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1968-03-21 第58回国会 衆議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月二十一日(木曜日)    午前十時五十分開議  出席委員    委員長 田村  元君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 毛利 松平君 理事 山中 貞則君    理事 渡辺美智雄君 理事 只松 祐治君    理事 村山 喜一君 理事 竹本 孫一君       大久保武雄君    鯨岡 兵輔君       河野 洋平君    小山 省二君       笹山茂太郎君    四宮 久吉君       砂田 重民君    地崎宇三郎君       西岡 武夫君    古屋  亨君       坊  秀男君    村上信二郎君       村山 達雄君    山下 元利君       吉田 重延君    井手 以誠君       石野 久男君    佐藤觀次郎君       中嶋 英夫君    平林  剛君       広沢 賢一君    広瀬 秀吉君       武藤 山治君    横山 利秋君       岡沢 完治君    河村  勝君       松本 忠助君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         大蔵政務次官  倉成  正君         大蔵省主税局長 吉國 二郎君         大蔵省関税局長 武藤謙二郎君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         農林省畜産局長 岡田 覚夫君  委員外出席者         総理府人事局参         事官      吉岡 孝行君         経済企画庁調整         局財政金融課長 熊谷 文雄君         大蔵省主計局給         与課長     津吉 伊定君         国税庁直税部長 川村博太郎君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部業         務課長     高橋 顕詞君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 三月二十一日  委員加藤万吉君、野口忠夫君、岡沢完治君及び  広沢直樹君辞任につき、その補欠として石野久  男君、横山利秋君、西村榮一君及び松本忠助君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員石野久男君、横山利秋君及び西村榮一君辞  任につき、その補欠として平岡忠次郎君、野口  忠夫君及び岡沢完治君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三一号)  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  六号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  七号)      ————◇—————
  2. 田村元

    田村委員長 これより会議を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。河村勝君。
  3. 河村勝

    河村委員 去る三月五日、本会議で、酒、たばこ値上げ所得税減税に関する問題について質問したのでありますけれども、そのときの大蔵大臣答弁がまるきりすれ違い答弁になってしまって、本会議ではそれ以上追及のしようもないものですから、きょうはほんとう大臣に直接御質問したいのですけれども、おいでにならないので、データ供給者と見られる事務当局に少し数字についてお伺いをしたいと思います。   〔委員長退席渡辺(美)委員長代理着席〕  そこで、私が申しましたのは、四十三年度予算では約九千五百億近い増収を見込んでおります。そのうちで、所得税増収分だけで、減税予定分を含めて三千九百二十三億、約四千億近い増収があるわけですね。この増収見積もりの大部分は来年度給与所得増、約一一%のアップを見込んでいるそのはね返りであります。つまり、世界に冠たる累進税率のおかげでもうかっておるわけです。だから、その中から千五十億程度のものは、当然、酒やたばこ値上がりによって相殺せずに、そのまま納税者に還元すべきではないかというのが私の質問だったのです。ところが、それに対して大蔵大臣は、給与伸び率を一一%に見ているのは、政府経済見通しにおける雇用者所得伸びを勘案して算定したもので、この二%はベースアップ率を見込んだものではありません——これは私がたまたま一一%ベースアップということばを使ったらそういう御返事なんですけれども、この点はちょっと論議のあるところですからあとに回しますけれども、それから大蔵大臣はこう言っているのです。「四千億円の所得税自然増収の中には申告所得とかあるいは利子配当、こういうようなものの増収分が含まれておりますので、給与所得税増収分だけを見ますと、来年は千六百七十三億円という計算になっております。したがって、この千六百七十三億円の給与所得税増収に対して一千億円の減税ということでございますから、減税財源がそう豊富であるということは言えないだろうと思います。」こういう返事をしておられたのです。大体私の質問に対して、答弁そのものすれ違いであるけれども、その問題の前に、一体四千億近いものの中から、給与所得増収で千六百七十三億円しかないという御答弁ですが、何が抜けて千六百七十三億円になるのですか。
  4. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 源泉所得税増加についての金額と、それ以外の所得税増加による金額との問題だと思います。大臣が言われた数字は、減税後の本年度予算の中に含まれる給与所得税額の前年度の補正後の予算に対する増加額を言われたのだと思います。実際の減税前の数字で申しますと、源泉徴収分は二千六百六十九億の増収になっておる。ただし、この中には利子所得配当所得増加分も若干入っております。大部分給与所得の分であるということはいえます。大臣が言われたのは、おそらく減税後の姿を言われたのだと思います。
  5. 河村勝

    河村委員 そうしますと、その四千億という前提に立って、それで千六百七十三億円しか減税財源がないという大臣答弁は、これは間違いですね。
  6. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 数字としては、いま申し上げたように、取り違えばございますが、改正後の源泉所得税の前年に対する増加額を言われたのでございまして、ちょっと錯覚はあったかと思いますけれども、数字としては間違ってないと思います。
  7. 河村勝

    河村委員 あなたに文句を言ってもしかたがないから一応その点は抜きますが、しかし、それにしましても、申告所得にしたところがやはり減税対象にはなっているのですから、抜くのはおかしいわけですね。おかしいけれども、それは問題を簡単にするために、一応源泉所得税の中の給与所得だけを対象にしてみましても、利子配当関係増収というのはどのくらいあるのかよく知りません、せいぜい百億かそこらだろうと思いますが、そうしますと、源泉所得税増収分というのは二千六百六十九億ですね。その中で、今回の減税というのは、今度は千五十億じゃなしに九百九十億ですね。そういうことになりますね。
  8. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 そうでございます。
  9. 河村勝

    河村議員 それなら二千六百億の中の九百九十億でしょう。その大部分がいま私が申した一一%のはね返りなんですから、これはもう私からあらためて申すまでもなく、今度の税制調査会の四十三年度税制改正に関する答申の中でも、この非常な高い累進税率のために取り過ぎになる分は、これは毎年返せということを言っているわけですね。ですから、当然それは手つかずに返すという趣旨であり、そうすべきものだと思いますが、いかがですか。
  10. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま仰せになりました先生の御質問趣旨が、所得税だけでも四千億の増収があるのだから、したがって酒、たばこ増収をはからずとも所得税減税は単独でできるではないか、こういう御趣旨だと思います。  これは、税制調査会答申に従って政府が決意をしたわけでございます。     〔渡辺(美)委員長代理退席委員長着席税制調査会答申で申しておりますのは、酒、たばこ増収引き当てにして所得税をまけるべきだということを言っているわけではないのでございまして、所得税は、ただいま御指摘のように、日本の場合まだ調整が進んでおりませんので、所得がこれだけ急速に伸びますと、非常に負担が重くなり過ぎる。累進課税でございますから、所得伸びればそれ以上に税金割合伸びるということは、本来の性格からは当然であるわけでございますけれども、普通の場合、どこの国でも一人当たりの所得が一〇%も一五%も毎年伸びるという例はないわけですから、そういう姿になってまいりますと、累進課税というものは見直しを受けないと、数年後にはたいへんな負担増になる。そういう点に着目して実は毎年減税をしているわけでございます。そういう意味では、ことしも、これは何をおいても減税をしなくてはならないというのがまず税制調査会の決心でございます。同時に、一方においてたくさんの自然増収がございますけれども、財政需要増加も非常に大きい。ことに、よくいわれます財政硬直化義務的経費増加、当時六千九百億といわれておりました。それに準当然増というものを加えますと、約一兆円に近くなってしまう。かたがた一方では、昭和四十一年に初めて国債発行いたしました。二年目の四十二年にも、当初の予算では、前年を上回る八千億という公債を予定した。そのために減税ネットで行なうことができまして、その段階では逆に租税負担率昭和四十年以前に比べますと、二〇%台をはるかに割り込みまして一八・五%まで下がってしまった。したがって、今後好況といいますか経済が回復した場合には、むしろ国債を減額しておいて、そして再び国債発行を必要とする時期に国債発行が可能なようにしておくという意味では、国債依存率をぐっと下げる必要がある。そういう意味では、ことしは国債発行を減額しなければならぬという理由があるわけです。  そういう面をいろいろ検討いたしますと、税制調査会としては、一応まず所得税減税は必要である。その後見積もられる自然増収が、そういたしますと八千数百億になりますから、それで歳入が満たせない場合は、今度全体の税制をながめて、そして増収要因があるかどうかを探る。その場合に、増収を必要とするものがあればできるだけそこからやっていこう。その場合に、従来から税制調査会指摘しておりましたように、間接諸税のうち、従量税率をとっておるものが、どうしてもほかの従価税率をとっておるものと不均衡を生ずる。従価税率をとっておりますものは、所得水準が上がり、物価水準が上がって課税対象の価格が上がってまいりますと、当然に税額も上がっていく。ところが、従量税率をとっておりますものは、そういう所得水準物価水準が上がっていったときには、これに即応して税率をながめ直さない限り、相対的に税負担は下がっていくという事実があるわけです。その顕著なあらわれがたばこと酒であるということを指摘したわけでございます。去年は御承知のように印紙税登録税にその顕著なものがあるとして直したわけです。ことしはそういう財政需要が必要であるならば、今度は第二次的に直すべきものは酒とたばこである。それにしても無制限にこれを直すということも国民負担としていかがであろうか。そこで限度としても、やはり所得税減税した限度までじゃなかろうかというような考え方を税制調査会は持ったわけです。そういう意味では、先生指摘のように、所得税減税は酒、たばこ増収をするからやったのではなくて、所得税減税はまず必要であるからやった。その全体の財政需要に応じ、また、ことに国債減額必要性というものに応じて、全体としての税体系の中で増収をはかるべきものは別途増収をはかったのだ、こういうふうに説明をいたしておりますし、私もそう思っておるわけでございます。
  11. 河村勝

    河村委員 そういう一般的な講義は伺うつもりはないのです。それはよくわかっておりますけれども、いまあなたがおっしゃったように、減税は必要があるからやったと言われたでしょう。必要があるからやったということは、実質的に減税効果がなければ意味がないわけでしょう。それで酒やたばこ値上げというものは、これはその財源引き当てにしろとこの答申は言っているのじゃない、それもそうですね。それなら差し引きゼロになってしまうようなことでは、減税の必要があってやったという効果はまるっきりないじゃありませんか。その点は一体どうお考えになりますか。
  12. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 現在の租税体系はいろいろな形ででき上がっております。したがって、全体の負担率として考えた場合には、絶対としての減税があったかどうかという問題にもなります。しかし、個々の税としては、対象者が違いますものですから、それぞれ別個に考えるべきじゃないかと思います。たとえばいまの酒の増収たばこ増収にいたしましても、これはやはり調整的な意味でやっておるということで考えますと、租税負担率という点から考えますと、むしろ現在は昭和四十年代に比べて相当負担率が低いわけです。また同時に、そういう観点から申しますと、自然増収が前年より多く出るということ自体も、これはやはり一つ増税ともいえる面がある。たとえばいま各国では増税をやっておりますが、日本ではネット差し引きでゼロということをいっております。日本の場合は、租税構造から申しまして毎年二割五分近くの自然増収が平均的に出るというかっこうでございますが、ほかの国ではほとんど自然増収というものは出ない。そういう場合には増税というものをしてまかなっていく。日本の場合は増収が非常に大きいので増税という形をとらないまま財政をまかなってきたという面がある。そういう面で所得税減税と酒、たばこ増税は同額であるから所得税減税になってないということではない、所得税は明らかに減税になっておる。それで結局酒、たばこ税収措置従前程度負担率にようやく返った、こう考えるべきではなかろうかと思います。
  13. 河村勝

    河村委員 どうもあなたのは理屈には合わない。それは確かに理論としては、所得減税対象と、それから物品税あるいは酒、たばこ課税対象とは違うということはいえるかもしれない。けれども、酒、たばこの場合は、これは言うまでもなく大衆課税ですね。これは税金を払う者の身になってみれば、払う人間は同じなんですよ。酒、たばこに払う人間と、減税の恩典を受ける所得税を払う人間ですね。だから結果的には、いかに理論的に区別ができても、払う実際の勤労者にとっては同じことですね。それじゃ理屈だけは通るけれども、ほんとうに過酷な取り過ぎを実質的にカバーしてやろうということには結果的には効果はないわけですね。それじゃ意味がないんじゃありませんか。
  14. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いま御指摘になりました点は、払う者は同じであるというのは確かにそうだと思います。ただ、この間も申し上げたように嗜好品に対する課税というものは特殊な形をとっておりまして、そういう意味で、世界各国財政でも嗜好品に対する課税というものと普通の課税とはだいぶ区別しております。いわゆるこれを財政物資と呼んでいるわけでございます。しかも今度の増税というのは、前々申し上げておりますように、たばこについては昭和二十六年以来非常にたばこ益金率は下がっておる。たばこのコストが約五割上がっておるのに益金率は逆に約二割下がっておる。そのために国民消費支出金額の中のたばこに対する消費支出割合というのは年々低下をしておる。たばこ自身が、販売の対国民総生産弾性値は〇・六五であったにかかわらず益金のほうは〇・五六で、毎年毎年減税しているという形になっているわけです。酒にいたしましても、昭和三十七年に戦時的な重い税を払拭をした、これが妥当な税額ではなかろうかということで改正をいたしましたが、その後所得水準も上がり、物価水準も上がりますと、実際に見てみると、当時予定した税負担よりも一割五分くらい低くなっているという事実がございますので、これは年々年々累積した減税額を一度に取り返す結果になるところは、ちょっとその年はきっそうに見えますけれども、実際にはそこまで全部取り返したわけではなくして、しかもこの場合にも、現在の負担の配分というものを考えますと、酒であれば特級、一級、ビール、ウイスキーといういわば高級な酒に限る、たばこについても若干の配慮を付してできるだけ負担適正化をはかる、こういうことをやったわけでございますから、そういう意味では、私は、所得税間接税との増減税がぴったり一緒に考えられるべきものではないといまも思っておるわけであります。
  15. 河村勝

    河村委員 酒、たばこの問題はそのときになって議論いたしますけれども、たばこ益金率が若干下がっておることは私も知ってます。けれども益金総額伸び率からいったら、三十年対比で二三〇%くらい伸びているんですよ。酒税に至っては四五〇%くらい伸びていますよ。ですから、益金率そのものは多少相対的には下がっているかもしれないけれども、ふえているものは抜群にふえているんですね。  それはあとの議論にしまして、実際、実質減税になるということについていま少し御認識を願いたいと思うのは、いま大蔵省では標準家族構成を五人にしていますね、夫婦二人に子供三人ですが、それは実際に合わないんですね。しかし、それをとってみましても年間減税分が百万円の所得で七千二百三十八円でしょう、あなたのほうの資料に間違いなければ。ところが、たばこ消費量というものは年間二千億本なんですよ。だから一人二千本でしょう。一人二千本というのは、一億国民一人残らず平均して一人一日六本何がし吸うのですね、そうでしょう。そうすると、五人家族構成なら平均三十本ですよ。そのぐらい一般的に吸っておられるのですね。だから嗜好品とかなんとかあなたいまおっしゃったけれども、しかし、あなた方のいわれる標準世帯で一日二十本吸うのです。三十本吸いますと、今度のあなた方の案でいけば、一日について十五円値上がりするのですね。一日十五円というのは年間でもって五千四百七十五円です。そうすると、七千二百三十八円から五千四百七十五円引いたら幾ら残りますか。千何百円しか残らぬのですね。そこに酒もあれば物品税もあるでしょう。そうすると、大体まるごと酒、たばこ物品税で完全にこの減税分帳消しになるのです。そうすれば、まだそのほかの一般物価値上がりがあるわけですから、その分だけは完全に実質増税になる、その事実はお認めになりますか。
  16. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 そういうモデル計算をやりますと、そういうことはいえるかと思いますが、夫婦子三人の場合、みんなたばこをのむとは考えられない。奥さんがのむのまぬは半々くらいだろうと思います。しかし、扶養親族子供三人はまずのまぬとお考えいただいたほうがいいのじゃないかと思います。そういたしますと、もう少し差が出てまいります。もちろん、たばこをのむ世帯所得税を納めていない場合もございますから、それだけ負担が多くなるということは事実だと思います。酒、たばこ増税をやった以上、その年として負担増が起こることは否定できません。しかし、これは先ほど来申し上げている、いわゆる所得税調整減税ということがいわれるならば、同じように物価所得変動によって負担減が是正されるということは、これはやむを得ないことだと私は思うのであります。     〔委員長退席毛利委員長代理着席〕 先ほど御指摘ございましたが、専売益金や酒の国税に占めるウエートはだんだん下がってきた。ほかの税は、先ほどおっしゃった期間中に五倍にもふえているのです。このふえ方が酒、たばこの場合、そういう事情があって少なくなるということでございます。たとえば早い話が、今度増税をいたしました酒類につきましても、過去においてもっと高い値段のときがあったわけです。ずっと減税をして適正化をして、そうして適正化したところから下がり出したものを直しておるというのが現在の姿でございます。そういうものでことし負担増があったということは、一種の調整であったということから申しますと、ここは大臣の言われるところでございますが、国民にも忍んでいただくべきところではないか、かように思っております。
  17. 河村勝

    河村委員 国民が忍ぶとか忍ばないとか、そんなことを伺っているのじゃなくて、私は、実質的に帳消しになるかならぬかということを伺っているので、別段赤ん坊までたばこをのむとは言ってないのですね。変な答弁をしないでもらいたい。とにかくのむ者ものまない者も平均して一日たばこを六本のむと言っているんですよ。そうすると、おやじがまるごと三十本のむかどうか知りませんけれども、それは多少の出入りはあっても、一つ世帯では一日大体三十本のむという計算が出てくるわけですね。そうすれば、当然平均的には一年に五千四百七十五円消えてしまうわけです。そういう事実はお認めになるでしょう。
  18. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 その計算自体はそうなると思います。実際の負担変動はどうかということはそう明確には言えませんけれども、そういうモデルでおっしゃれば、計算はそうなると思います。
  19. 河村勝

    河村委員 どうもそうお逃げにならなくてもよろしいと思う。それは一軒一軒調べれば出入りはありますよ。ですけれども、たばこは年に二千億本も消費されているのです。それは事実なんですから、平均的にはそれは間違いないんだとなぜあなたはおっしゃらないのですか。別にあげ足をとるつもりでも何でもない、ただそういう事実を認めるか認めないかということを私は言っているのです。
  20. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 事実と申しますか、おっしゃる点はそのとおりだと思います。
  21. 河村勝

    河村委員 まあそれ以上御返事にならないだろうから、ちょっと企画庁にお伺いいたしますけれども、いままでだいぶ論議されたことだからあらためては申しません。物価の問題です。その他の物価値上がりは、四十二年度からの持ち越しのいわゆるげた分が三・四%ですね。それからたばこ、酒、物品税、こういうものをひっくるめて大体物価上昇寄与率が〇・四%、これも間違いありませんね。ですからそれだけでもってすでに三・八%の値上がり。ですから、政府見通しの四・八%までには一%しか残っていない、これも間違いないですね。ところで、過去の実績で、前年度からの持ち越しげた分を除いて、一年間消費者物価上昇最低数字というのは幾らですか。
  22. 八塚陽介

    八塚政府委員 三十九年度から申し上げますと、げた分というのは……。
  23. 河村勝

    河村委員 全部聞いているわけではない。一番低いのを言っていただけばけっこうです。
  24. 八塚陽介

    八塚政府委員 げたといたしますと……。
  25. 河村勝

    河村委員 げたでなしに、げたを除いた上昇分
  26. 八塚陽介

    八塚政府委員 四十一年度の一・八というのが最近におきます一番低いものでございます。
  27. 河村勝

    河村委員 そのとおりだろうと思います。私もずっと調べてみたら、最近ではなしに過去いかなるときを例にとっても、げた分を除けば四十一年度の一・八%というのが最低ですよ。これはいろいろな偶然な要素が重なって、たまたまそうなったのですが、ことしはあと一%しか残っていない。ことしそれができれば日本記録ですけれども、日本記録をつくるためにはよほど強力な何か物価抑制の手段がなければならない。そうでなければ、天佑神助を頼む以外には、そういう可能性はないわけですね。それは何か特別なことをお考えになっているのですか。
  28. 八塚陽介

    八塚政府委員 いまの一・八に対比いたしますものは一・四であろうと思います。それにいたしましても、ただいま先生お話しになりましたように、過去における年度の中ではそういう数字はなかったわけでございますから、これは努力目標として非常な努力をしなければいかぬということでございます。ただこれは、この前もるる申し上げたのでございますが、私どもといたしましても、もちろん物価上昇という趨勢的な動きあるいは構造的な動きに対して、いろいろな施策を対象考えております。たとえば農業、いわゆる生産性の低い部分、これが非常に物価上昇の寄与率に大きく影響いたしておるわけでございますが、そういう農業生産あるいは中小企業の対策、あるいはまた流通の摩擦というようなことによる、あるいは不適応というようなことによる部分もあろうかというようなことで、もちろんそういうことも考えておるわけであります。その点につきましては、どこからどこまで物価抑制のための施策であるか、いろいろ論議があろうかと思いますが、逆に言いますと、生産性あるいは流通部門の改善というようなことがかなりな程度物価対策であろうと考えざるを得ないのでございます。一つ一ついわゆる物価対策として私どもが考えております予算の、あるいは対策の項目をるる述べますと、いろいろたくさんあるわけであります。
  29. 河村勝

    河村委員 いま物価対策がたくさんあるとおっしゃいましたけれども、そんなにあるかもしれないけれども、ごくこまかなものばかりで、ほんとうに有効なものがあるとは思われないのです。ほんとうに抜本的な対策というものは一つもありませんね。ですからおそらく少なくとも六%近い値上がりはあると考えなければならないのですね。  そこで、政務次官、いままでの話の結果でおわかりのように、なかなか吉國さんも実質減税ゼロだとは言わないけれども、とにかく計算上そうなることはお認めになったようです。一方、物価の上昇も、日本記録を更新しない限り、とてもそれは四・八%に押え得る気づかいはないわけですね。結局、今度の減税というものは、実質減税プラスマイナス・ゼロだと総理大臣はおっしゃっているけれども、払わなければならぬ側に立ってみれば実質増税になるのですね。私は、いかに財政硬直化、それから予算の緊縮が必要なときであって——もそれは将来増税の必要がある時期もあるでしょう。しかし、今日この時期に、こういう状態であっていいというわけではないと思うのですね。何か実質減税ゼロでなしに、ほんとうに生かす方法というものはもう残っていないのですか、いまからでは。
  30. 倉成正

    ○倉成政府委員 お答えします。  物価を押える方法として、非常に極端なデフレ政策をとれば、ある程度押えることができると思います。しかし、それではやはり国民生活に非常に大きな影響を与えますし、また、中小企業にかなり影響を与えますので、そういう極端な政策をとらない範囲で、ひとつ物価抑制というものを考えていくということは、非常にむずかしい課題であろうかと思います。  そこで、お尋ねの実質減税ということですけれども、実際は増税になっているじゃないかというお尋ねでありますけれども、これは先ほどから主税局長がお答えしておりますように、やはりお酒を飲む家庭もあれば飲まない家庭もある、たばこをよけい吸う人もあれば吸わない人もあるということでございますし、また、たばこ等に例をとりますと、昭和二十六年から全然据え置きでありますし、昭和二十六年で理髪料金は百七円、平均しております。今日では三百八十八円、約四百円で四倍以上になっているのであります。新聞の値段でも、大体当時と比べますと四倍半から五倍近くになっている等、その他の諸物価と比較いたしますと、極端にたばこの値段は安い。諸外国と比べても安いということで、あまり抵抗を感じないで、一応たばこの売り上げが伸びておるということから考えまして、やはり間接税の本質に触れる問題ではなかろうかと思いますので、そういう意味から考えて私は必ずしも実質増税とは考えておりません。しかし、理論的にいろいろ——非常に仮定を幾つか立てまして、そういう御計算をされれば、国税に関しては、そういういろいろな理論もあるいは成り立つかもしれません。しかし、地方税のほうで、御承知のとおり住民税の七百億以上の減税をいたしております。自動車取得税を引きましても、初年度において三百五十億の減税ということに地方税ではなっております。そういうものを勘案いたしますと、私は、増税になっているという御批判は、いささか当たらないのではないかと考えております。
  31. 河村勝

    河村委員 地方税の減税まで引き合いに持ってきて、どうやらプラスマイナス・ゼロくらいのところまでいけるのかもしれませんが、ですけれども、これでもってお考えになったらいかがですか。大蔵大臣にかわって考えていただきたいのですけれども、いま金・ドル不安を中心にして、もっと財政規模が縮減できるものなら縮減したいところだと思うのです。それで、いまから個々の財源に当たって、個々の項目に当たってあれを減らせ、これを減らせといってもむずかしいでしょうから、この辺でもってひとつ予算残らずあらゆる項目について一%削減、そういうことなら私はできないはずはないと思うのですがね。そういうことを考え実質減税ゼロでなくせば、片一方で財政も縮小できるし、しかも国民勤労者にとっては減税効果もあがるという一石二鳥の効果もあるだろうと思いますが、いかがでしょう。
  32. 倉成正

    ○倉成政府委員 非常に重大な御提案でありますので、私限りでお答えできませんけれども、十九日のイギリスの予算案を見ましても、非常にきびしい予算の様相を呈しておりますし、イギリスの場合には、御承知のとおり、歳出歳入比較いたしますと、歳入のほうが多くて黒字予算を組んでおるわけであります。また、酒やたばこも、イギリスで今度値上げをしておるわけであります。私は、少なくとも歳出の削減については賛成でありますけれども、歳入について、間接税の二十六年以来のバランスを取り戻すという意味からは、むしろかりにそういう御提案が成立をしたならば、私は、歳出を減らすと同時に公債を削減するというような形に持っていくべきであろうかと思うわけでありまして、間接税に関する限りは、やはり直接、間接のバランスをとる、たばこ等について先ほど申し上げましたように、酒についても、これは世界各国やはり歴史的、伝統的に、これによってある程度財政上の歳入に充てるということになっておるわけでありますから、この機会に、やはり間接税調整をはかっていくことが妥当な施策ではなかろうか。問題は、こうやってたばこ値上げし、あるいは酒を値し上げしたことによって得られた財源が、いかに適切に有効に国民経済に寄与するかということが一番大きな問題ではないかと心得ております。
  33. 河村勝

    河村委員 私は、酒、たばこの問題についても、たてまえとして上げていかぬということは言っていないのです。それは上げる理由はあるだろうし、上げる時期もあるだろうし、ことし何も実質減税ゼロにしてやる必要はないし、同時に、いま物価をどうやって押えようかという大事な時期でしょう。ですから、酒、たばこ物価値上げの理由にすることはないですね。だから特に酒、たばこのことを言っているのであって、何でもかんでも押えるということを言っているのではなく、むしろことしやるということに重点を置いているのです。この問題は政務次官に答弁を求めても無理でしょうから、やめます。  経企庁に伺いますけれども、この雇用者所得一一%の伸びを見ている根拠は何ですか。
  34. 熊谷文雄

    ○熊谷説明員 経済見通しを作成いたします場合には、大体十二月から一月にかけて経済見通しを、これは閣議決定でやるわけでありますが、閣議決定は一月になるわけであります。その際には、職業別の積み上げというものをやる基礎のデータがございませんので、きわめてマクロ的な方法によって見通しを作成するわけであります。たとえば雇用者所得につきましては、過去におきます経済成長率と雇用者所得の関係の伸び率の推計であるとか、あるいは国民所得経済規模との関係、あるいは国民所得雇用者所得の対比の構成でございますとか、そういったものを大体景気の動向に合わせて、来年度はどの程度になるかという非常にマクロ的な方法によって見通しをしていく、こういうことでございます。
  35. 河村勝

    河村委員 マクロ的な見方から割り出したものだと思いますけれども、しかし、源泉所得課税対象者の中の給与所得者だけをとってみても、私がベースアップ一一%ということばを使ったものですから、大蔵大臣は気にされて、これは雇用者所得の上昇であって、ベースアップではないと答弁されましたが、ベースアップ以外に、この一一%の中に含まれる要素というものは、ほかに何がありますか。
  36. 熊谷文雄

    ○熊谷説明員 たとえば何と申しますか、定期昇給なども、もちろん入っておるわけでございますね。
  37. 河村勝

    河村委員 定期昇給というのは、やめていく人間の給料と新規採用者の賃金との格差ですね。単価差、これがまあもとになって、それにプラスアルファされている。ですから、いま現在の年齢構成からいくと、やめる人は少ないかもしれない。だけれども、その差というのはそう大きくないのですよ。二%あるかなしかでしょう、この一一%の中に含まれるのは。そうすると、少なくとも定昇込みベースアップ分だということになるのじゃありませんか。
  38. 熊谷文雄

    ○熊谷説明員 私ども経済見通しを作成する段階、そういう時期におきましては、次の年の給与のアップがどの程度あるかということからのアプローチによって経済見通しを作成いたしておりませんので、先ほど申し上げましたような方法によりますので、一体どの程度この中に入りておるかということについては、ちょっと数字的に申し上げるわけにはいかないということでございます。
  39. 河村勝

    河村委員 推計の方法もわかりました。ですから、中身の分析ができないということもわかります。だけれども、その中に含まれる要素としてはほかにはありませんね。それだけ伺えばいいです。
  40. 熊谷文雄

    ○熊谷説明員 たとえば給与のアップはもちろんでございますし、俸給等のアップもちろんでございますが、そのほかに、たとえば社会保険料の雇主負担でございますとか、そういったものについても入っているわけでございます。
  41. 河村勝

    河村委員 わかりました。多少のものは入っているでしょう。それ以上は私はここで話を広げようとは思いませんから、それはそれでやめておきます。  それから農業所得について、これは三%の伸び率しか見ておりませんね。これはどういう理由ですか。
  42. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 農業所得につきましては、過去の課税実績を基礎にいたしまして、各種の価格の変動を織り込んで考えたわけでございますが、米価につきましては一応現在の米価を基礎として見ておるわけでございます。なお、その他果樹等につきましては、一般の過去の実績等を勘案して価格の動き等も勘案しておるわけでございます。
  43. 河村勝

    河村委員 税収の見込みのほうで三%見込んでおりますが、これは企画庁のほうの経済見通しでも同じ米価のアップは見ないで三%見ておりますか。
  44. 熊谷文雄

    ○熊谷説明員 見通し作成の当時におきましても、毎年の例でございますが、米価につきましては、年度が新しくなりまして米価審議会によって検討されてきまることでございますので、見通しの段階では農業所得には米価のアップは入っておりません。
  45. 河村勝

    河村委員 そうしますと、ここでもって米価を上げる、下げるの議論はいたしません。それから、これは将来少なくとも生産者米価か何か値上がりがある限りは、この三%の増収分というのは、さらにその上に積み上げられて、そこに税収のよけいな増収分が生まれてくる。そういうことになるわけですね。
  46. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 仰せのとおり、米価がアップするとなりますと、そこに増収が若干見積もれるかもしれませんが、同時に、米価が上がる以上は経費も上がるという前提もなければ上がるわけはないので、そこからこれは相殺される面もあると思います。
  47. 河村勝

    河村委員 時間もありませんから、それはそこら辺でやめます。  ついでに企画庁に伺いますけれども、先般予算委員会でもって社会党の北山愛郎さんが、予算規模の伸びについて、三千億去年から繰り述べた公共事業費を差し引き計算すれば、財政規模が一四・一%の伸びになるので、名目経済成長率を上回るんじゃないかという質問に対して、政府財貨サービス購入のほうは一一・七%になるので、これは電子計算機ではじいたのだから間違いないので、上がらないのだという説明で、経済企画庁長官並びに大蔵省主計局長が何か妙な答弁をしておられましたね。一体政府財貨サービス購入一一・七%のもとになる政府予算は、当然これは今年度予算ですよね。予算規模でしょう。予算規模のほうで差し引き計算がしてなければ、財貨サービス購入のほうでもってそれが差し引き計算されている理屈はないし、同時に、三千億繰り延べたものというのはことごとく公共事業費ですから、これを全部政府財貨サービス購入の中の資本支出に入るべきものですね。ですから、これはうんと買わなければならぬはずですが、ほんとうに一一・七%の中におさまっているのですか、いないのですか。
  48. 熊谷文雄

    ○熊谷説明員 経済見通しにおきましても、政府財貨サービス購入の伸びは、仰せのとおり一一・七%でございます。予算の一般会計の伸び率は、名目で一一・八%ということになっております。ただいま御指摘の、ことし約三千億の繰り延べがどうなっておるかという御指摘でございますが、大体政府がたとえば財貨サービス購入をはじきます場合にほうり出す項目がありまして、たとえば公共事業費でございましても、用地取得費でございますとかあるいは会計間重複費でございますとか、そういったものにつきましては当初から控除されるわけでございます。したがいまして、ただいま申し上げました三千億のうちの約六百億くらいが控除項目にあたりますので、差し引き二千四百億が財貨サービス購入項目となるわけでございます。ところが、通常四十一年度から四十二年度に繰り越すというものもございますし、四十三年度からまた同じく四十四年度に繰り越すというものもございます。そういうものを相殺いたしますと、約二千四百億の財貨サービス購入のうち千二百億くらいが来年度に繰り越しになります。したがいまして、それをことしの財貨サービス購入から引き算いたしまして、四十三年度につきましてはこれを足し算いたしまして、それぞれ伸び率をはじいております。それからもとになります財貨サービス購入の当初のベースでございますが、これにつきましては、もとより各支出項目に詳細に積み上げまして計算をいたしておるわけでございます。
  49. 河村勝

    河村委員 どうもごまかしちゃ困るので、通例年度末にくればそれはお金は多少余ります。五百億やそこらは必ず毎年繰り越しがあります。その差し引き計算するのはあたりまえです。この三千億というのはそうじゃないのです。年度途中で計画的に繰り延べたものです。ですから一一・七%のもとになる計算には入ってないはずですが、間違いなく入っていますか。
  50. 熊谷文雄

    ○熊谷説明員 間違いなく入っております。私ども非常にこまかく計算いたしておりまして、各項目について積み上げをやると同時に、そういうものについて千二百億を出たものについて差し引き追加をいたしております。
  51. 河村勝

    河村委員 入っておりますと言うものを、私が入っていないと言ってもこれは水かけ論ですからやめますけれども、入っているという基礎のデータをいただきます。よろしいですね。
  52. 熊谷文雄

    ○熊谷説明員 予算委員会にこの前資料要求がございまして、企画庁から資料を提出させていただいておりますので、それでいかがでございましょうか。
  53. 河村勝

    河村委員 中身が私の質問に該当するものを含んでいるのであるならば、同じ資料でもよろしいからこちらへ出してください。
  54. 熊谷文雄

    ○熊谷説明員 では後ほどお届けいたします。
  55. 河村勝

    河村委員 時間がなくなりましたので、もう一点だけ。最低税率を〇・五%引き上げていますね、主税局長。これ一体何で突如としてことしこんなことをやるのですか。
  56. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御承知のように、最低税率をどこから始めるか、これはことし初めてやったわけでございませんので、三年目でございます。課税最低限を引き上げるときには大体最終一〇%をもって最低税率とすべく、最低のところが増税にならぬように配慮しながら〇・五%ずつこれで三年目、上げているわけです。
  57. 河村勝

    河村委員 絶対上げちゃいけないと言ったわけじゃありませんけれども、物価調整減税としての効果もないくらいの状態のときに、何でその最低税率を引き上げる必要があるのか、もっと体系的にやるべきだと私は思います。これも時間がありませんからやめます。  最後に、直税部長ですか、せっかく来ていただいたので、民商の問題をちょっと伺いたいのですけれども、民主商工会という組織があって、これはいろいろ徴税事務を妨害をして、そのために第一線の税務署職員が非常に苦労しているという話を聞いております。去年中野と神奈川県の藤沢ですか、二回訴訟があって、公務執行妨害の刑事事件については国が勝って、それから民事では中野では国が負けて、藤沢では国が勝った、こういうように聞いておりますが、一体民主商工会というものはそもそもどういうものであって、あなた方はそれに対してどういう方針で相手をする、というのはおかしいですが、要するにこれを処理しようとしているのか、伺います。
  58. 川村博太郎

