運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1968-04-02 第58回国会 衆議院 大蔵委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月二日(火曜日)    午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 田村  元君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 毛利 松平君 理事 山中 貞則君    理事 渡辺美智雄君 理事 只松 祐治君    理事 村山 喜一君 理事 竹本 孫一君       大久保武雄君    大村 襄治君       鯨岡 兵輔君    河野 洋平君       小山 省二君    笹山茂太郎君       四宮 久吉君    砂田 重民君       西岡 武夫君    古屋  亨君       村上信二郎君    村山 達雄君       山下 元利君    吉田 重延君       阿部 助哉君    井手 以誠君       北山 愛郎君    佐藤觀次郎君       中嶋 英夫君    平林  剛君       広沢 賢一君    広瀬 秀吉君       武藤 山治君    岡沢 完治君       河村  勝君    田中 昭二君       中野  明君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         経済企画庁総合         開発局長    宮崎  仁君         経済企画庁調査         局長      矢野 智雄君         大蔵政務次官  倉成  正君         大蔵省主税局長 吉國 二郎君         大蔵省理財局長 鳩山威一郎君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         国税庁長官   泉 美之松君         建設省計画局長 川島  博君         自治省税務局長 松島 五郎君  委員外出席者         経済企画庁国民         生活局参事官  小島 英敏君         経済企画庁総合         計画局計画官  山田 久治君         経済研究所主任         研究官     宍戸駿太郎君         大蔵省主税局税         制第一課長   大倉 真隆君         国税庁税部長 川村博太郎君         通商産業省貿易         振興局為替金融         課長      宮本 四郎君         労働省職業安定         局雇用政策課長 細野  正君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      佐々木 直君         参  考  人         (税制調査会会         長代理)    松隈 秀雄君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 四月一日  委員小坂善太郎辞任につき、その補欠として  吉田重延君が議長指名委員に選任された。 同月二日  委員野口忠夫君、岡沢完治君及び樋上新一君辞  任につき、その補欠として北山愛郎君、西村榮  一君及び中野明君が議長指名委員に選任さ  れた。 同日  委員北山愛郎君及び西村榮一辞任につき、そ  の補欠として野口忠夫君及び岡沢完治君が議長  の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月一日  国立医療機関特別会計制反対に関する請願外  十件(石橋政嗣君紹介)(第三二三一号)  同(岡本隆一紹介)(第三二三二号)  同(木原津與志君紹介)(第三二三三号)  同(久保三郎紹介)(第三二三四号)  同外一件(工藤良平紹介)(第三二三五号)  同(栗林三郎紹介)(第三二三六号)  同(小松幹紹介)(第三二二七号)  同(實川清之紹介)(第三二三八号)  同外一件(只松祐治紹介)(第三二三九号)  同外一件(武部文紹介)(第三二四〇号)  同(内藤良平紹介)(第三二四一号)  同外二件(武藤山治紹介)(第三二四二号)  同(森義視紹介)(第三二四三号)  同外二件(八木昇紹介)(第三二四四号)  同外十六件(山田耻目君紹介)(第三二四五号)  同(山本政弘紹介)(第三二四六号)  同外一件(岡本隆一紹介)(第三二九〇号)  同外一件(川上貫一紹介)(第三二九一号)  同外二件(木原津與志君紹介)(第三二九二号)  同外二件(小松幹紹介)(第三二九三号)  同外三件(佐野憲治紹介)(第三二九四号)  同(實川清之紹介)(第三二九五号)  同外二件(田代文久紹介)(第三二九六号)  同外五件(谷口善太郎紹介)(第三二九七号)  同(畑和紹介)(第三二九八号)  同外二件(林百郎君紹介)(第三二九九号)  同(細谷治嘉紹介)(第三三〇〇号)  同外一件(松前重義紹介)(第三三〇一号)  同外八件(松本善明紹介)(第三三〇二号)  同(三宅正一紹介)(第三三〇三号)  同(森義視紹介)(第三三〇四号)  同外七件(稻村隆一君紹介)(第三三四一号)  同外二件(岡本隆一紹介)(第三三四二号)  同外四件(神近市子紹介)(第三三四三号)  同外一件(川村継義紹介)(第三三四四号)  同(栗林三郎紹介)(第三三四五号)  同(神門至馬夫君紹介)(第三三四六号)  同(佐野憲治紹介)(第三三四七号)  同外一件(田邊誠紹介)(第三三四八号)  同(武部文紹介)(第三三四九号)  同外一件(内藤良平紹介)(第三三五〇号)  同(中村重光紹介)(第三三五一号)  同外四件(西宮弘紹介)(第三三五二号)  同(平等文成紹介)(第三三五三号)  同外二件(古川喜一紹介)(第三三五四号)  同外一件(武藤山治紹介)(第三三五五号)  同外二件(山口鶴男紹介)(第三三五六号)  同(神近市子紹介)(第三三八一号)  同(楯兼次郎君紹介)(第三三八二号)  同外四件(楢崎弥之助紹介)(第三三八三号)  同外四件(広沢賢一紹介)(第三三八四号)  同外一件(山口鶴男紹介)(第三三八五号)  同外三件(山本幸一紹介)(第三三八六号)  同外一件(加藤勘十君紹介)(第三四〇八号)  同外五件(河野正紹介)(第三四〇九号)  同(田邊誠紹介)(第三四一〇号)  同外一件(平等文成紹介)(第三四一一号)  同外三件(村山喜一紹介)(第三四一二号)  同外一件(山内広紹介)(第三四一三号)  同外一件(山口鶴男紹介)(第三四一四号)  中小企業に対する国民金融公庫融資制度改善  に関する請願川上貫一紹介)(第三二八一号)  同(谷口善太郎紹介)(第三二八二号)  同(田代文久紹介)(第三二八三号)  同(林百郎君紹介)(第三二八四号)  同(松本善明紹介)(第三二八五号)  野菜果実類小売業等に対する国民金融公庫の特  別融資に関する請願外十七件(鈴木一紹介)  (第三三七一号)  同外十件(鈴木一紹介)(第三三八〇号) は本委員会に付託された。     ―――――――――――――本日の会議に付した案件  物品税法等の一部を改正する法律案内閣提出  第五号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第三四号)  国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一六号)      ――――◇―――――
  2. 田村元

    田村委員長 これより会議を開きます。  物品税法等の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  なお、本日は、後刻参考人として日本銀行総裁佐々木直君及び税制調査会会長代理松隈秀雄君が出席される予定であります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。平林剛君。
  3. 平林剛

    平林委員 きょう私がお尋ねしたいと思っておりますことは、租税特別措置法に含まれております中で、輸出振興等税制提案をされておるわけでありますけれども、輸出振興のために輸出割増償却制度を拡充し、輸出伸長貢献した企業甲種乙種と分けて認定をしていく。   〔委員長退席金子(一)委員長代理着席〕 このそれぞれの条件に合ったものに対しましては、輸出割増償却海外市場開拓準備金積み立てを特に拡大をして、特別の割り増しをしよう、こういう措置提案をされておるわけでございます。このために要する予算は、今日までの政府説明によりますと、輸出割増償却の特別の割り増し増加分初年度十六億円、平年度で六十七億円、また海外市場開拓準備金積み立てについては、初年度が六億円でありますが、平年度は二十五億円、こういう数字を示されておるわけでございます。  そこで、輸出商社、いろいろたくさんあると思うのでありますけれども、今後の輸出状況から見て、こういう措置に該当するものがどのくらいあるか、そういうことがただいま申し上げた数字にあらわれてきておると思うのですが、私はまず、この初年度十六億、平年度六十七億、あるいは海外市場開拓準備金積み立てのほうの数字も六億、二十五億、こうなっておりますけれども、その算出計算をした根拠をひとつ示してもらいたい。どういう根拠でこういう数字がはじき出されてきたが、これをひとつまず御説明をいただきたいと思うのであります。
  4. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 今回提案をいたしました割増償却並びに海外市場開拓準備金割り増し積み立てば、前回も御説明申し上げましたように、輸出献貢企業を甲乙に分けまして、乙種貢献企業は、基準年度に対して一%以上輸出が増加したものという前提でございます。甲種はこの一%と同時に、全体の輸出伸長割合の三分の二以上であること、または前年よりも輸出比率が下がっていないこと、それが条件でございます。それは御承知のように、通産省輸出貢献企業というのはずっと昔から表彰制度をとっております。ことに今度の制度は前年の実績をもとにいたします関係で、量としてはほとんど大部分のものについてチェックができるわけでございます。そこで、通産のほうでこまかく積み上げをいたしまして、どれぐらいの企業がこれは適用になるという数字が出てまいります。それに、その企業として従来基本となる割増償却をやっておった実績、あるいは積み立てをやっておった実績を勘案をいたしまして、その割り増し率は六割あるいは三割でございますから、それを基礎にして計算をいたしまして、平年度額を出したわけでございます。  なお、今回の改正も従来と同様四月一日以後に対するものでございますので、初年度割合としては十七億弱ということで計算をいたしたわけでございます。
  5. 平林剛

    平林委員 わからないですね。抽象的でちっともわからない。前年度実績ということ、それから従来行なわれていた通産省輸出貢献企業に対する表彰制度、そういうものを基礎にしてということ、それを説明してもらわないとよくわからないですね。それはどういうことになっておるのですか。
  6. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま申しましたように、この制度適用する法人あるいは輸出取引がどれくらいあるかということは、前年実績でございますので、すでに通産省も統計的に把握するところでございます。したがいまして、今度の措置適用になる法人というもの、それの輸出額というものは、通産省で把握できるわけであります。その輸出増加額というものを前提にいたしまして、もちろん中には欠損法人がございます。その分を除き、そして積み立ても全額積んでいるわけでございませんので、実行率がございます。その実績をとって修正をしていく。したがって、基礎数字がはっきりしておりますので、それに改正数字をかけていくということでございますから、内容的には具体的な基礎を持って計算をしているという点を申し上げたわけでございます。
  7. 平林剛

    平林委員 大体基礎があるんだろうと思いますので、その基礎を私は聞いておるのですよ。たとえば輸出商社が大体全国でどのぐらいあって、従来の輸出実績から見ると、こういう規定に該当しそうなものは、今後の輸出増加の傾向なども考えて何社ぐらいであって、それだからこういうようなことになりますというその説明を求めておるわけでして、大蔵省無理なら通産省のほうからひとつ説明していただきたいと思います。
  8. 大倉真隆

    大倉説明員 多少細部にわたりますので、私から作業の経緯を御説明いたしたいと思います。  まず、割増償却で御説明申し上げますと、御承知のように、実績としまして割増償却がどの程度行なわれたかということはあるわけでございまして、これをベースにいたしました上で、通商産業省が現在輸出貢献企業認定するために個々企業輸出実績を詳しくつかんでおられまするので、その実績から今回の基準甲種あるいは乙種に該当するものがどれぐらいあるであろうかということを拾い上げまして、それを結論的に申し上げますと、現行法で私ども見込みました割増償却範囲額は約八百三十九億見込みまして、これに対してただいま申し上げたようなこまかい積算をいたしました、甲、乙該当企業割り増し分、それぞれ六割増し、三割増しを計算いたしますと、三百二十六億償却範囲額がふえるであろうという計算をいたしております。三百二十六億ふえました分が、ただし全部償却が実行できるわけではございませんので、個々企業利益状況などを見ました上で、全体といたしまして利益法人分はその約八割であろう、さらに償却可能範囲というものはその七割五分であろうという推定をいたしました上で、今回の措置によります割増償却増加領は百九十五億という積算をいたしました。これに税率をかけまして算出いたしましたものが平年度減収見込み額六十七億円でございます。初年度は、通常の四月一日開始事業年度適用いたします場合の初年度割合を乗じまして、十七億というふうに算出をいたしております。市場開拓準備金につきましても、計算の方法は全く同じであります。
  9. 平林剛

    平林委員 あなた方はこまかい資料を見てわかっておるのでしょうけれども、国民の代表である私にはとんとわからないわけです。いまの説明だけではわからぬですよ。私がわからぬから一般の人はなおわからぬことになるわけでして、私はこれから本題に入るわけなんですが、たとえば、この輸出振興等のためにいろいろ恩典を受けられる企業というものがどういう概要になっておるか、それはどういう効果をもたらすか、そういうことをこれから尋ねていこうと思っておるのですよ。しかし、いまの御説明ではわからない。そして輸出商社がどのくらいあって、その中でも資本金別いろいろあるでしょう、そういうような状況がどうなっておるかということも全くわからないですよ。それで、説明がたいへん長くかかるというならば、おそらくその資料というものがあるでしょうから、その資料提出をしてもらえますか。あるいは提出するまでもなく、もっとわかりやすくお話ししていただけるなら、もうちょっとわかりやすく話をしてもらいたいと思うのです。私は、どうもいまの御説明では、これから本題に入っていきたくても入れないわけですから、もう少しだれにでもわかるような説明をひとつしてもらいたい。
  10. 大倉真隆

    大倉説明員 お答え申し上げます。  多少私の説明が不十分でございましたので申しわけないと思いますが、ただいま御説明しましたような積算をいたしました結果を申し上げますと、輸出償却範囲額の額のほうで申し上げまして、割増償却が通常できるそのうちの約七割分は今回の乙種該当になるであろうという結果が出てまいっております。これは金額ベースで約七割分。さらにその七割分の中の八割五分程度甲種に該当するであろうという結果が出てまいっております。これは先ほど主税局長が申し上げましたように、この制度は前年度輸出金額なり輸出比率というものを今期の割増償却に使うことになっておりますので、増加額計算は前年同期からさらに前々年同期に対する増加率が使えますので、ある程度実績的にわかるわけであります。ただ、全体としての平年度減収はそうやって出しました数字に、さらに全体の輸出の伸びの見込みを乗じております。その点は全体の輸出増加見込みが、再々御論議ございましたように一割五分と見ておりますから、その数字を乗じて平年度減収は出しておりますけれども、実績ベースで調べましたところ、金額ベースでは輸出金額のいわば七割が乙種に該当するであろう。その中のさらに八割五分が甲種に該当するであろうという積算の結果は出てまいっております。
  11. 平林剛

    平林委員 相当多数の輸出商社がこの規定に該当するであろうというようなことはおぼろげながらわかるのでありますけれども、きわめてあいまいですね。でありますから、私はきょうはできるだけ時間を省きたいと思っておるものですから、これではよくわからない、概略のことはわかるけれども。やはりそれを通産省とも相談をして何か資料として出してもらいたいと思います。とにかく金額が大きいのです。輸出振興等のための特別措置は、四十三年度において輸出割増償却が二百五十二億円であるし、海外市場開拓準備金等は八十億円にのぼるわけで、その他の技術等海外取引所得特別控除だとか、海外投資損失準備金その他を入れますと、まず、四百億円まではならぬけれども、相当の金額ですね。そういう金額輸出振興等特別措置としておやりになるにいたしましては、ただいまの御説明では、私は国民も納得できぬだろうと思うのです。そこで、これについてはどういう根拠でこういう数字が出てくるのか、もう少しこまかい算出根拠資料提出をしてもらいたいと思うのですが、この点をまず確認をしてから次の問題に移ります。
  12. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 こまかい数字を全部出すというわけにもまいりませんけれども、大体整理をした数字を後刻提出いたしたいと思います。
  13. 平林剛

    平林委員 それから、これは結局、従来から行なわれている通産省輸出貢献企業に対する表彰制度税制上の特別措置恩典を関連さして、表彰効果を大いて発揮させて輸出振興に役立たせようという措置だと思うのですけれども、私まだ、従来から行なわれておった通産省輸出貢献企業表彰制度、これはどんなものであるかわからないわけであります。この表彰制度はどういうものであるか、それから表彰制度表彰された企業はどういう概況であったか、それから、この表彰制度に要した政府としての支出はどの程度のものであったか、この三点についてお答えをいただきたいと思います。
  14. 宮本四郎

    宮本説明員 お答え申し上げます。  輸出貢献企業と申しますのは、通産省のほうで著しく輸出貢献をしておるということで表彰いたしておりますので、いままで行なってきておった制度でございますが、これは日本国民または内国法人でありまして、輸出品輸出業者、あるいは輸出業者に対して輸出品を販売しておる、これは間接輸出と私どもは申しておりますが、こういう販売業者、あるいは輸出品の製造及び輸出品加工業者というものを対象にいたしております。そこで、この人たちは毎年通産大臣に対しまして貢献企業認定の申請をすることができるようになっております。これに基づきまして通産大臣のほうでは、現在のところ基準を設けておりまして、基準は大体四つの項目からでき上がっておりますが、第一が輸出金額、第二が輸出比率、第三は輸出伸長率、第四は輸出経験年数、この三と四は相互に補完し得るような配慮ができるようになっておりますが、いずれにせよ、これだけの項目につきまして点数をつけるわけでございます。点数をつけまして、六十五点以上になりましたならばこれを合格ということで毎年表彰さしていただいておるわけでございます。現在通産省のほうで輸出貢献企業認定いたしておりますのは相当広範囲にわたっておるわけでございますが、昭和四十二年六月二十八日に認定を行ないましたこのときの企業数は全部で四千八百六十二企業ございます。ちなみに中小企業は四千百五十三で、大部分がそうでございますが、商社メーカーとの関係を若干申し上げますと、商社のほうが一千百八十二、それからメーカーのほうが三千六百八十、これだけになっておる次第であります。
  15. 平林剛

    平林委員 第三は……。
  16. 宮本四郎

    宮本説明員 第三の点は、いま資料を持ちませんので後刻調べて御返事申し上げます。
  17. 平林剛

    平林委員 それじゃあとで調べてもらいますけれども、そこで、今回の輸出振興等特別措置で、先ほど私は昭和四十三年度輸出割増償却は二百五十二億円、海外市場開拓準備金等が八十億円、技術等海外取引所得特別控除が四十三億円、海外投資損失準備金が七億円、その他二十五億円、こうなっておりますが、この数字の中には、今回の輸出割増償却特別割り増し海外市場開拓準備金等積み立て率特別割り増し、これはそれぞれ含まれての数字でございますか。
  18. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 含まれておる数字でございます。
  19. 平林剛

    平林委員 それでは、こういう海外市場開拓準備金制度は、昭和三十九年の三月の税制改正のときに、前にありました輸出所得控除制度の廃止に伴って代替措置として設けられたということを私承知しておるわけでありますけれども、今日まで、この準備金制度準備金として積み立てられた総額はどの程度になっておりますか。
  20. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ちょっと年度が古いのでございますが、実績で申しますと、四十年度までに百六十三億の積み立てができております。御承知のとおり、この制度は、積み立てをいたしますと、翌年からその五分の一ずつを益金に算入する制度になっておりますので、輸出が伸びなければ、五年たつと、そのまま横すべりになってしまうというものでございます。したがいまして、ふえ方も、ことしなどでも取りくずし額が相当出まして、その新規積み立て額を相当食っておるというのが実情でございます。
  21. 平林剛

    平林委員 古いも古い、四十年度百六十三億円では、この制度ができたのは三十九年三月でありますから、ちょっと古過ぎるが、最近の数字はないんでしょうか。
  22. 大倉真隆

    大倉説明員 実績は、ただいま局長の申し上げのが一番確実な一番新しい数字でございますけれども、その後の推計をいろいろ加えました数字を御参考までに申し上げますと、四十一年度は残高の見込みで二百九十三億円、四十二年度見込みは四百八十二億円でございます。
  23. 平林剛

    平林委員 四十一年度二百九十三億円の残、四十二年度四百八十二億の見込み、こういう準備金としての積み立てば、実際に海外市場開拓のための資金としてバランスがとれているかどうか。つまり名目どおり海外市場開拓のために、こうした税制上の恩典は役立っているかどうか。ただ輸出商社損金算入を認めるだけのことになっているかどうか。こういうバランス念査といいますか、検討という点はどうなっておりますか。
  24. 宮本四郎

    宮本説明員 御指摘の点は、私ども非常に注意すべき問題として自来研究いたしておる次第であります。御承知のように、市場開拓準備金と申しますものは、海外における支店等経費、あるいは宣伝広告等経費、その他いろいろな経費に使われておるわけでございますけれども、現在のところ、税制上の措置といたしまして、輸出取引額につきまして、メーカーで一・五%、大商社が〇・五%、中小商社のほうが一・〇%を市場開拓準備金として積まれるということになっております。私ども、こういった項目に対する支出が一体どのくらいあるだろうか、これはもちろんサンプル調査でございますが、しました結果、メーカーにつきましても、小商社につきましても、かなりこれを上回るような必要のある企業もたくさん出ております。その限りにおきましては、毎年必要な額以上には十分積まれていないものもある。逆に申し上げますと、海外市場開拓というものは、現在準備金を積んでおりますものよりももっとたくさん出す必要があるような状況になっておるのではないか。大まかに申しましてさように考えております。
  25. 平林剛

    平林委員 国民は、税制上のいろいろな面において、課税の公平という点を強く要望しております。ただ、国策として輸出振興が必要であるということも認めておるわけであります。だから、その範囲において、この税制が真に輸出振興に役立つものであるということであれば、これはまた国民もそれを検討して納得することになると思います。しかし、実際上巨額の輸出振興等特別措置が行なわれていながら、これが真の意味の輸出振興に役立っていないということになりますと、問題は別であります。そこで、税制調査会でも、この特別措置に限らず、常にそうした効果を確かめるということが必要であるということを指摘しておるわけでございまして、私もその点は同感であります。ですから、これについて、いまのお話によりますと、もっともっと海外の支店あるいは広告とかに使っていいものがある。もちろん、私は、ただそれだけが輸出振興だとは思いませんから、表に出たものだけでもって比較対照しろなんて、そんな狭い考えで言っておるのではありません。しかし、やはり気持ち、精神、そうした期待にこたえるというものでなければならぬ。これについて、特に税のほうを担当している大蔵省は、どうなっているかということをもっとしっかり話し合う必要があるのじゃないか。いま、あなたの感じだけが述べられたのですけれども、具体的にどういう措置を今後とられますか。それから、いままでそういうことを検討した結論というものは、私たちにも見せていただけるような程度のものにまとまっておりますか。これをひとつお答えいただきたいと思います。
  26. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いま御指摘の点は、後刻通産省からお答えをいただけると思いますけれども、税制でインセンティブとして扱う場合には二つ方法があると思います。この海外市場開拓準備金などで申しますと、一つは、輸出振興に必要な施設に対する準備金をつくるということで、その準備金を使用して設備をするということが輸出振興に具体的に役に立つということと、この積み立て金を積み立てるために輸出を多くしなければならぬ要因が出てくれば、その面からも促推ができるわけでございます。そこで、この開拓準備金をつくります場合には、御承知のとおり、開拓準備金を目的以外に支出しないでも、毎年五分の一ずつくずすということにいたします。したがいまして、輸出伸長させなければ、過去の取りくずし額のほうが多くなって税金がふえるという、一つの大きな動因がそこに隠されているわけであります。それが従来の制度でございますが、今度は、その制度に加えて、漫然とその率をふやすのではなくして、輸出増進をはかったものにだけこの追加の割り増しが認められるということにいたしまして、税制としては、積み立てる過程において輸出増進がすでにはかられているという前提をとりたいということにいたしております。  内容的な海外市場施設につきましては、通産省からお答えをいたしたいと思います。
  27. 宮本四郎

    宮本説明員 先ほど私が申しました点につきましては、たとえば市場開拓費これはどれだけ使っておるかということでございますが、一例だけ申し上げまして、資料の点につきましては後ほど、先ほどの資料とあわせて提出さしていただきますけれども、たとえば小さな商社でございますと、年間の市場開拓費が四十一年度で四億五千万円くらいになっております。ただし、これは先ほど申しましたようにサンプル調査でやっておりますので、この四億五千万円ということは、企業当たりにいたしますと二千万円とか三千万円とかいう非常に小さなものになろうかと思いますが、これの輸出に対するシァから申しますと〇・五%ぐらいに当たる。こういう意味におきましては、先ほどの中小商社市場開拓準備金が一%を占めるそれと比較いたしますと、先生御指摘のとおり若干メリットになっておると思います。ただ、逆に大商社の場合は反対になっておるわけでございます。
  28. 平林剛

    平林委員 さて、実はこれから私がちょっと問題にしたい点があるわけでございます。それは、こういう形で輸出振興のための税制が行なわれておるわけでございまして、国民税制上においての不公平、あるいはまた国家としても税収の損失――ということばは適当かどうかわかりませんが、税収を犠牲にして輸出振興をやっておるわけでありますけれども、私は、ここで考えなければならぬことが一つあると思うのです。それは、昭和四十二年度あるいは四十三年度政府輸出入の見通しをいろいろ見ておりますと、去年でもかなり輸出の面においては努力をせねばならぬということで無理をしておりますね。ことしも、最近の海外情勢から見ますと、輸出環境というのは容易ならざる事態にあることは言うまでもありません。それにもかかわらず、四十三年度の通関輸出は、たしか百二十三億五千万ドルぐらい、前年度対比一四・九%か一五%ぐらいの増加を見込んでおると思うのでございます。これはかなり私は無理があると思いますけれども、きょうはそれを情勢分析をするのが私の本旨ではないのです。いわば年間百二十億ドル、百三十億ドルとある輸出、これは相当な金額ですね。これが一体どのくらいの利益率になっているのか。つまり、輸出というものは、ただ輸出の額が多ければいいというものではない。昨年は百七億ドルで、ことしは百二十三億ドルである。輸出総額はたいへんふえておる、だからこれは喜んでいいというものになるかどうか。輸出そのものがある程度の利潤を得ていって初めて国の利益につながってくる。したがって、そういう意味で日本の社会、経済に貢献をするものとしては、国民税制上の不公平をまず目をつぶろうというところに、今回の税制改正というものの趣旨があるわけですね。でありますから私は、こうした輸出目標を立てた場合でも、一体この百二十三億ドルという商売をやった場合に、どのくらいの利益率になっているか、これがやはりわれわれとして重視しなければならぬ点だと思うのです。この百二十三億五千万ドル、これは目標でありますけれども、四十二年のあれからいきますと百七億五千万ドル、利益率というものは一体どのぐらいあるのか、実積はどうか、こういう点について、少し政府側の見解あるいは実積をひとつお話をしていただきたいと思います。
  29. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御説まことにごもっともだと思います。ただ、御承知のとおり、輸出だけの利益率というものは通産でもなかなか把握できにくい。輸出価格が低いではないかという議論がよくございます。ただ、それは原価を割ってはいないのだとか、いろいろな論争もございますが、御承知のとおり、輸出の面といたしましては、利益を獲得する、これはもちろんでございますけれども、日本において発生いたしました付加価値をできるだけドルなりポンドの外貨にかえる、それによって外貨の収支をよくするということも一つの大きな仕事だとは思います。なお、日本の場合、諸外国と違って、商社の入っておる範囲というのはかなり広いというようなことで、直接の輸出による利益率を商社だけで見ますと、これは非常に少ないけれども、それに関与した製造業者の利益というものを考えると、かなりあるのじゃないか。ただし、それは実際には通産としても把握をしていないというのが実情だと思います。そういう点は、おっしゃるとおり将来考えていかなければならぬ点だと私も思いますが、いま的確な数字を申し上げられないのはまことに残念な次第でございます。
  30. 平林剛

    平林委員 主税局のほうではわからないだろうと思うが、通産のほうで説明してもらいたい。それからきょうは国税庁を呼んでいませんけれども、本来は国税庁でも調べればわかることであるし、私は、輸出振興という以上、また輸出目標を掲げる以上は、やはり日本国としてもうからなければいけないと思うのですよね。もうからないで、輸出の目標ばかり掲げて、これが国益に通ずるなんて、それは確かに外貨の獲得にはなるでしょうけれども、一面、国民はどっかで損をするわけですから、そういうことを考えますと、やはり利益率ということはもっと重視をしていくような政策が打ち出されなければならぬと思うのですね。それをただ安易に、輸出目標だけを伸ばせばいいのだということには、私は納得できない。主税局長がわからないのはあたりまえなんであって、通産省、どうなんです。
  31. 宮本四郎

    宮本説明員 私どもといたしましては、もうかる輸出を促進しなければならない、こういう先生の御趣旨、全くそのとおりでございまして、いろいろその点につきまして業界とも打ち合わせをしてやっておる次第でございます。たとえば過当競争の結果、非常に安売りされる、それでもって自分たちの利益が失われるのみでなく、かえってマーケットを混乱させるというふうなケースも幾つかございますので、そういうことのないように協調して、もうけのある輸出をやってもらいたい。同時に、私どもといたしましても、税制もそうでございますが、金融もまたそうでございまして、できるだけ輸出がもうかる商売であるということに施策を向けてまいりたい、かように思っておりますけれども、現実にはなかなか輸出というのはもうけの薄い商売のようでございます。おりおり私どもも調査いたしておりまして、商社の場合には、国内の取引、輸出の取引、輸入の取引、それに三国の仲介取引というのがございますが、これを含めまして、大きいところで、いろいろニュアンスは違いますけれども、三分の一というふうな状態になっております。輸出がその中で非常にもうかるものであるということについては、私ども必ずしもそうではないのじゃないかという認識は持っておる次第でございます。また、ものによりまして非常にマージンの幅が多うございます。たとえば一割のマージンがあるというのは、これはメーカー商社を通じまして非常に少ないような感じがいたしております。他方、マージンがほとんどあるかないか、たかだか両方を足しまして二、三%というのがかなり多いのではないかというふうな感じはいたしておりますが、いずれにせよ、輸出だけを取り上げてのもうけというものの数字はございませんで、私どもやはり全体として商社の経理内容あるいはメーカーの主として輸出をやっておるものの経理内容を把握していくほか道がないように思っておる次第でございます。
  32. 平林剛

    平林委員 この問題は、通産省課長さんとお話をすべき性質のものではなくて、もっと政府の閣僚、特に貿易関係の閣僚が頭に入れてやってもらわなければならぬ問題であります。本来ならば、これはここに関係の大臣に出席してもらって問題を提起し、そして議論をしなければならぬ性質のものだと十分心得ていますから、私は課長さんを相手にしてやるつもりはありません。しかし、今日わが国の輸出の目標はかなり高いものになっているけれども、それがたいへんもうからない。そして、そのもうからない分はどこへはね返ってきておるかということをわれわれは考えなければならぬと思うのです。同時にまた、今回審議をされておるような何百億円という税制上の措置がそれに充てられておるというようなことであっては、これは意味がないわけですね。数百億円の税制上の措置商社海外で損をする、もうからない輸出、それで損をする、その穴埋めが税制上の措置になっておる。こんなことだったら輸出振興ということじゃないので、輸出損失のための補助金です。私はそういうことになると思うのです。これではわれわれは輸出振興などということの税制としては承知できないことなんです。そういうことから考えますと、これは本来であれば閣僚の方々にしっかりした考え方を聞かなければ、これ以上は質問ができない性質のものであります。  そこで、きょう課長さんには気の毒だけれども、この間も私はこの問題を取り上げたことがあるのですが、実際、輸出価格と国内販売価格というものがあまりにも開き過ぎる。これを私はきょうはもう一回指摘をしておきたいと思うのです。きょう材料お持ちですか。たとえば自動車、たとえば電機製品、まあ最近の輸出はこうしたものに限らず、鉄鋼とかあるいは船舶とか、食料品だとか、いろいろあります。私はそういう資料を全部持っています。持っていますけれども、国民にぴんとくる代表的な問題としては、たとえば自動車は一体どういうことか、輸出価格は幾らで、国内販売価格はどうなっているか、電機製品のようなものはどうなっているかということを、ちょっと説明できますか。
  33. 宮本四郎

