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1968-04-04 第58回国会 衆議院 懲罰委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月四日(木曜日)     午前十時十六分開議  出席委員    委員長 堀川 恭平君    理事 鍛冶 良作君 理事 田中伊三次君    理事 藤尾 正行君 理事 安宅 常彦君    理事 石野 久男君       阿部 喜元君    青木 正久君       井原 岸高君    大坪 保雄君       四宮 久吉君    永山 忠則君       廣瀬 正雄君    森田重次郎君       山村治郎君    猪俣 浩三君       黒田 寿男君    曾祢  益君       小川新一郎君  委員外出席者         議     員 鯨岡 兵輔君         議     員 穗積 七郎君     ————————————— 四月三日  委員小川新一郎辞任につき、その補欠として  竹入義勝君が議長指名委員に選任された。 同月四日  委員青木正久君、高橋英吉君、黒田寿男君、吉  田賢一君及び竹入義勝辞任につき、その補欠  として山村治郎君、阿部喜元君、猪俣浩三君、  曾祢益君及び小川新一郎君が議長指名委員  に選任された。 同日  委員阿部喜元君及び山村治郎辞任につき、  その補欠として高橋英吉君及び青木正久君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  議員穗積七郎懲罰事犯の件      ————◇—————
  2. 堀川恭平

