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1968-03-19 第58回国会 衆議院 商工委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月十九日(火曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 小峯 柳多君    理事 天野 公義君 理事 宇野 宗佑君    理事 鴨田 宗一君 理事 島村 一郎君    理事 中村 重光君 理事 堀  昌雄君    理事 玉置 一徳君       大橋 武夫君    岡本  茂君       海部 俊樹君    神田  博君      小宮山重四郎君    坂本三十次君       櫻内 義雄君    始関 伊平君       塩谷 一夫君    田中 榮一君       田中 六助君    橋口  隆君       武藤 嘉文君    久保田鶴松君       佐野  進君    楯 兼次郎君       千葉 佳男君    中谷 鉄也君       三宅 正一君    近江巳記夫君       岡本 富夫君  出席政府委員         通商産業政務次         官       藤井 勝志君         通商産業省貿易         振興局長    原田  明君         中小企業庁長官 乙竹 虔三君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      岩瀬 義郎君         大蔵省関税局国         際課長     岩田 善雄君         大蔵省銀行局中         小金融課長   長岡  実君         大蔵省国際金融         局企画課長   熊田淳一郎君         建設大臣官房地         方厚生課長   稻本  年君         建設省計画局建         設振興課長   桑山 行夫君         中小企業信用保         険公庫総裁   長村 貞一君         専  門  員 椎野 幸雄君     ————————————— 三月十四日  委員佐野進君、多賀谷真稔君及び中谷鉄也君辞  任につき、その補欠として畑和君、平等文成君  及び佐々木更三君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  委員佐々木更三君、畑和君及び平等文成辞任  につき、その補欠として中谷鉄也君、佐野進君  及び多賀谷真稔君が議長指名委員選任さ  れた。 同月十五日  委員佐野進君及び中谷鉄也辞任につき、その  補欠として川崎寛治君及び佐々木更三君が議長  の指名委員選任された。 同日  委員川崎寛治君及び佐々木更三君辞任につき、  その補欠として佐野進君及び中谷鉄也君が議長  の指名委員選任された。 同月十九日  委員中谷鉄也辞任につき、その補欠として佐  々木更三君が議長指名委員選任された。 同日  委員佐々木更三君辞任につき、その補欠として  中谷鉄也君が議長指名委員選任された。     ————————————— 三月十六日  中小企業構造改善促進臨時措置法案玉置一徳  君外一名提出衆法第一二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律  案(内閣提出第二五号)      ————◇—————
  2. 小峯柳多

    小峯委員長 これより会議を開きます。  内閣提出中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案を議題として、審議を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。佐野進君。
  3. 佐野進

    佐野(進)委員 中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案について質問をするわけですが、その前に、非常にいま新聞紙上というか世界的に問題になっておる事項について、これは大臣がいないのに政務次官に聞いては、ちょっと政務次官に悪いのですが、せっかく開かれた商工委員会で、そういう問題を全然触れないということであっては、経済的な問題を取り扱う当委員会としても、何かたいへん責任を果たしてないように感ずるし、さらにきょうの問題の保険公庫法にも関連がありますので、若干の時間聞いて、内容に入っていきたい、こう思うわけです。  きのうからけさの新聞紙上で一番問題になっているのは、いわゆるアメリカドル不安に基づくゴールドラッシュというか、そういうようなことについて日本が一体どうなるのかという点について、各界たいへん心配をしておるようなわけですが、政務次官、これらの状況についてひとつ抽象的でもいいが、政府で取り扱っている大要について説明してもらいたいと思います。
  4. 藤井勝志

    藤井政府委員 たいへん日本経済を取り巻く国際環境のきびしい変動特にアメリカ課徴金問題の動きに引き続いて、例のゴールドラッシュの問題は、御指摘のとおり通産省としても輸出振興経済政策の一番大きな柱といたしておりますから、重大な関心をもって見守らなければならぬ、このように考えております。特に金の二重価格制採用によるわが国への影響について、特に貿易並びに中小企業にいかなる影響を及ぼすかという点でございますが、わが国への影響については、今後の国際経済金融情勢推移を慎重に見守っていかなければならない必要があることは申すまでもございません。当面、貿易面では、アメリカ経済景気上昇傾向の鈍化、輸入課徴金等の問題に加えて、通貨為替面の不安から貿易取引が停滞するおそれがきわめて強い、楽観は許さない、こういう点でございましょう。特に中小企業については、国際環境の悪化、及び国内引き締め政策効果の浸透による影響が問題になるわけでございまして、外、内とも中小企業はたいへんな窮地に直面するということになりますので、われわれも事態推移を慎重に検討し、四十三年度講じようとする施策についても、経済は生きものでありますから、事態推移を見ながら、ひとつ時期を失しないように努力をしていきたい、このように考えております。
  5. 佐野進

    佐野(進)委員 問題が非常に大きいので、いま具体的に答弁を求めても無理かと思いますが、ただ、そういう点を聞きながら質問に入っていきたいと思っております。  そうすると、いまわれわれが一番問題にしておった輸入課徴金の問題は、何か今度のドル防衛に基づく一連のできごとの中で埋没してしまったのではないか、こういうような気すらするわけです。しかし、課徴金の問題も非常に重要なことになっていると思うのですが、これについてはいま政府ではどのように取り扱っておるか、この点について聞きたいと思います。
  6. 藤井勝志

    藤井政府委員 輸入課徴金の問題は、アメリカドル防衛の一環として、ごく最近具体的な姿となってあらわれてきたことは御指摘のとおりでありますが、もともとこれは関税一括引き下げケネディラウンドのあの精神から言うと、逆行し、これが矛盾もはなはだしい行き方ではないかというふうにわれわれは考えて、現在のところでは、このようなことをやったのでは世界経済はいわゆる縮小均衡方向へ行く。これはひいては過去の保護貿易主義が戦争の道に通じたという、こういうことにもなりますので、単に経済面のみならず、われわれそういう全体的な感覚から、この課徴金はやめてくれ、そのかわりこういう線を出すというような条件闘争でなくて、ともかくこのようなことはやめてほしい、こういう強い姿勢で対処せなければならぬ。すでに民間使節団にこの日曜日、十七日出発をいたしてもらったのも、そのようなことでございまして、政府はその推移を見ながら、政府代表も近々行っていただかなければならぬだろう、しかるべき大臣に御足労願う、こういうかまえで内輪相談をしておる、こういう状況でございます。
  7. 佐野進

    佐野(進)委員 そうすると、政府はいろいろ内輪相談をしておるのですが、この輸入課徴金の問題に政府は断固反対だ、そのかわり、関税一括引き下げに基づくケネディラウンドの問題については大幅に繰り上げ実施方針をきめた、こういうことになっておるのですが、ケネディラウンドの早期大幅繰り上げ実施をすることによって、はたして輸入課徴金をやめさせることができる、こういうような確信に基づいてそういうことを打ち出したのかどうか。輸入課徴金は、他の反面においてはどうしても実施されるだろうということを言われておるのですが、もし輸入課徴金実施された、ケネディラウンドは大幅に繰り上げ実施した、こういうことになると、いま次官が言っておるように、それでさえ弱い立場に立つ中小企業者はダブルパンチを食うのではないか。結局、政府はあせってやるわけではないだろうけれども、輸入課徴金をやめてもらうという確信がないのに、関税一括引き下げについては大幅に繰り上げを実施する、こういうようなことに踏み切ったということを聞いておるわけですが、そうなると、課徴金をやめさせるためにこうするんだというその功罪、そのことがもしうまくいかなかった場合についてはどうする考えですか。これはこれからの日本貿易政策、なかんずく中小企業対策に非常に重要な影響があると思うので、この点ひとつ聞いておきたいと思う。
  8. 藤井勝志

