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1968-03-14 第58回国会 衆議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月十四日(木曜日)     午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大竹 太郎君    理事 高橋 英吉君 理事 田中伊三次君    理事 猪俣 浩三君 理事 濱野 清吾君       鍛冶 良作君 理事 神近 市子君       塩谷 一夫君    河野 洋平君       中馬 辰猪君    千葉 三郎君       山下 元利君    広川シズエ君       中谷 鉄也君    河野  密君       山田 太郎君    岡沢 完治君       松野 幸泰君    松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 赤間 文三君  出席政府委員         法務政務次官  進藤 一馬君         法務省刑事局長 川井 英良君  委員外出席者         法務大臣官房司         法法制調査部長 川島 一郎君         最高裁判所事務         総長      岸  盛一君         最高裁判所事務         総局総務局長  寺田 治郎君         最高裁判所事務         総局経理局長  岩野  徹君         専  門  員 福山 忠義君     ————————————— 三月十三日  委員谷口善太郎辞任につき、その補欠として  松本善明君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員瀬戸山三男君、田中角榮君、綱島正興君、  馬場元治君、佐々木更三君、及び西村榮一君辞  任につき、その補欠として山下元利君、河野洋  平君、塩谷一夫君、広川シズエ君、中谷鉄也君  及び岡沢完治君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員河野洋平君、塩谷一夫君、広川シズエ君、  山下元利君、中谷鉄也君及び岡沢完治辞任に  つき、その補欠として田中角榮君、綱島正興  君、馬場元治君、瀬戸山三男君、佐々木更三君  及び西村榮一君が議長指名委員に選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五三号)      ————◇—————
  2. 永田亮一

    永田委員長 これにより会議を開きます。  内閣提出裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷鉄也君。
  3. 中谷鉄也

    中谷委員 法務省からの御連絡によりますと、大臣が十時半に御出席になるということでありますので、その前に最高裁判所お尋ねをいたします。  訴訟促進ということが裁判の一番大きな課題として叫ばれて非常に長いわけでございますが、裁判官がここ数年来若干の増員が行なわれておるわけです。そういう裁判官増員は私はきわめて不十分なものだと思うのですけれども訴訟促進効果があらわれているのかどうか。資料等もいただいておるわけですけれども、この点について最初に裁判所のほうからお答えをいただきたいと思います。
  4. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ただいま中谷委員からお話がございましたとおりに、裁判官増員は最近五年間に約百人、十年間をとりますと約二百人ふえておるわけでございます。裁判官の総数が二千人余りでございますから、まあ一割程度十年間にふえたということでありまして、ある意味ではかなりふえたとも申せますが、不十分な点もあることは間違いないわけでございます。そこでその増員によります審理促進の経過ということでございますが、お手元に参っております法律案参考資料のページに高裁、地裁、簡裁に分けまして平均審理期間を出しております。これは前回大竹委員お話の際にも申し上げましたとおり、いわゆる既済事件平均審理期間でございますので、これによってすべての動向を知るわけにもまいらないわけでございますが、しかしながら、応の数字としてはそこでごらんいただきたいわけでございます。そういう点からまいりますと、刑事事件については少しずつ早くなりつつあるということは言えるであろうと思いますが、民事事件についてはまだなかなか促進効果が十分にあがっていない。ただ先般も申し上げましたとおり、ここに数字は出しておりませんが、高等裁判所未済事件平均審理期間昭和四十年から四十一年にかけまして約一月短縮されておるわけでございます。これは何万件かある事件平均でございますから、それを一月短縮するということはかなりのものだとして私どもは評価をしておるわけでありまして、そういう点で少しずつ成果はあがりつつある。ただ、何ぶん事件もふえつつある、また複雑にもなっておりますので、まだまだ今後努力を要する、かように考えておるわけでございます。
  5. 中谷鉄也

    中谷委員 資料一二ページに、非常に参考になる平均審理期間についての表があげられているわけですが、その単独合議等についての資料はあるでしょうか。
  6. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 それは裁判所ごとによりまして、中谷委員つとに御承知のとおり、はっきり単独部合議部というふうに分かれておりますところと、一つの部の中に単独部合議部と混合しておるところがございますので、一つ一つ抽出検査をいたしますれば出ると思いますが、さしあたり手元には持っておらないわけであります。
  7. 中谷鉄也

    中谷委員 刑事事件法廷合議事件についての資料は、お示しいただきますか。
  8. 寺田治郎

  9. 中谷鉄也

    中谷委員 交通事故が多数に発生をしているという現況は、何人もこれを否定することはできず、非常に憂慮している問題でありますが、特に民事関係交通事故に伴う賠償事件、これらの交通事故賠償事件件数とその審理期間等についての資料をお示しいただきたい。
  10. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ただいま中谷委員お話のございました交通事故による損害賠償事件件数平均審理期間の点でございますが、全国の地方裁判所民事の第一審の通常訴訟事件の中で、交通事故による損害賠償事件件数は、昭和四十一年度におきまして三千六百七十五件でございます。これはその前年度あるいは前々年度に比べますと、かなりふえておるわけでございます。念のため申し上げますれば、三十九年が二千三百七十八件、四十年が二千六百九十六件ということでございます。それから平均審理期間でございますが、これまた四十一年度におきましては十二・二カ月、大体一年ということになっております。この期間はその前年度あるいは前々年度に比べますと若干早くなっておるという傾向でございますが、いま申し上げましたとおり平均が十二・二カ月でございまして、六カ月以内に解決いたしましたものが三九%、それから一年以内のものが約二六%、合計いたしまして六五%くらいのものが一年以内、そのような数字になっておるわけでございます。
  11. 中谷鉄也

    中谷委員 残の三五%についての内訳を、簡単に御説明いただきたいと思います。
  12. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 何の三五%ですか。
  13. 中谷鉄也

    中谷委員 六五%が一年以内にということでございますから、残の三五%の審理期間についての内訳を簡単にお示しいただきたい。
  14. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 失礼いたしました。一年以内のものが六五%でございまして、一年をこえ二年以内のものが約二四%、それから二年をこえ三年以内のものが、六・五%、三年をこえるものが四・五%かようになっております。
  15. 中谷鉄也

    中谷委員 ただいまのお示しいただきました資料は、地方裁判所資料ということでお伺いをいたしますが、裁判所の御見解を承りたいと思います。交通事故は、特に訴訟促進を要すると思います。そういう中でかなりの。パーセンテージを占めるものが、一年以上の審理期間を要している。その原因は主としてどこに求めらるべきでしょうか。
  16. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 交通事故事件は、他の事件もむろんでございますけれども、特に迅速に解決する必要があるという見地から、裁判所としては、たとえば大きな裁判所におきましては、この専門部を設けまして、そうしてその交通事故事件に専念するというような形で努力しておるわけでございます。ただ、それにもかかわりませず、先ほど申し上げましたように、必ずしも十分な成果があがっていないのでございます。その原因はやはりいろいろあろうと思いますが、結局普通の契約訴訟の場合には、何と申しましても契約書なりあるいはその他の関係書類というものがあるのが普通でございますが、交通事故の場合には、そういう書類的な証拠というものがございませんために、もっぱら証人でありますとかあるいは検証でありますとか、そういう証拠調べの方法によらなければならないというところに、非常にむずかしい点が一つございます。それからもう一つは、多くの場合、運転手個人被告といたしましても十分な目的を達しませんために、その使用者である会社でありますとか、あるいはその他の企業等を同時に被告にして訴訟を起こす。そうしなければ目的を達しないという場合が少なくないわけでございます。そうなりますと、この間にいわゆる職務関係等中谷委員つとに御承知のいろいろ法律上のむずかしい判断事項が伴ってくる。おそらくその辺のところに原因があるのではないか、かように考えておるわけでございます。
  17. 中谷鉄也

    中谷委員 訴訟促進ということから、裁判官増員を早急にはかつて、国民の期待にこたえなければならない。これは一つの大きな課題だと思います。  そこで、先ほど御答弁になりましたように、交通事故訴訟については、答弁第一点の事実の認定、すなわち被害者に対する加害者過失の有無という問題について争いになることが往々にしてある。往々にしてわれわれのよく知っているところなんですが、そこで訴訟促進観点から、まず実務上のお取り扱いお尋ねいたしますけれども、特に困難を感ずるのは、刑事関係において、業務上過失致死傷の責任が問われないで不起訴になった、そういう場合が一つ考えられます。そういうふうな不起訴になった場合においては一いわゆる刑が確定したものについては刑事記録閲覧を求める、あるいは取り寄せを求めること。ができますが、聞くところによりますと、不起訴記録については、裁判所においてお取り寄せになっていないというふうに聞いております。まずこの点について、もしそうだとするならば、その実情理由をお聞かせいただきたいと思います。
  18. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ただいまお話しのとおり、刑事確定記録については、全然問題はないわけでございます。ただ、不起訴記録については、これは検察庁のほうでは一般的に人に公表しないものであり、秘密性のあるものであるというふうな御見解のようでございますし、それはそれでごもっともな御意見だと考えるわけでございます。ただ、民事事件に関連いたしまして、その不起訴記録の中の一部分を拝見したいということが間々ございます。結局不起訴記録の中には、私詳細には存じませんけれども、たとえば不起訴裁定書とか、そういういろいろなものもついておるであろうと思いますが、そういうものは民事裁判所としては別段関心はないわけで、見たいのはたとえば、実況見分書というようなものであるわけでございます。そういうものの取り寄せ申請がありまして手続をとりました場合には、私の理解しておる範囲では実況見分書等は大体送っていただいておるように聞いておるわけでございますが、詳細に全国的な調査をしたわけではございませんけれども、私は大体そういうふうに理解しておるわけでございます。
  19. 中谷鉄也

    中谷委員 訴訟促進という観点からお尋ねをいたします。刑事局長さん、この問題についての御見解実務上の取り扱いはどういうふうになっておるかをお答えいただきたいと思います。
  20. 川井英良

    川井政府委員 一般的に不起訴記録を公にできるかどうかということにつきましては、従来から問題があるところでございますが、私ども方針といたしましては、捜査密行して行なうのが原則であって、したがいまして、公判請求をしなかった不起訴事件、並びに公判請求をいたしましても証拠能力その他の関係で公判廷に提出をしなかった、いわゆる不提出書類につきましては、原則としてこれを公にしないという方針をとっているわけでございます。したがいまして、いま問題になっておりますこの交通関係事件にいたしましても、基本的な方針としては同じようなことを考えているわけでございます。  ただ、寺田局長からも御説明がございましたように、交通関係事件民事訴訟におきまして、事故が起きたときの現場の模様をもう一回民事法廷において正確に事実を再現するということは、きわめて困難なことだろうというふうに思われますので、その限度におきましては、実況見分調書というふうなものがそこを明らかにするために重要な書類であると思いますので、そういうふうなものにつきましては、一般的に原則として取り寄せに応じて協力するというふうなたてまえをとることに、従来からいたしております。ただ、具体的なケースケースによりまして、民事刑事の問題が非常に紛争を生じているとか、あるいはそのときの刑事事件の処理がまだ続いているとかいうふうな場合におきましては、具体的にその刑事事件を担当している検察官の裁量に応ずるかどうかをまかせておりますので、具体的なケースにおきましては、この実況見分調書提出にもしばらく応じかねるといったようなことがあるかと思いますけれども原則といたしましては、実況見分調書ども再現は不可能な、そういう部分については、不起訴記録につきましてもなるべく提出に応ずるというふうな方針を一応とっております。
  21. 中谷鉄也

    中谷委員 実況見分調書などという御答弁があったわけですが、たとえば不起訴記録に添付されている被疑者供述調書民事関係で申しますれば、加害者関係供述等は、取り寄せに応ぜられるのかどうか。端的に申しまして、交通事故に関する民事訴訟事件民事裁判に占める。パーセントというのは、非常に多いと思うのです。その中で、訴訟促進観点から申しまして、実務的に代理人である弁護士が一番困惑を感ずるのは、刑事事件で不起訴になった、・しかしどうしても被害者損害賠償は請求さるべき事件だと考えたというもの、これについては証拠収集について努力をいたしますけれども、なかなか手が及ばない。そのことは、裁判所に非常に御迷惑をかけると同時に、裁判所自身訴訟遅延原因にもなっている。捜査密行主義というおことばがありましたけれども強姦事件とか収賄事件交通事故は、私は違うと思います。これらの記録の取り寄せを基本的に認めるということが、何か支障がくるのでしょうか。私は、単に交通事故の防止あるいは交通対策という問題は、法務省のお仕事として刑法の刑を引き上げるだけにとどまるべきではないという考え方をしばしば申し上げてまいりました。そういう点から申しますと、この問題だけは、実務家立場からぜひとも踏み切っていただきたい。大臣にもあとでお尋ねしますけれども強姦事件とか収賄事件とは違うと思う。ひとつ原則的にそれは取り寄せに応ずるということができないとするならば、捜査密行その他の理由をいま一度お話しを恥ただきたいと思います。
  22. 川井英良