    宮本説明員 具体的な輸出価格と国内価格との比較の数字、ただいま持ち合わせがございませんので、数字に基づいての答弁は後日にさしていただきたいと思います。
  34. 平林剛

    平林委員 私は、昨年もこの問題を取り上げまして、その後いろいろと調査をしてみたのでございますけれども、これは大体昭和四十一年の末あたりの私の持っておる資料ですけれども、カラーテレビは、十九型というのですか、最近は少し安くなったけれども、そのときは十九万八千円であった。輸出価格は六万五千円ですものね。国内の小売り価格が十九万八千円に対して輸出価格は三分の一の六万五千円ですよ。白黒のテレビは、十九型で大体国内の販売価格が五万九千円に対して二万一千六百円で売り出されておる。扇風機は、三十センチの型で国内販売価格が大体一万一千七百円が五千二百円、半分以下である。冷蔵庫は、百リットルのもので小売り価格が五万六千円に対して輸出価格は二万八千八百円、これも約半額です。トランジスタラジオのごときは、八石のツーバンドで小売り価格が七千三百円に対し輸出価格は三千三百円、半値以下であります。輸出価格というものと国内販売価格を比べてみますと、あまりにも開きが大き過ぎる。いかに国際的な競争に勝たねばならぬということがございましても、あまりにも開きが大き過ぎる。先ほど来の説明でわかりますように、おそらく輸出商社はかなり損をして売っておるのではないか。もちろん、ある時期において、マーケットを拡大するために出血輸出をしてお得意をふやすということもあるかもしれませんけれども、私は、ただ輸出を伸ばす目的のために結局安売りして輸出するということになったならば、これは国家として得か損かということを考えた場合に、やはり問題があると思うのです。同時に、その穴埋めがどういうところにきておるか。まず第一に考えられることは、やはり国内の販売価格に割り高となってはね返ってきているのではないか。また同時に、ただいま審議をしておるところの輸出振興税制というものに甘えて、あぐらをかいて、こういうもので総額にすれば三百億円も四百億円も補助金が出るから、それが穴埋めになる。それが結局安売りでもいいということになって、徹底的にもうかる輸出について商売をするという根性に欠ける、こういうことになるのではないか。一面、逆の面から見れば、やはりこれは税制の不公平ということをもたらしておるわけでありますから、全般から見ますと、こうした輸出振興政策というものはどこかが違っておるのではないだろうか、姿勢が違っておる、そういうふうに考えるわけなんです。ですから、私はそういう意味におきまして――きょう私が言ったのは、これはうその資料ではなくて、通産省からとった資料ですから間違いのない資料です。私がこの問題を指摘した後に、カラーテレビは十九万八千円が幾らか安くなりまして、十四、五万円くらいに販売価格が下がってきたものだから、いい質問をしてくれたと喜ばれたのですけれども、逆にいうと、今度いろいろな手紙がきまして、いや物品税がかからないから安くなっているとか、輸出品は現金決済であるが、国内は手形ないし売り掛けであるからとか、あるいは販売経費がかかるとかというようなことがあるからこういう開きだなんという説明平林先生ごまかざれたらだめだという、いろいろ激励の手紙をいただいておる。たとえば税金の面は、これは計算すればすぐ出てくるわけですしね。それからまた、いろいろなマージンというものも見当がつくわけですし、私に説明したテレビの場合なんか、キャビネットが違うのです、こう言うけれども、キャビネットは幾らよくしても五千円くらいの違いしかありませんよということの投書がきている。アフターサビスについても、大体どのくらいかかるかといったら、大体点数制度でやっているけれども、それだって、そのとき五十点とか、その程度であって、アフターサービスによるところの経費率というものはそんなにかかっていない。だから、少なくともテレビで二万円は違いますというようなことがきておりまして、輸出で損をしなければ、国内販売価格の面ではもっと安く国民に提供できる、私はこう思っておるわけなんです。大量生産をして、そして最近のように能率が上がっておれば、電機製品でも自動車でも、もっと安く国民に提供できるのです。そういうことを考えますと、基本は、もうかる輸出に徹するということに根本はあると私は思うのでして、それをただ税制の面であぐらをかかせるとか、いきなり国民負担にぶっかけて国民の犠牲に求めるというやり方は、姿勢が間違っておる。そこで私は言いっぱなしではありませんよ。課長さん、きょうお見えだけれども、最近における輸出価格と国内販売価格については、もっと声を大きくして、そして世論を喚起しながら正しい姿勢――私はただ企業をいじめるために言っているのではなくて、目的は、もうかる輸出に徹しろということを言っておるわけです。しかし、それをやるためには、こうした国内販売価格、輸出価格について、国民世論の中から、もう少ししっかりしてもらわなければ困るということを呼びかけていかなければならぬわけですから、最近時における実際のデータを提出してもらいたいと思っているのです。課長、引き受けて帰っていただけますか。
  35. 宮本四郎

    宮本説明員 私、所管ではございませんので、打ち合わせ後提出いたしたいと思います。
  36. 平林剛

    平林委員 委員長、どうですか。この問題については委員長のほうからもひとつ御注文をいただきたいと思います。
  37. 金子一平

    金子(一)委員長代理 いいですね、その資料のほうは。――後刻提出させましょう。
  38. 平林剛

    平林委員 それでは、もう一つ最後にこの問題に関連して尋ねておきたいのですが、今回のこの輸出振興策は、私は輸出能力あるいは今後の国際的な環境から見まして、大きな輸出商社、いわば大きな輸出メーカー恩典が傾斜しないかどうかという点であります。最近、政府中小企業白書を三月十六日に国会に提出をいたしました。この中小企業白書によりますと、最近の動向というのがございまして、特に輸出は大企業伸長率も鈍化したけれども、中小企業の伸び悩みが著しかった、これは四十二年度のことです。工業製品輸出全体に占める中小企業製品の比重は、四十二年の四四・六%から四十一年四四・四%、四十二年の一-九月の計算で四三・四%と次第に低下をしてきておる。最近の各商品別の輸出状況を見てみますと、鉄鋼とか、それからまた船舶とかという輸出の伸びはありますけれども、これは一時的な現象としてやや伸びておるということだとかいう批判もありますし、食料品もこの三月くらいにかなり伸びたという話を聞いておりますが、これも例のアメリカの課徴金の問題でかけ込み輸出というような傾向でございまして、私は、政府の立てた輸出目標もなかなか困難だし、同時にまた、この中小企業白書の状態、つまり実績から見ると、特に中小企業輸出という問題は非常に低下しておる。今度の奨励金は、とにかく一%増加ということですね。ところが、一%増加しなければならぬわけですからね。この中小企業白書から見ますと、私は、今後の輸出、特に中堅になっている中小企業の面においては、かなり国際的な情勢から見て打撃があるんじゃないか。そうすれば輸出能力その他いろいろな面において、力の強い、大きな輸出メーカー、大きな輸出商社に、この何十億円という恩典が集中してしまって、中小には割りが悪いんじゃないか、こういうふうに思うのですけれども、それらについてはどういうふうに考えていますか。
  39. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先ほど御説明いたしましたように、日本の場合に、輸出形態というのが、大商社というものを通ずる形態がほかの国より多いというようなことから、輸出金額が大きいものに集中しているという面はございます。したがいまして、基礎的に申しまして、輸出割増償却の八割は、主税局流で申します大法人のほうにいくわけであります。今度の措置も、そういう御指摘のように、やはりそちらに多くいくことは事実だと思いますけれども、先ほども御説明いたしましたように、一%の増加というものになりますと、大きなところほどこの一%という金額は相当な額になります。小さいところは小回りがききますので、努力目標としては相当努力の余地があるということも考えられております。前年実績でございますから、すぐにというわけじゃございませんが、ことしがんばれば来年は大いに割り増しになるという結果が生まれてきますと、私は、従来の制度よりも大商社に傾斜するということはなくて、むしろ中小企業に努力の余地が十分あり得るというふうに考えております。
  40. 平林剛

    平林委員 まあ実績で勝負しましょう。これはわれわれは賛成じゃありません。しかし、おそらく法案として成立するでしょう。実績で勝負しましょう。私はあなた方にまけてもらいたいと、こう言っているわけではないのです。実際に輸出の特に中心になっておる中小企業、どうせやるならばそれの助けになるようなことを願っておるわけです。また、大きな企業商社は、私が先ほど言いましたように、もうかる商売に徹してもらいたい、そういう努力をすべきだ。税制にあぐらをかいていては困る。また、国内の販売価格にしわ寄せして、国民の犠牲だけではいかぬ。私も外国へよく行ったときにも、商社人たちの根性を聞くのですが、やはり外国へ行きましても、一年か二年たつと、はあもう日本に帰りてえなんということで、そろそろ国のほうの勘定ばかりする人が多いですよ。そこへ行くと、もうここの国の土にならなければいかぬといって、ほんとうに商売ということに徹しているところもありますよ。ことに華僑のごときの商売のやり方を見ていると、これは根性というものはすさまじいと思うのです。やはりほんとうに国をあげて輸出をするというならば、第一線の商社もそういう気持ちになって売り込みをやればいい。ところが、今日国内においてこういうことをただやるだけでは、真の意味の輸出振興にならぬじゃないか。だから、大きな輸出企業においても、逆にそういうことを十分心がけてやってもらわなければ、一般の国民が犠牲になっておることが何の役にも立たぬじゃないか、こういうふうに私は考えるわけでございまして、きょうは大いにひとつハッパをかけておきまして、私の質問はこれで終わります。資料提出だけはお願いいたします。
  41. 金子一平

    金子(一)委員長代理 只松祐治君。
  42. 只松祐治

    ○只松委員 きょうは総裁がお忙しいようでございまして、日銀の副総裁に来ていただきまして、金融のあり方について、若干お尋ねをいたしたいと思います。  金融というのは、日銀法はじめ銀行法その他見ましても、きわめて国家と関係の深い、あるいは社会全体の基本をなすもので、公共性の強いものであります。ひとつここであらためて副総裁のほうから、金融機関の任務についてお教えをいただきたいと思います。
  43. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいま金融機関の社会的な責任、任務という問題についての御質問でございました。これは非常に大きな問題でございまして、なかなか十分説明申し上げることがむずかしいかと思いますけれども、やはりその国の経済の発展に自分たちの供給する資金が十分役に立つように、必要な場所に資金を供給するということが第一番の責任であろうと思います。そのほか、経済の発展以外に、やはりいろいろ国民生活のために資金の必要な場合がございます。そういう点にも考慮して融資が行なわれることが必要だと思いますが、何と申しましても最大の目標は、経済の発展により、国民生活の水準が向上するという点に重点が置かれることが必要であろう、こう考えておる次第でございます。
  44. 只松祐治

    ○只松委員 金融機関には、日本銀行を頂点といたしまして、都市銀行、地方銀行あるいは相互銀行、信用金庫等々、それから生保、損保、それから証券業界、いろいろございます。しかし、いまお話にもありましたし、この日銀法の第一条にも明確に「国家経済総カノ適切ナル発揮ヲ図ル為国家ノ政策ニ即シ通貨ノ調節、金融ノ調整及信用制度ノ保持育成ニ任ズルヲ以テ目的トス」、銀行法にもそれぞれきわめて高い目的をうたっております。事実そのとおりだと思います。現在そういう基本的な中からわが国の経済がこういう情勢に立ち至りまして、金融引き締めということが行なわれております。きょうは私はその個々の金融引き締めの政策について論議しようと思うわけであります。  大まかにいって、まず最初の問題は、先月の二十九日の新聞に一斉に、銀行の高収益が物価高を招く、金利の再検討をしたらどうだ、こういうことが書かれ、それから銀行性悪説というものが述べられるようになっております。これは中山さんが座長をしておられ、総理が諮問をしております物価安定推進会議が近く答申をするということで、その答申の内容でございます。御存じでございますか。
  45. 佐々木直

    佐々木参考人 まだ私は、その答申の具体的な内容をよく拝見しておりませんけれども、いずれ近くその答申がなされるということは新聞紙上で拝見しました。  銀行の収益が、引き締めのときに高くなるという事実は、ある程度これはもう事実でございます。公定歩合が上がりますと、それにつれて銀行の貸し出し金利も上昇いたします。そのときに一緒に預金金利が上昇いたしますればそれだけ利幅が大きくならないのでありますけれども、もし預金金利が上がりませんと、その場合には利幅が広くなって収益が増加するということもございます。ただ、過去の例で見ますと、都市銀行などにおきましては、引き締めの場合に、貸し出し金利も上がりますけれども、取り入れますコールレートの金利が非常に大きく上昇する場合には、むしろ逆に利幅が狭くなりまして収益がかえってマイナスになる、ふえないというようなこともあります。そういう意味で預金金利その他銀行の取り入れます金利のいかんによってその利幅が違ってくる。それがあまり上がらない場合には銀行の収益が増大するという事実は確かにございます。
  46. 只松祐治

    ○只松委員 銀行局長どうです。都市銀行だけ、ほかのも全部じゃたいへんでしょうが、ここ一、二年来の利益率がどういうものであるか、ひとつお示しをいただきます。
  47. 澄田智

    ○澄田政府委員 いま手元に数字を持っておりません。後ほどあるいは御質問なら数字も申し上げますが、一般的な傾向といたしましては、昨年の秋までずっと引き続きまして貸し出し金利が、戦後一番長い期間にわたり、しかも一番大幅に下がってまいりました。この間金融機関の採算といたしましては、資金量の増加によってカバーしている面もございます。また、その経費の節約によってカバーしているというような形もございましたが、利益の伸び悩みという形が明らかに見られておった。その後引き締めに入りまして、今回の引き締めは御承知のように特色として、最近まで、本年に入りまして一厘の公定歩合の引き上げが一月にございましたが、それに至るまでは、引き締めにかかわらず、日銀公定歩合が一厘引き上げられたにかかわらず、貸し出し金利のほうは上がらなかった、こういう形でございます。これはやはり企業の流動性も高いというようなことで借り急ぎも少なかったというような形もございます。したがって、貸し出し金利もそう上がらなかった。ところが、ことしに入りましてもう一厘公定歩合が引き上げられ、日本銀行の貸し出し増加ワクの規制というようなものも一段ときびしくなってきた。そういう前後から企業側の資金需要も強くあらわれてきて、そして貸し出し金利の上昇というものがそこへきてある程度はっきりあらわれてまいり、テンポも早くなってきた。他方、いま佐々木副総裁からもお話がございましたように、従来の引き締めですと、コールを取り入れる立場にあります都市銀行の場合は、コールレートが非常に上昇いたしましてそれによって資金の調達コストが上がってくるということが顕著にあったわけであります。今回はコールの上昇幅が従来に比べますときわめて少ないというようなことで、コールによる取り入れ資金が高くならないというような点が従来とは違っております。そういうようなことで、最近に至りまして、引き締めによって銀行の採算面には、いまのような貸し出し金利は上がる、コールは従来ほど上がらないというようなことによって利益の幅が厚くなってくるというような現象があらわれてきつつあると思います。しかし、まだ決算上はこの上期の決算というようなところによってそれが出てくる、こういうふうな状況でございます。
  48. 只松祐治

    ○只松委員 いろいろ理由や状況はございましょうが、この物価会議が報告する中で、たとえば利息の総額が三十一年度は五千億、四十一年度には二兆五千億、十一年間で五倍にふえている、こういうことが述べられております。事実そのとおりでございます。あるいは私がすでにいただいておる都市銀行等の決算書を見ましても、四十年の十月から四十一年の三月まで、公表で三百二十億、国税庁申告が七百五十一億、その次の四十一年の四月から四十一年の九月、これが公表で三百五十六億、申告で七百十五億、四十一年の十月から四十二年の三月で公表三百六十六億、申告で八百三十五億、一番新しい四十二年四月から四十二年九月までで、公表で五百四十三億、申告で七百五十六億、たいへんなこれは利益をあげておることが明らかになっております。まああとで順次お尋ねをいたしますが、しかも、普通の会社においてはいわゆる粉飾決算をするのが多いわけですが、銀行の場合は私たちが常に言っているように逆粉飾、まああまりもうけ過ぎて気の毒いから税金や何かいろんなものはひとつ先に差っ引いてしまおう、こういう形になっております。昨年に入ってから大蔵当局の指導等。があって、一昨年の三百六十六億から五百四十億と公表利益が上がりましたように、まあいささか気の毒いということで公表利益を上げてきております。しかし、いままではその半分にも満たないものしか公表利益を発表しておらない、こういう状態が続いております。いかにもうけておるかということの端的な一例でございます。このことに間違いはございませんか。
  49. 澄田智

    ○澄田政府委員 ただいまおあげになりました数字はそのとおりでございます。  四十二年の上期、四十二年の九月までの決算においてそれまでの公表利益よりも大幅にふえておりますのは、これはいまお話のありましたように、従来の金融機関の決算においては、金融機関の性格上金融情勢によっていろいろ動くわけでございますが、公表利益を安定的にするというような考慮、それから内部留保を厚くするというような考慮から、公表利益を計上するにあたりまして、そういう意味の操作が行なわれてきたというような現象がございました。これに対しまして四十二年の九月期から統一経理基準というものを実施をいたしまして、銀行協会側といろいろ検討いたしまして、金融機関についても公表利益にその期の経営の実態を反映させるべきだ、そういうようなことによってより金融機関の間においても経営の効率化というようなものをはかる。公表利益というものをありのままに実態をあらわすということによって適正な競争を行ない、経営の効率化をはかる、こういう趣旨から統一経理基準というものを実施して、三年間の経過期間中に逐次完全に同じ基準にそろえていく、そういうことでございますが、大部分のところはこの九月からすでに統一経理基準に従ったやり方をやっております。そこまで至らないものも逐次三年以内にそういう形にそろえる、こういうことになっております。そういう結果、従来ですと、ある程度の操作が行なわれてきたものがはっきり出てまいる、かような形になってまいりまして、四十二年の九月期の決算というのが公表利益が大きく出てきておる、こういう状況にございます。
  50. 只松祐治

    ○只松委員 道をお歩きになれば、メイン・ストリートには必ず銀行がある。しかも一番いい場所にある。一番りっぱな建物がある。信用を重んずるわけですから銀行をあばら家にしておけとは私は申しませんけれども、そうやって一番いわば高い土地にりっぱな建物を建てる。費用をふんだんに使う。使ってもなおかつこうやって逆粉飾をしなければならないというように利益があがってきておるわけです。  私は、きょうは序論でございまして、ほかの問題を論議しようと思っておりますから、この問題もこれ以上深くは討議いたしませんけれども、物価会議提案しようといたしておりますように、もっと預金者の立場に立って預金金利を引き上げる、あるいは借りる立場に立って貸し出し金利を引き下げていく。こういうことに対して、これは総理の諮問機関でございますから、総理に答申をすれば総理がまた皆さん方にいろいろ相談をかけることになると思います。そうでないとなかなか答えができない、こうおっしゃって逃げられるものと思いますけれども、皆さん方に来ていただく機会はなかなか少のうございます。こういう答申がなされるとするならば――こうやって新聞に全部出ているのですから、なされることは確実だと思いますが、その場合には預金金利あるいは貸し出し金利等について考慮する。こういうことをお考えであるかどうか、お聞かせをいただきたいと思います、副総裁。
  51. 佐々木直

    佐々木参考人 私どもといたしましては、できるだけ銀行の貸し出し金利を低下させ、企業の資金コストを下げるということについてはだいぶ前から努力してきておりまして、先般金融緩和のときには三厘ほど日銀の公定歩合を下げまして、前に比べますと一段とレベルを下げた。したがって、市中の銀行の貸し出し金利も下がったわけでございます。その後残念にまた再び引き締めをしなければならないことになりまして、二厘の上昇となったわけでございますが、そういうふうにわれわれとして貸し出し金利をできるだけ低くするということについての努力は今後においてもできるだけ続けてまいりたい、こう考えております。  預金金利のほうにおきましては、日本では定期預金の占める割合が相当高うございますので、これをそのときの金融の繁閑によって動かしますことにはいろいろ技術的な難点もございます。しかしながら、今後どういうふうに貸し出し金利との問の関係をうまくとっていくか、そういうことについてはさらに今後も検討していかなければならない、こう考えておる次第でございます。
  52. 只松祐治

    ○只松委員 歩積み・両建ての問題まで入りませんけれども、貸し出し金利と預金金利の間には歩積み・両建てとかいろいろな問題があるわけですから、定期が多いから、そういう預金の面からだけお考えにならないで、いろいろ扱い方があると思います。そういうものも含んで、中小企業者なり金を安い利子で借りたいという人がそういうことを一番願っておるわけであります。この物価会議提案があれば、ひとつぜひ御検討をいただきたいと思いますが、その立法措置その他は銀行局のほうが関与するわけですから、澄田さんどうですか、澄田さんのお考えを聞いておきたい。
  53. 澄田智

    ○澄田政府委員 金融をめぐる環境、それから今後の金融機関の使命というようなものから見ましても、できるだけ低利でもって安定した資金を、それぞれの資金を需要する面に、中小企業であるとかあるいは流通面であるとか、あるいは国民の生活、生活資金、たとえば住宅でありますとか消費金融でありますとか、そういう面等に供給するというのがこれからの金融を指導する目的、方針であろうと思います。そういう意味からまいりまして、金融機関の経営の効率化というものを徹底さして、そして資金コストを下げて低利な資金の供給ができるようにするということが最も肝要である、かように考えている次第でございます。  預金金利の問題につきましては、これは確かに引き締め等の場合であって、金融機関の努力というものでなしに、金融情勢によって貸し出し金利が上がっていく、こういうような場合に預金金利が据え置かれますと、その間の開きが大きくなってきて、金融機関にとっては全く金融情勢によって利ざやが増大するというような不合理な面は持っておりますが、ただ、日本の預金金利の水準というものは物価とかいろいろな関係等もございまして、高い低いというのにはいろいろな御意見があろうと思いますが、諸外国に比べると決して低くなく、むしろ高いほうであるということ、それからただいま副総裁からも話がございましたように、定期預金の割合が非常に高いこと等で、将来貸し出し金利をできるだけ下げていくというような場合に、金融機関の努力、経営の効率化というだけでは下げられないというようなところにまでくる場合も考えられるわけです。そういう場合には預金金利を下げるというような問題も将来の問題としてはあるいはあるかもしれない。しかし現在は、預金金利というものについてはむしろいま御指摘のような点もございます。いろいろ検討を必要とする面がございます。何よりもやはり資金コストを下げるという点を一つの重点として考えていきたい、かように存じております。
  54. 只松祐治

    ○只松委員 引き締めなり、したがって、公定歩合、貸し出し金利が上がる。これはちょうど、米の食管でいえば、政府が米の値段を上げて、そこで手持ちの米が上がる。その場合に米屋は差額を納めるわけですね。たばこだって、五月一日から上がればそれがある。こういうふうで、結局政府の施策によって大きな利潤が出るという場合には国庫に納付するとか、何かこれは特別のことを考えたらいいんじゃないか。金融機関というのは一番安全を重んじて――これは相互銀行、信用金庫もさることながら、保険会社等でも、本来ならば中くらいのところで原価計算をして、そして掛け金をはじくのがほんとうだと思うけれども、安全を見積って一番低いところにしてある。したがって、大きな生命保険や損害保険会社は非常にもうかっておるこういう状態が出てきておる。だから、あとで言うように、不動産会社などをどんどんつくっていろいろなことをやる、こういうことになるわけでございます。もう少しやはり――一番最初に申しましたように、きわめて公共性の強い金融機関のことでありますから、倒産ということは防がなければなりませんが、といって、絶対に損はさせない、もうけはもうけほうだいで、金融機関には一方的に与える。これは何らかの矛盾、あやまちがありはしないか。そういうことで、結局高度経済成長政策によって、借金政策で、いまの日本経済が伸びてきた。金を貸しておる銀行だけが非常に潤っておる。こういうことで、毎年毎年利息の収益がふえてきておる。したがって、こうやって逆粉飾をしなければならない、こういうことになっておるわけです。私は一昨年からこのこともちょっと言ったわけですが、ようやく去年から統一経理基準等をきめられて、一応の指導をされてきておるようでございますが、もっとこういう面を強めて、山陽特殊鋼じゃありませんけれども、多くの会社は四苦八苦して粉飾決算をしておるというところが多い中で逆粉飾をする、少なくともこういう形のないように――総裁はきょうお見えでございませんが、日銀当局、銀行局当局のひとつ強い指導をお願いいたしたい。  それは一応それで終わっておきまして、こういうたいへんな公共性を持つ、しかも高利潤を得ておる金融機関が、それに付随してたくさんの不動産業を営んでおります。不動産業を営んではならないとは、この銀行法のどこにもないようでございますが、だからといって、こういう不動産業、自分の持っておるビル管理その他の不動産業ならまあまあまだしも――これも私は必ずしもいいとは思わないけれども、そうでなくて、銀行をバックにして、その豊富な資金を自由自在に使って、そうして不動産業を営んでおる。これは私はまことにけしからぬことだと思う。日本における大きな都市銀行あるいは生命保険あるいは損保等の不動産会社の状況をひとつ御報告していただきたい。
  55. 澄田智

    ○澄田政府委員 最初に、関係不動産会社につきましてどういう態度で指導しているかということを一言申し上げたいと思います。  御指摘のような点もいろいろございますので、実は四十一年十月に私のほうの通達を出しまして、そうしてその銀行の不動産会社というものについては、これは銀行にできるだけ金融機関というものの性格として専業体制をとらせる。他方において、不動産の管理等のためには、別働隊としてこのような意味の不動産会社を持つというのもやむを得ない面もあるということは認めざるを得ませんが、しかし、その場合においても、そういった金融機関の不動産を管理するため、あるいは担保物件としての不動産を管理する、そういうような不動産会社については、業務の範囲を銀行業務と密接な関係にあるものに極力限定をする。そうしてその持ち株関係もはっきり銀行名で持って、それが独禁法に該当する一〇%以上の場合であれば、これは公正取引委員会の認可を受けて営むようにする。特に重役名義で持っておるというような場合も全然なかったわけではございませんが、そういうものははっきり金融機関名義ということにさせるという、こういう方針をとりました。   〔金子(一)委員長代理退席、渡辺(美)委員長代理着席〕  それから、そのほかの不動産会社、これは資本的に完全な支配ではございませんが、人事、業務等、金融機関に密接な関係があるような不動産会社、こういうものは、一般取引と同じように、金融機関としてはコマーシャルベースで扱うように、決して特別な関係先に行って、特別な取引をやるというようなことのないようにという指導をしてまいりました。不動産会社については、直接金融機関の営業用の不動産を管理したりあるいは担保物件を管理したりするものと、それから一般の不動産営業を営むものと分けさせるような指導を続けております。まだそこまで完全に分離していないものもございますが、着々そういうような形で分離してきている次第でございます。  いま御質問の不動産会社の状況というものにつきましては、実は完全な調べ等は間に合いませんが、都市銀行で申しまして、いずれも不動産会社をそれぞれ持っております。そうしてこの状況は一覧表で……。
  56. 只松祐治

    ○只松委員 私がもらっている分で間違いありませんか。
  57. 澄田智

    ○澄田政府委員 そのとおりでございます。  そのほかに、長期信用銀行等についてもお手元に差し上げてあるかと思います。  それから生保、損保、これも生命保険会社で九社、それから損害保険会社で十二社がそれぞれ一社ないしは二社、あるいは数社の不動産会社に出資をしたり、あるいは名義を出して主として融資を行なっている、あるいは人的なつながりを持っている、このような次第でございます。
  58. 只松祐治

    ○只松委員 私は、金融機関が他の業務に手を出す。特に、必要ではありますけれども、きわめてブローカー性の強い――まあそう言っては不動産業者におこられますが、不動産業者といえばああといわれるような形のもの、そういうものに手を出す。形は、直接になっておりませんね。大体独禁法すれすれの、一〇%内外の資本を自分のところが持つ。しかし、これはちょうど日通の伊豆富士見ランドと同じような形の、時の重役の一番意の通ずるいわば腹心のような人をその会社に送り込む。そうして一種のトンネル会社的な経営がなされております。私は、この日通の伊豆ランドと似たり寄ったりな事件が相当多いんじゃないか、こういう気がします。あとで私一、二具体例をお示しいたします。お示しいたしますが、そういうふうな私は気がいたします。こういう現状に対して、日銀当局、大蔵省当局は、これでいい、これは現状でやむを得ないのだ、こういうふうにお考えでございますか。いま多少通達や何かして整理なり規制を始めた、こういうお答えもいただきましたけれども、私はその程度じゃなくても、もっとこれは金融機関としてえりを正すべきものは正す、姿勢を正すべきものは正す。これもあとで言いますけれども、土地高騰の原因、土地値上がりのある意味の一番大きな原因は、金融機関の関係の不動産会社が、何万坪、何十万坪と大口に買う。こんなに大口に買っておるのは住宅公団以外にはないわけです。住宅公団が買っておりますが、そのほかに大口に買い切るには、個人では資金量がございません。金融機関関係の不動産会社が一番買っておる。   〔渡辺(美)委員長代理退席、委員長着席〕 しかも、たとえば興業銀行の下に興和不動産というのがあります。この興和不動産の下には、さらに五つか六つの子会社を持っておるわけです。興和不動産が直接買わないで、そうしてその下の幾つかの不動産会社に売買をさせておる。大きな差益というものを――買い込むときはAというものを使う、売り出すときにはBというものを使う、そして大きな利益というものはそこの会社に――その会社は大体悪くすると一年か二年で倒産をさせていくという、こういう形のものが行なわれておるわけであります。だから、日通の伊豆ランドと似たり寄ったりの事件が、この金融機関を取り巻いて行なわれておる。こういうことを言うとたいへんなことになる、私のところにも、金融機関から脅迫がくるぞ、こういう忠告を受けたような一件も私にはあります。このくらいこの内部は複雑な状態を呈しておるのではないか、こういうふうに私は思っております。こういうことがいいとお思いでございますか。これは急いで何とかしなければならない、こういうふうにお思いですか。それともそんなことはたいしたことはない、金融機関の行なっておる不動産会社ですからりっぱなものだ、こういうふうにお思いですか、どうです。
  59. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいまお話しのような事実を私初めてここで伺いましたので、私どもとしては、金融機関がそういうことをいたしておるとはいままで全然思っておりません。ただ、とにかく、金融がゆるみますと、銀行としては資金の運用先に困りますので、たとえばいまのような自分の下にあります不動産会社に金を貸して不動産業務を大きくしていくという傾向がありますことは私も存じております。そういうことで、この前の金融緩和期にそういう状態が目立ちましたので、先ほど銀行局長から御説明がありましたように、四十一年の十月にそういうような通達が出た次第であります。(只松委員「一向に改まっていませんよ」と呼ぶ)しかし、私はその通達の効果は確かにだんだん出つつあるというふうに存じております。
  60. 只松祐治