    藤井政府委員 ケネディラウンド実施の繰り上げの意思表示でございますが、きょうの新聞に出ておるようでございますけれども、これは実はEECのほうが理事会の決定によって、一応課徴金はやめてくれ、やめてくれるならばケネディラウンド実施時期は早めてよろしい、こういうアプローチアメリカ側にしておる。これにならって、わがほうもやはりタイミングを見て、黙ってじっとかまえておってもだめである、EEC並みにわれわれも、もし課徴金をやめるならばこういう用意もあるということを発表すべき段階にきたという判断のもとに、実はきのう、そういう態度をルートを通じて向こう側アプローチをした、こういうことでありますので、課徴金はやられた、ケネディラウンド早期実施という、アブハチとらずは断じて起こさないということでありまして、要は課徴金をやめさすというのが主目的であるということを御承知置き願いたい、このように思います。
  9. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは時間がどんどんたっていきますから、もっと聞きたいのですが次へ進みます。  こういうように輸入問題、輸出問題、いろいろな面で非常に困難な情勢に直面して、混乱を来たしておる段階の中で、政府態度、いわゆるケネディラウンドの大幅繰り上げ実施ということによって、はたして課徴金がやめられるかどうかについては、いまのアメリカ国内情勢その他からいっても、私は非常に疑問視せざるを得ないと思うのです。しかしこれはやる、それから輸入課徴金もやられる、こうなったときに、それではこれをやらない、両方でそういうことをするようなことはいたしません、こう言っておるけれども、少なくとも国がその態度を打ち出して、やりますということを対外的に交表した過程の中においては、それをやらざるを得ないと思うのです。そういう点について、政府は、輸入課徴金をこのことによってやめさせることができるという確信を持ってやっておるのかどうか、あるいは確信を持たないで、ただいいかげんに政策を発表するということになってくると、それは後進国その他の関係からいっても、やらざるを得ないことになってくるわけですから、そうなったときに、日本経済に与える影響はきわめて大きいと思うのですが、もう一度その点をお聞きしておきたい。
  10. 藤井勝志

    藤井政府委員 実はイギリスのほうも、この十四日に他の先進国が同様の措置をとる等の一定条件のもとに繰り上げ実施を行なう用意がある、こういうふうな態度を表明し、わがほうにもイギリス側からも話がございまして、そういうことならば一応われわれも、はっきりした課徴金をやめるということを条件に、一年間の繰り上げ実施を検討しよう、こういう意思表示をしたわけでございますから、御心配になるようにアブハチとらずになるような結果は来たさない、こういうことでありまして、むしろ黙っておるとかえって課徴金が前へ進む、これにブレーキをかけるという、こういう配慮イギリス側からのアプローチによってわがほうは意思表示をした、こういうことでございますから、万々そのような心配はない、こういう認識でございます。
  11. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは、心配がないと言うのに心配があるといつまで言ってもしようがないから、それは心配がないということに理解して次へ進みたいと思うのですが、このような国内的にいろいろな問題を投げかけつつある現在のいわゆる金の二重価格制実施というようないろいろな問題が出ておるとき、日本株式市場はいままで停滞の一途をたどっておったというにもかかわらず、昨日はダウで三十四円六十銭、でき高で三億七千万株、非常に熱狂的な場面が出てきたということを新聞紙は報じておるわけです。しかも株式の売買が、主として貿易関連株は敬遠して、不動産あるいは国内財産を有するそれぞれの株に集中しておる、こういうことになってきておるわけですが、このことは日本貿易の前途に対して非常に不安と失望というが、たいへんなことだという素朴な感覚がこういうような方向に向かわせておると思うのですが、政府はこういう点についてどのような判断をしておるか。昨日の株式市場のいわゆる貿易に対する先行き不安ということも反映して、この問題が出ておると私は思うのですが、政府はどう考えておるか、ちょっと聞かしてもらいたいと思います。
  12. 藤井勝志

    藤井政府委員 御指摘のような株の動き、これは非常に生きた微妙な心理が働いて、おっしゃるような貿易に対する不安感といいますか、これがいまのような動きになっておる大きな原因であることは、私も委員の御指摘のとおりだと思いますが、これが対策については、やはり何といっても輸出振興に最善を尽くす、衆知を集めて努力するという、一口に見えばそれ以外に方法はない、このように思うわけでございます。国際通貨の基礎をなしておりますドル自体に対しての不安感、こういうところまで大きく動揺が来たしておるのですから、なまやさしいことではないわけでございましょう。しかしわれわれとしては、もう努力のすべてを尽くして輸出振興に集中する、こういう以外にはいまの問題に対処の方法はない、このように思うわけでございます。
  13. 佐野進

    佐野(進)委員 大蔵省から二人来ておるのですが、どちらでもけっこうですから、いまの問題、主として中小企業に与える影響との関連の中で、昨日の株式異常高取引の非常に多くなっておるこについて答弁ができたらひとつしてください。
  14. 長岡実

    長岡説明員 全く担当外でございまして、十分にお答えできないと思いますが、昨今の株式市場推移等はやや一時的な異常現象もあるのではないかと思われます。その点につきまして、大蔵省といたしましては、おそらくその指導の方法等を十分に注意しながら、その中で何か基本的な変化等があれば、当然それがほかの施策に与えるような影響を考えながら対処していくようにいたすことであろうと思いますが、たいへん恐縮でございますけれども、担当いたしておりませんので、この程度のお答えしかできません。
  15. 佐野進

    佐野(進)委員 大臣がきょうはおるものであると判断して、いろいろ聞いてみたいと思って準備をしてきたのですが、大臣がおらないし、大蔵省のほうは別の問題で質問したいと思っておったわけですから、要求をしておりませんでしたから無理だと思うのですが、私は、きのうの株式の高騰あるいは店頭から金が資産家にどんどん買い取られておる、日本円のドルとの交換が異常なほど進行しておる、こういうような一連のできごとは、いま日本経済、特に貿易面において重大なる責任を持つ通産省としては、看過すべからざる重大事態だと思うのです。したがって、こういう重大事態に対処する政務次官は十分勉強してあるんだろうと思うのだけれども、しかし政策最高方針にも触れる問題も多いから、なかなか答えにくい点もあろうと思うから、私は同情する意味で質問を打ち切りたいと思うのですが、ひとつこれらの問題については十分格別な配慮を払いながら取り組みをしてもらいたいと思うのです。  ただ、ここで一言聞いておきたいことは、いわゆるドル不安は必然的にドル切り下げを招く。ドル切り下げを招くことになれば、そのことは円の切り下げということになるのではないか。円の切り下げということになれば、金を幾ら持っておってもしようがない。だから物にかえる。物にかえるということが必然的に、土地はなかなか簡単に売買できないから、株がいいだろうということで株になっておる。しかし株自体の持つ現在の環境下におけるその役割りというものは、なかなか持ったからすぐ利益になるということはないということはだれしも知っていながら、やはり株式投資のほうに向いている。いま日本の国民は経済的に非常に判断に迷っておる時期だ。したがって、判断に迷っておる時期が一波万波を呼んで、ちょっと投ぜられた一つの石が異常な株式相場を現出しておるといわざるを得ないと思うのです。したがってこのことは、それでなくともことしは非常にたいへんでないかということを言われてきた中小企業界にとっては、特に経営者にとっては、たいへん深刻な問題になりつつあると思うのです。この大もとを正さずして、一つ一つ現象についてのみ対策を立てておっても、これは本質的に中小企業対策にならない、こういうように断ぜざるを得ないと思うのです。したがってそういう点について、政策的にこれはこうだということを一刻も早く中小企業者に対してその方針を明らかにしてやるということが、政府が当面とる政策としては非常に重大なことじゃないか、こう思うわけです。  そこで私は一つだけお聞きしておきたいことは、いまドル不安の中でドル切り下げられるのではないかということで円の切り下げも行なわれるだろう、こういうことが強く心配されている問題ですが、きのうのどこかの委員会日銀総裁が招かれて委員質問に答えたことで、ドル切り下げがあれば必然的に円の切り下げというものも行なわれるであろう、そしてドル切り下げというのが必然的な傾向にあるような印象の答弁がなされたということを私聞いておるのですが、はたしてドル切り下げ並びに円の切り下げということについて、そういうような状態は、日銀総裁が言明したということとも関連して、どう政府側は受けとめられておるのか。政務次官が無理なら、中小企業庁長官でもいいし、あるいは大蔵省金融課長でもいいから、ひとつそういう全体としての動き見通しを含めてけっこうだから、明らかにしてもらいたいと思う。
  16. 長岡実

