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1968-04-17 第58回国会 衆議院 文教委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月十七日(水曜日)    午前十一時五分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 臼井 莊一君 理事 坂田 道太君    理事 谷川 和穗君 理事 西岡 武夫君    理事 長谷川正三君 理事 鈴木  一君       有田 喜一君    河野 洋平君       床次 徳二君    加藤 勘十君       唐橋  東君    川村 継義君       小松  幹君    斉藤 正男君       有島 重武君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         文部政務次官  久保田円次君         文部大臣官房長 岩間英太郎君         文部省初等中等         教育局長    天城  勲君         文部省体育局長 赤石 清悦君  委員外出席者         専  門  員 田中  彰君     ————————————— 四月十六日  委員渡辺肇辞任につき、その補欠として江崎  真澄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員江崎真澄辞任につき、その補欠として渡  辺肇君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月十二日  日本学校安全会法の一部を改正する法律案(内  閣提出第九号)(参議院送付) 同月十六日  外国人学校制度創設反対に関する請願外一件  (穗積七郎紹介)(第三九八六号)  教育公務員特例法の一部を改正する法律案反対  に関する請願河村勝紹介)(第三九八七  号)  学校教育法の一部を改正する法律案反対に関す  る請願河村勝紹介)(第三九八八号)  外国人学校法案反対に関する請願河村勝君紹  介)(第三九八九号)  外国人学校法案反対に関する請願鈴木一君紹  介)(第三九九〇号)  女子教育職員育児休暇制度法制化に関する請  願(竹本孫一紹介)(第三九九一号)  各種学校における教育整備充実に関する請願  (橋本龍太郎紹介)(第四〇四九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本学校安全会法の一部を改正する法律案(内  閣提出第九号)(参議院送付)  文教行政基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより会議を開きます。  内閣提出日本学校安全会法の一部を改正する法律案を議題といたします。     —————————————     —————————————
  3. 高見三郎

    高見委員長 政府より提案理由説明を聴取いたします。  なお、本法律案参議院において修正されておりますので、その修正部分に関する説明を便宜あわせてお願いすることといたします。灘尾文部大臣。   〔委員長退席谷川委員長代理着席
  4. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 このたび政府から提出いたしました日本学校安全会法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、日本学校安全会業務である災害共済給付対象高等専門学校学生を加えようとするものであります。すなわち、日本学校安全会は、学校教育の円滑な実施に資することを目的として、学校設置者との契約により、義務教育学校等管理下における児童、生徒の負傷、疾病、廃疾または死亡に関して必要な災害共済給付を行なう業務を実施しておりますが、高等専門学校学生についても、教育の成果を高めるために、その設置者が、日本学校安全会契約を行なうことにより、災害共済給付対象にすることができるようにしようとするものであります。  また、最近における他の特殊法人に関する法律の例にならい、監事に関する規定等を整備しようとするものであります。  なお、本法律案昭和四十三年四月一日から施行することといたしておりましたが、成立時期がおくれましたので、これを公布の日から施行するよう改めるとともに、高等専門学校学生にかかる災害共済給付については昭和四十三年四月一日から適用することとする旨の修正参議院で行なわれました。  以上が、この法律案を提出いたしました理由及び内容概要であります。何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成くださるようお願い申し上げます。
  5. 谷川和穗

    谷川委員長代理 これにて提案理由説明並び参議院における修正部分説明は終了いたしました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。  この際、川村委員より発言を求められておりますので、これを許します。川村継義君。
  6. 川村継義

    川村委員 日本学校安全会法案審議に次から入るわけですが、私は、その審議にあたりまして資料を四件ばかりお願いをしたいと思います。  一つは、日本学校安全会定款。少しごめんどうでしょうけれども、おそらく安全会のほうにそれらの冊子があると思う。日本学校安全会定款。それからいま一つは、日本学校安全会業務方法書、これが二つ目であります。三つ目は、どうもわれわれがいただいたいままでの予算説明資料では十分でありませんから、四十三年度の日本学校安全会関係予算細目表をひとつ知らせていただきたい。本年度は二千五百十四万八千円の増加となっておりますが、その増加された内訳を知りたいのでございますから、できたらひとつ四十二年度の予算との比較された細目表をぜひいただきたいと思います。それからいま一つは、日本学校安全会の役員及び運営審議会委員の名簿。この四つの資料をぜひお出しいただきたいことをお願いをしておきます。
  7. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 承知しました。      ————◇—————
  8. 谷川和穗