    ○川村説明員 民商につきましては、昭和二十三、四年、かなり古い時期に生まれております。現在では全国で五万八千八百人くらい、これは昨年の十二月末現在の会員数でございますが、約六万人弱と見られております。もちろん失格者もございますので、国税の有資格者といたしましては約四万、七割弱の人数と考えております。御質問にありましたように、この民主商工会は、税務署に対しまして種々の調査妨害を行なっております。あるいは調査にあたりまして事務局員が介入する、その調査内容にタッチして妨害を行なう、あるいは過少申告を使嗾するというような行為が従来かなり見られております。妨害に至りませんまでも、調査忌避のような行為は現在でもかなり続いております。現地の税務署におきましては、この処理に非常に苦労しておることは事実でございます。私ども税務行政に携わる者といたしましては、納税者に適正な公平な課税を行なうということに努力しなければなりませんので、こうした調査妨害あるいは忌避があるにせよ、一般と同じ課税水準で課税するということに努力を続けておるわけであります。  いま御質問の内容にありました藤沢民商につきましては、幸いに国が勝訴を得たのでありますが、今年一月三十日の中野民商につきましては、東京地裁第一審では国が民事で負けたわけであります。国税庁といたしましては、直ちにこれに対して控訴いたした次第でございますが、中野民商の判決につきましてしさいに検討いたしますと、なお税務行政の実態についての検討がかなり不十分ではないかと思われるのでございます。私どもとしましては、二審におきまして、税務の現状あるいは民商の調査妨害の実情、これにつきまして詳細に議論を展開いたしまして、勝訴を得るということで努力したいと現在考えておる次第でございます。  なお、こうした税務行政に対しましての妨害あるいは忌避を行ないます団体を徹底的にたたくということのほかに、国税庁といたしましては、その反面、あるいは税の相談日を設けて中小企業者の納税相談に進んで応ずる、あるいは商工会議所等を通じまして青色申告の記帳指導に積極的に乗り出すというような、両方相まって円滑な税務行政をいたしたいと考えておる次第でございます。
  59. 河村勝

    河村委員 われわれは苛斂誅求には絶対反対ですけれども、同時に、租税の負担公平ということは守られなければならない。あなた方が事実そのように租税負担の公平を害するようなものがあるというふうにお考えであるならば、もっとしっかりと現場の指導をすべきである。聞いておりますと、現場の第一線の職員は、どうも現場の管理者が態度があいまいというか、き然たる態度を持っておらないから、自分たちばかり非常に苦しい日にあって、非常につらくてしかたがない、こういう苦情が非常に多いのでありますけれども、一体現場の第一線の管理者に対して国税庁としていかなる指導をしておられるか。
  60. 川村博太郎

    ○川村説明員 お話のような傾向はないことはないと思います。ことに数年前の民商の課税水準をしさいに検討してみますと、こうした調査妨害あるいは忌避によりまして、実際に課税された水準が一般に比べてかなり低いというような点も見られたわけでございます。御承知のように税務行政は、かなり納税者数に対しまして調査人員が低いというようなこともございまして、こうした調査妨害等を行なう団体の調査にてとずりますと、一般の調査がかなり手薄になるというようなことから、どうしてもこういうやかましいものには触れないというような傾向がどうかすると起こりやすいわけであります。しかしながら、ここ数年来国税庁は、局長会議あるいは各国税局におきます署長会議を通じまして幹部の指導をかなり重点的に行なっております。その関係で、たとえば中野民商におきます事例、中野税務署長が従来の態度を相当改めて、税務署員がしっかりした態度で民商の調査を行なうというようなことが実は中野民商の事件の発端になったような次第でございまして、先生御心配のようなことのないように、国税庁としては十分努力しておりますし、また今後もその努力を続けていきたいと思います。
  61. 河村勝

    河村委員 いまなお現場にそういう不満が非常に強いということは、よくお考えをいただきたい。  それからいま一つ、現場の実地調査基準というのがあるでしょう。ことばは正確には知りませんけれども、そういう際にどうも低額所得者まであまりむずかしい調査をさせる、そのために仕事がやっかいだし、同時に、よけいなトラブルを起こす面があるのではないか。聞くところによると、最近までは八十万円までは高額所得者に入れて、ごく最近でも百万円以上は高額所得者としての非常に調査項目のむずかしいようなことをやらせて、そのためによけいな問題が起きるというような事実がありはしないか、その点についていかがですか。
  62. 川村博太郎

    ○川村説明員 先ほどお答えいたしましたように、現在税務行政の一番の問題は、調査に従事する職員と納税者の調査対象の件数との著しいアンバランスと申しますか、非常な事務の過重が問題でございます。したがいまして、国税庁といたしましては、できるだけ効率的な重点的な調査を行なうというようなことで努力をしております。おっしゃるように、白色の申告者につきましては、局により水準は違いますけれども、やはり八十万以上、東京、大阪で申しますと百万以上でございますが、これは一応高額と考えております。しかしながら、低額に対しましては、調査事務日数は高額に比べましてかなり少ない日数を当てておる、また少ない日数しか当てられないというような状態でございます。
  63. 河村勝

    河村委員 最低百万円まで非課税にしてしまえばたいていの問題は片づいてしまうはずで、ぜひそういう方向に早く持っていくべきだと思います。  まだこの問題についてはお聞きしたいこともありますけれども、私の持ち時間がなくなりましたから、きょうはこれでやめます。
  64. 毛利松平

  65. 横山利秋

    横山委員 いろいろあるのですが、最初、こまかいことで恐縮ですが、女房が内職をやっておる場合には二十万円までは扶養家族でいいんですね。−二十二万五千円、年に女房が内職をやっておるまでは扶養家族でよろしい。ところが、預金利子を何百万円もらっておっても扶養家族のままでいいというのはどういうわけですか。
  66. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御承知の租税特別措置で、現在利子所得について分離課税をやっております。その分離課税の制度を採用いたしましたときに、一般の所得税と区分することに制度をいたしましたものですから、したがってその場合には、非課税所得と同様に、総所得金額計算の上に算入をしないということになりますので、扶養親族がかりに利子所得を持っておっても、分離課税というものがある限りは総所得には入ってまいりませんので、そこで、ちょうど遺族年金を入れないのと同じような意味計算外にいたしますので、扶養親族になってしまうということなのでございます。
  67. 横山利秋

    横山委員 それはわかっているんだ。私の聞いている意味もわかっていると思うのだ。あなたはそれで納得しておるのかということなんです。
  68. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 横山先生さすがにいいところへお気づきになったと思うのでありますが、これは御承知のとおり、昭和二十八年から所得税の分離課税をいろいろな形で行なわれまして、その当時からずっと引き続いてこういう制度になっておるわけなのでございます。いま御指摘を受けますと、その後だんだん貯蓄がふえてきておるという実情から申しますと、御指摘を受けるような問題がやはり起こってきておるようにも私思います。私としては、この分離課税の期限が切れる時期が再来年参ります。そのときに少なくと本一緒に考え直さなければいかぬ——もちろん分離課税がなくなってしまえば問題ありませんが、その点で検討したい問題である、かように思っております。
  69. 横山利秋

    横山委員 分離課税を廃止しなければこの矛盾はなくならないのか、分離課税を廃止しなくても、だれが開いてもおかしな話は是正できないものか、その点はどうです。
  70. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 おそらくこの制度をとりましたのは、税制簡素化の趣旨もあったと思いますし、御承知のように分離課税の場合には支払い調書を取らない、そういう関係で——支払い調書を取りますと、これは一つの方法としてできるんじゃないかという感じはいたします。この支払い調書を取るとなりますと、いわばこの辺のところの所得についての支払い調書を、非常にこまかいものを取らなくてはならぬという問題が出てまいります。そういう点をいろいろ技術的に考え合わせますと、やはり分離課税の問題と一緒に今後検討してまいりたい、かように思っております。
  71. 横山利秋

    横山委員 参議院選挙で、たいへんわかりやすい材料で、日本国じゅうの奥さんに会って、働いている女房よりも働かない女房のほうが税金がべらぼうに安いという、これはいい材料なんですね。いい材料といったって、じゃ横山先生、あなたも大蔵委員をやっておって、どうしてそんなこと直らないのと聞かれたら、ぼくは弱いんだ。自民党の悪口を言うよりしようがない。あなた方の、吉國という悪いやつがあってちょっとも直らぬと悪口を言うよりしようがない。これはしかし、どう考えてもおかしいです。内職をするという家庭と、何百万でも預金利子をもらっている奥さんとの比較論というのは、どう考えてもこれは納得はできぬです。ですから、私はとにかく分離課税廃止論だけれども、廃止に至る前でも、こんなばかばかしい矛盾というものは善処されなければうそだと思いますよ。いいですね、それは善処しますね。しませんか。
  72. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは善処するとすると、法律的な制度でございます。まず、それを十分検討した上でやりたいという感じをいたしますのと、いま先生おっしゃいましたが、内職の二十万円には税はかからない、分離課税のほうは一五%とにかく取っておりますから、その点もひとつ差はあります。
  73. 横山利秋

    横山委員 扶養家族であるかないかという議論ですよ。問題をそらしちゃいけませんよ。  その次は、法令の根拠を欠いた問題、つまり法律に書いてないことで通達に書いてあることの問題です。租税法定主義の問題をよく私は提起しておるのですが、いまの税務署職員が法律を見ずに、みんな通達を見ておるわけですね。通達というものは一体何だということですが、何でしょう。
  74. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは国税庁のほうからお答えするのが筋かと思いますけれども、一応私から申し上げますと、通達は、法律、政令、省令、これらいずれも適用にあたって具体化を必要といたすことはもちろんでございまして、適用するためには解釈が必要でございます。ところで、解釈を一人一人の職員に求めるということは、なかなかむずかしいことであります。やはり一つの統一ある解釈を実施するためには、国税庁という統括官庁が法律に対する解釈を明らかにいたしまして、その具体的適用を明らかにする、統一をはかるという趣旨で、法律の内容並びにそれに対する解釈を事こまかに知らしているものが私は通達である、こう思います。
  75. 横山利秋

    横山委員 そこで、法律は国民を拘束するけれども、通達は国民を拘束しない。これは税務署職員が公務員として、公務員法によって拘束をされるものであって、通達を国民に押しつけて、それを守れというわけにはまいりませんね。その点はよろしゅうございますね。
  76. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 本質的にはそういうものだと思いますけれども、同時に、この法律解釈が合理的である——私は大部分の場合に合理的であると思いますので、納税者もその解釈をとって申告をされるのが一番合理的な結果になるという面がございますので、納税者がこれを御利用になることは非常にけっこうなことだと思います。
  77. 横山利秋

    横山委員 私の質問にまともに答えてないのですけれども、趣旨はあなたの言うとおり、私も協調します。けれども、通達は国民を拘束しないということをはっきりしてくれというのです。     〔毛利委員長代理退席、金子(一)委員長代理着席〕 法律は国民を拘束する。法律に定められたる内容で通達があれば合法性があるけれども、あえて理詰めでいくと、通達は国民を拘束することはできないということははっきりしているのですね。
  78. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 理論的にはそのとおりだと思います。
  79. 横山利秋

    横山委員 ここで、法律に根拠を持たざる通達は違法行為である、その点はどうですか。
  80. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 具体的に何をさして言っておられるのかちょっとわかりませんが、通達の中には、法律の問題と同時に行政官庁の運営に関しての基準もございます。そういう意味では一律に——どうも法律に根拠がないけれども行政のいろいろな措置をきめている通達もございますので、その点、具体的事例でお答えをしたほうがいいかと思います。
  81. 横山利秋

    横山委員 あなたが国税庁の前へ出て、あなたがけんかを買っているからあなたばかりやるのですけれども、私は、理論的にまず定義をするのは、法律に基づいて、一円から百円までの税金を取ると法律に定められたものを九十九円にする、二円にするということならこれは合法性がある。それから別途政令、通達にゆだねると書いてあること、それもまあ合法性がある。しかしながら、取ると書いてないことを取る、まけると書いてないことをまける、それはいかぬと言うのです。どうですか。
  82. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 法律の規定がないものを徴収するということはこれはいかぬ……(横山委員「まけてもいかぬ」と呼ぶ)まけるということもこれは本来いかぬことであります。どうもその内容がわかりませんと、はっきり申し上げかねるわけです。
  83. 横山利秋

    横山委員 おかしなことを言うね。理論的に言っているんじゃないか、わかりやすく。まけると書いてないものをまけてはいかぬ、取ると書いてないものを取ってはいかぬ、こう言っているのに、内容を見なければわからぬというのはどういうわけですか。
  84. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いわゆる解釈の中にも条理解釈というものもございますので、条理、いわゆる全体の解釈からして、何と申しますか、法律の形式性をある程度条理で解釈すべき部面もあると思います。そういう意味から申しますと、違法と言い切れない部面もあるんじゃないか、これは国税庁のほうにひとつ回して……。
  85. 横山利秋

    横山委員 逃げちゃったな。それじゃ国税庁のほうお願いします。
  86. 川村博太郎

    ○川村説明員 非常にお話が包括的でございますのでお答えしにくいのでございますが、一般的に申し上げますと、いま主税局長がお答えいたしましたように、法律を拡張解釈——法律の解釈には拡張解釈も、あるいは条理でその法律の趣旨に沿った動きをしなければならない、そういう面もあると思います。そういう意味でのいわば拡張的な意味で通達を書くという場合がございます。これを先生、法律に書いてないことを通達で規定しておると言われるのかどうか、そういった点必ずしもはっきりいたしませんので、法律に書いていない通達は全部違法とは必ずしも言い得ないのではないかと思います。
  87. 横山利秋

    横山委員 じゃ小出しですが、一つの卑近な例を出しましょう。たとえば交通費の免税が二千四百円になったときに通達から法律に昇格をした。この昇格のゆえんはおそらくこうだと思うのです、時間の節約上言うのですけれども。少しくらいならまあいい、まけてあることだから。けれども金額が大きくなると、目立ってぎらぎらしてしようがないから法律にするということじゃないかと思うのですが、どうですか。
  88. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは非常に行政上の問題になりますけれども、行政があまねくすべて徹底するというわけにはまいりませんので、行政にもある程度一つの基準というものがあると思います。先生のいま御指摘になったものは、昔はいわゆる少額不追及、現物給与とかなんかにつきましては、この程度のものは調査して追及するまでもないんだという趣旨で運用として通達を出しておったことと思いますが、おっしゃるとおり、この額が大きくなってくると法律問題に直接触れてくるおそれがある。したがって、法律で措置しなければならないだろうというので、通勤手当につきましては四十一年に法律問題に持ち上げたわけであります。
  89. 横山利秋

    横山委員 そこで問題は、そういう少額は追及しないという少額とは一体何だ、それから、これはまあぎらぎらしてきたから法律に変えようという判断は一体何だというと、結局国税庁なり主税局の恣意的判断にまかされておる。法律的根拠はないと思いますが、どうですか。
  90. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これはやはり法律制度の趣旨、行政の限界その他を勘案して合理的に考えるべきものだと思います。
  91. 横山利秋

    横山委員 合理的というのは、だれもあなたのほうと私のほうと話をするわけじゃないから、あなたのほうがかってにやることだ、こういうふうに思います。  それにちょっとはずれますが、関連して、この間予算委員会で、交通費の二千四百円は、定期が上がるのだから、それに相呼応して二千四百円は上げるということに、総理大臣の善処しますという答弁がありましたが、検討をしていますかということと。もう一つは、交通費に比べてほうりっぱなしになっているのが現物給与、これはいま七百円ですか、それが数年ほうりっぱなしになっておるわけです。現物給与が生まれたゆえんのものは、労働力不足ということから発足して、政府が、かねや太鼓でとにかく福祉施設をつくるということに、政策に合わして進展してきたものですが、ひとり国税庁に関するだけ、これに横を向いて、現物給与については数年間ほうりっぱなしになっておるということがどうにも私には納得ができない。この二つについて簡潔に御答弁願います。
  92. 川村博太郎

    ○川村説明員 現物給与の問題についてお答えいたしますが、現在月額七百円までは現物給与を非課税にしております。物価上昇等を考慮して引き上げろという御主張はございますが、現在個々に考えてみますと、いわゆる宿日直料あるいはまかない費等の現状から見まして、ほぼ七百円でまかなえるのではないかと思うことが一つ。それから第二点は、少額不追及はあくまでもいわゆる免税点的な考え方でございますので、七百円をオーバーすれば根っこから課税される。七百円までであれば全然課税を受けないというようなことで、その七百円の接点におきまする税負担の非常なアンバランスがあるわけでございます。しかしながら、税務の現状からいたしまして、あまり少額なものを追及してはというので、一定の限度で不追及にしておるわけでございますが、そういうようなことを考えますと、この限度を引き上げますと、いま申し上げましたようなアンバランスが非常に目立ってくるのではないかということが第二点でございます。先生御承知のように、宿日直料につきましては、そういった点も考えまして、昨年の秋、基礎控除というふうな考え方に実は切りかえたいきさつもございますが、そういうようないきさつもございますので、こういう少額不追及の限度の引き上げにつきましては、相当慎重なかまえでいかなければならないのではないかと考えております。
  93. 横山利秋

    横山委員 交通費のほうは二千四百円をオーバーした場合には、二千四百円まではいい、こういうようになっているわけです。現物給与のほうは七百円をオーバーしたら根っこから取る、その理屈は私にはわからぬ。交通費のほうも、ある税務署は、つい去年かおととしまではやはり二千四百をオーバーしたら根っこから取るというやり方をしておったわけですよ。御存じないかどうか知らぬけれども、それではおかしいということで根っこは取らない。そんなら何で現物給与もそれと同じような仕組みにしないのか、これは私は問題がたいへんこまかいようだけれども、そういう少額不追及の問題について非常にあたたかみが足りない。つまらぬことのようだけれども、あたたかみが足りないということを痛感しますが、どうですか。     〔釜子(一)委員長代理退席委員長着席
  94. 川村博太郎

    ○川村説明員 この制度自体そもそもの始めが、少額なものについては追及しないという考え方から実は起こっておるわけであります。これは先生御承知のとおりであります。そこで、その制度本来の出発点を切りかえるかどうかという問題でございますが、なお国税庁といたしましてはいましばらく検討いたしたい。私、ここで結論的なことを申し上げるのは、いまの段階ではちょっと差し控えたいと思います。
  95. 横山利秋

    横山委員 政務次官、二千四百円を上げる、国鉄が上がるから。そういう点についてはもう予算委員会で総理大臣がうんと言っているわけですね。その機会に、私は、いまの話の根っこの問題、七百円を上げるべきということと、七百円をオーバーしたら根っこから税金を取るということは、片方交通費の免税が根っこは取らないといっているのにおかしいと思うのですが、そんな国税庁の慎重な検討では納得できません。
  96. 倉成正

    ○倉成政府委員 だんだんお話を聞いておりますとごもっともの点がありますので、早い機会にこれは善処したい、こう思います。
  97. 川村博太郎

    ○川村説明員 若干申し忘れたのでございますが、その現物給与を控除的なものに切りかえるかどうかの判断をいたします場合に、一つ問題は、こういった現物給与的なものが現在一時の終戦直後に比べてかなり減っておるということが一つございます。それからもう一つは、結局この現物給与が通勤費以外の面で機能しております一つの形は、やはり食事の問題がかなり多いのであります。これをしさいに検討してみますと、大企業等の福利厚生施設の非常に行き届いたところと、それから中小企業のようなほとんどそういったものを持ち得ないところと二つございます。これを基礎控除というような形にいたしますと、現実にそれがあるものについては控除されますけれども、現実にないものにつきましては控除が受けられないというようなことになります。したがいまして、この基礎控除にするということ自体かなり問題がある。それから、ましていわんや、この限度を引き上げるということにつきましては、そういう実態を考慮いたしますと、かなり慎重でなければならないというような感じがあるわけでございます。
  98. 横山利秋

    横山委員 現実認識がちょっとあなたは足らないようです。一時減ったという点についてはわかりますが、その後の今日の労働力不足ということは、中小企業においても、いかにして若い労働力を確保するかについて四苦八苦です。それによって一人の労働者に給料以外に支払うものはべらぼうになく多くなっている。引っぱってくるだけで十万、十五万の金が要るということから、控除的に何かないか、ちょっちょっと出す金というものは現物給与を含めてきわめて膨大に上がっている。ただし、それについての税制面がどうやったらいいかよくわからないのです。だから現物給与というものがもう少し政策的に浮かび上がってまいりますれば、そういう方向に中小企業も必ず正当な損金、税の支出という方向へ流れてくると私は思う。つまり現物給与の温床というものは決して減ってないということをお考えの上善処願いたい。  それから、先ほどの質問によりを戻しまして、法律に根拠を欠く通達の問題であります。時間がありませんから、一ぺんこの例をあげておきますから、ひとつしっかり勉強をして文書で回答をいただきたいと思います。  法人の貸し倒れ金については、法人税法第五十二条が貸倒引当金の制度を設けており、その施行令は、第九十六条から第九十八条までわずか三カ条がこれに触れているだけである。その他は全部通達に依存している。たとえば基本通達七十八の二、債務免除が貸し倒れと認められる条件。基本通達七十八の三、債権の全額を貸し倒れと認める条件。基本通達の七十八の八以下、債権償却特別勘定を設けるという制度の全部。その次が、国税局長が基準貸し倒れ率を定める権限、これが昭和三十九年直法一から百八十。その次が国税局長による貸し倒れの承認制度の全部、基本通達七十八の十以下。その次が、債権償却特別勘定明細書を法律要件として確定申告書に添付すべき制度及びその明細書の様式、これが基本通達七十八の十八以下。それから法人が圧縮記帳に代替する引き当て金を設けた場合に、その明細書を確定申告書に添付しなければならない法律制度は、法令に根拠がなく、通達がこれを創設している、基本通達の三百三。  これは一例でありますが、特に私がいま申し上げたこの貸し倒れ金の問題は非常に複雑であります。貸し倒れ金について通達なり解説というものは実に多いわけです。これは私どもにもわからぬ。私はきわめて簡潔に中小企業に対して、五〇%まではあなたのほうで自由にしていいですよ、それ以上は国税局長の承認を得るのです、こう言っているのだが、この大蔵委員会でも私が力説したのは、こんなことを国税局長に承認を得なければならぬ理由というものはないと私は常に主張しているわけです。そんなことは自分のところでこれくらいの貸し倒れ資金ができる、できないという判断をして帳面につけていくのだったら、入ってきたらそれを整理していけば何ら脱税行為、納税回避行為にならないのだから。この貸し倒れの諸問題についてはあまりにも通達にゆだね過ぎているということと、もっと簡単にして納税者の自由裁量にゆだねることのほうが、窓口における紛争などもなくなる、こういうふうに痛感しておる。問題は、法律に十全なる根拠を置かないで通達に細目のややこしいことばかり書いておることと、それから本質的にこの種の問題についてもっと簡単にして納税者の自由裁量を認むべきだ、こういうのが私の主張でございます。時間がございませんから、どなたかお答えになるなら簡潔にお願いします。
  99. 川村博太郎

    ○川村説明員 通達のあり方につきましては、横山先生指摘のような問題が多々ございます。国税庁といたしましては、ここ一両年の間基本通達のあり方について全面的な再検討を行なっております。できるだけ近い機会に改めたいと思っております。  それから債権償却の問題、貸し倒れの事実認定は非常にむずかしい問題がございますが、従来通達できめておりました線が確かにやや硬直化していたことは事実でございます。昨年の秋にきわめてこれを弾力化いたしまして、納税者の記帳にかなり重点を置いた取り扱いに直してございます。それから、たとえば五〇%をこえる償却引き当て金の積み方にいたしましても、従来国税局長までの承認が要ったわけでございますが、これを税務署長で判断ができる……
  100. 横山利秋

    横山委員 五〇%までの話ですか。
  101. 川村博太郎

    ○川村説明員 五〇%以上、こえる場合です。かなりそういう意味での弾力的な取り扱いに昨年の秋切りかえた次第でございます。  それで、全般的に通達が硬直化している実態は御指摘の点が少なくないと私も考えますので、現在鋭意これが再検討を行なっておる次第でございます。気のついた点は個々にでも直していくつもりでございます。
  102. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ちょっと補足して申し上げますが、ただいま直税部長が説明したところで十分と思いますけれども、この問題は確かに問題でございますので、税制簡素化特別部会でも検討いたしまして——ただ、いろいろやってみますと、貸し倒れの認定基準というものは法律に書くのはたいへんむずかしい。それで、できるだけ通達を弾力的に、納税者の自主的な判断が動けるようにということで答申が出ておりまして、国税庁もその趣旨で直したものと思いますし、今後もその点はよく考えて合理化していくだろうと思います。
  103. 横山利秋

    横山委員 その次は、税制調査会の、いまお話の出た簡素化特別部会に関連しているのですが、その前にひとつ議論を吹っかけておきたいと思うのですが、少なくとも税制の前向きの問題で骨格に触れることになりますと、大蔵省なり国税庁はいつも、ただいま税制調査会で審議中でございますから、その結論を待ってと、こういう逃げ方をするわけです。それは理屈のないことではない。しかしこの間、税の新聞をちょっと読んでみまして、私非常に感心をしましたことが一つあります。それは当大蔵委員会及び予算委員会、地方行政委員会でもそうでありますが、税の理論ということについてわりあいにやっていないのであります。具体的な問題についてはいろいろ議論をするけれども、税の理論構成とか理論という問題についてはなかなかやれない。時間もないけれども、あなた方が、どうもその点については、何か前向きの大問題になりますと、税制調査会にすぐ逃げてしまう。これはあまりよくないと私は思う。  それからもう一つよくないのは、民間の税の調査機構といいますか、そういうものが日本にはわりあいに少ないということであります。あるのは国税庁なり大蔵省に対する批判的な立場に立つ学界、これはわりあいにしっかりしている。その学界の税理論と大蔵省及び国税庁との仲がわりあいによくない。歯車がかみ合っていないという感じがする。間違っておれば訂正してもらってもいいが、つまり税の理論構成とか骨格をつくるについては政府は常に税制調査会に逃げる。しかも逃げた税制調査会で、みんなと言っては語弊があるが、あなた方が出すメモでうまいことやってしまう。これはもう世論の批判です。税制調査会大蔵省の隠れみのであり、道具であるというのが天の声、地の声、人の声です。特に今回のものについてはもうその批判はきわめて鋭い。今回は税制調査会の中の委員すらそれを言っている。こういうことでは進歩がないと私は思うのです。私ども気をつけて理論的な問題をこれからやらなければならぬけれども、あなたのほうも税制調査会に逃げるということはよくないことだから、税制調査会税制調査会だが、ここでも、ひとつ理論なり税制の骨格に触れることであっても勇敢に議論を戦わすようた習慣をつけてもらいたい。それから、民間において税の議論がオーソドックスに起こるようなくふうをこらしてほしい。これは堂々と、もっと理論展開が内外において行なわれなければいかぬと思うのです。名前は言いませんけれども、極端な議論というものはどうかと思うのですが、少なくともオーソドックスに議論がされる限りにおいては、それを受けて勇敢にあなたのほうも闘争するとか答えるとか、議論を内外で戦わせるような気概を持ってもらいたい。自分たちの都合の悪いことは知らぬ顔をして、あんなものにさわるなさわるなというような雰囲気が見えることはまことに遺憾である。御答弁ありますか。
  104. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 確かに御指摘のように、わが国では民間における税法の研究というものがおくれておる、と言っては失礼でございますが、非常に少ないことも事実です。現に大学に税法の講座があるところは非常に少のうございます。アメリカになると税法の講座は非常に多数ございます。しかも法律、経済を一緒にしたような非常に具体的な制度がございます。日本ではその点どうも欠けておりますし、民間の団体もほんとうに自分の都合のいいことだけを言って、というと語弊がございますが、あまり税体系全体を考えずに、自分のところの税制だけを考えているところがたくさんございます。全体の体系として考えているところはなかなか少ない。これはおっしゃるとおり、今後そういうものがどんどんできてくることが私どもは望ましいと思っております。  それから、税制調査会が隠れみのになっていると仰せられましたが、これはそういうようにお考えになるのはたいへん遺憾に存ずるのでございますけれども、私どもはかなりそれは資料も提出し、御説明もいたしておりますが、最終判断はやはり委員会の判断である。これは私どもそれに従っておりますし、その点では私どもがかってに左右しているということはほんとうにないのでございまして、これはもうはっきり申し上げておきたい。
  105. 横山利秋

    横山委員 この調査会の権利救済制度改正に関する主要検討事項、この内容にまず第一に不満がある。これは調査会でまとめたといっているのだけれども、結局は、あなたのほうからいろいろな資料を出してこちらに運用したと思われるのだけれども、少なくとも国会で議論のありましたこの種の問題については、すべて調査会、この委員会に資料として提出をされておるでしょうね。自分たちの都合の悪いことは資料を出さぬということはないでしょうね。
  106. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 それはすべて紹介をし、そうしてやっているわけでございます。
  107. 横山利秋

    横山委員 たとえば予算委員会で私が十六項目の問題点を出したのは回っていますか。大蔵大臣が約束したのですよ。
  108. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 関係資料として提出しているはずだと思います。
  109. 横山利秋

    横山委員 はずですか、そんなあいまいなことでは困る。少なくとも国会において、この種の問題について議論のありましたことは、誠意をもって出すようにしてほしい。  それからこの中に、強く私どもが主張しております審査請求の裁決機関と税務行政の執行機関との関係はどうあるべきかという、いわゆる私どもが言う租税審判法とでも申しますか、これに本格的にお取り組みになるつもりでございますか。
  110. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは私どもといたしましては、弁護士その他争訟関係の専門家の方も入っていただきまして、いわば皆さんが一つの審議事項として取り上げられたことを逐一順序よくやっていただくつもりでございます。したがって、そこの段階で出てきた御意見はすべて御意見として討論していただくというつもりでおります。
  111. 横山利秋

    横山委員 国会が終わってからこの問題に本格的にお取り組みになるそうですから多少時間がありますから、私どもが近い将来に提起をいたします租税審判法案については、ひとつまじめにその機関の中で議論の対象にしてもらいたいと希望いたしますが、御配慮願えますか。
  112. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 その法案、私どもまだいただいておりませんが、法案が出ましたら、もちろん一つの重要なる見解といたしまして一これはまあ審議でございますから、言い方は悪いかもしれませんが、御審議の参考として見ていただくというつもりでおります。
  113. 横山利秋

    横山委員 それではぜひひとつ御検討を願いたい。これは政府自身におきましても十分に検討を願っておきたいと思う。  時間が参りましたからあともう一つにいたしたいと思うのですが、もう一つ私どもが強く主張しておるものに広告費課税の問題があります。端的に申し上げまして私どもの主張は、交際費課税の方式と同じような方式で、そして損金に見るようなやり方で、いわゆる従来伝えられております広告税ではない。第二番目に、コンスタントに一定額は広告費として、それを越した分については一定率のパーセントをもって損金に見る、こういう方式なのでございます。これはおわかりになっていると思うのですが、どうも、この前も政府は検討いたしますと言っているのだが、政府内部における本問題についての取り組みはきわめて消極的なように見られてならないわけであります。私は、いまここであらためて広告費課税のゆえんを時間をかけてお話をする時間はないので恐縮なんですが、この問題についての政府の基本的なものの考え方を一ぺんしっかり伺っておきたい。
  114. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 横山先生の御論文も私拝見いたしております。この広告宣伝費、非常に角度が違った提案だと思いますが、広告税を取れという声がしばしばございましたが、先生のは、いまおっしゃったとおり広告費の損金不算入をやれというお話でございました。これについてはいろいろな考え方があると思いますが、一つ重要な点は、広告費というものが純粋な形である限り、これは本質的に市場の開拓や売り上げの伸長という事業経費であるということは、これは否定できないと思います。そこで、交際費も従来は御承知のとおりこれも一種の経費であるということで、昭和二十七年までは全額損金に算入されてきたものでございますが、御承知のとおり、当時社用消費的なものがこの交際費の中に相当便乗しておるという批判がございまして、それを契機に業種別に基準をきめて、一定額をこえたものは損金不算入の措置をとるということが行なわれたことは御承知のとおりでございまして、現在それがいろいろな形で推移してきております。広告宣伝費の場合は、交際費とこの点がかなり違っておると思っておりまして、社用消費がそれに便乗しておるという形はあまり見られないのではないか。また第三番目に、広告宣伝費の支出というのは、企業の任意、恣意でやられるというよりは、どちらかというと、その業界の競争のあり方あるいは販売形態というものによって相当に規制されるものであります。したがって、いま仰せのように一定額を限度としてということになりますと、業種別に広告費の適正額というものをきめるというような問題が出てまいりますし、そのきめ方によっては非常に大きな問題が出てくる。しかし、これは技術的な問題でございます。さらに、この広告宣伝費というものを規制する場合には、新しく市場に登場する企業についてはかなりの不利を生ずるという問題もございます。そういう点で、交際費とはかなり違った角度で検討する必要があるかと私は思っておりますが、一部には、交際費が、これもやはり業種別に支出の態様が違うから、交際費の損金不算入をより強化するならば、広告宣伝費についても同様な考えが必要だという考え方もあるやに聞いております。先生の御意見の中にもそのようなことが出ていたと思いますので、そういう点で、交際費の損金不算入というものと広告宣伝費の損金不算入が全くパラレルに考えられるのはちょっと無理である。そういう意味で、いつもやや歯切れの悪い御返答を申し上げておるわけでございますが、私どもとしてもこれを無視しておるわけではないのであります。そういういろいろな難点その他を考えながら、検討いたしておるわけでございます。
  115. 横山利秋

    横山委員 ずばりと聞くのですが、どっち向きで検討しておるのですか。困難だからやめておこうという気持ちが強いのか、困難だけれどもこれは取ろうという気持ちでやっておるのか、どっちですか。
  116. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いま申しましたように、本質的には事業経費であるということで、その事業経費を否認する程度にそれが必要であるかどうかという点を考える必要があるということと、技術的な困難さというものを勘案しておりますので、どっちの方向ということでもないので、必要が出ればやる、そこのところの問題だと思います。
  117. 横山利秋

    横山委員 わかりましたか、委員長委員長がわかっておれば私はやめてもいいが、私にはわからぬ。  検討というのは、白紙の検討ということはないのですよ。結局はないと思うのですね。取ろうと思うけれども取れぬからこれはやめたという場合には、これは否定しない。けれども取らぬつもりで検討というなら、そんなことはやめておきなさいよ、忙しいときに。そんなひまがあるんだったら、やめておきなさいよ。やめていただいたほうがいいよ。けれども、われわれの税金を使って忙しい皆さんが検討するというのだったら、これは単に税の理論ばかりでなくて、今日のマスコミの時代、それから外国の広告社が日本に進出している時代に、政策的にぼくは提案している。常に横山委員の提案は建設的で通っておるのですよ。昨年以来既経過未収利息をはじめ、大蔵省の肩を持って財源捻出にどれだけ私はやったかわからない。今回も私は、大した額でなくてもいいと思っている。うちのおばあさんが、この間、利秋、テレビをとめてくれ、とめてくれ、またやってくれ、またとめてくれ、こう言うので、何だと思ったら、広告になったらやかましくてチャンネルを切ってくれと言うのですね、テレビを見ておって。全くあのコマーシャルのはんらんは何たることかと思うのですね。あれはみんなわれわれが広告を顔に塗ったり、広告を飲んだりしておるということです。全く国家としてべらぼうな消費だと私は思う。しかし同じ品物であっても広告費をかけたほうがもうかるということで、大企業が同じ品物を、悪い品物であってももうかっていく。中小企業泣かせになっておるわけです。かてて加えて、外国の広告社の進出はもう日に日に大きくなっているわけですね。だから私は、単に税の理論ばかりでなくて、全体的な政策として広告に手をつけなければうそだと思う。世間は何と言っているかというと、横山さん、それはようやらぬだろう、なぜだというと、結局マスコミの力に政府は弱いから、こんなことはやるもんかと、こう言っている。もしあなた方の心理の中にそういうマスコミに弱い心理が働いて、やろうと思ったって、おれが一生懸命になったって、どこかの通信社の社長が総理大臣に電話をかければ、あるいはどこかの新聞社の社長が大蔵大臣に電話をかければ、そんなものすぐだめにっつちゃうんだから、おれはそんなものをまじめにやったって結局はばかを見るという心理があなた方にあるとすれば、とほうもないことであると思うのですよ。どうですか。
  118. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 そういう心理は全くございませんが、先ほどから申し上げているように、私どもは、事業経費の規制ということを税制でやるのがはたしていいのかどうかという問題はあると思うのです。したがって、交際費の場合は、明らかに交際費は行き過ぎておる、この規制の方法はこれしかないということで踏み切ったわけでございます。おっしゃるように、私も広告費のもっと積極的な一般的な規制というものがあってもこれはしかるべしと思いますが、それを税制で、税務だけでやれるものかどうか、やるのが妥当であるかどうか、この辺が私どもの一番問題にし、検討しているところでございます。同時に、非常に有力な御意見もあるので、これを私どもが無視していることは適当でないということで、検討もいたします。
  119. 横山利秋