    ○只松委員 そういう答弁をされるならば、私も証拠を出してやりますよ。あとで多少出しますけれども、そうじゃなくて、やはり不十分である、金融機関がこんなことをするのはあまりいいことじゃない、いまの対策も不十分であると、少なくとも正直におっしゃったほうがいいと思う。私はこの前に個人の不動産の脱税問題をやりました。そのときも前の主税局長や何か、十分やっております、取り調べております、そうですが、それじゃ調べに行きましょうと言って、私が一、二の税務署に行きました具体的な例を示しました。この前私が指摘いたしましたように、ほとんどのものが課税が捕捉されておりません。悪質なものは裁判所を舞台にして脱税が行なわれております。和解調書をつくってそういうことが平気で行なわれておる。現在日本であるいは一番投機なりうまみなりがあるのは不動産だ。金を持っておる者がそのうまみをのがすはずはないわけです。自分のところに資金があるわけですから、これを何とか――直接には銀行や金融機関は手足がない、そこで下の会社をつくる。私のいただいたのは間違いないということでございますが、たとえば富士銀行では日本橋興業、仙台不動産、三菱銀行では千歳興業、萬興業、こういうふうにずっとあります。ほとんどの会社が持っておる。生命保険でも、たとえば日本生命は日生土地建物、日生住宅、日生不動産、西大和開発、こういうふうに四つも持っておる。こうやって生命保険会社、相互保険会社、全部不動産業を営んでおります。これは、さっきから言うように表面上なのですね。この下にまた幾つかの不動産会社をかかえる。伊豆ランドが長谷川造園会社を通じる。こういうからくりで幾つかのものをかかえて――私はきょうは、直接資料を入手したそういうところに御迷惑がかかりますから、その下の会社の名前は発表をいたしませんが、そういうところを持って、そうして不動産の投機売買をやっております。少なくとも、それは十分でない、あまりいいことじゃないぐらいおっしゃったほうがいいのじゃないですか。どうです。
  61. 佐々木直

    佐々木参考人 私はいまのお話のような、さらに下の不動産業を使っていろいろ不適当なことをやっているというお話がございましたが、私は実はそれはいま存じませんでしたのであれですが、もしそういうことがあるとすればそれははなはだ間違っておる、こういうふうに私は考えます。  それからもう一つ、銀行課長の通達につきましては、だんだんいいほうに向かっておるということを私申し上げましたが、完全であるというところまでは私はまだ申さなかったつもりであります。
  62. 只松祐治

    ○只松委員 少なくとも銀行マンというのは一番紳士といわれますように、一番信用を重んずる公共性の高い金融機関というのが不動産業に手を出している。そうして甘い汁を吸う――という先ほど言うように、金融機関それ自体でも巨大な利益を得ておる。その上に不動産に手を出していくということは、私はこれは邪道だろうと思う。即刻改めさせる、やめさせる。それからこれには出ておりませんけれども、保険会社もやっておりますね。自分が金融機関です。金融機関として工場に金を貸します。そうするとその工場が金を貸す、あるいは新設をする。それは自分の下にある保険会社、保険代理店、それを通じて加入しろ、こう言う、強制命令ではありませんが、強圧的なことを側面から申します。ある面では代理店では困っておるわけですが、それが一つの工場財団をつくって出して、ぽんとそのまま保険に入るわけなのですから、正当な競争というものが行なわれません。銀行が金を貸すときに、ひもつきで保険会社に入る、このことも御存じですか。主として火災保険です。
  63. 澄田智

    ○澄田政府委員 ただいまの御指摘の保険会社の、ことに損害保険会社の場合に、保険契約をとるに際して、そういうふうな関係不動産会社等を通じて有利な地位を利用しておるというような点は、具体例についてははっきり私が承知しているというケースがないわけでございますが、あり得る話だとも思います。そしてその保険募集の取締に関する法律では、そういうふうな非常に有利な利益を提供して保険契約をとるというようなことは、これは禁止をされておることでございますので、そういうふうな点からこの募集取締の違反になるというような場合であれば、これはやはり十分よく監督をして取り締まっていかなければならない問題である、かように考えております。
  64. 只松祐治

    ○只松委員 まあなかなか局長としては苦しい立場でしょうから、あるとは言えないかもしれませんが、言っておきますけれども、全部ありますよ。やっていないところがむしろないというぐらい、全部不動産会社がありますよ。これは別な面からきょうはそういう点もまだ聞いていきますから……。公取あたりを呼んで聞いても、公正な取引を阻害する行為になりはしないかと思うのです。  そういう面も、きょうは私は保留しておきますけれども、ついでにちょっと横道の問題できょうはまだ土地の問題を聞くわけですけれども、そういうふうに火災保険等も、ほとんどこの不動産会社を通じて強制的あるいは半強制的に入れておりますよ。こういうことをあまり知らないとか、指導していないというのは、私はたいへんな手落ちではないかと思う。不動産の売買、こういう保険の強制加入、まだいろいろあります。資本主義社会における金融機関というのは、いわばわが世の春です。しかし、力ある者、権力ある者は、やはりみずから正すべきものはある程度正し、えりを正すべきものは正し、守るべきものはやはり限界を守っていくということが私は必要だろうと思う。それでないと、自分がむちゃくちゃやって、そうでない被害者的な立場の者にだけ何か精神訓話のようなことを言って求めても、これはとても実行できるものではない。この日本は財界が再建をしたのだ、財界の中枢は金融機関だ。政治家や何かは、そんなものはたいして果たしていない。こういうことを言っておる向きがちょいちょいありますけれども、私はいまの財界、金融機関の専横、横暴というものは、まことに目に余るものがあるのではないか、そういうふうに思うのです。もちろん政治家その他もえりを正すべきものは正さなければなりませんけれども、その前にやはり財界、特にその中枢としての金融機関がえりを正さなければならないわけです。  私はプライバシーになる問題までここで論議しようとは思いませんけれども、一つ、二つ言っておきますと、金融機関、金融マンというのは、そんなにサラリーは高額は取れませんよ、金融という一つの紳士的なものがありますから。しかし、金はほしい。どうやって取る。この不動産会社を使うわけです。マンションに行ってごらんなさい。私が言うように、泉さんに聞いてもいいけれども、マンションには七割ぐらいは女性が住んでいますよ。この女性はどういう女性であろうか。その金をだれがサラリーの中から出すか。日銀副総裁、お持ちじゃないと思いますが、ちょっとサラリーから払えないでしょう。どうして払う。ここを利用するわけですよ。こうやってトンネルをやっている。私はそういうふうに一つの焦点としてこの問題を取り上げている。  過日取り上げた不動産の問題にいたしましても、サラリーマンは一〇〇%徴税をされる。それで足りない。酒やたばこをまた値上げする。中小企業者は綿密な調査を受ける。しかし、一番潤っておる不動産所得者というのは、不労所得でありながらいつまでたっても二年更改で権利金を取っている。そうして庶民を苦しめておる。その上脱税をする。そしてその脱税を共謀しなければ相手方に土地を貸さない。私がその後調べたら、会社だとその会社が公表するから、会社よりも個人がいい、こういうことでなかなか会社にも契約更新をしない、こういう傾向さえ出てきておる、これは地主の専横です。私がいただいたものでも、資本金を見てごらんなさい。みんな資本金幾らです。富士銀行の日本橋興業が二億四千万円、二億円くらいとは、億からのやつは数えるほどしかありませんよ。ほとんど千万円台です。いいですか、日本興業銀行の興和不動産は資本金が七千万、それで現在の総資産高二百十九億円、昨年の売り上げ高が五十九億二千万円。その上にどうです、税金は一千六百三十五万円です。これはどういうことです。七千万円の資本金のが、どうして二百億から――これも二百億じゃありませんよ。私が聞いたところでは、いま所沢にも二十万坪買っていますよ。それから八王子のほうにも六万坪から買っておる。去年じゅうで二百億の土地を買うと興和不動産は豪語しておりますよ。昨年だけで二百億円、資金があるから買う。これはどこから金が出てくるのです。中小企業には、とにかく金を貸せと言ったって貸しやしない。百万、二百万しか、とても貸しやしない。貸すときは、担保だ、何だってたいへんだ。ところが、傘下の不動産会社は、こうやって七千万円の資本で、資金は公表のあれですが、国税庁に出してきているのは二百十九億です。含み資産というのはもっと大きいはずです。私の言うように、二百億くらい去年だけで買っているはずだ。そうして売り上げが五十九億、約六十億、国税庁もあとでお答えをいただきたいが、六十億も商いがあって、わずか一千六百万円。こういうことはほかの製造会社なり販売会社では許しますか。あるときに、私が知っているだけで一年間で坪一万五千円抜いていますよ、興和不動産の下会社は。二万坪売って坪一万五千円扱いている、この利益、これは何ぼになる。これは一千六百万じゃないですよ。ほかの全部を見てごらんなさい。これだって税務申告を幾らしているか。二千万円以上の税務申告をしているのがここに何社ありますか。さらに、ないというのが半分はあるじゃありませんか、私がもらっている資料だけでも。こういうでたらめというのは、国税庁、銀行局は許しておりますか。まあ、ひとつ御感想からぼつぼつお答え願いたい。
  65. 澄田智

    ○澄田政府委員 私どもの通達による指導、これもこういうあれに着手をいたしまして、その方向に指導していくというようなことで、これで十分と思っているわけではございませんが、その金融機関の営業用の不動産について、まあ近ごろの土地の利用というような意味から、単に金融機関の店が入るだけではこの土地の利用としてもったいない場合に、若干それ以外のものが入る。しかし、そういうことも金融機関自体がやるということは、これは金融機関の専業という意味からいっておもしろくございませんので、そういう場合には不動産会社があって、それが金融機関の営業店舗、それからそれに一部他に貸している場合もあるというようなことも許される範囲であろうかと思います。  それからまた、担保物件として入りました不動産を処分するまでの間管理する、こういうことも金融機関の業務としては当然付随してくることでございますので、これを子会社の不動産会社がかわって管理する、これも許されることだろうと思います。  それ以外の、先ほど私が申しましたような、一般の不動産会社がやっております不動産業務というようなところまで手を広げているが、事実そういうところにだんだん手が広がってきておったことも御承知のとおりでございますが、四十一年十月に今後の指導方針をきめて指導いたしましてから、そういう場合、いま私が申しました狭義の不動産会社、その金融機関の業務に密接、直接に関連のある範囲の不動産会社と、それから一般の不動産業務を営む不動産会社と、これを分けると、前者については金融機関としては、これは一般の取引先と同じようなものであるということで、それについては十分に普通の取引関係というような範囲にとどめて、金融機関が特に有利な取引を行なったりするというようなことを避けさせるということでやってきておるわけでありまして、徐々にその方向に分離をさせたり、必要な体制をとったりしつつある段階であると思います。問題は、後者の一般の不動産業務を営むようなものに入っておる金融機関の関係であると思いますが、その点については、金融機関の指導あるいは検査等を通じて、今後とも十分そういう不動産会社と子会社に対し、金融機関として不当にいろいろ中に介入しているというようなことがないように、またこの債権の管理等についても一般の場合と同じように、厳正に財産保全という見地で金融機関として行なっていくように、そういう点について指導をしていきたい、かように存じております。
  66. 只松祐治

    ○只松委員 ただ、指導するとかしないとかいうことじゃなく、こういうことが行なわれているからどういうことになっているかというと、その前に、この銀行の古手の人を雇っていますから、それほどどれを見ても営業があまりうまくないようですね。それで、下の下請のものに相当食われたりなんかしているのがありますよ。そういういろいろなことから、一つはこれが大きな土地の高騰を招いているのです。埼玉やなんか近郊都市の買い占めをやっておる一番大口は、この銀行系の不動産会社のさらにその下の会社が直接買っているわけですね。これが一番土地の高騰を招いている原因なのですね。それから、繰り返し言っておりますように、こういう金融逼迫だ、何だかんだと言って、中小企業には貸さないで、こうやって――まあこれは聞くところですが、興銀のほうで二百億貸す、こういうことだそうでございます。そういうことで、結局中小企業に対しては、興銀にちょっと貸してくれと言っても貸しはしない。ところが、こういうところには何十億、何百億と出す。こういうことで、よけいに民間中小企業に対しては金を貸さない。少々の担保があっても金は貸さない。どんどん倒産は出てくる、こういう事態を招いておるのですよ。だから、金融機関はきわめて公共性が高いというのは、そういうことを言う。ただ単に貸している、貸していないという――その貸している結果、こういうことになる。どうですか、私がいただいておる範囲内でけっこうでございますが、不動産会社に金融機関から貸し出しておる各銀行の貸し出し状況というものを、ひとつ資料でお示しいただきたいと思いますが、いただけますか。それをひとつ……。
  67. 澄田智

    ○澄田政府委員 金融機関の個別の貸し出しの内容につきましては、それぞれの企業の秘密に属することもございますし、金融取引の性格というものから申しましても、一般に公表されるような形で資料をお出しをするというようなことはいままでも控えさせていただいておりますので、いまお話しのようなリスト全部にわたって貸し出しの状況というようなものをお出しするということは、いかがかと存じて、控えさせていただきたいと思います。
  68. 只松祐治

    ○只松委員 資本金と総資産と税金の問題は、大体いただいておる。あと売り上げは、国税庁のほうで一年間の売り上げ利益率は出せますね。これは公表できると思う。しかし、いまの貸し出しの内容でございますけれども、これは何らあやまちがない、あるいは正当なものであるということならば、これはそれでいいと思うのです。その秘密なりを私も侵そう、せんさくしようとは思っていない。私が一、二知っておる例だけ見ましても、なかなかそうではない、こういうことを知っておるわけです。そういたしますと、金融機関というものの特権を利用して、その金を不正に行使しておると言って過言ではないと私は思う。預金者から預かったものを、しているなら、これは預金者に対して不利益を与えておることです。あるいは興銀のように上から調達をして、したならば、それは不正に流用していることになる。私は、きょうはほんとうは法務当局のほうにもおいでいただいて、そういう関係についてまで少し突っ込もうと思ったのですが、そこまでしてもどうかと思って、きょうは法務当局のほうはおいでを差し控えたわけでありますけれども、私はこの問題は、不正に使っておるということになれば、そういう問題にまでおそらく発展するのではないかと思いますよ。佐々木さんも帰りがあれだそうですが、七千万円の資本金に対して、普通のブローカー的な不動産業者である会社に、公表で二百十九億、もっと含み資産を持っておるというのはもっと貸し出し金があるということですね。これは興銀だけがやっているか、何行かで協調融資しているかあれですけれども、どうです、これはいいこととお思いになりますか。即刻やめさせなければならないとお思いですか。それともこういうことは、あくまで銀行の秘密を保持するために、悪いことだけれども一切発表しないで――会社が倒産なんかしたりいろいろなことをしたら、どこどこで幾ら貸しておって、およそのことはこうだといって発表するでしょう。それで協調融資を、どこから融資した――しかし、こうやってわずかな資本金で膨大な土地を買う、こんなところはほかにないでしょう。こんな銀行がバックになってないところでこんなに土地を買うところが、個人なり民間でありますか。たいへんなことですよ。ぼくらに言わせれば、この二百十九億はもっと多いと思いますが、何百億か金融機関に貸してごらんなさいよ。中小企業金融公庫の貸し出しが幾らですか。国民金融公庫の貸し出し額は幾らですか。百億くらいとにかくことしは特に出せ、倒産するから、と幾ら私たちがここでやったって馬耳東風で、何とか努力いたします、善処いたします、なかなか貨し出しはしない。しかし、こうして不動産を買うためにはどんどん貸し出す。私たちが貸し出していると言うのにあなた方はそれほどじゃないと言ってるのだけれども、どうですか、ちゃんと資料を出しませんか。佐々木さんどうでしょう、これはいいことか悪いことかどう思っている、どう対処するか、証拠を出すか……。
  69. 佐々木直

    佐々木参考人 いま私のほうの手元にあります全国銀行――これは信託勘定も含むわけでございますが、四十二年中における不動産業に対する貸し出しの増加額は千百八億円でございます。これは四十一年の千四百二十二億円に比べますと増加額が減っておりますが、これは去年の、四十二年の夏から引き締めが始まりましたものですから、そういうときには、やはり一番先に不動産業に対する貸し出しが手控えられるという傾向がはっきり出てまいりますのをあらわしておると思います。こういうように、四十二年中の全国銀行の不動産業に対する貸し出し増加額は、千百八億円であったということは、これは私どもの手元にあります資料で事実でございます。
  70. 只松祐治

    ○只松委員 まあ私は、まだ個々に論じてないのですが、個々にそういうことを論議して一たとえば下町あたりの銀行で、約七割が不動産関係で金が動いているといわれているのですよ。それは何かといったら、ここに土地を買いたいという人がある、三百万しか持たない、ここにそれじゃ売ろうという、この買う人に銀行が二百万を貸す、それで五百万にしてやる。それでそのかわり銀行は、あなたのところで三百万ひとつ定期預金しなさい、そのかわり貸しますから、こうやる。これは一つは融資と、税金のがれ、二つかかっているわけです。税金のがれのために、これは二百万貸しておっても、三百万定期をとっておりますから、これは三百万円の取引ということにするんだ。銀行が立ち会いでやるんです。公然と、ほとんどの金融機関でやっておることですよ、これは。そういうトータルの数字だけ持ってきて、私らをごまかしなさんなよ。それは不動産目的で、名義だけであなたは調べているから、そういうことを言うのであって、そういう不動産でなくて、一般の金融の場合の動いている一番大きな金は、不動産で動いているのですよ。これは私は金融機関の中の人から聞いてきたのだ。だから、あまりきれいごとだけ言わないで、やはりそういう点が誤っておるなら誤っておる、そしてもう少しちゃんとする、それで危機におちいっている中小企業に優先的に融資をしていきたい、そうして勤労者の住宅なんか建てられなくなっているのだから、そういうことはひとつ金融面からも協力したいというのが、正直なお答えじゃありませんか。あまりここで四角四面なお答えを聞こうと思っていない。ただぼくはきょう、一国の日銀の副総裁ですから、こまかいことはあまり言おうと思っていないのですよ。あなたがお帰りになれば、もう少しこまかいことを詰めます。国税庁側に私はまだ詰めておりませんけれども、国税の脱税というのは、言ってないけれどもひどいものですよ。もう少し、やはり正すべきものは正して、そういうものをなくしていく、そういうことを善処する、そういう意向がありますか、すなおにお答えになったらどうですか。
  71. 佐々木直

    佐々木参考人 私いま御参考に不動産業に対する貸し出しの数字を申し上げたわけであります。もし、いまお話しのように、いろいろ金融機関が、自分の資金を頼んで不適当な仕事をしておるという事実がございますれば、もちろんそういう点は今後大いに直していかなければならないことは、これは申し上げるまでもないことでございます。  それから、われわれとして、中小企業に対する資金の供給につきましても、できるだけ配慮していることは事実でございます。その数字もございますが、それはいま申し上げるのを省略いたしますが、そういういまの御趣旨につきまして、私どもとして全く意見はございません。
  72. 只松祐治

    ○只松委員 ぼくが言った顕著な例としての資料を出しますか。そういう悪質なやつを、全然、知らぬ、存ぜぬでほおかぶりしようとしても……。
  73. 澄田智

    ○澄田政府委員 主として興和不動産の例をおあげになっておられますので、興和不動産について申し上げますと、四十二年の五月末で、長期借入金が、切り上げて百十七億でございます。それから短期借入金、これが六十九億六千万ばかりでございます。合わしますと百八十六億でございますが、これは全部金融機関借り入れでございまして、その金融機関は、これは決して興銀だけではございません。興銀のほか、非常にたくさんの金融機関がここに融資をしておりまして、その中には信託銀行とかあるいは生命保険とかそういうものも入りますが、そういった非常にたくさんの金融機関が融資をして、それがいまの合計百八十六億になるわけでございます。興銀が金額で一番大きいわけでございますが、興銀の融資額がほぼその三分の一程度に当たるわけでございます。この程度を申し上げることによって御推察いただきたいと思います。
  74. 只松祐治

    ○只松委員 佐々木さんは次の御予定があるそうですから、まだ聞きたいのですけれども、ひとつこれだけ聞いておきます。  私がいま幾つか述べました。局長のほうからもお答えになり、最後にこうやって興和不動産一行だけで長短期で百八十六億。わかりますか、膨大なものですよ、これは。中小企業金融機関に対する貸し出しと対比してごらんなさい。これが中小金融に響いて倒産が起こる。こういうふうだから、貸し出せ、貸し出せ、手当てしろ、あるいは私たちが金融の円滑化、民主化ということを言いますと、努力いたします、御期待に沿います、ところが、実際上こういうことです。貸し出し年月日や何かずっと調べてごらんなさい、まだまだ問題点が出てくるから。もう少し、日銀総裁も法王といってでんとすわらないで、こういう金融全般の多少はきめのこまかい面まで――政策委員会というのは、そのための権限なり権能が与えられておるわけです。けさもおやりになったのだと思うけれども、責任をお感じになって、こういうでたらめな金融行政といいますか、こういうものには、とにかく引き締めるだけ引き締める。これは土地の高騰を招いているのですからね、一番大きな原因は。そうしていま言うように、中小企業金融機関への金融の圧迫を招来しているのですから。そうして、あなたが帰ったあとで聞きますけれども、また脱税の大きな原因にもなってきておるわけです。こういうことはもう少し責任をお感じになって、この問題だけでもひとつ政策委員会に出して、どうやってこれをチェックしていくか、そうして正常な金融機関の運営をするかということをよく御討議をいただきたいと思います。よろしゅうございますか、お答えを願います。
  75. 佐々木直

    佐々木参考人 いまのような事情につきましては、私どもも十分調査が行き届いておりません。したがいまして、いまのような問題の御提議がありましたから、政策委員会にも報告いたしますし、今後は十分調査を進めていきたいと思います。
  76. 田村元

    田村委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  77. 田村元

    田村委員長 速記を始めて。  佐々木参考人には、長時間御出席いただき、ありがとうございました。委員会を代表してお礼申し上げます。  政府に対する質疑を続行いたします。只松君。
  78. 只松祐治

    ○只松委員 時間でございますので、一問だけして、あと午後質問を続けたいと思います。  さっきからちょっちょっと出しておりますように、泉さん、こういうふうに膨大な資金が動いておるということは、土地の売買が行なわれておるということですね。あなたたちが標準税率や何かつくっておいでになります。つくらないとおっしゃるけれども、あることは事実です。不動産業の利益の調査はなかなかむずかしゅうございます。いま言うように、全部下の小会社を持っておりますから、さらにこれが、銀行が小会社を持っていて、それが倒産したり何かしておりますから、これはなかなかむずかしいと思います。思いますけれども、私が国税庁からいただいたこの資料では、あまりにもずさん過ぎやしませんか。銀行で約半分以上利益なし、ありといってもわずかに二千万以下がほとんど。二千万こしたものはわずかしかない。午後からは日本地所の問題も少し例に出しますけれども、私はここに、日本地所の場合には、土地の所在地の地図から何から全部持っております。私はいま興和不動産のことを少し聞いている。五十九億、約六十億に近い売り上げがありながら、税が一千六百三十五万円、通常の営業をしておる製造会社あるいはサービス業で、こういうことが許されますか。この一つの例を言っているのですが、ほかの全部を通産してもほとんど利益があがっておらない。ある意味では、不動産業というのは一番利益があがっておる、こう私たちは見ておるわけです。単年度だけなら別です。しかしおそらくこの状態は、私はここ数年のやつはまだ見ておりませんけれども、何ならひとつここ数年間のやつをお出しいただきたいと思いますが、ほとんど利益があがっておらない。これはどういうことなんですか。
  79. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話しの、この金融機関の関係の不動産会社は、調査課所管法人、税務署所管法人、合わせまして私どもが把握いたしておりますのは六十七社でございます。最近の事業年度について申告状況を見ますと、そのうち三十七社が所得ありとして利益の申告をいたしておりますが、他の三十社は利益がない、むしろ欠損である、こういった申告、あるいは繰り越し欠損を控除すると当期の利益が飛んでしまう、こういったことになっております。只松委員のお手元には、そういった申告の状況をお見せしておる。しかもそのうち、御承知のとおり二千万円以上は公表することになっておりますので、二千万円以上の申告のものについて申告額はお示しをしておりますが、それ以下のものについては公表できませんので、申告所得ありなしという程度のことしか申し上げておらないのであります。これに対しまして、私どものほうは、もちろんその申告をそのまま認めておるものではございません。それぞれ調査をいたしております。  ただ、この六十七社のうち、先ほどもお話がございましたが、不動産の賃貸管理をやっている会社と、それから不動産の売買をやっている会社とに分かれます。最初の不動産の賃貸管理をやっているほうの法人数が五十一社、それから不動産の売買をやっているほうが十六社になっております。概して申しますと、不動産の賃貸管理をしておりますほうは、これはそう脱税の額は大きくないようであります。私のほうは、この五十一社のうち八社について調査いたしておりますが、調査課所管のものにつきましては、かなりの増差所得額が出ております。税務署所管はごく少ないものになっております。ただ、不動産売買を行なっておる法人のものは、かなりの増差所得が出ております。  まあ個別の会社の調査内容について申し上げることは差し控えたいと思いますが、ただ最後にお尋ねのありました興和不動産の場合、確かに私どものほうでその売り上げを調べますと、不動産あるいはマンション等を売却いたしまして、その売り上げ高が四十三億に達しております。したがって、それに伴う利益はかなりあるわけでありますが、同時に支払い利息が――先ほども長期、短期の借り入れ金が百八十六億に達するというお話がありましたが、したがって、借り入れ金の額に対する支払い利息が相当多額にのぼっております。先方としては、公表の損益が千六百三十五万でありますけれども、それに対しまする申告所得はそれを上回っておりますので、調査所得は、さらにそれを上回った金額になっておるわけでございます。
  80. 只松祐治

    ○只松委員 まあこれは一坪で一万五千円ぐらい私が知っておる土地で抜いておるわけです。興和不動産が取り扱っておるところで。わずか一年の問にそれが何万坪とあるわけですね。通常不動産業者に聞きますと、安くて五千円、高ければ一万五千円、まん中をとって七、八千円から一万円というのがこういう不動産業者――そのかわり一年じゃなくて二年、三年でやる。中間マージンを抜くわけです。だから、いまおっしゃったそういう数字というのは、私は納得できないのです。午後からひとつそういう面についての質問を続行いたしますから、そういう面の税関係資料をよくそろえていただいて、私の質問にお答えいただかんことをお願いいたしまして、午前中の質問を終わります。
  81. 田村元

    田村委員長 本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時八分休憩      ――――◇―――――    午後三時三十分開議
  82. 田村元

    田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。只松祐治君。
  83. 只松祐治

    ○只松委員 午前中からお尋ねをいたしましたように、不動産全体として現在の日本社会では非常な妙味のある産業になっておるわけです。それをたいへん資金の豊富な銀行がバックになって土地の買いあさりをやっておる。これは土地騰貴をもたらす。時間がありませんから、ただ私は土地騰貴をもたらすというような表現しか使わないわけですが、普通の場合は一年ぐらいで銀行から借金の催促に追われたりいろいろなことをするのですが、親元が銀行でございますから、二年と三年と持ちこたえることができる。こういうことで、騰貴の原因をなしたり、あるいはそこから利潤がたくさん出てくるわけでございます。こういう面や、他の一般的な金融貸し出しの圧迫要因をなしておる。そうやってたくさんの土地を買い、利潤をあげる。もうけておりながら、資産評価もでたらめであるし、したがってこの税務署申告の利益率というのは非常に低い。さっきちょっと午前中お尋ねをいたしましたように、通常建設で五、六分、それから土木関係では七、八分くらいが課税標準率になっておるのじゃないかと私は思います。私たちがいろいろタッチします税制の問題はそういうことなんですが、しかしこれから見ますと、一%どころか、たとえば興和不動産の五十九億ですと一〇%で五億九千万円です。五%にいたしましても約三億くらい。ところが、実際にはこうやって一千六百万円です。確かにこれはAという不動産会社の売買だけ見ると、そういうふうにしか出てきておらないわけですけれども、午前中から申しますように、Aという不動産会社の下にはイロハニホとこう幾つかの会社がありまして、売買にタッチをいたしておるわけです。   〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 たとえばAという不動産会社が昨年坪三万円ちょっとで買ったわけです。そのAという会社がイという会社を使って買った。ところが、今度これを売る場合に、口という会社を使って売る。それは、一万五千円から吹っかけた四万六千円で売り出す、こういうことになります。そうすると、坪当たり一万五千円も一年足らずで利潤をあげる。しかし、おそらくそのAという会社は、とてもそんな利潤を計上しないで、坪千円か二千円かしかもうかっておらない、こういう経理のしかたをしておるだろうと思うのです。これは具体例をここでは発表しませんが、何なら私が国税庁に教えますから、ひとつあとでお調べになったらいいだろうと思います。そして一万坪これがありますと幾らになりますか。一億五千万円です。この関係で六万三千坪買っております。こうやってするならば、相当膨大な利潤というのがそこに出てきておるわけですね。こういうふうに、そのAという不動産会社だけ見ますと、それほどの利潤は出てきておらない。ところが、その下のイロハニという会社を使ってやっている。これはその経理は非常にずさんですし、どうかしていくと、一年か二年かで倒産させる、こういう形をとっていく。これはちょうど日通の伊豆ランド事件と似たり寄ったりだ、こういうふうに私は思うわけです。日通が社会的に大問題を引き起こしておりますように、まして神聖なるべき公共性の一番強い金融機関を中心にこういうことが行なわれておるとすれば、これはたいへんなことになる。そういうことを私は午前中から一つの結論的なことに話を進めておるわけです。ぜひひとつこういう点に対しては、銀行局のほうにおいてももっときびしく調査をするし、指導していただきたい、こういうふうに思います。それから国税庁のほうにおきましても、不動産がどの程度うまみがあるかということは私たちしろうとが言わなくても、専門家の皆さん方は十二分御承知のはずでございます。幾ら金利を支払い何を支払ったところで、早い話が、私は言うのですが、金貸してくれるところさえあれば、一年借りておって年間大体一割払ってもよろしい。二年で二割だ。その間に、大体埼玉あたりの近郊都市では、およそ二年持っておけば、よほどのへんぴなところを買わぬ限りは、大体一年でおよそ倍になっております。一割の利子あるいは諸雑費を引きましても、一%も利潤が出ない、こういうばかげたことはとても起こり得ないのです。しかも土地の場合には人件費というものはそんなにかからないのです。こういうことが平然として行なわれて、査察部長さん等をここにお呼びして聞いても、いやよく調査をいたしております、十分でございますというお話を聞くわけですが、私は、はあ、さようでございますかと引き下がるわけにはいかない。ここで個々の全部の会社を出して問題にしようと思いませんけれども、ひとつそういう点に対して、必ずしも十分でないということをお認めになって、私がいただいておるこれを一般の商店やら中小企業者の課税標準とみなして一般の人に公表してごらんなさい。納税意欲は半減いたしますよ、銀行をバックとしてこれだけの資本金を動かしているのがこんなに税金を納めていないということになれば。さらに、それはサラリーマンに言ったってたいへんおこりますよ。しかし、これが現実に、こうやって皆さん方がお出しになる資料でさえも、こういう状態であるという点に関してあらためて――私は、この前個人関係の不動産業者の問題を、まあ野党ですから、ほんとうは税金を取りなさいと言う必要は私たちはひとつもないわけですけれども、あまりにも不公平の度が過ぎるということで申し上げておるわけです。ぜひひとつこのことをお認めになって、適正なる課税をする、こういうふうにつとめていただきたい。いかがでございますか。
  84. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話のありましたように、金融機関の関係の不動産会社、そのうちでも特に不動産の売買を目的としている会社につきましては、いろいろ問題がございます。先ほども申し上げましたように、私どもとしましては、そういった不動産の売買に伴って相当の利益が発生しているという見通しのもとに、他の法人に比べて特にそういう不動産売買会社については、実調率を高めておるような次第でございます。しかしそれでも、売った価格などにつきまして、金融関係との間でいまいろいろ通謀等のことも行ない得るわけでありまして、そういったことのために実際の所得を把握し得ない場合もいろいろあろうかと思います。しかし、私どもとしては、さらに努力を続けまして実調率を高めますと同時に、隠された所得の把握に努力をいたしたいと存じております。
  85. 只松祐治

