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1968-03-22 第58回国会 衆議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月二十二日(金曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大竹 太郎君 理事 田中伊三次君    理事 中垣 國男君 理事 濱野 清吾君    理事 猪俣 浩三君 理事 神近 市子君       鍛冶 良作君    瀬戸山三男君       中馬 辰猪君    福田 赳夫君       中谷 鉄也君    成田 知巳君       岡沢 完治君    山田 太郎君       松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 赤間 文三君  出席政府委員         法務政務次官  進藤 一馬君         法務省民事局長 新谷 正夫君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省人権擁護         局長      堀内 恒雄君         法務省入国管理         局長      中川  進君  委員外出席者         警察庁交通局交         通企画課長   関  忠雄君         法務省矯正局保         安課長     福原 弘夫君         外務省条約局法         規課長     大塚博比古君         専  門  員 福山 忠義君     ――――――――――――― 三月二十二日  委員佐々木更三君及び西村榮一辞任につき、  その補欠として中谷鉄也君及び岡沢完治君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員中谷鉄也君及び岡沢完治辞任につき、そ  の補欠として佐々木更三君及び西村榮一君が議  長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月二十一日  訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第八五号)  旧執達吏規則に基づく恩給の年額の改定に関す  る法律の一部を改正する法律案内閣提出第八  六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月二十一日  壬申戸籍管理に関する陳情書  (第一八六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  法務行政に関する件  検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ――――◇―――――
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  参考人出頭要求に関する件につきましておはかりいたします。  ただいま本委員会おいて審査中の第五十五回国会内閣提出刑法の一部を改正する法律案について、参考人出頭を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  なお、参考人出頭日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  5. 永田亮一

    永田委員長 法務行政に関する件、検察行政に関する件、人権擁護に関する件及び裁判所の司法行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神近市子君。
  6. 神近市子

    神近委員 私は、きのう過密都市交通の問題について若干御質問申し上げましたけれど、非常に時間がおくれましたので、きょうはその継続の御質問を申し上げたいと思います。  きのうはタクシーに対する免許の出し方について、非常にこれがきびしいということ、私ども決算委員会でこれは明らかになったことですけれど、〇・二%しか個人タクシー違反とか事故を起こしていない、これに対しまして非常にきびしい制限をなさるのはどういうわけかということできのう御質問いたしました。その点は私の満足するようなお返事じゃなかったのですけれど、やや改善されているということ、それから資格をもう少しゆるめるべきだということ、財産とかあるいは自動車の使用についての制限とか、そういうことについてもう少し勘案すべきでないか。これははっきりとしていると思います。私は、きのうは特別に御出席を願った方があったのでその点だけに触れたのですけれど、きょうはもう少し変わった問題に発展させたいと思います。  きのうの夕刊にございましたけれど、きのうの閣議でこの都市交通の問題を取り上げておいでになった。この都市交通対策の問題については、マイカー族というものが私の頭にあります。マイカー族という人たちが、車に対して非常なあこがれを持ってそれを使用している。新聞の悪口でしょうけれど、このごろはマイハウスマイカーおばあさん抜きというようなことがささやかれております。こんなあほうなことはないと私は思うのです。たとえば、不良少年たちが山だの川だのにドライブに行っていろいろな犯罪を起こすことがある。私は山や川に遊びに行くということにはちっとも反対しないけれど、マイカーを持っていくというところに、この少年たちの変なあこがれと間違った自負があると思う。やはりこれはたいへんよくないと思うのです。  それで、昭和四十一年の五月三十一日ですか、乗り入れ税金をかけるという勧告物価問題懇談会から出ております。これは藤山さんが経企庁長官のときであります。そしてきのう閣議で同じことが話題にされている。乗り入れに対してこういうことをするのはどういうわけかをよく考えてごらんなさい。中ぐらいの自動車一台が道路にとるところの面積は人間の大体七、八人分です。歩く人間が非常にかぼそくなって、そして自動車という巨人が大きな顔をして都市道路を走り回る。これは日本の道路が改善されれば別ですけれど、いまの都市道路は大部分人間が歩くようにできているのに、そこを車が大きな顔をして走るという矛盾を皆さんはお考えにならないのですか。ですから、四十一年六月の勧告にぴたっとするようなことがきのうの閣議で取り上げられたということは、非常に考えるべき問題じゃないかと私は思うのです。ちょうどいいあんばいにいま有料道路というものができているから、マイカーでつとめに出る人たちが入りたければ有料道路を走らせる。  そのあとは、美濃部都知事一つの構想として考えておられるように、どこか国有地かその他のところに駐車場をつくって、どうしても自動車に乗りたい人はそこに預けて、都バスとかほかのバスあるいは地下鉄というものを使うということにしたらどうか。私は、毎日見ているところの東京過密化状態を見ると、それを考えるのですけれど、これはどなたに御返事願ったらいいかと思うのですが、このことについてはどういうようにお考えになりますか。これはきのうの閣議で出た話題ではなくて、四十一年から物価対策協議会が答申して藤山長官におすすめしていたが、今日まで行なわれなかった。それをいまの状態から考えてどういうふうにお考えになりますか。
  7. 関忠雄

    関説明員 警察庁でございますが、ただいまの都市交通の渋滞問題について申し上げたいと思います。  都市交通の渋滞問題は、申し上げるまでもなく、都市計画行政なり道路行政あるいは運輸行政に非常に広く関連いたしますいろいろの対策を総合的に推進することによりまして解決さるべきものというふうに考えておるわけでございますけれども、この中で、警察といたしましては、交通渋滞緩和のための警察としての対策推進ということに努力をいたしておるわけでございます。警察といたしましては、その中で、たとえば交通規制を合理的にやっていく、あるいは交通信号機を改良いたしましてその高度化をはかる、あるいは交通情報収集体制といったものを整備いたすといったことに、警察独自の問題として取り組んでやっているわけでございます。しかし、ただいまお話しのような、たとえば自家用乗用車都心部への乗り入れ規制いたすといったような問題でございますけれども、これは道路交通法に基づくところの警察規制として実施いたすことは非常に困難かと考えられるわけでございます。また、たとえばその乗り入れを禁止する車と許容する車の区分をいかにしていたすか、また、これに対する取り締まりをどのように的確にやっていくか、非常にむずかしい問題が存するというふうに考えられるわけでございまして、元来このような規制と申しますものは、地下鉄その他の大量輸送機関を整備いたすとか、周辺部における駐車場の整備をいたすとかいったような施策を加味いたしますところの総合的な都市交通政策の一環として考えられるべきものであるというふうに考えておるのでございます。このような対策が充実いたします前に、たとえば、警察がこのような規制措置を先行的にいたすといったようなことは、やはり都市交通政策上必ずしもうまくないのではないかと考えられるわけでございます。したがいまして、この問題につきましては、警察といたしましても、現在慎重な検討を進めているといったような状況でございます。都市交通問題は非常に広範にわたりまして重要な問題でございますので、警察といたしましても、警察の担当いたします業務につきまして、先ほど申しましたようないろいろな施策推進ということに努力をいたしておるというのが現状でございます。
  8. 神近市子

    神近委員 昨年の十一月までの事故人たちは五十七万九千人、五十八万人ぐらい事故が起こっております。そしてその中で死んだ人は一万三千二十三人、これは十二月十八日までの数字です。ですからこれはどっちもふえているはずです。そうすると、これは、南太平洋にあるモルディブというところの人口は十万ですから、約この六、七倍近い死者事故の人を出している。これがわれわれの現状ですよ。これはよく認識していただかなければ——私はこのマイカー族の問題をある人に注意されて三年ばかり前に調査したことがあります。そうしたら、マイカー族というのは、高位の重役とかあるいは会長とか社長とかという方々でなくて、裕福な家庭からそこへつとめに入ったような人。年が若くてつとめに出る、それがたいへんな誇りなんです。自分自動車で行くということ、それが誇りでやる。そして、いろいろな不必要な遊びをする。こういうのが規制されなければならないと私は思うのです。一つ独立国の五倍も六倍もわれわれの民族が痛めつけられている。そして、全部ではないにしても後遺症を残している。こういうことが民族のあしたにとってどういうことなのか。これがもっと車がふえると、もっと事故がふえますよ、道路がこのままである限りは、そういうときに、早くこれを規制しないことにはたいへんです。私が調査したときには、この就職したマイカー人たちは、どうせ会社にコネがあって入った人たちで、そういうような人たちは、会社名前で登録しているんですよ。税金会社名前ですから非常に安い。そういうことで注意を受けたことがあったんです。こういうところはどういうようにはっきりしているか。それから事故を起こしたときに、法律上で、この事故人たちに支払うのはそれまでは五十万円でした。それがやっとこのごろ百万円にはなっていますけれど、百万円というものは、事故を受けて入院したりその後の療養をしたりという人に、そんなに大きな金ではないのです。いまひょっとしたら、百五十万ぐらいになっているかもしれないと思うのですけれど、この点で、私ども——あなた方知っていますか、脱税が計画されているということ。そして、仲介人なしで、事故が起こったときに順調に支払われているか、こういうことわかっていますか。百五十万円だかにいま上がっている。それが順調に行なわれているか、あるいは仲介者があって、ごく少ない金で納得しているか、そういうこと知っていますか。
  9. 川井英良