    川井政府委員 民事たると刑事たるとを問わずに、訴訟促進にできる限り法の許す範囲において協力するということは、私ども義務であることは申すまでもないと思います。ただしかしながら、御説明申し上げるまでもなく、民事刑事とは訴訟構造も違っておりまするし、いろいろ法律上で与えられた強制権を用いたりあるいはそれに準ずるような形においての資料もたくさんあるわけでございまするし、刑事訴訟法証拠能力のない証人も不起訴記録の中にはたくさん収録されておるわけでございますので、この確定記録のような形におきまして提出をするというわけにはまいりませんので、おのずから不起訴記録の中から限定をいたしまして、そのケースケースについて支障がないと思われるものをできる限り、訴訟促進観点からあるいはその他の目的から、その提出に応ずる、こういう基本方針というのは、いまただちにくずすことは私は困難なように思うわけであります。そこで、実況見分調書等と申し上げましたのは、いままでの実情を見てみましても、各地検地検ないしは検事検事によって多少その方針がニュアンスの差がありますので、実況見分調書だけではありませんで、この事件におきましては、それ以外のものも適当だと思われるものをその提出に応ずるような向きもあるようでございます。一応一般論として実況見分調書などと、こう申し上げました。  そこで、問題は供述調書でございますけれども、この供述調書は、一がい供述調書まで提出してよろしい、供述調書は一切いけない、こういうことも言えないと思うわけでありますけれども、私ども法務省方針としましては、実況見分調書というふうなものは、あらゆる観点から考えて、この際、一般論としましても、基本方針としましても、応ずるということは、公益上の観点からも、民事訴訟の特に交通事故事件賠償事件訴訟促進という面からも適当であろうということで、これにつきましてはそういう方針を一応示しておりまするけれども、その他のものにつきましては、個々具体的ケースケースについて、あらゆる観点から考えて支障のない限度においてこれに応ずるというふうな方針が、私は現在の段階では適当か、こう思っておるわけであります。
  23. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、実況見分調書供述調書これについては取り寄せに応ずるというふうにお答えいただいたわけでございますか。
  24. 川井英良

    川井政府委員 そうではありませんで、実況見分調書はまず差しつかえないから、これについては特別な考慮を要しない、一般的方針として応じてかまわない。供述調書につきましては、いろいろ支障のある向きも十分考えられるので、実況見分調書以外の書類供述書類も含めまして、それについては個々具体的ケースケースについて各検察官判断にまかせる、こういう方針でございます。
  25. 中谷鉄也

    中谷委員 裁判所お尋ねいたします。訴訟促進という観点から、ことに交通事故被害者を一日も放置できないという観点から、不起訴記録裁判所の取り寄せに応ずる。裁判所は不起訴記録を取り寄せができるということになるとすると、かなり訴訟促進に役立つ。ことに一年以上というふうに、代理人が立証に困惑し切っているというような事案というのは、非常に少なくなるというふうに思われますが、いかがでしょうか。
  26. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 まず、実況見分調書につきましては、先ほど来私も申し上げ、川井刑事局長からもお話があったとおりでございます。それからなお関係人供述調書等でも、たとえば民事事件審理をいたします際に、すでにその者が死亡しておるとか、あるいは外国へ行っておって長期に帰国しないというような者の場合には、裁判所としては検察庁が取り寄せに応じていただくことを強く希望しているわけでございます。ただ、それ以外の直接尋問できる証人の場合になりますと、これはかなりデリケートな問題でございまして、確かに検察の不起訴記録を見て証人尋問をやることも非常に有利な面がございましょうが、同時にまた、私どもは常に証人については直接主義ということを強く考えているわけでございまして、そういう点では、いわば警察等で話しましたことにとらわれずに、自由な立場法廷で発言することを尊重すべき意味合いもあるわけでございますので、その辺はかなりデリケートな問題であろうと思います。迅速と適正の問題というほどのことではないかもしれませんが、やはりかなりデリケートな問題でございますので、一がいに何でもかんでも取り寄せに応じてほしいとまでも考えるべきものではないのではないかというふうにも考えるわけでございます。一応さように私どもは考えております。
  27. 中谷鉄也

    中谷委員 大臣お尋ねをいたします。現在交通事故訴訟というものが、裁判所に非常に多数集中いたしております。それで、本来民事訴訟というのは、個人個人訴訟争い、そういうたてまえ、構造を持っていると思うのですけれども、しかし、このように交通事故が頻発をして交通事件訴訟が係属をしているということは、政府としても単に個人個人の問題としてこの問題を放置するというわけにはいかない。そういうような意味から、こういう交通事故に伴う損害賠償の問題について、政府として関心を示すことによってこのような施策をしているというふうな点について、大臣の御答弁をいただきたい。
  28. 赤間文三

    赤間国務大臣 お述べになりましたように、交通事故による民事訴訟、いわゆる損害賠償というケースは、非常に事件の増加に比例して多くなったことと思います。法務省としましては、そういうものができるだけすみやかに解決ができていくということを、私は心からこいねがっておるのです。ただ、前からお話しを聞いておりますが、民事の場合に、何か刑事のときの材料でももらえば訴訟が非常にうまく促進をするのじゃないかという御説のように拝聴いたしました。一応ごもっともに考えますが、また私どものある考え方からいうと、刑事民事は全然別のものでもあるし、いま刑事局長が言いましたように、そこは実況見分調書というようなものの再現の不可能な証拠書類については、民事裁判所の取り寄せの要求に応ずるというふうにすることが適当である、こういうふうに考えております。いずれにいたしましても、法務大臣としてはすみやかに適切な処置でどんどん片づくことを非常に希望をいたしておる次第でございます。
  29. 中谷鉄也

    中谷委員 昨日法務省に御連絡をいたしまして、たとえば訴訟促進という観点から本人訴訟等が非常に行なわれておって、それらの人たちは非常に困惑している。だから、たとえば法律扶助協会はこういうふうにいたしておりますとか、あるいは訴訟救助とか扶助の問題はこういうふうにいたしておりますとか、訴訟費用の問題についてはこのような予算を計上しようと思っておりますとか、そういう御答弁があると思ったのです。そういうふうなことなんですよ。申し上げておいたのですけれども大臣おいでにならないから、それらの問題の各論各論のところをお尋ねをしておったら、民事訴訟の不起訴記録の問題を大臣の口からお答えになったのですけれども、この問題は大事な問題ですし、何か御答弁についての御準備をいただいていないようですので、あらためて刑法の問題の際にお聞きをいたしたいと思います。  そこで、ただ一点だけ、大臣のほうから御答弁のありました不起訴記録の問題について、民事刑事は全く違うのだからという考え方、御答弁について、見解を述べておきます。と申しますのは、たとえば道交法の七十二条の一項などによって、交通事故が起こったときには、事故運転者は直ちに警察署事故発生を報告する義務を課せられておりますね。というふうなことで、特にいわゆる法律扶助協会の対象になるような事件については、代理人証拠収集に非常に困惑をするわけなんです。そういうふうなことがひいては泣き寝入りという事態を来たしておる。こんなことを単に民事刑事は違うのだというふうなことで放置をしておることは、私はたいへんな社会的な不満を生じておると思うのです。したがいまして、先ほども大臣おいでにならない前に私申し上げましたけれども、そういうふうな警察が調べたところの資料その他が、単に刑事事件として利用するだけではなしに、民事事件というのはそういうふうに政府も手伝いをして真相を究明するんだということでなければ、いろいろな賠償制度等をきめましても、保険による制度等をきめましても、国民は救われないということを私は申し上げたいのです。特に不起訴記録閲覧ということは、強姦事件とか収賄事件の不起訴記録閲覧するということになれば、名誉に関する問題も出てまいります。しかし、交通事故について名誉に関する問題というのは出てこないと思うのです。捜査密行というようなことで、被害者の救済がその面で非常な障害を来たしておるとするならば、交通事故の問題については不起訴記録を全面的に閲覧をさしていただく、こういうことで被害者の救済をはかっていただきたい。同時にいま一つは、訴訟促進に役立てていただきたい。そういうふうな通達を法務省がお出しになるまで、私は何べんでもこの問題については取り上げていきたいと思います。私のほうも十分にこの問題について調査をいたしますが、大臣のほうも、いま大臣が御答弁になったように、民事刑事は違うのだといえばもちろんそのとおりですけれども、現に被害者の救済というのは、国民的な課題であり、単に個人の問題ではないということだけは、私大臣のお口から御答弁いただけると思うのです。そうすると、民事であろうが刑事であろうが、政府がこの問題について重大な関心を持ち、被害者の救済に何らかの形において関心を示し、被害者にあたたかに手を差し伸べるということは、私は必要だと思う。その一つとして、この不起訴記録閲覧ということを申し上げているのです。そういう前向きのかっこうでこの問題をひとつ御検討いただけるかどうか、本日はこの点だけをお聞きしておきたいと思います。
  30. 赤間文三

    赤間国務大臣 お述べになりました点は、十分ひとつ研究させていただきます。
  31. 中谷鉄也

    中谷委員 それじゃこの問題についての質問を留保いたしまして、最高裁にお尋ねをいたします。  実は、各省については年度を限りまして定員の削減の問題が出ております。その問題について、最高裁については一体どういうことに相なっているのだろうか、この点についてひとつ——大竹委員のほうからお尋ねがあったのかもしれませんが、関心を持らますので、お答えをいただきたいと思います。
  32. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ただいま中谷委員からお話しのございましたように、内閣におかれましては、行政改革等の一環として、定員の削減措置について閣議の御決定があったように伺っておるわけでございます。最高裁判所なり、こちらの国会、そういういわば内閣から独立しておりますほうの機関につきましても、当初の案では、それに協力するように要請する趣旨のお話もあったやにも承っておるわけでございますが、私どもが閣議決定を拝見いたしました限りでは、裁判所についてはお触れになっていないように見受けるわけでございます。それから、文書によりますその協力の要請もないわけでございます。ただ、しかしながら、私どもいろいろ内閣と御連絡申し上げまする過程におきましては、内閣におかれても、最高裁判所なり国会においても、その趣旨を尊重すると申しますか、そういうことによって協力のできる範囲で協力することを御希望になっておる趣旨は、伺っておるわけでございます。ただ、しかしながら私どもといたしましては、現在裁判所は非常に職員の不足に苦しんでおる実情でございますので、おのずからこれに協力できる範囲とできない範囲がある。かりにそういう内閣のお話があろうとなかろうと、内閣でいろいろおきめになっております中には、非常にもっともな点もないではございません。一例をとりますと、報告等の整理というようなものがございます。それからまた、機械化による事務の合理化という問題もございます。こういう問題も、裁判そのものに関しましては、おそらくこういうことの適用の余地はないと考えますけれども、司法行政の面におきましては、たとえば私どもも下級裁判所から報告をとることもございます。そういうもの整理と申しますか、何らかの措置も考える余地はあろう。また機械化ということは、当然われわれとしても考えなければならない問題でございます。そういう意味においては、その精神はわれわれも十分みずから考えてまいらなければならない、かように考えておるわけでございます。
  33. 中谷鉄也

    中谷委員 大臣お尋ねをいたしますが、要するに、裁判所の現状というのは、裁判官増員あるいは書記官その他の裁判所職員が現状ではかなり増員をしなければ、国民訴訟促進という課題にこたえられない、こういう現状であろうと思うのです。だから、むしろ裁判所に限っては、増員的な要請というものがあることはあっても、いわゆる他の省のような減員などというようなことは全く翌えられれない状態だと私は思いますが、大臣の御所見を承りたいと思います。
  34. 赤間文三

    赤間国務大臣 私も全く同感でございまして、内閣で各省人員を減らすような場合にも、裁判所は別である、こういう取り扱いをすべきものである、かように考えております。
  35. 中谷鉄也

    中谷委員 質問が次から次へと飛ぶのですが、この機会に、大臣一つだけ次のようなことをお尋ねをいたします。  裁判官増員ということで、裁判官の給源をめぐりまして、本土の裁判官の充足さえも意にまかせない、これが現状であり、そのことで本案を審議をしておるわけです。ただ、いわゆる沖縄の裁判所については、ずいぶん裁判官が苦労しておられますけれども、問題がございます。そういう中で、沖縄の裁判官1ひとつこの機会に検察官のこともあわせてお聞きをいたしますが、沖縄の判検事について本土の判検事と交流するについて、いろいろな身分上のむずかしい問題が出てまいりますというようなことについて、どの程度御検討になっておられるか。これは総理府等においても、法務省にだんだんの話があるのだろうと思います。また、沖縄のほうからも、この問題については沖縄の弁護士会等においては関心を示しておらないとはいえない問題であります。この問題について、大臣どのようにお考えになっておられるか、この機会にお答えしていただきたいと思います。
  36. 赤間文三

