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1968-03-26 第58回国会 衆議院 法務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月二十六日(火曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大竹 太郎君 理事 田中伊三次君    理事 高橋 英吉君 理事 濱野 清吾君    理事 猪俣 浩三君 理事 神近 市子君       鍛冶 良作君    瀬戸山三男君       田中 角榮君    千葉 三郎君       中馬 辰猪君    中村 梅吉君       馬場 元治君    板川 正吾君       後藤 俊男君    中谷 鉄也君       横山 利秋君    岡沢 完治君       山田 太郎君    松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 赤間 文三君         運 輸 大 臣 中曽根康弘君  出席政府委員         人事院事務総局         任用局長    岡田 勝二君         警察庁刑事局長 内海  倫君         警察庁交通局長 鈴木 光一君         法務政務次官  進藤 一馬君         法務省刑事局長 川井 英良君         厚生省医務局長 若松 栄一君         運輸省自動車局         長       鈴木 珊吉君  委員外出席者         警察庁警務局監         察官      斎藤弥之助君         警察庁交通局交         通指導課長   綾田 文義君         法務省刑事局刑         事課長     石原 一彦君         外務大臣官房儀         典官      山下 和夫君         外務省北米局安         全保障課長   松原  進君         労働省労働基準         局監督課長   藤繩 正勝君         最高裁判所事務         総局民事局長  菅野 啓蔵君         最高裁判所事務         総局刑事局長  佐藤 千速君         専  門  員 福山 忠義君     ————————————— 三月二十六日  委員岡田春夫君、河野密君、佐々木更三君、堂  森芳夫君及び西村榮一辞任につき、その補欠  として横山利秋君、板川正吾君、中谷鉄也君、  後藤俊男君及び岡沢完治君が議長指名委員  に選任された。 同日  委員板川正吾君、後藤俊男君、中谷鉄也君、横  山利秋君及び岡沢完治辞任につき、その補欠  として河野密君、堂森芳夫君、佐々木更三君、  岡田春夫君及び西村榮一君が議長指名委員  に選任された。     ————————————— 三月二十二日  刑事補償法の一部を改正する法律案内閣提出  第九三号)  公海に関する条約実施に伴う海底電線等の損  壊行為処罰に関する法律案内閣提出第九四  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  刑法の一部を改正する法律案内閣提出、第五  十五回国会閣法第九四号)  訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第八五号)  旧執達吏規則に基づく恩給の年額の改定に関す  る法律の一部を改正する法律案内閣提出第八  六号)  刑事補償法の一部を改正する法律案内閣提出  第九三号)  公海に関する条約実施に伴う海底電線等の損  壊行為処罰に関する法律案内閣提出第九四  号)      ————◇—————
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤俊男君。
  3. 後藤俊男

    後藤委員 まず第一番に私お伺いしたいのは、きょうからでございますか、法制審議会がきょう、あす開かれる。しかも第一、第二、第五小委員会等一つの方針を出したので、それらを基礎にして全体会議が行なわれる、こういうふうに新聞等報道をいたしておるわけでございますが、その中を参考までに読んでみますと、交通事故等につきましても、悪質なものについてはいわゆる禁錮刑も累犯を認める。そうなってまいりますと、三年が六年になる。そうすると、かなり悪質な運転者に対しましても警告になるのではないか、こういうふうなことも、これは新聞でございますので、間違った点があるかもわかりませんけれども、そういう報道をいたしておるわけなんです。そうしますと、現在問題になっておる刑法二百十一条でございますか、これがいま国会に取り上げられて、これは思えば昭和四十年からでございますか、長い間の問題であったと思いますが、片方法制審議会では、いま言ったようなことで全体会議でおそらく専門家の人がお寄りになって真剣なる討論を進められておる。片方では二百十一条だけ抽出して国会のほうで改正しよう、今日こういうふうなことになっておるような気がするわけでございますけれども、この関連と申しますか、一体どういうふうにお考えになっておるのだろうか、そこをまず第一番に、きちっと整理された上の考え方をお示し願いたいと思います。
  4. 川井英良

    川井政府委員 昭和三十五年だったと思いますが、刑事局の中に刑法改正準備会というものをつくりまして、すでに刑法制定後六十年近くを経過しているわけでございますので、その間において学説の変遷とか判例の集積とかいうふうなこと、それから社会情勢のきわめて大きな変革、変化というようなことを考えまして、それらの状態に即応するような刑法のあり方を策定すべきではないかということになりまして、部内におきまして学識経験者の協力を得まして、かなり長い間検討を続けてきたものでございます。その結果、ごく素案でございますけれども改正が必要だという観点から準備会としての一応の案ができましたので、昭和三十八年でございますか、時の法務大臣から法制審議会に対しまして、刑法を全面的に改正する必要があるかどうか、もしあるとするならばその参考案を示されたいという諮問をしたわけでございます。その際に、何もないところから検討を始めるということは困難でございますので、その前にできておりました準備会におけるところの案を一つ参考案として法制審議会に提示をした、こういうことに相なっております。その際に、非常に難事業でございまするけれども、なるべく短期間に結論を出してほしいということも法務大臣の意向として審議会に伝えたところでございました。自来、法制審議会におきましては刑法特別部会を設けまして、その特別部会の中にさらに五つの小委員会を設けまして、刑法全体を総論、各論に分けてそれを五つに分割いたしまして、それぞれ審議を数年にわたりまして続けてきておるわけでございます。  そこで、昨日新聞に出まして、本日と明日と二日間にわたりまして第十二回目の刑法特別部会部会が開催されることになっておるわけでございますが、ただいま御指摘のように、小委員会が一応きめました案につきまして、案がある程度たまりますと、年に二回ないし三回にわたって部会を開きまして、その部会に各小委員会できめました案をかけまして部会全体の審議をお願いするということに相なっておりまして、その部会でもって案がきまりますというと、それをためておきまして、すべての小委員会につきましてすべての検討が終わったところで、そしてさらにすべての部会が終わったところで、今度は部会からその案を法制審議会総会にかけまして、総会でさらに審議をいたしまして、総会で決定いたしますると、初めて法制審議会の案として法務大臣答申される、こういうことに相なっております。法務大臣答申を受けまして、さらに法務省立場でもって検討を加えて、国会に提案するかどうかを考えるということに相なっておるわけでございます。やや経過の説明が冗長に過ぎましたけれども、さような手続に相なっております。きょうの十二回目の部会でおおよそ半分の条文につきまして第二回目の審議が一応終わるというふうな段階になっておりますので、はなはだ残念なことでございますけれども事柄の性質上、いま申し上げましたような最終的な法務大臣に対する答申を得るまでにはさらにかなりな年数が必要だということに見込まざるを得ない状況でございます。  そこで、一方においてそういうふうな全面改正すの作業を慎重に、かつ、また強力に進めておりますけれども事態を見ておりまして、そういうふうな全面改正を待っておってはとても間に合わないというふうなものにつきましては、順次刑法の一部改正というようなかっこうにおきまして、国会にその改正をお願いしておるという段取りに相なっております。本件二百十一条につきましては、二、三年前からのきわめて悪質な交通事故が続出しておるという事態にかんがみまして、政府のとっております交通総合対策の一環といたしまして、二百十一条について若干の刑の引き上げを行なうということによって、この悪質重大なものについて適当な措置をとるというふうなことが緊急必要な事柄である、こういうふうな前提に立ちまして、刑法全面改正の来る日を待っておっては間に合わないというふうなところから、特にその緊急性というところに必要性を認められまして、今回この二百十一条の改正全面改正の中と切り離してお願いをしておるということでございまして、特にその緊急性が強い、交通戦争といわれるような交通実態にかんがみて、特別緊急にこれを行なうことが必要だという考え方に立つものでございます。
  5. 後藤俊男

    後藤委員 そうしますと、刑法全面改正問題を審議しておられる法制審議会におきまして、いま問題になっておる第二百十一条でございますか、これもやはり当然論議されると思うのです。そうなってまいりますと、この問題につきましてはどういう結論法制審議会で出るかは私わからないわけでございますが、片方法制審議会で真剣なる論議が行なわれておる、二百十一条も当然その中に含んでおるということになれば、緊急、緊急と言われまして、なるほど交通地獄で早く交通事故防止をしなければいかぬ、これはまあおっしゃるとおりでございますけれども片方で真剣に全面改正論議がされておる、その中から二百十一条だけ取り出してきて、ここでばたばたとやるという必要はないような気がするわけでございます。ほかのところで全然これをやっておられないというのならともかくも、全面改正法制審議会では、当然この二百十一条もかなり問題になると私は思うわけなんです。それ以前に国会改正をしてしまう、こういうことについては、どうも食い違いがあり、普通の常識的な持っていき方でないような気がするわけでございますけれども、その辺のところをもう少し御説明をいただきたいと思います。
  6. 川井英良

    川井政府委員 刑法全面改正という形が最も好ましい形でありますし、それが間に合えば一番いいことだと思うわけでございますが、ただいま申し上げましたようないろいろな状況であるし、また条文は数百条に及んでおるという条文でございますので、かりに答申が行なわれて国会に提案するというようなことになりましても、一度の国会ではたしてこれが通るものかどうかということを非常に私ども心配をしているわけでございまして、ドイツの刑法がすでに数年にわたって国会にかけられて審議が継続されておりますけれども、それにも増して大きな事業だと思うわけでございますので、全面改正の法案が成立するというのは、かなり先になるということを見込まざるを得ないわけでございます。そこで、そういうふうな状態考えまして、現実社会の動きと比べ合わしてみますと、全面改正が行なわれるのを待っているということは、人間社会の英知としてもいかがなものであろうかということにかんがみまして、法の体系を乱さないという限度において一部改正が可能であるならば、そういう措置をとって現実状態に対処していくというのが、やはり私ども法運用国民から義務づけられておる者の職責ではなかろうかというふうな考えもあるわけでございます。  なお、刑法は、一部改正でございましても、国の基本法典でございますので、この一部改正を行なうにつきましては、法制審議会を招集いたしまして、このような事情によって二百十一条の一部改正が必要である、その一部改正の技術的な問題としては、これをこういうふうに変えることが最も妥当だと思う、その当否について審議を願いたいということを法務大臣から法制審議会諮問をいたしまして、この二百十一条につきましては、きわめて詳細な法制審議会審議議決を経ているものでございますことはもちろんでございます。その過程におきましてもいろいろ議論が出ましたが、問題につきましては、刑の幅について五年というのは低過ぎるので、むしろ禁錮七年にしたらどうかというふうな強い意見が出たくらいでありますが、これを今日の状態から見て改正しなくてもいいというような議論は、法制審議会においてはほとんど出なかったわけでございます。それで、法制審議会といたしましては、全面改正と切り離してこの二百十一条をこういうふうに改正する必要がある、こういうふうな議決法制審議会から法務大臣に出されまして、法務大臣はその法制審議会議決を経た上で四十八国会にこの二百十一条の改正をお願いした、こういうふうないきさつに相なっておるわけでございますので、重ねて申し上げますけれども、そのような事情で、今日の交通事故、あるいは交通戦争といわれるようなごく悪質な事故が続出しておるというふうな実態にかんがみまして、やはり全面改正と切り離して緊急的に一部改正を行なうことが必要ではなかろうか、こういう考え方でございます。
  7. 後藤俊男

    後藤委員 そうしますと、いまのお話でございますと、刑法の二百十一条の改正につきましては、法制審議会でも十分論議をされて結論が出ている。それが答申されて、それが国会に出ておるのですというふうに考えていいわけでございますか。  そこで、この二百十一条改正につきましては、国会でも長い間論議をされておると思います。この中心のねらいは、いまも言われましたように、悪質な交通事故防止するということだと思いますけれども、この二百十一条の適用範囲と申しますか、これは一〇〇%全部が交通労働者だけというものではないような気がするわけでございます。大体過去の実績その他から考えまして、どういうふうな実績になっておるのか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  8. 川井英良

    川井政府委員 御指摘のとおりでございまして、刑法二百十一条は、交通事故、なかんずく自動車事故だけに限るものではございません。自動車事故の中で悪質なものが続出しておるというのは、法改正の動機であり、また契機でございますけれども刑法の一部改正という形をとってまかないます以上は、およそ人が社会生活上の地位に基づいて反復継続して行なう行為であって人の生命身体影響を及ぼすようなものにつきましては、すべてこの法律適用があるわけでございます。したがいまして、自動車のほかに、列車とか電車というようなものに従事される業態のもの、それから飛行機船舶、あるいは炭鉱なんかでもって保安の業務を行なっておる者、あるいは炭鉱以外の爆発事故なんか最近続出しておりますけれども、そういうふうな爆発性のあるものを常時取り扱っておるような業態のもの、それから医者とか看護婦とか薬剤師とかいうような医療過誤に基づくような事故にも適用がございます。その他学校の先生であるとかなんとかというように保護義務法律上課せられておる者が、その保護義務を十分尽くさなかったため被保護者死傷にいたしたというような事例も出ておりますけれども、そういうようなものにも適用のある規定でございます。あるいは拳銃の所持を許されておる警察官あるいは自衛官というような者たちが、過失によってそれが暴発して人を死亡させたというようなものにつきましても、もちろんこれの適用があることは申すまでもないことでございます。また、食料を扱っておるというような者が、その食料の中に腐敗物があったために大きな中毒事件を起こしたというようなことがございますけれども、このようなものにももちろんこれは適用がございます。その他宅地の造成とかなんとかというようなことで最近土木工事あるいは建設工事が盛んに行なわれておりまするけれども、そのようなことに従事する人たちが不注意のために大きな事故を起こして人を死傷にいたしたというようなものにつきましても、この規定適用があるわけでございます。ほかにもいろいろあると思いまするけれども、およそ人の生命身体に危険を及ぼすというふうな業務、そういうふうな業務の者につきましては、刑法二百十一条が適用になるわけでございます。  ただ、いままで取り扱いました統計の面から申しますと、数におきましては、圧倒的に自動車によるところの事故というふうなものが多い。その他は、事故そのものは必ずしも多くないのでございますが、取り扱った実例といたしましても、自動車に比べてはるかに低い数字を示している、こういうような状況でございます。
  9. 後藤俊男

    後藤委員 そうしますと、いま言われましたように、交通事故関係が非常に多い。いわば悪質な交通事故防止する、これが目的として二百十一条の改正を提案されておるといたしますと、百のうち十なり二十は交通関係以外の業務と申しますか、そういう人にも適用になる。そうなってまいりますと、交通事故防止するためにこういうふうに改正されたことによって、ほかの関係業務もそばづえを食うような形になるような気がするわけなんです。たとえば、百のうち八十までは交通事故防止目的のためにこれをやるんだ、あとの二十というのはやらなくてもいいんだ。ところが、八十をやるために二百十一条を改正するということは、二十もやはり同じようにそばづえを食ったような形でいままで以上にきびしい処罰になる、こういうふうに思われるわけでございますけれども、その点いかがでございましょうか。
  10. 川井英良

    川井政府委員 刑法二百十一条は、何人を問わず、過失によりまして人の生命身体死傷の結果を与えたという者を処罰することを宣明した規定でございまして、御存じのとおり、刑法は、その他の罰則と言われておる特別取り締まり法規特別法規定とは、体系上本質的に性格を異にするという前提に立っておるわけでございます。刑法という法律は、申し上げるまでもないことでございまするけれども、ほかにも無数の刑罰法規があるわけでございますが、これは国民の約束でございましょうけれども人間社会においてこれだけは守らなければいけない、それからまた、これだけはだれが考えても、どういう理屈をとっても、反社会性のある悪なんだ、これを守ることによって、初めて人間社会としての法の秩序が保たれていくんだ、そういうぎりぎりの最低線のものを規定してあるわけでございます。そういうつもりでできているわけでございます。どこの国にも刑法というものがございまするけれども、およそ刑法という法律についての考え方、概念は、もうそういうふうに一応きめられておる、そういうふうに認識されておるという形のものでございまして、これはもう議論を尽くさずして、刑法規定されておる内容が悪である、反社会悪である、それは人間の情理、道義に反するものであるということを一応きめたものでございます。その他の特別取り締まり法規道路交通法でございますとか、あるいは今日何千というふうに罰則を持った取り締まり法規がございまするけれども、それは、そのときどきの行政の必要に応じまして、そういう罰則が必要だということで設けられたものでございまして、何人がどう考えましても、それがすぐ社会悪というわけではありませんで、この行政を推進する上においてはこういうことをやっていただくことは困るんで、これについては罰がかかるからこれをやらないようにしなさいよ、まあ平たいことばで申しますと、そういう気持ちでできているように私どもこの法体系を認識しておるものでございます。  そこで、二百十一条というのは、もともと人命尊重という立場に立ちまして、過失犯ではございまするけれども、人の生命身体に危険を与えるような業務に従事する者は、通常の人より高い注意義務を負わなければいけませんよ、こういうことを宣明した規定であるわけでございますので、この規定の二百十一条の中に、自動車だけの業務に従事する人たちだけは、特別重い注意義務を負わなければならない、その他の者は、事故発生率がわりあい少ないから、そういうのは軽い注意義務でいいというふうに理解するのは、私ども、この刑という先ほど申し上げました法の立場から申しまして、どうしても筋が通らない。それは医療過誤でございましょうとも、あるいは土木事業でございましょうとも、あるいは炭鉱業務でございましょうとも、飛行機船舶、それから汽車、電車というふうなものにつきましても、およそ人命影響のあるような業務に従事する者は、ひとしく通常人より高い注意義務を持たなければいけない。というのは、この刑法は明治四十年にできまして、ちょうど六十年を経過したところでございまするけれども、すでに六十年間日本の国の国民意識の中に、人の生命身体影響を与えるような業務というものは、人命尊重立場から通常人より高い注意義務を負うのだということが意識の中に定着してきたものだ、こういうふうに私ども理解しておるわけでございます。そうだといたしますると、今日非常にある一部の事故が多くなったからといって、それだけに特別重い注意義務を課して、重い刑罰を科する、その他のものは軽い注意義務でいいのだということで刑を低くしておくというアンバランスは、くどいようでございますが、先ほど申し上げましたような人命尊重という立場から定められた注意義務という観点から、どうしても筋が通らない。それは一律でなければならない。ただし、問題は裁判所における運用だと思いまするけれども、その運用の面におきましては、個々の具体的ケースにつきまして最も妥当な刑罰運用いたしていくということが、裁判によって担保されなければならない、こう思うわけでございまして、運用におきましては、きわめて慎重な配慮が必要でございまするけれども刑法の刑の幅という面におきましては、その間に甲乙をつけることはどうしても適当でない、こういうふうに考えるものでございます。
  11. 後藤俊男

    後藤委員 そこで、いろいろ御説明があったわけでございますが、長い間二百十一条の改正につきましては、国会でもあらゆる角度から論議をされたと思います。まず第一番のねらいというのは、悪質な交通事故防止するんだ、これが第一番の目的だと思います。そこでそのためには、交通関係で働いておる労働者労働条件の問題、さらには施設の問題、さらには車両整備の問題、その他条件がたくさんあると思うわけです。先ほど局長は、間に合わぬから二百十一条だけ早くやるのだ、こういうふうな御説明をいただいたわけでございますが、昭和三十三年の神風タクシーのときにも、労働基準局長から、事故原因というのは労働条件にも大きな原因があるんだから、事故防止のためには、少なくとも労働条件をよくしなければ交通事故防止できないのだということで、三十三年に労働基準局長の通達も出ております。さらに昨年の二月九日でございますか、これもやはり同じように、自動車運転者労働時間等の改正基準ですか、そういうのが各地方の労働基準局へ通達されまして、交通関係に携わる労働者労働条件の改善、このことを目的としていままでやってこられたわけでございますが、これが一体中身が前進しておるのかどうか。全国的に、一体交通関係労働者労働条件そのものは、今日どういう状態になっておるのか。これこそ局長の話じゃないが、今日の状態に間に合っておるのか、間に合っておらぬのか、こういうところへ話を進めざるを得ないと私は思うわけでございますが、労働基準局長おいでになりませんけれども監督課長さんですか、おいでになりますので、いま私が申し上げました昭和三十三年の神風タクシーのときの通達、さらに四十二年の二月九日の通達、この内容を見ますると、勤務時間の問題から、超勤の問題から、賃金の問題から、運転手が休養するところはこれだけの高い建物がなければいかぬとか、かなり詳細に出されております。これもいわば交通事故防止、これが目的で通達され、指導されてきたというふうに考えておりますが、全国的な今日のこの通達による情勢は、一体どうなっておるか、できるだけ重点的に御説明をいただきたいと思います。
  12. 藤繩正勝

    藤繩説明員 労働省といたしましては、交通事故防止の見地から、さらにまた、単にそれだけではなくて、一般産業の労働者に比べまして自動車運転者労働条件が必ずしもよくないという見地から、その改善をはかるために、先生ただいまお話がございましたように、累次の通達を出して、その改善方の指導、監督をつとめてまいったわけでございます。特に最近におきましては、政府の行ないます春、秋の交通安全運動の諸施策の一環といたしまして、春、秋には必ず全国一斉にわれわれの労働基準監督機関におきましても監督を行なうというような状態でございまして、したがいまして、先般も当委員会で御説明いたしましたように、往年は大体年間に三千ないし四千の事業場を監督するにとどまっておりましたが、昭和四十一年におきましては九千百四十一の事業場、四十二年におきましては二万一千八百九十の事業場を監督いたしておりまして、また違反につきましてはそのつど是正方を求めると同時に、悪質なものにつきましてはきびしい処分をいたしておりまして、これまた往年は年間にせいぜい十件程度の自動車関係の送検にとどまっておりましたが、昭和四十一年におきましては五十五件、昭和四十二年におきましては二百六十五件という送検をいたしております。その結果、最近におきましては、ただいま御指摘のありました昨年年二月に出しました改善基準の浸透がかなり進んでまいりまして、たとえば労働時間につきまして三十六条の協定に基づく適正な運用をお願いしているわけでございますが、そういった改善基準に沿った三六協定の届け出が、この一月末現在で四五%まで達しております。今後ともできるだけ早く、かつたくさんの事業場でこの改善基準に従った協定を結んでいただきたいというふうに思っておる次第でございます。また、よく論議になりますところの累進歩合等の極端な刺激的な給与の改善につきましても、二月九日の通達でうたっておりますが、昨年の十月末現在でこれらの累進歩合をとってまいっておりました事業場の二一%が一応改善したという報告が参っております。去年の十月のことでございます。その後、特に本年度におきましては、この改善に力を注ぎたい。特に、御承知のようにただいまは賃金改定の時期でもございますので、この時期をとらえて、極端な刺激的給与につきましてはぜひ改善をするように、全国の基準局をあげまして関係業界、労使にお願いをして、強力な指導を展開しているような次第でございます。何せ御承知のような業界でございますから、中小企業が多うございまして、なかなか一挙にはまいりませんが、私どもとしては、できるだけの努力をし、また関係労使からも御協力をいただいておりますので、漸次改善の方向に向かっていくというふうに確信いたしております。
  13. 後藤俊男

    後藤委員 いま大略説明があったわけでございますが、私いろいろ地方で聞くところによりますと、たとえば出されました通達に基づいて営業を行なった場合には、とてもやっていけぬ、営業が成り立たぬ、こういうふうな声もかなり聞くわけでございますけれども、これらの点については、これをどんどん推し進めていかれるということになれば、一体どういうふうな指導のもとにやっていこうとされておるのか。  さらに、交通関係労働者労働条件の改善につきましては、これはまだまだ徹底しておらぬと私は思うわけです。たとえばいま言われた超過勤務にいたしましても、半分のものも法律を守っておらぬ、労働基準法三十六条に違反しておると言ってもいいと思うのです。しかも、その超過勤務時間たるや、およそ想像もつかないほど長時間の超勤をやっておるというところも、かなりあると私思います。  さらに、賃金の問題につきましても、歩合制だ、とにかく動かぬことには月給が上がらぬ、こういうふうなことはやめて、固定給で生活保障、そういう方向へと、こういう通達は出ておるわけでございますけれども、一体それなら、全国的に見まして、他産業と比較して、これらの交通関係労働者の人の労働賃金、さらには労働時間、これらが一体統計上どういうふうな情勢に今日なっておるか、これをひとつお答えいただきたいと思います。
  14. 藤繩正勝

    藤繩説明員 たとえば労働時間につきまして申し上げますと、昭和四十年の四月に行ないました調査の結果から見まして、比較的長時間と考えられますのは、私どもは一日十時間をこえて労働しておるというものを一応長時間労働考えますが、その一日十時間をこえる長時間労働を行なっている男子労働者の数は、道路貨物運送業、つまりトラックでございますが、二七%、道路旅客運送業、ハイタクでございますが、二一%でありまして、全産業が八%という数字を示しておりますから、その数字から見ますと、かなり長時間労働の占めるウエートが高いというふうに思っております。  それからただいま御指摘がありました労働時間に関する労働基準法の違反の率にいたしましても、全産業では、男子の労働時間につきましては一八%の違反率が見られますが、道路貨物につきましては四九%、道路旅客につきましては四四%、これは昨年の実績でございますが、かように高い違反率を示しております。  休日につきましても、全産業では一〇%の率でございますが、トラックでは三一%、ハイタクでは二五%という違反率になっておるわけでございます。  それからまた給与にいたしましても、先ほども申し上げましたように、累進歩合制というようなものがハイタク等ではかなりとられておりまして、昨年の五月に行ないました調査でも、自動車業全体で歩合給をとっております割合は六三%に達しておるということでございまして、これらの改善についても、先ほど御説明したように、そういう状態にあるがゆえにこそこの改善を進めなければならないというふうに考えておる次第でございます。
  15. 後藤俊男

    後藤委員 いま説明されたようなことだと思いますが、これをさらにこれから指導監督されていかれる立場にある人として、現在のところ、いま言われたように三六についても四〇何%でございますか、約半分に近いところがようやくそこまで進んできた、しかしまだ半分以上残っておるのだ、こういうような状態だと思います。さらに超勤の時間にいたしましても、とにかくオーバーしておる、こういうふうな状態でございますし、さらに賃金にいたしましても、あなたが言われたような理想的な形態にはまだなっておらぬ。その苦しい中で交通労働者の人が働いておる。事故を起こせば不注意だ。不注意というのは、原因でなくて結果だと私は思います。一体なぜその人が不注意を起こしたのだろうか、その原因を十分探索しまして、その解明につとめる。その中の一番大事なこととして、交通労働者労働条件をよくするのだ、心配なしに生活のできるような環境のもとに置かなければいけない、そういう趣旨のもとに、昭和三十三年なり去年の二月九日なりにこういう通達が出されて現在やられておると私は解釈いたしておるわけでございますが、全国に多くの運送業者が私はあると思います、多くのタクシー業者があると思いますが、それなら一体全国でこういう営業をやり、さらに交通関係労働者をかかえて仕事をしておる企業がどれくらいあるのだ。これらをこれから一体どういうふうに進めていくのだ。どうして労働条件をよくする方向へ進めていくのだ。先ほどの説明によりますと、昭和四十一年には、送検数で五十五件でございますか、昭和四十二年には二百何十件と言われました。これはまことに微々たるものだと思います。おそらくこの四十二年の二月九日に通達を出されるときには、これは徹底してやります、違反は違反として十分摘発します、こういうかなり厳重な考え方のもとにこの通達は流されておると、私は解釈しておるわけなのです。しかしながら、その実績たるやと、こうなってまいりますと、まだまだ多くの問題を残しておるというふうに考えますが、先ほど刑事局長のほうからも、とにかく罰するのだ、これも事故防止一つだ、こういうふうな説明もございましたけれども、それ以前の問題として、関係労働者労働条件をよくすること、これがまず第一番の基盤でなければいけない。その関係をやっておられる皆さんのほうで、それではこれから一体どうやっていくのだ。まだ半分のところまでも達しておらぬ。平均すると三分の一くらいのところまでは順次よくなってきておるが、残りの三分の二をどうするのだ。交通戦争交通戦争と言われましたが、交通戦争をなくするためには一番大事な要件ではないかというふうにも私は考えておるわけでございますので、今後一体四十二年の二月九日に出されました通達に基づいてやっていかれるのか、さらに当面何かの方針があるのか、その辺のところをひとつ明確にお答えいただきたいと思います。
  16. 藤繩正勝

    藤繩説明員 全国には自動車運送業の事業場は、労働基準法適用関係で三万六千七百七十四というのが四十二年度の数字でございます。ただ問題は、自動車運送業だけではなくて、御承知のようにダンプカーというようなもの、あるいは鮮魚の輸送というようなことになりますと、産業分類が別になりますので、実際は私どもの監督対象というのは、五万件に近い事業場になるかと思います。そこで、監督がまだ手ぬるいではないかというお話でございますが、最初にお答えいたしましたように、まだまだ理想からいえば御指摘のとおりでございますが、往年に比べればかなりひんぱん、かつ、きびしい監督を私どもとしてはしておるつもりでございます。ただいまの先生のおことばにもありましたように、この改善基準をそのままどんどん進められれば事業がやれなくなるというような、業界のほうでもかなり深刻な反応といいますか、そういうものを示したこともございますが、何せこういう事情にあるのだから協力を願いたいということで、ただいまやってまいっております。今後労働基準法に基づく指導監督を進めることはもとよりでございますが、限られた監督官の能力だけでは十分ではございません。関係労使の協力も得なければなりませんし、そういう観点から、自動車労務改善推進員というのを全国で四百名ばかりお願いをいたしておりまして、この方々にも自主的に業界内部での改善に努力をしていただいております。すでに相当回数の集団指導等も行なわれております。  そこで、今後具体的にどうするかというお尋ねでございますが、先ほど来御説明いたしておりますような経過で監督指導を進めてまいる、またある程度の成果もあがってきておると思っておりますが、来年度におきましては、私どもは目標を明確にしていきたいと考えまして、ハイタクにつきましては、特に大都市を中心に累進歩合制の排除ということに最重点を置いてまいりたいというふうに、下部に指示をいたしております。それからトラックにつきましては、長期路線トラックを中心に、諸外国でとられております乗務員手帳制度、これは参議院の大倉先生からも御指摘がありまして、私どもILOあるいはフランス等からも現物を入手して、いま研究をいたしております。来年度予算にも若干ながら予算も入っておりますので、これらの普及を手がけていきたい。それからダンプカーにつきましては、昨年議員立法で行なわれました例のダンプ規制法に基づきますところの通報監督制度というものを活用してまいりたい。この三本立てで昭和四十三年度はさらに一そうの改善に努力していきたい、かように考えておる次第でございます。
  17. 後藤俊男

    後藤委員 いまダンプカーの話が出ましたから、一言お尋ねし、申し上げておくわけでございますけれども、去年の国会でダンプカー規制の法律ができました。それに基づいてダンプには背番号と申しましょうか、番号をつけることになりました。ところが、全国でダンプといわれるのが大体十三万台でございますか、その十三万台の中で八割というのが、同和地区だといわれております。その同和地区のいわゆる無鑑札のダンプカーでございますけれども、これらははっきりと運送業の免許をもらって背番号をつけぬことには違反になる、こういうことになってまいりますが、そのときに、十三万台のうちで約七割ないし八割というのがそういう地域にあるダンプカーでございまして、運送業の免許をとるためには七台以上の企業組合をつくらなければいけない、これは全国的な基準になっております。そうなりますと、実質問題として、地域の関係で七台以上の運送業というのはもうできないわけなのです。おのおのがかってな仕事を毎日やっておる。だから、いままでのように無鑑札の、運送業の免許もとっておらぬし、ダンプ規制のあれにも従わずに走るダンプがあるのではないか、こういうふうな心配も十分あるわけでございます。これは陸運局の問題ではあろうと思いますけれども、しかし、基準監督署といたしましても全然無関係とはいえないと私は思います。悪質な交通事故というのは全部が全部そこから出るとは申しませんけれどもかなり事故の温床になっておるのではないかというふうにも考えるわけでございます。先ほど刑事局長がいろいろ説明されましたけれども、それ以前の問題として、これらの問題を一体どういうふうに今後取り締まり、どういうふうに指導をしていくのか。この点は担当外かもわかりませんけれども、無関係な問題ではございませんので、おわかりになりましたら、ひとつお答えいただきたいと思います。
  18. 藤繩正勝

    藤繩説明員 必ずしも私どもの担当ではないのでございますが、承知している限りでお答え申し上げますと、実は一昨年の暮れに、御承知のように、愛知県猿投町のダンプカーによる幼稚園児大量事故というのが発生をいたしまして、各関係機関でその後ダンプカーの取り締まりの強化に乗り出し、私どももそのときに一斉に監督を実施いたしたのでございますが、その結果非常に問題になりましたのは、ただいま御指摘のとおり、非常に零細な業者が多い。同和地区であるかどうかは私どもつまびらかにいたしておりませんが、少なくとも十三万台あるいは十四万台といわれますダンプカーの中で、いわゆる白トラックというものが非常に多い。しかも、それが一人一車という形でまいっております。そうなりますと、 いわばトラックを持った日雇い労働者というような形態でございまして、そもそも労働基準法が適用になるのかどうか。一人で自分で車を持って営業をいたしておりますので、その点が非常に問題でございまして、普通の解釈でまいりますと、ほとんど労働基準法とは関係がないということになってまいります。しかし、それでは相なりませんので、私どもとしては、かりにそういう形態にあっても、実態的に、事実上、たとえば親方というようなものが存在をいたしておりまして、各種の保険をその人がかけておるとか、あるいはいろんな業務上の指揮監督を実際にしているとか、いろんな実態に着目して、ただ一人一車だから基準法関係はないということでなく、労働関係があると判断すれば、積極的に監督指導を加えていけという指示もいたしておるような次第でございます。また、労働基準法関係はないということでありましても、臨検監督をいたしていきますればいろんな事実を発見するわけでございますから、そういうときにはできるだけ陸運当局にも通報するようにという指示もいたしておりまして、現地ではそれぞれ通報もいたしておるわけでございます。今後特にダンプ規制法の運用にあたりましては、運輸省、警察庁等とも連絡を密にいたしまして、交通事故防止に総力をあげてまいりたいというふうに思っております。
  19. 後藤俊男

