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1968-03-19 第58回国会 衆議院 法務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月十九日(火曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大竹 太郎君 理事 田中伊三次君    理事 濱野 清吾君 理事 猪俣 浩三君    理事 神近 市子君       鍛冶 良作君    河本 敏夫君       千葉 三郎君    中馬 辰猪君       福田 赳夫君    中谷 鉄也君       成田 知巳君    山口 鶴男君       岡沢 完治君    山田 太郎君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房陸上交通安全         調査室長    宮崎 清文君         法務政務次官  進藤 一馬君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省矯正局長 勝尾 鐐三君  委員外出席者         警察庁交通局交         通企画課長   関  忠雄君         科学技術庁研究         調整局総合研究         課長      緒方 雅彦君         厚生省医務局総         務課長     上村  一君         通商産業省重工         業局自動車課長 田中 芳秋君         運輸省自動車局         参事官     岡田 茂秀君         運輸省自動車局         整備部車両課長 隅田  豊君         建設省道路局企         画課長     豊田 栄一君         最高裁判所事務         総局刑事局長  佐藤 千速君         最高裁判所事務         総局民事局第一         課長      井口 牧郎君         専  門  員 福山 忠義君     ————————————— 三月十九日  委員岡田春夫君、佐々木更三君及び西村榮一君  辞任につき、その補欠として山口鶴男君、中谷  鉄也君及び岡沢完治君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員中谷鉄也君、山口鶴男君及び岡沢完治君辞  任につき、その補欠として佐々木更三君、岡田  春夫君及び西村榮一君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 三月十五日  福岡地方裁判所小倉支部等の昇格に関する請願  (池田禎治紹介)(第二七五七号)  同(田中六助紹介)(第二七八九号)     ————————————— 本日の会議に付した案件  刑法の一部を改正する法律案内閣提出、第五  十五回国会閣法第九四号)      ————◇—————
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山田太郎君。
  3. 山田太郎

    山田(太)委員 前もってお断わりしておかなければいけないと思いますが、この刑法の一部改正の問題については、もう論じ尽くされた感があるということも聞いております。しかし、私が新たに法務委員とならしていただいてから初めての質問でございますので、重複する点も多々あるやとも思いますし、同時に素朴な質問も多々あるとも思いますので、それをまずお断わり申し上げて、しかし、まじめには質問さしていただきたいと思いますので、どうか回答者の方もまじめに答弁していただきたいということをまずお断わり申し上げまして、本題に移りたいと思います。  わが公明党といたしましては、人命尊重を第一義とするたてまえから、本法案に対し慎重に審議もし、また先輩の沖本議員もるるお尋ね申してきたことは、御承知のとおりでございます。しかし、最初にお断わり申し上げましたように、一応私としては初めての質問でもございますので、重複ももちろんあるかと思いますが、この刑法が制定されたのは、明治四十年だと聞いております。その制定された当時とそれから現在改正しようとするその間、どのような状況変化があり、そうしてなぜこの法案を提出なさったか、その点について、簡単でけっこうでございますから、お聞かせ願いたいと思います。
  4. 川井英良

    川井政府委員 明治四十年に現行法が制定されまして、その後昭和二十二年だったと思いますが、業務過失致死傷のほかに重過失致死傷というものが入りましたけれども、条文それ自体としては根本的には変わりがございません。したがいまして、過去約六十年間この条文は全く同じ形において制定され、運用されておった、こういうことに法律の面では相なるわけでございます。御指摘のように、その間にいろいろな社会情勢変化、特にこの条文関係あるものといたしましては、人命影響のある業務が非常にふえましたということと、同時にまた、その業務内容が科学の進歩とともに非常に規模も大きくなりましたし、また産業の勃興とともに、その規模が大きくなるばかりではなくて、実質的にもその内容が非常に拡充され、広範になってきた、こういうことを見のがすことができないと思います。それから、自動車とかその他の交通機関におきましても、その台数のみをとって考えてみましても、まさに隔世の感がある。こういうようなことでございまして、したがいまして、それらの業務のあやまちによっておかされる人命の損傷というものも、統計の面ではものすごい勢いでもってふえてきているということが言えると思います。たとえば昭和二十年の指数をかりに一〇〇と考えてみました場合に、昭和四十二年度におきましてはそれが七〇〇〇を突破しておるというふうな状況、これは一般交通機関によりまするところの死傷者の数の増加率でございます。そういうような変化のために、今回このような改正案審議をお願いしている、こういうことでございます。
  5. 山田太郎

    山田(太)委員 提案理由説明を拝見さしていただきますと、この提案理由は、ほとんど主として交通事故による業務過失致死傷事件を対象にしての提案理由説明になっておるようでございますが、先ほど刑事局長さんの御答弁の中にもちょっとお触れになったとも思いますが、この交通事故以外の問題に対してもこの法案は当然適用されるようになると思いますが、その点の事情をもう少し詳しくお聞きしたいと思います。
  6. 川井英良

    川井政府委員 まさに御指摘のとおりでございまして、この法案が成立しました暁におきましては、交通事故ばかりではございませんで、およそ人命影響のある業務に従事する一切の業態過失事故適用がある、こういうものでございます。
  7. 山田太郎

    山田(太)委員 そういたしますと、この提案理由説明はやや不親切であったというふうにも見受けられますが、どうでございましょうか。
  8. 川井英良

    川井政府委員 まことにごもっともな御指摘だと思いますが、提案理由は、現在あります法律改正をお願いしているというふうなたてまえからなるべく簡明にこれを申し上げるというふうなことで、なぜこういうふうな改正を考慮するに至ったかという動機重点を置きましてまとめましたために、そういうふうな形に相なったわけでございます。動機は、何と申しましても主として自動車の急激な増加により、またその自動車運転業務に基因するところの急激な死傷、しかもまた悪質重大な事故の激増ということが、この改正契機着想発端になっておりましたので、その発端動機重点を置いて取りまとめたためにそういうふうなことに相なったわけでございますが、一般的には、特別法改正ではありませんで、御承知のとおり、刑法の一部改正という形をとってまかなうというたてまえになっておりますので、刑法内外人を問わず、国内に居住するあらゆる一切の人々適用がある、こういうふうなたてまえの前提法律に相なっておりますので、もちろん申すまでもなく、刑法改正でまかなう限りは、単に動機となった自動車のみならず、それ以外の業態のものについてもそれが適用される。ただ問題は、下限、下のほうを上げませんで上のほうだけを刑の幅を広げるということをお願いしたところに実は一つポイントがあるわけでございまして、これは悪質重大なものについて頭打ち傾向に相なっておりますので、この頭打ち傾向というものに対してここに何らかの手を打ちたい、また打たなければならない、こういうようなところから、その上限だけを上げるということをお願いしているわけでございます。これは悪質重大なものについてのみ適用を求める、こういう趣旨でございますので、交通事故のみに限りませんで、その他の業態のものにおきましても、きわめて悪質重大なものがありますれば、その適用を受けるということはこれまた当然のことだろうと思いますので、いままで三年以下、あるいは一年あるいは罰金というふうなもので済んでおったようなケースについてまでにわかに一般的に刑の引き上げをはかる、こういうふうな趣旨のものではございません。
  9. 山田太郎

    山田(太)委員 当然この法改正目的交通事故防止しようという意図も多分に含まれていると思いますが、その点についていかがでしょうか。
  10. 川井英良

    川井政府委員 ちょっと御質問趣旨をあるいは取り違えておるかもしれませんが、刑法という法律は、御存じのとおりの法律でございまして、国民法秩序のための何人も守らなければならない最低限のものを規定しておるということで、その刑法の規定しようとする本質は、やはり国民の情理といいますか、道義といいますか、あるいは文化規範と申しますか、その守らなければならない規範を定めたものであるというふうに刑法本質が説かれておることは、御存じのとおりでございます。その刑法の中に二百十一条が六十年来規定されておりまして、そういう危険な業務に従事する者が注意義務をあやまったとかあるいはそれを怠ったために人の命あるいは身体に対して傷害を与えた、そういう行為は社会的に見ましても許すことのできない行為である。だから、特別な業務に従事する者は特別な注意義務を持っているのだということが、一応定立された規範として理解されておるわけでございます。したがいまして、そのような刑法の中にこれが規定されておるということは、単に犯した者をあとから処罰する、そしてその覚せいを求める、一般的な社会防衛一端に資するというふうな、事故が起こってしまってからだけの目的ではございませんで、やはり一つの定立を掲げまして、このような行為についてはこのような刑罰が課せられるのだということを国が明らかにいたしまして、その明らかにすることによって国の法の秩序を保っていこう、こういうふうな目的も、刑法には重要な一つ目的として認められているところでございますので、この刑を三年の刑ではなくて五年の刑、五年の刑罰に当たるような反社会的な行為であるということをここに刑法改正をもって宜明し、これを明らかにいたしまして、一般国民に対して、そのような業務につきましてはさらに注意を喚起する、こういうふうな目的をもあわせ持っているものでございます。
  11. 山田太郎

    山田(太)委員 したがって、国民注意を喚起するというその目的は、やはり交通事故防止という点も含まれておると承知してよろしいでしょうか。
  12. 川井英良

    川井政府委員 私もそういうふうに理解しております。
  13. 山田太郎

    山田(太)委員 そこで私といたしましても、先ほど申し上げました人命尊重意味からいっても、当然交通事故防止一端になるという、その意味においてそれが少しでも価値があるならば、人の命を守るという点から当然この法律改正がなければならないのじゃないかとも思っております。そこで心配になるのは、五年の禁錮並びに懲役引き上げていくということによって、はたして人命尊重の立場の意味から、これがどこまで効果があるかということが、まず一番の疑問点にもなってくるわけです。いつでございましたか、私が少年院に行きましたときに、少年院を出ていった人が——問題点は少しずれるかもしれませんが、この刑罰を重くするということによってどれだけ効果があるものかということを確かめたいために言うわけですが、少年院を出ていった人が、ほとんど七〇%以上の人がまた戻ってきたりあるいは刑務所に行くような人が出てきておりますということを聞いております。ということは、どこまで価値があるのだろうかということが、一つの大きな疑点となっているわけです。その点について、局長さんはどのように判断していらっしゃるか。あるいはこの刑事局からいただきました資料等にもありますけれども、外国事例等から見ても、人命尊重意味から交通事故防止に対してどのようなデータなり結果なりが出ているかということをお聞きしたいと思います。
  14. 川井英良

    川井政府委員 刑法に規定されておる犯罪の類型に対しまして法定刑を上げるということが、実際的に顕著な、目に見えるような効果をすぐもたらすかどうかということにつきましては、これはいろいろな条件が加味されてまいりますので、効果観察は率直に申し上げまして非常に困難だと思います。効果がないという意味ではございません。効果観察が非常にむずかしいということを、まず申し上げなければならないと思います。ただ、日本の例で申し上げますと、過去にヒロポンでありますとかいろいろ麻酔麻薬関係事案がはんらんしたことがございますけれども、そのようなときに、刑法ではございませんが、麻薬取締法改正をいたしまして大幅に刑を引き上げたというふうな、ごく最近の事例といたしましては一応法務省として経験を持っております。これは非常に顕著な効果を発揮いたしまして、今日御承知のように一時のような状態は影をひそめまして、範囲も非常に狭まりましたし、量的にも非常に少なくなってきた。かなり外国の人が出入りしているというような、特殊なさような事案を助長するような条件にもかかわらず、非常に減っているということは、ほかの条件もありましょうけれども、刑の引き上げがある一面においてその効果の招来に寄与しておったということが言えるのではないかと思います。ただ、本件のような場合において、三年の刑を五年に上げた、そして今度悪質な事故を起こせば懲役にも行かなければいけない、三年では済まなくて場合によっては五年というような重刑にもなるのだというようなことが、私はかなりこういう事態人々注意を喚起する効果は否定できないと思います。特に、前回も申し上げたことでございますが、故意犯過失犯と比べてみました場合に、過失犯注意を怠るということが犯罪としての本質でございますので、刑を上げるということは非常に大きなその業務につく人の注意を喚起することに、故意犯に比べてより以上に大きな効果を期待することができるのではないかというふうに私は考えておりますけれども、御指摘のような確実な数字にあらわれたデータをもってこうなるということをお示しすることができないのは、はなはだ残念でございますが、自動車台数にいたしましても非常に大きな数字をもって伸びておりまするし、したがいまして、事故が発生する基盤というものは刻々に増加しているというような状況にも相なっておりまするし、その他の事故におきましても同様なことが言えますので、いろいろな条件を勘案いたしてみますと、明確に、はっきりとこういうふうな状態になりますということは申し上げることがなかなか困難ですけれども、一般的、抽象的には、くどいようですけれども、私は本質的に大きな効果を期待することができる、こういうふうに考えております。  それから御指摘外国の例でございますが、外国の例につきましてかなり前から立法例を調べておりますけれども、運用の実際におきましては、外国の例は今度改正しようとする程度ないしはそれ以上の重い刑を持っているところが大部分でございまして、最近私ども考えておりますように刑の幅を上げるというふうなことをしたのがちょっと見当たりませんので、的確な事例はいま御説明申し上げることができないような状態でございます。
  15. 山田太郎

