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1968-05-10 第58回国会 衆議院 文教委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月十日(金曜日)    午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 臼井 莊一君 理事 久保田藤麿君    理事 坂田 道太君 理事 谷川 和穗君    理事 西岡 武夫君 理事 小林 信一君    理事 長谷川正三君 理事 鈴木  一君       有田 喜一君    稻葉  修君       河野 洋平君    周東 英雄君       高橋 英吉君    床次 徳二君       中村庸一郎君    広川シズエ君       藤波 孝生君    山下 元利君       渡辺  肇君    石川 次夫君       大原  亨君    加藤 勘十君       加藤 清二君    唐橋  東君       川村 継義君    小松  幹君       斉藤 正男君    山中 吾郎君       受田 新吉君    有島 重武君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         労 働 大 臣 小川 平二君         自 治 大 臣 赤澤 正道君  出席政府委員         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         給与局長    尾崎 朝夷君         外務政務次官  藏内 修治君         外務大臣官房長 齋藤 鎭男君         大蔵省主計局次         長       船後 正道君         文部政務次官  久保田円次君         文部省初等中等         教育局長    天城  勲君         文部省体育局長 赤石 清悦君         農林省畜産局長 岡田 覚夫君         食糧庁長官   大口 駿一君         通商産業大臣官         房長      大慈彌嘉久君         工業技術院長  朝永 良夫君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君  委員外出席者         文部省初等中等         教育局財務課長 岩田 俊一君         自治省行政局公         務員部長    鎌田 要人君         専  門  員 田中  彰君     ――――――――――――― 五月十日  委員二階堂進君、唐橋東君及び小松幹辞任に  つき、その補欠として山下元利君、石川次夫君  及び山中吾郎君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員山下元利君及び石川次夫辞任につき、そ  の補欠として二階堂進君及び唐橋東君が議長の  指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内  閣提出第六一号)      ――――◇―――――
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより会議を開きます。  教育公務員特例法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  この際、川村継義君より発言を求められております。これを許します。川村継義君。
  3. 川村継義

    川村委員 受田委員質問に入られる前に少し時間をいただきまして、私、委員長に対して議事進行という形で発言お願いいたしましてお許しいただきました。  私がただいま発言いたしたいと思いますことは、ただいま議題になっております教特法取り扱いについて政府見解をさらにお聞きをしたい、こういう意味からでございます。  文部大臣にお尋ねいたしますが、昨日労働基準審議会石井照久会長おいでいただきまして、参考人としてわが党の大原委員質問にいろいろとお答えになりました。文部大臣、その石井照久会長答弁をお聞きになりましたでしょうか。
  4. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は他の委員会に出ておりましたので、直接伺う機会はなかったわけでございますが、その要旨については伺っております。
  5. 川村継義

    川村委員 文部省局長おいでだと思いましたが、局長からつぶさに大臣にはお話があったでしょうか。局長お話しくださいましたか。
  6. 天城勲

    天城政府委員 御報告申し上げました。
  7. 川村継義

    川村委員 そうすると、大臣もその答弁については御存じでございます。私があらためて、それでは大臣ここでひとつお話しください、こうお尋ねしたいところでございますが、大事な時間でございますからそれはお尋ねしないことにして、私のほうからあらためて簡単にきのうの答弁要旨を申し上げます。  それは、一つには、現行労働基準法労働基準に関する憲法ともいうべきものであって、この基準を下回る特別法は原則的に許されない。二つには、労働基準法の施行と改正に関する事項中央労働基準審議会審議を経なければならない。三つには、教育公務員特例法改正案労働基準法適用除外をきめるもので、当然本審議会付議事項である。四つには、中央労働基準審議会は現在労働省の報告を受けて建議事項として審議中である。五つには、次期審議会総会予定日である五月二十四日を繰り上げ、国会労働大臣の要請によって、今日直ちに臨時総会招集の手続をとるため、労・使・公益代表協議する。国会は、国会みずからがつくった現行労働基準法をじゅうりんして、労働基準法上、憲法上重大な疑義のある本改正案を議決することは国会の権威のためにできないであろう。このような要旨を御答弁になったわけであります。これは労働大臣もお聞きになっておられました。基準局長もお聞きになっていたはずであります。  そこで、いまこの法案審議しておりますが、このような状態であるし、基準審議会では審議中でありますから、おそらく会長としては早急に審議会を開いて、何らかの結論をお出しいただくことだと思います。そこで、その建議が出されるまで、この法案について、国会採決等は待ってもらうべきがしかるべき方法ではないかと考えますが、文部大臣のお考え、いかがでございましょう。
  8. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この労働基準審議会政府として諮問するかどうかというような問題につきましては、かねてから御説明を申し上げておりますように、労働省とも御相談をいたしたわけでございますが、必ずしも諮問する必要なしということで、提案をいたしまして御審議お願いいたしておるところでございます。しかし、石井会長の御意見は御意見として私どもも伺ったわけでございます。現に御審議中であるということならば、政府としましては、なるべく早くその結論をいただけるものならいただきたいと思いますし、私どもといたしましては、この国会中にぜひこの法律案の成立を期しておるわけでございますから、御意見があればなるべく早くお示し願いたい、かように存ずる次第であります。
  9. 川村継義

    川村委員 きのうの石井会長答弁というものは、労働基準法の存在、労働基準審議会の権能、これから考えて、やはり政府としても重大視していただかなければならぬと思います。そこで、私はいまのような考えを申し上げて、実は大臣善処お願いしておるわけでございます。きょうは労働大臣お見えになっておりませんが、労働大臣協議をされて、私がいま申し上げましたように、石井会長も、来週早々にでも審議会を開いて、何らかの結論を出したい、こう言っておられるのですから、やはりそれまで待って、この法案の処理にわれわれが対処するということが当然ではないか、こう考えられるのであります。そこできょうは、労働大臣にもひとつお考えをお聞きしなければなりませんが、これは文部大臣からも労働大臣に、そのような意向を御相談なさることがあってしかるべきではないか、いかがでございますか。当然のことだと思うのですがね。
  10. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題は、何と申しましても労働大臣の御所管に属する問題でございますので、労働大臣の御意見を尊重しなければならぬと思う次第でありますが、また、国会における御審議につきましては、これは委員皆さん方のお考えによってきまることでございまして、私どもとしましては、なるべくすみやかに御審議を願いまして、何とか成立さしていただきたいという希望を申し上げるにとどめておきます。そのように御承知を願います。
  11. 川村継義

    川村委員 基準局長おいででございまして、労働大臣のかわりにお答えくださいと言っても御無理かと思いますけれども労務基準局長は、私が申し上げましたような意味を了解いただいて、あるいはきのう石井会長答弁等をお聞きをいただいて、労働大臣として何らか基準局長に、この取り扱いについて御相談、指示があったでありましょうか。あるいは局長として、何か労働大臣に具申されたようなことがあったでありましょうか。ありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  12. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 昨日、石井中央労働基準審議会会長のおことばもございましたし、その前には、会長労働大臣から、委員会での質問の趣を伝える、こういう答弁がその前の日にございました。大臣のおことばどおり労働省としては実は手を打っておるような次第でございまして、昨日からきょうにかけまして、審議会をできるだけ早期に開催するように、会長といたしましては、関係委員目下連絡をとっておる次第でございます。本日も、もうすでに関係方面連絡をいたしておる次第でございまして、できるだけ早い機会審議会を開催するということに努力をいたしておるような次第でございます。
  13. 川村継義

    川村委員 いま局長からお話しのようなことでございますから、これもやはり文部大臣、よくお考えをいただきまして、十分労働大臣協議の上、その建議がなされるまで、この教特法を通してしまうというような愚かな手だてをなさらないように、大臣としてもお考えをいただいてしかるべきではないか。  そこで大臣、そういう意味でこの際、委員長に対しても、労働大臣と御相談をいただいて、そのような取り扱いをしてもらうように、国会審議がそのような軌道で動いていくように、大臣からお話しいただくようなお気持ちはありませんか。
  14. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 審議会審議会としていろいろ御審議をなさっていらっしゃるわけでございますから、早急に審議会の開催についても、労働省のほうでもいろいろ御心配願っておるようであります。なるべく、御審議をいただけるものなら早くいただきまして、その結果によって、また労働大臣の御意見等も十分伺いまして、私としても考えてまいらなければならぬと思うのであります。どういうふうなことになりますやら、まだ全然見当もつかないことでございますから、御審議は御審議としてぜひお進め願いたいというのが私のお願いでございます。
  15. 川村継義

    川村委員 くどいようですが、審議会は、来週早々にでも審議会を開いて、何らかの結論を見出したい、誠心誠意努力をすると言っておられるわけですから、大臣のいまの立場は、わからぬではありませんけれども、それはそれという区別でもってやられますと、むしろ、この法律が通ったあとに出てまいったら無意味なことになってしまうわけです。審議会の決議を無視する、こういうことにならざるを得ない。それは非常にわれわれとして残念だ、こう思うわけです。だから、なるたけ早い機会建議をしたいと言っておられますから、それまで大臣としても善処をする考えがあっていいのじゃないか、こう私は要求をし、お願いしておるわけであります。  そこで、委員長にも一言お願いいたしますけれども、そういうようなことでございますから、委員長とされましても、よく両大臣と御相談をいただきまして、でき得べくんば、その建議がなされる来週早々の時期を見て、さらにこの教特法についての審議結末をつけるというような御配慮があってしかるべきではないか。そこでそれまでは、たくさんの質問者がおりますから、慎重に質疑を続けていきまして、慎重審議をして、建議がなされたあとで、またわれわれ全与野党の皆さん方の良識ある審議を通して結論を見出す、こういうように進めていただきたいと思うのでありますが、委員長の御見解をお聞きしたいと思います。ぜひそういう点をさらに後刻理事会等で御検討願えれば、私たいへん幸いだと思って、委員長の御意見を承りたいと思います。
  16. 高見三郎

    高見委員長 委員長といたしましては、本法律案に限らず、どの法律案につきましても、慎重に審議をいたすつもりでおります。
  17. 川村継義

    川村委員 それでは、議事進行ということでお許しいただいて法案取り扱いについての見解を申し上げたわけでありますけれども、十分ひとつ両大臣と御相談いただき、さらには理事会皆さん方と御相談いただきまして、愚かな審議結末にならないようにお願いをして、私の発言を終わります。
  18. 高見三郎

    高見委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。受田新吉君。
  19. 受田新吉

    受田委員 お許しをいただきましたので、発言を始めます。  このたび文部省が御提案になりましたこの教育公務員特例法の一部改正法案、それは教職特別手当制度の創設という、給与史上いまだかつてない新制度を設けられる御提案でございます。したがって、私は、この法案につきましては、基本的な問題が二つの面から考えられると思います。その一つは、給与制度の上に新しい教職特別手当という制度を創設されたというこの問題点。もう一つは、これを出すことによって超過勤務手当に対する一つの制約をする規定が盛られているということ。その理由に、教職にあるという特別の立場を指摘されておるということ。この二つの問題が重点であろうと思います。  そこで、基本的問題としてお尋ねを申し上げたいのでございまするが、教員聖職であるということばもある。このことについてはすでに当委員会で論議されたようでございまするが、教員労働基準法適用を受ける点においては労働者であるという、このことも御肯定されておる、さように私は了解します。  そこで、労働者という、労働基準法に示されておる労働者の定義の中には、一般労働基準法適用を受ける労働者という意味が指摘されておるのでございまするが、広い意味でいったら、文部大臣労働をする人として、あなたも労働者とお考えになるかどうか、御答弁願いたい。
  20. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ことばの問題ということになろうかと思います。広い意味でいえば、私どもみな働く人間でございます。そういう意味労働者ということばをお使いになっても別に差しつかえはないということにもなろうと思いますが、ただ労働者という法律上の用語は別といたしまして、労働者ということばからくるいわゆる語感というものからいえば、私ども労働者というふうに世間ではおそらく申さないだろうと思いますが、働く人という意味においては、みな同じことだというふうに思います。
  21. 受田新吉

    受田委員 世間でいう語感の上からは、あなたは労働者とはいえない。しかし、あなた御自身労働者であるという広い意味で自覚しておられる。まことに適当なことばに見えますけれども労働者というこのことを極度にきらう概念、考えが特に自民党の方々の中に非常に流布されて、労働者というものは筋肉労働者のような意味で、労働を提供する者は一般的に下層的なものだという考え方でこれを見ようとするというか、まだ封建的なものがどこかに残っておるのではないか。それが災いをして、教師労働者であるということをできるだけ押えるという方向にあるんじゃないか。労働を提供する上においては、精神労働肉体労働もあるわけでございまするから、労働は神聖なりという古言もあるわけで、この意味においては、私としては、労働を精神的に肉体的に提供する者を非常に崇高な人生を送る人であると考ええております。そこで教師労働者という面を取り上げると、文部大臣は極度におきらいになられる。そこできれいなお仕事という意味、それをお取り上げになって聖職と指摘されている。この点も私わからないわけではありません。そうした人間育成する大事な仕事を持っているという点においては非常に清い仕事人間練成という意味では、私自身も、大臣がそういう方向職務を持っている労働者であるという考えを持っていることに、その点では共鳴をします。  福沢諭吉先生がこういう教えを子孫に残しております。世の中で最もとうとい事業というものは人間をつくる事業である。その人がこの世を去るときに人間をつくって去ることが最もとうといものである。その次は事業である。最もまずい考えを持たれる者は金を残す者である、こう教えています。金をつくることに狂奔する人間は、われわれとしてもさみしさを感じまするし、そこからいろいろの欠陥が出てくる。教育者は、福沢諭吉先生教えた、最も世の中でとうといものは人間を残すことであるという意味においては、私はとうとい職務であると考えております。清いということばを、非常にとうとい人間育成という職務を持った労働者である、かように私は定義したいと思うのですが、大臣いかがお考えでしょうか。
  22. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 もちろん教師仕事は、労働といえば労働に違いありません。また、憲法でいういわゆる勤労ということばがございますが、勤労者と申し上げましてももちろん差しつかえないことであろうと思うのでありますが、ただ教師というものに対する国民の期待、あるいは国民感情というところから申しますと、これをいわゆる労働者ということばで呼ぶことは、国民気持ちにそぐわないものが私はあるように思うのでございまして、法律上の用語でありますとかなんとかいうことからいえば、議論の余地はないと思いますけれども、ただ普通の労働とは教師労働というものはどこやら違うところがある。同じ働く人と申しましても、先ほど申しましたように、われわれも働く人間でございますから、その意味においてはわれわれは労働者といわれても差しつかえない、こう思いますけれども一般的にいえば、私ども労働者という人はまずいないだろう。たとえば弁護士さん、お医者さん、みな働く人であります。これを労働者という人は私はいないだろうと思うので、そういう意味におきまして、ことばから生ずる国民気持ちというものもいろいろあろうかと思いますが、教師につきましては、特に人間育成していく仕事であります。全人格をもって当たっていく仕事でございます。また、そのことがわれわれの将来を託する子供たち育成ということでございますだけに、昔から教師というものに対しましては、国民は特別な気持ちを持ってこれに対しておると思うのであります。最も尊敬すべき、また大事にしなければならぬ人である。こういうふうな気持ちから、私は一般的にいって労働者というふうなことばでこれを呼ぶということは適当でない、このような考え方をいたしておるわけでございます。
  23. 受田新吉

    受田委員 教師世間では先生といい、可憐な子供も、先生尊敬している。尊敬できる人間というのは、私、非常にうらやましいことだと思うのです。その尊敬される仕事を持っている労働者、これが先生である。したがって、先生ということばはあの可憐な子供たちには、まともに先生と呼びかける真実の叫びである。ところが、世に先生と称するもの、いろいろある。代議士もみんな先生先生と言うておる。この先生という用語はもともとどこに起こったものであるか、お答え願いたいと思います。
  24. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 あまりそういうことについての知識がございませんので、的確なお答えはできませんが、中国にも昔から先生ということばはあるようでございます。
  25. 受田新吉

    受田委員 これは教師という、教えを受ける相手に対してささげる名称から発生したと私は理解しております。したがって、この教師に対する先生ということばが本物の先生で、代議士にささげる先生というのは――私は先生と呼んでもらいたくないのです、ほんとうは。何々さんでいいのです。それが、おまけに弁護士、医師もみな先生精神労働の対象になる人に特にそういうことばが使われておる。たまには、おかしなことをやったやつを、あの先生がとひやかしておるが、先生といわれるほどばかでないという俗言もあるわけなんです。こういう意味で、ほんとう先生という名称をささげる、心から叫んでいることばはやはり教師である。この意味において、教師の地位というものは、尊敬を受けるお仕事としては最高であると考えております。  そこで、文部大臣がそれをもとにして待遇の上においても何か別のものをつくろうとされることについては、そこに一つ問題があるのです。私が願っているのは、先生待遇というものをよくするために、教職特別手当というような給与史上例のないような形のもので、超勤を排除してそれにすりかえるような形のものが適当かどうか。このことについては、「当分の間、」と書いてありまして、本質的な改正を用意されておるようですが、その本質的な改正がどういうところにあって、「当分の間は、」いつごろまでを考えておられるのか。大臣の描いておられる今後の一つの構想をまず承りたいのです。
  26. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は、先生というものは、いまの受田さんのお気持ちどおりでありますが、ほんとう先生と呼ばれている教師職務というものに対する国民としての尊敬、あるいは教師としても、その誇りを持って仕事をやってもらいたいと思うのであります。ただ、給与の問題ということになりますれば、特にそういう点から格別な措置を講ずるというような考え方は必ずしもとっていないわけでございます。やはり先生といえども働く人でございます。その働く条件でありますとか、働く環境でありますとか、あるいは先生の働きに対するいわゆる管理の問題でありますとか、こういうことは常に考えていかなければならぬ問題であります。そういうふうな観点に立ちまして、いわば働く人として、これに対する労務管理勤労管理をいかにすべきか、勤労条件をいかにすべきかというふうなことは、同時に考えていかなければならぬ問題だと思うのです。その観点に立って、給与上の問題をいろいろ考えておるわけでございます。今回御提案申し上げておりますのは、お話しのとおりに暫定的な措置として御検討を願っておるわけでございます。  また、教員給与そのものにつきましても、この辺でさらに実態をよく調査いたしまして、給与改善に資してまいりたい、こういうつもりで、御承知のように本年度から若干の調査費もちょうだいいたしまして、調査を進めることにいたしております。その結果によって何か給与上の改善ができればと、こういう希望と意欲を持って、実はこれから調査を進めてまいりたいと思っております。それがいつ完成するかということになりますれば、そう、いつ必ず結果が出るというようなことを申し上げかねるのでございます。少なくともそのときまでは、格別なことがない限りはこの教職特別手当というものをもって――いわゆる教員の時間外勤務に対する超過勤務手当というものがございますけれども、そのいわゆる超過勤務手当をとらずして、その時間外勤務という実態を踏まえて、それに対応する措置としてこの教職特別手当というものを御提案申し上げて御審議お願いする、こういうつもりでおります。
  27. 受田新吉

    受田委員 これは一つの矛盾した内容を持った制度だと思うのです。それを私が指摘するならば、いま大臣の御説のとおり、正規の勤務時間をこえて勤務を命ぜられた者に対する時間外割り増し賃金、民間でいえば残業手当に当たるものですね。そういうところで超過勤務制度というものはスタートした。ところが、昭和二十七年十二月に一般職の職員の給与に関する法律というものが改正された。その基本的な法律改正の際に、超過勤務手当のワク内を尊重して、多少の勤務内容等を考慮して、俸給特別調整額という制度が創設されたわけです。これが超過勤務手当の変形としてあらわれてきた。そして超過勤務手当というものがそのときに、中央官庁の例にとりますならば一ヵ月に十二時間、地方官庁の場合は六時間、運転手が十八時間というような基準でスタートした。ところが、管理職手当、つまり俸給特別調整額、いわゆる中央管理職の人は二五%という比率をもらって、それから一八%、一二%という非常に高い、一ヵ月にこれを換算すると三十一・八時間も超勤をした人と同じような手当をもらうことになったわけです。これは日本の戦後の給与史上の非常に大きな変化で、管理監督の地位にある者は、ばかげた高い超過勤務手当に当たるものをもらうようになった。それ以前はなみ同じだった。みんな同じ超過勤務手当。そして予算のワクも、いま申し上げたようなところで各省に割り当てをされる。会計事務担当者が適当にそのワクの中で部内操作をやる。部内操作をやって多少おつりが出るようなところは、年末の期末手当支給のときに基本給にプラスアルファというようなかっこうで何か措置をしたことを、大臣も御記憶しておられると思うのです。この超過勤務手当の未支給分を期末手当のプラスアルファ支給に振り向けた。それから超過勤務手当の余裕のあるところとないところができてきたわけです。そういうのがほんとうの超過勤務であって、超過勤務を命じた者に支給するのが超過勤務手当。命じない者に超過勤務手当を支給してはならないわけです。超過勤務をしなかった者に賃金を払う必要はないわけです。実際に命じて超過勤務をさせる、この本質から超過勤務手当が出ているのであって、超過勤務を命じられないで超過勤務をするというような場合に、法律的にはこれは支払い義務はない、かってに勤務したのであって。だけれども教員の場合はそこに一つの大きな問題が発生した。  灘尾先生先生がいつも言っておられるとおり、教員は特別の職務を持っているから、超過勤務手当という形態をとるよりも、このような法律で処遇したらいいというかっこうを御説明になっておるのでございますけれども、ここに一つの問題が起こってくるのは、国立大学に伴う高校、中学、小学校では、現に超過勤務の支払いをしているかどうかという問題です。これはちょっと事実を御説明願いたい。
  28. 天城勲

    天城政府委員 国立大学におきましては、入学試験時、それから大学教官の論文審査について超過勤務を支給しております。
  29. 受田新吉

    受田委員 その支給率はどのくらいですか。
  30. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 これは私が前回お答えしたことでありますから、重ねて私からお答えしても差しつかえないと思いますが、大学の先生方、ことに付属病院の教官の医療勤務に服しているような人たちについては対本俸比九%、それからそれ以上の小、中、高の先生方については対本俸比は〇・六三%、私どもの調べではそうなっております。
  31. 受田新吉

    受田委員 出先機関の超過勤務手当の比率が国立大学付属小、中、高の先生にも出されておる。病院だけはちょっと高いようですが、全国の公務員の基準のところへいっておるようであります、国立学校の場合は。そうしますと、この教職特別手当というものを、国立の小、中、高にはもう大体基準どおりいっておるにもかかわらず、その他の小、中、高を含めて本俸の四%というと、これはその比率にも達していないわけなんです。国立の比率にも相当の懸隔がある特別手当がここで創設された。その創設された特別手当は、高専や大学でも当然支給すべきであるということを人事院は――この間、私ちょっと給与局長からお聞きしたのですが、私の耳に聞き間違いがあったかどうか、お聞きしたいと思います。
  32. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 私からお答えさしていただきます。  この間御披露しましたように、文部大臣あての回答の中では、それらとの関連において問題があるので十分検討したいということを申し入れておるわけでございます。これはいまの小、中、高の先生方とだいぶまた事情が違うものですから、別にそれはそれとして、いろいろ広い観点から研究しなければならない。いまのように大学の病院に勤めておられる教官の先生方は、もう九%ももらっていらっしゃる方もおるわけですが、これは研究いたします、そういうつもりでおりますというわけです。
  33. 受田新吉

    受田委員 現実にきのう資料をいただいた中に、超過勤務手当の支給状況というもの、あるいは給与実態というものは、これから研究して調査して、それを提出したいからというので、数字が出てきていないことをこれに書いていただいておるわけなんですが、現に支給されていない人々に対して教職特別手当を四%創設する、現に支給されている六%をもらっている人は、さらにその上に歩積みでされるのかどうか、国立は。その超過勤務手当をなくして、別途に出すという形にするのかどうか、大学、高専もどうかということです。
  34. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 それが研究問題でございますと申し上げたわけでございます。
  35. 受田新吉

    受田委員 研究問題といっても、それはちょっと筋が違うので、大学、高専に出している超過勤務手当は相当高いものが出ている。その分をやめて教職特別手当に切りかえるというのでないと、これは小、中、高だけを当分の間やって、大学の分は、当分の間の分にははめないというなら私は筋がとおると思います。ところが、同時にこのことも一緒に研究せねばならぬということになると、現に出している分を、ちょうどこれと同じように停止して、その四%に振り向けるより道はないわけです。筋としてはそうですね、総裁。
  36. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 筋としては、そのままほうっておけないというのが明白な筋であります。したがって、またそれらの特有の特殊事情というものがありますから、それらに基づき適正な案を研究しなきゃなるまいということを申し上げたわけで、ほうっておくということは毛頭申しておりません。
  37. 受田新吉

    受田委員 私は怒ってお尋ねしているわけではないのでございますから、もう少しやさしく御答弁願いたいと思いますが、私のいまお尋ねしていることは、給与局長から当然高専、大学にもこの法の適用考えていかなければならぬというおことばがあったがゆえに、現に支給されている、特別教職手当よりも高い率で支給されている分を停止してこれにすりかえられたのでは、大学、高専はたまったものではないので、その意味で私はお尋ねをしている。そこをはっきりしてください。
  38. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 それは当然のことでございます。にこにこしております。
  39. 受田新吉

    受田委員 これは非常に大きな矛盾があると思うのです。この矛盾をあえてそのままにしてここに法案が出ているので、この法案を出したことでいろいろなところに災いが起きているわけです。それが総裁わかりますか。
  40. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 この法案が出ましたために、われわれとしてもいろいろ勉強しなきゃならぬことがたくさん出てきたということは事実でございます。
  41. 受田新吉

    受田委員 私は、この点で人事院にちょっとほこ先を向けますが、人事院は文部省がこの特別手当制度を創設することについて、一体どういう御答弁をされたわけですか。これはまことに歓迎すべきこととしてやられたのか。いまのお話を聞くと、どうも歓迎された意味お答えをされていないと思いますが……。
  42. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 実はこの間たしか私がここでも申し上げましたし、また、おそらくプリントにして回答をしたと思いますが、決してたいへんけっこうでございますという返事にはなっておらぬと私は思います。
  43. 受田新吉

    受田委員 ここに人事院の文句が書いてあるのですが、「一応やむを得ない」などという実に変な回答ですね。人事院総裁、あなたは非常にすっきりしたことを好まれるようでありますが、「一応やむを得ない」などというようなことを回答するような制度をお認めになったことは、あなたとしてはすっきりしませんね。かつて学校長に対して特別調整額を支給するという制度を創設するときに、当時の神田人事官は、私の質問に答えてこう仰せられました。人事院としてはやむを得ずこれを認めた、ちょうどいまあなたが言われたのと同じようなことを答弁されたと記憶しております。そのように文部省が起案すると、最後は文部省が親方ですから、人事院は完全に最敬礼になる。校長に管理職手当を支給する制度を創設するときに、人事院は文部省に最敬礼をして、最後にはやむを得ず認める。それから数年前の池田内閣のときに、大学の総長の特別措置法で、認証官にするときの俸給表と合わせた給与と任免の特例法を出されると、人事院は、総裁御記憶のとおり、私にも御答弁になった、そういうものは好ましいかどうかというと好ましいことではないと答弁された。つまり文部省が特例法を出されることはやむを得ないというように。そこで今度人事院が新しく指定職というようなもので上へはみ出る措置をとられたらどうかと申し上げたら、大体そのような法案が出てきたわけです。結局、人事院は何回か文部省に押し込められて筋の通らぬ答えを出してお認めになって、あとから実にややこしい人事院としては説明に困るような措置をされなければいかぬようになってきておる。これは人事院の独立性という意味から、文部省に終始押されぎみで、文部省が出したのは最終的にはいつもやむを得ずのんでおられる。今回で四回同じような広範な一省の力づくで人事院がまいっておるという現象を見たときに、人事院総裁、この制度をお認めになったのは私は残念だと思うのです。なぜもっと本質的に、起過勤務手当実態を把握した上に教員にいかに超過勤務手当を支給すべきかという本質でやるべきでなかったか。これは非常に遺憾な現象が起こっておるのでございますが、その点について総裁の反省はないか、お答え願いたいのです。
  44. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 受田委員は人事院の従来とってきた中立公正の立場を十分に御理解の上でのお尋ねでございますから、別に詳しいことを申し上げる必要はないと思いますけれども、これはいまの国家公務員法が初めてできますときに非常に尽力をしていただきました受田委員も御承知のとおり、人事院の独立性というものをごらんになって、文部大臣に最敬礼せねばならぬという事情はどこにもないわけです。最敬礼したところで何の得もない、あるいは文部大臣に反抗したところで何の損害もないのです。そういう確固たる独立性を法律上保障されているわけですから、何ら最敬礼する義理はないということだけは十分御承知だろうと思います。ただ問題は、これが一体落第させていいものかどうか、落第ということばを私たびたび申し上げましたが、そこの問題に尽きるわけだと思います。御承知のとおりこの法案は、これは乗り合い舟なんですね。それは原子力船かどろ舟か知りませんで、とにかく乗り合い舟でありまして、わがほうの人事院の所管しております国立学校の先生というのは〇・六%の人間しかないわけです。しかも地方の教職員の先生方、いまのお話にも出ましたように、国立学校の小、中、高の先生方の現在の法的条件というのはずいぶん違っているわけです。たとえば労働基準法との関係も、もう二十年前に離れてしまっているというような事情がございます。したがって、私の発言がこの法案に対してどれだけ重きをなすかということも、いささか省みられるわけですけれども、私ども立場からいくと、たとえば現在明らかに予算上、先ほど申しましたように国立の小、中、高の先生については〇・六%の超過勤務手当がついておる、今度の案では四%ということになっておる。これは現状を基礎にする上においては決して損ではないわけです。ただ、その四%が高過ぎるか低過ぎるか、これは先刻来私が文部大臣に対する回答の中でも申し上げておりますように、それは十分検討しなければならぬ。しかし、その四%のゆえをもってこれは落第だという判こを押すだけの筋の通った議論は出てこない。それは労働基準法との関係もないわけです。そこの事情をよく御了解の上でお話を進めていただきたいと思いす。
  45. 受田新吉

    受田委員 了解することができないような回答になっておるのです、これは。つまり教員に対しても現行制度の上では超過勤務手当を払うべきであるという御見解が人事院にある。そのあるのが当面の措置としてこれを認めるというようないき方になっておる。したがって、やはり人事院というものは、本質を尊重して、本質で給与制度を守っていくというたてまえをとるのが、私は国家公務員法の番人である人事院の役目だと思うのです。こういう変則というものがぽっぽっと出るのを、やむを得ずと認めてくるから給与体系に非常な変則なものが幾つも差しはさまれてくる。本道を堂々と歩むのが人事院ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  46. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 昭和三十九年の私どもの勧告の際における報告の中に、当時超過勤務手当を支給すべきだという議論が相当ありましたから、それをうたいまして、超過勤務制度というものが現行法としてある以上、正規の超勤命令を出した以上は超過勤務手当を払うのは当然だというたてまえを打ち出して、しかし他方、超過勤務の問題に対応する基本的な給与構成、給与体系を、教職員についてはそういう面について根本的に検討をする必要があるだろうという指摘だけはしているわけです。したがって、問題としての意識は持っているわけです。
  47. 受田新吉

    受田委員 文部省は、三十九年の勧告の中に要望が付してある、いま私が指摘し、また総裁がいま言明したとおり、現行法規の上における超勤手当というものは当然教員にも支払うべきである。それを文部省に適切な措置をすることを要望してあったのですが、四十年、四十一年と何をしておられたのか、人事院のこの要望に対して。これはまだ大臣の再度の御就任になる前であったけれども大臣自身がおわかりにならないとすれば事務当局、この勧告の扱いに対する文部省努力あとをお示し願いたいのです。勧告に対した要望です。
  48. 天城勲

    天城政府委員 三十九年の勧告の報告書の中に、確かにいま御指摘のように、「現行制度のもとに立つかぎり、超過勤務手当を支給する措置が講ぜられるべきは当然であるが、他方、この問題は、教員勤務時間について」云々ということで「さらに慎重に検討する必要があると考える。」という文句でございます。御存じのとおり、私たちのほうの仕事といたしましては、教員勤務実態をその後調査いたしまして、正規の勤務時間外の仕事の量も実態もわかりましたので、これに対する措置につきまして、このたびのような案を考えてきたわけでございますが、その間におきましても、人事院がすでにこういう御見解を出しておりますので、人事院とも御相談を重ねてきておるわけでございます。
  49. 受田新吉

    受田委員 昨年七月に超過勤務実態調査をされておる。それは、この勧告が三十九年七月に出て、その報告の中に要望が付してある。直ちにそれに着手すれば三年間の余裕があったはずでございますから、いまどきにこういう問題を暫定措置としてお出しをするような筋合いでないことはきわめて明白ではなかったですか。この勧告の中に織り込まれた要望に対する措置がなぜ今日まで、昨年の七月まで延ばされたのか、理由を御説明願いたい。
  50. 天城勲

    天城政府委員 これは時間的な経過で、御案内のように調査を一年かかっていたしまして、その結果をどのように措置するか検討いたしてきたわけでございます。この人事院の報告にもございますように、この問題は、教員勤務時間についての現行制度が適当であるかどうかという根本問題にもつながるということで、直ちに超過勤務制度がそのまますぐ実施すべきであるというふうにだけ読めない報告書でございます。私たちは調査の上、いかなる措置を講ずべきかについて検討いたして、このたびの案を御提案したわけでございます。
  51. 受田新吉

    受田委員 私がいまお尋ねしているのは、この勧告に付した要望に対する措置がおくれていることを指摘しているのです。三十九年直ちに着手されたのかどうかです。
  52. 天城勲

    天城政府委員 四十年度に予算を要求いたしまして、四十一年度に実施いたした、その集計の結果を検討していくというプロセスを通ってきたわけでございまして、そういう過程で特にサボったとかいう意味ではございません。それで時間がかかったというふうに御了解いただきたいと思います。
  53. 受田新吉

    受田委員 その結果は、すでに超勤実態はわかってきた、わかってきたら、わかってきたかっこうの超過勤務手当を支給する措置の文部提案がされてしかるべきだと思うのですね。勧告があって、まる四年たってこういう法案、人事院の要望とは逆の方向で、基本的要求のほうを忘れて、末尾にあるような問題を主に考えるようなかっこうでこういう法案をお出しになっておられる。四年たてば、もうりっぱな超勤実態が把握でき、それに伴う措置ができるはずなんです。人事院のその要望に対する措置があまりにもおくれ、しかも現に調査をされて答えが出ておるにかかわらず、それをやめて教職特別手当制度を創設された理由を大臣から承りたい。
  54. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 人事院からのお話は三十九年のお話でございます。文部省としましては、四十年度の概算要求をいたす際に、四十一年度予算として予算の要求をせざるを得ないわけでございます。その四十一年度予算が成立しましたので、それによって調査をいたした。これは教員の時間外の勤務の状況に対する調査でございます。その調査の結果に基づきまして、さてこれに対していかに対処すべきやという問題でございます。この問題につきましてはいろいろ議論もございます。つまり、端的に超過勤務手当として支給したらどうかという意見もございます。また、一面においては、超過勤務の問題をそういう扱い方をすべきでない、本俸をうんと上げることによって、つまり待遇改善をうんとはかることによって、いわゆる超過勤務手当制度適用を除外すべきである、こういうお考えも有力にあったわけでございます。その間にいろいろ検討いたしました結果、やはり超過勤務という実態はあるわけでございます。その実態に対応する給与措置といたしまして、教員の場合におきましては、必ずしも時間ではかるということが適当と考えられないというので、いろいろ検討しました結果が、政府として今度のような案に落ちついてきた、こういうことでございます。そのようにひとつ御了承いただきたいと思うのでございます。
  55. 受田新吉

    受田委員 必ずしも超過した勤務の時間によってその賃金を考うべきでないという結論に達した、それは四年間の集約した御意見、三十九年に人事院の勧告に織り込まれた要望の扱いをめぐる最終的な見解がそこだ、こう理解してよろしゅうございますか。
  56. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題につきましては、いま申しましたように、従来御承知のように、文部省は超過勤務を命じないようにというふうな指導方針でやってきたわけであります。実態を調べてみますと、時間外の勤務が相当ある。その勤務の態様というものを考えますと、必ずしもそれが時間ではかって、いわゆる割り増し賃金制度適用するというのに適当でないというような結論に到達しました。これはやはりいま申しましたように、実態調査という期間を一つ経過いたしまして、その結果に基づいてのわれわれの判断、こういうふうに御承知をいただきたいと思います。
  57. 受田新吉

    受田委員 そうすると、いまの結論が四年がかりでなされたとすれば、当分の間の措置でなくして、もうこれは固定した措置として文部省は用意されておるのじゃないですか。
  58. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 当面の問題としまして、つまり前々から超過勤務手当を支給すべし、また現行法からいえば、命令する限りは支給しなければならぬということになっておるわけでございます。その当面の事態に対する措置としてこのような措置をとったわけでございます。やはり、先ほど来申しておりますように、教員給与全般にわたってさらに検討を加えてみたいというふうなことも考えておりますので、当面の暫定措置としてこれはひとつ御審議お願いしよう、そしていわゆる超過勤務問題に対する一応の解決をここではかっていこう、こういうことに考えております。
  59. 受田新吉

    受田委員 人事院が四年前に要望された現行法のもとにおける超過勤務支払いは、教員もこれを除外することはできないという意味の御要望が、四年後に結局このような形で出た。四年間の苦心惨たんの結論ということになりますと、人事院総裁、これは教員給与体系を根本的にやると仰せられても、当分というものは非常に長い、四年間かかって出た結論だけに次の問題の解決というものは容易でないと私は思うのですが、人事院総裁の判断はどうでございますか。
  60. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 これは、国家公務員たる教員の方々に関する限りにおいては、私どもの責任でありますから、これはわれわれとして大いに、先ほど申しましたように、検討に検討を重ねて適切なる案をつくりたい。このままでいいかもしれません。いいかもしれませんが、さらに改善すべきものがあるのじゃないか、そういう点について十分慎重に検討をいたします。
  61. 受田新吉

    受田委員 この「当分の間、」というのは、暫定措置でなくて、いま総裁が仰せられるようなこと、また文部大臣、か言われるようなことであるならば、政府見解をもってすれば、「当分の間、」などということばを省いたかっこうで、新制度の創設という形でやるべき筋のものじゃないか、あなた方のお立場からいえば。
  62. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 「当分の間、」とありますから、まあやむを得さるものとして了解をした、こういうことです。
  63. 受田新吉

    受田委員 「当分の間、」というので、やむを得ない、「当分の間、」がなかったら許さなかったのですか。
  64. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 それは仮定の問題でございますから、いろいろ考えようはございます。
  65. 受田新吉

    受田委員 「当分の間、」というのがあったから許した。「当分の間、」がなければ仮定の問題だということは、これは筋が通らぬ。そんな御議論はないです。「当分の問、」と書いてあるので認めた。「当分の間、」がなければ認めないということになるはずです。仮定の問題ではないはずです。つまりこれは暫定措置であるから人事院としてはやむなく認めた、こういうことでなければいけぬと思うのです。いかがですか。
  66. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 仮定の問題と申し上げたのは、私の思い違いでございます。これは論理上の問題であったわけであります。したがって、裏返せばおっしゃるとおりです。
  67. 受田新吉

    受田委員 そのとおりです。仮定をかってに言い出されては困るのです。  そこで私の懸念しておるのは、せめて人事院は、教員に対する措置をせっかく三十九年に出された要望の線に沿うがごとく文部省から答えを求めるべきであった。それが意外のものが出てきた。それから文部省自身としても、いま承れば超過勤務手当のような形までやるか、あるいは号俸をアップするか、いろいろ議論が出た。文部省自身の苦悩の連続、途中で何回か方針が変わったのじゃないか。一応去年の七月、八月の時点では、超勤制度としてこれを採用しようという考えがあったのじゃないか。時点、時点の変遷史をいまから御答弁をいただきたいのです。
  68. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 何月何日がどうであったということまで、私もよくわかりませんが、とにかく時間外勤務調査をいたしまして、その実態があるということで、これに対して給与措置を講じなくちゃならぬという段階において、現行法から申せば、命ずる限りは超過勤務手当を支給しなくちゃならぬのですから、したがって、そういうふうな形でやるべきであるというふうな考えも、省内においていろいろ議論もあったと私も聞いておるわけであります。同時にまた、一面から申しますと、それではいかにも教員の時間外勤務実態にそぐわないものがあるというようなことから、教員給与を――これは受田さんはむしろよく御承知のとおりだと思うのでありますが、昭和二十三年ごろの話かと思います。けれども教員給与については特別な措置が講ぜられ、自来いわゆる超過勤務手当は出さないというようなことで何年か推移してまいったということは、これは御承知のとおりでありますが、そういうふうな考え方に基づきまして、この際あらためて教員給与をうんと改善することによって超過勤務手当は出さないでいこう、こういう有力な意見も出てきたわけでございます。そういうふうなことがいろいろございまして、種々検討しました結果今回のような案に落ちついてきた、こういうことでございます。これにつきましては、なおいろいろ御議論なり御批判があるということは私もよく承知いたしております。したがって、そういう問題につきましてはさらに今後の検討にまたなければならぬ、かように思っておるわけでございますが、当面いわゆる超過勤務手当問題の解決の方法としてこの道を選んだ、こういうことでございます。
  69. 受田新吉

