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佐藤参考人 ただいま御指名を受けました私、
全国炭鉱職員労働組合協議会の
議長をいたしております
佐藤でございます。
諸
先生には日ごろから
石炭産業安定のために種々御尽力を賜わっておりますが、
組合員並びにその家族にかわりまして心から
感謝申し上げる次第でございます。
ただいまから
全国の
炭鉱職員
組合を
代表いたしまして、炭職協の
意見を申し述べさせていただきますが、ただいま炭労並びに全
炭鉱の方から説明がありましたので、あるいは重複する点があろうとは思いますが、この点御了解いただきたいと思います。それから炭労並びに全
炭鉱につきましては、国有あるいは国管という形ではっきり
方針がきまっておりますけれ
ども、私
たちはまだ
体制問題についてもう一歩検討せねばならぬ段階にございますので、少し具体的な
内容に触れて私
たちの
考えを説明させていただきたいと存ずる次第でございます。
内容につきましては、最初いわゆる
抜本策が
実施されてから半年もたたずして再検討を余儀なくされたという経過についてかいつまんで申し上げ、その次に、これからの
石炭対策についての私
どもの
考え方を述べさせていただきまして、三番目には
体制整備に関する問題点、四番目には当面する私
たちの
考えている点でございますが、このお願い、こういう順序で申し上げたいと思います。
最初に申し上げたいのは、
昭和四十一年七月二十五日
石炭鉱業審議会でいわゆる本格答申を
決定したわけでございますが、このときに、炭職協としては答申案に反対であるという意思表示をいたしたわけでございますが、私
どもの
意見はいれられずに原案のまま答申されたわけでございます。私
どもが反対した理由の要点を申し述べますと、第一点としては、
石炭の
位置づけに関してであります。第二点としては収支
改善策が不十分であるという点でございました。三つ目の理由としては、
実施時期がおくれたために、収支並びに資金の両面に狂いが生ずるという点でございました。このような点を指摘いたしまして、不十分な
対策では一歩誤ると収拾しがたい混乱と際限のない縮小
生産を惹起することが予想される、したがって、本答申をもって抜本的安定策とは認められないと
主張したのでございます。
その後、私
どもは、
昭和四十二年度
予算編成にあたりまして、ビルド
対策費やあるいは
需要確保対策費を充実せしめるべく要請行動などを行ない、
政府に対する御理解を得るようにつとめたわけでございます。しかしながら、通産省の要求いたしました七百九億円に対しまして
決定予算は五百二十一億円で、答申を基調にした
石炭産業再建のための
予算措置は約三〇%削減されてしまったわけでございます。そして時期おくれで、しかも
内容不十分な
石炭政策が
抜本策と呼ばれて四十二年度から
実施に移されたわけでございます。また、この
政策の
一つの柱でありますところの一千億円の
異常債務の
肩がわりにつきましては、四十二年八月に
再建整備
計画の審査を終わりまして、同年九月末第一回目の交付がなされたわけでございます。しかしこの
再建整備
計画は、平たく言いますならば、
再建できるという資料の作成を示唆した
政府、また
再建できるという資料を提出しなければ
肩がわりを受けられないということから無理を承知でつくった
会社、こういうことから生まれたのが当時の
再建整備
計画の実態ではなかったかというふうに私
どもは
考えております。私
どもは、このような
抜本策と四十二年度の
予算措置の不十分さを知りながらも、
企業の中核体として
会社再建のために懸命の
努力を払ったのでございます。卒直に申し上げまして、私
たちとしては、これらの
政策の不十分さを知っておりましたから、将来の展望に大きな不安を抱いておりましたが、それだけに四十三年度の
予算につきましては、将来の展望を明らかにし得る
予算の
内容であることを願いまして運動を進めたわけでございます。しかし残念ながらこれにつきましても、先ほど成立した
予算の
内容は、絶対額において若干の前進を示したものの、きわめて不十分な
内容に過ぎなかったのでございます。これではとうてい
石炭産業の将来の明るい展望を得ることは不可能である、このように私
たちは判断いたしまして、
石炭政策を早急に実現しなければならないというふうに
考えておるゆえんなのでございます。
以上、これまでの
石炭政策の経過にかんがみまして若干問題点を指摘したのでございますが、次に二番目の問題の
石炭政策はいかにあるべきかについて申し述べたいと思います。
私
どもはここで、
石炭が
一つの
産業として生きていく上に必要な三つの条件というものについて申し上げたいと思いますが、要すれば、この三つの条件を満たす
政策を
確立していただきたいということなのでございます。
その
一つは、
石炭の
出炭量が
一つの
産業として呼ばれるのにふさわしいものであり、それに見合う
需要が
確保されるということが必要なのであります。そのことを私
