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1968-03-12 第58回国会 衆議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月十二日(火曜日)    午前十時四十三分開議  出席委員    委員長代理 理事 松澤 雄藏君    理事 井原 岸高君 理事 上村千一郎君    理事 浦野 幸男君 理事 塚田  徹君    理事 大出  俊君 理事 木原  実君    理事 受田 新吉君       荒舩清十郎君    内海 英男君       桂木 鉄夫君    菊池 義郎君       佐藤 文生君    塩谷 一夫君       野呂 恭一君    淡谷 悠藏君       稻村 隆一君    武部  文君       浜田 光人君    安井 吉典君      米内山義一郎君    永末 英一君       鈴切 康雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 赤間 文三君  出席政府委員         法務政務次官  進藤 一馬君         法務省民事局長 新谷 正夫君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省入国管理         局長      中川  進君         公安調査庁次長 長谷 多郎君  委員外出席者         法務大臣官房司         法法制調査部長 川島 一郎君         法務省矯正局保         安課長     福原 弘夫君         法務省矯正局参         事官      朝倉 京一君         専  門  員 茨木 純一君     ————————————— 三月九日  委員浜田光人辞任につき、その補欠として大  原亨君が議長指名委員に選任された。 同日  委員大原亨辞任につき、その補欠として浜田  光人君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員淡谷悠藏君及び華山親義辞任につき、そ  の補欠として依田圭五君及び阪上安太郎君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員阪上安太郎君及び依田圭五君辞任につき、  その補欠として華山親義君及び淡谷悠藏君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第四三号)      ————◇—————
  2. 松澤雄藏

    松澤委員長代理 これより会議を開きます。  本日は委員長が病気のため、委員長指名により、松澤雄藏、私が委員長の職務を行ないます。  法務省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑を行ないます。質疑の申し出がありますので、これを許します。塩谷一夫君。
  3. 塩谷一夫

    塩谷委員 大臣がお見えになりませんから、一応政務次官に最初にお願いして、あとでまた大臣にお願いしようと思っております。  今回の一省一局削減政府方針に従って、法務省も当然機構改革が行なわれる。その法案については、全体ができ上がったときにまた設置法として出されると思うが、一応構想は固まったものと承っております。それについて、訟務局を廃止したり、あるいは官房長を新設するという話だが、この機構改革概要を説明していただきたい。
  4. 進藤一馬

    進藤政府委員 事務当局から説明いたさせます。
  5. 川島一郎

    川島説明員 このたびの機構改革につきましては、ただいま仰せのように別途行政機構簡素化のための法律案を提出いたしまして、後刻当委員会の御審議を仰ぐことになっておりますが、その概要を申し上げますと、法務省におきましては、訟務局を廃止いたしまして、これにかえて法務大臣官房訟務部を新設する。それからそれと同時に官房内部組織を変更いたしまして、従来からございました経理部を廃止いたしまして、官房全体を統括する責任者としての官房長を設置する、こういう構想にいたしております。
  6. 塩谷一夫

    塩谷委員 局を部にするということは各省で行なわれているわけでありますが、この問題がどのように今後影響するか。いわゆる法務省において、訟務局訟務部にした場合に、命令機関としての全国への命令系統、そうしたものは官房でいいのかどうか。それから特に性質民事検察等機構から考えても、はたしてそれでいいのかどうか。検察庁との関係、そういった点について支障はないかどうか、そういった点をお聞きしたい。
  7. 川島一郎

    川島説明員 訟務局を廃止いたしましても、現在訟務局で取り扱っております事務はどこかの機関で行なわなければならない、したがって、これを扱う機関といたしまして、官房訟務部を設けることにしたわけでございますが、従来訟務局で取り扱っております事務は、二つの種類がございまして、一つは国の利害に関係のある争訟についての指揮を行なう。もう一つはそういった争訟実施する面でございます。現在はこの双方を行なっておりまして、また今後といえども同じ事務を行なう必要があるわけでございますから、法務省支分部局法務局がございまして、その法務局訟務部というのがいわば地方における訴訟実施面を担当しておるわけでございます。そこで、現在訟務局が担当しております事務のうち、訴訟実施につきましては、特に重要なものだけを限定して訟務部において行なうようにして、なるべく地方に委譲してもさしつかえないというものはこれを地方に委譲することによって当面の事務処理を行なっていきたい、かように考えております。  検察庁のほうは訟務の仕事に直接関係がございませんので、今回の機構改革によっては影響がございません。
  8. 塩谷一夫

    塩谷委員 各省に従来官房長というものが置いてあったのだが、法務省には全然なかった。これは、なかった理由がいままであったのかどうか。  それから、いまの問題に関連するが、今度訟務部官房に入れたということで、いわゆる指揮命令の権威というものがおのずから違ってくると思う。そういう問題について、官房法務省独得のあり方で従来置かなかったという理由があって、各局間の調整は必要なかった、あるいは特別渉外の必要がなかったということで置かなかったのか、今度苦肉の策で、一局削減するので、どうしてもまた官房に集中するということになったのか、そういった点を、すっきりしているのかどうか聞きたい。
  9. 川島一郎

    川島説明員 一応私が理解しておる範囲でお答えさしていただきたいと思います。  法務省に従来官房長が置かれませんでしたわけは、昭和二十七年に法務府が法務省になりましたときに、法務省機構改革が行なわれたわけでございます。その当時は各省ともあまり官房長というものは置いてなかったわけでございます。そこでその際に官房長を置かなかった。それがずっと現在にそのまま至っていたということでございまして、その間官房長を置いたらどうかという意見はたびたびございまして、内部的には問題を検討したこともございますけれども、まだしいて、どうしても置かなければならないという時期ではないということで今日に至っているというわけでございます。  今回官房長を新設するということにいたしましたのは、ただいま仰せのような官房機構の変更ということもございますし、それからもう一つは、すでにほかの省が機構改革によってすべて官房長を置くようになっておる。そのほか、法務省業務関係でも、たとえば人員の問題、機構の問題そのほかいろいろ内部調整を要する仕事がふえてきておりますので、そういった事務処理するためには、やはり官房長を置いたほうがよかろうということで、今回官房長を設置することにいたしたわけでございます。
  10. 塩谷一夫

    塩谷委員 そこで、例の一局削減ということを政府で強力に打ち出してきておるのでありますが、各省でもこの問題で、内部でてんやわんやの騒ぎがあって、結局白羽の矢がどこかの局に立って、とうとう犠牲になるというようなことだろうと思うのです。特に文部省あたりでも、例の青少年局が問題になったり、あるいはせっかくつくった文化局対象になる。その内容は、いかに現総理が呼びかけて、自分のお声がかりでつくった青少年局もやはり対象になるというようなことで、結局役所の中の新参者というか新設、そうしたものがいつも対象になる。特に労働省あたりでもそうだろうと思いますが、労働安定というものが時代の要求で非常にやかましくなっている。しかし、できたばかりだからつぶそうということで、だめになった。法務省はその点は非常にしにせでありますから、いろいろそういう点では牢固たるものがあろうと思うが、法務省自体でこの一局削減というものを真剣に取り上げて、そうしてでき上がったものが——こういう問題がなくても、法務省が相当な検討を要する問題があって、独自の機構改革構想というものはかつて持っておったことがあるかと思うのです。そういうものは今度の機構改革に出されているかどうか。そういう点はやはりいま質問したように、官房長を置くことによってこの辺でお茶を濁しておけということであるのかどうか。そういった点で独自の構想というものを持った場合には、もっと極端に言えば縮小じゃなくて拡充しなければならぬというようなものもあったと思う。そういう点はどんなふうに考えておるか伺いたい。
  11. 赤間文三

    赤間国務大臣 ごもっともな御質問でございますが、法務省独自でどうしてもやりたいと考えておりましたことは、官房長はほかの省にみなありまして、官房長打ち合わせ会とかいろいろな会議がありましても、私のほうは機構が違うために何かと不便、しかも官房に部とか課とかありますそれを統括するのには、やはり官房長があったほうがいいのじゃないか。それから、なおまた事務も多岐にわたりますので、次官を助け、大臣を助けていくのに官房長というのがぜひ必要だということはかねて考えておったのでありますが、お述べになりましたように、総理のほうから一省一局削減せいということが出てまいりましたので、それならばどういうところを削減するか、これにはずいぶん頭を悩ましまして、落ち着いたところが、先に申し上げましたように、何かこれを削減しても事務に差しつかえが起こらぬでやっていけるかどうかという点を十二分に研究をして、とどの詰まりまいりましたのが訟務局の局を一つ部にしていこうということでございまして、部にいたしましても、仕事の運用によってあまり能率も下げぬでやれるんじゃないか、こういう考えがまとまりましたので、一局削減には訟務局訟務部にして、これをひとつ官房の中に置いて能率を上げていくようにしよう、こういうふうな結論に達してきたような次第でございます。
  12. 塩谷一夫

    塩谷委員 それでは、次に定員問題で伺いたいのであります。  定員問題は、前回の委員会大出委員から大臣に対して質問があって、大臣は非常に前向きな答弁をされて、そして人員確保については努力すると言われたのでありますが、法務省は言うまでもなく、登記事務あるいは出入国管理事務でたいへんな人員を要するということは承知しておりますが、結局現場で起こります大小の事件、そうしたものを処理する。それが処理ができなかった場合に意外な不信を買うということであります。法務省自体というものは、申すまでもなく警察とかあるいは教員と同じように、人間仕事をするのでありますから、人間確保ができなかったら機能を麻痺するということで、したがって、何もかも人が足らぬということで、人手不足でございますのでということで、すべての事件処理を行なわれたり、あるいは答弁をしておるというような状態では、ここだけでは済むけれども、法治国としての信用を失うわけであります。そういう点で、あくまでも人手不足で事が処理できないということだけで済まないと思うわけであります。特に法務省そのものは、一般国民から見るとむずかしい役所であり、また寄りつきにくいところである。困った人間でなければ行けない。またやむを得ず行くわけであります。それが人手不足で全くつっけんどんな応対をされたんでは、現場では全く人権問題がたくさんできてくるということであろうと思う。そういうときに大臣人員確保に努力すると約束された。しかしながら、現在では行管庁の発表にもあるように、とにかく人員確保というのは容易でない。そして国全体の公務員定員増をしないということであります。しかし、いま申しましたように、警察や教育と同じように、人間がやる法務省仕事でありますから、どうしてもこれは定員確保しなければいかぬということで、具体的にこれを交渉するにあたっての大臣方針ですか方策、これは大臣にとっては何よりの政治力ということで期待もされるし、またそれによって信頼が生まれると思いますので、大蔵省その他が何かにつけて査定の方法その他が、とにかく一般公務員と同じように査定されたんでは、これはやはり機能を麻痺する。そういう点で、決意だけでなく、具体的な方策並びに見通しを伺いたい。
  13. 赤間文三