    山田(太)委員 麻薬の例をとって御答弁になったことは、麻薬については了解できます。また同時に、局長さんの答弁の中にも、過失犯故意犯とその差があるということも、大きな前提になっているようにも思います。しかし、私が考えますのに、自動車伸び率によって、当然過失致死傷の例もそれにつれて、ある一定の率を持って正比例して伸びているというデータはおとりになっていると聞いておりますが、また同時に、この中にもあります、ただパーセントまでは書いておりませんけれども。それは当然とらえることができると思います。したがって、もしこの刑法の一部改正案がもし成立したといたしましたならば、当然その伸び率によって勘案できる。パーセントが、ある程度逓減していくならば、これはその効果が認められたということになると思います。したがって、これから後のことでございますけれども、当局においてその点をも十分観察し、そして運用を誤らないようにやっていただくということは、当然望んでおきたいと思います。それからこれは要望でございますけれども、後々までもその伸び率がこのように減っていったのだという結果が出ることをまず一大要件として、そのデータもとっていただきたいと思います。  そこで、この業務過失致死傷という問題は、調査段階において非常に困難であるということを聞いております。この調査はどのような資格の人が、どのようにやっているか。ただ、だれでもやればいいという問題ではないと思いますので、その資格なり、あるいは人員難という点も大きな問題となると思います。法の正しい適用をしていくためにも、法のもとにあらゆるものが公平でなければならないという意味においても、その点はどのように配慮がなされているか、お聞かせ願いたいと思います。
  16. 川井英良

    川井政府委員 最初の御要望、まさにいままでもある程度やっておりますけれども、今後におきましても、引き続き正確なデータの収集とこの法の適用との関係について知恵をしぼってまいりたい、こう思っております。なお、くどいようでございますが、刑法改正のみをもってこの交通戦争事態がまかなえるというようなことを考えておるわけではございません。御承知のような総合施策の中の、ささやかな一環としてこれを考えております、ということを申し上げておきたいと思います。  それからこのような事件が起きました際の調査捜査の問題でございますが、第一線警察官がまず現場に参りまして、そしてこの事故実態調査し、実況見分をつくり、さらに関係者の供述を求めて証拠を収集いたします。そして業務過失致死傷事件というふうな二百十一条違反事件に取りまとめまして、記録証拠検察庁のほうに送致してまいります。これがこの種の事例でございます。それからあのような南海の大きな事故でありますとか、三河島の事故でありますとかいうふうな非常に大きな事故におきましては、この事故実態をつかむことがたいへんむずかしい問題でもありまするし、また将来の公判に備えて早い機会に的確な証拠を収集するということが必要でございますので、警察から通知を受けますと、場合によりましては、ごくまれなことでございますけれども、検事がみずから現場に臨みまして、警察と一緒に共同捜査の形で捜査をするというふうな事例もございますが、普通の九九%までのこの種の事件というものは、警察第一線捜査をし、検事のところへ送ってくる。検察官記録を審査し、それから関係人あるいは被疑者を呼び出しまして、さらにその事実を確認いたしまして、間違いないという段階になりまして初めて検事裁判所公判請求をする、こういうふうな形が、この種事件捜査の経過と実態でございます。
  17. 山田太郎

    山田(太)委員 先ほどの質問の中にお伺いしたのですが、資格の問題です。どのような資格を持っている人か聞きたい。ポイントは、その調査する人が必ず運転免許を持っている人であるかどうか。この前の会議録——だいぶ前のことなんですが、会議録を拝見しましたら、必ず運転免許を持った人をそれに充てるというような御答弁があったように聞いております。それについて、いまの実情はどうなっておるか、ただ御答弁だけで終わったのだろうか、あるいはそのとおり実施されるようになっておるのだろうか、この点が心配ですから、お聞きしたいと思います。
  18. 川井英良

    川井政府委員 警察官のほうは、警察の方がお見えになっておるようでありますから、またそちらからお答えをいただきたいと思います。  検察庁におきましては、この種事件を取り調べるための検事、副検事、それから検察官取り扱い検察事務官という三種類の者が一応これに鞅掌しているわけでございますが、私ども、すべて免許証を持ち、さらにまた運転経験のある者が、確かにこの種事件を調べるのが捜査官理想の形だと思いますが、何ぶんにも全国検察庁が昨年一カ年間に受理した刑法犯は、八十万件をちょっとこす数字でございます。その中で四十四万件、五〇・六%に相当するものがこの事故事件だということに相なっておるわけであります。御承知でもございましょうが、従来、刑事事件というものは、窃盗、どろぼうがその大宗を占めていたというのが常識でございましたけれども、三年ほど前から、それにかわりましてこの事故刑事事件のまさに大宗を占めるに至ったということ、それが昨年度におきましては五〇%をとうとうこえるに至ったという驚くべき実態を呈しているわけでございますので、三年ほど前から、この態勢について体制の整備につとめまして、御承知のとおり、本年の七月から交通反則制度が発足いたしますので、いわゆる道交法ルール違反罰金、科料で済むような事件におきましては、これを大幅に検察から落としまして、警察官限りで処分できるような制度にいたしましたので、本年の七月からは、検察庁道交法事件につきましては大幅に手をすかせることができるということに幸いにしてなったわけでございます。  この機会に、ただいま御指摘のような態勢を加味いたしまして、特に私は副検事を中心とし、それに検察官を配備いたしまして、運転免許を持ち、さらにまたその経験を有する者を中核として、この種の事件捜査に当たらせるという態勢を固めてまいりたいということでございます。現在におきましても、なるべくそういうふうな免許証を持ち、またその経験のある者にこの種の事件をやらせるという態勢をとっておりますけれども、まだまだ不十分なものがあるように思っております。将来の私どもの覚悟と態勢整備に御期待をしていただきたい、こういうことでございます。
  19. 山田太郎

    山田(太)委員 警察庁の方、いらっしゃいますね。警察庁のほうからもいまの資格の問題について御答弁願いたいと思います。
  20. 関忠雄

    関説明員 交通事故処理に当たりますのは、交通警察専従員でございますが、全国で約二万二千名の者がおるわけでございますけれども、これのほとんどが運転免許を所持いたしておりますが、このほか、全国交通関係警察の署員は約五万七千名くらいのいわゆる外勤警察官、こういう者がそれぞれ従事するわけでございますけれども、交通事故処理には必ず交通専務員がそれに臨みますので、この者は、先ほど申しましたように、ほとんど全員運転免許を持っておるわけでございます。
  21. 山田太郎

    山田(太)委員 ほとんど全員ということは、持っていない人もおるということでしょうか。
  22. 関忠雄

    関説明員 たとえば、非常に高齢の者とか、免許を取得していない者も若干あると思います。
  23. 山田太郎

    山田(太)委員 先ほど刑事局長さんの御答弁の中にも含まれておったと思いますけれども、やはり運転免許を持っておる、すなわち運転経験が豊富であるという人によって調査される場合と、その経験が未熟であり、よくわからない人がやっていく場合と、大きな差があると思います。当然実情は、小さい子供さんが飛び出るようなこともあるでしょうし、そういうふうな場合は、やはり運転経験を持った人でないと実際の公平な裁断を下すことができないということが常識じゃないかと思います。そこで、相なるべくんば必ず運転経験豊富の人がその衝にあたるということが理想ではないかと思いますし、またそれができないことはないと思うのですが、いかがでしょうか。
  24. 川井英良

    川井政府委員 確かにこの手の届いた、行き届いた調べをするということのために、そのような犯罪の基礎となり、実態となったことについて、豊富な経験を有する者が取り調べをするということが理想的であることは、私も同感でございます。ただ、検察官全体につきましてそのような経験をこの際一挙に持たせるというようなことは、今日の状況といたしましてはなかなか困難なことでございますので、計画を組んで順次そのような態勢を整えてまいりたいというふうに思っておりまするし、それから東京、大阪というような大きな地検は、百人をこえるような検事がおりますけれども、その他の地検におきましては、少ないところは四、五名、多いところで十名前後というようなところでございますので、その中でもっぱらこの事件に鞅掌するというのは、検事が二名くらいとあと副検事数名というような態勢で一応まかなうことができると思いますので、今日多くの地検の中で全部の検察官ということは無理といたしましても、運転免許証を持っているような検察官が一人もいないというようなところは、私はまずないのじゃないかと考えておりますので、実際の態勢におきましては、なるべくその経験を有する者をそれに充てるという態勢をとっておりますし、今後も御指摘趣旨をくみまして、その点をもう少し体系的に整備してまいりたいと思っております。  なお、よけいなことでございますが、自動車のほうはまだ簡単でございますが、問題は、大きいのは列車の事故でありますとか、飛行機の事故でありますとか、炭鉱の事故でありますとか、中毒の事故でありますとかは、非常に高度の複雑な科学的な知識を必要とするということで、なかなかしろうとの者では鑑定の結果をまたないと捜査に着手することができない、こういうようなことでございますので、その方面につきましても、かねて対策を検討中でございます。たとえば、話がちょっと飛ぶのでありますけれども、特別な税務の関係というようなことにつきましても、いろいろ涜職事件などやっておりますけれども、簡単に発覚するわけではございませんで、税務大学校に派遣いたしまして、専門的な知識を持った検察事務官ないしは副検事を相当数検察庁は確保して持っておりまして、そういうふうな者があの種の事件捜査の基本に鞅掌しておるというふうな形をとっております。その他事故関係におきましても、特殊な科学的知識を必要とする分野につきましては、まだ数は少ないのでございますけれども、それぞれ私どもなりに計画を立てて事務を推進いたしております。御趣旨をくみまして、今後もっとそれを体系化してまいりたい、こういうふうに思います。
  25. 山田太郎

    山田(太)委員 自動車に多い交通事故以外の点についてはよくわかりましたが、自動車による交通事故については、前の会議録に御答弁のありましたように、警察庁においても、運転資格を持った、しかも運転の技術のある人が、よくわかる人が、やはりその衝に当たるというふうに目標をきめて、それを整備していくというふうにやっていったらいいのじゃないかと思いますが、どうでしょうか。警察庁の方からひとつ簡単でいいですから……。
  26. 関忠雄

    関説明員 現にそのようにつとめておりますし、今後ともさらにそのようにつとめてまいりたいと思います。
  27. 山田太郎

    山田(太)委員 では、その問題はこのあたりにいたしまして、次に移りたいと思いますが、まず建設省の方にお伺いします。  交通事故防止のために建設省としてもいろいろな計画を立てられておるようでございますが、建設省としてのこの計画は、どのように達成されてきたでしょうか。その実情を御答弁願いたいと思います。
  28. 豊田栄一

    ○豊田説明員 お答えいたします。御案内のように、建設省所管、特に道路の交通安全施設についてでございますが、これは御案内のように四十一年からの交通安全施設三カ年計画というものがございます。これは所管分だけで、私どもの事業費が五百六十億でございますが、昨年緊急立法されました通学、通園に関しますものが加わりましたために、現在これが拡大改定されまして、所管分については七百二十二億になっております。これがスタートいたしましたのが昭和四十一年でございますから、四十一年、四十二年で、ラウンドにいたしまして約四百五十億ばかりの進捗率でございます。あと今年度、四十三年度は大体二百七十四億をやりまして全体を終わるというのが、私どもの計画でございます。事業の量で申し上げますと、全体のたとえばこれは代表的な工事だけ申し上げますと、歩道が全体では四千二百五十キロメートルございます。いままでに、四十二年までで大体二千四百キロ。それから横断歩道橋は全体で約三千二百カ所でございますが、四十二年までで約二千カ所でそれから防護さくでは、全体で約三千キロでございますが、四十二年までで約千八百キロ。代表的な工事の進捗率は、以上のような状態でございます。
  29. 山田太郎

    山田(太)委員 私の持っておる資料が間違っておれば別でございますが、建設省の三カ年計画の防護さくは三千七百九十六キロメートル、このようになっていると承知しておりますが、どうでしょうか。
  30. 豊田栄一

    ○豊田説明員 先生御指摘の資料は——私先ほど申し上げました数字は、建設省所管部分の直轄と補助の累計でございます。それで、先生お持ちの資料は、それ以外に昨年きまりました通学、通園関係の、それの地方で行なわれます単独事業、これが入っておりまして、それが約九百四十キロメートルございますので、それを先ほどの数字に足していただきますと、約三千九百キロということになるかと思います。こちら側の説明の不足のために、ちょっと誤解を生じました。
  31. 山田太郎

    山田(太)委員 そうしますと、この防護さくについては、計画どおりよりも少しおくれているというふうに見えるのですが、どうですか。
  32. 豊田栄一

    ○豊田説明員 ただいま私御説明いたしました単独事業の量の計画は、四十二年と四十三年の二カ年分でございます。これは昨年通学、通園の法律ができましたときに認められましたものでございますので、したがいまして、四十一年の後半に事業量が決定されたために、四十二年のこの単独事業の推計においては、まだ正確にはまとまっておりませんけれども、いま私どもの手元では約二百七十キロくらいできるのではなかろうかと先ほど申し上げましたけれども、その数字を足していただきますと——結局昨年十二月にきめられた計画でございますので、期間が非常に短うございます。したがいまして、事業の量的には、この単独事業については四十三年度のほうに事業量が片寄ってまいります。そういう計画がございまして、全体の数字が振り当てられるわけでございますので、進捗率が云々ということは、直接ではなくて、いま申しました時点、時点のきめ方でございますので、そういうふうに御理解願いたいと思います。
  33. 山田太郎

