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1968-05-16 第58回国会 衆議院 地方行政委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月十六日(木曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 吉川 久衛君    理事 大石 八治君 理事 奥野 誠亮君    理事 塩川正十郎君 理事 古屋  亨君    理事 細谷 治嘉君 理事 山口 鶴男君    理事 折小野良一君       青木 正久君    亀山 孝一君       辻  寛一君    中尾 栄一君       永山 忠則君    藤田 義光君       太田 一夫君    河上 民雄君       三木 喜夫君    山本弥之助君       依田 圭五君    小濱 新次君       松本 善明君  出席国務大臣         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     赤澤 正道君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         経済企画庁総合         開発局長    宮崎  仁君         自治政務次官  細田 吉藏君         自治省行政局長 長野 士郎君  委員外出席者         警察庁警備局警         備課長     三井  脩君         行政管理庁行政         管理局管理官  安達 為也君         専  門  員 越村安太郎君     ――――――――――――― 五月十五日  委員青木正久君、有島重武君及び谷口善太郎君  辞任につき、その補欠として赤城宗徳君、大野  潔君及び松本善明君が議長指名委員に選任  された。 同日  委員赤城宗徳辞任につき、その補欠として青  木正久君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十四日  事業税及び住民税青色申告事業専従者の完全  給与制適用等に関する請願横山利秋紹介)  (第五三七二号) 同月十五日  地方公務員定年制法制化反対に関する請願外  四件(斉藤正男紹介)(第五四三一号)  同外一件(山中吾郎紹介)(第五四三二号)  特別区の区長公選及び自治権拡充に関する請願  (加藤勘十君紹介)(第五四八七号)  同(長谷川正三紹介)(第五四八八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十四日  水道事業起債利子低減等に関する陳情書  (第三七八号)  地方公務員等共済組合制度改善に関する陳情  書  (第四〇四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  都道府県合併特例法案内閣提出、第五十五回  国会閣法第二三号)  警察に関する件(昭和四十三年十勝沖地震に関  する問題)      ――――◇―――――
  2. 大石八治

    大石(八)委員長代理 これより会議を開きます。  第五十五回国会内閣提出にかかる都道府県合併特例法案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細谷治嘉君。
  3. 細谷治嘉

    細谷委員 委員会は成立しておりませんけれども宮澤企画庁長官に敬意を表して、御多忙の中いらっしゃったんですから、質問をいたしたいと思います。  まず、お尋ねいたしたいことは、四十三年四月三十日に経済企画庁は、従来たくさんの開発計画というのがありましたけれども、その評価の上に立って新全国総合開発計画策定をしようということで、そのたたき台としての一つ試案を発表されました。これは明治百年の記念だそうでありまして、ことしの十月三十日までには結論を出すやに承っておるのであります。   〔大石(八)委員長代理退席委員長着席〕  そこで、まず長官お尋ねいたしたいのでありますけれども、現在まで多数の全国総合開発計画関連する法律がありますけれども、この評価はどうなさっていらっしゃるのか、これをひとつ長官お尋ねしたいと思うのであります。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 沿革的に申しますと、最初に東北地方を対象といたしました特定地域開発ということが、戦後比較的早い時期に行なわれたわけでございます。これはやはり食糧増産などを頭に置いていたしたわけでございまして、それなりの効果をあげたと考えておりますが、その後各地域開発のための法律が次々と誕生いたしました。率直に申しますと、その結果、国土開発重点が多少ぼけたというような感じを持っておるわけでございます。  政府昭和三十七年に現在の全国総合開発計画をつくったわけでございますが、その後わが国経済もかなり急速に変化をしておることもありまして、このたびそれを書き直したいと考えておるわけでございます。その際に、在来の各地の開発に関する法律整理をしておいたほうが、国の考え方重点がどこにあるかということがはっきりわかると考えますので、できるならば多少整理をいたしたいと考えておりますが、しかし、これは国会の御意向によることでございますので、できるだけ御賛同を得てそういたしたいと考えております。
  5. 細谷治嘉

    細谷委員 いまの長官のおことばでは、従来の開発計画の功罪というものについて、率直な評価が伺えなかったのでございますけれども、あとでこの策定についての骨組みについてお尋ねしたいのであります。  いろいろな観点から私の意見を申し上げる前に、こういう新国土計画論という本もございます。長官もうなずいておられますので、御存じだろうと思うのですが、それを読みますと、国土開発法地域政策についての理念も方針もないままに、ついに母法としての役割りを今日まで果たさず、また、その規定の中にも空文化しているものが多く、地域開発基本法としての権威を失い、いたずらに形骸化しているといっても過言ではないのである、こういう評価がなされておるわけですが、この評価をどうお考えですか。ずばり言いますと、いままでの地域開発計画全国総合開発関連法は百幾つあるそうですが、これは失敗だったと大臣は見ておるわけでありますけれども、こういう評価もあるので、ひとつ大臣の率直な評価を伺いたいのです。
  6. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 いまの新国土計画論の文章についてのことをちょっと先に申し上げておいたほうがよろしいだろうかと思いますので申し上げますが、後ほど大臣がお答えをされると存じます。  御指摘のように、確かに国土総合開発法は、計画体系として、まず全国総合開発計画上位計画としており、さらに地方計画都府県計画特定地域開発計画、こういうような計画体系考え法律ができておるわけでございます。一番基本になります全国総合開発計画が、法律ができた昭和二十五年からいろいろな事情がありまして、ただいま大臣が申し上げましたように、三十七年までできなかったというようなことがございまするし、また、二十五年当時の事情と現在ではだいぶ違ってきている面もございます。たとえば、特定地域開発というようなものは、すでに大体使命が終わったというようなところもありまして、現在の法律内容においてあまり生きていないというような面もあるわけでございます。私どもは、今度の新しい計画におきまして、こういった国土総合開発法内容についてもいろいろ検討いたしております。計画のできます段階において必要が出てくるということであれば、そういった法律内容についても直していくというようなことも必要になるのではないかと考えております。
  7. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 事柄の性格上法律的な面もないことはございませんけれども、本来法規範で律すべき部分がおもな部分ではないわけでございましょうから、いまのような御批判が時の移りとともに出てくることはむしろ当然ではないだろうかというような感じがいたしております。
  8. 細谷治嘉

    細谷委員 これはある新聞記事でございますけれども、「戦後二十余年、わが国地域開発政策は、常に工業分散格差解消を口にしながら成果をあげるに至らず、かえって過密過疎の弊害を助長してきた。政府はもちろん、審議会もこの点を率直に反省し、抜本的な構造政策を織り込んだ新計画を生み出すよう、」と書いてある。この新聞も、今日まで二十年間行なわれた開発計画というのは、この著者である宮澤さんが批判しているように、やはり失敗だった、格差の是正あるいは過疎過密をある程度調整していくのだ、にもかかわらず、過疎過密というのはさらに激化していった、こういうことからいって失敗だという反省に立たなければならないと思うのでありますけれども、この新国土開発計画策定するにあたっての前提意識は非常に重要ではないかと私は思うのであります。一昨日この委員会参考人を呼んだのでありますけれども、中央大学の大原教授も、やはり格差の拡大や過疎過密を生んだ、あるいは大都市問題というものを生んだ、公害問題というものを生んだ、こういう点において、今日までの開発計画というのはやはり失敗だった、少なくとも政策にゆがみがあった、着眼点が違っておったのだ、工業開発重点に過ぎたのだ、こういうことを端的に指摘しておったわけでありますけれども大臣、そうじゃないですか。
  9. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 事柄の性質上、やはり試行錯誤によらざるを得ないという感じがいたしております。わが国が敗戦後経済を再建いたしますために工業投資重点を置いたことは、それ自身間違っておったとは考えないわけでございます。したがって、それを地図の上で展開いたしますならば、やはり工業開発というものにならざるを得なかったと考えます。そうしてそれがさらに拠点開発方式に展開していったわけであります。それはその段階で間違っておったとは思わないわけでございますけれども、むしろそれに伴うただいま御指摘のような問題が、結果として出てきたわけでありまして、いまの段階になりますと、そういう出てきた結果にもまた対処しなければならないということになるわけであろうと思います。したがって、広い意味での試行錯誤というようなことに、この種の計画はならざるを得ないのではなかろうかという感じがいたしております。
  10. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣、根本的に間違っておったということはおっしゃらないのでありますけれども、いろんな試行錯誤ということはお認めになったわけであります。これは、あまり時間がありませんから、次に進みます。  今度の新開発計画策定にあたっては、重要な柱がございます。その柱の中で、「広域的開発行政推進体制」、このことはどういうことを意味するのか、いわゆる府県合併というものを意味するのか、府県協力体制というのを意味するのか、あるいは地域的ないわゆる道州制的なものを意味するのか、あるいはもっと違った長官としての御構想がおありなのか、これをひとつ、重要な問題でありますから、お尋ねしておきたいと思います。
  11. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこで、先ほどお尋ねのございましたことの続きになりますが、今度この計画を書き直すという段階で私が一番気にかけておりますことは、従来おかした種類のあやまちをもう一ぺんおかしたくないということであります。と申しますのは、とかく全国的な観点が先に立ちまして、その結果、地域感情を無用に刺激するというようなことが、この種の計画には起こりやすいわけでございますので、その点を一番配意しなければならないと思っております。と申しますのは、そうなりますと、結局、計画は書いたが、それを実行することはできないということになりやすいからであります。  さて、ただいまお尋ねの点でございますが、今度この計画基本考え方として考えておりますことは、一次、二次、三次産業のみならず、やがて自然の保存ということが非常に大切な問題になってくると考えておりますから、それまでを含めまして、全国ブロックごとに相当大きなプロジェクトを、地域に即応したようなプロジェクト考えまして、そうしてそのプロジェクトの間を交通、通信のネットワークで結ぼう、大まかにはそういうことを頭に持っておりますので、そうなりますと、これは府県といったようなものを、県境を越えたものの考え方に当然なるわけでございます。事と次第によっては、県境があることがむしろ妨げになるということもあり得ると考えております。別にどの県とどの県が一緒になる、あるいは道州制が必要だというような主張を積極的に論理としてするつもりではございませんけれども、そういうふうなネットワーク計画考えていきますと、やはりおのずから行政単位というものが大きくならなければ非常にやりにくいというような結果におそらくなるであろう、そう考えております。
  12. 細谷治嘉

    細谷委員 行政単位が大きくならなければならぬ、そう考えておるということだけで、府県合併がこれに必要だということもおっしゃらないし、いまのおことばを拝聴いたしますと、むしろそういう府県区域があるということはじゃまになるということでありますから、府県を全部廃止してしまわなければいかぬということになる。あるいは、この新聞にも書いてありますけれども、「府県合併促進の決議に水をさすような関西財界有力者の発言である。」「小手先の府県合併がうまくいくはずがない。道州制の採用など、いさぎよく国土財源の再配分に踏み切る時期だ」という意見もある、こういうことで、この新聞主張などは、そういう観点から「国土総合開発審議会は、広域開発促進投資効率化といった面から、将来の課題として道州制の可否を含めて総合的に検討したうえで、新開発計画策定と取り組む必要のあることは、いうまでもない」こういうことを主張いたしております。  そこで大臣、私どもはいま都道府県合併特例法案という法案を検討しているのです。そうなってまいりますと、この新総合開発計画というものが考えておる広域行政というものは一体どういうものなのか、この辺が具体的に明らかになりませんと、私どもはどうも結論を出しにくい、こう申さざるを得ないのであります。大臣は、府県区域はじゃまだ、府県合併ということだけでも片づかぬ、さればといって道州制ということもおっしゃらない、どういう広域行政をお考えになっているのか、きわめて重要なポイントでありますから、お教えをいただきたいと思うのです。
  13. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 細谷委員がお考えになっておられるだろうということと、私ども考えておることとはおそらくあまり実は違わないのではないかと思っておるのでございますけれども国土総合開発計画一つ青写真でございますから、具体的なケースを無視して、こことこことは一緒になったほうがいいとかなんとかということを、あまり具体的に言うことは、やはり青写真のたてまえから言えば避けておくべきではないだろうか、ただ青写真を見た人たちは、これはこういうことであればこの間の県境はないほうがいい、あるいは行政単位はもっと大きくあったほうがいいという結論をおそらくそこから引き出されるであろう、これは十分考えられることでありますけれども青写真を書く立場の者が、だからこの県境はむしろないほうがいいとか、この県とこの県は一緒になったほうがいいとか、具体的に示唆することはなるべく避けておいたほうがいい、こういう考えでございます。
  14. 細谷治嘉

    細谷委員 示唆することは避けたほうがいいという政治的な御配慮かと思うのですけれども、それにいたしましても、従来二十年間やってまいりました開発行政の上に立って、少なくとも批判反省、そういうものの上に立って新しい開発計画を作成する、その重要な柱が広域開発行政にあるのだということになるとすると、その青写真というものを大臣にここである程度示していただかなければ、取りつく島もないと私は思うのです。もう少し具体的に大臣としての構想をお聞かせいただかなければ進まないのではないかと思うのです。
  15. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 総合開発計画を書きますときには、やはり全国を幾つかのブロックに分けておのずから考えるわけでございますので、ブロック単位という考え方は、青写真を書く基本的な考えの中にあるわけでございます。ただ、私どもが最も戒心しなければなりませんのは、いわゆる開発専門家立場からときどきおちいりやすい弊というものは、ここへこういうものを張りつける、こことここがこう結んでこれとこれと一緒になったほうがいいというような図上作戦をとかくやりやすいわけであります。それは、しかし、それ自身意味があるのでございますけれども、現実にそこに人が住んでおりますし、長い間の歴史、沿革がございますから、図上でもってこれとこれとをこうしたほうがいいといったようなことを申しますと、具体的になりますとそれができないのみならず、要らざる摩擦なり地域感情を刺激したりすることがしばしば起こるものでございますから、なるべく直接にそういうことを言うのを避けておきたい。ただ、とらわれない人が図面を見れば、なるほどそうすればこうしなければならないかなという自発的なその地域意識というものが起こってくるようなふうには書くつもりでございますけれども、こっちから、これとこれを一緒になれとかいうことはなるべく言わないほうがいいと考えております。青写真をと言われますけれども、これはことしの秋、年内には少なくとも決定をいたしたいと思っておるわけでございますが、ただいまその前段として、私どもの役所で各都道府県ごとに個別にいろいろな相談をいたしております。根本的な意思の疎通をはかりました上で青写真を進めていきたいと考えるものでございますから、ただいま全体の具体的な構想を申し上げることはできません。しかし、大まかに頭に考えておりますことは、先ほど申し上げましたように、一次産業、二次産業、三次産業及び自然の保存といったようなことを頭に置きながら、各ブロックごと特色のあるかなり大きなプロジェクト考えまして、そしてプロジェクト同士ネットワークで結ぶ、そういう考え方でございます。
  16. 細谷治嘉