    ○只松委員 そういうものの参考のために、ある意味では世にもふしぎな話を一つ聞かせましょう。  不動産銀行というのは、銀行それ自体が不動産を担保やいろいろなことをして金を貸すわけです。これがその下に日本地所というのを持っていますね。資本金一億五千万円。そのあることを銀行局長御存じでございますか。
  86. 澄田智

    ○澄田政府委員 おっしゃるとおり、日本不動産銀行が一〇%出資をしております会社に日本地所株式会社というのがございます。資本金一億五千万円でございます。
  87. 只松祐治

    ○只松委員 不動産銀行は日本地所と不動産ビルと二つの不動産会社を持っております。その中の日本地所というのは一億五千万円の会社です。現在の総資産は四十九億八千一百万円、約五十億円であります。ところが、その日本地所の持っておる土地の資料のほんの一部を私がここに持っております。何ならば差し上げてもけっこうでございますが、ごらんになりますか。全部日本地所が持っておる。その土地の測量面積までここに書いてあります。これを低目に見積もりましても、評価額がここに持っておるほんの一部で四十一億くらいあります。このほかにも、評価をいたしておりませんが、長野県や我孫子の造成中の土地、あるいは東京の都内に土地を持っております。概算いたしましても、私がここに持っておる土地だけでも大体五十数億のものになるだろう。このほかにも日本地所というのは多くの土地を持っております。あるいは、ここに持っておりますけれども、日本地所が鎌倉雪の下マンション、江の島マンション、パレス三条、麻生霞マンション、横浜野毛山マンション、それからそのほかにもこういうマンションをつくり、所有をいたしておりますし、売っております。あるいは全国市町村会館の不動産というものの所有名義はいま日本地所になっておるはずでございます。私がこうやってちょっと手に入れたものを見ても――全国市町村会館を日本地所が持っておることの中身にもいろいろな疑惑といいますか、複雑な問題がからんでおるようであります。それはそれといたしまして、こうやって日本地所の私が手に入れた一部の財産を見ましても、膨大なものになるわけでございます。ところが、国税庁とか銀行当局とか大蔵当局に提出されておるのは四十九億、こういうことでございます。さらにこの所得額その他もそれほどたいしたことはないわけです。これはどこの管轄になるかあれですが、日本地所の持っておる総資産というものは四十九億八千百万円、これが妥当であり、現在出されておる税務署への申告というもの、これが妥当である、こういうふうにお考えでございますか、どうです。
  88. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話しのように、日本地所はいろいろのマンションを持っておりますし、それからそのほかに土地も相当持っておるようであります。私どものほうの申告書に提出されておる貸借対照表から知り得ましたところでは、いまお話しのように、四十二年三月三十一日現在で総資産が四十九億、そのうち商品である土地が三十三億、それから建物が二億ということになっております。ただ、この期につきましては、まだ私どものほうは税務調査をいたしておりません。至急税務調査をしなければならぬだろうと思っております。その上でないと、いまの帳簿価額が不適正であるかどうかもわかりかねますが、ただ、その土地である商品は、取得価額が安ければ、時価は相当多額でありましても、三十三億という帳簿価額が不適正とはなかなか言い得ないだろうと思います。ただ、実際にこれを売買すれば、相当の利益があがる土地ではあろうと思います。したがって、その際に適正な申告がなされるかどうか、これが問題だろうと思います。いずれにしましても、私どもとしましては、調査をした上でないと、いまのお話の点が適正であるか適正でないかということは、ちょっとお答えいたしかねます。
  89. 只松祐治

    ○只松委員 不動産銀行というのは、ほかの不特定多数に対して設備や何かをする場合金を貸すわけですね。不特定多数に一般の産業の発展のために貸す。ところが、自分が直接そこに日本地所というような子会社をつくって、そうしてその子会社がマンションでも何でもどんどん建てていく。いわばこれは日通の伊豆ランド以上にトンネルもトンネル、つうつうのトンネル会社をつくっている。これはこういうことになるわけですね。そうでしょう。自分がそこにいて、そこの事業会社が、今度は土地の売買だけでなく、マンションまでつくって不動産銀行を舞台に金もうけをさせておるわけですから、これは不動産銀行本来の目的を逸脱し、その特権だけを乱用も乱用、はなはだしいものだと思うのですね。こういうことは許さるべきことではない。こういうことができるのだったら、どこかに国で銀行をつくっておいて、それを利用して、権力でも何でも乱用すれば何だってできる。その日本地所のために日本不動産銀行があるわけではない。もちろんそこにだけ貸してはいないはずですが、そういうトンネル会社的なものをつくってここでやっていくというのは、私は不動産銀行のあり方としては邪道だと思うのです。銀行局長、どうです。
  90. 澄田智

    ○澄田政府委員 日本不動産銀行は、御承知のように長期信用銀行法によりまして、長期信用銀行として一般の長期金融、ことにこの銀行の特色といたしまして、不動産担保金融等の不動産金融もいたしておりますが、広く一般の長期信用銀行としての金融を目的といたしております。日本地所株式会社については、これは先ほど私が申し上げました関係の不動産会社という性格からいいますと、これは一般の不動産の売買、それからさらにいまのお話にありましたような、マンションとかアパートとかを建てまして、その賃貸をやるというような形の一般の不動産業に相当することをやっております。ちなみに、もう一つの不動産ビルというほうは、これは不動産銀行の固有の業務に必要なビルの管理、賃貸というようなことをやっておりますが、日本地所のほうは、広く一般の不動産業に相当することをやっておりますので、不動産銀行としては、これは他の金融と同様に、当然コマーシャルベースによって取引をすべきものでありまして、そういう趣旨でもって、行き過ぎ、あるいはいま申しましたような、不動産銀行がこれを通じて不動産業自体を営むかのごとき、そういうおそれがあるというようなことのないように、この点は不動産銀行の監督及び検査の際に注意をしてまいりたい、かように存じます。
  91. 只松祐治

    ○只松委員 しかし、それを売買する人や、また日本地所が相手方に土地を買ったり何かして乗り込む、そういうときは、あたかも不動産銀行の子会社というのか何か、安心させるためにも、いかにも表裏一体になってしているのだ、買うにも何も金は心配ないのだ、こういう説得のしかたや何かして買うわけです。だから日本地所というのは、不動産銀行の出先みたいなものだ、こういうふうに受け取っておるわけですね。あるいは、そこの下にそういうように幾つか動いておる会社なんかは、完全にそういうふうなことを言いながら土地を買ったり何かする、こういうことになっているわけなんです。資本金とかあるいは重役のあり方とかなんとかを見れば、表面は必ずしも不動産銀行の直接の子会社、こういう形には見えないかもしれません。しかし実際上は、世間の通念としては、その会社の子会社、こういうふうに受け取られて土地の売買等が行なわれておるわけなんです。これは少し土地の売買したところ等を皆さん方が調査されれば、私が午前中あげました興和不動産の興というのも、興業銀行の興というのと同じ字ですし、あたかも管理会社と子会社みたいな形で地主たちや何かに接する、こういうことですね。そこで私がこういうことを強く言っているわけです。資本金が十分の一以下である、そこの中で重役は何人しか入っておらない、そういう面だけを見ますと、なるほどそうかという面もあるわけですが、しかし世間一般には、興和不動産というのは興業銀行のバックアップで資金二百億を持って買っているそうだ、こういううわさが飛んでいる。あるいは日本地所の場合には、何といったって不動産銀行がついているからといって、安心して売買その他をする。こういう形で売買というのは行なわれているわけですね。だからそういう面から、私はあまり形式的な法解釈や何かから皆さん方をいじめるのではなくて、この不動産業界の中で行なわれておるそういう売買のあり方や何か、そういうものを通じて銀行の子会社であるかのような形のものが公然と行なわれておる、こういうのはやはり行き過ぎではないか、邪道ではないか、こういうことを言っておるわけなんです。だから、定款や資本金の構成やそういう形式的な面だけではなくて、この不動産の売買の中に占めておるといいますか位置づけ、あるいはこの膨大な資金をバックに土地のつり上げ等が行なわれておる、こういうことを金融の面から正していくということをもう少し私はシビアーに行なっていただきたいと思うのです。  それから、さっき言いました資産評価その他にいたしましても、これは課税のもとになるそういうものでも、一般の会社や何かは相当きびしく行なわれる、あるいはこの利益の調査もきびしく行なわれるけれども、これは、こういうふうに私からいえば非常にずさんであるというか、でたらめであると言っても過言でないくらいに――こうやって私が持っておる資料だけを換算しても、これは大蔵省に提出されておる資料よりも総資産額が多いわけです。しかもマンションで売った利益、そういうものだけを見ましても、日本地所は本年六千八百万円ですか出ておりますけれども、とてもこんなものではない。そこに関係したある人が言うには、一億から簡単に利潤が出ておる、これだけ売って日本地所が六千万円くらいの利潤なんて、じゃうちの会社はもう何百万円か少なくしていいですよ。うちは土建会社をやっておる、土建会社をやっておれば、必ず五分から一割くらいはもうけているだろうということで追及をされてくる。それを否認するとえらい目にあう。ところが、こうやって不動産会社は大きな資本をバックとしながら、とにかく一%にも満たない利潤しかあげておらない、それが認められておる。それは厳重な調査をしたんだ、その結果でなおかつこういうことだ、こういうことであるならば、もうわれわれは税金を納めるのは何をか言わんやだ。こういうことを私のところに資料を持ってきた人なんかは言うわけなんですね。だから私が、いろいろ脱税の問題や何かについてもそうした意見を言いますけれども、こういう大口の――確かにAという会社は幾つかの子会社を持っておりまして、それを倒産させたり何かしておりますから、調査しにくいでしょう。そこまで追及をしていかなければならないからたいへんですけれども、追及をすればこういう膨大なものがあるわけです。ところが、いつも言うように、のれんをかけて夜逃げはできない、倒産はできない、子会社もできないというとうふ屋とか、くつ屋とか、げた屋とか、文房具屋、こういう商店は徹底的に追及をされる。ところが、こうやって膨大な利潤をあげておると見られながら、追及に多少日数がかかったり何かする。そういうことで、私はこの前から、そういうものの追及のためにも――中小企業をいじめるためではなくて、税務職員の方の苦労は苦労として、それは報いなければならないではないかということを言うわけですが、それはそれ、として、もっとこういう面に――私は、きょうはほかにもありますけれども、興和不動産のほんの一部と日本地所のほんの一部だけを例示いたしまして、あまり個々のものを例示するのもどうかと思って差し控えた。特に一昨日まで、三月三十一日までの日切れの段階であれば、もっと具体的に資料も要求して、その資料を出さない限り私は法案審議をストップさせるくらいの腹であったし、資料も持っておるわけであります。しかし、もう一応日切れ法案のその問題も済んだわけですから、私はある意味で、さらっとこうやって聞いておるわけです。さらっと聞いておるからといって、皆さん方はさらっと受け流すのではなくて、またいずれかの機会に私聞きたいと思うのです。  午前中は融資の問題でしたが、国税庁のほうも、私はあえて言うなら大きな脱税がある。これは普通の標準税率から見るならば、いまだれが見ても、不動産会社は大きな資金を持っていて、損しているとか、利益がないとか、ほんの一%に満たない利潤がほとんどということは、世間に通用しませんよ。やはりあなた方が行政をやる場合には、一応常識として世間に通用することを基準としてやるわけですが、標準税率から見た場合に通用しないようなことを――銀行をバックとする不動産会社に対しては、何がおっかないのか知らないけれども、こういう通用しないことをやって、査察部長に聞くと、厳重再三調査をした結果ですと言う。しかし、私がこういうことを言っている日本地所の資料一つとってみても、その資料がでたらめだということがわかります。しかし私は、ここで開き直ってやろうとは思っておりませんので、この程度でやめますが、ほんとうにやれば、あなたたちがどの程度やっておるかということについて、私は論駁する資料を持っております。しかし私は、委員会を流会させようとはいま思っておりませんから、この程度にしておきます。あなたたちががんばるなら、私はさらに申し上げますが、しかし、これ以上きょうは申し上げませんけれども、私の意のあるところをよくおくみ取りいただいて、こういう面に対して、税の強制的課税ということではなしに、適正な課税ということをお願いしたいと思います。
  92. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話の点は、まことにごもっともでございまして、私どもとしましても今後十分努力をいたしたいと存じます。
  93. 只松祐治

    ○只松委員 以上で終わります。
  94. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 竹本孫一君。
  95. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、きわめて簡単に一、二のことを承りたいと思います。  最初は、物品税の問題ですけれども、主税局長にお伺いしたいのですけれども、物品税はいつごろ、何の目的のために、いかなる性格でできたものであるかということを伺いたい。
  96. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 物品税は、御承知のように、昭和十二年八月に日支事変の特別税の中で行なわれたものでございまして、当時、消費税の性格を持って制定されたものでございます。
  97. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで、そういう性格の物品税等が、支那事変とかあるいは戦争のための一時の目的というなら意味がよくわかりますが、いつまでもずるずるべったりに続いておるということは、どんなものであろうか。  それからもう一つ伺いたい点は、これはそれぞれのものにかかってきますから、個別産業からいえば、非常に企業努力をして地盤を切り開いた、そしてやっと伸びて一人前になるというころには、物品税をかけられたというような形になる。そうすると、かけられない産業との間には若干の不公平が出てくると思いますが、いかがですか。
  98. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御指摘のように、当初消費税でございましたけれども、主として戦時中の奢侈抑制、あるいはさらに進んでは消費抑制的な意味で、物品税は戦時中に非常に税率が高くなった経緯がございます。戦後、その高い税率を逐次下げてまいりまして、そういう非常時税的なものから一般的な消費税の形に変えてきたのでございます。一時は一〇〇%以上の税率があったと思うのですが、最近では、御承知のとおり、製造課税で四〇%が最高でございます。小売り課税で二〇%が最高になってきているわけでございます。課税品目も一時はほとんど全品目と申しますか、金魚にまでかかったことがございますが、最近では、主として奢侈品、娯楽品に縮めてまいりまして、いわば戦時型の消費税から平時型の消費税に衣がえをしたわけでございます。税率も低くいたしまして、対象物品もそのように整理をいたしましたので、いわば世界各国に見られるような消費税の形になったと思います。そういう意味では、一般的な消費税に比べますと、奢侈目的のものにはやや高い税率を使い、差別課税ができる意味で、個別消費税という形でやっておるだけに、公平性がやや保てているものじゃないかと思っております。  御指摘のように、課税物品に対しましては消費税が課せられるという意味で、ほかの産業に比べていわば頭が重いかっこうになっておりますけれども、消費税自身が戦時中に課せられて、それが漸次廃止になってきたという経緯で、大体においては課税物品が従来の課税を前提にして生産をされておる、それによって経済流通もきまっておるという性格もございますので、問題は新しくできた物品にあるかと思います。  したがいまして、新しくできた物品、たとえば戦後トランジスタラジオとかあるいはさらにテレビジョンといったようなものが出現いたしまして、これが課税物品に加えられてまいりましたが、その際には、大体それらの製品が製品として市場に行き渡る直前に課税するとか、あるいは最初の課税の場合には低い税率を使うとかいたしまして、その課税の転嫁がしやすいように配慮をしてまいり、また中小企業のつくっております物品で転嫁がどうしてもできないものは、かなりぜいたくなものでも、転嫁ができないという意味では消費税として適当でないということではずしてまいりました。そういう意味では、現在の物品税は、大体転嫁可能なものが多く、産業に対する抑圧的な効果というものは非常に少ない、かように考えております。
  99. 竹本孫一

    ○竹本委員 奢侈品にかけるということはある程度理解ができるのですけれども、その奢侈とは何ぞやということを、だれがどういう機関を通じて判断するか、これが非常にむずかしい問題だと思います。現在はどうなっているか、そのかけ方はだれがきめるのかということ。もう一つ、消費抑制ということのために物品税を使うということは、必ずしも妥当な道じゃないと思いますが、その点いかがですか。
  100. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先日も御答弁申し上げたことでございますが、何が奢侈であるかという問題はなかなかむずかしい問題でございます。したがいまして、物品税も大体四年に一回くらいの間隔で品目の洗い直しをして、いろいろ国会で御決定を願っているというような次第でございますし、最初消費規制の意味で非常に広範に課税物品を定めておりましたのを、漸次いろいろな個別の事情、転嫁可能性あるいは日常の必需物品という観点から洗い直しておりますので、多分に歴史的なものがございますけれども、まずまず一般に受け入れられる程度にまでなってきたのではないかと思います。ただ御承知のとおり、同じ物品でございましても、非常にぜいたくなものとぜいたくでないものがございます。たとえば茶わんでも、何万円の茶わんもあり、あるいはわずか数十円の茶わんもございますので、物品税は、その点では課税最低限の制度を相当効果的に使いまして、奢侈と奢侈でないものとの区別をつける努力をいたしているわけでございます。
  101. 竹本孫一

    ○竹本委員 ちょっといま答弁を聞き漏らしたのかもしれませんが、だれが洗い直しをやるのかということが一つ。それから消費抑制のために物品税を考えるということは必ずしも妥当な方法ではないと思うが、どうか。この二点について……。
  102. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 だれが洗い直しをするかという問題は、それは手続的に申しますと、税制調査会でいろいろ御審議を願いまして一つの立案をするわけでございますが、最終的にはもちろん国会で御決定願っているということでございます。  それから、奢侈、消費抑制の意味に物品税を使うということは、これは一種の非常時税でございますので、現在の物品税にはそういう目的は適当でないと思います。
  103. 竹本孫一

    ○竹本委員 消費抑制ということは、日本のような国において必要であるか必要でないか、いろいろ議論が分かれるところでありますが、将来税制のあり方として、消費も抑制しなければならぬという段階において、消費の抑制を考えた税制を考えるという場合には、売り上げ税の問題あるいは付加価値税の問題、そういうようなものは考えないというような答弁もあったし、また一部には考えるといったような動きもあるようですけれども、基本的に大蔵省は消費抑制についてどう考えておるか。また、消費抑制の場合の税制のあり方はどう考えておるか。
  104. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御承知のように、イギリスなどでは物品税に相当するものを景気抑制の意味で税率を上下して使っておるという例はございますが、一般的な消費規制だけの目的で消費税をつくるということは、普通の経済状態では私は必要はないと思います。戦時であるとか、あるいは特別な不況の状態のときにそういうものを設けるとすれば、臨時税としてあり得ると考えております。わが国で現在消費規制の目的でたとえば売り上げ税を起こすという考え方は、私どもとしては持っておりませんと申し上げていいと思います。
  105. 竹本孫一

    ○竹本委員 きょうは簡単に終わりたいと思いますので、そのくらいにいたしておきます。  それから次に、租税特別措置法について伺いたい。これはいつごろできたものであるかということと、できてから従来までに――全部正確でなくてもいいのです。大体の話でいいのですが、廃止されたものがあるのかないのか。あるとすれば、どういうものがどういう理由で、いままでの経過の中で廃止されておるかといったような問題。
  106. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 租税特別措置法は、現行法は、御承知のとおり、昭和三十二年に全文改正をいたしまして整備いたしましたが、その前に戦時中から臨時租税措置法とかいろいろな形で長らく続いているものでございます。現行法では、できるだけそういう租税特別措置的な要素のものを各基本税法から抜きまして整備をいたしましたために、現在は特別措置租税特別措置法にほとんど集中されておるという形でございます。  租税特別措置は常に中身を整備いたしております。たとえば廃止したもので大きなものと申しますと、重要物産免税、これは大正年代からあった制度でございますけれども、これを四十一年の税制改正だったと思いますが、廃止いたしました。それからその間にも、増資配当免税という制度を起こして廃止した例もございます。その時点その時点における政策目的に応じて新しい措置をとると同時に、その後廃止をしていくという過程を繰り返しておるものでございます。
  107. 竹本孫一

    ○竹本委員 もうすでに同僚委員からいろいろと質問、論議が深められておりますので、結論を聞きたいのでございますけれども、これをやる場合には、必ずこれこれの目的、政策効果をねらいとしてやるわけですけれども、われわれが初めから、あるいは現在においても、そんな政策効果はないんだといって反対しているものもたくさんある。政府は、そうでない、こういう効果を期待しておるんだと言われたものもある。それは見解の相違もいろいろありますが、政策効果を期待したもので実はそれほどなかったという、政府において反省されておるものがあるかどうか、それをお聞きしたい。
  108. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 現在残しているものは、やはり政策効果があるという前提で残しておるわけであります。廃止したものの中にも、最初はあったけれども、いよいよ意味がなくなったということでやめたものもございます。重要物産免税などはおそらくその一つではないかと思います。重要物産免税は、御承知のとおり、新しく製造を開始した物品につきまして三年間免税をいたすわけでございますが、その際、もし免税を受けるとすれば、その製品は最初から利益を受けられるような強い製品であったわけです。それに免税を与える理由はなかったと思われます。もし産業が最初に起こったときに保護するという意味であれば、最初のうちは利益がありませんので、免税の措置は何にもならないという矛盾があったわけです。これは惰性で長らく続いておりましたが、これを最後には、現在最終的に経過規定として電算機が残っているだけで、すべて終了したわけです。最後的な意味から申しますと、重要物産免税は政策効果はまずないという判定を受けた、こうお考え願っていいかと思います。
  109. 竹本孫一

    ○竹本委員 主税局長の御答弁を聞いておると、日本の税制は満点であるかのような感じですけれども、そういう反省のない態度がとかく論議を呼ぶのだと思いますが、きょうはこのくらいにしておきます。  そこで、資料の要求にもなるかと思いますが、ややこしいと思うのですけれども、租税特別措置を今日ただいま全廃した場合には増収額は幾らくらいあるかということについての一応の概算を資料として出してもらいたい、こう思います。これは言うまでもなく、貯蓄奨励とか輸出割増償却とか技術等海外取引所得特別控除というようなものは、こちらでやめればこちらで収入になる、こういうことですね。そういう部類のものもありましょうし、あるいはまた海外市場開拓準備金海外投資損失準備金制度をやめれば、それが益金になって、それに対する税がかかる、こういう場合もあると思うのですね。これは広沢委員でしたか、いろいろ追及されておりましたけれども、どうも食い違っておりますので、それを裏返しに私は資料を要求するわけですが、いまその制度をやめた場合にはどのくらいに増収になるかということについての資料を、採決前には間に合わないでしょうが、御提出を願いたい。   〔毛利委員長代理退席、渡辺(美)委員長代理着席
  110. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 制度自身を廃止したことによる経常的な歳入増というのは、私どもが前にお配りをいたしました二千六百億という数字がそのまま、減収額が実現しなくなるわけでございますから、そっくり増収になるということになると思います。しかし、さらに過去において減税してきたものの累積額は、租税特別措置の系統で約四千億近くあると思います。これが全部益金に算入されますと、それの三五%、千四百億程度の税金が一時に――たとえば市場開拓準備金のように、五年に分けて益金算入というような制度がございますが、そういうものを無視してしまって、一挙にそれをやれば、そういう数字になると思います。ただし、それはその次の年からはもはや増収にはならぬ。経常的な二千数百億はこれはずっと続くわけです。そういう結果になると思います。
  111. 竹本孫一

    ○竹本委員 いま御答弁の範囲のものを一度整理して、こういう益金が立てられるのでこうなるという点の資料を、急ぎませんが出してもらいたい。なおそのときには、すでに廃止されておる租税特別措置で減収になったもの、要するに制度が始まってから途中の、こまかいものはいいですが、大きなところだけでこういうものもプラスして考えなければいかぬというものも、あわせて一応資料をいただきたい。
  112. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いま最初におっしゃいました資料で、こまかい一々の内訳はないかと思いますが、概算としてお出しをいたしたいと思いますし、廃止したものにつきましても、おも立ったものの廃止の当時の減収額というものを拾って――網羅的にはこまかいものがありますので、御了承いただければ大ざっぱに出したいと思います。
  113. 竹本孫一

    ○竹本委員 最後にもう一つ。連結財務諸表の問題でございますけれども、アメリカでは五十年前からこれをやっておるとかいうことでございますし、せんだってもこれについていろいろ質問があったようでございますが、日本ではこれはどういうふうに考えられておるのか。時間の経済上全部まとめて申し上げますが、連結納税申告制度を採用する考えがあるのかないのかということが一つ。次には、その場合に、税をごまかしてしまうというようなことがありはしないかということについて、御心配が主税局長からこの間述べられたと思うのですけれども、しかし、それは必要な規定をつくればそれを押えることができるのではないかと思いますが、その点はどうか。  それからもう一つ、これはこの前塩崎主税局長のときに私が質問した問題でございますけれども、大企業中小企業に化けてというのではないかしらぬけれども、とにかく大企業が別働隊をつくりまして、製品の広告でも宣伝でも全部大企業がやっておるのだけれども、たとえば大阪支店、兵庫支店というべきところを、大阪何々株式会社とか兵庫何々株式会社にしてしまって、そして結果としては中小企業に与えられているいろいろの恩典を乱用、逆用しておるというものがある、これは一体どうするつもりかという質問に対しまして、これはひとつ連結方式で押えることを考えてみたいというような御答弁がございましたが、それはその後どうなっておるか。  この三点をお答え願いたい。
  114. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 連結貸借対照表の問題は、まず企業会計の中で非常にむずかしい問題がございまして、企業会計審議会で現在検討して一つの基準をつくりまして、しかしこれはまだ制度として商法で採用されておるわけではございませんで、いわば一種の企業財務規範というような意味でそういうふうなものをつくっているということが考えられるわけですが、直ちにこれを制度上取り入れるというところまではまいっておりません。税法といたしましても、これが制度として採用されてくる時期にこれをどうするかを考えなければならぬと思いますが、現在税制として連結貸借対照表による納税申告というものを考えるという段階ではまだないと思います。諸外国ではそういう例もございますけれども、この間も申し上げたように、子会社と親会社を結合して損益を通算するという意味が強いということから、むしろ子会社が損をしていて親会社だけもうけている、片っぽうは税が返してもらえないのに片っぽうは税が返る、そこで通算したいというような向きに使われているものが多いと思います。そういう意味では、公平を考えればそれがほんとうなのかもしれませんが、条件その他なかなかむずかしい問題があると思います。これは、将来の問題として研究してまいりたいというふうに考えております。そこで、そういう通算によって税が減ったりなんかするかという問題ももう少し具体化してから考えたい、かように考えております。  それから、前回御質問になりました、大企業が別働隊をつくって、それが中小企業であるために、たとえば一億円以下の資本金でいろいろな軽減税率とかあるいは、中小企業の貸倒引当金というようなものを利用しておるという問題を御指摘になったことを私も聞いております。私どもも、これについては確かに問題があると思いまして、そういう企業については、一億円以下であっても特別な規定適用しないという方法があるのじゃないかということも、実はいろいろ研究もいたしております。おっしゃるように、確かに、連結貸借対照表を使うというような企業の連関性というものに一つの基準が出てまいりますと、そういうことで切っていく手があると思います。どの程度の連関性があればそれを切れるかということになりますと、その点まだ十分検討ができておりませんので、将来の研究課題として続けて検討してまいりたい、かように考えております。
  115. 竹本孫一

