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1968-05-10 第58回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月十日(金曜日)    午後二時三十七分開議  出席委員    委員長 堂森 芳夫君    理事 鹿野 彦吉君 理事 神田  博君    理事 田中 六助君 理事 岡田 利春君    理事 多賀谷真稔君       大坪 保雄君    齋藤 邦吉君       始関 伊平君    篠田 弘作君       西岡 武夫君    中村 重光君       渡辺 惣蔵君    田畑 金光君  出席政府委員         通商産業省石炭         局長      中川理一郎君         通商産業省鉱山         保安局長    西家 正起君  委員外出席者         参  考  人         (日本炭鉱労働         組合中央執行委         員長)     山本 忠義君         参  考  人         (全国石炭鉱業         労働組合書記         長)      早立 栄司君         参  考  人         (全国炭鉱職員         労働組合協議会         議長)     佐藤 栄一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件(石炭対策基本問題及び  雄別炭鉱落ばん事故に関する問題)      ————◇—————
  2. 堂森芳夫

    堂森委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  本日は、石炭対策基本問題に関連して意見をお述べいただくため、参考人として、日本炭鉱労働組合中央執行委員長山本忠義君、全国石炭鉱業労働組合書記長早立栄司君、全国炭鉱職員労働組合協議会議長佐藤栄一君の御出席をいただいております。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中のところ、本委員会に御出席を賜わり、まことにありがとうございました。  わが国石炭鉱業現状は、関係各位の御努力にもかかわらず、ますます逼迫の度を加えてきていることは御承知のとおりであります。  本委員会におきましては、石炭鉱業あり方等に関して、政府をはじめ関係各方面に対する質疑等を通じて石炭鉱業の真の長期安定策樹立のため真剣に努力を重ねてまいっております。参考人各位におかれましても、当問題についてそれぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  それでは、最初一人十五分程度意見をお述べいただき、そのあと質疑を行なうことといたします。  まず、山本参考人にお願いいたします。
  3. 山本忠義

    山本参考人 炭労の山本でございます。(拍手)  諸先生方には長年にわたって石炭の問題でお世話になっておることについて心から感謝をいたしておる次第でございます。きわめて重大な時期になっておるのでございますが、今後とも何ぶんよろしくお願いいたしたいと思います。私ども立場から所見を述べさせていただきたいと思います。  昭和三十年、合理化臨時措置法の制定により、スクラップ・アンド・ビルド政策がとられてから、すでに十余年を経過しております。この間、昭和三十四年には十一万人の労働者首切りという、たいへんなスクラップ五カ年計画決定されました。この政策実施によって、閉山首切りをめぐって石炭産業では労使の激突が繰り返されてまいりました。産炭地には失業者がはんらんをし、関連中小商工業者倒産相次ぎ、産炭地生活困窮者が多数街頭にほうり出され、地域経済は混乱、疲弊し、自治体の財政は軒並みに危機的状態におちいりました。石炭問題は深刻な社会問題へ発展したのであります。昭和三十七年、私どもが組織をあげて産炭地住民や地方自治体とも協力をし、政府石炭政策の転換を迫ったのは、このような状況のもとで黙視することができなかったからでございます。そこで昭和三十七、三十九、四十一年と三次にわたり石炭政策の手直しが行なわれましたが、いずれも失敗に帰しています。これらは私どものたびたびの主張、抗議にもかかわらず、常にスクラップ・アンド・スクラップ基本を踏襲してきたところにあると思います。したがって、炭鉱労働者並びに産炭地住民地域経済の置かれた状況は、さきに述べた実情からますます悲惨なものになるばかりでありました。現行政策である抜本策は、石炭各社異常債務のうち一千億円の国庫による肩がわり安定補給金の支給など、私企業に対しては限界といわれるほどの救済策内容とするものでありましたが、大日本炭鉱倒産によってその破綻が表面化してまいりました。昨年十一月には経営者がすべて、もはや抜本策によっては石炭産業が成り立っていかないことを確認しております。政府石炭再建計画を練り直さなければならないという考え方を明らかにいたしておると思います。その後半年、今後の石炭政策をめぐる論議だけは活発となり、新聞紙上をにぎわしていますが、いまだに政府経営者も何らの成案を見ておりません。炭鉱労働者と家族、産炭地住民はこのような経過に対し、日一日と不安動揺を強めております。九州の大辻炭鉱は資金繰りに行き詰まり、倒産寸前状態にあり、閉山通告を私どもは受けております。すでに本年三月から賃金の遅配を繰り返した上、負債総額五億円、未払い退職金約七千万円をかかえ、電力料金支払いもできずに送電の停止通告を受けているありさまでございました。労働者退職金も満足に払われないままほうり出されるのではないかとあすをも知れぬ不安にさいなまれております。北海道の太刀別炭鉱会社更生法の適用を申請しましたが、どうなるか全く見通しも立たない状況にございます。かくして石炭産業は一歩一歩破局へと突き進んでいるのではないかと考えるのであります。  私ども昨年秋、政策破綻という異常な事態を迎え、一日も早く石炭産業の安定が期せられるよう国有化という提案を行ないました。今日石炭危機労働者不足による出炭減にあることば、関係者のひとしく認めるところであります。私どもは今日までの石炭政策について、一貫して労働対策が欠如していることを基本的な欠陥として強く主張してまいりましたが、今日の状態は、残念ながらそのことを端的に示していると思います。  石炭政策は、労働者の犠牲によって企業採算の好転をはかることに中心を置いてきました。このため、炭鉱労働者賃金は他産業との格差を次第に大きくする一方であります。鉄鋼労働者との比較で見ると、炭鉱賃金は月一万五千円も低くなっております。保安悪化するばかりで、災害率は十年前に比べて二倍に達しています。労働内容は、労働者不足のもとで出炭を維持するため、きわめて過重なものとなっております。しかも閉山首切りの不安は絶えずつきまとっております。このような状態で耐え切れずに山を離れる労働者あとを断ちません。私ども労働組合役員は山を守るべく、これらの労働者を山にとどめるために懸命に説得につとめておりますが、もはや限界でございます。  昨日も雄別炭鉱では崩落事故によりまして四名が死亡をいたしまして二名が重傷というような災害が激増いたしております。  いま、このようにたいへんな先行きの不安のもとで人並みの生活も許されず、生命も保障されず、肉体の限界ともいうべききつい仕事を果たさなければならないとしたら、どうしてこれ以上労働者をとどめておくことができましょうか。これまで曲がりなりにも一定の労働者確保してきたのは、組合努力に負うところが大きいと私どもば思っております。私ども役員は、その意味労働者に対し重大な責任がございます。これ以上現状のままで労働者を働かせることは、もはや罪悪と言っても過言ではありません。その立場から私どもは強く労働条件抜本的改革を要求したいのでございます。  これまで石炭産業には次第に多額国家資金が投入されてきましたが、一向に所期の効果をあげていません。それでは石炭産業再建する道はないのでしょうか。私どもはその道はあると確信しております。石炭産業には経営者政府もみずから認めますように宿弊を持っております。その一つ鉱区分割私有でございます。これが技術開発の障害となり、二重投資のむだを生み出しております。第二には流通機構の複雑さでございます。これは銘柄売炭制メリット炭価と結びつき、さらには無益な市場競争によって交錯輸送貯炭費輸送費のはかり知れないむだを招いております。私は、現在のように石炭産業が深刻な危機にあり、膨大な国家資金が投入されておる段階で、なぜこのような基本的な欠陥がほとんど手をつけられずに温存され放置されてきたかに大きな疑問を感ぜざるを得ないのでございます。私どもは現在の私企業体制のもとでは、この十年の歴史が示しますように、これらの点についての思い切った改革はできないと判断をいたしております。したがって私どもは、今後の石炭産業あり方としては国有化主張しております。私どもの試算によると、国有化することによって、生産流通機構近代化、さらに管理費の節約を含め、優にトン当たり七百円程度財源が節約されると考えております。これらの国有化することにより、どのような利点があるかについては、去る四月三日この委員会において、日本社会党より国有化法案並びに公社法案について提案説明がなされました中で十分言い尽くされておりますので、ここでは重複して申し上げることは避けたいと思います。その趣旨と私どもは全く同意見でありますので、十分御検討をいただきたいと心から思う次第でございます。  労働条件につきましても、現行私企業体制のもとでは、少しくらいの国家資金の補助があっても改善はむずかしいと考えます。私どもには絶望的にさえ見えるのでございます。しかし、国有化することによって、むだを省くことによって、私ども現行石炭政策財源のもとでも労働条件抜本的改革は十分果たし得ると確信を持っておる次第でございます。もし国有化土台に私ども主張するような一切の努力を尽くしても、なおかつ現状以上に多額国家資金を投入することなくしては、労働者社会的水準賃金を保障することができず、生命の安全も期し得られないとするならば、そのときこそ私どもを含む石炭産業の存否について重大な決意をいたすべき時期であろうと考えております。  多額国家資金の投入についての国民に対する責任をはっきりするためにも、この際、石炭産業抜本的改革として国有化に踏み切るべきではないかと存じておる次第でございます。  以上、炭鉱労働者産炭地住民の苦境を訴えるとともに、私ども国有化主張について考え方を明らかにいたしました。本委員会が私どもの意向を十分にくんでいただきまして、一日も早く石炭産業の今後の方向に長期的な明るい展望を見出せるように切に先生方の御努力をお願いを申し上げる次第でございます。  以上をもちまして私の公述を終わりたいと存じます。ありがとうございました。(拍手
  4. 堂森芳夫