    谷川委員長代理 文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。有島重武君。
  9. 有島重武

    有島委員 新学期が始まりまして、いま新聞紙上には文教問題について非常に雑多な、また困難な問題が続々と掲載されております。その中の一つといたしまして、新学期からの小学校教科書についての記事がたくさんございまして、それでだいぶこれが右寄りになっておるというような批評がたくさん出ております。こういう問題につきまして、先般灘尾文部大臣発言されました国防教育云々、このことについて少しお話をし合ってみたい、そう思うわけでございます。  灘尾文部大臣が昨年末の記者会見におきまして、国防考えない国民はあり得ない、子供のときから国を守るとか自国安全保障について自覚と認識を養うことが必要だと思う、いつまでも国防意識をタブー視してはいけない。いまの国民自分一個のことや家族のことしか考えないような傾向がある、これを改めてよき日本人として自覚を持たせ、みずからの国を守ることの必要性を認識させることが大事だ。と言われたそうでございます。なお、四十六年から改定される小学校学習指導要領の作成にあたり、社会、国語などの教科を検討し、何らかの形で安全保障問題を加えるよう指示するつもりだ。とも言われた、そう伝えられております。  これにつきまして、本委員会におきましては、先日谷川委員からの質問に応じられまして、文部大臣が、その真意については次のようなお答えをしていらっしゃいますので、時間を省略するためにここでもう一ぺん確認しておきますけれども、いやしくも独立国国民であるならば、その国を愛し、その国に尽くし、その国を守っていく、この資質はだれでも持っておらねばならない。当然持っておらねばならない資質を養うためには子供のうちから適切な教育を施したほうがよい。そのやり方については専門教育者にまかせる。ただし、これは政策以前の問題であり、同時にまた、学校教育の場に、いわゆる国防の問題や安全保障問題等政策論議をそのまま持ち込んでいくということは賛成しがたい。ただ愛国国防意識心情というものは小さいときからつちかっていくのが適当である。大要このようなお答えをなさっていたように思います。  このお考えには現在もお変わりありませんでしょうか。そのことについてもし何か釈明がございましたらば伺いたいと思います。
  10. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 特に釈明する必要を私は認めません。そのように考えておる次第であります。ただその中で、しいて言えば国防ということばを仰せになったわけでありますが、私は必ずしも狭い意味のいわゆる国防ということだけを意識して申し上げているわけではございません。
  11. 有島重武