    横山委員 歯切れが悪いが、これで終わります。
  120. 田村元

    田村委員長 午後一時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時三十九分休憩      ————◇—————     午後一時五十八分開議
  121. 田村元

    田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。広瀬秀吉君。
  122. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 所得税法及び法人税法の一部改正について質問をいたしたいと思います。  まず、昭和四十三年度自然増収が九千四百七十六億だ。その見通しの根拠になった経済見通しは、総生産が実質で一二・一%、鉱工業生産も実質九%、こういうことであろうと思うのですが、その後、この経済見通しが出された後におけるポンドショック以来の国際経済環境の悪化というようなことから、国際収支の年度末の見通しも、おそらく二億五千万とか三億ドルとかいうような赤字ではなくて、もっと相当な赤字幅が見込まれるようなことになりかねない、こういうきびしい情勢が出てまいったし、最近の金市場の停止あるいはドル防衛、ドルの不安、危機、そういうようなものから見ますると、当初のこういった見通しでことしの経済見通しがいいのかどうか。国際収支を見通しどおり三億ドル以内に押え込むというような場合には、成長率をもっと下げなければならないのじゃないか、こういうようなことも考えられるわけです。そうしますと、当然国内的な引き締め政策というものも強化をしていかざるを得ないだろうと予想されるわけでありますが、そういうことを勘案いたしますと、ことしの場合には自然増収の見積もりというものが少し過大であるのではないか。通常の場合には、大体自然増収の見通しというものはいつも低くしておいて、少なくとも二、三千億円はそれを上回るというような、ずっとそういう傾向をたどっているわけであります。そういうことも考え、ことしの場合にはそれが逆な面が考えられるのではないか、こういうようなことでございます。それについて、これは次官にお答えをいただきたいわけですが、それらの問題をどのようにお考えでしょうか。
  123. 倉成正

    ○倉成政府委員 非常に広範な御質問でございますが、確かに今日の経済情勢が、政府が一月に経済見通しの改定をいたしましたときよりもきびしくなっていることは御指摘のとおりでございます。しかし、御案内のように経済見通しの改定は一月にいたしたわけでございますし、また今回の金のゴールドラッシュと関連いたしましてアメリカが引き締め政策をやるということ、それからイギリスがまた引き締め政策をやる、そういう面からは日本の貿易環境がきびしくなっていることはまさに御指摘のとおりであります。しかしながら、これと相対応いたしまして、共同コミュニケの中にもありますように、EEC諸国はひとつ経済の刺激的な政策、すなわちアメリカのドル防衛に協力するという体制で、インフレにならない程度で刺激的な政策をするということをうたっておるわけでありますので、一九六八年のOECDの加盟国の経済成長率は四・五%、また貿易規模増加は七%ということになっておるわけでありますが、これをさらに上回ることになろうか、そういう意味から申しますと、こういう地域の貿易については、やはり環境はきびしくはなりますけれども、日本の輸出は増加するということも期待できるということを考えるわけであります。  いずれにいたしましても、やはり世界のわが国の経済をめぐる環境はきびしくなることは御指摘のとおりでありますけれども、全般を通じて日本財政金融政策が当を得ますならば所期の目的を達し得る、また、国際収支の赤字についても政府見通し程度にとどめ得る、かように考えておる次第でございます。
  124. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 非常に楽観的な見通しを伺ったわけでありますが、私どもは必ずしもそういう見通しに同調いたしませんけれども、かなりきびしいものがあるのではないかというように思われるわけです。このことは前に大蔵大臣にも質問をした問題でもありますし、将来の見通しの問題ですから、その楽観論がそのまま事実になってあらわれればたいへんけっこうだと思いますけれども、十分戒心してかからなければいけないだろうという点だけを申し上げておきたいと思うわけであります。  それで、ことしは予算が総合予算だ、いわゆる補正なし予算だというたてまえになっておるわけであります。したがって、この自然増収の見通しもいわば目一ぱいに、自然増収がさらに増加をする可能性をできるだけ少なくしたと申しますか、目一ぱいに見たということがいわれておるわけでありますが、たとえばその問題につきましても、もし引き締めがこれ以上強化されなければならないような事態の場合、歳入の欠陥というようなものが考えられないかどうか。この点について、どちらからでもけっこうですからその見通しについてお伺いをいたしたい。
  125. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま御指摘のように、現在の国際経済の環境というのはいろいろ激変いたしております。私どもの見積もりました来年度の収入は、一月末に決定になりました経済見通し、最終的決定をいたしておりますが、その経済見通しが確定いたしますまでには例の計算が幅を持っておりまして、たとえば国民総生産一一二・一ないし一一三、鉱工業生産についても同じく幅を持っておりますが、私どもずっと経過を見ながら最終的な見積もりを固める段階では、経済企画庁ともいろいろ連絡をとりまして最終の経済見通し一一二・一といった数字を採用いたしておりますので、かなりかた目に見ております。かた目と申しますか、経済の実態に即して見ておるつもりでございます。もちろん先ほど御指摘のございましたように、例年同じ見方はいたしております。ただ例年は経済見通しが大幅に狂いまして、狂うのがプラスのほうに狂ったものでございますから自然増収が出たわけでございますが、見方は従前と同じ見方でやってはおりますけれども、経済見通しについては一番かたいところでやっておって、それが最終の論議と一致したわけであります。  なお、もう一つ申し上げておきたいのは、一番狂う可能性があるのは法人税でございます。法人税は大体半年ぐらいずれて歳入になっている。たとえばことしの三月決算は来年の収入になりますので、四十二年の九月以降の経済情勢というものは大体において来年に入ってくるわけであります。そういう点で狂いはわりに少ないのではないか、と申しましても決して楽観はいたしておりませんが、いまの段階では、私ども十分警戒しながらもこの見積もりが大体妥当してくるのではないかというふうに考えております。
  126. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 かたいところで見積もりをしたということでございますが、この九千四百七十六億円の内訳を見ますと、これは大蔵省で出している「ファイナンス」による数字でございますが、所得税四一・四%、法人税三一・四%、酒税六・二%、物品税六・四%、印紙収入五・四%となっております。所得税と法人税関係の比率がここで逆転をしておる、こういうことでありますが、このことはやはり所得税が今日非常に高いという問題、それから所得税減税をされながらこういう状態が出ているということは、所得税がとにかく重いのだという一つの証左になるだろうと思いますが、その問題についてひとつ主税当局の御見解をお聞きしたい。
  127. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいまお仰せになりました数字減税前の自然増収の一〇〇%の中で所得税四一%、それから法人税が三一%を占めているという数字でございますが、本来なら所得税と法人税はほぼ同額の収入がございますから、増収としても同額であるはずだという御指摘であると思うのでありますが、来年度の見積もりをいたします際に、法人税収は四十二年度には非常に大きな増収を出しております。四十三年度にはいわゆる所得率——所得率と申しますのは法人税の所得伸び経済伸び、つまり物価上昇、それから売り上げの増加というものの増加率を上回ってふえる場合、これが所得率がふえると申しております。私どもの術語でございますが、去年、おととしは経済がのぼりましたために所得率が一〇八%程度に上がっております。ことしはそれがほぼ横ばいになる、つまり経済伸び程度所得しか上がらないだろう、こういう見積もりをいたしましたので、法人税の伸び方がやや少なくなっております。その関係で所得税を比べますと、所得税のほうは、所得伸びが大体順調に伸びそうでございますので、ことしの見積もりでは所得のほうが伸びが大きくなる。ただ減税は主として所得税において行なわれますので、減税後の伸びは大体同じ額程度になっておるということでございます。
  128. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 好況の四十二年の九月ごろから年度末までが大体次の年度にずれ込む、こういうことがある、これは法人税についてはあると思うのです。そういうことでかなりその点では高水準である。したがって、昭和四十三年度の下半期になれば、こういう状態が出るには法人関係の所得というのは非常に落ち込む、こういうことでなければ計算がなかなか合わぬわけですね。そういう点で上半期と下半期に分けて、利益率の一〇八%というようなものが、上半期にはどの程度になり下半期にはどの程度になると見通されておりますか。
  129. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 上半期につきましては、大法人——六カ月決算法人が大部分でございますが、これを中心に見積もりまして、前年の同期に対しまして一〇八%の増加、下半期が一〇五%の増加、これは売り上げ等がそれ以上に伸びますから、その関係で当然増が出ますが、それを八%、五%程度と見積もっております。
  130. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 一〇八%と一〇五%ということになりますと、横ばいという数字じゃないと思うのですよ。その点はどうなんですか。
  131. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先ほどちょっと私が申し上げたのがおわかりにくかったかと思いますが、所得率と申しますのは、普通は利益率というふうに考えるのでございますが、私どもが使っております所得率は、利益率の増加する割合なんでございます。たとえば去年五%の利益が売り上げに対してあった、それがことし六%に上がった場合には、所得率が二〇%伸びたというふうにいうわけです。去年の四十二年中は、前年に対して利益率が八%上昇したわけです。ことしは、四十三年度はそれを一〇〇%と見ましたから、利益率がふえる、拡大するという傾向はなくなる、横ばいで断る、こう見たわけです。ですから、八%伸びる、五%伸びるという、利益は売り上げがふえますからそれに応じてふえる、それだけしか見込んでいないわけでございます。
  132. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 租税全体の弾性値を平均的に見てみますと、大体一・三七とか、その程度なんですが、過去十年間の平均を見ると一・三五というようなこともいわれておるわけですが、これに対して所得税のほうは、いわゆる所得税の弾性値と申しますか、これは二・二だ、これは所得税以外のもの、たとえば法人税、酒税その他たくさんあるわけでありますが、そういうものの税額の基礎になる経済活動なり収益なりというようなものよりも所得が非常に伸びている、それに伴って累進構造というものが働いてそういう結果になるだろうと思うのですけれども、そういう点についてこれをもっと詰めなければ、所得減税を何ぼやっても所得税は依然として重いという感じが残るだろうと思うのですが、この問題についてどうお考えですか。
  133. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御指摘のとおり日本の場合は弾性値が高うございます。     〔委員長退席渡辺(美)委員長代理着席〕 個人総所得伸びに対しまして二・二というふうになっております。大体これは毎年変わらずそう推移しております。これは御指摘のとおりで、所得伸びが非常に大きいものでございますから、累進構造が大きく働くという結果だと思います。税制調査会でもこの点を強く指摘しております。その累進構造としての要素は二つございます。一つ課税最低限、一つは税率でございます。いままでは大体税率を直してきた例は非常に少ないのでございます。まず低額所得者に一番働くのは課税最低限ということで、課税最低限を上げてまいったわけであります。ところが、最近は百万円以上の所得者というものが非常にふえております。三十五年当時はせいぜい二、三%であったのが、四十三年になると大体二〇%こえるのじゃないか、そういうことから、いまの税制調査会考え方では、中間答申の案としては、課税最低限を八十三万円に、ことしの改正どおり上げると同時に、三百万円程度までの累進税率を緩和することが必要だということも言っております。これはもちろん税制調査会としては、ことし長期答申を出す前提で言っているわけでございますから、ことしまでにそうしろと言ったわけじゃないので、七月に出る長期答申にそれが盛り込まれるという前提でございますから、そういうわけで今後は税率も加えた累進構造というものを考えていかなければいかぬ時期が来るのじゃないかという感じがいたします。いずれにいたしましても、一どきに思い切って直せば五、六千億の財源が要る。したがって、毎年財政事情を考えながら少しずつ直していくというのがいまの現状だと思います。
  134. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 一体主税局長は、日本所得税というのは諸外国に比較して軽いのか重いのか、どっちだと思っておられるのですか。
  135. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 毎年こういうふうに減税をしておりますために、かなり軽くなっているはずでございますが、所得税が重いか軽いかは、その国の一人当たり所得等々を比較して考えなくちゃいかぬ問題だと思っております。日本の場合重くなるという一つの理由としては、いま申し上げたように、所得が非常に早く伸びる。税率にいたしましても、課税最低限にいたしましても、一つ所得の構造を前提にしてでき上がっているものですけれども、所得構造がこういうふうに右のほうへ動いてまいりますと、その税制自体がきつくなっていく、経済成長とともにきつくなっていくという面がございます。ですから静態として軽いかどうかとなりますと、たとえば発展途上国の税率などもっときついのでございますけれども、また課税最低限が、この問から申し上げているように、もうすでにことしは、日本はイギリスよりは高くなってまいりました。そういう点を考えてみますと、静態としてはかなりよくなっているけれども、経済成長というものが常にまたそれを重くしているというのが実情だと思います。
  136. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 一体重いのか軽いのかという結論だけ言っていただけばいいのであって、その点どう思っているのか、まずこのことを伺っておきたいんですよ。
  137. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 私としては、いま申し上げたように、やはり重い要素が毎年生ずると考えざるを得ないと思います。
  138. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 これはあなたのほうからいただいた資料だと思うのですが、平均所得者に対する所得税負担額の国際比較があるわけですけれども、日本の場合に平均所得額百六十二万二千四百五円、これは五人家族でしょうけれども、日本の場合には所得税額で八・五%、アメリカの税法をこの平均所得に適用すれば、二・五%、イギリスが一一・二%西ドイツが八・七%、イギリス、西ドイツは若干高いのですが、これは地方税を合わせておりますから、それを比較してみますと、日本の場合に住民税の負担額が四・一%で、合計しますと一二・五%だ、両方合わしたものを比較してみますと、アメリカの税法では二・五%になる、イギリスの税法では一一・二%、西ドイツが八・七%、フランスが三・二%、こういうようにいずれよりも高いという数字が出るわけであります。今度はアメリカの平均所得のところを見てみると、地方税、所得税両者を合算したもの、日本の税法を適用した場合に三七・六%、アメリカの場合が一四・九%、イギリスが二九・六%、フランス一二・六%。比較的日本に近いと思われる西ドイツを例にとってみましても、西ドイツの平均国民所得二万八千九百六十マルク、これに対して日本の税法を適用してみると二一・六%、アメリカの税法を適用してみると七・七%、以下そういうようにずっとなっておるわけでありますが、いずれを見ても、やはり平均国民所得という形でとらえてみて、各国の税法を適用してみれば、日本が一番高い。大体において西ドイツ、フランスというような、同じような立場にあるといいますか、国勢にあるというか、国民所得についてもだいぶ近ずいてきたそういうところと比較して見ましても、そういうように負担税率というものは高くなっている。こういうことを考えれば、主税当局としての政策立案の態度というものも、やはりかくのごとく重いのだという立場で考えていただかなければならないだろう、こういうように思うわけです。それをさらに細分化して、所得階層別にこれを見てみますと、さらにより一そうこの傾向というものは拡大の傾向にある、こういうように思うわけです。どうですか。
  139. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いま御指摘になりました点、確かに同じ国民所得という前提で考えますと、日本の税法が重いのは事実であります。ただこれは、税法を立案する場合に、各国の一人当たりの国民所得が違う場合に、同じに持っていくということは、これまた不可能なわけで、たとえば日本国民所得が非常に低かったころ、昭和二十五年ごろでございますと、御承知のとおり課税最低限が三万円ぐらいで、五十万円をこえますと五五%の最高税率を適用しておったわけです。所得伸びるにつれて、いわば先進国型に緩和がはかられて、つまり所得水準が上がり、生活基準が上がるにつれて、税制もそれに応じて広がっていくというのがいまの姿だと思います。そういう意味では、いまの日本の姿は所得がどんどん追いついている。たとえば十年前にはアメリカの八分の一だったのが現在四分の一になっているとか、あるいはイギリスに対してもすでに一・五分の一になっているとかいうことになってまいりましたので、急速に課税最低限も上げてまいりましたし、おそらくそういう一人当たり所得各国に追いつくときには、税制もほぼこれに近いものになるような速度で現在税制改正が行なわれていると思いますし、また、そういう意味での税制改正は私どもとしてはぜひともやっていくべきものだと思うのでございます。いまの段階で他の所得の高い国々と比較すれば確かに重いとはいえますけれども、これはそういう一人当たり所得になったときに、それに対応するだけの課税最低限になるような努力が必要だという意味で、私はやはり日本税制がほうっておけば重くなるという感じは持っております。
  140. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 それはいろいろ理屈を言えばあるでしょうけれども、国民総生産なりあるいは国民所得というようなものに対して、負担率を見ると日本は一九・六%、昭和四十三年度で大体それぐらいだろう、四十二年度も大体それぐらいだろうということになっているわけです。それを、ほかの国では三〇%以上も、あるいは四〇%近くも負担をしているというような比較をよくなさるわけでありますが、そういうことではなしに、やはり平均国民所得ということで、それぞれの国の税法を適用してみると、いま申し上げたような数字になるということは、やはり日本所得税、住民税というようなものが相対的に重いという数字は出ると思うのです。さらにそれを、たとえば百万円なら百万円クラスのところをとってこれをやってみたら、あるいは百二十万クラスのところをとってやってみたら、もっと差が出るのではないかと思うのです。そういうところを、たとえば百万円というところでのこういう国際比較というのはありますか。
  141. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 百万円のところで比較したものはございますが、日本の税法でまいりますと、夫婦子三人で申し上げますと、実効税率で、所得税額が一・五%、それから住民税額は、この段階では住民税が高くて二・〇%、合わせて三・五%ということになっております。アメリカではこの段階では税はかかりません。それからイギリスではその段階で四・一%になっております。それから西ドイツではやや低くて、二・三%ということになっております。(広瀬(秀)委員「フランスはありませんか。」と呼ぶ)フランスはこの段階ではかかっておりません。いま申し上げたのは夫婦子三人の給与所得を例にとりました。
  142. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いまの数字を見ましても、イギリスを除いては、フランスはゼロだし、アメリカもゼロだし、西ドイツは二%だ、負担率が二分の一近いというような状況になっているわけでしょう。そういう点を見れば、やはり日本所得税は重いのだ、こう言わざるを得ないのじゃないですか、所得税、住民税合わして。
  143. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これも毎回申し上げておりますけれども、やはり一人当たり国民所得というものを前提にしないと、比較はちょっとむずかしいと思います。なまで比較すれば確かにいまの税法では日本が重いということはいえると思いますけれども……。
  144. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そこで、先ほど主税局長の答弁では、ほうっておいたらたいへん重くなってしまう。それは当然強度の累進構造というものが作用していると思うのです。それで、いわゆる累進税率というものが、凸型の放物線といいますか、そういう形になっている。これを凹型の放物線にできるだけ変えていくというようなことがないと、やはりいま主税局長のおっしゃったことが——いわゆる物価値上げに対応する物価調整減税というようなことをやる、あるいは毎年毎年所得の増大に応じて減税をやる、課税最低限の引き上げ、いままでは大体課税最低限の引き上げという形だけの減税であったけれども、それをやはり、そういう税率そのものを若干ずつでもいじって、凸型のカーブを描く累進構造というものを凹型の放物線といいますか、そういうものに徐々に改めていくということがないといけないのじゃないかと思うのです。このことは税調あたりでも議論にはなっているようでありますけれども、大蔵省としてはこの税率にまで、たとえば先ほど三百万円以下あたりはというようなこともありましたけれども、これをどういうように変えていくかというような点について、大蔵省としての、主税当局としてのいまの段階でのお考えはいかがでしょう。
  145. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 税率を大幅に変えましたのは昭和三十二年でございまして、このときいわゆる一千億円減税というものを所得税でやったわけであります。そのときの税率の改正によって、先生のおっしゃいましたような中ぶくれがずっと直りましたが、その後課税最低限を上げてまいりましたために、ぐっと詰まってまいりまして、また少し中ぶくれになっておる。そういう意味で、私どもは、できるだけ早い機会に税率を緩和したいという念願を持っております。ただ、一千億減税をやったときは、課税最低限も上げまして、その減税額のうち、たしか税率改正が八割くらいを必要としたと思います。非常に大きな金額を必要といたしますので、財政事情等を考えながら、できるだけそういう方向に持っていければと思っておりますが、税制調査会でも、今度の長期答申でそういう点を十分検討されることと期待しておるわけであります。
  146. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 まだはっきり固まったお考えじゃないようですけれども、やはりまだ、先ほども言われたように、三百万円以下くらいのところについての税率の引き下げ、さらにそれ以上の一千万円をこえる、あるいは五、六百万円をこえるというようなところでは、少し税率をかげんをする、ふやしても若干いいんじゃないか、そういうような気がするわけですね。その問題については、来年度税制調査会には諮問を出しますか。
  147. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御承知のとおり、税制調査会は、この七月で一応委員の任期が終了いたします。三年ごとに任命をいたすことにしておりまして、ことしの七月に終わる税制調査会では、長期税制の最終答申をすることになっておりまして、調査会としては、ここで長期答申をするということは、いわばここから先二、三年、少なくとも二、三年を見通した答申をされるものと思っておりますので、まず、この調査会が答えを出されるのじゃないかと私は期待しております。
  148. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大蔵省としては、その点は、もうすでに税率の検討も諮問しておるわけですか。
  149. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 税率、課税最低限、その他制度一般も含めて、長期の税制の確立ということについて御検討を願っておるわけでございます。
  150. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いわゆる主税局原案というようなもの、そういう考え方というものは、具体的なものを出してはいる、そういうことですか。
  151. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 主税局原案というものをまだ提出してはおりませんし、主税局原案というものを出した形で御審議を願うというやり方ではなくて、委員会の意見を聞きながら、それに相応じて資料を提出して固めていっていただくというやり方をいたしております。
  152. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 次に移りますが、所得税の税収全体の中で占める比重というものの推移を、ここ数年にわたってひとつ比率をお示しいただきたいと思います。
  153. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 昭和二十五年当時でございますと、所得税が三八・五%という数字を占めております。その後、三十二年に大改正をいたしまして、この数字が二〇・九%まで下がっております。その後、三十七年に二四・二%と、じりじりと上がってまいりまして、四十年が二九・六という数字になりまして、来年度の見通しでは二八・九%という見込みでございます。
  154. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 ファイナンス三月号の六ページの資料に出ておりますが、所得税が四十三年度、三一。二%、法人税が三一・四%ということになっておるわけですね。いまの二八・九%というのとどういう関係になりますか。
  155. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 失礼いたしました。私がいま申し上げましたのは、国税収入全体で特別会計まで入っておりましたので、一般会計だけで見ますと二二・二でございます。国税全体、つまり特別会計と専売益金を国税扱いにしまして計算しましたのが二八・九でございます。
  156. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 一般会計なら一般会計でもよろしいですが、あるいは専売益金を加えて国税全体でもいいのですが、全体において占める所得税構成化は大体何%ぐらいが適当だろうという考えがありますか。
  157. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これはそれぞれ各国国民所得構成のあり方によって違うと思います。たとえば個人総所得が非常に多いところ、あるいはそうでないところ、あるいはまた一人当たりの国民所得の高さ、つまり個人の所得負担力が大きいかどうかということによって違いますので、どれくらいがいいかというのはなかなか言いかねると思いますが、たとえばアメリカでございますと、国税の中で五三・九%ぐらいが所得税でございます。それからイギリスでございますと、所得税が四〇・八%、西ドイツでは三七・二%、フランスが一九・七%というような数字になっておりまして、必ずしも何%が適当かということは言えないと思いますが、結局、その負担感その他で諸税のバランスがとれるという前提から出発して考えるよりほかないだろうと思います。
  158. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 これはいろいろ考えなければならない諸要素があるだろうと思いますが、所得税の比率を租税全体の中で何%ぐらいまで持っていきたいとか、あるいはそういう目安というものは別に立てているわけではない、こういうような立場ですか。
  159. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この問題は税制調査会でも検討していただいたわけでございますが、各税の税体系における比率が幾らであるべきかということは、その国の経済、その時期の経済、その所得構成等から考えて、一律にはいえないのだということをやはり言っておりますので、私どもも、所得税をどのくらいに持っていけばいいかということはちょっと言いかねる感じでございます。
  160. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 課税最低限の問題をちょっとお聞きいたしますが、これは平年度で八十三万まで、初年度で八十万八千円というふうに引き上げられたわけでありますが、諸控除の引き上げによってここまで来たわけであります。私どもは、四十四年度には百万円まで免税ということをやるべきだ、こういうことを主張いたしておるわけだし、また昨年の五月二十三日、平林委員質問に答えて大蔵大臣答弁いたしておるところを見ますと、四十四年度にもやりたいということを大蔵大臣はこの委員会で答弁なさっておるわけです。前後を省略しますけれども、「減税幅をずっとやれるかという先の見通しにおいて、私どもは相当慎重な考えを持ちまして、正直言って、四十四年ころまでに実現したいということも私どもも考えております。」こういうように答弁をされておるわけであります。平林さんからさらにだめ押し的に聞いておるわけですが、それに対して「可及的すみやかにという国会の議決の意味は、十分私どもは承知しておりますので、努力したいと思います。」こういうことで、当時の新聞は翌日一斉に、大蔵大臣昭和四十四年に百万円までの免税点引き上げ、課税最低限の引き上げをやるのだ、こういうことの言質を与えた、こういうように一般に報道したわけであります。私どももそのとおり了解をしたわけであります。ところが、予算委員会における答弁では、今度はそれが後退をしまして、四十五年度にということで総理も答弁をし、大蔵大臣もそれに歩調を合わせるような答弁をななさっている。これは非常に私どもとして残念なわけであります。一体これは、まあ若干選挙の公約ではないが、公約をはっきり公約だと言うと、公約違反といってつかれるからというような弁解もあわせてしているんですけれども、四十四年にもやりたいという意思の表明は少なくとも大蔵大臣からあったわけですよね。これがそういうように後退しているということは、先ほどから主税局長がどう答弁されましても、日本所得税は低所得者にとって非常に重いという実感は免れないわけでありますが、これを早く百万円まで課税最低限を引き上げるという措置をやっていただくことが、こういう税が重いという国民の気持ちに対してこたえていく道だと思うのですよ。それに対して、四十四年、来年にやはりやるべきだと思うわけでありますが、これはいかがですか。
  161. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 大蔵大臣が一時四十四年にでもと言われたお気持ちも私はよくわかるのでございますが、いろいろ財政事情等もございますし、いまのところ政府の公約として承っておりますのは四十五年度ということなんでございまして、四十五年には何としても実現をしたいということから、おそらくことしの一千億円の所得税減税にも努力をされたものと心得ているわけでございます。確かに四十四年にやるといたしますと、相当な金額が要りますので、財政事情等を考えないと、そこまでやり切れると言うわけにはいかぬのじゃないかというのが率直なお答えでございます。
  162. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 これは大臣が答えたことですから、大臣に聞かないとほんとうはいけないわけですけれども、大臣だって、ちゃんとした一年や二年先の見通しを持たないでこういうことを言うわけはないのであります。しかも御丁寧に「正直言って、」ということで、「正直言って、四十四年ころまでに実現したいということも私どもも考えております。」こういうことを言っているわけですよ。ところが、主税局長は、あまりこういう点で国民の声を聞かぬで、ことしあたり少なくとも八十五、六万、初年度でそのぐらいまでは課税最低限を引き上げる。そうすれば、急激にということじゃなしにやっていけるはずだと思うのですね。急激に二十万も引き上げるということはなかなか困難にしても、ことし少なくとも約十万課税最低限を諸控除を通じて引き上げる、そういうことをやるということだったら、それをさらに十五、六万まで持ってきておれば、当然これはもう来年にはスムーズにいけるということにもなるわけですね。それをやらなかったというのは一体どういうわけか、こういうことにならざるを得ないわけですね。その点、やれなかった事情は財政硬直化とかなんとかいろいろ言われるんでしょうけれども、あなた方は一体どの程度にこういう答弁というものを考えておられるのか。国民にある程度期待を持たせる答弁がなされておって、それに対してもう四十五年でしかできないようにつくってしまう、そういうやり方というものに対してどうお考えか。
  163. 倉成正

    ○倉成政府委員 大臣がどういうお答えしたか私もつまびらかに存じませんが、ただいままでの御質疑を承っておりますと、おそらく平林委員から精緻なまた非常に積極的な御発言がありまして、大臣もそれにお答えしてそういう願望を申し上げたのだろうと思うわけであります。しかし、御承知のとおり、その当時からいたしますと、ことしの財政経済をめぐる環境は非常にきびしくなってまいりましたし、また、特に公債の依存率を下げるということが非常に大事な財政の課題になってまいりましたので、ことしはとりあえず八十三万という課税最低限のところまで持っていったということでございます。やはり百万ということになりますと、四十五年ということを目安にするのが妥当な線ではなかろうかと考えておるわけであります。
  164. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 戦前と戦後の課税最低限を比較してみますと、昭和九年から十一年の平均国民所得が千四十五円だった。その際に課税最低限は千八百七十五円のところに位した。これは国民所得の一・七九倍のところにあったわけであります。これを今日の価額に引き直してみれば、平均国民所得が五十三万、課税最低限が九十五万二千円にならなければ戦前並みというわけにはいかぬわけですね。ところが、今日の昭和四十三年度では、平均国民所得が百八十七万一千円まで伸びてきておる。それに対して課税最低限は八十万八千円だ。これは平均国民所得に対して四三%という非常に低位にある。このことは、言って見れば納税人員が当時は六十七万とかその辺のところであった。あるいは七十万かその辺のところであった。これに対して、今日では所得税の納税人員が二千百万をこしている。こういうようなこととともに所得税そのものがもう大衆課税になっている、こういう姿になっているだろうと思うのです。だから、これはかなりの減税をやっても、少なくとも戦前の状態というものとはまさにほど遠い姿になっていると思うのです。こういう点についてどう思われますか。そして、戦前並みとまではいかなくても、やはりこれほどの開きがあったということで、しかも戦前には軍事費というものも相当使われておった時代に、なおかつ国民大衆の肩にかかる所得税はこのような状況であった。今日軍備は、国民所得の中で占める比率も、予算の中で占める比率も諸外国に比べれば非常に低いという姿が出ている。こういう状態の中で、これからまただんだん軍備なんかが増強されたりしました場合には、所得税を中心にしてものすごい苛斂誅求の姿というものが出るんじゃないかと思うわけですね。だから、そういう問題について一体主税局長どういうようにお考えでしょうか。
  165. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 昭和九−十一年当時の税制では、御承知のように間接税中心主義というものがとられておったわけでございます。所得税が酒税よりも上回ったのが大正の半ば過ぎだったと思いますが、したがいまして、当時間接税の比率は国税の中で六五%を占めていたはずでございます。さらに国税、地方税を合わせた国民所得に対する税負担率は、当時はほぼ一三、四%でございまして、現在に比べると三分の二くらいの負担であった。それが現在は間接税が四〇%の負担になり、直接税が六〇%というようなことになってまいりましたので、いわば日本税体系が先進国並みの形になってきたともいえるんじゃないかと思うのです。平均国民所得に対する比率にいたしましても、日本の場合はいま四二・七%でございますが、アメリカなどになりますと二五・六%でございます。日本よりはるかに低いところからとっております。有業者人口に対する課税割合にいたしましても、日本は五〇%未満でございますが、アメリカの場合は約七五%というようことで、幅広くとっております。カナダにいたしましても、課税最低限の平均国民所得に対する割合は三二・八%、オーストラリアは一〇%、イギリスが三四%というような調子でございまして、開発途上国になりますと、フィリピンなどは二五三・六%それからタイにいたしましても九九・一%というような姿で、やはり間接税に依存せざるを得ないような国民所得の低さでございますと、どうしても平均国民所得に対する課税最低限というものはかなり高いところにあると思います。それが間接税に依存しないでも、所得税を中心にした、いわば理想的な租税体系にだんだん近づけば近づくほど、ある意味では幅も広くなりますけれども、それだけ租税全体の公平性というものが保たれるのじゃないか。日本としてはかなり苦しい、少し実際以上に直接税中心になり過ぎているんだという議論もございます。何しろアメリカに次いで日本が直接税中心主義になっているということはかなり苦しいのじゃないか。一部からも、もっと間接税負担を置けという議論も出ているくらいでございますので、そういう点を考えあわせますと、戦前の姿より現在の姿のほうが体系としては進んできているのではないかというふうに考えます。
  166. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 所得税の納税人員が四十二年度給与所得者が一千八百万、これが四十三年度には一千九百七十三万二千人に増大をしている。申告所得でも、四十二年の三百四十四万九千人に対して三百五十九万七千人、四十三年の見込みを合計しますと二千三百三十二万九千人、この数点は、いま有業者に対する所得税を納める人数のパーセントが幾つか例に出されましたが、これは一体何%になりますか。
  167. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 各所得者を合計いたしまして、現行法の計算でまいりますと四六・三%、改正後の見込みでございますと四三%でございます。
  168. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 この数字というのは先進国型になった。アメリカと比較するのも何ですけれども、カナダが三〇何%というような例をも引かれました。     〔渡辺(美)委員長代理退席委員長着席〕 こういう数字からいいましても、やはり低額所得の人たちにまで所得税が及んでいるということはいえるんじゃないかと思うのです。後進国で九〇%というようなあるいはそれ以上の数字もあげられましたけれども、そういうものとは違った状況にあるわけであります。そういう点で、減税のめどとしても、大体有業人口に対して所得税を納める者はどのぐらいまで低めたい、何%ぐらいまで低めたいというような、そういうめど、目安というようなものは設定をされませんか。これは諸外国、同じような進歩の段階にあるといいますか、先進国において比較的類似しているイタリアとかフランスとか西ドイツとか、そういうところと比べて、それぞれ税制の違いもありますが、しかし日本と比較的似たような発展段階にある国と比較して、やっぱり多いんじゃないか、こういうように思うのですが、いかがでしょうか。
  169. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま申し上げましたように、英米独仏等の所得税課税割合、つまり有業人口に対する納税者割合は、大体六、七〇%程度ということでございますので、課税としては日本よりかなり高いわけでございます。しかし、日本としてどれぐらいが適当かということについては、税制調査会でも何べんも検討が行なわれまして、税制調査会考え方では、当時は、大体所得税というのは所得の再分配機能を強く発揮する税なんで、そういう意味からは大体五〇%程度を目途にすべきじゃないか、それ以上にふえるというのは当面としては適当でないんじゃないか。そういうことで、毎年減税をいたしますと、大体いまの日本のところでは四〇%、五〇%になる直前でとまっているわけでございます。大体そういうのが一つの当面のめどではないかというのが、税制調査会考え方でございます。
  170. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 有業人口の大体五〇%というのを目安にしておられるわけですか。それとも四三%が昭和四十三年の段階だ、これをさらに若干でもパーセントを低めて、四〇%程度あるいは若干それを下回る程度、三七、八%ぐらいまで下げるか、そこらのところはいかがでしょう。
  171. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 大体私ども実際的に考えますと、できるだけ納税人員が減税によって現状程度になるぐらいにはしたいという考え方を当面持っております。
  172. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 それからひとつ資料をぜひ出してもらいたいのですが、収入階層別の所得税の納税人員数と納税額、これを私のほうの希望としては、百万円以下がどのぐらいあるか、また百万円以上二百万、二百万から三百万、三百万から五百万、それ以上という程度のものに分けて、いまわかればお答えいただきたいのですけれども、なかなか急にといってもいかないと思いますが、そういう資料はできますか。
  173. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 実は、給与だけの源泉所得税の分と申告納税所得税の分と分けますと、大ざっぱなものができると思うのでございますが、この申告納税の中には、給与所得の五百万以上のものとか他のものが入っておりますので、その入り組みが実は出ていないのでございます。そこで、そういう資料は実は私ども持っておりませんが、部分的な資料ならあとでできる限りつくってみたいと思います。分かれたままでよろしゅうございますか。
  174. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 分かれたままでいいです。
  175. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 それでは分けて、できる限りのものを——新しいのはちょっとできませんが、実績が出ております四十一年度程度のものならできると思います。
  176. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 次に問題を移します。最低税率を四十三年度もまた〇・五%引き上げようとされているわけでありますが、これは三十七年以前の一〇%にどうしてもするという気持ちでやられておるわけですか。
  177. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 特にそういう意識ではないのでございますが、何と申しましても端数がついていないほうが計算も容易でございますし、また、各国課税最低限というのは、各国の税率の一番最初の段階というのはかなり高いところから動いております。なぜかと申しますと、課税最低限が上がっていけば、課税最低限が税率の作用をして、非常に担税力のあるところが課税所得として最初に出てまいりますから、それで税率を高くしておくほうが、できるだけ最初に所得者は落として、しかも税収を上げる道として当然なんであります。そういう意味では、昔五%になったこともございますが、できるだけ早く一〇%にしたい。しかし、それは課税最低限との見合いでございますから、日本程度課税最低限なら一〇%が一番妥当だろうというところで、最近三カ年続けてこれを是正しようとしておるわけであります。
  178. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 課税最低税率が、なるほどたとえばアメリカが一四%だとか、イギリス、ドイツあたりは二〇%というようなものもあるわけでありますが、フランスのごときはやはり五・四%だという状態だと聞いておりますし、ソ連などでも一・五%くらいという、そういう低い税率だってあるわけです。ですから、高いところにばかりさや寄せするといいましょうか、そっちを模範にして、そちらにばかりいこうというのじゃなくて、特にこの課税最低限との関係もおありでしょうけれども、何も端っぱがついたからといって、安いほうがいいのであって、八%から再出発したわけですから、八%なら八%まで下げたってこれは低所得者が喜ぶだけであって、それを〇・五%きざみに毎年上げてくるというのは、いわゆる独身者といいますか、そういう者などで、諸控除の引き上げに浴しない人たちは、税率引き上げによってかえって減税感というようなものが非常に薄められてしまうというようなこともあるし、あるいは増税になるというような面だって出てくるんじゃないか、そういう者に対してちょっと冷酷なやり方ではないか、そういうように思うのですが、その点、いかがですか。逆に九%に引き下げたらどうですか。あるいは八%まで戻すというように。上へ一〇%で切りよくするというのじゃなくて、下に八%だということでやるということだって当然やらるべきだと思うのですが、いかがですか。
  179. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 給与所得者の独身者は、最近の税制改正では、この三カ年間続いて定額控除を引き上げました。こういうチャンスでございますので是正ができた。基礎控除だけでございますと、ちょっと過酷過ぎるという問題もございますが、定額控除を相当上げておりますので——個人の事業所得者というのは独身者は統計上ほとんどないのでございます。したがって、給与所得者の独身者が非常に軽減になる際に——三十九年から四十三年までの税制改正の累計では、課税最低限が一番上がっているのは独身者なんです。一七六%上がっております。ですから、この際に是正をする。それでまた、最初の税率が高いというところは課税最低限をそれだけ上げて、それで中小所得者を全部課税所得者から除外をして同じ税収が上がるという意味でございますから、それはやはりそのほうがより所得再分配には向いているんだろうと思います。そういう意味で、さしあたりめどは一〇%でございますから、この次一回でおしまいということでやっていきたい、こう考えております。
  180. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 最低税率はそれ以上に上げないということですか、一〇%をめどにして〇・五%ずつ上げてきたけれども、一〇%以上は上げません、こういう気持ちですか。
  181. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 私は、当面は一〇%でいきたいという感じを持っております。
  182. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 私どもはこの点、そういう意思が確認されたわけですけれども、最低税率も上げるべきではない、こういうように強く感ずるわけであります。  そこで、今度は全体的な問題で少し質問をしてみたいと思うのですが、千五十億円所得減税をやる、それに対して物価調整分というものが、これは大蔵省では三百五十億だと言われますが、税調の算式といいますか、そういうものを用いれば四百三十億だ。そういうことになりますれば、所得税減税額というのは少なくとも四百三十億程度は差し引かれたものが所得税減税額になるわけですね。それでよろしいですか。
  183. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 減税はやっぱり千五十億でございまして、ただほっておけば物価上昇の影響を受けて実質所得から見ると負担が重くなっていくという部分が三百四十億ということでございます。税制改正をそれだからしなくちゃならぬということではないので、ただ、それまで見て税制改正をするほうが、いまの物価の状況では適当であろうという意味では、三百四十億が物価調整に当たるという説明をしているわけであります。
  184. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 もう少し率直に答えていただきたいのですが、昨年の委員会では、やはり私、当時の塩崎主税局長に質問をしたわけでありますが、物価調整分というものを四百三十億なり、大蔵省の見解なら三百五十億だと言われるかもしれませんが、いずれにしてもそういうものを引いた額が実質的には所得税減税額でございますと、塩崎さんは率直に答えられたわけです。吉國さんはそう答えられませんか。
  185. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 実質所得考えた場合はまさにそうだと思います。
  186. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 実質所得でそういう形になるということをお認めになったわけであります。  そこで、今度は増税のほうは、これは掛け値なしの千五十億というものがかかってくる、こういうことになるわけですね。そうしますと、やはりその分だけは増税じゃないかという、これが一つです。もう一つは、それを内容的に見れば、特にたばこのようなものは、今回上げられるわけですけれども、これで五百五十億といっておられます。しかし、予算書を見ると、昭和四十二年度当初よりも七百四億ですか、国庫納金がふえる。補正後の予算に比べましても、たしか六百十四、五億ふえるという勘定になっております。おそらくこれは五百五十億といいながら、やっぱりそれだけ国庫納金がふえるわけですから、それだけ増税になるのだ、こう私ども見ざるを得ないわけです。かりにそれは政府が言うように五百五十億だとしてみても、そのうちかなりの部分、六、七割になるのじゃないかと思うのですけれども——これはたしか三十五年ごろの税調ですか、専売公社から出したたばこの消費動向調査か何かそういうもので記憶をしているのですが、低所得者が大体たばこ消費量の六五%ないし七〇%は占めているということになっているわけです。所得減税の恩恵に浴しない階層が、六割ないし七割ぐらいはたばこを消費しているということになるのじゃないかと思うのです。そうしますと、そういうところは所得減税に浴しないで、たばこ増税だけということにもなるわけでありまして、そういうことを勘案してみますと、やっぱりことしは増税の年だ、そう低所得階層は受け取らざるを得ないわけですね。こういうものを考えて、減税ゼロということじゃなしに、やっぱり増税をやる。先ほど倉成さんは地方税も含めて三百五十億くらいある、こう言われますが、それはやっぱり物価調整分ととんとんになってしまう。大蔵省の言うように三百五十億程度調整分だとしても、大体それでとんとんだ。たばこの定価法の改正による増税というものだけは、低所得者にとってはやっぱりどうしてもぬぐい去れない増税として残るのじゃないか、こういうように思うのですが、その点いかがです。
  187. 倉成正

