げましたように、弁護士のほうの収入金額のうらはらの問題で必要経費または損金に算入される、かように考えております。
  58. 横山利秋

    横山委員 たとえば報酬金の百万を最後に支払った場合と、それから二年目に五十万、三年目に五十万払った場合と、あなたのおっしゃる言い方によれば、現金収入、払った期に損金として落とすとすれば、現金主義として理解をしていいのですか。払ったときの損金にすればいいという考え方なんですか。
  59. 大塚俊二

    ○大塚説明員 内容が、いま申し上げましたように、弁護士のほうでそのときの収入金額になるという性質のものでございますれば、支払い者側は払ったときの損金ということで考えてよろしいと思います。
  60. 横山利秋

    横山委員 私がそういうことを聞きますゆえんは、一体最後のときに百万円払った金額は、本来その期の弁護士の努力に対して報いられたものでなくして、三年間にわたった努力に対して報われたものであるということから、その期の決算にすべて百万円の損金を計上することは適当でないということを納税者が言うのです。そんなことなら、毎年五十万を払ったほうが自分のほうとしては実情に合っておるし、また会社経理上も適当である、こういう考えを持っておる。その点はどうですか。
  61. 大塚俊二

    ○大塚説明員 弁護士報酬は、これは請負と申しますか、一種の委任の報酬でございますので、性格から申しますれば、委任を受けた仕事を完成して初めてその契約による報酬を受け取る面が出てまいる性質のものであろうと思います。そういう意味から申しまして、報酬弁護士のほうが委任を受けて仕事を完成したその時点で収入すべき権利が発生すると考えるのが、一番通常の状態ではないかと考えております。そこで、もちろん契約の内容といいますか、あるいはしかたにもよるかと思いますが、訴訟の進行に応じまして逐次支払っていく、委任をいたしました仕事の進みぐあいで支払っていくということであれば、それぞれの時点で収入に、あるいは経費に入れるということも、可能であろうと考えております。
  62. 横山利秋

    横山委員 私の申し上げておるのがよくわからないようですが、そうすると、依頼者は二年目に五十万、三年目に五十万払うつもりで、しかし、実際は弁護士に五十万を二年目に支給しないで、それを債務として計上する、そういうような方法をとっても理論上は差しつかえないわけですね。債務として、弁護士に対して五十万払う義務ありとして計上しておくけれども、実際は弁護士にまだ支給しない。つまり借金だ。弁護士に対する借金として計上しておく。そうして三年目に五十万と合わせて百万払った場合、二年目に五十万の損金が計上され、三年目に五十万の損金が計上される、そういう帳簿整理をしても違法ではございませんね。
  63. 大塚俊二

    ○大塚説明員 これは依頼者と弁護士のほうとの間の契約関係によると思います。仕事の完成と申しますか、委任をいたしました弁護という仕事を完成してそれに対する報酬を払うという契約でございますれば、途中で払ったものはやはり前渡しといいますか、そういう……(横山委員「払っていないんです」と呼ぶ)払ってないものに対しまして債務を計上するというのは、これは所得税法にもございますように、確定した債務だけを必要経費に算入するという考え方がございますので、必要経費に見られないという場合があろうかと思います。
  64. 横山利秋

    横山委員 裁判の終わった場合にどういう報酬を払うかということについて、納税者と弁護士の間に約束があるとしますね。大体それが百万円だとする。その裁判が終わった日に特に百万円の計上は困難である。困難であるから、その約束を履行するために年々積み立てておくといいましょうか、年々、事実弁護士にそれだけの努力をさしたのであるから、それを積み立てておくといいますか、そういうようなやり方をして、最後に百万円を支払うという方法が違法であろうか。そして、その期その期に積み立てた分を損金として落としていくということが、なぜ違法であるのかとお伺いしておるのです。
  65. 大塚俊二

    ○大塚説明員 年々積み立てまして、裁判が完結いたしましたときに百万円を支払うという形をとりました場合は、あくまで依頼者の側で支払う債務というのは裁判が完結したときに生ずるわけでございますから、その準備をして年々積み立てておりましても、その分は年々の経費には算入されないというふうに考えております。
  66. 横山利秋

    横山委員 これは少し審理課長のお考えがおかしいと思うのですけれども、時間の関係で一応別の機会にまた……。  最後に一つだけお伺いしますけれども交通事故の損害賠償請求事件において、弁護士費用というものは本来敗訴者が負担すべきものであるかという点について、御意見を伺いたいと思います。
  67. 菅野啓蔵

    ○菅野最高裁判所長官代理者 交通事故の損害賠償事件におきまして原告が勝訴した場合、そしてその訴訟において弁護士をつけて費用を払って初めて勝訴した場合、これが敗訴者である被告、自動車事故で申しますれば加害者の負担になるかどうかという点につきましては、まず、これは現行法のもとにおきましては、いわゆる訴訟費用として請求するわけにはいかないのでございますが、そうなりますと、これは一つの損害賠償の因果関係の範囲内にある損害かどうかということできまるわけでございます。したがいまして、弁護士を使って初めて不法行為としての損害が賠償されるという点が立証されたならば原告の請求を立てることができるという法律関係になっておりまして、現実にもそういう裁判がなされております。
  68. 横山利秋

    横山委員 私が被害者である。そして交通事故でたいへんな被害を受けた。そしてその賠償を請求して裁判を起こした。本来、裁判費用も私が負担すべきでない。これにかかった費用は全部敗訴した加害者が負担すべきであるのが当然であると、一般的には考えるわけです。裁判の最近の傾向も、敗訴者が負担すべきであるという判例も出ておるようでありますが、なぜ一般論として敗訴者が負担をできないのか、もう一度ひとつ。……
  69. 菅野啓蔵