    有島委員 この中でもって国防ということばは必ずしも狭い意味国防だけではない、そのようにいまお答えでございますけれども国民一般はどのように受け取っておるか。このことは大臣のお考えとややニュアンスが違う場合も多いと思うのでございます。それで、ちょうど灘尾発言というものは、佐藤ジョンソン会談以後、佐藤首相が、みずから自分の国を守る気概に立てという発言をして、世間一般では政府与党の著しい右傾化であるといって驚いたそのやさきのできごとでありました。ですから、当然文部大臣ことばを再軍備方向に向かう政府与党一連政策として受け取っておる向きがあるわけです。これを追うようにして、増田防衛庁長官の、国防教育は大いにけっこうなことであるというようなこともありましたし、それから倉石前農林大臣平和憲法めかけ論、軍備必要論が重なりまして、こういう一連発言の系列の中でもって、灘尾発言だけは別なのだという受け取り方は、ちょっと一般にとっては無理であったように思うのです。その証拠として、今度の教科書日露戦争の写真などがどんどん出てくる。あるいは平和憲法についての項目が少し縮められておるというようなこと、もう予算委員会段階でさまざま論議されてまいりましたけれども、これは文部省としてどうこういう前に教科書会社がかってにやったのだとは申しますが、これは灘尾文部大臣の御発言真意とはやや違うふうに解釈してと申しますか、国防というものを狭い意味にとらえて、そうして手っとり早くこういうふうにしたらばいいのじゃないかという動きが十分感じられる。それで国民一般受け取り方に対して、文部大臣の言っていらっしゃる国防というのはどういった意味なのであるか、そのことを教員も父兄も聞きたがっていると思うのです。そういうことについてやや詳しくお話し願いたい。
  12. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題はたびたび皆さんから御質疑を受けたのであります。その際申しておりますように、私は特に記者会見で特別な意図を持って発言したものでも何でもないわけでございます。いわば記者諸君との懇談をいたしております際に、平素私の考えております問題の心持ちを率直に漏らした、こういう程度のことでありまして、自然佐藤総理ジョンソンとの会談の経緯でありますとかその他の関係というふうなことは全然考慮の外にあったわけでありまして、ただ、私の気持ち記者諸君にお話しをしたという状況のもとにこの発言はなされた、このようにひとつ御理解をいただきたいと思うのであります。  それから、そういうことでありますので、私は別にことばづかいも吟味してかれこれ話したわけでも何でもございませんが、私の言いたいことは、国の独立を守っていくとか、国の安全を守っていくとか、要するにわれわれがここに住んでおる日本というものをお互いに守っていくという気持ちはだれしも持たなくちゃならぬものじゃないか。ただ自分一個のことだけで明け暮れしておるのではなくて、進んでは社会公共のためにも尽くさなくちゃならぬし、お国のためにも尽くしていかなければならぬ。その一環としてやはりお国の安全を守るとか、独立を守っていくというふうな心持ちはだれしも持たなくちゃならぬのじゃないかというところから出発をいたしておるわけでございます。  したがって、ふえんして申し上げますれば、なるほどいわゆる国防というものも必要でございましょう。そのために日本は自衛隊というものを現に持っておるわけであります。それだけの問題じゃない。むしろ日本があるいは平和国家として徹するとか、あるいは外交関係をうまくやっていくとか、あるいは国際交流を大いに進めていくとか、こういうような努力も、日本独立を保持し、日本の安全を守っていく有力な道であるということは当然のことだと私は思うのでございます。そういうふうにふえんして申し上げれば広くなってくる。また、そういう心持ちで実は申したつもりでおるのですけれども、狭く解釈せられればそれもけっこうでありますが、しかし、日本としてどこまでもお互い国民生活、われわれの民族の安全は守っていかなくちゃならぬという方法論につきましては、これはいろいろお考えがそれぞれおありになることと思うのであります。やはり公明党さんには公明党さんのお考え方もございましょう。また、社会党の皆さんが非武装中立ということをおっしゃるのも、やはりそれが日本の安全のためになるというお考え根底にあると私は思うのであります。そういうふうにどなたもお持ちになっている心持ちであるけれども、また持たなくてはならぬ心持ちであるけれども、これをいかにして実際の政策の上にあらわしていくかということになれば、それぞれ考え方も違い、また自然政策も違ってくるということは大いにあり得ることだと思うのであります。そこまで私は言っておるのではない。その根底のことについて、いわば政策以前の問題としてものを申し上げている、こういうふうにひとつ御理解をいただきたいと思います。
  13. 有島重武

    有島委員 政策以前の問題である、これは十分承知して伺っておるわけでございます。それから御発言の経過その他については、これは何べんも承って存じております。  それで一つ気になりますことは、それほどことばを吟味して言ったのではないとおっしゃられた。これはやはり国の将来を基礎づけていく教育行政最高責任者でいらっしゃるわけでございますから、ある場合には総理大臣よりも、防衛庁長官よりもはるかに深刻な影響力を及ぼす場合もあると思うのです。ですから父兄教育者も非常に戸惑いを感じている面があるわけでございます。こうしたほんとうに基本的な問題で多少とも疑心暗鬼の中であってはろくな審議が進まないと思うのでございますよ。それで、そうしたことをほんとうに腹を割って話し合えれば、そのようなことはほんとう専門家にまかしておいてもいいんじゃないか、そのようにも私たち考えるわけでございます。  いま、軍備という狭い意味でもけっこうだというようなことを言われましたけれども、狭い意味にとられてもけっこうですけれども平和国家をつくっていく、文化外交を展開していく、国際交流などを含む広い意味だというような、その辺ははっきりとしていただいたほうがいいんじゃないかと思うのでございますが、さっき釈明と言ったことばはやや私は不適当かと思いますけれども、注釈をそのようにやはりしっかりとつけていただいたほうがいいんじゃないか。それは、その御発言段階にあっては、ほとんど何げない座談であったかもしれないけれども先ほども申しましたように、一連の狭い意味国防政策的な国防ということと非常に、その一つの流れの中での御発言でございましたから、これは文部大臣としての考えはそういった意味ではなくて、かくかくこういう意味合いをもって言ったのだということは、広く国民一般教育者にもはっきりと示していただいたほうがいいのではないか、そういうふうに受け取るわけでございますが、いかがですか。
  14. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 国を守るという表現を使ったわけでございますが、その国を守るという内容についてはいろいろあるということもいま申しましたとおりでございます。私は、その考え方は別に改める必要もないと思うのであります。そういういわゆる国を守る方策についてはいろいろあり得るわけであります。その中で、いま狭い意味のあれを含んでおるということも申しましたが、これは当然もちろん含まれるわけであります。御承知のように、いかなる国といえども自国を守っていくという権利は基本的にあるということは世界どこの国でも認められておることで、わが国においても認められておることであります。必要があれば自衛のために立ち上がるという気持ちは、私は日本国民は当然持ってしかるべきものと思うのであります。そういう意味におきまして、国を守るという中には当然これは入っておると申し上げてよろしいと思います。
  15. 有島重武