    堂森委員長 次に早立参考人にお願いします。
  5. 早立栄司

    早立参考人 私、全国石炭鉱業労働組合書記長をしておる早立でございます。  先生方には石炭対策につきまして格段の御努力を賜わっておりまして、さらにまた、本日は私ども意見を述べる機会を設けていただきましたことを厚く感謝をいたします。  私は今後の石炭対策について、最近私ども炭鉱考え基本を述べて、次いで私どもの持つ対策構想内容を要約して述べたいと思います。  まず第一に、さき抜本策答申について、今日マスコミをはじめとして、これがすべて間違いであったとするかのごとき批判の向きがあるのでございますが、私たちは五千万トン位置づけ国策として打ち出し、それを維持するために強力な国家的助成とそれは対応する公共的規制実施しようとする抜本策答申基本と、その政策体系は決して間違っていなかったと考えるのであります。ただ、それにもかかわらず、抜本策答申に基づく再建路線が今日著しくそごを来たし、深刻な事態に立ち至ったというのは、抜本対策実施がおくれたことと、かつその内容が不十分であったために資金事情悪化労働力不足あるいは坑道掘進のおくれというような問題を乗り切ることができずに予想外出炭不振を生じ、またこの出炭不振からさらに収支の悪化、赤字の増大、資金難悪化となって悪循還をして、危機を深めてきたということであります。  さらには、大かた石炭経営者が自信のある長期的な計画を持ち得ずに他力本願な態度から脱却し得なかったということに原因があるのであって、したがって、これらの点をきびしく反省をして、その原因を克服するとともに、計画のつまづきを穴埋めして再出発すべきであると考えるのであります。  第二に、以上の考え土台とした今後の対策基本についてでありますが、私たちは、さき抜本策による五千万トン体制は、わが国の将来にわたるエネルギー需給関係の総合的な見通しの中から国民経済並びに石炭産業経営上の最適の規模として、国内資源たる石炭位置づけを行なったものであり、また昨今の出炭不振も適切十分な対策実施によって克服をすることができるものであると考えております。したがって、石炭産業再建基本方策は、五千万トン体制前提とした強力な国家的助成の緊急な実施と、その効果を裏づける有効な公的規制強化でなければならないし、そのための産業体制としては、石炭資本所有関係の変更という観点からではなくて、経営効率から考究さるべきであると考えておるわけであります。  そういう意味において私たちは、公労使代表による公的管理委員会設置をして、これを通じて実効ある国家管理体制確立をし、推進すべきであると考えます。  また、再建のかぎとなる労働力確保のためには、国の助成を含めて思い切った措置実施をし、魅力ある労働条件確立するとともに、産業企業の民主的な運営をはかるため、産業民主主義体制徹底すべきであると考えておるのであります。  そこで、私たち考え再建構想内容でありますが、以下その要点を申し述べてみたいと思います。  一つは、石炭鉱業管理委員会による管理実施であります。すなわち、国の行政委員会として公労使、三者同数代表によって構成する石炭鉱業管理委員会設置をして、現行石炭局をその管理委員会事務局として石炭鉱業政策を総括的に決定実施をし、業界に対する監視、誘導、規制を進めるということであります。同時に、この管理委員会は、生産規模需給均衡調整、さらには役員人事鉱区調整、経理及び労働条件改善保安確保開発並びにビルドの促進と、統合または閉山についての行政勧告及び行政命令権を持つようにするということであります。  また、販売体制につきましては、現行電力用炭販売会社を改組しまして、政策需要炭販売機構を一元化する。同時に、石炭鉱業管理委員会の指示する価格をもって、この一元化された販売機関販売をするようにするということであります。ただし、ここで現在一千万トン程度あるところの、いわゆる政策需要炭以外のその他部門の需要については、一元的販売機構ではこの需要確保することが困難であるというふうに私ども考えておりますので、これらについては現行販売体制土台にできるだけ協同化をはかり、メリットをあげるようにすることであります。  それから、鉄鉱の増産に伴う原料炭不足輸入炭炭価上昇を抑制するために、石炭鉱業管理委員会は、国及び民間出資による特殊法人を設立をして海外原料炭鉱開発する。並びに採炭技術開発とか、あるいは一般炭原料炭に転化活用する等の技術開発のために国営の技術開発機関を新設をしていくということであります。  さらに二つには、炭鉱労務対策近代化についてであります。  先ほどの山本参考人からも述べられておりますように、今日炭鉱労働者労働条件等については他産業に比較して、きわめて劣悪な状況にあるわけであります。したがって、今後の石炭産業再建のためには労働力確保することが絶対に必要であることは、いまさら申し上げるまでもありませんが、そのための具体的措置として賃金及びその他の労働条件大幅改善を促進することが必要であります。同時にまた、昨年でき上がりました炭鉱労働者年金制度につきましても、せっかくできましたけれども、その内容的には、あの程度では働く者にとっての大きな魅力とはなり得ないわけでありますから、これらの面を改善をしまして、その給付水準を引き上げること、さらには炭鉱労働者の住宅を中心として炭鉱労働者生活環境近代化を促進する。あるいはまた、全国一本の石炭鉱業健保をつくり、かつ山元医療機関を充実をするというような措置を講ずることであります。  三つには、保安対策強化についてでありますが、もうこのことの必要性はいまさら申し上げるまでもありませんが、ここでその対策強化についての骨格だけを申し上げれば、生産計画技術革新に対応した保安対策を策定をし、推進をするということ。保安に対する国及び企業責任制確立するということ。炭鉱における自主的な保安体制強化をし、特に保安教育徹底をするということ。あるいは国の保安監督行政強化をするということであります。これらの措置を通じて保安対策強化しなければならないと思います。  四つには、これら以上の措置を進めるにあたっての対策財源確立と、その予算執行についてであります。  現在石油関税一〇%によるところの石炭対策特別会計が設けられておりますが、何でもかんでもこの中に含められているというところに実際の炭鉱再建対策が不十分とならざるを得ない問題があると思うのであります。私たちはこの石特会計設置趣旨が、再建のための石炭産業対策費をこれによって充当するというところにあったと思うのであります。  そういう意味鉱害対策とか、産炭地域対策とか、あるいは離職者援護対策というような炭鉱閉山したことによって生じた、いわゆるあと始末対策、これは当然国の社会政策費の範疇に属するものであって、この石特会計から分離をして、一般会計で充当すべきである。石特会計財源全額炭鉱再建前向き対策に充当するようにして、同時にその予算執行は先ほど申し述べた石炭鉱業管理委員会が担当するようにするという考え方であります。  最後に、先ほども基本的考えでも述べましたが、産業民主主義体制徹底についてであります。私たちは、石炭鉱業再建は、産業民主主義経営民主化を軸とする労使民主的協力関係樹立が絶対不可欠な前提条件であるという見地に立って、労使共同決定方式による協力関係確立しなければならないと考えます。  具体的には、中央統一石炭産業会議設置をする。この統一石炭産業会議は、労使同数代表によって構成し、必要に応じて管理委員会事務局代表が参加するようにする。そうして、生産販売計画あるいは保安対策労務対策近代化産業体制の整備というような諸事項について、労使協議、合意、共同決定体制をつくるとともに、その共同決定した事項については、労使それぞれの立場と機能のもとに責任ある推進に当たるようにすることであります。  以上が私ども考えでありますが、終わりにあたって、私は次の一言だけを付言したいと思います。  それば、さき植村構想として三千万トンの線が新聞で報道されました。いろいろ聞きますと、必ずしも三千万トンと言ったのではない云々ということでございますが、とにかく新聞では、あたかも昭和四十八年度三千万トンという極端な縮小路線を描いておるというように流されておるのであります。さらに最近は、これに続いて、大蔵省財政当局方針として、またまた三千万トン構想新聞で流されており、大幅な規模縮小が印象づけられ、そうして原料炭にあらざれば炭鉱にあらずともいうべきような印象が与えられておるのでありますが、こういうことが、せっかく苦しい中で再建と取り組んでいる労働者の心理に重大なショックを与えるところとなっておりまして、この面から内部崩壊をする危険にさえさらされているということが言えると思うのであります。  先ほど大辻炭鉱の話が出ましたが、私ども関係する支部においても、佐賀県の国見炭鉱という中小炭鉱がこの四、五日前に閉山決定いたしました。これは、いろいろ企業的に経理的に苦しい事情にあったことも事実でございますし、生産上もいろいろ問題のあったことも事実でありますが、しかし、今日まで労使で真剣に再建に取り組んでまいりまして、石炭局自体が、この国見炭鉱については、まさか閉山ということになるとはゆめゆめ考えておらなかった炭鉱であります。ところが、今回賃金支払いをめぐっていろいろ経営者のほうの扱いの不手ぎわな面もあったようでございますが、それがおもな原因となって労使間の紛争が起こり、とどのつまりは、会社から閉山提案され、組合がこれを承認するということになったわけであります。われわれはこの過程で、会社閉山などと言うことはけしからぬ、同時にまた、組合もそういうことを受けてはいかぬ、いま何とか石炭鉱業を建て直そうとしていろいろ努力しているではないか、もう一度みんなでがんばらなければいかぬということで、一生懸命説得したのでありますが、ついにわれわれの説得が効を奏せず、組合会議において満場一致で閉山を認めざるを得なかった。これはなぜかというと、いままではそのような態度をとる組合ではなかったのでありますが、昨年の三千万トンの植村構想、同時に最も大きかったショックは、今回の大蔵省方針としての、今後は原料炭炭鉱だけで三千万トンだというものです。したがって、中小炭鉱であり、しかも一般炭種の炭鉱である国見炭鉱は、幾ら努力しても先は見えている、おれはもう四十一になっている、二、三年たてばどうしても先が見えるということなら、いまのうちならば他産業に転換できるからいち早くいこうということで、そういう空気が会社内を支配してしまって、われわれの一生懸命の説得にもかかわらずついに閉山した。しかもこれは、石炭局自身が、われわれがそれを報告したら、まさかあそこが閉山になるとはゆめゆめ思わなかったというような炭鉱においてそういう事態が起きておるのであります。私は、最近のこういう動きについてきわめて遺憾に考えておるわけでありますが、同時に、そういうことからくるところの山元に働く者の不安動揺というものを何とか克服して元気をつけてささえる有力なただ一つの材料ともいうべきものは、いろいろ言われておるけれども、決して前にきめられた、国策として掲げられている五千万トン体制、五千万トン路線というものを縮小することではないのだ、国がこの程度石炭を必要とするのだから、この程度の炭を出してがんばっていこう、諸君一生懸命やろうではないか、政策も必ずそういう方向で出てくると思う、そういうことによって炭鉱の将来は決して暗いものではない、明るいものである、こういうことをわれわれは五千万トン体制推進という基本的な立場で一生懸命宣伝をすることによってかろうじてささえているという現状であります。いろいろ今日政策が検討されております。審議会でも検討され、本委員会においても諸先生方にも格段の労をわずらわしておるわけでありますが、どうかそういう点も山元労働者の心理的な面も十分お考え願いまして、この心理的な面というものを軽視して問題を扱い、大幅縮小というような方向を示されることになれば、設定されている計画自体以前に、縮小しても当然残すと計画されているような炭鉱においてさえも労働者の心理的不安から内部的に崩壊するという危険性が伴うことを私どもしみじみと考えておりますので、あえて、この際、最後一言以上の点を申し上げさせていただいたわけであります。(拍手
  6. 堂森芳夫