    ○菅野最高裁判所長官代理者 交通事故よにる被害の損害賠償ということは、法律で申しますと、不法行為でございます。ところが、それに伴って必要な弁護士費用というものは、不法行為ではなくして、むしろ債務不履行による損害賠償じゃないかという学説上の趨勢が、従前は非常に強かった。そうしますと、金銭債務でございます。不法行為による損害賠償の請求というものは、金銭の請求であります。その請求に金を払ってくれないために起きた損害というものは――金を払ってくれないから弁護士をつけるわけです、訴訟を起こすわけです、そのための損害というものは、不法行為としてとらえるかあるいは債務不履行としてとらえるかということの民法上の論争が実はあったわけです。そういたしましてもし債務不履行による損害賠償でなければ請求できないということになりますと、民法で金銭の債務不履行による損害賠償というものは法定の利息というものしか請求できないのではなかろうかという説が、以前はむしろ強かった。判例も、従前はそういう学説に影響といいますか、そういう学説を考慮いたしたのでございましょう、不法行為による損害賠償を請求するについての弁護士費用というものは、むしろ債務不履行による損害賠償であって、法定利息以上に請求することはむずかしいのではないかという考えから、弁護士費用を不法行為による損害賠償の請求として認めなかった判例もございますし、そういう学説もあった関係上、訴訟における請求自体、弁護士費用を不法行為による損害賠償の請求として認められた事案というものが、比較的少なかったわけでございます。しかしながら、そうかたく解しなくてもいいのではなかろうか、やはり弁護士費用というものも不法行為の因果関係の中で考えられる問題ではなかろうかというふうに考え判例がふえてまいりまして、現在のところ、先ほど横山委員からお話がございましたように、判例としては、弁護士費用を不法行為による損害賠償として請求してきた場合にこれを認めるという判決が、比較的――比較的と申しますよりも、圧倒的に多くなったという現状でございます。
  70. 横山利秋

    横山委員 終わります。
  71. 永田亮一

    永田委員長 これにて本案に対する質疑は終了しました。     ―――――――――――――
  72. 永田亮一

    永田委員長 本案に対し、大竹太郎君外八名から、自由民主党、日本社会党、民主社会党、公明党四派共同提出にかかる修正案が提出されております。  まず、修正案について提出者に趣旨の説明を求めます。大竹太郎君。
  73. 大竹太郎

    ○大竹委員 私は、自由民主党、日本社会党、民主社会党、公明党四派共同提出にかかる訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案に対する修正案について、趣旨の説明をいたします。  まず、修正案文を朗読いたします。    訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律    案に対する修正案   訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案  の一部を次のように修正する。   附則第一項を次のように改める。  1 この法律は、公布の日から起算して七日を   経過した日から施行する。  ただいまの修正案につきまして、その提案の趣旨を御説明申し上げます。   「公布の日から起算して七日を経過した日」に改めることについてでありますが、御承知のように、今回の改正は、証人、鑑定人等の日当を増加しようとするものであります。民事訴訟におきましては敗訴者が負担し、刑事訴訟におきましては被告人が負担することが原則となっております。これはそれぞれに義務を課するものでありますので、その施行について七日の経過期間を置くことが妥当であると考えたからであります。終わります。
  74. 永田亮一

    永田委員長 これにて修正案の趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  75. 永田亮一

    永田委員長 これより修正案及び原案を一括して討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  まず、訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案に対する修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  76. 永田亮一

    永田委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  77. 永田亮一

    永田委員長 起立総員。よって、本案は修正案のとおり修正議決いたしました。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――   〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  79. 永田亮一

    永田委員長 次に、内閣提出、旧執達吏規則に基づく恩給年額改定に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、これを許します。山田太郎君。
  80. 山田太郎

    ○山田(太)委員 このたびの旧執達吏規則に基づく恩給年額改定に関する法律の一部を改正する法律案と、非常に長い法律案でございますが、まず執行官汚職のことについてお聞きする前に、この提案理由説明、あるいは法務省提出の法律案参考資料を読みましても、その道の専門的な人でさえこれは不親切な態度であると言うのを聞いておりますが、私自身しろうとでありますから、なおさらわからないわけです。この法律案の内容を具体的に、すなわち増額の実態はどのようなものであるか。あるいは自動的に増額するというふうに見えるのですが、それはどのようなふうに自動的に増額するのであるか。またもう一つは、なぜ一般公務員の恩給の増額につれてこの執達吏の恩給も増額しなければならないのか。この三点をまずお伺いしたいと思います。
  81. 川島一郎

    ○川島説明員 今回この法律案を立案いたしました趣旨から、まず申し上げたいと存じます。  御承知のように、一般公務員の恩給は、これまで数回にわたって改定が行なわれております。それは主として物価の変動などに伴いまして、ちょうど一般公務員の給与をベースアップするのと同じように、恩給につきましても恩給受給者のために恩給年額のベースアップをする必要があるという理由によるものでございます。そして一般公務員の恩給のベースアップが行なわれました場合には、これに伴いまして旧執達吏規則に基づく恩給、つまり執行吏を退職した者が受けております恩給につきましても、同じ割合でベースアップを従来行なってまいったわけでございます。ただ、そのベースアップの方法といたしまして、従来は具体的な金額を記載いたしまして、旧執達吏の恩給についてはいままで何円を基準として計算していたが、今後は何円を基準として計算することに改める、こういう方式をとってきたわけであります。ところが、一般公務員の恩給につきましては、過去何回もベースアップが行なわれておりますように、今後におきましてもさらに何回もベースアップが行なわれることが予想されますので、これに伴って執行吏の退職者の恩給につきましても、今後何回も同じような改正を行なわなければならない、こういうことになるわけでございます。ところが、旧執達吏の恩給制度というのは、昭和四十一年に旧執達吏規則が廃止されまして、そのときまでの退職者に限って支給されるということになっているのでございます。現在その恩給の支給を受けております者は、全国で六十一名にすぎないわけでございます。そこで一般公務員の恩給改定が行なわれた場合に、そのつど執行吏の恩給について別の法律措置を講ずるということは、あまりにも事務的に煩瑣な感じがいたしますので、今回の改正におきましては、今後一般の公務員のベースアップが行なわれた場合には、特別な立法措置を要しないで執行吏の恩給についてもこれに準じたベースアップが行なわれるという一般的な措置を講じようとするものでございます。  次に、この法案の内容について御説明申し上げますが、お説のとおり、非常にわかりにくい条文でございます。そもそも恩給法というものが非常にわかりにくくできておりまして、一般公務員の恩給改定のほうの法律は、実はこれ以上に複雑な規定になっておるわけでございます。そういった非常に技術的なむずかしさがございますので、その点は一応御了承を願いたいと存ずる次第でございます。  その内容でございますが、これは要するに一般公務員の恩給改定が行なわれた場合には、これにスライドして執行吏の恩給改定もされるということを規定したものでございます。ただ、一般公務員の恩給と申しましても、恩給は俸給年額基準として計算することになっておりまして、その俸給年額は人によってそれぞれ違うわけでございます。つまり恩給の計算のもととなっております俸給年額というものが、幾段階にも分かれているわけでございます。そこで一般公務員の恩給のうちで、執行吏の恩給の基礎となっている俸給年額と同じ俸給年額で計算されるもの、つまり俸給年額が執行吏の場合と同額である一般公務員の恩給改定された場合には、これにスライドして執行吏の恩給額も改定される、要するにこういうことを規定いたしておるわけでございます。
  82. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そこまでのことはわかるのですが、この増額の実態を説明していただきたい。どのようにスライドしていくのか、その金額、それを教えていただきたいと、こう申し上げたわけです。
  83. 川島一郎