    有島委員 私の伺ったのは、国民一般が受け取っておる大臣発言の中の国防ということば意味合いですね。それがすでに教科書会社なんかにはそういったふうに受け取っておる方があらわれておる。それから大臣がいま、もう少し広い意味と言われましたですね。そのことを国民一般にもう一歩進んで御説明なさったらばいかがか、そういうような意味でもって伺ったのでございますよ。
  16. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私の発言国民にいろいろ受け取られておる。こういうことでございますが、これはものを申しましてそれが世間に出ました以上は、いろいろな受け取り方をなさる方もいらっしゃるだろう。その中にはあるいは戸惑いを感じていらっしゃる方もあるかもしれません。ただ私は、この国を守るとか、国のために尽くすということは、何もいまこと新しく私が申さなくても、現在の日本教育の中に、いわば国を愛すると申しますか、国に対する愛情と理解を高めていくとか、こういうふうなことは学習指導要領にもしばしばいわれておることでありますが、そういうことの中には、当然いま私が申し上げましたような心持ちというものは含まれておるものと実は解釈しております。ただ現在の教科書は、実は私の発言より以前にみなできておるものであります。将来の新しい教科書はどういうふうになるか存じませんけれども、現に出ておりますものは私の発言とは少なくとも無関係にできておるものであるということは申し上げることができると思いますし、それが認められておりますのは、現在の学習指導要領ないしは教科書検定の基準に合っているというので文部省が認めておる、こういう関係のものだというふうにひとつ御承知を願いたいと思います。
  17. 有島重武