    堀川委員長 これより会議を開きます。  議員穗積七郎懲罰事犯の件を議題といたします。  穗積七郎君が御出席になっておりますから、穗積君の弁明を求めます。穗積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積議員 少しく時間をいただきまして、私の弁明をさせていただきたいと思います。  きょうは、まことに奇妙なことでございますが、私の佐藤総理に対する売国者という発言が当委員会において審議されております同じ日に、午後には本会議におきまして、佐藤総理アメリカ一辺倒の従属性から出てくる、民族の期待あるいは国民大衆に対する裏切り、すなわちその政治的売国性について、野党すべてから弾劾を受けようとしておるわけでございます。これは単に野党のみならず、与党内における相当多数の良識派の諸君からも批判を受けており、院外におきましては、圧倒的多数の大衆が、実はインフレから戦争への従属性をますます深めつつある佐藤政策に対して、非難の声が高まっておるのでありまして、これは一種の政治的なカリカチュアといいますかアイロニーといいますか、まことに奇妙なめぐり合わせになったわけでございます。そのことは、私がここでふつつかな弁明をいたしますより、この政治情勢の事実というものが、私の発言に対する、あるいはその真意に対する大きな弁明であるというふうに、私は受け取らざるを得ないのでございます。したがって、これから後に私は指摘もいたしたいと思いますけれども、そして賢明な懲罰委員皆さんに対して、懲罰委員というものは、言うまでもなく党派を越えた正義と公平によってのみ、議員の身分は——一種の裁判でありますから、そうあるべきであると思いますから、切に懲罰委員の諸兄の論理的かつ政治的な、賢明な御判断をいただきたいと、前もってお願いを申し上げておきます。  実は、皆さまも御承知のとおりでありますが、特に私どもは、昨年十一月十五日のジョンソン佐藤共同声明以後、佐藤首相が好んで高姿勢になって、愛国心を国民に強要する態度を示してまいられました。愛国心、国を愛するということは、すべての国民何ら異議があるはずはございません。ところが問題は、極東におけるアメリカの戦略に一方的に追随し協力をして、そして愛国心を国防または戦争と結びつけて国民に押しつける、そのことによって、支配権力独占資本に国民をして忠誠を誓わしめんとする愛国心のにおいが顕著になってまいりました。  特にこのことばを受けて、文部大臣は、小中学校の生徒に対しましても国防教育をやるのだ、愛国とはすなわち国防である、戦争を拒否することは愛国の道に反するかのごとき方向を示しながら、これを提案をされておる。したがって、中学校の生徒の間においてすら、先般のNHKのテレビ討論会で、中学校の生徒の諸君が、灘尾文部大臣の前で、最近佐藤首相並びに文部大臣が説くところの愛国心というものは、われわれからするならばまことに危険である、われわれは反対である、という趣旨の討論が圧倒的でございました。  そういうことについて、私どもは、やはり民主主義の革命後のわが国民が持つべき愛国心とは一体何であるべきか。それはすなわち平和五原則にも示されておりますように、帝国主義または植民地主義からすべての民族が解放され独立をしなければならない、その戦いの態度、路線こそが愛国の道である。また国内におきましては支配権力独占資本に忠誠を誓うことは愛国心ではなくて、それは愛国心の反対のものでありまして、民主主義の唯一の原理である政治の主人は国民である、その国民は圧倒的に平和と生活の確保を念願をいたしております。その念願、大衆に対して忠誠を誓うことこそが、私は、民主主義のもとにおけるあるべき愛国心である、首相が権力を背景にいたしまして、院内においてはあるいは多数を背景にいたしまして愛国心を独断的に押しつけようとする、これはおよそ非民主的であり、非愛国的な行為であるといわなければならない、ものの考え方が根本がさか立ちをしておる、こういうふうに私どもは危惧を抱き、批判の眼をもって、最近の首相の自主防衛あるいは愛国論というものをながめておりました。  たまたま、いま問題になっております三月六日のわが外務委員会におきまして、先般、本会議におきましてもその経過はるる御説明申し上げましたから、きょうは簡単にいたしますが、問題は、鯨岡さんの提案を伺いかつ精読いたしましてからのこの私の弁明でありますから、その点について関連をして弁明を行ないたいと思うのでございます。したがって、多少重複するところがありますが、何とぞ静かなお気持ちで、論理に従ってお聞き取りを賜わりたいと思うのでございます。  当日は、先般も申し上げ、賢明な委員皆さんはすでに御承知だと思いますけれども、首相の出席は都合上一時間しかできない。しかもその前に、与党の小泉純也委員がぜひ質問をしたいということで、二十分、二十分、二十分という割り当てにいたしまして、御質問がありました。その記録はお手元にまだ——私は奇異なことだと思いますが、まだ当日の速記録は出ておりません。すなわち、きょうの私の事実を、私のかすかなる記憶、お聞きになった方のかすかなる記憶にたよっておるのでありまして、物的証拠となるべき速記録がまだできていないのです。したがって、その間においては、私は、これは裁判から見まして——私もいささか法律を学びましたので、きょうは法律家の方がだいぶいらっしゃるから申し上げるのですが、法理的な論理を展開する前には、事実関係を明確にしておかなければならない。事実の唯一の証拠は、国会の権威ある速記録でございましょう。ところが、それがいまだに私も手にいたしておらない、鯨岡さんも手にいたしておらない、委員の諸兄はもとよりいまだ耳にもしておられぬことだと思う。したがって、私の発言が総理に対する罵倒であり、無礼を働いたと、鯨岡議員提案理由の中に、第一に指摘されておりますが、これは私は、侮べつ感を含んで総理を罵倒して、そうしてその政策が誤りである、あるいはその政策を引っ込ましめようとするような、下劣かつ非合理的なことをやったのではございません。したがって、私の発言がいかなる意味で使われておるか、そしてそれに対して私がどういう態度をとっておるか、そのことをお聞き取りいただくことが、審議の焦点の一つであるとも思いますから、いささか申し上げたいのでございます。  私は、決して感情に激して、総理を、論理的、政策上ではなくて、人格的にあるいは名誉を罵倒いたしまして、わがほうに有利な論理を展開しようというようなことをやった事実は、私の主観のみならず、事実の中にないのです。非常に冷静にかつ論理的でございます。したがって、そういう意味でありますから、お耳を拝借いたしまして、少しくその問の論理的な発展を報告申し上げたいと思います。  これは、先ほど言いましたように、速記録がまだできておりませんから、私の記憶にたよって申し上げるのでございます。当日は、外務委員会の理事として、提案者鯨岡さんもここにお見えになりますから、もし事実に誤りがあったら、私は自分の報告を固執いたしませんから、あとで訂正していただいてけっこうでございます。実は、小泉純也委員が、首相はこのごろ自主防衛とか愛国心ということを盛んに言っておるが、総理のその考え方、具体的な内容は一体何であるか、こういう質問をされましたのに対して——私の売国者発言に関連のあるところだけ申し上げます。それは総理はこう言われたのです。私の考えでは——すなわち総理の考えですよ。私の愛国心ものさしではありませんよ。総理の考えでは、愛国心の前提は民族の完全独立でなければならない、ところがいまわが国は依存体制にたよっておる、すなわち対米依存が強過ぎる、これを早く抜け出すことが愛国心の前提でなければならぬと、いみじくも主張された。その次に、ことばを継いで言われましたことは、先年、私はフランスドゴール大統領に会った。そのとき彼がこう然としていわく、わがフランス民族の安全の問題が他国の大統領、すなわちアメリカジョンソンでございましょう。ジョンソン大統領のポケットの中のキーによって確保されるということは、フランス民族愛国心が許さない、忍びないところである、ということを彼が強調した、そのことばを私は当時感銘深く聞いた、今日もなおかつその記憶が鮮明に残っております。こうドゴール愛国心をたたえて、そのことばをもって私の愛国心とする、すなわち対米依存体制を脱却して、そうして完全独立を取り戻さなければならないということを強調されたのでございます。  そこで、私は委員の皆さんにはなはだ失礼でありますが、注意を喚起いたしておきますが、これは、私のものさしで、私の主観で総理を売国者と規定したのではございません。総理自身がこのものさしを示されたのでありますから、そのものさしで、私は後の、これから報告いたします総理の答弁の展開の論理の中で、偉大な矛盾を感じ、あなたの私への答弁は、これから日本についてなさんとする対外政策というものは、まさにあなたが強調した愛国的外交政策とは似ても似つかぬものどころか、その真反対のものではないかという論理で出てくるのでございます。したがって、そういうふうに言われました。ところが私の質問に入りましてから、これはいろいろな質問がありましたから、報告すれば長くなりますけれども、それらは割愛をいたしまして、いずれ速記録で、あるいは仮速記録でお読みいただきたいと思っておりますが、重要な点は、総理は、沖縄返還の問題に関連をして、私が非核原則に対する総理の所信をお尋ねいたしました。そういたしますと、アメリカの核基地を認めるか認めないか——これは返還に際してですよ。現在の状態において、沖縄にある施政権外の基地についての問題ではありません。日本領土として復帰する場合のことを言っておられるのでございます。そのときに、実は最近、御承知のとおりアメリカ人でありますライシャワーですら、核つき返還は反対であるということを、しかも公の国会の公聴会の席上で明言をいたしておる段階になってきております。にもかかわらず、日本の佐藤首相は、国会並びに国民に対しまして、非核三原則は堅持することを幾たびか公約をなさいました。その非核三原則は破るべからざる原則であると言っておられる首相が、沖縄返還に際して、アメリカの核基地を認めるかもわからぬ、認めることもあり得るという論理になります白紙論を展開されたのであります。私は、これは原則の問題でありますから、ことばどおり、国会に対する、国民に対する公約を守られようとするならば、白紙で臨むということはあり得ない。非核三原則に立ってのみ、交渉に当たるべきものであると私は確信いたします。ところがそれを軽視されまして、破ることもあり得るという御答弁になりましたので、私はいささか、非常な不安、あるいは非難の気持ちも強まっておりました。続いて私は、関連をしてこうお尋ねをいたしました。ただいま政府自民党の一部の中に、B52、ポラリス潜水艦、これに沖縄帰還後も沖縄基地に対して寄港または立ち寄りを認めたらどうかという意見があるが、まさかそういうことはあなたはなさらないでしょうねという質問をいたしましたが、これも白紙である、すなわちそういう場合もあり得る、こういうことでございます。これは、私は省略をいたしましたが、当日の委員会の前段におきまして、B52、それからポラリス潜水艦、ICBM、いわゆる三Bといわれておるのは、攻撃的核兵器の代表的なものであります……、総理は、そのとおりである  このものは憲法違反である、政策上反対だというだけではなくて、侵すことのできない、憲法に違反するものであるとわれわれは当然考えますが、総理はどうですかと言ったら、いま指摘なさいました兵器は明らかに攻撃核兵器であって、これは明瞭に憲法違反であるということを言明しておられるのです。それに対して私が、沖縄が返還されて日本領土となったときに、以後においても、これの寄港または立ち寄りを認めることもあり得る、白紙論。このことは、すなわちいまの論理からいきますならば、憲法を守るかあるいは憲法に違反するかは、アメリカとの相談の上できめるということを意味しておるのであります、論理的に。当然でございましょう。一国の総理が、非核三原則どころか、憲法にも違反するかしないかの態度を明確にしないで対米交渉に臨む。アメリカ以外の国でもけっこうです。対外交渉に臨むということはあり得べからざることなんだ。わが国の国際条約を一たん結びますと、これには憲法解釈上、抵触した場合には、御承知のとおり国際条約上の義務が優先をするか憲法が優先するか、こういう議論がありますけれども、対外折衝あるいは対外条約、協定等を結ぶ場合においては、一国の総理の権限を持つ者であろうとあるまいと、いずれにいたしましても、日本国を代表する者が、憲法に違反するかもわからぬという白紙委任を受けて折衝に当たるということは、根本的な裏切りであります。あり得べからざることでございましょう。私は非常に奇異に感じたのです。だからこそ、前段において、B52、ポラリス潜水艦は違憲であるか違憲でないのか、政策上の問題であるかどうだと言ったら、明らかに違憲である、憲法上の問題である、こう言っておいて、そして憲法に違反することもあり得る白紙論というものが国会において許されていいのでしょうか。だれが一体国会を軽視し、国会の権威を侮辱しておるものでございましょうか。しかも、長い時間じゃありませんよ。同じ委員会ですよ。数分前に、これは明らかに憲法違反であるということを、同じ質問者私に対して、総理は明言をしておられるのです。私は納得がいきません。  さらに根本的な問題につきましては、事前協議権の問題、すなわち安保体制下においては国家主権行使の唯一のかぎである、その問題について、一部に、これを放棄してそうして基地の自由使用を認めたらどうかという意見が、アメリカ側だけならいいけれども、日本側にもあるが、一体、まさかそういうことはないでしょうと念を押す意味で、私は不安を感じましたから、続いてその問題をお尋ねいたしましたら、これまた、驚くべきことでありますが、主権の放棄もあり得るという白紙論を展開された。一国の総理が、もし総理として尊重され、総理として国民から敬愛をされたいというならば、憲法に従い、国民の要望に従い、それを総理が言ったように、自分自身ものさしから見ましても、主権あえて譲るべからずと、この完全独立の態度に立ってこそ、私は交渉の権限が初めて譲られておる、まかせられておるものだと確信をいたします。皆さんも御同感であろうと思います。ところが、主権をすら放棄するかしないかを、アメリカと相談の上でいずれかにきめるという態度が許されていいでしょうか。そんな答弁が、のこのこと国会を横行することができていいのでしょうか。国会は国民に対して、何と言って一体説明するのでしょうか。それを聞き捨てにし、その民族的な裏切り行為、私のことばから言えば、愛国的の反対の売国であります。そういう行為や発言を、この重大な段階になって黙視して、国会の権威が保たれるでしょうか。これは後にも申しますが、私議員が佐藤首相に対して無礼を働いたと言われますが、どちらが無礼でしょうか。三権分立のわが国の今日のたてまえにおいて、憲法に明記されておるように、国会は最高の権威であります。国会によってのみ、すなわち国会を通じて、主権者である国民からのみ、首相の権限は与えられておる。地位も与えられておる。天から、または天皇から授けられた権限ではありません。私はほんとうに自分を守るために強弁するのではないのです。私は謙虚にそう信じておる。それが誤りであるならば、敬愛する同僚の皆さん、党派を越えて、私の誤りあれば教えていただきたい。私はこのように信じております。  そこで、私は驚いたので、もう一ぺん、その問題は国家主権の問題ですよと言って、念を押して再質問をいたしましたが、相変わらず、放棄するかしないかは相手と話し合いの上できめるのだ、白紙だ、こう言われた。そこで私は実は非常な義憤を感じまして——義憤は感じましたが、頭は論理的、冷静のつもりでございます。後に申しますように、ジョンソンとの共同声明の中で、固有の領土としての沖縄を売り渡して、日本のみの固有の領土じゃない、アジアにおけるアメリカ、韓国、台湾、フィリピン等を含む諸国の共同の基地であるというふうに、政治的に売り渡している。その上に、非核三原則を踏みにじり、憲法を犯し、主権をすら放棄する危険のある首相に対して、一体どうして国会がこの首相を、国民のためになり、民族のためになり、大衆のためになる、しかも、それを愛しておる愛国的な首相であると申し上げることができるでしょうか。私はできません。私ができないだけではない、先ほど言いましたように、鯨岡さんの提案理由の中に、自分の政策、方針、思想と一致しない者はすべて平和の敵であると言ってなじるのは間違いだとある。そのとおりです。私はそんなことは言っていない。先ほど申しましたように、総理が愛国心ものさしはこうだと言って、自分でドゴールの例を引いて示した、完全独立アメリカからの依存体制を脱却することが愛国心確立の前提であると言われた。その総理が、事前協議権は縮小して、場合によれば放棄をする、憲法にも、場合によれば違反をする。それでは佐藤首相自身の論理から見て、佐藤さんの示された愛国心愛国者とは似ても似つかない真反対のものであるといわざるを得ない。すなわち、愛国者ではないというだけではなくて、その反対の対蹄的なものである、こう論理的に言うのが誤りでございましょうか。私はそう信じて、実はさらに次のように問題を提起いたしました。  あなたがいまアメリカに対して放棄するかもしれぬという事前協議権は、国家主権の重要な部分である外交、防衛に対する国家主権を、アメリカに譲り渡すことである。それだけではありません。われわれがここで考えなければならないのは、この事前協議権の放棄の問題は、現在われわれが縛られている憲法以上に強い国際的な義務を負っておる安保条約中心規定である第五条、すなわち共同防衛行動義務規定でございます。これと関連して、われわれは今後の事実を見なければならない。というのは、もし事前協議権を放棄して、アメリカの一方的な自由使用を認めたとすれば、日本の領土になった沖縄の基地にあるアンガー司令官の恣意的な作戦行動によって——日本の国会、日本の政府が否定しても、効力がない、自動的にわが国の自衛隊は戦争に参加しなければならない、これがこの第五条の規定でございます。このことは私だけの解釈ではありません。いままで歴代の首相がかわり外務大臣がかわるたびに、この第五条の問題は、ベトナム戦争エスカレート政策と関連をいたしまして、わが国が戦争に参加するかしないかという、重大なかなめとしての規定でありますから、私は常に責任を感じてこれを問いただし、そうして統一解釈を求めております。現内閣、現外務大臣のもとにおきましても、この第五条の解釈は、私がいま申しました解釈に、政府と国会との間で、確定解釈になっておるものです。これは国民から見ますと、実に深刻な問題ではないでしょうか。あたかも、南ベトナムの政府並びに人民が今日その境遇に置かれております。あるいは、かつての韓国の政府並びに人民が同じ境遇に置かれていた。戦争をやめようと言い、あるいは平和を願いましても、その決定権は、その政府、その人民には全然ないのです。当時のマッカーサー司令官、今日のベトナムにおけるアメリカ軍の司令官の手に、完全にゆだねられている。このような主権放棄が愛国的といえましょうか。愛国的でないばかりか、私は、民族を裏切る、大衆を裏切る売国的なものであるといわざるを得ないと思います。これが実は委員会における経緯でございます。  そこで、鯨岡さんについては、趣旨説明の中で、私の人格、精神を何も憎んだり責めるものではない、また、その思想、外交政策等々について責任を問うものではないと、寛大なおことばをいただきまして、私も党派は違いますが、鯨岡委員の人柄、識見については敬意を表しながら、お互いに益するところのある政策上のライバルであるというふうに考えております。そういうことですから、鯨岡さんの提案理由、私が懲罰に付されるに至りましたその理由を、私は精読いたしまして——月曜日にこの官報が初めて私の手に参りました。それで、この前の火曜日の委員会に失礼いたしましたのは、これを精読いたしておりませんでした。伺っただけです。のみならず、与党の方の外務委員会に対する対策上あるいは友情上、私のほうの戸叶理事交通事故で重傷を負いましたので、委員会として見舞いに行くということを決定していただきました。私ども野党社会党の者は心から感謝をいたしまして、与党の理事さんに同行いたしまして、お見舞いに行ってまいりました。そのために読むひまがありませんでした。それで実は委員長にもお願いをして、きょうにしていただいたのです。  私は大体これを精読いたしまして、間違っておるかもしれませんが、これを整理してみますと、第一が議院の品位を汚した、国会の権威を傷つけた、それから、目的は、与党、野党、首相と、私穗積との間に、平和に対する願望信念については変わりがないはずだ、ところが、その手段政策について相違がある、その手段政策に相違があるからといって、すなわち自分と意見が違うからといって、相手を独断的に誹謗することは、議員としてとるべき態度ではない、こういう御非難でございます。それから、一国の首相を罵倒し、無礼を働いた、以上四点が、この私を懲罰に付する提案理由の主たるポイントであると私は理解いたしました。それに対して、具体的に私は弁明をさせていただきたいと思います。  