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1968-05-24 第58回国会 衆議院 商工委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月二十四日(金曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 小峯 柳多君    理事 天野 公義君 理事 宇野 宗佑君    理事 海部 俊樹君 理事 鴨田 宗一君    理事 中村 重光君 理事 堀  昌雄君       内田 常雄君    岡本  茂君       木野 晴夫君   小宮山重四郎君       坂本三十次君    櫻内 義雄君       始関 伊平君    塩谷 一夫君       島村 一郎君    田中 六助君       武藤 嘉文君    岡田 利春君       佐野  進君    多賀谷真稔君       千葉 佳男君    中谷 鉄也君       古川 喜一君    塚本 三郎君       吉田 泰造君    近江巳記夫君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    柿沼幸一郎君         通商産業政務次         官       藤井 勝志君         通商産業大臣官         房長      大慈彌嘉久君         通商産業省重工 高島 節男君         業局長  委員外出席者         参  考  人         (八幡製鉄株式         会社社長)   稻山 嘉寛君         参  考  人         (富士製鉄株式         会社社長)   永野 重雄君         参  考  人         (川崎製鉄株式         会社社長)   藤本 一郎君         参  考  人         (住友金属工業         株式会社社長) 日向 方斉君         専  門  員 椎野 幸雄君     ————————————— 五月二十二日  委員佐野進君及び伊藤惣助丸君辞任につき、そ  の補欠として平岡忠次郎君及び小川新一郎君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員平岡忠次郎辞任につき、その補欠として  佐野進君が議長指名委員に選任された。 同月二十四日  委員木野晴夫君、三宅正一君及び小川新一郎君  辞任につき、その補欠として内藤隆君、戸叶里  子君及び岡本富夫君が議長指名委員に選任  された。 同日  委員内藤隆君及び戸叶里子辞任につき、その  補欠として木野晴夫君及び三宅正一君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 五月二十一日  テレビ受信機修理技術者資格制度法制化に関  する請願愛知揆一君紹介)(第六八六七号)  川口青木町の小型自動車競争場騒音防止に  関する請願畑和紹介)(第六九〇〇号)  北海道地下資源開発株式会社労働者処遇に  関する請願猪俣浩三紹介)(第七〇二九  号)  同(大出俊紹介)(第七〇三〇号)  同(木原津與志君紹介)(第七〇三一号)  同(河野密紹介)(第七〇三二号)  同(松前重義紹介)(第七〇三三号)  同(山本政弘紹介)(第七〇三四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  通商産業基本施策に関する件(製鉄企業の構  造改善等の問題) 請 願   一 中小企業に対する金融施策等改善に関     する請願小川平二紹介)(第二四     号)   二 同(吉川久衛紹介)(第二五号)   三 同(羽田武嗣郎紹介)(第二六号)   四 同(林百郎君紹介)(第二七号)   五 同(小坂善太郎紹介)(第三〇六号)   六 公営による水力発電事業の推進に関する     請願奥野誠亮紹介)(第三八〇号)   七 中小企業に対する金融施策等改善に関     する請願井出一太郎紹介)(第三九     二号)   八 同(平等文成紹介)(第三九三号)   九 同(原茂紹介)(第四四五号)  一〇 同(下平正一紹介)(第七三九号)  一一 化粧品再販契約制度に関する請願(山     下元利君紹介)(第二九九三号)  一二 同(加藤常太郎君外一名紹介)(第二九     九四号)  一三 同(野呂恭一君外一名紹介)(第二九九     五号)  一四 同(大平正芳君外一名紹介)(第三〇一     〇号)  一五 同(菅波茂紹介)(第三〇一一号)  一六 同(吉川久衛紹介)(第三〇四七号)  一七 同(砂田重民紹介)(第三〇四八号)  一八 同(進藤一馬紹介)(第三〇四九号)  一九 同(中川一郎君外一名紹介)(第三〇五     〇号)  二〇 同(粟山秀紹介)(第三〇五一号)  二一 同(上村千一郎紹介)(第三一二三     号)  二二 同(砂田重民紹介)(第三一二四号)  二三 同(天野光晴君外一名紹介)(第三二〇     九号)  二四 同(海部俊樹紹介)(第三二一〇号)  二五 同(中尾栄一紹介)(第三二一一号)  二六 同(中村時雄紹介)(第三二一二号)  二七 同(古内広雄紹介)(第三二一三号)  二八 同(湊徹郎紹介)(第三二一四号)  二九 同(大久保武雄紹介)(第三二六四     号)  三〇 同(八田貞義紹介)(第三二六五号)  三一 同(古屋亨紹介)(第三二六六号)  三二 同(秋田大助紹介)(第三三二九号)  三三 同(上村千一郎紹介)(第三三三〇     号)  三四 同(辻寛一紹介)(第三三三一号)  三五 同(神田博紹介)(第三三六四号)  三六 同(田中榮一紹介)(第三三六五号)  三七 同(中川俊思君紹介)(第三三六六号)  三八 同(植木庚子郎君紹介)(第三四五九     号)  三九 同(川野芳滿紹介)(第三四六〇号)  四〇 同(黒金泰美紹介)(第三四六一号)  四一 同(高橋清一郎紹介)(第三四六二     号)  四二 同(床次徳二紹介)(第三四六三号)  四三 同(西岡武夫紹介)(第三四六四号)  四四 同(早川崇紹介)(第三四六五号)  四五 同(麻生良方紹介)(第三六八九号)  四六 同(河野洋平紹介)(第三六九〇号)  四七 同(古井喜貴君紹介)(第三六九一号)  四八 盲人世帯電気料金低減に関する請願     (小峯柳多君紹介)(第三四六六号)  四九 北海道地下資源開発株式会社労働者の     処遇に関する請願川上貫一紹介)(     第三五〇六号)  五〇 同(田代文久紹介)(第三五〇七号)  五一 同(谷口善太郎紹介)(第三五〇八     号)  五二 同外一件(林百郎君紹介)(第三五〇九     号)  五三 同(松本善明紹介)(第三五一〇号)  五四 化粧品再販契約制度に関する請願(二     階堂進紹介)(第三七七二号)  五五 北海道地下資源開発株式会社労働者の     処遇に関する請願淡谷悠藏紹介)(     第四〇一六号)  五六 同(加藤勘十君紹介)(第四〇一七号)  五七 同(川村継義紹介)(第四〇一八号)  五八 同(久保田鶴松紹介)(第四〇一九     号)  五九 同(河野密紹介)(第四〇二〇号)  六〇 同(佐藤觀次郎紹介)(第四〇二一     号)  六一 同(島本虎三紹介)(第四〇二二号)  六二 同(中井徳次郎紹介)(第四〇二三     号)  六三 同(中嶋英夫紹介)(第四〇二四号)  六四 同(中村重光紹介)(第四〇二五号)  六五 同(芳賀貢紹介)(第四〇二六号)  六六 同(長谷川正三紹介)(第四〇二七     号)  六七 同(松前重義紹介)(第四〇二八号)  六八 同(森義視紹介)(第四〇二九号)  六九 同(柳田秀一紹介)(第四〇三〇号)  七〇 同(山本弥之助紹介)(第四〇三一     号)  七一 同(安井吉典紹介)(第四一二三号)  七二 化粧品再販契約制度に関する請願(谷     口善太郎紹介)(第四〇三二号)  七三 同(小川半次紹介)(第四〇三三号)  七四 同(大村襄治紹介)(第四〇五六号)  七五 同外一件(亀山孝一紹介)(第四〇八     四号)  七六 同(細田吉藏紹介)(第四〇八五号)  七七 同(愛知揆一君紹介)(第四一二〇号)  七八 韓国しぼり帯揚製品輸入禁止に関する     請願小川半次紹介)(第四一二二     号)  七九 化粧品再販契約制度に関する請願(愛     知揆一君紹介)(第四一五五号)  八〇 同(山下榮二紹介)(第四二四三号)  八一 同外一件(愛知揆一君紹介)(第四三〇     八号)  八二 北海道地下資源開発株式会社労働者の     処遇に関する請願石橋政嗣君紹介)(     第四一六八号)  八三 同(岡田利春紹介)(第四一六九号)  八四 同(木原実紹介)(第四一七〇号)  八五 同(田原春次紹介)(第四一七一号)  八六 同(中井徳次郎紹介)(第四一七二     号)  八七 同(華山親義紹介)(第四一七三号)  八八 同(帆足計紹介)(第四一七四号)  八九 同(板川正吾紹介)(第四二四四号)  九〇 同(小川三男紹介)(第四二四五号)  九一 同(大柴滋夫紹介)(第四二四六号)  九二 同(勝澤芳雄紹介)(第四二四七号)  九三 同(神近市子紹介)(第四二四八号)  九四 同(川村継義紹介)(第四二四九号)  九五 同(阪上安太郎紹介)(第四二五〇     号)  九六 同(山本幸一紹介)(第四二五一号)  九七 同(石田宥全君紹介)(第四三〇九号)  九八 同(岡本隆一紹介)(第四三一〇号)  九九 同(北山愛郎紹介)(第四三一一号) 一〇〇 同(島上善五郎紹介)(第四三一二     号) 一〇一 同(多賀谷真稔紹介)(第四三一三     号) 一〇二 同(武藤山治紹介)(第四三一四号) 一〇三 同(山花秀雄紹介)(第四三一五号) 一〇四 同(細谷治嘉紹介)(第四三五一号) 一〇五 同(永井勝次郎紹介)(第四四〇四     号) 一〇六 同(山口鶴男紹介)(第四四〇五号) 一〇七 同(横山利秋紹介)(第四四〇六号) 一〇八 中小企業振興事業団金融施策強化改善     に関する請願井出一太郎紹介)(第     四四四五号) 一〇九 同(小川平二紹介)(第四四四六号) 一一〇 同(小沢貞孝紹介)(第四四四七号) 一一一 同(吉川久衛紹介)(第四四四八号) 一一二 同(小坂善太郎紹介)(第四四四九     号) 一一三 同(下平正一紹介)(第四四五〇号) 一一四 同(中澤茂一紹介)(第四四五一号) 一一五 同(羽田武嗣郎紹介)(第四四五二     号) 一一六 同(林百郎君紹介)(第四四五三号) 一一七 同(原茂紹介)(第四四五四号) 一一八 同(平等文成紹介)(第四四五五号) 一一九 同(増田甲子七君紹介)(第四九七九     号) 一二〇 電灯線引込口避雷設備法制化に関す     る請願大野市郎紹介)(第五一一三     号) 一二一 北海道地下資源開発株式会社労働者の     処遇に関する請願安宅常彦紹介)(     第五一四九号) 一二二 同外九件(阿部助哉君紹介)(第五一五     〇号) 一二三 同外九件(赤路友藏紹介)(第五一五     一号) 一二四 同(淡谷悠藏紹介)(第五一五二号) 一二五 同(井岡大治紹介)(第五一五三号) 一二六 同(井手以誠君紹介)(第五一五四号) 一二七 同(井上普方紹介)(第五一五五号) 一二八 同(伊賀定盛紹介)(第五一五六号) 一二九 同外一件(石田宥全君紹介)(第五一五     七号) 一三〇 同(石野久男紹介)(第五一五八号) 一三一 同(大出俊紹介)(第五一五九号) 一三二 同(大柴滋夫紹介)(第五一六〇号) 一三三 同外九件(太田一夫紹介)(第五一六     一号) 一三四 同外九件(佐野進紹介)(第五一六二     号) 一三五 同外九件(多賀谷真稔紹介)(第五一     六三号) 一三六 同(楯兼次郎君紹介)(第五一六四号) 一三七 同外五件(中村重光紹介)(第五一六     五号) 一三八 同外九件(永井勝次郎紹介)(第五一     六六号) 一三九 同(山本政弘紹介)(第五一六七号) 一四〇 同(井上普方紹介)(第五二五三号) 一四一 同(石川次夫紹介)(第五二五四号) 一四二 同(石橋政嗣君紹介)(第五二五五号) 一四三 同外九件(江田三郎紹介)(第五二五     六号) 一四四 同外八件(枝村要作紹介)(第五二五     七号) 一四五 同(小川三男紹介)(第五二五八号) 一四六 同(千葉佳男紹介)(第五二五九号) 一四七 同(堀昌雄紹介)(第五二六〇号) 一四八 同外八件(稻村隆一君紹介)(第五三〇     五号) 一四九 同(板川正吾紹介)(第五三〇六号) 一五〇 同(岡田利春紹介)(第五三〇七号) 一五一 同外一件(山本政弘紹介)(第五四〇     七号) 一五二 川内市に原子力発電所建設に関する請願     (池田清志紹介)(第五四一五号) 一五三 北海道地下資源開発株式会社労働者の     処遇に関する請願外九件(中谷鉄也君紹     介)(第五四七一号) 一五四 同(井上泉紹介)(第五六〇四号) 一五五 テレビ受信機修理技術者資格制度法制     化に関する請願愛知揆一君紹介)(第     六八六七号) 一五六 川口青木町の小型自動車競走場騒音     防止に関する請願畑和紹介)(第六     九〇〇号) 一五七 北海道地下資源開発株式会社労働者の     処遇に関する請願猪俣浩三紹介)(     第七〇二九号) 一五八 同(大出俊紹介)(第七〇三〇号) 一五九 同(木原津與志君紹介)(第七〇三一     号) 一六〇 同(河野密紹介)(第七〇三二号) 一六一 同(松前重義紹介)(第七〇三三号) 一六二 同(山本政弘紹介)(第七〇三四号)      ————◇—————
  2. 小峯柳多

    小峯委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件について調査を進めます。  本日は、製鉄企業構造改善等の問題について、参考人から意見を聴取することになっておりますが、午前の参考人として、八幡製鉄株式会社社長稻山嘉寛君、富士製鉄株式会社社長永野重雄君が出席されております。なお、正午からの参考人として、川崎製鉄株式会社社長藤本一郎君、住友金属工業株式会社社長日向方斉君に御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には御多用の中を本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本日は、製鉄企業構造改善等の問題について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承り、もって本委員会調査参考に資したいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。  なお、御意見開陳は、おおむね一人十分程度におおさめくださいますようお願い申し上げます。御意見開陳あと、各委員からの質疑がありますので、これも御了承願いたいと存じます。  それでは稻山参考人にお願い申し上げます。稻山参考人
  3. 稻山嘉寛

    稻山参考人 鉄鋼業につきましては、日本経済発展並びに重要産業発展いたしますにつれまして、しあわせに非常な発展を遂げておることは皆さま御存じのとおりでございまして、戦前七百万トンの総生産にとどまったわけでございますが、その後昭和二十七年には、戦前の七百万トンの生産に復帰いたしまたが、その後わずか十五年間にいたしまして、今日六千三百万トン以上の生産をあげておるわけでございます。米ソに次ぎまして、はるかにドイツを凌駕いたしまして、第三位の製鉄国に相なったわけでございます。もちろん鉄が第三位になったわけでございますので、工業国家といたしましても、また世界第三位であることは、皆さま御存じのとおりでございます。幸いにいたしまして欧米より盛んに新式の設備輸入いたしまして、そのためにただいまではいかなる製鉄国家にも劣らないという設備を備えることができました。したがって品質もまことに優良でございます。また幸いにいたしまして、資源のない日本でございまするが、原料を海外に仰ぐことができますのみならず、非常な技術進歩によりまして、船舶が大型化するというようなことから、立地条件のいいことと相まちまして、なまじ原料日本にあるよりはさらに優良な鉱石を多量に安定的に入手することができますために、コストが非常に安くなっております。コストの点につきましてはもう現在においては諸外国に劣るところない、かように考えております。したがいまして、戦前は予想だもいたしませんでした鉄鋼輸出が始められまして、わずか二十年の今日、世界一の鉄鋼輸出国になっておるわけでございまして、一千万トンの鋼材を輸出するようになっております。ドイツもほぼ一千万トン輸出はいたしておりますが、第三国には五百万トン、あとEEC六カ国の中の輸出でございまして、したがってまたこれに見合うEEC諸国からの輸入があるわけでございます。したがいまして、実質的の輸出の量からいきますれば、もうはるかに世界一であることは間違いないわけでございます。したがいまして、昨年度は上半期におきましていささか国内の市況が強かった、そのために輸出を控えろというようないろいろな行政指導もございまして、そのために上半期輸出がふるいませんでございましたが、下半期におきましてはこれを回復いたしまして、ほとんど年度といたしましては予定どおり輸出ができたのでございますが、大体十四億ドルばかりでございます。それに加えまして御存じのように鉄は他の輸出産業素材となるものでありますし、またそれの設備の材料ともなるものでございますが、他の産業の間接的に輸出されます素材を換算いたしますと、大体五億ドル程度に相なるわけでございます。したがいまして、これらを合計いたしますと、鉄として輸出されるものが十九億ドルに達したわけでございます。ただ残念ながら日本では昨年度溶鉱炉がまだ足りません。したがいまして、旺勢な需要に応ずるために銑鉄あるいはスクラップというような形で鉄源を多量に輸入しなければ需要に応ずることができなかったわけでございます。そのために輸入が十七億ドル見当に相なっておるわけでございます。従来二、三年は素材だけの輸出十分原料をペイできたのでございますが、昨年度は不幸にして、素材だけとしますと若干不足をしたわけでございます。しかし漸次溶鉱炉が完成いたしてまいります。したがいまして、今年度はこれらの輸入も半減すると思われるわけでございまして、われわれできるだけ国内溶鉱炉で、そして鉄鉱石輸入いたしまして、外貨の対策に応じていかなければならないのではないかと思うのでございます。銑鉄スクラップの形で輸入いたしますと、鉄一トンつくりますのに五十ドルは少なくとも払わなければならないのでありますが、これを溶鉱炉鉄鉱石、石炭の形で輸入いたしますならば、これは二十五ドルぐらいで済むわけでございます。  かようにいたしまして国内の伸び行く産業に幸いにして鉄を供給することができました。日本経済発展にいささか寄与できる鉄鋼業になっておるわけでございます。  しかしこの陰にはまだ非常に多くの問題が残っておると私は考えております。第一はだんだん国際競争ば激化してまいります。また技術は日に日に進歩しております。こういう国際環境あるいは技術進歩に応じますためには、われわれはまだなさねばならぬ幾多の問題をかかえておるわけでございます。私はその一番重要だと思いますものは、こういう量的質的発展の陰に、私ども鉄鋼業者といたしましての企業体と申しますか、財務内容と申しますかは、非常に貧弱なものでございまして、全く蓄積がないと申し上げて差しつかえないと思うのでございます。これはどういうわけであるかと言えば、需要が戦後におきまして、激増をいたしましたために、これに応ずる設備をつくっていかなければならない。七百万トンの能力から六千三百万トンの生産をあげる設備をいたしますためには、おそらく六千万トン近い設備をしていかなければならない。どう安く見ましても、一トン四万円はかかるわけでございますから、これを現在の時価に換算いたしますならば、二兆四千億というばく大な金をわれわれは投じてきたわけであるのでございます。しかるに企業は、御存じのように日本占領政策によりまして財閥は解体される、財産税は取られるということで、ドイツといささか違いまして、蓄積は全部なくなったところからこれだけの新たな需要増大に応ぜねばならない状態であったために、蓄積ができるということはなかなな困難でございます。しかも現在なお伸び行く日本でございます。  そのもう一つの半面は、遺憾ながらわれわれの重大なる責任でございますが、過当競争でございます。設備シェア競争生産シニア競争、安く売るということはけっこうでありますが、コストより安くという商業道徳が根強く存在しております。私どももその一員であることをおわびいたさねばならないわけでございます。しかしいずれにいたしましても、価格競争によってシェアを拡大しようというために利潤は非常に薄いわけでございます。ようやく配当を続けておる。しかしそれも欧米の国に比べますれば蓄積は全くないと言ってもいいくらいでございます。もしこういう蓄積がないということになりますれば、今後の外国との国際競争、ことに技術進歩ということにわれわれは多大の努力を傾注いたしまして、日進月歩の技術についていく努力をしなければならないと思うのでございます。それには何といっても企業体質が強くなければいけない。要するに、今後の国際競争企業総合力競争であろうと思うのであります。そういう意味におきまして私どもは、企業の総合的な国際競争力を強化するということが非常な急務であろうと思うのであります。  さらに、われわれいま非常に問題にしておりますことは、企業設備単位が非常に大きくなってまいったことでございます。しかるに、片方におきましては、需要はもちろんますます伸びるとは思いますけれども、しかし企業単位が伸びるほど伸びないという問題があるわけでございます。その場合に、各社がまだ今日のようなシェア競争をいたしておりますれば、そこに設備のむだが起きる可能性があるわけでございます。こういうことは資金の効率的な面から言いましても、また設備が過剰になりますとアイドルタイムができるわけでございますから、それから来るコスト引き上がりということ、これがまた大きな問題であろうと思うのでございます。  またさらに、これは非常な誤解を受けるのでありますが、やはり工業国家においては、鉄の価格というものはベースなんだから、ある程度安定してないというと経済全体の土台が動いてしまう。みんなが動けばやはりあらゆる産業の計画が立たない、見込みが立たないという問題、またわれわれ企業経営者としても今後どういう方針で進んでいくかという方針が立たないという欠点があるわけでございます。したがいまして、日本経済が四年に一ぺんずつ不況が来る、不況というものは決して国民経済にとってプラスではない、マイナスであるという、かような観点から、できるだけ価格の大幅な変動を起こさずして、日本経済全体の景気変動を少なくしていく努力は、われわれとしてはしなければいけないんじゃないかと思うわけでございます。そういう意味合いにおいて、価格の問題が今後重要なわれわれの考え方であらねばならないとは思います。  以上、簡単でございますが、一応私どもが考えている問題点について御説明を申し上げました。(拍手)
  4. 小峯柳多