    ○倉成政府委員 たばこの場合は、御承知のとおり嗜好品でありますから、たばこをよけい吸う人もあれば、のまない人もあるということであります。したがいまして、たばこを非常に吸う人にとっては確かに家計支出がふえるということは御指摘のとおりでございますけれども、これはやはりたばこについては、御承知のとおり非常に昔から、一時は禁止した、一時は奢侈的なものとして非常に貴重品の扱いをした。それからだんだんこれが財政物資として取り上げられるようになってまいりまして今日に至っておるわけでございますから、やはりたばこの分について一がいに増税というわけにはまいらないと私ども考えておるわけであります。昭和二十六年から、御案内のように、たばこはもう全然値上げされておりませんし、先ほど申し上げましたように、理髪代金をとってみましても、昭和二十六年を一〇〇としますと、昭和四十二年で三八八、新聞代金が昭和二十六年を一〇〇としますと、五八〇ということでございます。ふろの代金にいたしましても、二倍半くらいになっておる。あるいはそばの代金にしましても、大体もり、かけ十五円というのが六十円に今日なっておるというぐあいに、ほかの物価から比べますと、たばこというのは非常に安い。したがって、この直接税、間接税調整をこの機会にいたしたということで、昭和二十六年から全然上げてない、しかもたばこの場合はかなり抵抗なしにふえておるということを考えてまいりますと、これをちなみに所得税と比べて差し引き一応計算上はゼロということになりますけれども、私は別の角度から取り上ぐべきものじゃなかろうかと思う。所得税については、主税局長からるる申し上げましたように、累進構造が非常に強いものでありますから、どうしても減税ということを考えていかないと、独身者なりあるいは低所得層に非常に大きな負担をかける、これは調整する必要があるということでありまして、間接税の酒、たばこというのは、やはり物価所得の上昇と比べますと、非常に据え置かれておるということからこの調整をはかっていく、そういう角度から考えていくべきだと考えておるわけであります。  それから同時に、そう言っても上げないでおいたらいいじゃないかというのは一つの議論でありますけれども、しかし、やはりこれは財政支出との関連、今日われわれがなすべき仕事はたくさんあるわけでありますから、どうしてもその財源をまかなわなければならない。また、公債はこれをなるべく減らさなければならない。そういう角度から考えますと、やはり間接税について調整を加えていく。そうして直接税、間接税のバランスをとっていくということが租税のあるべき姿ではないか、かように考えておるわけであります。
  188. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 まあ、いろいろ説明されましたけれども、私が聞いているのは、低所得者にとっては明らかにこれは増税になるじゃないか。これは、いままでかなり長い期間にわたってたばこの定価を引き上げてこなかった。しかしその間に、いわゆるフィルターつきのたばこというようなことで原料を節約し、しかも定価を上げてきておるわけです。そういうような中から、専売益金はこの十年間に二百三十何%にのぼっているというようなことも、午前中の議論にあったわけです。そういうようになっておるし、しかも専売の益金率といいますか、利益率というか、そういうものも六〇%はまだ維持されているわけです。意図せざる減税をやってきたということが言われたようでありますけれども、意図せざる減税、とにかくそれだけこれはもう善政になっているわけですよね。あらためて今度それを、意図せざる減税だからといって引き上げるということは、やはりこれは増税なのであって、しかもそれが一方において所得税減税の恩典に浴しない低所得の人にとってまさに増税になっている。このことを認めておいていただけばいいのですよ。それは当然そうでしょう。これは調整とか何とか理由はあるでしょうけれども……。
  189. 倉成正

    ○倉成政府委員 たばこについては、先ほど原料費のお話がありましたが、収納価格にいたしましても、昭和二十六年から四十三年を比較いたしますと、一〇〇の指数をとりますと二五二と、二倍半に上がっておることは広瀬委員御承知のとおりであります。まあその議論はさておきまして、たばこをのむ人、たくさんのむ人にとっては大きな負担になっているということは御指摘のとおりであります。しかし、のまない人もございますし、やはりこれは嗜好品でありますから、嗜好品について安ければ安いほどいいという議論も一面において成り立ちますけれども、やはり国の財政をまかなうために財政専売の立場をとっておるわけでありますから、他の物価とのバランスをとるということは今日大切なことじゃなかろうかと考えておるわけでございます。
  190. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そういうことじゃなしに、私が聞いているのは、所得税減税の恩恵に浴しない人、そういう人たちがたばこを吸う。その人たちにとってはことしはまるまる増税ではないか、そのことだけ聞いているのですよ。
  191. 倉成正

    ○倉成政府委員 お答えします。  まあ非常に大きな負担になってくるといって、たばこを吸わないというわけにいかない。いままでどおりたばこを吸うということを前提にいたしますれば、そういう方については負担がふえるということは御指摘のとおりであります。
  192. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 きょうはたばこの問題が主じゃございませんので、その程度にとどめておきますが、これはまた、たばこ定価法の問題のところで詳しくやりたいと思います。  次に、銀行局長がお見えになっておりますので、この少額貯蓄の非課税問題に関連して若干数字をお聞きしたいのですが、大体この利子所得というのは——去年及びことしの見通し、四十年あたりから四十一年、これは実績がもう出ているだろうと思いますが、四十二年度の見込み、四十三年度の見込み、こういうもので利子所得というのは一体どのくらい日本にはあるものか、これをひとつ明らかにしていただきたい。
  193. 田村元

    田村委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  194. 田村元

    田村委員長 速記を始めて。
  195. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いまの質問に対して答えていただいて、それから……。
  196. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 利子所得でございますが、四十三年度の見込みで申し上げます。総額が二兆六千五百十二億円ということになっております。
  197. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 実績を四十年、四十一年、それから四十二年の見込み、四十三年の見込み、こういうようにいま質問したわけですが、それがわかっていたら答えてください。
  198. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 四十一年度の実績が一兆九千二百五十七億、これは課税、非課税を含めまして、総額でございます。それから四十二年度の実績見込みが二兆三千五十四億でございます。それで四十三年度が二兆六千五百十二億でございます。
  199. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そのうち課税対象になっておるものはどのくらいございますか。
  200. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 四十一年度が九千五百四十六億、四十二年度の実績見込みが一兆千二百六十七億、四十三年度見込みが一兆二千九百五十七億ということになります。
  201. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 銀行局長にちょっとお伺いしたいのですが、少額貯蓄の非課税制度の利用状況という表をいただいておるのですが、金融機関関係で三千八百五十万二千人、証券会社関係で百三十万八千人、勤務先預金四百六十五万人、こういうことで、合計しますと四千四百四十六万人がこれを利用をしておるという数字が出ておるわけであります。これは非常に多い。日本の有業人口が大体五千万といわれる中で、ほぼすべての有業人口にも匹敵するような高率でこれを利用している、こういう状況になっておるわけですね。こういう制度、これはいろいろ長い歴史を持ってきているわけですけれども、その中に匿名預金制度もあるし、あるいは無記名預金もある、あるいは一人一店舗という時代から、また多種類多店舗という状況にもなってきた。こういうようなことで、銀行局としては、たとえば一億円というようなまとまった金を多種類多店舗に分散貯蓄している、そしてそれを無記名などでやっている、こういうものは非常にあるだろうと私は思うのですが、そういうものについてどのように見ておられますか。
  202. 澄田智

    ○澄田政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、現在の少額非課税貯蓄の制度は、御承知のように昨年度から多種類多店舗というような形にはなっておりますが、しかし、これはそれぞれ百万円という中で各貯蓄者について名寄せをしてそういうあれをやっている。こういうことでありますので、いまのお話のような匿名預金であるとか、あるいは架空名義であるとか、いろいろそういうようなものもあることは事実でありますが、いまの少額貯蓄をその関係においてどう考えるか、こういう御質問であるとするならば、現在の制度は、百万円という金額、少額貯蓄を奨励するというところからいって、そこまでの限度において優遇するということは、これは各貯蓄手段を通じて行なっていくというたてまえからいっても必要なものである、かように考えるわけであります。そして架空名義等については、この委員会でも御指摘をいただきまして、現在それを自粛するようにということを各金融機関に申しまして、金融機関もそれぞれ店頭に掲示する等、趣旨の徹底につとめているわけでございます。
  203. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いわゆる一店舗にたとえば一億の預金をすればそれで済む人が、これを百の店舗に、百種類でなくても、何種類かのものを貯蓄をやっている、そういうような形のものは絶対ないか。いわば所得の隠匿というような形あるいは脱税のためにそれを利用する。本来、一億円持って預金をしたいならば、一億円をどこかの銀行に預ける、そうすれば利子に対する所得税というようなものも相当取られる、分離一五%でございますか、一五%取られる。こういうことになるわけでありますが、多種類多店舗にそれを分散貯蓄するということになれば、百万円限度で少額貯蓄の利子の非課税の措置を受けられる。こういうものがないと言い切れますか。
  204. 澄田智

    ○澄田政府委員 その点はむしろ税務当局のほうで名寄せをするということが徹底して初めて全部把握できるかというような問題であろうと思いますが、たてまえといたしましては、多種類多店舗でありましても、それはそれぞれ預け入れをする金融機関を通じまして、住所、氏名その他非課税取り扱いをする貯蓄の金額等記載をして出している、それが合計百万円までである。こういうことでございますので、一億円を分散をするというふうな例示でございますが、百万円をこえる部分については、これは名寄せの結果できないということになるわけでございます。先ほど申しましたように、匿名でありますとか、あるいは無記名であるとかいうようなものは、これは少額貯蓄の適用を受けませんで、一五%の源泉を取られている。取られているものが、あるいは無記名もございますし、それから匿名については現在これを自粛するように趣旨徹底中でございますが、そのものについては、これは少額貯蓄の恩典を受けないで、源泉で取られているものである、かようなぐあいになっているわけでございます。
  205. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 もっと端的に答えていただきたいのですが、これは国税庁で名寄せをやれるか、やれないか。一部特に何か問題のあった所得者というようなものについて、その裏づけ捜査というような形でやる場合はあるでしょう。しかし、しょっちゅう金融機関に行って名寄せをやって、そういう資料をぴしっと持っているというようなことはまず考えられないわけです。現実に匿名預金でも、大蔵省が自粛を呼びかけても、こういう引き締め段階を迎えれば、より一そう貯金を増強したいという気持ちにも銀行もなるというようなことから、そういう制度がある以上は、自粛しろといったってこれは無理な話で、やっぱり無記名でけっこうでございますよと言うんですよ、実際に。そういう形というものはあり得ないのだということは銀行局長も言えないでしょう。いかがですか。
  206. 澄田智

    ○澄田政府委員 いま無記名のことをおっしゃいましたが、無記名の場合は、これは初めから少額貯蓄の適用を受けようにも受けられない形でございますから、この場合は一五%は当然取られる、こういうことになると思います。それから匿名の場合でありましても、これは金融機関を通じて税務署に申告をするわけでございますから、匿名という形では申告はできない。そこで、申告するにはちゃんと住所、氏名を明らかにしたものであり、それが全部の店を通じて百万円をこえてないかどうかという点になりますと、あるいはまた、その名寄せの結果若干はみ出ている場合があるかもしれませんが、この点は現在の届け出の書類というものは、ほかの店でもってこういう預金がある、そこは限度幾らだということもあわせて申告するような形になっておりますので、金融機関の目でも一応のチェックはできる。それが虚偽であったらどうかというような問題はあるわけでございますが、その点は、これはそれぞれ金融機関を通じて税務署のほうに上がっていくわけでございます。そちらでチェックをすればわかる、こういうことになるわけであります。
  207. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 無記名、匿名の場合には非課税申告もできないのだというなら、それはそれでいいとしましても、やはり名寄せというようなことが現実に税務当局によって、国税庁がしょっちゅうやってそういうリストをつくっておくわけじゃないですから、やはりこの可能性というものはかなりの程度にある。そういうことでなければ、この四千四百万もの口数が、人数でこれだけですから、二口や三口という人もあるだろうし、あるいは百口もそういうことでやっておる、百万円を小口でやっておるという人もこれはあると思うのです。そのことは絶対ないと否定できないでしょう。
  208. 澄田智

    ○澄田政府委員 繰り返すようなことになりますが、少ない人の話になって恐縮ですが、名寄せがどこまで徹底するかという問題があることは、私も申し上げておるとおりでありますが、そういう問題もあると思います。  それから、いまの四千万というような数でございますが、これはそれぞれ、必ずしも世帯主だけでもございません。家族の名前でも百万円の少額のあれはできるわけでございますので、したがって、全国民のうちで四千万というような数字はかなり高いというふうにもいえるわけでございますが、妻や子供というような名前の貯蓄をそれぞれ持っているというような場合を考えますと、一人が幾つも持っているというようなことでなくて、いろいろな名義といいますか、家族名義等も動員してやっている、こういうことではないか、かように思うわけでございます。
  209. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 租税特別措置法に入りましたら、またこの問題をさらに資料を持ってやりたいと思いますが、主税局長、利子の分離課税の場合に、当然これは上積み実効税率の問題で非常に不公平が目立つわけであります。たとえば二百万円の給与所得者を一応例にとってみますが、その場合に給与所得の税率は幾らになりますか。そのうちもう一方は、給与所得で百五十万、あと利子所得で五十万くらいあったとしますと、税率でどういう差が出ますか。
  210. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いま急でございますので、計算して申し上げますと、給与収入金額二百万、標準世帯で申しますと、今度の新法で、平年度税額が十八万三千三百五十円となります。それに対しまして、百五十万の給与所得でございますと、同じく夫婦子三人で七万九千八百十円でございます。それに、五十万円に対する一五%相当分、つまり七万五千円でございますが、それを加えますと、十五万四千八百十円となりまして、そこで約三万円程度の差ができるのであります。
  211. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そういう差が出てくる。これはもっと高額のところにいきますと、さらに差というものははなはだしくなって、非常に公平を害するという問題も出てくるわけです。したがって、これはできる限り早く本則に戻すという方向でやってもらわなければならぬと思うわけでありますが、年限がくるまでこれは絶対やりませんか。その間にもやる勇気はないですか。
  212. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは御承知のとおり、昨年の改正で一〇%だったのを一五%に引き上げたものでございます。その一五%にした際に、三年間の間に最終的な措置を検討するということで、三年間期限を延長したということでございますが、これは単に期限を延長しただけではないと私は思っております。利子所得を完全に課税するためには、いろいろな制度が私は必要と思います。完全に捕捉しなければかえって逆に非常な不公平を生ずるおそれもある。そういう種々の点を考え合わせ、課税制度自体を検討する期間を入れて三年間としたものと私は思っておりますので、ただこれをぱっとはずしただけで、全体がうまくいくかどうかということは、かなりむずかしい問題だと思います。御承知と思いますが、アメリカなどでは非常なたいへんな手数をかけてやっております。そういう点も研究をするということになると、ただ単にこれを来年はずすとかなんとかいう問題ではなくて、十分な検討をしてかからなければならぬ問題だ、かように思っております。
  213. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 この問題は、また租税特別措置法の段階で詳しく質問したいと思います。  次に、運輸省が来ておりますが、通勤定期は、今度の運賃法の改正で約三八%くらい上がるといわれておるわけでありますが、その引き上げ率、それからそれによって増収になる分は幾らか。また引き上げ幅が距離によっても若干違うようでありますが、最高の値上げ率というものはどのくらいになるかというものをお示しをいただきたいと思います。
  214. 高橋顕詞

    ○高橋説明員 通勤定期の引き上げ率でございますが、これは平均いたしまして一ヵ月定期の場合三七・二%、それから最高の場合は三十一キロの地点におきまして五九・五%の改定率になっております。
  215. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大体東京を例にしまして、通勤する者が一番多い区間というものは何キロ区間くらいが多いですか。
  216. 高橋顕詞

    ○高橋説明員 これは昨年の五月に、全国でキロ帯別に通勤人員の構成比の調査を行なっております。これによりますと、東京の分も含めまして、全国で一キロから十キロメートル、ここの通勤距離の地帯で人員で全体の四二・二%、それから十一キロから二十キロの地帯で三六・二%、次いで二十一キロから三十キロの地帯で一〇・四%、三十一キロ以上は非常に構成が少なくなっております。結局、二十キロまでのところで全体の七八・四%という数字を示しております。     〔委員長退席渡辺(美)委員長代理着席
  217. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 私がある省の職員組合の人に調べていただいた数字によりますと、四十キロ以上のところから通勤しておる人が非常に多い。千何百人とおるわけです。こういうところがかなり今度高率に引き上げられるわけであります。三十一キロからで五九・五%と引き上げられる。  そこで、これは主計局に伺いますが、現在通勤費は最高どれまで公務員関係は出しておりますか。
  218. 津吉伊定

    ○津吉説明員 お答えいたします。  先生御承知のように、四十一年度の人事院の勧告によりまして、従来月に千百円まで、これは全額支給になります。それからそれをこえる千円につきましては、その半額を給付するというのが通勤手当でございます。それが四十一年度の改定によりまして、千六百円までは全額、それをこえる千六百円につきましては半額、こういうことになりまして、最高限二千四百円ということに現在のところ相なっております。
  219. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 運輸省に聞きますが、最高限度の二千四百円というのは、何キロぐらいのところに該当しますか。
  220. 高橋顕詞

    ○高橋説明員 従来の通勤定期の一カ月の場合で、従来の料金によりますと、二千四百円と申しますのは三十八キロの地点でございます。それから、その三十八キロの地点は、このたびの改定では三千七百円ということになります。
  221. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 主税局長に聞きますが、この最高限の二千四百円は課税対象になりませんね。
  222. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 四十一年から通勤費控除ができましたので、通勤費を受け取って、このいまの二千四百円の非課税限度であれば控除を受けます。したがって、課税になりません。
  223. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 今度、これがおそらく運賃法の改正によって、二千四百円のところが大体三千七百円に上がってくるわけですね。そうしますと、主税当局としては、値上げ分をそのまま見るかどうか。これは人事院の勧告を待ってという答えになるかもしれませんけれども、しかし、それがいつ出るかわからない。総合予算主義だから、この問題はおそらく織り込み済みであるかどうかはわからぬけれども、そこらのところは一体どうなるのか。これについての所得税の取り扱いはどうなりますか。
  224. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先生も御承知のとおりでありますが、通勤費控除ができましてから一回運賃の引き上げがございまして、それで通勤手当が千六百円から二千四百円に上がったわけでございます。いままでの慣例と申しますか、実際のやり方は、大体公務員の通勤手当が民間の一番普遍的な平均的なものであるというので、公務員の通勤手当を最高限度として控除を認めてまいりました。この通勤費控除と申しますのは、通勤費を受けたときに、その中で限度までを控除するというのが制度でございますから、交通費が上がった場合に、一体どの程度の通勤費の引き上げが行なわれるかということがまず問題でございます。その調査は、現在のところ最本権威のあるのが人事院の調査でございます。調査が終わって勧告があり、それが政府の制度として織り込まれるという段階をとるわけで、私どもとしては、いままでの慣例から申しましても、通勤手当が上がればその限度で通勤費控除は上げるべきものだ、こう心得ております。
  225. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 総理府の人事局、来ておりますね。  通勤定期がこのように値上がりしてくるということは、いま運輸省から言われたとおりであります。これに対して一体どうされるおつもりなんですか。その点を伺いたいと思います。
  226. 吉岡孝行

    ○吉岡説明員 ただいま主税局長からもちょっとお話がありましたように、従来の方針としまして、通勤手当、これは公務員給与の一環としまして、人事院の勧告を待って措置するという方針をとってきております。今回の国鉄定期の引き上げにつきましても、それが民間の給与にどうはね返るかを人事院のほうで実態を調査しまして、それに基づいて人事院の勧告に取り入れられて出てくれば、政府としてはそれを尊重して措置するという方針になると思います。
  227. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 現実にはそういう段取りがあとに続くにいたしましても、二千四百円で最高限度をきめておった、そしてそれは非課税の扱いを受けている。ところが、公務員の諸君は、この運賃値上げ法が成立すれば、とたんに四月一日から三千七百円支出しなければとにかく定期券を買えないわけですね。それだけ出費が増大しているわけです。したがって、これはどのような人事院勧告が出るかわかりませんけれども、年内にこれが結着がつかなかったということになれば、やはり従来どおり二千四百円までしか官公庁としては認めていかない、非課税はそれが限度だ、こういうことで押し通すつもりでございますか。
  228. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 やはり人事院の勧告があり、公務員の通勤手当が引き上げられるという行き方が、いままでのしきたりから申すと一番可能性のあることだと私は思っております。
  229. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そうしますと、人事院勧告が例年いつもおくれて、これが暮れになってもなかなか片づかぬという実態だ。ところが、四月からもう現実に通勤費というものは引き上げられてくる。そうすると、その分だけは少なくともたいへんな不利を税制の面でも受けざるを得ない、実質賃金がその点でも下がる、こういうことになるじゃないですか。
  230. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先ほども申し上げましたように、この通勤費控除は、通勤手当を受けている場合に、その中で限度額までを控除する制度でございますから、人事院の勧告によって公務員の通勤手当が上がらない限り控除のしょうがないということになるわけでございます。ですから、これはどうしても通勤手当を上げて——そんな言い方をしてはいけませんが、通勤手当が上がるということが前提になるわけです。
  231. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 ですから、そういうことで何らかの便法なり何なりというようなものは一切考えない、あくまで人事院の勧告があり、国会でそれが議決をされて給与法が改正されるということがなければ手の打ちようがない、みすみすその分は公務員は出費が増していく、こういうことでやむを得ない、こういう見解ですか。
  232. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これはちょっと手当てのしようがないわけでございますね、二千四百円までしか通勤費が出ないわけですから。出た分までは全部まかなっているわけです。
  233. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そういう場合に、何らか機動的な税制における手を打とうと思えば打てることだと思うのですよ。現実にそういうようにいままでと同じ条件だ。これは通勤距離や何かでも、いろいろな通勤帯もありますよ。しかし、この辺までということで二千四百円というのもきめられておるわけですね。ところが、それが三千七百円にはね上がった。それをみすみす、そういう制度的な裏づけがない限り税制も手を打てないのだということでは、いかにも情けない状況だと思うのですね。これはもう手を打とうと思えば打てるのじゃないですか。方法は何もないですか。制度を変えたらいいのじゃないですか。
  234. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いまおっしゃいました点でございますけれども、この通勤費の規定を読みますと、「給与所得を有する者で通勤するものがその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとして通常の給与に加算して受ける通勤手当(これに類するものを含む。)のうち、一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分として政令で定めるもの」、こういう規定のしかたでございますので、「加算して受ける通勤手当」というのが前提になっておるわけですね。もちろん通常必要なものというのはどの程度かというのはなかなかむずかしいところでございますが、いまのところ人事院の調査が一番妥当であるということで、そういう御説明もし、御了承も得てやっておるわけです。ですから、人事院の勧告が出ますと、一応その額がきまる。しかし、それが実際に払われるまでは公務員としてはどうにもまけようがないという結果になるわけです。
  235. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 この点、何ぼやってもやる気がなければだめなことであって、やる気があれば、そういうものに対して臨時特例法をつくるなり何なりというようなことでそういう問題に対処するということはなきゃならぬだろうと思うのですね。これは大臣が来てから大臣の見解をお聞きしたいと思いますので、保留しておきます。  次に移りますが、青色申告の専従者控除は完全給与制にことしから移行する、白色申告の場合には今度は専従者控除の引き上げがございませんので、配偶者控除よりも一万円逆に少なくなる、こういう事態になりますね。
  236. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 そのとおりでございます。
  237. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 このことはけさも横山委員からも追及がされましたけれども、青色申告において完全給与制に踏み切った、これはまあ非常に英断であって、私どもも賛成だったわけで、これはたいへんけっこうだ。白色申告とどうしても区別しなければならないこの妻の専従者としての立場を給与制に踏み切ること、あるいは少なくとも一般の配偶者控除よりも若干高いところに専従者控除を白色申告の場合にも設けるという、そういう配慮が当然あってしかるべきだと思うのですね。本来ならば青色申告と同じように給与制というものを常識の範囲内において認めてもいい、青色申告と同じような基準において認めるということが筋だろうと思いますが、いずれにしても、少なくとも一般の配偶者控除よりは高いところに設けるというのが当然の筋だろうと思うのですが、これを引き上げをしなかった理由というのは一体何ですか。
  238. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御承知のとおり、完全給与制の前提は完全な記帳が行なわれているという前提で完全給与制に踏み切ったわけでございます。青色申告の場合は給与として支給するという前提で、しかも二十四万円の限定がついておりましたので、それは何と申しますか、実際に出している、記帳もはっきりしている給与を否認するのはおかしいのじゃないかということで、適正な給与であれば限度を設けないことにしようということでやった。白色の場合は、そういう客観的な資料がないわけで、しかも給与を出しただけ引くのじゃなくて、一定額を出そうが出すまいが引くわけでございますから、そこでどうしても限度というものを考えなくちゃならぬということになる。青色申告は完全給与制にいたしましたのは二十四万円を上げたわけではないので、正しい引き方をするというだけのことでございますから、したがって今度の場合は、青色申告がその結果控除額が非常に大きくなれば、それに応じて白色も考えなければならぬと思いますけれども、青色申告の完全給与制はことしの一月から、本年度分から実施、したがって、これの推移を見きわめないとはっきりしないということで、今度はとりあえず国税と非常に差がついております事業税、住民税について、白色申告者については三万円だけこれを引き上げることにして、その点で均衡をとっていこうということにしたわけでございます。
  239. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 地方税でどういう措置をとられたにもせよ、少なくとも所得税体系の中でおそらく実際の扱いとしては白色申告の事業者も家族専従者控除を適用するよりも一般の配偶者控除でやったほうが高いわけですから、それで十六万でやられるでしょうけれども、しかし、少なくとも税体系として、片方はとにかく店の手伝いをして家事もやっている、片方は御主人の所得のほうの、これはまあ間接的には手伝いをしたということにもなろうけれども、白色の事業者に対する妻の立場というのは、そういうものをやったほかに仕事の手伝いも直接的にやるわけです、専従者として。店の商いもやるわけです。そういうものが、所得税の中で一般の配偶者控除よりも低いということは、どうしても納得できないわけです。そこに何らかの合理性というものがあるのか、その点をお聞きしたいわけです。
  240. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 白色申告者の控除を上げてくる段階では、配偶者控除がずっとしばらくの間高かったことはございます。そういう意味では白色申告者の専従者控除に妻の分と分けてということも、これもまた無理がございますので、これはやむを得ぬのじゃないかという感じがいたしますのと、それから御承知のとおり、去年の改正では、白色申告者は簡単に青色申告になれるように、簡潔なたとえば現金主義の記帳も認めまして、できるだけ青色申告になって正しい記帳の上に立って税務申告ができるようにという配慮をしておりますので、できるだけこの際青色に移っていただくということが適切な解決ではないかという感じもするわけでございます。
  241. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そうしますと、取り立ててその理由はないけれども、白色申告から青色申告に移したいという政策配慮がその一万円の差をつけたことになりますか。
  242. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 無理やりに青色にするためにしたわけでは決してありません。さっき申し上げましたように、青色申告の完全給与制というものがはたしてどの程度の控除額としてあらわれるかという実績を十分検討した上で白色に対して答えを出したい。しかも、それでは白色が気の毒だという声があるので、住民税、事業税が必ずかかるわけですから、その面で三万円ずつ控除を広げていこうということで、所得者全体としては国税、住民税全部含んでいるわけでございます。そこで均衡をとっているのだということでございます。
  243. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そういう説明ではやっぱり納得できませんね。少なくとも青色申告に移るということは経営の近代化という面でも当然のことだと思います。     〔渡辺(美)委員長代理退席委員長着席〕 しかし、八百屋さんをやったり、魚屋さんをやったりしている人たちが、夫婦差し向かいというような姿で、個人で事業をやっているという場合に、なかなか青色申告をやれない。しかしながら、ほとんど店に出て商売をやっているこういう人たちが、青色申告に移れば大体月給にして二万五千円なり三万円というものが認められる。ところが、白色申告なるがゆえに月一万二、三千円ぐらいのところしか認められないのだ。こういうような差というものは、青色になかなか移れないという人たちにとって、これはどう見てもやはり不公平だと思うのですよ。青色に移るだけの余裕があればいいけれども、夫婦で商売をやっている人たちはなかなか困難であります。そういうものに対してこれだけ差をつけなければならないという具体的な理由は何もないのではないか。この点について少なくとも来年あたりはかなり大幅に改善する気持ちがありますか。
  244. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 白色申告の場合は、青色申告の場合と違いまして給与を支給しなくても定額の控除があるわけであります。それだけに控除額というのは青色の場合とかなり意味が違うと思います。来年度どうするかという問題は、青色申告についての実績は、税務署にすべて支給基準が出てまいります。わかっておりますから実績はかなりはっきりつかめると思います。それらを通じて判定をしてまいりたいと思っております。
  245. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 倉成政務次官、あなたは政治家として、いま私が質問した問題についてどうお考えになりますか、これについてよき御返事を聞いて私の質問を終わりたいと思います。
  246. 倉成正

    ○倉成政府委員 青色と白色と若干区別があるのは当然だと思うわけです、やはり記帳した人とそうでない人との関係がございますから。それから、できるだけ簡便な方法で、現金主義による簡易な方法で青色に移れるように四十二年度改正でしたわけでありますから、それをできるだけお願いする、主税局長がお答えしたとおりだと思います。しかし、青色申告における完全給与制実施ということに踏み切ったわけでありますから、やはりこれの推移を若干見守ることが必要ではないか。これは主税局長が御答弁したことに尽きると思いますけれども、夫婦二人で一生懸命やっている、これをもう少しめんどうを見たらどうかというお気持ちはよくわかりますので、十分検討いたしてみたいと思っております。
  247. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 それじゃこれ一問で終わりますが、主税局長なりまた政務次官、これは青色申告の完全給与制というものの実態をもう少し様子を見る、それで非常に差がつき過ぎている、こういう実態が明確にあらわれたという確証といいますか、あまりにも不公平じゃないかと思われるような数字が出た段階においては、白色申告の専従者控除についてもかなり前進的に検討をしてまいる、こういう気持ちであると了解していいわけですね。
  248. 倉成正