    長岡説明員 非常に大きな問題でございまして、また私の責任範囲は、いわばこの大きな波を受けるという立場でございますし、先生御指摘のように、こういう大きなドルそのもの動揺というものを一応のけても、なおかついま中小企業はたいへんな時代を迎えつつある、その上へもっていって、いまの御指摘のような時代になってくるわけでありまして、担当する私といたしまして一番大事なのは、やはり日本経済も、従来のようにスムーズに、いわば一本調子で、むろん景気の波動は相当ございましたけれども、まあまあとにかく一本調子で伸びてきたということを前提にして中小企業経営をしていくなり、ないしは特に政府政策を考えていくなりではいけないのではないか。相当日本経済がやはり大きく動いていくということを前提にして私たち責任者政策を考えていく必要があるということになりますと、この日本経済が大きく動く場合の政策は、さしあたり何を考えるべきかといえば、これはもう平凡なことではございますけれども、体質を強化していく、それから構造を改善していくということに重点を注いでいくよりしかたがないのではないだろうか。これから特にむずかしいのは、体質を強化し構造改善していく場合に、いままでのようにと申しますか、貿易が自由化されず、資本が自由化されなかったときの政策のように、国内だけで考えられませんので、どうしても開放体制下で考えていかなければならないので、この体質強化策構造改善策は、よほど強力に進めていくということが絶対に必要であるという覚悟をしておる次第でございます。
  17. 佐野進

    佐野(進)委員 いまの問題について、いわゆるドル切り下げが円の切り下げの不安を招いておる、そのことが、経済的にいわゆる中小企業に対して非常に大きな不安を与えておる、したがって、そのことが、中小企業者の本来持つその仕事に専念することなく、専念し得る状態でなくなって、株式投資なりあるいは土地投資なり、そういうような方面に注意、力点を向けざるを得なくなる、こういうような懸念があらわれつつあると思う。したがって、そのことは、株式市場にあらわれているように、いわゆる輸出を振興しなければ日本経済の存立ないし中小企業者の繁栄もないということがわかりながら、実際上にはそういうことと相反した行動中小企業経営者が立たされつつあるということなんですよ。したがって、そういう状況に対処して、円の切り下げはやりませんということをはっきり表明できれば、それはもう道ははっきりするわけですね。ところが、日銀総裁発言でも、あるいはその他有力者発言、いろいろあっても、結局そこへいくのではないかというような懸念が残れば残るほど、中小企業者自分たち財産を守るために、これは企業というか日本経済を繁栄させるという一つ役割りを果たすということでなく、自己保存本能のために、相反した行動に立たざるを得ない。だから、そういう点について政府が円の切り下げについてはこれは絶対いたしませんということを表明できるのか、あるいはアメリカドル切り下げられるならば、円の切り下げもやむを得ないというように考えておるのか、こういう点が非常に重要なことになってきておると思うのです。だからその点について、きょうの場面ではちょっと無理だと思うのですが、通産大臣なり大蔵大臣なりがそれらについて答弁すべきだと思うのですが、ひとつもう少し、いま言われたような形でなく、突っ込んだ答弁をしてもらいたい、こう思うのです。
  18. 藤井勝志

    藤井政府委員 問題がたいへん国の経済の基本に直接触れる問題であり、おそらく通産大臣おいでになっても具体的な返答はできない。これは私からそんなことを言うのはいささか出過ぎでございますけれども、これはやはり大蔵大臣を中心にして、当面せる激しい国内外の経済動きに対して、佐野委員指摘のような、日本としてどう対処するか、これは音を立てないで真剣に検討すべき問題である。御趣旨はよくわかりますので、大臣のほうにも私からよく伝えておきたい、このように思います。
  19. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは次に進みますが、私は、いま申し上げたようなことが必然的に日本貿易対策について重大な影響を与えてこようと思うのです。この前、ジェトロをはじめ各界代表者おいでを願ったとき、輸入課徴金実施されるということで日本経済は非常に深刻な影響を受けるのではないか、特に総合収支について、赤字が、三億五千万ドルないし四億ドル程度がこれによって七億ドル程度になるのではないというような意見の開陳があったと思うのです。ところが、事態は、この輸入課徴金の問題をさらに大きく乗り越えたような様相をいま示しつつあるわけです。したがって、こういう部面からくる輸入の制限、さらに輸出増進というようなことをやらざるを得ないわけですけれども、輸出増進ということは、世界情勢の中で非常に大きな隘路に逢着しておる、こういうことをもういまの時点の中で断ぜざるを得ないと思うのです。中小企業庁としては、こういう事態に対処して、さっき構造改善をする、輸出増進をする、いろいろ言われましたけれども、単なることばの上の説明は、もういままで何十冊の本にもそういうことが書いてあるわけですけれども、その書いてあるときといまの答弁もほぼ同じですね。しかし、事実上の問題としては、もっともっときびしい状況がくると思うのですが、中小企業の面における輸出に与える影響、これは一体、いままでの見通しに対して、どの程度のいわゆるマイナス面における影響が出てくる、そう予想せざるを得ない、というようなことを検討したことがあるのかどうか。あればその内容をここでひとつお示し願いたい。
  20. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 輸入課徴金日本輸出に対しましてどの程度の量的な効果を及ぼすであろうかという御質問は、今国会におきましてたびたびなされたことでございます。それに対しまして通産大臣から、これは非常にむずかしい問題で、勉強はしておりまするが、いま数字的には申し上げることがなかなか困難でございますという御答弁を繰り返しておるわけでございます。私たち中小企業責任者といたしましては、繊維でございますとか雑貨でございますとか軽機械でございますとか、いわゆる輸入課徴金で一番被害を受ける輸出品が中小企業者の製品でございまして、その被害は非常に大きいであろうという心配をしております。したがいまして、この課徴金阻止につきましては、政府部内におきましてもっと強硬な措置をとってもらうようにという要請を強くしておるわけでございまするが、先生端的に御質問の量的にどうかということにつきましては、きょう現在においてまだ勉強ができておりません。
  21. 佐野進

