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1968-04-10 第58回国会 衆議院 大蔵委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月十日(水曜日)    午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 田村  元君    理事 金子 一平君 理事 毛利 松平君    理事 渡辺美智雄君 理事 只松 祐治君    理事 村山 喜一君 理事 竹本 孫一君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       鯨岡 兵輔君    河野 洋平君       小山 省二君    笹山茂太郎君       四宮 久吉君    砂田 重民君       地崎宇三郎君    西岡 武夫君       古屋  亨君    坊  秀男君       村上信二郎君    村山 達雄君       山下 元利君    吉田 重延君       阿部 助哉君    井手 以誠君       神門至馬夫君    佐藤觀次郎君       中嶋 英夫君    平林  剛君       広沢 賢一君    広瀬 秀吉君       武藤 山治君    岡沢 完治君       田中 昭二君    広沢 直樹君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         厚 生 大 臣 園田  直君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      荒井  勇君         大蔵政務次官  倉成  正君         大蔵省主計局次         長       船後 正道君         大蔵省国有財産         局長      大村 筆雄君         厚生省公衆衛生         局長      村中 俊明君         厚生省医務局長 若松 栄一君         厚生省保険局長 梅本 純正君         社会保険庁医療         保険部長    加藤 威二君  委員外出席者         大蔵省主計局法         規課長     小田村四郎君         自治省財政局交         付税課長    横手  正君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 四月十日  委員登坂重次郎君及び中嶋英夫君辞任につき、  その補欠として四宮久吉君及び神門至馬夫君が  議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国立病院特別会計法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一四号)      ————◇—————
  2. 田村元

    田村委員長 これより会議を開きます。  国立病院特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。中嶋英夫君。
  3. 中嶋英夫

    中嶋委員 最近、佐藤内閣になりましてから、施政の方針が漸次受益者負担方式とでも申しますか、鉄道が赤字ならば乗客が負担すればいい、病院赤字ならばひとつ患者負担をしてもらおうじゃないか、もちろん政府も若干出す、これはインフレ過程ですから、予算は膨張していますし、若干の伸びは自然現象で、特別の恩典でもなければ前向きの政治の姿でもないと思いますけれども、そういう形で税金を納めている国民をつかまえて、本来政府が手を出しているものが回転が苦しくなると政府みずからがやりくりをしない、そして国民生活に直結しない面ではどんどん膨張予算を組んでいく、こういう傾向を感ずるわけであります。  今回の国立病院特別会計法、すなわち国立療養所特別会計移行という問題も、いろいろ答弁については、一般財源繰り入れを十分するとか、あるいは迷惑はかけないとか、あるいは二割差し引きの措置はそのまま継続するとかいう答弁はありますが、しかし、最終的にこれが実行に移された場合には、いわゆる受益者負担方式というものがなお強められていくという、こういう危険性はどうしても無視できないわけであります。そういう点について先般本会議でも質疑をいたしましたが、またきょうから、同僚の諸君からそれぞれ問題別に掘り下げた質疑を行なわれると思うのであります。   〔委員長退席渡辺(美)委員長代理着席〕  私は、この今回の改正を企図した理由を当局に前もって聞いてみたのでありますが、そのときの厚生省側あるいは大蔵省側の端的な表現は、こういう表現でありました。療養所は古くなっておるのでこれを設備をよくしていきたい、これはけっこうなことです。それにはお金がかかる、そのためには独自に資金の借り入れができる道をあけてやりたい、同時にこれに今度の改正によって、療養所が持っておる土地を売却し、その売却した代金をもって療養所施設の改善、設備確保に充てていきたい、これがねらいだということをいみじくも言われたのであります。私は、これは非常に重大な問題があると思う。というのは、借り入れの問題はさておきまして、土地を売ってその代金設備をよくしていくということは、過去の療養所歴史を知らない人にとっては一つの都合のいいそろばんかもしれませんけれども、いまの国立療養所の中の相当数が旧軍の療養所であったわけであります。あのきびしい軍国主義のもとにおいて、軍が必要とする土地、これを農民に求めた場合に、これに対する抵抗というものはまさに鎧袖一触、何べんお願いして先祖代々の土地を守っていきたいと訴えても、憲兵どうかつすらしてこれを取り上げたものであります。しかも代金国債で払う、払われた国債は間もなく終戦でほご同様。これはもう農地補償の場合と違い、あるいは建物の疎開の場合と違って、全然無代償で軍に、暴力の前に奪われたという、こういう非常にみじめな歴史を持っておるわけであります。そうして広大な土地があるからといって、余剰土地があるからといって、これをいま地価が上がったから売って、それで何とか充てようということは、これはとんでもない大きなあやまちだと私は思うわけであります。特に最近、農民土地に対する執着というのはもちろんいまなお根強いものがありますけれども、中には大都市周辺などにおいては土地の値がどんどん上がっていく、たいへんな財産だ、この財産は守っていきたい、温存していきたい、こういう執着が入っておりますけれども、戦前における農民あるいは山漁村民土地あるいは山、こういうものに対する愛着というものは、愛着などというそんななまやさしいものではない。長塚節の「土」の物語にあるように、まさに土地はその農民にとっての先祖であり、歴史であり、家であり、血であり、からだである。そういう強い執着のあるときに、暴力で奪われた土地暴力的どうかつによって奪われた土地、しかも無償同様に奪われた土地、それをいま持っておって、すぐそばに農民がいる目の前で、値上がりになったからこれを売れば建物をよくできる、こういう考え方。しかも国立療養所ならば、設備が弱っておるならば、設備が使用に耐えなくなっているならば、あるいは設備近代化が要請されておるならば、当然厚生省大蔵省に対して予算を堂々と要求すべきであります。なぜ予算を堂々と要求しないで、国民的課題を解決する予算を要求しないで、持っておる土地を売っ払って直しますからいかがでしょう、そんな卑屈な態度厚生省政治に臨んでいるというならば、私は重大な問題だと思う。この点についてまず厚生省関係者、同時に大蔵省関係者においてどういう考え方があったのか、私が指摘する点についてどう答えようとするのか、それを伺っておきたいと思います。
  4. 若松栄一

    若松政府委員 このたびの国立療養所特別会計移行の動機といいますか、目的といいますか、そういうものの中に施設整備をやりたい、そのために土地処分する、これが結果において古い農民等土地を収奪するような結果になるのではないかという御趣旨だと思いますが、私ども今回の国立療養所特会移行の最大の眼目といいますのは、単に土地その他を売り急いで整備するということでなしに、国立療養所というものがいままでに果たしてきました役割りというものは、これは日本結核対策の上で輝かしい業績を残したものと考えております。しかし、結核対策が推進するに伴いまして結核患者が漸次減少し、しかも最近はきわめて急速に減少いたしております。このような状態で現在のこの膨大な国立医療機関国立医療能力というものを、結核が減少したことによって新たに起こってくる国民医療需要にこたえていきたい。そのためには、結核はピーク時には約六万床のベッドを持っておりましたが、それが最近は四万になり、近い将来には二万になるという状況でございますので、それらの国立医療機関としての診療能力国民需要する方向に向かってフルに拡大したい、つまり最近起こってまいりましたように重症心身障害者あるいはリハビリテーション、あるいは老人慢性疾患であるとかいうような病気医療に活用していきたい。したがって、現在の先細りになってまいりました結核医療をさらに新たな国民医療需要に即応させるためには、どうしてもこれを急速に近代化していかなければいかぬ。結核が減ってくるのに非常に時間がかかりましたけれども、この新しい需要に即応することはきわめて急速に展開しなければならぬ。そういう意味で、従来予想しておりましたよりもきわめて急速に施設整備をやっていかなければならぬ。そのためには従来のように——従来も相当一般会計からも経費はもらっておりましたけれども、この程度のスピードではとても百六十という療養所整備するには足らない。それで何らかの方法を講じなければいかぬ。そのためには、こういうような大きな施設長期先行投資でございますので、単年度主義をとっております一般会計繰り入れだけではとても間に合わぬ。そこで借り入れ金も導入し、また土地処分もやるということでございます。  土地につきましては、私どもも、そういうような国立療養所が将来に向かって国民の新しい需要にこたえていくために、むしろ拡大再生産の方向に向かわなければならぬ、そのためには土地というものは将来にわたって非常に貴重な財産であると考えております。したがって、これをみだりに処分するというようなことは私どもも厳に慎み、将来の拡大、飛躍に向かって潜在的な大きな能力としてこれを温存したい気持ちは一ぱいでございます。それにもかかわらず、現在のこの緊急を要します整備のために若干は犠牲にせざるを得ない。総体として、私ども国立療養所の持っております土地の一割程度をこの全体の整備の数年間の中でこれを処分するというような計画を立てておりまして、この処分方法につきましても、ただいまお話がありましたような性格にかんがみまして、その処分は公的なもの、あるいはは公共福祉に関するもの、あるいは学校敷地等、そういうような公共の用に充てるということを原則にして、厳にしてまいりたいと思っております。
  5. 船後正道

    ○船後政府委員 療養所土地処分につきましては、ただいま医務局長からお答え申し上げたとおりでございまして、今後療養所施設近代化、集約化することに伴いまして余剰土地が出てまいるわけでありますが、この余剰土地を売却いたしまして、それをもってさらに施設整備費に充てていく、療養所近代化を促進していく、こういう考え方をとっておるわけでございます。また、この療養所は、その中核をなしますものが旧軍の結核療養所等を引き継いだものでございますので、その敷地の取得につきましては、先ほど先生が御指摘になりましたような種々の事情があったろうと思うのでございまして、この点は一般の旧軍財産と同じような状況ではないかと思います。  現在、国有財産処分方針といたしましては、やはりこれを公用ないしは公共的な用地に転用するということによって土地国民経済的な有効活用を期するという方針でありまして、やはり療養所土地につきましてもこういうような方針のもとに、従来も病院土地処分しました場合、あるいは一般会計におきまして療養所余剰土地大蔵省が引き継いで処分いたしました場合、このような方針でまいったわけでございますが、特会移行の後におきましても、こういうように公用ないし公共的目的地元のいろんな都市計画開発計画とか、こういうことにのっとりまして福祉の向上に役立てるという方向処分考えていきたい、かように考えております。
  6. 中嶋英夫

    中嶋委員 問題を狭めて掘り下げたいと思うので、医務局長にもう一つ伺いますが、いまあなたは国立療養所の新しい任務、課題というような問題を十分認識されておるようですね。それに即応する潜在的能力として土地があるということは好ましいということをお認めになっておる。しかし、最後にいってまた、土地はやはり売ってやりたい。聞いてみると十八億だというのですね。あなたは大蔵当局予算折衝をして、とても出ません、もうはしにも棒にもかからない、好ましくないが将来の展望からいっても取っておきたいけれども、泣き泣きこの十八億の金がほしいという話をしたわけです。どうしてこの十八億の金があと出ないとこう思ったのですか。何か具体的に折衝したのですか。大蔵省から、だめだよ、君らのほうで将来そんなことを考えておってもとても不可能だ、自分で始末して金をつくってこいと言われたのか。あなたのほうで、日ごろ国民にとっては非常に密着した予算を取ってもらって国民は喜んでおるわけだけれども、どうもあまり大蔵省がめんどうを見てくれない、毎年毎年こんなことではということで自信を失って、自分からだを売ってそれで何とかしようか、こんな気になったのか、どっちなのか。あなたの錯覚なのか。十分折衝した上で、大蔵省から剣もほろろで見通しがない、あきらめざるを得ないと泣いてこの問題を提起したのか、どっちなのか。
  7. 若松栄一

    若松政府委員 私ども、申し上げましたように、土地というものを将来医療機関潜在能力として非常に重視しておるということはもうそのとおりでございます。ただし、この国立療養所というものは国立病院と比べましても、非常に広大な土地を持っております。百六十の療養所が、平均いたしましても、一カ所平均三万何千坪という大きな土地を持っております。大きいものは八万坪、十万坪という大きい土地を持っております。そういう意味で、御承知のように、療養所という本のは全部いままではほとんど平屋で、横に地面をはうような形で療養所というものは……。
  8. 中嶋英夫

    中嶋委員 土地があるというのはわかっているのです。いま聞いたことに答えなさいよ。十八億の金はどうしてなんだ。
  9. 若松栄一

    若松政府委員 そういう意味で、私ども土地処分能力も若干はある。そこで、一般会計からの整備費繰り入れ大蔵省にも強くお願いいたしますけれども一般会計のほうとしてもある程度限度もあり、お互いにまた出せる能力は出し合って整備費を十分に確保したいという意味で、私どものできる範囲で協力をしていくという態度であります。
  10. 中嶋英夫

    中嶋委員 いま医務局長一般会計にも限度がある。どういう限度ですか。国の政治方針が変われば、いままでこれしかないという予算が、一ぺんに何倍にもなる場合があるでしょう。間に合わせるために、オリンピックの場合は昼夜兼行でも間に合わせるでしょう。国民の健康な生活を守るべき立場にあるあなたが、かってに一般会計からの繰り入れにも限度があるとは、何の限度があるのだ。限度の目安を示しなさいよ。それはあなたの一人よがりじゃないですか。
  11. 若松栄一

    若松政府委員 限度と申し上げましたのは、ある意味では私どもの力の限度ということにもなるかもしれませんが、私どもも毎年毎年、すでにことしで二十年経過しておりますので、整備のためには毎年予算折衝で努力してまいりましたけれども、なかなか飛躍的に整備費を獲得するということができなかったわけでございますので、そういう意味で私どもの力の限度と申すほうがあるいは適当かもしれません。
  12. 中嶋英夫

    中嶋委員 それは力の限度ではなくて、熱意限度ですよ。今後も十分注意してほしいのは、患者だけ考えちゃいけませんよ。一人の病人がいる、これをなおしてやっているというだけではだめなんですよ。これをなおすことが、いま患者でない健康な人に健康を維持させる道に通ずるし、患者の家族の悲劇、こういうものをカバーするという、もっと——患者の数だけ考えちゃいかぬ。患者が何万減ったというけれども、社会問題に変わりはないわけですよ。また拡大する可能性がないとはいえない。医薬品によって非常に罹病率が少なくなった、あるいは治癒率も多くなった。一方、耐性の出てくるのもいわれていますね。同時に近代病がどんどん出てくる。いまあなたがお話しになったように、新しい病気がどんどん出てくるのですよ。これにこたえなければならない。目の前にきているたばこの害ということもいわれているけれどもテレビの害はたいへんなものですよ。テレビの場合にはマスコミが取り上げないけれども、明るい螢光灯を何時間も見ているのと同じですよ。いまのテレビ時代が何年もたってくると、いまに日本人の視力というのはがっくり落ちることは間違いないといわれる。ただ、みんな触れない。スポンサーとしては大きいし、大体テレビマスコミの大きな一角ですから、あまり取り上げないけれども、そういう新しい近代病というものが出てきている。そういう問題等を将来、計画の場合に、工場敷地のようにここは何の工場が何坪あるからなんてものじゃないのです。どう拡大するか、まだわからぬでしょう、未知数でしょう。そういう問題をかかえているのだから、あなたがいま言う限度というのは、むしろ熱意限度と理解しなければならぬ。  しかも、その土地というものが、あの軍国主義の盛んなころに坪三円、六円でとられているのですよ。しかも支払いは国債ですよ。憲兵が現にどうかつに来ているのですよ。しかし、その人々も国のためだということで、泣いてがまんしたのだろうと思う。いまの農民の何倍も何倍も土地に対する執着があるのに、泣いて手放したと思う。それをあなた方が、ちょっとこれを直したいから、土地が広いから——土地が広いのはあたりまえですよ。軍の圧力があったからですよ。普通の民間でやったら、あんな広い土地を持てないでしょう。お国のために戦った人のためだというので、それが正義だということで、思い上がりも加わって、広大な土地を取っていたのです。しかし、いまや広い空閑地というものは、一方都市過密化現象の中で、国民の健康にとって非常に重大な要素でしょう。あなた医務局長だけれども空間が多いほうがいいのか、少ないほうがいいのか、立体化したって、空間があれば、療養所患者のためだけではなくて、その周辺の住民もあそこに緑があるということで、あれは先祖代々の土地を戦争に取られたと思っても、その緑を自分が享受し、自分の孫子の代まで享受するであろう、こういう考えの中にあきらめがつくだろうと思うのです。  それを土地が余っているから売るんだ。それはおっしゃるように、公共団体だ、公共のためだ、学校だと言うけれども地方公共団体が今度は再払い下げはしない保証はないわけです。現に神奈川県にあった。演習場地方自治団体払い下げをする。それを今度は何か別のレジャー産業のほうへという話があって、これはもちろん、県民の猛烈な反対でつぶれましたけれども、そういう例はある。あるいは地方自治団体が国から土地払い下げを受けておいて、その一部をゴルフ場に貸しているという例も実際あるのですよ。これはその次の保証は何もないですよ、そうでしょう。あなた医務局長として、そういう空閑地があることがプラスかマイナスか、医務局長あたり、せめてもっとゆったりした考えを持ったらどうですか、健康保持のために。どこかの土地会社の重役みたいに、土地が余ってますから、もったいないから効率をあげるんだ、そんなばかな話はないですよ。  だから、あなたの熱意限度を疑わざるを得ない。もし、あなたの認識について、ことばが足らなかったというなら、私はもっと熱意を持っているというなら、ここであなたの熱意のほどを示してもらえば、私どもはバックアップしますよ。十八億円くらいの金をねらって、土地を売るんだと言わざるを得ない、立法手続をすると言わざるを得ない、というのは情ないじゃないですか。みんなに応援してもらえばいいじゃないですか。大蔵省に交渉したらどうですか。わけのわからぬ国にこんなに金を出そうとしている。参議院選挙もあるから国会中はやめておいたほうがいい、国会が終われば出そうかと言っているのだから、それに比べれば、ほんの少しですよ。それに対して何か答えがありますか。
  13. 若松栄一

    若松政府委員 御趣旨まことにごもっともだと思います。日本のようなこういう稠密地帯空閑地の持つ意義は非常に大きいと思いますし、また私どもも、特に療養所という性格のものは将来とも慢性長期患者を主として収容することになりまするので、都市中心地にありますような、いわゆる急性病院とはまた違った性格を持っています。そういう意味慢性病院にはかなりゆったりした土地を持つ、いわゆるガーデン・ホスピタルというような形の、長期療養者にふさわしい生活環境というものをつくってやらなければなりませんが、そういう意味で、国立病院等に比べましても、十分ゆったりした土地確保していくという方針を私どもとっております。  そういう意味で、土地はなるべく処分したくないというのはやまやまでございますけれども、まあある程度限度というところで、特に非常に都市化したような地域にあまりにも広大過ぎる土地もどうかというような声も若干ございまして、一部については処分をさせていただきたいと思うわけでございます。
  14. 中嶋英夫

    中嶋委員 都市化すればするほど空閑地というのは必要なんですよ。逆にこれを民間の人が持てったって無理だ。財閥が邸宅を持っているといっても、だんだんお手伝いさんはいなくなるし、とてもそんなものは持ち切れない。それが実態ですよ。いま空閑地は公の機関で持ってやらなければ、これから、だれが持てますか。これが一つ。  それから私は、一坪の土地、一坪の家も持っていないのです。うちの家庭で争議があれば、大体うちがないということで争議が起きる。その一坪の土地、一坪の家も持っていない私が、国立療養所へ行って、広い土地を持っているな、もったいないなあと思ったことは一度もない。よその土地へ行って、おれは土地がないのだと悲しく感じても、国立療養所へ入って、あの広い余裕のある土地を見て、もったいないなあ、おれに五十坪あればなあとは思わない。あなたでもだれでもそうだろうと思う。これは多くの人に是認されておるのです。すべての人にと言ってもいいが、是認されている。中には、療養所伝染病患者などが入っているから、伝染しちゃいかぬという意味で広いほうがいい。遠いからうつらぬという問題ではないのだけれども、昔は療養所ができるというと地元は反対するくらいだったのです。まわりが伝染病になるんじゃないかと心配するくらいだった。そういうものが残っているから、是認するのもあるだろう。とにかく全部是認している。その是認の上であなた方の持っている能力を発揮して、一番期待にこたえなきゃならぬ医務局長が、先走って都市近代化のさなか申しわけございませんと言って、何であなたが卑屈になる必要があるか。重大な錯覚ですよ。この際考えを変えたらどうですか。
  15. 若松栄一

    若松政府委員 御趣旨は十分御了解いたしますけれども、実は一昨年も、私どものほうの土地住宅公団等集団住宅地土地に提供してくれというお話もありました。といいますのは、結局、われわれが空閑地を多くとるということも確かに非常にいいことでございますが、一面、都市周辺におきまして住宅地がないために、住宅政策それ自体が非常な困難に逢着しているという面もございまして、建設省との話し合いの上で、できるだけ都市近郊の適切な住宅地は放出してもらえないかという話もございまして、そういう住宅政策ということもまた大事なことでございましょうし、われわれのほうの療養所環境あるいは空閑地確保ということも大事でございますが、そこらの辺が現実に折れ合ったという点で、相当土地を提供したことがございます。それらに引き続きまして、同じような方針で若干の土地を提供したいという趣旨でございます。
  16. 中嶋英夫

    中嶋委員 あなた、折り合う必要はないですよ。いま住宅政策はあなたのほうで土地を出せば解決するというものではない。やり方はまだ幾らもあるでしょう。高層化の問題もある。問題は地価なのです。家を建てる材木が足らぬのじゃないのです。それは輸入できるのです。新しい建材もどんどん生まれている。問題は土地が高いからなのです。土地が高いところに、これはあなた方が手放しても地価問題に対する解決には何ら役立たない。二階から目薬ほどの効果もないだろうと思うのです。先ほど強調されたもっと重大な意義とのバランスを考えた場合、そんなところに何であなた方が譲る必要があるのか。しかも、将来その土地が厚生行政を充実発展させるために必要になった場合、役所がやることでよくあることだが、一方で安く土地払い下げておいて、今度土地がほしくなったといって、今度は高い金を出して買い取る。ごね得されて困りましたというようなことでぼやいている例が幾らもあるでしょう。そういうばかなことをしないために——先ほどあなたは、将来に対する潜在能力といういいことばを使った。そのすばらしい能力を何でみずから放棄するかということを十分考えていただきたいと思うのです。答弁はいいです。  そこで、主計局次長に伺うのですけれども、厚生当局がこんな考えを持つのも、主計局のほうでめんどう見が悪いからじゃないのか。こういう二百も三百もあるというなら、一気に療養所設備が改善されるということで、これは一つの大きい問題だと思う。十八億ぐらいの金のことで……。   〔渡辺(美)委員長代理退席、委員長着席〕 ここでは医務局長は今回の法改正の主眼をとうとうと述べられたけれども、気楽に会館に説明に来たときには、はっきり言って土地を売ると金が借りられるということでした。そろばんずくなのです。これはそろばんが足らぬということなのです。そろばんはどこにいっているか。厚生省のあなたのほうにいっているそろばんの握り方が、国民に背中を向けるようになっていないか。この問題について考えはありますか。
  17. 船後正道

    ○船後政府委員 予算のワクは全体として大きくなっておりますけれども、その中でいろいろな財政需要にどういうふうに経費を配分していくか、非常にむずかしい問題でございます。療養所整備につきましても、従来一般会計等におきましてもでき得る限りの配慮をしてまいったのでございますが、やはりこの急速な整備を促進するということになりますれば、でき得る限り財源のワクは大きいほうがいい、こういうようなことから、四十三年度から特会に移行し、借り入れ金なり、土地売り払い代金なり、こういった特定財源を導入して、一般会計繰り入れに加えまして施設整備費のワクを従来の倍程度にふやすということにいたしたわけでございます。今後も、もちろん一般会計繰り入れの財源につきましても十分な配慮をしてまいりたいと思いますけれども、やはり療養所のほかにもいろいろな施設整備の問題があるわけでございまして、私どもといたしましては、そういったもろもろの財政需要のバランスを見ながら、療養所というのは非常に重要な問題でありますから特に重点を置いてまいりたいと思いますが、こういう方針予算を編成してまいりたい、かように考えております。
  18. 中嶋英夫

    中嶋委員 財源問題等については他の委員の方からもそれぞれ掘り下げがあると思う。ただ、私がきょうここではっきりしておきたいのは、先ほど来提起した一つの例ですが、軍国主義の盛んなころに、軍がおって、軍の圧迫があったからでしょうが、市役所からも役場からもしょっちゅう来た。しまいには憲兵が来た。値段は三円——六円。しょうがないと思ったが、払いは国債だ。国債はすぐほごになった。建物疎開は当時幾らか費用は出ておる。農地補償の場合も出ておる。再補償もしておる。こういう犠牲があるということを考えた場合に、土地処分等についてはあだやおろそかには考えられない。農民の血と涙がこもっている土地であるということを認識してもらいたい。単に広い土地だ、松の木がはえているという認識では間違いだということだけははっきりしておきたい。  同時に、政務次官、主計局の関係の方も聞いてもらいたいのですけれども、私は何も農民払い下げよというのではない。どうしても手放すならばまず農民ということはいえるけれども、あいているそうだから農民に返してくれといって払い下げ運動をするのではない。国有地の払い下げを要求しているのではないが、他の農地再補償が行なわれた現時点にかんがみて、こういう悲惨な例に対して、これはもうやむを得ないものだとして今後永久に放任し放棄していい問題なのか、何か考えておかなければならぬ問題なのか、どちらなのかということだけは伺っておきたいと思う。
  19. 倉成正

    ○倉成政府委員 先ほどから土地払い下げ問題について中嶋委員からお話がございました。私は、中嶋委員の御主張は、おそらく財源を求めるためにただ安易に土地を売ることはやめたがよろしい、かりに土地処分するにしても、もっとしっかりした考え方に基づいてやるべきだという御趣旨だと承りましたが、まことにごもっともだとこれから思います。われわれもそういう方針でやってまいりたいと思います。  なお、この土地を取得するについては、地域でいろいろ事情が違うと思いますけれども、御指摘のような先祖伝来の農民土地を強制的に取り上げた、それも二束三文で取り上げたというような事態があるところも、あるいは若干あると思います。そういうのをどうするかという問題になってまいりますと、現在の時点で、その農民の犠牲に対して具体的にどう対処するかということはいま具体案は持ち合わせておりません。しかし、療養所土地のみならず、全国的にいろいろこういった問題があろうかと思いますので、負担公平の原則というか、何らかいい方法があるかどうかということは、これからもわれわれは勉強してまいりたいと思っております。
  20. 中嶋英夫

    中嶋委員 その点はいまお答えがありましたけれども、政務次官が巧妙で、土地は手放しちゃいかぬ、私はこう言っておるわけです。あなたは、かりに手放すにしても、よほどしっかりしたことをと、余分なことをつける。私が何か速記録を見ると、手放したほうが条件がいいということになってくる。私はそんなことを言ったのではないのですよ。こっちが言わぬことを言ったようなことにして、かってにそんな誘導答弁——誘導尋問ということは聞いたことがあるが、誘導答弁というのはない。おかしいですよ。  そこで、時間も来たようでありますから、最後に主計局に伺っておきたいのですが、厚生省医務局長という国民の健康を第一番に考える人が、国民の健康からいって、明らかに土地は広いほうがいい、ああいう空閑地があったほうがいい、都市の過密化の際にあったほうがいい、こう考えておられるのは明白ですね。それから同時に、近代病と申しますか、近代化されるとだんだん新しい病気が出てくるのです。そういうものに対応した潜在的な能力は非常に貴重であるということをここで言われておる。これは私は同感なんです。これだけわかっておりながら、なお当面十八億という財源を捻出しなければならぬと思う心根が哀れだと思うのですよ、私は。主計局次長、その辺のところをどうお考えになっておるか。今後、きょうあすの問題ではないけれども、少なくともこういう予算については、単に病人はなおしてやるんだ、費用の負担がかかれば患者負担を増すか、療養所が持っておるものを売ったらどうか、という考え方を持たせないだけの——私は放漫財政を組めと言うわけじゃないのですよ。そういうみじめったらしいお考えをお持ちでなくやっていけるかどうかということ、この点を伺っておきたいと思います。
  21. 船後正道

    ○船後政府委員 先生の仰せのとおりでございまして、療養所国民の健康を守り、特に結核その他長期の慢性疾患を担当する、こういう使命を持っているわけでございますから、この療養所の使命を達成するという範囲内において土地処分の問題を考えていかなければならぬ。療養所の円滑な運営を阻害する処分、こういうことは私ども考えておりません。まあ今後の医療需要がどうなるか、非常に見通しもむずかしい問題とは思いますけれども、やはりわれわれ土地処分にあたりましては、ただ単に財源を捻出するということではなしに、今後のいろいろな、療養所の経営ということも頭に置きまして、それが本来円滑にい、ように、必要なる面積は確保する、そしてなおかつ生まれます余剰土地は、これはやはり国民経済的なる観点から土地の有効利用をはかっていくということでまいりたいと思います。
  22. 中嶋英夫

    中嶋委員 それでは、私の質問はこれで終わりますが、これからあと、他の委員諸君から問題の掘り下げがあり、あるいは追及も行なわれるだろうと思います。単なる議論のやりとりではなくて、国民の健康を維持し向上せしめる、そういう観点に立って、前向きに進められることを期待し、当面国立療養所の特別会計についての多くの疑問点が関係者の中にも出ておる、そういう問題にこたえるものでなければならないと思うのです。私はこれには反対ですけれども、十分その趣旨がわかるならば、政府も行きがかりにこだわらないで、−いろいろな法案で国会で通らぬ法案が幾らでもあるわけですよ。ひどいのになると、四回も五回も国会に提出して流れてしまったというようなものもある。それが四年たち、五年たっても、大きな矛盾が起きたり、国民に大きな被害が起きたという例はないのですよ。やはり四回も五回も通らぬというのは、結果的に三年たってみても通らぬ何かがあった。むしろ通らぬでよかったということが関係者の中にもつぶやかれておる事例は、いままで幾らもあるのです。そういうことから、こだわりない審議が続けられることを委員長にも同様にお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  23. 田村元

    田村委員長 武藤山治君。
  24. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 あとわが党委員から詳細にわたって質問がありますから、すべてを網羅して聞きただすことを差し控えて、何点かにわたって大蔵省、さらに厚生省、自治省等の見解をただしたいと思います。  最初に、現在全国で登録をされておる結核患者数はどのくらいおるのか。しかもその中で入院治療を必要とする要医療数というのはどのくらいおるのか。まずその数字を明らかにしていただきたいと思います。
  25. 若松栄一

    若松政府委員 現在保健所において登録されております活動性の結核、これは完全に治癒していないという結核が八十八万六千ございます。この中で入院しております者は十九万、在宅医療をしております者が五十四万という状況でございます。
  26. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 八十八万六千の患者のうち、入院しておるのが十九万、在宅療養というのがとにかく五十四万もおる。こういう姿は望ましい姿なのか、それとも在宅というのはずっと減って、本来ならば入院すべき者がもっとウエートが高くなるべきなのか。その辺をどう判断されておりますか。
  27. 若松栄一

    若松政府委員 入院と在宅医療の関係は、もちろん一般的に申しまして、入院医療のほうがベターであるということは申し上げるまでもございませんが、近年におきます結核治療薬の進展に伴いまして、在宅医療というものが大幅に容認される状況になっております。そういう意味で、逆にある意味では、いたずらに入院し社会生活から離れるよりは、服薬しながら社会生活を続けることが至当であるというような患者さえ相当多数出てきております。しかし、現在なお実態調査等で、医師の判断で入院治療が好ましいという判断をされる者が相当多いにかかわらず、必ずしも十分に入っていないということは事実でございまして、三十八年の実態調査で推計いたしましたところでは、約四十八万ぐらいあるといわれておりますが、これはサンプル調査からの推計でございまして、また現実を見ますと、要入院であっても現実には働いておるという患者相当ございます。そういう意味で総体といたしましては、まだ入院を適当とするけれども入院していない患者相当数あるということは事実でございます。
  28. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 要入院患者相当数あるのは事実だ。その人たちはなぜ入院できないのか。いろいろ原因はあると思うのです。一つは、生活が貧困のために入院をすれば一家の生計が成り立たない、無理をして就労しているという事実もあるでしょう。第二には、入院するだけの経費がとても支弁できない。だからがまんをする。生計まではささえないが入院治療費までも負担できない、こういう患者もおるでしょう。そういう数々の社会保障的なあたたかい手を差し伸べなければ完全治療ができないという人たちが、まだ日本には山積している。あなたたちの推計した数字でも、昭和三十八年には要入院が四十六万、空洞のある者が二十八万、こういう数字が出ておる。したがって、私は何かが足りないと思うのであります。厚生省の指導なり国立療養所のあり方なりに何か足りないのもがあるのではないか。そのためにもつと入院すべき患者が入院しないというものがある。その何か足りないという何かにあなたはお気づきになっておりますか。いまの国立療養所のあり方なり内容なり、いろいろな面から見て何か足りないものを私は感ずるのでありますが、率直にいって、いまの国立療養所で何か足りないとあなたはお感じになっておりますか。
  29. 若松栄一