    受田委員 文部大臣、校長は一二%、教頭は八%、一般教員は四%を、いわゆる基本給のほかに特別調整手当かあるいは今度の特別手当かいずれかをもらうことになるのだが、校長、教頭、一般教員の間における特別手当の支給にこれだけ大きな差のあることは、教育という特別な世界だけに、全く家庭的な雰囲気で教育の任に当たっている学校単位のところから見て、その差がばなはだし過ぎるというお気持ちはありませんか。これを途中で伺っておきたいのです。
  70. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 考え方によっていろいろ御意見もあろうかと思うのでございます。現在の校長あるいは教頭に出しております特別調整手当でございますか、いわゆる管理職手当、これはその職務の重要性ということが中心となってこの手当というものができておるものと考えるわけであります。したがって、一般教員にはこれが出ていないということになるわけであります。その間に不公平とか差別とかという性質の問題はなかろうと存じております。今回のこの案におきましては、これもいろいろ御議論のあるところでありますが、とりあえずの措置といたしまして――校長、教頭につきましては従来からいわゆる超過勤務手当に相当するものは出ておらないのであります。特別調整手当にすべてが包含せられておるというような考え方をいたしておりますので、今回は一般教員のみこの手当を一律に支給しよう、こういうことにいたしておるわけであります。特にその間に不公平とか不平等とか差別というような考え方でもってやっているわけではございません。
  71. 受田新吉

    受田委員 学校単位の教育世界において、一校の中で一二%、八%という本俸に準じた特別の手当が出ておる、一方は四%。この手当の比率の大きな差というものは、教育の世界であるがゆえに私は問題があると思うのです。その四を六にするとかあるいは八にするとかというような点が考慮されておったとしたならば、ある程度これほどきびしい批判が出なかったかもしれないと思うのでございますが、この点について、この特別手当制度の間におけるいろいろなアンバランスというものを、総裁、いわゆる管理職手当とそれから超過勤務手当、今度の教職特別手当、こういうものはもともとあまり大きな差をつけないほうがいいという考えを私は持っておる。これはあなたの考えだからといってこれを否定するわけにいかない。もともと超過勤務手当のときは一本であった。それが途中から管理職手当がぽこっと出て、ばかに高い比率――出世コースを歩む人たちが二五%をもらうことによって一般の公務員との間に非常な差ができて、それでさらに退職時の恩給が高額になって、それからまた天下り人事等でいって豊かな暮らしをする人と、誠実に努力しながら一向に努力が報いられない公務員との間において非常に大きな差ができてくる。それは手当の上においてはそう差をつけるべきではない。基本給の差が十分その間の職務の困難と複雑さ、それに対する責任の度合い、これを裏づけておるということになれば、手当のところまでこう差をつけることは適当でないと私は思うのですが、諸手当制度の上におけるこの大きな格差というものを是正する必要はないか、総裁として見解を明らかにしていただきたい。
  72. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 基本的にはよく御趣旨は理解できますが、やはり職務と責任というものがそれぞれ違います以上は、それに即した手当というものを盛りつけていかなければならない。そこでおそらく今後これがどうなるかという御質疑だろうと思いますが、これは先ほど申しましたような検討の一環として十分検討しなければならない、こういうふうに考えております。
  73. 受田新吉

    受田委員 検討の一環として考えるというお話が出てきた。そこでいまその問題にちょっと触れていきます。  教員給与はいま四本立てになっているわけです。大学のほかに高専制度ができたために、大学、高校、中小に高専という四本立てになっておる。この四本立てというところにも大きな問題がまた発生してきておる。文部大臣、小学校、中学校の先生というものは、私きのうも参考人にお尋ねをしてみたのですが、私も脳裏にひらめく幼き日の思い出としては、小学校の先生の印象が一番脳裏に刻まれておる。大臣、いかがですか。
  74. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 そのとおりだと思います。
  75. 受田新吉

    受田委員 幼いときからの長い人生を振り返って大臣もそのとおりだというおことばがあった。ところが小学校の先生、中学校の先生が一番低い俸給表を適用されているのです。同じ年限の大学を出て、同じ勤務年数でスタートして、行政職(一)の俸給表と比較してみると三号程度高いところでスタートしておる。けれども、それからの昇給間差――特別昇給制度の問題がここに提案されておりますが、この特別昇給制度を見ましても、あなたのほうからけさお出しいただいた資料を見ても九県しかいま出ていない。この九県が完全な特別昇給かというと、それも決してそうではなくして、三ヵ月、六ヵ月、九ヵ月の昇給短縮を含んで、おそらくそれに非常に重点を置かれているので、これは形ばかりの昇給制度です。一般公務員と比較して、特別昇給制度適用されているところでさえも非常な差が出てきておる。国立学校の公務員の教師である場合と一般の地方公共団体の教師である場合とでは、特別昇給で大きな相違が出ておるのです。全然特別昇給を考えない。僻地に勤務するとき、三年以上勤務する者に対して一号俸程度の特別昇給をする、これはほとんどは僻地教育振興の意味から緊急措置がしてあるという程度にすぎない。それで御存じのように、国立大学の教育学部になかなか人材が集まってこないという現象が起こっておる。女子の学生のほうが男子の学生よりも全体として成績がいいのが多いというような傾向も見られる。御存じのとおりです。幼き日の思い出が生涯を支配する小学校の先生のこうした質的な低下というものは何に原因しているとお考えになりますか。文部大臣としてはたいへん大事な問題だと思うのです。
  76. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御指摘の問題はきわめて重要な問題だと考えるのであります。産業、経済、社会の変動に伴いまして、いろいろな影響が教育界にも及んできておると思うのであります。優秀な男性の人材が得にくいという点もその一つであろうと思いますし、また一面からいうと女性の進出が非常に多くなってきたということもその影響の一つであろうかと思うのであります。いずれにしましても、教育をつかさどる大切な教師のいわゆる構造についてかなり変化を生じてきておることは明らかな事実であります。これにいかにして対処すべきやというのがただいまの大きな課題じゃないかと私は思うのであります。そういう意味におきまして、文部省としても真剣にこの問題と取り組んでいかなければならないのではないか、さように考えておる次第でございます。この事態に対処してどうするか、将来の見通しの問題もございましょうから、そういう点も考えましてひとつ十分検討してまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  77. 受田新吉

    受田委員 非常になまぬるいお考えですね。一国の文部大臣で、しかも内閣における最も高い地位を持たれ、総理から深く信頼を持たれておる灘尾先生としてはなまぬるいです。そのような簡単な問題じゃない。非常に深刻な問題が一つある。それば小学校、中学校の待遇が、大学、高専、高校に比較して段階的に陥没しておるということです。これは教育を尊重するという意味から言ったならば、思い切った給与体系を根本的につくり上げて、教師優遇策を給与体系の上でしっかりと築き上げなければならない。その意味においては、四本立ての給与を何らかの方法によって一本にする。行政(二)は単純労務ということで、これはわれわれは別に考えていきます。行政(一)というのは、大学を出て、同一勤務年数の一般にバランスのとれる給与体系。これに教育職俸給表として対応するように、大学から小学校まで一本。その資格の点においては四年制の大学を出なければならない。二年制の特別措置があっても、それは変則でございますから、四年制の大学を出た者に対して、教職員としての資格が付与されておる。それが大学へ勤務しようと、高校へ勤務しようと、小中学校へ勤務しようと、教育の世界を尊重するという意味からいうならば、差をつけないで、たとえば助手、助教諭、そういうところを四等級あるいは五等級にしていく。それからその次は教授、助教授と合わせて教諭と対応させていく。あるいは小中のほうは一本で、大学を二本にしてもよろしい。それから学長、部長、あるいは校長を最高の位置に据えていく。こういうような形で、それで大学の特定のところには指定職として、ある程度はみ出すような俸給表をつくってもよろしい。そういう形をもって、教師は教育職という一本の俸給表の適用を受ける。そういう案を具体化していくということによって、小学校の先生は安んじて、大学の先生と同じ俸給表の適用を受けておるんだという喜びを感じて、いまなお脳裏に残るかつての小学校の先生の愛情の姿が実績をあげる姿となってあらわれると思うのです。文部大臣、あなたのような非常に力を持たれた文部大臣のときに、こういう問題をすかっとやられて、それを人事院に、どうだと、こう御相談されたら、人事院は最敬礼をして灘尾案に賛成してくれますよ。そういうところへ一向頭を向けないで、学校差を著しくつけたままで今度の俸給の改定を見ても、この間の校長と学長の差でも、五万円以上違っておる。この四種の俸給表は差がますます拡大しておる。こういう現象を見たときに、小中に適用の教育職日というものはあまりにもみじめな俸給表です。それに人材を吸収せよということは、現在は、精神的な一方では、生活を主体とする働く労働者であるという立場から、せめて教育職俸給表を根本的に是正するというこの案は、いまにしてとるべきときであると思うのです。文部大臣、御見解を承りたい。
  78. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 教育界に優秀な人材をそろえたいということにおきましては、われわれとしましても、もちろん当然考えなければならぬことでございます。したがって、この問題と関連して、給与改善という問題も決して等閑視すべき問題でないことは申すまでもないことだと思うのであります。先ほども申し上げましたが、教員給与に関する各種の調査を積極的に、意欲的にやってみたいと申し上げておりますのも、そういう気持ちが私どもにもあるからでございます。この問題は十分検討に値する問題だと考えております。いまじきに何らかの方策を持ってこうする、ああするということを申し上げることは、私にとりましては少し早過ぎという気がいたします。問題としてはきわめて重要だと考えますが、十分に検討した結果、できるだけいい案をつくり上げたいという意欲を持っておるというふうに申し上げておくにとどめたいと思うのであります。御指摘の教員待遇改善すべしというお考えにつきましては、私ども全く同感でございます。
  79. 受田新吉

    受田委員 総裁、私がいま指摘している問題は、教育の世界に、教師によってその待遇差が著しくて、小中学校の先生というものは薄給である。これは明らかにここに出ておる。しかし、いまからここで俸給表の論議をする必要もないが、もう数字の上でながめたときに、今度改められた俸給表を見ましても、二等級の教員の最高は八万三千円、こういうような低い俸給をもらっておる。教員でがんばっても、そこまでしか行かない。しかし行政職であるならば、たとえば課長のところへ行くとしても、それよりも一万五千から二万高いところに行っておる。大体学校の先生は、校長は局長、部長と私は見ていいと思う、大学を出て精励恪勤した者。それで、この俸給表の中で特に教授の俸給表、それから学長の俸給表と小学校中学校の先生俸給表、学長だけにおいても、これは五万という相違がある。同じような四年制の大学を出て、精励恪勤して、その行き詰まるところがそこまで違ってきておるわけです。この行政職の一等級の十四万と比較しても、また課長の九万六千と比較してもそうです。それから二等級の教諭と、課長どまりになったとして計算しても十万で、二万五千の差がある。こういうふうに行政職と比較しても、特別昇級制度に恵まれない教員の場合は、ここで最後の行き詰まる山、同じ高ねの夢を見る人々にして、山の高さが非常に違っておる。このあたりでひとつ俸給表の根本的作成をはかるときが来てはいないか。大学の、旧帝大の職員、校長、学長を優遇するということにのみ狂奔して、中小教職員の俸給表を改善することを怠っている。機械的にしか改善しておらぬというこのことは、いま私が指摘した問題と一緒に御検討願って、教職俸給表を一本立てにしていく。その間において適当なランクを設けて、その特別の任務を持った者に対する措置をすることは、俸給表で認められていることです。この提案に対する人事院総裁のこれからの御見解、これからの方策としての御見解を明らかにしていただきたい。
  80. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 三本立て、四本立ての制度は、御承知のとおり、たしか昭和二十八年議員立法としてつくられた制度であります。われわれとしては、その経過等もやはり尊重しなければならぬものですから、大体従来のたてまえを尊重してまいっております。なかなかこれは、現場の先生方からはいろいろな要望がある。いまの受田委員のおっしゃるような要望もありますし、あるいは高等学校の先生、大学の先生の要望は、それとまた逆な要望としてあるというようなことでありまして、問題意識は十分持っております。しかしながら、それらの点をも総合勘案して、やはりいまおっしゃるとおりすっきりした形をひとつつくり上げたい。そういう理想は持っておるが、なかなかむずかしいということだけは御了解願いたい。
  81. 受田新吉

    受田委員 いま、理想を持っておるという御答弁です。教育職俸給表の根本的改定を、私の提案したような形を織りまぜた理想を持っておる、そう理解してもよろしいですね。
  82. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 そこまでは申し上げるつもりはございませんが、筋の通った適正な給与体系、理想的な給与体系というものに対してそれを実現すべく努力するつもりであるということであります。
  83. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、私の言うことは筋が通ってないということになる。私がいま政府に要望していることは、小中学校の先生を特に優遇していく、したがって高校も大学に近づけてやればみんなが満足ですよ。小学校のところまで下げようというから問題が起こるので、それを大学に接近させることになるならばみんなが満足する。大学の先生は、おれは小中学校の先生よりはえらいといばりたい者がおれば、そういう不心得者は大学の先生の資格なし。小中学校の先生、高校の先生を優遇して大学の俸給表に近づけることを歓迎する人が大学の先生の資格があると思うのだが、そういう意味において私はいま提案しておるので、おのおの言い分というものは、小学校、中学校と差をつけていきたいというような言い分というものは非常に偏狭な言い分であって、これは筋の通った言い分ではない、合理的ではない。私はその意味において教師を大切にするという意味で、特に最も影響力のある小中学校等の教師をりっぱに育てあげるところの環境づくりを国がしてやらなければならぬ。それをいま提案しておるのです。これは文部大臣、あなたのほうからひとつ、特別手当のようなものでなくて俸給表の基本的な改定というものを求める人事院の御相談という形を積極的にとっていただくべきで、いまの憂うべき小中学校の待遇の低さというものが教育の質的低下にも影響しておる。こういうことを考え、そこにまた日教組の皆さんにしては非常な不満が出て、実力行使とかいうような問題も起こってくる。そういうようなものを、別に闘争目標に合致するという意味でなくて、もっと高い立場から――私自身としても、この教職員の職場放棄などというのは全く反対なんです。そういうような形の闘争というものが現にある。あるのはやはり給与の不満足ということがそういうところに出ておるのだ。それを改める意味においても、ひとつこの際小中学校の教師の優遇策、これを根本的に一そして人材がとんとん教育界へ流れて、希望者の十人、二十人に一人しか採用できないというような形になっていくために、教育学部の志願者が他を圧っするほど出てくるということを考えなければならぬし、また教育学部の卒業生以外に、国立大学以外に一般の大学からもどんどん教師を採用しておるわけでございますが、そういう中にも良質の教師が採用できるような道を開かなければならぬ。これをひとつ国の文教政策の基本に置くお気持ちがあるのかないのか、はっきり御答弁願いたいのです。
  84. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、教師待遇改善をはかっていくということは、当然文部省として考えなければならぬ大切な仕事でございます。日教組がどうのこうのというふうなことでかれこれすべき問題じゃもちろんないと思います。りっぱな人材が安んじてとうとい仕事をやってもらえるような状態にしていかなければならぬということが文部省として当然追求していかなければならぬ大きな目的ではないかと思うのでございます。その意味におましては、受田さんのおっしゃることについて私も敬意を払うわけでございます。また、私どもがこれから大いに調査もしてと、こう申し上げておるのも、何とかして給与の状態を改善していきたいという意欲のもとにこの調査をやってまいりたいと思っておるわけでございます。具体的な方策ということになりますと、受田さんのおっしゃることもなかなかすっきりした筋の通ったお話かとも思いますけれども、さて実際ということになりますと、そう簡単にいかない点もあろうかと思います。いずれにいたしましても十分検討をさしていただきたい問題で、この改善のために努力するということにつきましては、はっきり申し上げておきたいと思います。
  85. 受田新吉

    受田委員 人事院総裁であなたは局長の御答弁をみな兼ねておられるから一人で御答弁を願ってけっこうでございますから、ひとつしばらく総裁と議論をさしてもらいたいと思うのです。  この本質的問題でちょっとお尋ねしたいのでございますが、教職員に対して特別昇給制度を実施している府県はまことにささやかであるというこの現状に対する御認識はどこにあるか、ちょっと御答弁願いたいと思うのです。――さっきから申し上げているとおり、特別昇給制度というものが一応公務員にはある。その制度が小中学校、高校を含めて地方公務員たる職員にはほとんど適用されてないという現状です、文部省から出された資料を見ても。これをどうお考えになるか。
  86. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 それは今回の当初に私がはっきり申し上げ、先ほどもはっきり申し上げましたように、私どもは地方公務員たる教員の方々は全然所管しておりませんものですから、所管外のことについては申し上げかねるということで御了承を願ってずっときょうまできておるわけでございます。
  87. 受田新吉

    受田委員 地方公共団体のことを所管していないことは私はよく知っておるのです。しかし、それに対するあなた自身は国家公務員だけを担当しているから、そのほうに対しては一切発言をしては越権行為だという、そういう役人根性のさびしさからくるものであれば私は何をか言わんや。しかし、公務員の給与、その人事の公正を期する大事なお役所として、当然地方公務員にも国家公務員と同じような形のものがとられるべきであるという気持ちをお持ちにならないような人事院総裁なら意味をなしませんね。その期待をしておる気持ちが何かなければならぬ。それを私は言っておる。所管外は一切発言をしないというようなことで、結局文部省から御相談を受けたのは国立学校の分については御相談を受けた、ほかのことは一切御相談を受けてない。こういうことだが、国立学校は現に超過勤務手当をもらっておる。もらった上に二重取りになる。それから地方公務員のほうは二重取りではなくて初めてもらう。その差が非常にきびしいじゃないですか。これに対してのあなたのあらましき姿というものがないと、やはり人事院総裁として適任な方じゃないと思うですね。やはりそういう夢を持って……。
  88. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 おっしゃるとおりで、しかし役人根性のさびしさとかなんとかおっしゃいましたが、私をして言わしめれば国会制度のきびしさというふうに申し上げさせていただきたい。私はかって何十年か国会通いをしておりますが、所管外のことをしゃべった政府委員でしかられた人がおる。これは所管外のことについては制度的にしゃべるものではないということが一つと、また私の人事院としての特殊な立場からいたしまして、その辺は厳に戒めなければならぬということで申し上げておるのでありまして、さびしさというようなことでなく申し上げておることを御了承願っておきます。  しかし、根本のお気持ちはよくわりかます。われわれがいろいろな給与立法をします場合にも、大体地方公務員の方々、教員の方々についてもそれに準じられますから、そういうことを頭に描きながらいろいろ検討しておることはこれは事実であります。全然そちらのことは考えずにやっておるかということになると、そうではございません。これは所管外のこととしてお答えをいたしてにおきます。
  89. 受田新吉

    受田委員 それを言っていただいていいのです。国会はうるさいところ――総裁がそこまで地方公務員のことをやっておることは名総裁として誇るに足る人でありますから、そういう人をだれも抗議する人はおりません。そういうことを抗議する人があったらそのほうがおかしいのです。その点については総裁が思い切って広く公務員全般に対する愛情をささえに、公務員全体を対象にした立法措置を勧告するんだというお気持ちがなければいけないと思う。最後のことばがあったので、私はこれを了とさせていただきます。  それから文部省は、私に示していただいたこういう実態調査をいままで何回くらいされましたか。毎年やっておるのか、年次的にこれがふえつつあるのか、減りつつあるのか、累年の統計をお示し願いたいのです。
  90. 天城勲

    天城政府委員 けさ先生にお配りしましたのは、これは特に調査というよりも、各県で条例とかあるいは人事委員会の規則とかいうことで定められておる県の状態でございますので、これは制度として私たち常に了知いたしております。
  91. 受田新吉

    受田委員 ちょっと私のお尋ねに答えていらっしゃらぬ……。
  92. 岩田俊一

    ○岩田説明員 毎年度状況調査で報告をとっております。
  93. 受田新吉

    受田委員 その結果をお知らせ願いたいとお尋ねしておるのですよ、累年の結論
  94. 岩田俊一

    ○岩田説明員 累年の状況は、差し上げた資料とほとんど変わっておりません。
  95. 受田新吉

    受田委員 過去十年間この九県だけがこのささやかな措置をしておるだけですか。途中で変遷はないのかどうか、はっきり御答弁願いたい。
  96. 岩田俊一

    ○岩田説明員 いま手元にその資料を持ち合わせておりませんが、この給与改定時期に際して行なわれる分がございますので、その間の事情をいま明確に申し上げられないわけでございます。
  97. 受田新吉

    受田委員 文部省と自治省との間では、その間において何かの連絡があるのかどうか、お答え願います。
  98. 岩田俊一

    ○岩田説明員 特段の連絡はないわけでございます。
  99. 受田新吉

    受田委員 地方公務員の担当をしている自治省として、おそらくこの給与実態調査というのもやっておられると思うのです。きょう御苦労願えればたいへんしあわせだと思うのですけれども、私はそういうものは、自治省の調査資料というようなものを、同時に地方公務員たる教師に関する限りは文部省が総体として把握していただいておると思ったんですが、その間何らの連絡がないといういま御答弁です。これは何かありますか。
  100. 天城勲

    天城政府委員 口仮初に、私、御質問のとり方を間違っておったのかもしれませんので、その辺は補足いたしましてお答えいたします。  御案内のように小中学校の教員につきましては、義務教育費国庫負担法によりまして私どものほうで半額国庫負担をいたしておりますので、しかもこれは精算方式になっておりますから、毎年その負担と精算の仕事の範囲内におきましては、各県の給与の状態は把握しておるわけでございます。ただ、最初の御質問の特別昇給の実施の状況というものは、これは制度でやっておりますのは、御報告申し上げましたとおり現在九県でございますが、個々の県がどういう形でこの九県におきましても特別昇給をやっているかということは、結局精算負担制度でございますので、正当な支出である限りは、総額においての負担金でございますので、中身について特にはわからないということを申し上げたわけでございます。  なお、自治省との関係でございますけれども、負担金の積算、地方財政計画上の積算を調整する、その他のことから、そういう意味では絶えず連絡はございます。
  101. 受田新吉

    受田委員 特別昇給がこの程度のものであって、そして超過勤務手当も支給されていない。実質的に教師の所得というものは、地方公務員の給与が国家公務員よりもやや高いところにあるという点で救われているにすぎないという結論になっておると思うのです。このことは筋論を通す意味で、当然支給される、そしてまた法的根拠を持って地方の給与条例が制定されている以上、これは当然支払われなければならぬ。そのような指導をする権限は文部省にはないのかどうか、お答え願います。
  102. 天城勲

    天城政府委員 御案内のように公立学校の教員給与の種類と額、これは特例法の二十五条の五によって、国立学校の教育公務員のそれによる前提がございます。具体的には各県の条例で定められることでございますが、私たち、この法律の条文の趣旨からいきまして、国の制度と合わせていくことについては、もう先生のおっしゃるとおり、基本的にわれわれの仕事だと思っております。ただ、具体的にどう定めるかということは、やはり現在の制度上各県の条例にまかせられておりますので、おのずからそこには限度があるわけでございまして、この法律の条文の趣旨に反するようなことがないように、できるだけわれわれは期待しております。
  103. 受田新吉

    受田委員 どういう指導のしかたをしておられるか、通牒を出しておられるかどうか、それを具体的にお示しされるようにお願いします。
  104. 天城勲

    天城政府委員 給与に関しましては、ただいま申し上げましたように負担金制度をとっておりますので、毎年年度途中に給与の担当者を中心とした責任者の会議を開いておりまして、予算の新しい決定に基づきまして年間のいろいろな態度について十分話し合いの機会を持っております。また、ベース改定等がございますれば、そのつど同じような会議を開いて、単に一片の通牒というのではなくて十分こまかい話をいたしておるわけでございます。
  105. 受田新吉

    受田委員 この地方の実情は、ここでちょっと定数に触れますけれども、当然法律に規定されている、いわゆる標準法の実施にあたっても、養護教諭とかあるいは事務職員とかいうものを規定のワク内で実施してないところがある。そこで市から市費でもって職員を雇用したり、あるいはPTAでこれにかわる職員を雇用したりしているというこの事実を、御存じかどうか、お答え願います。
  106. 天城勲

    天城政府委員 広い意味での教職員の定数につきましては、御案内のような標準法によってわれわれ総体的な予算措置をいたしておるわけでございますが、現実に県費負担以外あるいは市費負担以外の職員が入っている事実も私存じております。
  107. 受田新吉

    受田委員 存じておるということでございますが、その実態を把握しておられるかどうか。これも文部省が資料として用意せられなければ、教員給与体系の根本的改定などというのはとてもとても本質的にはできないはずです。市費による職員の採用あるいはPTAによる採用……。
  108. 天城勲

    天城政府委員 たいへんこまかくなりますけれども、たとえば養護教諭でございますが、養護教諭の定数が十分でないということから、市で養護職員という形で負担しております。この数字も各県別に把握いたしております。
  109. 受田新吉

    受田委員 総体はわかっていませんか。
  110. 天城勲

    天城政府委員 市町村費負担の養護職員が、小中合わせて三千五百三十七名でございます。それから事務職員七千三百九十七名でございます。それから図書館関係の事務の職員として千百五十三名。これが市町村費負担でございます。
  111. 受田新吉

    受田委員 これは市とか、地方公共団体として力を持つところはそれができておる。ところが、町村段階になってそれをやっておるところがあるかないか、町村の数字を示していただきたい。
  112. 天城勲

    天城政府委員 いま申し上げましたのは市町村、要するに公共団体の負担でございまして、特に市町村別に分けた数字を持っておりません。
  113. 受田新吉

    受田委員 ありましたらひとつ……。
  114. 天城勲

    天城政府委員 みんな一緒でございますので、分けてございません。
  115. 受田新吉

    受田委員 それは文部省として非常に不親切です。これは私たちがいまお尋ねするのに、ある程度財政規模のしっかりした市とか、ある特定の町とかいうそういうところに、この事務職員あるいは養護教諭等を配置しておる。そうでないところは、おおむね町村というものは貧弱な財政の中でこういうお手伝いをすることができないような実情になっている。また三千幾らの数字をいま出されて、これだけのものを市町村としてお手伝いに市町村費で出しておる、こういう御答弁を平然とされるように実情はきびしいのです。したがって、そういう職員を出し得ない学校はどれだけ多くの事務量をかかえておるかということをお考えいただかなければならない。統計事務等で報告しなければならない事務など、おそらく超過勤務を規模の小さい学校では相当の量でやっていると思うのです。それに対しては、教師の本質的な任務として超過勤務を命じない形になっているから、全く無定量な奉仕をしているというかっこうになってきていると思うのです。そういう教育の世界というものはまことにずるずるといった野方図な――野方図というのは私の郷里のことはでございまして、ルーズなやり方で、その実態を把握してない。これは委員長も教育界の御出身であるだけによくおわかりいただけると思うのですが、文部省はそれを正確に把握して、それに対するこのたびのような措置でなくして、実態を把握した手当を支給するという行き方をとっていただかないと、公平を欠くと思うのです。この公平を欠くという現象が現に起こっていることはおわかりになりますね。事務当局でけっこうですから、御答弁願いたい。
  116. 天城勲

    天城政府委員 ただいま申し上げましたような市町村費負担の職員がいるということは、やはり教職員の定数が十全でないということの一つのあらわれであろうと思いますし、また地方公共団体、府県によってこの差がいろいろあるということも、それぞれの事情や財政事情の反映だと思っております。したがいまして、教職員の定数の問題につきましては一ぺんになかなか理想どおりいかないのでございますけれども、御案内のように五カ年計画を繰り返しまして、本年度で第二次の分が終わるわけでございます。この間にも事務系の職員あるいは養護職員等も不十分なことがいろいろ指摘されたり、また御意見も出ているわけでございまして、また地域によっていろいろな事情がございます。これらの点につきましては、適正な教職員の基準というものを次の仕事として、私たち宿題としていただいておるし、自分たちでも次の大きな仕事考えておるわけでございます。
  117. 受田新吉

    受田委員 標準法の目標が四十三年度で一応達成されて四十五人の基準に到達する、こういう段階において定数の改正計画がいま進んでおると理解をしてよろしいかいなか、文部大臣
  118. 天城勲

    天城政府委員 ただいま申し上げましたように、二回にわたる年次計画が今度終わるわけでございますので、その間にわれわれも当初考えたとおりできなかった点もございますし、また新しい事情等も生じておりますので、それらの問題を含めて次にどうするかということを検討中でございます。
  119. 受田新吉

    受田委員 四十四年度から新しい計画に着手するために標準法の改正企図を持っておると理解をしてよろしいかどうか、文部大臣からひとつ……。
  120. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 そういう気持ちをもって検討を命じておるところであります。
  121. 受田新吉

    受田委員 四十四年から標準法の改定措置を講ずるようにいま検討を命じてある、大臣の御発言で一応明らかにされたわけです。この定数と事務量ということは、これは確かに大きな因果関係があるわけです。したがって、この特別手当制度でこれをごまかすということのないように定数をしっかり確保して、願わくは四十五の定数は四十まで下げるという目標をひとつ新しい計画の中に織り込んでいただいて、それに事務職員、養護教諭等の配置をさらに強化していくという、そういう教育の世界に新しい希望を持たせるような方向文部大臣として御検討を命じておられるのかどうか。
  122. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現状をさらに一そう改善するために検討を命じておるところであります。
  123. 受田新吉

    受田委員 現状改善の目標ということの中にば、定数の問題も含み、また職員の配置、事務職あるいは養護職の職員の増置、こういうものも含んでの検討であるかどうか。
  124. 天城勲

    天城政府委員 いま定数の問題でございますが、中身につきましてはいろいろな問題が考えられるわけでございます。学級の規模の問題ももちろんでございますが、全体の教員定数の問題養護教諭あるいは事務職員、それも地域によって、あるいは学校規模によっていろいろな条件がございますので、広い観点からこの問題を検討いたしておるわけでございます。
  125. 受田新吉

    受田委員 いまちょっとあいまいな点があったのですが、私がいま指摘したのは具体的な数字でございまするけれども、そういう具体的な数字を示さなくても、定数の問題も含めて検討しておるというふうに理解してよろしいのかどうか。
  126. 天城勲

    天城政府委員 どういう意味で定数ということばをお使いになったか知りませんが、要するに標準法の定数の問題をいま申したような角度から検討しておるということでございます。
  127. 受田新吉

    受田委員 昭和四十三年度で一応五カ年計画の目標が達せられた機会に、いまの学校職員の事務量の複雑多岐を防止するためにも事務職員、また健康保持のためにも養護教諭――たとえどんな小さな学校にでも、一応のワクの中にはまったちゃんとした報告義務も与えられておるし、子供もみなおる。それらが地域社会の一般子供にも、ときには手伝いに行ってあげるくらいのゆとりをもって、その学校の教職員が地域社会から信頼されるような方向へ持っていくような意味での養護、事務職そういう方々の増置を含め、学級定数の問題を進める意味における検討と了解してよろしいか。もう一ぺん確認をさしていただきます。
  128. 天城勲

    天城政府委員 そのとおりでございます。
  129. 受田新吉

    受田委員 文部大臣、そのとおりですね、もう一ぺん。
  130. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 そのとおりでございます。
  131. 受田新吉

    受田委員 大臣からそういう四十四年に対する期待感を抱かせる御発言がありましたので、その点は今度のこの特別手当制度にも密接な関係があるだけに、それと積極的に取っ組んでいただくことを私から要望をしておきます。  では次に、この法案に、さらに別の角度から関連してひとつお尋ねをしてみたいのでございますが、養護学校あるいは盲ろう学校という特別の任務を持った学校の教職員の待遇、これは私、この法律の規定の中に発見できない一つの問題が残されておると思うのです。肢体不自由児、それから精薄児、こういう学校に勤務する教員の中には、単に教育という部面だけではなくして、御飯を食べさせることから、おしっこをすることから、すべてにわたって教育と世話の深いつながりでこの不幸なる子供たちのしあわせを守っておるのです。こうした特殊の任務を持った養護学校等の教職員に対する世話料というものに対して、世話部分に対する処遇をどうお考えになっておるか、いかがでしょう。
  132. 天城勲

    天城政府委員 御指摘の盲ろう、養護学校の教職員の給与上の措置でございますが、まず現状を申し上げたいと思います。  これは、たとえば盲学校にいたしましても、中に小、中、高等部というような部が分かれております。それぞれ小学校、中学校、高等学校に準ずる教育をいたしておるわけでございますが、現在給与の上から申しましては、先ほど御批判ございましたけれども、高等学校の俸給表を全員につきまして適用いたしております。  それから、いま御指摘のように、かなり教育ということも手間のかかる仕事がたくさんございます。このために全員に調整額として八%を特殊学校につけたわけでございます。  なお特に寮、宿舎を持つ場合に寮母というものが必要になってくるわけでございますので、寮母も教員と同じ給与上の措置をいたしておるというのが現状でございます。このたびも、この寮母を含めまして、盲ろう、養護学校の教職員につきましては教職手当を及ぼすという考え方でおるわけでございます。
  133. 受田新吉

    受田委員 いま寮母の話が出ましたが、この寮母の資格基準はどうなっておるわけですか。
  134. 天城勲

    天城政府委員 寮母の資格基準は現在のところ定まったものがございません。
  135. 受田新吉

    受田委員 そこに一つの問題があるわけなんです。寮母が資格基準を持っていないから、それぞれの地方公共団体のこうした特殊任務を持った学校では、寮母というものをどういう基準で採用するか、国が一応の基準を示してその基準にのっとって採用するという形でなければならないのが、府県がかってに寮母の基準を設けるところもあれば、設けないところもある。いろいろとその間における規律の乱れというものもできてくる。その寮母の資格基準というものを文部省がきちっと制定する必要はないか、いかがでしょう。
  136. 天城勲

    天城政府委員 先ほど申し上げましたように、現在寮母の資格基準は定められておりません。なお、現実の寮母の資格と申しますか、寮母になっておる方々の実態でございますけれども、これもそういう基準が定められてないことも原因でございますが、非常に千差万別でございますので、この点につきましては実態と合わせて私たちも十分今後検討しなければならない課題じゃないか、このように思っておるわけでございます。
  137. 受田新吉

    受田委員 文部省としては、これは特に肢体不自由児あるいは精薄児あるいは盲ろう学校の生徒、こういう皆さんに特別の愛情を持つというたてまえからいったら、一応の基準、しかもそれは非常にゆるやかな基準で、広範にわたって子供をかわいがる寮母を採用できるような基準を設けていく。そしてそれは助教諭という資格を与えておる県もあるでしょうし、あるいはそれを与えないでいつでも罷免できるようなところもあるというように千差万別になっておると思うのでございます。特に介貳を必要とする可憐なる子供たちであるがゆえに、そこに可憐なる子供たちに深い愛情を持つという意味のある別の精神面のりっぱな適格者なども採用してよろしいと私は思っておるのですが、そういうものについてワクを広げた基準を早急に制定することを文部大臣考えいただけますか。
  138. 天城勲

    天城政府委員 ちょっとその前に補足させていただきます。  寮母の仕事は非常にたいへんな仕事でございますし、非常に形式的な資格基準を定めてしまいますと、かえって適当な方が得られないことも考えられます。現に実態も非常にバラエティーに富んでいるものですから、その点がいままで簡単に資格基準をつくれないでいた一つの理由でございますが、御指摘のように、やはりどういう姿であれ、いい方が来ていただけるように資格基準というものは定める方向考えなければならぬと思っております。  なお、私たち、資格基準がないから放置しておくという意味じゃございませんので、先ほども申しましたように、教育職の俸給表を適用いたしておりますので、給与の面では教員給与表を全部適用する措置をとっております。  そういう意味で、要はいい方をたくさん採用できるようにという前提でこのことを考えていきたいと思っておりますので、御了承をお願いしたいと思います。
  139. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 実情につきましてはいま政府委員から御説明申し上げましたとおりでございますが、寮母の資格基準あるいはその待遇等の関係につきましては、十分ひとつ検討させていただきたいと思います。
  140. 受田新吉

    受田委員 文部省の所管されているお仕事の中に幾つも不行き届きの点が残っている。こういうことも同時に、こういう法案をお出しになる際に、処遇改善に伴うて全面的に整理し、規則としてその他のいろいろな区切りをぴしっとつけていただくことを私は要望しておきたいと思うのです。  次に、基本的な問題になるのでございまするが、いままでいろいろとお話を伺ってみて、今度の教職特別手当というものが全く思いつきの新制度創設という印象をいかにも裏づけするような形に私自身考えざるを得なくなりました。そこで文部大臣、この教職特別手当というものの中に超過勤務手当の部分を含むと同時に、教員勤務は特別の任務を持っている、子供を教育するということであるから、超過勤務ということの実態をはっきりつかむことができないような形で、ばく然とこれにかわるものということでこれを提案された印象を受けるのでございまするが、超過勤務にかわるという意味は、私がいま指摘したような懸念される面を全然含んでいないのかどうか、それをまずお伺いして……。
  141. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この教職特別手当というものは、教員の時間外勤務という事実があるということに対応しての措置でございます。その意味におきまして、超過勤務手当制度にかわるものというふうな御解釈もあるいは成り立つかと思うのであります。超過勤務手当を支給しないで、教員の時間外勤務を、状況の特殊性を考えまして、これを一律四%の手当を支給することによって問題の解況をはかろう、こういうふうな趣旨でございます。
  142. 受田新吉

    受田委員 文部省が集計された全国の超過勤務の時間の実態はどうであったか。
  143. 天城勲

    天城政府委員 すでにこの資料は前に発表いたしておりますので、概略を申し上げたいと思いますが、四十一年度に、教職員の勤務の状況を、条例、規則等で定められております服務時間内と服務時間外に分けて、ちょっとややこしいことでございますが、校長の超過勤務命令があるかないかということを一応抜きにいたしまして、どういう仕事をしているかという一応の状況を調べたわけでございます。しかもその場合に、服務時間外の仕事では、学校の敷地内でやっている場合もございますし、敷地外でやっている場合もございます。外の場合には、宿泊の場合もございますし、そうでない場合もある。いろいろな条件がございますが、一応それらの点を前提に置きまして調べました結果、小中学校の教員について見ますと、小学校で二時間三十分、中学校で三時間五十六分という服務時間外の仕事実態が出てきたというのが、率直な実態の結果でございます。
  144. 受田新吉

    受田委員 この二時間三十分、四時間足らずという小中の勤務時間というものが、今度の特別手当の参与になったのかどうか。
  145. 天城勲

    天城政府委員 私たち、この出てまいりました勤務時間外の仕事の中身をいろいろ検討いたしまして、いわゆる勤務の延長と考えられるものもこの中に入っておりますし、それから仕事でございますから、必ずしもそうでないものもいろいろ出てまいりましたが、この中から、結果的には勤務時間内の勤務の延長としての事実があるという判定をいたしたわけでございます。
  146. 受田新吉