どもの
主張に端的に結びつけて言いますならば、
需要、供給の両面におきまして五千万トン
体制を
確立していただきたいということでございます。私
どもはいわゆる縮小均衡なる俗論に反対をいたしておりますが、縮小という
意味に対する
労働者の本能的な抵抗感、ただこういうことばかりでなく、総倒れ的な現象を伴って縮小に次ぐ縮小をなされたら、
産業継続の条件が否定されて、
石炭が
一つの
産業として生き延びていく道を失うのじゃないか、このようなことをおそれているからでございます。
次に、
石炭が原価以上の価格で
販売されるということが
石炭産業の存続の上で二番目の問題点でございます。このことを平たく言いますならば、たとえば
石炭が一
トン当たり五千円で掘られましたならば、これを六千円で売れるようにしてもらいたいということなのでございます。
ちなみに通産省の資料によりますと、大手十六社の
昭和四十二年度実績見込みでございますが、自産炭総費用が
トン当たり四千五百二十円でございますけれ
ども、
山元手取りは
トン当たり三千七百九十四円、したがいまして、
トン当たりで実に七百二十六円の赤字になっております。非常に単純なものの言い方でございますが、これは
基本的な命題の
一つでございまして、
石炭に対する価格
政策を根本的に再検討をお願いしたいということなのでございます。
日本の
石炭政策を顧みますと、
石炭の
販売価格を
昭和三十八年度までに千二百円引き下げるという外国にも例のない過酷なものでございましたのは御承知のとおりでございますが、その後、
昭和四十年度に若干の修正はございました。しかし諸物価の高騰にもかかわらず炭価は依然として低く据え置かれているのは事実でございます。
次に、炭価修正に関連いたしまして
石特会計の
あり方について
一言申し上げたいと思います。今後あるべき
石炭政策の
財源措置との関連におきまして、
一つは原重油関税からする自然増収分を
石特会計に繰り入れていただきたい。これは当然なされてしかるべきであるというふうに
考えております。
二つ目は離職者
対策あるいは
産炭地域対策、
鉱害対策、これらの諸
対策費はワク外に出していただきたい。
石特会計以外の
予算でこれらのものをまかなっていただきたいということでございます。それからまた現在、
石特会計のワク内に置かれております
需要家の負担増
対策費でございますけれ
ども、これも将来は整備をする
方向で
努力をしていただきたいというふうに
考えておるのでございます。要するにビルド
対策費を集中的に拡充していただきたいということなのでございます。こうした
措置によって
石炭対策費の拡充をはかって、新しい
石炭政策の完全
実施のために必要にして十分な
財源を
確保していただきたいというふうに
考えております。
さて、
石炭存続条件の第三点でございますけれ
ども、これは先ほ
ども全
炭鉱のほうあるいは炭労で触れておりましたように、
労働力が
確保されることでございます。表現をかえて言いますと、一定水準の
労働条件が保たれること、
企業の将来展望が明らかにされること、坑内の
保安が
確保されること、こういうことが非常に重要なことでございます。魅力ある
賃金あるいは安全を保障された職場、これが
労働力の
確保、なかんずく若手の新規採用を可能にする大きな条件であろうと判断するものでございます。
職員給与水準の低さについて、その実態を若干御説明申し上げたいと思いますが、
昭和四十二年の増給後の三井、三菱、住友、北炭の職員給与の平均と、関東経協調査によります全
産業の第三・四分位とを比較いたしますと、モデル比較でございますが、大学卒の三十歳で一万八百四十五円二四%、三十五歳で二万四百八十三円三七%、このように激しい落ち込みを見せておりますし、高校卒の三十歳で一万八百九十円二七%、三十五歳で一万五千四十六円三〇%、このような激しい落ち込みを見せておるのであります。
一方
炭鉱における
保安の
確保につきましては、私
たち多くの技術職員を擁します炭職協としては重大な関心を持っておるのでございますけれ
ども、この
保安確保の
対策を含めまして、
炭鉱において
労働力を
確保するということはいまや高度の政治力を必要とする問題である、このように
考えております。
いろいろ申し上げましたが、以上の三点が
石炭産業の存続を可能とする上に必要な
基本的条件というふうに
考えております。
いま一度繰り返して申し上げますと、
一つは
石炭が
一つの
産業として生きていけるだけの
生産量と
需要量の
確保でございます。二つ目は
石炭の価格を適正に設定することであります。その三つ目は
労働力が
確保されることでございます。
ところで、申し上げましたこの三本の柱というものはむずかしい理屈ではなくあたりまえのことでございますけれ
ども、ここで
需要家側に立って
考えてみますと、国産の
石炭を使う
需要家側としてはエネルギー資源を使う
立場としておそらく次の三点を
主張されると思います。
その
一つは海外エネルギー資源よりも安いものであること、もう