    赤間国務大臣 先般も沖縄の弁護士会長が見えまして、いろいろな制度について意見の交換がありました。御承知のように、本土と沖縄は一体で助け合うていこうという原則があります。司法の上におきましても、われわれできるだけひとつ沖縄に応援をしていく。いろいろ司法官の試験とか、そういうものもできるだけの便直を与えるような方法を講じていこう。なおまた、沖縄の司法官の人の資質が向上されるようなことについても、何らかの方法を講じたらよかろう。あらゆる面から本土沖縄一体の原則裁判官、司法官の問題についても助け合うていこう。そういう話し合いをいたしたような次第でございます。
  37. 中谷鉄也

    中谷委員 司法試験の一体化、研修のための援助ということについては従来最高裁判所を含めて法務省等において努力をしておられることについては、承知をいたしております。問題は、前段申し上げましたように、身分上の非常に困難な問題がありますが、沖縄高等裁判所以下の裁判所における判検事は、どのような形になるのか、これは非常におずかしい問題です。沖縄の裁判官あるいは検察官が非常に努力しておられますけれども、単なる研修のための講師として沖縄に行かれるというのではなしに、直接沖縄の裁判所裁判官に本土の裁判官が行って、そうして実際に向こうで実務をおやりになるということについての要請も沖縄県民の中からかなりあると、私は沖縄へ行って、このからだで感じてきたわけであります。そういう問題については、非常にむずかしい問題でもありますし、今後この問題についてあらためてお尋ねをいたしますので、ひとつ御検討をいただきたいと思います。  質問を次に続けたいと思いますが、最高裁判所お尋ねをいたします。非常に実務的な問題になりますけれども、書記官のいわゆる給与の上での格づけの問題でございます。要するに、きわめて俗なことばで申しますと、役づきでない書記官、平書記官というふうなことばは適当でないと思いますけれども、われわれ裁判所に出入りしておる者はそういうことばを使いますが、そういう方については、いわゆる格づけでこれから上はとにかく昇進しないのだ、そういうふうな格づけが平書記官である限りはあると思うのですけれども、こういうふうな問題について、書記官の仕事というのは、話を聞いてみると、その書記官は首席だとか、主任だとか、次席だとか、何かそういう名前を聞きますけれども、しておる仕事というのは、われわれ弁護士の立場から見て、全く同じ仕事をしておるといってもいいと思う。ほとんど外から見て違う仕事をしておるようには見えない。端的にいうと、たまたますわっている机が少し違うのかぐらいのことなんです。そういうことで、いわゆる役づきでない書記官について頭打ちの状態になっておるということは、おかしいじゃないか、一般の行政職とは違うんじゃないかと私は思うのですが、この点について、総務局長さん、どのようにお考えですか。
  38. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 基本的、一般的には、中谷委員お話のとおりであろうと思います。ただ、しかしながら、書記官がすべて同じような仕事をしておるというわけにもまいらない場合があろうと思います。それは必ずしも行政的な監督いうことではなくして——それもむろんあろうと思いますが、それ以外にも、比較的むずかしい、重要な事件と、それからそれほどでもない事件という区別もあるわけでございます。裁判官の場合には、全く機械的に事件を配点するというのがたてまえでございますけれども、書記官の場合には必ずしもそうではございません。いまお話しのいわゆる主任書記官というものは、本来は率先してむずかしい事件の立ち会いに当たり、むずかしい調書の作成に当たるということも、当然に考えるべきことであろうと思います。しかしながら、そうは申しましても、やはり一般の書記官としても非常にむずかしい重要な仕事をしておるわけでございますから、できる限り格づけを上げていきたい、かように考えておるわけでございます。
  39. 中谷鉄也

    中谷委員 同じように、地方の裁判所の友人のほうから、これは最高裁判所に、書記官の全体の問題として、ひとつぜひ配慮せらるべきであろうということで、問題を出したいと思います。たとえば本来公判部に配属されているというのは書記官。ところが、ある地方の裁判所などによりますと、タイピストの方を除いて、いわゆる事務官の方が十八名ばかり簡易裁判所地方裁判所に配属されている。こういうふうなことで、まず一つ言えるのは、実際事務官というのは書記官の仕事に似たような仕事をしている。こういうような状態はきわめて不自然でもあるし、まず書記官が非常に少ないのだということに私は相なると思います。しかも公判部に配属されている書記官の頭打ちの問題も出ておる。これらの問題については、いかがでございましょうか。
  40. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 これはたいへんむずかしい問題もその間に含んでおるわけでございますが、一体書記官の職務を書記官がすべて全部自分でしなければならないか、多少その補助職を使うことはできないかということが一つの問題でございます。きわめて端的な例を申しますと、こういう席であまりこまかいことを申し上げて恐縮でございますけれども、たとえば送達事務というものは、当然に書記官の職務でございます。しかしながら、封筒を書くこと自身を書記官が自分で書かなければならないかという問題でございます。私どもとしては、書記官も、自己の責任において、自己の監督のもとで補助職を使うということは、差しつかえないのではないかと考えるわけでございます。そうなりますと、そのことは同時に書記官の地位を高め、また書記官の待遇をよくする道でもあるわけでございます。どうしても、そういう比較的つまらない仕事までやるということになれば、この格づけその他にも響いてまいるわけでございますので、私どもは、書記官というのは高度の法律専門職として格づけしてまいりたい。かような前提からまいりますと、補助者を置くことのほうが妥当である。それを事務雇いというようなもので置くのも一つでございましょうが、いろいろ待遇その他からまいりますれば、その方々を事務官に昇進させてあげるということが好ましい。こういうようなところから、いろいろな関係で現在裁判所にも補助的な職員として事務官がおるわけでございます。これはもう中谷委員つとに御承知のとおり、事務官が法廷に立ち会うということはあり得ないことでございまして、もっぱら事務の補助をしておる、かように御理解いただきたいわけであります。
  41. 中谷鉄也

    中谷委員 司法修習生の問題について大臣お尋ねをいたしたいと思います。本年度の司法修習生の判検事、弁護士に対する志望もほぼ確定をいたしたと思いますが、司法研修所の研修のあり方と関連をいたしまして、裁判官の志望が本年はかなり向きになったということについての御答弁を前回いただきました。検察官については、大臣としてどのようにお考えになっておりますか。実数等についての把握がおありでしょうか。そして、もしそれが検察官の給源として足らないとすると、その原因は一体どこにあるとお考えになりますか。
  42. 赤間文三

    赤間国務大臣 他の政府委員から答弁をさせます。どうぞお聞きいただきたい。詳細にひとり……。
  43. 川島一郎

    ○川島説明員 先に事務的なことを……。  今年司法修習生を修了いたします者の中で、検事になることを志望しております者は、五十二名だそうでございます。この数は大体いままでと同じでございますけれども、若干ふえております。裁判所のほうの判事志望者も、ことしは例年に比べまして幾らかふえておりますが、検察官のほうも幾らか志望者がふえているという傾向でございまして、これは前回裁判所のほうから述べられましたと同じような理由によって逐次伸びているんではないかというふうに考えます。実情だけ報告いたしておきます。
  44. 中谷鉄也

    中谷委員 実情の御説明がありましたが、検察官の志望についての実情、一体大臣としてはどのようにお考えになるか。その程度の志望ということは、一体どこに原因があるか、多いのか。少ないのか、この点について研修のあり方に関連をして御答弁をいただきたい。
  45. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は、希望としては、もっとたくさんな人が検察官を希望してくれればいい、かように考えております。しかし、これはやはり社会のいろいろな実情からいたしまして、そこの給料の問題とか、他の職業との比較とか、いろいろな点で私が希望しておるようにたくさんな人が検察官になろうという者が出てこないのじゃないか、かように考えております。
  46. 中谷鉄也

    中谷委員 将来の検察のために検察官志望の数、その推移、その原因等については、大臣のほうにおいて重大な御関心を今後お示しをいただきたい。この問題についても、機会を改めてお尋ねをさせていただきたいと思います。  そこで、最後に最高裁判所お尋ねをいたします。現在もなお司法研修所の寮は指ケ谷にあるのではないかと思うのですけれども、何か最近新しい寮の規則というものをおつくりになりまして、たとえば大学の刑法の先生などもその寮へお伺いをして、そうしてそこで刑法等の話を聞くことも寮の規則によって禁止をされているというふうなことを聞きました。この問題について、ひとつ寮のあり方、そういうことが実際事実あるのかどうか、こういうようなことについて、ひとつお答えをいただきたいと思うのです。ことに司法修習生といえば、ここ数日前の新聞によりますと、厚生省の国立公園の局長さんがおやめになって、そうして修習生として新しく門出される、非常に私はけっこうだと思うのですが、そういうふうに、平均年齢をとりましても二十八歳、もう大学を卒業して数年たっている。世帯持ちの者もおる。そういうふうな人たちについて、寮の自治ということでまかしたらいいじゃないか。何か寮の規則によって、大学の先生が来て刑法の話をするのもそれはまかりならぬのだ、そういうことであるとするならば、委員の岡澤さんなどと私は話をしているんですけれども、たとえば修習生出身の弁護士であるわれわれが行って、後輩の修習生の諸君と寮でいろいろ話をしようじゃないかというふうなことを考えておっても、門前払いを食わされるだろう。おそろしくて寮のほうに寄りつけないだろうという問題もあると思うのです。一体こういうようなことが、寮のあり方、司法修習生の研修のあり方として正しいのかどうか、いかがでございましょう。
  47. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 前もってお断わり申し上げなければなりませんのは、司法研修所は確かに最高裁判所の所管ではございますが、一応事務当局等からは独立いたしまして、教官会議等もございまして、司法研修所の自主的な判断によっておやりになる場合が多いわけでございます。そこで、その点詳細に私聞いてまいっておりませんので、詳細なことをお答えできないわけでございますが、まずこの寮の点ははっきりいたしております。現在は松戸のほうに新築されまして、りっぱな寮ができておるわけでございます。その点だけははっきりお答えできるわけでございます。  それからその寮の規則の点でございますが、これは私は全然いま聞いておらないわけでございます。ただ、しかしながら、寮がございます以上、ある程度の規則ができ、またある程度のそこに守るべき準則が定まるのも、当然であろうと思います。しかしながら、いま中谷委員からお話のありましたように、単なる学生でもないわけでございますから、ある程度おとなの扱いをすべきことも、当然でございます。しかし、また他面から申せば、国家から一応の給与を受けて勉強をしておる身分でございます。純然たる学生とは、その点ではまたやや違う面もあるわけでございます。そういうことをいろいろ勘案いたしまして、合理的な納得のできる準則ができ、それに基づいて行なわれることが好ましいのであろうか、かように考えておるわけでございます。
  48. 中谷鉄也

    中谷委員 終わります。
  49. 永田亮一

    永田委員長 山田太郎君。
  50. 山田太郎

    ○山田(太)委員 まず最初に、裁判所にお伺いいたします。先日の委員会で総務局長のほうから御答弁がありましたが、最初に裁判官の人事のことを一点お伺いしておきたいと思います。  先日の御答弁の中で、全くミスがないとは言い切れませんがというお話もあって、大体の御説明は承知いたしましたが、このような場合があります。先日も一言触れておりましたけれども裁判官の中でたとえば常置委員会あるいは最高の首脳の方の一人からきらわれたりあるいは感情的な問題があったりして、不遇に置かれる一ただ一人のことだけで私が申し上げるわけではないのです。そのようなことが他に例があってもいけないし、また裁判官だけの問題でもないと思いますので、そういう方の救助、ということばは適当ではないでしょうけれども、意見なりあるいは上申なり、そういう問題を救うてあげる、そういう制度あるいは方法があれば、教えていただきたいと思います。——言う意味がおわかりにならぬようなお顔ですが、もう一ぺん言いましようか。裁判官の中で、感情的な問題やあるいはたとえばきらわれているとか、そういうことで不遇に置かれている裁判官、そういう方を救う方法なり制度なり、ただ裁判官だけの問題じゃないですけれども、それがありますか。なければ、将来どのようにしようかという点を御答弁願いたいと思います。
  51. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 いまお尋ねの問題は、裁判官中心の問題と承ったわけでございますが、裁判官につきましては、お話しのような特別の制度というものはないように理解しております。結局これは所属上司を通じて申し出るということによって、最後には最高裁判所裁判官会議の決定をまつ。これは繰り返し申し上げておりますように最高裁判所裁判官会議は十五人の裁判官の合議体でございますから、そこで出ました結論は相当客観的なものになるはずであろうと思います。一人が反対したから実現しなかったというお話もございました。あるいはそういうこともあるかどうか私よく存じませんが、それは一人が反対された結果、他の十四人の方がいわば説得されて、それに賛成されたせいであろうと思います。もし一人だけ御反対になった場合ならば、それは実現したはずでございますから、その点、ほかの省でたとえば大臣なり次官が単独でおきめになるのと違いまして、裁判所の場合は十五人の裁判官の合議体ということによって客観性が保たれているということが、実情ではないだろうかと私は考えております。
  52. 山田太郎