    有島委員 一つの例ですが、何か誤解のようなことが生じつつある。それが衰減していく方向ならいいのですよ。それが増大していく方向であるとすれば、これはあまり好ましくないことであると思いますので、小さいうちにはっきりしておいたほうがいいのではないかと思うのですよ。それでなお申しますけれども、国を守る心あるいは国を愛する心、これは大臣の言われたとおり当然だれでも持つべき大切なことであると思うのです。また、これは世論調査なんかして見ますと、戦争反対だ、軍備もいやだ、だけども攻めてきたらば国を守ろう、これは高校生の九〇%がみんな言うわけでございます。これは国民の感情でございます。あらためて大臣から言われなくてもみんなそういうふうに思っているわけですよ。ただ、そういった国を守る心というのは国を守る行動とつながっていなければならない。それから、国を愛するという心が国を愛する行動につながっていなければならない。その辺でいまの子供たちははっきりしないものが非常にあるように思うのでございます。それで、そういった国を愛するという心でもって確かに行動はしたのだけれども、結果、国をそこなった。国を守る気持ちで、そういう心でもって行動したのだけれども、結局、国を破ったというのでは、これは困るのでございまして、これは一種の過失致死罪というような、そういうことが起こっては困るわけでございますね。ですから第二次世界大戦のときもみんなそういった本来的な心は持っておった。これは政策論じゃございませんよ。そういうことにならないように、そうした心でその行動をして、結果としてほんとに国を守ったことになり、結果として国を愛したという証拠が客観的に出るような、これだけの吟味は現在十分しなければならない時代になっているのではないかと思うのです。そういうために国防とか愛国とかいうことの意味をここでもって再検討していったほうがいいのではないか。ことば意味というものは、これは時代によって非常に違ってまいりますし、それから使う人によっても非常に違ってくるわけでございます。それで、国防考えない国民はあり得ないと大臣は言われたわけですけれども大臣国防についての考えを正式に——正式にというと大げさですが、さっき少しおっしゃいましたけれども、それをもう一ぺんはっきりとお教え願いたいのですが……。
  18. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 大体先ほどお答えで尽きているように私は思うので、つけ加えて申し上げることもございませんが、しかし、とにかくわれわれは、この世界におきまして名誉ある独立国民として日本の発展をはかり、子孫の繁栄をはかり、同時にまた、世界のために貢献するところがなければならぬと思うのであります。そういうことをになうに足るりっぱな国民を養成するということが教育任務である、私はこのように存じます。そういうりっぱな資質を備えた国民を養成するという任務を遂行するために現に私どもが行なっております教育関係の仕事は、申すまでもなく日本国憲法教育基本法あるいはそれに基づいてできておりますいろいろな制度、こういうものを忠実に守ってやっていくところに私ども任務があろうかと思うのでございます。  国防国防と、こう申しますと、いかにも何か戦争でもやるのじゃないかとか、あるいは極端にいえば好戦国民をまたつくるのか、したがって文部大臣は反動的な考え方を持っておるのじゃないか、こういうふうな御批判もちょいちょいちょうだいするわけでございますけれども、現在の日本がいわゆる平和国家として、民主国家として、また文化国家福祉国家として進んでいかなければならない大原則というものについては、私どもはあくまでもこれを忠実に守っていかなくてはならぬと思っております。したがって、国民の活動という分野におきましては非常に広いと私は思っている。その中にやはり自国の安全を常に確保していく、自国の名誉ある独立を常に保持していくということは、国民の当然尽くさなければならない責務であると私は思うのであります。その一環として、先ほども申しましたけれども、これをどうやっていくかということについては、いろいろな方策考えられるでありましょうけれども、また、その中には一たん緩急あればという昔のことばがありますけれども、お国のために必要であれば、やはり積極的に立ち上がって国を守っていくというその国民——佐藤さんのことばでいえばそういう気概もほしいと私は思うのであります。  そういうふうなことを頭に置きまして、国を守るという心情なり意識なりというものを正しく育て正しく導いてまいりますためには、幼いときから配慮が必要なのじゃないか。また、どういうふうにやっていくか、こういう問題についてはわれわれがかれこれ甲すべきことではない、むしろ専門の方に十分御検討願って、その年齢、その発達段階に応じて適切な指導を加えることによって、正しい資質を備えた国民を養成していくということが必要なことではなかろうか、こう思うのであります。  先ほど私が申したことについておことばがありましたが、いわゆる国防論議というようなものをなまのままで学校教育の場でかれこれ、あれがいいとかこれが悪いとかいうふうな論議は、あまり感心しないわけであります。しかし、子供さんのほうからいうと、いろいろ新聞記事も読む、ラジオも聞く、テレビも見る、いろんな外からの影響でそういう問題にだんだん年をとってくれば関心を持ってくるであろうと思うのであります。関心を持ってくるのも当然であろうと思うのでありますが、そういう際におきましても、私は、専門家学校の教師の諸君はきわめて慎重な態度でもってこれを指導していただきたい。私の願うところは、いろいろそういう論議がありましても、学校教育を受けておる段階におきまして、ことに高等学校以下の段階におきましては、そういういろんな議論が世の中に行なわれておるが、それらについて正しい理解を持ち、判断を持ち得るような能力を身につけていただくということが一番私どもの期待するところでございます。そういう意味におきまして、学校教育の場におけるいわゆる国防論議等につきましては、よほど慎重な扱いをしてもらいたいというのが私の希望でございます。そのようにひとつ御承知を願いたいと思います。
  19. 有島重武