    佐野(進)委員 私は、これはいまの情勢から判断して、必然的に各国がそれぞれ、特にアメリカが財政立て直しのために輸入の障壁を高くする、こういうことは当然予想されることであるし、対外授助費、あるいはまたEEC諸国をはじめヨーロッパ諸国もそれぞれ自国の経済を守ろうとする、そういう行動の中で、低開発国に対する援助ないし対策というものはどうしてもおくれてくるということは見通さざるを得ないと思うのです。そうすれば、必然的に輸出というものが非常に少なくなってくる、こういう点は当然予想されなければならないと思うのです。こういう点について、量的にどうかということがまだ見通されませんというのは無理もないことだと思うのですが、この量的にどうかということが必然的には中小企業者の生産に関連を持ってくるわけですし、生産が過剰になり、あるいはまたストックが多くなる、買ってくれる相手方がその輸入を受け入れないというようなことになれば、中小企業者は、そのものをつくったという形の中で倒産という悲運に逢着しなければならない。これはだれしも考えられることだと思うのですが、そういう点について、中小企業に対する基本方針を立てる段階と、現在のいろいろの条件は相当変わってきていると思うのですが、そういう点について中小企業庁はまだ全然何も考えていませんと、こういうような答弁と受け取れるのですが、どういうことか、その点をひとつ、情勢の変化に対応した対策をどういう形において立てるつもりか、この際聞かしておいていただきたい。
  22. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 量的な面では、非常にむずかしい問題でございますので、残念ながらお答えができかねるということはさっきお答え申し上げたわけでございますが、この対策につきましては、率直に申し上げまして、今回の予算案を組みますときに輸入課徴金問題というものが出ていなかったことは事実でございます。しかし、いわゆる特恵の問題でございますとか、特恵以前にさらに後進国の非常に激しい追い上げでございますとか、それから国内の労働力不足によります中小企業者の非常な苦悩でございますとか、こういうことはいずれも明瞭に出ておったわけでございまして、これに対しまして私たちは、今回の予算案におきまして、これは決して十二分ではございませんけれども、できるだけ努力をいたしまして、構造改善に対します施策でございますとか、もちろんこれも構造改善の重要な柱になるのでございますけれども、技術改善の施策でございますとか、さらに零細小規模企業者に対します施策でございますとか、こういうものをできるだけ織り込んだわけでございます。今回の中小企業予算、また財投等をひっくるめまして中小企業施策の大黒柱になっておりますのは、この世界の激動期におきまして日本中小企業者を脱皮させていくという構造改善、またこの中小企業者を守っていくという対策、これが中心になっておりますので、ただ先ほど申し上げましたように、予算をつくりますときに確かに課徴金の問題はわれわれとしては念頭になかったということは申し上げざるを得ないのでありますが、私たちの、課徴金以前に立てました施策というものが間違っているとは決して思わないし、むしろその施策をアクセルを踏んですみやかに実施していくことが現在の施策として非常に大事であり、正しい方向であるというふうに思っておる次第でございます。
  23. 佐野進

    佐野(進)委員 時間がなくなってくるから、質問の要点をひとつしぼっていきたいと思うのですが、そうすると、この問題については、どんどん中小企業者が年度計画に基づいて生産をあげた、もちろん中小企業者だけでなく大企業もあるけれども、話を中小企業にしぼってみますと、あげた。しかし各国はデフレ的な様相を深めて、輸入の障壁を高くするということで、物が売れなくなる。したがって、いまの状態の中では、そういう点があなた方が中小企業対策を立てたときよりもむしろ進んだ形の中で深刻化しているということになれば、必然的に、それらの物をつくり過ぎて売れないということで倒産の危機に見舞われる、こういうことが予想されるわけですね。そういうような事態がきたとき、通産省としては、中小企業庁としては、これらの業界ないし業者に対して、あるいはそのストックを保有するそれぞれのものに対して特別の融資なりあるいは救済策なり、そういうものは当然考えていかなければならないと思うのですが、そういう点についてはいまのところどう考えておるか、それを聞いて次へ進みます。
  24. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 どんどん日本輸出先の状況が変わってくるわけでございますから、一番大事なことは、売れるものをつくるように市場調査をいたし、また業界に対してそういう情報を的確に流すということが一番必要だと思いますが、さしあたりの問題としては、輸出振興についてのいろいろ諸措置を講じていく必要があると思います。しかし、なお目先の問題として、いまつくっておるものがとまる、特にこういうドル不安でございますとか、課徴金問題でございますとか、こういうふうな貿易の出入りのビジネス・ルールを乱すようなことがございますと、特にこの中小企業製品のような輸出品は輸出約定が滞りがちになるわけでございまして、こういうさしあたりの対策につきましては、私たちとして商工中金等を活用して、資金量も限られておるのでございますから、十分というふうな大きなことは申し上げられませんけれども、できるだけの措置を講じていくことが必要である。しかし第二段に、やはり一般的な輸出振興策、強化対策を講じていくことが長期には必要であるし、市場対策が一番大事である。そういう中で努力をしてまいりたいと思います。
  25. 佐野進

    佐野(進)委員 まだ聞きたいのですが、次に進みます。  きょうの新聞で、毎月毎月倒産の数がふえるという問題が報道せられておるわけです。一月がいままでの最高だ、こういわれておったのが、一月より二三%ふえて千百七十二件ですか倒産があった、こういうことがいわれておるわけです。一般世上にいわれておることは、この二月よりもあるいは三月よりも四月、五月、六月のほうが多いのではないか、こういうことがいわれておるわけですが、そうなると、二月の銀行取引による倒産数が千百七十二件だということになると、五月、六月が一体どの程度になるのか。特にいままで言ったように、世界的な経済環境、日本国内における経済情勢等勘案いたしますと、非常にその倒産数がふえてくるということが当然予想されるわけですが、中小企業庁としては、これらの倒産者が全部といっていいほど中小企業者であるだけに関心が深いと思うのですが、五、六月どの程度に見ておるか、ひとつこの際説明願いたい。
  26. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘のように、倒産件数が一時年末にちょっと減ったのでございますが、またさらにふえてまいり、非常に苦慮しておるところでございます。さらに、おそらく金融の引き締めの程度は逐次加わるというふうに覚悟せねばならないと思いますので、もちろん今回と申しますか昨年当初からこの倒産が高水準になってきておりまして、その原因は単なる金融引き締めとは思われません。業種によっていろいろ事情が変わっておるようでございますが、体質的に脆弱であり、また経営的に十分でなかった企業が引き締めで倒れる、こういうことでございますので、引き締めが、弱くなってきた企業を倒す契機になることは否定できない。そうなりますと、これから引き締めが加わってきます特に五、六月という時期が心配されるわけでございます。この状況につきましては、私たち楽観を許されない。十分これは神経質に監視をしていかなければいけない。もし相当なる事態が生じてくるということになりますならば、できるだけ私たちの持っております手段、政策を使っていかなければならないというふうに覚悟をしております。
  27. 佐野進

