運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1968-05-15 第58回国会 衆議院 大蔵委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月十五日(水曜日)    午前十時五十八分開議  出席委員    委員長代理理事 毛利 松平君    理事 原田  憲君 理事 渡辺美智雄君    理事 村山 喜一君 理事 竹本 孫一君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       河野 洋平君    小山 省二君       笹山茂太郎君    四宮 久吉君       地崎宇三郎君    坊  秀男君       村山 達雄君    山下 元利君       吉田 重延君    阿部 助哉君       井手 以誠君    大原  亨君       佐藤觀次郎君    平林  剛君       広沢 賢一君    広瀬 秀吉君       武藤 山治君    岡沢 完治君       河村  勝君    小川新一郎君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      荒井  勇君         人  事  官 島田  巽君         総理府総務副長         官       八木 徹雄君         内閣総理大臣官         房審議室長   橋口  收君         総理府人事局長 栗山 廉平君         大蔵政務次官  倉成  正君         大蔵省主計局次         長       海堀 洋平君         厚生省年金局長 伊部 英男君         厚生省援護局長 実本 博次君  委員外出席者         人事院事務総局         給与局次長   渡辺 哲利君         総理府恩給局恩         給問題審議室長 大屋敷行雄君         大蔵省主計局給         与課長     津吉 伊定君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 五月十五日  委員奥野誠亮君、鯨岡兵輔君、西岡武夫君、古  屋亨君及び野口忠夫辞任につき、その補欠と  して池田正之輔君大平正芳君、福永一臣君、  宇都宮徳馬君及び大原亨君が議長指名委員  に選任された。 同日  委員池田正之輔君宇都宮徳馬君、大平正芳君  及び大原亨辞任につき、その補欠として奥野  誠亮君、古屋亨君、鯨岡兵輔君及び野口忠夫君  が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十四日  中小企業に対する国民金融公庫の融資制度改善  に関する請願外一件(大原亨紹介)(第五二〇  一号)  同(神門至馬夫君紹介)(第五二〇二号)  同(佐々栄三郎紹介)(第五二〇三号)  同(浜田光人紹介)(第五二〇四号)  同(稻村隆一君紹介)(第五二九二号)  同外五件(大出俊紹介)(第五二九三号)  同(佐々栄三郎紹介)(第五二九四号)  同(柴田健治紹介)(第五二九五号)  同(内藤良平紹介)(第五二九六号)  同外二百九十五件(中谷鉄也紹介)(第五二九  七号)  同外一件(浜田光人紹介)(第五二九八号)  同外七十二件(美濃政市紹介)(第五二九九号)  同(横山利秋紹介)(第五三〇〇号)  同(内藤良平紹介)(第五三八三号)  同外二件(古川喜一紹介)(第五三八四号)  同外百十九件(美濃政市紹介)(第五三八五  号)  音楽、舞踊、演劇及び映画等入場税撤廃に関  する請願有田喜一紹介)(第五二〇五号)  同(草野一郎平紹介)(第五二〇六号)  同外一件(小坂善太郎紹介)(第五二〇七号)  同(砂原格紹介)(第五二〇八号)  同(谷川和穗紹介)(第五二〇九号)  同(野呂恭一紹介)(第五二一〇号)  同(藤山愛一郎紹介)(第五二一一号)  同(坊秀男紹介)(第五二一二号)  同(伊能繁次郎紹介)(第五二六二号)  同(遠藤三郎紹介)(第五二六三号)  同(神田博紹介)(第五二六四号)  同(木部佳昭紹介)(第五二六五号)  同(吉川久衛紹介)(第五二六六号)  同(小峯柳多君紹介)(第五二六七号)  同(河本敏夫紹介)(第五二六八号)  同(田川誠一紹介)(第五二六九号)  同(塚田徹紹介)(第五二七〇号)  同(中曽根康弘紹介)(第五二七一号)  同(本名武紹介)(第五二七二号)  同(福田篤泰紹介)(第五二七三号)  同(箕輪登紹介)(第五二七四号)  同(山口喜久一郎紹介)(第五二七五号)  同(山口敏夫紹介)(第五二七六号)  同(始関伊平紹介)(第五二七七号)  同(荒舩清十郎紹介)(第五三一七号)  同(大竹太郎紹介)(第五三一八号)  同(岡崎英城紹介)(第五三一九号)  同(四宮久吉紹介)(第五三二〇号)  同(広川シズエ紹介)(第五三二一号)  同(藤枝泉介紹介)(第五三二二号)  同(村山達雄紹介)(第五三二三号)  同(山口シヅエ紹介)(第五三二四号)  同(菅太郎紹介)(第五三二五号)  同(賀屋興宣紹介)(第五三三七号)  同(小渕恵三紹介)(第五三七七号)  同(世耕政隆紹介)(第五三七八号)  同(高見三郎紹介)(第五三七九号)  同(竹内黎一君紹介)(第五三八〇号)  同(橋本龍太郎紹介)(第五三八一号)  国税庁独身寮自治権確立等に関する請願(広  沢賢一紹介)(第五二一三号)  医療法人に対する法人税減免に関する請願(小  川平二君紹介)(第五二七八号)  同(吉川久衛紹介)(第五二七九号)  同(始関伊平紹介)(第五二八〇号)  同外一件(藤井勝志紹介)(第五二八一号)  同(岡本隆一紹介)(第五三八二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十四日  政府関係中小企業専門金融機関に対する資金増  額に関する陳情書  (第三五〇  号)  保険代理業の育成に関する陳情書  (第三八一号)  保険代理業手数料算定に関する陳情書  (第三八二号)  葉たばこ収納取扱所統廃合反対に関する陳情  書(第三  八三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十二年度における旧令による共済組合等  からの年金受給者のための特別措置法等規定  による年金の額の改定に関する法律等の一部を  改正する法律案内閣提出第六二号)  昭和四十二年度における公共企業体職員等共済  組合法規定する共済組合が支給する年金の額  の改定に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第七四号)  国家公務員共済組合法及び公共企業体職員等共  済組合法の一部を改正する法律案武藤山治君  外十一名提出衆法第一八号)  国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律  案(武藤山治君外十四名提出衆法第一七号)      ――――◇―――――
  2. 毛利松平

    毛利委員長代理 これより会議を開きます。  委員長所用のため、指名により私が委員長の職務を行ないます。  昭和四十二年度における旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等規定による年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案昭和四十二年度における公共企業体職員等共済組合法規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律の一部を改正する法律案武藤山治君外十一名提出国家公務員共済組合法及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案武藤山治君外十四名提出国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。小川新一郎君。
  3. 小川新一郎

    小川(新)委員 いま問題になっております共済組合並びに関係法案につきまして、実質面から少し質問さしていただきます。何ぶんにもあまりよく勉強しておりませんので、要点がはずれる場合がありますけれども、ひとつ明快に御答弁をしていただきたいと思います。  まず最初に、次官にお尋ねいたしますが、現在の国民経済というものは非常な高物価に悩んでおります。毎年四%前後の消費者物価上昇はもう避けられない。こういう現実に立って、年金とか共済組合とか、または保険とか、こういった私たちの側面からの生活をバックアップしていくようなシステムというものは現在くずれつつある。ましてこの恩給等のものは、恩給制度そのものが老後の職を失ってからの生活の柱とならなければならない、そういうたてまえの精神の上からできておりますが、現在のような物価のもとにおいては、毎月もらっております国民年金である老齢年金等は千六百円、また母子福祉年金においては二千円、障害年金においては二千五百円足らず、一回食事をしたらなくなってしまうような微々なる額で、こういった根本の法の精神というものがくずれていくような立場にいま立っております。こういう点におきまして、その現情勢には対処できないのではないか、こういうふうに私は考えておりますが、この点につきましてまずお考えを承りたいと思います。
  4. 倉成正

    倉成政府委員 お答えいたします。  ただいまの御質問は、恩給あるいは年金、あるいはその他の社会保障の諸制度について、物価上昇になかなかついていけないのじゃなかろうかという御質問だと思いますが、御承知のとおり、恩給につきましては、いろいろその性格については議論があると思いますが、まあ過去の功労の報償的な意味、また生活保障的な意味ということ、また、今回御審議をいただいております共済年金につきましては、いわば社会保険制度に脱皮した制度でございます。また、ただいま御指摘老齢母子年金の問題は、いわゆる社会保障の範疇に属するものだと思います。これらについては、恩給法あるいは国家公務員共済組合法にもありますように、「国民生活水準国家公務員給与物価その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情を総合勘案して、すみやかに改定措置を講ずるものとする。」いわゆる国民生活の実情あるいは諸物価の実態に合わせていくようにといういわゆる訓示規定が書かれておるわけでありまして、われわれといたしましては、国の経済力に応じて内容充実していくべきものと考えております。  しかし、いま一つわれわれが考えておかなければならないことは、やはり財政事情ということ、どうしても財源に限りがあるということになりますと、歳出の面でおのずから制約を受けてくる。わが国の社会保障制度が戦後急速に発達いたしまして、諸外国のいろいろな制度を取り入れたという点は、大きな前進だと思うわけでありますけれども、いささか形の上でいろいろなものを形式的につまみ上げた、こういう点があろうかと思うわけでありまして、国の財政力からなかなかその内容を十分充実するまでに至っていないというのが率直なる点であろうかと思いますので、これらの社会保障制度全体についてやはりもう一度いろいろ洗い直して、ほんとうに中身の充実したものを経済力に応じてやっていくという姿勢が私は必要じゃなかろうかと率直に考えておる次第であります。  しかし、御指摘の点について、できるだけ諸物価、その他経済事情に応じて充実をはかっていくという姿勢はくずしておりません。
  5. 小川新一郎

    小川(新)委員 たとえばそういった私ども指摘に対しては、政府は必ず財政硬直化とか財源の問題とか、財政をすぐ口にするわけであります。これはまあ現実問題をとらまえてみると、確かにそうであります。それを改めていくのが政治なんです。公務員共済組合制度にしても、また、公企体共済組合制度にしても、その法の精神というものは、完全にこれを社会保障一環として保障していかなければならない。それでは抜本的に不備というものを――いまも次官がおっしゃられたように不備があるんだ、これは当然根本的にまた抜本的に改革していかなければならぬ。その前提のもとに、いまこういった機構とか運営という問題についてまあ問題が出て、質問が集中していると思うのです。  そこで、こういった抜本的改革というものをお認めになっておる以上、これを近い国会等において、こういった国民のいま望んでいる、また、政治的な要素を含んでいる姿勢について、いつ具体的にそういった問題を出されるんでしょうか。
  6. 倉成正