    有島委員 大体大臣のお考えはわかるような気持ちがいたしますけれども、いまのおことばそのまま報道されますと、国防には、いろいろあるけれども、中には一たん緩急あるときには、たとえば佐藤首相の言われた国を守る気概を持ってというおことばがございました。そうなりますと、やはり中心がそこら辺にあるような印象をまだ受けますね。  それで、今日自分の国の防衛について絶対の確信を持っておる国というものが世界じゅうにあるかとうかという——それはみんなばく然とした国を守りたいということはございますけれども自分の国の安全保障について、どんなにがんばってみたところで確固たる結論が得られないというその根本は、いろんな改策とかそういうこととは別に、世界の客観情勢というものが第二次世界大戦以後に違ってしまっておるのだという認識が必要であると思うのです。申すまでもなくこれは原子爆弾が出現した。しかもそれが非常な大量な貯蔵量が現在の地球上にはある。これはもういろんなデータがございますけれども、アメリカだけでも二万九千三百二十六メガトン、ソ連が三万七千二十五メガトン、合計すると六万六千三百五十一メガトン。よくいわれることですけれども、第二次世界大戦でもって連合国が日本とドイツに投下した火薬爆弾の総量が五・五メガトンである。そうなりますと、アメリカだけで第二次世界大戦級の破壊力というものは四千回繰り返すことができるほどの貯蔵量があるわけでございますね。ですからそういった客観情勢の認識ということの上から、やはり国を守るということがどういうことなんだということは、百年前あるいは二十年前とはおのずからだいぶ感覚的に違っておる。そこら辺の時代感覚と申しますか、いまの若い人たちは初めからそういったような前提の中に育っておる。また、平和憲法というものも、昔、原水爆のなかった時代に、フランスやその他の国が戦争を放棄するというようなことを宣言した、そういうこととはまるきりニュアンスの違う一つの強い必然性を持った宣言であったように、そういうふうに受け取れるわけでございます。それからもう一点は、愛国ということについても、これは明治時代愛国心と現在の愛国心とやはり客観情勢が違う、時代認識が違う。したがって、その内容というものは政策以面の問題としても、これはずいぶん違うのではないか、そういうように思いますけれども大臣の御所見を承っておきたいのです。
  20. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私の申したのは、やはり政策以前のお互いが持っておらなければならない心情とか意識とか、こういったふうなものを頭に置いて申してまいったわけでございますので、いま例におあげになりましたような事態ということに対する認識なり理解なりという問題よりも、もっと前の話というふうな気持ちが実はするのでありますが、だんだんお話のようになってまいりますと、確かに明治時代といまの時代とは違うとか、あるいはまた今後の日本の国のあり方というものが昔の日本の国のあり方と同じでよろしいとか、もちろんそういうものではないと思います。ことに新憲法の理想とするところでも明らかでありまして、この大原則を否定する人はまずないだろうと私は思うのであります。あくまでも平和に生きる国としてやっていかなくちゃならぬ、あるいはほんとうの民主主義の行なわれる国でなくちゃならぬ、あるいは文化国家とか福祉国家とか、こういうふうな大きな国の目標、私は、これは何人も否定し得ないりっぱな原則であろうと思います。そういうふうなところになってきますと、だんだんと話はやはり実際政治における政策の問題とか、態度の問題とかいうふうなことにもつながってくるわけであります。その論議は、実は私の過日の発言としては関係ないものとしてものを申したつもりでおるわけであります。  同時に、日本の理想あるいはまた世界人類の大きな願いというものはもちろん大切なことであり、私ども真剣に考えなければならぬ問題でございますが、また、現実世界というものについての認識を誤ってはいかぬと思うのであります。そういうふうな点は、やはりいまの世界がどうあるか、国際関係がどうあるかというようなことは、学校に学ぶ子供の発展、発育段階に応じて適切な教育を施すことによって、世界の現状なり国際関係なり、また、その間に処して日本の進むべき大きな態度なりというふうなものについて、正しい教育をしてもらいたいものと存じております。決して私は、国を守るということをいわゆる狭い意味の軍事教育だとか、国防教育だとか、そういうことを頭に置いて考えておるわけでは全然ございません。そうでないわけでありますが、平和国家として生きる、あるいは民主国家として生きる、福祉国家として生きるという理想を持ちながらも、お互いそれをいかにして実現していくかということになると、それぞれまた考え方の違いも出てくると思うのでありますが、そこまできますと、もう私の発言とは関係のないことに実はなってくるのであります。その辺のことについての論議は、この際はひとつ御遠慮したほうがよろしいのではないか。ただ、そういうことでなくて、何と言いますか、どういう表現がよろしいのかわかりませんが、私の言い方はきわめてプリミティブなことを申し上げておるということにもなろうかと思いますが、とにかくおよそ人間が生きておる以上、どこかの国にみな生きておるわけであります。そしてまた、お互いが何事をなすにつきましても、やはり国というものを通じていろいろなことが行なわれてくる。それが発展すれば結局、一つ世界として物事を考えていくということになりましょうけれども、現実の世界というものにどう対処していくか、どう生きていくかということについては、これまた誤りのない指導のもとにみんなが正しい判断をし、正しい意見を立てる、そういう基礎的な能力をつけていくのに学校教育が十分尽くさなければならぬ、かように考えております。
  21. 有島重武