    佐野(進)委員 中小企業庁のほうで具体的に予見される数字を言ってくるということで、はいそうですかということは無理だろうと思うが、これはわかるのだけれども、しかし一月に九百件、今度は千百件以上、こういうぐあいに雪だるま式というか飛躍的に倒産件数がふえていっているのですね。その金額も非常に大きくなっている。いわゆる倒産する金額そのものが大きくなっている。国際的、国内的な情勢の中で引き締めがさらに強化される。ことによると公定歩合の引き上げもさらにあるのではないか。財政繰り延べも行なわれる。どこからどう踏んでみても、いまよりもよくなる中小企業者の環境というものはないわけです。いまよりも中小企業者の環境がよくなるという保証はない中で、いまでも千二百件に近いものが倒産しておるとなると、だれでもが心配している五月、六月には飛躍的に増大するということは、これはもうはっきりいえる段階ではないかと思うのです。そういう事態が一体いままでの統計上の問題——これはいろいろありますね。私もいろいろ倒産のことについて研究してみたのですが、一つの出発点を基礎にして統計をとっていくと、金融引き締めその他の状況の中で倒産件数が相対応する数字としてあらわれてくる、こういうようなことがあるわけですが、しかし私のほうは単なる勉強のための資料だし、あなた方はいわば責任ある立場における説明になるからなかなか言えないと思うのですが、これはもう二千件、三千件というのが当然だ、こういうことになってくると思うのです。そういうような面について私はたいへん心配をしているわけですが、これは保険公庫の総裁がお見えになっておりますから、総裁のほうから、これら倒産件数についての現状を出発点として、ここ数カ月でいいですが、将来に対してどの程度倒産を予測し、これに対する対策を立てなければならないかということについて、ひとつお答えを願いたいと思います。
  28. 長村貞一

    ○長村説明員 倒産の予測が非常にむずかしいことは、ただいま中小企業庁長官の御答弁のとおりであると思います。私ども、これは正確に申しますと、倒産とイコールにはならぬと思うのでありますけれども、御承知のように保険金を支払っております。保険金の支払いというのは、中小企業の方々が金融機関から金融を受けて期日に弁済できないために保証協会がいわゆる代弁をする、それから法律的に私どものほうが保険金を支払うことになりまして、いわゆる代位弁済の額の増減が保険金にはね返ってくることは御承知のとおりでございます。したがって、私のほうから申し上げるならば、今後代位弁済がどのくらいふえるだろうかという御趣旨として考えたいと思うわけでございます。これまた倒産と同じように、なかなか何割ということを的確に申し上げるのは困難だと思いますのは、過去の例で見ましても、月によりまして代位弁済というのはかなり高低がございます。全体を通じて見ますれば、これがいわゆるアップカーブであるということは申し上げることができるのでございますが、これをきわめて短期に見まして、二カ月、三カ月の代弁の額がどのくらいになるか、いまの時点を基礎にしまして何割ふえるということは、いま私責任を持って申し上げるだけの実は自信がございませんけれども、それにいたしましても、現状を基礎にしましてここ数カ月の間に代位弁済の額がかなりふえてまいるということは考えられるのでございます。私どもそれを頭に置きつつ仕事を進めてまいりたいと考えております。
  29. 佐野進

    佐野(進)委員 大蔵省の主計官ですか、中小企業担当だという人にお伺いをしたいと思うのですが、いわゆる倒産件数の増加ということは必然的に金融面からこれを解決していこうという点につながりが非常に強いと思う。したがって、通産省に対して、関連三公庫はもちろん、他の一般中小企業金融について、われわれは非常に努力してもらいたいというお願いを出しておるわけですが、この五、六月の、いわゆる倒産がピークにくるであろう、あるいはその後にまたピークがくるかわかりませんが、こういう事態に対応して大蔵省としてどのような金融措置をとろうとしておるか、ひとつ説明願いたいと思います。
  30. 長岡実

    長岡説明員 銀行局の中小企業課長でございますが、お答え申し上げます。金融引き締めのもとにおける中小企業対策といいますか、一番しわを受けやすい中小企業に対する配慮という点につきましては、大蔵省といたしましても、金融業界の指導等の面で十分に配慮をいたしてきておるつもりでございまして、たとえば本年一月に公定歩合の再引き上げが行なわれました際にも、特に民間金融機関に対しまして、その引き締めの影響中小企業に過度に寄るようなことがないようにというような要請をいたしまして、その要請を受けまして全国銀行は、例の標準金利の引き上げに際しまして、主として中小企業関係であると思われます一件三百万円以下の日銀再割り適格商手の割引歩合を据え置くといったようなこともいたしておるわけでございます。したがいまして、今後におきましても、また私どももといたしましては、四十三年度の金融情勢等につきまして、先ほどから御質問がありました点について数字的に的確に把握しておるわけではございませんけれども、ある程度そのような情勢を見込みながら、政府系の中小三金融機関につきましても、その資金量を約一九%増額する。あるいは後ほど御質問もあろうかと思いますが、保険公庫の業務、信用保証協会の業務につきましても、相当程度代位弁済がふえてもまたそれに対する保険金の支払いに支障を来たさないといったような配慮をいたしたつもりでございますが、なお、今後の問題につきましても、そのときの事態をよく見きわめまして、何とか中小企業者のうち健全な経営を行なっておるものが金融を理由として倒産するといったようなことにならないように気をつけてまいりたいと思っております。
  31. 佐野進

    佐野(進)委員 私は、いまの金融課長答弁で、一生懸命やるということですから、それでもうたいへんけっこうだと思うのです。ただ、金融から倒産がこないという、そういう面についての格別の配慮をするということが政府において行なわれる、あるいは政府関係の三金融機関また保険公庫の総裁等が一生懸命やってくれるということになれば、中小企業の倒産について、それを防止するために非常に役立つであろう、したがってこの面についてはさらに格段の努力をしてもらいたいと思うのですが、過去倒産した例の中で、実はこの前も相互銀行の会長が来たとき質問をしておった問題があるので、この際若干の時間をいただいて金融課長並びに中小企業庁長官質問をしてみたいと思うのです。  これは、この前のとき質問したように、昨年の六月二十九日、東京相互銀行の、いわゆる金融機関としての不徳義な取り扱いによって中堅中小企業が倒産をした事例があるわけです。その不徳義な内容というのは、そういうことをしなければその中小企業は倒産をしなくても済んだであろうし、さらにそれに関連する百五十幾つかの中小企業が不測の損害を受けないで済んだであろうし、関連して倒産した幾つかの企業を救うことができたのではないか。これは中小企業の倒産が単に新聞紙上何千件あったということでなくて、おそらくそれに相類するものも相当数あると思うので、あえて具体的に質問を申し上げるわけですが、こういう倒産に追い込まれるような措置を銀行がとった場合、あるいは金融機関がとった場合、これに対する制裁というか、あるいは片一方においてはそういう金融機関に対する制裁であり、片一方においてはそういう理由によって倒産した企業に対する救済、こういうような点はどのような処置がとられるのか、この際、中小企業庁長官大蔵省金融課長にお伺いしておきたいと思います。
  32. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 一般問題といたしまして、これからだんだん締まってきた場合に、倒産に瀕するような企業が出てくるわけでありまして、私たちといたしましては、いま全力をもって、とにかくそういう倒産まで至らないように努力をしております。これは単に考えているだけではございませんで、大蔵、日銀と私のほうと密接に連絡をとりまして、特に現場で連絡会議も設けまして、これはすでに通産局——全国九地区でございますけれども、通産局が幹事役をやりまして、倒産というふうなにおいが立ちますと、すぐこの会議にかけて、食いとめ策を講ずるというふうなことも実はやっておるわけでございます。先日先生御質問の点も、もし事実とすればこれは非常に困ることでございまして、特に銀行というのは債権者の中で比較的強い立場を持っておりますし、いわばじょうずに立ち回ると、他の債権者に対して非常に有利な立場に立つのみならず、債務者である中小企業が立ち直るかもしれないときに最後に息の根をとめるということになるわけであります。もしそういうふうなことになってはいけないということで、実はいろいろ調査をしたわけでありますが、これは主として銀行サイドに問題があるということでございますので、大蔵省にお願いをして調べていただいたわけでございます。大蔵省からお答えがあると思いますけれども、私たち聞きましたところによりますと、どうも両方いろいろ言い分があるようでございます。
  33. 長岡実