    ○山田(太)委員 いまの御答弁は、最高裁判所においてのことだと了解いたします。その前の高等裁判所においての問題を私は申し上げたわけですが、そのような場合、そういう人を救助する方法はあるかないか。それについてお伺いしておるわけです。
  53. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 その点も先般申し上げましたとおり、たとえば高等裁判所の総括裁判官の決定につきましては、高等裁判所側の意見を聞くことになっておりまして、そして上申は受けますけれども、その決定は最高裁判所がするわけでございますから、それによって救済される。実際には高等裁判所の上申どおりに行なわれなかった例は、きわめて例外的の場合以外にはないように聞いております。しかし、絶無でもないように聞いておるわけでございまして、つまり高等裁判所の言いなりになっているわけではございませんで、最高裁判所が最終的な決定権を持っておる、かように御理解いただきたいと思います。
  54. 山田太郎

    ○山田(太)委員 どうもポイントが少しそらされたのか、それたのかわかりませんが、そういうことがないとも言えないし、あるとも言えないようなことの御答弁になってしまいますが、それを救助していく方法、あるいはその方法を講ずる制度があるかどうかということをお伺いしておるわけです。
  55. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 裁判所以外の機関で救助を受けるということは、ある意味では司法権の独立に対する干渉にもなるということでもございましょうし、現在はないと理解しております。
  56. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そこで、司法権の内部においてそれを救済する制度というものを考えていただきたい。最後に、要望になるようでございますが、その点についてはどうでしょう。
  57. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 非常にむずかしい問題でございますので、十分慎重に検討いたしたいと思います。
  58. 山田太郎

    ○山田(太)委員 十分慎重に審議してという御答弁を頼みにして、それもいついつまででもなしに、どうか早急に審議をやっていただきたいと思います。この点はこれで打ち切ります。  そこで、この参考資料でございますが、先日先輩の大竹委員からも質問ありましたが、この二ページです。「昭和四十二年六−十一月における借地非訟事件の新受・既済・未済件数」この借地非訟事件の問題ですが、非常に数が少ない、なぜ少ないのだろうかという質問があったように聞いております。この制度を設けるときには、これくらいは件数があるだろうという見込みのもとにこの制度をつくられたはずです。それはどのような方法をとっていかれたのでしょうか、お伺いしたいと思います。
  59. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 これは前国会の際に御説明申し上げた事項になるわけでございますが、実はこの借地事件裁判所の管轄に入りまして、事件がどうなるかということをいろいろな形で推計をしてみたのでございます、しかしながら、その推計が実にむずかしいわけでございます。御承知のとおり、これの対象になります事件は、典型的に申し上げますると、たとえば借地権の上に建っております建物を借地権とともに譲渡する、その場合に地主さんがなかなか承諾をしてくれないという事件、それから借地の上に建物がございまして、それに増築や改築をしてはならないというような特約があるけれども、増改築をしたい、それにもなかなか応じてくれないという事件です。その他若干ございますが、大きなものはそういうものでございます。そういう事件件数というものは、いわば今後発生するものでありますから、非常につかみにくいわけでございます。その際に、一応私どもが計算の根拠にいたしました問題は、まず日本でおよそ建物の増改築がどのくらい行なわれておるであろうか。この件数は、建設省の計画局でおつくりになっております資料ではっきりした数字があるわけでございます。それからまた、建物の譲渡というものがどのくらい行なわれておるであろうか。これはおそらく一〇〇%正確とは申せないかもしれませんが、自治省の税務局の府県税課というところでお調べになったものがあるわけでございます。まあ税の関係でございますから、これが実数と完全に合っておるかどうかという問題もあろうかと思いますけれども、まずかなり正確な数字でございます。この増改築あるいは譲渡の数というものは、一方でわかっておるわけでございます。それから全然それとまた別個に、およそ日本で借地の上に建物がどのくらい建っておるか、つまりいわゆる借地率というものも、大体はっきりしておるわけでございます。ただ、その二つを結びつけまするその借地の上に建っておる建物の譲渡の数、あるいは借地の上に建っておりまするものの増改築の数、こういうものの数は、いままでの内閣その他の資料にも、何もないわけでございます。そこで、しかし、普通はそれがかけ合わせたものであろうというようなことで、それを二つかけ合わせまして、そして大体借地の上の増改築なり、譲渡の数はどのくらいであろうかというふうな推定をしたわけでございます。この数がすでに推定でございます。のみならず、その推定に基づきまして、さらに事件裁判所にどのくらい出るであろうかということになりますと、これはいわゆる紛争発生率ということになろうと思います。地主が理解のある方であればどんどん許可もするでしょうし、あるいは多少権利金を取れ、手数料を取れというようなことで簡単に話のつく場合も多々あるわけで、お互い同士で話がつけば裁判所に来ないわけでございますから、紛争発生率ということになりますと、もう完全な腰だめになるわけでございます。その点が私どもとしては非常に苦しいわけでございますが、その腰だめのパーセントをあるいは二〇%と考え、あるいは五%と考え、いろいろ推計をしたわけでございます。しかし、いろいろな情勢から、その五%というような推計で件数を出しまして、それで増員等の数を出した、こういうことになるわけでございます。先般大竹委員の御質問に対しまして、私説明いたしました点がやや正確を欠いた点があろうかと思いますが、その五%の発生率という点から見ますと、この数字は下回っておるわけでございます。ただ、私どもが五%と考えましたのも、これはやはりおのずから世間にそういうことが知られていく普及度というものがあるので、まずそれを三年間見て、三年後には五%の発生率があるであろうというところから、三年計画で増員等の手配をしたわけでございます。そういうふうな観点からいたしますと、そう違わない数字になっておるわけでございます。ただ、初年度に五%出なかったという意味では、その数字が少ないということになろうかと思います。それからもう一つ、きわめて常識的な意味で、もう少し裁判所に来そうなものじゃないかという感じといいますか、そういうような計算的な数字ではなしに、案外出ないものだなという気持ちがお互いにあるものでございますから、そういう意味でそういう表現になってきておる、かように御理解いただきたいわけであります。
  60. 山田太郎

    ○山田(太)委員 いまの御答弁を聞いておりますると、予定どおりであったようにも聞こえますが、もう一点は、やはりちょっと期待にはずれて少なかったというふうにも聞こえる両方の御答弁があったように思います。そこで問題は、この借地非訟手続の問題が周知徹底されてないという点が、たいせつな問題ではないかと思います。その周知をはかる意味において、どのような方法を講ぜられたか、お答え願いたいと思います。
  61. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 こういう新しい制度ができました場合に、その周知徹底の仕事というものがどこの仕事であるかという点については、私は各方面でやるべきものであろうと思うわけでございます。つまり裁判所というのは、あくまで裁判をする役所でございますので、その裁判所がそういう面にあまりに深入りいたしますと、時に誤解に近いことを受ける場合がなきにしもあらずでございます。と申しますのは、たとえば一番徹底してやるといたしますれば、どんどん窓口に相談にいらっしゃい、それは非訟事件で出せます、これは調停で出しなさいということを教えてあげるところまでやれば、いわば一種の法律相談的なところまでやるならば、これは一番広報活動として徹底するわけでございます。しかしながらそういうことはこれはいろいろ問題がございまして、私どもとしては家庭裁判所ではある程度の活動をいたしておりますけれども、普通の裁判所では、それにはおのずから限度がある。そうなりますと、おのずからこの広報活動としてはやはり新聞に掲載してもらう、ラジオで放送してもらう、テレビで放送する、こういうことにならざるを得ない。一番基本的なのは官報でございますが、ただ、御承知のとおり、官報にはたびたび出しましても、なかなかお読みいただけないわけでございます。それから新聞の場合にも、これは広告をするという性質のものではございませんので、結局たびたび記者諸君にお話をして、そうして書いてもらう。たとえば社会面のトップあたりに書いてもらいますと、非常な効果があるわけでございます。ところが、そのタイミングもなかなかむずかしくて、記事の多い日にたまたま記者会見をいたしますと、全然載らないわけでございます。なるべく記事の少ないときに記者諸君に話しまして、こういうことを書いてもらうというようなこともいろいろくふうはいたしておるわけでございますが、なかなかそういう点であるいは十分でない点があろうかと思います。しかしながら、同時に当然、こういう制度を設けられた法務省におかれまして、あるいはもっといえば内閣におかれましても、十分活動をやるべき筋合いのものであろうと私は考えておるわけでございます。裁判所も、訴訟手続のことでございますから、裁判所として行き過ぎにならない範囲でいろいろな広報活動をやってまいっておる、これが実情でございます。
  62. 山田太郎

    ○山田(太)委員 その御答弁を願った中で、新聞記者諸君にお話をして、そして広報活動の一助にしようというお話もありましたが、この制度ができて以来、私の見落としもあると思いますが、私は二度は見ております、その後新聞に載ったのは。ただ、そこで大切なことは、先ほどの御答弁にありました内閣の広報活動においてもこの点を十分応援をしてもらいたいという御答弁ですが、その点についてはどのような方法を講じていらっしゃいますか。
  63. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 最高裁判所として内閣にどのような連絡をしているかということでございますが、そもそもこの法律が制定になりました経過は、内閣、直接には法務省でございますが、法務省に設置されております法制審議会で議決になったものでございます。法制審議会がいわばイニシアチブをとっておやりになったことでございます。そうして法務省においてこの法案を御立案になり、そして最終的には国会がおきめになったものでございます。その間、むろん裁判所としてもいろいろ関係がございますので、意見をいろいろ申し述べてはおりますけれども、制定の経過は、そういうことでございますから、内閣なり国会におかれましては、十分御理解になり、いろいろ広報活動をおやりになっていただいておるもの、かように考えておるわけでございます。
  64. 山田太郎

    ○山田(太)委員 私のお伺いのしかたが悪かったかと思いますが、広報活動の具体的な面、それはどのようなことをしてもらっておるかということをお伺いしたのですが……。
  65. 川島一郎

    ○川島説明員 この法律法務省で立案をいたしましたので、私のほうからお答え申し上げたいと思いますが、この法律の所管の局でございます民事局におきましては、やはり先ほど裁判所お答えになりましたように、新聞記者に対しまして何回かレクチュアを行ないまして、その解説記事を新聞に載せてもらっております。それから官報などにも解説を載せております。そのほか、弁護士会の方面のお集まりのときとかあるいは商工会議所の方々がお集まりになるとかというようなときに、法務省に対して係官を派遣して説明をしてもらいたいというような要請がございます。そういう場合は、できる限り係官を派遣いたしまして、法律の趣旨を説明するというふうにいたしております。そのほか、これは役所としての活動ではございませんが、雑誌などに改正法律のいろいろな解説というものが載ります。それによってかなり、少なくとも法律関係者には周知されておるというふうに考えておるわけでございます。まあ実際の件数が伸びないのは、何といってもまだ十分に国民の間になじんでいないためではないかというふうに考えております。
  66. 山田太郎

    ○山田(太)委員 私がここでなぜ二度、三度とお伺いするかと申しますと、直接多くの大衆に触れておる機会が多いものでございますから、当然この借地の問題ということもたくさん聞いております。そういう方々が、この借地非訟の手続という問題は、全く知らない人がほとんどといってもいいくらいです。先ほどの御答弁によりますと、法律関係の方は周知徹底はできておると思いますということですが、それは当然なことだと思います。けれども、一番大切なことは、この借地問題を起こす大衆の側においてこれを知っていなければ、そこに周知されていなければ、この借地非訟の手続が全く生きてこない、効果発生しないということにもなっていく。この現実の姿がこの数字にあらわれている。これは確かなことです。事実知らないです。そこにおいて、もう一歩、竿頭一歩を進めて、これは裁判所のほうでおやりになる仕事ではないかもしれませんが、しかし、政治を行なう政府立場としてどのような方法を講じてでも、たとえば隣組に配るというような方法もありますので、そのような方法なり、あるいはいかなる方法にしても、実際にこの借地事件の問題を起こす大衆に周知されないと意味がない、全く意味がないといってもいいと思いますが、その点を考慮していただきたいと思いますが、どうですか。
  67. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 大衆に十分周知徹底させなければならないという点については、全く異存がございません。
  68. 山田太郎

    ○山田(太)委員 法務大臣にお伺いしますが、いまの問題について法務大臣の御意見を——いますぐ思いつきにならないとは思いますけれども法務大臣においてもその点を十分考えていただきたいと思いますがどうですか。
  69. 赤間文三

    赤間国務大臣 寺田君がお答えいたしましたように、十分ひとつ周知徹底方に努力をしていきたい。ひとつあらゆる機会をつかまえてその趣旨が徹底するようなPRと申しますか、周知の方法を考えてみたいと存じます。
  70. 山田太郎

    ○山田(太)委員 実際の借地の事件というのは、非常に多いのです。これはこういう表に載る数どころの問題じゃないのです。これが何十倍どころじゃないと思いますが。その方々に非常に大切なことだと思いますから、いまの局長さん、それから法務大臣答弁をいただいたわけですが、それは時を改めて、このようなことにしたんだという結論を聞かして、いただくことを楽しみにして次の問題に移りたいと思います。  そこで、調査官の問題に移らしていただきます。簡単にお尋ねしたいと思いますが、試験観察制度というのがありますが、この少年の試験観察制度について、法務省裁判所と意見の食い違いがあると聞いております。なぜならば、試験観察期間が非常に長いために、これでは裁判所としての範囲を逸脱しておるんではなかろうかというふうな声も一、二聞いておりますがこの点について法務省のほうとしての御見解はどうでしょうか。
  71. 川島一郎