    ○川島説明員 その点は申し落としましてたいへん失礼いたしました。ただ、今回の改定は、内容としてはスライドするということをきめたにすぎないわけであります。そこで、一般の公務員の恩給について増額が行なわれれば、それに従って、その機会にこの規定が発動するということになるわけでございまして、一般公務員の恩給の増額につきましては、御承知のようにことしの十月から改定を行なうことにいたしまして、目下そのための恩給法等の一部を改正する法律案が今国会に提出されて、別途御審議を受けているわけでございます。そこで、その法律案が通りまして、予定どおり本年の十月から一般公務員の恩給改定が行なわれた場合に、その規定によって執行吏の恩給がどのように改定されるかということを申し上げますと、現在ではこの旧執達吏規則に基づく恩給年額改定に関する法律の第一項に――これは参考資料の六ページに規定がございますが、この第一項に規定してございますように、現在の執行吏の恩給は、六十五歳以上七十歳未満の者については十八万四千四百円を俸給年額とみなして算出する、それから七十歳以上の者につきましては十九万七千五百円を俸給年額とみなして算出する、このようになっておりますが、改正後は、この六十五歳以上七十歳未満の者につきましては十九万七千五百円を俸給年額とみなして算出する、それから七十歳以上の者につきましては二十万七千五百円を俸給年額とみなして算出する、こういうことになるわけでございます。  そこで、それでは実際にそのようにして算出した結果、この執行吏の恩給を受ける者はどの程度恩給年額の増額が得られるかということを御参考までに申し上げますと、これは勤務年数その他によって違うわけでございますが、一番恩給を受ける最短の勤務年限である十七年勤務したという場合を例にとって申し上げますと、六十五歳以上七十歳未満の者につきましては、現在六万一千四百六十七円の恩給を一年に受けておった。それが六万五千八百三十三円、約四千五百円程度の増額になるわけでございます。それから七十歳以上の者につきましては、現在六万五千八百三十三円受けておりましたのが、改正後は六万九千三百六十七円受けられることになりまして、およそ四千五百円程度の増額になるわけでございます。
  84. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そうしますと、一々恩給の増額に際して議会に法案を提出する、その煩瑣を省こうというわけですか。
  85. 川島一郎

    ○川島説明員 仰せのとおりでございます。
  86. 山田太郎

    ○山田(太)委員 それはまずさておいて、もう一つお聞きしたいことは、執行官に対しての国庫補助基準額、これは二通りあるというのを聞いておるのですが、この基準の算定はどのようにしてなされておりますか。
  87. 川島一郎

    ○川島説明員 仰せのように、現在の執行官に対する国庫補助基準額は二本立てになっておりまして、執行官法による成規の資格を得たものが執行官に任命された場合には、高いほうの基準でいく、それから従来執行吏をいたしておりました者が経過措置によって執行官に任命されたというような場合におきましては、低いほうの基準でいくということになっております。そこでその基準額でございますが、高いほうの基準は、七十万三千円でございます。これは大体一般職の職員の行政職(一)の四等級七号俸を基準にして、その月額できめられておりますが、それを十二倍して年額に改めたものと同額でございます。それから低いほうの基準は三十一万二千円でございまして、これは同じ行政職(一)の七等級一号俸に若干のプラスアルファを加えたものを基準にして定められておるものでございます。
  88. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そこで執行官の汚職の問題に移りたいと思いますが、先日の同じ当委員会において、寺田総務局長の御答弁には、執行官法で施行されてから後執行官の不正事件がある程度改まってきたような、そういう御答弁があったわけですが、それから間もなく、また東京地裁において、朝日新聞あるいは毎日新聞あるいは読売新聞と、非常に大きく報道されるような、そういう執行官汚職が出てきております。この新聞の記事の一部を読みますと、このようにあります。「東京地裁執行官の強制執行をめぐる贈収賄事件は、公明正大なはずの裁判所事件だけに、さまざまな波紋を投げかけている。警視庁組織暴力犯罪取締本部の調べによると、贈、収賄側とも多数が浮かんでおり、事件は広がる見通しとなった。問題は執行官制度で「執達吏」と呼ばれていたが、競売ブローカーや立会人との不正が多かったため、公務員としての性格を明確にし、これら不正の防止を目的に四十一年六月の国会で「執行官法」が成立「執行官」に生まれかわった。しかし今度の事件で不正が重ねられていたことがはっきりしたわけで、競売のあり方や執行官制度の欠陥が問題となっている。」このように主題にまず書いてありますが、この事件の経過とそれから内容を簡単に説明していただきたいと思います。
  89. 菅野啓蔵