    ○竹本委員 最後の問題は、もう少し積極的に前向きに検討してもらうように要望をいたしまして、質問を終わります。
  116. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員長代理 田中昭二君。
  117. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 きょうは私、まず物品税の問題から聞いてまいりたいと思います。  物品税が、政府のいつも御答弁なさるように、ぜいたく品にその税の負担を持たせていきたい、こういうことで課税されておるようでございますが、きょうはその物品税が課税されておりまする品目について、事実ぜいたく品に多く課税されておるということをひとつ聞いていきたい、こう思うわけでございます。こまかいことになりますが、まずその点を申し上げて始めたいと思います。  まず、現在の物品税の第三種物品の中に清涼飲料に課税してあるわけですが、この清涼飲料というのは、どういう品目にどういう金額から課税されて、その金額がどのように税収があがっておるのか、一番最近の課税実績からお願いいたします。
  118. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 従来清涼飲料は第三種でございましたが、この間の改正で従量税をやめまして従価税に組み入れましたために、現在「飲料類及び飲料用のし好品」という形できまっておりまして、果実水、シロップ類、それから炭酸飲料、こういうものが課税品目にあがっております。
  119. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 その課税品目の課税範囲はどのようになっておりましょうか。
  120. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは、課税最低限があるものと、それからいわゆる非課税と申しますか、課税除外のものと二つわかれております。たとえば果実水で申しますと、果実水のうち果実の搾汁そのもの、これは非課税物品になっておりますし、また一定の発酵乳または乳酸菌を使用したものの一部は非課税品になっております。それから御承知のドリンク剤についても、これは政令で五十一ミリリットル以下のものは非課税ということになっておりますし、今回の改正では、五十ミリリットル以上のものであっても、その使用方法、販売方法等が薬品としての態様で行なわれているもので厚生大臣の指定するものについては、これを非課税とするというような規定がございます。それから一般に果実水及び果実みつにつきましては、百ミリリットルにつきまして七円の課税最低限があるわけでございます。それからコーヒーシロップ及び紅茶シロップ、これらにつきましてはやはり糖度によって百ミリリットル七円ないし二十二円の免税点があるということになっております。それから固型ラムネにつきましては一キログラムについて四百二十円の課税最低限がございます。
  121. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 税率は幾らでしょうか。
  122. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 それは五%でございます。
  123. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 そうしますと、普通世間に出回っております果実水、シロップ、コーヒーというのは全部税金が一応かかるということになると解釈しますが、第二種物品のうちの第四類でございますか、いまそういう分類がございますが、その中の「コーヒー、ココア等」というものが課税実績があがっておるようでございますが、これといまおっしゃった第三種物品の清涼飲料とどのように違うのですか。
  124. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま申しましたように、清涼飲料は、四十一年の改正で果実水等と同じものにいたしましたし、それから前には一類、二類ということで、五%、四〇%、三〇%というような税率区分をやっておりましたが、あれはやめまして、御承知のとおり、税法をごらんになるとおわかりになりますが、税率を品目ごとに統一して規定いたしまして、その中で税率区分を行なっているというのが現在の姿でございます。税額表に直してあるわけでございます。
  125. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 そうしますと、そのいまの品目ごとの税率を一通り教えていただきたいと思います。区分でけっこうです。
  126. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは無数にございますので、税法を読んでいただくよりしかたがないと思います。非常に長い表でございますので、これを読み上げているだけで一時間くらいかかりますが、一つ読んでみますと「貴石及び半貴石並びに貴石製品、半貴石製品及び貴石又は半貴石を用いた製品」これが第一種の物品の一でございます。それの品目は、「1 貴石及び半貴石のうち、ダイヤモンド、ルビー、サファイヤ、アレキサンドライト、クリソベリール、トパーズ、スピネル、エメラルド、アクアマリン、ベリール、トールマリン、ジルコン、クリソライト、ガーネット、オパール、ひすい、水晶、ねこ目石、トルコ石、月長石及びクンッァイト」これが二〇%、こういうふうになっております。全部読み上げましてはとても間に合わないと思います。
  127. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 いまのその貴石の税率は二〇%ですね。
  128. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 そのとおりでございますが、これは小売り課税でございます。さっきの第二種の物品は製造課税でございますが、第一種の物品は小売り課税でございますから、大体第一種の二〇%は第二種の四〇%に相当するという考え方でできております。
  129. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 第一種物品、第二種物品のそれぞれの税率は幾らになっておりますか。
  130. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 第一種は小売り課税でございまして、二〇%と一〇%の二つの税率でございます。それから第二種は製造課税でございまして、五%ないし四〇%の六段階の税率区分になっております。
  131. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 私、ここに税務統計を持ってきておるのですが、これによっていま質問をしておったわけなんですが、どうも私が言うたこととそちらのお答えになるのが――よくわかってないように思います。私の持っております物品税の課税状況から見ますと、第一種物品の中に第一類というのがございますね。それと第二類、それが第一種物品の大ワクの分け方で、その第一類の中に、先ほど言われた小売り課税の貴金属、真珠、貴金属製品、べっこう、しっぽう製品、毛皮類、このようになっております。それからその次が室内装飾用品、それから茶道用具、華道用具、その次が飾り物、玩具類、それからその次が囲碁、将棋用具、このようになっておりますが、これは間違いございませんか。
  132. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先ほど申し上げましたように、物品税は昭和四十一年に全文改正をいたしておりますので、制度を全部組みかえております。先生がお持ちなのは四十年の分類だと思います。それは一類、二類の差がございましたが、現在はそういうものはなくて、一種、二種三種に分かれているだけでございます。
  133. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 私がいま持っておるのは四十年度の課税実積のものでございますから、わかりました。  いわゆる税率の区分においては、小売り課税は一〇%から二〇%、これは間違いございませんね。それから、いまここにあがっております第二種は製造課税で移出従価課税ですね。これは五%から四〇%、これは変わりございませんね。この中で、私がいまお尋ねしたかったのは、こういう物品の中で日常使います、いま言いました清涼飲料ですね、こういうものが課税されておる。また化粧品はどうでしょうか。化粧品はどういうものに課税しておりますか。
  134. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 化粧品につきましては、従来、漸次内容をはずしてまいっておりまして、現在では一〇%課税になっておりますものが「香水、香紙、香袋及びつめ化粧料」それから二番目の分類で五%課税のものとして「おしろい、紅、口紅止め、化粧ずみ、化粧粉、脱毛料、あぶら取り料、化粧クリーム及び化粧下、化粧水、頭髪用の油及びねり油、整髪料、養毛料並びに染毛料」ということになっております。
  135. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 その化粧クリームというのは、どういうふうな課税の実態になっておりますか。幾らぐらいのもので、実際課税しておる品目はどういうものがありますか。
  136. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 化粧品につきましても課税最低限がございまして、クリームは百グラム二百六十円の非課税がございますが、これは製造でございますから、小売りで四十グラム入りで二百円以下のようなものは大体非課税。ですから中級品以下は大体非課税になっておるとお考えになってけっこうだと思います。
  137. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 そうしますと、いま小売り価格で四十グラム入りで二百円前後までは化粧クリームには税がかからない。それ以上は全部ぜいたく品なんですね。そうすると、その化粧クリームの二百円以上のものは、これは世間で聞きますと、化粧品というものは高いほどよく売れる、こういうことも聞いておりますが、主税局のほうで調べてあるかどうか、私も前もって資料をお願いしておりませんでしたからわかりませんが、二百円以下の化粧用クリームと二百円以上の化粧用クリームというものは、どういう比率になっておるのでしょうか。売れる品物はどういう区分になっておりますか。
  138. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 化粧クリームがぜいたく品であるかどうかについては相当疑問があると思います。私、いつも申し上げておるように、ぜいたく品、いわゆる奢侈品のほかに、いわゆる娯楽品とか趣味、観賞用品とか、あるいは身の回り品というようなものを課税対象にしておりますが、クリームなどはいわば身の回り品だと思いますが、それでも普通の一あまりクリームを使わない人もありますけれども、使うにしても安いクリームには課税しないという趣旨で、昭和四十一年に、従来は全部課税しておりましたが、免税点をつくったわけであります。おそらく二割ぐらいのものは免税点で落ちております。
  139. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 そうすると、化粧クリームの全体の二割ぐらいは課税になっていないけれども、あとの八割は全部税金がかかっておるということになりますね。そうしますと、いま、ぜいたく品の解釈についてはいろいろ問題があると思いますけれども、化粧クリームの八割、大半は税金がかかっておるということは、私は国民はよく知らないのではないかと思うのです。  まだそのほかに少し聞いてみたいと思います。いわゆる「コーヒー、ココア等」とございましたが、コーヒー、ココアというのは、どういうところによって課税、非課税がきまっておるのですか。
  140. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま二割と申しましたのは金額でございますから、化粧クリームの中には高いものは四十グラム入りで千円以上するものもございます。ですから、量としてはおそらく半分近くが非課税だと思うのであります。  それからコーヒー、ココアは、そのものとしてはし好品でございますし、またこれは同じようにひくわけでございますから、これは免税点がございません。
  141. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 コーヒー、ココアは免税点がなくて全部課税されるということですね。し好品だからということですね。  その次に家具。家具にも課税されておられると思いますが、家具はどのようになっておるか。  それから一緒にお尋ねしますが、電気器具製品の中で扇風機、冷蔵庫、そういう電気器具はどのようになっておりますか。
  142. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 家具類につきましては、非常に高い免税点がございます。たとえば一例を申し上げますと、衣服用のたんすは一個または一組につき四万円、これは製造課税でございますから、四万円ということは小売りでいえば七万五千円くらいで、よくいわれますように、総キリのたんすでも現在課税が落ちておるという状況になっております。ここではっきり出ておりますように、同じ日常に使うものであっても、非常に高級なものであればこれは奢侈品的な性格がございます。それを課税最低限で調整しておるというのは、先ほど私が御説明したとおりでございまして、タンスなどはまさにそのとおりであろうかと思います。ベッドにいたしましても、大体小売り七万五千円以上のものしか課税にならないということになっております。  それから扇風機と冷蔵庫は、御承知のとおり一五%の課税率でございます。これは免税点というのは別につくってございません。
  143. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 家具は高級品でよかったですね。大いに課税してもらう、これがいわゆるぜいたく品に課税するという意味に通ずると思うのです。そのように、高級品に課税するということは、この前私も呉服の問題を取り上げたのですが、呉服の問題は、零細業者がつくるからどうだとか、また大企業の圧迫がないのだ、このようなお話もございましたが――これは私がそう申し上げたからそう言われたと思います。家具類も実は私の郷里あたりでもだいぶつくっておりますが、ほんとうに零細業者がつくっておるのですね、倉成政務次官も御存じのように。ですから、そういう高級品にやはり課税して、普通の二、三万くらいのタンスには課税しないということは、これは善政だと思うのですね。そのようにやってもらいたいと思うのです。やってもらいたいと言ってそっちにお願いするのじゃないのですけれども……。  それと、いま冷蔵庫、それから扇風機というものは全部課税されておるということですね。しかし、どうでしょうか。いまの日常生活の中で、冷蔵庫とか扇風機というものはほとんど――扇風機もあるところによっては、普通の家庭でも一台でも足らなくて、二台目を置いておるところもあるのじゃないでしょうか。冷蔵庫なんてものは、現実の生活の様式の中においては、私はもう当然なければならないものじゃないか、このようにも思うのですが、いままでの経過上、そのように課税されておるという点でございますが、これはひとつ政務次官のほうから、こういう大衆に密着した、大衆化され、一軒の世帯の中にはもう当然備えつけられておる、どんな四畳半の間借りするところにもたいてい冷蔵庫はございますよ。女の子が一人で東京で高い間借り代を出して生活しておる場合でも、小型冷蔵庫の一台は持っている。そういうものからまでも物品税を取らなければならないという現実の物品税の体系について、ひとつ政務次官のほうから、だれが聞いても妥当だ、なるほど政府はそういう考えを持っておるのかというような前進した御意見をお聞きしたいと思います。どうでしょうか。
  144. 倉成正

    ○倉成政府委員 田中委員よく御承知のとおりに、ことしの物品税の収入見込みが二千三百億でございます。したがって、ヨーロッパ各国のように、売り上げ税といったような包括的な税を取りまして、たとえばシャツであるとか、くつ下であるとか、そういうものまでも、そういう売り上げ税をかければかなりの税収をあげることはできますけれども、しかしわが国の場合は、そういう一般的な売り上げ税の制度をとっておりませんので、個別の物品についてそれぞれ税を課している、こういう体系をとっておりますので、やはり冷蔵庫について、これは生活必需品じゃないか、今日ではほとんど生活の中に溶け込んでおるではないかという御議論は、まことにごもっともでありますけれども、一応便益的なものについてもある程度の税をかけて物品税としての税収を得るというたてまえをいまとっておるわけであります。しかし、だんだんこれがもう少し普及してまいりまして、将来ほんとうにさらに普及してくるということになれば、また、田中委員のおっしゃったような立場で検討する時期もくるかと思いますけれども、やはりある程度の税収を確保するというたてまえから申しますと、この程度の税は、沿革的に見てやむを得ないのじゃないか、かように考えます。
  145. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 それは物品税が二千三百億税収があることが、冷蔵庫がどれほどの税収を負担しているかということには私は当てはまらないと思うのですよね。政務次官ですから、大蔵省のきめたことだけにこだわらずしての意見でないと、またむきになって言わなければならぬようになるのですね。ですから、いま私が言っているのは、それは二千三百億も物品税を――二千三百億ですか、ことしは。違うでしょう。ちょっと見てください。
  146. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 二千三百億というのは、四十二年度の税収見込みで申し上げたわけでございまして、本年度の補正予算では千八百八十九億でございます。
  147. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 それはまだいまから税法をきめて取る分が二千三百億ということですからね、千八百億がほんとじゃないですか、それはどうでもいいのですが……。  冷蔵庫はもう少し普及をしたならばと言うのですけれども、そういう点は、現在でもどんな農家に行ってもあるような状態で、いまからもちろん普及もするでしょうけれども、その説明だけでは政務次官も、自分自体もすっきりしないのじゃないかと思うのですね。これ以上の普及をして、冷蔵庫を三つも四つも置くことも、これは考えられないですからね。大体その世帯に一個あれば十分だし、世帯が大きくなれば大きいのを入れるだけであって……。ですからそういう点、ひとつまじめに考えて御答弁なさったほうがいいのではないかと思います。  次に、もう一つ聞いておきたいのは、楽器類でございますが、楽器類の物品税はどのようになっているのでしょうか。
  148. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 税率は一五%でございます。それぞれ品目によって免税点があるものとないものがございますが、ピアノについては免税点はございません。しかし、三弦琴につきましては一万一千円、弦楽器につきましては五千円といったような免税点がついているものもございます。
  149. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 そのほかの種類の楽器には免税点はないのでしょうか。
  150. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 楽器もたくさんございますが、たいていは免税点があるわけでございまして、免税点がないのはピアノだけです。また、今度改正をお願いしている電子楽器についてもない。――失礼いたしました。一律に五千円という最低の免税点はあるわけでございますが、ピアノについては五千円というのは問題になりませんので、実際上ないということになると思います。
  151. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 そうしますと、ピアノは幾らのピアノでも税金がかかるということですね。  ピアノとオルガンとはどういうふうな区別になっておるでしょうか。また、ハーモニカはどうなっているのでしょうか。
  152. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御承知のように、ピアノは弦楽器でございまして、オルガン、ハーモニカはいわゆるリード楽器に属するわけでございます。ハーモニカについては、リード楽器として五千円の免税点がございますから、よほど高級なハーモニカでなければ課税にはなっていないということでございます。
  153. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 オルガンとピアノの区別は、特別ないわけですね。
  154. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 両方とも一般的な免税点五千円というのはございますが、特別にそのものについて定めた免税点はないという点では共通でございます。  なお、オルガンの中には、ストップ装置のついていない六十一鍵以下の、いわゆる子供がひいているものがございますが、これは非課税物品でございます。
  155. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 もう一つ、写真用の機具でございますが、フィルムと写真機とその他に分けまして、どういう課税の条件になっておりますか。
  156. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 写真機、フィルムともに税率は一五%でございます。写真機については免税点はございません。フィルムはもちろんございません。写真材料、部分品等については個別に免税点があるものがございます。
  157. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 その次にもう一つ、室内装飾品というのがございますが、これは税率が幾らでどういう区分になっておるのでしょうか。
  158. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 そのものは他の分類でほかのものとして課税される場合を除き、昭和四十一年に全部非課税として掲名から除いてございます。
  159. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 そうしますと、室内装飾品は全然課税されていないということですね。
  160. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 貴金属等を使っているために、貴金属を用いた物品とか、貴金属製品とかいうことで課税になっているものはございますけれども、室内装飾品という分類で一般的に課税をしておった制度は廃止いたしております。
  161. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 いまずっといろいろ品物を聞いてきたわけですが、当初ありましたようにダイヤモンドとか、そういうものには小売り課税で二〇%の税率、それからフィルム、写真機類はどんなものでも一五%の税率、それからいろいろな化粧品、電気器具品、そういうものの課税をずっと見てみますと、当然物品の中においては一ぺん見直してみるという考え方も必要ではないかと私は思うのですが、このような見直しについての主税局長並びに政務次官の御意見を聞いておきたいと思います。
  162. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先生御承知だと思いますが、昭和四十一年には全面的な見直しをしております。その前に、三十七年にも全面的な見直しをしております。三十四年にも全面的な見直しをしております。大体物品税につきましては、四年ないし五年の問に消費の態様等がいろいろ変わってまいります。そういう意味で、常に見直しをしておりますが、見直しをしながら課税実績に応じて品目を落としたり、課税最低限を上げたり、税率を変更したり、それは大体一定時期を画してそういう洗い直しをやっております。御承知のように、現在の冷蔵庫も四十一年の改正の際に二五%から一五%に税率を下げるというようなことにいたしておりますし、その前の改正では、普通の冷蔵庫、いわゆる電気冷蔵庫でないものも課税しておったのにそれをやめるとか、いろいろなことをやっておるわけでございます。現在の税法は四十一年改正法でございますから、ここ二、三年は私ども一応この線で進んで、その間に課税の実態、消費の動向等を見きわめて準備を進めていく考えでございます。
  163. 倉成正

    ○倉成政府委員 主税局長から一応お答えしましたが、やはりこの物品税というのは非常に沿革的なものがあると思うのです。ですから、ある時期においてはやはり経済情勢その他を見直しながら洗い直すことが必要ではないかと思います。したがいまして、いろいろ御意見を承った点は十分参考にさせていただきたいと思っております。
  164. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 次に、租税特別措置法のほうに入っていきますが、いつも委員会で問題になります交際費課税でございますが、この交際費課税の現在の規定、またはその規定をつくった沿革をもう一度聞かしていただきたいと思います。
  165. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 交際費は、御承知のように、長らく法人税法においては総損金の中に計上されることになっておりました。しかし、戦後交際費の支出が非常に多くなってまいりまして、これは所得税の税率が高いせいもございますが、その中に社用消費的なものが相当含まれてきたという事実がございますので、昭和二十九年に期末資本金五百万円以上の法人について、業種別の基準と過去の実績との基準いずれか低いほうの金額をこえた部分につきまして二分の一を損金不算入とするという制度をつくりました。その後五、六回改正を経ておりますが、現在の制度は、御承知のとおり、中小企業者、つまり法人全体に否認を広げました関係で一年当たり年分として三百万円と、期末自己資本金の千分の二・五相当額との合計額を越えた部分についてその二分の一を損金不算入とするということにいたしておるわけであります。――ちょっと失礼いたしました。年当たり四百万円と、期末資本金の千分の二・五との合計額をこえた部分の半分を損金不算入にするという制度であります。昨年の改正で、さらにこれに加えまして、前年の交際費額を一〇五%以上上回った場合には、その上回った部分は全額損金不算入にする。また、別に、前年よりも交際費額が減少した場合には、その減少した金額相当額を否認額の中から控除する。つまり、交際費を節約すれば否認が少なくなるということ、交際費をよけい使えば、割り増しの損金不算入が生ずるという、いわば交際費の節減の努力というものに対するメリットを与えるような改正を加えたわけでございます。
  166. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 この交際費につきましては、いろいろ新聞でも取り上げられまして、社用天国といいますか、そういうことばで取り上げられておるようでございますが、この交際費の今度の改正によりまして、事実上、法人の交際費というものがどのように規制されたか――規制されたというのはどうかと思いますが、その四十二年度改正によるところの課税の結果というのは、いつごろにわかるかということが一点と、それから、いわゆるその課税によって企業に与えた交際費に及ぼす影響といいますか、そういうものがわかっておればお聞かせ願いたいと思います。
  167. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 昨年の改正は、四十二年四月一日以後の開始事業年度から適用になっておりますので、まだ統計的な実績は出ておりません。ことしの半ば過ぎには実績が出てまいると思います。その上で一ぺん御披露いたしたいと思います。
  168. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 そのもう一つの、いわゆる交際費のそういう課税を強化したことによって、交際費に対する企業からのいろいろな意見とか、それからまた、税制の上で期待した姿といいますか、期待しておった状況というのは、どのような変化があるか、そういう点もひとつ……。
  169. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この制度によって交際費の支出が減ったかどうかという点は、先ほど申し上げた統計が出てまいりませんと比較ができませんので、その制度効果というものがまだ見きわめがつかない現状であるということを申し上げたいと思います。
  170. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 聞くところによれば、大体資本金百億円以上で四億近い交際費が支出されておる。これは平均でございますが、そのように聞いておりますが、間違いないでしょうか。
  171. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 百億の資本階級で見ますと、一社当たりで、約その程度支出があることは事実でございます。
  172. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 そうしますと、百億円以上の会社の水揚げ、売り上げというのは、どのくらいの金額になりますか。
  173. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いま調べますが、交際費の、売り上げ千円当たりの支出額というのは、大体平均して五円程度、つまり売り上げの〇・五%程度というのが実績になっております。百億円以上の会社の売り上げと申しましても、卸的な商業と工業とでだいぶ違いますので、平均の数字が出ておれば――これは後ほど調べて申し上げます。
  174. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 そういう交際費の問題につきましては、各国の法人企業の中の効率的な支出といいますか、そういうものもあると思いますから、あわせて、各主要国の法人が使います交際費、それは課税の面ではどういうふうな制度をとっておるのか、できましたら教えていただきたいと思います。一応特別措置関係をそれで終わりたいと思います。  次に、先日から問題にして、私、保留しておりました税収の見積もりでございますが、この前、全体的な税収の見積もりは、主税局長からいろいろお話を聞いたのが、二月末の租税収入がわかりまして、ここにいただいたわけでございますが、まず、それが、あのときに話していただいたようなことが少し反映するだろうかと、こう私は疑問に思うところがある。あのときはあのときで、ああいう話で終わるわけでありますけれども、実際のその税収の見積もりというのは、なかなかそうはいかないというように私は思うのです。そういう点から申し上げてみますが、まず、酒税はどうでしょう。四十二年度予算額というのは、収入見込み額は、前年までの決算額の割合みたいに収納できるものでしょうか、どうでしょうか。
  175. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 酒税につきましては、清酒の移出が意外に振わないということでございまして、実は先月は、前年の決算額に対する比率で三・一%の減でございましたが、それが今回は四・九%の減ということで、酒税については、予算額一ぱいまで行く見込みは現在のところちょっと見当たらないということでございます。
  176. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 清酒の伸びが悪い。しかし、花見どきも参りますから、――それは、昨年も花見はあったんで、ことしも花見があるんだから問題ないわけでございますが、現在、二月末において四・九%の差があるわけですね。そうしますと、酒税が全体で約四千七百億ですか、四千七百億の四%から五%といいますと、相当な数になるわけです。それが、大体、主税局長が、その収納見込みが立たないということになりますと、これは四十二年度の予算は歳入欠陥を催すようなことに――これだけじゃないので、まだほかにもありますが、その点についての心配は私たち要らないのでしょうか。――まあ、そういう言い方はまずいですが、政務次官としてそういう点ですね。四千七百億としますと、四%にしまして約二百億ですか、そういう歳入の欠陥を来たすということになるのですが、いまさらこれからビールがうんと伸びるわけでもございませんし、あと三月一カ月、あとは整理期間を入れまして、大体五百億以上の収入がなければならないということになるようですが、どうでしょうか。   〔渡辺(美)委員長代理退席、毛利委員長代理着席
  177. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この間申し上げました一月末の全体の一般会計合計では一%程度低いと申し上げておいたのでありますが、二月末では、それが〇・八%に縮んでまいりました。さらに、三月、最後にはずうっと出納整理期間としての四月分がございますので、この間も申し上げましたけれども、歳入歳出を通じた一般会計の欠損が出るということは、もう絶対にあり得ない。歳入だけでは、歳入予算についてぎりぎりまでいくか、やや不足するかという程度になるかと思いますけれども、歳入歳出を通じた一般会計全体としては歳入欠陥は生じないという見込みは確実に立っております。
  178. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 政務次官、その点は。
  179. 倉成正