    ○川島説明員 実は、保護関係の担当者は、きょうそういう御質問があるのを承知しておりませんでしたので、ちょっと参っておりませんが、早急に呼び寄せることにいたしたいと思います。
  72. 山田太郎

    ○山田(太)委員 いいです。では、もう一点お伺いしておきます。現在の試験観察制度は、どういう点において成功しておるか、どういう点において失敗であるか、一応のデータも集めてはありますがその点について御答弁願いたいと思います。
  73. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 お話しの点も実は私の所管ではございませんので、御説明があるいは正確を欠く点があれば、まことに申しわけないわけでございますが、試験観察制度は、御承知のとおり、少年法の二十五条の規定に基づいて行なわれておるものでございますので、私どもとしてはこれは家庭裁判所調査官の権限でやるというふうに考えておるわけでございます。そうしてその試験観察の成果があがっているかどうかということは、若干のデータも出ておることは出ておるわけでございます。すなわち、試験観察を行ないました結果、その最終的な処分をする際に、比較的寛大な処分にとどめ得るものが八割近くあるということが、一つのデータとして出ておるわけでございます。ただ、しかしながら、こういう点も、これはそもそも試験観察に付するもの自体がどういうものであったかということの比較から出発いたしませんと、試験観察をした結果、非常に改善されたかどうか、その試験観察の過程において成果があがったかどうかということは、なかなか数字だけではきめられない問題であろうかと思います。こういう点は、ただ私どもとしては、家庭裁判所裁判官なり調査官の体験からして、これによって成果があがっておる、かように考えておるわけでございます。
  74. 山田太郎

    ○山田(太)委員 調査官の問題は通告していなかった問題ですから、これは御答弁の方がいないのは当然だと思います。  そこで本題の執行官の汚職の問題に入りたいと思います。先日の新聞にもまた再び執行官の汚職事件が出ておりますが、東京の都庁の汚職ともひとしいとさえ言われておりますこの執行官の汚職でございます。まず最初に、この執行官の汚職について、これはお話ししてありますから、当然お調べになったと思いますが、ここ十年来のデータについて御答弁願いたいと思います。
  75. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 まず、お答え申し上げます前に、裁判所の職員であります執行官について、たびたびそのような不祥事件が起こりましたことは、私どもとしてまことに遺憾に考えておるわけでございます。その点を前もってまずおわび申し上げまして、それからいまお話し件数の点に入りたいと思いますが、件数につきましては、三十四年から四十三年までの十年間に、合計三十二件発生いたしております。そうして有罪になりましたのが、二十五件でございます。それから現在係属中のものが七件でございます。ただ、これはいわゆる執行吏の代行というようなものも含んでおるわけでございます。
  76. 山田太郎

    ○山田(太)委員 昭和四十三年二月二十九日現在、執行官数は三百六十名だと承知しておりますが、三十二名という数は、その数に比較すると約一割にも匹敵する数字になります。執行官の一割が汚職に関係した数字にひとしくなってくる汚職の渦が巻いておると言ってもいいほどです。これは事件となった数字だけでございます。この前も一言申し上げましたように、何と言っても、現在の司法権に対する民衆の信頼といいますか、裁判官に対する信頼といいますか、これは非常に絶大なる信頼があると言ってもいいほどです。検察官に対する信頼も、これももちろんですけれども、何と言っても、司法権に対する信頼というのは、一番いま確立されております。国家公務員あるいは地方公務員、これは国会議員を含めて大衆の信頼を失いかけておる現状になっております。その信頼の厚い司法権の中において、一番信頼をそこのうておる現状があるのは、この執行官の汚職の問題でございます。この執行官の汚職の問題は、司法権の信頼を確立する意味からいっても——現在の制度からいうならば、どうしても裁判所の責任になってくるわけですから、裁判所立場として、現在どのような監督制度が行なわれているのか。その監督制度に欠陥があるのじゃなかろうかということも考えられるわけですから、それについて御答弁を願いたいとともに、この汚職を起こしておる三十二名の住所地といいますか、それは収入の多い都会地のほうが多いのじゃないかという気もするわけです。したがって、執行官の収入、それからこの事件が都会地において多いという——これは私の予測ですけれども、多いのじゃないかという気がしておりますが、それに対する御答弁と、そしてこれに対する監督制度をどのようにやっておるのかという三点を、御答弁を願いたいと思う。
  77. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 まず、執行官の汚職の発生地でございますが、これはかなり全国にわたっておるわけでございます。ただ、くれぐれも御理解をいただきたいのは、これは十年間の数字でございまして、先ほど現在の執行官三百六十人の約一割だというお話でございまして、確かに三百六十人で三十数名とすれば一割になりますけれども、これは十年間でございますから、相当にこの人は入れかわっておるわけでございますので、その点はひとつ御理解をいただきたいわけでございます。そうしてその発生地の点は、必ずしも大都会ばかりではございません。東京のような都会地の例もございますし、大津のように比較的小さなところ、あるいは御承知の沼津のような支部の所在地というようなところもございまして、一がいに大きなところ、小さなところということでもないように見受けられるわけでございます。  それから執行官の最近の収入でございますが、これは御承知のとおり、現在の制度では、原則として年間六十数万円の手数料の収入がない場合には補助金が支給されるということになっております。いなかのほうでは、この補助金によっている人たちも若干いるわけでございます。それに対しまして、都会では普通それを上回っておるわけでございまして、たとえば名古屋とか福岡というようなところでは、二百万をこえておりまして、三百五十万というようなところもあるわけでございます。東京都あたりですと、二百万前後ということになっております。低いほうでは補助金ぎりぎりのところもあるわけでございます。そういうふうに広く分かれておるわけでございます。  それから執行官の監督の問題でございますが、これまた特に強調して申し上げたいわけでございますが、御承知のとおり、先般国会で執行官制度の改革と申しますか、執達吏制度の改革と申しますか、つまり従来のいわゆる執行吏制度から執行官制度に切りかわったわけでございます。そうして四十二年の一月からこれが発足したわけでございます。私どもとして、これはある程度言いわけがましいことではございますけれども事件は確かに四十二年一月以後にも発生しておりますけれども、そのうちの若干の者は新法施行前の者でございますし、特に新法施行後執行官に任命されました者の中からは、そのようなものは一名も出ていないわけでございます。執行官に何とかしてりっぱな者を得て、そうしてそういう事故の起こらないようにということで改革がなされましたねらいの一端は、その限りでは達せられておる。ただ、たまたま従来の執行吏も、これをいわゆる首にするわけにはまいりませんので、原則としてまだそのまま執行官に身分を承継してまいりまして、そういう人たちの中から事故が起こっておるということでございます。それから監督の点でございますが、執行官法が制定されました機会に、最高裁判所では、裁判官会議の決定によりまして執行官規則というものを設けまして、これの第四条以下で監督に関する事項を規定いたしたわけでございます。簡単に申し上げますと、地方裁判所裁判官の中から監督官というものを指名いたします。さらに、一般の職員の中から監督補佐官というものを指定するわけでございます。そうしてなおその監督補佐官の補助をする者も設けるように、これは事務総長の通達で定めておるわけでございます。また、監督に関するやり方につきましては、いろいろその執行官規則の第五条で具体的に規定しておるわけでございまして、もしお尋ねがございますればその点を御説明申し上げますが、一般的にはさような監督方法がとられておる、かように御理解いただきたいわけでございます。
  78. 山田太郎

    ○山田(太)委員 これも局長さんが御存じないのは無理もないかとも思いますが、現地における執行官と、それからそれに関係する債権者あるいは債権者等々の問題の実情というものは、御存じないと思います。また数日中に、あまりにも私の耳にする問題が多いものですから、これは相当広い範囲で現地へ調査にも行きたいと思っております。決してこのような数字ではないということは、一言申し上げておきたいと思います。  そうしてその監督官あるいは監督補佐というのですか、あるいはその補助をする者、そのような御答弁でございますが、この監督官は裁判所長が兼任しておる。裁判所長が兼任して監督官になっておって実際の執行官に対する目の届くはずもないわけですし、ただ事件が起きたときに一応報告を聞く程度になってしまっております。また、この監督補佐官とか監督官補佐とか、どういう正式の名称か、官が上につくのか下につくのか知りませんが、その問題についても、やはり事務長というのですか、その方がついていらっしゃるようです。これにおいてはただ名前だけ、肩書きだけは与えてありますが、事実においては、このような制度があるというだけであって、実際上の監察の力というものは全く発揮してないと言ってもいいような状態であります。局長さんはそれを否定されるかもわかりませんが、私からその資料は必ずお知らせしたいと思いますが、実情はそうなっております。  そこで、私の結論として申し上げたいのは、いまの監督制度では、あるいはいまの監察制度では、とても全部にわたっての監察というのは行き渡ってないということをまず前もってお話し申し上げて、それに対する対策——これはただの意見ではございますけれども、この監督官というものを、司法権の信頼をどうあっても確立し抜いていく、そこなわないためにも、裁判官の専任制、あるいは全国高裁のハブロックに一人の専任の監督官を置くとか、そのような問題についてはどのようにお考えになりますか。いま兼任になっている、ほんとうの役に立っていないということは、実情です。それが実情である以上は、これをそのままにしておいたのでは、どうしても大衆が迷惑する、法のもとにおいて公平であるべき大衆が迷惑するわけですから、それについてお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  79. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 司法権を行使する者として、裁判官はもとより、その他の裁判所職員の諸君においても、世間から非難を受けるようなことは全くないにもかかわらず、ひとり執行官にのみかような事故が出ますことは、私どもとして、冒頭に申し上げましたとおり、まことに遺憾に思うわけでございます。そうして、これは前回執行官法制定の際にも、この法務委員会でも相当に御論議のあった問題でございます。当時、わざわざ執行吏役場の視察までしていただいたような状況でございます。そうして相当いろいろ各方面から御検討いただき、その前提としては、もとより法務省におかれて、法制審議会で相当慎重な討議がなされたわけであります。国会でもかなり慎重な御議論があったわけでございます。いろいろくふういたしました結果、現段階では一応そのような制度でやっていくよりほかあるまいというのが各方面の一致した意見でございまして、そうして運用に当たってまいったわけでございます。その上でもし事故が起これば、これは私ども裁判所の監督上の責任として、十分この監督を強化しなければならないということはお話しのとおりであろうと思います。現在でも、規定の上では、先ほど省略いたしましたけれども、たとえば監督官はみずから「執行官の記録、帳簿若しくはその保管にかかる金品について調査し、又はその調査のためこれらの物件を提出させること。」あるいは「職務を執行する現場に臨み、その職務の執行を監察すること。」であるとか、あるいは「一定の事項を指定して報告をさせること。」であるとかいうようになっておりまして、そうしてその報告を受けておるわけでございます。また、年数回は必ず行かなければならないというような事務総長の通達もあるわけでございます。そういうようにしまして、その結果の報告等を通じて私どもとしては一応外形的には監督を行なわれておるものと考えておったわけでございます。しかしながら、かように事故が起こりました以上は、さらに一そうその監督を強化するということにつきましては、全く同感でございます。ただ、具体的な方法につきまして、いま山田委員からお話のございました高等裁判所に配置するということが適当であるかどうかということについては、なお検討の要があろうと思います。地方裁判所に所属する職員でございますので、まず地方裁判所にしかるべく監督を行なう者を置く。それにつきましては、おのずから裁判所の規模にもよるかと思いますけれども、専任の監督官、監督職員というようなものを置くことについても十分検討しなければならない、かように考えておるわけでございます。
  80. 山田太郎

    ○山田(太)委員 時間もまいりましたが、いまの御答弁によって地方裁判所に専任の——その次がちょっとわからなかったのですが、一言御答弁してください。
  81. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 監督職員と申し上げたわけでございます。これは別にそういう名称でつくると申し上げておるわけでございませんで、監督をすべき職員という趣旨で申し上げたわけでございます。
  82. 山田太郎

    ○山田(太)委員 地方裁判所に専任の監督の職員を置くように検討したいということで、この問題はきょうは終わりたいと思います。  そこで、最後に一つだけお伺いいたしたいのですが、昨日法務大臣からの御答弁の中に、私が法務大臣にお伺いした青梅の友田地区への刑務所の移転の問題について、西武鉄道と現地の方との間にかわされている覚え書き、契約書のほかにもう一通覚え書きをかわしてありますが、その覚え書きについての御答弁はついになかったわけです。この覚え書きはちゃんと署名捺印をしてありますし、両者を拘束する力はあるはずです。それを勝尾局長は承知しておった。しかし、いまその所有権は新都市開発センターのほうに移っておるから、西武鉄道を拘束する力はあるけれども、新都市開発センターは拘束しないという御見解かもしれませんしかし法務省としまた法務大臣として、国民を守り国民の権利を擁護する立場からいっても、それを承知しておりながらその契約を締結する、そこに純粋の法律論の立場でなしに、法務大臣としての国民の利益を守っていき国民を守るというその立場からいっても、その点はどうかという疑義が残るわけですが、法務大臣としての御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  83. 赤間文三