    倉成政府委員 ただいま非常に重要な問題の御提起があったわけであります。社会保障制度充実ということは、また裏を返すと、ある意味において国民負担をお願いをするということにも通ずるかと思うわけでありまして、どうしても財政は空から財源がついてくるわけでございませんので、結局は国民負担に帰する。そういう意味において、われわれはいま精力的に財政制度審議会におきまして、国の財政あり方について、また、いろいろその財政制約を加える諸要素について検討していただいております。また一面、税制調査会において、今後の日本税制長期的に見てどうあるべきか、将来ますます多く要求されてくる財政需要に対していかなる税制をもってこれに対処していくかという問題を検討していただいておりますので、この両審議会の結論を待ってできるだけ早い機会に皆さま方の御審議を、社会保障制度問題を含めて御検討いただきたいと存じておるわけであります。
  7. 小川新一郎

    小川(新)委員 その財政問題、経済問題の討議になりますと、これは相当深い問題になりまして、社会保障の底辺になっている基礎問題でありますから、これは相当大事な問題であると思うのですが、ただいま次官から近い将来というばく然たる――近い将来という年限の限度の定義というものはわれわれもあいまいでありますけれども、まあ近い将来、私どもの満足のいくそういった答申を待ってやっていくというような御答弁をいただきましたから、われわれもこれを期して待っていく次第であります。  共済組合改善に関して、いろいろとそういった組合から統一要求というものが出ております。私は、そういった統一要求の見解というものがはたして是か非かという問題はさておきまして、なぜそういう問題が起きてくるかということは、ただいま申し上げましたような、何といっても満足にいかない保障制度ですね。これはいま抜本的に問題を改革しなければならぬという前提要素になっておりますから、そこでそのできるまでの間の、ほんとうの直接問題として、これだけはぜひともやってもらわなければならぬという問題を、二、三聞いてみたいと思います。  まず初診料とか入院料、これは医薬の問題ですが、薬代の一部負担組合員にかけておりますが、こういうものを撤廃する考えはないか。また、付き添い料入院料、またそういった部屋、またはベッド、こういうものが格差がついております。その格差差額徴収というものが改められないか。これはいま非常に共済組合員としても疑問に思っているところでありますので、この点具体的な問題でありますが、こういった医療分野の点についての共済組合の諸問題について、まずお答えいただきたいと思います。
  8. 津吉伊定

    津吉説明員 医療保険の問題につきましては、昨日も御議論が出たところでございます。われわれ、共済組合システムは、御承知のように長期給付とともに短期給付というものを職域保険として担当いたしておるのでございますが、その医療保険分野におきましては、いわば一般の健康保険職域分野において代行的に行なうというような性格を持っておるものでございます。先生御承知のように、やはり社会保険でございますので、本人の掛け金負担とともに国庫負担のあるものもございます。もちろん事業主折半負担というものもございます。そういうシステムにおきまして、できるだけ給付は厚くすべきである、こういう目標に向かってわれわれも努力をいたしておる次第でございますが、御承知のような医療体系全般の問題、医療保険の抜本的な検討ということを要する段階に至っておりますので、あるいはその時点が近い将来ということに相なるかと存じますけれども、それまでの間にいわば部分的な給付水準変動させるというふうな点につきましては、やはりわれわれさらに検討を行なうべきものと考える次第でございまして、一般的な医療保険全般の問題の検討とともにその水準充実させたいという目標に向かって進んでいきたいというふうに存じております。
  9. 小川新一郎

    小川(新)委員 非常に前向きな姿勢をいまお伺いしたわけであります。そういった点もただ姿勢だけでなくて、いま次官が申されたように抜本的にこの問題の改革をはからなければならない。できないのだできないのだということが、いつも、何の問題でも、当委員会ばかりでなくてどの委員会へ私行ってみてもそういうことが出てきますが、こういう点が現実の問題との歯車が合わない、この点は十分考えていただきたいと思うのです。  それから、前の方の御質問もあったと思うのですが、社会保障制度というものが、社会災厄にしてもまたいろいろな疾病にしても、国及びその使用者責任においてそれを解決していくのだ、また保障させていくのだという精神であります。だけれども、その目標に到達するために、われわれとしても、労働者の側にしても、その一半の責任を負っていく。何でもかんでも国及び使用者側責任を転嫁していくわけではありませんが、いま共済組合制度というのはこれは折半であります。でありますが、これが国庫負担金負担された場合には、これは労働者のほうの荷重というのは減らしていくのが当然だと思うのでありますが、この点大事な点でありますので、次官にちょっとお答えをいただきたいと思うのです。
  10. 倉成正

    倉成政府委員 お答えいたします。  ただいまの問題、おそらく国庫負担の額の問題ではなかろうかと思います。その点は、現在医療保険制度定率国庫負担がされておるのは、国民健康保険が四〇%、それから日雇健康保険が三五%ということになっておるわけでありますけれども共済組合は国保、日雇いの場合とは事情を異にするわけでありまして、給付水準、掛け金水準等総合的に勘案いたしますと、特に掛け金負担が他の制度と比べて均衡を失するとは考えておりません。したがって、このような社会保険に対する国庫負担あり方は、共済制度のたてまえと他の社会保険均衡という点にかんがみて、定率国庫負担を導入するという考え方はございません。  それから長期負担についてということになってまいりますと、保険料だけで適当な給付水準を確保することができない場合が出てくるわけでありますが、これは、被保険者が低所得層に及ぶ場合に、事故の性質上、被保険者事業主だけで費用負担させることが必ずしも適当でない、こういう場合に、国庫負担緊要度に応じて、社会保険制度全体の均衡を考慮しつつ検討すべきもの、また当然その際には、先ほど申し上げましたように、国の財政力に応じて低所得層に重点的に配慮することが必要であろうかと思うわけでありますす。  国家公務員共済組合長期給付については、現在一五%となっておるわけであります。これも常に、厚生年金等との負担の問題――厚生年金で二〇%になっておりますので、これとのバランスということで、もう少し上げたらどうかといういろいろな議論があるわけでありますけれども、これも昨日るる申し上げましたように、これはやはり給付算定の俸給、共済の場合には退職前三年間の平均給与厚生年金の場合には全加入期間平均標準報酬となっていますし、支給開始年齢も異なっておるということで、実質的には厚生年金における国庫負担二〇%というのが共済組合における一五%に大体見合っておるということでバランスをとっておる、こういう状況でございます。
  11. 小川新一郎

    小川(新)委員 そうすると、将来においては――ただいまお聞かせいただいた一五%というワク、これはバランス上一五%だという一つの政略的なものに考えられるのですが、そういった低所得階級労働者の、たとえば長期の病気、結核とかそういった問題なんかも相当含んできますので、こういった面においては、いまの日本社会保障制度がどういうものかということは、これはまた議論があると思うのです。私はこの点もいまの額を上げてもらいたいと思っているのですが、こういったワクというものははずすという考えは、近い将来ではないのですか。
  12. 倉成正

    倉成政府委員 先ほども申し上げましたように、国庫負担あり方はいろいろ議論がありますけれども、結局、国庫負担緊要度ということが第一点、それから社会保険制度全体の均衡ということが第二点、それから国の財政力に応じて低所得層に重点的に配分する、大体こういう基本的な考え方を持っておるわけでありまして、この線に沿ってやはり各制度均衡考えながら国庫負担の率というのを考えていくべきじゃなかろうか。したがって、現在の一五%が全然固定的なものであるとは考えませんけれども、現在のところでは十分バランスがとれておる、さように考えておるわけであります。
  13. 河村勝

    河村委員 関連して。いまの御説明で、国家公務員共済組合については、事業主としての国の負担のほかに、国庫負担が一五%あるわけですね。それが、バランスの問題は別として、一応社会保険としての性格を持っておるから国庫負担がある。そこで、公共企業体共済組合については、現在事業主としての国鉄なり電電なりだけが負担をしておって、国庫負担というのはないわけですね。その理由はどういうわけでございますか。
  14. 津吉伊定

    津吉説明員 まことに適切な御指摘でございますが、いわゆる公経済負担事業主負担というものがわれわれ国家公務員共済で申しますと国庫負担ということで表示されるのでございますけれども性格的にはいま申し上げました公経済負担とともに事業主負担というものがそれぞれあるわけでございます。先ほど御指摘になりました公共企業体における公企体負担といいますものは、これは公経済負担とともに事業主負担というものが公企体によって負担されておるという結果になっております。全般的に申し上げますと、非常にほかの分野においても議論されておりますところの公共負担というものの公企体との関連における問題の一環にもなろうかと存ずるのでございますが、過般国鉄におきましても、電電におきましても、長期収支計画調査委員会をおつくりになってやられたのでございますけれども、その際においても、筋合いとして本質的に絶対的に見ますと、公経済負担というものを公企体負担するという点においては、必ずしも割り切れて、それですっきりといいのだということはいえないにしても、従来の沿革ないしその団体の性格そのものがいわば国と全く分離した異質なものになったというふうにも常識的には見られないので、さしあたり公経済負担を、たとえば国鉄がこれを負担するという点においてもやむを得ないということであったと承知いたしております。これは委員会の報告の中に記載されておるのでございますが、必ずしもそれをもって、あえて公経済負担筋合いとして国鉄ないし電電等公企体がすべきであるかどうかという点は、いまだ議論がございますとは思いますけれども、現状においては、そういう考え方とともに沿革的な理由もありまして、公経済負担とともに事業主負担公企体によってなされておるという状況でございます。
  15. 河村勝

    河村委員 そうすると、理論的には公共企業体においても公経済負担があるべきだということはお認めになるわけですか。
  16. 津吉伊定

    津吉説明員 一応、収支計画調査委員会においてそういうふうな議論がされておる結果を見ておるのでございますけれども、何ぶん国との関係におきまして、公社という法人ではございますけれども、その公法人がいかなる程度に、いかなる面において公経済的負担をしてしかるべきやという問題は、必ずしも絶対的に割り切れておるというふうには私は存じておりませんので、ただいまのところ、絶対に筋合いとして公経済負担をたとえば国鉄がすべきではないというふうに申し上げる段階ではないと存じております。
  17. 河村勝

    河村委員 たいへん逃げた御答弁で、ちょっと筋が通らぬ話だと思うのですがね。一般的に公共企業体はある程度の公共負担をしょっておるけれども、それ自体本来国が負担するようなものを何かの便宜的な都合で企業体がしょっておるわけですからね。  ですから、政務次官、お伺いしますが、たとえば国鉄のような場合、すでに財政的に完全な危機状態にある際に、こういう共済組合の問題においてもなおかつそういった公共負担という意味で、それで国庫負担を欠いておるというのは非常に不当であると思われますが、ここら辺でもってこれは是正して、少なくとも国家公務員共済組合と同様の一五%程度の国庫負担というのは当然あってしかるべきだと思いますが、いかがですか。
  18. 倉成正