    堂森委員長 次に、佐藤参考人にお願いいたします。
  7. 佐藤栄一

    佐藤参考人 ただいま御指名を受けました私、全国炭鉱職員労働組合協議会議長をいたしております佐藤でございます。  諸先生には日ごろから石炭産業安定のために種々御尽力を賜わっておりますが、組合員並びにその家族にかわりまして心から感謝申し上げる次第でございます。  ただいまから全国炭鉱職員組合代表いたしまして、炭職協の意見を申し述べさせていただきますが、ただいま炭労並びに全炭鉱の方から説明がありましたので、あるいは重複する点があろうとは思いますが、この点御了解いただきたいと思います。それから炭労並びに全炭鉱につきましては、国有あるいは国管という形ではっきり方針がきまっておりますけれども、私たちはまだ体制問題についてもう一歩検討せねばならぬ段階にございますので、少し具体的な内容に触れて私たち考えを説明させていただきたいと存ずる次第でございます。  内容につきましては、最初いわゆる抜本策実施されてから半年もたたずして再検討を余儀なくされたという経過についてかいつまんで申し上げ、その次に、これからの石炭対策についての私ども考え方を述べさせていただきまして、三番目には体制整備に関する問題点、四番目には当面する私たち考えている点でございますが、このお願い、こういう順序で申し上げたいと思います。  最初に申し上げたいのは、昭和四十一年七月二十五日石炭鉱業審議会でいわゆる本格答申を決定したわけでございますが、このときに、炭職協としては答申案に反対であるという意思表示をいたしたわけでございますが、私ども意見はいれられずに原案のまま答申されたわけでございます。私どもが反対した理由の要点を申し述べますと、第一点としては、石炭位置づけに関してであります。第二点としては収支改善策が不十分であるという点でございました。三つ目の理由としては、実施時期がおくれたために、収支並びに資金の両面に狂いが生ずるという点でございました。このような点を指摘いたしまして、不十分な対策では一歩誤ると収拾しがたい混乱と際限のない縮小生産を惹起することが予想される、したがって、本答申をもって抜本的安定策とは認められないと主張したのでございます。  その後、私どもは、昭和四十二年度予算編成にあたりまして、ビルド対策費やあるいは需要確保対策費を充実せしめるべく要請行動などを行ない、政府に対する御理解を得るようにつとめたわけでございます。しかしながら、通産省の要求いたしました七百九億円に対しまして決定予算は五百二十一億円で、答申を基調にした石炭産業再建のための予算措置は約三〇%削減されてしまったわけでございます。そして時期おくれで、しかも内容不十分な石炭政策抜本策と呼ばれて四十二年度から実施に移されたわけでございます。また、この政策一つの柱でありますところの一千億円の異常債務肩がわりにつきましては、四十二年八月に再建整備計画の審査を終わりまして、同年九月末第一回目の交付がなされたわけでございます。しかしこの再建整備計画は、平たく言いますならば、再建できるという資料の作成を示唆した政府、また再建できるという資料を提出しなければ肩がわりを受けられないということから無理を承知でつくった会社、こういうことから生まれたのが当時の再建整備計画の実態ではなかったかというふうに私ども考えております。私どもは、このような抜本策と四十二年度の予算措置の不十分さを知りながらも、企業の中核体として会社再建のために懸命の努力を払ったのでございます。卒直に申し上げまして、私たちとしては、これらの政策の不十分さを知っておりましたから、将来の展望に大きな不安を抱いておりましたが、それだけに四十三年度の予算につきましては、将来の展望を明らかにし得る予算内容であることを願いまして運動を進めたわけでございます。しかし残念ながらこれにつきましても、先ほど成立した予算内容は、絶対額において若干の前進を示したものの、きわめて不十分な内容に過ぎなかったのでございます。これではとうてい石炭産業の将来の明るい展望を得ることは不可能である、このように私たちは判断いたしまして、石炭政策を早急に実現しなければならないというふうに考えておるゆえんなのでございます。  以上、これまでの石炭政策の経過にかんがみまして若干問題点を指摘したのでございますが、次に二番目の問題の石炭政策はいかにあるべきかについて申し述べたいと思います。  私どもはここで、石炭一つ産業として生きていく上に必要な三つの条件というものについて申し上げたいと思いますが、要すれば、この三つの条件を満たす政策確立していただきたいということなのでございます。  その一つは、石炭出炭量が一つ産業として呼ばれるのにふさわしいものであり、それに見合う需要確保されるということが必要なのであります。そのことを私ども主張に端的に結びつけて言いますならば、需要、供給の両面におきまして五千万トン体制確立していただきたいということでございます。私どもはいわゆる縮小均衡なる俗論に反対をいたしておりますが、縮小という意味に対する労働者の本能的な抵抗感、ただこういうことばかりでなく、総倒れ的な現象を伴って縮小に次ぐ縮小をなされたら、産業継続の条件が否定されて、石炭一つ産業として生き延びていく道を失うのじゃないか、このようなことをおそれているからでございます。  次に、石炭が原価以上の価格で販売されるということが石炭産業の存続の上で二番目の問題点でございます。このことを平たく言いますならば、たとえば石炭が一トン当たり五千円で掘られましたならば、これを六千円で売れるようにしてもらいたいということなのでございます。  ちなみに通産省の資料によりますと、大手十六社の昭和四十二年度実績見込みでございますが、自産炭総費用がトン当たり四千五百二十円でございますけれども山元手取りはトン当たり三千七百九十四円、したがいまして、トン当たりで実に七百二十六円の赤字になっております。非常に単純なものの言い方でございますが、これは基本的な命題の一つでございまして、石炭に対する価格政策を根本的に再検討をお願いしたいということなのでございます。  日本の石炭政策を顧みますと、石炭販売価格を昭和三十八年度までに千二百円引き下げるという外国にも例のない過酷なものでございましたのは御承知のとおりでございますが、その後、昭和四十年度に若干の修正はございました。しかし諸物価の高騰にもかかわらず炭価は依然として低く据え置かれているのは事実でございます。  次に、炭価修正に関連いたしまして石特会計あり方について一言申し上げたいと思います。今後あるべき石炭政策財源措置との関連におきまして、一つは原重油関税からする自然増収分を石特会計に繰り入れていただきたい。これは当然なされてしかるべきであるというふうに考えております。  二つ目は離職者対策あるいは産炭地域対策鉱害対策、これらの諸対策費はワク外に出していただきたい。石特会計以外の予算でこれらのものをまかなっていただきたいということでございます。それからまた現在、石特会計のワク内に置かれております需要家の負担増対策費でございますけれども、これも将来は整備をする方向努力をしていただきたいというふうに考えておるのでございます。要するにビルド対策費を集中的に拡充していただきたいということなのでございます。こうした措置によって石炭対策費の拡充をはかって、新しい石炭政策の完全実施のために必要にして十分な財源確保していただきたいというふうに考えております。  さて、石炭存続条件の第三点でございますけれども、これは先ほども炭鉱のほうあるいは炭労で触れておりましたように、労働力確保されることでございます。表現をかえて言いますと、一定水準の労働条件が保たれること、企業の将来展望が明らかにされること、坑内の保安確保されること、こういうことが非常に重要なことでございます。魅力ある賃金あるいは安全を保障された職場、これが労働力確保、なかんずく若手の新規採用を可能にする大きな条件であろうと判断するものでございます。  職員給与水準の低さについて、その実態を若干御説明申し上げたいと思いますが、昭和四十二年の増給後の三井、三菱、住友、北炭の職員給与の平均と、関東経協調査によります全産業の第三・四分位とを比較いたしますと、モデル比較でございますが、大学卒の三十歳で一万八百四十五円二四%、三十五歳で二万四百八十三円三七%、このように激しい落ち込みを見せておりますし、高校卒の三十歳で一万八百九十円二七%、三十五歳で一万五千四十六円三〇%、このような激しい落ち込みを見せておるのであります。  一方炭鉱における保安確保につきましては、私たち多くの技術職員を擁します炭職協としては重大な関心を持っておるのでございますけれども、この保安確保対策を含めまして、炭鉱において労働力確保するということはいまや高度の政治力を必要とする問題である、このように考えております。  いろいろ申し上げましたが、以上の三点が石炭産業の存続を可能とする上に必要な基本的条件というふうに考えております。  いま一度繰り返して申し上げますと、一つ石炭一つ産業として生きていけるだけの生産量と需要量の確保でございます。二つ目は石炭の価格を適正に設定することであります。その三つ目は労働力確保されることでございます。  ところで、申し上げましたこの三本の柱というものはむずかしい理屈ではなくあたりまえのことでございますけれども、ここで需要家側に立って考えてみますと、国産の石炭を使う需要家側としてはエネルギー資源を使う立場としておそらく次の三点を主張されると思います。  その一つは海外エネルギー資源よりも安いものであること、もう一つは供給に安定性のあること、もう一つはエネルギー選択は自由であること、この三つであると思います。どのエネルギー資源を使うかにつきましては、値段や供給の安定性を見きわめてよいではないか。これが自由主義経済のたてまえであろうと思います。こうした需要家側の主張は私ども主張でございます。  先ほど述べました石炭生産量と需要量を最大限に確保してほしい、炭の値段は是正してほしいという立場とは相いれないものがあることは明らかでございます。この点、政治力によって石炭を使うようにし、買い取らしてもらいたいというのが私ども主張でございます。また、これが政府に対する要求でございますし、諸先生方に対するお願いでもあるわけでございます。  ことばが非常に乱暴になって恐縮なんでございますが、政府なり先生方は鉄鋼や電力などの日の当たる産業の当事者に向かってもっと声を大にして、私たちが望む方向に政治力を発揮していただきたい、このように考える次第でございます。  国産のエネルギー資源を保有するということは、世に大国あるいは一流国家と言われる条件の一つになっているのではないかというように考えますし、また国内資源というとりでをなくして、無防備な状態になったとしたら、国民経済に与える影響もまた大きいものと考える次第でございます。このような重要な事柄につきまして関係各位の大乗的な御理解を得たい、かように考えております。  さて、ここで私ども責任を痛感する問題が一つございます。それは端的に言って出炭の問題でございます。  先ほど申しましたように、価格と選択の自由の二面におきましては、石炭政策の擁護や、あるいはいわゆるセキュリティーなどの立場から石炭への協力を願うということになりますが、いかに自由主義経済法則の適用が困難になった石炭といいましても、安定した供給力を身につけるということば必要でございます。この供給責任の完遂体制樹立することは、前に述べました石炭位置づけ確立という課題との関連におきましてもぜひとも必要なことなんでございます。私どもといたしましては、出炭確保には今後とも懸命の努力を続けてまいる所存でございますけれども、その達成のためにはどうしても政策のてこ入れが必要でございます。供給の安定性が確保できる体制、これを政治の力によって確保していただきたい、樹立していただきたいということなのでございます。  供給の安定性を強化する方法としては、安定度の高い維持炭鉱に対して国の援助を画期的に充実していただきたいということが必要でございますが、一方におきまして閉山費用を十分な額まで拡大さしていくということも必要だと考えます。  ただし、このことにつきましては、石炭産業の体質を強化させ、同時に供給の安定性を高めるための手段として組合が納得したときということでございますので、念のために申し添えておきたいと思います。  以上で石炭対策についての私たち政策についての考え方を述べましたが、次に石炭鉱業体制に関連する問題について申し上げたいと思います。  前に申し上げましたように、新しい石炭政策産業存続の条件を満たすものでなければならないと申しましたが、この三本の柱は、産業体制が国有あるいは国営として与えられようとも、あるいは私企業の原理を生かされた形で与えられようとも、すなわち石炭体制はどうあろうとも、これだけは確保していかなければならない必要条件であり、体制の問題につきましては、目的を達成するための方法も産業存続の条件を確立するための手段である、このように私どもは理解しております。  石炭鉱業体制整備のあり方は、相当幅広い検討を必要とするものであり、冒頭に申し上げましたように炭職協としても目下鋭意検討の上結論を見出したいと考えておりますが、現段階としてはここで植村構想に触れて、この構想に対する炭職協の見解を申し述べることによって、石炭鉱業体制についての方向性を考えてみたいと存じます。  植村構想それ自体が非公開なものでございますけれども、私どもはこの構想というものを非常に重視しております。したがって、これに批判を加えることは失礼なことと存じますが、これについてはまずもって御了承願うことにいたしまして、あえて意見を述べさしていただきたいと思います。  植村構想における問題点と思われることは、まず第一に石炭の撤退策であるかのような姿勢でございます。構想は、スクラップ強化ということが全面に打ち出されている感じで、そのため、あたかも石炭の撤退策であるかのような印象を人々に抱かせがちでございます。スクラップはあくまでも石炭鉱業の体質強化産業維持のためにするものであって、手段たるべきスクラップ政策の目的であるかのように扱われることは、私どもとしては困るのでございます。  第二点は、石炭の存続条件が明らかでないという点でございます。石炭位置づけ需要構造のあり方などのビルド政策が不明確で、しかも撤退姿勢が強い、これでは問題がございます。  第三点といたしましては、多角経営によって企業の存続をはかる道が閉ざされようとしているということでございます。企業存続の道を石炭以外のほかの事業に求めようとすることは、一種の自衛行為であると私ども考えます。この点をよく理解していただけないということは、私どもとして非常に残念なことでございます。一般に石炭企業にとって、石炭に関する事業こそ何といってもその企業が生成していく母体でありますから、これを新旧分離という手段によってほかに持っていかれたなら、現在の企業に大きな空洞ができてしまいますので、雇用の発展的転換を求めていこうとするものにとっては耐えられないことなのでございます。  四番目は、退職金や社内預金などの保障措置が明らかでない点でございます。もしも金融機関に対する肩がわりのみが保障されて、それ以外の負債に対する保障には具体的な裏づけがないとしたらゆゆしき問題だと思います。その成り行き次第によっては、相当な深刻な社会問題に発展しかねない、このように考えます。  第五点は、石炭企業経営の姿勢についてでございますけれども石炭企業にとっては積年の命題であります保安確保流通機構販売機構の抜本的な合理化、職制並びに管理機構の簡素化、このようなことで石炭鉱業の効率を極限まで高めるための近代化、効率化の方途について、もっと積極的な示唆がほしいところでございます。  以上、植村構想につきまして炭職協の見解を申し述べましたが、これによって私たちの指向する方向性についてほぼ御賢察いただけたと存じますが、資本の所有形態はともあれ、石炭企業の機構はこの際徹底的に改革されるべきであると考えます。  すなわち、まず第一に、石炭企業は焦眉の急としてその職制並びに管理機構を徹底的に簡素化して管理人口の縮小をはかり、経営の効率を高めるための荒療治を断行すべきであると考えます。  第二点としては、石炭鉱業は国の強力な指導体制のもとに、流通機構販売機構の抜本的な合理化並びに鉱区調整、機械化の推進など、生産販売、流通などのあらゆる分野におきまして画期的な改革を行なって、長期の存続体制確立すべきであると考える次第でございます。  以上がいわゆる体制整備に関連する炭職協としての意見でありますけれども、もう少し検討が進みましたなら、新石炭政策という形で炭職協の具体的な提案ができるものと信じております。  いろいろ意見を申し述べてまいりましたが、今後の石炭政策を検討いたします過程においては、あるいは予期し得ない問題に逢着すると思われますが、諸先生方の御指導を賜わりましてこの難局を打開していきたいと存ずる次第でございます。  つきましては、数多く存します課題の中から、当面身近にございます切実な問題について二、三申し上げまして、私の発言を終わることといたしたいと思います。  その一つは、職員層の雇用問題についてでございます。職員の人員縮小が現実のものとなりました場合には、管理職的な、つまりホワイトカラーであることからする特性を考慮に入れていただいて、再雇用の場を広く確保し、その対策に万全を期していただきたいのでございます。  いま一つは、石炭鉱業の多角化の道を閉ざさないでもらいたいということなのでございます。国の援護によりまして存命することのできる石炭鉱業でありますから、みずからの姿勢を正し、国庫から支弁される援護費の使い方にしても、はっきり整理し、必要な法の規制に従うことはもちろんでありますが、ただ、石炭が有限資源であるという特性にかんがみまして、石炭鉱業が多角化によって企業の体質を強化して、そこに働く者の生活の基盤を守ろうとする、このことすらもできなくなることのないように特に慎重な御配慮と御理解をいただきたいのでございます。逆説的な言い方になるかもしれませんが、このことは、石炭をできるだけ多く、かつ長期間にわたって確保するためにも多角化ということの裏づけが必要であるということでございます。  三つ目としては、退職金支払いや社内預金に対しての保障措置を早急に明らかにしていただきたいということであります。いかなる単位であっても、不幸にして進退を決さなければならない炭鉱が出た場合には、労働の対価であります、汗の結晶である退職金あるいは社内預金につきまして、その完全弁済をしていただきたい、このような措置をひとつお願いしたいのでございます。  最後にお願いしておきたいのは、つなぎ融資の問題でございますが、今日のような状態の中でもし賃金などの遅欠配でも起こりましたらたいへんな問題でございますから、資金の確保につきましては特段の御配慮をお願い申したいわけでございます。  非常に長くなりましたけれども、以上で私の意見の開陳を終わらしていただきますが、表現のまずい点あるいは不十分な点につきましては、御質問によってお答え申し上げたいと存じます。御清聴どうもありがとうございました。(拍手
  8. 堂森芳夫

    堂森委員長 これにて参考人各位の御意見の陳述は終わりました。
  9. 堂森芳夫

    堂森委員長 これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、これを許します。田中六助君。
  10. 田中六助

    ○田中(六)委員 山本早立佐藤、三人の参考人、本日はお忙しいところをわれわれのために出席してくださいましてありがとうございます。  ただいま三人の方々からるるとして御説明がありまして、私どもも現在の石炭産業の将来というものを憂慮しているだけにその立場は皆さまと全く同じでございますし、十分皆さまの説明でわかったところもございますが、質問の点で多少ダブる点もあると思いますので、御了承願いたいと思います。皆さまの説明をさらに確認をするという意味で、皆さまの説明の中にもうすでにある点をさらに質問する場合もありますので、よろしくお願いいたしたいと思います。  まず第一にお尋ねしたいのは、植村試案とか社会党の提出されております国有国営論、そういうような体制の変革を中心に、そのほか一社案、三社案、そういうようなものがミックスされまして問題を提起しているわけでございます。いろんな一次から三次までの答申が出て、今回で四回目の調査、検討がなされつつある段階でございます。早立参考人対策が不十分であったというふうにおっしゃっておりますが、なるほどイギリスやフランスあるいは西ドイツなどを見ましても、政府の補助というものは日本よりもはるかに多うございます。しかし、経済基盤というものは日本はこれらの先進国と違っておりますし、日本の経済状態考えたときに、いままでの石炭に対する援助が足らなかったかどうかということについては、国民の多くは必ずしもそれが足らないというふうには思っていないと私は確信しております。それでもこの石炭産業がなかなか成り立っていかない。私はこれはやはり共通の責任経営者にも皆さんのほうにもあるのじゃないかということを考えております。したがって私のお聞きしたいのは、皆さんの立場から見た場合の経営者欠陥、たとえば具体的に申しますと現在固定資産のほとんどが長期借り入れ金になっております。大手十七社の三十六年下期を見ますと八百四十五億円借りている。四十二年の上期になりますと二千二百九十二億円、千四百四十七億の増加になっております。私はやはり経営者がいろんな点で問題があると思うのです。現実に炭鉱の構内などを見ましても、機械の遊休つまり遊んでおる部分もある。そういう現実の面に逢着したときに、これ以上私ども国民炭鉱産業を援助しろというようなことを言うのにも説得力に欠ける点があるわけでございます。したがって私は、皆さんの立場から経営者の現実をどう見ておるかということを三人の方それぞれにお聞きしたいと思います。
  11. 山本忠義