まず第一に、順序は何ですけれども、首相自身に対して罵倒をした、あるいは無礼を働いたというおことばでございますが、私は全然働いておりません。そんな主観は全然ございません。先ほど申しましたとおり、私が平素佐藤さんはきらいだとか、佐藤さんの政策は誤っておるというようなことを考えておって、出会いがしらに佐藤さんを売国奴と言って誹謗する、このばか者と言って誹謗する、罵倒する、そういう態度をとったならば、私はいかなる御処置をも甘んじて受けますし、陳謝もいたします。ところが、先ほど言いましたように、佐藤さん自身の示された愛国心の基準並びに論理の展開、それから見て、あなたはもうおよそ根本的に矛盾をした発言をしておられるのではないか。——論理的でございます。売国奴と言えば、用語上もこれはいささか侮べつを含んでおるというのが、わが国の用語上の国民の通念であろうと思いますけれども、私はそう言ったのではない。あなたが愛国心愛国者ということをあらゆる機会に言われ、きょうも野党の質問に対して言っておられる。しかも、その中身と方針を示され、それから論理的にいまの政策論争の中でやっておる間に、それには似ても似つかない全く反対のことを言われたから、すぐ論理的に、あなたは愛国者ではない、ないだけではなく、その反対の何々者になるのではないか、反対のものになるのではないかということを私は申し上げて、そしてそれが国民を代表する議員としての、国会の権威から、当然の責務であるという信念に基づいて、そういうように申し上げ、そして罵倒したのではない、それを頂門の一針として、総理に深く反省を求め、その方針の転換を求めたのでございます。その間のことは仮速記録にも残っております。佐藤さんが、あなたに売国者と言われるのは心外だ、無礼ではないかということのおことばがありましたので、私は、いやそうではない、あなたのおことば、あなたの方針なりあなたの発言をお取り消しになれば自然に消えることです、あなたの論理の中から出てきていることです、こう静かに言っただけでございます。だから、私の主観並びに、何といいますか、発言は、何ら佐藤さんに対して罵倒をしたり侮べつをしたり、人格的に傷つけて、自分の論理を有利にしようというような考えはない。また客観的に見てどうでしょうか。相手の名誉を傷つけた、相手を罵倒した、こういうことであるならば、佐藤さんが、ほんとうにだれが見ても、自分の言っているとおりの愛国心の信念に従って、おれはこう思う、こういうことが愛国心の原則であるというふうに思うと言って、そのようにこれから対米折衝をやろうとしておる、またやってきた、その人に対して、私がその反対の売国者ということを言ったならば、これは誹謗であり、中傷であり、侮べつでありますけれども、佐藤さんはそうじゃないじゃありませんか。自分の示した愛国心と真反対のことを言っているのですから、自分自身が、私は愛国者ではない、その反対のものであると言っている。それに対して、愛国者の反対のことばは、これは用語上のことはあとで触れますが、何々者、佐藤さん自身の論理から展開してきたものであって、佐藤さんは愛国者の反対のものである、何々者であるということを言われるにふさわしい答弁をしておるではありませんか。だからこそ、三十一日のジョンソン声明で、この共同声明の親分がくずれて、そしてきょう、国会の中においても、国会の外においても、その政治的な誤り、裏切り的売国性、これをいま弾劾されようとしておる。これは不当な言いがかりでしょうか。きょうの弾劾質問が名誉の棄損でございましょうか。私は論理的にそう思わないのであります。  それからその次に、議院の品位の問題でありますが、議院の品位ということは一体どういうことをいうのか。これは提案者並びに賢明な同僚の皆さんにお尋ねしたいのです。私はいまのような熱烈な気持ちで、論理を追って、そして将来のわが国家、国民の運命、アジアにおける運命を、戦争か平和かの岐路に立って、憂えるのあまり言ったことばが、一体なぜ議院の品位を傷つけるのでしょうか、わからない。買収、供応の悪質な選挙違反をやる者、これは明らかに議院の品位を傷つけておると思う。それから地位を利用いたしまして政策を金で売る、すなわち収賄、汚職をやる者、これも議院の品位をおかして、まさに国会の品位を傷つけるものであろうと私は思います。または私行上非常に大衆から非難をされる、大衆の社会常識から見て、実に悪徳な行為である詐欺を行なうとか、あるいは傷害罪を起こすとか、あるいはまたばくちをやるとか、あるいはまたその他の私行上のあやまち、そういうものが議院の品位をおかす、したがって、議会政治に対する信頼を落とさしめるものであるといわれましょう。私は、議院の品位を汚すものというのは、そういうことがまず頭に浮かぶのでありまして、私が先ほど言いましたように、国家最高の権威、国民の代表者としての責務を感じて、政府の非常な論理的な矛盾、そしてまたそのあやまち、それを究明することが、一体なぜ議院の品位にもとるのでございましょうか。私は全然そういうことが理解できないし、私はその反対のことを常に心がけて、十数年の間、議席を占めてきたつもりでございます。  さらに、次に国会の権威であります。国会の権威を一体なぜ汚したのか、聞かしていただきたい。そうすると、売国という用語だけでございましょうか。私は国会の権威を傷つけようなんとは全然考えておりません。国会の権威を軽視したのは、白紙でこの期に臨んで、また遠い将来不確定条件が多いというなら別でありますが、ライシャワーですら、もうすでに、核基地は反対だ、B52は憲法違反だと自分で言っておる。そのことを、非核三原則をじゅうりんし、そして核基地を認めるかもわからぬというようなことを言って、認めるか認めぬかはおれ一存でやるのだ、おれに白紙でまかしておけ——これで一体国会の権威が保てましょうか。こんな答弁をいつまでもいつまでも繰り返して、しかも首相のスケジュールによれば、これはくずれましたけれども、大統領選挙でジョンソンが勝ち、自分が総裁選挙を三たび受けるならば、年明けとともに直ちに行って、沖縄問題を交渉しようとするプログラムがすでにできておるのですよ。そうであるならば、対米交渉の方針があるはずだ。にもかかわらず、国会を軽視し、国会の権威を無視して、おれにまかしておけ、白紙だ、万事おれの胸中だ、こういう態度こそが、私は国会の権威を傷つけるものではないだろうかと、義憤をすら感ずるのでございます。先ほど申しましたように、主権在民の民主主義政治体制の中におきましては、三権分立の中心は国会でございましょう。これは憲法に規定するところであります。したがって、その国会から、あるいは言いかえれば、国民から首相の地位と権限を与えられた佐藤首相が、その主人であるべき国会並びに国民を軽視して、核つきで認めるのか、ポラリス、B52の駐留、立ち寄りを認めるのか認めぬのか、深刻な場面になってきておるのに、さらに、主権の一部である事前協議権を放棄するのかしないのか深刻な問題になってきているときに、国会を軽視して、おれにまかしておけ、おれ一存の権限だ、これこそ国会軽視もはなはだしきものである。私はこの際、鯨岡同僚議員をはじめとして、賢明な懲罰委員の公正なその御精神に訴えて、謙虚に私の考えを申し上げて、お教えを仰ぎたいところでございます。もし私のこの考え方が根本的に誤りであるならば、どうぞ御指摘をくださるようにお願いをいたします。したがって、国会の権威を傷つけるなんとは、私は実は思っていない。  それから第四点は、相手の政策が、平和独立に至る政策が、自分の政策と相反するからといって、相手をけなしてはいけない、この寛容の精神は持っております。だからこそ、われわれは、いつでもこれはいかぬと思いながら、言うべきことは言いまして、しかる後に、委員会における採決でも、多数決に服しておるではありませんか。私は、だからといって、罵倒しておるのではない。しかも佐藤首相に対して、私は私の主観によって、罵倒したのではないということは、先ほどの、三月六日の外務委員会における発言から見て、佐藤さんの論理に従って、冷静かつロジカルに言っただけのことでありまして、何ら私は、反対の意見があるから、おれの意見と違うから、しゃくにさわるというようなことで、これを罵倒したりあるいは暴言を吐いたり、そんなことをした覚えはございません。  こうして突き詰めてみますと、最後に第五点として、鯨岡提案者も説明しておられるように、穗積君の識見、穗積君の思想、穗積君の当日展開した論旨あるいは政策、これを責めようとは考えていない、穗積君には穗積君の意見があるはずだ、それは自由であり、われわれは反対であっても、それをけなすものではない、ただ一点、問題は用語上であるということにしぼられてまいりました。これは官報における鯨岡議員の御発言をつぶさに見まして、そういうことになっております。これは私の間違った受け取り方ではないと思います。そうなりますと、私が今日皆さんの多数の決定によって懲罰委に付されて、これから審議をいただくということは、ただ一に、売国者という用語が悪いということだけに尽きるわけですね。そういうことに、この提案理由はなっております。  そこで、売国者ということばについて申し上げますが、先ほどもすでにその一部は申し上げました。すなわち、私は売国奴と言って、侮べつ感を含んで罵倒したのでは決してありません。だから、受国者、愛国者と言われるそのものさしはこうだと言った、その反対のことを言われたから、あなたがそんなことを言っておったのでは愛国者でありませんよ、愛国者でないばかりか、その反対のものです。それはとっさの場合に、私の貧弱な国語学の語彙の中からは、売国者ということばが出てきたのです。売国奴と言わないで、売国者と言ったのは、愛国者に対する対語の意味で言ったのであります。このことは本会議でも説明を申し上げましたから、申し上げる必要はないかと思いますけれども、簡単に申しますと、私ども小学校時代から学びました東洋語、われわれの使う東洋語には対語という反対語があります。それで表現の妙を得ている。上といえば下、右といえば左、白といえば黒、善といえば悪、こういうふうになっております。そこで愛国の対語、反対語は何か。売国、そのときとっさに私の語彙には浮かんできたのです。侮べつ感は含んではおりません。対語として選んだのです。ですから、私は、秋田委員長から不穏当ではないかという御批判がありましたので、いま申しましたことを申しまして、しかもなおかつ謙虚に、私は国語学に対して他に誇るほどの知識は持っておりません。私の貧弱な語彙の中から、愛国に対する対語として、売国ということばが出てきたのである。これは賢明、博識な皆さんにして、いまからでもおそくはありませんが、愛国の対語は、売国のほかに、こういうより適切なことばがあるのだ、これが成語であるということを教えていただくならば、私はこんなことばだけにとらわれるものではありません。ですから、いつでも訂正をいたします。そのことは最初から申し上げております。ところがいまだに、野党の中でも与党の中でも伺うのですが、そのことを教えていただかなかった。  これはちょっと余談になりますが、この間、本会議でも私がそのことを言ったら、ある自民党の席から不規則発言がありまして、それは非愛国者だと言って、教えてくださった。しかし、この方は私以上に国語の知識がない方でありまして、中学校の国語の試験で、愛国と書いて非愛国が対語だといって、それにまるをつけたら、その生従は落第です。これは否定語であって、対語ではありません。白の上に非をつけた非白が白の対語だといっては、これは落第です。非白は白にあらざるですから、黒とは限らないですよ。赤も黒も黄も青も、みな非白なんです。そういう意味でありまして、対語ではない。実は私は、そういう意味で謙虚に、記者クラブの方は議員さんよりも文章をもって立っておられる専門家ですから、教えを受けて、もしあれば、注意を受ける前に私も訂正を申し入れようと思って、賢明な記者の皆さんに教えを請うた。そうしたら、みんな頭をかしげられて、どうもわれわれといえどもわからぬ、こういうお答えでございました。その後、国会の記録を調べてみますと、愛国の反対の表現として、売国ということばが、幾つかの機会に、他の議員から用いられております。私も用いた記憶があります。その行為は売国的である、その条約解釈は売国的ですよと、国益に反するものですよという意味で、売国ということばを使った。これはなぜいいのでしょうか。売国ということばが国会の権威を傷つけ、議院の品位を汚し、首相を侮べつしたものだ、その趣旨いかんは論理的であろうとあるまいと、動機は何であろうと、売国ということばがいかぬのだというなら、これらはすべて懲罰に付さるべきだと思うのですね。それはまさに、そういう犯意のない、侮べつの意味のない、罵倒の意味のない、品位を汚すという自覚が全然なくて、そして用語上の中から、そういうことばを選択した。その用語が間違っておるというだけで、一体懲罰に付されるということは、私には納得がいかないのです。むしろこれは提案者に実は率直にお尋ねしたいところです。  これは、私がわが身かわいいで言うのではありません。国会は、鯨岡さんも言われたように、言論の府であります。その表現に対しては、外から刑事的責任、民事的責任は問わない、こういうことになっておるわけです。だから、売国的と言ったのはよくて、売国者と言ったのは悪いと——その後、自民党の方あるいは記者クラブの方の御意見を漏れ承りますと、国を売る者と日本語に訳して言えば、それは問題にならなかったであろうという御意見もあるようです。国を売る者ということであるならばよくて、それを漢語——三文字、三文字の対語ですね。対語というものは、韻を踏んでおりますから。これは中国語がもとですけれども。それを、国を売る者はよくて、それを対語に直して売国者と言えば、これは懲罰になるのだという。そういうけじめは一体あるのかないのか。わが党にも、きょうはここに議運のベテランの安宅理事もおられますし、過去の例は一体どういうことなのか。与党の方も、博識の方がおられるようで、田中先生も古い法学者であるが、それを実は教えていただきたいと思うのです。私はほんとうにこれは単に言いのがれ、責任をのがれるために言っているのじゃないですよ。ですから、用語が悪いということが、それが鯨岡さんの指摘された、品位を汚し、権威を傷つけ、相手に無礼を働き、国会の秩序を乱した、どう考えても、私の冷静かつ常識的な判断では、懲罰にこれが付されるというようなことは、納得がいかないわけでございます。  さらに、これは私自身が弁明をいたす中で申し上げるのは不適当かもしれません。私ちょっと慣例になじまないところがありますので、他の委員の方からお正しいただくのが適当かとも思いますけれども、この事の経過を理解していただくために、外務委員会におられなかった委員の方々に、ちょっと参考のために申し上げておきます。私も長年議席を与えていただいておりますけれども、国会というところは、法規だけでなくて、慣例もとうとぶところだ、こういうふうにいままで教えられておりました。当日の私の発言はそういう趣旨でありましたが、実は売国ということが、私の判断では、おそらく、売国者という論理的なことばとして受け取らないで、売国奴という侮べつのことばと連想感があるからいかぬということだと思うのです。国を売る者だという発言なら、これは懲罰にならぬだろうとある与党の方も言われた。客観性のあるジャーナリストの方も、そう言っておられる。それから、この間の国会対策の対談の中で、柳田君も、あれは売国者と言わぬで、日本語に訳して、国を売る者だと言えば、より適切な表現ではなかったか、こう言っておられるわけです。ところが、いままで、これを慣例から見まして、先ほど言ったことが一つの例。それから、それでもなおかつ論理的な意味で使ったのだということが、とっさの場合で御理解がいかなくて・売国奴を連想をされて、そうしてこれは侮辱を与えたものだ、暴言だ、というふうにおとりになったのではないかと私は推測をいたしますが、そういう意味で、秋田委員長も、野党理事の諸君と、とっさの場合に打ち合わせをされまして、私の質問中に発言がございまして、これはまだ速記録になりません、仮説の中にも載っておりますが、そしてまた、鯨岡提案者も本会議で説明しておられますが、先ほどの穗積委員の発言中不穏当な点があるならば——あるならばと仮定になっております。——あるならば、委員長において後に速記録を調べて善処いたします、こういう御発言になっております。これは従来の慣例からいきますと、議長または委員長が、その当該本会議または委員会においてこういう不穏当と認めた、認められる発言があったときの処置として、これが常に使われて、従来の慣例を調べますと、大体委員長の、または議長の職権において、その不穏当と認めたことばが削除になる。そういう意味で、いまだにあの日の速記録ができないのではないかと、私は思っておるわけでございます。処置がまだ済んでいないということではないかと思うのですね。そういうふうに私は理解している。しかも、あるならば、と仮定になっておるのと、あったからと、確定になっておるのと、また使い分けがあるそうです。あとで伺いますと……。あるならば、というのは、一番軽い意味で言ったものだというふうに言われ、そして理事の方々もそれで処理が済んだと思ってお帰りになった。あとの御説明によりますと、特に福田幹事長が、この方は御承知のとおり、私も個人的には存じ上げておりますが、長年の官僚出身の方でありますから、われわれから見ると、いささか権力主義のお考えがおありのように見受けておったが、のみならず、いまの、今国会におけるいろんな国会かけ引き上、これを懲罰をもって臨んでこられた、こういう取り扱い上の、何というのか、いままでに例を見ざる処置が行なわれた。この間のことについては、鯨岡提案者の御説明の中にちょっと触れておられますが、秋田委員長からは、私はまだ何も伺っていないのです。秋田委員長から、これを取り消したらどうかとか、あるいはこれを削除したいと思うとかいう御処置について、御説明は実は直接伺っておりません。その一体論理の継続性がどういうふうになっているのか、私はまだ納得ができないわけであります。しかし、いずれにしても、当日の委員会におきましては、従来の慣例による措置がとられておることだけを弁明の最後につけ加えて、当日その席にお見えになれませんでして、しかもなおかつ速記録を見ていただくことのできない状態にある懲罰委員の公正な判断をいただくための材料として、報告を申し上げておきたい。  それから最後に、これは委員会におけることですが、冒頭にもちょっと申し上げましたように、実は佐藤総理の政治的な売国性、反民族性、反人民性というものについては、これは私は、論旨はおのおのの自由でございまして、何ら訂正をする考えはございません。そのことは冒頭にも申しましたように、今度のジョンソン声明をきっかけといたしまして、昨年十一月十五日の共同声明の路線がいかに誤りであったか、いかに失敗に満ちておるものであったか、われわれ国民から見るならば、民族並びに大衆から見るならば、まさに危険にして不安な路線であった。しかもそれがアメリカの一方的な独断において行なわれておる。アメリカを信じろ、アメリカは理解ある友国である、アメリカの善意を信ずれば何でも安心だ、これが安保条約体制の政府の国民に対する説明のきまり文句であった。ところがグェン・カオ・キにすら、あるいは朴正煕にすら、何の断わりもなしに今度ぽかっとやったのですから、日本政府になど断わったはずはないのですよ。ちょうどたまたまその日に、一日の日にわれわれは外務委員会を開いておった。開いておる最中に、向こうから電報が入ってきて、これは朝日その他の新聞にも、囲み欄として、周章ろうばいされたありさまが手にとるように報道されております。だから、何の一体信頼性がありましょうか。こういうことが暴露されてきておるのです。ですから私は先ほど言ったように、この期に臨めば、もうすでにわれわれ国会の与野党の者が真剣に取り組むべきものは、売国ということばが、愛国の正しい反語であるか、不適当な反語であるか、そんなことをいつまでも議論しておる段階でないように私は思うのです。そして、問題になっておる佐藤首相共同声明路線というものをここで転回をすべきで、そして国民の合意を求めるようにつとめることこそが、私は国会の品位と国会の権威を守る唯一の大事な大道であるというふうに考えます。したがいまして、私の願望は、だといってこの問題を不問に付せろ、責任のがれに言うのではありません。こういうことは常識に従って、しかも皆さんは自民党の、各党に属するあるいは他党に属する議員であると同時に、少なくとも懲罰問題については、裁判官以上の公正な自主性を、公正な精神によって、私はものを審議して手ぎわよく処理していただくことを、これは私のためではない、いまの国民の当面しております情勢から見まして、その賢明な御審議と御判断を切にお願いし、期待をいたしまして、私の弁明を終わります。そうして本会議において後段で申し上げましたことについては、これはむしろ政権をとっておられる責任のある自民党の方々に、ぜひ、これはきょう申し上げませんから、耳を傾けて検討していただきたい。本会議における弁明とあわせて、私の一括した弁明とさしていただきたいと思います。  たいへん御清聴ありがとうございました。(拍手)
  4. 堀川恭平