    受田委員 勤務時間内の勤務については正確に把握できるはずです。それが今度勤務時間以外になると、なかなか正確な把握がむずかしい。その勤務時間以外の勤務をひとつ正確に把握することが文部省の趣旨であったと思うのです。その意味で、教職員の場合は、たとえば学校から外へ出て、家庭訪問という校外指導がある。さらに父兄との懇談会というような、そういう集会に出席することがある。研修の出張をすることがある。修学旅行というような場合も起こってくる。そういうものを集計すると、一般の公務員と比べて非常に大量な、誠心誠意努力する人ほど超過勤務がすばらしい量に上ってくると思うのです。防衛庁の職員については、ここで一つ例を引きますが、演習というのは昼夜兼行でやるから、その演習という期間を含めて本俸に、自衛隊の職員というものに対して地域的な差をなくした全体としての六%という要素が数字の上で入っておる。これが自衛隊の職員の俸給表になって出てきているわけです。そういう意味からいうと、教職員というものは少なくともいま私が指摘したようなしゃくし定木にきちっといかない超過勤務というものが相当の大量に及んでいるということを文部省は前提にしていくならば、超過勤務手当について、国立学校で六・三%という基準は、地方公務員たる教職員に対しても、当然国家公務員の基準を、市町村、府県に対して指示して、それを支払うように、そのワク内で操作ができるような幅を持たせてやるというのが私は本筋じゃないかと思うのです。これをひとつ明確にお答えを願いたい。
  147. 天城勲

    天城政府委員 ちょっと最初に数字の問題でございますが、国立学校についての超勤の比率でございますけれども、私たちはそのような数字を持っておるわけではございません。さっき人事院総裁も〇・六%とおっしゃっているのですが、私たちもそういう数字はちょっといまないのでございますが、実績で見ますと、大体十時間ぐらいでございます。予算の組み方が、すべてのものが対象ではございませんものですから、何人に対して幾らという積算になっておりまして、結果的に見ますと十時間前後でございますので、その点はちょっと最初に申し上げておきたいと思います。  それから先生の御指摘のとおり、正規の勤務時間外の仕事実態というのは、非常にバラエティーに富んでいるということは事実でございます。この調査といたしましては、先ほど申したように学校の敷地内でやるものと学校の敷地外でやるものにつきましては、一定の条件ということはないですけれども、記述上の前提をつけなければ調査にならないものですから、その範囲でこれは調査いたしております。また家庭に帰ってからの仕事もそれはあるわけでございまして、そういう点では確かに数字的に明確に把握できない状況でございます。  なお、国立学校との比較が出たのでございますが、国立学校の場合には、大学の場合には論文審査と入学試験事務に対して支給されているわけでございまして、一般的な超勤というとり方をとっておらないわけでございます。それから、あるいはこれは私の想像でございますが、六%というお話が出たのですが、これは一般の地方公務員の超勤の財源率が六%ということではないかと思うのでございますが、これは御指摘のとおり一般の地方公務員の超勤の財源率として六%組んでいるわけでございます。
  148. 受田新吉

    受田委員 あなたの御答弁、どうもはっきりしないのですがね。私がいま指摘しているのは、六%というのは一般の公務員の超勤の比率なんですよ。これは地方公務員もそうなっておる。それで、いま国立学校の小中校の職員の超過勤務の比率をお尋ねしたら、人事院総裁は六・三%というお答えであったが、六・三%というのは国立学校の中小校の比率としてお示しになったのではなかったですか。ちょっとその点を……。
  149. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 そうではないつもりでお答えしたわけです。これは給与局長から申し上げさせたほうが正確でしょうが、予算の上で超過勤務手当分として予算額にその額は上がっておるわけです。それから、その本俸当たりの超過勤務手当額を比率で見ると〇・六%の比率になりますよという事実を申し上げたわけです。
  150. 受田新吉

    受田委員 〇・六%、それからさっきの六・三%は何ですか。それから九%と言われたが、その比率は何でしたかね。
  151. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 教官の超過勤務手当につきましては、予算上積算されているものにつきまして見ますると、総裁から申し上げておりますとおり、高校以下の学校の教官につきまして一人一月当たり平均約〇・九時間、対本俸にしまして比率が〇・六三%程度でございます。
  152. 受田新吉

    受田委員 〇・というのが上に一つついておるのだな。そうすると国立学校の超過勤務というのは一般公務員の十分の一、そういうことになっておるのですね。
  153. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 同じ関係を一般の学校以外の職員を全部ひっくるめまして、国の職員全部につきまして平均をとりますと、大体一人一月当たり十五時間程度でございまして、俸給にいたしまして一〇%ということになっております。
  154. 受田新吉

    受田委員 俸給に対して超過勤務手当が一〇%、国立学校の付属高校以下の職員の給与に対して超過勤務手当は一〇%、こういうことですね。ちょっともう一ぺんはっきりしてもらいたい。
  155. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 予算上積算されております超過勤務手当の大きさにつきまして分析いたしてみますると、国立の教官、特に高等学校以下の教官につきましては、一人一月当たり約〇・九時間分程度でございまして、本俸に対しまして〇・六三%でございます。それを含めまして国の一般職給与法を適用されております職員全部につきまして、約四十九万おりますが、この職員全体につきまして平均をとってみますると、その中にはそれぞれの業務におきまして非常に超勤時間数の多いところもございますし、そうでないところもあるわけでございますが、それを全部ひっくるめまして見ますると約十五時間、本俸に対しまして約一〇%、こういうことになっているわけでございます。
  156. 受田新吉

    受田委員 そのおしまいが大事なんです。それは地方の小中校も全部を含めて、事務職員、養護教諭等も含めて超過勤務としてこれを考えてあげるべきだ。それで十五時間、一〇%という国立学校の職員の超過勤務手当支給率というものは、私は非常に貴重な数字だと思うのです。そうじゃないですか。
  157. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 ただいま申し上げておりますのは国家公務員につきましての計算だけでございます。国家公務員の中で給与法の適用者が約四十九万おりますけれども、その四十九万にはいろいろ業務があるわけでございますが、その業務を全部ひっくるめまして一人当たり平均いたしますれば、一月当たり十五時間程度、本俸に対して一〇%程度でございますが、その中で特に教職員だけについて高等学校以下について見ますれば、一月当たり〇・九時間であり、本俸に対しまして〇・六三%ということでございます。
  158. 受田新吉

    受田委員 この教職員の〇・九時間という超過勤務はどういうぐあいにやらしておるわけですか。国立学校のほうを言っておるのですから人事院のほうで。
  159. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 正規の勤務時間外に超過勤務を命じます場合には、それぞれの業務の必要性に応じまして臨時、緊急の場合に超過勤務を命ずるということで、業務の必要性に応じまして、それぞれの定員との見合いにおきまして、それぞれの省庁におきまして業務上にらみ合わせて予算要求しまして、それに基づいて超過勤務を命ずるということをやっておるわけでございます。私どもといたしまして、その関係を文部省当局でそういう業務の必要性として予算要求をされたその内容については、先ほど申し上げましたように承知しておるわけでございますが、その内容は入学試験業務、それから大学等につきましては論文審査等の業務であるというように承知いたしております。
  160. 受田新吉

    受田委員 そうすると、国立学校の中小校の入学試験業務というものを担当するわけですか。
  161. 天城勲

    天城政府委員 これは、文部省といたしまして前から超過勤務を命じないという方針をとっておりますが、ただ、いま申し上げました入学試験とかあるいは論文審査というようなものについては、例外的に超過勤務を命じてもよいという形で予算措置をしたわけでございます。したがいまして、一般意味における超過勤務というものはないというたてまえであります。
  162. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、国立学校の入学試験業務というと、高等学校だけですね。
  163. 天城勲

    天城政府委員 現在付属小、中、高等学校が入学試験をいたしておりますので、小中学校に及んでおります。
  164. 受田新吉

    受田委員 そうすると、地方の高等学校も一入学試験業務をやっていますね。その場合はどうなっておるのですか。
  165. 天城勲

    天城政府委員 各府県の県立学校職員に対する県の給与条例の定めでございますが、私全部は了知しておりませんが、県によりますと、高等学校の入学試験業務ですとか、あるいは農場の仕事などにつきまして、条例上の超過勤務の規定がある県がございます。
  166. 受田新吉

    受田委員 実質的に高等学校の入学試験業務を担当した職員に超過勤務手当が支払われておるのかどうか、国立と同じようなかっこうでやられておるのかどうか、その報告を御調査されておると思いますからお示し願いたい。
  167. 天城勲

    天城政府委員 先ほど申し上げましたように、県の条例上規定しておるところも規定してないところもございます。ですから一律ではございません。
  168. 受田新吉

    受田委員 実質的に支払われておる府県をお示し願いたい。
  169. 岩田俊一

    ○岩田説明員 青森、福島、静岡、千葉、神奈川、三重、大阪、岡山、愛媛、大分、これらの各県においては支給されております。
  170. 受田新吉

    受田委員 相当数の府県が超過勤務手当を支給しておる。これは文部省として、教員に超過勤務を命じておるという国家公務員たる中小校に準じた扱いを地方に指示した結果でありますか、どうですか。
  171. 天城勲

    天城政府委員 超勤の扱いにつきましては、先ほども申し上げましたように、二十三年のときの給与の切りかえ等の事情がございまして、超過勤務は命じない。ただ、いま申し上げましたような入学試験事務、あるいは論文審査等につきましては命じてもいいし、支給してもいいという指導をいたしてきております。
  172. 受田新吉

    受田委員 今度の法律改正……
  173. 高見三郎

    高見委員長 ちょっと受田委員に申し上げますが、ここで暫時休憩いたしまして、本会議終了後御質問を続けていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  174. 受田新吉

    受田委員 それではいまの行きがかりのところだけちょっと……。  今度の法律改正で、超過勤務を命ずる場合があることをこれに認めておりますね。それがいまの試験等の場合の勤務を命じた過去の実績を生かす意味の規定であるかどうか。
  175. 天城勲

    天城政府委員 従来と今度とはこの法律の根拠が違うわけで、考え方が違うわけでございまして、従前は一般に時間外の勤務ということで特定のことはございませんでした。その場合に、教員の場合には一般に超過勤務を命じないように、ただ高等学校以下の場合に入学試験事務の場合には例外である、こういう考え方をとっております。今後は公務のために臨時の必要がある場合というふうに根拠が異なっておりますので、おそらくそれは設置者ないし任命権者において判断をなされる、このように考えております。
  176. 受田新吉

    受田委員 休憩しようということでございますから一応賛成をしますが、いまの問題で、国家公務員全体のものは一〇%、地方公務員は大体六%という比率の超過勤務手当が支給されておる。その段階で教職員だけを、ある一部の入学試験業務だけは命じて超過勤務させるが、その他は実際は命ぜられることなくしてやらなければならない仕事をやっておる。これは当然命ずる仕事であるのを命ずる形をとらないで勤務させておるという変則を教育の世界においてやっておる、そこに大きな問題があるわけです。だから国家公務員の一〇%の支給率、地方公務員六%の支給率というものは、当然教師の世界にもこれを適用するというのが原則であって、それを文部省が従来超過勤務をなるべくしないように、命じないようにという指導を加えた結果、実際はやっておりながらもそれを命じた形にしていない、命じた形にしなければ時間外勤務手当というものは支給しない、こういうたてまえでやってこられた、こういう形ですね。それをはっきりしておいて、一応の午前中の質問を終わります。
  177. 天城勲

    天城政府委員 それには経緯がございまして、先生一番御存じじゃないかと思いますが、二十三年の給与の切りかえのときの事情を前提に置きまして、超過勤務を命じないようにという態度をとってきたわけでございます。したがいまして、結果的には、時間外の勤務をやる場合には命じないでやっていた、そのことが調査の上でも明らかになってきた、かように申し上げておきます。
  178. 高見三郎

    高見委員長 本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時十一分休憩      ――――◇―――――    午後二時四十八分開議
  179. 高見三郎

    高見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。受田新吉君。
  180. 受田新吉

    受田委員 午前中にお尋ねをしました問題の続きをひとつしておきたいと思います。  昭和二十三年、いわゆる二千九百二十円ベースヘの切りかえの当時に、教職員の超過勤務に対する特別の措置として、教職員は長期の休業、または本俸を一割程度高くしてやるということで超勤の支給を遠慮するような措置がされた、さっきからのはこういう意味のことであろうと思うのです。その教員に対しての超過勤務手当の支給を遠慮した理由が、私がいま指摘した二つのほかに何かありますかどうか、お答え願います。
  181. 天城勲

    天城政府委員 当時、御指摘のように俸給法切りかえが行なわれましたけれども、この際教員につきましては十七割という高率を用いたわけでございますが、そのときの理由で、勤務の複雑な特殊性、それから勤務時間の実情等から、一応四十八時間以上の最高のものと認定して切りかえた、こういうふうに了解いたしております。
  182. 受田新吉

    受田委員 その切りかえる理由はどういうところにあったと、それでは具体的にお示し願いたい。
  183. 天城勲

    天城政府委員 いま申し上げましたように、当時十五割、十六割、十七割という切りかえ率をもって切りかえられたわけでございますが、この場合、教員につきましては、勤務の複雑な特殊性、それから勤務時間の実情等から一応最高の十七割というものへ切りかえた、このように了解いたしております。
  184. 受田新吉

    受田委員 いま私がお尋ねしているのは、その勤務の特殊性というものの中身がどういうことになっているか、それをいま指摘しておるので、ばく然とした御答弁でなくて、掘り下げた具体的な御答弁を願いたいわけです。
  185. 天城勲

    天城政府委員 当時、現在の地方公務員法も制定されておりませんし、教員勤務時間も現在と違っておりまして、勤務時間をその当時の状況で固定することは実情に即さないということから、一応四十八時間以上のものと同じような推計のもとに切りかえた、このように了解しております。
  186. 受田新吉

    受田委員 その切りかえがどういう意味で切りかえたかという具体的なものを――当時はまだ人事院の給与準則案というものも用意されていなかった。二千九百二十円ベースのときはそういう時代なんです。そういう時代に切りかえられた、いわば旧体制のもとにおいて切りかえられたということになっているのです。これは人事院としては当時給与準則案もまだできていなかった。したがって、古い給与体系時代の切りかえであると了解できるかどうか。これは給与局長、あなたはそのころからおられたはずです。
  187. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 昭和二十三年当時におきまして、旧来の俸給制度から新しい俸給制度に切りかえたのでございますが、その場合に、それぞれの職員の職務の特殊性等をいろいろ勘案をいたしまして、勤務時間というものを特に十分考慮いたしまして、一般の職員につきましては四十一時間から四十四時間までの職員といたしまして、十五割で切りかえるということにいたしたのでございますが、四十八時間以上の勤務者といたしましては十七割で切りかえるということでございまして、教官の場合には、その職務の特殊性から見まして四十八時間以上勤務するものとみなしまして、十七割の切りかえを行なったというふうに理解いたしております。
  188. 受田新吉

    受田委員 結局、それが一割とちょっとの高率の切りかえということになったわけですね。つまり厳密にいえば、一割とちょっと高い、いまの号俸についていえば三号俸それが高い。その理由が勤務時間四十八時間としての計算ということでございますが、長期休業という、夏休みとかあるいは春休みとか、こういうようなものもあるという理由が含まれておったかどうか、お答え願います。
  189. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 私は、当時切りかえに際しまして在職してこの関係にあっておらなかったものでございますから、詳細のことは承知いたしておりませんけれども一般の職員につきまして勤務時間の長さに応じて切りかえたということはございました。教官の場合には、その仕事の関係からいいまして、最も勤務時間の長い四十八時間以上のものという形にみなしまして切りかえておるということでございまして、そのみなし方は、勤務時間の長さ、勤務時間の実態というもの、あるいはその仕事内容というものを勘案されてみなされたものというふうに理解するのでございます。
  190. 受田新吉

    受田委員 当時の理由の中に、学校の先生は長期休業がある、そういうようにおまけもついている、こういうような意味を言っておられるのです。私もよく記憶に残っている。ところが、当時は文部省も、この教員給与についても三本立てに反対しておった。これは同一学歴、同一勤務年数で、勤務する学校の差を認めるべきでないと、私もよく記憶しております。従来の二千九百二十円ベースヘの切りかえ当時の文部省の態度、古い体制のもとにおける、人事院の給与準則の案もないときの通し号俸的な号俸の切りかえのときでございまするから、そういう意味においては旧体制の俸給表時代であった、こう言って私は過言でないと思います。  文部省にちょっと聞きますが、給与三本立ての体制が一本化されることを堅持しておられた時代があったことを御記憶であるかどうか、事務当局、歴史を御存じのはずでございまするから、ひとつその当時の古い時代的な制度における文部省の態度というものを想起していただきたい。
  191. 天城勲

    天城政府委員 私も、当時そのことに直接担当に当たっておりませんものでしたので、詳しいことは存じませんが、給与制度のあり方に関してはいろいろ変遷があったことは事実でございます。詳しいことについては、当時参加しておりませんでしたので、存じておりません。
  192. 受田新吉

    受田委員 これは歴史をひもとかなければ現実は生まれてこないのです。これははっきりしておるのです。つまり文部省の基本的態度というものは、教員の長期休業という特典などが計算に入れられておる。あわせて学校差を認めないという方針を当時堅持しておられた、これはきわめてはっきりしておる。それが後に例の議員提案の動きで、高校職員の四号から九号までの緊急措置をやることになり、さらに同時に三本立て法案というものが生まれてきた、こういう歴史がある、だから古い時代の超勤を支払う必要がないという時代の古い制度のもとにおける観念が今日まで生きておるということに問題があるわけです。今日長期休業は教職員の場合完全な長期休業になっているのかどうか、勤務実態をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  193. 天城勲

    天城政府委員 普通いわれております夏休み、あるいは春休み、あるいは学年末休みといわれておりますのは、実は子供の授業がない日というのが制度上のたてまえでございまして、公務員としての教員の休業日ではないわけでございます。したがいまして、勤務時間に応じて支払うべき俸給も支払っているというたてまえでございます。  実際の勤務の状況でございますが、学校で授業が行なわれておりませんので、子供に直接携わる仕事は原則としてございません。しかし、臨海学校とか、あるいは林間学校、その他夏季の補習等で児童の教育に当たる場合もございますし、また、その他の時間につきましては、一応自宅研修という形で勤務を実施しているというみなし方をいたして、勤務時間の勤務が行なわれている、こういうたてまえをとっておるわけです。
  194. 受田新吉

    受田委員 事実問題としては、長期休業というものは学校を休むだけであって、教職員の勤務形態は引き続き、勤務条件等も一般の公務員と変わりないという解釈がとられますか、いかがですか。
  195. 天城勲

    天城政府委員 実態についてはいろいろございますが、制度上は勤務しているとみなしているわけであります。
  196. 受田新吉

    受田委員 実態についてはいろいろあるとは、どういうことでございますか。
  197. 天城勲

    天城政府委員 先ほど申しましたように、子供の授業がないわけでございますから、通常の勤務のしかたと違っております。その中には自宅研修というものも含めまして勤務とみなしておる、そういうことでございます。
  198. 受田新吉

    受田委員 その点においては、長期休業というものは通常の勤務をしているとみなすという形がとられておりますね。間違いありませんか。
  199. 天城勲

    天城政府委員 みなしておりますから給与を支払っております。
  200. 受田新吉

    受田委員 それは月給を払っておるわけだね。それは昔といまと変わりないかというと、当時二千九百二十円ベースの切りかえのときは、長期休業という教員の特権があるように盛んにいわれておる。それがいまはない。それから当時は、学校差ということについても、これは事実あの三本立て法案を施行したときに、当初各府県でその実施が非常におくれて、その実施をしなかった県がある。それは、大学を出て高校へつとめても、小中学校へつとめても俸給が同じだというので、交流人事が非常に盛んに行なわれて、人材が適材適所主義で採用されたという時代に、給与三本立てが実施されたために、実際に各都道府県において、三本立ての実施に非常なトラブルが起こっておるということを、文部省は歴史の上で御存じかどうか、それもひとつお答え願いたいのです。
  201. 天城勲

    天城政府委員 先ほど申したように、当時私、まだ給与関係の仕事を担当しておりませんでしたのと、それから不勉強で、その間の事情をつまびらかにいたしておりません。ただ従来の、特に二十三年の一本の給与から、その後いろいろな給与体系の変遷がございまして、特に教育職の給与表が分かれてまいりまして、その間に三本立てあるいは高専の新しい給与ができるというような過程において、いろいろ問題はそれぞれあったことは事実だと思います。
  202. 受田新吉

    受田委員 事実だと御記憶になっておられる。この機会に、文部省は、この給与の変遷史の上に幾つかの問題点を拾い上げられて、その際にどういう世論の動向があり、現実にこの運用にいかなる困難が伴ったかというものをきちっと整理されておらなければいけない。現実は過去から生まれてきておる。時の流れというものを考えていかなければならぬ。二十年前の切りかえ当時のその措置を今日依然として、二十三年の切りかえ当時のその事情を今日の時点において適用されようとするところに問題があるわけなんです。文部大臣、二十年前の切りかえ措置のときの事情が今日まで生きておるということであるならば、人事院総裁も、三十九年の勧告に伴う報告で、超過勤務手当法律上払うべきであるというような要望をしなかったはずだと思う。  総裁、この二十三年当時の事情がそのまま生きる形で三十九年の要望がされたのか、三十九年当時の実情に応じて要望をされたのか、あなたの御心中を披瀝していただきたい。
  203. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 私どもは、現実の公務員給与を、これはいかにすれば適正にあるべきかということに集中してものごとを考えておりますから、古い歴史のことは、まあ勉強としてはやっておりますけれども、それを基礎にしてどうということは考えておりません。いまお話しことばを返せば、三十九年現在の実情からああいうことを報告で申しましたということです。
  204. 受田新吉

    受田委員 非常に明快。文部大臣、そのとおりです。つまり、切りかえをしたときには超過勤務手当を払わなくてよかったというので要望したという意味ではない。三十九年当時の実情によってこの支払いをすべきであるという要望をしたとはっきり言っておられる。したがって、責任は文部省にかかってまいりました。文部省は、この超過勤務実態を一応調査された。そうして現実に二%から四%近い勤務をしているという実情もあらわれてきた。さらに、これをもっと深刻に実態を調べるならば、家庭訪問からその他の修学旅行の引率というものまで含めていくと、相当幅の広い勤務をしている、 こういうことがいえる。また、小中学校では個別指導をする必要があるから、答案などを家に持って帰って、十分個別の添削等もして返しておる。大学というのは、与えられたわずかな時間を教授をするために勉強の時間がやられておるのであるから、勤務時間はきわめて少ない。小中学校は、ばく大な、大量の勤務をして、しかも家庭においてその勤務の延長が続いておる。この実情は、文部大臣としても、大学教授の場合と小中学校の場合と比較して、この家庭における対外的な、子供に関係した勤務が小中学校に多いであろうという予測はできますかどうか。
  205. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 大学の教官の場合と小中学校の教官の場合と、それぞれその勤務の態様については特殊なものがあろうかと存じますが、とにかく小中学校の先生方が、学校がひけてから家へ帰ってからも子供のためにいろいろ勉強していらっしゃるというふうな事実は、もちろん認めておるわけでございます。
  206. 受田新吉

    受田委員 その実態を正確に把握し得ないから、まあ超勤にかわるこういう制度を設けて、超勤とみなすというような措置にされたというようなことであっては実にあいまいなわけです。これはやはり原則的な手当制度適用していただいて、教職員を例外にすべきじゃない。二十年前の実情、二十年前の切りかえ当時のことをいまも持ち出されるということは、これは適当ではない、こういう御判断が結局生まれてまいりましたかどうか。
  207. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 教員の時間外勤務の問題について、二十年前、二十三年以来の沿革は先ほど来申し上げ、また、受田さんが一番よく御承知のとおりでございます。しかし、法律論から申しますというと、労働基準法関係のいわゆる超過勤務手当制度適用を受けるたてまえになっておるわけであります。したがって、そのような問題につきましては、文部省としては、従来から超過勤務を命じないようにというような指導をしてまいったことも事実でございます。しかし、現実問題として時間外の勤務という実態があるということは、特にまた調査の結果明らかにもなったわけでございますので、これに対応をしていかなる措置をとるかということが、今回の提案となってあらわれてきたわけでございます。問題は、現行法のたてまえから申しますならば、超過勤務を命じた場合には超過勤務手当を出さなくちゃならぬというたてまえは、もちろんわれわれも認めた上で、そのたてまえに従ってやるのがよろしいのかどうなのか検討せられまして、今度のような案となり、同時に、超過勤務手当制度のほうは適用を除外する、こういうことにいたしたわけでございます。
  208. 受田新吉

    受田委員 いま、きょう午前中からの議論を伺っておると、二十三年の切りかえ当時の事情を盛んに指摘されるものですから、私は非常に不愉快である。現時点における論議をしていただくのはよいが、それを二十年前を盛んに持ち出される。ところが、大臣の最後の御答弁は、これは過去のことは言わないのだということでありまするから、過去のものをいま持ち出されることは、この機会に、これからの論議では御遠慮を願います。現時点における勤務の形態ということでひとつやっていただきたい。  そこで、労働基準法の中にも、超過勤務手当制度というものがきちっと規定されておるのでございまするが、これは労働省の御答弁を願いたいけれども超過勤務手当の解釈はどういうものであるか、お答え願います。
  209. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 これはあらため申すまでもないことでございますが、法定労働時間を超過して労働いたしました際に、その労働の対価として支払われるものでありますが、その率が二割五分という割り増しになっておるわけでございます。割り増し賃金、労働基準法はそのように承知しておるものでございます。
  210. 受田新吉

    受田委員 時間外勤務手当という定義をきめてよろしゅうございますね。
  211. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 名称法律によって異なりますけれども労働基準法では二割五分の割り増し賃金を払わなければならない。一般には超過勤務手当残業手当などといろいろ称しておりますが、労働基準法上の名称は割り増し賃金ということに相なっておるわけでございます。
  212. 受田新吉

    受田委員 人事院の超過勤務手当の定義をひとつ御説明願います。
  213. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 給与法に規定してございますように、正規の勤務時間をこえて勤務したときに、その勤務した全時間に対して支給するということになっております。
  214. 受田新吉

    受田委員 そうしてその支給する際に、時間外勤務の命令を出す必要があるという前提がありますね。これはそのようですね。命令を出さなければ時間外勤務手当は支払いできない、こういう解釈が成り立ちますね。
  215. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 そのとおりでございます。
  216. 受田新吉

    受田委員 命令がなければ割り増し賃金は出さない、労働省の解釈をひとつ。
  217. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 労働基準法のたてまえといたしましては、三十二条の一日八時間、一週四十八時間という原則があるわけでございます。その原則に対しまして例外的に三十三条の規定によるもの、あるいは三十六条の協定によるものなどがあるわけでございます。これらの法的な根拠によりまして時間外労働をなし得るわけでありますが、その際には、これも御承知のとおりでありますが、黙示あるいは明示の意思表示がある場合がありますけれども、要するに使用者の命令と申しますか、使用者の指揮命令のもとにある労働ということであろうと存じます。そのきめ方は事業場の形態によって必ずしも同一ではございませんが、いずれにいたしましても指揮命令のもとにおいてなされる労働であるということが把握できる状態のものであると思います。
  218. 受田新吉

    受田委員 労働基準法の割り増し賃金の適用を受ける者は、きょうこれだけの事業量が自分でできなかったから、その分を自発的にやって片づけて帰るという場合もしばしば起こっておるのですね。そういう場合に、それは指揮命令のワク内として、自分の与えられた仕事の処理をするために自発的に勤務に服してやった場合と解釈して、大まかな意味で、おまえはきょう残れと言われなくても残って勤務した者は、割り増し賃金の支払いを受けるということができますかどうか。
  219. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 たとえば三十六条協定を結びまして時間外労働をいたします際に、どのような状態が三六協定で定めた労働時間であるかということにつきましては、労働協約規定により定めておる例が往々あるわけでございます。たとえば勤務時間以外にスポーツのチームを編成しまして練習をするとか試合に行くとかいった場合に、労働時間として認めるかどうかということになりますと、労働協約とか就業規則で、そのような態様のものをどう扱うかということをきめるのが一般でございますが、そういうものの集積といたしまして一つ労働慣行となっておる。労働時間の延長だけは三六協定できめておるが、労働時間として把握するものはどういうものであるかということが、労働慣行の集積によって理解できる場合もあります。いずれにしても明示もしくは黙示の命令と申しますかがあったという状態が把握できるものというふうに理解されます。
  220. 受田新吉

    受田委員 黙示を含めて勤務した者に対しては賃金が支払いされておる。教職員の場合は、この仕事をやらなければならないという一つの一定の勤務量というものがある。それを果たすために教員が自発的にそれをやっていくことは、結局職務を遂行するという職務執行上の責任の実施ということで、別に校長が命令しなくても、それを果たすことは職務遂行上のワク内として考えられるものではないか、いわゆる黙示に当たる勤務を提供したと見るべきではないのですか、どうですか。
  221. 天城勲

    天城政府委員 教職員の職務には非常に多様なものがございますから、よくいわれるのでありますけれども、職員会議のようなものが勤務時間をこえて行なわれる場合には、これは黙示の超過勤務の命令があったものと類推されるものだろうと思います。ただ、そのほかのものについて、どれがどうかということになりますと、教員は特に自主研修ということが多い職務でございますので、その辺の境目がなかなかむずかしいものでございますけれども、いま申したような種類のもので黙示の命令と理解されるものは確かにあるだろうと思います。
  222. 受田新吉

    受田委員 はっきりお認めになっておられます。黙示の命令とみなされるもの、これが教職員の場合には父兄参観というものがある。参観をしたあとで父兄懇談会がある。四十五人の子供の父兄と懇談をすると、これが午後三時ごろから始めても五時、六時になるのが常識です。いま、四時になったからやめますといって父兄を追い返すわけにはいかない。これはしばしば起こる。父兄との懇談、生徒の就職指導、進学指導、そういうことは夜七時、八時となることはしばしば起こっている。それは当然与えられている任務を遂行するための勤務の提供であるということになると、私は、実態としては相当大量の超過勤務教職員の場合していると思うのです。この実態文部省は把握しなければならない。時間内の勤務だけを見られないで、時間外の勤務というものがいかようなものであるかということを十分把握するという文部省の責任があると思うのです。どうでございましょうか。
  223. 天城勲

    天城政府委員 過去のことは言うなということでございますので、一応おきますけれども、いろいろの変遷の中でやはりそういう実態がいろいろあるのではないかということから、勤務調査をいたしたわけでございまして、その結果は、先ほど来申し上げておりますように、正規の勤務時間外においての幾つかのタイプの仕事が明らかになってきたというのが経過でございます。
  224. 受田新吉

    受田委員 私、その点で、さっきのおあげになられた実態調査の比率がちょっと問題だと思うのですが、厳密に文部省が指示された指示内容がどういうものであるかを私はまだ伺ってないのですが、それに対する回答というものが非常に締められた形でなされておるのではないかということも懸念される。それはそれとして、はっきりと黙示の勤務は相当に及んでおる、こういう御答弁があったわけです。そこで超過勤務手当というものを労働基準法に基づく制度の運用の点で実施していただくものであるということもよく私に理解できました。黙示の命令を含んでおられることである。そこで教育公務員特例法という特別法で基本法である労働基準法超過勤務手当を制限する、これを抑止するという結果を招くことになるならば、当然それは労働基準の基本問題として中央労働基準審議会にかけるべきものである、この原則をもうすでに当委員会でお認めになられております。間違いありませんね。
  225. 天城勲

    天城政府委員 このたびの法律をごらんになっていただけばおわかりのように、これは公務員制度としての教育公務員という立場からの取り扱いでございまして、地方公務員法と国家公務員法を踏まえての教育公務員の特例を規定した法律での手当でございます。したがいまして、地方公務員に対しましての労働基準の定め方が労働基準法を準用してある部分もあるわけでございますが、結果的に地方公務員法を通じて労働基準法適用除外ないしは読みかえという形をとったわけでございまして、私たちとしては、公務員法の改正であるけれども労働基準法との関係があるということで、労働基準局との相談を重ねてきたわけでございます。
  226. 受田新吉

    受田委員 そうすると、この法律労働基準法適用を除外するという確定的な発言はできないわけですか。
  227. 天城勲

    天城政府委員 地方公務員法を母法として特例法ができておりますので、新しい手当を創設することに伴いたしまして地方公務員法についての労働基準法適用を排除する、そういうことになってまいります。したがいまして、労働基準法の所管省である労働省と御相談をいたして処理をいたしたわけでございます。
  228. 受田新吉

    受田委員 そうすると、基本問題としての中央労働基準審議会付議事項としては認定をされないわけですか。
  229. 天城勲

    天城政府委員 いま申したように、労働基準法によったときには関連がございますものですから、その所管省である労働省にこの改正の問題について御相談をいたしたわけでございます。したがいまして、あと労働省のいろいろ御判断を得て私どもは処理する、こういうことでございます。
  230. 受田新吉

    受田委員 労働大臣、御苦労願っておりますので、ひとつ御答弁願いたいのでありますが、文部省は、この法案を出すのに、人事院にも、労働省にもお伺いを立てておるということでございます。ところが、労働基準法という基本法、この基本法にのっとって超過勤務手当制度なるものがきちっと定められておる。それを適用除外をしようというときに、例の二条、九十八条にあるところの、労基法の改正に関する事項審議会の議によって結論を得た後に答えを出す、こういうたてまえをとるのが労働省としてのたてまえではないか。これは結局、教育公務員特例法の法改正にあたって、労働基準法適用を除外するという措置が当然とられるように法律の中身にも書いてあるのでございますから、労勤大臣としてはそこをきびしく判断をされたお答がいただけると私は思うのです。小川先生、いかがでございますか。
  231. 小川平二

    ○小川国務大臣 先般大原委員の御質疑に対してお答えいたしたのでございますが、現在国家公務員については労働基準法適用されておりません。また、地方公務員につきましては、一部を除いて基準法が適用されておりますけれども労働基準監督機関の権限、私どもの監督の権限はこれに及んでおらない、かようになっておるわけでございます。今回の改正は、教育公務員特例法改正によりまして、まず国家公務員について教職特別手当なるものを創設して、超過勤務手当を廃止する、次いでこれを地方公務員たる教職員に及ぼす、かような形で改正がなされるのでございます。そこで私どもは、この問題を主として公務員関係の問題であると理解をいたしておるわけでございます。むろん、この改正によりまして教職員の労働条件の変更を結果として来たすわけでございますから、したがいまして、この点については慎重に検討いたしまして、検討いたしました結果、前例等にも徴しまして、必ずしもこれは審議会に諮問申し上げるべき問題ではない。ただ、事柄が現実に労働条件の変更を伴いますので、法案の閣議決定に先立ちまして、文部省の当局とともに審議会に詳細御報告を申し上げた次第でございます。審議会におかれましては、その後一部の委員の御提案によりまして、この問題を正式にお取り上げになり、ただいま審議をなさっておる、こういう状況でございます。
  232. 受田新吉

    受田委員 労働大臣としては、単に審議会に報告義務があるということ、しからば報告しなくてもいい問題であるということになるわけですか。
  233. 小川平二

    ○小川国務大臣 諮問を申し上げるべき問題ではないという判断をいたしたわけで、実際には詳細に御報告を申し上げた次第でございます。
  234. 受田新吉

    受田委員 その報告すらもしなくてもいい問題だとお考えですか。
  235. 小川平二

    ○小川国務大臣 これはただいま申し上げましたとおり、教職員の労働条件が変更される問題でございますから、御報告すら申し上げないということではこれはいけないと思います。報告すべき問題だと考えましたので御報告いたしたわけであります。
  236. 受田新吉

    受田委員 それは単に儀礼的なもので、報告しなくても何ら義務違反にはならない、かように了解してよろしゅうございますね。   〔発言する者あり〕
  237. 高見三郎

    高見委員長 お静かに願います。
  238. 小川平二

    ○小川国務大臣 とれは報告を申し上げることが労働大臣として適切である。かりに御報告申し上げないといたしましても、法律的にこれが法律の違反になるかどうかということは別といたしまして、報告申し上げることが適切でございまするし、これはもう徳義上も当然そうしなければならないと考えて御報告いたしたわけであります。
  239. 受田新吉

    受田委員 これは一つ労働条件、すなわち公務員の場合は勤務条件、それに関係する基本的な問題ですね。それは労働基準法適用除外ということにおいても、もともと縛られている身分は地方公務員法だから、付議を提起しなくても何ら労働大臣としての審議機関に対する義務はないものである。したがってやらなくてもいいのだ、ただ儀礼的に、まあ申しわけとして報告を申し上げておいた。ところが、審議会としてはそれをさっそく審査に入っておる。そうすると、審査に入っていることは間違いないのですね。はっきり御答弁願います。
  240. 小川平二

    ○小川国務大臣 審議会は、各種の問題について建議をなさる権限を持っておられるわけであります。したがいまして、これを自発的にお取り上げになってただいま審議をなさっておるわけであります。
  241. 受田新吉

    受田委員 したがって、審議会はこの問題を審議しなくても、法律的な責任は何らないものであるから、別に審議会としての責任はない。ただこれも、いろいろな問題を一応調べてみようかというような軽い意味の御審議と、そういうふうに大臣は御判断をされていると理解してよろしいかどうか。つまり、審議会は何をやってもいいのだから、そういう労働者の個々の問題を審議する、しかしこのたびの法律には何らおかまいない、おかってである、こういう了解をしていいかどうか、お答えを願います。
  242. 小川平二

    ○小川国務大臣 今回の法律改正が、もちろん審議会建議権と無関係なものだとは思っておらないわけでありまして、それでありますからこそ本件について御報告を申し上げたわけでございます。審議会がいかなる観点からこれを正式の議題としてお取り上げになったのかは別といたしまして、ただいま真剣にこれから討議が行なわれるものと承知いたしております。
  243. 受田新吉

    受田委員 この間おたくの監督課長の御答弁によると、地方人事委員会というものは労基法の精神を生かしながらものごとを判断していくというたてまえをとっておる。しかしながら、今回のこの超過勤務手当制度を変形で出すということについては、りっぱな労働基準法に規定する問題に関することであることは間違いない。労働基準法は、やはり身分としては地方公務員に属している教職員にも適用は当然考えられるという意味の御答弁をいただいたように思っておるのです。したがって、今回の措置は、中央労働基準審議会というものと全然無関係で法律を処理されることを適当としないという監督課長の御判断ではないか、いま監督課長はおられますが、そう私は理解したのだが、大臣は、私のいま指摘したことについて御答弁してください。
  244. 小川平二

    ○小川国務大臣 全然無関係に審議さるべきものではないともちろん考えております。したがいまして御報告を申し上げたのでございまして、御検討の結果、あるいは何らかの形で建議がなされるかもしれない。なされました暁には関係の各省とも相談もいたしまして、十分慎重に検討するつもりでございます。
  245. 受田新吉

    受田委員 監督課長も、中央労働基準審議会がこれを議題にしていることは当然であるという解釈をしておられた、その点には御異存はありませんか。
  246. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 先生承知のように、労働基準法の九十八条二項では、労働基準審議会は「労働条件基準に関して関係行政官庁に建議することができる。」、こういう条項がございます。したがって、労働条件基準に関する事柄でございますから、基準審議会が自主的に御判断なさいまして、これは建議すべきだという判断に立って建議権を行使するということはあるわけであります。監督課長の発言についてのお話でございますが、そういう観点に立ちますならば、労働基準審議会建議することあるべしということは当然予想されるわけでありますから、当然ということばを使ったのではないかというふうに私は解釈いたしまして、補足させていただきたいと思います。
  247. 受田新吉

    受田委員 大臣はどういうお考えですか。
  248. 小川平二

    ○小川国務大臣 ただいま基準局長から答弁申し上げたとおり、私も同様に考えております。
  249. 受田新吉

    受田委員 そこでこの問題は労基法二条の適用除外ということになってくる。こういうことになると、やはり基本問題に触れてくると思うのです。だからこの問題は、身分が地方公務員のほうにあって、われわれのほうはただ単に労働基準超過勤務手当という制度につながっている一面があるだけであって、それは中央労働基準審議会が基本問題であるから議題として審査をすることはおかってであり、建議をすることもおかってであるが、身分が属している地方公務員の本家のほうに教職員の身分が縛られている以上は、労働基準適用除外に何らの法的拘束を受くるものでないというこの解釈は、基本的な問題を労働基準法で掲げ、それに対して中央労働基準審議会が真剣に討議をしようとしておるときに水をかけ、それを無視して、日本の労働者の基本的人権を一方的にワク外にほうり去ることによって非常に冷遇するというお答えが出ると思うのです。これをすかっとやっておかれて、労働省としては、法的解釈論でいろいろと議論をされるとしても、少なくとも労働基準の問題の中で超過勤務の解釈をどうするかというような問題について、やはりここで中央労働基準審議会審議して、その建議を待って、そして労働大臣として文部省お答えをするという手順を踏むことがきわめて親切であり、また道義的な労働大臣の責任も果たされことだと思うのです。労働大臣としては、法的な義務のないことを前提にして、事実問題としての中央労働基準審議会の御苦労を無視するという形をとることが賢明であるとお考えですか、大臣に御答弁願います。
  250. 小川平二

