運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1968-03-13 第58回国会 衆議院 文教委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月十三日(水曜日)    午後一時四十七分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 臼井 莊一君 理事 久保田藤麿君    理事 坂田 道太君 理事 谷川 和穗君    理事 西岡 武夫君 理事 小林 信一君    理事 長谷川正三君 理事 鈴木  一君       有田 喜一君    稻葉  修君       久野 忠治君    河野 洋平君       高橋 英吉君    床次 徳二君       中村庸一郎君    広川シズエ君       藤波 孝生君    渡辺  肇君       川村 継義君    小松  幹君       斉藤 正男君    樋上 新一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         文部大臣官房長 岩間英太郎君         文部省初等中等         教育局長    天城  勲君         文部省文化局長 安達 健二君         文部省管理局長 村山 松雄君         文化財保護委員         会事務局長   福原 匡彦君  委員外出席者         議     員 斉藤 正男君         専  門  員 田中  彰君     ————————————— 三月八日  委員河野洋平君及び渡辺肇辞任につき、その  補欠として桂木鉄夫君及び佐藤文生君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員桂木鉄夫君及び佐藤文生辞任につき、そ  の補欠として河野洋平君及び渡辺肇君が議長の  指名委員に選任された。 同月九日  委員有島重武君辞任につき、その補欠として浅  井美幸君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員浅井美幸辞任につき、その補欠として有  島重武君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員有島重武君辞任につき、その補欠として樋  上新一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月九日  学校警備員設置に関する法律案斉藤正男君  外八名提出衆法第五号)  市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する  法律案斉藤正男君外八名提出衆法第六号)  日本学校安全会法の一部を改正する法律案(斉  藤正男君外八名提出衆法第七号) 同月十二日  国立及び公立学校教員に対する研修手当の  支給に関する法律案鈴木力君外一名提出、参  法第二号)(予)  高等学校定時制教育及び通信教育振興法の一  部を改正する法律案松永忠二君外一名提出、  参法第三号)(予) 同月十三日  産業教育手当法案松永忠二君外一名提出、参  法第四号)(予)  へき地教育振興法の一部を改正する法律案(鈴  木力君外一名提出参法第五号)(予) 同月六日  外国人学校制度創設反対に関する請願平等文  成君紹介)(第二一一三号)  同(福岡義登紹介)(第二一一四号)  同外四件(枝村要作紹介)(第二一三五号)  同(加藤万吉紹介)(第二二〇二号)  同(米田東吾紹介)(第二二〇三号)  同(井岡大治紹介)(第二三〇三号)  同(木原実紹介)(第二三〇四号)  同外一件(神門至馬夫君紹介)(第二三〇五  号)  同外一件(広沢賢一紹介)(第二三〇六号)  同(渡辺芳男紹介)(第二三〇七号)  同(川上貫一紹介)(第二三〇八号)  同(田代文久紹介)(第二三〇九号)  同(谷口善太郎紹介)(第二三一〇号)  同(林百郎君紹介)(第二三一一号)  同(松本善明紹介)(第二三一二号)  学校図書館法の一部改正に関する請願外一件  (荒木萬壽夫紹介)(第二一三六号)  同外十九件(上村千一郎紹介)(第二一三七  号)  同外十四件(小笠公韶君紹介)(第二一三八  号)  同(奧野誠亮紹介)(第二一三九号)  同外十件(亀山孝一紹介)(第二一四〇号)  同外三件(木野晴夫紹介)(第二一四一号)  同(坂本三十次君紹介)(第二一四二号)  同外百五十三件(長谷川峻紹介)(第二一四  三号)  同外一件(渡海元三郎紹介)(第二一四四  号)  同外七件(奧野誠亮紹介)(第二一九五号)  同外五十三件(木村武雄紹介)(第二一九六  号)  同外十一件(久野忠治紹介)(第二一九七  号)  同外三十八件(小山長規紹介)(第二一九八  号)  同外三件(広川シズエ紹介)(第二一九九  号)  同(古屋亨紹介)(第二二〇〇号)  同外五件(和爾俊二郎紹介)(第二二〇一  号)  同外一件(赤澤正道紹介)(第二二九六号)  同外十五件(亀山孝一紹介)(第二二九七  号)  同外一件(久野忠治紹介)(第二二九八号)  同(木野晴夫紹介)(第二二九九号)  同外十件(床次徳二紹介)(第二三〇〇号)  同外百六十六件(白浜仁吉紹介)(第二三〇  一号)  同(早川崇紹介)(第二三〇二号)  幼児教育振興に関する請願鈴木一紹介)(  第二二〇五号) 同月十二日  学校図書館法の一部改正に関する請願外四十三  件(石田博英紹介)(第二三九六号)  同外五件(宇野宗佑紹介)(第二三九七号)  同外一件(奧野誠亮紹介)(第二三九八号)  同外八件(亀山孝一紹介)(第二三九九号)  同(木野晴夫紹介)(第二四〇〇号)  同外百四十七件(高見三郎紹介)(第二四〇  一号)  同外二件(辻寛一紹介)(第二四〇二号)  同外八件(池田正之輔君紹介)(第二五〇三  号)  同(上村千一郎紹介)(第二五〇四号)  同(小坂善太郎紹介)(第二五〇五号)  同外二十一件(辻寛一紹介)(第二五〇六  号)  同(南條徳男紹介)(第二五〇七号)  同外二件(根本龍太郎紹介)(第二五〇八  号)  同外二件(古川丈吉紹介)(第二五〇九号)  同(上村千一郎紹介)(第二五九六号)  外国人学校制度創設反対に関する請願外三件(  井岡大治紹介)(第二四〇三号)  同(古川喜一紹介)(第二四〇四号)  同(神近市子紹介)(第二五一〇号)  同(後藤俊男紹介)(第二五一一号)  同(島本虎三紹介)(第二五一二号)  同(木原実紹介)(第二五九四号)  学校図書館司書制度確立に関する請願(仮谷  忠男君紹介)(第二五九五号) は本委員会に付託された。     —————————————本日の会議に付した案件  学校警備員設置に関する法律案斉藤正男君  外八名提出衆法第五号)  市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する  法律案斉藤正男君外八名提出衆法第六号)  日本学校安全会法の一部を改正する法律案(斉  藤正男君外八名提出衆法第七号)  文教行政基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより会議を聞きます。  この際、斉藤正男君外八名提出学校警備員設置に関する法律案市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案及び日本学校安全会法の一部を改正する法律案議題とし 順次提出者より提案理由説明を聴取いたします。斉藤正男君。
  3. 斉藤正男