    堀川委員長 これにて、穗積君の身上弁明は終わりました。  衆議院規則第二百三十九条の規定により、自己の懲罰事犯委員会に列席することはできないことになっておりますので、穗積君の御退席を願います。   〔穗積議員退席〕   〔発言するものあり〕
  5. 堀川恭平

    堀川委員長 穗積君に対しまして申し上げます。適当な場所で傍聴されるのは差しつかえございませんから、どうぞ。     —————————————
  6. 堀川恭平

    堀川委員長 次に、懲罰動議提出者、鯨岡兵輔君に対する質疑の申し出がありますから、順次これを許します。安宅委員
  7. 安宅常彦

    ○安宅委員 私はきょう、この前の理事会で、本日の委員会の審議のしかたについて、少し順序その他について深い打ち合わせをすべきだったなということを反省しておるのです。というのは、委員会が終わってから理事会、いつも公報に委員長書かれるのですが、それをうっかり——どこの委員会でも大体公報に出すときには、理事会があって、それで本委員会がある。そのときにどこの党のだれが質問通告を出すとか、大体道程、日程というものはこの前の理事会できまったのですが、そういうことを話しし終わらなかったものですから、本来ならば、外務委員長もきょうおいで願いたいと思っておったわけですが、とっさの場合ですからしかたがありません。後日、同僚あるいは諸先輩の皆さんが、私の党の所属の皆さんは言うに及ばず、その他の方々も御出席なさると思いますが、ぜひそういう機会はつくらなければならぬと思っておりますが、はなはだ私残念なので、ひとつきょうは、提案者である鯨岡さんに若干の質疑をしてみたい、こう思っておるわけです。  この間、議院運営委員会でいろいろと論議がございました。その場合に、秋田委員長は、もし不穏当な発言があったならば、議事録を取り調べて善処するという趣旨発言をしております。国会の運営の大体いままでの慣例からいえば、それは議事録削除の手続、私はこう思うけれども、そのときに、あなたは懲罰というものを考えておったのか、考えておりませんでした、つまり外務委員長がそういう考えがなかったから、議長に対して報告をしなかったわけです。これは御存じのように、懲罰事犯ありと認めた場合、国会法、衆議院規則で、議長に報告しなきゃならないと思うのです。していないのですから、したがって、これは議事録削除の手続。本会議でもやるでしょう。議場内交渉係がありまして、不穏当な発言がありましたから議事録を善処しますというときには、もう議長職権になってしまう、そういう場合があります。それから、もしあったならばというのもあります。それは全部もう事務総長のところに印刷になっております。ですから、報告をしなかったのは、議事録削除の手続であって、秋田さんも懲罰考えていなかったというのですから、当然報告をしなかった。これは当然ですね。そうしますと、国会法の条章から見て、懲罰の場合には、議長職権によるもの、これが一つです。そのときは議長が宣告するのですね。第二番目は、委員会内で懲罰事犯があった場合に、委員長がそれを議長に報告してやる方法。第三項に、議長委員長懲罰事犯として認めない場合であっても、衆議院においては四十人以上の議員諸君がその懲罰の動議を出すことができる。前の二つは、委員長は報告をしなければならない。しなければならないというものと、それから、することができるというものとは、私は法律的にはしろうとでありますが、くろうとの皆さんは、どちらが重要なものか、もうはっきりしておると思いますね。ですから、そういう手続によったものだ、こういうふうに思います。鯨岡さん、これは委員長懲罰の意思がない、したがって、あなたが教唆扇動をしたのかどうかわからぬけれども、一緒になって、みんなで相談をして、与党諸君が出したんだ、こういうふうに私は理解しているんだが、そのとおりですか。
  8. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 その通りであります。——ちょっと待ってください。委員長懲罰をする意思がない——これはないかあるかわかりません。なかったかあったか私にはわかりません。ただ私が皆さんとはかって出したということは、安宅委員が言われたとおりであります。
  9. 安宅常彦

    ○安宅委員 あったかなかったかわからないから、報告をしないところを見るとなかったんだろうと私が言ったら、議運の委員会では、ありませんでしたという答弁をしていますね。あなたも議事録をごらんになっていると思います。あのときあなたはおったと思いますが、そうですね。出したときは、わからなかったということですか。
  10. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 議事録は見ましたけれども、議運の会議には、私は出席しておりませんでした。
  11. 安宅常彦

    ○安宅委員 つまり、懲罰事犯であるということを、議長委員長が認めない場合においてという文章が、衆議院規則のほうにありますが、においても、議員が四十名以上、こうなっているのですね。だから、委員長懲罰の意思がない場合しか、あなたは出せない。そういうことですね。
  12. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 私は必ずしもそうは思いません。委員長懲罰の意思がかりになくても、私は出すかもわかりません。なくても出すかもしれません。あってもちゅうちよしていれば、出すかもわかりません。それは私がお答えする範囲ではないです。私は法の示すところによって、出したわけですから。
  13. 安宅常彦

    ○安宅委員 委員長がちゅうちょした場合に出せるという規定はありません。国会法、衆議院規則をよく読んでください。
  14. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 ちゅうちょした場合に、私が出せると言ったのではありません。ちゅうちょしているような場合には、私が出す場合もあるということです。
  15. 安宅常彦

    ○安宅委員 そうすると、そういう場合には、あなたがお出しになったのですか。このたび、そういう場合だと判断をしてお出しになったのですか。
  16. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 委員長はなかなか出さないですから、そこで委員長の意思と関係なしに、われわれは出したわけであります。
  17. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは重大な発言ですね。委員長が意思なしと見て出したというのなら、たいへんりっぱな答弁になるのですがね。委員長が何だかわからないけれども出したということになりますと、重要なんですよ。それはあなた重要なんですよ。  委員長、ちょっとこれは重要なことですから、私は衆議院規則から見て、それはできないものだと判断をします。できるかできないかについて、ちょっと相談を、理事間でする時間を与えてもらいたいと思う。(「院議でやれ」と呼ぶ者あり)じゃ院議に回しましょう。そうしたら議院運営委員会に差し戻して、議院運営委員会でやります。
  18. 堀川恭平

    堀川委員長 差し戻すことは私は考えておりません。(発言する者あり)安宅さん、とりあえずこれは私のほうが議院規則によって付託されたんですから、これを差し戻すというような考えは、委員長としては持っていません。
  19. 安宅常彦

    ○安宅委員 売国者愛国者みたいなもので、そう言うから、言っただけの話です。いいですか。私はちょっとその内容を言いますが、国会法百二十一条、これを受けて、衆議院規則の二百二十五条「議長又は委員長において懲罰事犯と認めない事件についても、議員は、国会法第百二十一条第三項の規定によって懲罰の動議を提出することができる。」……(発言する者あり)だから、議長懲罰事犯と認めない事件だったら、これは出すんだ。(発言する者あり)それじゃ、その前のところを言いますか。この場合ですね、この百二十一条は、ようございますか、こうなっておるのですよ。「委員会において懲罰事犯があるときは、委員長は、これを議長に報告し処分を求めなければならない。」、求めていないのですよ。(「それは委員長がきめた場合のことなんだ」と呼ぶ者あり)委員長がきめないということは、どういうことになりますか、それでは。だから相談してもらったらと言うんだ。やじや何かで応酬したって議論にならない、ここに大臣がいるわけじゃなし。
  20. 堀川恭平

    堀川委員長 どうですか、いまの安宅委員の御提案を御承知くださいますか。  〔「必要なし」と呼び、その他発言する者あり〕
  21. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 お許しを得て、提案者として……。
  22. 安宅常彦

    ○安宅委員 何もあなたに質問していない。理事会ではかってもらいたいというのに、提案者に発言を許す、委員長、そんな手続があるか。だめですよ。
  23. 堀川恭平

    堀川委員長 それはいいじゃないですか、一応黙って聞いてみませんか。   〔「理事会で相談したら」と呼び、その他発言する者あり〕
  24. 堀川恭平

    堀川委員長 とりあえず、それじゃここでちょっと理事会を……。   〔委員長退席、田中(伊)委員長代理着席〕
  25. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員長代理 それでは質疑を続行してください。安宅君。
  26. 安宅常彦

    ○安宅委員 理事会の話し合いで、これは両立しているとか、救済規定だとかいう議論についてはまとまらなかった。これはいいでしょう。お互いの主張ですからね。ただ、両立しているからといって、動議も出すわ、委員長も出すわ、今度逆にいえば、いろいろなその他の側面も出てくるような、そういう解釈は、私どもおかしくないかという考え方だったわけですが、いまの話し合いで、動議も、委員長の分もぞろぞろ出てくるなんということは、この法律考えていないのじゃないかという話になりましたから、これはいいでしょうということにしたわけです。  それでは次に進みますが、先ほど穗積さんから一身上の弁明がありました。このことについて、私はたいへんりっぱな弁明だと思いました。鯨岡君のいわゆる提案理由の説明といいますか、たいへんりっぱなことばが使われておりますが、いろいろな点で矛盾がありそうなところが散見されるわけです。このことについて一つ一つこれからやっていきたいと思いますが、特に私が鯨岡さんに質問したいのは、こういうことなんです。私がさっき言ったように……。   〔田中(伊)委員長代理退席、委員長着席〕  私、質問を中断します。
  27. 堀川恭平

