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1968-05-14 第58回国会 衆議院 内閣委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月十四日(火曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 三池  信君    理事 井原 岸高君 理事 浦野 幸男君    理事 塚田  徹君 理事 藤尾 正行君    理事 松澤 雄藏君 理事 大出  俊君    理事 木原  実君 理事 受田 新吉君       赤城 宗徳君    荒舩清十郎君       上村千一郎君    桂木 鉄夫君       菊池 義郎君    野呂 恭一君       淡谷 悠藏君    稻村 隆一君       工藤 良平君    武部  文君       華山 親義君    浜田 光人君      米内山義一郎君    伊藤惣助丸君       鈴切 康雄君  出席国務大臣         農 林 大 臣 西村 直己君  出席政府委員         農林大臣官房長 桧垣徳太郎君         農林省農政局長 森本  修君         農林省農地局長 和田 正明君         農林省畜産局長 岡田 覚夫君         農林省蚕糸局長 池田 俊也君         食糧庁長官   大口 駿一君         林野庁長官   片山 正英君  委員外出席者         専  門  員 茨木 純一君     ————————————— 五月十四日  委員淡谷悠藏君及び浜田光人辞任につき、そ  の補欠として山崎始男君及び工藤良平君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員工藤良平君及び山崎始男辞任につき、そ  の補欠として浜田光人君及び淡谷悠藏君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第四八号)      ————◇—————
  2. 三池信

    ○三池委員長 これより会議を開きます。  農林省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。淡谷悠藏君。
  3. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大臣、この間、実は本会議関係で時間が足らなかったものですから、だいぶ質問を残しましたので、きょうはまた継続したいと思いますが、その前にちょっと伺っておきたいことがあるのです。  昭和四十二年の八月二十二日の農林省決定の「構造政策基本方針」という書類がありますが、これはその後変更になっていないでしょうね。これをもとにして質問を展開しましても的はずれにはならぬでしょうね。
  4. 西村直己

    西村国務大臣 変わってはおりません。
  5. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大臣、きょうはひとつできるだけ大臣に御答弁願いたいと思うのは、この農林省設置法案に関連しまして、一局削減による機構改革どもだいぶあるようですが、これはやはり一局削減方針が出たからそれに合わせて農林省機構改革するのじゃなくて、あくまでもこれは農政の根本に立って改革をなしたものと私は信じます。そういう観点から、勢い最近における日本農政の基本的な方針について大臣姿勢、それから方針も、やはりこれから農業をどうするかという基本的な線に沿いませんと、私は、将来非常に困った事態を招くおそれがあると思う。先般大臣にお聞きしました自給率などの点でも、いま念を押しましたこの書類の資料から見ますと若干違っていますね。これは申し上げません。米の自給率が九五%というのが九四%になったり麦が二一%というのが二〇%になったりする点ですから、こういうこまかい数字見通しは論じませんけれども一体大臣は将来日本食糧自給する上において、構造の変わってきました食糧の形をどういうふうに把握されるつもりか。米の自給率九五%ということを非常に誇示されましたけれども、麦の二〇%という自給率については今後高まる見通しはないということを食糧庁長官が言っておられる。さらに肉にしましても牛乳にしましても、そのもの自体自給率は相当高いのだけれどもえさの点からいうと全く自給率なしといったくらいひどいものになっている。したがってこれは、米を除いては、麦、牛乳食糧ともに、非常に低い自給率に立っている。このままでいいのかどうかです。将来やっていくとしたならば、そういうような広義における食糧全体の自給率考えなければならぬと思うのですが、これに対する大臣考えを聞きたい。
  6. 西村直己

    西村国務大臣 もちろん米は大事なものでございまして、まだこれは米以外に、先般申し上げましたように消費動向というものがかなり変わっていくということは当然でありましょう。経済の成果が上がりまして動物性たん白資源というものをもっととっていく、こういう段階におきまして酪農、もちろんその裏には飼料をどうするかという問題はございますが、いずれにしましてもそういうものは上がっていく。それには水産資源のほうからも補給をしていかなければならぬ。これも当然考えてまいります。それから同時に、それ以外に果樹、蔬菜、こういったものの供給も当然でありましょう。  そこで、私どもとしましては、麦につきましては、麦は二〇%、一応四十一年度の暫定ではありますが自給率、大麦、裸麦が六五%、このうちで麦につきましても私どものほうは裏作契約栽培その他によりまして、ある程度の供給量をふやしてまいりますが、しかしこの自給率を急激に大きく変えていくということは困難な情勢ではないか、こういう説明であったと思います。それから肉類につきましては、これは相当全体としては自給率は高いわけでありますが、これをさらに肉類などはふやしてまいる、こういうような方針をとってまいりたい。それから牛乳につきましても八〇%の自給率、これが四十一年度でありますから、やはり牛乳酪農製品につきましても高めてまいる。ただ、飼料をどうするかという問題は、確かにあります。そこでこの間もここで御論議がありましたように、草地開発、こういうようなものをできるだけやってまいるということと、それから自給飼料というものは、淡谷さんからも非常に御提案がありましたように、日本に適した飼料というものはあり得るのではないか。濃厚飼料、そういうようなものもわれわれとしては検討を加えながら、やはり伸ばしてまいりたい。  率直に申しまして、日本の従来の食形態というものは、戦前は主食は米、それから今度戦後におきましては非常に荒れた状態の中から経済復興をやってまいりました。そうして経済が高度成長して国民所得向上するにしたがって、いわゆる世界水準に近づこうという食生活の改善が行なわれている中に合わしての、私どもとしては日本農政日本農業生産というもの、総生産の中における各種目別というものを見ていきたい。そこで三十七年につくりました、主要農産物と申しますか、主食を含めましての長期見通しというものを秋までに作目別にもう一ぺん洗い直して、かっちりしたものをつくり出していきたい。それとこの構造政策とをあわせて運用してまいりたい、こういう考えであります。
  7. 淡谷悠藏

    淡谷委員 やはり将来の食糧政策としては、米に限らず麦その他の広義食糧増産考え、この自給率も十分にはかるのだ、こう認識してよろしいのですか。
  8. 西村直己

    西村国務大臣 麦につきましては、採算が合わないというようないろいろな経済性もありましょう。それから農村の構造変化に基づきまして——しかしことしあたりから手をつけましたように、裏作における麦の契約栽培と申しますか、そういうような形で自給率というものはなかなかでありますが、いわゆる供給料というものは維持なりある程度上げるような努力はしてまいりたい。
  9. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この米の生産推移を見ておりますと、これは決して増産されていないのですね。最近はもう一〇〇に対して九五とか六とかいう線しか出てこない。そうしますと人口増の面における食糧というのは、ほとんど麦をもって代替されていると思わなければならぬ。つまりパン食にかわっていると思わなければならぬ。それに対して麦の作付は非常に自信がないように言っている。これは経済的にも引き合わないというふうに見られているわけです。これはやはり麦だけではなくて、飼料全般に対する傾向でもあると思うのです。つまり日本農耕技術なり農耕のさまざまな機構なりが、こういう近代的な食糧生産に適していないような面がだいぶたくさんある。これが一つ。その一つの原因としては、この前につくりました農業基本法がある。あの基本法においては、食糧に対する見方が非常に甘いのですね。これはかつてわれわれと大臣の政党との間に激しい対立があった形です。この基本法の中における食糧軽視の形を今後手直しする意思があるのかないのか。われわれ具体的に仕事をする場合に、食糧に対する政策軽視から非常に困っている面がたびたび出てくる。これをどう思われますか。
  10. 西村直己

    西村国務大臣 基本法自体は、農業生産全体をあげていく、もちろんその中におきまして、日本消費構造というものを現実的にながめながら考えてまいる。麦につきましても、たとえば最近パン食が伸びました。またこれは固定化してきたわけです。しかし、同時に今度は、それでは非常に、昨年、一昨年のような伸び方をするかというと、少し頭打ちをしているというような状況でもありまして、そこで私どもとしてはやはり米の自給率、これは四十一年でありますから九五でありますけれども、四十二年になると、自給率としては相当な数字が出てくるのではないか、こう思うのです。
  11. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうして麦の自給率が高まるのですか。この間の食糧庁長官答弁とはまるで違うのです。食糧庁長官自給率の高まる見通しはないということをはっきり言っている。
  12. 西村直己

    西村国務大臣 いや、麦の自給率が高まるということは申し上げておりません。ただ自給というものを、少しでも生産増を維持するような努力をしている。これがさっきから申し上げているような裏作契約栽培等新しい方法等も講じて、農民経済利益考えて奨励していく。
  13. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうも最近の農産物輸入推移を見ますと、明らかに麦並びに飼料重点が移ってしまっているんですね。特にコウリャンとかトウモロコシ輸入——トウモロコシは相当これは出てきておりますが、コウリャンなどは思い切って入ってきていますね。これは日本農業農耕方法が基本的に改められなければならないというふうに考えられるわけですが、大臣どうお思いですか。
  14. 西村直己

    西村国務大臣 まあ飼料の問題は御存じのように先般来私が申し上げますように、酪農と申しますか動物性のそういった畜産関係はややおくれていったわけでございます。それからもう一つ日本土地構造、また農地あり方、いろいろな問題をお考えいただきますと、おのずから濃厚飼料経済ベースでもって一挙に急激にふやそうというのには相当な時間がかかる、こういう点もおわかりいただけると思うのです。
  15. 淡谷悠藏

    淡谷委員 農業基本法というのは少なくとも日本農政がとるべき基本的な方針を示したものと考えております。この基本法によって食糧の充足、生産発展がかなり阻害されていると私は信ずるのですが、大臣基本法はいまのままでいいとおっしゃる。いまの基本法でそういうふうな面が達成できるとお考えですか。
  16. 西村直己

    西村国務大臣 私は基本法そのものを変えるというようなことは必要はない。ただ、基本法を具体的に運用する場合においてやはりそれを事情に合うように運用していく、この問題だと思います。
  17. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それじゃ、具体的に応用すべき基本法条項をお示し願いたい。どこから出てきたか。えさ生産なりあるいは麦の生産なり——特にえさ成長部門としてうたわれておりますけれども基本法一体どこに具体的に運用してその目的が達成される条項がございますか、これは御教示を願いたい。
  18. 西村直己

    西村国務大臣 個々条文の適用につきましては、それは事務当局のほうから御説明させます。
  19. 淡谷悠藏

    淡谷委員 事務当局じゃなくて、大臣からお答え願いたい。
  20. 西村直己

    西村国務大臣 それは個々の問題でありますから……。ただ問題は、農業基本法の精神というのは、農業の総生産を上げていく。しかしこれはあくまでも国情に合わせなければいかぬということは当然であります。国情に合わしていかなければならぬ。
  21. 淡谷悠藏

    淡谷委員 国情がそうなっているでしょう。全般的な食糧構造が変わり、その変わった食糧構造に対する十分な自給ができないといったような形が輸入増加という形ではっきり出てきているじゃありませんか。食糧輸入に待つというのは非常にあぶないのです。これは単に農業だけではなくて、財政面からもさまざまなことが生じてくる。具体的にこれは国情がそうなってきているじゃないですか。その国情農業基本法のどの条項一体こたえるか。
  22. 西村直己

    西村国務大臣 国情と申しますのは経済事情変化もあります。同時に土地生産基盤になります生産基盤状況というものもそれに合うように直していかなければならぬ。これは当然であります。作目に応じ、またその作目経済事情に合うようにそれぞれ農業における近代化問題というのが非常に大きな問題として取り上げられているわけです。それから特に土地の問題につきましては少し時間のかかる問題でもあります。そういう点もあわせながら運用していかなければならぬ、これは当然のことだと思います。
  23. 淡谷悠藏

    淡谷委員 いや、私の質問をちょっと大臣お取り違えになっている。基本法を直す必要はない、基本法条文の運営で十分やっていけるというんですから。それじゃ、こうした基本的な食糧増産自給率向上に対して基本法のどの条文がこたえるかということをお聞きしているのです。
  24. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 農業基本法では各種の政策方向を示しておるわけでありますが、「国の施策」第二条の第一項第二号で「土地及び水の農業上の有効利用及び開発並びに農業技術向上によって農業生産性向上及び農業生産増大を図る」、これは御指摘のわが国農業の総生産増大することによって農産物ないし食糧自給度向上ということを最終の目標にすべきことを、国の施策方向として示していると思います。
  25. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それは一般的な概念的な規定です。具体的にしからば食糧に対する施策がどこにあらわれていますか。食糧に関する施策があったら条文をお示し願いたい。
  26. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 私は第二条第一項第二号のただいまの規定が、農産物という表現をとっていますが、当然に食糧の総生産増大ということを国の施策方向として示しておるというふうに理解をしておるのでございます。また第十三条で「輸入に係る農産物との関係の調整」というところでも、やはり国内農業の保護、したがって国内農産物生産増大ということに対する対外的な姿勢についても規定しておるというふうに理解をいたしております。
  27. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そのままではやはり答弁にならぬ。具体的にあらわれてまいりましたえさと麦の増産不可能な点を、これはもう日本国土上どうしてもできないんだというふうに断定されるのか、こういう面についても、食糧自給を高めるのか、この基本的な問題です。
  28. 西村直己

    西村国務大臣 えさにつきましては、私どもはやはり自給というものあるいは増産というものをはかれないんじゃない、はかろうとしているわけであります。そのために、たとえば粗飼料であれば農地改良といいますか、今回の農地法におきましても、草地利用権設定というような新しい制度を打ち込んだ里山等開発をはかろう、こういう努力をいたしておりますし、また御審議いただいた予算面においても、今年度も相当な草地改良事業費を入れている、こういうことであります。
  29. 淡谷悠藏

    淡谷委員 もう少し具体的な御答弁を願いたいのですが、えさや麦の生産をするためには、従来の日本農業方法なり経営反別なりを思い切って変える必要があるでしょう。農地も農具も一切変わらないと、えさ生産にはたえ得ないのじゃないですか、あるいは麦の生産にたえ得ないのじゃないですか。これは国土上の制約なのか農機具や農法の制約なのか、大臣一体どちらとお考えになっておりますか。
  30. 西村直己

    西村国務大臣 これは一つ農業といいましても、端的にぽんとあらわれたものじゃなくて、それはそれぞれの国の歴史所産であります。それからもう一つ歴史所産の中には自然の条件もありましょう。そういうものをよくつかみながら、しかも今度は具体的に経済がのぼってまいりますれば、それぞれの食生活向上し改善してまいります。それとのかみ合わせの中で考えていく。そこで、確かにそれは農耕方法農機具のやり方も今度は農地あり方も、そういったものも合わせまして考えていかなければならぬ、こう思うのであります。
  31. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そこが非常に重要なことです。一体そういう観点から考えた場合に、日本におきましては麦並びにえさ自給はでき得ると思われるのかできないと思われるのか、これによって農政方向が変わると思うのです。開拓方向も変わってまいります。私はやはり日本農業というものをもっと農民にとって有利な、そして日本食糧の要望にこたえるようなものにするためには、開墾をもっと促進しなければならぬと思っています。そのために、基本法の場合でも、社会党ははっきり開墾地造成をうたっておりますが、必要なしと規定したのはこれは基本法です。大体そういうふうになっています。ですから、もしもいまのままの土地状況開拓をしないでやるならば、これはえさと麦に対しては自給の要求をしていないんだというふうに考えざるを得ない。あくまでもこういうものは輸入にまっていくという基本方針なのか、これは日本国土においてある程度の自給率が高められるのだと考えられるのか、これは大臣基本方針として発表してもらいたい。
  32. 西村直己

    西村国務大臣 私は先ほどからも申し上げましたように、えさにつきましても自給度は高めたい、そのためにもいろんな施策というものを講じたいということはすでに御説明申し上げました。
  33. 淡谷悠藏

    淡谷委員 高めたいと思うならば、基本法を変えなければだめです。いまの耕地のままでこれ以上耕地をふやさないと自給できるわけはないじゃないですか。先般も申し上げましたが、単なる草だけによっては酪農もできない。何といっても、濃厚飼料生産もしなければなりません。それに現在のままの耕地でやっていけないことは見えているのです。それをはっきり制約しているような形の農業基本法はこの際手直しを必要とする。これを手直しをしないで、日本食糧が行き詰まらないという自信がおありなんですか。問題は、基本的には、食糧輸入まっか自給にまつか、二者択一の政策にかかっている。大臣はどっちをとられますか。
  34. 西村直己

    西村国務大臣 これはおそらく私が農林水産委員会予算の際にも申し上げましたように、政府といたしましては、食糧自給ということは何といっても大きな柱であります。したがって、飼料そのもの自給できないじゃないか、こうおっしゃいますが、自給を高めていこうということはまだ可能であります。その方法についてはいろんな方法がありましょう。農地造成することもありましょう。その一つとして、たとえば農地法改正の中に、草地利用権設定というような新しい制度を皆さまの前に御提示申し上げている、これも一つ方法なんであります。
  35. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは私にしては非常に満足のいかない御答弁なんですが、いまの基本法によってでも十分耕地の拡大はできるとおっしゃる。私は基本法の誤った点は、たとえ与党であろうが、もういいかげん年がたっておりますから、この辺で再発足をして、将来の日本農業に合うような状態手直しをしたほうがいいと思うのです。できたものだからいつまでもそれを温存していくといったようなことは、この際とるべきでない。いま大臣が、具体的には手直しは要しませんと言ったら、あとであなたは困りますよ。これは憲法とは違いますから、基本法というものはときどき改正しなければならないものです。情勢が変わったら変えなければならない、これをあくまでも基本法で通すならば、日本農業は滅びますよ。これでもってあくまでも日本農業発展させるような自信をお持ちですか。
  36. 西村直己

    西村国務大臣 私は農業基本法は、現在の農業の大きな憲法的な方向を示したものだと思います。たとえば具体的な例を申し上げますと、第二条の「土地及び水の農業上の有効利用」これは現在あるものを有効利用しようということで、それから「開発」と書いてあります。開発というのは御承知のとおりに、新しい土地造成、新しい方法というものを考える、こういうような形であります。ですからこの基本法の中から当然具体的な実情に合った運用をしてまいって政策が進められて、私は別に、おっしゃるようにこれによって日本農業はだめになってしまうのだ、こういうことはいえないと思います。
  37. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは掘り下げましょう。昨年東北各県の知事会が与野党一致しまして、いまの日本食糧の非常に心配な状況考えるあまり、食糧基地構想を立てた。この食糧基地構想を立てたのは、どういうふうに一体発展をお考えですか。
  38. 西村直己

    西村国務大臣 東北知事会議でどういうふうなお話があったか、それは私はちょっと存じません。
  39. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それじゃ知事会なんかの決定というのはどうでもいいのですか。去年ですよ。去年決定したものを存じませんじゃ、農林大臣一体何をやっているのです。これはあなたはかわったから、そう言うかもしれませんが、引き継ぎ事項にあってもいいじゃないですか。東北知事会決定なんというのは、自後一年余り農林大臣は知らぬでもいいというふうにお考えなんですね。それならそれでいいですよ。
  40. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 私も東北知事会議決定をこまかく記憶をいたしておりませんが、東北地方の持っておる自然的資源賦存状態、その他農業労働力状態等から見て、東北地方わが国食糧供給基地的な重要な役割りを果たす能力と将来を持っておる、そこでこの東北地方について、農業開発農業生産力の増進のために特段の方途をとってもらう必要がある、大筋を申し上げますとそういう趣旨の御決議であったというふうに記憶をいたしておるのでございます。その御決議につきましては、東北開発の法制もございます。その中で検討されることでもあり、また近く改定を予定されております国土総合開発のすべての産業を通じます開発方向の中では、知事会議の御意思は、当然政府の検討すべき問題の一つとして取り上げられ、国土総合開発計画方向一つの示唆を与えたものとして、私ども政府としては受け取るべきものというふうに考えておるのでございます。
  41. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大臣、こういう事態の起こるのは、やっぱり私は基本法によると思うのです。基本法食糧の確保というふうにうたい上げておって、このことに重点を置くならば、せっかく米の生産の大半を持っております東北、不幸にして第一次産業しか思わしい発展のないような東北で、食糧基地構想を持っておったならば、むしろ大臣が進んでこの構想を取り上げて国策として進めるのがこれは正しい方向じゃないですか。われわれ具体的にこれを遂行する場合、基本法食糧軽視方向が明らかにあらわれてきているのです。今後ともこの東北各県の食糧基地構想というものを国策として生かしていくだけの自信おありですか。基本法によってこれが少しも制約されないというふうにお考えですか。単にこれは東北の問題じゃない。現実に出ております食糧の不安に対して——私は米だけとは申しませんよ。非常に複雑な構造を持っております日本食糧の不安に対してこたえるために立てられたこの方策は、これは東北方策としてではなしに、国全体としての責任として考えるのが当然だと思う。大臣それだけの決意がおありなんですか。
  42. 西村直己