    斉藤正男君 ただいま議題となりました学校警備員設置に関する法律案について、提案理由内容概略を御説明申し上げます。  第一に提案のおもな理由について申し上げます。  今日、学校教育法で規定する公立学校の用に供する教育財産管理地方公共団体の長の総括のもとに教育委員会管理するものと規定されています。(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第二十三条、「教育委員会職務権限」、第二十八条、「教育財産管理等」、第三十三条、「学校等管理」)そしてこの学校等管理の重要な仕事一つとして教職員宿日直勤務が行なわれているのであります。  数職員宿日宿勤務を課する根拠法規とされているのは労働基準法並びに地方公共団体条例教育委員会規則等であります。もとより、この教職員宿日直勤務は戦後に始まったものではなく、旧憲法体制下学校においていわゆる「御真影」を守るということを主要な任務として古くから行なわれてきたものであります。  しかし、先に述べましたように学校等管理責任設置者たる地方公共団体教育委員会にあることは明らかであり、一方教職員職務については学校教育法第二十八条において明らかに規定されているのであります。すなわち「校長は校務を掌り所属職員を監督する」「教諭児童教育を掌る」としており、その他、養護教諭事務職員、助教諭についてもそれぞれ同趣旨の規定をいたしております。  したがって、宿日直勤務の通常の内容(主として学校等にかかる火災盗難等防止)が教職員の本来の職務に照らして、その積極的意義を見出すことができないといわなければなりません。しかも、現在行なわれている宿日直勤務教職員の主たる職務である教育活動に深刻な障害を与えているとともに、生命の危険にさえさらされている事情からして、この際、私ども教職員学校警備に関する負担を抜本的に検討し、教職員がより一層教育に専念することができるようにするとともに、学校火災盗難等防止のために専門学校警備員設置する法律を制定することがきわめて至当であり、緊急かつ重要なことと考えるものであります。  そのためには主として教員の現在における勤務全般的情況について考察し、その具体的な事実の中から本法律制定の必要な趣旨を理解していくことが大切であると考えます。  今日、教員は他の産業に従事する者と同じく労働基準法がほぼ全面的に適用されることとなっているとともに、勤務時間等については条例で定められることになっており、大部分の都道府県では  一週四十四時間、一日八時間と規定しております。しかし、勤務実態はこれをはるかに超過していることは昭和四十一年度の文部省調査によっても明らかでありまして、平均一週三時間前後の超過勤務をせざるを得ないのが実情であります。しかも、この数字は調査が可能な項目に照応する勤務時間であって教育という特殊性からくる教員個々学習研究活動等を含めるならばさらに実情は多くなっていることが明白に推量することができるのであります。その上、これらの超過勤務については労働基準法に規定する超過勤務手当を一切支給していないことにも留意する必要があります。また、今日の教員勤務実情は、その勤務時間が不当に長いというばかりではなく、その内容も著しく官制化して複雑であり、肉体的、精神的疲労度を強めているのであります。本文教委員会でもこれまでしばしば請願を受け、重要な問題としている就職、入試問題と、これにかかわる補習授業強制的傾向テスト主義傾向等教員に不正常な負担を多くしているのであります。  また、雑務に類する事務量が拡大の一途をたどっており、不必要な諸帳簿がふえ、金銭の集納事務等教員超過労働の大きな部分を占めているのであります。この雑務といわれる仕事について教育行政者も一般的には好ましくないとしていますが、事実は当局自身がかえって管理面から教員事務量を増していること、また学校給食PTA関係等に関する雑務現実には一挙に除去しがたい実情にあることにも留意する必要があります。  また、教員にとっては労働基準法に規定する休憩時間がほとんど有名無実となっており、年次有給休暇労働基準法第三十九条)についても普通一年間二十日を与えなければならないにもかかわらず、教職員定数等の制約のもとで実情年平均、四日前後という実情であることに注目しなければなりません。そのほか当局の計画する各種研究会生活指導クラブ活動等超過労働、休日労働が増大しているのであります。  以上を要約して申し上げますと、教員仕事がその職務である生徒児童教育をつかさどること以外にあまりにも多くの勤務時間と勤務量を必要または強制されており、労働基準法の規定する近代的な最低の基準をはるかに越え、その異常な精神的、肉体的疲労の結果が教育活動そのものに大きな障害を与えているといわなければなりません。  さらに重要な障害となっていることは学校警備に関する宿日直勤務ということであります。世界各国教員は、申すまでもなく児童生徒教育に専念できる体制が確立され、教員学校警備仕事に従事させられている事例は全く存在せず、先進国一つにあげられている日本のみにあるという事態は一刻も早く改めるべきだと考えるのであります。  一九六六年九月、パリにおける特別政府間会議で採択された「教員の地位に関する勧告」の八十七項は「教員がその専門的職務に専念することができるように、学校には授業以外の業務を処理する補助職員を配置しなければならない」と規定していることは、本件の解決にあまりにも明瞭にその指針を与えているといえます。  昭和三十八年二月、広島県において日直中の女教師が相次いで暴漢に襲われるという遺憾な事件が発生して以来、単に教師のみでなく、日本教育界でも学校警備員設置必要性が強調され、文教委員会も第四八、四九国会において学校警備員委員会設置し、長期にわたり検討を加えたのであります。  そして昭和四十一年五月に文教委員会は小委員会報告を受け「学校警備員設置方向はのぞましい」「調査結果をまって必要な措置を講ずる」ことを満場一致確認したのでありますが、文部省調査結果がすでに昨年発表されているにもかかわらず、学校警備員設置についての何らの措置が講じられておらない現状にあります。  以上のおもなる理由により、私ども教育質的向上教師の健康と生活を最低保障するために、この学校警備に関する教員宿日直負担を根本的に軽減し、教員教育に一そう専念できるよう学校警備員設置に関する法律を制定しようとするものであります。  第二に、本法律案内容概略について御説明申し上げます。  第一条においては、すでに述べました本法律制定の目的を明らかにしたものであります。  第二条は、学校、並びに学校警備員の定義をしたものであります。ここでいわゆる公立の諸学校に限定いたしましたのは、国立学校においてはすでに学校警備員設置されていますので、あらためて規定する必要を認めなかったのであります。  第三条においては、学校警備員二人以上を置かなければならないとして、学校警備員職務が最低限保障されるようにしたのであります。  第四条は、本校、分校とも一つ学校とみなして警備が行なえるようにしたのであります。  第五条、私立の学校についても公立の例にならい、学校警備員を置くようつとめなければならないとしたのであります。  なお、この法律昭和四十三年四月一日から施行することといたしております。  以上、提案理由内容概略について御説明申し上げました。  なお、続いて市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案につき、その提案理由及び内容概略を御説明申し上げます。  科学技術の日進月歩する今日、教育拡充発展世界各国共通の課題であり、完全なる教育質的充実発展につとめていることは御承知のとおりであります。  しかるに日本現状を見ますと、教育公務員勤務条件は決して十分とはいえず、相当大きな超過勤務が行なわれ、過重労働に追い込まれているのであります。  すなわち、本来職務内容から不特定雑務まで一切を背負わされ、法律に基づく一日八時間、一週四十四時間以内では、とうていその職務を処理することができず、超過勤務を余儀なくされているのが実態であります。  一九六七年における文部省調査によりましても、教育公務員は捕捉できがたい教育活動を除いて、小学校では二時間三十分、中学校三時間五十六分、全日制高等学校三時間三十分の超過勤務の事実が明らかにされているのであります。  教育公務員の絶対数の不足免許外教科の担当や過大学級によるものはもちろん、受け持ち時間数が多く、これに伴つて研修授業準備事後処理、採点などに要する時間が増加しており、さらに生徒会指導校外指導は、家庭訪問などの重要な指導に相当時間がかかるためであります。  また、事務職員養護職員給食関係職員、用務員の不足から、調査統計給与等事務や、出張、集金、給食保健衛生図書等に関する仕事が多く、さらに湯茶接待、清掃、営繕等の不特定雑務が多いことが原因となっているのであります。  以上のような勤務実態は、本来の教育活動を大きく妨げていることはもちろん、教育公務員の私生活まで圧迫し、健康的で人間らしい生活をゆがめているのであります。  このような超過勤務現実に存在するにもかかわらず、超過勤務手当すら支払わないことはきわめて遺憾なことであります。  教育公務員以外の公務員については、法的根拠に基づいて超過勤務手当が支払われており、また、そのために給与の六%に相当する額が予算化されているのでありますが、ひとり教育公務員のみが、超過勤務をしているにもかかわらず超過勤務手当が支払われないのは不当であります。  現実教育公務員超過勤務を行なっている以上、理由のいかんにかかわらず、超過勤務手当を支払うべきであり、このことは労働基準法やその他の諸法令次官通達人事院事務総長の回答、京都地裁判決、千葉県人事委員会判定等から当然のことであり、昨年八月の人事院勧告も、教育公務員超過勤務手当について「現行制度のもとにたつ限り、正規の時間外勤務に対してはこれに応ずる超過勤務手当を支給する措置が講ぜられるべきは当然である」と述べており、教育公務員のみを例外として認めることは許されないのであります。  したがって、この際、所要の改正を行なおうとするものであります。  以上がこの法律案提案理由及び内容の概要であります。  続いて、このたび社会党から提出いたしました日本学校安全会法の一部を改正する法律案につきまして、その提案内容理由を申し上げます。  先ず内容といたしましては、現在義務教育学校児童生徒学校安全会共済掛け金は、学校設置者父母が折半をして負担をしておりますが、昭和四十三年度から、この共済掛け金負担率設置者十分の七、父母十分の三としたいとするものであります。  理由といたしましては、私は児童生徒の安全ということについて現状を憂慮をする立場にあることを申し上げたいと思います。その理由一つとして、最近の児童生徒交通災害の多発があげられましょうし、いま一つ中学校の理科、技術科、体育など、特に技術科の実習中の事故がふえてきていることを重視したいと思うわけでございます。  したがって、将来においては、国家公務員地方公務員民間労働者災害補償の諸法律で守られておりますように、児童生徒のこれらの災害が、国家なり公共団体全額負担をして補償をしていくという、社会保障制度として考えたいわけでありますが、当面義務教育費父母負担の軽減の点をも考慮をして、学校設置者共済掛け金の若干の増により、安全会制度前進をはかりたいと考えたわけでございます。  当然私たちは、児童生徒をあらゆる危険から守る安全の確保が最も重要だと考えておるわけでございますが、さきに申し上げたとおり、児童生徒災害から保護をする一方、万一不幸にして安全会法の適用を受ける際には、できるだけ父母負担でなく、社会責任において果たしたいという、制度としての一歩前進といつた点からも当面の措置として提案をする次第でございます。  以上が提案内容とその理由でございます、何とぞ十分御審議の上、すみやかに、御決定をいただきたいと存じます。
  4. 高見三郎

    高見委員長 以上で提案理由説明は終わりました。      ————◇—————
  5. 高見三郎

    高見委員長 文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。谷川和穗君。
  6. 谷川和穗

    谷川委員 先般留保いたしました私の質問につきまして、文部大臣所信表明を中心に若干質問を続けさせていただきたいと思います。  最初に、初等中等教育すなわち義務教育普及充実についてでございます。その中で、特に文部大臣所信表明では、初等中等教育普及充実については、一に教職員の資質の向上、二に処遇改善をはじめ、三に施設設備の整備、四に教職員定数充実等についてさらに努力を重ねるとともに、特に教育質的向上をはかるため、時代の進展と児童生徒の適性、能力に即応するよう、五に教育内容改善をはかりたいと存じます、こう述べておられます。  私は、まず最初教員処遇改善の問題から質問をさせていただきたいと存じます。まず初めに考えますことは、最初質問におきましても申し上げましたように、やはり今日われわれは近代国家が形成されるその過程の中で非常に大きな産業構造の変化が起こりつつあるのだというこの問題を常に念頭に置いて文教政策を論じなければいけないのじゃなかろうかと思っておるわけでございます。特に教員処遇改善すなわち給与の問題ということになりますと、今日民間給与の著しい上昇のためと、もう一つはその近代国家の形成の過程、行き着くところへ行き着いてきたわけでありましょうが、どちらかというと、むしろわが国のような国柄では高等教育に相当の力が集まってきて、義務教育のほうは教職としての魅力を失いかけておるような感じがなきにしもあらずという気がいたします。これは先進諸国においても最近特に顕著にあらわれてきておる状態ではなかろうかと思います。振り返って考えてみまして、昭和二十三年、例の二千九百二十円ベースの教員給与が決定いたしましたときに、あの当時としては初めての職務給の思想がこの教員給与の中へ取り入れられまして、そのおり教育職員というのは独自の要素があるということで、すなわち勤務特殊性を考慮して他の一般職よりも高目給与がきまったという事実がございます。ところがその後、その他の一般職公務員に比べましても、あるいは教育職内部の種々の矛盾によって生じてきましたその矛盾解決のための給与改善方向を見ましても、さらには何回かにわたって行なわれました、このただいま申し上げました給与改善実態から申しましても、いまも私が取り上げましたような問題が根本的に解決されておるとはいえない筋がございます。特に昭和三十六年以降は、最初に触れさせていただきましたように、民間給与の著しい上昇というものは、われわれ教育を論ずる場合に教員処遇改善にとって非常に大きな問題を投げかけたのだというふうに理解すべきであろうと思います。  したがって、文部大臣お尋ねを申し上げたいのでありますが、大臣所信表明にもございましたこの教職員処遇改善について、ただいま私が申し上げますような点を考慮しながら大臣としては今後できるだけすみやかにこの教員給与改善については抜本的な方策をお考えになっておるかどうか、この点についてまず最初にお伺いをいたしたいと存じます。
  7. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 教育の重要な役割りにかんがみまして、教育に従事する教職員に人材を集めなければならないことは申すまでもないことでございます。その意味からいたしまして、現在の教職員に対する給与の状況は必ずしも満足すべきものではないと率直に認めざるを得ないのであります。政府といたしましても、この問題につきましては年来検討をいたしているところでございますが、ただいまお尋ねになりましたような御趣旨に沿うものかと考えるのでございますけれども明年度予算につきましては、教職員勤務実態について調査をいたしまして、その調査の結果に基づきまして教職員に対する特別の給与体系というようなものを創設したらいかがであろうか、かような考えのもとに予算のほうをお願いいたしているわけでございますが、われわれといたしましては、お尋ねの御趣旨のとおりに、教職員に対する給与体系について格別な考え方のもとに調査を進めてまいりたい、そのような心持ちで現在おるわけでございます。
  8. 谷川和穗