一つは供給に安定性のあること、もう
一つはエネルギー選択は自由であること、この三つであると思います。どのエネルギー資源を使うかにつきましては、値段や供給の安定性を見きわめてよいではないか。これが自由主義経済のたてまえであろうと思います。こうした
需要家側の
主張は私
どもの
主張でございます。
先ほど述べました
石炭の
生産量と
需要量を最大限に
確保してほしい、炭の値段は是正してほしいという
立場とは相いれないものがあることは明らかでございます。この点、政治力によって
石炭を使うようにし、買い取らしてもらいたいというのが私
どもの
主張でございます。また、これが
政府に対する要求でございますし、諸
先生方に対するお願いでもあるわけでございます。
ことばが非常に乱暴になって恐縮なんでございますが、
政府なり
先生方は鉄鋼や電力などの日の当たる
産業の当事者に向かってもっと声を大にして、私
たちが望む
方向に政治力を発揮していただきたい、このように
考える次第でございます。
国産のエネルギー資源を保有するということは、世に大国あるいは一流国家と言われる条件の
一つになっているのではないかというように
考えますし、また
国内資源というとりでをなくして、無防備な
状態になったとしたら、
国民経済に与える影響もまた大きいものと
考える次第でございます。このような重要な事柄につきまして
関係各位の大乗的な御理解を得たい、かように
考えております。
さて、ここで私
どもは
責任を痛感する問題が
一つございます。それは端的に言って
出炭の問題でございます。
先ほど申しましたように、価格と選択の自由の二面におきましては、
石炭政策の擁護や、あるいはいわゆるセキュリティーなどの
立場から
石炭への
協力を願うということになりますが、いかに自由主義経済法則の適用が困難になった
石炭といいましても、安定した供給力を身につけるということば必要でございます。この供給
責任の完遂
体制を
樹立することは、前に述べました
石炭の
位置づけの
確立という課題との関連におきましてもぜひとも必要なことなんでございます。私
どもといたしましては、
出炭の
確保には今後とも懸命の
努力を続けてまいる所存でございますけれ
ども、その達成のためにはどうしても
政策のてこ入れが必要でございます。供給の安定性が
確保できる
体制、これを政治の力によって
確保していただきたい、
樹立していただきたいということなのでございます。
供給の安定性を
強化する方法としては、安定度の高い維持
炭鉱に対して国の援助を画期的に充実していただきたいということが必要でございますが、一方におきまして
閉山費用を十分な額まで拡大さしていくということも必要だと
考えます。
ただし、このことにつきましては、
石炭産業の体質を
強化させ、同時に供給の安定性を高めるための手段として
組合が納得したときということでございますので、念のために申し添えておきたいと思います。
以上で
石炭の
対策についての私
たちの
政策についての
考え方を述べましたが、次に
石炭鉱業の
体制に関連する問題について申し上げたいと思います。
前に申し上げましたように、新しい
石炭政策は
産業存続の条件を満たすものでなければならないと申しましたが、この三本の柱は、
産業の
体制が国有あるいは国営として与えられようとも、あるいは
私企業の原理を生かされた形で与えられようとも、すなわち
石炭の
体制はどうあろうとも、これだけは
確保していかなければならない必要条件であり、
体制の問題につきましては、目的を達成するための方法も
産業存続の条件を
確立するための手段である、このように私
どもは理解しております。
石炭鉱業の
体制整備の
あり方は、相当幅広い検討を必要とするものであり、冒頭に申し上げましたように炭職協としても目下鋭意検討の上結論を見出したいと
考えておりますが、現段階としてはここで
植村構想に触れて、この
構想に対する炭職協の見解を申し述べることによって、
石炭鉱業の
体制についての
方向性を
考えてみたいと存じます。
植村構想それ自体が非公開なものでございますけれ
ども、私
どもはこの
構想というものを非常に重視しております。したがって、これに批判を加えることは失礼なことと存じますが、これについてはまずもって御了承願うことにいたしまして、あえて
意見を述べさしていただきたいと思います。
植村構想における問題点と思われることは、まず第一に
石炭の撤退策であるかのような姿勢でございます。
構想は、
スクラップの
強化ということが全面に打ち出されている感じで、そのため、あたかも
石炭の撤退策であるかのような印象を人々に抱かせがちでございます。
スクラップはあくまでも
石炭鉱業の体質
強化、
産業維持のためにするものであって、手段たるべき
スクラップが
政策の目的であるかのように扱われることは、私
どもとしては困るのでございます。
第二点は、
石炭の存続条件が明らかでないという点でございます。
石炭の
位置づけや
需要構造の
あり方などのビルド