    ○倉成政府委員 歳入歳出については、絶対に歳入欠陥ということはあり得ません。
  180. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 しかし、歳入歳出においては欠陥はないとおっしゃいますが、歳入において、ただ酒税一つを取り上げてみても、いま主税局長おっしゃったでしょう。予算額の収納はあぶない、現在においても二百億ぐらい予算額よりも少ない収納になるのじゃなかろうかというように、私はいま主税局にお聞きしたわけなんです。それが、各項目の租税収入がそのように減ってくる部分もありますし、またふえてくる部分もあるんですが、その一つ一つをいま例にとって申し上げているわけでございまして、多くなってくると予想されるいわゆる所得税関係、これなんかも相当予算額よりもオーバーするんじゃなかろうか。また、法人税もやはりまだ少しふえるんじゃないか、こういうふうにも私、思うのですが、所得税がこのようにふえるということは何に原因しているのか。また私、いつも実施機関の国税庁のほうにも言うんですが、どうも地方では、財政硬直化とか、こういうことがいわれて、徴税が強行されている事実があります。そういうことからみ合わせますと、もうこの辺で所得税は、申告納税や調査もやめて、取らなくてもゆっくり予算額が入るのであれば、その辺はどうでしょうかね、これは主税局の範囲じゃないと思いますが、一応収納面から考えて、御意見を聞いておきたいと思います。
  181. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 私ども、歳入というものは、やはり総額として予定した税収を収納することが必要だという考え方を持っておりますが、同時に、各税日ごとに与えられた法律のもとで正当な税収を確保しなければならない。ある場合には見積もりが誤っておったり、あるいは経済情勢が変わったりいたしますので、歳入の見積もりよりはふえる場合がありますし、あるいは減る場合もございます。それが通算されて、一般会計としてはほぼとんとんになってくるという結果になる場合が多いわけでございますけれども、一つの税収がプラスであるからといって、そのものについては収納を適当に打ち切るということは、われわれとしてもこれは正当ではない、オーバーしてもやはり法律をできるだけ適正に執行するということであるし、また、不足いたしましても、不足だからといって無理やりに税法を曲げて収納するというわけにはまいりませんので、それは個々の税法に従って執行するよりほかはない、かように考えております。
  182. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 それはちょっと主税局長考え過ぎなんで、私は税法を曲げて取れと言っているのではなくて、税法をそのとおりやるやり方が問題だとこう言っているわけです、所得税の場合ですね。それはまあいいです、それを聞くのが本質でございませんから。  いま、いわゆる見込みなんだから間違いのものもあるというような御発言でございましたが、そうしますと、酒なんか、これは当然、予算額の見積もりの間違いですか。酒、砂糖消費税、それから物品税、有価証券取引税、これなどもありますが、少し、一つ一つ聞いてみたいと思います。  まず、酒税は予算の見積もりの間違いですか。それともほかに事情があるんですか。
  183. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 歳入見積もりと実績とが食い違った場合は、客観的にいえば、歳入見積もりが違っておったということになりますけれども、歳入見積もりをしたときの事情が変化してくれば、やはりそこに事情の変化による誤差が出るということがあり得るわけでございまして、すべて見積もりにはそういう問題がつきまとうと思います。経済見通しにいたしましても、最初つくったときはその当時の予測した経済情勢というものでは正しかったと思いますけれども、その後の情勢で変化があれば、経済見通し自体も狂ってまいります。税収についても同じことでございまして、当初見積もったときと事情がいろいろ変わってまいりますと、どうしても税収は狂ってくる。酒税につきましては、かなり量の多い清酒についての出荷が、昨年に比べてかなり見込みどおりにならないという特殊な事情が出てまいりました。これはいかなる事情に基因するかはちょっとわかりませんが、そういう意味での誤差が出てきたということは確かでございます。見積もりでございますので、結果が違っておれば誤りだと言い切れるものではない、かように思っております。
  184. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 そうすると、見積もりは見積もりであって、出荷が悪くなったのだから、現在時点においても約五%近い収納の減がある。当然今後、三月を見ても、予算に見積もったようにそう入らない、こうですね、簡単にいえば。出荷の状況は、その原因をほんとうは知りたいのですけれども、それはここでやることでないと思いますから……。いずれにしろ出荷が思わしくなくて、現在では、二、三百億酒税の収納はあがらなくなる、そういう見通しなんだ、こういうことに了解しておきたいと思います。  次に、物品税でございますが、これもずっと落ちておるようでございますが、これはまあまあ、前年の二月よりも数字は一応ふえておりますから、全体的に千八百億ですから、そうたいした影響もないかと思います。  小さな割合を占める中で、一番いまの予算の見積もり額と収納が心配になるのは取引所税と有価証券取引税ですね。これはどうですか。こういうところにそういう極端な税収の不足があると思うのです。まず、その税収の不足が年度末においてどのように来たすものか……。
  185. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 有価証券取引税につきましては、昨年の実績に比べて八・五%ばかり低くなっております。ただ、有価証券取引税自身が八十七億程度の収入でございますので、かりに一〇%減ったとしても八億程度、それから取引所税は年間の収入見込み額が三十五億でございますから、これも一〇%減ったとしても三億程度、両方合わして十一億程度不足するということがあり得ると思います。  有価証券取引税につきましては、これは御承知と思いますけれども、証券市場の動き、取引高に左右されます。去年は御承知のように九月に引き締めがございました。また一月に同じく公定歩合の引き上げがございました。こういうときには大体証券市場の取引というものは少なくなる。そういうことから、去年に比べて、見積もりが足りなかったということになったかと思います。  取引所税は、御承知のとおり商品取引にかかっておりますが、商品取引自体も同じような影響を受けたのじゃないかと、かように考えております。
  186. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 それは一割で十億ですが、しかし十億ということは大きいのじゃないですか。大蔵省から見れば四兆もの金額なのですから、十億なら少ないですね。これは当然、取引所税も有価証券取引税も、今後三月で急激にふえるということは考えられませんね。当初予算額のまあ九割いけばいいほうじゃないか、こう思うのですが、その金額が両方合わせて十二、三億だから、主税局長が、問題ない、こうおっしゃることで了解しておきます。  問題はもう一つ、一番最後にございます印紙収入です。この印紙収入は、昨年税法改正で、ここでいろいろ審議もいたしました。これは現金収入がふえるからいいんだ、そのような強気な見方も聞いておったのですが、案の定四十二年度の収入の状況は悪いようですね。これはどうですか、あと三月、整理期間まで入れまして、どのくらいの収納ができるのでしょう。
  187. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 現在のところ五%減というのはそう縮まらないと思いますので、全体千三百億の五%と申しますと六十五億程度は不足する結果になるのじゃないかと思っております。
  188. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 その印紙収入のことにつきましては、原因がどこにあったかおわかりであれば、少しお話ししていただきたいと思いますが……。
  189. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この印紙収入につきましては、印紙税法の改正、登録免許税法の改正、相当大幅な改正をいたしました。したがって、見積もりの際も、その要素が、かなり推定が多くされていたという関係もございますのと、それからやはり先ほどの経済の情勢によるいわゆる引き締めによって、取引が思ったほど伸びないといったようなことが集中して出てまいったと思いますが、何と申しましても、ことし改正をいたしました改正法の見積もりであっただけに、ややその点は課税標準の見積もりに不十分な点があったかもしらぬということを反省いたしておるわけでございます。
  190. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 反省されて、それが今後生かされていくことを希望いたします。  次に、この前問題にしておりました租税及び印紙収入の予算の説明書の中の一一ページですか、その申告所得税の課税税額の見積もりの欄でございますが、その中から聞いてまいりたいと思いますが、申告所得税は営業所得者、農業所得者、その他事業所得者、その他給与所得者等というように、納税人員を現行法に当てはめた場合に、どのような課税人員を見た、このようなふうに私はこの説明から受け取れるわけなんです。それは間違いございませんね。
  191. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 そのとおりでございます。
  192. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 そうしますと、その課税人員に対する総所得、その課税人員の中の総所得の区分というのはわかりますか。
  193. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ここにあげてございますのは、この所得分類の主たる区分でやっておりますので、営業の中に営業所得としてその他が入っておるという、営業所得者で他の所得が入っておるものもございますし、その点は、その他だけのものがその他に入っておる。たとえば、申告所得税で給与所得の申告をする五百万円以上の人、そういう人とか、譲渡所得だけの人とか、そういう人はその他に入っておりますということでございますので、この分類の中には主たるもので他の所得を含むというように……。
  194. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 十分承知しておるつもりですが、それをいまから聞いていくわけです。そのいわゆる課税人員の中に一ここで私の聞きたい点を率直に申し上げますと、配当所得を併有しておる納税人員が何人で、その併有しておる納税人員の総所得は何ぼで、その中に配当所得は幾ら含まれておるか。これが問題点であります。そこをお願いします。
  195. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 配当所得を課税所得としている納税者は、これはもちろん源泉分離しておるものは別でございますが、配当所得として配当控除を受けるものは四十一年度分の実績から推定しておりますが、四十一年度分で申し上げますと二十八万七千人、うち資産合算として合算されておるものが六万八千人ございますから、差し引き二十一万九千人ということになっております。その配当所得が四十一年度分で申しますと千二百五十七億円だということになります。
  196. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 その千二百五十七億円の配当所得が総所得に入っておるわけですね。その人員は二十一万九千人ですね。そうしますと二十一万九千人で千二百五十七億円の配当所得が含まって、総所得は幾らでしょう。なぜかといいますと、四十一年で主税局長いまおっしゃってますから、その四十一年度の総所得を聞かなければ、四十三年のこの現行法の総所得と比較ができませんから。幾らになっておりますか。
  197. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この配当所得を持っておる人の総所得という計算はやっておりませんで、総所得は総所得として出しておりますから、この配当所得を持っておる人の総所得金額というのは、これでは推算できないと申し上げたわけでございます。
  198. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 それはけっこうなんです。配当所得だけを持っておる人の総所得を聞いておるわけではないのです。全部の申告所得税の課税人員に見合う総所得は何ぼです。それといわゆる課税人員は何人でしょう。   〔毛利委員長代理退席、金子(一)委員長代理着席
  199. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 昭和四十一年度で申しますと、納税人員は三百二十四万一千人、それから総所得金額が三兆二千七百三十一億八千六百万円ということになっております。
  200. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 そうしますと、四十三年度の申告所得税の見積もりの三百五十九万七千人というのは三百二十四万一千人という課税実績から推定したわけですね。それと四兆四千百十一億二百万円ですか、この四十三年の総所得は四十一年の三兆二千七百三十一億円から推定したわけですね。そうしますと、四十三年度の見積もり額の三百五十九万七千人の課税人員で四兆四千百十一億二百万円の総所得が、改正法によりますと納税人員は三百四十八万三千人、こう減るわけです。そう減りますということは、四十一年の実績に見ましても、配当所得を有しておった二十一万九千人が含まれておるわけでございますから、三百五十九万七千人の本年の課税人員の見積もりにも、当然その割合による配当所得を有した人員が計算されておる、このように見ていいでしょうか、それが一点。  次に、その人員が含まれておれば、改正法によるところの四兆三千五百七十一億二千七百万円の中にも、四十一年分に含まれておりましたような千二百五十七億の配当所得に見合う配当所得がある、こう見ていいでしょうか。
  201. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 総所得の中に、あるいは納税人員の中に、配当所得並びに配当所得を有する人員が入っておることはそのとおりでございます。ただし、同じ割合ではないということを申し上げられると思います。なぜかと申しますと、現行法改正法の違いは、課税最低限の引き上げによります失格者を除いたわけでございます。先ほど申し上げましたように、配当所得を有する納税人員は二十一万九千人でございますけれども、失格者に相当するような低い所得者というのはほとんどないわけでございます。そういう意味では三百四十八万三千人の中には、三百五十九万七千人の中に入っておる配当所得者がほとんど含まれておるというわれわれの推定でございます。
  202. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 そうしますと、現行法による総所得の見積もりの中の配当所得の金額も、改正法に含まれておる配当所得の金額も一緒ということになりますが、そうなりますと、配当所得以外の所得の人だけが、納税人員も減って所得も減ったという不合理になりますよ。どうですか。
  203. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いまの御指摘の点は、配当所得を有している人が各所得階級に平均してあるとすれば、おっしゃるとおりだと思いますけれども、配当所得を有している人は課税失格のすれすれのところにはほとんどいない。ことに御承知のとおり配当につきましては一年に受ける配当金額が五万円までは課税を要しないといういまの特別措置がございます。五十万円以下の配当につきましては源泉選択の制度がございます。ほとんど源泉選択をとっておられると思われますので、配当所得の課税人員というのは非常に少なくなっているわけであります。少ないということは、逆に申しますとそれらの額をこえた、五万円の少額非課税制度あるいは源泉選択制度金額をこえた所得者がほとんどであるということになりますので、納税人員の中にはもちろん入っておりますけれども、高い所得層に入っておりますので、控除によって失格をしない限りは全員課税のまま残っておるということになると思います。
  204. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 まず、いま主税局長がおっしゃる課税額すれすれの者はいないという、それはほとんどいないとおっしゃる。ほとんどいないということはわずかにおるということなのです。それが第一点。これはここでは全部煮詰めることができなければ、私は初めから積算数字を出してください、こうお願いしているのです。ですから、積算数字を出せば一番はっきりするのですが、それはまた後ほど見せてもらうことにしまして、いま主税局長がおっしゃったほとんどないということは少しあるということなのです。そうでしょう。全然ないということと、ほとんどないということとは違う。少しあるのです。その少しは幾らなのかということが一つの問題点。  それと、五万円の配当所得の申告をしないでいいということは、これは当然初めからきまっている問題です。現行法の場合も、五万円持っておっても申告しませんから、そういうものがこの中に入るということは考えられない。源泉選択のものも当然そうなるのです。源泉選択すれば何も申告するに限らないのですから、そういうものが入っているとか入ってないとか、そういう議論は当てはまらない。もう少し頭を整理してお答え願いたい。
  205. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 私の申しているのは、現行法の中にそういう少額非課税とか、源泉選択という制度があるために、小さい所得者で配当所得を持っておる者は、現行法の中にもほとんど入っていないということを申し上げているのです。その現行法の中から少額所得者だけが課税最低限の引き上げで失格するわけでございますから、配当所得を持っている人はほとんど全部が現行法改正法で、同じ数字で残っておりますということを申し上げております。  念のため申し上げますと、私どもの推定では、このあとでこまかく数字をもって御説明にあがりますけれども、控除額で大体七十五万円程度は動くかと思いますけれども、この数字では百万円単位で切り捨てておりますから、それで差が出ない。いままで先生、ずっとごらんになっておりますとおり、配当についての制度改正がない場合は、配当控除の額は従来の計算でも現行法改正法は同額を計上しているわけです。といいますのは、いつもこういう計算をいたしますと、配当控除が失格によって減るということはほとんどないものですから、したがって、同額で計上してほとんど間違いないということで、これは従来からそういう計算をしているわけです。これは先生、長年比較しておりますから御承知だと思います。   〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  206. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 委員会のほうから要請もございますから一いま七十五万円と聞きましたけれども、どうも七十五万円は問題があります。あるが数字でもって御説明いただくということでございますから、これで質問をやめます。
  207. 田村元

  208. 北山愛郎

    北山委員 私はいわば飛び入りでございますが、非常にむずかしい税金の問題についてふだん疑問に思っている点を、特に土地税制を中心としてお伺いしたいと思います。  この地価問題は、よほど前から国会でも問題にされておるわけであります。すでに昭和四十年の秋ですか、政府内閣の中に地価対策閣僚協議会というものを設けて、基本方針などもきめたわけでありますが、その大きな柱である土地税制の問題については、いまだにかっこうがついておらない。まことにこれは私遺憾と思っておる点であります。この原因はどこにあるのか、率直にひとつ政務次官からお答えを願いたいと思います。
  209. 倉成正

    ○倉成政府委員 北山委員承知のとおり、土地の税制の問題は、あくまでこれは補完的、補充的なものでございます。そういう意味から申しまして、税制を確立するためには、土地政策そのもの、土地の利用計画、もっと広くいえば、国土の利用計画、都市と農村との関係をどうするか、産業の配置あるいは人口の移動、そういうものをやはり基本的に踏まえた上で土地対策に取り組まなければならない。そういう点の検討がおくれておるということがやはり一番の原因であろうと思っております。
  210. 北山愛郎

    北山委員 土地政策全体が進まない限りは税制の問題はできないというようなお話ですけれども、これはおかしいんじゃないかと思うのです。総合開発なり、あるいは都市計画なり、それぞれ部分的には政策も実行されておるわけなんですね。それを完全にやらないうちは土地税制が進まないということは、これはおかしいと思うので、私は、何か土地税制が進まないという、そこにブレーキをかけるところの原因があるのじゃないか、こういうふうにすら思われるわけであります。いろいろお伺いしたいことはございますが、一体今日でも地価対策の閣僚協議会というものは存在するわけですか。
  211. 倉成正

    ○倉成政府委員 あるそうでございます。
  212. 北山愛郎

    北山委員 政務次官が聞かなければわからぬほどの状態にいま協議会の存在がなっておる。そういうところにも問題がありますが、特に今年度租税特別措置法の中にも、いわゆる事業用資産の買いかえの問題についてはさらに延期をするということもございまして、現在の税制調査会の中でこの問題が議論されておるということは、私は承知しております。ただ、ふしぎに思いますことは、この税制調査会の中に、いわゆる利害関係者である不動産会社の社長さんなどが入っておるということは、まことにこれは納得ができないと思うわけであります。そういう者がおりますか、どうですか、お答えを願いたい。
  213. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この土地問題につきましては、非常に広範な土地に対する知識が必要でございますので、御承知のように、江戸英雄氏が学識経験者として一人入っておるわけであります。
  214. 北山愛郎

    北山委員 これは税制調査会だけじゃなくして、建設省の宅地審議会の中にもそういう人たちが入っておると思うのであります。これでは土地税制が進まないわけだと思うわけです。政府は、御承知のように、米価審議会の中から、利害関係者といいますか、生産者代表や消費者代表ははずした。そしていわゆる中立の審議会だということにしたようでございますが、この非常に重要な、利害関係の非常に問題の多い税制調査会の中で土地税制を審議するという場合には、このようなはっきりとした不動産会社の社長のような人、あるいは私鉄関係の社長さんとか、そういうふうな利害関係者は除くのが当然じゃないか、こういうことで現状では公正な結論は出ないのはあたりまえだと思うのであります。  私、ある新聞だかで見たのですが、昭和四十年の十月に住宅建設の促進のための意見具申書というのが土地住宅政策推進委員会というものの名前で出ておるわけです。メンバーは、三菱地所の社長さんとか、いまお話しのあった三井不動産の社長さんとか、あるいは生命保険会社、あるいは小田急、京成等の不動産をやっておるところの私鉄関係者、あるいは土建屋さん、こういうようなメンバーで、そのいわゆる意見書なるものは、地主の権利金等の所得を非課税にしろというふうな、まことに乱暴きわまる意見書が出ておる。こういうふうな、われわれが期待しておる土地税制、いわゆる地価抑制のための土地税制とは逆行するようなことを推進しておる。こういうメンバーでは、税制調査会の中で公正な意見が出るわけはないと思うのです。ですから、この点はここですぐイエスと言うわけにはいかぬでしょうが、やはり税制調査会の中でも、その他の審議会と同じように、直接の利害関係者は、かりに学識経験があろうとも除くのが当然じゃないか。こういう点について検討される用意があるかどうか、伺っておきたいのであります。
  215. 倉成正

    ○倉成政府委員 税制調査会は、現在税制全般についてのいろいろな議論をお願いして、各界の方から御意見を承っておるわけでありますが、しかし、特にそういう特殊な利害関係を伴うような審議に際して、そういう方が参加して御意見を伺かうかどうかという問題は、将来の検討問題だと思います。
  216. 北山愛郎

    北山委員 税制調査会の土地税制部会の特別委員には江戸さんもなっているわけですね。そういうものをわざわざ特別委員にしなくとも、ほかにも学識経験者がたくさんいるわけですから、そういうほうから適切な人を選んでいただくという考慮が私は必要じゃないかと思うのであります。  それから、本年事業用資産の買いかえの特例はさらに延期をされるということでありますが、この趣旨はどういう意味なんですか。これは税制調査会の中でも、事業用資産あるいは居住用資産の買いかえ制度、この特例はむしろ弊害が多いんじゃないかという意見が出ておるわけなんです。そういう意見が出ておるにかかわらず、さらにこれを延期をするということはどういう趣旨なんですか。
  217. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先生御承知のとおり、現在の土地に対する課税というのは、そのときそのときの積み重ねで、非常に複雑になっておるのは御承知のとおりでございます。個人で申しますと、基本原則は、三年以内の譲渡所得であれば全額課税、三年をこえて保有した土地の譲渡所得でございますと二分の一を課税標準に算入するというのが基本原則でございますが、たとえば収用の場合であるとその二分の一をさらに二分の一にするとか、あるいはそれを代替資産の買いかえによる圧縮記帳を認めるとか、そういう制度がございます。さらに事業用資産、居住用家屋、土地については買いかえ制度というものがございます。この買いかえ制度というものが制度としてはたして妥当かどうかということについてはいろいろ議論もございます。ただ御承知のとおり、現在の税制でございますと、非常な土地の値上がりがございますので、取得価額というものが、現在平均的に見ますと、ずっと持ち続けている人は二十八年の相続税評価額によりますので、大体売却額の二、三%にしかならない、非常に大きな課税になるということから、ことに居住用の資産を買いかえた場合等に矛盾が出るというので、居住用資産の買いかえ制度ができたわけでございます。確かに買いかえ制度には問題がございます。それらを含めまして土地制度全般に即応する土地税制の総合的な姿を描く必要があるということで、税制調査会ではいろいろな角度から検討いたしたわけでございます。ことに、土地の供給をふやすという面、あるいは有効利用を妨げている事情を除却するとか、あるいは開発利益を吸収するとか、そういう多角的な面からの総合的な税制をつくろうということで御検討願ったわけであります。それができればこの買いかえ制度も大幅に整理ができるという見込みでやっておりましたが、先ほど御指摘がありましたように、ことしの改正には全体としての前提条件が不十分であるので、部分的な改正を加えるとかえって不公平が起きる。また、一つの税制をつくりますと、その税制によって制度が束縛を受けますから、土地制度全般に対する影響も考えなければならないということで、ことしの検討を見送りました。ところが、事業用資産の買いかえだけは、それにかかわらず期限が来てしまいますので、代替制度を置かずにそのまま切り捨ててしまうのもいかがか、経過的に一年だけを延ばしておいて、その間に土地税制についての総合的な結論を出したい、こういう趣旨で、とりあえず事業用資産の買いかえだけは経過的に検討期間だけ据え置いたということがこの理由でございます。
  218. 北山愛郎

    北山委員 いまのお話ですと、事業用の資産の買いかえ制度は、ことしの暮れに期限がくるやつをさらに一年延長したわけですね。そうすると、いまの税制調査会の土地税制についての結論は、もうあと二年もかかるということですか。そういうことになるのじゃないですか。
  219. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ことしの十二月に切れるものであれば、ことしの税制改正でやっておかないと間に合わないわけなんです。一年延ばしておくということは、来年、四十四年度税制改正で手をつければよろしいということで、二年延ばすという意味ではございませんで、この次の税制改正のときには当然何らかの対策を要するものだ、まさに一年延ばしたということでございます。
  220. 北山愛郎

    北山委員 事業用資産のものをさらに来年一年延ばしたために、ほかのほうの制度改革もまたおそらくその道連れになっておくれるのじゃないかというようなことで、私は、いま急を叫ばれておる土地税制の問題がさらにどんどんこうやって延ばされていくということは、まことに納得がいかないわけであります。  そこで、次にお尋ねするのですが、一体事業用資産の買いかえ制度適用を受けておるものはどのぐらいあるか、四十一年度とか四十年度とか、その実績はどうなんです。どのぐらいの人数がどれぐらいの金額適用を受けているか、その数字をお伺いしたい。
  221. 川村博太郎

    ○川村説明員 事業用資産の買いかえの特例の適用を受けている人員はわかります。四十一年で申し上げますと、七万八千九百三十六件でございます。所得金額等はこれは事柄の性質上わからないということでございます。
  222. 北山愛郎

    北山委員 ところが私は、ある大蔵省調査という中で資料を見ているのですがね。事業用資産の特例、これは四十一年度ですが、六万五千人で譲渡収入が二千五百五十三億、適用前の譲渡利益というのが二千三百二十二億、この特例を適用したあとの利益というのが五百三十四億ということになっておるわけです。この数字は大蔵省から出ておると思うのですが、どうなんです。
  223. 川村博太郎

    ○川村説明員 北山先生御指摘の計数は、現実に税務統計では、いま申し上げましたように、計数がございませんので、土地税制の検討の資料といたしまして、四十一年分につきまして五十分の一の抽出率でサンプル調査をした計数でございます。サンプル調査でございますので、若干の誤差は予想されると考えます。
  224. 北山愛郎

    北山委員 そうしますと、いま読みましたのは、これは大蔵省がやりましたサンプル調査によってそういう数字が出ているというわけですね。そこで、これは課税額について見ますとどうなんでしょう。譲渡収入が二千五百五十二億ある、そして特例を適用する前の譲渡利益が二千三百二十二億、これが特例を適用すると五百三十四億に減るわけなんですね。その結果として、実際の課税金額についてどういう影響があるのですか。二千三百二十二億という利益が五百三十四億というふうに非常に安くされたわけですね。その結果として課税金額はどういう影響を受けるか、どれだけ違うか伺いたい。
  225. 川村博太郎

    ○川村説明員 実はまだ御指摘のような計算をしておりませんが、特例適用前の譲渡益が二千三百二十二億、適用後の譲渡益が五百三十四億でございますので、特例を適用したことによります譲渡益の減が千八百億と考えられます。現実にはこれに三十万の控除が働きまして、同時に課税所得としてはこの二分の一になりますので、八百十億円の課税所得の減と考えられます。現実にはこれに上積み税率がかかりました分が特例適用による減収ということになると考えられます。
  226. 北山愛郎

    北山委員 課税金額は。
  227. 川村博太郎

    ○川村説明員 したがいまして、上積みの税率は二五%と考えられますので、特例適用によります減収額は二百三億、これは概算そういうことが申し上げられるかと思います。
  228. 北山愛郎

    北山委員 事業用資産の買いかえの分だけで二百三億、課税金額が違ってくるということなんですね。そうしますと、いまお話がありました同じ調査によりますと、いわゆる収用特例あるいは居住用特例、あるいは居住用と事業用併用の特例とずっとあるのですが、それをちょっと読みますと、収用関係の減税の分というのが、人員は六万八千人で譲渡収入が二千八百一億、適用前の譲渡益が二千六百四十七億、この特例を適用しますと利益が四百八十六億に減るわけです。それから居住用資産の買いかえの特例、これは七万四千人で譲渡収入二千七百十二億、それから適用前の譲渡益が二千二百九十二億、適用後の利益が六百二億、それから居住用と事業用の併用分が九千人で譲渡収入が五百八十四億、譲渡益が五百三十八億で、適用後においてはそれが百十九億に減るわけです。このようにして、これらの特例、収用あるいは買いかえ関係の特例を計算したものがございますが、これはみんな個人分ですけれども、二十二万一千人で譲渡収入が八千八百二十一億、適用前の譲渡収益が七千九百六十五億、それがこの特例を適用しますと千七百四十一億に減るわけなんです。ですから、いまお尋ねしたのは事業用の買いかえだけの問題でありますが、それで二百三億です。このいま申し上げた買いかえその他収用特例等を合算しまして七千九百六十五億という収益を千七百四十一億に減額したわけなんですが、その結果としてこの収入する課税の金額にはどの程度の差が出るか、これをお示し願いたい。その内訳は個別にわかるようでありますから、項目ごとに課税金額の減る分をお示し願いたい。
  229. 川村博太郎

    ○川村説明員 ただいまのような計算を実はまだいたしておりませんので、後ほど計算して差し上げたいと思います。ただ、これの計算につきましては、いま申し上げましたように、上積み税率であるとか、あるいは控除が全体にフルに適用になっておるかどうか、そういった問題がございますが、非常にラフな概算であることは御了承いただきたいと思います。
  230. 北山愛郎

    北山委員 変ですね。いま事業用については相当詳細にすらすらとお述べになって、その以外の項目計算してないというのはおかしいじゃないですか。はっきりしなさいよ。隠す必要はないから出しなさい。
  231. 川村博太郎

    ○川村説明員 事業用につきましてはいま簡単な暗算をやっただけでございまして、計算をしているわけではございません。別にこれは隠しだてをするべき筋合いのものではございませんので、計算をした結果は後ほど御説明いたしたいと思います。
  232. 北山愛郎

    北山委員 それじゃ個別のやつはあとで示していただくことにして、ひとつ暗算をしていただきたい。いま小計で適用前の譲渡収益が七千九百六十五億、これが適用の結果千七百四十一億になった。これはいま事業用について言われたように、暗算をして大ざっぱに、どれくらい課税減が出るのか、この金額を示してください。おかしいじゃないですか。二百三億は暗算ですらすら出るんだが、ほかのものは出てこない……。
  233. 川村博太郎

    ○川村説明員 非常に簡単な暗算でございますので、問題はあろうかと考えられますが、一応三十万の控除をいたしました結果、課税所得で減少するのが約三千億でございます。したがいまして、上積み税率二五%といたしますと、約七百五十億の減少になります。ただし、この計算で若干申し上げておかなければなりませんことは、この特例がなかった場合に、課税されるということになれば、当然譲渡をやめるというケースが出てくるだろうと思います。したがいまして、その譲渡をやめる件数を実際は見積もりましてそれを差し引かないと、七百五十億がまるまる減収であるということはいえないだろうと思います。
  234. 北山愛郎

    北山委員 そういう説明でもするだろうと思っておりましたが、七百五十億が大ざっぱにして出ますね。いわゆる収用関係、それから買いかえ関係で七百五十億出る。ところが、租税特別措置のほうの減収見積もりには二百八十億しか載ってないんですね。そのような計算はどういうふうにしてやられるのですか。とにかく現実には居住用資産あるいは事業用資産の買いかえ特例と収用関係の特例ということだけでいまあげられたような数字で、現実には七千九百六十五億も利益があるものが、課税対象としては千七百四十一億しかやっていない。これは抽出検査であろうが、大体現実なんですね。この特典だけでそれだけ減税をやっておるわけですよ。七百五十億がどうして二百八十億になるのですか。
  235. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま直税部長から御説明申しましたように、従来の譲渡所得の実績等から勘案いたしますと、この居住用資産の買いかえとか事業用資産の買いかえができてからは譲渡が非常に多くなっております。そういう関係で、この減収額を見積もります際には、いま先生が概算されました七百五十億というような数字、私どもでは四十三年度で大体六百五十億ぐらいと見ておりますが、その中で過去の実績から見て、この買いかえがあるから事業用資産の譲渡を行ないあるいは居住用資産の譲渡を行なったというもの、これを差し引いて考えますと、減少額が百四十八億になるという計算をしているわけでございます。もっともこれは個人だけでございますから、法人を加えれば二百八十億になるということでございます。これは御承知のとおり、この買いかえ制度を始めましたのが三十八年でございますか、中央の混雑した土地から地方に、できるだけ事業を外へ出そうということで、その場合に東京都内の土地などはほとんど取得価格ゼロに近い、それを売り払って譲渡益が課税されますと、実際の残る所得は五〇%くらいになります。そういたしますと、新しくつくる工場というものは縮小してしまうわけでございますので、それが過密都市から外へ出ていくのを妨げているという実情から、その期限を切って事業用資産の譲渡についての特例をつくったわけでございます。その結果として、ずいぶん多くの工場が外へ出ていったわけでございますが、それがなかりせばこういう譲渡益は出ない。そういう意味で計算をいたしますと、従来のような譲渡所得の出方で計算をすれば、六百五十億にはならないで、譲渡益というのは実際よりはるかに少ない。それを差し引いて計算しますと、この制度をつくったことによる純粋の減少額は、所得税関係では百四十八億、法人と合わせて二百八十億という計算をしておるわけであります。
  236. 北山愛郎

    北山委員 私はそれは納得できないのです。それは確かに、収入をする、いわゆる税収を受ける主体としてはそういうような考え方でも、しかし、この税制というのは一つの政策目的を持っているわけですね。そうすれば、この適用を受けたものはそれだけの利益を受けている。単に総体として収入を受ける国の立場から税収を見積もるのではなくて、現実にこれだけのものが税金を払わなくても済んでいるということですね。はたしてこれだけの効果がこの買いかえ制度にあるのかどうか。この税制調査会の中でも意見が出ておるとおり、逆にむしろ買いかえをやりやすくすることによって、恩典を与えることによって、郊外等に土地の需要が新規にどんどんふえるわけです。この制度のために逆に土地の需要がふえて、しかも郊外等における土地の需要がふえて、それが地価を高めるという結果になっている。逆にこの税制というものは地価を上昇させるような結果になっているんじゃないですか。どうですか、この点については。
  237. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この制度についての賛否の論というのは、まさに先生のおっしゃるような意味の否定論も相当あるわけでございます。さればこそ税制調査会でも、何とかこの制度を合理的なものに取りかえようということで検討しておるわけであります。ただこの制度としては、現在そういう政策的な意味はなお残っております。それが土地の価格の引き上げに向かって動くというような欠点を除去する必要がある。このまま置いておくと、政策的な効果とマイナスとが相殺されてしまうおそれもある。そういうことからもっと土地制度全般に及ぶ総合的な税制をしくべきでないかというのがいまの考え方でございます。たとえばフランスなどは、そういう制度をやっておりましたが、変えてしまいまして、極端に低い税率で、法人でございますと五〇%の税率で課税をするところを、買いかえ制度では圧縮記帳で全然課税をしなかったわけでございます。それではまずいというので、最近の改革では、譲渡益に対しては、その譲渡益を留保している限り、分配しない限りは一〇%の軽減税率を使うという制度をつくったわけでございます。そういうのも一つの考え方でございますけれども、今度は全体譲渡所得を一〇%というような軽い課税にいたしますと、土地の所有者が不当な利益を得るということで、これはまた一つの問題がございます。ですから、買いかえをやらないでほんとに土地を売りっぱなしにしている人も一〇%の課税で済んでいるということになると、他の譲渡所得との権衡、他の所得課税との権衡も問題になります。そういう点を勘案して、不当な利得が生じないような全体の体系を整備したいというのが税制調査会の考え方で、保有課税あるいは土地の有効利用、あるいは供給の促進というようなあらゆる観点に対応した税制をそろえようということで検討したわけでございますが、その前提が十分に現在ではそろっていないという、それらを勘案いたしまして検討を一年延ばす。延ばすとすると、大体この制度なしに直ちにこれを廃止すると影響が非常に大きいので、検討と見合いでこの制度を一年だけ延ばしておこうというのが、今回の税制改正の趣旨でございます。
  238. 北山愛郎

    北山委員 そういうふうな弊害を認めておりながら、しかも、私どもからすれば、弊害が大きいと思うのですよ。その大きな弊害を認めておりながら、事業用資産についてさらに来年一年延ばすということは、全体の結論をそれだけおくらすということなんです。ことしの十二月の三十一日までにまだ相当あるんですよ。その期間までに税制調査会は答申を出して、何でも夏ごろに出すという話ですから、これによって臨時国会でも何でも開いて、税制改革をやったらいいじゃないですか。それを漫然とことしの暮れからさらに一年間延ばせば、事業用資産だけ一年間という一つの既得権を与えたことになるから、ほかの改正ができなくなるのです。だから、税全体の改革がずっとおくれてしまう。いまお話があった弊害が、さらにさらに解決しないままにだらだらと延びていくという結果になるのじゃないですか。私は、これは思い切って、今度のこの措置法では一年間延ばさないで、このような弊害のある居住用資産の買いかえとか、あるいは事業用資産の買いかえ制度というものは、ことしのうちに結論を出して法律改正したらいいじゃないですか。何でそういうことをしないのですか。政務次官の見解を聞きたい。   〔委員長退席、渡辺(美)委員長代理着席
  239. 倉成正

    ○倉成政府委員 来年度改正にもし持ち込むとなりますと、どうしても一年延ばさなければいけないということになります。いま北山委員のおっしゃるように、臨時国会でも開いてやるということになれば別でありますけれども、一応土地税制というのは、北山委員がよく御承知のとおり、非常に複雑で、非常にむずかしい問題であります。したがって、やはりそれだけの期間を置いて検討するのが適当とわれわれは判断したわけであります。しかし、この問題については、やはりある程度蛮勇をふるわなければいけない。そうしなければ解決しないという点は私どもも考えております。
  240. 北山愛郎