    若松政府委員 最近におきましては、医療保障が相当に充実いたしまして、皆保険が達成され、あるいは結核の命令入所制度が大幅に拡充されるというような点で、医療費それ自体にはかなりの改善が見られておりますけれども、家計の責任者である方々が入院されるというような場合に、家計に対する影響ということは非常に大きゅうございますので、そういう意味結核対策の中で医療保障はやや完備しましたけれども、所得保障の面がまだきわめて不完全であるという点が、結核対策面における一番大きな欠陥であろうと思います。
  30. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それは相手側の問題についての主要な欠陥であろうが、国立療養所自体の欠陥がある。ありますね。それはあなた自身の責任じゃありませんよ。だから、率直に客観的にものを言っていいと思うのであります。  私は第一に、療養所に医者が足りない。足りないばかりではない、いい医者がいない、技術がへぼである、入院してもなおらない。そういうことになれば、患者国立療養所へ行きません。もっと設備が完備した、しかもいい医者のいる、機械化されたそういうところへ行かぬと命をとられちゃうかもしれぬという不安感から、国立療養所患者は行かぬ、こういう問題になると思うのです。そういう点から、医者はどうですか。いまの療養所の状態でどの程度充足をされているのか。また厚生省として、この程度ではいかぬ、これはこのくらいの期間においてこう充足をしたい、そういう計画なり目鼻なり努力なりは一体なされているのかどうか。まず医者の問題から聞きましょう。看護婦や職員はそのあと。まず私は医者に大きな欠陥があるために療養所は今日あきベッドがたくさんできていると思うのでありますが、どうですか、局長の御見解は。
  31. 若松栄一

    若松政府委員 国立療養所における医者不足は、御指摘のとおり相当重大な問題でごございます。三月末現在で国立養療所における医師の充足率は約九一%でございます。一割近くが欠員になっているという状況でございます。この欠員の状況は、現在医師は全般に不足しておりますために、一般医療機関でも医師の獲得はきわめて困難でございまして、一般の急性疾患病院においても十分な医師は獲得できないものが大多数でございます。国立療養所におきましては、やはり結核という病気がある意味では将来少なくなっていく病気であるということのために、医者が興味を持たないという点もございますが、同時に現在のような国立療養所施設設備におきましては医者が逃げてしまうという逆の悪循環が起こりますので、そういう意味でも、真に医師が将来を楽しみで働けるというようなことにするためにも、施設設備を充実するとともに医療の内容をさらに拡大をしていくということが、同時にまた、医師の獲得にもつながってくるものと考えております。
  32. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 局長、いまのベッド数、実数であきベッドは何ぼあるか、パーセンテージにして何%あきベッドになっていますか。——そんなのすぐわかるよ。おれのところにあるあなたのほうから出した資料にもちゃんとある。
  33. 若松栄一

    若松政府委員 実は、まごまごいたしましたのは、私ども療養所におきましては、建物それ自体としては六万床分の古い建物がございます。実際にこれを活用する人的、物的の設備が伴うものが約五万一千床でございますが、それに対して現在七六%ぐらいの充足率でございます。したがって、二割ちょっとの空床があるわけでございますので、一万数千床の空床があるということになります。
  34. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 一万三千床の空床があるわけですね。一万三千もあいているということは、結核患者がいないんじゃないんですね。冒頭のお話のように、結核患者はまだまだ一ぱいおる。入院を必要とする者が四十八万もおるという数字が出ているんですからね。空洞のある者だけで二十八万もおるというのですから、私らしろうとから見ると、一万三千のベッドがあくこと自体がふしぎなんですよ。安くて技術がよくてなおる病院なら満ぱいになりますよ。だから、いまの療養所自体に結核に対する治療の熱意というものが希薄になっている。あなたはいま、それは医者がもう結核というものに対する興味がなくなってきたから、結核のほうを担当する医者があまり出てこない、あるいは療養所へ行こうという人も出てこない。それよりも中高年層の高血圧症やあるいは成人病や、そういうほうがもうかるから、そういうほうへ医者がみな行ってしまう。だからなかなか医者を充足できないし、それが結局はあきベッドになってあらわれてきている。私はそう見たいのであります。  そこで、そういういまの実情というものを解消するために、特会制になるならばそういう状況というものは変わるのだ、特会制になればあきベッドもなくなってくるだろうし、あるいはもっと充足されるだろうし、医者もこんなに不足しているのを何とかいまよりは前進できるのだというメリットは何かあるのですか、特会制にした場合は。どうですか。
  35. 若松栄一

    若松政府委員 ただいまも申し上げましたように、現在の若い医師は、結核医療というものにはかなり興味を失っておることは確かでございますが、そういう意味で、昔は結核医療を一生の仕事というふうに思い込んで結核に入ってきた医者がずいぶんあったのでございますが、そういう傾向がだんだん薄れてきている。そういう意味でも、やはり医師が喜んで働けるような、また興味を持てるような、熱意を持てるような医療機関の体制にしていくということが、これは結核医療そのものをささえるためにもぜひ必要である。そういう意味で、ピーク時には六万ありました結核が、おそらく十年後には二万程度になるという見通しがついております。  それにしても、なお結核医療は国の相当な部分を占める重要な医療でございますので、それをささえていくためにも、現在の医療施設の内容を整備し、かつ医療の幅も広げ、医療自体に対する医師の関心、興味も持たせるというような方向で、ある意味では多角的なやり方をしていきませんと、将来の結核医療確保できないという意味で、今度の特別会計移行がその転機を促進するためにきわめて有効であるというふうに考えております。
  36. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 まあ、そういう効果があるかどうか非常に疑問でありますが、それは後刻論争することにして、いま事実関係をまずきちっと把握をしてから論争はいたしたいと思います。  政府が四十三年度に予定している命令入所患者、この命令入所患者数をどのくらいに押えて、金額はどのくらい見ておるか。これはどうですか。
  37. 村中俊明

    ○村中政府委員 ただいまの命令入所患者の四十三年度予算についての武藤先生の御質問でございますが、第一点の人数につきましては、九万一千名という積算をしております。医療費は総額で約三百五十億円程度でございます。
  38. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 九万一千人で三百五十億円ですね、予算がちゃんとしてあるのは。そのうち、今度いろいろ負担がふえる。基準看護、あるいは基準寝具、あるいは基準給食、この三つの各料金の加算による増額が行なわれるわけですね。その行なわれる部分というものは全額国のほうで予算化しておるのですか。陳情によると、この分は地方自治体にかなり転嫁される。交付税の中にも十分見積もってない。地方交付税の中には一億四千万程度しか入っておらぬ、こういう指摘がありますが、まるまるこういう加算の料金の引き上げについては国のほうで見ておるのですか。見ておるとしたら、その内容を前年度予算と比較して本年度ふえた分のこれとこれとこれだけがその部分であるということを、具体的に説明願いたい。
  39. 村中俊明

    ○村中政府委員 ただいまの四十三年度でいろいろな医療費の伸びる要素を見込んで予算化しておるということについてのお尋ねでございます。この点は全般的な医療費の伸びという考え方で、約八%弱の伸び率を見ております。
  40. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 その八%の伸び率は、物価水準が上昇したとか、あるいは命令入所患者の数をふやしたとか、そういうものにマッチする引き上げ分であって、看護婦の基準看護、あるいは基準寝具、基準給食、この三つの各料金の引き上げ分というものは、実数をきちっと積算をして予算措置をしているのかどうかというのが私の質問なんです。その点はどうですか。   〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席
  41. 船後正道

    ○船後政府委員 結核予防法の系統の経費は、これは必ずしも国立療養所に入る患者だけではございません、民間のほうに入る患者も含んでおります。その結核予防法のほうでやはり二割引き廃止、基準加算ということでもって単価がふえるわけでございますので、四十三年度におきましては総額六億九千四百万、これを特に二割引き及び基準関係ということで加算して計上いたしております。
  42. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 主計局次長、二割引きを廃止される予定人員、それはどのくらいを一応積算して六億九千四百万というのが出てきたんですか。
  43. 船後正道

    ○船後政府委員 療養所におきます患者のそれぞれ経費の負担区分があるわけでございます。この負担区分に基づきまして、今回の措置では、自己負担を伴う患者、これにつきましては二割引きも継続する、基準加算も行なわないということにいたしておりますので、その部分を除きまして、従来の実績により、結核予防法で措置を受けておりました患者、この数を出しまして、それによって積算したわけでございます。
  44. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 だから、新規に入る人は何人くらい見込んでおるか。
  45. 船後正道

    ○船後政府委員 結核関係は、入院では七千五百八十七名、外来では二千二百十人でございます。
  46. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 厚生省、年間に新たに国立療養所へ入所するであろうと思われる人たちは七千五百八十七名、これは厚生省の大体いままでの実数に基づいて積算をした数字ですか。過去何カ年間の平均を出したのですか、こういう数字は。
  47. 若松栄一

    若松政府委員 四十一年の実績でございます。
  48. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうするとあきベッドが一万三千もありながら医務局としてはこのあきベッドを埋めていこうという前向きの姿勢というものはなはいのですな。もっと収容して、一万人なりあるい一万二千人を、とにかく要注意の者はみな入れていこう、そういう前向きの姿勢がなくて、職員の定数だけ何とか確保できればよろしいから、重症心身障害児に、あるいは高血圧症に、長期療養患者用に、そういう方向に転換していく、結核のほうにはもう四十一年ベースぐらいでそう新規のものはふえないのだ、そういう感覚ですな。
  49. 若松栄一

    若松政府委員 私ども国立療養所があいてくることはきわめて寒心にたえないところでございまして、できるだけ国立療養所本来の使命として、国立療養所のベッドは決してその総数が結核ベッドではございませんので、国がたくさん引き受ければ引き受けるほどいいという立場をとっております。したがって、現場におきましては保健所等とも連絡をとって、できるだけ患者を入れるようにということをやっておるわけでございまして、それにもかかわらず年々最近数年間は千五百ないし二千名入院患者が一年間で減少していくというのが実情でございます。
  50. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 なぜ減っていくかという論争をするにはいろんなデータが必要ですから、ここでは時間がありませんから省きますが、主計局次長、なぜ新規の患者から二割引き制度というのを廃止するのですか。これは大蔵省考えですか。それとも、新しく入る患者からは二割引き制をやめたいという厚生省の申し出ですか。大蔵省の決断ですか。こういうことはどちらがきめたのですか。
  51. 船後正道

    ○船後政府委員 厚生省大蔵省と相談いたしましてきめた措置でございます。  なぜこれを廃止することにいたしましたかという問題でございますが、御承知のとおり結核療養所を軍から引き継ぎました当時におきましては、一般的な公費医療制度もまだ完備いたしておりません。生活保護の体系もはっきりしておりませんし、いわんや結核予防法もまだない時代でございます。また、健康保険法もまだ未発達の段階でございます。そういう段階でこの結核対策を推進するために、特にこの国の機関がみずからこういった公費医療制度の不備を補完するという役目をになってきたわけでございますが、現在におきましては医療保障制度も完備しておるわけでございまして、国立療養所だけがこの割り引き制度を存続するという意味は現在ではほとんどなくなってきております。したがいまして、この特会移行を機といたしましてやはり医療収支を明確にするという観点からこういった措置をとることにしたわけでございます。
  52. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうなると、主計局、特会制というのは独立採算制はとらないが採算制ということをかなり導入をするのだ、こういう患者の不安というのはあなたのいまの答弁からいくと当たっておりますね。国立療養所というからこそ、いままでとにかく基準料金は一切徴収しない、差額ベッドもない、あるいは経費減免制度というものがフルに活用された、二割引きという制度も続いてきた。これは国が国家的見地から結核というものを撲滅しよう、そういう高い大きな次元からの配慮で今日まで国立療養所は運営されてきたわけであります。それをさいふの都合だけで採算制をとろうという考え方で二割引きというものを廃止するという考え方は、やはり独立採算制の精神というものをこういう会計にまで入れようとする、これは間違った道じゃありませんか。やはり大蔵省考え方からこの二割引き制度を廃止するという見解が出たのでしょう。しかも、国全体から見ればわずか六億じゃありませんか。しかし、負担する患者側から見たらたいへんな負担ですよ。二割が取られるか取られないかという問題は、重大な問題です。主計局は、こんな重箱のすみをようじでつつくような財源の捻出は考えるべきじゃないと私は思うのですが、主計局、いまからでも大臣と相談をして、この二割引きの制度だけは存置しよう、そういう決断を大蔵省はすべきだと思いますが、あなたの見解はどうですか。
  53. 船後正道

    ○船後政府委員 今後とも結核対策は大いに推進しなければならないわけでございまして、これの経費負担面におきましては、やはり結核予防法の体系でもって対処するのが筋道である、かように考えております。  結核予防法の体系におきましては、御承知のとおり全額公費負担でございまして、患者の一部負担は高額所得者につきましてあるわけでございますが、全額公費負担でございます。こういう制度が完備しておるわけでございますので、特に国立療養所だけが二割引きをやってきたというのは沿革的な理由によるものでございますので、この際これを廃止いたしましても、その経費の問題は、結局公費相互間の調整にすぎないわけでございます。  なお、現在の医療保険制度のもとにおきましては、患者の自己負担がある。たとえば国民健康保険では三割、健保の家族では五割というように家族の負担があるわけでございますので、こういった面につきましては、やはり二割引き制度の廃止が直接に患者負担につながるという面がございますので、今回の措置におきましては、こういった自己負担を伴う患者につきましては引き続き割引制度を継続する。かつまた、基準を実施いたしましても、基準料金を取らないという措置をとった次第でございます。
  54. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 ちょっと私認識不足だったけれども、そうすると社会保険、国民健康保険、これの家族、こういう者の場合には二割引き制度というのは全然働かないわけですか。従来どおりですか。
  55. 船後正道

    ○船後政府委員 そのとおりでございます。患者がみずから自己負担をするという面につきましては、従来どおりでございます。
  56. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、その二割引きが廃止されて実際に負担しなければならぬ人、どの保険にも入ってない人、たとえばわれわれ国会議員みたいな者です。国民健康保険にも入っておらない、社会保険にも何も入っておらない、そういう人だけが七千五百八十七名入所するだろうという見込みですか。保険には一切入ってない人ですか。
  57. 船後正道

    ○船後政府委員 現在、日本医療保険のたてまえでは、健康保険に入らないという方はないわけでございます。皆保険でございますのですべてが健康保険に入っておられるという状況でございます。  そこで、この二割引きが依然継続される方々は、先ほど申しましたように保険の給付が十割給付でないという方——健康保険の本人でございますと十割給付でございます。家族が五割給付こういった方、あるいはその他何らかの事情でもって、外国人でございますとか、健康保険の適用を受けないといった場合にあるわけでございます。
  58. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 家族も二割引きはなくなるのだな。
  59. 船後正道

    ○船後政府委員 健康保険の家族は五割が自己負担でございますので、こういう方につきましては引き続き二割引きを継続いたします。国民健康保険は本人も家族も七割給付でございまして、三割部分が自己負担でございますので、これは自己負担を伴う患者といたしまして引き続き二割引きを継続いたします。
  60. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうしてみると、二割引きの恩典を受けない階層はほんのわずかである。外国人というのははっきりわかったのですが、具体的にはどういうことなんですか。
  61. 船後正道

    ○船後政府委員 そうではないのでございまして、患者のほうの立場に立ちますと、二割引きを廃止される方が大部分でございます。国民健康保険の本人、家族、それから各種健康保険の家族、これが自己負担を伴いますので二割引きが継続される。それ以外の方々、すなわち健康保険の本人、それから生活保護を受けている方、結核予防法によって公費負担をされている方、こういう方方につきましてはすべて二割引き措置を廃止いたします。二割引き措置を廃止いたしますけれども患者負担は全く増加いたしません。
  62. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 保険相互間でそれは差し引き勘定にするわけですな。そうしてみると実害というものはそうはない、こういう判断をしていいですね。
  63. 船後正道

    ○船後政府委員 患者のポケットから出る金という点につきましては全く変更はございません。
  64. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それは新規の場合はいまの説明と違うわけですね。これから入る人もいまと同じ基準で措置をする、こういうことですか。
  65. 船後正道

    ○船後政府委員 もう少し詳しく申し上げますと、新規の患者につきましてこのような措置をとるわけでございます。それから現在入所をしている患者につきましては、これは経過的措置といたしましてすべて二割引きを継続いたします。
  66. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうしてみると、二割引きを廃止しても、患者自身がふところから出す部分というものは、これはそう多くの人には該当しない、大部分保険会計同士の支出になるんだ、こういう理解でいいわけですね。わかりました。  それから国有地をこれから払い下げをするという予算予算書に盛ってあるわけでございますが、国庫債務負担行為の継続予算として療養所整備費三十億、それから繰越明許、ともに予算書に計上されておるわけでありますが、この国有地の払い下げというのは、一体どこを払い下げしようという、まず当初考えている場所ですね。十八億円見込んでいるわけでしょう。それは一体どこの療養所処分しようというのですか。
  67. 若松栄一

    若松政府委員 ただいまほとんど確定的に予想しておりますのは松戸、それから武蔵療養所、中野療養所、その他いまなお検討中のものが若干ございます。
  68. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 医務局長、いま療養所が持っている空地ですね。全国の療養所の空地の坪数というのは、総坪数どのくらいあるんですか。
  69. 若松栄一

    若松政府委員 国立療養所土地の面積は現在一千七百八十一万一千平方メートル、その建物の延べ面積が百九十三万二千平方メートルでございますが、これは延べ面積でございますので、一部二階建てあるいはすでに高層化したものもございますので、この差だけが全部空地というわけにはまいりませんで、この差以上のものが現実の空地ということになろうかと思います。
  70. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 その空地のうち、処分可能と思われる面積というのはどのくらいあるのですか。
  71. 若松栄一

    若松政府委員 現在、私ども処分可能と考えておりますものは大体百八十万ないし二百万平方メートルということに考えております。
  72. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 もしこの百八十万平方メートルを全部処分したとしたら、大ざっぱでいいですが、総額どのくらいの金額になりそうですが。
  73. 若松栄一

    若松政府委員 個々の土地の評価をしておりませんので正確ではございませんが、およそ四十五億から五十億程度であろうと考えております。
  74. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、あなたたちの発行した「国立療養所の特別会計」というこのパンフレットを見ると、この国有財産処分ができて、それが大蔵省に取られないでこちらで使えるのが非常な利点だ、そういう意味のことが書かれておるわけですが、この国有財産処分する場合に、大蔵省のいままでの指導は、学校とか病院とかあるいは公営の住宅とか、そういう公共用のものに国有財産というのは払い下げを優先的にする、こういう基準を一応定めて大蔵省国有財産局は指導してきた。今度の療養所の場合も同じそういう国家的な見地から払い下げ先というものは検討し、優先していく、こういう理解でよろしいのですか。
  75. 若松栄一

    若松政府委員 そのとおりでございます。
  76. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 これから国の医療機関というものはますます整備拡大をしなければならぬ傾向になると思うのであります。それは結核ばかりでなくて、重症心身障害者あるいは長期療養を必要とする高血圧症、いろいろなそういう人たちの収容の施設というものはふやさなければならぬ傾向にあると思います。そういうときに、いま財政が硬直だから、いま大蔵省が苦しいからという理由でこういう周辺のあき地を売り払ってしまうということは、私は長期的な視野に立った場合に好ましくない、こう思うのであります。そういう点、大蔵省並びに厚生省は、いまの急場をしのぐ場合にはやむを得ないんだ、もう財産処分して施設をする以外に国の財政的な支援はできないんだ、こういう考え方なんですか。そこらを厚生省大蔵省両方の見解を発表してください。
  77. 若松栄一

    若松政府委員 先ほども中嶋先生にお答え申し上げましたように、私ども自身としてはこの土地を非常に貴重なものと考えておりますので、できるだけこの土地を温存し、将来の発展のために備えたいと考えております。ただ、同時にまた、現在この老朽した施設を急速に整備するということもこれまた焦眉の問題でございますので、それらをかね合いをとりまして、さしあたり一割程度土地をこの対象にしたいというふうに考えておるわけでございます。
  78. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 一割程度というと、先ほど四十五億、金額で一割にはならぬでしょうけれども、四十五億。ところがもう四十三年度と四十四年度で売ろうというのが十八億ですか。そうすると一割程度じゃないでしょう、局長、それは。
  79. 若松栄一

    若松政府委員 一割といいますのは、私どもの持っております土地の一割という意味でございます。
  80. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 土地の一割だけれども、確かに九州や北海道や東北のへんぴなところの療養所が広大な面積を持っておる。だから地価は安いんだ。したがって、一割処分するといっても金額ではあるいは一%か二%にしか匹敵しないでしょう。いまの大体大ざっぱに見て四十五億ぐらい価額にしてあるというのでしょう。それを四十三年度と四十四年度の二カ年ぐらいの間に十八億円を処分しようという予算が出ておるわけですよ。そうしてみると、四十五億の総価額のうち十八億を二年間で処分をするのに全面積の一割程度しか売り払う気持ちがないというのは、どうも数字の上で食い違いがあり過ぎるんじゃないかと言うのですよ、私の言うのは。国会でその場だけ言いのがれの答弁をされては困るという気持ちからいまの質問をもう一回確認しておるわけですよ。ほんとうに一割ぐらいですか。土地処分するのは。
  81. 若松栄一

    若松政府委員 土地の面積については一割程度、そしてその単価は、いま申し上げましたように、すべてが確定的になっておりませんので一々具体的な単価を出すわけにはまいりませんので、およその平均単価ということで平方メートル当たり二千五百円というような単価で計算しております。現実にはお話しのように東北の山地のほうもたくさんございますし、都会地もございますので、結果においては一割になりますか、あるいはそれより少なくなるか。いなかのほうは土地は安くて広いものですから、現実には一割より少なくなるかもしれません。
  82. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 時間が刻々進むから飛び飛びになりますが、今度の予算では国立病院特別会計療養所勘定の中で基金を四百六億三千七百万円まず定めたわけですね。この四百六億三千七百万円の基金の中身は何ですか。土地と何と何を含んでおるのですか。
  83. 小田村四郎

    ○小田村説明員 基金と申しますのは法律の第三条に定めてあるものでございますが、療養所の資産を一般会計から特別会計に引き継ぐことにいたしておりますので、その引き継ぐ額の総額を一応基金というふうに定めておるわけでございます。内容は予算書に出ておりますけれども、当初の基金の額といたしまして一応四百六億円程度が予定されております。内訳といたしましては、流動資産が十八億六千二百万円、それから固定資産が三百八十七億七千五百万円。その固定資産の内訳は、土地が百十二億三千一百万円、それから建物百六十四億四千五百万円、工作物六十九億一千六百万円、医療用器械器具が二十三億三千五百万円、こういうふうなものがおもなものでございます。
  84. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、予算書二七七ページにある貸借対照表によると、いまのあなたのおっしゃる金額と全然合わないわけですね。たとえば流動資産においても予算書では十九億、土地においても予算書は百八億。あなたはいま土地を百十二億と言ったね。そうすると一般会計で出した金で買ったものと、そうでない金で買ったものというものを区別して、そうして四百六億三千万円を基金とするという定め方をしたのですか。この貸借対照表の中の数字でぴしっと追ついかないね。
  85. 小田村四郎

    ○小田村説明員 予算書の二七七ページに計上しておりますのは期末の予定貸借対照表でございまして、四十三年度末、つまり来年の三月三十一日の予定額でございます。したがいまして、ただいま私が申し上げましたのは、この特別会計法施行に際して一般会計から引き継ぐ資産の内容でございますので、これが一年間の予算を執行した結果この予算書に出ておるような数字になるであろうという見込みを書きましたのがこの予算書の数字でございます。
  86. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大蔵省、おかしいですよ。そうなると土地はどこから四億買うのですか。どこを予定しているのですか。全国でどこか土地を買わなければそういう数字にならないですよ。予算書は土地の評価は百八億三千六百万円でしょう。あなたは、基金の中に含まれる土地代金百十二億と言ったんですよ。四億差がある。ということは、この一年間に、年度末までに四億円療養所土地をどこか買うということでしょう。資産がふえるわけですから。どこを買うのですか。片方では土地をどんどん売って収入しようというのに、今度土地を買うというのはどういうことなんですか。
  87. 小田村四郎

    ○小田村説明員 土地は、四十三年度の期首が百十二億見込まれておりまして、四十三年度末百八億と予想されますので、結局差額の四億円は売り払い割れということで、これが収入見込みと異なりますのは、この額は台帳価額で計上しておりますので、したがって、実際の売り払い見込み額とはまた異なる額でございます。
  88. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、大蔵省はこの一年間に四億円土地がまあ売れる、こういう見通しなわけですな、大蔵省の一応の見通しは。じゃないと、この貸借対照表はまことにずさんなものです。数字をおっつけた印象を受けますよ。そうでしょう。期首が百十二億で期末が百八億三千万円になるんだ。差額の四億というのが一年間に処分する土地だ、こういうことになりますね。どこを処分するんですか。その四億はどこが売れそうなんだ。
  89. 小田村四郎

    ○小田村説明員 場所につきましては、後ほど御答弁申し上げますが、四億円は、先ほど申し上げましたとおり、台帳価額としての四億円でございます。
  90. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 台帳価額にしたって、あなたの説明は四十三年度の期首が百十二億、期末が百八億三千六百万円になるというのでしょう。四億円下がるでしょう。土地だけでも四億円下がる。その差は、どこかの土地は四億円売れるという予想なんでしょう。そうでしょう。
  91. 小田村四郎

    ○小田村説明員 この基金あるいは貸借対照表に計上してあります土地の価額は、国有財産の台帳価額で計上してあるわけでございます。ですから、台帳価額にして四億円の土地を売り払う見込みでございますけれども、それが歳入といたしまして幾らに売れるかということは、これは台帳価額そのままではございません。
  92. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 だから、そんなことは聞いていないんだよ。この差額はどういうところを大蔵省は積算しておるのか。厚生省と同じようなら、厚生省局長が答えたのと同じ場所だと答えればいい。
  93. 小田村四郎

    ○小田村説明員 厚生省が先ほどお答え申し上げたのと同様でございます。
  94. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いろいろ患者やあるいは国立療養所に勤務している人たちからの不安がたくさんございます。そこで、そういう不安が解消されるようなことをわれわれは政府に要求をしなければならない。そういう数々の問題点についてきょうはたださなければならぬと思ったのでありますが、十二時半までという時間のつごうがありますので、こまかい点はあとから質問される委員に指摘をしていただきたいと思いますが、基準看護、基準寝具、基準給食、この三つの加算で増額される金額ですね、月にして、あるいは日に直してどういうことになりますか。従来と、四十二年度と比較してどのくらいそれが今度は引き上げられるのですか。
  95. 若松栄一

    若松政府委員 基準加算を実施することによりまして、増収を見込んでおります額は七億三千四百万円程度でございまして、これを実際の一日一人の患者について見ますと、基準加算の看護が百四十円、給食が百四円、寝具五十円、計二百九十四円というのが加算による一人一日の増加額でございます。
  96. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 一人一日増加額が二百九十四円、一カ月にすると約九千円ですね。これは全然患者には転嫁されないのですか。全く患者には転嫁されないのですか、どうですか。
  97. 若松栄一

    若松政府委員 先ほど大蔵省からのお答えがありましたように、この加算が影響するような自己負担のある患者については、全くこれをやらない。したがって、自己負担のない患者についてはこれを適用いたします。したがって、保険者あるいは公費に対してはこれがかぶってきます。しかし、本人の支払い額については影響ないというふうに取り扱っていきます。
  98. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そういう取り扱いが事実上できるかどうかと疑問が持たれるのは、寝具の点ですね。寝具の洗たくなどこれから一日五十円上がるわけですね。それを今度は下請に出して洗たく屋に出す。そういう合理化をはかろうという計画があるやに聞いておるのですよ。そういう場合にそういう患者のものをきちっと整理をし区別をして、負担になるようなことは絶対にないんだ、こういうことは約束できますか。
  99. 若松栄一

    若松政府委員 基準寝具は昭和四十二年に約三分の一実施、来年三分の二実施して完全にやるつもりでありますが、これはいま申し上げましたように、自己負担患者負担には全くはね返らないという方針でやっております。
  100. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 この寝具を下請に出すことについて、何か特別な療養所とのつながりのある与党の代議士に関係した会社が指名をとれなかった、入札競争で負けた。そうしたら、それに対して療養所側がもう一回やり直す、こういう態度をとったために、医務局長のところまでその周辺の業者から陳情やあるいは不満の声が出されたということを聞いておりますが、そういう事実はありますか。
  101. 若松栄一

    若松政府委員 四十二年に初めて一部について基準寝具を実施したわけでございますが、この入札にあたりまして非常に安い単価で落札したところがございます。それで地元の業者が相当安いと思ったのが、なお入らずに、地元でない業者がさらに安い単価で落札したというようなことで、いろいろ問題が起こったことがございます。
  102. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 その問題は結果的にはどうなったのですか。一番安い最低値で入札をした業者に請け負わせたのか、それとも特定の指名、随意に匹敵するような形で他の業者に変更したのか、それはどうですか。
  103. 若松栄一

    若松政府委員 終局的に一番安い札の業者に落札したわけでございます。
  104. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それでは、その問題についての疑惑や不正というものは全くないと言い切れますね。
  105. 若松栄一

    若松政府委員 入札そのものには全く疑惑はないと存じます。
  106. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 入札そのものにはない、そのほかなら何かありそうなんですか。職員か何かそういうところで収賄か何かあったのですか。入札にはないということは、ほかには何かくさいものがあったらしいのですか。
  107. 若松栄一

    若松政府委員 ことばが非常に足りませんでしたが、病院の寝具をやっておりますのに寝具協会というものがございまして、協会の加盟業者と加盟業者でないものがございます。加盟業者でないものが不当な取り扱いを受けたのではないかというようなクレームもございましたので、そういう点を頭に入れながらやったものでございますから、病院そのものにこの取り扱いに不正あるいは不当があったということではございません。
  108. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 患者の今度の基準引き上げ加算、こういう問題で患者負担増と、うものはないのだ、そういう点は安心させるように、もっと厚生省はきちっとした内容を、いまここで答弁するような親切な具体的な指示をしなければ、私は皆さんの手続上欠陥があると思うのです。私もいま聞いてみると、寝具の問題にしてもそういう心配はない、誠心誠意療養所としては従来やってきたような形で、患者自身の負担というものはそう激増しないのだ、そういうことをもう少し親切に皆さんのほうとしても説明する必要が私はあると思うのです。  次に主計局に、療養所勘定に四十三年度は二百五億七千五百万円の一般会計からの繰り入れをやる。この額というのは四十二年、四十一年の実数を比較してみてどういう傾向をたどっておりますか。  それと同時に、これが特別会計になって、将来一般会計からの繰り入れというものは大蔵省としては大なたをふるって減らしていこうとしておるのじゃないかと思うのだけれども、その辺の見解はどうでしょうか。
  109. 船後正道

    ○船後政府委員 四十三年度は療養所勘定の歳出総額が四百二十億円、これに対しまして一般会計からの繰り入れが約二百六億円、率にいたしますと四九%でございます。そこで四十二年度以前につきまして同じように特会であったならばということにいたしまして、特会のほうの自己財源というものを診療収入、それから普通財産として大蔵省に所管がえいたしました土地処分、それから雑収入、これを見込んで試算いたしますと、結論のいわゆる繰り入れだけ申し上げますと、四十二年度が、当初予算ベースでございますが、五三・四%、四十一年度が四五・八%、四十年度が三九・四%、三十九年度が四〇・四%、三十八年度が四二・一%、大体四、五〇%程度の率になっております。  今後の問題でございますが、私どもといたしましては、療養所のほうの特別会計において療養所の円滑なる運営ができるように、かつ施設整備ができるように、所要の歳出を計上いたしまして、特定財源でもってまかない切れないいわゆる収支差額でございますが、その収支差額につきましてはこれを一般会計から繰り入れていくという方針でございます。したがいまして、繰り入れ率がどうなるという問題は一にかかって療養所側における診療収入の帰趨がどうなるか、その中でも一番大きな要素はここ数年間繰り返されております診療報酬の引き上げ問題という不確定要素があるわけでございますし、なかなか予断がつかない。したがいまして、率といたしましてどうなるかは申し上げにくいのでございますけれども方針といたしましては、療養所の適正な経営から生じた収支差額はすべて一般会計から繰り入れていく方針でございます。
  110. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、独立採算はとらない、差額が出た場合には大蔵省は責任を持って予算措置をする、こういう約束をしたと受け取ってよろしゅうございますか。政務次官どうですか。
  111. 倉成正