    赤間国務大臣 法務省は御説のように、人による人の行政が本質のように考えております。やはり国民によくサービスをして親切にやっていくためには、どうしてもある点まで人間確保が必要であることは、お述べになったとおりでございます。そういう意味からいたしまして、ほかの省とは少し変わりまして、法務省はその点を特に力説をいたしまして全力を尽くしたような次第でございますが、やはり人減らしということが大体の空気の中にありまして、人減らし原則の中で法務省だけ特別扱いということは、なかなか骨が折れます。しかし、骨が折れましても、ただいまお述べになりましたように、国民サービスに事欠くということは、これまた非常に困ることであります。そういう点でいろいろと努力いたしまして、四十三年度におきましては、登記所関係におきましては大体二百人ほど人員の増加をいたし、それからまた入国管理のほうも、これは日本の発展に伴って外国人の出入りが非常に多い。ここもまた非常に大事なところでありますので、ここに二十七人ほどの増員をやりました。それからなお刑務官とかあるいは保護観察官鑑別所職員、こういうものもあまり十分ではございませんので、刑務所の看守は大体百人、少年鑑別所教官は十人それから保護観察官は二十人の増員、こういうふうで行管におきましても法務省は特別だということで非常に応援をしてくれまして、われわれも微力でございますが、全力を尽くしていまのような成績を得たのでございます。やはりこれでは私はまだお述べになりましたように十分ではないと思います。将来におきまして三カ年に五%の人員減ということが原則になっておりますが、法務省は減らせるところがあればもちろんこれも減らしますが、どうしても国民に直結して必要なところについては将来においてもやはり引き続いて増員をしていかなければならぬような面が多いと考え、微力ですが十分努力したい、かように考えておる次第であります。
  14. 塩谷一夫

    塩谷委員 大臣のその御努力というものはわかりますが、とにかく人が不足でとても現状では十分なことはできないというような事例がたくさんあるわけであります。その事例について関係局長からいろいろ伺いたいと思います。すべてこれは定員の問題に帰着すると思いますが、たとえば民事のほうで登記行政近代化合理化が進められておるようであります。特に登記台帳の一本化とか機械化その他商業登録等ファイル化等をやっておりますが、それはほとんどアルバイトを使わなければならぬという状態のようであります。これはやはり定員外として指摘されているものか、こういう点についていまどのくらいアルバイトを使っておるのか、これを伺いたいと思います。
  15. 新谷正夫

    新谷政府委員 登記所仕事は近年非常に増加いたしております。経済規模が拡大し、さらにまた公共事業が非常に活発化いたしておるわけでありますが、こういった事情が法務局のほうに反映されまして、登記所に出ます事件は非常に増加してまいったわけであります。戦後この趨勢がずっと続いてまいっておりますが、国民に対するサービスの徹底を期するために私どもとしましてはいろいろの方策を講じまして、これに対処しなければならぬというふうに考えてまいったわけであります。ただいまお話のございましたように登記台帳一元化あるいは粗悪用紙改正商業登記簿改正、そういった一連の問題はすべて業務合理化をはかり、事務が少しでも促進するようにという配慮から数年来計画いたしましてこれを逐次実行してまいっておるような次第であります。  このためには、もちろん特別の仕事でございますので、経常的な業務のほかに人員を必要といたします通常業務でも本来の事件が非常に増加いたしておりますので、与えられました定員職員でこれを処理するには十分ではございません。そこへもってまいりまして、さらにただいま申し上げましたようないろいろの登記行政合理化という観点から各種の施策を講じておりますために、これにどうしても人が必要になるわけであります。したがいまして、これは本来の定員職員でまかなっていけるものではございません。また各登記所、現在登記所の数だけで約千五百ございます。さらに支局がその上にございますが、これが三百近い数字でございます。本局が約五十近い数字でございます。その各庁におきまして実施するといたしますと、どうしてもその実行する庁を計画的に定めまして、個別的にこれをやっていかなければならないということになるわけであります。そこで一元化なりあるいは粗悪用紙改正等の各仕事につきまして、それぞれに必要な臨時職員の採用によりまして、この仕事を遂行していきたい、こういうふうにいたしたわけでございます。現在全国で約千二百名ぐらいの臨時職員がございます。これはただいま申し上げましたように、組織が非常に分散いたしております。それに配置いたしまして、臨時のこれらの仕事処理する必要がございますために、定員外職員として予算上これを計上いたしまして臨時職員としてこれを使っておるという経緯になっておるわけでございます。
  16. 塩谷一夫

    塩谷委員 そういうのが今度行管のほうで指摘されておるいわゆる定員外の千六百人という数字でございますか。多少数字が違っても、それを言っているわけですか。
  17. 新谷正夫

    新谷政府委員 新聞には千六百名と出ておりますが、私どものほうの実態調査では、これはもちろんその時点時点によって数字が非常に変動がございます。予算年度の当初においてはこの数が非常に少なくなったり、年度末になるとこれが非常にふえてまいります。したがいまして、年間通じまして一定の数字がございませんけれども、大体千二百五、六十名のところの数字が経常的な数字でございます。これが先般新聞にも出ましたが、定員外やみ定員だというふうな表現をされたのでございますけれども、私どものほうでは、やみのためにそういう措置をとっているという意識は毛頭ございません。ただいま申し上げましたように、臨時仕事をやってもらいますために特に予算予算を計上いたしまして、その範囲内でこの臨時職員を採用いたしておるわけでございまして、いわゆる一般定員職員の行ないます業務とはおのずからその性質も違っておりますので、こういった仕事について、定員要求ということはちょっと性質上できないだろうと思います。そういう意味合いから、私どものほうでは臨時職員予算に計上して採用いたしております。これが年次計画でいろいろの事業をやっておりますので、ずっと引き続いて定員として採用しておるような外観を呈しておるかもしれませんけれども実態を申し上げれば、ただいま申し上げますような臨時業務のために正規の認められた職員でございます。
  18. 塩谷一夫

    塩谷委員 登記事務のようなことはそれで済むわけですが、たとえば問題になった例の那須国有林ですかの払い下げの問題、ああいうものの公図をつくる場合、それ自体できていなかったということで問題になった。全国にそういう問題は幾らでもあると思う。そういうものを実測するとか、相当な作業量が必要になってくるあるいは航空写真をとるとか予算要求も必要になってくる、そういう用意などもしなければならぬと思いますが、そういう点はどういうふうに考えておられますか。   〔松澤委員長代理退席井原委員長代理着席
  19. 新谷正夫

    新谷政府委員 那須土地につきましては御指摘のように国有地を払い下げました当時から図面が整理されていなかったようでございます。すでに昭和二十五年に土地台帳法務省で引き継ぎました以前から図面がなかったようであります。これが災いいたしまして現在のようなある種の混乱が生じてきたということは申しわけない次第でございます。こういった例も全国的にながめますと、まだほかにもあるようでございます。国有地でございますので本来これは台帳に載っておりません。したがいまして、その台帳上の図面というものもなかったわけであります。しかしいまこれを法務局で引き継ぎまして登記台帳一元化していくということになりますれば当然その地図備えつけということも必要になるわけであります。税務署から引き継ぎました地図明治年間に作成された非常に古い地図のものもございます。こういった既存地図整備をはかりますと同時に、ただいま御指摘地図のない個所につきまして、今度法務局としましても、地図を新たに作成して、これを整備してまいらなければならない状況下に置かれております。既存地図整備に、実は過去数年間、ある程度の予算を計上してやってまいりました。また、将来もこれは続けていくつもりでございます。しかし、地図のないところにつきまして、何とかして早くこれを整備する必要があると考えまして、来年度におきまして、ひとつテストケースとして新規のところをやってみようということにいたしまして、その予算を初めて来年度計上したわけでございます。それを実行いたしました結果によりまして、全国的に地図のないところをさらにどのようにして地図整備していくかということを慎重に検討いたしたい、このように考えておる次第でございます。ともかく、地図のないところについて地図を作成するという仕事が新年度からいよいよその緒についていくということになりましたことは、私どもとしても一歩前進と考えております。今後これを早急に推進していく必要があろうと考えまして、その方向で努力する所存でございます。
  20. 塩谷一夫

    塩谷委員 次は、入管の問題でちょっと伺います。  例の十日付の毎日新聞に出た、イントレピッドの脱走水兵、これは結論的に言うと、小宮山さんですか、横浜の管理所長さんの談話で、人手不足でしかたがないという結論になっている。これがそういう結論で終わるべき性質のものじゃないということは御承知のとおりだと思うのであります。結果論にしても、とにかく白昼堂々とソ連の定期船バイカル号というのに乗って、そうしてテープを受けて、その写真まで載っている現状であります。そしてそれを見のがしてしまった。これはもう巧妙にして大胆にやったことであるからしようがないということで、しかも人手不足であるというようなことでは、やはりこれは責任問題だろうと思う。そういう点、結論的にやはり人手不足だという点に対して私は追及するわけであります。大体ああいう事態というものは、週刊誌にも載っておるし、むろん治安当局としての警察も言っておる。そういうことであるし、いずれにしても相当センセーショナルな問題であったにもかかわらず——いつ出ていくかということは、極端にいえばもう国民みんな、映画もどきの興味を持っておったのだ。それを結局ああして白昼堂々と出ていったということである。こういうことは、結論的に人手不足で済まされない問題だろうと思う。これは、たとえば外国問題が非常にひんぱんになり、複雑になってきた場合に、水ぎわ作戦とか、あるいは新潟等——これはうわさでわかりませんが、いわゆる北鮮系の船が寄港したときには自由自在だというようなうわさが飛んでおるというようなわけで、そういうことが全国至るところであるということは、これは単に人手不足人手不足で済まされない問題があると思う。こういう点をもう一度局長の立場で、特に責任という観点で御答弁をいただきたい。
  21. 中川進