    ○小川国務大臣 審議会の機能を無視するつもりはないのでございまして、したがまして事情を詳細御報告申し上げた次第でございます。決して審議会の機能を軽視、無視するという考え方はないのでございまして、先ほど来お耳に入れました理由から、私自身の判断においてこれを諮問せず、報告にとどめたということでございます。
  251. 受田新吉

    受田委員 しからば、中央労働基準審議会が、この適用除外は適当でないという答えを出された場合に、へのかっぱにも感じないかどうか、労働大臣として、おかってであると考えられるかどうか。
  252. 小川平二

    ○小川国務大臣 いま、いかような形で建議がなされまするか、あるいは建議そのものがなされるかいなか予測できませんけれども、かりに、この法律案に対して消極的な建議がなされました場合におきましても、これは先ほど申し上げましたとおり、関係各省と協議いたしまして御趣旨を慎重に検討いたしたいと存じます。ただいまの段階では、まだいかなる趣旨の建議がなされますか予想ができませんので、かれこれ申し上げられませんけれども、さような場合には、その段階でもちろん慎重に検討するつもりでございます。
  253. 受田新吉

    受田委員 大臣は、労働基準局長とは違って、いささか誠意のある答弁をされておるようです。それは、中央労働基準審議会は、おそらくこういう情勢の中で政府と変わった見解の表明というものはなし得ないのであろうというような期待感が局長におありじゃないかと思うのですが、そういうことばありませんね。――大臣、これは審議会結論があなた方の企図される方向と変わったお答えが出た場合に、いまお話しのとおり、十分これを尊重する措置をとるという形に理解してよろしゅうございますか。
  254. 小川平二

    ○小川国務大臣 建議がなされました場合に、先ほどおことばにありましたように、これに対して一顧も与えないということでは、これはもちろん相すまないことでございます。なされましたら、十分その御趣旨を研究いたします。
  255. 受田新吉

    受田委員 研究するそうでございまするが、そのときにこの法律が通ってしまった、施行に移されたというときには、法の改正の企図をお持ちになるということもいまの御発言の中に含まれるかどうか。
  256. 小川平二

    ○小川国務大臣 おことばのごとく、法案成立後に建議がなされるという場合も、今後の御予定等まだはっきりきまっておらないようでございますが、あり得るかと存じます。否定的な結論が出ました場合には、その段階で研究をいたします。建議の御趣旨が、私どもとして首肯するに足りる御趣旨であるということでありますれば、それが法律改正を必要とすることを必然的に結果せざるを得ない、こういうふうな御趣旨の建議がなされました場合は、むろんそれについても研究はしなければならぬと存じます。
  257. 受田新吉

    受田委員 研究をするという場合には、重ねて法改正に持ち込む場合も含めた研究かどうかです。
  258. 小川平二

    ○小川国務大臣 これはいかような趣旨の建議がなされまするか、いかような理由でどういう結論をお出しになるかということが予想できませんので、ここで私がいまから結論的なことを何ら申し上げるわけにはまいりません。(発言する者あり)いかなる趣旨の建議がなされましても……
  259. 高見三郎

    高見委員長 お願かに願います。
  260. 小川平二

    ○小川国務大臣 この法律改正に反対であるという趣旨の建議がなされました場合にも、もちろんこれを十分慎重に研究をするつもりでございます。
  261. 受田新吉

    受田委員 私は仮定の質問ということを、この場合に大臣として……   〔発言する者あり〕
  262. 高見三郎

    高見委員長 ただいま受田君の発言中であります。お静かに願います。
  263. 受田新吉

    受田委員 大臣として御発言になるべきではない段階です。つまり、この法案審査中に建議がされた場合、もう一つ法案がかりに多数で押し切られて通った場合、二つあるわけです。そのいずれの場合にも、一応の労働大臣としての良識のある態度をちゃんとお考えになっておらなければいけない。審議中に否定的な建議が出た場合には、直ちに――研究といっても時間をかけるわけにいかないようになってきますから、この内容をある程度変えるための御努力労働大臣としてされるかどうか。これはきわめて具体的な問題でございまするから。それから、法案成立後、たとえば参議院に回って審査途中に建議が否定的に出たという場合には、参議院で修正する道もあるわけであります。それから、法が制定された、成立したそのときには、次の段階で法改正に持ち込むという場合を含めた研究という意味かどうかをはっきり言っていただきたいです。
  264. 小川平二

    ○小川国務大臣 否定的な建議がなされました場合に、それがいかなる理由に基づくものであるかということもこれは一つの問題の点であると存じます。その理由としてお述べになっておるところによりまして、私どもが認識を改めなければならない、あるいは判断を誤っておったということをあらためて認識をしなければならないような事実がかりに出てまいりますれば、これはその段階で考え直すということもあり得ると存じます。
  265. 受田新吉

    受田委員 労働大臣は、その段階で考え直す場合があり得ると明言をされました。労働大臣としては当然のことだと思います。労働の基本権を擁護される行政官庁の最高責任者として、国務大臣たる小川先生のいまの御発言は非常に意味が深いと思います。そこで、考え直すことがあり得る、そこまでいま仰せられるに至っておることについて、いかがでしょうかね。そう時間はかからぬと思います。この建議を待ってこの法案の審査に――少なくとも審査段階で建議内容を検討し、考え直すことを含めた御審査を願う方法を政府としてはおとりになるべきではないか、それが一番筋の通るやり方であると思いまするが、文部大臣いかがでございますか。
  266. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 その御質問に対しましては、けさほど川村さんの御質問に対してお答えをいたしたわけでございます。私としましては、いまほかのことはあまり考える余裕はないのでございます。なるべくすみやかに本案の成立を期しておるわけでございますが、審議会のほうで、審議会のお考えによってこの問題を取り上げられて審議をせられるということでありますれば、願わくはなるべく早くその結論をちょうだいしたい。おそらくそれが出ますれば労働大臣からも御相談のあることと思いますが、その際あらためて政府として検討してみたいと思います。
  267. 受田新吉

    受田委員 労働大臣、この建議の時期をなるべく早くしていただきたい、審査中にお願いしたいという灘尾先生の御発言があったわけです。それにかなうように審議会に申し入れをしておられますかどうか。
  268. 小川平二

    ○小川国務大臣 この点につきましてはさきに大原委員からも御発言がございました。そこで国会においてかような御要望が出ておる、また現に法案審議がすでに行なわれておるという事実、この事実もあわせましてお伝えをいたしました。その結果、さしあたって労・使・公益委員相談をして、私はただいまおことばをはっきり覚えておりませんから、あるいは間違っては恐縮でございますが、すみやかに開く方針でただいますでにそういう接触をなさっておるものと承知しております。
  269. 受田新吉

    受田委員 すみやかに開くというのは、この審査中に建議がなされるようなすみやかなという意味でございますか。
  270. 小川平二

    ○小川国務大臣 大原委員から御要望がありました趣旨は、さようなおことばを使われたかどうかは存じませんが、国会ですでに審議に入っておるという事実と関連してのおことばでございましたから、石井会長もそのように御了解になって、審議の期間中に開けるように努力をなさっておるものと、こう承知しております。
  271. 受田新吉

    受田委員 非常に大事な御発言がありました。審議に間に合うように建議がしていただけるように了解をしていただいておる。そこまで紳士的な話ができておる。道義的な立場での責任を石井先生もきっとお持ちであろうと思うし、労働大臣も非常に積極的に、その建議を待ってこの法案審査の結論を得たいという熱意をいま表明されておる。答えはもうきわめてはっきりした。この機会文部大臣、ひとつこの法案の審査に十分慎重を期すると同時に、委員長においてはこの扱いを、労働大臣があそこまで誠意をもって、しかも石井会長との間で非常に紳士的な、いまの御発言を聞いていると、さすが労働者の味方である大臣としての御発言である、傾聴に値する。この建議が問もなくされることをわれわれは期待しておるわけでございまするから、委員長において、せっかく労働大臣がここまで努力しておられる、その努力を水泡に帰せしめないためにも、その建議を待って審査をゆっくりやれるようにしたいという決意があるかないか、委員長お答えを願います。
  272. 高見三郎

    高見委員長 私は委員長として、この問題については終始一貫慎重審議をいたしております。(「高見の見物だ」と呼ぶ者あり)
  273. 受田新吉

    受田委員 いま委員長も、同時に自民党の先生である議員さんたちも、いまあなた方の政府労働大臣がここまで熱意を示して、審議に間に合うように御建議を願いたいと交渉中だから皆さん審議をあわてないようにしてくれと仰せられておる。それに御理解を願って、ひとつ自民党の議員さんに御協力をいただけるかどうか。特に谷川前文部政務次官は、私がさっき大臣質問した際に、私と全く同意見であるという御発言までいただいておるように、協力者がおられる。そういう意味でひとつこの機会に慎重な審議をして後顧の憂いがないように、大事なルールを破壊してまで強引にこれを通過させるというそしりを後世に残さないように、自民党の議員さんと委員長にお取り扱いを要望して、私の質問を終わります。
  274. 高見三郎

    高見委員長 加藤清二君。
  275. 加藤清二

    加藤(清)委員 私がお願いいたしました答弁者がまだおそろいになっていないようでございまするけれども委員の皆さんに御迷惑をかけてはいけませんので、委員長に協力する意味におきまして質問をさせていただきたいと思います。そのかわり、その答弁者の質問になったときにいらっしゃらぬ場合はこの限りでございませんから……。  それでは高見の見物ではございませんが、熱心に御審議をしていただいております委員長にお尋ねいたします。  私は委員長を非常に尊敬しております。それは決してうそではございません。なぜかならば、第一番に、ただいま問題に相なっておりまする学校の教員、これには委員長は最も深い関係にあらせられる。私もまたさようでございます。しかもあなたは優等生であるがゆえに付属の訓導をなさったわけでございます。人格は高潔でございます。しかもなお恩義に感じてこれを実行に移すというけだかい徳を実行に移していらっしゃる方でございます。これは私がおせじで言うのではございません、決しておせじで言うのではございません。私は委員長の郷里興津にたいへん関係の深いものでございます。したがって、毎年委員長の郷里へ一回は必ずお伺いしております。あの海岸に近いお寺に高山樗牛のお墓がございます。その墓石に「吾人は須らく現代に超越せざるべからず」と刻まれております。これは未来永劫でございましょう。そこで選挙をなさっておられる委員長は、この高山樗牛の精神をぜひくんで、高見の見物でなくして現代を超越した気持ちにおいてこの法案審議されんことを最初に要望いたしますが、御見解はいかがでございますか。
  276. 高見三郎

    高見委員長 加藤委員お答え申し上げますが、現代を超越するのでなくて現在の問題をいま審議いたしておるのであります。お気持ちはよくわかります。そのつもりでこの審議慎重審議をいたしておるのであります。
  277. 加藤清二

    加藤(清)委員 現在に生きる者が現在のことを考えるのは当然である。しかし、政治家はその上に将来を思考する思慮がなければならぬと存じます。  私はドイツに参りましたときにあのアウトバーンを見ました。アウトバーンを見てしみじみ思いましたことは、あの大戦争を引き起こした男、しかし彼はついにアウトバーンを残しておるわけでございます。しかも彼は今日のドイツ人になお畏敬の意を持って迎えられておることを見てまいりました。私はかつて予算委員会において、いまはなき河野建設大臣に、あなたもぜひひとつ未来永遠の社会発展のための事業を残してもらいたいという質問をしたことがございます。快く引き受けられましてオリンピック道路をりっぱに完成されました。河野さんはなくなってもおそらくやこの道路は永久に残ることと存じます。思慮ある政治家はかくあってしかるべきだと思います。ひとつあなたも、その振り出しが師範学校であります。ゆめ学校の先生たちに恨まれるような法律をつくらないように、この際、日本国じゅうの先生たちから喜んで迎えられると同時に、高見三郎の名前が学校の先生たちの脳裏に永遠にきざみ込まれるようなりっぱな法案にしていただきたい、かようにお願いをするわけでございますが、委員長の所見はいかがでございますか。
  278. 高見三郎

    高見委員長 お答えいたします。私も学校の先生方に喜ばれる法律案をつくりたいと思っております。せっかくこの法律案について皆さんの慎重御審議を求めておるのであります。私はしかし衆議院の文教委員長でございます。自民党の文教委員長ではないということを申し上げておきます。
  279. 加藤清二

    加藤(清)委員 喜ばれる法律とあなたはおっしゃられておりますが、実は私の手元には、この法律は天下の悪法である、だからぜひこれは撤回してもらいたい、こういう要望の手紙やら電報がわんさと来ております。読み上げることは差し控えますが、うそでない証拠に理事の方々にこれをちょっと見ておいていただきます。これは一枚や二枚じゃございません。喜ばれる法律をつくろうとしていらっしゃるあなたが、きらわれる法案をなぜゴリ押しに押さなければならないだろうか、だれしも理解に苦しむ点でございます。したがって、すでにさきの委員の皆さんによって明らかにされたるごとく、この法律は手続上たいへんなあやまちをおかしております。不備をおかしております。瑕疵ある法律はこれをとらずでございます。これを用いずでございます。もちろん立法されたとしても無効になるわけでございます。(中澤議員「瑕疵ある法律は無効だよ」と呼ぶ)いまあちらで中澤茂一予算理事のおっしゃるとおりでございます。用いない法律、用いられない法律、無効の法律をなぜにゴリ押しに審議なさらなければならないだろうか。しかもなお、これは内容上すでに明らかにされたるごとく、憲法違反の疑いがございます。労働基準法違反の疑いがございます。いかに例外法といえども基本から逸脱することは許されません。基本の法律の範疇の中においてのみ例外は許されることでございます。なぜこれをゴリ押しをしなければならないのか。しかもこれが通過して実施された暁には一体どうなるのか。おそらく裁判上の論争が盛んに繰り返されて、世の中に論争の種を巻き起こすことと存じます。同時に、これが前例となりますれば、全国の各市町村の吏員、農協の役員をはじめとする職員に及ぼす影響は甚大でございます。したがって、この法案の反対の電報や手紙や請願書は何も教員だけではございません。地方公務員から農協からも来ているわけでございます。しかもこの法律の根ざすところは決して愛情から発したものとはいえないわけでございます。教育は尊重されなければならない、特別な職であると口に言いながら、それは尊重する理念から出たのではございません。特別差別待遇をするということでございます。したがって、かかる法案はよろしく去って他に道を求むべきだと思います。すなわち撤回して修正する、この方向委員長としては政府を叱咤激励するの用意ありやいなや。
  280. 高見三郎

    高見委員長 せっかくのお話でございますが、すでに提案せられている法律案であります。私は審議の過程においていろいろな御意見のあることはごもっともだと思いますけれども、私がこの法案を撤回するという方向でどうこうというわけにはまいりません。
  281. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は、委員長の職責上そうお答えになることは存じあげている。しかし委員長としての、あるいは個人としての哲学的理念からほとばしりいずるところの純情はそうではないと思っております。  それでは次に進んで、もし一この際野党から修正案が出たならば、これは審議する用意がございますかございませんか。
  282. 高見三郎

    高見委員長 加藤君にお答えいたしますが、私は委員会を主宰しているものであります。委員会委員の皆さんから修正の御意見が出たということであるならば、委員会の御審議を願いまして、どう決着いたしますか、委員の皆さま方の御審議を待つ以外にはございません。
  283. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでけっこうです。それではもう二点だけ。委員長としてはこの案件をあくまでゴリ押しして、職権開会をしたり、単独審議をしたりというような考え方はありますか、ありませんか。
  284. 高見三郎

    高見委員長 会期の迫っていることでもありますし、私は審議についてできるだけ強行などという非常措置を避けたいと存じまして、今日まで終始一貫慎重審議を続けてまいりました。今後もそういたしたいとは思っております。これはあくまで原則のことであります。したがって私は、委員長の職権において開会するということはあり得るということをこの機会に申し上げておきます。
  285. 加藤清二

    加藤(清)委員 じゃ強行採決はあり得るとおっしゃられましたが、あり得る以上は時期があるでございましょうが、時期は一体いつごろでございましょうか。
  286. 高見三郎

    高見委員長 さようなことは私の決することではございません。私が何月何日強行採決いたしますとか――強行採決でなしにそのまま皆さんの御賛成で満場一致成立するかもしれませんし、成立しないかもわかりません。それは私、委員長のやることではございません。委員の皆さま方がおやりになることでございます。
  287. 加藤清二

    加藤(清)委員 強行採決はあり得る、ただしその時期は言えない、なぜかならば個人高見の意思ではないからである、かように受け取ってよろしゅうございますか。
  288. 高見三郎

    高見委員長 さようでございます。
  289. 加藤清二

    加藤(清)委員 それじゃこの法案は非常に手続上、内容上不備があり、その結果及ぼす影響は甚大であるという、こういう大切な案件を包含する法律、これを一体、だれがだれの意図でどのように文部省に持ち込んだのか、それとも文部大臣の意思でこれが立法措置が行なわれたのか、いずれでございますか、文部大臣にお尋ねいたします。
  290. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 文部大臣といたしまして、いろいろ検討いたしました結果、これが今日の場合適当であると考えまして提案いたしましたような次第であります。
  291. 加藤清二

    加藤(清)委員 今日の文部大臣としては、そうお答えにならざるを得ないでございましょう。しからば文部大臣はこの法案について全責任を負っていらっしゃると受け取ってよろしゅうございますか。
  292. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 形式論はどういうことになるか存じませんけれども、主管大臣といたしまして、この法案について私はもちろん全責任を負うつもりでございます。
  293. 加藤清二

    加藤(清)委員 この法案が、いままでの審議の過程において明らかにされたごとく、すでに手続上、内容上きわめて不備であるのみならず、憲法違反、労働基準法違反のおそれがあるということはお認めでございましょう。お認めになりませんか。
  294. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 認めません。
  295. 加藤清二

    加藤(清)委員 認めない。――それでは、論議の間で明らかにされましたように、これから審議会が行なわれましょう。その審議会の答申なり建議なりの中に修正要望なりあるいは間違いを指摘された場合、それをのむ用意がございますか、ございませんか。
  296. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 本案につきましては、いろいろ御意見はあろうと存じます。また、先般来皆さんのいろいろの御意見は伺っておるところでございますが、政府といたしましては、今日の場合といたしまして、この案を適当なりと信じて出しておるわけでございますので、いろいろな御意見は御意見として承っておりますけれども、あくまでもこれが成立を期しておるというのが現在の私の心境でございます。ただし、労働基準審議会のほうで自発的に問題をお取り上げになって御検討中だと承りましたので、もし何か建議でもなさろうというのであれば、なるべく早くお出しを願ったほうが好都合である。このように考えておるわけでございます。
  297. 加藤清二

    加藤(清)委員 早く出されたほうがいい、時期の問題はさようでございますが、内容の点において、いま出されております法案と違った内容が答申、建議された場合に、あなたはどうする用意がございますかとお尋ねしておる。
  298. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 建議がなされるのかなされないのかということも現段階においては不明のことでございます。かりになされたといたしますならば、労働大臣から必ず御連絡があるものと存じます。その際によく御相談をいたしたいと思っております。
  299. 加藤清二

    加藤(清)委員 その際にならなければなおこの法案の欠陥はお気づきにならないとおっしゃるのか、気づいているけれども立場上いまこの場で言えないということでございますか。いずれでございますか。
  300. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 これはなかなかむずかしい御質問でございますが、私どもはこの案を是なりと信じて出しておるわけでございます。それ以上申し上げるわけにはまいりません。
  301. 加藤清二

    加藤(清)委員 非なりという意見並びに答弁、これが他の各省の関係者あるいは労働基準審議会長等々からすでに述べられておるのでございまするが、それを馬耳東風と受け流して、なおこれを無理に押そうということはあまりにも老いの一徹という非難を受けるおそれがあると思います。あなたはそういう方ではなかったはずでございます。大臣もすでに一年生ではないのです。吉田さん内閣を除き、以下石橋さん以来すでに四回、五回なんです。文部大臣大臣歴としては最高のお方です。歴史上、四回も五回も文部大臣をつとめたというお方はまずまず少ないでしょう。しかも七年生議員ということでございまするが、七年生議員なら社会党には何人もおるのでございますけれども大臣やった者は一人もいない。そういう若いときからあなたは文部大臣について、文部行政には通暁していらっしゃるはずでございます。まさかこの法案がよいか悪いかの判定ができないほどの頭のお方とは存じません。もしそれしかりとするならば、もはやあなたは大学の管理はできない。特に法学部門の管理はできないということなんです。なぜかならば手続上の間違いのみならず、内容の間違いの要点は、これは各論じゃなくて法律の原論であり、原理のところで間違っておる。法律以前のところで間違っておる。法学通論くらいで、こんなものは教養学部の問題なんです。すなわち瑕疵ある法案はこれをとらずなんです。これを用いずなんです。御存じのとおり法律は既往にさかのぼらずなんです。疑わしきは罰せずです。日本国民は法のもと平等なんです。しかし、あなた自身がとり行なおうとしているこの法案は、法のもと不平等をつくろうとしていらっしゃる。差別待遇をしようとしていらっしゃる。しかも基本で許されているところの憲法並びに労働基準法、その権利を除外して、権利を剥奪しようとしていらっしゃるこんなことはとっくにおわかりのはずなんです。わかっているけれども、それを言えないというのは、恥ずかしいから言えないのですか、それとも文部大臣という職をじっと守らなければならないからですか、それとも文部大臣という職はあえて教員を除外するためには基本法を踏みにじってもやらなければならぬという職でございますか、いかがでございますか。
  302. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 いろいろ法律上の諸原則をお述べになりましてお教えをいただいたわけでございますが、私としましては、加藤さんがおっしゃるような心持ちでこの案を出したわけではございません。この案がいわゆる時間外の勤務に対する給与改善措置といたしまして、現段階においてこの辺が適当ではないかという考えのもとに出したわけでございますので、決して違法を犯すつもりもございませんし、また教員の諸君に対してつらく当たろうということでやっておるわけではございません。これがよいと思ってやっておるわけでございますので、どうぞ御了承をいただきたいと思います。
  303. 加藤清二

    加藤(清)委員 ことばの上では、御答弁の上では法を犯す、差別待遇をする意思はないとお答えでございますけれども、この法案自体の意図している点は、明らかに差別待遇、明らかに法のもと平等であるその権利を剥奪しておる。特別扱いなんです。もしあなたのことばどおりであるとするならば、その条項だけは削除なさいますか。私はあとで逐条でいきまするけれども、それが発見された場合に、あなたはそれを削除する用意がありますか。   〔委員長退席、久保田(藤)委員長代理着席〕
  304. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 何か間違ったところがあれば御指摘をいただきたいと思うのでございますが、私どもといたしましては、この法案が別に間違ったところはないと思っております。法の前に平等であるというようなことの原則につきましては、私も承知いたしておりますけれども、しかし現実の場合に、いろいろな法の適用に関しましては、その事情、その事態に応じていろいろな措置がなされるということも加藤さんのよく御承知のとおりであります。そういうことでございますので、私どもとしましては、まずこれが適当であろう、こういう考えのもとに出した。先ほども申し上げましたようなお答えを繰り返すだけでございます。
  305. 加藤清二

    加藤(清)委員 この際、お忙しい自治大臣がせっかく御来場でございまするので、ちょっと系統的な質問からちょっとはずれまするけれども、(「ひまでしょうがないんだ、油をしぼってやれ」と呼ぶ者あり)という声もございまするけれども、自治大臣にお尋ねいたします。  本法案は地方公務員、特に全国の学校の教員に及ぼす影響が甚大でございます。それは監督官はむしろ文部省というよりも、給与面その他財源確保等々は自治大臣、あなたの管轄でございます。そこであなたにお尋ねいたしますが、この法案はもう連日熱心に討議が繰り返されておりますけれども、問題は時間外の労働賃金、労働基準法で与えられたところの労働者の権利でございます。これを削除する、しかし四だ%けのおみやげをあげよう、だからしんぼうせい、こういう法律でございます。  そこでお尋ねしますが、地方公務員の超勤手当、特に市町村の吏員――関係がちょっとはずれるかもしれませんが、まだ農林大臣が来ておられませんので……。農業協同組合の職員等々には超過勤務手当はついておりますか、おりませんか。
  306. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 御指摘のものにはついております。
  307. 加藤清二

    加藤(清)委員 そのとおりでございます。その超勤手当は何%ほどに相なっておりますか。
  308. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 地方財政計画上では六%でございます。
  309. 加藤清二

    加藤(清)委員 六%が大体平均値でございますね。ところが、それ以上の方はありますか、ありませんか。
  310. 鎌田要人

    ○鎌田説明員 ただいま大臣からお答えいたしましたように地方財政計画上組んでおるわけでございますが、現実の姿といたしましては、市町村すべて超勤の実績を私どものほうで実はとっておるわけでございませんので、個々の事情はわかりませんが、平均的には大体五・三四%くらいのところじゃないかと思います。個別的には上がるところもあれば、それよりも低いところももちろんあり得るわけでございます。
  311. 加藤清二

    加藤(清)委員 それではあなたでけっこうです。自治省の特別職の方々あるいは役付の方々、この方々にはどのように手当がついておりますか。名前は特別調整手当となっておると思いますけれども、これは一体何%くらいついておりますか。
  312. 鎌田要人

    ○鎌田説明員 課長以上二五%でございます。
  313. 加藤清二

    加藤(清)委員 二五%以上何%までですか。
  314. 鎌田要人

    ○鎌田説明員 これは人事院から答えていただいたほうがいいと思いますが……。
  315. 加藤清二

    加藤(清)委員 いや、いいからいいから……。あなたの自治省はどうか聞いております。
  316. 鎌田要人

    ○鎌田説明員 二五%でございます。
  317. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは文部大臣にお尋ねいたします。  この法案が通過すると教員には四%しかつかない。ところが隣の役場につとめている人は六%つく、教えを受けた生徒が年若くしてもつく、先生には四%しかつかない。しかも役付、課長級以上は二五%つく。それだけじゃないのです。それは最低です。最低のことをあなたはおっしゃっている。それ以上四〇%、よろしいか、四〇%以上もついておる。なぜわかるかといったら、これは赤澤大臣は予算審議のベテランなんです。毎年毎年各省がふやしてくれ、ふやしてくれといってこれを審議してきたんですから、だから大臣はみなちゃんとわかっておる。同じ場所につとめながら学校だと四%、隣の役場なら六%、校長先生さえ一〇%、隣の課長さんは四〇%大臣、これは平等でございましょうか。
  318. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 そのパーセンテージは確かに違っておるわけであります。それだけでいえば違っているということだけは申し上げることができると思いますが、学校の教師の場合には従来出しておりますものについては一応これをもって相当と考えているわけであります。今回の特別手当につきましても、この辺で相当なところではなかろうか、このように考え提案をいたしておるわけでございます。これをもって直ちに平等の原則に反するとかなんとかいう問題ではなかろうと私は思います。
  319. 加藤清二

    加藤(清)委員 苦しい答弁をなさらなければならないあなたの立場に同情を禁じ得ません。あなたは文部大臣です。もし一、四%と二五%と四〇%が同一であるなどと言うたら、これは小学校の三年生の算術でもぺケでございます。   〔久保田(藤)委員長代理退席、委員長着席〕 あくまで数字ははっきり価値を表現しておるのです。その数字までも否定をせんければならぬあなの立場に私は同情しますよ。何がゆえにそうまでしてこの法律を通さなければならないのだろうかというところに疑問があるわけです。  では、もう一つお尋ねいたしましょう。文部省の課長級以上は特別調整手当は何%御要求でございましょうか。文部省予算要求のときに要求が出ているはずでございます。
  320. 天城勲

    天城政府委員 二五%でございます。
  321. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたはどれだけいただいておられます。
  322. 天城勲

    天城政府委員 私のは指定職ということで、何%かよく存じませんで、そういう比率でない金額指定の俸給でございます。
  323. 加藤清二

    加藤(清)委員 何%かと聞いている。それじゃゼロですか、ゼロなら予算審議のときに覚悟がありますよ。それはそうですよ。あなた、それなら持っていった予算どこへ持っていったか言わなければならぬ。
  324. 天城勲

    天城政府委員 これは公務員の給与制度でございますから、文部省だけでなくて全部通じての問題でございますので、基本的な問題でございます。一般職の中に指定職というのがございまして、それには特に――どうも自分のことが間違っておりましてたいへん失礼いたしました。二五%でございます。
  325. 加藤清二

    加藤(清)委員 そのとおりです。それが正直に答えられないというのは、頭が悪いからではない。初中局長です、頭が悪いからではない。どこぞもそっと下のほうが悪いからだと思います。ないしはあまり恥ずかしくて道徳的良心がうずくからではないかと思われます。それ以外にこんなことを、自分の俸給、特別手当は何%あるか聞かれて、それを知らぬという人ならば、あなたは大財閥であって、そこらの給与みたいなものはてんで問題にしないということだ。そういう議員さんもいらっしゃるのですからね。  そこで、本省の課長級以上は二五%ないしはそれ以上の超過勤務手当に匹敵するものをもらっている。しかし学校の先生は四%でけっこうである。これは平等といえましょうか大臣、この数字はイコールということがいえましょうか。
  326. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私はそのパーセンテージを比較なさることは実はどうかと思うのでございます。この教職特別手当は、いわゆる管理職手当とはまた違ったものでございます。それと比較なさるということになると、ちょっと問題が違ってきやしないかと思うのでございます。いろいろ御批判はございましょうけれども教職特別手当は、いわば時間外の勤務という実態を踏まえての考えに立っておるわけでございますので、そのように御了承いただきたいと思います。
  327. 加藤清二

    加藤(清)委員 比較することが間違いでありとおっしゃるならば、今後各省の予算を提出なさるときに説明書きを加えてもらいたい。私どもは、これを審議する場合に超過勤務手当にかわるべき手当であるという説明を受けておる。もし文部省だけそうでないというならば、文部省だけ特別な理由を付記していただきたい。しかも、そうなればパーセンテージが他省と同じように二五%というのもこれは変わってくるでしょう。  そこで人事院にお尋ねいたします。超過勤務手当を一括廃止して四%しかつけない、こういう前例がほかにございますか。
  328. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 ただいま御審議になっております――管理監督の地位にある職員に対しましては俸給特別調整額が支給されますが、その関係の場合には、超過勤務手当を支給しないで一方におきまして特別調整額を支給するという形になっているわけでございまして、沿革的に超過勤務手当が支給されておったのが支給されなくなり、新しい制度になったという形でございますけれども、その場合には四%というものはございません。
  329. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は、あなたたちが頭のいい方だということはよく知っていますから、時間の関係上簡潔にすなおにお答え願いたい。もう頭のよさはよう知らされております、選ばれたエリートでございますから。  もう一度お尋ねいたします。人事院の皆さんと比較して聞いておるのではございません。四%以上は超勤を与えないという例がほかにありますかと聞いておる。よう聞いておってくださいよ。
  330. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 超過勤務自体は正規の勤務時間以外に業務の必要性に応じて命ぜられてやるものでございます。したがいまして、その場合に必要性に応じまして実際にやる、相当長くやるものもございますし、そうでないものもあるわけでございますが、その間、したがって業務の必要性に応じてもっぱらやっておるわけでございまして、その関係で上限が制限されておるという関係のものはございません。
  331. 加藤清二

    加藤(清)委員 わかりました。つまり簡潔にいうとこういうことですね。超勤手当は十ぱ一からげ一括何%として与えるものにはあらずして、稼働した時間に正比例して与えられるものである、四%一括十ぱ一からげのごときは他に類例がございません、こういうことですね。
  332. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 超過勤務手当制度は、正規の勤務時間外に対しまして命ぜられた勤務について支払われるものでございます。超勤制度というものはそういうものでございますけれども超勤制度をとりませんで別の制度をとっているという制度については、先ほど御指摘のようなものがあるわけでございます。
  333. 加藤清二

    加藤(清)委員 超過勤務手当とは十ば一からげにして万人共通に与えられるものにあらずして、稼働した時間に比例して与えられるものである、与え方は。かように理解してよろしいか、総裁にお尋ねいたします。
  334. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 そのとおりでございます。
  335. 加藤清二

    加藤(清)委員 名答弁です。そうしたら時間が早く済む。  それでは今回のようなこういう例が他にございますか。
  336. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 四という数字のものはございませんけれども、先ほど来お話に出ておりますいわゆる管理職手当あるいは外務公務員とか検察官とか裁判官、そういうようなものについては別段の、いまの時間割りということになっていない待遇がされているというわけです。
  337. 加藤清二

    加藤(清)委員 そのとおり、その場合は少なくとも六%以上、特に課長さん以上は二五%から四〇%、むろんそれ以上もございますということに相なっておりますね。それがうそだとおっしゃるならば、人事院の課長級以上は何%予算で御要求になったかをお尋ねします。
  338. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 俸給特別調整額は、法律の規定に基づきまして最高が二五%でございまして、それ以内において人事院規則で定めるという形になっております。
  339. 加藤清二

    加藤(清)委員 人事院の職員の方々もまたしかりでございますね。例外ではございませんですね。
  340. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 そのとおりでございます。
  341. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたは、わが手元にいる人には二五%与える、予算の上で要求する。しかし山奥の小学校の先生は四%で十分である、かようにお考えでございますか。
  342. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 国立学校は山奥にはございませんから、この点については申し上げかねますけれども、先ほど申しましたように、国立学校の付属の小、中、高の先生方に対する現在の超過勤務手当は、予算の上では〇・六三というだけしかそれに盛られておらないわけであります。それが四%になるということになるならば、損ではないということはいえるわけであります。
  343. 加藤清二

    加藤(清)委員 むだな論争はやめましょう。ということは、私は根も葉もないことを言うておるのではない。山奥にあなたはないとおっしゃったが、私はこんなことでおこりたくないのです。すぐおこり出すたちだから。もう一ぺん深呼吸してからやりますが、山奥にないとはどういうことです。それだったら文部省はどうなります。文部省にお尋ねいたします。あなたのところに大学の演習林というのがある。これは町のまん中にありますか。気象観測というものがございます。これは山のてっぺんですよ。冬のさなかといえども帰ってこられませんよ。大学演習林、植林、その方々の待遇改善するために、地元の出身議員は与野党を通じて一生懸命になっているのですよ。あなた、ないなんてたいへんなことだ、国立ですよ、それは。
  344. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 それはたいへんなことになります。私のお答えしましたのは国立の小、中、高です。小学校、中学校、高等学校です。これを申し上げたのであって、大学の問題はこの法案には実は表に載ってないものだから、それはそれで問題がございますよと、私のほうから言っておるのです。
  345. 加藤清二

    加藤(清)委員 私はいま比較をしているわけです。自治省のお役人さんやら、文部省のお役人さんやら、人事院のお役人さんやらと、学校の先生と比較をしておるのです。あなたは自分の都合のいいほうへ都合のいいほうへと引っぱっていくのです。冗談じゃないですよ。私は初めから比較をして言っておるのです。  では、赤澤大臣、長いことお引きとめしちゃお気の毒ですからあれしますが、大臣、このことが影響をします、前例になります。学校の先生が四%で済ませるとお思いですか。役場の人や農協の人が六%、七%をもらっている。そのときに、勤務内容その他この他がございますが、それを押しつけて、これで通ると思っていらっしゃるのですか。もし一学校のPTAの会長になったら、これを受け取った会長はどう扱いますか、お尋ねする。
  346. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 地方公務員と申しますのは、御案内のとおりに仕事内容というものが実に種々雑多でございまして、その中でも学校の教員諸君の場合は、教職を私どもはたいへん神聖なものとも考えておりますので、別に考えるということには賛成の意をかねて表しておるものでございますが、私ども経験から申しますと、月給を払ったことはありますけれども役人になったことはない。大体ベルトコンベヤーなんかで流れる作業の場合には超勤なんか簡単に計算できますけれども仕事内容によりましては、これを合理的にそろばんをはじくことはなかなか容易ではないことは私どもよくわかるわけでございます。ただ、学校の先生の場合には身分的には地方公務員でございます。しかし、仕事内容、また時間等については文部省が所管しておられるわけでございますので、私といたしましては、ただいまの四%ということもいろいろ事情をお調べの上、そういう計算上の数字が出ておるというふうに考えておるのでございます。したがいまして、これがそういうふうに文部省としておきめになりました場合には、公務員法上から申しまするならば、そういう扱いになりましても、私のほうとしては別に異議を申し立てる筋合いはございません。やはりこの四%が妥当かどうかということばどもの自治省の仕事の範囲ではございませんので、そのことは明確に申し上げられないのでございます。
  347. 加藤清二

    加藤(清)委員 四%が勤務の実質量について妥当であるかないかは、あと逐次学校給食にまで及んで審査をいたします。ただ、私があなたに聞きたいのは、学校の先生が差別待遇を受ける、そのような状態下にあって、はたして市町村長は優秀な教員を確保することができるかいなかという問題なんです。できない場合には、過去においてもPTAで何とかしなければならない羽目に追い込まれるのが実情なんです。  そこでお尋ねしますが、その県内において教員が足りないという県が何県ございますか。
  348. 天城勲

    天城政府委員 御質問の趣旨を解しかねております。足りないということはどういうことでしょうか。たいへん恐縮でございますが、もう一度……。
  349. 加藤清二

    加藤(清)委員 各県が教員養成学校を持っていますね。国立、国立とはいうものの、ほとんど県にゆだねられているかっこうなんです。それなるがゆえに、あなたも御存じの愛知教育大学はいまでも問題を起こしているわけです。そうでしょう、ところで、そこで養成された卒業生だけでは需要に満たない、つまり需要供給のアンバランスの県が何県あるか聞いているのです。
  350. 天城勲

    天城政府委員 御指摘のとおり、各府県ごとに存在しております教員養成大学の卒業生が、当該府県の教員の需給とぴったり合っていないことは事実でございますが、いま私、どこの県がどれだけ足りないか、ちょっと資料を持っておりませんので、具体的にはお答えいたしかねます。
  351. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたは私の質問をよく聞いておってくださいよ、あなたは頭のいい方なんだから。足りない県がどれだけあるか、何県あるか聞いているのです。何人足らぬとかは聞いていないのです。それもわからないのですか。
  352. 天城勲

    天城政府委員 御質問意味はわかるのですけれども、何県という具体的資料を手元に持っておりませんということを申し上げたのです。
  353. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは東京は足りますか。
  354. 天城勲

    天城政府委員 一般論といたしましては、大都市をかかえている府県におきましては、当該府県の卒業生では足りない状況でございまして、大阪も愛知も神奈川も東京もそういう状況の県でございます。
  355. 加藤清二

    加藤(清)委員 大都市はほとんど足りない。そこで愛知県でもそうですが、余っておるであろうと想定できる県へ、教員やあい、教員やあいといってさがし歩く。いま人手不足の最たるものが中学の卒業生と教員なんです。なぜそうなるのだろうか。産業の大きい県においては、学大を卒業して教員になるべきはずの卒業生がよそへ行ってしまう。同時に文部省の指令もこれあり――はっきり言っておきましょう、学生運動を行なった者は就職させないという。それでますます払底する。他府県へ求めてもなお足りないからどうするか、やむなく教員養成大学ではなくて別な大学の卒業生を臨時に雇う。新しい時代の代用教員がここに生まれてきておる。なぜそうなるか。産業の発達した県ほどこの需給のアンバランスが大きいということは、周囲の工場であるとか会社であるとか、それと比較して、初任給も違えば、だんだんつとめていて五年たち十年たつに従ってますます格差が大きくなるということが原因なんです。したがってかかる事態を――私は数字を持っておりますけれども時間の都合上はしょりますが、この状態を放置しておくことがけっこうなことでしょうか、大臣
  356. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいまの御質問教員給与全体に関する問題だろうと思います。そういう観点からいたしまするならば、現在の教員給与そのものにつきまして十分検討しなければならぬものがあると私も思うのでございます。前々から申し上げて恐縮でございますけれども、その趣旨の検討を遂げて何か教員給与についての改善の策を講じたいということで先般もお願いいたしまして、若干の予算もちょうだいしたようなわけでございます。十分関心は待っておるつもりでございます。
  357. 加藤清二