    長岡説明員 佐野先生の御質問の具体的なケースでございますが、私ども、時間的な関係もございまして、十分に金融機関側と融資を受けた企業側の両者の言い分を聞くだけの時間的な余裕がなかったわけでございますが、いろいろ聞いてみますと、企業者側はもちろんのこと、金融機関側にも言い分はあるようでございます。一般的に私ども、さきにも申し上げましたように、企業が、単に資金繰りの関係と申しますか、金融機関からの融資を受けられなかったという理由で、健全に経営してきたものがこの金詰まりの時期に倒産をしてしまうというようなことがないように、厳重に金融機関に対しては注意も与えますとともに、そういう行政指導も行なってまいりたいと思いますが、本件につきましては先生のほうがお調べは行き届いておると思いますけれども、私どもが聞いたところでは、金融機関側に必ずしもいま申し上げたようなことばかりでもないようでございます。たとえば、聞くところによりますと、あの銀行がメーンバンクになりまして、ほかの銀行等からもあの企業は金を借りておったようでございますが、通常の場合、メーンバンクにほかの金融機関等から金を借りられる見通し等もあわせまして資金繰りを提出する、その資金繰りを見た上で融資の態度をきめるというようなことが常識のようでございますが、その資金繰りの計画等が出てまいりましたのがもう月末ぎりぎりであったというようなケースもございます。  それからもう一つ、これは金融機関が自分だけの債権を保全して、非常に冷たい措置をとったという点もおそらく御指摘の点だと思うのであります。この点につきましても、まだ実情を十分調査いたしておりませんが、大蔵省立場といたしまして非常に微妙な点は、このケースということではございませんが、一般的に言いまして、金融機関が非常に不良債権をかかえてしまうということは、結局金融機関の経営を脅かしまして、善良な預金者に迷惑を及ぼす、したがって、債権の保全には万全を期さなければならないという要請も一方においてあるわけでございます。そういうようなことから行き過ぎがあったのかどうかという点については、なおお時間をいただきまして私どもいろいろ調査をいたしたいと思いますが、一般的には、金融を受けられなかったということだけで倒産に追い込まれるようなことがないように、金融機関に対して十分注意をし、指導をいたしてまいりたいと考えております。
  34. 佐野進

    佐野(進)委員 いまの答弁で大体了解いたしますが、いろいろやると長くなりますし、すでに調査も相当進んでおるようでありますから申し上げませんが、どちら側もその申し立てをする際においてはその見解があることは、それは当然だと思う。ただ要すれば、どういう理由でものが言えたとしても、片一方のほうはそのことによって企業がなくなり、関連する何千人かの人たちがそれによってはかり知れざる損害を受けておる。片方は、時間的に余裕がなかった、あるいはどうだという主張があったとしても、何ら痛痒を感じない。しかも痛痒を感じないどころか、そのことによって他の金融機関等に対して優越して特殊な地位を保つ、こういうようなことによって企業の倒産を招来するということは、少なくとも健全な意識を持つ金融機関としてはあり得べからざることだろうと思うのです。そこに当然もしそういう措置をとらざるを得ないということがあるならば、政府機関、三公庫にしろあるいは信用保証協会なり保険公庫なり、救済すべき措置は、倒産という事態を招く前に幾らでもあることをその金融機関の責任者が知らないということはあり得ないと思う。あり得ないにもかかわらず、翌日手形が交換所に回されるということがわかりながら、銀行取引がすべて終わった時間でいわゆる貸し付け不能という回答をするということは、明らかに意図的であると断ぜざるを得ないと思う。こういう点について、大蔵省あるいは中小企業庁が親切に具体的に指導し、あるいは対処する、こういうことでなければ、倒産はどんどんふえますよ。これはやったっていいんだ、自分のところの債権だけをとっておいて、自分のところの債権が保全されれば、あとはつぶしてしまえという、そういう悪い金融機関があったとしたら、中小企業はつぶれるのはあたりまえですよ。もしそういうことになりそうだったら、自分だけがうまくやろうという考えが社会一般にはびこってくることになれば、中小企業対策を幾ら立てたって、こんなことはどうにもならないと思う。したがって、いまの問題については時間もございませんからこの程度でやめますが、中小企業庁並びに大蔵省は、いま少しく両者の意見なり当事者の意見等聞きながら、救済し得る措置、あるいは将来行なうべき措置等について至急善処してもらうよう、この際強く要望したいと思うのです。委員長においてもよくひとつお取り計らい願いたいと思います。  そこで、私はこれは要望といたしまして、次に、中村先生のほうがお待ちかねのようですから、中小企業信用保険公庫の問題について二、三御質問をして終わりたいと思うわけです。  昨年も保険法の改正が行なわれましたとき、これは非常に熱心に討議が行なわれ、倒産を防止するためにも、あるいはその他の問題についても議論があって、附帯決議等が付されて、この問題について法律が通っておるわけです。そこで保険公庫総裁にお伺いをいたしたいのですが、いわゆる無担保無保証ですね、こういう面におけるところの金額の増額はもちろんですが、いわゆる貸し付けが行なわれた場合、無担保無保証あるいは無担保、こういう場合におけるところの信用補完、いわゆる保険の支払い状況というものはどのようなことになっておるか。あるいはこれからそれがどのようにふえていく状況が予見されるか、この際無担保無保証についてお伺いをしたいと思うのです。
  35. 長村貞一

    ○長村説明員 無担保無保証、いわゆる特別小口という種別のものについてのお尋ねと存じますが、これは現在の保険と申しますか信用補完の中では、全体として占める割合はまだわずかでございます。一つには、できましてまだあまりときがたっていないということもあると思います。さような関係がございまして、毎年と申しますか毎月数字は伸びてはおります。したがって、今後ますます利用されるだろうと思いまして、それに応じていまのはおそらく保険金はどういうふうに支払われるかということだろうと思いますが、保険金の支払いも多くなるだろうと思うのですけれども、ただいまのところは、まだこれにつきまして、どのくらいの保証をして、それに対して、どのくらい事故があって保険金が出るだろうかということをまだ端的に的確に捕捉するだけのデータがございませんのですが、今後ますますこれは利用されるだろうということは疑いないところでございます。
  36. 佐野進

    佐野(進)委員 そうすると、今度ふえてくるということが当然予想されるわけですが、これはもう借りて返さないということが一番いけないのですが、それらについては十分御指導を願わなければならないけれども、いわゆる無担保無保証あるいは無担保ということが、いかにその時点の中で中小企業者、特に零細企業者に喜ばれておるかということは、これは私がいまさら申し上げるまでもないと思う。したがって、私はそういう面について、これは中小企業庁その他の方針ということにもなってこようと思うのですが、これから保険公庫のほうで取り扱わなければならない件数も相当多くなりますけれども、そういうことを予想されたとき、今度保険公庫法の改正に基づて二十五億というこの基金が増額されるわけですが、この程度で、先ほど来私がいろいろ質問申し上げておる情勢等の反映の中で、保険公庫としてはどの程度対策できると思うか、この際ひとつ聞いておきたいと思います。
  37. 長村貞一