    中川(進)政府委員 ただいまの先生の御指摘、ごもっともでございますが実情を申し上げます。  まず、横浜港からイントレピッドの乗員が四名出国したという点でございます。横浜港は、先生も御承知だと思いますが、年間に、たとえば昭和四十二年に九千八百三隻の船が出入りしております。それからわが入管で扱いました件数と申しますか、要するに先ほど大臣も御答弁になりました人の数でございますが、これは五十二万九千三百三十三人という数でございます。これに対して、わがほうの入管の職員は三十七人いまおります。今度予算の御協賛を得まするならば二人ふやしていただくことになっておりますが、大体その程度でございます。これを割ってみますと、船が一日に大体二十七隻ぐらい出入りするわけでございまして、それに人が一人一人行って船員の上陸を見てやる、あるいは日本人が出ていくのを見届けるということは、これはまあたいへんな事務量でございまして、事実上やってはおりますが、たまに手ぬかりが起こり得るということは、これはあってはいけないことでございますが、絶無ではないのではないかと思います。ただし、ただいま御指摘のイントレピッドの四人は、御承知のごとくアメリカ軍の構成員でございます。そうしますと、日米地位協定というのがございまして、それのたしか九条でございますか、これに対しましては日本の入管令は及ばないことになっておるのでございます。したがいまして、先ほど先生、責任の問題からも大いに検討を要するとおっしゃいました。まさにそのとおりでございますが、しかしこの点から申しますと、米軍の構成員が米軍によって兵籍を離脱するというようなことでもありません限りは、これはわが入管令の適用の外に立っておるわけでございまして、その意味では形式的に入管にこの人たちが日本を無断で出ていったということに対して責任がないということにもなるのでございます。しかしながら、そうは申しましても、先生御指摘のごとく白昼公然と外国人が日本の官憲の知らない間に出国して、しかもその写真新聞とか週刊雑誌に載っておるということははなはだ好ましくない事態でございます。そこで、私も入国管理責任者である、ただいま御指摘の小宮山所長によく事情を確かめたのでございますが、これは次のようでございました。すなわち、普通の乗客は全部入国管理事務所に出頭いたしまして、そうして旅券その他の必要なペーパーに出国の証印を取けまして、それから船に乗って出かける、こういう順序でございまして、その当日のバイカル号もまず大部分はそういうことになったのでございますが、ただ、バイカル号に限りませず、一般的に横浜港から商船、すなわち人を乗せる船が出ます場合には、見送り人とそれから訪問者と申しますか、そういうものが非常にたくさん参るのでございます。そこで、ただいま申し上げましたように、一日平均二十七隻にのぼる船に対する訪問者の取り締まりは、これはもうとても入管当局ではできませんので、船会社の職員がやっておるのでございます。ただいま御指摘バイカル号に関しましても、その船会社がこれを訪問する人のチェックを自己の責任においてやっておるわけでございますし、またやったのでございます。そこで、私どものほうの入国管理の門を通って正規に出国した人の中にはこの四名はもちろん入っておらないのでございまして、私どもの想像でございますと、そうしてまたあの週刊誌や、一昨日、昨日の毎日新聞に載った写真などが本物であるといたしますと、おそらくこれは訪船客を装って出帆まぎわに船に乗って、そうして結局下船しないでそのまま出帆したものであろうと、かように推察しておるわけでございますが、残念ながら必ずそうしたということは、事務的確証はあがっておりません。そのバイカル号が出帆しまして、その次に寄港しましたときに、事務長などに言ってよく事情を聞いたのでございますが、要するに知らぬ存ぜぬの一点ばりでありますし、船長にも尋ねましたがやはりわからないということであります。それからまたその次の便でその船が帰ってまいりましたときに、また尋問しようと思いましたところが、今度は船長もパーサーも交代しておるというようなことでございまして、それは自分がこの船に乗る前のことであって、その前のことを聞かれても何も知らないという一点ばりでございます。そういうことでございまして、御指摘のごとく、どうもあの日のバイカル号にあの四人が乗ったであろうということは十分推測されるのでございますが、しかし確実に乗ったという人的確証というものは、いまのところは得られておりません。しかし先ほど私が申し上げましたように、ともかく白昼堂々と入管令の適用を受けない——形式的には受けないといたしましても、外国人がわれわれの知らないうちに出国する、あるいは入国するというようなことがありましては私どもとしましてははなはだ残念に思いますから、入国管理当局といたしましても極力、先ほどから御指摘のごとく人員を充実し、そうしてまた仕事能率をあげることによりまして、そういう不祥事態が起こらないようにつとめますとともに、また一方、この船の会社にもよく注意を喚起いたしまして、その船に対する訪問者のチェックは厳重にやってもらうように、すなわち乗った数だけではなしに、必ずおりたかどうか確かめる。たとえば、乗船券を破って半分ずつでもやって、帰りにその数を洗ってみてまだ四人が帰っておらぬとかなんとかということでもやるように、若干大福帳的なやり方があるんだろうと思いますが、ひとつもう少し具体的に科学的にぴしっとすみまで行き渡るようにしてミスのないようにやってもらいたいという注意を与えておるわけでございます。
  22. 塩谷一夫

    塩谷委員 法的な意味で責任がないというようなこともいま言われたようですが、私の言うのはそういう意味ではなくて、とにかく人手不足のために全部ホローしきれないという社長の弁明は国民にきわめて不信感を与える。手薄ならば何でもできる。あるいは相手が大胆巧妙ならばどんどんできる。しかもあれほど騒がれた水兵であります。そういう者に対して、治安当局その他との連携なども忙しくてできぬことはわかりますけれども、それは弁明にならぬ。やはりああいう問題は手薄ならば手薄なりに何か対策を講じていかなければならぬ問題だろうと思う。ただ人手不足でしようがないというような談話だけで済まされないように、厳重な責任を感じて、そうして対策を考えてもらいたいということなんであります。
  23. 中川進

    中川(進)政府委員 先生の御指摘の点ごもっともでございまして、先ほどから私申し上げましたように、急激に人員の増加は不可能でございますが、とにかくただいま与えられました人員のもとに全力を尽くしてそのような不祥事態が起こることがないようにひとつ努力していきたいと思います。
  24. 塩谷一夫

    塩谷委員 刑務関係でやはり新聞ざたになった問題でちょっと伺います。  例の松山事件で暴力団が内部と外部との間で問題を起こしたことがありますが、今度も名古屋の刑務所で南山大学の試験の問題集を外へ出したという問題がありますね。新聞に出ております。こういう問題も人手不足になるのか、あるいは粗漏な内部における執務状態にあるのか、そういう点をどう考えておるか伺いたい。
  25. 福原弘夫

    ○福原説明員 この問題につきましては、現在警察でそのいきさつなどを詳細調査中でございまして、まだその明確な経緯等が出ておりません。もちろん人手不足などでこういうことがあってはならないのでございます。十分その結果を待ちまして、とるべき責任をとり追及すべき点は追及して、二度とこのようなことのないようにつとめる所存でございます。
  26. 塩谷一夫

    塩谷委員 いま答弁のとおりだろうと思うけれども、少し緩慢な答弁だと思う。もう一回しっかりした答弁をしてください。
  27. 福原弘夫

    ○福原説明員 この事件に関しましては、先日、ごく最近のことでございますが、どういういきさつでそのゲラ刷りが出たかということにつきまして、単なる受刑者と外に釈放した者との通報だけであるのか、またその間にどれだけの管理上の手落ちがあったか。もちろん刑務所のへいの中から出ましたので、管理上の手落ちのあったことはわかりますが、そのいきさつをさらに調査をした上で対処いたしたいと考えております。
  28. 塩谷一夫

    塩谷委員 十分調査していただくことはけっこうでありますが、いずれにしてもタイムリーにことをしていかないと、とにかく入試というのは一つのシーズンである。それから青少年に与える、学生に与える神経的な影響というものはたいへんなものだろうと思う。さっきの入管の問題も同様に調査して、その結果がまた非常にドラマチックに書かれておるということなんです。そしてむしろ犯罪を助長するような、書き方によってはおもしろい読みものにされておる。結局入管としての責任あるいはそうしたものがびしっとしていないからあるいは刑務所におけるいわゆるタイムリーな処置というものがないから、何か読みものにされてしまうわけであります。そういうものがスリラーものにどんどん扱われておるというところに、むしろ手薄であったら人手不足であったらやればできるぞというようなおもしろ半分の犯罪も起こるであろうし、また影響によっては青少年あるいは受験生にとっては非常な不信感が出てくるということなんです。そういう点について、もっとタイムリーな措置並びに談話を発表するなりして、そして少しでも安心のいくような方策をとっていただきたいというふうに考えます。
  29. 福原弘夫

    ○福原説明員 ただいま御指摘ございましたとおりでございまして、現在法務省としても経緯の正確な調査を進めております。また警察当局、検察庁当局においても、その経緯などについて調査を進めております。原因の判明次第、御指摘のような措置をとりたいと考えております。
  30. 塩谷一夫

    塩谷委員 次には矯正局、法務局と二つに関連しておりますが、少年鑑別所の問題で伺いたいと思います。  今回の予算で食費が一日当たり増額になったようでありますが、われわれ常識ではとても考えられない食費であります。これは内部で少年がどの程度に扱われているかあるいはこれでカロリーは十分なのかどうか、そういった点もありますが、世間並みの食費とは違うにしましても、十分であるかどうか、こういった点を伺いたいと思います。
  31. 朝倉京一