    ○倉成政府委員 国立療養所性格にかんがみまして、営利企業の独立採算をとりません。したがって、ただいまの御説のとおりでございます。
  112. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 副大臣が約束をいたしましたので、一応独立採算はとらない、差額が出ても、療養所が適正な運営さえしておれば差額は国の責任において支出する、こういう確約をしたと私は受け取りまして、この問題は一応了解いたします。  医務局長にちょっとお尋ねしますが、国立療養所敷地と隣接をしたところに保険庁の所有地で広大な土地がある。ところが、所有権者が違うためにその土地を自由に使えない。同じ国の機関でありながら非常な不合理がある。こういうものは現実にいま施設を拡張しそこを使っておるものに当然所管がえをすべきだ、こういう考え方からの質問なのでありますが、全国の療養所にそういうケースはあるのですか。私の地元にはあるのでございますが、ほかにありませんか。
  113. 若松栄一

    若松政府委員 現在、国の療養所敷地に隣接しあるいはそこに入り込むような形で、保険庁あるいはその他の財産がまぎらわしいような形の存在するのは数カ所ございます。これについてはお話しのように、全面的に利用効度を高めていくために適切な話し合いをして、財産処分をしてまいりたいと思っております。
  114. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 保険庁の担当官にお尋ねしますが、もう時間がありませんから具体的な話にストレートに入りたいと思います。  栃木県足利市の国立療養所敷地に隣接して保険庁の土地がかなり広い面積あるわけであります。御存じですね。そういう場合に、片方はこれから重症心身障害児施設をつくり、結核の病棟も完備していく、いろいろ施設もつくりたい。しかし、その土地が保険庁のものであるためにこれに手を出すわけにいかない。同じ国家的な健康に関する業務、保険業務をやっている機関でありますから、金を取らずにこういう場合には話し合いで移管をしてもいいのではないか、こういう私感じを持つのでありますが、現在までの処理状況等、そういう場合にはどういう方法をとってきたか、ちょっとお尋ねいたします。
  115. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 先生御指摘のとおり、確かに各国立療養所の中にあるいは隣接して社会保険庁でベッドを持っておる、あるいは土地を持っているというところが現在三カ所ばかりございます。足利療養所に隣接いたしまして約五千坪の土地がありまして、五十五床の結核ベッドを持っております。これは御指摘のとおりやはり別々の会計で、建物土地を別々に持っているのは私どもも合理的でないという感じがいたしますので、できれば私のほうは手放したいという気持ちでございます。  ただ、先生無償でと仰せられましたけれども、やはり健康保険の特別会計は四十二年度末で約一千億をこえる赤字がございますので、全くただということはちょっと私どもとしては処理しかねると存じますが、値段等につきましては、特に同じ国の会計でございますから、高く売りつける必要は毛頭ございませんので、私のほうで会計検査院その他に説明のつく金額でできるだけそういうものは療養所のほうに引き取ってもらいたい、こういう考えでおります。
  116. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 国有財産局として、同じ場所にしかも同じ保険関係の諸官庁、保険庁と国立療養所と、そういう場合には大蔵省が中に入ってその状況、現実を十分調査検討して、必ずしも独立採算だから金を取らなければならぬという観念でなくて、こういう場合に処理する方途というものは見当たらないものかどうか。国有財産の取り扱い専門官としてどうですか。
  117. 大村筆雄

    大村政府委員 お答えいたします。  国有財産法に関連をいたします、特別会計法にも関連する点でございます。社会保険特別会計、それから病院特別会計、それぞれ一応特別会計が独立しておりますから、その間の財産の所管がえは有償が原則でございます。したがって、無償というわけにはまいらないのでございます。
  118. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 これは私、無償でやるべきだという立場だったのですが、どうも慣例からいって無償はむずかしい、有償だという場合はできるだけ安い値で考えようという答弁があったわけでありまするから、ひとつ詰めて、どの程度まで安く移管ができるか、具体的ケースとして御検討を両官庁で話し合いをしていただきたい。地元民もそういうものが一つの管轄になれば、そこに今後の充実した設備を町当局としてもいろいろ希望しておるところでありますから、すみやかにひとつそういう検討をしていただきたいと思いますが、いかがでございますか、医務局長
  119. 若松栄一

    若松政府委員 御趣旨の線に沿って検討してみたいと思います。
  120. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 もう私はこれで質問時間が切れるわけでありますが、いろいろ質問しなければならぬ点のほんの五〇%程度で時間切れになりまして、たいへん不満足であります。  しかし、厚生省当局並びに大蔵省当局は、患者の諸君あるいは療養所に勤務する職員の諸君からいろいろな不安や今後解決をしなければならぬいろいろな要求が出ているわけであります。医者の少ない問題、看護婦の問題、あるいはいまの施設の不備な問題、あるいは特会になってからの将来に対する不安、そういう問題については、ひとつ真剣に大蔵省厚生省も誠意をもってこれらの不安が解消できるように、この審議が終わるまでの間にそういう確実な回答が出せるように、各般の検討をぜひしておいていただきたいと思いますが、主計局次長いかがですか。
  121. 船後正道

    ○船後政府委員 いろいろの問題もございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、療養所特会移行は、やはり療養所施設を急速に整備して、医療内容の充実をはかるという趣旨のものでございますので、その線に沿いまして今後の運営も考えていきたい、かように考えます。
  122. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 社会党はこういう特別会計にする必要はないという見解に立っております。したがって、私どもは、こういう法案を出さなくとも、政府がやる気になれば、一般会計でどんどん国立療養所整備拡充は可能であるという見地に立って、この法案には私たちは非常な不満を持っております。そういう点も十分大蔵省厚生省等も勘案をして、ここで答弁したことはもう政令あるいは省令に匹敵するという気持ちで、将来不安を解消する方向に、答弁したことは実行する、こういう姿勢で本案の審議に臨んでいただきたいことを強く希望して、私の質問を終わります。(拍手)
  123. 金子一平

    ○金子(一)委員長代理 午後一時三十分再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十四分休憩     …………………………………    午後一時五十四分開議
  124. 田村元

    田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。広瀬秀吉君。
  125. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 国立病院特別会計法の一部を改正する法律案に関連する諸問題について質問をいたしたいと思います。  最初に、政務次官にお伺いいたしますが、今回、一般会計で処理をしてまいりました国立療養所の会計を特別会計に移行をするわけでありますが、一体その理由は何なのか。一般会計でいままで支障なくやってきたものを国立病院特別会計に移行しなければならない積極的な理由、こういうものをまずお伺いいたしたいと思います。
  126. 倉成正

    ○倉成政府委員 国立療養所は、御承知のとおり結核、精神、脊髄等特殊な療養を要する者を対象とする療養所でありまして、これに特殊性がございます。医療法上の病院であることには変わりがございません。その経理の明確化をはかるためには国立病院と同じくやはり特別会計で経理することが望ましいというのが一般的な考え方であります。また、国立療養所は旧軍事保護院所管の結核療養所、精神療養所及び脊髄療養所を終戦に伴って厚生省が引い継いで、その後さらに日本医療団が解散になって、その経営をしておりました結核療養所を引き継いだものでございます。  そこで、私もこの施設を全部は見ておりませんが、私の郷里の付近あるいはその他見ておりますし、また、いろいろ調べてみますと、非常に施設が老朽化して早急にこの整備をはかることが必要であるということが要請されております。したがって、特別会計に移行することによりまして不用財産を売り払って収入を上げる、あるいは借り入れ金を特別会計の場合にはすることができる、これによって施設整備計画的に行なうことが容易になります。また、療養所の経営は収入の増加があった場合にはそれに対応して支出を弾力的に増加し得ることが望ましいわけでありますけれども一般会計の場合にはそういうことができません。特別会計に移行しますと、弾力条項の適用によりまして経営の円滑化をはかることができる。まあ以上のような諸点を考慮いたしまして、国立療養所施設設備整備と弾力的経営の確保をはかるという観点から、四十三年度から国立療養所を特別会計に移行したい、こういう御提案を申し上げている次第であります。
  127. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 一応の説明がなされたわけでありますが、私が伺っているのは、いまおっしゃったようなことの中で弾力条項などというのは若干問題があるにしても、一般会計ではどうしてもできないということだから特別会計に移行するのだという点についての疑問に対する説明としてはきわめて不十分だ、こういうように思うのです。いま政務次官があげられた、たとえば経理をより一そう明確にする、それじゃ一般会計では経理が明確になっていないのか、そんなばかな話はないと思うのです。それからもう一つは、財産を整理をして、不用財産と思われるような、特に非常に膨大な土地があるということは私もよく承知をしておるわけであります。そういうものを売って、しかも特別会計だからそれをうまく金にかえて整備をはかる資金にできるという、そういう点では便利になるという、そういう積極面もそれは認めるわけであります。しかし、それはしょせん国の財産であり、国の金であります。一般会計でそれを適正に売って、そうしてこれは雑収入ということになる。あるいは国有財産処分金ということになるでありましょうけれども、しかし、これだけは国民医療国民の健康のために必要なのだというならば、一般会計から支出したって何も差しつかえのない範囲の問題だと思うのですね。  それと借り入れ金の問題です。一般会計の場合にはそう借り入れ金でまかなうということはできないということがある。しかし、現在、国立病院が特別会計に移行をした後において、借り入れ金制度が開かれて、これがだいぶ累積をしてきて、ここ二、三年中には元利の支払いを迫られる、しかもこれは相当な累積額——あとで数字はお聞きいたしますけれども、百五十億程度になっているということを伺っているわけです。そういうようなことで、借り入れ金はしょせん返さなきゃならぬものですし、しかも利子をつけて返さなきゃならぬものですから、そういう面ではかえって経営を圧迫して、医療の充実というものを妨げるような方向に作用してくる、そういうような面だってあるわけです。  そうしますと、どうもこれは、一般会計でやっているといろいろ不便があるからという以上に、安上がりに国民医療問題を片づけていこう——しょせんはやはり独立採算というような形で、国のいわゆるそういう面での歳出——国民医療国民の健康、国民の命というようなものに対する金の出し惜しみ、財政資金の出し惜しみじゃないか、そういうものがねらいじゃないかということにならざるを得ないわけです。それらの点について一体どうお考えですか。
  128. 倉成正

    ○倉成政府委員 先ほども申し上げましたように、結核、精神病に加えまして、重症心身障害あるいは進行性の筋萎縮症等、長期慢性疾患の新しい医療に対処するための使命を国立療養所は持っておるわけであります。したがって、これを営利企業の場合のように独立採算制を考えておるということでは絶対にございません。やはり適正な経営によって生ずるものは一般会計から繰り入れていくという方針をわれわれは持っておるわけであります。  しかし、広瀬委員よく御承知のとおり、今日の国立療養所状況は非常に老朽化しておる。一日も早くこの施設整備し、また、患者の処遇その他についても配慮する必要があるということを考えますときには、これは病院であることには変わりはないわけでありますから、国立病院とあわせて特別会計に移行いたしまして、そうして先ほど申し上げましたような弾力条項の適用であるとか、借り入れ金をやることができるとか、あるいは不用の土地があればそれを売り払って財源に充てるということをもってやりたい。われわれは、国立療養所を充実強化したいという意味から特別会計に移行したい、こういう考え方でありますので、御了解をいただきたいと思うわけであります。
  129. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 政務次官の御説明ではいいことずくめなわけなんですけれども国立病院が特別会計になったときにも、これはいろいろ問題はあったけれども、たとえば一般会計からの繰り入れば昭和二十五年度で約十億円で、経営費の二四%あったものが、四十年度には三十四億になった。それだけ医療の範囲も広がったし、内容的にも時代の趨勢とともに増加した。その当然増の分も相当含めながらそういう積極面もあったろうと思う。しかし、繰り入れ率といたしましては一四%程度に落ち込んできている。こういうようなことが現にあるわけです。  しかも先ほど申し上げたように、国立病院はその後整備増強のためにかなり特別会計で借り入れをふやしてきた。この借り入れの数字を伺いますけれども、先ほど私百五十億くらいあるのではないかと申し上げたのですが、借り入れ金の残高は正確には一体幾らありますか。
  130. 若松栄一

    若松政府委員 三十八年から四十二年までの借入金は百十五億であります。
  131. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 正確な数字は百十五億だそうでありますが、これは五年据え置きの二十年償還ぐらいの条件でございますか。そうしてもうそろそろ償還が始まるだろうと思いますが、この償還の年次計画というようなものを元利について出していただきたい。
  132. 若松栄一

    若松政府委員 お話しのように、五年据え置きの二十年償還でありまして、利子のほうは一般会計から補給していただいております。したがって、元金の償還だけが国立病院本来の診療収入から償還していくという計画でございまして、償還が四十三年度から開始されまして、四十三年度の予定が三千七百五十万円、四十四年度が一億六千二百五十万円ということで、年々少しずつふえております。
  133. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 五年くらいのところを言ってくれませんか。わかっておるでしょう、表になっておるでしょう。
  134. 若松栄一

    若松政府委員 大体いままでの元金だけで申しますと、四十七年に五億七千五百万円、四十八年に七億二千五百万円で、大体いまのところの分では、その程度の金額が続くことになります。
  135. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そういうぐあいで、四十七年あたりを見ますと五億七千万円になり、さらに四十八年になれば七億にふえる、こういうぐあいにかなり借り入れ金の償還というようなものも増大をしていきます。こういうものは、経営は独立採算ではないといってはいるものの、やはり国立病院の経理を圧迫する非常に大きな要因になるから、それは大体において自前でまかなわなければならぬようなことになってきております。  そういうものから考えますと、いままで一般会計でやっておったものを特別会計に移行する。しかも、先ほど次官もおっしゃられたように、個人の力ではなかなか十分な療養ができないという非常に長期にわたる疾患——結核が中心ですが、そのほか、精神病とか脊髄損傷関係であるとか、最近では筋萎縮症——ジストロフィーというのですか、重症心身障害、成人病、交通災害、老人病、また、最近では特に心臓病なども非常にふえております。家族の中でそういう者が一人おるとその家庭全体がもう非常に家計が苦しくなって、貧乏と病気というその相関関係で救われない。そういうような人たちに対する国の直営する医療機関として非常に大きな役割りを果たしてきたと思うのです。そういうメリットというものは、やはり特会制に移行したら失われていくのではないかということが非常に心配されるわけです。結核の問題も、患者数が非常に減少をしてきたということはいわれますけれども、これは数字でもはっきり証明されておりまするが、しかし、今日結核がないわけではないし、これはやはり依然として長期に療養しなければならぬ病であることには間違いない。近代的な医学をもってしても、特効薬があらわれても、なかなかこれは撲滅の段階にまでは至っていない。まだまだこの結核の撲滅は続けなければならぬというような事情もあるし、先ほど例をあげたような長期を要し、しかも非常に負担のかかる新しい疾病の発生というようなこともあるわけですね。そういう事態に処して、やはり国の責任でそういうものをやらなければならないというからには、一般会計でやるのがやはり一番いい姿ではないのか。どうしてもこの特別会計ということになると、経理がきわ立つものですから、それでどうしても特別会計のワクの中で収支を合わせようというそのことが、何よりも人の命をほんとうに大切にする、健康を大切にして早く病気をなおしてやろうという本来の使命を忘れて、経理に走ってしまうという経理至上主義の形に、特別会計になるとどうしてもなってしまう。これはぬぐい去ることのできない疑問として残ると私は思うのです。  そういう問題について、そういうおそれというものは——そして、貧乏と病気の再生産という形にならないかどうかということについての、政務次官としての確信のほどをひとつお伺いしたいと思います。
  136. 倉成正

    ○倉成政府委員 おそらく成瀬委員の御心配になりますのは、国立病院の場合には、当初特別会計に移行したときは一般会計からの繰り入れ率が非常に高かった、しかし、今日絶対額はふえているけれども、率からいうと減ってきた、こういうことを御懸念なさっておることだと思います。  この点は、御案内のとおりに、国立病院のほうは、ただいま広瀬委員も御指摘のように、短期の患者が多いわけであります。それから外来患者が非常に多いということでありますから、やはり施設が非常に充実してくるとそれに合わせて収入もふえてくる、こういうことでありますから、そういう性格を持っておると思います。  しかし、療養所の場合は、まさに先ほど御指摘になりましたように、長期の療養者が非常に多い。非常に長い間、十年以上入院しておるという方々もかなりおられますし、また、いろいろな新しい、しかも、個人の力ではどうしようもないような病気があるという特殊性を持っておりますから、やはりこういう方面の採算ということになりますと、一般の企業、現業の特別会計のような企業的に運営するという企業と違う。比較してみますと、ちょうど国立学校の特別会計というのがございますが、こういう種類のものだというふうにわれわれは考えておるわけであります。したがって、一日も早く今日の国立療養所をよくしたいという気持ちから出発しておるわけでありますから、ただいまのような御懸念がないように、十分気をつけてやってまいりたい、そういう独立採算制を強要して、必要な一般会計からの繰り入れを避けるというようなことはしないということを申し上げておるわけであります。
  137. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 国立療養所の収支の状況が、三十一年は収支率六九・六%、それが三十五年には六四%に落ち、四十年には五七・七%に落ち、四十二年には四九・七%になってきている。こういうような数字というものが、実は何よりもその特会制移行への直接的なあなた方の政策態度を変える理由になったんじゃないですか。そこらのところ、この数字についてどうお考えでしょう。
  138. 若松栄一

    若松政府委員 国立療養所の収支率の悪化、あるいはいつまでたっても改善できないということが直接的な特会移行趣旨ではないか、したがって、将来この収支率を改善するために、さらにもうけ主義あるいは労働強化ということに走るのではないかという御懸念のようでございますけれども、私ども特会移行趣旨は、どこまでも国立療養所が、従来の結核のみを扱っていて、しりすぼみになって、国立療養機関を縮小しなければならぬということでは困るのであって、新しい医療需要に向かって拡大再生産の方向に向かっていく。そのためには、現在どうしても急速に施設整備し、改善し、新しい需要にたえるようなものにしていかなければならぬ、そういうことが趣旨でございまして、経費面の問題についてとやかく考慮しているつもりはございません。
  139. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 答弁としてはそういうことをおっしゃるわけなんですが、いま国立病院の中に差額料金の徴収、差額ベッド、こういうようなものが非常に多くなった。一番高いベッドはどのくらいのものがありますか。
  140. 若松栄一

    若松政府委員 国立病院には現在一室一日六千円というのがございます。
  141. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 室料だけで六千円もするようなベッドがあるというのは、なかなか庶民大衆では利用できない。かなりの資産なり収入なりのある人でないと、なかなかかかれないわけです。そういうのが、近代的な医学の進歩あるいは医療設備の進歩という概念だけで、国民的な立場で割り切れるかどうかという問題が一つ大きくあるだろうと思うのですね。そういうようなことをやって、しかも病気がかなり重いと判断されて国立病院に入りたいと思っても、なかなか一般の安いベッドはあいてないというような状況なんかも一方においてある。ところが、すばらしい病院は建った、そうしてそういう部屋がかなりできてきておるというようなことは、やはり国立病院としても特別会計に移行以来かなり収支というものを重視する。収支を重視することはけっこうなことだけれども、事は国民の命、健康にかかわる問題だという場合に、そのものをやはり非常にウエートを置いて考えるようにどうしてもなりやすいですね。だから、そういうようなものなんかもできるというようなことを通じて国民大衆にサービスをする医療というものから、そういうベッドにはなかなか入れないから、そういうところには金持ちの人、所得の高い人はすっと入れるというようなことで収入をふやしていくような道なんかもはかられる。このことは国の施設としては邪道ではないのかと思うのですね。国立療養所を特会にしてそういう方向にいく可能性というものはないか。そういうための歯どめというものは一体どこにあると思われますか。これは両方からひとつ……。
  142. 若松栄一

    若松政府委員 国立病院にも相当高一額の差額ベッドを持っておる点を御指摘いただきましたけれども、六千円というようなベッドは国立病院全体の中のほんの数床でございまして、数人分でございまして、その他は大体千円どまり前後が大多数でございます。それにしても差額ベッドを持っておるということは貧乏人が利用できないようなことになるではないかということでございますが、これはごく少数にとどめておきまして、現在、国立病院だけで見まして全体のベッドの八%が差額ベッドになっております。国立療養所におきましては〇・六%という程度でございまして、これは決して貧乏人を締め出すというような趣旨からではなしに、現在の医療機関の中でも、病気をして入院するけれども、その中でやはり社会生活がそのまま続いて持ち込まれる。どうしても病室の中でもある程度の仕事も続け、あるいは社会的な体面等からもそのような環境が必要であるというものでございますので、それらの便宜のためということもございまして、ある意味では、国立医療機関をすべての人に利用していただきたい、そのためにはそのようなことも必要であるという趣旨に出ることでございまして、決してこれによって病院の収支を改善しようというような意味は持っておりません。
  143. 船後正道

    ○船後政府委員 国立病院国立療養所における差額ベッドの問題は、ただいま医務局長から御答弁申し上げましたとおりでございまして、やはりこれはそこに社会的な需要が存するから、国立病院療養所におきましても差額ベッドを用意しなければならない、こういう観点から設けられたものと解しております。私どもといたしましては、収入確保の観点から差額ベッドを云々したことは過去においてもございませんでしたし、今後もそういうことを考えてはおりません。
  144. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 先ほど国立学校の特別会計とほぼ同じような性格だ、企業特別会計あるいは管理特別会計とかございますが、やはり特別会計に呼応して経理をその限りにおいて明らかにするという形、国立病院特別会計の中に療養所会計、病院勘定という二つの勘定が設けられるわけです。国立病院のほうはいままでと同じように、かりにいままでの運営に先ほど指摘したような問題点はあったにもせよ、これは国民全体のものだから、高額所得者は一切国立病院から締め出すのだという、そういうことでもこれは行き過ぎかと思います。確かにそういう面もあるわけであります。しかし、そういうようなことを通じて、だんだんそういうようなものがやがてふえてくる可能性もある。そしてできる限りやはり収入をよけいあげたい、こういうことが、今日現場の病院長あたりもかなり露骨に公務員である医療労働者に対してそういうような指導をせられておるような例などを、私ども直接に従業員から聞いておるわけであります。収入をまずとにかくあげなければ始まらないのだ。収入をあげてそれから設備を、ここを直せ、あそこを直せ、あるいは医療器械が古くなったからこれを交換しろということが一声えるので、すず収入をあげなければならぬということになると、庶民大衆の千円ベッドやそれ以下のベッドに入るような人には、たいへん取り扱いがそっけなくなってくる。そして六千円のベッドに入るような人は至れり尽くせりの看護をしてやる。こういうようなものもやはり出てくる。こういうような例なんかも実際にはあるのです。  次に伺いますけれども、今日、昭和四十二年度において国立療養所にどれだけの支出を国としてしておるわけですか、その数字をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  145. 船後正道

    ○船後政府委員 四十二年度におきます国立療養所の歳出総額は三百四十一億円でございます。四十三年度は四百二十億円でございます。
  146. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そこでいまこの特別会計に移行するということで一番心配しておるのはだれかというと、入院患者です。それと入院患者の世話をしております厚生省所属の医療労働者の医療公務員といいますか、そういう人たちが非常に心配をしてこれには反対だということを強く叫んでいるわけです。先ほどから御答弁になっておりますようなことが、一体そのとおり額面どおり将来にわたってだいじょうぶなんだ、絶対心配ないんだ、そういう人たちの心配はまさに杞憂なんだというようなことならば、実際に今日まで病院に勤務をし、あるいは療養所に勤務をしてきた、そういう人たちがあれほどこれはたいへんだ、これは反対しなければならぬというようなことにおそらくならなかっただろう。そして患者自身は今日までの長期にわたる療養生活を通じてはだで感じておるのですね。これはたいへんなことになる、われわれの命を粗末にされて、そして収支収支という、そういうことになってしまうのじゃないか。そして医療費も高く取られて、サービスは逆に改善されない、建物だけはよくなったけれども、その他の面ではサービスも非常に低下をして、命があぶないのじゃないか、そういうおそれというものを非常に抱いているわけです。  これに対して私どもは、やはりその人たちの気持ちもかなりうなずける面がある。これは何もかにもが全部その人たちの言うことが正しくて、大蔵省厚生省の言うことが全部間違いだということを言うつもりはございませんけれども、そういう人たちの考えも、これは事実に裏づけられているんですね。たとえば患者にしてみれば、医療機関としてのサービスを向上させ医療内容を向上さして、ほんとうに早く病気をなおすというような立場からいうならば、これからお医者さんなんかも減らされるんじゃないか、看護婦なんかも減らされるんじゃないか、そういう中で病人がほんとうに苦しまなければならないんじゃないかということがあるわけです。それから、たとえば給食の問題あるいは寝具の問題、クリーニングの問題など含めて、そういう問題なんかもある。こういうような問題なんかも、基準給食、基準寝具、あるいは看護の問題でも、基準看護ということがきめられておるけれども、はたしてそのとおり現在までも配置されておるのかどうかという問題が一つあります。これは定員関係、基準に合って全面的にそれに違反をしない——違反をするというのは言い過ぎかもしれないけれども、それにぴしっと合っただけの要員が確保されているのかどうか、そういう問題がある。  それからもう一つの問題は、やはり医療事故というようなものがかなり具体的にも幾つかあるわけです。たとえば便所へ行ったところが喀血をしてそのまま息絶えてしまった。ブザーがあればすぐに医者なり看護婦なりが飛んでいって応急手当てもできただろうに、それがないということで、そういう事例もあったということも聞いております。そういうようなことだとか、あるいは食事をとれないのを、看護人がつかないでそれを無理してやったために、のどにつかえて死んでしまったというような事例なんかもあるようですが、幾つもそういう医療事故というようなものもある。そういうようなものが法改正になったら出るんじゃないかという、ほんとうに切実な問題があるわけです。そういう問題について、われわれそういうものを聞いたら、これは国民の代表として当然そういうようなことがもしあったら、これは全くその人たちの言うとおり、徹底的に反対をして廃案にでもしなければならぬ法律だと思うのです。そういうようなことについて、だいじょうぶだ、かくかくの処置をいたしますからだいじょうぶですというものをひとつここで示してもらいたい。
  147. 倉成正

    ○倉成政府委員 私から一般的なお答えを申し上げたいと思います。  いま広瀬委員の仰せのとおり、国立療養所に入っておられる方は、結核その他特殊な御病気長期間療養しなければならないという非常に気の毒な立場にあられる方たちばかりであります。したがって、非常に精神的な不安があるということは、ほんとうに御指摘のとおりだと思います。また同時に、ここにつとめておられる職員の方々が患者のために非常に献身的に努力をしておられる、そういう非常に御苦労があるということもよく理解ができるわけであります。そういう立場に立って見ますと、やはりいろいろ特別会計に移ると何かもうけ主義になるんじゃないかという不安を持たれることも、あるいはよくわかるような気もするわけであります。しかし、私はその間におきまして、やはりこの特別会計移管についての認識というか理解というか、いろいろ誤解がありまして、十分この内容をよく御承知ならないで無用の心配をしておられる向きがあることも否定できないと思うわけでございますので、ひとつぜひこの委員会を通じて、そういう誤解のある点をわれわれも十分お答えをして解いてまいりたいと思うわけであります。  まず患者負担が上がりはしないかという問題も、患者の方々、私が日患同盟の方々とお会いしたときもそのお話が出ます。その問題については、すでにさきの武藤委員質疑に対してお答えいたしましたとおりに、公費負担患者については二割引きを廃止いたしますけれども、実際患者負担にはならないということになりますし、それから自己負担のある患者については二割引きを続けるということでありますから、結局患者に対する二割引きの現行の制度は、患者負担に関する限りは現在と全然同じだ、こういうことでありますし、また、一般会計繰り入れを渋るということを大蔵省するのじゃないかという点につきましては、これは営利企業ではございませんから、適正な運営をされる限りにおいては、必要な額は一般会計から繰り入れるということをはっきり申し上げておるわけでありますから、私はこれらの患者の皆さま方あるいは職員の皆さま方の御心配は大部分解消したものと信じておるわけでございます。
  148. 若松栄一

    若松政府委員 国立療養所特別会計移行の問題は、実は本年急に持ち上がったことではございませんで、すでに数年前からこの問題が検討されてまいっております。特に最近におきまして、私どもは、新しい医療需要の急速な増加と、これに対して対処することが焦眉の急であるということから、いまこそもう施設整備その他の面を含めて思い切ってやるべきだという考え方を強くしてまいりました。したがって、昨年来、たとえば職員団体である全医労等との団体交渉等におきましても、われわれは決してもうけ主義や独立採算をやるつもりはないけれども、これこれの事情で特別会計に移行するほうが適当であると思う、したがって、予算折衝等の段階において条件さえ十分整うならば特別会計移行の用意があるということを申しておりました。それらの点について組合側等も非常に心配いたしまして、独立採算、労働強化、患者の貧乏人は入れぬというようなことが起こるのではないかということを常々申し越しておりますので、それらの点も十分私どもは考慮いたしまして、予算折衝等の段階において全医労の方々あるいは患者同盟の方々の御心配の点を十分に配慮して、それらの点に対処できる、心配をしていただかなくてもいいというような条件を具備したところでわれわれは特別会計に移行すべきだということの信念を持っておりまして、そういう意味では長年の懸案でございましたけれども、今度ほぼ満足すべき状態に達したという見通しを得ましたので、大臣の御決意を得まして特別会計移行ということに踏み切ったわけでございます。そういう意味では、労働強化であるとか、患者の処遇の悪化であるとか、もうけ主義に走るとか、国立医療機関の使命放棄であるとかいうような非難に対処できるという見通しを立てておるわけでございます。   〔委員長退席渡辺(美)委員長代理着席
  149. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大蔵省に聞きますが、四十二年度の数字は先ほど言われたわけですが、一般会計から昭和四十二年度に国立療養所の分として大体総所要額——これは内容的にはいろいろあるわけでありますが、人件費、物件費、その他たくさん項目があるのだろうと思いますが、そのうち一般会計から繰り入れた。パーセントは何%に、繰り入れ率といいますか、これはどのくらいになりますか。そして昭和四十三年度繰り入れ率は四十二年度と比較をいたしましてどういう関係になっておりますか、その数字もあわせて聞かせてください。
  150. 船後正道

    ○船後政府委員 四十二年度の国立療養所予算、これは一般会計でございますが、かりにこれを特別会計であったならばと、こういう仮定を置きまして、自己収入部分を除き、残余を一般会計繰り入れ、こういう試算をいたしてみますと、当初ベースで歳出総額三百四十一億円に対しまして、一般会計繰り入れ相当する額は百八十二億円でございます。これの率は五三・四%、四十三年度におきましては一般会計繰り入れ率は四九%でございます。
  151. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 もうすでに昭和四十三年度の予算で二百五億の繰り入れが予定されておりますが、繰り入れ率は四九%、四十二年度は五三・四%である。こういうぐあいに明らかに繰り入れ率が低下をしておるというようなことは、特別会計に移行したから、移行させるという気持らであえて操作をしたのではないとは思いまするが、こういうぐあいになっておる。こういう比率が病院等の場合非常に低下をした。二五%から一四%あるいはそれ以下に低下をしておるということと同じような結果をすでに示す、これはことし初めてやることであるけれども、そういう状態になっていくというようなことについては非常に危惧が持たれるのではないかと思うのです。  一体大蔵省としては、この繰り入れ率は病院のごとく十年たってみたらこうなっていました、二五%から二・二%まで落ちましたというようなことのないような形というものはとるのでしょうね。その点聞いておきたいと思います。
  152. 船後正道