    ○菅野最高裁判所長官代理者 前回の当法務委員会に、私やむを得ない事情がございまして出席できませんために、寺田総務局長が参りまして、執行官汚職の点について答弁を申し上げた、その直後に事件が起きたではないかという御指摘の事件は、東京地裁の寺田浩という執行官についての被疑事実のことであろうと思うのでございます。この事実はただいま、三月二十二日に逮捕されまして、引き続き勾留中で捜査が続けられておるようでございまして、その詳しい、もし被疑事実があるとすれば、そういう事実が今後の捜査の進行によってもっとはっきりしてくるのではないかと思いますが、ただいままでにどういう被疑事実で逮捕されたかということにつきまして、私どもが聞いておりますところによりますと、強制執行について特別の便宜な扱いをしたということで相当額の現金――この相当額ということで、その金額までが逮捕の段階でははっきりしていないようでございます。そういうことで、要するに収賄の嫌疑で逮捕せられ、勾留中であるということでございます。  それから執行官法施行後その執行官の犯罪、不正事実というものが変わってきたということを寺田局長が答弁しておるのを速記録で私も読んだわけでございますが、この言っておられる趣旨は、こういう趣旨であろうと思います。元来、執行官法施行前の執行官に関する不正事件というものは、大体二種類ございます。それは横領関係とそれからいわゆる汚職関係――詐欺等もございますけれども、主として横領と収賄のいわゆる汚職事件でございます。横領事件と申しますのは、執行官が手数料の予納を受けあるいは競売代金を保管中にこれを横領するという事件が非常に多かった。執行官法施行後は数件の不正事件が起きておりますけれども、この中で横領事件というのは一つ浦和にございましたけれども、しかし、これは形の上でいえば横領になるような、ならないような事件であったものございまするから、これは起訴猶予になりました。ほかの目下裁判が進行中である、あるいは起訴されたという事件は、すべて収賄の事件です。したがいまして、執行官法施行後は横領の事件が現在のところまだないということが言えるということでございますが、これはなぜかという点は、やはりこの制度の改正ということが響いてきておる。制度改正の最重点は、不正をなくすということであったわけでございます。その不正の原因である金銭の保管、手数料の予納金の保管であるとか、競売代金等の保管金の管理であるとか、そういう面が執行官だけの、執行吏役場だけの手で制度改正前はやられておったものでございまするから、そこにどうも金銭の扱いには不明朗な点がある、これはぜひ他の官庁がすべてやっておるような、いわゆる会計法規に乗ったような制度に近いものにしていかなければその点は明朗にならないという点で、執行官の金銭の扱いというものはこれをやめて、すべて裁判所の会計のほうでこれを取り扱うという方法で――もちろんこれは裁判所のほうの受け入れ態勢、それに要する人員というものは必要でございますから、一挙にはできないけれども、年次計画でだんだんそういう体制に移していくということにいたしまして、施行の年から漸次可能な裁判所につきまして会計の事務を執行吏役場から裁判所のほうに取り入れるということにいたしてまいったわけでございます。そうして現在までにすでに全国の四十九の地方裁判所のうち十の地方裁判所において、会計事務を裁判所に取り入れるということを施行したわけであります。さらに、もし今年度におきまして、ただいま御審議を願っております増員要求というものが認められますれば、昨年度行ないました程度裁判所への会計事務の取り入れということが、実施できることになるわけでございます。そういたしますと、四十九のうち約二十の裁判所は、そういう体制になる、執行官が金銭を取り扱わないという体制になりますので、これを推し進めてまいりますれば、絶滅するということは申し上げられないかもしれませんけれども、執行官役場で金銭を取り扱っておって、そのために生じた不祥事件というものはこれを防止することができるという体制になったわけであります。その現のあらわれが、執行官法施行後の不正事件というものについて、横領事件は非常に減った。不幸にして汚職事件はございましたけれども、そういうことで、犯罪の、不正の体型が変わったということを申したのは、そういう意味であったのでございます。
  90. 山田太郎

    ○山田(太)委員 局長の御答弁は、横領事件が減ったということを主題にしてお話があったように思いますが、収賄事件のほうは、去年を見ても、あるいはことしを見ても、減ってないように思いますが、その点はどうですか。
  91. 菅野啓蔵

    ○菅野最高裁判所長官代理者 これは御指摘のとおり、収賄関係につきましては、執行官法施行前と施行後とにおきまして格段の差があるとは、現状におきましては遺憾ながら認められないのでございます。そういう点も執行官法の一つのねらいであった、そういうものをなくすということがねらいであったわけでございます。それにもかかわらず、こういう事件が起きたということにつきましては、私ども非常に遺憾に思っておりますとともに、責任を痛感いたしておる次第でございます。  これの対策といたしましては、やはり二つのことがあろうかと考えます。  一つは、根本的には執行官にその人を得るということであります。そういう不正を起こすような人物が執行官としてとどまっているということは好ましくない、そういう人でない人を執行官として迎えたい、迎え得る体制にしていかなければならないということが、根本であろうと思っております。  同時に、やはり監督の体制というものが必要であるということは申し上げるまでもないと思います。実は監督の体制といたしまして最も決定的な方法ということになりますと、やはり上司がおって常に命令をしておるという体制、これが徹底されれば、完全な公務員制度――上司をピラミッドとした、いわば執行局長があり、課長がありという体制であろうかと思います。これは執行官法制定の際、それ以前から、完全な俸給制の執行官制度というようなものをとるべきではないかということが申されておったわけでございますが、それがやはり手数料制を残す、そうして公務員ではあるが、そういう意味で非常に違った形の執行官として生まれたということは、一つには、完全な公務員にした場合においてはたしてそれが――なるほど理屈の上では形は整います。しかし、実際に人を得られるかどうかという点に問題がありまして、やはり現状においては手数料制の執行官というものでやっていくよりしかたがないという私どもの立場もありましたし、国会の段階の御審議でいろいろ御議論はいただきましたけれども、結局しかたがなかろうということであの執行官法が制定されたような経過でございます。しかしながら、監督の面において、従前の監督体制と全く同じかということになりますと、執行官法はその点におきましても、制度といたしまして一つの前進はしたわけでございます。と申しますのは、従来は執行官の監督体制といたしましては、いわゆる査察官、そしてそれを補助する者、そうして原則として、ただ年に何回かの査察を行なうというにすぎない制度であったわけであります。執行官法が制定せられまして、さらに執行官規則というようなものができまして、従来の査察官が監督官となり、従来の補助者が監督補佐官となりまして、そうして監督の方法として、査察はもちろんやりますけれども、そのほかに、そういう監督官と補佐官という制度ができましたために、常時監督し得るという体制にはなったわけでございます。しかしながら、これはあくまでも監督官という立場におきましてのよそから監察する、いわゆるほかの省にもありますような監察官的な制度でございますので、そこにはやはり徹底しない面があるとおっしゃられれば、そういう面がないわけではないのでございます。これは重ねて申し上げるようになりますけれども、公務員としての監督体制ということになりますれば、執行局長、課長というものがあって監督しておる体制というものが、ほんとうの完全な公務員、官庁における監督体制というものであろうかと思います。執行官につきましては一歩前進したとはいうものの、やはり外からの監督官による監督というにすぎない現状であるということは、申し上げなければならないかと思います。
  92. 山田太郎