    ○倉成政府委員 さようでございます。
  249. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 以上で終わります。
  250. 田村元

    田村委員長 平林剛君。
  251. 平林剛

    ○平林委員 いろいろと聞きたいことがありますけれども、まず簡単な問題からお尋ねをしていきたいと思います。  最初に、私が取り上げたいと思いますのは、給与所得控除の問題であります。今回の税法改正で、給与所得控除が若干、それぞれ定額控除はじめ最高額等についての改正が行なわれることになったわけでありますけれども、率直に申し上げて、給与所得控除とは何ぞや、給与所得控除とは一体どういう性格のものであるか、その定義、性格、これをひとつまず御説明をいただきたいと思います。
  252. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 給与所得控除につきましては、一つの権威あるものといたしまして、シャウプ勧告のときにこの給与所得控除が問題になりまして、シャウプの考え方では、給与所得者だけが控除を受けるのは適切でないというような考え方がございました。それに対して、日本の従来の制度からの理由といたしまして、一つは、給与所得者といえど本勤務を完遂するために必要な経費があるはずだ、その経費というのは非常にこまかくてあるいは計算ができないかもしれないが、その概算控除的な意味としての控除は当然必要である、これが第一点であります。  第二点は、源泉徴収を受ける給与所得者の場合は、三期に分けて申告納税する場合に比べて、やや利子の分だけ前取りされている結果になるということで、その利子相当分に対する報償が必要であるということが第二点。  第三点といたしましては、資産を持って事業を営む事業所得というのは、資産と勤労の結合した所得である。ところが、勤労所得というのは全く勤労だけの所得であるので、そこに担税力の差異があるのではないか、そういうものをばく然と含んで控除を考えるべきではないか。  この三点ぐらいが給与所得控除の原因と申しますか、理由であるということを解明をいたしました。それで給与所得控除が残ったという経緯がございます。私ども考えても大体そんなところじゃないかと思います。
  253. 平林剛

    ○平林委員 大体そんなところではないかという解説があったわけでありますけれども、一体、今日所得税負担というものがたいへん重い。そしてまた、国民の生活に税金が食い込んでおるという状態になってまいりますと、この給与所得控除をもう少しいろいろな比較の面において妥当なものにする必要があるのではないだろうか。今回の改正というものは、それではいまお話しになった給与所得を得るための概算控除、あるいは源泉を受けているための他の事業税その他申告者と比較しての不利な面、つまり利息相当分、資産を持たない階層であるから担税力が弱いところをカバーするという意味、これは一体どんな割合ででき上がっているのか。いわば概算控除的なものはどのくらいあるのか、それからまた利子相当分というようなものは一体どんなふうに計算して、どのくらいの割合なのか、どうでしょうか。ある程度ばく然として、大体そんな見当だなんていうことでわれわれはやはり税法を取り扱うわけにまいりませんので、その点、もう少し明確なお答えをいただきたいと思うのです。
  254. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いま申し上げたのは、給与所得控除を認める理由のものでございます。もしこれがわかるのならば、それぞれ分類をして何々控除といえるしろものではないか。要するに、そういうことはなかなか計算できないところが給与所得控除のむずかしさでございまして、そこで給与所得というものの課税の実態、事業所得課税の実態等を勘案しながら、具体的に妥当なる数字を求めるということが課題であるかと思います。したがって、どれがどの金額であるということが明確にできないのがこの給与所得控除のむずかしいところだと思います。
  255. 平林剛

    ○平林委員 包括的にいえば、そういう分類といいますか、積算根拠を明らかにすることができないものだから給与所得控除として概括的に控除してあるのだ、まあいわばわからないと、こういうことですけれども、そういうことをやろうと努力をしたことはあるのですか。一応こんな見当じゃないかというふうな試算の努力はしたことがあるのですか。全くなくて、ばく然とそうやってきまっちゃってきているものでしょうか。何か努力してあれば、ある程度見当がつかないものではないと私は思うのですけれども、そういう試算はやってみたこともないんですか。
  256. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いま申されたのは、実はこの問題については何と申しましても税制調査会でも中心課題なものですから、何回もいろいろ検討いたしましたが、結局長期答申の答えでも、いま私が申したことは、それぞれ根拠があるけれども、それを具体的に数字にすることはむずかしいので、「これらの困難を解決する唯一の手段としては、結局画一的であってなんらかの基準によって概算的に控除を認め給与所得控除による方法以外にはないと考えられる。」こういうことを言っているわけであります。  そして、努力をしたかというのは、実はだいぶ昔でありますが、やったのでございます。何とか給与所得控除を引き上げようじゃないかというので、私どもがまだもっと若いころでありますが、一生懸命全部の職員がモデルになって書き出したのでございますが、遺憾ながら、それを出してみましても、どうもここでごらんに入れるようないい数字が出ない。給与所得者の必要経費を厳密に洗いますと、なかなか出てこない。やはり全体の課税水準というものを考えながら、収入金額の一定割合を徐々に合理化していくよりほかないのではないか、こういうことになるのではないかと思います。
  257. 平林剛

    ○平林委員 吉國さんが若いころおやりになったというのだから、もう一回そういう気持ちになって、あなたは一番当面しているんだから、やってもらいたいとぼくは思うのですよ。というのは、事業所得者、それから一般の給与所得でも、申告の場合もそうでしょうし、実際の徴税あるいは課税対象になる場合、必要経費というのはかなりいろいろな角度から議論されている問題です。ところが、サラリーマンだけは給与所得控除ということで、おおまかな理由はあるけれども、あまりはっきりしない根拠で包括的にきめられてしまっておる。これはやはり問題があると私は思うのですよ。でありますから、これはひとつもう少し試算のようなものでもいいし、今日の状態でどの程度までできるかということをやってもらえませんか。
  258. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これはなかなかむずかしいので、やってみないかと言われますと非常につらいところでございますが、基準をきめるのもむずかしゅうございますし、私どものいま考えておりますところでは、概算経費控除的なところがやはり一番大きい理由だと思いますので、そういう意味ではいまの控除の頭打ちがあまりにも下のほうにあり過ぎるのじゃないか、所得がふえていけばある程度以上はもう無経費だというのも、ちょっと給与所得控除の場合酷に過ぎるのじゃないかという感じはいたします。そういう意味でことしも百万円まで控除限度を上げた、そういう解決。それから給与所得に対して何%ぐらいが適当かというようなことは、そういうところをいろいろ詰めていくよりしようがないのじゃないかという感じを持っております。
  259. 平林剛

    ○平林委員 いまお話しになった中で、私は次の疑問は、給与所得控除の内容から見て、現在の制度では最高額をきめておるわけですね。今度二十八万円にするのですか、これは所得がだんだん違ってきても同じようにそれでやる、これは一体どういう理由かということを私は実は聞きたいのですね。もしも給与所得を得るための概算控除の部分があり、かつ源泉のための利子補給分もあり、そうしてまた第三の理由は、資産を持たない担税能力という点からいくとやや欠くるところがあるかもしれませんが、一、二の例を見ましても、最高額を頭打ちにしておるということにはやはり一つの矛盾がある。そこで、私は給与所得控除全般について見直す必要があるという考えを持ったわけでありますけれども、最高額を限定しているという理由はどこにあるのでしょうか。
  260. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは沿革的なものもございますし、同時に、ある程度所得を得るというための経費というものは固定しているという部分がございますから、確実に給与所得に比例するとはいえないと思います。だんだん大きな所得になっていけば給与所得の経費というものが減っていくというのは一種の常識で、その常識をどの程度に反映していくかということで限度額を置くのはやむを得ないと思いますけれども、その限度額をどの程度に置くかが今後の問題じゃないかと思います。
  261. 平林剛

    ○平林委員 私は、この給与所得控除の沿革をいろいろ調べてみたのですよ。昭和十年当時は収入金額が一万二千円以下の人に限って六千円までは二〇%、六千円をこえて一万二千円までの人は一〇%という形で給与所得控除というのを定めた時代もございますけれども、昭和十五年、昭和二十二年、昭和二十五年、昭和三十二年と、だんだんにそれぞれやり方というものが変わっているわけなんです。この最高限度額というのが生まれてきたのが昭和二十二年の改正でありまして、そのときには一万二千五百円というふうにきめられ、二十五年には三万円にきめられ、三十二年には十二万円に定められ、いま改正する前は十八万円、二十二万円、二十八万円と、こうなっているわけなんです。ところが、何を根拠にしてこの最高額——さっきのお話しの理由ならば、ある程度何かを基準にしてスライドしていくというようなことがなければならぬはずなんですね。だってそうでしょう。その所得を得るための概算控除ということになれば、時代とともに所得金額が多くなってくるのだから、それに対する概算控除も多くなるはずだ。また、源泉の分であるということを前提にすれば、その分もふえてくるはずだ。ところが、最高額をきめた昭和二十五年から二十六年、二十七年、二十八年、二十九年、三十年、三十一年、七年間三万円で据え置かれているわけです。その後昭和三十二年にも最高が十二万円になったけれども、三十三年、三十四年、三十五年、三十六年、三十七年、三十八年と七年間据え置かれているわけですね。そうすると、あなたは、これは大体総括的にいえば給与所得を得るための概算控除であり、源泉をやるという意味で、あとで一括やる人たちとは違って、利子相当分の補給の意味もあると言うけれども、理屈になってないじゃないですか。だから私は、あなたは定義されたけれども、従来の沿革から見ると、そういうような定義に当てはまっていませんというのです。いかがなものでしょうか。
  262. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは最初に申し上げたように、理論づけでございまして、これがこういう理論で基礎づけているということでございます。そこで二十二年に限度という形にしたのは、これは分離が総合所得税に変わったという関係で前の制度を読みかえたわけです。やはりある程度限度というものは、いわば経費逓減の法則から出てまいります。それを税の上でミニマムまで書くわけにいかないので、二割、一割ということで、次はゼロ、こういうことで技術的に解決している、こうお考え願うよりしようがないのじゃないかと思います。ですから、おっしゃるように所得がふえる、所得水準がふえると、理論的にも経費の部分もふえるのではないかという推定は成り立つ、それがこうやってだんだん給与所得控除が上がってきたゆえんだと思います。  ただ、一方において、さっき申し上げましたような担税力とか、三つばかり申し上げましたが、よく世の中では、事業所得は把握が悪いのだ、だから公平のために引けという議論もあるのですが、それはどうもそこまではやれない。なぜかと申しますと、そうやれば、申告所得税のほうは給与所得相当分ぐらいは割り引きして申告すれば済むのだということになったのでは、申告納税制度は成り立ちませんから、やはりこの三つぐらいを一つの理論として、そうして妥当な数字を検討していくよりしようがない、こういうことだと思います。
  263. 平林剛

    ○平林委員 理論づけが、従来の例では非常にあいまいだということはお認めになると思うのです。いまのあなたのような理論づけをいたしましても、七年間ほうっておいた、二十二年の場合も七年間、それから昭和三十二年以降も七年間ほうってあったということは、あなたの言われた理論づけというものは崩壊をしておる。これからはやはりその理論づけをしっかりして給与所得控除というものを考えていかねばならぬなというお考えはあるのですか。
  264. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 おっしゃるとおり、私どももできるだけ給与所得控除というものの性格づけをはっきりしたいという気持ちは持っております。その点がいつも所得税の問題の中心問題になることは事実であります。今後税制調査会等でもこの点をもっと掘り下げて研究していただきたい、かように思っております。
  265. 平林剛

    ○平林委員 もっと検討していただくというお話ですからこれ以上言いませんけれども、私は、現在の一般のサラリーマンが、今回の法改正によって行なわれる定額控除にいたしましても十分ではない。このごろのサラリーマンは、やはり月給を得るためには、ひどい混雑した電車に乗らなければいかぬことになっておりますから、洋服の消耗率だって昔とは段違いだと思うのですね。くつだって、ときどきはがされてまた買いかえしなければいかぬですよ。世の中が少しはでになってくると、しょっちゅう百円のネクタイばかりしているわけにいきませんから、たまにはちょっといいネクタイもしてみたい。ワイシャツだって、このごろはなかなか便利なものができておりますから、自分もああいうのがほしいということになりまして、かなり経費がかかるわけです。昔は弁当を持っていけばよかったけれども、いまは弁当を持っていかないで食堂で御飯を食べなければならぬということになりますと、そういう経費も要るし、喫茶店がやたらにできれば、お休み時間にちょっとコーヒーぐらい飲みたいということになるわけです。これは私は、ある意味では昔と比べると、今日のサラリーマンは所得を得るための経費をかなりかけているというふうに思うわけですね。今回の改正が妥当であるかどうか、私はその点には非常に疑問を持っているわけです。それを包括的な、いわばつかみ的な考え方だけでサラリーマンの給与所得控除をきめるということはいかがなものであろうか。もっと大蔵省は、一般のサラリーマンの気持ちになって、こうしたことについて、所得税の基本的な課題だとおっしゃるなら、あいまいにしないでほしいと思う。もう少しこの点を詰めて、最も妥当なるものをやらない限りにおいては、今回の所得税改正の措置は、私はそういう意味の批判を免れることはできないのじゃないかと考えるわけでありまして、ひとつ税制調査会には頭のいい人もたくさんいるし、吉國さんも若いころおやりになったということですから、もう一回この問題はやり直しをしていただいて、次の機会にはもう少しはっきりした、論旨明快なる御答弁ができるように私は期待をしておきたいと思うのであります。  ただ、ついででありますからもう少しこの問題について聞いておきますと、一時税制調査会でも、ただいまのような議論があったかどうかは知りませんけれども、課長さんだとか部長さんだとかいうような人は、一般のサラリーマンと違っていろいろな支出がある。まあ課長さんぐらいになると、部下の者が結婚でもするとお祝い金を千円包むか二千円にするか苦労するでしょう。それから、おい、きょうは残業をやれと言っても、課長の尊厳を維持するためには、たまには焼き鳥屋ぐらいは連れていって一ぱい飲ませなければならぬということもあるでしょう。中には、慰安会や何かがあって会社がどこかへ旅行するとすれば、課長さんきょうは一ぱい出るでしょうと言われて、よけいお祝い金ぐらい包まなければならぬ。これがいまの生活状態だと思うのですね。ところが現在、これも必要経費というかどうか、ことばの語源は別といたしまして、給与所得控除がいままでは最高二十二万、今度は二十八万に押えられているわけですね。一般のサラリーマンの定額控除、それから。パーセントによるもの、最高額を比べますと、ややその点については一般の感じからいって何とかすべきものではないかという議論は私はあり得ると思うのですね。これについて大蔵省はどんな考えを持っていますか。
  266. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いまのお話は、実は私来る前でございましたが、税制調査会の中にそういう議論があったのかどうか、それを反映して朝日新聞が紹介をしたということらしいのでございますが、あれが非常に話題になったところを見ると、そういう要望が強いなということは当然わかるのでございます。いまの必要経費論というものも時代とともに進歩するはずであります。給与所得者の必要経費というものの見方も、社会生活が変わってくれば変わってくると思います。それが最近盛んに給与所得控除が引き上げられてくる理由でもあるかと思います。先生おっしゃったように、昔は七年に一ぺんぐらいしかし上げない。給与所得控除というのはほんとうはないのだというくらいの気持ちがあったのかもしれません。しかし、給与所得控除が給与所得者に対しては一つ理屈のある控除であるという感じが出てきたのが最近の姿である。そういう意味で、今後給与所得控除に対する考え方をより深めていくつもりでやっていきたいというふうに考えております。
  267. 平林剛

    ○平林委員 そういう考えでやっていく場合に、これはどういうところに線を引くかというのは非常にむずかしいと思うのです。課長さんといっても、一等課長から三等課長まであるし、小さな会社では重役なんて名前をつけるのもありますし、小さな法人になれば、七十万もあればおやじのほうが社長で女房が専務取締役というのもありまして、どこに線を引くかというのは非常にむずかしいと思うのです。対象を一体どういう程度にやるかということも出てくるでありましょうし、また伝えられておるように、それぞれによってパーセントを変えていこうというようなこともありましょうし、そういうようなものについてはどうなんでしょうか、何か御研究になったことがありますか。そしてまた、ある程度しぼられた線でやるとするならば、どのくらいのお金が必要なんだということもやってみたことがありますか、全くありませんか。
  268. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 やってみるというような形ではないのでありますけれども、税制調査会等でも、たとえば経費が実際に引いてやれるかどうかとか、いろいろなことはやってみた。しかし、実際問題として、いま源泉徴収されている給与所得税を、実際の経費で差し引きし直して洗い直すというようなことは、実行上もむずかしいし、そういうかっこうをとっているところも、定額控除や選択を認めて、実際の行政では定額控除だけになっているというのが実情であったりいたしますので、やはりこういう個別の経費控除ということは無理だという結論が出ているわけであります。どれくらいに分けるかということはやってみてはおりません。
  269. 平林剛

    ○平林委員 これも、先ほど言いましたサラリーマンのいわゆる給与所得控除、俗にいえば必要経費の検討と同じように、近い機会にやはりある程度皆さんの中でも研究をしてもらいたい。  ただ、そこで実は注文をしておきたいわけです。いきなりこの問題に取りつくと、やはり別な意味の批判が出てくると私は思うのです。それはなぜかというと、いまの七十万くらいの法人の中の三等課長あるいは三等に通ずるかどうか知らぬが、もっとひどい重役さんや役員みたいなものもありますし、ある程度一流、二流くらいの役付の人もあるし、いろいろあります。ただこれを、一つの大きな会社を例にとりますと、直ちに課長だからこの程度必要経費が要ります、部長だから要ります——大蔵省や各官庁は別にして、民間のほうをやる場合に、ある意味ではそうした経費が会社の交際費という形で落とされているということを十分考えていかなければならぬのではないかと思うのです。昨年でしたか、国税庁が昭和四十一年度年間の交際費を発表しておりましたね。大体金額では五千九百億円ぐらいになったでしょうか、全法人七十万の総売り上げ高といいますか、そういうものが、所得が三兆円をこえるとすれば、その交際費は約五分の一。私、かつて問題にしたことがあるのですけれども、こうした株式会社の配当金と大体同じぐらい交際費を使っておる。国家予算で見れば、五千億円も六千億円ものお金を使うということになると、去年あたりの予算ですと、大体文教費に相当する。文教予算が大体六千億円ぐらいでしたからね。文教予算に相当するものが大体飲み食い——全部が飲み食いとは言いませんけれども、交際費としても使われておる。ですから、一般のサラリーマンの必要経費は、これはあれですけれども、役付の人の問題についてある程度矛盾があるのですから、是正をしたほうがいいと私は思いますけれども、そのときはあわせて交際費についてやはりメスを入れてからでないと、これは軽々には打ち出せないのじゃないかという感じがしておるわけです。そこでいかがでしょうか、この交際費というものとかね合いでこうした問題は考えるというような構想に大蔵省は立っておるかどうか。
  270. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先ほども申し上げましたように、部課長減税ということを大蔵省がまともにやってみたわけではないので、したがって、いまのような御意見もそういうことをやっておれば当然考えるべきことだと思いますけれども、その方向に進むかどうか、これはまた将来の検討事項だと思いますが、もしそういう方向が考えられるとすれば、おっしゃるとおり交際費を個人別に問題にするということはあり得ることだと思います。
  271. 平林剛

    ○平林委員 もう一度給与所得控除の点で取り上げておきたいことがあるわけですけれども、それは給与所得控除、一般のサラリーマンにとっては私は必要経費だと思います。利子とか担税力が弱いという点の部分を除けば、いわばその給与所得を得るための必要経費、こう見てよいのではないだろうか。そうすると、これは担税力の弱い、また自分のからだだけしか資産のないサラリーマンが職場において給与所得を得るための絶対必要額、私はそういうふうな定義のしかたもできると思うのです。この場合、いまのわが国の税制のもとでは、課税最低限をきめる場合に、この必要経費というものを積算の中に入れてない——入れてないというか、主として今日まで議論をされていたのは飲食物費、それがエンゲル係数でどうのこうのというような理論で、憲法にいうところの生計費にはこれを課税せずという形で課税最低限というのを定めておったわけでありますけれども、先ほど私が申し上げた定義がある程度常識であるとするならば、課税最低限というものは、それも積み上げて計算をしなければならないのではないかという疑問を持っておるわけですが、これはいかがでしょう。
  272. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 そこが非常にむずかしいところでございまして、一般世帯の生計費と給与世帯の生計費の調査と実際は内容はほとんど変わらないわけです。そこがなかなか解釈しにくい点でございまして、したがいまして、いまのところは両方一体にして考えているということになっております。
  273. 平林剛

    ○平林委員 一体にして考えているというのは、そういうことも含まれているわけですか。
  274. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この生計費調査でも、給与収入別にやっておりますし、給与課税最低限は、給与の収入金額から給与所得控除を引き、それから基礎控除を引くということになりますので、そういう意味では、いま生計費調査はもとにしておりませんけれども、あれの中にはやはり給与の必要経費というものが含まれて算定されてできたものだ、こう解釈していただいてかまわないと思います。
  275. 平林剛

    ○平林委員 いや、そう解釈してかまわないと言うけれども、私はむしろ給与所得控除というもの、サラリーマンの必要経費というものを考えていくと、今日の課税最低限にそうしたものも加味して最低限度額をきめなければ適当ではないのじゃないかという疑問を発しておるわけです。
  276. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いま申し上げたように、給与課税最低限は、まず給与所得控除をやって、それから基礎控除を引いているわけですね。給与のほうの家計調査も、いわば家計支出として出ているものは必要経費であるというものも全部書き出しているわけであります。事業所得やあるいは法人であると、経費が落ちたあと所得給与の場合は全部書いてあるわけですから、そういう意味では課税最低限も同じベースでできている、こう言わざるを得ない。ただ、それが家計調査ではみんな同じようにできているというのが一つの問題ではあると思います。
  277. 平林剛

    ○平林委員 この問題はまだあるけれども、給与所得控除の問題はこの辺にして、やさしい問題はこのくらいにしておきましょう。この次にまたもう少し議論をさしてもらうことにして、とにかく、いずれにしてもこの問題は近い将来ひとつ検討していただきまして結論を出してもらいたいと考えておるわけでありまして、この点は要望しておきたいと思うわけであります。  第二の問題は、第八十九条の改正で、税率が今回課税所得十万円以下の金額に対しては百分の九から百分の九・五に引き上げられた点でありまして、さっき広瀬さんも質問していましたから、重ねてのお尋ねはしないつもりでいますけれども、私ちょっと聞いておきたいのですが、階層別の所得税負担の調べによりますと、大体こんなふうになっているはずです。三十万円以下の人は三百十一万五千人いる、それから五十万円以下の人は五百九十四万六千人いる、七十万円以下の人は四百五十二万二千人いる、百万円以下の人が三百二十一万三千人いる、これを合計いたしますと千六百七十九万六千人、つまり全納税者の八八・八%は百万円以下の所得者、階層別にいえば。これは大体昭和四十年ぐらいの資料で私見たのであります。いまは四十一年、二年と、多少変わっていると思うのです。大体そんなふうに私承知しておるわけなんですけれども、何かあとでないと資料がつかめないのですか、最近のものはどんなぐあいになっているかというのは、いますぐそこでわからないのですか。
  278. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 さっき申し上げましたように、両方総合した資料は実際むずかしいわけでございます。いまおっしゃったのは、おそらく四十年の資料を、給与所得者の分と申告納税所得者の分とを合計なさったと思うのですが、給与所得のほうは収入階級別に出ておりまして、申告納税所得者のほうは所得別に出ているわけなんです。しかも両方が重複をしておりまして、給与所得の収入金額で出しました分が、申告いたしますと申告納税のほうにも載っておるわけでございます。この重複を全部洗って直すということは実際たいへんな手数でございまして、まだ一ぺんもやったことがないのです。そこで、御議論願うときは、給与所得の収入金額の階級別でお話し願えばある程度真相に近いものが出るのではないかということで、先ほど給与所得、申告別にでき得る限りの資料を提出いたしたいと申し上げたわけであります。
  279. 平林剛

    ○平林委員 私も最近忙しいので、どうもいろいろな資料を見る時間がないのですけれども、大蔵省の資料をいろいろなところから洗ってみると、いまのような数字が見つかったわけなんです。ところが国際的の比較の数字がどうもないんですね。それで大蔵省の資料をいろいろ見ても、日本では百万円以下の人が、いま私の分類で、昭和四十年で全納税者の八八・八%を占めているのに対し、アメリカではどのくらいかというと、アメリカでは昭和三十九年で一五・七%、イギリスでは昭和三十八年で六七・六%、西ドイツは、これは昭和三十六年八六・四%、七年も前の資料しかないんですね。これはとても国際的な比較をするわけにいかないのですよ。だけれども、私は、日本の階層別、特に低所得階層がかなり税の重みに耐えているということを考えると、国際比較、どうも三十六年や三十八年の数字で対比して議論していたんじゃ話にならぬというふうに感じたのです。少なくとも、西ドイツにいたしましても、イギリスにしても、アメリカにしても、経済成長をしていけば所得も多くなるのでしょうし、この百万円以下の人の割合というのは、たぶんいま私が申し上げたよりももっと低目になっておる。日本でも、これは四十年ですから、いまは少なくなっているかもしれませんけれども、相対的にぐんと少なくなっている。よく大蔵省政府のほうは国際的比較を言われるけれども、私は、日本ほど低所得階層が税の負担をしておるという国はないんじゃないだろうか、こういうふうに思うのでありますけれども、資料のことで恐縮ですけれども、アメリカ、イギリス、西ドイツ、この国際比較について最近の年次のものは、いまでも大蔵省はお持ちになっておらぬでしょうか。
  280. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いま仰せになった数字しかないんでございますね。つまり、日本ほど統計を詳細につくる国はあまりないのですな。日本が一番進んでいるのじゃないか。  それともう一つは、いまおっしゃった年次の分はいまでもある程度はお使いになれる。なぜかと申しますと、これらの国々の所得伸びがわりに少ないのと、課税最低限を上げておりません。日本の場合は毎年上げておりますから、下のほうはどんどん落ちてまいります。その関係でだんだん上へずり上がってくるという傾向が顕著でございますが、ほかのほうはある程度は古くても使えるという感じはございます。
  281. 平林剛

    ○平林委員 資料の面から申し上げますと、私は、いますぐ手元に大蔵省の資料がないからかちっとしたことは言えませんけれども、概括的にいえば、昭和四十年の調べで年間所得が百万円以下の人が千六百七十九万人、全納税者の八八・八%を占めているということ、それからまたアメリカ、イギリス、西ドイツという国、これも古い資料でございますけれども、それぞれの国と比較いたしまして、日本ほど低い所得の人にまで税金がかかっている国はないということ、これだけは私はいえると思うのです。その中で今回税法第八十九条の税率を改正して〇・〇九から〇・〇九五に上げてきたということは、さっきの広瀬さんの質問を聞いていて私ちょっと憤慨してやじを飛ばしたのですが、計算しやすいからと、こういうのですね。それは税制調査会では漸次この税率を上げろというお墨つきはいただいているけれども、私に言わせれば、あれは大蔵省のあなた方が書いたやつを大体まとめさして、税制調査会の会長がまあいいだろうといってこれを調査会の案にした、言い過ぎたかもしれませんが、大体そんなところが真相だと思うのです。そういうようなことをしてきめていくのですね。私は、非常に低い所得の人に対する思いやりを、もう少し大蔵省のお役人さんは指導性があるだけに持ってもらいたいと思うのです。こういうことをやっておるから、いつまでたっても納税者が二千万人だ、あるいは二千万人をこえるという状態が解決できないのじゃないだろうか、こう思うのでありまして、どうなんでしょうかね、これをただ機械的にそうなっているからというだけで上げていいものでしょうか。
  282. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先ほど申し上げましたように、所得税所得再分配機能というものをほんとに発揮させるためには、できるだけ納税人員は少ないほうがいい。そしてその上のほうの税額で必要な税収が得られることが望ましいということになりますと、できるだけ課税最低限を引き上げて、担税力の強いところから課税する。そのかわりに最初の税率はかなり高いところからいくというのが理想だと思うのです。そういう意味では、日本税制では、ほかの国と比べて八%というのはやや低過ぎる。ということで、これは少しずつ引き上げていったらどうか、ただその場合に独身者が非常に過酷になるのじゃないかというので時期を見ておりましたが、最近の三回の改正では、いずれも給与所得の定額控除を引き上げて、基礎控除と合わせてかなりの引き上げが行なわれますので、この際にやろう、事業所得の独身者というのは全くいないくらいですから、これが一つのチャンスである、そしてできるだけ課税最低限のほうを引き上げるほうに努力を払うというのが私どもの考えでございます。私どもと言ってはいけませんが、税制調査会並びに私どもの考え方でございます。     〔委員長退席渡辺(美)委員長代理着席
  283. 平林剛

    ○平林委員 いや、いまのことは本音ですよ。私は、その点は少し形を整えるということが大事だし、いまのお考えわからぬことはないけれども、何しろ日本納税者分布から見てもわかるように、圧倒的に低所得——納税者といえども、税金を納められるほうがいいやといったって、税金を納める人は圧倒的に低所得の人が多いわけですね。そして率直に申し上げまして三十万円以下の税の負担というのは、全般の割合から見てそんなに多いものじゃないのですよ。むしろ日本税制は、もっと高額の所得者のほうに対して、担税力のあるところをねらって、それから取れるべき税金のところは取っていって、こういうところは諸外国並みにもう少し軽くしてやる、もう少し若い人に希望を持たせるような税制をひとつやるべきだと思う。私は小さいときやっぱり所得があったけれども、税務署がどこにあるかなんて知らなかったですよ。実際いって相当の偉い人でないと税金を取られなかったのです。これは若い人より世帯主、世帯主より子供の多い人のほうがたいへんだというようなことはわかりますけれども、そのかわり受けるべき恩典も別な意味であるわけですから、昔からわれわれが議論しておりましたように、高校卒業したての子供から税金を取るとかいうような制度は早くやめる必要がある。大臣やなんかは、いや、そういうことはなるべくやめると言うけれども、大蔵省のほうが形を整えるために〇・〇〇五ずつおまけしてふくらましていくんですから、われわれが考える政治にわれわれの希望がちっとも反映していないんですよ。大蔵省は悪いところだと私は思うんですよ。そういう点は、きょうは私もう少し主税局をいじめておかなければならないと思いまして、この問題を質問しておるわけであります。考えてもらいたいと思うのです。特に年間三十万円の人は今度の税法改正で大体どのくらい税金がまかるんですか。
  284. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 独身者の給与所得者でございますと、今度の減税税額が全部まかることになってゼロになります。
  285. 平林剛

    ○平林委員 いままで幾らかかって今度はゼロになるわけですか。
  286. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いままで千二百七十円かかっておりましたが、それが全部落ちるということであります。
  287. 平林剛

    ○平林委員 給与所得の収入が年間三十万円ぐらいある人、これは私のさっきの計算でいくと三百十一万五千人、これは昭和四十年ですが、かなりの数の人でございますね。その人は一人大体千二百七十円ずつおまけになる。おまけになるというか、いままでかかっていたものがかからなくなる。そうすると一月に大体百円ですね。百円だけおまけになる。そこで一月に百円おまけになるんだけれども、これは減税してやるんだからと、政府はいばっているでしょうけれども、春闘というのがあって今度賃金が上がるわけですね。それで日本の労働団体は、総評にしても全労にしても大体七千円から一万円ぐらいの要求をしているわけですね。しかし、年間給与所得三十万円ぐらいのところですと、普通の例でいくと四千円、このごろ若手の労働力が不足だということで大体四千円、いいところは五千円ぐらい上がるところがあるんですね、若い人たちがほしいというので。かりに四千円アップしたとすれば、せっかく百円減税してくれたんだけれども、今度の春闘で四月あたりに大体賃金がきまってきますね。これらの階層の人が月給四千円上がってきたら税金はどのくらいになりますか。
  288. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いまちょっと概算をしてみますと、年間四千円ぐらいになるんじゃないかと思います。
  289. 平林剛

    ○平林委員 私が計算したところによると、大体月に四千円のアップをすると、ボーナス大体三カ月か四カ月ぐらい入れますと、年間七万円ぐらい所得がふえるわけです。そうすると税額は六千四百円になるわけです。税額六千四百円ふえる。そうすると、今度の税法改正で三十万円以下の人、もう一回言いますよ、三百十一万人の人は百円ずつ月に減税になったといたしましても、かりにベースアップがあって賃金が改定をされますと、百円どころじゃない、かえって来年の三月ぐらいまでは税金が私の計算でも五百円ぐらい上がってしまうところがある。月に五百円ぐらい上がってしまう。大体所得が上がらないということを前提にすれば減税の恩典はあるかもしれないが、多くの勤労者は春闘その他で所得が上がるということを前提にすれば、ちっとも減税効果がないということになるわけです。そういう計算になるでしょう。
  290. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これがそうなるとぐあいが悪いのです。所得のほうは五万円ふえているわけですから、それでなお減税になるようにというのは非常に無理な話でございまして、所得がふえれば税金は上がるというのは当然な話なんで、そこまで織り込まれては困る。三十万円の人は現状でこれだけまかる、三十五万円以上に上がったときには、三十五万円ならば幾らかかったけれども、今度は幾らになったから幾らになる、こういう計算になると思います。日本のように所得がどんどん上がる国はほかにないのでございますから、それこそほんとうをいえば、所得が上がれば現行の累進税率が上がるのはあたりまえだという人が多いのですけれども、それをあえてそれでは上がり方が激し過ぎるというので減税をしているというのがいまの実情だと思うのでございます。
  291. 平林剛

    ○平林委員 いや、それは理屈所得が上がるからそれだけたくさん税金を納めるのはあたりまえだ、こういうことはあっても、いまの国民は政治に何を求めているか。減税といったら一体どういうことなのかということは考えますと、減税とはやはり自分がいままで納めていた税金より少なくなることが減税だと思っているのですよ。ところが、年間所得三十万円の人は、国会で今度所得税改正になって減税になったんだよ、こう言われて、半年かそこらたって月給袋を見れば、四百円、五百円、また税金を取られていることになるので、これは減税をしたけれどもちっとも減っていないというのが偽らざる実感だと私は思う。理屈はあなたの言うとおりですよ。理屈はそのとおりですよ。だけれども、国民生活というのは理屈どおりじゃない。ですから、私の言いたいことは、今度のような所得税減税じゃ足りませんということを言っているのですよ。こんなものでは減税といっても、国民が政治というものはいいものだな、佐藤内閣というのはたいしたものだなと思いやしませんということを私は言いたいので、今度の場合でも減税額は過少ですよ。そこへまた〇・〇九を〇・〇九五に大蔵省数字合わせによってやられるのですから、どんな気持ちを抱くでしょうかということなんですよ。わかったですか、主税局長。
  292. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 たいへん冗談を申して申しわけないのですが、前の主税局長の塩崎さんが大阪国税局長をやっているときに、今度の減税でおれの税は減らないでふえたと言ってきまして、かつての課長補佐に頭ごなしにやられて頭をかいたことがございますが、あるいはそういう感情はあり得ると思うのでございますけれども、毎年減税をしてきたということでございますが、たとえば個人の所得というのは非常な勢いで伸びております。その個人の所得に対する所得税負担率というのは、この十数年間ほとんど上がっていないということは、それだけやはり税率を下げ、課税最低限を上げているわけなんです。ですから、実態的には所得が非常にふえたにかかわらず所得税負担率はほとんど変わっていない。これは所得のほうは三倍になっているけれども、税負担率は依然として平均的にいいますと三分の一の実効税率くらいになっているのですね。ですから、これは説明しなければわからないというのはなかなか弱点ではございますが、日本所得が毎年ふえているもので、税金のほうは働けど働けど楽にならぬという感じを残すというのは、これはむしろ日本所得伸びという特殊性にあるんじゃないか、かように考えております。
  293. 平林剛