    ○船後政府委員 療養所繰り入れ率でございますが、これはやはり一方におきましては療養所の必要な歳出、他方におきましては療養所の診療収入を中心とする自己財源、これとの相関関係できまってくるわけであります。それで先ほど四十二年度の数字を申し上げましたが、もしも同じようなやり方で四十一年度を試算してみますと、四十一年度は四五・八、四十年度は三九・四、三十九年度は四〇・四、三十八年度は四二・一、大体このような数字でございまして、おおむねこの五、六年間は四、五〇%ということになっておるわけでございます。年によって変動がございますのは、これのやはり一番大きな原因は診療収入の問題でございます。それから四十三年度に若干低下いたしておりますのは、これは歳入面におきまして借り入れ金の導入があったというような問題、あるいは診療収入の面におきまして昨年度の診療報酬引き上げの結果増収が見込まれたといったような問題もあるわけでございます。したがいまして、今後の見通しといたしましても療養所の収入がどのように伸びるか、これは一にかかって入院患者がどうふえるかという問題と、他方はやはり診療報酬点数が今後どうなるかというところに大きな問題があるわけでございまして、いまここで明確なる見通しを立てるわけにはまいりませんけれども、先ほどから申し上げておりますとおり、療養所の必要なる歳出予算確保いたしまして、これが収支差額を生ずるという場合には、必要なる額を一般会計から繰り入れまして、療養所の運営に支障を来たさないという方針予算を編成してまいりたい、かように考えております。
  153. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いま主計局次長から言われたことは、ことしは、昭和四十三年度は十五億の借り入れを予定しておるというようなことから昨年よりも繰り入れ率が減った、こういうお話があっわけであります。そこにやっぱり特別会計への移行の本質が物語られておるような気がするのです。ごく端的にいえば、借り入れ金でやれということだと思うのです。どんどん借り入れの道を開いて借り入れをさせていく、そうして今度借り入れ金を返す段階が来る。そうすれば、やはりでき得る限り収入をあげていかなければならぬ、そうしてなるほど療養所整備されたけれども、借金払いに追われる、追われれば収入をあげる方法を一生懸命考えなければならぬ、そういうような形に追い込まれていく。そういう筋道をたどっていくのではないかということをわれわれどうしても考えざるを得ないわけなんです。  それともう一つは、広大な土地処分して自前で、税金を使わずに、そういう財産処分を通じて改善をやっていこう、こういうようないわば安上がり医療行政というものを目ざしたものじゃないかというようなことにもなるわけであります。それはこれからの推移を見なければならぬわけですけれども、どうしてもおやりになるというならば、そういうことになるのですけれども、いずれにしても大蔵省としては、この繰り入れ率を四〇%ないし五〇%でこの五年くらい、若干のぶれはあっても、その範囲内くらいだ、そういうことで、これはいろいろこれからの見通しの問題にもなるから問題はあろうけれども、主計局らしいようなことでしぼり上げていく。もっと収入をあげなさい、もっと合理化をしなさい、人も減らしなさいというような形で財政のつじつまを合わすという立場から、この面でこの繰り入れ率を下げるというような意図、そういうものはないと断言してよろしいですか、どうですか。
  154. 船後正道

    ○船後政府委員 先ほども申し上げましたように、診療収入その他の関係で繰り入れ率は変動があろうかと思いますが、積極的に自己財源をふやす、そのために一般会計繰り入れ額を減らすというような意図を持って予算を編成する考えは全くございません。
  155. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そのことをはっきり記憶いたしておきたいと思います。  それから厚生省に伺いますが、抽象的に患者の人たちやあるいは全医労の人たちが心配するようなことはみんなないということを言われたわけですが、私先ほど伺ったのは、要員なんかについても、現実の姿でそういう問題はなかったのか。それで現在要員の配置なり何なりで、基準看護の問題にいたしましても六対一とか五対一、四対一というような一類、二類、三類というようなこともあるけれども、そういうようなものできちんとしたものが配置されているのかどうか、この実態を正直に答えていただきたい。   〔渡辺(美)委員長代理退席、委員長着席〕 それから今後のそういう問題について、はたして六対一、五対一、四対一というような基準で医療制度として非常に向上した姿だと思っておられるのかどうか。そういう点について具体的に答えていただきたい。
  156. 若松栄一

    若松政府委員 国立療養所における職員の定数、それがこれからの医療の低下あるいは労働強化等にならないかという御趣旨かと思います。  国立療養所は、先ほど来申しますように、従来は結核、精神、脊髄というものを本命としてやってまいりました。結核患者だけについて見ますと、最近は千五百ないし二千名ずつ年々減少しているという状況でございます。したがって、療養所患者数はこの一、二年におきましては年々五%弱程度ずつ減少しております。それに対して職員はごくわずかしか減っておりませんで、明年度につきましても、患者数が五%程度減るのに対して、職員の数は〇・六%しか減らないというような状況でございまして、そういう意味では決して労働の強化云々というようなことにはならないと存じております。  これを端的な事例で申し上げますと、たとえば看護婦につきまして、看護婦一人当たりについて患者を何名受け持っておるかということを年次的に見ますと、昭和三十年には六・一人の患者を持っておりました。三十五年にも六・一人でございましたが、四十年には五・八人になり、四十三年には五・四人になるという見込みでございます。そういうように総体といたしまして、少なくともこういう数字の上からは、患者数が若干減りますために職員が逆に充実してまいっているという実情でございます。  なお、この看護婦数で基準看護その他に適合するかどうかという問題につきましては、残念ながらいままで全施設に基準看護を適用してはおりませんで、今度基準看護を適用するについては実情を調査いたしまして、それを社会保険事務所に申請しなければなりませんが、若干の施設については基準看護の適用ができないというようなところも、ごくわずかでございますが出てまいる。そういうところについては将来とも充実してまいりたいと考えております。
  157. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 実際の運営の姿の中で、なるほど数字的には一人が受け持つ患者数が漸減しておる、これはいい傾向だと思うのです。これが専門的な立場でどのくらいが理想的かは私つまびらかにいたしませんけれども、こういうように一人当たり看護する人数が減ってくるということは、それだけ行き届いた看護ができるということですから、たいへんけっこうだ、そういう方向を進めていただきたい。これは強く要請しておきます。  今日では大体完全看護という立場がとられているのですが、ところが、当然完全看護であるべきものに対し、国立療養所なりあるいは病院等からその病人のうちに電話をして、なかなかたいへんなので、どうぞひとつ付き添いに来てくださいといって、その妹さんか何かが病院に来て、十日も二十日も泊まり込みで看護している。それはいわばもぐりのような形ですから、やすむところなんかもベッドの下の狭いところに薄べりを敷いて夜は寝るというようなことも聞いておるわけです。そういう非常に具体的な事例なんかも私はたくさん持っているのですけれども、それを一つ一つここで問題にする時間的余裕はないからいたしませんけれども、そういう実態というものをやはりよくつかんでこれらの問題を考えていただきたい。このことも強く要請しておきたいと思うわけです。  それから、次に問題を移しますが、二割引きの廃止の問題、これはけさほども武藤委員の質問に対して答えられて、御答弁があったわけですが、四十年九月に行政管理庁から、国立療養所入院患者に一律減額制度をとっている、二割引き制度をとっている、これは適切ではない、生活困窮者に対してのみ一定基準により医療費の減免措置を行なうのが適切ではないかという勧告を受けている。今度はこれを全面的に廃止したわけですね。そうすると、行政管理庁が勧告したものよりもきれいさっぱり廃止してしまう。やはり行政管理庁とい、えとも生活困窮者に対しては——困窮者だって、生活保護とかいうようないわゆる公費負担というものでなしに、ボーダーラインの人たちがあるわけです。そういう人たちに適正な線を引いて、これから下はいままでどおり二割引き、これは特殊な医療なんですから。厚生省設置法の中で国立療養所の任務として、先ほど冒頭にも申し上げたように、病気と貧乏という関係がそのまま当てはまるようなケースのそういう病気、そういうものに対する特殊な医療機関なんだということがいわれているわけです。それにもかかわらず、こういう貧しい低所得の人たちまで全部消してしまう、二割引きというのはもうないんだということは、この特会移行にあたっていかにもこれはもうけ主義ではないか。貧しい人からも取り上げて収入をふやすんだ、こういうことを疑わせるに十分な措置なんです。行政管理庁だって全部廃止しろとは言っていないのです。それを全部廃止したというのは一体どういうわけですか。
  158. 若松栄一

    若松政府委員 ただいま行政管理庁の勧告の話が出てまいりましたけれども、行政管理庁といたしましても、おそらく最近の医療保険の充実であるとか、あるいは公費負担医療の充実というような面から、一律二割引きするということは意味がない、むしろ低所得者にだけやったらよかろうという趣旨であろうと思います。ただ私どもといたしましては、低所得者というものを一々市町村長の証明であるとかなんとかいうことでやることはむしろ適当ではない、この際二割引きを廃止することによって、現実に自己負担の増加する人が出ないようにすることが最も望ましい姿であるということで、自己負担の伴わないような患者については二割引きを廃止します、自己負担を伴う患者については二割引きその他一切従来のままに残しますということでございますので、単に低所得者というだけではなしに、少なくとも自己負担の伴う患者については一切従来どおりという方針をとりましたので、むしろ行管の勧告よりも行き届いたものであるというふうに考えております。
  159. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そうしますと、自己負担を伴う、たとえば国保の家族が大体ことしで七割になったと思うのですが、七割ということで、三割負担する。そういう人たちはみんな自己負担を持つ。あるいは国家公務員の共済組合の家族、こういうようなものも五割自己負担がある。そういうものについては二割引きということはずっとこれからもやる、こういうように了解していいわけですね。これからもやる、ずっと続ける。大蔵省もいいのですか。国立療養所が続く限りそういう方針でいく。これは抜本的にそういう自己負担がないようになれば自然消滅になるわけだけれども、そういうことに了解してよろしゅうございますか。
  160. 船後正道

    ○船後政府委員 現状の公費医療制度、それから医療保険制度ということを前提といたしますれば、ただいまのような取り扱いを継続していきたい、かように考えております。ただ、医療保障制度全般がどうなるか、これは非常な激変期でございますので、そういった問題が出てまいりますればその時代であらためて検討いたしたい、かように考えております。
  161. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 次に問題を移しますが、今度の特別会計制度に移行した場合に、二割引きの問題を含めていろいろな問題があると思います。これは単に国の問題だけではなしに、地方自治体における負担の問題も当然出てくると思いますが、この状況は、特会制に移行して若干制度的にも変わったというようなものを踏まえて、これは自治省にお伺いしたいのですけれども、どのくらい地方自治体の負担増というものがございますか。その間の事情を、ひとつ数字をもって明らかにしていただきたいと思います。
  162. 横手正

    ○横手説明員 お答えいたします。  今回の二割引き制の廃止、これに関連いたしまして地方団体の負担の増加額が四十三年度におきましておおむね二億円になるもの、かように見込まれております。
  163. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大体二億円。その内訳、どういうもので経費がどれだけ増大しますということになるか、その内訳をひとつはっきりお聞きしたいのですが……。
  164. 横手正

    ○横手説明員 内訳を申し上げますと、結核対策関係におきましておおむね一億八千万、生活保護関係、医療扶助関係でございますが、これで約二千万、合わせて二億円余り、こういうことになると思います。
  165. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 まあ二億円といえども、これが非常に富裕な地方団体ならばたいしたことないのですが、問題が具体的になり、非常に貧困な市町村等において——やはり貧困の市町村に結核患者も多いわけでありまして、そういうような場合にその負担に耐えられないようなことになるというおそれがある。市町村、特に村、町というようなところで、非常に財政力の弱いところがあるわけでありますが、そういうようなところに対して私どもはおそれるのは、たとえば命令入所させなければならぬような者があっても、負担がたいへんだというので見て見ないふりをするというような、そういう事態なんかが発生するおそれというのは全くございませんか、そういう心配はございませんか。
  166. 横手正

    ○横手説明員 お答えいたします。  昭和四十三年度の地方財政計画におきましてこの二億円の地方負担の増加額は計上いたしますとともに、地方交付税の算定基礎の中にもこれを加えてまいっております。したがいまして、全般的に見ましてそうしたおそれの生ずるということはほとんどあり得ないもの、かように考えております。
  167. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 二億円の負担増があって、そのうち交付税で見る分と、それから地方自治体自体で見なければならない、支出しなければならない面と、大体どの程度の比率になっておりますか。
  168. 横手正

    ○横手説明員 普通交付税で配分されます額はおおむね七割見当になろうかと思います。残りの三割はいわゆる不交付団体、そのようになりますが、この不交付団体は、先生も御承知のように地方税収入のかなり多額な団体でございます。そうした面の負担増に耐え切れないというような事態にはならない、かように考えております。
  169. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 非常に楽観をされておるわけでありますが、いまおっしゃられた結核対策と、あとは生保の医療給付の関係だけ。これから国立病院特会に移行したら——精神病あるいは筋ジストロフィーとか、その他最近の交通災害によるむち打ち症だとかあるいは成人病、あるいは非常に困難な、最近小児心臓病というものが非常に注目されてきておりますが、こういうような問題なんかについても何も考慮されてないわけですね。そういうようなものの医療を充実させようとして特会移行をやるのだ、こうおっしゃっておるわけですけれども、そういうものは入ってない、結核だけ。そういうものが出てきたら一体どうなるのですか、それについての自治省の対策……。
  170. 横手正

    ○横手説明員 先生のお話が、かなり具体的な事項について、こういうことでございますが、御承知のように、昭和四十三年度の地方財政計画におきまして、国庫補助を伴います経費については、すべてその裏打ちになる地方負担は計上しております。また、地方交付税の算定にあたりましても、社会保障関係経費につきましては、従来から非常に重点を置いて算入いたしてまいっております。したがって、全般的な財源対策、マクロ面から見ました財源対策としては十分行き届いておるものと思います。ただ、個々の団体につきまして、特に結核対策にいたしましてもあるいは精神衛生関係にしましても、全国平均以上に多額の地方負担を出しておる、多額の負担をかぶっておる団体が間々見られるわけでありますが、こうした団体につきましては、従来から特別交付税の措置によりまして相当程度の手当てをいたしてまいっております。従来からさような方針のもとにやってまいっておりますので、地方団体の財源措置の面につきましては、あまりそうしたおそれはないのじゃないか、かように考えております。
  171. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 心配ないということなんですが、ほんとうに心配のないようにこれがされるならば、私どもあえて言うことはありませんが、その点については若干の経過を見たければならないかもしれません。しかし、答弁どおり心配のないようにやってもらわなければ困るわけでありますので、その点特に強く要求いたしておきたいと思います。  それから、これは厚生省にお伺いしますけれども、最近心臓病、特に心房中隔欠損とかなんとかたいへんむずかしい心臓関係の疾患というものが目立ってきて、昔ならばそういうものはやみからやみに、早死にしてしまう、いたいけな子供の時代に何かわけのわからぬ病気で死んじゃったということでほったらかしにされたかもしれませんが、近代医学はそれをはっきりと発見をして、それを何とかしてやろうというようなことで、心臓病対策というものがかなり進められてきたわけであります。しかし、いずれにしてもこの心臓病というようなものは、正確に診断をし、疾病の原因というものを突きとめるというところまでには非常に時間と金がかかる。さらに手術も、これはとうてい普通の勤労者世帯などでは負担し切れないような手術料もかかってくる。あるいはその他の関連経費といいますか、交通の往復をするとか旅館に泊まらなければならぬとか、なかなか心臓関係で権威のある医療機関というものは全国にどこにもあるというわけじゃなくて、東京に遠くからも来るというようなことで、非常にかかる。一人の心臓病の子供を持つと大体四、五十万の負担があるというようなことで、いま栃木県あたりでも、これを何とかしようという民間の運動なんかも非常に盛り上がってきておるのです。その親たちにいろいろ話を聞いてみますると、どうしても四、五十万の金というものがかかってしまってどうにもならぬというようなことで、県あたりでも幾らか貸し付け制度なんというものをつくりまして、これは去年からつくったわけであります。しかし貸し付けは、しょせん返さなければなりませんし、しかも全額借りられるわけでもないということで、もうその金のくめんだけでおやじさんが今度は心臓を悪くしてしまうというように、ほんとうに一家にとってたいへんな災厄と申しますか、そういうことになっておる。厚生省ではこれらの問題に対してどういうような対策を用意しておられますか。この際医務局長せっかくお見えですから、聞いておきたいと思うのです。  それともう一つ。この会計との関連で、先ほどから何回も出ていますような疾病というものに対して医療を充実していこう、こういう立場でおられるわけですけれども、心臓病というようなものはこの国立療養所結核と同じように見ていこうというような配慮というものは、この特別会計制移行にあたって考慮されませんでしたか。そこらあたりを伺いたいと思います。
  172. 若松栄一

    若松政府委員 国立病院療養所は、一応医療機関としてまず運営していくということでございますが、国立病院のほうは、その中でも一般医療機関に非常に近い形でございます。国立療養所のほうは長期慢性の疾患を扱い、特にまた、子供の障害者をたくさん扱っておりますので、当然そういうものに非常に関心を持っております。しかし、先ほど来出ていますように、医療費保障の体系と医療機関の体系というものはある程度明確にすべきものというふうに考えまして、現在のお話しのような心臓病の児童の医療費に対する負担というものは、国立病院自体が、いわゆる割り引くというようなことでなしに、児童福祉法で費用を負担するたてまえをとっております。一二十九年度から児童福祉法で子供の心臓病の手術等に対する費用の負担を始めておりまして、四十三年度におきましては九百件、七千二百四十四万円の予算を計上されております。したがって、これでもって直接的な医療費についてはほとんど負担を免れる。先ほど来出ました旅館に泊まるとか交通費というような点につきましては、これはまだある程度家族の負担になりますが、直接医療費については大幅に軽減されるということになろうと思います。  なお、国立療養所も、そういう子供専門的な施設がだんだん分化してまいりますので、国立療養所においても将来この方面にも分担をとってまいりたいというふうに考えております。
  173. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 直接医療費と申しますか、そういうものは負担を免れているというのですが、たとえば手術費、それから入院費、看護料、食事代とか、そういうようなものは直接医療費の中に全部入って、この七千二百四十四万の予算の中から全部それの対象となるものについては支出をしておられる。それではそれの対象外になるというものは一この七千二百四十四万の予算の中で全部カバーし切れているのですか、現状は。どうなんですか。
  174. 若松栄一

    若松政府委員 ただいまの金額の中にはお話に出ました手術料、入院料、食費、看護料、一切含まれております。
  175. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 時間の割り当てもございますのでやめたいと思いますが、もう一点だけお伺いしたいのは、現業部門と申しますか、たとえばクリーニングだとか寝具の関係ですね、こういうようなものについては直営で、クリーニングは大体どこの療養所へ行っても施設もあるし、そこで働いている現業の人たちもおるわけですが、ああいうものはどうなりますか。これを下請にするというような話を聞いておるわけですし、また寝具等についても、基準寝具というような形で一日五十円の予算ですか、そういうようなものでまかなうようでありますが、これなども業者に全面的にまかす、下請、こういうようなことにこれからなっていくのですか。その辺のところをちょっと聞いておきたいと思います。
  176. 若松栄一

    若松政府委員 病院における給食あるいは寝具の設備等は病院自体が行なうことが好ましいと思います。しかし、現実に国立療養所は、この戦後二十年間寝具を備えないで、患者が寝具をみずから持ってきて入院して、持って帰るというたてまえをとっておりましたために、寝具の備えもござませんし、またそれを洗たくし、修理し、更新するだけの人手もございません。   〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 したがって、一般医療機関ではほとんどこれが全部整備されておりますけれども国立療養所は非常におくれてしまったわけでございます。しかも、これを急速に実施するということになりますと、一挙に多額の設備費と、また人手も大幅な増加を用意しなければなりません。これが現在なかなか困難でございますので、寝具につきましては四十二年と四十三年でいわゆる下請といいますか、寝具業者が洗たくしたものを持ち込んで、また一週間たつと持って帰り、そして洗たくして納めるといういわゆる一部下請の方式でやることにいたしております。給食につきましては、従来から療養所直営でやっておりますので、今後も直営でやっていく所存でございます。
  177. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 寝具の問題で私どもあまり芳しくないうわさなども聞いておるわけなのです。それは、ある療養所で入札をさした。そうしたら、基準寝具協会というところが高く出した。町の業者がそれよりも安く出した。ところが、それを破棄して基準寝具協会のほうにまた入札をやり直してやったというようなことで、町の業者が、これは一体どういうことなんだ、厚生省とこの基準寝具協会なるものとの間には何かあるのじゃないかというようなことを言っている。これはまあ一種の黒いうわさかもしれません、このことを私自身直接調べたわけでありませんから。しかし、そういうようなことなんかがありますと、やはりこの問題をめぐってこの特会制移行にあたって非常に問題点にもなる一つの事項だと思うのです。そういうような点については、私はこれはまた聞きの問題でありますから、ここでこれ以上追及しようとは思いませんけれども、ほんとうに患者がよき寝具で、清潔な、また裁断の面でもしっかりしたものの中で楽しく療養のできるような寝具の調達ということに、そういう問題が出ているだけに、この際そういうことには厳重にひとつ注意をしていただきたいと思うわけなんです。そのことについてのそういう事例をもし聞いておったならば、ひとつこの際見解を明らかにしていただきたいと思うのです。
  178. 若松栄一

    若松政府委員 昭和四十二年度に初めて基準寝具の下請を一部実施いたしました際に、お話しのように東北のある地方でかなり安い単価で入札したにかかわらず、さらにまた再入札によって基準寝具協会のメンバーに落札したという事例がございました。これは決して一たん落札したものを取り消して随意契約をやったということではございませんで、施設におきまして予定物価を少し低目にし過ぎたといううらみがあったかと思います。しかし入札そのものは公正に行なわれたものでございますので、誤解が生じたことはまことに申しわけございませんが、今後も注意をして実施してまいりたいと思います。
  179. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 以上で質問は終わりますけれども特別会計法に移行するということについては、これだけの質問で今日患者及び全医労の職員の人たちが抱いている危惧というものが完全にぬぐい去れたとはまだ私どもは思っておりません。したがって、それらの面については、聞くべきところは十分に聞くという体制でなければならない、こういうように考えるわけであります。  以上で質問を終わります。
  180. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 広沢委員
  181. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 ただいまの質問に対しまして、大蔵省厚生省ともに心配が要らないんだというなかなかいい御答弁がありました。それを私はしかと確かめますが、今後も同僚委員が確かめます。  まず第一番目に、独立採算制はとらない、それから差額は国から支出するということですが、これははっきり申しました。そこで、その内容ですが、差額いわゆる赤字は国から支出する、——違うんですか。それじゃちょっと答えてください。さっき答えたでしょう。そうでしょう。——そんなに用心深いところをみると、まだ非常に心配があります。それをよく確かめる前に、私は若干の事実でもって、いまおっしゃったことについての事実と違う点があるのではないかという点を御質問します。  まず第一番目に、けさの産経新聞にこういうふうに書いてあるんですよ。生活保護患者医療を受ける場合、これは大阪の堺市にある耳原病院、御存じでしょう。ここでもって病院に入院することを断わられるという、もしくは転院を勧告されるという問題が起きている事実をあげていますが、その点でこういうふうにいっています。「「A子さんが生活保護患者になると、ベッド料がとれなくなるからだと思うのです。私立病院ならまだしも、公立病院がやることじゃありませんよ」医療保護のたてまえでは、生活も健保もなんの差別はない。しかし、どこの病院でも一日に千円—三千円もとれる差額ベッドをふやしているため無料ベッドはいつも満員。差額ベッド料を払える人以外はなかなかすぐに入院できない。」こういう問題が起きております。国立病院が特会制に移行してから国からの支出の額はふえたといっても、率は目立って低下しているのですね。こういう問題が一ぱい起きていましてほかにも材料がありますが、こういう問題のよって起こるところはどういう理由ですか。
  182. 若松栄一

    若松政府委員 ただいまの耳原病院というのがどういう病院か、私正確に存じておりません。お話を聞きますと、生活保護の患者では室料の差額を取れないから断わるというようなお話でございます。国立療養所におきましては、そのような差額料が取れないから入院を断わるというようなことは全くいたしておりません。確かに国立療養所におきましても、幾つかの施設にいわゆる有料ベッドを持っております。これは相当整備されました病院におきまして、ごく少数だけ差額ベッドを用意しておりますが、これは先ほども御質問にお答えいたしましたように、そのような社会的要求もあり、これを全く無視することのできない現在の情勢にかんがみて、ごく少数だけ差額ベッドを用意するという趣旨でありまして、原則はやはり一般の大衆患者に十分に利用していただくという趣旨でこの医療機関を経営してまいりたいと思っております。
  183. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そのあとに、今度療養所の問題が出ております。「コンニャクのてんぷら」というので、Bさん、四十八歳は、「数年前まで兵庫県下の国立療養所にいたが、そこでは外出泊許可証が「健保患者用」「生保患者用」とはっきり区別してあった。」それで「生保患者は一日も早く退院する義務があり、そのために管理がきびしい」こういうことはよくやりますね。「食事も、規定されたカロリーだけにつじつまを合わせるため、コンニャクのてんぷらがよく食膳にのったという。古くなって油がまわり、サクラエビのように赤くなったシラスボシを食べさせられた」食いものの恨みが一ぱい出ているというのですが、これは国立療養所は非常につつましい経営をしている。そういうためですね。
  184. 若松栄一

    若松政府委員 国立療養所一般医療機関に比べますと、従来は非常に高い単価で給食を実施いたしております。したがって、国立療養所が安上がりにするために、一般医療機関に比べてはるかにお粗末な食事を提供したということは、これは事実と著しく相違するのではないかと存じております。
  185. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、ここに産経新聞が書いているのはうそを書いたということですね。ちゃんと記者の名前まで書いている。これをお読みになったらいいと思いますが、私の経験では産経記者のいっていることのほうが大体ほんとうで、それじゃこれからその食事代はどのくらいか、カロリーはどのくらいかを一々吟味してみたらよくわかると思うのですが、これは医務局長の責任じゃないのですよ。私が言おうと思っているのは、大蔵省が非常にきびしい、そういう問題から起きているんだということで、大蔵省のほうに責任があるのでそういうことを引き出そうというわけです。  次に、国立療養所村山療養所について二、三の問題点が出ています。国立村山療養所は無医村の状態、厚生省は責任を持って医師を増員してもらいたいという陳情があります。国立村山療養所の所長さんの名前はともかくとして、特殊整形外科療養所にしようとして、三百名の結核患者を追い出し、また、長年結核治療に尽くしてきた多くの結核医を多数辞任させている。その結果、次のようなおそろしい事態が生まれている。最も重症患者、五階にいるそうですが、昨年暮れから主治医がいない、最悪の事態が起きている。昨年十二月二十九日、元旦を三日後に控えた年の暮れに、入院中の患者、三十五歳の女の人ですね、この人は、たんのコップ五はいにのぼる大量の喀血をして瀕死の重症におちいって死亡したけれども、お医者さんがいなかった。その女の人が喀血した昼に、主治医近藤医師が療養所にいなくて十七時間も診療が放置された。これをいまどういう理由だということをお聞きすることは、十分資料がないと思いますから、空然だから気の毒ですが、国立村山養療所の医師は、日産の病院に毎週診療に出かけていると聞くが、国家公務員である医者がアルバイトしてもいいんですかという質問がありますが、これはどうですか。アルバイトしていいんですか。
  186. 若松栄一

    若松政府委員 職務に専念しなければなりませんので、アルバイトはいけないことになっております。
  187. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それ以上やると、やはりそのお医者さんも気の毒な状況にあるかもわからない、嘱託とかいろんなことで、だからあれですが、そういう例があるんですね。私が聞いたところでも、養療所のお医者さんとか、そういうところで、非常にそういうことを兼ねている人が国立病院にも一ぱいおりますね。そういうお医者さんが、さっきは不足していない、万全であるということ、なかなかもって、これはあとでも述べますが、非常にむずかしい問題がある。それでここでは肺外科手術、これは肺はもう外科手術になってきましたが、昨年以来外科医が一名もいないためにやっていないけれども、外科手術のできるように外科医を配置して患者の治療に責任を持ってもらいたいという要望もある。これについてはどうですか。
  188. 若松栄一

    若松政府委員 最近の結核療養所におきましてもある程度分類的な収容を促進しておりまして、ただいま出ておりますような村山療養所は骨関節の結核を主にした療養所として運営されております。したがって、骨関節に関する外科は、日本でも有数な高い程度能力を持っておりますが、同時に村山の近くに東京療養所がございまして、ここは一般の肺外科の能力も非常に高い療養所でございますので、できればそういうような能力を集中的にして効率的に使うという意味で、一般外科はこの東京療養所というような形になっているわけでございます。
  189. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そこはやはり療養所である限りは——その東京と村山とがどれくらい距離が離れているか私はまだわかりませんが、その距離はどのくらいですか。
  190. 若松栄一

    若松政府委員 東京と村山療養所は、大体四キロか五キロ程度の距離かと思います。   〔「急病は間に合わないじゃないか」と呼ぶ者あり〕
  191. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それはそのとおりですね。ただいま不規則発言があったけれども、急病には間に合わないですね。  もう一つ村山療養所について申し上げます。  村山療養所は看護婦さん不足で、小児結核患者に掃除をさせているというのがあるのですが、国立村山療養所に、小児結核性カリエス患者ですね、三歳くらいから中学卒業ぐらいまでの子供が十数名入所しているが、極端な看護婦不足によって、少ない看護婦で、おとなの病室と子供の病室を同じ看護婦がかけ持ちで看護をしている。また、小児患者に食堂、病室、教室の掃除をさせている。小児患者佐々木則子さんはつづり方に、看護婦さんは忙し過ぎて、私たちは食堂や病室を掃除させられます。大きなモップで板の間をふくのはとてもつらいです、というのですが、こういうことは許されるのですか。
  192. 若松栄一

    若松政府委員 村山療養所は、先ほどのように骨関節の結核を主にした特殊な療養所でございますので、子供のカリエス患者相当おりまして、教室を聞いて学校教育もやっております。そのために子供の食堂あるいは教室というものを、一般学校並みにあるいは掃除等に手伝わしたかもしれません。その点病状上不適当なものがあるとすれば、将来これは十分に是正してまいりたいと思います。
  193. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 つまり看護婦さんが足りないということは、これは全国的に民間病院もそうですね。療養所で特に、あとからもずいぶんいろいろな資料がありますが、大体お医者さんと看護婦さんが足りないということは、これは療養所でだれでも言うことです。それについて先ほどの御答弁では、だんだん患者が少なくなるからと言うけれども、今度はあと身障者とかその他の方々も入れるわけですね、病院近代化して。そうすると、そういう人たちを入れていくということになれば、重症患者だって、これはたいへんな看護婦さんが必要なわけですね。結核患者よりか必要になるかもわからない。そういう点でいまの状態で十分だと思っているのですか。
  194. 若松栄一

    若松政府委員 結核療養所に重症心身施設を併設いたしますので、併設いたしました場合には、それ相応の人員を新たに配付するというたてまえをとっております。
  195. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 この問題はさらにあとでお聞きしますが、もう一つ、沖繩の結核患者ですね。その人たちの問題が来ていますが、政府は昭和三十八年より五年間、沖繩の結核患者を委託方式により本土国立療養所に受け入れてきたが、国立療養所の特会制実施に伴って、政府が支払う沖繩患者医療費の増大を、委託方式から援助方式に変えて、今日まで無料であった結核以外の併発病治療費を、本年四月一日から全額患者本人負担にやろうとしているということがいわれておりますが、これについて、どうですか。
  196. 船後正道

    ○船後政府委員 沖繩の結核患者に対する援動費の問題でございますが、御指摘のとおり四十二年度までは、これは本土収容につきましては間接援助の方式をとっておりまして、こちらの一般会計に計上して厚生省に移しかえまして支出する、こういう方法をとってまいったわけでございます。これは御承知のとおり、沿革的に沖繩援助が、当初きわめて制限された事項につきまして、いわゆる個別援助という形でもって発足したのでございまして、この結核治療のほうはかなり早くから援助項目に取り上げられた問題でございます。ところが、その後沖繩関係につきまして大きな変化がございまして、四十二年あたりから援助費の総額も飛躍的に拡大いたしましたし、援助項目もかなり大きくなってまいったわけでございます。特に四十三年度におきましては、社会保障医療関係につきましては、ほとんど沖繩における社会保障制度の全領域を網羅する程度まで援助の対象を広げまして、予算といたしましても四十一年度の十五億を約二十四億というふうに大幅にふやしたわけでございます。この機会に従来個別援助当時やっておりました間接援助の形式を、ほかの生活保護等と同様に、直接援助の形に切りかえまして、一度沖繩の予算を経由いたしまして、そうして支出するという方法に改めたわけでございます。この改めました理由は、やはり今後沖繩と本土の一体化政策を進めていく上につきましては、やはり本土並みの制度に全般的に引き上げていく必要がある。そのためには、社会保障制度全般につきまして、一応沖繩の予算を通すほうが、より沖繩が自主的にかつ効果的に経費が使用できるであろう、かように判断したわけだからでございます。このように援助方式は変わりましたけれども、現実に患者さん方につきましては、これは全く従来と同じような扱い方を続けていく予定でございます。
  197. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 いまの御答弁を聞くと、一体化じゃなくて、ますます複雑になってくるような感じがしますけれども、これは日本国民なんだから、できるだけこれを一体化して、琉球政府——政府じゃなくて、自治体なんだと私は思います。したがってこの問題については、沖繩問題としても今後追及しなければならぬと思いますが、一体化して、同じ待遇にするという御答弁ですから、次に移ります。  最後に、やはり国立村山療養所でもって、入所している患者で五十五歳の男の人ですが、外科手術を受けまして、手術の終わった午後二時三十分から、腰と左の大腿部にギブスのコルセットを巻いて電熱乾燥を行なったそうです。電熱乾燥を行なったところが、だれもいなかったため下半身がやけどをしました。麻酔からさめて、こげくさいにおいでもって気がついたら、大やけどを受けていた。その結果、両方の睾丸を摘出されてしまったというような大やけどがあったのですね。これはやはり看護婦不足のため起きたわけです。そうすると、こういうことは始終行なわれているのだと思いますが、これはだれの責任でもない、国の責任だと思いますが、看護婦の増員ですね。当日の三階手術病棟の看護体制は、日勤の看護婦さんが六名、準夜勤が二名、深夜勤が二名です。それでこういうような状態が出ていますけれども、やはりこれは看護婦さんの不足の状態から生まれた、こう見ていいわけですね。
  198. 若松栄一