    細谷委員 たたき台といいますものの、非常な重要な点がぼけておる。おとといかと思うのでありますけれども、さっそくこの新全国総合開発計画に、たとえば建設省をはじめとして他の省はかなり激しい反対意向が出つつある、こういう新聞記事すらあるのであります。  そこで、いまの大臣のおことばから推測いたしますと、各ブロック単位——ブロックといいますと八つか九つでしょう。そういうものに大型プロジェクトをする。そういう場合に、推進するのは政府がおやりになるのですか。あるいはそれのブロックをひとつ合併させよう、そうしますと、いわゆる道州制ですね、そういうことをお考えになっておるのか。あるいは、現在ブロックごと連絡会議というものが持たれております。法律はあり、一年に一回か二回ぐらい行なわれておりますが、実質的には有名無実ですね。何をもってこれを推進されようとするのか。へたをしますと、百年記念ということで打ち出して、いままでの反省批判の上に立ってできた、二十年たってみたらこれもまたたいへんな批判反省が生まれる、ばらばらだった、こういうふうになりかねないと私は思うのであります。そこを憂えますので、一体どういうところがベースでそういう大型プロジェクトを推進していくのか。国もむろんやらなければいかぬでしょう。地方団体の今日の力をかりないで国が直接事業をするわけじゃありませんから、その辺の関連というものが明確になりませんと、「広域的開発行政推進体制」と重要な柱としてここに打ち出されておるのが一つも明確じゃないのであります。  私は、端的に言いますと、そういう二十年間の反省の中からこういう策定計画を、明治百年記念企画庁が中心になって樹立しようとしておる。それも十月三十日であります。佐藤総理は、府県合併明治百年記念にやるのだ、これも明治百年記念にやるのだというのでありますから、それまでやはり全体の計画ができた上で、基礎がきちんとできた上で問題の決着をするのが正しいのではないかという気さえするのであります。ただいまの大臣のおことばでは私は非常に不満です。もう少し薄くてもいいから、ひとつ大臣基本的な構想ぐらいは御説明いただきませんといけないのじゃないか、こう思うのですが……。
  17. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実際そういうことになりかねませんし、私も実はそれを一番心配しておるわけでございます。ですから、今回は、在来の経験にもかんがみまして、先ほど申し上げましたように、もうほぼ二年に近いようでございますが、一つ一つ都道府県と、その県がどういうことを希望しておるか、自分の県の開発をどういうほうに持っていこうとしておるかということもよく聞いておりますし、また、私どものほうの基本考え方も個別に話をしておるわけでございます。そういう意味で、在来青写真をつくって上からおっかぶせた、そういうふうになりかねないものでございますから、今度はそうでないことにしよう、できるだけ個々の県あるいは個々ブロック意思を通じながらここまで準備作業を進めてきたつもりでありますし、また、これから先も、各地方ブロックごと開発審議会がございますので、そのことも御相談をしていきながら仕事を進めてまいりたい。明治百年記念といったような気負った考えがあるわけではございませんが、やはり地域ごと特色というものはあるはずでありますから、それに即応したプロジェクト考えていきたい。  これをどういうふうに推進するかということでございますけれども、それはかりにその地方と十分な了解ができて、計画策定されたといたしますと、当然公共投資重点的にそのプロジェクトに振り向けることによって誘導をしていくつもりでございます。
  18. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣、気負ってはおらぬと言いますけれども、おたくのほうのこの試案の冒頭に「明治百年を迎えた今日において、」と書いてあるのですから、これはやはり相当気負っておるということですよ。  そこで、これ以上大臣も時間がないようでありますから質問しても何ですけれども、これを読みますと、広域行政というのは、いま私が御質問したけれども宮澤企画庁長官としてはどうもはっきりおっしゃらない。ところで、この計画の柱になるべきもの、これは全部国がおやりになるのですか。いまのお話ですと、国と地方団体あるいは関係ブロック、こういうものと密接な関係をとりながら、こういうお話でございますが、それならば、広域的な開発行政を推進するにあたっては、少なくとも企画庁といたしましては、特に長官経済専門家でありますから、そういう場合の国と地方との間の機構上の問題、権限上の問題、責任を明確にするというような問題、あるいは財政上の問題、こういう問題も重要な柱にならなければならないと私は思うのです。これを読みますと、広域行政広域行政といっておりますけれども、全部国がおやりになるんじゃないか、こういう気さえするのであります。広域行政の実態が明らかにされないのでありますから……。この辺はどうなんでしょうか。行政機構というのは一体どうなるのか。どういうふうにお考えになっているのか。
  19. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 とても国だけの力でできるものではございませんし、それは財源の問題ばかりでなく、地方自分でそういう気になって一緒にやろうと言ってくれなければ、何事も国だけではできない。ことにこういう地域開発はそうだと考えております。  それで、私自身は、本来国と地方との行財政の再配分ということが必要だと考えておるものでございます。地方制度調査会がすでに行政の再配分については考えを出されたようでありますが、財源が伴わなければ行政の再配分はできませんので、今年夏でございますか、秋でございますか、財源の再配分についても提案をしてくれるものと承知しておりますが、やはり行財政両面にわたって国と地方との再配分考えなければ、あらゆることが実は行き詰まってきておるのではないか、そう考えております。で、これは、この開発計画との関連ばかりではございません。そういう段階にきておるということは、もうおそらく十年ぐらい、すべての人が認めていながら、今日まで何もできていないのでありますから、やはりどうしてもそれをしなければならない段階にきておる、その問題に直面しなければならない時期にきておるというふうに考えております。
  20. 細谷治嘉

    細谷委員 直面している、こういうことは、もう私もそう思っております。しかし、直面しているという大臣のおことばは聞きますけれども、直面したそういう困難さを解決しようという姿勢も、この中にはほとんど書いてない。国と地方との間は一体どうなるのか。いま大臣が、この夏ぐらいには地方制度調査会の答申が出るだろうと、こうおっしゃっておりますが、大臣地方制度調査会の答申というのは、昭和四十年の第十次の制度調査会の答申に基づいて、問題の自治法附則八条の国費職員の身分をどうするのかとか、あるいはいろんな許認可事務等をどうするのかとか、そういうようなものに基づいた、わずかな二千百億円程度のものについていま審議が進められて、その答申にしぼられておるわけですよ。大臣がいまおっしゃった、直面している問題は何かといいますと、そういう問題も、これは国と事務の関係を正確にする、責任分野を明らかにするということでありますけれども、激変する社会経済情勢に対応するような税財源の再配分という議論は、この夏には地方制度調査会は出ないのですよ。ところが、明治百年を記念して、この十月三十日にはそれが出されようとしているわけですから、少なくともこれは非常に重要なものですから、その中にはそういう行政事務の問題、財源の再配分というものは、当然重要な柱として、広域行政体制をうたうばかりでなく、これは重要な柱として打ち立てていただかなければならぬものだと私は思うのですけれども地方制度調査会がこの夏ぐらいには答申を出すでしょうが、これだけでは問題の解決には全然なっていません。これはどうなんでしょう。
  21. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはよくわかります。よくわかりますが、この場でもってそういうことを言うことがいいのかどうかということは、やはりよほど考えておかないといけないと思います。私どもがこの場で、この国土総合開発計画の場をかりてできることは、おそらくは、これを読んでこの青写真を見てもらうと、どうしてもそういう問題は解決しなければならないなあという、そういうふうに読む人が思われるであろう。経済の現実のほうが先へそういうふうに進んでいく、そういうことを国民にお知らせをしたいということが私どもの役割であって、それから先、行財政財源などの再配分を具体的にどうやるかということは、おのずからそれを解決する別の場があるのではないだろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  22. 細谷治嘉

    細谷委員 別の場がありましょう。別の場があります。しかし、私が大臣に御質問し、特に要望いたしておる点は、少なくとも経済企画庁としては、国土の新しい総合開発計画を進めて、二十年後の一つの像を描いて進む以上は、こういう柱とこういう柱とこういう柱が必要だ、この柱はりっぱに打ち立てなければならぬと私は思うのです。その柱が一向明確じゃないわけですね。広域行政というものについての大臣のお考えもどうも明確じゃない。重要な国と地方との関係というのは一体どうなるのか。そういう行政上、財政上の問題についても、これについては柱も何も入っていない。こういうことになりますと、この開発計画自体がどうも絵にかいたもちになってしまう、こういうことになると私は思うのですよ。経済企画庁事業予算をお持ちにならないでしょうけれども、国のあるべき姿を二十年後に描いたならば、それにまっしぐらに突進していって、どうしても欠かせないところの柱というのは、この中で打ち立てていただかなければならぬと私は思うのですが、そういう積極的な姿勢が、大臣にもおありになるのでしょうけれども、ここでどうも、まことに残念なんですが、表明されない。  たとえば、地方自治法ができた二十二年の五月から実施されている際に、ほんとうに戦前の姿を現在の地方自治法に乗せるという経過規定の法律さえも、いまだに戦後二十数年たって解決できないでおって、そして絵ばかりかいて、文章で書いても、これは作文じゃないですか。絵にかいたもちじゃないですか。そういうことでありますから、各省が独走をする。こんなものはどうせ絵にかいたもちだ、企画庁のやつらは反対なんだ、もうのろしを上げている、こういうことになると思うのですよ。  大臣、もっと思い詰めた形で積極的にこの問題を進めるのならば、もう二十年の失敗は繰り返さないという形でぴしゃっと柱を立てていただかなければならぬ。その柱を立てていただく場合に、広域開発行政というのは府県合併ということじゃないのだ、こういうことだけははっきりいたしましたけれども、さらにこれだけでは足らない。国と地方との関係をどうするかということの柱を立てていただかなければならぬと私は思うのです。これは地方制度調査会に逃げ込んでも大臣の期待するものは出ないのでありますから、大臣、これをやるのは明治百年記念と気負っておるのですから、やっていただかなければならぬと思うのですが、最後にひとつこれを承っておきます。
  23. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、仰せられますことはよくわかりますし、ほんとうはそれが正論なんであろうと私も実は思っております。思っておりますが、現実の事態としては、地方事務官一つ解決できないし、中央の役所が、私の観点からすれば、不必要と思われる地方の出先をたくさん持っておって、その整理すらできないというのがいまの現状でございます。これは何かしなければならないということで、私も昨年自分個人の構想を出しましてから、主として自治省、建設省、大蔵省等との関係なんでございますが、その間にもっと対話がなければならないということ、私も微力ながらそれに努力をいたしてきたつもりでございます。今年地方交付税をめぐる国と地方とのやりとりが、初めて——多少おかしな形でありますが、ああいう形でできました。これは、ああいう種類の対話としては、まあ絶えてなかった久しぶりのことだと思いますが、それぐらいこの問題の解決はむずかしゅうございまして、この場合、それを持ち込んでくるということになりますと、さらに事態を複雑にするだけなのではないだろうか。むしろ私どもとしては、これから二十年先の国土総合開発ということを考えるとこういう青写真になるということをもし言うことができれば、それに基づいておのずからいま御指摘のような問題も解決しなければならないという機運が出てくるのではないだろうか。そういう役割りを果たしておこう。さらにもう少し踏み込んで、いま言われたようなことができれば、これはもうまことにけっこうでございますけれども、事は経済開発だけの問題でもございませんしいたしますから、やはりこの場でもってそれを片づけてかかろうとするのは、少し望みが大き過ぎるのではないか、こんな気持ちでいるわけでございます。
  24. 細谷治嘉

    細谷委員 望みは大き過ぎてもいいのですよ。  最後に、企画庁長官お尋ねしたいのです。  私は、この計画をつくるにあたって、そういう重要な柱が抜けておる、これをひとつぜひ入れていただかなければならぬ、こう考えますと同時に、私は今日までの開発計画というものを見てみますと、これは何のことはない、工業開発、いわゆる基盤整備のみに重点が置かれたものであった。そういうために住民の福祉というものはないがしろにされた。いま所得倍増計画から社会開発ということばで進められておりますけれども基本姿勢は一つも変わってない。ですから、公害は激発する、過疎過密の問題はどんどん進んでいく。このたたき台の中でも、新聞でも論評しておりますね。一体、過疎過密をどういう方向で解決するかという基本方向も出ていない。私もそう思うのですよ。そういう問題、あるいは大都市の問題をどう解決するのか、そういう地方制度あるいは行政問題、財政問題、そういう問題も、どうも基本姿勢のひずみじゃなくて、基本姿勢に誤りがあるのだ。本来、政治というのは住民福祉に奉仕するというのが政治なんでありますから、今度は二十年後の反省の上に立ってつくる以上は、住民の福祉を増進する、こういう観点でこの計画は立案していただかなければならぬと思うのでありますけれども、最後に、ひとつ大臣のその辺の基本姿勢をここで表明しておいていただきたいと思うのです。
  25. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点も実は御指摘のとおりであって、その辺を私自身も一番心配をいたしております。非常に率直に申しまして、この試案の中で、私は、一番弱いところは過疎問題に関する部分が一番弱いと思っております。これが最後にできましたときに、うまくそれにこたえられるかどうかということについて、いまから実は私は危惧を持っております。おそらくこの過疎問題についてはこの計画をずっと詰めていきますと、やはり村落の再編成をしなければならないといったようなところへぶつからざるを得ないと思いますが、そのときに、しかし農業のビジョンがどうであるか、再編成はどういう方向に向かって進んでいくかというようなことについてあまり立ち入って書くことが結果としていいかどうかという問題がやはりあると思います。ですから、おそらくは再編成がどうしても避けられないという方向を示唆するといった程度にとどまるのではないだろうか、これを読まれた人たちが、なるほどそうかといって再編成に動いてくれればまことに幸せだ、そういったような青写真を書いております。こういうことあたりに結局落ちつくのではないだろうか、試行錯誤でありますから、確かに公害とか過疎といったような問題がいままでおくれてきたことは確かでございますが、また、見方によっては、公害とか過疎とかいうことが政治の問題として取り上げられるようになったということは意識として私は進歩であると思います。問題として取り上げられるようになって初めて解決への模索が始まるわけでございますから。十年前にはそういうことは取り上げられていなかった。少なくとも三十七年の全国総合開発計画ではそういう問題はあまり意識に乗っていなかったわけであります。そういう新しい問題意識を持つということが、やはり試行錯誤の結果出てきたのではないか、過密の問題につきましては、ある程度この計画は答えることができるであろうと思いますし、公害についてもそう思いますが、過疎の問題については、あるいはしっかりした答えを具体的に出すことはできないかもしれません。これは私非常にその点を心配をしておるのでございますが、さりとてどうしたら答えが出るかということもわからない状態であるというのは、率直に申しましていまの現状だと思います。
  26. 細谷治嘉

    細谷委員 自治大臣、行管見えておりますか。
  27. 吉川久衛

    ○吉川委員長 大臣と安達管理官が見えています。
  28. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣に質問したいのですが、先だって参考人を呼びまして、参考人の御意見をお聞きした際に、いま私は経済企画庁長官の新しい開発計画策定を聞いても、依然としてはっきりしないのでありますけれども、今度の法案の第二条に「合併関係都道府県間の格差の是正に寄与する」こういうことがうたわれております。この間の参考人は、格差はますます拡大してきたんだ、こういうふうに言っております。この法案によりまして二条の関係都道府県間の格差の是正が保障できますか、これをお尋ねしたい。
  29. 長野士郎