    堀川委員長 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  28. 堀川恭平

    堀川委員長 では、速記を始めて。  質疑を続行いたします。安宅君。
  29. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは、最近の国会の運営のしかたが、何か問題が起きると、国会正常化などということばが出てくるのですが、正常化ということばが出てくるということは、常に不正常だという意味です。あれは非常にまずいことばだ。私ども社会党は、国会正常化委員会なんというものをつくろうなんということを、ここにおられる大先輩の田中先生が副議長のときに話が出た。正常化ということばを使うべきでない、国会運営に関する、何か委員会とか懇談会とか、こういうことにしなければならないということになった。なぜかというと、何かいま委員会が定数不足のまま運営されているのがあたりまえのつもりでおる人が非常に多いのです。委員部の諸君も、それが習い性になって、にやにや笑っているけれども、これはあなた方も気をつけてもらわなければなりません。これは一番悪いのは、自民党の諸君が人を懲罰にかけておいて、そうして言うなれば、さらしものにしておいているのですよ。たとえば、こういう場合にはすみやかに議決をしなければならない、こういうふうになっているのです、こういう案件は。これは国会法でもそうなっている。すみやかにしないのですね。いままで長いこと投げておいて、予算が通過したら、今度はそれすみやかにというのです。早くやってくれ、早くやってくれと。そんないいかげんなものなんでしょうか。国民の代表である国会議員の身分に関する委員会だ。特に私はこの点は気をつけてもらわなければならない。こういう意味で、私はほんとうに憤りを感じているのです。わが身をつねって人の痛さを知れということがありますが、もしあなた方が、与党諸君懲罰にかけられて、そうして反対党の諸君がどうせ勝つのだからというので、裁判官のいない裁判みたいなことをやってやられたならば、どういう気持ちを起こすでしょう。これこそえらい国会を侮辱したものだ、退場した者は懲罰だとかと言うに違いがありません。私はくやしいけれども野党というものは……。たとえば予算委員会で変な発言をした人もおります。いろいろなことがたくさんありますが、暴力でもって小指一本折れた人があります。だけれども懲罰動議を出しても、私どもは負けるのです。しかたがないから——出せばいいんでしょうが、出せばいいじゃないかと言われるかもしれぬけれども、しかたがないので、前から涙をのんでいる場合がうんと多いのです。多数党というものは、男を女にかえたり女を男にかえたりする以外は、何でもできるという、非常に侮べつしたことばが、世の中に、イギリスの有名な学者が言ったとかなんとかいうので、ずっと伝わっております。そういうことを常にやれるものだという思い上がったそういう態度というものは、改めてもらわなければならないと思うのです。委員長委員会の運営について気をつけていただきたい。委員長の所見どうですか。
  30. 堀川恭平

    堀川委員長 安宅君に御答弁申し上げます。(発言する者あり)まあ荒立てずに、ひとつ聞いてください。(発言する者あり)御静粛に願います。   〔発言する者、離席する者あり〕
  31. 堀川恭平

    堀川委員長 御静粛に願います。御着席願います。  安宅君にお話し申し上げます。  先般……。(発言する者あり)静粛に願います。  安宅委員に申し上げます。あなたから委員長意見を聞かれたから申し上げるのですが、実は本会議にかかってここに付託になったのでありますが、その当時、本会議以後二日間、私かぜを引いて寝たのです。そのために、途中で日曜がありましたので、三日ほどおくれたと思います。それは早くせなければならぬのが当然でありましたが、委員長として、実は病気をしたものですから、それで三、四日おくれたということを御了承願いたいと思います。  それから今日は御承知のように採決の件が各委員会でよけいにあったので、私も今後はよく注意いたしまして、できる限り全員そろってもらうようにいたします。どうぞ御了承願うて、発言を継続していただきたいと思います。
  32. 安宅常彦

    ○安宅委員 あなたを責めておるのじゃないのですよ。さっき所見を聞きたいというのは、それはあなたのところに回ってくるまでの間の話ですから、懲罰委員会が、かぜを引いておくれたのは申しわけないと、あやまることはありません。あなたに罪はありません。ようございますね。その前の話をしているんですよ。そういう場合に議長が判断を下して、そうしてすみやかに会議にかけなければならないことになっているのが、当時予算を上げるまで投げておいて、あとでは、早くやってくれ、早くやってくれということはまずいじゃないですか、ということを言ったわけでありまして、あなたは何も責任はないですよ。そういう意味です。これは正常な国会の運営じゃないですよ。しっぺい返しみたいなものじゃないですか。  それから、委員長、御注意申し上げておきますが、採決がたくさんありまして、きょうはなにで……、そういうことは議事録に残さないほうがいいと思いますがね。
  33. 堀川恭平

    堀川委員長 実はそういうことで、私の真情を申し上げたのですが、今後気をつけます。
  34. 安宅常彦

    ○安宅委員 議事録に残さないほうがいいんじゃないですかと、私は言っているのですがね。
  35. 堀川恭平

    堀川委員長 その点に対しましては、しかるべく処置いたします。
  36. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは非常にまずい言い方ですね。まあほんとうに現実を見て、まじめにおっしゃった、悪意のないおことばだと思いますから、私はあえて追及をいたしませんが、少なくとも、採決がたくさんあってなどという、その次にくることばは、したがって人が少なくなったんだから、安宅君かんべんしてくれということばが続くんだろうと思います。それを、私はあえてあなたの発言をとめておるわけです。これは委員長まずいですよ。  そこで本題に入りますが、そういう意味で、私どもは、鯨岡さんに聞きたいことは、先ほど法律解釈のことでいろいろ議論がありましたが、まあそれはさておいて、言論でもって、懲罰をやるとかやらないとかいう問題が起きるということは、よくよくのことだと私は思います。たとえば人をなぐったとか、あるいは何か院内を撹乱させるような行動があったとか、いろいろな条件があるでしょう。破廉恥罪だとか、たくさんございますね。そういうことだったら、これは私は当然懲罰に付してしかるべき問題だと思いますが、言論というのは本来尊重されなければならない。これでもって懲罰委員会にかけるということはぎりぎりの問題です。それを委員長懲罰事犯と認めるに足らない、私はそういう意思がありませんでしたと言っておる。これを四十名なりの議員さんが名前をそろえて出すというやり方は、これはほかの問題だったら、いわゆる破廉恥罪だとか、そういうことだったらあれだけれども、こういう言論をもって、そして問題を提起するということはよくよくのことだと私は思いますが、そういうお考えで、鯨岡さんは出してこられたのか、こういうように、よくよくのことだと思いながら出した、こういうことでしょうか。
  37. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 安宅委員のお考えと多少見解を異にすることを残念に思いますが、安宅委員はいま、暴力等が行なわれた場合にはやむを得ざる場合もあるかもしれないけれども、言論で懲罰委員会ということはなかなか容易ならざることだと言われた。容易ならざることというのは、先ほどから安宅委員みずからおっしゃったように、人を懲罰に付するということですから、容易ならざることは言うまでもないのです。言うまでもないけれども、言論でも、日本国会法、憲法、衆議院規則、それらをおしなべてみて、禁止に関する条項が日本ほど多いところはない。日本ほど多いところはないけれども日本ほどまたこれがなおざりにせられておるところはない。たとえば議員同士はお互いに敬称をもって呼び合わなければいけない、無礼な言辞があってはいけないというような規定があるのです。そういう規定があるにもかかわらず、それがなおざりにされておるきらいはないか。安宅委員も十分お認めのように、これはしばしば行なわれておるわけです。それがなおざりにされておる。それは寛容の精神によってなされておるのであろうと思いますが、寛容にも限度があります。そういうことがなおざりにされておることは、法律できまっておることが行なわれていないということです。そういうことがずっと慣例になりますと、国会の秩序というものは乱れるのではないでしょうか。私どもが憂えたのはその点でございます。  お答えになりましたかどうか。
  38. 安宅常彦

    ○安宅委員 それでは、無礼な面があったり、法律が守られなかったという例を、ひとつあなたのほうからお示しを願いたいと思います。観念論で言われては困ります。
  39. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 今度のことで申し上げましょう。
  40. 安宅常彦

    ○安宅委員 今度のことじゃありません。従来のことをあなたは言っておりますから。
  41. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 従来のことでは、いろいろ無礼行為それから不規則発言——お答えになりますかどうか。それではこういうことを申し上げます。イギリスでは、不規則発言の中で、裏切り者ということを言っただけで処罰をされておることがある。わが国では、先ほど穗積さんの一身上の弁明の中にも、裏切り者であるとか裏切り行為であるとか、あるいは売国的であるとかいうことがしばしば出ております。こういうことは、他にことばがないとおっしゃいますけれども、はたしてそうか。私は、それほど代議士というものはことばに不自由していないと思うので、私は、何かほかのことばで十分自分思想を言いあらわすことができるのではないか、こういうふうに思います。
  42. 安宅常彦

    ○安宅委員 お答えにはなっていないと思いますが、片りんがありますから、さらにお答えを願いたいのですが、そうすると、過去において無礼な言辞があったり、たとえば敬称の話が出ておったが、あなたを鯨岡などと言った人がいままであったとします。あるいは、あなたの答弁の中にありましたが、売国的だとか裏切り者ではないかとか、そういうことばはしょっちゅう出てくるがという例をとって、私の質問にお答えになっておる。そういうものも当然懲罰に付すべきものだという考えがあったから、そういう例を出されたと思いますが、そのとおりでしょうか。
  43. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 それはその場の状況でありまして、私がお答えする範囲でないと考えます。
  44. 安宅常彦

    ○安宅委員 その場の空気によって、ことばが同じであっても、それを懲罰に付したり付さなんだりすることがありますか。そのとおりでしょうか。
  45. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 その場の状況によって、それを無礼な言辞があったと受け取った場合には、するでしょうし、しない場合もあるでしょう。私はこの場合、私の提案理由に対する御質問として、お答えする必要の範囲を越えていると思うのであります。
  46. 安宅常彦

    ○安宅委員 私は、あなたが、いままで法律がさっぱり守られていないし、そういうことがたくさんあったとおっしゃるから聞いた。そうしたら例として出されたから、お答えする範囲外だなんという答弁は納得できませんよ。そういう例を出されたから、そのとおりでしょうか、違いますか。違いますだったら違います、そのとおりだったらそのとおりとおっしゃったらいい。あなたがおっしゃったんです。私が言ったんじゃないですよ。
  47. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 いままでしばしば無礼と思われる——無礼というのは客観的な問題ですから、無礼であると思われるような行為がなかったかという御質問に対して、私はしばしばあったとお答えいたしました。それでは、しばしばあったのなら、なぜしばしば懲罰動議が出なかったのかというふうに受け取られますから、そういうふうな御質問だと思いますから……。(安宅委員「そんなことじゃありません。」と呼ぶ)それでは、その点をはっきり御質問願いたいと思います。
  48. 安宅常彦

    ○安宅委員 私のほうははっきりしています。そういうふうに話を外にずらさないでください。議事録を見ればよくわかります。あなたは逃げようと思って、そんな別のところへ話を持っていっちゃだめですよ。法律日本では守られない——あなたは英国の例をたいへん詳しく御存じのようであります。本会議でもおっしゃいましたし、またきょうもおっしゃいましたが、裏切り者と言うだけで懲罰になっているという例を出して、そうして、そういう例が日本国会でしばしばあって、寛容の立場から許されているのかもしれませんがという前提があって、そういう場合は日本国会では全然問題になっていない、規則がたくさんあるくせにやっていないと言う。だからどういうことがあったのですか。観念論では困ります。これは言うなれば、一人の人をどう処分するかによって、その人に、いわゆることばでいえば、傷をつける、こういう、やむを得なくて傷をつけられる場合もあります。つけるのが当然だという場合もあります。どっちみちいやいやながら、そういう場合もありましょう。その範疇はどこでもいいのですが、傷ということばがいいか悪いかは別として、何らかの処分を受けるわけですね。これは非常に重要な、言うならば裁判みたいな委員会です。だから、観念的ではなくて、ひとつきちっとした立証をしなければいけない、こういう意味から私は聞いているのですから、あなたがそうおっしゃった以上、こういう例があったではないかということを、反論してもらわぬと困るのですよ。
  49. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 一々例をあげろとおっしゃいますが、いまその用意はございませんけれども、それでは、私の記憶に残っている最近の問題でも申し上げましょう。  たとえば、あえて名前は申し上げませんけれども、最近の外務委員会において、隣の国の中華民国を称して、イモの形をしたと、何かこう特別なあまり上品でないおことばを使いましたが、そういうふうに言って、その国を批評した。アメリカの、最近まで政治家であって、いま大学の教授をやっておられる某博士を、あれはばかせではないかと思うというような御発言があった。これらは、われわれ同僚に対する無礼とはあえて思いませんけれども、やはり品位を重んじなければならないという条項には適合しないのではないか、いかがでございましょう。
  50. 安宅常彦

    ○安宅委員 したがって、そういう場合、あなたはそれを痛切に感じておった。あなたは、懲罰問題にならなかったではないかという質問らしいからと推定をしておるようですが、そうではなくして、私の質問は、そういう場合にこそ——あなたが穗積さんを懲罰に付すべきだという動議を出した御本人だから聞くのですが、大体そういうものと同じだという考え方で、例を述べられたと思います。そうしますと、これはたいへんまずいことにはならないでしょうか。
  51. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 どういう点でまずい点になるか、私にはよくわかりません。詳細におっしゃってください。
  52. 安宅常彦

    ○安宅委員 あなたは客観的な問題だと言いましたが、客観的な問題だというのは、四十人集まったから客観的になったのかもしれませんが、あなた以外の人でも同じですが、売国者と言ったのが懲罰条項に該当するというので、懲罰動議を出されたと思います。はなはだ遺憾なことだというので、例を二、三あげられましたが、そういう場合にも、あなたは懲罰動議なり、そういうものを出すのが、法を守らないといって慨嘆をしておられる方ですから、法を守るゆえんじゃないでしょうか。そういう意味です。
  53. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 ですから、先ほど私が申し上げましたように、そのつど、なぜ懲罰動議提出の現象が起きないか……(安宅委員「起きないかではなく、あなたに聞いている」と呼ぶ)それじゃ、なぜやらなかったかと言い直してもけっこうでありますが、それはそのつど、私はまことに遺憾に思いますよ。遺憾に思いますけれども、安宅委員承知のとおり、そのつどそれらをつかまえて問題にするというのも、国会の運営のためにもよくないと思いますから、それはやるやらないは、こちらが困ったことだとは思いながらも、それをやらない場合もありましょうし、これはやるべきだと思う場合もありましょう。それは安宅委員と必ずしもその場の状況に対する反応は同じでないかもしれませんが、御了承願いたいと思います。
  54. 安宅常彦