    ○平林委員 主税局長、あなたそんなことを答えているけれども、腹の中はくすぐったいでしょう。あなた自身だって、いまの税法の制度というのは、減税をやっていてもちっとも減税になってねえやということを実感としてあなたいま持っているはずですよ。それで理屈言っているんだから、腹の中はくすぐったいと思うのだ。そういう意味では、ことしも税の自然増収が九千億円くらいもあるときですから、この程度減税ではあなた自身も不満足だろうと、私はおなかの中を察しますし、国民はなおそれより輪をかけて考えておるということをしっかり頭に入れて、大体低額の人を、数字を合わせてちょうどぐあいがよくなるなんということにあまり固執せずに、それこそこれを七年間くらい延ばしておくような考え方でいいのですよ。さっきの給与所得控除じゃないですけれども、七年間ほうっておいたときもあるのですよ。方向としてはそうだとおっしゃるけれども、こういうような調整減税をやるたびに直すというような根性は改めて、少し延ばしたらいいじゃないか。一回くらい見送りをしてこの次にしよう、そういうことを、あなた方大蔵省の頭のいい人が発想してやるくらいの気持ちになったら、大臣や閣僚たちはそれはもうそうなるのですから、ぜひひとつ、そういうことを頭に入れておいてもらいたいのです。  特に、先ほどたばこの問題や酒のことについてお話がありましたけれども、国鉄の定期の運賃値上げ考えたって、そのとおりなんですよ。大体二十五日か六日に運輸審議会を開いて、そうしてそこで国鉄の定期の値上げをきめるでしょう。そのとたんに一般の国民は——ちょっと資料で調べてみますと、信濃町あたりから乗っかって東京駅まで通うサラリーマン諸君は、今度の定期代だけで月に百六十円上がるのですよ。新宿から東京に通っている人は一月で二百十円上がるわけです。中野から東京のほうにつとめている人、これは二百五十円も上がるわけですね。荻窪あたりに住んでおる人は二百六十円も上がる。最近は遠距離通勤というのがはやっておって、やむを得ず郊外から通っておる。たとえば市川あたりから来ると、これもやっぱり二百五十円くらい上がるし、千葉から来る人は三百三十円も上がってしまう。それから鎌倉あたりから来る人は四百二十円も上がる。所得の多い人が遠くにいてくれて、所得の少ない人が近いところにいればバランスがとれるわけですけれども、こればかりはどうも、所得が多いからおまえは遠いところに行って、おまえは所得が少ないから近いところにというわけにいかないので、同じようにみな上がるわけですね。そうすれば、たとえば年間所得三十万円くらいのサラリーマンは、みな同じような率で上がってしまうわけでありますから、減税が月に百円ありましても、定期代だけですっ飛んでしまうし、それより倍になってしまう。こういう程度のものであるということを、私はやっぱり頭に入れてもらいたいと思うのですがね。そうして、酒、たばこということになりましたならば、政務次官、さっきあなたおっしゃっていたでしょう、いや増税にはなっていませんと、こう言うけれども、増税ということばは、厳格にいえばそれはいろいろな議論があるかもしれませんが、国民生活における負担というものが増加しているということは認めないわけにはいかないと思うのですが、いかがでしょうか、政務次官。
  294. 倉成正

    ○倉成政府委員 先ほどからお答えいたしておりますように、酒、たばこというのは嗜好品でありますから、酒、たばこについて特にそれを飲む人、そういう人に限定いたしますれば、負担が重くなることは御指摘のとおりであります。国鉄定期の部分についても負担がかさむということも御指摘のとおりだと思います。  それからもう一言、減税の点でありますけれども、実質減税ほんとうにもう国民が、去年納めたものよりも、ことし納める税金が絶対額で少ないということになりますと、税全体が、それを足してまいりますと昨年よりもことしは少ないということになりますから、それはなかなかむずかしい。理論家の平林先生はもう御承知でおっしゃっておることと思いますが、やはりこれは負担率考えるべきだと思います。
  295. 平林剛

    ○平林委員 私は、国民は租税の負担率が何%なんということはあんまり関係ないと思うのですよ。ですから、現実の問題からひとつ直視して国民生活を考えてもらいたい。かりに国民租税負担率が二〇%になろうが、二一%になろうが、あるいは一九%になろうが、そういうものとは関係ないですよ。私は消費者物価指数だってそうだと思うのです。四・五が四・三になったから暮らしが楽になったなんて考えている人は統計学者くらいのもので、あるいは統計学をそのままうのみにして政治をやろうとする人たちの考えであって、国民生活はそれとは関係なく、重い軽い、そして苦しいということを感じておる。それを忘れて政治をやっていったのでは、私はこれはお役人さんの政治だと考えるわけでありまして、理論だけで問題は解決できないものであるということを頭に入れてもらいたいということです。  それでは次の問題に移りますが、法人税の問題につきまして、景気調整措置に関して景気調整税制の問題につきましてちょっとお尋ねをしておきたいと思うのであります。  御承知のように、昨年の国会におきましては、景気調整機能を強化するということで、税の面においてもこれをひとつ生かしたらどうかという提案が政府からございました。このときには、景気過熱の期間に一定の範囲内で法人税の延納利子税率を引き上げるということと、もう一つは、過剰投資による過熱景気の期間、合理化機械等の特別償却制度の適用を停止して繰り越すことができるような制度を整備するということがきまり、かつ、おまけに不況時の場合には合理化機械等の指定範囲を拡大するという措置がきめられたことは御承知のとおりであります。  さてそこで、こういう景気調整機能を強化するという提案をいたしながら、昨年七月以降の景気調整のときには、政府はとうとうこれを活用しなかった。あのときは金利の引き上げがあり、公共投資も削減せにゃならぬ、金融の引き締めもせにゃいかぬというようなときで、この景気調整機能というものを働かすならまさに絶好の機会であった。私は、これをおもんぱかってこの法律案を提案してきたのかと思ったら、このときお使いにならなかった。なぜ使わなかったのか、こういう問題についてちょっと承りたい。
  296. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いまおっしゃいました前段の延納利子の引き上げの問題は、これは法律上自動的に適用されることになっておりまして、すでに適用になっております。第二段の特別償却の停止の問題は、これは延納利子の問題と違いまして、公定歩合の引き上げられている期間で、設備投資の抑制をする必要があると認められる期間として政令で定める期間ということでしぼられておるわけでございます。それをなぜやらぬかというお話かと思いますが、御承知のように、来年度の設備投資の動向というもの、これが一体どういうふうに動くかという問題について、私どもも専門の官庁ともいろいろ相談をいたしております。何しろ合理化機械というのは、いわば資本自由化に備えて企業の体質を改善するという意味で特別に認めている制度でもあるだけに、これをしも一律に引き締めるという段階に立ち至ったときには、当然私どもは発動さるべきものだと思います。同時にこの制度は、ほかの一般の投資を押える上には何の役にも立たぬということで、使い方によっては一番先進的なといいますか、最も先導的でなければならない、主導的でなければならない投資を押えるという結果になるわけであります。しかし、それが必要な場合には当然やるべきでございますが、いまの段階で経済官庁その他といろいろ打ち合わしたところでは、それを一律にやるのはまだ早いのじゃないかということから、現在まだ発動しておりませんが、制度としては先生おっしゃるように、まさに設備投資が過熱してきて、全般的に、あらゆる目的を越えて押えるという時期にこれを使うべき伝家の宝刀であるということはいえると思います。
  297. 平林剛

    ○平林委員 予算委員会でもこのことは問題になりまして、わが党の北山さんが大蔵大臣にいろいろと尋ねておりました。大蔵大臣の説明によると、この法律を発動すると——この法律というのは、主として過剰投資による景気過熱の期間、合理化機械等に対する特別償却制度の適用停止の問題ですよ。これをやると中小企業に対してその恩恵がなくなってしまうとか、あるいは過去の必要によってやった設備投資の恩典を奪うという作用のほうが大きいとかいうような理由でやらなかったのだという説明をしているのですね。それならいつやるときがあるのか。
  298. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 大臣が言われたのは、先ほど私が申しましたように、あの制度は合理化機械を選別的に押える制度になってなかった、全部一緒にがしゃっと押えるものですから、あの中には中小企業の合理化機械も若干入っております。大臣としては、大企業のほうはびしゃっと押えてもいいかもしれないが、一律であるものだから、中小企業がいませっかくやっていることを押えることになりはせぬかということを言われたことが一つと、過去の分というのは、あの制度のやり方は、これから設備投資をするものを押えてしまうというのではなくて、特別償却の償却額をその年度で押えてしまうということになりますので、前にやって、ちょうどいまでき上がってきたというものを押えてしまうという効果もあるわけであります。むしろ設備投資をこれからやろうとしているものは全部適用除外してしまう制度になりますと、かなりやりやすいわけで、つまりこれからではもうできない。これはいままで大事だからやれやれといってできた制度を、今度はいよいよ償却しようと思ったらだめだということになりますので、よほどきつい引き締めのときにやるのはこれは確かに必要なことだと思いますが、いまの段階でどうかなという意味大臣は言われたものだと思います。
  299. 平林剛

    ○平林委員 それならば景気調整機能税制として昨年提案した考え方には欠陥があるのですよ。これをほんとうに生かして使おうと思えば欠陥があるのですよ。たとえば同じ設備投資の中でも、必要な設備投資もあるでしょう。それから、いま例をあげた中小企業の育成強化のためにこれを奪ってはかわいそうだ、それでは趣旨に反するし、政策目的に反するものもあるでしょう。しかし、それとは逆に、これは過当競争だ、これはやるべきじゃないというようなものについても、みそもくそも一緒だからできないことになるのですよ。そういう欠陥があるということはやはり認めなくてはならぬ。いかがですか。
  300. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 そこのところは、過当競争的な色彩の強い業界には特別償却自体を指定いたしませんで、そこは考えたのだと思います。ただ、発動するときに一律でなければならぬというところが、いまおっしゃったような点が若干あるかもしれないと思いますが、最後の手段としては、これは全部一緒にやってもいいので、牛刀的なところがあるかもしれませんが、そういう意味でやや使いにくい点はあるかと思います。しかし、制度としては、欠陥というか、少しきめが荒いということで、欠陥ともいえないのじゃないかと思います。
  301. 平林剛

    ○平林委員 私は、これは大蔵大臣でも来たらこの点を聞きたいと思っておるわけでありまして、私は、ある程度国家目的に基づいて景気を調整するというならば、そんな一ぺんに何でもできるものより選別的にできるような選択権があってもいいんじゃないか。そうしなければ、大きく景気調整税制だなんていってうたい込んで提案をした目的というものは死んでおるんですよ。総理大臣のように、伝家の宝刀だから抜かないほうが切れるのだと言っていたら、これでは目的をちっとも達しないわけでありまして、そういう措置をやるということならば、この考え自体に欠陥があるのだから、これはやはりその点を少し再検討してやる必要があると思うんですよ。政務次官いかがです。
  302. 倉成正

    ○倉成政府委員 いまお尋ねの点は、おそらく四十二年度の設備投資が七兆二千億、それから四十三年度の設備投資が七兆九千億、九・八%の増ということに政府は見通しておりますが、大体現在のところこの範囲で押え得る、こういうことで発動してないと思いいます。ただいま御指摘の点は、ここにありますいろいろな合理化機械の種類が非常に多いこと、中にはあるいは景気調整から考えてあまり関係ないじゃないかというようなものもあるかもしれません。そういった点は、ほんとうに景気調整のためにどういう手段を講じたらいいかということはもう少しきめこまかく検討する必要があるかもしれません。御意見のところは十分承りまして検討いたしてみたいと思います。
  303. 平林剛

    ○平林委員 それからもう一つ。法人税の延納利子税率の引き上げ、これは法律に自動的になっておるのは私も承知しておるわけですけれども、最近の金融逼迫の事情の中から、金融界の延滞納がことしいろいろな面で目立っているのではないだろうか。つまりほかに金を回したほうが率がいいものだから税金のほうは滞納して、そのほうが経理面では運営がうまいぐあいにいく、これは商売だから、一銭一厘を争うような金融界で大きな額を扱っておるだけに、いまの法定のやつだけでは、金融機関がこの景気調整税制の発動というようなことで延滞納しないようにという意味で幾分この率を上げたといたしましても、ほかの金融環境というものによってはしり抜けになってしまう、こういうようなものはそのままでいいんでしょうか。一般の国民は三月十五日になるときちんと納めなければならぬ、税金は納めるべしというようなことでやっているときに、金融機関は、これは要するに経理上の操作であって、得なほうにやるのに何が悪いか、これは理屈としてはあり得るかもしれませんが、こういうことをやっておるということをどうやったら押えていけるか、これについての何かお考えはありませんか。
  304. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いま滞納とおっしゃいましたが、滞納の分は日歩四銭になっておりますが、延納は、これは許可制でなくて、半分納めてあと届け出すれば自動的になってしまうわけです。三カ月間は。これは法人の一種の権利になっておるわけです。しかし、金融機関などはあまり使わないのが例だったわけですが、一部の金融機関が今度相当使ったとかいわれております。しかし、これはもう少し良心的に考えたらどうかという指導がいま行なわれておりまして、今後そういうことはないと思います。ただ、これ自身は各法人平等に半分だけは三カ月の延納ができて、それが日歩二銭になっておるものですから、この延納を食いとめる意味で公定歩合を引き上げて二銭を上げる、こうしたわけです。ですから、おっしゃるとおり金融機関の節度としてはどうかという点はあるかと思いますが、その点は良心的に考えてやってもらうよりないのじゃないか。制度としては権利でございます。
  305. 平林剛

    ○平林委員 さっき銀行局長の顔がどこかに見えたからそれを聞こうと思ったが、いまはいませんね。私は、要するに景気調整のための税制として裏づけてやった以上は、一番大事なところはどこかといったら金融機関なんですよ。     〔渡辺(美)委員長代理退席委員長着席〕 景気調整をする役割りで一番大事な機関は金融機関なんです。金融機関が延納のほうが有利だわいということにして、その金をよそへ回すようなことをしたのでは、これは何の役にも立たない。主税局長はその点もっと怒って、そうして銀行局に文句を言わなければ、せっかく提案をしたことがしり抜けになるということに相なると私は思う。そうすれば、やはりこれを使って効果を果たそうと思えば、そうした面の配慮がなければならぬ、その面の規制がなければならぬ。それを放置しておったのでは、こういう措置は満足に働かぬということになるわけです。そういう点を考えると、この面についての調整も何らかの形で必要でないだろうかと考えるのですけれども、これは銀行局長に少し注意してもらいたいと思うのです。
  306. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いまのおっしゃるところでございますと、極端な方法としては、一定のときには延納を認めなくしてしまうというのが一つの手だと思うのですが、いまのところは金利機能で動かそうということで公定歩合と連動さしたわけでございますね。ですから、その点ではほかの企業も同じことで、ほんとうをいえば国策に順応してくれればいいのですけれども、自分の金利といろいろにらみ合わして有利なほうをとるというのは企業としてはやることなんですね。ただ、金融機関というものはこういうときに全体として協力するのがほんとうであるという意味では、実は銀行局のほうに主税局のほうからも注意をして、そういうことがあってはおかしいじゃないかというようなことは言っているのでございますが、おそらくは金融機関のほうも、そこは自粛を今後するのじゃなかろうかと期待をしております。一般に延納を全部とめてしまうのはちょっと制度としてはきつ過ぎるかと思います。いまの程度でやはりかなり効果は生じていると思います。
  307. 平林剛

    ○平林委員 政務次官にお願いしておきますけれども、この資料をひとつ提出をしてもらいたいと思うのです。各銀行でこの延納措置の状況はどうなっておるか、これを、きょうでなくてもようございますけれども、ひとつ今後の自粛を求めるという意味で資料を提出してもらいたいと思いますが、どうです。
  308. 倉成正

    ○倉成政府委員 お答えします。  個別の銀行はどうも調子が悪いようでございますから、それで銀行局長によく検討させまして、御審議の参考になるように資料を研究さしてみたいと思います。
  309. 平林剛

    ○平林委員 私はその資料を見ましてからまたあれしますが、調子が悪いなんというのはだめですよ。それはちゃんと、きちんと自粛させるようにしなければ……。それは、景気調整措置というものをせっかく提案しながら、合理化機械の特別償却が選別性がないために結局発動できないで、せっかくの法律は何の役にも立たない、政府は相当自信があるから、こんなのやらなくてもいいと思っておれば別ですけれども、しかし、そんなものではないのじゃないか。せっかくきめたものをできないという欠陥があるなら、それを直さなければいかぬ。同時にまた、この法人税の延納利子税率の問題についても、目的は景気調整機能を働かせるために行なっているのであります。それを、一番肝心かなめの金融機関が延納のほうが有利だという一つの商業ベースだけでものを考えたら、国家の財政目的というのは通っていかないということになる。そういうことはやはりおきゅうを据えておく必要があるのでありますから、ひとつ適当な資料を後ほど提出をしていただいて、大いに自粛の実をあげていただくように銀行局は指導すべきである、こういうことを申し上げておきたいと思う。  では、ぼつぼついいそうですから最後の点についてちょっとお尋ねをいたしたいと思います。
  310. 田村元

    田村委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  311. 田村元

    田村委員長 では、速記を始めて。
  312. 平林剛

    ○平林委員 所得税法法人税法の問題について質疑を重ねてまいりましたけれども、最後に、もう一つの問題でちょっとお尋ねをしてまいりたいと思うのであります。  それは政府のほうでは、昨年来ことしの予算案を編成するに際しまして、財政の硬直化ということをしきりに唱えまして、特に大蔵省が中心になって財政の硬直化という問題を指摘をし、そのための打開策がいろいろ検討され、今度の予算案の中にいろいろな構想が織り込まれたことは御承知のとおりであります。そこで私は、この大蔵省政府が唱えた財政硬直化、あるいは西ドイツの例をよくとらえまして問題を指摘をしたわけでございますけれども、大蔵大臣は、ほんとうにいまの日本財政はのっぴきならぬところまで来ているのか、西ドイツの経済と同じような道をどうしても歩まねばならぬから総合予算主義もとらにやならぬし、あるいは国民に対していろいろな受益者負担をかけるとか、あるいは間接税増税をして、実質的には所得税差し引きして実質減税ゼロというような形でいかなければならない、そういうような一つの危機感を大蔵大臣はお持ちになって今度の予算編成に取り組まれたのかどうか。つまり、大蔵省が言っていたあのときの財政硬直化財政の危機というキャンペーンをそのまま大蔵大臣はお考えになって今度の予算編成に取り組んだかどうか、そのことをひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  313. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 財政硬直化の傾向というものは、やはり日本財政にはっきり出てきておりますので、いまこの問題に対して解決の一歩を踏み出すことが必要だ、手おくれになると、たとえばいまおっしゃられたような西独のような問題が起こってくる。起こってきてからいろいろの措置をとるというようなことは、国民生活に犠牲を非常にかけることでございますので、こういう問題なしに財政の弾力性を確保していくということが一番望ましいことでございますので、私どもは今年度予算編成からこの第一歩を踏み出したというつもりでございます。
  314. 平林剛

    ○平林委員 さて、そこでその第一歩を踏み出すにしても、間違った方向に第一歩を踏み出されては、これは本質的な解決にはならぬわけですね。その第一歩を踏み出すならば、やはり日本財政はこのほうがいいのだという正しい方向に第一歩を踏み出すならばいいけれども、間違った方向へ第一歩を踏み出したのでは、これは大きな間違いをおかすことになると思うのです。  そこで、政府の四十三年度予算に対する批判は、予算委員会その他を通じていろいろな形で行なわれましたけれども、私は、きょうは将来の税の減税の問題にからんで、そのことをちょっと考えたいと思うのであります。     〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕 西ドイツも確かにいわゆる財政の硬直化によりまして予算の編成難におちいりまして、いまいろいろな手当てをしておることは承知しておるのですけれども、西ドイツと日本経済財政硬直化というものの中身というものはうんと違うというふうに私は思うのですけれども、大蔵大臣はどんなふうな認識を持っておられるか。
  315. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 中身はこれは確かに違うでございましょうが、しかし、いずれにしましても西独も日本と同じように、予算の膨張圧力というもの、これが年々やはり強まってきたことが一つ。それから日本より一歩前に経済が成長をしましたが、やはり成長時代のいろいろな慣習そのほかを断ち切れないで、硬直化の原因を除去しないで積み上げてきたということが、最後のああいうところに来た原因だろうと思います。そこで、そういう財政が硬直化してきたときに、経済調整の必要がドイツに起こってきた。起こってきたときに、まだ財政政策がとり得るような柔軟性があればよかったのですけれども、財政政策でとれなかったというために、全部あげて金融政策にまかせた。こういうために、これは非常にきつい経済の収縮を来たして、今年度のごときはドイツは成長力がマイナス何%ということで、ほとんど国の経済の成長力も確保できなかったというように、財政が硬直化した場合に金融政策でしか調節ができない。これは私は非常にこわいことだろうと思いまして、日本も、いざというときに財政政策を柔軟にとれるようにするためには、やはり公債の依存度というものをできるだけ減らしておかないとこういう措置がとれないというふうに私は考えて、今度もこの点に非常に重点を置いたつもりでございます。
  316. 平林剛

    ○平林委員 この間、予算委員会で公述人の意見を私ちょっと聞いておったのですが、正木さんが述べられたことに特に私は関心を強くしたわけです。いまの日本財政というものは大蔵省の言うような財政硬直化財政の危機というふうにはたしていえるかどうか、むしろ財政の危機というよりは、いまの政府の認識というのがそうではないのか。たとえば歳出面の硬直性という面だけをひとつ考えてみますと、歳入の面で税収の伸びる力が大きい、大きいときには実際にその歳出がある程度伸びても、それはある程度調整をすれば切り抜けていけるのだ。そういう意味では日本はまだ歳入面で税収の伸びる力が大きい、起債力もある。そういう意味では歳出がかなりふえてもそれ自体財政危機に発展するかどうかという点疑問があるというような説を述べられていた。私は今度の予算におけるいろいろな政府のとった措置と西ドイツの場合と比較してみたのでありますけれども、西ドイツがいわゆる財政の硬直化といって歳出の面で固定的な部面はどの面に一番強くあらわれてきたかというと、社会保障が大体二五%くらいどうしても固定経費の中に占めておる、これは非常に大きい。その次は防衛費が二六%占めておる。その次に大きいのは公共事業の一〇・八%ぐらいで、あとは恩給費にいたしましても、国債費にしても、あるいはベルリンの援助費についても、文教費についても、賠償の援助費についても、あまり大きな数字にはなっていない。ところが、日本財政の硬直化の要因、固定化した歳出の面を見ますと、一番大きなものは公共事業費の二〇・一%、それから社会保障は一四・五%ぐらいでありますから、西ドイツの二五・七に比べるとまだまだ割合というものが少ない。それから、日本では地方交付税交付金が一八・四%を占めている。これは非常に大きな部面を占めておるわけでありますけれども、概括していえることは、日本がまだまだ公共事業の面におきましては西ドイツの固定経費と比べて非常に大きな違いがある。この公共事業が、ことしの予算自体から見合いましても、ある程度小さくなってもまだ相当な大きさを占めておる。同時に、さっき私議論しておったのですけれども、日本の場合は設備投資はまだ強い力を持っておる。こういうことを考えると、西ドイツが財政危機になってきた理由をいろいろこまかく分析してみますと、日本とはかなり違う面がある。違う面を総括的に言いますと、日本ではまだまだ設備投資熱がかなり高いし、それからまた公共事業も相当の割合を占めている。固定経費の大きいものは先ほど申し上げました地方交付税交付金等であって、その他では大体同じようなことになっておる。そうすると、私は、昭和三十年代のような高度成長ということは無理だとしても、日本経済の成長率というものは一三%とか一四%程度がまだかなり続いていくのじゃないか、こういうふうに思われるわけであります。そうすれば、これはある程度自然増収の面でも、ことしは九千億円ぐらいだったけれども、来年、再来年も現在の状況が続くならば、まだまだかなり自然増収というものが期待できるというふうに考えるのですけれども、大蔵大臣のお考えはどうでしょうか。
  317. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 確かに西独とは違うと言いましたのは、日本はまだまだそこまで来てないで、おっしゃられるような余裕がまだ若干あると思われます。しかし、私どもが心配しておりますのは、この政府の施策がよろしきを得ないと、いま物価の問題がとにかくございまして、これがうまくいけばいいのですが、ある程度の成長はいたすでしょうが、この物価の上がり方いかんによってはこれが人件費にはね返ってくる。人件費と物価というものの動きによって、いまの財政の余裕なんというものは一、二年でへたをすればすぐに全貌が変わってしまうという危険性をはらんでおりますので、私どもは、いま特に日本財政の硬直性というようなことについては、この物価と人件費の高騰ということを心配しております。これが高騰すると、経済伸びても、いわゆる租税の弾性値というものはどんどんと下がってきて、いままでのように一方経費はふえるがそれに伴う税収はないという状態になりますので、ちょっと間違うと、この硬直化は、いま余裕があるようですが、もう一、二年で容貌が変わるくらいの心配な要素を含んでおると私は思っております。
  318. 平林剛

    ○平林委員 問題はやはり物価の問題だと思います。物価の問題に違いありませんが、政府も一応ある程度物価抑制のための努力を続けるわけでありまして、その面をもし期待することができるとするならば、公共事業あるいはまた設備投資などの点から、成長率そのものは二二%ぐらいのものであるならばまだ二、三年は続く。そして、それが続くという前提に立てば、税の自然増収というのも、弾性値がかりに一時非常に高いときの二くらいのときに比べてうんと落ちるにいたしましても、ことし九千億円の自然増収があったそれに相当するようなかなり高い自然増収は期待できるという考え方ができるのではないだろうかと思うのですが、その点はどうなんですか。
  319. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 かりに税のことし程度伸び率の期待ができたとしましても、いまの状態でいきますというと、この経費の膨張余力のほうがもう少し強いということで、おそらく新規政策費というものがますます狭まっていって柔軟性をなくするという傾向はもう避けられない傾向ではないかというふうに思っております。
  320. 平林剛

    ○平林委員 財政硬直化の原因について私が指摘したときに、いろいろ公債政策を批判をしたことがありましたね。結局大蔵大臣も、公債発行額はことし縮小して財政に対する割合というのを低めていきまして、今後大体五%くらいまで下げていきたいというお話をしておりましたね。その根拠は、私がただいま申し上げたような見通しの上に立たなければ言えないことなんでしょう。ある程度の成長率、そしてその成長率を基礎にして相当の自然増収が期待できない限り公債費の削減というのはできない、歳出に対する依存率を引き下げるというのはその前提の上に立たなければできないでしょう。そういう意味では、公債の発行を縮小しながら財政に対する依存度を下げていくというのは、ある程度の税の自然増収ということを頭に描きながらおっしゃったと思うのですけれども、そうでしょう。
  321. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それが一つと、もう一つは、やはり既定経費の見直しといいますか、結局は法律、制度に根ざしておる。そこに要因のある点が多いのですから、やはりこれの合理的な見直しということをあわせてやるということによって公債の依存率を縮めるということは可能になるだろうと思います。
  322. 平林剛

    ○平林委員 そういう意味で、私は大体今後の見通しについてはそんなに違わないと思うのです。  そこで、私は、今回の所得税法改正で千五十億円ですか、やって、けちな減税だとさつき主税局長にさんざん文句を言ったんですよ。こんな程度減税なんてとてもだめだというお話をしまして、現実の生活の面からいろいろ問題を提起したわけなんですけれども、大蔵大臣は、今回初年度千五十億円の減税を提案なさったわけでありますけれども、給与所得者の重い税負担を緩和するためには、税制調査会が述べて一おりますように、今後毎年、少なくとも五カ年程度は千億円程度減税は続けていく必要がある。こういうことにつきまして大蔵大臣は肯定なさいますか。
  323. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 所得税については、私どもは一つの公約を持っておりまして、昭和四十五年までにはとにかく課税最低限を百万円まで持っていく、これはそのとおりにやりますが、それ以後も、むろん引き続き最低限を上げる仕事と同時に、やはり百万円をこえるというところへきましたら、一応今度は税率についてのいろいろな検討とかいうようなものもあわせてやらなければいかぬ時期に来るのではないかというふうなことを考えております。     〔金子(一)委員長代理退席委員長着席
  324. 平林剛

    ○平林委員 昭和四十五年までに百万円にやる、その努力は続けるとおっしゃって、また税率の点についても示唆がありましたけれども、私はここに新聞を持ってきておるのだけれども、去年私がやったときには、課税最低限百万円は四十四年に実現をする、百万円まで無税にするのは「四十四年度から実現」というふうに新聞に書いて、これは私が大蔵大臣質問をやったときの記事ですよ。「蔵相やっと言質、免税点百万円」と、こう書いてある。ですから、正直な話は昭和四十四年までに百万円にしたいというのが大蔵大臣の気持ちである。大蔵大臣、すなわち政府の台所を預かるところの大臣のお話を、いつの間にかこれを忘れちゃって、四十五年にすり変えているのですけれども、一年間、どうもすり変えられては困るわけなんです。正直な話でやってもらいたいわけなんですよ。今後の財政の事情等から考えると、かりに公債を縮小し、財政の依存率を五%程度まで縮めるという方向があったとしても、税の成長率、自然増収、そういうものを考えると、それに対しながら、なおかつ減税を続けるだけの余力が出てくると思う。そうすれば正直に、私は四十四年度から実施したいということは、あなたが大蔵大臣をやる限りは、やはりそれを忘れないでいってもらいたいのですよ。ほかへ行って、しらばくれて四十五年に言い直すことはいいけれども、大蔵委員会、しかも私、平林剛の前では、四十四年にやるというのが正直言って私の考えだ、こう言ってもらいたいのですよ。そうすれば、私の質問をこれで終わります。
  325. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま速記録を見ましたし、あのときのことも覚えておりますが、正直に言って四十四年にやりたい。しかし、はっきりしたお約束はできないので、四十五年というのがはっきりしたお約束だ、こういうふうに書いてありますので、それは御承知のとおり予算委員会にもいろいろいきさつがございましたし、当委員会にもあって、できるだけ四十五年といわないで、四十四年でも努力するのだという方向をとにかく出せということで、私もそのつもりでございましたから、そういう答弁はしましたが、約束ということは、ちょっとむずかしいということは言っておりますので、やはりいまでもそのつもりでございます。四十五年になったら百万円ということではなくて、四十五年なら、いまの状態なら百何万円になりますから、百万円を突破するところの改正はできると思いますが、先はいいのですが、四十四年に百万円ということは、これは当時も約束してはございません。
  326. 平林剛

    ○平林委員 四十五年百万円なら、だれでもやるということを私は言っているのですよ。さっきからの議論をあなたは聞いておられなかったから、わからないでしょうけれども、四十五年百万円ならだれでもできるのですよ。大蔵大臣が、国民が期待する減税をやるというような、やはり物価上昇その他を考えると、四十四年にやらなければ、国会できめた「可及的速やかに」という議決の意味がなくなってしまうから、四十四年、正直言ってやりたいと思うということを、ここでもう一回言明しておいてもらいたいのですよ。よそへ行ってしらばくれて、四十五年は約束だ、これは自民党が選挙のときの公約ですよ。それはよく知っているのですよ。四十五年までに百万円というのは選挙のときの約束で、これは大自民党の約束なんです。しかし、国会では、われわれは、もうすぐに百万円やれと、こういう約束を少し妥協して、「可及的速やかに」それを実現するときめたということは、四十五年百万円という自民党よりは、国会の議決というのは——これはみんなも入っていますよ。自民党も入っている話で、国会のは、それより「可及的速やかに」やれということなんだから、「正直言って、四十四年ころまでに実現したいということを私どもも考えております。」こう言っているのだから、それを取り消してもらったら困る。大事にしておかなくてはいけない。さっき言いましたように、四十四年までには実現したいということを、私どもいまでも考えていますということを、ひとつここで再確認をしていただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  327. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 野党に対しましては、私どもは別に(平林委員「いや、国会」と呼ぶ)別に目標を出しております。四十四年、四十五年にはどういうふうにするつもりかと、一応の数字を出せ、計画を出せということがございましたので、そこで昨年出してございますが、それによると、四十五年は百万円以上ということになっておりますが、四十四年はまだ百万円にはなっておりません。それで、われわれの目標はこうだというものは出してございますが、できるだけ近づくように努力するということは、いま考えておりますので言いますが、ぴったり四十四年になるかというお約束はなかなかむずかしい。十分努力いたします。
  328. 平林剛

    ○平林委員 これで私の質問は終わります。
  329. 田村元

    田村委員長 井手以誠君。
  330. 井手以誠

    ○井手委員 時間がおそくなりましたが、大臣質問する機会があまりありませんので、お疲れでしょうが、しばらくおつき合いをいただきたいと思います。  きょうは、特に税制の基本、所得税、法人税のあり方につい三これが第一です。続いて資本の充実。この二点について大臣のお考えを承っておきたいと思うのです。あまりこまごまとお伺いはいたしません。大蔵大臣としての所信を承っておきたいと思います。  その前に事務当局にお伺いをいたしますが、配当だけの所得に対しては、幾らまで免税になっておりますか。それからいま一つ、四十一年度の法人企業統計でけっこうですが、鉄鋼業に対する法人税は何割になっておりますか。この二点をお伺いいたします。
  331. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 第一の、配当所得だけの世帯、これは夫婦子三人の場合でございますと、二百三十六万円までは、課税されますけれども、配当控除が適用になりますので、結果においては税額控除で税額はゼロになります。  鉄鋼業について特別の税率というものはございませんので、昭和四十一年度であれば税率は三七%でございます。
  332. 井手以誠

    ○井手委員 実績です。
  333. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 実績と申しましても、税率はみな一緒でございますから、所得に対して三七%ということでございます。
  334. 井手以誠

    ○井手委員 税率ではなくて、いろいろな租税特別措置によってかなり減免されておりますので、実際の納税は幾らに該当しておるかと承っておるのです。二二%になっておるはずです。——よろしゅうございます、主税局長。法人企業統計に載っております。それは県民税、町村民税を含めてのことですから、それを引きますと二二%です。  それから続いてお伺いしますが、昨日、私のほうの広沢君に対して、日本の法人税と外国の法人税の実効税率についてお伺いをいたしましたときに、一通りの回答がありました。その中には少し説明違いがありゃせぬかと思います。日本の場合は、実効税率は地方税を加えて四三・七九%でありますが、一〇・七一%を占めております事業税は経費に入っておるはずであります。経費として損金に算入されておるはずでありますから、法人税の課税対象にはならないと思いますが、そうでしょう。
  335. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 昨日御説明申し上げましたのは、表面税率に対して実効税率が出ますのは、事業税が損金算入になりますので、表面税率で計算するときは、一〇〇の所得に対して税率が幾ら幾ら、それを事業税と住民税と全部足して一〇〇で割るわけでございますが、実際の実効税率は、一〇〇の所得であれば事業税が一二%、小さいときには九%、六%とそれぞれ違いますが、最高のところでは一二%引かれまして、八八に対して税率が適用になるわけでございます。そうして出しました税額を一〇〇で割りますと実効税率が出る、こういう御説明をしたわけであります。
  336. 井手以誠

    ○井手委員 ただいま主税局長から、日本の法人税の実効税率は、事業税は損金に算入される、経費として落とされるということでありますから、法人税の課税対象にはならないわけです。  そこで、私は大臣にお伺いをいたします。配当所得だけの人には二百三十六万円までは無税になる。先刻お話もあったように、高校新卒者に対しても税金がかかってくる。あれほどの膨大な利益をあげておるわが国の鉄鋼業に対して、実効税率はわずか二二%です。この不公平。しかも法人税においては、わが国の実効税率は事業税を引きますと三二%、アメリカは五〇%、イギリスは四〇%、西ドイツは四九%、フランスは五〇%、いずれの国も日本より法人税は高いのです。法人税と所得税の比較、わが国の法人税と外国の法人税の比較、これを考えてまいりますと、わが国の税制、特に法人税、所得税に非常なアンバランスがあることが明らかになってまいります。申し上げるまでもございませんが、租税は公平を鉄則といたしております。国家権力で徴税をする場合には公平でなければなりません。公平でなくては国民の納得を得ることはできないのです。この不公平なわが国の税制に対して、大蔵大臣はどのようにお考えになっておりますか。
  337. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ちょっと数字で、いま鉄鋼業の実効税率が二二%とおっしゃいましたのは、おそらく特別償却などの金額所得に戻されて割られたのではないかと思いますが、そういう計算は、ドイツにおいても、イギリスにおいてもあるわけでございまして、その特別措置を適用したあと所得に対しての税率を私は申し上げましたので、それが三七だと思います。ほかの国でも特別措置がある場合には、その場合の実効税率というのは意味が違いますけれども、租税特別措置による減収なかりせば所得に対して幾らであるかという税率を出しますと、これはほかの国でもそういうことが起こると思いますという、そういう意味でございます。
  338. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 法人税と所得税とどちらが高いかということを比べるのは、ちょっと無理じゃないかと思います。一方は強い累進構造を持つものですし、一方は比例税率の課税控除を持っているものでございますから、これをただ単純に実質はどちらが重いかということを比べるのは無理かと思いますが、法人税につきましては、外国との比較において、これまた率だけで比較するのも問題でございますし、内部留保などについて非常な優遇を受けているところは、税率が高くても実質は軽いということにもなりますし、そういう意味からいって、日本の法人税と外国の法人税の比較では、事業税、住民税全部を入れますと、私は日本の法人税のほうが割り高だというふうに見ておりますが……。
  339. 井手以誠