    山田(太)委員 いや、おくれているか、おくれていないかということです。あるいはよりオーバーして実施されているかどうか。当然オーバーして実施されていくべきであると思いますけれども、その点はどうでしょうか。
  34. 豊田栄一

    ○豊田説明員 累計で申し上げますと、全体は、単独事業まで入れますと、約三千九百キロぐらいでございます。そのうちで、四十一年と四十二年でできます数字が、概算で申し上げますと約二千キロでございます。過半を越えておるというように御理解願いたいと思います。
  35. 山田太郎

    山田(太)委員 では次に、運輸省の方にお伺いしたいと思います。  まず、自賠責の問題ですが、この自賠責は、昨年金額が三百万円に引き上げられたということも承知しておりますが、これはどの省庁によって担当されていくものか、どこがリーダーシップをとっていくものか。またどのような基準をもってそれがきめられていったのか、その点について簡単に説明していただきたいと思います。
  36. 岡田茂秀

    岡田説明員 まず第一の御質問のどこの省が所管するかということでございますが、これは大蔵省、運輸省、農林省……。
  37. 山田太郎

    山田(太)委員 リーダーシップはどこがとるのですか。
  38. 岡田茂秀

    岡田説明員 大蔵省が中心にその保険金の決定をいたします。それからその他関係官庁とも協議をしてきめるわけでございます。
  39. 山田太郎

    山田(太)委員 保険金の算定をするのは大蔵省であるということは承知いたしますが、それが現在の実情に合っているかどうかということに絶えず注視して、これはもっと上げなければいけないのじゃないかというふうなことまでも注意を払っていく、そのリーダーシップをとっていくのはどこの省庁でございますか。
  40. 岡田茂秀

    岡田説明員 それはいま申し上げました関係省庁ともみんな関心を持っておりまして、私の所属する運輸省におきましても、具体的には、裁判における判決あるいは和解とか仲裁とかいうふうなものの数字を見守りながら、強制保険としての自賠責保険の限度額はどの辺であるべきかということを考えながら決定していっている次第でございます。
  41. 山田太郎

    山田(太)委員 その自賠責の金額を決定するのは、裁判の決定等とも勘案してということでございますが、昨年あるいは一昨年と、この金額はふえていっております。これはどのような根拠でもっておやりになったか、それをお聞かせ願いたい。
  42. 岡田茂秀

    岡田説明員 昨年の八月一日に、先生御指摘のように、死亡につきましては、限度額を百五十万円であったものを三百万円に引き上げたわけでございます。いま申し上げましたような、裁判における判決、和解、仲裁等を勘案いたしますと、百五十万円ではカバーする部分が必ずしも十分ではなかろうというふうな見解で、昨年なぜそうすると三百万円にしたかということになりますと、大体そういうふうなものの約七六%が三百万円でカバーできるのじゃないかというふうな観点から、三百万円ということにきめさせていただきました。
  43. 山田太郎

    山田(太)委員 それからあわせて一緒に御質問しますが、その七六%ということにきめた根拠と現在の状況というものについて、御答弁を願いたいと思います。
  44. 岡田茂秀

    岡田説明員 御承知のように、自動車事故による被害者救済ということになりますと、基本といたしましては、先生御指摘の自賠責保険でございますが、それ以外に任意保険という制度がございまして、この両々相まって被害者救済を実施したいということに相なるわけであります。しかも自賠責保険は、御承知のように、強制加入ということになっておりますので、必ずしも一〇〇%カバーすることでなくてもよろしかろう、強制である以上、やはりある一定の最低限というものをカバーするにとどまるであろう、その上は任意保険でカバーしていただくべきであろうという考えが根本でございます。  現時点においてどの程度カバーしておるかということでございますが、われわれが現在調査した段階におきましては、死亡につきましては七〇%ぐらいをまだカバーしておるというふうに理解いたしております。
  45. 山田太郎

    山田(太)委員 いまの御答弁にありましたように、昨年の昭和四十二年八月一日から施行したその当時から比べると、すでにそのカバーする程度も非常に落ちてきております。同時に、よく新聞紙上にもてはやされておりますけれども——もてはやされるということばは悪いのですが、よく世間の注視を集めておりますが、加害者のほうで親子自殺なさったり、あるいは被害者の方が多くの家族をかかえて家庭の中心を失った方が自殺していったり、そのような悲惨な事例というものは、よく目にし、耳にするわけです。当然この自賠責の問題にいたしましても、人の心になって——ただこれぐらいだったらよかろうという考え方でなく、人の心になって考えていってこそ、言うならば、自分がその当事者であったならばということを考えて進めていくのが、大切なことじゃないかと思います。したがって、外国の例等を見ましても、いまわが国において行なっておる強制保険の死亡者に対する三百万円の限度額というのは、先進国に比べると非常に低いところに置かれておるということは、御承知のはずだと思います。そこで、すでにパーセントも下がっておりますし、一昨年あるいは昨年と連続して引き上げてきております。これは御承知のとおりですが、やはりことしにおいてもこれを引き上げていくという方向に検討すべきじゃないか。パーセントも下がっておるんだし、このパーセントが必ず七六%でなければならぬとか、八〇%でなければならぬとか、そのような根拠はどこにもないと思う。また同時に、任意保険というものは、これはあくまでも任意であるし、その任意保険を断わられているという事例も新聞には報ぜられております。これも御承知のとおりです。ただ単に任意保険と強制保険とあわせ用いていくんだという一端のことばだけで、実際にその被害を受けた方、あるいは加害者の国民の方たちが、この保険で安心しておられるか、あるいはそれから後の生活を安心して営めていっておるかというと、これは非常にさびしい問題です、また非常に憂えべき問題でございます。そこで、当然わが党としてもこれは六百万円とかあるいはぐんぐん上げていきたいという方針のもとに進んでおりますけれども、これはわが党だけでなく、国民的な要望ではないかということも考えているわけですが、その点について運輸省としてはどのようにやっていこうと思うか。パーセントは、これは動かせない基準じゃないのですから……。その点を御答弁願いたいと思います。
  46. 岡田茂秀

    岡田説明員 先生御指摘のように、まず第一に被害者の救済ということに十分な配意をいたさなければならないということはもちろんでございますし、また加害者がそういうふうな苦しい立場に立たないようにというふうなことも、十分配意をいたさなければならないわけでございまして、そのためには、一つは先生がおっしゃるように自賠責保険の限度額の引き上げということもございますし、また反面、任意保険への加入の勧奨とか、あるいはまた自賠責保険の支払いについて被害者救済のための種々の便宜をはかるというふうなことも、並行的に推し進めてまいりたいと思うと同時に、先生が御指摘の保険金額の限度額の引き上げということにつきましては、先ほど申し上げたような裁判その他の推移を十分見守りながら、人命尊重という立場から前向きで検討さしていただきたい、かように思っておるところでございます。
  47. 山田太郎

    山田(太)委員 この前、どこでございましたか、同じような答弁をなさっておった会議録も見たことがございますが、ただ前向きでというふうな単純なる御答弁では、私納得できないわけです。もちろん裁判所の方にもあわせてお伺いいたしたいという気持ちでおりますが、裁判所のほうにおいては、死亡者に対しての三百万円によって——いまの運輸省の方の御答弁では七〇%でしたか、その程度はカバーできるように思う、このようにおっしゃっていますが、裁判所のほうではどのような判断をなさっていらっしゃいますか、これは御答弁できるかどうかわかりませんが、あわせてお聞きしたいと思います。
  48. 井口牧郎

    ○井口最高裁判所長官代理者 私どもの判断といいますよりは、数字にあらわれたものをまず申し上げます。これは一年古うございまして恐縮でございますけれども、昭和四十一年に全国の地方裁判所の交通事件を担当しております裁判官の方に、それぞれ判決、和解、これが終わりましたたびに実態調査を行なっております。その結果を見ますと、いまさしあたり問題になっております五百万円というところを見てまいりますと、百万円をこえて五百万円まで、これは判決でございますけれども、この数が総数六百四十三件のうちの二百二十二件、三四・五%、五百万円をこえる——これは上限がちょっととってございませんけれども、五百万円をこえる件数が二十四件、三・七%というようになっております。  それから交通事件では和解で終了する場合が非常に多うございますけれども、昭和四十一年度におきまして、総数千四百五十八件のうち、百万円をこえ五百万円までの和解が成立いたしましたものが二百八十七件、一九・七%、同じく五百万円をこえる和解が成立いたしましたものが十五件、一%、そういうような数字になっておりまして、この数字では、三百万円を境にしてどうなるかという点は、ちょっとはっきりいたしません。なお、年度が四十一年でございますことをお断わり申し上げたいと思います。
  49. 山田太郎

    山田(太)委員 いま裁判所からの御答弁によりますと、地裁によって、百万円から五百万円は六百四十三件中二百二十二件、三四・五%となっております。この点についてはどうでしょうか。
  50. 岡田茂秀

    岡田説明員 私もいま裁判所のほうから初めて伺った数字でございまして、それがどうかと伺われましても、ちょっと私も申し上げかねますが、私の先ほど申し上げた数字は、四十二年の四月から四十二年の十一月まで、いわば現時点において法務省等にお願いしてわかる最も新しいというものをとらえまして、もう少し詳しく御説明させていただきますれば、高裁、地裁の判決の中で、死亡について申し上げますと、三百万円までが六九・六%、それから五百万円までということになりますと八八%、次に高裁、地裁、簡裁における和解について申し上げますと、三百万円までが六六・一%、五百万円まででございますと八七・二%、同じく地裁、簡裁における調停の死亡の場合について申し上げますと、三百万円までが八〇・六%、それから五百万円までといいますと九六・三%という状態になっておりまして、これらをトータルいたしますと、先ほど申し上げました三百万円について約七一%、正確には七丁三%という数字になっておるわけでございます。
  51. 山田太郎

    山田(太)委員 先ほどの裁判所の御答弁がそのまま運輸省の答弁に利用できないのが非常に残念ではございますが、いまの裁判所の御答弁によってもある程度推しはかることができます。しかし、これは当然そのまま適用できませんので、裁判所には、三百万円までの一番最近のデータを、後でけっこうですから資料として提出いただくとして、いまの御答弁から見ても、カバーする。パーセントは下がってきておるわけです。また世間の国民大衆の実情からいっても、これは合っていないということは御理解できると思います。パーセントでも下がっている。また世間の実情からいっても、このことで死んでいっている人が次々に出てきている。これをただ見のがしていいものでもないし、それから外国事例を見てみても、また裁判によって判決を下されている金額というものも、非常に高額になってきております。こういう点から見て、任意保険にまかしておけばいいというような、そのような魂胆がもしあるとするならば、これはゆゆしい問題だと思う。おそらく任意保険にまかしておけばいい、両方兼ね合わしていけばそのような問題は起きないんだなどと考えてはいらっしゃらないと思いますので、ことしにおいてもこれを改定していこう、より多く改正していこうという御答弁が当然あるべきだと思うのですが、どうでしょう。
  52. 岡田茂秀

    岡田説明員 先生の御趣旨には全く異存はございませんが、何回も申し上げておりますが、強制保険であるということも十分お考えいただいて、私たちも前向きでほんとうに検討していきたい、かように思うわけでございます。
  53. 山田太郎

    山田(太)委員 もう一言お伺いしますが、前向きの御答弁というのはよくわかりました。また、運輸省の岡田参事官として、それを私として答弁できないんだというなら、それは答弁できないと言ってくださってけっこうです。ことしにおいてそれを前向きで改定しようということが答弁できるのかできないのか、その点どうでしょうか。
  54. 岡田茂秀

    岡田説明員 私はもちろんそういうことを御答弁申し上げる責任者でもございませんし、なお、先生が言われる御趣旨もわかりますが、やはりもう少し推移を見守っていきたいという感じでおることを御了承願いたいと思います。
  55. 山田太郎

    山田(太)委員 では、岡田参事官に要望しておきますが、いま現状においてどのような方向でいっているかというものを、書類でもってけっこうですから、ただ前向き、前向きと言うだけでは、これは国民も納得しませんし、同時に私も納得できないわけですから、その点の資料等も出していただいて、そうしてこのような方向で進んでいるんだということを書類の上であからさまにしていただきたいと思います。  では、最後に厚生省の方にお伺いしますが、現在の交通事故に対しての救護対策は、救急病院あるいは救急センター等々、苦心を重ねて拡大設置していらっしゃるということも、よく承知しております。     〔委員長退席、田中(伊)委員長代理着席〕 しかし、私の友人の医師の言うことによりますと、その事故現場において直ちに処置できるならば、いまの交通事故によって死亡する人の幾%かは——パーセントの数は忘れましたが、救うことができるんだということも聞いております。おそらくまた、これが専門家にとっては事実だと思います、われわれ門外漢には深くわかりませんが。こういう事態について——間違えないでくださいよ。現場で処置すればという、こういう事態について、厚生省としてはどのような対策を講じていらっしゃるか、あるいは講じようとされておるか、それについて簡単に答弁願いたいと思います。
  56. 上村一