    川井政府委員 過密都市における交通対策、まことに御指摘のとおりでございまして、たいへん重要な問題だと思います。私ども、この刑法改正をお願いしている立場から、必ずしも深くそのような事情についてまで理解を持っている自信はございませんけれども、これに関連いたしまして、各省庁との問でしばしばこの交通対策についての会議を開いております。私どものほうからも、私並びに私の下におる者が委員として出て、そのつど協議に参画しておりますから、その限度におきまして、申し上げたいと思います。  先ほども税金の問題、それからさらにまたマイカー族乗り入れについての特別な対策の問題、それから事故を起こした後における、事故によって生じた費用賠償ないしは慰謝金問題等、これらにつきましてもかなり関心を持って見ておる次第でございます。この事故賠償金につきましては、自賠法の規定は御承知のとおり百万円の限度が先般三百万円に値上げをされまして、その限度におきましてかなり活発な運用がなされていることは、前二回の刑法改正の審議の過程における各省庁からの御説明でおおよそ御了解がいただけたことと思うわけでございますが、そのほかにも、昨日、私、御説明申し上げましたように、法務省におきましては、必ずしも示談でもって解決ができませんために、民事訴訟に持ち込んで円満な——円満といいますか、満足のいくような補償金を取りたい、こういうふうな向きももちろんたくさんございますので、それらの向きにつきましては、法律扶助制度を活用いたしまして人権擁護委員相談に乗りまして、そして法務省に割り当てられました、本年度は六千五百万円割り当てられておりますが、その費用を使いまして、訴訟を援助し、訴訟におきまして勝訴した場合には、その援助した金は、勝訴した金の中から費用を完済するというようなかっこうにおきまして、この制度も非常に活発に最近運用されておるわけでございます。  それからまた民事訴訟におきましても、民事訴訟はたいへん手間がかかるというのが従来の常識でございましたけれども、この交通事件に関する民事訴訟は非常にはかどっておりまして、中にはもちろんむずかしい事故で手間どっておるのがありますけれども、ほかのケースに比べまして非常に迅速な処理がはかられておるということは、私の立場から言いましても非常に喜ばしい現象ではないかというふうに考えております。  そこでいま御指摘の、そういうような表向きにならないで、陰でもってわずかな金で事故がうやむやにされておるというような事実があるのだけれども、そういうような事実を十分のみ込んでいるか、こういうふうな御指摘だ、とこう思いますが、それらにつきましても、私ども方面にいろいろな面から情報として入ってきております。ただ、申し上げるまでもないことでございますけれども民事関係訴訟は純然たる甲と乙というような私人問関係でございますので、役所としましては直接これにタッチするわけにまいりませんし、また、そのタッチする度合いというものもおのずから限度がある、こういうように思いますので、法務省としましては、先ほどの法律扶助制度あたり役所に許された最大の限度でないかというふうな気がいたしております。そういうふうな点を活用いたしまして、やみで被害者が泣くようなかっこうにならないように、できるだけ公正な賠償が行なわれるように、いろいろの方面を通じましてせっかく努力中でございます。  なおその他いろいろ御指摘になりました過密都市における交通対策の遠い将来を見越しての徹底した、また完全な対策というようなことにつきましては、それぞれまた担当しておる官庁がございますので、詳細は、またそういうふうな向きから御説明を御聴取願えればしあわせだと思います。
  10. 神近市子

    神近委員 よいほうに向かっているということは、あなたの説明でも承っていたのですが、きのうやはり閣議に出たのは、地下鉄あるいは高速道路、こういうものの管理を、たとえば地下鉄のようなものは都がやる部分と法人がやる部分がある、それを統一したらということが大きな問題になっていたようでした。ところが、よく考えてみると、終戦前に東京都は、たとえば西武とか東急ですか、そういうところの支社を、全部都内だけは統一するために四億の金を出して、これを全部買収していたんです。ところが、戦争になりまして、電車は空襲のためにやられる。それからバスが非常にやられる。こういうわけで、交通機関が足りないというので、駐留軍の示唆があったのかあるいは単独の決定であったのか、全部これをもとに戻して、いまのような分裂状態になっているのです。これはやはり四十一年五月の物価問題懇談会忠告と、きのう閣議でそのことが問題になったということが新聞には出ております。もともとこれはどの知事の時代であったか知りませんが、その点では、やはりよいアイデアではないかと思うのです。ですから、政府がこれを強力に推進するように、発言をなさるように法務大臣に御相談になって、あるいは今日の私どもアイデア——物価問題懇談会が答申したこの事情、これを今日の東京あるいは大阪のような過密都市おいてぜひ決定すべきじゃないかということを考えるのですけれども、これを法務次官大臣にお取り次ぎを進めて、そうして閣議で活発な忠告をして、一つ独立国の五倍、六倍の負傷者を出し、死者を出し、そうしてむち打ち症というか、非常に困った状態の人をたくさん出しているということを避けなければ、私ども民族が一年、一年これだけの人数の人を出しているということは、将来にとって非常に困ることになるんじゃないかと思うのですけれど、それは次官が御約束できますか。
  11. 進藤一馬

    進藤政府委員 ただいまの神近委員の御意見、まことに重大な問題でありまして、十分に大臣にも伝えまして、政府の方針としても、また文明の恥辱であるこうした交通禍を少しでも、一日も早くなくすということに努力してもらうように御趣旨を伝えることにいたします。
  12. 神近市子

    神近委員 もう一つ交通事故の裁判が時間がかかる。そのよい例は、猪俣先生のお子さんの場合であります。これは五年か六年前で、私どもはそのときの先生の悲しみはたいへんよく知っておりますけれど、それがやっとこの間解決した。そんなことがいままであったということが教訓になって改善されつつあるということがいまの御返事だろうと思うのですけれど、これはもう少しぜひ前進させていただきたい。そして困った人たち——先生なんかは困らない境遇においでになるのだけれど、ほんとうにこのごろかかっている人たちは、ずいぶん困った人たちが多いのです。  それともう一つ伺いたいことは、この間、私のおいがやはり交通事故にあったのです。これはまだ若い者ですから、自分は頭はやられなかった、足を車の中でふんばっていて。そして気の毒にタクシー運転手の方がだいぶん顔をやられたということですけれど、おいのほうは足の先を少しやられた程度で済んだのです。私は、そのときの事故のことをちょっと考えると——向こうトラックだったのです。トラックで、そして逃げようと思って、この車をやったところがよそのへいにぶつかって動かなくなった。そうしたらその運転手は逃げたのですよ、助手がいたか何かで。トラックですから、持ち主、雇い主がおるわけで、そのときの状態はこういうふうでした。運転手は前の日に雇われた。そしてその日は五千円、手当を前借りしたと思いますけれど、それを持っていた。それまで失業していたのかどうか知りませんが、久しぶりにお金が手に入ったものですから、東京に荷物を持ってきた、これは宮城あたりの人ですけれど、そこで一ぱい飲んで、そして運転して事故を起こした。事故を起こしたらばんと逃げたのです。これは運送会社の態度にも非常によくないところがあると思うのです。どこか知らない、住居もおそらくはっきりわかっていない。そういう者を雇ってトラック運転させて、こういう事故を起こした。これは私どもの目の前に起こったところの一つの例ですけれど、これを使用する人たちのほうにも問題があるのじゃないか。一体幾ら人手不足でも、酒を飲んだり、あるいはちっとも他人の迷惑というものを考えることのできない若い、定着した精神を持たないような青年、こういう人たちをでたらめに使う業者にはどこか欠点があると思うのです。その点どういうふうにお考えになるか。いま大体免許を持っている人は百四、五十万いるのじゃないですか。そうしてこの人たちに安易にトラック運転させたり、あるいは道路に出すということ、こういうことはもうちょっときびしくやらなくちゃならない。これは運送業者あるいはタクシー業者、そこらに問題がいくと思うのですけれど、これを規制する方法があるのかないのか、ちょっとそれを考えていただたきい。
  13. 川井英良