    谷川委員 教員に特別俸給表が適用されたのが昭和二十九年であったかと存じますが、その後昭和三十二年に職務の級があまりにも複雑であるというようなことから、例の頭打ち、あるいはワク外者が急増しているというこの実態をとらまえて、新しい職務給への切りかえが行なわれました。そのときに産振手当が創設され、さらに旧勤務地手当の廃止がなされて、暫定手当としてこれを本俸に繰り入れられるという手だてがとられたわけでございます。今回文部省は超勤問題に対して新たな手当を考えておられるようでありまするが、そのような給与の一部というより、むしろ基本的に給与改善し、人材を集めるほうがよいと考えますが、その点についてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  9. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 教職員勤務実情にかんがみまして、今回教職特別手当というものを考えて、法案において御審議を願うことになっておるわけでございます。ただこの手当は、われわれとしましては暫定的なものと考えておるわけでございまして、先ほどのお尋ねにもございましたように、根本的に教職員給与体系について調査を進め、適切な体系づくりをしてみたい、それができるまでの暫定的な取り扱い、こういうふうに御了承を願いたいと思います。
  10. 谷川和穗

    谷川委員 超過勤務に対する基本的な問題について二、三御質問を申し上げたいと存じます。  一つは、教育というものの持っている本質から、国民すべて非常に教育の問題については大きな関心を持っておる、こういう意味から、多くの国民の持っておる感情、気持ち、こういうものを考えながら質問をさせていただきたいと思いまするが、まず第一に、超過勤務の問題の中では、学校職員の中に二つの種類がある。すなわち教員事務職員と二つに分けておって、事務職員に対しては予算の裏づけがあるにもかかわらず、教員に対しては国庫負担法の原則、すなわち実支出額規定がございまして、ここにおいて国の負担区分は確立しておるわけでございまするけれども、これについても手だてがございませんし、また市町村立学校職員給与負担法第一条にもございませんし、さらに地方交付税法にいうところの教育費の中にも計上されていない。すなわち学校教職員を、時間外勤務が、予算の裏づけがあってのいわゆる事務職員と、予算の裏づけのない教員という二つのものに分けておる。これは先般お聞きをいたしましたので、その論を続けさせていただきますが、もう一つ制度的に見ますると、先ほどちょっと触れさせていただきました昭和三十二年職務給制度が創設されたときの本俸切りかえ表を見ますると、一般職は六割増しになっておるにもかかわらず、教育職員に対してはこれが八割増しになっておる。その理由として、当時勤務時間が四十八時間をこえる者を基礎として八割としたのだ、教員はこの中に含まれるのである。そのかわりとして超過勤務手当は支給しないのだというふうに一般に理解をされてきたと思うのであります。  三番目に、昭和二十九年に特別調整額創設のおりに、これは先般公務員に対してなされたことでございまするが、やはりこの論議としては、管理職としての勤務特殊性と、もう一つ勤務のとらえ方が非常にむずかしいということで、この特別調整額が創設されております。  以上の事柄をいろいろ組み合わせて考えてみますと、まず第一に、教育職というのは勤務態様が区々で、いろいろさまざまあって、時間外勤務を必要とするときは、原則として勤務時間の振りかえによるべきものという前提があるのだということが一つ。それからもう一つ教育職の勤務というもの、その成果を時間で算定することは必ずしも不可能でないかもしれないが、これはすこぶる困難であるということ。それから三番目といたしましては、教育職の労務報酬について、これを時間を基準として計算することはおのずから限度があることなんだ、かつ、最も合理的であり、有効のものとは言い得ないのだ。こういうような共通の理解がいままで成り立っておったと思うのであります。もしこれを逆に教員勤務の時間のみに拘泥をいたしますと、たとえば夏休みとか冬休みあるいは春秋の休み、さらには農村地帯では農繁期の休業というものがございます。こういうものを全部ひっくるめましても、年次有給休暇を差し引きましても、なおかつ四十五日程度の休業中の教員勤務態様があらわれてくると思いまするが、これについては初中局長から御答弁いただきたいと思いまするけれども、この休業中の教員勤務態様は一体どのようになっておるのか。特に二、三諸外国における例などありましたら、この際ひとつ教えていただきたいと存じます。
  11. 天城勲

    ○天城政府委員 ただいまの御質問教員給与の沿革的な事情並びにこれに伴います教員勤務態様についてのたいへん広範な基本的な御質問でございます。  沿革的に申しますと、御案内のように昭和二十三年の十五級制の切りかえのときに、一般の行政職員よりも一割程度増額して給与が切りかえられたことは事実でございますし、その当時も一般の公務員よりも高くしたことと関連いたしまして、原則といたしまして超過勤務を命じないという指導方針並びに勤務時間の管理につきましては、いわゆる変形八時間制の活用等の指導をしてまいったわけでございます。しかるに給与制度はその後幾たびか変遷を遂げておりまして、特に教員職務責任特殊性に基づいて俸給表が別立てになって以来、一般職職員との給与水準の比較というものが簡単にまいりませんで、給与制度の変遷が続いて今日に至っております。  この間も超過勤務に対する考え方も分かれてきておったわけでございまして、現実に一昨年われわれが調査いたしました実態におきましては、時間外の勤務考えられる実態が把握できたわけでございます。そこで、これに対する措置考えなければならぬという段階に至ったわけでございます。そこで、この教員勤務につきましては、御指摘のように制度上は、公立学校につきましては条例で一日八時間、週四十四時間というものが原則として定められております。したがって、勤務時間が把握できない、あるいはあいまいであるという考え方は毛頭ございませんで、正規の勤務時間というのは明らかにされておるわけでございます。ただ、この正規の勤務時間外の勤務について、実態としていろいろ事実が出ておりますけれども、これを一般の行政職員のように、一時間幾らという時間単位の形でとらえるのには適しない実態がずいぶんあるんじゃないか。要するに、勤務の態様からいって時間計測になじまない実態考えられるわけでございます。したがいまして、時間外に対する措置はいたさなければなりませんけれども、この措置のしかたは、一般に考えられている超過勤務と同じような方法でない方法のほうが教員勤務の態様に即するのだ、こういう考え方から、このたび新しい手当の創設を考えたわけでございます。  なお、このことと関連いたしまして、制度上は正規の勤務時間、一日八時間一週四十四時間という形が定められておりますが、御指摘の夏休みの話が、常識的には始終出るわけでございます。一がいに夏休みといわれておりますが、これは制度上は子供の休業日——休業日ということばが学校教育法系統の法律で使われておりますが、これは教育の面から考えた休業日というのは、子供の授業が俗にお休みの日をいうわけでございまして、教員という公務員の立場から申しますと、これは決して休暇でもなければ休日でもないし、休業日でもない。要するに勤務日に当たっておるわけでございます。したがいまして、勤務日であるから勤務に対応する報酬としての俸給が、たとえば夏休みでも学年末の休みでも支払われているわけでございます。  それでは、俗にいわれる夏休みにおける教員はどういう実態なのかということになるわけでございますが、われわれの調査で見てまいりますと、学校活動の関係で、最近は夏休みにおきましてもいろいろな学校の行事がございます。林間あるいは臨海学校等指導もございましたり、あるいは補習授業を積極的にやるところもございますし、学校に出てくる日あるいは学校外で勤務するという実態もございます。なお、全体といたしまして学校授業、要するに子供の授業がない日でございますので、教員については、いわば自宅における研修という形を認められておりまして、職務の一環として勤務するという考え方をとっておるわけでございます。したがいまして、形式的に申しますれば、年間の時間外勤務と、あるいは夏休み等の時間、休業日における勤務の態様とを相殺できるじゃないかという議論もあろうかと思うのでございますけれども、一応われわれは、勤務勤務勤務外の時間は勤務外の時間という形で考えていったほうがいいんじゃないか、現行制度の上で考えてそういう措置考えたわけでございます。  なお、夏休みの問題というのは、実は教員勤務考えます場合に一番基本的な問題でございまして、諸外国においてこれをどう扱っているかということは、われわれも現段階において検討はいたしておるのでありますが、事情はいろいろ違います。たとえばアメリカの例フランスの例等をいま調べておるわけでございます。アメリカなど州によって異なりますが、アメリカでは一般に教員給与は年俸の形をとっておりますが、通常その年俸の内容といたしましては、休暇を除いた計算にいたしておるところがございます。一般教員は九カ月であるとか、あるいは校長は十二カ月だとか、あるいは十カ月だとかいうように、その契約の中身に基づいた俸給の積算をいたしまして、それを年俸として幾らと計算し、支払いは十二カ月に分けて分割支給するというようなやり方をしている例もあります。これはまさに授業を中心とした勤務に対する俸給という考え方で、それ以外の勤務日本における超週勤務とは違いますが、クラブ活動の指導員に対しては課外活動の手当を別に出すというような、かなり時間を中心とした考え方をとっているところもございます。  なお、諸外国の給与制度につきましては、われわれも今後の課題として詳しく調べたいと思っておりますが、フランスあたりは一般官吏と同じ身分扱いで、特に俸給についても一般公務員と同じようなやり方をいたしておるようでございます。詳しいことはなおわれわれも検討した上で、あらためて御説明申し上げたいと思います。  教員勤務時間につきましてはたいへんむずかしい問題がざごいますが、現行法に基づく限りは、一日八時間、週四十四時間の勤務時間というのは明らかにされておる、時間外の勤務という実態も把握できる、ただ、その時間外の勤務については一時間幾らという時間計測になじまない実態がある。このように教員勤務時間については把握いたしておるわけでございます。
  12. 谷川和穗