    加藤(清)委員 同じ村につとめ、同じ町につとめる先生よりも、生徒のほうが超過勤務手当はよけいにもらう、そういう状況下において先生が喜んで働けると思いますか。先生の足りない穴埋めを待遇改善して埋めたいというあなたのこのことばは額面どおり受け取ります。しかし、おやりになっていることは逆じゃございませんか。こんなことでこの穴埋めができるとお考えでございますか。
  358. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題は、従来から問題となっておりますいわゆる時間外勤務に関する給与の問題として、とりあえずの措置を講じたわけでございます。教員給与そのものにつきましての本格的な検討は今後大いにしたいということをかねてから申し上げておるところでございます。
  359. 加藤清二

    加藤(清)委員 自治大臣にお尋ねいたします。  教員の足らざる県がたくさんにございます。格差は教員の層にまで及んできておるわけなんです。そこで地方の県知事、市長は教育委員会、教育長と鳩首、頭をしぼって、教員やあい、教員やあいというてさがし歩いておるのが実態なんです。こういう際に、市の吏員よりは手当が少ない、いままでさえもよそへ行っちゃうのですから、一体市長や村長はどうしたらいいでしょうか。あなたも市町村長とは親しい人もたくさんみえるでしょう。いろいろ陳情があるでしょう。私どものところへもその陳情が来ている。給与は全額国庫負担にしてもらいたいという声さえあるわけなんです。こういうやさきにこんな、また格差が大きくなるような制度をつくり法律をつくって、はたして確保ができますか。市町や村長だったら、どうしたらいいですか。どうやってこれを切り抜けるのですか。
  360. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 これは、繁栄途上にあってかくまでも経済成長を行ないつつある国では、それに限らずいろいろなそういう面が出てきておると思います。それは愛知県や東京の事情はわかりますが、また私どもの郷里のほうでは、教員というのが一番いいというので、何とかあきはないかと行列して待っているような状態でございまして、そういう現象は随所にあるわけでございます。しかしながら、結局給与の問題でこういう状態が出てくるということは、ただいま御指摘になった初任給の面で考えればいいということでしょうけれども、しかし、先ほど申しましたように、私は教職というものは他の職とはずいぶん違った性格のものであると考えております。学校の教員というりっぱな職につこうとなさった方が、何がしか賃金が高いからすぐによそに流れていくということは、私どもたいへん心外に思うわけでございます。しかし、学校の先生にしてみれば、とにかく時間を一時間、三十分と区切って幾ら幾らということよりは、賃上げと言ったらことばは悪いけれども、しかし四%でもそういった特別の手当が出るということが、この文部当局のほうで計算上出ておるならば、私は、これはやはり学校の先生を遇する一つの道ではないかというふうにも考えるわけでございまして、いずれにしても四%が適当かどうかということにつきましては、私は所管ではございませんので、そのことにつきましては申し上げかねます。しかし、実態はそういうふうに判断いたしております。
  361. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたは理想をおっしゃってみえますが、それじゃひとつ突っ込んで聞きましょうか。  教員聖職でりっぱなものである、安い月給でもけっこうだ、小学校の先生、中学校の先生にするんだとおっしゃるならば――私はあまり突っ込んじゃ気の毒、申しわけないから、それじゃお尋ねしますが、自民党の代議士の皆さんの中に、わが子を小学校の先生にした人が一人でもいらっしゃいますか。わが娘を小学校の先生にもらってもらった人が一人でもありますか。  もう一つお尋ねします。それは学校の先生がきらいだからではない。口ではタンチョウヅルの、日教組の幹部がけしからぬのと言いながら、実は学校の先生さまさまで、自分の子供や孫を教育させるときには、家庭教師として一人ならず二人ならず、三人、五人もつけていらっしゃる人がある。尊重しておる証拠なんです。ところが、じゃ、さて自分のむすこはというたら、する人はない。なぜだろう、口では聖職である、特別職であるといいながら、なぜそうだろう。結局は経済の問題です。だから私は優遇すべきだと思うのです。  そこで問題になる点を申し上げてみましょう。大臣、よく聞いてもらいたい。戦前においてはほんとう教員を尊重しておりました。今日ではことばの上で尊重している。じゃ具体的にどうなっていたか。高見先生よう御存じでしょう。師範学校は全部給与制なんだ、授業料はただなんだ。それだけじゃございません。国民皆兵といわれた時代だ。しかし教職に従事する者は聖職であればこそ、この兵役が免除されておる。ほんとう聖職なんだ。聖戦におもむくか聖職におもむくかといわれた。したがって、兵役を免除された教員は教壇を戦場と心得た。それなるがゆえに実績があがったのです。それなるがゆえに、あの当時では山川イズムか福本イズムか、いな、いな、いな、千度もいな。あの思想はなやかなりしころ、高等学校の試験を受けて受かっておりながら、ノーマルスクール(師範学校)に行った者も多かった。あの当時はきゅう然として素質のいい生徒が集まったものです。聖職だと考えればこそ、その聖職にはよりよき教師を送り込まなければならぬ、そのための政策が並行して裏づけされておったのです。今日なぜそれができないのですか。なぜ差別待遇をしなければならぬのですか。そういうところへどうして好んで行く人がありますか。どうして好んで自分のむすこを送ろうとする人がありますか。ほとんどあきらめの状態なんです。もって文部大臣の所見を伺いたい。
  362. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 戦前の状態と比較してのお話でございますが、確かに戦前の教員養成の制度ないしは先生の処遇の問題につきましては、いまお互いが感じているようなものではなかったと思います。その点につきましては、私は加藤さんのお話の御趣旨はよくわかる気持ちがいたしております。戦後の今日の問題でございますが、決して教師に対して差別待遇をするとか、そういうような心持ちは少なくともわれわれは持っていないつもりでございます。しかし、現在の処遇がはたして適正であるかどうかということになりますれば、いろいろ問題はございます。私どもとしましても、この教員給与の現状にかんがみまして、何か改善の方途はないか、何かりっぱな給与体系をつくる考えはできないかということで検討を進めたいということを先般来繰り返して申し上げておるところであります。願わくは御協力のもとによりよき教員給与体系あるいは給与の実質の改善が行なわれますように、私どもとしましても努力はしてまいりたいと存じております。同時にまた、教員養成の制度につきましても、いまのままでよろしいのかどうなのかということは大いに問題のあるところであろうと存じます。なかなかこういう問題を解決するということは簡単でないことは加藤さんもよく御承知であろうと思いますけれども、私どもとしましては、やはり養成制度等につきましても十分検討を加えて、よりよきものが生まれればこれに越したことはないのでありますから、そういう意味におきましては、積極的に研究もし、努力もしてまいりたいと存じています。急の間に合わないということで、おしかりを受けるかは存じませんけれども加藤さんも予算にはお詳しい方でございます。また教育制度についてもお詳しい方でございますので、そう簡単には解決できませんけれども、この努力をこの方向に向けて進めてまいりたい、このように存じています。
  363. 加藤清二

    加藤(清)委員 給与体系を改善する用意がありと受けとってよろしゅうございますか。
  364. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御承知のように、教員給与実態についてあらためて調査をいたしたいと考えておるのでございます。その調査の結果に基づきまして、願うことならばりっぱな教員給与体系がほしい、こういう意欲を持って実は調査をいたしたいと思っております。どういう結論が出るかは、調査の結果によってさらに検討しなければならぬ問題でございますけれども、そのような意欲を持って積極的に進みたいということは申し上げることができます。
  365. 加藤清二

    加藤(清)委員 給与体系を改善するために積極的な意欲をかり立てて前進したい、こういうことでございますか。
  366. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 さようでございます。
  367. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは引き続いて承ります。いまの養成機関に義務免除ということが何かございますか。
  368. 天城勲

    天城政府委員 就職の義務でごさいますか――そういう制度はございません。
  369. 加藤清二

    加藤(清)委員 そうじゃないよ。君らはそういうふうに妙なふうに解釈する。たとえば授業料、これは義務ですね、兵役、これも義務ですね。前と比較してものを言っておるんだから。そういう義務を免除するところの恩典が教員養成機関に何かありますかと聞いておる。
  370. 天城勲

    天城政府委員 聞き間違えてたいへん失礼いたしました。ございません。
  371. 加藤清二

    加藤(清)委員 それではお尋ねします。委員長にお尋ねいたします。もと教員宿舎というものがごさいましたね。教員宿舎、御存じですね。――うなずいてみえるところを見ると、これは証明されたと思う。それはいま幾つありますか。全国に幾つありますか。
  372. 天城勲

    天城政府委員 数はいま覚えておりません。
  373. 加藤清二

    加藤(清)委員 大臣、かくのごとしですよ、何ぞ尋ねるとね。教員の余っておる県、足りない県、これもわかっちゃいない。いま待遇改善をするとおっしゃるけれども、それじゃ教員宿舎のある県が幾つありますか、場得はどこにありますかと聞いても、それもわからない。てんで調査していないのですね。
  374. 天城勲

    天城政府委員 御存じのとおり、現在教員宿舎という形でつくっておるところもございますし、一般の公務員宿舎の中で割り当てを受けておるものもあります。また僻地は、僻地の教員宿舎として特に補助を出して建設しておるところもございます。いろいろな制度がございますものですから、いますぐどこの県に何戸あるかと言われても、ちょっとお答えできないということでございます。
  375. 加藤清二

    加藤(清)委員 つまり文部省は直接手を施して教員のために親切にこれをつくってやった、あるいはつくらせるように努力した、そういうものはございませんね。
  376. 天城勲

    天城政府委員 現在、予算の制度の上では、僻地地帯に僻地の教員住宅を直接補助してつくっております。
  377. 加藤清二

    加藤(清)委員 このゆえに転任を命ぜられるとやめる人が多くなってきておる。宿舎がないからやむなくやめます。あるいは初めて就職する卒業生が、うちのないところへは行けませんという住居の理由で断っているという例もございます。せっかく基本の給与体系までも考え直す、検討して前向きで前進しますとおっしゃるならば、せめてやれることぐらいはおやりになったらいいと思う、この程度のことくらい。なぜかならば、それこそ各省の高級官僚はみんな宿舎がある。県庁も市役所も高級官僚は宿舎がある。産業に従事する会社でも、工場にまで宿舎はある。本省が、親元が直接手を下して宿舎のめんどうを見ないのは教員だけなんだ。ここにも教員に対する冷遇措置がある。したがって、超勤もさることながら、通勤の問題が出てくるわけなんです。通勤の上でずいぶん難儀をする教員が出てきているわけなんです。特に都会地においてはこれがはなはだしい。口で尊重するならば、具体的に実行に移すべきだと思う。何かやれますか。この際、自治大臣はお忙しいでしょうから、地方自治団体で何か教員のために住宅その他で苦労しているとか、りっぱな例があるとかいうんだったら承りたい。
  378. 鎌田要人

    ○鎌田説明員 一応市町村あるいは県で公費をもちまして住宅をくっております例もございます。そのほかに、公立学校の先生の場合でございますと、公立共済一般の職員の場合でございますと、地方職員共済でございますとか市町村共済ということになるわけでございますが、資産の運用の幅があるわけでございます。これを不動産投資なりあるいは住宅貸し付けのワクをことしからふやしまして、利率も下げております。そういった面で配慮をいたしておるところでございます。
  379. 加藤清二

    加藤(清)委員 じゃ、自治大臣お急ぎのようですから申し上げておきます。もう一点だけでけっこうです。  四十三年の五十人国会、この国会に三つの大きな間違った案件がございます。その第一が米審でございます。この米審は六月にうまくいかないと学校給食のパンにまで影響がまいります。第二は、それこそあなたの専門の選挙資金規正法でございます。大骨小骨どころか、天井も底も抜けてしまって、規正でなくて歓迎法になりつつある。第三がこの教特法でございます。この教特法の手続上、経過上の間違いはすでに論議されておりますからもう申しません。しかし、これがもし一、先生がそうだから役場の人もそうしてくれ、農協た人もそうしてくれということで、村会、町会で論議されるようになったら、自治大臣としてはどうなさいますか。
  380. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 地方公務員の場合、先ほど申しましたように仕事内容が種々雑多でございます。ですから一律にどうという扱いができませんので、やはり超勤手当を支給するほうがいいものと、今度の教員みたいな扱いをするほうがいいものと、おのずからあるわけでありまして、先ほどもそれは態様に応じまして、いずれにいたしましても公務員法上別に問題はないということを申したわけでございます。ただ、ちょっと触れましたように、いま非常に日本の内部が経済的に混乱しておる、過渡期にあることは、加藤さんよく御承知のとおりでございまして、加藤さんが主として立論の基礎としていらっしゃる地方と、私どものほうとは、ちょっと触れましたように、まるきり違っておるわけでございます。私のところは農林山村と申しますか、まあ農業、林業が中心でございますから、そういった皆さんが教員の今日をごらんになりました場合の感覚と、それから加藤さんが名古屋でごらんになった感覚というものは、私はずいぶん違うと思っておるわけです。学校の先生方の中にも、私平たく聞いてみましたが、そのほうがいいよとおっしゃる方もあるし、またちょっと考えの変わった方は、それは困る、やはりわれらは労働者であるというようなことをおっしゃる方もあるし、いろいろでございますけれども、しかしながら、それは先ほど文部大臣の御説明にもございましたけれども教職というのは特殊な仕事内容でございますので、この仕事内容をはたからいろいろ縛り上げるということもいけませんし、やはり自由に、預けた子供たちの御教育を願わなければならぬ。それにふさわしい給与がどうあるべきかということが私どもにとっては非常に問題であるわけでございます。ですから、その内容がどうかということにつきましては、ひとつ文部当局のほうにお聞きを願いたいと思いますが、われわれのほうといたしましては、そういう措置がきまりましたからには、学校教員教員として別な扱いをするわけでありまして、これがすぐに右から左に、たとえば地方公務員の中には単純労務に携わる人もあれば、ホワイトカラーもあるし、技術者もおりますし、種々雑多でございますけれども、学校教員に対するこういう計らいというものが、すぐに別なところに波及するということではなくて、別の場合はまたそれぞれ態様を考えまして処理すべきものである。かように考えます。
  381. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は結論だけ聞けばよかった。あなたに時間かせぎをやられちゃ、こっちは制限を受けているからたまったもんじゃないのですよ。あなたは自治大臣でしょう。ですから、教員がこうだ、学校の先生でさえもそうだ、おまらの先生でさえも超勤は四%だけだぞよ。だから役場の諸君よ、しんぼうしてくれ、農協の職員よ、しんぼうしてくれ、こういうように波及するおそれがあるということを言うておる。そうなった場合に自治省としてばいかに御指導になりますかと聞いておる。
  382. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 ただいま申しましたように、教職その他の職務というものは内容が全然違うわけでございまするから、波及といって、学校教員の扱いがこうなったから他の職種にも右から左に伝播するということは、私ども考えておりません。
  383. 加藤清二

    加藤(清)委員 あったらどうしますか。どう指導されますか。
  384. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 ないと考えております。
  385. 加藤清二

    加藤(清)委員 ないということは、もしあったとしてもないと同じように扱う、こういうことですね。
  386. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 もちろんそのとおりでございます。
  387. 加藤清二

    加藤(清)委員 じゃあ自治大臣どうぞ。  次に、内容についてお尋ねいします。  すでに検討されましたように、ずいぶん内容に誤謬がある、手落ちがあるということはもう証拠立てられておりまするけれども、私はどう考えてもふしぎでならぬことだけを二、三お尋ねをしてみます。  第一番、文部省にお尋ねしますが、手続の問題のところに戻ってお尋ねします。手続の場合に、かかる重要な法案提案される事前に、自民党とは御相談なさいましたか、天城君にお尋ねいたします。
  388. 天城勲

    天城政府委員 いたしました。
  389. 加藤清二

    加藤(清)委員 じゃあ、野党とは御相談になりましたか。
  390. 天城勲

    天城政府委員 いたしません。
  391. 加藤清二

    加藤(清)委員 野党はつんぼさじき、そうですね。それじゃ関係各省とは一体どこと相談なさいましたか。
  392. 天城勲

    天城政府委員 関係各省は、自治省、大蔵省、労働省、内閣の人事局、それから人事院でございます。
  393. 加藤清二

    加藤(清)委員 労働省と人事院だけですか。
  394. 天城勲

    天城政府委員 ただいま申し上げましたように、自治省と労働省と内閣の人事局と大蔵省と人事院でございます。
  395. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは、野党とは相談なさらなかったんですね。直接この影響を受ける教員とはお話しになりましたか。
  396. 天城勲

    天城政府委員 話すという話し方の問題でございますけれども教職員のいろんな団体がございますが、その方々と、私たちのところへ積極的においでになった場合もございますし、それから来なかった場合もございますが、いろんな団体と、中間ではお話をいたしましたことはございます。最終に法律案がきまったときに、かなり広く教職員の団体の方にお集まりいただきまして、この法案の趣旨を御説明いたしました。
  397. 加藤清二

    加藤(清)委員 相談ということは、でき上がってから説明したということですか。
  398. 天城勲

    天城政府委員 最終はもちろん説明でございます。
  399. 加藤清二

    加藤(清)委員 こういうことだから問題をかもし出して、委員長をはじめ与党の理事諸公が余分な難儀をしなければならぬ。出しちゃったら急げ急げ、インテイズブ(いんぎん、丁寧、ず太い)の答弁で、これで通していこうとしていらっしゃるようですが、ほかの省ではそうばかりじゃございません。予算のごときは、野党とも何回も何回も折衝するのです。大蔵省の法案、通産省の法案、農林省の法案、これは法案が作成される段階において、野党のそれぞれの政策の担当者とずいぶん論議される。そのことばすぐお隣にいらっしゃる労働省でも同じことなんです。なぜ文部省だけは、野党や当の当事者である、これによって影響を受ける対象である教員とはお話しにならないのですか。理由を承りたい。
  400. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 格別の理由はございません。従来から大体そういう取り扱いで進めてまいっております。
  401. 加藤清二

    加藤(清)委員 理由なしですか。
  402. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 特に取り立てて申し上げる理由はございません。
  403. 加藤清二

    加藤(清)委員 納得する理由を承りたい。
  404. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 別に、いままでやりました私どもの扱い方において差しつかえがあるものとも考えておりません。
  405. 加藤清二

    加藤(清)委員 法律違反であるとは言うていないのです。たとえ法律違反と、だれが見ても患われることでも、あなたはそうでないとおっしゃるんですからね。私は法律違反とは言っていない。しかし、野党もつんぼさじき、それよりもなお問題になる点は、当事者がつんぼさじきであるということになりますると、これを結婚にたとえますと、親と親とが相談して、子供の結婚であるにもかかわらず子供には何にも意思表示をさせずに、意見を聞かずにきめてしまう、こういう行き方と変わりないと思う。こういうやり方がよいとお考えですか。
  406. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 よいか悪いかというふうにおっしゃいますと、お答えがしにくいわけでございますが、私どもとしましては、今回のこの手続の取り運び方というものについて、特に変わったやり方をやったつもりはございません。従来と同じようなやり方をやってまいりました。
  407. 加藤清二

    加藤(清)委員 同じようじゃないですよ、あなた。与党とは相談して、野党とは相談しない。事前に打ち合わせをしないと答えている。まあ、その押し問答よりも、そういうことをやられまするから、したがってどうなるか。審議の途中においていろいろな誤りが発見されて、それを修正しなければならぬような場合に追い込まれてくる。こういうところで修正するといえば恥だと心得なさるから、ゴリ押しで押そうという結果になる。これが事前に打ち合わせが行なわれておれば、公にならぬところで修正が行なわれるから恥でも何でもない。両方とも、双方合意でいける、こういうわけなんです。国民と対話の形でいく、国民的合意によって政治を進めるという佐藤さんのことばと、やや趣が違うじゃございませんか。その結果内容上どういう問題が起きてくるか、ひとつ例をとってお尋ねしてみましょう。  人事院のこれに対する答弁はすでに提出されておりまするから何ですが、問題の存するところである、検討を要する、こういう答弁ですね。ところで、最後の段階へきて、暫定だからまたやむなくこれを許した、こういう趣の答弁がなされましたが、いまでもそうですね。そこでお尋ねします。文部大臣、暫定という期間は何年でございますか。
  408. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 何年ということをはっきり申し上げることができれば、あるいは時限立法にすべきではなかったかと思うのでございます。そこまではっきりするわけにもまいりません。いま考えておりますことは、だいぶ私の希望的なあれが入ってまいりますけれども教員給与に関する改善の策をいろいろ検討してみたい、こう申しておるわけでございます。その検討の際には、いままでのすべての教員給与について検討がなされなければならぬと思うのでございます。したがいまして、私ども希望するがごとき筋道でものごとが運んでまいるといたしますれば、私は、次の給与改善の方策ができ上がるときまでということは申し上げ得ると思うのでございます。それが何年かかるかということにつきましても、明確に申し上げることはできないわけでございます。その間においてまた特別な事情があって、改定でもしなければならぬということがあれば、これはまたそのときの問題として考えなければなりませんが、一応の考え方としまして、次の給与改善ということを根本的に考えます際にあわせて検討してみたい、このように思っておる次第でございます。
  409. 加藤清二

    加藤(清)委員 この法案の要綱にも出ておりますが、文部省の予定された当分の間というのは、何年くらいのことでございますか。
  410. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 その点は今日明確に申し上げるということはきわめて困難なことでございます。いろいろ調査をいたしまして、結論が出て、これが実施に移されるというときまでに一体何年かかるかということになりますと、早いことが願わしいことはもちろんでございますけれども、ここではっきり申し上げるというわけにもまいりません。その点は御了承いただきたいと思います。
  411. 加藤清二

    加藤(清)委員 はっきり申し上げることができない理由を、ほんとうは承りたいのですが、それではそれは百歩譲ったとして、何年という腹は、あなたの中には、あるいはこの原案を作成する過程においては用意されていたのですか、いないのですか。
  412. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 明確なる用意はございません。
  413. 加藤清二

    加藤(清)委員 人事院にお尋ねします。あなたのほうとしては、この法案は不十分なものである、検討を要する。しかし、暫定なるがゆえにということでお許しになった。そうすると、あなたのほうは暫定という期限はどう踏んでおられたのか、あるいはどう受け取っておられたのか、あるいはその話の間に何年ということがあったかなかったか、いずれでございますか。
  414. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 国家公務員であります教員の方々については、私どもの所管でございますから、私どもとしてはこの法案内容、たとえばパーセンテージ等について、また確実なるデータを集めて真剣にこれを検討する。そしてその答えが出れば、これはすぐにでも出次第に勧告を申し上げます。しかし、その慎重なる審議が長く続けば、これはまた当分まだ間がその間ある。いわゆる暫定というのは一月、二月から二、三年までかかることもあり得ることでしょう。早ければ早いほどいいことだと考えております。
  415. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたのほうは二、三年と受け取って見えるのですか。それとも文部省の交渉の段階における発言で、そういうことがあったのですか、どっちですか。
  416. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 文部省との交渉は全然ございませんから、そういう話が出た場面もありません。
  417. 加藤清二

    加藤(清)委員 では、あなたはどう受け取っておられるのですか。
  418. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 私の考えておりますところは、先ほど申し上げたとおりで、これは一生懸命調査研究せねばなるまい。確実なデータ、われわれの責任の負える確実なるデータをとらえて、それによってまた大学、高専等の先生方との関係も考えて、適正なる結論を出さねばなるまい。そして出れば国立学校に関する限りは勧告をいたしますということです。ですから、その研究にどのくらいかかるか、それはわかりません。また、ここでの御審議の経過というものを十分承りませんことには、軽々しく答えを出すわけにはいきませんから、慎重に取り組みますけれども、慎重に、かつ早く結論が出ればそれは幸いです。すぐに勧告を申し上げるということです。
  419. 加藤清二

    加藤(清)委員 抽象的に期待をしているというだけですね。抽象的になるべく期近を期待している、こういうことだけですね。当分の期限を二年と踏んだか三年と踏んだか四年と踏んだか、私はお聞きしたいのですけれども、それがわからない。わからないといえば、なるべく期近を期待している、こういうことですか。
  420. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 これがおかしいという結論が出たら、いつまでもほっておくという手はないと思います。これでいいという結論が出れば、このままでもいいということですから、その結果によるわけです。
  421. 加藤清二

    加藤(清)委員 すでに人事院は、超勤の問題については、三十九年に文部省に対してちゃんと指示をされていらっしゃるでしょう。あれからもう四年たっているでしょう。四年たってまた、これから当分、そうなればだれだって怠慢のそしりを免れない。それ以上かかる問題じゃないのだ。オリンピックの建設だって、あれほどの大事業だって六年も七年もかかっていないのです。したがって私は、何年かと、もう一度あなたの受け取り方とか、あるいは心がまえを承りたい。
  422. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 できるだけ調査研究を急ぎます。そして適正なる判断をいたします。三十九年からいままで何をぼやぼやしておったというお話がちょっと出ましたけれども、これはわれわれとして一言申し上げざるを得ない。現在この法案が成立するまでは、超過勤務制度というのは厳然として現行制度であるのですから、あの報告書にもはっきり書いてありますように、超過勤務制度が現行法としてある以上は、政府として超過勤務を命じたならば超過勤務手当を払うべきだということを書いてある。その制度があるのに軽々しくちょこちょこそれにかわる制度考えなければならないものでもない。それは慎重に考えるということでありますから、遊んでおったという御批判はこれは受け取りがたい。
  423. 加藤清二

    加藤(清)委員 人事院総裁はよく御存じでございましょうけれども、基本法があるにもかかわらず、暫定法をこれに付加して例外措置をとるという場合は、緊急性を要する場合か、何か事件が起きた場合か、それ以外にはないはずなんです。立法措置をとるということは、暫定法あるいは特別立法というのは例外措置なんです。例外措置法律をあえて立法しなければならぬというのは、第一の要因は緊急性なんです。この法律について緊急性がございますか。どういう理由であなたは暫定をお許しなさった。
  424. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 私はここへすわっていますけれども、この法案の応援団としてすわっているのではないのであります。文部大臣の照会に対して答えた者としてその趣旨を申し上げるために来ておると申し上げてよろしいと思います。何のためにやむを得ざるものとして認めたかということは、一昨日来申し上げておるとおりでありますけれども、国家公務員の関係では、労働基準法との関係はもうございません。これは二十年前に解消しております。その点、地方公務員の方々の場合とは違います。国家公務員の場合、あと残るのは超過勤務手当制度を変えて一括した調整手当にすることの給与法上の問題だけです。そこでこれが国立学校の教員諸君の損になるか得になるか、現状において、それは先ほど申しましたように損になるという証拠はどこにもありません。少なくともただいまの〇・六三%というものから四%になるのですから。ただ、四%が精密にいったらどうかという問題は残っておるわけですから、その暫定的というのは、そこに着目してそれを中心にしていろいろ考えて、あるいは大学、高専に問題が及ぶかもしれません、あるいは逆戻りすることが正しいということになるかもしれません、それはこれから検討しよう。したがってやむを得ないものということでございます。
  425. 加藤清二

    加藤(清)委員 私の質問に答えてもらいたい。基本法があって厳然としてそれが行なわれている。にもかかわらず、その例外措置をつくるという場合の前提条件としては、何か緊急性がなければならぬはずだ、こう言っておるわけです。何か緊急性がありましたかと尋ねておる。それとも緊急性ではなくて別な理由がありましたかと尋ねておる。
  426. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 たびたび申し上げますように、基本法とは、ことしで二十周年になりますが、二十年前にお別れをしておるわけでございます。したがって、労働基準法から直接の問題は今日ないわけです。しかし、労働基準法の精神というものは尊重しなければならない、これは当然のことだ。したがいまして、一昨日も申し上げましたように、超過勤務は命令はするわ、それに対応する給与措置は全然とらぬわということだったら、これは決然として反対をせざるを得ないということまでおととい申し上げたわけです。そうはなっていないのですから、そこは当分の間の措置としては了解できるだろう、こういう気持ちです。
  427. 加藤清二

    加藤(清)委員 何ぼ言うてもあなたは私の質問に答えていただけませんから次へ進みますが、質問に答えてもらいたい。  この法案の示すところによりまするというと、時間外勤務、割り増し賃金、これは四%にとどめる、そのかわり労働基準法適用は除外する、必要のあるときは命ずることもできる、地方公務員法は読みかえをする、つまり命ぜられて不特定の無定量の勤務もまたやむなし、こういうことになっているのでございますね。これでいきますと、そういう結果になりますね。総裁どうですか。
  428. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 これは最初から申し上げておりますように、私どもは国家公務員を所管しておるのでありまして、所管外の事柄について発言すべき資格もありませんし、その気持ちもない。これはごかんべん願います。
  429. 加藤清二

    加藤(清)委員 それはわかっておる。しかし、いまはこの法案内容を聞いておるのです。この法案内容は、四%を与えられることによって、教員の持っている権利、すなわち超勤したら給与がもらえるという労働基準法の権利、これを放棄すると同時に、命令によって、不特定多数の、あるいは無定量の時間外勤務をせなければならないという義務をしょわされることになりますねと、この法の解釈を聞いておるわけです。
  430. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 簡潔にお答え申し上げますれば、私どもが見ますのは、第二十五条の四とそれから新しい二十五条の五、この二つが私どもの関係でございます。お示しのような事項はこれには直接関係のない事項でございます。
  431. 加藤清二

    加藤(清)委員 文部大臣にお尋ねします。ほんとうは法制局長官を呼んで聞きたいところですけれども……。  この法律案は、四%の一律の給与を、教員側からいうともらうことによって、時間外の割り増し賃金をもらえるという労働基準法の権利を放棄する、あるいはすりかえられると言うてもいいでしょう。と同時に、無定量の時間外勤務を命ぜられる結果になる、そう受け取ると違いますか。
  432. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この特別手当は、事実上時間外の勤務の有無にかかわらず、これだけの手当を出そう、こういうことになるわけでございます。教員のいわば時間外の勤務があるという実態を踏まえて、それに対してどういう手当制度をとるべきかということから出発して、繰り返して申し上げて恐縮でございますが、今度のような制度をとったわけであります。前提としては、時間外勤務ありという前提のもとにこれをいたしたわけでありますが、現実には、毎日毎日の時間外勤務の有無にかかわらず、年間を通じてこういうふうな手当を一律に支給するということで、かねてからのいわゆる超勤問題の解決をはかったわけでございます。そのようにひとつ御了承を願いたいと思うわけであります。それに関連いたしまして、いわゆる超過勤務手当は支給しないということになっておるわけでございますが、同時に超過勤務を命ずることができるという根拠も置いてあるわけであります。教員が事実上どういう勤務をいたしますか、その勤務管理は学校長の当然考えなければならぬことであろうと存じますが、事実上の問題については格別給与としては触れておりませんけれども、学校長として必要に応じて時間外の勤務を命ずるという根拠規定だけは置いてあるわけです。それが加藤さんおっしゃるように、無定量の勤務を命ずることになるのではないか、こういうお尋ねになったのだろうと私は思う次第でございますが、その点につきましては、私どもはさようなことにはならぬであろうというふうに考えております。  それと申しますのは、まず第一に、いわゆる正規の勤務時間というものは、これは原則としてあくまでも尊重すべきものであろうと思います。できることならなるべく正規の勤務時間の中でその日その日の勤務は終えてもらいたいというのが私は原則だろうと思うのでございます。むやみやたらに時間外の勤務を命ずるとか、やらせるとかいうことが適切な勤労管理の道ではない。健康にしてしあわせ多き生活をやってもらいますためには、やはり勤労管理の適正をはかっていかなければならぬことは学校長としては当然の責務であろうと思います。また、そのように指導もしてまいりたいと考えております。これがこうなったから、何でもかんでも命令は幾らでもできるのだ、そういうふうなものの考え方というものは、私はいかがであろうかと存じておる次第であります。御心配のようなことは私はない、このように考えております。
  433. 加藤清二

    加藤(清)委員 それはあなたが学校の校長をやっておれば、あるいはあなたの生き写しの心を持った人たちが校長になっておれば、それはそういうこともいえるでしょう。しかし、立法の場合は、さにあらざる人もあやまちなきようその法律を生かすべく立法しなければならぬはずです。  で、私の質問に答えてもらいたい。もう一度お尋ねします、簡潔にものをキャッチするために。四%の給与を受けることによって、教員労働基準法に有する超勤の権利を喪失すると同時に、無定量と言って悪ければ、良識ある校長はさようなことはせぬという付言をしてもいい、そういう命令を受ける結果になる、こうですね。それでそうでないというなら別な解釈を言うてください。
  434. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 そのとおりでございます。
  435. 加藤清二

    加藤(清)委員 しまするというと、これは有価値的物権の交換ということになる。権利の交換ですね。労働基準法に許された権利、憲法に許された権利、これが喪失し拘束されるようになるのでございますから、四%という割り増し給与と交換、こういうことになるわけですね、結果は。
  436. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 交換という表現でございますが、交換と言って適切な表現であるかどうか、私はいかがかと思うのでありますけれども、とにかく結果においては、新しい制度を創設することによって、労働基準法に淵源しておるところの割り増し賃金制度はとらない、こういうことになったことはそのとおりでございます。
  437. 加藤清二

    加藤(清)委員 交換ということばが当たらなければ置きかえでもいいですよ、すりかえでもいい、ずりかえでもいい、ギプ・アンド・テークでもいい、ことばはどういうことでもいいのです。が、具体的事実はそういうことですね。  そこでお尋ねせんければならない。ほんとうはここも法制局長官に聞きたいところですが、有価値的物権の交換には必要条件があるわけなんです。たとえば労賃もそうなんです。労働者側からいえば、労力を提供することによって賃金を得る。使用者側からいえば、労力を得ることによってそれに見合う賃金を支払う。これは何もマルクスの理論じぁございませんよ。ケインズの理論なんです。ケインズでも同じことなんです。これが道徳律に適用されてギブ・アンド・テーク、こういうことになっておる。有価値的物権の交換に必要な条件、これは――これこそまた法律以前できまった問題ですが、ここにはっきりとそれが法文の上に明示されておるものがあります。しかし、文部省としてはその条件を何と何と何というふうに心得てこの法案をおつくりになりましたか。
  438. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 まことに無学で恐縮でございますが、遺憾ながら私はそのことはよく承知しておりませんので、お教えいただければ幸いであります。
  439. 加藤清二

    加藤(清)委員 これは謙遜されることはいいけれども、そうなると、無責任の責めを免れることができなくなりますよ。有価値的物権の交換には必ず条件がある。その条件を知らずしてこれを行なったとすれば、それは剥奪であり、ないしはそれは無効となるのです。ですから条件を承りたい。
  440. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 われわれとしましては、教職員の時間外の勤務実態があるということは、繰り返して申し上げますが、これを前提といたしておるわけであります。ただ現実に、いわゆる割り増し賃金制度でもってこれに対応することは必ずしも適当でないという考えのもとに、現実的には、ある日は何時間残った、ある日は残らなかったということはいろいろありましょうけれども、年間を通じましてそのような実態があるということに立脚いたしましての手当制度の創設でございますので、割り増し賃金制度の権利を剥奪したとかなんとかというふうにきつくお考えにならないで、この時間外勤務に対応する一つ給与制度、こういうふうにお考えをいただきたいと思うのであります。
  441. 加藤清二

    加藤(清)委員 この問題だけは下がれませんよ。なあなあづくとか、どんぶり勘定でとかいう問題とは違いますから。法律で有価値的物権の交換をしいる場合、命ずる場合、これには条件がある。その条件は何ですかと聞いておるのです。そんなことは、これこそまた経済学以前です。法律以前をおかしてみたり経済学以前をおかすようじゃとんでもない話なんです。マルクスの経済を聞いておるのじゃございません。ケインズの経済を聞いておるのです。だれでもいいです。どなたでもいいから答えてください。
  442. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 どうも、先ほど来申しておりますように、無学でありますために加藤先生のおっしゃることがよくわからぬのであります。よくわからぬのでありますが、給与と申します以上は、やはりそれに対応する勤労があるはずでございます。その勤労に対する給与であることは間違いないわけであります。そのように考えて、先ほど来申しておりますように、一日一日の問題はしばらくおきまして、年間を通じましての給与制度としてこれを取り上げていった、こういうふうにお考え願いたい。勤労のないところに給与を払うというつもりはございません。
  443. 加藤清二

    加藤(清)委員 それはそのとおりですよ。そのとおりですがね、その交換をするときに、甲の物権と乙の物権、いずれも有価値的物権、これを交換する。労使の賃金、これは交換の経済ですね。そのときには、交換する場合には条件が満たされなければならない。その条件は何と何と心得られましたかと聞いておる。おわかりにならなければこっちで申し上げます。天城局長にお尋ねする、あなた責任者だ。
  444. 天城勲

    天城政府委員 あるいはお答えが、質問を十分理解してないかもしれませんが、まあ原則としてはその契約の中身だと思いますけれども、等価ということが原則になるのじゃないかと思っております。等価交換じゃないかと思います。
  445. 加藤清二

    加藤(清)委員 そのとおりです。それはもう等価交換ですがね。それはもっと具体的に言いましょう。それじゃ申し上げます。等価交換、それは当然のことですね。しかし私は、その四%が多いとか少ないとか、等価であるとか不等価であるとかという以前のことを聞いている。これが具体化されたものに手形法、小切法がありますね。手形法、小切手法とは交換の場合に使われる貨幣の別な手段なんです。それを見ると一番よくわかる、手形法、小切法。まあ有価証券法をごらんになってもいいですけれども、これは価値の交換の場合の手段なんですね。それには条件があるんです。第一条にうたわれておるのです。何と何ですか、こんなことは大学の卒論にもなりませんよ。
  446. 天城勲

    天城政府委員 私も不勉強で存じませんです。
  447. 加藤清二

    加藤(清)委員 では、そこであなたを詰まらせてここで引き延ばしをしようなどとは私は考えておりません。手形法の第一条、小切手法の第一条、ともに第一条から第二条にそのことがうたわれているわけです。読み上げてみましょう。手形法第一条、手形に必要な記載事項、「左ノ事項ヲ記載スベシ」です。これは第一、第二といっていろいろありますが、「満期ノ表示」「支払ヲ為スベキ地ノ表示」「支払ヲ受ケ又ハ之ヲ受クル者ヲ指図スル者ノ名称」「手形ヲ振出ス日及地ノ表示」「振出人ノ署名」等々とあります。それは何かといったら簡単なことなんです。いつだれがどこで何でどうするか、こういういわゆる歴史の場合ですと五つのWです。それに付加されていくだけなんです。いかなるものでも有価値的物権には、あなたのおっしゃった、いま天城さんのおっしゃった等価という問題と同時に時が記入されるのです。日時、場所が記入される、だれがという責任者が記名されるのです。責任の所在とこれを実行に移す期限が明記されない場合はこれは無効なんです。もっとも白紙委任の手形を振り出せばこれは犯罪になることはもう新聞でよく御案内のとおりなんです。本件もまた有価値的物権の交換なんです。当分の間借金しておきます、当分の間銀行から金を借ります。私にあなたからこれを買いましたけれども、もらいましたけれども、支払いは当分の後でございます。当分とは何かと聞いたらそれはいつのことやらわかりません。そのことは私は受け取っておりませなんだ。この契約は裁判に持ち込めば完全に破棄されるわけです。だから私は最初に言ったのです。これが実行に移されたらいろいろ裁判上の問題が発生してくる。当分の間という暫定措置でありとするならば、これは当然年限が記入されてしかるべきなんです。いわゆる時限法として行なわれるのがしかるべきなんです。いまそこに通産省からも来ておられますが、経済立法にして暫定のものだったならば必ず時限があるのです。それが欠けているのです。欠けているということは、成立しないということなんです。この契約は不成立ということなんです。すなわち最初に申し上げましたように、きずのある法律はこれは用いずです。きずがあるのです、これは。瑕疵ある場合はこれを用いず、瑕疵ある場合はこれを成立せずです。委員長承知願います。成立しません。
  448. 高見三郎