    後藤委員 交通関係労働者労働条件につきましては、こまかいことを申し上げますと数限りないほどあるわけでございますけれども、おそらくあなたのほうへも、日本の交通関係労働者の皆さんやら、あるいは交通事故をなくそう、こういう会のほうからも、かなり具体的な問題として要求もされ、申請と申しますか、申し入れがしてあると私ども感じておるわけでございますが、いずれにいたしましても、いま説明がありましたように、三十三年の通達なり昨年の二月九日の通達、これらに基づいて指導監督はされておりますけれども、まだ半分にも達しておらない。いわば交通事故を起こす原因がまだまだ残っておる、こういう言い方をしても間違いではなかろうと私思う次第でございます。そこで、先ほどあなたが言われましたように、来年度の問題として、都会のハイタクにおいては歩合制をなくする、固定給一本でいく、こういう方向でひとつ強力に指導したい、これは昭和四十三年度の方針だと思います。さらには、トラックについては乗務員手帳を渡す、こういうふうな説明がございましたが、具体的にその問題に対する計画がおありだと思います、もう四、五日すると来年度でございますので。その辺の計画がございましたら、簡潔でけっこうでございますから、御説明をいただきたいと思います。
  20. 藤繩正勝

    藤繩説明員 先ほど御説明いたしましたのは、極端な走行を刺激するような累進歩合制というものはなくしてまいりたいということでございまして、場外労働という性質上、また一般産業にも広く見られる請負給、歩合給というものをいま直ちに全く自動車運転者から排除するということは、現状に即さないと私ども思っております。しかしながら、歩合給の割合をできるだけ少なくして、特に歩合給といいましても、話がこまかくなって恐縮でございますが、一律歩合あるいは積算歩合あるいは累進歩合ということでございまして、累進歩合というのは、ある程度以上になりますと、根っこから金額が非常に高くなるということから、運転者が特に走行を刺激されるというものでございます。あるいはまたトップ賞というようなもので、成績を非常にあげた者については、極端に給与をよくするというような、いずれにしましても走行を刺激するような累進歩合制、これはぜひひとつなくしていただきたいということで、関係者に強く訴えておるわけでございます。御承知の春闘期でございますので、賃金改定にあたってぜひその点を改善していただきたいというふうにお願いをいたしておるわけでございます。  それから乗務員手帳につきましても、先ほど御説明をいたしましたように、若干の予算も入っておりますので、ぜひ運転者が自分で簡単に走行の時間、その間ハンドルを握っておったか、あるいはその他の作業に従事しておったか、あるいは食事をしておったか、あるいは寝ておったか、休憩しておったかという程度の分類を設けまして、そこに線を引いていくことによって、大体その日の自分の勤労状況というものを記録し、自分も承知し、事業主も承知し、また監督官庁の監査の便にも供するというようなものを、ぜひ普及してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  21. 後藤俊男

    後藤委員 もう一つ、先ほど言われました改善推進員でございますが、全国に四百人できておる、こういうことを言われましたが、この改善推進員というのはどういう性質のものであって、任務は一体どういうことなんで、それに対する何か報酬というとおかしいのですが、手当等が出されておるのか、どういう形でそういう人が置いてあるのか、その点を簡単でけっこうですから、御説明願います。
  22. 藤繩正勝

    藤繩説明員 自動車関係の労務改善をはかりますためには、労働基準法に基づく監督はもとより必要でございますが、先ほど来御議論がありましたように、それだけではなかなか改善されない。そこで、業界がみずから、特に最近のような世論及び今後の労働力不足というような事情を背景にいたしおりまして、労務管理を近代化していこうという機運をつくってもらう必要がある。そこで、そういった関係業界における自主的な推進体制を確立するということをねらいといたしまして、労働条件その他労務管理に関する事項について、相当の指導力のある方々をお願いをいたしまして、主として集団的な指導、つまり関係業界における集団指導講習というようなときに、役所も参りますが、その方々もいろいろな経験に基づいた改善講習をしていただく、あるいはまた事業場はいろいろでございますから、大部分の事業場がその方向に向いておるのに、一、二いろいろ異論を唱えて従わないというような場合に、その説得に当たっていただく、個別指導をしていただくというようなことを、主としてお願いをいたしております。手当はごくわずかでございまして、たしか年間一千円かそこらの、これはもうほんの気持ちだけのものでございますが、そういうことで協力を願っておるような次第でございます。
  23. 後藤俊男

    後藤委員 そこで、進藤政務次官にお尋ねするわけでございますが、いまもいろいろとお話をいたしましたように、刑事局長は刑事局長としての立場の御説明がございました。現在の交通戦争をいかにして防止するか、これはもうお互いに異議のないところだと思います。そうするためには、施設の問題なりいろいろな問題があると思うのです。その中でも一番大事なことは、直接ハンドルを握っておる交通関係労働者労働条件の改善というのが、一番大きな問題ではなかろうかと私は思います。局長もお聞きのように、いまの労働基準局の課長さんの説明を聞いてみましても、全国的に考えてみると、まだまだ歩合制もやっておる。動けば動くほど賃金もよけいふえていくのだ。さらには超勤につきましても、全く無協約で、労働基準法を守らずにやっておるところが半分以上ある。さらに勤務時間につきましても、十時間ということを言われておるとは思いますけれども、その勤務時間の内容というのもやはり問題になろうと思います。こまかくなるからそういうことは私いま申し上げるのはどうかと思いますけれども、やはり実作業時間なり手持ち時間なりいろいろな関係がありまして、そういう点を具体的にきめていただかぬと、往々にして経営者としてはごまかす、ということばを使うとあれかもわかりませんけれども、そういうようなことになるというようなことで、全般的に見まして、私の見たところでは、三分の一程度しかこの通達による指導徹底というのは行なわれておらぬように思うわけです。そうしますと、この懲罰、いわゆる罰則を重くして交通事故をなくする、それも大事なことかもわかりませんけれども、それ以前の問題として、なぜもっと経営者に十分なる指導をやっていかないのか、こう言いたくなるのです。こういうような情勢の中で、刑法二百十一条を、先ほども言いましたように、法制審議会で徹底的なる審議が行なわれる、そんなものを待っておっては間に合わぬ、これだけ取り出して早く交通戦争をなくするのだ、それだけの気持ちをお持ちになるとするのなら、それよりか軽い問題でない、重い問題である労働者労働条件の改善、これにもつと力を入れてしかるべきではないかというふうに私は考える次第でございます。これに対して次官として一体どういうふうな御意見をお持ちなのだろうか、どういうふうにお考えになるのだろうか、これをお尋ねいたしたいと思います。
  24. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 交通事故を一日も早く除去するための方法は、たくさんあります。万般にわたってやらなければならぬと思いますが、ただいま後藤委員のおことばのように、労働条件の問題も大きな重要な課題であると思いますが、すべて運転従事者の精神的な面からも、あるいはそうした待遇の問題からも、いろいろな万般から考究して除去していくという方法をもっていきたいと思う次第でございますが、特にこういう面、この刑法改正もその一つであるというふうに思っておるのでございます。どうぞ御了承願いたいと思います。
  25. 後藤俊男

    後藤委員 どうもいま政務次官が言われたのは、そっちもやるけれどもこっちもやるのだという、こういう非常に簡単な答弁でございますけれども、ただ、私はもう一ぺん申し上げますと、刑法の二百十一条をこういう考え方でこういうふうにやりたいと思う、これは局長のほうから再三再四御説明をいただきましたが、それよりもさらに問題のあるのは、交通関係の直接事故を起こす、働いておる労働者の生活の保障というのが十分なされておるかどうか、それと同町に、事故を起こすような賃金体系になっておらぬか、事故を起こすような長時間労働になっておらぬかということで、これがなっておるのだということで四十二年の二月九日に通達が出ておるのだと、私は解釈しております。さらに、それよりか九年前の昭和三十三年にも、同じような通達が出ております。中身を読んでみますると、三十三年に出ておるのも、四十二年に出ておるのも、大して変わりはございません。ただみんながわあわあ言うから通達だけ出しておこうじゃないか——こんなことを言うとしかられるかもしれませんけれども。ところが、中身が、これで万全りっぱになりました、こういう労働者を使っていただければ、もう交通事故はございません、これでもなお悪質な事故についてはこうなんだ、こういうふうな順序を追った行政なら、私は話がわからぬことはないと思いますけれども、ただ先ほど刑事局長が言われましたように、法制審議会でやっておるのは間に合わぬから、これだけ早いところ引っぱり出してきてやるんだ、まあ労働者のほうはやっておるんだろう、労働条件については改善されておるだろうと言われますけれども、話の中身を聞いてみますと、三分の一くらいしか進んでおらぬ。また、基準法に基づく三六協定を結んでおらぬところで半分以上あるのだ、これが実態だと私は思います。いま申し上げましたように、交通事故防止のために大切なことはほかにもたくさんありますけれども、私が申し上げましたその関係で携わっておる人々の生活の保障なり、あるいは勤務時間なり、あるいはその他いろいろな問題があろうと思いますから、これらについては、先ほど課長のほうからも来年度はこういう方針でひとつ進みたいと言われておりますが、ただ、この問題は経営者がその気になってくれるかくれないかで大きな違いがあると私は思います。そこで働いておる者がわあわあ言うてみたところで、なかなかその成果というものはあがらないと思いますので、経営者を含めて十分なる指導をしていただく、このことをぜひ次官なりあるいは労働基準局といたしましても腹に持っていただいて、交通事故防止にひとつ全力を尽くしていただく。刑法二百十一条の問題につきましては、私もしろうとでございますので十分わかりませんが、それ以前の問題としてやるべきことがまだある、これに全力を尽くしていただく。ただ罰するだけが交通事故防止ではない、この点だけ最後に申し上げまして、最終的な締めくくりとして次官のほうからもう一ぺん現在のお気持ちをお答えいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  26. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 事故原因は、ただいま後藤委員のおことばのように、各方面によるのがあるのでありまして、その点は十分に私ども認識いたしておりますので、そういう点から、各方面から事故の除去につとめていくという決意でおりまして、政府といたしましては、そういう関連の各方面とも十分な連絡のもとに進めていく決心でおります。御了承願います。
  27. 後藤俊男

    後藤委員 終わります。
  28. 永田亮一

  29. 板川正吾

    板川委員 刑法の一部を改正する法律案について、若干質問いたしたいと思います。  まず、問題の刑法二百十一条のほうでありますが、この改正の理由、目的について伺いたいのであります。改正の提案理由を見ますると、「近時の自動車運転に基因する業務過失死傷事件及び重過失死傷事件の実情を見まするに、数において激増しつつあるのみならず、質的にも高度の社会的非難に値する悪質重大事犯が続出し、法定制の最高限またはこれに近い刑が裁判において言い渡される例も次第に増加しつつあるのでありまして、この際、この種事犯中特に悪質重大なものに対して、より厳正な処分を行ない得るものとするよう必要な法改正を行ないますことは、今日における国民の道義的感情に合致するばかりでなく、国家の刑政から見ましても、きわめて緊要なことと考えられるのであります。」こう言っておるのでありますが、すなわち刑罰をきびしくして交通事故の悪質事犯を防止したい、こういうのが今回の改正目的と解していいかどうか、伺いたい。
  30. 川井英良

    川井政府委員 改正の趣旨並びに目的につきましては、ただいまお読みいただきましたこの提案の趣旨に概要尽きているわけでございます。なお重ねて申し上げますと、端的に申しまして、この改正の動機、それから原因になりましたのは、争いもなく自動車による交通事故が非常に量的にもふえたことと、非常に悪質なものが特にふえてきたということが、この動機でございます。  それからもう一つ、その場合にいろいろ立法の面で対処のしかたがあると思いまするけれども、私ども人命尊重という立場から、やはり刑法改正をもってこれをまかなうのが法体系の筋だというたてまえに立っておるということ、それからただいま御指摘がございましたが、禁錮三年という量刑が頭打ちと申しましょうか、三年一ぱいの刑を裁判所が盛るという事例、それから裁判所の判決の中にも、もうこれしかないからやむを得ないじゃないかというのがすでに判決の中にあらわれているものもございますので、そういうところがあわせて、刑罰がすでに実態に——犯罪現象と法定刑とがバランスを失ってきているのではないかというふうな考え方にも立っているのでございますし、特に酒酔い運転なんかによる非常に悲惨な事故の続出に対する国民的な感情というものからも、明治四十年の禁錮三年という刑罰はすでに精彩を失ってきている、何らかの妥当な措置が必要だ、こういうふうな考え方も、率直に申し上げまして、この法改正原因、動機の点でございます。
  31. 板川正吾

    板川委員 この二百十一条を改正して罰則を強化した場合に、事故防止にどの程度の効果があると考えておるのでありますか。こういう罰則強化によって悪質犯が減ると考えておられるかどうか、この点について伺いたい。
  32. 川井英良

    川井政府委員 これは刑罰の法定刑を上げた場合に、実証的に、科学的に、端的にこういう事故はこれによってこれだけ減るんだということを実は申し上げる合理的な根拠、数字というものが出てこないわけでございます。私どもただいまも御質問がございましたが、刑法刑罰を上げることだけでもっておまえは悪質な事故が減るというふうに考えていると、たいへんな間違いだよ、ほかにもたくさん前提としてとらなければいけないことがあるんだよ、ということを質問を通じておさとしがございましたけれども、私はそういうことにつきましては、十分質問される方に劣らず実は深い関心を持っておるつもりでございます。ただ刑法の刑を上げることだけでもって、今日の交通戦争がそれでもうほんとうに気持ちよくなくなるのだというようなことは考えておりません。大きな、政府としての交通施策の中の一環として、この刑法改正ということが、この交通戦争に対して何らかの有力な寄与をするということは間違いない、こういう確信に基づいているわけでございます。的確な例がございませんし、また、最近の各国のこの種の法律改正の例を調べてみましたけれども、ごく最近にはそういう改正の例がありませんので、各国の事例の中にも出てまいりません。ただ、私ども体験を持っておりますのは、ちょっと犯罪が違うのでございますけれども、先般の麻薬取締法の改正などについてば、国会にお願いしまして非常に大幅な刑罰の引き上げを行なった事例がございまするけれども、これも刑の引き上げだけでそういう効果があったということを申し上げるのはいささか早計でございましょうけれども、これは上げる前とあとにおきましては、非常に大きな効果を発揮いたしまして、今日ヒロポンないしは覚せい剤あるいは麻薬、おしなべまして、統計の上から見ましても、非常に犯罪のあれが少なくなってきたということは、きわめて顕著だと思います。これは故意犯でありますし、また特別法改正でございますので、本件の例をもって直ちにそのような著しい効果がすぐ出てくるというようなことは、さらさら申し上げるつもりではございませんけれども刑罰改正ということも、何らかの大きな底力を持った効力を発揮するのだ、そういうふうな一応信念、確信というふうなものは持ち合わせております。
  33. 板川正吾

    板川委員 警察庁に伺いますが、昭和三十五年に道交法が改正をされて、運転手の罰則が強化された。その強化された結果、事故件数というものが減ったかどうか。その実績例について伺いたいと思うのです。いま刑事局長の答弁によると、罰則を強化したからそれでもって悪質事犯が直ちになくなるということは、科学的にも立証できないが、しかし、心理的な威嚇作用をなして、やはり相当な効果があるだろうということを期待しておるようであります。しかし、昭和三十五年に道交法の改正で運転手の罰則が強化されて、その結果、道交法の違反事件の科刑状況の統計を見ますると、改正されたのは三十五年でありますが、逆に三十六年から七年にかけて非常に事故が多いのですね。こういう点から見ますると、刑罰を強化することによる、いわゆる刑罰の威嚇によって事故を予防し得るという期待は、はなはだ少ないのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  34. 綾田文義

    ○綾田説明員 お答え申し上げます。ただいま法務省刑事局長から御説明のように、警察庁におきましても、刑罰を上げたために事故がそれだけ減ったというふうな統計は、実はございません。三十五年に道交法が改正されまして、それと全く同じ条件で、車もふえないし、道路状況も同じ、運転者の数も同じという、与えられた条件が同じであるならば、そういう統計は出ますけれども、いろいろ自動車の台数の増加、交通量の激増、それから運転者の増加、あるいは道路の整備——これはだんだんによくなっておりますが、そういう与件がいろいろ複合されておりますので、そういう実際の統計は何らない状態です。もちろん警察庁といたしましても、先ほどからたびたびお話しのように、罰則の強化のみが唯一の手段ではなくて、むしろ警察行政以前の道路行政、運輸行政あるいは労働行政というもの、その前提になる諸行政がしっかりすれば、さらにそういう事故は私はなくなると思いますが、やはり罰則の強化に伴う運転者に対する心理的な抑制という効果も、私は相当あったのではないかというふうに考えております。
  35. 板川正吾

    板川委員 その事実は、いかに罰則を強化しても、他の与件が違うのですからね。だから、罰則強化というだけで私は事故は減らない、こう思うのです。そこで、伺いたいのですが、この自動車による悪質な交通事犯がふえたから、刑罰を加重する、こういうことを言われておりますが、それならば、悪質事犯が減ったら刑罰を軽くするのかという逆説もあり得ると思うのです。また、改正してもさらに悪質事犯が減らない、こういうことになれば、さらに刑罰を加重する、こういう論理にもなり得る、こう思うのです、この提案の理由から考えますと。これは、刑法という非常に安定した機能を持つべき法律が、不安定だということになるだろうと思うのです。刑罰の加重の論理がさらに発展するならば、私は、要するに悪質事犯がたび重なって最高刑に近いのがどんどん出てくるからさらに刑罰を上げるのだという形でいくならば、将来は憲法が保障しておる残虐な刑罰さえも正当化され得るという可能性があるだろう、こういう危険があると思うのでありますが、この改正案の提案者の見解をひとつ承りたいと思います。
  36. 川井英良

    川井政府委員 御指摘のように、刑法はきわめて安定した法律でなければなりませんし、また、今日あると信じておりますが、その刑法にきめられた法定刑というものは、やはり刑法全体としてバランスをとって定められておることは、御指摘のとおりでございます。   〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕 そうして一たび制定しますと、安易なことでもってこの改正をしないということが、また国民全体に与える法意識と申しましょうか、法意識の範囲としての法秩序の維持ということに非常に役立っている。そこに法律の安定性というものがあるということは、私は全く同感でありますし、御指摘のとおりだと思います。そこで、軽々に法定刑をいじるべきではないということは、私どもも全く同感でございますが、しかしながら、最近の時勢の変化と申しましょうか、社会情勢の推移、変転というふうなものは、まことに膨大なエネルギーをもって進展いたしまして、とどまるところを知らないというふうな状況だというふうにもいわれておるところでござますが、その中におきまして、特に最近の交通事情、あるいはこういう人の生命身体影響を与えるような業態の拡充発展というふうなことは、目をみはるものがあるように思うわけでございまして、その結果といたしまして、はなはだ残念なことでございまするけれども、非常に大きな災害が、量的にも質的にも悪質重大化して、常非な量にのぼってきておる。御承知のところだと思いまするけれども、全国検察庁が一年間に受理する事件の件数は五百万件を今日突破しておりまするけれども、その中で御指摘刑法犯だけをとってみますると、大体年間八十万から九十万の間を上下しているのが、ここ数年間の実情でございます。その刑法犯の中では、数年前までは、明治からずっと引き続きまして窃盗が第一位を占めておりまして、私ども検事になりたての時分には、朝から晩まで三年間窃盗ばかりやっていたものでございますが、ともかく窃盗というものがもう刑法犯の一番の横綱を占めておったわけでございますが、これがこの三、四年、三十九年あたりからの統計を見ますと、事故が異常な率を示しておりまして、昨年四十二年度におきましては、八十何万件の中で、実に四十四万件が事故刑法犯でございます。これは全体の刑法犯の五〇・六%に当たるわけでございまして、窃盗犯をはるかに追い越しまして、交通事故というものは、今日全国検察庁の検察官が鞅掌しておるその半分の仕事を占めておるというふうな実情に相なっておるわけでございまして、この趨勢は、この三、四年間の傾向でございますから、さらに引き続き、自動車の台数の増加あるいは産業の発展ということと考え合わせまして、同じような傾向というものは容易に推認することができると思うわけでございます。  そこで、このような事態に対処いたしまして、御存じのことでございますけれども刑法裁判所が言い渡す法定刑というものは大体下限のほうに集中しておりまして、一ぱい一ぱいの上限にいったというような例はほかの刑罰ではほとんどないわけでございますけれども、最近数年間の実情を見ますと、交通事故といいますか、二百十一条関係におきましては、交通事故に限りませんけれども、もう三年の禁錮ではまかなえないような事例が非常にたくさん出てきておるということでございます。二年以上をとってみましても七十何件とか、それから三年以上のものをとりましても六件とか二十件とかいうふうな数字が出てきているわけでございまして、これはもう刑を実際に量定する裁判官の方面からも、このままの法定刑でいいだろうかということが要望されておるような実情もありまするし、また検察官、求刑するほうの側からいいましても、どこもこの刑ではまかなえないような悲惨、悪質な事故が出てきている、どうするのだというふうなことも出てまいっておるわけでございます。このような異常な事態に対処いたしまして、そして先ほど御指摘がございました刑法の安定性ということと考え合わせ、さらにまた、この事故が激増するに至ったのは、何も刑法だけで処理できるものではありませんで、その前提としあるいはそれと並んで、ほかに大きな施策の推進ということがもとより必要でございまするけれども、その他のものをすべて勘案いたしまして、この際、二百十一条の刑罰をいささか引き上げるということも有力な対策の一環たるを失わない、こういうふうな政府全体としての決定あるいは考え方に基づきまして、法制審議会の議を経まして、三年を五年とする、そして最近は、非常に酒を飲んで、悪質な、故意犯と変わらないような事態が出てきておる、そういうようなごく悪質なものにつきましては、禁錮ではなくて懲役をもって臨んだほうがいいではないかというふうな議論もあわせ取り入れまして、三年を五年に引き上げる、こういうふうなところが、万端いろいろのことを総合的に勘案した結果、最も妥当ではなかろうかということに落ちついたのでございます。先ほどもちょっと触れましたが、法制審議会にこの案をかけました際に、五年ではおかしいので、禁錮七年にしたらどうだという有力な意見も出たこともあるくらいでございまして、七年というのはいささかどうかと思いまするけれども、五年というあたりが、刑法全体といたしましても、決して刑法の安定性を害するような、非常に異常な引き上げではないということに落ちつきまして、三年を五年に上げるということは決して刑法の安定性を害するものではない、しかもそれによってかなり大きな効果が期待できるというふうな確信に立っているものでございます。
  37. 板川正吾

    板川委員 刑の量定には歴史的経過とバランスがあるということはいまお話しのとおりでありますが、もし業務過失死傷罪を本案のように改正しますると、過失致死罪、過失傷害罪とのバランスがくずれるということはありませんか。今度は、過失致死罪や過失傷害罪が低過ぎるから、これを引き上げるという考え方はありませんか。
  38. 川井英良

    川井政府委員 確かに御指摘の点については慎重な検討が必要だと思います。私ども部内で検討し、さらに法制審議会の議を経るにつきましても、この点について問題になったことがございます。これらにつきましては、今日御存じのとおり、刑法全面改正刑事局、私の手元において数年前から進められておりまして、刑法全体としての法定刑のバランスについての慎重な検討が進められております。これは特別な事態といいますか、異常な事態に対処するための一環といたしまして、特に緊急性をもってその中からこの問題を取り上げて改正を急遽お願いをするということになっておりますので、あわせてその他の過失罪についても同様に刑を引き上げていくということにつきましては、実は問題があったわけでございます。  そこで、ただいまおあげになりましたような業務でない単純な過失につきましても、それぞれのバランスをとって法定刑が定められておりますが、これらは御存じのとおり、統計上実際に扱う数が非常に少ないわけでございます。業務というのは、これは非常に多いわけでございますが、それに比べてここに書いてありますその他の過失罪というのは、数字が非常に少ないというようなこと、それから今日の実態からいきまして、量が少ないばかりではなくて、特にその過失の中で悪質重大なものが出るというふうなことは、いろいろ考え合わせましても、絶無ではございませんけれども、特別悪質なものは通常状態におきましてはほとんど考えられないというふうなところから、三年を七年にするという場合におきましては、その他の過失罪につきましても何らかの手直しが必要だと思いまするけれども、三年を五年に上げる、そしてしかも罰金刑はそのままに据え置いていくというふうな状態に持っていくならば、その他のものにつきましてもこの程度で一応バランスは失われないというふうな考え方に立って、これだけの改正をお願いしたという事情でございます。
  39. 板川正吾

    板川委員 申し上げるまでもなく、刑法第三十八条では、故意犯は罰し、故意なきものは罰しない、こういう原則に立っておりまね。ただし、故意なき場合でも、業務過失のような法律に定めある場合は除くとしまして、原則として故意あるものは罰し、故意なきものは罰しない、その中間はない、こういう考え方に立っております。故意に人を殺せば殺人罪に問われるし、人を傷つければ傷害罪に問われることは、御承知のとおりです。ところが、改正理由説明の中に、悪質な交通事案の中には「故意犯に属するいわゆる未必の故意の事案と紙一重の事案であり、」「単に故意犯でないとの理由で、禁錮刑ないし罰金刑によって処罰せざるを得ないことは、国民の道義的感覚からいってむしろ不自然」だ、こういっておられます。私は、真実と正義と科学の上に立脚しておる司法当局の提案理由としては、ちょっとおかしいと思うのであります。それはなぜかというと、刑法の責任条件は故意か過失かしかないのであります。未必の故意も、これは申し上げるまでもなく故意であります。過失事案を故意犯であるかのごとく、紙一重に位するから、だから罰則を上げる、こういう理屈は、合わないのじゃないか、こう私は思うのです。それは故意犯なら故意犯で罰すればいいのじゃないか。しかし、未必の故意か過失か紙一重で立証がむずかしい、めんどうくさい。だから、罰則を上げて、そうして未必の故意犯に近い刑罰の最高限を上げて同じような扱い方をしよう、あるいはきびしくしよう、こういうような思想は、司法当局の考え方としてまことにおかしい考え方ではないかと私は思うのですね。未必の故意なら故意で罰すればいいのじゃないでしょうか。立証がむずかしいから、めんどうくさいから、この過失死傷罪の刑量を上げておいて、そしてむずかしいやつはこっちで罰すればバランスがとれる、こういう思想はおかしいのじゃないですか、いかがですか。
  40. 川井英良

    川井政府委員 提案理由の趣旨並びに私の逐条説明で御説明申し上げましたただいま御指摘のくだりは、未必の故意といいますか、それと紙一重のような非常に悪質なものが出てきている。だから、三年を五年に刑を上げたほうがいいというところに——作文はまずかったかもしれませんが、そういう結びつきのつもりではございませんで、実は現行法の禁錮だけにしているところへ懲役刑もあわせ加えた点が、重大な改正点の一つになっているわけでございます。従来、御存じのように禁錮刑というのは、政治犯とかあるいは過失犯というようなものに科せられるのが原則であり、常識でございました。ところが、本件は過失犯でありながら、過失過失として取り扱いながら、禁錮刑のほかに懲役刑もこれにつけ加える、こういう改正に相なっておりますので、従来の常識からかなり出た部分がございまするので、なぜ過失犯に懲役刑を加えるのだということの説明一つといたしまして、最近の悪質な二百十一条違反の事故というものを見ているというと、その中には未必の故意——未必の故意も故意でございますか、過失犯であることは間違いない。ないけれども、外形的に観察すると、未必の故意がある場合とほんとうに紙一重のようなきわめて悪質なものが続出してきているというところに着眼をいたしまして、そうだといたしまするならば、初めから刑を上げるのだというわけではございませんで、刑を上げるのはまた別な理由に基づきますけれども、その場合においては何も禁錮刑だけをもってまかなう必要はないのだ。故意犯に近いような悪質な過失犯については、今日の刑法の時代的な趨勢からいって、これに懲役刑を盛るということは差しつかえない、またそれが正しい方向だ、こういうことを言うつもりでそういうふうに作文をしたわけでございますので、未必の故意と紙一重という点は、懲役刑を取り入れてきたということの理由としてそこに掲げてあるものでございますので、そのように御了承を賜わりたいと思います。
  41. 板川正吾

    板川委員 この説明によると、「これらの事案は、故意犯に属するいわゆる未必の故意の事案と紙一重の事案であり、このように人命を無視するような態度で自動車を運転した結果、人を死傷にいたした場合も、単に故意犯でないとの理由で、禁錮刑ないし罰金刑によって処罰せざるを得ないことは、国民の道義的感覚からいってむしろ不自然」だ、こういっているのですね。だから、未必の故意が業務過失と全く区別しにくい紙一重の差である。だから、業務過失処罰する場合に、故意の刑量にある程度近づけた刑量を上げておいて、それで罰する。どうも司法当局としてはまことにおかしな論理じゃないか、私は実はそう思ったわけです。もし未必の故意でも故意という証拠を立てて、そうして故意犯の範囲というものを裁判なりで確定すれば、こういう場合にはもう未必の故意犯として刑罰を受けるぞ、こういう範囲が自然に裁判の中できまっていけば、私は、あえてこの刑法改正しなくても所要の刑量は得られるのではないか、実はそう思うわけであります。  そこでちょっと伺いたいのですが、こういう場合には、未必の故意ということになり得るかどうか。いわゆる相当因果関係というものが立証できるかどうかという意味ですが、ある人が車を所有して運転できる。その人は酒を飲むと、一種の狂暴性を発揮して酒乱になる。そういうことは家庭の人も友人も自他ともに認めておる。その狂暴性の限界は別として、そういう傾向を持っておる人がその車を運転し、途中においてまあ少しぐらいいいだろうというので酒を飲む。酒を飲んでいるうちにだんだんと性格が変わってきて、そしてその結果人を傷害した、こういう場合には、未必の故意という因果関係が成立するのでしょうか。
  42. 川井英良

    川井政府委員 ただいま想定されました問題点につきまして、たまたま本日法務省の中で法制審議会の全面刑法改正の第十二回の部会が開催されて、日本における刑法の有力な学者、実務家を網羅してただいま検討中でございますが、その検討の中で、御指摘になりましたみずから招いた精神障害による故意犯、過失犯の問題が議論されております。御存じのとおり、原因において自由な行為ということで、刑法議論の中でたいへん近代問題になっておる事柄でございます。そこで、想定されました条件だけですぐにそれが故意犯として認定できるかどうかということにつきましては、もう少し具体的な問題点についていろいろ確認した上でないと的確にお答えすることは困難であるし、また適当でないと思いますけれども、酒を飲んで運転をした。その結果事故を起こした。その事故をこまかく点検していきまして、酒を飲んでおったということ、めいていしておったということが過失の内容をなすかあるいはその過失の一部をなしておったというふうなことが多くの事故の場合多いわけでございますが、この場合においては、申すまでもなく、酒を飲んで、そのためにめいていして事故を起こしたということは、酒を飲んで運転したということ自体がすでに過失になりますので、過失犯として処罰されることは問題はないと思います。そこで、自分は大体酒癖が悪くて、酒を飲むというとわけがわからなくなったりあるいは乱暴なことをすることについていささかも抵抗を感じなくなる、そういう性癖のものであるということを自分もよく承知しておる。承知しておりながら、いま車を運転しておるのだ、ここでいま酒を飲めばそういうふうな状態になることがわかっておる、なおかつ自分はその状態の上でもって車を運転してうちに帰るというふうな状況のもとにそれをあえて運転して、その結果事故が起きたというふうな場合が、御指摘になったケースだと思います。これはまたそれだけの簡単な条件の想定だけで未必の故意を認定することができるというふうにいえる場合もあると思いますけれども、あるいはまたもう少しいろいろな条件と具体的な事情を加味して考えてみて、未必の故意を認定することは困難で、単なる過失犯に認定されるというふうなことになる場合もあろうと思いますので、場合によって、またさらに条件を付加いたしまして未必の故意に認定し得る場合もあろう、こういうふうに思います。
  43. 板川正吾

    板川委員 そういう事例が未必の故意として、故意犯として取り扱いができるようになれば、いま裁判官が量刑の上限がなくて困っている、天井が低くて困っておる、こういうようなことがたいへん改善されるのじゃないかという感じがするわけであります。  次に伺いますが、再三いままでいわれておりました悪質な交通事犯が激増して、現行法の禁錮刑三年の量刑では低過ぎる。そのため、最近は現行法の最高刑に近い刑で処罰される者が非常に多くなっております。現行法の最高刑が低いために、過失の態様、程度及び行為の結果に応じて適切妥当な刑の量定ができない、要するに天井が低過ぎて不便だ、改正理由でこう言っておるわけですね。そこで伺いますが、当局の予定しておる悪質な交通事犯というのは、主として酔っぱらい運転、ひき逃げ運転という交通事犯、こういうものだと思うのでありますが、主としてそうでしょうか。
  44. 川井英良

    川井政府委員 主としてそういうことでございますが、交通事故に限って申し上げますと、たくさんの事故を扱っておりまして、おのずから類型的に悪質なものが出てくるわけでございますが、その中で大体三つを予定しております。第一は、御指摘の酒を飲んでそういうふうな業務に従事する。その結果非常に大きなものが出てきておる。これは過失の点からいきましても、一番重大なものだと思います。それから二番目には、特に自動車の場合に、未熟な者の無免許運転によってまた非常に重大な、目をみはるような事故が出てきておると思います。これが第二のものであります。その他きわめて無謀な運転、六十キロのところを百二十キロ出したり、あるいは四十キロのところを八十キロで運転しているというようなきわめて無謀な運転、それから信号を無視して通ってしまう、あるいは著しいわき見運転とか、あるいは通りがかりの女性をからかって無謀な運転をするとか、あるいはオーナードライバーをじゃまするために前へ行ったりしてつきまとうような運転をするとか、まことに常軌を逸したような運転の結果による事故かなり出てきておるのでありますけれども、そういうようなものをひっくるめまして、きわめて無謀な運転操作による事故というものを、私ども一応悪質なる事故の範疇に入れて考えております。
  45. 板川正吾

    板川委員 刑事局で出しました資料の一一五ページに「重大な人身事故の具体的事例」というのがございますね。これは昭和三十七年一月一日から四十二年十月三十一日まで約六年間、三年以上の自由刑の言い渡しがあった事例として報告のあったものをまとめた、こうありますが、百七十九件ここに集録されております。この百七十九件のうちに鉄道関係が七件ありますから、自動車関係は百七十二件ということになりますね。この百七十二件のうち、内容を分析してみましたならば、めいていして運転したというのが百十件です。逃走、ひき逃げ、これが九十四件です。そしてめいていして運転しておるし、しかも事故を起こして逃走、ひき逃げしたという重複しているのが七十一件です。酒を飲みひき逃げをしたものの合計が百三十九件で八一%。この中にはなるほど無謀運転もあるだろうし、無免許運転も若干ありますが、こういう大きな人身事故の具体的事例を分析すると、酒を飲んで事故を起こす、無謀運転というのは、主として飲酒の結果無謀運転になるのですね。それからひき逃げ、これも酒を飲んでひき逃げというのが多いのです。こういうように、この百七十九件を分析してみますと、大半がひき逃げであり、飲酒運転だ、こういうふうに理解していいと私は思うのです。無謀運転、無免許運転とか言っておりますが、この資料を分析したところによると、そういう数字が出てくる。無免許運転というのはわずかです。無謀運転というのは、酒飲み、酔っ払い運転の中に入ると思います。そういう分析のしかたをしますと、酔っ払いひき逃げの交通事犯で、現行法で最高刑は幾らということになるのでしょうか。
  46. 川井英良