    谷川委員 児童が休業中ということは、すなわち学校授業が行なわれないという期間だと思いますが、今回の時間外勤務に対する措置として教職特別手当を出すというのであれば、これを年間通じて一律に出すというのは理論的にきわめておかしいと思いますが、その点はどういう御説明になりますか。
  13. 天城勲

    ○天城政府委員 ただいま御説明申し上げましたように、正規の勤務時間外の教員仕事、活動の中に、勤務の延長と考えられる実態もございます。しかし、それは必ずしも一時間という時間単位でその効果を判定したり評価したりするには適しない態様があると考えるわけでございます。したがいまして、時間外の勤務に対する報酬ではございましても、その時間外における活動の質と量とを一括集約して考えたほうがいいという考え方で、一律の教職特別手当というものを考えたわけでございますので、一々の時間外の時間というものを必ずしも根拠に置いておりません。また、教職員の活動から考えまして、いまの趣旨から申しますと、ある月において事実上の時間外の勤務がある。あるいは他の月にない場合がある。また月によってその繁閑が違うということがございましても、これを一々時間で計測するには非常に適しないということで、いわばこれを平均的に考えていこう、量と質というものを平均的にとらえたほうがいいのではないかという考え方をとった考え方は、やがて年間を通じてという考え方にも通ぜざるを得ないわけでございまして、私たちといたしましては、そういう意味で年間を通じて一定率——この場合四%という率を考えたわけでございますが——支給したほうがかえって実態に即するのではないか、このように考えたわけでございます。
  14. 谷川和穗

    谷川委員 最初に申し上げさせていただきましたように、国民は教育に関する限り非常に高い関心を示すわけでございます。特に、すさまじい勢いで近代化の達成されつつあります今日の日本社会におきましては、なおのことそういう傾向が顕著でございますが、憲法二十六条にいう表現は、これは国民一人一人がひとしく教育を受ける、言うなれば市民的権利を宣言した条文であろうと思います。特にそのあと後段で親の義務が明記されております。親権者としての義務が明記されておりまするけれども、そこで私は、最初この問題を論議するにあたり、国民的感覚で、こういう表現を使わしていただきましたが、実は教育者に対しても、やはり多くの国民は教職にある者は特別な方々であるという感覚をお持ちであるというふうに感じております。というのは、教育者といえども、もちろん憲法二十七条の働く者の権利は当然これはかぶっておるわけでありまするし、労働基準法一条にいうところの労働条件の原則、これも当然かかるということは一般国民みんなわかっていることだと思います。ところが同時に、今日教職にある方々、特に義務教育の面だけ取り上げていうならば大半は地方公務員でございます。地方公務員の中から教育公務員だけ特別に取出して書かれている条項が教特法の二十一条の三であろうかと思います。すなわち国立学校教育公務員の政治的行為の制限について規定されている条項でありますが、その中にこういう条文がございます。地方公務員法第三十六条、これは地方公務員の政治的行為の制限条項でございますが、その「地方公務員法第三十六条の規定にかかわらず、国立学校教育公務員の例による。」こうわざわざ教特法二十一条の三で規定されておるわけであります。これは一般職地方公務員の中から教育公務員だけ特別に取り出しておる条項だといえるわけであります。言うなれば、一般職地方公務員は地域社会の住民に対して責任を負う。しかし、教育職の地方公務員は国民全体に対して責任を負うべきものなんだというように読める条項であると思うわけでございます。  超過勤務に対しましても、国民の素朴な感覚というのは、やはり教職というものは特別の職であるというふうに理解しておるのじゃないかと思われるわけであります。すなわち、先ほどもちょっと局長の御答弁の中にもございましたが、時間ではかるというようなことがはたしてできるかどうかということ、あるいはそれが合理的であるかどうかということ、たとえていうならば一時間の家庭訪問と三時間の家庭訪問と質的にどちらがどうというような議論を時間的にやることが是か非かというまことに素朴な感覚でございます。こういった問題だとか、あるいは校長先生の権限として、午後四時を限度としてそれぞれの先生方に任意退出してもよろしい。先ほどこれも局長の御答弁の中にございましたが、自宅で研修をなさい、こういう制度が、これは法律でできておるのではなくて、実態として存在し得るというのも、やはり教職が特別の職であるということをそれとなくみんなそれぞれに了解しているからであろうかと思います。さらには、これまた先ほどの局長の御答弁にもございましたけれども、夏休み等の扱い方にいたしましても、教職にある限り、やはり教員たる者は自己の研修につとめてもらって、みずからを高める努力を常に続けてほしいという、またそういう職なんだという、まことに素朴な面でありまするが、これが一般国民大衆の持っておりまする教職というものに対する感じ方であろうと思います。  要するに、これを端的に言ってしまえば労働問題だけでは教育問題は解決しないのだ、あるいは単純労働たとえていうならばキーパンチャーだとか、あるいは常に目の前をいく流れ作業の中で組み立てをしておるような組み立て工だとか、あるいは電話の交換ボックスへすわって、かかってくる電話を交通整理をしておる電話交換手だとか、むしろこういう方々の超過勤務問題を論議するならば、これはきわめてはっきりと労働基準法のいろいろな条項を当てはめることができるけれども、しかし、教職というものに対してはそれがなかなかむずかしいのだというのが率直な感じ方であろうと思います。これは戦前からいわれておりました無定量忠誠の義務という論争とはまるで違った角度から見ておる国民全般の感じ方であろうと思います。特に地方公務員たる公立学校教育職にある教員に対する国民的感情は、この点についてきわめて鋭いものを持っておると思うのであります。   〔委員長退席、坂田(道)委員長代理着席〕  以上申し上げましたような国民の持っておる素朴な感じ方、こういった問題を踏んまえて今回教特法の改正に踏み切られたかどうか、これは特に大臣からお答えをいただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  15. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御質問の中にもございましたが、教職員といえども働く人たちであるということについては変わりはない、こういう御趣旨であったかと思うのであります。私もそのように考えるのでございますが、ただ、教職員勤務というものがいわゆる賃金労働者とかというふうなことばでもって考えられるような性質のものでないということも同時にいえることかと思うのであります。特定の利益に対して奉仕するものではなくて、国家社会全体に対して奉仕する任務を持っておるものであるということだけを見ましても、そこに大きな違いがあるということもいえるのではないかと思うのであります。同時に、国民感情の上から申しましても、やはり単純な——別に他の労働がどうのこうのという意味ではございませんけれども、教職に対する国民感情というものは、きわめて大切な仕事である、またこれに従事する教職員というものは尊敬せらるべき人でなければならぬ、こういうふうな気持はだれしも持っておる気持ちであろうかと思うのであります。私は、単純に何時間働いたら幾らの賃金を払うというようなことで割り切れないものが教職員勤務にはあるかと思うのであります。今回の法律改正につきまして私ども考えましたのは、なるほど教職員の方も時間外勤務はしていらっしゃる。一応の勤務時間というものはあるわけでございます。時間外の勤務をしていらっしゃるけれども、その勤務の性質、態様というものが普通の時間外勤務とは違っておるというふうなところを考えまして、特殊の制度としてこれを編み出してきたというのも、やはり教職員仕事が普通一般の事務なり、いわゆる労働なりとは違っておる、こういうところを前提として考えましたわけでございます。
  16. 谷川和穗

    谷川委員 問題を、一番最初私が提起さしていただきました近代国家の形成の課程における諸問題ということへ戻さしていただきまして、ここで公務員という問題について一ぺんお尋ねをさしておいていただきたいと存じます。特に公務員労働基本権、もっと端的な表現を申しますとスト権奪還という考え方についてでございます。  奪還ということばを使われている以上は、いつかの時点に戻るということだろうと思うのでありますが、つまり昭和二十三年の政令二百一号以前に戻すことを奪還、かりにこういうふうに考えますと、すべての公務員にあたかもスト権があった時代があったかのような議論をすることは私は根本的に誤りであると考えます。なぜかと申しますならば、スト権を認められた現業においても、政令二百一号以前において、いわゆる旧労働組合法あるいは労働調整法を調べてみれば、その時代からすでに争議権の限界についての指導は存在をいたしておりましたし、法律の中にも、命令によってという条項が確実に存在をしたわけでございます。さらには、その後最近になって、昭和四十年の七月十六日ジュネーブでなされました例のドライヤー報告書の中に、公務員を二種類に分けて、重要な業務と重要ならざる業務を二つに分け、重要ならざる業務に対してはスト権を認めてもいいかのごとき論がなされておりますが、私はこのドライヤー報告というのは、今日決して世界的普遍的なものではないと信じております。第一、もしドライヤー報告をそのまま日本の現在の公務員実態に当てはめようとすれば、重要ならざる政府業務と重要な政府業務との間ではてしない論争を呼び起こすわけでありまするし、第一、スト権とは一体何ぞやという、まことに本質的な論争さえ起こりかねないわけであります。したがって、最高裁の二、三の判決から徴しても、二十三年以前にすべての公務員にあたかもスト権が存在したかのごとく論ずるのは、根本的に間違いであるし、今日の日本法律体制のもとでは、公務員のストはこれは違法であるということはもうはっきりしておることだと思うのであります。  こういうことを前提にお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、昨年十月の二十六日に、われわれとしては非常に心痛むわけでありますが、先ほど来論議いたしてまいりました教育というものに対しての国民の素朴な感じ方に対して、まことに憂うべき事態が起こったわけでございます。こうした違法行為が起こらないように、将来どんな指導をしていこうとしておられるか、この点につきまして特に文部大臣からお尋ねをいたしたいと存じます。
  17. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 その職務の性質が、いわゆるストライキを認めることができないものについて現在ストライキを禁止せられておると私は思うのであります。いろいろ議論のあるところだと思うのでありますけれども、私は、現在のストライキを禁止いたしておる体制について、これを変える必要があるとは考えておりません。  どういうふうに指導するかというお話でございますが、格別名案があるわけでもございませんけれども、やはり何と申しましても、その仕事に従事しておられる方々が、自分の仕事の本質というものについて十分の理解を持っていただく、自覚を持っていただく、同時に法の禁止しておるものまであえて破るというようなことは、そのような仕事に従事しておる人としてはまことにふさわしくない事柄である。こういう点に対して強い自覚を持っていただくようにする以外には道はないかと思うのであります。何が何でも、法がどうであろうとも、力でもって破っていくのだというような思想は、最もおそるべき危険な思想であるかと思います。
  18. 谷川和穗