    ○長野政府委員 大臣がお答えいたします前に、この法案が立案されました趣旨につきまして一言御説明申し上げておきたいと思います。  地方制度調査会の答申では、御承知のように府県合併基本的な態度といたしまして、現在の府県ごとに県を単位として考える、これが一つ。それから、いわゆる後進地域と申しますか、先進地域と申しますか、いろいろ社会発展の状況が府県ごとに違うわけでありますが、相なるべくは、そういう意味で同じような条件ということではあるけれども地域格差の是正に資するような府県の組み合わせというものが望ましい、こういうことを申しておるわけでございます。そういう意味で、この第二条の府県合併基本というものの中に、その合併についての基本的なものの考え方をこの第二条は明らかにする必要があるということで規定しておるわけでございます。したがって、そういうような合併、要するに合併関係都道府県間の格差の是正に寄与できるような合併というものを配慮すべきである、こういうことを申しておるわけでございます。そういう点でいままで経済力の発展の非常に強かった府県と、これから発展に立ち向かおうとするような府県とが合併をいたしますことは、そういう意味ではやはり府県間の格差の是正に寄与できるということに相なるわけであろうと思うのであります。  この前の参考人の御意見に、開発をすることはむしろ格差を拡大するんだというようなお話が確かに一部あったようでございます。どうも、そのお話は、御発言の中身が非常に簡単でございましたので、私どももちょっと理解に苦しむ点があるわけでございますが、特定の場合にそういうケースが出てくることはあるかとも思いますけれども、それが直ちにもって都道府県合併の場合にすべてそのとおりだというふうには私どもは理解できないと考えております。
  30. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、格差の是正に寄与するといっているが、それは保障できるか、こういう質問です。それについての答えがないわけだ。時間はかかりましたけれどもね。ちょうど企画庁のほうもいらっしゃいますから、経済審議会地域部会報告というのがございます。その一一四ページに昭和四十年度における「地域格差財源調整」という表がございます。これを見ましても、いままでの開発計画、これも広域行政なんということも考えながらやってきたところで、この格差はたいへん拡大しているんですよ。どなたが何と言おうと、格差が拡大したということは事実なんです。この表を見てもわかりますが、もっとも格差というのは所得水準だけがということではありませんけれども格差ということは所得水準というのが重要な一つの要素であることは間違いない。たとえば、例をあげて申しましょうか。関東の臨海、いわゆる東京湾ですね、一三九ですよ。全国平均を一〇〇とします。南九州は六五ですよ。たいへんな格差でしょう。これは拡大しているんですよ。北海道は八三です。近畿の臨海地帯は一二八です。これは昭和四十年度の地域の一人当たりの所得水準ということです。格差は拡大しているでしょう。この間の参考人が言っておったのは事実ですよ。ところが、この法案の二条には、「合併関係都道府県間の格差の是正に奇与する」と書いてある。だから保障できるのかと私は聞いておるわけだ。戦後二十年間格差は拡大していったんですよ。そうでしょう。
  31. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 ただいま御指摘地域部会の表に出ておりますようなことで、一人当たりの所得水準で比較した場合の格差が非常に大きいということは、御指摘のとおりでございます。ただ、最近の推移でながめてまいりますと、三十年代におきまして格差の推移ということを見ますると、地域別に若干の違いはございまするが、大体昭和三十六、七年ごろまで関東地域を一〇〇とした場合の、たとえば九州とか東北とか北海道、いわゆる後進地域といわれるところの格差は若干拡大傾向をたどっておりましたけれども、三十八年ないし九年ごろをピークといたしまして、その後現在まで若干縮小傾向をたどっております。私どもの今度の計画におきましても、こういった格差がなくなるというようなことは考えられませんけれども、少なくとも同一の産業における格差というようなものはできるだけないようにしたい。  ただ、もちろん地域別に産業構造の相違というものはございますけれども、先ほどお話がございましたように、地域の特性に応じて開発計画を立てて進めていきたいということでもございますので、こういった意味の一人当たりの所得格差というようなことでは当然解消はできない、こういうふうに考えておりますが、ただいま申しましたような同一の産業における格差というような点では、これをできるだけ平準化するような考え方で進めなければならぬ。同時に、生活環境の各種の施設の水準というようなことにつきまして格差があるということが、実際問題として非常に大きな問題でございますので、これは国定生活審議会の答申においてもそうした点が指摘されておりますが、今度の計画基本考え方におきましても、こういった生活関係の施設の水準というようなものの格差をむしろ問題として、そういうところにおいて格差の縮小をはかる、場合によりますればいわゆるナショナルミニマムといわれておるようなものを頭に置いて施策を進めてはどうだろうか、こういう考え方でございます。
  32. 細谷治嘉

    細谷委員 いま私は個人の所得格差ということをちょっと申し上げたのですが、一体、地域開発等にあたっての地域格差というのをあなたのほうはどういう要素をお考えになっておるのですか。列挙してください。
  33. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 この地域部会報告でもその点は述べておるわけでございますが、ここで問題としておりますのは、格差問題としていろいろな角度から見るべきだということで、所得水準、消費水準、生活水準、経済の発展率であるとか、あるいは地方の財政力、そういったいろいろの面からとらえて問題にしていくべきであるというような考え方をとっております。  私どものほうの基本考え方においても、考え方としては大体似たようなところでございますが、ただいま御説明申し上げましたように、特に国土総合開発計画としてはやはり施設の計画ということがこの開発計画の性格になってまいりますので、生活環境関係の施設の水準というようなところに特に着目をして改良していったらどうだろうか、こういう考え方でございます。
  34. 細谷治嘉

    細谷委員 所得水準が下がれば、所得水準の格差があれば、その地方の財政力というのは非常に格差が大きいのですよ。これは常識ですよ。あなたのほうのこの表を見てもわかるでしょう。あなたのほうは、これを還流率ということで使っておりますが、その還流率というのを見てみても、たとえば東京は昭和四十年度が一〇・九だ。昭和十三年が六・四ですよ。鹿児島県をとりますと、昭和十三年は五一・一ですよ。いまや二三三・七じゃないですか。これほど自主的財源が枯渇しているということですよ。財政力の格差は、いまや個人の所得格差以上にぐんぐんと広がっていっているという実態です。こういうことでありますから私は心配でありますから——それがまた二条に「格差の是正に寄与する」なんてきれいにうたっているのですね。こんな実態に反するような文句は法律にお書きにならないほうがいいのじゃないか、こう私は申し上げておるわけです。保障できないならこれはお書きにならぬほうがいいですよ、逆に進むのですからね。
  35. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 この二条についての質疑応答が繰り返されておりますが、二条には、言うまでもなく、ここにありますように、つまり将来一体性のある区域として発展の可能性のある区域をばらばらにしておくよりか、一体化して行政運営をやったほうが地域住民の福祉につながるという考え方であります。しかしながら、一方、合併にあたっては、格差の是正に寄与することができるように配慮すべきである、そういうようなつけ足りがついておることは、私はあるべき姿であると思うのです。  そこで、先ほどから、一体格差とはどういうものをさしていうか、列挙せよというようなお話もございますけれども、列挙すれば切りのないことだと思います。おっしゃるとおり、所得格差あたりは一番中心課題であるべきものだと思います。文化水準にいたしましても、あるいは生活環境にいたしましても、やはり格差が確かにあるわけですから、それをどうして解消していくかということは大きな課題であります。所得面にいたしましても、私ども、この問から問題になっております大阪、兵庫、鳥取を比べました場合に、単純労務者の賃金だって、鳥取県で千円以下のものが、隣県にいけば千五百円になり、大阪の万博のところに働きにいけば三千円になる、こういうことになって、労働力の移動も激しいわけです。それを力を一つにしたらそれで統一ができるという簡単な考え方に立っておるわけではありませんけれども、やはりそういう総合、一体性があったほうが発展に便利であると考えられる地域にあっては、それはそこのブロック内で見て、そういった地域格差——兵庫県の例もありましたけれども、やはり是正をはかるように努力するのは私は当然のことであると思うのです。そういう実力のある合併公共団体とその他の取り残されたものとの格差がどうなるかということになると、これはなかなか容易ならぬことでございまして、先ほど経済企画庁長官もだいぶ苦慮しながら答弁しておったわけでございますけれども、それとこれとは私は関係ないとは申しませんけれども、やはりそういう一体性があったほうがいいと考える。ただ、ある地域合併への道を開くということは、私ども一つの時代の要請でもあると思いますので、この二条もそういった意味でお聞き取りを願いたいと思います。   〔委員長退席、塩川委員長代理着席〕
  36. 細谷治嘉

    細谷委員 いまの大臣の答弁、明確じゃないですよ。合併したら格差が是正されるのだ、私は、冒頭、大臣に、この法律地方制度調査会の答申のつまみ食いじゃないか、こういうことを申し上げた。少なくとも国としては、自主的に盛り上がる力で合併したいということであれば、これは恋愛結婚みたいなものですから阻止することはよろしくないでしょう。しかし、そのために府県間の格差ができるということは好ましくないから、たとえば地方制度調査会は「府県行政水準は、できるだけ均衡がとれていることが望ましいので、合併と並行して開発のおくれている府県に対しその開発を進めるため、行財政上の施策を講ずることが必要である。」こう書いているじゃないですか。これについては法律も何も出ていないじゃないですか。同時に、おこがましくもこの二条に、いや、合併したら合併府県間の格差が是正されるのだ、そうでしょう。愛知県と三重県と岐阜県が合併した、金はどこからもくるのでありませんから、三つの集ったものが一つのさいふの中に集まる、それを割り振りをずっと均衡化したら、それは一見格差が是正されるかもしれませんけれども、先ほども明確になっておりませんけれども、今日までの開発計画、十月三十日にできるであろう開発計画も、いわゆる社会開発という名において産業基盤の整備に重点的な投資が行なわれることははっきりしておる。現にこの一条の場合でも重点的な投資をするのだといっている。そういうことでありますから、この格差が是正されるどころじゃなくて、拡大されるのはこれは自明の理でしょう。それをここへわざわざ「格差の是正に寄与する」なんてお書きになるのは事実と違うじゃないですか、そうでしょう。
  37. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 二条のことでございまするけれども合併一つの機運であり、趨勢であるから、その道を開くということでありまして、そのために都道府県間の格差の是正が保障されるかどうかというお話ですけれども、私は、これは一応直接には関係はないと考えております。しかしながら、こういう際に、やはり実力のある県ができて、しかも取り残されたところは落ちぶれるわけでございまするから、そういうことについて全然配慮がないということは、政治の正しい姿でもありませんし、やはり格差是正に寄与するために、できる配慮というものは全般としてあることは当然のことである、そういった意味で書かれてあるわけでございまして、合併したらすぐに、じゃ格差の是正を保障してくれるかということは、私は関係ないと考えております。
  38. 細谷治嘉

    細谷委員 配慮しろ、そういうふうに書いてあるだけだ、だからこっちのほうは責任ないのだ、こんなことじゃだめですよ、あなた。少なくとも一条には「効率的な行政の確保及び住民の福祉の増進に寄与することを目的とする。」とあるのですから、配慮どころじゃないですよ、これは。一条から出てくるものは配慮するだけで、ならなければしょうがないのだ、こんなものじゃいけませんよ、これは。この二条だけにこだわってものを言っちゃいかぬです。この点はどうしても納得できない。私は、配慮するなんて書いてあるのは、これはごまかし文句だ、ことばが少しきたないけれども、そうならない。逆に格差を拡大するのだ、こういうふうに申し上げざるを得ないと思うのです。  そこで、ちょっと先に進みますけれども、この間、財政の問題はコップの中のあらしだということを申し上げました。まず長野さんからお聞きしますが、この法律のどこに、行政府県の能力を充実強化する——財政上のことはこの間聞きました。行政上どこに府県の能力を充実強化する項目があるのですか。
  39. 長野士郎

    ○長野政府委員 この前も申し上げましたように、この法律考えております点は、自然的、社会的に一体性のある府県合併、それによる府県区域の拡大ということが府県の広域的な地方団体としての広域行政の推進に合理的かつ効率的な影響を及ぼす、したがって、その意味府県の能力の充実強化に資するということを考えておるわけでありまして、この法律によって直ちにほかの府県よりさらにふえるような法律上の地位、さらに権限を強めるような法律上の地位を与えるということを考えておるわけではございません。府県の規模の拡大が、すなわち広域的な地方団体としての広域行政を合理的、効果的にやりやすくする、そういうことを考えているわけでございます。
  40. 細谷治嘉

    細谷委員 広くなったらやりやすくなる、やりやすくなるから充実強化される、長野さんらしくない飛躍した議論ですよ。論理性が一つもないじゃないですか。
  41. 長野士郎

    ○長野政府委員 現在広域行政の問題は、要するにインタープリフェクチャーと申しますか、府県間におけるところの府県間にかかわるいろいろな問題でございます。道路の問題にいたしましても、河川の問題にいたしましても、あるいはまた住宅の配置の問題にいたしましても、いろいろ府県間にわたる問題が問題になっているわけであります。そういう意味で、そういう問題になっておるものが、府県の統合ということで一つの単位として広域的な観点からの計画が立てられ、それに基づく事業の施行ができるということは、すなわち広域行政というものを担当しておりますところの府県としての能力発揮に資するゆえんである。これは何びとも認められるところではないかと思うわけでございます。
  42. 細谷治嘉

    細谷委員 ゆえんであるといったって、面積が広くなっただけですよ。そういうことかもしれませんが、住民から陳情も来ないし、唯我独尊で行政ができるから、知事ものんきなもんだ、そういうことでやれる、思うとおりにできるから充実強化される、こんなことですか、議論は。あなたの言うことは何も論理性がないじゃないですか。
  43. 長野士郎

    ○長野政府委員 私は、府県区域の拡大という点について、この法律合併ということを直接の目的にしておりますので申し上げておるわけでございますが、現在の府県区域、先ほどの企画庁長官お話にございますように、府県の境界がじゃまになることもあるということを申されました。現在の府県区域というものによって、広域行政というものが地方行政の分野でもある面停滞をしておるという感じに受け取られておる面が少なくないことは、これはもう先生御承知のとおりであります。そういう点を合併によって合理的に解決するという道を開く、これはもう大いにあり得ることでございまして、その点は何もならない、保障にならない、陳情が来ないからいいというようなことを申し上げておるわけではございません。
  44. 細谷治嘉

    細谷委員 そこで、少しも納得できませんが、四月末の日本経済新聞の社説に、自治省の行革構想というものが出ておりました。この委員会でも、自治省は行政改革というものを考えておるようだが、その構想を説明してくれとある委員から質問したら、まだ固まっていません、こういうことでした。行管のほうでは、二月二日かの閣議決定に基づいて、六月末までに各省から行政改革の方針を出してもらって、それを検討して八月末には行政改革の方針を閣議決定する、こういうことだそうですね。そこで、行管もいらっしゃっておりますが、この法律の中には充実強化ということだけを麗々しくうたってあって、内容は何もない。  そこで、お尋ねしたいことは、自治省の行革構想とは一体何ですか、これをまずお尋ねしたいと思います。
  45. 長野士郎

    ○長野政府委員 お話がございましたように、政府では行政改革についての長期の計画を持とうということで、行政改革本部というものが置かれておるわけでございます。その場合に、行政改革の内容といいますか、対象といたしまして、地方行政にもそういう改革の必要のあるものがたくさんあるわけでございます。しかも、そういう点につきましては、地方公共団体としては自主的に行なえるものについてはずいぶんいままでも努力をしてきたと考えられますが、国の法律なり制度によって行政処理を義務づけられておりますものにつきましては、改革する余地があるといたしましても、制度改正を待たなければ改革できない、こういう面が多いわけでございます。したがいまして、そういう意味で、地方行政の面における制度改正を伴う国の法制を改革することによって改革できますようなものにつきまして、自治省としては、地方団体意見を聞きながらそういう改革案をまとめまして、国全体の改革の際に、国、地方を通ずる行政改革をぜひ実現をしてもらいたい、こういうことで、現在準備中でございます。
  46. 細谷治嘉