    小峯委員長 ありがとうございました。  次に永野参考人にお願いを申し上げます。永野参考人
  5. 永野重雄

    永野参考人 日本鉄鋼業の今日の姿は、ただいま稻山社長から御説明ございましたから繰り返しません。  私は、主として、どういう点が合同する利益か、あるいは合同することについて配慮せんならぬ問題がどういう点にあるかということに重点を置いて御説明を申し上げたいと思います。  まず、日本鉄鋼業が先ほどのように世界三位、大きくはなりましたけれども、幾多の問題で、ただ規模の大きさじゃなくて、これ以上にコストをどうして下げるかという点にまだまだ努力をせんならぬ問題がたくさん残っております。具体的に例をあげて申しますと、先ほどのように、設備をみんながばらばらでつくり合う、国の全体の需要とのバランス、ほかの経済とのバランス、こういう点について片ちんばになりますと、御承知のようにこれは主として財政、金融の面で考えておられる問題と思いますけれども日本経済にインフレーションも起こさないで、ほんとうの必要なものを経済の割合に沿っていこうとすると、ある競合——何と申しますか、設備資金に投下されるべきワクがあると考えていいかと思うのですが、そのワクを、特に鉄がお互いにせり合って取るということは、他の産業のワク、これは国民経済全体から言いましても、ある場合には道路、ある場合には橋、ある場合には港湾、あるいは他の産業方面の資金需要というものに対して競合するわけでございますから、私どもの立場から申します、社会資本に迷惑をかける場合もあるし、あるいは他の産業にいくべきものが、みんなのせり合いの結果、鉄が横取りするというかっこうになれば、いわゆるお得意さまの需要を減らして自分は拡大生産をする結果になって、しまいには自分自身がはね返りを受けて返り血をあびて困るということになりますので、これをどう調整していったほうがいいかという問題は、われわれのほうで言いますと、諸設備は、過度に要らない、経済発展に即応して、要らないものに対してつくるようになるのを注意しなければならぬという意味でございまして、決して、一定の量にして、それで過当なあるいは有利な商売、有利な利益を上げようなんというような根性は毛頭ございません。  一つの例を申し上げてみますと、十年ほど前でございましたか、世界的に鉄ブームの年がございました。日本鉄鋼も市価がトン当たり九万円とかしたような際に、私どもは、設備資金は自分でしておいたほうが将来の需要者に対して金利だけコストが安くなるから、この際に幾らかでも、トン当り五千円でも一万円でも上げたいと思ったときに、政府から、低物価政策の観点から、将来の需要者の問題を考えることはもちろんよくわかるけれども、目先低物価政策に協力してくれという要請がございまして、私どものやっている仕事が、先ほども話が出ましたが、いわゆる基幹産業、各産業に共通な需要品であるという点を考えまして、その当時市価が九万円も十万円もしている際に五万円で出した。ただ、その当時は、まだ今日の情勢とは違いまして、十年以上前ですから、不足している。それを七万円くらいで輸入して、そうして平均で六万円くらいで売ったような例がございます。この一例でわれわれの考え方を御推察いただきたいと思うのであります。  それから、先ほども話がございましたように、今日のように日本の鉄が発展をしてまいりますと、世界的に輸出する。ことに、先ほどのお話のように、約一千万トン見当のものを輸出しまして、その半分がアメリカに参っておるわけでございます。最近アメリカでいろいろな問題が起きておるのでございますが、そんな関係で、従来は技術について、パテントあるいはノーハウ等について、遠慮なく教えてくれた。これが、昔の上杉謙信、武田信玄の例ではございませんけれども、最近は思うように教えてくれない。最近もアメリカのある有力な製鉄業者が特異な技術を持っておるということを私ども技術で知りまして、それを導入交渉いたしましたら、もう教えてくれないのです。もうこれから先は、自分自身の力、日本鉄鋼業自体の力で技術を開発していく以外には方法がない。その際に、御承知と思いますけれども、何と申しましても技術の改良には非常に多額な資金と相当な日数がかかる。この間は支出だけでありまして、収入は立たない。したがって、相当な規模の分母を持ちませんと、なかなかそれがやりにくい、やれない。ばらばらになっておれば、結局そういうことができない、結局技術的におくれをとるということもわれわれは案ずるのでございます。  それから、コストにつながるもう一つの問題では、運賃の問題がなかなかばかにならないのでございます。今日、会社は別ですから、したがって経理は別ですから、私どもは北海道にも工場を持っておりますけれども、北海道でつくった製品が九州の八幡にいっておるという事実がございます。また、九州八幡の製品が北海道、東北その他の地域にいっておる実例がございます。これは原材料、機械を買うような場合には、やっぱり自分のところのものを使ってくれないかというようなことば、商売の競争が激しくなれば理の当然でございます。そんなようなこと、あるいはお得意の関係等から、非常に大きな交錯輸送をやっております。はっきりした金額は双方の事情が十分わかりませんから申し上げかねますけれども、おそらく数十億円というむだな運賃を払っておることが想定されます。  それから原材料についてでございますが、原材料も、鉄鉱石は幾らお互いに張り合っても、海外の山を開いてもらうという場合には、一緒に話し合う。これは八幡、富士だけではありませんで、他の大きな製鉄業者等も一緒になって海外の鉱山と交渉いたしまして、長期の契約をして開山してもらうわけですけれども、これなんかは、何しろ天然資源のことですから、品位そのものが、いいのもあれば悪いのもある。あるいは海岸から遠いのもあれば近いのもある。あるいは海が深いところも浅いところもある。深い海というのは、先ほども話がありましたけれども、大きな船で運ぶから運賃が安くつきます。それから距離も、インド、マレー、豪州のように比較的近いところもあれば、アフリカとかブラジルとか、そういう遠いところもある。それを要約しますと、日本着の鉄分一%当たりの鉱石の値段は全部ばらばらでございます。アメリカあたりの例ですと、たいていの工場が一種類か二種類の鉱石を使っておるのです。したがって、ストックヤードにしましても、岸壁にしましても、あるいはそれをまぜ合わすにしても貯鉱槽にしましても、簡素なもので済む。日本は、簡素にしようとしますれば、あるところは非常に有利なものばかり集まる、あるところは非常に不利なものばかり集まる。したがって、有利なものも不利なものも入りまして、高いものは高いもの、安いものは安いもの、こうばらまきますから、一つの工場で何十種類という種類の多い鉱石を配分せんならぬということになります。そこで、広いヤードを、一坪安くても数千円——最近は数千円といえば安いのですけれども、何万円もするような土地を余分に何万坪、何十万坪ととる。往来の菓子屋の店頭みたいに菓子箱を並べたようなストックヤードをつくらなければならぬ。また、貯鉱槽も同様にたくさんつくらなければならぬ、クレーンもつくらなければならぬ、またそれをまぜ合わすためのベルトコンベアその他の施設も要ります。これなんかも、原料関係で非常に不利な点でございます。これが一つの経理母体になりますと、安いものは安いものに、高いものは高いものにまぜ合わせましても、そんな不利が、トータルでは一つの経理に入るものですから、これができる。  それから技術でございますが、技術は製鉄の技術で何十、何百、あるいはもっとでしょうけれども、一つ一つのこまかな技術の総和が全体のコストにつながるものですけれども、ベターは複数でありますけれども、ベストは一つしかない。そのベストのものを、あるものは八幡が持つ、あるものは富士が持つ。おのおのお互いにこれは出しっこしませんから、そこでこれを共用して使えば、その優秀な技術の効果は倍にして使えるということにもなるのであります。  また、先ほどの例に申しました研究所なんかでも、今日数十億の金をかけまして八幡も富士も同じような研究所をつくって、同じような研究をしていたのであります。また、ぜひ来ていただきたいというような優秀な先生も、まとまっては来ませんで、ある特定な専門のりっぱな先生は八幡に行く、ある先生は富士に行く。そこで、それが両方重なった技術を出せばよりよく、もっと高くなるのがこの辺でとまっておるというような問題もございます。  これは販売経費の問題ですけれども国内においても、全国に両社とも支店網、営業所網を持っております。同様に海外にも幾つかの支店を持っております。これなんかも明らかに重複している投資でありまして、これなんかも結局はコストにつながるというような結果になるわけであります。  それと、こういう合同の場合によく問題になるのは労働問題でございますが、以前がこの両社は日本製鉄として一社であった関係上、ずっと尾を引きまして、今日でも同じ系統の労働組合でございますから、相互間の摩擦がなくてやりやすい点もございます。私は生産性本部の副会長をしておるのでございますが、生産性本部では、生産性の向上は結局は資金と労働とあるいは需要者と、そういうものがあって初めて事業がやっていけるのだから、生産性向上による利益というものはそういう方面におのおのに分けなくちゃならぬというのが、生産性本部の大きな標語になっております。今度の合同というのは、ある意味におきます生産性の向上でございます。したがって、ただいま申しましたようなもろもろの合理化による利益というものは、いま言ったような点に沿った配分をしていくべきではないか、こう考えておるのであります。  なお、よく、こんな大きな会社が合同したら競争がなくなって、結局国民にその負担が転嫁するのじゃないかということがございましたが、最初に申し上げましたように、市価が十万円もしたようなときにその半値ぐらいで、われわれはある程度以上の利潤は求めない、結局は国民が全体の需要者であるこの鉄なものですから、そちらへサービスするという精神をおくみ取りいただいたと思いますけれども、今後はやはりその点と、並びに今後両社が大きくなったと申しましても三十数%、そしてその他の四社もなかなか力強く、午後もお聞きになるそうですけれども、そこで御意見をお聞き願えればわかると思いますが、私どもの考えますのでは、両社が寄っても競争はなかなかなくならない、激しい競争が相変わらず続くことは覚悟しております。しかし、だからといって、先ほど申しましたような長所がたくさんあるのに、コストが下がるのにこれをやらないという手はございませんので、こんな点について配慮いたしたい。  時間の関係もございますので、この辺で、気持ちを申し上げた次第であります。     —————————————
  6. 小峯柳多

    小峯委員長 これより質疑に入ります。田中六助君。
  7. 田中六助

    田中(六)委員 私どもの持ち時間が一人十五分というふうにきまっておりますので、せいぜいうまく質問できて四問くらい、へたすると三問で終わる可能性がございますので、答えは簡単にしてもらいたいというふうに考えております。  同僚議員もたくさんおられますし、合併のメリット、デメリットについては新聞や雑誌あるいはいま二人の参考人が述べましたようにいろいろございますので、私ばその点を省きまして、まず稻山社長のほうにお聞きしたいのですが、私も輸入課徴金の問題でちょっとアメリカに行ってまいりました。そのときちょうど稻山さんあたりと入れ違いになったわけでございますが、ニューヨークタイムズやワシントンポストを飛行機の中で読んだのに、稻山さんが、鉄鋼の対米輸出については自主規制つまり自主調整をやって、うまくコントロールするんだということを言っているのが載っておりまして、そのあとロス通商代表にお会いしたときにも、稻山さんがそういうことを言ったことが非常に問題になっておりまして、ロスさんはロスさんなりの意見を述べておりましたが、自主調整と申しましても、日本でも一昨年から輸出入取引法による輸出量規制という一つの自主調整に似たものをすでにやっておりますし、何かそういったこと以外に構想がおありであったかどうかつまりいま二人の参考人が述べましたように、一千万トン近いわが国の輸出のうち五百万トン近いのがアメリカに行くわけですから、そういう点で今後輸入制限というものをアメリカは常にねらっておる印象を受けるわけでございます。したがって、この点についてまた何か深いお考えがあるならばお答え願いたいというふうに考えています。
  8. 稻山嘉寛

    稻山参考人 ただいまの御質問、私がアメリカへ参りまして、課徴金問題もさることながら、鉄については非常に根強い輸入割り当て制限運動が鉄鋼業界また鉄鋼の労働組合を中心にいたしまして、展開をしておるわけでございまして、どうも非常に憂慮すべき状態だと思うのであります。私は、少なくともこの両三年ばどうしても米国の地盤を固く握っておらないと、日本はたいへんなことに直面するのではないか、かように考えておるわけでございます。そこで、たまたまミルズ委員長にお会いいたしましたときに、鉄鋼は非常に割り当て制限の強い運動を起こしておるんだ、われわれやはり選挙で出るんだから、自分は自由貿易論者であっても、なかなか押え切れるものではないんだということでございました。ことに鉄については、国防産業という見地からこの問題が取り上げられるようになると、もう普通の力では押えられないというお話がございました。そこで私は、そんな割り当て制限なんという、自由貿易を標榜しておられる指導国家がそういう法律でもってこれを規制するということはまことに残念なことだと思います、そういうことがあってはたいへんだから、今日すでに昨年からわれわれは自主的にアメリカ向けだけは輸出入取引法で許可を得て何百万トン以上は輸出しないということを毎年毎年決定しておるんだということをお話し申し上げた。そうしたら非常に興味深く取り上げられまして、そういうことをやっておるのか、ではそれを利用して何かうまく今後の防壁をつくるということができないのかと言うから、なかなかアメリカは独禁法がやかましいから、アメリカの業界と相談するなんということはなかなかできないじゃありませんか、というような話から国務省に連絡があられたのでございましょう。そこで私と国務省の次官補のソロモンという方といろいろお話をしたわけです。その結論は、これは自分一人でやっているわけじゃないんで、東京へ帰って、自主調整を皆さん知らないからいけないんだから、知らせるような仕組みもお約束いたしましょうということでございました。  いまアメリカで一番問題になっておりますのは、日本はどんどん設備をしている、一九七〇年には一千万トン以上になるだろう、だからたいへんだという説明をしているわけでございます。PRをしているわけです。だからそんなばかなことはしないんだ、一九七〇年になってもこのくらいなんだということを示してやれば、私は輸入割り当て制限運動が実らないんじゃないかという可能性を考えて、いまから手を打ったほうがいいんじゃないかということでいま国内をまとめておるのが実情でございます。ですから、話し合おうというのじゃない、ネゴじゃない。われわれが自主的にこれだけしかやらないんだということをアメリカの政府なり何なりみんなが知っていれば、それはアメリカの鉄鋼業者の言うのはおかしいじゃないかと言って押えられるだろうという期待をしているだけでありまして、決してそれは押えられるかどうか、そこのところはわからないのでございます。しかもわれわれは、アメリカの輸入割り当て制限になれば、いまのところ法案が出ているのは、三百五十万トンに減らされてしまうという実情であるわけでございます。そんなことではたいへんなんです。われわれはとにかく何がしかでもこの三年間輸出を増進していかなければならないのでありますから、そんなたくさんじゃないんだということを知らせることによって押えられればしあわせだ、かように考えておるわけであります。
  9. 田中六助

    田中(六)委員 少なくともこれから三年間はどうしても現状の輸出体制が必要だというお答えですが、日本重要産業であるこの鉄鋼、つまり供給は安定しても需要が不安定だという構造上の問題を内包しているこの鉄鋼問題は、アメリカ一国にこのように一千万トンのうち半分近くの輸出を依存しておるということはやはり問題だと思うのです。輸入課徴金問題で、経団連も吹っ飛んで行くし、われわれも吹っ飛んで行って、どっちかというと、私に言わせれば、醜態だと思うのですね。アメリカが輸入制限を、何かそういうものを始めようとするたびに日本から飛んで行くというようなことになると、ちょっとやはり大国とまでいかなくても、そろそろそういう意識を内外ともに持っており、しかも工業国として世界三位というような国のやる態度であるかどうかということが問題だ。食わなくちゃいかぬのだということから言えば問題ですが、この対米輸出を少しシェアを分ける、一辺倒になっておるのを、そういう構想のもとでものの考え方を進めた場合に、その可能性についてはどうでしょうか。これは両社長の御意見をお伺いしたいと思います。
  10. 稻山嘉寛

    稻山参考人 私は、輸出は多々ますます弁ずるのでありまして、アメリカのものを減らしてほかへ持っていくという考え方ではないはずだと思うのであります。私がいま両三年と言ったのは、東南アジアに需要がどんどんふえるのが、ほんとうの体制に入るのに両三年間ではなかなか急激にはふえないんじゃないか、しかし少なくとも両三年くらいたてばその可能性は十分にある。そのときには多少アメリカが伸び悩んでも、われわれの輸出獲得市場はでき上がっておるんじゃないだろうか、これも私どもの予想でございますから、ただそうありたいと思っておるわけであります。
  11. 永野重雄

    永野参考人 ただいまの御質問の、総量の約半分は、従来もそうでありますが、アメリカへ行っておる。このおもな理由は、結局は買う意思と買うお金と両方持っておるということでございますが、その他の東南アジアはじめ後進地域は、それは橋も家も道路もりっぱにしたい意欲は持っておりましても、先立つものがないということなんでございます。私は、これは今後日本の原材料等の出入りの道もまた開けると思いますけれども、同時に、先般ニューデリーでやられました国際貿易開発会議、UNCTADの結論も聞きますと、GNPの一%、すぐできるかどうか知りません、今日は〇・七くらいだそうですけれども、これが後進国に出ていけば、結局後進国では港をつくり工場をつくり、あるいは道路をつくるということになってまいりますから、あれが具現してくれば、ほしいものの上に金の裏づけもできる、そんなような期待も持っておるわけであります。
  12. 田中六助