    川井政府委員 二百十一条が最高刑禁錮三年で、それからそういうふうな事故を起こした上に届け出をしないで、また被害者の救護をしないで、ひいて逃げたというふうな場合には、道交法のほうで懲役三年という刑があるわけでございます。そこで、よけいなことですが、人をひいたということが本体になって、本体のほうが禁錮三年で、逃げたというほうが懲役三年——御承知のとおり刑法では禁錮は懲役の半分だということになっておりますので、それを禁錮に直しますと、逃げたほうは六年になるけれども、人をひいたほうは三年でいいのだというアンバランスが、私ども専門家の間で非常におかしいじゃないかということが前から言われております。これはよけいなことでございますが……。そこで、ひいて逃げた場合には、多くの場合併合罪になるわけです。併合罪になりますので、重いほうの一倍半ということになりますから、ひいたほうではなくて逃げたほうの一倍半ですから懲役四年半、処断刑懲役四年半の中で、刑罰を言い渡しておる、こういうことになるわけです。
  47. 板川正吾

    板川委員 そうですね。ひき逃げのほうは道交法百十七条で懲役三年、刑法二百十一条で禁錮三年、この場合には重いほうをとりますから、刑法四十七条で重いほうの五割増しということになりますから、ひき逃げの場合には併合罪で懲役四年半。それから酔っ払い運転して業務過失死傷をやった場合には、道交法百十七条の二で懲役一年、刑法二百十一条で禁錮三年、したがってこれは重いほう、禁錮三年の一倍半、禁錮四年半、こういうことになりますね。そこで、再三刑事局長が言っておる、悪質事犯の最高刑に近いものが多くなって、要するに天井が低過ぎる、これ以上刑罰を重くしたいと思っておるが、しかしこれはそれ以上ないから困る、こう言っておられることがこの改正理由の中の一つになっておりますが、従来の悪質事犯に対する判決の実績は、確かに言われるように最高限にいっておりますか。要するに、ひき逃げの場合には四年半、酔っ払い運転、人を死傷したという場合には四年半の禁錮、片一方は懲役、この最高限に実績がいっておりますか、この提案理由のいうように。
  48. 川井英良

    川井政府委員 ただいま御指摘の資料の中に、禁錮三年半とか懲役三年半とかいうものが二つ三つ出ておりますけれども、これはまさに併合罪加重した上で処断刑懲役四年半ないしは禁錮四年の範囲内でもってそういう刑が盛られたものでございます。そこで、現行法のたてまえの上からいっても、四年半ないしは四年まで上げるべきじゃないかというふうなことでございますけれども、いわゆる法定刑と、刑法にいうところの加重減軽をした処断刑と、それから実際に裁判所が言い渡す言い渡し刑、この三つの関係というものは、それぞれそれなりに特別な意味を与えられているわけでございまして、申し上げるまでもないことでございますが、法定刑というものが刑法という先ほど御指摘の安定された法律の中でいかように定められているかということが、私はこの法秩序の面で非常に重要な意味を持っているものだというふうに理解しておるものでございます。そこで、たまたまほかのいろいろの併合罪加重というふうなことが行なわれた場合には、その法定刑よりさらに重く処断刑がきめられるんだ、その範囲内でも十分まかなえるのじゃないかというのは、なるほど一つの理屈ではあろうかと思いますけれども、およそ刑法というものは、法律をたてまえとして国民全体といたしまして最低限度の法の秩序といいますか、それを条理として行動を律していくというふうな場合に、たまたま加重されたような処断刑をもととしてものごとを論じていくのではなく、やはり本来の法定刑というふうなものを基準として、そこに日常生活の規範を置いて行動していくということが、初めて法の秩序を維持するということについて重要な意味を持ってくるのではないかというふうに考えるものでありまして、先ほどもちょっと触れましたけれども、ひいて禁錮三年、逃げて懲役三年ということは、法体系の中ではこういうふうなつじつまの合わない矛盾というものは、おそらくほかの法律では発しようと思っても非常に困難な存在ではないかと思われるものでございまして、その一事をもっていたしましても、二百十一条のほうは、何とか早目に道交法の刑のバランスとも合うようにこれを改正していくということがぜひとも必要ではないかというふうに思っております。  それから、よけいなことでございますが、酒を飲んでやった場合においては懲役が一年、それからひいたほうは禁錮三年、こういうことになっておりますので、重いほうの一倍半ではございますけれども片方のほうが一年で頭打ちになっておりますから、刑法のまた別な条文によりまして、最高刑は禁錮四年半にはなりませんで、四年が処断刑に相なっておりますので、四年ないし四年半、こういうふうに御説明申し上げました。御了承いただきたいと思います。
  49. 板川正吾

    板川委員 この提案理由の中に、先ほども言いましたが、「数において激増しつつあるのみならず、質的にも高度の社会的非難に値する悪質重大事犯が続出し、法定刑の最高限またはこれに近い刑が裁判において言い渡される例も次第に増加しつつあるのでありまして、この際、この種事犯中特に悪質重大なものに対して、より厳正な処分を行ない得るものとするよう必要な法改正を行ないます」こういっておるのですね。われわれしろうとでありますが、ではこの裁判の実績は、確かにこの提案理由のいうように、最高限に近い判決が言い渡されておる、この法定刑はいわば処断刑であろうと思うのです。この処断刑の実績を見ました。先ほど言いました百十五ページの、過去六年間の百七十九件について調査をしてみました。そうしたら懲役刑は、三年半というのがたった一件であります。三年が四件、二年から三年が一件、一年八ヵ月から三年が一件、二年八ヵ月が二件、二年半が九件、二年四ヵ月が二件、二年三ヵ月が四件、二年二ヵ月が一件、二年が五十三件で、合計七十八件、また禁錮刑を受けた者が、最高と言われるのは三年半、これが一件です。三年が五件、二年から三年が一件、二年半が二十一件、一年半から二年半が一件、一年から二年半が一件、二年三ヵ月が四件、二年が六十七件、合計百一件、合わせて百七十九件ですが、この実例から言いますると、現行法の四年半、四年、この処断刑の範囲からいって、どうも提案理由の説明というのが実情に即していない感じがしますね。もういわゆる上限に近い判例がどんどん出ておって、頭がつかえておるという説明でありますが、そんなに頭がつかえてないじゃないですか。これはどういうふうに説明されるのです。
  50. 川井英良

    川井政府委員 頭打ちの傾向ということを申し上げてきたわけでございますが、法定刑一ぱい一ばいの刑が百も二百も三百も出るというふうな事態刑法犯についてもし出てくるとするならば、これは私は異常な事態だと思うわけでございます。今日日本の裁判所刑法犯について言い渡す事例を見ましても、たとえば傷害なんかは十年以下の懲役刑を、自由刑を規定しておりまするけれども、傷害で三年の刑とか五年の刑とかいったようなものはおそらくないのじゃないかと思うわけでございます。それからほかの故意犯についても同じでございますが、要するに裁判の実情は、長年の実績を勘案いたしまして、法定刑の下のほうに集中しておる、上のほうにはほとんどいってないというのが裁判の実情でございます。これはどういう事情になるかということはまた検討を要しましょうけれども、とにかくそういう実態を示しております。ところが、ひとり二百十一条関係につきましては、ここに表に書いておきましたように、三十年に三件でありましたのが、三十五年には八件、三十六年にはまた八件、三十七年には十八件、三十八年には二十件というふうに……(板川委員「四十年には減っておるでしょう」と呼ぶ)三十九年には同様二十件、四十年には六件、それからその隣にまた二年以上が書いてありまするけれども、そういうふうな事例がとにかく出てきておるわけであります。今日その他の刑法犯の類型の中で、法定刑の併合罪でありましても、処断刑の一ぱい一ぱいでなくて、併合罪であってなおかつ一番重いもののほうの法定刑の一ぱい一ぱいいくというような例は、おそらくさがしましても出てこないじゃないかというふうな裁判の実情におきまして、六件でも五件でもとにかく毎年最高刑をいく犯罪が出てくる。そういう異常な犯罪が出てきておるということは、たいへん異常なことだと思います。先般最高裁の刑事局長もここに出てまいりまして答弁しておりましたが、裁判官の経験から、法定刑の一ぱい一ぱいを盛るということはまずまずないことなんだ。なぜならば、自分が今度これから裁判する事例の中でこれ以上悪質なものはない、これが最高に悪質なんだというものでないと、法定刑の一ぱい一ぱいは盛れないのだ。なぜならば、法定刑というものはそういう性格のものなのだということをしみじみと自分の裁判官の体験から答弁されておりました。私、裁判官の経験はございませんけれども、検察官としては長い間体験を持っておりますが、検察官として非常に悪質なものだということで求刑をするというふうな場合におきましても、同じような気持ちを経験したわけでございます。もし実務家の体験にしてしかりといたしますならば、かりに六件でありましても、八件でございましても、最高刑を言い渡されたというふうなものが出てきている、さらに二年とか二年半というようなものはそれに次いでございまして、何十件となく増加の傾向にあるということ、これは私ども、もう頭打ちでもってにっちもさっちもいかないというふうに申し上げることはいささかオーバーでございますけれども、二百十一条に関する限り、量刑の実際は頭打ちの傾向を示してきた、こういう表現は決して間違っていないのではなかろうかというふうに考えておるものでございます。
  51. 板川正吾

    板川委員 裁判官がその体験上そういういろいろの経験を述べられることば自由でありますが、しかし、これはわれわれはこう考えるのですね。最高刑は、これ以上の犯罪がないというのでなければ最高刑を科することはできないのじゃないかと言われるが、しかし、刑罰の最高刑は死刑である。これだってずいぶん世の中にある。で、こういう刑罰が最高刑に近いものがたくさん出てきたから、だから刑罰が上げるんだという思想は、私はおかしいと言うのです。出てきたってしようがないじゃないですか。問題は、じゃなぜしようがないかというと、最高刑が出るようなことが、そういう社会情勢というのがあるのだから、それを反映しているのだから、そこで問題がどこにあるのか、そういう犯罪がふえるのはどこにあるのかということを社会全体が考えるという一つの傾向にもなるのじゃないですか。刑罰の上限に幾つか、日本じゅうで五件か八件なってきたから、だから刑罰を上げるという思想は、逆におかしいのじゃないですか。いまのままで刑罰のほうは目一ぱいに上限までくる例が多かったら多いで、これは国全体、社会全体が、なぜそういう悪質犯が起こるのか、いまの交通事情からですよ。そうして国全体、社会全体が考えて、そういうことがないような方向を、対策を考えるのが普通じゃないですか。それを上限にくるのが五件か八件あるからといって、刑量を上げるという思想が私はおかしい。そうして処断刑の実績を見たって、七十八件のうち二年という懲役刑——四年半が最高限であるが、二年というのが五十三件ですよ。大体下のほうじゃないですか。言われるように、禁錮刑百一件の中で、二年というのが——四年まで出てこようというのに、二年というのが六十七件じゃないですか。酔っぱらい、ひき逃げですよ。だから、決して上限に集中しているとは実績からいって言えないですね。いま説明されたように、なるほど刑法二百十一条関係で三十五年の五件、三十六年の七件、三十七年の十六件、三十八年の十八件、三十九年の二十件、ふえております。ふえてきてこれ以上ふえたらたいへんだから上げると言っておられるが、四十年はわずか五件ですね。三十五年と同じですよ。だから、この四十一年、二年はおそらくこれまたたいしてふえてないと思うのです。おそらくふえていればこの表に載ってくるはずです。だから、この最高限が多少あるからといって刑罰を上げるという思想がおかしい。これはいわゆるいまの憲法なり教育刑中心の思想というものじゃなくて、応報刑法理論というものを重視している考え方じゃないかと思うものですから、この点について私は反対ですが、意見どうですか。
  52. 川井英良

    川井政府委員 犯罪が発生するということについて、刑罰の分野におきましては刑法という規定を設けまして、そうして一般的な犯罪発生の予防をはかるとともに、犯した者については、応報ないしは教育的な意味を含めて、それについて定められた刑罰を科すということによって社会の秩序を保っていこうというのが、刑法という法律の持っている機能であろうと、こういうふうに一般に理解されておりまするし、私もそう思っておるわけでございます。その前に、犯罪が発生したということに対して、刑法刑罰だけでもって、刑務所へ持っていくということだけですべて事足りるのかということになりますと、社会全体としては決してこれだけで事足るわけではございませんで、もしそれだけでいいということになれば、法務省だけあれば済むことなんだというわけでございますが、そうではございませんで、失礼な言い方でございますけれども、非常にたくさんの各省が設けられまして、万般の行政施策を遂行するということによって社会の秩序を保っていこうということでございまするから、私どもは私どもなりに、法務省ないしは検察というふうなものの役割りを、そう積極性があるものであり、人に先んじて、先を歩いていくというような気持ちは毛頭ないわけでございまして、むしろこれは補充的なものであり、あるいは場合によったら間接的なものであり、消極的なものであっていいと思うわけでございまして、その他の万般の行政施策を推進いたしまして、その結果、やむを得ず犯罪が出たというような場合に初めて私どもの出番が出てくるのじゃないかというふうな気持ちで、実は運用をいたしておるわけでございます。  したがいまして、このいま問題になっております交通事故が多発してきた、だから刑を上げる、それから頭打ちになったから刑を上げるのだというだけでは理屈が通らぬぞとおっしゃいますけれども、そこだけをとってそういうふうに論じ詰められますというと、まさにそのとおりでございまするけれども刑法の持っておる機能は、一般的な社会防衛といいますか、犯罪防止という面についての大きな機能を持っておるということは、これはすべての人が認めるところでございまするし、また不幸にして罪を犯したという者があるならば、その情状を十分に調べて、それは雇い主の過酷な労働条件のために犯された事故だということでありますれば、その事故に関する責任はその限度において軽減されて、逆にまた雇い主についての道路運送法ないしは労働基準法というふうな違反についての刑罰的な面では措置がとられるということによって、その辺のところの具体的な妥当性を期していこうというふうな事柄でありまして、刑罰が頭打ちになっているというのは、今回の刑法改正をお願いいたしました数個ある理由の中の一つの理由に相なっておるというふうに、ひとつ御了解を賜わりたいと思います。
  53. 板川正吾

    板川委員 時間がないですから、あと二点ほど申し上げます。  この業務過失死傷という問題をいま考えると、私は自動車を運転する者、運転手、これがどうも現在法のもとに平等な待遇を受けていないという感じがする点があるのです。その一例をあげてみますると、たとえば三十八年十一月九日三池三川鉱でいわゆる石炭会社で坑内の炭じんが爆発して四百五十八人が死亡し、七百十七人が重軽傷を負ったのですね。これは私ども法律に詳しくない一般国民考えるならば、業務過失死傷罪に当たると思います。ところが、その炭鉱主は不起訴になっておりますね。業務過失死傷等の罪に問われるどころか、不起訴になっておる。一体これはどういうわけでしょうと、われわれは考えます。たとえば炭鉱内の保安設備にもっと金をかければ、事故防止できたかもしれない。しかし、炭鉱の保安設備にあまり金をかけない。だから、ささいな人間のあやまちによって大きな爆発を起こす。これを不起訴にしておるから、だからその後相次いで炭鉱の爆発が起こり、多くの人命が失われておる。まさにこれは業務過失死傷罪に当たる。しかし、これを罰した例はあまりない。皆無とは言いませんが、あまりない。あっても、それは保安係とかなんとかという程度のものであって、当然保安の設備を責任を持って強化すべきである経営者に罪を問われるということはない。それからまた、飛行機が墜落しても同様でありましょう。これまた経営者がその業務過失死傷罪に問われるということはない。炭鉱飛行機やあるいは高速度鉄道も同じでしょうが、なぜ経営者に対して法はそういうふうに寛大であるかといえば、おそらく炭鉱という業種、態様からいって、ある種の危険はやむを得ない。飛行機も、空飛ぶ以上は万が一ということもあり得る。高速度鉄道も万が一ということもあり得る。その万一の危険のマイナスよりも、飛行機を飛ばし、石炭を掘り、高速度鉄道を運転したほうが、国家的、経済的、社会的にプラスがある。だから、多少の危険があっても、まあ大目に見ようということではないかと思う。まあそういう思想のゆえかどうか知りませんが、とにかく司法当局というのは、資本家等にはまことに寛大である。しかし、一方道路交通という面から問題を見ますると、時間がないから私ははしょりますけれども、この道路交通法二十六条では、同一方向に進行する車両が、——同じ方向に行く場合には、前の車が急停車しても追突しないだけの安全な車間距離をとって運転しろということが、道交法二十六条に明記されております。これは御承知のとおりであります。しからば、都市交通——東京都内で考えた場合に、東京都内の道路というのは、時速四十キロ制限というのが、特定の高速道路は別としまして、ほとんどであります。四十キロの速度で、一体どれだけ車間距離があったならば、前の車が急停車しても追突しないで済むか、これは警視庁の交通行政の指導基準というのが、四十キロで走っておった場合には車間距離が十五メートル以上ということになっておりますね。これは間違いであれば、あとで交通関係者から訂正してもらいたい。間違いないと思う。十五メートル以上の距離を持たなければ、東京都内の時速四十キロの道路では前とうしろの車が走れない、走ってはいけないという基準になっておる。しかし、この間のNHKのテレビによると、NHKでは交通事故研究班というのがあって、交通事故実態をいろいろ研究しておりました。追突というテレビの報告があったのでありますが、そこでは今日東京都の時速四十キロの道路で、車間距離は平均四メートルだそうです。法律が示す基準よりも、その四分の一ですね。四メートルで四十キロで走っておって、前の車が急停車したならば一体どうなるかというと、二台、三台、四台追突は免れない、こういう状況だと、NHKのテレビで事実を示しておりました。そうしますると、私は、今日交通関係労働者、運転手、おまえたちは悪質な事故を起こすから罰則強化をするということであれば、警察庁交通局は、これは車間距離を十五メートルずつ離すような指導をすべきだ。それより縮めたらいかぬ、こういって指導すべきだと思う。そうでなければ、時速をずっと下げざるを得ない。先ほど四十キロでは十五メートルでありますが、二十キロなら六メートルです。三十キロなら九メートルですから、時速制限というのをずっと低めればいい。しかし、時速制限をずっと下げたり、車間距離をその基準どおりにやったら、今日の東京都内、都市の交通というのは、全く麻痺してしまう。このことがいま都市交通実態なんだ。それを取り締まらないというのはなぜかというと、それはなるほど車間距離四メートルというのははなはだ危険であるが、しかし時速を下げたり、車間距離を十分とったりしたのでは、社会的、経済的に非常にマイナスの面があるから目をつぶっておると、私はこういうんじゃないかと思うのです。だから、そういう実態の上に、刑罰のみを強化して、そうして刑罰の威嚇で事故を予防しようという思想は、私は、少し先ばしっているんじゃないか、国全体がもっと交通安全というものに対する施策というものを強化しなくてはならぬじゃないか、こう思います。外国では、交通違反の罰金を交通安全の教育の費用にずいぶん充てておるそうであります。アメリカでは小学校、中学校、高等学校まで、交通安全教育というのは必須科目である。そうしてその費用は何かというと、交通違反の罰金の金が七五%、あとは自動車、ガソリン屋から自動車を寄付してもらって、実務で交通安全の教育をする。それでも事故が量的には日本より多いかもしれませんが、しかし、そういう交通安全の教育を徹底しておるからこそ、私はあの程度で済んだんじゃないか、こう思うのです。だから、私はそういうような刑罰をもって交通安全を期待する、こういうようなことは、実際はそうならない。だから、交通安全を確保するためには、交通安全の教育もそうだし、道路の整備もそうだし、安全施設をつくる、歩道橋をつくる、あるいは歩道をつくる、いろいろなことが必要でありましょう。そういう方向へ私は、国全体、社会全体の目を向けなくてはならない、何か罰則を強化すれば事故が減るような感覚を持っておられることに問題があるだろう、こう思います。いかがですか。
  54. 川井英良

    川井政府委員 いろいろ仰せがございましたが、最初の炭鉱事故について、ちょっとお答えしておきたいと思います。  これは先ほど御指摘になりました、私どものほうから出した資料の中にも、六十六というのが、炭鉱事故禁錮二年とかいろいろございますが、三井三池炭鉱の場合におきましては、捜査の実情について、私、当時最高検察庁におりましてこの事件の担当をしておりましたので、よく承知いたしておりますが、結論におきまして過失を認定することができなかった、こういうことでございます。それから一昨年北海道の夕張炭鉱であれに次ぐような大きな事故が発生いたしましたけれども、これにつきましては、捜査の結果、過失を認定することができるということで公判請求をいたしまして、目下札幌地裁で審理中でございます。その後に起きた九州の事故におきましても、同様公判請求をして審理中の事故がございます。したがいまして、特にそういうようなものについてやらないというわけではございませんで、申すまでもないことでございますが、過失があるものにつきましては、公訴を提起して刑罰を求める。過失を認定できないものについては、これを不起訴に付すということも、結果においてやむを得ないところだと思いますので、御了承賜わりたいと思います。  それから都市交通における交通実態でございますが、私も御指摘のとおりの状態だと思います。思いますけれども、そういうふうな状態にあるから人命は損傷されてもいいのだろうかということが、私の大きな疑問でございます。私は、とれと並行し、ないしはこれが前提となって、いろいろな施策を傾けて全体として政府が大きな政策を打ち出すとともに、御指摘のありましたように、それを強力に実施するということが何よりも必要であるということにつきましては、全く同感でございます。さりながら、それを待っておりまして、その間に今日、昨年の統計でいうならば、一時間に一人半、四十八秒に一人ずつ事故によるところの傷害ができております。こういうふうな実情に対して、その他の万般の施策につきましてはどんなに強力に迅速にやりましても、かなりの時間を要することは当然でございます。その際に、その一環といたしまして、この程度刑法に手直しを加えて、その一般的な防衛とともに、さらにこの種の業態に従事する者に格別の注意を喚起するということは、私、決して矛盾していない、こう思うわけでございまして、要は、運用におきまして、御心配のような乱雑な運用にならないで、刑法規定といたしまして、ほんとうに悪質重大な者についてのみ加重された刑罰の範囲内において刑を持っていく、いままでどおりのきわめて慎重な検察当局と裁判当局のこの刑罰運用を期待していくということが、一番大事であろう、こういうふうに思います。もちろん私ども法務省として手の届く分野におきましては、検察とも協力いたしまして、その運用については深甚の考慮を払って間違いないようにやっていきたい、こう思うわけでございますが、酒に酔って車を運転する。無免許で車を運転する、そして事故を起こす、こういうようなものは、私どもどんなに道路を広くいたしまして、それからどんなに労働条件をよくいたしましても、ある程度避けられないことじゃないか、こう思うわけでございまして、酒を飲んで運転するのも、無免許で運転するのも、その結果重大な事故を起こしたというような者につきましては、まさに私この刑法が出る出番ではなかろうか、刑法の負担すべき分野じゃなかろうかというふうにも考えておるものでございますので、どうかひとつ慎重な運用を万全の対策をもって講じていきたいというところに御信頼をいただきまして、御了承を賜わりたい、こう思うわけでございます。
  55. 板川正吾

    板川委員 最後に一言。われわれも犯罪を犯した者をそのままにしておけという意味じゃないのです。現行法でもその効果はいいじゃないか。そして問題はなぜそういう犯罪が起こるかということにわれわれ全体が目を向けて、その根本をつかなければ、幾ら刑罰を強化したところで問題が解決するわけじゃない、こう思うのであります。  そこで、最後に一つだけ申し上げますが、交通犯罪というのは、正直のところ、いまの日本の交通事情からいって、犯罪をなくすというわけにはいかないですね。そこに刑法の守る分野がある、こういうことは私も認めます。しかし、罰則の強化でなくて、私は実際は被害者の救済という制度を、親切な政治という意味から、もっと根本的に立て直さないといけないのじゃないかと思います。被害者の立場になって考えてみた場合に、それはひき逃げしたやつはけしからぬ、酒飲んでけがさせたのはけしからぬ、 こう思います。しかし、起こってしまったとすると、人間というのは半ばあきらめて、あとは、この損害をどうしてくれるんだ。損害が起こってしまった、しようがない、災難と見て、あとは損害が完全に補償されるなら、次善の策としてやむを得ない、こういう気持ちになりますね。事故を絶滅するわけにはいかない、とすれば、次善の策として、私は、刑法改正よりも、自賠法を強化して被害者の救済に全体の方向を向ける、これが次善の策として必要じゃないか、こう思うのです。これは刑事局長の分野じゃないのですが、次官に答弁してもらってもいいのですが……。ですから、被害者は、加害者が懲役三年か五年かということは、そんなこともうそれほど問題にはならない。損害をどうして補てんしてくれるか、賠償してくれるかというところに問題がある。いまの日本の自動車賠償の損害保険の最高額というのは三百万ですね。世界各国見ますと、イタリアはちょっと低いのですが、ほかはもう一千万をはるかにこえている。フランスのごとき三千万というのもありますね。私たち、この自賠法の最高限というのを少なくとも二倍程度、ほんとうは一千万以上にしたいのだけれども、急にできないというならば、とりあえず六百万程度、二倍程度に上げる。そうすると、掛け金が大体六割ほど高くなるそうです。掛け金が高くなってもよろしい。どうも自動車保険が高いから車を持たないという人があれば、これは、この際いまの交通事情からいって、社会に協力してもらうために車を持つことは遠慮をしてもらってもしようがない。こういう自賠法の制度をもっと強化するということのほうが、実は当面の急じゃないかと思うのです。それから事故が起こって、裁判をやって、そして判決で勝訴したといっても加害者から実際金が取れないというのが三分の一ある。それから、いまの交通事故の大半は、裁判による公正な解決ということよりも、示談屋に頼んだり、あるいは加害者、被害者が相対で話をきめる。きめるから満足しているのかというと、そうじゃないのですね。大部分が不満なんですね。こういうことを考えた場合に、去年六十五万件、おそらくことし八十万件、来年は百万件近くなるでありましょう、自動車がこのままふえるならば。だから、そういう膨大な被害者に対して、もっと救済的ないろいろな手段というものを強化することのほうが、当面私は刑罰強化の方向よりも正しいあり方じゃないか、こう思いまして、この刑法二百十一条の改正にはどうしても賛成できかねるという気持ちであります。  時間がないようですから、私はこれで終わります。
  56. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 松本善明君。
  57. 松本善明

    ○松本(善)委員 法務大臣にお伺いしたいと思うのですが、この刑法の二百十一条を変えるという問題につきましては、交通関係労働組合をはじめとして、相当広い範囲の反対があります。私のところにも、毎日のように電報でこれはどうしても困るという要請がきております。そういう状態でありますが、法務大臣としては、この反対運動が起こっている理由ですね、なぜ反対をされているというふうにお考えになっておるか、どういう認識を持っておられるか、それをまずお聞きしたいと思います。
  58. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 この刑罰が、禁錮三年以下というのが懲役五年以下あるいは禁錮五年以下ということで刑が重くなるということになれば、私は一部の反対は当然あるだろうと予想をするのであります。しかしながら、いまの日本における交通事故というのは、これは実に驚くべきほどのものでございますので、政府をあげてひとつあらゆる面からこの交通事故を撲滅するということが、人道上の私は大きな問題だと考えておるのであります。乱暴な操縦をやってとうといまたとない人命をそこなったような場合に、三年以下の禁錮というようなことは、いまの時勢に合わぬのじゃないか。なお。交通事故をできるだけ少なくするという人道上の目的からも、それが合いにくい、こういうふうな私は考え方を持っておる。それであらゆる有効適切なる方法をすべてひとつ出して、そうして六十数万件というもの、あるいは将来またふえるかしれぬ、それをなくするようにするという趣旨には、あまり反対な方は少ない。人命尊重事故を少なくするということについての反対は、あまり私のところにはまいらない。私は、そういう意味からいたしまして、ぜひともひとつ今度の改正については御協力をお願いしたい、かように考えております。
  59. 松本善明

    ○松本(善)委員 私のお聞きしておりますのは、法務省の提案理由や大まかな考え方というものは、存じておるつもりなんです。いま法務大臣言われたように、人命尊重交通事故をなくするということについては、だれも反対している人はいないわけです。にもかかわらず、非常に広範な、実際に交通に携わっておる労働者が反対をしている理由を、法務大臣はどういうふうに見ておられるか。あるいは知らなければ知らないでけっこうです。そういうものは一切知らぬ、いままで聞いたことがないということであれば、けっこうです。法務大臣が理解しておられれば、どういうわけで反対をしておるというふうにお考えになるかということです。
  60. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 私は、そういうことにほんとうに反対するという心境というものが想像ができない。やっぱり人道の上からいって、交通事故を少なくするとすれば、それが役立たぬという意味で反対をされるのかしらんと、これは想像でございますが。私は、大事な人命にたいへんな危害を負わしたのだから、軽い刑よりも適切なる刑をかけるということは、事故防止の点から役立つというのでありますので、むしろ私のほうから反対理由というのをお伺いしたい。人道上からそれが事故防止に役立つというたてまえから、こちらは考えておる。ほかには考えがないわけであります。それに反対があるということはこちらからひとつお伺いして、それについて私またお答えをしたら、話がスムーズに直截簡明にいきやせぬか、こう思うわけであります。
  61. 松本善明

    ○松本(善)委員 法務大臣御存じないらしいのですが、この刑法の一部改正案が何度も国会にかかっている。しかし、なかなか成立しないということであれば、当然なぜ反対をされているのだろうか、その理由はどういうところにあるだろうかということについて、もっと熱心に十分検討して、それに一体理があるのかどうかということを検討した上で提案されておるのかと思うと、どうもそれは違うらしい。それはとうてい想像できぬということで提案されているということでは、私は国の行政を預かる方として十分なものではないのじゃないかと思うわけです。思うわけですけれども、続けてではお聞きいたしましょう。  警察庁が言っておりますことでも、一台当たりの事故の件数は減っておるのであります。たとえば、警察庁が言いましたところでは、昭和二十一年には死者は一万台当たり二六四・六です。ところが三十一年になると、死者は一万台当たり三九・三です。四十一年になりますと、死者は一四・九です。負傷者についてもそれぞれ数がありますけれども、それは省略いたしますけれども、激減をしておる。一万台当たりで計算しますと——一台当たりでも同じことですけれども、要するに一台当たりの事故件数はうんと減っておるということになると、これは単に個人の運転者の問題でないということが、統計上明らかになっていると思うのです。法務大臣は、この点については、そういう数字を示されてどういうふうにお考えになりますか。
  62. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 私は、やはり事故が減るということは望ましいことで、操縦者が非常な注意をする、露骨なことを言うならば、酒なんか飲んで乱暴な操縦をやらないというような例をあげると、そういうことが減ったことでも事故は減るだろう。また、一方においては、歩行者といいますか、そういう方も注意をする。両方の者ができるだけ注意を払う。それから取り締まりをやる交通巡査のような職務上の方も注意をする。こういうものは、ただ一部の一方面だけでなくて、私はあらゆる面からの注意が届くということが事故が減る一つ原因であろうと考えております。この刑の問題についても、何も刑を重くしたから簡単に事故がそれでまたたく間にものすごく減るということを、はっきりと私は数字であらわすことはできないが、いまのような軽い不適当なものよりは適切なる刑に処するほうが事故防止に役立つ、こういうふうな考え方から、私はこれを考えておるのであります。事故防止原因はいろいろその他にもまだあろうと思いますが、要するに私は、あらゆる面から協力をして事故を減らすという値打ちのある、また当然これはやらにゃならぬ重大な問題である、こういうふうな考え方をしております。
  63. 松本善明

    ○松本(善)委員 私がお聞きしておりますのは、一台当りの事故件数がぐっと減っておるということにあるならば、個人の注意義務の問題でなくて、これは自動車がうんとふえているからなんです。事故全体としては減ってない。しかし、一台当り、あるいは一万台当たりの事故件数はうんと減っているということになると、交通事故をなくすための対策を考えます場合、交通事故原因というのが、そういう個人を処罰するというところにあるのではなくて、急激に自動車がふえている、いまモータリゼーションということばがありますけれども自動車をどんどんふやしていく、そのことによって産業を活発にしていくという考え、それが安全施設を伴わないでどんどんふえているわけですが、そこに根本原因がある。だからこそ、事故をなくすというために個人を処罰するということに重点がいくのではなくて、やはり安全施設あるいは労働者労働条件の向上というようなところに主眼を置くべきではないか。そこに焦点を合わせていかないで、交通労働者に責任を転嫁していくような処罰を重くするという考え方の法案に反対だ、こういうことが交通労働者の大きな理由になっておるわけです。これについては、法務大臣どう考えられますか。
  64. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 私は、あなたとその辺は考えが違います。あらゆる方面から交通事故を少なくするというのが、政府のとるべき方針である。これはどこか一部だけをやって、それでもって交通事故が防げるというようなことは、私は考えられない。われわれの思い立っておるのも、これだけで日本の交通事故をなくしてしまおうというような大それた考えは持ってないが、これは相当役立つということについては、私はさように信じておるのであります。そのほかにおいても、交通教育を徹底させるというようなことも、これまた非常に必要なことで、学童その他においても、子供のときから、日本の道が狭くて車が多いということが避けられないのだから、交通教育を施すというようなことも、例をあぐればまたこれも相当な効果がある。しかし、とにかく一年に六十何万件というけれども、驚くべき数にのぼっておるのを、簡単に、このためにこれが起こったとか、このためにこれが起ったというふうに割り切るのには、あまりに被害が多いという考え方を私は持っております。それは処罰も適切なる処罰をやることは、確かに交通事故をなくすることに役立つ、その他いろいろなことをあわせてやることがまた同時に役立つ、こういうふうな考え方で私はこの法案をお願いをして、ぜひ通したい、こういうふうな考え方を持っております。
  65. 松本善明