    細谷委員 それは、十分に地方団体意見も聞いて、その上で自治省の構想をきめる、六月までに結論を出すというわけでしょう。この新聞にも書いてありますよ。たとえば、懸案の地方事務官制度の廃止、国の出先機関の合理化などとともに、実情に合わない現状は積極的に改革に乗り出さなければならぬ、こう書いてあります。行革行革といっておりますが、できますか。「当分の間」というのが二十何年続いて、いまだに解決できない、こういうものもできますか。
  47. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 行政改革は、多年臨調の答申などをもらいながらなかなか実施ができなくて、今度は一省庁一局削減を契機として全省庁やれという総理からの厳命が出ておりますことは、御案内のとおりでございます。六月の末までに各省みなそれぞれ計画を内閣に出すことになっておりますが、そういうこととは別に、自治省といたしましては、多年の懸案である改革を断行するにあたって、単はデスクプランではまずいですから、やはり三千有余の地方団体意見をそれぞれ全部求めまして、そうして、そういう一つの背後の勢力をはっきりさせました上で非常に強い要求をしたい。なぜそういうことをやるかと申しますと、地方団体ごとにそれぞれやり得る行政改革はみなやっておるわけでございますけれども、これから先はやはり法令、または補助金政策などにそれぞれ関連があるわけでございまするので、これから先の思い切った行政改革をやりますためには、どうしても関係各省庁の協力を得なければできないわけです。ところが、そこにネックがありまして、なかなか果たさなかったものを、今回は異常な決意をもって突破しようという考え方に至っておりますが、中には、発表したらなかなか抵抗の強そうな案件もたくさんあるわけでございます。これは与野党を通じてひとつ支援体制を張っていただきたい、かように思っておりますし、異常な決意を持っておりますことを御披露いたしておきたいと思います。
  48. 細谷治嘉

    細谷委員 発表したらたいへんな反対が起こる、だから発表することはできない、そんなものが実行されるはずはありませんよ。実行する決意があるのなら、堂々と発表して努力すればいいでしょう。発表することもできないで、実行するなんということはできっこありませんよ。  そこで私は言うのだ。府県の充実強化なんといっても、三十七、八年ごろ河川の管理権というのは国に移った。国道の管理権というのも国に移った。地方には農政局ができた。地方の権限はどんどん吸い上げられるばかりでしょう。そうして、一方においては、当分の間官吏とするというのも、二十三年間続いていまだに解決することもできない。こういう形で、何が充実強化できるのですか。空理空論じゃないですか。これからそういう自治省の行革構想というのも具体化する、こういうことでありますが、そういうものも具体化せぬずくで充実強化ということを第一条にうたって、そうして府県合併をして意味があるのですか。おぜん立てができておらぬじゃないですか。  そこで、行管にお尋ねしたいのです。行管は、二月二日の閣議決定に基づいて、行管庁三年計画行政改革三カ年計画というものを何か推進するらしいのですが、その内容はどんなものなんですか。これもまた八月にならなければ発表できないのですか。
  49. 安達為也

    ○安達説明員 行政改革の三カ年計画は、御承知のとおり行政管理庁だけでつくるものではありませんで、各省全部一致した考え方で一致を見たいということで、各省の自主的な発意に基づく行政改革という点にある程度ウェートを置いておりますので、六月末までに各省から行政改革の計画を出していただくということになっております。各省から出された行政改革の計画に基づいて、行政管理庁あるいは行政改革本部において、それを調整しながら、行政改革本部としての行政改革計画をつくって閣議で決定をしたいという考え方を持っております。
  50. 細谷治嘉

    細谷委員 新聞によりますと、その行管庁三年計画というのは、基本方針としては事務の整理(許認可、報告制度、零細補助金等の整理、事務を出先機関や地方公共団体へ委譲、共管競合その他類似行政整理統合、事務機械化など)、行政機構の簡素化及び定員の再配分、法令の一割整理、こういうことが書いてあります。ところで、発表はできない、各省庁と打ち合わせしなければならぬ、こういうことでありますが、あなたのほうのあれにもありますが、この地方自治に関する提言という国民政治研究会の資料を見ますと、東京都の中央から受けた文書数に関する調査というのは、一年間に九千六十九件あるのですよ。一年間に九千六十九件、東京都の中央から受けた文書数に関する調査、これに報告しなければならぬ。一万件あるのです。それから、各省庁の人事というのがある。人事というのは、土木行政というのは建設省が握っているでしょう。社会保障関係は厚生省が握っているでしょう。財政関係は自治省が握っておるのですよ。最近はまた大蔵も出始めている。こんなような人事行政、財政上の行政、それから事務の繁雑、ちょっとした補助金をもらうのにたいへんな書類を書かなければいかぬ。これを整理するのはたいへんけっこうでありますが、こういうことまであなたのほうは整理する決意ですか。
  51. 安達為也

    ○安達説明員 いまお話しのとおり、非常に事務が繁雑でございますので、法令については一割、それから報告、いまお話しのように、非常に繁雑な報告類、これは人事、会計その他一切の報告を含めてですけれども、二割を目途として整理するということで、各省でいま作業をやっておる最中でございます。
  52. 細谷治嘉

    細谷委員 次官、こんな人事を通じて介入、文書を通じての、一つ都道府県に一万件も通達を出して報告を求める、こんなやり方で、自主的に合併した都道府県というものが、広域行政というものでどこが充実強化されるのですか。充実強化するというなら、こんな通達行政をやめることが必要です。私はおやりなさいと言っているのだ。国費職員の身分移管のことも解決できない。区長公選の問題も解決できない。こういう姿の中において、合併すれば充実強化するのだとおっしゃっているわけですから、空理空論じゃないかと言っているのです。そういうものをおやりになることができますか。そういうものをやることができるかどうか。それから、いろいろな今後やらなければいかぬ問題があるわけですから、少なくとも八月には行管がその結論を出すというのですから、それを見た上で結論を出したっていいでしょう。どうですか。
  53. 細田吉藏

    ○細田政府委員 ただいま御指摘になりました、地方から中央に対する報告が多いとか、いろいろ中央と地方との関係におきまして、地方行政が阻害されるといいましょうか、いろいろ問題点があるということは、御指摘のとおりでございます。  したがいまして、いま私どもが進めております仕事はただ地方行政機構を簡素化しろ、合理化しろ、そういうことだけではいけないんじゃないか、中央の関係からまず正していかなければ、地方行政が簡素、強力なものにならないんじゃないか、こういう考え方でございまして、百数十項目にわたりまして、いま一万通近い報告の話がございましたが、私たちといたしましては、その項目を総点検をいたしております。それにつきましては大体のものができましたが、まだいろいろその中身についていま検討しておる段階でございます。これにつきまして各自治体の意見というものはわかっておるものもございます。いろいろ意見の分かれるものまで一応問題になるのは全部洗おうということで洗いまして、意見をとにかく聞こう、それによりまして実は本日も私、行政管理庁長官にも朝お目にかかりまして——たまたま政務次官会議においでいただきまして、行革の問題がございましたのでお話ししたのでございます。なお関係各省にもお願いしておるのでございますが、関係各省で御協力をいただかなければできません。   〔塩川委員長代理退席委員長着席〕 うちの省がやることはもちろんやらなければなりませんけれども、ほかの省にもお願いしなければならぬことがある、また、国会にお願いしなければならぬことがある、法律上の問題もありますから。そういう点につきましては、非常なる決意をもってやりたいというのが大臣の趣旨でございます。したがいまして、私どもとしては、これをどうしてもやりたい、こういう気持ちでおることをいまはっきり申し上げることができると思います。大臣が先ほど申し上げたのもそういう趣旨でございます。  それから、六月三十日までに一応出すということにつきましては、実は本省の行政簡素化の問題でございまして、これにつきましては、ただいま私どものほうの官房が中心になりまして鋭意進めております。ただ、自治省の場合は、選挙局がなくなりましてわずか三局でございます。戦後、地方財政委員会から発足して積み上げたようなこういう省でございますので、なかなか余地が非常に少ないと思いますけれども、しかし、やはり政府の方針にのっとりまして、私どものほうの本省の行政機構につきましてもいま検討中でございまして、これは六月末までに行管の本部のほうに出そう、こういう段取りにいたしております。  そのことと、実はこの都道府県合併の充実強化、これは少し角度が違うのではないか、かように思うのでございます。充実強化をしなければならぬ、そのためにも、おっしゃったようなことをしなければならないということは、これはまっ先に出てくることであると思います。たいへん必要なことであると思いますが、この法案に言っておりますことは、そういう一般的な問題、合併しようがしなかろうが、とにかく充実強化しなければならぬという問題と同じ条件であれば、合併したほうがより充実強化するということを言っておるわけでございますから、両々相またなければならぬことは当然でございます。また、おっしゃるように、もっと一般的なこともやれないのに合併などというのは、という御意見もわかりますけれども、多少この法案に書いてありますものと、いまおっしゃっております一般的な充実強化の問題とは、関連はございますけれども、少し角度が違うというふうに私ども感じておるわけでございまして、やはり合併をして広域になりますと、同じ条件であれば、二県でやるよりも一県でやるほうが能率があがるという面が多々あろうと思います。能率が下がる面もあるかもしれません。しかし、能率があがる面が多い、こういう見地でこのような表現をいたしておる、こういうことに理解しておるわけでございます。
  54. 細谷治嘉

    細谷委員 角度が違うということでありますが、私が申し上げておるのは、府県というのは自治体でしょう。その自治体の権限というのがどうどん中央に吸い上げられた、中央集権化されておるんですよ。しかも、法律に書いてある「当分の間」というような問題も片づけることができないで、面積を広げろ広げろ、今度の国会を通りました都市計画はどういうことです。広げました都市計画の推進というのは市町村長じゃないですよ。権限は知事でしょう。いままでよりも三倍以上の面積になった、この辺にも矛盾があるでしょう。都市計画というのは、たとえば東海三県が合併した岐阜の山奥のほうである程度の計画をやるといった場合に、これは市町村長が主人公じゃないのですよ。県知事がやるのですよ。ますます広くなったらこれはたいへんじゃないですか。そういうことになりますと、県の事務は吸い上げられつばなし、市町村の事務は県に吸い上げられつばなし、こういう形で何の広域行政なんです。何が充実強化されるのですか。解決されるものは一つもなしに、広がれば充実強化されるのだ、こんな議論はおかしいじゃないですか。長野さん、あなた担当者だから……。地方自治体がいろいろな問題を国に吸い上げられておりませんか。
  55. 長野士郎

    ○長野政府委員 国と地方団体との間の事務の分担という問題につきましては、地方自治を育成強化する、また地方団体のみが行政の民主的な処理、総合的な処理というものが統一的に行ない得る、また最も現実の事情によく適合した行政を行なえる、こういうところとして最もふさわしいところだというような考え方は、私ども常に持っておるわけでございます。  都市計画お話が先ほどございましたが、都市計画につきましては、計画的な面というものを、現在の交通や通信網の整備の状況からいいますと、これは無視するわけにはいかないわけでございますから、そういう意味で市街化区域とか市街化調整区域とか、いろいろな問題を県のほうで考えていくということは現実として認めざるを得ない。ただ、その中におきますところの市町村が、その中で具体化していきますところの都市計画の分野というものは、お話がございましたが、全部なくなっているというわけではありません。また、現在までの都市計画は全く旧時代の産物でございまして、むしろ都市の計画を建設大臣がきめる、こういう形であったわけでございまするが、今度の都市計画法によりますと、それを府県なり市町村の段階に持ってきたということでございますので、その点ではやはり現在の地方自治といいますか、都市づくりが当該団体の手で行ない得るという——それは不十分な点もごさいますが、これは広域的な調整との関係においてとらえなければならぬ面でございますので、これは非常な前進だと考えるわけであります。  ただ、河川とか道路とかの問題になりますと見方がいろいろございます。ああいうふうに国に吸い上げられる形になったということについて、河川の管理とか道路の管理について適当でないという考え方ももちろんございます。また同時に、河川の水源の開発利用、あるいは道路の国道の整備、改良というようなものが非常に広域的に関係を持つという点からして、広域的な処理を行ない得ることが必要だという考え方も出てくるわけであります。そういう一面ではやはり一つのネックは、そういうたびに問題になりますのは、現在の府県では、その広域性を十分に確保できるほどの単位でないということが、実は各省がそれぞれの立場から立案いたしますときの一つの大きな理由になっているわけであります。  現在の広域行政を十分受けとめるような体制をつくる、そのためにどういうことが考えられるかといえば、私はやはり現在の府県というものの発達段階によって、それぞれ地域によって違うと思いますが、たとえばそういう面の社会的、経済的に一体的だと思われるところが非常に狭い範囲でおることは、やはり認められないんじゃないか、むしろそれは府県という単位の範囲のほうから進んで広域化していくという道を開いていく、そして府県が広域的な地方団体として広域行政を受けとめ得る体制というものを常につくり上げていくということが、やはり時代の要請にも適合するのではないだろうか。どうも変な話になりますが、地方農政局あるいはいまの河川なり道路の関係地方建設局、こういうものができますことについて、自治省としてそれが非常に適当で、もろ手をあげて賛成というわけでは決してなかったわけでございますが、現実の府県行政と国政との関連においてああいう事態が起きたということも、言ってみれば、この広域行政体制の整え方が十分だと見るか十分でないと見るかということも非常に大きく作用しておるということは、これは無視することのできない問題だと思うわけでございます。常に吸い上げられてけっこうだと考えておるわけではさらさらございません。むしろ、そういう意味では、そういうものを受けとめ得る体制を地方自治というサイドから考えていきたいというのがこの案の一つの大きなねらいだというふうに考えておるわけであります。
  56. 細谷治嘉

    細谷委員 わからない。それは私は知っていますよ。都市計画についてのあなたのほうの意見というのは、もっと市町村に権限を置くべきだ、あるいは昨年の五十五国会でできた中小企業振興事業団ですか、そういうものについてのあなたのほうの地方自治から見た考え方主張、こういうものも知っております。河川法、道路法についてのあなた方の意見も知っております。何でも反対だと自治省はいわれている。しかし、何一つ、あなただめじゃないですか。みんな吸い上げられておるでしょう。地方自治の本旨という点から言うと、ことばは適切じゃないけれども、あなたのほうは反対反対と言うけれども、たたかれどうしだ。たたかれどうしで、そして論理もない、理屈もない、具体性もない、都道府県合併、広域という肥後守みたいなものを出すというのでしょう。肥後守どころじゃないですよ、こんなものじゃ切れも何もせぬです。自治省は各省からたたかれどうし。地方自治の本旨がむしばまれてどうにもならなくて、ていさいづくりにおもちゃのピストルを突きつけておるというのがこの法律じゃないのですか。政務次官、そうでしょう。それがないじゃないですか、いまの答弁から聞くと。
  57. 細田吉藏

    ○細田政府委員 いわゆる縦割り行政と申しますか、それぞれの関係各省と自治省との間に、いろいろな法案が出ます際に、やはり論争がございまして、いま御質疑の中にもありましたとおりでございます。これらの点につきまして、自治省といたしましては、強力にがんばっておるつもりでございますが、微力で思うようにまいっておらないということは、率直に私も認めてもよろしいと思うのでございます。  ただ、都市計画法を例に出されましたが、都市計画法などでは、むしろ、でき上がったものに対しまして、自治省はけしからぬというような各省の意向が強かったわけでございまして、私はもちろん不満足ではありますけれども、ある程度地方自治の立場というものは、今度の都市計画法については、ある程度ですが、出てまいっておる、これについて言えば私はそう思います。しかし、全般的には御指摘のように力足らずして地方自治の本義というものが必ずしも貫徹できておらないような部面が多いということについては、残念ながら私は認めざるを得ない点が多々あると思います。ただ、であるからこれが、それに対する何か肥後守——比喩ですから、どういうのかよくわかりませんが、そういうような考えで本法案を提出しておるわけではございません。しかし、おっしゃいますることをそんたくいたしますのに、こんなことをやるよりももっとおまえたちはほんとうにやらなければならぬ、がんばらなければならぬことがたくさんあるじゃないか、そういうことでがんばらずにこれを出すことはどうか、こういうようなことではないかと思うわけでありますが、そのがんばらなければならぬ点につきましても、今後とも大いにがんばります。これはこれでまたこれなりの意義を持っておることでございまして、肥後守がどういう意味かよくわかりませんけれども、私たちはそういう意味でこれを出しておるということではございませんので、御了承をいただきたいと思います。
  58. 細谷治嘉