    ○山田(太)委員 長い御答弁をいただいたわけですが、結局は執行官法を施行しても、収賄事件は減るどころか、かえってふえた状況である。同時に、この事件の発覚が私の調べた範囲内によると、債権者あるいは債務者の当事者の投書だとか告訴、告発等によるように聞いております。決して監察制度が整備されたのではない、監察制度が整備されたために、それが事件として成立したのではないという調査の結果も出ております。いまのその点はまず局長が認められたこととして、執行官法が施行されたために収賄事件が決して減ったのではないということは認められるわけですね。
  93. 菅野啓蔵

    ○菅野最高裁判所長官代理者 現象として減ったということは申し上げかねると思います。しかしながら、減らし得る体制には近づいたということは、申し上げなければならないと思うわけでございます。不完全ではあるけれども、監察制度としては一段と強化されたということは、申し上げられると思います。
  94. 山田太郎

    ○山田(太)委員 それは局長のことばの上だけのことでございまして、実情はそうではないということが、この新聞の報道にも出ておるわけです。これはその次を読むとともに、私が調査してきた面もあわせて知っておいてもらいたいと思う。「東京地裁執行官室は最高裁裏の近代的なビルの谷間の木造老朽庁舎。こくで毎週月、水、金の三日、差押え不動産の競売が行なわれる。この競売に参加するのが、さきに一億数千万円の詐欺、恐かつ容疑で警視庁組織暴力犯罪取締本部に逮捕された高橋仙吉(五四)ら競売ブローカーである。これとは別に競売場近くにたむろして、債権者やその代理人の弁護士から声がかかるのを待っている集団が“立会人”または“立会ゴロ”“事件屋”と呼ばれる。」このように報ぜられております。実際に、私も調査してみまして、そのはなはだしいのに驚いた一人でございます。おそらく民事局長はその点を御承知ないのかもしれぬ、あるいは知っておって知らないふうをなさっておるのかもしれない。その点はいざ知らず、実情は執行官とそれから不動産屋あるいは道具屋、これがなれ合いになってしまっております。あるいは立ち会い人、これも、立ち会い人という名前はいい呼び名にはなりましたけれども、先ほど新聞にありましたように、「“立会ゴロ”“事件屋”と呼ばれる。」というておりますように、これもなれ合いになっております。  具体的な事件を申し上げますと、ただの一例でございますが、このような状況になっております。ある執行官役場でございますが、公告はただ掲示板に張るだけであって、それはそれで規則でいいのでしょう。しかし、その競売の時間、そのようなものはただ八時以降となっておりまして、いつ競売するのやらそれはてんで明示されていない。そのようなことがあっていいものでしょうか、その点具体的な問題ですから、お尋ねしておきます。
  95. 菅野啓蔵

    ○菅野最高裁判所長官代理者 いろいろ問題の御指摘にあずかったわけでございますが、監督の体制につきまして、もう一言ふえんさせていただきたいと思います。監督の体制としては、監察制度としては一歩前進したけれども、いわゆる官庁的な監督体制はとられていない。それは執行官というものが完全な俸給制の執行官制度がとられなかったためであるということは申し上げましたが、実はこの監督につきましては、正直なところ、監察という制度では、ないよりかあるにまさるといっては少し過言かもしれませんけれども、十分な効果を期待することは無理なのでございます。実質的な執行官の監督というものは、やはり具体的な事件を通じて執行官がどういうことをしておるかということの実態をつかんでいかなければ、ほんとうの監督はできないわけでございます。ただ査察に参りまして帳簿を見るということでは、ほんとうの監督の実はあげられないというふうに私ども見ているわけでございます。官吏制度をとらないでいてそういう実をあげる方法ということはどういうことかといいますと、実は先ほども申しました会計事務の取り入れということでございます。これは実情といたしましては、執行官が会計にいろいろな手数料の請求に来たりそれを支払ったりという形で出てくるわけでございまするけれども、その請求をするのに対して、どういう事件の流れでこういう手数料を支払う関係になるかどうかということは、先ほども申しましたように、監督補佐官がその場でチェックできる関係になってきたわけでございます。そういう面から、実は私ども事件を通じての執行官の実際上の実質的な業務の監査ということを考えておりまして、執行官法施行のための予算の最重点といたしましても、執行官の会計を扱う会計職員の増員ということに実は最重点を置いているわけでございます。それからなおこまかい点につきましても、中途はんぱな改革であるがゆえに、こまかいところから気をつけてやっていかなければならないということで、執務環境の明朗化、これは従来は執行吏役場でありましたために、裁判所の構内に必ずしもないというような状況にあったものを、現在ではほんの四カ所でございますが、これが予算関係でまだ裁判所外にございますけれども、そのほかは全部裁判所の庁内に取り入れて、そういう意味で非常に監督ができる体制になった。それからこの執行宮室自身も、庁舎が……。
  96. 山田太郎