    ○松本(善)委員 私も、悪質な者を処罰をするということについて、これに反対をするというつもりはありません。ただ、法務省の言いました提案理由では、結局悪質重大な者に関しておもに考えているのだということであります。その悪質重大な、いわゆる法定刑の上限に近いものという数は、全体の事故からすればきわめて少数なものなんです。ここに法務省の資料によりましても、昭和四十年度で三年以上は六件、二年以上は六十五件、これは交通事故全体から見ればほんとにごく一部のものなんです。交通安全対策としてはこれはむしろそういうところが焦点ではないということは、この法務省の資料によっても明らかなんじゃないかというふうに思うわけです。ほんとにごく一部のことではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  66. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 たとえその者がおあげになりましたように少なくとも、そういうところに力を入れて悪質なる違反者には前よりも重い刑を科するということは、非常な大きな効果があると私は考えるのであります。露骨に言いますと、交通事故なんかは好ましくないのだからこういうことをやっちゃいかぬと言うだけでも、やっぱり相当の効果があるのじゃないかと思うのです。悪質の者にいまよりも重い刑を科するということは、またそれが非常な警告にもなるし、ひいては業界全部に相当の警戒と注意をする気風を助長すること一は、当然だと考えます。ただ、悪質の件数が少ないからそれだけが注意するというのじゃなくて、自動車の運転等については注意しなければならぬ、不正常な、酒を飲んだり、また全然睡眠をとらぬで乱暴な操縦なんかはやってはいかぬ、そういうことをやるといまよりも重くなる、これは社会に対する一つの非常な警告と申しますか、そういう点からいっても、その効果はたいへんな効果があると思う。ただそれが何件あるからそれだけを警告するのじゃなくて、だれがいつそんなことをやるかわからない、六十何万件のうちで、乱暴な操作をやる人間というものは何もきまっておるわけじゃなくて、だれがいつ不注意なため、あるいは用心がないために、そういう好ましくないことになるかもわからない。それは私はすべてに対する一つの大きな警告になる、そういう点から見て、これは非常な効果があるものである、かように私は考えております。
  67. 松本善明

    ○松本(善)委員 数が少ない、非常に部分的なものであるということはお認めになったようでありますが、しかし警告的な効果があるんだという趣旨であったと思うのですけれども、しかし、交通労働者事故を起こしました場合は、命がけなわけです。自分の命がなくなるかもしれない。だから、刑がきびしいということで事故を起こすまいというよりも、自分がけがをしまいと必死になって安全対策を交通労働者は要求しているのです。そうして先ほど刑事局長が法務大臣来られる前に答弁しておられたんですけれども法務省の扱っている刑法犯の大半は、交通事犯になってきたというのです。これは刑の警告的効果が非常に少なくなってきているということを示す最大の証拠じゃないかと思うのです。刑を、いま皆さん方は、政府のほうの答弁でも、これを上げたからといって急に交通事故がなくなるというようにも思わぬけれどもと、再々そういう答弁が出ています。それはそれこそ効果がない、ほかのことを考えなければならない、これは交通事故そのものをなくす方向のことを考えなければいけない、そういう安全対策であるとか、労働条件の向上であるとかいうことを真剣に、待っていられないで、いま考えるべきことじゃないかということの証明じゃないかと思うのです。法務大臣は、その点はどうお考えになりますか。
  68. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 たびたび申し上げまするように、あなたと考えが違うのは、これという妙薬というものがそうあるものでないという考え方を、私は持っておる。われわれができる範囲内において、すべての国民が力を合わせて一年に六十何万件という、ほんとうに人道上からいって驚くべき大災害というものを各自なくするように努力するというのが、大前提になっておる。そういう点からいえば、悪質なものについては、われわれとしては刑をいまよりも重くするということは、一々注意を喚起するとともに、非常にはからざる効果が必ずある、かように私は確信をしておるので、これ一つだけをやれば犯罪がなくなるとか、そういう僣越なことを申し上げるわけじゃないが、これも犯罪をなくすることにはだれが何と言っても役立つものであるという考え方法務省は持っておるので、何か一つすばらしい案を出して、これで交通事故なしというそんな知恵は——いまの日本の道路の関係、それから交通量のふえること、それから自動車というものがまた年とともにふえること、人の注意というものも、やはり注意を怠る場合もあればいろいろな機会もあるのだから、私は一つでもって事故を全滅するというようなことはできぬのじゃないかというので、やはり事故を撲滅すること、少なくするためには、あらゆる方法をやるべきであるということについては、だれも私は反対はなかろう、こういうふうな考えで、それよりもこれが有効だとか、それよりもこれが効果が少ないとか、薄いとか、比較をするにはこの交通事故を少なくする問題はあまりに大きな問題である。小さな事故なら一つでけっこうだろうと思いますが、六十何万というおそるべき話にならぬほどの大事故をなくするのに、それよりもこれがいい、これよりもそれがとか、比較検討すべきものでなくて、有効適切なる問題は漸次これを行なって、これをなくするということが人道上から私は必要であろう、こういうふうな考え方を持っておるのであります。その辺をひとつお考え願いたい。   〔大竹委員長代理逃席、委員長着席〕
  69. 神近市子

    ○神近委員 ちょっと関連。私は、この間の質問のときに次官におことづけ願ったのでございます。いまの刑法罰則強化によって交通事故を少なくしよう、あるいはなくそうというお考えに、私はちょっと批判的であります。というのは、ほかの方法がないかどうかといえば、あるのですよ、幾らでも。いま日本の自動車の台数が三千万ということを私は聞いております。農村なんかで農民がたとえば近くの町に行くとか、あるいは品物を運んだりする、そういうことに農村で使われている私有の乗用車というものは、私はこれは非常に楽しいものだと思います。だけれど、一番楽しくなくて一番困るのは、今日非常に多くの事故を起こしている、こういう過密都市の中に乗り入れる、あまり年もとっていない若い人たちのマイカー族の車だと私は考えるのです。これは私三年くらい前から決算委員会でもこの問題を扱ったことがあるのですけれど、このマイカー族というものを何とか規制できないか。都市の中の道路の問題あるいは駐車場の問題、こういうものをかかえているから、このマイカー族を——この間四、五日前の閣議であなた方はそのことを御相談になっているように私は新聞で見たんですけれど、たとえば他県からくる自動車に通行料を取ろうというようなことがちょっと出ておりました。私はそれと同じで、産業や工業の進歩に必要な自動車というものは、これはなるほど政府として減らすということはできないでしょう。だけれど、おもしろ半分で、通勤のために自分の車を持っているということが大きな誇りで、そしてそれをかなり乱暴な運転をやって、今度は駐車場がなければどこか道路のそばに並べておく、こういう人たちを規制したらどうか。私は、政府考え方がそこまでいかなければ、今日のこの状態を——たとえばあなたがおっしゃったように、南太平洋のマルディブという国は人口が十万なんです。その六倍もあるいは七倍近くも死傷者を出すというようなことは、これは少しばかりの罰金強化とかあるいは懲役強化、そういうものではこれはらちがあかないんですよ。だから、他県からくる車を制限するということが一つ。それから交通の過密を防ぐためには、地下鉄あるいはバスというようなものを一本化して、勤務者あるいは通学者はそれを使用するように指導するということで、私は今日の東京、大阪等の過密都市の事故は非常に減ると思うのです。これをぜひ考えていただきたいのが一つ。  それからやはりいつか前の閣議で問題になっていたようでしたけれど、東京都あるいは大阪府、そういうような過密都市の交通機関を一本化するという問題を御論議になっていたようであります。これはあなたは御存じかどうか知りませんが、今日の状態を想像した人があったのか、戦争前に東京都は、この交通機関を一本化するために私設の電車あるいはバス、そういうものを一応四億円というお金で買収してあったのであります。それを空襲のために電車はやられる、バスはやられる。それで東京都のものと私設のものとをともかく出し合わせて、間に合わせていたのでございます。それがそのまま今日のこの分散した状態になって、統一のとれない状態になって、そして今日になっている。これをやはりもとの考えに戻って、この近郊の私鉄あるいはバスの系統、こういうものは統一したらどうか。この二点を、私は事故の減少のためには罰則強化よりもこのほうが効果があると考えるのですけれど、その点についてお考えになってみる気がおありであるかどうか。この間私は次官に、閣議で問題になっていることだし、この点をひとつあなたに御進言を願いたいということをお願いしておきましたけれど、この二点についてのお考えはどうでございますか。
  70. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 いまお述べになりましたことは、私も都市政策調査会の副会長といたしまして、一年ばかし都市の交通、それから住宅、道路、地下鉄、電車、あらゆる面についていろいろの学者の意見を聞いたりやってみたのでございます。御承知のように、都市化集中というのが非常に激しくなりまして、いなかと言うとあれですが、農村県は人口が減りますが、東京とか大阪、名古屋というところは、人口が非常にふえてくるのであります。人口がふえてくるのに対する道路の問題、交通の問題、住宅の問題というようなのがなかなか追いつかないというのが、現在の状況です。それがまた将来やみそうなのかというと、この都市化集中、過密の度合いというものはまだふえてくるのじゃないかということで、一時は、御承知のように過密化を防ぐということについてずいぶんと調査がせられたのでありますが、どうも過密化ということを防ぐことは困難な問題じゃないかという学者の説も、だいぶ多いようでございます。私は、そういうお述べになりましたようないろいろな都市の交通問題、それから住宅の問題、それからまた住宅の高層化の問題、たとえば建物からいうと、二十階、三十階の建物が建ったって、建物自体は何でもないが、そこに収容する人間交通との関係などの問題もありますし、それは非常に複雑で重要な問題が山積している。この都市化の問題、過密都市の対策というものは、これはもう徹底的に党をあげて、社会党も一生懸命にやっておられますが、自民党も一生懸命にやっていますし、これの解決策を講じようということで、いずれの党も大いに御精励を願っておるように思うのであります。ただ、いま一言いましたように、都市化の傾向が非常に激しいので、なかなかむずかしい問題が山積しておる。山積しておるけれども、お述べになりましたように、ほっておくわけにはいかない。できることからやらねばいかぬというので、いずれ都市化問題、過密化対策というものがきめられてくると思います。しかしながら、われわれ考えていますのは、いろいろな原因がありますが、先にも申し上げましたように、一年に六十何万というばく大な人間が死んだり、けがしたりするのであります。これは非常に猶予のできぬ問題で、あらゆる面からこれを防止策を講じなければならないというので、法務省はこういうふうな一助として刑を重くする点は役に立つ。これは運転をする人にしてもなにする人にしても、社会に対しても、非常な警告にもなるし、私は非常な効果があると考えておるのであります。もういろいろな手を打って、お述べになりましたことでも、すぐ実行のできるものはこれをあわせてとり行なうような方法、できることからどんどんやるし、また計画的にもそれをやって、過密化を防ぎ、交通禍を最小限度にするということに、これは皆さんとともどもにひとつ全力をあげなければならぬ問題だと、私は考えております。
  71. 神近市子

    ○神近委員 私、いまのお返事はちょっと満足でないのですけれども、時間が非常に限られておりますから……。ただ弱い者に罰というような在来のような考え方でこの問題を解決なさろうということには、反対であります。時間がございませんから、私はこの次にまたこの点についてはお尋ねするかもしれないと思います。
  72. 松本善明

    ○松本(善)委員 先ほど法務大臣が言われたのは、どうも妙薬がない、けれどもこれもやらぬわけにはいかぬだろう、こういう趣旨なんですけれども、この法務省のつくりました資料の百十五ページ以下に、いろいろ具体的な事例があがっております。私、法務省立場に立っていろいろ検討しましたけれども、この中でも、たとえば五番目にあります事件が、業務過失死傷、国鉄の事件ですけれども、これはATS、自動停止装置が出る前の事件なんです。これは自動停止装置をつくれば、なくなる事故なんです。この一つの例でわかりますように、事故が起こった。その場合に、この安全施設を全部完備をしていく、まさにこれこそ緊急なことなんじゃないかというふうに思うわけです。そういう観点で、私この法務省の出しました資料を少し分析をしてみましたら、この国鉄のATSの問題のみならず、ガードレールや歩道橋を設備をするというだけで、三年以上の十四件のうち九件、そうして死亡者百九十五名のうち百七十名、重傷者四百五十六名のうち三百九十四名は、こういうもので助かるのです。それから二年半以上という三十四件について見てみましたけれども、これはガードレール、歩道橋その他安全施設を設置すれば、二十四件が救われる、こういう性質のものです。それから二年以上の百三十件のものも、やはりそういう安全施設との関係考えてみますと、九十四件、これがなくなります。だから、この法務省の出しました資料を分析してみましても、これはそういう安全施設のほうがよほど緊急なんです。まさに人命の尊重、事故防止、これは緊急だ、このために金をたくさん出さなければならぬということになれば、これはもう各党一致すると思うのです。現にそうであります。それを処罰をするという方向に向けていくというのは、どうも何も妙薬はないんだ——妙薬はあるわけです。安全施設をやる、それから過労におちいっている労働者労働条件を引き上げる、こういう問題なのです。妙薬はあるし、ただ行きあたりばったり刑を上げても、ほんの先ほど法務大臣が認められたように、ごく一部の問題です、たいした効果があがらないのじゃないかと思います。いま私のお話し申し上げましたことをお聞きになって、法務大臣、どう考えられますか。
  73. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 いまお述べになりましたことは、もうとうの昔にわれわれは研究して、いかにこれを実行するかということで、運輸省で盛んに早くから安全装置というものについては注意をして、事故の起こらぬような車の施設ができるのか、できぬのか、そういうものについてはもうお話しにならぬ前から、とうの昔からやっておるのです。あなた、いま妙薬がないとか何とかおっしゃいましたが、そういうことは私は一言も言わない。妙薬がたくさんあるものを全部取り入れてこの大悲劇をなくそうというので、妙薬がないなんていうようなことは、それはとんでもない話で、私のところは妙薬に違いはない。また、どうせ妙薬なんといっても、人間は注意をするということが事故をなくするもとじゃないかと私は思っていますよ。あやまちというものは、心が浮いたというか何というか、設備とあわせて、心の持ち方がゆるんだときに、たとえば、たくさんの酒を飲んでたいへんな事故を起こしたというようなことは、現実の例においてもたくさんある。心の持ち方の問題なんです。心の持ち方を力を入れてよくするためにこの刑が重くなるので、ただ単純に刑を重くするなんというのじゃないのです。人を殺したり、乱暴なことをやって人をあの世に送るようなことは一番好ましくないことだぞということの徹底をするという意味で、この刑というものは重くなるのであります。その辺の考え方は、私はあなたとだいぶ違うところがあるんじゃないかというふうな気がするのです。それで妙薬はないんじゃない。ありとあらゆる妙薬をこれに注いで、大事故件数をなくし、死傷をなくそうと、こういうふうな考え方で、妙薬が一つもないからやむを得ずこれをやったというふうに誤解されたら、私の本意とたいへん違います。これは非常な妙薬なんです。しかしながら、その他に、ひとりよがりはせぬで、ほかにあらゆる妙薬があるやつを全部取り入れて事故をなくするということにやろうというのが考え方で、あなたの言う設備改善なんかも、それはなかなかいいことだけれども、なかなか金か——金がかからぬでうまくてきるものもあるかもしれぬが、金もかかれば時間もかかる。そういうものを一々全部待つことのできぬ施設もあるだろうと思う。われわれは閣議においても、中曽根君に、何とかして自動車事故の起こらぬような設備というものがあるのかないのか、アメリカじゃどういうふうになっておるのかというようなこともずいぶん調べて、あればそれをやる。そうして、私鉄にしたって何にしたって、南海の事故があるたびごとに、安全装置などについても、ありとあらゆる施設の改善策を立ててやる。私は、施設はできるだけ改善をすることはこれはもうあなたと全く同じことで、施設は何も改善せぬで、これ一つやっておけばいい、そういうけちな考え方は持っていない。施設がある限り、財政の許す限り、金の許す限り、安全装置というものはやるべきであると思います。しかしながら、一番大事なのは、注意をする心の持ち方というものが、事故には抜き差しならぬ重大な問題だ。心持ちを緊張させるためには、このことが安全設備より以上に効果があるんじゃないかとまで私は考えるのであります。
  74. 松本善明

    ○松本(善)委員 先ほど言っておられたことと、だいぶ違ってきたわけでございます。先ほど資料をあげて、法務省の資料でもこれはほんとのごく一部なんだということを申して、警告的効果はうんと減ってなくなっているんだ、それから交通労働者にとっては命がけの問題だから、警告効果はないんだということを話しをして、一応それを前提法務大臣も答えておられた。いまになってだいぶ変わったと思いますが、一応いま言われたことの中でちょっと申しますが、はからずも安全施設は金がかかるんだと言われた。この金のかかることを——いま総予算からするならば、そんな大きなものでないですよ。これをいまやれというのが交通労働者の要求であり、私たちの主張なんです。それは金がかかるから、いまできぬ。いま当面、より大事なのは処罰をすることなんだということで、年に百件以下のものについて処罰をしていく。お医者さんから、調理士さんから、もうそれに関係するあらゆる階層の交通労働者の全部の反対を受けている。こういう事態になったら、人の言うこともどこか理屈があるんじゃないかということで、なぜお考えにならぬのか、私はふしぎでしかたがない。法務大臣が当初に、私はそんな、想像もつかぬというようなことを言われた感覚でこの問題を処理しておられることについて、私はたいへん遺憾に思うわけなんですけれども、しかし時間もありませんので、最後に法務大臣への質問をちょっとまとめておきますが、安全施設を何とか——いろいろほかの施策をやる、やると言われる。そこでお聞きするのですけれども、ここに前法務大臣おいでになりますが、前法務大臣当時に私お願いをしまして、検討しようということを言われていたことがあるわけです。それについて、一体法務省はどういう検討をしたのかということをお聞きしたいのです。交通労働者のほうからいえば、使用者を処罰してほしい。使用者のほうで、労働条件が過重になっているのにむりやり働かす、あるいは積載過剰でも行けと、こういうふうにやることがある。こういうふうなものの処罰をうんとやってほしい。交通労働者処罰は、使用者の処罰をしなければならないものがたくさんあると思う。これをどうするのかという問題、これは前田中法務大臣検討するということを言われました。それから道路の安全施設の設置を義務づけるという問題、これも検討しようということを言われました。それから交通労働者労働条件、賃金が非常に低いという問題、それから労働時間が長いという問題が、交通事故関係がある。これも検討しようということを前田中法務大臣が言われた。一体法務省としてはどういう検討をして、どういう結論を出しているかということをお聞きしたいと思います。
  75. 川井英良

    川井政府委員 その趣旨の御質問が出まして、当時大臣並びに政府委員から確かにそういうふうなお答えをしたかと思いますけれども法務省独自の立場で自主的にできる事柄と、それから他省の所管で、他省のほうに連絡をして善処方を依頼するというふうな事柄と、おのずから分かれると思うわけでございます。そこで、最初の、労働者だけを処罰しないで使用者も処罰してほしい、こういう点についてどういうふうな方策をとったかという点ございますが、これにつきましては、別に他省にお願いしなくても、法務省独自でとり得る措置がもちろんあるわけでございますけれども、具体的には警察の御協力を得まして、この種事件を検挙処理するにあたりましても、オーナードライバーではなくて、その背後には雇用主がおります。その雇用主が労働基準法違反、道路運送法違反、あるいはその他の刑罰法令に該当するような使い方をしている、そのことがひいて事故に何らかの影響を持っておったというようなことが十分考えられるので、そのような場面については、単に事故を起こした人だけを二百十一条で処罰するのみならず、少し広く、責任のある範囲におきまして厳格にその責任を追及するということについて格段の配慮を願いたいというようなことを連絡いたしたわけです。それから私ども部内におきましては、先般、数日前にも副検事会同並びに次席検事会同を開いておりますけれども、そのつど私どものほうから、雇用者、管理者関係について、どの程度労働省において、あるいは警察において事件を処理しているか、また具体的なそういうふうなものについてどういうふうな処罰が行なわれているかというような数字なり内容などの用意をしてありますものを示しまして、それをモデルとして、さらに一そうこの面についての検察を強化するようにというふうな措置も講じてございます。現に検事のところに来たものの中から、検事が調べまして、検察官認知ということでもって道路交通法違反で体刑を求刑して、体刑が通ったというふうな事例も、数件報告になっております。したがいまして、不十分ではございますけれども、十分その点については強力な方策を推進するように考えておりますし、現に実施しておりますし、労働基準監督官などにつきましては、司法警察権を持っておりますので、私ども緊密な連絡がございまして、この面につきましては、特に中小企業を中心としての自動車業に対する労働基準時間あるいは均一労働その他につきましては、十分な監察をお願いしたいということで、監察をお願いいたしまして、三十七年以降数件にとどまっておりましたのが、四十年には三十四件、四十一年には三百五十四件というふうなかなり大きな、送致件数の著しい増加という面になってこれがあらわれてきておりまするので、その送致件数の前の監督件数というものは、何万件にも及んでいるわけでございます。その辺のところを十分認識して実行に着手しておるということがいえると思います。  それから施設の充実でありますとか労働者の勤務条件の改善というようなことにつきましては、そのつど関係方面に、こういう質問が出、またそれについてまことにもっともだというふうな趣旨にも考えられるので、どうかその辺について、刑法の一部改正とあわせて、総合的な対策として、交通事情の抜本的な政府の対策の推進のために十分な御協力を願いたいということを伝えてございまするし、確かに私ども、そのあとからいろいろ資料をいただきましても、各関係方面におきましては、それについてかなり十分な施策を講じているように考えております。
  76. 松本善明

    ○松本(善)委員 時間がありませんので、また本会議後やることとしまして、最後に法務大臣にいまのところの詰めだけお答えいただきたいのですけれども道路の安全施設の設置の義務づけの問題、それから労働者労働条件交通事故の問題、これについて前法務大臣検討するということを言われたのですけれども、まだまだ不十分ではないか。閣僚の一人としてこの問題についてどう考えられるかということを一言お答えいただいて、私午前の質問はここで一応終わりたいと思います。
  77. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 私の尊敬する前法務大臣のおっしゃったことは、私の時代も引き続いて成績のあがるように努力をいたしたいと思います。
  78. 永田亮一

    永田委員長 本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後二時二分休憩      ————◇—————    午後四時三十四分開議
  79. 永田亮一

    永田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松本善明君。
  80. 松本善明

    ○松本(善)委員 刑事局長に少しお聞きしたいのですが、この法務省のいっておりますのは、悪質重大な事犯がふえてきて、法定刑の上限に達するようなものがだいぶ出てきたということをいっておると思うのですけれども、似ております殺人罪、傷害致死罪で見ますと、殺人罪でも上限といえば死刑であり、あるいは無期というふうに言っていいかと思いますけれども、司法統計年報によれば、殺人罪で死刑が、昭和三十八年に七件、三十九年三件、四十年六件、無期も、三十八年十七件、三十九年二十三件、四十年十七件、こういうふうにあるわけです。あるいは傷害致死でも、これは有期懲役で十五年以下ですね、これは三十八年が、十五年以下が二件、三十九年二件、四十年  一件。十年以下になりますと、三十八年は八件、三十九年は九件、四十年は十件ということになっておりまして、大体大多数は、殺人では十年以下一におさまっている。それから傷害致死の場合には五年以下くらいからずっとふえている。これを業務過失死傷で見た場合に、四十年でも、三年以上というのが六、二年以上が六十五、一年以上と二年以下というのが圧倒的多数になっている。こういう状況を見ますと、そう大きな変化ではない。これについては刑事局長、どう考えますか。何ならこれをお見せしてもいいです。これは法務省でつくってもらったものです。
  81. 川井英良

    川井政府委員 御質問の趣旨は、二百十一条の改正について、刑の言い渡しが頭打ちの傾向にきているということだけれども、何も頭打ちの傾向というのは、ひとり二百十一条のみに限らないので、殺人その他、ほかの罪種についても同じ程度の数字が出ているのじゃないか、こういうふうな御趣旨に承ったわけでございます。この殺人の場合におきましては、もちろん最高刑死刑がございますし、死刑はもうこれ以上の刑罰がございませんので、どんなに悪質なものにつきましても、死刑以上の刑罰というものは、刑罰としては一応考えられないわけでございますので、殺人あるいは強盗殺人というようなものにつきまして死刑の言い渡しが年間相当数出ているということは、これはむしろ当然といいますか、そういうふうな結果になるのは、その刑罰の性質からしまして当然の結果ではないか、こう思うわけでございますが、その他の罪種につきまして、法定刑の最高刑にいっているというふうなものは、この統計を見ましても必ずしも出ていないのではないか、むしろ十五年とか二十年とかいうものは、おそらく多くは殺人ないしは強盗殺人の刑だ、こう思うわけでございまして、そういうふうな点から申しましても、この二百十一条のように、最高刑が三年であるというふうな刑罰の法定刑のきめ方をしている際に、その三年に近いものないしは三年をこえるものがかなりな数字が出てきたというものは、私はほかの罪種については見当たらないのではないか、こういうふうに考えております。
  82. 松本善明

    ○松本(善)委員 刑事局長あるいはそういうことを言われるのではないかというふうに思ったのですけれども、それはやはり事実に反しておるのです。これは司法統計年報は、御存じのように殺人と傷害致死をもちろん分けて統計をしております。殺人だけのもの、それからほかの例——ほかの罪種にはないだろうという趣旨のことを言われたけれども、そういうこともありません。先ほど刑事局長、傷害の例をあげておられた。傷害は御存じのように最高刑十年でございますが、傷害の場合には、単純傷害で十年以下七年までのものが三件あります。七年以下三件、五年以下が二十九件ということであります。それから、そういうことはないだろうと思われる窃盗でさえあるのです。窃盗では十五年以下というので二件あります。十年以下で五件、七年以下三十四件ということで、これらをずっと見ますと——いまのはいずれも四十年の司法統計年報です。いままで法務省の出しておった資料は、業務過失死傷のここだけ持ってくると、いかにも、まるでここだけが上限にきているようなことを言われるけれども刑事局長の直接答弁をされた傷害でも、そういうことは全くないのですよ。全く非科学的な、刑事局長としてそういうような感じがするというようなことの説明ではないかと思う。この数字を申し上げてお聞きするのですけれども、これについて刑事局長どう考えられますか。
  83. 川井英良

    川井政府委員 具体的には、こまかい内容に関しまして刑事課長が調べてきましたので、あとから補足して説明していただきますが、単純傷害で七年以上十年以下というので三件あったという御指摘でございますが、おそらく十年いったというのはないんじゃないかと思うのです。私三十年検事をしておりますけれども、単純傷害で十年いきましたのは、共産党の徳田球一さんが佐賀で爆弾を講演中に投げられてけがをした事件、あれはたしか十年いったと思います。そのとき単純傷害と認められまして十年の刑がまるまるいったということは歴史上非常に珍しいことだということで、私たしか何かに書いた記憶があるくらいでございまして、その後注意しておりますけれども、単純傷害で最高刑の十年いったという例はないんじゃないかと思うのです。七年以上十年以下というのは、それは七年いったというのはあるかもしれませんけれども、十年というのはないんじゃないかと思いますが、なお詳しくは刑事課長から説明をいたします。
  84. 石原一彦

    ○石原説明員 四十年度の統計に基づきまして松本委員からお話がございましたが、私どもも三十九年の統計表をあらゆる角度から検討したことがございます。その際、ただいま傷害の話が出たのでございますが、私どもの経験から申しましても、七年から十年というところで、はたしてそれが十年であるかということははっきりいたしておりません。しかのみならず、一応ただいま七年—十年という話が出ましたものですから、私も法律家の一員としておそらく松本委員と同じであろうかと思いますが、大体懲役十年のうちで七年から十年というのが相当重い、最高刑に近い刑であろう。これを一ジャンルといたしまして、その次は大体五年程度のものとそれ以下のものとを分けて数字を出したことがございます。そういたしますと、傷害につきましては、いま申しました七年から十年までは、百分比をとりますとわずか〇・二でございます。それから中くらいになるものは一・三でございます。それから最後の分、非常に下限に集中いたしておりますのは九八・六%でございます。ちなみに業務過失について見ますと、上の大体二年から三年と申しますのが一・一%、中くらいの、それより少し下回っておりますのが二八・六%、それから下の分、下限、一年以下の分でございますが、これが八二・三%でございます。そのほか窃盗、詐欺等につきましても、お尋ねがございますれば申し上げますが、こうした上限がある犯罪につきましては、やはり私どもで提案理由説明にも書きましたとおり、法定刑の最高限に集中しているという傾向が見られると思うのであります。
  85. 松本善明

    ○松本(善)委員 もちろん司法統計年報には十年というのは書いてありませんから、十年までいったかどうかわかりませんけれども、十年以下七年までのものが三件あり、七年以下——七年を含んだものが三件ある。これは、やはりこの上限に近い刑が盛られているということは、何もこの業務過失死傷だけに限った何か特別の例として、刑事局長が、こんなことは全くあり得ないんだというようなことで、パーセンテージをとれば多少の多い少ないということはあるかもしれないけれども、何か特別のことのように説明をされておられたけれども、それは違っているんじゃないかということを言っているのですが、どうでしょう。
  86. 川井英良

    川井政府委員 頭打ちの傾向にあるということを申し上げたけれども、その傾向にあるということは、そういうふうな事例が漸次多くなってきているということを申し上げておるわけでございます。  事のついでといたしまして、その他の類型につきましては、最上限に近いもの、あるいは最上限に盛られているというふうなものは非常に少ない、ほとんどないのではないかという意味の趣旨をいままで繰り返し説明してきたわけでございます。たくさんある事件の中で、またいろいろな裁判所が量刑をされるわけですから、十年ときめられている量刑の中で、将来もそういうふうなものは全くないと言い切るわけではございません。裁判の実情としましては、最近の事故の悪質重大化にかんがみて、二百十一条の関係におきましては、その最上限のほうへ刑が集中してきている。それからその他の犯罪におきましては、御案内のように、むしろその底辺のほうに量刑が集中してきているという、逆な集中の傾向を示してきているということをいままで強調したつもりでございます。
  87. 松本善明

    ○松本(善)委員 いろいろこの四十年だけで見ましても、いま申しましたようなことなんで、これは法務省考え方が、少なくともいまの指摘だけでもやはりだいぶ違っているんじゃないかというふうに思います。これはさらに十分に検討して考えられたいと思います。  そういうふうになりますもとの問題ですけれども、この業務過失死傷の事件について上限にきているということの例としてあげる場合には、これは併合罪でない場合、業務過失死傷だけの単純一罪という場合をあげるのが正当であろうと思いますけれども刑事局長の見解はいかがでしょうか。
  88. 川井英良

    川井政府委員 事例としてあげるという場合におきまして、いろんな考え方があると思いますけれども一つの現象というもの、たとえば併合罪にも御承知のとおり全く違ったような、窃盗と詐欺というような併合罪もありましょう。ところが本件のような場合におきましては、酒を飲んで運転して、その結果、それが原因となって事故を起こしたというような場合には、酒酔い運転の道交法の違反と、それから事故を起こした結果についての二百十一条の違反とがたまたま併合罪の関係になるというようなことでありますので、併合罪と一口に申しましても中身はいろいろございます。全く飛び離れた、罪質の異なった併合罪の場合と、それからいま申し上げましたようなひいて逃げたとか酒を飲んでひいたとかいうふうな、罪質の関係においてはなるほど併合罪の関係になりますけれども、その犯罪の実態をながめてみますと、一つ実態と見ることができるというような場合の併合罪もあるわけでございます。本件の場合におきましては、犯罪現象としてはむしろ一体として観察ができる、またそういうふうに観察したほうがものごとの観察として真相を把握することが便利だと思うようなものがございますので、私ども、あとのような観点に立ちまして、全く飛び離れた——事故でここに並べました中にも、それ以外にまた全然別な、たまたま調べたら窃盗しておったということで、事故と窃盗をあわせて起訴したような事例もございますので、そういうものは全部除きまして、その中からごく一体として観察することが適当だと思われるようなものについての併合罪の関係につきましてここに集録しておるわけでございます。
  89. 松本善明

    ○松本(善)委員 その問題についてはあとで論じますけれども法務省の出した「重大な人身事故の具体的事例、」この資料によりますと、科刑三年以上も全部そういう意味での併合罪です。科刑二年六月以上のものも全部そうです。科刑二年以上というところに来て初めて単純一罪のものが出てくるわけであります。もっともこの二年六月以上の中に、どうも法務省の間違いらしくて、併合罪のもので、等ということを書いてないのが一つありますけれども、しかし全部単純一罪ではありません。単純に業務過失死傷ということで考えるならば、みな科刑二年六月までだということをお認めになりますか。
  90. 川井英良

    川井政府委員 これは、人の名前を出したりそれから名誉に関係してはいけないという趣旨から、なるべく抽象化した形において資料をつくったものでございますので、詳しくは一つ一つの内容にわたって検討することが必要かと存じます。いま申しましたように——御趣旨必ずしも私まだよくのみ込めませんけれども、単純に、併合罪の関係になくて、たとえば、ただひいたというだけでもって懲役三年、禁錮三年というふうな最高刑をいった例があるか、こういうふうな御趣旨だと思いますけれども、それにつきましては、そういうふうな観点から必ずしもこの事故を調べ、また収録しておりませんので、必要があればまたその点はあらためてこの資料の中から検討さしていただいてお答えを申し上げたいと思います。
  91. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは、どういう観点で資料をつくるべきかということはあとで論じます。しかし法務省のつくった資料によれば、いわゆる業務過失死傷等と書いてあるのは、ほかの犯罪と一緒のものだろうと思います。だからこれと、それともう一つ、これは酒酔い運転が一緒に入っているのがありますので、私の見たところでは、この資料でいくならば、単純な一罪の場合は科刑二年半以下ばかりではないか、この事実を認められるかというのです。その評価、つくり方がいいか悪いかは別問題です。この事実を認められるかということです。
  92. 川井英良