    ○上村説明員 救急医療対策としましては、一つは施設を整備すること、一つは救急医療を担当する医師の技術をみがくこと、この二つがあるわけでございます。いま御質問の第一点は、救急医療を一番身近なところで行なえるような体制のお話だというふうに考えますが、第一次的な救急医療施設としましては、消防法に基づく告示によります救急医療施設というものを、昭和三十九年以来告示してまいっております。去年の暮れ現在で三千六百五十三、約三千七百カ所ございます。もちろん三十九年以来のことでございますから、県によっては十分こういった医療施設が普及しておらないところと普及しておるところとの両方ございます。普及しておらないところにつきましては、県当局を通じまして、できる限りきめのこまかい網の目を張れるように指導しております。それからこういった約三千七百カ所の救急病院なり救急診療所の医師につきましては、これまた三十九年以来ファーストエードと申しますか、最初段階で救急医療が行なえるような研究会を実施しております。これが現場での私どもがいまやっております対策でございます。
  57. 山田太郎

    山田(太)委員 時間の関係で、もっとそのことについてお伺いしたい点は多々ありますが、その点についてはきょうは一応これで打ち切っておきます。  そこで、私の考えますのに、いま交通事故現場において、警察においては巻き尺ではかったりあるいはその他いろいろな手間をとっているわけですね。そのようなものもあわせて——いま私の聞いたところによると、車でぐるっと一回転すれば、全部そういう点がわかってしまって手間かけぬでもいいというふうな車さえもできておるということですが、名前がはっきり言えないのが残念ですけれども、その車のことはおわかりになるでしょうか。これは警察庁のほうですか。
  58. 関忠雄

    関説明員 交通現場写真をとるための器具と申しますか、いわゆるステレオカメラというものが最近開発されてまいりまして、一部の県では装備をいたしておりますが、非常に高価なものでございますので、なかなか普及には困難があるということでございます。
  59. 山田太郎

    山田(太)委員 ステレオカメラというのですか、それを各県に配備するという方向で、目標はきめてやっていただきたい。その点について……。
  60. 関忠雄

    関説明員 現在試験的に埼玉県で採用をいたしておるわけでございますけれども、さらにその成果等を勘案いたしまして、今後の方向を検討いたしたい、かように考えております。
  61. 山田太郎

    山田(太)委員 警察庁に一言もう一つ伺いたいことがありますので、ついでに御答弁願いたいと思いますが、先日の新聞に、ヘルメットをかぶっておりながら重傷を負ったという記事が出ておりましたが、ヘルメットをかぶるように指導しておりながら、 ヘルメットをかぶっておるのに、そのヘルメットが不備であったために重体になっておる。これは三月十三日の毎日新聞の記事でございますが、このヘルメットについてどのような指導を与え、またどのような条件を備えておるように指導しておるのか。これは野放しであるのか。野放しでないとするならば、それをどのように規制し、どこが責任を持っておるのかということについて、御答弁を願いたいと思います。
  62. 関忠雄

    関説明員 乗車用ヘルメットの着用の問題でございまするけれども、現在、昭和四十年に新設された条文でございますが、自動二輪車の運転者は、高速自動車国道及び自動車専用道路においては、乗車用ヘルメットをかぶることが義務づけられておるわけでございます。もっとも、このような義務といいますのは、本人の受傷事故防止ということが主たる目的でございますので、罰則のついておる規定ではございません。しかし、ヘルメットを着用いたしますことが、自動二輪車の事故等の場合にその被害を軽減する効果が非常にあるものでありますところから、この着用についての行政指導につとめてまいっておるような次第でございます。  この乗車用ヘルメットの規格でございますけれども、道路交通法では特にこれは規定をしていないわけでございますが、現在の規格化されておるものといたしまして、日本工業規格の乗車用安全帽というのがございます。これは昭和四十年六月に日本工業標準調査会の審議によりまして改正されまして、従前の規格が引き上げられたものとい叶うふうに承知をしておるのでございます。私どもとしましても実験等を行ないまして、一応事故防止上有効な性能を有したものというふうに考えておるわけでございます。現在この規格に合ったヘルメットを製造しておりますメーカーが国内で六社あるというふうに聞いておるわけでございますけれども、このような規格に合ったヘルメットを着用いたしますように指導をいたしておるということでございます。
  63. 山田太郎

    山田(太)委員 責任の所在というものは、どこでございましょうか。
  64. 関忠雄

    関説明員 責任ということでございますけれども、このヘルメットを着用するという義務あるいは着用するという行為でございますけれども、これは本人がみずからの受傷事故防止をはかる、こういう性格の規定なりまたその行為なわけでございます。したがいまして、道路交通法でどのような規格のものをかぶりなさい、こういうまでの手当てはしてないのでございますけれども、これは一方におきまして、日本工業規格の制度がございまして、それによって十分な性能を持ったヘルメットが製作されておるということでもって足りるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  65. 山田太郎

    山田(太)委員 いまの御答弁では、その責任の所在ということについての明確な答弁はなかったようにも思いますし、またわざとそれを避けて御答弁なさったのかもしれませんが、しかし、全国にすれば相当多くの人がヘルメットをかぶって運転しているわけです。その安全であると信頼しておる規格に合ったヘルメットをかぶっておりながら、不測の、自分でころんだとはいいながら、そのヘルメットによってかえって重傷を負っておるということについては、どのような責任がどこに所在するのか。それを指導し、それをかぶらせるように義務づけた警察庁の立場として——そのヘルメットが不備であったためにとさえいってもいい、金具が頭に突き刺さって、そうして重傷を負っておるわけです。緩衝物としてゴムが入っているのですけれども、それが打ったために、その緩衝物のゴムは縮んじゃって、ボルトというのですか、それが頭の中に食い込んじゃって、そうして重傷を負っておるわけです。事実そういう事例が出てきておるわけですから、これについての責任の所在と、あるいはそれをどのように指導していこう、規格をどのように変えていこうという点について、あわせて簡単でいいですから答弁してください、もう時間がだいぶ過ぎておりますから。
  66. 関忠雄

    関説明員 今後とも、日本工業規格の性能の乗車用ヘルメットの着用を促進いたしますように、指導してまいりたいと思います。  なお、当該事案につきまして私は詳細承知していないわけでございまするけれども、その事故原因等につきまして、さらにそのヘルメットがどのような性能のものだったか等につきまして研究をいたしたい、かように存じます。
  67. 山田太郎

    山田(太)委員 責任の所在という点においては、御答弁はできないでしょうか。
  68. 関忠雄

    関説明員 先ほど申しましたように、このような規定あるいはこのような指導をしておりますということ自体が、やはり本人の受傷事故防止なり保護を目的としておる行為でございます。その際に、やはり本人自身の判断と申しまするか、どのようなヘルメットをかぶるかということは、本人の判断にかかる分があるわけでございます。その点につきまして、たとえば非常に規格に合いませんようなヘルメットをみずから好んで着用した場合に、その責任がどうであるかといったような点につきましては、やはり本人の責任という点もかなりあろうかというふうに考えます。
  69. 山田太郎

    山田(太)委員 規格に合わないものを着用しておるというのが御答弁の中にありましたけれども、規格に合ったものを着用して、しかも重傷を負うという場合のことでございますから、その点について、もしきょう御答弁できないならば、これを差し上げます。これはゆゆしい問題です。交通事故に対しての防止がかえって重傷のもとになっておる、せっかく着用を義務づけておりながら、反対の結果を来たしておるということについて、当然警察庁としても将来への指導もあろうし、規格への指示もあろうし、また本人自体も規格に合ったものを着用しながら、そのような思いもかけないヘルメット自体の不備のためにはがをするということがあったのでは非常にお気の毒だと思うし、ただ精神的な責任だけでも済まない事態だと思う。これについて調査した結果をひとつ知らせていただきたいと思います。この点はこれで打ち切ります。  そこで最後に、この刑法一部改正については、もし成立したといたしましても、これについての慎重な運用をしていただきたいということは、あくまでも法務省要望もし、希望もし、願っておきたいことでございますから、その点について最後に一言御答弁願って、私の質問を終わりたいと思います。
  70. 川井英良

    川井政府委員 いかなる法律でも、運用注意しなければならないわけでございますが、特に刑法、さらにその刑を上げるというふうな特殊な改正でございますので、成立いたしました暁におきましては、その運用については特に慎重を期してまいりたい、こういう覚悟でございます。
  71. 山田太郎

    山田(太)委員 終わります。
  72. 田中伊三次

    田中(伊)委員長代理 岡沢完治君。
  73. 岡沢完治

    岡沢委員 私は、二月二十九日の質問に引き続いて、続行させてもらいたいと思います。  最初に、法務省刑事局長さんと最高裁の刑事局長さんと両方にお尋ねしたいと思いますけれども、二百十一条の「業務上過失」の「業務」の解釈でございます。専門家の両局長に申し上げるのは恐縮でございますけれども、ほかの法律では、業務というのは反復継続を重視するように解釈するのが通常だと思います。二百十一条の「業務上過失」、特に自動車運転者の関係適用については、この反復継続ということがあまり重視されないで、いわゆるオーナードライバー、一年に一回くらいしか乗らない人、場合によったら無免運転者も業務上過失で起訴し、処罰せられるようでございますが、この辺の解釈のよってきたるゆえん、他の法令との関連も結びつけて御意見を聞かしていただきたいと思います。
  74. 川井英良

    川井政府委員 法律上、業務ということばはいろいろな法規に使われておりますが、二百十一条の場合におきましては、御存じのように、人の社会生活上の地位に基づいて反復継続して行なう行為であって、かつその行為が人の、要するに人身に危険を及ぼすおそれのある行為、こういうふうなことがわが国の裁判所が確立した判例の立場、解釈でございまするし、またその解釈につきまして、学説の面におきましても特別の異論はないようでございます。長い間かかりまして確立された解釈であると思います。ただ、ここで私は、どこにこの業務ポイントがあるのだということになりますと、その最後の、あくまで人の生命に危険を及ぼすような行為というところに、この業務性の解釈の最も重要なポイントが置かれているんじゃないかというふうに考えておるものでございます。したがいまして、そのような解釈から、反復継続の度合いなりあるいは形、解釈におきましても、いろいろなニュアンスというのが出てきておるものだ、こう思うわけでございますが、全く反復継続の意思もありませんし、実際の問題として反復継続されるような実態にないというふうな場合には、あえてこれを業務上の過失致死傷ということでやるのは非常に無理があるということで、御承知のように、戦後になりましてこの二百十一条の条文の中に重過失致死傷というものを取り込んでまいりましたので、運用といたしましては、たとえば無免許運転でも、無免許でしばしば運転をしておったというふうな過去の実績があり、またその本人の意思といたしましても、将来続けてそういうふうなことを行なうような意思が証拠によって得られる、またそういうふうな生活の実態であったというふうな場合には、業務上ということで処理することができると思いますし、処理いたしておりますけれども、たまたま無免許で学生がそこに置いてあったトラックを運転して事故を起こしたというふうなことが、最近しばしば発生いたしておりますけれども、これらのものにつきましては、重過失致死傷の規定を適用いたしましてこれを処理しているというのが、あらましの実態であります。
  75. 佐藤千速

    ○佐藤最高裁判所長官代理者 ただいま川井刑事局長が言われたごとく判例上は解されていると思うのであります。問題は、先ほどの御質問に関連して考えますと、それによって収入を得ておるかどうかというような区別があるかということも、一つの問題になるかと思うのでありますが、必ずしもそれによって収入を得るということを意味しないというのが、判例の考え方であろうと思います。でございまするから、オーナードライバーでございましても、車を持って反復してそれを運転するという社会上の地位に着目して判例が考えているのだ、かように思うわけでございます。
  76. 岡沢完治

    岡沢委員 解釈論議でございますので、これ以上議論を進めることは避けたいとは思いますけれども、一般自動車運転手の場合は、人身事故の例では、いま川井刑事局長からお答えがありましたように、当然重過失致死傷というのであれば他の法令の場合の解釈として納得できる場合がありますけれども、普通の通例だからということで一般業務過失致死傷というのを起訴罪名に使われるということは、私はいま申しました他の法令での解釈との比較において、素朴な国民感情として少し納得できないものがあるような感じがいたします。御答弁にもありましたように、事件によっては重過失致死傷罪の適用になるというほうがいい例もかなりあるのじゃないかと思いますので、その辺について私は一応問題点があるということだけ指摘さしていただきたいと思います。  次に、たとえば懲役三年を法定刑とするひき逃げと業務上過失の併合罪の場合でございますけれども、申し上げるまでもなしに、処断刑は懲役四年半までいけるわけでございますが、実際にはせいぜい三年どまりで終わっているようでございます。いただきました配付資料等を見ましても、その点そういうことです。ということは、刑法二百十一条の刑が引き上げられない限りは三年以上の刑を盛れないという気持ちが、求刑なさる検察官、あるいは判決なさる裁判官にあるのか。実際、申しましたような例の場合は、現行法でも四年半までいけるのに、三年どまりで終わる、その辺について、実務家のお立場から、それぞれ裁判所検察庁法務省両方の御見解を聞きたいと思うのです。
  77. 川井英良