    北山委員 言うまでもないことですが、それだけ複雑な税制を、特例をなぜやったのですか。これだけめんどうくさいものを、やるときには軽率にやっておきながら、これを改正するときにはこれは複雑だというのは、私は通らぬと思うのです。しかも、これはだれが考えたって弊害は明らかですよ。むしろ工場とすれば、過密都市からどうしてものがれなければならぬという、個別的に認めればいいのです。一般的に買いかえを認めれば、必ず工場は、会社は、一のものを売って五のものを買うでしょう。そういう弊害すらも大蔵省のいろいろな調査書には指摘されておるのですよ。そういうことは、要するに郊外等の土地需要をそれだけふやして、結局土地の値上がりにつながっていく。逆じゃないですか。これはもうそういう弊害がはっきりしているのです。やるときにはやっておきながら、やめるときには、複雑だからこれはむずかしいなどというようなことは、私は通らぬと思うのです。ジョンソン大統領ほどの決断をしなくたって、こんなことはどしどしやらなければだめですよ。しかも、私はこのケースを見てびっくりした、実際言うと。租税特別措置のほんの一隅ですよ。この収用等の特例と居住用、事業用資産の買いかえ特例となれば、租税特別措置の片すみにあるような規定ですよ。これを実際に履行しておるときに七千九百六十五億円もの譲渡益があるものを千七百四十一億に低く見ている、こういう結果がある。大減税ですよ。これは大問題なんです。私どもからするならば、普通にやれば、これを適正化すれば千億や二千億の税収はここであがってくるのですよ。しかも、これが地価を抑制するという効果がなくて、逆に地価を引き上げるという結果になっておる。収用等の特例はこれは別ですよ。強権でもって土地を取られるんだから、それだけの恩典を与えなければならぬということはよくわかります。わかりますが、その他の買いかえというのは、これは弊害のほうが大きい、その弊害のあるもの、しかも税制調査会の中でも意見がある。「買換制度の合理化について」ということで、「不急の需要を呼んでいる場合がある。」それから「事業拡張の場合の拡張資金について、土地等を売却した場合についてのみ優遇を与える結果になっている。」とか、いろいろ欠陥が指摘されておるじゃありませんか。気づいておりながら直さない。しかも来年一ぱいこれがおくれるということになる。こんなことをだらだら続けておって、ほんとうに正しい税制に変わるということは期待し得ないと思うのですよ。いいことはどんどんやるべきですよ。なぜやらないのですか。私はこの数字を見てびっくりしたのは、一体土地の譲渡所得というのはどのくらいあるかということなんです。この特例を適用されるものだけでも、個人分だけで譲渡収入が八千八百二十一億円ある。一般の譲渡、いわゆるこの特例を適用されないものの譲渡収入は四千五百六十八億円ある。個人の譲渡所得の収入面を見れば合わせて一兆三千三百八十九億円、こういうふうに大蔵省の調べが出ておる。法人分はどうなんです。これは個人だけです。法人分についてはどれくらいの譲渡収入があるのですか。
  241. 川村博太郎

    ○川村説明員 個人につきましては、所得種類別表という税務統計がございますので、いまおっしゃったような計数が把握できますが、法人につきましては、法人利益金額の内訳がございませんので、いまのような計数は把握してございません。
  242. 北山愛郎

    北山委員 そこでもう一点この調査についてお尋ねしたいのですが、一般譲渡ですね、要するにこの特例を受けないような譲渡についても、実際は申告の価格と実際の売買価格というのは開きがある。これは非常に悪い慣例なようでありますが、二分の一とか三分の一にしか申告してない、これは通例ですね。それでもなおかつ四千五百六十八億円ある。おそらく三倍くらいになると思うのです。そうすると、全体合わせて、個人分だけ見ても、二兆円くらいの土地の譲渡収入があるのですね。土地の取引並びに土地の譲渡の収入が、最近では一年間に一体どのくらいあるというふうに見ておりますか。これは企画庁にもお伺いしたいが、大蔵省のほうでわかれば大蔵省のほうでの数字をお示し願いたい。
  243. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 土地の取引額につきましては、正確な統計はございません。昨年の経済白書では一兆円を下らないものと見られるという表現をいたしまして、やや幅のある表現方法をとっておりますが、その一つの根拠は、四十一年の十二月、物価問題懇談会の地価問題に関します提案の中に、一兆円を上回るだろうという推定が出ております。その根拠は、農地転用が一年間に大体二万五千ないし三万ヘクタール、建設所管の土地取得が四十年度数字で一万ヘクタールほどある。そのほかに、若干こまかいのをあげておりますが、そうしたところから、大体一年間に三万五千ないし四万ヘクタールくらい、ただ単価がどのくらいかというのは、これも全国的な統計がございません。部分的にはいろいろございますが、全体を平均して正確に調べた数字がございませんが、一平米当たり二千数百円くらいとかりに見ますと一兆円程度になる。もちろんこれで全部が把握されているかどうかわかりませんし、平均単価の点にもかなり幅がありますので、一兆円をこえるであろうという表現をとったわけであります。
  244. 北山愛郎

    北山委員 四十二年度の経済白書には確かにそのとおり一兆円くらいと書いてありますが、これは非常に低いと思うのです。いま申し上げたので大蔵省の税のほうの個人の分だけを拾っても一兆三千億円という数字が出ているわけですからね。だから私は二兆円以上はあるんじゃないかというふうに大体推定しておるのです。  一つの方法は、不動産取得税のデータがあるわけです。これは四十一年度の不動産取得税の対象になる土地の面積が種類別に出ておりますが、宅地でもって一兆一千八百万坪です。それから農地で二十三万ヘクタール、山林で三十五ヘクタール、その他で十万ヘクタール、合わせて六十八万ヘクタールあるのです。ところが、農地のほうの二十三万の中で、いま言ったように、農地転用になったのが二万八千ヘクタールくらいということになる。そうしますと、農地が宅地に転用したものが坪にすれば八千五百五十八万坪、ですから、合わせて二兆坪くらいが宅地としての移動。それを価格計算しても大体二兆円くらいにはなる。実際の取引額を見ると、私は二兆円以上だと思うのです。この膨大な土地の取引と、そこから出てくる譲渡収入というのはばく大なものです。これをどういうふうに経済企画庁等では見ておるのか。あるいは課税対象としてこの譲渡所得を大蔵省としてはどういうふうに考えておるのか。いまのように、収用特例とか、あるいは居住特例とか、こういうふうに減免税をやっていけばこれでいいと思うのか。その点について大蔵省と企画庁の両方から聞きたい。
  245. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 減免税と申されますが、これはいわゆる圧縮記帳でございまして、毎年保有資産の価格をそのままつけておくということでございますから、家屋の場合でございますと、減価償却ができなくなる。新しく一億円の建物を建てても、従来の百万円のものを売って買った場合には百万円の償却しかできないということで、いずれは取り返される。土地にいたしましても、買ったものをそのまま売りますと、これは取得価額が百万円でございますから、そのときに譲渡所得が取られる。一種の課税の繰り延べでございます。  ただ問題は、御指摘のように、この制度企業のいわゆる事業用資産の買いかえでございますと、企業の近代化、合理化で、できるだけ理想的な地域に工業地帯をつくるというような面からは相当に大きな働きをしたと同時に、一面、それはおっしゃるように、確かに地価引き上げの原因になっていることも事実なんです。そういう意味で私どもとしては、効果だけがあって弊害のない制度にできるだけ改める必要があるということは痛感いたしております。したがって、税制調査会でも、特に部会を設けて検討していただいておるわけであります。ただ土地制度は、税制自体が十数年にわたるいろいろな制度の積み重ねでできてきておりますので、できるだけ慎重に事を運んで、今後弊害のない制度をつくり出すという意味では、やや時間的におくれておりますが、慎重な検討をしたいということで、今回の税制改正には間に合わなくて一年間期間を延長した、こういうわけでございまして、制度改正についての熱意というものは、主税局ももちろんでございますが、税制調査会も同じように持っておられると私は思っております。
  246. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 土地の取引額につきましては、先ほども申し上げたとおりでございまして、正確な数字を持ち合わせておりません。それで先ほど申しましたとおり、物価問題懇談会の提案もあり、その点につきましては私ども若干検討をいたしましたが、実際にどのくらいあるかということははっきりいたしません。一兆円を下ることはあるまい、それ以上であろう、それがどの程度かということは正確なところわかりません。
  247. 北山愛郎

    北山委員 建設省、来ていますか。――このような地価の高騰によって、公共事業あるいは住宅、みなこの用地補償が非常に高くなって困っておると思うのです。最近、いままで発表された建設白書等を見ますと、公共事業の中での用地補償というのは平均して二一%ぐらいといっています。それから住宅については、住宅建設費総体の二六%というふうな数字を私見ておるのですが、最近の数字はどのくらいになっておるか、一番新しいところをひとつ示してください。
  248. 川島博

    ○川島(博)政府委員 私どもの調べでは、四十年が一番新しいものになっておりますが、これで見ますと、いわゆる公共事業といわれますもので二一%。それから、住宅公団でありますとか、道路公団でありますとか、所管の公団事業を加えますと、建設省の所管事業合計して、これは用地補償費に限りますが、二四・二%ということになります。
  249. 北山愛郎

    北山委員 いまの数字は、住宅も入れてですか。
  250. 川島博

    ○川島(博)政府委員 さようでございます。
  251. 北山愛郎

    北山委員 民間の住宅の建設では、どのくらいの用地費がかかっているかという調査はございますか。
  252. 川島博

    ○川島(博)政府委員 それは調べてはございません。
  253. 北山愛郎

    北山委員 とにかく、このように地価の値上がりというのは、一方においては大きな不労所得といいますか、譲渡所得を生みますが、他方においては、非常に大事な公共事業なり、あるいは住宅の建設というものの大きな障害になっているということは、言うまでもないのですね。そういう事態がますますひどくなってきている。こういう事態に対しまして、先ほどちょっといまの特例について申し上げましたが、そういううしろ向きじゃ困ると思うのです。これは、いまのこの減税特典にしても、地価抑制のほうの税制には一つもなっておらないのです。地価抑制のための税制、いわゆる土地増価税なり空閑地税と長年いわれているものについては一つも手をつけないで、うしろ向きの減税をやっている。むしろ土地騰貴あるいは土地需要をふやすような、うしろ向きの減税をやっているところに私は問題があるのじゃないかと思う。この点は十分検討願いたいと思います。できればことしの法律をちょっと修正をして、事業用資産の一年延期というやつは保留をしておいて、そして大急ぎでことしじゅうに法改正をやる、あるいは税制調査会のほうも、大急ぎでその土地税制についての結論を出して、そして土地税制改正をやるというふうなお気持ちはないのですか。私はこれは国民の一つの大きな要望だろうと思うのです。先ほど、一番最初にお話があったように、いや土地利用計画であるとか、やれ都市計画、そういうふうな土地制度の政策がなければ、税制ではどうにもならぬと言いますけれども、やってみないじゃないですか。一つもやってみないで、なぜ一体宅地開発が進んで、そうして土地税制、いわゆる地価抑制の税制はおくれているのですか。私は実際納得がいかないのです。これはもう新しい問題じゃないのです。何年も何年も前から、十年ぐらいになるでしょう。税制のほうはさっぱり進まない。これはひとつ大蔵省としても思い切って考えていただかなければならぬ問題だ。現状ではうしろ向きですよ。政務次官、ひとつお考えを聞きたいのです。良識のあるところをひとつ……。
  254. 倉成正

    ○倉成政府委員 いまお話しの、たとえば空閑地税あるいは高度利用促進特別税、ある一定の地域の建物は、五階以上なければそれには税金をかけるとか、いろいろわれわれもわれわれなりに、具体的な問題について検討はいたしております。また税制調査会におきましても、いろいろ御検討いただいておると思います。しかし、現実にこれをやるということになると、いろいろむずかしい問題が出てくるということと、土地についての税制を考える場合には、やはり一つ一つつまんでやるのではなくて、総合的に税制として体系を整えるべきじゃないかということで、いませっかく税制調査会で仮の案も、たたき台として御検討いただいておりますので、そういうものを踏まえて前向きで善処いたしたいと考えております。
  255. 北山愛郎

    北山委員 とにかく、地価の高騰というものは、日本の場合特に異常なものがあるわけで、これがお話があったように、公共施設にしても住宅にしても、国民の生活に大きな重圧になってのしかかっている重大な問題なんですね。その上に一つの問題は、この地価の高騰が、税制の中で、いま言ったように譲渡所得に対してむしろ恩典を与えるけれども、それを吸い上げるような方向でつくられてないために、社会的な不公正といいますか、社会的な公正を欠いている面がたくさんあると思うのです。一生懸命になって働いた所得に対しては税金がかかり、黙っておって自分の持っておる土地が値上がりをすれば、その譲渡所得に対しては数々恩典が与えられるというふうな税制は、税制そのものが非常に社会的な不公正をむしろ進めるものだ、こういうふうに考えるわけであります。  そこで、もう一つの問題は、いま申し上げたように、二兆円とかあるいはそれ以上も土地の取引が行なわれ、そこからばく大な譲渡所得が生まれておる、そういうことは経済的にまた問題があると思うのですね。これは所得の分配にしてもいろいろ問題があると思うのですが、一つの疑問点は、土地の値上がり等による譲渡所得は、国民所得計算上は計算に入れないのだ、地価の値上がりというのは、土地の実質上の価値が上がるわけじゃないのだから、そこから出た所得というのは、値上り分というのは、擬制的なものであって、国民所得には計算上入れないのだ、こういうふうに企画庁はやっておるわけです。私はちょっとこれが納得いかない。ということは、観念上は、理屈の上では、なるほど土地そのものの価値が実質上上がったわけじゃないというかもしれぬ。しかし、分配所得にはこれは介入するのですよ。たとえば不動産会社が、土地の値上がりによってもうけが出る。それは実際の、現実の所得としてやはり分配所得の中に入るでしょう、法人所得の中に。経済上それはちょっとやそっとじゃないのだから、何兆円というものですから、それを除外して国民所得の計算をするということは非現実的じゃないですか。一体企画庁どう考えておりますか。
  256. 宍戸駿太郎

    ○宍戸説明員 ただいまの件でございますが、一応国民所得統計の定義といたしまして、生産活動に伴って発生した所得という形で計算しておりますので、土地売買等のキャピタルゲインというものは除外しておるわけです。これは一応国際的にもどこの国も、国民所得統計の定義といたしまして、生産に伴って発生した所得という形に現在はなっております。  そういう形で計算しておるというのが現状でございます。それから、ただいまの業としてやっておる場合は、それのマージンといたしまして、その分が法人所得という形では入るわけでございますが、これは業とした場合は当然でございますが、全体といたしましてキャピタルゲインを必要とする場合の方法といたしましては、生産に伴うという形において出てきておりますものですから、これは経費上落として計算しているというのが現実でございます。
  257. 北山愛郎

    北山委員 それは理屈なわけです。私の言うのは、現実とそういう理論と矛盾しているのじゃないかということです。たとえば国民所得の計算でも、名目でもって計算をして、あとである指数でもって物価の値上がりを調整をするということをするでしょう。土地だって同じじゃないですか、ほかの商品だって同じじゃないですか、値上がり分というものを一応名目でもって計算しておいて、あとで調整するのですから。そういう意味で、土地の値上がり分もその中にぶち込んで考えられないのですか。どうも理論上は、そのキャピタルゲインの問題は、特にただ評価してというならこれはあれだけれども、現実に売買をしますと、そこに所得が出てくるのですよ。現実の所得、貨幣所得、それを捨象して国民所得計算を考えるのじゃ非現実的じゃないですか。そういう問題は起きないのですか、議論はされていないのですか、どうなんですか。
  258. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ちょっとあちらで御相談の間に申し上げますけれども、国民所得計算と税務計算というのは違っているのはそこだと思います。税務の計算は、個別の経済主体というものの富の増加ということでやっておりますので、譲渡所得も課税する。国民所得計算としては、全体の土地がふえるわけでもないので、そこはキャピタルゲインの計算をしないということをやっておりますけれども、税制でも、たとえばイギリスの税制は、最近まではキャピタルゲインも非課税にしておったわけです。国民所得計算と同じで、土地を売って土地を買えば、それは全く同じものであって、そこには課税所得は生じない。一種の買いかえと同じ思想でキャピタルゲインを非課税にしております。アメリカは、御存じのとおり二分の一課税で、法人がキャピタルゲインを取得した場合も二分の一課税という特例――特例と申しますか、それがキャピタルゲインの課税方式ということにしておりますが、日本の税制ではそこが非常に割り切っておりまして、法人の場合には、土地を売れば法人の所得だということで課税をする。個人であれば、いまは二分の一課税でありますけれども、やはり課税所得であるという考え方をとっておるわけであります。ただ、そこでキャピタルゲイン一般についての問題というのは、現在も各国で問題になっておりまして、土地制度に関しても、いまも先生のおっしゃる角度からの土地政策としての税制の面での重要な問題、キャピタルゲインをどうするかという問題は実は二つからんでおりますので、税制としてはかなりむずかしい問題になってくると思われます。ややよけいなことを申し上げましたが……。
  259. 北山愛郎

    北山委員 そのむずかしい所得計算の問題は、私もしろうとですから、ただ疑問としている点をお伺いしているのですよ。これは矛盾があるのじゃないかと私は思うのです。また、理論的にも土地が値上がりするというのは、やはり直接にはその人が投資をしたら、改良しなくても全体の影響を受けて開発利益といいますか、その土地そのものが価値がふえているのではないか、そういう理論も立て得るのじゃないかと思うのです。だから、どうも所得計算にしても分配所得なんかはある程度は積み上げ方式ですよ。現実に貨幣の収入があったものを積み上げていくんだから、計算基礎税制の場合とある部分は同じなんですけれども、そのときにどうもむずかしい理論ばかりやって、そしてキャピタルゲインといいますか、土地なんかの値上がりというものを除外して考えるというところにむしろ経済見通しが狂う一つの原因があるのではないか、そういうふうに私は思うのです。しかし、これは別にきょうの本論じゃないですから、ただこの問題はひとつ検討してください、こういうふうに申し上げたいのであります。  いずれにしても、私はいまお尋ねした点あるいは現在の税制を見ると、ほんとうの意味の地価抑制のための税制は一つも手をつけられていないと思うのです。この点に非常に不満もあり、国民の納得のいかない点があるだろうと思います。むしろ逆に、現在の制度の中で特殊のものについては減税をしている、恩典を与えている、それが先ほど申し上げたようなばく大な数字になっている。こういうことはやっておるけれども、地価抑制のための空閑地税、増価税、そういうものはさっぱり手をつけていない、これに問題があると思うのです。ところが、案としては建設省にも、あるいは大蔵省の中でもあるのです。土地の増価の不労所得を吸い上げよう、あるいは開発利益を吸い上げようというような案がありますね。あるいは空閑地税という案もある。その案のほうは、何年も前からことばだけは出ておるけれども、少しも手がついていない、ここに私は問題があると思うのです。建設省も案を出しておりますが、その中で一つの問題点は、土地の譲渡所得を分離課税にしたほうがいいのだというようなお考えがあるようです。この点については大蔵省はどのように考えていますか。
  260. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 建設省のこの考え方は、私どもも承っております。いまの所得税の体系でございますと、総合累積ということになっておりますので、基本的な考え方から申しますと、譲渡所得も他の所得と合算をして、超過累進の税制で課税をするのが公平だという考え方が基本的にはあるわけでございますけれども、建設省の考え方はできるだけ土地供給を増加させるために、土地の所得だけは分離して課税をする。そういたしますと、たとえば五百坪の土地を売っても税率が同じだということになりますので供給の促進としての意味はかなりあるわけです。いまの基本税制でまいりますと、毎年百坪ずつ売っていけば高い累進課税がかかりませんから、土地を細分化してしまうという弊害が出てくるわけです。その点から分離課税を時限的にやって、供給をうんと増加する。この需要と供給のバランスをとらないと、いまの値上がりが続くというところから建設省は考えられたと思います。そういう意味で、いろいろ検討もいたしておりますし、これも税制調査会でも検討項目に入っておりますが、一面において一万坪の土地を売っても、所得がそれで一億も出ても、一定の比例税率であってはまた不公平じゃないかという声もあるわけです。そうすれば、本来なら七五%の最高の税率までいくだけの所得がありながら、分離課税だとちょうど利子所得の分離課税と同じような問題が起こってきやしないかというようなことから、いろいろ苦心して検討いたしておるわけであります。
  261. 北山愛郎

    北山委員 土地の譲渡所得というところで政策的に捕促をするということからいえば、やはり分離課税というのは検討に値する一つの案だと思います。その効果をあげるためには、やはり分離したほうがいい。たとえば法人についても、分離されますからそういう点があると思うのです。  とにかくもう時間がありませんから結論的に申し上げておきますけれども、地価抑制対策としての税制の問題、土地税制の問題がこれほどおくれているということは全く納得がいかないし、これはむしろいろいろ勘ぐられてもしようがないのではないかと思うのです。これにブレーキをかける、足を引っぱる力が働いているのだというふうに勘ぐられてもしかたがない。しかし、これを解決しなければ、やはり国土の建設もあるいは住宅の問題の解決もできないのですから、真剣になって取り組んで、あまり問題を先に延ばしたりしないように、結論を早く出すように大蔵省としても――大蔵省が一番データを持って、実態がわかっているはずです。いま申し上げたような資料も堂々と外に出してやるべきですよ。こういうふうな実態になっている。これだけの減税になっているのですから、私も知らないでこれを見て初めて驚いたような次第なんです。  それからもう一つは、税率のほうはかげんをしても、実際にうその申告をするといったような、実態とかけ離れたような課税、捕捉が足りないというような問題もあわせて解決をしていくというふうにして、社会的な公正をひとつこの面でも実現するというふうに十分の御配慮を願いたい、そういうことを希望して私の質問を終わります。
  262. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員長代理 井手以誠君。
  263. 井手以誠

    ○井手委員 だいぶん時間がおそくなって、参考人松隈さんをはじめ各関係省の皆さん方には恐縮ですが、一時間ばかり皆さん方の御意見を伺いたいと思っております。  第一に聞きたいのは、租税特別措置法によるいろいろな積み立て金、引き当て金の問題。二番目には、開発利益還元という問題を含んだ土地税制の問題、三番目には、経済審議会から答申された、いわゆる社会資本によって利益を受けた者のその利益をいかに受益者負担として徴収するかという問題でございまして、将来にわたる問題が多うございますが、重要な当面の課題でございますので、単に質問、答弁ということではなくして、当局の意見を存分に述べていただきたい。そのことを最初にお願いをいたしておきます。  今日まで、租税特別措置法による不当な内容について、同僚委員から幾多質問がございました。どうも不審にたえませんのは、積み立て金、引き当て金の種類でございます。  国税庁にお伺いをいたします。四十二年度はまだ無理でしょうが、四十一年度における価格変動準備金、貸倒準備金、退職給与引当金はどのくらい純増になったのか。前年度末に比べて一カ年間に幾らふえたか。それは経理の関係はいろいろ承知いたしております。その三つの引き当て金、積み立て金についての四十一年度一カ年の増加分と四十一年度末における総額、残高、それをお伺いします。
  264. 川村博太郎

    ○川村説明員 四十一年度末におけるいま御指摘の各種準備金、引き当て金につきましての期末残高を申し上げます。  退職給与引当金が八千七十六億円、対前年増加額が六百二十五億円、貸倒引当金七千三百十九億円、対前年増加額が千三十三億円、価格変動準備金三千七百八十一億円、対前年増加額五百九十九億円、以上でございます。
  265. 井手以誠

    ○井手委員 ただいまお答えになったそういうおもなる積み立て金、引き当て金のほかに、最近いろいろかってなものを積み立てておるようでありますが、法定のものだけで四十一年度末は総額どのくらいになっておりますか。
  266. 川村博太郎

    ○川村説明員 異常危険準備金八百四億円、海外市場開拓準備金二百九十三億円、それから海外投資損失準備金六十五億円、合わせまして千百億円程度でございます。
  267. 井手以誠

    ○井手委員 法人統計によりますと、四十一年度末には一兆四千億円にのぼっておると思いますが、違いございませんか。一兆三千九百何十何億になっております。――かまいません。それは間違いございません。赤い表紙のものを見ればすぐわかります。  そこで、国税庁にお伺いしますが、ただいま格価変動準備金が四十一年度に大体六百億円純増いたしておりますが、これを租税特別措置法によって減税をしなかった場合、これは法人税を見れば出てくると思いますが、これの税額は幾らに当たってきておりますか。
  268. 川村博太郎

    ○川村説明員 これは約六百億円でございますので、基本税率三五%をかけます約二百十億円程度になります。
  269. 井手以誠

    ○井手委員 そこで、主税局長にお伺いいたします。  二、三日前、あなたは同僚委員の質問に対して、昨年、四十二年度の見積もりは、価格変動準備金は百数十億である、四十三年度改正をするから十三億でございますという答弁をなさった。今度の改正によりますと、八%を六%に、六%を四%、三%を二%に引き下げたために百数十億のものがどうして十三億になるのですか。
  270. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは価格変動準備金積み立て機構を御説明しないとわかりにくいと思いますが、価格変動準備金は、期末のたなおろし資産に対しまして、八%、六%、三%の種類別によりまして率をかけたものが価格変動準備金として積み立てられます。翌期にはそれが全部益金に算入されまして、つまり期末に積み立てたのが翌期には全部益金に入り、また期末にあらためて八、六、三で積むわけであります。今度の制度はその八、六、三を六、四、二にしたわけでございますから、八%を六%に下げるということは、つまり三割ぐらい切るわけですね。ですから、去年積み立てたものを全部くずしまして、今度は去年よりも三割少ない額しか積めませんから、本来ならばうんと減るわけであります。食い込んでしまうまではやらないで、去年積み立てた額まではそれは残してもよろしいという経過措置をとりましたものですから、結局、残ったものは新しく設立した法人とか新しく事業を開始した法人積み立て分が十三億残って、いままで積んでいたものが全部全然積めないということになります。そのために百数十億あったものが来年度は十三億にとどまってしまうということを申し上げたわけであります。
  271. 井手以誠

    ○井手委員 私も一通り会計のほうは調べましたが、それじゃ世間は通りませんね。しかも、いま国税庁から話があったように、四十一年ですら概算二百十億の減税になるわけです。ところが、あなたのほうから私のほうに示された減税見込み額によると、四十一年度は九十億しか出ておりません。私が言いたいのは、あまり過小に見積もり過ぎておるということですよ。八%を二%減らして六%にした。ずっとほかのものも二%引き下げた。四十一年度は二百十億あったはずです。昨年は、説明によると百数十億あったはずです。二%下げたものが、どうして三割ぐらい引き下げてわずか十三億になるのですか。それは一たん益金に入る、それは知っていますよ。しかし、それは毎年やっていることじゃありませんか。二%下げただけでえらい下がるものですな。そんなことはあり得ないはずです。
  272. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは、さっきの概算の二百十億と申しますのは、三五%の基本税率を掛けたからそうなったのでございまして、実際問題といたしましては、配当軽課措置等がございまして、配当している法人の実効税率が下がっておりますから、たとえば三割ぐらいになっているものもございます。ですから、数字は少し違ってやや過小に見られているという点は、実績の織り込み方が少なかったかとは思います。ただその減った点は、これは先生、たとえば三千七百八十一億円がそっくり益金に入って、そうして今度新しく積まれるのは二割ぐらい減っているといたしますと、たなおろしがかりに一割伸びたとしても、三百億円くらいは今度は積む分は減るわけであります。ですから、今度の制度ではその積み分が減るけれども、前の年積んだものよりももっと食い込んで減ってしまうことは経過措置として許しておこうというので、ことし三百積んでいる人は、翌年の積み分が新法で二百六十であっても三百にとどめておくということにしておりますから、つまり積み増しが全然ない。つまり毎年、先生がごらんになった二百五十億円とか百五十億円とかいう減収分が全然出なくなっちゃうという意味で、百五十億円の減収額がなくなってしまう、それがいまの制度から見れば増収になる、こういうことを申し上げているわけであります。
  273. 井手以誠

    ○井手委員 三五%を六百億に掛けたのは、それは荒い計算かもしれません。それを平均の二八%に掛けてもいいんですよ。百五十億円は出てくるはずです。減る実績とあなたのほうの見積もり、あまり違い過ぎておるということが一点です。  主税局長、私がきょう言いたいのは、あなたのほうが租税特別措置法による減収額を過小に見積もり過ぎているということを、私は聞きたかったのです。それは今度の税法の改正によって二%下げられるでしょう。それは、従来かりに六百億円あったものが、三割下がって四百五十億円くらいに減るでしょう。それにはいろいろこまかい計算はあるかもしれませんが、前年は百数十億円あったものが四十三年度十三億円に減ってしまうというのは、これは何としても納得できません。しかし、私はきょうは時間の関係がありますので、これで詰めようとは思いません。要するに、実績に対してあなたのほうの見積もりがいつも少な過ぎるということです。それは申し上げておきます。  次にお伺いいたしますが、従来租税特別措置法であったものが今度は法人税の本法に――とかくの批判があり、風当たりの強い租税特別措置法の中から本法に転居させて、防波堤をつくって風当たりをなくしようという。貸倒準備金、これは数年前まで租税特別措置法にあったはずです。退職給与引当金もあったはずです。――それじゃ出しましょうか。これは昭和三十六年大蔵省――あなたのほうでしょう、大蔵省は。これの租税特別措置及びその減収額一覧表というものがございますが、その内部留保の充実の中に、貸倒準備金、価格変動準備金、退職給与引当金、渇水準備金、当時はこれ全部租税特別措置法に入っていた。これはうそですか。   〔渡辺(美)委員長代理退席、委員長着席〕
  274. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 主税局で提出いたしました当時、租税特別措置と考えたものを一覧表にいたしましたので、当時はすでに本法に入っておりましたが、その租税特別措置らしいものを抜き出しまして租税特別措置に整理をいたしたわけでございます。したがいまして、貸倒引当金と退職給与引当金は法人税法でつくった制度でございます。当時は会計基準その他が整備しておりませんで、貸倒引当金というものは税法独自の制度で、しかもいわゆる準備金で毎年積み立てていって、最高額に達するまでは、貸し倒れが実際それより少なくても積み立てられるような制度でございました。その後直しまして、貸倒引当金にいたしましてからは、毎年洗いかえる制度にいたしましたので、これは特別措置的な色彩がなくなりましたので、のけたわけでございます。退職給与引当金は、御承知のとおり最初が全額を積む、それを二分の一に直しました。そういうわけでございますので、確かに主税局が租税特別措置としてあげたことは事実でございますが、税法としては本法でございます。
  275. 井手以誠

    ○井手委員 私が申し上げたいのは、どうも最近租税特別措置が拡大されておるのに一向減税額がふえないなとふしぎに思って調べたのです。ところが、従来は租税特別措置として減税額に入っておった多くの項目が、最近かなり落ちております。七つ八つ落ちておるはずです。しかも先刻申し上げたように、減税額の実績に対して減税の見積もりが非常に少なく見てある。これはどういう意図であるか、私はここでは申し上げません。大体わかっておりますが……。少し正直に数字は発表していただきたい。これは税調代表の松隈さんもひとつ聞いておいてほしいと思います。なお、この数字の正しいか誤りであるかについては別の機会に私はただしたいと思う。  そこでお伺いいたしますが、この租税特別措置の外国の例を主税局長から承りたい。アメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ、この程度でけっこうです。
  276. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 アメリカ等におきましては、租税特別措置的なものはございません。本法の中にいろいろ入っておりますが、アメリカでたとえば最近として大きいのは投資税額控除というのがございます。
  277. 井手以誠