    倉成政府委員 ただいま給与課長からお答えいたしましたように、一つは沿革的なものがある、それから公共企業体性格が一般のものと若干異なっておる、国の財政におんぶするところが非常に大きい、こういう点からさような取り扱いをしておると思います。  そこで、これをどういうふうに割り切っていくかという点につきましては、基本的ないろいろな制度でやはり検討いただいた上で処理すべきものと心得ております。はっきり割り切っておるわけではない、しかしこういうふうな処理を沿革的にしてきておる、そういうことでございます。
  19. 河村勝

    河村委員 もう一点だけお伺いしますが、物価が非常に変動することが一番大きな原因で年金改定が三年に一ぺんぐらい行なわれております。それによって上がることは当然であろうと思いますけれども共済組合財政としてはだんだん危機状態になるわけですね。そこで当然責任準備金の不足が生じてくるわけです。そこで、国家公務員共済組合については、こういった年金改定等による財源の不足はどういうふうにして補っておられますか。
  20. 津吉伊定

    津吉説明員 本年度のいまお願いいたしております改定案、これの負担方法といいますのは、四十二年度改定でお願いいたしました負担区分と全く同様でございます。その内容は、恩給部分あるいは旧法、旧令部分、旧令年金、これは全額国庫負担でございます。それから新法年金のうち、すでに御承知でございますように、純粋に新法の部分――これは恩給あるいは旧法、旧令の通算部分がございますけれども、それから新法に足を踏み込みまして、新法部分のみというものがございます。これは恩給のほうでおやりになる原則的なアップ率をならって使っておりますけれども、その分についてはいわゆる三者負担というものをやっております。したがいまして、新法の施行日前の部分につきまして、それからまた旧令年金につきまして、これは国がいわゆる追加費用を全額負担するという方式でございます。
  21. 河村勝

    河村委員 この旧法、旧令部分の国庫の負担、国が全額負担の部分は、これは事業主としての国ではなしに公経済としての国だ、そういうふうに理解してよろしいわけですか。
  22. 津吉伊定

    津吉説明員 御承知のように、そういう通算の関係は、新法年金の始まります前の、人事管理上、過去勤務債務として通算をするという措置でございますので、いま申し上げました全額負担といいますのは、これは国が事業主として負担をいたしておるという筋合いのものでございます。
  23. 河村勝

    河村委員 国が事業主としての負担であるということは、一体そういう公権的な解釈があるのですか。
  24. 津吉伊定

    津吉説明員 われわれこの負担を見ます場合に、その通算の本旨に基づきまして、先ほど申し上げました過去勤務を通算して年金の額に加えていくという措置は、事業主たる国の人事管理上、新年金制度発足に伴う経過措置として措置をいたしておりますので、事業主としての負担であるという解釈をいたしておるのでございます。
  25. 小川新一郎

    小川(新)委員 ただいまのことは、その辺のところまでまた議論させていただきますが、組合員がかけている保険料率、これは健康保険法第七十五条ノ二では、月額の報酬の千分の三十五となっております。現在これが破られておるということが問題になっておりますが、この状況はどうなっているのでしょうか。
  26. 津吉伊定

    津吉説明員 御指摘の掛け金率でございますが、健康保険の掛け金率のほうは、恐縮でございますが、私、直接担当いたしておりませんのでちょっとわかりかねる次第でございますけれども共済組合における短期の掛け金率というのを見てみますと、最低におきまして千分の二十四、最高で千分の四十一、平均いたしまして千分の三十五ということに相なっておるのでございます。
  27. 小川新一郎

    小川(新)委員 その平均の三十五以上を上回っている各単位の共済組合、またはそういったところの、標準以上のところの掛け金率を組合員にしているようなところは、事業主または国がその負担分だけは見てあげるということは考えられないのですか、これはどうでしょうか。
  28. 津吉伊定

    津吉説明員 その点につきましても昨日御議論をいただいたところでございますが、共済組合におきまして、各単位共済の行ないます保険内容、これはそれぞれの罹病率、あるいは昨日も御指摘のございました性別、年齢等の職員構成の内容によりまして、これは掛け金とともに、それが必要である水準が要求される給付の面として、ある差異をもってあらわれるのでございます。  それで、平均以上こえておるものにつきまして、特に何らかの補助をするかという点は、これも昨日申し上げましたが、各共済の自主的な努力というものがそれぞれ行なわれておりまして、単純に実態に即してのみやむを得ない収支のバランスの悪化というものであるのか、それともさらにいわゆる企業努力を要する分野があるのかという点が多分にございまして、さらに検討をすべき問題かと存じます。基本的にはそういう単位共済組合において、それぞれ自主的な努力によりまして、くふうをこらして運営されておるという点におきまして、先ほど政務次官からもお答えを申し上げましたように、特にその補助の緊急性、もちろん事業主としての負担ではありませんけれども――事業主としての負担とおっしゃいますけれども事業主負担といえどももちろん税金のまかなうところでありますので、これは慎重に検討すべき問題であるというふうに存じております。
  29. 小川新一郎

    小川(新)委員 そういう運営面についてのずさんな点等が認められるとか認められないとかという点も出てまいります。こういう点の監督とか監査みたいなものは行なっているのですか。
  30. 津吉伊定

    津吉説明員 運営のずさんな点といいますのは、一般的にはないわけでございますけれども、やはり人間のやることでございますので、いろいろ個別、具体的にはそういう事案がないと申せばうそになるわけでございます。大蔵大臣の共済監督機関たる立場でその事務を分掌いたしておりますわれわれ給与課におきましては、これも共済組合法上規定されておるところ以外には別段何もやっておりませんが、大まかにいいますと、各共済組合の事業計画とか予算の認可をいたします。その際、これはきのうも議論ございましたが、あまりにも画一的な方針をもって臨むのじゃないか、絶対そういうことはございません。まあそういう方針で認可をさせていただく。さらに御指摘になりますところの運営の個々につきましては、技術的に申せばごちゃごちゃこまかい話になりますけれども、端的に申し上げますと、一年に一回はいわゆる年次監査というものを財務局部におきまして、もちろんわれわれもやりますけれども、それぞれ分担をいたしまして監査を行なっておる。それからまた、各省の共済におきまして当然これも規定がございますけれども、いわゆる内部監査というものによりまして業務運営ないし会計経理上の処理の適正妥当をはかっておるという制度でございます。
  31. 小川新一郎

    小川(新)委員 それも確かに画一的にやられては困ります、そういう問題が出てまいりますから。その点はおまかせいたします。  家族療養費の点で、現在は七割平均ですか、そうすると当然国民健康保険等の事例もございますし、家族にも十割の給付ということがいま叫ばれております。この線に引き上げるためにはまた保険料という問題もこれは相当考えなければならぬ。でも当然、現在のような医療制度の中からは家族の給付も完全な十割給付を望んでおりますが、こういう点についてはどのようにポイントが置かれているのでしょうか。
  32. 津吉伊定

    津吉説明員 給付水準につきましては、紋切り型で恐縮でございますけれども、各社会保険制度、特に医療保険全般の中におきましてその均衡をはかりつつ、各種の保険の本旨に即しました水準とともに反面の負担があるわけでございますので、それも基本的な検討の問題といたしまして、特に医療保険の抜本的改正、検討というようなことも進められておるおりからでありますので、われわれもそれに並行いたしまして、あるいはその結果を待ちまして、ともに検討を進めたいという事柄でございます。
  33. 小川新一郎

    小川(新)委員 もう一点、医療の問題でお尋ねしますが、現在の保険制度というものは、病気になっちゃった、罹病されたその結果についての医療対策ですけれども、これが予防ですね、ガンとか成人病とか、結核なんかもそうですが、そういったいま騒がれている予防給付に対するような新しい考えのもとに立った給付というかそういったものを新設する考えは将来お持ちにならないですか。
  34. 津吉伊定

    津吉説明員 御指摘でございますが、むしろ将来の問題ではなくして、現在のところ各共済組合においてやっております事柄、あるいはその程度というものはばらばらいたしておりますけれども、各組合の保健事業といたしまして、たとえばわれわれもその経験があるわけでございますが、いわゆる人間ドックとかそれから成人病の検診とか、そういうものを適時やっておるという実態でございます。もちろんおっしゃいますように、できるだけそういう対策は適宜これを増強していく。もちろんいわゆるニードのあるところに適切に対応するということではございますけれども、それは別段保険財政の許す限りそれ自体を拒否すべき問題ではないと存じておりますので、現状、保健事業としてやっておるとともに、さらにそれが進められてしかるべきであろう。もちろん諸種の条件はございますけれども、そういうふうに存じております。
  35. 小川新一郎

    小川(新)委員 では年金のことでちょっとお尋ねいたします。  国民年金の被保険者厚生年金の被保険者との差があるのでありますが、現在のように消費水準が上がってまいりますとこれは接近してまいりますが、こういう現状に対して厚生年金または国民年金の被保険者との関係性はいまどう考えられておりますか。
  36. 伊部英男

    ○伊部政府委員 国民年金厚生年金との関係でございますので、私からお答えすることにさせていただきたいと思います。  御案内のとおり、厚生年金に引き続きまして国民年金につきましても四十一年におきます大改正を行ないまして、厚生年金国民年金との間に一つのバランスが存在しておるのでございます。しかしながら、御指摘のように、最近特に自営業者の所得水準も上がっておりますし、あるいはまた、老後保障に対する関心も高まっておるのでございます。その関係で厚生省といたしましては、明年厚生年金の再計算期に当たります機会に、国民年金につきましても相当な改善を行なおうという考え方のもとに、ただいま関係審議会において御審議をいただいておるという状況でございます。その過程におきまして、ただいま御指摘の両制度均衡をどう考えるかという問題は非常に大きな議題となっておるのでございまして、関係審議会の御議論も十分いただき、給付の引き上げということになればまた当然保険料にもはね返るわけでございますので、そういう問題をも含めてただいま関係審議会で十分検討しておるという階段でございます。
  37. 小川新一郎

    小川(新)委員 この答申はいつごろ出てくる予定なんですか。
  38. 伊部英男

    ○伊部政府委員 ただいま厚生年金につきましては社会保険審議会国民年金につきましては国民年金審議会におきまして、それぞれ御審議をいただいておるのでございまして、厚生省といたしましては四十四年度に両制度の改正が行なわれ得るような時点で両審議会考え方がまとまることを期待しておるものでございます。
  39. 小川新一郎