    谷川委員 今回国会に提案をされました学校教育法改正の中には、教頭や養護助教諭などを法制上の官制としてその地位を確立させる方針をとろうとしておると聞きますが、この点について局長からひとつ御答弁をいただきたいと存じます。
  19. 天城勲

    ○天城政府委員 御指摘のように、小学校中学校高等学校等における教職員の組織、それから職務を明確にするために、学校教育法一部改正案を今国会で御審議願うつもりでおるわけでございますが、その内容は、ごく簡単に申し上げますと、教頭と、その他養護助教諭、講師、実習助手、寮母、これらの職員の諸君を法律上明らかにいたしたい、こう考えたわけでございます。そのうちの教頭でございますが、従来は教諭をもって充てる職とされておったわけでございますが、今後教頭を新しく一つの独立の職といたして根拠を明らかにいたしたいと考えております。それから養護教諭あるいは養護助教諭、講師、実習助手、寮母につきましては、これは学校の構成職員としてきわめて重要な職務でございますが、現在教頭の充て職と同じように施行規則で規定されております、学校教育法上。これ以外の教諭につきましては、免許状のあるものについて学校教育法に規定されておりますが、養護助教諭のように、同じように免許状を必要とする職員でありながら、同じように並んで規定されていない。また講師実習助手、寮母も、教育公務員特例法は教育公務員の扱いをしているわけでございますので、何か法律上の扱いがふぞろいでございました。そこで、このたび教頭並びに養護助教諭講師、実習助手、寮母につきまして、その根拠を法律上明らかにしていきたいという考え方でおるわけでございます。
  20. 谷川和穗

    谷川委員 前回の委員会におきまして、学校管理、特に高等教育の場でありまする大学の管理問題についてお尋ねをいたしました。本日はさらに、その学校管理の問題をもう一段下げてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  ILO八十七号条約批准の当時、この条約の一番の骨子は、労使の慣行を確立することなのだということであったと記憶いたしております。そしてその後、この批准のあとに、その原則にのっとって人事院規則その他の改正あるいは追加があったと思うのであります。ところで、働く者の集まっておりまする職場というものは、管理体制が確立してこそ初めて職場として能率をあげ得るのだというふうに考えられるのでありまするが、この管理というものの本質から考えますると、今日学校というところは、たとえば交通安全教育とか、あるいは学校保健とか、あるいは学校図書館とか、その他特に社会増地域においては、時代の進展に伴う非常に幅広い社会的諸問題をかかえておる場所でございます。いまの局長の御答弁をふえんするならば、この際そういった職場における管理体制を確立する意味からいっても、教務主任とかあるいは学年主任を学校教育法の中に規定して、管理職としての機能を持たせたほうが、ただいま申し上げましたような、こういった学校の機能の変遷変化からいって適当かと思いまするが、その点についてはどうお考えになっておりますか。
  21. 天城勲

    ○天城政府委員 学校の組織の問題に関連しての御質問と承るわけでございますが、一つの組織体が目的を十分に逐げるように運営していくために管理機能というものが必要なわけでございますが、同時に、組織体が組織として運営していくことに組織の確立も必要でございます。組織の各分野を分担する機能ということも明瞭にならなければならぬことでございます。現在、御指摘のように学校にはいろいろな名前の職務がございます。教務主任でございますとか、学年主任でございますとか、あるいは保健主事とか、職業指導主事というような、学校の組織上必要な職務がいろいろございますが、これはみな教諭をもって充てる、いわば教員職務命令として組織のそれぞれの仕事を分担しておるわけでございます。今回考えましたのは現在指定されております教育公務員特例法上免許状を所有しない者でも学校の組織上必要な職員、先ほど申した実習助手とか寮母というようなもの、それから免許状を必要とする養護教諭、それからILO条約の趣旨からいっても管理監督の地位にあることが明らかになっている教頭の公的な地位、これらを明らかにするということが主としたねらいでございます。御質問学校の組織に関連いたしますいろいろな職務、その職務内容につきましては、なお学校の望ましい組織体制というものについて検討にまつところが非常に多うございますので、今後の研究課題にいたしたいと思っております。したがいまして、他の職について管理職として指定するかしないかということにつきましても、この学校組織全体の中の職制というものをなお検討した上で処理いたしたい、今後の問題といたしたい、かように思っておるわけであります。
  22. 谷川和穗

    谷川委員 いま私のあげました教務主任とか学年主任は教員の中から職務命令でこれに充てるのだ、だから今回は教頭だけを考えたのだ、こういう意味の御答弁だったと思うのでありまするが、私は一点、それでは文部省としては高等学校事務長についてどう考えておるか、これをお尋ねをいたしたいと思います。学校教育法をつぶさに読んでみますると、高等学校以上が事務職員を置かねばならないと規定をいたしておるわけであります。そして逆に大学のほうからいいますと、事務職員の長たる事務長というものがはっきり法律で規定されております。いまの局長の御答弁の中にも、免許状を持っておる教員と、それから免許状をそういった形で持たないでおって学校におる養護職員その他の者と、こういう意味のことを言われましたけれども、やはり学校管理というものを考えた場合には、教育職すなわち校長と教諭と、それから事務職と、これをはっきり分けております。高等学校以上の事務職の長、つまり事務長は当然管理職という立場にあってしかるべきだと思いますが、この点についてどういうようにお考えになっておられますか。
  23. 天城勲

    ○天城政府委員 御指摘のように学校という一つの組織体の職務の中で、事務面の分野も非常に大きなウエートを占めております。しかし、事務長という形でこれを一般的に位置づけるかどうかにつきましては、私たちもなお学校におけるほかの職種と同じように今後の検討にまちたい、かように結論的には申し上げたいのでございまして、先ほども申しましたように、学校の組織につきまして、学年主任の問題あるいは教務主任の問題、その他学校司書の問題もいろいろいわれておりますし、保健主事とか職業指導主事というものも、現在の学校教育法の施行規則の中にはございますが、これらを通じてどういう職務内容、あるいはどういうふうにこれを位置づけるか等につきましては、なお今後検討していかなければならぬ問題だと思っておりますので、今回は先ほど申したような範囲の措置だけにいたしたわけでございます。
  24. 谷川和穗

    谷川委員 小中学校あるいは盲ろうあ、そういった特殊教育学校、これはともかくといたしまして、高等学校は法文上事務職員を置かなければならないということが規定されておるわけでございますので、私はやはりこの学校管理の中における事務職員の地位の確立というものは、ぜひ考えるべき事柄であるというふうに考えるわけでございます。  それでは続きまして私立学校の振興、私学の振興についてお尋ねをいたしたいと存じます。  最近、といっても相当前の話かもしれませんが、群馬県下のある村において私立の中学校への通学を禁止する通達を出したというような話を聞くわけでございまするが、こういった事実があったかどうか、これをまずお尋ねをいたしたいと存じます。
  25. 天城勲

    ○天城政府委員 群馬県の桐生市に隣接しております笠懸村という村に四十一年の四月に御指摘のようないきさつがございました。これはこの笠懸村の桐生市に近い地区に居住しておる者が、その子弟を桐生市の私立学校に通学させたい、通学を希望するという実態がございまして、その笠懸村におきましては、区域外通学になりますのでいろいろ問題になっておったわけでございます。たまたま私立の中学から笠懸村の小学校に、中学校への入学の勧誘を行なうような実態があったと村では判断したわけでございますが、この区域外通学の問題とからみまして、四十一年の四月に、区域外に通学する者は住所を変更して区域外に出てくれ、要するに区域内にいる者は区域内の学校に入学すべきであるという考え方をとって、その前提で通達を発したわけでございます。しかし、これは制度的に申しましても、公立学校への通学の区域の問題と私立への通学の問題とは別の問題でございますので、これは当然のことでございますが、さっそく中学側からその教育委員会に抗議があったわけでございまして、村の教育長からも、検討した結果、これは確かに区域外の公立学校への通学というものと一緒にこの問題を処理してしまって、これは行き過ぎであったということで直ちに取り消したわけでございます。この子供はもちろん予定どおり中学校に入れたわけでございますが、そういう通達を出した経緯がございます。その後、この問題につきましては、県の教育委員会からも指導がございまして、関係の私学の団体とも円満に話がつき、同村の教育委員会も、この通達の行き過ぎを認めてこれを取り消したといういきさつは過去において確かにございました。
  26. 谷川和穗