    川井政府委員 酒を飲んでトラック運転して事故を起こしたというふうな者は、私、再三ここで御説明申し上げておりますように、まことに悪質な違反、こう思います。そこで問題は、ただいまの御指摘は、具体的なケースでございますから、証拠に基づいてどっちに過失があるのかということを認定しないと、その具体的ケースについて、いまここでもってどちらに非があるとかないとかということを申し上げるわけにいきませんけれども、かりに酒を飲んで運転したほうに過失があったといたしますならば、はなはだ質のよくない事件だ、こう思います。そこできのう雇われた運転手であって、雇用状態おいても管理が行き届かないで無責任な状態に置かれておったというようなことについて、何らか法的に打つべき手はないか、こういうふうな御指摘だと思いますが、これにつきましてはもしその雇用主のほうがその運転手雇用して、そしてそういうトラック運転をさせるということについて、もちろん規制するための法律がございます。たとえば、道路運送法などにその種の規定がいろいろ設けられているわけでございまするけれども、そういうふうな規定趣旨違反するようなかっこうおい雇用し、運転を命じておったという、こういうような事実が確認できますれば、それは雇用主のほうに対しまして、刑事的な面では道路運送法上に規定されておる罰則の刑事責任を追及するということができるわけでございまして、たとえば猿投の事故がよくここで問題になりますけれども、あの事故なんかにつきましても、雇用主のほうに道路運送法違反があるということで、道路運送法違反に基づきまして雇用主のほうも処罰をいたしております。それから処罰だけではもちろんものが解決するわけではございませんので、おそらくそういうふうな運転免許のあるというふうな者を営業上の必要から不用意にまた準備もなく簡単に雇い入れて、そして重大な職につかせるということが問題だろうと思いますので、その辺につきましても何らかの手が必要ではなかろうかと思います。ただこれにつきましては雇用の自由と申しましょうか、労働者自分の持っております技術を生かして、そしてよりよき労働条件を求めて雇用主との問に自由契約を結んで営業をしていくということは、これまた一方において簡単に制約できる問題ではございませんで、重要な人の自由と権利だと思うわけでございます。  そこで、それはともかくといたしまして、一般の営業用の主としてタクシーについてそういうふうな業態が目に余るものがある。そこを手を打たないと、的確な交通行政が行なわれないということで労働省が先べんをつけまして、非常にたくさんそういうふうな営業用の車を持っておる雇用主を集めまして雇用実態について注意を喚起するとともに、そういうふうに一日ごとにともかく甲の雇用主から乙の会社に移っていくというようなものをなるべく避けて、そして労働条件をよくして、そこに長く居ついてやるような方法を講じてほしいということを強力に呼びかけまして、業者のほうもまたこれに応じて自主的に何らかの措置をとりたいというようなことが、ことしの初めごろに打たれた一つの手でございます。これはやはり雇用の自由、実態ということから考えまして、私もやはり業者並びにまた労働者の自粛に待つということが最も適当な方法であって、それをさらに何らかの法律をつくってすぐにこれを規制するということは、法制の面でなかなかめんどうなものがあろうかと思うわけでございますので、今日すでにそういう手が打たれておりますので、そういう効果に期待するとともに、また関係方面向きにもそういう趣旨を体しまして一そう雇用の正常化について努力をするということで尽くしてみたい、こう思っております。
  14. 神近市子

    神近委員 道交法の六十六条には、使用時間を八時間くらいということに書いてありますね。だけれど、運転手自身に聞いてみますと、目の関係なのか、変わったものをしょっちゅうなにしなくちゃならないので、三時間か四時間くらいそれをやっていると、とろっと眠くなることがあるんだそうです。これは八時間というのが普通の労働時間ですけれど、少し長過ぎるのではないか、これは七時間ぐらいに制限——ほかの仕事と違って、目と頭を極度に使わなくちゃならないから、この時間の制限をする。これが実際にはタクシー会社運転手に聞いてごらんなさい、十時間でも、宿直の場合なんか十二時間というんでしょう。だから、乗客を拒否するとかあるいは居眠り運転というようなこと、おなかがすくということもあるでしょうから、そういうような事態がどうもこの人たち事故を起こさせる。ともかく一度に非常に長時間この就労をするということはむずかしいんじゃないか。私、六十六条のこの八時間というのは、これは基準として認めますけれども、必ずその問に二十分か三十分居眠りの出る時間があるということを考えれば、もう少し駐車場というものも、これも対策になりますけれども必要ではないか。私、パリに行ったときに、浜口さんという絵かきさんがパリをずいぶんいろいろ親切に案内してくださったときに、その駐車場というのに、お茶の時間だったか、食時の時間だったか、入れてもらったんです。そうして五階くらいですから、そんなにりっぱな建物は、防火装置さえ強ければ要らないと思うのです。それで運転をして五階まで上がって、そこに車が預けられる。いま日本では青空有料駐車がありますけれども、あれが三十分で百円、一時間で二百円というように上がっていくんだそうですけれども、あの地所を使って少し高い駐車場をつくることができれば、これは非常に交通緩和になるんじゃないかということを考えるんです。あれだけもったいない地所を、ただ地面の上を——地下でもいいですよ、駐車場は。大きなビルにはみんな地下がある。そして宮城前に行ってごらんになればわかるように、道路に一ぱい車を並べている。それで私どもが何か知り合いの車かあるいは国会の車を拝借しているときか、そういうときには、二階に上がってあるいはビルに入って用事のあった時間、車は三十分でも四十分でもぐるぐる回って待っているんですよ。あれを防げば、道路に置かれているものとそれからそのぐるぐる回って待たなければならない、これを地下でもどこでもいいから駐車場をもう少し増設してもらえないか、国有地がたくさんあるじゃありませんか。宮城前にもあるし、それから都内にもそこここにある。その国有地なり都有地なりの地下でもいいし、地上でもいいし、少し駐車場をふやすということによって、私はだいぶ道路が楽になるというふうに考えるのです。これをひとつ、またこれも次官の問題になるんですけれども法務次官もこれを頭に入れておいていただけないかということをひとつお願いしたいと思います。
  15. 進藤一馬

    進藤政府委員 そうした駐車場があるということは、経済的にもまた交通緩和のためにも非常に有効だと思います。実際の問題私もよく存じませんが、そういう私有地なり国有地なり使用できるものがあれば、そういうふうにすることが一番交通緩和のためにも役立っていいことだと思います。十分に検討したいと思います。
  16. 神近市子

    神近委員 時間をずいぶんとりましたから、あと一、二問にしますけれども、さっき申し上げましたように、いま東京都内で資格を持って免許を持っている人は百数十万いるんですよ。この中にさっき言ったような、あまりじょうずでない運転をする人がいる。これは一つは教習所の問題だと思うのです。もう五、六年になりますけれども、私の娘が自動車を買って、夫と二人で運転を習って、そして免許がとれたというようなあとだったと思うのです。娘が参りまして言うことに、運転手さんというのが親切なことが身にしみてわかるというのです。それは、運転する人たち労働者で、いい人たちに違いない、自分たちの労働で食っている人じゃないかと言って、その話をどこかでしたら、運転手に笑われたんです。しろうと運転というのは運転する者にはすぐわかりますので、この人は免許のとりたてだなと思うとその人の車とずっと離れて私たちは動くんですと言われたので、運転手はいい人だ、ということが、そこで娘のあれではなくなったのです。けれど、——娘は事故なんか絶対起こしませんよ、無謀な運転は絶対するなと言っておきましたから。だからそれはよく言い聞かせておいたので、またあぶないところには絶対行くな、自分運転ではするなということを言っておきましたから、それはやらないようです。  教習所のことをもっとお尋ねしようと思いましたけれど、きょうは時間が、少ししゃべり過ぎたようですからやめますが、運転をもっと厳重にやって、百何十万というような資格者という、資格証明を持っているのをおまわりさんに出すことができるような人をそうたくさんつくって、そしてこの人たちにこれを乱用されるということが困るので、私は、どなただったか、やはり忠告をなさっているように、教習所を、少し厳重な訓練をさせるところにすべきで、いまのような——河川敷がずいぶん使われていますよ。私ども視察に行ったことがありますけれど、荒川だとか多摩川だとか、あの河川敷をかってに使って、そして高い教授料を取ってやらせる。そしてちょっとチップでもはずめば安易にこれを出す、こういうようなことがないように、教育的にもきびしくする。飛行機のほうは非常にきびしくしているわけですけれど、運転手も同じようにきびしい練習をさせる、こういうことが必要ではないかと思うのです。ともかくその点についてはどういうようにお考えになっていますか。これは、監督なさるのはあなた方でしよう。
  17. 関忠雄

    関説明員 指定自動車教習所の問題でございますけれども、現在指定教習所におきますところの教習につきましては、教習所におきます教習の時間なり教習の方法あるいは技能検定の方法等につきまして道路交通法の施行規則に詳細な基準が定められておりまして、またこれが適確に行なわれますように、技能検定に対しますところの立ち会い検査でありますとか総合検査その他の監督指導を行ないまして、適確な運用を期しておるような次第でございます。現在指定教習所を卒業しまして運転免許をとります者はかなりふえてまいっておるわけでございますけれども、この卒業者とそうでない者との事故率なり違反率なりといったものを昨年実態調査でつかんでおりますが、現在、事故率におきましてもまた違反率におきましても、いずれも卒業者が低い率を示しておるわけでございます。指定教習所におきまして組織的な教育を受けますことは、やはりいいドライバーを育成するということについて効果的であるというふうに考えておるようなわけでございます。     〔委員長退席、田中(伊)委員長代理着席〕 しかしながら、これらの指定教習所におきまして、さらに適確な教育訓練が行なわれますように、今後ともさらに指導監督というものを徹底してまいりたい、かように考えております。
  18. 神近市子