    ○山田(太)委員 聞いたことに答えてください。
  97. 菅野啓蔵

    ○菅野最高裁判所長官代理者 そういうわけで、監督の体制というものも、不十分な分は不十分ながら、いろいろの手を打っているということを申し上げたかったわけでございます。  なお、この競売の現場をおまえ知っておるかというお尋ねがあったと思いますが、私どももそうたびたび参るわけにもまいりません。時間の余裕等の関係で、ないわけでございますが、これは何回か行って見ているわけでございます。ただ、私どもが参りますということ等で、多少ふだんと様子が違うというようなことがあるいはあるのかもしれません。しかし、仰せのように、私ども参りました際にも、いわゆるブローカーであるとか、道具屋であるとかいうふうていに児受けられる人がたむろしておるという現状は、私も見ておるわけでございます。これが必ずしも執行官あるいは競売場というものを明朗な状態に置いていないということも、私ども存じております。ただ、それではなぜこのいわゆるブローカーであるとか、立ち会い屋であるとか、道具屋であるとかいうようなものが完全に排除できないのかということにつきましては、これは非常に複雑なむずかしい問題でございまして、一々お話を申し上げると長くなるわけでございますが、たとえばこの道具屋の例をとってみますと、なぜ道具屋というような種類の人たちが競売場のまわりにおって、それを裁判所が必ずしも排除しないかという御不審の点があろうかと思います。その点につきまして申し上げますと、元来、この動産の競売ということになりますと、本来の法律考えているところでは、その動産を競売いたしまして、その競落代金で債務の弁済に充てるという仕組みになっているわけでございます。ところが、現在の差し押えを受け、競売に出される道具というものは、大部分いわゆる家財道具のがらくたな品物でございます。これが普通の市場に出して売れるという品物でないわけでございます。売れないものを債権者がなぜ押えるのかということになりますと、これはがらくたであっても、実は債務者にとりましては非常に重要なものであります。したがいまして、債権者としては、むしろこれを売るということよりも、押えることによって、もしかしたら競落されるかもしれないという、債務者に心理的な圧迫を加えることによって間接強制をするというようなことが、実際の動産の競売の実態でございます。そこで、それでは買う者がなければだれが買うのだということになりますと、債務者は、自分の使っていたものでありますから、自分にとって価値があるから買いたいということでございまするが、これは、債務者自身が自分の押えられているものを買うということは、法律上できないことになっております。そこで道具屋というような人が中に入って、そうしてこれを、まあ債権者の側からいえば非常に高く買ってくれるということが債務の弁済の面から見れば有利なわけでございますが、債務者とすればこれから買い戻すということを考えるわけでございますから、むしろ道具屋の手を通じて自分のほうに安く買い戻してもらうということを考えるわけでございます。そういう非常に複雑な関係がございまして、そういうような関係で、道具屋というものがもしいなかったならば、いまの制度では動産の競売に関する限り買う人もなければ、ということで、差し押えというものも実際上は効力がないという現状にあるがために、道具屋というようなものもにわかには排除ができないという状況にあるわけでございます。
  98. 山田太郎

    ○山田(太)委員 私が先ほどお伺いしたのは、るる御答弁がありましたが、具体的なことをお伺いしたわけですね。まず競売公告、これはほんとうの競売でなければならないけれども、実際には午前八時以降という時間が書いてあるだけであって、そうして執行官がいつ行くのやら、時間は事務員に聞いてもわからない、そういう状況である。ということは、実際においての競売が行なわれてないということです。こういうことがいいことか悪いことか、これでいいのかどうかということを聞いた点と、あわせてついでにお伺いしておきます。これは丸谷茂男さんという人ですが、これはある地裁でございます。債務は約五十万円。そして家財道具を競売されて、三万円で競落した。ところが、この買い戻しが十万円。そのときに競落人よりゆすられております、本人の申し立てによると。わずか一時間もかからない間に、三万円で競落したのが十万円で買い戻されておる。このときの立ち会い人は、事実上は立ち会い人兼道具屋になっております。このような例は多々あるわけです。先ほどの局長の御答弁によりますと、この道具屋というものはしようがないというふうに聞いておるわけですけれども、善意の国民の立場から、しかも法について無知なるがゆえに、その善意の国民が、執行官と、それから立ち会い人と道具屋――これは事実、立ち会い人兼道具屋がおります。このようなことが許されていいものかどうか。弱い者は絶えず泣いておるのです。中には悪質の債務者もないとはいえません。名義をその前に変えたりして債権からのがれようという悪質者もおるでしょう。しかし、多くの善意の、しかも無知の国民が――しかもこの立ち会い人には高利貸しがおります。町の金融機関の支配人か番頭さんか知りませんが、それが立ち会い人になったりしておる、こういうことが許されていいものですかどうですか。局長から、具体的に、簡明でいいですから、答弁していただきたい。
  99. 菅野啓蔵

    ○菅野最高裁判所長官代理者 最初に、競売の時間の公告の点でございますが、これは動産の場合か不動産の場合かによって違うと思います。動産の場合ですと、大体債務者がおりますので、差し押え後その現場に行って品物を競売するということになっております。その時間は何時何分ということがはっきり予告できれば最もいいわけでございまするし、また本来はそうすべきものであろうと思います。ただ、数件の事件を一日のうちに処理しなければならない執行官といたしましては、一カ所でどのくらいの時間を要するかということにつきまして的確な予想を立てがたいという事情もございまして、そういう指定のしかたをしているのだろうと思いますけれども、これはある程度やむを得ないといたしましても、八時以降というようなはなはだあいまいなことでは、その指定のしかたとしてはよろしくないというふうに思います。はっきり何時何分ということは言えないにしても、少なくとも八時あるいは十時、午後なら一時、三時というくらいに分けた指定のしかたをすべきであろうと思います。それから不動産の場合でございますと、実は競売の呼び上げがございましてから一定の時間がたたなければ、競落ということが法律上不可能でございます。一定の時間に呼び上げをして、その間に、いろいろその品物を落とそうとする人は記録等を見まして考えをきめた上、いよいよ競落をすべき時間になったというときには、そこに競落をすべき人が集まってまいりまして、そして執行官がもちろん立ち会っておりまして、そこで競落をするということになるわけでございます。その時間的な執行の関係は、動産、不動産で少し様子が違ってまいるということが出てまいると思います。  それから具体な事件仰せられたのでございますが、三万円で道具屋が競落して十万円で売り戻したというようなことがもしあったといたしますれば、それは、見ますと、はなはだ道具屋というものはもうけ過ぎだ、そして債務者はひどい目に会っているじゃないかという見方もできるかと思います。道具屋というものがあるにしても、そういう利幅というものが激し過ぎるという感じはいたしますが、やはり競売上におきましても経済原則というものが働く場面でございまして、債務者といたしましては、十万円の金を持っていれば、元来それは債権者に支払ってもいい金であったわけでございます。これを支払わないでおいて競売にかけても、そして十万円で買い戻しても、そのほうが一部弁済という形で終わるよりも有利であるということを考えて、あえて一部弁済をしない。と申しますのは、一部弁済をしましても、残額債務があればやはり差し押えられるわけでございます。ですから、本来、ほんとうに正直な債務者ならば、金はこれだけしかないのだ、これは払います、あとは差し押えてくれ、こういくのが債務者としては最も公明な債務者であろう、正直な債務者であろうと思います。しかし、そうは申しましても、やはり人間のことでありますから、いろいろの経済関係の取引ということがこの社会で行なわれるわけでございます。実は十万円の金を持っているのだけれども、しかしこれは債権者には払わないでおいて、しかし道具屋にはもうけさせる結果になるかもしれないけれども、やはりそのほうが得だという経済観念から、そういう事象もあるいは出てくるかとも思います。
  100. 山田太郎