    ○長村説明員 これは、根本的には来年どのくらい保険金の支払いが出るかということに帰すると思います。各種の保険全部総合いたしまして、私どもこれにつきましては、従来、特に四十二年度の保険事故の発生の状況でありますとか、あるいはまた来年度の一これはもとは御承知のように、各保証協会の保証がもとになりまして、はね返ってくるわけでございますので、全国五十一の保証協会の来年度の保証見込み、ひいてはどのくらいの保険金が出るだろうかという各協会の見込みの計数等を基礎にいたしまして、大体百八十四億ということを見込みまして、先般、予算にも計上され、御審議いただいたわけでございます。この数字は、かなり大事をとりまして考えた数字でございまして、まずまずこの程度の数字におさまるであろうと思っております。それでございまするならば、保険料あるいは回収金の収人、これは現にちょうだいいたしております。保険金は来年度にも持ち越しますが、ある程度それらを勘案いたしますると、ただいまの予測では、二十五億の保険準備基金をちょうだいいたしまするならば、来年は支障なく支払い得る、かように存じております。
  38. 佐野進

    佐野(進)委員 中村先生が待っておりますから、まだいろいろ聞きたいことは一ぱいあるのですが、時間の制約もありますので、質問を打り切りたいと思いますが、いずれにしろ、私が質問申し上げたことは、中小企業の倒産が非、常に多くなってくることが現在予測されるときに、この中小企業信用保険公庫の果たすべき役割が非常に大きい。したがって、この公庫法の改正ということについて私も賛意を表するわけですが、ただ運用の面並びに対策の面については、ひとつ真に中小企業者の倒産をなくするだけでなく、健全なる発展が期されるよう格段の努力を願いたいし、特に先ほど申し上げたように、金融機関の取り扱いによって当然救済し得ると思われる、倒産をしなくても済む企業、こういうものが相当あるにもかかわらず、独断的な、あるいは独善的な自己本位の金融機関の措置に基づいて倒産が行なわれるというようなことは、これはもう絶対に許すべからざる問題だと思うのです。したがって、そういう面については、大蔵省当局、特に金融課長はこの当面の責任者であるので、この際、これから数カ月間における予想される情勢に対処して、金融機関全体に対して、ひとつ注意を喚起して、先ほど起きた事例等についても、もっと慎重な取り扱いをしてもらって、中小企業者に安心してもらうと同時に、その企業の運営について一段と努力ができるような方途を講じてもらうことを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  39. 小峯柳多

    小峯委員長 千葉佳男君。
  40. 千葉佳男

    ○千葉(佳)委員 中村先生の前に実は私が待っていたわけでありますが、ごく簡単に三点ほどお尋ねいたしたいと思います。多少重複することがあるかもしれませんが、御了承をいただきたいと思います。  最初に、今回の法改正の一つの大きな原因であります代位弁済ですが、これが地域的に、それから職種的に四十一年から四十二年にかけて目ぼしい特徴があるかどうか、その辺わかっておられたら、お知らせいただきたい。
  41. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 代位弁済が進行しておりますが、御質問の地域的な特色があることが第一点でございますが、各保証協会ごとの率を私たちのほうでもちろんとっておるわけでございますけれども、これによりますと、やはり東京でございますとか、特に大阪、愛知、神奈川、北海道、福岡という大きな保証協会は、やはり事故も数が多いということでございます。この中で代位弁済の率でございますが、特に神奈川あたりが相当高い、また北海道が高いというような数字が出ております。   〔委員長退席、鴨田委員長代理着席〕 それから比較的小さな保証協会におきましては、これは少しまとまって代位弁済がありますと、パーセンテージがぐっと上がるわけでございますけれども、和歌山とか、鳥取とか、岐阜とか、この辺の代位弁済の率が高いということが数字上あがっております。  業種別の状況でございますが、製造業と建設業とサービス業三つをとってみますると、製造業は全体を一00といたしまして、その中のパーセンテージで四0%くらい。四一から四三%くらいをずっと毎年引き続いておるわけでございますが、最近の特色としては、建設業が非常にふえてきております。建設業が三十八、九年のころの倍以上の比率に上がってきているということ、これは非常に顕著な例でございます。それからサービス業がまた相当高く上がってきておるということでございます。サービス業も三十八、九年のころの三倍とか四倍とかいう数字で上がってきております。この建設業は、いままで詳しく御審議のありました倒産業種の中で一番多い業種でございますが、やはり倒産業種の多いものが代位弁済というか保険事故発生が多いということが申し上げられるかと思います。
  42. 千葉佳男

    ○千葉(佳)委員 いま長官からお話がありました資料を実は私もいただいたのですが、おっしゃいましたように、神奈川は大きなところでは特殊な状態でありますが、これをずっと見てまいりますと、代位弁済率が三%をこえるところ、たとえば熊本、愛媛、鳥取、和歌山、福井といったところが代位弁済率が多いということから見て、やはり俗にいわれている後進地域にそういう率が多いわけです。企業庁としてはその辺をどのように見ておられるか。北海道と神奈川は別にいたしまして、そのほか代位弁済率が三%をこえておるというところは、岐阜と福井はおそらく繊維なんかの関係があるものと思いますけれども、それとからんで、何か俗にいう後進地域という特徴があるような気がするのですが、その辺どのように見ておられるか。
  43. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 どうも十分勉強ができておらなくて恐縮なのでございますけれども、私たちがいままで調べましたところによりますると、後進地域だから特に代位弁済率が高いということはないんじゃなかろうか、小さな保証協会でございますと、少しまとまって関連倒産等が出ますと、ぐっと代位弁済率が高くなるというふうな事態もあるのではなかろうかと思っておりまするが、県別に、なぜこの県が特に高いのか——確かに御指摘のように、鳥取あたりは例年高いのでございますが、この辺のところは私たちのほうもまだ十分調査ができかねております。
  44. 千葉佳男

    ○千葉(佳)委員 この件につきましてはそれくらいにしておきますが、これと関連して、この間参考人で出ていただきました相互銀行のほうから資料をいただいたのです。相互銀行といえば大体中小企業相手の融資が非常に多いのですけれども、その中で保証協会を通じて融資を得ているというのは、四十一年で二・一%、四十二年で二・五%、これは非常に低いような気がするのです。そうなると、信用保証協会そのものの中小企業にとっての補完制度という本来の役割りがいささかそこなわれているんじゃないかという気がするのですが、その辺の見方はいかがなものでしょうか。
  45. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 金融機関を全部集計しまして平均いたしますと、四十二年九月の時点の調査では四%ということになっておりまするが、先生御指摘のように、政府関係の国民金融公庫が低いのはあたりまえとしまして、相互銀行の数字は確かに低く、四十二年九月で二・五というところでございます。都市銀行が五・七、地方銀行が四・八ということに比べますと、ほんとうに低いのでありまするが、相互銀行の保証つきの貸し出しは、三十八年当時は一・二という数字がございますので、これから見ますると逐年ふえてきておるということを数字上は示しております。
  46. 千葉佳男

    ○千葉(佳)委員 数字上ふえておるのはわかりますが、その辺の原因らしいものを企業庁のほうでつかんでおられるかどうかをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  47. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 相互銀行が二・五という数字でございまして、都市銀行が五・七という数字でございます。都市銀行が非常に高いようでございますが、先ほど説明が不十分でございましたが、都市銀行はもちろん中小企業向けの貸し出しを分母にして比率をはじいているわけでございます。相互銀行のほうは一応全部中小企業向けということを推定いたしまして、相互銀行の貸し出し全額に対しまして保証つきのものが二・五%ということのようであります。したがいまして、一つはその点からも数字が低く出ているのではなかろうか。相互銀行の中でほんとうの中小企業だけのものを拾い出しますと、もう少し高くなるのではないかと思いますが、御指摘の点は勉強させていただきたいと思います。
  48. 千葉佳男