    西村国務大臣 東北知事会議の内容を知らない、こうおっしゃるが、それは具体的に何か特殊なことをやったのかと思ったから、私はそういうふうに受け取ったからであります。東北食糧基地であることは、私ども政治家としての当然の常識であるし、同時に何も東北だけではございません。北陸におきましてもあるいは九州におきましても、そういう大事な基地はある。したがって、今回のたとえば国土総合開発計画改定におきましても、国土総合の中で、われわれのほうも参加いたしまして、そうしてそういった大事な地域に対する農業政策のさらに前向きな進め方というものを織り込んでまいるような努力はしたい、こういう意味でございます。
  43. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これはしかし大臣、さっきの答弁とだいぶ違ってきているのです。ほんとうに食糧確保に向かって進む姿勢があるならば、去年知事会決定した場合に、直ちにこれに相応じて取り上げるのが正しい農政あり方でしょう。それをいまになって、この委員会で質問されて、なるほどあったんだなという調子じゃ、少なくともいまの御答弁とは全然合わないと私は思う。  まあ追及はこの程度にしておきますが、今度の機構改革を見ますと、将来拡張しなければならない耕地、これは当然えさなり小麦なりの自給をはかろうと思うと、近代的農業にふさわしいような耕地の拡張が必要になってくると思う。耕地の拡張は必要じゃないのですか、いかがです。
  44. 西村直己

    西村国務大臣 耕地の拡張の必要だということは、これはもう農業基本法にもすでに開発ということが基本的に述べられております。したがって、われわれのほうにおきましても、新しい農地造成もありましょう、同時に既耕地の新しい近代化という問題もありましょう、あわせてそれは毎年農林省としても予算上の措置を進めてまいっております。
  45. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これはしかし農林大臣農業基本法構想をあなたはおわかりにならない。あのときに、具体的に開発を提唱しましたわれわれの態度と、これを必要なしとした政府の態度とがはっきり対決したはずです。もう食糧は十分だから開発の必要なしと言った。そのために具体的に農林省開発の場面になると非常に渋るでしょう。こういう観点から考えますと、いまのこの食糧の危機に対して非常に果断なる大臣方向転換が必要だと私は思う。第一、いまの農村の実態をどうお考えになっておるか。土地だけじゃない、後継者の問題は一体どうするのです。この出されました書類によって検討いたしましても、ほんとうに将来の農村を背負って立つような、農業が自立できるような形態の農家というものは一体何%示されておるか。基本法が出てからもう四、五年になる。その間にこの基本法に基づいて自立した農家で、やっていけるという人は何%出ておりますか。これは大臣、関心持たれていますか。まるでもう山くずれみたいに都会に殺到する若い労働力が農村にどういう結果をもたらしておるか、その点で関心を持たれたならば大臣はっきりこのパーセンテージは押えているはずだ。
  46. 西村直己

    西村国務大臣 私も農林大臣でございますから当然関心を持っております。九%前後ということは戸数において言われておるわけであります。
  47. 淡谷悠藏

    淡谷委員 九%の自立農家で今後の日本農業をどう動かしていかれるか。九%ですよ。これがこの基本法によって育成されて、せめて半分くらいというなら聞くところがありますが、一割足らずの九%の自営農家の確立によってどういう希望が持てるのですか。これを見てびっくりしたのです。非常に楽観的です。九%は知っていましたけれども、態度が非常に甘いです。何んとかなると思っておる。
  48. 西村直己

    西村国務大臣 もちろん私どもは自立経営農家がさらにパーセンテージの上昇ということも望んでおります。またそれ自体がさらに規模の拡大することも望んでおります。同時に、しかし現実には兼業というものも相当の分野を占めておる。これも農業生産の中の重要な食糧供給基盤であります。そこで私どもとしては、自立経営農家も中核体として育成し、さらにこれをふやしてまいると同時に、兼業の農家の健全な協業化もはかってまいる、こういうような構想のもとにやっておるわけであります。
  49. 淡谷悠藏

    淡谷委員 協業はどの程度まで進んでおるのですか。
  50. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 担当局長が参っておりませんので便宜私からお答えいたしますが、協業の概念というのは非常に広い概念でございまして、たとえば一部協業、つまり農業生産手段の共同的な利用という範囲まで含めますと、非常に範囲の広いものになるわけでございますが、それを計数的に調べますことは、現在の調査のデータに基づきますと非常に困難でございますが、いわゆる協業経営という形で農林省が調査いたしておりますものは、昭和四十二年二月の数字で五千五百十二経営、そのうち全面協業が四百二十三部門、協業が五千八十九というような数字になっております。生産の集団といたしましては約六万程度の集団があるというふうに私どもの調査では出ておるのでございます。
  51. 淡谷悠藏

    淡谷委員 いまの第一種兼業は別としまして、二種兼業ですね、いわば飯米農家といわれておる分です。この二種兼業の部分が非常にふえてきておる。この二種兼業というのは社会的な食糧生産をしていないのです。自給だけはやる。飯米はとります。しかし国民全体の食糧には貢献する面がたいへんに薄い。したがってこうした一種兼業、二種兼業の諸君の労働力を集めるのは共同経営しかないということをわれわれははっきりうたった。それに対して基本法は共同経営ということばを避けまして、あくまでも協業でいくのだ、こう言っている。共同経営と協業とは一体どこが違うのですか。いまの協業というものもわれわれの共同経営といってよろしいかどうか。
  52. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 協業という観念は、いわゆる共同経営という観念よりいわば広い観念であると理解をいたしております。共同の経営自身、農業の経営全部あるいは一部を共同で行なう場合、これを私どもは共同経営というふうに理解していいのではないかと思うのでございますが、協業という場合にはさらに広く、生産工程の一部について協同をするというようなものを含めて協業というふうに理解をしていいのではないだろうかと考えております。
  53. 淡谷悠藏

    淡谷委員 非常に不明確です。共同経営というのはただ一セクションだけを共同でやるというのじゃないでしょう。経営自体の共同でしょう。共同作業とは違うでしょう。あるいはその部面部面について共同してものを販売したり買ったりするというような農協の理論というものでもない。あくまでも生産基盤に立って経営主体となってやるのが共同経営なのですが、協業はそこまで考えておられるのですか。協業においては経営の共同者になりますか。
  54. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 ただいまお答え申し上げましたように、協業と申し上げます場合には、私ども理解ではいわゆる協業経営、これを共同経営と呼んでも同様かと思いますが、それと協業組織というものを含めて協業という考え方で理解をいたしておるのでございます。したがいまして、農業基本法の中にあります協業という観念の中には、先生が御指摘になりました共同経営というものも含まれておるというふうに理解をいたしております。
  55. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは将来の日本農業を持っていく上において共同経営も取り入れるというふうに解してよろしいですね。念のために聞いておきますが。
  56. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 現にそういう組織自体もあるわけでございまして、それを健全に育成していくということは日本農政一つの課題であろうと思います。
  57. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その場合に日本の協同組合というのはいまのままでよろしいかどうか。生産性を全く抜いてしまった協同組合というものは将来どういう発展性を持っているか。
  58. 森本修

    ○森本政府委員 農業協同組合の現在の事業の中では、御案内のように、流通関係、たとえば共同販売でありますとか、あるいは共同購入でありますとか、それから信用関係以外に、御案内のように共同利用施設の設置でありますとか、あるいは共同の作業といったような生産関係、また生産に対する普及の関係、普及といいますか、法律の用語では教育の事業ということになっておりますけれども、営農指導員を一万数千名置いて生産に対する指導をいたしておるといったようなことで、協同組合としてもかなり生産面に対して施設の設置なりあるいは営農指導員の活動なりといったようなものを通じまして努力をしておるというふうに私どもは思っております。
  59. 淡谷悠藏

    淡谷委員 あくまでも生産場面では外部指導をするだけで、実際主体となってこの共同経営をやるような構想はないのですね。それならば一体協業の場合でも共同経営の場合でも、主体はどうなったらよろしいのですか。これは九%の自立農家というものを軸にしてこれからの日本農業発展をはかろうと思ってもかなりむずかしいのですね。多くの小農が脱落していって路頭に迷うしかない。その場合に、この小農を吸収してやるとすれば、合理的な共同経営たらざるを得ない。その共同経営は具体的にどういうふうな主体を持ち、どういうふうな発展形態をとるべきか、これは農林大臣の高遠なる御理想を聞きたい。
  60. 森本修

    ○森本政府委員 現在共同経営としてやっております形態としましては、法律的な法人組織としましては、御案内のように農業協同組合法に基づきますところの農事組合法人制度というものがございます。これは協同組合法の中にもその組織形態あるいは運営についても規定を設けておりまして、ちゃんとした法人形態をとるわけでございます。現在漸次その設立の数もふえておりまして、千四百組合ということになっております。そのほか協業経営をいたしますには、そういった法人形態をとらないで数人あるいは十数人が集まって共同して経営するといったような形態をとっておるものもございます。まあいずれにいたしましても、そういう組合が農家の選択によりまして農事組合法人あるいは協業経営といったような形でやっておるというわけでございます。全体の協業経営が五千幾らでございまして、農事組合法人としてはたしか千四百組合であったと思いますが、先ほど申しましたように、いま数字はちょっと……。
  61. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大臣、この際私率直にお願いしておきたいんですが、農業基本法の法文の解釈、あるいはこれの審議に当たっては、あの当時非常に真剣な討議が行なわれました。この中でこの共同経営の問題か自立農家の問題かで火花を散らしてやったことも事実です。それから耕地の拡張か非拡張かでこれまた火花を散らしてやりました。私どもは敗れました。敗れましたが、いまここ数年間の経過を見ておりますと、明らかに、いまの農業基本法のよって立った論拠というのは当たらなかったわけです。お忙しいでしょうけれども、あの当時の農業基本法の論争というものを大臣みずから読み返していただいて、さっき変えないと言ったけれども、変えなければ現実の情勢がどうにもならぬところにきておると思うのです。これは与野党共同でもかまいませんが、基本法の基本的なものを変えて、そこから新しい農業発展に進んでいきませんと、どうにもならぬときに立ち至っております。  それから第二の問題は、後継者の問題です。農家の労働力が老齢化しておる。つまり女性化しておることは争いもない事実でしょう。この後継者の問題は、農業の問題でも非常に大きい、出かせぎ問題とも関連しまして非常に大きいのです。これに対する大臣のお考えはいかがでしょうか。これはときがたちますとひとりでになくなる階層ですけれども、はたして若い労働力を農村につなぎとめるような農業一つの理想というものが掲げられておるかどうか、その点に対するお考えをお聞きしておきたい。
  62. 西村直己

    西村国務大臣 経済の進展に伴いまして、農業の就業人口がどの辺にあってしかるべきか、まずそういうような一つの目標があってしかるべきじゃないかと思いますが、といってなかなかこれはむずかしい問題ではあります。現在の就業人口が二〇%、統計のとり方によってちょっと去年あたりの計算で割った。たしか経済社会発展計画が四十六年で一六・七%のものを農業就業人口比率では見込んでおるのではないかと思うのでございます。そういうような基盤の中で、今度は労働力の質の問題でございますね。それが後継者育成問題になってまいるわけでございます。そこで、私どもといたしましては、やはり率直に申しますと、農業をやって自分の職域として希望があるんだ、これが何といっても最大のことだと思います。生活の環境に希望、これは何も物的のみではない、精神的一切を含めての希望があるんだということに中心を立てなければならぬ。  そこで、私どもとしましては、何と申しましても、一つ個々の農家の問題もありますし、もう一つは全体の基盤としての、集団としてのと申しますか、環境として全体としてつかみ上げていく面と、両面からいかなければいかぬと思います。前者のほうの全体の基盤としては、いわゆる抽象的にいえば豊かな農村つくりというような表現に言われておりますが、具体的には環境整備でございましょう。都会地が特に公害問題であり交通問題であり、収入が多少よくても、その環境としてむしろどちらを選んだほうがいいか、こういう一つの問題になってきた場合に、環境を豊かにする、そこで農業振興地域の整備に関する法律案というものをこの国会に提示いたしまして、農村における農業投資の重点化、いわゆる農業立地でございますか、そういうような方法考えてまいる。それからもう一つは、同時に農業生産基盤としての経営規模——少しでも農業をやるにはやはり土地というものが広くなければいかぬ。そこでかつては御存じのように管理事業団構想というものがございました。国会で御審議決定は願えなかった。今日は農地の流動化の形としての農地法の改正というものを提案申し上げている。かたわら今度は農業生産として自立的農家中心ではありますが、総合資金制度というものを今回入れて、この国会に提案をしておる。同時に予算その他の面から、各般の施策というものをこれから進めてまいる。もう一つは、個人の後継者の問題については、すでに御存じのとおり後継者育成資金であるとかあるいは研修農場であるとかそういう制度、それからいま一つは、この国会にも御提案申し上げました農業技術をさらに導入する意味におきましても農業大学校というような恒久の機関まで設けて、後継者というものの教育を高度化してまいる、こういうようなことをやってまいりたい、という中で後継者——いま一つは最終的には将来農業者というものが老後において安定した生活を営むための農業者年金というものの検討を開始をする、こういうように考えております。
  63. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは農業問題というのはいま日本だけでなくて世界でも最大の難問題にぶち当たっておりますから、なかなかたやすくは理想どおりいかないことはわかっておりますけれども、少なくとも私は大臣には、現実の農村というものは非常な危機の中に立っているという認識だけは、はっきりお持ち願いたい。これは精神的にも物質的にも恵まれた環境にはございません。その具体的なあらわれとして、若い労働力が都会に集まってきたというこういうことが出てきているのです。これはおそらくはかって農業基本法をつくり経済成長政策を立てましたときの政府の理想にも反した現象であると私は思う。これは大きな反省を必要とする。ただその場合、将来の農業ははたして家業として後継者を考えるべきか、家業を離れた農業として考えるべきか、これは将来の農業考える場合に大きい問題です。大臣一体どちらをおとりになりますか。
  64. 西村直己

    西村国務大臣 私といたしましてはやはり日本農業——これ一つ農業の基本の考え方にもありますが、私は農業というものは、基本は、何といっても生きものを相手にしておる。この点で工場生産とはちょっと性格が違うという点がやはり基本だと思います。これは酪農なんかにおいて一番はっきりしてくるわけであります。そしてクリエーションの社会だと私は思います。そしてこれを経済によって近代化し、そして流通機構、消費者にはまた安定的に供給する、こういう中から考えてまいりますと、私はやはり中心は家族経営というものが中心になっていくことが一番いい、こういうふうな考え方をやはり持っております。
  65. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その家族経営がどんどんこわれていっているのじゃないですか。おやじがやった農業を子供たちが継承してやっているという形は、具体的にこわれているのじゃないですか。もしもどうしても家族が農業を継承しなければならないというならば、このくずれていった形は一体どこに原因があるか。それが正しい方向でありそれでなければならないというならば、国としても何らかの施策を講じなければならぬ。具体的にいって、農家の家族というものは崩壊状態でしょう。夫婦さえ別居生活をしているじゃないですか。それに対する対策を立てられましたか。
  66. 西村直己

    西村国務大臣 これはいろいろ原因があると思うのでございます。ただ、その結果だけをごらんになれば確かにそういう御指摘も当たりましょう。しかし、一面におきまして自立経営農家、これは具体的な例を最近申し上げますが、この間NHKで表彰を受けた全国の代表的な自立経営農家の方々が十数人集まられて、その方々が、年代は大体三十から四十でございます、しかも、家族を中心にしてやっておられる自立経営農家であって、しかも、前途には非常に希望を持っている。もちろん具体的にいろいろな種類があります。酪農、園芸あるいは養鶏あるいは水稲、いろいろな種類がございますが、一がいにもう家族経営的なものじゃだめだ——もちろん家族だけでやれという意味じゃありません。しかし、そういうようなものを中心にしながら、自立経営農家の方向というものも決して明るくないものじゃない。ばらばらになっていっちゃうんだから、それじゃ何か別なものをこしらえ上げて、そうして一つのものでやれ、こういう御思想かもしれませんが、私は一挙にそこへそう割り切るわけにはいかない。  それからもう一つは、さっきから議論になっておりますように、協業と申しますか共同の形態ももちろん入ってまいるでありましょう。兼業農家が現実に多いのでありますから。そしてそこにも国もずいぶん助成しあるいはいろいろ地方の公共団体も手引きしながら能率をあげていく、こういうことになります。  それからもう一つは、ある期間ちょっと出ていってしまう、さっきおっしゃいましたいわゆる出かせぎの問題でございましょう。この問題につきましても、確かにそういうことは事実あります。じゃ、出かせぎ全部が現実にいけないのかと申しますと、どうしても現実の問題としては農業所得だけではあがらない。また冬季の関係あるいは労働力が余るという場合においての就業の機会というものをいろいろ合理化していく方法考えなければいかぬ、これは新潟県でも昔から杜氏なら杜氏というものは相当兵庫県に定期的、安定的に出かけておる、こういう事実はあるのでございますから、そういうふうないわゆる農外労働、農外就業の合理的な組み合わせ、これを明朗化し近代化すると申しますか、特に交通機関も電話も非常に発達した。それから就業も安定させ、そこへもっていって妙な事柄も起こらぬようにする。同時にもう一つ、私は農業地に対してもところによっては冬季の労働力が、道路環境その他が整備してまいりますれば、家庭を中心にしてそれが農外就業としての収入を得ていく、こういうような現実的な打開もかたわらはかっていかなければ、農家全体としての生活水準が上がらない。こういうようなところも、じみではございますけれども、現実に即した兼業農家の生活を守っていく努力をしていかなければならぬのじゃないかと私は思います。
  67. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大臣がたいへん推奨されております模範農家ですね。模範農家ならざるものもあるでしょうけれども、全部ひっくるめて九%ですよ。九%の中のまた二、三のものを引っぱってきて、これでやはり自立経営農家が一番いいんだというような結論は少し早過ぎやしませんか。あとの九一%はどうなっているんです。どのように強弁されましても高度経済成長政策というものは、農村から若い労働力を全部引っばり出したから、これは当然な話なんです。生きものが相手だと言いますけれども、同じ生きものでも植物と動物では生き方が違ってくる。最も生きものの生きものたる動物はどうです。成長部門であるといった酪農なりあるいは養鶏なんかはたして家族農業でやられていますか。この間の質問でも言いましたが、日本にかつてなかったニューカッスルなんという病気を輸入してきて、日本の養鶏界をさんざんこわしてしまった。家族の養鶏業というものはこわれてしまった。これは大資本じゃないですか。あるいは豚にしましても大洋とか日魯とか水産業者が上陸をしてきて、従来の家族農業者を一なめになめてしまって何十万羽という大きな養鶏をやる。生きものは家族農業でなければやれないと思ったら、これはどうですか、大臣、その点は生きものを扱う農家というものはやはり家族農業でなければだめだというならば、すみやかに「マルは」なり日魯なりを解体したらどうです。あれは邪道だとなぜ言わないのですか。
  68. 西村直己