    神近委員 だいぶ時間をとりましたから、私これで質問をやめようと思いますけれど、きょうの私の要点は、全体としてこういう過密都市に、車は大型だったから十人分とりますよ。小型でも六人分や七人分をとる。自分で乗ってみて見てごらんなさい。人間の影と自動車の影とをとれば、七、八倍の面積をとっている。それを考えると、道路の改善が十分に行なわれない限り、今日の少なくも工業あるいは商業、そういうもののトラックを減らすことができないならば、遊びのためにやられる乗り入れ制限すべきだ。どこか山か川かにドライブに行きたければ、レンタカーをもっと使えるようにやらせればいい。そして都内の事故多出の状態、年々五十何万人の人が全部頭脳を失うということは考えられないけれど、かなりの人たちが後遺症を残している。これは東京あるいは大阪というようなところだけの問題でなく、私ども民族全体に後遺症を残していくということになると思うのです。だから、この点をひとつよくお考えになって、たとえば、マイカー族に対する教育というか、あるいはこれを夢中になってほしがるような人はちょっと頭がへんな人たちで、これを再教育する必要が大いにある。そしてもっと住みよい東京、住みよい大阪ということを考えていただきたいというのが、私のきょうの要点でございます。どうもありがとうございました。
  19. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員長代理 お待たせいたしました。猪俣浩三君。
  20. 猪俣浩三

    猪俣委員 私は、難民問題、亡命問題につきまして、政府の御見解を承りたいと思うわけであります。  それは、ことしは国連の世界人権宣言が宣言せられましてから満二十年に相なるわけであります。一九四八年十二月十日に、第三回国連総会で、この人権宣言が採択せられてから、ちょうど二十年に相なります。そこで、第十八回国連総会におきまして、ことしは国際人権の年とするという決議がなされておるわけであります。日本の政府におかれましても、その用意があると存じます。そこで、明治百年に対しましては非常に宣伝をせられて、いろいろな行事を考えておられるようでありますが、それもいいでしょう。しかし、人権擁護を目的といたしておりますわれわれからいたしますならば、この世界人権宣言の二十周年の祝賀こそ徹底的にPRいたしまして、人権思想というものを植えつけなければならない。明治百年に負けざる行事をやる。また、日本国民には人権思想が非常に希薄であります。官民とも希薄なんです。こういう民主政治の根底をなすものは人権思想であります。そのちょうど二十周年に当たる。しかもこれは国連総会で祭りをしようという決定がされておるわけであります。私どもはサンフランシスコ平和条約におきましても、世界人権宣言の目的を実現するために努力することを誓っているわけであります。こういうことから考えましても、ここに盛大なる行事ができてしかるべきだと私は思うのでありますが、これに対しましてどういう計画がありますか。これは政務次官がいいか、堀内人権擁護局長がいいか、どちらでもよろしゅうございますから、政府の計画をお示しを願いたいと思います。
  21. 進藤一馬

    進藤政府委員 基本的人権の尊重は国政の基調をなすものであることを確信いたしておりますが、特に本年は世界人権宣言の採択二十周年に当たり、また国際連合の指定しました国際人権年であるのであります。式典その他の各種記念行事を実施して人権思想の普及高揚をはかるほか、人権擁護のためのいろいろな活動を全般的に一そう充実強化につとめる所存でありまして、具体的なことにつきましては事務当局から御説明いたします。
  22. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 国際人権年でありますことしの行事といたしまして私どもがただいま考えております具体的な行事は、まずいわゆる人権活動というものを、ことしの年間を通じまして従来よりも  一そう活発化していきたいということが一つ。それから記念行事といたしましては、世界人権宣言が採択されました十二月十日の日に、国際人権年記念式典を催したいと考えております。そしてそれによりまして、なおポスターとか、ステッカーとか、各種の資料を利用しまして、広く社会一般に自由と人権の思想の普及、高揚をはかっていきたいと考えております。なおそのほか、国際人権年を記念した切手を発行いたすとか、あるいは記念の出版物を刊行するとか、講演会、座談会を開催いたしましたり、また人権上の問題のある制度、慣行などの実態調査をいたしましたりするようなことによりまして、各種の啓発宣伝活動をやっていきたいと考えております。
  23. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員長代理 猪俣先生、法務大臣は十二時過ぎに出席をいたします。
  24. 猪俣浩三

    猪俣委員 法務大臣がまいりましたら、中断して法務大臣に質問をいたします。  いま御計画を明らかにされたのでありますが、一体予算はどのくらいお取りになっておりますか。
  25. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 国際人権年記念行事のための予算といたしましては、昭和四十三年度予算におきまして三百七十二万円というものが予定されております。そのほか、法務局の予算の中で人権の啓発宣伝活動のために使用できる予算がございますので、それらの予算を十分にこの方面に振り向けることによりまして、ただいま申し上げました活動をやっていきたいと考えております。
  26. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこで、私は人権年の年でありますがゆえに、ここに亡命問題、これは国際問題として亡命問題、国内問題としては再審の問題を考えているわけでありますが、きょうは、亡命問題だけにつきまして、政府の所見を伺いたいと思うのであります。  この難民問題、亡命問題につきましては、難民の地位に関する条約というものがあるわけでありますが、これは世界五十四カ国の文明国ことごとく入っておる。日本はこれに入っておらないようであります。これは私がいまから六、七年前に、すでに政府に強く要望しておった。世界の現状から見て、文明国をもって任ずる日本が、何がゆえにこれに入らないのか。ところが、いや、この条約の精神はたいへんけっこうだから大いに研究して善処しますという答弁を、法務大臣も外務省の条約局長もされておった。その後どうなっておるのか、その御説明を願いたい。これは外務省から来ている方、どなたでもいい、答弁してください。
  27. 大塚博比古

    ○大塚説明員 御承知のように、一九五一年に亡命者の地位に関する条約というのが採択されているわけでありますが、その後外務省は法務省とも連絡しつつこの条約に対する研究を進めてまいったわけでございますが、一昨年の総会におきましてこの条約が修正されまして、範囲が拡大されたことになっておりまして、この修正されました議定書が昨年の一月に発効しておりますけれども、その後改正された議定書についての検討をいま行なっておる段階でございます。
  28. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、日本はまだ入っておらないわけですね。
  29. 大塚博比古

    ○大塚説明員 おっしゃるとおりです。
  30. 猪俣浩三

    猪俣委員 その理由はどこにあるのです。もうすでに六年前でも三十四カ国入っておった。その後たって現在五十四カ国、いま言ったように一九五一年四月二十八日現在で五十四カ国入っておる。どういうわけで日本はそれに入らないのか。何か理由があるのですか。
  31. 大塚博比古

    ○大塚説明員 御承知のように、五一年の条約は、一九五一年以前の事態において生じたヨーロッパの難民を主として考えていたわけでございます。その後改正になりました新しい議定書では、こういったヨーロッパにおける難民という事態をはずしまして広げているわけでございますけれども、実はこの定義に申します難民の内容その他が多少明確を欠く点もありますので、わが国がこれに入りましたときのいろいろな影響とかそういったことを考えて、いま検討中でございます。
  32. 猪俣浩三