    川井政府委員 確かに、事故を起こしてそのまま逃走したというふうな例を想定いたしますと、人をひいた点において最高刑がもしいくとするならば禁錮三年、届け出をしないでそのまま逃げたということになりますと、道交法懲役三年という刑が最高刑ございますので、両方をおそらく多くの場合併合罪になると思いますが、その場合には重いほうの一倍半ということに相なっておりますので、懲役と禁錮を比べまして、重いのはもちろん懲役刑でございます。ひいて逃げたというほうも懲役三年の一倍半ですから、懲役四年半の処断刑が出てくる、その処断刑の範囲内において言い渡し刑がきまる、こういうことになると、ただいままさに御指摘のとおりでございます。ただ実務の実際を見ておりましても、これはまた個々の裁判官によって裁判官の考え方が違うと思いますので、私どもの立場から一がいに一般論として申し上げることも適当でないと思いますけれども、    〔田中(伊)委員長代理退席、大竹委員長代理    着席〕 処断刑の一倍半という範囲内においてこの刑が盛られることにはなっておりますけれども、私ども検察官あるいは法務の立場から見ておりまして、量刑の実際というのは、長い間の実績と伝統を見まして整理してみましても、やはり言い渡し刑は一つの重い罪の最高刑の範囲内において量刑がされているというのが、まず実務の実際ではなかろうかと思うわけでございます。その理論的な理屈とかなんとかいうものはどこにあるかということにつきましては、いろいろまた意見なり研究なりが必要だと思いまするけれども、とにかく量刑の実際は、まずそういうふうに見られる実態に相なっておりまするし、それから本件のような場合に、刑法という法律で定めてある過失に基づいて人を死傷いたした、こういうふうな事実のほうが軽くて、そして届け出ないで逃げたというふうな取り締まり法規である道交法に規定されているほうが懲役三年で非常に重いという——禁錮と懲役は、申し上げるまでもなく禁錮は懲役の半分だというふうに刑法で定められておりますので、同じ三年でも懲役のほうが非常に重いわけでございますので、本来私どもが犯罪、あるいは刑罰と言ったほうが適当かと思いますが、あるいは罪、そういうふうなものと、刑法に規定されておりまするところの刑罰と、取り締まり法規に規定されておりまするところのいわゆる罰則というふうなものの間には、私は法学上も本質的な意識観念において相違があると思うわけでございますが、その罰則のほうが刑罰として定められておるものより著しく重いということは、刑罰理論の体系を持ち出すまでもなく、はなはだしくアンバランスの実態ではないか、こう思うわけでありまして、検察官裁判所に参考として求刑をするというふうな場合におきましても、そこに非常な抵抗とアンバランスを感ずると同じように、また裁判官が具体的な事件について言い渡し刑を盛られるというふうな場合におきましても、その刑罰本質の相違なりあるいは量刑の幅なりというものについて、確かにかなりな考慮を払われるのではなかろうかというような気がいたしておるわけでございます。私の立場からいたしましては、やはりひいて逃げたというふうな場合に、やはり人をひいたというほうが、国民感情といたしましても、また社会の情理といたしましても、重かるべきものではなかろうか、こういうふうに考えております。
  78. 岡沢完治

    岡沢委員 最高裁のほうももし意見がありましたら……。
  79. 佐藤千速

    ○佐藤最高裁判所長官代理者 非常にむずかしい問題で、一般裁判官の気持ちということをそんたくすると申しますか、むしろ端的に私の経験に基づいた気持ちということで申し上げさせていただきますならば、一般的に慎重であるという傾向がございますほかに、これは目の前の、自分で扱っているケースはこれはひどいという評価を持った場合でも、はたしてそれが現在の法の予想しておる極限のケースであるかどうかということにつきましては、必ずしも極限であるというような確信が持てない場合がかなりあると思います。それからかたがたこれは過失であるという、過失事件だということも頭にあるかと思いますので、先ほどの御質問のような、極限についてちゅうちょなくその極限の刑を科するというような傾向ではないというふうに、私自身は考えておるわけであります。
  80. 岡沢完治

    岡沢委員 法務省刑事局長の御説明は、よくわかりました。いま最高裁の刑事局長のお気持ちをもっと端的にいえば、やはり法定刑の必要があると、裁判官あるいは個人としてはお考えだというふうに聞いてよろしゅうございますか。
  81. 佐藤千速

    ○佐藤最高裁判所長官代理者 必ずしもそうはならないのでございますけれども、一般の感覚と申しますか、むしろ法の制定者が、これはもう極限の三年なら三年が相当だというふうに想定なさっているものと、現実の裁判官が、目の前に持っておるケースとそれとが一致しているかどうかという問題だと思うのでございます。先ほど申し上げましたように、これはひどいとかりに思いましても、法の想定している極限のケースであるかどうかという点に、そこのところで多少何と申しますか、そういう感覚がぴたっとこないという場合もあろうかと思うのであります。御承知のごとく、量刑が一般的には確かに慎重であるということにおいて、業務過失致死傷事件が、量刑、ほかの罪種と比較いたしまして、一般的に法定刑の上限に近寄ってきているということはいえるわけでございます。それから過去十年の間において相当刑が重くなってきているという傾向は明らかでございまして、その極限の問題になりますと、いま申し上げたような気持ちを少なくとも私は持っておったということを端的にいま申し上げたわけであります。
  82. 岡沢完治

    岡沢委員 お答えで裁判官のお気持ちの一端が私もわかったような気がいたしますので、この問題はこれでやめさせてもらいまして、二月二十九日以来、取り締まり、裁判の順に従って問題点と思うところを質問さしてもらったわけでございますが、やはり最後の段階で、刑務所における処遇が違反者の再犯防止に役立つ。これはもちろんこういう業過事件だけではございませんけれども、きわめて大事であろうと思うのでございます。特に業過の場合、やはり再犯者が——犯罪を重ねて犯すという場合もきわめて多いようでございますだけに矯正段階における処遇ということをわれわれも重要視したいと考えるわけでございますが、それに関連いたしまして、習志野等で行なわれております禁錮囚のいわゆる集禁につきまして、昨年の国会でも御答弁があったようでございますけれども、最近の状況、実績等について、矯正局長から御説明いただきたいと思います。
  83. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 矯正施設の使命を達成するために、再犯をしないような社会復帰をはからなければならないということは、お説のとおりでございます。そういう意味におきまして、いわゆる交通事犯の禁錮受刑者につきましては、できるだけ集禁をして、他の一般懲役刑とは異なった処遇をしたほうが適切であろうということで、昭和三十八年の三月から習志野に、いわゆる千葉刑務所習志野支所に東京高等裁判所管内で確定した交通事犯の禁錮受刑者を集禁しているわけでございます。昭和三十八年の三月から昭和四十二年一月二十五日までの間、習志野に集禁をしました禁錮受刑者の数は千三百三十五名でございます。こういう集禁者につきましては、できるだけ開放的な処遇をしてまいりたいということで、たとえば居室、食堂、工場あるいは教室では施錠をしない、あるいは行刑区域内では戒護者をつけないとか、あるいは接見、信書につきましては、これを制限しない、あるいは接見の場所については戸外で接見をさせるというような開放的な環境のもとで、処遇の重点といたしましては、毎週二時間以上、順法精神の涵養、浸透を中心とした教育を必ず行なう。さらに、収容者のうち、出所した暁に二度と運転しないという者、あるいは運転をするかもしれない者、あるいはやはり運転をせざるを得ない者、おおむねこのグループに分けまして、出所の暁にも運転をせざるを得ないという者につきましては、自動車の知識を中心といたしました自動車運転に必要な科目、実地訓練、これを中心にして行なう。さらに転業をする者につきましては、転業の指導をして、それに必要なプレスとか板金とかいった職業指導をやっております。現在までの結果、千三百三十五名のうち、出所した者が千百名ばかりおりますが、幸いに交通事犯による再犯での入所者はございません。一部二、三%再犯者はありますが、それは他の窃盗とかそういった種類の再犯者でございます。交通事犯による再入所はないということでございます。したがいまして、いままでの結果に徴しまして、習志野をさらに整備充実すると同時に、現在五カ所に集禁設備を持っておりますが、これを全国的になおあと三カ所ふやして、この処遇をより一そう徹底してまいりたい、このように考えております。
  84. 岡沢完治

    岡沢委員 ただいまの局長の御答弁では、非常にいい成績をあげておられるようでございますし、私から指摘するまでもなしに、犯罪者に刑罪を強化するということよりも、犯罪の予防ということが大原則であるだけに、そういう優秀な成績をあげておられる制度につきましては、局長からも拡張の意図があるように御表明がございましたけれども、前回の委員会でも、裁判所法務省は予算獲得その他に意欲がなさ過ぎると、超党派の意見が出されました。ぜひこういう問題については御遠慮なしに積極的な拡張計画をとっていただいて、何としても犯罪者を少なくする——犯罪者だけじゃなしに、それが国民の社会不安をなくし、国民の税負担をなくし、いろいろな面で大きな効果があると思いますので、この点については、ぜひ積極的なお取り組みを重ねてお願いしておきます。  最後に、本改正案本質について——本質と申しますか、ちょっと私の考えております疑問を一つだけ聞いておきたいと思うのでございますけれども、本改正案昭和四十年の二月に生まれて、その後何回も流産にあったり、衆議院は通過しながら参議院で流れたりしておるわけでございますが、それからでも三年がたっております。すでに指摘された問題でございますけれども、もし本改正が必要と認める場合でも、その後の交通事情、交通事故実態変化と対応して、いわゆる今度の法定刑引き上げ、五年以下の懲役刑の新しい行き方、禁錮刑の上限を五年に上げるというその数字、五年というものに限られた数字が妥当であるかどうか。その後三年の経過を経て、それがさらに必要であるとか、諸般の、たとえば交通設備の関係とか、道路の拡張その他からして、もうその必要は幾らか減ったとか、その辺の事情について、五年という数字がどこを根拠に、いかなる合理性のもとに出されておるか、その辺のことを刑事局長からでもお答えいただきたいと思います。
  85. 川井英良

    川井政府委員 刑罰の幅をどうするかということは、非常にいろいろな事情を総合してきめなければならないことでありまするし、特に刑法法定刑につきましては、他の条文とのバランスの問題もございますので、実はかなり法案を提出する前の段階におきまして検討をいたしたわけでございます。先ほど問題になりました道交法懲役刑との関係というふうなものが一つの目安になっておることも事実でございまするし、それから刑法に規定されておりますいろいろの過失犯がほかにも数種ございますけれども、その過失犯法定刑との均衡の問題、そしてそれらの過失犯の罪質の問題それから実際の運用の量とか、あるいは運用の実際、あるいは効果の問題というふうなものも、この法の刑罰についてかなり慎重を期したつもりでございます。ただ問題は、御承知のように、過失犯についてあえて懲役刑を盛り込んだということが非常に大きな特色になっておりますけれども、原案を法務省にございます法制審議会に持ち出しましていろいろ御審議を願った際にも、非常に活発な議論が展開されまして、議論の過程におきましては、懲役刑をやめて、禁錮刑だけにして七年の刑を盛りなさいという意見が、少数意見としてではございまするけれども、非常に強い意見もあったのでございますが、結局結論といたしましては、懲役刑を盛り込んだ上で五年という刑が、あらゆる条件を考え、またバランスをとって考えた場合にも適当だというふうなことになったわけでございます。また一面、諸外国の同種の立法例法定刑なども参考の一つになったことは争えませんし、その辺のところも考えて、提案の以前の段階におきましては、懲役刑を入れて五年というところが最も相当だというところに落ちついたわけでございます。それから三年の月日が過ぎまして、その間に道路事情その他も整備されましたが、またその間に、一面交通事故のみならず、ほかの多種多様な業務過失事故が多発いたしまして、いろいろ新聞紙上に報ぜられるような悲惨な事故が出てくるというふうな、これもまた実態の面においてのいろいろな変化もございました。それらの観点をいろいろ考え合わせてみましても、私ども今日の立場におきまして、やはり懲役刑を含めての体刑五年という刑は、今日におきましても最も相当な法定刑の範囲だ、こういうふうに考えております。
  86. 岡沢完治

    岡沢委員 時間もございませんので、これで終わりたいと思いますが、最後に進藤政務次官にお尋ねをいたしたいと思うのですが、先ほども指摘いたしましたように、この改正案昭和四十年二月から問題になって、過去四回国会で流れておるわけでございます。私たちも、この改正案につきましてはかなり意見もございますし、希望もございます。しかし、改正の必要性の原則につきましては、実務家はもとより、世論も、また事故実態も、また与党あるいは公明党の方々も、私たちも、その必要性を認めておるわけであります。ところが、なお成立についてはいろいろな問題点がある、こういう実態について、御担当の政務次官としていかに考えておられますか、お聞きしたいと思います。
  87. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 この法律案につきましては、岡沢委員の先ほどからのお話にありましたように、四十年二月に提案されまして以来、たびたびの国会で、衆議院は通過し参議院で廃案になったり、あるいは継続審議になったりいたしておりますが、今日交通戦争といわれ、まことに人命尊重の上から申しましても、一日も早くこれを絶滅するということは国民の悲願であって、私どもも何とかして早くそういう惨害を除きたいという熱意を持っておるのでございます。この法律案によりまして、完全にいかなくとも、今日の交通事故——三十八分で一人の死亡者があり、四十八秒で一人の負傷者があるというような、こういう悲惨な現実を何とかして除きたいというのが、国民の悲願であり、私どもの念願でありまして、一日も早く御審議を得まして国会を通過させ、ひとつそういう国民の悲願を達成させたいというのが、私どもの希望でございます。どうぞ皆さまの御支援で一日も早く成立さしていただきますように、法務省といたしましては念願いたしておる次第でございます。
  88. 岡沢完治