    細谷委員 まあ切れない肥後守、おもちゃの鉄砲、ピストル、こんなものだと私は申し上げているわけであります。  そこで、自治省は広域行政の推進についての新しい方式とかいろいろお考えになっているようでありますから、それも二年計画でおやりになるとかなんとかいうことでありますから、それについてひとつもっと明らかにして、国と県との関係、県と市町村との関係、それが広域行政とどう結びつくのか、地方自治の本旨とどう結びつくのか、この辺の問題を明らかにしたいと思いますが、ちょうど十二時半ですから、私は一応これでとめておきます。
  59. 吉川久衛

    ○吉川委員長 午後一時三十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時三十一分休憩      ————◇—————    午後一時四十七分開議
  60. 吉川久衛

    ○吉川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  警察に関する件について調査を進めます。  今朝発生した十勝沖を震源地とする地震の災害状況について、この際、赤澤自治大臣から報告を求めます。赤澤国務大臣
  61. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 ちょうど四時間ばかり前に、北海道方面に非常に強い地震がありまして、かなり広範な被害を与えておるようであります。ただいま警察情報が入りましたものを拾い読みいたしましても、青森県下が一番ひどいようですが、人的被害は、死亡者七人、行くえ不明十人を数えております。また、物的被害は、家屋の全壊八十ということになっております。  北海道は人的被害、負傷者が十九名、物的被害は、家屋全壊三、半壊五、一部損壊八、道路損壊六、山くずれ三、通信施設六十七という報告でございます。  岩手県は死者が一人、負傷者三、家屋倒壊二、床下浸水その他いろいろ被害があったようであります。  まことに天災とはいいながらお気の毒なことになりました。時間がたてばもっと詳細な被害がわかることと思いまするけれども、私どもといたしましても、事後の措置につきましては、万全のことをいたさねばならぬ、かように考えております。  なお、詳細な被害状況につきましては、警察当局から参っておりますのでお聞き取りをお願いいたします。
  62. 三井脩

    ○三井説明員 ただいま大臣から御報告を申し上げましたが、いまお手元に配付いたしました資料は本日正午現在で判明した分でございます。大臣がただいま申し上げましたのは午後一時現在という数字になっておりますので、若干被害数はふえております。  この地震は今朝九時四十九分に発生をいたしまして、最も激しいところでは震度六、これは北海道の苫小牧でございます。東京が三、その他の地方で二というところまで、おおむね北海道、東北が大きいわけでございます。  被害の状況から申しますと、一番大きいのは青森、ことに八戸市、青森市、次いで岩手でございます。それから北海道という順序になっておりますが、現在の判明状況ではそういうふうになっておるのであります。北海道の場合は、札幌を中心といたしました地域が北海道の中では大きいわけでございまして、一番激甚と伝えられております苫小牧におきましては、現在まで判明しておりますところでは、人的被害は現在のところまだ報告ございません。ただ国道に亀裂が生じておる。それから電柱の電線が切れたというような程度が判明しておるところでございます。現在までの状況は大体以上のとおりであります。
  63. 吉川久衛

    ○吉川委員長 三沢に火災が発生したようなあれは誤報ですか。
  64. 三井脩

    ○三井説明員 六カ所火災の報告が来ております。
  65. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 質問してもよろしゅうございますか。
  66. 吉川久衛

    ○吉川委員長 調査中ですから、その範囲についての御質問ならば……。
  67. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 岩手の床下浸水十戸とありますが、場所はわかっておりませんか。
  68. 三井脩

    ○三井説明員 いまのところその詳細はわかっておりません。
  69. 細谷治嘉

    細谷委員 津波かね、これは。
  70. 三井脩

    ○三井説明員 ただいまの浸水は津波だと私たちは考えております。けさちょうど津波がございまして、一番大きいところでは二メートル、少ないところで三十センチ、五十センチというような津波が来ております。なお、けさ午前中にありました津波の来襲の場合は干潮でございましたので、このための被害というのは特にはない様子でございます。  なお、午後にわたってさらに襲来するということでございますので、この点につきましては、それぞれ警察官を動員をして避難措置、堤防の護岸に対する警戒等の配置につけております。      ————◇—————
  71. 吉川久衛

    ○吉川委員長 次に、都道府県合併特例法案を議題とし、質疑を続行いたします。細谷治嘉君。
  72. 細谷治嘉

    細谷委員 いままでいろいろな点から御質問いたしたわけでありますけれども、まだ多数の質問者が控えておりますので、あと数点の質問をいたしたいと思います。  まず、お尋ねいたしたい点は、たとえば四十二年八月二十三日の新聞に、「広域行政推進に新方式」こういう見出しで、自治省が新しい広域行政を推進する方式を検討し始めた、そうして、それについてはおおよそ二年計画だ、こういうことが報ぜられております。その内容構想、こういうものはどういうものなのか、ひとつ承っておきたいと思います。
  73. 長野士郎

    ○長野政府委員 昨年の八月の新聞記事と申しますのと、私がこれから申し上げることと同じかどうかわかりませんが、地方制度調査会が御承知のように事務配分の答申のあと、財源配分の答申を引き続き行なうということで審議が続けられておるわけでございます。そういうことが進んでまいっておりますが、同時に最近のいろいろな社会経済の状況の変化、特に人口、産業の大都市集中というような問題に関連をいたしまして、市町村における問題、府県におけるところの問題、いろいろ問題がございますが、広域行政関係の問題についてのあり方というようなものを、両方含めましてそれぞれ方式をいろいろ検討をしていきたいというようなことで、部内で内部的にいろいろな問題をあげまして検討しておることは事実でございます。しかしながら、いまこれをどういう内容のものであるということを申し上げる段階にはまだ至っておりません。
  74. 細谷治嘉

    細谷委員 新聞に出しておいて、何も申し上げる段階じゃありません——中核都市構想とかいろいろなことが去年の半ば以降、今年度になりましてから自治省の構想としても出ておるわけですね、たとえば新聞等に書いてあるところを見ますと、現在の広域行政方式の実態と問題点、こういうものを十分に検討しよう、中心都市に対する周辺都市の行政的依存の状況を検討しよう、中心都市に期待されるべき機能と都市圏域内市町村の機能分担のあり方等もひとつ検討しよう、こういう問題を検討した上で、二年計画で、そういう中核都市に対する行政的な財政的な特権を付与すべきかどうか、そういうことについての結論を出そう、こういうふうに新聞が報じております。これだけ報じておるのですから、あなたの基本構想ぐらいはここで御発表いただけるものと私は思うのです。いかがですか。
  75. 長野士郎

    ○長野政府委員 先ほど申し上げたとおりでございまして、市町村の広域行政体制というようなものも、そういう意味でどういうふうに進めていくかということを早急に取り上げて検討すべきかどうか。そこで、自治省としましては、一つの拠点開発的な考え方になるかもしれませんが、いわゆる中堅都市といいますか、地方におけるところの地域的な中心である都市の行政の波及しておりますところの範囲というものから考えて、その都市圏域というものの中で、市町村の広域的な行政の展開というものをどのように自治体との間で調節をしていくことができるか。もしそういうことができれば、それが一つの新しい自治行政の近代化というような面での推進をしていくよりどころにならないだろうかというようなことで研究はいたしております。  そういう関係で、ある地点等を選びまして、現在自治省としても調査にも出かけましたり、あるいは関係の学者に委託をいたしまして調査をいたしましたりしておる過程でございまして、まだそれを通じまして、どういう方式でこれを推進していくべきだというような結論にまでは到達しておりませんので、申し上げる段階には至っていない、こういうことを申し上げたわけでございます。
  76. 細谷治嘉

    細谷委員 新聞では、二年計画結論を出すといっているのですが、そのとおりですか。
  77. 長野士郎

    ○長野政府委員 新聞で報じておりますのは、関係者のどういうところから取材いたしたのかわかりませんが、むしろ、とても一年ぐらいの仕事ではなかなか見込みがつかないというような意味で、数年にわたるというような感じのことでそういう記事になったのではないだろうかと思うのでございまして、二年計画できちんといくというようなことを、そのときに考えておったわけではございませんし、また、関係者がそういうことを申したのでもないと思います。
  78. 細谷治嘉

    細谷委員 これもぼけた答弁であります。  もう一つお聞きしたいのでありますが、首都行政の再編成について検討したことがあるか、検討をしておるか、検討しようとしておるのか、どうなんですか。
  79. 長野士郎

    ○長野政府委員 その点につきましてはお話しのとおりでございまして、検討したこともあり、検討もしておりますし、なお今後も検討しようということであります。
  80. 細谷治嘉

    細谷委員 検討したこともあり、検討もしておる、なお検討もするということでございますが、現在の検討の中から出てまいりました結論なり構想というものをお聞かせいただきたい。
  81. 長野士郎

    ○長野政府委員 これもまだ、はなはだ申しわけございませんが、結論というところまで至ってはおりません。ただ、東京を中心にいたしますところの首都圏域というものと現在の東京都政その他の問題と関連をするわけでございまして、それをどういうふうにつかまえていくことができるか。もう一つは、東京につきましてはさらに特別区という特殊な問題がございます。特別区につきましては、御案内のように、現在三、四の区で区長の選任をめぐりまして現実にいろいろな問題が起こっております。そういう意味で、東京においては、この二面の問題——現在の東京都というものは、御承知のようにほかの府県とは違った制度を持っておる、一般の府県制とは違うということがいわれますが、現在の違いは、実は都と特別区との関係において違うというのが現在の制度上の違いでございます。  しかしながら、実際問題としての首都圏というものの中における東京というものの位置がそういうことでは、正確に反映されていないということも考えられるわけでありまして、むしろほかのところとの違いというものを、そういう首都圏域における東京の位置づけというものに求めるべきが至当でないか。そういう方法として、これも一つ広域行政という問題になりますが、どういうふうに組み立てていくか、あるいは考えていくべきであるか、そういう意味で、また反面、都と特別区との関係というものも片づけていかなければならない。現在の東京は、どちらかといいますと、二十三区の区域内におきましては、都は二十三区を通じて市にかわった機能を果たしておるわけでございます。したがいまして、その意味から二十三区の区域内におきましては、東京都は県という機能と同時に東京市という機能を果たしておる、こういう形に実はなっておりまして、都政全般を通ずるウエートから言いますと、むしろその二十三区にかかわる問題というものがたいへんなウエートを占めておるような体制になっております。これも無理からぬ点があると思います。がしかし、片一方で、特別区というものも、大きな世田谷とか杉並区というふうなものは、平方キロから言いましてもたいへん巨大な人口を擁しておるところでありまして、これを他に取り出して考えますと、非常に大きな、わが国では指折りの大都市という仲間に入り得るものです。そういうことでございますので、都と特別区との関係というものをまず合理的な解決の方法を見出し、そして、むしろ都が二十三区の中の行政にかかずらわっておるウエートをなるべく軽くして、そして首都圏というものの方向にその行政重点を向けていくというような一つ考え方というものが、一体できるのかできないのかというようなことが考えられるわけでございます。そういう面で首都圏域におけるところの広域的な問題の解決に資するような体制をどう考えるか、また、それに相関連して二十三区と都の関係、あるいは二十三区自体の問題、あるいはそれに関連して三多摩の問題もあるかもしれません。そういうものをどう解決するか、この両面の問題について検討を続けておるということでございます。
  82. 細谷治嘉

    細谷委員 これも検討を続けておる、検討をしてきた、こんなところのあれしか出ておりませんけれども新聞で報じたところによりますと、住民の日常サービスの主体として東京市を復活させる——日常サービスになるかどうかはたいへん疑問でありますが、それが一つあります。市の範囲はおおむね現在の二十三区の範囲とし、三多摩地区の市の一部をこれに加える。公選の議会を持つ特別区は廃止して行政区とする。一区の人口は二十万か三十万を限度として再編成する。区長は、市長が市の職員の中から任命する。都は都市計画の立案、実施に当たる。都が都市計画の対象とする範囲は、おおむね都心から三十キロメートルの通勤圏とする。こういう構想であります。三十キロ行きますと、千葉市とか横浜市が入ってしまうわけですね。そういうことでしょう。こういう構想新聞に出ておりますが、こういう構想なんですか。あるいはこれに沿うているのですか。
  83. 長野士郎

    ○長野政府委員 その新聞に出ました記事は、私どもも見ましたが、それは自治省の方針というような内容のものではございません。自治省としては、いま申し上げましたように、現在検討中でございまして、そういう考え方に沿ってものを考えていくというわけではございません。ただ、自治省の中には、そういう意味でいろんな角度から検討しておるものはたくさんございます。と同時に、学者方面におきましても、そういう意見というものは相当集めておりますが、その中にも、二十三区の区域を中心にして東京市という考え方、それから、大都市関係行政法学者の一つの通説のようになっておりますけれども、大都市の下部構造としては行政区のほうが大都市の一体性を確保する上で望ましい、これは従来からの行政法学者の多数の考え方でございます。そういうものが一つの改革構想ということで二、三の新聞社等において集約して取材されたものではないだろうかと思います。それ自身も私は一つの案だとは思いますけれども、それは自治省の方針でありますとか、自治省が検討しておる内容でありますとかいうことではございません。
  84. 細谷治嘉

    細谷委員 新聞に出たのが、全部そういう答弁でいつの間にかそういうものが本物になってきているというのがいままでの例であります。  そういう答弁しか得られませんからさらにお尋ねいたしますが、大阪府において——市ではありません、大阪府において、大阪を現在の東京都のような都の制度にすべきだという都制構想が答申されたことを御存じですか。そういう意見もあったということを御存じですか。お読みになったことはありますか。
  85. 長野士郎

    ○長野政府委員 たしか昨年の秋でございましたか、ある新聞に大阪都制の構想というものが大阪におきまして大きく取り上げられて、新聞記事になっておることを聞きましたので、私どもそれを取り寄せて読んだことがございます。
  86. 細谷治嘉