    ○井手委員 金額も……。
  278. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 金額はちょっといま見当たりませんが……。それから西半球事業法人というのは、アメリカ大陸のアメリカ以外の国で所得を得ているものについての特別の減税とか、それから減耗控除、いわゆるパーセンテージ・デプリシエーションというものでございます。たとえば石油等の採掘に対しては収入金額の二五%を免除する。それから西ドイツも投資税額控除といったような制度がございます。それからフランスも同じく投資税額控除がございます。イギリスには特別償却制度がかなり多くございます。減耗控除などはフランスにもございますし、ドイツにもあるはずでございます。
  279. 井手以誠

    ○井手委員 政務次管と松隈さんに聞いておいてほしいのです。松隈さん、先日実は法人税の論議をいたしましたときに、大蔵省から税調に出された資料国民に発表された資料の中に、世界各国との比較に、日本の場合は四三%、アメリカ、イギリス、フランス、西ドイツにおいては大体五〇%前後。ところが日本の四三%の中には、損金に算入されておる事業税が加えられておるわけです。これは引かねばなりません。そういたしますと、法人税というのは、世界各国は日本よりも大体五割程度高いということが明らかになりました。どうして大蔵省が損金に算入される地方税の事業税を税額中のに入れたか、私はふしぎでなりません。これは論議しようと思いませんが、ひとつ法人税を税調で審議なさるときには、そのことを頭に置いて論議いただきたいということを松隈さんにお願いをいたしておきます。  そこで、私も外国の租税特別措置を調べてまいりましたが、いま主税局長が話されたように、全然ないわけではございません。イギリスはございません。特別償却はどこの国も税法である。ほかの国においては、いわゆる国策に沿った新規投資に対して租税特別措置をやっておる。また西ドイツは石炭対策で一部やっております。アメリカは西半球の国策の関係から減税をいたしておることは知っております。しかし、税額はどこもそう多いものではないのです。倉成さん、よく聞いておってください。こういう話がある。日本が誇とするものが三つある。それは何か、いろいろ例はありましょうけれども、私がこの税金に関して聞いたところでは、日本に誇るべき三つのものは、富士山と悪路、道の悪いことです。それから租税特別措置という三つが世界の誇りだといわれております。考えてごらんなさい。この価格変動準備金というものは一体どこに理由がありますか。私はここでもう論議はいたしません。政府は、毎年七%平均成長すると言っておるではございませんか。安定成長だと言っておるではございませんか。どこに価格変動の根拠がございますか。好景気になったり、不景気になったり、戦前のような事態がある場合には、価格変動ということも考えられるでしょう。しかし政府みずからが、毎年七%前後は成長すると確約しておる。安定成長だと言われておる。しかも会計経理からいっても、時価と帳簿価格との低いほうで経理されるようになっておるはずです。一体どこにその価格変動準備金の必要がございますか。貸倒準備金が毎年一千億円以上もふえているんですよ。これは半分は償却されていっておるはずです。損失に計上されておるはずです。純増が千億円をこえておるのです。倉成さん、一体そんな貸倒準備金がいまの世の中にどこに必要がありますか。それだけの多額なものがですよ、そんな純増はなくても済むはずです。半分は償却できるはずですから。それから退職給与引当金の問題も同様です。最近変更になったかもしれませんが、これは大部分は運転資金に運用ができることになっておるはずです。先刻説明があったように、退職給与引当金は、四十一年度末で八千億円、今日では一兆円をこえておるといわれております。企業が一ぺんに退職するはずがございません。必要以上の引き当て金をあなた方は認めて、そうして損金に算入させる、利益を少なく見積もらせて法人税を少なくかける、こういう租税特別措置。まあ大蔵大臣を実は待っておるのですけれども、まだお見えになりませんから、これは大蔵大臣にも聞きますが、これほど不当きわまる租税特別措置――私はすべてが悪いとばかりは申し上げません。いまさら戦時中、戦後のことを申し上げようとは思いません。しかし、これはごく短期のもののはずであります。問題は勇断をふるうことです。この機会にひとつ、学識経験者であられる松隈さんの租税特別措置に対する御見解、代表としてよりも学識経験者である松隈さんのお考えを承っておきたいと思います。
  280. 松隈秀雄

    松隈参考人 私、税制調査会の会長代理をいたしておりますので、私個人の意見も申し述べますが、同時に税制調査会での空気も申し上げたいと思うのでございます。  租税特別措置が、わが国の場合には諸外国に比して多種多様であるということは、まさに御指摘のとおりだと思います。租税特別措置は、それを制定した当時においては、それなりの理論的根拠があるわけであります。それも見方によっては、根拠薄弱、こういうおしかりがあるかもしれませんが、一応は理論的根拠に基づいて租税特別措置を講じ、特に政策的効果をねらっておるのでございますが、これがともすれば既得権化しましてなかなか廃止が困難である。そこへもってきて、新しい経済状勢に対応しまするために、また次の租税特別措置が生まれる、こういうことが多様化、多種化をもたらしておると思うのでございます。そこで、税制調査会におきましても、租税特別措置については根本的に見直す必要があるということで、これを再検討いたしまして、効果の薄いものについては、期限の到来する場合においては延長をしない。それから期限のないものについても、できるだけ早い機会にこれを廃止する方向に持っていくべきであるというような根本的な結論を出しております。それから、新たに租税特別措置を制定する場合には、十分にその政策的効果を考慮しまして、減税によってでなければそういう政策が有効に実行できないかどうか、他の方法によって実行できるならば、できるだけ減税政策によらないほうがいい。やむを得ず減税の方法によって政策効果をねらわなければならぬというのであれば、期限を付すると同時に、その期限の再延長をしないようにすべきである、こういう基本方針を取りきめております。できるだけそういう方針で税制調査会も審議をいたしております。  たとえば本年度昭和四十二年度税制改正につきましても、租税特別措置による輸出振興とか技術の開発とか中小企業対策ということは、まさに現下の経済状勢上やむを得ない措置である、こう認めて新規のものを認めましたが、それの減税額に相当するものは、少なくとも、先ほど御指摘のありました価格変動準備金制度としてもおかしくなっている、これは過去の経緯から見て当然下げるべき性質のものであるから、それに手をつけるというようなことによりまして、差し引き減税額をゼロにするというような方法をとりましたし、また、かねてから税制調査会が問題にしておりました供出米穀についての免税制度であるとか、あるいは社会保険診療報酬の特例等についても、ぜひこの際改めて廃止の方向で検討するようにというような答申をいたしておるのも、ただいま申し上げたような趣旨のあらわれであるというふうに御了解を得たいと思う次第でございます。
  281. 井手以誠

    ○井手委員 ただいま税調代表からのお話、そのとおり実行できるとけっこうだと思っております。特に期限の到来するものについては遠慮なく廃止をする――遠慮なくとはおっしゃらなかったけれども、廃止をするという御方針はひとつ貫いてほしいと思うのです。所得の再配分だといわれている財政、租税について、逆に所得の再強化が行なわれるような租税特別措置については、ひとつ勇気をふるってもらいたい。  そのおっしゃるあなたが、何で今回は石油の備蓄施設まで特別租税をおやりになろうとするのか、その辺が私にはわからない点です。石油界は三月決算ではトップグループです。この石油には価格変動もない。しかも利益が上がりつつある。強固な基盤を持っておる石油会社の原油備蓄施設に対して、あるいは価格変動に対して、なぜ特別租税を残さねばならぬのか、あるいは新設しなくてはならぬのか。
  282. 松隈秀雄

    松隈参考人 石油が燃料資源としていかに大切であるかということは、私から申し上げるまでもないところでございますが、この備蓄設備についての租税特別措置を認めましたのは、近東状勢が緊迫いたしまして、石油の日本への回送が非常に困難になる、このままでは石油資源に不足を来たす。その結果は、石油会社の採算ではかりにカバーできるとしても、石油の絶対量の不足というようなことが万一起こりますれば、日本経済全体に対して大きなマイナスになる心配があるということでありましたので、それでは備蓄設備を特に租税特別措置によって優遇して必要な石油を備蓄する、こういうことに踏み切らざるを得ない、こういう考えのもとにこれを入れることを税制調査会も可決したわけでございます。
  283. 井手以誠

    ○井手委員 石油の問題では、時間がたちますから論議はいたしませんが、日本をきわめて有利な市場として世界の石油資本がねらっておる今日、何も備蓄施設にまで特別措置をやらねばならぬ理由は私はないと思う。これだけ申し上げておきます。  それでは、大臣が間もなく見えるそうですから、その間社会資本の受益者負担関係について事務当局からお伺いをいたしたい。  労働省にお伺いします。最近、高卒、中卒の就職状況はほとんど大都市に集中されておるようでありますが、大都市――首都圏、中京圏、近畿圏、そういうところに学卒者の何割くらい入っておるであろうか。それが一点です。  それから、昭和五十年と申しますか、今後はどういうそれの情勢になるであろうか。いわゆる中卒はどんどん減ってくるでしょうが、その中卒の減る見込みと、簡単でいいですから、さらに大都市集中が起こってくるでなかろうかという点をお伺いいたしたい。
  284. 細野正

    ○細野説明員 ただいまのお尋ねにございました学卒の大都市への集中率でございますが、全体の就職者を一〇〇といたしまして、東京、大阪、愛知の三都府県についてこの比率は、昭和四十年の数字で三七・三%でございます。いま申しましたのは全体の中で三七二二%が三つの都府県で就職するということですが、県外の就職率はここ数年落ちる傾向にございまして、長期的に見ますと学卒の数が減ることと、それから企業の地方進出が労働力不足につながって行なわれてくるのではないかというふうないろいろな事情で、集中傾向は若干緩和するのではないかというふうに見られます。
  285. 井手以誠

    ○井手委員 大臣、お疲れのところ恐縮ですが、お待ちしておりました。  実は、租税特別措置の中のいろいろな積み立て金あるいは引き当て金などについてお伺いをいたしました。結論的には、あまりにも不当ではないかということになりまして、税調代表の松隈さんからもこういうことでした。期限の到来するものは廃止いたします、また新設しようとするものについても、これはごく特別のものに限ってやりたい、こういうお話がございました。繰り返しては申し上げませんが、世界各国見ましても、日本ぐらい租税特別措置の多いところはないのです。日本の誇りだそうです。そこで、松隈さんがそうおっしゃった、期限の到来するものは今後廃止する、これを受けて大蔵大臣は、所得の再配分という租税負担公平の原則からいって、当然それを全面的に尊重なさると私は期待をいたしておりますが、大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  286. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 期限の来たものはとにかく全部一応見直す、そうして廃止すべきものは廃止するし、改正すべきものは改正するというふうに、これはもう固定させないで弾力的にやることが必要であるというふうに考えております。できるなら一たんはやめるというような運営のしかたが私は好もしいと思っております。
  287. 井手以誠

    ○井手委員 その程度でいいでしょう。これは問題は理屈とかなんとかじゃございませんよ。いままでの論議をお聞きにはならなかったけれども、実はいろんな積み立て金、引き当て金というのは、国税庁の調査によると、減税一覧表というものよりも実際に多いのですよ。なるべく減税額は少なく見せてやろうという御配慮もあるようです。とにかく勇気を出してほしい。断行あるのみだと思いますから、特にその点は念を押しておきたいと思います。  次に、土地税制のことについてお伺いをいたしたいと思います。  土地税制については、先ほど北山委員からもいろいろお話がございましたが、当面の土地政策の促進剤として非常に緊要な問題である。建設省のほうでは土地収用法を次々に改正強化してまいりました。いわゆるごね得をなくそうということ、そのことはけっこうですけれども、一方では強権をもって売りたくない人も売らざるを得ない事態になっておる。いわゆる公共事業のためには強権を発動する。一方、公共事業を起こしたために周辺の地価はどんどん上がっていく。片一方は犠牲を受け、片一方は利益を受ける。こういう開発の利益について、開発の不利益について、土地収用法の強化と開発利益の還元というものは車の両輪のようで、一方だけ進んではならないと思います。並行して進まなくてはならぬはずです。鉄道をつくる、道路を通す、そのために泣く泣く土地を手放した人もあるでしょう。一方には、そのために何倍の利益を受けた人もあるでありましょう。この車の両輪であるべき開発利益の還元という土地税制についてどうお考えになるでしょうか。先刻も北山委員から指摘されましたけれども、あまりにもおくれ一過ぎてはいないでしょうか。その点、大臣からお伺いをいたします。
  288. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 開発の利益を土地の所有者だけが享受すべきでないという考え方はもっともであると思います。この前、土地収用法を出しましたときに、一緒に税制をつけて出しましたのがこの委員会を通りませんでした。これはあれに便乗して、一般の土地売却の場合の制度でございましたので、土地収用法とは直接関係ないということで反対されたわけでございます。土地収用法と関係して、公共事業の施行によって生ずる利益を一般社会に還元するという意味から、この税法をつくろうとしましたから、やはりむずかしいことは、その公共事業の施行によってどの範囲にどれだけの利益が出ているかということを判定しなければなりません。税制としましたら、この判定の基準をつくるとかいうようなことは必要だと思いますが、これは言うべくして非常にむずかしい問題だと思います。そこで、一ぺんこの前の土地収用法と兼ねて、役所側でも研究しましたが、あれが通らなかったのを機に、この問題は一括して税制調査会で、他の土地税制一般と一緒に研究してもらわなければということで、いま税制調査会に討議してもらっておる最中でございます。これはなかなか技術的に私はむずかしいと思います。
  289. 井手以誠

    ○井手委員 そういういきさつがあるならば、大臣として急がれる土地税制について、何年度から実行しようというお心組みでございますか。
  290. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 答申はこの夏までに大体いただくという予定になっておりまして、その目標でいま討議していただいておりますから、答申が出てさましたら、来年度税制の問題として取り上げたいというふうに考えております。
  291. 井手以誠

    ○井手委員 税調のほうも、ことしの秋口までにはだいじょうぶでございますか。
  292. 松隈秀雄

    松隈参考人 税制調査会の委員は、ことしの八月で任期が切れることになっております。したがいまして、委員の責任上、これだけ問題になっておりまする土地税制について、答申をせずに委員を去るのは残念であるから、できるだけ任期の終了までの間に答申をまとめたい、こういうので努力をすると思いますが、いかにしてもあと四カ月しかないわけでございますので、このむずかしい土地税制、しかも基本的、総合的税制でないと、えり食いしたような税制ではかえって弊害が生ずる、こういう点がございますので、努力は十分いたすと思うのでございますが、はたしてどの案についても具体的な立法可能になるまでの答申にまとめ上げるかどうかは、いまの段階ではちょっとまだ疑問を持つわけであります。
  293. 井手以誠

    ○井手委員 ちょっと心もとないものがあります。松隈さんともあろう税制の権威者が、そのぐらいの御答弁ではいけませんな。北山君も申しましたが、大蔵大臣、委員の中に不適当だと思われる大土地所有者の代表や不動産業者もおられる。利益代表は入れてはならぬはずですから、その点は十分注意をし、来年度から実行されるならば、いま松隈さんの、税調代表のおっしゃった懸念のないように格別の御配慮が願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  294. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 しばしば申し上げておりますように、この土地問題は結局地価の問題の解決――土地利用の問題は本来の土地政策によってきめられるべきものでございまして、これを税制によって促進するというようなことは、これは非常にむずかしい。しょせん税制というものは土地問題の主役にはなれないものだ、補完的な仕事をするものだというふうに私どもは考えております。したがって、いままでたとえば空閑地税とかいうようなものもいわれておりましたが、何が空閑地かというようなものは、全部やはり別個の土地政策から決定してもらわなければ、税のほうでは手が出ないというような問題がございましたので、もっぱら建設省を中心にいろいろな土地政策をやってもらっておったのですが、ようやく建設省のほうの土地政策もいろいろ具体案が出てまいりましたので、それと呼応して税制も総合的に考えられるという基礎がようやく整いかけてきたところでございます。いま松隈会長代理が言われましたように、これをえり食いして、やっかいなものだけ残していくというようなことだと、土地税制としては非常に不完全なものになりますので、全体をくるめて、土地税制というような一つの体系をなすような改定をしたいと私どもは考えております。したがって、ここまで問題になってきましたから、もうそろそろまとめ上げていいときだと思いますので、できたら私は来年から実施するようなところまでこぎつけたいというふうに考えております。
  295. 井手以誠

    ○井手委員 私の希望の点についてはお答えになりませんでした。しかし、重ねて問いはいたしません。  経済企画庁にお伺いいたしますが、いわゆる新市街地形成、ベッドタウンと申しますか、そういった市街地をつくる社会資本というもの、一体坪当たりどのくらいかかるのでしょうか。推計したものはございませんか。
  296. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 ただいまの御質問に直接お答えするような数字は持っておりません。これは首都圏、近畿圏の場合、それぞれによって相当相違もあると思いますが、いずれにいたしましても、現在住宅公団あるいは公共団体の手によって相当大きな開発が行なわれておりまするので、かなりの金額に達するということは十分想像できます。
  297. 井手以誠

    ○井手委員 経済企画庁はその程度しか数字は出ませんか。それじゃよろしゅうございます。私は、土地問題の権威者が書いた論文その他をいろいろ調べてまいりますと、市街地の環境施設と申しますか、道路とか上下水道、交通通信、ガス、こういったものの開発に要する社会資本というものは坪当たり三万円という数字が出ております。これはひとつ参考にしてほしいと思う。新しい市街地になるには坪当たり三万円の社会資本が要っておる。中にはガスのように料金を取るというものもあるでしょう。   〔委員長退席、渡辺(美)委員長代理着席〕 しかし、道路、住宅、上下水道などという環境施設については、公共事業を中心とする社会資本がばく大に投下されるのです。このばく大な社会資本の投下に対して、いわゆる開発利益に対して、どのような土地税制をおやりになろうと松隈さんはお考えになっていらっしゃいますか。これは一問一答じゃなくて、まとめてあなたの見解を聞きたいと思います。私の見解を先に申し上げておきます。  私は、開発利益負担金というものを一律に取ることは、実際問題として困難であると思います。たとえば、農地のように売買しないもの、あるいは自分の百坪そこそこの宅地のように売買しないもの、そういったものに開発利益金を徴収するということは、実際問題として無理であると思う。と同時に、開発によって騒音、いわゆる公害を受ける地帯もあるでありましょう。そういう開発不利益の地帯に開発利益の負担をかけることも、私は困難であると思う。そういうことを考えてみますならば、やはりオーソドックスに従来ある税制を活用すべきである。譲渡所得税、これは一名土地増価税ということもいえるでしょう。この譲渡所得税について私は実はもっと数字で質問したかったのですが、時間がありませんのでまとめますが、譲渡所得税は、大体北山君も申しておりましたが、二兆円は間違いない。二兆円から原価を差し引いて税金をかけますと、どのくらい取れますか、ばく大な税収があるはずです。よく考えておってください。あなたにとってはたいへんありがたい話です。その譲渡所得がつかみにくいというので、非常にむずかしい点はありますけれども、やはりこれは脱税捕捉という面から、私はあくでまも公正に徴収すべきものであると信じております。それから固定資産税、自治省からお見えになっておりますが、これはもう時間がありませんので問いはしません。しかし、固定資産税というものは、土地の使用料でございますから、この評価というものは時価に厳正に評価をして課税すべきであると考えます。土地の価値が上がったならば、使用料としてその分だけ評価を上げていくということができるでしょう。空閑地税については先刻も話がありましたが、私は、空閑地税というものは、未利用であるとか、あるいは軽利用であるとか、いろいろなことばがありますが、あるいは土地使用税とか特別付加税ということも同じような意味でいわれておりますが、やろうと思えばできないはずはないのです。私は坪三万円の開発利益が正しいとは思いませんが、あるいは上回るかもしれませんが、これほどの開発利益の負担について、私がただいま申し上げたような現行の税制でこれを強行していけば、土地税制というものは八十点、九十点は取れるものと私は考えております。この私の考えに対して松隈さんの御意見を伺っておきたいと思います。
  298. 松隈秀雄

    松隈参考人 税制調査会といたしましては、土地税制特別部会を設けまして、土地の税制の審議をいたしておることはすでに御承知のとおりであります。昨年の暮れに部会長が中間報告をいたしまして、それに仮案というものを示しております。その中にも、お話の開発利益特別税を創設したらどうかという提案がございます。その課税標、準は、「一定の開発事業の周辺の土地の当該事業終了後の固定資産税評価額または評価増差額とし、納税義務者は土地所有者とする。」こういう一応の想定でありますが、開発事業の範囲というものは、非常に認定が困難なものでありますから、一つの考え方として、一定規模以上の公共事業等として個別に指定をする。何が開発事業かということは、規模を一定の規模以上に限定する。それから、周辺の土地の範囲とか法定税率範囲内での具体的税率の決定は非常にむずかしいものですから、仮案では、「施業者、関連土地所有者及び学識経験者から成る諮問機関の議を経て決する。」ここらが非常にむずかしい問題だけに、結論をはっきり出さずに逃げておるといえば逃げておるようなかっこうにしか問題が提案されていないわけであります。  なお、こういう提案をしつつも、ただいま井手委員から御指摘のありましたように、関発利益があるけれども、開発不利益もあるじゃないか、こういう問題はどうするかとか、いろいろ具体的な問題点を掲げて、いま世論の反響を待っておる、こういうわけでございます。  それから、固定資産税についても、仮案は、固定資産の評価がえということはなかなか事務手続がたいへんでありますので、現行のたてまえは三年ごとに改定するという一応のたてまえになっておりますが、特に、開発が行なわれたというような環境の変化によりまして、土地の価格に著しい変動を生じておるような地域については、そのつど評価がえをするというようなことにしたらどうかというような提案をいたしております。  それから、空閑地税ないし未利用地税についても、一応の仮案は出しつつも、なおその案を実施するについてこういう点に問題があるということも示しております。その問題のうち、乗り切れる問題と、乗り切りにくいから案を画して提案する、こういうことになるかということを今後の審議にかけておる次第でございます。
  299. 井手以誠

    ○井手委員 実は、大事な土地税制の問題ですが、時間もだいぶたってまいりましたので、最後の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  それは、最初に申し上げました社会資本の受益者負担の問題です。開発利益というよりも社会資本の受益者負担の問題。これは、昨年の十月の三十日、御存じであろうと思うが、経済審議会の部会の報告としてこういうことがいわれております。総説には、第一に地域格差の問題については財政の再配分機能を中核としなければならぬということが書いてある。第二には過密問題として、大都市に集まることによって利益を受ける者、すなわち企業が社会資本をもっと負担する原則を確立すべきであるというりっぱな答申ができております。これは審議会としては非常に出色のものである。そこで、一々数字をお伺いして意見を聞く時間がございませんので、まとめて申し上げます。   〔渡辺(美)委員長代理退席、委員長着席〕  これは私の独創ではありますが、これをどうして受益者負担させるかということについて、関係当局も委員の皆さんも、短い時間でございますので、ひとつお聞きをいただきたいと思っております。  いま公共事業というのは、ほとんど大都市に投下されております。太平洋ベルト地帯には、自然増というものを引きましても、人口の集中により、公共事業の投下というものは、その七割、八割を占めるでしょう。建設省の方は御存じと思いますが、街路事業、それから住宅、特に公団住宅に至っては一〇〇%大都市に投下されると思います。公団住宅だけでも二千億円をこえるでしょう。先刻私は坪当たり三万円の開発利益と申しましたが、それほどの社会資本、公共事業というものを、大都市に人が集まるために投下しなくてはならぬのです。過密対策として投下しなければならぬのです。それでは、一体人が集まるのはなぜかといえば、私は大都市に企業が集中し、企業がどんどん人を雇うからだと思うのです。すなわち、言いかえますならば、企業が、工場が人を雇う、そこに人がどんどん集まってくる、集まってくるから国の大事な公共事業というものを大半大都市に投下しなければならぬということになるでありましょう。企業が人を雇う、人が集まる、そのために社会資本、公共事業をこれほど投下しなければならぬというならば、当然企業に受益者負担というたてまえをとることが必要ではないか。私は目的税として雇用税を取るべきではないかと提唱したいのです。そして一方では、九州、北海道、四国、中国山陰、北陸、東北地方の農村はあき家同然になっておる。この過疎問題、これは自治省が非常に心配なさっている。都会では畳一枚に一人ずつ住まにゃならぬという過密状態。この過密、過疎という問題をいかにして解決するか。国鉄については、今日都心三区に百三十万人の通勤者があるといわれておりますが、ここ十年ばかりにさらに百万人ふえそうであります。ばく大なる通勤の資本を投下しなくてはなりません。したがって、都会で人を雇う場合には、本来ならば、国の費用で多くの人が教育されて、一人前になしたその一人前の者で大都市の企業に雇われて人がふえてくるのですから、この公共事業、社会資本の何割かは、企業が人を雇用したことによって負担してもいいのではないか。一名雇用税と申し上げていいのです。その取ったものを今度は工場の地方分散なり過疎対策に回す。今日雇用者は、労働省に聞けばわかることですが、大体三千万人だと思っております。その所得は二十兆円にのぼっておると思うのです。年間の勤労所得は二十兆円だと思うのです。二十兆円のうち、大都市にあるものを六割として、十二兆円のうちの五%を徴収したらどういうことになるでしょう。六千億円の財源が出てくると思う。これほどばく大な公共投資、社会資本を入れておるならば、五%程度の負担があっても無理ではなかろう。いまの法人利益から考えますならば、決して無理なことじゃないと思う。その徴収したものを、地域開発のために、公害対策のいろいろな施設に、あるいは過密対策、通勤列車対策などに向ける。過密、過疎対策に活用することが非常に必要ではないか。また一面こういうことも言えます。高卒、中卒の新規就職者はだんだん減ってまいります。しかも日本ぐらい、サービス業などの第三次産業に学校新卒の就職の多い、求人の多いところは、世界各国においてもないのです。これは、労働省では雇用政策としていまいろいろ検討なさっておるようですが、雇用税を取る場合に、憲法に職業の自由がございますから、これを強制することはできません。けれども、国の重要な産業に雇われる者は税金を安くして、さほどでないものに対してはよけい雇用税を取る。いわゆる労働力を税制によって重要な面に誘導していくということはできないことはないと思うのです。これを称して選別雇用税ということができるでしょう。第三次産業からはよけい徴収する、第二次産業からは少なく徴収する、地方に分散するものには奨励金をやる、こういう選別雇用税というものは、これは実はその一部はイギリスで実行されておるのです。真に社会資本の受益者負担ということになりますると、そこまで到達しなくてはならぬではなかろうか。いまの日本の労働力の問題、地域開発の面を考えますと、私はきわめて必要なものではなかろうかと思います。  質問よりも提案になりましたが、私はそういうものを税制調査会なり大蔵省でも考えていい時期に来ておると思うのです。この私の構想、選別――選択でもいいです。選別雇用税、これについて大蔵大臣と松隈税調代表の意見を承っておきたいと思います。
  300. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 日本では全く新しい課税方法でございますし、その影響がどういうふうか、とにかく十分これは検討に値する問題だと思います。検討することにいたします。
  301. 松隈秀雄

    松隈参考人 イギリスにおいて選択雇用税があることは税制調査会のほうにも資料として出ておりますが、まだ日本でこれを実施するかどうかについては議論が進んでおりません。御提案もありましたので、税制調査会でも検討いたしたいと考えております。  なお、付加価値税を事業税に導入したらどうかというような検討はすでに始まっておりまして、その場合に加算方式をとりますというと、人件費というものが課税標準になりますから、人をよけい雇っておるとそれだけ負担が高くなる、こういうような面もありますので、事業税に付加価値を導入するかどうかというような検討とあわせて雇用税というようなものを考えていく必要がありはしないか、こういう気がいたします。
  302. 井手以誠

    ○井手委員 これで終わりますが、土地税制なり選別雇用税についてもっと大蔵大臣の意見を聞きたかったのですが、おそくもありますし、ジョンソンショックでいろいろ御心配であろうと思います。私は、この私が申し上げたような土地税制なり雇用税というものは、検討してみます、まいりますという程度のものではないと思うのです。わが国における当面の大きな課題であろうと私は思うのです。いたずらに、土地を持った者、そういう者を税制調査会に入れたり、あるいは審議会の委員にしたり、税金を課せられることを引き延ばすようなことがあってはならぬと思うのです。それでは国民の納得を得るものではございません。この前も申し上げましたが、これ以上税制についての教訓的なことは申し上げません。どうぞひとつ土地税制特別措置などについては勇気を持って当たられるように特に要望をいたしまして、私の質問を終わります。      ――――◇―――――
  303. 田村元

    田村委員長 この際、国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。     ―――――――――――――
  304. 田村元

    田村委員長 政府より提案理由の説明を聴取いたします。
  305. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ただいま議題となりました国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及び概要を御説明申し上げます。  今回、この法律案提案いたしましたのは、この特別会計に属する特別積立金引当資金の使用に関し、同引当資金は、当分の間、この会計から森林開発公団に対する出資を行なうために優先的に使用することができることとすることを目的とするものであります。  現在、国有林野事業特別会計の国有林野事業勘定において損益計算利益が生じたときは、その利益の二分の一を利益積立金に、残りの二分の一を特別積立金に積み立て、しかも、この特別積立金に見合う額は特別積立金引当資金として現金で保有することとされております。  この特別積立金引当資金は、林業の振興その他の財源に充てるものとして一般会計に繰り入れる場合に限り使用できることとされ、毎年、予算の定めるところにより、一般会計への繰り入れが行なわれてきたのであります。  ところで、森林開発公団が行なっている水源林造成事業は、保安林整備臨時措置法に基づく保安林整備計画の一環として行なっているものであり、このための所要財源は、従来この引当資金から一般会計に繰り入れられた財源をもとにして、一般会計からの出資によりまかなわれてきたのでありますが、同公団の行なう水源林造成事業のための所要資金を継続的、安定的に確保するため、この引当資金は、当分の間、まず、この会計から同公団へ直接出資するための財源として優先的に使用することとし、この使用の妨げとならない場合に限り、一般会計への繰り入れができることに改めようとするものであります。  なお、引当資金を森林開発公団への出資に使用した場合には、これに見合う特別積立金の金額は、利益積立金に組みかえて整理することといたしております。  以上がこの法律案提案の理由及びその内容であります。  何とぞ御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  306. 田村元

    田村委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ります。  次回は、明三日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後八時七分散会