    高見委員長 加藤君、答弁を求めておられるのですか。
  449. 加藤清二

    加藤(清)委員 私の理論に反論する人があったらどなたでもいいから述べてください。どなたでもいいです。
  450. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 加藤さんのおっしることが幾らかわかってきたような気がするのでありますが、まだしかし理解不十分かもしれません。しれませんが、私は先ほど申しておりますように、これはいわば暫定的な立法として御提案申し上げているわけであります。したがって、未来永久にこれでやるというつもりでないということだけははっきりしておる、ということは申し上げられるわけでありますが、時限立法としてやる以上は、これはもう暫定立法でも何でもないと思います。時限立法でできないからむしろ暫定立法で「当分の間、」という表現を用いた。その有効であります限りは別に瑕疵のある問題でも何でもないと思うのでございます。また、この手当をどういうふうにして支払うかとか、どういうふうな条件のもとに、手続のもとにやっていくかというふうなことは、いずれ手続規定はきめるつもりでおります。その点もその御心配はないだろうと思います。  なお、よけいなことを申し上げて恐縮かとも思いますが、ただいまのところは四%ということで私どもは相当であると考えて出しております。しかしこの四%は、これは暫定期間中といえども決して不動のものではないと私は思います。御承知のように今度の案の中にも、この事項は人事院の勧告にかかわる事項ともいたしております。人事院のほうでまた御調査の上で、この点について改めるようにというふうな御勧告でもあれば、私どもはこれを尊重するにやぶさかではありません。そういう四%でございます。これを支給する手続その他につきましては、いずれ手続規定というものはきめてまいるつもりでおりますから、その意味におきまして、これは瑕疵ある立法で成立しないというふうにまできめつけられるのはいかがであろうかと私は思うのであります。
  451. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたは私の答弁に答えていらっしゃらない。非常に賢明でいらっしゃるけれども、私の質問に答えていらっしゃらない。すなわち有価値的物権の交換にはその条件となるべき要項が必要である。こんなことは常識なんです。この法案は有価値的物権の交換を義務づける法律である、しかも暫定であるとおっしゃる、暫定とは緊急を要しなければならぬ。緊急を要するものが永続するはずはないのです。さすればこれば時限を必要とするんです。その時限をあなたは別な手続でとおっしゃった。そうすると政令とか省令ということになるでしょうが、冗談言ってはいけません。法律の年限は法案の中にちゃんとうたわれなければならないのです。暫定法、有価値物権の交換法、これには期限がうたわれなければならない。ただ単なる、これよりももっと程度の低い小切手でさえも、手形でさえも、定期預金でさえも、ちゃんと期限というものが切られる。それに期限がうたわれてないということは、明らかに具備すべき条件を備えていないということなのです。法案としてのていさいを整えてはいない。私はこんなことを言いたくないものだから、前提として、社会党の政審の労働部会なり文教部会なりにこれを相談なさいましたかと言った。もしも相談なさって、そのときにこのことを注意しなければ、わが党の相談受けた人が至らなかった、こういうことになるわけです。だからそれはやめようと思ったんです。ところが相談してないとおっしゃる。だれが見たって、経済関係の者が見たら、これは手落ちであるということはすぐわかる問題なんです。しかし相談がない。相談がなくてほおかぶりして瑕疵ある法律を通そうとしていらっしゃる。承服することはできません。
  452. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 加藤さんの御意見は承りましたが、私はこの法律の存続期間といいますか、年限を別に他の政令その他に譲ろうとは思っておりません。これは当分の間ということで尽きておると思うのであります。問題は、これをどういうふうにして支給するかというような手続等の問題については別にこれを定めていこう、こういうことを申し上げておるだけのことでございます。
  453. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたはそうおっしゃっても、年限がない。なぜないか、なくてもこれで通るという理由がわからない、納得できない。年限がなくてこれが通るという理由を御説明願いたい。あるいは忘れておったなら忘れておったでいい、いまから追加されたってまだ審議中ですから。
  454. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 ちょっと関連質問。  私は、先ほど途中から入ったのでよくわからないのですけれども、要するに勤労に対する報酬というものはいろいろな条件があって、経済的条件の変動とかそれぞれあるので、それでなんじゃないですか。何も年限を切らなくとも、経済条件とかその他諸条件が変化すれば、それにつれてそれぞれ勤労に対する報酬というもの、対価というものが変わってくるということになるのですから、現在はいろいろな条件が、この程度でなければならないからこういうふうにしているのだけれども条件がもっと違ってくればまた違ったものにするというふうな意味でしょう。何もいまから時限立法とかなんとかで年限を切らなければならないということはないでしょう。諸条件が変わってくれば要するに勤労に対する報酬が違ってくる。お互いに相談し合うなり、支給するほうで、会社がもうかってくればうんと報酬を出すということになりますし、赤字になれば違うということになるのだから、条件が違ってくれば違うかもしれぬ。ちょっと私、加藤君と違うかもしれぬが、私はさっきから聞いていてそう思う。だから時限立法にするというのはちょっとおかしいのじゃないですか。対価関係とか等価関係とかいったところで、土地や物品、物と違うのです。物でも変動があるわけですから、いわんや事勤労に対する報酬というのは諸条件の変動によってまた変わってくるというふうなことに解釈していいんじゃないかと思うのですが、どうですか。
  455. 加藤清二

    加藤(清)委員 先輩の御意見に反発してまことにおそれ入りますけれども、経済情勢というものは日進月歩、常に変わっている。特に佐藤内閣のように物価値上げをやられ、インフレ傾向であり、公債まで発行されますると、物の価値並びに交換価値、貨幣の交換価値は年がら年じゅう変わっておるのです。きのうまで七十円であったハイライトがきょうは八十円である。それは当然のことなんです。だからこそ期限が必要であるということになってくるわけなんです。固定しているものなら必要ないのです、時期は。時間がたったって金利とかプラスアルファがつかないという底辺状況の経済だったら何も期限は必要ない。変わるから期限が必要なんです。それを変わるから期限をつけなくてもいいという理論はおおそれながら、失礼ながらいただけない。反駁してもらいたい。もしかりにそうであるとするならば、手形の場合あるいは国家が国民に金を貸す場合、企業に金を貸す場合、貸したときと返すときの価値はすっかり変っわている。変わるから期限をつけぬでもよろしいといったら無期限になる。時は金なりの日本でも、ケインズの経済学の基本は回転率なんです。回転率とは単位時間に何回回るかということなんです。これ時間なんです。それを無視して規制するなどという、そういう法律がまかり通るということになるならば、もはや日本の経済は自由主義経済ではない。封建主義時代の王侯貴族の横行した時代の経済なんです。それをいま今日に当てはめようなんて、それはとんでもない話なんです。どなたでもいいからこの問題を切り抜ける――それで間違いであるとおっしゃるならば、私はいまその論拠の原典も持ってきておりますから、どうぞお読みあそばしてください。
  456. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 その点になりますと、私は加藤さんのお考えと必ずしも一致しないのであります。話を簡単にするために、超過勤務手当にかわるこの手当をつくった、こういうふうなことといたしました場合に、私どもは現段階においてはこの四%でもって相当だ、このように思っておるわけでございます。この四%というものは動かせないものというようなつもりで立法はいたしておりません。先ほどもちょっとお答え申し上げましたが、この問題につきましては人事院の勧告ということの道もちゃんとつけあるわけでございます。また、あえて人事院の勧告を待たなくても、われわれ自身としましても研究をしていかなければならぬ問題でございます。こいつは決して確固不動のものではない。やはり状態によって変わっていかなければならぬはずのものだと思っておるわけでありますが、その点はひとつそのように御承知を願いたい。  立法全体といたしまして、これを暫定立法にしたということも、先ほど来申しましたが、少なくともわれわれの頭の中には、将来の給与体系の改善ということを頭に置いておりますので、それまでのというふうな意味でこの暫定ということばを使っておるわけでございます。これが明確に一年先、二年先ということがいえるものなら、これははっきりしたらよろしいと思うのでありますが、この点は老巧な加藤さんよくおわかりいただけるだろうと思います。そう簡単に期限を切るわけにまいらない。したがって当分のうちということばを使ったわけであります。当分のうちではありましても、有効であります期間中は別に問題は何もないはずだ。御心配になる点は、この給与制度というものによって支給せられるものが金縛りになる、こういうものをお考えとすれば、そうではないというふうにひとつお考えをいただきたい。
  457. 加藤清二

    加藤(清)委員 誤解なさってはいけません。将来のことですから、神ならぬ身のだれしも経済状況をずばり三年先、五年先を当てることができぬくらいのことは百も承知をしております。したがって、政府が長期十年経済計画、中期計画、今度は開発計画とつくってきたけれども、それが十年のものが二年でくずれ、五年のものがまた二年でくずれ、またぞろ今度つくった開発計画がくずれようとしておる。期限的にはそのように変わっていく。だからいけないと言っておるのじゃない。将来はわからないけれども、これを当初計画したときには何年程度でいけるというものならば、時限法として二年とか三年とか五年とか入れて、三年たち五年たって、なおそのような必要条件が継続しておる場合は、これはまた継続法として延期させればいいのであって、そういう手続が必要なんです。ただ当分の間なんということで法律が、しかも別な法律ならいざ知らず、経済立法が片づけられるとするならば、もはや政府が発行するところの公債には期限が要らないことになる。期限がつけられればこそ価値が変わるのです。どう変わるか、すなわち長期債であれば金利は高いのです。国債はそうでしょう、高いのです。ところが、政府の発行しておる短期債、蔵券、小川さんのおいごのやってみえる経企庁で計画してみえる短期債、蔵券、米券であれば一年で切りかわってくるからこれは金利も安い。これは高見さん農林の専門ですからよく御案内のとおり。期限が違うことによって、国家が発行しているところの有価証券あるいは債券、これでも国家がこれに与えるプラスアルファすなわち金利までが違っておるのです。それを、額面はきめたけれども期日がない、これは無効でございます。同時に、期限を無視したということになれば、もはやこれはケインズの経済学ではない。資本主義の経済学ではない。私はあくまで自民党の皆さんの土俵で勝負しておる。それがやらぬでもよろしい、期限はつけぬでもよろしい、こうおっしゃるならば、その確たる理由、私が納得できるところの理由を御説明願いたい。私がえこじであるのか、あなたのほうがゴリ押しであるのかは、やがて経済学者も見て調べるでしょう、法制局も調べるでしょう、論説委員の皆さんもおっしゃるでしょう。私の納得するところの理論をお教え願いたい。有価値的物権を交換する場合に期限をつけなくてもよろしい、ただそれは「当分の間、」でよろしい、それで法律が成立していく。一体どこの国の法律でしょう。後進国もはなはだしい。
  458. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 加藤さんのおあげになりましたいろいろな例というものからいえばお話しのようなことにもなろうかと思いますが、しかし、その設けられました例と今回のこのものがぴったり合うものであるかどうか、私はその点にちょっとのみ込めないものがあるのであります。私は、立法の上から申しますと、今回のこの措置は決して前例のないことではございませんし、当分のうちということでやって立法上何ら差しつかえがないものと考えております。
  459. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は差しつかえがあると思う。期限なしの有価値的物権の交換、それは許されるはずのものではございません。だから、もう一度申し上げます。これが年限が想定できない場合は、当初の想定をこれに織り込んで、二年とか三年とか五年とか十年とかと織り込んで、いまあなたのおっしゃいましたように、状況の変化を来たし、その法律の必要性がなくなった場合には、これを期限内でもやめるにやぶさかでない。足らざる場合は、条件が継続している場合はこれをまた継続法とすれば、暫定の年限だけを切りかえればそれで事が足りるわけなんです。すべての経済法はそうなっている。これは経済法なんです。文部省でおつくりにはなっているけれども、経済法なんです。天城さん、何か意見があったらどうぞやってください。私はこれは引けませんよ、絶対引けません。
  460. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お引きになるかならぬか別でありますが、加藤さんの先ほど来のお話が、どうも私には頭が悪いせいかのみ込めないところがあるのであります。有価値的物権の交換というような表現で一体この問題が扱われてしかるべきものであるかどうかというところにも私は問題があろうかと思います。一つの新たなる給与制度の創設であります。その給与制度について期限をつけるかっけないかということでありますが、暫定ということば、すなわち「当分の間、」ということばをかりに使わなかったといたしますならば、これは無期限ということになるのであります。そういう立法もあり得るわけでございます。しかし、私どもとしましては、将来給与制度改善ということにもっと突っ込んだ検討をしたいという考えがありますために、少なくともそれまではということで「当分の間、」ということばをつけたわけでございますので、もしそうでなかったなら、これは「当分の間、」という字をとるだけのことであります。とってしまえば無期限の法律というものになってくるわけでありますが、そういう場合は一体どういうことになるのであろうかというふうにも思うのでございますが、あるいは私の理解不足かもしれません。
  461. 加藤清二

    加藤(清)委員 大臣、それが文部省的な考え方です。ここのところを攻められた、あるいはそこのところに文句をつけられた、それならさらを引けばいいじゃないか、こういう考え方です。しかし、さらを引いたら、これは本質が変わってくるのです。どうして変わるか。基本法ならば、いまおっしゃるとおりです。期限をつける必要はない。憲法にしても、農業基本法にしても、労働の基本法にしても、これは基本であるから、その中には交換のことなどはうたわれていない。基本法なら「当分」をはずせばいい。しかし、もし大臣が「当分」をはずせばそれでよろしいとおっしゃるなら、基本的に各条項全部変えなければならぬ。これは先ほど来、あなたもおっしゃったし、人事院総裁もおっしゃった。はっきりと現状をキャッチして、これならば正しいと思われたときにそれをおやりになればいい。そういうグレードやら何やら、あまたの経済情勢に対するスライドから何から全部盛り込んでこなければいかぬはずなのです。それが盛り込まれていない。そうして「当分の間、」を削る。それではこれはとんでもない話、大間違いです。また間違いの上に間違いを重ねる結果に相なる。  どなたでもいいから、各省から来てみえるから、わが省に経済立法にして、暫定法にして、なお期限なくして通した、そういう法律があるとおっしゃるなら、教えてもらいたい。そしてその理論的根拠をどなたでもいいですから教えてもらいたい。だから経済担当の通産大臣や農林大臣にぜひ来てもらおう。ところが、いまだに見えない。そういう法律があるのかないのか。  それではあなた、逆に設問いたしましょうか。米券、あれは一年以内となっている。大蔵省の米券、これを「当分の間、」ということにして、これで通りますか。公債は七年となっている。これを「当分の間、」ということばで国債が通りますか。予算だったら一年です。かりに繰り越し明許の許されるところの自衛隊の予算でさえも、これは五ヵ年計画となっておるのです。当然期限をつけてしかるべきなのです。ほかになったらお教え願いたい。労働省に何ぞありますか、暫定法にして、経済の交換を義務づける法律にして期限なしというものが。あったら教えてください。通産省でも、外務省でも、その点……。
  462. 小川平二

    ○小川国務大臣 ただいまのところ、ちょっと思い浮かびません。
  463. 加藤清二

    加藤(清)委員 外務省で何かありますか。アメリカにそういう法律ありますか、教えてください。そういう法律がどこにあります。どうぞ教えてください。アメリカの立法でも――何もソ連、中共を教えてくれと言っていないから、イギリスてもイタリアでもどこでもよろしいから、答えが出さえすればいいですよ、納得する答えが。ここにこういう前例がある、これはこの前例にまねた……。
  464. 高見三郎

    高見委員長 暫時休憩いたします。    午後六時二十四分休憩      ――――◇―――――    午後七時五十五分開議
  465. 高見三郎

    高見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。この際、加藤委員に申し上げますが、先ほどの論議になりました問題につきましては、当局においてももう少し検討の時間を与えられたいと申しておりますので、ほかの問題について続いて御質疑をいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  466. 加藤清二

    加藤(清)委員 ほかの問題――はい。
  467. 高見三郎

  468. 加藤清二

    加藤(清)委員 実はあの問題については、まだ不満でございますが、私が尊敬しております委員長の命令であり、同時に、これが理事会で決定されたということに相なれば、私は、その理事会相談並びに委員長の命に服して、次の問題に移りたいと存じます。しかし、あの問題で私が特に申し上げたいことは、明らかに本法案は働く教員の基本権でございます労働権、しかも労働基準法に認められておりますところの超過勤務手当の権利、これはあくまで権利でございます。それを剥奪する、同時に無定量の活動、勤務を命ずる。つまり権利を剥奪して義務を課する、こういうことに相なっているわけでございます。したがいまして、それにかわるに四%を与える、こういうことになっているわけでございます。これは明らかに有価値的物権の交換でございます。有価値的物権の交換であるならば、期限がつくのはもう今日の経済学の理の当然でございます。皆さん御案内のとおりでございます。罪を犯した者に対しても権利を剥奪することがございます。すなわち、自由の権利を剥奪するという意味において懲役に服役させる。自由の権利の剥奪でございます。しかし、それであってもなお、罪人といえども、義務を課する場合、権利を剥奪する場合には期限をつけるのでございます。当然でございます。法律には、何々をした場合には何々の期限、ちゃんと期限がつくのでございます。いわんや罪なき者が権利を剥奪される、あるいは法律によって交換を余儀なく義務づけられる場合は、それは先ほど天城先生のおっしゃったように、等価交換でなければならない。同時にこれは、同時交換でなければなりません。それがもし同時交換が不可能な場合には、これに時間に値する金利がつけられるわけでございます。金利なしの無期限などということは、およそどこの横暴な政府、王侯時代の国民に対する義務といえどもなかったわけでございます。したがいまして、この問題は明らかに立法過程におけるミステークである。これをこのままに許すということに相なりまするならば、日本の国会には、法律の基本、経済の基本をわきまえない議員ばかかりと、諸外国に笑いを受けなければなりません。これは日本のりっぱな最高権威でございまするので、国会の権威を傷つけることはなはだしと言わざるを得ません。そのようなものを黙って受け取るわけには参らないわけでございます。  以上、私の趣旨を了とされまして、委員長におかせられましては、理事会でさように決定いたしましたならば、ぜひひとつ筋の通った、今日の経済によく当てはまった、しかも義務を課せられ、権利を剥奪される側の者が納得する線にこの法案を持ち込んでいただきまするようお願いを申し上げまして、次の質問に移ります。  次のものは、いまおっしゃられました四%がはたして等価交換に値する価値がありやいなやの問題でございます。これについてまず大臣お願いしたい。四%は等価交換なりやいなや。
  469. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私も議論をいたすことは避けたいと思っておりますが、先ほど来の加藤さんの御意見、必ずしも私の承服するところではございません。しかし、その議論は避けることにいたします。  等価交換なりやいなやということでありますが、私は今度の教職特別手当、つまり一律四%支給というものは、現段階において相当なもの、(「等価交換以上だ」と呼ぶ者あり)このように考えておる次第でございますから、さように御了承願いたいと思います。
  470. 加藤清二

    加藤(清)委員 声あって、等価交換以上というお話があるようでございまするが、それでは労働省におきましては、超勤というものは四%程度が全国の平均値なりやいなや。一体、平均値であるかないか。国内の他産業と比較し、外国のこれらのいわゆる同職と比較してみて、四%は多いか少ないか。実はこの際ここでアメリカは何%になるか、イギリスは何%になるか聞きたいのでありますが、そうやるとお困りになってもいけまんので、早く進めるために、簡潔にお尋ねするわけです。
  471. 小川平二

    ○小川国務大臣 ただいま数字の資料を取り調べさせますから、ちょっとお待ちください。
  472. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 四%が妥当なりやいなやという点については、文部省のほうでいろいろ御検討いただいたものでございまして、私ども実態的な調査の資料等は有しておりませんが、御指摘の各産業についてはどうかという点については、御承知の毎月勤労統計調査あるいは賃金構造基本調査によりましては、この毎月きまって支給する現金給与、その中で、所定内給与と超過労働給与という形であらわれておりますが、何ぶんにも統計では金額の実額で出ておりますので、いま何%かという点については、時間の関係上、これは計算いたしませんと、各産業によるものは出てまいらぬのであります。
  473. 加藤清二

    加藤(清)委員 それではこの御答弁は、私の質問が終わるまでに出していただきたいということにして――こんなところでストップをかけようとは思っていませんんし、次へ進みますから、そのかわり私の終わるまでにひとつ出していただきたい。  それじゃ、私は四%が妥当なりやいなやを自己流に計算いたしてみました。わが党の政策審議会において調査をさせましたその結果の試算を申し上げてみます。八時間勤務の者が月二十五日働くといたしますと二百時間になります。その四%は八時間でございます。ところで一日八時間労働としましたおりに、その四%は一体何ほどになるか。天城さんのほうの御試算はどうです。一日八時間の場合に、その四%は何分になりますか。
  474. 天城勲

    天城政府委員 十九分余でございます。
  475. 加藤清二

    加藤(清)委員 そのとおりです。こういうことはもう、四%をきめなさる場合の積算基礎数ですから、こういうことは暗唱しておってもらわなければいかぬですね。仰せのとおり一日十九分十二秒でございます。しかし、実質はどのくらいあるか。実質はどう踏んでいらっしゃいますか。
  476. 天城勲

    天城政府委員 これは前にもちょっと申し上げたのでございますけれども、四十一年の実態調査の結果、一年間を通じまして、週間の平均の勤務時間外の仕事量を調べた数字から、実は時間外の仕事の中にいろいろなものがあるということはこの間申し上げましたけれども、その中から、いわゆる勤務の延長と考えられるものと、そうでないもの、あるいは服務時間内と相殺できるものなどがいろいろございますので、その調整をいたしまして、その結果を、当時の給与のベースに、一応超過勤務の金額で計算したといたしますと、御存じの二割五分増しでございますので、それをかけて計算してみたのを比率に直しますと、四・三%という数字が出たわけでございます。いま先生お話しのように、八時間、四%、十九分何がしという数字は、計算上確かでございますけれども、この年間の調査を見ましても、年間を通じまして時間外の仕事の量というものは非常に高低がございます。かなり多い月と、そうでない月がございます。また人によってかなり実態が違います。それをならしての週間の数字を、一応超勤の計算の方法で比率に直してみると、いまのような数字になるということでございます。
  477. 加藤清二

    加藤(清)委員 夜分おそくなってやるのですからね、時間を急ぐことに協力するという意味で、答弁質問に答えるように御注意を願いたい。まあ今回はいいです。と申しまするのは、あなたのほうの積算では何分になるか、何時間になるかと聞いておるのです。時間をぴしっと言ってもらったらそれで事は足りる。あなたのほうの調査、すなわち調査には予算がついております。三十九年に勧告、四十一年に予算がついております。それで調査費がついて調査をなさったはずです。そうでしょう。その予算は一体幾らあったのですか。それでおやりになったその結果が、この十九分十二秒ですか。一日の超勤が十九分十二秒で足りますか。
  478. 天城勲

    天城政府委員 ですから、先生が八時間で四%とおしゃるから、計算で十九分という数字が出るということを申し上げたのです。私どもの計算では、ただいま申し上げたような方法で計算いたしまして、比率を出し、週間を通じてのものを出したいのです。
  479. 加藤清二

    加藤(清)委員 平均何分ですか、コンスタントの平均を聞いておる。コンスタントでないことはわかっておるのです。積算の基礎に単価がなくてどうしてやれますか。冗談じゃないですよ。
  480. 天城勲

    天城政府委員 ですからいま申し上げたように……。
  481. 加藤清二

    加藤(清)委員 だから、一日平均何分になるのですか。
  482. 天城勲

    天城政府委員 私たちは一週間の平均から出したのですから……。
  483. 加藤清二

    加藤(清)委員 一週間の平均でも何でもいいが、何分になるのか。
  484. 天城勲

    天城政府委員 平均いたしますと、一週間で小学校は一時間二十分、中学校は二時間三十分という計算でございます。
  485. 加藤清二

    加藤(清)委員 一日を聞いておるのです。
  486. 天城勲

    天城政府委員 私たちは一週間でやりましたので、これを六で割れば、小学校の場合は一時間二十分でございますので、十三分でございます。中学校は二時間三十分を――いま計算しながらお答えしておりますのでちょっと時間がかかりますが、中学校の場合は二十五分でございます。
  487. 加藤清二

    加藤(清)委員 一日中学校は二十五分、小学校は十三分ですね。わかりました。  それでは、積算の基礎を長々とお述べになりましたから、私は申し上げます。積算の基礎となりました時間の要素、それは何と何ですか。
  488. 天城勲

    天城政府委員 これは一応仕事の種類を、指導活動、事務活動、補助・労務活動、付随関連活動、その他と大きく五つに分けまして、その中を、指導活動では直接指導活動、間接指導活動、研修、それから事務活動の中では、管理・教務事務、学級経理事務、その他の事務とに分けまして、服務時間内と服務時間外に分けて、実際に仕事をされた時間を記入していただいたのです。その結果をそれぞれの仕事の中から、超過勤務あるいは正規の勤務の延長と考えられないもの等を考慮いたしまして計算したのが、先ほど申し上げた数字でございます。
  489. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは、一つ一つお尋ねいたします。  その要素の中に、学童の成績の採点を何分ととられましたか。
  490. 天城勲

    天城政府委員 間接授業指導という項目の中に、たとえばいま例に出されました採点が入っておりますが、小学校の例で申しますれば、一週間に服務時間内で八時間五分、それから服務時間外で一時間十四分――これは採点だけじゃございません。先ほど申した間接授業指導という領域でございます。
  491. 加藤清二

    加藤(清)委員 余分なことは言わぬでもいいですから、私の質問に答えてください。それは積算の基礎に入っていないとか、いや忘れたとか、入っているならいる、余分なことを言う必要はない。採点は何分と入っておりますか。
  492. 天城勲

    天城政府委員 間接授業指導の中に入っております。しかし、間接授業指導は何かという調査のときのことでまとめて入っております。ですから、採点時間だけが何分という数字は出ておりません。
  493. 加藤清二

    加藤(清)委員 間接授業指導という項目を聞いておるのではない。試験の採点ということは、先生としては絶体不可欠の要件です。だから、それを何分と見積もられたかと聞いておる。
  494. 天城勲

    天城政府委員 ですから繰り返して申し上げておりますように、そういう一々の時間をとっておりません。カテゴリーごとにとっております。
  495. 加藤清二

    加藤(清)委員 わかりました。  次にいきましょう。成績、作品の調査、たとえば図画とか手工とか、これは小学校に例をとるが、これはみな先生が採点しなければなりません。それは何時間何分ととられましたか。
  496. 天城勲

    天城政府委員 これもいま申し上げました間接授業指導の中に入っておりますが、それだけの時間は別にとっておりません。
  497. 加藤清二

    加藤(清)委員 そういう積算の基礎なしでどんぶり勘定ですか。  次に、身体検査をしなければなりませんが、身体検査をする時間並びにこれを記入しなければなりませんが、これは事務員がやってくれません。先生みずからがやるのですが、これは何分ととられましたか。
  498. 天城勲

    天城政府委員 よけいなことを言うことになっておしかりになられるかもしれませんけれども、ちょっと調査の構造を最初申し上げますと、これは……
  499. 加藤清二

    加藤(清)委員 構造が何であろうとかんであろうと、たとえば建築だったら仕様書があるのと同じだ。ガラスが幾らで、柱が幾らで、瓦が幾らでと、こういう仕様書があってこそ初めて家一軒幾ら、坪当たり単価幾らと出るのです。
  500. 天城勲

    天城政府委員 ですから、それをちょっと最初に申し上げさせていただきたいのです。
  501. 加藤清二

    加藤(清)委員 それを言いなさい。私が質問しておるのは、採点も、身体検査も、成績も、みなその要素なんです。要素を幾らかと聞かれたらさっと答えられなくてどうするか。それではどんぶり勘定です。
  502. 天城勲

    天城政府委員 これは調査の労力の問題もございまして、一応先ほど申しました領域ごとに立て、領域をもう少しこまかく分けまして、また、間接授業指導とは何であるかということを定義いたしまして、それをまとめて、その項目ごとに時間を書いていただいたものですから、身体検査が何時間と出しておりません。だから、身体検査は何時間と出ませんで、これは学校行事等指導というふうな項目に入っておりますが、他の項目とまとめた時間で出しております。
  503. 加藤清二

    加藤(清)委員 冗談じゃないですよ。予算だって、款項目の款とするときにはまとめたものが出るのですけれども、項があり目を書いていったら積算の基礎が出てくるんですよ。それがなかったならばもはや積算基礎数じゃないんですよ。そんなばかげた計算がどこの国で通りますか。どこの世界でそういうことが通りますか。
  504. 天城勲

    天城政府委員 これは現場の先生方に一定の調査表をお送りしまして、一週間を単位に書いていただいたので、採点が何分、身体検査が何分と、一々書くのもたいへんなことでございますので、大体仕事実態がわかる程度にまとめて、一週間ごとに書いていただいたわけですから、そのカテゴリーごとの時間をいま申し上げたわけであります。
  505. 加藤清二

    加藤(清)委員 それじゃあなた、承りますが、文部省が学校建設で入札させるときに、たとえは一それて例をとりましょうか。ベニヤ板は何号ものを使うかというときに、それはなかなかっかみにくいからということで済ませますか。壁は何寸塗りか、道路のアスファルトだったら、下砂はどれだけ使うか、砂利はどれだけ使うか、アスファルト分はどれだけ、何インチ、したがって、国道第一号線は二十七センチ。北海道はこれが一メートル二十センチ、こうきまってくるのです。それから積算してくるのです。しかもその場合に、砂利は、天竜川の石を使うか、木曽川の石を使うかによって違う。割り石もそうです。鉄道のまくら木だってそうです。鉄道のまくら木だって、これをセメントでいくか、クリ材を使うか、ナラ材を使うかによって違うのです。同じ砂利でも、割り石でいくか、川石でいくかによって値が違うのです。冗談じゃないですよ。そのときに、計算がむずかしいから、木は、まくら木はまくら木でございます、これで通るのですか。そんなばかな、あなた、人間は尊重する、教育は尊重するとおっしゃる。物質と物質でもって構成する建築であろうが、道路舗装であろうが、港湾であろうが、この積算から始めるのですよ。いわんや、人間労働じゃございませんか。尊重する、尊重するというたら、何が何分、何が何分、それも私がこつ然と出した問題と違うのです。たとえば身体検査とか学籍簿、通知簿というものは不可欠の問題、どこの学校でもつくらなければならぬ問題、特に身体検査、学籍簿に至っては、これは永久保存なんです。重要書類なんです。だから私は、そういうものを抜き書きして聞こうとしたら、それが積算の基礎に入ってない、どんぶり勘定であるということだったら、ほんとうはこれは予算委員会だったら通りません。これで通りますか、冗談じゃないですよ。
  506. 天城勲

    天城政府委員 建築のときの資材の単価をきめるということは、私もよくわかります。しかし、それは先ほど来申し上げておりますように、教員活動というのは、種類を分けたら非常に多いのでございまいます。それを一週間まとめてどういうのが……(「ぜひやらなければならぬのは何かということだ」と呼ぶ者あり」ですから、それなら少し説明させていただきたいのでございます。調査のやり方を、ちょっとやっぱり御説明させていただきます。  大くくりといたしまして指導活動、それから事務活動、補助・労務活動、付随関連活動、その他とに分けます。そのうちで、いま問題になっておりますのは指導活動でございます。ほかも多いのですが、その中身を申し上げます。  指導活動を大きく分けまして、直接指導活動と間接指導活動及び研修の三つに分けます。その直接指導活動を授業指導と課外指導に分けます。授業指導の中がa、bと分かれまして、aは教科・道徳・特活指導でございます。bは学校行事等指導でございます。教科・道徳・特活指導は正規の授業でございますが、一番いろいろな種類が多いと思われるのが学校行事等指導、これは修学旅行、遠足、儀式、朝礼、学芸会、文化祭、展覧会、健康診断、運動会、奉仕活動、学校給食等が入っております。  それから課外指導のa補習等指導の中には、補習授業、クラブ活動、それから林間あるいは臨海の学校行事、bのその他の課外指導の中に、対外試合引率、生徒指導、進路指導というふうな項目が入っております。  こういうことで、先ほど申した教科・道徳・特活指導に、まとめて何分かと書いていただくやり方をいたしたわけでございます。ですから、教員の重要な活動というのは、一応これらの中にみんな含めて入れているつもりでございます。
  507. 加藤清二

    加藤(清)委員 含まっていないと言うておるのじゃない。しかし、あなたのいまの説明で、分類のしかたと銘柄だけはわかりました。しかし、積算というものは、その銘柄銘柄の単価がわからなければ、これはどんぶり勘定というのです。たとえばいまお話のございました学校給食、これは一体何時間あるいは何分と見ておりますか。
  508. 天城勲

    天城政府委員 繰り返しますが、この調査はすでに行なわれた結果でございますので、学校給食の時間は学校行事等指導の中に含めて入っておりまして、他のものと合わせまして、小学校で勤務時間内が五時間二十八分、それから時間外が十二分、これは学校給食だけではもちろんございません。先ほど申した事項が全部入っております。
  509. 加藤清二

    加藤(清)委員 大臣にお尋ねいたします。  大臣、あなたは学校建設の補助金の問題、大蔵省に要求しなければなりません。補助金のパーセンテージを言うのではございません。しかし、補助金を、中学校は二分の一、小学校はいま三分の一ときめられておりまするが、二分の一にしろ三分の一にしろ、これは積算の基礎があってしかるべきなんです。そのおりに文部省が大蔵省へ提出する場合に、大蔵省は積算の基礎を尋ねませんか。
  510. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 これは積算の基礎等につきましては、大蔵省として審査する問題でございますから、当然文部省としても、その上に立っての予算要求をしておるはずでございます。
  511. 加藤清二

    加藤(清)委員 しからば、物の場合でもそうでしょう。物の場合、いまこれが物なんですね、建築の坪当たり単価というのは。物です。その場合でも、八万円でもいまじゃやり切れません。十万円ぐらいかかる。雨天体操場をつくってさえ、平屋の雨天体操場でも十万円かかります。その十万円かかるというときには、床下のセメントから、床板から、屋根裏から、屋根がわらに至るまで、かわらは何級品を使うというところまでがきめられるわけなんです。いわんや、人間の働き、多いか少ないかということを、いや、何時間あるかということをきめるにあたって、いま一番大事な学校給食の、一日何時間になるかわからないという、そういう積算の基礎というものがございますか。ずさんもはなはだしいといわなければなりません。  そこで、しかし、そういうことになれば何ですが、私のほうの計算からいきますると、一ヵ月二百時間のうち、最低十六時間は必要でございます。ないしは二十五時間、したがって、一ヵ月二百時間の四%の八時間、一日にして十九分十二秒、それを小学校は十三分と見たというておられまするけれども、四%まるまる全日見たときもなお十九分十二秒、これはあまりにも少なきに失している。実質の三分の一から四分の一でございます。あまりにも少なきに失しておる。抽象的なことば天城局長はたいへん上手です。交換の場合は等価でなければならぬとおっしゃるけれども、しかし、積算の基礎でピンはねが行なわれておったら、これは経済行為だったら汚職というべきです。背任横領というべきです。(「それじゃ聖職じゃない」と呼ぶ者あり)聖職どころか。しかし、何もそれは天城君が着服するのでないから、決して天城局長が汚職したとは言わないけれども、これが他の労働契約であったとするならば、実質の三分の一、四分の一しか見なかったとすれば、その親方がピンはねしたということになる。したがって、背任横領なんです。当然のことなんです。冗談じゃない。この問題で御承知のとおり九頭竜川事件が予算、決算で問題になり、ついにそのおかげでたいへんなことになった議員さんもいらしたわけですけれども、何も天城さんはそういう経済行為、ピンはねに参加してないから、私はここに犯罪が構成されるとは言わないけれども、しかし事務上の怠慢か、あるいは粗漏か、これは免れないということなんだ。どうしてもそうでないとおっしゃるならば、その積算の基礎を銘柄別に出していただきたい。たとえていうと、建築の場合、正しいか正しくないかを調べる場合の仕様書と同じことでございますから、これをぜひ出してもらいたい。しかし、いまここで出さなければ審議せぬぞよと言えば、予算流になりまするから、そうは言いません。続けていきます。文教流でいきましょう。  そこで、しからば学校給食の場合ですが、学校給食を行なっている学校、行なっていない学校、義務教育でございます、この数字をあげていただきたい。
  512. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 政府委員お答えを申し上げます。
  513. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 お答え申し上げます。  小学校は、完全給食学校数にいたしまして七三・二%、補食、ミルクそれぞれございまして、全体で九三・六%でございます。中学校が、完全給食学校数で三六・四%、補食、ミルクそれぞれございまして、合計八一・〇%でございます。これは学校数でございます。
  514. 加藤清二

    加藤(清)委員 けっこうでございます。その中で、学校給食には調理師と栄養士が必要でございますね。調理師、栄養士の整っている学校と、整っていない学校の数字をお示し願いたい。
  515. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 学校栄養士は、御承知のように小中学校それぞれに置かれておりますが、さらに都道府県教育委員会、市町村教育委員会にそれぞれございますので、いま全部申し上げます。全国で四千四百五十九名でございます。それで、いまお尋ねの小学校、中学校それぞれの設置率を申し上げますと、小学校は九・四%、中学校は六・七%になっております。
  516. 加藤清二

    加藤(清)委員 けっこうです。よく勉強して、準備していただきました。そうなりますと、この栄養士の充足率は、大臣、こういう数字が出ておりますね。簡単にいうと、学校給食はほとんどやっておる、どんぶり勘定式に言うと。九三・六%と八一・〇%やっているわけですから、ほとんどやっている。ところが、必要不可欠な栄養士がいるのは九・四%と六・七%、ともに一割に満ちておりませんですね。  そこでお尋ねいたします。栄養士のおらない学校は、栄養のカロリーを検査せぬでもよろしいか、報告の義務がなくてもよろしいか、大臣にお尋ねしましよう。
  517. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 政府委員からお答えをさせます。
  518. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 これは学校におりません場合は、市町村教育委員会に一人おれば、便宜市町村教育委員会におります学校栄養士をして行なわしめる。それもおらない場合は、こそは便宜手分けいたしまして先生方にお願いしております。
  519. 加藤清二

    加藤(清)委員 そのとおり。いいことをおっしゃった私はそれが聞きたかった。つまり、栄養士は必要不可欠である。この事務もまた不可欠である。報告の義務も課せられている。しかし、貧弱町村にはその方を雇用するだけの経済力がない。ないところはやむを得ず先生がこれを兼務する、こういうことになっているんですね。その先生兼務の比率はどのくらいございますか。
  520. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 残念ながら正確な数字はいま出ておりません。ただ、給食主任とかいろいろきめておりまして、それらの先生にやっていただいておるわけでございますが、弁解じゃございませんが、学校栄養士は、戦後逐次ふえつつございますから、できるだけ先生のさような事務量を減らす協力をいたしておることは事実でございます。
  521. 加藤清二

    加藤(清)委員 いや、あなたは非常に純真にお答えいただけるので、あなたを決して責めませんから、心配要りませんからどうぞ。こういうように正直にすらすらと答えていただければ、それはそれでやむを得ない。文部省にもそれだけの人手がなければそこまで調査することができないということならば、それはお気の毒だから、来年の予算からひとつ体育局には人数をふやしてあげなければならぬじゃないかと、こういうことになる。ですから、心配せぬでもいいですから、落ちついてほんとうの数字を述べてくださいね。   〔委員長退席、久保田(藤)委員長代理着席〕  これが都会地の大きな学校、学級が二十学級から三十学級程度のところでございますると、ややある。ところが、郡部の山奥に行きますると、単級はもちろんですが、複式のところも、あるいは一学年ずつ学級数があるところも、ほとんどないのです。私は回って知っておるのです。そもそも戦前、この学校給食を行なうおりに、私は失礼なことを言いますが、全国のモデルスクールで私が当てられて、その指導方法を全国の方に見ていただいたことがあるからです。言うなれば草分けなんです。そこでいまも興味を持っているというわけなんです。で、回ってみるというわけなんです。いらっしゃらない。戦前には、ほとんど栄養士という人はいらっしゃらなかった。無理な要求ではあるけれども、これがなければならぬと思います。うっかりいたしますと、あっても、学校給食の中に洗剤、石けんの粉が入っておる。東京のどまん中の給食場の中で、粉ミルクの中に毒が入ったり、ごみが入ったり、ばい菌が入ったりという事実は、たくさんごらんのとおりです。したがって、ほんとうに児童の健康を考えるならば、ぜひこれは必要な存在であると思います。文部省としてはこれをふやす、すなわち学校の教員が専門の教育に専念できるようにするためには、栄養士をふやさなければなりません。これはどのように指導していらっしゃいますか。
  522. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 お答えいたします。  栄養士は、数年前にようやく国庫補助の対象になりましたが、全部の学校に置く計画を進めたいとは思いますものの、いろいろ人件費の金額がかさみますので、とりあえずは共同調理場、それから大規模学校、こういうものに全部一名ずつ置きたいという計画で実は進めております。
  523. 加藤清二