    西村国務大臣 私も、数字のことはよく知りませんが、もちろん養鶏には大きな資本力が入った集団的な集羽飼育というものもありましょう。しかし同時に全国に養鶏の数からいきますれば、いわゆる個々の単位の養鶏も相当大きなものではないかと思うのであります。私が言ったのは、工場生産農業とは何が違うかという点は、やはりひとつ気をつけていかないと、同じような思想で同じようにやるということ自体が、はたしていいのかという問題は、絶えず考えていかなければならないということを私は申し上げたのです。
  69. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは、その数字を聞きましょう。統計事務を何か今度合併するそうですから、今度の機構改革にも大いに影響ありますが、農林統計というのはもっと強化しなければだめなのです。たとえば米が九四%あるいは九五%の自給率を持っておるけれども食糧管理法がちゃんとあって、食管制度が堅持されているからでしょう、国がいかに金を出していても、あの困難な生産の中で持ちこたえてきたのは、食管制度のためなんです。一歩誤ったらとても収拾困難を来たす直前にあります。現に来たしつつある。いま大臣がはっきりかぶとをぬがないで、いわゆる少羽数の経営があるようにおっしゃっておりますが、全国の少羽数の経営はばたばた倒れてしまっておる。数字があるならお示し願えませんでしょうか。——よろしい。いいです。どうせ満足な数字は出っこありませんから。私はやはりこういう点にもう少し現実を見た農政発展させなければならないと思う。特に今度の農政局の改変ですがね、あれは一体どういう趣旨でおやりになるのかお聞きしたい。
  70. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 今回の農林省設置法で地方農政局の機構を整備いたしまして地方農林局に改変をする。その際、民有林行政の一部を、現在林野本庁で直接処理をいたしておるものを地方農政局へ権限移譲することによって、農業と民有林行政が次第に精緻な行政に変化をいたしております点に着目いたしまして、現に行なっております農業行政との調整をはかりつつ、地域農業ないしは地域の民有林行政の伸展をはかってまいりたいということが第一点。  第二点は、農業の地域性が次第に顕著になっていく動向に即しまして、地域の農業に対する行政を一そう適切に推進いたしますために、農林統計の地域的な活用という点の必要性を痛感いたしまして、統計調査部の出先機関でございます各県統計調査事務所というものを地方農林局の組織の中に統合をするという二点がおもなる内容でございます。
  71. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どだい、農政局というものは屋上屋を架するのじゃないかと言ってわれわれは反対したんですよ。何か農政局は農政局でいままで実績をあげましたか。どういう実績をあげましたか。
  72. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 地方農政局の実績ということは、つまり総体的な農林行政の実績の問題でございますので、ここが地方農政局の実績であるというふうに分離してお示しすることはたいへん困難でございますが、地方農政局設置以来たとえば地域の、実情に即した総合的な行政を展開するという意味で、農業構造改善促進対策を講じてまいったのでございますが、全国すでに二千数百の市町村についての構造改善事業がおおむね円滑に展開されましたのは、私はやはりああいう機構、地方農林行政機構があったことが大いに力があったというふうに思うのでございます。また各種の災害対策等につきましても、その災害の防止のための施策の浸透なり、あるいは災害に対する応急的措置あるいは恒久的措置についての調査、施策の展開という点にも、やはり一応地方農政局の功績は大きかったと思うのでございます。また地方農業の動向につきまして把握いたしました各地方農政局別の地域農業の動向という報告を農林本省に提出をさせておりますが、これが私どもが全国的な農政を比較し、推進をいたしますために非常に適切な資料として活用されてまいったというような点は、いま私の頭に浮かびます範囲でもあるわけでございます。
  73. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは農林省の立場から言えば、出店があったほうがやりやすいでしょう。出店を扱うほうの一般の農民というものは、困っている面が相当ありますね。地方農政局だけではきまらぬものが多いでしょう。地方農政局に行って、また農林省に来なければものがきまった例がないじゃないですか。それからむしろこれは一局削減ならすべからく考えてみられたらどうですか。せっかくこれから大事な林政の問題やあるいは統計の問題をそこへまた持っていって、その面でもまた二重の形をとるということは、かえって行政改革の逆行ではないですか。これは別な場面でいろいろ議論するでしょうから私は触れませんが、ただその場合一体民有林と国有林と二つの面で林政に変わりがありますか。国有林と民有林と所有は違っていますよ。日本全体の治山治水を基盤とした、しかも森林資源を豊かにするという林政において、この二つの所有形態ではっきりした差別がありますかどうかお聞きしたい。
  74. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 私は林政問題についてそれほどの知識はないのでございますが、一応設置法で民有林行政の一部を地方農政局に権限移譲するという考え方の基礎にありますものの範囲でお答え申し上げますと、国有林と民有林が総じて日本の林業生産のそれぞれの場であり、またそれは一体として日本の森林生産等にあずかっておるという点については、御指摘のとおりだと思うのでございます。ただ行政の形態といたしましては、国有林は御案内のように一個の経営体として予算の構成の上でも特別会計という一本の経理の中で運営をされている。それに対して民有林は、それぞれ個々の経営体の相違によって経営が営まれておるという業態というか、経営体の相違がございますので、したがってそれに対します行政の対応のしかたも、国有林について統一的な方針一体的に運営されているものとおのずから違った姿があるということだけは言えるのではないかというふうに思うのでございます。
  75. 淡谷悠藏

    淡谷委員 西村大臣、いまお聞きのとおり、あまり官房長林政については詳しくないそうでありますから、これは農林大臣から直接御答弁願ったほうがいいと思いますが、いまの知事会決定しまして、国に強く働きかけておるのは国有林開放です。私はこの国有林開放について、あまりにも簡単に、あまりにも世俗的に地元民をだましている形態に腹が立ちます。たとえば、名前は避けますけれども、選挙の場合など賛成の代議士たちはどんなことを言うか。お上の林なんだから、これをとってきておまえたちに分けてやるのになぜ社会党が反対するのか、これが言い分です。国有林をお上の林でこれを持ってきて分けてやるという構想に国有林の開放が立脚しておる。私はこれは決して正しい林政ではないと思う。   〔委員長退席、浦野委員長代理着席〕 一体農耕をじゃましておるのは国有林だけじゃないと思う。耕地開発をする場合は、国有林でも私有林でも一緒にやらなければいけません。それを一方は国有林だからみんなちゃらんぽらんに分けてしまって、私有林のほうは使用の条件さえない。そうすると、林といっても非常に違うと思うんですね。しょっちゅう私たちの言うのは、農耕のじゃまになり、地元の経済にじゃまになるような林であるならば、国有林であろうと私有林であろうと、これを開放するのがほんとうであるというような、これが私たちの立場です。ですから国有林の条件に従うなら、いつでも賛成してあげます。明らかに国有林に対する態度と私有林に対する態度が違っている。それをわざわざ一つの庁がやってきた私有林に対する行政を、あらためてここでまた分割するというのは何ごとですか。それからまた国有林という考え方にもいろいろありまして、実は土地はほしくないが材木がほしいという人もあるんです。最近のようになると、だんだんこの要求が強くなりまして、から林ではしようがないから木がついたままくれということがある。明らかに今度の機構改革を見ますと、私有林側にこびた改革がありますよ。わざわざ経済の場面から行政の監督をとってしまって、つまり山林業者あるいは材木屋さんの統制を国の統制からはずしてきているという実態が出てきているんじゃないですか。大臣一体どうお考えになりますか。御答弁によっては私はさらに質問いたします。
  76. 西村直己

    西村国務大臣 国有林の活用につきまして御議論がありましたが、すでにこれは国会では法律が提案になっているわけです。関係委員会で御審議をされんとしておるだろうと思うのでありますが、これは国有林はすでに構造改善その他につきまして活用をされておる。ただ払い下げとかあるいはお上のものをやるとかという主義ではございません。活用していただく、これは当然の活用をはかっていく。ただそれを法律の上の一つ制度として、きちっとした基準のもとに活用していただくということで、今回の具体的な方向法律案に定めたものでございます。  それから地方農林局に私有林行政を所掌させたということにつきまして、やはりこれはどちらかというと農政全般の中において民有林と農政全般との関連が深い面もある。こういうことから地域行政と密着した形で私は民有林行政というものを地方農林局に入れたものだ、こういうふうに考えて御審議を願っておるわけでございます。
  77. 淡谷悠藏

    淡谷委員 まだどうも納得がいかないんですな。これは確かに東北地方あるいは北海道その他の地域では、国有林の利用は大事です。したがってわれわれもこの国有林の民主的な利用については、むしろ積極的に賛成している。ただし国有林のそういう民主的な利用をする場合に、私有林は一体民主的な利用はしてないじゃないかということです。これははっきり私有という観念があるから手がつかないんだとおっしゃるでしょうけれども農地法改革の場合これが残されているでしょう。稻村委員が私のあとに農地法をやると思いますから、当然問題が出てくると思いますけれども農地法の改正の場合に、山林原野は大山林地主の圧迫によってこれは立ちどまったでしょう。まだ改革以前の状態ですよ。だから終戦後のあの場合だからできたのだなんという言いのがれは許しません。国有林の活用が必要で私有林の活用が必要でないとお考えかどうか。その点に私はもっと私有林の、つまり民有林と国有林が林政の上において大きな差があるということをはっきり申し上げておきます。この点はどうですか。
  78. 片山正英

    ○片山(正)政府委員 お答え申します。  国有林と私有林との問題でございますが、国有林の活用法案は御承知のように現在提案しておるわけでございますが、これは農業構造改善その他の農業の今後の推進すべき方向に対しまして、国有林としましてもその土地の高度的利用という意味で協力できるものを御協力申し上げるという姿で提案しているわけでございます。それは土地としての考えでございますので、先ほど御指摘のございました立木につきましては、それが農業その他の活用と関係のないものであれば、それは立木を国によって処分したあとでお使いいただくという方向に現在お願いして検討をいただいているわけでございます。したがいまして、ただ農業として直接その立木が、たとえば防風林であるとかそういうもので必要というものにつきましては、当然立木つきの農地転用ということに相なるわけでございます。  それから民有林との関係でございますが、これは機構との関係で官房長も御説明申し上げましたように、われわれとしましては大きな方向としては、全国森林計画というもので民有、国有ともども一つの体系を持って推進しているわけでございますが、その中で国有林はいわゆる国の所有している山を中心として営林局署がそれぞれ実行しているわけでございますが、民有林につきましては、直接いままで林野庁が府県と連絡、指導の中で推進しておったわけでございます。しかしながら、先ほどの農業構造改善あるいはさらにその後山村振興法に基づきます山村の振興計画、それからわれわれといたしましては林業構造改善というものをその後実施しておるわけでございますが、それらが相関連して合理的な、先ほど申し上げました高度利用ということを推進するためには、やはり出先機関としての農政局を農林という形においてこれを総合して現実に即した形で御検討いただく、そのようなことによってこれを達成してまいりたいというような形で御提案申したわけでございます。
  79. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは国有林活用法案を出したように将来民有林活用法案をお出しになるのですね、同じ方向で行くならば。いまのお話はどうもそういうふうにとれる。
  80. 片山正英

    ○片山(正)政府委員 民有林活用法案というものをわれわれはいま考えておるわけじゃございませんが、ただ民有林としてのいわゆる高度利用ということで、御承知のように民有林のうちの約半分以上が薪炭林という形で利用されておったわけでございます。しかしこれは時代の流れによりまして薪炭需要というのは激減しております。したがいまして、それらに対処する山のあり方ということで、われわれは用材林ということでこれまで指導しているわけでございますが、たまたま提案されております諸法案がございます。それらとの関連でいわゆる土地の高度化ということでお互いに計画しあるいは打ち合わせる、そして協議する、それでこれを進めてまいりたいというふうに考えております。
  81. 淡谷悠藏

    淡谷委員 こういう具体的な問題は時間がありませんから一々しませんけれども大臣一体国有林と民有林とで国土開発上あるいはまた治山治水の必要上この対策に差があってはならないものですね、この点はどうですか。差をつけますか。差をつけるとすればおそらくは農地改革をしていないからだと私は思うのですが、私はやはり山林行政としては国有、民有を問わず、一つの行政の趣旨が貫かれなければならないと思う。今度はこれを二つに割るような形になりますから混乱するでしょう。大臣は基本的な考え方として一体どうお考えですか。
  82. 西村直己

    西村国務大臣 混乱するとおっしゃいますが、私はそうは考えないのでございます。農林大臣のもとで林野庁あるいはその他の農政をやっている局があります。それから同時に国有林につきましては出先機関は、なるほど営林局、営林署の系統でございましょう。そして民有林につきましては農政局を農林の立場でもって農政全般とあわせてやってまいります。したがって、当然民有林に関しては林野庁の系統でいくわけであります。地域農業なり地域実情に合わした林業経営をやっていこうという意味で、いわゆる農政局単位でもって、ある場合には権限移譲を受けて問題を処理してまいるわけでございますから、その点では御心配のようなことはあり得ない、こういうふうに私は思います。
  83. 淡谷悠藏

    淡谷委員 いや、お答え願いたいのは、治山治水上、国土開発上、経済開発上あるいは農業開発上でもいいでしょう、国有林の扱いと民有林の扱いに違いがあっていいものかどうかという問題です。これは高度な政治問題ですから、大臣の御答弁をはっきり願いたいです。
  84. 西村直己

    西村国務大臣 民有林の占める分野のほうがはるかに大きいでしょう。それは政治的に見まして、日本の国内におきまして国有林につきましてはすでに国がこれを管理しておるのであります。民有林につきましては民間が——ただ、御存じのとおり、民有林というものは、日本の国はきわめて零細規模である、そこで施業等につきましてなるたけ計画的にやってもらわなければいかぬというので、今回その計画制度化したものをこの間の森林法の一部改正として皆さんの御審議を願い、御賛成を願って国会で成立した。こういうような長期展望のもとにこれを推進してまいるわけでありまして、それらが当然一つの治山治水の基礎にもなっているのではないかと私は思います。もちろん今日国内の林産というものが需要にマッチしないで外材に相当依存しておる点につきましては、われわれとしてもいろいろな努力はしてまいらなければなりません。けれども、それ自体で治山治水が二つに割れてしまうというような心配はないと私は思います。同じ林野庁の中において、ただ出先機関が地域を単位に、片っ方は、国有林は国有林の営林署、営林局の系統でやるのでございまして、別に治山治水がそこで乱れてしまうというようなことはあり得ない、こう考えております。
  85. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは地方農林局構想の中でお答え願っていますが、国政の場面として治山治水あるいは経済開発に両者違いがあっていいかどうか。たとえば、森林開発公団なんかつくった場合に、あの辺で大山地主である北村又左エ門君なんかの山が帳簿面で八千町歩あるというので、全然見回りも何もしなければ手入れもしなかったでしょう。これは搬出しようと思っても道一本なかったのですよ。あの熊野三山に当たってわれわれ数次調査して、あの公団をつくって、道路をつくってやったりした事実はおわかりでしょう。そうしますと、全体の林野の四分の三くらいは民有林ですね。四分の一の国有林の活用、これは必要でしょうけれども、なぜ四分の一の国有林の活用が必要で、四分の三の民有林の活用は必要じゃないのか。国政からいえば同じものですね。ただその間にあるものは、これは大臣言いたくないでしょうが、農地改革がおくれているためなのでしょう。最近は治山治水の面においてもあるいは経済開発の面においても、非常に民有林の圧迫が強いのです。われわれが心配しますのも、東北地方における国有林の活用、利用が必要なことは知っていますが、いまのような民有林の所有の上限さえきめていない場合に、しかもかってに幾らでも持ち得るという制度のもとにおいて、国有林をさんざんにばらしておいて、また新しい民有林のさまざまなあやまちやさまざまな欠陥を暴露したくはない。やるならば一緒でいいじゃないですか。国有林活用法案を出すなら、民有林活用法案を出したらよろしい。やろうというならば、第三次農地改革でやったらいいじゃないか。それもしないで、非常に安易な気持ちで農政局を農林局にしますくらいでは山林行政は完全になりませんよ。日本の林政は完全になりません。むしろこれは一局削減、行政改革のしり馬に乗って、全く見通しなしにやった行動としか私には思えませんが、その点大臣のお考えはどうですか、率直にこれはお聞きしたい。
  86. 西村直己

    西村国務大臣 淡谷さんのお気持ちはほぼわかりました。それは民有林に対しまして第三次農地改革といいますか、民有林を解放さして、そして新しい一つの民主的な方法によってもっとこれを国策的に動かしたらどうかというようなお気持ちでございましょうが、ただ問題は、現実の問題といたしまして私どもはそういうことははたして妥当であるかどうか。民有林というものに対しての、農地解放とは違って民有林がなぜ解放されないで今日あるかという一つの議論がまた別にあると思います。  それは別といたしまして、ただ私どもとしましては、民有林につきましても現状のような形だけでほっておくわけじゃなくて、できるだけこれをやはり国全体のあるいは治山治水全体の、それから森林資源の恒久的と申しますか、長期的な展望に立った林産資源としての活用の方法からくる施業案を制度化していくというようなこと。それから同時に、今日里山等がいたずらに放置されたならば、これは先ほどのような草地などを求めておる場合における今回の農地法の改正で、草地利用権設定というような一つのあっせん行為に基づく一種の私有権に多少入り込んでいって草地開発をしていくというようなことも、まあ農地法の面から考えてまいりたい、こういうふうに前進はしてまいりたいと思っております。
  87. 淡谷悠藏

    淡谷委員 いつもの大臣に似合わず非常に憶病な答弁しかされていませんが、これは影響するところ大きいだろうと思うのです。しかし私はやはりそこに、いまの林政の面に大きな隘路が出てきていると思う。東北地方が国有林で困っている事実は私は知っていますよ。またこれを利用しなければならない必要も感じている。しかしいまの四分の三の民有林を残しておいたままでやれば、やはり新しい私有化の傾向が多分にあるのです。ないとは言えないです。われわれ別に、二十町歩、三十町歩あるいはそれ以上必要とするようなものでも、実際手の回る経営ができるような山林原野の所有までも解放をしろとは言いません。けれども、あの大きな激動的な農地改革をやったあとで、一人の山地主が何千町歩という山林林野を実際握って開発をおくらしておるのが実情でしょう。これは北村君だけでありませんよ。岩手県にもあった。方々にあります。したがってこの農業基本法はもう手直ししたほうがいいと思います。手直しして日本農業に画期的な生命を開こうとするならば、耕地の拡大も何か零細農家の土地を手放すのを待っているような態度じゃなくて、国の構想においてはっきりした近代的な農地造成したほうがよろしいと私は思う。これははっきり政府農業基本法基盤だったでしょう。全国を歩いてみんな聞いていますから知っていますよ。その態度をいま改めないと抜本的な農業改革はできないと私は考える。その点はいかがですか。
  88. 西村直己

    西村国務大臣 その点は一つの御意見として承っておきましょう。
  89. 淡谷悠藏

    淡谷委員 承った以上、これは御考慮願うと思いますが、私はやはりいまの農業というものは危機感に立ってあらゆる面から慎重に、そして大胆にこれを分析し、解剖し、同時に発足しなければ何ともならないと思う。現に米価問題で困ってしまったというような理由で、日本ではもう米をつくらないでもいいというような説が農林省の一部に出てきておるじゃないですか。南方の水田開拓なんかに依存して自給率は下ってもいいというようなことを大胆に言うのもありますよ、日経連、経団連をはじめとして。これくらいに国の農政を撹乱し、これくらい国の食糧問題を撹乱する説はない。はっきりした国の農政基本方針というものは、やはりこの際もう一ぺん策定し直すべきではないかと私は思う。このことを強く農林大臣に要望いたしまして、私の質問を終わります。
  90. 浦野幸男