    ○井手委員 数字がはっきりしているじゃないですか。
  340. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は大体そういうふうに理解しているのですが、そういうこまかい点の分析は十分していないので、よくわかりません。
  341. 井手以誠

    ○井手委員 きょうは大蔵大臣としての確固たる信念を私は承りたいのであります。なるほど法人税と所得税の体系は違うでしょう。私はそればかりの比較を申し上げているわけではございません。法人税が日本は安過ぎる。外国は日本よりも五割高いじゃないか。所得税が重過ぎるということは、これは定説です。常識です。  私がきょう最後にあなたにお尋ねしたいのは、法人税はもっと税率を高めて所得税減税すべきであるという私の考え方です。法人税はいろいろ立て方があるとおっしゃいましたが、日本の経理ほど経営者に甘くできているものはないはずです。私も世界各国税制を一通り調べてまいりましたが、あれほど甘やかされた経理——事業税も大臣、経費の中に入っているんですよ。よく頭に入れておいてほしいんですよ。事業税も経費として落される。あれやこれやたくさんのものが落されたそのあとの利益に対して法人税がかけられる。そうして日本は外国よりもずっと軽いということに対してどうお考えですか。また一方、所得税においては、働きもせぬで、いわゆる不労所得で、座敷におっても、部屋におっても、配当だけの所得を受けられる人は二百三十六万円までは税金がかからない。高校新卒者にも独身者には税金がかかるというこの不公平。所得税には不公平がある。この点を私は大臣にお伺いしているわけであります。不公平な証拠はたくさんありますよ。私は時間の関係から多くは申し上げませんが、一つ二つの例をあげましたが、この不公平なものをこのまま見過ごそうとお考えになりますかどうですか。大臣は、租税公平の鉄則というものがありますが、どうお考えですか。
  342. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 法人税の問題につきましては、前から申しておりますように、昭和二十四年のシャウプ税制以来の問題でございまして、いまおっしゃられるような問題を解決するために、法人というものの性格をどう見るかというようなことで、これは相当根本的な問題になりますので、いま税制調査会にこの検討をお願いして、いま税制調査会において検討している最中でございますが、なかなか結論が出てまいりません。もう少し検討時間を要することと思っております。  そこで、これは私個人の意見になるかもしれませんが、いま井出さんのおっしゃられたように、法人税を重くして所得税の比重を軽くするという方向ということでございますが、私は、所得税の比重を軽くするという方向は賛成でございますが、しかし、法人税の比率を重くするという行き方は、これからの税制のあり方としては非常に問題じゃないかというふうに考えております。というのは、現に欧米諸国においては、法人税というものは斜陽税化する傾向をとっておるということは御承知のとおりと思います。これはなぜかと申しますと、欧州あたりの連中の意見でございますが、近代国家の政治の目標は福祉国家をつくることだ。福祉国家というものはどういうふうにしてつくられることになるかと申しますと、結局国民所得水準を上げる、そうして生活内容をよくするということが目標になると思いますが、それでは国民所得水準を上げるということと税制との関係はどうなるかと申しますと、いまのように、国が法人との間で、法人に利益を得させて、得た利益を国と法人が山分けするというような形の税制は、将来の福祉国家をつくる上に非常に阻害的な作用をなす。そういう税制をつくったら、やはりここに脱税が起こりますし、企業の内部留保というものが十分にいかない。利益段階から税で収奪されるということにしますと、今度は人件費の問題も同様であって、これ以上賃金を上げたら、もう会社は成り立たぬとか収益が減るとかいうことで、もっぱら賃金を押える原因になってくる。税制自身がそういうところに働く。これはいけないのであって、やはり法人段階で利益に課税するということはよして、一ぺん散らして、支払うべき労働の対価は公平に支払う。そして資本家に配当すべき配当を十分にする。そのほかは内部留保を許して、これによって新しい施設は全部銀行その他の借り入れに依存しない企業体質をつくるべきだということで、企業の利益を散らすところに散らして、そこから税を取るというような構想を持たなければ福祉国家というのはできないんだという税理論が最近欧米に非常に行なわれてきましたが、そういうことを考えると、企業にもうけさして、もうけの段階から国と企業が分け合うという——税を取ろうという以上は、今後いろいろ問題が出てきますので、ここらに今後の長期税制のあり方としてわれわれが考える必要があるものがあるのじゃないか。税の体系をいろいろ立て直すことのいかんによっては、そういうものの解決から、今度は直接税の比重をもっと減らす構想も出てくるということから、税の研究では、いますぐにはできなくても、よそで採用しているような付加価値税とか、いろいろまだこれから考えるべき税制の問題が長期税制としてあるのじゃないかということで、税制調査会に検討をお願いしているということでございますが、所得税を少し強化するという方向で今後の税制を組み立てるかどうかということには、非常にまだ問題があるというふうに私は考えております。
  343. 井手以誠

    ○井手委員 大臣がおっしゃるように、福祉国家のために、あるいは政治の目的である国民所得を向上させ、国民生活を向上させるためには、なるべく所得税は低いほうがいいはずです。低いことによって購買力が生まれてくるはずです。所得税減税しようということは大臣もお考えのようである。それでは法人税が高いか低いか、欧米各国では、先刻も申し上げたように、法人税は大体実効税率が五〇%です。その五〇%というものは何であるかといえば、企業というものは、その社会的責任から利益の半分は国に納めよう、寄与しようという根本観念があるわけです。半分は国に納めよう、そういう考えで欧米諸国では大体五〇%の法人税です。実効税率がですよ。それに対して日本は幾らであるかというと、わずかに三二%じゃございませんか。繰り返して申しますが、事業税は経費に落とされておりますから、課税対象ではございません。主税局長、はっきり覚えておいてください。租税のほかの経費の中に入っている。そういうふうに、欧米各国では、利益の半分を法人税として取っている。日本はわずかに三二%。所得税が重いならば、非常にばく大な利益をあげている法人税の税率を上げてもいいんじゃないか、私はそのことをお尋ねしているわけです。  さらにいま一つ進んでお尋ねいたしますが、大臣は、シャウプ勧告以来、税制の方式についていま税調に諮問してしているというお話がございました。複雑多岐、難解、きわめてむずかしい日本税制を改めよう。また、全国では七十何万社でございますか、一年間に九十八兆の売り上げを持っている日本の企業、日本経済の圧倒的力を持っている日本の企業、この企業に対する税制をどうしようかということについては、すでに結論は税調から出ているはずです。私はいまからその点をお伺いいたします。  御承知のとおり、昭和四十一年十二月の税調の答申では、長期税制のあり方について、企業は独自の負担力があるということを確認しております。シャウプ勧告の基本になっている法人擬制説というものはきわめて矛盾が多い。こういう点から、それを改めようとするあなたのほうの態度のため、諮問に対して税調では、企業は独自の負担力があるという確認をいたしまして、今後基本的方向としては法人利潤税方式を採用する。この場合、株主の影響を考え、配当控除、受取配当益金不算入措置を段階的に廃止するという答申が出ているはずです。もう方式はきまっているわけです。この出された答申に対して大蔵省はどのように作業を進められているのか、その点をお伺いいたします。
  344. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 昭和四十一年の十二月に出ました中間答申におきましては、ただいま先生がおっしゃいましたような、そういう考え方で税制改正を検討していく必要があるのではないかということを指摘したわけでございます。その後、四十二年中に、税制調査会といたしましては、企業税制部会においてこの利潤税方式というものを検討をいたしたわけでございますが、そもそも利潤税方式と申しましても、何が利潤税方式かということが具体的にならないと問題にならないということで、一ぺん事務当局に案をつくれということで、法人利潤税を取るとすればこんなかっこうではないかという案をたたき台として出したことがございます。先生お持ちだと思いますけれども、それを基礎にしていろいろ議論を詰めてまいることになっておりますが、ちょうど四十三年度税制改正の時期が参りましたので、それに対する結論は四月以降の検討にゆだねることにいたしました。その仮案と申しますものは、大体において、いま先生おっしゃいましたとおり、法人税は法人、企業に対する独自の税として考える。したがって、株主に対する従来の配当控除というものは認めないことです。そうして、一方において配当控除がなくなったのであるから、それに即応した所得税減税ということも考えるし、法人税率も配当控除がなくなったことによる増収ということを含んで三〇ないし三二程度の税率とする、簡単にいえばそういう案でございます。これは御承知のとおりイギリスが、従来の所得税の中の法人課税を改めまして独立の法人税をつくりました。これは従来法人利潤税として課税していた方式をそのまま法人税にいたしましたので、ここでは法人利潤税と呼んでおるわけでございます。この方式については、今後税制調査会として検討を続けてまいりますが、なお税制調査会としてはこの問題は従来の課税体系を根本的に変えるものであるし、投資家、企業家、それを取り巻く利害関係人に対する影響が非常に大きい。そうして、その納得を得られないとすると、また誤解が生じて大きな波紋を描くので、十分に論議をしてもらいたい。そのためにこのたたき台式のものをつくったのだということにいたしておりまして、各方面の意見も聞きながら、四月以降に結論が出るということになると思います。
  345. 井手以誠

    ○井手委員 にだいま主税局長から説明いたしました方向にいま進んでおるわけです。法人課税方式としては革命的なものでありましょう。その利潤税方式に対して、大蔵大臣、これは税調のメンバー、いわゆる利益グループと申しますか、経営者がだいぶ多いようでありますが、そういう人の意見ばかりでは国民の納得はいかないわけです。そういう人々の、税調の委員の抵抗があったにもかかわらず、大勢としてやむを得ないという結論からそういう答申が出されておるわけです。この答申並びに大蔵省事務当局の作業に対して、この利潤税方式というものをどういうふうに実行に移されようとするのか、大臣の所信を承っておきたいと思います。少々摩擦があっても、意見があっても、ようやくここに到達した利潤税方式というもの、当然そこにいかねばならぬ方式です。問題は、これを実行に移す勇気があるかないかの問題であると私は思っております昭和四十一年度の一年間にそこの赤い表紙の法人企業統計に載っておりますが、いろいろな甘い経理をした上でもなお二兆六千億円の利益をあげておる日本の法人、この法人に対する課税方式としてはもはや利潤税方式以外にはないということでありますが、これをどういうふうに実行なさるおつもりでございますか。大臣の所信を承っておきたいと思います。
  346. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま局長が申しましたように、大蔵省としては、税制調査会に何らの案なくして討議を願うわけにいきませんので、大蔵省考えたこの法人利潤税問題をたたき台として出して、いま討議してもらっておるときでございまして、まだまだ結論を出すのは相当ひまがかかると思いますが、四月以後から本格的に討議してくれるということになっておりますので、この結論が出て答申がございましたら、私どもは、いろいろむずかしい問題が相当ございましても、結論が出た以上は、これを実施に移すことについては努力するつもりでございますが、まだ結論がいまのところ出ておりません。
  347. 井手以誠

    ○井手委員 利潤税方式についてはもう答申が出ておるわけです。具体的な内容についてまだきまっていないのです。大臣はこの方式が正しいと思って実行なさるおつもりですか。そのいきさつのことはかまいません。手続はかまいませんが、大臣の所見です。大臣は、利潤税方式をやろう、実行に移そうというお考えでございますかどうですか。その点をはっきり聞かせてください。
  348. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 従来の法人税のあり方に対する体制といたしましては、こういう方向しかいまのところないのじゃないかというふうには思われますが、まだ全然結論が出ておりません。したがって、大蔵省答申を受け取っておるということは全くございません。
  349. 井手以誠

    ○井手委員 中間答申であっても、基本的な答申は出ているのですよ。出ている上になお大蔵省の作業は進んでおるのですよ。だから、これが正しい方式として大蔵大臣は実行なさる御意思であるかどうか、聞いておるのです。
  350. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはとにかく大きい問題でございますので、私はじっくり専門家の間で研究していただいて、結論が出たらその方向で実施することはありますが、なかなか簡単な問題ではない、まだしばらく検討時間がかかるのではないかと私自身は思っております。
  351. 井手以誠

    ○井手委員 今日まで長い間時間をかけて、従来の法人擬制説では矛盾が多過ぎる、不公平が多過ぎる、法人がよ過ぎるという批判からこういう中間答申が出ておるのですよ。これに対して大臣、この方式でやろう、いつから、来年からというわけにはまいりませんが、なるべく早い機会にこれを実行に移したい、各方面の了解を得て実行に移したいというお考えくらいは言えそうなものじゃございませんか。
  352. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 実際私は税のしろうとでございますので、専門家が、いま調査会にあれだけのメンバーが集まって検討しているところでございますから、私はやはりその結果を待って自分の考えをきめたいというふうに考えております。
  353. 井手以誠

    ○井手委員 それでは、中間答申が出され、中間報告が出されて、それに基づいて大蔵省が試案を出しておる。利潤税方式の試案を調査会にまたかけられて、その結論が出れば実行なさるというわけですか。
  354. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっきから申しているように、原案を私どもがつくっているということではございません。討議のいわばたたき台というようなものを提供しているということでございまして、これから問題をさらに掘り下げた検討を願うことになっておりますので、結論が出ますればもちろんその方向でいきたいと思いますが、これは非常に大きい問題でございますので、私は十分時間をかけて検討してもいいんじゃないかと思います。
  355. 井手以誠

    ○井手委員 それでは税率の問題ですが、先刻も私は外国との比較を申し上げました。ただいま、たたき台の案としては、利潤税の方式によると、三一%ないし三二%程度が適当ではなかろうかという試案のようです。しかし、外国の例をとりましても、外国の企業者の社会的責任を考えてまいりましても、また、日本の企業のあのばく大な利益を考えますならば、もっと税率は高目でいいのではないか。三二%を四八%程度、五割増し、諸外国同様の税率に引き上げても、私は決して不均衡ではないと思っておりますが、いかがでございますか。
  356. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、あまり詳しく存じませんが、利益にかけるという場合、この利益をどう見るかという見方について、日本と欧州あたりの国では相当違っておりますので、率だけの比較では正確ではないのじゃないかと思っております。
  357. 井手以誠

    ○井手委員 日本が一番利益は甘く見てあるのですよ。経費を一番よけいに見てあるのです。法人統計を見てごらんなさい。二兆六千億円の利益、その利益を生み出すまでには、多くの甘い経理が行なわれておるはずです。交際費でも同じことです。私どもからいえば、必要でないものまで経費に見て、残った利益に対して配当の特別の恩典も与え——二兆六千億円の利益に対して、一体どういう利益処分になっておりますか。四十一年の利益処分をおっしゃってごらんなさい。
  358. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 その前に大臣の御説明を補足して申し上げますが、三一ないし三二%という数字を仮案の中に入れましたのは、現在の法人の課税並びに配当に対する課税の総体を変えないと仮定した場合の税率ということになっておりますから、その点は申し上げておきたいと思います。  それから、いまの四十一年の企業統計によりますと、純利益のうち社外流出が約七〇%でございますが、配当が二五・六%、賞与が三・八%、税金が四〇%、残りが社内留保で三〇・六%ということになっております。
  359. 井手以誠

    ○井手委員 もう時間もたってまいりますから、その利益金処分の内容の論議はいたしません。けれども、利益剰余金が多過ぎるはずです。非常にばく大な金額になっておるはずです。昭和四十年には四千億円程度のものが、一躍八千億円ぐらい四十一年度には留保されておるはずです。一割の配当をしてもそれだけの留保があるといわれる。この法人に対してもっと課税の余裕があるのじゃございませんか。いま主税局長は、今日の税制による配当控除であるとかその他のことを考慮して、総額的には三一%ないし三二%というたたき台をつくったというお話がございますが、私はこれでは低過ぎると思う。所得税が高過ぎることはもう常識です。しかし、私どもたとえ野党といっても、財源のことは考えなくてはなりません。重い所得税に比べて法人税があまりに低いではないか、しかも外国に比べても低過ぎると思うから申し上げておるわけであります。現在の法人税をもっと引き上げられる余地はないのですか。その点を大臣からお聞きしたいと思います。
  360. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま利益剰余金のお話が出ましたのでちょっと申し上げておきたいと思いますが、現在各国の企業の資金調達の状況を比較してみますと、日本の場合は自己資金調達が四〇%でございまして、株主による調達が四十一年の下期で申しますと一・八%、社内留保が六・六%、減価償却が三一・七%となっております。残りの六〇%は借り入れ金でございます。アメリカの場合は社内留保が二四・六でございます。それからイギリスの場合も自己資金としては社内留保による資金調達が三一・四、西ドイツが一二・五と、いずれの国をとりましても、利益剰余金による内部留保は日本が一番少なくなっております。
  361. 井手以誠

    ○井手委員 大臣はなかなか口をかたくしてその考え方を明らかになさらぬようです。慎重であらねばならぬことはわかりますが、これほど税の不公平が非難されておるときに、一方では交際費でどんどんバーで遊ぶ、料理屋で遊ぶ。一方では、けさのテレビでも出ておりましたように、多くの国民大衆は重税に悩んでおる。この不公平なものに対して、これを租税公平の見地から公平に改めようというお考えがなかなか承れないのを私は残念に思っております。  そこで、私はこの機会に先に進んでお伺いいたしますが、三十六年の税調の答申によりますと、今後は内部留保とは逆に、増資の促進によって資本の充実をはからねばならぬということが答申されております。当然のことです。内部留保についてはいろいろな問題がございます。口を開けば、資本充実である、自己資本を充実しなくてはならぬ、そういうことを盛んに政府からおっしゃる。にしきの御旗のごとくおっしゃっておる。それでは一体、最近五カ年間にどのくらい自己資本がふえてまいりましたか。自己資本の比率、それから資本金の比率を五カ年間についてお示し願いたい。
  362. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 五カ年間でございますけれども、四十一年までの統計がございますので、三十七年から申し上げますと、資本金の比率は三十七年が一二・一、三十八年が一一・九、三十九年が一一・七、四十年が一一・三、四十一年が一〇・五、それから自己資本の比率は、資本剰余金、純益剰余金を加えました総体を申し上げますと、三十七年が二二%、三十八年が二〇。五%、三十九年が一九・七%、四十年が十九%、四十一年が一八・四%ということになっております。
  363. 井手以誠

    ○井手委員 大臣もいまの数字をお聞きになったと思いますが、三十七年から毎年資本金の比率も自己資本の比率もずっと低下をしてまいりました。これは数字が明らかです。政府は、いま申したように、口を開けば、資本の充実が必要である、体質の改善が緊要であるといって、いろいろな特典を与えてまいりました。先刻も平林君からその質問がございました。あれほどの恩典を与えて、なぜ自己資本が低下いたしましたか。どうして資本金の比率が下がってまいりましたか。政府の方針と全く逆じゃございませんか。あれほど租税特別措置法なり税の優遇をしておいて、資本の充実はあがっていないじゃないですか。逆じゃございませんか。
  364. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いまの企業経営から見ましたら、銀行の利子は経費と認められるものでございますから、増資をして配当するというふうに増資の金を使うよりも、負債によって企業経営をやったほうが事実上は有利だというようなところに、やはりその資本構成が直らない根本的な原因があると思います。
  365. 井手以誠

    ○井手委員 大臣お話しのとおり、借り入れ金利は八分前後で借りられる。しかも損金に算入される。株主にうるさいことを言って増資するよりも、安易な方向に向かっておる。これはわかったことです。わかったことを資本充実、内部充実のために政府は盛んにおっしゃってきた。それでは、なぜそういう安易な方法をとるようなことを改めさせないのですか。今日まで十数年の間、あれほど資本の充実を叫びながら、あれほどの恩典を与えながら、事実は逆じゃございませんか。なぜ増資ができるような政策を実行なさらないのですか。増資をした場合にこういう免税の措置を与えるとか、いろんな方法はあるはずです。政府があれほど資本の充実を唱えておるならば、それに向かう、実績のあがる政策がとれるはずです。自民党は絶対多数じゃございませんか。しかもどうでございますか、私は先刻利益金処分のことをお尋ねいたしました。時間が足りなくて私は十分質疑をできませんでしたが、今日、四十二年度の設備投資は、政府や財界の思惑よりも意外に伸びております。十億円以上の資本金の大会社においては三九%伸びておるようです。なぜそんなに伸びたか。それは設備投資の資金の七割は留保金から出しておるのですよ。留保金は四兆四千億円になっておるのですよ。政府があれほど景気抑制、設備投資抑制を叫んでおりながら、意外に高度成長したのはそこに原因があるのです。あなた方のおっしゃっておることと現実は逆じゃございませんか。内部留保させたために景気が過熱した、設備投資がふえ過ぎた、前年に比べて三九%もふえた、それは内部留保が多過ぎるからです。四十一年の金を見てごらんなさい。四兆何千億円になっておるはずです。私は知っているから、数字は聞かぬでもよろしい。一体そういう指導でよろしゅうございますか、大蔵大臣。私は数字のことはあまりとやかく申し上げません。ただ基礎になるものだけは申し上げます。私は、現実に自己資本なり資本金の比率が下がっておるという、その一点について聞いておるのです。このくらい明らかなものはございませんでしょう。この政策の実績について大臣はどうお考えになっておりますか、お伺いをいたしたい。
  366. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 確かに企業の利益剰余金の累積額は四兆円に達しておりますが、毎期の増加額は平均して七千億円程度でございますから、これで設備投資がまかない得るという問題ではないと思います。むしろ一つは、減価償却が従来からいたしました設備投資によってかなり大きくなっているという点は、これはあると思いますが、大体先進国並みの減価償却の率になっていると思います。つまり、資金供給のうちの減価償却による割合は、大体先進国並みに追いつきました。従来の設備投資が多かった結果でございます。やはり設備投資が多く行なわれました大きな原因は、借り入れ金が非常に大きいということだと思います。ほかの国に比べて目立つことは借り入れ金でして、借り入れ金が大きいことが設備投資を多くしておる一番の原因じゃないかと思います。社内留保を含めた資本金自体が下がっておりますから、内部留保、利益剰余金による資金供給力は、それほど大きくなっていないんじゃないかというのが私の見たところでございます。
  367. 井手以誠

    ○井手委員 いまここで、私は、わき道にそれて設備投資のことを論議しようとは思っておりません。予想外にふえたことは事実です。それが銀行からあまり借らぬでどうして工場がどんどん建てられるのかふしぎがっておったら、実は内部留保が非常に多かった、潤沢であったということがいえると思います。  私は、ここで集約的に大臣にお伺いしたいことは、十数年にわたって資本充実だ、資本充実だと盛んにかねや太鼓で宣伝をされ、ばく大な租税特別措置その他の恩典を与えておいて、現実は逆じゃございませんか。政策が誤ったんじゃございませんか。ここで従来の企業に対する一切の政策を再検討する必要はございませんか。私は、何もここで計画経済をやれとかなんとか、あなた方には無理なことは申しません。けれども、資本の充実、資本金をふやさなくちゃならぬ。たてまえはそうでしょう、巨額な金を多人数から集めて経済活動をする今日の会社、法人ですから。しかも税調からは増資が必要であるといわれておる。ほんとうに増資に必要な政策はあまりやっていないじゃないですか。安易な借り入れ金にたよるようなやり方、もしそういうことであるならば、それを食いとめる政策をなぜ実行なさらぬのですか。今日までの政策の実績にかんがみて、大臣、どうお考えですか。
  368. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 あなたがここで現行の制度を一ぺん再検討してみる必要はないかということについては、これはもう賛成でございます。しかし、それと同時に、さっき私が申しましたように、欧州諸国を見ますと、法人税の収入というものは国の歳入の税収のうちの一〇%以下におそらくなっておるのだと思います。日本所得税と法人税が国の税収の大宗でして、それぞれがみんな三割近い比率を持っておると思いますが、外国は、すでに法人税というものはそういう方向へ、斜陽税的な方向へいっているという事実は、やはり無視できない。こういうものを再検討する場合において、法人税を将来もっと税率を多くしていく方向へいくのか、税の体系全体の問題としてあらためてそういう角度からの考えを入れた検討が必要かということになりますと、いまむしろ日本税制は、体系的にいろいろ長期的なあり方を考えるところへ来ておるのじゃないかというふうに考えますので、そういう問題とからんで今後はやはり検討を続けていきたい、そういうふうな気がいたします。
  369. 井手以誠

    ○井手委員 欧州の法人税の比率が低いというお話でございますが、それはこうでしょう。日本の場合は、二十二番目の長屋から三番目のきれいなビルに国民は通っておるとよくいわれておる。法人はりっぱになっておる。国民は、世界第三位などといっても、二十二番目か二十一番目です。だから、利益のばく大な法人の税が多くを占めるのは、これは当然じゃございませんか。外国は国民所得が高いから税金が多いのですよ。あたりまえな話です。私はこの資本充実の問題についてあらためて機会を持ちたいと思っておりますが、これはひとつよほど考えてもらわなくてはなりません。何の価値もないじゃないですか。いまの法人税の仕組みはどうですか。あの不景気なときでも、日本の全会社の平均は九分以上の配当をいたしておりますよ。中小企業は倒産のときに、零細企業は倒産するときに、大企業、中企業は平均して九分の配当をいたしておりますよ。なぜそんな配当ができ、そしてなお五千億円平均の内部留保ができるのか。それはなるべく管理価格によって、独占価格によって物価をつり上げてばく大な利益をおさめる。経理を甘くして利益が少ないようにする。配当は減税の恩典を与えて利益を留保させる。結果から申しますならば、法人の高い利潤を維持するために、今日の法人税の体系が完備されておると私は申し上げたいのです。不景気のときには配当ができないのはあたりまえです。それを平均して九分、一割の配当ができるという根拠は、やはり今日法人税法の欠陥があると私は申し上げたいのです。私は欧米でとられておる法人の社会的責任などを考えまするならば、法人税は現在の一兆四千億円の五割は無理をせぬでも必ず取れると思うのです。取っても内部留保はなおできるはずです。法人税の金額と剰余金を見ると、りっぱに出てくるはずです。一兆四千億円の五〇%の七千億円は出てくるはずです。交際費その他を節約をすればもっと出てくるはずです。その七千億円の財源をもって所得税減税してごらんなさい。それがあなたの言う福祉国家の実現ですよ。  私は大臣にはたくさん言いたいことがありますけれども、大臣予算委員会の引き続きでございますから、きょうはこの程度に私はとどめたいと思います。一応落ちついてから——これは個人の問題じゃありません。日本税制にとっては非常に大事な点でございますから、あらためてあなたと議論をいたしたいと思います。きょうはこれにて質問を終わります。      ————◇—————
  370. 田村元

    田村委員長 次に、関税定率法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。石野久男君。
  371. 石野久男

    石野委員 もう時間が二十分しかありませんので、端的に定率法の問題について大臣にお尋ねいたします。     〔委員長退席毛利委員長代理着席〕 本委員会では、もう定率法の問題についてはいろいろと質問が長く行なわれているようでございますし、特に本日私が承りたいのはケネディラウンドの実施に伴うこの税率改正でございますが、その適用を受けない国に対する処置、そういう問題で、特に中国との関係についてお伺いしたいのでございます。  その前に大臣から、関税政策の目的は何であるか、これはもう平凡なことですけれども、この際ひとつ聞かしておいていただきたい。
  372. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 主として国内産業の保護ということになると思います。
  373. 石野久男

    石野委員 国内産業の保護ということだけに尽きるのですか。
  374. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それと貿易の振興。
  375. 石野久男

    石野委員 特に今度のケネディラウンドに関連するジュネーブ協定の意義というものは、そのどちらのほうに重点が置かれているのですか。
  376. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 両方の目的がございますが、もっぱらやはり世界貿易をもっと伸ばす、貿易の拡大というところにあると思います。
  377. 石野久男

    石野委員 大臣は、関税政策の目的は国内産業の保護ももちろん一つあるということを言いましたが、今日の段階では、やはり貿易量をふやすということのほうに主として重点が置かれている、そしてまたそういう観点から定率法等の改正が行なわれていくのだというふうに私は理解しておるのですけれども、これは間違っているのですか。
  378. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 先生指摘のように、もし国内産業保護ということがございませんと、ほんとうは関税はどこの国も全部無税でいいわけでございます。ところが、そうは簡単にまいりませんので、国内産業の問題を考えながらなるべく貿易の障害を低くしていこうということで、その調和に苦労しているわけでございますが、おっしゃられましたように、大方向としてはこういうものはなるべく引き下げていこう、そういうことで世界じゅう進んでおるわけでございます。
  379. 石野久男

    石野委員 世界経済の実情からいって、ケネディラウンドの目的としたところは、やはり各国間の貿易量をふやすというところにそのおもな重点があったというふうに私どもは理解しておるし、もちろんその間、国内産業を保護しなければならないということは言うまでもありません。しかし、なくなったケネディがこの問題を提起する段階では、あまり関税の障壁を高く立ててもらっては困るからというのが、やはりケネディラウンドを討議しなければならない最大の原因だったと思うのです。だから、そういう趣旨に基づいて今度の定率法の改正が行なわれると見ても、これは別に間違いじゃないし、むしろ今日的な意義はそこにある、こういうふうに私どもは理解すべきじゃないかと思いますが、いま一度大臣からひとつその趣旨を聞かしていただきたい。
  380. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そのとおりだと思います。
  381. 石野久男

    石野委員 関税定率法のわが国におけるこの五条の適用の問題を論議するにあたりまして、やはりこの五条の適用というのもその趣旨に基づいておるもの、こう考えますけれども、大臣そうではないのですか。
  382. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 関税関係全体については、先生おっしゃられるような大方針がございます。ただ、五条の問題を考えますときには、一つ一つについてはいろいろ問題がございまして、御承知のように、ガット加盟国がどういうふうにして譲許税率を下げていくかと申しますと、お互いにこちらとしては、たとえば甲の国と交渉しますときに、甲の国のこういう日本への輸出品の関税をこういうふうに下げてくれということを申します。それからそのかわりに、日本のほうの甲の国が主として関心を持っている品目の輸入についてこういうふうに下げるから、また相手の国も同じようなことを言います。それで、国内産業の面から見ますと、輸入品の関税を下げるということは、どうしても国内産業のほうから抵抗がございます。お互いにそれは抵抗があるわけです。それから輸出がふえるという点でお互いにメリットがあるわけです。そこで一つ一つの品目について、御承知のようにケネディラウンドも非常に長い交渉になったわけですが、そういう二国間の交渉を積み上げていって多角的にまとめる、そういうことをしているわけでございます。
  383. 石野久男

    石野委員 しかし、結果的には、国全体として差し引きで利益の出るような方向が主たる目的になるわけなんでしょう、この便益関税を与えるのは。
  384. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 いま申しましたのは、便益関税は別にしまして、関税交渉をするときには、そういうことで日本が得をして乙の国が損をするとか甲の国が損をするとかいうことはございませんで、お互いに貿易の障壁を低くしていくということが資源の適正配分という大目的から見て好ましいことだということで、言いかえますと効率的な生産のほうにだんだん産業を転換していく、そういう大目的で関税交渉をまとめるわけでございますから、それで日本も得をする、相手も得をすると思うので話がまとまる、そういうことになっております。
  385. 石野久男

    石野委員 第五条による政令をきめます場合の基準というものの大体の方向はいま局長のそのお話でわかりますが、問題はその五条の適用をするにあたって、結果的に見て、両国の間の、相対する国の間の貿易量をふやすという方向に持っていくということ、これは税法それ自体の目的としてはそれ以外にはないわけですね。
  386. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 私のお答え、まだ半分しかいたしていないのですが、譲許税率はガットの加盟国——三十五条援用のところは除きます。それからソ連のように二国間条約で最恵国の義務のあるところ、こういうところには適用になります。したがいまして、ある品目をガットで下げるというときには、そういうところには必ず適用になる。したがって、そういうところから入ってくるものが、日本に対して非常に大きな影響を及ぼさないかどうか、それを調べてそれを譲るというようなことをいたします。  次に、今度便益関税の話でございますが、まずガットの三十五条援用国でも、事実上日本に対して差別待遇をしてないというところがございます。これは法律上は条約もございませんから、日本としてはそういう国に対して譲許税率を条約上の義務として適用するということはないわけでございます。     〔毛利委員長代理退席委員長着席〕 しかし、向こうも事実上日本に対して差別待遇をしていない、したがってこちらも事実上差別待遇をしない、そういう場合にそういう国に便益関税を適用いたします。それから、ガットに入っていない国でも、事実上向こうが日本に対して差別をしていない、そこには日本も事実上差別をしない、そういうときにもやはり便益関税の適用国になります。
  387. 石野久男

    石野委員 中国の場合を端的にお尋ねしますけれども、中国の場合については便益関税の適用はどの程度行なわれるかということについては、もうすでに何べんも聞いておりますし、私は先般の予算委員会の分科会のときにも聞きました。そこで問題は、額において八〇%までは便益関税を適用する、しかし量においては五五%は適用を受けていない、こういう結果がいまのところは出ているようでございます。こういうような適用のしかたをする基準はどこにあったのか、それをひとつ聞かしていただきたい。
  388. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 まだその三つ目の便益関税を適用してないグループの話を申し上げてないのでございますが、中共はそこに入っているわけでございます。どういう国に便益関税を適用してないかというと、たとえば日本との間に何も条約がない、あるいはガットの三十五条を援用している、しかも日本に対して差別待遇をしている、したがってそういう国には、日本は条約の税率を便益関税という形でも適用しておりません。それから、中共のように国交がない、したがっていろいろな情報ですと向こうは差別待遇をしているようでございますが、これはどうもはっきりしない、こういう国にも、法律的に申しますと、正確に申しますと便益関税を適用していないわけでございます。しかし、今度御審議願っておりますような品目については国定税率を下げておりますので、便益関税は適用しないのですけれども、しかし国定税率が下がりますので、結果的には譲許税率と同じものが適用になる、そういう形になっておるわけでございます。
  389. 石野久男

    石野委員 中国に対する税率の問題では、便益関税は適用されないけれども、国定税率の引き下げが行なわれるから、それで結果的にはその部分に対する便益がなされているんだ、こういうことですが、国定税率を中国との取引品目の中で選別する、その選別した基準はどういう形からできておりますか。
  390. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 先ほど私からちょっと申し漏らしましたが、八〇%と五五%の話でございますが、八〇%というのは金額のウェートでございます。それから五五%というのはたぶん品目数の比率だと思います。  さて、それでは国定税率を下げて、これは中共だけではなくてほかの国にも適用されますけれども、国定税率を下げるときにどういうことを考えて下げたかということでありますが、国定税率を下げるときに考えなければいかぬことが二つございます。一つは、御承知のように、相手が三十五条を援用している、そして事実上日本に対して差別待遇をしている、そういうときにこちらは御承知のようにいろいろな努力をして、三十五条の援用を撤回しろということを交渉するわけでございます。そのときに、日本の税率が二木立てになっておりますので、そこで、三十五条援用を撤回しますとこういう有利なことがあります、譲許税率が全部適用になる、その問題があります。交渉の種にとっております。これは品目別でございますので、中共とかなんとかということじゃございませんので、一つはそういう問題を考える必要がある。交渉の口種をとっておきたい。もう一つは、その品目について国内に対してどういう影響を及ぼすか、この二つを考えて国定税率をどうするかということをきめるわけでございます。
  391. 石野久男