    田中(六)委員 私さらにお聞きしたがったのは、東南アジアあるいは世界のどこら辺に、まあ後進地域でしょうが、輸出の余地があるかということもあわせて聞きたかったわけですが、それはまた私自身が調べます。  第二問といたしまして、戦後最大の幕あきということでこの合同劇が行なわれた。しかも故意か偶然か、永野社長の発言を毎日新聞それから工業新聞の二つの新聞がスクープという形で、最近のジャーナリズムのいいところか悪いところかわからぬが、これを非常にファナティックにあおったという面があって、国民も必要以上にこれを見ておるわけです。そういうムードの中で、各企業、各産業の合同を非常に刺激しておるわけですね。だからこれが将来の日本経済に、それは合同劇がいい悪いは別といたしまして、これを契機にやはりターニングポイントをつくったと思うのです。そういう点から考えるときに、ほんわかムードは別にいたしまして、それがいい悪いもいたしまして、この合同のために用意されておかなければならないものが欠けているのじゃないか。ただ表づらだけをそういうふうに持っていくという企業があるならば、これは重大な問題だと思うのです。  私のお聞きしたいのは、まあ私どもの立場としては、これをうまくするということが一つの使命でしょうが、政府の政策上あるいは国会がそういう合同メリットをさらに促進できるならば、そういうことはしなければならないと思うのです。そういう面で体質改善に役立つ政策というもの、たとえば税制面でどうするとかいうようなこともあると思うのですが、そういう点で政策上なさねばならない、なしてもらいたいというようなことがおありでしたら、お二人の社長の御意見を聞かしていただきたい。
  13. 永野重雄

    永野参考人 その点は、せっかくそういう御意向を承りましたので、合同することは、われわれはいいと思っておるからするわけです。また国の考え方にもむしろ慫慂していかれるようにもとれた面もあるものでございますから、国家の要請でもあり、またそのためにコストが下がって、問題はその下がったことによる利益をどう配分するかということがポイントだと思います。国民経済としてコストが下がることは当然利益だと思いますから、そこで、これがいいとなった場合にお願いをしたいことは、多くの場合に、合同しますと税金を取れるのです。これを別々にやっておけばそのままでやってよろしい。国のために幾らかでも国民経済に寄与ができる、いいこととわれわれは思っておるのでございますが、それに対して税金が取られるということになりますと、どうもわれわれとしては解せない面があるのでございます。こういう点について特別の御配慮を願いたいものだと思っております。
  14. 田中六助

    田中(六)委員 お二人の方を代表されたと思います。  私もあと二、三分しかないので最後にお聞きしたいのですが、この問題は非常に重要だし、それから鉄鋼生産そのものの持つ企業の性格上からいたしましても、各国は、基幹産業でございますので、国有とまでいかずとも公営にしておったり、企業集中化はどこの国にも見られておるわけです。日本でも現在御承知のように、社会党や総評は石炭の国有国営論を出しておるわけです。しかも社会党は——社会党という特定の党を出してかまわないと思いますが、石炭の国有国営論はスタートである、そのあと鉄鋼、電力、そういうものを自分たちは意識しておるのだということをはっきり公表しております。  それで、私はそういう観点から問題をひとつお聞きしたいということ、それからもう一つは、稻山社長が消費者に対する振り当ては一さっきも価格の面について稻山さんはお触れになった。このために誤解されておるようだがということは、私はそれにもつながると思うのですが、合同によったメリットでコストの引き下げということがある、そのもうけた分は、まず企業の資本蓄積やあるいは株主、そういうものに向けて、そして他の企業との競合によってもうけた価格を今度はコストダウンさせるのだというふうな表現を使っておられるのです。それがかなりの抵抗を、たとえば自動車産業あたりからも受けておるようですし、それから多くの場合誤解を生んでいると思うのです。それで国有国営論ともう一つの問題、つまりハーバード大学のガルブレース教授が言っている新産業国家ですか、利益をずっと発展させていくことは、それを消費者に必ず転換させずに経済を拡大させる要因として持っていくならば、それは国家的大きな経済的利益になるという断定をして、しかも社会主義の理論と資本主義の理論は、将来はそういう点でマッチするんだ、一致するんだという論を展開しているわけです。そういう点から、私はふと稻山さんのそういう発想法とガルブレースが言っているそういうような考え方というものが、方向としては同じ方向を向いているような気がする点があるわけです。したがってこういう二つの、まず第一に、社会党の国有国営論への方向、あるいはまたガルブレースの言うようなそういう方向、そういう点について御意見がございましたらお伺いしたいと思います。
  15. 稻山嘉寛

    稻山参考人 結局私どもは、現在の体制においては自由主義経済を基礎にしておると思うのであります。そういう意味から言いますと、やはりいい競争というものは伸ばしていかなければならない、それが国の発展なんだという考え方に立っておるだろうと思うのであります。したがいまして、いい競争を伸ばすということは、鉄については十分できると思うのでありますが、ただ石炭は違った意味から必要があるのではないかと思うのであります。これはやむを得ない状態というように私は考えております。できれば、原則としては自由競争でやらせるのが一番経済発展になるのじゃないか、かように考えます。  それから、先ほどの利益を返す返さないというのは、ここにもお書きくだすった記者の方もおられるようでありますが、うそのことをおっしゃったのじゃないので、ただほんとうのことをお伝え願わなかったと思うのであります。これは私が理屈っぽいからだと思うのでありますが、要するに私が、利潤というものはどう分配するかというお尋ねに対して、利潤というのは企業者、経営主体が取るわけだ、労務者なり、それに参加した資本家なりが利潤は取るものだ、消費者に返るのは価格として返るのだ、価格論と分配論とは違うんだということが私の頭にはあるわけでございます。しかし、結局利益として価格で返るか、利潤で返るのか何か知らないが、返ることは間違いない、こう申し上げたのでありますが、利潤と価格という、自分が経済もあまり知らないで、まことに失礼な言い分を申したわけでありますが、とにかく消費者に利益は必ず返っていくということは競争を通して間違いない、そのことは一致しておるわけでございまして、ガルブレースはきょう私拝見したのですが、確かに私と同じ考えを持っているように考えております。しかし直接お会いしませんから、まだわかりません。
  16. 永野重雄

    永野参考人 先ほどの田中委員のお話に、結局それは国有にしたらどうだ、あるいは他の産業も似た歩みを特殊な産業についてはしたらどうだというきっかけにもならぬかというような御意向のように承りましたが、私は実は何十年製鉄業、鉄屋をやっておるわけですが、終戦の直後に、物が足りない、船で輸送もできない、実際にどうするかということから、赤紙応召みたいなことで、経済安定本部の副長官に引っぱり出されたことがあるのです。その後富士を創立いたしましてこの方十八年何がし、その間の両方の経験を通じて考えますとは、あの統制時代に、当時は必要だったかもしれませんけれども、やむを得ずそうしたにしましても、一番弱りましたのは、理論的に積み重ねていきますと一つ隘路がある。人間のことですから全部の要素はつかみ切れるものではございませんけれども、一つの隘路がありますと、その隘路があるのに次の段階に移るのはおかしいじゃないかという理屈が出まして、自縄自縛のような理論で、縮小再生産になることが間々ございました。そこで、ほんとうの意味の経済の伸びというものは、個人個人が企業に責任を持って、創意とくふうを最大限に発揚していくほうが若干のプラス面、若干のマイナス面はあるにしても、トータルとしては、いまのような企業に責任を与えて、創意くふうを十分に発揮さしていくほうがいいものだ、私はこう考えておるのであります。
  17. 田中六助

    田中(六)委員 いろいろありがとうございました。まだ管理価格の問題とかいろいろございますが、これで一応終わりといたします。
  18. 小峯柳多

  19. 堀昌雄

    ○堀委員 いまお話を聞いておりまして、当事者の皆さんでございますから当然だと思うのですが、たいへん合併というのはいいことばかりで、私、永野さんが考えなければならぬ問題があるとおっしゃったので、デメリットに率直にお触れになるかと思っておりましたが、その部分もどうも聞いておりますと、あまりデメリットはないようで、この合併についてマイナスはないようなふうな感触で実は承ったわけですが、ものごとにはやはり表と裏がありますから、確かにいまお述べになりましたメリットのほうはそういうことがあり得るだろうと考えますが、デメリットの問題のところで、最後に稻山さんがお話しになりました価格と利益の関係の問題のところが、私はやはりデメリットの最大の焦点になるのじゃないか、こういう感じがいたしておるわけであります。  そこで、ちょっと具体的にお聞きいたしますけれども、今度合併をなさいますと、品種別に物を見ますと、重軌条がシェアが八六・八%、鋼矢板が九六%、これはほとんど独占とみなしていいだけの品種になるわけでございますが、こういう品種の価格決定というのは、今後は一体どういうメカニズムで行なわれることになるのか。先ほど永野さんがおっしゃった、たいへん安いので、市価は高かったけれども安くお出しになった。しかし資本主義というものは、競争がもし正しくあったならば、あまりそんなことは大体はできないのが仕組みじゃないかと私は考えておるのであります。経営者の善意などというものは、資本の仕組み、メカニズムの中では、ごく限られた範囲にしかないことであって、もし善意が通るならばそこには競争はないんだ、こう理解したいと思うのです。そういう資本主義というもののきびしさがたくさんあると思いますので、この二つの品種についての価格決定というものは、どういうメカニズムで、基準が何になるのか、それをちょっとお答えいただきたいと思います。
  20. 永野重雄

    永野参考人 先ほど実は時計を見ましたら時間がないので、デメリットのほうを詳しく申し上げる時間がなかったのですが、デメリットはおっしゃるような点ともし考えれば、これは先ほど稻山さんも言いましたように、私自身もそう確信ををいたしておりますけれども、ほかに有力な会社がございます。これが十分競争力を持っておる会社でもありますし、そこに相当激しい競争があると思います。競争の数は十の場合、七つの場合、五つの場合違うものじゃございませんで、場合によれば数が少なくても激しい競争もあるわけでございます。そこは落ちつくところへ落ちつくのじゃないか、こういうふうに思うのです。先ほどの例にあげられましたレールとかごく超大型のものについてでございますが、レールは、大体、値段のきめ方は国鉄でございます。あとはそれに準ずる。国鉄は、われわれ両社合わせたよりももっと大きな力を持っておりまして、そこで言われることでおしまいになるわけであります。向こうでコストを研究されまして、これでどうだということで出しておるのが従来からの経緯でございましたけれども、これは今後も違わない、科はそう思うのであります。もう一つの例の大型物は約六割くらいになるのじゃないかとおっしゃったのでございますが、この問題につきましても、現に最近——われわれの同業者の固有名詞をここであげるのはどうかと思いますけれども、たとえば川鉄とか住金とか鋼管とか、そういう諸工場でも計画をし、あるいは工事に着手しております。それだけでも、最近相当相場が下がっております。結局、現在ある何割というのは、ごく近いうちに当然下がる。まだ始まらぬうちから、ただいまのように相場が冷却しているという点でも御推察をいただけるのではないかと思います。
  21. 堀昌雄

    ○堀委員 いまレールと国鉄の関係をお出しになりましたが、私は、いまの粗鋼の問題のところに今後の問題の焦点がくるのではないかと思います。国鉄は、八幡、富士の供給先として、今度はまたこれがほとんど独占的な受け取り側ですから、ここでは力関係が場合によっては国鉄のほうが強いかもしれません。独占品種ですから、場合によってはどっちかわかりませんけれども。そこで、国鉄がある程度原価計算をしてきめた価格で納められる。これはしかし、どちらかというと、国鉄は御承知のように公的企業でございますから、特別に、むちゃくちゃにたたいてやるということもないと思います。公正な利潤というものを原価に上積みしたものが価格として決定をされる。これは公開される問題でございますから、当然そこには国民注視の中での価格形成、こういうことになってまいると思うのであります。私どもが、いま私的独占の問題について問題にいたしておりますのは、やはり価格と利益の関係、その価格形成がまず最大の焦点だろうと思いますが、私の感じでは、なるほどシェアが三五%ということは、そんなに六〇%も七〇%もあるわけじゃありませんけれども、ここで一つの価格がきまれば、要するに経営側としては、価格についてはできるだけそれに近いかっこうで処理をするということに私はなってまいるだろうと思う。アメリカの例がそうだと思います。アメリカは非常に強い独占禁止法がありながら、USスチールの価格にその他の価格が大体追従をしているのじゃないかというふうに私は見ておるわけでありますが、おそらく今後はそういうことになってまいるときに、皆さんのほうが考えておられる新しい企業価格形成が、問題の公共性にかんがみて、きわめてガラス張りで公的に、裏がえして言いますと現在の電気事業のように——電気事業は、御承知のように法律で定められておりまして、適正なコスト、公正な利益、こういうことでパーセンテージをきめたかっこうで、価格が定められておるわけでありますけれども、そういう形になっていくというのであるならば、私どもは弊害というものはかなり除去されるのではないか、こう考えているわけです。今後の価格形成は、これまで、高い低いがいろいろありますけれども、それでは現在のところが非常に低いかというと、品種については低いものもありますが、総資本利益率その他を拝見しておりますと、たとえば最近の四十二年の上期、いまより少し高かったわけではございますが、三十七年の下期等に比べますと、利益率等もかなり高いわけでありますから、そういう点で、一体適正な利益とは大体どのくらいを考えていらっしゃるのか、そういう点を、ちょっと明らかにしていただきたいと思います。
  22. 永野重雄

    永野参考人 適正な利益の問題でございますが、こんなことを皆さんあたりに申し上げてどうかと思いますが、両社の合同が新聞に出ましたとき、普通ならば、ただいまの御意見のように大きな力、暴力をふるって値を上げるのだということは当然収益が上がる——コストは先ほど申しましたように下がる、収益は上がるということで株価は上がるはずでございます。しかし株価は新聞にあらわれておりますように五十円払い込みどおりで、その辺、あの連中がやるのは合理的な利潤以外にむちゃはやらぬのだろうという観測が前提になっているのじゃないか、私はこう思うのであります。そしてまた、いままでの相場の結局前提は、過去いままでわれわれがとってきた行動から類推されているのではないか。この点についてはひとつそういう観点からも、ごらんを願いたいと思うのでございます。  それから、その価格をどうするか、それには何らかの方法が要るのではないか。われわれは合理的な利潤以外にむちゃをやろうという意思は——もっとも上げようと思っても競争があって上がらぬかもしれませんが、それ以上のことを毛頭考えておりません。これは国民経済に奉仕をするつもりでおりますから、われわれはそんなものはなくても、りっぱに要請にこたえる決心を持っておるものでございます。ただ皆さま方のほうでそれでも心配だからどうこうと言われるのを、われわれはいかんともできませんけれども、私どもの気持ちからいえば、御期待に沿わないようなことはしないという確信を持っております。
  23. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでもう一つ伺いたいのは、鉄は御承知のように基幹産業でございますから、他の産業に比べると公共性が非常に高いと思います。かつて八幡製鉄、富士製鉄は日本製鉄という特殊会社としてやっていらしたわけであります。お二人ともその特殊会社の一員としていらした時代があるのだと思うのでありますけれども、一体当時の特殊会社というものは、まずいものだったのでしょうか、それともあれでよかったのでしょうか。当時のお話を先にちょっと簡単に伺いたい。
  24. 永野重雄

    永野参考人 当時は今日と経済情勢あるいはもろもろの情勢がだいぶ変わっておりますから、今日からあの当時の事態を想像するということは、なかなかしにくいのでありますけれども、私どもは、当時は当時でベストを尽くした、そして当時の国家要請に沿ったつもりでおります。
  25. 堀昌雄

    ○堀委員 当時はあれはあれでよかった。今日私どもはすでにわれわれの方針を出しております。昭和四十一年でありますか、すでに出しましたけれども、将来の鉄鋼企業はひとつ公私合営のかっこうでやっていただいたほうがいいのではないか、こういう提案をしておるわけです。特にそのとき出しました中には、民間のあの設備投資競争というものはやはり鎮静化をさせてもらいたいし、資本の効率化をはかりたい。そこでしかし、どうしても高炉四本を建てなければ、完全に効率ユニットにならない、こういう問題がありますから、一本ずつを皆さんがお建てになることは、きわめて非効率でありますので、すでに認められたところだけを除いて、ひとつ公私合営の会社をつくって、それからあとはここで全部おやりをいただきたい、こういう案を出したことがあるわけです。今度の問題がここにきた場合に、私的独占禁止法の十五条との関係から見ましても、この問題をもし公正取引委員会が認めるならば、日本においては合併に関しては公取法はもうあってなきがごとき存在になるという判断を私どもはしておるわけであります。そこで、しかし皆さんの問題と紙や何かとは問題が違いまして、もしこの問題を、メリットの点というものを高く評価するならば合併が前進をしてもよろしいが、しかしデメリットの部分を除くためにひとつこの際公的な性格をより強く持っていただくならば、これはいまの設備投資でも、現在予想されておるたとえば鹿島とか水島とか福山というのは、すでに着工されておりますから、どうぞユニットまでお建てください、そのあとは新規設備は全部特殊会社でやりますということになれば、そこから先の設備競争というものはきわめて合理的に計画的な処理ができるようになります。これは何も私どもは国有国営を言っておるわけではございませんで、今後皆さんの設備投資、スクラップ・アンド・ビルドをなさるに必要な資金というものは、現在合併をなすった場合に資本金二千二百八十二億に対し、長期借り入れ金二千七百十三億ということになるわけですから、その上にさらに長期借り入れ金というよりも、国の出資等によってスクラップ・アンド・ビルドが行なわれるならば、すべての点で問題は合理的になるのじゃないか、私はこういう判断をしておるわけでございますが、そういう私どもの考え方に対してどういったお考えをお持ちか、ちょっとひとつお答えをいただきたい。
  26. 永野重雄

    永野参考人 ただいまの、別個の会社にしてそこでやったらという御意見でございますが、それに対してはいろいろな考え方がございますけれども、別の会社になりますと、最後の経理主体が変わってまいりますから、先ほど申しました交錯輸送を省くとか技術の共用とか、いろいろな点のメリットがまず発揮できない、それが一つ。
  27. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっとお待ちください、御理解が違うようですから。  私が申し上げたのは、富士と八幡を一緒にしたものをひとつ戦前のような特殊会社にしましょう、そうしてそのあとは、しかし、新規設備投資は現在きめられたもの以外は新特殊会社だけがやります、こうなれば、こっちが広がるだけですから設備競争もないし、さらにいま皆さんのおっしゃるメリットは拡大していくでしょう。しかし、公的に価格その他は規制されますから、私どもの心配はなくなる、こういうことなんで、それについてはいかがかということです。
  28. 永野重雄

    永野参考人 その点につきまして、いまの八幡、富士が合併して、ほかは競争力がないという場合には、そういう御心配はごもっともと思います。しかし、先ほど申しましたように、相当有力な会社、これは技術的にも経理的にも力を持った会社がどんどん伸びていこうという意欲を持っております。従来は意欲があり過ぎて、そのほかのみならず、われわれ両社も意欲があり過ぎて、こんなことになったのでありまして、決して、いまの競争がなくなってそのために不当な価格が形成される、いわゆる管理価格にいく、こう思わないものでございますから、そういうものがなくてもいいという感じが私はいたすのでございます。  それからもう一つは、国が資本を出してやろうということのような御意見でございますが、結局は、心がまえと経営能力と技術その他を含めまして、だれがやるかという問題に帰一するだろうと思うのでございますけれども、心がまえが悪くて、おまえたちではだめだとおっしゃられればしようがありませんけれども、やはり一番なれた者がやるのがいいということになれば、国が資本を出そうと、あるいはわれわれの会社だけの資本でやっていこうと、結局は同じ人間がやるなら心がまえ次第だと私は思いますので、われわれの主観的には、別個の会社をつくっていただく必要はなくて、われわれが御待期に沿えるようにやっていけるという自信を持っておる次第でございます。
  29. 堀昌雄