    ○浦野委員長代理 稻村隆一君
  91. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 実は私、このごろ農地法改正の問題が新聞に出ましたので、重要な問題だと思って一応読んでみたのです。ところが読んでみて驚いたのです。むろん、農林省としてはそういう気持ちがないだろうと思うけれども、この法案というものは農地改革の根本精神を崩壊させる第一歩だというふうに私は実は認識したわけです。むろん、あなたのほうでは、そうではない、こうおっしゃるであろうけれども、実は提案理由も聞いておりませんから、一言にして言えばどういうつもりでこの法案を出したのだということをお聞きしたいのです。具体的なことはいずれだんだんお聞きいたしますが、その点農林大臣はどういうお考え農地法改正を出されたか。私はその必要はないと思っているのですが……。
  92. 西村直己

    西村国務大臣 実は農林水産委員会には御提案申し上げて、趣旨等こまかに、あるいは内容を御説明申し上げております。  そこで、あとで農地局長から内容についてごく要点だけ申し上げますが、目的は、結局は御存じのとおり日本におきまして農地の規模が零細である。そこで、しかも近代化する。そのためには実際の農民の声としてももう少し土地をほしいという声はきわ立ってあるわけです。そこで、どうしたら土地というものをもう少し広めていくか。しかし、一方におきまして農地法をつくりましたときの自作農を中心にしてまいりました一つ農地法の精神というものもございます。そこで、かつて農地理事業団という構想が出たと思います。しかしこれも国会の中において、御論議の末成案が得られませんでした。そこで、農地の流動化ということは、構造改善において何とかして農業をやる人の手によって土地が効率的な利用をされるようにという中で考えられましたのが、私は実は今回の農地法の大きなねらいだろうと思うのでございます。  結局、農業をやめるというような方がありましても、そこでもって土地の財産的な保有というかそういうようなお気持ちは持っておられる。しかし、それを何かそのまま置いておくわけにいかぬので、番のようなかっこうでお年寄りを残しておくような方もありましょう。そういうものはむしろある一定の期間、たとえば今度の法案ではたしか親子二代くらいに制限されておりますが、一定の方に対してこれを一定の限度までは農地を賃貸借をしていく、こういうようなかっこうで、一種の不在地主を認める。これならば、専業者、農業をやろうとする人に対して、自作をしていこうとしておる人に対しての賃貸借、借りやすい、貸しやすいという形で農地が集まっていく。こういうような形で農業者に対しての土地の提供をはかっていこう。かたわら、それは当然やみ小作とか請負小作とかいうような、法的根拠のないものに対して、そういうものをやめていっていただいて、賃貸借というような形に集約していくことになるのではないか。  それからいま一つは、現在多くではありませんけれども、すでに小作に出ているところは別としまして、将来そういった小作をやろうというような場合においての最高小作料は撤廃をいたしましても、もし弊害が起こった場合にはいろいろな勧告とか、是正の手を打ってやりますれば、小作料は相互間できめ合っても、法的に統制をしないでも、今日のいわゆる労働の雇用機会の非常に多いときには妥当な小作料というのが設定されていくのではないか、こういうような耕作者に対する立場、それから今度は農地の流動化を多少促進するというようなねらいを持っていたわけでございます。  それから大型機械等を利用した場合においての農業生産法人の要件を緩和したりするようなことと、先ほど来お話が出ておりましたように、今日裏作があいております、そういうようなものに対しましての裏作の短期の小作契約と申しますか、裏作を利用してもらうというようなこと。  それからもう一つは、市町村や農協が共同利用しようというような場合においての草地をつくっていく、畜産の、いわゆる草地造成のためには一種の共同利用権と申しますか、市町村、農協に対しての草地利用権設定をするような方途を開かしてやる。こういうようなことになっていきますと、農業をやらぬ人がただ土地を集めていくとか、そういうことにならないようにして、農地をできるだけやりたい人のところに集めてまいる。そしてそれが効率的に農業のために利用されていくということは、土地を持っておられる方で、しかも農業をやらないという方、あるいは農業をやる人があれば自分は土地は持っておっても退いていくというような人たちと、相互の利益を考えながら、その中で農業というものをさらに土地を広め、規模を拡大していく、こういうようなねらいでもって今回の農地法の改正をやったわけでございます。
  93. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 いま大臣の説明は私はそういう考え方は悪くはないと思う。しかし実際はそうじゃない。実際はそうならない。私は一々読んでみて、あなた方は役人として長い間上からものを見てきたでしょうが、私は二十のときから農民であって、五十年も農村でやってきたのだから、ずいぶん農地解放のための戦いなどは、監獄などに何度も入ったりして、苦労してやってきておる。そういうふうに下からものを見る。私はそのほうが政策に照らしていつも正しいと思っておるのです。そこで、具体的にお聞きしますが、あなたの言うようにそう簡単にそんなことをやったところで、農地の拡大、近代経営はできないと私は思うのです。  最初にお尋ねしたいことは、農地の権利移動の制限緩和でありますが、農地保有の上限面積を撤廃して、下限面積を現行の都府県平均三十アールを五十アールに、これは北海道は別ですけれども、引き上げようとしておる。政府はこのような改正をやってはたして農地の流動化が進展すると思っているのか。私は進展すると思わないのですが、あなた方進展すると思っていらっしゃるのですか。これはほんとうに進展しますか。
  94. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 ただいまのお尋ねの要点は、現在農地の権利を取得をいたします場合に、原則として上限三町、それから下限で原則として三反歩以上ということで三町歩三反歩の間で好ましい経営農家を育成していくという考え方に立っておりますのを、下の三反を五反歩に上げ、さらに上の三町歩の制限をはずしたことが適当ではないではないかという御意見でございます。農地法を制定いたしました当時の三反歩という基準は、当時の第二種兼業農家の土地所有状況を見ますとほとんどが三反歩未満であったのでございますが、最近は第二種兼業農家の大多数は五反未満の経営規模になっておりますので、今後新たに農業経営を開始しようとする人に第二種兼業という形で開始をしてもらうことは、やはり乏しい農地の利用の効率から考えて適当ではない。ただ買い取りなりあるいは耕作権の設定等に際しまして、従来持っておりました面積と合計して五反歩をこえます場合にはそれは権利の移動を認めることにいたしたのでございます。最高の三町歩は、従来の農法、農地法の制定されました当時の農業技術のもとにおきましては、家族中心では三町歩がおよその限界であろうというふうに考えられておりましたので三町歩を原則といたしましたが、現行法でも、家族が中心で農作業をやる場合にはそれをこえることも許されておったわけでございますが、今回の改正ではより経営規模の拡大が、生産技術発展に伴いまして可能になりましたので、自分たちが家族で農作業をやる限りは三町歩をこえてもよろしいというふうにいたしたわけでございまして、現在の農業事情なりあるいは生産技術なりの実情に応じた改正をいたした趣旨でございます。
  95. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 それはよくわかるのですよ。私も過小農経営は日本農業のガンであると思うけれども、実情に応じてやらないとこれはとんだことになってしまうわけですね。現にそういうふうな経営はいますぐ五町歩とか七町歩とか行なわれないのだから、その実情に応じて経営面積を拡大するとか、現行法でも家族労働力による場合は制限をこえることができることになっておるのだから、それを上限をいま撤廃したからといって、直ちに規模を拡大する農業がふえるとは思われないのです。前向きの条件がついておらない。百町でも二百町でも、機械があるのだから経営はできるけれども、しかしそういう経営する条件ができていない。だんだんやらないというと、これは今度土地の騰貴だとか不在地主がばっこしてきたりして手も足もつけられなくなりますよ。早くに規模の拡大の農家がふえるとは思われない。規模が拡大できる経済的、社会的環境が整備されなければ意味がないのです。特殊なところ、開墾地とかあるいは北海道の一部だとかは別だけれども、全体としてはそういうような環境が整備されていない。こういうことはむしろ大農経営が簡単にできる一部の農家に資本主義的経営ができるというような幻想を与えるだけじゃないか、こう思っているのですが、その点はどうですか。大臣どうです。
  96. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 従来から農地法の最高制限の原則的な三町歩というものは、やはり経営規模拡大のための制度上の阻害要因になっておるということは一般的に言われておることでございまして、御承知のように私どもも、そこの制限をはずしたからといって、直ちに三百とか五百とかいう経営農家ができるということを期待はいたしておるわけではございませんけれども、機会があれば三町歩をこえて農業だけで食っていける農家ができるように、制度としてつくっておくことはむしろ今後の農業政策として適当であろうというふうに考えております。
  97. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 そういうことはいろいろ議論になるけれども日本のようなところでは、大農経営はむずかしいのだから、そこで機械ができている。それなら機械は共同利用していけばいいのですよ。たとえば、いまの日本農機具なんというものは何十万台と普及されておる。しかもメーカーが盛んに宣伝をしておる。そして農家は土地を売って農機具を買っておる。大農経営をやるために耕地面積を少なくしているのだから、そういうようなばかなことをやらないように、生産面だけでも共同するということで、たとえば耕うん機は、一々隣も買ったからおれも買うということにしないで、これは五軒共同で買ってかわりばんこに使う、そういうことはできる。さっきも共同経営が問題になったけれども、共同経営の農業を促進していくべきであって、所有権を拡大するということじゃないのだ。これは実際上、さっき言ったように簡単にできやしないのだから、こういうふうな、つまり機械貧乏をしないように、機械ができたんだからお互いにその機械を中心に共同経営をやっていく、共同経営だというと直ちに社会主義経営とか集団農業とかそんなふうに誤解があるから日本ではそれをきらうのだけれども、そんな所有面積の引き上げをやる意味は何にもない。まず機械ができたから共同経営をやる、こういうことをやっていけばそんなことをする必要はないと私は思う。  それからこれはあくまでも私的農業、私的経営というふうなものが頭にあるからなんです。これは、共同農業とかなんとかいえばすぐ集団農業とか共産主義国家のやっていることと誤解するが、そうじゃないのだ、共同経営は資本主義の国でもやっているのだから。何度も繰り返し言うようだけれども農民がたんぼまで売って何十万円の一台の機械を買う必要がない。これは共同で買って共同で使えば非常にいいのだから、共同経営はできるのだ。そういうようなふうに農林省が指導すべきであると思っておるのです。土地所有だけ拡大したら直ちに資本主義的な大経営ができる、こういうふうに思ったらとんでもない間違いですよ。日本はアメリカなんかと国情が違いますよ。そういうふうなことは根本的に間違っている。上からばかりものを見ておって実情を知らないからそんなことをやっている。  それからまた、零細農に対する農外収入の安定収入が保証されていないのに、下限面積を引き上げたってこれはどうなる。三反以下のものは農家でなくなってしまう。農家の待遇を受けない、こういうことになる。日本では三反百姓というのは多いですよ。こういうものを無理に農村から追い出しても、日本が世界有数の工業国家だといっても人口が多いのだから、それを追い出して都市の工業がこれを拾うだけの、まだそんなふうになっておらない。一億もあるのですから、イギリスみたいに三千万か四千万ぐらいだったらそういうことは可能かもしれないけれども、もう実情に合わないことをやっている。  現行法においても第三条第二項の八では農業生産が低下することが明らかな場合は農地の取得の制限が加えられているのだから、農地の面積の上の制限を引き上げるということは意味はない。これは理解できない。むしろ五十アール以下の経営規模のものは農家として権利が認められないことになる。これが問題なんです。これが農村におけるいわゆる階級的な分化を起こして、そうして農業者として扱わないところに大きな問題がある。そうかといって都会へ行けない場合もある。このごろでは出かせぎがずいぶん多くて、だんだん農業人口が減っていくのも事実だけれども、それはそう急速に——まだ全人口の三割以上が農家なんだから、そういうことを考えると、どう考えてみても、この所有地の引き上げなんということは意味がない。また五十アール以下の農家を農業者から除外するということは、これはもってのほかだと私は思っている。そういう点は一体どうお考えでありますか、大臣。これは根本的に間違っている。
  98. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 ただいま二つのことをおっしゃいまして、一つは個人の経営規模の拡大ということよりは、共同経営を育成していくべきである。それが今後の大型機械等の利用の効率を高めて、農業政策上も必要であるということをおっしゃったわけでございますが、今回御提案を申し上げております農地法の改正案の中では、お説のような共同経営をあわせて育成をしていくための土地制度というものを考えまして、農業生産法人に関します現行の規定を相当大幅に直すとか、あるいは農協としての共同経営ができるということにいたしますると、そういう共同経営組織と土地所有者である耕作者の個人との間の土地の利用関係につきましてのいろいろな規定を整備いたしまして、今後の集団的な生産組織の育成のための土地制度の改正を盛り込んでおるのでございます。しかし他面そういう共同経営を進めることとあわせまして、個々人で自分では個別に経営をやりたいという農家もあるわけでございますから、そういう農家のために、条件が整えば経営規模が拡大できる条件を備えておくということは、別に現状に反する制度だというふうには私ども考えておらないのでございます。  それから第二に、下限面積を五反歩に上げました事情は先ほど申し上げましたが、そのことは、五反未満の農家を農地法の対象からはずすとか、あるいは農業者として認めないということとは全然違うのでございまして、五反未満の新たな農家が創設されることは否定をいたしたい。現状五反末満の農家がさらに自分で農業を続けていくために七反なり一町になろうとすることを何ら否定するものでもございませんし、五反未満の農家を農業から排除しようとするような規定は、この改正案のどこにもないのでございまして、そういう趣旨ではないことを御了解いただきたいと思います。
  99. 浦野幸男

    ○浦野委員長代理 この際、暫時休憩いたします。    午後零時三十八分休憩      ————◇—————    午後三時三十分開議
  100. 三池信

    ○三池委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を続けます。稻村隆一君。
  101. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 先ほど農政局長は、土地所有権の上限の撤廃は近代的大経営にするためだ、こう言ったけれども、これはあとで農地法をだんだん調べてみるとわかるのですが、小作地の所有の制限緩和とかあるいは賃貸借の制限緩和でそうならないのですよ。いま手間賃は、田植えの時期などは女でも二千円取りますから、そんな高い労賃をかけて大経営なんかしないですよ。これはもう必然的に小作のほうに発展するのです。地主制度の復活にならざるを得ぬのです。これは幾らいっても大経営なんかにならぬ。だから私は言ったでしょう。大経営をやるなんというような社会的な条件はできてない。大経営をやるなら農業協同組合なり農事協同組合で共同経営を機械を中心としてやれ、そういうふうに進めていけ、こう言ったのです。私は、農地法改正をみんな見たんだから、農業協同組合のそういうことをうたってあることを知らないわけじゃない。だから、これはもう地主制度の復活にならざるを得ないのです。あなた方若いから知らぬけれども、そう言っては失礼ですが、昔はわれわれの若い時分は、戦争のずっと前は、小作料がまだ下がらない農民運動を始めたころは、五町あればふところ手で食えたのだから、日本の高率の小作料——ついにそこになりますよ。それは議論だからここではあまり言わないけれども、こういうことが近代経営になる、資本主義経営になるということは、それは部分的にはあるかもしらぬけれども、全体的にはならぬ、そのほうが全く損だ。  そこで、私は小作地の所有制限の緩和と賃貸借の制限についてちょっとお尋ねしたいんですけれども、今度の改正で、都府県は一ヘクタール、北海道は四ヘクタールまでに不在地主を認めることになったのですね。不在地主という制度は、ほんとうは全然不在地主をなくすることが農地改革の目的なんですよ。ところが不在地主を今度一町まで認めるということは、やがては何かの機会に二町にする、三町にする、こういうことになる。昔は——昔といっても戦争前ですね。肥料商だとかそういう農業者でない者が不在地主であって、農業を支配していた、そうして農民を搾取しておったのだから、幾ら理屈を言ってもそういうことに発展せざるを得ないことになるのです。しかもこういうことは農地改革の精神を根本から否定することになる。こういう法案をつくるときには、農地改革というものは——これは私は何もえらそうに言うわけじゃないけれども、どこの国でも同じ事情で行なわれている。これは資本主義のもとに行なわれようとも共産主義のもとに行なわれようともです。つまり、地主制度というものは、ブルジョア経済学のリカードじゃないけれども農業生産力を阻止しているものだからこういうものは資本主義の発展のためになくさなければならぬということをブルジョア経済学者は言っているんです。だからヨーロッパではすでに、御存じのように、スペインとかそれからドイツを除くほかは、農民生活その他で、フランス革命なんかの影響で自作農主義でもって——そうでないところも多少は残っているけれども、大体は自作農主義でもって民主的な農地改革が行なわれている。ただ、中国とかソ連とかは非常におくれた国だったから、封建時代の土地所有が残っていた。そこで、土地改革を共産党がやったにすぎない。この農地改革歴史をよく知らない者は、農地改革歴史は共産主義革命だと言っている。とんでもない話なんだ。土地改革は純然たるブルジョア民主主義改革である。これはあなた方は学問をしているから御存じであろうけれども。だから農地改革というものは、どこの国でもその精神というものは、特殊の例を除いては、不在地主をなくする、地主制度をなくする、農民でない者が土地を持つとかそういうことをなるべくなくしよう、こういうのが農地改革の精神だ。ただイギリスだけは、あれは大農経営で、農業賃金労働者である。地主は、これは地主じゃなくて農業資本家なんだから、英国だけは特殊であって、あとのいわゆる民主主義国家では自作農主義が基本なんです。そういうことを考えると、これはもう根本的に間違っている。小作地の所有の制限を緩和するとか賃貸借の制限緩和とかいうことは、農業史を無視した、ただ法律屋が法律だけを考え、何かの思惑を持ってこんな案を出した、こう疑わざるを得ないのです。こういう点は一体どう考えるのか。不在地主の土地所有を一ヘクタール認め、それから賃貸借も制限を緩和するなんということは、これは地主制度の復活にならざるを得ない。その点農林大臣はどう考えておりますか。
  102. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 今度の改正案では、御意見のように不在地主を認めるという考え方に立っておりますが、そのうちの一つとして、先生も先ほど来言っておられます共同経営、集団的生産組織を育成するという立場に立ちました場合に、その組織に現在の自作地を預けて数人で共同で経営する場合に、もし大型機械等が入りますれば全員が農耕に従事しなければならないという実情は出てまいりませんので、そういう共同生産組織に預けたという形では不在地主が発生をしてもやむを得ないのではないかというふうに考えましたことが一つと、それからもう一つ、個人間の場合には、御意見のように先生が農民運動等を非常に強力に御努力なさいました時分のように地主対小作という関係土地問題をとらえなければならない、そういう状況には現在はなっておらないのでございますが、今度の考え方では、少なくとも十年以上自分が耕作をしていた土地を、その人が農業をやめるにあたって、売らないで他人に預けて、経営をそちらにまかすような場合に限って、不在地主としても一町歩までを認めるという考え方で、きわめて限定的に考えておるわけでございます。したがいまして、私ども改正案を立案いたします過程でも、戦前のような無制限な不在地主の存在を肯定しようということではございませんで、一つには、共同経営組織へ参加したメンバーがその組織に預けた農地について不在になるケースと、それから、従来十年以上みずから農業経営をやっておった農家が、農業をやめて、みずから他の産業に従事するようになった場合に、その農地の所有権を留保した形で他人に預けた場合に、本人とそのむすこの代までに限って不在地主になるということを肯定をしよう、言いかえれば、その段階で農地の所有権を一町歩だけ留保した形での勤労者の存在を認めることは、現在の実情から考えて差しつかえないんじゃないかという立場に立っておるのでございまして、先生がるる申されましたような土地制度全体として野放図な不在地主の存在を肯定をし、またそういうものが今後大きな地主として成り立っていくことを肯定するというような考え方には立っておりませんので、きわめて限定的な機会に——繰り返し申し上げますれば、共同経営組織に参加をした人について、それから従来十年以上自作地であった人が、本人と子供の代に限って、他産業に従事する間その家として暫定的な期間だけ不在地主を認めるということが、現在の土地利用の実態から考えて適当であろう、そういうふうな判断でございますので、御意見のように不在地主の存在を広範に肯定をしたり、あるいはせっかく農地改革によりまして小作対地主という形での農政問題を解消しました現状で、もう一度戦前のような土地制度に復活をさせようというようなことは毛頭意図しておらないので、御了承いただきたいのであります。
  103. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 そういうことはたいへんけっこうですが、そういうことにはならぬですよ。法律なんかどうだって変えられるんだし、人間はなかなか既得権は捨てるという気持ちにならぬから、本人とむすこの代といったって永久にそういう方向にしようとしますよ。たとえば明治維新の土地改革の例を私出しましょうか。明治維新の土地改革というのは、これは大名の土地をいわゆる天皇に奉還したということで、実際上土地所有制度日本では全くなくなった。それは御存じでしょう、実際。たとえばドイツのユンケルだとかそれから帝政ロシアなどの大地主みたいなものはなくなる。これは国一つに集中されたはずなんです。ところが、なぜそれは地主ができたかというと、これは歴史は繰り返すわけじゃないけれども、よほどしっかりしておらないとそういうことになって地主制度が発生する基礎になってくる。大体徳川時代においては土地というものは全部大名のものだから。ところが使用権を持っていた。一部の庄屋とか一部の者、あるいは新田開発をしたというような者は使用権を持っていた、だから、使用権というものを、今度明治維新の土地改革で大地主はなくなったけれども、小さな地主が使用権を所有権に土地改革で変えちゃった。そこで、日本では小さな地主が発生した。ところが外国のような広大な土地を持っているところ、人口が少なくて土地が多いところは大地主というものは発生しなかった。地主というものは、それで遊んで食えるというようなものは、発生する余地がなかった。ところが、人口は多いし土地は少ないものだから、五町歩くらい持っていれば遊んで食える。そういう小地主が至るところに発生したのがいわゆる明治維新後の地主制度なんです。それが非常に小作農民をしぼって、農民は片っ端から軒並みに自分の娘を女郎にやって小作料を払っておった。そんな悲惨な状態が出てきた。小作料は高率で、農業生産はさっぱり発展しない、そして寄生地主が出てきた、こういうようなわけですね。それはあなた方の意図はそうしないなんて言ったところで、法律はどんなにでも変えられるんですから、これはまた変わって、また地主が発生して同じようなことを繰り返す。そして、それで農地改革の精神というものを全く破壊してしまうという結果になることはおのずから必然だと思うのです。そういう点を心配するわけです。これはお答えいただかなくともいいけれども、あなたと議論したってしようがないんだけれども、実際そういうふうな今度の農地法の改正というものは、私は何か意図があって、いろいろあなた方はうまいことを弁解されるけれども、これは要するに農地改革というものに対して納得いかない者が、あるいは反感を持つ旧勢力というものが動いて、そしてあなた方を動かして、そしてあなた方はそれに便乗して法律をつくったということになる。いままでの農地法に何にも不便はないのだから、さっきから私は何度も言ったとおり、はなはだ失礼な申し分であるが、疑わざるを得ない。第一、一ヘクタールに制限されたとしても、実際上、農村における不労所得を奨励することになるのです。そして一ヘクタール以下の農業経営者は農業から離れていくことを期待しているのじゃないか。こういうようにわれわれは考えて、この前の構造改善計画なんて、あんなものは失敗すると私どもは言っていた。強行したら、どうですか。うまくいってないじゃないですか。あんなことを言って、近代化するなんて言ったって。それで悪く考えれば、これは資本家的立場から、資本主義的立場から、一ヘクタール以下の農業規模の農家から労働者をつくり出して、そして低賃金労働力を確保しよう、こういうものじゃないかというふうに、われわれ疑わざるを得ない。この点農林大臣いかがですか。これは必然的にそうなりますよ。
  104. 西村直己