    岡沢委員 終わるつもりでしたが、いまの進藤次官のお答えでは、交通事故防止、特に数字と結びつけてこの法案のことをおっしゃいますと、本質を離れるのではないか。悪質、重大な犯罪者に対して法の上限が低過ぎるということが問題になっておるわけでございまして、事故防止という観点では、むしろ、先ほど来指摘もございましたけれども、道路とかあるいは設備の改善とか、あるいは使用者や管理者に対する問題とか、非常に各般の条件があると思うのです。あまり事故防止にこれを役立てるとおっしゃいますと、われわれも抵抗を感じます。そういう点につきましては意見はありますけれども、時間の関係で私としましては質問を終わらしていただきます。
  89. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 山口鶴男君。
  90. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ただいま岡沢委員さんの質問を聞いておりまして、交通事故防止するのには罰則強化だけが特効薬であり、万能薬ではないという御趣旨の御発言もあったようであります。私も全く同感であります。そこで、まず警察の交通局、来ておりますか。——私は、罰則を強化すれば、交通事故がなくなるということがもしかりに一つの道であるとするならば、日本にも今度反則金の制度道交法改正でおとりになりましたですね。今年の七月一日から反則金の制度が実施せられるわけですが、諸外国の反則金の金額と日本の反則金の金額では、一体どちらが重たいのですか。
  91. 関忠雄

    関説明員 反則金制度はわが国のいわば独特の制度であるように承知しておるわけでありますけれども、同じような違反に対して課せられますところの罰金なりそういうものの額については、国によりましてそれぞれ差が若干ずつあると思います。ただいま資料を手元に持ち合わせておりませんので、ちょっとそこら辺お答えいたしかねます。
  92. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 昨年の五十五特別国会で道交法審議をいたしました際に、国家公安委員会でおつくりになりました資料を実は私どもいただいたわけであります。それを見ますと、反則金といいますか、反則金という制度以外に、いわば諸外国における交通違反事件の簡易迅速処理について、罰金という形で取るところもあるでしょうが、要は簡易迅速な処理でやっております各国の金額というものの比較を、私どもちょうだいをいたしました。それを見ますと、日本の場合は最高一万五千円ということになっているわけでありますが、最低は二千円から始まるようであります。しかし、普通車の場合の最低の違反が三千円、大型車の最高が一万五千円ということのようであります。イギリスなんかを見ますと、二ポンドですね。こういった迅速処理、二千円でしょう。ポンドが少し下がったから、少し金額も下がったかもしれませんが、まあ二千円程度。それからフランスは最低三フラン、最高四十フランですね。したがって、日本円に換算いたしますと、最高が二千八百円、最低は二百十円です。西ドイツ五マルク、四百五十円ですね。スエーデン五十クロノール、日本円にいたしまして三千五百円。ポーランド五ないし百ズロチですね。最低が四百五十円、最高が九千円です。こう見ますと、日本ではまだ反則金、迅速処理のことは実施されておりませんが、七月一日から実施される。その場合、最低三千円、最高一万五千円です。罰則が強化されれば、違反が少なくなるということが事実とするならば、日本は本年の七月一日からは、諸外国に比べて急激に違反というものが少なくならなければならぬと私は思うのですが、警察の交通局長さん、どうでしょうか。本年の七月一日、諸外国よりも非常に高い反則金の制度ができたら、とたんに交通事故というものは激減をすると、こういうお考えですか、ひとつお尋ねをいたしたいと思います。
  93. 関忠雄

    関説明員 現実に七月から反則金制度が実施されまして、それによって交通事故が少なくなるということにはならないものと考えております。諸外国で反則金制度でございますか、それに相応する簡易迅速処理の方式が行なわれておるわけでございますけれども、それが対象としております違反と、わが国の反則金制度の対象としております違反と、必ずしも一致していないわけでございます。その金額の比較のみによりまして、わが国が高い、あるいは諸外国が安いということにはならないものというふうに考えます。
  94. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 おたくのほうは、資料を持ってこないで、感じでいろいろ言っておられるわけですね。そういうことでは私はだめだと思うのですよ。ですから、日本の反則金の事案、それに対する反則金の金額、それから諸外国の簡易迅速処理適用するところの事案、それから金額というものを、この刑法二百十一条審議の間に、詳細な資料として出してください。そうでなければ、罰則を重たくしたから1交通違反をなくするためには罰則強化も必要だ、そういう思想から刑法二百十一条の改正を出しておられるのでしょう。そうすれば、それと類似の資料について当委員会に詳細出していただかなければ、審議は進まぬと思うのですね。どうでしょうか。出していただけますか。
  95. 関忠雄

    関説明員 反則金制度と申しますのは、いわば罰金に相応する金額を反則金として納付いたしますれば、そのまま提訴にならない、こういう制度でございます。したがいまして、現に行なわれておりますところの、科せられております罰金の額、それと大体相応するものが、この反則金の額としてきめられておるわけでございます。諸外国におきまして行なわれております制度とは、かなり異なるわけでございます。その点の比較は、やや困難だろうというふうに考えます。
  96. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 日本は特殊な事情があるというならば、そういう特殊な事情は、諸外国との比較において具体的に明確になるんじゃないでしょうか。そうでしょう。ですから、その資料だけは早急に出すようにしてください。
  97. 関忠雄

    関説明員 資料については検討いたします。
  98. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 検討するんじゃなくて、審議の間にきっと出すように、これは委員長にお願いをいたしておきます。  次に、お尋ねをいたしたいのは、総理府の宮崎陸上交通安全調査室長さんにお尋ねをしたいと思うのですが、おたくのほうでおつくりになられました、昭和四十二年度版でありますが、「陸上における交通事故——その現状と対策——」という資料を拝見をさしていただきました。これを見ますと、「交通事故の現況」「道路交通事故」それから「鉄道事故」次に「交通安全施策の現況」、この「交通安全施策の現況」をこまかく分けまして「交通安全施策の推進」「道路交通環境の整備拡充」「交通安全思想の普及徹底」「安全運転の確保」「交通秩序の確立」、ここに「罰則の強化」というものがあるようですが、次に「救急業務及び救急医療の対策」「被害者援助対策」それから「交通事故防止に関する総合的研究の推進等」、各項目に分かれて書かれてございます。私はこの資料を見ましてもそうだと思ったのでありますが、結局交通事故をなくするためには、非常に各般の総合的な施策というものが必要なのではないだろうか。その一環として、交通秩序の確立というものがある。またその中で、罰則の強化というものも一つの方法として政府も考えておられると思うわけです。ですから、問題は、罰則を強化するということがすなわち交通事故をなくする道ではないのであって、それ以外の他の方法を総合的に確立をしていく。特に交通問題につきましては、関係する各省が非常にばらばらなわけですね。取り締まりは警察がおやりになっており、道路整備が必要だということになりますと、これは建設省もやれば府県もやれば市町村もこれに関係をしてくる。それからまた、そこを走ります車両の整備状況がどうかということは、運輸省のほうで車検等をおやりになる。車の規格等については通産省が関係している。そういう意味で、各省にわたり、しかも地方自治体にまたがって、非常に複雑な形で交通対策というものが行なわれている。そういう意味で、交通事故をなくするためには、何よりもまずこの問題に対して総合的な施策を確立する、各省にまたがったばらばらな事務を、少なくとも総合的に進めていくことが必要だということだろうと思うのです。そういうことについて、今日まで政府としてどのような努力をしておられますか、お聞かせいただきたいと存じます。
  99. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 交通安全行政が関係各省に非常に多うございまして、これを総合的に推進するということは、御指摘のとおりでございます。政府もそのような考えでございまして、実は昭和四十年でございますが、総理府に現在私の所属しております陸上交通安全調査室を設けまして、自来関係各省の行ないます交通安全行政の総合調整をはかっておるところでございます。  どういうことをしたかという御質問でございますが、これはいろいろなことをやっております。たとえて申しますと、現在政府の総合的な交通安全施策につきましては、総理府に交通対策本部という機関が設けられております。これは御承知かと思いますが、交通に関係ございます関係各省庁の事務次官から成りまして、総理府総務長官が本部長でございます。ここにおきまして総合的やや長期的な対策、あるいは具体的な例を申しますと、昨年の南海電車の踏切事故のような重大事故が発生いたしました場合には、それに対します緊急的な対策、こういうものを逐次そのつどきめまして、各省庁がそれを実施しておるところでございます。
  100. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私は、特に科学技術庁を活用いたしまして、そうして交通事故をなくしていくということが一つのとるべき重要な柱ではないか、かように思うわけです。何か最近の科学技術の進歩、それに伴います産業の発展というものを見ていきますと、産業が発展すればするほど公害がふえてくるという現象が、現に起きています。しかし私は、これは誤りなのではないだろうか。産業が発展し、科学技術が進歩をするならば、いわば公害除去のための科学というものもこれに加わって進歩していかなければならぬ。したがって、産業が発展したから公害がふえるということは、そもそも誤りなのではないだろうか、そういうことが現在の科学技術のゆがみではないだろうかという感じがいたします。私は、それは交通にとっても同じだと思います。確かに自動車も進歩をする。それから昔の鉄道から現在の新幹線に発展をする。航空機の場合もそうでしょう。そういうものが発展をしている。しかし、何かスピードならスピードを増加さしていくというところに科学の重点みたいなものが置かれていて、これに伴うところの安全施策と申しますか、そういうものが非常におくれておるのではないだろうかという感じがするわけです。新幹線なんかも、雪に弱い新幹線といわれております。そういうこともおかしいじゃないか。スピードを非常に上げることもけっこうであるが、同時に、雪に対して弱いということを直していくことが必要ではないかと思うのです。そういう意味で私は、この交通、わけても道路交通について、もっと安全な車両をつくるにはどうしたらいいのか。また現在あります安全施設についても、どうしたらより安全を確保できるような施設ができるのか。また道路につきましても、現状あります道路、これのカーブなりあるいは路面の状況なり、そういうものをいかに変えていったら安全というものはもっと確保できるのかという、万般の研究というものは、私は当然必要ではないかと思います。これを見ますと、第八章に「交通事故防止に関する総合的研究の推進等」とあって昭和四十一年から科学技術庁において総合研究を始めた云々と書いてございます。科学技術庁以外の省庁でやっておるものもあるようでありますが、そこでお尋ねをしたいのは、この交通事故防止に関する総合的研究に対して、昭和四十一年度以来今日まで三カ年間、一体どの程度の予算を組んでこられたのか、それをまずお聞かせをいただきたいと存じます。
  101. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 私のほうで実は交通安全対策の予算の一応は取りまとめをいたしておりますが、御承知のように、交通安全関係の予算は各省庁に分かれております。したがいまして、それらの予算の中には、直接交通安全に関係あるもの、あるいは間接的に交通安全に関係あるもの、いろいろございます。私のほうは主として直接交通安全に関係ありという予算だけを各省庁の予算から抽出して取りまとめておりますので、私のいま申し上げます数字が、交通安全の科学的研究に関する経費のすべてではないということをお含みおきいただきたいと思います。  逆で恐縮でございますが、昭和四十三年度から申し上げます。昭和四十三年度におきましては、総額約三億程度の金額の予算をもちまして交通事故防止に関する科学的研究を各省庁で行なうことにいたしております。これに見合います昭和四十二年度の予算は、約一億六千五百万でございます。それから昭和四十一年度におきましては、その点が非常に小額でございまして、約二千万ということになっております。したがいまして、逆に申し上げましてたいへん恐縮でございましたが、昭和四十一年度の二千万が、昭和四十二年度には一億六千五百万、さらに四十三年度は約三億を計上いたしております。ただ、これ以外にも、先ほどお断わりいたしましたように、交通事故防止なり交通安全に関係ある科学的研究費は、それぞれ各省庁に含まれております。
  102. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 では、科学技術庁関係は一体どのくらいになりますか。
  103. 緒方雅彦