    山本参考人 私どものほうでは、経営者経営者なりにきびしい条件に置かれておりますから、それなりに努力をしているという点については認めます。しかし、ずっと朝鮮動乱以降あるいは世界的に流体エネルギー、固体エネルギーというふうに変化をしてくる、石炭市場が国内的にも狭くなってきている、そういうことを長期展望の中でとらえて的確に積極的に対処してきたかどうかについては、団体交渉その他の席上を通じてそういう姿勢ではなかったではないかということを個々の例の中でも申し上げておるところでございます。特に今回の場合には、私どもの場合生命生活をそれぞれの企業にお預けしている形になっております。したがって、そこの最高責任者というのは当然そういう責任の上に立っていち早く方向というものについて私どもに知らして、労働者の不安や動揺をないようにするという、苦しければ苦しいなりに積極的な姿勢があってもいいのではないか。ずいぶん私どもとしても至らないところはあるかもしれませんけれども、今日労働者みずからが生活の体験を通して一通りの案をまとめて世論に問わなければならぬというところまで真剣に考えておるにもかかわらず、なお今日経営者のほうの団体ではどういうふうにしたらいいのか、あるいはこういうふうにお願いをするという案自体がまとまっていないというところに、それぞれ経営者責任等についての一端が端的に示されているのではないか、こういうふうに思っております。そういうことでございますから、当然国民の税金を先生方のお世話で使うことでございますので、個別企業として国の財源をこれ以上援助するというのは国民は確かに納得をしないだろう、こう思います。したがって、そういう企業責任者に対して、いままでやってきたけれども、それなりの実効があがらぬということは冷厳な事実でありますから、当然今後はつぎ込むにいたしましても、その金が全部まるまる国民の側に返ってくるということは別にいたしましても、何らかの国民的な利益と合致する方向石炭産業それ自体が再建をされていく、こういう方向でなければ、私は私企業に対する融資なり、あるいは資金の導入ということについては、世論が許さないだろう、こういうふうに思っておる次第でございまして、それらの点から考えてみて、過去の失敗等を徴してみて、この際私どもとしてはイデオロギーを抜きにいたしました国有公社という方向産業全体としての対策を立てる以外にないのではないか、このように思っております。  それから、炭鉱の場合には鉱区が非常にじゃまになってきております。むだな立て坑をずいぶん北海道の場合でも空知炭田では掘っております。こういう面もあると同時に、やはり保安の点についてまだまだ技術的に開発をしていかなければならぬ点がたくさんあろうと思いますけれども、大型炭鉱について育成強化をしていくということをしませんと、保安の問題等にいたしましても、あるいは能率の問題等にいたしましても、私は現在では頭打ちではないかそういうくふうがより一段必要である、こういうふうに考えております。だから当然多額の機械貸与資金やその他をもって自己資金で買ったものでない貴重な機械等について屋外で雨ざらしにしているということそれ自体は、明らかに坑内の稼行条件等を十分に吟味をしないで、人から金を借りてやるんだから買わなければならぬ、あるいはあそこも買った、ホーベルも入れたからやらなければならぬ、こういうような無計画生産計画に基づいて行なっていたところにそういう現実があるんではないのか、百円や二百円の機械じゃございません、何千万円もするような機械が遊んでいることは事実でございますので、そういう面についての技術的なものを含めたより真剣な山元の稼行条件に合わせた対策というものを考えていなかったところが欠陥としてあらわれておるのではないか。それが、全部が全部けしからぬということじゃございませんけれども、そういう点は経営者の側のほうでもきびしく反省をしなければならぬことではないのか。私どもはそういう面については遺憾ながら発言は経営協議会やあるいは生産計画山元できめる際にはいたしますけれども、採用していただけませんとそれなりに終わってしまうという面がございますので、そういう意味合いについては私どもとしてはいかんともなしがたいところがございます。この点は御了察をいただきたいと思います。  以上でございます。
  12. 早立栄司

    早立参考人 山本参考人から述べられたことと大体において同じような見解を持ちますが、いささか角度を変えて一、二点申し上げてみたいと思うのです。  まず一つは、確かに石炭産業そのものがエネルギー革命の中で非常にきびしい事態にあったわけでございますから、昔の炭鉱経営者は、非常に質の悪いのがおりましたが、こういう苦しい中では、適当なことをして質の悪い経営者がふところを肥やすなんということはできないわけでございまして、それなりに苦労をし努力をしてきていることはわれわれも認めておるわけであります。ただどうしても一つわれわれが指摘をしなければならないのは、個別の経営者について部分的に見れば、あるところについてはこうなっておる、あるところについてはこうなっておるといういろいろ違いがございますが、おしなべて言えることは、どうも労使関係において形式的には経営協議会を持ち生産協議会を持って一応労働組合のほうと話し合うような形式をとっても、ほんとうの腹の底から働く者労働者というものを信頼して、これと裸になって話し合っていろいろな欠陥を克服し、どうすればいいかということに取り組むという体制にないということであると思います。それは私ども今度の対策の中で、労使協同決定体制というようなことを強調しているのもそこからくるわけでございますが、大体そうなる原因というのは経営者が最近は幾らか頭が近代化されたとはいえ、依然としてまだ頭の片すみに昔ながらの炭鉱経営者の古さが宿っておりまして、まあ労働組合はやかましいことを言うけれども、われわれがやってできぬことを労働組合がそれ以上の知恵が出てくるものかというような見方とか、それから労働組合とそんなに掘り下げて相談をしたら、いつまでたっても仕事が進まぬというようなこと、そういういわゆる労働者、労働組合というものに対する経営者としての見方、信頼というものがまだまだ十分でない面があると思うのです。一面これはまたわれわれ労働組合側の問題として反省しなければなりませんけれども、相手の経営者にそのように完全に信頼される状況になっておらぬとすれば、それなりに信頼されない組合側の体制上の欠陥もあるということ自身もまたわれわれが反省しなければいかぬと思います。いずれにしてもそういうようなことを含めた労使関係の面でいろいろお互いに努力をしておりながら、肝心の面でまだまだ抜けておる面がある。かりにいろいろ御指摘があった機械の問題、生産機械、いろいろあります。大体炭鉱の坑内というのは自然条件が相手でありまして、非常にいろいろ問題があります。神さまでもない限り確たる長期計画をつくっていこうといっても思わぬ自然条件の変化ということに直面してつまずくというような場合が往々にしてあるわけでございまして、政策的にはそういう場合にアフターケアというものが必要になってくるわけでありますが、同時にまたそういう思わぬつまずきがあるにしても、できるだけ早くそういうつまずきというものを発見をしたり、あるいはそれらの傷をできるだけ浅くして克服していくということのためには、大学を出て地質学の専門であるどうであるというような会社経営幹部の頭脳と同時に、実際に長く坑内で働いて裸でもっていろいろ経験をし感じておるものからくるところの提言というものも案外役に立つものでありまして、そういう面が必ずしも十分に生かされておらなかったというところに御指摘のような欠陥が生じた面があるというように考えます。  それから第二点は、最近の抜本対策破綻という上に立って非常に石炭問題が重大化してきたこの事態において、昨年の秋以来のいろいろな動きを見てまいりますと、どうも経営者全体の態度として、特に大手経営者態度の中にはやる気がなくなっているのじゃなかろうかと思われるような面さえあるわけであります。大体炭鉱へしがみついていたってよくはならぬから、この際国のほうで補償してくれるか、どこかで何かしてくれるというならば、ひとつそちらのほうにおまかせして、もうかるほうにいこうかという気持ちを持っているのじゃなかろうかと思うほど、ほんとうに日本の国内資源生産のにない手としてあくまでやってみせる、りっぱにやってみせるというような気魄、意欲にあふれている面がどうもわれわれとしては感じ取れない点があります。そこで植村構想で三千万トンとかどうとかいわれたと思いますが、われわれも植村さんの考えそのものは知りませんが、問題は植村さんのお考え自体、植村構想そのものを言うのではなくて、石炭経営者の大手の協会がこれを大筋として了解して、これはこうでというような態度になっておる面をいろいろ分析してみるというと、どうもやる気を失ってきているような面があるのではないか。あるいはまた反面、そうではないほうの立場経営者はどうかというと、一つ何か新しいことが出てきた、自分のところの資産や何か、いろいろそろばんをはじいて計算して、うまくいったらだいじょうぶ、おれのほうはもうかるぞというような形での見当をつけておるという面がどうもあるのじゃないかというように思われますので、まだまだ石炭経営者態度というものに対しては、われわれ労働組合自身も大いに意見を述べたり監視をしたりという活動をしなければならないが、同時に、いろいろ問題となっておる今後の新しい対策確立する段階において、こういう経営者のくせというものをなくして、ほんとうに労使が真剣になって取り組んで、できるだけ早くそういう努力の上に立って安定をするという意欲をあらしめるようにいろいろ対策考えなければならない点があると思うのでございます。  以上でございます。
  13. 佐藤栄一

    佐藤参考人 私ども職員というのはその中から経営者に上がっていくわけでございますから、もとをただせば、経営者も私たちも同じ職場で働いておった者もございますし、それなりに身近な感じがするわけでございます。もちろん経営者企業の指導者として行動するわけでございますが、そういう意味におきましても、私たちは職員の立場として、現場におきましては一心同体となって企業再建のために努力しているということが実態でございます。ただ、石炭政策が不十分だからできない、あるいは自信がないということは確かにあると思いますけれども、私はやはり現在の経営者は、いろいろ問題があったにしても、もう少し先の見通しを立て、現実を正しく見詰めて事に当たるべきであるというふうに考えます。ですから先ほども申し上げましたように、抜本策のとき、というよりは、去年の八月の再建整備計画、あのときに当然なされるべき職制の整備とかあるいは管理機構の簡素化とか、こういうことにも手をつけない、こういう非常に積極性のない一面が現在の経営者にはあると思います。ですからその点については、局のほうとしても相当積極的な指導をするというようなことで、できるなら、ひとつそういう経営者の悪いところを、しりをひっぱたくというようなことが必要ではないかと思います。私たち企業の内部において、それぞれの労使協議会条においては相当建設的な意見を申し上げまして、かえって組合ではないような見解まで、合理化に対する意見具申をするというのが実態でございます。
  14. 田中六助

    ○田中(六)委員 非常によくわかりました。特に早立参考人のおっしゃったように、大筋だけで、やる気をなくしている経営者がおるんでないか、あるいはまた、この際国からもらう金はたくさんふんだくっておかなければいかぬというような気持ちがある経営者があったならば、これは問題です。特に前の答申案のときも、各炭鉱会社から出された資料というものが非常にずさんであったというようなことも批判されておる現段階でございますので、私どももそういうことは信じたくないが、経営者の心がまえというものがどこかで欠除しているためにこのような答申を何度も出さなければいけなかったという責めはあるんじゃないかと思います。たまたま植村試案について皆さんお述べになっておりますので、私は植村試案についてお尋ねしたいのですが、佐藤参考人がおっしゃったことで、多角経営によって企業の存続が考えられるのに、石炭プロパーだけ、石炭産業だけ抜き去るというこの経営あり方ではたして将来どうなるという問題を提起されておりました。植村試案というものを公開されておりませんので、私もよくは知りませんが、親会社から第二会社をつくる場合、石炭の部門だけを抜き去る。いろいろなそれに対する手だてはございますが、佐藤参考人のおっしゃるように、石炭は有限でございます。無限ではない。そのものだけを抜き去って、さあ皆さん働いてくれ、いつか限度がある産業について労働者を雇用しよう、みな来てくれというようなことを言っても、それは来ないのが当然でしよう。イギリスでもフランスでも、これは国有ですが、西ドイツの私企業の面を見ましても、みんな関連産業というものを持っておるわけでございます。そこで相互にいろいろなことをしておる。それが伝えられる植村試案というものは、石炭産業だけを抜き去る。これでは先が思いやられるわけです。この点を佐藤参考人は指摘しておりましたが、山本早立参考人はこの点についてどのようにお考えか、意見をお聞かせ願いたいと思います。
  15. 山本忠義

    山本参考人 個別企業の場合に、経営基盤というものを厚くするために、それぞれの関連の会社等をつくっていくということは、それなりに上向きのときには経営者としてとっていい措置ではないか、そういう努力も必要なことだとは思いますが、そういうことよりもむしろ、石炭産業それ自体が非常な借金をかかえて、産業自体スクラップ化されそうな時期にきているという場合には、私どもはそういうことにこだわるのではなしに、別な観点から石炭産業というものをどうするのかという点で、やはり考え方というものをまとめていかなければならぬ。佐藤参考人と違いますのは、個別企業としては石炭産業は私どもはこれ以上やっていくことはできない。たとえば国からの補助なり援助なりができない場合には、自己資金その他がないわけでございますから、当然三菱にしても三井にしても北炭にしても、それぞれ倒産なりあるいは経営危機になってきている、こういうふうに見ておりますので、それ自体では、石炭産業それ自体がスクラップになってしまう。したがって、各社の利害関係のことなんかこの際言っていないで、石炭産業を生かす道というのはこういう方法しかございません、こういう見地からものを言っておりますので、個別企業を残すという思想的立場の上に立ちますと、関連産業のことやいろいろなこと等もそれなりにファクターとして考えられると思いますが、私どもはそういうふうに甘く今日置かれている石炭産業というものを見詰めておりませんので、個別企業としては経営者といえどもやっていけるという自信を持って説明のできないところまで追い詰められている、こういう認識の上に立って、何とか国の重要な資源である石炭産業を、地域経済の発展と結びつけて生かしていく方法を大所高所から国の政策としてぜひ御決定をいただきたい、こう申し上げておる次第でございます。
  16. 早立栄司