    猪俣委員 おかしいんだ、その答弁は。難民に関する定義がはっきりしないというようなことを、いまから六年前も条約局長は言うていた。そんなことはないと思うのですよ。最近とみにこの亡命問題がやかましくなり、難民に関する国際条約というものが非常にやかましくなっている。とにかく世界人権宣言の二十周年記念でありますが、この世界人権宣言の第十四条を見ましても、「何人も、迫害からの保護を他国において求め且つ享有する権利を有する。」大原則が人権宣言にうたわれているではないですか。日本はサンフランシスコ条約でもって、この世界人権宣言の目的を実現するために努力する、こうちゃんとうたっている。世界人権宣言の十四条にそう書いてある。     〔田中(伊)委員長代理退席、大竹委員長代理着席〕 なおまた、一九六二年の第十七国連総会において、庇護権に関する宣言というものをやっておる。それを見ましても、「世界人権宣言第一四条を今一度確認し、同宣言第一三条二項を想起して、第一四条により訴追されている人びとに各国が庇護を与えることは、平和的人道的行為であることを認め、他国はそれを非友好的行為とみなしてはならない」。これは日本もやはり国連総会に入っているじゃありませんか。全会一致でこれをやっておる。そうしておいてこの条約だけはやらない。一体、サンフランシスコの、世界人権宣言の目的を実現するために努力するということを何もしてない。サンフランシスコ条約は成立してから十何年もたつんだ。そうしてそれを質問すれば、難民の定義が明らかじゃないと言う。ところが、これはいま言った難民の地位に関する条約においても、明確に難民の定義が出ておる。のみならず、その後数回にわたりまして、国連総会を開くたびに、この難民の定義は、できるだけ拡張しようじゃないかという申し合わせをやっているじゃないか。できるだけ拡張解釈によって難民の範囲を広げるということが、国連総会で数回にわたって決議されておる。日本においても代表が出て、その決議に参加しておる。人を処罰する法規というものは、厳格に解釈しなければならぬ。しかし、人道主義に基づいて人の人権を擁護することはなるべく拡張して考えるということが、いわゆるヒューマニズムの態度ですよ。難民の定義がはっきりしないなんということでこれに入っておらぬ。いま、若いあなたとそんな議論をやったって、これは大臣に出てきてもらわなければしょうがないから議論はやめますが、どうもわからないんだ。一体難民の定義のどこがわからぬのか。この条約にはっきり難民の定義が出ていますよ。このどこが一体わからぬか。「人種、宗教、国籍、政治的思想などの理由により迫害を受けると信ぜられる十分な根拠があるため、現在本国を離れており、帰国してその国の保護を受けることが不可能か、または帰国を望まぬ人々」これを難民というと、ちゃんと定義している。しかも、この定義はなるべく拡張して解釈しようじゃないかということが、数回にわたる国連総会で決定されているじゃないか。しかし、難民の定義がはっきりしない、理由にならぬと思うのだ。これは大臣でもなければ答弁できないと思いますから、私は答弁を求めませんが、私どもははなはだ不可解に存ずるのだ。あなたの解釈として、いまあげた定義で一体どこが不明瞭だというのですか。各国はみんなこれを承認して調印しておる。あなた方若い人から見て、一体どこが不明瞭なんです。不明瞭のところを指摘してください。
  33. 大塚博比古

    ○大塚説明員 ただいまお読みいただいた難民の定義の二項ではそういうふうに書いてあるわけでございますが、いまお読みになりましたその定義自体の中に、一九五一年の一月以前に起こった事態によってという制限があるわけでございまして、その一九五一年の一月一日以前にということにつきましては、さらに別の定義がございます。それを見ますと、一九五一年の一月一日にヨーロッパで起こった事態という制限が加えられておりますので、私どもとしてはこの点で、この条約は本来は原則的にはヨーロッパの事態というものを対象にしたことと考えております。
  34. 猪俣浩三

    猪俣委員 そんなものは妙な解釈だと思うのだ。しかし、いまあなたと議論したって始まらぬが、そこでこの難民問題については、世界各国におきまして、憲法ないし国内法におきましてみんな規定されておる。そういう規定がないのは日本ばかりだ。世界各国にありますよ。一々これを言えないけれども大臣が来ないので、少し問題が大き過ぎてあれですが——そこで、いま大臣お見えになりましたからあらためて申し上げますが、昨今日本でも、政治的亡命あるいは難民と称せられるものが急速にふえていることは皆さん御存じのとおりであり、ヨーロッパなんぞと違いまして、いままでそういうことにつきまして関心の薄かった日本国におきましても、難民問題、政治亡命問題について確固たる基準をつくらなければならぬ時期に際会しているように思う。それに対しまして、いま申しましたように、条約にも入っておらず、国内法もはなはだ不備である。国内法といたしましては出入国管理令というものがある。この出入国管理令というのは、一体いついかなる動機でできたものであるか。これは中川入国管理局長にお尋ねいたします。——それでは大臣にお尋ねします。出入国管理令、それから外国人登録法、これは外国人の入国問題あるいはそういう問題についての唯一の法律で、世界で最も貧弱な国内法です。外国ではみんな憲法に規定していますよ。それに基づく法律がみんなできておる。これは私が数年前から警告しているにかかわらず政府はちっともそれに対する立法もしない。もちろんわれわれの議員立法として提出すべきものかもしれませんが、これは政府の提案になるべきが至当だと私は思っている。昨今こういう問題がいろいろ起こってきている。これに対して出入国管理令と外国人登録法だけしかない。これは不備と思いませんか思いますか、法務大臣にお尋ねします。
  35. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お尋ねになりました件についてお答えしますが、まずこの出入国管理令の改正の問題でございます。これは御承知のように、今日も非常に各国間においての出入りが多くなっている。特にわが国におきましては、外国人の出入りも非常に多くなっている。私は、いまお述べになりましたように、出入国管理令は今日の時勢に合うように改正をしなければならぬと考えております。前から御意見にありましたように、この必要を感じまして、これがいかなる点を改正するかということも研究をいたしておるのであります。なお、できれば今国会にでも提出をしたいという考えを持っておりましたが、まだ一部調査の部分が残っておりますので、私としてはできるだけ早い機会に、御趣旨に沿うような、また一般の方々の希望に沿うような出入国管理令をつくりたい、かように考えて、勉強を急いでおるような次第でございます。
  36. 猪俣浩三

    猪俣委員 政府改正を急いでいられるというのであるから、その点了承いたします。これは一九五一年、いわゆる日本の占領中、ポツダム政令としてつくられたものです。押しつけられた憲法だから改正しなければならぬと盛んに言うところの政府与党は、こういう問題についてはさっぱり改正を唱えておらない。これこそ占領中にできた、アメリカの管理下におけるポツダム政令でよす。こんなものは、当然日本が独立した後に、直ちに改善に着手すべきものなんです。いままでほうっておいたのは、怠慢もはなはだしいと私は思う。  そこで、どういうふうに改正されようという腹案でありますか、その腹案をお示しいただきたい。
  37. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 一口に骨子を申し上げますと、非常にたくさんな人が出入国するようになりましたので、あやまちのない方法で、できるだけ手続を簡便化するということを、私は一つのねらいに考えておるのであります。それからなお御承知のように、非常にな日本の発展に伴いまして出入国者が多くなりますので、その便宜、日本の国に来るのにできるだけ不自由、不便な点をなくする方法はないかどうか、しかも正確に間違いのないような方法をということが、私はこの管理令の一番大きなねらいに考えておるのでございます。なおまたいろいろと衆知を集めまして、管理令の十分な成績のあがるような方法考えていきたい、かように考えております。これは昭和四十二年の六月の九日に法務省内に、御承知のように出入国管理改正準備会というものを設けて、促進をはかっておるような次第でございます。ここでいろいろ有効適切な案が研究をせられ、実現をしたい、かように私は考えております。特に、私はこの管理令におい考えますことは、短期旅行者というものが相当ふえるのでございます。この短期の旅行者については、国際旅行の容易化ということが非常に必要じゃないか。私はこの点に特に力を入れていきたい。それからなお、御承知のような、日本の国におる外国人の管理というものを、いまよりももっとくふうをして、適正な方法でやる方法はなかろうか、こういう点を私は主として考えておるような次第でございます。
  38. 猪俣浩三

    猪俣委員 ただいま実はあなたが来る前に質問したのですが、一九五一年にできました難民の地位に関する条約というものがあって、世界の文明国五十四カ国が現在加盟しておる。しかるに、日本はそれに入っておらぬ。私は六年前、昭和三十七年にこの問題について詳細に質問しておる。そうすると、難民の定義が明らかじゃないというような外務省の条約局長の答弁、それで入らないんだ、そんなことは詭弁だと思うのです。この難民の地位に関する条約においては、難民の定義は明らかになっている。難民とは何ぞやということにつきましては、文明国において憲法あるいは法律、みんな規定されておる。定義が明らかじゃないならば、明らかな定義をつくってもよろしい。それを今日までほっておいて、いまあなたの説明を聞けば、準備会ができて検討なさっておる。すみやかに難民の定義も確立して、そしてこの条約に加入するなり国内法をつくるなりしてもらいたいと思うわけであります。そして日本は、サンフランシスコ条約において、世界人権宣言の趣旨に従って努力するということを書いてあるのです。ことしは人権宣言二十周年、それでこの問題を再び私は持ち出したのですが、国際連合においては、たびたびの会合を開いて、亡命問題、難民問題を決議されておるわけです。どうもその趣旨に日本の政府は同調しておらぬ。いまだにこんな不備な国内法を備えておるものは、おそらく文明国ではありません。各国の憲法に規定しているじゃありませんか。条約に加盟するならば、日本国憲法第九十八条によって、条約はこれを尊重しなければならぬということが書いてあるから、これははっきりしてくるでしょう。その条約にも加盟していない。  そこでなお、この出入国管理令の改正について私が要望することは、現行法を見ましても、法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるときはということに限定せられておる。法務大臣の独裁になっておるのであります。ここに、私は非常に前近代的な封建的な残滓を認めるのです。昔の政治亡命者に対する恩典として、君主が特にある人間の亡命を許すということを特権としてやっておった、そのくさみが残っておるわけです。私はこれは特別な委員会でもつくって、良識ある委員会をつくって、その委員会でこの人間は特別に在留を許可すべき条件があるかないかを決定されて、行政府はそれに従う。大臣の判こ一つ——大臣だってなかなか詳しいことはわからぬから、結局入管の事務系統の人の上申でみんな判こを押しておる。こういうことじゃ、公正を欠くと思うのです。せっかくいま管理令の改正中だとするならば、私は、新しい国際法僻概念に基づいて、国連の精神に基づいて、最も進歩的な法律をつくってもらいたい。その意味におきましても、こういう特別に在留を許可するかどうかというようなことは、私は特別の委員会の審議によって決してもらいたい。これが民主的だと考える。これに対する大臣の御所見を承ります。
  39. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。お述べになりましたように、政治難民に対する庇護に関する条約にも日本は入っておりませず、なおまた、お述べになりましたように、憲法にも規定がない、こういう点からして、お説はよく私は理解ができるのでございます。ただ、こういう政治亡命者に対しましては、まずやはり政治的な迫害の主張が十分その根拠があるかどうかということを慎重に検討をする、また人権の尊重ということもお述べになりましたように、この点も十分尊重する、あわせて、やはりこの亡命問題については、わが国の利益、公安の保持、こういうことも十分考慮した上に、私は在留の適否が認められることが正しいと考えておる。ただ大臣考え一つというのでなくて、いま言いましたような諸点を十二分に事務的にも研究をいたし、間違いのない点を研究いたした上で措置をすることが必要である、かように考えておる次第であります。私は、そういう点におきまして、ただ大臣一個の考えじゃなくて、いま言いましたような諸点を十分考えまするが、それでもお述べになりましたように、何もそれで十分とは考えておりません。機会を得て、前向きの姿勢でお述べになりましたことも十二分に研究をしていきたい、かように考えておりますので、御了承願いたいと思います。
  40. 猪俣浩三