    若松政府委員 日勤六名、準夜二名、深夜二名というのは最も標準的な看護体制でございますので、この点から看護婦が不足しておるということは必ずしもいえないと思います。しかし、療養所全体としても、看護の手が不足であるという苦情も相当ございますので、今後とも職員の充実あるいは看護上の手落ち等のないように十分気をつけてまいりたいと思います。
  199. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすれば、これはやはり看護基準が十分でない。全般的に十分でないわけです。だから、個々のところは基準に合っても全般的に十分でないということで、やはり再検討する必要があると思いますが、その点どうですか。
  200. 若松栄一

    若松政府委員 ただいまの村山の例は標準的なものでございますので、これがもし不十分であるということになりますと、国全体の看護制度が不十分であるということになるわけでございまして、従来からも患者対看護婦の数の問題はいろいろ議論が出ております。しかし、現在の基準においても、なおかつ看護婦が不足しているという現状から見まして、これ以上の濃厚な看護体制をしくということが現実にきわめて困難な状況になっております。まず、現状における看護体制を確保できるような看護婦の絶対数の養成ということに現在努力をしてまいっておる状況でございますので、この看護体制の基本的な問題として私ども検討を行なっている段階でございます。
  201. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 看護婦さんが不足なためにいろいろの不都合が生まれて、結核予防法二十九条第一項、第三項に違反しているような例がずいぶんあります。  たとえば兵庫県の尼崎市東保健所の指示によって、国立療養所の春霞園に入所の申し込みを行なった人がいますが、この人が両手片足のない障害者であり、看護に手がかかるために、鈴木医事主任が二時間にわたって説得して入園を拒否したという例、それから花巻療養所でもって、今野キヌ子保健婦が付き添って入所手続に来た娘さんの入所を拒否して、民間の北上黒沢尻病院に紹介状を持たして入院させた。それから国立療養所の東京病院、先ほどあったお話ですが、ここで、ベッドがあいていないという理由で断わった。で、多摩中央病院の入院案内書を渡したという例があります。  こういうように非常に多くの例が一ぱいありますが、やはり全体として、お医者さんとか看護婦さんが不足してベッド数が足りないとかいうことがあるんじゃないですか。結核はどんどん少なくなったと言うのだけれども、事実は違うじゃないですか。どうですか。
  202. 若松栄一

    若松政府委員 具体的な例でございますので、私どもも必ずしも十分承知していないかもしれませんが、第一番目に出ました兵庫県の春霞園で入園を断わられたという例は、医師が病状上入所の必要がないということで断わったものと聞いております。したがって、身体障害者で手がかかるから断わったのではないというふうに報告を受けております。また、国立花巻療養所の例でございますが、これは花巻の療養所で診察して、胃かいようの疑いがあるんじゃないかということで、そちらのほうを先に、急性疾患として治療してくるほうが望ましいということで黒沢尻病院に紹介したというふうに聞いております。また東京療養所で満床のゆえに断わったということでございますが、これは本人が別の病院に入院しておりまして転院を希望したわけでございますが、冬期間の移動等で病状悪化も憂えられるので、しばらくそちらで療養するようにというふうに申したと聞いております。  いずれにしろ誤解等でこのようなことが起こってはたいへんでございますので、今後も十分気をつけさせるつもりでおります。
  203. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そういう御答弁だったら、それが事実だったら非常にいいことでして、今後、そういう療養所ともあろうものが、やはり法律があるわけですから、断わったというような例があったら、そういう例が私のところへ持ち込まれたとかその他があったらば、厚生省としては断固として、これはいけないことであるということで処置をする、入れなさいとかその他の処置をとる。それからそういうことでもってのベッドが足りないとかその他の問題については、十分原因を探求して、それで大蔵省に要求すべきことは要求する材料にするということで、責任持ってそういうことは全部ないようにしますね。どうですか。
  204. 若松栄一

    若松政府委員 従来からも、いろいろ個々の事例で注意を受けておりますので、できるだけそういうことが起こらないように管理上の体制を強化してまいりたいと思います。
  205. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 ちょっと関連。医務局長、いま広沢委員から、医者が足りないことと看護婦が足りないために、いろいろな災害が起こっている。これはもう人為的な災害ですね。そこで、今後改善をするように検討すると言うのだけれども、具体的にどういう検討をするのか、どういう改善をするのか、聞いていてさっぱりわからぬ。そこで、具体的に本年の予算書で、医者は一体何名予定していて、何名欠員になっているか。看護婦は何名予算定員があって何名おるか、こういう点をはっきり聞きたいのですが、まず看護婦の問題で、予算では八千三百五十八、内百七十一と、内訳は何のことかようわからぬのだが、このうち何名が現在欠員になっているか。看護婦は、欠員は何名になっているのですか、予算定員のうち。
  206. 若松栄一

    若松政府委員 現時点における定数並びに現員は承知しておりませんが、ただいま持っております資料で、四十二年の十二月一日現在におきまして国立療養所の看護婦の定員が九千七百四十九名に対して三百五名の欠員がございます。
  207. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 この三百五名はいつごろまでに補充できる見込みか。
  208. 若松栄一

    若松政府委員 実は看護婦の充足状況というものは年間に非常な変動がございます。新たに就職する者も相当多いかわりに退職する者も相当多うございますので、年間の変動の波が非常に多い職種でございます。したがって、新たに看護婦が就職します四月には非常に充足率が高くなり、特に十二月のボーナス等が経過いたしますと退職者が非常にふえるというような状態でございまして、そういう意味では十二月以降、つまり一月から三月までの第四・四半期というのは、端境期といいますか、非常に看護婦の数が不足するのが年々の例で、いずれの医療機関においてもある状態でございます。
  209. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 あなたは、さっき広沢委員のおっしゃる点の不都合は早急に検討する、看護婦さんが足りない、人手が足りない——それじゃ口先ばかりだね。具体的に三百五名の定員不足、欠員、これをどう補充するか。さらに新たに本年の予算を見ると九千八百六十六でしょう。看護婦関係、婦長もみんな入れて。総婦長から副総婦長、養成所の婦長全部入れて九千八百六十六名、予算定員が。そうなると、去年より百二十名ふえるわけだ。しかし、予算定員が百二十名ふえても前の三百五名の欠員があり、四百二十五名というものを確保する見込みがあるのかないのかということを聞きたいのだ、われわれは。その見込みが立たなければ患者の不安は解消せぬ。検討するということは、具体的にどうしてこれを確保するか、こういうことなんですよ。あなたの何かうまい方法で、こういう方法で補充できるのだという、それを聞かなければ安心できませんわ。それをひとつ聞かしてください。
  210. 若松栄一

    若松政府委員 このような職員の充足というのは、看護婦がやめますと、すぐ翌日にかわりの要員が充足されるというのが困難でございまして、どうしてもこれだけたくさんの職員がおりますと、欠員というものが相当あるのが通常でございまして、そういう意味で三百五名というのは決してこれが恒常的な欠員ということだけではございませんで、相当ランニングの欠員というものが占めておるわけでございます。そういう意味で、現在のところこの定員に対して非常に欠員があるというふうには存じておりません。特に増員もいたしておりますので、これらの分も含めまして、四月にはほとんど例年期待する程度の職員の充足が行なわれるのが例でございますので、本年もそのように行なわれると期待しているわけでございます。
  211. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 看護婦さんの不足に話が戻りましたが、いま端境期と言いましたが、そのときは少なくなると言うのですけれども、それは看護婦さんの仕事が大切な仕事なのに給料が低くてたいへんつらい。その一つとして、昭和四十年五月二十四日に、看護婦さんの夜勤制限に関する人事院の判定というものがありましたね。この人事院の判定が各病院で行なわれていますか、どうですか。
  212. 若松栄一

    若松政府委員 人事院の判定の中の一番主要な要旨は、夜勤の回数の減少、それから一人夜勤の解消、産前産後の夜間勤務の禁止、最後の項目は実は休息、休憩時間の明示であります。主として夜勤問題でございまして、その夜勤問題を解消いたしますためには、単純にいきますとどうしても相当数の定員増をしなければなりません。しかし、現実にはなかなか定員増が——定員だけで夜勤回数を減少するということができませんで、次善の策といたしまして看護単位の編成あるいは患者収容の合理化というようなことをはかり、また夜間の勤務体制を、夜間だけ二つの看護単位を一つにするというような形で、いろいろほかの手段を用いて夜勤の回数の減少をはかり、さらに夜間勤務それ自体の困難性あるいは苦痛を軽減するために勤務環境を改善する、たとえばインターホーンを増設するとか、あるいは冬季における勤務時間の保温、暖房、休息関係というようないろいろな勤務環境を改善するというようなことを現在やっておりまして、十分どころか非常に不満でございますが、若干程度の改善しかできていないということを遺憾に思っております。
  213. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 私、ずっといま例をあげたのは、人の命にかかわることが、結論は、看護婦の定員が非常に不足であるということなんです。お医者さんの問題も、具体的に聞けば、そういう各療養所でもって、広島療養所はどのくらい、宮城の療養所はどのくらい不足である、お医者さんの定数がみな不足しておるのですよ。これは人の命にかかわる問題ですよ。大蔵省は、こういう医師の定員増の要求を受けてどのくらい削るかという問題について、まさか削ってはいないでしょうね、お答え願いたいと思います。   〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
  214. 船後正道

    ○船後政府委員 病院療養所の定員の問題でございますが、もちろん、ベッドに伴う必要数というものは絶対確保するという方針で臨んでおります。ただ、ただいま問題になっておりました看護婦の夜勤等に伴う問題でございますが、厚生省のほうでも先ほど御答弁いたしましたように、実行上の措置といたしまして、種々くふうをこらしておる現状でございます。これを定員増というかっこうでカバーする方法がもちろんあるわけでございますし、厚生省のほうからもそういう御要求もあった次第でございますが、一般的な公務員の定員問題というようなこともございまして、四十三年度につきましてはこの関係の増員はいたしませんでした。ただし看護婦、医師の問題は、人命にかかわる重要な問題でございますので、この点につきましては、今後とも厚生省とも相談いたしまして十分検討してまいりたいと思います。
  215. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 つまり厚生省はいろいろと合理化でもって、人員のふえなければならぬのをがまんしている。大蔵省としてはやはり厚生省とよく相談して今後十分検討すると言うのですが、自衛隊の人員は増強しました。それから機動隊の人員は増強しました。それと比べて看護婦さんの問題——このことを約束してもらいたいのです。つまり自衛隊の増強はやるかやらぬか。もっと優先するかどうか。一、二、三と順位をつけたときには、どれを優先するかということをちょっと答えてください。
  216. 若松栄一

    若松政府委員 自衛隊、病院とそれぞれ目的は違うわけでございまして、異質のものを比べまして優先順位をつけることはなかなかむずかしい問題でございます。病院は、先ほど申しましたように非常に重要な問題でございます。四十三年度におきましても、一般的には増員につきましてはかなりきびしい方針であったわけでございますが、この看護婦につきましては、国病及び療養所を通じまして、純増二百七十名というような措置を講じておるわけでございます。われわれといたしましてはできるだけ医師、看護婦の充足には今後とも配慮してまいりたいと考えております。
  217. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それからお医者さんも同じですね。医務局長お医者さんも各療養所とも不足していますね。その点について……。
  218. 若松栄一

    若松政府委員 療養所相当医者は不足していまして、四十二年十二月一日現在で九三%の充足率でございます。
  219. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、先ほど特会制に移行しても、看護婦さん、お医者さんの不足というのは心配はないと思いますと言うけれども、どだいいま現在移行しない前に不足しているんですよ。たいへんな努力をしているんですよ。だから、さっきの御答弁のような形では、特会制に移行したらなおさら不安が起きるというのはあたりまえなんです。  もう一つ不安があるんですね。それは特会制に移行することによって百六十カ所の国立療養所を将来何カ所縮小するか。そのベッド数はどのくらいか、そういういろいろの計画はあるのですか。まさか縮小しないとは思うけれども……。
  220. 若松栄一

    若松政府委員 私どもは、国立療養所全般の基本的な方針といたしまして、結核患者は減ってきますけれども、それと同時に、新しい医療需要に即応して、重症心身障害であるとかあるいは筋ジストロフィーあるいは慢性疾患等を収容することにより、療養所医療機能それ自体は拡大再生産の方向に向かっていきたいという趣旨でやっておりますので、将来とも総体的にこれを縮小していくというような考え方はございません。
  221. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それでは旭川、青森、秋田、石川、福岡、大分、鹿児島各県内の療養所を統合するというようなことはないですね。
  222. 若松栄一

    若松政府委員 統合ということは必ずしも縮小ではございませんで、統合する場合にも、二つの施設を合わして従来と同じ程度の機能を持つということをやっております。したがって、従来の統合といいましても、たとえば福岡三園とか千葉とかあるいは中部病院というようなところはそれぞれ隣接のものを二つ、三つ一緒にして、従来の機能と同程度の機能を持たせるというような形で統合し、近代化していくという方法をとっておりますので、今後とも近隣施設等につきまして、たとえば二百床の施設を二つ鉄筋化いたしましても、同じように炊事も事務室もつくらなければならぬということは非常に効率的でございませんので、そういうような近隣の施設についてはやはり統合整備するという基本的な方針は持っております。現在どの施設をどうという具体的な点は、将来問題がございますが、原則論としてはそういう考えを持っております。
  223. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 つまり、それはことばの言い回しだけれども、実施されるところにとっては縮小なんです。実際上そういう計画を持っているということなんですよ。昭和三十八年に小林厚生大臣が、国立病院療養所の七十九カ所を縮小すると言っているのですよ。そうすると、小林さんの考え、頭の中では、これは縮小に映っているわけですね。結局、二つか三つ、無医村や何かのずいぶんないなかにあって、必要なところにあった。それをやめてしまって一つへ合体するということなんでしょう。一つまん中へ集めてしまう。そうすると、ますます地域差が大きくなるという感じはしませんか。
  224. 若松栄一

    若松政府委員 従来から統合いたします場合は、非常に隣合っているものとか、非常に近い施設を統合いたしておりまして、そのために非常に遠い、離れた施設を幾つも統合するというようなことで、その地域全体に不便をおかけするというようなことのないような配慮をした統合を考えております。
  225. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 その施設の統合ということですが、その統合をする場合に、いま定員不足のことを言われましたけれども、そこにいろいろな雑役の方々がずいぶんいますね。そういう人たちについて、統合する際に労働条件なりその他のことを十分話し合って、満足のいくようにずっとやるつもりなんですか、どうですか。
  226. 若松栄一

    若松政府委員 統合することによって、たとえば首切りであるとかいうようなことの起こらないように、また、勤務条件等についても不平の起こらないように十分配慮し、現地のいろいろな意見を聞きながらやっていく所存であります。
  227. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それはしかとお約束できますね。私はもうそれはしかと約束した、こういうふうに見ます。(「いや、返事をもらわぬとだめだ」と呼ぶ者あり)それでは、その返事をひとつ。
  228. 若松栄一

    若松政府委員 十分配慮して実施してまいりたいと思います。
  229. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 その次に、もう一つ、今度は具体的な問題をお聞きします。  高知、香川の問題ですが、いろいろ新聞によりますと、これは読売新聞の高知版からずっととっておりますが、高知では国立療養所をめぐる汚職で事務長ら四人が逮捕されました。その次の新聞によりますと、それは帳簿を書きかえたりなんかして、結核治療用薬品を買った際の納入の便宜を薬の会社にはかった、それでリベートをもらっている。それが大体四十万円。今度はそれが香川へ飛び火しまして、それでやはり十数万のリベートをもらっている。これは四十一年十一月に起こったことで、新聞にずっと出ているのは御存じですね。
  230. 若松栄一

    若松政府委員 事件の経過は承知しております。
  231. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 なぜ四十一年十一月からそのままほうっておいたかというのが一つ問題ですが、どうしてほうっておいたのですか。
  232. 若松栄一

    若松政府委員 現在、検察当局で取り調べ中ででございますので、その決定を待って処置したいと思っております。
  233. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 ずいぶんのんきな話ですね。そのおかげで、この療養所は定員七名のお医者さんが三名に減って——これはお医者さんの責任じゃないですよ。それで所長さんが辞表を出しているそうですが、厚生省、その辞表を御存じでしょうか。
  234. 若松栄一

    若松政府委員 施設長が辞表を提出しているということについては、承知いたしておりません。
  235. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それは違うのですね。私の聞いたところでは、厚生省も辞表を認めざるを得ないというところまで来ておる。結局七人のお医者さんが、一人しかいないんですよ。それも結核が回復したばかりのお医者さんしかいない。この国立療養所が麻痺状態になっておる。それをそのまんまほうっておく気なんですか。これはたいへんなことです。
  236. 若松栄一

    若松政府委員 現在高知療養所では常勤の医師が三名で、これでは非常に足りませんので、市立病院から二名の非常勤の応援をいただきまして、現在五名で療養所の運営をやっております。
  237. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そこで出たのは、やはりお医者さんが足りない、定員が足りない。これは大蔵省、覚えておいてくださいよ。  今度は、特会制になれば、薬が自由にたくさん買えるということになるのですか、どうですか。
  238. 若松栄一

    若松政府委員 特会制に制度が変わったということではなしに、今度のこの特会移行を機会に、療養所の薬品費等は約十一億程度も増加いたしておりますので、いままで、確かに年度の後半になりますと、薬品費が窮屈であるという声が聞かれましたけれども、この点は解消できるものと存じております。
  239. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 薬のふえるのはいいのです。いいのですが、一般会計できちっとつつましくやっているのと比べて、特会制になったということでだんだん療養所の自由裁量がふえていく、病院と同じように。たとえば県立の病院でやはり同じような問題が起きておる。ところも同じ高知県です。高知県の県立病院では、職員の宴会、出張に製薬会社がいつも金を出しておる。これが習慣になっております。それで高知県会で追及されております。県議会で追及された結果、薬の購入価格が全国の平均よりも高いのじゃないか、こういうことが言われておるのですが、この高知、香川療養所の薬の値段と全国の値段と、四十一年十一月からこういう問題がいろいろ起きておるのですから、お調べになったことがございますか。
  240. 若松栄一

    若松政府委員 高知療養所の薬の購入単価について、詳細に調べたことはございません。
  241. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 私は、一般会計から特別会計へ移す理由を先ほど聞いていて、その他いろいろ考えてみても、まだ納得がいかないのです。そういうようにしてだんだん——ことしの繰り入れ額は先ほどの御答弁のとおりだけれども、将来ずっとそれについて一般会計から繰り入れますと、独立採算じゃありません、こう言っていながら、次の年、次の年になってくると、大蔵省からへ 一般会計からの繰り入れが少なくなっていく。そういうおそれが多分にあるんじゃないか。ないというならありがたいですが、それはあとで十分大蔵政務次官から聞きたいのですが、いま考えてみますと、結局そういう形になっておる。ところが、各病院療養所での薬代の使い方がそういう不都合が生まれれば、全国合わしたらたいへんな額になると思うのです。そういう問題についてきちっとして、不正事件が四十一度十一月から生まれたんだったならば、そのくらいのことは全部調べるのが、これはやはり厚生省側としては大蔵省に対するいろいろの親切だと思うのですね。そういうことをやれば、大蔵省も喜んで、厚生省の要求次第でどんどん出すと思うのです。そうですね、大蔵省。  そこで、一方では、ことしの一月から三月に、国立療養所の薬剤費の不足から高い値段の薬は制限しますという張り紙が、東京療養所で出ているのを御存じですか。
  242. 若松栄一

    若松政府委員 東京療養所にそういう張り紙が出たということを承知しておりません。
  243. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それがほんとうに怠慢なんですよ。やはり薬をどういうふうに買って、どういうふうに使われているのか、平均をとったり、一々監査したりする必要がある。一方では東京療養所でそういう張り紙をしているということ、これはやはりよくつかむということが必要じゃないかと思うのですね。そういう御答弁だと、さっき言ったいろいろのたいへんな状況ですね、たとえばコンニャクをてんぷらにするなんという状態が出てくるんですよ。みんな相当不満を言っている人もいるんですよ。だから、もっとよく下情に徹して、いろいろとお調べになっていただきたいと思うのです。  問題は、薬ばかりじゃない。たとえば建築業者との関係、今度は非常に整備をやるんでしょう。特別整備をやるんだから、建築会社との関係、それから基準寝具メーカー、さっき質問がありましたが、これの関係なんかもいろいろとうわさが飛んでいる。前に厚生省におられた方、実力者が寝具メーカーの会長さんになっていて、それでさっき言った岩手県のような事例が起きる。これがあと、たとえば建築業者その他に波及しないかどうか。よく病院——民間病院なんですが、民間病院の院長さんというのは、なかなかのくせ者が相当いるんですよ。だから、一般会計から特別会計になるに従ってそういうおそれがないか。断言できますか、おそれがないと。
  244. 若松栄一

    若松政府委員 一般会計から特別会計に移ったということで、経理のやり方そのものにそう変化があるわけではございません。整備費等が大幅に増額されますので、各施設等で入札等をやる機会が多くなると思いますので、これらの点につきましては従来よりも一そう監督を強化して、不祥事件がないようにつとめてまいりたいと思います。
  245. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 その点もしかとお約束したと私は確信します。  その次、特会制については、整備の財源に借り入れができるから特会制にしたと言うんですよ。ところが、大蔵省にお聞きしますが、この借り入れ金の金利は何分ぐらいで、どのくらいの条件になっておるのかということをお聞きしたいと思います。
  246. 船後正道

    ○船後政府委員 これは資金運用部からの借り入れでございますが、条件は五年据え置き、二十年償還、金利は六分五厘でございます。
  247. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 もうけ仕事でない、この厚生省設置法による国立療養所性格規定でも、はっきり、もうけ仕事ではなく、「特殊の」と書いてある。先ほどから議論されているのはみんなそうなんです。その療養所、これはもう全然採算を度外視しないと成り立ちはしない。その療養所に何と一般の営利会社の六分五厘——輸出入銀行は、輸出を盛んにするというんで四分ですがね。六分五厘でお金を借りると、それは返さなければいかぬ、言われたとおりずうっと将来は。こういうことが特会制になったことの一つの大きな自慢話になるというのは、これはおかしいじゃないですか。おかしくないですか。
  248. 船後正道

    ○船後政府委員 資金運用部の原資は、大部分が郵便貯金と年金積み立て金でございますので、そのほうの関係から、病院療養所につきましても、貸し出し金につきましては六分五厘の利子を取るというたてまえになっております。  なお、今度は療養所側の返済の問題でございますが、病院のほうは、現在利子につきましては一般会計からこれを繰り入れておりますが、元金につきましては、年次計画でもって診療収入のほうから償還している、こういう方法をとっております。療養所も、たてまえといたしましてはこの方式にならうわけでございますが、ただ療養所の場合は、利子は一般会計から繰り入れると申しましても、結局全体といたしまして、適正な経営から生じた収支差額は一般会計が持つわけでございますので、これは一般会計負担でございます。
  249. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 つまり年六分五厘というのは、これは郵便局の——仰せのとおりです。ところが、四分でもって輸出入銀行が出すという。これは利子補給しているでしょう。だから、せめてやはり利子補給とかいろいろの措置を将来はやらなければいかぬと思うのです。その点についてはどうですか。
  250. 船後正道

    ○船後政府委員 先ほども申しましたように、病院につきましてはすでに利子の支払いが始まっておるわけでございまして、これは全額一般会計から繰り入れております。療養所ももちろんこの原則によるわけでございます。
  251. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そこで、国立病院についても私が先ほど申しましたように、非常にみじめな状況が一ぱいあるのです。国立病院がみじめな状況にあって、しかもだんだんと一般会計からの繰り入れが少なくなってくる。ずっと年々割合は少なくなって、一一%になっちゃったのです。それで一番初めの国立病院が特別会計に移行する場合に、ちゃんと四五%ぐらいは出してもらえるものだという政府答弁があるわけです。それからそのときの厚生省の医務局次長さんは、財政的にもこのように大きな一般会計繰り入れをしなければならないものは特別会計に適しないとはっきり言っているのですよ。この当時の久下医務局次長の言っていることはいまうそなんですか、どうでしょう。
  252. 船後正道

    ○船後政府委員 まず、病院一般会計繰り入れ率の問題についてお答え申し上げます。  御指摘のとおり、二十四年に病院特会に移行いたしましたときの一般会計繰り入れ率は二五%程度でございました。二十五年、六年はおおむねこのような状況を続けております。当時における病院収入の状況から推定いたしますれば、おおむねこの程度一般会計繰り入れが必要である、かように考えられたわけでございます。ところが二十七年になりまして、診療報酬点数の一点単価の引き上げという措置が講ぜられました。甲地につきましては、当時十一円でございましたのを十二円五十銭、乙地につきましては、十円でございましたのを十一円五十銭、約一五%程度の診療報酬の引き上げがあったのでございます。この結果といたしまして、二十七年度の診療収入は大幅に増加いたしましたので、この二十七年度に一般会計繰り入れ率は一〇%程度に低下したわけでございます。自今一般会計からの繰り入れにつきましては、ある年は診療報酬の引き上げがあったために非常に繰り入れ率が低下した、またある年は値上げ寸前の年であって、病院経営が非常に苦しくて二〇%程度繰り入れ率になった年もございます。おおむね以上のような状況で推移し、現在では、四十三年度の病院繰り入れ率は一〇・六%という状況になっております。
  253. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 病院のいろいろな経理内容が好転してくればもちろん繰り入れば少なくなるということなんですが、そうすると療養所でもって、先ほど問題になった土地を売ったり、それから高い利子でもって一時しのぎに借り入れをする、高いといっても六分五厘だけれども、営利事業じゃないんだからやはり高い。そういうことをして収支を表だけ——さっき言ったように、お医者さんとか看護婦さんとかの問題については、患者さんに非常に悲惨な思いをさせる。それはお医者さん、看護婦さんの責任じゃない。そういう場合に表だけが少しく黒になったからといって繰り入れをずっと下げるという形に療養所もなりかねないが、そういうことはないという保証はありますか。
  254. 船後正道

    ○船後政府委員 療養所の経営につきまして必要なことは、療養所がその本来の使命を達成するために必要なる予算確保されることでございます。この財源を一般会計から繰り入れるか、あるいは診療収入と自己財源で確保するかという問題は、やはり毎年毎年の状況によって若干の変動があろうかと思います。ただ、私どもといたしましては、あくまでも療養所がその機能を円滑に果たすということに主眼を置きまして、一般会計繰り入れ率というようなことは結果として生まれてくる問題である、したがいまして、先生が懸念されておりますような問題は起こらない、われわれとしてはどこまでも療養所がよく経営されるようにいい予算を組んでまいりたい、かように考えております。
  255. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そういう心配はない。そうするとさらに進んで、先ほど言ったお医者さんとか看護婦さんの定員の不足から生まれるたいへんな人命問題、そういう問題を完全に確保しなければならぬ。そこで、今後厚生省の医務局からいろいろ詰めた要求があると思うのです。そういう要求について、第一番目には、もう赤字はやむを得ないという場合には繰り入れる。それからその次には、それがだめな場合には、今度はやりくり算段してくふうしてごらんなさいということで利子補給も考える。この二つについてお約束願いたいと思いますが……。
  256. 船後正道

    ○船後政府委員 そのとおりでございます。
  257. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 利子補給もやる。そうすると、最後にお聞きしたいのですが、さっきお聞きしました基準寝具協会というのは、どんどん国立療養所の寝具や何かを下請させる、これがさらに洗たく場の下請をさせる、だんだん下請が一ぱいふえてくるわけですが、こういうようなやり方のほうがいいのですか、どうですか。
  258. 若松栄一

    若松政府委員 病院の業務につきましては、医療との関係がいずれの面にもございますので、できるだけ病院がみずから責任を持ってやるということが望ましいと考えております。したがって、寝具もできれば自前でやれることが望ましいと考えております。しかし、現在の情勢におきまして、初度の設備に膨大な費用がかかる、またこれを新たに実施する場合に、相当数の定員増をしなければならないということで、現実の困難がございますために、病院の中で行なわれております医療の中では、比較的直接の医療とは関連の薄い寝具だけを一応下請に出すということにしておりまして、医療の中でも直接医療相当関係の深い給食業務については、どこまでも病院自体が直営でやるという方針を堅持してまいるつもりでございます。
  259. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 国立小児病院では洗たくも下請に出していますが、そうすると、やはり下請というものは好ましくないから大体やむを得ない現状にとどめて、特会制へ移行したからどんどん下請をふやすというのじゃない、こういうふうにはっきりお約束できますか。
  260. 若松栄一

    若松政府委員 ただいまのお話のように基準寝具はある意味では例外でございまして、その他の面について特会に移ったということのゆえをもって大幅に下請を強化するというような考え方は毛頭ございません。   〔「いまでもやっておるぞ」と呼ぶ者あり〕
  261. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 いまでもやっておるぞという声があがりましたが、今後療養所の体系を整えるためには、各療養所とか国立病院がかってに下請をふやしてみたり何かすれば、それに伴って自由裁量の余地が多くなって、全国統一したきちっとした国立医療制度にならぬと思うから、その点を特に強調します。  それから、最後にもう一つ、先ほど地方財政へのはね返りはないと言いましたね。確かにそうですが。いろんなところの資料がありますが、新潟県の衛生部でつくった資料がありますが、やっぱり地方財政へはね返るというのです。新潟の例でいいですから、もうちょっと詳しく……。
  262. 船後正道

    ○船後政府委員 自治省の方がお帰りになりましたので、かわりまして私からお答えいたします。  はね返りがないわけではございませんで、約二億円程度が地方の負担、こういうことになってはね返るわけでございます。ところが、先ほどの自治省のほうの御説明では、そのうちの七割程度が交付団体、三割程度が不交付団体、こういうように推定されておるわけであります。交付団体の分につきましては、これは四十三年度の交付税の基準財政需要の算定基準に織り込んでおりますので、したがって、その面で財源手当てをしてやる、こういうことで、全体といたしまして二割引きの廃止に伴い地方負担は二億円程度ふえますけれども、地方財政上差しつかえがないと考える、こういうのが自治省の係官の答弁でございました。
  263. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 もう一回聞きますが、不交付団体はどうなんですか。
  264. 船後正道

    ○船後政府委員 不交付団体は、御承知のとおり地方税収入の増収その他もございまして、財源的にもかなりゆとりがあると思います。この程度ならば差しつかえはないというのが自治省の御見解でございます。
  265. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 富裕団体といいながら、みんな相当苦しいのでして、これは結局、ほかの算定方式もあって、時間があればこれをいろいろ吟味すればいいのですが、もしか地方財政に負担があるとか、それから富裕団体でもやはりそうするとだんだん削るのですね、それは。そうでしょう。今度は強制入所や何かも、いろいろ口実をつけて削って、入所させないとかという工作をするおそれがある。おそれがないですか。政務次官がそういうふうに言うのだったら、政務次官、その理由をひとつ。
  266. 若松栄一

    若松政府委員 直接の問題になります命令入所の問題は、窓口としては厚生省では公衆衛生局が担当しておりますが、それらのものとも十分協議をし、さらに末端の県衛生部等にも十分この点を理解させまして、財政的な手当ても十分にしてあるのだから、そのようなことの起こらないようにということを、衛生部長会議等を通じまして十分に指導しております。
  267. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それでは、地方財政の面から命令入所者について入所制限や何か絶対にあり得ない、それは全然ないということを約束できますね、いま約束しましたね。
  268. 若松栄一