    川井政府委員 それはもう少し調べさしていただきたいと思います。
  93. 松本善明

    ○松本(善)委員 それはいま見て、どれだけ等がついているのがあるか、すぐおわかりになりますよ
  94. 石原一彦

    ○石原説明員 ただいまの松本委員の御質問の中で、等と書いてあるのが併合罪だという点はそのとおりでございます。資料をつくりました責任者といたしまして、それは少々間違ったことがあるという御指摘を受けましたが、松本委員のおっしゃるとおりでございます。しかしながら、業務過失死傷だけの分を出して、それだけで論じようという点については、私といたしましては遺憾ながら賛同いたしかねるのでございます。と申しますのは、これは見ていただきますればわかりますように、等とあろうとなかろうと禁錮三年で処断された者があるわけでございます。業務過失死傷そのものは禁錮三年でございまして、酒酔いは懲役一年でございます。処断刑といたしましては禁錮三年で処断されるであろう。そういたしますと、かりに併合罪といたしましてそういうものがありましても、裁判官が、処断刑としては業務過失死傷罪が重いと判断したからこそ高い刑が言い渡されているのであろうと思います。しかりといたしますれば、1から12例までのうちの1と2は、これは1は業務過失死傷罪の併合罪でございまして、禁錮三年六月でございます。2はひき逃げを伴いましたので懲役になりまして三年六月でございますが、これを除きますと残り十でございます。十のうちに、懲役になりましたのは四件でございます。残りの六件は禁錮になっております。というのは、裁判官の量刑に対する気持ちを推測いたしますれば、かりにほかのものがついておりましても業務過失死傷罪を処断刑といたしまして、そうして禁錮三年の最上限を言い渡したということに相なるのではないかと思います。しかりといたしますれば、併合罪がなければ二年六月であるという議論は出てこないのではないかと思うものでございます。
  95. 松本善明

    ○松本(善)委員 この評価のしかた、それがいいかどうかということは聞いてないのですよ。要するに、出した資料では単純一罪ということであれば二年六月以下というものだけですねという事実を聞いておるのです。その評価の問題についてはこれから別に質問したいと思っているわけです。その事実は認められるわけですね。
  96. 石原一彦

    ○石原説明員 資料面から見る限りにおいては、そのとおりでございます。
  97. 川井英良

    川井政府委員 これは私の手元で資料を収集してもらったのですけれども、全部の事件記録に基づいて詳細に検討したものもありましょうし、そうでないものもあろうと思いまして、罪名は御承知のとおり起訴罪名である程度出てまいりますので、判決が認定されたのはどういう事実を認定したのか、一々こまかく記録と判決に基づいて整理をいたしませんと、ここに等と書いてありまして業務過失死傷以外の罪名があることになっていますけれども、はたしてその罪名がこのケースでもって認定されておるかどうかということは、詳細にいうならばやはりもう少し検討を必要とするのではないかと思います。ですから、具体的にこの資料を収集した刑事課長のいまの答弁の考え方はまたございますけれども、ごく正確にまた御議論をいただくということであるならば、この内容について多少のまた検討の上でもってお答えを申し上げることが適当であろうというふうにも思っております。
  98. 松本善明

    ○松本(善)委員 刑事局長、いまごらんになっても、これは単純なものはないのですよ、ここに出ている限りでは。ここに出ている限りでは私の言う事実は認められる、これは変わりないのでしょう。さらにこまかく見ればもっとこまかい検討はできるかもしれませんけれども、ここに出ている限りでは単純の一罪のものではないわけですよ。その事実では異論ないということでしょうね。
  99. 川井英良

    川井政府委員 大体そういうことになると思います。
  100. 松本善明

    ○松本(善)委員 ところで、先ほど来法務省刑事局長、刑事課長が、単純一罪だけで見るのはおかしいじゃないかと言われることなんですけれども、この問題について、たとえば刑事局長よく言われるが、道交法の百十七条の場合とそれから刑法二百十一条の場合を見るならば、刑法二百十一条のほうを重く見なければいかぬ、こういう趣旨のことを言われた。まあ言われるけれども、しかし道交法百十七条というのは言うならば遺棄罪のようなものに類するもの、これは故意が入っているわけです。酒酔いにしても故意犯です。過失犯とは違うわけです。そこのところを混同していやせぬか。酒酔いはいけない、それからひき逃げはいけないというならば、そこのところで問題を考えるべきじゃないだろうか。過失犯のところに持ってくるというのはおかしくはないか。この点については刑事局長どう考えますか。
  101. 川井英良

    川井政府委員 多少考え方が私違うのでありまして、道路交通法という取り締まり法規に掲げられたいまの百十七条のひき逃げというのは、なるほど刑法できめられておる遺棄罪の内容といいますか、それに類するような趣旨を立法理由としていることは私争いませんけれども、遺棄罪で処分することができるものであるならば遺棄罪の法律適用するということも可能でありますので、刑法の遺棄罪の規定と道交法のその規定とを対照して考えてみると、それが別個に設けられておるという趣旨から考えるならば、必ずしも遺棄罪というものに類するその遺棄罪の法益、そういうようなものを重要視して取り扱われたということにはなっていないのではないかと思うわけでありまして、事故が起きれば直ちに官にこれを報告してそのあと始末をする、あるいは被害者の早急な救済をするなり、またさらにそれによってその後の道路の交通の円滑をはかる、いろいろの目的のもとにそういう規定が設けられているのではないかと思うわけであります。それに対しまして説明するまでもないことでございますけれども刑法にきめられた二百十一条の立法趣旨なりその法益なりあるいはこの犯罪の性質なりというふうなものは、この百十七条の特別法規定とは本質的に違った意義を持っているものであるというふうに私思うわけでございまして、人命影響のあるような業務に従事する者は、くどいようでございますけれども通常人より高度の注意義務を守って人命の尊重に心がけるということが、人間社会における一つの法の秩序維持のために重要な規範である、こういうことに基づいて二百十一条ができていると思うわけでございまして、そういうふうな規範に違反し、そういうふうな条理に違反して起こされたような事故、その事故の法的評価と、それから、その事故を起こした結果、官に報告せずしてその場から逃走したというその犯罪の評価というふうなものは、やはりおのずから別なものがある。私はやはり、注意が足らないために人をひいて人命殺傷というふうな事故を起こしたということのほうが、今日の法的評価としてはより重いものがあるんじゃないか、こう思っておるわけです。
  102. 松本善明

    ○松本(善)委員 遺棄罪と道交法の百十七条が一緒であるというようなことはもちろん言っていないわけですけれども、問題は法務省のほうでいっております悪質なものということの例として、ひき逃げでありますとかあるいは酔っぱらい運転だとかいうものを出してくるでしょう。それを過失犯の情状として持ってくるからおかしいんじゃないか、それはそれぞれの法条で処理すべきものがあるではないか。そこで考えるならば、その当否は別として、これはたとえば道交法百十七条があるいは軽過ぎるとか、あるいは酒酔い運転が軽過ぎるとかいうことで問題を持ってくるならば刑法の論理に合うけれども過失犯にこれを持ってくるというのはおかしいんではないかということを言っておるのです。それはどうでしょう。
  103. 川井英良

    川井政府委員 いま酒を飲んで運転という例があげられましたので、それについてまず論じようと思いますが、酒を飲んでめいていして運転をして、その結果事故を起こしたというケースを考えてみますと、酒を飲んだということがすでに過失になるわけでございます。さらに酒を飲んでめいていした結果。操縦を誤ったということがまた一つ過失になるわけでございます。経過的には、その過失が重なり合いまして、そして事故を起こしたという過失犯が成立するということになっておるわけでございます。したがいまして、酒を飲んで運転して、その結果事故を起こしたというふうな場合には、すでに酒を飲んだことが一つの重要な過失として認定される。それは今日ここに判例を持ってまいりましたけれども、そういう判例がもちろんたくさんありまして、だれもそれを疑う者がないわけでございます。ところが、今度その事案に対して刑罰法規を当てはめる場合には、その酒を飲んで車を運転したということが、たまたま道交法の別な罰条に該当する、こういうことでございますので、酒を飲んで運転して事故を起こしたという事故について考えてみますと、それは一つ過失事故でありますけれども刑罰法規関係におきましては、酒を飲んで運転したということで、事故のあるなしにかかわらず、酒を飲んで車を運転したということがまた一つの別個な法律の評価に該当するということで、その一つの行為に対して二つの法条が適用になっておる。その場合においては、御承知のとおり観念的競合になるか、あるいは併合罪になるかということでいろいろ裁判上争いがありましたけれども、裁判の今日の実情は、そのような場合においては、その法律の趣旨あるいは目的とする、守ろうとする法益というふうなものは違うので、それは併合罪の関係になるということで、今日最高裁の判例では、併合罪として認定する裁判例が判決例として確立したものだということになっておりますので、その関係においては、たまたまそれが刑法の総則の適用においては併合罪の関係になっておる、こういうことになると思うわけでございます。そういうことになりますからして、したがって酒を飲んで運転したというふうな場合に、酒を飲んだという行為はまた酒を飲んだというほうで別個に処罰し、事故を起こしたというのは事故を起こしたというだけで二百十一条だけでもって罰すればいいじゃないかという考え方は、もとよりそういう考え方が全くの誤りだというふうには申しませんけれども、いま申しましたように、一連の一つの犯罪現象というものを考えてみました場合に、どういう罰条をもってどういうふうにその犯罪現象を評価していくのが最も法秩序維持のために必要か、こういう点から考えてみますと、それにつきましては、酒を飲んで運転しているということは一個の犯罪になっておるという点を考えてみまするならば、私はやはり刑法二百十一条を主体としてそれを評価していくということが妥当ではないか、そう思うわけでございます。
  104. 松本善明

    ○松本(善)委員 ひき逃げの場合はどうでしょう。
  105. 川井英良

    川井政府委員 ひき逃げの場合におきましても、酒飲み運転ほどに、何といいますか、一体をなしておるという感じはありませんけれども事故を起こさなければひき逃げということはあり得ないわけでございます。いわばある意味におきましては、牽連犯的な手段と結果のような犯罪現象になっておると思うわけでございまして、下級審の判例の中には、ひいて逃げた場合には牽連犯をもって処断したような事例もないわけではございません。しかしながら、この点につきましてもその後漸次裁判が上級に進むに従いまして、多くの事例の場合において、すべて同一ではございませんけれども、ひいて逃げたというふうな場合においては、やはりこれは併合罪として処断するのが適当だというふうなことになりまして、前の酒酔いと、刑罰の評価の点については同じようなことに相なっておるわけでございます。そこで、そうだとしますならば、最初の質問の答弁に戻りまして、ひいて逃げたというふうな場合には、逃げたのに重点を置いてその罪を評価するというのは適当でない、ひいたという点に重点を置いて処罰をするというのが、私はやはり刑政のあり方としては妥当ではないか、こういう考え方であります。
  106. 松本善明

    ○松本(善)委員 別のほうから話をしたいと思いますけれども、御存じのとおり過失犯は全体としてたとえば単純業務過失でない過失の場合は、刑法の法条でいけば過失致死で千円ですね。これは五万円以下の罰金です。これとの比較考量をした場合に、これはたいへんに重くなるという感じがないだろうか、この点についてはどう考えますか。
  107. 川井英良

    川井政府委員 一部改正でございますので、刑法の一部だけを取り上げて刑を上げるということにつきましては、非常に慎重な配慮が必要だと思います。  そこで、まず刑法体系の中にある過失犯を全部一応引き出しまして、その法定刑と、それからそれについての過去二十年間における実際の取り扱いの件数、実情というふうなものを考え合わせ、また今日までに処理されたたとえば過失致死罪の中で最も悪質なものにはどういうふうな事件が過去においてあったかというふうなこともあわせて研究をいたしました。したがいまして、ごく理想的に申し上げるならば、これは刑法全面改正を待って、そして全体系にわたって法定刑のバランスを考え改正を行なうということが理想であることは、これは申し上げるまでもございません。そこで、それを待つことができる状態であるならば、もとよりけっこうでございまするけれども、私ども考え方は、それを待っているのは適当でないという考え方で、緊急ということから、一部改正でもってまかなうということになりましたので、そこに理論的に、また合理的な立場から考えまして、他の法定刑との関係におきまして、特にただいまあげられました過失犯との関係におきまして、完全無欠のバランスをとっておるというふうに申し上げるだけの自信はございません。しかしながら、午前中にも申し上げましたように、それらの罪はこの業務過失の罪に比べて非常に取り扱い件数が少ないわけでございます。それから先ほども述べましたが、その中でいろいろなケースを点検してみましたけれども、今日定められた刑罰の範囲内でもってまかなうことができないというような事例は、過去においてはほとんどなかったわけでございます。  それから過失致死なんかの場合におきましても、二十二年の改正で二百十一条に重過失死傷罪がこの中に設けられましたので、この過失致死の中でも重過失致死と認められるようなものにつきましては、二百十一条と同じような法定刑のもとにこれを律することができるということに相なりますので、私は、たとえば三年から一挙に七年に上げるというふうなことは、はなはだバランスを乱すことになると思いまするけれども、いろいろな角度から考えまして、三年を五年という程度に上げるということは、御指摘になりましたようなほかの過失犯との関係におきまして、非常にそのバランスを乱すというふうなことにはならないと考えております。
  108. 松本善明

    ○松本(善)委員 この刑法過失犯では単純過失傷害、それから過失致死のほかに、御存じのように往来危険罪についても過失致死罪がある。それから失火についても過失致死がある。これはみんな三年ですね。そして単純過失ではうんと低いのです。こういうことをほんとうならば、全体の過失犯と故意犯ということについて、本来十分に討議をしてやるべきことではないか。これはいま刑事局長も認めたとおりですね。私がひき逃げの問題とかあるいは酒酔いの問題を先ほど問題にしたのはそういう趣旨です。これは過失犯処罰についての考え方を大きく変えることになりはせぬか、結果から見て。個人の責任というものの見方を、非常に大きく刑法の原則を乱ることになりはせぬかということを言っておるわけです。それが過失犯とそれから故意犯とを厳格に区別をして、酒酔いあるいはひき逃げだということを悪質なものとしていうけれども、しかし根本は過失犯処罰についての考え方が違いはせぬかということを言っているのですけれども刑事局長どうでしょうか。
  109. 川井英良

    川井政府委員 過失犯と故意犯は、御説明されたとおり刑法体系の中におきましては純然たる本質的な区別が存します。したがいまして、私どもといたしまして刑罰法令の運用にあたって過失と故意犯とを混同して法を考え、ないしは法を解釈し、ないしは法を運用するということはあってはならないと思います。罪刑法定主義のたてまえからいきましても、責任主義のたてまえからいきましても、近代刑法の持っております基本的な趣旨に照らしましても、その辺のところは厳格に区別をし、そして適当な配慮のもとにこれを運用していくということが必要であることは私も全く同感であります。そこで、この三年という刑を五年に上げる、加えて懲役刑を加えるということにつきましては、かなり大きな改正の問題を含んでおりますので、私ども部内におきましては、できる限りのきわめて慎重な配慮をした結果、この五年という刑は相当だということに踏み切ったわけでございます。  そこで、私どもの内部には、刑法の基本法制については御承知のとおり法制審議会という現在日本の有する法律学者を網羅した審議会が大臣の諮問機関としてできておりまして、これにかけて十分に案を練っていただく、その上で初めて国会審議をお願いする、こういう段取りに相なっております。もちろん、その最後の刑罰の幅が適当かどうか、体系を乱すものであるかどうかということは国会によって決定されるものであることは言うまでもないことでございますけれども国会審議にかける前の手続といたしましては、この法制審議会におきまして十分に議論が尽くされまして、私ども事務当局もそれに出ましていろいろまた討論に加わり、意見を述べてその審議が行なわれたわけでありまするけれども、その際に、ただいま御指摘になりましたような他の過失犯との法定刑のバランスの問題についてもいろいろ議論が尽くされました。いろいろ資料も提出いたしまして議論をいたしました結果、少なくとも法制審議会までの段階におきましては、この程度の刑の引き上げというものはいままでの運用実績、それから刑罰の日本の刑法のきめ方、それから法定刑、過失犯と故意犯との区別というふうなことにもかんがみまして、故意犯と過失犯を混同するものだ、あるいは他の法定刑とのバランスを著しく乱すものである、日本の刑法体系としておかしくなるという議論はついに出なかったわけでございまして、私ども国会にお願いする前におきましては、そのような過程を経、そのような議論を尽くして一応提案いたしたものでございまして、私何回も刑法改正について昨年から皆さま方のきわめてきびしい御質問に対処してまいっておるわけでございますけれども、きびしい御質問また厳格な法の解釈というふうなことにもかかわらず、私なお今日この刑法改正案は決して他とのバランスを乱すものではない、また同時にそれは過失犯と故意犯とを混同するものではないという信念はゆるがないわけでございます。
  110. 松本善明

    ○松本(善)委員 法制審議会でありますとかあるいは法務省がそういうふうに考えているということはわかりましたけれども、しかし私どもが言いますのは、いま刑事局長認めたように、こういうバランス、日本の国の刑法の責任の問題という重大な問題をどうしても論ぜざるを得ない。だから引き出して持ってきたのじゃいかぬのじゃないか。この国会の場でそういうバランスまで討議できるような——いま刑事局長も、理想は全体でやるべきなんだということを言われたけれども、いま緊急なんだという話ですけれども国会でのそういう全体のバランスを討議することをやめてまでやるような、それほどの緊急性はないのじゃないか、私はそう考えております。むしろそういう緊急性は安全対策のほうに向けられるべきではないかというふうに思いますけれども、これは質問としてはその程度にいたしましょう。いたしますが、この審議によって、単に悪質なるものではなくて、非常に広範な医師から調理士から私鉄、航空機、それから国鉄、自動車関係、ハイヤー、タクシーから貨物自動車に至るまでの広範な労働者影響が及ぶということは否定のできないことだ。この国会では、刑事局長の答弁でもそういうふうになってきたようですが、そういう影響が及ぶということについては、そういうことがあってもやむを得ぬ、こういう考えですか、法務省
  111. 川井英良

    川井政府委員 道交法で改正をするのではなくて、刑法改正をするわけでありますから、自動車事故ばかりではなくて、人命影響を及ぼす業務によって起こされた人身事故一切に及ぶということは、たてまえとしてはあたりまえのことでありますので、前に言わなかったとかいまから言い始めたとかという問題ではございません。ただ、立法を行なう場合におきましては、何もこの立法に限りませんが、ほかの立法を見ましても、その改正の理由、趣旨というのは、どういう理由でこの立法を行なうのだ、どういう契機でもってこれを改正するのだということが端的に簡潔に書かれておるのが、立法をする場合の立法趣旨の書き方であろうと私思うわけでございます。私の省ばかりではなくて、ほかの省の立法の趣旨を見ましてもそういうことに相なっておりますので、この場合におきましても、当面改正緊急性を要する趣旨というのは、そういう悪質な交通事故というふうなものが多発重大化してきておる。それに対処するために緊急的にこの刑を上げるということが一つの総合対策の一環として考えられたのだということでございますので、その立法の動機、契機というふうなものを強調してそこに掲げられたのが立法の趣旨でございまして、その後質問に答えまして、改正になった場合においては自動車だけか、さようではございません、一切のものに及ぶことは刑法改正ですから当然のことでありますというふうにお答えしてきたつもりでございます。
  112. 松本善明

    ○松本(善)委員 ちょっと別のことをお聞きしますが、いわゆる悪質なものといわれている酔っぱらい運転、それからスピード違反あるいはひき逃げというふうなことが警察官で問題になった。警察官にもそういうものがあるということで去年相当問題になりました。私、法務省から資料としてもらいましたものによりますれば、昭和四十二年の交通関係業務過失死傷事件、ここでは九件報告になっておりますが、 この中で罰金が五件、禁錮一年、四年間執行猶予が一件、それから不起訴が一件、家裁送致が一件、捜査中が一件、こういう結果、全体からすればたいへん軽いという感じがいたします。のみならず、この中には意識的でありますか無意識的でありますか知りませんが、いわゆる三悪ドライブと称して、警察官が酔っぱらって無免許で、しかもスピード違反をやった、こういう事件、これは警視庁の者で、蒲田から逗子での事件ですけれども、これが報告をされておりません。ということになりますと、警察官の、本来こういうものを取り締まるべき人たちに対する関係では、いわゆる先ほどの法務大臣の答弁では非常にきき目があるという厳罰主義が全く行なわれていないといってもいいんじゃないかと思いますが、刑事局長、この経過を見てどう思いますか。
  113. 川井英良

    川井政府委員 「昭和四二年以降における警察官に係る業務過失死傷等事件事例」、これに基づいての御質問だと思いますが、なおその前に、「最近における人災事故事例」ということで、警察官の拳銃暴発その他の事故を取りまとめた資料を委員会に提出してございますので、あわせて御検討を賜わりたいと存じますが、これだけの事例をながめて、一般には重いけれども察官には軽過ぎるじゃないかということは、私必ずしもそうは言えないと思うわけでございます。一件一件のケースそれ自体には、それぞれのケースのみが持っておる特殊な事情もあることは申し上げるまでもないわけでございまして、これにつきましては相手方の過失の程度というふうなものも問題になりましょうし、その他いろいろな情状が勘案されましてこういうふうな量刑が行なわれているものだ、こういうふうに考えるわけでございます。一般の例の場合におきましても、三人も四人も死亡者が出た、重軽傷者が大ぜい出たという事例におきましても、この結果の重大性というものを無視するわけにはいきませんけれども過失が多いか少ないかということによってこの種の事案の基本的な悪質の度合いというものがきまるのではないか。またいわゆる結果主義ではなくて過失主義に基づいてこの種の事件の量刑が行なわれているというのが最近の実情でございます。したがいまして、この事例の結果だけ見まして、警察官の場合には軽過ぎる、一般の場合には重過ぎるということにはすぐにならないわけでございまして、やはり一件一件の内容、詳細にわたってその事件のみが持っている特殊性というものを十分に勘案した上でないというと、これはにわかに評価することは適当ではなかろうというふうに思います。
  114. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは聞きますが、この事例には載っていない、いわゆる三悪ドライブといわれるもの、これはちょうど五十五国会刑法審議をやっている最中に起こった事件です。これについてはここに報告をされていないのだけれども、一体どうなっておりますか。これは刑事局長の言われる最も悪質なものですよ。酒酔いそれから無免許そうしてスピード違反ですよ。全部そろっている。だから三悪ドライブということで、警察庁はびっくりして全国へ指示をしたということになっている事件です。これは報告されてないのですが、一体どういう結果になっておりましょうか。
  115. 石原一彦

    ○石原説明員 ちょっとお伺いいたしますが、いまのその事件は、業務過失死傷罪の成立している事件でございましょうか。
  116. 松本善明

    ○松本(善)委員 それはどういうふうに立件したかわかりませんけれども新聞記事から見ますと、当然にそうではないかと思います。
  117. 石原一彦

    ○石原説明員 昨日は松本委員はじめ多くの先生方から資料要求がございまして、私どもの課で、全員資料の作成に当たったわけでございますが、もしいまの事件が業務過失死傷罪となっておるといたしますれば、これは資料をつくりました私の責任でございます。さっそく調べさせまして、後ほど御返事いたしたいと思います。しかしながら、私といたしましては業務過失死傷には入っていなかったのではないかというほのかな記憶もございますので、もう少し調べさしていただきたいと思います。
  118. 松本善明

    ○松本(善)委員 ちょっとこれをごらんください。これが業務過失死傷罪にならぬということはとうてい考えられませんね。  別の質問をしましょう。それではここにある資料だけでもけっこうです。これの第三例、昭和四十二年千葉県での、無免許で大型自動車を暴走させ、幼稚園児六人に傷害を負わせた、重過失傷害です。これは罰金で確定していますね。これは確かにこの裁判での全部のこまかい情状がここでわかるわけでないから、それだけですべてを判断するというわけにはいきませんよ。これは刑事局長の言うとおりです。しかしそれでは全然判断できぬかというと、そんなことはない。先ほどから刑事局長が口をきわめて言っている無免許だとか酔っぱらい運転、こういうように上限まできているのだと言っている事例だということは明らかです。それが罰金で済んでいるのです。幼稚園児六人に傷害を負わせた、無免許で警察官が運転した、これを見てどう思いますか。別にふしぎにも思いませんか。
  119. 川井英良

    川井政府委員 これは内容をいますぐに詳しく説明する知識は私にはありませんけれども、たしか警察の教習所の構内で、自動車の運転の練習をしておったときに、その運転を誤って、門かへいを乗り越えて外に出て、その結果そこを通りかかった幼稚園児六人に傷害を負わせたという、あの事件ではなかったかというふうに記憶しているわけでございます。裁判の結果につきまして、この具体的なケースについて、これが軽いとか重いとかいうふうな批評はもとより自由でありますし、またそういうふうな批評があって初めて裁判が、公正な結論が順次たどっていくということになりますので、私個人としましても、これについて軽過ぎるとか、あるいはいまの時勢からいってどうかと思うとかいう批評はもとよりかってございますけれども、ここにあらわれた資料からいいまして、もう少し内容にわたって詳細に検討した上で、罰金では不適当だ、体刑をもって当然臨むべき事案だというふうな結論が出ますか、これは罰金にしたのもやむを得ない事案だということになりますか、具体的な刑が重いか軽いかというようなことにつきまして、ここで私、重い軽いというふうに結論を出す自信はございません。
  120. 松本善明

    ○松本(善)委員 それが一例だけであればまだいいけれども、しかしこの五の例も酒酔い運転で執行猶予です。四の例は酒酔いとは書いてありませんけれども、私のほうの資料によれば酒酔いです。ほかの例については、酒酔いであったかどうか、これは法務省のあれでは出ておりませんけれども、私の知る範囲でも三例が罰金と執行猶予です。確かに個々の例について、裁判官のような立場に立って議論をする立場にはお互いにないです。ないですけれども、この統計と資料だけを見て、これはやはりおかしいんじゃないか、むしろ警察官についてはもっときびしくやらなければいかぬのじゃないかというぐらいのことはあっていいのじゃないかと思うのです。どう思いますか。
  121. 川井英良

    川井政府委員 私ども、検察官といたしまして、部内に犯罪を犯した者があった場合におきましては、世間から見まして、あれほどまでにやらなくてもいいんじゃないかと思うぐらいに、いままで厳格に処理をしてまいりました。これは私確信を持って申し上げることができると思うわけでございます。したがいまして、警察官は、私ども検察の部内の者ではございませんけれども、やはり犯罪捜査に鞅掌し、法律の命ずるところによって社会悪を剔決する、こういう重要な任務を帯びておるものでございますので、それらの人があえて犯罪を犯したというふうな場合に、特に警察官であるから軽く扱ってやろうというふうな気持ちは、私ども検察全般といたしましてはさらさらないわけでございまして、犯罪を剔決する者に、そうだからといって特別通常人より重くしなければならないという感情はありましても、理論的にいって、そのことの当否ということについては、私また別の観点から意見がありますけれども、とにかく一般の感情といたしまして、犯罪の剔状というような職務に従事する者が、あえて犯罪を犯したというふうな場合におきましてはいささかも容赦しない、法の命ずるところによって厳格にこれを処理するということが基本的な方針でなければならない、こう思います。
  122. 松本善明

    ○松本(善)委員 警察庁の刑事局長に聞きますが、いま私ずっと警察官についての例をあげたわけです。これについて詳しく繰り返しませんけれども、どう考えますか。
  123. 内海倫

    ○内海政府委員 もともと交通取り締まりに従事しなければならない警察官交通事故を起こすということ自体、われわれ部内規律としては厳正でなければならないと考えております。したがいまして、不幸にして事故を起こしました場合には、現在私どもはその処理の厳正公平を期するため、検察官事故現場における立ち会いを求めるというふうな措置をとりまして、できるだけ警察官事故だから警察官が処理して不公正にわたったというふうなことのないような措置も講ずるわけでございます。こういう点につきましては非常に細心の配慮をいたしておるところでございます。その送致いたしました以後の処理につきましては、ただいま法務省刑事局長の言われましたとおり、私ども厳正に処理いたしたい、かように考えております。  なおつけ加えますならば、それはそれといたしまして、警察官事故を起こして、その処断が論ぜられる以前に、警察官自身が事故を起こさないという努力が最も必要であろう。しかし一たび事故を起こしました場合は、法の前で厳正に処断されることは当然でございます。
  124. 松本善明

    ○松本(善)委員 私の聞きますのは、厳罰主義ということがたいへん効果のあるように先ほど来ここの委員会では言われているけれども、例を見てみるならば、警察官には厳罰主義でないじゃないか。これについては警察庁はどう考えるかというのです。そうだと思うか、矛盾を感ずるかどうかということなんです、結果的に。
  125. 内海倫

    ○内海政府委員 法のもとで裁判を経て処断されたものでございますから、私どもはこれが正しく行なわれたものと考えます。
  126. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういうことを言えば、この結果について質問をすることはできなくなりますよ。何事も法に基づいて判決を下されたものですということを言って済むならば。それじゃこれは軽過ぎるじゃないか、重過ぎるじゃないかということは一切論議できない。そういうばかなことはないと思います。その点と、つけ加えて聞きますが、これらについて部内ではどういう処分をしましたか、両方答えていただきたい。
  127. 内海倫

    ○内海政府委員 先ほどの警察官について軽いか軽くないかという問題でございますけれども、これにつきましては、私は標準というものがあって初めて軽いあるいは重いということがいわれるものと思いますが、その標準というものは、やはり現時点におきましては法律のもとで裁判せられた結果によって考える以外に方法はない、かように考えておるわけであります。  なお、私ども、先ほど申しましたように、警察官の場合は、その職務柄事故を起こしました者については全員を送致いたしまして、処断を求めておるところでございます。  それから部内におきます処分につきまして、いま私、手元に詳細な資料を持っておりませんけれども、いずれもその事案に対応いたしまして、最もきびしいものは懲戒免官、以下状況に応じましてそれぞれ必要な行政処分というものを行なっておるところでございます。私の本部長としての経験におきましても、まず客観的に見て——客観的とは、客観的な世論その他の反響を見ましても厳正な処断をしたように思っております。
  128. 松本善明

    ○松本(善)委員 警察庁については、その処理状況について、部内の処分も含めてどういうふうに処理をしているかということをきょう聞くからお整えいただきたいということを昨日連絡してあったはずですけれども、それについてはどういうことを調査されましたか。
  129. 内海倫

    ○内海政府委員 私どもの内部の行政処分について申しますと、事故の第一原因となりました者が昭和四十二年中に二百七十名でございますが、それらについて懲戒免職をいたしました者が八名、それから停職をいたしました者が十六名、それから戒告をいたしました者が百十三名、それから諭示の上免職させました者が十九名、減給をいたしました者が九十八名、以上二百五十四名がいま申し上げたような処分を受けております。
  130. 松本善明

    ○松本(善)委員 懲戒免職は二百七十名のうちの八名、これはもうたいへんに少ないのじゃないか。厳罰主義、厳罰主義ということを盛んに言っていますけれども、警察の中にこそまず厳罰主義を徹底すべきじゃないかと思いますが、法務政務次官、いかがでございますか。いまの議論をお聞きになっていて、政府の一員として、厳罰主義はまさに警察官に先にすべきじゃないかと思いますが、どうですか。
  131. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 取り締まる立場の者であるだけに、厳重な処置をすることが当然だろうと思います。
  132. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、現在はやはり少し手ぬるいということをお認めになりますか。
  133. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 いま出ているのが手ぬるいというわけじゃなくて、厳重な処断は必要でありますが、いま処罰されたものはやはりそれぞれの事情に応じて慎重にやられたものだと思います。
  134. 松本善明

    ○松本(善)委員 いま警察庁の言うには二百七十名のうち懲戒が八名、それから法務省の出した資料でいえば、九例のうち禁錮一年、執行猶予が一件で、ほかはみんな罰金です。この実情は何よりも軽いということの、厳罰主義は警察官には適用されてないということの証拠ではないかと思う。これを見られても、やはり必ずしも現状は手ぬるいとは言えぬ、こういうふうに法務政務次官考えられるということですか。
  135. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 その事実は、慎重にやられた結果がそこにあらわれていると思います。しかしながらそういう処罰をする際には、取り締まる立場の者であるだけに、他よりも一そう慎重に厳重にやるべきだと思います。
  136. 松本善明

    ○松本(善)委員 政務次官、いま禁錮三年では足らぬという議論になっているのですよ。懲役五年にしなければいかぬという議論になっているときに、いまの例をごらんになると、みんな警察官は罰金なんですよ。禁錮一年、執行猶予なんです。それから懲戒免になっておるのがほんの一部ですよ。これをごらんになって、刑法の上限を上げるという問題を考えて、警察官だけは別世界に住んでおるというふうに思われるかということですね。思われなければ思われないでけっこうです。それだけお答えいただきたい。
  137. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 別に別世界にあるとは思いません。
  138. 松本善明

    ○松本(善)委員 まだ多少ありますけれども、同僚の委員の質問があるようですから、それが終わってから続けさせていただきたいと思います。
  139. 永田亮一

  140. 横山利秋

    横山委員 運輸大臣は短時間のお約束でございますから、ほんの聞きたい焦点だけになると思います。  赤澤さんがえらいアドバルーンをあげて、端的に言えば陸運事務所の機構について発言なされた。陸運事務所が自動車行政にたいへん関係があるけれども、昔から複雑で、運輸省とそれから地方自治体との間に議論があるわけであります。今後、自動車行政の一番先端組織にあるこの陸運事務所のあり方について、どういうふうに大臣お考えでございますか。
  141. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 陸運事務所の行なっております仕事の中で、車検、登録というような仕事が大きな仕事になっておりますが、それらは所有権の確認、法的認証という国家的な性格を持っているものでありまして、たとえばこれは不動産登記というものとよく似ているものであります。したがいまして、こういうことは国家が行なうことが妥当であると思います。それから安全基準の確立とか全国的交通行政の統一、そういうような全国的な性格を持っておることも、これは国家が行なうのが適当であると思います。現に運輸省におきましては、自動車の登録等の仕事は電子計算機を用いて全国的に統一しよう。そして各府県に別に行かなくても、ほかの都市でも登録をいろいろできる、そういう形で全国一カ所のセンターをつくろう、そういう考え方でいま電電公社と打ち合わせをしております。これによると相当お客さんは利便になりますし、警察当局等も、自動車の車体番号あるいは所有権、そういうものを瞬時にして知ることができるので、警備その他の関係から非常にいいんじゃないかとわれわれは思います。したがいまして陸運事務所のやっておる仕事の中で、以上のようなことは、これは国の公務員として国が行なわせるほうが私はいいと思います。ただし、たとえば地方的な仕事、バスのタイムテーブルであるとかバスストップをどうするとか、そういうような地方的な仕事は、これは地方が行なってもいいだろう。現在の地方事務官制度というのは、占領軍がおりましたときに、占領軍からの非常に大きな要請に基づいて妥協の産物としてできていたと私は聞いております。この際はやはり国民が何が一番便利であるか、また国家的にもどういう仕事が大事であるかというような考え方に立ってその辺をはっきりしたらいい。国に返すべきものは国に返す、地方でできるものは地方でやる。あるいは国や地方でなくて民間団体や業者団体でやれるものがあればそれにやらせる、そういう形にできる段階に来ていると思います。運輸省といたしましては行政刷新本部というのを部内につくりまして、いまその限界等を研究させておるのが実情であります。
  142. 横山利秋