    西村国務大臣 私は、農地改革自体非常に意義があったと思います。ただ農地改革も今日相当な年数もたち、その間に御存じのように憲法も定着したわけであります。また社会情勢、諸般の情勢というものは、戦前とはすっかり変わって、農地改革の精神というものは私は定着をしておると思う。その中において、今度は農業の近代化あるいは生産性向上、こういう中でいろいろ私ども農政として規模の大型化あるいは土地の利用の効率化というものをはかってまいる。こうなると一つ考え方、農地理事業団というようなものもかつて考えられたわけでありますが、これも御議論がありまして成立を見なかった。それでそれよりはさらにこれが非常に絶対にいい法律であるか、これはいろいろやっていく間において、必ずしも直ちに法律によってこの流動化がうまくいくわけではないにいたしましても、私は次善の策として、こういう形で、土地は持っていたいが、しかし土地を預けて、耕作をしたくないというような方の土地の効率化をはかるということは、農地法の精神にもはまり込んでいくというふうな意味から言えば、私はあなたのおっしゃるような、根本から一つの別な意図を持っていくようなものとは違う。そして御存じのとおり通作のできないような土地を持つようなことは、この案では禁止をいたしております。あるいは投機的目的を持って、それからあるいは農業をやってない者がこういうような土地をつかもうということも、これは当然できないようなことになっているわけであります。私は相当な制限の範囲内において、土地利用を促進させていくということにおいては、やはり効果はあるのじゃないか。しかも農地法の精神そのものは、定着したものを殺すことはない、こう考えておる次第でございます。
  105. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 一たん農業をやめた者が農業へ帰るということはほとんどないですよ、不在地主になったらね。これはもう帰るものじゃない、実際上。農業みたいに肉体労働をやるものにはばかばかしくて帰りませんよ。長男だって都会へ出ていって仕事を見つければ、みんな農村を捨ててしまうのですから。特に山間のところで農業で食えないところはもう離れていくことはきまっています。ここでは議論になりますからそれ以上は言いませんけれども、第一賃貸借条件を緩和すること、これは請負小作などのいわゆるやみ小作料は、そういうものはなくなる。特に個人の賃貸借はなくなるけれども、こういうふうないわゆる上限を撤廃するというようなことは、私はどうしてもそこにいくのじゃないか、いかざるを得ないのじゃないか、そう思うのです。さっき言ったとおり、農業労働者を大ぜい雇ってやるより貸したほうが得ですから、やみ小作はなくなる、これは公然と賃貸借ができるのですから。それからヨーロッパなら、こういうような賃貸借の緩和というものであなた方の考えているような借地農業が生まれて、近代的な経営規模の拡大する借地農業が生まれると思うけれども日本のような非常に地価の高いところでは、私がさっき言ったとおり、これは実際上賃貸借が緩和されれば、やりがいがありそのほうが利益があるんだから、それでそれはいわゆる小作、地主の間みたいになってしまって、決して近代的な農業にならぬと思う。これはもうはっきりしていると思います。それは日本が地価が高いし耕地は少ないということは問題になるわけですが、そういうふうなことで、賃貸借の緩和というものは地主制度の復活の前提である。また地主制度とはいわないけれども、あなた、そういうふうにならざるを得ぬでしょう。
  106. 西村直己

    西村国務大臣 地主制度の復活とおっしゃいますけれども、客観情勢がかなり変わってきている。さっき定着しましたということは、なるほど賃貸借、あれは農業を離れて土地は持っておる。元来これはかなり日本の特殊性もあろうと思いますが、土地に対していわゆる財産としてどうしてもネコのひたいのような土地でも持っていたい。現にそういうような現象が荒らしづくりのような形で出ておるのが今日の状況であります。土地は持っていたい、より効率的に使ってよりよい収入があるなら持っていたい、そういう気持ちがある。そこの経済的な要素をつかみながら、しかし同時に農地法の精神というものは、かなり自作農というものを奨励していくという形のものは定着していく。農業を離れていきたい、しかし土地は持っていたい、そこで荒らしづくりでずっと持っているよりはあるいは協業の形で、不在地主になっている者があるいは個人の管理でもって従来やっていた者が農協に委託していく。それは親子二代くらいの間は暫定として認めていく。じゃこれが三代も四代も、そして巨大地主に変わっていくということになれば、私は今日の社会の客観条件がそれは許さないと思う。これはずっと経済の仕組みから全部変わっている仕組みにおいて、過去に戻るということはかなり制約をされるのではないかという中での農地法の改正として受け取っていただくのがいいのではないか。しかも農村においてはやはり土地がほしいという声は、私どもしろうとでございますけれども農民から聞くのでございます。  それから土地の値段の問題が一つございます。これは事実でございます。売買でございます。売買を避けてもそういうふうに土地を求めている人に対して土地が使われていくような形をとるという方向一つのくふうではないか。大事な農地改革の精神をくずさぬということはあくまでもわれわれは大事にしていかなければならぬことは当然であります。
  107. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 それは農業をやめる者は土地を強制買収すべきですよ。農業をやめる者は農地を持っていたいというふうなことはないです。これはいけないですよ。また同じことを繰り返しますが、それは大臣と私とのお互いの見解の相違でしょうけれども、人間である以上欲望もあるし、先祖代々の土地と家を持っていたい、これはあたりまえの話なんだ。それは永久に離したくないです。そのときになれば将来は周囲の事情が許さないなんというものではない。だから農業をやめる者は農民の資格がないのだから、当然農業協同組合なりが強制買収するとかなんとかいうことをきめておく。農業を離れる者は再び農民に戻れないです。農民をやめた者は、よほどの何か突変的な地震があるとかあるいは戦争によってどうこうするとかいうような非常の場合には帰って百姓する場合もあるけれども、それは百姓をしたからといって、やれないからまた都会に戻ってきます。都会から農村に行って、そうして百姓をし通したなんという者は何人おりますか。それは敗戦のときやあるいは地震のときは多少あったけれども、そんなものは長くつとまらないからまた都会に戻ってくる。できるものじゃない。だから農業をやめた者が農地を持つことを認めるなんということは、とにかくそれが不在地主になる危険性は十分にある。一たん持ったものならもっとほしい、不在地主はわりあいにいいものだ、収入があるものだとなると、これは人間の欲望からもっとほしくなる。これは人間の欲望が政治を動かして農地改革の精神を台なしにしてしまうということになると私は思うのです。これはお互い主観の相違だけれども、あなた方農林省の役人で、これをやった人がいつまでも生きているわけではない。若い人はそんなこと言われてもどんなものか知らない、話には聞いているけれども。実際上世界の農地改革——日本農地改革は敗戦だけでなったのではない。同じ戦争でも、朝鮮や韓国のほうが大地主が残っているが、日本は残っていない。やはり農民運動の成果というものがそこに反映して、そしてそれが国民なりあるいは占領軍に反映して日本では農地改革になったのです。そういうふうなわけですから、実際若い人は知らないのです。こう思うとかああ思うとかいったところで、事実上歴史の経過というものをよく調査して、その歴史の経過によって法律をつくらなければだめですよ。ただ行き当たりばったりで、近代的農業にしたいとかなんとか言ってやったところで、歴史は過去の発展なんだから、過去の歴史をよく研究して、その研上の上に新しい時代に適応した新しい法律をつくるというのでなければだめですよ。ただ思いつきやなんかで土地の所有をふやせば近代的農業になるだろう、こういう考えでやるということは、これはむしろ危険であると私は考える。  それから、十年以上経過すると地主側に土地を取り上げる権限が生ずることになれば、小作者の場合は非常に弱められることになります。請負小作者でいく場合は全く無権利状態に置かれているわけですから、十年間はその耕作権を保証するという面をたとえば評価するにしても、十年間保証するということはいいけれども、これは現状を是認し、若干の条件をつけたにすぎない。むしろ現在の状態をあれするのに、十年間を単位として公然と不労所得に寄食することを認めることになるわけです。地主じゃないか、不労所得に寄食することを認めるということは。これは全く農地改革の精神を踏みにじる以外の何にものでもないでしょう。このような措置が請負耕作をなくするためにどれだけの実効があるか、疑問だということです。だから私は、こういう場合は原則として個人間の賃貸借が問題だと思う。農業協同組合の受託とかあるいは農業生産法人に貸す場合にだけ限定したらいいではないか、それに限定して農地をつくるべきであったわけなんだ。日本のような地価が非常に高い場合は当然のことであるが、借地料も高い。借地による経営規模の拡大にはおのずから限度がある、地価対策を講じないで借地農業形態を導入しようとしても、これは効果がないと思う。だから、農業収入では生活をまかない得ない零細規模の兼業農家対策として、農地を貸して高くするということよりも、安定した、しかも一定水準の労働賃金を得られるような対策が基本問題だと思うのです。だから、総合的な政策考えをおくべきであって、こういうふうな、ただ観念でこうだろうとかああだろうとかいうふうなことで、実際上長い間の農地改革歴史を無視したような法律の改正なんというものは、これは全く危険きわまると私は思っているのです。
  108. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 ただいまの御意見の中で十年という期間のことでございますが、御承知のように小作契約をいたします場合の一般の賃貸借契約は、期限の定めのないものと期限の定めのあるものと二つあるわけでございます。最初から期限の定めのないものにつきましては、今度の改正でも当事者の間で半年前に文書で同意が成立をいたしておりません限りは都道府県知事の許可事項になっておりまして、その点は従前と変わっておらないわけでございます。それからまた、有期の契約の中で十年以上の長い期間の契約をいたしましたものについて、その契約期間が終わったときの取り扱いとして、そのときには従来ございましたような更新の拒絶というようなことをしないでもそのときに終わるというふうにしたらよろしかろうというふうにしておるのでございまして、外国の例を見ましても、たとえばフランス、ベルギー、西ドイツにおきましての定期の賃貸借契約は九年ということになっております。  いまお話しのように現在一部でやみ小作あるいは請負というような形で農地法の現行制度をくぐるいろいろな契約がございますが、これは一年一年の契約でございまして、きわめて耕作者の地位としては不安定なものでございます。そういうやみ小作あるいは請負というようなものを、極力農地法制度の中における賃貸借に引っぱり込みまして、そうしてなるべく長期の定期契約をさせるように指導をし、また定期でないものについてはあくまでも同意がない場合には、小作人が同意をしないにもかかわらず地主側から一方的に取り上げることがないようにということにいたしておりますので、御懸念のような賃貸借関係が混乱をしてくるということはむしろなくて、私どもとしては現在ございますようなやみ小作ややみの請負というような形で、農地法をかいくぐっておりますものを制度的に農地法のワクの中へ取り込んでいけるというふうに考えておるわけでございます。
  109. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 日本のやみ小作というのはいまだに大体半分半分ですからね。あなたそれは御存じでしょう。日本のやみ小作はいまやっているのは半分半分です。そうでしょう。収穫の半分は自分が取って半分はやるというのが多いんじゃないですか。実情はどうですか。
  110. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 私ども理解をしておりますところでは、戦前、先生も御承知のように全国の平年の平均の反収が二石だった時分の農地改革の前の小作契約というのは、お話しのように半々というような形で二俵から二俵半くらいの現物で納めていたわけであります。最近は御承知のように反当生産力が著しく上昇いたしましたので、現在のやみ小作あるいはやみ請負の一部の例外がございますが、平均的な相場は二俵から二俵半、つまり従前の物納小作料とほぼ同額でございます。したがって生産量が増加をいたしましたから、生産量、反収に対する比率としては、戦前は二分の一でございましたが、いまは大体四分の一以下というのが一般的なやみ小作料の水準であるというふうに理解していただきたいと思います。
  111. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 それは制限はありませんね。
  112. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 やみ小作あるいはやみの請負というのは、何といいましても現行の農地法の脱法行為でございますから、それは制限は現行法ではあるわけでございますが、それをかいくぐってやみの小作契約をしておるわけでございます。今度の改正では現在小作地でございますものについては引き続き小作料の統制を行ないますが、今後新しく賃貸借の契約が成立いたしますものについての小作料の統制は廃止をいたしたいと考えております。そのことは先ほど大臣からもお答えがございましたように、戦前の地主対小作との間の関係で、非常に高い小作料があり、また非常に不安定な小作契約でありました時代には、一般的に申しまして雇用の機会が非常に閉鎖的であった時代を背景にしておったと思いますが、最近は各種の産業における人手不足等もございまして、雇用の機会が非常に拡大をしてまいりましたので、そういう意味においては小作料がべらぼうに高くて、農業採算に合わないような小作料を要求されれば、耕作者の側から、そういう高い小作料でやらないでも、他産業の労賃収入の得られる機会が非常にふえてまいりましたので、農地改革前のような高額な小作料は、一般的には発生しないであろうというふうな前提でものを考えておるわけでございます。
  113. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 しかしこれは法律によってきめられるのは非常に危険じゃないですかね。現行の小作料の統制を撤廃して、収量による金納小作料制を今度のはとらせることになっているのじゃないですか。これは私きのうようやく見ただけで……。
  114. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 戦前は物納あるいは代金納というような小作料がございましたけれども農地調整法以後また農地改革を通して、現行の農地法では定額金納という小作料制度になっております。先ほどちょっと実情の例として申し上げましたやみ小作あるいはやみの請負耕作契約等では一部に物納の例がございます。そういうことはやはり賃貸借契約としては適当でないというふうに私ども考えておりますので、先ほど申しましたようにやみの契約をできるだけ農地法上の正規の賃貸借のワクの中へ取り込んでいくように、今後積極的に指導をしますとともに、小作料契約につきましては定額金納でなければいけないということにいたしまして、定額金納でない小作契約をいたしましても、その契約部分は無効であるという規定を法案の第二十一条の二項に入れておるわけでございます。
  115. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 しかし地価の高い、差額地代の大きい時代では、小作料の高騰は防げないじゃないですか。そういうことが農産物価格に影響が出てきやしませんか。さらに農地の固定資産税へのはね返りが心配されないですか。
  116. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 一般的には雇用の機会が戦前に比べますと著しく拡大をいたしておりますので、農業採算に合わない小作料の契約をする耕作者は一般的にはないと思いますが、万が一特殊な人が出てこないとも限らないではないかという御懸念に対応いたしますために、法案の第二十三条では、当事者間で話し合いました小作料を地主側が増額を請求をいたしましても、当事者間に話がつかない間は、旧来契約をいたしました定額の金納、小作料のみを支払っておればよろしい。それを変更するために当事者間の話がつきません場合には、それを裁判に持っていきまして、裁判での処理にまかせるというふうにいたしてございます。それからさらに農業委員会が、その農業委員会の管轄をいたします農地全体につきまして、農産物の価格なり生産費なりその他の経済事情を勘案いたしまして、一定の小作料の水準をきめまして、それを越えるような小作契約を発生いたしませんように、地主なり小作側に対していろいろ勧告、指導をするという規定も置きまして、現実に万が一高い小作料が発生することのないような規定を設けておるわけであります。
  117. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 例の、近衛内閣のとき、和田博雄君が農政課長時代に、小作料を上げることができない小作料統制令というものをつくった。それが平沼内閣のときに、赤だといって企画院から引っ張られたことがある。あのような、小作料を上げることをはっきり禁止する。それから、小作料を引き上げる、これはやはり当事者間の問題ですが、そこで農民組合なんかができるようになるのです。あのとき農民組合は公認されていなかったけれども、小作料が五割五分から六割ぐらいのところからずっと下がってしまったのです。だから、あのときの農地買収の価格というものは、安いといって再買収をしたけれども、あの当時の値段では実際には安いのではなくて、普通の値段で地主から買い取ったわけですね。そういうふうな時代に小作料統制令をつくった。それを平沼内閣で赤だといって引っ張って、和田君あたりは二年も監獄にぶち込まれたのですね。それを、今度の農地法改正を見ると、その小作料の引き上げを押える法律ではないように思うのですよ。ここで抽象的にいろいろあなたが言ったようなことはあるけれども、そうすると、どうしたってこれは実力によって小作料を引き下げなければならないということになるわけです。農村における階級闘争、これは私ども一向差しつかえないけれども、また騒々しくなるのじゃないですか。あなた方何だかんだ言ったって、そうなりますよ。そうならぬですか。小作料が高くなる。高くされたって押えることはできないのですから、それで農産物価格に影響が出てくるでしょう。農地の固定資産のはね返りも出てくる。こういうわけなんですが、その点は何度もお聞きするようですけれども、そういう心配はあるのじゃないですか。これはやはり大臣にお聞きしたいのですがね。
  118. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 小作料統制を廃止すると再び階級闘争等が起こってくるのではないか、こういう御質問であったかと思いますが、先ほど農林大臣からもお答えを申し上げましたように、現行の農地法のままで今後も推移をいたすというふうにまず前提を置いて考えますと、少なくとも家計維持の上で農業をやらなくてもいいような状態になりました人たちが、他人に小作に出せば、非常に安い小作料収入しかあがらない、また貸したらなかなか返してもらえないかもしれない、不在地主になればすぐ買収されてしまうというような制限のもとにおきましては、もはや農業への家計維持上の必要性をなくしましたような農家でも、その農地を荒らしてそのまま放置しておくか、あるいは先ほど来申しておりますように、やみの形で、請負とかいうような形で人にやみ小作料のようなものを取りまして預けるとか、そういう形で農地法の脱法行為が生じてまいります。そういう実情になっておるわけでございます。  そこで一つには、やはり荒らしておくよりはほんとうに農業をやりたい人たちがその農地の利用ができるような条件をつくることが何にもまして必要である。さらにやみの形でいろいろ動くよりは、やはり農地制度のワクの中で正常な耕作のための賃貸借契約ができることが望ましいということはいまさら申し上げるまでもないわけでございまして、そういう意味でこの改正案を御提案申し上げておるわけでございます。したがいまして、農地改革前のような大地主対非常に経済的に弱い小作人という形での小作料の問題とか、あるいは耕作権の問題とかいうような問題が起こってくるのではなくて、農業への家計維持上のウエートがもはやなくなった人たちの所有しておる農地が、より社会的に効率的に利用される機会を制度的につくりたいというのがこの制度の趣旨でございますから、階級闘争が激化するというような懸念は私どもとしてはないというふうに考える次第でございます。
  119. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 激化かどうか知らぬけれども、とにかく小作人対地主のようなものができるのだから……。  それから、あなたはさっき全収穫の二割とか三割とか言ったけれども、私どもの県——私は全体を調べたわけじゃないけれども、私の県なんかでは非常にたくさんとれる。ところが、これは大体農業できない人が貸しておりますので、そうすると半分は自分がもらって、半分を借りてつくった人にやっております。こういう例がずいぶんある。それがそのまま今度新しい農地法改正のもとにおける小作料になることになるわけなんですね。実際上そういう事情がありますよ。あなた方、蒲原郡の農家を調べてごらんなさい。実際上貸した者が半分もらって、半分はつくっている人にやるというふうなことになっておりますよ、水田地帯のいいところでは。場所によって違いますけれども。いろいろなところがあるので、平均したらどうか知らぬけれども。そうすると、やはり激化かどうか知らぬけれども、これが公然たる問題になると、やはり小作料が少ないほうがいいし、一方は多いほうがいいのだから、そこでどうしたってそういう問題が起きますよ。いやならやめてしまえ、そういうわけに簡単にいくものじゃないのですからね。不景気になれば、ほかに仕事があるかどうかもわからない。現に農民は、出かせぎをやっても、持ち帰る金なんて実際上いくらもない。出かせぎなんてしなくてよければ、なるたけいて農業をやりたいのだ、そういうところでは、水田地帯ではどうしてもいまのやみ小作の半分半分のところがあるから、六分四分より半分半分が多いのですから、そういうところでは、そういう高い小作料になってしまう。そうすると、五町歩ぐらい持っていれば、これで遊んでいける地主が将来出てくるというわけなんです。そういうことになるわけです。いろいろな、法律がどういうふうになっているか知らぬけれども、そういうことになりやしないか。私は地主制の復活になりやしないかという心配をするわけなんです。そうなれば、せっかく農地改革をやったあの歴史的な改革というものが、将来全くむだになってしまうのではないか、そういうふうに心配するわけです。
  120. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 稻村先生おっしゃいますように、新潟県の蒲原郡の地帯では、全国的な平均基準から見ますとやや高いやみ小作料が一部ございますことは事実でございます。ただ、先ほど大臣もお答えを申し上げ、私もお答えを申し上げたのでございますが、現行の農地法におきましても、在村地主は一町歩以上の小作地の所有は認めないわけでございます。このことはこの改正案でも同様でございますから、先生の御意見のように、五町歩持っていればその五町歩の小作料だけで食っていけるではないかというふうにおっしゃいますけれども、五町歩みんな小作に出せば、そのうちの四町歩は政府が買収するという規定は現行農地法にもございますし、今度の改正案でもその点をいじっておるわけではないのでございます。むしろ私どもがおそれますのは、そういう在村でも、正式な小作契約でなしに、請負とかいうような形で、おれは経営者なんだというような、農地法をかいくぐったやみの小作契約が発生することのほうが、土地制度全体を崩壊させるおそれがあるのではないか。むしろ、そういうやみ契約のやみ小作なりあるいはやみの請負なりを正規の賃貸借契約というふうに取り込んできて、在村の一町歩以上の地主的土地所有はあくまでも否定していきたいというのが今度の改正案の趣旨でございますので、御了承いただきたいと思います。
  121. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 私は、いますぐ五町歩の地主が発生すると言ったわけじゃないんで、将来そういう危険性へ発展していかないかということを心配するわけなんですね。だから私は、不在地主なんというものは認めなくたっていいじゃないかという議論なんです。執着があるのはだれだって同じなんですよ。だれだって欲はあるのですから、そんなものは認めなくてもいいじゃないか。さっきから何度も繰り返しているように、農業をやめた者が再び農業に帰るなんということはなかなかむずかしいのだから、そんなものは認める必要ないんじゃないか。一ヘクタールの不在地主を認めれば、法律を改正すれば二ヘクタールにもなる。あなたたちそういう考えはいまはないでしょう。しかし経済発展というものは、そこへいきますよ。しまいには三ヘクタールも認めよう、四ヘクタールも認めようということになるおそれがある。そういうおそれが十分あるのだが、あなた方はないと言うでしょう。ないと言うけれども、そんなものじゃないのですよ。これは一つ認めればだんだんそれが発展していく。犯罪だってそうですよ。何でも小さなことから、少しぐらい悪いことをしてもいいだろう——これはたとえにならぬかもしれぬけれども、一ぺんやったら、だんだん悪いことだって大きくなる。政治でも何でもそうです。一ヘクタール認めれば、それはやがては二代目だって、あるいは三代目はやはり先祖の土地はほしいということになるのだから、それをどうしてもやはり認めてもらいたいということになる。しまいには一ヘクタール持っていれば二ヘクタール、三ヘクタール持ちたいというのはあたりまえの話なんです。今日、農民が出ていって、そうして労働賃金で働いたって、それはろくな賃金を取れるものじゃない。だから農村に住んでいて食えれば農村に住んでいたいのだから、そういうときに、人口過剰であるし、農村は土地が少ないのだから小作料は上がりますよ。いろいろなことをあなたは言うけれども、これを防ぐ方法はどこにありますか。和田博雄君がつくった小作料の統制令の威力も、そんなものはないじゃないですか。きわめて抽象的な規定しかないんだ。あなた方は答弁はうまくやるだろうけれども、実際、こういうふうな危険があるのです。その点十分考えて、こんなずさんなものを、いま無理に農地法改正を出さぬでよろしい。私が言ったように従来の法律でけっこうなんです。もっと研究して、過去及び現在、将来にわたって、現在は過去の発展なんだから、将来は現在の発展なんだから、そういう点をよほど見通して、そうしてもう少ししっかりした農地法改正をつくらないと、農地解放の精神を失わないような法律をつくらなければだめですよ。ただ観念的に自分たちの考えだけでもって、日本農地改革歴史も調べないで、そうして簡単にこんなことで近代農業になるだろうなんて農地法の改正なんぞうっかり出すと、私がいま指摘したような非常な危険性が出てくる。生産力発展にならない。大規模経営、資本主義経営にならないで、一部はなるかもしらぬが、一部はならないで、とんでもないほうにいくような結果になる危険性が十分あるじゃないですか。農林大臣、そう思わないですか。あなた、もう少し検討してやりなさいよ。こんなものを無理に出して、まるで法律さえつくればいいようなかっこうで軽々に現行法の改正案をつくるなんということは、これは危険ですよ。私ども改悪案となると見ているんだから。別に政府が出したことだから何でも反対するわけじゃないんで、小作、地主の問題については、私は何度も監獄に入れられ、苦しんできているからよく知っている。あなた方はあのときのことは知らないでしょうが、知っている私がそういうことを心配して言っているのだから……。西村さんも内務省におったから、私ども農民のことをいろいろ査察をして、稻村なんて危険なやつがおったと、要注意になって知っているだろうと私は思うのだ。そういうことを心配するから、そこでこういうふうなずさんなものを、私が指摘しているような危険性のあるものを——理屈はどうでも言えるけれども、こんな危険性のあるずさんなものは、もう少し検討して練り直せと言うのです。そう私は考えるのですが、大臣はどう考えますか。
  122. 西村直己