    赤間国務大臣 法務省といたしましては、やはりいまお述べになりましたように、国民の利益を守り、またりっぱな仕事をやっていかなければならぬ。人から疑いを受けたり、あるいは国民に不利益になるようなことをやったり、国の損になるようなことをやるということは、もう一番私の省としては厳禁をいたし、あくまで正しい、明るい方法で事件を処理していきたいという考えを持っております。それで、たとえば覚え書きの話も、私は具体的にその覚え書きの内容は知りませんが、常に正しい、明るい、何といってもほんとうに国民のため、国のためになる、だれが聞いても間違いのない正しい明るい行政といいますか、措置をやっていくことをはっきりと申し上げておきたい、かように考えております。
  84. 山田太郎

    ○山田(太)委員 では、これで終わります。
  85. 永田亮一

  86. 岡沢完治

    岡沢委員 私は、理事会でお約束しました時間は二十分でございますので、その範囲お答えをいただくように簡潔にお願いいたします。  最初に、裁判事務の合理化に関連してでございますが、私から申し上げるまでもなしに、裁判の迅速化ということは憲法上の要請でもございます。ところが一方で、かつて裁判官は化石化しているというようなことわざも流行したこともございますし、実際に裁判所の建物等を見ましても、赤れんがで明治調ふんぷんたるものがございます。裁判官本来の事務であります裁判事務については、かなりきびしい責務意識をお持ちで、優秀な裁判官が多数おられることは認めますけれども、一方で司法行政事務と申しますか、特に裁判官の事務環境その他に、私はかなり他の官庁と比較いたしまして建物に入った一瞬でも感ずるくらい非能率化と申しますか、非能率なままで放置されている部面がありはしないかというふうに考えますので、総務局長の合理化についての御見解を聞きたいと思います。
  87. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 先ほど中谷委員お尋ねの際にも申し上げましたとおり、私どもとしても事務の機械化による合理的な処理ということについては、やはり十分検討してまいらなければならないと考えております。一例を取り上げますと、例の電子計算機がございますが、きわめて小型のものではございますけれども、昨年から導入いたしまして、統計事務にはこれを活用いたしておるわけでございます。それから、話がややこまかくなって恐縮でございますが、たとえば複写機というようなものにつきましては、最近は非常な改善が加えられておりますので、そういう最新式のものを全国の裁判所に配付いたしておるような状況でございます。なお、そういう問題全般につきまして、私どもの事務総局の中で一つの研究会を設けまして、先般来いろいろ機械化についても検討をいたしておるような実情でございます。
  88. 岡沢完治

    岡沢委員 ただいま問題になっております法律案におきましても、裁判の適正化、迅速化、ということが提案理由にしるされております。確かに裁判官をふやすこと、裁判官以外の裁判所職員をふやすことも必要だと思いますけれども、人の問題ですから、そう簡単にできるわけはない。そういう点でいま総務局長から一、二のアイデアの御披瀝はございましたけれども、よくいわれますように、裁判所はいわゆる所管大臣を持たないということで、予算要求の面で非常に御遠慮なさっているのではないか。私は力にかわるに法の支配というのが民主国家の基礎であるというふうに感じておりますだけに、防衛費予算に比べてあまりに少ない司法関係予算ということが、単なる裁判官の御遠慮ではなしに、結果としては国民の大きな損害を招いていると思います。というのは、裁判の迅速化が現実に実現されておらない、あるいはまた場合によっては裁判官への信頼が裏切られるというような面でも、この合理化のおくれが一因をなしている場合もあるのではないかというふうに感じますので、人員増以外の点での合理化あるいは科学化という点についても、ぜひ今後とも鋭意くふうを重ねていただきたいと思います。  簡単なことでございますけれども、ことしの七月から交通反則金制度が採用されます。それによって当然交通事件事件数が減ると思いますが、それと結びつけて裁判官の配置がえというようなことについて、どういうふうにお考えになっておるか、お聞かせいただきたいと思います。
  89. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、ことしの七月からいわゆる反則金制度が施行されまして、その関係事件警察どまりになり、裁判所には参らないことになるわけでございます。これがどのくらい裁判所へ来なくなるかということは、やはり見通しでございますので、先ほど来問題になりました借地事件と同様、一つの推定的要素が生ずるわけでございます。ただ、このほうは法律ではっきりこの種の事件となっておりますので、一応件数の減の計算はできるわけでございます。ただ問題は、反則金で警察で処置された場合に、それで満足しておさまる事件と、それでは不服でやはり裁判所へ持ち出してこられる事件と、その比率については、これは全く推定以外には出ないわけでございます。反則金の対象になります事件というものは、結局七割ぐらいございますので、その関係からまいりますと、事件は従来の三割ぐらいになるわけでございます。しかしながら、反則金では満足せずに裁判所へ持ってくる事件というものは、当然相当数あろうと思います。そういう点から申しますと、実際は四割ないし五割というものがやはり裁判所へ来る、かように考えておいたほうが無難であろうと思います。しかし、それにいたしましても、かなり事件が減るということになりますので、私どもは、合理化の問題とは別に、それに要する人員、職員というものは、やはり一つの減員的要素と考えざるを得ないと思います。しかし同時に、先ほど来お話しのとおり、裁判所では非常に人が不足しておるわけでございますから、増員的要素も非常に多いわけでございまして、その増員的要素からただいま申し上げました減員的要素を差し引きましたものが、いま御審議をいただいておる純増二十五ということでございます。いろいろ予算の話もございまして、私どもも非常に不十分な点があるとは思いますけれども、ただ、内閣全体としては総定員を減ずる、五%減という方向で進んでおられますときに、私どものほうでは、反則金事件に移って事務量が減っても、なおかつ増員を獲得できたという限度においては、一応成果があったものと考えておるわけでございます。  そうしてその転換というお話でございましたが、これは必ずしも、現在交通事件をやっておる職員を他のほうへ配置転換するという意味ではございませんで、あくまでも定員上のものでございますから、定員上の操作として、たとえば事務官の減の定員の見合いで家裁調査官の増が入っておるというような関係に相なるわけでございます。特定の人が、いままで交通事件をやっておったのが家裁の調査官になる、そういう趣旨ではございません。
  90. 岡沢完治

    岡沢委員 反則金にからんで訴訟事件がどれぐらい減るかということは推測でございますから、私も見解は持っておりますし、局長の言うように多いとは思いませんけれども、ここで議論する必要もございません。ただお願いいたしたいことは、そういう事件の減少に即応してあるいは増減に即応して、裁判所のほうも化石的な事務分配ではなくて、能率的な運営をぜひお願いいたしたい。  それから若干角度を変えて同じような問題を論ずるわけでございますけれども、最近の人口の都市への集中、過密過疎という問題は、行政上も大きな問題でございますけれども裁判所の配置とか、特に人員の分配等につきましても、大体明治時代の管轄配置に従って現行も行なわれておる。東京、大阪等の人口集中の大きい都市において、特に地裁の事件というのは激増しておって、一方では過疎地域の地方裁判所は、おそらく事件数かういたしましても非常に減少しておる。また、裁判の遅延が顕著なのもやはり都市の地裁に多く見られるというようなことを考えましても、事件数の推移と関連をして、この関係でも裁判所の統廃合あるいは裁判官の人員の配置について、事情変更の原則に即応した態勢をとられる必要があるのではないか。この辺についての御見解を聞きたいと思います。
  91. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 非常に重要な問題でございますので、詳細にお答えを申し上げるとすると、この問題だけでも相当な時間をお願いしなければならなくなりますが、先ほど簡潔にというお話でございましたので、要点を結論的にだけ申し上げますと、これはもうまさにその必要はあろうということでございます。ただ、裁判所の統廃合ということになりますと、これはきわめて重要な問題でございまして、とうてい私ども事務当局の感覚のみで処理できない問題を多々含んでおるわけでございます。同時に、行政組織のいろいろな改変の問題とも関連するわけでございますので、今後国会の御意見を伺いながら、慎重に検討をしてまいりたい、かように考えております。  それから職員の配置の問題でございますが、これは絶えず事件の推移に応じて定員の変更をいたしております。ただしかしながら、そうは申しましても、特定の職員を異動させるということは、裁判官の場合は別といたしまして、一般の職員の場合には非常にむずかしいわけでございますから、そこで定員は変えましても実員はそれにおくれて変わっていくという場合も、多々あろうと思います。そういう点で、事件がふえたのに職員がふえていない、あるいは減ったのに減っていないという現象が、過渡的には起こるかと思いますが、これは絶えず綿密な定員計算をいたしておりまして、作業をいたしておるような次第でございます。
  92. 岡沢完治

    岡沢委員 局長の御答弁はわからないことはないんですけれども、やはり私は裁判所の統廃合ということが一番大きな問題ではないかと思う。その場合に、裁判所に関しましては、政治関係者もあるいは一般の市民等も、非常に等距離感覚といいますか、発言が弱うございますし、またある意味では敬遠もしておるというような感じがございます。しかし、裁判の迅速化、あるいは適正化、あるいはまた国民負担ということを考えました場合に、思い切った統廃合が必要ではないか。確かに裁判所でも、役所としては大事な問題だということで、住民からは存置運動があると思いますけれども、現実の問題として、交通事情の変化等を考えますと、たとえば私の大阪の場合を例にとりましても、すぐそばに吹田の簡裁、茨木の簡裁、あるいは堺、布施の簡裁等がございますが、簡易裁判所に行くほうが地裁に行くよりも交通上から考えるとむしろ不利益である、不便である。裁判所が、単に地元の要望なりあるいはまた単なる過去のいきさつ上残されておる。裁判官なんかも、宿舎その他でもたいへん苦労しておられる。やはり思い切った統廃合についての御見解を当事者である裁判所がお出しにならなければ、なかなか国民や政治担当者もついていけないというような事情もありますので、こういう問題については思い切った所見をお出しになっていただく心その裏づけに、もちろん事務の増減あるいは交通事情等、これも御提示いただいて、国民判断にまかしていただいて、やはり国民負担の減少とあわせて裁判というものを適正、合理化するようにしてもらいたい。お願いいたします。  最後に、小さいことでございますが、私は先ほど申し上げましたような意味で、裁判の適正、迅速化には、事務の合理化とあわせまして、たとえば裁判官あるいは裁判官以外の職員の執務環境の整備というようなことも、無視できないのではないかと思います。大阪、東京だけでもけっこうでございますが、私の感じる範囲で、他の官庁であれば当然局長クラスの方々でも、裁判官の場合は御自分の机も持っておられないという方が、相当数あるはずでございます。単独部裁判官で個室を持っておられない方、あるいはまた裁判官で机、いすを共用しておられる方の数字等がありましたら、この際御提示をいただきたい。裁判官が自分の机も持たないで、きょう甲の裁判官の使った机をあすは乙の裁判官が使われる、あるいは個室を持たないために、事件関係者との打ち合わせの話し声が他の裁判官の執務に差しつかえる。少ない裁判官の事務能率をそういうつまらないことで阻害されておって、結局裁判の遅延と結びついて国民の迅速な裁判の権利が奪われるという結果をもたらしているような感じがいたしますので、数字等がありましたら、お答えいただきたいと思います。
  93. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 岡沢委員は大阪の弁護士さんであらせられまして、実は裁判所としては、大阪というのは最も庁舎の関係でおくれておるところでございます。その点で、実は私自身も大阪に勤務いたしまして、非常に苦労した経験を持っておるわけでございます。ただ、大阪でもってすべての裁判所を代表してお考えいただくことはまことに私どもとしては心外に思うわけでございます。御承知のとおり、大阪の裁判所につきましても、すでに建築の準備が着々進んでおりまして、二年ぐらい後には十何階建てのりっぱな建物が建つことになっておりまして、こうなりますれば、当然裁判官は個室と申せないまでも、一部で一室、場合によりましては間仕切り等による部屋に勤務することができるということになることは、近い時期に目に見えておるわけでございます。これにつきましては、一期工事、二期工事というような計画がいろいろ営繕課のほうであるようでありまして、二期工事完成の暁には、りっぱなものができ上がるわけでございます。結局いま数字というお話がございましたけれども一つの机を二人で使っておりますのは、いま申し上げました大阪でありますとかあるいは東京地方裁判所民事部の一部というようなことでございまして、東京では、御承知のとおり刑事部におきましては、すでにりっぱな庁舎でそれぞれ個室なり、個室に近いものを持っておるわけでございます。高等裁判所は、部で一室は確保しておるわけでございます。しかしながら、まだ東京の場合は、最高裁判所の庁舎との関連もございまして、今後数年不十分な点もあるわけでございますが、しかし、増築等は、これまた御承知のとおり、現にやっておるところでございます。臨時司法制度調査会の意見にも、そういう執務環境の改善というような方針が出まして、私どもそれを金科玉条にするわけでもございませんけれども、その趣旨に沿って大いに予算を獲得し、逐次改善されつつあるので、もうしばらくの間長い目で見ていただきたい、かように考えておるわけでございます。
  94. 岡沢完治