    早立参考人 特に大手の炭鉱において、いろいろ炭鉱によっては非常にたくさんの子会社を持っておるところもあるわけでございます。過去さかのぼってみまして、炭鉱企業がそのように多角経営と称して、いろいろな企業にあるいは分離し、あるいは新しい子会社をつくるというような形でやってきたという理由としては、その時点時点における炭鉱部門の縮小、体質改善生産性向上のための措置として生じたところの雇用の縮小、余剰人員が生じまして、それについての扱いとか、またなかんずくその地域における経済振興というようなことが理由にされている面も一部にはあるでありましょうが、同時にそういう面があったとしましても、さかのぼってそれらのつくられてきた経緯をずっと吟味してみれば、一方において国からの国民の税金による大きな援助を受けつつ、他に社外投資と称されるそういうことを行なったということについての批判の余地は十分にあると思うのであります。ただ、いずれにしましてもそれは過去のことでありまして、言うまでもなく、抜本策実施を契機として、相当の助成を受けておる炭鉱については、それなりに経理規制法に基づいて社外投資等についてのチェック、制約がなされておるわけでありますから、過去におけるそういうものはあったけれども、これからは現行体制の中でそういうことが許されない制度になっておるということがいえると思います。  そこで御設問のあった点でありますが、いずれにしても、どうであろうと、過去においてつくられてきておるそういうもの、それらが確かに個別企業炭鉱企業体に対していろいろな形で利しておる面が今日あると思います。したがって、今後何らかの形で炭鉱企業の統合という事態になってきた場合に、その炭鉱部門だけをもって統合するということになれば、いまそれぞれ個別企業が、いろいろなそういう多角経営からくるささえをも含めて何とかかんとかもっておるものに対して、そのささえをはずして炭鉱部門だけ、ことばをかえればかすばかりということになるわけでありましょうが、それだけ寄せ集めて統合ということになれば、どうも思わしくない面が出てくると思いますから、多賀谷先生等十分御承知の、西ドイツの鉱山エネルギー労働組合あたりが反対しておるがごとく、発電所をはずしてかすばかり集めてどうするかというようなことと同じ見解をわれわれは持たざるを得ないわけであります。したがって、もし何らかの形での大統合というような場合には、それらの面を十分含めて、統合することによってかすばかりでかえって前より悪くなるということにならないように、私どもは経理の専門家でもないからわかりませんが、いろいろその場合の資産、負債、そういうものの扱い方とかどうとかいうことでもっていろいろ出てくると思いますが、そういう点を抜け目なく十分吟味してかからないと、思わないことになってくるのではないかという懸念を持っておるわけであります。
  17. 田中六助

    ○田中(六)委員 どうもありがとうございました。  次の質問ですが、現在の石炭産業の現実から見まして、どの程度出炭量が適当か。あなたたち立場からいえば、それぞれ皆さん、大体五千万トン程度だ、伝えられておるような植村構想による三千万トンではあらゆるいろいろなそごを来たす、労務者も集めることができないというようなことを言っておりましたが、もう一度三人の方に聞きたいのですが、どの程度あればいいか。セキュリティの問題もあるでしょうが、セキュリティの問題ばかりを強調していますと、たとえば五千万トンを国際収支の面でどの程度影響があるかというふうに見ますと、約二千億をオーバーする程度なんです。御承知のように鉄鋼などは日本で全然原料がなくて、海外から持ってきて、それに手を加えていて、しかも日本の重要な世界有数な産業になっておるわけです。これでも問題があるわけですが、そういう点から論じられると非常に根拠が薄くなる一面も出てくるわけですが、もう一度、どの程度出炭量があればいいか。どの程度でどうなるかということを皆さん御意見を聞かしてください。簡単でけっこうです。
  18. 山本忠義

    山本参考人 私のほうは、さきの国会でも決議いたしました電発火力八基等を含め、前向きの政策の中で五千万トンは必要である、こうおっしゃられた諸先生方の御決議についてぜひ御踏襲をいただきたいと思っておる次第でございます。
  19. 早立栄司

    早立参考人 私も山本参考人と同じ見解ですが、ただ加えて一つ、供給のほうの事情として現に出ていないじゃないか、四十二年度に四千七百万トンで、四十三年度の計画もそのくらいじゃないかというところの、その問題が出てくると思います。しかしこれらは私どもは、先ほど山本さんおっしゃったように、前の国会で先生方が決議してくださったのは、日本の経済計画の長期展望の上に立って、総合エネルギーの中の石炭のなわ張りとして五千万トンというものを決議していただいたと思うのです。それを出さなければいけませんが、ちょうどその出し方の問題で、供給力の問題で炭鉱がいささか今日問題がある。それが四千七百万トンになっておるけれども、だからといって、これは出ないんだ、縮めろというものではないと思うのです。特に私ども五千万トンということを言うと、どうもいろいろの方面から、そのことを言うだけでもって相当の反撃を受けておる。しかしわれわれはやはり五千万トン主張するのが正しいと思っておる。それは現に出ないじゃないかと言われますけれども、四十二年度の上期における三百万トンの減産ということが大きなショックでありましたが、その後の十二月、一月、二月という最近における、年度末における出炭の傾向を見れば、これは年産ベースに直して五千万トンにやや近いところまでいっておるのです。もちろん年度内に何とか出さなければいかぬという、一部では恒久資金とかいろいろな面もありました。けれども上期のああいう思わぬ大減産に対して、下期に至っては、特に年末等からかけて比較的伸びてきたということの理由は、これは私どももこまかく吟味しませんが、石炭局当局あたりでもっていろいろ検討され、かつて発表されている中でも、いろいろ炭鉱の作業条件といいますか、作業態様ですか、そういう中での改善がなされた。たとえば大型重装備切り羽ということでその万能主義でいったけれども、そうするとちょっと自然条件の変化でつまずいたときに思わぬことになるから、それを反省して、重装備大型切り羽と小型のほうとを組み合わせてどうとかこうとかするということを切りかえてやっているところもある。あるいはそういうふうにするというと、沿層掘進が長くなるけれども、それらに対応してはペイカーセブンという優秀な掘さく機がいま実力を発揮する段階になってまいりました。そういうものの効果が出てくるというようなことも決して見過ごせない要素であると思うのです。したがって私どもは、いま四千七百万トンぐらいであっても、あらゆる面の技術開発等を含めて大いに努力をしていくならば、同町に一面必要な労働力確保するということは労働力不足ではできませんからこれを確保するためのしかるべき適切十分な対策を講じ、一方において技術的にそういうものをやっていく。さらにまた、一方においては合理的開発を目ざした新鉱開発ということになるでしょう。そういうようなことをもろもろやっていけば、もう出ない出ない、これじゃだめだなんということでなくて、十分五千万トンくらいは出せるようになると思うのです。したがって、需要面では先ほど申し上げたようなことであり、それに対する供給体制としては決していまの一時期におけるちょっとした出炭不振のことのみをとらえずに、必ず五万トンくらいは出して日本のエネルギーのにない手としてりっぱにやっていけるようになるというふうに確信しておるのでありますが、残念ながらそうするためにはもろもろの対策財源のほうが出てまいらないわけであります。特に四十二年度の思わぬ出炭減から生じたところの計画以上の赤字の上回った面等についていかに穴埋めするかとか、あるいは労働力確保のためには、現在の七%程度賃金措置では、物価が五%も上がる中で名目七%程度賃金措置では、とてもこれはだめなのでありまして、そういう面をいわゆる対策強化をしなければならないが、対策強化をするということになると、どうしても国の対策財源が要るということになってくるわけであります。先ほど私どもそういう点まで触れて申し上げたのであります。
  20. 佐藤栄一

    佐藤参考人 五千万トンの問題でございますけれども、これは先ほど山本さんが言うたように、三者共通の指標として、その方法については三者それぞれでございますけれども、四月十五日にこの問題について、五千万トン体制確保ということで三者で統一ストライキを行なっております。これは炭職協、全炭労、炭労三者で二十四時間ストライキをやったというのは初めてのことでございます。それからエネルギー調査会の資料によりますと、五千万トン体制で五十年度は九・三%、それから六十年度で五・三%、こういうことになっておるようでございますけれども、もしもこれがたとえば二千万トン、あるいはちょうど半分の二千五百万トンということになったとしたら、この総エネルギーに占める比率がものすごく低い数字でございますから、先ほど申し上げましたように、とうてい石炭産業一つの単位として存続する価値がなくなるのではないか、そういうふうに考えます。ですから、一千万トンでもこれはもうだめだと思います。二千万トンでもだめだと思います。三千万トンでも私たちはだめだと思う、こういうことを言うておりますので、現状としては四千七百万トンくらいの出炭ベースでございますが、これを含めて私たちは五千万トン体制確立、こういう表現をいたしておるわけでございます。
  21. 田中六助

    ○田中(六)委員 われわれも決議した大きな責めがあるようですが、大体五千万トン程度だということでございますが、それならば、その五千万トン程度を掘るためには、やはり人間が要るわけです。いろいろな条件というものがあって、その対策が練られているわけですが、現実の労働者確保について、皆さまも述べられたように、賃金面あるいは労働時間あるいは退職年金あるいは期末手当、災害補償、保安、そういうような面等がたくさんございます。これに関連しまして、皆さんの一部の人は、石炭の炭価の問題を取り上げられ  ておりますが、私の記憶違いかもしれませんが、たぶん山本さんはこの炭価の問題に触れなかったように思いますが、山木さんは、この炭価についてどういうふうにお考えですか。
  22. 山本忠義

    山本参考人 やはりあらゆる産業のもとでございますから、安いエネルギーを供給するという責任はあると思います。したがって、当然現行の炭価をうんと上げてくれなどということになれば、重油価格との競争の面がございますし、重油の値段等がございますから、そういう面である程度の価格差補給金などという政策がとれればよろしいわけですが、私どもとしては、現行炭価を上げるという上に立って諸計画を組むということは、むしろこれは国民を納得させるわけにはいかない、それから関係の取引先その他でも必ずうんと言うわけではない、こうういうふうに考えて、現行炭価据え置きの上でいろいろな試算をしてみても、なおかつ再三申し上げるようですが、国有公社の方法でやってもメリットはあるのだ、またそういうふうに努力をしなければならないものだ、独立採算ということは要求されてくるだろう、こういう認識を持っております。
  23. 田中六助

    ○田中(六)委員 石炭産業を国有国営とすれば、そういう面も十分採算が合うというふうに山本さんはおっしゃっておりますが、この国有国営ですが、この問題を私いろいろ考えると、この前ちょっと多賀谷さん、岡田さんがおられて、いろいろ御質問もしたわけですが、つまり石炭産業体制の変革はそれであるわけですが、しかし常識的には、イギリスとフランスは現になっておりますが、私に言わせるならば、資本主義機構のもとで国有国営をやっておるからこそ、イギリスやフランスに大きな欠陥が出てきているのじゃないかというふうに見られるわけです。これは資料もたくさんありますが、H・へーガンという人が、御存じかどうか知りませんが、彼が指摘しているのですが、一般に言われている社会主義体制、あまり小理屈を言う必要はないのですが、いずれにしても、そういう全体の体制ができてないのに、一産業を国有国営にすることによって——むしろイギリスの場合を指摘しているのですが、資本家をもうけさせているではないか。たとえば利子の面とか株式の保有とか、そういう面があるわけです。その他のメリットも言っておりますが、そういう点が考えられるわけですが、そういう点の配慮というものがあるかどうかということをお聞きしたいのです。
  24. 山本忠義

    山本参考人 現行日本の政治体制の中で、社会主義的なイデオロギーの発想に基づいて石炭産業を国有公社と、こう申し上げておるのではないのです。何回も何回もやっても困難になって、先き行き要らないということになれば別でございますけれども、ずいぶん国民の税金を使った産業でございますから、何とかしなければならぬという見地に立てば、そういうイデオロギーの問題を抜きにして、国の一つの保有手段にして、思い切った鉱区の整理等から何からやらなければ、中途半端なものになるのではないかというところから私どもは謙虚に考えていることを御理解いただきたいと思います。  それからイギリスの例でございますが、よく勉強しておりませんので、詳しく知らないで間違っている点があるかと思いますけれども、あの場合に、賠償の方法が問題ではないかと思っております。必要以上に過当に資本家のほうを擁護するような形での賠償金あるいは買い上げ資金を出したところに——イギリスの場合、それらの費用の返済を除きますと、優に黒字になって炭鉱企業はやっているわけですから、その賠償金を返済するために重荷になって赤字だ赤字だと言われているやに聞いているわけでございますので、その辺適切な措置をとっていくならば——勝手ばらばらに企業が狭い市場の中で食い荒し合うということよりも、全部プールで一元的にむだを省いていくということば、当然メリットその他の面からも整理をされて向上するということは明らかでございますので、そういう方向でやっていくことが十分できるのではないか。それ以外に植村さんの案やいろいろな案があるようでございますが、これはいずれも中途半端に終わってしまって、もう一回手直しをするということになる可能性があるのではないかという心配を持っているわけでございます。わが田に水を引くようでございますが、そういう確信のもとに行なっているわけでございます。
  25. 田中六助

    ○田中(六)委員 山本さんにもう一つお伺いしたいのですが、万一国有国営になった場合、私どもの見解は別にございますが、きょうは質問ですから御了承願いたいと思いますが、私どもの見地からすると、当然石炭会社の従業員は公労法の適用を受けるべきだというふうに思うのです。というのは、あなたも言いましたように、これは政策需要というものがあるわけです。したがって迷惑をかけない、しかもセキュリィティという至上命令を皆さんは標榜しているわけでございますので、そういう観点からしますと、やはり疑問を持たざるを得ないのですが、この点についての御意見を……。
  26. 山本忠義

    山本参考人 おっしゃる意味はすなおに私理解ができます。ストライキ権のこと等についても触れておっしゃっているのではないか、こう思うのでございますけれども、御承知のようにいま炭鉱の場合は、他産業に比較しまして劣悪な条件でございます。中小炭鉱あり、国の管理炭鉱みたいな形でいるような炭鉱もありますし、大手の炭鉱もあります。したがって、それを一本にする過程の中では、賃金の格差等もいろいろあるわけでございますから、法律ができたからといって、一年やそこらですぐ簡単に正常に復して、より前向きになるとは考えておりません。その限りにおいては、私どもはいま言ったように、ストライキ権のないようなことでは身分保障を守っていけない、こういうふうに考えております。しかし、われわれだって供給の責任があるわけでございますから、軌道に乗っていく将来展望の中では、いろいろな御意見があればすなおに聞いて、それらのことについては謙虚に考えていくという心組みではございます。
  27. 田中六助

    ○田中(六)委員 次の岡田さんも控えておりますので、またの機会に皆さんに何度も出ていただきまして、私どもの疑問の点も明らかにしてもらいますし、皆さんの御意見も十分聞いて、できるだけいい対策を立てたいというふうに思っております。どうもありがとうございました。
  28. 山本忠義