    谷川委員 区域外通学のことにつきましては、学校教育法施行令第九条第一項にまことに明らかに述べておることでございます。これを教育委員会がとり違えるということは、これはちょっと普通では考えられないような問題でありまするが、私はこの際、私立学校義務教育の関係については、ここではっきりいたしておきたいと存じますので、重ねて御質問いたします。  昭和二十二年三月教育基本法が論議されておりました最中に、はっきりこれは議事録に残っておりまするけれども保護者が、つまり親権者でありまするが、保護者が子弟に教育を受けさせようとするときは、憲法二十六条の後段並びに教育基本法四条に基づいて、国公私いずれの学校を選ぼうと、義務教育のレベルにおきましては全く親権者にその選択の自由があるんだということが確立をいたしておると思います。さらに、もしこれを妨げれば、憲法二十六条の前段並びに学校教育法施行令第九条第一項の後段、さらには教育基本法三条、こういった諸法令に基づいて、これは明らかに違法である。ただいまの問題は、学校教育法施行令九条一項の区域外就学についての問題について、たまたまこの法令の読み間違いというか、そういうことから起こった事件だと思います。こうした事件が起こったことを契機に、この際はっきりさしておきたいと思いまするけれども、あくまで親権者にとっては、自分の保護する義務教育適齢子女を私立学校へ行かせることは当然の選択の自由を持っているんだということをここで確認をいたしておきたいと思います。これは当然のことだと存じますが、あえて、あらためて確認をいたしておきたいと存じます。
  27. 天城勲

    ○天城政府委員 お説のとおりでございます。
  28. 谷川和穗

    谷川委員 それではただいまの憲法二十六条をふえんをいたしまして、いましばらく義務教育の中における私学の問題についてお尋ねをいたしたいと存じます。  学校教育法弟五条では、学校の経費は設置者負担の原則が打ち立てられております。学校の経費とは何ぞやという議論をいまここでやろうとは思いませんけれども、かりにその学校の経費というものの中に、いわゆる広い意味での教育費が全部含まれておるというふうに考えて、そうした設定で質疑をさしていただきたいと存じます。  まず第一に、援業料の問題であります。援業料問題に関しては、国公立学校に関する限り、教育基本法第四条並びに学校教育法第六条に、はっきり徴収をしないと明記をされておるわけであります。それに対して私立の義務教育学校においては、学校教育法六条によって、授業料は取ることができる、こう明記されております。つまり、授業料に関する限り、公立学校——国公立と言うのが正しいわけでありますが、国立は数が非常に少のうございますから、かりに公立と限って言って、公立義務教育学校と私立の義務教育学校は区別されております。  その次に、教科書及び教材費の問題でありまするが、まず教科書の問題は、義務教育学校の教科用図書の無償に関する法律の第二条によって、義務教育学校とは、「学校教育法に規定する小学校中学校並びに盲学校、聾学校及び養護学校の小学部及び中学部をいう。」こう明記されておるわけでございまして、これは私立学校も入っておるわけであります。ところが、教材費については、義務教育費国庫負担法第三条によって、教材費の国庫負担の原則が確立しておりますが、これには明らかに私立学校は入っておらない。こういうふうに見てまいりますると、同じ義務教育学校であり、それから教育費でありますけれども、あるものは国立公立、私立と同じように法律がかぶっており、あるものは国立公立にかぶって私立にかぶっていない、こういうふうに分けられておるわけであります。  この問題について、昭和三十九年の義務教育教科書国庫負担請求事件の最高裁の判決文中こういう文章がございます。すなわち、義務教育の無償は国公立義務教育学校授業料不徴収のみを意味しているのであって、他の教育費の無償は立法政策の問題、とあるわけであります。この事件は、この最高裁の裁判は、公立学校に子供を送っておりました親権者が、教科書以外の教材費も義務教育であるから当然国が無償で児童に与えるべきであるという訴えを起こした事件でございます。したがって、直接には私立学校義務教育問題とは関連はございませんが、この中でいう、他の教育費の無償は立法政策の問題というこの判決文だけで言いますると、この他の教育費というものは教材費を含めた、いわゆる授業料以外の教育費のことをさしておるわけでありまするが、私は、この他の教育費の無償は立法政策の問題であるというこの最高裁の判決は、広く他の教育費というものは、私立学校教育に要する経費もやはり同じく立法政策上の問題であるというふうに読んで間違いはない判決だ、こういうふうに考えておるわけであります。言いかえれば、憲法二十六条の前段に「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」とありますが、これは言うならば、国民一人一人の市民的権利を宣言したものであり、その後段、すなわち、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。」これは親権者の義務を規定して、国が、義務教育というものが少なくとも日本においては普及徹底するようにという決意を憲法の中に明らかにしておることであろうと思います。そうしてそのあとに、「義務教育は、これを無償とする。」という条文がついてきておるのだと思います。  すなわち、ここで一点明らかにいたしたいところは、義務教育レベルにおいては、私立学校を選ぶというのは、これは教育内容の選択であって、完全に親権者にとって自由だ。ということは、義務教育普及充実並びに徹底を期する政府の立法政策上の決意とは関係のないことだ。この点についてはっきりいたしておきたいと存じます。管理局長から御答弁をいただきたいと思います。
  29. 村山松雄

    ○村山政府委員 御指摘のとおりでございます。
  30. 谷川和穗

    谷川委員 わが国は、教育に対して、少なくとも近代化の過程においてまことにすさまじいまでの熱意をあらわしてきた国家一つでございます。この教育費の沿革を調べてみますると、明治初年から大正七年の義務教育費国庫負担法、さらには昭和七年の同じ法律の臨時措置法、さらには昭和二十四年のシヤウプ勧告による平衡交付金制度の確立、さらには昭和二十八年の新しい義務教育費国庫負担法の制定、こういうような過程を経てきておるわけでございます。  私は、ここで一点指摘したいことは、昭和二十八年当時の義務教育費国庫負担法が制定されたそのいきさつには、やはり日本が戦後義務教育の年限を三年間引き上げて九年間とした。ところが、旧制中学校は一斉にみな新制の高等学校に上がってしまった。設置者の大半は市町村であったわけでありますから、市町村としては非常に大きな財政負担を余儀なくされた。そこでシヤウプ勧告によって平衡交付金というような制度考えてみたけれども、うまくいかなかった。そこで立法政策として義務教育費国庫負担法というものが制定されたのだ。私はこういうふうに考えております。ようやく日本におきまする子供の数、児童の数も、言うならば安定してきたというふうに考えられる今日でございます。私は、この際文部省として、この憲法二十六条にいう義務教育を徹底せしめたいのだというこの国としての決意、これをあらためてここで再確認をして、新たに私立学校義務教育に対しても、今後積極的に措置をしていく決意を固めていただきましたならば、日本のこの義務教育の普及徹底にさらに一そう効果があるように考えまするが、この点につきましては特に大臣からお答えをいただきたいと存じます。
  31. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 なかなか大きな問題と思います。先ほど来お述べになりました点については、私もよく了承いたすところでございますが、この義務教育につきましては、国の問題はしばらくおくとしましても、公立と私立との問題はどうあるかということについてはいろいろ沿革もあることだと思うのであります。私の素朴な考えから申しますというと、義務教育につきまして、公共団体は、国民が希望すればこれを就学せしめるだけの用意をしなければならぬということが前提とせられておると思うのであります。いわゆる私立学校に関しましては、おつくりになるのも御自由であるし、またそれに就学することも御自由であるというようなたてまえのもとに、今日までやってきたかと思うのであります。そういうことで現在の私学に対するいわゆる国の文教政策というものができておったのじゃないか、かようにも考える次第でございます。もっぱら問題は、いわゆる政策的見地からどう考えるか、谷川さんのおっしゃるような御趣旨について、政策上の立場からいかにどういう態度をもって私学に臨むべきか、そういうふうなことではないかと思うのであります。従来からの沿革もあることでございますし、この際お話のような方向に政策を切りかえていくということにつきましては、私は御趣旨はよくわかりますけれども、よほど慎重な配慮を加えなければならぬのではないか。学校教育制度に関する整備拡充の問題が、現に中央教育審議会におきましても検討をせられておるところであります。これはすべての学校について、問題として取り上げなければならない諮問事項であろうかと思います。そういうところで十分に御検討願った上で、文部省といたしましても考え方を定めていくのが適当ではないか、かように存じております。
  32. 谷川和穗

    谷川委員 日本教育の中に占める私学の位置づけという問題は、今日私は非常に重要な問題であるというふうに考えておるのであります。したがって、今後なお一そう文部省におかれましては、いわゆる前向きの姿勢をもちましてこの問題と取り組んでいただきたいと存じます。  さらに一点、私学の問題について、労災保険法の適用についてお尋ねをいたしたいと存じます。  昭和四十年、労災法の抜本的改正以来の問題でありまするが、現在私立学校には労働三法の適用がある。したがって、現行制度のもとでは、私学に労災保険を強制適用すべきであるという労働省の主張も、これは理解できないことではございません。しかしながら、昨年十二月には、地方公務員災害補償法もでき上がったわけでございます。この際、教育をつかさどる学校である私立学校は、他の一般の業種とは著しくその性格の異なるものであって、したがって現在直ちにというものではありませんけれども、将来は労災保険の強制適用というようなことを考えていく方向からこの問題を解決していくよりも、むしろ別個の独特の立法措置を行なうほうが望ましいと考えまするが、この点についてはどうお考えになるか、この問題については管理局長からお答えをいただきたいと思います。
  33. 村山松雄