    細谷委員 いま私は二、三の具体的な、新聞等に書かれてあるものをお聞きしたわけでありますけれども、なかなか具体的な答弁が得られない。けれども、私どもが、今日までの答弁あるいは今日までの自治省の姿勢、こういうものから言いますと、口には地方自治の本旨、地方自治の拡充強化ということを言っておりますけれども、たとえば東京都においては二十三区を行政区にしてしまうのだ、こういうようなことになりますと、住民自治あるいは住民を主人公とした地方行政ということについては、自治省ではほとんど無関心ではないか、こういうふうに申さざるを得ないわけであります。  そこで、大臣お尋ねしたいのでありますけれども、いろいろと社会経済の発展といいますか、激変といいますか、そういうものに基づいて、いろいろな制度というのが百花咲き乱れるごとく発表されておるわけでありますけれども地方制度調査会が言っているように、大都市制度については別途検討すべきだ、こういうふうに書いてあり、この答申は四十年でありますけれども、いまだここでその骨組みの構想すらも発表できない。こういうことからいいまして、私はたいへん情けない。私はつまみ食いということばを使いましたけれども、つまみ食いどころではない。何らの構想も持たないで、そして、先ほども表現いたしましたけれども、おもちゃのピストルみたいなちゃちなこういう法律を出してきている。総合性というものは全くない、こういうふうに申さなければならぬと思うのです。  そこで、大臣に伺いたいのでありますけれども、私は自主的合併けっこうでありますけれども、今後国と県はどういう関係になるのか、県と市町村はどうなるべきなのか、その関係はどうなのか、こういう総合的な中において府県制度のあるべき姿、日本の自治制度のあるべき姿というものが何らここに述べられていない。何らかの構想がなければこんな法律を出すことはけしからぬと思うのですが、ひとつ自治大臣、日本の府県制度の基本構想、そういうものでもございましたらここで発表していただけませんか。
  87. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 大都市のあるべき姿は、こういう状況になってまいりましたので、やはり現状ではいいとは考えておりません。ですから、たとえば主として東京ですけれども、これをどういう姿にするかということにつきましては、制度調査会の方針もありますし、まず先行すべきものは事務の再配分であるということで、大体東京都においてはあらかた終かった現状になっております。しかし、なお問題点が残っておることは御承知のとおりです。ですからこの際、やはり最終的な結論を出さなければならぬ段階になっておることは御指摘のとおりでございますけれども、こういうことはよく時期を見ませんと、軽率に断を下すわけにもまいりませんので、先般も議論のありましたその問題につきまして制度調査会に答申させたらどうか——私うっかりしておりましたが、すでにこの答申もかつて行なわれたことがあるわけでございまして、しかし私はこれで十分であるとは考えておりません。ですから、何らかの形で、いつまでもこういう状態で放置することなく、しばらく先を見通した結論を出さなければならぬという考え方を持っております。  それから、国と都道府県、しかも合併した都道府県との関係、さらに一体こういう地方公共団体を将来どういう形に運ぶのかということでございまするけれども、やはり公共団体が大きくなっても、小さいものであっても、扱いは同じであると思うのです。ただ、私は、地方公共団体の場合は、やはり地域住民の福祉を直接に扱っておりまするので、やはり地方公共団体は地方公共団体なりの発揮すべき機能というものがおのずからある。国の場合は、言うまでもなく、やはり国また国民全般に関する、たとえば防衛関係であるとか、あるいは経済的には景気の調節であるとか、いろいろやらなければならぬことがたくさんございます。それはそれとして、国が所管するのだが、やはりその地域住民のために政治というものはある、これは考えてみればそのとおりでございまするので、私どもといたしましては地方公共団体の自治ということに重点を置いて進める。国と地方公共団体の間には、おのずからやるべきことの秩序というものはあると思っておりまするので、何も今後また新しい考え方に立つということではないと考えております。
  88. 細谷治嘉

    細谷委員 何も構想がない、新しい考えもない、広くさえすればいいのだ。さっきも食堂で政務次官とだべりながら話したのですけれども、あなたはいま地方住民が大切だと言っておりました。地方自治というのは住民が主人公だということをお認めになっている。広くなって、岐阜の奥のほうから名古屋に行くのと、岐阜で用が足りるのと、どっちが住民に大切なんですか。三重県の南端のほうで、大阪に行っていいのか、名古屋に行っていいのかわからぬ、経済圏としてはむしろ大阪に近い、合併されたらどうなるのです。ですから、私がお聞きしたいのは、やはり制度調査会も、合併法をつくるならばもろもろの問題がありますよ、とこう言っている。府県のあるべき姿、これは一体どういうものなのか。過密過疎の問題はどういう形において解消されていくのか。公害問題はどうなのか。地方自治というのは一体どういうことで充実していかなければならぬのか。こういうことをよく踏まえた上で、少なくとも基本構想を持っておらなければこういう法律は出すべきじゃない。しかも、先ほど私は行政局長に、広域行政を推進する方式すらも固まっていない。二年くらいでやると新聞に書いてありますけれども、一年では無理だから、まあそれ以上ということになって二年くらいと新聞が書いたんでしょうなんてとぼけた話をしておる。首都行政というのはどうあるべきか、こういうことについても何らの具体的な基本構想も発表されない。府県のあるべき姿、それに国がどう関係していくか、市町村はどういう姿になるべきか、こういう問題についての基本構想がいまだ固まらないで、少なくともこれから何年がかりという時期にこういう法律を出すのは、不見識もはなはだしいですよ。政府のとるべき措置ではないのです。こういうことは、そういう問題が固まって行政上の制度の問題あるいは開発行政、これも固まっていないのですよ。十月三十日にならなければできないというわけです。そういう問題がそろった上で、府県はどうあるべきか、今後の地方制度はどうあるべきかということ、地方自治の本旨がいかにして貫かれるか、こういう前提に立って検討をされなければならぬと思いますけれども、そんなものは一切おかまいなし。答弁も何もせぬで、はい合併でございます、こういう形で特例法を出してくるというのは、私は不見識のそしりを免れないと思うのですよ。ですから私は何か基本構想があるのですか、広域行政というものについて何かの青写真があるのですか、こうお聞きしている。府県のあるべき姿というものはどういうものなのですか。そういうものをひとつここに、基本的なものだけでもいいからお示しいただきたい、こういうことを質問しているわけです。ぜひお替えいただきたいのです。
  89. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 基本構想といっても別に真新しいことを考えておるわけではございませんので、いま先に基本構想というものを立ててやりましても、なかなかそういう形で考えたとおりにいくわけのものではないし、やはり歴史が解決いたします。ですから、いまの段階ではやはり住民の考え方がどこにあるかということを私たちは察知して、その住民の希望というものに対して道を開くということが大事だと思うわけでございまして、こういう法案も提案をしておるわけでございます。だから府県合併しなければならぬということでは一つもございませんので、やはり住民の考え方というものが、広域行政というものが妥当である、時代の要請である、これには非常な利点もあるんだという考え方に立って、よし合併していこうという方々はこれでおやりになるといいということであります。私どもといたしましては、むしろわれわれのほうで一つ構想をつくって、それを押しつけるということこそ危険であるという考え方に立っておるわけでございます。
  90. 細谷治嘉

    細谷委員 だれも押しつけろとは言っておりませんよ。地方自治体が自主的にやることはけっこうでありますけれども、少なくともそれは国の総合開発計画、あるいは国が考えておる国と地方、あるいは地方制度のあり方、そういうものに沿うていかなければいかぬでしょう。ですから、国としてはこういうふうに考えておるのだ——押しつけるわけではないのです。こういう青写真なんだ、こういう形でいけば過疎過密の問題は片づいていくんだ、こういう形でやっていけば住民の福祉は増進されるんだ、こういう形でいけば格差は是正されていくんだ、こういうことに立って、いわゆる住民を主人公とした行政が推進されるような青写真を示して、そしてそういう基本線に沿うて——押しつけるわけではありません、そういう基本線に沿うて広域行政というのを進められるべきではないか、自主合併という名においていずれ押しつけるんでしょう。法律ができたらいずれ押しつけるのですよ。お前のところはなぜ合併せぬか、いずれ押しつける。現に自治省のいまの次官は知りませんけれども、前の次官あたりは、進んで現地へ行って、早く合併しなさいと盛んにPRをやっていたでしょう、官費で。押しつけに違いないのですよ。自主ということばを使うなら使うで、国と県と市町村と、そういうものがあるわけですから、調整をとらなければならぬでしょう。それについて国は何らの構想もない。恋愛したが結婚することになりました。認めてください。住民の意見も聞かない。こんな形でよろしいのですか。だめですよ、そんなことでは。
  91. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 なかなか考え方に違いがございまして一致いたしませんけれども、やはり都道府県というものが、いまの境界でこれが最善だということはだれも言い得ないと思う。午前中に、経済企画庁長官がいろいろ申し述べましたけれども、やはり地域格差の是正、その他国土を全般的に繁栄への道を歩ませるためには均衡ある発展ということが必要だ。そのためにはこういう過密地帯ができ、過疎地帯ができるというのは不合理だから、産業分散を中心としてやり直しをしなければならぬということでして、新産都市だとか、工業開発促進地域だとか、いろいろ国のほうでつくりましてやったけれども、こういうことは産業を分散させると申しましても、やはり条件が整わなければ命令でいたすことができぬわけでございますので、やはり拠点拠点ということになってくる。拠点というと、やはりそこに一つの繁栄への条件がそろっておるところでございまするので、その繁栄への道が、たとえば条件のそろっておるところが大きくなってはいかぬということは言い得ない。やはりその地域一つのこういう大きな合併構想があって、そうして、そのことが行政を運ぶ上において、また住民福祉にも決してマイナスにならぬ、プラスになるという判断が地域住民にあります場合は、合併への道を開いても一向差しつかえない。いまの境界地域で必ずこれでなくちゃならぬということは私はないと思う。ですから押しつける押しつけぬ、何も細谷さんが押しつけるとおっしゃったわけではございませんけれども、何か話を聞いておりますと、府県合併のこういう法律案を通せば、指導で、君たちはなぜ合併しないのか、合併をしたらこういう利益になるのだと宣伝するかのごとく言われておりますけれども、私たちはそういうふうにとっていないのでございます。いろいろ地域住民がお考えになって、こうやったほうが住民の福祉に連なるのだ、やろうじゃないかということであったら、たとえ府県合併であれ——国の場合は話は違いますけれども、とにかく国内の府県合併ですから、境界を改めるぐらいなことにそうこだわる必要はない、かように考えておるわけでございます。
  92. 細谷治嘉

    細谷委員 これは確かに平行線です。なぜ平行線だ。あなたのほうに何もないからですよ。たった何ページかの法案だけ出して、それですべてが解決するような、そんなことだから平行線になる。しかし平行線じゃないのですよ。これは平行線に届かない。まだそこまでいっていない。あまりにも粗雑だということです。おもちゃのピストルみたいなものだということです。私はいまの大臣のそういう態度については、そういうことでは危険だと思う。私は、いままでいろいろと質問してきましたけれども、この都道府県合併特例法というものは、もう今日のいろんな社会の病理現象を解決できない。あるいは言っておる広域行政ですらも解決できないものなんだ、こう私は思って、この種の法律は直ちにいま撤回なさったほうがいいのじゃないかということを心から大臣におすすめします。  私の質問はこれで終わっておきます。
  93. 吉川久衛

    ○吉川委員長 山本弥之助君。
  94. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 この都道府県合併特例法の制定につきまして、細谷委員から憲法上の疑義につきまして、九十二条あるいは九十五条の違反であるという指摘がなされたわけでありまして、私もこの点につきましては細谷委員と同意見でありまして、憲法違反の疑いが相当あるというふうに考えておるわけであります。しかし、相当論議を尽くした問題でありますので、重ねて同じ論議を大臣とする気持ちはないわけであります。  そこで、この特例法の制定に関しまして、府県合併につきましては、憲法九十二条を受けまして地方自治法第六条の第一項という規定があるわけなんですが、いま手続規定は整備されておると私は思うのでありまして、特にこの特例法を制定しなければならないという理由といいますか、あるいは実益といいますか、そういうものについての大臣の御見解を承りたいと思います。
  95. 長野士郎

    ○長野政府委員 お話しのとおり第六条では府県合併の手続はきめてございます。ただ地方公共団体の合併の手続として、現在の府県合併の手続だけでなくて、現在の市町村の合併手続に類するような、準ずるような方式を府県合併合併手続の中に取り入れるということも可能でありますし、また、そういたしますことが、府県の側から合併についてのイニシアチブをとることができる、こういうことでございますので、そのほうが地方の実情に即した地方の要求ということをはっきり受けとめて合併を進めていくということになるのではないか、こういうことでこの合併特例法の中に府県合併の特例を規定する、こういうことでございます。第六条の、法律で定める、というのは、言ってみますと、国が法律できめるということでございますので、形は少なくとも国家意思によってのみ府県合併というものはきめられていくということに相なるわけでございます。御指摘のとおり、そういうことでありますから、それが特別の地方団体の問題になるということである場合には、地方自治をおかすおそれがある。したがって、国家意思によってのみ行なうことを防ぐといいますか、チェックするために、憲法の特別法というものの働きがあるというかっこうでございまして、私どもはそういうふうに考えます。  そこで、特別法は、住民投票するから非常に民主的な手続になるということであるかもしれませんが、同時に、憲法それ自体の考え方も、地方団体全部に通ずる問題でなくて、一部の地方団体に特別に義務を負わしたり、特別な変化を与えたりするようなことは好ましくない、ただ法律で措置をしてしまうということは好ましくないという意味が、ああいう条文の裏には含まれているというふうにも考えられるのであります。したがいまして、この第六条の規定は、昔の府県制を実はそのまま受け継いだような形でございます。そういう意味で国家意思にのみ基づいて合併を行なうというのみではなくて、市町村の合併方式と似たような発意を府県側に置いたところの合併方式を認めていくということが、やはり地方自治という立場からいってもふさわしい形ではないか、こういうことだと考えます。
  96. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 私は、地方自治法の第六条第一項は、国の発意に基づくわけでありますが、しかし憲法の九十二条の精神等から言いますと、国も広域団体としての必要を感じ、また地域の住民もその必要性を感じて、県民の盛り上がりの上にそういう機運が熟したときに、当然特別立法という措置が行なわれるわけでありまして、国がかってに、府県の住民の意思いかんにかかわらず、発動して住民の意思を問うという精神ではないと思う。ただ、広域団体におきましては、町村合併につきましてもあとから触れたいと思いますけれども、少なくとも全国四十六の都道府県というものが定着しながら今日広域行政をやっておるわけでありますが、しかも地方自治体として定着したのは終戦後なんですね。まだ二十年しかたっていない。しかもそれが完全な自治体と言い得ないのが今日の実態である。国の施策から言いましても、これを完全な自治体に推進しなければならぬ、育成していかなければならぬ、こういうふうな状況にあると私は思うのであります。したがって、この合併につきましては、第六条で推進をする必要がかりにあるとするならば、当然事前によく調査をし、また県民の意向等もそんたくして、その上に立って特別立法をするかどうかということを慎重に判断すべきである、こういうふうに考えておるわけであって、いたずらにこういう特例法を設けるということの必要性を感じていない、こういうように考えますが、いかがでございましょうか。
  97. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 行政区画というものは法律できまっております。町村合併のときもそうでしたけれども、長い間行政区画というものは動かせないものだという考え方が国民の頭にしみ込んでおった。町村合併だって、これをやろうという機運が起こったときは、むしろびっくりした人が多かったと思うのです。ところが、町村合併は済みましたけれども都道府県だって同じことだと私は思うのです。地方自治が定着して二十年とおっしゃるけれども、この行政区画ができましたときは、都道府県の場合は百年以上も前のことでございますから、当時の人が夢想もしなかったような今日の国の状態になってまいりますと、都道府県であれ市町村であれ、一たん御破算にして、そして住民の福祉につながるような、また行政についても十分合理的にやれるような形にやり直したほうがむしろいいのだという考え方が一方にあるわけでございます。しかし、せっかく都道府県の境界というものを守って、それなりに地方自治というものが発達した面もありまするから、私どもはもう全部やり直すということまでは考えておりませんけれども、住民のほうで、この地域だけは都道府県といういまの境界というものがむしろないほうがましだという考え方がありました場合には、おやりになって差しつかえないという道だけ開いたわけでございまして、さっき細谷先生のお話もございましたけれども、これでぜひやりなさいということを言っておるわけではないのでございます。ですから、都道府県の境界というものは先祖代々動かせないのだ、昔の殿さまの時代の境界をそのまま持っていくのだという考え方を捨てようじゃないかということがやはり背後にあるわけでございます。
  98. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 いろいろと大臣からも行政局長からも伺いましたけれども、多少この法律に意義があると思われる点は、この「自主的に行なわれることを容易にし、」ということをうたいたかった点だと思うのですが、そうでございますか。
  99. 長野士郎