    山本参考人 お願いいたします。
  29. 堂森芳夫

    堂森委員長 岡田利春君。
  30. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 初めに端的に山本参考人にお聞きいたします。実は私七日の日に帰ってまいりまして、八日釧路地区に参りまして、釧路地区の炭鉱の労働組合の幹部の諸君とお会いをしたわけです。このときにすでに四月の十五日労働賃金の問題については中労委の調停を申請をしておる。もちろん連休もございましたけれども、ずいぶん時間がかかっているということに対する非常な不信といいますか、そういうような意見が述べられておりましたし、また同時並行的に進めると言われているいわゆる遺族補償と退職手当の問題、この問題については自主的な交渉が実質上何ら行なわれていない、こういうものに対する不信というものが非常に述べられたわけです。その後上京しまして聞くところによりますと、炭労自体は十六日から四十八時間のストライキ、十九日からさらに反復のストライキを指令した、こういうことでございますけれども、そういう経過からかんがみてこのストライキの指令をした理由について、ひとつこの際端的に伺っておきたいと思うのです。
  31. 山本忠義

    山本参考人 私どもの機関でも明らかなことでございますが、今度のストライキにつきましては、自主的に交渉を行なっております遺族補償、退職手当金、労災補償の一部上積みの問題、こういうものについてのストライキの批評でございますので、その点はひとつ御認識をいただきたいと思います。ただ、次のことが関連をして考えられますので、一言、弁解になるかもしれませんが、申し上げておきたいと思いますのは、私ども政府並びに関係当局の御努力をいただきまして、平和的に問題を解決をつけるという方向について最高責任者として了解をしたわけでございますから、そういう方向での指導等については責任を持ってやらなければならない立場にあることば事実でございます。したがって、そういう面から考えますと、今次のストライキ等につきましては何か信義的な裏切りみたいにとられますときわめて心外でございまして、あの際に会社側の方といろいろと話し合いました過程の中で、とても日にちがかかるような場合といえども、お互いに退職金の問題や、先ほども申し上げましたけれども、きのう雄別ですでに四人のとうとい殉職を崩落事故で出しておる、こういうことで遺族補償等の問題については、組合員の関心のきわめて強いところでございます。そういうような問題についてはひとつ誠意を持って自主交渉をやろうじゃないか、こういうことになっておったわけでございますが、一向に前進を見ない。こういうのが下部のほうにすぐ伝わるわけでございます。なお、あわせてこの平和的な方向で中労委のほうに調停を依頼をいたしましたけれども、必ずしも下部組合員や家族の場合には、はい、そのコースが全くよろしいということでもろ手を上げて賛成ということではなしに、またいいかげんなことになってしまうんじゃないか、こういうことを私ども説得をいたしまして、いま中労委の方向努力をいただいておるわけでございますが、山には連休というのがないわけでございます。したがって、二十日になんなんとする間一向に進捗を見ない、山本のやつはまた何か中央でこちょこちょやっておるんではないか、こういうようなはね返りがきわめてきびしくきておるという点だけは、ひとつ正しく御認識をいただいて、そういう中にあっても私どもはいまだに平和的に解決をつけるということで、御心配をいただいた方々に対して、根本的にその問題についてあいくちをつきつけるような形でのストライキをかまえているという気持ちではないという点だけは、ぜひ御了解をいただきたいと思う次第でございます。
  32. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 先般の三者のストライキが解決をして以来、ちょうど二十五日間の日にちを経過いたしておるわけです。そういう点で賃金は一応調停段階がおくれながら進んでまいると思いますし、問題は、自主的に遺族補償、退手その他の問題について、これまた具体的な自主的な誠意のある交渉が展開されないことは、私ども非常に遺憾だと思うわけです。今日の石炭産業の置かれておる状況からかんがみて、この機会に私は労使に対して、誠意を持ってひとつ自主的な交渉を展開すべきではないか。たとえば一例をとりますと、遺族補償はすでに全鉱では百二十万の額が支給をされている。まして炭鉱の場合にはメタルの鉱山よりも非常に災害が高いという現実は無視することができないのでありますから、そういう意味では誠意を持って話し合いを進めることによって解決は可能ではないか、こう考えますので、そういう点でできるだけひとつ自主的に平和的に解決されるよう期待すると同時に、経営者はおりませんけれども経営者に対してもこの機会を通じて要請いたしたいと思います。  次に、三人の参考人の方にこれまた端的にお聞きいたしたいのでありますが、いま鉱業審議会には雇用部会というのがありまして、組織の代表もこれに出ているわけです。しかし、減産の理由として人手の確保が困難であるという問題があるわけです。そういたしますと、審議会はこれは諮問機関でありますから、雇用の問題についてはむしろ産業別サイドとして労使の間に雇用問題協議会を設ける、そういう中で、雇用全般に関する労使の話し合いの積み重ねが今日最も要求されることではないか。あるいはまたもう一つの問題としては、きのうの朝、雄別でさらに重大災害が発生をいたしておるわけですが、保安問題についても中央保安協議会はもちろんございます。しかしこれは法に基づくいわゆる機関であるわけです。保安上最も大事なことは、何といっても生産の接点におる労使が自主的に保安を守る、こういう体制が出てこなければならない、こう思うわけです。そういたしますと、これもまた産業別サイドで保安問題のための協議会を設ける、こういう中からやはり自主的な保安体制というものを引き継いでいく、こういう姿勢が私は今日最も大事ではないか、このように実は考えるわけですが、こういう点についてはむしろ三者が一致されて経営者側に呼びかけ、要求をする、もし応じないとするならばそれこそ力をもって抗議をすべきではないか、私はこういう積極的な意見を持っておるわけですが、こういう考え方について三者の御意見を承っておきたいと思います。
  33. 山本忠義

    山本参考人 非常にいいアイデアと申しますか、私どもの気のつかない点についての御意見考えて、それぞれ機関の中で十分考えてもいいことではないか、こう思います。  ただ雇用問題のことで申し上げますと、これは現実にずいぶん差し迫った課題でございますから、労使が何らかの形での対策委員会でも設けるということになりますと、労使アベックで人集めをするということにすぐ結びつきます。それで決して悪いとは申し上げませんが、端的にすぐ集めてこられるのは、閉山になりそうな山や閉山になった山へ行って引き抜いてくるというかっこうになるわけでございますので、そういう場合にはきわめて悪弊害が起きるのではないか。したがってここで、取り扱ういろいろな問題等は、むしろ長期的な展望の上に立って——炭鉱労働者の平均年齢が四十歳である、老齢化をしている、あるいは若手労働者についてどうやったら吸収することができるのか、あるいはまた、それぞれの企業で工業学校をつくっておりますけれども、そういう炭鉱の従業員の子弟をめどにした何らかの形の、炭鉱に雇用をするというような方向はないのかというようなことで、長期的な展望の上に政策的な問題としてテーマを設定をしていかなければならぬのではないのかというような気もいたしますが、それはいまちょっと気のついたことだけでございまして、全体的には御趣旨の点については私どもの機関はもちろんのこと、ここに見えておりますそれぞれ組織の代表の方々とも十分に話し合って、前向きでとらえていいのではないかと私は考えております。
  34. 早立栄司

    早立参考人 実はおっしゃられましたようなことを、われわれはほんとうに必要だと痛切に感じておるわけであります。以前から、私ども炭鉱としては、大手炭鉱関係については中央に統一労使協議会を設置をしております。中小関係については、地方ということになっておりますが。そこで、昨年の九月ごろにこの統一労使協議会をちょっと一時中断いたしておりましたが、再編成をしました。私ども組織の関係、相手側会社全部列席した中で、労使協議会を持って保安の問題、労働力確保の問題、関連して住宅対策の問題、医療健保の問題等を私どもからテーマとして出しました。これらを詰めるために、労使協議会は小委員会設置をして、資料をお互いに出し合い、詰めた話をしようという約束になったわけであります。相手側は非常にもたもたしておりましたが、ようやく昨年末ごろ相手のほうも選んできて、小委員会設置する段階になりましたが、実は小委員会一、二回持ちましたが、まだまだほんとうの意味の話し合いというところまで来ておらないわけであります。どうもけしからぬということでわれわれ追及しますと、あれやこれやいろいろ考えれば考えるほど、根本的には石炭産業をどうするかということになってくると、いま植村試案が構想を示されて、社長会議の中でどうとかこうとか、また、経営者内部がどうとかこうとか、そういう肝心な根本のことについて意思がまとまらぬ状況にあるのだから、どうも保安の問題、労使の問題でも何でも、問題がそこはいってしまうからまずいということで、逃げ腰なんです。われわれがせっかくそういう制度をつくってやってもだめですから、次にはそれではもう少し形の変わったところで炭労、炭職労とも相談をして、石炭産業全体についての統一的な産業会議をどうかという話を経営者に出してみたこともありますが、なかなかそれも相手のほうが乗っかってこない。そこで先ほど私ども考え方構想の中で述べましたように、今度の新しい政策決定する際に、政策措置として中央段階における石炭産業会議というものを設定をして、その中で十分話し合い、いままでも労使協議会、経営協議会と個別企業にもありますが、それは企業段階のことでありますし、同時にその話の内容がどうも形式的に終わっているきらいもありますから、そうではなくて、ほうとうの意味の話をしてお互いにきめたことに責任を持つという体制にするためには、労使共同決定体制というものも、そういう石炭産業会議の場につくり出すべきじゃないかというふうに考えさせられまして、そういうことの提起をしておるわけです。現状は、いろいろその必要性を感じましたけれども、残念ながら経営者側がどうしてもそれに乗っかってこないということで、まだ効果ある活動というふうに実っておらないという状態にあるわけでございます。
  35. 佐藤栄一

    佐藤参考人 大体意見は同じでございますけれども、今度の植村構想に対して、協会のほうで条件つきで返答する、あのころの状況でございますけれども、三者でできるんなら協会と話し合いをしようじゃないか。ですけれども、なかなか協会としては正式な話には乗ってこなかった。したがって、ここにもいらしゃいますけれども石炭局長にでも仲介してもらって、ひとつざっくばらんな話をしようじゃないかというようなことを三者で打ち合わせしたことが過去に何度もございます。ですから、私どもとしては、単に、雇用あるいは保安の問題だけでなく、この際、将来の展望をきめる大きな政策に取り組む時期ですから、ざっくばらんに忌揮のない意見の交換をやりたいというように考えております。  それから炭職協の三月に行なわれました大会の方針としても、将来としては産業別の労使協議会を設置して積極的に労使慣行の問題の解決に当たりたい、こういうふうに考えております。
  36. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 早立さんにお聞きしますけれども、いわゆる全炭鉱として今後の石炭政策あり方について、先ほど所見を承ったわけです。所有の変更を伴い、経営能率をあげて公労使体制を通じ国家管理をする、これが一応の基本構想であろうかと思うわけです。そこで私、日本の石炭産業を国際的に比較をする場合には、出炭規模から言えば、やはりそれぞれのヨーロッパの諸炭鉱と日本の炭鉱を比較するということになるのだと思うわけです。したがって、日本の炭鉱の弱点というのは一体何なのか。この点を私なりに集約してみますと、第一には地質的に地層が非常に若い。そして稼行炭量というものが単位面積当たり非常に少ない。地盤は非常に軟弱である。こういう弱点がありますから、いわゆる立て坑システムが伴わないので、施設の蓄積が行なわれない。こういうのが一つの弱点だと思うわけです。第二の弱点は、褶曲が非常に多くて断層が多い。したがって機械化採炭の体制というものは困難である。これが第二の弱点ではないか。第三の弱点は、炭質が悪い。原料炭といえども、弱粘結より出ませんし、一般炭についても、いわばアメリカの褐炭に毛の生えた程度、こういう点では炭質が悪い。しかも歩どまりが非常に悪い。同じ一トンを掘り出しながら、極端なところ半分が石炭である。こういう非常に歩どまりが悪いという弱点があるわけです。第三番目には、ガスあるいは水が多い。炭塵も比較的多い。第四番目は、産炭地が九・北のいわゆる北と南に偏在をして、消費地が非常に遠い、運賃が非常にかかるという弱点があると私は思うわけです。さらに鉱区が非常に細分化して所有されておる。そういう点で小規模単位の炭鉱で構造が形成をされてきたという歴史的な過程、こういう面における弱点がある。特に最大の産炭地である筑豊は鉱害が非常に多い。こういう点が私は日本の炭鉱の弱点だと思うわけです。この弱点を認識した上で、今後の石炭政策をどうするか、こういうものごとの考え方に立たなければいかぬだろう。  そこで、では今後の再建政策を出す場合に、一体どういう政策が一番効率的に行なわれるのか。できるだけ国民の税金の投入を少なくして、なおかつ石炭産業が自立安定をしていかなければならない、こういう面で考えてまいりますと、私は、第一番には、やはり販売が全然いままで手を染められなかった、この点は全然手を染めなかったということが石炭政策のまず最大の失敗であったろう、こういう理解を実はいたしております。その理由は弱点からもくるところでございます。さらに第二には、出炭規模の小さい会社が非常に多い。現在でも二百の炭鉱がある。そういう点では管理費が非常にかかっている。また資材等の共同購入、こういう面が全然行われないという面における管理費が非常にかかっている。小規模なるがゆえに総合的に見ますと管理費が非常にかかっている。第三番目には、総合的な開発計画というものが、先ほど言った鉱区の分割所有、褶曲が非常に多いのでありますから、少しでも効率的に採掘する開発計画が立てられなければならない。こういう点がなかなか容易に行なわれない。簿価で言いますと、三菱は二千数百万円のいわゆる鉱業権の金額である。あるいは太平洋炭鉱のように黒字経営であっても九十九万七千円の簿価で鉱業権が計上されておる。こういうのにかかわらず、これをもし若干でも鉱区を分割する、調整するということになりますと、トシ当り百円以上になる。こういうようなことが今日行なわれておるわけです。さらに第四番目としては、労働力確保が非常に困難になってまいりました。問題はいかなる政策を立ててもスクラップ・アンド・ビルドの方向は、これはどういう形態になっても避け得られない一応の方向でありますから、いかにして社会的摩擦を避けるか、そうして多くの労働者生活をどう一体守っていくか、安定をさせるか、このことが秩序ある、計画的に考えられなければならぬ問題である。こういう点は一体どうしたら一番よく効率的に行なわれていくのか、さらにまた技術の交流あるいは技術の開発の問題、機械の効率的な利用、あるいはまたそれ以外に福利厚生施設の共同的な利用、それと、また将来に向かって蓄積された技術を海外開発に活用する、こういうような点が、これからの政策あり方、再編成をめぐる、どういう形態が一番いいのかという源の考え方の基準にならなければならないのではないか、私はこう思うわけです。そういたしますと、全炭鉱からいま述べられたこの基本構想は、所有の変更が全然伴わないという面については、何らこだわるべきではないのではないか、別に鉱区が、鉱業権が一つ会社に帰属しようと、公社とか統一会社とかは別にして、そういう点は何らこだわる必要はないのではないか、私はこのように考えるわけです。したがって、せんじ詰めてみれば、国有公社運営、国有国営じゃなくて国有公社運営という社会党の案と、いま述べられているこういう面をさらに詰めて検討してまいりますと、実質的にはそう変わりないのではないか。販売は、単にブロックの自主共同化では不十分で、政策指標としては当然一元化だ、所有の面も、鉱業権その他から見れば別にこだわる問題ではない。こうなってまいりますと、そう差がないのではないか、私は、専門的に検討してこういう判断をいたすのでありますけれども、この点についての見解を述べていただければ幸いだと思います。
  37. 早立栄司