    若松政府委員 そのようなことの起こらないように指導してまいりたいと思います。
  269. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 以上で私の質問を終わりますけれども、さっき私が質問していて答えがなかったのがあるのです。それを大蔵政務次官に聞きますが、つまり、さっき自衛隊とか機動隊の人員増が一番大切なのか、それとも看護婦さんやお医者さんが少なくて、たいへんな人命問題が起きているのが大切か、これは次元が違う問題だ、こういうお話なんです。しかし、政治に当たる者は——やはり私はこう思うのです。いまから十年前、やはり国立療養所一般会計が望ましいと政府委員国会ではっきり答弁している。それが今度はこういうように移行したのです。こういうように移行したについてはいろいろ理屈があります。ただ私が聞いていると、これは金を借りるのが特会制の利点である、その金を借りるのが何と六分五厘の利子を払わなければならぬのですね。特会制に伴ういろいろな弊害について心配はないということですが、一つ一つこれから同僚委員が、国立病院の十年史や何かからも明らかに読み取れる重要な問題について質問すると思いますが、とにかく今度の制度は、簡単にいいますと改悪なんだ、やむを得ずやはり財政硬直化という理由でございましょうか、そういう点からとられたので、前進ではないのだ、こういう点をはっきり心の中にお認めになって——いま私がいろいろ確かめました、国立病院でも療養所でもたいへんつらい状況にある。これは実例で私お聞きいたしました。たいへんつらい状況にあるのだったら、これの定員の増加その他、ただ帳面づらがこれだけの赤字だからもっと縮めることができるだろうという査定ではなくて、やはり看護婦さんの定員を増加するとかお医者さんの定員を増加すれば、こういう悲惨な事故が起きないのだという一番底辺のきちっとしたものから積み上げた数字で、つまり医療制度が前進する形で、この問題について先ほどはっきり約束したのですよ、お約束になった。独立採算ではない、一般会計から繰り入れるのだということについて、十分責任を持って行なうという点について一言はっきり言っていただきたい。
  270. 倉成正

    ○倉成政府委員 ただいままでの広沢委員の非常にきめのこまかい御質問で、患者やあるいは職員の方々が、いろいろ危惧しておられた点はおおむね解明されたと思っております。  いま国立療養所を特別会計に移した場合に、一般会計繰り入ればどうなるかという問題でありますが、国立療養所の本来の使命を達成するために適正な運営がされる限りにおいては、これは一般会計から繰り入れていく、独立採算はとらないというたてまえを堅持してまいりたいと思います。  なお、看護婦やあるいは医師の充実の問題は、これは一般会計であろうと特別会計であろうと、そういうこととは別個にさらに充実していかなければならない問題と思いますので、厚生省のほうともよくお打ち合わせして、十分努力してまいりたいと思っております。
  271. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 以上で終わります。
  272. 田村元

    田村委員長 阿部助哉君。
  273. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いままでいろいろ同僚委員から質問がありましたが、何といっても予算と関連する法律であります。ところが、予算のほうはもう参議院で、十六日には自然成立、場合によれば十五日に通るかもわからぬという段階に来ておる。ところが、この法律はそれと関連があるから急がなければいかぬということになってくるわけです。  いまこの法律をめぐっていろいろな人たちが、将来に対する不安をお持ちになっておる。五十万からの反対の署名が集まっておるというような問題であります。それをなぜこういうふうに予算と関連だということで急ぐようなやり方をするのか、そこにまず私は不満があるわけであります。できるならば、こういう大きな、ことに病気の人たちの問題は、一年ぐらいは十分にゆっくり審議をしてその上で白黒をつけるというのが一番いいやり方だと思うのですが、なぜこういうふうに予算を先に先行するような段階で急がにゃいかぬのか、どうしてもこれはことしでなければいかぬ、こういうことなんですか。
  274. 倉成正

    ○倉成政府委員 私からお答えいたします。  今度の国立療養所の特別会計への移行というのは、いわば老朽化した国立療養所をできるだけ早急に施設を充実したいという目的のために、弾力的な運営のできる特別会計に移行したいという手続の問題でございます。したがいまして、特別会計に移行するというたてまえで、予算のほうでは特別会計の予算として組んでおるわけでありまして、これは阿部委員よく御承知のとおりに、やはり予算とこれに関連をする法律とは一体であるべきものでありますから、御一緒に御審議をいただく、こういう意味で提案をしたわけでございます。たまたま予算のほうがいま参議院で御審議中であるということでございますので、ぜひこの予算に間に合うようにこの法律を御審議いただきまして、通過ができるようにお願いを申し上げたいと思っておるわけでございます。
  275. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 予算が先行しておって、それでこれを無理して通さにゃいかぬような事態になっておるこの事態もあれですが、この書類、これは厚生省からもらったのですが、これは印刷でなしに厚生省医務局という判を押して説明書をいただいたのですが、これは医務局のほうでおつくりになったものですか。
  276. 若松栄一

    若松政府委員 さようでございます。
  277. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これは皆さんは、事務当局でこの案をつくったら国会はもう自民党の多数で必ず通るものだというふうにきめてかかっておるのですかね。
  278. 若松栄一

    若松政府委員 そのようなことはございません。
  279. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そのようなことはございませんと言うけれども、あなたのところでつくった一番冒頭に、「四月一日から国立療養所がらいを除いて特別会計に移ることになります。」こう書いてあるじゃないか。国会軽視じゃないですか。国会を通ってからおやりになったらどうなんです。こういう文句は要らないですよ。大体これを見たところであなたのほうの言い分はわかるけれども、特別会計にしなければできないものは一つもないじゃないですか。借り入れ金とあれぐらいのものであって、国のほうで予算を組むならば、何も特別会計にしなくたっていい問題でしょう。なぜこんなものを四月一日からきめるみたいな国会軽視の文章をここにつけるのですか。
  280. 若松栄一

    若松政府委員 その。パンフレットの中に、四月一日からなりますと書きましたのは、私どもの軽率な誤りでございまして、その点はおわび申し上げます。当然御審議をいただいて法案も通過したあとですることでございますので、その点はおわび申し上げます。
  281. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 皆さんは、国会は自民党の多数で通すということだけで問題を考えられては困るのですね。むしろ皆さんの厚生省の任務は、一番大事なのはまず結核患者、こういう病気の方々をどうするのだ、この人たちに不安を与えないように、そうして結核をなおしていこうということに重点があるべきであって、国会を通過して法律をつくっていけばいいのだということで問題を考えられるのは、これは主客転倒だと私は思う。  ところで、そういう人たちに対して皆さんはどれほど納得さしているのですか。この人たちは五十万もの署名を集めていまでも反対の運動をしているじゃないですか。局長のほうではこの人たちを納得させるような説明が行なわれたのですか、まずその点をお伺いしたい。
  282. 若松栄一

    若松政府委員 私どもとしては、できるだけ納得していただこうという趣旨でそのようなパンフレットもつくり、また、そのほかにももっと簡単なビラみたいなものをつくりましてできるだけ周知徹底させる、理解をしていただくということに努力したつもりでございます。
  283. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 あとでその資料をお願いしたいのでありますが、こんなものを見たって、特会制でなければ困るというような問題は何もない。一つ一つ見てみたところで、何べん読んでみたところで、これは大蔵省と折衝して大蔵省一般会計から金を出せば解決できる問題でしょう。解決できないのですか。特会制でなければどうしてもだめなんだ、こういうものがあるのですか。
  284. 若松栄一

    若松政府委員 絶対的に特会でなければだめということはいえないと思います。しかし、私どもすでに数年間この経過を見まして、現在の国の財政事情等から見ましても、大蔵省にも十分御協力をいただきながら、なおかつ私どもの庶幾するところにはなかなかいかない、そういう観点からこの際新しい資金の導入等が可能な特会に移行するほうが、われわれ現在の焦眉の急としております問題解決のためにきわめて好都合な改正であるというふうに解釈しております。
  285. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 金が出て好都合だと言うけれども、それは皆さんが大蔵省に頼んでもなかなか厚生省弱いから金がもらえない、正直なところこういうことなんでしょう。金さえとれればいいのでしょう。  それじゃ大蔵省にお伺いしますが、これは昨年の十二月七日、読売新聞に出ているのですが、新聞がそううそをつくとは思わないのですが、「医療保険改善に自民本腰」という大きな見出しで、その次には「療養所を統廃合 予算節約 大蔵方針」こういう見出しで、これは短いから全部読んでもいいのですが、特別会計に移す理由として大蔵省があげているのは「医療収支をはっきりさせ、独立採算体制を強める」というのが一つ。第二には「療養所土地建物を全国的な見地から統廃合する。三、患者数の減っている結核病とうにかわって精薄者や身障者の病とうをふやすとともに来年度一般会計の規模縮小、負担軽減をねらったものである。」こういろいろと出ておるわけであります。そのあとまだ私が言いたいことが出ておるわけでありますが、こういうことを大蔵省として当然お考えになっただろうと私も思うのですが、次官、どうでございますか。
  286. 倉成正

    ○倉成政府委員 ただいまの新聞記事は私よく読んでおりませんけれども、阿部委員の御指摘になっている点は、もしそういうふうなことが書いてあるとしますと、不正確ではなかろうかと思っております。
  287. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 次官読んでおられないのだからあれですが、少なくとも事務当局の主計局のほうでは新聞ぐらいはお読みになっておると思うのですが、いかがですか。これは全然気がつきませんでしたか。
  288. 船後正道

    ○船後政府委員 十二月の段階でございますので、四十二年度の予算編成に関するいろいろな問題がいろいろな話題になる時期でございます。私も読んだような記憶もあるのでございますが、そこにあげております中身の中で、療養所を特会に移行することについて収支を明らかにするという点につきましては、これは特会の本旨でございますが、その他もろもろのことにつきましては、当時におきましてもそのようなずばりの考えは持っておりませんし、現在でもそのような考えは持っておりません。
  289. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これが、じゃあ経理の問題以外はこの新聞がでたらめだ、こういうことですか。
  290. 船後正道

    ○船後政府委員 新聞がでたらめかどうかはともかく、一々だれがどういうふうに話したかどうか、現在はわからない問題でございます。いろいろな観察のしかたがあろうかと思いますけれども、当時におきましても私ども考え方は、先ほど来るる申し上げておりますとおり、特会移行によってこの療養所施設整備なりあるいは医療内容の向上をはかるというところにあるわけでございまして、決して独立採算制の強化とかそういったことに関連してこの特会移行考えたものではございません。
  291. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 皆さんのおっしゃることがそのまま実行に移されていくならば国民も信ずるのですが、佐藤さんが幾ら物価が最大の政治問題で、物価安定につとめますなんと言ったって、物価は上がるばかりでしょう。言うこととやることと違うことをあげれば、私はここで一時間しゃべったところで尽きないくらいおっしゃることとやることが違っておる。皆さんがおそらくこういうことを言ったから新聞は書いた。ただ、国会を通すためにはいろいろなことを言いわけをしながら通すでは、国会は何のためにあるかわからぬのですよ。だから、やはりもう少し本心を出してほんとうのところで論議をしていって、その上でどうしても患者のためにもこれがいいんだというものであれば、患者の方々やつとめておられる人たちも必ずしも反対しないと思うのです。こういうものがある、しかもどうも私たちも将来に対する危惧の念がある、そこにいまいろいろの問題があり、五十万に及ぶ署名が行なわれておる、こういうことだと思うのです。  それならばもう一ぺん厚生省にお伺いしますが、特会制になったら、利点はいままでいろいろあげましたが、まあ経理面をきちんとするとか——これは特会制にならなくたってきちんとしょうと思えばできるはずでしょう。そういう利点をあげたが、簡単に個条書きで利点と、ついでだから、やった場合の欠陥というものをひとつあげてみてくれませんか。
  292. 若松栄一

    若松政府委員 従来もすでに意見が出ましたように、利点といたしましては、一般会計では全く不可能の長期資金を借り入れることができるという点が第一点。それから、整理によりまして余剰となりました自己の財産処分して整備の資金に充てることができるという点。また、平生の運用面につきましては、予定いたしました歳入以上の収益がありました場合に、これを弾力条項として支出に還元することができる。またもう一点は、一般会計でありますと万一不用の金が立ちますとこれは一般会計に返してしまいますが、余剰が出ますとこれを積み立て金として積み立てておいて将来の支出等に向けることもできるという点が利点であろうと思います。  欠点といたしましては、やはり再々話も出ておりますように、ときにはかせげかせげというような勢いになるのではないかというようなことが一番心配される点ではないかと思います。といいますのは、やはり経理を明確にするという点から年間の経理計画というものを立てて、大体その経理計画を目標にしてやってまいりますので、そういう点で経理計画から非常に収入が減ってくるということになると、何か非常に悪いことをしたように事務長が思い込んで、収益を上げるために狂奔するというようなことが起こり得るという点がやはり欠点であろうと思います。そういう意味で私どもは、診療に当たる医師等につきましても、決してこれがもうけ主義になるというようなことでなしに、国立医療機関としての医療の本質をそこなわないようにということを十分に注意してやってもらいたいと思っております。
  293. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これは二十四年五月十八日に、時の厚生大臣の林さんがこれを検討させるというあれがあるわけですよ。それにはいま局長がおっしゃったよりももっと具体的に欠陥としてはいろいろあげておるわけです。イロハニホ、こういう項目で具体的にあげておるわけです。これはあなたのほうでも御承知なんでしょう。検討しているのでしょう。御承知でなければ私読みますけれども……。   〔田村委員長退席渡辺(美)委員長代理着席
  294. 若松栄一

    若松政府委員 当時の速記録によって承知しております。
  295. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これだけいろんな問題がある。それを皆さんのパンフレットは、いいところばかりあげつらっておれば人間というものはだれも信用しなくなるわけです。こういう欠陥もあるけれどもこういうプラスがあるんだという形で主人公である国民にはっきりお示しになって、みんなに検討してもらって、それで支持を得て法案が出されるのがほんとうでしょう。皆さん自分の都合のいいことだけ並べて、何とかして国会をほおかむりで通そうという根性に大体国民は疑惑を持つ。特に関連者の不安と疑惑を持つのは当然だと思う。持つなと言うほうが無理なんだ。ほんとうにそれを協力してもらい納得してもらうためには、こうやればこういうプラスもある、こういう欠陥もあるのです、だからこれをカバーしてこういうふうに持っていきたいのですと言うのが、これはいかなる場合でも当然なことだと思う。それなしに、こんな都合のいいことばかり言っておるけれども、これは信用されないのがあたりまえです。不安を持つのがあたりまえです。そういう態度がけしからぬ。たいへんことばは悪いけれども、私はどうも納得がしがたいわけですが、そういう点での欠陥も話して、なおかつ、これはこういうためにはこれはいいのですということになれば、私は国民にも納得してもらえると思う。そういう態度がとれないのですか、どうですか。
  296. 若松栄一

    若松政府委員 御指摘のように、特会制度といえども、いいところばかりで全く欠点がないことは決してないということは私どももよく承知いたしております。先ほどのように経理的な傾向におちいりやすいという欠点は確かに一点あろうと思います。  ただ、国立病院の場合と国立療養所の場合ではまた多少性格が違いまして、国立療養所というものは当初から国の結核対策に協力するためにある程度収支の考えというものは薄くなっておりますし、また、今回新たに新しい使命に邁進しようという場合の重症心身障害児の対策等、あるいは老人慢性疾患の特殊な対策というようなものも、一般医療機関がなかなかやれないような面を受け持とうという趣旨でございますので、一そうこれが収益あるいは採算というものと関連の薄い医業を担当しておるという自覚もございますので、そういう意味では若干国立病院の場合と異なるところもあろうかと思って、そういうような点についてもやはり療養所会議等でも、所長の皆さんからもそういう声が出ておりますので、十分心してまいりたいと思っております。
  297. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いまあなたの答弁を聞いておりますと、国立病院とは違って長期の療養をしなければいかぬということでしょう。そうすればなおさらこれは特別会計なんかにしないで、全額国の負担で国の一般会計で見るというのが私は当然だと思うのです。いまあなたの答弁を聞いておって、国立病院とは違うと言うが、違うからこそみんなは、これはいまよりも一そう一般会計から金を支出してそれでめんどうを見るのが当然じゃないかという感じになるのは当然でしょう。私はいまそういう感じになっておる。あなたは国立病院とは違うんだ、こうだとおっしゃるけれども、私は違うからこそこれを特別会計にすることはけしからぬ、こういう感じになるのですがね。だからあなたは、先ほど言ったように、このパンフレットに何か都合のいいことばかりを並べようとするから無理があるのですよ。  とにかく一番の問題は、大蔵省予算折衝しても大蔵省がなかなか金を出してくれないから、しようがないから、とにかくここで特別会計で土地を売っ払ったり借り入れたりして、老朽化した建物を新しくしよう。新しくすることはけっこうですよ。だけれども、そういう形に落ち込んでしまったんじゃないですか。厚生省のほうとしてはどうなんです。そこはずばり言ってくれなければ、その上であなたを責めるわけにもいかないんだから、大蔵省にもの申す以外にないんだから、そこをずばり聞かないことには、あなたの答弁では私は納得しない。おそらく聞いておる委員の方々も、病院と違うんだから特会にしなければいかぬのですと言ってみたところで、これはだれも納得しないと思うのですがね。特別会計にしなければいかぬというところは、私はたった一つ大蔵省が金を出さないからだ、これだけなら私はわかるのです。どうなんですか。そこをもう少しわかるように説明してくれなければ、これはとても通すわけにいかないですね。
  298. 若松栄一

    若松政府委員 現在特別会計移行によって私どもがやろうと思っておりますようなすべての事項を、一般会計で満足するとすればあるいはそういうことも言い得るかもしれません。しかし、長年のいままでの経過から見まして、私どもがこの百六十カ所に及ぶ膨大な医療施設を新しい情勢に対処するために急速に整備しよう、相当多額の先行投資的な経費をつぎ込まなければならぬという事態に至りまして、これを単年度主義一般会計の中からそれだけをいただくということは、もうわれわれの長い経験、歴史の上からとうてい不可能である。   〔渡辺(美)委員長代理退席、委員長着席〕 この際、長期資金を導入するためには、特別会計にして借り入れ金等を活用するにしかずということが現実であろう、かように思っております。
  299. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それでは、これには四十三年度には建物を幾つつくって施設費をどうするということが図解で出ておりますが、計画はこれだけなんですか。あるいは五カ年計画とか三カ年計画というようなものは持ち合わせはないのですか。
  300. 若松栄一

    若松政府委員 本年度飛躍的に整備費を強化いたしましたのは、四十三年度を初年度とする五カ年計画で、さしあたりまず半数程度療養所近代化するという計画でございます。
  301. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 その計画はわれわれには示してはいないのですか。
  302. 若松栄一

    若松政府委員 これは、大体四十二年度の予算をほぼ平年度化することによってその計画が達成できるというつもりでおりまして、私どもは内々では五カ年の整備計画というふうに考えておるわけでございます。
  303. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 あなたのほうではできないとおっしゃるけれども、防衛費や何かはちゃんと五カ年計画で二千何百億というものを五カ年間で支出するといって、大蔵省はその計画をちゃんと認めておるわけですよ。なぜあなたのほうでは、これだけ国民の健康に重大な問題を、それくらいのものを計画を立て、われわれに示さなかったのですか。それを示さずにいま特会制に移行しようとすれば、われわれとしてもますます不安を持たざるを得ないでしょう。不安を持つのは当然なんです。それは出せないのですか。そういうものは全然ないのですか。もう一ぺんそこをはっきり答弁してください。
  304. 若松栄一

    若松政府委員 五カ年で大体約半数、八十四施設を現在のところ鉄筋化する計画にいたしておりまして、その総額として約二百三十億円を要するというふうに考えております。その初年度分がただいま御審議いただいております特別整備の費用といたしまして約四十四億、その他一般整備を加えまして六十二億の整備費を計上いたしておるわけでございます。
  305. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これは大蔵省のほうもその五カ年計画というものを承知をし、承諾をしておるわけですか。
  306. 船後正道

    ○船後政府委員 ただいま医務局長から答弁いたしましたとおり、五カ年計画といたしまして、医務局のほうでは本年度の特別整備の四十四億円というものをほぼ横ばいさせて、五カ年間で二百三十億程度というような計画を立てておられるわけでございます。私どももそういう大ワクにつきましてはお聞きいたしておりますし、もちろん今後の予算は単年度ごとに編成していく問題でございますので、こういう問題につきまして直ちに承認するとか承認しないとかいった問題ではございませんが、趨勢といたしましてはその程度計画ならば可能ではなかろうか、かように考えております。ただ、どこの施設をどういうふうに整備していくか、これはかなり具体的にむずかしい問題もあるわけでございますから、今後厚生省とも十分相談してまいりたいと考えております。
  307. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 厚生省のほうではやはりそういう計画を出して、それくらいのものをきっちり大蔵省と交渉して、その資料をここの委員会に出して、それで審議をされるのがほんとうじゃないですか。というのは、私はどうも先ほど来言うように、特会制にするのは金の問題だという点は大体局長も認められたようだし、私もそう思っておる。皆さんのほうがうんと強くて、大蔵省から何ぼでも取れるくらいの力があるならば別だけれども厚生省はえてして弱いようだから、それくらいのものを出してここできっちりさせないことには、患者の方々も不安だろうし、われわれも不安なんです。だから、それくらいの計画をここで示すのがほんとうじゃないですか。こんなお粗末な法案だけ出して、参考でありますというようなこんな。パンフレットを配って、これだけの重大問題を審議せいというのは、大体厚生省国会をなめておる。だから、なめておるから四月一日からとにかくこれこれになりますというようなうそっぱちを記載せざるを得ないのです。そんな考え方がもう間違っておるのじゃないですか。なかなか金が出てとないから、この辺できっちり計画も立てて、大蔵省とも話をして、そうしてここの委員会に論議の材料を提供するというくらいの努力は当然すべきじゃないかというふうに私考えるのですが、どうもその点で厚生省考え方は甘過ぎるのではないか、また準備も不足し過ぎるのではないか。そういう形だから患者の人たちやそこにつとめておる人たちが不安を持つのは当然なんで、これは繰り返しませんけれども、その人たちを納得させるだけの話し合いというものもできないでおるのじゃないかという感じがするのですが、その点、もう少しきちんとしたらいかがですか。
  308. 若松栄一

    若松政府委員 私どもといたしましては、この特別会計移行につきまして、ただ単に会計制度を変える、また借り入れ金だけができるという、そのようなことではなくて、国立療養所全体の将来のあり方というものを考えまして、そういう意味では大蔵省国立療養所の今後のあり方、特に新らしい事態に即応して拡大再生産にまで持っていくのだという基本的な方針についても大蔵省と事前に予算折衝の話し合いをいたしまして、そのような構想のもとにこの整備計画というものも当然内容として織り込みまして、そういう前提で予算の折衝をいたしてまいったつもりでございますので、それらの点については大蔵省も十分御認識をいただいておるものと考えております。
  309. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 けれども、その予算国会できまるのですよ。だから国会にそれを私は提出しろと、こういうことなんですよ。それでなければ大蔵省と話し合ったなんと言ったところで、われわれもそれを信用できないし、また、患者の方々もそれを信用できないというのがいまの不安のもとだと思う、こう何べんか言っておるわけでして、その計画をそれでは出しますか、近いうちに。
  310. 若松栄一

    若松政府委員 療養所整備というのは、非常に膨大なものでございますので、現在百六十カ所ございますが、これを全部一挙に整備することは困難でございます。そういうことで、さしあたり第一期ということで、それを五ヵ年で考えておりますので、きわめて具体的な、どの施設にどれだけというか、こまかな積み上げまではいたしておりません。しかし、全体として約二百三十億、したがって、これを五カ年でやるとすれば単年度四十四億程度で大体やっていけるという、大まかな計画だけはできておるわけでございます。
  311. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そんなことじゃだめなんで、防衛庁あたり、五カ年計画をちゃんと大蔵省のんでおるじゃないですか。それくらいのものを厚生省は出せないはずはないでしょう。これは思いつきでことし出したんですか。  それではお伺いしますけれども、私は皆さんのほうの説明でも、ほかの書類でも拝見したのは、これは十年来の懸案だというふうに聞いておるわけですが、なぜ一体ことし出したかというのをお伺いしようと思っておったわけです。それくらい長い期間かかって懸案だ懸案だと言って出しておられる。なぜそれくらいの計画ができないのです。それでは国会議員や委員会では、とにかく目をつぶって通してくれとこういうことなんですか。その計画くらいはここで示せなければ問題にならないじゃないですか。そんなずさんな考えでこれからの国民医療行政を担当していこうなんというのは、これはとんでもない話じゃないですか。いつごろ出せるのですか。いまなければ私はやむを得ないと思うけれども、それを出して大蔵省もある程度その基本線は承認する。私はどこの建て物をどうするということまでは詳しく言っておりません。大体年次計画でこれくらいの建物をこわれたところはどうだというくらいの把握がなければおかしいと思う。その計画を示して、それでこうなるからこういうふうに特会制に移行したいのだということが裏づけがされなければ、皆さんのいままでの答弁では、わが党の委員が一生懸命やっていても不安は解消されていないのです。その計画はいつごろつくって、いつごろ国会にお出しになりますか。
  312. 若松栄一

    若松政府委員 現在五カ年で私ども整備してまいりたいと思っておりますのは、一応予定としてまずあげて、そうしてそれを大体何ベッド、その施設整備に要する費用はどのくらいということを一応積み上げまして、その結果大体五カ年で約三万七千床程度整備しようという計画をいたしております。したがって、一応年次的にも四十三年度には四十四億、四十四年度には四十五億、四十五年度、四十六年度も四十五億、四十七年度あたりに五十一億程度というふうに計画をいたしておりますが、この計画の個々の施設のどれというようなところまで細密に詰めておらないということでございます。
  313. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それをできるだけ具体的なものをおつくりになりまして、それで国会にも示し、大蔵省のほうとも基本線では承認しておいてもらわぬと、これはあとで情勢の変化というようなことで削られる危険性が多分にあるわけですよ。  もう一つお伺いしたいのは、これは大蔵省にお伺いしたいのですが、昨年から財政硬直だというようなことで、つい昨晩この委員会で終わりました酒、たばこの問題についても、低所得層にはこれは重税になるわけで、増税になるわけです。そういうものをやってくる片一方では、再軍備というか防衛費は増大をしてくる。国際的な経済情勢は悪化しておる。いろいろな面で社会保障費も伸び悩んできておる。こういう年に、なぜこういう病人の問題、こういうものを出さなければならなかったのですか。もう少し社会保障費をどんどんふやしていくような段階、あるいは社会保障費が伸びていく段階で出されるならばまだ話がわかりますけれども、こういう財政上のいろいろな問題のあるときに、なぜこういう問題を出すのです。  そういうことを考えると、私が一番最初に読んだ読売新聞の記事に出ておることが裏づけをされるわけですよ。皆さんが幾らあれを否定してみたところで、いまの予算の措置、経済情勢、そして自民党のいまの防衛関係の政策、対外援助計画というようなもの、全体とかみ合わせてみると、やはりこれは患者負担にしていこうとか、特別会計を独立採算制に、逐次それらしいものに移行しようという意図が大蔵省にあるのではないだろうかという不安をわれわれは持たされるわけであります。これは持つことが当然だと思う。なぜことしのようなときに、これを無理してお出しになったのか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  314. 船後正道

    ○船後政府委員 一般的な財政硬直化の問題とこの療養所特別会計移行の問題とは、直接の関係はございません。(阿部(助)委員「そんなことはないでしょう」と呼ぶ)療養所につきましては、ともかく戦後二十数年を経過いたしまして、いままで努力が足りなかった点につきましては、もちろん私どもも責任はあると思いますが、ともかく現状は、大部分が木造の建物で耐用年数も次第に尽きつつあるという状況で、放置し得ない問題になってきております。したがいまして、この際、特別会計に移行して、こういった整備を大いに促進したい、こういう考え方から四十三年度にこの特会計移行を考えた次第でございます。
  315. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 関係がないなんということをあなたがおっしゃってみたって、それは国民の中で納得をする人はほとんどおりませんよ。けれども、これは水かけ論でありましょうから、もう少し詰めていきたいのでありますが、金をいまの五カ年間で二百三十億程度使って直していくわけですが、その間に借り入れ金というものは五カ年間でどの程度をお考えになっておるわけですか。二百三十億全部これは借り入れ金ではないのでしょう。
  316. 若松栄一

    若松政府委員 この五カ年計画を実施するための借り入れ金としては、総額百億を予定いたしております。
  317. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうしますと、利子は一般会計から補給するということでありますが、返済の時期が来れば、この百億というものの返済は逐次特別会計に重しとなってかかってくる、こういうことでありますが、これを何とか軽減する手というものはないのですか。
  318. 若松栄一

    若松政府委員 ただいまお話しのように、利子は一般会計から補給していただきますので、元金の返済は五年後から始まるわけでございますが、ただいまの百億の借り入れの結果といたしまして、五年目からまず七千五百万、一億七千五百万、二億七千五百万、三億七千五百万、その次以降五億という償還の計画があるわけでございまして、ピーク時には五億という償還が約十年以上続くわけでございます。  これが一般の経営に対して大きな負担になり、経営を圧迫しないかということでございますが、何ぶんにもこれだけ長期の資金でございますが、しかし、最近の医療費の動向等を見ましても、数年間で医療費が倍増するという状態でございますので、十年、十五年後というものは医療費も診療報酬も相当大幅にふえてまいりますので、現在われわれが五億という金に感ずるほどの負担はかなり軽減されるであろうというふうに考えます。  なお、それを含めまして、当然正常な経営をいたしましてなおかつ不足いたします経営費につきましては、一般会計から補てんをいただくということにいたしておるわけであります。
  319. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 だんだん医療費が値上がりする、確かにそうなんです。しかし、いつまでも佐藤内閣が続くわけはない。こういう物価値上げ内閣は、そういつまでも続かない。だから、貨幣価値が安定してきたということになれば、やはりこれはけっこう大きな重しなんです。同時に、これを特別会計に移行したから利益が出てくるという性格のものではないのです。そうでしょう。特会制にしたからこの国立療養所が金がもうかって、利益が出てくるというものではあり得ない。そうすれば、二十四年に林厚生大臣が言っておるように、もうからない仕事はなるたけやりたがらないとか、いろいろ欠陥を五つ六つ指摘がありましたように、そういう危険性がやはりあると思う。そうすると、国の一般会計からの繰り入れというものを、何かできっちりした歯どめといいますか、大蔵省との約束ごとがなければ、これはやはりその指摘された危険な方向にいかざるを得ないのではないですか。そういう点で、一般会計からの繰り入れというものは、大蔵省とどの程度の話し合いがなされておるのか。ただ、不足したらその年その年大蔵省予算要求をするという程度の甘い考えでおられるのか、それとももう少しきっちりした約束ごとができておって、それで特会制に踏み切ろうということになったのか、そこをひとつお答え願いたいのです。
  320. 若松栄一

    若松政府委員 一般会計からの繰り入れについて確たる約束をして、経営に対する危険の歯どめをしろという御意見でございますが、先ほど来国立病院特別会計の一般会計からの負担について御説明がございましたが、その国立病院におきましても、当初二五%、それからいろいろ変わりまして、現在は一〇・六%でございますが、その間におきまして、大きな変動はやはりこの診療収入の変動でございます。その診療収入も、単価改正あるいは点数改正というような、診療それ自体と直接関係のない要因でもってきわめて大きな変動をしてまいります。したがって、今後におきましても、国立療養所の収入を固定化して推計することは困難でございまして、どうしても診療報酬の改定あるいは新薬の採用というようなことが起こりますと、診療収入にもきわめて急激な変化が起こる。そういうことが予想されますので、ここで定率あるいは定額というようなことをきめることは、従来の国立病院の例から見ましても必ずしも適当でない。また、従来国立病院特別会計における一般会計よりの繰り入れの線においても、おおむねそう不自由はしてこなかったという点から、すでに前者の例がございますので、そういう約束ごとというようなことをせずにまいった次第でございます。
  321. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大蔵省は、この点に関してどのようにお考えになっているのですか。先ほど来同僚の質問にもありましたように、非常に不満がある。国立病院のときは二五%繰り入れるという約束をしたけれども、だんだん率は低下してきたじゃないか。金額はなるほど大きくなった。しかし、これはインフレのせいもありますし、また、文化が進めば新しいより高い薬が出ることも当然なことです。そういうことで、金額はなるほど増加してきたけれども繰り入れの比率はますます低下をしてきている。これが二五%いまも繰り入れられているとすれば、さらに国民の健康のためにより国立病院が有効な働きをしているだろう、こう思うのだけれども、率はだんだん低下してきているという事実に対して、先ほど来いろいろな角度から不満が述べられているわけです。今度の場合には、それよりももっと長期にわたる患者である。もっと気の毒な立場にある。そういう点から考えると、何かここでそのときどきということになってきますと、いま特会制に移行しなければならぬというときに、やはり建設費の問題、老朽化したからこれを何とかしなければならぬ、しかし大蔵省は金を渋っているというようなことで、せっぱ詰まってこれは特会制だ、こういうことになったようでありますので、その辺の借り入れ金負担にならないように、また、これが患者のために十分めんどうを見ていただける体制にするためには、やはり一般会計からの繰り入れというものをきちんとしておく必要がどうしてもあるのじゃないか、こう私は考えるのですが、この点、次官いかがですか。
  322. 倉成正