    ○長野政府委員 府県合併のイニシアチブを府県の側でとって、そうして進めていくということができる道を開くのでございますから、その意味では「自主的に行なわれることを容易にし、」ということは、お説のとおりだと思います。
  100. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 今日の地方自治体に対しまして、いわゆる地方自治を尊重するなり、その本旨に従うということをうたいたかったということでありますならば、きわめて名文をここにうたわれたと私は存じますけれども、今日の府県の実態を行政局長はよくおわかりだと思うのですけれども、財政面におきましても、四十六府県のうち三割以下の自主財源を持っているのはおそらく三分の二以上だろうと思います。しかも、この前も地方交付税なり地方税制で質問申し上げたのですが、大都市が行政需要に応じ切れなくて、ある程度まで過密を解消するための税源を法人割等に求めるという場合におきましても、容易にそういう措置がとりえない、こういう実態であり、しかも財政計画で人員の一%削減までうたい、さらに単独事業等につきましても、交付税が増額になれば単独事業を財政計画で圧縮してかってに府県事業の推進をはかり得ないというふうな実態に置かれているわけでありまして、今日府県が自主性を持ち得ないという実態にあるのが現状だと私は思うのであります。法文の上で自主的にと言われても、現実に、ほんとうに地方自治体を育成するということが具体的に財政面においてもあらわれていなければならない、こういうように考えるわけであります。あなたのほうで四十三年度地方財政運営通達というものを事務次官名で出しておられますけれども、これを一々読むことをやめますが、いかに府県の自主性というものを束縛しているか。事こまかに府県の財政運営に関するもろもろの制限をこれで通達しているわけです。国の予算のあらましだとか、予算の編成方針だとか、あるいは国際情勢、国内の経済情勢ということを知らせるということではなくて、それに関連をして、あらゆる面において府県がこれに準拠するように通達でもって締めつけている。それほど自主性を認められていないというのが今日の府県の置かれている立場であるわけです。しかも、ある事業については民間委託をしたらいいとか、あるいは冗費の節減をせよとか、——それほど自主性を尊重しているとするならば、こういう府県合併というような重要な問題で自主性を尊重するよりも、現実に府県がもう少し行政需要に応ぜられるような、地域開発に適応できるような措置を考えていくべきである。事務次官の通達、あるいは、場合によっては局長なり課長なりの通達で事こまかに制限をするということをやりながら、形式的に地方自治を尊重するということはあり得ない、こういうふうに私は考えるわけです。それだと、第一条の自主性というものもいかにも現実と乖離している。なぜ、こういう法律を出さなければならぬのかということ。今日府県行政に、社会の発展なり経済の発展上支障があるとすれば、府県を、その行政需要に対応し得るような財源、あるいは府県制、地域の特性に合った推進をはかり得るような体制に先にしておかなければならぬ、こういう感じがいたしますが、どうでございましょうか。
  101. 長野士郎

    ○長野政府委員 地方財政、地方行政につきまして自治省が地方団体に対しまして、いろいろな意味の通達なり指導なりをいたしているその内容について、いろいろ問題にすべき点があるではないか。これはごもっともでございますし、また多岐、微細にわたり過ぎている面もあるかと思います。そういう点は大いに反省しなければならぬところでございますが、同時に、そういう意味で全体の府県の自治行政というものの自主性が妨げられているという場合に、合併だけを自主的にやれということを言っても意味がないじゃないかというようなお話かと思いますが、今日、現在の府県なり市町村なりの地方自治の運営というものを、ほんとうの地方自治の本来の姿に即して経営をさせる、運営ができるようにしていくということは、われわれ地方自治に関係しております者の念願でございます。ぜひそういうことになるように努力を私どもも続けていかなければならないと思います。  また、そういう点で現在の状況がそれとほど遠いではないかという御指摘も、私もまさにそのとおりだと思います。われわれの努力も足りないということだということで、常に反省をしなければならぬ問題だと思います。それはもう仰せのとおりでございまして、一方、改善に努力を続けていくことは今後ともやっていかなければなりません。しかしまた、ここでいま御提案申し上げておりますのは、府県の規模の適正化と申しますか、府県が広域的な団体としての能力を十分発揮するための府県のあり方、区域、規模の問題というものについて考えました場合に、現在の府県が置かれている場所によって——すべての府県がそうだという意見もございますけれども、すべての府県がそうだというより、そういう状況になっている府県についての問題として取り上げるべきだという意見もございます。したがいまして、少なくともそういう面で広域化をはかっていく必要のあるという点では、今日大方の世論というものはそういうことを認めておると思うのでございまして、そういうことをやります場合に、それを国のほうのサイドから一方的にやっていく。一方的にという言い方は語弊がありますが、そういうことがいいか、それともそういう実態を認識した上で府県関係者というものがリーダーシップをとって進めていくということを考えていくことが望ましいかということになりますと、あとのようなものがはっきり打ち出されていくことも望ましいことではないかというにすぎないのであります。  この法律は、そういう意味で、地方自治法六条は法律でだけきめるということになっておる。それにもう一つ加えまして町村合併の方式と同様のものを考えるべきであるとするものであります。地方自治法の六条のほうは、どちらかといえば、府県の重要性ということからいって、国の立場からものを考えていくということが出てきておるというふうにも言えるわけでございます。ですから、もし逆に立場をかえて考えますと、いまの都道府県合併特例法のような条文が六条にあって、もし府県合併法律でのみ定めるということを新たにつけ加えることにした場合に、私はきっと逆の議論が起きるだろうと思います。何てことをするんだという議論になるだろうと思います。そういうことも考えまして、かれこれ考えますと、国の立場から見ていく考え方もよろしい。しかしながら、府県がイニシアチブをとってやっていくという考え方の道を開くということがそれほどむずかしい問題であろうか、はなはだけしからぬじゃないかという問題には決してならないだろうというふうに、私には思えてしかたがないのであります。
  102. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 きのうも、参考人の口述をめぐりましていろいろ議論が分かれたと思いますが、私は大体中央大学の大原先生の意見に賛成なわけですが、私実感として申し上げますと、こういう法律をつくって自主的に合併促進しようということは、いわば自治省の責任回避だというふうに思います。かつて地方公共団体が財源的に非常に困った時代がありました。現在も困っております。たまたま三十年ごろからわが国経済は伸びたわけであります。ところが、三十五年、池田内閣以来、所得倍増というキャッチフレーズ、いかにも国民それぞれの所得が倍になるのだというふうな錯覚のもとに、いわば大企業を中心としての資本の蓄積、設備投資が積極的に行なわれたわけです。したがって、財政に困っております府県あるいは市町村は、公共投資をすることについての財源が乏しいために、いわば企業誘致、工場誘致をすることによって、固定資産税なりあるいはそこに従事する職員の県民税あるいは市民税、事業税の税収の確保をはかりながら、さらに公共投資を拡大していこうという考えになったわけであります。いわば財源の充実が県民の所得の向上にもつながる、こういう考えに立って、盛んに乏しい財源の中から、工場誘致に対する税の減免あるいは諸般の土地の購入その他の便宜をはかったわけですが、東北地方は苦い経験ばかりなんです。すでにむつ製鉄という企業が来ることにほぼ決定を見て、むつ市、それから青森県は、相協力いたしまして用地の購入その他のあっせんをはかったわけですね。ところが、いよいよ建設の段階になって中止になった。それらの先行投資というものはむつ市——これは新町村の関係合併して市になったところであります。乏しい財源から穴埋めもできない。非常に苦境に立ち、市長は苦悩のあまりついになくなられたという事例まで出ております。  最近の例も、これは汚職につながった問題でありますが、国内産糖の奨励をするということで、東北の畑作地帯、しかも県北の畑作地帯に、青森の南から岩手の県北、秋田にかけましてビートの栽培をやらせ、そしてフジ製糖を建設いたしまして、これも相当の融資をさせて、それが軌道に乗ったら企業が倒産する。畑作に転換してやっと酪農との関連において、いわゆるビートかす等の飼料の問題の解決をはかりながら、畑作問題も解決つくであろうという軌道に乗って五年目に、今度は畑作転換をしなければならぬ、こういう状態になっております。  釜石市の富士製鐵の釜石製鉄所は、これの育成は、戦災の際、あるいは釜石鉱山からの製鉄所に対する引き込み線に県、市がばく大な経費を投じまして協力をしてきた。現実はどうでございますか。東海製鉄の転換によりまして毎年千人ずつの配置転換が行なわれているわけです。釜石は毎年衰微——というところまでいかないまでも、人口は減少し、どう釜石の将来を考えるかという事態に追い込まれているわけです。  この三つの例をあげてみましても、企業の意思によってその地域の発展が左右されるということが現状であります。そのあと始末は、公共団体自身、県民なり市町村民の負担においてやっておるのが現状なんです。なぜそういう事態が起こるか。今日大都市及びその周辺に企業が集中しておる。企業が集中するにはそれだけの理由があり、あるいは人口その他の集積が企業にプラスするからであります。しかし、それが過密になりまして、過密の弊害が出てまいりますと、これに対して公共団体に対する要求が熾烈になってまいります。いわば企業のために、公共団体がいろいろ県民のためなり市町村民のために努力をしてまいった体制が、一気に取り返しのつかないような財政負担、あるいは県民の生活向上に支障を来たすような状態になっているわけであります。私は長々と申し上げることを避けたいと思いますけれども、そういうことを考えますと、今日広域行政のために、ある程度まで広域でなければならぬということを要請しているのが、関西の経済界、東海地方経済界がまっ先に立っておるということは、いわばいままでそこに企業を立地しておって、そのことがマイナスになり始めたときに、公共団体に要求してきた、これらの問題を自治省は自主的に解決つけようとしてこういう法律を出してきたというふうな見方が私はできると思う。これは一昨日大原先生の指摘したとおりであろうと思うのですが、そういうことに対して、社会経済の伸展に即応した合併を自主的にやらそうということについのお考えはどういうことなんですか。
  103. 長野士郎

    ○長野政府委員 地方公共団体に対して企業があと始末をさせたいというようなことから、過密地帯ではあと始末をさせる時期が来たから合併をさせるんだというようなお話でございますが、企業と地方公共団体との関係におきまして、企業の発展ということが即住民の所得の向上なり産業の発展ということにつながる、そういう意味で企業を誘致し、あるいは企業の立地につきまして、関連する公共施設の整備なり、いろいろ地方公共団体の合併としても努力をするということは、従来から御指摘のように行なわれておるところでございます。もちろん、府県合併の必要というものも、地方団体ということで考えますと、ここに書いておりますように、自然的あるいは社会的、経済的な条件というものが非常に緊密な状況になってきた。そして、それが一つの一体的な実質を持ちながら府県間にまたがっているような状況になると、行政の上での不都合なり停滞というようなものが起きてくる。そして、そこにいろんなアンバランスやひずみが行政の側面からも出てくるというようなことが、公共の福祉、ひいては住民の福祉の上にも影響を及ぼす。したがって、そういうようなところで広域行政というものを合理的に展開できるようにするために、これは全部の方法じゃありませんが、一つの解決の方法として、府県合併という方法もついに考えるべきときが来たんじゃないかということで、しかもその合併の方法について、自主的に府県のイニシアチブによって合併を進めていくという方法を開くということが似つかわしいのじゃないかということで、この法案を出されておるわけでありますから、そういう意味で、企業サイドから、企業の要求からものを考えるということじゃなくて、企業もいろいろ集中をしてくる、人口も集中をする。交通、通信も非常に発達してくるというようなことで、全体としての地域社会の一体性というものがいろいろな観点から要請される。その場合に、行政的に分割されておることが不都合であるというようなこと、あるいは、むしろそれを一体にしたほうが地域行政をやっていく上で非常に合理的だというふうに思われるというような理解に達したところに、合併しやすくする道を開いていくということを考えておるにすぎないのでありまして、企業のサイドというものにも、そういう意味で影響することは確かでございますけれども、企業を含めて、地域社会、地域住民全体の立場からの合併ということを考える。したがって、議会なり何なりの絶対多数の意思によってこれが実現をはかっていくということでございますので、全体の公共の福祉の増進と広域行政というものの展開のために行なわれるということに御理解を願いたいと思います。
  104. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 繰り返すようですけれども府県合併の必要があるとするならば方法がないわけではない。そのときに、この特例を出しまして、自主的という名目のもとに合併が一部に認められていくということは、本来府県広域行政はどうあるべきか。これは細谷委員指摘したところでありますが、そういう基本的な考え方に立たずに、関係府県に責任を転嫁させながら、しかもそれらの府県は、今日においてもなお広域地方団体としては、制度上においても運営の面においても、また財源の面におきましても、自主性を持っていない、ただこういう重要な問題のときに、府県の責任あるいは自主性を強調しながら、府県に責任を転嫁させながら法令を出すというところに、私は大きな疑問があるわけなんです。
  105. 長野士郎

    ○長野政府委員 御指摘のこともわかりますが、そういう府県の自主性のない実態でございますから、府県の再編成も国の手でやってしまえという議論には私はならぬのだろうと実は思うのであります。むしろ逆でありまして、だから自主性を回復し、自主的に編成するものが全体の考え方にも即することが望ましいけれども、まず第一に地方団体としてそういう自主的な統合、合併ということが一番望ましいことではないか、また、ほかの行財政面においても自主性を確立することが望ましいのであって、自主性がないような実態であるから、別個の合理的な計画によって、全体計画として推し進めていけばそれで済むのだということには私はならぬのだろうと思うのでございます。  そこで、地方自治の現状においていろいろな面で十分でない点は、もう御指摘のとおりでございます。これは今後とも努力を続けてまいらなければならぬということは重ねて申し上げるまでもないことでございますが、府県合併につきまして、そういう意味で、府県の置かれている状況の中でいろいろな条件が違うわけでございますから、府県間を越えて、日常の生活圏域なり経済圏域なりというものが広がっておるような地域におきましては、日々の住民の生活関係とか交流関係というものがそういうふうになっている。したがって、行政自体も、そういうものを府県区域を越えて調節をしなければならない分量が非常にふえておるというような地域と、それから、まだそこまではいってない、ほとんど大部分行政対象というものが一つ府県の中で大体完結する、ときどき特定の問題について府県を越えるような広域的な処理が必要だ、こういうような状況のところと、それぞれ立地するところの条件が違う面が多いわけでございます。したがいまして、そういう意味で、地域的にも社会的にも一体性のある区域というものとして、どうしてもそれを統合して処理したほうが合理的であるというところについての合併から進めていくということで現段階は進めていくのが適当ではないかというので、合併特例法におきましては、合併の別個の手続を開きますと同時に、全体の考え方もそういうことになっておるわけでございます。その状況の違うものを全部一度に再編成をしていくというところまではまだ踏み切ってない。その点で、全体の姿をはっきりさせないでやるということになるのじゃないかという御指摘でございます。ごもっともでございますけれども、いまのところ、そこまですると、非常に実質に合わない点が出てくるのじゃないだろうかということでございますので、一体性を持っておるところについて自主的に合併が進められるという方向で、一歩踏み出していくのが適当ではないか、こういう考え方でやっておるわけでございます。
  106. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 私が先ほど例を引きましたのは、企業の要請によって、地域住民の福祉を増進するということと往々にして相矛盾するという事例が出ている。したがって、先ほど行政局長は、一部の地域においてそういう世論も出ておるというお話がありましたが、世論の形成が、主として企業側といいますか、そういうところから出てくるという場合には、それに直ちに対応するというしかたが、地域住民の福祉の増進あるいは生活の向上ということと必ずしも一致しないということになり得るんだ。だから、その点については、合併の道があるので、合併の道のあることでやるべきであって、この特例法が、実質的にそのときの知事なりあるいは県会議員の意思によって、それらの要請にこたえるということになりますと、合併それ自体が、本来、地域住民の自治が要請され、地域住民の生活の向上をはかるという地方自治体の本来の性質と矛盾するような結果になりはしないかということを指摘したいわけなんです。
  107. 長野士郎