    猪俣委員 中川入管局長参られましたが、これは外務省の条約局長でないと責任ある答弁はできないかもしれませんが、あなたは外務省から来た方だと思うので、お聞きします。一九五一年の七月、ジュネーブで作成され、五十四カ国の人が入った、難民の地位に関する条約というのがあるのだが、日本はこの条約に入っておらない。その理由として、難民というのは定義がはっきりしないということを、いまから五、六年前から外務省は言っておる。ところが、難民の地位に関する条約には、はっきり定義が出ているのです。亡命者とは、難民者とは、「人種、宗教、国籍、特定の社会的グループへの所属、政治的意見の相違などの事情のために本国において迫害を受け、または迫害を受ける危険があるために外国にのがれ、本国の保護を受けることができず、また、それを望まないもの」という定義ができております。ここにどこに難民の定義に疑問があるというのです。私は六年前にもう入るべきだということを言って、それはけっこうだ、まことに趣旨はけっこうだ、しかし難民の定義にちょっと疑問があるので検討しますという答弁で、そのままになっているのだ。あなたは外務省から来た人だが、どこにこの定義に不審があるか。
  41. 中川進

    ○中川(進)政府委員 私、確かに外務省から参っておる者でございますが、難民の定義に関して疑義があるという点に関ましては、どういう理由で先生のおっしゃいますように疑義があると承知しておるのか、その点つまびらかにいたしませんから、条約局によく尋ねまして御返答いたします。
  42. 猪俣浩三

    猪俣委員 役目が違うから無理がないかもしれません。条約局長出てこれぬから、条約局長が出てきたらに保留しましょう。  ただ私は、入管の近来の壮挙といたしまして、金東希という韓国の兵隊でベトナムへ派遣を命ぜられた人が、脱出して日本に救を求めてきた。これを入管では北朝鮮へ送還されたようであります。私は、これは相当勇気ある決断だと思っております。私は、入管がこういうき然たる態度でやっていただきたい。そこでなぜこれを申しますかというと、これは私が申し上げるまでもないことだけれども、国際法なるものの概念が非常に近ごろ変わってきている。外務省の若い人が来ているが、どう変わったか、御存じあったら答弁してもらいたい。それが根本なのだ。そこから出てこないとだめなのだ。国際法の概念が変わってきている、どう変わったですか。
  43. 大塚博比古

    ○大塚説明員 私ども考えでは、一般国際法というものは、やはり今世紀に入りましてからの国際社会の組織化に伴って、おのずから変化してきていると思います。具体的に申しますと、一九四五年の国際連合憲章ができまして、その憲章に現在百二十教カ国、世界じゆうのほとんどすべての国が入っているということによりまして、国連憲章というものは一般国際法として世界ほとんど全部の国によって加入されているという事実が、国際法というものを変革さしてきているというふうに認識しております。
  44. 猪俣浩三

    猪俣委員 昔の国際法というものは、国と国との関係だと単純に考えられておった。ところが、国と称するものがみんな民主国家になった今日においては、国と国との君主問の約束じゃない。だから、ある国からある国に対して犯罪人の引き渡しを求めても、高い人類崇高の目的から判断をしなければならぬというのが、国際法の基準なんです。それで国際法というものが、君主と君主の、専制者と専制者の約束事じゃなくて、国際社会というものはやはり根底においては個人の社会だ。個人を没却せしめたる抽象的な国と国との関係を律するものじゃないのだ。そういうものからこの難民問題が出てきておるのですから、外務省のいままでの人たち考えておるような国際法の概念じゃない、私は新しい概念をつくりあげていただきたい。世界が一つにならんとするわれわれの最後の希望というものも、そこから発達してきている。主権の制限というものが、これからの進歩した国際法の原則でなければならぬ。各国の主権ばかり主張するようなもとの国際法なんというものは、人類からだんだん遠ざかることになる。若い諸君は、そういう点、ひとつ頭がかたくなった大臣を解きほぐしていただきたい。  そこで、大臣はお急ぎのようでありますから、いま実は人権擁護局長から、それから政務次管からお答えがあったのですが、ことしは世界人権宣言の二十周年、四百万近い予算をおとりになっているようであります。まあ明治百年もけっこうです。ですけれども、人権宣言二十周年、これは実に重大な年だと思います。しかも、国際連合では人権宣言年として特に決定されておる年であります。これに対しまして、どうか——わが国においては、まだまだ民主政治の日が浅くて、人権思想というものはそう発達しておりません。これは官民ともに、取り締まる側も取り締まられるほうも、どうも人権思想が薄いのです。これは資本家も労働者も、どうもやっぱり薄い。で、この人権思想というものを徹底的にこの機会に宣伝していただきたい。これは大臣が熱意を持ってやっていただきたい。これは私希望として申し上げておくものであります。ただ大臣の御決意を承れれば幸甚です。
  45. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 人権宣言に関する問題については、猪俣委員と全然同感でございまして、お述べになりましたように、ことしは人権宣言二十周年記念の年にあたりますので、予算もひとつ私はできるだけ各方面から寄せ集めて、七百万以上かけて——金をかけるだけじゃなくて、ひとつこの趣旨の徹底に十分な努力をしていきたい。お述べになりましたように、日本ではまだ人権宣言があらゆる面に徹底を欠いておることは、私も全く同感でございます。ひとつできるだけ熱意を持って各方面に呼びかけて、これの実のあがるように全力を尽くしてまいりたいと考えていますので、御了承願いたいと思います。
  46. 猪俣浩三

    猪俣委員 大臣お急ぎのようですから、もう一点だけで釈放いたします。これは人権年に関することですが、私どものほうでは、神近女史がいま非常に苦心いたしまして、占領期間中に行なわれましたる裁判というもの、おしなべて死刑の確定がしているようなものに対して再審の道を開いてもらいたい。これはいろいろ理由がありますが、法案を各党共同で出そうと思って努力しているのですが、その際に、これはおもに司法記者クラブから出ている——真偽のほどはわかりませんけれども、例の平沢貞通、帝銀事件犯人及び佐藤誠、これは詩人でありまして、死刑の判決を受けたということで相当評判になっているものですが、いずれも死刑が確定しておるわけです。赤間法務大臣はこれに執行の判こを押してしまうという決意を固めているという実は報告がありまして、はなはだ私どもはがく然としているのですが、少なくともこの再審に関する法律をせっかくこの国会で成立せしめようとわれわれが努力している際に、それに該当するこの二人が執行されてしまいますと、何としてもあと味が悪い。あんただってあと味が悪いと思う。だから、これに対して私はあまりお急ぎにならぬほうがいいのじゃないか、こう思うのですが、ひとつ巷間伝えるように、死刑執行をあなたは断行なさる意思であるかどうか、それをお聞きいたします。
  47. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お述べになりました当該二人について、死刑執行の意思決定はまだいたしておりません。お述べになりましたように、あらゆる面からひとつ慎重に検討をしてまいりたい、かように考えております。
  48. 猪俣浩三