    ○安宅委員 同じような例かと私が言いましたのは、なぜかといいますと、前提があるわけです。言論で懲罰動議に付するのはぎりぎりのことではないか。そうではないとあなたは答えた。ずっと順序を立てて言いますよ。そうしますと、あなたはぎりぎりのことではないのだと言う。それは当然守らなければならない法律はたくさんあるわけですよ。そういう例がしばしばあります。そのしばしばの例を言ってくださいと言いましたら、あなたはそれを言いました。そうすると、懲罰動議を出す資格のある人が、国会対策上まずいなと思ったときには出さないし、だいじょうぶだと思ったときには出してもいいなと思うし、そういういわゆる恣意によってやられる危険が非常に多いのではないか。私は、あなたの議論からいいますと、そう思わざるを得ないのであります。そうなりますね。ですから、国会対策上必要なときは、裏を返せば、いまのことばのあげ足をとる意味ではありませんが、国会対策上必要だというふうになった場合には懲罰にされ、国会対策上まずいということになった場合には、それはかんべんしてやろう、こういうことをあなたは答弁しておるんですよ。こういうような発言なんですがね。
  55. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 私は国会対策委員ではありませんから、国会対策委員とはかってやっておるわけではありません。したがいまして、国会の今日の時点において、これらの問題は非常に気になるけれども、同士を懲罰に付するか付さないかということは、私はあくまで自分考えた。国会対策といっては少し専門用語になりますから、安宅委員考えておる国会対策とはちょっと違うかもしれませんけれども、それはそれとして、恣意になるおそれはないかというお話がありましたが、私はこの法律を見て、恣意になるおそれは十分あると思います。そこで、これは懲罰に値するか値しないかということは、皆さんがおきめになることです。鯨岡が出したものは、あれは鯨岡の気分である、四十名賛成者があるけれども、それは気分だ、これは懲罰に値するかしないか、それは皆さんがおきめになることで、私はなると思って出しただけの話でございます。これを見ますと、恣意になるおそれは十分あると私は思います。懲罰事犯がありと認めた場合には、議長がやらなければならぬ、あるいは委員長がやらなければならぬ。もし両方がやらない場合でも、議員は四十名の賛同者をもってやれるというのですから、そうしたら、あいつをやってやろうということがあるかもしれません。それは安宅委員のおっしゃったとおりです。しかし、良識がなければなりませんから、そのつどそんなことはないと私は思いますが、絶対にないかといえば、私はそうではないと思います。そこで皆さんが、懲罰事犯として取り上げるに値するかどうか、それは皆さんのおきめになることで、私が答えるべきことではございません。
  56. 安宅常彦

    ○安宅委員 そういう言いのがれをしないでください。あなたが考えたのじゃなくて、国会対策上他の人が考える場合もあるでしょうという意味で、国会対策ということばを使ったのが、私の国会対策と安宅君の国会対策は少し意味が違うようですがと言って、同じことばを使って、その辺から逃げて答弁する気はないなどということは言わないでください。それじゃ私は善意に解釈しましょう。そういう場合に、これは国会対策上かんべんしてやった例がたくさんあったのだというふうに私は理解している。鯨岡さん自身じゃなくて、そういうふうに思ったというだけのことなんでしょう。あなたのことばは、こういうふうに軽く聞いておきましょう。しかし、これは議論をするとき非常に重要な発言なのですから、何かあなたはことばの使い方が非常に上手なようですが、ときどきしっぽを出しますから、気をつけてやっていただきたいと思います。まあ、それはいいでしょう。  それでは伺いますが、議院運営委員会で、私どもははなはだ失礼でありましたが、他党の言論を例にとって、議論をいたしました。それがまた比較論という意味で、私の党の中嶋議運委員発言をされたのでありますが、だから私はいま、例はたくさんしばしばという話がありましたから、どんな例があったのでしょうか、こうすなおに聞いているわけなんです。そういう意味なんですよ。それで、日本共産党の川上貫一君の例をとって、いろいろ議論を展開しておりました。もしこれも同じだなどといわれてしまったのでは、他党の言論を私どもが中傷したり、わざわざ何でもないのを懲罰に付する結果になりはしないかということを心配し、たいへんしつこいほど、私は議院運営委員会で、こういう川上君の発言というものは懲罰の対象にならないのですねということを、懸命に追いまくりました。追いまくったということばは適当でないかもしれぬけれども、はっきりさせようと思ったわけです。自由民主党の委員諸君が、そのとおりだ、こういうふうに答えました。その内容は、皆さんは、議院運営委員会の議事録をお読みになった方はおわかりだと思いますが、もっと具体的で、もっとだめ押しみたいな言論が展開されておるのです。たとえば本年の一月三十一日の発言ですが、こういう発言をしていますね。「アメリカの凶悪きわまりない侵略と戦争政策を擁護し、それに国民を同調させるための売国的な欺瞞であると断言してはばかりません。」——売国的な欺隔だということは、これはあとで売国者ということばとたいへん関連してきますから、いまは触れませんが、売国的な欺瞞ということを断言するのですからね。そうしますと、売国者と言ったのとどういう違いがあるかといったら、ここは裁判みたいな委員会だから、私はそういうことを言うのですが、これは「(拍手)」になっておる。そして何も問題は起きておりません。佐藤総理態度がこうだということを言っているわけです。これはそのままになっているのですね。これも、じゃあ懲罰にしたらいいじゃないかという意味で言うのじゃないという前提で、もうすでにそれは懲罰の範囲じゃありませんということを、議院運営委員会で確認をとっておるということを前提にして申し上げているのです。そうしますと、ドゴールが、外交防衛の実権というものを他国の大統領のポケットのキーで始末されるような、そういうことは愛国行為ではないと言ったのを、非常に感銘深くいまも頭に残っております。こういう発言をしたから、それでは沖縄返還なり安保条約上の日本の事前協議制なり、これがいまふらふらになって、白紙白紙だと首相が言う、白紙ということはどうだというこまかい質問穗積さんがしていますね。そうしたら、みずから差し示したものさしドゴールの例をとって、そういうことでものさしを示した首相に対して、ドゴール愛国者ならばあなたは反対——みな全部まかしているのですから、松前・バーンズ協定なんというのは、完全に、日本の空襲その他のときは、アメリカがかってにやっていいのだという協定まで結んでいるのですよ。事前協議するも何もありませんよ、これは。これは安保条約そのものも、せみの抜けがらみたいなものだということを証明するに足るひどい協定ですね。国会の承認なしに取りきめられて、それは単なる取りきめだから国会の承認を必要としないなどという詭弁を弄する。ほんとうに国を憂うる者の発言として、これは謹聴に値する、ほんとうに耳を傾ける発言だ。本来はきちっとほんとうに国を愛する者なら考えなければならない。そのときに、首相に対して、あなたはその反対だ、それでは売国者ではないかと言ったそのことばと、これは率直に本会議の演壇で、売国的な——首相がそういうものさしを示したかいなかにかかわらず、売国的な欺瞞であると断言してはばかりませんと言ったことばと、どっちが懲罰に値することか、はかりにかけてみた場合に重いでしょうか。私は、穗積さんのことば懲罰に値しないものだということを証明するために、言っているのです。これが懲罰に値しないのだということがはっきりしましたからね。そういうこともいろいろ過去において例がたくさんありましたという鯨岡さんの発言の中に、こういうこともお調べになった上でお出しになったのでしょうか、その辺をお聞きしたかったわけです。
  57. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 そういうほかのことについても調べたか調べないかということをおっしゃれば、調べた限度というものはもちろんありましょうけれども、全然調べなかったわけではありません。(安宅委員「この問題については」と呼ぶ)その問題も調べてございます。調べてございますが、これは私に質問されても、私ははなはだ迷惑するのです。なぜかといえば、その問題と対の問題で私は考えているのではないのです。ですからその問題が見のがされた、懲罰に値しないような問題だから、今度のこの問題も懲罰に値しないと御判断になるかならないかは、皆さんが御判断になるのでございます。私は、売国者と言ったそのことを問題にしているのであって、その判断を私に問われても、私は御返答のしようがございません。  それから安宅先生にお願いいたしますが、しばしば、鯨岡、うまいこと逃げてはいけないと言われますが、私は逃げる気持ちは少しもありません。先ほど安宅先生がかなり真剣に御真情を御発露でございましたから、私も申し上げますが、私も国会権威を保ち、国会国民から見て非常に上品なものであるというふうに思われたい。そうありたいと願う心きわめて切なるものがあります。それは安宅先生もそうだろうと私は信じて疑いません。したがいまして、私はここでその場のがれをしようなどと考えるならば、懲罰の動議などは出しません。どうか逃げるなどということは言わないでいただきたい。これはお願いをいたします。  それから、お話の中に、愛国者ということばがあったから、その対語として売国者と言った、これはまあ傾聴に値する議論ではないかというお話がございました。これは内容に触れて、私は申し上げておるのではございませんから、特にこのことについては触れたくはないと思います。また触れるべきでもないと思いますが、せっかくのお話でございますから、私の考えを申し述べて御批判をいただきたい。間違っていましたら、御指摘をいただきたいと思いますが、あまり適切な例であるとは思いませんが、たとえば、たとえ話で、不幸にして御主人に死に別れた婦人があった。その婦人は一生次の夫君を迎えないで、ひとり身を通した。人、これを評して非常な貞女である、こう言った。ところが、他の婦人はやはり同じように主人に死に別れた。しかしその後第二の夫君を迎えた。そこで貞女ではないとは言えるでしょうけれども、これをすぐに売女と言ったらどうでしょう。私はそこに用語の注意というものがなければならない、こういうふうに思うわけであります。いかがでございますか。
  58. 安宅常彦

    ○安宅委員 逃げるということばを使うなとおっしゃいますが、そういうのを逃げると言うのです。売女とか、奥さんとか亭主の問題、そんなたとえ話をここでしないでください。そういうようなことよりも、もっと具体的なことであなたがおっしゃったから、私はそういう例がありますかと言っている。その例を言わないで、二度亭主を持った女の例をもって答えるというのは、たいへんこれは院の品位に関するものに近いような御発言でありますから、そうして、あなた方がきめるのだということは、私が聞いているのは提出の動機について聞いているのですから、あなた方がきめるのだなどと、総理大臣みたいに開き直って、あなたえらそうなことをおっしゃらないでください。私はそのことを聞いているのではありませんから。そこを逃げるのだと私は申し上げるのですから。鯨岡さん頭がいいから、やられたなと思っても——これは鯨岡目の黒いうちは安宅などに、という気持ちはよくわかります。わかりますが、そういうことはもう突っぱらないでください。私もあえて以後言いません。  それでは次に進みますが、そうすると川上さんの発言に対して検討はいたしたけれども、私にそれを問われても戸惑いをするばかりです、みなさんがきめるんだ、という最後の発言だったのですが、しばしばそういう例があって、国会では見のがされておるのではないか。だからこれもほんとうは鯨岡さんの言によればあなたは、売国者だと言ったのと、売国的な欺瞞であると断言してはばからないと言ったのと、それとは、懲罰とは離れて、ことばを二つ、ぴしっとやった場合に——前後の流れを抜いてもけっこうです、ドゴールの例を出して聞いているくらいですから。そのことばの内容、議論を問わないとあなたはおっしゃっておるのです。ところがあなたの趣旨弁明は、そうは言いながら、いろいろなことを言っているのです。だけれども内容は言わないと、最後のところだけで言っているのです。なかなかうまい趣旨弁明だと思いました。そういう意味では、たいへん頭のいい趣旨弁明だと思いましたが、最終的にはあなたはことばで勝負しようというような気持ちのようですから——勝負するということばはまずいでしょうがね。何かそこできちっとしましょうという態度のようですから、言いますから、私は言うのですが、これはどうですか。この二つを並べてみた場合、同じみたいなものだと思いますかどうですか。
  59. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 私の趣旨弁明について、たいへんおほめをいただいて恐縮に存じます。  私は、共産党の川上議員発言は、その発言をしたときは知りません。その後において調べて、その後いろいろ議運や何かありまして、そういう経過の中で知り得たのであります。したがいまして、私はそれを比べてみて、やはり非常に品位のない、適当でないことば使いだなとは思います。思いますが、これが懲罰動議と直接関連するとは思えないのですが、いかがでございましょう。
  60. 安宅常彦