    小川(新)委員 国民年金厚生年金と同じように報酬比例制を取り入れたほうがいいという意見がいま相当あるわけですが、この報酬比例制について、国民年金に対してどのようにお考えになっておるか、また、そういう答申が出てきた場合には取り入れるか、この点についてお答え願いたい。
  40. 伊部英男

    ○伊部政府委員 御指摘のように、国民年金厚生年金の差はいろいろあるのでございます。そのうち一つは、御指摘のように所得比例制が片方にある、片方にはないということでございます。また一面、国民年金のほうが、たとえば妻の年金権を保全しているといったようないい面もあるのではございますけれども、しかしながら、所得比例制が片方にはある、片方にはないという点は確かに一つの差であるわけでございます。そこで、先ほど申し上げました両制度バランスという問題の一環といたしまして、所得比例制を取り上げてはどうかという議論が、ただいま国民年金審議会においても相当強い議論として出ておるのでございます。厚生省といたしましても、事務的ないろいろな問題点をただいま検討しておる段階でございまして、国民年金審議会議論がまとまりますれば、もとよりそれに従いまして所得比例制を導入いたすということになろうと思います。
  41. 小川新一郎

    小川(新)委員 じゃもう一点でございますが、拠出年金制の受給ラインと老齢福祉年金のラインとの間に相当に差があるわけです。そのために、相当期間どららからもいただけないという老齢者が生じてくるという可能性があるのでございますけれども、そういった不合理の点をなくすということがいま問題になっておりますが、その点どうでございましょうか。
  42. 伊部英男

    ○伊部政府委員 日本年金制度は、昭和十七年の厚生年金が始まって以来二十五年を経過いたしたのでございますが、共済恩給のような長い歴史を持つ制度と違いまして、実は制度として比較的新しいのでございます。御案内のとおり、国民年金につきましては拠出制は三十六年四月からの始まりでございますので、両制度とも比較的歴史は新しい。しかも十七年発足当時におきましては、厚生年金の被保険者というものは三百万程度でございまして、現在の被保険者二千万と比べますと、実に隔世の感にたえないのでございますが、この間に急速に、申し上げるまでもありませんが、工業化が進み、したがって被保険者の増加があったのでございます。  このことは裏返しますと、御指摘のように被保険者期間が必ずしも満たないという方もあり得るわけでございます。あるいは自営業者につきまして国民年金が三十六年から始まっておる。そこで三十六年に始まりました際に、いろいろ通算年金制度等に、あるいは国民年金そのものにおきましても、中高年齢層に対する特別の措置は講ぜられておるのでございますが、今後のことを考えますと、やはり御指摘のように、中高年齢層が年金を将来に期待し得ないという方々があり得ることを認めざるを得ないのでございまして、この方々をどうするかということは、先ほど申し上げました両制度バランスと同様な比重での重要な宿題である。しかもこの問題は、国民年金のみならず、厚生年金国民年金を通じての宿題であるということで、ただいま中高年齢層に対する対策をどうするかということで、これも両審議会におきまして十分御審議をいただいておる重要課題の一つでございます。
  43. 小川新一郎

    小川(新)委員 宿題でございますから、当然宿題をやってやらなければいかぬわけですね。その審議会の答申を待ってということでなくして、あなたのほうでこういうふうにやるという考え方はいまお持ちじゃないですか。
  44. 伊部英男

    ○伊部政府委員 御承知のとおり厚生年金につきましては、事業主及び被保険者保険料をきめまして、それでいわば厚生省がお預かりをして制度を運用いたしておるわけでございまして、あるいは国民年金につきましても相当の国庫負担がございますが、やはり主体をなすものはもちろん保険料でございますので、ただいま先生御指摘のような問題意識をわれわれとして十分持ちつつ、関係者の意見を煮詰めて、前向きに本問題に対処していきたい、かように考えておる次第でございます。
  45. 小川新一郎

    小川(新)委員 まことに名答弁で、納得する以外にないと思うのですけれども、そういう点が社会保障制度の盲点になっておる。こういう盲点は、これは次官いろいろあると思うのですよ。もらえないというような不合理な点、谷間に入ってしまった、こういう点は抜本的な改革という中でも一番大事な問題だと思うのです。これは早急に、いまの審議会の答申とか何とか言っておりますが、これはこちらで施策をつくって、合致した中で改革していかなければならぬ。  これは次官にお尋ねしたいのですが、現在の日本の家族制度というものは核家族、これは御案内のとおり、家つき、カーつき、ばば抜きといっておるような状態の中で核分裂、そういう中で昔どおりの年金制度というものがはたしてこれが合理的なのかどうか。抜本的にこういう点は考えなければならぬ。これは人間性の問題になってきますが、老人福祉の問題、これが離れてくる。年金制度というものはわずかな金をもらう、だけれども離れておる。こういう核家族に対する現在の世相というものの中で、年金制度そのものを考えるべき時代に来ておると思うのです。こういう大きな政治的課題に対して、大臣に御答弁願いたいと思いますが、いらっしゃいませんから、次官責任のもとに今後の姿勢としてどうあるべきかということをお尋ねしたいのです。
  46. 倉成正

    倉成政府委員 非常に大事な御指摘がありましたが、確かに戦前、戦後を通じて家族制度が、大きく変革してまいっております。したがって、核分裂をして夫婦だけの生活というような、また、老人も家族から離れて生活するというような状態が出てきておることは御指摘のとおりであります。したがって、そういう諸般の情勢に対応した制度がやはりつくられていくべきだという御指摘はごもっともだと思います。そういう問題をやはり含めて、現在いろいろ検討していただいておる審議会で結論を出していただきたいと思っておるような次第であります。
  47. 小川新一郎

    小川(新)委員 あとの方の質問が控えておりますから、私はあと二点でやめますが、軍人恩給の点について答申が恩給審議会から出ております。その中に問題点がるる述べてあります。私はこの問題の中で、いろいろ見てみたのですが、大事な点を二、三お聞きしたいと思うのです。  第一点に、「戦地外戦務加算および各種職務加算に関する問題」という点がある。この問題の中で沖縄や小笠原ですね、「終戦後、南西諸島、小笠原諸島および千島列島にあって帰国の自由を失った旧軍人に対しては、海外に抑留されたものと同様、帰国するまでの期間につき加算措置を行なうかどうか」ということが非常に問題になっております。この点は現在、小笠原、沖縄の返還等にからみまして社会的な問題になっておりますが、この点についてひとつ見解を承っておきたいと思うのです。
  48. 大屋敷行雄

    ○大屋敷説明員 ただいま御質問の問題は、これは戦地におきまして終戦後抑留された方、こういう方々につきましては、昭和四十年の法律改正によりまして、抑留期間一月につき一月の加算をしておるわけでございます。ところが、その法律を制定する場合におきまして、いわゆる内地であったものはこれが除外されたものでございますが、しかし、ここに書いてございます沖縄とか小笠原あるいは千島列島、こういうところは戦地と同じような激戦、あるいは戦地と同様な状態にあったわけでございます。こういうところに勤務されました方は、その法律の書き方がいわゆる外地というような表現をしておりましたので現在は入っておらないわけですが、しかし、これは当然戦地と同様に考えるべきであるというのがこの審議会の意見でございますので、総理府といたしましても、この事情は従前から非常に問題にしておったことでございますから、今後はこの審議会の答申に従いまして考えたい、検討したい、こう考えております。
  49. 小川新一郎

    小川(新)委員 そうすると、この審議会の結論はどうなのですか。
  50. 大屋敷行雄

    ○大屋敷説明員 審議会の答申では戦地と同様に是正すべし、こういうような意見が出てございますので、その審議会の趣旨を尊重しつつ検討したい、こう考えたわけでございます。
  51. 小川新一郎

    小川(新)委員 そうすると沖縄、小笠原、北方領土は戦地と認めて、これは内地になってもその加算を認められる、このように了解していいのですね。
  52. 大屋敷行雄

    ○大屋敷説明員 そのような趣旨で今後検討したい、こう考えております。
  53. 小川新一郎

    小川(新)委員 次に、「実在職年三年以上七年未満の旧軍人に対する一時恩給に関する問題」という問題点がここに書いてございます。旧軍人に対する一町恩給は引き続く実在職年が七年以上普通恩給最短年限未満の者に給することとされておりますが、この要件を緩和して引き続く実在職年が三年以上七年未満の者にも一時恩給を給するかしないかという、これは年限の問題で非常に大事なのでありますが、この点について恩給問題審議室長の御見解を承りたい。
  54. 大屋敷行雄

    ○大屋敷説明員 旧軍人の一時恩給につきましては、戦前では軍文を通じて同じような制度、つまり三年以上普通恩給最短年限未満、こういう方につきましては一時恩給が出ておったわけでございます。ところが戦後軍人恩給が復活しました場合に、旧軍人についてのみは、この答申にも書いてございますように、「七年以上普通恩給最短年限未満」このような制限で一時恩給を支給したわけでございます。(武藤(山)委員「七年という根拠は」と呼ぶ)この七年といいます根拠は、長期在職者を特に救済するという意味で、兵を含めてこの一時恩給制度というものを設けたわけでございます。しかしながら、この審議会の意見といたしましては、旧軍人は下士官以上につきましては戦前におきましても国に納金をしておったわけです。このような事情もございます。なお、文官との均衡考えますと、要するに戦前認められておりました下士官以上の方につきましては、戦前どおり三年以上の者につきましても一時恩給を給するのが適当である、このような意見が出ておるわけでございます。しかしながら、この問題につきましては、私どものほうで、該当者がどのくらいあるか、現在のところ全然つかめないような状態でございますので、そのような該当者等を調査の上で検討したい、このような段階でございます。
  55. 小川新一郎

    小川(新)委員 これで終わりますが、恩給というものは、公務員退職時の給与によって決定されるのでありますけれども、あとで退職するほど、現在のような物価高の場合には有利になっておる。そういった退職期間による年金恩給の著しい格差、こういった格差の是正という問題がいま問題になっておりますが、こういった不公平または不満に対して、次官はどのようにお考えになっておられますか。
  56. 倉成正

    倉成政府委員 これは先ほどお答えいたしましたように、恩給については、やはり国民生活水準であるとかあるいは国家公務員給与物価その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、諸事情を勘案して、すみやかに改定措置を講ずるということで、また、今回の恩給審議会の答申にも調整についての御意見も出ておるようでございます。こういうことを参考にしながら対処してまいりたいと思っております。
  57. 小川新一郎

    小川(新)委員 それでは終わります。
  58. 毛利松平

  59. 村山喜一

    村山(喜)委員 時間があまりありませんので、私のほうでも簡潔に質問を進めてまいりますから、答弁も長きにわたらないようにお願いしたいと思います。  そこでまず第一に、これは八木総理府副長官にお尋ねをする事項になると思いますが、国家公務員法の百七条の退職年金制度というのは、あなたのところで総合的に調整をする、そういうふうに考えて差しつかえございませんか。
  60. 八木徹雄