    猪俣委員 わかりました。私は大臣に対する質問は終わりまして、それから難民問題についてもう少し質問したいと思うのですが、当の外務省側が出ておられますけれども、責任ある答弁をしていただく地位にはないと思うのです。     〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕 そこで留保して、次回にまた少なくとも外務省の条約局長には出ていただかぬと、事は明らかにならぬと思いますから、私は、きょうはこの程度で打ち切ります。
  49. 永田亮一

    永田委員長 わかりました。
  50. 神近市子

    神近委員 関連を一問。いま人権擁護の条約、人権条約についての御質問がありましたけれど、これに入っていないと思うので、いま大臣をわざと御辞退したのでございます。これはどちらかというと管理の問題で、私、ちょっと法律家の来年行なわれる会合の名前を忘れましたけれど、囚人の管理についてですから、矯正局長あたりの御決定か、あるいは大臣に対するアドバイスでできることじゃないかと思うのでございます。これは現在の囚人に対する待遇でございます。たとえば喫煙が禁止されている。それから頭の毛を短い刈りにする。これは手がかからないようにばりばり刈ってしまうのじゃないかと思う。それからいまは赤い着物は着せないそうですけれど、この間から現状視察ということが横山君あたりから出ておりましたけれど、赤いのは着せないそうですけれど、やはり一定の囚人ということがはっきりするような着物を着せる。この三点ですね。喫煙の禁止、それから頭の何刈りというか、短刈りというか、それから着物の統一、これは外国にはないのだそうです。後進国の中にはあるかもしれないけれど、この三点は旧憲法時代の方法で、これは旧憲法の支配下の囚人ということで、非常に下に下にというようなアイデアでできている統一の着物、統一の頭、統一の挙動、動作、こういうものを要求ざれたと思うのです。それを外国並みに、先進国並みに改善するということは不可能なのか、やらないのか、どっちなのか、ひとつ矯正局長あたりのお考えを聞きたいと思います。
  51. 福原弘夫

    ○福原説明員 ただいまの点につきまして、喫煙の点につきましては、建物その他のいろんな管理上の面というような点、あるいはたばこの害というような問題などあわせまして、やらないということではなくして、改めるかどうかということについて現在検討を重ねてございます。頭髪の点につきましては、従来一律に五分刈りでございましたが、出所後の社会復帰というようなことなども考えまして、出所のときには希望する者には髪を伸ばして出れるというようなことに一昨年末に変えまして、現状では社会復帰のときには伸ばした髪で出れるように改められております。服役中の期間につきましては、出所間近になりますと伸ばせるわけでございますけれども、それ以前の段階では、五分刈りあるいは俗にいう番頭刈りと申しますか、前だけ長くするというような二通りの髪型をつくっておりまして、本人の希望によってどちらかを選ぶというような形に、現状はなっております。この点につきましては、いろいろ検討を加えた結果の現状でございますので、いますぐ改めるということは、現在の段階ではないのではないだろうかというように考えます。被服の点につきましては、従来茶褐色でございました。その後に戦争色と申しますか、青い着物でございましたが、現状では色はややえんじがかった色ですが、遠くからお見受けいたしますと、柄を別にして、神近先生のような色の衣類に現在なっております。ただ、そこで受刑者という立場から申しまして、やはり六万人近い収容者の被服でございますので、一律につくる、いわゆるユニホームという形は将来ともとらなければならないというように考えますが、いまでは別に刑務所という大きい字も小さい字も書いているわけでございませんので、一般社会の労務者が着ておるものとほとんど変わりません。したがいまして、これはまだ一昨年ころからの改正でございますから、この改正が全員に行き渡りますと、従来の戦争色、青い着物というものもだんだんなくなっていくと思います。現状では、過渡期でございますので、まだ前の残った衣類を使っているものもあるし、いま改正になった衣類を着ておるものもあるという状況でございます。  改善するということにつきましてかねがね検討は重ねておりまして、重ねた結果、いまの頭髪、衣類という点につきましては、さような段階になっております。喫煙につきましては、現在においても、さらに監獄法の改正という段階におきまして検討を続けているということを申し上げたいと思います。
  52. 永田亮一

  53. 中谷鉄也

    中谷委員 壬申戸籍の問題について重ねてお尋ねをいたしたいと思います。  生きていた差別の戸籍ということで、本年の初め壬申戸籍の問題が多くの国民の前にクローズアップされましてから、法務省では一月の十一日に民事局長通達を出されました。民事局長通達は、親族以外の者の閲覧の請求には応じない取り扱いを定められましたね。越えて三月の四日になりまして、さらに民事局では一歩を進められまして、親族についても閲覧を禁止する、このような通達を出されたわけであります。それで、本件についてそのような通達の処置をめぐりましてその後事態が進行したわけでありまするけれども、次のようなことが、最近新しい動きとしてあらわれてまいりました。すなわち、百年の差別を返上するのだということで、大阪府下の大東市、岸和田市、貝塚市の三市から大阪地方法務局に対して、市役所が保管をしております壬申戸籍を、去る三月の十九日、返上いたしたいということで、大阪地方法務局にその戸籍を持参いたしました。そうして結局大阪地方法務局では、その戸籍を預かるというふうな措置をとられたようでございます。問題は、壬申戸籍について、まず閲覧についてどのような措置をとるかという問題これが一つ。いま一つは、壬申戸籍の保管をどうするかという問題、この二つに分かれるわけであります。閲覧の問題については、三月上旬の民事局長通達、すなわち親族にも閲覧をさせないという通達によりまして、ある程度処理できたと思うのですけれども、保管の問題について、さらに多くの壬申戸籍について関心を持つ人たちの中に意見が分かれておりますのは、保管場所が市町村である場合には、さらに差別問題を生ずるおそれがある、このようなことについての非常な危惧があったからだと私は思うわけです。したがいまして、民事局長に御答弁をいただきたいと思うのですけれども、岸和田、貝塚、大東の三市が大阪法務局に戸籍を預けた、こういうふうな措置は、全体としての法務省措置として今後措置さるべきだと思う。要するに保管場所を法務局に移さるべきである、このような見解が非常に有力であると私は思いますけれども、この点についての局長の御答弁を承りたいと思います。
  54. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 壬申戸籍につきまして、昨年末から本年の当初にかけまして、いろいろの問題が提起されたわけでございます。その中の一つといたしまして、従来の壬申戸籍の閲覧の問題が確かにございまして、今後どうすべきかということを検討いたしますためのとりあえずの暫定措置といたしまして、先ほどお示しの一月十一日付の通達によりまして、親族以外の者には見せないという措置をとったわけでございます。その後いろいろ実情を調べまして、閲覧を全面禁止いたしましても一般国民にとって特段に不便は生じないということがわかりましたので、三月四日付の通達によりまして、閲覧は全面禁止することにいたしたのであります。これにつきましては、もちろん相続その他の関係でどうしても身分関係を証明する必要がある場合がございますので、公証方法はやはり残しておく必要があるということから、現行の戸籍法で許される範囲のものについてのみ謄抄本を作成するという措置にいたしたわけでございます。  閲覧関係の問題につきましては、一般に公開することは確かにいろいろの問題が生じ得るのでございまするが、先ほど申し上げましたように、一般の閲覧は禁止いたしましたけれども、全国的にながめてみますと、壬申戸籍といえども一般国民は利用しなければならない面もまだございますために、その利用の面を完全に閉ざしてしまうこともこの際は困難ではなかろうかという感じがいたすのであります。そうかと申しまして、この閲覧も、謄抄本の作成が不要になった場合、もう完全に壬申戸籍利用の必要がなくなっったという場合の措置でございます。その場合には、市町村のほうから法務局に廃棄の認可の申請を出してまいることになっております。廃棄いたしました後の保管が今後の問題でございますが、先ほどお話しのように、市町村によりましては、市町村側でこれを保管することについての万全の措置がとれないという危惧の念から、法務局に保管してもらいたいという意見も若干出ておるのであります。大東、岸和田、貝塚の三市は、そのような観点から大阪法務局に壬申戸籍の保管を依頼してきたという事実はございます。こういうことについて法務局側といたしましてどのように対処するかという問題でございますが、これは一がいには言えない面もあろうかと思うのであります。現在、全国三千三百八十六市町村のうちの二千六百四十五市町村が、この壬申戸籍を保存いたしております。戸籍の数も七百十一万一千戸籍、冊数にいたしまして約二万五千冊でございます。これは必ずしも正確な数字ではないかもしれませんが、本年一月に調べました一応の数字でございます。それだけのものがまだ保管され、利用されておるという面も考えなければなりませんので、こういったことも考えながら今後の措置をとっていかなければならないと思うのであります。そこで法務省側といたしましては、市町村から廃棄の認可の申請がありますれば、保存期間その他のことを考えまして、正規に廃棄していいものかどうかを判断いたしました上で認可いたすのが通例でございます。廃棄いたしましたあと市町村側でどうしても保管に困るということであれば、法務局にこれを引き取りまして保管するのも一つ方法であろうと思います。しかし、法務局の現状は、御承知と思いますけれども、現在、登記簿あるいは戸籍の届け書といった書類で倉庫はもう満ぱいになっておりまして、それだけの壬申戸籍を全部一カ所に集中管理するというだけの余裕もなかなかございませんけれども、何とかくふうもあるのではあるまいかということをただいま検討いたしております。できるだけ人権問題等生じないようにいたしますためには、法務局側としてもそれなりの配慮は必要であると思いますので、今後の問題といたしましては、市町村のほうともよく相談いたしまして、法務局でとれるものにつきましてはしかるべき方法を講じまして、それが外部に流出しないような措置を講じながら法務局で保管していくということも念頭に置いて、ただいま検討いたしておるわけでありますが、近いうちにその結論が出し得るものと考えております。
  55. 中谷鉄也