    ○堀委員 心がまえとおっしゃいますけれども、私ども過去の設備投資の情勢を見ておりまして、それだけの心がまえなら、これまでああいうことがなかったのじゃないか。稲山さんが最初に、たいへん申しわけないとおっしゃったわけですけれども、それができていないということが今日の鉄鋼の実情でございますから、私は信用しないわけです、たいへん悪いですけれども、だから、もしおっしゃるようなことがこれまでにあったのなら私ども信用しますが、これまでになくて、合併したら今度はとたんに人間が変かってしまうということにはなりません、同じ方たちが経営をなさることでございましょうから。ですから、私どもは、公的なある程度のコントロールがあってもいいではないか、しかし、そのコントロールの半面資金は国が入れてもいいではないか。なぜそう申すかと申しますと、ここでさらに借り入れ金がふえることは、そのことによって価格に転嫁されるわけですから、それらの利子は価格に転嫁されて、結局価格が高くなる。せっかくの合理化メリットが、私は、今後の設備スクラップ・アンド・ビルドのスピードによりますけれども、そうおっしゃったようにうまくいくかどうか疑問です。そういう問題も、国が出資するのですから利子は要らないわけです。そうなれば、より安い製品ができて、国際競争力にも資するし、それが国民的利益になる、基幹産業でありますから。そういう公的社会的な考え方を——かつて皆さん方はそういう特殊会社にいらしたのですから、われわれは、そうやったら国で全部やるというのではなくて、特殊会社でおって皆さんがやればいいのです。ただし、いろいろな面で不明朗なことのないようにする公共的な介入といいますか、私どもは、出資との引き合いにおいて国民的利益を守っていきたい、こういう発想なんでございます。その点をひとつ……。
  30. 稻山嘉寛

    稻山参考人 電力のようでございますと、地域的に少なくとも独占しておる。しかし、いま八幡、富士が合併いたしましても、全体の三五、六%を持つだけでありまして、決して独占的なものではないわけでございます。しかも、その会社に政府が出資して特殊会社にしたら、その会社だけ設備投資をしてよろしい、ほかは設備投資はしていけないのだというようなことが、この自由主義体制でできるかどうか。そういう特殊会社だから片一方には許可する、片一方には許可しない、そうなってくると、われわれ非常に都合のいい半面があるわけでありますけれども、そうはなかなかできないのじゃないか。それからまた、私ども日本製鉄というのは特殊会社で合併したわけでございますけれども、これは特殊会社ではほとんどなかったと思うのであります。ただ一株主であって、昔の官営の八幡時代とは全く違った存在だと思います。八幡時代に——昭和四、五年、このときに、銑鉄でいうと八五、六%から、鋼材でいうと六〇%を八幡製鉄は小さいながら持っていたわけです。ところが、そのときに川鉄とか日本鋼管とか住友さんとかいうのはまだ存在をしておったのです。そのときに三社くらいで三つどもえの競争をやりまして、これではとうていだめだ、日本鉄鋼業はつぶれてしまうのではないか。外国からはどんどん安いものが入ってくる。そこで激烈な競争の結果、協同組合をつくったわけでございます。で、ようやく経営が成り立つようになったときに、満州事変が起こり需要増大して、日本製鉄という合併劇が行なわれて、それが統制会まで発展するわけでございまして、三五%くらいで、しかもいま非常に強くなっている民間の大企業競争なしということはもう考えられないわけでございます。ことに先ほど永野さんがおっしゃったように、だんだん企業が大きくなってまいりますればまいりますほど、国家に影響するところ甚大なんでございますから、われわれ大企業というものは非常に大きな責任を持っておる。ことに、コストの引き下げに努力して、とにかく安くしなければいけないのだということはわれわれ重々責任を感じておる次第でございます。しかし、もしそれにはずれるようなことがあったら、もっと大きな意味の社会的責任をお問いくださる仕組みを何かおつくりになることもけっこうだと思います。
  31. 小峯柳多

  32. 中村重光

    中村(重)委員 きょうは八幡、富士の社長としてのお二人ということで日本経済界に大きな影響力を持っておる御両氏に御意見を伺うわけであります。どうかひとつ、合併の当事者から、一面から見ると何か被告みたいな形になりますけれども、そうでなくて、経済界の両大御所として高邁な御意見を伺いたい。  時間の関係もありますから、私は率直に伺いますが、今度両社が合併をなさいますと、鉄鋼におけるシェアというのは、国有になりました英国を除きまして、全く世界一という、またいろいろな面からの、角度の違った面では英国をもはるかに凌駕するといったような大きな勢力を占めることになるわけですね。そこで、どうでございますか、これほど大型の企業の合併というものが現在独占禁止法の中で許されてよろしいものであるかどうかということですね。御承知のとおりに、公取の警戒ラインとしておりますのはシェアは三〇%ということは両参考人とも御承知になっていらっしゃるところでございます。そのことを十分承知しながら、あえて合併に踏み切られたということについては、いま趣意書もいただきましたし、あるいはテレビ、ラジオ、新聞等を通じて、メリットの点について、あるいはこの弊害を除去するためにはどうあらねばならぬということは伺っておりますけれども、この際、端的に、あえて独占禁止法の精神というものには沿わない形で合併の申請をされるというように、追い詰められたようなそういう形というものはほんとうにあるのかどうか、この際、ひとつ御意見を聞かせていただきたいと思います。
  33. 永野重雄

    永野参考人 独占禁止法は厳然としてございますし、これは国の総意といいますか、国会の決定に基づいてできておる法律でございますから、われわれはその法の精神は尊重いたします。ただ、国民経済全体に寄与して、そうして言いかえますと、先ほどのメリットであげましたような成果がある、にもかかわらず、ただ形が大きい小さいだけの理由でいい悪いという御判定をいただかないで、そういうメリットがあるならば、もしデメリットの点がなしで済むような方法があるかどうか、あるいは起きないかどうかという点について、先ほど来申し上げましたように、大きくなってプラスだけ——プラスというのはコストの低下等あるけれども競争は相変わらずあるというわれわれが確信を持っておるものでありますから、確信というとおかしいのですけれども、事実、私そう思っておるものでございますから、そこで、それならば、いまの、ただ大きくなることだけはいかぬのだという考え方でなしに、国民経済に寄与するような行き方をとることはわれわれの責務だ、こうも考えたのでございます。
  34. 中村重光

    中村(重)委員 財界では、開放経済体制下にあるから、シェアというのは国内だけではなくて、海外を含めて見るべきであるという意見もあるわけですが、御意見はどうでございますか。
  35. 永野重雄

    永野参考人 あっしゃるように、その意見もございます。国内だけですらそういうことになっておるんだということを申し上げましたんですが、そのほかに、海外にも、このごろは資本の自由化ですから、われわれがかってなことをすれば、どんどん日本で事業も起こせますし、また、−今日は貿易も自由にできるのですから、どんどんくるのでございます。したがって、仰せのように海外のものについても、乱暴なことをすれば当然牽制される、調整されるということは当然考え得る問題だと思います。先ほどは海外の問題までいきませんでしたのは、国内だけですらそういう事情になっておるということに中心を置いて申し上げた次第でございます。
  36. 中村重光

    中村(重)委員 おっしゃるように、開放経済体制下になりますと、海外との激烈な競争というものが展開されることはわかります。わかりますけれども、だからといって、海外まで含めてこのシェアというものは判断すべきであるという意見には、私は賛成いたしかねるわけですが、影響があるということは、ただいま永野参考人のおっしゃったとおり私もわかるのです。  なお、メリット、デメリットということについての御意見がありました。いまこの「合併趣旨」をいただいてみまして、確かにこれはメリットとして評価しなければならぬ点がある。だけれども、疑問に感じるところもあります。まあ、一々ここで申し上げると時間がございませんから……。そうすると、この両社の合併を、午後に御意見を伺うことになっておりますけれども、他の三社が一応歓迎をしておるという点はどこにあるとお考えになっていらっしゃいますか。
  37. 永野重雄

    永野参考人 私は、いろんな他人さまのお考えですから、私からどういう理由だということを言うのは僭越と申しますか、言い過ぎになるかと思いますが、ただ、先ほど来皆さま方の、国の貴重な資金を使って過当競争をやっておる、これはもういままでの十の過当競争が六か七かの過当競争ぐらいにでもなればいいという程度じゃないかと思うのでございますけれども、私は、おそらく御質問の中に含まれております、それでみんなが手を組んで高い価格がつくられるからという意味のなにじゃなくて、むしろ、設備増強の過当競争程度がやわらぐという程度であって、厳然として競争は残るんじゃないかと思っております。
  38. 中村重光

    中村(重)委員 先ほど稻山参考人の御意見では、価格の点を非常に強調なさいましたですね。私は正直な考え方を表明されたと思うのです。合併は、これは価格の点を強く意識して合併に踏み出されたというふうに私は理解しておるのですが、そこで出てくるのは管理価格の形成です。他の三社が一応賛意を表しておるということは、私は管理価根の形成に期待があるからだと思う。この管理価格というようなものが独禁法上許されてないということは、これは御承知のとおりでございますが、稻山社長さんとしては、この点についてどのようにお考えになっていらっしゃいますか。それで、この前のいわゆる稻山発言というものですね、これは国際競争力はこの合併については目的でない、それから合併によるところの利益は消費者には還元しないという御発言をなさった。先ほど価格の点を強調されたこととあわせて、この点に対してひとつ率直に御意見を聞かしていただきたいのです。
  39. 稻山嘉寛

    稻山参考人 先ほども申し上げましたように、私の真意が伝わっておらないのでありまして、価格の点について、利潤としては返るのじゃないというような意見を申し上げて、しかし消費者に利益になって返るということは当然だということを申し上げたのですが、その部面が書かれてなかったということであります。  それから、ただいまの国際競争力がありということは、私はそのときの発言も、コストの面から見て、現在どんどん輸出が出ているのですから、国際競争力がないということは言えないじゃないか、その面からは、ある、しかし蓄積がないのだ、体質が弱いのだ、だから、企業の総合的な力としての国際競争力はないのだから、われわれはこれから蓄積をためて体質改善をはからなければ競争に勝てない、こう申し上げたわけでございます。  ところが、今度は、先ほど強調したとおっしゃるのは、私は確かにそう思っております。価格が大幅な変動をすることはいけないのだから、この点は日本経済の問題だということを指摘しただけであります。私はそれを合併に結びつけて議論をしておるのではないのでありまして、われわれは合併だけ考えていればいいというわけにはまいりません。日本経済をどうしたらいいかということに対してもわれわれ常に考えていなければならぬことは間違いないと思うので、なまいきだけれども、ちょっと申し上げただけでございます。  それで、合併をいたしますと、われわれは価格を、どうあるべきかというようなことは、これはいろいろな関係があって別問題にしても、われわれ自身がコストを安くするということは、ひいては価格を安くすることになるのだから、あるいは蓄積ができるのだから、だからわれわれが合併することはとにかくいいことじゃないか、こう別にお考えいただきたいのでありまて、競争は依然としてあるのだ、だから、合併で管理価格ができるというようなことはあり得ないのだという前提のもとに、とにかくわれわれだけは合併で少なくともコストを引き下げよう、こういうことを考えておるわけでございます。
  40. 中村重光

    中村(重)委員 おっしゃるとおり、どうも鉄鋼価格というのが経済界の変動に伴って非常に暴騰したり低落したりするのですね。これは経済界自身に混乱を起こしている。そういう意味において、価格の安定ということは私は賛成ですよ。ですけれども、この合併によって、いまの御意見の中に出ました、合理化によって非常に価格が下がってくるというようなことですね。その合理化の程度がどういう形に進められてくるのかということについて、問題は分かれてまいりますけれども、とにかく価格が安定するということは賛成である。だけれども、その価格が、合併によって管理価格を形成して、非常に高い価格において安定をするということは、これはいわゆる国民経済的に見ましてデメリットである、大きな弊害であるということで、私どもは警戒をするわけです。ですから、一企業の社長という立場よりも、私が冒頭に申し上げたように、日本経済に大きな影響力を与えておる権威ある御両所でいらっしゃいますから、価格の安定というものはどういう形においてもたらさなければならないのかという問題は、当然これはいわゆる責任者として持っていただかなければならぬということであり、それからもう一つ、競争は非常に激烈になるのだとおっしゃいましたが、少なくとも私は、合併をすることにおいて、いまのままの形態で進みます場合には、合併した大型企業というもののいわゆる力関係というものが非常に強くなってまいりますから、その意味においては、私はこの競争というものは多分に抑制されてくるというように思う。それは問題であると考える。  そこで、競争は依然としてあるのだという御意見でございますが、それならば他の三社はどういう態度に出るだろうか、その点のお見通しもございましょうから、ひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  41. 永野重雄

    永野参考人 まず最初に安定ということばでございますが、当業者が安定と言いますと、おっしゃるように高いところへ安定するのだろうととられますし、また需要者が安定と言えば、低いところに安定するのだと、同じ安定という字句でも誤解を招く。立場立場によってそんな誤解を招くといけませんので、私はこのごろは安定ということばはわれわれの立場からは使わないことにしている。これは、むしろ皆さん方のほうの高い角度から、国の全体の姿勢、経済をお考えの場合の安定は、きわめて合理的なところに安定だという御趣意だと思いますから、幾ら出てもそれはわれわれは拝聴しますけれども、われわれ自身の口から安定と言うと、ともすればそういう誤解を招く。そこで私は、価格の乱高下をなくするということばを使っておるのです。たとえば造船の立場になってみますと、一年、二年の長い注文を受ける。しかも安いときに先の注文をとって途中で上がったら、その企業はたいへん損をする。結局乱高下が大いに問題じゃないか。したがいまして、合理的な安定ということば当然あるわけでございますが、それをわれわれから誤解を招く立場で安定ということばを申し上げない理由はそんなところにあることをお含みいただきたいと思います。  もう一つ、他の三社があるいは四社がどういう考え方であろうかということでございますが、おそらく、以前私どもと八幡で張り合ったときの気持ちを、他の会社の方も同じような気持ちを持っておられると思います。日本人には非常に進歩発展欲、ファイトがございますから、したがって能力についてもふやしたいという気持ちはおそらく持たれると思いますし、また能力をふやすためには市場が要ります。市場獲得のためにはやはり価格競争というものがあってはじめて需要を獲得できるという観点から、これは皆さん他の会社のほうのことを差し出がましいことではございますけれども、そういう気持ちでおやりになるのじゃないだろうか、こう思います。
  42. 中村重光

    中村(重)委員 設備投資調整のことについて御意見を伺ってみたいと思うのですが、稻山社長が、これは鉄鋼業界の指導者という立場に立たれて、設備競争という面について非常に慎重な態度をおとりになってこられた。これは永野社長の立場も同じである。そういう点については私は評価をしておったわけです。ところが、先ほど堀委員から申し上げたように、どうも全体としては、先発メーカーは自分の地位をあくまで維持していこうとしましょうし、後発メーカーはこれを追い上げていくというような現実的な競争で、実際問題としては設備調整はなかなかできなかった。そこで今度の合併もそうした関連もあるのでございましょうし、いま八幡製鉄が君津に一号高炉が完成する前に二号高炉に着手する、そうすると富士製鉄も大分に計画をお立てになった、まあここで勝負だというような決意を固められて、そうして合併ということにまで発展してきたと思うのですが、さて今度はそういうことになってくると、これから先の設備調整ということがはたして可能であろうかどうかという点が一点問題になってまいります。設備をこれから先また進めていかれることになってまいりますと、御承知のとおり、二年間に高炉一本という形、従来そういう形で進められていますね。そうすると、合併になりますが、その場合は一つの会社になったのですから、二年に一本ということになるのでございますか、あるいはそうではなくて、これは一年に一本ということで進められることになりますか。
  43. 稻山嘉寛

    稻山参考人 この合併と設備調整を今後どうするかという問題は、これは全く別個の問題でございまして、合併したから設備調整の必要がなくなるという問題でもございません。今後どうするかというのは、これは自主調整でありますから、みんなで相談するということ以外には申し上げられないと思うのでございます。ただ、われわれ二社が合併いたしますと、私のほうも一本やりたい、向こうも、富士も一本やりたいという計画であったのが、いま一緒になりますと、同じやるにしても、まず私のほうが先にやって1私のほうと言ってももう私じゃないのですけれども、その一本を先にやって、もう一本はあとで一年くらいたってからやるということになりますと、三年間では二本建つわけなんですが、その建つのが一ぺんに三年前に建てないで、一年半おきに建てるということによりまして非常な二重投資、つまりアイドルタイムがなくなるという利益がわれわれ両社にはあるわけでございます。したがって、それがコストダウンにつながるということに考えておるわけでございまして、他社との設備調整をどうするかという問題は、これはお互いの相談ずくでございますし、またことにきまらなければ鉄鋼部会というのがあるわけでございますから……。
  44. 中村重光

    中村(重)委員 従来だと、これは一社によって二年に一本という形で進められている。ところがこの合併をしたということになってまいりますと、毎年一本だというと必ず紛糾してくる。またそういうこともおそれなしとしない。しかしこの問題はまた別な問題になりますから、御意見を伺ったのみにとどめておきます。  そこで、価格の監視機構ということについてもいろいろ議論されておるようでございます。けっこうであるというように新聞談話か何かで伺ったのでございますが、この価格の監視機構けっこうだとおっしゃると、どういう形で価格の監視ということができるだろうか。現在の独占禁止法の中においてはそういう規制はできない。はたして政府が価格の監視なんということができるのであろうか。歓迎なさる御意見でございましたから、この点に対しての御検討もなさったでございましょうし、どのような御見解でございますか。
  45. 稻山嘉寛

    稻山参考人 それは私どもは、合併をしても競争は依然としてあるのだから、そんな管理価格なんかはないんだ、こういう前提に立っておるわけでございます。にもかかわらず、世間は、そうは言ったってそうはいかないという御心配があるなら、これ以上高くすることはいけませんよという値段を御指示願って、そしてこれ以上は高くしないというお約束をその企業体と行政府としたらいいじゃないか。それは決して法的なものではございません、非常に私的でいいわけです。現に私どもは、公開販売制度というのをお認め願いまして、そうしてこれ以上の価格はいけないよという基準価格というものを示されております。それをいまだ一ぺんも破ったことはないわけでございます。これは行政とわれわれとの自由な契約とでも申しますか、お約束になっておるわけです。そういう形で、統制のこういう問題は行政の問題でありますから、行政がそういう監視をおやりになれば、何もむずかしいこと考えないでもできるだけに鉄鋼業界は育っております。
  46. 中村重光

    中村(重)委員 時間が参りましたからこれでやめますが、どうでございましょうか、国民が非常に心配していることも事実ですよ。これはもうよくおわかりになっていらっしゃると思う。  そこで私は、この日本経済を左右する非常に重要な産業である鉄鋼業、これを自由競争という形にまかしておくということでなくて、設備調整の問題にいたしましても、あるいは生産調整の問題等々にいたしましても、少しチェックするという方法、要するに管理体制というようなものを考えたらどんなものであろうか。まあ管理行政委員会みたいな形でそういうことは考えられないか。それもあくまで自由競争、自由主義経済というようなものを拘束するというお考えなのか。それからいろいろ鉄鋼業に対して鉄鋼業法をつくれとか、あるいはまた鉄鋼管理業法というようなものをつくるべきだ、そうして鉄鋼業の社会性というものをやはり国民監視の中に置くべきだということは、私は今日国民の声だと思う。この点に対しては、これは私企業の立場からノーというお答えになるのかもしれませんけれども、冒頭申し上げたように、日本経済界のいわゆる大御所であり、大きな影響力を与えるという立場の上に立って、その点ひとつ端的にお考え方をお聞かせ願いたい。
  47. 永野重雄