    西村国務大臣 いろいろな御意見は御意見といたしまして、これを出すのにも単に思いつきで出したのではないと私は思います。もちろん構造政策をどう持っていったらいいか、その中で幾つかの考え方がございます。また農林省におきましても、農地改革のあとを受けまして、一体日本農政農業生産というものをどう近代化させるか。問題は土地政策の問題であります。しかしそこに意義のある農地改革の精神をほんとうに定着したことを見届けつつ、その中で今度は日本農業を近代化するのにどうしたらいいか。そこで、かつては農地理事業団というような考え方を持った時代もありましょう。それは国会の御審議を得ましたが成案を得られなかった。したがってその間に相当な検討は加えられたわけです。それが今回、構造政策基本方針一つとして農地の流動化をはかりたい、その中でもって最も弊害のない方法で前進するには、こういった現実に即した前進の手法をとることが一つの経営規模の拡大ではあろうと思います。ただおっしゃるように、これが法律あるいは国会の中の勢力関係で一町歩の不在地主を認めた、それを導入した、それが圧力によって二町歩になり三町歩になり四町歩になり五町歩になり、そうしてそれがあぐらをかいているような、ふところ手をしたいわゆる旧地主の旧来の制度に戻るとおっしゃれば、この論理も成り立つかとも思います。しかし、私は世の中の客観条件が変わっていると思います。客観条件というものが、その農地法の精神というものを簡単に踏みにじるような客観条件ではない。こういう点も十分勘案しながら出てきた法案でございますので、御批判は御批判として別でございますが、それぞれの委員会におきまして十分御審査を願いたい、こう思っております。
  123. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 これ以上申し上げてもしかたないですが、だからこれでやめますけれども、その次にこの農地法の中の農業委員会による紛争調停、仲裁制度についてちょっとお尋ねしたい。  現在は農業委員会に対する農民の不信がかなりあります。これは御存じだろうと思うのです。特に都市周辺地区においてはこの反感感情がある。いろいろ農業委員会でブローカーのようなことをやっていたりする者が現にあるし、刑事問題を起こしているのもあるからね。このような農業委員会がはたして農村における紛争の調停や仲裁をする能力があるかどうかを私は疑うのだ。だから農業委員会の改革考えないで、もう信頼を失った農業委員会に紛争調停や仲裁制度をやらせるなんてことはちょっと危険じゃないか、こう思うのですが、その点はどうお考えになりますか。
  124. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 農業委員会のあり方についての御批判もあったわけでございますが、現行農業委員会等に関する法律の規定によりましても、現在農業委員会が農地関係について紛争の和解のあっせんをする権限はあるわけでございます。ただその場合に手続規定等が書いてございませんので、今回の改正案ではそれらのところを詳細に書いた、こういう趣旨でございまして、最終的には、先生も御存じのように昔からございます小作調停、現在はそれは民事調停法による農事調停というふうに名前は改められておりますが、最終的な紛争はやはり農事調停で処理をされるという現行のたてまえに変わりはないわけでございます。
  125. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 私は農業委員会を改革したらいいんじゃないかと言うのです。大臣のほうはどうですか。
  126. 西村直己

    西村国務大臣 確かに地域によりまして農業委員会の権能の薄らいでいる面も、現行農地等においてはある場合もあるでございましょう。しかし現在の農業委員会としては、法に従って十分活動をしておるものと私は思っております。
  127. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 この農業委員会というものはもっと権威あるものでなければならぬと思うのです。だんだん改悪して、骨抜きにしておかしなことにしてしまったんですね。だから今日の農業委員会というものは部落代表機関になっておるにすぎない。たとえば、いろいろな階層別に適正な構成になっていない。部落の有力者が構成員になっている場合が多いわけです。農業委員の選挙なんて、金を十万使った、二十万使ったなんて言っておるわけです。そういうものでは、必ずしも適正な調停仲裁ができないと私は考える。また地域によっては、町村会議員に次ぐ地位の有力者が農業委員になっているんだから、この場合に、最も地位のある町村会議員の動向に農業委員の動向が左右されておる場合が多いのです、現在においては。それだから、いろんな利権あさりの道具に使われる場合が多い。土地ブローカーなんかをやる場合が多い。このような状態のところでは、農民間の土地をめぐる紛争なんかが生じた場合に、農業委員会が特定の人々の利益代表的なものから構成されておっては、調停仲裁ができないわけです。資格がない。こういう点を考慮して、私は農業委員会を改組することなくしてこのような権限を与えることは非常に危険じゃないか、こう思うのです。そういう点は心配ありませんか。
  128. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 農業委員会は和解の仲介をいたすわけでございますけれども、当事者間に同意が得られなければ、それは調停とか仲裁とかいうようなものとして、民事上の契約として成立はいたさないわけでございまして、現地における指導的立場にある農業委員が三人、当事者の間に入って和解のあっせんをするということは、別に農業委員会の現状を改組しなければできないというふうな性質のものではないのではないかと思います。御説のように、ごく限られた一部の農業委員の中に至当でない行動をとった者がございますが、それは農業委員会という組織の問題ではなくて、やはり個人の質の問題であろうかというふうに考えます。
  129. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 最後に二つだけ大臣にお尋ねして、私の質問を終わりたいと思います。  農業構造改善事業は、農業の近代化なんだと言って、このいまの農地法改正の問題と同じように、農業の近代化、つまり農業のいまのような過小経営をもっと近代的な大経営にするということでなされたのですけれども、これは私は初めから失敗すると思っていた。機械などの金はみな利益のない農民に負担さして、しかもその金は、農業構造改善事業の金などは高いですよ。三分五厘というのもあるけれども、かりに三分五厘であろうとも、とにかく五分五厘とか六分の金を借りて機械を導入して、それが返せるわけがないですよ。ほとんど失敗していますよ、無理に強行して。その点は成功していると言われますか。どうですか、大臣
  130. 西村直己

    西村国務大臣 これはもちろん金利がもっと安いとか、償還年限をもっと長くするとか、助成費がもっとどうとかという、それはいいんだけれども構造改善そのものが失敗したとは思いません。ことに地方によっては、構造改善をさらにやってもらいたいという強い要望も今日非常に出ておる次第でございます。
  131. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 そう言われるけれども、これは部分的には成功したところもあるけれども、私の知っているところではほとんど失敗して、借金だけ残して途中でやめたり、やってもたいへんだということが多いですよ。会計検査院も現に、農業構造改善事業は、検査院で調査したもので二三%が事業実績が不当であると指摘しています。最近の会計検査院の指摘は非常にルーズだけれども農業改良貸付資金についても、検査院が調査したものでも三九%が使途が不当だと指摘されていますよ。これは農民の責任に帰するものではない。構造改善事業を盛んに鳴りもの入りでやって、そうしてやらしておいて、それがこの結果になっているのだから、これは農林省の責任ですよ。こういうことをいつでも農林省——いつでもというと語弊があるけれども農林省農業に貢献しておる。日本農業の発達は世界最高水準だから、それまでに発達させた功績は大きいけれども、しかし、国民の税金をむだに使って、それで高い金で機械買わして破産させるような状態が続出しているじゃないですか。これで成功と言えますか。こういうことはよほど注意してくださいよ。
  132. 西村直己

    西村国務大臣 それは確かに部分には、いろいろ構造改善において必ずしも成功でなかったものがあるかもしれません。しかし、全体といたしましては農業の近代化に役立っているし、また今日、事実構造改善をさらにやりたいという声も相当強いものがあるのであります。私どもとしては、これがそういった弊害の面が出ないように、実効があがるように指導するということは当然であります。私はこれを失敗とは思っておりません。
  133. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 いまのような高い金利で、そうして機械を買い込んでほとんど失敗している。だから、会計検査院からこんな指摘をされている。  最後に、私は米価審議会のことについて、いろいろ問題になっておりますが、農林大臣の御意見を聞きたいのです。  米価審議会は、普通から言って生産者と消費者の代表を委員にすべきで、その意見を聞いて米価を決定すべきだ。中立委員なんて一体何ですか。中立なんていう委員があるはずはない。生産者と消費者だけですよ、米価の問題は。中立なんていうものがあるはずはない。それを中立委員なんてごまかして、そうして不当に米価を押えようとするような農林省のやり方は、私はもってのほかだと思っております。倉石農林大臣時代の中立委員だけで構成するなんてああいうのをやめて、もとのように、やはり生産者と消費者の代表でもって米価審議会を構成するという考え方はありませんか。
  134. 西村直己

    西村国務大臣 この問題は、私が着任いたします前にすでに論議が続けられておった問題であります。その後におきましても、国会の場を通しまして各党間でいろいろ協議していこう。私のほうとしましては、各党間で協議ができますれば、その点は十分尊重してまいりたい、こういうふうな態度であります。
  135. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 実際に農業だけを圧迫しているのですね、日本の政治というものは。あなたも政治家だから言うけれども、大体財閥天国ですよ。インドネシアがあれだけのことをやって、そうしてそれが取れないからといってそれを政府が肩がわりして払ったり、貿易なんというものはどれだけの国家資金、つまりわれわれの税金、国民の税金を使って財閥に奉仕しているか。それを食管会計なんていって特別会計にして、そうして食管会計は赤字だからなんていうことを言ってスライド制にしよう、そうして消費者米価を上げる、生産者米価を上げるなんてやっている。これは全く不当な考えだと思う。食管特別会計をつくったこと自体が私に言わせればすでにインチキなんです。だから、あくまでも農産物価格というものは、これは農林省が専門家なんだから、どういうふうに決定しようと、これは学問的な経済学上の問題なんです、これはわれわれ、論理的に検討して農産物価格を出さなければいけないのです。それをああいうふうなことをして、そうして不当に農業だけを圧迫して、財閥には——大体貿易で損したやつをわれわれの税金で補償するなんて自体がけしからぬ。今日、足らない食糧をつくった者に対しては特別な保護をやる。アメリカだってそうでしょう。それを食管会計が赤字だからとかなんとかいうことを言って、そうして農業だけを圧迫をして、何かいまの食管会計をはずすことを口実にして、そうして中立委員だけでもって構成しよう。これはまあ政府は意見を聞いて決定するのだから、これは米価審議会は米価を決定する機関じゃないのだから。しかし政府がそういうものを聞くということは欺瞞もはなはだしい、中立委員なんというものに。そういう点に対して私は強く、いまの米価審議会の委員を消費者、生産者の両方から出してやり直し——あんなばかなことを倉石農林大臣がやったということは全く寄怪千万だと私は思う。西村農林大臣もその点を十分に考慮されて、いまの審議会に対して、やはり従来の正しい態度によって公正な米価を決定するようにひとつ努力していただきたい、こういうことをお願いして私の質問を終わりたいと思っております。
  136. 三池信