    ○朝倉説明員 ただいま先生おっしゃいました食費の点でございますが、特に少年は発育期でございますので、現在非常に低いということが言えると思います。多少集団で生活いたしておりますので、個人一人当たりの割合とは直ちに比較はできないと思いますが、ただいま仰せになりましたように絶対額が非常に低うございますので、毎年予算の増額その他に努力はいたしておりますが、物価の値上がりも含めますとたいして増額というほどには至っておりません。今後なお一そう努力が必要だというふうに考えております。
  32. 塩谷一夫

    塩谷委員 少年の問題、特に犯罪の問題で、犯罪白書に見ますると、保護観察官全国で六百八十一人今度は増員になったようでありますが、それにしましても一人で平均百七十人を担当しなければならぬというような数字が出ております。やはりこの人手不足に帰着するわけでありますが、いまの食費の問題とかあるいは少年の保護観察官の人数が少ないとか、いずれにしましてもせっかくの施設があだになってしまって、入っていった中で、感染度の強い少年時代に、刑務所以上のことをいろいろと覚えて帰ってくるというのが通念になっております。そういった点について、職員不足あるいは条件等による採用難の問題等を考えると、やはり最初から申し上げますように、保護観察行政というものは、幾ら理想的な絵をかいても、現実にそういう問題ができないということだろうと思う。どうしてもこの人員不足を打開していかなければならぬのじゃないかというふうに考えます。  そこで、もう少しいろいろ伺いたいと思いましたが、時間もありませんから、やはり大臣にもう一度御決意と国民的な期待という意味からいって注文を申し上げます。  とにかく、行管がいかに否定しましょうと、あるいは大蔵省がいかに査定しようと、法務省仕事というものは、大臣もさっき言われたように人間がするのであります。どうかそういう点で、今後いろいろな問題がある、しかも大小にかかわらず責任問題が出てくる、それがすべて人手不足で終わったのでは相ならぬわけでありますから、定員不足という点について法務省は特別であるということについての大臣のPR並びに大蔵省との折衝に当たってのせっかくの御努力を要望しまして、質問を終わります。
  33. 井原岸高

    井原委員長代理 受田新吉君。
  34. 受田新吉

    ○受田委員 法務省設置法改正案は、きわめて簡単な機構の改善、位置の変更という程度のものでございますけれども、私としては、一応法務行政上のポイントといわるべきおもな問題点を要約いたしまして、まずお尋ねをさしていただきたいと思うのです。  法務省機構改革上の単純な問題といっても、官房長設置という問題は非常に重大な問題なんです。いままで他省にある官房長の職種が法務省になかった、それで済んだ理由大臣から御説明願いたいと思います。
  35. 赤間文三

    赤間国務大臣 他の省にあって法務省官房長がなかった理由の詳細は私知りませんが、私の考えでは、やはり法務省仕事は非常に複雑であって、各仕事仕事の間の関連性が比較的に他の省よりも少ないような感じを当時持っておったのじゃなかろうか。ところが今日考えてみますと、その関連性はなかなか少ないどころの騒ぎじゃない。みんな相関連続で関係は深いし、官房がありながらそこの官房長がいないということは、もうあらゆる面において不便である、こういうことで官房長を今度設けたい、こういうことをお聞きしたよらな次第でございます。私は大体そういうふうな考え方を持っております。
  36. 受田新吉

    ○受田委員 かつて当委員会で私が、法務省には各局別のセクト主義が濃厚で、その間の連絡調整に事欠くおそれがあると思われるので、官房長の必要はないかと質問したときがあったのです。そうしたら、いやいや、私のほうは官房長などけっこうでございまして、十分各局で仕事がやれますからという大臣の御答弁もあったわけで、これはやはりモデルのような役所一つほしいなと思っておったのですが、これは情勢の変化がどこから発生したか、どなたからでもいい、ひとつ経緯を御存じの方に御答弁を願いたい。
  37. 川島一郎

    川島説明員 歴史的に申し上げますと、昭和二十七年に法務府が法務省に改組されたわけでございます。その当時は、官房長を置いている省というのはほとんどなかったわけでございまして、法務省も、法務府の時代には官房長というものを持っておりましたけれども法務省になりましたときに、官房長制をやめたわけでございます。その後よその省では逐次官房長を設けるようになりまして、今日まで法務省を除くすべての省では官房長を設置するに至ったわけでございますが、法務省といたしましては、先ほど大臣がお答えになりましたように、比較的各局の仕事性質が独立しておるということ、それから大臣官房には経理部、司法法制調査部というような二つの部がございまして、これがまたそれぞれ自分の所掌事務についてある程度まとまった仕事のしかたをしておるというようなことで、特に官房長というものがなくてもやっていけるのではないか。そういう状態に加えて、官房長を置くということはかえって事務を複雑にすることになるのではないかというようなことで、ずっと現状を維持してまいったわけでございます。  ところが、次第に、たとえば定員の問題でございますとか、あるいは予算の問題でございますとか、まあ法務省なら法務省といたしまして、対外的にいろいろ主張しなければならない問題もございます。国会に法案を提出いたしますにしても、よその省では官房長がいろいろ連絡調整事務をやっておりますのですが、法務省の場合には、これに当たる機関がないために、あるいは官房の秘書課長、あるいは調査部長、あるいは各局の局長がこれに当たるといったような、ばらばらな形になりますので、やはり総合調整という意味での官房長があったほうがいいのではないかという反省をするようになってきたわけでございます。そこで、いままで二、三回、官房長を設置しようかどうしようかということを検討したことがあったわけでございますが、そのつど機構の拡大をあまり好ましくないという情勢もございましたので遠慮いたしまして、今日に至ったわけでございます。  大体以上のような経過でございます。
  38. 受田新吉

    ○受田委員 機構改革のつど問題になったけれども遠慮した。ところがいまや各省一局削減主義をとる年になったわけです。どの省も一局ずつ減らす、そういうときにことさらにこれを持ち出したという理由をお聞かせ願いたいのです。
  39. 赤間文三

    赤間国務大臣 これは各省一局削減しなくともお願いしたい、こういうことを私は非常に痛感をしておったのです。なかなか法務省仕事もだんだんに複雑多岐になりまして、特に官房にいろいろな部とか課がありますが、これのまとめ役がいないということは非常に不便利だ、実質上に非常に困る点が多い、こういうことで一局削減あるなしにかかわらず、官房長を一人置きたい、こういう考えを持っておりました。そこに例の総理大臣の命令で、一省一局を減らせという命令が出たのでございます。それはわれわれとしては進んで総理の一省一局減らすことはやりますが、かねがね考えておった官房長というものはこの際ひとつ置かしてもらいたいという考えを持ったような次第でございます。ちょうど片一方でそういう時期にこれをふやすと、何か矛盾したようにもお考えになるかもしれませんが、官房長を入れなければ事務その他において困るという考えを持っておるおりに一省一局削減が出たものですから、こういうふうなことになったと考えております。御了承願います。
  40. 受田新吉

    ○受田委員 各省官房長をどんどん置いていって、最後に郵政省、文部省などもこれを置くようになった。その際に、郵政省のごときは、法務省と郵政省だけが官房長を置いてないなどということが提案理由の中に書いてあった。それほど法務省というのはあこがれの役所である。つまり官房長がいなくて済む役所として、機構上の問題としては節減主義のモデルのような役所であった。そういうときには要らないと言って、今度一局削減主義が起こるとお願いするというのは、何だかへそ曲がりのような感じがする。大臣のへそはまっすぐいっておると思うのですけれども、大体法務省という役所が何かこう変わった役所の印象を、私審査しながら濃厚に受けるわけですが、大臣の御所感という程度のものを承りたいと思います。
  41. 赤間文三

    赤間国務大臣 別にへそが曲がったわけじゃありませんが、やはり事務がだんだんに複雑になったと私は考えております。それで官房にしても、部があり課があり、いろいろしますし、それからまた対外の、国会との折衝とか、いろいろな重要な問題が多いときに、官房長がいないとどうもこと欠きやすい、こういうことでひとつ官房長はぜひともお願いを申し上げたい、かように考えております。それから、政府方針方針でそれにいさぎよく服していく。しかし実際必要なものは、やはりこれはお願いすることのほうがいいのじゃないか。こういうふうな考え方から、官房長をこの際ふやして訟務局はこれを部に下げる、こういうふうに非常にすなおな考え方でやったので、お考えのように減らすときに何やら官房をふやすから、片一方では減らして片一方ではふやすのはどうもおかしくはないかというお説も私はよくわかるような気がしますが、実情はいま申しましたように、前から官房長が必要に迫られておったので、おりあらばひとつ官房長をふやそうということを考えておったときでございまするので、この際に了解を得ましたのでこれをお願い申し上げたい、かように考えております。それに官房が大きゅうございまして、部がありましたり課がありましたり相当大きいものですから、そこの長がいないと、やはり官房があって官房長がおらぬのは調べてみると何かと不便なことが多うございますので、実際に合うようにという意味でお願いを申し上げておるような次第でございます。
  42. 受田新吉

    ○受田委員 いま故人となられた高橋先生であったと私は記憶しているのですけれども、いま大臣の御発言のようなことを私がここで唱えて、むしろ官房長法務省に置けと発言をしたことがある。各局の独立性が強過ぎて法務省というのはばらばらな役所のような印象を受けるから、それをまとめる連絡調整機関としての官房長は必要ではないかという提案をしたときには、これはそれぞれの局長が熱心にやっておるから、また官房もあることだから、間に合うから御懸念なくという御答弁があったと記憶しております。   〔井原委員長代理退席、松澤委員長代理着席〕 高橋先生は非常に純粋なお方であったことをいま想起するのでありますが、ところがわずか数年を出ずして急激に仕事がふえるというのは、それはどの役所も同じことだと思うのです。法務省だけが仕事がふえておるのではない。どこもふえておる。そういうときに、せっかく伝統を誇られた法務省がその伝統を一てきして、こうした行政機構削減主義の段階においてあえてこれを断行せられるという意図は、ちょっと私自身は了解に苦しむ。野党の立場からの発言として、そのことがけしからぬという意味でなくして、私は公正な意味で提案をしたことです。そのときは、どの局長さんも異議なしという御意図のようであった。しかし私自身はそういう意図で、たとえば入国管理局は外交官の方が大体局長になられる、それから検事の御出身の方が局長になられるポストもある、一般の立場の方がなられるポストもあるといったようなことで、ちょっとその連絡調整、統制をはかる上において、大臣としてはその補助者として官房長がおったほうがいい、必要であると私は思っておった。こういう点、法務省としてはちょっと時代感覚がずれておるような印象を受けるので、ここまできましたのでこれ以上は申し上げませんけれども、今後法務省行政運営上のどこかに抜けたところがある点を埋めて、しっかりと日本の法律の番人として御努力を願いたい。赤間先生、いいですね。  次に、法務省の各局の仕事の中で訟務局というのは一番軽くて済むと御判断をされたのか。つまり整理するのには一番都合のいいお役所と御判断された理由を御説明願いたいのです。
  43. 赤間文三