    永野参考人 結局、問題は、どちらの方法がいいかという問題になるんだと存じますが、一定の強力な管理となれば強力な指導になろうと私は思いますけれども、ともすればもたれかかる、自分の創意くふうを出すということを怠るというふうなことで、形は安心するようなかっこうになりましても、国民経済全体からいえばマイナスになることをおそれるわけでございます。結局この辺になりますと、何と申しますか、不安のもとが性善説をとるか性悪説をとるかというようなことにまでつながると思うのですが、私どもの立場といたしましては、従来のような考え方、言いかえますと、資金というものはできるだけ銀行からあるいは生命保険会社から借りておりますけれども、結局は頭取のポケットマネーを借りているのではなくて、数千万人の、言いかえると国民のほとんど全部の金を使っておる。一工場をつくるのに二千億とか数千億とかかかるのですけれども、そういう全部の資金を使っている限りは全部の要請にはこたえなければならぬという気持は、われわれ両人とも深く持っております。そこでその考え方でやってみる、やってみたがどうしてもいけないんだということになれば、そのときにどういうお考えをお出しになっても、これはわれわれとしてはそれに追従するよりしようがないのでございますけれども、今日現在の考え方は、一緒になっても御要請に沿ってりっぱにやっていくという考え方を持っております。それから管理価格の問題でございますが、これは世界的商品でございますから、価格には高いときもあれば安いときもあり、安いときに、これは程度でございますけれども、ある管理価格をやる。そうすると、安いときには国が助成金を出すとか、国が高く買ってやるとかという裏づけがあるということにつながっていく。結局その価格は一本価格の統制価格みたいなものができてしまうんじゃないか。そうすると、先ほど申しましたような不安があって、それがはたして国民経済を伸ばしていくためにいいかどうかという観点にまでさかのぼるものでございますから、余分なことでございますけれども、こんな考えを申し述べた次第でございます。
  48. 稻山嘉寛

    稻山参考人 いま永野さんのおっしゃったとおりだと思います。結局性善説、性悪説ということになるのですが、私どもは人間というものは性は善なりと考えております。企業はことに性善だと思うのであります。大量生産企業になりますと、薄利多売という原則が自由競争では行なわれるわけでございます。したがいまして、よけい価格の単価を上げて暴利をむさぼるという形になりますのは、設備が足りないときに起きる現象であります。だから、私どもはそういう現象が起きないような設備を用意しておけば、それでいつでも供給できるような体制を整えておけば、今度は企業は薄利多売という原則が行なわれまして必ず安い競争が行なわれるので、そんな高くなるはずがない。ことに日本経済は体質が一変いたしまして、今日では原料外国から参りますが、これがみんな専用船でくぎづけされております。したがって運賃が暴騰する。したがって原料が上がる、鉄が上がる、だから輸入しなければならぬ、国際収支を悪化させる、そういうような現象はもうこの世から、日本から去ってしまっております。原料はもう常に安定した原料でございます。したがいまして、設備も用意されております。だからわれわれば、これからそういう工業生産品からくるインフレーションは起きないのではないか、かように考えております。またそうなければならないという責任を感じておるものでございまして、自分自身性善だと思っておるのであります。
  49. 小峯柳多

  50. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 八幡、富士の合併は、確かに企業としては幾多のメリットがあると思います。問題は、これほどの大きな会社が合併するに伴って国民経済にどう影響あるかというのが争点ではないか、こういうように思うわけです。  そこで、昨年でありましたか、永野社長にもわが社会党に来ていただいて意見をお聞きいたしたわけであります。その前後で永野さんは、東西二社論を唱えられた。稻山社長は、それを受けて旧日本製鉄の復活ならば考えられるというような意味の発言を新聞で見たわけであります。しかし、それがその後今日に及んだかどうかは知りませんけれども、問題は、当時永野社長がお話しになった日本の二大製鉄論というのは、非常な過当の設備競争を何とか調整するための意見であったと思う。  そこで、私は、八幡、富士が合併するに際しては、日本のいままでの戦国時代といわれるような鉄鋼設備競争というものは少なくとも調整をされるという社会的な意義がないと、この合併というものは一企業の問題にすぎない。先ほどから聞いておりますと、いや競争は依然として続くんだというふうなお話をされておりますが、この点についてどうお考えになっているのか。私は今月の初めにドイツ鉄鋼連盟に行きましたら、昨年でありますか、ブラッセルにおいて稻山社長が発言になって、今後の日本鉄鋼界の伸びをお話しになったそうですが、そのことばかなり各国に影響を与えておる。一体日本人はいまのアメリカ人が使用しておるぐらいの一人当たりの鉄鋼を将来生産してどこへ売るんだろうか、こういうことを私はベルギーでもドイツでも聞いてきたわけです。一体設備競争というものがこの合併において調整をされる大きな役目をになうのかどうか、これをひとつお聞かせ願いたい。
  51. 永野重雄

    永野参考人 最初に、私の二、三年前に申し上げました話題をお取り上げになっておりますから申し上げますが、御承知のように溶鉱炉というのは、戦前は最大のものが千立方メートル、そして一立方メートル一日一トンですから、一日千トンでありましたが、このごろでは技術が非常に躍進をいたしまして、大きさそのものがもう二千八百とか三千立方メートル、その上にエネルギー革命にもつながりまして、その他の高圧操業とかいろいろな技術を取り入れまして、一立方メートル二トンないし二トン半、したがいまして、以前の溶鉱炉一本は今日では七倍になっているような次第であります。したがいまして、従来ならば各会社が日本需要状況、それに即応する生産状況として、かりに七社が一本つくってもよかったのが、今日では一本で足りる。ただ当時より発展力が高うございますから、したがって、絶対量が一本じゃ足りないから二本でいく。これを昔のように、どれもやろう、こういたしますと、二本でいいものが二倍、三倍の余分なものをつくる結果になることは、国民経済の中の貴重な資金の使い方としては相済まないという感じがあるわけでございますから、年々日本需要の増加に即応する本数、その本数を、だれもけんかしないで、しかも、国家的要請にこたえるのにはどういうことかということから要る本数があるくらいの会社なら、両面から考えて一番いいという考えでああいう発想もいたしてみたのでございます。しかし、問題の観点が、今度競争があるのかないのかという点で御検討でございますから——しかし、残念ながら現状は二社じゃございません。先ほど来お話でありますように、二社が合同しましても、まだ残った数社、有力な会社があるわけでございますから、いい悪いは別として、あるいは過当競争になるか合理的な価格になるかは別といたしまして、御心配になるような管理価格、そういうものは起き得ないんではないだろうかという点に重点を置いて申し上げた次第であります。
  52. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、この競争がいわば調整をされるというならば合併におけるある意義があるだろうと思う。しかし、いまの八幡、富士の三五%のシェアというお話ですが、やはりおのおの傘下会社を入れますと相当のウエートになるわけです。これもやはり無視できない。そうすると、日本のいろいろの今後の経済のあり方として、一体それだけの大きな企業体を許すことがどうであろうかというのがやはり争点になるだろうと思うのです。それで、いま設備競争というものは、これによって少なくともいままでのような戦国時代といわれ、百鬼夜行といわれ、知っておるけれどもやめられないというような設備競争というものが調整の方向に行くだろうか、少なくとも八幡、富士のけんかはなくなるけれども、そのほかはどうだろうかという点がわれわれの非常に心配をしておる点であります。これがますます激化をされるのだということになれば、一体富士、八幡が合併してどこに意義があるか。企業としては確かに意義があるかもしれないけれども、問題ではないかという点になる。そこでお聞きしておるわけです。
  53. 永野重雄

    永野参考人 ただいまの点でございますが、全然競争はなくはならないということも先ほど来申し上げてございますが、むしろ先ほどの皆さま方のお話の中には、競争は大いにあるべしという御意見もあったのでございますけれども、ただいまの御意見では、競争がなくなって、調整しながらいくのでなくちゃ意味がないじゃないかというふうにも伺ったのでありますが、設備は結局生産のもとでございますから、過度に設備があれば結局競争のもとになる、こう思います。  それから、どうせ設備競争がある程度あるなら、やっても意味がないじゃないかという御発言でございましたけれども、大きな二つが合理的な、またみんなで研究して良識を出し合っていきますれば、全部が激しい競争をするよりも国に対する被害を少なくおかけする結果になるのではないか。百鬼夜行というお話が出ておりましたが、五鬼夜行くらいになってくれるならば、やらぬよりもやったほうがいいという感じがいたすのであります。
  54. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 時間の制約がございますが、一番国民が心配しているのは、寡占体制における管理価格的なものによって、企業は安定するけれども、国民にそのメリットの転化がないのではないかということを心配しておるわけです。これにつきましては先ほどから答弁がありましたので省略いたします。  そこで、富士、八幡の合併というような大問題をあえて強行されるならば、一体いまの鉄鋼における流通機構、この改革はどう考えられておるのか。ことに、直接に販売をされておるのは一五%程度と聞いております。むしろ問屋を通じて大口ユーザーに直接出荷する。直接出荷するくらいなら、なぜ問屋を通じておやりになるか。これは私も実情は知らないことはないわけですが、官営八幡時代に売り掛け金が取れなかった、それで問屋を使ったということを先輩の書物で見ましたけれども、一体、販売流通問題については今後どういうように処置されるつもりであるか。  続いて質問をいたします。いま八幡、富士合併について地域経済が心配をしておりますのは、たとえば八幡の縮小、釜石の縮小等について非常に心配をしておる。これは御存じのように、製鉄所というのはいわば地域経済を形成しているわけです。八幡村は八幡製鉄ができて八幡村ができたし、北九州ができた。さらに釜石も同じだろうと思いますが、こういう地域経済に及ぼす影響は炭鉱以上に製鉄所の場合は大きいと私は思う。ですからこの八幡、富士合併によって、採算が比較的悪いとか、あるいは古い施設を持っているところはスクラップになるのではないかという住民の心配というものは、やはりこの際はっきり責任者から回答されておかれる必要があるのではないか、それについてあわせて御答弁を願いたいと思います。
  55. 稻山嘉寛

    稻山参考人 流通の問題につきましては、日本は確かに特異な立場でありまして、みな商社を使っております。これはつまり鉄ができる前に外国のほうから輸入してきたので、輸入商のほうが先にできておったわけでございます。外国の品物を日本の品物に置きかえるためには、商社を利用したほうが外国品を騒逐することが非常にたやすかったということが一つの大きな理由だろうと思います。それから以後は、銀行の金融のあり方が日本は独特なものになっていると思うのでございまして、われわれが設備投資をする金、それから流通に使う金、両方請求いたしますとなかなか貸してくださらない。われわれには設備投資だけの金は貸してくれるが、流通の金は少ししか貸してくださらない。商社だと貸してくれるということで、商社金融と工業金融が別になって現存しているわけでございます。そこへもしかりに八幡だけが流通機構を使わないということになりますと、商社ば注文をほかに持っていってしまうおそれがあるわけでございます。お互いが競争しているから、自分たちの販売力を利用しないということは販売戦線で負けることになりますから、一、二の三でやめる。そして銀行も全部商業金融をメーカーへつけてくれるということになるならば、これはかわりやすいだろうと思うのです。そのほうがいいのかどうか、これはやはり将来研究しなければいけない問題であることは間違いございません。ただ、両社で合併いたしますと、そういう流通の問題を合併した立場において考え直す必要は確かにあると思いますので、これは両社合併の暁に非常に研究しなければならぬ問題だと思います。  それからもう一つは、商社というと私どもの商社のように考えるのですが、他面は買うほうの代表でもあるわけでございます。御存じのように日本には三井グループとか、三菱グループ、住友グループというグループがあるわけであります。三井グループはやはり三井物産を使って注文をとろうとする。そしてまた向こうの購買の知識をいままでは商社の方々が与えておったわけでございます。ところがだんだんこれが進んで、また消費産業が大きくなってくると、そういう買う知識というものも消費者に出てくるわけでございます。組織も出てくるわけですから、そういう面で多少の考え直しをする時期にあるいはきているのかもしれない、かように考えます。  もう一つの質問ば地域的の質問ですが、両社の工場のあり方を見ますと、北は北海道から南は九州まで、全部地域経済に非常な貢献をしている形になっているわけでございます。これは集中的なことをだんだん地域に分散していくということの必要性の今日におきまして、これらの地域の工場を減らしていく、あるいはなくなしてしまう、そんなことは毛頭考えておりませんし、そんなものを減らしたりなくなしたりするだけの余裕はないと私は思うのでありまして、これらをやはり手入れし、拡充していきまして、需要増加にできるだけ現在ある設備を利用していくということでなければ、われわれとしては経営上も成り立たないわけでございますから、そういう心配はないのではないか、私ばかように考えております。
  56. 小峯柳多

    小峯委員長 中谷君。  後続の参考人がお見えくださっておりますので、質疑者も参考人も、ひとつ簡潔に御発言願いたいと思います。
  57. 中谷鉄也

    中谷委員 同僚委員からあらゆる角度からお尋ねをして、両参考人のほうから率直な御答弁をいただきましたので、一言だけお尋ねをいたします。  実は八幡と富士の合併の問題というのは、日本経済が将来どうなっていくか、産業政策はいかにあるべきかという、鉄鋼問題を越えた大きな問題として、冷静にこの問題に取り組んで掘り下げてみたいというのがわれわれの考え方です。そういうふうな中で、これはひとつ私、率直に申し上げたいと思うのです。本日、両参考人、特に永野参考人の先ほどの御発言の中でちょっと気にかかった点がございましたので、ひとつ率直に印象的な発言をいたしたいと思います。  従来から、合併のメリットについてはずいぶんだくさん論説があります。本日もその点についてのお話がありました。そこで、永野参考人のおことばの中に、合併についてはわれわれもメリットがあると思う、同時に国家もそういうものについて要請していると思われるというふうな趣旨の御発言があったわけです。しかしこれは、特に通産省あるいはまた経済企画庁がおいでになっていると思いますが、率直に申し上げておきますけれども、国家なんというものは少しもそういう要請はしていないと私は思うのです。   〔委員長退席、鴨田委員長代理着席〕 そういうことを応援団的に応援をしているのは通産省であり経済企画庁であるけれども、まさに合併承認に関する問題というのは公正取引委員会の承認事項であるという、このことを当事者であるところの両社長さんにおいて明確な御認識をいただきたいと思うのです。先ほど、というより従来の合併が発表されましてから今日までの雰囲気というものは、何か合併のメリットが非常に大きく取り上げられまして、公取としてはむしろ合併を承認しなければ何か悪いのじゃないかというふうな雰囲気が醸成されているとすると、私は非常におそろしい、憂慮すべき事柄ではないかと思うのです。そういう雰囲気というのは、私が冒頭に申し上げましたように、今後の産業政策のあり方、日本経済のあり方というものをひとつ冷静に、独禁政策と産業政策との関連の中で掘り下げていこうという立場からいたしますと、じゃまにこそなれ、決してプラスにならないと私は思うのです。  そういうことを前提といたしまして、公正取引委員会が準司法的な機関であって、この問題について、通産省や特に経済企画庁などに、私は両参考人にお尋ねするかっこうの中で要望しておきたいと思いますけれども、あまり応援団的な、ことに証人が十五条の解釈にわたるようなことをどんどん言われるというふうなことははたしていかがなものであろうか、こういう印象を今度の問題で私は非常に痛感しているということをまず最初に申し上げておきます。  そこで、合併のスケジュールをお立てになったというふうに聞いております。九月に両社の株主総会をお開きになって、そうして四月一日、非常に記念すべき日だそうでありますけれども、そういう日に発足させたいというところの一つのスケジュールをお立てになった、こういうふうにお聞きいたしました。ところが独禁法の十五条というのは、従来から、ことに今回指摘をされておりますように事前審査の制度でございますね。したがいまして、先ほど稻山参考人それから永野参考人のほうから、競争を実質的に制限するというふうな問題は起こらないのだ、管理価格というような心配は要らないのだということをずいぶん口をすっぱくしておっしゃったと思うのですけれども、これは全部将来にかかわる事項なんです。一体これはどうなんだというと、それは国家のために、国家的な見地から鉄鋼業というのは存立しているのだ、われわれを信頼してもらいたいという、そういう信頼関係以外にはそういうことはないわけなんです。そうすると、公取の立場から申しましても事前審査なんですから、そういうふうな合併の承認をした場合に、いわゆる管理価格が生じないのか、競争を実質的に制限するおそれはないのかという問題も将来に関することだ、十五条の承認問題については公取自身もずいぶん頭を痛める問題だろうと思うのです。  そこで、端的に申し上げますけれども、富士、八幡の合併問題の、十五条についての認定問題について承認という結果が出たとするならば、十五条の問題というのはもう将来起こらないだろう、私はそういうふうに考えます。おそらく理論的には、理屈の上では十五条という条文はあっても、この合併承認について実質的に調査されるような問題というのはほとんど起こらないだろうというふうに私は考えている。  そこで、合併承認について承認申請をお出しになりますと、まず三十日、特段の場合には六十日を延長することができるという規定になっております。そして、本日、五月二十二日付でお出しになりましたところの合併趣意書も拝見をいたしました。要するに九月までに事前調査というかっこうでいろいろなふうに公取と御連絡をおとりになって事情の御説明をなさる、こういうふうなことだと私は伺っております。   〔鴨田委員長代理退席、委員長着席〕 しかしこの問題は、永野参考人が常に申されておりますように、世論の支持がなければいかぬということであるならば、ひとつこういうことについて御見解を承りたいのです。はたしてこの合併がいわゆる十五条に該当しない、要するに合併承認になるケースかどうかということについては、今後の日本産業政策のあり方に関連をして、私は徹底的に調査、検討、審査さるべき問題だと思います。  そこで、かりに三十日プラス六十日、九十日というふうなことで審査が十分にいかないというふうな場合が出た場合にどうなるんだということを私は考えます。九十日というものは動かすことのできない期間でございます。だから九十日たってしまえば公取はそれ以上延ばすわけにいかない。何か非常に不十分な審査の中で結論を出す場合だってあり得るということを私は心配をします。そういうことになれば私はたいへんだと思うのです。ところが現状の公取の機構、人員というものは非常に私は不十分だと思うのです。たとえば本日も新聞に報道されておりますけれども、別の審査部、これは全然部が違いますけれども、公取の別の条文についての牛乳に関する公取の審査が一年間まだずっとえんえんと続いているというふうなことがいわれておる。そこで、世論の支持を求めるという立場、いま一つは、徹底的に日本産業のあり方、経済のあり方を決する公取の審査というものはそういうものなんだから、かりに九月までの事前調査の段階において公取が三十日と六十日との九十日の期間をもってしてもとても審査がしきれない、十分な審査ができないというふうな状態であるならば、ひとつこれは勇断を持ってむしろ合併の承認申請を一月くらいお延ばしになる、そして事前調査の期間を公取に余裕を与える、その程度のことは私はあってもいいんじゃないかというふうに考えるわけです。これはそういうふうにすでにスケジュールもお立てになった中でそういうことを申し上げることは、非常に不利益、不都合というものが生じてくることを承知した上で、あえてお尋ねをいたしたいと思います。
  58. 永野重雄

    永野参考人 ただいまの、最初の、私が国の意思をそんたくしたということばは、私どもの業界が一番直接に指導といいますか監督を受けていると申しますか主務省、そこの中に産業合理化審議会というのがございまして、その中にまた有澤委員会鉄鋼部会というのがございます。そこでは集約化をすすめておられるものですから、これも国家機関です、したがってそういうように申し上げた次第でございます。  それから、十五条の解釈の問題がございましたが、十五条は明らかに不当に競争を制限するというような字句になっておりますので、私どもは先ほど来くどく申し上げましたように、不当に競争を制限するというふうに考えておりませんので、したがって、とにかくわれわれなりの立場から出してみて、それが十五条にどう当たるかということは公取で十分御審議をいただいていいんだ、こういう趣意でございます。  それから第三の問題で、こういう大きな問題がとても現在の公取の陣容で間に合うとか間に合わぬとかいう問題を御心配なすっていらっしゃいましたが、これは私どもから言えば、政府機構というものは必要な職務を果たされるためには、それ相応の陣容を持っておるという前提で考えているものですから、その点は御了承いただきたいと思うのでございます。  それから一月延ばしたらどうかという御意見がございましたが、私どもはなま煮えのままで無理でもどうでもという意向ばございません。したがいまして、現在では九月初めでないと——多少の余裕は見ていかなければ、公取の審査の結論が出まして、その上で会社が正式に発足するには、一般商法による債権者公告その他がございますので、そういう考え方で、多少の余裕を見て九月の初めを考えたのでございますけれども、それでは十分に審議がいかないのだ、十五日延ばせとかあるいは一カ月延ばせとかいうようなお話がございますれば、それをしも押してあくまでも予定どおりにしてくださいと、国の意思でおきめになることをわれわれが無理をお願いし得る立場でもございませんので、その点はさよう御了承いただきたい。ただしそうなりましても、現在のわれわれのかってな推察でございますけれども、かりにいま申し上げた程度の審査期間を十分におとりになっていただいても、四月、これには間に合う。オーケーという御判断をいただいたと仮定しますと、間に合うのではないかという感じを持っているのでございます。ただ、その間の一般商法の手続等について多少無理はかかりますけれども、これは努力をして書類その他の手続を勉強いたせば、間に合うのじゃないかと思っています。
  59. 中谷鉄也