    ○八木政府委員 そのとおりでございます。
  61. 村山喜一

    村山(喜)委員 現在のこの公務員年金という問題を考えてまいりますと、恩給法上の措置がとられている、それから旧令による共済組合、新法による共済給合、それから特殊な例といたしましては、公務員の災害補償、こういうようなのがずっとあるわけであります。その中身を調べてまいりますと、これらの最低保障額というものが統一をされていないと私は思うのでありますが、現状はどういうふうになっているか、説明を願いたいのであります。担当者でけっこうです。
  62. 大屋敷行雄

    ○大屋敷説明員 恩給だけの問題について申し上げますと、恩給法におきましては、長期在職者、つまり普通恩給年額に達しておる方につきましては、本人は六万円、それから遺族の方につきましては、その半分の三万円、このようになっております。
  63. 津吉伊定

    津吉説明員 国家公務員共済に限って申し上げますと、御承知のように恩給部分と新法部分がございますが、純粋新法施行前における最低保障といたしましては、恩給とのバランス、先ほど恩給局から答弁のありました最低保障額によっております。それからまた、新法施行後における最低保障といたしましては、昨日も申し上げましたが、厚生年金における最低保障にならいまして、これをやっております。
  64. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 公務災害補償の問題が出ましたが、公務災害補償法による公務死亡に対する遺族年金額につきましては、最低保障という考え方はございません。したがいまして、最低保障に相当するといいますか、そういう点から考えまして、一番俸給の低い方、行(二)の俸給の最低俸給の方の一万五千百六十円、給仕に相当する方でございますが、この一番低い俸給の方が公務で死亡された場合に、遺族に支給される年金は幾らであるかと計算してみましたところが、五万六千二百円というかっこうになります。
  65. 村山喜一

    村山(喜)委員 これは私の質問のしかたが、あまりにも広い立場で質問をいたしましたので、一つの種目にしぼって申し上げます。  公務扶助料、これは今回の恩給法の改正によって兵のところで遺族七十歳以上の者に対して十二万六千百四十四円、それから旧令による殉職年金、これは七十歳以上の場合十二万五千五百円、それから新法による公務遺族年金、この場合には九万九千三百五十八円、それから国家公務員災害補償法に基づく公務災害の場合、最低が五万六千二百円、こういうふうにそのときの法律内容規定によって違いがあるわけですが、恩給法上の公務扶助料が高くて、そうして旧令によるものがそれに次いで、それから新法による公務遺族年金というものが十万円を割る、災害補償法による最低はさらにまたそれよりも下回る。こういうような形の中で、同じ国家のために殉職した、公務のために命をささげた者に対して、そのような異なる措置をとることがはたして正しいとお考えになっているのかどうか、この点について総理府では検討されたことがございますか。
  66. 八木徹雄

    ○八木政府委員 いま村山先生がおっしゃいましたように、恩給の場合の兵が十二万六千百四十四円、旧令共済組合の場合の陸海軍の雇用員の場合は、一番安いところで十一万一千円、それと現在の国家公務員の分とのいわゆる調和がとれているかどうか、こういうことについて心を配っているかどうか、こういうことであろうと思いますが、先ほど来申し上げておりますように、共済組合年金最低保障額が九万九千三百五十八円でありますが、それに別途公務災害補償法による遺族年金が支給されて、これが両方足し算にはなりませんが、調整をされておりますが、その調整をされたものが、先ほど栗山君が申しましたように、給仕の最下級の俸給者の場合、両方合わせますと十一万九千百七十円、こういう計算になりますので、十二万六千百四十四円と十一万一千円と十一万九千百七十円と、全く一致ではありませんが、大体バランスはとれている、こういうふうに見ていいのではないかと思います。今後もこれらのバランスというものを当然とっていけるように考えてまいらなければならぬと思いますので、当方といたしましては、そういう心組みで引き続き調整を考えてまいりたい、こう思っております。
  67. 村山喜一

    村山(喜)委員 旧令による殉職年金は十一万一千円、新法の分は、国家公務員災害補償法が実施される以前のものについては公務遺族年金だけ、こういうような形ですね。その点はそのとおり考えてよろしいですか。共済関係です。
  68. 津吉伊定

    津吉説明員 お答えいたします。  御指摘になりました新法の公務廃疾年金は公務災害補償制度ができまして以後適用になっております。
  69. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は公務廃疾年金の問題はまだ触れていないのです。公務遺族年金の問題を聞いているのです。だから、いま確かに大体線はそろってはきておりますが、まだ十二万六千百四十四円、それから旧令が十一万一千円、それに公務遺族年金が九万九千三百五十八円、国家公務員災害補償法による分は、新法調整分の調整規定に基づくものまで入れて十一万九千百七十円、大体の数字はそろってきておりますけれども、公務遺族年金は、新法による公務遺族年金だけしか受けていないところ、あるいは旧令による殉職年金しかもらっていない層、これはやはりアンバラがまだ残っておりますので、いま八木副長官がお答えになりましたように、私は、少なくとも最低保障額というものは、こういうような国家のために殉職をしたようなものについては同じ基準にそろえるべきだと考えておりますが、そのような線で今後やはり進めていくということで確認をしてよろしゅうございますか。
  70. 津吉伊定

    津吉説明員 公的年金全体についての検討の中におきまして、最低保障が御指摘になりますように合理的な理由なくしてばらばらになるということは当然求むべきではございませんので、御指摘の趣旨に即しまして十分検討をいたしたいと思います。
  71. 村山喜一

    村山(喜)委員 このことは障害年金等についてもいえるわけでございます。それで、このたびの恩給法の改正で、傷病恩給が一番高いところですが四十万六千円、それから旧令による場合も障害年金四十万六千円ですか、新法による分については公務廃疾年金は三十八万九千四百円ということで差がありますね。この災害補償法による分はいかがなっておりますか。
  72. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 先ほど申し上げました行(二)の俸給の最低の者、給仕さんのはしりの者の場合、これが一番低い俸給でございますから、その者が公務傷病によって廃疾となって廃疾年金を受けると仮定しました場合の計算をいたしますと、公務災害補償額は十二万三千二百円となります。
  73. 村山喜一

    村山(喜)委員 そうしますと、国家公務員災害補償法に基づく公務疾病の障害年金が一番安いということになりますか。それに何か加わるものがありますか。
  74. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 これは共済組合のほうの所管かもしれませんが、便宜、私のほうで関連いたしますのでお答え申し上げます。  ただいま申し上げましたような一番低い俸給の方が公務傷病によりまして廃疾となった。先ほどちょっと言い忘れましたが、廃疾年金は御承知のように一、二、三級とございますが、ただいま一級の場合を仮定して申し上げております。一級の廃疾となりまして年金を受けるといった場合には、ただいま申し上げましたように十二万三千二百円の公務災害の補償を受けるわけでございますが、別途、先ほど来お話のありましたような共済組合による廃疾年金が出るわけでございます。これは最低保障が先ほど申された額でございますけれども、公務災害補償を受ける場合には調整をされることになっておりまして、私どもが計算しましたところによりますと、調整された結果が三十四万四千八百二十四円になろうかと存じます。したがいまして、公務災害補償とこれを合計いたしますと四十六万八千二十四円ということに相なるのではなかろうかというふうに存ずるわけでございます。
  75. 村山喜一

    村山(喜)委員 調整をしたもの、その三十四万四千八百二十四円を加えて四十六万になるのですか。
  76. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 はい、四十六万八千二十四円でございます。
  77. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、八木副長官にお尋ねいたしますが、公務傷病のために介護人を必要とするような廃疾状態になっている者について落ちこぼれが、新法の、まだ災害補償法が実施される以前のものについては三十八万九千四百円ということで一番低いところに置かれているわけですね。私は、やはりこういうような最低保障額というものは、少なくとも統一をしておくべきではないかという考え方を持たなければならないと思うのです。そうして、あとからできたものについては、さらによくなるというのだったら、それはわかります。しかし、古いものがよくて、まん中のところにあるものがその歴史的な過程の中で落ちこぼれておるという場合には、これを少なくともその前の恩給法上の傷病恩給と同じように、あるいは旧令による障害年金と同じように措置すべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  78. 八木徹雄

    ○八木政府委員 体系的にいえばいま大体バランスはとれているけれども、落ちこぼれがあるのではないかという御意見だと思います。落ちこぼれの全体の調整というものは当然考えなければならぬと思いますから、これらについては努力してまいりたいと思います。
  79. 村山喜一

    村山(喜)委員 倉成大蔵政務次官、よろしゅうございますか。
  80. 倉成正

    倉成政府委員 同様でございます。
  81. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、人事院にお尋ねをいたします。  国家公務員法の百八条によりまして、人事院はどのような措置をいまの段階として準備をしておいでになりますか。
  82. 島田巽

    ○島田(巽)政府委員 私どもといたしましては、御承知のとおり二十八年に新しい恩給制度に関する勧告をいたしまして、それが現在の共済組合法の中に取り入れられたわけであります。それ以後、百八条に基づいての勧告は行なってはおりません。ただし、私どもとしましては、慎重な研究はその後も続けているのが実情でございます。
  83. 村山喜一

    村山(喜)委員 ずいぶん前ですね。二十八年ですからだいぶ前になります。その後調査研究は法律に基づいてされているわけですが、必要な意見として国会なりあるいは内閣に申し出をするというところまではいっていないわけですか。
  84. 島田巽

    ○島田(巽)政府委員 昭和四十一年に共済組合法の中にスライドに関する規定を取り入れましたし、私どもといたしましても実質価値と申しますか、低下を防ぐためにも何らかのことはしなければならないという目的で検討はいたしておりますが、しかし、共済組合法に新しく加えられました条項の中で国民の消費水準国家公務員給与及び物価、この三つの要素をにらんで、その変動に応じてスライドするということに関しまして、それでは正確にどの指標をつかまえてやれば一番公平なものになるだろうかということを考えますと、非常に複雑なものがございまして、鋭意それに取り組んで解明してまいりたいということが一つでございます。  それからもう一つは、国家公務員の場合だけで済む問題ではなくて、他の年金その他に関連するところが非常に大きい問題でございますので、鋭意関係方面と折衝して、そして最適なものを出したいというので手間どっているというのが現状でございます。
  85. 村山喜一