    ○倉成政府委員 国立療養所に対する一般会計からの繰り入れば、阿部委員御承知のとおり、四十年度で百二十二億、四十一年度で百五十一億、四十二年度で百九十二億、四十三年度が二百五億と、いずれも四十年度から四十二年度までは補正後の数字でございますが、絶対額では上がってきている。それから比率から申しましても、大体四十年度から四十一年度、四十二年度というふうに上昇してきております。ただし四十三年度につきましては、比率としては四九%と若干下がってきているわけであります。  したがって、今後の繰り入れをどうするかという問題でありますけれども、先ほどから各委員の御質問にお答えしておりますように、やはり診療収入がどうなるかということが今後の繰り入れの問題の一番大きなウエートを示してくる。したがって、保険の体系が非常に大きな激変を来たしますと、またこの間が大きく変わってくるということが考えられるわけであります。しかし、いずれにいたしましても、国立療養所長期患者を預かっておるところでございますし、国立病院のような短期の患者、また外来者が非常に多いということと非常に性格が異なっておりますから、独立採算制はとらない、やはり必要な適正な運営をいたしまして、国立療養所の所期の目的を果たすということが眼目でありますから、その限りにおいて必要な経費は一般会計から繰り入れる、こういう原則を堅持してまいりたいと思っておるわけであります。率を一体幾らに固定したらいいかということは、これは結果として出てくるわけでありますから、ここできめるということは無理ではなかろうかと思っております。
  323. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そこあたりにやはり問題があろうかと思うのですが、まあ今年度、四十三年度の率を下らないくらいのところを入れておかないと、やはり不安が残るわけです。非常にわがままな質問かもわかりませんけれども、いまやはり不安をみんな持っておる。私も不安を持っておるわけです。そういう点で、この特別会計に移行するというときにはやはりそれぐらいの考慮があってもいいんではないか。またそれがなければ、実際言うてだんだん医療行政が後退するんではないか。まあほんとうは、結核患者はここまで減ってきた、たいへんけっこうなことであります。しかし、厚生大臣がおっしゃるように、最後の追撃戦をやるというならば、ここで思い切ってもう数年間か十数年間を努力すれば、日本から結核患者というものをほとんど一掃できるという状態になるのではないかという点で、厚生省にもより一そう努力をしてもらいたい。決してこれは自然に結核患者がなくなったのではなしに、いままでの努力によってこの結核患者が減ってきた、こう私は思う。それだけにいま手をゆるめたりあるいは制度を変えて後退することのないように、そしてこれからもうしばらくの間これに努力をするならば、あとはもうこの結核対策というものは経費も要らなくなる時期が必ず来るだろう。それまではひとつ大蔵省のほうも、厚生省が十分な働きができるように努力やめんどうを見るべきだというのが私の希望であり、考えであります。  そこで、最後にもう一つお伺いをして終わりたいと思いますが、先ほど関連質問で武藤委員のほうから質問がありました看護婦がまだ三百五名も不足しておる、こういう事態でありますが、これはなぜこうやってこないのですか。ずばりお伺いしたいのは、やはりもっと待遇をよくせにゃいかぬのじゃないですかね。あれだけのことを、夜勤をさせられたりいろんなことをしておれば——まあ昔は白衣の天使だとかいろんなことを言うておだてておったけれども、もうそういう時代じゃないですよ。これは大事な仕事ではあるけれども、あなたたちは白衣の天使だから安くていいんだという理屈はもう成り立たない。そういう点で何か問題があるのだと思う。どこに問題があるのか、ひとつお答えを願いたいと思います。
  324. 若松栄一

    若松政府委員 看護婦の不足という問題は、実は国立療養所だけの問題でなしに日本全体の問題になっております。あるいは大きくいいますと、世界全体に看護婦が非常に不足しております。これはどこの文明国でも共通の問題でございます。といいますのは、ただいま御質疑がありましたように、近年は若い女性の働き場として非常にはなやかな、しかも比較的待遇のいい場が多くふえてまいりました。それに比べまして、看護婦の勤務というものは、夜間の勤務も非常に多うございますし、病人を相手というようなことでもございますし、勤務それ自体が必ずしも愉快なものではない。しかも待遇もそれにふさわしいほど特別よくないということが非常に大きな問題ではなかろうかと思います。  そういう意味で、現在私どもは、一番根本の問題として看護婦の絶対数の不足というものを解消するために、看護婦の養成を非常に努力しておりまして、数年前から非常に深刻になりました看護婦の養成問題をここ数度の間にかなり緩和できるという見通しが一つございます。  それとあわせて、看護婦の処遇改善という面にさらに一そう努力してまいらないと、長期にわたってこの問題を解決することにならないと思っておりますので、そのような方面で努力してまいりたいと思っております。
  325. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いや、方針は大体どこで聞いても同じことを言うのですよね。だけれども、もう少し具体的に、待遇はどういうふうにして、どの程度まで上げねばだめだというぐらいのことが——もうこれは長い間の懸案でありまして、私は新潟で県会をやっておったときも、いつでも問題になるのは看護婦とお医者さんの足らないことなんです。県立病院があるけれどもお医者さんがおらないなんという病院がありまして、そういうことなんだから、もう少し具体的に、せめてこの程度までは待遇を改善するということでなければ、看護婦の養成所へ入っておったって、そこを出れば必ず看護婦にならなければいかぬということはないのだから、それはどっかへ行きます。それは当然なことなんです。だから、その辺でもっと抜本的な対策というものをきちんと立てないことには、これはいつまでたっても解決しない。それで皆さんのお答えは、いつでも検討する、検討するで日が暮れておる。それでは困るので、もう少しその辺具体的な案を立てる必要があると思うのですが、いかがですか。
  326. 若松栄一

    若松政府委員 看護婦の待遇改善につきましては、給与のかなりの大幅な増加、ベースアップという問題と、特に夜間勤務等に対する手当の増額ということでの増加をお願いをいたしまして、人事院と毎年相当、大臣までお出かけいただきまして折衝をしておるわけでございます。ただ国家公務員は、通常民間よりも低い場合に人事院の勧告が出るわけでございますが、看護婦に限りましては、若干ではございますが、民間よりも公務員のほうの給与がいいという状態がここ数年間続いております。しかし、それでいいからといって満足すべきものではございませんので、さらにこの面でも特に看護婦の勤務の状況等とあわせまして改善の努力をやっているわけでございます。今後も相当大幅な改善要求をしてまいりたいと思います。
  327. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 同僚の委員からもいろいろお伺いし、私もいろいろお伺いしてみましたけれども、どうもいま御答弁を願っておる限りにおいては、特会制でなければこれはよくならないというきちんとしたお話もない、計画一つも出しておられない、そこで審議をしろと、こういうような態度では、私たちはどうもこのあれには納得できないわけであります。せっかく結核患者をここまで減らしてきた、もう一歩という段階でありますから、むしろこの際、いままでのあれを一般会計予算をつけ、いままで以上に予算をつけて、そうして数年たてばこの結核というものを日本から追放することができるだろうという段階で——いまこういう政治、経済の情勢の中で特会制に移すということには、どうもわれわれ不安を持たざるを得ないわけであります。さらにまた、患者の人たちあるいはまた勤務しておられる人たちを納得させるわけにはいかないんじゃないか。そういう点で予算措置あるいは今後の計画というものをもっときっちりしまして、そういう人たちをも、またこの委員会をも納得させるような手だてをとった上で、その上で初めてこの特会制というものをここで審議されるのがほんとうだったと私は思う。  そういう点で、まことに残念でありますが、せめてその努力だけは十分にされることを希望して、私の質問を終わります。(拍手)
  328. 田村元

  329. 神門至馬夫

    ○神門委員 いま医務局長のほうから、看護婦の三百五名の欠員補充には、いろいろ社会情勢等の話をして、努力をするというお話でございました。しかし、先ほどの答弁の中には、養療所に入療している結核患者数は毎年約五%程度減っておる。五%も減っておりながら看護婦の不足は〇・五%で、これは過重労働になっておりません、定員に対する実人員が足らないのは一般的社会現象でございます、こういう答弁をしていたのです。ところが、いろいろ視点が変わって、追及の中では、三百五名の欠員に対しては何とかして最善の努力をしなくちゃいけないというふうにあとから答弁が変わっている。最初あなたが言っているように、六万人の入療能力があるところに四万人しか患者が入っていない。そういうふうに患者数は減っておりながら、従業員数はそのわりあいに減ってないのでむしろ楽になっているんじゃないかということで、欠員を積極的に補充しないというあなた方の指導の中に現在の欠員の原因があるんじゃないか。いみじくもあなたの答弁の中にそれが出ておると思うのです。その点については、前とあととの食い違いはどうですか。   〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席
  330. 若松栄一

    若松政府委員 欠員が三百五名ある、この相当数につきましては、いわゆる人事管理上の穴を埋めようと思ってもすぐにはなかなか埋まらぬというランニング欠員といいますか、そういうものが相当数あるということを申し上げたわけでございまして、そのほかに現実にランニング欠員というもの以上に欠員があるということも事実でございます。しかし、看護婦の動勢といいますのは、先ほども申しましたように非常に時期的に波がございまして、大量に卒業生が出てまいります年度当初はほとんど充足していく。ところが、年度末になりますと非常に大きな穴があくという状態でございます。そういう意味で、三百五名という問題は看護婦の充足関係から見ますとそれほど大きい欠員ではないというふうに考えます。しかし、これを意識的にあまり充足しないのではないかというお話でございますが、これはもう看護婦の充足、補充は各施設ともそれぞれ極力努力していて、なおかっこのような結果であるということを申し上げたいと思います。
  331. 神門至馬夫

    ○神門委員 いまもたいした欠員ではない、しかし極力と、こういうようにあなたの本心とことばがときどき食い違っていると思うのです。  これはそのことが今度の問題ではないし、追及はしませんけれども、問題は、特会が独算をしいられるんじゃないか、こういうことによって及ぼす公共性の喪失ということが一番この問題で論点の焦点になっていますね。この問題についてもやはりいま当局のほうからの説明は至れり尽くせり、これが絶対いいんだというふうな答弁がなされている。しかし、反面には、財政硬直化の現状からというようなことで、社会情勢、経済情勢、財政情勢からしかたなくまたやらなければならない一面というふうなものも提案理由の説明の中には言っておいでになる。あるいは答弁の中でもそういうことが言われておりますね。もう一つは、参議院の社会労働委員会におきまして医務局長答弁をされたのをずっと読んでみると、やはり財政硬直化云々ということがその条件の中に入っております。先ほども厚生省は弱いということで、大蔵省の言うままにならざるを得ない、こういうようなことがここでも話しになっていたが、実際問題としては、財政硬直化ということで、特会という経理の扱い方をしいることによって独算にしていくのではないか、この辺がやはり心配される点なんですよ。それで、一番問題になるのは、先ほども話が出ていたように、国立病院が昭和二十四年に独算制をしいられた。この国立病院もあなたの所管にあることには間違いありませんね。同じ所管にある国立病院が、その当時いろいろのことがいわれております。先ほども阿部委員のほうから出ておりましたように、「国立病院十年の歩み」という厚生省発行のパンフの中に、時の厚生大臣林さんがこの特別会計の欠点と利点というものをお話しになっていて、いま二十年たった今日において、そのときの欠点というものがうわべに出て、そして心配したとおりの結果があらわれている。ここにひな形があるわけですよ。どのように答弁をされようとも、国立病院の特会はよくならなかったという現実がここにある。ほんとうに療養所がよくなるものだったら、これは与党も野党もあげて賛成するはずなのです。このようにこぞって反対するということは、そこにやはり国立病院が二十年の歴史を経てよくならないという原因、原因というよりか事実がある。ここにそのような与野党が完全に一致しないという点があるのじゃないかと私は思うのです。  それで、時間がないから簡潔に答弁してもらいたいんだが、このときに出された特会そのものを実施することによる利点と欠点ということで、両方に分けられて例示されている。この例示事項そのものは、国立療養所が今日特会制度としてやられようとしても、やはり同じような問題として適用できるかどうか、との点についてお答え願いたいのであります。
  332. 若松栄一

    若松政府委員 国立病院特別会計法のときの国会における問答の中の利害というものは、大部分は共通すると思います。しかし、国立病院は急性疾患病院であり、療養所は慢性疾患病院でございますので、国立病院の特別会計の難点にあげられておりますような慢性疾患の入院患者を敬遠するとかいうようなことは、実態とは当てはまりませんので、それらの病院療養所の本質的な相違に基づく点は適当でないと思います。
  333. 神門至馬夫

    ○神門委員 そうすると、入院患者性格が違う。回転の早いのと回転のおそいのと違う。この辺のものが違うのであって、あとの条項については大体一緒だ、こういうふうにもう一ぺん確認してよろしいですね。
  334. 若松栄一

    若松政府委員 もう一つちょっと言いますと、生保の患者を敬遠するというようなこともございますし、現在ではむしろ生保や結核予防法の患者というものはまるまる公費でございまして、支払いは一番安定しているといいますか、確実なものでございますので、それらの点が、まだ医療保険あるいは医療保障制度の整っていない時代と現在とではかなり違った感覚で受け取らなければならぬと思います。
  335. 神門至馬夫

    ○神門委員 そういう制度的な変更がもたらす若干の問題は、違いは来たしましょう。しかし、これには基本的な問題が書いてあるのです。普遍的な問題が。その普遍的な条項が、いわゆる利点としては三つ並べ、欠陥としては五つ並べられている。このことについて、大綱としては現在の国立療養所に特会が適用されても大体同じことである、こういうふうにお認めになりますか。
  336. 若松栄一

    若松政府委員 この欠点の中であげられております、たとえば看護婦の養成が等閑に付されるというようなことにつきましても、現実に国立病院相当精一ぱいの養成もしておりますし、国立療養所相当の努力をいたしております。しかも看護婦養成については、病院特会におきましても、療養所の特会におきましても全く一般会計負担していただきます。これらの点について問題があったことは、これは解消しているものと思います。   〔金子(一)委員長代理退席、渡辺(美)委員長代理着席
  337. 神門至馬夫

    ○神門委員 そうすると、看護婦というふうなサブ的な問題があるので、医療制度そのものに及ぼす利点と欠陥というふうなものについては、たとえば、このイ、ロ、ハ——私、ちょっと読んでみます。利点の中で「イ、人員、金銭に機動性をもつことができる。ロ、能率をあげることが要請され、各職員がその能力を発揮する。ハ、運営が合理化され、各種統計が迅速となる。」この点については異論はないでしょうね。
  338. 若松栄一

    若松政府委員 原則的に妥当であろうと思います。
  339. 神門至馬夫

    ○神門委員 そうすると、二として「然しながら、反面欠点があらわれる。特別会計制の最大の欠点は、収入をあげなければ運営が不可能となる結果、必然的に収入第一を目的とするようになり、そのため公的医療機関としての特色が稀薄となり、少い支出で多くの収入をあげようとすることになる。このため具体的な欠点は、イ、診療内容が不適正となり実質的な医療費の高騰を来す。粗悪な薬品を使用し、診療費の徴収を目的として一不必要な治療を行うようになる。ロ、収入のあがらない患者を敬遠し、難病、慢性病を歓迎しない。ハ、治療、診断などの基礎的な研究などの業務が等閑に附され、行った場合もその費用は患者負担となる。ニ、災害時、伝染病流行など、公衆衛生面の活動がおろそかになる。ホ、新設、大修繕等大きな営繕工事が困難となる。」この二の問題についてはどうですか。
  340. 若松栄一

    若松政府委員 二の欠点の中の総論として書いてございます、ある程度もうけ主義、かせぎ主義になるのではないかという御心配については、先ほどもそういうような懸念はあるということを申し上げましたが、それは国立医療機関としての使命にかんがみて厳に慎むようにしたいし、また、医療機関の先生方からそういう意見が出ている、その意味でそれほど心配がない。そのほか、具体的な問題につきましては、これは、時世の違い、制度の違い、いろいろありまして、必ずしも妥当しない面があろうと思っております。
  341. 神門至馬夫

    ○神門委員 総論のほうが特に問題になって、あとの例示している内容については時代の違いによって変わってくる点があると思います。ところが、この総論に心配されている一面というものが、二十年たった今日の国立病院にあらわれているということについてはお認めになりますか。全然それがあらわれていないというふうに断定されますか。
  342. 若松栄一

    若松政府委員 これが全くないかと言われると、全くないとは申し上げませんが、これが著しい弊害になっているというふうには私は考えておりません。国立医療機関というものが、あそこはもうけ主義であるというような非難が起こっているとは私は考えませんので、やはり国立医療機関というものは、かなりの地方における信用ある医療機関として運営されているという点で、それらの非難は当たらないものと考えております。
  343. 神門至馬夫

    ○神門委員 その中に確認——確認というか、あなたのほうからお出しになっている「国立病院十年の歩み」の中に出ている内容は、この整備についても公共事業費として一般会計より支出する予定であるというふうに、施設整備ですね、施設整備についても、今後は一般会計から繰り入れる、こういう予定であるというふうにその中には書いてあるのです。  ところが、二十年たって、私が知っている——私は島根県の出身ですが、松江に国立病院があります。それは軍隊の使っていた陸軍病院です。その施設がそのまま今日に至っても使われていて、おんぼろがそのままになっている。これを特別会計をもっていけば、あなたが先ほど説明されていたように、いままでの一般会計という経理の仕組みではどうしてもどうしようもないから、クッションを設けて借り入れなりあるいは不急不要の土地等を売却することによって先行投資的な投資をする、そして拡大再生産する、こういうあなたのおことばがあった。そういうふうな拡大再生産などということばは、私はけしからぬことばだというふうに考えるのですよ。あるいは先行投資ということばについても、これは非常に当を得ていないことばだ、このようなことが本音ではないかと思うが、よしそれをおくとしても、国立病院が今日二十年たって、そのまま、いま特会の最重目的である病院近代化ということについてまだ何ごともなされていない。国立病院は特会になって二十年たっているけれども国立療養所に関する限りこれを置いておいて、この特会をやることによって優遇しようと考えるのかどうか、この点をお答え願いたい。
  344. 若松栄一

    若松政府委員 ただいま御指摘になりました公共事業費として一般会計より支出されるということは、これはまだ国立病院特別会計に借り入れ金の導入の制度がなかった時代のことでございますので、そういう意味公共事業としてやられるということです。それを今度は借り入れ金を導入いたしましてからは相当急速に整備が行なわれまして、そのために病院療養所の格差が非常に開いてしまったという実情がございます。そういう意味から、今度療養所におきましても、この借り入れ金の導入によってそのおくれを急速に取り戻そうというのが今回の考え方になっております。
  345. 神門至馬夫

    ○神門委員 先ほども百六十ある現在の国立療養所が将来統合される心配はないか、あるいはベッド数においてこれを減少されるような心配はないか、こういうことについて、地の利によってはよくするために合併することもあるだろう、こういうふうな答弁があったが、たとえば棟の問題、建て屋の問題についてはそういうような建設的な統合というものがあろうとも、ベッド数その他については減らすような意図はないかどうか。
  346. 若松栄一

    若松政府委員 結核それ自体につきましては、ピーク時に約六万近い結核患者がおりましたが、それが四万になり、将来は二万、十年後には二万程度になりますので、結核病棟それ自体としては減少させざるを得ない。しかし同時に、新しい医療需要が起こってまいりますので、それに即応して新しい性格の病棟もどんどんつくっていく、そういうことで、総体としては、先ほどことばが悪いとしかられましたけれども拡大再生産的な考え方でやっていきたいという趣旨でございます。
  347. 神門至馬夫

    ○神門委員 拡大再生産というのは、現在のベッド数よりかふやしていく、こういうふうに解釈してよろしいのですか。
  348. 若松栄一

    若松政府委員 長い将来から見まして、国立医療機関診療能力拡大したいという趣旨でございます。
  349. 神門至馬夫

    ○神門委員 二十四年に特会になって以来の国立病院、そのときの病院数と現在地方公共団体に移譲された病院数、この数字をちょっと示してもらいたい。
  350. 若松栄一

    若松政府委員 国立病院で地方に移譲したものは九つでございます。  なお、国立病院療養所との間には、結核医療の趨勢によりまして病院から療養所に転換し、また、療養所から国立病院に転換するものがございまして、現在までに国立病院から療養所に転換いたしましたものが累計四十一施設、逆に療養所から国立病院に転換いたしましたものが二十四施設ございます。
  351. 神門至馬夫

    ○神門委員 いまの国療と国病の間の転換というふうなものについては所管省が大体一緒ですから問題はないですが、九つのものが地方自治団体に移譲されているというこの事実ですね。この療養所国立になってそういう地方自治団体に移譲されない、させない、こういう確約はできますか。
  352. 若松栄一

    若松政府委員 国立病院というものをどう考えるかということが基本的な問題でございまして、地方移譲の法律ができました時代におきましては、国立病院というものは高度の中心的な医療機関だけをやればいい、一般医療医療施設は地方でやるべきだという考えがありましたために、地方移譲が行なわれたわけでございますが、最近の現実におきましては、なかなか地方がこれを受け取ってもくれませんし、現実にそれらの施設がその地方にそれぞれの段階におきまして根を張ったといいますか、地方の中心的な医療機関になっておりますので、なかなか地方移譲が困難な状況でございます。また、積極的に現在地方移譲しようという考えは持っておりません。
  353. 神門至馬夫

    ○神門委員 考えを持っていないということ、すなわちしないと、こういうふうに言えますか。
  354. 若松栄一

    若松政府委員 特殊な事情等がありまして、地方からぜひ公立でやりたいというような意見が出てまいりまして、もし妥当な場合があるとすれば考慮してみたいと思います。
  355. 神門至馬夫

    ○神門委員 その地方自治体のほうが積極意思を持って要請をする以外にはそういうことはない、こういうふうに確認してよろしいですね。
  356. 若松栄一

    若松政府委員 現在、国のほうから積極的に地方に押しつけようというつもりはございません。
  357. 神門至馬夫

    ○神門委員 それではもう一つ、独算という問題について聞いてみたいと思うのですが、先ほど阿部委員の質問の中にこの繰り入れ率の変動、それはいろいろなこういうような条件があったから変動したんだ、こういうふうにお話があった。ところが、独立採算制というふうなものは一体どういうふうにお考えになって——独立採算にはしないんだというふうにお答えになっているが、これはどういうふうにお考えになっているのかということが問題になると思うのです。独立採算というのは一般予算、国の助成というものを一切なくして、完全に病院が企業としてその範囲内で採算をする、こういうことのみを独算あるいは独算的状態にしない、こういうふうにお考えになっておりますか。
  358. 船後正道

    ○船後政府委員 一般的に独立採算制という概念で理解されておりますのは、その特別会計のあげる自己収入の範囲内で歳出を考えていくということだと思います。
  359. 神門至馬夫

    ○神門委員 そうしますと、五〇%の繰り入れ率を五%にしても、これは独算をしいておりませんと考えますよ。そういう考え方ですか。
  360. 船後正道

    ○船後政府委員 療養所に対する繰り入れ率は、これはいろいろな要素がございまして変動すると思いますが、ともかくも収入を前提といたしまして、その範囲内でしか歳出を考えないというたてまえと、そうではなくて、円滑なる運用をはかるために、まず歳出を考えまして、それに必要なる財源をみずからの自己財源、一般会計繰り入れから考えるということとは大きな違いがあると考えております。
  361. 神門至馬夫

    ○神門委員 先ほど言ったように、二十四年に国立病院にこの特会を適用するときに、制度化するときに欠点としてあげられた一面というものは、いまの医務局長もお認めになっている。お認めになって、それがより採算をしいられるように公共性を失ってくるような一面が出てくるのは間違いない、こういうふうにわれわれは考えられるのであります。そういうときにこの繰り入れ率を、いわゆる国からの助成そのものをだんだん大蔵省の意思としてはしぼってくる。そこには一般会計そのものの繰り入れ金が何ぼかの率としてはあるけれども、それは実態としてはすでに独算制になっていると思うのですよ。この辺が実は——いや、これは独算制ではなしに、独算的経営に追い込まれている、こういうふうになってくると思うのです。大蔵省としてはこのような繰り入れ金がないほうを期待するのか、あるいは繰り入れ金をどんどん要請してくるようなものを期待されるのか、いずれですか。
  362. 船後正道

    ○船後政府委員 非常にむずかしい御質問でございます。病院の経営をどう一般的に考えるか、特に国立病院の場合には、これは総合病院でございまして、いわば公私立病院を通じましてかなり標準的な病院でございます。こういう標準的な病院がみずからの通常経営費を通常収入でまかなえないというような状態は一体何であるか、原因は何にあるか。いろいろなところに原因があろうかと思いますが、一つにはやはり診療報酬体系の問題があると思います。したがいまして、私どもそういった総合病院ではやはり経常支出は経常収入でまかなわねばならぬのじゃないだろうか、かように考えております。しかし、国立病院といたしましていろいろな研究もございます、看護婦の養成もございます。そういった公的な使命を果たす分につきましては、これは当然一般会計負担しなければならない、かような考えを持っております。
  363. 神門至馬夫

    ○神門委員 そうしますと、先ほどお話があったように、特会にすることによって先行投資をやって拡大再生産をしていくのだ、全く財政硬直化現象とは違った非常に積極的なかけ声があるようなんです。そういうふうにたくましく病院をどんどんつくっていく、借り入れ金もやっていく、必然的に現在の先行投資的な病院は経営が困難になるのだ、民間病院においてもそうなんです。ほんとうの意味においてあなたがおっしゃるようなやり方をするならば、必ずこれは赤字が累積してきます。繰り入れ金というものがどんどん拡大をしてこなかったら、ほんとうの経営をやっておいでになるとは思われないと思うのです。ましてや参議院の社労委において医務局長答弁しておいでになるように、この結核患者というものは急減する。急減する中で、それならばこの医療需要というものはどういうふうに考えられていくのか現在想定できない、こういうことを言っておいでになる。収入というふうなものがはっきり計算されないままにどんどん先行投資的な盲目的な投資をして、言うなれば国民奉仕をほんとうにやっていかなければならぬ、そういうようなときには積極的に何かの方法によって大蔵省はそういうものについてはどんどん見ていく。もしかそういうようなやり方が消極的なときには、大蔵省のほうはより積極的にそういう施設整備をせいというふうな激励をしていく、こういう用意があるかどうか。
  364. 船後正道

    ○船後政府委員 療養所につきましては、先ほど来申し上げておりますように、この老朽化しつつある施設を急速に整備しなければならないという重要な問題がございますので、本年度の療養所の特会におきましては施設整備費として約六十三億円を計上いたしております。将来ともこの点につきましてはさらに努力を重ねていきたい、かように考えております。
  365. 神門至馬夫

    ○神門委員 いや、努力じゃなしに、そういうふうにどんどん設備先行投資をして施設整備をしていく、こういう要請が出てきさえすれば、大蔵省のほうとしてはあのようなりっぱなことをおっしゃっているのだから、あなたのほうからはチェックなりカットせずにどんどん積極的に応じていく意思があるのかどうか。
  366. 船後正道

    ○船後政府委員 先ほど医務局長から、特別整備の五カ年計画として総額二百三十億程度計画お話がございましたが、私どももまだ具体的な話は聞いておりませんけれども、おおむねそういった線に沿って具体案を策定してまいりたい、かように考えております。
  367. 神門至馬夫

    ○神門委員 時間が来ましたから、この辺でやめます。
  368. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員長代理 村山喜一君。
  369. 村山喜一

    村山(喜)委員 厚生大臣もお見えでございますので、専門的な問題については明後日、社労の諸君が連合審査に参りますので、その際にお聞きをすることになろうと思いますから、私は大まかな概括的な立場から問題を提起しながら、大臣の御所見もお伺いをいたしてまいりたいと思います。  初めに、一九五九年に医療機関整備計画というものが厚生省にある、つくられたという話をわれわれは聞いているわけでありますが、それは国立病院を頂点にいたしまして、府県中央病院、それにその下に公的な資本によるところの地区病院、さらに地方病院、その末端の診療機関といたしまして開業医による診療所、こういうようなものを全体の医療制度の基本的な計画としてつくられた。これは医療制度調査会がたしか答申を出した線に従ってそのような一つの推進計画をつくられたものだとわれわれは聞いているのでございますが、それは今日なお生きているものであるのかどうかということについて、これを説明を願いたいのでありますが、これは医務局長から答弁願います。
  370. 若松栄一

    若松政府委員 病院整備計画といたしまして、当時まだまだベッド数が少なかったのでございますが、およそ百万床計画という計画を立てました。その百万床のベッドを機能的に体系化していくというたてまえから、県の段階の中央病院あるいは地区の病院、あるいはさらに小地域の診療施設というような体系化を都道府県に対して指導したことがございます。
  371. 村山喜一

    村山(喜)委員 それは、今日なお生きておりますか、どうですか。その計画はもう死んでしまったわけですか。
  372. 若松栄一

    若松政府委員 相当長期計画でございまして、百万床計画というような計画でございました。現在約八十数万床でございますが、まだそういう意味の百万床計画には達しておりません。現在そのころの具体的な計画をそのまま実施しているという段階ではございませんで、この点はある程度しり切れトンボ的になっておりまして、それと実は逆に、ガンの専門病院であるとか救急病院であるというような特殊専門病院の体系化ということに現在は重点を向けてやっておる段階でございます。
  373. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますと、その雄大な計画というものは今日なお生きているんだ。これは一つの目標として、そういうような線に従って立体的に医療機関制度というものを組み立てていくんだという構想はお持ちなんですね。  そこで、厚生大臣に私はお尋ねいたしますが、この国立療養所というものを、将来どういうふうな形の中でその中に位置づけていこうとお考えになっておるのか。話をお聞きいたしますと、厚生大臣は結核についてこれを撲滅していこうというような非常に雄大な考え方をお持ちだというふうに承っておるのでございますが、その国立療養所の位置づけというものをどのような立場においてとらえておいでになるのかということをお伺いしたい。
  374. 園田直

    ○園田国務大臣 まず最初に、村上委員から申されました将来の病院体系の目標でございまするが、これはすでに西欧諸国等では実施しておりまするが、大きな病院を中心に数少なく整備をしていく。それを核として、いまおっしゃったようなことでやっております。英国等でも小病院を統合して、そして核をつくっておる。ところが、それは医療制度が大体まんべんなく回ったあとの話でありまして、残念ながら、私個人の考えでは、日本病院施設医療制度はそこまでまだ十分いってない。むしろ国内にまんべんに施設をする時期であると考えております。  したがいまして、国立病院一般治療のほかに医療技術の向上という国立病院としての特別任務がありますが、その任務に対する寄与は、正直にいって、いまのところまだまだ国立病院としての機能を発揮していない。将来はそういう目標を持たなければなりませんけれども、しかし、現在の段階でそれを無理して統合していくということは、これは考えなければならぬので、審議会から出された案というものを私も考えておりまして、これは目標ではあるが、現実においては相当食い違いがある。このように考えておるわけであります。  なお、療養所の位置づけでありますが、療養所というよりも、ただいま療養所が受け持っております結核の問題でありますが、結核は事務当局では逐次減ってきたとは言っております。しかし、結核対策が一応の任務が終わったものとは考えておりません。この時期にこそ、結核撲滅の方向に向かって重点を注いでいかなければならぬ。本年度も昨年度よりも三十二億予算をつけ加えてこの対策に努力をしておることでございまするが、将来は逐次功を奏して結核が終えん近くになったならば、複郭陣地に追い込めるという意味で、いまのハンセン氏病のようなことで追い込めていかなければならぬ。したがって、療養所もそういう方面から、特別会計になりましても、国立病院とは違った意味において将来格づけをしていかなければならぬ、このように考えております。
  375. 村山喜一