    中谷委員 終わります。
  60. 小峯柳多

  61. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほどからいろいろ御意見を承ったのでございます。いろいろと合併のメリットを言われたわけでありますが、私は、そのメリットの中にはおっしゃられてはいなかったですけれども、ほんとうのねらいは管理価格だと思うのです。皆さんはそこでそうだということは言えませんけれども、この点について、先ほどもお話がございましたが、通産なり経企庁なりそれぞれが応援団のような形をとっている、こういう点は政府としては非常に行き過ぎた態度だ、現在そういう積極的なことを示すのは行き過ぎだとは思います。ここにおいて何かそういうように政府が応援しているような形でありますから、皆さんが賛成しているような感じを与えるのです。しかし、ここでほんとうにみんなが賛成をしているかといいますと、いろいろな声があるわけですよ。特に自動車とかそうした要するに使用するところは、ほとんど価格の点で硬直化ということを心配しているわけです。この点は、そういうことはありませんと言われますけれども、非常に心配なんです。ここで独禁法があるといっても、価格のチェックということは実際できないわけですよ。特に鉄鋼の各産業に及ぼす影響ということを考えますと、非常に慎重に取り扱いをやっていかなければならない、このように思います。これは私の意見でございます。  それで、先ほどからのお話で、これからの国際競争力ということは結局技術の革新だ、このように言われたわけです。しかし私は、これは非常に疑問があるわけですよ。いままでそのようにマンモス化したところでそれだけの技術革新ができたかというと、アメリカの現在の鉄鋼業において日本輸入制限もやろうというような動きもある、先ほどもお話がございました。なぜそれをやるか。アメリカが非常に沈滞しているわけですよ。なぜそのようなことになってきたか。結局USスチールという非常に大きな会社がでんとその上に乗っかっておった。結局合併をすることによって技術の革新等においても非常に大きなプラスがあるのだという。だけれども聞きますが、一九四〇年からアメリカにおいて非常にすばらしい十三の発明がなされていますが、USスチールはそれをやりましたか。全部ほかの会社がやっている。あるいはまた、私はしろうとでありますけれども、革新的な転炉製鋼法というのですか、これはオーストリアの名もない小さな会社がやっているのですよ。ですから、あなた方がいろいろおっしゃった点については全く私は納得することができないのですよ。その点に対してどうお考えになっていますか。
  62. 稻山嘉寛

    稻山参考人 まあ私は、管理価格は心配する必要ない、実際、ないと思います。富士と八幡が合併したら管理価格が成立するということはないと思います。ことにアメリカにおいてUSが大きいからアメリカは価格が安定しているのだと私は思いません。カイザーが西海岸に飛び出したときに血みどろの競争が行なわれたわけでありまして、最近ではそういうことはないと思います。価格が安定しているのは、これは別な意味合いにおいてあれしていると思います。  それから技術革新でございますが、大きくなって発明できないじゃないかというお話でございますが、それは発明するということじゃなくて、ダーウィンは、模倣は大発明であるということを言ったということをこの間聞きましたが、つまり、どこで発明されてもいいが、合併でわれわれは研究費が倍になるわけでございます。その研究費を使いながらやはり他の発明したものはとうてくる。また自分たちもいろいろな意味で——何も発明といってとっぴな発明でなくても、改良もあれば、いろいろあるわけでありますから、そういうものでいままで二倍の金を使っておったのを、合併することによって二つ効果をあげることができる。そういう意味で、やっぱりわれわれ相当努力をしなければいけないと思うのでございます。非常に目立たないようでありますけれども、われわれ両社で最近技術改良、発明したものの特許料の収入は、われわれのほうが外国へ支払っているより、ここ数年輸出超過になっております。このことば両社合併すればますます実現可能になるのじゃないか、かように考えております。
  63. 近江巳記夫

    ○近江委員 西ドイツは別としまして、ヨーロッパ等も鉄鋼界は非常に沈滞ぎみなんです。それも結局は、そうした独占といいますか、あるいはカルテルの形成、そういうことが積み重なってきた。日本が敗戦後ここまで鉄鋼業が、先ほど社長さんがお話されましたが、躍進してきた。この原因は何か。それは結局、自由競争、有効競争といいますか、その中に創意くふうがあり、企業間の必死の競争また戦いがあり、ここまでこられた。それじゃ、現在八幡さんも富士さんも国際競争力はないのですか。その点、どうですか。
  64. 永野重雄

    永野参考人 まず最初に、先ほどUSスチールはほとんど沈滞しておっていい発明をしていない——オーストリアのリンツというのが転炉製鋼で、それをわれわれも導入したのでございますが、USスチールでも実は、別にアメリカの会社のことをちょうちん持つ必要はちっともございませんけれども、ただ例としまして、たとえばあそこからわれわれが技術導入したのがございます。高層建築に必要なハイテンションのカーテンウォール、これなんかUSスチールからわれわれは技術導入いたしました。  それからさっき、上杉謙信、武田信玄の例を申し上げましたけれども日本が今日のように大きくなったから、もうなかなか教えてくれない。現にUSスチールは、われわれ鉄鋼屋としていま世界で一番関心事である連続鋳造、しかもリムド鋼でつくるというのが一番大きな問題でありますが、この発明を完成した。われわれは刻々目をみはっておるものでございますから、それを看取して交渉しましたが、もう教えてくれません。そんなふうに、やはりあそこはあそこなりに勉強をやっているようです。だから、大きいからあぐらをかいてしまうということは言えない、よくなるということを申し上げたのですけれども、われわれは今日日本の場合でも、おまえたち相当な規模でやっておりながらなぜしなかったんだというお小言のようにも拝聴しましたけれども、先ほど稻山社長も言いましたように、私どもも相当勉強いたしております。また相当膨大な設備の研究所を持ちまして刻々の技術研究には非常な努力を注いでおりまして、決していままで安閑としておるわけではございません。そういうものが、原料の関係ももちろんございます。あるいは船の、大型船の、専用船の問題もございます。同時に、技術改善、改良、発明等につきましても非常な努力をしておることをひとつこの機会に、せっかくの機会ですから、御了承をいただきたいと思うのであります。  それでは、ここでやっているのにそれでいいじゃないかということでございますが、もう新しい研究は、今日のように、日本が世界じゅうを荒らし回ると言ってはことばが悪いんですが、どうも輸出をうんとする、こうなればなかなか従来のようには技術的な協力をしてくれないであろう。そうすると、技術の研究につきましては、二、三年、大きな研究をして、そして非常に多額の資金を要します。そればやはり分母、母体が大きければ、その間収入にはならないのでございますから、その負担に耐える。結局よりよき技術の研究もできやすいという点がございますので、従来もやったつもりでございますが、今後もより大きな成果のあがる研究をするためにも有意義ではないかということを申し上げる次第でございます。
  65. 近江巳記夫

    ○近江委員 国際競争力の面からいけば、私はもう鉄鋼はおそらく最も優秀だと思うのです。そういうような点からいきまして、私は鉄鋼における合併なんというものは、他の業界から比べれば一番あとでもいいと思うのです。与える影響というものは非常に大きいわけです。あの話が出てから、また王子系のそうした合併の話も出てきておる。ですから、この問題は私は慎重にしなければならない。特にこれは合併がなされるなら、独禁法なんかもうないのと一緒ですよ。私はそう思うのです。なぜなら、管理価格はないと言われますけれども、先ほどもシェアの話が出ましたが、ひどいのになれば、先ほど軌条の話も出ましたが、八七%ですよ。大型形鋼にしても少なくとも六〇%、鋼矢板、これは九四%、亜鉛鉄板は六三%、珪素鋼板は六五%、薄板で四八%、少なくとももう六割以上は一社で占める。これで高位硬直化が心配ありませんなんて言ったって、これはあくまで口約束ですよ。何の保証もない。これじゃ国民はみんな心配しますよ。根本の鉄鋼が値上がりすればどれほど大きな影響を持つかわからない。簡単にそんな合併をしますという、そういう態度は私はよくないと思うのですよ。これはよほど慎重に考慮しなければならない、このように思います。いずれにしても、この合併のそうした意思というものは、お二人とも強く持っていらっしゃいますし、一番大きくみんなが懸念しておるのは、そうした管理価格、高位硬直化という問題です。だからそういう点において、私は関係者及び公正な学識経験者等を入れた重要価格調査委員会、あるいは国会内においてもこれと同じような特別委員会をつくって、特に価格等の問題についていろいろなことを検討すべきだ。先ほど稻山さんからそうした価格の点については示唆というか、そうした方向がほしいという旨の発言がありましたが、こういったことについてどのようにお考えになっていますか。
  66. 永野重雄

    永野参考人 最初の問題についてでございますが、後半の問題につきましては、私どもは両人とも今後の経営方針、心がまえについて申し上げましたし、また今後の競争の実態については、他の会社の名前まであげまして実例を申し上げて、競争すべきであるということを申し上げました。しかし自分たちとしてはまだ納得はいかぬ、不安が残るのだということなら、これから先はわれわれとしてはこうやってくださいということを申し上げ得ない立場でございますので、それは賢明な皆さま方の御意向、御判断によるよりしようがないと思います。ただ一言、すでに鉄は相当大きくなっておるからというお話がございましたが、広い視野から国政全体を御検討の皆さま方に申し上げるのは僭越かもしれませんが、私の私見をもってしますと、日本は船は第一位とか、鉄は世界三位とか、化繊は二位とか、いろいろ一位、二位、三位の産業をたくさん持っております。しかし一面には、国民生活全体はまだ二十位とか二十一位とかいうようなひどい地位にある。結局は日本産業構造が、あるいは農村なりあるいは日本の自然のあり方として、また過去の経済発展段階からしまして中小企業が相当にあるという点、それぞれを総合しますとそういうことになる。しかし農業も必要でございますし、中小企業も必要でございます。そこで、伸びるものについては十分に伸びさして、そして全体の平均を上げていくよりしようがない。そういう意味から言いますと、造船とか鉄とかいうのはずっと伸びて、国全体の平均をせめて五位とか七位とかに上げていきたいものだ。これがわれわれの職責のように思うものでございますから、ある程度まで国家的な、それは技術的にも資金的にもあるいは労働配分の上からも、いろいろな点で御配慮を願っているのでございますが、この上ともなお伸びなくてはいまのような職責は果たせないというような感じがいたすものでございますから、まだこれでがまんできないで、伸びるために、コストを安くするために、あるいは世界市場において品質をよくするために、やりいい方法の一つとして合併をお願い出たような次第でございます。
  67. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは時間がないそうですから、これでやめます。いずれにしても、国民の立場からいきまして、鉄鋼への要請というものは非常に大きいわけです。そういう点で、あくまでも直接国民の消費生活に響いてくるわけですから、慎重にあらゆる意見もまた聴取して考えていただきたい。われわれの立場から言うならば、先ほど申し上げました管理価格の問題、結局一たん合併になってしまえば、幾ら独禁法でチェックするといってもできっこないわけです。経企庁長官はその場合には分割も可能だなんて言っておりますけれども、公取の事務局では、そんなことはできない、そうした見解を言っているわけです。ですからもう合併になってしまえば、ほんと、うに懸念しておったそういう弊害は、私は結局国民に浸透してくると思います。そういう点でひとつ慎重に今後も、ただもう合併するんだ、前向きのそういうあれではなくて、広くあらゆる状況を見つつ、再度ひとつ振り出しに戻って慎重審議せられたい、この点を特に要望しまして終わりたいと思います。
  68. 小峯柳多

    小峯委員長 午前の参考人への質疑はこの程度にとどめます。  参考人各位には御多用中、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、たいへん参考になりました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  69. 小峯柳多

    小峯委員長 速記を始めてください。  参考人川崎製鉄株式会社社長藤本一郎君及び住友金属工業株式会社社長日向方斉君が出席されました。  参考人各位には、御多用のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。製鉄企業構造改善等の問題について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承りたいと存じます。  なお、御意見はお一人十分程度にお取りまとめ願い、そのあとで質疑がありますので、この点御了承願いたいと思います。  それでは藤本参考人にお願い申し上げます。
  70. 藤本一郎

    藤本参考人 藤本でございます。  私、技術の出身でございまして、そういう面から日本鉄鋼業の将来、大きなことを言いますが、実に大ざっぱに簡単に申し上げたいと思います。原稿を持ってきましたので、ちょっと読ましていただきます。  御承知のように、四十二年度のわが国の鉄鋼生産高は、粗鋼にしまして六千三百七十万トンに達しました。このようなことは十年前には予想もしなかったことでありまして、そして数年後には一億トンの生産も可能であろうかと予想されます。短期間にどうしてこのように鉄鋼生産が急伸したか、その原因はいろいろあげられると思いますが、特に言えることは、すぐれた立地条件の上に、旺盛なバイタリティと飽くなき合理化精神によって、業界の公正かつ熾烈な競争を繰り返して、企業の徹底した体質改善を行なってきた結果であると信ずるものでございます。  すなわち、第一番に、日本の製鉄所はいずれも臨海製鉄所でありまして、大型港湾の建設が容易であるため、海運を利用して、世界各地の高品位かつ低廉の鉄鉱石、石炭などの主原料を大型専用船によって安価に入手できること。これは日本が世界に誇り得る最高の立地条件であります。  第二に、戦後のめざましい技術革新を存分に取り入れまして、思い切った設備合理化を進めてきました。ことに新製鉄所では、そのときそのときの最高技術水準の設備を競って取り入れまして、高能率の生産を行なってきました。製品の品質面でも著しい向上がもたらされました。このような合理化の結果、品質の向上と大幅なコストダウンが達成され、鉄鋼需要はさらに喚起され、日本経済発展とともに国内需要は急速に伸長するとともに、国際競争力も一段と強化され、輸出を伸ばすことができるようになったものであります。しかし、日本のこのような努力発展に対し、欧米諸国においてもようやく最近に至って合理化意欲が高まり、各地に新鋭製鉄所の建設が進められているのであります。国際的な競争はさらに一段と熾烈の度を加えていくことであろうと思います。そこで私は、これからの設備技術面での動向について二、三所見を述べてみたいと思います。  まず、一般的に鉄鋼生産設備はますます大型化連続化、そして自動化した大量生産方式の傾向を強めるであろう。なぜなら、この方式がコストを引き下げ、品質の向上、安定に役立つからであります。そして一製鉄所の生産規模も、粗鋼年産七百万トンないし千万トンが必要となりましょう。コストを引き下げるためには、能力の小さい製鉄所を数多く持つよりも、大能力の製鉄所を一つ持ったほうが有利なことは明らかであります。また、鉄鉱石、石炭の輸送船舶も、現状の七万トン、八万トンのものから十二万トン、十三万トンのものになりますので、水深十六メーターないし十七メーターの大型港湾が必要になります。したがって、生産規模も勢い六百万トンないし七百万トン以上の製鉄所でなければつり合いはとれません。  次に技術面では、高炉時代は依然続き、しかも一基の能力はますます巨大化し、内容積三千立米ないし三千五百立米、一日の出銑能力は七千トンないし八千トンのものもあらわれるでしょう。鉱石処理鉱の比率はさらに高まり、高温、高圧送風、コンピューターによる高炉操業も実現するでありましょう。製鋼部門では転炉への転換はさらに続けられ、高炉メーカーでの平炉操業はほとんどその必要がなくなると思います。電気炉は大手メーカーも中小メーカーも、その特殊性のため、現状より増加するものと考えられます。また連続鋳造法については、発想は古いが、量産方式に実用化されたのは最近のことでありますが、若干問題が残されておりまして、分塊圧延法に置きかわるまでには、なお時間が必要であると思います。圧延部門では、大型化、連続高速化、自動化が特に目立ってきております。品質や歩どまり向上のためには、強大な圧力のもとに、できるだけ大型の半製品を高速に圧延するほうがいいのでありまして、AGCやコンピューターを使って自動制御することによって、さらに品質の安定、歩どまりの向上が得られます。十年前の新鋭圧延機も、今日の新鋭圧延機に比べれば、性能において格段の開きがあり、まことに日進月歩とどまるところを知らぬ技術進歩に目を見張る思いがします。旧式化した設備のままでは、あらゆる面で太刀打ちはできません。  また一方におきまして、鉄の高級化を要求されております。科学技術の発達につれて、高張力、耐熱、耐候あるいは極厚、極薄といった鉄鋼の持つ特性を生かしつつ、苛酷な条件に耐え得る製品の開発が望まれています。これらの方面での新技術が今後ますます取り入れられるであろうと思います。  このような技術進歩も、公正かつきびしい競争があればこそのことであります。われわれは自由経済下の公正自由な競争原則のもとに、国内はもちろん、国際市場においても勝ち抜くためには、今後とも新技術の開発をはじめ、あらゆる面での合理化を勇敢に進めるつもりであります。これが結局は国民の利益につながるものと思います。  以上でございます。
  71. 小峯柳多