政策が不明確で、しかも撤退姿勢が強い、これでは問題がございます。
第三点といたしましては、多角
経営によって
企業の存続をはかる道が閉ざされようとしているということでございます。
企業存続の道を
石炭以外のほかの事業に求めようとすることは、一種の自衛行為であると私
どもは
考えます。この点をよく理解していただけないということは、私
どもとして非常に残念なことでございます。一般に
石炭企業にとって、
石炭に関する事業こそ何といってもその
企業が生成していく母体でありますから、これを新旧分離という手段によってほかに持っていかれたなら、現在の
企業に大きな空洞ができてしまいますので、雇用の発展的転換を求めていこうとするものにとっては耐えられないことなのでございます。
四番目は、
退職金や社内預金などの保障
措置が明らかでない点でございます。もしも金融機関に対する
肩がわりのみが保障されて、それ以外の負債に対する保障には具体的な裏づけがないとしたらゆゆしき問題だと思います。その成り行き次第によっては、相当な深刻な社会問題に発展しかねない、このように
考えます。
第五点は、
石炭企業の
経営の姿勢についてでございますけれ
ども、
石炭企業にとっては積年の命題であります
保安の
確保、
流通機構、
販売機構の抜本的な合理化、職制並びに
管理機構の簡素化、このようなことで
石炭鉱業の効率を極限まで高めるための
近代化、効率化の方途について、もっと積極的な示唆がほしいところでございます。
以上、
植村構想につきまして炭職協の見解を申し述べましたが、これによって私
たちの指向する
方向性についてほぼ御賢察いただけたと存じますが、資本の所有形態はともあれ、
石炭企業の機構はこの際
徹底的に
改革されるべきであると
考えます。
すなわち、まず第一に、
石炭企業は焦眉の急としてその職制並びに
管理機構を
徹底的に簡素化して
管理人口の縮小をはかり、
経営の効率を高めるための荒療治を断行すべきであると
考えます。
第二点としては、
石炭鉱業は国の強力な指導
体制のもとに、
流通機構、
販売機構の抜本的な合理化並びに
鉱区の
調整、機械化の
推進など、
生産、
販売、流通などのあらゆる分野におきまして画期的な
改革を行なって、長期の存続
体制を
確立すべきであると
考える次第でございます。
以上がいわゆる
体制整備に関連する炭職協としての
意見でありますけれ
ども、もう少し検討が進みましたなら、新
石炭政策という形で炭職協の具体的な
提案ができるものと信じております。
いろいろ
意見を申し述べてまいりましたが、今後の
石炭政策を検討いたします過程においては、あるいは予期し得ない問題に逢着すると思われますが、諸
先生方の御指導を賜わりましてこの難局を打開していきたいと存ずる次第でございます。
つきましては、数多く存します課題の中から、当面身近にございます切実な問題について二、三申し上げまして、私の発言を終わることといたしたいと思います。
その
一つは、職員層の雇用問題についてでございます。職員の人員縮小が現実のものとなりました場合には、
管理職的な、つまりホワイトカラーであることからする特性を考慮に入れていただいて、再雇用の場を広く
確保し、その
対策に万全を期していただきたいのでございます。
いま
一つは、
石炭鉱業の多角化の道を閉ざさないでもらいたいということなのでございます。国の援護によりまして存命することのできる
石炭鉱業でありますから、みずからの姿勢を正し、国庫から支弁される援護費の使い方にしても、はっきり整理し、必要な法の
規制に従うことはもちろんでありますが、ただ、
石炭が有限資源であるという特性にかんがみまして、
石炭鉱業が多角化によって
企業の体質を
強化して、そこに働く者の
生活の基盤を守ろうとする、このことすらもできなくなることのないように特に慎重な御配慮と御理解をいただきたいのでございます。逆説的な言い方になるかもしれませんが、このことは、
石炭をできるだけ多く、かつ長期間にわたって
確保するためにも多角化ということの裏づけが必要であるということでございます。
三つ目としては、
退職金の
支払いや社内預金に対しての保障
措置を早急に明らかにしていただきたいということであります。いかなる単位であっても、不幸にして進退を決さなければならない
炭鉱が出た場合には、労働の対価であります、汗の結晶である
退職金あるいは社内預金につきまして、その完全弁済をしていただきたい、このような
措置をひとつお願いしたいのでございます。
最後にお願いしておきたいのは、つなぎ融資の問題でございますが、今日のような
状態の中でもし
賃金などの遅欠配でも起こりましたらたいへんな問題でございますから、資金の
確保につきましては特段の御配慮をお願い申したいわけでございます。
非常に長くなりましたけれ
ども、以上で私の
意見の開陳を終わらしていただきますが、表現のまずい点あるいは不十分な点につきましては、御質問によってお答え申し上げたいと存じます。御清聴どうもありがとうございました。(
拍手)