    ○山田(太)委員 局長はこのような大衆の実態を御存じないから、そういうことをおっしゃるんだと思う。私は一時間と申しましたが、一時間もたたない間に――この一時間の間にどのようにかけずり回って血のような汗を流して集めてきたか、ただ単に十万円持っておって、それを払わなかったからというんじゃない。これは血のような苦労をし、汗水流して一時間かけずり回っておる。私が言わんとするのは、困らされるのは絶えず弱い立場の人で、しかも善意の国民が困らされておることが多いということの一例にあげた。それはどのようなのに困らされておるかというと、執行官とそれから立ち会い人とそのような道具屋、ほかにも例がありますよ。家の明け渡しの例も、これもちゃんと名前も経過も調べてきてあります。時間がないからそこまで言わぬだけですが、その立ち会い人、道具屋、執行官、このなれ合いによって泣かされておる。そうして立ち会い人あるいは道具屋というものが、不当な利益を占めていっている。このような実情局長は知って、その答弁をなさったのであるか。このようなことはよくない。たとえばいまの公告の問題にしてもよくない。それに対しては、じゃどのようにするのか、あるいはこのような悪質の道具屋あるいは悪質の立ち合い人、これを防ぐのにはどのようにしようとするのか、この答弁を願いたい。
  101. 菅野啓蔵

    ○菅野最高裁判所長官代理者 この競売時間の公告の点でございますが、時間の点につきましては、先ほど申し上げましたような時間の指定のしかたということはよろしくないのでございまして、これはそういうことは改めさせるように指導いたしたいと思います。  それから債務者をいじめているものが執行官であるという見解につきましては、いじめているように見えるのではないかというふうに私どもは思うわけであります。執行官といいましても、債務名義がない執行というものはできるはずはないので、元来債務名義がある以上、法律的には冷酷に見えても、執行官はこれを実行するというのがその職務でございます。先ほどの事件につきまして、少しへ理屈のようになって申しわけないようにも思いますけれども、金を持っていれば、先ほども申したようなことが私は本来の姿であろう。金を持ってなくて、たとえ金銭をくめんしたといたしましても、債務者としてもその金銭をくめんしてこれを債権者に支払うというのが、債務の内容いかんにもよりましょうけれども、しかし本来はそういうものであろうかと思うのでございます。むしろ道具屋とかそういう者が働く余地があるというのは、債務者の立場というものもある程度ございまして、そういうものが仲介をしていわばそこに経済的な取引がなされておるというふうに見ているわけでございます。ただ、その経済的取引ということになりますれば、そこにやはり経済的な取引としてのいわゆる、まあ俗なことばで申しますればコマーシャルベースというものがあるだろうと思う。それが三万円が十万円というふうにすぐなってしまうということは、いささか正当な取引ではなかろうというふうには思いますけれども、時間的に一時間ということでありましても、それは必ずやその前にいろいろの話し合いがあって、そこでその結果、三万円で落としたのが十万円で売れたというような結果になっておるのだろうと思います。その差は、私もどうかと思います。そこが多少の差額であれば、先ほどありましたような実態から見て、やはり経済的な取引であるというふうに思います。
  102. 山田太郎

    ○山田(太)委員 局長のことばはきれいなように聞こえますが、やはり実態というものがまだのみ込めてないのじゃないかと思う。全部の執行官というわけじゃありませんよ。しかし、私が見たのは、十件は執行官と一緒に行っております、ずっと始めから終わりまで。そうして競落した金額と買い戻しの費用と――全部はわかりませんでしたけれども。そのようななれ合いになっておる。この一件もまのあたりに見ております。そこにあるものを見通していくのが、局長の立場じゃないかと思う。どう言い抜けようとも、実際においてそのようなことが絶えず行なわれているということは事実なんです。また、不当な利益がむさぼられておるということも事実なんです。これはやはり、何といってもいまの競売法にしたところで、あるいは執行官法にしたところで、そこに非常な不備な点があるということは認められますか。
  103. 菅野啓蔵

    ○菅野最高裁判所長官代理者 本日ただいまの競売法のもとで、先ほど私が申し上げたようなことが行なわれておる、これはある程度法の不備であるということは認めます。したがいまして、手続法というものの改正ということが必要である。そうしてそれによって競売の本来の姿――先ほど申しましたように、売れた代金で債権に充当していくという姿、本来の姿が出てくるような手続法が生まれることが望ましいわけであります。これは執行官制度の改正の面と同時に、手続法の改正ということもやらなければ、競売制度というものはほんとうの姿に戻ってこないということでございまして、この点につきましては、法務省のほうにおかれましても、執行官法の改正に伴いまして、それに引き続きまして法制審議会で検討中というふうに承っているわけでございます。
  104. 山田太郎

    ○山田(太)委員 その件について、司法法制調査部長の御意見を承りたいと思います。
  105. 川島一郎

    ○川島説明員 執行官法を成立させていただきました後に、なおかつ執行官の不祥事件が起こるということは、はなはだ遺憾に存じております。これは御承知のように、昭和四十一年暮れに発効した法律でございまして、まだ新制度というものが軌道に乗りかかっているところでございます。現に、現在の執行官の大部分は、昔の執行吏であった者が経過的に執行官に任命されている、そういう状態でございますし、それから裁判所の監督体制も、新制度に応じて進歩しつつあるわけでございます。
  106. 山田太郎

    ○山田(太)委員 いま私が聞いたのは、菅野局長の言われた意見を、あなたはどう思うか。執行官制度も改正しなければいけない、競売法あるいは手続法も改正しなければいけない、それについてどう考えるかとということを簡単に……。
  107. 川島一郎

    ○川島説明員 執行官法の改正をしたほうがいいかどうかの点につきましては、なお検討する必要はあると思いますが、現時点で直ちにどこをどういうふうに改正しなければならぬという結論は、出てこないと思います。  それから手続法につきましては、これは目下検討中でございます。法務省の法制審議会において、強制執行制度全般についての検討をいたしておりますので、その際、十分御指摘のような問題についても検討がされるものと考えております。
  108. 山田太郎