    小峯委員長 ありがとうございました。  次に日向参考人にお願い申し上げます。
  72. 日向方斉

    日向参考人 日向でございます。本日は商工委員会の皆さま方には、八幡、富士両社の合併について、同業の甘貝の意見を聞くという趣旨じゃないかと想像いたしまして、その問題につきまして私の見解を簡単に述べさしていただきたいと存じます。  私は、もともと企業の自己責任原則に基づく自由競争体制が、わが国経済の健全な発展をもたらす最大の原動力であることを主張し、また実践してまいったものであります。したがいまして、今回の両社の合併につきましても、いろいろの見方があるかと存じますが、私の立場から見ますれば、両社長がその自己責任において、合併が必要であると判断されたものである以上、国民経済全体の観点から問題がなければ、それを認めることはけっこうなことであるかと、かように存じておるのであります。  第二に、国民経済全体の立場から、今回の合併が公共の利益に合致するかどうかの評価は、われわれ業界の者ではなく、むしろ消費者の方々、自由経済の正常な運営を監視しておられる公正取引委員会の皆さんであるとか、そうした客観的な方々によって観察されるべきものであると考えますが、御参考までに同業者の一人の私の意見を申し述べさしていただきますと、この合併によりましてわが国鉄鋼業の寡占状態が進行いたします。寡占状態が進行すればそれだけいわゆる管理価格発生の素地がふえるということは、一般的には言えると思います。しかしながら、寡占即管理価格の発生と即断することは間違いでありまして、逆に寡占が競争を激化させる可能性も一面においてはらんでおるのであります。要は、自由競争の原理が寡占下にあっていかに確保されるかが問題であります。その場合、同業者の一員としての私に関する限り、いわゆる管理価格を形成するような意図は毛頭持っておりません。このことを申し上げたいと存じます。ただし、この辺の判断は、先ほども申し上げましたとおり、客観的な第三者におまかせするよりほかはないもの、かように考えます。  第三に、したがいまして万一巨大な規模を持った会社の出現によりまして何らかの問題が起こるとすれば、それは経済競争以外の要因によって、たとえば政治力とかなんとかいいますか、経済の正常な運営が阻害される場合であると申してよいかと思います。その場合にも、不公正な競争手段を用いるならば、公正取引委員会による現行独禁法の運用によっておのずからこれを取り締まることが可能であるかと思うのであります。なお、新聞紙上等で、一部には特別の監視機構を設けたらどうかという御意見もあるやに伺っておるのでありまして、あるいはこれは、われわれ相対的には弱小企業化するものに対する御配慮かとも存ずるのでありますが、これも考えものでありまして、特別に巨大な企業ができる、その特別な巨大企業だけに対する監視機構であるならば、われわれがとやかく言う筋合いのものでもありませんが、しかしこのような制度が往々にして業界全体の価格生産設備などの監督にまでつき進んでくるおそれがあります。そうなることは私企業の活動に対する政府の介入をもたらし、競争原理を大きく阻害する危険性をはらんでおりますので、そういう全般にわたる意味での監視機構ならば、私どもといたしましてはどうしても賛成申し上げるわけにはまいりません。もし何かそういう監視の必要があるならば、これは機構の問題で、しろうと考えでありますが、むしろ公正取引委員会の機能を拡充強化するなり、公正な競争を確保する方向の監視の強化というのが筋道ではないかと考えます。これはしろうと考えであります。  第四に、このようにだんだんと寡占体制が進んでまいりますれば、寡占が進めば進むほど、その反面において自由競争体制を極力維持することが従来にもまして必要になってまいると考えます。寡占からくる弊害を取り除くためには、純粋の自由経済原理に立ち帰る必要があると思います。すなわち政府の企業活動への介入、その他の経済以外の要因による競争の制約を極力排除して、企業の自由活動と、その結果に対する企業の自己責任を明確にすることが絶対必要であると思います。その一例といたしまして、設備投資の問題があるのでありますが、、企業経営の根幹である設備投資のあり方につきましても、この際とくと再検討すべきときに来ていると思います。現在の鉄鋼設備調整の方式は、業界の自主調整を原則としていますが、まとまらないときには鉄鋼部会の答申を経て通産大臣が裁定を下すことの仕組みになっております。寡占の進行しておる今日においては、このような調整方式は取りやめて、むしろ設備投資は各社の自己責任にゆだねるほうが、長期の見地から競争原理を確保し、経営を効率化し、またむやみな設備競争を自主的に取り除く最善の道であるものと信じます。従来、設備調整があるがゆえに、逆に設備競争を誘発している事実も見のがせないと思います。  最後に、資本の自由化、経済の国際化、いよいよ世界的経済競争の時代の中で、日本経済発展していく原動力は、何と申しましても競争原理による企業のバイタリティを生かしていくことであることは、ただいま藤本社長のお話にもありましたとおりでございまして、自由競争原理こそ、今後ますます進行していくであろう寡占の弊害への最良の歯どめになると思います。その意味で、今日こそ自由経済の本質を取り戻すべき機会であると考えております。  簡単に私の所見を申し述べまして、御参考に供したいと思います。(拍手)
  73. 小峯柳多

    小峯委員長 ありがとうございました。
  74. 小峯柳多

    小峯委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。田中六助君。
  75. 田中六助

    田中(六)委員 午前中は八幡、富士の両社長に参考人として来ていただき、午後は藤本日向両社長にお願いするわけでありますが、この富士、八幡の合併に関することにつきましてこれはニュアンスが多少、特に日向社長と稻山さんの見解が違う点がございますので、そういう観点から聞きたいと思います。  特に日向社長は鉄鋼界の一匹オオカミで、政府から何か原料炭の輸入を差しとめられたりするようなこともあったことを記憶しておりますが、私は一部国民が非常に心配しております、両社の合併によって生産シェアが三五%になる、それから特にこまかい点を申しますと重軌条、つまりレールなどが八六・八%、鋼矢板が九六%というふうに、各品目に入るとさらに寡占の影響が大きく占めてくるわけでございます。そうなると、どうしても管理価格——歴史の中にも、USスチールがそういう寡占の価格の上にあぐらをかいて、かなりの批判を浴びておるという点と、それからもう一つは、合併が必ずしも効果をあらわしてないということは、USスチールのこれもやはり例でございますが、一九五一年には市場六五%はアメリカ国内で占有しておったのが、現在は二〇数%というようなことにもなりかねないし、この合併によってプライスリーディングと申しますか、そういう価格を一定の自分たちのいいように維持できる、消費者というものを第三に考えるという結果を、ほんとうはそういうふうに考えたとしても結果的にそういう経済体制に落ち込むということを、私どもは憂えるわけでございます。したがって、いまこの合併について合理的な効果が出てくることは一応確かでありましょう。したがって、メリット、デメリットの関係でいま各学者はもちろん、国会でもあるいは各部門で討議されておるわけでございますが、私のまずお聞きしたいのは、ひとつこの合併によって、私は専門家でありませんので、自分が当事者でありますからお聞きしたいのでありますが、いつごろからその効果があるか、しかもとの程度——こういうのは数字の面であるいは予測で、もちろんこれは推測しかできないわけですが、どの程度、いつごろから、この二つの観点からお二人の御意見をお伺いしたいというふうに思います。
  76. 藤本一郎

    藤本参考人 私、八幡、富士の内容はよく知りませんので、はっきりしたことは申し上げられませんが、合併というものは非常にむずかしいものだと思います。合併がすっきりした姿になるには早くて二、三年、おそくて四、五年、その程度かかるのではないか、そういうふうに考えております。しかも日本の第一位、第二位の大きな会社でございますから、相当時間がかかるものと思います。
  77. 日向方斉

    日向参考人 それは当事者のやり方一つですからわかりませんが、大体の勘としましては、いま藤本さんのおっしゃったことと同じような感じを持っております。
  78. 田中六助

    田中(六)委員 私の持ち時間が十分だそうですから、あと一問でお譲りしたいと思います。と申しますのは、日向社長のおっしゃるように、自由体制をずっと詰めていきますと、この合併によって、もしかしたら人員の構成であるとかあるいは現在の潜在実力などから見ますと、考え方によっては、合併した新会社よりも、数年たった暁にはむしろ皆さんの会社のほうがうんと伸びる、あるいはうまくすると追い越すというような可能性さえ秘めていると私は思うのです。それはやり方によっては必ずしも否定できないことだと思うのです。というのは、合併して調整をしなければいかぬ。調整と口で言うことはやさしいのですが、現実問題としていま藤本社長は三年から五年くらい、日向社長も大体その程度と見ておられるようですが、鉄鋼界の現状から見て将来を展望した場合に、五年たったシェア競争、それから合理化の程度を見ますと、私は私が先ほど申しましたようなことがあり得ると思うのです。そういう観点から見ますと、いずれにしても、合併したほうの会社とあるいは現状のままでいまの潜在勢力を顕在化していこうという会社、二つは、これは必ずしも競争が無視されるという事態よりも、むしろやはり競争していく状態が望ましいことでございますし、そうなる可能性のほうが多い。私は、田中六助個人としてはそういう見解を持っているわけでございますが、いずれにしても、両方の側を、日向社長はこれをよく監視してほしい。しかし監視機構についての構成の考え方については、いろいろ御意見を述べられましたが、やはりここで問題になってくるのは独禁法だと思うのです。独禁法を監視する公取、そういうような面を見ますと、だんだん昔の独禁法が存在しておった時代と現在、それからこれから発展しようという時代を考えるとき、独禁法そのものがかえって非常に産業全体の発展を阻止する要因になるのではないか。アメリカでも日本よりもシビアーな独禁法がありますけれども、これをかいくぐっていろいろなことをやっているわけです。しかもそのやっているのが効果がある。日本の場合も独禁法を現状のままでいいかどうかということについて私はときおり疑問を持ちますし、午前の質問でもちょっと言ったのですが、ガルブレース教授なども、新しい資本主義のあり方というものは独禁法で制約されておったらたいへんだという見解をその論の中に入れているわけです。そういう観点はどうなんでしょうか。お二人にお願いしたいと思います。
  79. 藤本一郎

    藤本参考人 私、独禁法についてはよく知りませんが、その精神は、消費者の幸福、そういうことにあると思います。その意味においては私独禁法はいいと思いますが、しかし私たち生産をやろうとするときあるいはそれを調整したいと思うとき、お互いに話し合いできないということは非常に不合理ではないかというような気がするのです。独禁法に対しましては、ある程度緩和して、生産調整なんかの話し合い、その程度のことは許していいんじゃないか、そのくらいのことしか私存じ上げません。
  80. 日向方斉

    日向参考人 独禁法の精神については、自由経済の一つの歯どめとして必要だと思っております。それから運用については、時代の変遷に従って改善の余地があるのではないかという感がしております。ただいま出ましたたとえば不況カルテル行為は許されておる。不況カルテル行為をするための要因は何かというと、全業界全部が無配にでもならなければならぬようなときでなければいかぬというふうに、厳密に解釈されると非常にややこしいむずかしい事態になると思いますが、一つの品種をとってみて、業界全部がこれは赤字であるということもある。その値段が国際価格から見て明らかに下回っておるというようなときには、不況カルテルを組んでもいいというふうな経済的、実際的解釈をしていけば、現行独禁法でもかなり運用の妙が発揮できるように思います。
  81. 田中六助

    田中(六)委員 けっこうです。
  82. 小峯柳多

  83. 堀昌雄

    ○堀委員 最初に藤本参考人にお伺いをいたしますが、私はかねてから通産省がやってまいりました一律粗鋼減産というあのやり方には実は反対でございまして、やはり、いまもお話が出ましたけれども、独禁法には必要があれば法律に基づいて不況カルテルをつくるという仕組みがあるわけでございますが、残念ながら、これまではそういう手続は手間がかかると称して、独禁法としては本来認められない通産省による勧告という、私どもは違法な処置だと理解をしておりますが、そういう処置が二回ばかり繰り返されたわけであります。私は、今日も依然として、通産大臣に、こういうことはやめるべきだと申しておるわけでございますが、藤本参考人は、一律粗鋼減産についてどのようにお考えになっているか。
  84. 藤本一郎

    藤本参考人 ちょっと最後のところがわかりにくかったのですが……。
  85. 堀昌雄

    ○堀委員 一律粗鋼減産ということを二回やりましたね。こういうやり方は望ましいのかどうか。私は、法律の定める品種別不況カルテルでやることが、現行法としてもまた実際の経済上の問題からしても合理的だと考えておりますが……。
  86. 藤本一郎

    藤本参考人 あなたのおっしゃるとおりと思います。ただ、品種別にやることは技術的に非常にむずかしいのでございます。それで、一律に粗鋼を減産する、そういうふうに持っていったほうが手っとり早いから、そういうように私どもは提案するわけでございまして、ほんとうは、理屈からいったら品種別にやるべきだと思っております。
  87. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、私も、先ほど日向さんがおっしゃったように、資本主義でありますならば自己責任に徹してもらいたいというのが私の主張なんです。自己責任に徹してもらうならば、設備投資を皆さんが自己責任でおやりになって、そうして、過剰生産で、全体の経済の情勢で不況が起きてきたときに、やはり御自分の力で処置をしていただくのが本来のことでして、自分の設備をつくるときは自己責任で、不況になったら政府の力で粗鋼減産で逃げようなんというのは、論理が一貫しないというのが私の主張なんです。ですから、もし粗鋼減産のようなことが行なわれるのなら、設備調整は政府が責任を持ってやれというのが私の考えです。政府が責任を持ってやったことなら締めくくりは政府がとる、しかし自己責任でやったのなら締めくくりも自己責任だ、できるのは不況カルテルだというのが私の考えですが、設備投資について、日向参考人はいまお話しになりましたから、藤本参考人はどういうふうにお考えになっておるか、今後の問題として。
  88. 藤本一郎

    藤本参考人 私は、さっき日向社長がおっしゃったように、やはり設備は自己責任でやらしていただきたいと思っております。そのかわり、会社がまずくなったからといって、政府に援助をお願いするようなことは決してしないつもりでおります。
  89. 堀昌雄

    ○堀委員 ここが今後の鉄鋼行政で非常に肝心なところでございまして、実はさっき永野参考人がこういうふうにおっしゃったわけです。価格については私どもは実はちょっと不安がある、非常に大きなシェアをお持ちになった結果一方的にきまるおそれがあるのではないか、こう申し上げましたら、実は過去において鉄鋼価格が非常に高いときに安い価格で出したこともあるから、信用してくれ、こうおっしゃった。しかし私が信用できないのは、これまでの設備投資の状況を見て、そういう論理ならば、よそがやっても自分のところは無理をしないというなら話がわかるのですが、必ずしもそうなっていなかったので、その点については問題があると申し上げたわけであります。  そこで、今後の設備投資となりますと、先ほども話が出ておりましたが、二つが一緒になったものはいつまでも二つで通用する単位なのかという問題が出てくるわけですね。今度は一つなんですね。大きいけれども一つだ。そうすると、今度は、新会社、それから、ここにいらっしゃる方だけで、川鉄、住友、こうなった場合に、これは二つくっついたのだから設備投資の場合のシェアはここは常に二なんだ、それで、皆さんのほうは一なんだ。これは、私、当面起きてくる問題だろうと思うのです。その場合に、皆さん方はそれをどう理解されるか。新会社一つになったらそればやはり一つだ、われわれも一つだ、こういう御理解になるのか。しかたがないから向こうはずっと二なんだ、こっちは一なんだ、こういうことになるのか。これについてちょっと日向参考人から……。
  90. 日向方斉

    日向参考人 設備投資の問題はなかなかむずかしい問題でありまして、いまのお話はいわゆるシェア論であるかと思うのでありますが、過去の実績によって未来を縛るということは私は絶対不賛成であります。企業の実力に応じた設備をしていくということでなければ経済発展いたしません。でありますから、当面あるいは二対一ということになるのかもしれません、やってみなければわかりませんが。しかしながら、永久にそれが続くのか、あるいは三対一になるのかもしれませんし、一対一になるのかもしれません。その変化していくのが自由経済であり、それがわれわれの企業努力だ、かように考えております。
  91. 堀昌雄

    ○堀委員 当面シェアに結びついた感覚が残ると私も思います。ただしかし、大きい小さいという問題は、自己責任という問題から見ますと、大きいから常にいいということにもならないし、小さいから効率が悪い、財務比率が悪いということにも必ずしもならないと思うのです。ですから、そういう場合には、最初のここ一年くらいは別としても、少し二、三年たってきたら、では一体設備投資をこうなさる、しかし国の側からしますと、過去のような状態で、皆さんが一本ずつさっと建てるのだということになりますと、これは、需要の面なり資金の面なりで、国家的にはやはり半分にしてもらいたいという要請が出てくる場合が十分あると思うのです。その場合にはいまのようなものさしば何になりますか。
  92. 日向方斉

    日向参考人 その前にちょっと、当面シェアでまかり通るかもしれぬということを私は認めませんから、私はこの際そんなことを認めるわけにいきませんから、あるいは結果においてどんなことになるかもしれないという一つの意味で申し上げたわけでありまして、当面といえども二対一であるかどうかわかりませんよ。しかし資、本主義社会における会社の力というものは、過去の生産量ではないのでありまして、資本力であるはずであります。ですから、いかに割り当てができても、実行できない会社もあるかもしれません。でありますから、そういう調整は無意味だと思うのです。だから、その財力に応じた設備をやらしてくれというのが私の意見であり、藤本社長の意見であるのであります。その財力に応じた投資をやらせる方法は何かというと、私は、前から言っておりますように、資産負債比率、流動比率等による財務による財力計算をしてやらしてくれというのが私の主張でございます。
  93. 堀昌雄

    ○堀委員 そこはわかりますが、そうすると、家的要請はあります、介入するしないは別として。鉄鋼としては、この際、いまの設備投資を半分にしてくれという要請が出たといたしますね。そうすると、その半分というのは、日向さんのお考えでは、あくまで自主調整でやらしてもらいたい、こういうことでありますし、そのものさしは財務比率だ、こういうことになるわけでございますね。しかし、現実にはこれまで自主調整という形はなかなかつかないというのが過去の実例でございますね。つかなかったときにはそれではどうしたらいいのでしょうか。
  94. 日向方斉

    日向参考人 これはもう、そういう調整をやめていただきたいのであります。そうして、実力に応じてやれば、むちゃをやればその会社はつぶれますし、そういう会社に金を出した銀行も、取りつけば最近ないようでありますが、業績も落ちますし、そういう時代に来ておると思います。そういうことを通じて、日本の自由経済が健全に発展できると私は確信しております。いいかげんな割り当てをすると、それが権利化して、力がなくても金が集まるというようなことをやっていくことは健全な発展につながらないと私は思っております。
  95. 堀昌雄

    ○堀委員 後段はわかるのですが、前段のほうで、要するに、たとえばことしもそうでありますが、ほんとうは実は昨年やるべきことであったのでありますけれども、いま産投資金は、御承知のように支払いベースでいろいろ調整をやっておりますが、支払いベースでやるのは間違いだというのが私の主張でございまして、コントロールするなら工事ベースでコントロールしなければ、資金ベースだけでいくことば問題があります。しかし、工事ベースでは、やはり異常な成長が起こるときにはある程度事前にコントロールしなければ、御承知のような日本の国際収支の状況でありますから、皆さん方に、御自由にどうぞといって、どんどん走られたのではどうにもならないのであります。そこまで資本家の皆さん方が最終的責任まで負えるかというと、実際は負えなかったというのが今日の引き締めの実情だろうと思うので、やはりどうしてもそういうようなある程度のワクといいますか、鉄鋼はこのくらいにしてくれということはやむを得ないことじゃないかと思うのですが、その点も御反対だ、こういうことでしょうか。
  96. 日向方斉

    日向参考人 私の試案としましては、もしそれならば、先ほど申し上げました一定の財務比率を高めに設定して、その範囲で自由にやれ、そうすると、この会社は三年たたなければ高炉は建たない、この会社は五年たたなければ高炉は建たない、しかしこの会社は二年間でやりたいから小さい高炉を建てる、そういうようなことをやる、そういうようなことになるかもしれませんが、それが体力に応じた投資、こういうふうに考えております。これは私の試案でございます。
  97. 堀昌雄

    ○堀委員 要するに、ある程度設備調整の要請がある場合には、ものさしをつけて要請をしてもらいたい、こういうことでございますね。
  98. 日向方斉

    日向参考人 恐縮でございますが、補足させていただきます。  そのものさしというものは資本主義である限り財力である、そうであるべきであると私は思います。なぜこういうことを申し上げるかといいますと、世界銀行借款が各社の財務比率を縛っておる間は、各社がてんてこ舞いしても設備はできなかった、急いでやろうにもできなかった。でありますから、その間はとんでもないラッシュにはならなかったわけです。その制約がきかなくなってきてから異常なラッシュになってきたようでありますから、そういうもので客観的に縛っておけばむちゃな投資がおのずからできなくなると私は信じております。
  99. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの問題は一応それで終わりますが、次に、独禁法に対する理解は、さっきちょっとお話がございましたが、アメリカでは、一九五九年にベスレヘム・スチールとヤングスタウン・シート・アンド・チューブが合併申請をいたしました。ところが、当時シニアは二〇%でありましたが、却下されたという実例がアメリカにあるわけです。私は私なりに、このアメリカの資本主義というものはなかなかきちんとした資本主義といいますか、ルールがきちんとしていまして、守らせるところは守らせる、そういう点では日本よりもはるかにシステムができている感じが非常にするのであります。日本の場合はどうもその点がやや1日向さんのお考えは大いに自由競争ですから弱肉強食ということでいいのかもしれません。いまの発想からいくと、富士、八幡の合併なんというのは、自由競争としては起こる一つの要素の中に入ってきますので御賛成の側になるかもしれませんが、私ども、さっきからお話を聞いていても、やはり競争はなくならないのだ、こうおっしゃっておるわけですね。合併しても競争は残るのだ。残るのならいまのままでいいのじゃないか、実は私はそう思うのですね。合併をしなければならぬほどに差し迫った問題はどうもなさそうだと私は見ております。独禁法の観点からして、この間も公取委員長が申しましたが、シェアが三〇%以上は問題がある。ところが、三〇%というのは実は粗鋼だけが三〇%でして——三五%ですか、あとの品種の問題については五〇%をこえるものがかなりあるという条件ですから、そういう点で、自由競争というのは、少なくとも現状のままでいくほうが望ましいということになるのじゃないか、私はこう判断をするのですが、いまのアメリカの関係と日本の現状等から判断をされて、競争の姿としてはどっちのほうが有効かという点について、日向参考人にお伺いします。
  100. 日向方斉