    横山委員 赤澤さんの構想は私ども新聞で見ただけですが、どうも受けた感じは、陸運事務所を地方に移管しろ、こういうふうに受け取れたわけでありますが、大臣のいまのお話は原則的にそれに反対、こう理解してよろしゅうございますか。
  143. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 原則的に反対であります。と申しますのは、車検、登録というような仕事が非常に大きな分野を占めておるわけです。それから安全基準の確立とか、全国的統一を要する問題がますます大事になってきている。たとえば国道にいたしましても、いままでの一級国道、二級国道というような国道の編成がえが行なわれて、多分に国がめんどう見るという分界をはっきりさしてきたのはここ数年来の傾向でありますが、人命を扱う自動車行政のような場合は、やはりある程度はっきり、責任の所在を明らかにしたほうがいいと思いますし、また国民のほうの立場からしましても、県庁へ行ったり、陸運事務所に来たり、あっちこっち回されるというのでは非常に不便が多いだろうと思います。ほかの役所のことはよく知りませんが、大部分県庁の中で一緒に執務しているのが多いようですが、陸運事務所だけは別の建物で独自の仕事をやっていて、知事はほとんどその機関事務を、判こも預けて、事務所長がその代理でやっているというのが現在の実情であります。そういう面からしましても、お客さの利便一つ考えてみましても、やはり国でやるべきものは一貫して国でやってしまうほうがいい、そういうふうに私は思います。
  144. 横山利秋

    横山委員 わかりました。  次の質問は、先般来国鉄の問題に関連して、また交通問題に関連して、中曽根さんのたいへん大きな雄大な構想を新聞で拝見したのであります。率直に感じました点は、一体そういうことがそう簡単にできるだろうかという印象を受けたわけであります。もちろん英国をはじめ大都市においてもそういう構想があることは私も承知はしておりますが、いまの日本における都市交通について、運営の総合集約といいますか、一元化といいますか、どういうつもりでそれをおっしゃったのであろうか、単に絵図面をかくことであるならば、これはだれでもかけるけれども、一体それらの構想というものが、私はあなたの御意見を詳細には承知はしませんが、新聞で得た範囲内で見ますと、何か国民は、当面のことができないからそれに逃げたのではないか、できもしないことを言って逃げたのではないかという印象を——ちょっと強いですが、受けたわけです。大臣がこの都市交通の一元化といいますか、集約化、あるいは路線の競合、競争線の調整といいますか、そういうことを、構図としては非常にいいと思うのですが、責任ある大臣として、いかにしてそれに到達するかという点について、実現性の道筋を一ぺん聞かしてほしい。
  145. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 都市交通の一元化ということを私は言ったことはないのであります。新聞にもし出ているとすれば、それは誤り伝えられたものであろうと思います。私が言いましたのは、都市交通というものが最近は非常に変化してきている。そこで一つは官あるいは公共団体の力を活用すると同時に、もう一つは主として郊外、いわゆるサバーブについて民鉄その他の力を借りなければこれはできないだろう、国が何でもやるという考え方には自分は賛成できない。特にこれから非常に大事なのは郊外における通勤問題や都市問題なのであって、政治的に見ても、ジョン・ケネディが当選したのは郊外の票である、美濃部さんが当選したのも郊外の票である、すなわち三多摩の票である。それだけ見ても、郊外というものが非常にクローズアップされてきているものと思います。横山さんはその辺の状況はよく御存じのはずであります。そういう意味で、郊外についてはいま大体私鉄が担当しているので、国が全部やれといっても、税金その他に限度がありますから、これは民間の力を大いに活用してやらなければならなぬ。いままで私鉄は不動産をやったりあるいはチェーンストアをつくったり、デパートをつくったり、どんぶり勘定でいろいろやってきたけれども、昔は不動産がもうかってうまく見合ったこともある、しかし近ごろは地価も高くなり、必ずしもそういうどんぶり勘定でやるということが合理的であるかどうか疑問である。そういう面から、また一面においてはATSをつくれとかあるいは複々線にしろとか、車両をふやせとかプラットホームを長くしろとか、いろいろ公共的要請も受けて私鉄も投資しておる。そうすると赤字経営ということはやむを得ない情勢が出てくる。そういう情勢のもとに、デパートやチェーンストア、不動産値上がり等のどんぶり勘定でいつまでもやれるものかどうかはわれわれとしても検討すべき段階に来ている。ついては、これは検討してみなければわからぬけれども、経理関係をどういうふうに限界を明らかにするか、またその相互の交流、協力関係をどういうふうにやるかということを検討しながら、一面において公共的仕事を行なう場合については私鉄に対して公共性を認めて、国鉄その他に認めているようなある程度の国家の助成も考えていい段階に来ている。そういう意味で、特別立法によって郊外を担当している私鉄にも発奮願うという体系をとるべきだ。そういう意味でいまその検討を命じておる。また、一面において国自体も郊外問題に乗り出すということは必要になる。というのは、通勤距離が五十キロから百キロ圏に延びている。その部分は私鉄だけではとてもカバーできない。そこでいま運輸経済懇談会において、通勤高速線という思想があるわけです。これはいま具体的にいろいろ検討しておりますが、単に通勤高速線だけつくったのではラッシュアワーに使うだけで、ふだんは赤字になる。そこで高速線をどういうふうに運営し、どういうふうに引くかというところに財政上の問題もからんだ問題があるので、それはいま運輸経済懇談会においてしさいに検討してもらっておるところでありますが、しかし、五十キロ、百キロになるというと、ある程度国がそのめんどうを見なければならぬということになるだろう。それから今度は環状線の中、都心という問題については、これは私営のバスなりあるいは地下鉄なりがやっておるわけでありますが、その連絡のポイントが非常に大事である。渋谷でおりてまた乗りかえるというところにあの混雑がある。昔のような時代ならば、山手線というのは東京を非常に利したけれども、大阪と東京を比べてみると、山手線というのが非常に害をなしている要素もある。とにかくあそこで乗りかえて出ていくからあそこへ東急王国ができる。あそこへおりて、みんな野菜を買ったり肉を買ったりして家へ帰るからあそこに自然にデパートができ、西武王国ができる。いわゆる副都心のもとというのは交通関係からきておる。そういう点で、郊外線と都心へ乗り入れるものとの連絡、接合をどういうふうにするか。もちろんこれば乗り入れがいいにきまっております。そういう方向にこれを促進すると同時に、乗り入れの線の補強というものは地下鉄にたよるのがよろしい。そこでいま都市交通審議会審議しておりますが、近くその審議が終わったら認可して、工事を至急四本ばかりやらせようと思っております。  そのほかに、さらにでき得べくんば都心の方向に向かっては地下鉄群をふやして、そしてループ線の中はそれで円滑にいくようにしたい。なお都市計画自体としても、めったやたらに百階建ての建物ができると、これはもう地下鉄の駅が満員になってしまいます。そういうわけだから建設大臣にもお願いして、ともかくかってにつくるというなら地下鉄の駅を自分でつくれ、ことによれば地下鉄も自分で引いてくれ、さもなければ運輸省はめんどう見きれぬ、そのかわり環状線の外に百階建てや二百階建てをつくるならば少し固定資産税を安くしてやったらどうか、外につくることを奨励しなさい、そうすれば交錯輸送になるでしょう、そうして環状線の中は青山墓地とか豊島岡とか、まだずいぶんアパートをつくる余地がある、あの中に高層アパート群をつくって、歩いて職場に通うようにするのが理想である、そういうふうに税制上の調整をやってもらったらどうか。問題は税制なんだ、売りたいけれども全部税金で取られてしまうから売れない、そういう情勢の土地がかなりまだあるようであります。その辺は何か知恵をつけて税制的に解決してもらえれば、都心の中にも相当なアパート群ができる。丸の内とか京橋とか、そういうところはだめでしょうが、かなりのところに私はまだできると思う。そういういろいろな総合的な関係でこの都心問題の一部を解決していこうということを申し上げたのであります。
  146. 横山利秋

    横山委員 私の聞きたかったのは、構図はわかるけれども、どういう道筋で責任ある大臣としておやりになるかということが聞きたかったのでありますが、まあその一端にはお触れになりましたけれども、ぜひ実現の方途について国民の中にもう少し明らかにしていただきたい、こういうふうに希望したいと思います。  少し次元が違いますが、次の質問は、私どもが問題にしておりますいわゆるから判決の問題であります。交通事故における賠償の判決がから手形になっておるという問題であります。この追跡調査の結果によりますと、判決を受けたものの実に三分の一が全然もらえなかったり、途中で支払いを受けていない、月賦などでもらっている、支払いをストップされたということで、判決の権威を失墜させる原因になっておるので、最近テレビ、新聞等で、から判決が非常に問題になっておるわけであります。  そこで、これは必ずしも運輸大臣の所管ではございますまいが、先般もテレビで各党が呼ばれまして議論をいたしましたが、運輸省がかつて、去年でございましたか、大臣就任前でございましたか、センター構想をお出しになったときに、これをひとつある程度受けて立つというような印象を受けました。いまの自賠の補償をかりにもう少し増加するならば、直接的救済でなくても、少なくともいま社会問題になっておるから判決に対して何らかの措置ができるのではないか。庶民は簡単に、国でしばらく肩がわりしてくれといっておるわけですが、それがすぐに肩がわりができないにしても、何か、から判決に対する救済が自賠の中でできないものかどうか、御検討をしておられたら御返事がいただきたいと思う。
  147. 鈴木珊吉

    鈴木(珊)政府委員 ただいまの御質問に対しまして、昨年自動車のそういった被害者救済のためのセンターをつくるという構想を立てて、実現し得なかったのであります。現在は、補償制度の中の運用利益から四十二年度は約十億程度の補助費というものを、たとえば法律関係の相談に行くとかあるいは救急病院とか、そういうところに補助金を出すということでございました。それで四十三年度予算案におきましてもこの程度の補助を計画しております。したがいまして事務的には、四十三年度におきましては、昨年から出ましたような種類の補償センターをつくるという案は、予算案としては出しておりません。
  148. 横山利秋

    横山委員 現状において、から判決を解決する案がないことは承知している。ですから大臣にひとつ何とか考えはないものかということを私はお伺いしたいのです。しかし追跡調査によりますと、裁判にあまり期待しない、むしろ、相手が承知したのだから、示談のほうが、きまったあとの被害者に対する金の入り方がいいのであります。しかしそういうことでは、裁判の判決できまったものが実行されないということでは裁判の権威にもかかわることであるから、この際ひとつ、私もいろいろ考えてみましたが、また各党のテレビに出席した者も、結局自賠の中で何か考えるよりほかないのではないかということになったわけであります。大蔵省の問題もございますけれども、この際、これほど各マスコミが取り上げております問題で、私は、法務大臣、最高裁にいっても何ともならぬ、一番近いのは運輸省の問題になると思うのですが、御検討をぜひ願いたい。いかがでございますか。
  149. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私はしろうとでまだよくわかりませんが、やはり一つ自動車損害賠償責任保険の金額を上げるということのように思います。御存じのように、去年八月三百万円に上げましたが、最近は飛行機事故とかそのほかの事故を見ますと、六百万円、七百万円くらいが大体平均みたいな形になってきている。高いものは御指摘のとおり、千五百万円くらいのものもございます。いまの三百万という数字は、判決の動向から見ますと、やはり低いように思うのです。そこで、いつこれを動かすかという問題なのです、議会でもこの問題はずいぶん御質問がございまして、われわれは真剣に検討しておるのです。そのためには、保険料その他が上がっていきますが、しかし、それもやむを得ない、ある段階にきたら、これを上げようと思っております。去年の八月やったばかりであるので、急に大幅に上げるのもどうかという気持ちがあるのでありますが、しかしこれはPRをして自動車所有者に御理解を願って、やはり上げなければならぬだろう、そういうふうに考えて、その時期その他をいま検討しております。  傷害の場合は大体五十万円でございますが、いままでの例で見ると、大体五十万円以内の傷害が多いようです。ただ、むち打ち病なんかで長引く場合は、まだはっきりデータができておるわけではありませんが、目下のところは五十万円でよさそうだ。  そこで問題は、おそらく横山さんの御指摘は、現状において千万とか八百万とかいう金額をどうするかという御指摘なんだろうと思うわけですが、御質問から察するに、でき得べくんば、この自賠責のお金をプールしておいて、そして一時立てかえてやるという方法は考えられないかという御指摘のように思われます。私もケース・バイ・ケースによって、そういうこともあるいは可能ではないかとも考えられます。その点はもう少し深く検討してみたいと思っております。
  150. 横山利秋

    横山委員 次の問題は、先ほどあなたがおいでになる前に、警察官の責任による交通事故が話題の中心になっていました。ここに人事院もお見えになっていますね。総合的に聞きたいのですけれども、ひとつ大臣に中心になってお答え願いたいのは、こういうことなんです。  国鉄でも、交通事故で無罪になった人もあります。起訴されて、裁判で無罪になった人もあります。起訴されると休職になる。休職にされると六割の給料しかくれません。そして、六割では食えませんから、他に職を求めようとすると、兼職禁止の規定に引っかかります。内職をしてもほんとうはいかぬのです。裁判が長びく、そうして無罪になった、その場合には現行法規では六割と十割の差額の四割はだれも補償してくれないわけであります。それが第一、私が先般来指摘しておるところであります。  そこで、その次の問題としては、起訴された、裁判が長引く、食っていけないからこの際、希望退職をしたいということを申し出たとします。しかし、希望退職の場合は、役所は懲戒免職をしなければならぬ場合もあるから、希望退職を受け付けない場合も多いのであります。そうすると、結局、休職六割、家族をかかえて裁判、金がないからみんなにカンパを求める、こういう状況が続くわけであります。特に交通事故の場合におきましては、どろぼうした、人殺ししたというわけでもありませんので、同僚はたいへん気の毒に思う。そういう、気の毒だからというて、先ほど警察官の例が引き合いに出されましたけれども、適当にやる場合が多いのであります。罪をなるべく軽くしたい、部内において。あるいはまあ、例を出しては悪いのですけれども、上野動物園長さんは希望退職で最後には無罪になったのですが、動物園長さんみたいな人柄の人は気の毒だからいいのだ。しかし、ほかの人は社会に指弾をされるおそれがある。  そこで私の提案は、第一は、無罪になった場合には休職したときの補償をしてやれ、四割か何割。たしか国鉄では、帰ってきたときには休職期間中の昇給だけは上へ乗せて、これから出発してやる、こういう救済があります。しかし、この間の救済はない。国鉄ばかりではない、すべてそうであります。私の提案は、無罪になった場合には公社なり、あるいは国なり、何らかがそれを補償してやるべきだというのが第一の提案であります。  第二番目の提案は、新しい国家公務員法の措置考えるべきではないか。たとえば私はやめたいと言った場合には、役所も困るだろう、将来懲戒免職になった場合には困るだろうから、退職金その他を一応たな上げにして、仮の許可をする、そして他に転職をするもやむを得ないという措置をする、こういうことをすべきではないか、どろぼうや人殺しや何かと、これほど大きくなっておる交通事故については、ある程度区別してもいいではないかというのが私の提案であります。この点について、初めて大臣にお話し申し上げたのですから、即答いたしかねるかもしれません。趣旨はおわかりだと思います。私のいま説明したことについて疑念があるとおっしゃるお役所、それはもう気持ちはわかるけれども、どこか間違っておるという点の御指摘をなさるお役所があったら、まずそれを言っていただきたい。別に間違いがなければ、すぐに運輸大臣から——現業を率いている運輸大臣から御答弁を願いたい。
  151. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 前者のほうは、もっともなところがあるように思います。休職期間中の休職との差額の問題は、現状復帰をして、さかのぼってやってやる必要があるような気がいたします。  それから公社の場合、仮退職みたい形になるのだというお説だろうと思いますが、そういう過失を犯して、そういう経過期間中の人が現職よりも優遇される結果というものが出てきてはいかぬという心配もありますね。ほかへ就職してしまったら給料がよかったとか、いろいろな場合があり得ると思うのですね。そういう場合や、その他いろいろ考えて分析してみる必要がある。確かにお説のように、その間宙ぶらりんになってしまって、自分の身の振り方やその他のほうでも困ることがあるように、同情はされますね。同情はされますが、しかし一般論として、優遇されるようなことがあるということは、やはりこれは困ることになるだろう、ある程度過失やその他を犯して刑事事件その他になっているような場合には、本人の応報というとおかしいですけれども、 (横山委員「無罪になったことを考えてください」と呼ぶ)将来、かりに無罪になった場合でも、その経過期間中はやはり一般の人よりも優遇されることがあるということは、考えなくてはいかぬではないかという感じがいたします。私は、これは全般的に見たら、そういう配慮を何らかの形で考えてやるということも必要かもしれぬという気もしていますが、また一方において公平の原則といいますか、服務規律の関係なんかも考えなければいかぬのではないかという気がいたします。
  152. 横山利秋

    横山委員 私の提案も、いかなる場合においてもそれを適用しろと言っているわけではないのです、客観的に見て、有罪のおそれが多分にあるという場合には、それは措置をしなくてもいい。しかしながら、これはもう気の毒だ、本人の全く過失である交通事故なんていうのが圧倒的に多いですからね。過失の場合で人をけがさせたり、殺した。それが公務員たる品位を傷つけるという観点に立っているわけですよ。公務員法ができましたのは、公務員がどろぼうとか、人殺しとか、窃盗をするという場合を想定してあれはつくられたのです。しかしその後、交通事故がこれほど多くなってまいりまして、そうして全くの過失死傷を犯した場合において、そこまで公務員法は追及をほんとうにしておったのであろうかどうか。したがって、そういう場合においては、これは起訴される、休職になる、そして長年、そして無罪。その場合、あとから金が返ってくるといったって、その間どうするのか。私は全部やれと言っているわけではないのですよ。その場合の特殊な例の道を開いてやるべきだ、こう言っているわけです。  それから、あなたは、過失を犯した人が役所よりも給料がよくなるというのはおかしいと言うのですが、別におかしくないのですよ。分に応じて働いているのですからね。役所の給料の低いのがおかしいのです。そういう点については、いまの公務員法及びその施行規則その他について、私はもう何らか一つの方途を考えるべきではないかと思うのです。結局、休職になって、裁判で判決が出るまでの過程はうちでじっとしておれというのでしょうか、六割で。そんなこと、できやしませんよ。何らかみんなやっているのですよ。それは見のがせというのでしょうか。法に違反している可能性がはるかに顕著だと私は思う。それを見のがせ、そういうことをやってもほおかぶりしておけというおつもりではないと思うのです。現実の課題です。先般、私ちょっと予算委員会で提起をしたのですが、人事院はその後どういう検討を進めておられるのか、ちょっと伺いたいと思います。
  153. 岡田勝二

    岡田(勝)政府委員 刑事事件で起訴されまして、多くの場合休職になります。その場合に百分の六十を支給することになっております。これは二十六年に制定されまして、それ以前には、休職中には一文も金が出なかったのでございます。百分の六十ということをきめましたのは、先般給与局長からお答え申し上げましたが、当時のエンゲル係数を判断し、同時に失業保険法の休業補償の百分の六十、労働基準法の雇用者の責めに帰すべき場合の休業手当が百分の六十というあたりを勘案いたしまして、百分の六十ときめたわけでございます。  その次の問題の、判決が確定いたしまして、無罪になった場合、残りの百分の四十を、というお話でございますが、検察当局におきまして適法に起訴されまして、それをもとにいたしまして休職にいたすわけでございます。その限りにおきましては、雇用者である任命権者、あるいは雇用者である国と申してもよろしいかと思いますが、その立場からは、そこに何らの問題はないと思います。ただいま中曽根運輸大臣からお答えになりましたような角度から考えるといたしますれば、むしろ統治権者としての国として考えるべき問題ではなかろうかと考えます。
  154. 横山利秋

    横山委員 大臣がお急ぎですから、それではもう一つ大臣に問題を提起しておきたいと思います。  この間、朝日新聞に、交通事故の診料代が非常に高い、医者が、一言で言うと、ぼる、そういう問題がさきに提起をされました。私も、私の知り合いが加害者であり被害者であった場合の問題として経験があるわけであります。加害者としても被害者側としても、先生よろしく何とか頼むという事情から、医者がぼったか、ぼらないかという点についてはずいぶん議論があるわけであります。しかし、それにしても、朝日新聞によれば、一月あまりの入院治療費が何と百二十五万円。病院側が多量の注射をしておきながら、健康保険の適用を断わったためだということで、この諸角さんという人は問題を提起しておるわけであります。私の承知しておる限りにおいては、健康保険の場合は点数がきまっているから、ぼろうと思っても極端なことはできない。しかし、自賠の場合はチェックができないから、あるいは加害者の負担ということになるという可能性が論理的になしとしないということのようであります。いま、大蔵省が、全国の査定事務所で調査をし始めているそうでありますが、運輸省としても、自賠関係としても何か適切な手段はないのであろうか。私は、その瞬間のことを考えますと、確かに、両方とも医者によろしく頼むということなんだから、医者の良心とか、医者の判断にまかせざるを得ない場合が多いけれども、間々そういうことを私はちまたで聞くわけであります。こういう点についてどういうふうにお考えでございますか。
  155. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 どうもそういう場合は、苦しいときの神頼みということでお医者さまお医者さまということで、金額や何か目もくれないで、ともかくなおすという感じになると思うので、おそらくそういうことがあり得ると思いますね。ただ、これは厚生大臣の主管の分野であって、私らの主管の分野をはずれるわけで、私からいいかげんなことを申し上げることは避けたほうがいいと私は思っております。ただ、そういう問題があるということだけは銘記しておきます。  それから、先ほどの休職の問題ですが、おっしゃられたように、事件が起きた、休職になった、それが判決、無罪で戻ったというときの四割のカバーという問題は、これは考えていいというような感じがいたします。これは私は変わりありません。ただ、しかし、事故を起こして、それがペンディングになって六割しかもらえない、食えない、やめようと思っても、懲戒免官か何か、そういうことでやめさせない。その場合に、どこかへ就職して、タクシーの運転手か何かになってかせぐというケースがあとる、もしその人が有罪になった場合、これはもちろん懲戒免とかなんとかが出てくる、退職金などももらえない、そういう懲罰もあるが、しかし、もし有罪になった場合というようなことを考えると、その間六割の給与しか受けられないというのもやはり一つの規律じゃないかという気がするのです。ひどい場合には、起訴されて牢屋へ入ることがあるのですけれども、それもやはり社会の規律なんであって、そういう社会の規律を維持するということは、公務員でもだれでも、やはりぴしっといくところはいかせないといかぬじゃないか、そういう気がするのです。もしそれが無罪になった場合には矯正さるべきである。有罪になった場合にはがまんしなければいかぬじゃないか。公務員といい、あるいはややそれに近いものの立場の場合は、何かそういう、一般の会社員や何かと多少違ったところがある。国鉄とか、その他の公共団体とか、そういう規律のあるところにはあってしかるべきだという感じが私はしておりますので、先ほどのことばはちょっと不十分でありましたので、この際申し述べさしていただきます。
  156. 横山利秋

    横山委員 大臣、まだちょっと誤解があるようですね。起訴される、休職になる。有罪か無罪かは別として、そこまではみんな給料をもらっているのですよ。そうでしょう。それから、休職になってからの措置については、結果として有罪になる者と無罪になる者とがあるが、ぼくの提案は、全部をそうしろというのではない。状況判断をして、本人が辞表を出してきたという場合に懲戒免職のおそれ多分という場合。たとえば、汚職だとかなんとか、そんなものは直ちに懲戒免職を一方的にやっても差しつかえない役所の立場です。しかし、ひょっとして無罪になる場合には気の毒だ、過失であるという場合においては、そこで一たん辞表を受理して——これは現行制度から変えようというのです。改正しろというのです。現行制度を基準においてはいけない。変えて、一つの道を開いてもいいではないか。その道というのは、退職金のたな上げ、あるいはそのほか保留というような道を開いて、無罪になったらそれを返してやる、こういうことならば何ら差しつかえないではないか。規律だとおっしゃるけれども、それなら言いますけれども、無罪になった場合は、検察陣が善意であっても、これは明らかに無事なる国民に対して被害を与えたのですから、それを大臣は、まさか、規律だからしようがない、受忍義務国民としてあるとおっしゃるのではなかろうと私は思う。だから、私の言うことが、まだここから先の話が大臣の頭によく落ちないらしい。これはよく御検討を願っておきたい。あとでまたほかの人とやりあいます。
  157. 岡田勝二

    岡田(勝)政府委員 ただいまのお話でございますが、起訴されまして休職になります。その途中で、場合によって辞表が出て、これを認める場合がございます。その場合、退職金の扱いといたしましては、そのときには支給をいたさないわけでございます。刑事事件が確定いたしまして有罪になれば、むろん退職金は出ません。無罪になれば、その無罪が確定した時点で退職金が出るように、いまの退職金手当法はなっております。
  158. 横山利秋

    横山委員 そういう措置が、辞表を出した場合に、辞表というものを簡単に受理しないという状況になっておるのですよ。その点を私は言っておるわけですよ。
  159. 岡田勝二

    岡田(勝)政府委員 その場合に、本人から辞表が出てまいります。で、任命権者のほうでその起訴されている内容、事実が自分のほうでつかめなければ何ともいたし方ございませんが、自分のところでつかめますれば、懲戒免職いたすのが相当だと考えれば、もう辞表を受理しないで懲戒免職をしてしまえばよろしいし、懲戒免職するに至らない程度のもと判断いたしますれば、その辺で、懲戒の下の段階の停職なり減給なり戒告なりがございますから、そういうもので処分いたしまして、一応役所の規律を正しました上で辞職の発令をいたすのが最も妥当だろう、こう考えております。
  160. 横山利秋

    横山委員 先ほどあなたは、四割の問題は、雇用主である国でなくて、統治権者としての国であるとおっしゃったのだが、具体的にはそれは現行法規ではどういうことをおっしゃろうとしておるのか。何法によって賠償するとおっしゃろうとしておられるのか。
  161. 岡田勝二

    岡田(勝)政府委員 現在、給与法のたてまえにおきまして、六割は休職給として出すということはございます。そして、それはむろん休職期間中でございます。しかし、そのあとが、無罪になったということは、なった場合の措置は何ら規定するところはございません。そこで、先ほど運輸大臣がお答えになりました、そういうことを考えるといたしますれば、統治権者の立場としての国で何らかの特別の立法措置なりなんなりをしなければ、現在の法制のもとでは何とも四割を補償する道はなかろう、こう考えております。
  162. 横山利秋

    横山委員 どなたかお答え願いたいのですけれども、それで差額の四割を、運輸大臣も人事院も、その点については、趣旨はわかるけれども現行法規では四割を補償する道はない。そうだとすれば、新しい立法措置なりなんなりしなければそれはできないということなのです。それをすべきであると私は思うのです。いかがでございますか。
  163. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 この問題は重要な問題ではありますが、やはりいろいろな関係で、とくと前向きで研究しなければ、すぐどうするというような問題じゃない、かように私は考えるのであります。皆からずっと休職のときには大体六割ということになっておりますが、あなたのお話を聞くと、それが非常にいろいろな点で無理があるというのを予算委員会で聞きまして、あなたの話もよくわかりますので、これはやはりとくと前向きで研究をしてみたいと私は考えております。
  164. 横山利秋

    横山委員 やってくださるとすると、これは何省の所管になりますか。法務省ですか、人事院になりますか。
  165. 岡田勝二

    岡田(勝)政府委員 いま大臣と少しお話しいたしたのでございますが、したがいまして、私の申し上げるのはまさに私見と申し上げるよりほかないと思います。先ほど私申し上げました六割は、適法な基礎がございまして、それに基づいて任命権者が休職処分を発令するわけでございます。それはそれで、六割というのを出すのは、まさに任命権者としてあるいは雇用者としての国でありますが、それが無罪になったということになりますれば、これは任命権者なり雇用者としての国の立場といいますか、責任の問題ではないように考えられる。という意味で、任命権者あるいは雇用者としての国の公務員制度を扱う立場としての人事院の所管にはちょっと入りかねるように存ずる、こういうことを申し上げます。
  166. 横山利秋

    横山委員 そうすると、どこですか。
  167. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 主管は総理府の問題ではないかと思います。
  168. 横山利秋

    横山委員 この問題は詰めたいと思っておりましたが、いらっしゃる方が責任が持てないお返事では困りますので、実は委員長にお願いしたいのですけれども、厚生大臣が二十八日しか来られないというわけで保留になっておりますこととあわせまして、次回にはこの問題を所管される責任者に御出席をお願いいたしたい。よろしゅうございますか。
  169. 永田亮一

    永田委員長 はい。
  170. 横山利秋

    横山委員 では次に厚生省。今回のこの刑法の一部改正につきまして、医師の誤診の問題が一つの焦点になっております。それで二十八日には武見会長もおいでを願い、厚生大臣もお見えになるのですが、その前に一言お伺いをしておきたいことがございます。私の手元にありますのは法律時報でありますが、これによりますと、少ないながら医師の誤診が、最近国民の権利意識が発展をいたしましたために、裁判事件になっておる。民事事件、刑事事件になっておりますのが相当ございます。厚生省では、医師のこの種の問題について御検討をされていますか。
  171. 若松栄一

    ○若松政府委員 私どものほうでは、民事事件については直接調査その他をいたしておりません。医師が業務過失致死等の刑事事件となりまして、刑が確定いたしましたものについては、これは医師法に基づく医道審議会でそれぞれ行政処分等をいたしておりますので、そういう例については私ども把握しております。
  172. 横山利秋

    横山委員 今回の刑法の一部改正について、厚生省は協議を受けましたか。
  173. 若松栄一

    ○若松政府委員 個別の問題として、特に医師の業務上の過失致死の問題として、個別的な協議は受けておりません。
  174. 横山利秋

    横山委員 個別的というのはどういう意味かわかりませんが、刑法の一部改正、二百十一条の、いわゆる業務上必要なる注意を医師が怠った場合には、これによって五年以下の懲役ないしは禁錮に処せられるということについて、厚生省はどういう意見の表明をいたしましたか。
  175. 若松栄一

    ○若松政府委員 現在、厚生省といたしまして、格別の意思表示というものはいたしておりません。当然、内閣提出法律でございますので、法案提出に際して協議はございますので、その場合には、われわれ賛成をいたしております。そういう意味で、法案の内容の医師の場合あるいは看護婦の場合の個別の問題ということについては協議は受けていないわけであります。
  176. 横山利秋

    横山委員 いささかそれはおかしいと思うのですけれども、押し問答には時間がございませんが、これほど四国会議論になって、そして前の国会の最後には、法務省には、医師の誤診の問題をこの次に取り上げるということを申し上げてある。医師の誤診の問題について厚生省が、内閣の出したものだからそれは賛成にきまっておるということについては、いささか私は、あ然とするわけなんです。少なくともこの法律が、医師の誤診をはじめもろもろの交通事故以外の業務過失事故について適用されるということについて、あまり関心がないようでございますが、いま医師関係だけをたとえば議論してみまして、医師の誤診その他の現状が五年以下の懲役ないしは禁錮に処せられるべき必要性のある事情だと、こういうふうに理解をしていらっしゃるのですか。
  177. 若松栄一

    ○若松政府委員 最近の世の中の趨勢から見まして、人間生命の尊重という意識が非常に高くなってきております。先ほどから例が出ておりますように、死亡事故等の補償金等の金額も非常に急速に上がってきておりますということもその一つのあらわれじゃないかと思います。したがって生命の尊重という意味から、国民自体も、危険の伴うような業務に従事する職業人が、それぞれ、さらに一そう高度の注意を払っていただくということを希望し、念願していることと思います。したがって、それに対応して、医師その他の、業務上ある程度危険の予想される職業につく場合にも、その職業人は当然、従来よりも一そう心して仕事をしなければならぬということになろうかと思います。したがって、そういう注意義務が一そう要求される時代におきまして、その注意義務が欠けて起こった過失致死というような問題につきましても、刑の上限を若干上げるということについては、これはやはり社会通念、社会常識に従ったものではないかというふうに私ども考えております。
  178. 横山利秋

    横山委員 そういう抽象的なお伺いをしていないのです。医師の誤診その他の現状が、三年以下の現行法では軽過ぎる、だから、五年以下の懲役ないし禁錮にする必要があると積極的にお認めになっておるのですかと聞いておる。
  179. 若松栄一

    ○若松政府委員 先ほど申しましたような理屈から、当然、上限というものを若干引き上げるのはやむを得ぬのではないかというふうに考えます。ただ、それが三年か五年かというような量刑的な問題につきましては、私ども専門家ではございませんので、それぞれ専門の法務省その他の関係者が十分関連分野を検討していただいておきめいただくのが妥当じゃないかと考えます。
  180. 横山利秋

    横山委員 医師の医療過誤によって、三年の上限に近い、ないしは、三年というような判決はございましたか。
  181. 若松栄一

    ○若松政府委員 私どもが把握しております範囲内におきましては、最近数年間においては、純粋の医療上の過誤に基づいて過失致死を起こしたというような場合に、三年の禁錮が科せられたという例を承知いたしておりません。
  182. 横山利秋

    横山委員 だから、おかしいというんです。法というものは、積極的必要性があって行なうべきもの。あなたは、法務省に、その前におられて、遠慮していらっしゃるかもしれない。法律というものは、積極的必要性があるから制定される。いま、医師にこういうような医療過誤が多い、しかも、それは上限に近づいている、これは放置するのは許されないから、この際、五年以下の懲役ないし禁錮にする現実必要性がある、こういうことかと言って先ほどからだめを押している。あなたのお話によると、ここ数年来そういう必要性がある事実というものは何もないではないか。どういうふうにあなたはお考えなんですか。抽象的な話ではない。われわれはこういう交通事故事情だから上限を引き上げたいというような法務省説明です。医療に関してあなたの話でいけば、現実事態というものは、五年以下の懲役ないし禁錮にする必要性は医療自体についてはないということをあなたは自分で言っているのじゃないですか。どうなんです。
  183. 若松栄一

    ○若松政府委員 三年あるいは五年というものがどのような意味を持つかということ、つまり、量刑の実際の数値に関しましては、これは専門である法務省にむしろお願いしたい。ただ、上限の引き上げというようなものが、これは社会的な通念に即応するものじゃないかというふうに考えるわけであります。
  184. 横山利秋

