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川井政府委員 確かに、
事故を起こしてそのまま逃走したというふうな例を想定いたしますと、人をひいた点において最高刑がもしいくとするならば禁錮三年、届け出をしないでそのまま逃げたということになりますと、
道交法で
懲役三年という刑が最高刑ございますので、両方をおそらく多くの場合併合罪になると思いますが、その場合には重いほうの一倍半ということに相なっておりますので、
懲役と禁錮を比べまして、重いのはもちろん
懲役刑でございます。ひいて逃げたというほうも
懲役三年の一倍半ですから、
懲役四年半の処断刑が出てくる、その処断刑の範囲内において言い渡し刑がきまる、こういうことになると、ただいままさに御
指摘のとおりでございます。ただ実務の実際を見ておりましても、これはまた個々の裁判官によって裁判官の考え方が違うと思いますので、私どもの立場から一がいに
一般論として申し上げることも適当でないと思いますけれども、
〔
田中(伊)
委員長代理退席、大竹
委員長代理
着席〕
処断刑の一倍半という範囲内においてこの刑が盛られることにはなっておりますけれども、私ども
検察官あるいは法務の立場から見ておりまして、量刑の実際というのは、長い間の実績と伝統を見まして整理してみましても、やはり言い渡し刑は
一つの重い罪の最高刑の範囲内において量刑がされているというのが、まず実務の実際ではなかろうかと思うわけでございます。その理論的な理屈とかなんとかいうものはどこにあるかということにつきましては、いろいろまた意見なり研究なりが必要だと思いまするけれども、とにかく量刑の実際は、まずそういうふうに見られる
実態に相なっておりまするし、それから本件のような場合に、
刑法という
法律で定めてある過失に基づいて人を
死傷いたした、こういうふうな事実のほうが軽くて、そして届け出ないで逃げたというふうな取り締まり法規である
道交法に規定されているほうが
懲役三年で非常に重いという
——禁錮と
懲役は、申し上げるまでもなく禁錮は
懲役の半分だというふうに
刑法で定められておりますので、同じ三年でも
懲役のほうが非常に重いわけでございますので、本来私どもが
犯罪、あるいは
刑罰と言ったほうが適当かと思いますが、あるいは罪、そういうふうなものと、
刑法に規定されておりまするところの
刑罰と、取り締まり法規に規定されておりまするところのいわゆる罰則というふうなものの間には、私は法学上も
本質的な意識観念において相違があると思うわけでございますが、その罰則のほうが
刑罰として定められておるものより著しく重いということは、
刑罰理論の体系を持ち出すまでもなく、はなはだしくアンバランスの
実態ではないか、こう思うわけでありまして、
検察官が
裁判所に参考として求刑をするというふうな場合におきましても、そこに非常な抵抗とアンバランスを感ずると同じように、また裁判官が具体的な
事件について言い渡し刑を盛られるというふうな場合におきましても、その
刑罰の
本質の相違なりあるいは量刑の幅なりというものについて、確かにかなりな考慮を払われるのではなかろうかというような気がいたしておるわけでございます。私の立場からいたしましては、やはりひいて逃げたというふうな場合に、やはり人をひいたというほうが、
国民感情といたしましても、また社会の情理といたしましても、重かるべきものではなかろうか、こういうふうに考えております。