    石野委員 中国の場合、実際にいまわれわれの理解しているところでは、金額では八〇%、それから品目では四五%くらいですね。国定税率が適用になるというのは。金額二〇%、品目五五%というものについてのこの内容は、いま言った交渉の口種をつくっておくのだということ、それからもう一つは、国内産業を守るんだということなんですが、はたしてその国内産業を守れるような実態になるのかどうか、このところ特に私は考えてもらいたいと思うんです。たとえば今度のケネディラウンドを適用されて、そして税率の改正が行なわれる品目で、しかも中国と取引する品目の中に直接結論が出てくる問題があるわけですよね。それがはたしていま局長が言われるように、国内産業を守る面にいい面が出てくるのか、逆にそれが日本にとっては損になる面が出てくるのかということをわれわれは考えなければいかぬですよ。たとえば第二類の魚類一つ見ると、一〇%の税率が五%になるわけですね。普通は。ところが、中国から来る生鮮のものは一〇%そのままでくるわけですね。そういうことになれば、これはとても入りっこありません。もちろんこれに対して、いま近国からそれにかわるべきものは入るのかもしれませんけれども、たとえば昨年一年だけで十四億円のものが入っております、中国から日本に対して生鮮魚類が。これらのものがもしそのままではこれはとても入れない。韓国とかなんとかから入るんでしょうけれども、あるいはまた、中国のものを香港で仕入れて、仲買いをして、とにかく五%の差がありますと、これをやはり中間で中継ぎしてここへ持ってきても売れるそうですよ。十分仕事ができるそうです。それからまた、第五十類にあるところの絹糸のごときものを見ましても、これは昨年一年で中国から約五十億円の輸入がありますが、ケネディラウンドによる格差がつけば、その分はイタリヤとか韓国なんかの糸が入ることになるわけですね。ところが、これは実際に香港を通じて入れば、一五%が七・五%で中国は生糸を出すことができるわけですよ。そして香港を通じて同じように中国のものは日本に入ってきておるのですよ。その場合にどういう結果が出てくるかというと、同じ中国のものが香港を通じて日本に入ってくると、香港を通じて入ったものについては見返りがないですよ。中国のものであれば、今度の覚書交渉によってバーターでいきますから、向こうから入っただけのものは日本から輸出できるんだ。ところが、香港から入ったものはそうはいかないでしょう。だから、こういうような問題はもう少し真剣に考えるべきだと思うのですよ。また、たとえばブラウスなんかでもそういうことがいえるんじゃないですか。いま中国からブラウスが一年間十億円入っているというのです。これは六一・〇二ですね。この女の子あるいは子供なんかが着ているブラウスというものは、中国から入っている。これが三〇%ですね。それが今度ケネディラウンドによって二二・五%と二一%になるんだそうだが、九%の差があると、これは香港で中国のものを受け取って、それを日本に持ってきてりっぱに商売できるそうですよ。その場合、かりに十億円のものがそうなったとすると、中国との間の取引なら、十億円のものは見返りとして日本は買った分を出すことができるが、香港との取引でしたらそうは簡単にいきませんよ。そういうことを考えると、いまおっしゃられるような国定税率の改正という問題で適用されておる大豆とか銑鉄というような大ものだけはやっておりますけれども、この五五%の品目、二〇%に相当する金額というものは、非常に日本の貿易量の上においては重大な問題を持ってきます。もちろん金額そのものはたいしたことはありませんけれども、約三百六十何種類という種目というものに関連する商社筋というものは、徹底的につぶされてしまうのですよ。中国と取引している商社は。だから、こういうようなことを考えました場合に、私はやはり中国のものを、便益関税とは言いませんが、国定税率によって結果的には五条の適用が行なわれる結果が出る、そういう扱いをするなら全部やるべきだ、やらないなら全部やらない、それをはっきりすべきだと思うのです。  ここで問題になるのは、大臣に聞いてもらいたいことは、関税政策というものは、結局日本の貿易を拡大する——もちろん国内産業も保護しなければいけませんけれども、しかし、主として今日の段階ではやはり輸出を増大させるために論議されているものだと思います。今日定率法の一部改正の問題は、やはり一〇〇%輸出増強のために論議されてきておるものだ、こう見て間違いないと私は思います。そういう観点からして、今度自民党の古井君や田川君たちが取りまとめてまいりました日中覚書貿易協定というものの意義と関税定率法の意味するものとのかね合いを、政府として統一させなければいけないだろうと思うのです。私は、今度のこの定率法の改正によって、そして関税定率法が準用される形で出てくる結果としては、この二〇%の金額、五五%に匹敵する品目に関しては、これに関連する商社筋は、ばたばたと倒れていくだろうと思います。ことに、それに見合う金額というものは見返りがつかない貿易量となって、第三国が中間にこれを扱うことになってきて、日中貿易の側面からいいますと、逆にいわゆる定率法の中における差別待遇が行なわれるという結果が出る。相手は差別待遇と見ます。だから、中国がそう見てまいりますと、日中貿易の側面からいって、いわゆる互恵平等といいますか、その精神というものは全く踏みにじられてしまうことになるのじゃないかと思うのです。だから私は、この際、大臣にひとつ今度の定率法の改正に伴う政令につきましては、これらの点を十二分に勘案してやってもらわないと困るんじゃないか。だから、これを品目別で差別するというふうなことではよろしくないので、できることならば、第五条は国または品目ということになっているわけですから、その国の指定は全面的に指定すべきじゃないか。これは、いま中国は国交がないからというようなことで、国の指定はできないという理屈はないと思うのです。それはたとえば渡航の問題でも何でも、これは中華人民共和国というものを政府認めてやっておるわけでございますから、いわゆる国交のない国だからというので貿易ができないわけじゃございません。  ことに私は、もう一つ真剣に考えなくちゃならぬ問題として申し上げたいのは、非常に差別待遇をしているところ、たとえばアルジェリアとの貿易は、日本に対しては非常に差別待遇をしているけれども、日本の輸出をふやすために、日本ではいわゆる便益関税を適用しているわけでしょう。こういう実例もあることから考えると、今度の日中貿易に対する自民党の古井、田川君たちの努力、そしてまた、政府自身が日中貿易に対して真剣に考えている態度からしても、今度の定率法の改正に伴う日中間の扱いについては、全面的に、一〇〇%やはり便益関税に相当するような国定税率を適用すべきではないか、こういうふうに思うのだが、ひとつ大臣の所見を聞かしてもらいたい。
  392. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 ちょっとその前に、技術的なことが一つございますので……。  先ほど先生がおっしゃられました、香港は安い税率が適用になる、中共のほうは高いのが適用になる、そうすると中共のものは香港を回って日本へ入ってくる、そうすると中共と取引のある商社が非常に困るじゃないかというお話、それからいろいろございましたが、いまの関税率の適用というのは、積み出し港がどこということになりませんで、原産地がどこかということでやっておりますので、中共のものが、いまでもそういうものはございますが、香港を経由して入っても、中共産のものは中共に対する税率が適用になる、そういうことになっております。
  393. 石野久男

    石野委員 そんなへ理屈を言うが、君、いま香港産のブラウスをどこで原産地証明するんだ。そんなことできっこないじゃないか。そんなへ理屈を言って。
  394. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 原産地証明という制度がございまして、原産地を香港が偽ってやるということになれば、こちらはまた調査をせねばいかぬと思っておりますが、国際的に原産地でもって製品に対する税率はきめる、そういうことになっております。
  395. 石野久男

    石野委員 原産地証明というのは、たとえばココムとか何かの場合に非常にやかましく言われていることは、私たちも知っている。知っているけれども、ブラウスに原産地証明をどこでとるのです。女の子の着ているブラウスだの子供の着ているブラウスに、一品や二品そんなものがあったとしても、そんなこととてもできやしませんよ。いまの国際貿易の中で、そんなことがそんなに簡単にやれると思いますか。魚の原産地をどこで知るんだ。どういうところで証明するんだ、そんな子供だましなことを言ってはいかぬですよ。
  396. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 これはたとえば今度、先生御承知のように、後進国に対する特恵関税という問題が起こっております。あれについても原産地がどこかということで、特恵を適用し、あるいは適用しないということになっておるわけでございます。
  397. 石野久男

    石野委員 原産地証明というものがあることは私も知っているから、局長がいま言うことは、一応議事録に載せるために言うならそれはかまいませんよ。しかし、実務上からいうならば、とてもとてもそういうことはできるものじゃありませんよ。そうして現実に見てごらんなさい。これをやれば、たとえば魚にしてもブラウスにしても、これだけの金額は中国からなかなか入らないで、香港経由のものはそれだけ多くなることだけは間違いありません。そうしてそれは結果的にいって、日中貿易に対して非常に大きな障害になるのです。これは事務官よりもむしろ政治家が考えなければいけない。やはり大臣はそういう問題を明確に政治的に指導すべきだと思うのです。しかも金額にして二〇%のものを日本に入れて、どれだけ経済的に大きな障害がくるのか。ところが、品目三百何十種類というものについて出てくるところの中小の商工業者に対する打撃はどんなに大きいものかということを考えなければいけません。金額ではたった二〇%ですよ。しかし、品目では五五%です。中小商工業者に対して佐藤内閣はどういうような態度をとるかという問題が、ここで端的に出てくるのです。そういう問題について、大臣の関税政策に対する一つの所信を聞かしてもらいたい。あんまり関税局長とか、事務官にばかりに引っぱられたらだめですよ。
  398. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は分科会でも答弁しておるはずでございますが、この便益関税の適用というのは無理だ、しかし格差の生ずる各品目については、国内産業の事情が許す限り、国定税率改正のときにおいて前向きにわれわれは考えていくということを言ったのですが、これが大体いまの政府の態度でございます。
  399. 石野久男

    石野委員 その方針はよくわかりますけれども、先ほどから言っておりますように、日中貿易の中でケネディラウンドに関連して出てくる問題から見ますと、金額にしては二〇%でございますけれども、これは二〇%をちょっと上回るでしょう。今度米が二十万トンが十万トンになってきますからね。そうすると、相当程度これは変わってきます。数%違ってくる。約二〇数%の金額でございましょう。しかし、品目にしますと三百六十何種類になりまして、ほとんど五五%ぐらいになる。この五五、六%の品物を取り扱っている商社筋というのは非常に多いです。金額八〇%に相当するものを取り扱うのは、まあ少ないことではありませんけれども、それは非常に大手でございますから少なくて済む。けれども、三百数十種類にわたるところの商社筋は非常に大きい。それが実質的に仕事ができなくなってくるという問題はたいへんなことでございます。それが一つ。同時に、中国側から見れば、これは明らかなる差別的な取り扱いである。もっと端的にいうならば、田川氏たちがあすこで政治三原則で非常に苦しんだように、政治的に敵視する一つの具体的な政策面に出た方策ではないかというようにも見られます。だから私は、今日、中国におけるそういうような見方をさせないためにも、また、日本の業者が苦しまないためにも、この際——大臣がいま言われた国定税率の改正等について前向きでやるということはわかりました。わかりますけれども、ただ前向きだけでは解決しないのですよ。むしろ私は、この段階では五五%の品目については、これはもうオープンに全部適用するということをしても、日本の国内産業に影響するものはそうないということなんですよ。それどころか、かえって貿易を広げるということなんですよ。貿易量を広げるという結果が出てくるのです。そうでないと、かえって貿易量を狭めてしまって、いわゆる中国における輸入の割り当て額が減ってしまうのだから、そういうばかげたことをすべきじゃないというふうに思うのですが、ひとつ大臣の再度のなにをお聞かせ願いたい。
  400. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私の希望は、日本からの輸出も差別してもらわない、向こうからの輸入も日本は差別しないというような方向へ持っていって解決するのが一番いいと思います。しかし、それはなかなかできないのですから、一方的にも、日本の事情の許す限り、そういう方向へ日本努力しようということであります。
  401. 石野久男

    石野委員 もう時間がございませんから、大臣はその方向で、定率法で便益関税が適用されるような、具体的な成果のあがるように、できる限りひとつやってもらいたい。その方向だけを明確に、この段階でそうやる意思のあることだけを大臣からお聞きしておいて、私の質問を終わりたいと思います。
  402. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 品目別によく検討いたします。
  403. 石野久男

    石野委員 品目別ということを言われると、ちょっとひっかかっちゃう。いまも言うように、金額の面で二〇%だけれども、品目の面では三百六十何種類あるのです。だから、そういうことを言っていると、いままで私が質問したことは何にもならなくなってしまうのです。だから大臣はできるだけ一〇〇%の−一〇〇%といっても金額では二〇%ですよ。だから、これは政治的な判断よりほかにないのです。大臣のその方向についての決意をひとつ聞かせておいてもらいたい。イエスかノーでいいんだ。
  404. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは当然各品目別に日本もこれを検討して、そして前向きの方向で解決しようということでございまして、ここですぐ、一切品目の検討もしないで全部、一〇〇%そうしろということを私に言わせることは無理でございます。そういう意思はございません。
  405. 石野久男

    石野委員 たびたびですみませんが、そういうやり方については、できるだけ年度にそれが効果の出るような方向をとってやっていただくのですね。
  406. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 品目別にいろいろとこれは影響があるわけでございますが……(石野委員「そんなことじゃなしに、時期の問題を聞いている」と呼ぶ)そこで、一つ一つ検討をしますので、これは相当な時間が要ります。なるべく影響の大きいものから検討するということで、先般来生糸については検討するというお答えをしておるわけでございます。たとえば生糸についてはそういうことでございます。
  407. 石野久男

    石野委員 だから、それは——それでは終わります。あと武藤君がやってくれるそうですから譲ります。
  408. 田村元

    田村委員長 武藤山治君。
  409. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵大臣も御承知のように、この国会で、特に関税定率法の審議にあたって、中国との貿易政策をこの際大いに再検討の要がある、こういう立場から、それぞれの質疑者から大臣も耳にたこが張るほど聞いたと思うのであります。  そこでいま、国際収支の面からも、また隣国という面からも、また日本物価上昇という面からも、中国から買うべき品物はかなりある。われわれはそういう立場に立って、政府のこれからの施策に大いに転換を要求して質問をしてきたわけです。いま石野さんからも、いろいろな角度から中国貿易の拡大をぜひ政府としてこの際考え直すべきだ、こういう質問がされました。しかし結論は、便益関税はやれない。これははっきり大臣はそういう答えを出したわけです。しかし、基本税率が引き下げられれば、それに呼応して税率が引き下がるという品目別の検討はする、こういう答えは出ましたね。ここまでのところは、大臣、間違いないでしょうね。個々の品目について引き下げをするという点では考慮をする。具体的には、生糸の問題については広瀬委員あるいは広沢委員などからも御質問があって、農林省が国内産業保護という点が心配なければこの一年以内に検討してこれらの輸入障壁についても公平に取り扱う、こういう答がここで出たわけであります。したがって、これは一年間の間に蚕糸局で十分検討して、この質疑応答の中で行なわれたような姿勢で早く結論を出したい、こういう政府側の答弁があったわけであります。大臣、そういう点を、もうこの次は大臣やらぬかもしらぬからといって忘れることのないように、まず頭にしかととどめていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  410. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 頭にとどめておきます。
  411. 武藤山治

    武藤(山)委員 そこまでの点はよろしい。  もう一つ、この間私が、やはり個別商品で議論をしないと歯車が合わないという立場から、中国からの輸入、すなわち豚の胃と腸の問題をここで取り上げました。大臣もそのときにお聞きになっていたと思います。私は、きょうは二十分ぐらいで結論だけをまとめようとしてここに立ちましたから、くどいことは申しません。ただ、業者が言うのは、農林省に行って農林省の了解を受けて、しかも通産省にも行って了解を受けて、これは無税の品物である、こういうことで業者は無税だとばかり思って中国から輸入をした。ところが、東京税関に来て二五%の関税をぶっかけられる。こういう経過で、まことにこれは中国からの輸入品についての差別取り扱いである、けしからぬではないか。ここまでこの前質問して、大臣と両方が憤然として別れたままになったわけであります。そこで、私は、きょうはその問題だけを、個別商品にわたりますが、ちょっと結論をつけたいと思うのであります。  まず、畜産局長にお尋ねをいたしますが、日本の場合、中国以外の国から腸や胃の輸入をしている国は一体どこですか。同時に、量はどのくらい輸入しておりますか。
  412. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 内臓につきまして、輸入をしている量を申し上げますと、四十一年に八百九十トン程度ございました。ケーシング、インドから二百トン、中共から三百三十五トン、香港から四トン、ビルマから一トン、パキスタンから九十トンというふうにかなりの国から輸入をいたしております。大きいところでなお追加して申し上げますと、米国が百三十トン、それからオーストラリアが八十八トンということでございます。
  413. 武藤山治

    武藤(山)委員 アメリカから入ってくるものとオーストラリアから入ってくるものは関税は幾らかかりますか、関税局長。
  414. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 これは国別の差別ではございませんで、なまのものと煮沸したもの、そういう差別でございます。
  415. 武藤山治

    武藤(山)委員 なまのものと煮沸したものとの差別ということでありますが、農林省はアメリカもの、オーストラリアもの、ビルマものはどの程度の熱処理をして、冷凍にして日本に入ってくるという指導をしているのか。また、そういう熱処理は一切かまわずにアメリカ、オーストラリア、ビルマのものはなまのものを冷凍にして認めるのか、その点の取り扱いはどうですか。
  416. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 通常なまのものが入ってくるわけでありますが、御承知のように、なまのものでございますと無税ということになっております。煮沸いたしましたものは二五%の関税ということになっております。煮沸したものの定義といたしましては、百度で一時間煮沸したもの、これを煮沸と称しております。それ以外になまのものをお湯の中に入れて出すことがありますけれども、こういうものにつきましては、なまものであるというふうに考えております。
  417. 武藤山治

    武藤(山)委員 しからば九十五度までならば、なまのものとして関税は無税ですね。
  418. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 関税のほうですから私のほうからお答えいたしますが、このなまのものの扱いの中に、御承知のようなものでございますから、相当いろいろなものがついておる。それをぬるいお湯の中で、湯がきといって汚物をとるというような処理をいたしましたものと煮沸したもの。先ほど畜産局長が申しましたように、煮沸したものについては二五%の税率がかかる。  そこで先生がおっしゃられますのは、そこをどこまで差別をつけるかということだと思います。それで何度はどうか、何度はどうかということになると思いますけれども、その境は、御承知のようにいまの関税率の分類というのはブリュッセルの分類をとっております。これは技術者が集まって、どういう分類に属するかということを国際的に相当固めております。そこで煮沸とそうでないものとの差を、たん白質が変性するということで設けております。
  419. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、農林省は初めから煮沸したものは二五%税関で取られますよということを承知の上で業者に百度の中で一時間通して持ってこいという指導をしたのか。それとも業者の言う、新聞に出ている記事は、農林省は煮沸をすれば輸入を認める、関税は無税だ、こういう指導をしたと言っているわけですね。農林省はぼくが質問するまでは、なるほど煮沸してしまえば二五%になるのか、無税だと思っていたのだがということじゃないですか。そこの指導はどうですか。
  420. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 ただいま先生のお話しのように、ある商社から農林省の畜産局の衛生課のほうへ質問がございまして、中共からの豚の腸だとか胃だとか膀胱だとかいうものの輸入について質問があったのでございますが、これに対しまして、衛生的な動物検疫の観点からいいますと、なまのものにつきましては中共からの輸入は禁止をいたしております、煮沸したものであれば動物検疫上差しつかえはないというふうな答弁をいたしたようでございました。したがいまして、まあ動物検疫の衛生関係でございますから、関税率がどうであるとかいうことについては、必ずしも十分平生考えておらないわけでございます。動物検疫の立場のみから、煮沸したものであれば動物検疫的に輸入は可能であるというふうなことを答弁したように承知いたしております。
  421. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、畜産局のほうでは、あるいは動物検疫の担当官としては、なぜ中国ものは煮沸しなければ輸入ができないと判断したのか、その根拠を明らかにしてもらいたい。
  422. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 御承知のように、現在わが国の動物検疫上、偶蹄類の動物でありますとか、肢体でありますとか、肉でありますとか、内臓というものにつきましては、輸入を禁止をいたしておる国がございます。現在輸入の禁止をいたしておりません国といたしましては、アメリカでありますとか、豪州、ニュージーランド等の数ヵ国でございまして、それ以外の大部分の国は輸入禁止地域に指定をいたしております。中共もその中に入っておりますので、なまのものは輸入ができないということは了承をいたしております。
  423. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵大臣、アメリカやオーストラリア、ビルマから輸入をする業者は二五%の税金がかからない。中国から同じものを輸入したものは二五%税金がかかるのです。商社の立場になってちょっと考えてみてください。そうすると、アメリカやビルマやオーストラリアから買って商いをしている商社は二五%だけもう優位になる。中国から買ってきた業者は二五%税金がかかったら商人として競争ができると思いますか。大臣、商人として、輸入業者として、二五%かかる品物とかからない品物で同じ市場で競争したら、中国からの輸入をやっておる業者はとても競争にならぬ、つぶれるという運命になると思いますが、御見解はいかがですか。
  424. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 先般ちょっと申したかもしれませんが、この税率については関係者と協議して、この改正について考えたいというふうに思っております。先日このお話を聞いたあとで、実はこういう相談もしたいと思っておりましたが、何しろ目下一日十時間勤務ですので、時間がなくておくれておって申しわけございません。これはやはり関係省で十分協議して今後の問題は相談したいと私は思っております。
  425. 武藤山治

    武藤(山)委員 水田大蔵大臣にしてはりっぱな答弁で、一応七〇%満足ですが、大体いつごろをめどにそういう各省との協議をして結論を出そうとお思いでございますか。
  426. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 御承知のように、内臓につきましては、一般食用に供せられる場合には特に鮮度を重視する商品であります。従来煮沸品として国際的に流通するということはなかったわけでございますが、最近になりましてそういうものが入ってくるという形態が出てきたわけです。したがいまして、関税率につきましては、そういうものを特に二五%にするというたてまえで関税率が設定されておったものではないわけでございまして、くず肉その他の調製品ということで一括二五%ということになったわけであります。ただ最近のように輸入が行なわれるというような状態になってまいりますと、一体どういうふうな形で——従来はそういうものはないというふうに考えておったわけでございますけれども、最近輸入されるとなればどういうものに使われるのか、どういう形で使われるのかという流通的な形態を調査をしてみたいというふうに思っておりますし、またその結果によりまして、なまものと同じように考えるべきかどうかというふうな均衡論の問題もございますし、その他同種の商品とのバランスの問題もございますので、そういうものを十分検討いたしまして前向きで善処いたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  427. 武藤山治

    武藤(山)委員 いつごろまでに出るか。
  428. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 昭和四十三年度中に結論を出すようにいたしたいというふうに考えております。
  429. 武藤山治

    武藤(山)委員 畜産局長、結局百度の熱で処理をして持ってこいと指示をした理由は、中国の口蹄疫という病気があるから、これに用心をする余り百度、一時間というワクをはめたと思いますが、それはどうですか。
  430. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 先ほども御説明がありましたように、要するになまの肉と煮沸肉というものの違いということでございまして、それでたん白質の変化というふうな点に着目いたしまして百度、一時間というふうな基準が考えられておるわけでございます。
  431. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、あなた、口蹄疫というものを持っていると、煮ても焼いてもそのビールスは死なない、人間の体内へ入って、それがさらにふんになって、ふんの中から日本の牛や馬に伝染するというのでしょう。そうなると、胃や腸もそういう解釈をされるおそれがあるのじゃないですか、どうですか。
  432. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 口蹄疫は煮沸いたしますと、これは一応害毒がなくなるということになるわけでございまして、したがいまして、腸だとか胃だとか膀胱というものにつきましては、煮沸したものであれば動物検疫上支障がないというふうに考えておるわけであります。
  433. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういたしますと、中国の肉のかん詰めなら自由にどんどん輸入を認めるのですか。
  434. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 肉のかん詰めにつきましては、もちろんこれはIQ物資でございますから割り当て制があるわけでございますけれども、割り当ての範囲内であれば中共から入りますことは妨げないわけでございます。
  435. 武藤山治

    武藤(山)委員 あなたは畜産局長という一応畜産関係の最高の責任者で、昭和三十一年十月、四十年八月、四十一年三月の三回にわたって中国にほんとうに口蹄疫というのがあるかないかという調査をしておりますね。しかも与党の大石武一さんを団長にしてかなりの技術陣が行って調査をしている。それでも農林省は信用しないで、四十一年には農林省の元畜産局衛生課長を派遣して調査をしている。その結果、報告はここにも全部文書がありますが、中国にはもう口蹄疫の心配はない、施設も非常によくできているといって、もう問題がないと言っている。坂田農林大臣はその報告に基づいて一応輸入禁止を解除した。ところが、またまた松野さんが農林大臣になったら禁止をした。省令で自由にこれをいじっているわけですね。なぜ三回にわたるこの調査団が行ったのに、畜産局長としてこの報告を信用しないのですか。
  436. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 お話しのように三回の調査団が派遣されております。前の二回につきましては、中共の衛生状況一般の視察であったわけでございます。第三回目の調査は、現畜産振興事業団の副理事長をいたしております田中氏が調査に参りました。その際は、口蹄疫の問題につきまして非常な関心を持って参ったわけでございまして、中共は非常に広い国でございますからすべての地域を見るということはなかなかむずかしいわけであります。特に北京、上海等の調査をいたしまして、中共の要路の方々といろいろ議論をかわして帰られて、報告を出されておるわけで、報告書は出されておりますので御承知のとおりだと思います。この報告書の中で明らかにされておりますことは、中共、戦前のシナ大陸は口蹄疫で非常にきたなく荒らされた地域であったわけです。中共治下になりまして衛生状態は非常によくなりまして、そこで予想外に衛生状態は改善されておるというふうなことを見てまいったようでございます。  そこで、口蹄疫の問題につきましては、御承知のように中共の周囲の国はほとんど全部口蹄疫の常在地帯でございます。そこで口蹄疫の問題についていろいろ議論がなされたようでございますけれども、口蹄疫のビールスと称しますのは基本型八種類ございまして、あとサブタイプがございまして非常にたくさんの種類があるのです。しかもワクチン等もそれぞれの種類によって違いまして、非常におそるべき病気でございます。そこで、ビールスの種類がどういうものであるとか、あるいはワクチンがどういうものであるとか聞きましたけれども、正確な答弁が得られなかったわけでございます。ただしかし、いろいろな情勢を判断いたしまして、おそらく中共には口蹄疫はないであろうというふうな判断を下されておるわけでございます。しかし、これは一つの調査でございまして、これだけで中共に口蹄疫があるかないかという判断をすることは、われわれ行政庁の立場としましては、やや早きに失するのではないかということで、必要な資料の提供を中共に求めたわけでございますけれども、残念ながら必要な資料の提供が受けられないというふうな状態でございまして、そういう結果、現在なお輸入の禁止の解除をすることができない状態にあるわけでございます。
  437. 武藤山治

    武藤(山)委員 解除できないのは、畜産局長としての判断なのか、大臣としての命令なのか、はっきりしてください。
  438. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 この問題は、たとえば日本に口蹄疫が入ってきますと、おそらく日本のように狭い地域に偶蹄類の動物が密集しておりますときには、ほとんど日本の畜産が壊滅的な打撃を受けるであろうというふうに私たちは考えております。特に英国におきましては、昨年十月から口蹄疫が発生いたしまして、現在までに四十二万頭の牛ないし豚の殺処分をいたしまして、それに出した殺処分の手当が二百億をこえるという状態です。私のほうの畜産局所管の予算が二百五十億でございますから、とにかく全部殺処分手当に出さなければならぬという状態で、きわめておそろしい病気でございますので、われわれとしては、ぜひ日本の畜産を守りたい、口蹄疫を侵入さしてはいけないという気持ちを持っておるわけでございまして、これは大臣の御命令であるとかどうとかということじゃなくて、われわれ家畜の衛生を担当いたしております者としましては、どうしてもその点が明らかになりません限りは輸入の禁止を解くわけにはまいらないというふうに考えておる次第でございます。
  439. 武藤山治

    武藤(山)委員 それでは、局長が中国側に希望する必要資料の提供がないために前進しないという理解を私はいたします。しからば、あなたが中国側に期待をする必要資料の提供とは、何と何の資料の提供をあなたは求めたいとしておるのか。
  440. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 それではその必要な資料というものを申し上げますと、第一は、過去における口蹄疫の発生状況と実害というものがどうであるかということでございます。第二は、いままで行なわれた口蹄疫の撲滅方法の具体的な経過、第三といたしましては、口蹄疫ワクチンの性状、種類、製造方法、使用目的等、第四、口蹄疫の診断方法、第五、その他最近における不明疾病の発生の有無とその状況、この五つの点でございます。
  441. 武藤山治

    武藤(山)委員 その五点については、中国側はすでは高碕事務所へ何回か日本政府に報告するように向こうから伝達が来ていると私は聞いている。高碕事務所へ来ている報告にあなたは目を通したことがあるか。
  442. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 この点に関しましては、実は一昨年もLT貿易の交渉の際に、私のほうからこういう資料の提供を受けたいという申し出をいたしたわけでございますけれども、それに対して何らの回答にも接しなくてはなはだ残念に思っておるわけでございます。そういう状態で、従来もこのような資料が得られるということにつきまして努力はいたしたわけでございますけれども、残念ながらいまもって得られないという状態でございます。
  443. 武藤山治

    武藤(山)委員 時間がないから、ここにその当時の日を追って追及することができませんが、局長は去年の四月二十八日、この大蔵委員会で、当時横山利秋議員からあなたにここで質問をしたそのときの答弁といまの答弁、全く同じです。一年間何も検討しておらぬということですよ。あなたに誠意があるならば、何らかの方法で調査できるはずですよ。たとえば中国が肉を輸出しておるヨーロッパなり、あるいは香港で食べておる肉はほとんど中国の肉なんですからね。香港でもって調査をしたっていい。口蹄疫があるかないかわかるでしょう。日本政府としてそういう厳重な調査をする気ならできるじゃありませんか。それを怠っているというのは、私は畜産局長として怠慢だと思う。いかがですか。
  444. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 実は中共の調査に三回も参っておりますけれども、中共の肉がどこに輸出されておるかということにつきましては、中共から聴取できない状態にあります。諸外国の肉の輸入統計というのがございますけれども、それを調べてみましたけれども、中共という名前のもとに幾ら肉が輸入されたという統計は残念ながら発見ができない状況でございます。  そこで、調査をもっとやるべきではないかというふうな御意見でございますが、私たちは私たちなりに努力はいたしておるわけでございますけれども、現在輸入を禁止しておる諸国におきましても、口蹄疫がない地帯におきましては、日本に対しまして食肉の輸出、つまり日本が輸入の禁止を解除するようにという要請が数カ国から参っております。そういう国に対しましては、私のほうで技術者を派遣しまして、国内につきましてあらゆる必要なところの調査をいたしました。これにつきましては快く応じておるわけでございます。また、あらゆる必要な資料の提供を求めておるわけでございますが、これらに対しましては、いずれも正確な統計その他の資料を提供してくれておるわけでございます。ところが、中共に関しましては、肉の輸入の禁止を解除するようにという話でございますけれども、必要な資料の提供を、われわれはわれわれなりに努力をしたにもかかわらず、提供を受けられないというふうな状態でございまして、これははなはだ残念なことであるというふうに考えておる次第でございます。
  445. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうなると、その提供を受ける場合には、正式な機関を通じて、政府機関を通じてこちらから申し出なければだめなのか。それとも民間の使節団がそういう資料を中国から取り寄せても、高碕事務所なり、あるいは今度の覚書貿易を取りきめてきた担当責任者が、そういう資料を提供するように中国側と話し合ったら、それを農林省としては正規として一応認めるかどうか、その点はどうですか。
  446. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 現に中共とは正式の国交が回復しておりませんので、国と国という交渉の場において行なえないのは非常に残念なわけでございますが、国が直接交渉いたしますのにかわりまして、権威ある機関を通じましてそういうふうな情報が提供されることができれば、私たちはそれに基づいて検討するという考え方はございます。現に、中共にこの前その必要な資料の提供を受けるということを要望した際にも、中共から技術者が日本に来まして、日本のしかるべき技術者とそういう点につきましてディスカッションするということも、両国の実情を明らかにするという意味におきまして望ましいことであるというふうな提案もいたしておるわけでございますけれども、それもなかなか実行されないというふうな事情にあるわけでございます。
  447. 武藤山治

    武藤(山)委員 これで質問を終わりますが、大臣、いずれにしても生糸の問題、あるいは食肉の問題、内臓の問題、さらに個々の品目にわたっての今日の格差の問題、これらを解消することが日中貿易を大きくする道であると私も確信をいたします。大臣、せっかく前向きにとにかく年度内に検討をするという大臣の言明があったわけでありますから、私どももそういう個々の品目については関税局長に提出をしておきますから、できるだけすみやかな機会に前向きの中共貿易拡大のための御努力を特に私は希望して質問を終わりたいと思います。  最後に、大臣の御意見を承りたい。
  448. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 承知いたしました。
  449. 田村元

    田村委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
  450. 田村元

    田村委員長 これより討論に入るのでありますが、本案につきましては討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  おはかりいたします。本案を原案のとおり可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  451. 田村元

    田村委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。
  452. 田村元

    田村委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、自由民主党、日本社会党、民主社会党、公明党を代表し、山中貞則君外三十八名より附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。只松祐治君。
  453. 只松祐治

    ○只松委員 自由民主党、日本社会党、民主社会党、公明党を代表いたしまして、ただいまの法案に対する附帯決議について御説明申し上げます。  案文を朗読いたします。    関税定率法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  一、今日の憂慮すべき異常なる国際経済状勢を充分認識し、米国の輸入課徴金を含む一連の輸入制限措置問題に対しては断固たる態度をもつて対処し、また、ケネデイ・ラウンド関税一括引き下げが実施されることによつて協定税率が適用されない国との間の貿易が阻害されるようた結果にならないよう貿易の振興のため万全の措置を講ずべきである。  二、国内産いも及びでん粉の取扱いについては関税割当の基本方針に基づき、国内産でん粉総量をもつてしても需要量に不足する環境の中でいやしくも余剰でん粉の生ずるようなことの絶対ないよう適切な行政処理を行なうとともに、必要によっては農産物価格安定法の運用等により価格安定に万全を期すべきである。  右決議する。  以上の附帯決議につきまして、時間がありませんから、おそくなっておりますから、簡単にその趣旨を御説明申し上げたいと思います。  大体この内容にありますように、ポンド、ドル不安定等、今日のゴールドラッシュという現象を招来したわけでございますが、そういう結果、米国中心の経済政策あるいは貿易政策というものがたいへんに不安定になってまいりました。特に、いま申し上げましたように、輸入課徴金などの面から高金利時代あるいは輸出競争の激化の時代に入るわけでございます。わが国の輸出がたいへんに困難になってくる、容易でない事態になるわけでございます。ひとつそういう趣旨を十分了とされまして、一そうの努力をお願いしたいわけでございます。  こういう情勢の中で、一方アジアあるいは対共産圏、特に中国関係の貿易は新たな角度から検討されなければならないわけでございまして、この新たな角度とは、当然にいまのような経済情勢の中から拡大発展を、さっきから大臣がお答えになりましたような展望を持ってなさるべきでございます。どうぞひとつそういう点に関しまして十分なる御配慮をわずらわしたい、こういう趣旨でございます。  次に、国内産イモ及びでん粉の価格安定のため、本法改正案によって四十三年四月以降適用されるコーンスターチ用トウモロコシについては、関税割り当て制度の実施によりまして、適切な運用が期待されますが、諸般の情勢を見るとき、でん粉市況は弱含みであり、国内産でん粉の需給は必ずしも楽観を許さない状況にあります。食糧庁は全販連、全澱連、コンス協会、全国コンス工業協会及び澱粉糖業振興会に対して適正な行政指導を行ない、価格の安定をはかり、カンショ、バレイショの国内イモ作農家並びにでん粉製造の中小企業者に不安を与えないよう配慮を行なっていただきたいと思います。  これらの措置を講じた後においても、なお国内産でん粉が市場においてだぶつき、問題が生じた場合は、農産物価格安定法の定めるとおり、適切な運用により政府買い上げ等を講じて、万全の措置をなしていただくよう特にお願いをいたしまして、趣旨説明にかえます。(拍手)
  454. 田村元

    田村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  おはかりいたします。本動議のごとく附帯決議を付するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  455. 田村元

    田村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。大蔵大臣水田三喜男君。
  456. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って善処いたしたいと存じます。     —————————————
  457. 田村元

    田村委員長 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  458. 田村元

    田村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  459. 田村元

    田村委員長 次回は、明二十二日金曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後八時二十三分散会