    村山(喜)委員 いつごろ研究の結果を御発表になる見通しがございますか。
  86. 島田巽

    ○島田(巽)政府委員 期日の期限を御質問でございますが、目下のところいつごろと申すめどはまだはっきり申し上げるまでに至っておりません。
  87. 村山喜一

    村山(喜)委員 私はそれはおかしいと思うのですよ。やはり一つのめどをつけた作業というものが行なわれなければ、あなた方が法律に基づいて、人事院はそういうようなことをやるんだという権限事項が法律規定されない結果と同じようなことになると思うのです。  そこで、あなたは人事官ですからその具体的な作業の中身についてはさほどまで報告を受けておいでにならないかもしれない。だれか、給与局の次長見えておりますか。――その見通しだけ、いつごろになるかという見通しをお持ちであれば説明願います。なければけっこうです。
  88. 渡辺哲利

    渡辺説明員 お答えいたします。  年金のスライド制につきましては、法の中に三つの指標が掲げられておりまして、国民生活水準、それから公務員給与物価その他の諸事情ということになっておりますが、それらのどれとスライドをリンクさせるかというようなことについても非常な問題がございますし、また、かりに一つ物価というものを考えましても、統合的な物価でいいのか、あるいは恩給受給者が消費するようなものについての物価を主体とすべきかというような問題もございますし、あるいはかりに生活水準というような場合にも、国民一般の生活水準なりあるいは恩給受給者の生活水準、いろんな考え方もございますし、これらにつきましていろいろとむずかしい問題がたくさんございます。それから、たとえば公務員給与と申しましても、単なるベースでいいかというような問題もございますし、その後の俸給表の改正その他についていろいろ問題もございます。  そんなような関係もございますし、先ほど人事官からお答え申し上げましたように、他の公務員のみでなく他の年金とのいろんな関係もございまして、現在それらにつきまして鋭意検討を進めておりますが、時期的にいつまとまるというような見通しは、現在のところ困難であるというふうに考えておる次第でございます。
  89. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、これは人事院の怠慢だと思うのですよ。法律に基づいてあなた方としてのやるべき仕事が明記してある。なるほど調査研究はしておられる。調査研究はしておられるけれども、スライドをさせる場合に一体どれを中心に考えるべきかということさえもまだまとまっていない。すでに恩給審議会としては、物価上昇というものはファクターとして考えるべきであるという答申を行なっておる。にもかかわらず、人事院としてはそのどちらをとるかということもまだはっきりしない。他の公的年金との関係がある、こういうようなことで、物価そのものをとらえてみてもむずかしい点がある。こういうようなことでは、非常に立ちおくれておるという批判を人事院は甘受しなければならぬと私は思う。  そういう立場から、私たちは率直に申し上げますが、確かに今日の恩給共済とを考えてまいりますと、もう恩給のほうに鼻づらを引っぱり回されて、そのあとから共済がのこのこついていくというかっこうをとっているでしょう。今度の国会に提案された法律の形態にしても、全くそれと同じことを裏書きをしている。そして他の公的年金は、社会保障制度審議会あたりから、それだけ独走をするということはけしからぬという批判は出ているけれども、それじゃ具体的にどういうふうに進めていくかという問題については、昭和三十七年に指標は出されてはおるけれども、その具体的な作業の日程というものが爼上にのぼっていないというのが実情でしょう。そういう点から、私は島田人事官に要望申し上げておきますが、あなたもこの百八条の人事院に与えられた権限、それに基づいて、もう少し給与局等を叱咜勉励をして、人事院としての態度というものをできるだけ近い機会にわれわれに明示してもらいたい。そういうように要望申し上げますが、いかがですか。
  90. 島田巽

    ○島田(巽)政府委員 非常に怠慢であるというおしかりをいただきましたが、私ども引き延ばしを策して延ばしているわけでは決してございませんで、先ほど次長から申し上げましたように、一つ一つの指標をとりましてやる場合に、どれをとるかということが非常に複雑でありますために、慎重に検討している段階でございまして、しかもできるだけ早急に出したいという姿勢は常に持ってやっておりますことを御了解願いまして、私どもとしていまのお説を十分心に体しまして今後に処してまいりたい、こういう考えでございます。
  91. 村山喜一

    村山(喜)委員 人事院、けっこうです。  そこで、私は法制局にお尋ねいたしますが、恩給というのは、今日においては憲法上の一つの財産権としてこれは認められておると思うのであります。憲法二十九条によるところの財産権の範疇に入る。だから、財産という問題をとらえてまいりますと、財産という経済的な価値というものは、社会の構造、状況によって変化をいたしまするし、その社会性、公共性という立場から見まして、公共の福祉に適合するように法律で定め得るものだ、こういうふうに考えております。前の法制局長官をしておられました林修三さんが、憲法制度調査会のときにも報告を出して説明をしておられるようでございますが、この恩給受給権というのは、いわゆる憲法二十九条にいうところの財産権である。年金を公債化をしたりあるいは一時金化したりするということは、必ずしも二十九条違反にはならない。両者が等価値でなければならないという点はあるけれども、実質的にそれを削減をするような場合には問題になり得るとしても、そういうような一時金化したりあるいは公債化したりするような措置は、等価値である限り可能である、こういう憲法上の解釈を説明をしておられるわけであります。私は、この恩給という問題を考えてまいりますと、今日恩給受給者の諸君は、これは一つの生活権として、あるいは過去における法律上の期待権として、今日財産権を享受しておられると思うのであります。この四十三年度の恩給表をながめてまいりますと、二百九十三万九千六百二十七人の人が受けられておるわけであります。そのうち旧軍人の遺族まで含めてでありますが、恩給受給者が二百七十二万五千八百三十一人ということになっております。私は今度の恩給審議会の答申を見まして、これはやはり今日の新しい憲法体制下において問題を処理しなければならないのに、古いいわゆる恩給の既得権という考え方に立ち過ぎたとらえ方をしているのではないかといういろいろな部面を拝見いたしたわけであります。  そこで、概念的な、これは抽象論になりますが今日新しい憲法が生まれ、いわゆる共済制度というものが発足をしていく中において、恩給が先行をして共済のほうがあとを追っかけていくというような措置は、これはどうもおかしいのではないかと私は思うのであります。やはり新しい憲法下の中でできました共済制度というものを中心に恩給制度がそれにならっていくという方向をとるのが正しいと思うのであります。そのような意味から恩給なりというものは、新憲法に適応するように公務員法の立場から新しい恩給制度というものを考えていく、そのような方向で問題をとらえるべきなのが正しい立場ではなかろうかと考えますが、そのような方向で恩給制度をながめるという見方についてどのようにお考えになっておりますか。
  92. 荒井勇

    ○荒井政府委員 新憲法のもとでできました新しい公務員制度に即するように年金制度がどのように設けられるべきであるかという点は確かに問題でございまして、その点につきましては、昭和二十三年に国家公務員共済組合法旧法が制定されまして、これによる退職年金制度というものが生み出されたわけでございます。これは恩給とは違って、社会保険の理念に基づいて、その被用者としての掛け金を負担し、使用者及び国庫がまたこれに対応する負担をするという形でできたわけでございます。ただ、その当時におきましては、旧官吏制度に基づく恩給制度と並行して存在する雇用人についてだけの共済年金制度退職年金制度であるということでございましたけれども、その点は昭和三十三年の新国家公務員共済組合法の制定、施行によりまして、三十四年一月あるいは十月から、恩給制度と従来雇用人についてのみ存しました共済組合による退職年金制度というものが統合せられ一本化されているわけでございまして、現在公務員である人につきましては、すべてこの国家公務員共済組合法による退職年金というものが適用されるようになっているわけでございます。その場合に、新しい共済組合法による退職年金制度が施行される前に恩給受給権が発生したというものについてどのようにすべきかといいますと、これはすでに権利の裁定があり、一つの年金債権として確定しているというものでございますので、三十四年一月なり三十四年十月一日に現に在職する者について、従来の恩給を受けるべき地位というものを新制度に切りかえるのに伴いまして、これは恩給ではない新しい退職年金を受給するべき組合員期間としてそれを評価するのだというふうにしたわけでございますけれども、既往の恩給受給権をいきなりやめるということは、これは憲法二十九条の財産権尊重という点からいってそう簡単にいく問題ではございませんで、それが既裁定のものについてはそのまま存続し、まだ裁定の時点に至っていないというものについては新しい退職年金制度の中に吸収するというふうにしたわけでございます。  その場合、その等価のものであれば、他の一時金に切りかえるとか交付公債という方法によることができはしないかということでございますけれども、これは一時金ではございませんで、年金であるというようなもの、しかも一昨年、昭和四十一年の改正によりましてスライド制というようなことも入っている、その年金債権というものをいかに現価に評価するかというような点も問題でございますし、それの財政負担というものを考えますと、結局等価のものが等価のものに変わったというだけであるならば、国家財政的に見ましても、あるいはこういう社会保障的な考え方からいいましても、積極的なプラスはちっともないではないのかというふうに考えられますし、結局、既裁定のものはそのままになり、新しい退職年金制度においてはその既往の恩給公務員期間を組合員期間の中に通算するという形において承継し発足せざるを得なかったということでございます。この点は、国家公務員共済組合法が新たに制定される前に、議員立法で公共企業体職員等共済組合法が制定されたわけでございますけれども、これにおいても同じ行き方をとっておったわけでございます。  そのように、恩給公務員期間というものを新しい共済組合による年金制度組合員期間の中に通算する、そして既往の期間についてどれだけの恩給額が算定されるべきであったかというものをその年金計算の基礎の中に織り込むという形で発足しておりますので、今回のような恩給についての措置がとられたとしますと、それとの均衡からしまして――というのは、恩給公務員として退職されたのは昭和三十年であるとか三十二年であるという人と、三十四年十月にやめた人、三十五年にやめた人というものとの権衡を考えますと、どうしてもやはり向こうの改定に対して調子を合わせないと、その間のアンバランスが起こるということで、昨年あるいはその前にも何度かございましたけれども、そういう恩給における改定措置共済年金についても準じてとらざるを得なかった。これはたとえば戦時中の旧令共済組合等につきましても、官吏たる自分を持っておった人については恩給法の改正によってその年金改定が行なわれる、しかし、雇用人たる身分を持っている者についてはそれが行なわれないということでは不合理だということで、従来のような措置がとられたのだと思います。
  93. 村山喜一