    ○緒方説明員 科学技術庁の予算といたしましては、特別研究促進調整費という名目の予算がございます。科学技術庁はみずから研究機関を持って研究するということではございませんで、先ほど先生御指摘ございましたように、交通事故あるいは交通安全関係関係する省庁はきわめて多うございますので、それぞれの省庁でそれぞれの行政的立場から研究を進めておられますが、その中でも特に総合的に推進する必要があると考えられるものにつきましては、ただいま申し上げました特別研究促進調整費の対象とする研究として取り上げられており、これにつきましては、昭和四十一年度はわずかでございまして、千六百八十万円程度でございます。内容といたしましては、交通事故に関する総合研究ということでございますが、一部これは警察庁あるいは建設省なんかの総合研究になっております。それと、だんだん車が高速になってまいりましたので、高速道路の交通環境を改善するためのシミュレーターを使っての研究という二点がございます。  四十二年度、今年度でございますが、これは四件ふえております。ただいま申し上げました四十一年度の研究の継続の分に加えまして、むち打ち対策に関する研究、これは緊急研究といたしまして取り上げましたので、四十二年度一年限りの研究でございます。それともう一つは、直接交通事故防止とは関係ないのかもわかりませんが、交通渋滞の緩和に関する特別研究、これらの四件を合わせますと、約六千二百万円、これらが科学技術庁といたしましてただいま申し上げました総合的な研究の推進に特調費から支出した金額でございます。
  104. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 まあ金額が昭和四十一年の二千万円から見れば現状三億ですから、十五倍にふえたということもいえるわけでありますが、絶対額からすれば、たいへん少ないような気がいたすわけです。  そこで、科学技術庁にお尋ねをしたいと思うのですが、私は、交通事故防止ということが国民世論の大きな対象にもなっている、また現在国民の生命、財産を確保するという面からいきましても、交通事故防止というのは大きな課題であるということからいたしますと、この交通事故防止に関する研究というものは、国の研究施策としては当然最重点に掲げられていい問題ではないだろうかという感じがいたしたのであります。ところが、それでは科学技術庁としてそういった事故防止の研究にどの程度力を入れているのかということを、昭和四十三年度の予算の説明でありますが、その科学技術振興費の中でどの程度ふえているかと思って実は拝見をいたしました。ところが、ここに一八ページから二〇ページに至る間、いろいろ書かれております、原子力経費はどうだとかいうことはたいへん書いてあるわけでありますが、この中に一つ交通事故防止の研究についてはどうだというようなことが書いてないのですね。それでは、科学技術庁の予算の概要説明というものがございますので、科学技術庁でお書きになったその予算説明の中には一体どう書いてあるかと思って、これも拝見をいたしました。全部で一二ページばかりの資料でありますが、一切そういうことが書いてありませんで、らしきものといえば、七ページに防災科学技術、公害防止技術、海洋科学技術等の各省庁の所管にかかわる総合研究を弾力的かつ云々と、こう書いてあるぐらいであって、この防災の中に入っておるのかどうか知りませんが、この交通災害について云々ということは一つもないんですね。これでは、私は、これだけ交通事故が叫ばれておる、現にこの刑法二百十一条の改正というようなことが問題になっておる、しかもこれは何回もの国会で審議をされたが、成立されずにおりまして、今回また法務省ではこれをお出しになっているということになれば、そちらのほうでは相当御熱意があるというふうに受け取れるのでありますが、それを防止するための科学的研究については、宮崎さんのほうでお出しになったものでは、何か科学技術庁その他の省庁に御依頼をしてこういう研究をするというようなことが書いてあるが、肝心の科学技術庁の予算の説明なり国の予算の説明の中に、交通事故の研究という字句一つすらないということは、私はたいへん遺憾だと思うのですよ。そういうことはどうなんでしょうか。お二人にお尋ねいたします。
  105. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 交通事故防止に関します科学技術の研究につきましては、交通安全を直接行政の内容といたしております、たとえて申しますと警察庁、建設省、運輸省等におきましては、日常業務内容といたしましてそういう研究が行なわれているわけでございます。たとえば先ほど先生が御指摘になりましたように、道路構造の問題あるいは信号機の設置の基準の問題等は、それぞれ建設省、警察庁におきまして、日常の業務といたしまして研究をいたしております。したがいまして、その経費も、経常費の中でまかなっている部分が相当ございます。ここで、私が先ほど申し上げました、たとえば昭和四十三年度に三億という予算を計上いたしたのでございますが、これは特別な研究機関におきまして特別の経費を用いなければ研究できないというものでございまして、たとえば運輸省におきまして自動車の追突事故防止等に関する研究をいたします場合には、特別な施設によって特別な研究をいたさなければならない、そういう項目を計上いたしたわけでございまして、冒頭にもお断わりいたしましたように、交通安全に関します技術的研究経費は、これ以外にも相当の経費がそれぞれの分野に含まれているわけでございまして、決してこれだけというわけではございません。  なお、全般的に申しまして、御指摘のとおり、交通事故の科学的研究は今後ますます推進する必要がございますので、政府といたしましても、昭和四十三年度におきましては、交通事故防止に関します科学技術の研究の推進を一つ重点項目に取り上げておりまして、今後より強力に推進してまいりたい、かように考えております。
  106. 緒方雅彦

    ○緒方説明員 科学技術庁といたしましては、重要総合研究の推進という項目の中で、この交通事故防止の問題あるいは交通安全の問題ということを研究の面から取り上げることにいたしておるわけでございます。ただ重要総合研究と申しますのが、推進のしかたといたしまして、一応重要総合研究の分野というものを設定いたしまして、これは十四の分野が現在ございます。その中で、交通事故防止技術という一つの分野があります。これがそれに相当するわけでございます。それからさらに関連といたしましては、都市工学という分野がございます。この中で特に道路の問題ということでやや交通事故防止に関連のある分野ということで、二つの分野があるわけでございます。ただいま申し上げましたようなことでございまして、実はたいへん申しわけないのでございますが、その中に十四の分野を全部列記いたしておけばよろしかったのでのございますが、防災科学技術あるいは環境科学技術、これは公害でございます。というものを例示的に二、三並べまして、「等」としたことでたいへんおしかりを受けたわけでございますが、決してゆるがせにいたしておるわけではございません。そういうようなところでございますので、御了承いただきたいと思います。
  107. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 言いわけのような御答弁をいただきましたが、確かに「交通事故防止に関する当面の重点施策」というものを見ますと、「道路交通環境の整備に関する予算の早期執行等」——研究はないですね。「自動車の安全性の向上」というようなのがあります。それから昭和四十一年十一月二十一日、交通安全施策の強化に関する当面の方針を決定し、次の事項云々とありまして、アイウエオとありまして、その最後に「自動車の安全性の研究の推進等」、こう書いてございますが、しかし私は、少なくとも交通安全対策というものが重要な項目であれば、この予算の説明の中に、交通安全の研究くらいのことばが当然あってしかるべきだと思うのです。全部見たけれどもないですよ。それから科学技術庁の予算説明を見てもないですね。ということになれば、何か罰則だけ強化していけばいいのだというような思想だけであって、それをなくするための研究というものが、こうやって質疑をすればことばとしては出てくるけれども、結局こういった国の予算の説明や科学技術庁の説明という中に出てこないということは、これはやはりそういうものを科学的に研究をして事故防止していくという熱意が不足している、こういうもののあらわれではないかという感じが、私はいたすのであります。  私は次官にお聞きしたいのですが、どうでしょうか、次官は法務省の政務次官で、直接そういうところに関係ないですけれども、しかし、次官会議等で政府全般のことについて責任を負っておられると思うのですが、ただいまの問答を聞いてどうでしょうか、何かそれでは罰則一点ばりであって、それに対する施策というものはさっぱり熱意がないというふうに受け取られてもしかたがないと思うのですが、御感想はどうでしょうか。
  108. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 交通事故防止のために政府としても非常な努力をしてやっていることは事実でありまして、この法律改正ができましても、これだけが万全だとは思っておりませんが、あらゆる面から交通事故防止対策を講じていかなければならないと思っておりまして、総理府においてそういう方面で現にやっておられる。不十分な点は政府全体としても十分連絡して、予算の面にもそれがあらわれるようにやっていかなければならぬと思います。
  109. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そういう点にやはり力を入れていただくことが、必要じゃないかと存じます。  警察庁にお尋ねしますが、最近、精神病者が運転免許証を持っておることによって起こる事故防止するために、お医者さんに精神病者であるかないかの診断をしていただいて、その上で運転免許証の交付ということをやっておられましたが、どうもそれは実情に合わぬというのでおやめになりましたですね。この資料を見ますと、厚生省と警察庁の科学警察研究所で、いかにしたら精神病者を早期に発見することができるか、運転者の脳波試験等いろいろな研究をやっておるということでありますが、今度、病院から診断書を取りまして、その上で運転免許証を交付することをおやめになった。しかし、そういった精神病者の方が運転をすることによって起こる事故というものを防がなければならぬ。したがって、病院の診断書にかわる、より科学的なそのチェックの方法を研究しておられるというふうに、私はこの文章を読んで感じたのでありますが、そういう御研究は、一体やっておられるのですか。
  110. 関忠雄

    関説明員 そのような研究を厚生省と共同で進めておるわけでございます。たとえば脳波のテストといったようなことがあるわけでございますけれども、これを簡易脳波計——十分ぐらいでその判定ができるように改良をいたすような研究、あるいはチェックリストと申しまして、お医者さんでありませんでも、多少勉強をいたしますといわゆる疑わしい人を発見することができるような簡易な診断の手引きと申しますか、そのようなものをつくり上げるような研究を進めておるわけでございます。
  111. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私、きょうのNHKの「スタジオ一〇二」を拝見しておりましたが、昨年道交法改正で過失による合い図違反の処罰規定を整備いたしましたね。ところが、NHKの「スタジオ一〇二」で本日やっておりましたが、名古屋周辺の豊橋の国道一号線、ここの地区におきましては、信号がたいへん見えにくい。進行方向に対して左側に信号がついているわけですが、大きなダンプカー等が前にありましてうしろに小型車があるという場合は、このダンプカーがいわば遮蔽になりまして、左側の信号が全く見えない。そのために追突事故等があそこは非常に多いそうですね。そのために、この左側の信号が何が出ているかということがわかるように、右側の信号の下に左側の信号が出るようなくふうをされたというのです。これによってだいぶ事故がなくなったということを本日の「スタジオ一〇二」はやっておりました。そういった研究なり、運転者に対して信号が見えやすいようなくふうと申しますか、そういうものをもっと力を入れてやる必要があるのじゃないですか。私は、そうすることがやはり事故防止だと思うのです。そういう点に対して、おたくのほうではシュミレーターによる道路交通環境の改善に関する総合研究もやっておられるようです。科学技術庁のほうの総合研究の対象にもなっていますね。そういった研究に一体幾らくらい予算を使って、今日までどのような成果をあげておりますか、あわせてひとつお聞かせいただきたい。
  112. 関忠雄

    関説明員 交通信号機の背面に信号が見えるように装置をいたすというのは、数はそう多くはございませんけれども、各地ですでに行なわれておることでございます。たまたま本日の一〇二で豊橋のものが取り上げられたと思うのでございますけれども、信号を見やすくいたしますために、背面に信号板をつけましたり、あるいは信号の灯器数をふやしましたり、そういうようなことに努力をいたしておるわけでございます。それから、交差点における車の通行の規制方法に関する研究でございますけれども、科学技術庁の特別研究促進調整費の配分を受けまして、四十一年度、四十二年度継続して研究をしておるわけでございますが、この両年度で約五百万弱でございますが、その内容といたしましては、テストいたします交差点を設けまして、そこに車を走らせてみまして、車の数が多くなりますと、一時停止とかあるいは進路を譲れといったようなことではさばき切れなくなる。その場合には信号機による制御が必要となってくるわけでございますが、そのような限界の発見でありますとか、あるいは変形の交差点等におきまして、たとえば五叉路といったような問題もありますけれども、その中のある道路を一方通行にいたす、そのほうが車の流れがよくなるのじゃないか、一本を犠牲にいたしましても、そのほうが全体の交通の流れがよりよくなるのじゃないかというような、交差点の処理の技術の基礎資料を求めるための研究というものを継続してやっておるわけでございます。それらの成果につきましては、大体本年の六月ごろには一応その結果がまとまるものというふうに承知をいたしております。
  113. 緒方雅彦

    ○緒方説明員 科学技術庁といたしましては、先ほど申し上げましたようなシュミレーターによる道路交通環境の改善に関する総合研究というテーマで、四十一年度から三カ年の計画でその総合研究を取り上げたわけでございます。この関係いたします研究所と申しますか、省庁といたしましては、警察庁の科学警察研究所、建設省の土木研究所、通産省の電気試験所、これらが関係がある研究所でございます。端数は省略させていただきますが、四十一年度は九百三十万円、四十二年度は千六百五十万円でございます。四十三年度は、四十一年度、四十二年度の成果とにらみ合わせまして、近々研究者に集まっていただきまして、どういう点を改善したらよろしいかということを研究してみたいと考えております。
  114. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 通産省の方、運輸省の方にお尋ねしたいと思うのですが、自動車をより交通安全確保のために適切なものであるような構造にしていくかということは、やはり交通安全対策の大きな柱でないかと思うのです。自動車の操縦装置でありますとか、タイヤの研究でありますとか、ブレーキの研究でありますとか、さらに運輸省におきましては、車検の状況でありますとか、そういうものをいろいろ御検討されておると思うのですが、どのような点に力点を置いて研究をしておられるかということが一つと、それから運輸省にお尋ねしたいことは、事故数字等はいろいろ出ておりますから私ども拝見をいたしますが、車検を受けなくてもよろしい種類の自動車が起こす事故の比率というものもやはり相当高いんじゃないかと思うので、そういったものに対して検査制度を実施していくということも、私は重要なことではないかと思うのですが、こういう点についての御見解はどうでしょうか。
  115. 隅田豊

    ○隅田説明員 お答えいたします。運輸省の船舶技術研究所におきます研究は、自動車の安全性を向上させるということが最大の目的でございまして、いろいろと自動車の構造各般についての研究をやっております。ただ、現在の船舶研究所が、予算人員からいきましても、それほどのスケールをまだ持っておりませんので、ある程度重点的な研究を施行せざるを得ない形になっております。四十二年度から特に重点を置いて特別に考えてやっておりますのは、今後の自動車の問題として、衝突その他によって起こるところの安全の問題でございます。現在では、四十二年度予算でその関係の研究設備を整えまして、基礎的な研究に入っております。  それから、第二の御指摘の車検の問題でございますが、御指摘のとおり、現在町を走っておる自動車の中の軽自動車といわれるものは、車検の対象になっておりません。これは現在までの統計的な数字で考えますと、車検したものの事故の中にいろいろな原因があるわけでございますが、自動車整備が悪かったために起きました事故、それは自動車一般的な事故とは一応性格が違うものと考えております。車検を行なっている車に対して整備不良が原因となっている事故のパーセンテージ、それから車検をやっていない、いま申しました軽自動車事故の中で整備不良車両のパーセンテージでございますが、これがいまのところの数字だと半分くらいになっておりますから、現段階数字的に考えますと、軽自動車の車検をやらなければならないというようなことにはなっておりません。ただ、全般的にものを見まして、車両検査というものの制度は、将来いろいろな意味で再検討しなければならぬということは事実でございまして、そういうときには、それを含めて検討していきたいと思います。
  116. 田中芳秋