    ○長野政府委員 このような特例を開くことによって、かえって企業サイドの意思というものがこの中へ入り込みやすくなる場合がないか、そういうことで、何か住民福祉と逆行するおそれになるようなことはないかという御指摘のようでございますが、私ども、もちろんそういうことがあってはならないと考えておりますし、また、現在の府県の住民あるいは現在の地方人たち考え方の中に、いろいろな考え方があると思いますけれども、私ども考えまして、いまの時点でいわゆる企業サイドだけからの行動なり意欲というものに、全部住民が盲従していくというような時期は、もうすでに過ぎているんじゃないだろうか。また、そういう意味で、企業誘致をあるところでやろうとしましても、それが公害を発生するのではないかとか、いろいろな問題で、企業誘致というものが不成立に終わっておるような事例も、最近は非常にたくさんございます。そういう意味でも、住民の自覚と申しますか、住民福祉と企業との関係における必要な調整というものについては、相当理解が進んでおるのじゃないかという気もいたします。それからまた、同時に、正しい意味での企業側の活動というものを全然無視するということが、常に正しい方向でもない。やはり企業のサイドからの行動と地域社会の福祉というものと、これは当然につながりがあるわけでございます。現在の都市の繁栄、それにもいろいろ指摘されるような欠陥もあるかもしれませんが、やはり企業立地あるいは工業立国ということが、これだけ高い国民所得を伸ばしてきておることも、これは間違いないことでございますから、そういう意味で企業との調節ということが、こういう新しい規定を入れることによってウエートがかかってくる。国が法律でやればそれは守れるけれども地方団体がイニシアチブをとるときには、かえって企業の力に押しまくられるおそれがないかというようなことには私はならぬのではないかというふうに思います。
  108. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 もう一つ例をあげますと、姫路市におきましても、市長の企業誘致に対して地元の反対があった。これは非常に長くかかったわけですが、その場合も、あらゆる方法をもってこれの誘致をはかり、しかも市長が選挙戦で破れるというような事態にならないと問題は解決しなかったという例もあるわけなんです。したがって、私は何も企業がすべて地域団体の生活の向上なり福祉の増進ということと無縁のものであるということを申し上げるわけじゃないのです。ある意味におきまして、そのことが経済の発展につながり、地域住民にも還元されるということは、これはあるわけであります。そのことによって、わが国も工業ということに重点を置いておるということも言えるわけであります。しかし、細谷委員からも質問がありましたように、府県広域行政にどう対処するというような基本構想もないままに、主として企業界の要請ということが世論の形成の背景になりながらこういう法律が出てくるということについては、私は、慎重に対処すべきであるということを申し上げておきたいわけであります。しかし、このことをいろいろ議論をしておりましても切りがないわけでありますので、次に移りたいと思います。  確かにこの特例法を見ますと、一般の府県をうたっておるようでありまして、「広域にわたる行政のより合理的かつ効果的な処理と広域の地方公共団体としての都道府県の能力の充実強化」、そして、合併をすると効率的な行政が確保されて住民の福祉が増進されると、こういうふうに一条でうたっておるわけですが、これは現実にこの法律、が出ますとどういう動きになるのでしょうか。
  109. 長野士郎

    ○長野政府委員 府県合併の問題におきましては、先ほどからお話が盛んに出ておりますが、資料でもお目にかけておりますように、府県合併問題は、地方行政調査委員会議で昭和二十六年ごろからすでに、現在の府県の規模の合理化ということは言われておったわけでございまして、言ってみますと、戦後直ちにそういう問題も問題として取り上げられておるというかっこうでございます。しかるに、そういう問題について、実際問題として、そういうことが識者の間で言われながら、実現がはかりかねておるまま現在に至っております。一つには地方自治体の間におきまして、たとえば町村会でございますとか市長会等におきましては、市長会がその意味では一番急先鋒と申しますか、強い主張を持っておられますが、府県制は廃止しろ、そうして、むしろどちらかと言えば道州制的なものをつくれというような意見さえ、これは多年にわたって出ておるような状況でございます。しかるにかかわらず、そういうことが一方で言われますが、同時に、府県地域における影響力というものは非常に強大でございます。そこで具体の場所におけるところの問題としての府県合併論というものは、ある意味では非常に内攻するといいますか、非常にはっきりとした論議として各地域で行なわれていくということが、なかなか起こりにくいような状況にございます。ですから、私どもは、こういう法律が制定されまして、やはり全体として府県というものを再検討し、府県のあり方というものをほんとうに論議をしていくときがきたということが、はっきりと明らかになること、そのことが、具体のどの府県がどう合併するということもございましょうけれども、全体としてそれが非常に大きなそういう問題におけるところの進歩ではないか。要するに府県問題というものと真正面から取り組んで論議をするということが当然のことであるということで地方行政の問題が考えられるようになっていくということが、具体の府県合併の推進という問題もございますが、それにもまして非常にいい傾向をもたらすのではないか、こう考えております。
  110. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 どうもはっきりわかりませんが、ただいま市町会の意見が出ましたので、私一言申し上げておきますが、市町会の府県制廃止という議論の背景は、これは当時の府県行政というのがいわば市町村行政の補完行政なり調整行政という使命よりも、本来並立的な公共団体、地域の広狭によっての、広域行政府県が担当し、市町村は基礎的な公共団体としてその地域内の行政を担当するという考え方であるにもかかわらず、これは国の政治の欠陥もあるわけでありますが、国の政治の委任事務として市町村に対して並立的な団体であるにもかかわらず、府県が常に監督行政ばかりに熱中する、いわば戦前の府県のあり方というものを脱皮していない。いわば府県自体が赤字団体でありながら健全な団体の財政監督をする、あるいは干渉をするということに対して、地方自治体の本来のたてまえが狂っておるじゃないか、国の出先機関のような考え方に立って市町村に臨むそういう二重行政は不要じゃないかというところから、府県に対する廃止論が出てきているわけでありまして、本来の府県行政と市町村行政のあり方に対するいわば抵抗といいますか、不要論というのが出ておるわけでありまして、その点が直ちに本来の姿の府県行政に対する問題というよりも、いわば当時の情勢からいくとそういう情勢にあったと思うのであります。  そこで、その点はいいといたしまして、この第四条に「地方自治法第六条第一項に定める場合のほか、この章に定める手続に従って行なうことができる。」こうありますが、地方自治法の第六条とこの特例法とは今後どういうふうに使い分けをするわけですか。
  111. 長野士郎

    ○長野政府委員 国が具体の府県についての合併を国の立場で推進しようということでございます場合には、地方自治法第六条によりますところの法律をつくる、こういうことに相なるだろうと思います。それから、府県が自主的に合併をするという場合には、おそらくこの法律が成立いたしますればほとんどこの特例法の第二章によって合併が進められる、こういうことに相なってまいるだろうと思います。
  112. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 そういたしますと、この特例法ができますと、今後は自治法第六条の発動ではなくて、ほとんどこの特例法によって合併を進めていく、こういうことですか。
  113. 長野士郎

    ○長野政府委員 府県議会において自主的に合併の話がまとまりまして合併を進めていくという場合には、特例法による手続によることが多いだろうと思います。
  114. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 自治法第六条第一項にもよるというようないまの御答弁のようですが、そういうことをおやりになりますか。
  115. 長野士郎

    ○長野政府委員 自治法第六条によりましても、府県合併法律で行なうことはもちろん可能でございます。しかし、いま申し上げましたように、府県が自主的に合併を進めていこうという場合には特例法の合併の手続によることがほとんど大部分だろうと思います。
  116. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 どうも重要な府県合併という問題を、自治省は、いずれあとでお伺いをしたいと思いますけれども広域行政としての府県行政がどうあるべきかという自治省としての見解は何もないということですね。今後十年間、府県合併したいところはかってに合併しなさい、そういうことですか。
  117. 長野士郎

    ○長野政府委員 自治省としては、府県行政が将来どうあるべきかという青写真をいまここでお見せするという段階に至っておりません。ただ、お話にございましたような、府県合併しやすいところがかってに合併したらめちゃくちゃになりはしないかというような気持ちがおありのようでございますが、私どもはそのようにも考えておりません。やはりだれが見ても合理的なところが合併をしていくのであって、また、それが将来の府県のあり方というものにもちろん背馳するものになるという心配もいたす必要はないのではないか。そういう適切なところが適切に合併をしていくというのが、自主的な合併というものと全体の調和というものが、かえってそのほうがよくとれるのではないか、このように考えている次第であります。
  118. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 どうもはっきりわからないのですが、将来の広域行政を担当すべき府県行政については、自治省としてはまだはっきりしていないけれども、しかるべく自主的に合併すると、あるべき姿になっていくのではないかというような御答弁のようですが、この特例法によってしかるべく指導をしながらあるべき姿に持っていきたい。しかし、実際にはわかりませんけれども、腹案はあるという含みのような答弁に聞こえますが、そういうことですか。
  119. 長野士郎

    ○長野政府委員 府県合併特例法によりますところの府県の自主的な合併によりまして、私どもは、府県という団体の広域行政体制というものが逐次整備されていく、そういうことの行き着きます先が、やはりいまの府県を脱皮いたしまして、そして広域行政体制を整えた新しい広域府県というものに漸次整備されていくようになる、このように考えております。
  120. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 十年間の時限立法で、この間に自治省は公表しないままに次から次にやっていこうというお考えのようですが、十年間のうちにどういう成果を期待されておるわけでありますか。
  121. 長野士郎

    ○長野政府委員 十年間のうちにどこどこがどうなるかということについては、私どもまだここで申し上げかねるわけでございますが、この法案は時限法になっておりますけれども、その間に、やはりあるべき広域行政としての府県合併計画というものが逐次実現されていくというふうに考えております。
  122. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 どうも行政局長は、あなたが担当している府県行政というものに対して全く人ごとみたいに考えている。そんな立場で、この法律は必要があるのでしょうか。  そういたしますと、具体的にお聞きいたしますが、もしこの法律が制定になりますと、直ちに申請されると思われる府県はどこどこでしょうか。
  123. 長野士郎

    ○長野政府委員 出てこなければわからぬわけでございますが、現在府県合併として問題になっておりますのは、愛知県、岐阜県、三重県の三県の合併問題、大阪府、和歌山県、奈良県のいわゆる阪奈和の合併、広島県及び島根県の広島、島根の合併、あるいは北九州地域におけるところの合併構想というものも古くからございます。  そういうことでございますが、こういうものは現在すぐ直ちに首をそろえて出てくるかどうかということになりますと、これはやってみなければわからない話でございます。いずれも自主的な合併でございますから、政府がすぐ出せというわけになかなかまいらぬという事情でございますので、むしろこの法案が制定になりました場合には、府県合併というものについての問題の所在、あり方、合併のメリットあるいはデメリットというようなもの、将来のその地域社会の発展の展望というようなものを詳細に検討をされた上で、そういう結論に達していくところは実を結んでいくというふうに考えております。
  124. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 おとといの参考人の西村さんのお話を聞きますと、大阪府の府会は反対決議をしておる。奈良、和歌山の知事さんも反対をしておる。そういう情勢の中に、申請される可能性はありましょうか。岐阜県、愛知県、三重県の場合も必ずしも岐阜県、三重県というようなところが積極的に申請をするというふうな気配も見えないわけですが、そういう背景の中に法律の制定を促進されるということはメリットがないと思うわけでありますが……。
  125. 長野士郎

    ○長野政府委員 かつて大阪府議会でそういうような御意見をお出しになったということは私ども聞いております。ですから、阪奈和の合併等については、やはりいろいろな角度からいろいろな意見があるわけです。それほどにまた府県合併問題というものは、地方によって非常に重要な問題でございます。そこで、そういう問題についてあらゆる方面から科学的にも調査をいたしまして、そうしてその合併の成果なり、効果なり、予測なりというものを見きわめた上で、そして合併というものについての真剣な討議がかわされる、そういう機運というものを一日も早く醸成をすることは、これはむしろおそきに失するくらいではなかろうかと思うのでございます。したがいまして、大阪府がどういう御研究の結果その当時御意思を発表されたか知りません。あるいはどこそこの知事さんがどういうことだということも、どういう御研究の結果かわかりませんが、なおなおもっと詳細に御研究、御検討いただいて、住民世論というものを背景にして合併問題というものをほんとうに討議にかけていただきたいという気がしております。そういう意味で、やはり従来からの経過から考えまして、だれがどうであったからどうだというのでなくて、あくまでも冷静にその地域社会の将来の発展構想というものを踏まえながら、科学的にいろんな方面から検討を加えていただきまして、合併の是非というものの結論を出していただきたい。そういう意味では、私はやはりこの特例法が成立するということは、そういう検討を加えるための一つの土台を形成することになるという意味におきましても、たいへん大切なことだというふうに考えております。
  126. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 それでは、質疑を保留いたしまして打ち切りにいたします。  きょうの十時ちょっと前に、北海道、青森、岩手を中心にいたしまして激甚災があったわけであります。まだこれの被害の詳細につきましては判明をしていないわけでありまして、三陸の津波等の問題が非常に懸念をされ、その被害が相当発生するのではないかということが予想されるわけでありますが、これらに対しましては、政府としても十分対処願いたいと存じますが、その点について一言お伺いいたしておきたいと思います。
  127. 細田吉藏

    ○細田政府委員 本日の地震の被害につきましては、刻々といま入っておりますけれども、まだ全貌を把握するに至っておりません。おそらく次々と入ってくる情報で、被害状況が大きくなりこそすれ、小さくなることはもちろんないと思います。たいへん激甚な災害でございます。  本件につきましては、私どもも消防庁の所管もいたしております。また、申し上げるまでもなく、地方行財政を担当しておるわけでございます。広く政府といたしまして、これに対しましては万全の措置を講ずるべく努力をいたしてまいる、またそうしなければならぬ、かように存じておる次第でございます。
  128. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 不幸にして災害が頻発する国柄でございますので、この前私大臣をやりましたときにも、いきなり新潟の地震があって、その事後措置にはずいぶん努力いたしました。たいへんお気の毒なことであると思いますので、この災害の事後処理につきましては万全を期したいと考えておりますが、起こったばかりですから、いまあれをやる、これをやるということはちょっと申し上げにくいと思いますけれども、これは皆さんの御期待にそむかないような処置をいたしたい、かように考えております。
  129. 吉川久衛

    ○吉川委員長 次回は、明十七日午前十時から理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後三時三十九分散会