    村山(喜)委員 もうほかの関係のところを呼んでいるわけで、これ以上追及する時間がありませんが、私は、恩給問題審議室ですか、あなたに一つだけお尋ねをしておきたいと思う。  それは、軍務に従事した期間、実在職年数七年以上普通恩給最短年限未満の者に支給している一時恩給を、下士官以上の者については三年以上七年未満の者についても短縮支給をすべきであるという答申を恩給審議会が今度行なっておりますね。それは、一時恩給権というものが文官との均衡の上においてあったのだ、そういう立場から問題をとらえておいでになる。私は、これは、そういうような既得権というもののとらえ方、それから文武間の均衡というもののとらえ方からするならば、そういう説が出てくるのは当然だと思う。しかしながら、恩給というものが、今日、社会保障制度の中における位置づけもとられているわけですから、そういうような要素が加味されていることは、今日の恩給の中身を見てもわかるわけであります。国民の中にそういうような身分差によるいわゆる不合理というものを残すようなことでは、私は間違いだと思うのです。これはやはり兵隊であっても、そういうように国のために、そのような命令を受けて兵隊に引っぱられて、そして戦争行為に参加し、あるいはそのほか銃後のいろいろな措置に従事した。ところが、その期間は、今日公的年金制度の中には全然――国家公務員なり地方公務員、あるいは三公社五現業等の場合は、兵役に従事した期間は公務に従事した期間として通算をされますが、そのほか民間にありましては、国民年金制度の中にあって、何らそういうようなものは考慮されていないわけでございます。御承知のように、国民年金があります。あるいは厚生年金があります。そういうようなものの中には、軍務に従事した期間は、一般の公務に従事しない、自由業等に働いている者については現在適用されていない。そういうような問題をやはり半面に考えなければならないのではないか。だから、下士官以上の者については一時恩給を支給する、残りは切り捨てである、こういうような答申をお出しになったものを受けて、やはり国民全体が何を考え、何を求めているのかという立場から、今日の公的年金制度が非常にアンバラな形で恩給に引っぱられておるという姿を、これを国民に納得をしてもらう、そういうような形で問題を取り上げなければならないと思うのですが、それについての御意見はございませんかどうか。また、それに対する大蔵政務次官の御見解を承っておきたいのでございます。
  94. 大屋敷行雄

    ○大屋敷説明員 旧軍人の一時恩給につきましては、審議会でもこれを既得権として認めたわけではございません。すなわち、その前文におきましても、昭和二十八年、旧軍人恩給制度が発足した場合には、結局、戦前ありました権利そのままを受け継いだというような形には決していっていないのでございまして、一応二十一年に軍人恩給を廃止して二十八年に新たな装いのもとに発足した、このような見解に立っておるわけでございます。  しかしながら、この旧軍人の一時恩給につきましては、先ほども申し上げましたように、在職中納付金をしておったというようなのが重要なポイントになります。それともう一つは、やはり同じ恩給制度の中におきまして、文官と軍人、並立しておるわけでございますが、その間にどうしてもアンバラがある。既得権的な考えじゃなしに、以上申し上げましたような考え方から、下士官につきましては、戦前の文官の一時恩給と同様に、三年以上の者にも支給したらどうか、適当である、このような御意見が出ておるわけでございます。  しかしながら、これも先ほど申し上げましたが、この問題につきましては財政上の問題も多々あると思います。そのほかに、それと関連しましてやはりこの対象数が一体どれくらいあるのかということも、私どものほうでは現在全然把握しておらない状態であります。そういうようなことを調査し、いろいろなことを考えまして、この問題については検討してみよう、こういうふうな態度でございます。
  95. 倉成正

    倉成政府委員 村山委員の御指摘の点、いろいろな問題があろうかと思います。これらの問題は、やはり公的年金制度の連絡協議会でいろいろ御検討いただきたいと思っております。  それから、恩給審議会の答申については、われわれ受けまして、十分財政上の事情を勘案しながら検討いたしたいと思っております。
  96. 村山喜一

    村山(喜)委員 私、これで終わりますが、どうもどう考えてみましても、兵隊の場合、十二年程度つとめた場合、公務扶助料なりあるいは恩給をもらう。そういうような立場の給与の中身は、われわれが今日説明を受けているのは、その兵隊の俸給の中には恩給納付金相当分を差し引いて兵隊には支給をしておったのだからということで恩給法上の対象としているという説明を聞いているのであります。それで、下士官以上は一時恩給を納付金として納付をしておったからという説明だけでは納得はできません。やはりそういうような問題を取り上げるとするならば、兵隊の場合も、たとえそれが三年であろうが四年であろうが、そういうような勤務をした者はこれを他の公的年金の資格の中に入れ込む。その財源は国のほうから出していく。それによって均衡ある措置をとるべきである。その身分差によるものだけを一時恩給として支給するというのは間違ったやり方であると私は指摘をしておきたい。  そこで、最後に私は倉成さんに要望を申し上げておきますが、あなたもよく御存じのように、いろいろな公的年金がございます。この中身を見てまいりますると、一番取り残されておるというのか立ちおくれておるのは国民年金であります。これが二百九十九万六千九百七十三人適用されながら、その平均年金額は一万八千円にすぎない。そういうようなアンバラな状態が今日の姿です。これはやはりそういうような公務に従事した者の特殊性は認めなければなりません。しかしながら、社会保障制度としての一般的な原則の上にそういうような特殊性というものは組み立てられなければならない。私はそう思うのです。だから、自分たちの権利を主張することは当然の国民の権利でありますけれども、全体的な国民のそういうような社会保障制度の中における位置づけ、あるいは公務員という特殊性の上に立ったそういう年金制度あり方というものについて、まあ近いうちに再計算の時期も参りますので、そのような時期に間に合うように、公務員年金制度連絡協議会ですかで、そこら辺ひとつ十分に検討を進めていただきたい。これを要望申し上げまして終わります。
  97. 毛利松平

  98. 大原亨

    大原委員 私は、広島県の竹原市にあります大久野島における戦争中の毒ガス工場の被害救済問題について質問をいたしたいと思うのです。  これは、御承知のように旧陸軍造兵廠の忠海兵器製造所においてイペリットその他毒ガスを製造しておった問題であります。国際法違反の毒ガスをつくっておったのですから、これは表面化するわけにいかぬということで、戦争のときには地図からも島を抹殺いたしました。今日は大久野島というのがありますが、抹殺をいたしておったわけであります。  そこで、その兵器工場において毒ガスをつくるために従事をしておった従業員の人数あるいはまたその従業員の身分といいますか、直接に雇用された者あるいは徴用工、あるいは動員学徒、あるいはその他地域の婦人団体、こういうふうなものについて実態をどのように把握をしておられるか。こういう点についてひとつお答えいただきたいと思います。
  99. 津吉伊定

    津吉説明員 先生御指摘になりますように、旧陸軍の造兵廠の問題でございます。その実態につきましてはあとで御答弁申し上げますかと思いますけれども、われわれのほうで連合会が若干措置をするという面で関与をいたしておりますので、ある時点における実態がどうであったかという点につきましては、厚生省関係からお答えをなさるほうが適当かと存じます。
  100. 実本博次

    ○実本政府委員 お尋ねの大久野島の旧陸軍造兵廠の職員の問題でございますが、これは終戦時の現在でわれわれのほうで把握いたしております数字といたしまして、千八十名という数字があがっております。そのうちいわゆる職員と工員とに分かれておりまして、現実に毒ガス製造に従事した従業員は、工員ということで千十一名、それから管理事務その他いわゆる事務系統の職員として六十九名というふうな方々が終戦時現在の職員として勤務されておったわけでございます。  そのうち、さらに詳しく申し上げますと、職員といたしまして恩給法上の恩給公務員ということで、三十三名が旧恩給法上の公務員という身分を持っておられる方々でございまして、それから三十六名がいわゆる嘱託雇員ということで、旧令共済の職員としての資格を持った方がおられます。それから工員の千十一名につきましては、男子工員が六百六十九名、女子工員が三百四十二名、これはいずれも旧令共済組合組合員になっております。  以上が当時の職員数になっております。
  101. 大原亨

    大原委員 徴用工や動員学徒やあるいは愛国婦人会、その他の地域の婦人団体でここに仕事をしておった人は何人ですか。
  102. 実本博次

    ○実本政府委員 当時の身分関係のあった人だけの資料しかわれわれのほうでは持ち合わせがございませんので、そういうふうな協力をいただいておりました方々につきましての直接の復員局系統の資料はございません。
  103. 大原亨

    大原委員 ただ私は、つまり終戦直後にはこれは毒ガス島であったから、GHQが入ってきたならばだれが責任者で製造し、その指揮系統はどこで、その責任はどうかということで、戦犯の追及、国際法違反の追及がある、こういうことで資料も抹殺し、そして従業員についても実態の把握ができないままに放置されておる。こういうことになっておるのは、当時の情勢から、許しがたいことではあるが、わかるわけです。しかし、いまの実態調査を見てみますと非常に違うわけです。これは広島県が調査いたしました名簿によりますと二千三百名ある、こういうふうにいわれておるのです。援護局長は千十一名、こういうお話です。動員学徒や徴用工や愛国婦人会、その他婦人の労働者、当時は毒ガス島でありましたから憲兵の指揮下にあったわけです。ですから、そういうことについて実態がわからぬということは、どこかで実態と究明しなければならないということと一緒に、この際私は明確にしておいていただきたい。これは一体どこがやるのだろうか、こういうことですね。対象の実態がわからないで、旧令共済関係法律を――これはあとで議論いたしますが、適用するというふうなことはどういうことだろうか。どこが責任を持ってこれは調べるべきか。こういう点はこの旧令共済関係の、大蔵省のほう予算を持っておるから、あなたのほうでひとつ見解を述べてください。
  104. 津吉伊定

    津吉説明員 御指摘になりましたわれわれのほうでやっております措置は、昭和二十五年以来、先生御承知のように、いわゆる旧令年金といいますものにつきまして、旧陸海軍と旧外地の共済組合、これが終戦とともに、消滅いたしました。したがいまして、この権利義務を連合会が承継をして年金支給等をやっておりますが、それにかかわる事項といたしまして、先ほど御指摘の大久野島の毒ガス対策ということを、行政措置によりまして、昭和二十九年から実施を開始したのでございます。  したがいまして、この措置共済組合における業務上の災害ということでありますので、しかも旧令にかかわる問題として連合会が行政措置としてやっておることでありますので、その対象といいますのはいわば申し出主義によりまして、あとで申し上げますように調査委員会と認定審員会という機関がございますけれども、そこにおいて身分とともに障害と勤務との因果関係、これはしつこいようですけれども、業務上の障害でなければ共済組合としては問題にし得ない面がございます。そういうことと障害程度、これは申し上げますが、年金一時金の問題あるいは療養の給付、医療手当というようなことにかかわってまいる給料額等々と、のみならず障害の程度の医学的な認定ということがございますので、この両会議体におきまして議を経て、連合会理事長が裁定をいたしまして処置をしておる、こういうことでありますので、オールオーバーに前提といたしまして、およそその実態をまず調べた上で措置をするという方式は、しつこいようですが、われわれのほうのサイドの措置としてはとっておらないという状況でございます。
  105. 大原亨