    田中説明員 通産省におきましては、最近におきます交通事故の激増に対しまして、安全な自動車を研究する、そういう責任をメーカーに課すということに全力を注いでおるわけでございます。この見地から、従来実施しております施策でございますが、まず第一に、昭和四十二年度から、学界、それから自動車工業界等の協力を得まして、通産省の工業技術院にございます機械試験所あるいは産業工芸試験所等の技術力を動員いたしまして、俗称ではございますが、自動車安全公害研究センターというものを設置したわけでございます。この予算は二億一千三百二十万円、そのうち安全関係の予算は一億三千八百二十万円でございます。四十三年度でございますが、ただいま御審議をいただております予算案におきましては、総額が三億七千二百九十万円、うち安全関係は二億三千三百九十万円でございます。ここにおきまして、自動車の安全に関します技術開発を徹底的に追及してまいりたい、かように考えておるわけでございます。これが第一点でございます。  それから第二点は、自動車の安全に関連いたしますシート・ベルトとか、強化ガラス、あるいはブレーキの性能等に関します日本工業規格、いわゆるJISと申しますが、これの制定に努力しております。最近追突によりますむちうち症防止のための安全まくらのJIS規格を制定いたしまして、その技術基準を今月末に確立いたしまして、五月からこれが告示に移りたいという努力でいま進めておる次第でございます。  第三点といたしましては、民間のこれらの研究に対します補助と申しますか、重要技術研究開発費補助金というのがあるわけでございます。四十一年度が約七百万円程度になっておると記憶いたしておりますが、四十二年度は千三百六十万円というものを重点的に交付をいたしておるわけでございます。四十三年度におきましては、この試験研究補助金の総ワクを現在御審議いただいております予算案では十二億円でございますが、そのうち安全研究に対します技術研究につきましては、重要課題ということでこれを取り上げまして、現在この候補を選定中、こういう状況でございます。  大体以上が、通産省が従来実施してまいりました施策でございますが、今後ともこの線を強力に推進してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  117. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 運輸省の方にお尋ねしますが、確かに事故率は低いかもしれない。しかし、これに対して車検をやらぬのは、そればかりではないような気がするんです。かつて国会でこういったものについての車検の適用をすべきではないかという議論があったときに、こういった軽自動車をつくっております業界からだいぶ反対の陳情等もあったのでありますが、これは結局、車検を受ける必要がないからその面で経費が安いということが、軽自動車を売る場合の一つのPRと申しますか、宣伝の一環になっているという事実は、無視することはできないんじゃないですか。私は、そういう点はもうちっと安全確保という面で断固たる姿勢をとってもいいんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょう。
  118. 隅田豊

    ○隅田説明員 先ほど、検査をやっていないということを申し上げましたが、もう少し補足さしていただきます。  いわゆる車検ということを軽自動車についてはやっておりませんが、メーカーが車をつくりました段階におきましては、型式認定をやっておりまして、その際自動車の設計その他を見て保安基準に合うかどうかということを見ておりますので、その意味では新車時の車検に相当するものが行なわれておりまして、実態的には同じになっていると思います。継続検査はないという問題は確かにございますが、メーカーの段階における安全性というものは、構造的には確保されているというふうに考えてもよろしいんじゃないかと思います。御指摘のような、検査がないということがユーザーなんかのメリットとして一部宣伝されているということも事実でございます。私どもとしては別にそういうことにとらわれて行政をやっているつもりはございませんが、そういうような御意見の出ることも承知しております。先ほど申し上げましたとおり、全般を含めました車検制度というものについて検討していく、こういうふうに考えております。
  119. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 道路の問題について若干お尋ねをしてみたいと思うのですが、交通事故の発生状況を調べてまいりますと、国道よりはむしろ地方道における事故率のほうが高いですね、事故の件数からいえば。交通事故道路種別の件数ですが、国道における率が三七%、主要地方道、一般道府県道、市町村道合計をいたしまして六二・二%、ですから、事故の件数全体では、国道よりも——もちろん国道のほうが短い、地方道のほうが延長が長いということはありましょうけれども、道路一キロに対する件数の割合という意味ではありません。事故全体が幾らあって、そのうち国道でもって幾ら発生し、地方道で幾ら発生したかという割合でありますが、これから見ると、国道のほうが三七%で少なくて、地方道が六二・二%、主要地方道、一般府県道、市町村道以外の道路で起きたのが〇・八%で、合計一〇〇と、こういう数字であります。  そこで建設省にお尋ねをしたいことは、そういった状況であるにかかわらず、現在の地方道の道路状況というものは非常に悪いですね。舗装してあるからいい、舗装してないから悪いということではないのでありまして、かえって舗装すればスピードが出て事故を起しやすいということがあるかもしれませんが、それは別といたしまして、道路の整備状況を見ますと、高速度道路については舗装率が一〇〇%、これは当然だろうと思いますが、国道のうちもとの一級国道が七七・二%、二級国道が四三・三%、国道全般といたしまして五九%の舗装率、これに対して主要地方道は二八・二%、一般府県道は一二・四%、府県道を総計いたしまして一六・七%、これに対して市町村道はわずか四・四%しか舗装されていない、整備されていないという状況です。地方道が非常に放置されている。そういう中で、むしろ事故は地方道に多く発生をしておる。こういう状況を建設省としては一体どう改善し、整備をされようと考えておられますか、お聞かせをいただきたいと思います。
  120. 豊田栄一

    ○豊田説明員 道路の整備の点についての御指摘について、御説明いたします。先生御案内のように、現在私どもは道路整備五カ年計画を逐次繰り返しながらやっております。しかし、事業によりましては、五カ年単位というのは、単位期間中に終わらない道路もございますので、そういう意味では長期展望を必要といたします。そういう点で、私どもが持っております長期展望としては、道路については今後二十年間に想定されます道路の延長なり交通事情というものを考えての道路の改良、舗装というものを考えてまいっております。いま先生御指摘の資料は、おそらく四十一年三月の資料かと思いますが、もう時間がたちまして四十二年三月現在の計数が整備されておりますので、その数字を申し上げますと、改良と舗装とに分かれておりますが、その中で改良で申し上げますと、四十二年三月まで一般国道の実延長が二万七千百四十四キロございますが、これの改良率が七二・九%でございます。それから主要地方道、これが実延長にして三万三千七十キロほどございますが、これの改良率が五三・九%でございます。それから一般地方道、これが延長は八万九千五百二十一キロでございますが、改良率は二七・六%、以上を集計いたしますと、十四万九千七百三十五キロでございますが、これの改良率が四一・六%に現在なっております。私どもはこれの五カ年計画をただいま閣議決定のための準備をやっておりますが、その五カ年内にこれをどのくらいまであげようかという一応のメルクマールを考えておりますが、全体の数字について申し上げますと、この四一・六%を大体五〇%近くまで上げたい、正確には四九・六%ぐらいまで上げたい。それから舗装について同じくそういうような種別で申し上げますと、四十二年三月のいまの道路種別にあります舗装の計数が、二九・九%でございます。これを大体四八・二%に五カ年で上げたい。これは御案内のように、四十二年から四十六年までのあれでございますが、四十六年を終わった段階の姿としてそこまで上げたい。この改良率と舗装率を御判読いただきますと、先ほど先生御指摘の交通需要の道路種別別のウエートと申しますか、そういうものに対応して、地方道のほうを増強している姿勢がここにあらわれているというふうに私どもは考えております。この中で、先ほど御指摘の道路種別の改良整備率を上げていく姿勢をとっているつもりでございます。  なお、現在行なわれております交通安全対策事業、これは御案内のように、昨年の十二月に閣議決定されまして、これに基づいて現在やっておるわけでありますが、その道路種別別のウエートと申しますのは、私ども端的にいいますと、国道の指定区間については直轄事業としてやっております。それからそれ以外の補助の国道の部分、地方道の部分、こういうもののウエートを見ますと、やはり全体としては補助のほうのウエートが高うございますけれども、先生御指摘のような単位延長当たりに直しますと、直轄の国道のほうが交通量がシェアとしては多うございますので、そういう点での傾斜はかかっております。しかし、これは当面の安全対策のあれでございますが、やはり御指摘のように、将来の整備の目標というものを踏んまえて、私どもはこの自動車道の整備に取り組んでおるわけでございます。
  121. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 昭和四十二年−四十六年の五カ年計画六兆六千億ですね、そういう中で地方道の充実に力を入れているというお話でありますが、それはわかります。しかし、問題は市町村道ですね。八十万キロをこえる市町村道、これについては五カ年計画では六千七百七十六億ばかりを使って市町村道を整備していくというのですが、現状の市町村道についてはほとんど財源が与えられていないのですね。今度地方税法の改正自動車取得税が三%、これは七月一日から実施をされる。本年度でたしか三百四、五十億ではなかったかと思いますが、平年度にいたしますと、五百億をこえるものが付与されます。これとても六千七百七十六億のこの金額——これは国道、主要地方道、府県道等に比べますと、金額自体も非常に少ないわけでありますが、しかもその少ない金額すら現在の市町村においては財源付与というものがされていない。わずかに、先ほど申し上げた自動車取得税が、本年の七月からおくればせながら創設される。したがって、四十三年が三百億ちょっと、それから今度は平年度になりますから、四十四年、四十五年、四十六年の三カ年間で、これが年間五百億から六百億ぐらいになるでしょう。かりにそうしましても、総額にいたしましてせいぜい千八百億ないし二千億ぐらいの財源しか付与されない。こういう状態では、先ほど申し上げたように市町村道で現在起きている事故——市町村道での発生事故は、全体の事故の三一・五%起きているのですから、その三一・五%も起きている市町村道、これに対する手当てというものは、まさに二階から目薬であって、全く不備だと、こう言わざるを得ないのじゃありませんか。この点はどうですか。
  122. 豊田栄一

    ○豊田説明員 お答えいたします。市町村道の整備のことについての御注意でございますが、ただいま市町村道の延長キロを先生から八十万キロという御指摘がございました。これは御案内のように、道路統計年報で集計された数字でございますが、その市町村道の内容をつぶさにあれしてまいりますと、何と申しますか、道路の戸籍はありましても、全然道路の実態をなしていないようなところまで入っております。こういう点を私ども将来どういうぐあいにしたらいいかというので、現在市町村道の実態調査をやりまして、そういうものの取り進め方、あるいは市町村道の整備の方針を勉強中でございます。これは昨年から継続してやっておりますが、本年も継続しまして、こういうものの取り扱い方をきめたい、かように考えて、現在鋭意作業中でございます。  その要旨を簡単に申し上げますと、将来の交通需要を考えます場合に、全体として道路の必要な延長はどのくらいであるか、そういう中で市町村道の持つ延長はどのくらいだろうかということを私ども現在試算中でございますが、おおむねの見当としては、約二十数万キロではなかろうかと考えております。そういうものをどんなふうにして整備を進めていくべきか、またそういうものに対する財源措置をしていくべきか。御案内のように、市町村道の管理者は市町村長自身でございますので、こういう点での財源問題については、私ども単独ではございませんで、これはいろいろと関係省がございますが、そういうものの中で協議してこれを進めてまいりたい、かように考えております。お説の点について、だんだん道路網の充実とともに、そういうものが整備されていくことを私ども念願してやまないものでございます。
  123. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 まだいろいろ質問したいと思ったのですが、委員長にちょっとお尋ねしたいのです。私も国会ではいろいろな委員会に出て質疑をいたしますが、当法務委員会のように——委員長でなく、委員長、代理のようでありますが、このような状態審議しているのは初めてでございまして、意外な感を受けたわけです。しかし、少なくとも刑法二百十一条を改正する、今度は三年の禁錮刑で一番きつかったものを五年にし、しかも懲役刑並びに禁錮刑、こういうことにするわけでありまして、国民全般にとればきわめて大きな影響のある法案だと思うのですが、ここへまいりまして、お昼はどうすると言ったら、お昼抜きで審議するという、きわめて熱心な委員会だと思って感心したのですが、こういう状態審議を続けていくということは、何かこの法務委員会の権威というものを考えると、しかも国民全体に対して影響のある刑法審議の場としてはいかがかという感じを持ちましたが、一応それは私の感想として申し上げておきます。  こういう状態では、質問をしてもしかたがありませんから、一応やめますが、ただ一点、先ほど警察当局にお願いいたしました反則金の金額と他国の例、もちろん対象になる事案が違うという御意見もありましたが、違えば違うでよろしいわけでありますから、どういう事案について日本では反則金が幾らから幾らまで科せられる、また諸外国においては、どういう事案に対しどういう罰金と申しますか、簡易敏速な処理方式としてどういう金額が科せられているのか、これをひとつ出していただきたいと思うのです。その資料が参りました上で、何か罰金のみ強化することが交通安全対策の道ではないということについてお尋ねをしたいと思いますので、その点だけを保留いたしまして、本日はこれでやめたいと思います。
  124. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 次回は、明後二十一日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時二十五分散会