    赤間国務大臣 一省一局でありまするからいかなる局を減らすかということについては、ずいぶんいろいろな面から利害得失を検討をいたしたのでありまして、それが訟務局ということに落ちついたのでございまして、実は訟務局も御承知のようになかなか重要なところでありまするので、ずいぶん研究をいたしましたが、これを部にして、仕事簡素化をはかっていいならば、御迷惑をかけなくて訴訟の目的も達せられるのじゃなかろうか、そういうことで、ひとつ局を部に下げて、能率を十分にあげて御迷惑かけぬようにやっていこう、こういうふうなところにこれが落ちついたような次第でございます。いずれの局も大事でございまして、どこの局がどうというのはなかなか骨が折れましたけれども、ここに落ちついた。しかし、ここに落ちついたけれども能率は部になっても下げぬでやっていこう、こういうふうな仕組みでおることを御了承願いたいと思います。
  44. 受田新吉

    ○受田委員 訟務局に次長制を設置されたときに、訟務局は他の局と比べて非常に仕事が繁雑であるので次長制をしきたい、こういう御提案で、他の局には次長制がないのにかかわらず訟務局には次長制を置いた。それほど大事な次長制まである局を、あえてこれを減らして、次長制の置いてない局を残した理由を、大臣御説明願いたいです。
  45. 赤間文三

    赤間国務大臣 別に局に次長がおるとかいないとかというような点はそう重要な点とは考えない。ただ、局を部に下げて能率を下げぬでやっていけるかどうかというそこに重点を置きまして、あらゆる局をあらゆる面から考えてみて、訟務局を重要な局であるが部にかえていても能率を下げないでやれるということに話がまとまりまして訟務局を減らすようにしたので、実はもうどこの局も減らしたくないのは腹一ぱいでありますが、どこかやらねばならぬ。それで、おのおの局長はおりまするし、容易ならぬ研究と努力でここへやむを得ず訟務局に落ちついた。法務省はいずれもなかなか仕事が重要なところばかりと思っておりまするが、やっぱり内閣の一省一局削減には絶対に服従せねばならぬということで、ここに落ちついたというふうに御了承をお願いしたいと思います。
  46. 受田新吉

    ○受田委員 次長制は入国管理局にもあるわけです。ところが他の局は参事官を置いているにすぎない。これは同じ地位にあるという立場でありましても、はっきりと職制の上では次長ではないわけです。そういう次長を置いている大事な局を削られるということについて、訟務局長来ておられたら御所感を承りたい。いまの大臣答弁では納得できないです。  私はいま大臣が次長を置いてあるから大事なとかなんとかいう意味じゃないのだという、非常に次長制を軽く発言されたことを遺憾に思うわけです。次長制を置くのは、容易ならぬ機構改革上の問題として、こういうポストを置くことに法務省としても非常な熱意を示してこれを獲得された。それは簡単に次長制を——大臣、十分研究が足らないからつい申されたので、地方行政のほうには明るいでしょうが、国家行政機構上の問題として次長制というのは非常に重要なポストなんです。次長制があろうがなかろうがという判断は非常に不見識な判断だと私は思うが、いかがですか。
  47. 赤間文三

    赤間国務大臣 次長がおる局といない局とを比べてみればお説のとおりで、私は、次長のおるところはおらぬところよりも客観的には重要であるというふうに見られるのが普通と思いますが、とにかくいずれもなかなか困難な削減でございますので、協議に協議を重ねまして、まあこれよりほかに方法はなかろうというのが、私らの法務省の中の会議で実はきまりました。それで私どもとしましては、言いましたように、やったために一般の人に迷惑をかけたり仕事の運営を阻害するようなことがあってはいかぬから、その点をまたあわせて十二分に考えて訟務局を減らすようになった。私も実はあまり減らしたくはない、重要なところだということは同じように考えておりますが、どこか一ところ減らさないとぐあいが悪いというので、やむを得ずここを減らしたことの事情をひとつ御了解を願います。これは前の大臣のときからもずいぶん会議があったそうですし、私のときもずいぶん会議をしてこういうふうなところへ落ちついた、その事情をひとつ御賢察を願いたいと思います。
  48. 受田新吉

    ○受田委員 賢察を願うといっても、やはり筋を通す御処置をされてから賢察を願うならば私も賢察しますけれども訟務局長、きょうちょうどおいでにならないようで残念です。この局をつかさどられる方の御意見も承ってみたかったのですが、事ここに至り万事休すという立場での大臣の御発言と了承して、あえてこれ以上追及しますまい。  そこで、今度は、永末委員もあと質問いたしますので、私残った問題は分科会でお尋ねすることとして、もう一、二お尋ねしておきましょう。  入国管理局のお仕事が非常に複雑多岐であって、入国事務と出国事務の両方を担当しておられる。これは私、中川さんが御負傷されながらもあえて病をおして御勤務をされておる、その高級公務員としての御苦労に深く敬意を表しますと同時に、この局の仕事は国から出ていくほうと入ってくるほうと両方がある仕事であるから、たとえその分量にいささかの差があろうとも出入国管理局というのが名称として筋が通る、こう私は判断します。大臣、御所見を承りたいです。
  49. 中川進

    中川(進)政府委員 これは昨年先生から御教示を受けたとおりでございまして、私どもも例の出入国管理令の改正におきまして、出入国管理令というものは「出」という字を現在どおり続けるつもりでございます。ただお役所の名前は、確かに論理的には出と入と両方ある。そのとおりでございますが、なにしろ出と一つつきますと長くなりますので、簡便をたっとぶことが一つと、それから、出るということは、出入国管理行政におきましては、原則として、どちらかといえばほとんど問題がなく、入るということについて非常にいろいろ問題があるわけでございますので、仕事の分量から申しますと——出と入とがごさいますが、どうしても入のほうがはるかに多いというようなこともございまして、入国管理局と、いつの間にか出という字がなくなったというふうに聞いておりますが、論理的には先生のおっしゃるとおりだと思います。
  50. 受田新吉

    ○受田委員 論理的には御肯定をいただきましたから、きょうは申し上げませんが、適当な機会に上に出の字をつけたほうが筋が通る。同時に、ポツダム政令の出入国管理令を管理法と、独立国家としての名誉においてポ政令を整理せよという提案を繰り返しておるわけで、昨年もこの出入国管理令を法として占領のいまわしい印象を払拭することについての決意を大臣局長も言明されたわけだ。この言明に対する事務進捗状況を承りたいのです。
  51. 中川進

    中川(進)政府委員 昨年先生から御教示をいただきましたとおり、そしてまた、それに従いまして、前田中大臣がここで御答弁なさいましたごとく、昨年の六月九日に、さっそく出入国管理法制定準備委員会というものが、不肖私をそのチーフにいたしまして、省内に設立されたのでございます。それから、何しろ関係するお役所の数が非常に多いものでございまして、大体十四省庁でございますが、同じ省ないし庁でいろいろな課にまたがる関係がございまして、大きな会議を持ちますときには、大体五十人くらい各省から集まっていただくのでございますが、そういうふうな会合をすでにもう四回も五回も開きました。それからまた、省内におきましても、ただいま申しました六月九日に設立されました出入国管理法制定のための準備委員会をもろ何回も開きまして、ことに近ごろは毎週開いておりますが、先ほど先生におっしゃっていただきましたごとく、私不幸にして昨年の秋事故にあいまして、そのために約二月ほど休養やむなくせられました関係もありましたために、私ども初めに考えておりましたときと若干テンポがおくれておるのでございますが、何とかこの国会の会期中には何なりの案をまとめ上げたいと思いまして、いま九分九厘までできておるのでございますが、最後の一厘をまとめるために最大の努力をいたしておりますから御了承願いたいと思います。
  52. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、今後の国会の予算審議も、暫定予算を組む方針に変わってしまっておるわけですが、参議院選挙を前にして、参議院の議員さんたちは浮き足立った状態であることも理解できますけれども、国会議員の職務を遂行せずして浮き足立って選挙運動に没頭するような議員はまじめな議員といえない。そういう意味においては、まじめな議員という前提のもとに、会期一ぱい審査するとして、今会期中に出入国管理法の提案がされる見通しがあるかないか、その見通しを承りたいのです。
  53. 中川進

    中川(進)政府委員 これはきわめてむずかしい問題でございまして、何しろ国会がきわめて忙しいし、また、そこにどの法案をプライオリティーを与えて出すかということは、必ずしも入管だけの意思できまるわけでもございませんので、きわめて客観的に、見通しいかんと聞かれましたならば、五分五分であると申し上げるよりしかたがないと思います。ただ、私どものほうといたしましては、何とかこれを九、一ないし十、ゼロにして提出さしていただきたいと思って、先ほど申しましたように、最後の追い込みに入っておるわけでございまして、案自体は日ならずして最終案ができる見込みでございます。
  54. 受田新吉

    ○受田委員 局長の苦しいお気持ちを了として、これ以上お尋ねをしますまい。そういう方針で前向きで一生懸命やっておるということですから。  最後に一つ、今度は入国管理事務所の出張所の関連になるわけですけれども、大体密入国というものは日本のどの辺に多くて、国別に見たらどの順序に多いか、御説明願いたいと思います。
  55. 中川進