    中谷委員 事実関係で一点だけ確かめておきたいと思います。報道によりますと、大阪法務局の戸籍課長は、とりあえず私個人が預かるといって受け取られたということが報ぜられておりますが、要するに、これはただいまの局長の御答弁から明らかになりましたが、確かめておきます、大阪法務局としてお預かりいただいた、市の立場からいえば、そういうふうにも当然理解できることだろうと思いますが、そういうふうにお伺いしてよろしいかどうか、これが一点でございます。  なお、単に岸和田、貝塚、大東三市のみならず、少なくとも百年の差別といいますか、この同和問題について、それぞれの立場おいて深刻に悩んでおり、また、その差別というものを前向きの形においてどうしても解消しなければならないということで努力いたしております各市町村の中には、差別事象を生ずる危険を包蔵いたしておりますこの壬申戸籍については、法務局あるいは地方法務局に保管させることが一番適切であるというふうな声が、非常に強いようであります。私自身も和歌山県下の若干の市町村を調査いたしましたけれども、そういう意向が非常に強いわけなんです。といたしますと、法務省考え方は、今後そのように各市町村の戸籍課のほうから法務局において保管をされたいということの申請、要望があった場合には、保管をする方向で努力をする、こういうことで理解してよろしいのかどうか。先ほど御答弁がありましたけれども、非常に深刻な問題ですので、重ねて答弁をお願いいたしたいと思います。  なお、いわゆる部落解放同盟のほうでは廃棄ということを強く主張いたしておるようでありますけれども、聞くところによりますと、廃棄というのは、結局焼き捨てるというふうな意味ではなく、要するに、各地方法務局に回収をして厳重に保存するということを強く要望している、こういうふうに私は理解をいたしております。そういうようなことで、先ほど御答弁がありましたけれども、二点についてお答えをいただきたいと同時に、各市町村に対して、法務省の先ほど御答弁になりました考え方について、さらに通達等をお出しいただくことを私は希望いたしますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  56. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 今月十九日に大東、岸和田、貝塚三市から壬申戸籍を預かってもらいたいという要望がございまして、大阪法務局の戸籍課長といたしましては、これは個人的に預かるという形で一応お預かりしたようでございます。これにはいきさつがございまして、すでに三市からは廃棄の認可申請がございました。しかし、先ほど申し上げましたような本年当初からのいろいろないきさつがございましたので、法務局側といたしましても、この取り扱いを慎重にする必要があろうということで、現在までそのままにしてまいったというのが実情でございます。しかし、昨日大阪の法務局に照会いたしましたところ、すでにこの三市の廃棄認可の申請につきましては、大阪法務局長のほうで廃棄の認可をいたしたということでございます。したがいまして、現在では、法務局側で正式にこれを受け取りまして壬申戸籍の保管の用意をいたしておると理解いたしておる次第でございます。この保管の方法も、先ほど申し上げますように、法務局の現状から申しますと、必ずしも理想的な一カ所に集中管理するというふうな形はとりにくいかもしれません。が、何とかして人権問題を生じないようにいたしますためには、創意くふうをこらして法務局といたしましても適切な処置を講ずるものと、私どもは確信しておる次第でございます。  なお、一般的に各市町村から法務局側で保管してもらいたいという要望がございました場合にどうするかということでございます。先ほど私、近いうちに結論を出したいと申し上げましたのも、実はその点に関するものでございまして、これは各市町村のいろいろの事情もございますので、その辺の事情を十分に考慮に置きながら、できる限り法務局としても協力するという態勢で臨みたいというふうに考えておるわけであります。もう少し具体的に申しますならば、法務局でこれを保管することもあり得るということでございます。このことにつきましては、結論を出しました上で、さらに重ねてこの保管の問題について通達を出す考えでございます。  なお、この保管は、現在の壬申戸籍をそのままの形で保管するというのではございません。先ほどお話しのように、廃棄の認可のありましたものについてこれを保管するということになりますので、現在の市町村の保管をそのまま右から左へ法務局へ移していくという趣旨ではございません。このことは、中谷委員も十分御承知のことと思いますので、そういう趣旨で、保管するとすれば法務局で保管する、こういうことになろうかと思います。
  57. 中谷鉄也

    中谷委員 次に、人権擁護局長さんにお尋ねをいたします。  その前に、民事局長さんの御方針についての御答弁をいただきましたが、それらの問題については早急におまとめをいただいて、通達等をお出しいただくことが適当であろうかと思いますが、その点についての御答弁が若干落ちたように思いますので、その点については、人権擁護局長さんに対する質問と同時にお答えをいただきたいと思います。  人権擁護局長さんにお尋ねをいたしたいのは、前回も私この点については、同和対策審議会の答申を引用いたしまして、要するにあるべからざる差別というものが一日も早く払拭されなければならない、このことが同和対策審議会の答申の一番基本の考え方であると私は思いますが、ということでお尋ねをいたしました。そこで右答申を受けまして、昭和四十二年の二月の二十五日に「同和対策長期計画の策定方針に関する意見」が同和対策協議会のほうから出されております。そこで、たとえばその協議会法務省関係のところを一、二点拾ってみますると、「人権擁護関係団体による啓発活動を活発にし、人権相談を強化し、人権侵犯事件について、その侵害排除を積極的に行なうことと。」いうふうなことが、方針あるいはなさねばならない当面の課題として課せられているわけです。そこで壬申戸籍の問題を当面の一つのできごととして、次のようなことが差別の実態の中から浮かび上がってまいりました。すなわち、このような差別をしておる、その差別に対する法的な規制が必要ではないか。いま一つは、差別から保護するための必要な立法措置を早急に講ずるべきではないか。そういうふうな救済の道を拡大する方法は、一体どうなっているか。これらの点について、政府としても早急に措置をさるべきではないか。要するに差別に対する法的な規制、差別から保護するための必要な立法措置、これらについて措置さるべきではなかろうかということでございます。これらについての人権擁護局としての御見解を承りたいと思うのです。先ほど同僚委員が質問をいたしましたけれども、人権宣言二十年、部落差別というのは百年の差別、こういうふうな実態を踏まえて、これらの問題についての前向きな御答弁をいただきたい。  なお同時に、まさにあるべからざることであったと思うのでありますけれども、この壬申戸籍の問題をめぐりまして、すでに人権擁護局のほうにおいても事象についての調査を始めておられると思うのでありまするけれども、大東市の女の方、いわゆる人権侵犯事件でいいますならば、結婚妨害という、壬申戸籍によるところの差別事象が生じておる。これらの問題について、どのように調査をお進めになるか。民事局長の御答弁があったわけでありまするけれども人権擁護局として、今後壬申戸籍に伴うところの差別事象を生ずるおそれというものをどのように防止するか、これらの点についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  58. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 壬申戸籍の廃棄後の保管問題につきましては、通達を出す考えのもとにただいま検討いたしております。
  59. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 まず、お尋ねの第一点の、差別の解消のための法的規制ということでありますが、差別に対しまして法的の規制をする、また差別から保護するための立法措置をするというような、差別の解消と差別されている者の救済のための諸方策、これにつきましては、現在総理府に設けられております同和対策協議会におきまして慎重に検討中でございます。近くその結論が得られる見通しでございますので、その結論が得られましたならば、私どもも人権という立場から、その実現に努力いたしたいと考えております。  第二点の、大東市に起こりました事件についてでありますが、壬申戸籍を閲覧したということが原因になりまして差別事件が起こったのかどうか、私ども現在のところまだこれを確認しておりませんけれども、もしさような事実がありましたとすれば、まことに遺憾なことだと考えるものでございます。戸籍を所管しております民事局におきまして閲覧を禁止するという措置をすでにとりましたので、今後はこのような事態は起こらないであろうと思われますが、人権擁護局といたしましては、人権擁護の観点から、民事局とも十分に連絡をとりまして、また、いわれのない差別というものが不当であるということを、十分に啓発活動によりましてその解消につとめていきたいと考えております。
  60. 中谷鉄也

    中谷委員 終わります。
  61. 永田亮一

    永田委員長 次回は、来たる二十六日午前十時理事会、理事会散会後に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時十九分散会