    岡沢委員 お約束の時間でございますから、これで終わりますけれども、先ほども指摘いたしましたように、裁判所関係の予算の獲得の努力ということが、局長自体が裁判官であられるというような立場もあって、他の官庁に比べて非常に意欲的でないと申しますか、遠慮深いと申しますか、いま私の質問も助け船を出すつもりであったのが、逆にその必要がないというような意味にもとれる御答弁でございました。それが全裁判官の意見を代表しておられるとは思えないし、私たちも何も裁判官だけを優遇しようという気持ちではなしに、やはり法の番人として裁判官の御職務にふさわしい環境を整備してもらい、またそれにふさわしい待遇とともに、やはり国民から見れば憲法上の権利である迅速、公平な、適正な裁判をお願いするために、そういう執務環境についても私は当然の職務として総務局長は意欲的であっていいのじゃないか。防衛費等と司法経費はある程度見合ってもいいと思うくらいの重要を感ずるにもかかわらず、きわめて少予算に満足をしておられるというところにむしろ問題があるのではないか、遠慮なしに要求をしていただきたい。この問題につきましては、昨年の当委員会におきましても、党派をこえて各委員がむしろ積極的に裁判所を激励したはずでございますから、御遠慮深過ぎるのではないか。何も裁判官にいばっていただきたいとか、あるいは無理に特典を与えさせてもらおうという意味ではございませんけれども、やはり裁判官にふさわしい、たとえば居室にいたしましても、あるいはまた車の配慮等があってもいいのじゃないか。私が大阪で府会議員をやっておりましたときに、ある裁判官から、住宅がないので府営住宅を世話してくれというようなことを頼まれたことがございますが、そういう問題等につきましても、裁判官が自分の居宅に困るというような環境で、どうして法の権威あるいはまた国民の司法への信頼をかちとれるかというような問題も、考えざるを得ないわけでございます。もちろん国民全体が経済的にまだ完全に充足されるような状態でないことはわかっておりますけれども、しかし、先ほども指摘いたしましたように、新しい憲法の精神は、力にかわるに法の支配ということが近代国家の基礎だという思想に私は立っておると思うだけに、司法予算の獲得について行政的な立場を代表される総務局長の——いま事務総長お見えでございますけれども、もっと積極、意欲的な御努力をお願いして、私の質問を終わります。
  95. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 ちょっと関連して。私も岡沢君の意見に大賛成です。だいぶ局長から満ち足りたような答弁のようにも聞こえるような御答弁があったけれども、四、五日前私が浦和の裁判所へ行ってびっくりして帰ってきたのです。それから東京都内の簡易裁判所でも、至るところたいへんな建物のように思います。環境がいいとか悪いとかは論外として、たいへんなことだと思いますが、理想的になっているところもありましょうし、大阪なんか悪いほうということですが、全国的に見てほんとうに遠慮されているのではないかと思う節がございます。たびたび私も申し上げておるところでありますが、私どもの法務部会でも始終申し上げておるのですが、ぜひ積極的にこの環境の改善といいますか、そういうことに力を入れていただきますように、私からもお願いしておきます。
  96. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ただいま事務総長なり経理局長も参っておりますので、私の発言の不十分な点は補足、修正してもらいたいと思いますが、私の気持ちも、現在で満足しているという趣旨で申しておったつもりでは毛頭ないわけでございます。私の表現のしかたがたいへんまずいために、さような印象を岡沢委員、高橋委員にお与えしたとすれば、私の真意ではありません。ただ、私どもも私どもなりに考えてやってまいっておるということを説明したい気持ちのあまり申しましたことが、あたかも現状で満足しておるような印象をお与えしたかもしれませんが、そういうことでは決してございません。当委員会から御激励を受けて、予算のシーズンには全力をあげてやってまいっておりますが、今後ともその御激励にこたえるように、また私ども自身の立場において全力を尽くしてやってまいるという気持ちで終始申し上げておったつもりでございます。表現のまずかった点はおわび申し上げます。
  97. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 私途中からまいりましたが、大体の事情は推察できます。予算に対する裁判所考え方は、ただいま総務局長が申しましたとおりでございまして、決してわれわれは安易の道に安んじておるのではありませんで、常に例の財政法十九条に基づく二重予算の権限というものを念頭において努力いたしております。また、それが、これまでの経過によりますと、相当の効果をあげておるというふうに考えられます。今後もなお一そう私どもといたしましても努力いたしますので、こちらの法務委員会におかれましても、超党派的に御支援をお願いいたしたいと存じます。
  98. 永田亮一

  99. 松本善明

    松本(善)委員 予算の話が出ましたので、そこから話をしたいと思いますが、事務総長に伺いたのですが、裁判所の国家予算の中に占める比率が年々減ってきている。あまり時間がありませんから数字で申しますと、ことしは〇・六五%、それから去年は〇・七〇%、三十一年、三十二年ごろは九%以上です。そのころをピークにして、ずっとどんどん減ってきている。この事態を事務総長どう考えておられますか。そういうことは、最高裁の裁判官会議で問題になっているのかどうか。それをお聞きしたいと思います。
  100. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 裁判所の予算は、ここ数年年ごとに国家予算全体に対する比率が下向しつつあるということは、まさに御指摘のとおりでございます。これはいろいろな原因があると思いますが、一つには国家予算の全体が膨張する原因として、各省いろいろな事業を持っておられる。あるいは福祉関係の仕事を持っておられる。そういう点の予算が日本経済の膨張とともに増大化するのに対して、裁判所というところは、御承知のような人間と建物が中心になって仕事をするところでございますので、国家全体の経済の膨張に対しまして追いついていくことには、ある程度限界があろうと思います。それで、今年度の予算は前年度に比べまして〇・〇五%総額においては減少いたしておりますが、しかし、中身を見ますと、これまで全く予算が計上されなかった数項目につきまして、新たに予算が計上されまして、それが頭を出してきておりまして、そういうことを手がかりに今後なお一そう努力いたしたいと思います。それに今年度裁判費が減っております。これは裁判費というものは、事件の数に応じて査定されます。民事事件は多少増加の傾向にありますけれども事件全体としては減少の傾向にある。また、この七月からは例の反則金制度が施行されまして、交通違反事件の大量のものが裁判所から消えてしまう、そういうような事情がありましたために、裁判費も減少いたしました。また、営繕費が昨年に比べて多少減少いたしております。これは、昨年度最高裁判所の敷地買収費八億計上されましたが、残りの分が六億五千万認められておりまして、今年度は六億五千万で十分であります。そういう点で、営繕費も減少いたしておりますが、しかし、下級裁判所の継続工事、それから新営等については、今回の公共事業、営繕が非常に押えられておるきびしい中では、裁判所としては各庁に比べまして決して劣らない比率で計上してもらっております。そういう点、なるほど全体の比率が減りつつあるということはまことにそのとおりで、私どもとしてもその点においては非常に残念に思っておりますけれども、ただ比率だけの問題ではなくて、やはり中身とあわせてお考え願いたいと思うのであります。
  101. 松本善明

    松本(善)委員 事務総長の話を聞いておると、満ち足りたようなお話で、政府答弁をしておるような感じですけれども、中身が満足しているならそれでよろしい。しかし、裁判所は大蔵省に折衝するについて、五百人以上要求したわけでしょう、人員については。営繕設備はけっこうだ、設備で裁判するのじゃないですから。五百人以上要求した。そして結果が御存じのとおりで、二十五人ですか。で、裁判官以外の事務職員、書記官や、行政(二)や、こういう関係では、全司法の労働組合は、私の聞きましたところでは三千百三十七人要求しております。この結果が十三人増でしょう。裁判所当局として政府のほうに要求されたものからも、はるかにかけ離れた数字であります。労働組合が要求しているのからは、けた違いに違っております。中で働いておる人がこういう状況だと言っているにもかかわらず、人員はこういう状況であります。これで一体公正な裁判が保障されているのか、国民の人権が守られているのか、この点について事務総長、どう考えられますか。けた違いに違っているのです。それでできるのかどうか。
  102. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 予算内容、その人員の点の事務的な問題につきまして、まず総務局長からお答えさせます。
  103. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 松本委員からお話のございましたように、組合の諸君が三千名の増員の希望をお持ちになっておるということは、私も直接委員長から伺っております。ただ、その中身に、たとえば書記官六百人増員というようなものがございますが、これはその必要性の有無等は別といたしまして、実際問題として、養成等の点からも単年度でできる問題ではないのであります。私どもの計画は、常にある程度の年次計画をとっておりますので、そういう点も一つには組合の諸君とも意見の違う点でございます。そのほかにも、中身について個々に申し上げますればいろいろございますが、それは省略いたします。  それから最後に、当初要求いたしましたものよりも下回って計上されておるという関係につきましては、これは何と申しましても、裁判所の中心である裁判官なり書記官は、充員という点からある程度の制約を受けざるを得ない。裁判官の充員というものを考えまして最後の増員数を決定いたしまして、その裁判官増員数に見合いまして書記官の増員数をきめる、かような関係になりますために、裁判官の給源に縛られまして増員数が押えられるわけでございます。ただ、本年の場合は、組合の諸君からのお話もあり、私どもとしてもまた必要を感じまして、いわゆる行政職(二)表の職員を三十名増員しておるわけでございますが、これは別に他の官庁と比較する必要は毛頭ございませんけれども、とにかく今日の時点において行政職日表の職員を三十人増員したということは、私ども一つ努力をお認めいただきたいと考えるわけでございます。
  104. 松本善明

    松本(善)委員 それでは事務総長に聞きますがい裁判所証人尋問の期日が入りますのに、半年先だということがあります。あるいは仮処分で証人尋問を入れるのに、労働事件なんかでは三カ月、四カ月というのが普通だということがあります。一体これでいいのですか。まず、こういうことを最高裁は知っているのかどうか、知っておって、これでいいと思っているのかどうか、それをお聞きしたいと思います。
  105. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 それは訴訟遅延の問題につながる問題でございますが、裁判所によりましては、民事証人の次回期日が三月なりあるいは六カ月というふうに、非常に長引くという実情承知いたしております。しかし、私どもとしてはそれに対してそれでいいとは毛頭考えておりませんで、何とかして訴訟促進の方策を打ち立て、その実をあげたいということは、これはもう日ごろ頭から離れない問題であります。しかし、同時に、いま総務局長が申しましたように、裁判官をふやすということ、これは臨時司法制度調査会でも、もし現状の審議期間を半分にするには五百人裁判官をふやさなければいかぬというような計算が出ておりますが、五百人の裁判官を一挙にふやすということは、事実上とうてい不可能なことであります。やはりこの充員という点を考えながら、逐次毎年裁判官をふやしていく、裁判官と同時に、またその補助職員をふやしていく、そういう方法によらざるを得ないのであります。法曹としての有資格者を裁判官以外に求めるという努力もいたしております。大学の教授あるいは検察官から裁判官に任官される人も、近年は少しずつ出ております。一番来ていただきたい弁護士会からは、幾ら呼びかけてもなり手がない、そういうような事情もありまして、この裁判官の充員というものは非常に困難をきわめておりますが、しかし、決してこの現状に満足するわけではなくて、私どもとしては裁判官の充実、充員ということを常に努力いたしております。その事件によりまして、民事事件審理期間全体から見ますと、それほどはおくれてない。特殊な事件について非常におくれている事件もあるということで、全国的に見ます場合には、全部が全部の事件が六カ月先でなければ証人が入らないというわけではございません。何といっても大都会に事件が集中して、大都会の裁判所が負担が重いということは、これは世界各国に共通の現象でございます。それをわれわれは何とかして打開したい。そういうわけで、数年前からも、一審の充実強化という方策も考え、いろいろな手を打っておるわけであります。訴訟の適正迅速な実現ということについては、今後とも十分の努力を払う所存でございます。
  106. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 議事進行。どうも、総長の御答弁その他先ほどの局長さんの話、いろいろ聞くと、大蔵省でさいふのひもを締めるような話ばかりのようで、どうもわれわれの気持ちとぴったりこないのですが、われわれも裁判促進にはできるだけの協力をしたいというような気持ちで、これは共産党の人ばかり、全司法ばかりふやしてもしようがないが、やはり穂健な裁判官や書記官をふやしてもらって、そしてとにかくいい環境のもとで裁判を、民事刑事、やりたいような気持ちですから、われわれは応援するのだから、押えるような答弁でなしに、まあいいですからひとつやってくれというふうなことで、共産党の方にも協力してもらうように、景気のい恥ことをひとつ言っていただきたい。どうも大蔵省の答弁みたいですが、もし判事になり手が少なければ、これは待遇が悪いと思うのです。いろいろ条件が悪いからそうなるのだから、その条件をよくするために、普通の一般職以上の好遇をするとかなんとか、いろいろの条件を満たすように努力をする、そういう点に対してわれわれも協力するから、しっかりやってくれというようなことで、ひとつ景気よくやってください。
  107. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 ただいまたいへんありがたいおことばを拝聴しまして、実際われわれはその気持ちでやっておりますので、決して裁判所の予算について大蔵省に首を絞められて遠慮するということはいたしておりません。裁判官あるいは書記官というものは、先ほど総務局長が申しましたように、一朝一夕にでき上がるものではないのでありまして、その給源というものが問題なんでございます。先ほどちょっと申し落としましたが、当初五百名の要求で、それが結局においては純増が三十名足らずに終わった、数の上からはそのとおりでございます。しかし、五百名を要求いたしましたのは、八月三十一日の例の概算要求書を提出する期限の時点において要求をしましたので、その後国の全体の経済政策と申しますか、財政方針等から、増員はもう全く見込めない、そういったような情勢になったわけであります。裁判所増員につきましても、最後の大蔵大臣との折衝の段階の前夜までゼロ査定であったわけであります。結局において純増二十五名認められたわけであります。純増二十五名と申しますけれども、本来は、交通反則金の関係で四十九名は当然に事件の減に伴って減員しなければならないはずでございます。それから一般の内閣の方針として、定員の削減という方針が打ち出されました。しかし、裁判所としましては、閣議の決定に拘束されるというものではありませんけれども、できる限りのこと、つまり裁判にあまり影響のない部門の人員の三十五名というものを出しまして、そうして結局四十九名と三十五名、合計八十四名は一応裁判所職員の定員からはずされたわけでありますが、しかし、結局にお小てはそれはすっかり返していただいた。その上にさらに二十五名の増員が認められ、そうしてその……(「二十五名しかと言ってもらいたい。」と呼ぶ者あり)二十五名しかでもけつこうです。そのとおりですが、そうして合計百九名、これが今度新しく、実質上は増員というとことばはおかしいですけれども、そう裁判所の戦力をそがずに済んだ。先ほどのようなきびしい状態のもとでは、まあこの程度ならば二重予算を発動しないで済まそうということになったわけであります。
  108. 松本善明