  137. 米内山義一郎

    ○米内山委員 農林大臣にお尋ねしたいのでありますが、過般、政府は酒やビールの税金を上げましたところ、酒のメーカー、ビールのメーカー、直ちにそのものの値段を上げるようになりました。政府はこれを押えようとしたが、押えようがなくてお手あげというようなぐあいなんです。こういうふうなときに、米の問題でありますが、米は昨年一千四百万トンとれまして、ずいぶん長い間古米を食わなければならないというような事情にありながら、ことしはいままでにないほど米の問題が重大な政治問題化する可能性がある。なぜかと申しますと、物価値上げの先頭を切っているのが政府なわけです。そして酒やビール、これに限らず、一切の物価を押えるという手は何ら打たれていない。農民は何を上げたらいいのか。結局こぶしを振り上げて米価要求でもせざるを得ないというのが、いまの情勢なわけです。ところが政府としては、あるいは日本の財界は、一貫して米価抑制方針をとっているわけでありますが、そのために米の値を上げれば賃金が上がる、賃金が上がるとすぐ物価にはね返るということが、一つの殺し文句みたいになっています。農林省としましては、あくまでも農業生産発展させる。農業を安定発展させるというたてまえに立っているわけですから、米の値を上げれば賃金が上がる、物価が上がるというようなことに対して、この理論的な根拠を明らかに説明してもらいたいのであります。高度成長の中で市街地の地価が何倍に上がり、上場されている株式は何倍に上がっているかなどを勘案しながら、米価を上げれば一般の物価が上がるという理論的な根拠を、まずお聞きしたいと思います。
  138. 西村直己

    西村国務大臣 物価と申しますか、価格政策、これは一つの大きな政治問題であります。そこで、これは私の所管というよりは経企庁自体の所管でございますが、問題は相互作用だと私は思います。物価というのは、必ずしも片方が上がったから片方が上がる、こういうふうに片方だけを原因にして片方を果とするというわけにはいかない。私は、米の場合におきましては、食糧庁長官から御説明いたしてもらってもいいのでありますが、いずれにしましても、米の価格の計算の根拠といたしましては、御承知のとおり、現行食管法というのがありまして、そして再生産確保というもの、それから消費者家計の安定という、家計米価を中心としたものが消費者米価としてあるわけでございます。したがって、労賃、資材が上がってまいる、あるいは反当の生産性をどう考慮するか等によってきまってまいります。米価自体が、生産者米価なり消費者米価なりが上がること自体もありますが、それ以上に一つの波及効果というもの、いわゆる心理効果と申しますか、これはやはりある程度、何んとしても主食でございますから、あるということは言えると思うのでございます。なお、物価の中において政府自体がきめるもの自体というのは、全体の物価の中ではきわめて分野は狭いということは、ひとつ申し上げておきたいと思います。たとえば酒にいたしましても、ビールにいたしましても、今日酒自体を政府が価格を決定しているわけではございません。ビールにつきましても、政府決定をしているわけではない。こういうことだけはひとつ申し上げておきたいと思います。
  139. 米内山義一郎

    ○米内山委員 酒、ビールは政府決定していないことはそのとおりでありますが、そこで米価だけは政府決定するわけです。したがいまして、米価決定にあたりましては、食糧管理法の第三条二項というものは、厳然として法律として存在するわけでありますから、本年度米価の決定に際しても、政府は第三条二項の精神に基づいて公正におやりになる御意思であるか。  もう一つは、いま稻村委員も最後に質問なさっておりましたが、政府買い上げといい、あるいは政府への売り渡しといい、取引なんです。取引の間において、牛を売ろうが、野菜を売ろうが、当事者の意思の反映しない取引というものはおよそないといってもいいくらい。その際に生産者の意思も直接反映しない、消費者の意思も直接反映することのできない今回のこの米価審議会の構成を、適当なものとお考えになっているかどうか。やるやらないは別問題ですが、これは適当であるとお考えになっておるか。
  140. 西村直己

    西村国務大臣 米価の決定は、現行法の食管法というものがございます。これによって基本的な行き方というもの、方針と申しますか、それは法律的に一つ制度ができているわけであります。問題は、それに対して米価審議会という、農林省設置法によりまして主要食糧の価格の基本を調査審議するという一つの権限を与えられた機関があることは、御存じのとおり。この構成の問題であります。そこで今回いろいろな経緯でああいう発令ができております。さっき御答弁申し上げましたように、各党間でも一つの政治的な意味で取り上げられまして、各党間でできれば結論を出したいという御意見がありまして、これはそういうお申し合せもありますから、私としてはそれが出ればひとつそれをなるたけ尊重する努力をしてみたいとは思っておりますが、いずれにいたしましても生産者、消費者の意向というものを、米価決定政府がいたしますから、政府が反映する努力はする。ただ、それを米審構成の中でやるか、あるいは米審の構成の外でやるかということは、これはいまの問題と関連があるわけであります。反映するということは、当然これは農林省または私としても、職責上、生産者、消費者の意向というものを反映する機会、場というものは、十分考えてまいりたいと思います。
  141. 米内山義一郎

    ○米内山委員 こういうふうな農業行政といいますか、これはまさに本末転倒とも言われますし、農民不在の農業政策じゃないかと思われるのでございます。とかく米の不足な時代は、ずいぶん農民を喜ばせるといいますか、おだてるような政策をとってきましたが、近ごろ米の問題を中心にしまして、少しも政府農民を激励する、励ますような政策というものは、われわれ受け取るほうの側から見ると発見できないのであります。こういうやり方というもの、ものの考え方というものは、目的と手段を取り違えているじゃないか。いわゆる農政というもの、農業というものを、物の側面だけから考えて、人間の生活、農民の生活、村の生活という、より基本的な目的である政治的な観点から考え考え方が、きわめて乏しい、皆無にひとしいというような感じさえするわけであります。  そこで私は、大臣であるからお聞きするのですが、農業政策の目的というものは何にある。これは農民だけよければいいというような農業政策は、あり得ないと思います。しかし、国民のためにいい食糧を豊富に、低廉に供給するというのは、私は農業の使命であり、任務である、こう考えるわけであります。その際に、主体的な農民の生活なりあるいはその考えている理想というようなものを無視しながら、物さえとれればいいのだというのは、単なる経済の側面、物の側面だけからしか考えない食糧政策だ。これはきわめて問題であると思う。こういうふうな農業政策がとられる限り、日本農業は破滅的な状態に入る。現に入りつつあると思います。あとでこの問題を具体的に申し上げたいと思いますが、こういう基本的な政治として農業考える場合に、もっと人間の側面から、政治の側面から、政策を進めるお考えはございませんか。
  142. 西村直己

    西村国務大臣 その点は全く同感でございます。したがって、私は、単にすべての問題を——農業の問題でも、価格だけですべて解決しようたって解決できるものではございません。もちろん価格問題も大事でございます。それからもう一つは、御存じのとおり、共産国家におきましても、また近代国家におきましても、また低開発国におきましても、単に農業問題というのは経済の原則だけで割り切ろうとするところに、いろいろな社会問題が起こってくる、これは事実であります。私は午前中申し上げましたけれども、工場生産とは違うのだ、言いかえますれば、自然を相手にし、しかもそこにクリエーションですか、動物なり植物なりの生きているものの生産するものの実りを求める、あるいはそこからくるところの産出を求めていくというところに基礎があるのでありますから、ただ量さえ、あるいは物さえとれればいいというだけでは片づけられない。そこで、農業の進め方におきまして、一つは、国内的には全村的な基盤というもの、村づくりというような基盤、環境という問題もございましょう。労働力の質の問題もございましょう。それから今度は生産の量もございますし、生産の質もございます。同時に流通なり、あるいは消費の段階がある。もう一つは、国際間、そういった面を総合的ににらみ合わせて、初めて私は農業政策というもの——しかも農業政策はきょうやったからあしたという簡単な結論が得にくい問題でありますから、長期的な視野をもって絶えず気をつけてまいるということが大事である、こう考えておる次第でございます。
  143. 米内山義一郎

    ○米内山委員 農業は決してロマンチックなものではございませんで、いかに国民の生命の源泉である食糧生産するといっても、決して政治経済の一般から孤立をして、独立をしてあるものではございません。最近発表されました国民総生産が四十兆になった、世界の資本主義諸国の第二位とか三位、一人当たりの所得が三十三万だ。確かにそういう側面から見ると、国民はみんな日本経済成長の大きさに実は驚いているわけでありますが、しかし、いまの世界を見ましても、スウェーデンとか、あるいはニュージーランド、オーストラリアというような必ずしも工業先進国でない地域の国民の生活水準は、わが国よりもはるかに上であり、安定しているわけであります。しかも、わが国の三十三万という一人当たりの所得の分配を見ますと、受け取る側から見ますと、格差が非常に大きいし、内容的に見ると、衣食というものはある程度先進国並みでありますが、国民全体の衣食住の中の住というものから見ると、まことに後進的貧困感を深くするわけであります。こういうふうなことなども、すべて物の側面からだけ経済考え、政治をやってきた結果だと思うのであります。したがいまして、農業だけが困難だというものではない。ここまで発展した工業の力、技術の力というものを——工業の発展に全部休めとは言いませんが、工業中心の工業成長にしばらくブレーキを、一服休みをして、その力をわが国農業に集中的に進むべき時期ではなかろうかと思うのでありますが、農林大臣はその点について、どのようなお考えを持っておいでになりますか。
  144. 西村直己

    西村国務大臣 もちろん、農業は申し上げるまでもなく土地制約がございます。自然条件がございます。また、国民の大事な最終的な命の綱である食糧を確保する大使命、これはある意味におきましては、私は公共的な使命だと思います。その意味では、国の財政資金なりを相当投入しているこの姿勢、これは当然であります。そこで問題は、そういったような国の経済あるいは国民経済を運用する場合に、また一面におきまして工業なら工業というものがあって、一つの外貨獲得という面を持っていなければ、日本の国民経済というものは伸びてまいりません。これは当然であります。ただ、これが異常な伸び方をすることによって、そこに非常な格差ができたり、あるいは時間的ズレが激しくなってはいけないというので、安定成長経済という方向をいまたどりつつあるわけであります。これをストップをかけて——ただここだけというわけにはまいらぬと思います。日本の国民経済の運行自体、いわゆる国際収支なりそういった面、あるいは原材料確保というような面とかみ合わせてできておるのであります。したがって、そういう点は十分農政、あるいは農業生産の特殊性というもの、あるいは立場、地位というものを考慮しながらの国民経済の運用、同時にまた、その中にある財政の運用、これははかっていくべきだと思います。
  145. 米内山義一郎

    ○米内山委員 私は、麦の生産が非常に落ちておる。飼料輸入量がべらぼうにふえる。そうして国内には無畜農家が非常にふえつつある。その結果これは地力問題になって、農業生産に大きな影響を及ぼす可能性がもはや出ておると思いまするが、どうも考えてみると、日本農林省のやっている政策というものは、何か輸出国、そのうちのアメリカと共謀結托してやっているのではないかと疑われる節が多いのです。これは決して私は政治的な意味の発言ではなくて、技術的な面からもそういうことが言えると思う。たとえば乳牛にしましても、その生産費の六〇%近いものは濃厚飼料、豚であるならば六五%、鶏では七〇%をこえるような事態であります。こんなやり方の畜産を奨励している国は、さがして歩いても世界中にないわけであります。スイスあたりの牛を中心とした畜産業は、九三%ぐらいが飼料自給している。スイスの地形は、御承知のように、日本よりも急峻であります。こういうふうなことから見ましても、なぜ鶏を飼育するにも、ああいうカナリヤかウズラでも飼うような、鳥から見るときわめて不自然な環境——最近のアメリカの鳥はそのように品種改良したと申しますが、非常に不自然な環境で飼育するから、濃厚飼料中心でなければできない。いいものをうんと食わせて、ふんだけ多くたらせるような行政指導をしている。こういうふうなことから、飼料効率が悪くなり、輸入量がふえる。そうして畜産物の価格が高くても生産農家が間に合わないという結果が生じている。   〔委員長退席、浦野委員長代理着席〕 何かここに日本の国内にも一人一人の民間人がこういう点について非常に進んだ研究をし、経験を持っておるにかかわらず、こういうものは一切無視の指導をしている。養鶏というものも、養豚というものも、完全にえさ屋のえじきになっているような今日の畜産業というものについて、何か反省すべきところはございませんか。
  146. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 ただいまの点でございますが、先生御承知のように、牛は草食性動物でございます。したがいまして、生理的な点から申しましても、できるだけ草を豊富に食わせるということが必要であるわけでございますし、また生産費を低下させるという意味におきましても必要であるということで、牧草でありますとか飼料作物によります飼育ということにつきまして、指導をいたしておるわけでございます。豚、鶏につきましては、大量な肉なり卵なりを供給するという必要が生じておりまして、だんだん大規模な飼育形態になっておるわけでございますが、こういうものにつきましては、濃厚飼料供給するというのは、単にわが国だけではございません。世界のいずれの国におきましても、こういう形で生産の拡大が行なわれているわけでございます。この点につきましては、濃厚飼料供給することはやむを得ないことだというふうに考えております。
  147. 米内山義一郎

    ○米内山委員 いまの答弁者の局長に一問だけお聞きしてあとの参考にしたいと思いますが、それでは今日の日本のように、豚におきましても、乳牛におきましても、あるいは養鶏におきましても、日本よりも多い濃厚飼料の率でやっている国はどこでございますか。
  148. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 アメリカ等におきましても、日本と同じような形で生産をやっております。
  149. 米内山義一郎

    ○米内山委員 そこなんです。アメリカと日本との環境の違いというものをあなた方は考えない。アメリカは世界最大の飼料の輸出国であるし、わが国は世界最大の輸入国である。ここにおいて、飼育の技術というものは同一であり得るはずがない。だから、その研究をしていないというところに、ぼくはあなた方がアメリカと結託した農政をやっているのではないかということばが出るわけです。あとは聞きません。  次に行きます。平坦地の農業さえ、価格の保証されている米をつくっている農村でさえ、今日非常に困窮しております。ましてや山間部の傾斜地、そうして国有林あるいは民有林に取り囲まれて、耕すべき土地の狭い、生産性の低い山村の問題があります。山村振興法というようなものをつくりましたが、何百年かかって山村を振興するつもりなのか。国民の要請にこたえて山村の遊んでいる土地開発して、食糧なり、飼料なり、あるいはくだものなり、養蚕なりを大々的にやって、山村の農民の生活を安定させるお考えはないか。特に最近消費が高級化しまして、農村部の成人式に行きましても、農村の娘さんたちは、ほとんど訪問着——化繊の訪問着なんてのはありません。絹の国内需要というものが、生活が高度化するに従ってふえるわけであります。北朝鮮のようなああいう条件の場所でも、非常に養蚕に力を入れておる。その入れておる理由を聞きましたところ、こう言うのです。われわれは、経済発展させて国民の所得をふやす。当然朝鮮の民族というものは絹を愛好する。ほしくなってから桑の木を植えるようなことでは及びがつかないから、いまから桑を植えつけていくということで、四、五年前でありますが、すでに七万町歩以上の桑園ができておりました。こういうふうに、隣の国などもそういう考え方でやっているにかかわらず、日本では、ある時期には桑を抜いてしまえば補助金を出す、高くなればまた奨励をするというような、非常に安定性のない政策をやってきたのは事実でございましょう。山村の振興にあたりまして、特にこういうふうな農業種目というものが重要視されなければならぬと思うのでありますが、政府としてはどういうお考えでございましょう。
  150. 池田俊也

    ○池田政府委員 ただいまの先生の御質問の趣旨は、養蚕その他の生産性の比較的高い農作物で山村に適するものを振興すべきではないかという御趣旨だと思います。私の関係いたします生糸、蚕糸関係について申し上げますと、御承知のように桑というものは、これは平地はもちろんけっこうでございますけれども、平地だけじゃなしに、相当な山合いのところでもできるわけでございます。いま御指摘がございましたように、生糸に対します需要は最近非常にふえております。まあ十年前に比べてみますと、内需の量は大体倍くらいになっておるわけでございます。したがいまして、価格も相当高い水準にあるわけでございます。そういうことで、私どもといたしましては、将来養蚕というものはそういう山合いの農家の作目としては非常に有利なのではなかろうか、今後相当需要も増大することが予想されておりますし、そういうような意味で積極的に生産を伸ばすような線で施策を進めておるわけでございます。
  151. 米内山義一郎

    ○米内山委員 政府農地整備十ヵ年計画というものを立て、目下進行中だと思いますが、十ヵ年計画に対して、今日まで経過して大体目標の何割くらいの進度状態であるかをお聞きしたいと思います。
  152. 西村直己

    西村国務大臣 ちょっといま手元に資料を持っておりませんから、正確な数字が後ほど届きましてからお答えいたします。十ヵ年計画に対する年次割りの進捗状況が出ておりますから、調べまして後ほどお答えいたします。
  153. 米内山義一郎

    ○米内山委員 今度の設置法の中に、地方農林局の問題がありますが、先ほどどの委員もお話ししてありますが、国が先頭を切って行政簡素化ということを唱えまして、行政の繁雑を整備しようという段階でございます。地方農林局の存在というものは、全く二重行政というよりも、中二階程度のものでありまして、われわれ地方におりまして、村長をやっておる、あるいは県会議員などやっておって、どうしてもそこに行かなければならない。ところが、あそこでものの片づくものはほとんどなくて、東京まで来なければならない。簡素化であるならば、あそこに大幅な権限を移譲してもらいたい。権限の移譲なしに簡素化なんと言うことは、からうそなんです。この簡素化の精神にのっとって地方農林局に改組するならば、具体的にどういう権限を今後地方農林局に移譲なさる計画でおられるのかをお尋ねしたいと思います。
  154. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 地方農林局設置の趣旨は、地域の特性に応じたこまかい農政を推進してまいりたいという考え方で発足したわけでございます。当初、地方農林局に対する権限の移譲についてはやや不徹底な面があったのでございますが、地方農林局に対する権限移譲の要請が政府部内あるいは外部からもございまして、私どもも検討を進めるに従って、権限の移譲をやってまいったのでございますが、原則論的に申し上げますれば、全国統一的な基準あるいは全国統一的な尺度で、事業の採択あるいは指導を要するというようなものについては、地方に留保せざるを得ないということでございますが、また、中央の行政としては当然農林行政の基本的な企画の任務が伴っておりますので、それらの問題は本省に留保いたしまして、一定の方針に基づいて地方的に処理できるものは、できる限り地方農林局に権限を移譲してまいりたいという考え方で処理するつもりでございます。
  155. 米内山義一郎

    ○米内山委員 私は、具体的に何をと聞いたのでありまして、できる限りやりたいというようなことをお聞きしたんじゃありません。具体的なことをお聞きいたしたいと思います。  次に、農林省の所管する農地事業、これは国営の場合もあるし、県営の場合もあるし、補助事業の場合もありますが、不正事件がきわめて多発する傾向にあります。これは会計検査院の指摘によって明らかでありますが、一体農林省農地局に関する仕事に限って、なぜ他の事業分野よりも多いのかということについてお考えになったことはありませんか。
  156. 西村直己