    ○山田(太)委員 御答弁が長いものですから時間がすぐたってしまいまして、根本の聞きたいこともまだだいぶ残っております。しかし、時間もだいぶ経過いたしておりますので、要点を一つ二つ最後にお聞きしておきたいと思いますが……。
  109. 菅野啓蔵

    ○菅野最高裁判所長官代理者 制度改正、手続法改正の点につきまして、制度改正の点につきましては、やはり法務省と同じ考えでございまして、執行官法が制定されたばかりでございますので、いま直ちにこれを改めることがいいかどうかということは、非常に問題だと思いますが、そのほうは執行官法の実施を完全を期するということを第一目標に置きまして、次の法律の改正ということになれば、手続法の改正ということをやっていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  110. 山田太郎

    ○山田(太)委員 では単刀直入に申し上げますが、執行官の俸給制度、これは昭和三十一年の法制審議会においても、将来俸給制に持っていくべきであるということが打ち出されておるように見ております。また、この執行官法の成立のときの附帯決議にも、このようにありますね。「直接固定俸給制の裁判所職員たる執行官において行う方向について検討を加え、早急にその実現方について鋭意努力すると同時に次の諸点について配慮すべきである。」この執行官法案に対する附帯決議、これにも固定俸給制に持っていくべきであるという附帯決議がついているように思います。これについて、当然この附帯決議を無視するわけにはいかないはずです。検討を加えられてしかるべきである。執行官の俸給制について、どのような検討を加えられておるか、それに対する答弁と、それからもう一つは、菅野局長の言われました執行官の人間的な資質の問題です。いかに制度を変えてみても、執行官の資質が悪ければ汚職はあとを断たないであろうという意味のことがあったと思います。この執行官の人間的な資質を整えるためには、どのような方策を検討しておるか。当然これは検討はなされていなければ、いつまでたったってこの汚職は根絶するわけにはいかない、これに対しての御答弁と、二つをお願いしておきます。
  111. 川島一郎

    ○川島説明員 俸給制の点につきまして、私からお答え申し上げます。  執行官を現在の手数料制から俸給制にするかどうかというのは、いままで何回も議論された非常に重要な問題でございまして、当委員会の御決議があることも承知しております。そこで私どもといたしましては、この点については十分検討するつもりでおりますが、現在のところ、執行官の実態を把握するのが先決である、それには仕事の状況などはいろいろ各地に係官が参りまして調査をいたしておるわけでございますが、さらに収入面の調査、これも必要だと思うわけでございます。収入面の調査につきましては、例の金銭保管の事務は裁判所で取り扱うように現在なりつつあるわけでございますが、この完備を待ちまして、裁判所法務省協力して調査をした上、さらに制度的な検討を加えていきたい、かように考えておりますので、まだそういった基礎的な調査を行なっている段階でございます。
  112. 菅野啓蔵

    ○菅野最高裁判所長官代理者 制度的な面につきましては法務省のほうから御答弁をお願いいたしましたが、この実際の任用の点にわたる、執行官の資質の点につきまして申し上げますと、この執行官法で任用資格というものを非常に高めたわけでございます。従来、官庁の制度で申しますと、七等級ということが任用資格になっておったわけでございますが、これを四等級ということに改めたわけでございまして、そのねらいは、まさにそういう資格の人でやっていくという、執行官の資質の向上ということをはかったわけでございます。ただ、現在は従来の執行官というものが相当残っておりますので、そういう点から全面的にいまの実態の執行官の素質が改善されたということは申せないのでございますけれども、新しく任命される執行官というものにつきましては、素質が変わってきております。今度不祥事件を起こしました者も、実は新しく任命された者からはおらないわけであります。
  113. 山田太郎

    ○山田(太)委員 では最後に、新しく任命された者の中にはいない、とは言っても、新しく任命されたのはわずか三十二名のように思います。前の執行吏から変わった人と、あるいは臨時職務代行者から変わった人と、それを除くと三十数名だと思います。やはり国民の多くが影響を受けるのは、あとのほとんどの九〇%の執行官に影響を受けているわけです。そういう面からいいましても、それをじんぜんと待つわけにはいかないわけです。その点への配慮は当然なければ、ここ十年や二十年は、とてもじゃないが、依然として汚職が続いていく執行官制度になっていく、数字は三十二名が少々変わったとしてもですよ。その点についても、当然俸給制に変えていくということによってある程度これが防いでいけるのではないかと私は考えるわけです。俸給制度にすべきである、また俸給制度にしたほうがいいのじゃないかということを考えるわけですが、その点についてもう一言だけ答弁を願います。
  114. 菅野啓蔵

    ○菅野最高裁判所長官代理者 新任用者の数の点でございますが、なるほど新資格で任用された者は三十一名でございますが、私が申し上げました新任用執行官の中には、執行官法の附則によりまして旧執達吏規則の任用資格で任用いたした者もございまして、総員で六十五名あるわけでございます。その中にはおらないということでございますが、しかし、これはまあたいした言いわけにもならないかと思います。御指摘のとおり、資質というものの改善に最善の努力を尽くさなければならないということは、私ども及ばずながら努力はいたしておるのでございますけれども、そう一挙にやるということは、人員、人という関係で、それから現にいまいる人ということを考えますときに、現実の問題として不可能に近いということを、正直に申しまして、申し上げなければならないと思います。  俸給制は、私どもの実は夢であります。しかし、それにいろいろの手を尽くしながら到達したいというのが、私どもの心境であります。
  115. 川島一郎

    ○川島説明員 私から一言だけ申し上げておきたいと存じます。俸給制に変えた場合に現在のような不詳事件がなくなるかどうかという点でございますが、それよりも資質の向上をはかるのが重要な問題であって、俸給制にしたからといって、非常に誘惑の多い仕事でございますので、それによって現在のような状態から直ちに脱皮できるかどうか、非常に疑問に思っております。
  116. 山田太郎

    ○山田(太)委員 任免についての問題とその他二、三を保留させていただいて、きょうはこれで一応質問は終えておきます。
  117. 永田亮一

    永田委員長 次回は、明五日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時十七分散会