    ○村山政府委員 私立学校に対します労災法の適用問題の経緯につきましては、ただいま御質問のとおりでございます。多少重複いたしますが、私学団体側の考え方、それから政府考え方を御説明申し上げますと、私学団体といたしましては、私学の教職員というのは性格上労働三法が現在適用されてはおりますものの、かなり特殊性がある。機会あるごとに私学独自の立法を希望しておるわけでありまして、労災法の適用についても必ずしもこれを急ぐことなく、独自の立法をしてほしいという態度で接してまいりました。他方政府といたしましては、御指摘の昭和四十年の法改正が、二年間を目途として、現在強制適用業種でないものについて強制適用にすべく研究して適当な措置をとることが義務づけられておるわけであります。そういうことを勘案いたしまして、私学側、文部省労働省、三者いろいろ折衝いたしまして、独自の立法は希望するものの、現在労働基準法が適用されておることは事実でありまして、そこで労災法の適用を絶対に反対するということはぐあいの悪い点もございますので、政令によって一般的には適用するものの、適用のしかた、特に保険料率その他につきましては弾力的な運用をするという了解のもとに、この際労災法の適用を受けることに踏み切ろうということになっております。
  34. 谷川和穗

    谷川委員 次に外国人学校の創設について御質問を申し上げたいと存じます。  大臣所信表明の中には、「わが国が国際社会において、はるかな将来にわたって発展し続けていくためには、伝統的な文化のいしずえの上に、新しい文化や科学をたゆみなく創造し発展させていく必要がある」と、前段において述べられ、さらに第五においては、文化の国際交流に触れておられますが、特に教育、学術、文化、こういう問題をここで国際問題として取り上げておられるわけであります。外国人学校制度というものは、「もっぱら外国人を対象として行なわれる組織的な教育についても新たに法律上の制度を創設することといたしております。」こういうふうに述べられております。私は、もっぱら国際親善の見地から御質問を申し上げたいと思いまするが、今日外国人学校として認可をされておりますものは、少数の公立学校を除いてはほとんどが各種学校だといえるわけだと思います。その中で、これから新しい外国人学校制度が創設されると、国際親善の見地から、特に日本の国益に反しないものはやってもらってよろしいのだ、こういうことで、ここに新たに外国人学校という日本教育立法の中では初めてのものができ上がるということだろうと思います。  まず第一にお聞きいたしたいことは、こういった国際間の問題を引き起こす可能性のあるものについて、なぜ二国間協定あるいは多数国間協定を結ぶという、通常行なわれております条約にのっとらずに、言うならば国内法の一種の宣言立法的なものをとったのか、こういう問題について一点お尋ねをいたしたいと思います。
  35. 村山松雄

    ○村山政府委員 外国人の取り扱いにつきまして何か措置する場合、御指摘のように、国内法でもって措置する以外に、協定によって措置するということもあり得るわけでございますが、協定によってやるということになりますと、それぞれの国とそれぞれ話し合いをしなければならぬ、理論的には同一の扱いにならないこともあり得るわけでございます。しかし、わが国内に在留する外国人について何か教育制度をつくるという場合に、それぞれの所属国によって扱いが異なる可能性が出てくるということは、考えようによっては問題がございますので、この外国人学校法の立案にあたりましては、国際協定の方法によらないで、わが国に在留する外国人、日本の国籍を有する者を除く者に対して平等に適用される国内法規によるということにいたした次第でございます。
  36. 谷川和穗

    谷川委員 日本法律の中で身分が確立するということは、それ自体すでに一つの権利の獲得であると思います。さらにそのほかに、たとえば免税とか、通学定期などの恩典は、これは今日日本学校教育法の中の各種学校としての身分の中でかぶさっておるわけでございますが、こういった恩典はやはり外国人学校にも及ぼすものであるかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  37. 村山松雄

    ○村山政府委員 法律成立の上は、現在各種学校として認可されている学校について適用されておる免税ですとか、あるいは通学定期ですとか、そのような恩典はひとしく外国人学校にも適用するように、文部省でできることはやりますし、関係各省と折衝を要することにつきましては折衝をして、そのような取り扱いを受けられるようにいたしたいと思います。
  38. 谷川和穗

    谷川委員 学校教育法第二条によりますと、学校設置するものは、国か、地方公共団体か、あるいは私立学校法三条にいう学校法人に限る、こうあります。先般閣議決定され国会に提案をされました外国人学校法を見ますると、個人にでも学校を設立できるということになる。この点についてはどういうふうに考えたらよろしいのでありましょうか。
  39. 村山松雄

    ○村山政府委員 学校設置者を、国、地方公共団体及び学校法人に限っておるのは、いわゆる学校教育法一条の学校の場合でございまして、各種学校につきましては、現在個人立も可能になっております。外国人学校法を立案する場合には、それらの経緯を考えながら、また独自の角度で設置者の問題を考えてよろしいわけでございますが、外国人学校法律案の基本的な考え方は、最小限度わが国の立場を阻害しないという保障のほかは、なるべく自主的に、自由に当該国民としての教育をやらせるほうが適当である、かような考え方からいたしまして、設置者につきましても法人という縛りをかけず、法案にもありますように、必要な経済的条件あるいは社会的信望のある者であれば、法人であると個人であるとを問わず、設置者たることを認めるのが適当である、かように考えた次第でございます。
  40. 谷川和穗

    谷川委員 日本の国内法で外国人学校制度をつくる。そして、そこで学ぶ者は、これはすべてがそうということではないと思いますが、大半が外国人の子弟である。当然次に考えられることは、何か事件が起これば国と国との問題になるわけであります。  そこで、学校教育法八十四条の第二項には、各種学校でもし法令に違反した事項があった場合には、中止命令を出すことができるという規定がございます。もしこういうような考え方で外国人学校の中を、その経営に対して、片一方では法律でこれを認めておきながら、片一方では直ちにこれを中止させてしまうのだというような規定のしかたをかりにしたとしたならば、これは、もしその行使が相手の国に対して非常に大きな損害をこうむらしたという結果になれば、国際間の問題になると思うのでありますが、この点については、この法案作成にあたって特に格別に十分配慮がなされておるかどうか、その点についてお尋ねをいたしたいと存じます。
  41. 村山松雄

    ○村山政府委員 外国人学校法案によりますと、設置後の監督の態様はほぼ学校教育法による日本人の学校に対するものと同様な規定を設けておるわけでございまして、学校教育法による閉鎖命令に相当する規定がございますし、変更命令に対するものといたしましては是正命令というのがございます。無認可でやっておるような場合には中止命令というようなものがございます。  学校教育法になくて外国人学校法に盛られている条項といたしましては、立ち入り検査に関する条文がございます。これは、そのような事実があると思われるときには、事実を調査することなくいきなり閉鎖命令をかけるというのではなくて、事前に調査をして、さらに当事者の言い分も聞いて、どうしても法令違反で放置できないというような場合には閉鎖命令をかける、こういう監督の態様でございます。ほぼ日本人の学校に対する監督の態様と同様でありますし、条文上はさらに一段と、著しく法令に違反する場合とか、重大な違反がある場合とか、そういう慎重に取り扱うような修文上のくふうをこらしてございます。  なお、実際上の扱いで、国際問題というような可能性のあるような場合には、もちろん、文部省といたしまして、文部省のみの判断でなく、外務省はじめ政府全体の感覚も調整いたしまして、いやしくもこの制度の運用が国際関係に悪影響を及ぼすというようなことのないようには留意するつもりでございます。
  42. 谷川和穗

    谷川委員 この法律の第二条には、外国人とは日本の国籍を有しない者、こうございます。ところが、出入国管理令だとか、外国人の財産取得に関する政令その他の外国人の身分関係の法律には、きわめてはっきりと、外国人とはだれであるかということが規定されておるわけであります。それから見ますると、この外国人学校法のいう外国人というのは、日本国籍を有しない者はすべてであるということで、きわめて広範囲でありまするけれども、これは少し範囲が広過ぎるのではないか。すなわち、かりに未承認国の国籍を有する意思を持ちあるいは未承認国の国籍を現在有しておって何らかの理由日本におる者、こういうものは将来に問題をゆだねて、まず承認国の国籍を有して日本におる者だけに限って十分だと思いまするが、なぜこの第二条で、外国人とは、日本の国籍を有しない者というような広い外国人の概念を規定しておるのか、その点について積極的な意義がどこにあるか、御説明をいただきたいと存じます。
  43. 村山松雄

    ○村山政府委員 外国人の定義につきましては、積極的な意義よりも、むしろ国籍法の外国人の定義をそのまま踏襲したのでありますが、積極的な意義いかんということであれば、これもこの外国人学校法案立案の基本的な考え方である、わが国に在留する外国人を広く平等に取り扱おうという精神から、国籍法の一般的な外国人の定義を採用したといってよろしかろうと思います。
  44. 谷川和穗

    谷川委員 かりに私ども日本人の子弟が外国におると考えます。そうすれば、まず当然考えられることは、その国の公立学校へ進むのが今日の国際慣行だと思います。にもかかわらず、先ほど私が申し上げましたように、二国間協定あるいは多数国間協定という姿をとらずして、言うならば、日本国内の一種の制限立法的な姿をとってこの外国人学校制度を創設する、その積極的な意義はどこにあるか、御説明いただきたいと存じます。
  45. 村山松雄

    ○村山政府委員 ただいまの点につきましては、ある外国に在留する者がその子女をその国の公立学校に入れるということは、在留国の、何といいますか、法の反射的な利益でありまして、一般的にはそれが認められておるわけでありますけれども、そのほかに自国民としての教育をやりたいという願望も一般的に広くあるところでありまして、在留国の公認あるいは黙認のもとに、自国民としての教育をやっておるということもまた、かなり広い範囲に行なわれております。公立学校に通わせることが原則であるとまでは言い切れないのが現在の国際的な実態ではなかろうか、かように思います。
  46. 谷川和穗

    谷川委員 それでは別の観点から一点お尋ねをいたしたいと存じます。  かりにある外国人がおって、その外国人は将来にわたってその国に居住をいたしたい、日本におる場合には日本におりたい、こういう外国人がおったといたします。その場合に、この種の制度を、しかもこれを教育立法の中で確立するということは、その外国人の子弟が、そこの国の社会制度、法制その他一般市民と同じく平穏かつ無事にその国で生活をしようとするのにかえって障害をつくるもとになるのではないかという考え方も確かにあると思います。たとえていうならばアメリカの幾つかの州、西ドイツあるいは今日のイギリスにおいてもそういう考え方は根強くある。かえってこれは障害になることになる。今日日本で、世界に先がけて、ある意味では非常に進歩的な立法だともいえるかもしれませんけれども、この種の外国人学校制度を設立するという時点にあたって、いま私の指摘をいたしましたような問題についてはどうお考えになられますか。
  47. 村山松雄