    中川(進)政府委員 御承知のように、日本はアジアでは先進国でありまして、その日本に向かって、おもに朝鮮ないし中国などというところから来られる人が多いわけでございます。したがいまして、そちらに近い日本の地域ということになりますので、先生の御郷里のほうをはじめ、大体北九州、それから中国の裏のほう、その辺が多いようになっております。
  56. 受田新吉

    ○受田委員 この密入国の扱い方に問題が一つある。これも時間がないので簡単にお尋ねしたいのですが、西の方に多く、大体中国、韓国、北鮮という順序ですね。その中で、韓国との間には、すでに日本に居住する大韓民国人の法的地位及び待遇に関する両国の協定ができておることでありまするし、また、その運用については出入国管理令の適用を受ける面もあるということになっておるのですけれども、大体占領が終わるころだったと思いますが、法務大臣宣言で、その当時日本におった者の居住権を容認する、密入国者といえども容認する宣言をされておる。また、日本におって生まれた者も永居住権があることになっておるが、それら永居住権を持つ者の配偶者となった者も、密入国者であるときはすぐ追い返さなきゃならぬという規則になっておる。これははなはだ残酷な物語であって、アメリカなどは、いまマッカラン移民法の大幅改正を累次いたしまして、米国籍を有する者の妻となった者はすぐ呼び寄せ、国籍が取得できるようになっている。また、その子供もそういう措置ができるようになっている。ところが、永居住権を持つ妻あるいは夫を持つ配偶者が密入国者であったというので追い返されて、現実の問題として、その夫婦愛のこまやかであった関係を引き裂くような行き方というものははなはだ冷酷であると思うのです。この機会に何らかの改正をされて、密入国のきびしい制約があっても、それはもう一応現実を尊重するという意味から、永居住権を有する韓国民の配偶者となった者は法的な制裁を加えない措置をとるべきじゃないかと思うのです。私は、人道的、人権的に非常に問題があると思う。これは局長及び大臣から御答弁を願いたいと思います。
  57. 中川進

    中川(進)政府委員 先ほど一つお答えするのを忘れました点がありまして失礼いたしましたが、密入国者の国籍について御質問がございました。昭和四十二年の入管でとらえました、そのほかに保安庁、警察でとらえました密入国者が五百三十九名ございますが、そのうち五百十六名が朝鮮の出身者であり、あと中国十一名、その他十二名となっておりまして、大体九割以上の者が朝鮮の関係であり、あとはその他というふうに御理解願えればいいと思います。  それから第二のただいまの御質問の点でございますが、確かに韓国との間には永住に関する日韓間に地位協定がございまして、そして永住権をとった者の日本における地位は非常にかたいものになっておるのでございますが、この配偶者に関しましては、これは先生御指摘のように、われわれとしましても、極力これを人道的に扱いたいと考えておるのでございます。ただし、この配偶者がこの協定永住の夫を慕ってかりに密入国したという場合におきましては、やはりわれわれとしては密入国の事態は、これはもう一つの国家に対する、ことばがあれでございますが、犯罪でございまして、これは何とかひとつ是正する必要があるわけでございます。ただそういう密入国ということでなしに、協定永住者の家族のレユニオンということに関しましては、極力行政的な配慮を加えまして、その実現をできるだけはかってやりたいと考えております。また密入国をいたしました協定永住者の配偶者でありましても、その密入国が非常に古いという場合には、これまた行政的配慮で適当な特別配慮を認めるということで、この家族の離散を防ぐ方法を講じる場合もございます。しかし密入国の時期が非常に新しいという場合には、どうしてもこれは一ぺん密入国に対する責任だけはとっていただいて、家族のレユニオンの問題はまたあらためて考え直すというふうに処置していきたいと、かように考えております。
  58. 受田新吉

    ○受田委員 戦時一時帰国の扱いというかっこうにして、法務大臣談話で戦後一応帰った者で密入国した者も日本に居住権を認めたかっこうになっているのです。ところが向こうに妻や子が残っている。その人が夫を慕うて入ってきた場合には、これはあとから入ってきた、つまり談話以後であるというのですぐ追い返す。だから、韓国へ残しておやじだけが日本へ来ておる、そして永住権を獲得した、その妻と子供が父を慕い、夫を慕うてあとから追っかけてきた。その追っかけてきた方は、不法入国者として強制追放するということは、私非常に残酷な行き方だと思う。つまり、夫が永住権を持たれた以上は、むしろ妻や子供は呼び寄せができる措置をとってやるべきではないかと思うのですが、これはいかがでしょうか。
  59. 中川進

    中川(進)政府委員 ただいまのお話でございますが、確かに昭和二十七年四月二十七日、この講和の発効の日によりまして、ただいま受田先生御指摘大臣声明の一つの時期が画されるわけでございます。そこで夫が協定永住を持っておるということは、これは結局戦前から引き続きずっとおる人でありまして、いわゆる戦後入国者、すなわち終戦後から講和発効まで、昭和二十一年から二十七年までの間に日本に入ってきた人は、これは大臣談話によりまして永住を認めることはございますが、まだ協定永住は認めておりません。  そこで、先生のお話の協定永住者の配偶者にしぼりまして、協定永住者を慕うて韓国から日本に密入国したという場合、先生の御指摘の講和発効以後、昭和二十七年五月以後かりに入ってきたといたしました場合に、かりにこの配偶者が昭和二十八年、二十九年というようなころに日本に不法入国してきた、そしてその後、かりに二十九年といたしますと十四年間無事平穏に何ら悪いこともせずに暮らしておったというような場合、しかもその婚姻がちゃんと戸籍抄本その他で証明せられまして、合法的な、法にかなう婚姻であるということが確認せられる場合、それらの場合には、私どもといたしましても行政的な配慮をもちまして、これをむげに追い返すということはいたしておらないのでございます。ただ、先ほど私が申し上げましたように、その入国の時期が非常に新しい。非常にといっても、きのう、きょうということでなくて、もう少し長いのでございますが、比較的新しいという場合には、一応不法入国ということに対する責任をとっていただいて、そして先ほど御指摘の呼び寄せるくらい考えてやっていいじゃないかということでございますが、それはまたそれで、私どものことばで平たく申しますと、表門から堂々とひとつ入ってきていただくような、不法入国とかなんとか、裏口からこっそり入ってくるというようなことでない方法で解決する方向に向かって努力していきたい、かように考えております。
  60. 受田新吉

    ○受田委員 こちらに密入国した時期がおそい、新しい分は追い返す。それから二十七年五月に近い分はそのまま認めておく。時期によって差をつけるのは私は適当でないと思うのです。それは出入国管理令及び外国人登録令、この二つの法律違反ということで、ほかのことは悪いことをしているわけではない、犯罪などしていないという人間であるならば、かつて日本へ来た夫が、独立の生計を営み、家族を呼ぶに足る能力を持って初めて追っかけてくるのが普通だと思うのです。そういう意味では、一応ひとり立ちできるようになって初めてそっと夫を慕い、父を慕うて来るのが、これはむしろ人情じゃないかと思うのですがね。それまでがまんしたわけですから、私はむしろお説のような合法的な入国手続をこちらからとらして、おまえの妻や子を呼び寄せたらどうかというような形にしてやる親切さがほしいと思うのです。私はこういう事例を幾つも体験したものですから。親子関係、夫婦関係を断ち切って、夫を慕い、父を慕うて来た者が追い返されていく。また、永住権を持つ韓国人と不法入国した人が結婚して、子供ができた。妻は永住できるが、おまえは密入国したんだから帰れと追い返される。これは人道主義国家の日本としては考えなければならぬ問題だと思うのです。そうたくさんの人間がおるわけじゃないんだから、そのために人口の大幅な移動が行なわれるということもないわけです。このあたりでスカッとした人道主義の見地に立ち、かつ日韓両国の関係を阻害しないような立場で、呼び寄せ移住ができるような措置を講じていただきたい。(「賛成」と呼ぶ者あり)賛成という異口同音の声が聞こえる。非常にいい御質問として認めていただいた。
  61. 中川進

    中川(進)政府委員 先生の御卓見確かに承りまして、私どもといたしましても、極力そういうラインで解決をはかりたいと思うのでございますが、とにかく不法入国ということがありました場合、その責任はやはり一応とっていただいて、その上であらためて——もう少しわかりやすく申しますと、一ぺん帰っていただいて出直していただくというふうにしたい、私どもはそう考えております。  ただし、私は法律にしろうとで、そんなことを申しますとあれでございますが、法律行為には一般に時効と申しますか、ある状態が長く続いた場合には、その起こった原因は若干不法ないし違法でありましても、とにかくいまある事態をそのまま承認するほうがより大きな正義にかなうというような法理があるということがものの本に書いてございますが、そういうことから、たとえ不法入国いたしました者でも、非常に長く日本におって、日本に昔からおったような顔をして、先ほど御指摘のごとく、不法入国以外には何ら犯罪もないというようなことでありますと、これはむしろあまり古傷を洗い立てて、おまえ帰れといって追い返すのも酷であるという場合がございます。もちろんその相手が、ただいま御指摘のように協定永住者であるというような、いろいろ条件があるわけでございますが、そういうような場合に、非常に古い場合にはある程度行政的考慮をいたしまして、特別在住を認めておるのでございます。しかし、非常に新しい場合には、やはり不法入国したんだ、何といってもそういう事実があるわけでございますから、一応形式的なその責任はとっていただきまして、いま受田先生御指摘の、家族一緒に暮らすべきだという、そのほうの解決は、また別途な呼び寄せと申しますか、私は正門から入ってもらうと申しましたが、そちらのほうで解決をしていきたい、かように考えております。実はこれに関しましては、昨年の夏に韓国の外務次官と時の田中法務大臣との間に申し合わせ事項がございまして、そういうようなラインでひとつできるだけ人道的に協定永住者の配偶者並びに未成年の子女に関しますその家族の入国をさせるということに関しましては考慮したいということもございますので、先生の御指摘のようなことにこれからだんだんなっていく、かように考えております。
  62. 受田新吉