    ○安宅委員 国会というところは、論議する場合でもそうですか、動議を出すとき、その前例なり、そういうものをやはり相当尊重してやっておることは、あなたも御承知のとおりですね。先ほど私の質問に対しては、調べておりましたと一応こうおっしゃったのです。本件についても調べておりましたとおっしゃったから聞くのですが、議運その他の論議を通じて私は知りました、だから動議を出すときは比較することはできませんでした、という意味なんですね。
  61. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 動議を出すときには、そのことは知りませんでした。
  62. 安宅常彦

    ○安宅委員 先ほどは、動議を出すにあたってそういうのをお調べになったでしょうかと言ったら、この点は調べましたとあなたが言ったから、それを聞いているのです。それは知らなかったら、いいですよ。それだったら、私はきめろと言われてもしようがない。あなたはさっき調べたと言ったから、だから所見を聞いているのですからね。これは議事録を見ればわかるわけです。  それから、そういうことについて、私どもどうしてもあなたに聞いておきたいのは、国会運営という立場でもちょっとお話がありましたが、あの外務委員会の空気、いろいろなそのときの総理の所作などを私聞いております。穗積君、あれはなかったことにしよう、それで笑顔で総理がおられたということも聞いております。握手したなどという話まで伝わっておったのですが、調べてみたら握手はしなかったんだそうですかね。首相は、非常にけしからぬと思って、無礼ではないかということまで発言をしておりながら、そういう態度だったそうですね。だから私は、なかなかりっぱな総理だと思っておるんです。そういうことは、総理の所作としてあったというふうに私は聞いているのですが、そういう過程はあったのですか。
  63. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 そういうことはなかったことにしようとかなんとかいうようなお話、私は知りません。
  64. 安宅常彦

    ○安宅委員 そのときの外務委員会に、あなたは出ておられたでしょう。
  65. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 出席しておりました。
  66. 安宅常彦

    ○安宅委員 それは知らなかった、こういうことですね。わかりました。これは自民党の諸君の中でも、そういうことを言っていた人たちもありましたし、わが党の人に確かめてみたら、そういうことだった、こういうことでありましたから、私はあえて聞いたわけであります。提案者が知らなかったのは、はなはだ残念でありますがね。  それでは、この総理に対する考え方国会議員としての見識、こういうことも、同じ議員、同僚だと言えばそれまでの話です、議院内閣でありますから。ただ三権分立の立場からいって、国会というのは最高の議決機関ですね。ところが議院運営委員会でいろいろ議論したときには、もっとひどいことばが使われましたが、総理大臣に対して無礼ではないかということば、こういうことはあなたの提案理由の説明にもちらっと出ているわけですね。一国の総理に対する礼儀だという意味でしょう。しかしこれは政策論争といいますか、具体的な、事前協議をすればどうなるのか、沖縄返還をするというのはどうなるのだ、ドゴールという話を出して、あなたはそういう態度をとったらどうなんですかという、ちょっと結論的な意味で言ったその売国者ということばからいって、一国の総理大臣に対して平議員が何だという意味発言というのは、あなた方の党内に非常に多いのです。あなたの趣旨弁明の中には、そういう響きがなされるような、文章にはなっておりませんけれども、何か特に総理大臣だけぬきんでて、そうして無礼ではないか、こういうお考えが、どうもあるような気がいたします。そういうことはありませんか。
  67. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 全然そういうことはございません。私は、対等の場合としてでも、ただ総理大臣の地位に対しては、もう少し適当な態度があってしかるべきものと思いますが、いま何か平議員総理大臣に対してなんて、そんな気持ちは全然ございません。明らかに申し上げておきます。
  68. 安宅常彦

    ○安宅委員 それでは、提案理由の説明の中に、「佐藤総理大臣に対し質問中、総理を指さして、「あなたは売国者です。あなた、佐藤さん、こちらを向きなさい。」と、語気鋭く、まことに驚くべき暴言を吐いたのであります。」、こういう個所があったり、あるいは「いやしくも、国会委員会という公式の席上で一国の総理大臣を売国者ときめつけるがごときは、総理大臣に対する無礼なるは申すまでもなく、日本国日本国民に対する侮辱的暴言であるといわざるを得ないとわれわれは考えるのでございます。」——これは執行機関である内閣なわけですね。だから日本国日本国民に対する侮辱的なことばだというのは、どういう論理なんでしょう。
  69. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 正直に申し上げますと、私、本会議趣旨弁明のときには、「総理大臣に対して」と、こう申し上げました。その後、誤解を受けるといけないなと思い直しまして、この委員会趣旨弁明のときには、「総理大臣という地位に対して」と、こう言い直しております。これは速記録をごらんになっていただければ明瞭であります。  そこで、国民に対してというふうなことを言うのはどういうわけかというと、私は、衆議院議員として、総理大臣といえども対等であるということは、安宅先生お感じになっているとおりであります。対等であっても無礼の言辞を弄してはいけない、お互いに品位を重んじなければいけない、お互いに敬称をもって呼び合わなければいけない。これは、われわれのきめた自律の規則であります。厳重に守られなければならない。特に総理大臣という佐藤さんという意味じゃありませんよ。総理大臣、これは将来社会党の総理大臣ができるかもしれません。総理大臣というものは、国民から選ばれた、われわれが選んだものです。したがいまして、国民から選ばれたわれわれが侮辱されたのと同じことだというふうに考える。それはわれわれを選んだ国民を侮辱するのと同じことだ、こう考えるのでございますが、いかがでしょう。
  70. 安宅常彦

    ○安宅委員 だから私の質問になったのですよ。まあいいでしょう、あなたの意見ですから。ここで議論して黒白をつけようたって、それはつかない仕組みですから、いいです。  そうすると、私どもは、こういうことになるのですよ。逆をいえば、私も率直に言って、事前協議で日本の自主的な防衛上の立場というものは確立されておるんだということを盛んに言って法律を通しておきながら、あとでずっと調べてみたら、事前協議制というのは何もないのと同じような協定が出てきたりすれば、これは国を売るものではないかという心配をみんなが持つのは、当然国民だってそこに不安を持っているのです。いま非常に心配しているのですよ。自民党を支持されている方も佐藤総理を支持されている方も、みんなこれが心配であることは事実なんです。それは非常に困ったことだなと思っているのです。いかに言いのがれるかなどという問題ではありません。手段、方法について議論が分れるのは当然だとあなたは言っているのですから、そのことを取り上げて、そしてやる意思はないと言いながら、こういうことを——具体的に日本の国をまかせた総理大臣、そういう人が、日本の国の外交防衛の実権というものを、国民を代表する議会にうそをついてまで法律を出しておいて、そうして今度は別な秘密の協定があって、アメリカ空軍が出動するときには事前協議も何もないんだ、というようなことが明らかになるような協定を政府が結んでおるということならば、そういう意味で、穗積さんの発言国民が侮辱されたのではなくて、そういう行為によって国民が侮辱されたというふうに、私ども考えざるを得ないような気分になるのですね。そういうことなんですよ。そこに問題があると思うのです。ですから、穗積さんの一身上の弁明は終始それに貫かれて、この態度は私はりっぱな態度だと思っているのですが、こういう意味で、あなたもあっさり——総理大臣を売国者と言ったことが国民に対する侮辱だと言うのは、私はやや独断に過ぎはしないかという気がするのですが、どうなんでしょうね。
  71. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 お尋ねがあったから私は答えたのでありまして、事の内容につきましては、これはいまここで私がお答えする範囲ではない、こういうふうに思うわけです。
  72. 安宅常彦

    ○安宅委員 どういう意味ですか。
  73. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 国民に対する侮辱とはどういう意味か、こういうことですから、国民から選ばれたわれわれ国会議員が選んだ総理に対して、売国者というような最大級の悪口を投げつけることは、総理大臣の地位に対してこれを冒涜、侮辱するだけでなしに、それを選んだわれわれに対して侮辱する、それから国民に対して侮辱する、こういうふうに、お問いがありましたからお答えをした。ところが、それを言わざるを得なかった事情等につきましては、趣旨弁明でるる申し上げましたように、これはよくわかる。ですから、その点について私がとやかくここでお話をする範囲を越えている、こういうふうに思うのです。
  74. 安宅常彦

    ○安宅委員 質問がありましたからあなたが答弁したのではなくて、これはあなたが一番先に言ったのですよ、わかりますね。  それで、私から言わせれば、穗積さんの弁明穗積さんの弁明として、りっぱだと称賛をしただけの話で、これは別。私個人、委員として考えた場合には、そういう協定を結んで、秘密協定などを結んでおいて、日本外交防衛上の実権は、あの協定をほんとうにすなおに読めば、日本はどうにもならない。アメリカの指揮命令によって動くどころか、アメリカ日本の軍事の戦略戦術すべてかってにやれるという協定ですよ。こういうものを結んだほうが国民を侮辱したことになると私ども考えている。だから、そういう両論がある、こういうことだけはお認め願いたいと思うのです。  そうすると、私の論理としては、そういうふうにあなたが趣旨弁明で断言するのは、少し鯨岡さん、日本の国の将来を憂える議員の一人として、その辺から考えた場合には、私の考えに同調しろなどとは言いませんが、あまり断言していることは独善過ぎやしないかなという心配を私は持っておるから、あなたはそうは思わないがと答えたので、あなたが思わないと言えばそれでいいんだし、答弁の限りではない、範囲外だとか、さっきから盛んに五、六ぺん言っていますが、そういう意味でなくて、すなおに答弁してもらえばいいのです。
  75. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 質問ですか。——御感想だと思いましたが、質問ですと、私はそうは思いません。
  76. 安宅常彦

    ○安宅委員 私が具体的にいま言いました協定など、あるいは事前協議制などを具体的に持ち出して言ったわけですから。そういうことについて、国民が、そういうことにならないと思って、まかせておる、私はそう断言していいと思うのです。憲法もそうなっているのですから。だから、日本憲法の範囲外にわたるようなことについて、佐藤さんがやったとかあるいは三木さんがやったとか、そんな個人の問題ではなしに、政府責任においてやったことですね。国会で暴露されたら、あ、しまったというような顔をして、それは単なる取りきめだと言っているのですが、政府がそういう行為をやることは、これは国を売るような非常に重要なことになると私どもは思っているのですよ。だから、あなたがそう思わないというんだったら、それでいいのです。  次に私が聞きたいことは、最後の私の質問にしたいと思うのですが、さっきからあなたの答弁の中心は、政策あるいは穗積君の展開された議論、これのよしあしをいうわけではない、売国者ということば、このことによって、私はこれを責めるんだ、こういうふうに発言なさっておられる。  それで、先ほども質問したことと関連をするのですが、あなたはなかなか頭がよろしいから、あそこですっぱりと切ってしまったから、ほんとうの話、私も戸惑いしているのですが、売国者ということばが非常にまずいことばである、これは懲罰に値するものだという断定を下し、四十名の賛成者を得て、あなたが出したことは事実なんですね。そうすると、たとえばさっき恣意にやれるんじゃないかと言ったら、あなた、いまの法律ではそういう心配もあるでしょう、こういうふうに言いました。あなたは恣意だと思って出したのではない、まさか恣意で出したなんて、そんなばかなことはおっしゃらないでしょう。そうすると、先ほどのあなたの答弁の中に、いろいろなそのときの状態や何かで、同じことばであっても、それは懲罰に付されない場合、懲罰動議をやろうという対象に至らない場合もあるでしょうという話があったのですが、この売国者というものはどんな場合でもやはりいけない、こういう断定であなたはお出しになった、こういうふうに理解していいわけですね。
  77. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 私はいけないと思います。
  78. 安宅常彦