    日向参考人 アメリカの独禁法の合併に対する態度は日本よりきびしいようでございます。しかしそれは、法律がどういうふうな規定をしておるか、私詳しく存じ上げておりません。確かにお説のように、第二位の会社と第五位の会社が合併して二一%のシェアになろうとしたときに却下しております。しかし、そのことがいいのか、今回の八幡さんと富士さんの合併がいいのか、それが競争にどういう影響を及ぼすか、競争原利保全のために、それが公共の利益になるのかならないのかということは、私どもよりもむしろ第三者にお聞き願いたいと思うのでありまして、私どもはその業界の渦中の一員として、たとえ三五%の大会社ができましても、及ばずながら堂々と自由競争を続けていきたい、決して管理価格などをやる意思はない、独禁法がある以上、その法律に従って行動したいということを申し上げます。
  101. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの問題は、ほかの方もいらっしゃいますから、終わりにしたいと思うのですが、きょう最初に稻山さんと永野さんのお話の中で、たとえばレールのようなものは、国鉄が一社で買うんだから、価格は国鉄のほうできまってしまうから、そんな不当な価格はつくれない、こうおっしゃっておるわけです。実は、総資本利益率をずっと見ておりますと、最近は、まだ四十二年の上期しか資料がございませんからわかりませんが、過去の例では、三十七年下期というのは非常に悪かった例でありますが、利益率そのものは実はそんなにひどく悪くなっておらないのじゃないか、市況はかなり低迷しておるといいながら、そんなに悪くなっていないのじゃないかという感じがするのであります。さっきお話がありましたように、不況カルテルをつくりたいということがもし起きる場合に、それはしかし個々の品種で原価計算ができるのでございましょうか。そこのところにちょっと私——全体として利益は上がっておる、しかし、この品種だけが下がった、それだけじゃ不況カルテルをつくるというようなことが、そんなふうにうまくいくかどうかという点ちょっと疑問があるのでございますが、この点を伺っておきたいと思います。
  102. 日向方斉

    日向参考人 これは各社とも品種別の原価計算をしておりますから、不況カルテルを申請する場合には、そういう品種別原価計算を出して申請するのが筋であるかと私は思います。
  103. 堀昌雄

    ○堀委員 その場合、さっき無配でなければ、とおっしゃったのですが、配当の問題というものは多少企業の恣意的な判断で内部留保に回して無配にする場合もあると思います。それからさっきの財務比率からきまして、やはり利益率が大体このくらいまできたとき、あるいはいまの原価を割ったらよろしいとか、全体の利益が上がっておるのに、ある品種だけがたとえば平電炉メーカーとの競争で非常に下がったというようなときに、それだけですぐ不況カルテルというのは私はちょっと問題があるので、やはり全体のそういう利益率とその品種のコストをあわせて考える必要があるのではないか、こう考えるのですが、その点はいかがでございましょう。
  104. 日向方斉

    日向参考人 ただいまの金利水準から見ますと、あるいは配当に対する源泉課税から見ますと、一割配当をしなければ、まず配当の部類に入らぬと思います。でありますから、われわれは一割配当は維持したいと思います。そういうことを前提にしまして、品種別に見まして、確かに、能率のいい会社は、例外は別として、大体この品種は採算が合わない、しかもその価格は国際価格よりも明らかに下回っておるというような品種については、むしろ堂々と不況カルテルを申請して組んでもらい、公取のほうも無理ないなというふうに経済的にお考え願えれば、現在の独禁法もかなり有効に活用できるのではないかというふうに私は考えます。
  105. 小峯柳多

  106. 中谷鉄也

    中谷委員 あと委員の質問もありますから、簡単にお尋ねをしておきたいと思います。  日向参考人にお尋ねをいたしたいと思いますが、製鉄所の所在する地域社会の社会経済に与える影響の大きさ、こういう問題については機会を改めてお尋ねをいたしたいと思います。いま一つは、先ほど日向参考人のお話の中で、合併の問題については企業の自己責任ということを非常に強調されまして、そうして国民経済的な観点からは、この問題については独禁法の解釈、認定、判断をまかされているところの公正取引委員会と消費者が、いわゆる国民経済的な観点から公共の利益に合致するかどうか、これを判断さるべきであるという御意見開陳がありましたが、私は、この点については全く賛成なんです。と申しますのは、これはひとつ重ねてその点について御意見をいただきたいと思いますが、今度の合併問題については、もちろんこの合併の問題は単に独禁政策の問題だけではなしに、産業政策の問題、鉄鋼産業のあり方の問題も私は関係してまいると思いますけれども、各省、各庁の意見が非常に百花繚乱の感があると思うのです。やはり、この問題についての十五条の承認、不承認という問題は、むしろ準司法的な手続であり、判断なんですから、公正取引委員会の冷静な判断ができるような環境をつくる、もちろん当事者、利害関係者はこの問題について主張すべきことは十分に主張すべきでありましょうけれども、あまり回りの者ががたがた言うというふうなことはむしろかえっていろんな面において国民一般の誤解を招くんじゃないか、このような感じもするわけですが、この点についてはいかがでしょうか。
  107. 日向方斉

    日向参考人 回りの、お役所の皆さんの御意見発表等につきまして、私がとかく申し上げる立場にございませんので、遠慮させていただきたいと存じます。ただ、私は、同業の一人でありますから、これによって管理価格になるんじゃないかというような御心配をお持ちになっている方が多いようでありますから、同業の一人として、そういうものには持っていきたくない、自分は少なくともそういうものには持っていきたくない、あくまで自由競争でいくという決意を申し上げた次第でございます。  それから、前段にちょっとお話がありました製鉄所とその地域環境の問題でございますが、私は、和歌山にも大きな製鉄所をつくりつつある、ほとんど完成しております、もう少しありますが、あるいは鹿島にもまたやりますが、地域環境とは大いに融和していきたいと思います。また、それによりまして、その地方の経済発展にも貢献できますし、また反面、公害等の問題等がありまして、和歌山だけでも数十億円の公害防止資金を使っております。のみならず、環境の改善につきましてもいろいろと努力はしております。それでも、しかし御不満の方もあるようでありますが、しかしながら、これについて企業としての負担し得る限界もおのずからありますが、誠意を持って地域環境とも共存共栄関係を維持してまいりたいと思いますので、そのことだけを申し述べておきます。
  108. 中谷鉄也

    中谷委員 後段にお答えいただいた点は、またあらためてお尋ねをいたす機会を持ちたいと思いますが、管理価格といわれている問題については、両参考人とも、そういうふうな心配は要らないんだ、こういうふうなことをお答えいただきました。また、午前中の参考人の方も同趣旨のお話があったわけです。ただ、管理価格の問題というのは、午前中も私発言をしたのですけれども、要するに、合併ということがかりに承認された場合、その承認の結果、将来生じてくる問題であって、要するに管理価格は生じないだろうという予測の問題であろうことはもう間違いないと思うのです。したがいまして、現在の時点に立って、そういう管理価格は生じないというふうに考えられる、見通しができる、こういうふうなことでありますけれども、そこには、それに対する保障というものがなければ、消費者の立場からいいますと非常に不安だということは同僚委員からも発言があったわけなんです。そこで、先ほど日向参考人のお話の中にありました、いわゆるそういうふうな管理価格を生ずるおそれはないけれども、そういうようなものについて、それをチェックするような制度があってもいいというようなお話として私は承ったのですが、この点をもう少しお聞きしたいと思うのです。  いわゆる監視機構というふうなことばが新聞の報道で見えるわけですけれども、合併の問題が大きく取り上げられまして、そうして合併は承認さるべきだ、不承認だというふうなお話があって、それに随伴をして監視機構をつくるかつくらないかという問題が出てきたという経過であることは、これは間違いないと思うのです。そこで、その監視機構ということばも非常に熟さないことばでありますけれども、要するに管理価格というふうなものが起きて消費者に迷惑をかけないような、そういうふうなチェックするものというものについては、具体的にもう少し御説明をいただきたいのです。  日向参考人にお尋ねしますけれども、どのような制度を予想しておられるか。たとえば独禁法の強化であるとか、あるいは公取の人員の充足であるとか、いろいろな問題がありますが、具体的にはどのようなものを予想しておられるのでしょうか。先ほど堀委員のほうからアメリカの例をお引きになりましたけれども、アメリカ、イギリス、欧州などにおいてはかなり価格の問題については政策的にも制度的にも措置がされているようであります。西ドイツ、フランスなどにおいてはまた若干別のあり方のようでありますけれども、これらの点について、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  109. 日向方斉

    日向参考人 管理価格が心配だから監視しよう、こういうことになりますと、その分野は、私は法律は詳しくはありませんが、その機能は公正取引委員会の機能に入るのではないかと思います。もしそこが御心配ならば、その公正取引委員会の機能を強化されるという筋合いになるように思います。
  110. 中谷鉄也

    中谷委員 私の時間がないようですので、一点だけお尋ねしておきますけれども、現在の独禁法の中でそのようなものはまかなえる、いわゆる強化というのは公正取引委員会の機能面の人員の充足等の強化で足りるのであって、必ずしも現行の独禁法というものをいじるというふうなことはしなくても効果は達せられるというお考えなのでしょうか。それとも、いや、そんなに心配だったらさらに独禁法そのものを制度として強化することもあり得る、そういうことも業界としては別に拒否するものではないというふうな御意見なのでしょうか。この点いかがでしょうか。
  111. 日向方斉

    日向参考人 どうも法律は詳しくありませんから答える資格はないと思いますが、大体の感じから言いますと、いまの管理価格をやっているかやっていないかというようなことを見分けるか見分けないかというようなことは、現行独禁法の活用ででき得るのじゃないかというふうに考えます。
  112. 小峯柳多

  113. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 時間もございませんから、ごく簡単に一問だけ。  実は八幡、富士の合併によって今後の設備競争はますます強化をするのだという意見と、いや、むしろ設備競争は鎮静されるのだという意見と、いろいろ見方がある。また、いまお話しの管理価格の問題については、これは管理価格体制に入るだろう、こういう見方が大方の意見です。ところが、そういう中において、住友さんとかあるいは川鉄とか日本鋼管といういわば業界のほうから、八幡、富士の合併について賛意を表されておる。これがどういう形式で——新聞記者が行ったときにちょっと話したのか、そう伝わったのか、反対というのじゃなくて、むしろ賛意を表されておるというふうに新聞紙上で承っておるわけです。そこで、賛意を表しておるということについて、またいろいろ憶測をし、また将来をいろいろ考えておる。そこで、ずばり聞きにくいことを聞くわけですけれども、一体賛意を表されているというのは、金持ちけんかせずといいますか、同業者のことだからあまり要らねことを言わなくてもいい、こういう気持ちであるのか。ほんとうに競争はどうなるのか、価格形成はどうなるのか、これが一番われわれが政策を論ずる場合に大きな問題点なんですね。それで、一体それについてどういう気持ちなのか。とにかく賛意を表されているというのは、これは何かやはりリーダープライスというようなものが形成されて、それでまあまあいまのように利益なき投資をやっていてもいいのだというようなこともあるのじゃないかというような点も憶測できるわけですが、ひとつ忌憚のない御答弁を願いたい。
  114. 日向方斉

    日向参考人 先ほど私が冒頭申し上げましたように、自由主義経済、自己責任によって企業を経営していくのでありますから、公共の利益その他、第三者がいけないというなら別ですけれども、そうでないならば、りっぱな会社の社長が一緒になろうというのでありますから、けっこうであります、さよう申しただけであります。
  115. 小峯柳多

  116. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう時間がありませんから簡潔にしたいと思いますが、八幡と富士の合併に際しまして先ほどもお話がいろいろ出ておりましたが、経企庁なりあるいは通産省あたりがいうならば産婆役のような働きをしておる、あるいはまた政治的な力が加わっておるのではないか、こうした憶測が行なわれているわけです。こうした動きに対して両社長さんはどういうように思っていらっしゃいますか。
  117. 藤本一郎

    藤本参考人 私もそういう事実は知りませんので、何とも思っておりません。
  118. 日向方斉

    日向参考人 どうもお役所の高官や皆さんお話しのことをとかく私どもが何とか言う立場にないと思います。いろいろお考えがあってのお話であろうと思って新聞等で拝見をしております。
  119. 近江巳記夫

    ○近江委員 お立場よくわかりますけれども、こういうときにこそ思い切って日ごろ思っていらっしゃることを言っていただくことが、われわれにとって非常に大きな参考になるわけですが、お立場もありますから、一応この点はおきますが、両社合併の問題は結局規模の利益の追求になると思うのです。こういう点でいま実際の鉄鋼界における技術水準からいきまして、適正な規模というのはどのくらいにお考えになっていらっしゃいますか。
  120. 日向方斉

    日向参考人 先ほども藤本社長からお話がありまして、近代の製鉄所はまず七、八百万トンくらいの臨海製鉄所が規模としていいのではないかというような御説明がありましたが、私も大体そのように考えておりますし、通産省あたりのお話でも大体そのようなところであります。
  121. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、合併する二社は大体そのくらいの規模に近い線に来ておるわけです。いま御意見を聞いたわけでありますが、両社はそた以下ということは考えられないわけですね。そういう点からいくと、ここに非常に疑問が残るわけです。決して以上でないのに合併をする。それで率直な御意見を賜わりたいと思うのですが、同業者として、いままで両社は鉄鋼界における大ものでありますし、われわれも非常に関心を持って見ておるわけでありますが、これを合併したときに、率直な御意見として、いま両社長さんが一番心配なさっている点を述べてもらいたい。ひとつ心境を聞かしてもらいたい。
  122. 藤本一郎

    藤本参考人 両社が合併してすっきりした姿になった場合、そのときは実におそるべき力になると思っております。技術の開発あるいは設備の更新など着々と行なうでしょうから、ただいまのように輪西とか室蘭とかあるいは旧八幡とか、ああいうふうな古い設備は更新されまして、それぞれ六百万トン、七百万トンのユニットの工場が四つくらいできると思いますが、そうなれば実におそろしいと思っております。それだけ私たちは今後に対しまして大いに努力しなければいけないというつもりでおります。
  123. 日向方斉

    日向参考人 第一点は、それぞれで数百万トンの製鉄所を持っているから、国際競争力は現在でもあるのじゃないかという点が第一点でございましたね。——そういう質問ではなかったのですか。なければやめます。  第二点の、強力なものになるだろうという点は、藤本社長のおっしゃるとおりであります。したがいまして、われわれも大いに合理化を行ない、近代化を行なって、自由競争に負けないように努力したいと思います。
  124. 近江巳記夫

    ○近江委員 一応は不安を感じていらっしゃるわけです。その反面、実際に合併の効果が出てくるまでには、先ほどおっしゃったように何年かかかる。長ければ五年、早ければ三年、大男総身に知恵が回りかねということばもありますし、いろいろな困難も合併になれば伴ってくる。そういうような面の足踏み状態のときもあるわけでありますが、しかしそれから数年後の状態を考えれば、非常な脅威を感じていらっしゃる。そうした場合格段の差がつくわけです。一位と二位が合併する。そうした場合、両社長さんとしてそれに対抗する——要するに企業間格差の問題をどのように今後考えていらっしゃるのか、その辺のところをひとつお聞きしたいと思うのです。
  125. 藤本一郎

    藤本参考人 私ども千葉製鉄所、これがただいま六百万トンやっております。水島製鉄所はただいま二百万トンやっております。来年のいまごろには四百万トンぐらいになると思います。これをもう一段と大きくしまして八百万トンぐらいに持っていきたい。これば八幡、富士の合併したメリットが出てくるまでにそういうふうに持っていきたいと思っております。この千葉と水島と二つでもって対抗していきたい。私は負けないつもりでおります。
  126. 日向方斉

    日向参考人 私ども和歌山で現在六百万トンの製鉄所ができておりますが、明春これが八百万トン以上の製鉄所になりますので、これを活用いたしまして極力競争していきたいと思いますが、先ほどの合併の効果が三年であがるか、あるいは一年であるか二年であるか、これはやりよう次第でいかようにもできてまいりますので、常に競争経済下においては最善の努力をしてまいるつもりであります。しかしながら、自由経済下の両社が合併する決意でありますし、それが公共の利益の上から許されるものであるならば、それがいかに強大になろうとも、われわれは堂々とそれに競争していくべく努力をしていく以外に方法はないと思います。また努力の余地もあると思っております。
  127. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間がございませんので、終わります。いずれにしても、鉄鋼は最も基幹産業でありますし、今後の日本産業発展のためにもひとつ大いにがんばっていただきたいと思います。
  128. 小峯柳多

    小峯委員長 参考人に対する質疑はこの程度にとどめます。  参考人各位には、御多用中長時間にわたり、貴重な御意見をお述べいただき、たいへん参考になりました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。どうぞお引き取りくださいますように……。      ————◇—————
  129. 小峯柳多

    小峯委員長 これより請願の審査に入ります。  本国会において、本委員会に付託されました請願は百六十二件であります。  請願日程第一より第一六二までを一括して議題といたします。  まず審査の方法についておはかりいたします。  各請願の内容については、文書表で御承知のことと存じます。また先ほどの理事会で御検討願ったところでありますので、この際、各請願について紹介議員よりの説明聴取等は省略し、直ちに採決に入りたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  130. 小峯柳多

    小峯委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  これより採決いたします。  請願日程中、第一ないし第一〇、第一〇八ないし第一一九、第一五五及び第一五六の各請願は、いずれも採択の上内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  131. 小峯柳多

    小峯委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、ただいま議決いたしました請願に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  132. 小峯柳多

    小峯委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  133. 小峯柳多

    小峯委員長 なお、本委員会参考送付されております陳情書は、和歌山県の振興山村指定町村増加に関する陳情書外二十六件であります。この際、御報告申し上げます。      ————◇—————
  134. 小峯柳多

    小峯委員長 次に、閉会中審査に関する件についておはかりいたします。  すなわち、  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  公益事業に関する件  鉱工業に関する件  商業に関する件  通商に関する件  中小企業に関する件  特許に関する件  私的独占の禁止及び公正取引に関する件  鉱業と一般公益との調整等に関する件  以上各案件について、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 小峯柳多

    小峯委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、今国会に設置いたしました産業構造並びに貿易対策に関する小委員会産業金融に関する小委員会及び鉱業政策に関する小委員会は、閉会中もこれを設置し、調査を続けることに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 小峯柳多

    小峯委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、閉会中審査を行なうにあたりまして、参考人より意見を聴取する必要が生じました場合の人選、日時、手続等に関しましては、あらかじめ、すべて委員長に御一任を願っておきたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  137. 小峯柳多

    小峯委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に閉会中委員派遣に関する件についておはかりいたします。  閉会中審査案件が付託になり、審査のため委員派遣を行なう必要が生じました場合には、委員派遣承認の申請に関しましては、すべて委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  138. 小峯柳多

    小峯委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日は、これにて散会いたします。    午後二時十三分散会