    ○受田委員 私、これで質問を終わりますが、いまの局長のおことばのとおりであれば私は了承するのです。ところが現実はおことばのとおりになっていない。みな追い返されている。父を慕いあるいは夫を慕うて来たら、最近はみな追い返しておる。正式に堂々と表門から来る方法がどこにあるかということ、これは事実問題として非常に困難です。そういう受け入れ体制というものが現在できていないから、日本に永住権を持つ者の妻でありあるいは子供であるものが夫のところに来れる、父のところに来れるというような何か規則をつくってもらわぬと、お話が現実に机上の空論になっておる。これはおわかりいただいておるとおりです。だから、これはひとつ大臣も心に抱いて——日韓両国の親善に人間関係、家族関係というものほど大事なものはないと思う。親子がさきさかれ、夫婦が断ち割られてくるようなかっこうになっている、これは非常に憂慮すべき状態だと思います。大臣の、これに対する英断を持って処理する決意を表明していただきたい。  犯罪人及び刑余者の処遇その他の刑事的な問題は、別の機会に質問することとして、私の質問を終わります。
  63. 赤間文三

    赤間国務大臣 現在としましては、お説のように現在の法令の許す限り人道的見地からこれを考慮していくということにしていきたいと考えております。許す限り、ほんとうに人道的な見地からこれを考慮していく。なお将来につきましては、表門から呼ぶとかそういうことがしやすいようなぐあいに、正式に表門から呼び寄せる。そういうことについてもとくとひとつ研究をして、そういうことがなるべくできるようにと思っております。
  64. 松澤雄藏

    松澤委員長代理 永末英一君。
  65. 永末英一

    ○永末委員 私は、予算委員会でわが党の委員質疑をいたしましたアメリカ海軍軍人の妻がわが海上自衛隊の隊員を自動車の無暴な運転によって殺害、傷害せしめた事件について、法務省当局の法律的な見解をこの際承っておきたいと存じます。  第一点は、この犯人は他の一般外国人あるいは内国人と同じ地位としていまお取り扱いになっておるかどうか、伺いたい。
  66. 川井英良

    ○川井政府委員 刑事訴訟法上の地位といたしましては、内国人と変わらない地位において取り扱っております。
  67. 永末英一

    ○永末委員 昨日の予算委員会では、外務省からは、この犯人を釈放したことについて、安保六条による地位協定、それに関係する合意議事録はこの釈放を義務づけたものではないという旨の答弁があったと聞いております。しかしそのことは、この合意議事録に記載されておるアメリカ軍人の家族という字句にも、この犯人が該当していない取り扱いを受けるべきだと言っておることとは私は感じていないのでございますが、いまこれは裁判中でございますから……。法務省としてはこの犯人の地位というものについて一体どう見ておられるかこれに関連をしてお答えを願いたい。
  68. 赤間文三

    赤間国務大臣 日本に裁判権がありまするので、法務省といたしましては、これはもう日本人と外国人と何らの区別なく、あくまでもき然たる態度で適切な捜査をやっていく、こういう考えでおります。
  69. 永末英一

    ○永末委員 私が伺いたいのは、通常の場合であるならば、この犯人が釈放せられたる場合に、裁判が続く。その裁判が続いている期間は、法務省、裁判所としては、その犯人がそれぞれの裁判に出頭する、あるいはまたその調べに応じる、こういう、やはり何らかの法律的な関係を持っていなければならぬと思うわけであります。ところが、この犯人の場合には、アメリカ軍人の妻であるという理由で一応釈放されておりますけれども、日本人の場合には、もしこれが裁判所の力が及ばないようなことになるならば、これは現在の法律の中で追及できるわけですね。ところが、この犯人は、追及できるのか、できないのか、その辺の御見解を明らかにしていただきたい。
  70. 川井英良

    ○川井政府委員 釈放いたしましたのは、予算委員会で御説明申し上げましたように、過失事件でございまするし、それから、事故を起こした場合に、男たると女たるとを問わず、また内国人、外国人を問いませんで、あの程度の事故で、一たん身柄を逮捕して取り調べた上、勾留をしないで、身柄引き受け人をつけて釈放しているというのが、日本人の場合におきましても、むしろ現状でございます。したがいまして、本件の場合には、たまたまあれが軍人の妻であったというふうな特別の事情がございましたけれども警察といたしましては、いろいろ事情を調べました結果、逃走のおそれもないし、証拠隠滅のおそれもない、こういうふうに思われましたので、普通の原則に戻しまして、一たん逮捕しましたけれども、検事のもとに送る前に身柄を釈放して事件だけを検察庁に送ってきた、こういう事情に相なっております。検察官はすでに三回にわたりまして本人を検察庁に呼び出して取り調べをし、調書をつくっております。先ほども連絡したところによりますと、ごく近い機会に厳正な処理がなされる予定である、こういうことに実情は相なっております。  そこで、身柄引き受け人がたまたま軍人でありますために、その軍人を管理いたしております、こういう事件責任者である基地の憲兵隊長が責任を持って身柄を引き受けるということで身柄を引き受けてまいりましたので、その責任ある、権威ある公の機関である者が責任を持って引き受けた、こういうことでございます。いままでもこういうふうな取り扱いをいたしておりますけれども、そのために裁判ができなくなってしまったというような例は全くないわけでございますので、私ども、いままでの実績も考えまして、今回の場合も、おそらく警察においてはこのような措置をとったのだろう、こういうふうに考えております。
  71. 永末英一

    ○永末委員 この犯人はいかなる意味においてもこの地位協定に関する合意議事録とは無関係だという判断ですか、関係ありという判断ですか、その点伺いたい。
  72. 川井英良

    ○川井政府委員 本件の場合においては、この議事録と関係なしに、従来の通常の取り扱いに応じてこれを釈放したものだ、こういうふうに考えております。
  73. 永末英一

    ○永末委員 それでは、あの合意議事録にあります家族の犯罪という場合に、どういう場合が一体該当するのです。どういう場合を予想せられておりますか。あるいはまた、いままでにこの合意議事録によって処置をした事例があれば伺いたい。
  74. 川井英良

    ○川井政府委員 御承知のとおり、軍人、軍属につきましては、向こうに第一次裁判権がある場合がありますけれども、家族につきましては今日ほとんど全部日本の第一次裁判権ということに相なっておりますので、この合意議事録に基づいて義務づけられて向こう側のほうへ身柄を引き渡さなければならないというふうな場合はほとんどないのではないかというふうに考えております。
  75. 永末英一

    ○永末委員 先ほど刑事局長は軍人と言われましたが、あれは軍人の家族なんですね。したがって、軍人だから基地憲兵隊長が身柄引き受け人になった、こういうことをいまそこで言われましたけれども、軍人の家族は当然にアメリカ軍の憲兵隊長が身柄引受け人になり得るものかどうか、この辺の御見解はどうですか。
  76. 川井英良

    ○川井政府委員 この法のたてまえからいって、当然になるとは思っておりません。それから一般観光客なんかの外人がときどき犯罪、間違いを犯すことがございますけれども、そういうふうな場合には適当な身柄引き受け人がございませんので、いろいろそれをさがすために苦労するのですが、多くの場合非常に不安定な状況に相なっております。ところが軍の関係におきましては、前々からいろいろ折衝がございまするし、それから特に軍人の家族であるというふうな場合には、具体的な本件の場合には、一応二日に逮捕いたしまして、二日の夕方釈放するときに、警察は憲兵隊長に責任を持って引き渡したということでございますが、その後引き受け書といいますか、必ず出頭せしめる、身柄を確保して出頭せしめるという本来の身柄引き受け書は基地の保安部長の名前で出ているようでございます。したがいまして、憲兵隊長が必ず引き受けるというのじゃございませんで、事件が起きた、憲兵隊長あるいはその意を受けた者がとりあえず飛んできて、責任を持って身柄を引き受けていったということでございますので、必ずしも憲兵隊長でなければいけないというふうには思っておりません。
  77. 永末英一

    ○永末委員 合意議事録によりますと、そもそもこの種の軍人家族の犯した犯罪については、第一次裁判権は日本政府にあるとこれがきめられておって、しかしこれが相手方に引き渡される場合については、相手方への義務づけとして「拘禁にゆだねるものとする。」というのが書かれてあると思うのです。それはすなわち第一次裁判権がわがほうの政府にある以上は、アメリカ軍人の——この場合家族に限りますが、家族が、いうならば日本の裁判所が自由に手を下し得ないような状態に置かれる場合でも、それは特別の場合であるから、アメリカ軍の拘禁にゆだねるということをこれは期待させておる文章だと思う。  ところでこの事件について、全然地位協定と無関係だとするならば、わがほうとしてはこの犯人が拘禁されているということは期待していない、こういうことですね。
  78. 川井英良

    ○川井政府委員 ちょっと質問の御趣旨を取り違えたかもしれませんが、これは永末委員御承知のとおりに、この取りきめの趣旨は、あまり深い趣旨を持っているのではございませんで、風俗習慣が著しく違っておりまするので、私どもの管理いたしております警察の留置場でありますとか拘置所とかいうふうなものの中に、必ずしも外国人を収容する施設というものが全部あるわけではございません。食事にしましても、それから日常の生活にしましても、寝具等におきましても、その他ことばの問題等におきましても非常に手数がかかるとともに、また人道的な問題といたしましても、これは各国同じでございますけれども、いろいろその取り扱いについて考慮が払われておるわけでございます。そこで、こういうふうな者を日本に第一次裁判権があるということで身柄を収容したというふうな場合には、いまの非常に困った問題があることと、それからもう一つは、その国に厳然たる裁判権がございますので、その裁判権の完全な行使とのつり合いをどのように考えていくかということをいろいろ考慮いたしました結果、この議事録をお読みくださればわかりますように、身柄を拘束するかいなかということはあくまで日本に自主性を認めるということを明らかにしたことがこの取りきめの第一の重要な意味だと思うわけでございます。  そこでそのバランスの問題でございますけれども、日本の留置場に勾留ないしは逮捕留置をするというほどの必要はあるまい。そうしなくても隠滅あるいは逃走のおそれがないと認められるような者については、軍側のほうに、軍の中に特別権力関係といたしまして厳重な拘禁施設が設けられておりますので、そちらのほうにこれをゆだねるというふうなことにいたしたら、その辺のところがバランスがうまく調整がとれるのではなかろうかというような気持ちから、御指摘になっておりますこの合意議事録ができたものと私ども理解しているわけでございます。  そこで、確かにそういうふうな事情がございますので、特に日本側において必要のあるものについては自分のほうの拘禁にまかせていただくということを向こうが期待しているということは、この文章そのものが、何々を除くのほかゆだねるものとする、こういうふうに書いてございますので、御指摘のようにこの書き方は、確かにそういう気持ちが十分にここに出ているということを推察することができると思います。したがいまして、この合意議事録に乗っかるものについてはそういうふうなたてまえで処置いたしておりまするし、この合意議事録に乗っからない場合、これを使わないで処置した場合におきましても、その実際の運用といたしましてはこれに準ずるといいますか、向こう側の、米軍側の身柄処置あるいは証拠隠滅を防御するということの方法に、事実上の問題としてそれを準用してやっていただくというような両者の気持ちでもって、いままでかような事件の運用をしてまいっております。実情はそういうことでございます。
  79. 永末英一