    有島委員 大臣のお考えはほぼ了解いたしますが、世間一般受け取り方と、大臣考えとのその断層を私は一番心配するのです。それでいまおっしゃった心の意味は非常にプリミティブな意味愛国心である、国防意識である。だけれども、一番先に申し上げましたとおり、佐藤首相発言があって、あるいは倉石発言があって、いろいろなことがあって、その系列の中でだれでもとらえやすい。これは国民の側に立ってみればもっともな話でしょう。それですから、やはりそこをはっきりともうぼつぼつ政策のところまではいかないところを、心というのをもう一歩これは現時点においてはっきりなさったほうがいいのじゃないか。それをいつも心だ、心だと言っておりますと、これはどうともとれることになってしまいますね。それでいまはもう一歩、そう憶病にならずとも、だれでもの通念として、こうなのだというようなことばで、大臣の御発言として御発表になったほうが適当なのじゃないかというふうに思うのでございます。それがないと、やや心配なことは、いま愛国心の問題でございますけれども、江戸時代に持っていた愛国心——おそらくこれは地域的な川に隔てられ、山に隔てられして、そこに生まれたということで一つの郷土愛といいますか、そういうもので争っていた状態の中で、黒船が四はい来た。そのことによって日本という全体観に目ざめて、そこで初めて愛国心というようなことばが起こってきたのじゃないか。そういったような日本の国を中心とした愛国心につきましても、これは江戸時代には愛国心ということばはなかったはずでございまして、実際生活の中に日本全体というものが意識されてきた、その上に初めて愛国心が起こった。さっきおっしゃった一番プリミティブな心がそこまで広がった。そしてその心がなまのものでございましたため明治維新が起こったのだけれども、やはり西郷隆盛を呼び帰して、反乱を起こして、狭い愛国心に終わった。これも大臣のさっきのおことばによりますと許容できるということになるわけですが、現在の子供たち意識というものは、テレビなんかを見ておりましても非常にコスモポリタン的な面もございます。それでは全部がインターナショナルな感じになってしまえばそれでいいのか、そうもいかない。昔だって、やはり日本という一つの国家意識愛国心という郷土の特徴、個性というものが大事にされてきた。これが大事な問題であると思うのでございます。  そういたしますと、現在の日本人の持つべき愛国心というものはやはり昔とはまるきり違う。昔は薩摩からお江戸までは非常に時間がかかったわけであります。いまはアメリカから日本は非常に短い時間で来られるし、それから報道性の点から申しましても、大阪から江戸まで早馬でもって二日かかったという時代が、いまはケネディが死んだ二時間後にはみんなが知っているというふうに、まるきり違うわけであります。そうしたときに、今度は国を守っていく心、この意識というものが明治時代的な意識ではなくて、新しい世界認識の上に立った意識でないと、これまたいろいろな論争の種になると思うのです。現実に角材を振り回している学生たち国防意識が全くないのか、国防の心がないのか、あると思うのですよ。文部当局もあるいは大学の人たちも、それは国を愛する心はあると思うのですよ。その心がどれほど客観的な世界認識の上に立った愛国心であるかということは、いままさにこれが問題になっているところであると思うのです。これをだれかがやはり解決しなければいけない。これは政策といいますと、またその先にいってしまいますので、いつも疑心暗鬼の中でもってむだな対立が繰り返されていると思うのです。文部大臣の御発言がもう一歩進んでもいいのではないか、そういうふうに私ども思うのでございますけれども、たとえば神武天皇の話、大国主命の話でもいいですよ。それは確かに誇るべきわれわれの伝統について正確な理解を持っておる、それはいいのです。そういった理解、知識と同時に、現在の世界についてのやはりきびしい認識、理解というものを、これはさらに強力に指導要領の中にでも入れ込んでいくということを命じられるということが、健全な愛国心、愛国意識に通じる道じゃないか、こういうように思うのですが、いかがでしょうか。
  22. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 どういうふうに申し上げてよろしいのか、実は私も表現に困っておるのでありますが、私は、現在並びに将来におけるわれわれの国のあり方、あるいは進むべき方向というものは、全国民がひとしく考えなければならぬ問題だと思います。少なくとも現在の教育におきましては、しばしば申し上げておるところでありますが、これも受け取り方によってはいろいろ御議論があると存じますけれども、私ども考え方は、やはり日本の憲法あるいは教育基本法、その精神を忠実に追求していきたいということでやっておるわけでございます。いまおっしゃいましたように、私が発言をした、それがいろいろ物議の種になり、あるいはまた混乱を起こしておる。こういうような仰せでございますけれども、その意味におきまして、こういう御質疑をいただくということは、私にとってはむしろ、不十分か存じませんけれども私の考え方世間に知っていただく一つの機会になることであります。そういう意味では、私は非常にその点は感謝しておるのであります。どういうふうに受け取られるかということになりますと、私自身もいかんともしがたい。一ぺん口に出したもの、それが新聞記事になった。その新聞記事が必ずしも私の思うようなものが出ておるわけではございませんが、皆さんはそれを中心にいろいろお考えになる。そこになると、さて方法もないということでありますが、あらゆる機会に私の考え方を申し上げるのが、私のあるいは任務かとも存じます。国会を通じてこうして御質問をいただくということも、私の考え方国民皆さんに知っていただく上からいえば、よかれあしかれとにかく意義のあることだ、その意味で私は感謝いたしておるわけであります。  日本の現状が明治の日本とは違う、あるいはもちろん旧幕時代とは違うということは、これは当然のことでございます。また、教育の上におきましても、そういうことは常に配慮せられて私は指導いたしておると思います。また、現在の学習指導要領等について見ましても、現在の日本が、いわゆる世界の中における日本という点を非常に強く教育内容としてやっておると私は思うのであります。どちらかといえば、むしろ世界日本という関係は非常に強く出ておる。必要なことでありますから当然のことでありますけれども、非常に強く出ておる。そしてまた同時に、一面からいうと、個人という問題も非常に強く出ておる。ただ何となしに、これは私がしろうとで言うわけでありますからなにでございますが、現在の学習指導要領をすなおに読んでみますと、個人と世界との間の、おる国というものに対する記述は、どちらかといえば薄いのじゃないかという感じを私としましては受けておるのです。もちろん、個人と国と世界ということについて指導はいたしておるわけでございますけれども、そういう感じは率直に申し上げて受けておるわけでございますが、いずれにしましても、このいまの世界に、その中における日本としてどうあるべきか、また世界の情勢はどうか、こういうふうなことについては相当今日の教育では行なわれているように実は私は思っております。御心配になるような点は私はないのじゃないか、かように考えます。
  23. 有島重武