    大原委員 これは旧陸軍関係の兵器工場でございますから、いま千十一名の内訳がお答えがありましたが、現在大蔵省の給与課がとっておるそういう制度というもの、国家公務員共済組合連合会に委嘱してとっておるそういう行政措置というものは、当時の組合員であったということが条件ですが、あるいは組合員でなくても徴用工やその他でもいまお話しの点に該当して相当の因果関係あればよろしいのですか。いかがです。
  106. 津吉伊定

    津吉説明員 的確に旧陸軍共済組合員であったということに限定せず、徴用工であられた人でございまして、現実にガス障害が、先ほど申し上げましたその勤務の状態との因果関係におきまして発生しておるということでありましたならば、それを認定して諸種の給付その他の措置をいたしておるところでございます。
  107. 大原亨

    大原委員 こういうことは私は質疑応答でわかると思うのですが、当時の従業員の実態が、これはあとで議論する毒ガスの被害の程度等についてもそうですが、従業員の実態、対象の把握が全然なされていない、これは毒ガスという当時の性質から考えて。それから申し出主義と言われましたが、言うなれば恩恵主義というか、非常に便宜的な措置であって法的な根拠がない。大体どの法律の何条に基づいてわずかな予算を出しているのですか。
  108. 津吉伊定

    津吉説明員 先ほど申し上げましたように、いわゆる旧令共済組合等年金受給者のための特別措置法という規定では、連合会が旧令共済の業務を承継いたしまして実施しておりますが、その法律の八条におきまして「連合会は、共済組合法の規定による業務の外、左に掲げる業務を行う。」これは端的に申し上げまして、旧令関係年金、一時金の支給その他その承継した債務の整理をするということでございます。それから、いわゆる管理病院というのがございまして、これはあとで出てまいりますので申し上げますけれども、忠海病院とか呉病院とか、あるいは横須賀とか、そういう旧海軍系統の病院がございますが、これがこの法律施行と同時に承継されまして、連合会においていわゆる旧令病院としての運営されておるということがございます。  それで御質問のポイントになり得るわけでありますけれども法律の八条の三号にそういう「業務に附帯する業務」というのがございます。付帯する業務ということでもって、先生先ほど御指摘のように、これは毒ガスの問題でもございますし、当時私は担当しておりませんので直接は知りませんけれども法律をもってやるということではなくて、その法律の解釈によりまして、これも御承知のように行政措置として特別措置要項を出しまして二十九年以来やっておるという状態でございます。
  109. 大原亨

    大原委員 これはきわめて便宜的な措置なんですよ。  そこで、昭和四十二年度現在に実施をしている給付の種類、それから対象人員を一つ。
  110. 津吉伊定

    津吉説明員 まず療養給付の問題でございますが、これは先ほど申し上げました二機関におきまして認定をしました結果、その療養を要するということを認定いたしまして、その結果、忠海病院と呉病院におきまして療養給付をしておるということが一つでございます。  それから、第二は障害給付でございますが、障害年金、それから障害年金者遺族一時金というものがございます。これは旧恩給法施行令の四項症以上の障害というものを対象にしております。さらに障害一時金、これは旧恩給法施行令五項症以下四目症以上という障害について一時金を給付するという措置でございます。  さらに医療手当、これは原子爆弾の被爆者の援助につきましてとられました、これにならいましてといいますか、これに応ずる措置で、時点としても同じでございますが、三十六年四月以来、原爆についてとられている医療手当の措置を採用しております。さらに四十三年度におきましては、原爆における医療手当の額の引き上げということもありますし、また特別手当、いわゆる所得保障といわれるようなものであるようですが、月額一万円の手当というものもこちらのほうでならってとっておるということであります。  これが給付内容でございます。
  111. 大原亨

    大原委員 ただ、いまのお話の中で、原爆の医療給付については、認定患者については原爆被爆者医療法の基準に従って出しておられる、こういうことですね。そこでそれを準用してその基準でやっておられる、こういうことでしょう。
  112. 津吉伊定

    津吉説明員 いま申し上げましたのは、私、医者でございませんので医学的な問題というのはよくわかりませんが、ガス障害というのと原子爆弾の関係というのは、療養給付自体は異なるところがあろうかと存じます。また、その形式的というか、障害等級の基準といたしましても、さっき申し上げました旧恩給法施行令上の一つの区切りというのをとっておるのでございます。いまおっしゃいました原子爆弾にならってというのは、医療手当、それから四十三年度予算における特別手当というものについての問題でございます。
  113. 大原亨

    大原委員 イペリットその他いわゆる毒ガスの障害、あるいは後遺症、これに対して認定の制度を設けて、調査委員会を設けてやっている。これが一つですね。  そこで、医療手当の問題だけでなしに、医療給付の問題で原爆被爆者の医療給付制度があるわけです。因果関係のある者については認定制度があるわけです。しかし、放射能の影響をたくさん受けている、そういう者に対しましては特別手帳の制度があるわけです。健康管理の制度がある。従業員の把握についても問題があるけれども、やっぱり患者の要望というものは――いわゆる毒ガスの影響による認定患者の範囲が非常に狭い、シビアーだ。そして毒ガスの工場で防毒面をかけて仕事をした人がおるわけです、当時いろんな症状があった人が。そういう人々に対しては後遺症その他の管理上特別手帳を交付すべきじゃないか。これは原爆症のそういう放射能の障害とイペリットその他毒ガスの障害との類似点から考えても、そういう健康管理をすべきでないか、こういう要求があるわけです。つまり、いわゆる毒ガス工場で働いていた人々に対しては、原爆被爆者の特別手帳に相当するところの特別手帳の制度を設けて健康管理をしてもらいたい。これは私は公平の原則から当然ではないかと思うのですが、いかがでしょう。
  114. 津吉伊定

    津吉説明員 その御指摘自体はまことにごもっともでございます。ただ、私先ほど来御答弁申し上げておりますように、われわれが担当しております分野は、旧陸軍共済組合における給付の周辺といいますか、それにかかわるものないしその基準というものは、医療手当につきましては原爆の措置というものにならって考慮をしていっておる、こういうことでありまして、その問題の考え方の中心になりますのは、以前旧共済組合において業務上の障害としていかなる措置をとる制度があったかということでございます。したがいまして、そういう健康手帳等の措置につきまして、それ自体を私の立場で拒否をするということでは毛頭ございません、そういう筋のものではございませんが、われわれ共済組合における措置としてとっておる限りにおきましては、それはさらに高い立場といいますか、そういうさらに公害に近づくような関係も一つの面があろうかと存じますが、そういう意味において、端的にそういうことになってしまうかどうか知りませんですけれども、いわば厚生行政の系統に近づくのではないかというふうに存じておるわけでございます。
  115. 大原亨

    大原委員 そこで、時間がないから結論を急ぐのですが、つまり当時の身分関係では、軍の雇用人ですから軍属でしょう、あるいは準軍属でしょう。それから徴用工や動員学徒や愛国婦人会等が二百数十名、それぞれあの――徴用工なとはまだまだ多いですよ。動員をされているのですよ。それはわかっているのですよ。だからそういうのは、他のほうでは戦傷病者戦没者遺族等援護法で軍属かあるいは準軍属かで援護を受けているのです。しかも、あなた、これは単なる公害じゃないのです。実際に憲兵あるいは県知事が総動員法で動員をかけて、そして職場において宿泊場所を指定しながら、どこに泊まっておれ、かってに帰ってはいけない、こういうことをやりながら国際法違反の毒ガスを秘密につくらせたのです。それが人道上はかり知れない後遺症が今日あるわけです。それを旧令共済のそういう関係だけで――もちろんあなたは関係法律ですから、答えておりますが、そういう点においては、私はこれは実態把握と対策において法律的に非常に欠陥があると思うのです。だからこの問題は、厚生省の援護局長、厚生大臣のほうも十分調査をしてもらいたい、均衡ある措置をとってもらいたいことが一つ。  それから、これは倉成次官のほうに大臣にかわって質問をしておくわけですが、この問題はそういう健康手帳の交付――あなたはこれは詳しいはずだ。そういう特別手帳の交付、こういう問題等を含めて、医療の面、そして年金とか給付とかそういう面において均衡の失しないような措置をとるべきではないか。  きょうは時間がないので、これはずいぶん各問題について追及し議論をする問題があるのですが、そういう問題について考え直して――法的な根拠を、旧令共済で便宜的に付帯事業としてやるのではなくて、これは根本的に考え直してやるべきではないか。数は非常に少ないのですが捨てがたい問題であって、今日超党派的に関係市町村その他においていわれておることなんです。その点について厚生省の見解と、それから最後に次官の見解を述べていただきたいと思います。
  116. 実本博次

    ○実本政府委員 その毒ガスの被害者の問題につきましては、先ほど来国がとってまいりました処遇のしかたといたしましては、こういう特殊の造兵廠というところに勤務していた方々の一種の、先ほど津吉課長からのお話のように、いわば産業災害というふうなことで、労災の関係の観点から処遇してまいっておるわけでございます。  先ほど先生ちょっとお触れになりました人数の違いでございますが、これはこの毒ガスの製造所が昭和四年に設置されておりますので、先生がいまおあげになった二千何人というのは、おそらくその当時からの延べみたいなかっこうで出てきているものじゃないかと思いますが、これはわれわれのほうは終戦時、そのときにおられた方をとっての数でございます。  いずれにいたしましても、そういったはっきりした身分の関係のある方について、もしいまの処遇のしかたが実態に合わないということであれば、これはまたそういう処遇のしかたについての分野で処遇の改善を考えていっていただくべき問題ではないだろうか。一般的に原爆の被爆者のようなかっこうでこの問題を取り上げるということでありますならば、これは産業災害とか特殊な職域における特殊な病気という観点から離れなければならない問題でございまして、従来の政府の立場としては、一種の産業災害の問題だというふうに考えた角度から処遇してまいっておりますので、それを踏み越えるということにつきましては、なお慎重に検討してまいらなければならないのではないかと考えております。
  117. 倉成正

    倉成政府委員 大原委員の御指摘の忠海兵器廠の問題、非常にお気の毒な状況だと思います。国家公務員共済組合でやれる範囲は、先ほどから給与課長が申し上げましたとおり、おのずからやはり限界があるのじゃなかろうか。したがって、厚生省なり関係の省で実態を少しきちっと把握した上で、どう処理するかということをやはり議論すべき問題ではなかろうかと思っております。
  118. 毛利松平

    毛利委員長代理 次回は、明後十七日金曜日、午前十時十五分理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時三分散会