    村山(喜)委員 厚生大臣の雄大な計画には敬意を表するわけでありますが、それをまかなうのにはやはり金が要るわけであります。それの予算的な裏づけをしていかなければなりませんので、われわれといたしましても、この立場から逐次質問を申し上げてまいりますが、そこでこの際お伺いをいたしたいのは、せんだって参議院の、これは予算委員会だったと思いますが、いわゆる医療法の七条の二項によります施設の規制といいますか、公的病院の病床の規制をやっているのではないかという質疑が行なわれまして、それに対する医務局長答弁も、私速記録を拝見したのでございますが、その中で今日人口規模に対するいわゆる医師の配置数の基準からいった場合に、人口規模別段階において一号地とかあるいは二号地とかいう区別があるわけでございますが、これを見てまいりますると、現在においては過密地帯と過疎地帯は適正な医療機関が配置されていない、中間地方都市においては過剰な状態になっている、こういうような統計が示されておるようであります。そうなってまいりますと、国立療養所というのは今日大都市周辺あるいは過疎地帯、こういうようなところにあるわけでありますが、これは将来のいわゆる整備統合計画というものにも関係をしてまいろうと思いますけれども民間病院は、その中で話を承りますと、医療金融公庫の貸し付けで規制をしているのだ、調整をしているのだということでございました。はたしてその医療金融公庫の貸し付けで調整ができるかどうかということについても疑問があります。  なお、こういうような状態の中にあって、これを一体どういうふうに今後是正をしながら、その中において国立病院なり国立療養所というものの配置をどのように考えているのかという点について、これは説明を当然必要とすると思うのでありますが、全体的なマクロ的な説明でけっこうですから、そういうような計画的な運営という立場からお示しを願いたい。
  376. 若松栄一

    若松政府委員 御指摘のように、現在日本医療機関の配置がかなりアンバランスになっております。人口の稠密な地帯と過疎地帯が医療機関が非常に少ないということでございまして、これを是正するために過疎地帯に対しては公的医療機関の増床に対して国が助成金を出してこれを支援し、また医療金融公庫におきましては、そういうような過疎ベッド不足地域に対して有利な条件で貸し付けを行なってその促進をはかる、一方すでに標準よりも超過しているような地域については公的医療機関の新設あるいは増床を規制し、また、民間医療機関についても医療金融公庫等の貸し付け条件を酷にし、また増床等は認めないというような態度でこの調整をとっているわけでございます。  その中にあって、国立療養所が特に比較的過疎地域に多いという点から、国立療養所というものがそういう過疎地域あるいは病床不足地域における医療機関として今後果たすべき役割りが増強されてくるものと考えております。そういう意味で、結核患者それ自体は減る、結核ベッドとしては減るかもしれませんけれども、そのような需要が肩がわりして、総体として国立医療機関診療能力を落とすことは適当でない、こう考えておるわけであります。
  377. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、医療金融公庫の貸し付け状態を見ていく場合に、医療金融公庫が設立された目的というのは、いま医務局長から説明がありましたように、離島であるとかあるいは山村僻地であるとか、そういうような医療機関に恵まれない地域に低利の長期の資金を貸与してやっていくという構想のもとに出発をしたわけです。ところが、実際の運営は必ずしもそういうように運営されないで、最近においては非常に差額徴収を基調とする大病院施設のデラックス化が流行現象になってきているわけであります。そういうようなものに使われているのではないかと私たちは思っているのですが、現在の運営のやり方は当初発足をしたときにおいてつくられたものに合致しているとお考えでございますか。
  378. 若松栄一

    若松政府委員 医療金融公庫は病床不足地域あるいは僻地、辺地の医療機関を助成するというだけの目的ではございませんで、医療機関全体の整備促進をやるにあたりまして、公的医療機関等に対しましては厚生年金関連融資、あるいはその他の財投関係でまかなっていく民間の私的な病院につきましては医療金融公庫で助成していくということでございまして、医療金融公庫は本来僻地あるいは辺地、不足地域だけの問題ではございません。しかし、現在はそういうベッドの均等化という考え方も入れまして運用しているということでございます。
  379. 村山喜一

    村山(喜)委員 最近、私はこの医療の中身を見てまいりますと、高度の近代的な医療を自由に享受できるのは一部の富裕層のみになっておるという事実がある。だんだんにデラックス化した施設ができ上がっていく中で差額ベッド方式を基礎にしてやろう、そういうようなやり方がきわめて多過ぎる。だから、国民医療はそういうような姿の中からゆがめられていると私は思うのでありますが、厚生大臣は、そのようなデラックスな施設に狂奔して差額ベッド方式を基調にするような個人病院が増大することについてどうお考えでございますか。
  380. 園田直

    ○園田国務大臣 金融公庫が私的病院の規制をやっております以上は、御指摘のとおりに金融公庫設立の本旨に立ち返って、この際十分厳重に検討しなければならぬと考えております。
  381. 村山喜一

    村山(喜)委員 次に質問を進めてまいります。療養所に参りますと、医療法上の病床数と訓令定床とそれから実数は幾らだということをわれわれは聞くのであります。いろいろ話を聞いてみますと、訓令定床というのは予算上の人員の配置とかその他患者の措置、そういうようなものを見ている定床数であるということであります。そこで、現在はこれはどういうふうになっているのですか。療養所の設置個所数、それから医療法上の病床数、訓令定床、それに実数、これを説明願いたい。
  382. 若松栄一

    若松政府委員 四十三年度に計画しておりますものは、医療法上のベッド数というのが建物でございますので、六万三十七床、これに対して訓令病床は五万二百六十床、それに対して四十一年度の年間の実績患者数は四万一千九百七十九人ということでございます。
  383. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこでお尋ねをいたします。あなた方が配られた資料によりますと、先ほど武藤君のほうからも資料の追及がございましたが、これによると五万一千床のうち入院愚者数三万八千名、一年に千五百人くらいずつ減少をしていく、こういうことでございましたね。すると、四十一年度末には四万一千九百七十九人ですから、四万二千人はおった。それが一年たった後においては三万八千人に減ったんですか。
  384. 若松栄一

    若松政府委員 四十二年の九月現在の結核患者数が三万八千六百三十二名ということでございまして、精神とそれからその他の患者を入れますと四万五千七百八十一という数になります。
  385. 村山喜一

    村山(喜)委員 その四万五千七百名の数を今度は幾らに見積もるのですか。四十一年度末は四万二千名、四十二年の九月は四万五千名。そうすると、ふえているわけですね。四十三年度は何か千五百名くらい減少を見込んでいるんじゃないですか。
  386. 若松栄一

    若松政府委員 四十三年度に予定しておりますのは、結核、精神を含めまして四万一千八百五十一を予定いたしておりまして、最近一般患者あるいは重症心身障害等の収容が軌道に乗ってまいりまして、それらも入れますと四万三千五十六という、そういう計算の基礎でございます。
  387. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしましても、やはり千五百名あまり減りますね、四十三年度。間違いありませんね。
  388. 若松栄一

    若松政府委員 いわゆる予算一つ考えております患者はそれだけ減るということでございます。
  389. 村山喜一

    村山(喜)委員 その中で、結核患者は幾らになる、予定でございますか。
  390. 若松栄一

    若松政府委員 結核患者を三万九千五百五十と予定いたしております。
  391. 村山喜一

    村山(喜)委員 九月現在においては、これは一月三十一日付の医務局の、われわれがいただいた資料ですから、これによると三万八千名、四十二年の九月は。それが今度四十三年度は、その全体の数は千五百人減るにもかかわらず三万九千五百五十人になるのですから、千五百五十人の増、こういうようなことになりますね。いいですね、それで。
  392. 若松栄一

    若松政府委員 先ほど四十二年の九月に三万八千六百三十二と申し上げました。これは九月の時点でございます。四十二年は、実は年間平均といたしましては四万一千七百三十六を予定しておりまして、四十三年の年間平均は、ただいま申し上げました三万九千五百五十、こう予定しておるわけでございまして、年度当初それぞれ予定しております数は、千八百程度減っておるわけでございます。
  393. 村山喜一

    村山(喜)委員 あなた方がわれわれに資料をくれるから、私は、三万八千人しかいない、その三万八千人が、ことしは結核撲滅の非常に大きな構想を持って園田厚生大臣が就任をされたので、それが三万九千五百五十人ということになる。だから、千五百人ぐらいのいわゆる結核患者を新たに収容をして、結核撲滅の第一歩を踏み出されたのだなと思って、先ほどお伺いした。ところが、それが逆に千八百人減る。全体として千五百人減る中で千八百人は結核患者が減るのだということになるわけですから、これは結核を撲滅しようというその考え方に対して非常に後退をすることになるのじゃないですか。一体これはいまの医療法上の定床から見ましても、あるいは訓令定床から見ましても、患者数が少ないのにそれをさらに下回るであろうという計画を立てて、あなた方はそれで結核対策を重視しているということが言えるのですか。
  394. 若松栄一

    若松政府委員 明年度の予定をしております三万九千五百五十というのは、昨年度の当初に比べますと千八百名ばかり減っておる。しかし、四十二年九月現在、あるいは後半もほぼ似たものでございますが、それらの数字に比べますと増加しておる。四十二年の平均よりはかなり下がりますけれども、何とか努力をして患者の収容をはかりたいという趣旨でございます。
  395. 村山喜一

    村山(喜)委員 何とかして患者の収容増をはかりたいというのだったら、これは千八百人年度間で落とすということは、計画自体がおかしいのじゃないか。これはおかしいですよ。厚生大臣、おかしいとはお考えになりませんか。
  396. 若松栄一

    若松政府委員 われわれはなるべく落とすまいと努力をしておりますけれども、実績が二千程度この一、二度は下がっておりますので、そこまでは落としたくないということで、できるだけ食いとめていきたいという考えでございます。
  397. 村山喜一

    村山(喜)委員 それはごまかしの答弁というものです。やはりあなた方が結核対策について全力をあげていく、いま三割の空床がある、その空床を満たすだけの努力をしようというのであるならば、少なくとも四十二年度の平均よりも下回った計画を出すというのはおかしいじゃありませんか。もう結核患者はいなくなったのですか。さっき厚生大臣は、ハンセン氏病と同じような、そういうようなところまで追い詰めていきたいという決意を表明された。事務局がわれわれに説明資料として出されたものは、昨年度よりも千八百名下回る計画を出してやろうとしていらっしゃる。これは矛盾するじゃありませんか。
  398. 若松栄一

    若松政府委員 私どもとしても、できるだけ多数を収容し続けてまいりたいと思っておりますけれども、それにもかかわらず、この一、二年は年々二千名ずつ患者が減っております。その実情から考えまして、かなり努力いたしましてもさらに去年よりもふやすということは事実上困難であろうと考えておるわけであります。
  399. 村山喜一

    村山(喜)委員 じゃ、いま結核患者は幾らおるのです、そうして入院をしなければならない患者数は幾らですか。もう命入によって強制収容をしなくてもいいというような、そういう人たちはどうなっていますか。
  400. 村中俊明

    ○村中政府委員 お答えいたします。  昭和四十一年末で、現在結核患者は登録制度を実施いたしておりますが、これで登録された患者の総数が約百四十万人ございます。この中で、感染性の結核患者と感染の可能性のあまり心配のない患者と、こういう区分けをいたしますと、二十二万九千人が感染性の結核患者、それから非感染性の結核患者が五十九万人、こういう数字になっております。この中で現在入院しておりますのが、工十二万九千名の中の約半分の十一万二千名となっております。
  401. 村山喜一

    村山(喜)委員 四十一年度の新登録の結核患者数は幾らですか。
  402. 村中俊明

    ○村中政府委員 昭和四十一年度末で、一年間に登録された患者の数が二十七万九千名、こうなっております。
  403. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで厚生大臣、毎年の新登録結核患者というのは大体三十万台、二十七万九千ですから、二十八万おる、大体三十万人、そうしていま百四十万の結核患者がおる。その中で、他人に感染をさせるおそれのあるものが二十二万九千人おる。うち、入院をしているのは十一万二千人、あと残りは放置されているわけですね。  そうなってまいりますと、この療養所のいま空床になっている状態、これが非常に問題だと私は思うのであります。三割は空床になっている。一体なぜ入院ができないのか、なぜ空床のまま埋まらないのか。そうしてなお、厚生省の事務当局は、一生懸命努力をするんだけれども二千床の減少は免れません、それを下回る千五百床減るであろうという計画をつくって予算書を出しておいて、一体これに対する責任はだれが負うていただけるのですか。
  404. 園田直

    ○園田国務大臣 結核患者が年々減っていることは事実でありますが、その減っている減り方とそれから入院患者の減り方との間に差がある、これは入院患者が減っている数をもって結核患者が減っておるという判定をすることは間違いであるということは御指摘のとおりでございまして、これは一つは、いまの国立療養所設備が完全でないということ、もう一つは、結核患者で養療所に入所している人の生活の保障がまだ十分でないという点を率直に反省をしなければならぬと考えます。したがいまして、御指摘のとおりに、今年度ベッド数のごときは少なくとも昨年度の数を確保すべきであるにもかかわらず、いままでの平均の減り方よりも下回った減り方ではあるが、予算上減らしたということは、私の責任であると考えております。
  405. 村山喜一

    村山(喜)委員 厚生大臣のその謙虚な御答弁をいただくと、私も追及のやいばが鈍りますが、しかし、これは私はおかしいと思うのです。新規の登録結核患者はそれは確かにだんだん減ってはきておりますが、なお三十万人に及ぶという事実、しかも感染をさせるおそれのある患者が在宅患者として今日十万をこえているという事実、これを見て、今回は特会制によって新しい近代的な設備をつくろうというのでしょう。これがことしから五カ年計画の第一年次で来るわけですね。そのために特別会計制度というものに移していくんだ、こういうふうに説明されておるにもかかわらず、いまおっしゃった設備近代化はことしからできるわけでしょう。できるにもかかわらず、なおこの千八百名も減少をする予算を組まなければならないということは、生活保障が不十分であるという、これが原因になって入院ができないということにならざるを得ないわけです。あなた方、医務当局の方は一体今後どういうような計画をお持ちなんですか。結核患者をどういうふうにして、厚生大臣が、言われたその雄大な構想に基づいた方向でどのように具体的に実現をしていく計画なんですか、それを示しなさい。
  406. 若松栄一

    若松政府委員 国立医療機関あるいは一般病院につきましても、みずから患者をさがして歩くという立場にはございません。現在、結核対策といたしまして健康診断を行ない、また、医療機関結核と診断された者は保健所に登録し、それに対して保健指導を行ない、病状によりまして治療をすすめあるいは入所をすすめるというのが結核対策の公衆衛生活動でございますから、そういうルートを通じまして、できるだけ入院の必要な患者については入院をすすめる、また、その際に医療費の問題のある患者については、それぞれのケースワークをして命令入所なりその他の手だてを教えて指導するというやり方をやっておりますので、それに呼応いたしまして、療養所の医師等も保健所と十分連絡をとって、そして必要な者についてはできるだけ入所させる援助をしていくという形で努力をしてまいることにいたしております。
  407. 村山喜一

    村山(喜)委員 だから患者の諸君が、特会制度になっても結核患者を活療をする、そういうようなものがよくなるとは考えていない、こう言って署名をしたりして騒いでいる、それは事実としてこういう数字の上にあらわれてきているということを、あなた方自覚をしてもらいたいわけですよ。これは厚生大臣もそういうような雄大な構想をお持ちになることもわれわれも賛成であります。それをわれわれも支援をしたいと思います。しかし現実は、そういうような一歩ずつ前進をしていく姿であるならば私たちもそれをほめたたえたいと思いますが、残念ながら計画によると二千名を下るというそういう状態になる。これでは何のために国立療養所の特会制度というものをつくらなければならないかという疑問点に突き当たるわけであります。  この点については、今後次の資料をお出しいただきたいと思います。先ほど阿部委員から質問がございました五カ年計画近代化計画をつくる、その近代化計画をつくるのは施設設備だけではないと私は思います。それに伴って患者をどういうふうに増員吸収をしていくという計画をお持ちであるのか。その全体的な財政計画というものを当然あなた方はお持ちにならなければおかしいのであります。ことしの予算はこういうことになっても、来年度の予算の中においてはそれよりももっと前向きの形でここまでいこうじゃないか、そしてその次の年にはこういうふうにいこう、そういうものがわれわれのところに提示されて初めて全体的な医療国民にサービスする体制ができ上がるわけでありますから、それをお持ちでないというのはうそでありますから、金曜日の朝までに出していただけるかどうか、御返事願います。
  408. 若松栄一

    若松政府委員 施設整備、同時に患者の収容対策というものを含めた構想ということでございますが、私ども現在いろいろな見通しは持っておりますので、そのような見通しに基づくものを一括して整理してみたいと思っております。
  409. 村山喜一

    村山(喜)委員 それは出していただけるということでございますから、それをまたもとにしてあとの委員が質問をするでありましょうから、私はこの程度でそれをとどめます。  そこで、予算関係で質問をいたします。四十二年度の診療収入は百四十一億である。ところが、今回は千五百床ベット数を減らすという計画にもかかわらず、四十三年度は百八十一億円のいわゆる診療収入の見積もりがなされております。ということは、四十億円増収をするという計画になっているわけであります。とするならば、一人当たりの診療費というものは、これはどういうふうに変わってくるのですか。特にことしの場合は、今度の計画によりますると、今後入院をする者については二割引きの軽質患者の取り扱いというものは中止するということでございますから、その内訳について今日までの療養費と今後の療養費のその区分別の数字を示していただきたい。それから、そのよって来たる一人当たりの単価というものが、それは当然療養費が上がっているわけでございますから、その療養費が上がるのは何のために上がるのか、これも説明を願いたい。
  410. 若松栄一

    若松政府委員 御指摘のように、明年度の診療収入は約四十億増を見込んでおります。この内訳といたしまして、従来からいろいろな医療の進歩、検査の進歩、あるいは薬の開発というようなことで、いろいろな要素による自然的な増加があります。大体、年々増加している率がございますので、それらの経験を見込みまして、自然増収として約十五億六千三百万円を見込んでおりますし、昨年の十二月、診療報酬の改定がございましたために、本年度の予算はその診療報酬の改定を通年化いたしますので、その診療報酬改定分として十三億九千九百万円、それに診療報酬の改定と同時に薬価の減がございましたので、それで減額見込みとして四億七千二百万円、さらに先ほど来お話の出ております割引廃止に伴いましての増収が六億四千三百万円、また新しく基準加算を実施することに伴いまして七億三千五百万円、その他、児童福祉その他の重症心身関係等の費用もございますので、その分が一億三千百万円程度、合計四十億の増収を見込んでいるわけでございます。  これに対して、したがって個人の一人当たりの単価が上がるであろうということでございますが、これは四十二年度におきましての予算の当初積算の根拠といたしまして、一人当たり、入院の場合百四・五点——これは点数に十円かけますので千四十五円ということになりますか一を見込んでおりまして、これに対して四十三年度におきましては、これのいわゆる自然増分を見込んだものが百十一・九点、それにエタンプトール、カプレオマイシンというような新しい薬の使用が通年化いたしますので、この分を平均いたしまして四・五点、それに診療報酬改定分といたしまして九・七二点、合計百二十四・四点というものを考え、それにさらに基準加算の二十九点、これで約千五百円程度になるわけであります。
  411. 村山喜一

    村山(喜)委員 それは一日当たりですね。一日当たり千四十五円のものが千五百円程度になる。五割の医療費の値上げ、そうなってまいりますと、これは患者ごとによって違うわけですね。命入患者の場合、これは幾らに見ておるのか。それから国立療養所の入所患者の場合、割引廃止をする患者、それから割引を継続する患者、これは単価が違うわけですから、それを説明をしてもらいたい。
  412. 若松栄一

    若松政府委員 一日当たりが千五百円程度になりますので、私ども積算の根拠として見込んでおりますものは、割引を完全に廃止して基準加算も全部実施いたすといたしますと、その場合、月の医療費が四万六千百四十円程度、またそれに対して、たとえば継続入院患者等で割引も継続し、基準加算も実施しないといたしますと、二万九千八百五十六円ということになります。
  413. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、一日五割も入院費が引き上がり、そして療養をする患者の諸君が心配をしているのは、こういうふうになってきた場合に、これが個人負担に転嫁されるのではないかという点が第一点。第二点は、個人負担に転嫁されないとしても、もう君は菌も出なくなったから、そろそろ退所してもらいたいということで、ケースワーカーやその他を通じて、あるいは病院の独立採算という立場から見て、あるいは各市町村の国保等の財政状態から見て、まだ自分は療養をしたいと考えているにもかかわらず、もうおまえはなおったから出ていきなさいということで追い出しを受けるのが早まるのではないかという心配があるのであります。この点は心配は要りませんか。
  414. 若松栄一

    若松政府委員 その割引廃止あるいは加算の実施によって相当差が出てまいりますけれども、先ほども出ましたように、個人の負担にはね返るような患者、つまり国保の患者あるいは健保家族というものについてはこのような影響がないようにするということでございますし、また、そのような値上げのはね返ってくるものは保険者あるいは公費でございます。そういう意味で、公費の部分がそのような金がかかるから、返さるというようなことがあるかないかという心配でございますが、公費をもって入所させるのは大体保健所でございます。また退院させるべきやいなやということを決定するのは療養所の主治医でございますので、そこら辺のところにそれぞれ決定を行なうものが違っておりますので、そのようなことはまずまず起こるまいというふうに考えます。
  415. 村山喜一

    村山(喜)委員 まずまず起こるまいじゃ、心配があるのですよ。  そこで厚生大臣、そういうことはしない、させない、これは大臣から言明をしてもらわなければ、いま療養をしている患者諸君も安心して治療ができないし、そしてまた、療養所の医師にしても、予算上、会計上処理ができないというようなことで、独立採算的な運営はやらないということを言っているにもかかわらず、そういうようなことで締め上げられたらやらざるを得ないという羽目に追い込まれる。こうなってきたら、われわれが心配をしているような結果が生まれることになる。だから、厚生大臣としてはそういうような措置はしないということを言明願います。
  416. 園田直

    ○園田国務大臣 問題は、これがだんだん独立採算制に移行していくかどうかという問題であると考えておりますが、この点については十分そういう点の心配をいたしましたので、財政当局とも、独立採算ではなくて、それぞれの年次の経営の収支は一般会計から繰り入れるということになっておりまするので、その点には運営行政上も十分注意をしてやっていきたいと考えております。
  417. 村山喜一

    村山(喜)委員 一般的な問題を全体的な財政上の問題から大臣は説明されるわけですが、入院患者にそういうような心配は杞憂である、やはり心配をしているから五十万くらいの署名が集まるのですよ。だから、そういうようなことは心配は要らないということを、あなたは大臣の職を賭してでも明確に国民に告げる必要がありますよ。これをお答えいただきたい。
  418. 園田直

    ○園田国務大臣 ことばは悪いが、治療を必要とする患者の方々を追い出すようなことは絶対にさせないことを申し上げておきます。
  419. 村山喜一

    村山(喜)委員 ありがとうございました。  大蔵大臣、そういう立場で厚生大臣はおやりをいただくそうでございますが、あなたとしても、ことしは二百五億一般会計の中から出していただきました。将来においても当然そのような事態が起こらないようにやるということが言明できますか、いかがですか。
  420. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはもう特殊な治療でございますので、この特殊性に基づいて独立採算制をとるというようなことは、これは性質上不可能でございますので、適正な経費の支出による不足というようなものについては、これはもう一般会計繰り入れをもって対処するという方針は変わりありませんので、財政上の理由から、いま厚生大臣が言われましたように、患者を早く出すというようなことは絶対にあり得ないと思っています。
  421. 村山喜一

    村山(喜)委員 ではだんだん煮詰まってまいりましたので、次の質問に入ります。  私は、この際、憲法八十五条、それから財政法の三十条、三十二条、会計法十四条の関係についてただしておきたいと思います。憲法八十五条によりますと、政府は歳出予算による以外にはいかなる支出もできないということになっております。財政法にしても会計法にいたしましても、その内容をそれぞれ裏づけるものでございます。  そこで、財政法の二十四条あるいは憲法八十七条の立場から見てまいりまするならば、予備費の使用についても、予見しがたい予算には充当はできる。この場合に、私たちは今日まで審議を進めておるわけでございますが、残念ながら本予算が成立をするのが十五日、それからこの法案が通るのは若干それよりもおくれるのではないかという事態を予想しなければなりません。ところが、巷間伝えられるところによりますると、厚生省としては前渡金支出の措置をすでに終わったから心配は要らないというようなことを言う人がおるとわれわれは聞いているのであります。そういうようなことを言われるのは、ここにはおいでになっていないだろうと思うのでありますが、私たちもその点については非常に苦慮しておるわけであります。そこで、この点については、私はやはり憲法なり財政法なり会計法という問題については厳密に解釈をしなければならない筋合いのものだと思います。そうでなければ、予算は成立をしたから法律はなくても支出ができる、予見しがたいものであったからということで予備費から取りくずして支出をしていく、これであるならば、憲法なり財政法、会計法というものは死んだということと同じであります。私たちはそういうようなことを苦慮しながら、問題の収拾に当たろうというふうに考えている。しかし中には、それは予見しがたいものであるから予備費から支払えばいいじゃないかということを言う人がおる。これに対して、私はそういうような問題のとらえ方をすべきでないと思いますが、これについては法制局も参っておりますから、まず法制局の考え方からお伺いをします。
  422. 荒井勇

    ○荒井政府委員 憲法八十七条及び財政法の二十四条で、「予見し難い予算の不足に充てるため、」云々と、予備費の使用という制度を考えておりますけれども、ここで規定しておりますのは、予見しがたいという事実と、それから予算の不足ということでございます。いまお尋ねがありましたような場合、すなわち昭和四十三年度の本予算は成立したという場合、そこに予算の不足があるかと申しますと、そこに予算の不足があるとは言い切れないというのが本筋であると思われますので、財政法二十四条の規定によってその予備費を支出するということは、これは財政法の予想しないところでございますし、その正当な解釈としてとることはできないというふうに考えております。
  423. 村山喜一

    村山(喜)委員 船後主計局次長、いかがですか。
  424. 船後正道

    ○船後政府委員 ただいま法制局からお述べになりましたと同じような見解を主計局としてもとっておりまして、お尋ねのような場合は、予備費支出の事由に該当しないというふうに考えております。
  425. 村山喜一

    村山(喜)委員 厚生省は前渡金支出のそういうような問題について発言をしたという事実がありますか、ありませんか。
  426. 若松栄一

    若松政府委員 発言しておりません。
  427. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、そういうような立場にわれわれ国会が立たされておるということを考えますと、政治的ないわゆる姿勢の問題について追及をせざるを得ないのです。というのは、昭和二十四年、現在の国立病院特別会計法が成立をいたしましたときには、いわゆる制度と予算との関係においては、その猶予期間というものを考えて制定をしました。しかし今回の場合は、阿部委員のほうから指摘がありましたように、あるいはそのほかの委員の人からも指摘がありましたように、予算は通ったじゃないか、法律は通さなければ職員の給与も支払えないぞ、患者のまかない費も出せないぞ、薬も出せないぞ、こういう形で追い込んでくるような審議をわれわれにさせるということは、国会の審議権に対するところの行政府の越権行為だと私は思う。その点について、なぜ二十四年のときのような措置をおとりにならなかったか。私は、その点はやはり厚生大臣にその責任を追及をしたい。そうしなければ、われわれの審議がノーマルな姿の中で審議ができない、こういうことになってくるじゃありませんか。いかがです。
  428. 船後正道

    ○船後政府委員 私から二十四年当時の事実関係を若干説明させていただきます。  二十四年に国立病院特会が発足いたしましたのは七月一日でございます。ちょうどこの年は二十三年の十二月に国会が解散されまして、翌二十四年一月に総選挙、二月十六日に第三次吉田内閣が成立というような情勢のもとに予算編成の作業が行なわれまして、二十四年度の予算国会に提出いたしましたのが四月の四日でございます。したがいまして、これは全く特別会計の経験のない国立病院一般会計から移すという事務的な準備の問題もございましたので、最小限の事務的な準備の期間を考えまして、七月一日から特会ということにいたしたのでございます。
  429. 村山喜一

    村山(喜)委員 そのときには予算はいつ成立をいたしておりますか。
  430. 船後正道

    ○船後政府委員 正確な日付はただいま調べておりますが、四月の二十日ごろと記憶をいたしております。
  431. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、その当時は新しい制度を始めるという意味においてこういうような措置がとられたのだろうと思います。しかし今回の場合も、この問題については今日に始まった問題じゃございません。関係者の人たちが非常に心配をしておりますのは、ことしになってから始まった問題じゃないのであります。去年も、この前からいろいろ話がなされておる。そういうような段階の中において、提出は早かったとおっしゃるけれども、しかし、この大蔵委員会はほかの委員会と違います。歳入関係の委員会でございますから、税法をはじめ幾多の重要な問題があるわけです。その中において特別会計法というものをお出しになった。とするならば、やはり制度を先に発足をさせる、そういう法制的な準備をした上でそれに対する予算の裏づけをして審議を願うという形をとるのが当然ではないか。また、実施期日を若干準備を見てやるという姿、前回とられたような猶予期間というものを置いてやるというのが、移行措置の段階の中においてはトラブルを少なくしていくという配慮が政治の姿勢としては当然なければならない、私はこういうふうに考えますが、厚生大臣いかがでございましょう。
  432. 園田直

    ○園田国務大臣 審議の結果としては御指摘のような結果になったわけでありますが、国会が正常に運営されておれば十分御審議願える期間があると判断いたしましたことと、もう一つは、国立病院の特会に切りかえの際の経験もありまするので、今度の場合はそれでいけるという判断をしたことで、大蔵大臣がこのような法律案を提案されたのでございます。
  433. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、そういうような事務的な答弁では納得ができません。やはりこれには政治の姿勢を、筋を通してもらわなければならないと思います。おくれたのは、国会の審議の大蔵委員会のやり方が悪いからという、そういうようなとらえ方をしてもらったのじゃ困る。そしてこの問題については、せっぱ詰まったところでわれわれは論議をしなければならないのです。私たちも野党ではありますけれども、そういうような社会不安を引き起こすような、混乱を引き起こすようなことをやりたくはないのです。やりたくはないけれども、これは命に関する問題でありますから論議を深めていかなければならない。日本医療制度の将来に関する問題であります。だから、真剣に論議をしなければならないのに、もう日時がない。こういう追い詰められた形の中で論議をさせようというような結果になったことは、私たちは遺憾に存じます。そういうような問題について、厚生大臣として前向きで取り組んでいらっしゃる、その姿勢に対しては私は敬意を表しますが、十分な配慮がそこまで至らなかったという点についてはお認めになるのが当然ではないだろうかと思うのですが、いかがですか。
  434. 園田直

    ○園田国務大臣 決して大蔵委員各位の審議の態度によってこういう結果を来たしたと言っておるわけではございませんので、この点は御了解を願いたいと思います。国会の予測できない状態でこういう状態になってきた、しかしながら、審議とは別にして、そのような準備期間を置くことが必要であったとは私もそのように考えます。
  435. 村山喜一

    村山(喜)委員 私もそろそろやめますが、この際最後に、いま鈴木善幸さんを会長にする医療基本問題調査会の問題がいろいろ論議されております。その中で療養所に関係のあります問題を私取り上げたいと思いますのは、いわゆる医師会等をはじめとする三師会を除いた十団体の意見書がそろっております。それを見ると、ほとんど一致している意見というものがございます。三つほどあるのですが、その中で社会公共的な医療は公費負担でやるべきである、公費負担医療というものを拡充すべきであるということが指摘をされております。その中で対象として取り上げられているのは、それぞれ団体によって若干のワクの狭いものと広いものとありますが、結核なり精神なり、伝染病なり公害なり、心身障害者、そういうようなものはこれは当然社会公共的な医療としてやるべきであるということは、どの団体でも指摘をしておるわけであります。そういう立場から厚生大臣は、結核については現在のらい患者の収容施設と同じような形において、結核菌をばらまく人たちが在宅患者のまま放置されるというような姿ではなしに、国立療養所がその中核になって撲滅運動のその柱にならなければならない、そういうふうな考え方をお持ちになっていらっしゃると思うのであります。それはやはり保険というものにたよらずに、当然国が公費として支出をしていく、そういう医療体系というものが正しいのだということを肯定をされていらっしゃると思うのですが、このことについてはどういうふうな態度で処理をされようとしておいでになるのか、お伺いをしておきたいと思うのでございます。
  436. 園田直

    ○園田国務大臣 結核については、従来も公費負担でまいりましたが、今後も公費負担の原則はそれを貫くのは当然であると考えております。  なおまた、結核以外のものについても、公費負担のほうに逐次追加をしていかなきゃならぬガンなどというものも出てきておる、このように考えております。
  437. 村山喜一

    村山(喜)委員 これらの医療の基本的な問題については、今後所管の委員会でそれぞれ論議をされることでございましょうが、やはりこの際——社会保障制度全体がどうもことしの予算の状態から見ましても伸び率が悪い、こういうようなことも指摘をされておりまするし、先ほど論議をする過程の中で、二十二万の菌を他にうつすおそれのある者が、なお十万人余りはそのまま放置されておるというような今日の状態から見まして、こういうような問題については、ぜひ大蔵大臣も厚生大臣も御努力をいただきたいということを要望申しまして、私の質問を終わります。
  438. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員長代理 本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後七時十一分散会