    西村国務大臣 工事の妥当でないという会計検査院の指摘を受けないような適正な運用というのは、これ自体はまだ絶えず直していく余地が十分ありますが、しかし、問題は、それ以上に進んで、いわゆる刑事上の事件というようなものが一、二発生しておったようなところもあります。こういうところは、私つくづく考えますのに、一人の人間が長くそういうところにおりまして、民間のいろいろな業界とつながりを持って事件を起こす。そういうところは、今後、人事の配置においても、長く一つのところにおって、いわゆるくされ縁のようなものができないように注意する。それから工事の適正化と申しますか、これはやはり悪意でなくても、いろいろな大まかなやり方をやったりして会計検査院から指摘を受ける場合があるのではないかと私は思うのであります。これはやはり十分反省してまいりたいと思います。   〔浦野委員長代理退席、松澤委員長代理着席〕
  157. 米内山義一郎

    ○米内山委員 悪いのは、農林省の高級官僚が悪いと思います。実は、私も村で土地改良区の理事長をやっておったのでありますが、こういうことがあるのです。事実を申し上げます。ちょうど六年前に参議院の選挙があったのですが、三月ごろに、仙台の農地事務局の職員、本省の開墾課の職員、県の開拓課あるいは土地改良課の職員がそろって土地改良区を回って歩いて、災害復旧の何かないか、補助事業の何かないかといって、注文をとりに歩いたことがある。何百もあるものを集めたわけではないが、数ヵ町村のどこかの改良区の事務所に人を集めまして、補助事業の注文をとったことがある。農林省というのはこんなににわかに親切になったかと思って、災害でないものもみんな災害申請をしたりしたわけです。ところが、そのとおりにこないばかりか、ここで開墾地内から四百名をこえる選挙違反者が出た事実がある。こういうようなことなどが綱紀を弛緩させ、不正多発の温床ではないかと思うのですが、大臣、こういうことがあったとしたら、これはもう役人ではありませんから、政治家になっていますから、処罰の方法はないでしょうが、今後こういうようなことを封じる御意思がありますか。
  158. 西村直己

    西村国務大臣 私も十分な事実は存じませんが、かって何かそういう関係の違反事件があったという話は聞いております。私といたしましては、いろいろな選挙を控えまして、そういうことが絶対にないようにひとつ気をつけていきたいと思います。
  159. 米内山義一郎

    ○米内山委員 農業者大学校のことでお聞きしますが、これを東京都におつくりになるのだそうですが、農業者を教育するのに、あえて農村の青年を東京に集めなければならぬ理由をお聞きしたい。特に東京に大学校をつくるということに問題があると思う。私立でないからいいようなものの、朝鮮大学校というものに対して、東京都の私学審議会はいろいろ文句をつけているが、一番具体的な問題は、大学校というような名前は大学令による大学と混同しやすいということでこれを認可してはいかぬというのだが、こういうふうな農村の青年を東京に集める理由をまずお聞きしたい。
  160. 森本修

    ○森本政府委員 御案内のように、農業者に対しまして種々の研修なり、あるいは再教育の機関を県内でやってまいっておりますが、県内におきましては、経営伝習農場、あるいは地域の青年の研修のためには地域営農研修所といったものがございまして、そういった施設はもちろんそれぞれ各県なりあるいはブロックの適当な地域に置くというふうなことで、主として農業技術なりあるいは経営を実地に習得をしていただくという目的で、こういったことをやっております。今回の農業者大学校におきましては、もう少し一般的な教養といいますか、教育の内容といたしまして、社会科学、人文科学、自然科学もございますけれども、そういった高度の、あるいは基本的な知識を勉強をしていただいて、むしろ実務といいますか、そういうものよりは、いま申しましたような広範な知識、識見といったようなことを中心に教育をいたしまして、それぞれ地域における農業者のリーダーになっていただくといったような性格の教育を想定をいたしておる。そういうことでありますので、大学校で教育をされますところの教授といいますか、そういった教える方の活用の問題その他を考えまして、東京都に設置するのが適当であろうということにいたしております。
  161. 米内山義一郎

    ○米内山委員 私は、農業者大学校という考え方には、別に反対する理由はないんです。たとえば岡山県あたりで酪農大学校なんてものがありまして、農村の青年諸君はそこで勉強して非常にいい成果をあげていることも知っております。しかし、農業を学ぶに東京でなければならないというのは、第一おかしい。教師の問題とかいうことがあると言いますが、地方にだって大学があれば、農学部もあれば、博士課程もある。したがって、農村の実務に携わる中堅青年を教えるに、地方に教師の不足はないわけであります。ただ見本に東京につくるということから、日本にたった一つつくってみようということから、東京になったろうと思うのです。東京というところは、農村の青年を二年ないし三年教育するのにいいところは一つもございません。むしろ地方につくるべきじゃないか。  それからもう一つは、今度の大学校の収容人員といいますか、何人くらいを何年にわたってどういう教育を施して、それが日本農業発展のために具体的にどう役立てる御計画のもとにおやりになっておるかをお尋ねしておきたいと思います。
  162. 森本修

    ○森本政府委員 とりあえず、初年度でございますので、集まっていただきますところの学生といいますか、そういう人は五十人程度ということを計画いたしております。この数はもちろん固定的に私どもは思っておりませんで、将来教育の経験その他経過を見まして検討していきたい、あるいは増加をする必要があれば、そういった方向へ漸次持っていきたいというふうに思っております。  教育の内容でございますが、先ほど簡単に触れましたように、大きな分類といたしましては、社会科学、人文科学、あるいは自然科学といったようなことになりまして、この中にも、またそれぞれいわゆるこまかい学科を現在詰めつつある状態でございます。  教育の期間といたしましては、約三年間ということを想定しております。先ほど申しましたように、そういった一つの機関において農業の自営化のリーダーあるいは地域開発の指導者といったようなことを想定をいたしまして、そういう資格が十分得られるような知識を付与するということが目的でございます。したがいまして、そういう方が単に自分の農家の経営問題ばかりでなしに、それぞれ広く農村における自営業者に対して指導的な役割りを果たすというような意味の人を教育をしたらどうかというねらいでございますので、そういう意味では、学科の内容等十分精査をいたしましてやっていきたいと考えております。
  163. 米内山義一郎

    ○米内山委員 こういうことは何を物語るかというと、あなた方の農業政策が全部破産したということだ。一体日本全国から五十人集めるとすると、四十六都道府県から一人ずつ、北海道は広いから三人、新潟県から二人というが、中堅青年、指導能力のある青年をつくるといって、これで一体今日の日本の農村の経営能力の不足あるいは技術能力の不足が補えるかどうかということです。数学的に考えていただきたいと思うのです。やらないよりましだということもあり得ますが、これは冗談みたいな話になるのです。全くぼくらから見ると冗談半分な農業政策としか考えられない。とうちゃん星をとってくれ、こうせがまれたとうちゃんが、ほうきを持って屋根の上に上がった、なるほど地上よりは星に近づいているかもしれないが、これは問題の解決にはならぬ、そこのビルの上に立ったって、これは同じですよ。こういうふうな考え方、役人をつくる、局長をつくるつもりならば、全国から五十人程度のエリートでいいかもしれないが、この広い農村社会で、むしろそういう少数のエリートというものは、目ざわりになって、農村社会から孤立する可能性がある。やるならばもっと構想を大きくして、——農林省は各農業地域にたくさんの土地を持っています。種畜牧場などといっても、私の県にある種畜牧場は、一千五百ヘクタールの土地を持っている。二百頭あまりの牛馬よりいない。こういうふうな場所に地域の青年を何百人となく集めてやれば、きき目があると思う。これでも天まで届かない。しかし、これならばきき目が見える。もう自分の持っている土地というものは、畜産局は畜産局のなわ張り争いで、広大な土地を、地域の農民よりもいい農地を大量に持っている。何もやってない遊ばせておる土地において——東京あたりの地価の高いところに学生を集めるよりも、九州にだってそういう牧場はあります。宮崎の牧場でもどこでもまだ土地はある。北海道にもあるし、関東にだってあるわけです。どうせやるなら、ほんとうに農民のために、農業のためにおやりになるなら、それくらいの構想をお持ちになったらりっぱだとわれわれは敬意を表するんだが、これじゃわれわれは軽べつせざるを得ないと思うのです。どうです、これをお考えになった農林省、局長さん、どういうお考えです。
  164. 森本修

    ○森本政府委員 先ほど申し上げましたように、農業の自営者を訓練をするとかあるいは再教育をするというふうな場合におきまして、それぞれ私どもとしては施設なり教育の制度について分担を考えております。先ほど言いましたように、各県におきましては経営伝習農場、その他高校卒の者にはかような教育の程度、それからまた、地域別にもう少し高度の経営技術についての研修施設といったようなもの、それから、今度の大学というようなものについて、それぞれ教育の程度、それから入っていただく青年の資格、先生の程度といったようなものをそれぞれ検討いたしまして、ある意味ではそういった施設による組織的な教育ということを考えておるわけであります。したがいまして、農業者の大学一本農で民の自営者としての教育が事足れりというふうには思ってないわけでありまして、各種研修施設がそれぞれ総合的な効果を発揮するということによって研修の実績が上がってまいることを期待しておるわけであります。  なお、経営伝習農場あるいは地域での研修施設におきましては、年々かなりな数の農村の青年に対して研修を行なっておるという状態でございます。
  165. 米内山義一郎

    ○米内山委員 じゃ、次へいきます。  農林局に統計事務を移す、その趣旨は、地域的な農業政策を立案する上にそういう統計事務の地域性を重要視するというようなお考えであるということのようでありますが、実は、これは私の地方であるから私知っているので申し上げますが、青森県で農業環境の一番悪いところ、これは地図でいいますならば、まさかり型になっている下北半島の地域、あそこには昭和三十五年に六千六百戸の農家があったんでありますが、それが今日まで、四十年までの間に一〇%が農業をやめております。いわゆる脱農しておる。さらに専業農家——自立農家じゃございません。専業農家が三%に落ちている。第二種兼業農家が八二%になっている。   〔松澤委員長代理退席、浦野委員長代理着席〕 こうして見ると、これは工業、これとてもありません。通勤するような作業もない。わずかに沿岸漁業があるわけであります。ところが、この地域の所得統計から見ますと、農業中心の地域よりも、この下北地域が所得が多く出た。私は、最近、県庁からその統計を見て、これは間違いじゃないかと思って聞きただしましたところが、これは出かせぎ収入なんです。先ほど農林大臣が、出かせぎもその他の所得を得るためには、悪いものでない——いいものだとはおっしゃらなかったように思いますが、一戸平均が四十万円の出かせぎ賃金。毎戸が平均で一・三人の出かせぎ者を出しているようであれば、四十万円の賃金を取るためには、出かせぎ日数がどれくらいあるか、一・三人であるとすれば、毎戸からどういう状態であるか。もはやここには、農村に家庭生活というものはないのです。県はこれに対して、この地域に対して、出かせぎをしなくてもいい農業をつくってやるために、肉牛を奨励する、こう言われる。ところが、四十万円の不足を補うに、しかも、六千戸の農家を対象に、地方の県としてどんなやる能力がありましょう。農家もまた、四十万円の出かせぎをやめてやるだけの農業があるとは信じない。県が牛を貸そうといっても、農民は声を出さなくなりました。ここまできますと、すでに農業が破滅の段階じゃないか。修理もきかない段階じゃないか。これからは統計をこまかに企画し、調査し、それを集計し、分析して政策を立てるでありましょうが、このような実態がおそらく全国の農山村や沿岸にあると思うのです。農業環境の悪い地域では、共通的な問題であろうと思う。こういう人間を見ない、統計のしりから見て、米が一千四百万トンとれたとか、畜産業が二〇%伸びたというだけでは、これは農政にはならない。ものの側面だけ、経済の側面だけから考え農林省であって、農村とか農民とか、働いてものをつくるとかいう人間の本性に触れた政策じゃないんです。   〔浦野委員長代理退席、委員長着席〕 すべての誤りが私は、この辺から出ているのじゃないか。世の中が非常に進歩しました。自然科学が驚くべき発展をした。重化学工業を中心とする工業生産はべらぼうに伸びたが、この社会的な経済的な恩恵というようなものは、農村には逆の作用、これはまさに重大であります。私は、農林大臣に申し上げたいのは、これから日本の政治を進める上にもっと本質的な問題を考えていただきたいと思います。自然科学の発展によって衛星船が飛んでいる。人間が地球の外から地球をながめることができるようになった。こういうことは、釈迦、キリストはもちろん、カント、マルクスだって想像しなかったこと、こういうふうなときに、おざなりな、屋根へ上がってほうきを振り回すようなことで、農村の水準を高めようなんていうことは、これは話にならぬ。根本的な問題を私は農林当局として考え直す必要があるであろう、こういうことを申し上げて、御意見を聞いて終わりにしたいと思います。
  166. 西村直己

    西村国務大臣 確かに経済の面からまいりますると、いろいろわれわれの想像に絶するような科学の進歩もありましょう。それから、まだまだ日本経済政策を伸ばしていかなければならぬが、おっしゃりますように、私は、農業あるいは国土の全体の総合利用の立場から、全体的に絶えずつかむ努力によって、国土総合開発計画も秋にはこれを直そう。御指摘の下北半島というところは、一つは、就業の機会としての例のむつ製鉄の問題とか、県も非常な御苦労を願った地域でもございます。したがって、現在はビートも十分でなく、他への転換をやりながらやっていこうというところに、県政の上におきましても、農民の指導の点で御苦労があることは、重々私も承知いたしております。ただ、それじゃといって、一挙にこれを解決するというのには、あすこの地域の一つの特殊性もあると思います。やはり私は、何を主産業にして、いいかえれば、いま酪農を入れよう、この場合におきましても、県の相当な負担、あるいは県の力ではできないじゃないかという御意見もわかります。だから、そういうようなこともあわせまして、やはり全体の中のその部分として取り上げていくように努力していきませんと、できないと思います。と申しますのは、ある程度は、経済でございますから、やはりもうかるほうへ動いていくということ、これをチェックはできません。また、ある程度もうかるほうへ指導しなければなりません。しかし、それじゃ、どの程度に——そこに定着するようにするには、他の産業との組み合わせも必要でございましょう。酪農だけで、ただそれで六千戸の人間の大部分をささえていこうということは、県の力あるいはわずかな国の助成でやろうとしても、問題は解決しない。ですから、たとえばあの下北半島の地域に何か特殊な産業を持っていこうというような組み合わせを考えるならば、やはり地域の開発も、農業と他の産業を組み合わせてこれを考えて、これを維持していくという、こういうようなことでいかなくちゃならぬじゃないかと思います。
  167. 米内山義一郎

    ○米内山委員 最後の一問ですが、今度食糧庁機構を変えまして、業務第二部をなくす、これは御承知のとおり砂糖をやる。北海道では、本年になってビート糖会社が三社がまた一個になったそうであります。これで兼業ビート糖メーカーがなくなるわけです。これはどういうわけでこういう傾向になったのか。政府は最初やるときはあれにもこれにもと言ったが、一つになることが将来わが国の甘味資源の奨励やそういうことに都合がいいから、こういうことを認めておられるのですか。
  168. 大口駿一

    ○大口政府委員 北海道のビート生産関係の会社の統合の問題につきましては、米内山委員も御承知だと思いまするけれども、ビート工場の採算を最も決定的に左右するものは原料のビートであることは、いまさら申し上げるまでもないと思います。北海道におけるてん菜を加工するビート産業は、現在多くの会社に分かれておりまするが、やはり将来生産性の高い企業ということであれば、むしろ内地に本社を持つ製糖会社と切り離して、北海道におけるビートの加工部門というものを統合することにより、安定的な原料の供給態勢をつくるほうが、将来企業の体力をつける意味でよかろうかということで、私どものほうも考え、指導してまいったのであります。北海道庁においても、全面的に私どもと同じような考え方でいろいろ指導された結果、あのような形になったと私は理解をいたしておりまするので、むしろ事態はよい方向に向かった結果であるというふうに私は理解をいたしております。
  169. 米内山義一郎

    ○米内山委員 その話は、すでに前々からわれわれはうわさとして聞いておる。うわさじゃなく、日本の砂糖会社の上にいる三菱商事とかいろいろなものがそういうふうな合理化を進めておるということは、われわれ聞いておったのです。結果として北海道ではそうあらわれ、青森県にあった北東北のビート工場は廃止という形であらわれたわけです。まさにこれは資本家的な合理化政策の結果であり、青森県農民の犠牲だったわけです。あそこには国が奨励し、指定し、国家の資金を融資して十数億の設備があって、今日まだ残骸をさらしているし、そこにはまだ労使の問題——退職金等もとれないで労使紛争をそのまま続けている労働者も数十名おる。こういうふうなことを、何ら国が責任持たずに、企業だけの責任にしておるということは、はなはだ無責任だ。農民に対しては、いろいろな転換策なんというものを、スズメの涙ほどのものをやっておりますが、農民は国のあの転換策は何ら喜んでいないし、実質的な効果はあがっていない。それよりももっと重大な問題で私はお聞きしたいのは、あの工場を誘致するために地元の六戸町が約七十ヘクタールという土地を一坪——三・三平方メートル百五十円という安い価格で農民から買い集めて、フジ製糖に提供しております。売っております。この土地の一部分を最近フジ製糖が処分しましたが、残地の五十ヘクタール余りというものは、何ら生産の役にも立たず、そのままである。これは農林省の権限で転用の認可をした責任がある。工場をそこに設定させたのも農林省の責任である。ゆえに、この土地はもとの農地に返し、もとの農民に返すべきじゃなかろうか。そうしませんと、坪百五十円の土地が二千五百円になっております、売れます。じゃフジ製糖は農民をだまし、国の借金を踏みながら——これは踏む結果にならないだろうと思うが、土地だけの利益で数億の利潤をあげておる。変なことになるんじゃないですか。農民をだまして、やったこともない、見たこともないビートを栽培させて、数年間の試作時代は、収量が少なかった。ここで目標どおりとれる段階でやめた。農民をペテンにかけ県、市町村の行政費にはばく大な——やるべきものをやらないで、この空白の損害というものは、これは評価できない。そうしてその土地の値上がり利益だけで数億の不当な利益というものをただ一つの資本家に許すということは、これは許されないことじゃないですか。これに対して農林省はどう対処されるお考えですか。
  170. 大口駿一

    ○大口政府委員 東北てん菜の振興並びに最終的にフジ製糖の工場が閉鎖を余儀なくされました一連の経過につきましては、農林省として、率直に従来の見通しの違いと申しまするか、結果的には、現地の農民に非常な迷惑をかけたことについては、十分反省をいたすべきものだと思います。今年のてん菜の処理並びに今後の転換対策につきまして、ただいまスズメの涙ということばがございましたが、私どもとしてはできるだけのことをやったつもりでありまするし、またあれでもうすべて農林省としては一切何もしないという気持ちを持っておるわけではございませんで、ただいま御指摘の土地の処分の問題等につきましては、その後の具体的な工場のあとの資産の処理等につきまして、その後の経過を詳しく私は現在存じておりませんので、ただいまの御意見も十分頭に置いて今後の推移を見守ってまいりたいと思いますが、いずれにいたしましても、東北のてん菜の振興並びに最後にああいう結果になりましたことについての私どもの責任は痛感をいたしておりまするので、事態の処理にあたっても、その責任を痛感した気持ちでやったつもりでありまするが、なお今後の処理の問題につきましても、ただいまの御指摘も念頭に置きまして見守ってまいりたい、かように考えております。
  171. 米内山義一郎

    ○米内山委員 かなりの対策費を出したとおっしゃいますが、私は、スズメの涙ほどとあえて言ったのは、この土地の値上がりの差より少ないから言うのです。この土地が高く売れますと、農林省が転換対策費で出した金よりは多くなりますよ。だから、ここにどうかいまおっしゃったとおり責任を持って善処されることを要望して、私の質問を終わります。
  172. 三池信

    ○三池委員長 次回は、明十五日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十九分散会