    松本(善)委員 それでは人員のほうはその程度にしまして、裁判所の職員の給与の問題をちょっと伺います。  御存じのように、今度は総合予算主義ということで、公務員のベースアップ要求が出ましても補正予算は組まぬということになる。あれは大体四・八%の給与の値上げしか考えていない、そういう予算です。ところが、労働省の毎月の勤労統計で見ますと、人事院勧告の基準になった、去年は民間の給与が一一・四%上がっているというのを前提にして考えている。ことし一月まででも、すでに去年の四月から七・五%上昇しています。この人事院勧告の基準になります四月ぐらいになりますと、春闘もありますから大体一〇%以上になると思います。裁判所の職員——−ほかの民間の人たちの給与が一〇%以上上がるということになる。物価も上昇が予想されておる。でも四・八%しか給与を上げぬ、こういうたてまえになっておるのです。去年も、裁判所の職員が給与を上げてほしいということでリボンをつけるということについても、裁判所は反対をする。裁判所の職員の生活が保障されない。そして裁判所の職員が労働組合運動をやれば、裁判所でとめる。こういう形の中で、一体裁判所が——労働者はもう五〇%をこえているのですよ、いまの日本の就業人口のりその人たちの権利を守る裁判ができると思いますか。この問題について、裁判所政府に対して、裁判所の職員の給与の問題についてどんなことを言いましたか。
  109. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 裁判官を含めての裁判所職員について、一般公務員と別個の給与体系、報酬体系を考えてはどうか、そういう意見もあるわけでありまして、現に所管の局のほうではそういう案を考えたこともあります。また、現に考えつつあるわけであります。しかし、さてどういうふうなランクにして、どういう額を盛ったらいいかということになりますと、昨今のように毎年ベースアップがなされるような状況のもとでは、そのような別個の体系をつくるということに一利一害がある。はたしてそれで待遇の改善になるかどうか、そういう点にも問題があるわけでありまして、そういうわけで現在のところでは従来の方式に従っておるわけであります。裁判官の報酬の問題は別としまして、裁判官以外の補助職員の待遇につきましては、われわれといたしましてもその改善に非常に努力いたしております。決して他の行政官庁に比べて劣ってはいない、まさるとも劣ってはいないということは申し上げられます。現にここ数年来、五等級に上がることが非常に困難でありましたが、昨年あるいはことしにかけましては、それが非常に楽になったこういう現状のもとでは、こういうような方法、つまり級別定数をできるだけ獲得する、それから調整の問題を考えるそういう方向で今後十分できる限りの努力を続けていきたい、かように考えております。
  110. 松本善明

    松本(善)委員 私が聞いておりますのは、この問題について政府に言われたかということ、それから最高裁の裁判官会議で問題になったかということを聞いておる。
  111. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 別個の体系をつくるということにつきましては、まだ裁判所としては成案を得ておりませんで、これは内部で検討いたしております。しかし、ベースアップの時期になって、裁判所職員についてのなにをきめる段階には、これはもう担当の局課長から、しかるべき筋へむろん非常に熱心に強い要求を出してやっております。
  112. 松本善明

    松本(善)委員 人員の問題についても、予算の問題についても、各委員から裁判所は弱腰だということを言われておるけれども、単なるそれだけの問題ではないと思うのですよ。これは最高裁の裁判官裁判所の職員全体について責任を持たなくちゃいけない。ここへ来て一生懸命弁解をしておられるけれどもそういう態度ではならぬはずです。それからいまのたてまえでは、国会と行政権とそれから司法権と別々でしょう。あたかも法務省の中の一部門であるかのごとき、そういう立場答弁をしておられる。そこに根本的な問題がある。裁判官として責任を持って、この日本国民の人権を保障し公正な裁判を行なうというために独自に必要なことは、全部裁判官が一人一人考えなくちゃいけない問題です。それに足りているかどうかという、そういうたてまえでどうも最高裁がやってない。二重予算の問題について、毎年問題になるわけです。本来のたてまえは、これはいざという場合に抜くという、そういうものではないと思う。最高裁が国民に対して、責任を持ってこういうふうにやっていくのだということを明らかにしなければならぬものだと思うのです。このことは、最高裁の裁判官会議で問題になっているかどうか、これをお聞きしたい。
  113. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 こういう問題について、裁判官会議で私どもからよく報告いたしております。ただ、法務省の一員のような立場答弁しておるといま言われましたけれども、これは全然そういうことはありません。事務総局としては、法務省と意見が対立して、相当な争いと言っては何ですが、議論を戦わした上で、そして裁判所裁判所の案をつくって、そして法務省もそれに賛成するというような、そういう事例もこれまで幾たびかあったわけであります。
  114. 松本善明

    松本(善)委員 そこで、もう一つお伺いしたいのですが、この裁判所の司法行政のあり方です。これは一人一人の裁判官が責任を持たなければならない。最高裁は最高裁の裁判官、それから高裁は高裁の裁判官地方裁判所裁判官も、自分の裁判が完全に保障されるかどうかということについて、この人員についても、予算についても責任を持たなければならない。そういう意味裁判官会議が司法行政を総括するということになっておると思いますけれども裁判官会議は各裁判所でどの程度に開かれておりますか。
  115. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 最高裁判所では、毎週一回やっております。それから高等裁判所地方裁判所、ところによって違いますが、東京あたりでもひんぱんに月に何回か開いております。地方によりましては、正式の会議は年に二回とか、そういうふうに聞いております。それはそれぞれの裁判所の自治にまかされておりますので、一律に申し上げることはちょっと困難でございます。
  116. 松本善明

    松本(善)委員 私の聞いておりますところでは、年に一回ぐらいしか開かれていないところがある。しかも慰労会のような形で、そんな程度にしか思われないような、そんな程度だということを聞くところもあるのです。これは各裁判所によって違うかもしれません。違うかもしれませんが、裁判官会議が非常に軽視をされている。そして所長でありますとか、長官でありますとか、そういうところにまかされてきている、そういうような傾向が裁判所全体に起こってきているということを聞いておりますが、いかがでしょうか。
  117. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 幾ら少ないところでも、年に二回は開いておるはずであります。それからそういうところは常置委員という制度がありまして、日常その常置委員会議で重要な問題をきめております。それから司法行政と申しますと非常に範囲が広いので、簡単なものは長官、所長に委任されておる。しかし、それがゆえに新しい制度のもとにおける裁判官会議の趣旨は没却されておるというふうには考えられません。
  118. 松本善明

    松本(善)委員 この裁判官会議が、少ないところでも、年に二回というのでは、やはりいかぬのじゃないか。この二重予算の問題についても、裁判所が消極的であると毎年毎年指摘される根源は、裁判官がこの問題について責任を持ってないのじゃないか。一人一人の裁判官が、自の分ところで起こっている司法行政の問題について、これは最高裁がやることだ、特に事務総長がやることだというようなことで、そういう気持ちでおるからなのではないか。司法研修所においても、裁判官の教育の面でも、単に裁判官裁判をやっておるだけでいいんじゃない。この裁判所全体がほんとうに裁判の公正を保障し、それから人権を守るというようにしなければならぬというように思うのですけれども、そういう点での改善のお気持ちがあるかどうかということをお聞きしたい。
  119. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 ただいまの裁判官会議の制度はこのまま存続すべきと思います。正式の会議が開かれる回数が少ないと思いますけれども、その会議において全部全裁判官に報告されて、そして承認を得る、こういうことになっておりますので、現在の制度というものをすりかえて、長官、所長の独断行政ということになるものでは決してございません。
  120. 松本善明

    松本(善)委員 最後に法務大臣にお聞きしておきたいと思いますが、各委員が指摘をされましたように、裁判所の現状はきわめて憂うべきものがあります。こういう状況では、ほんとうに人権を保障をし、そして三権の一角をになっているというたてまえになっている裁判所のあり方としては、非常に困るのであります。これは私、日本全体の立場から見ましても、これは相当考えなくちゃいけない問題だと思います。政府のほうの予算編成のあり方も、これは別格のものなんです。そういうたてまえでやらなければならぬ問題と思うんですけれども法務大臣の閣僚の一人としての所見を伺いたいと思います。
  121. 赤間文三

    赤間国務大臣 裁判所関係にいたしましても、法務省関係にいたしましても、他の省に比しましてなかなかよく秩序が重んぜられ、非常にいい点が多いのでありますが、予算とかそういう方面はどうもわりあいに少な過ぎるというような、私は気持ちがいたしておりますので、今後裁判所あるいは法務省、こういう方面の予算については、絶えず力を入れて、また法務委員の皆さま方のお助けも借りまして、必要な経費は十分ひとつ獲得ができるように努力していきたい、かように考えております。
  122. 永田亮一

    永田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  123. 永田亮一

    永田委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。大竹太郎君。
  124. 大竹太郎

    大竹委員 私は、自由民主党を代表して、本案に賛成の意見を申し述べたいと存じます。  最近数年間の高裁における訴訟事件の処理の実情を見ますると、なお相当長期の審理期間を要しておる実情でありまして、本案は、高裁における事件の適正迅速化をはかるため、高裁判事九名を増員しようとするものであります。  また、御承知のように、一昨年の借地法の改正により、借地非訟制度という画期的な制度が新たに誕生し、地裁における事務量が著しく増大したのであります。その借地非訟事件を処理するためには、相当数の裁判官増員が必要でありまして、本案は、これに対処するため、地裁判事三名の増員をしようとするものであります。  さらにまた、これら事件の円滑な処理をはかるため、並びに増加する非行少年事件を適確に処理するため、裁判所書記官、家裁調査官などの裁判官以外の裁判所職員の増員を必要とするのでありまして、そのため、本案は裁判所職員十三名の増員をしようとするものであります。  以上のような実情によりまして、本案はまことに時直に適した措置であると信ずるものでありまして、私は本案に賛成の意を表するものであります。
  125. 永田亮一

  126. 松本善明

    松本(善)委員 私は、日本共産党を代表いたしまして、本案に反対の討論を行なうものであります。  この増員要求は、質疑の中で明らかでありますように、いまの裁判の公正を保障し、そして国民の人権を守るというにはとうていほど遠いものであります。その人員の増加の内容につきましても、下級の職員の要求に十分沿うものではありません。この問題を処理するにあたっての裁判所の態度にいたしましても、毎年毎年指摘されているにもかかわらず、財政法できめられております二重予算の権利を行使をしていない。国民の前に裁判所予算のあり方について明らかにする自信がないからではないかと思います。裁判所のやっておることが国民から真に支持をされているならば、そういう権利を行使するに少しもやぶさかであってはならないし、それをやることができるはずで、そういうことができないで出てきておりますこういう予算、そういう意味で私たち共産党は、この案では国民の人権を保障できない、また裁判所のあり方からしても正しくないという観点で、この案に反対をするものであります。
  127. 永田亮一

    永田委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————  これより採決いたします。  内閣提出裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  128. 永田亮一

    永田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  次におはかりいたします。ただいま可決されました法律案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  129. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  130. 永田亮一

    永田委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後一時二分散会