    早立参考人 岡田先生からいろいろ日本の炭鉱の問題点として指摘されている点について、私ども先生ほど深くは承知しておりませんが、私どもなりにいろいろそういう面についての問題点を考えて検討してきたわけであります。したがって、おっしゃられましたように、そういう面の克服ということをまず今後の政策の中で考えねばならないと思います。それが基本でなければならないと思います。ただ私どもが先ほど申し上げましたのは、こういう事態の中で、所有権の変更という観点からではなくて、経営効率をいかに高めるかという観点から取り組まねばいかぬということを申し上げておるのでありまして、経営効率を高めるという立場から取り組んだ結果としてのでき上がる姿が所有権の変更を伴うものであっても、いささかも差しつかえないわけであります。言われるとおり、われわれは、鉱区がどこに所属しようと、われわれ労働者の雇い主がだれになろうと、そういうことをいささかも問題にしておるのではありません。問題は、日本の石炭が五千万トン、日本の経済のにない手としてそのくらい確保していけると同時に、その中における労働者生活というものが、ほんとうにみんなが喜んで働いていけるような体制のものになっていくかどうかということにかかってくるわけであります。ただそういう立場で、しからばということになりますが、われわれなりに、突っ込みが足りないかもしれませんが、いろいろ指摘された問題点等を検討してみました。鉱区調整、もちろんそれは鉱区の帰属も——いわゆる鉱区境界線なんというつまらぬ問題は取っ払ってしまう必要があると思います。ただそれらは、いま鉱区の境界線というものをはずそうとはずすまいと、現にここに斜坑があり、立て坑があり、事業所があるという現実である。そこで、これから将来にわたって新しく新鉱を開発をするという場合には、当然非合理な鉱区の境界線というものは取っ払って、合理的に開発を進めなければなりません。私どもある意味では、今後の新鉱開発は国営でやってもいいのじゃないかという考えも大体持っておるのですが、まだはっきりそこまでは申し上げられません。そういうことです。ただ現在ある炭鉱確保しておる炭鉱について、鉱区を取っ払ったことによって——必要があれば取っ払えばよいわけです。そのことによってそれほど大きなメリットがあるかどうかということについて、私どもは大きなメリットをそこに発見できない。しかし必要があれば大いにその鉱区調整という形で境界線は取っ払うような形で管理委員会として命令をさせるべきであるという命令、勧告権をそこに持たせる考えであります。それから販売関係についても当然言われるように一元化、しかし先ほど述べたように政策需要については確かに一元化することによってかなりのメリットを発見することができると思いますから、これはこれなりにやらねばならないと思いますが、公社の販売か何かの、その他原料炭一般炭か、一千万トン程度まで含めてこれをやるという場合に、どう考えても、私どもは、かつての石炭が足りなくて配給している時代とは違うわけですから、それほど——小口部門についてはお客さまがその銘柄についてそれを必要としておるのであって、そういう面について損な立場かもしれませんが、いろいろ過剰とも思われるほどのサービスをしながら大いに努力しなければ維持できない、開拓できないということでありまして、これらは配給時代と違った今日の事態で、一元的な配給、配炭機構で扱っていった場合には、どうもこの辺の需要が減ってくるのではないか、植村構想で出ているような原料炭三千万トンくらいにした場合は、そんなことは考える必要はない、政策需要だけでわれわれは五千万トン維持ということを考えているから、その部面だけは突っ放すべきだという考えを持っております。  それから言われるまでもなく、管理機構と、いろいろそれを簡素化するという立場からいって、これも統合あるいは国有公社というような形になれば非常にそういう面からも出てくると思います。ただいろいろ検討してみましたが、そういうことを含めて、はたしてどれだけのメリットがあるかということになると、確かにそれは現状よりもメリットがあると思います。しかし一方、所有権転換を伴うために、その補償財源を社会党さんはどのくらいか、私どもはやるならこれはもうどうしても大体六百億くらいかかるのではないかという感じがしておるものでありますから、そういうような補償財源というものを出して、なおかつそれを補って余りあるところのメリットが出てくるかどうかという点で、私どもの突っ込みが足りないせいでしょうか、どうも自信を持てるまでのものに至らないわけです。そこでそういうことであるならば、何もそういう補償財源なんというものを考える必要はないから、その金があるならば、五千万トン出せるようにするための前向きの坑道掘進なり何なりの対策費に使ったほうがいいのではないか、それでなくても離職者対策とか鉱害対策産炭地対策というものは社会政策だから一般会計に持っていけ、四十二年度は百六十億くらいそっちのほうに持っていったらいいのではないか、百六十億に対して財政当局あたりはかんかんにおこる性格のものなんです。五百億も六百億も所有権転換の補償のために必要とする財源があるとすれば、それを使わないでこっちに持っていったらいいのではないかという感じが、結局は所有権転換には触れない形での管理、しかも内容的には、もちろん国有にされたほどのメリットはないでしょうが、内容的にはやや国有公社で運営するにかなり近いくらいのしかるべき監視誘導規制管理委員会として管理の形態でやっていくということを考えておるわけであります。  その締めくくりとして、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、率直に私の気持ちのほどを申し上げますと、いろいろあるわけでありまして、植村案にしろ、あるいは国有案にしろ、その他もあるわけでありますが、それぞれとにかく石炭産業は困った、何とか立て直す意味でもって真剣に検討されて、国が出されたものでありますから、われわれは早計に、軽々しくそういうものに批判するような態度をとってはならない、われわれも十分その中から学んでいかなければならないと思っておりますが、ただ気持ちのほどを率直に言えば、石炭産業は瀕死の重病人でございます。瀕死の重病人に対して、これでは死んでしまうということで、頭の先から足の先まで一ぺんに大手術をすると死んでしまうのでありまして、この手術をする前に栄養補給をして少し体力を持たせてからでないと大手術はできない、こういう関係になるのではないかと思います。こういうような気持ちも多少私どもの頭の中に作用しまして、同時に先ほど申し上げたようなもろもろの要素を入れて、先ほどのような所有権にこだわらないような立場での管理という姿勢、しかし重ねて言いますが、われわれとして雇い主がどうなろうと、自分の所属がどこにいこうと、鉱区がどこになろうと、そういうことをいささかもこだわるものではなくて、そのほうがいいという形のメリットがはっきりと出てくれば、それも望ましいのではないかと思っております。
  38. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私はヨーロッパと日本を比べて一ついいことは、五千万トンの出炭規模であれば、一応昭和四十五年度新規需要としてガスその他の原料炭の消費が一千五百万トン、電力が三千万トン、あと五、六百万トンを一般向けに売る、こういう需要構造が政策的に一応確立されているわけです。したがって、需要の面が心配なんです。特にヨーロッパの場合には需要の面から補償せざるを得ないというのがヨーロッパの情勢でありますから、そういう点では日本は需要の面で余りがなくても従来の計画そのものでやっていける、こういう一つの面があるわけです。ただ反対に、日本の石炭産業は非常に異常な債務を背負っておる、借金を背負っておるという問題なんです。一部を除いては膨大な借金を背負っておる。ところが西ドイツでも赤字炭鉱一つくらいで、あとは配当しているというのが現状でありますから、日本の石炭産業というのは確かに瀕死の重病人でありますけれども、心臓移植するくらいの気がまえで石炭政策をやらなければこれは救いがた  いんではないかと思うわけです。西ドイツの場合には配当しているわけですから、体力があるけれども再編成をする、そうして国が補償して膨大なお金を出す、こういう仕組みになっておるわけですから、日本の場合にそれ以上金がかかるということになってまいりますと、国民が納得する、いわゆる最も効率のいい体制、こういうものがやはり求められて、政策として打ち出されていかなければならないのではないか、こういう気が実は私はするわけです。そういう意味では、別に国有公社というものに私がこだわって申し上げているのではなくて、要するに効率的な経営あるいは能率を上げるという面はいろいろな措置考えればよろしいわけですから、少なくともそういう点では統合していくという方向は大勢としては避けられぬではないか。国民の税金を石炭産業に受けてわが国のエネルギーの安全保障と国際収支の面に石炭産業労働者が果たしていく立場に立てば、そういう方向は避けられないという立場ははっきりしてくるんではないかと思うのですが、もう一度重ねてこの面について伺っておきたいと思います。
  39. 早立栄司

    早立参考人 おっしゃるとおりに私ども考えております。ただそれを、伝えられますように全国一本の一社にしたらいいか、あるいは北海道、東北、九州という三社にといろいろの線が出ておるようでありますが、私どもは統合問題についていまのところ比較的消極的態度になるわけでありますが、その理由は、伝えられておる大統合論が、われわれの受ける印象としては三千万トンなり何なりにする大幅な規模の縮小をしていかなければならぬ、そういうことのためのスクラップをしいいようにする、つぶす場合みんなで葬式代を持って、とにかく縮めていかなければいかぬのだから、つぶしいいようにするということでスクラップ縮小というものを前提として、そういうものが考えられておるように、どうもわれわれいままで言われておる中から感じられるわけです、国有問題ではなくて、その他の統合問題。そういう点ではわれわれは五千万トン程度は出していこうという考え方土台とした上に立って、しからばそのための経営効率としてどうすべきか、そのためにどことどこを統合すればいいかということをもっともっと詰めていかなければいかぬと思っているわけです。ですからわれわれの言う石炭鉱業管理委員会管理体制、命令権、勧告権等の中にも、当然そういう面について地区的にいろいろ検討し、西ドイツではありませんが適正な規模にしていくために、ある地区におけるこうこういう統合というようなものが具体的に検討の上に立って出てくれば、それらについて、その統合を促進するところの命令あるいは行政勧告権等を付してこれを促進するという考え方に立っておるわけであります。
  40. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 スクラップ方向がもちろん心配されるわけですけれども労働者として一番大事な措置をしておかなければならぬのは、いままで長年働いてきて、退職金は大日本炭鉱のように閉山になれば五割しかもらえない、あるいはそれ以下でやめなければならないという悲惨な実例が出ているわけです。また大辻、日吉あるいは国見炭鉱が、いわば中堅どころ以上の炭鉱がすでに閉山が始まっている。こういう現状認識をわれわれがまずする場合に、措置としては、働いておる多くの人々がその後転換をしなければならぬという面もあわけですから、退職金がまず保障される、労働者賃金というものがまず保障される、この措置をし、そうして今後の早期な石炭産業の安定の方向、形態はどうあるべきか、こういうことの考え方が一番大事ではないか。そういう意味では植村構想の中に述べられている管理会社を——管理委員会ではなくて一つ会社をつくって、退職金だけは保障してこの会社措置する。そういう措置は、この部面だけはきわめて前進的な労働者確保の面から役立つであろう、こういう認識を実は持っておるわけでございまして、そういう点が伴っていくとすれば、どうしても単に監督、命令、融資をするという一つのものだけではなくして、そういう会社機構こういうものがなければ、そういう点が明確にならないではないか、このように私は考えるわけです。こういう点について、きょうは議論する場ではございませんから、より一そう御検討願って、この構想のより一そう具体的なものを今後お聞かせ願えれば幸いだと思いますので、私からも若干の問題の提起を申し上げておきたいと存じます。  次に、佐藤参考人にお聞きいたしますけれども、炭職協として当面の政策についていろいろ述べられ、さらにこういう政策をより具体的に確固たるものにする過程の中で、今後の石炭産業の形態というものが明らかにされていくというぐあいに私はお聞きいたしたわけです。そういう面から考えて、問題は、これは石炭サイドだけから考えると同時に、また国民全体のものとの考え方、また批判というものもわれわれは率直に受け、理解をしてまいらなければならないのではないか、こう思うわけです。そういう意味では炭職協としてはこの組織再編成の問題については一体どういう過程、どういう幅、深さがあるのか。こういう点についてもしお聞かせ願えれば幸いだと思うわけです。
  41. 佐藤栄一

    佐藤参考人 失礼になりますけれども、組織再編成というのは、今後のあるべき体制ですか。
  42. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そうです。
  43. 佐藤栄一