    有島委員 御心配になる点はないんじゃないかと大臣はお考えになっておる。ところが、やはり国民は心配しているから、ひとつ説明をなさったらいいのじゃないかと先ほどから言っておったのであります。ここにおけるお答え、ずいぶんいただきましたけれども、やはりやや古くさい明治調の国防愛国というふうに行ってしまうのじゃないかというふうに心配しているわけでございます。大臣としてはそれを否定していらっしゃいますけれども、その否定のしかたが、何かいま伺っていてもやや力が弱い、あいまいな点があると思うのでございますね。それでその点を、むしろこれは世間の勢いがそういうふうに誤解の方向に向かっているのですから、文部大臣としてはこうだ、文部省としてはこうなんだということを強く——それは学習指導要領にはこの方向で、戦後の教育ですからなっておりますよ。その点を、やはりどの辺に光を当てるかでございますね。そのことは、やはり現段階においては積極的にこれをなさったほうがいいのじゃないかと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  24. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 どうも有島さんのおっしゃることがわかったようなわからぬような気がするのでありますが、私としましては、先ほど来るる申し上げておるような心持ちで、もしそれがそのままに世間へ伝わらない、あるいはまたそれが何かの誤解を起こすもとになっておるということであれば、私の考え方をできるだけ皆さんにわかっていただくような努力をするということが、いまの私としては当然のことだと思うのであります。有島さんのおっしゃるのは、こういうふうなことをやったらどうかというお話があるのだとわかるのですが、どういうふうに申し上げてよろしいのやら、実はお返事に困っておるようなわけなんです。
  25. 有島重武

    有島委員 ややあいまいであったと思います。それではもう一ぺん私の考えを申しますと、大臣発言がやや誤解されて、いろいろ論議されている。むだな論議が繰り返されているということは大臣が御承知であると思います。それでむだな論議が起こらない程度に、重ねて、この前言った国防という意味はかくかくこのような広い意味なのであるということをはっきりと、これは何かの機会におっしゃったほうがいいんじゃないか、あるいは指導要領の問題ですね、そのことについてもおっしゃったほうがいいんじゃないか、そのように私は提案申し上げるわけでございます。それはおわかりくださるでしょうか。
  26. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 よくわかりました。十分私の考え方の趣旨を皆さんに知っていただくように、私としても努力をいたしますが、皆さんのほうにおかれましても、この点はひとつすなおに聞いていただきたい、かように存じます。
  27. 有島重武

    有島委員 それでは、ごく近い将来に大臣が何らかの御発言をしてくださることを、これは教員側も父兄側も期待しておると思いますので、よろしくお願いいたします。
  28. 谷川和穗

    谷川委員長代理 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  29. 谷川和穗

    谷川委員長代理 それでは速記をお願いします。  本日の委員会はこういう状態でございまして、委員長代理として、まことに委員会の運営について責任を感じております。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時八分散会