    ○永末委員 私の伺いたいのは、地位協定に、合意議事録に関係のある人間ならば拘禁にゆだねるということが、日本政府側の期待権と言っていいと思いますが、それに該当するわけですね。無関係なら拘禁しようとしまいとこっちのかってだ、こういうことになると思うのです。そう解釈してよろしいかどうか。
  80. 川井英良

    ○川井政府委員 その合意議事録に乗っからない場合におきましては、正規の拘禁ではなくして、一般の身柄引き受け人と同じ程度の善意の管理者の注意をもって身柄を監視していただくということだと思います。
  81. 永末英一

    ○永末委員 大臣に伺いたいのですが、この案件は米国軍人の家族の犯した交通事犯であります。米国軍人の場合にはどうなると思いますか。米国軍人が同様な状況で交通事故を起こしたといった場合、本人たちはこの地位協定にかかるかかからぬかということです。
  82. 川井英良

    ○川井政府委員 原則的には軍人軍属は向こう側に裁判権がある、家族の場合には裁判権がないという違いだけでございまして、軍人の場合でありましても軍属の場合でありましても、同じような取り扱いになるのではなかろうかと思います。
  83. 永末英一

    ○永末委員 もう少し詰めておきたいのですが、家族の場合にはこの種の事犯は、今回のこの事件について地位協定、合意議事録と無関係だと言われた法務省の見解ですよ。そこで、軍人軍属の場合には相手方に第一次裁判権がある、こういうことでありますけれども、それならばこの合意議事録に家族と明記してあるものは、一体どういう場合に合意議事録によって処理せらるべき対象になるのか、この辺をちょっと明らかにしていただきたい。
  84. 川井英良

    ○川井政府委員 問題がちょっとあれしてきましたが、まず第一に釈放するか釈放しないか、拘束するか在宅で調べるかということの決定権が日本当局にございますので、これは普通の事件でも当然釈放していい事件であるし、在宅にしなくてもいい事件だというようなことでもって釈放すれば、この議事録には乗っからない処置になると思います。ところが、これは釈放するのは必ずしも適当でないので、本来ならば勾留の上で取り調べたほうがいい事件だというふうに考えた場合にこの議事録のほうに乗っかる場合が出てくると思います。
  85. 永末英一

    ○永末委員 この犯人がわが国に居住しておるのは、すなわち安保条約六条の規定に基づき、その地位協定によって居住しているわけです。したがってこの犯人は日本国の法律のもとに、たとえば税金を払うとか、間接税は別でありますけれども、そういう対象になっていない。いわば特殊の地位にある人間である。しかしこれが本件のようにたまたま交通事犯を起こした場合に、この地位協定とは全然無関係だ、こういうことになりますと、この合意議事録の中で軍人軍属の家族と銘を打ったものについてこういう取りきめをしておることはほとんど発動がないのではないかと思われるが、どうですか。
  86. 川井英良

    ○川井政府委員 説明が不徹底だったかもしれませんけれども、たとえ家族でありましでも、日本の当局がこれは釈放して在宅で調べていい事件だと思わないで、やはり拘置して調べるべき事件だ、たとえば逃走のおそれがあるとか、証拠隠滅のおそれが認められるというような状況がありまして、在宅で調べることが適当でない、こういうふうな決定をした場合においては、この合意議事録にのる場合が理屈上あると思います。
  87. 永末英一

    ○永末委員 大臣にひとつ御見解を承っておきたいのですが、この件は合意議事録に——犯人の地位ですね、無関係だということが法務省の公式見解だと承ってよろしいか。
  88. 赤間文三

    赤間国務大臣 法務省の見解としましては、日本に裁判権があるというなら、裁判が完全にき然として内外人を問わず行なわれる、これが一番大事なことに考えておるのです、まあ結論を申し上げますと。要するに日本に裁判権があるならば、日本の裁判権が行なえぬような状態では困る、完全に日本の裁判権が行なわれることが一番大事だということが法務省の見解なんです。このたびの問題につきましては、警察のほうでこれを釈放いたしましたけれども法務省の考えとしましては、本人が逃亡するということもない、それから証拠の隠滅というおそれもない、言いかえるならば完全に裁判が行なわれる状態にあるという考えで、私たちとしてはそれでいいのじゃないか、こういう考え方を持っております。
  89. 永末英一

    ○永末委員 法務大臣、私の伺っておりますのは、第一次裁判権ということばが使われる、なぜこのことばが使われるかといえば、この合意議事録において、アメリカ軍人軍属並びにその家族という対象者があげてあるわけだ。これらの起こす犯罪について第一次裁判権をわがほうが持つ場合はというのがこの合意議事録の文章なんですね。だといたしますと、そこの点に焦点を置くと、この犯人はこの合意議事録によって処理せらるべき対象だと思われるふしがあるわけだ。ところがいま刑事局長の御答弁では、この犯人はいかなる意味においてもこの合意議事録とは無関係だと言われたから、法務大臣としては一体無関係だという判定をしておられるのかどうか。法律解釈の問題。裁判がうまくいけるように、そんなことは別問題です。
  90. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は、今回の問題は無関係である、かように考えております。
  91. 永末英一

    ○永末委員 もう一つ、この殺害並びに傷害を受けた自衛隊員のほうでありますが、これは公務のために行進をしておったわけです。もしこれが個々ばらばらで歩いておるという状態であるならば、あるいはひらりと体をかわして殺害も傷害も受けなかったかもしれない。しかしこれは自衛隊の公務中でありますから、隊を組んで歩けということで歩いておった。そのことがこのように被害を多くした原因であったと私は思います。だといたしますと、普通の私人に対する交通傷害事件ではなくて、片一方は公務中ですね。この公務中の者に対するいまのような交通傷害事件、それを律する何らかの法律をお持ちですか、お持ちでございませんか。
  92. 川井英良

    ○川井政府委員 特別ございません。
  93. 永末英一

    ○永末委員 日本の防衛というのは、やはりまず防衛を担当しておる人々の心の持ち方、そこに一つの大きな柱があると思います。また、その防衛の第一線に立つ人々に対する国民の支持、これが第二の大きな条件だと思う。自衛隊員にしてみれば、自分は公務中に歩いておる。そしてそこで傷害を受けて死んでいった。しかしその傷害を受けたけれども、日本の法律構成のもとにおいては、自分が一人でかってに歩いておったときの交通事故と何ら違わない扱いを受けておるということは、私は防衛の第一線に立つ者にとってはきわめて心理的に悪い影響を及ぼす事件ではないかと思う。いま刑事局長がそういう場合における何らの法制はないと、こう言われましたが、こういう状態でいいと思われるかどうか、法務大臣の御見解を伺いたい。
  94. 川井英良

    ○川井政府委員 私、最初の御質問が、何か刑事関係でそれを重く特別に処罰するようなものはないか、こういうふうに狭く拝聴しましたので、特別ございませんと、こう申し上げましたけれども、また別な行政的な意味では、言うまでもないことでございますけれども、公務中の事故でございますから、おそらく公務災害としての取り扱いで、その意味では特別な措置が講ぜられるというようなことが考えられます。しかし一般刑事の問題としては、特別なあれはいまのところ持っていないわけでございます。  それからなお、ちょっと質問とそれて実ははなはだ恐縮でございますが、問題になりましたこのマラリン・ローランドの事件は、弁解でございますが、警察段階で検察庁のほうに何ら相談なしに釈放になっておりましたので、私、きょう質問に応じてお答え申し上げましたのは、主として議事録あるいは地位協定の抽象的な純然たる法律解釈にとどまっておりますので、私ども現地の検察庁を通じて現地の警察から報告を受けたところでは、釈放すべきものを釈放すべきものとして取り扱ったのだ、こういうようなことに相なっておりますので、本件の具体的な事情につきましては、私は間接に聞いたところをお答えしておりますので、どうぞひとつ御了解を得ておきたいと思います。
  95. 永末英一

    ○永末委員 私も、現在これは裁判中でありますし、あなたの所管ですから、その意味でお伺いしておるのであって、釈放した警察側のその決意をした理由等をいまあなたに伺っておるわけではございません。  そこでもう一つ伺っておきたいのは、いまのような状況で、先ほど法務大臣が言われたように、わがほうの裁判が十分に行なわれる、犯人の追及は十分に行なわれるという御自信はございますね。
  96. 赤間文三

    赤間国務大臣 き然たる態度で内外人を問わず裁判が行なわれると確信をいたしております。
  97. 永末英一

    ○永末委員 この問題は、事件は小さいようでございますけれども、もう少しほじくっていきますと、この運転をしておられる人の隣におった者との関連において、はたして隣におった者は事件に無関係かどうかということも私は出てくると思うのです。正常な運転をなさしめない行為をもし隣におった者がなしたとするならば、これはもう少し別な問題が出てくるのではないかと私自身は思われます。しかしこれは安保条約上起こった重要な事件でございます。法務当局は無関係だ、こう言われますけれども、ぜひ十分にこの裁判についてはりっぱに日本国の裁判権が執行されるようにやっていただきたい、こう申し上げておきます。
  98. 松澤雄藏

    松澤委員長代理 これにて本案についての質疑は終了いたしました。  次回は、来たる十四日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十九分散会