    佐藤参考人 先ほど申し述べましたように、いかなる体制にするべきであるかということについては、まだ論議をする一つ手前の段階なんです。  御承知のように炭職協は、炭労傘下の組合員があり、あるいは全炭鉱傘下の組合員がおるわけでございます。そして中立、三者構成になっておりますから、私どもとしては最終結論を出すときに、それぞれの組織の実態から、なかなかめんどうな問題がございます。ですからその体制はかくあるべしというのは、できるだけ早急に結論を出したいと思いますが、いまのところまだ残念ながらお答えできるような方向にはなっておりません。ただ、先ほど考え方の中で申し上げましたけれども、できるのなら私たちとしては現行一つ体制の中で、徹底的にやはり合理化をすべき点がまだあるのではないか。そういうことを十分行なった上で、そして国民的な視野の立場から諸対策もあわせ考え、そして一つのかくあるべき体制を私たちは見出したいというふうに考えております。ただ、現在の私企業体制ではもう行き詰まりにきているということは私たちも認識しておりますから、たとえば販売機構並びに流通機構を別なものにするとか、あるいは現在の私企業体制でなかなかめんどうかもしれませんが、鉱区の統廃合という問題についても、何らかの手段でやる必要があるとか、あるいは管理機構を徹底的に合理化するとか、そういうメリットの追及については、この際徹底的にいたすべきであるというふうに考えております。
  44. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 わが国炭鉱は、もし現時点でさらに急速なスクラップ・アンド・ビルドを進めていくとすれば、非常に大きな問題が出てくるのではないかという気が私はするわけです。といいますのは、経済出炭というものの把握のしかたが非常に不正確だという認識を私は持っているわけです。いわゆる一つのフィールド、何年間かかって、一年間幾らの炭を出していくのが一番経済的なのか。こういう把握のしかたに非常に欠けるところがあるのではないかと思うのです。一例をとりますと、たとえば太平洋炭鉱で今日二百万トンの炭を出し、計画を漸次十万トンぐらいつつ上げていくという計画を進めていますが、これは海底炭フィールドであって、それではこれからさらに投資が伴っていくわけですから、そういう意味で経済出炭規模というものが考えられて、そこで能率はどうあらねばならないかという面でいきますと非常にコストが安いからといって集中し、無理して生産の拡大をさせると、非常に不経済な出炭体制にやがてなり、コストが高くなっていく、こういう欠陥を持つのだと私は思うわけです。ましてビルドアップの炭鉱というのは概して海底炭鉱がほとんどである。それに夕張地区、こういうところがわが国の重要なビルドアップの代表的な炭鉱であるという現状から考えても、この経済出炭規模というものをやはり正確に判断をする。これを基礎にして出炭規模というものを考えていかないと、重大なそごを来たすのではないか。極端な言い方をすれば、一九〇〇年代にわが国石炭産業はがらがらと崩壊するような結果にもなりかねないのではないか、私は実はこういう心配をするわけです。ですから、これからの、特に大手に属しているような規模スクラップというものは相当慎重を期して考えていかないと問題が大きい、こう思うわけです。こういう点について、特に炭職協の場合は経営全般の面でタッチしておるわけですから、どういう認識を持たれておるかということが一つと、私は日本の炭鉱労働者は非常によく働くと思うわけです。一週六日間八時間労働をし、さらに毎日平均一・九時間の残業をしておる。基準法では坑内労働者は二時間の残業をすることは禁じられておるにかかわらず一・九時間の残業。公休出勤もして働いておる。こんなにべらぼうに働いておる炭鉱労働者はほかにはないわけです。こういう意味で私は日本の炭鉱労働者はよく働いておると思うのです。それでなおかつ採算が非常に悪い。各企業とも非常に赤字である、こういう点が問題になってくるわけです。  先ほど炭価の問題について触れられておりますけれども、そういう意味において、炭価政策ばただ上げるといってもどういうところに炭価政策をとるのかということが非常に問題ではないかと思うわけです。従来の炭価というものはある一定の、たとえばわが国財源的に関税政策をとっておりますけれども、競合する重油消費税をたとえば千二百円取るということになりますと、重油の値段はそれだけ上がってくる。それが財源にも回っていくという場合には、これは価格政策の一助にもなってくるわけですが、わが国の場合には原油関税政策をとっておりますから、そういう政策を希望するのか。あるいはいまの炭価が安いから上げるということを希望しておるのか。あるいはまた炭価は、たとえば鉄鋼、電力についても、電力であれば従来の需給構造からいって東電が一番高くて、中国電力は最大の産炭地が近かった関係上安い。いわゆる南に下るに従って安い。鉄鋼についても関東が一番高くて、南に下るに従って炭価が安い。あるいはまた供給の安定性の面から大手は高くて、中小が安い。そこに依然として大手商社、中小商社が介在をして価格差がついている。こういう炭価政策を是正し、一元化していくというのか。もしこの一元化をするとするならば、どうしてもこれは販売機構を革命的に変えざる限りこれらの問題を解決することは私は不可能だと思うわけです。こういうことに全部関連をしてくるわけですが、炭価政策というのはそういう面を含んでどうお考えになっておるのか。もしそういう点を検討されておれば、この機会に見解を承っておきたいと思います。
  45. 佐藤栄一

    佐藤参考人 それでは第一番目の問題でございますけれども、確かに現行としては先生のおっしゃるように、もしも生産性の向上ということに最大限の努力をするとしたら、ある資源を非常に有効に採掘できないということになるかもしれません。そういう事例ももちろん私たちも承知いたしておりますけれども、できるだけ今後能率を向上するためには機械化の促進等を行ないまして、とにかく日本で少ない資源のうちの貴重なものでございますから、これはどんな体制になろうとも有効にとる手段を考えなければならない、私はそういうように考えております。  それから二番目の炭価政策の問題でございますけれどもあとから言われた具体的なことについてはまだ結論を出しておりませんが、端的に言いまして消費者との関係もございますから、私たちの側のことばかりは申し上げられないと思いますけれども、千二百円のコストダウンのあとに、第二次答申で鉄鋼二百円、電力三百円は直ったというものの、やはり低炭価に押えられておるということは事実でございますから、少なくとも消費者物価のスライドくらいの炭価の値上げということをひとつ何とか織り込んで考えていただけないかということが一つございます。  それからもう一つ対策としては、やはりいろいろ問題あるかもしれませんけれども石特会計確保とその中にある鉱害とか産炭地とか離職者対策とかいうものを別にして、ひとつビルド対策に重点を置いて、そうしてもちろん最大限の努力をしますから、できるならば現行体制の中でもう一度努力をしてみようではないか、もう一度努力をさしてもらってもいいのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。ですから、先生言われた具体的に結論を出すときには、そういう高速輸送とか販売機構の一元化の問題を含めて具体的に結論を出したいと思いますが、少なくとも現行体制にあっても、そういう流通機構改革によって、矛盾のある点については徹底的に直すべきである、そういうふうに判断をいたしております。
  46. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 最後に、現在石炭鉱業審議会が開かれて、それぞれ各組織の代表の方々もこのメンバーに入っておられるわけです。また逆に、ある意味ではそれぞれ団体がございまますから、石炭政策あり方に案をお持ちでしょうから、そういう案について学識経験者の方々が意見を聴取する、こういうような方向をとりながら現在いろいろ検討されていくだろうと思うわけです。ただ一番問題点は、もちろん労働団体が歴史的な過程やその方針に基づいてそれぞれ別途な組織をつくられておるわけですが、しかし、少なくとも労働組合としてこの点だけは絶対にこうあらねばならないというものは相当一致するのではないか、こう私は思うわけです。そういう点は、できるだけ国有化と国家管理——まだ結論が出てないという点ではあれは別でありますけれども、しかし、この点とこの点とこの点は大体消化をせねばならないという点は私はあるのではないかと思うわけです。そういう点できればある程度歩調をそろえて、あとは別途の意見をお持ちであっても、労働者側としてわが国石炭産業はやはりこういう方向だけは確立せねばならない、そういう姿勢、態度が大事ではないか、私はこう思うのですが、そういう点について十分話し合う用意をお持ちかどうか。五千万トンについては一致しておられるのですが、さらに一歩を進めて、これから八月一ぱいに答申を出されるわけですから、そういう点について十分ひとつ話し合いをされる御用意をお持ちかどうか、簡単にひとつお聞きして終わりたいと思います。
  47. 山本忠義

    山本参考人 私どもの組織では、こういう炭鉱労働者としては共通のことでございますから、組織は別になったという歴史的な事実はございましょうけれども、それらは払拭して問題点をとらえながら十分に三組織間で話し合いをしていきたい、またこうあるべきではないか、こういうことは機関の中でも承認を受けておりますし、全体の意思でもございますので、私どもとしては今後ともやっていきたい、こういうふうに考えております。
  48. 早立栄司

    早立参考人 全炭労も同様でございます。五千万トンで一致したということは、その他のことについても一致する点があれば大いに力を合わせてやろうということであります。ただ一言申し上げておきますと、そういう意味でのいろいろな連絡会というか話し合い等しばしば行なっておりますが、五千万トンでは一致しましたが、それから先になりますと、それぞれ理屈がありまして、意見を合わせようといたしましても合わない面がしばしばありますので、御期待に沿わない実情が出てくる場合がありますが、そういう方向努力だけはいたしていきたいと思います。
  49. 佐藤栄一

    佐藤参考人 私ども決定といたしましては、国有化を別に否定しているのではございません。先ほど言いましたように、産業の存続の条件を三点あげましたけれども、これを達成するための一つの手段として、私どもとしてはその限界としてはやはり国有化ということが必要であろうというふうに認識しております。しかし現段階としては、その前に一歩努力することがあるのではないか、こういう認識に立っておりますから、炭労、全炭鉱ともに十分話し合って、今後の政策について意見交換をしていきたい、かように考えております。
  50. 堂森芳夫

    堂森委員長 これにて参考人各位に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会代表して厚くお礼を申し上げます。      ————◇—————
  51. 堂森芳夫

    堂森委員長 昨九日、北海道雄別炭鉱における落盤事故について、政府の報告を聴取いたします。西家鉱山保安局長
  52. 西家正起

    ○西家政府委員 最近、石炭鉱山におきます死亡災害は減少の方向をたどっておったやさきでございますが、昨日、北海道の雄別炭鉱におきまして、落盤による重大災害が発生いたしまして、まことに遺憾に存ずる次第でございます。  お手元の資料によりまして、簡単に御説明をさせていただきます。  災害の起こりました炭鉱雄別炭鉱の雄別通洞坑でございます。鉱業権者は雄別炭鉱株式会社でございまして、北海道の阿寒郡阿寒町にございます。災害が起こりましたのは、昭和四十三年五月九日、五時三十五分ごろでございます。場所ば堤沢末広第四B払いでございます。罹災者は、死亡者四名、重傷者二名、計六名でございます。  災害状況でございますが、当坑は鉱山労働者約千三百三十八名をもって月産六万八百トンの出炭をいたしております。今回災害を発生いたしました第四払いは、坑口から約七千メートルの位置にある長壁式の後退払いでございまして、払い面の長さは九十メートル、傾斜は二十三度、掘っております山たけは一メートル七十九センチ、そのうち炭の部分は一メートル三十九センチでございまして、払いの支柱は水圧鉄柱、カッペを使用いたしまして、千鳥の三列柱方式でございます。採炭機械といたしましてはドラムカッターを使用いたしておりまして、一日の払い人員は八十六名で四百二十一トンを出炭いたしておりまます。災害の起こりました前日の五月八日の三番方として係員三名と鉱員の方二十二名、計二十五名が配番になりまして、採炭作業を行なっておったのでございます。  災害発生前に、カッターは、とい口——とい口と申しますのは積入込み口でございますが、込み口から二十六・ニメートルの位置まで切截作業をいたして、払いをのぼってきておったのでございますが、また、この積み込み口より十五メートル付近において、鉱員の方二名が山固め作業、その支柱の補強作業をやっておったのでございます。災害直前に、そこへ係員と鉱員一名が、払いの肩、すなわち上部のほうから、深のほうにおりてきたのでございますが、このときに突然、深の下部のほうにございますステープル、すなわち機械座のところから、上部二十九・五メートルの間で幅八・六メートル、高さ一・五メートルの範囲にわたりまして崩落が発生いたしまして、カッターの切蔵作業をやっておりまました鉱員一名と散水作業をやっておりました鉱員一名と、さらに先ほどの補強作業をやっておりました鉱員二名、さらには払いを下がってきました係員一名、計五名が埋没をいたしたのでございます。係員と一緒に下がってきておりました鉱員は重傷を負ったのでございます。  埋没いたしました五名のうち、散水作業をしておりました鉱員一名は無事に救出をされたのでございますが、残りの四名は遺体として収容されたのでございます。  原因の究明でございますが、札幌鉱山保安監督局から一名の監督官並びに釧路鉱山保安監督署から署長ほか三名の監督官が現地に急行いたしまして、目下鋭意調査中でございますが、現在までわかっておる状態を申し上げますと、払いの支柱に異種鉄柱、すなわち長さの違った鉄柱を使ったという事実が判明しておりまして、これらがこの災害に直接関係があったかどうかということに重点を置きまして、目下調査をいたしておるような次第でございます。  一番右のほうの半ぴらの紙に略図がかいてございますが、これが災害の起こりました場所でございまして、上のほうが肩でございまして、二十三度の傾斜で下のほうに傾斜をしておるわけでございます。左のほうから右のほうに採炭作業をやってまいっております。斜線の部分が今回崩落をした場所でございまして、かけじるしが罹災者の位置でございます。マル印をつけた二名の方以外の四名の方が死亡をいたしたというようなことでございます。  以上簡単でございますが、災害の御報告とさせていただきます。
  53. 堂森芳夫

    堂森委員長 これにて、政府の報告は終わりました。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十七分散会