    ○村山政府委員 現在考えております外国人学校制度は、もちろんこの設立を強制するものではございませんし、また、政府としてそうたいして奨励もするつもりはございません。ただ、この種の自主的な教育をやりたいと希望するものについては、この法律の要件を満たせば認めようということでございます。そこでまあ一般的には、永住を希望する者、その他在留国の風俗習慣というものを在留期間中は十分修得したいと考える者は、わが国の公私立の学校に入ろうかと思います。現在、実態的に申しましても、わが国に在留する外国人で、各段階の学校に通っておる者は十五万五千人ほどおりますが、そのうち十二万人は日本学校に入っております。三万五千人が百三十ばかりの各種学校あるいは無認可施設に通っておるわけでありまして、これは先ほどの公立学校と私立学校日本人が選択するのが自由と同様に、外国人にとりまして、この外国人学校を選ぶか、あるいは日本学校を選ぶかというのは全く自由でございます。
  48. 谷川和穗

    谷川委員 外国人学校について最後に一点お尋ねをいたします。  今回この法律は、単行法として新しい制度の創設という形で出てまいったわけでございます。ところが、同時に提案をされました学校教育法改正の中には、外国人の子弟の教育をもっぱらする組織的な機関はこれを除くのだ、あるいは別に定めるのだという条項がありますから、二つの法律のうち、片方だけが国会を通過して法律となるということが考えられるわけであります。そのときに、わが国と友好関係にあり、しかも先方がわが国の、先方の国の在住国民に対してこの種のものを認めようという国であります。つまり、日本人に対して日本教育をすることを許そうというような国であり、かつ、今回の新しい制度確立をむしろ期待しておるようなものまで、片方の法律が通って、片方の法律が通らなかった場合には、新しいこの単行法ができ上がるまでは、新しく申請をしようというものは、この法律が通過しない限り、この種の学校を設立することができないわけでありまして、これではかえって国際親善にもとるということになりかねないと思いまするが、この点につきましては、特に局長としては、この二つの法律の関係、それからそれが国会での審議に対してどういうふうにお考えになっておるか、この辺のことをお尋ねをしてみたいと存じます。
  49. 村山松雄

    ○村山政府委員 提案しました政府側といたしましては、両法案の成立を期しておるわけでありまして、片方だけが成立するという事態につきまして、実はあまり準備をいたしてないわけでありますが、理論的にはそういう事態があり得るわけでありまして、まず第一に、外国人学校法のみが成立した場合、これは学校教育法のほうは別に定めるという規定が、別に定めるものが先に成立したというだけの関係でありまして、これは国際問題という御質問の要点には触れなかろうと思います。  次に、学校教育法改正案のみが成立して、外国人学校法案が成立しなかった場合には、御指摘のような事態が起こり得るわけでありますが、経過措置といたしまして、現にあるものは存続を認められるわけでありますので、政府としては、経過措置の期間内に、もし現在提案いたしました外国人学校法案にふぐあいな点があれば修正いたしまして、近い将来に必ず成立を期するという以外にお答えのしようがないわけでございまして、御了承願いたいと思います。
  50. 谷川和穗

    谷川委員 それでは最後に、時間も参ったと思いますので、文化行政について一点だけお尋ねをして、私の質問を終わらしていただきたいと思います。  大臣所信表明の中には、「文化行政の機構については、行政の能率化をはかるとともに、芸術文化に関する行政と文化財保護行政との調和をはかり、これらを一体的に推進することができるよう機構の整備を行なうことといたしております。」こう述べておられます。すなわち文化庁の設置ということであろうかと思います。私は確かに、文部省の所管内の問題として、この二つの行政を調和させて、これを一体化させるということ、これは必要なことでもあるし、積極的な意義もあるし、またそれをするほうがよろしいと思っておりますが、問題はその外の問題でございます。すなわち、特に一点だけお尋ねをいたしたいと申し上げましたのは、文化財の中の特に埋蔵文化財の問題でありますが、当文教委員会の中にも文化財保護に関する小委員会が設けられております。いま私の御質問申し上げたいと思う事柄は、すでにこの小委員会で、前回の小委員会委員でありました三ツ林委員並びに長谷川正三委員から再三にわたって質疑がなされた問題でございます。具体的に申しますると、平城宮の東院とその上を通る国道二十四号バイパス道路の問題でございます。埋蔵文化財は、これを発掘調査をする前に推定によってこの範囲をきめること自体、将来に非常に行政上のいろいろな問題を起こすものだと思いまするが、いま取り上げました平城宮の問題については、これは建設省の道路建設の計画がすでにでき上がってしまった後に、あらためて発掘調査が進んだということで、特に顕著な事例だと思います。こういう意味合いから、このたび大臣所信表明の中にもあるような形で、二つの行政を調和させ、一体化させ、そしてここにはそうは書いてございませんけれども、文化庁をつくろうとしておられまする文部省の中で、ほかの省との関係、ほかの行政組織体の管轄内にある問題点との調和について、今後こういう問題はどう取り扱っていこうとしておられるのか。特に具体的な平城宮東院と国道二十四号バイパス道路に限って、建設省とのいままでの折衝並びに今後の見通し、これだけをひとつお答えをいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  51. 福原匡彦

    ○福原政府委員 お答えいたします。  ただいま谷川委員から御指摘のありましたように、平城宮址の東側のバイパスにつきましては、実は一昨年の三月、文化財保護委員会といたしまして、建設省の道路計画に了解を与えたものでございます。これは、その時点におきましては、古くからの定説として平城宮址は方八町、一キロメートル平方ということで、だれも疑う者がなかったわけでございます。ちょうどその方八町の東側には東一坊大路が通っていたということで、東一坊大路という昔の道路の上に道路を通す。これは奈良時代の相当広い二十メートル余りの道路ということに聞いておりますけれども、その上にちょうどまた二十メートル余りのバイパスが通る形になります。そうしますと、道路を復元するという意味もございますし、もう一点、遺構が道路でございますとほとんど存在しないであろうということで、文化財保護委員会といたしましても、学者先生方もほとんど疑わない、その方八町という平城宮址をよけ得るという見通しでこれに了解を与えたのでございます。そういたしまして、その道路予定地の発掘調査に入ったわけでございます。発掘調査をいたしておりますうちにだんだん様子が怪しくなってまいりました。と思しますのは、その東側の北のほうから大体四分の三部分には道路のあとが出ずに、むしろ建物のあとなどが出てきた。その時点におきましては、まだこれが道路のあとに、道路をこわして建物をつくったのではなかろうかという推定をするほどに、だれも疑っていなかったのでございますけれども、それが南のほうから四分の一の地点の発掘調査をするに至りまして、そこは道路が通っておりましたけれども、その四分の一の地点で道路が東に曲がっている。そこで、宮域を示す築地が東側に延びていることが昨年来わかってまいったわけです。そのことによりまして、それまで調べておりました北側の四分の三の地点には、これは道路はなかったのであろう、結局東側に宮域が張り出していたという推定が出てまいったわけでございます。それに基づきまして、実は昨年の十一月に、文化財保護委員会といたしましては、建設省に、道路をほかに切りかえてもらう路線の変更を申し入れた次第でございます。  その時点におきましては、まだ東側に張り出しているという推定でございましたが、その後、昨年の十一月から今年にかけまして、ただいまも調査を続行しているわけでございますけれども、その東側に張り出している部分の東南隅と申しますか、いわば宮が東側にどこまで延びていたかということがこの一月になってわかってまいりました。ちょうど二百五十メートルくらいになるわけでございますけれども東側に延びている。この北端がまだわかりませんで、東南隅だけでございますので、宮域全体についてはわかりませんけれども、宮域の東端、東限というものが判明するに至ったものでございます。しかもこの東側の張り出し部分においてのみ、三彩や緑釉のかわらが出てまいりました。これは続日本紀の中に東院玉殿というものがございまして、そこに「ふくにるりのかわらをもってし」というような表現がございます。それが平城宮址のほかの部分にはいままで全然発掘されずに、初めてここで出てまいりましたことから、これが東院であり、しかも称徳天皇のときにはこれが玉殿として天皇自身ここにお住まいになられたということがほとんど確実に推定されるに至りました。まあ、いいますならば、昨年十一月に私どもが建設省に申し入れたときよりは、東側に延びている部分の価値といいますのは、続日本紀でやはり孝謙天皇のときから記事が数カ所出てまいります。そういたしますと、孝謙天皇それから重祚されて称徳天皇がそこに天皇としてお住まいをお持ちになったということで、これは平城宮址としては、これまでの方八町と、あとからこれをただつけ足したというようなものでなくて、一体的なものであるというふうに私ども考えまして、そういたしますならば、いよいよ文化財保護委員会といたしましては、これまで平城宮址を指定し国として買い上げるという史跡の中でも特別な保護を加えてまいっておりますので、それと同じ考え方でこれに臨まなければならないのではないか、こういうふうに判断いたしまして、その事情についてもさらに建設省のほうに説明をいたしまして、建設省に路線の変更についてさらに御検討願っているところでございます。ただ、建設省といたしましては、地元の奈良県におきまして万国博までにそのバイパスをつくろうといたしまして、路線の買収はいたしておりませんけれども、話を進めてまいってきた地点でございますので、そういった関係から非常に慎重な検討をしているようでございまして、私ども、まだその結果につきまして、路線を変更するとか、あるいは現在のところをどうしても通させてくれとか、そういうことについての確たる返答は建設省のほうから得ていないわけであります。
  52. 坂田道太

    ○坂田(道)委員長代理 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。   午後三時四十九分散会