    加藤(清)委員 それはいつの日に行なわれますか。
  524. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 いまの計画でまいりますれば、あと三、四年かかる、こういう計算になっております。
  525. 加藤清二

    加藤(清)委員 わかりました。大臣、いまの給食の栄養士の分の勤務を学校の教員が負担しなければならない。このことは、いまのお話からいっても、なおあと三、四年はかかる、こういうことになるわけですね。いわんや、給食婦さんがいないということになりますと、あなた御存じのとおり、PTAから交代で応援が出ている学校が多いですね。金集めから、買い出しから、運びから、調理から、先生が教壇に立たずに、手のすいておる先生があるとみんなかり出されて、これをしなければならぬ。これは勤務時間の中に入っておりますか、入っておりませんか。
  526. 天城勲

    天城政府委員 先ほど申したように、間接授業指導の中には給食も含めて入っておりますので、給食の時間は、勤務時間ないし勤務時間外に勤務したものはこの調査に入ってくるわけであります。
  527. 加藤清二

    加藤(清)委員 入っておるとするならば、平均値をお尋ねしたい。
  528. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 実態につきましては初中局のほうの所管でございますが、私どものほうの指導の態度といたしましては、昼、昼食時間を四十分ないし四十五分とってほしい、こういう指導をいたしております。ただこれは指導でございますし、いま申しました完全給食、不完全給食とございますので、その結果が実態としてどのようになっておるかは、これは初中局の調査でございますから、私どものほうで調査いたしておりません。
  529. 加藤清二

    加藤(清)委員 いまのお答えの四十五分というのは、給食時に授業その他を休む児童の時間、こういうことですね。給食を準備したり、カロリーを検査したり、あと始末したり、これは勤務ですね。児童は授業を休んでおっても、世話をする人からいえば勤務になりますね。それは平均どれだけ基礎数に加算されておりますかと尋ねているのです。
  530. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 いま四十五分と申しましたが、大体こんなふうに区分けして指導いたしております。食事時間は二十分、準備を十五分、あと片づけを十分、計四十五分、こんな計算で指導いたしております。
  531. 加藤清二

    加藤(清)委員 それだけで四十五分入っている、こういうことになりますね。そこで本件についての総括をちょっとやってみます。文部省の指示に、一時時の授業には一時間の準備をせよ、こういう指令を出されたことがありますね、大臣
  532. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 政府委員からお答え申し上げます。
  533. 天城勲

    天城政府委員 ちょっと私いまその記憶は率直に言ってないのでございます。
  534. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたが御存じないだけでございます。わかっている人、答弁してください。――委員長、あなたは文部省の先輩でいらっしゃる。文部大臣かあるいは初中局長が教育委員会に、教育委員会から学校へ指示されたところの研究の基本に関する問題を、どなたでもいいから答えてくださいと言ったら、一人も答える人がない。命令を忘れておるのですか、そんなことでどうして教員が働けます。   〔久保田(藤)委員長代理退席、委員長着席〕 どうして研究ができます。あなたたちは、教員組合が教研集会をやることはいかぬ、文部省の研究をやれという指示まで出している。しかし、一時間の授業には少なくとも一時間の準備をせいという指示を出していて、それを忘れてしまっているのですか。もうやらぬでもいいのですか、そうなったら……。
  535. 天城勲

    天城政府委員 授業をするためにはいろいろ準備も必要でございますし、あとの処置の必要なことはわかりますが、いま、一時間の授業に一時間の準備を充てろという指令をしたとおっしゃるので、そういうことを私覚えがないということを申し上げたわけであります。
  536. 加藤清二

    加藤(清)委員 通達も指令も同じことだ。なければないでいいですよ。
  537. 天城勲

    天城政府委員 ですから、指令にしても通達にいたしましても、そういうことを私ちょっと記憶ないものですから、明確にお答えいたしかねるわけであります。たいへん恐縮でございます。
  538. 加藤清二

    加藤(清)委員 たいへんな発言ですよ。記憶がない、それではその通達はなきものと心得てよろしゅうございますか。
  539. 天城勲

    天城政府委員 ただいま御質問を受けて、私、ただいま記憶がないので、明瞭に答えられないということを申し上げておるわけであります。
  540. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは、調べてお答え願いたい。
  541. 高見三郎

    高見委員長 加藤君に申し上げますが、時間がだいぶ過ぎておりますから、どうぞひとつ簡潔に御質疑いただきたいと思います。
  542. 加藤清二

    加藤(清)委員 質疑している時間よりさがしている時間のほうが長いのです。  それでは、待ちくたびれている方もいらっしゃるから、お気の毒ですから、私、質問を続けましょう。しかし、先ほどの質問もお預けになりましたね。いま、あと始めてからまたここで二つ目お預けだすよ。もうこれで三つ目お預けですよ。これはストップ、ストップ、ストップだ。こんなところで私は停車しようと思っていない、停車駅と思っていない。こんなものはレールの上なんです。こっちは走っていきたいのです。ところがストップ、ストップ、ストップ、そっちがストップしている。  では、こういうことになりますと、問題は、それはあとで聞くとして、私はあることを知っていますから、あることを前提で話を進めます。  一時間の授業に一時間の準備をすることになりますと、そしておまけに給食の時間一日四十五分とった、こういうことになりますと、超勤は、先ほど私は一ヵ月の分を十六時間から二十五時間と申しましたが、それに追加されてくるわけなんです。とんでもない時間になります。それを十九分――文部省のほうでは小学校十三分、中学校二十五分と、こう見積もっていらっしゃるということに相なりますと、給食の時間もやれぬということになりますな。計算に入っていないという勘定が出ますね。しかくさようにずさんであるということなんです。  ところで、先生たちがそんなに一生懸命になって――もうあと急いでいきます。そんなに一生懸命になっておやりになっても、なお全国に流布されていることばがございます。それは学校給食はまずいということ、学校給食はまずい、特にパンがまずい。パンの食い残りの率を承りたい。これはちゃんと出ておるのです。
  543. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 お待たせしました。パンの残食率、量で調べておりますが、残食率を量で見ますと、小学校が七・五九%でございます。中学校では二八・五一%になっております。これは去年四月の調査でございます。
  544. 加藤清二

    加藤(清)委員 もう一度。
  545. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 小学校で七・五九%、中学校で一六・五一%でございます。
  546. 加藤清二

    加藤(清)委員 私のほうの政策審議会調査したところによりますると、遺憾ながらそれよりは多いんでございます。しかし近似値は出ております。あなたのほうは正直にお調べになった証拠なんです。それはとる場所によって、時期によっても違いまするから、私はあなたの数字を否定はいたしません。  それでお尋ねしますが、それは残飯のおけでお調べになったのですか。それとも、ないしょでこそっと子供が持って帰りますね。うちへ持っていって適当にこれを処理する。母親たちはこれをもったいないとして、かわかして、あとでてんぷらだの何だのに使うときのころもの材料にしていらっしゃる。捨てるのはもったいない。それからあるうちでは、失礼な言い分ですけれども、これを家畜ですね、ネコは何ですけれども、家畜におやりになる。いずれにしても、母親はこれを捨ててはいない。有効には使っているけれども、食い残りがある。食い残りの率は、中学になると二割の余ある、こういうことだけは明らかでございます。いまそちらでは一六・五%とおっしゃったが、中学校は持って帰る率が多い。  大臣にお尋ねしますが、先生たちが一生懸命に超過勤務までして、そうしておやりになりましたその学校給食が、二割も食い残しがあるという点について、どのようにお考えでございましょうか。これが料理屋であるとするならば、量が多過ぎたとかいうことになるでしょうが、学校給食は、栄養士がおってぴしゃっと準備してかかっている。どうしてそんなに残るか。
  547. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 簡単にいえば、食べ残しがあるということは、子供の食欲が十分に進んでいないということもあろうかと思います。言いかえますれば、まずいと感ずるから食べ残すという場合も相当あろうかと思います。同時に、おなかが太いから残すという場合もあろうかと思います。いろいろ事情があろうと思いますが、その中に、もっとうまければみんな食べるんだがというふうな場合も決してないとは申しません。そういうこともございましょう。
  548. 加藤清二

    加藤(清)委員 次にお尋ねします。  まずい、食い残りが二割の余もあるということは、どこかに欠陥があるということです。特に、まずいということがいえるのは、小学校のほうが食べ残りが少なくて、成長盛りの中学のほうに食べ残りが多いというところに問題があるわけです。すなわち、味を覚えてくると、まずくて食えないということです。その原因はどこにありますか、大臣
  549. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 その原因がどこにあるか、一人一人のことは私もよくわかりません。ただ、幾らか年をとれば、味という問題について、あなたがおっしゃるように、多少欲も出てくるといいますか、舌が発達してくるといいますか、そういう点でまずいと感ずることもあるいはふえるのかもしれません。しかし、そればかりの事情でもないと思いますけれども、そういう要素も確かにあろうかと思います。
  550. 加藤清二

    加藤(清)委員 それではお尋ねします。  市販のパンと学校給食のパンと、材料に相違がございますか。
  551. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 学校給食パンは、御承知のようにできるだけ良質ものを、一定の品質をきめまして製パンいたしております。
  552. 加藤清二

    加藤(清)委員 市販の食パンと学校給食の食パンに、材料に相違がございますか。
  553. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 御承知のように学校給食のパンは、小麦は、カナダ産のマニトバ二号または三号と、アメリカ産ハードウインターまたはダークハードウインターを七対三の割合で混合しておりますが、さらに学校給食用パンでございますので、このほかにイースト、食塩、ショートニング、砂糖類を一定の率で加えまして、こういうもので製造いたしておりますので、若干一般市販用とは違いがあるはずがございます。
  554. 加藤清二

    加藤(清)委員 これは、あなたがいみじくもおっしゃられましたように、指示はそうなっているのですね。もう一度、一つ一つお尋ねします。  強力硬質の、いわゆるたん白の多いカナダ強力小麦、これを例にとると、これを何%入れていますか。マニトバでも別のものでもいいですよ、いわゆる強力硬質小麦は何%入れていますか。
  555. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 七対三の割合で混合いたしておりますから、いま先生の御指摘のものは七割、七〇%まぜておるということになっております。
  556. 加藤清二

    加藤(清)委員 それはカナダ産のほうですか、主としてそれは何になっています。マニトバですか。
  557. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 マニトバです。
  558. 加藤清二

    加藤(清)委員 それじゃ軟質のほう、準強力、いわゆるアメリカ産の小麦、それは何%ですか。
  559. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 アメリカ産のものは三〇%。
  560. 加藤清二

    加藤(清)委員 銘柄は。
  561. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 ハードウィンターまたはダーク  ハードウインターです。
  562. 加藤清二

    加藤(清)委員 大体そういうところですね。けっこうです。  食糧庁にお尋ねします。食糧庁の文部省に対する指示、それを承りたい。いかなる小麦粉を使って学校給食用パンをつくれと指示していらっしゃるか。
  563. 大口駿一

    ○大口政府委員 学校給食用の小麦は、食糧庁で、いま文部省から答えられましたような原料の小麦を使って委託加工で粉にいたしました上で学校給食用に売っておりますので、特に原料で指示をするという形はとっておりません。粉に委託加工した上で売却しております。
  564. 加藤清二

    加藤(清)委員 いまのカナダ強力小麦のマニトバを大体七〇%、それからアメリカ産のハードウインター、セミハードですね、これは三〇%、これを混合して、つまり製粉会社にそれをつくらせてこれを卸に回しているという指示は食糧庁がなさるのですか、それとも文部省の独自の考え方でおやりになるのですか。
  565. 大口駿一

    ○大口政府委員 原料から小麦粉を委託加工してつくるまでは、食糧庁の仕事としてやっておりますので、私どものほうでいま申しましたような比率の原料を使って粉をつくるまでは私どもの内部の仕事としてやっております。
  566. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは食糧庁にお尋ねしまするが、市販の食パンと学校給食のパンと材料に相違があるのですか。市販の食パンですよ、菓子パンは別です。
  567. 大口駿一

    ○大口政府委員 私ども考え方によりますれば、学校給食用に売却をいたしております小麦粉の品質は、一般の市販のパン用の小麦の中庸程度の品質に匹敵するというふうに考えております。
  568. 加藤清二

    加藤(清)委員 中庸とは、特に市販といえども普通のお店ですね。高級ホテルのあの白いやわらかいパンとかどうとかは別として。したがって、市販の中級のパンも学校給食のパンも変わりがあってはならないはずなんですね、材料の点において。
  569. 大口駿一

    ○大口政府委員 私がいま申しましたのは、小麦粉の品質ということだけを限定して申し上げております。
  570. 加藤清二

    加藤(清)委員 そうです、小麦粉です。大体同様な銘柄の小麦粉の混合率、ほとんど同様でありながら、値段も相違していないけれども、質がたいへんに相違している、まずい、これはどこに原因がありましょうか。
  571. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 全部まずいというふうにおとりいただくのも、いささか当を得ないかと思いますが、一般に学校給食用のパンの味が悪いという点を、私どもこのように解釈しております。やはり学校給食費を、できるだけ父兄負担を軽減したい、できるだけすべての点において低廉にあげさせたい、加工賃等においても、できるだけ値上がりしないような指導をいたしております。質が悪くなってもいいから安くという指導はいたしておりませんが、結果として若干の面で一般の市販よりもどうしても焼きが悪いとか、 いろいろな点で、どうしてもまだ遜色があるかもしれないという点は認めざるを得ません。
  572. 加藤清二

    加藤(清)委員 やや勉強していらっしゃるようです。準備していらっしゃるようです。しからばお尋ねします。東京の学校給食で配給しているコッペパン何グラムですか、一個。
  573. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 百十七グラムでございます。
  574. 加藤清二

    加藤(清)委員 それは平均値の話ですか、それとも一番大きいやつの話ですか。
  575. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 でき上がりの平均値でございます。
  576. 加藤清二

    加藤(清)委員 じゃ、低学年用の一番小さいのは何グラムですか。
  577. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 小さいほうは百十グラムでございます。
  578. 加藤清二

    加藤(清)委員 それはどこの学校ですか。
  579. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 材料の目方が八十グラムでございます、小さいほうでございます。それを焼きますと百十グラム。それから大きいほうが材料が九十グラムで、百二十五グラムでございます。
  580. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は、これはあなたを困らせるために言うておるのではないのです。ほんとうの目方を記録に残したいからです。で、一番小さいのは七十五グラム、最高のもので百二十グラム程度です。あなたのお調べも近似値が出ております。なぜこんなことを念を押して聞かなければならないかというと、記録に残したいからです。そこでその目方と同等のもの、つまり指示されたと同等のパンが配給されているかというと、はかってごらんなさい。実際はかられましたか。たいてい小さいのです。いいですか、目方がたいてい少ないのです。  次に進みましょう。たいてい小さい。しかるに、この規格なら、この年齢においてこれは食べ切れるであろうと思ったその規格、それよりも小さいのが配給されておるにもかかわらず、なお残りが二割もある、あるいは少なくても一割もある。これは目方の問題や大きさの問題ではないということなんです。質の問題なんです。そこであなたは、子供さんがいらっしゃればおわかりでしょうが、子供がないしょでかばんの中へ隠してきたそのパンをごらんになったことありますか。私はほんとうはここへ持ってくるために、ずっと寄せてあるのです。あまりにもえげつのう見えてはいかぬからやめておるだけです。
  581. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 若干そういう話は聞いておりますけれども、私の周辺には見かけておりません。
  582. 加藤清二

    加藤(清)委員 それは体育局長の、監督官のいらっしゃる連区ではそういうことはないかもしれません。それからさるおとど、さるえらい人が調査に行ったときは、そういうことはない。が、これが常に悪い、常にまずい。検査に行ったときだけよろしい。これはどこに原因があるでしょう。
  583. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 やはり一般の営利企業に委託しております以上、十分指導監督はいたしておるつもりでございますけれども、間々さような現象があり得る場合もないではなかろうかと存じます。
  584. 加藤清二

    加藤(清)委員 この問題を軽視されるといけませんから、金額をお脅ねいたします。全国で学校給食に使いまするパン、この金額は幾らでございますか。
  585. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 ちょっとそういう資料は用意いたしておりません。しばらくお待ちいただくと出てくるかと思います。
  586. 加藤清二

    加藤(清)委員 これで保留は前のと合わしてもう六つです。そこで、私はそれじゃそのデータが出るまで待ちます、こう言いたいところですけれども、こちらのほうの概算を申し上げます。教科書代と比べて、パン代は教科書より多いか少ないか、初中局長さん。――私は、議事促進のために次から次へと質問して、お答えのないまま一方通行でいきますけれども、この状態では進められませんよ。何とか処置してください。
  587. 臼井莊一

    ○臼井委員 議事進行でちょっと。御質問の途中ですが、理事会の申し合わせでは大体一人二時間以内ということでございまして、加藤清二君はすでに三時間半以上を経過しております。質問の総計におきましても十七時間半をすでに費やしておりまするので、あとさらに本日は山中君の質問の予定もされておりますから、委員長においてどうぞひとつその点を、質問者に時間の御注意をしていただきたいと思います。
  588. 高見三郎

    高見委員長 加藤君に申し上げますが……(発言する者多し)加藤君に申し上げますが、もう時間もあれですから、できるだけ簡潔にお願いいたします。
  589. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は、委員長の人格と、大臣の人格には尊敬しているということを前から申し上げている。だから、ここで混乱させるために言うているのじゃない。だから、命令どおり促進しよう促進しようということで御協力申し上げておりまするが、いまの際は、答弁ができないので私が待機しておったら、その最中に、臼井先生がああいう議事進行をおやりになった。これは臼井さんも理事ですから、それは立場上わかるのです。おっしゃる意味もわかりまするけれども、これは少し理不尽だと思う。質問者が長いからというのだったら、答弁者のほうにも御注意をなさることが平等ということじゃございませんか。したがって私は、――それじゃ続けます。  そこで問題は、金額が百億台なのです。数百億なのです。それの二割が食い残りである。これはたいへんなことでございます。中小企業の鋳物屋のオシャカよりもなお多いのです。たいへんなことなのです。何十億です、二割ですから。私は数字を持っているけれども、あっちに教えちゃうといかぬから教えないだけだ。これは容易ならざる問題なんだ。  そこで、それじゃなぜ数十億の食い残りを余儀なくしなければならないかという原因を、私は前から調べてきておるのです。なぜかならば、学校給食に関する限り、それは名前は一々あげませんけれども、当時の管理局長もこれはずいぶんお骨折りになったのです。それから河野農林大臣のときもずいぶんお骨折りになっている。鶏のえさ、牛の飼料、これにも特別の手当てをすると同時に、学校給食についてはよりよきパンを食べさせて元気な子をつくろうというので、トン当たり一万円の補助金がついておるのです。同じ材料で、同じ値段であったならば、トン当たり一万円というと、これは一体何%になるか。これもちょっと聞いてみましょう。トン当たり一万円は、普通のコストの何%ですか。それじゃ、強力小麦の高いほうでトン当たり何万円ですか。
  590. 大口駿一

    ○大口政府委員 大ざっぱな数字で大急ぎで申しますが、大体五万円台でございますから、一万円というと大体五分の一ということだと思います。
  591. 加藤清二

    加藤(清)委員 大体トン当たり三万円から五万円の間ですね。それじゃ五万円に対して一万円といえば、これだけでも二割ですね。それならばそれだけ質がようなっていなければならぬはずです。にもかかわらず学校のほうが悪い。なぜです。二割よくなければならぬはずです。河野先生にもたいへん御努力いただいて、トン当たり一万円の補助金をつけるということにしたのですが、その効果があらわれていないじゃございませんか。これは野党の言い分だけじゃない。与党にも心ある方が見えて、与野党結束して、その当時の文部省管理局長も一緒になってやったことなんだ。それがいつの間にやら、どうやらこうやらになっておる。なぜ悪いか、文部大臣
  592. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 補助金を出しておってなぜ悪いというお話でございますが、補助金を出しておる第一の使命は、父兄負担を軽減するというところにございます。もちろん、安かろう悪かろうということではございませんが、先ほど来申し上げましたように、全体の学校給食費の低減をはかるということがやはり目標でございますので、どうしても多少加工賃その他の点で、一般市販品より落ちておる例も若干あるという話を聞いております。
  593. 加藤清二

    加藤(清)委員 それは例外でございまして、どこのPTAでも、学校給食には本省からいただくと同等、それ以上のまた補助金を入れておるのです。そんなことを言っちゃいかぬです。そんなことを言ったら、もうまるきり文部省の補助金をPTAなり親がピンはねしたように思われる。冗談じゃないですよ。  そこで、私はこの問題について先を急ぐために次に進みます。  この問題であやまちがある。その結果は、学校の先生に難がかぶってくる。先生手当てのしかたが悪いとか、先生の注文のしかたが悪いとやら、食べさせ方が悪いとやら、知らぬ父兄はそういうことを言って、超勤までして一生懸命に努力した先生のところへ難をかぶせてきておる。したがって、このお世話はごめんですという声が出てきておるのです。だから、私はこの超勤のところでこれを取り上げておるわけなんです。人の罪を教員にかぶせるようなことは、罪と罰が逆転しておると言わなければならぬ。  そこで、さらに文部大臣、検査機構についてお尋ねいたしますが、学校のパンの検査機構はどうなっていますか。
  594. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 政府委員からお答えいたします。
  595. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 検査機構と申しますか、その品質の低下を防止する、質の向上のための手段、方法でございますが、関係者によってそのときどきパンの品質の批判会をいたしましたり、また、関係者が抜き打ち的にパン屋に行きまして抜き取り検査をするといったような手段、方法を講じております。
  596. 加藤清二

    加藤(清)委員 うまいことをおっしゃったね。そのとおりだといいですがね。そのとおりだとうまくいくのです。ほんとうにそうだったとしたらば、その検査の結果を承りましょうか。その結果、粉の混合率にあやまちがありましたか。ないという答えが出ておるでしょうか。
  597. 大口駿一

    ○大口政府委員 ただいま文部省からお答えになりましたように、品質批判会とか抜き取り調査をやっておるわけでありまするが、いま私が手元に持っておる資料によりますと、品質批判会でどのくらいの件数をやって、優、良、可、不可とどういうふうに分かれたかという数字はございます。抜き取り調査の場合にも大体同様のそういう数字の資料は持ち合わしております。
  598. 加藤清二

    加藤(清)委員 それじゃ発表していただきましょう。
  599. 大口駿一

    ○大口政府委員 品質批判会、ここに持っております資料は、四十一会計年度の中での下半期、十月から三月まででございますが、コッペパン、食パンに分けて、コッペパンの審査件数三千百二十一個、その中での優九百六十八、良千九百七十二、可百六十、不可二十一。食パン合計千二百九十三、優四百七十四、良七百六十六、可五十一、不可二。それから抜き取り調査の成績は、調査期間は先ほどと同じでございまして、コッペパン千六百六十、優五百六十八、良千三十六、可四十八、不可八。食パン千六、優二百二十三、良七百三十六、可四十二、不可五、以上であります。
  600. 加藤清二

    加藤(清)委員 お読み上げのとおりです。抜き取り検査の成績としからざる成績が、ほとんど似通っておりますね。そうですね。
  601. 大口駿一

    ○大口政府委員 若干は違います。
  602. 加藤清二

    加藤(清)委員 抜き取り検査のほうがやや成績が悪い。悪いものが多い、こういうことになっておりますね。そうですね。
  603. 大口駿一

    ○大口政府委員 おことばを返すようで恐縮でございますが、いま私が読み上げた数字では、パーセンテージにいたしますると、可以下のパーセントは品質批判会のほうが高くて、抜き取りのほうが低い数字になっております。
  604. 加藤清二

    加藤(清)委員 その理由もよく存じております。しかし、お尋ねしますが、それは東京都のどこの地区のあれですか。
  605. 大口駿一

    ○大口政府委員 いま申しましたのは、先ほど申しました期間内において実施した二十三府県の合計数字でございます。
  606. 加藤清二

    加藤(清)委員 大臣に申し上げます。  せっかく抜き取り検査、あるいは品質批判会が行なわれておっても、まずいパンがあとを絶たないという理由がどこにあるか、おわかりでございますか、大臣
  607. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 具体的な理由は、私にはよくわかりません。
  608. 加藤清二

    加藤(清)委員 いま食糧庁長官のほうからでしたから、今度は体育局長からお尋ねしましよう。検査をしても一向成績があがらない、これはどういうことでしょう。
  609. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 全然あがっていないとは考えておりませんが、思ったようにもしあがっていないとすれば、先ほど来申しましたように、どうしてもやはり加工賃を指導上押えておる。したがって、その焼きの不十分とか、いろいろな面でどうしても味わいに響いておるということを一部認めざるを得ないと思います。
  610. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたは、ほんとうによう研究してみえます。そのように加工賃を低きに押えておるという点もございますけれども、最も重要なことをあなたは抜いてみえる。最も重要なことは、――大臣、ここは大事なところですから。一番大事な点は、抜き取り検査であろうと調査であろうと、事前に相手に知らしてしまうということなんです。なぜかというと、これは合同調査が行なわれる。したがって教育委員会、食糧事務所、製パン組合、――これは何も文部省ではありませんよ。文部省が調べに行くのではありません。体育局長が行くわけではありませんからね、参考人として行く場合があるかもしれませんけれども。それから、食糧庁長官もこれは関係がない、その下部組織の一機構が検査員として行くのですから。つまり教育委員会、食糧事務所、製パン組合、この三者が合同で検査に行く。検査に行くときに、事前に通告があるのですから、それこそ文部大臣が視察に行くよ、給食を調べるよ、だから準備しておけよという、この視察と同じことなんです。だから大臣、佐藤総理が見えたときだけはパンがおいしかったと、子供はつづり方に書くのです。ここに問題があるのです。言うなれば、悪い警察署長が、テキヤのばくちをつかまえるにあたって、事前通告しておくものですから、親分だけは逃げてしまって、小ものだけがひっかかってくるのと同じことなんです。こういうこの検査のあり方について文部大臣食糧庁長官ほんとうは農林大臣に聞きたいところですが、一ぺんばあっと飛び込んでいったらどうなんです、お昼に。私はこのことを道路の問題のときにも、時の建設大臣の河野さんと、時のオリンピック大臣の佐藤さんに予算委員会で言うたことがある。そうしたら翌日ばあっと走られたんです。あの方々はそれだけの実行力があったわけなんです。だからこそ、国民から歓迎されたわけなんです。大臣、ひとつばあっと抜き打ちにやるべきじゃありませんか。先に通告して行かれたら、その日だけはあなた、おいしいパンで、ついでにりっぱな油を使って、あげてまでくれますよ。あれは特別料理ですからね。ほんとうに食べ残りが年間四十数億もある。これはもったいないということであれば――親はこれを捨てぬように始末しておりますけれども、問題は、学校の先生はこれを食わなければならぬ、持って帰ってはいかぬと指導するんです。子供は、おいしくないから、そうっとかばんの中へ入れて帰ってくる。これは道徳上からいってもよろしいことではないと思います。ほんとう文部省が道徳教育を叫びなさるならば、子供がうそを言わぬように手当てをしてやるべきだと思うのです。そこであなたは、この一事をもってしても抜き打ち検査をやるだけの価値のある仕事だと私は思いますが、いかがでございますか。
  611. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほど来の、きわめて詳細にわたる質疑応答を通じまして、私も非常に教えられたわけでございますが、ことに食べ残しが多いということも、これは集めてみますと、相当なものになってくるわけであります。したがって、そういうことによって起こってきます損失というものは決して無視はできないと思います。その点に対する改善の問題につきましては、私はまことに不勉強で、きょう教えられたことが実に多いのでありますけれども、十分参考にいたしまして、下僚を督励いたしまして、改善の問題、あるいはいまの抜き打ちの問題等につきましても、十分考えてまいりたいと思います。
  612. 加藤清二

    加藤(清)委員 全く同感にして敬意に値するお答えをいただきました。そこで終わりといきたいのですが、もう一つ先があります。  食糧庁長官、体育局長にお尋ねしますが、製粉の委託の方式でございますね。食糧庁、農林省が輸入して、そしてこれを委託加工させなさいますね。この委託加工の発注のしかたはいかなる方式ですか。ここにも問題があるんですよ。   〔委員長退席、久保田(藤)委員長代理着席〕
  613. 大口駿一

    ○大口政府委員 発注の方式と申されると、工場の選定の方法でございますか。
  614. 加藤清二

    加藤(清)委員 さようでございます。
  615. 大口駿一

    ○大口政府委員 工場の選定は、立地条件、あるいは加工能力その他を勘案して選定いたしておるということでございます。
  616. 加藤清二

    加藤(清)委員 指名か随契になっているんじゃございませんか。競争入札をやらせたことがありますか。
  617. 大口駿一

    ○大口政府委員 御指摘のとおり、随意契約でやっておりまして、競争契約ではやっておりません。その理由は、後ほどお尋ねがあれば申し上げす。
  618. 加藤清二

    加藤(清)委員 およそ国家が、国家の事業を民間私企業に委託するにあたって、随契でよろしい、競争がない、指名競争ならばまだしも、特命で行なわれるという理由はだれしも合点がいかぬと言っておる。もしこれを建設省に当てはめたらどういうことになるか。汚職呼ばわりになるじゃございませんか。競争入札をさせてもなお汚職がある。なお、決算委員会でも予算委員会でも問題が出る。いわんや随契でしたら、それこそ日通一軒に運ばせておるところのあの運送法と同じじゃございませんか。食糧庁の米運びは、もはや随契特命入札ではいかぬ、だから他のものにもある程度分ける。いわんや中小企業に関する政府入札は、三分の一程度は中小企業にやらせろというあの法律のたてまえからいっても、随契なんということをいまさら守っておる時期じゃございません。あの終戦当時、あるいはそれ以後は、設備が不完備であったので、設備のよきところにやらせないとせっかくの歩どまりが悪くなっちゃう。そこで表向きは、そういう大義名分だったはずです。今日、別な大義名分がありますか。
  619. 大口駿一

    ○大口政府委員 私どもが随意契約をやっております理由として考えておりますのは、この委託加工をやります場合の経費の中に含まれる運賃部分がばかになりませんので、立地条件というものが一つの委託加工工場を選定する場合の大きな要素になりますので、立地条件ということを頭に置いて随意契約をやっておるというのを理由にいたしております。しかしこの問題は、ただいまの加藤委員の御指摘も含めましていろいろ御批判を受けておりますので、私どもはこの問題を中心に今後研究をいたすつもりでおります。
  620. 加藤清二

    加藤(清)委員 そうあってしかるべきだと思います。運送することも、随契特命一個人ではいけないという時期に到達している。時期あたかもよろしい。ただし、あなたのいまおっしゃいましたように、港におけるサイロその他の所有権あるいは加工場が隣接にあるやいなやの問題等々もございますので、だれでもいいと言うているわけじゃございません。当然一定のコストで加工し得る能力と設備を持っているもの、それならばどこにやらせたってしかるべきだと思います。したがって、ぜひ、いませっかくいい御答弁がございました。いままでの随契方式のみにたよらず、将来はこれを改善して、よりよき粉が、より安く国民の手に渡るように、その契約の方法等を改善なさいますか。
  621. 大口駿一

    ○大口政府委員 先ほど申し上げましたように、この問題はいろいろの御批判を受けております点を考慮して研究をいたします。ただ、一つだけこの際申し上げておきたいのは、学校給食用の小麦粉の委託加工を実際にやっておる工場は、比較的中小製粉にやらせております。もしこれを完全に競争にしますれば、おそらく大製粉ということになりますので、そこら辺の企業対策の面も副次的には効果があったわけでありまするから、それらの効果がそこなわれない範囲で競争原理を入れるという趣旨での研究になろうかと思います。
  622. 加藤清二

    加藤(清)委員 ごもっともです。だから私も、中小企業に国家の下請の三分の一程度はやらせるべきであるというあの中小企業の法律のたてまえを順守してもらいたいということを先ほど言ったわけです。それを順守した上において、いま言うたことを追加していただければけっこうです。   〔久保田(藤)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、もうだんだんと時間も何でございまするから何でございますが、大臣文部省は製パンをどのように指名していらっしゃいます。
  623. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 政府委員から答えさせます。
  624. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 御承知のように、都道府県の学校給食会が中心になりまして実施いたしておりますが、これもやはり御指摘のように、パン工場は、全国的に製パンしてもらわなければなりませんので、どうしても中小企業のパン工場が多くの対象にならざるを得ません。したがいまして、現実におきましては、ただいまお話のありましたように随意契約をもって行なっております。
  625. 加藤清二

    加藤(清)委員 大臣、お聞き及びのとおり、粉加工でなしにパン加工もこれまた随契、いわゆる特命入札で行なわれておるわけでございます。したがって、自由主義経済の最もよき点、競争によって値下げが行なわれ、競争によって品質がよくなるという自由主義の恩典は、ここには何ら恵まれてきていないというのが実態でございます。幸い製粉のほうにおかれましても、その非を改めるというおことばがございましたが、文部省のほうにおいても、ぜひそうあってしかるべきだと思います。  それからもう一つは、いかなる品質であるか、いかなる粉が使われているか、いかなる材料が使われているかということを知っている者は皆無に近いのでございます。専門家しかわかりません。そこで、しろうとにもわかるようにするために通産省では品質表示ということを義務づけておるわけでございます。いわんや義務教育の小学校の教科書については、いろいろあなたたちは検討して、ずいぶんいろいろむずかしい注文をつけていらっしゃるわけでございます。検査も何回かやっているわけでございます。パンだけおろそかにしていいという理由はありません。あれは業者がやるからよろしい、教科書のほうは学者が書くからいけないという理屈は成り立たぬと思うのです。ぜひひとつ、子供がよりすこやかに伸びていくために、大臣のせっかくの長年のキャリアをもって、子供のためによきパンをつくれまするように、同時に、そのよきパンを使って学校の先生の方々が喜んでこの超勤に従事できるように御努力が願いたい、かように思うわけでございます。
  626. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 いろいろ御教示いただきましてまことにありがとうございます。私のほうでも、なおよく、状況の改善のために十分検討させていただきます。
  627. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は本日はもうこの程度にしたいと自分は思っていますが、さっき私が終わるまでに答弁を持ってきてくださいということが、いまだに持ってきていただかぬ。持ってきていただけるまでこれからやれとおっしゃるんなら、次の材料がございますので、通告もしてあるわけでございますから……。
  628. 高見三郎

    高見委員長 加藤君の問題は、この次の機会に保留していただけませんか。
  629. 加藤清二

    加藤(清)委員 それじゃそれでいいです。委員長の仰せに従います。
  630. 高見三郎

    高見委員長 それでは、時間もだいぶ過ぎましたから、これで質問を一応やめていただきまして、次の山中さんにお願いしたいと思います。
  631. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は委員長の仰せに従いまして、私の残余の質問並びに過去に質問いたしましたうちの御答弁漏れについては留保をいたしまして、本日はこれで終わります。ありがとうございました。
  632. 高見三郎

  633. 小林信一

    ○小林委員 委員長、ただいま与党のほうからわれわれの質問時間の計測の発表があったのですが、もしああいうことを論拠とするならば、非常にこれは重大な問題だから、委員部にストップウォッチを用意させてください。どんぶり勘定じゃいけないので、やはり積算基礎をしっかりしてもらわなければならない。それは失礼な場合がありますよ。さっきのように政府側の答弁がちゅうちょするような時間もこっちのほうに入れられたらたいへんなんだ。重大な発言も控えなければならぬようなことになる。あれは一つ発言を押えることにもなるわけだから、もしこれから計測するならば、ストップウォッチを使っていただきたい。これほど重大な法案を取り扱っているのだ。このとおりこんな深夜になっても、国民の皆さんが真剣になって聞いているのだ。それをここでもってどんぶり勘定でもって計算されたらたいへんなんだ。だから、向こうのほうの答弁がストップしたら、ちゃんとストップウオッチでもってはかって、ちゃんと計測してもらわなければ非常に迷惑だ。委員長の慎重に審議するということに欠けるわけだから、お願いしますよ。それがちゃんと整うまで、質問は私のほうじゃ保留しますよ、計測しないというなら。臼井さんがああいう発言をするというのは重大な問題だ。臼井さんがああいう発表をするというなら、これは委員会全体が了承した計測であるかどうかが問題なんだ。かってに、ストップウォッチも使わずに、幾ら幾ら発言をしたなんというそんな問題を持ち出されて、そして発言を阻止するような行動はまずいよ。(「阻止はしてないよ」と呼ぶ者あり)大きな一つの牽制ですよ。委員長お願いしますよ。さもなかったら、これは合議の上で計測してもらいたい。それをしないで何時何分というような発表をするのは、非常に不謹慎だ。
  634. 高見三郎

    高見委員長 小林君に申し上げますが、私はお約束の時間というのを、いままでそう厳重に制限をした覚えもありませんし……
  635. 小林信一

    ○小林委員 理事会できめたらきめたで、ちゃんと両党が納得するようなそういうものを出して、責めるなら責めてもらいたい。(「責めるわけじゃない、注意なんだ」と呼ぶ者あり)注意のしかたも不謹慎だよ。どこからデータを持ってきたか知らぬけれども加藤さんずいぶん士気を阻喪したと思うのだ。おおよその見当をつけるなら何とも言わない。しかし、議事進行の時間をとって、そして発言者を牽制するようなああいう発言をするにおいては正規の計測をしてもらいたい。(「牽制されるような加藤君じゃないよ」と呼ぶ者あり)いやいや、ずいぶん牽制されてしまった。加藤さんも相当に意気阻喪してしゅんとしてしまった。それは正規の計測ならばこのまま継続してよろしいが、今後ああいうものを取り上げて発言をするようだったら、ちゃんと根拠のあるものでやってもらいたい。
  636. 高見三郎

    高見委員長 私は委員各位がおおよその良識をもっての御質問お願いいたしたいと思います。私は別に時間が一分超過したからどうのこうのということを言った記憶はございませんし、今日までのところでは、社会党の皆さんの御質問に対しても、一時間こえておりましても、私が御注意を申し上げるというようなことは極力避けてまいっておりますので、その辺は御了承願っておきたいと思います。
  637. 小林信一

    ○小林委員 その辺は委員長の名委員長ぶりであるならばがまんしますが、いまのような牽制はしないようにお願いいたします。
  638. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私は、この法案をどのように評価をされたか、この評価についていろいろ検討してみたのですが、 これだけエネルギーを浪費して、国会の大の男がこれだけ努力して成立させる価値がどこにあるのか、どこを見ても私はどうも納得できないのです。その点明確に関係政府委員及び大臣からお聞きしないと、一体何のためにこれだけの国税を使って国会が運営されておるのか、非常に私はむなしい感じじがするので、そういう趣旨から御質問を申し上げたいと思うのであります。  きのう参考人をお呼びになったわけですが、これは委員長にまずお聞きしておきたいと思うのですけれども参考人の御意見審議には参考にさるべきものであると思いますが、与党の方々は参考人のときには一人もおられない。そして聞いていない。あれは形式的にやっておられるのかどうか。その点はどういうふうに委員長としてお取り計らいになりますか。
  639. 高見三郎

    高見委員長 与党の人たちもおりました。したがって、参考人それぞれの御意見がありましたので、それぞれのお受け取り方はあるであろうと存じます。
  640. 山中吾郎

    山中(吾)委員 何人かはおりましたが、ほとんど便所に行ったりどこかへ行ったり、参考人意見聞いていなかったので、この点はよく徹底するようにしておいてください。  あのときに四人の参考人が来ておりまして、この四人のうち、いわゆる超勤問題について直接みずからに関係のある先生のほうの新教職員組合連絡協議会副議長である佐伯さん、それから北海道の中学校の先生の土岐さん、それから都立品川聾学校教諭の平塚さんは、この法案には非常に疑問を持って低く評価をしておる。ところが、管理職手当をもらって超勤には関係のない校長の遠藤さんだけが、これを評価しているのですね。この超勤問題は、直接自分の現実の生活に関係のある人は全部――この団体の代表といえはあらゆる団体が入っている。その人たちが評価をしないのですね。そういう法案をいまここでこういうふうに夜おそくまで審議をしておる。この点についても、まず参考人意見を聞いて審議の参考にするという手続で行なっておるならば、また十分に尊重すべきものである。灘尾文部大臣は、国会における参考人が大体どういう意見を発表しておるかということはお聞きになっておりますか。   〔委員長退席、久保田(藤)委員長代理着席〕
  641. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 あらましは伺っております。
  642. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それはお聞きだけしておきます。  まず、この法案教員待遇改善になるのか、あるいは待遇改善に関係のない改悪になる法案か、文部大臣はどういうように評価しておられますか。
  643. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は待遇改善になるものと考えて提出いたしておるわけでございます。
  644. 山中吾郎