    横山委員 わからぬ。全然見当違いで、私の質問に対してわざわざそらされるというような傾向を私は感ずるわけです。私の聞きたいことはわかっているでしょう。わかっておって、なぜすなおに率直にお答えにならぬのか私はふしぎなんです。まあ押し問答になりますから、またいずれ厚生大臣にその点をもっと率直にお伺いをしたいと思います。  それから、厚生省にもう一つ伺いたいのは、救急医療の問題であります。いま、全国で行われている現場における救急医療体制が都市によって方式が違うように思います。私の知っておるのは、御存じかもしれません、いわゆる愛知県の救急医療コントロールセンターなんでありますが、あれを私ども、市民とともに骨折ってみてつくづくと痛感いたしましたのが、消防署と警察と医師、市役所と県、全くこの調整がとれないで、いざ救急医療ということになると、現場保全が主であるか、応急処置が主であるかについて常に問題がある。お医者さんのほうも、公共的にそれをやろうとすると、自分の商売がたきとしてひがんでいい顔をしないという可能性がある。そういう点につきまして、先ほど運輸省の話を聞きますと、運輸省でも救急医療について考えておられる。各役所が区々にわたっておるのですが、この際ひとつ、人命尊重というような立場から、救急医療というものの方式を各都市で一元化すること、それから、救急医療というものが結局、本人負担は原則ではあるけれども、本人負担というようなことのために医者がなすべき処置をあまりしなかったり、人を見て処置をしたり、あるいは、先ほど言ったように、いわゆるぼるということがある。したがって、救急医療センターの公的な性格にかんがみて、その経常費を含め国家負担ということを考えるべき段階ではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  185. 若松栄一

    ○若松政府委員 御指摘のように、現在の救急医療というものは、現在一般に行なわれております保険医療の体系のもとでは、必ずしも十分に報われているものではないと私も思っております。特に救急を申し出まして、救急を担当しております告示医療機関というものは、相当の義務も課せられております。ある程度のベッドをあけておく、あるいはそれ相当の当直員を置くというような義務も課されておりますが、それらのものを完全に履行いたすといたしますと、現在の健康保険等の診療報酬体系でまかなっていくにはかなりの困難があると思います。そういう意味で、私どもも、保険医療の体系でも、できるだけこれらの経費をカバーできるような体系に直していくということの一方、救急医療というものは、すべての医療機関に完ぺきな体制を要求することはかなり困難でございますので、やはり特殊な専門的救急医療機関を整催する必要がある。そういう専門的救急医療機関というものは、どうしても現在のような診療報酬体系のもとでは公的なものに依存しなければならない。そういう意味で、四十二年度から、さしあたりいわゆる救急センターと称するものを全国で百十一カ所選定いたしまして、ここには本格的な救急体制、設備というものを整備することにいたしております。年次計画でございます。したがって、そういうようなものにつきましては、施設の整備に必要な経費を国庫補助し、あるいは機械等についても国庫の補助をするというような形で助成を行なってまいっております。なお、経常的な経費についてはこれではまかなえませんので、これらについてはやはり公的な医療機関あるいはそれに準ずるものについて、国あるいはそれぞれの地方自治体等が何らかのめんどうを見てさしあたりやっていくということで、救急医療体制の整備を、現在、ごく最近からかなり急速に進めておるつもりでおります。
  186. 横山利秋

    横山委員 御存じだと思いますが、地元の例を引いて恐縮でございますが、名古屋では東海交通災害コントロールセンターが、民間の非常な盛り上がり、熱意を受けて、そして寄付金が集まり、自動車が寄付をされ、市役所、県も応分の寄付をし、財団法人ができた。ところが、さてできたけれども、建物を竣工する段階になって、なおかつ経常費の問題が、とてもこれは出ない。出ないのはあたりまえでございます。そのために行き悩みの状況になっておるわけであります。御存じのように、交通事故によって死ぬ人の三分の一は、現場の応急処置よろしきを得れば助かるであろうというのが、厚生省の何かの統計に出ておった模様であります。したがって、民間でつくったがために、かえって銭のことでばかを見たといいますか、経常費その他の出る余地がなくなった、だから、自動車もほこりをかぶったまま一年放置されておる。全く言語道断で、たくさんの、一億になんなんとする寄付された人の心情を思いますとばかばかしくてしょうがない。どこへ文句を言ったらいいかわからない。もしこれが、県や市でやっておったならば、自分のところでやっておったことであるからもっとめんどうを見たかもわからない。しかし、とうとい民間の盛り上がりの勢いでもってできたがために、かえっておかしなことになっておるということ、私は今後、ああいうやり方というものでは、民間ももう協力しないだろうと思うのです。だから、救急医療というものが結局公的な、社会的なものであるから、国もこの際百尺竿頭一歩を進めて、ひとつ経常費もめんどうを見るということに踏み切ったらどうか。国がめんどうを見るならば、県も市もあたりまえになるわけでありますから、こういう点にこの際踏み切ってもらいたいと思うのであります。いかがでございましょう。
  187. 若松栄一

    ○若松政府委員 現在、救急の体制は、大ざっぱに分けまして救急の搬送と救急の医療ということに分けられると思います。救急の搬送につきましては、御承知のようにこれは消防法の関係で消防で所管し、したがって、市町村等の実際に救急車を動かしますのは、大きな市でございますが、市の業務になっております。救急医療のほうは、これは医療機関が当然担当するわけでございます。  ただいまお話しの名古屋におけるTACCという仕組みは、これは民間の浄財によってできましたけれども、御指摘のように救急搬送と救急医療を両方やろうと計画をしたものでございますが、救急搬送については、これは本来名古屋市には名古屋市の法律上の義務があることでございますので、市の業務というものと民間の法人の業務というものをいかに結合し、調整していくかということが、私は懸案解決のかぎであろうと思います。したがって、法人が相当多額の経営費をまた寄付によってさらにまかなっていくということは、これは事実上非常に困難であろうと思います。そういう意味で、やはりこれは法律的にも救急搬送については市の責任であり、救急医療体制についてはそれぞれ公共団体に責任があるわけでございますから、公共団体の行なう業務と、委託といいますか、一部委託の形になりますが、何らか結びつきをつけて、公共団体で相当の必要な経費を負担できるように持っていくことが妥当じゃないか、そういう意味で、私ども県の当局者等には、そのような指導をしてはいかがというような意見を述べております。
  188. 中谷鉄也

    中谷委員 関連して、厚生省にお尋ねをいたします。  実は木曜日に医療過誤の問題をお尋ねをする予定でおりますが、先ほどの横山委員の質問に対するお答えで、一応問題点を明確にしておいたほうがいいと思いますので、お尋ねをしておきますが、従前より一そう注意義務が高く要求されるということでございますね。そういたしますと、注意義務違反に伴う責任の量もしたがって高くなる。そういたしますと、厚生省のお考えは、今後は、責任の刑罰的表現が量刑ですから、量刑も一般的に高くなってくることを予想しておられる。だとすると、従前この刑法改正について論議をしておりましたときの法務省説明とは非常に違って、まさにそのようなことになるだろう、一般的に刑が上がってくるだろうというふうに申しておりましたことを非常に率直に、素朴に厚生省はお認めになったわけで、まさにそういうことが多くのお医者さんや、美容師や、理容師や、あるいは一般の交通労働に従事しておるところの運転手などが危惧をしておる点だと思うのです。  そこで、もう一度整理をしておきますが、要するにお医者さんの注意義務というのは、普通お医者さんとしてしなければならない注意というのが基準になるということですけれども、医療行為というものは非常に高度化する。注意義務も高度化してくるけれども、医療行為そのものも高度化してくる。そういう中で、違法性阻却の問題だって出てくるだろうと思うのですけれども、一方的に注意義務の高さを要求しておられるということになってまいりますと、一体今後の医療行為との間の関係がどうなるのかというふうな問題も出てくるだろうと思うのです。いずれにいたしましても、注意義務は強く要求されるというその注意義務ということばは本来法律的なことばでありまして、決して道義的なことばでないはずなんですが、お使いになったのは、法律的な意味での注意義務ということばをお使いになり、同時に注意義務ということが高く要求されるということは、それに伴うところの責任も高く要求される。したがって、量刑もそれに伴って高くなる。それがあたりまえなんだ、こういう趣旨のことを述べたというふうに論理的にはなると思いますが、そういうことでございましょうか。
  189. 若松栄一

    ○若松政府委員 実は私も医者でございまして、法律の詳しいことは存じませんけれども法律的な厳密な解釈という意味よりも、社会通念的な意味で、そういう論理が出てこないかというふうに申し上げたわけでございまして、純粋の意味の法律解釈、法律理論というふうに申し上げたつもりではございません。
  190. 中谷鉄也

    中谷委員 実は、昨年刑法学会で医療の問題を特に取り上げまして、たとえば、私、明後日質問いたしたいのは、形成外科と刑事責任の問題とか、豊胸術後死亡例の剖検所見の刑事責任、こういうような問題をお尋ねしたいと思うのです。整形美容と言われている問題も取り上げたいと思いますけれども、ひとつ事は法律的な評価にかかわる問題ですので、道義的な問題とあるいはムード的な問題と法律的な問題とごっちゃにしていただきたくないのです。しかし、また本来そういうふうなものなのかもしれませんけれども、どうもいまのおことばは、私たちが危惧をしておったことが、まさに政府委員のお口から、そういうふうに刑が上がることによって、全体の刑が上がるということをお答えになったというふうに思いますので、その点をいま少し次回に掘り下げてお尋ねをいたしますから、整理をしておいていただきたいと思います。
  191. 横山利秋

    横山委員 ちょっと私の時間を超過しましたから、二十八日に厚生大臣並びに先ほどの総理府ですかの御出席の際にあとの質問を少しやることにいたしまして、私の質問はこれで終わります。
  192. 永田亮一

    永田委員長 松本善明君。
  193. 松本善明

    ○松本(善)委員 引き続いて質問をいたします。  警察庁にお聞きしたいのですが、先ほど警官の事故のことを問題にしていたわけですが、去年の七月十一日に、いわゆる警官の三悪ドライブというのがあって、それから警察庁ではそういうものの根絶を指示をしたということでありましたけれども、その後のそういうものの効果は上がっておるでしょうか。
  194. 内海倫

    ○内海政府委員 主管の監察官が参っておりますので、監察官のほうから答弁をいたします。
  195. 斎藤弥之助

    ○斎藤説明員 警察官交通事故防止対策につきましては、あらゆる機会に警察庁といたしましても、第一線の警察に対しまして注意を喚起し、また指示、通達を出されております。また、各都道府県警察でも、この問題は重点的に指導、教育、あらゆる面にわたって事故防止に努力をいたしております。  四十二年の記事ということで、私どもちょっとその記事の内容は知らなかったわけでございますけれども、四十二年は四十一年に比べますと、確かに警察職員の交通事故が増加をいたしております。四十三年、今年に入りましてからの数字は、ちょっと正確な数字はいまございませんけれども、四十二年との関係で言いますと、必ずしも増加してきているという感じはございません。  効果ということでございますが、いろいろな機会に防止対策をやっておりますので、御指摘のような効果について、できるだけ事故の絶滅を期するようにということで、やっておる次第でございます。効果の具体的な点につきましては、ちょっと手元に資料がございませんものですけれども、以上でございます。
  196. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは、この事件についての法務省答弁準備できているようなんで、御報告いただきたいと思います。
  197. 石原一彦

    ○石原説明員 先ほどの件につきまして横浜地検に照会いたしまして、ただいま回答を得ましたので、それについて申し上げます。  この事件につきましては四十二年の七月十一日に発生いたしたのでございますが、七月二十六日逗子警察から横浜地検の横須賀支部へ事件送致を受けまして九月十九日公判請求をいたし、現在係属中でございます。その内容は、先ほど松本委員が御指摘されましたように、七月十一日に助手席に同僚の巡査を乗せまして鎌倉に向かっていく途中、お酒も飲んでおりました関係から電話の柱に衝突いたしまして、同乗の巡査に大腿骨折の傷害を負わせたということでございます。したがいまして、罪名といたしましては業務過失傷害及び道路交通法違反、すなわち酒酔いと無免許の点を含めまして起訴し、現在審理中であるということでございます。
  198. 松本善明

    ○松本(善)委員 警察庁の先ほどの答弁にはたいへん驚いたのですけれども、この「三悪ドライブで警察庁にショック」ということで各新聞とも、警察庁がこういうことの絶滅を期するようにということで通達を出したという、それをよく知らぬという答弁がここでされるとは、全く警察庁の通達というものが何にもなってないのだ。国会へ来て答弁をするべき人が、このことはよく知らぬというようなことでは、とても効果について聞いてもむだだろうと思う。  それで、私はこれ以上は聞くのをやめまして、法務大臣にちょっとお聞きしたいのですが、先ほど警察官の事案を相当問題にしておりまして、ちょっと簡単に申し上げて法務大臣の見解を聞きたいのですけれども法務省で資料をもらいました九例のうち、禁錮一年の四年間執行猶予、これが一番重いのです。罰金が五件です。そのほか捜査中、不起訴、家裁送致、そういうようなのがあります。しかもその中には酒酔い運転、無免許運転、これが一ぱいあるわけです。こういう現状であり、かつ警察庁の答弁では、二百七十名去年あった。そのうち懲戒免にしたのは八名だ。先ほど法務大臣が、非常に効果がある、妙薬だと言われた、この厳罰主義というのは、警察官にはどうも適用になっていないらしい。法務政務次官に、これは軽過ぎやせぬか、警察官だけ別世界に住んでいるのじゃないかとお聞きしたら、いやそんなことはないと思う、こというお話。もし法務政務次官の言うとおりでありますならば、警察官についてこの程度で何とかなるというのならば、条件を引き上げる必要はさらさらないんじゃないか。十分、罰金と禁錮一年、四年間執行猶予、こういうような刑でやっておられるわけですから。そうして警察庁としては緊急通達さえも覚えておらぬというような状態でやっておられるのです。これは条件を引き上げる必要は全くないと思いますけれども、いま私、法務大臣がおられないときの審議の経過をちょっと御報告申し上げたのですが、御意見を伺いたい。
  199. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 こういうふうな事件につきましては、警察官であろうと警察官でなかろうと、私は、しごく公正と申しますか、正しくやらなければならぬと考えております。警察官なるがゆえに軽いとかそういうことはあってはならぬし、現在そういうふうなことは聞いたことはない。公正に行なわれておるものと私は考えております。ただ申し上げたいことは、たまたまそういう事件があったのが刑が軽かったからそれで刑の量定を上げるということはむだじゃないかとすぐ結びつくというふうには私は考えておりません。やはり人命尊重が文化のあれとともに非常に高くなっていく、これはもうみんなだれも共鳴するところでありますので、注意力を喚起するために刑の量定が上がるのは、今日の時勢に照らして何もふしぎなことではない、当然なことである、私はかように考えております。あくまで身分とか人柄によって刑が重いとか軽いというようなことは、法務大臣の一番きらいなことであります。絶対にそういうようなことがないようにやるということを重ねて申し上げておきます。
  200. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは先ほど法務政務次官にお聞きしたことと同じことをもう一度お聞きしておきたいと思います。  九例のうち、警察官が酒酔いで重傷二人というのが禁錮一年、四年間執行猶予、これが一番多いのです。それから無免許で児童六人に傷害というような事件は罰金です。一つもこういう酒酔い——先ほど来法務省は悪質だと言っていました酒酔いだとか無免許だとかいう例につきましても、そして複数の人をけがさしたという事件についても、決して上限までいってないわけですよ。法務大臣考えでは、これは少し軽過ぎるというふうには思われませんか。
  201. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 私は、事実重かるべきものは重くやることが正しいと思う。それから軽からねばならぬものは軽くやる、これが量刑の正しいところだと私は思うのであります。同じ一つの事件でも非常に慎重にとり行なわれるのでございまして、やはり被害者の状態ども見なければ、その刑が軽いとか重いとかいうことは判断が困難だ、こういうものは、やはり実際の問題を取り扱うた人が、加害者というかまたは被害者のほうはという両方を厳正な立場で見て、くだされるものと私は考えておるので、いろいろなケース、ケースがあるだろうと——これは想像でございますが、実際に刑を取り扱った人でないと、これは軽いとか重いとかいうような批判をくだすことは非常に困難である、私はかように考えます。
  202. 松本善明

    ○松本(善)委員 それは個々の裁判についての量刑ということになるとごもっともなように聞こえるわけです。しかし、議論をされているのはすべて統計ですよ。さっきからの重いとか軽いとかと言っているのも、たくさんの事例をあげて、これはここまできておるから、もう上限は上げなければいかぬという話は、個々の事件の量刑の議論ではないのです。全体の議論なんです。だから当然これだけの事例を見た場合には、これは、警察官について、普通の人と比べてちょっと軽くはないか。いま刑の上限を五年の長期にしなければいかぬというようなことをいっておるときにどうかということの判断は当然してしかるべきなんです。しないなんということのほうがおかしいはずだと思います。それについて法務大臣が、さらに、そんなことはないのだ、私の言うのが間違っておるのだということであれば、あとで機会を得て御意見を聞きたいと思いますけれども、私は特に答弁は求めませんけれども、私の考えが間違っているのだ、あなたの考えが正しいのだというならば、あとで言ってもらいたいと思います。  ところでお聞きしたいのは米軍の問題であります。米兵の妻の酔っぱらい運転で、これは自衛隊の列に突入をして、二人死んで十六人けがをしたという事件が最近あって、これは予算委員会あたりでもたびたび論議になったわけでありますけれども、この事件の処理は結局どうなったのでしょうか。
  203. 川井英良

    川井政府委員 横浜地検横須賀支部において事件送致を受けまして、捜査の結果、証拠十分だということで裁判所に公判請求をいたしました。
  204. 松本善明

    ○松本(善)委員 それから引き続きまして、この三月二十日にまたアメリカ兵の妻が事故を起こして六人をけがをさせておる事件が厚木の基地の付近の大和市で起こっております。これはどうでしょう。
  205. 川井英良

    川井政府委員 捜査中だそうでございます。
  206. 松本善明

    ○松本(善)委員 私がお聞きしますのは、この米軍人及び軍属それからアメリカの家族、こういう人たちについての事件の処理がどうなっているだろうかということをお聞きしたいのですけれども、先ほど公判請求をしたという事件につきましては、アメリカの婦人は逮捕して間もなく釈放されているという経過が論議の中でも明らかになっております。こういう業務過失死傷で複数の人を殺し、それから複数の人をけがをさせておる、二十人近い人が殺傷されておるというようなケースで、そういうふうに簡単に釈放しているのだろうか、実務の処理はそうだろうかということをお聞きしたいと思います。いかがでしょう。
  207. 川井英良

    川井政府委員 ものによりけりで、処理はいろいろでございますが、一般的に申しまして、業務過失死傷事件というのは、もちろん言うまでもなく故意犯ではなくて、過失犯でございますので、身柄の処置につきましては、故意犯ほどに厳格な処置をとっていないというのが実務の実態でございます。したがいまして、検察庁が警察から事件の送致を受けて、事件を受理する場合に、身柄つきでこれを受理するというものは、最近漸次多くはなってまいりましたけれども、その数が必ずしも多くございません。むしろ警察の段階において、致死の事件でありましても、身柄を釈放した上で取り調べて、在宅で事件を受けるというのが数においては多いようでございます。
  208. 松本善明

    ○松本(善)委員 昨日から米軍人、軍属、家族の業務過失死傷事件の処理状況についてお調べいただきたいということを言っておいたわけですけれども、どういう結果が出ましたでしょうか。
  209. 石原一彦

    ○石原説明員 実は私どもの統計で、軍人、軍属、家族の区別がございません。しかしながら、それを一緒にいたしました全般の数について申し上げたいと思います。  昭和四十二年度におきまして、検察庁が受理いたしました総数は五百七十四人でございます。そのうち、起訴いたしましたのは百五十五人でございます。起訴猶予になりましたのが二百三十六人でございます。なお、これは大半が公務中の犯罪ということに相なるわけでございますが、わがほうが裁判権がないということで不起訴にいたしたのが百四十八件でございます。その他嫌疑なし等が三十五件でございまして、不起訴の分を合計いたしますと、四百十九件に相なります。  なお、起訴率でございますが、これは従前から私どもとっているように、起訴された分と起訴猶予の分を分母といたしまして、起訴されたものを分子とするわけでありますが、その起訴率は三九・六%と相なっております。
  210. 松本善明

    ○松本(善)委員 例のアメリカの婦人の暴走事件につきましては、そういうようなケースの場合にすぐに釈放されるというようなことは、いまのような業務過失死傷事件が非常に重大な人命尊重事故防止ということで威嚇していかなければならないということが論議をされている中で、きわめてこれはふしぎな処理であるというふうに私は思いますけれども、これ以上論ずるつもりはありません。全体としてそのようなことがあってはならないということを言って、次の質問を申し上げたいと思います。  この刑法改正問題でいろいろ質疑をしたり、議論がされたりしております中で言われますことは、これは悪質者を処罰するのだということが盛んに言われるわけです。そうしてそのために附帯決議というようなこともいろいろ考えられているというような状態が出ております。しかしながら、これがやはり保障にならないというのが実態ではないかと思います。たとえば軽犯罪法について例を出してお聞きしますけれども、この軽犯罪法ができますときに、昭和二十三年三月二十三日の衆議院の司法委員会では、国宗政府委員がこういうふうに言っております。「この法律の存在が、労働運動その他の社会的の団体運動に対しまして、弾圧的な性格をもっておるのではないかという御質問に対しては、……この法律自体は、さような労働運動等を目標としてつくられたものでは絶対にないのでございますから、全般の犯罪の、刑事訴訟法で言いますところの刑事政策的な動かし方によりまして、そういう弊害は十分に避け得られるものと思っております。」こういう答弁をしている。しかも、それだけではやはり保障がないということで、御存じのように、この法律には四条に、「この法律適用にあたっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない。」という条項がございます。ところがこの軽犯罪法で一番適用されているのは、民主的な諸団体や労働組合がやっているビラ張りに適用されているが、これは法務大臣、御存じかどうかわかりませんけれども刑事局長あたりは十分に御存じのことと思います。実際上は労働運動や民主運動のビラ張りの弾圧に軽犯罪法が一番使われている。これは立法当時議論をされたこととその運用とが違うということの最適の例だと思います。この例をお示しして、法律ができた後の運用とここでの答弁というのは違うものだと思いますけれども法務大臣の見解を聞きたいと思います。いかがでしょう。
  211. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 私は法律運用はどういう組合にきつくいくとか、そうでないものは楽にやるとかいうようなことはあってはならぬと考えております。私は法律の前にはもうみんなが平等だ、これを法務大臣としては徹底していきたい。特別の者にわりあいにつらく当たり、特別の者には大目に見る、これは私は法律の施行の本来の姿でないと思います。公平に、厳正に、しかも適正なる運営をやるということに全力を尽くしていく。しかしながら、やはりこういう法律でありますから、特殊の者がたいへんな違反をすれば、その特殊の人間がよけいあげられるのは、これは起こった現象に対して刑の執行が行なわれるのであって、しかし、それかといって、何も不公平な取り扱いじゃない。簡単に言いますならば、私は附帯決議があるなしにかかわらず、法律はすべての者に公平に、適正に行なわるべきものである、こういうことを徹底していきたい、かように思います。
  212. 松本善明

    ○松本(善)委員 私のお聞きしますのは、この法律ができますときに議論をされておることと全く違ったことが実際には起こっているという例を申し上げたわけです。ここで悪質重大な者以外には影響させないということを幾ら言われても、これができた後はやはり影響するということが実態ではないかと思うけれども、どうだろうかということなんです。そのことをお聞きしているわけです。そういう危険は十分あるのではないかと思いますが、いかがですか。
  213. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 私は法律本来の使命に向かって十分その法律目的を達するような方向にこれを進めていきたい、かように考えております。どういうところにしわ寄せをするとか、そういうことは全然考えておりません。しかし、この法令のできたのは、何といいましても悪質なのか——文化の進展とともにだんだんに人命が重く見られる、これはみんなさよう御了承のことと思う。文化が進めば進むほど人の命が大切になる。これにあわせて、この法律が今日の時勢に合ってできるものと私は平たくいえば考えております。これを乱用したり、何か、いろいろなことは全然考えてない。ただ、最高刑が上がるというだけのことです。それは、私は人間の命が尊重せられることはあたりまえのことのように考えていいのじゃないか。人命尊重が文化の進展とともに高くなったという事実に照らして、こういうものが必要になってきたものと私は考えます。
  214. 松本善明

    ○松本(善)委員 私の聞いたことにどうもお答えいただけないので、刑事局長から聞きたいと思うのですが、いま私が言いました軽犯罪法の例でわかりますように、立法当時の議論とその後の運用とが違うのではないか。ここでいかに保障すると言っても、法律ができた後はひとり歩きをするのではないかと思いますが、刑事局長の御見解はいかがですか。
  215. 川井英良

    川井政府委員 軽犯罪法の例をあげて説明されましたが、そのほかにも、暴力行為等処罰ニ関スル法律とか、あるいは最近では凶器準備集合罪の立法の趣旨、経過、国会における議論を収録した議事録というふうな内容をあげられまして、同じような御質問がしばしば繰り返されております。私はそのあげられましたものにつきましても意見を持っておりますけれども、そのことと今度の二百十一条の問題とは、事柄は同じようでございますけれどもかなり内容が違っているのではないかというふうな気がするわけであります。  それはそれといたしまして、悪質重大な事件が非常に多発している、そういうふうな者には、三年という刑罰はまさに頭打ちの傾向にある。これを打開し、みんなの気持ちに沿ったような刑罰を盛るということのためには、上限を三年から五年に上げるのが適当だ、こういう考ええ方に基づくものでありますけれども、しかしながら、そうは言っても、いままで一年なりあるいは罰金なりで済んでおった者が、上限が上がったということに比例をして、一般的に運用の面で重くなるようなことはないかというような御心配なり御指摘がございますけれども、これにつきましては、検察当局においてできることは、主として裁判所に対する量刑の参考資料としての求刑が最も重要な資料になると思うわけでございますが、その点におきましては私どもの範囲内においてできることでございますので、繰り返し述べておりますが、悪質重大な者に限って重い刑を量刑するのであって、しからざる者について一挙にまた重い刑を一律に引き上げていくというようなことは絶対にさせないという確信があるわけであります。しかしながら、問題は、刑を量刑するのは裁判官ないしは裁判所でございまして、その裁判所は、私ども行政の手の届く範囲内にはございませんので、独立した立場において刑が量刑されると思います。  ただ、ここで私ども一つの苦心の技術的な点でございますが、実は上限だけを上げて、罰金の千円という下限はそのままにしているわけでございます。これはかなりの意味を私は持っていると思うわけでありまして、上限だけを上げて、下限を上げてないということは、現実に刑を量刑される裁判官に非常に大きな一つの考慮の条件になるのではないかというふうに思うわけでございまするし、なおかてて加えて、御承知の日本の裁判所の量刑の実態というものは、御存じのように非常に慎重で、また長い伝統とたくさんの実績を積み重ねております。私、これは直ちに上限が五年になったからといって、いままで軽く済んでおったものが一律に一斉に裁判所の量刑が上がってくるというような傾向には絶対にならないと確信しているわけでございまして、最後は、独立した裁判所のすることでございますけれども、下限を上げてないということは、一つの重要な条件になるのではないか。それからもう一つは、いまの裁判所の量刑についての慎重な態度というものに信頼をいたしまして、私ども考えているように悪質重大なものに限って、しかも特にその中から特別またどうしても三年でまかなえないというようなものが、上げられた範囲内において適当な刑が盛られる、こういう結果になることを確信しているものでございます。
  216. 松本善明

    ○松本(善)委員 私はその見解とは違って、現実に違った方向にいくだろう。だから答弁も初めは悪質重大ということを言っておられましたけれども、だんだんと広がってきますと、お医者さんからそれからそのほかの関係者に広がるという、実際上影響を及ぼしていくということを認められる方向にきていると思います。現にその人たちに大きな不安を実際上巻き起こすだろうと思いますし、それから交通事故の対策としてはたいへん部分的であり、そして決して効果をあげるものではない、もっともっとやらなければならないことがあるのだということを指摘をいたしまして、きょうの質問は終わります。
  217. 永田亮一

  218. 中谷鉄也

    中谷委員 前回資料要求をいたしまして、たいへん貴重な資料をいただきましたので、それについて一、二点お尋ねをいたしますが、その前にちょっと、「交通事故と外交特権」という波多野という助教授のレポートがありますので、そしてその内容は見のがすことのできない内容を含んでいると思いますので特にその資料を確認をいたしました上に、大臣の見解を求めたいと思います。  内容は、いわゆる青ナンバーの事故率についてでございます。青ナンバーというのは、要するに四種類あるそうでありまするけれども、要は外交特権を認められている人たちに対するところの車のナンバーであります。青ナンバーの車の交通事故発生率、東京でございますが、一九六二年は登録台数千八十五台に対しまして事故件数が百五十九件、事故発生率が一四・六%、省略いたしますが一九六六年登録台数千三十六台、事故件数が百三十一件、したがいまして事故発生率が一二・六%、一九六二年から一九六六年までの五年間を平均をいたしまして事故発生率が一四・三%ということになっております。そこでそれを「東京における自家用乗用車の事故発生率(推定)」という表があるのですが、それによりますと、一九六二年度で事故発生率は八・九%、一九六六年で事故発生率は四・五%、平均が六・五%であります。同じく一般車の事故発生率——一般車というのは、ダンプや砂利トラなども含むわけですが、それは比のとり方が先ほど読み上げました表とは若干違うのですが、一九六二年の四月から一九六三年の三月までの期間をとりまして一〇・九%、一九六四年では八・一%、したがいまして先ほどの青ナンバーの交通事故発生率について、一九六四年というところを見ますと、一五・一%ということに相なっているわけであります。  外務省にお尋ねをいたします。このようないわゆる交通事故発生率という推定はおおむね正しいかどうか、これをまず最初に論議を進めていく事実関係として、確認をいたしたいと思います。
  219. 山下和夫

    ○山下説明員 外務省としてお答えをいたします。  ただいまの御指摘の数字は、私ども持っております数字と一致しておりまして、かつこれは警視庁及び警察庁の出した数字でございますので、その事実に誤りないと思います。
  220. 中谷鉄也

    中谷委員 そこでもう一度、したがっていまの数字をもとにいたしまして大臣にお尋ねをいたしますけれども、青ナンバーの車、要するに外交官の車でございますね、日本に来ている外交官の車、その事故発生率が東京の非常に評判の悪いダンプや砂利トラの事故発生率の二倍をこえている。そしていわゆる自家用自動車事故発生率の実に三倍に近い。しかも、さらに詳細に分析をしていきますと、要するにその自家用乗用車の場合はドライブクラブの車や日曜ドライバーのマイカーあるいは相当運転キロ数が少なくて車庫で眠っている、そういうふうなものやタクシーなんというものも含まれている、こういうようにこのレポートは書いているのです。にもかかわらず、外交特権を持った人の事故率がこんなに多い、こういうふうなことは一体何に原因するんだろうか、これは禁錮三年を五年以下の懲役もしくは禁錮ということに上げようという中で、私はこういうふうなことが放置されている、たいへんなことだと思うのです。対策はあとでお聞きいたしますけれども、大臣ひとつ、こういうふうな数字を私自身もこのレポートを読みまして非常に驚きましたが、何に一体こういうことは原因していると考えになりますか。
  221. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 いま初めてあなたから統計を私は承ったので、そういう事故原因が何にあるかということについては、私は明確に申し上げる材料を持ってない。われわれの常識から考えますと、事故が多いとか少ないということは抜いて、私は裁判の対象にはこれはならないのじゃないか、こういうことを考えております。外交の特権がある、裁判の対象にはならないというふうに私は承知をしております。しかし、あなたのお述べになりました統計、あるいは警視庁の統計かもしれませんが、どうして事故がそんなにあなたのお述べになりましたように多いかということは、他の政府委員から答えさせます。
  222. 中谷鉄也

    中谷委員 大臣の御見解を承りましたが、外務省として、こういうふうな外交特権を与えられた人たち事故がダンプや砂利トラよりも多い、この原因は一体何だというふうにお考えになりますか。
  223. 山下和夫

    ○山下説明員 私のほうといたしましても、ただいまおあげになった統計数字の事故原因等について、詳細なデータはまだ現在集めておりませんけれども一つ推察されますことは、いままで事故件数は車の接触事故とか損傷事故というものも全部入っているのではないか。したがって個々の事故の大きさといいますか、被害の大きさ、特に対人関係死傷の発生した人数ということもあわせ含めて、その統計数字のほんとうの意味というものを評価することがあるいは事前に必要なのではないかというふうに考えております。
  224. 中谷鉄也

    中谷委員 おっしゃっている意味がわかりません。一般の乗用車の事故発生率の対象になった事故の内容と、同じ警視庁が調べた青ナンバーの事故発生率の基礎になった事故の内容とは違うなどと外務省はおっしゃるのですか。言うてみると対物、対人いろんな事故がありますよ。しかし、おしなべてそれらを一緒にして、そうして事故率というものが出ているということになれば、 いまおっしゃったことは何ら原因の分析にも原因に対する御見解にもなっていないと思うのですがいかがですか。
  225. 山下和夫

    ○山下説明員 おっしゃいますとおり、いま舌足らずでございまして、原因そのものにつきましても私触れませんでしたけれども、確かにその原因を究明するためには、そういう事故件数の個々の事故内容というものもあわせて検討した上で原因も調べたほうがよかろうということで申し上げたわけでございます。事実、現状では、この事故件数において特に高い事故率を起こしている原因につきまして、私どもとしてももう少し考えていきたいと思っております。
  226. 中谷鉄也

    中谷委員 一九六二年からのきわ立った、約三倍以上の事故率というものが出ているわけです。そうすると、事故の内容について掘り下げて検討したらよかろうということで、今日まで検討を放棄しておったということになるわけですか。それとも六二年以来これらの問題については検討したけれども結論が出ない。しからば検討のプロセスにおいてどういうふうな考え方が浮かんできたか、どういうふうな見解があるのか、そこまで伺いましょう。
  227. 山下和夫