    ○安宅委員 そうしますと、この売国者というのはいけない、たとえばドゴールがほかの国の大統領——ジョンソンをさしているのですよ、その人のポケットの中に核のかぎが入っておる、そんなものにフランスをまかされようかと言ったというのを非常に感銘深く聞きました、これが愛国者のほんとうの姿だ、こういうふうに思う。そうすると、日本はそれと反対なんですよ。遺憾ながら反対なんですよ。だから、そういうことをさして売国者と言った場合と、それから大きなけんかをして、何だかんだ、があがあ言って、それで、売国奴あるいはおまえは売国者だと言った場合と、たいへんニュアンスが違うと思います。そういう区分けはない、しかしながらどこで線を引くかという基準もありません、だから恣意にわたることもあるでしょう、この法律の体系からいえば、というあなたのお話ですが、何らかそこに一つの基準というわけにはまいらないと思いますが、まいるなら……。だから、そういうことについてでもなければ、あなたが御心配なような恣意に——あなたみたいな良識のある人が出してきた場合はそうでないかもしれませんが、感情的になって恣意にわたるようなことを防ぐことについて、真剣に私ども考えなければならないと思うのですね。そういうことについて、私はこういう場面というのを二つ想定して、いま穗積さんの場合、ドゴールの話が出たあとのこういう場合と、そうではなくて——いわゆる口ぎたなくののしりとして、売国者、こう言った場合と、私はたいへん違うような気がいたします。政策上の問題で議論してそういうふうに言った場合と、何か口ぎたなく感情的になってそうしてやった場合と、たいへん私はそこに国会権威とか議院の品位とか、こういう問題を頭に置いた場合、違うような気がいたしますが、これはあなたの考えでは、量刑の軽重の範囲には入るけれども、両方ともニュアンスが違っても、それは画一的に処理する点では一般論として正しいのだ、こういう御議論なんでしょうか。
  79. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 かなり詳細にわたる御質問ですが、それはその場の事情等によって個々まちまちであろうと思います。ですから、何かもっと具体的なことがありますれば、それによって、まことに不敏ですが、私なりの判断はできると思いますが、いまの安宅議員の想定の中だけでは、判断はできないと思います。  ただ、ついでながら申し上げますが、いまの想定では、何か話しているうちに議論が高ぶってきて、それで、おまえは売国者だ、こう言った場合と、私がいまやっているこの場合とは、どこに線を区切るかというお話、それは全然線は区切れないと思いますが、国会法第百十九条では、「無礼の言を用い、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。」、これは御承知のとおりであります。百二十条では、「議院の会議又は委員会において、侮辱を被った議員は、これを議院に訴えて処分を求めることができる。」、こうなっておりますから、あとの場合はどうでしょう、これに該当する場合が多いのではないでしょうか。(安宅委員「侮辱という意味ですね」と呼ぶ)侮辱ということで。
  80. 安宅常彦

    ○安宅委員 これはあとでどなたかもっと詳しくやるでしょう。私は、二つの想定じゃいけませんとおっしゃったから、その雰囲気なりを何とか具現しようと思って——私は弁護をする立場ですから率直に申し上げます。ですから、総理が、まあまあ穗積君、ないことにしようじゃないかというふうに言ったという話を聞いているので、それはなかったかと聞いたら、あなたは知りませんとおっしゃいましたので、まあ取りつく島がなくなったわけです。しかし皆さんそれを知っているのです、外務委員会の中で。  もう一つは、だからそういう場合、あなたは懲罰動議を出された方でありますから、この懲罰動議を出すにあたって、一点の曇りもなく、一点のいわゆるきずもなく、一点の落ち度もなく、出さなければならないという信念に燃えて出したと思います。ですから、私からいろいろな角度から質問をされても、そのとおりやります、安宅君どうもと言って頭をかくようなことはいまさらできませんから、その立場はわかりますよ。ですから、あなたはきちっとした答弁をなさっておるのだと思います。だけれども、そういう例ではいけませんといまおっしゃいましたが、そういうこともあろうかと存じまして、はなはだ日本共産党に対しては失礼なことになるかもしれぬけれども、さきに議院運営委員会で、そういうことは懲罰対象になりませんという議事録確認をいたしておるものですから、反面安心をしながら、それで共産党の例を出して、いま「アメリカの凶悪きわまりない侵略と戦争政策を擁護し、それに国民を同調させるための売国的な欺瞞であると断言してはばかりません。」という具体的な例を出して、それでこれは懲罰どころか、そのままになって、拍手で本会議はそのままですうっと通った、そういう例を出して、私は言いました。そうしたら、懲罰動議を出すときは私はそれは知りませんでしたと言ったので、あとで御訂正になったので、そのときは私は言いませんでしたが、こうなりますと、こういう場合とある程度の比較論争はいたしておかなければならないと思いまして、今度具体的に私二回も申し上げておるのです。どういうものでしょう、私はどうもこういう言い方のほうがきついような気がいたしますが、あなた提案者として、ドゴールの例を引いて反語として言った場合と、こういう言論を比較した場合、私どもはこっちのほうが非常に——あなたが言う侮辱といいますか、そういうことばがあるとするならば、あなた方が考えることですから、穗積さんの発言はそういう要素が多分にあるというならば、もっと多分にあるとあなた方が判断をしなければならない言論のような気がいたしますが、いま申し上げたような言論はそうではないということなんでしょうか。そのことを聞いてみたわけです。
  81. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 何がそうではない……。
  82. 安宅常彦

    ○安宅委員 いやいや、共産党の発言ですよ。いまですよ、いまの段階
  83. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 前段のお話の中に、鯨岡は私心もなく落ち度もなくこれを出したと思う、こういうお話がありました。私心は全くありません。これは全く私心はない。ただし落ち度がなかったかどうか、これは私はわかりません。これは議会の運営その他についてはたいへん先輩である安宅議員に、ひとつ御教示を願いたいところですが、私心が全くなかったことをひとつお認めをいただきたいと思います。  それから、前にあったこと、そのことで、それとこれとはどうだろうということですが、私逃げるわけでは決してありませんが、それをいま聞かれても、私は答えようがないです。というのは、私はこの問題を問題にしているのであって、先ほど安宅先生はこれを裁判と同じだというふうにおっしゃいました。そこでこの例も、またよけいなことを言うと思われるかもしれませんが、ある事象を出してきたときに問題にならなかった、その事象を出してきて、それとこれとどうだと言われるようなことは裁判にはないと思うので、私はその川上議員の「売国的」云々のことば、これもかなりきびしいことで、用語として不適当である、無礼の言辞あるいは品位を傷つけない、そういうところに抵触するとは思いますが、それとこれとはどうだろうという比較は、私に求められても無理ではないか、私はそれをお答えする自由を持たない、こういうことを申し上げておきたいのであります。  それから第三点は、総理が、何かなかったことにしようではないかと言われたという、私、不幸にしてそのことを知りません。安宅議員の話によると、大ぜいの者はそれを知っていたというふうにお話しですが、私は知りません。知りませんが、かりにそのとき総理との間に、まあなかったことにしよう、君あんまり失礼なことを言うなよ、いやどうも言い過ぎましたよと言ってこれがおさまったとしても、どうでございましょう。これはむしろお教えをいただきたいのですが、それでも懲罰委員会に付すべきだとある議員考えて、それで賛成者の同意を得れば——これが採択になるかならないかは別ですよ、懲罰委員会に動議として提出することはできる。というのは、かつて、いまはなくなりました清瀬一郎先生が、いまの憲法の問題を御説明のときに、マッカーサー憲法と言った。ところが大ぜいからわあっとやじが出た。そこでその場で、おりないうちに、これは言い過ぎたと思ったのでしょう、マッカーサー憲法と言ったのは取り消します、取り消します、取り消しますと、何回も何回も言った。そこで議長は、いま清瀬議員はどうも不適当なことばを吐いたというので取り消しております。取り消しておりますと、これまた何回も言っております。それにもかかわらず、社会党のほうからは懲罰の動議が出たこともあります。だから、私は別に他意はありませんけれども総理がこれは何とかしようじゃないかと言ったこと、それは私知りませんよ。知りませんけれども、もしかりにそういうことがあったとしても、動議を提出することは間違えているという議論にはならないのではないかと思うのですが、いかがでしょう。
  84. 安宅常彦

    ○安宅委員 わかった。私の聞き方も悪いんだよ。一本一本何かばらばらで言うから、あなたそういうふうに聞こえたと思うけれども、私が言わんとするのは、やはり裁判だからとおっしゃるけれども裁判は比較論争をしますよ。だから率直にいうと、あなたは検事の立場ですよ。検事だって、これは裁判へいって裁判が維持できるかどうか心配だというときは、やはりおかしいなと思っても出さない場合があるのです。ですから私は聞いているのです。  それで、そういう心境で——心境なんというものではありません。これは非常に重要なことですから、どういう立場かはっきりしてほしいと思う。その中で誤りがあれば御指摘を願いたいという話ですが、そんなことは私は考えていなくて、あなたがそういう信念で出されたんだろうからという意味で申し上げているのです。だからそういうことならば、それでよろしゅうございます。あなたのほうでそういうことならば……。  私は再度あとでこの委員会態度を鮮明にしたいと思いますが、もうすでに議運の理事会で、急な立場でありましたから、ある程度のことは、ぴしっとした立証みたいな順序を立てた議論は、原稿を読んだわけでもないし、まだ残っている部分もありますが、一応やっているわけです。したがって、私の態度というものはあとではっきり言いますが、要するに私どもがいま聞いたのは、他党の例まで引いて、その党に対して失礼かもしれませんが、聞いたのは、穗積君ということではなくて、それももちろんあるのですが、日本国会というものが、何か一つの事象をとらえて、国会運営の作戦で、許してみたり許さなんでみたり、あるいは最も尊重さるべき言論の中から——だから、ぎりぎり一ぱいのところかと聞いたのもそれに関係あるのですが、そうでもないという話ですから、ますます私は心配を——提案者である鯨岡さん自体が、こういう法律体系では恣意に流れるおそれあると思うという発言もございましたので、私は深く何か言いませんけれども、将来、日本のこの議会制民主主義というものがどうなるのかということを心配し、そういう場合にわれわれの立場というのは、穗積さんのことの技術的なそういう運営のしかたを見ますと、たいへん倉石さんあたりからの関連があって、しっぺい返しみたいな意味にとれる。そしてその証拠には、予算案が上がってきたら、やりましょうということで、そうして少し長い時間かけてやってみましょうかなと思いましたが、理事会等で、あなたのほうは、早く上げてくれ、党のほうから五日までに上げてくれと言われているんだ、こういう話までございました。これは明らかに、私は議会制民主主義そのものに、日本国会というものに暗影を投げかけるものだということを心配しているんです。  それから、もう一つの例を引いた、事前協議制や沖縄返還の問題についての首相の一連の発言、それからドゴールを例にとった、ほんとうに首相としては、核を持つか持たないかというその国柄の違いはあっても、ドゴールの精神というものを非常に高く評価をしておった、そういうことばと、実際やっていることから見て、ほんとうに国民から懲罰に付せられるのは穗積七郎君ではなくて、これは日本政府じゃないかと思うほど——これは日本政府だと断言してもかまわないですよ、私は。そういう立場にあるものだ。私はあとでもっと詳しく言いたいと思います。いまアメリカ大統領ジョンソンが、北爆停止の問題について重大な声明をし、局面ががらっと変わろうとしているのです。閣議も三者三様、三つの意見が出たなどということが、巷間まことしやかにうわさをされております。けさも自由民主党の相当の地位にある議員さんと話をしたら、あえて名前は申し上げませんが、北ベトナムというのは、なかなかしかし幅広い意見を、柔軟な意見を持っているものだ、タンホアまで爆撃をされたら、これは拒否という回答が、重大声明があるということを盛んにゆうべテレビあるいはラジオで放送しておったから、拒否という態度が出てくるのではないかと思っておったら、米国と話し合う用意があるという声明であった。たいしたものだ。わが党の幹事長あたりに少しつめのあかでもせんじて飲ませたいくらいだという話がありました。こういうのは、いま公式に開かれている懲罰委員会なんか、そういう場合ではなかなか出てまいりませんが、この国会の中の雰囲気として、そういう話がいま白昼堂々と横行しているのが今日の日本国会です。だから、そういう国会のみんなが心に思っていることをはっきりと国民に示して、何か都合の悪いことは隠すなんということじゃなくて、そういう議会運営なりがなされて、だからこういう言論というものはある程度などというよりも、相当これは尊重される原則というものを貫いて、こういう問題で一々懲罰だ何だといって、そうして懲罰にかけてみたら十数日か何かそのまま投げておいて、今度は予算が上がったら、五日までに上げてくれ、論議する日にちはたった一日か二日しかない、こういうことがわかっておりながら、党の本部から言われているのだとおっしゃったから言うのですが、そういう党の執行機関を持っている人々が、その懲罰委員会の上げる日にちまで指示をしてよこす、こういう雰囲気というものを私は非常に遺憾だと思うのです。ですから、鯨岡さんは、そういう意味であなたは提案をしたのではないと思います。私心はないと言いますから、あなたを信用しますよ。しかしこれらの情勢というものをよくお考え願って、いま私が言ったようなことについて、なるほど一面そういうこともあるだろうとお考えになるんでしたら、良識ある鯨岡さんでありますから、賛成した皆さんにおはかり願って、撤回をしてもらったらどうか、私はそう思います。いかがなものでしょう。
  85. 鯨岡兵輔

    鯨岡議員 申し上げましたように、私心は全然ありません。その考えのよって来たる原因等については、遺憾ながら安宅議員と異にいたしますが、国会の姿というものを、どうか国民にもっと信をつなぎとめたいと考えていることにおいては、少しも変わりはありません。したがいまして撤回をするなどという気持ちは毛頭ないことをお答えを申し上げておきます。
  86. 安宅常彦

    ○安宅委員 質問を終わります。
  87. 堀川恭平

    堀川委員長 それでは、この際おはかりいたします。  本人穗積七郎君に対し、次回の委員会に、衆議院規則第二百四十条により、議長を経由して出席を求めたいと存じまするが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 堀川恭平

    堀川委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長においてその手続をとることにいたします。  本日はこの程度にいたしまして、次回は、明五日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十八分散会