    山中(吾)委員 その待遇改善になる事実をひとつ説明してください。
  645. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 法案によって御承知を願いたいと考えます。
  646. 山中吾郎

    山中(吾)委員 わからないからお聞きしているのです。どこが待遇改善になりますか。それがわからないから、提案者の灘尾文部大臣は説明する責任があるのじゃないですか。
  647. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今日まで御説明申し上げていることは、私は待遇改善になるものと考えて御説明を申し上げておるわけでございます。
  648. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それはどうも不親切ですね。先ほど加藤委員が、いろいろと微に入り細に入り、超過勤務の算出の基礎をあれだけ時間をかけてここで皆さんと論議をしておって、そうして一応基礎については、問題はあったけれども、四・三%という一つ調査の結果が出てきたが、これは学校給食その他における先生方の非常な苦労その他のことを含んで、どれだけ超過勤務をしておるかという実態も明らかになっておる。そして一方で超過勤務の請求権を剥奪して、ただこれだけのものをこの法案に盛って、待遇改善になる事実が説明されたことになりますかな。局長説明してください。
  649. 天城勲

    天城政府委員 教員待遇改善の方法は、いろいろな方法があると思います。教職手当がこれで一〇〇%待遇改善の道だという意味ではもちろんございません。ただ、時間外の勤務に対する給与上の措置といたしまして、いままでいろいろ議論がございますが、とにかく超勤の支払いが行なわれておらなかったわけでございますので、それにかえて新しい手当を創設したという点では、われわれとしては一歩前進だ、そういう意味で結果的には給与改善に資する点がある、このように理解しております。
  650. 山中吾郎

    山中(吾)委員 戦後の教員給与をおきめになるとき、事実上労働基準法のたてまえ、近代的な労働制度というものを前提としながら、教員勤務の状況から考えて初任給を二号高くされた。そこで文部省の御指導として、いわゆる行政指導としては超過勤務を命じないようにということでずっときた。その間に一号削り二削削り、そして何もない、もくあみにしておいて現在にきておるわけです。先生方は、二号というものがいわゆる初任給に重なっておるから、みずから自主的に、自発的に権利を請求しないで現在にきたけれども、現実に二号俸はなくなってしまったのです。それならばというので当然の権利を主張して、それに見合うようにといって、中村文部大臣のときから調査を始めて現在にきておるわけなんです。したがって、初任給二号俸というものをもとへ戻して、そして具体的にその権利は保留して、権利を請求しないということであるならば先生方は納得すると思うのです。前進でなくしても、一応戦後の出発点における教員給与の体制だけは確保することになる。失地の回復だけはできたと思うのです。ところが、失地はそのままにしておいて、そして超勤というものの現在のいわゆる実態よりもさらに低い姿の中でそれだけを――私はどういう性格の手当というのかわからぬが、その手当を規定をして、さらに請求権を剥奪する。どこにプラスになるのですか。一体文部省というのは、教育を前進せしめて、教員待遇改善をし、そして希望を持って子供のために働くために政策があるのではないのですか。この法案待遇改悪案であっても、どうも改善はどこにも見当たらないのです。夜おそくまでエネルギーを浪費して、待遇改悪になるような法案を、なぜこれだけわれわれが努力しなければいかぬのですか。それは事実をもって説明してください。私は、二号俸プラスになったときから、地方行政でそういうことはよくわかっているんです。減らしてしまったんじゃないか。減らした分を回復しないで、超勤の権限を取って、実態調査をわざわざしておいて、それより低くくぎづけするというのは、どこが一体改善になるんだ。私は改善になると思いますなんて、何ですか文部大臣、不謹慎千万じゃないですか。
  651. 天城勲

    天城政府委員 ちょっといま経過のお話が出まして、確かに二十三年の切りかえのときに十七割の切りかえでございますから、一般よりも一割ほど高い切りかえをいたしたわけでございます。そのときには、先ほどの質疑にございますように、勤務時間の定めが必ずしも明らかでなくて、最高の四十八時間以上にわたるものという前提でやったわけでございます。それで超過勤務を命じないという行政指導をしてまいったわけでございますが、その後の事情は、先生もおっしゃるとおり給与体系が変わってしまいました。当時は一本の給与表でございましたけれども、その後給与表が変わりまして、教育職の俸給表が別にできました。したがいまして、その間に当時の一割ほど高かったのが現在どうなっているかというのは、議論がいろいろあるわけでございますけれども、必ずしもその当時の姿と現在とを確実に比較する方法がないわけでございます。ただ、当時は一本の俸給表で切りかえたわけでございますが、現在はいろいろ分かれてしまった。その意味で、先ほどもお話がございましたように、私たち、過去のことをいまいろいろ理由に出す根拠がなくなったんじゃないか、かように思っております。したがいまして、実態としても、調査の結果正規の勤務時間外の仕事のことがわかってきたわけでございますので、これに対してどういう措置をとるかということについては、いろいろ意見がございましたし、また現在でもあろうかと思います。いま先生のおっしゃるように、二十三年の姿に戻すという手も一つかもしれません。しかし、その二十年間トレースして、的確に現在が前と比較してどうなっているかということをきめる数字的な措置もなかなかできかねるわけでございます。しかし、時間外の状態というものは明らかになりましたので、いろいろ給与の基本的な考え方については意見があるわけでございますけれども、当面やはりこの時間外に対する措置はいたさなければならぬ。こういう前提に立ちまして、最もいい方法をいろいろ検討した結果、一時間幾らという時間計数でなくして、いわば、たいへん抽象的でございますけれども教職員の時間外の勤務の態様に基づきまして、時間的な要素、質的な要素を集約してしまって、年間をならして四%という新しい制度のほうがより適当じゃないか、こういう考え方をとったわけでございまして、歴史的に見ますればいろいろ御意見がございますけれども、少なくとも時間外の勤務に対しまして無措置であったのに対しては、措置をするという点では、われわれとしては一歩前進したと考えているわけでございます。
  652. 山中吾郎

    山中(吾)委員 いまお話しになったことは一つ大事なことが抜けておるのですね。超勤実態調査をして、その実態がある。一方に二号俸はどこかにいってしまった。それでその点について、いままで先生方は自発的に請求権をみずから行使をしないでいた、二号俸上がったというので。これはやはり先生方の自発的な精神である。ところが、そうでないから超勤を請求をするということで、二号減った分についてはやはり当然主張すべきであるという正当なる考えで請求を始めたころからこれは問題が起こった。それで調査をされて、そのときに皆さんのお考えでは、教員の特殊性からいって、いわゆる同じように分けるような支給の方法を検討したほうがいいんだという論議をされて、こうなったといま言った。なぜそれなら請求権を法律的に剥奪されるのですか。請求権のほうをそのままにしておくならわかりますよ。二号俸も削った。そうして特異性という口実のもとに、現在の実態調査よりも低くくぎづけにして、さらに請求権剥奪、待遇改悪案じゃないですか。なぜそれについてこれほどあなた方は熱意をお持ちになるのですか。改悪することについて熱意をお持ちになるのですか。いま請求権の剥奪のことを説明されないじゃないですか。
  653. 天城勲

    天城政府委員 繰り返すようなことになるかもしれませんけれども、御指摘のとおり、法律的に申しますれば、実は二十三年のときから、労働基準法を前提といたしまして、超過勤務を命じた場合には時間外の割り増し手当を支払うべき原則はございました。それは二十三年から今日まであるわけでございます。ただ、給与の切りかえのときの措置の事情を前提として、そういう行政指導をして、当時の状況において一応行政指導の了解のもとに進んできたということは事実でございます。しかしその後、その地盤が給与制度の変遷によって変わったこともまた事実でございます。しかし、基本的に先生のおっしゃる、現行制度を前提に置けば、命令による超過勤務に対しては割り増し賃金を支払うべきであるということに変わりはございません。   〔久保田(藤)委員長代理退席、委員長着席〕 したがいまして、それを前提に置きまして、どのようにするかということで、今度は請求によらず新しい一律の手当を創設するという形を妥当と考えまして、その結果――請求というのじゃなくて命令によって一時間幾らという形で割り増し賃金を払うよりも妥当だろう、こういう前提で新しく制度を創設したわけでございます。
  654. 山中吾郎

    山中(吾)委員 天城さん、ぼくに説明していないのです。請求権を法制的に奪われたということを説明なさらないのだ。大体先ほど加藤委員が対価の経済原則を言われた。私も聞いておって、それは一つ給与の問題だから、一つの法の原則としてそういう論議は成り立つと思うのですが、厳密に私はそういう論議はしないのですけれども教員に、勤務実態に即してというので、最初の出発点で初任給に二号俸を重ねて、そのかわりに、現在の近代的な労働体制は前提とするけれども、指導方針としては請求をしないように先生自身も納得をした、二号俸あるから。そして二十何年来たんじゃないですか、来たのでしょう。それがなくなったから、それならばというので請求をして、どこの裁判所においても、当然だといって判決を下されてきておる。それからこの問題が起こってきたはずです。そのときにいろいろのものの考え方があって、超勤は、拘束時間はあるのだから、その超過割り増し金を当然出すべきだけれども、一実態に即して一々そういうやり方をすると――そのあと何か聖職観がいろいろ出て、そういうものではないのですけれども、私は論議はあとでしますが、そういうことからだんだん言っておるうちに、せっかく待遇改善するという目的がどこかへ吹っ飛んでしまって、超勤だけが問題になって、支給方法についてはまずいからというので、いまのような行き方をして、そうして超勤の請求権を取ってしまったんじゃないですか。そんなばかなことが一体この法案でどうなるのですか。どこが改善になっているか。こういう法案を大のおとなが何です。しかも、教育の向上をはかろうとする文部省で、一体こんな発想がどこから出てくるかというのが私にはわからない。あなたはそこの説明をされないんじゃないですか。
  655. 天城勲

    天城政府委員 ですから、そこは新しい立法論の問題でございまして、現在の制度でいけば、超過勤務を命ずれば一時間幾らの超過勤務手当を支給しなければならない、逆に先生のほうからいけばそれを請求する権利がある。こういうことだろうと思うのでございますが、今度は、立法政策としてそういうものをとらないで、新しい手当を創設した、こういう考え方でございます。
  656. 山中吾郎

    山中(吾)委員 どうも私は理解しにくいのですが、請求しても今度は超過勤務手当をやらない、四%でくぎづけにしたのでしょう。また、いまのようないわゆる学校給食関係の栄養士その他が、定員関係で、財政硬直化で押えられてくる。だんだん定員が狭くなってくる。これはふえるにきまっている。そういうときに実態に即して請求する立場というものを剥奪して、そして一方に教員の特殊性とかなんとか――特殊性というのは、二号俸上げて待遇改善してやることならわかる、専門性を向上するならば。そういう目的はみな吹っ飛んでしまって、超勤問題をいじくったまま――いまここに稲葉先生いないようだが、二号俸上げてやるとかなんとかいうのは一つの正論だ、考え方だと思います。それがないじゃないですか。どうしてこれだけ皆さん方努力しなければならないのですか。そして少しもみなは喜んでないでしょう。わからぬのだ、あなたの言うことが。
  657. 天城勲

    天城政府委員 最初に申し上げましたように、教員待遇改善あるいは給与制度改善ということについてはいろいろな方法があろうと思います。基本的にはやはり給与改善ということは本俸の問題で措置すべき問題だと思っております。正規の勤務時間に対応するものが俸給でございますので、正規の勤労に対する改善措置というものは当然本俸にわたるべき問題でございます。その意味で今回の措置が正面から給与改善だ、そういう意味で申し上げているわけじゃございませんで、時間外の勤務に対する手当の問題として、範囲はもちろんその範囲に限られておるわけであります。ですからその範囲内の議論を私たちもちろんいたしているわけでありまして、その範囲内での措置も、従来のことから考えれば若干前進である、こういう前提で申し上げているわけで、給与改善を本俸でなければできないのじゃないかという議論は、もちろん当然起きる御議論であると思います。
  658. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私の言うのは、二号俸上積みをした給与体系を前提として現在まで来て、実際上は先生は超過勤務を請求しない。自発的にそれを納得してやってきた。二号俸がなくなったそのときに超過勤務を請求してきた。それにどうしてやればいいのか。それならば、その点については手当をしてやるか、二号俸をもとに戻すか、これならわかるのです。一方に労働基準法をいじくって、いまあと質問しますけれども、そしてその方法は、さらに何か変な教師観の理屈をつけてゼロにしてしまって――ゼロじゃなくて、なくしてしまって、そしていまの超過勤務の関係を低く見て、そしてわずかな財源だけで、しかもあらゆる現代の近代的な労働体制を無視するような法案、中身はそれしかないでしょう。私はその点について、そんなことはするはずがないのだ、そういうはずはないと見ておった。そこで、この予算を請求する、最初の六十三億を請求するときの、そのときの文部省の方針を説明してください。そのときにどういう方針でやったのですか。
  659. 天城勲

    天城政府委員 四十三年度の予算の概算要求を大蔵省にいたしますときに、正式の名称は六十三億で給与改善措置費ということで要求いたしました。と申しますのは、当時もちろん超勤でいく考え方もございましたし、それからいま先生お話しのような、給与の基本的な改善方法についての意見もございまして、率直に申して内容がきまっておらなかったわけでございます。しかし方向としては、その問題を措置しなければならぬ、沿革的に出てまいりました超勤に関する問題を措置しなければならぬという意識がございましたので、名目として給与改善措置費という名前で大蔵省に要求したわけでございます。
  660. 山中吾郎

    山中(吾)委員 二年前から私らが中村文部大臣とこの中でいろいろと論議をしたあと、超過勤務というものは事実あるかどうか、実態を調べてそれは考えなければならぬというので、二ヵ年かかって予算計上をして実態調査をした。そしてその現実があらわれてきた。そしてあなた方が要求したんでしょう。いままで長く計算しているうちに、小学校二時間何ぼ、中学校三時間何ぼと出てきて、それを算出の基礎にして六十三億を出したんじゃないですか。出したんでしょう。それならばわかるのです。そして一方に根本的な給与体系の調査をやるというなら、おやりになってけっこうでありますよ。そういう案じゃないですか、本法案は。
  661. 天城勲

    天城政府委員 六十三億の金というのは、やみくもにつかみ金じゃございませんで、そういうふうに積算してまいりました金額を一応根拠にいたしまして要求したことは事実でございます。しかし、制度としてどうするかにつきましては、率直に申して意見がまだ定まりませんでしたので、給与改善措置費という形で要求したわけでございます。
  662. 山中吾郎

    山中(吾)委員 経過をずっと見れば、それは事実なんですから、予算を要求するときも、そういう経過から、自民党のほうからどういうふうな御意見があってこうなってこうなってと、ここで経過を説明してください。
  663. 天城勲

    天城政府委員 いま申し上げましたように、六十三億の積算はやみくもにつかみ金を出したわけじゃありません。いま先生も御指摘のように、実態調査に基づきました数字をもとにいたしまして、一応の積算基礎を立てて出したわけでございます。超勤も現行の二割五分増しの金額で計算すればという形で出したことは事実でございます。しかし、それを直ちに超勤という形でやるかやらないかについて、これも事実でございます。すりかえたわけじゃありませんで、大蔵省に要求した概算要求書には、給与改善措置費として要求したわけです。これはもう事実でございます。その当時から率直にいって意見がまとまらなかったのであります。(小林委員「どこで」と呼ぶ)政府部内でまとまりませんでした。政府としてきめられなかったわけでございます。これも率直に申しまして、その後いろいろの議論があったことは、新聞紙上でもかなりオーブンに議論されているのでありまして、いろいろな意見がございました。それがその年一ぱいかかり、予算の決定ぎりぎりまで時間がかかったわけでございまして、最終に新しい教職手当を創設するという形にきまったのが、大ざっぱにいって経過でございます。
  664. 山中吾郎

    山中(吾)委員 教員勤務条件をよくして教育を向上する立場というものが、文部省の不変の立場でなければならぬし、そうだろうと私は信じていま話しているのですが、そういうことからいって、超勤手当というものをお調べになり、実態をお調べになって、そしてそれに応じて支給をする。現在いままでだって認めておったんですよ、超勤についての請求権は。ただ実際は先生がしなかっただけの話なんです。しなかっただけなんです。したがって、給与改善されれば――それは先生方は、実際にいろいろ家へ帰って徹夜して仕事をしても、私は待遇されれば自主的に請求されないと思う。それが二十年続いてきたんじゃないか。二号俸というものを削ってしまったあと、今度は超勤を請求するのは実態に合わないなんて残酷な思想が、一体どこから出てきたのです。二号俸というものを上げて、現実にそういう請求権があってもしないりっぱな日本の教育精神が伝統的にあるじゃないですか。いま法律的に一方を押えておいて、そして労働基準法からいっても、これは人事院総裁、腹の中では非常な矛盾を感じておられるはずなんです。そうして、われわれがこういう論議をしておるようなことを、どこをひねくって一体こういう最悪の結論を出したのです。私はその点についてはどうしてもわからない。これは待遇改悪案だ。一体どこにいいところがあるのです、二号俸削って。大臣、説明してください。
  665. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 昭和二十三年以来の経過については、山中さんのおっしゃるとおりでございまして、また天城局長の説明したとおりだろうと私は思うのであります。教員給与改善という問題を全般的にとらえての話というものは当然あるわけでございます。その問題につきましては、繰り返して申し上げているようで恐縮でございますけれども文部省としても何らかの改善策を講じなくてはならぬというので、現に調査に関する予算もちょうだいいたしまして、本年度からその調査に着手するわけでございます。これは給与全般に関する問題ということに相なると思うのであります。今回御提案申し上げておりますのは、先年来問題となっておりますところの超過勤務手当、この問題に関連しての措置である。それに限定してお考えをいただきたいと思うのでございます。その過程におきましては、当初の沿革等にかんがみまして、二号俸アップしたらどうだ、こういうふうな、いま山中さんの言われましたような考え方もございました。また、いわゆる超過勤務手当として支給すべしというような考え方ももちろんあったわけでございます。その間のいろいろな議論がせんじ詰まったところが、こういう案になってあらわれてきたということでございまして、これはいわゆる超過勤務手当というものに関連しての措置である、全般的な給与改善の問題はまた別の問題としてなお検討を重ねていきたい。こういうふうな考え方でございますので、そのように御承知願いたいと思います。
  666. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それは、いま大臣言われたお話の中の、いわゆる号俸を上げるという待遇改善超勤問題とは因果関係があって、そして一つの問題として論議をしてきたのではないですか。
  667. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 前からの因縁もございますので、そういうふうな意見もございました。ただ、二号俸をアップするということは、今日の場合といたしまして、直ちにその結論に到達するわけにはまいらなかったということでございます。
  668. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうすると、超勤という場合は、超勤だけを処理するならば、超勤の請求権、労働基準法をいじくるということはどういうわけです。そこだけは途中から、一方に待遇の一環の中で論議をしてきておって、そうして超勤というのは――暫定的でもいいですよ、超勤を支出する。超勤の権利を何か法律でとってしまうのじゃなくて、暫定的に超勤を出すというのであるならば、文部省でいろいろ苦心していることはまだわかる。そうでなくて、一方の待遇改善というものは、この法案のどこから見たって出てこない。超勤だけをいまのような行き方にして、そうして労働基準法から排除するというそこの精神が私はわからないのです。灘尾さんは、教員というものの実態をよく調べて、どこかでも改善しようということでお考えになっているはずでしょう。そうでないのですか。
  669. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 教員給与改善という全体の問題につきましては、いまも申し上げましたように、さらに調査を重ねた上で適切な案を得たいという希望を持って、調査を開始いたしておるわけでございます。今回御提案申し上げておりますのは、先年来問題となっておりますところの超過勤務手当云々というこの問題に対応する措置としてこの問題を考えた、こういうことでございます。そのときに、議論の過程におきましては、山中さんがおっしゃったような昔の関係を振り返ってみて、この際また昔のように二号俸でもアップして、そしていままでのような扱いでいったらどうか、こういうふうなお考えもございますし、一面からいいますと、二号俸アップするのはいいけれども、同時に超過勤務手当の問題は、そのままにしておけばやはり権利としては依然として残っておるということにもなるわけであります。その辺をどうするかというふうな議論もございましたし、いずれにいたしましても二号俸アップというような問題は、予算措置の上から申しましてもなかなかたいへんなことでございます。そう簡単に結論は得られないということにもなったわけでございます。同時に、従来の労働基準法を前提とするいわゆる超過勤務手当を支給すべしというふうな考え方も確かにあったのであります。その問題につきましては、先般来申しておりますように、これらについてはいろいろ御批判もございましょうけれども教員の時間外勤務実態というものを考えましたときに、これを時間でもってはかるということがいかにも不適当じゃないか、こういうふうな議論からいろいろ検討しました結果が、結局今日のように一律四%程度の給与を出すことによりまして、超過勤務手当の問題をこれに吸収していこう、こういう考え方になりましたような次第でございます。二号俸アップの問題は、何と申しましても当面の問題としましては、少なくとも財源的にもなかなか容易じゃございません。問題としましては、超過勤務手当に対してどう措置するかというところから得られた結論がこれでございます。
  670. 山中吾郎

    山中(吾)委員 給与改善方向灘尾大臣はどうも自信がないという話であります。どうなるか、希望はしておる。そして一方に超勤という関係は、これからどんなに超勤がふえても、それ以上はどうにも請求できぬような法案を出している。そして一方に、この超勤を自発的に請求しないような行政運営をしてきたのは二号俸という問題があったからですよ。一体どこが改善かぼくにはわからない。改悪を頭に置いてこの案を出されているのですか。
  671. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 非常に大きな、広い立場からいえば、いろいろまた御議論もあろうかと思うのであります。ただ私が先ほど改善すると申しましたのは、現在の状態のもとにおきまして(山中(吾)委員「二号俸というものが前提でなければだめですよ。それは最初から二号俸あったのですよ」と呼ぶ)それはわかっております。わかっておりますが、またここで二号俸アップの措置をとるということがいいか悪いか、またできるかできないかというような問題がいろいろ検討の段階にあったわけでございます。あらためて二号俸アップして、従来のような姿で進んでいったらいいじゃないかというような議論も確かにあったのであります。しかし、それはなかなか採用できない。それからまた、権利として現にありますところの超過勤務手当の方式というものも必ずしも適当でない。そういうことから、いろいろ御批判ございましょうけれども、私どもはこの案が現段階においては適当であろうというのでこの案を提出しましたわけでございますので、これは結局、いわゆる時間外勤務というものに対する一つ給与の方式として考えられたわけでございます。全体的な給与改善という問題は、なおひとつ調査をさせていただいて、そしてりっぱな給与体系ができることをわれわれは期待しつつ調査を進めてまいろう、こういうのがいまの段階でございます。(「明快明快」と呼ぶ者あり)
  672. 山中吾郎

    山中(吾)委員 少しもぼくには明快でない。繰り返しますが、二号俸プラスしておるときでさえ、制度上は先生に請求権というものは認めておったのですよ。二号俸なくなって、そのあとに、今度は支給方法はどうだこうだといって、そういう権利を剥奪して、そこの分だけの法案が出ているのです。それならば、いま調査費を計上されておるならば、あと二年かかるかしれないが、結論が出るまでは、少なくとも現行制度教員の請求権を認めながら、二号俸がなくなっておるのですから、教員立場を、しかも近代的な労働制度の上に立って、憲法二十七条のもとにできておるいわゆる労働基本権に相当するところの労働基準法の上に立ってお考えになるのが、私は常識だと思うのですね。支給方法のことについては、現実には県庁でもどこだっても、現在の労働制度を前提として請求権を認め、実際は職場職場で一緒に平等に分けておるところもあります。それは請求権を持った人間同士の仲間意識の中で、職場を明るくするために知恵を出した方法なんです。いまこれを法律で押えつけるというようなことを一体どうしておやりになるのかわからぬ。どうしてこういう無理を通そうとされるのですか。これでみんなが賛成するなら別ですよ。どうして御無理をされるのですか。
  673. 天城勲

    天城政府委員 御返事の中におことばを返すようなことが出てくるかもしれませんが、確かに歴史的ないろいろないきさつがございまして、二号俸の時代もあったのですけれども、現在二号俸が高いか低いかという議論が、過去にさかのぼってトレースできない制度になっておるということは御了解いただけると思います。給与表が一本のときには、一般公務員と比べて全体がどうだ、一号高い、二号高いという議論もできるわけでございますが、現在は給与体系が違ってきております。その給与体系の違いというのは、教員勤務の特殊性というものに基づいて教育職の給与表ができておるわけでありまして、本来教員職務に即した給与改善というものは当然本俸でなすべきである、これは先生御指摘のとおりであります。ですから、本格的な給与改善の問題では今回の措置はないわけであります。その点は十分われわれも自覚しております。  ただ、時間外の勤務に対する給与上の対価というものが、いままでは法律上の根拠によりますれば、一時間幾らで計測して支払う割り増し賃金制度ということになっておるのでありますが、そのことにつきましては、人事院の三十九年の勧告についておりました報告書の中でも、現行をたてまえとするならば出すべきであるけれども、他方、この問題は、教員勤務時間についていろいろ問題があるのじゃないか、だからなお検討しろ、こういうお話もございまして、教員勤務時間というもの、あるいは勤務の態様というものにつきましては、いろいろ議論が前からあるわけでございます。したがいまして、今回時間外の措置をいたすことに踏み切るにあたりまして、一年間を通じてならしてながめるほうがむしろ妥当じゃないか、こういう考え方でございます。  それは、四十一年の勤務の状況調査のときにも、夏休みあるいは春休みというものは、きょうの前の質疑のときにも申し上げたとおり、現在給与制度上は正規の勤務時間だというフィクションを置いておるわけです。みなしておるわけでございまして、もちろん臨海学校その他の仕事もございますけれども、なお自宅研修というものを認めておる制度でございます。そういう前提に立ちますと、いわゆる休業期間、子供の授業の休みの期間における教員勤務につきましては、超過勤務の有無を確認することはできません。私たちは四十四時間の勤務はあるというフィクションを立てましたけれども、四十四時間以上の勤務というものは、これは確認できないわけでございます。そういうことと、それから月別に非常に繁閑がございます。そういうことを考えまして、それから職務の中には必ずしも校内で行なわれない、校外にわたる勤務の延長もございます。管理監督者に適正な時間の把握ができないような仕事もございますので、これらの状況を勘案いたしまして、一時間幾らの計測による割り増し賃金制度ではなくして、いま申したような、年間を通じてのならした給与制度、新しい手当の創設のほうが妥当じゃないか、こういう判断をしたわけでございますが、これについては、ここに至りますまでにいろいろな議論もございましたし、また、現在いろいろな御批判があろうかと思いますけれども、われわれといたしましては、これが現在のところは、当分の間の措置としては妥当ではなかろうか、こう判断したわけであります。
  674. 山中吾郎

    山中(吾)委員 重箱のすみをつつくような、教員に意地悪するような考え方はどこから出てきたのですか。戦前には、先生が夏休み、冬休み休んでおるから月給を少なくしてもよいという思想はどこにもないですよ。東京の高等師範を卒業した人の初任給が百円ですよ。東大出た者が七十円、六十円ぐらい。そしてできるだけ教育にいい者を連れてきて、そういうことをけちけちしないようにという配慮が日本の戦前にあったはずです。いま何ですか、同じようにしておいて、夏休みがあるからどうだこうだ、一体いつからそういうような教員に冷酷なる行政思想が生まれてきたのですか。
  675. 天城勲

    天城政府委員 これはおことばを返すようですけれども、冷酷という意味で申し上げたのでは毛頭ございません。ただ夏休みの超勤というものは計測ができないという例を申し上げただけでありまして、夏休みの給与をやめるとか落とすとかいうことを毛頭申しておるわけではありません。
  676. 山中吾郎

    山中(吾)委員 超勤というものについては、これはそういう特殊性か何かというようなことでなくて、給与の公平の原則に基づいた制度なんです。校長さん、管理者がこの仕事を頼むと命じたときに、その人にそれだけの報いをするというのが公平の原則なんです。そうでなければ人間というものは――ある人が病気ばかりしておる、ある人は一つの特殊の技能を持っておるからその人に頼む、特別に日曜日とか放課後頼むと言ったら、それだけ報酬を管理者は出すべきである。また、受けるほうはその中で初めて公平感というものがある。職種の特殊性などで、特別に超勤を出すと教員は精神がどうなるなんて、だれがそんなことを言い出したか、受ける人はそんなふうなものごとの考えは持っておりませんよ。超勤制度が出たところで、一つの二十人なら二十人の学校の職場があれば、お互い教育精神を持った同士なんです。ある者が校長の命を受けてやっても、しかし、みな薄給ならば、研究費にお互いに積み立ててやるとか、あるいは同じように分けて研究旅行をしようとか、それは職場の先生にまかせればいいじゃないですか。しかし現在の労働制度の上に立っていわゆる拘束時間がある。そして特別の人にある勤務を命じた場合には、その人に当然に時間に応じてそういう超勤を出すのが当然じゃないか。公平の原則じゃないか。そんな職種によってどうだというふうな問題を論議をするけれども、職種が芸術ならばこれはちょっと計算できない。中身はどうであろうが、時間によって拘束時間をこえた者は、それに応じて公平の原則に基づいて支給しようという思想があって、そして一方に、拘束時間以上に対して報酬を出さなければ、横暴なる管理者というものは、自分の人事権を活用して、やたらに仕事をやらすから、やらさないようにという二つがあると思うのですね。教員超勤を出すと教育精神がすたれるというのは、一体どこからそういう論理が出ておるか。人事院総裁、こういうことについてどういうふうにお考えになるか、ひとつ総裁のほうから見解を述べてください。
  677. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 結局、私ども国立学校のほうの関係をおあずかりしております者の目から見まして、要するにこの手当問題は、いまお話にも出ましたように、本俸の問題もあわせて考えていかなければならぬことであろうと思うのです。二号俸アップだとかというようなことで、最初の出発がどうだったというようなこともございましたが、やはり両面から給与上の待遇一本の問題としてながめなければならぬというふうに思います。私どもとしては、いま文部省局長から答えられましたように、昔と今とは給与体系が確かに違っております。いろいろな面で条件が変わっておりますから、にわかにこれを比較して、この格差が消えたか消えないかというようなことは申し上げられません。しかし私どもは、それだけの格差あるいはそれに近いものはぜひとも今後とも持ち続けていかなければならぬという気持ちで本俸の改善にもつとめておるわけでございます。したがいまして、たとえば微々たるものではありますけれども、例年の給与勧告の際にも改善はつとめつつおるということであります。それに対して、今度は超過勤務手当の問題が、先ほど来お話しの三十九年あるいは三十八年、あの辺のころからいろいろ問題が出てまいりました。これは制度として超勤制度というものがある以上は、当然超過勤務に対してはそれに対する手当が支払われるべきものであって、それと本俸と合わせてその待遇が適正であるかどうかということを考えなければいけない。本俸二号差、三号差で、超勤の分をすっかり本俸に吸収してしまえば、超勤の問題はそれはなくなりましょうけれども、そこらのかね合いは、やはりいつも二またで考えながら臨んでいかなければならぬのではないかということもございまして、三十九年に幸いにして――幸か不幸かと申し上げたほうが率直だろうと思いますけれども、国立学校の先生の場合の超勤手当の支給の問題はあまり露骨には出てまいりませんで、主として地方の先生の場合が一般世間の関心を引いたと思いますけれども、しかし、われわれ国立学校の関係をお預かりしております者としても、これはぜひちゃんとした実行を、あるいは運用の手当てをしていただきたいということで、あの勧告、報告を出しました際にも、私自身中村文部大臣にお会いをして、こういうことを報告に書いてありますので、ひとつ十分これの実現方をお願いしますということを強く要望してまいったような次第でございます。  そこで問題は、今度この法案の問題になりまして、しからば超過勤務手当に当たるものとして、あるいはかわるものとして、この四%なり何なりというものが、ぴったりとそれに合うかどうかという問題が残るわけでございます。それも、先刻来申し上げ、あるいは文部大臣に対する回答において申し上げておりますように、これはもうごく精密な、あるいは正確な実情の、あるいは実態の把握のもとに、これが適正かどうかということは、われわれなお今後鋭意努力をしてその結論を得たいということであります。とりあえずの、当面の、あるいは臨時の暫定措置としては、少なくとも現在よりも損にはならないという意味で、やむを得ざるものということを申し上げたわけでございます。
  678. 山中吾郎

    山中(吾)委員 総裁の管轄の国立の場合には、超勤手当もあり、今度はこういう特別手当も出るのです。それについては改善になると思うのですね。そうして現実には各地方自治体においても、超勤の実際の権利というものは当然に認めて、そうして分け方はいろいろな分け方をしている。個人の権利の行使のしかたですからね。行政の指導もある。総裁の思想ならば、この法案は、給与改善というものが今後できたときにはまたいろいろ論議してもいいけれども、それまでは現状の制度のままで支給するのが正しいという御主張でしょう。あなたのいまのお答えは、労働基準法から排除して、いわゆる超勤の請求権を略奪するようなことについては適当でないという思悪ですね。それに間違いないですね。
  679. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 現行の制度のもとにおいては、超過勤務手当制度がありますから、正規の超過勤務命令を出された以上は、それに対する手当をお出しになるのは当然でありましょう。これは三十九年以来発表しておるわれわれの考えであります。
  680. 山中吾郎

    山中(吾)委員 だから、あなたの思想は、現行を前提にしておる場合に、そういう法ができたときには、そういう立法というものは望ましくないという御思想でしょう。あなたの見解としてはですよ。
  681. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 それが、三十九年の際の報告書に、また先ほど来文部省局長から言いましたように、一方には別に問題があるという指摘だけはしておるわけです。そのほうもあわせて検討しなければならぬ。したがって、たとえばいまの教員の方々の超過勤務というものは、精密に測定し得るものか、測定し得ないものかという実態にからまってくれば、その結果いかんによっては、一括した形での一つ手当というものは、これは成り立ち得る考え方である。その場合に、その現実のパーセンテージなり何なりがどう出るか、それはわれわれとしてじっくり慎重に検討しなければ正しい答えは出ない、こういう結論になると思います。
  682. 山中吾郎

    山中(吾)委員 総裁、かりにこの法律が出ました場合に、これは勧告の対象になるということになるでしょう。法律では四%に法定されている。ほかのものは法律改正がなくても予算措置その他でできる。しかし、これは法律で規定されておるので、法律を変えなければ、そちらの勧告の対象になって勧告をしてもどうにもならない。こういう過重な法律なんですね。現在調査令があって、いわゆる待遇改善というものが結論が出たあとでこの法案の論議をするならば、別な角度で論議することもあるのですが、一方で調査費を出しておって、灘尾文部大臣は、希望しているけれどもなかなかむずかしい、いつになるかわからぬというような自信のない話をしておる。この法案ができると、総裁は、勧告する対象になるというけれども、しかし、勧告したところで、法律できめておるのだから、法律を変えない限りはどうにもならない。一体そういう法律なんです。あなたは、そのあなたの立場からいって、あなたの見解、あなたの思想からいえば、これは一方調査費が計上されておるのだから、その結論までは現状でいくべきであるというふうにほんとう考えておるのでしょう。何を腹の中で考えて遠慮して言っているのですか。われわれは、この法案の価値をもっと常識的に評価しないと、こういうふうなことでふまじめなことを論議しながらこんなものが通ってしまえば、一生懸命やっておる先生が気の毒ですよ。  そこて、大蔵省の局長来ておりましたか。――文部大臣のほうは、給与改善のための調査費を要求して、あなたのほうで一千万円ですか、計上してある。その調査費を計上した目的は、どういう目的としてあなた方のほうで予算査定をされたのですか。目的は何ですか。
  683. 船後正道

    ○船後政府委員 義務教育諸学校教職員の給与問題につきまして、調査研究するための基礎資料として実態調査を行ないたい、かような予算要求がございまして、先ほど仰せのように約一千万円を計上した次第でございます。
  684. 山中吾郎

    山中(吾)委員 一方に財政の硬直化というものがあって、大蔵大臣その他あなた方のほうでは、四十四年から本格的に予算編成については着手していくという表明がある。そうして文部省のほうでは教員給与調査費が計上された。それは改善のため、教員の特殊性に基づいて給与を上げるという目的のための調査費としてお認めになったんですか。そうじゃないのですか。
  685. 船後正道

    ○船後政府委員 先ほど申し上げましたように、文部省として教職給与問題の研究のための基礎資料を得たい。教員給与実態調査につきましては、かなり前のものしか資料がないわけでございます。そういう意味で要求があったわけでございます。それでございますから、当然文部省のほうでは、ただいま問題になっております教員給与のあり方というものを検討される基礎資料としてお使いになる、こういう意味で予算を計上した次第でございます。
  686. 山中吾郎

    山中(吾)委員 給与をよくするか悪くするかというときに、改善する目的でない、必ずしもそうではない、下げる場合もある。とにかく、どういう御説明を聞いて、あなたはどういう意味においてこれを計上――予算編成の場合に、大蔵省はどういう見解でこれを認めたのか。改善の必要を認めた上の経費なのかどうか、そういうことです。
  687. 船後正道

    ○船後政府委員 当然文部省といたしましては……
  688. 山中吾郎

    山中(吾)委員 文部省じゃない。あなたほうは文部省の要求を認めたのですか。
  689. 船後正道

    ○船後政府委員 これはもう予算の一般の問題になるわけでございますから、各省からそれぞれ、かくかくの理由でもって予算を要求する。そういうことで話し合いの結果予算を計上しわけでございますから、先ほど申し上げましたように、教員給与問題を研究するための基礎資料を得たいという目的の御要求でございますので、教員給与実態調査は十数年前にやったきりでございますので、必要であろう、こういうことで計上した次第でございます。
  690. 山中吾郎

    山中(吾)委員 教員は、終戦後二号俸高くして、一応いい素質の者を入れて、そうして教育というものを生活が安定して安心してやれるという、いわゆる教育の向上の立場から初任給を二号高くして出発した歴史がある。それがなくなってしまって、そこで超勤問題でいろいろ何だかんだいって、二号俸上げるべきだ、一号俸だという論議があって、そのげく、その調査結論が出ない前にこういう法案が出ておる。そこで、この調査費というものは、教員の特殊性で一、二号高くしても、三号高くしても、やはり日本の教育向上をはかるという趣旨で計上されたという断定はまだ私は受け取れないのだが、天城局長のほうでは、どういう説明をして予算を計上することを要求し、取ったのでしょうか。
  691. 天城勲

    天城政府委員 いま大蔵省のほうから御説明ございましたように、教員の……(「定足数なし、やめ」と呼ぶ者あり)いろいろの措置考えるにいたしましても、何ぶんにも基本的な調査資料がありませんので、まず事実に即して実態をつかまえた上でなければどこをどう改善するかということもつかめません。私たちは教員給与改善するという基本的な態度を持っておるわけでございますけれども、その前提としての基礎資料を得なければならぬというので、基礎資料のための調査費用を要求した、こういうことでございます。ですから、この基礎資料の調査費でございます。この調査ができました結果に基づきまして、われわれといたしましては、どういう実態であるか、それをもとにして、どこをどのように改善していったらいいかということを考えていくつもりでございます。   〔発言する者あり〕
  692. 高見三郎

    高見委員長 定足数はあります。   〔「こういうふうに騒げば来るような、そんな不謹慎な構成じゃだめだ、もっとまじめに与党やりなさい」と呼ぶ者あり)
  693. 高見三郎

    高見委員長 山中質疑を継続してください。   〔「委員長、これじゃ無理だよ」「休憩、休憩」と呼ぶ者あり〕
  694. 高見三郎

    高見委員長 暫時休憩いたします。    午後十時五十五分休憩      ――――◇―――――    午後十時五十六分開議
  695. 高見三郎

    高見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  社会労働委員会より連合審査会開会の申し入れがありまして、社会労働委員長と明日午前開会することに合意いたしましたが、本委員会理事間で協議いたしましたところ、意見の一致を見ませんでしたので、見合わせることといたしましたので、御了承ください。  次回は、来たる十三日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会いたします。(「反対」と呼ぶ者あり)  これにて散会いたします。    午後十時五十七分散会