    ○山下説明員 ただいまの御質問に対しまして、私どもとしましては、確かにこの事故件数がふえた。事故率がふえていることにつきましては、こういう統計によって承知しておりましたけれども、具体的な事故原因と申しますか、かつ高い事故発生率ということの総合的な調査研究ということは、むしろ警視庁、警察庁の専門家の御意見も含めて検討の必要ありということで、私個人といたしましては、現在責任を持っていかなる高い事故率があるかということにつきまして申し上げるデータはございませんので、もう少し検討した上お答えいたしたいと思います。
  228. 中谷鉄也

    中谷委員 課長さんにおいでいただいて、そういうふうに詰めるのはあまり好みませんが、あなた個人の見解、私見をこの委員会で聞くためにここへ来てもらっているのではないのです。そうすると、外務省としてはこれらの問題についてはまともに、まじめにあるいは過去何年かさかのぼって検討した事実はない、こういうことになるわけですか。そういうふうにしかお聞きできませんね。あなたの私見などというものを——あなたおっしゃっるとおり事故原因についてはあなたのほうは専門じゃございませんよ。警察庁の協力、警視庁の協力を得なければいかぬ、そういうふうなものの協力を得て検討したことがございます、その結果はこういうことですが、しかしまだそれは検討の過程にありまして、ここまでの見解は出ておりますけれども結論として申し上げるには至りませんというふうな話なら話として聞ける。あなた個人の見解というようなものを聞くためにあなたに来てもらったんではない。一体どういうことなんですか。
  229. 山下和夫

    ○山下説明員 たぶんに御説明の不十分な点はおわびいたしますけれども、私の申し上げようと思いましたのは、こういう責任ある場におきまして、個人の見解ではなくて外務省の見解としての正式な回答を申し上げるためには、私としましてもう少し責任ある回答ができますようにいたしたいということでただいま申し上げたわけでございまして、決して検討を放棄するとかそういうようなことでただいま答弁したわけではございません。
  230. 中谷鉄也

    中谷委員 大臣にお尋ねをいたします。  裁判にかからないのじゃないかと大臣はおっしゃいましたが、その裁判にかからぬということを前提として、外交特権と交通事故の問題、外交特権を享受している者の交通事故事故発生率が極端に高いという問題を提起しているわけでございます。そこで、お尋ねと申しますよりも大臣の見解を承りたいのですが、一九六二年から少なくとも町に出ている本のレポートの中にもすでにそういう表が出ているわけなんです。いまからもう足かけ七年も八年も前からこの事実は注目されている。こういう問題について、外務省、政府としてまともに検討していないというふうなことは、私は外交特権ということを云々するわけではないけれども、外交特権を持った人の事故が砂利トラよりも多いというふうな事実について、一体その原因は何だろうかということを検討されなければ、この二百十一条の問題にしろ世間は納得しないだろうと私は思うのです。外交特権の上にあぐらをかいておる状態、それがこういう事故発生率を生んでおるのだということをある学者は言っております。そういうようなことではないでしょうか。この事故原因についての大臣の率直な御見解を承りたい点が一点。  いま一つは、こういうふうな外交特権というものは大事なものだと私は思います。しかし外交特権の上にあぐらをかいて事故を多発しておるというふうなことは、全体としての法秩序を乱すことだと私は思うのです。これに対する防止策いかん。  この二点について大臣のお答えをいただきたいと思います。
  231. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 その点はもう前にお答えしました。外交特権があるということも言いましたが、しかし外交特権があるから事故が多い、そう結びつけるかどうかは、私はまだ調査も何もしていないから、外交特権があるから事故が多いなんということは、私はまだ申し上げる材料を持っておりません。しかしながらいずれにせよ事故が多いということは悲しむべきことで、事故は全力をあげてこれを少なくするということについては、全然あなたと同じ考えを持っておる。外交特権があろうがなかろうが、事故が少ないということをみんなが希望するので、そういうことに対しては適切な方法をとって、この事故が少なくなるようなことを、当然あなたのお言いになったように、考えたい、かように私は思います。
  232. 中谷鉄也

    中谷委員 刑法の問題については、ずいぶんわれわれは真剣に論議をしてきたつもりなんです。また大臣も非常に夜おそくまで御出席になりましたけれども、青ナンバーの事故率が多いということを手がかりにして私がお尋ねをしておるのは、この交通事故防止一つの解決のデータがある、こういうように私は思うのです。なぜ外交特権を持った人の事故率が多いのだろうか。この事故分析をしていくということが、同時に交通事故防止につながっていく一つの作業になる。そのことについて、結局大臣は原因はわからぬというお話なんです。わからぬということでは困ると私は思うのです。  それで警察庁にお尋ねいたしますけれども、警察庁としてはこの事故原因は一体何にあると思われますか。
  233. 綾田文義

    ○綾田説明員 警察庁としても、外交特権の車はかつてアメリカでも問題になったことがありまして、この統計については承知をいたしておりますけれども、なぜそういうふうな事故率が多いかという点につきましてはまだ突き詰めて検討いたしておりません。今後外務省にも十分意見を聞きまして、警察庁は警察庁として十分に前向きで検討いたしたいと思います。
  234. 中谷鉄也

    中谷委員 民間の学者が次のように分析をいたしております。「一般運転者とくらべて、外交官だけがとくに運転技術が未熟だということはありえないはずである(また、かりに、特権享有者が無免許運転をしていることがわかっても、それが通行人や他のドライバーにさしせまった危険を与えると判断できないかぎり、その特権享有者の身柄を、一時的に拘束することさえできない)。とすれば、結局、青ナンバー車に事故の多い最大の原因は、特権享有者の運転の粗暴さにあると断定して、大過ないであろう。」、こういうことを言っております。こういうふうな分析というものをやはり明確にしていただくという姿勢が——先ほどの警察官に対する処分の公正だとか、あるいは外交特権を持った人の事故の率が極端に多いということに対する原因の究明と防止策の確立であるとかというふうなことがなされずに、いわゆる夜星朝星で働いている運転手さんだけを道交法違反でつかまえるということは、法の秩序を乱すものである、私はこういうふうに申し上げたいのです。なお、この対策について特に明確な御見解をお出しになりませんでしたが、先ほど警察庁の政府委員が答弁をいたしましたけれども、アメリカで問題になったことがある。アメリカでは、「再三の警告にもかかわらず、外交官の交通違反件数が増大する一方なのに業をにやした国務省は、一九六四年春、ラスク長官の名前で、各国大公使館に書簡を送り、今後は、外交官も、交通違反に対する罰金を払うよう慫慂した。」云々とある。要するに思い切った措置をアメリカはとった。こういうふうなことについて、おとりになれとは私は言いませんが、少なくとも外務省などと連絡をとって、こういう交通事故率が多い、事故数が車に比べて圧倒的に多いというようなことについて何らかの意思表示をするということは、自分の国の国民に対して厳罰を課するなら、まずそういうようなことについて警告や、少なくとも要請をするくらいのことはあたりまえじゃないですか。こういうことをおやりになろうとは思われませんか。
  235. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 その点もさきにお答えしました。しかるべき方法をとくと講じたいということを私は申し上げた。しかるべき方法というのは、あなたのおっしゃった事故率が減るような方法をひとつ講じたいということをお答えをして、何もそれをほうっておくということは一つも言っていない。しかるべき適当な方法でそれが減るような方法を講じたい。しかし特権のものをやらなければ刑法改正は何か意味が薄いのじゃないかとか、そういうようなこととは別なことじゃないか、かように私は考えます。
  236. 中谷鉄也

    中谷委員 問題を指摘をいたしましておきます。  次に、外務省のほうにお尋ねをいたしますけれども、松本委員のほうから質問いたしました点をもう少し私もこまかくお尋ねをいたしますが、地位協定を受けたところの議事録の中に「犯人として逮捕したときは、その犯人を拘束する正当な理由及び必要があると思料する場合を除くほか、」「合衆国の軍当局による拘禁にゆだねるものとする。」、こういうふうなことに相なっておりますね。そこでこの「犯人を拘束する正当な理由及び必要があると思料する」という点については、すでに有権解釈も確定をしておるわけですけれども、念のために外務省にお尋ねをいたしますが、これは刑事訴訟法の百九十九条あるいは六十条の規定と同趣旨、この文言の「犯人を拘束する正当な理由及び必要」というのは同趣旨というふうに承っておきたいと思いますが、いかがですか。
  237. 松原進

    ○松原説明員 私国内法の刑事訴訟法の規定をあまりよく存じませんので、立ちおくれまして申しわけありませんが、同趣旨と考えます。
  238. 中谷鉄也

    中谷委員 刑事局長さんにお尋ねしておきますけれども、すでに前の局長の津田さんなどがお書きになった本の中にも、刑事訴訟法と同趣旨だ、全く刑事訴訟法どおりのことを述べてあるにすぎないのだ、こういうようになっておりますけれども、そういうことでよろしいか、これは全く念のためにお聞きしたのですけれども、課長のほうでお答えいただけませんでしたので、局長の御答弁をいただきたいと思います。
  239. 川井英良

    川井政府委員 私もそういう趣旨のものだと理解いたしております。
  240. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、実務家としての局長と課長さんにひとつどちらでもいいから私お答えいただきたいと思います。  酔った婦人が、交通法規どおりに行進をしておる部隊の中に車を突っ込んで、前途有為な二人の青年を即死させて、数人の青年に重軽傷を負わした。要するにアメリカ軍人の夫人の暴走事故、こういうめいてい運転により二名即死させたというような事故、こういう事故について、私ども率直に申し上げまして、先ほどの局長の御答弁きわめて不満なのです。業務過失致死の事件などというようなものは、一般の事件と違って身柄不拘束で送検する場合が非常に多いですというふうなお答えがあった。しかし松本君も実務家なんです。私もとにかく交通違反の事件、業務過失致死事件というものについては若干弁護してまいりました。この種の事件について不拘束で調べられるというようなことがわれわれの常識で考えられますか。実務家としての私は、業務過失致死事件については逮捕率は少ないのですとか、勾留率は少ないのですというような局長の先ほどの御答弁は全く不満なのです。先ほどの答弁は、われわれの常識から見てこんなものは保釈さえも許しがたいような事件なのです。一般の業務過失致死事件が他の事件と比べて逮捕率や勾留率が少ないということはわかりますけれども、ての種事案が逮捕もされず、勾留もされないで釈放されるというようなことは私はあり得ないと思います。私の短い二十年の経験の中にもそんなことは絶対ありません。局長さんが、こういうことは例としてよく知っておる、そんな例があった、あるいはまた刑事課長が、そんな例があった、自分が検察官として検察庁に勤務しておるときに、こういう事案について釈放しましたというようなことが例としてでもあるならば、私は言っていただきたい。まじめにわれわれ刑法審議をしてまいった。だから、いわゆるその場のつじつまの合ったところの答弁ではなしに、実態のことを私は言っていただきたい。いかがでしょうか。
  241. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 私は実務のほうはあまり明るくないのでありますが、あなたのいまお述べになりました事件につきましては、私もいろいろと研究をいたしました。あなたも専門家で全部御存じでしょうが、とにかく日本に裁判権がある。あれは御承知のように現地の警察のほうで大体一通り何時間か調べたという報告を私のところに受けました。そして、言うならば一応の調べをやって、そしてまた証拠を隠滅するおそれというようなことはない。それから逃亡するというようなおそれもない。日本の裁判権に服してやる。こちらのほうから見ますと何にも日本の捜査、裁判をやるのに、一つも支障のあることがないからああいうふうにやられたものと私は考える。私は、おそらく犯罪の捜査とか裁判というものは、やはり裁判権のある者が、その者の意思のとおりに捜査ができ、意思のとおりに裁判ができるなら、それでいいのじゃないか、こういうふうな率直な考え方を持っておる。形式的に二人もひき殺したのだから、必ず日本でそういう者はつかまえて、必要あるなしにかかわらず、疑いはなくとも逮捕をしておかなければならぬというふうには、私の聞いたところでは考えない。一応必要なだけ調べて、それで逃亡とか証拠隠滅とか、その他のおそれがないから、しからばそれを釈放してくれ、こちらから呼び出せば何ぼでも出てくるというのであって、それからまた、一応身柄も向こうの相当の者が預かっておる、こういうふうに、実質的に考えて、私は警察のとった処置も、そう非難すべきものはないのじゃないか。われわれは相談を受けたわけじゃないですが、一応調べて、釈放したのは警察が釈放したように私は聞いておりますが、大体私はそういうふうな解釈をとった。ただ、いまあなたの言いましたように、私は実務とか実際のことをやってないが、日本に裁判権があり、捜査、裁判に事欠かぬならば、私はいい。ただ、日本人なるがゆえに、あるいは外国人なるがゆえに、軽くやったり重くやったり、調べをまけることは、断固として許すべきことではない。やはり同じような判決が行なわれ、同じような取り扱いが行なわれるということだ、こういうふうに私は報告を受けております。
  242. 中谷鉄也

    中谷委員 時間も八時十前分になりまして、与野党、田中先輩、それから鍛冶先生、大竹弁護士、岡澤君、それから松本さん、私、全部法律の実務家——大臣のおっしゃっていることは間違いじゃないのです。ただ、私が言っているのは、ずいぶん刑事局長などから事情を聴取されて刑事訴訟を御勉強になったことには敬意を表します。しかし罪証隠滅のおそれがない、逃亡のおそれがないというときには、要するに刑事訴訟法六十条とかあるいはまた逮捕状の発付を受ける百九十九条に該当しないというときには、それはとにかくいずれにしても釈放することでございます。逮捕しないということでございますね。私が聞いているのは、そういう刑事訴訟法の基本的な精神にかかわるところの講義を大臣から承ろうとしておるのではないのです。日本の女の人がこのような事案を起こしたときに、逮捕せずに、あるいは逮捕してすぐに釈放する、しかも調書をとるときには文句を言って調書に署名しなかったというじゃないですか。こんなものを釈放するというふうなことが、実務家の感覚としてあり得ないということを私は申したのです。そういうふうな処置が正しかったかどうかという以前に、日本人にはそういう処置はありませんぞということを申し上げておる。そのことについて局長が先ほど業過についての逮捕率や勾留率は少ないですなんというような一般論にそのことを解消されたことについて、私は全く不満です。納得できない。だから私は局長の御答弁、あるいは課長さんでもけっこうです、御答弁をいただきたい。それは、検察官として三十年の経験ということを、前回の委員会であなたはおっしゃった。私の大先輩です。三十年のあなたの経験から見て、こんな事案について逮捕しなかったなどという例がありますか。こんなものを逮捕しなかったら、一体どんなものを逮捕するのですか。こんなものを勾留しなくて、どんなものを勾留するのですか。こんな不公平なことはないじゃないですか。なぜそのことが不公平だということを率直に答弁ができないのですか。そのことを私は申し上げている。
  243. 川井英良

    川井政府委員 答弁ができないわけではありませんで、私も答弁申し上げようと思ったのですが、大臣から先に大臣の所信に基づいて答弁なさったということでありますので、これから私の信念と確信に基づいて御答弁を申し上げます。  私は大体前提として、犯罪を犯した者について身柄の拘束をするということについて、実は意見が一つあるわけです。犯罪が重大で、きわめて悪質で、社会の耳目を聳動した、だから身柄を拘束しなさい、こういう意見には賛成しがたいのでございます。私はやはり法の命ずるところに基づきまして、いかに重大な犯罪を犯しましても、その身柄を拘束するにつきましては、刑事訴訟法の命ずるところによりまして、その条件を満たした場合においてのみ身柄を拘束するということが、私ども法運用国民から負託された者の肝に命じて忘れてはならないことである、こういう私は信念を持っております。したがいまして、過失事故であろうと故意犯であろうとを問わず、身柄を拘束して調べるか、あるいは在宅にして調べるかということは、あげて刑事訴訟法の要求するところの条件を満たしているかどうかということできまるわけでございます。今日、検察官が身柄を拘束して調べることが適当である、こういうふうな信念に立ちまして、裁判所に勾留の請求をいたしましても、かなりの数字のものが裁判官によって却下されております。これは検察官と裁判官との意見の相違ということもありましょうけれども、人権尊重のたてまえから入念に検討されまして、証拠隠滅のおそれは認められない、薄い、罪証隠滅のおそれは認めがたい、そしてさらにまた責任ある身柄引き受け人がついておるので、逃走のおそれもない、こういうことになりますと、いかに検察官が身柄の拘束が必要であるという意見を持っておりましても、勾留が却下になる。こんなことは御説明するまでもなく、おそらく中谷委員百も承知のことであろう、こう考えるわけでございます。私どもは犯罪が重要であるとか、あるいは社会を騒がしたとかいうことのみをもって身柄を拘束するというたてまえをとりませんで、それは裁判の結果、その判決において量定されるところの刑罰によって、その犯罪の最終の評価というものがなされるものである、こういう考え方を私は持っているものでございます。そういうふうな一般論を前提といたしまして考えてみた場合に、故意犯でありましょうとも過失犯でありましょうとも、その犯罪、あるいはその被告人の環境、周辺、そういうふうなものを考えまして、身柄の拘束が必要でない、罪証隠滅のおそれもない、逃走のおそれも認められない、こういうふうに思われれば、これは釈放して、在宅をもって調べるというのが私は常道であろう、こう思うわけでございます。前提として申し上げておきます。  そこで、この具体的な過失事故でございますが、一、二例、例があったら言え、こういうことでございますので、あえて申し上げますが、先年名古屋において著名な作家が、親子三人が歩いているところへ突っ込んで二人を即死せしめたという重大な事故が発生したことを、おそらく御記憶にあるだろうと思います。この事件は逃走するおそれもありませんし、本人みずからそこでもって過失を認めておりますというふうなことで、本件は不拘束のままで取り調べをし、また送致を受けて裁判所に請求いたしまして、四十一年一月十一日に名古屋地裁で判決がおりております。  その他、ごく最近の思いついた事例でございますけれども、これは千葉県の佐倉で起きた事件でございますが、二十八歳のバスの運転手が前方不注意等、あるいは操作を誤りまして事故を起こして、三人を死亡させて五十五人についてけがをさせたという事件がありますけれども、本件も検察庁は在宅送致を受けて処理いたしまして、四十年五月十一日に禁錮二年三カ月の判決が下っております。  その他また、香川県の事件でございまするけれども、酒に酔ってスピード違反で一人をけがさして数人に傷害を負わしたというようなものも、不拘束で取り調べをして、四十二年一月三十日に判決が出ております。  取り急ぎ調査をしたものではありますが、致死の事件でございましても、その人のその当時の状況によりまして勾留の要件に該当しないというような場合におきましては、常道に戻りまして、なるべく在宅でもって調べるというのは、私決してうそを申し上げているわけではないわけでございます。ことに最近の事故につきましては、もとより、悪質重大なものが出てきまして、非常に過失を認めることを渋ったり、あるいはいろいろな弁解が出て、その結果事故が重大であればあるほど将来においてひょっとしたら罪証隠滅のおそれが出てくるのじゃないか、また事の意外さに驚いて、その結果、重大な事故を犯したということでどっかへ飛んでいって自殺をしてしまうのじゃないかというようなことがうかがわれる事例もたくさんございます。そういうような特殊な事例があるものにつきましては、精神の鎮静を待って取り調べをするということのために身柄を拘束するということももとよりございます。したがいまして、事件事件によりまして、最も妥当な条件を満たすもについては身柄を拘束し、しからざるものについては、これを釈放して調べるということは、私は決してうそのことを申し上げるわけではございませんで、そういうふうな事例があるということを申し上げたいと思います。
  244. 中谷鉄也

    中谷委員 おそらく予算委員会や何かで問題になったのでそういう事例を御検討になったのだろうと思いますが、実務家の感覚は、何と言われたって、いまのような信念とか信条とか考え方なんということに納得はできません。局長自身が、こんなものが逮捕できないということについて、おかしいと思っているのが当然だと思う。だから、一般論としても、局長から刑事訴訟法の逮捕の要件、勾留についての必要性とか相当性のお話を聞こうと思って質問しているのじゃないのです。そういうことをおっしゃるなら、重大な人身事故の具体的事例として、一件から全部でたしか百七十九件までおあげいただいたこの中身の重大事故というのはほとんど飲酒運転による事故なんです。もし、いまおっしゃったような事例が簡単に直ちに出るなら、この百七十九件の事故のうち、酒飲み運転で同じような事例を出していただきましょうか。二名以上の人とプラスアルファの人をけがをさしたというふうな事案で不拘束で調べられたというような事案が、半分半分だとか三人に一人はそんなのがあるとか五人に一人はあるというふうなことが、はたして言えるでしょうか。私はこのことについての資料をあとで課長か何かからいただきたいと思うけれども局長の実務家としての感覚から、重大事例として百七十九件出ている中で、酒飲みによるところの業務過失死傷事件、不拘束で調べたもののほうが多いですか。勾留して調べたものが多いでしょうか。二人以上殺したという事案でいわゆる不拘束で調べたものが多いなんて絶対に言えないと思うのです。半分不拘束で調べたということが言えるでしょうか。三人に一人不拘束で調べたということが言えるでしょうか。五人に一人調べたということが言えるでしょうか。おそらく十人に一人も、二十人に一人も私は調べていないと思う。私のそういう考え方は、全く資料に基づいていない実務家としての勘で申し上げている。そういう私の勘が間違っていますか。それとも局長のような検察官のあり方というようなことで、このうちの半分も不拘束で調べているということになるでしょうか。  こういうふうに新聞には出ているじゃないですか。「自衛隊の列へ乗用者突入、二人死に十六人重軽傷」そのあとまた新聞は、「また米兵の妻が事故、衝突し六人にけがさす」また米兵の妻が事故、この事故についてだって不拘束で調べているじゃないですか。少なくとも新聞に出た限りにおいては一〇〇%ですよ。一体どうなんですか。その点についてお答えいただきたい。
  245. 川井英良

    川井政府委員 問題はケースケースの具体的な事情によってそれを決すべきだということを申し上げているわけでございまして、全体の趨勢として過失犯は故意犯に比べて身柄拘束の率が少ないということは事実でございます。そこでいま問題になっております横須賀のマラリン・A・ローランドの事件のことでございますけれども、これは検察官の手元へ来てから検事がいろいろ考えて釈放したというわけでございませんで、先ほどちょっと大臣も申し上げましたけれども、警察の段階において一たん逮捕いたしまして身柄を拘束して取り調べをした結果、在宅で措置するということになって送致に相なっているわけでございますので、検察官が勾留の請求をしなかったとかあるいは在宅のままでよろしいということであらかじめ指示をしたとかいうことでありますれば、もう少し具体的に当該検察官についてその当時の詳しい事情を報告を求めて実はここで御満足のいくような御報告ができると思うわけでございますが、警察の段階において一応身柄が釈放に相なっております。以下は私の若干の推測もまじっておるし、また警察から横須賀の地検、検察庁に報告になったものを間接にまた報告を受けたということになるわけでございますが、具体的のケースにおきましては、とにかく百何十人という自衛隊の若者たちが早朝訓練で粛々として道路を行進しておった。その行進にはいささかも法規違反がない。そしてその人はたちまことにはっきりした頭脳の立場でもって行進をしておった。その列の中へ無謀な暴走した自動車が突っ込んできたということでございまして、きわめて大ぜいの目撃者がある件でございます。なおかつこの婦人は年が若い上に生まれて九カ月の幼児を持っておる婦人であるというふうな事柄考え、さらにまた身柄引き受け人としては軍のほうで責任を持って身柄を引き受けるというきわめてかたい引き受け人も出てきたというようなことから考えまして、罪証隠滅のおそれもないし、逃走のおそれもないし、身柄不拘束のままで調べて在宅で送っていい事件だ、こういうふうな判断に基づいて身柄を釈放したというふうに報告を受けているわけでございます。客観的に詳しく検討いたしまして、捜査官の立場、先ほど申し上げましたような信念とあり方に照らしてみて、本件の身柄の釈放がはたして妥当であったかあるいは不当であったかということにつきましてはあとでいろいろ議論がありましょうけれども、私、第一次の捜査権を与えられた警察官がいまのような事情を加味いたしまして在宅事件でよろしいといって判断したことにつきましては、そう著しい不当があったというふうには考えておらないわけでございまして、要は個々の事件につきまして具体的な事情を十分に勘案してそして第一線の捜査官が決断を下すべき問題だ、かように考えております。
  246. 中谷鉄也

    中谷委員 私自身が申し上げたいのは、あとで資料の要求をいたしますけれども、次のようなことなんです。局長はそういう御答弁をされましたけれども、子供を抱いている、そしてもうその子供が病気だ、町内会の会長さんが泣くように頼んでいったって警察は引っぱっていくじゃないですか。検察庁は勾留するじゃないですか。われわれはそういう例をずっと十五年見てきましたよ。そういうふうな局長が言っているようなきれいごとの逮捕や勾留はだれもやっていませんよ。なぜ米軍の婦人についてだけそういうふうなことがあるのですかと聞いている。そういうふうなことが一貫してやられているのでしたら、拘置所も警察も要りませんよ。留置場も要りませんよ。なぜそういうことについて刑事訴訟法の勾留の必要性とか相当性についての講釈のようなお話をされるのですか。われわれの実務家としてのからだで感じたものがそれを不当だと思うのですよ。だから、そういうことを言っておってもおかしいと思うから、私はそういうことで水かけ論をしたくないから、この人身事故例についての重大事件百何十件かありますけれども、めいてい運転として処罰されたもので不拘束が一体何件あったか、勾留が何件あったか、この資料を私はひとつぜひともお出しいただきたい。同時に米軍人軍属の犯罪について、私は、法務省がどの程度関心をお持ちになっておられるか、非常に疑問だと思うのです。したがって、私は、先週の委員会が終了直後法務省にお願いしたのは、いわゆるめいてい運転の米軍人軍属の公務外の犯罪についてのいわゆる逮捕率あるいは勾留率、それと実刑率、それをひとつこの種事案について日本の場合と比較をしていただきたいということのお願いをいたした。そうすると、刑事課長のお話では、米軍人軍属の問題については十分な統計がないようなお話であった。私が、こういうふうな外交特権の問題を本日問題にし、米軍人軍属の問題を問題にしたのは、たとえば有力者がもらい下げをするというようなことをよくいいますけれども、こういうものは資料も証拠もございませんね。そういう法のもとにおける平等というものが乱されておってはいけないという前提で、この二つの問題を私は特にピックアップしてお尋ねをした。そうすると、これらの資料はお出しいただけるわけですね。局長この問題についての勾留の必要性、相当性についての講義のような御答弁をされて、このような処置は決して間違いでないんだと言われたら、少なくとも日本人とアメリカ人との間に統計の上で不公平があるとすれば、これは何らかの形で是正してもらわなければいかぬだろうし、私の言っておることは勘が正しかったということになるでしょう。いまの資料がお出しいただけるかどうか、それをひとつお答えいただきたい。
  247. 川井英良

    川井政府委員 御要求の資料については、できる限り努力して御趣旨に沿うように努力したいと思います。  なお、一般的に業務過失事件で身柄拘束事件は、送致事件の約一%、窃盗事件は二七%、こういう数字に相なっております。したがいまして、一般論として、業務過失事件についてはむしろ原則として在宅が多い。もちろん一%に該当するものは非常に重大で、証拠隠滅云々ということになるものだと思いますので、そこのところは特に御了承賜わりたいと思います。  それから何度申されましても、第一線の警察官ないしは検察官が具体的な事情を調べまして、証拠隠滅のおそれなし、また加えて逃走のおそれなし、こういうふうに判定した場合におきましては、身柄を在宅でもって調べるのが常道である、要するに問題はこの点に尽きると思うわけでございます。
  248. 中谷鉄也

    中谷委員 ではもう一点だけお聞きします。そういうふうな第一線の警察官や検察官が罪証隠滅のおそれなし、逃亡のおそれなしと判断したら、釈放してしかるべきなんだ。逆に言うと、実務の世界では、第一線の検察官や警察官が逃亡のおそれあり、罪証隠滅のおそれありとして、一体こんなものどうして罪証隠滅をするかといって聞きに行かねばいかぬようなものを、そういうことでどんどん勾留請求をし、あるいはまた逮捕をしている。検察官といったって、いわゆる一応法律を知っておるという、そういう資格者でしかないんでしょう。そういうふうな第一線の検察官が判断をして、勾留の必要なし、あるいはまた逃亡のおそれなしと判断した場合には、その処置は正しいのだということは、逆に言うと、検察官の筆先一つで逮捕されたり勾留されたりするということもあり得る。逆に言うと、一つの原則をお述べになったけれども、その原則についての判断は検察官の恣意によって、個々の検察官自身の刑事訴訟法の解釈によってどのようにも曲がっておる。現実にいろいろな地方の検察庁におきましては、先ほど私が申したように、乳飲み子をかかえたような女の人がたいしたこともないような事件で逮捕されている事例が、次から次に出ておりますよ。そういうこともやむを得ない、それもまた合法的な行為なんだ、検察官のやっておることは常に正しいのだ、釈放しようが勾留しようが、それは常に検察官の判断なんだ。主観的な判断ということをそれほどあなたがおっしゃるということは、はなはだ謙虚さを欠いておる。そういうふうな検察官によって三年の刑が五年にされて求刑をされるということは非常におそろしいということだけを、私はきょうは申し上げておきたいと思います。
  249. 川井英良

    川井政府委員 身柄を逮捕したり勾留をしたりする場合は、検察官の恣意ではいかないわけでございます。御存じのとおり、裁判所の令状なくして身柄の拘束は今日できません。したがいまして、身柄を拘束する場合におきましては、検察官の恣意は絶対あり得ません。公平無私な裁判所の判断によってそれがきめられるということでございますので、私、十分人権は保障されていると思います。ただ、身柄を釈放する場合は、裁判所に相談をいたしませんで、検察官あるいは警察官の独自の判断で身柄が釈放できる、こういうことに相なっておりますので、その面におきましては、検察官ないしは警察官の恣意的なものが働く余地がないことは保証できないのでございますので、その点につきましては、御指摘の趣旨は十分よく肝に銘じまして、いままでも努力してまいりましたけれども、今後も恣意的な釈放というようなものが決して起こらないように、またそういうふうな誤解を受けるようなケースがないように、万全の努力をしたいと思います。
  250. 中谷鉄也

    中谷委員 終わります。
  251. 永田亮一

    永田委員長 本日の刑法の一部を改正する法律案に対する質疑は、この程度にとどめます。      ————◇—————
  252. 永田亮一

    永田委員長 次に、去る二十一日付託になりました内閣提出訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案、旧執達吏規則に基づく恩給の年額の改定に関する法律の一部を改正する法律案及び二十二日付託の刑事補償法の一部を改正する法律案公海に関する条約実施に伴う海底電線等の損壊行為処罰に関する法律案の各案を一括して議題といたします。     —————————————
  253. 永田亮一

    永田委員長 まず、四法案について、政府に提案理由の説明を求めます。赤間法務大臣
  254. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、民事訴訟及び刑事訴訟の証人及び鑑定人等の日当の最高額を増加しようとするものであります。すなわち、民事訴訟における当事者及び証人の日当並びに刑事訴訟における証人の日当につきましては、その最高額は、出頭または取り調べ一度につき千円と定められ、また、民事訴訟における鑑定人、通事等の日当及び刑事訴訟における鑑定人、国選弁護人等の日当につきましては、その最高額は、出頭または取り調べ一度につき七百円と定められているのでありますが、最近における物価の状況その他諸般の事情を考慮いたしましていずれもその最高額を引き上げることとし、当事者及び証人の日当につきましては千二百円に、また、鑑定人、通事、国選弁護人等の日当につきましては千円に、それぞれ改めようとするものであります。  以上がこの法律案の趣旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。  旧執達吏規則に基づく恩給の年額の改定に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、一般の公務員の恩給の増額が行なわれた場合には、これに伴って、旧執達吏規則に基づく執行吏の恩給を増額することにしようとするものであります。  御承知のとおり、執行吏を退職した者には、旧執達吏規則に基づく恩給が支給されることになっております。この恩給につきましては、従来、一般の公務員の恩給の増額が行なわれるたびに、これに準じて増額の措置を講じてまいりましたが、政府におきましては、今回さらに、本年十月から一般の公務員の恩給を増額することを内容とする恩給法等の一部を改正する法律案を今国会に提出いたしました。そこで、執行吏の恩給についても、これに準じて増額の措置を講ずると同時に、将来さらに一般の公務員の恩給の増額が行なわれることをも考慮いたしまして、今後恩給に関する法令の改正により一般の公務員の恩給の年額の改定が行なわれる場合には、これにならって執行吏の恩給の年額も、別段の措置を講ずることなく、当然改定せられることにしようとするものであります。  以上が旧執達吏規則に基づく恩給の年額の改定に関する法律案の趣旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いを申し上げます。  刑事補償法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  刑事補償法による補償金の算定の基準となる金額は、昭和三十九年の改正によって、無罪の裁判またはこれに準ずる裁判を受けた者が未決の抑留もしくは拘禁または自由刑の執行等による身体の拘束を受けていた場合については、拘束一日につき四百円以上千円以下とされ、また、死刑の執行を受けた場合については百万円とされているのでありまするが、最近における経済事情等にかんがみ、これを引き上げることが相当と認められまするので、この法律案は、右の四百円以上千円以下を六百円以上千三百円以下に百万円を三百万円に引き上げ、いわゆる冤罪者に対する補償の改善をはかろうとするものであります。  以上がこの法律案の趣旨であります。慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いを申し上げます。  公海に関する条約実施に伴う海底電線等の損壊行為処罰に関する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  政府は、このたび、公海に関する条約に加入することとし、今国会にその承認を求める案件を提出いたしておりますが、同条約は、第二十七条において、すべての国は、自国の旗を掲げる船舶または自国の管轄権に服する者が公海に敷設された海底電線、海底パイプラインまたは海底高圧電線を損壊する行為を処罰するために必要な立法措置をとるべきものとしておりまするので、同条約の加入にあたり、右の要請に応じようとするのが、この法律案であります。  この法律案は、故意または過失によって海底電線、海底パイプラインまたは海底高圧電線を損壊する行為についての罰則を定め、さらに、故意によるこれらの罪の未遂を罰することにしております。なお、海底電信線保護万国連合条約規定する海底電信線を損壊する行為は、既存の海底電信線保護万国連合条約罰則によって処罰することができまするので、この法律適用対象から除き、処罰規定の重複を避けることとしております。  このほか、この法律案は、附則において、右の海底電信線保護万国連合条約罰則につき所要の整理を行なうことにしております。  以上がこの法律案の趣旨であります。慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いを申し上げます。
  255. 永田亮一

    永田委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  以上四法案に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、明後日二十八日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後八時二十三分散会