    ○千葉(佳)委員 その辺いろいろわかりましたら、あとからでけっこうですが、ひとつお知らせいただきたいと思います。  それから第二番目に、先ほど佐野委員からも質問がありましたが、今度の二十五億の基金繰り入れといいますか、これのねらう間接効果といいますか、その辺もう一ぺんお知らせしていただきたいと思います。
  49. 長村貞一

    ○長村説明員 この二十五億の資金の効果ということでございますが、金額自身といたしましては、先ほど申しましたように、これをちょうだいいたしますれば、来年度の保険金はまずまず支払えるだろうということで、結局さようなことになりますれば、この二十五億によりまして必要な保険金の支払いができる。つまりその方法によって、いうならば、中小企業者の方々にかわって金融機関のほうに所要の弁済ができるということで、私どもは、これによりまして、これがおそらく保険なり保証なり信用補完なりの一番大きなねらいになると思いますけれども、金融機関としても、万一の場合の弁済が確実になる、あるいはまたそれによって、払います中小企業者の方につきましては、ともかく一応それで金融機関のほうには弁済ができて、あと立ち直りつつそれを返していくということになると思います。
  50. 千葉佳男

    ○千葉(佳)委員 この資料を見ますと、準備基金が四十二年度まで八十一億ですか、それでおそらく今度で四十三億の欠損が出るであろう、したがって三十八億になる、そこに二十五億を加えて六十三億の準備基金を持つ、こういうようなことになると思いますが、当然予想される倒産件数、それに伴う代位弁済は非常に大きくなることは予想されるといいながら、実際は絶対額から見ますと、ことしは八十三億あったけれども、二十五億出資しても六十三億というように絶対額は低くなっておるわけです。その辺は、いま言われたように完全なものかどうか、その辺の説明をひとつ。
  51. 長村貞一

    ○長村説明員 御指摘のように、現在の八十一億の保険準備基金は少なくなってまいりまして、そこに二十五億加わるわけでございますが、御承知のとおり、保険金を支払いますもとになる元金といたしましては、最後によるところは保険準備基金ではございますけれども、その前に、毎年入ります保険料もございます。それから、いうなれば立てかえ払いみたいになりますけれども、それを回収します回収金がございます。それらがみな第一段としては、保険金を支払います元金になり、それが予算でも百何億かになりますので、かれこれ合わせまして保険金の支払いはしばらくできるようになっております。
  52. 千葉佳男

    ○千葉(佳)委員 本来であれば、こういう保険準備基金が少ないほうが、少なくて事がないほうが喜ばしいわけでありますけれども、それがだんだんこういうふうに問題になること自体が、中小企業にとってははなはだうまくない姿だと思うのです。それとかね合わせて、やはり法案のねらいである信用補完を無担保無保証で零細企業者に及ぼしていくということになれば、当然逆に、準備基金とは別に、こっちのほうの融資基金のほうを増額しながら、各県の信用保証協会の保証力というものを強める、こういうところに政策の力点が変わっていくというようなことが私は好ましい姿じゃないかと思うのですが、どなたかおそらく御指摘になったと思いますか、融資のほうは九十五億が七十億になって、絶対額はふえておりますけれども、こちらのほうにだけ少なくなった。その辺はどうなんですか。
  53. 長村貞一

    ○長村説明員 お話しのように、政府の出資に二種類ございまして、保険準備基金、融資基金でございます。保険準備基金のほうは、ただいま御指摘のございましたことにお答え申し上げたとおりでございます。融資基金のほうが、昨年九十五億のところが七十億に減っております。率直に申しまして、私ども保険公庫の立場といたしましては、この融資基金というものは、そのまま五十一の協会に融資をされまして、それが一つにはそれぞれの協会の保証をバックとする金融機関の貸し出しの誘い水的なことにもなりまするし、また協会それ自身の財政的な一つのささえになっているので、これは少しでも多く私どもはちょうだいしたいのでございます。七十億という金額、昨年に比べますと確かに減っております。私どもこれで十二分とは考えておりませんけれども、財政硬直その他政府の財政上の都合もあり、まず来年度はこれで運営してまいる、やむを得ないが、これで来年度は運営してまいるという考えでございます。私はこの融資基金というものは、年を追うに従いまして、性質上、御指摘のようにますますふえてしかるべきものであると考えております。
  54. 千葉佳男

    ○千葉(佳)委員 その辺が、倒産対策をしておると言いながら、どうもやはりちぐはぐな点じゃないかということを感じるといいますか、ぬぐえないと思うのです。準備基金のほうだけよけいにして、悪く言えば倒産を持っておるような——それはないと思いますけれども、私はそういうような印象を受ける。むしろ倒産を防止するという点から言うならば、やはり融資基金のほうをよけいにして、保証協会の信用力を増す、力を増すというふうにやはり変わらなければならぬというような気がするのです。その辺いま総裁言われて十分あれでしょうから、これ以上はやりませんけれども、その辺私はいまでも疑問は晴れないのです。いずれ追ってこれまた問題にしたいと思います。  それから第三番目の法案の改正、役員の欠格条項の問題について質問したいと思いますが、これは国会議員、地方議員それから政党の役員を一括して「政府又は地方公共団体の職員」こういうふうになっておりますが、その辺どのようなお考えですか。
  55. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 端的に申し上げまして、政府の最近の立法では、役員の欠格条項が昔にかわりまして狭くなってきております。それに右へならえをこの際したわけでございます。その理由といたしましては、国会議員や地方公共団体の議員が、現行の信用保険公庫法では欠格条項になっておるわけでございますけれども、現在、他の最近の立法におきましては、こういう国会議員や地方公共団体の議員につきまして、その役員等につきましても、これは無理に欠格条項の中に入れる必要はないということでみな削除しております。そういうことで最近の立法例にならったものでございます。
  56. 千葉佳男

    ○千葉(佳)委員 いま説明ありましたように、最近の立法例にならった、他意はない、こういうふうに言われてしまえばそのとおりだろうと思うのですけれども、特に議員と政党が落ちておるということは、最近特に問題になっておる高級官僚の天下りという点と、それからこういう席上で申し上げるのはどうかと思うのですが、この前、実は綾部前運輸大臣が選挙に落ちられて、すぐ鉄道建設公団の総裁になられたとき、私は何ともいえない感じがしたのです。そういう意味で落選代議士の一つのポストといいますか、そういうふうな世上の批判が非常にきびしいおりですから、そうしてまた問題の非常にあるときですから、そういうときに、こういう議員と政党が他の立法例にならったのだからということで落とされたといってしまえばそれだけだと思うのですが、しかし落選された議員がそれなりの十分お力があって役職につくのでしょうけれども、一般選挙民から見れば、これは不可解な、ふしぎな感じにとらわれるし、私ども政治を志す者にとっては、落選すればやはりお互い苦労しながら次に出てくるというのが、これは政治家の宿命ですから、そういうときに、そういういろいろな例がありますから、この点ちょっと私気にかかるのですが、その辺の考え方はどうなんですか。
  57. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 国会議員、地方公共団体の議会の議員、地方公共団体の長もしくは常勤の職員それから政党の役員、これが先ほど最近の立法例にならったということを申し上げたのでございますけれども、この公庫の役員と密接な関係のある人だけを法律上は欠格条項にする、もちろん、これは実際の行政上の運用と申しますか、どなたが役員になられるかということにつきましては、いま先生御指摘のような諸点も、さらに当然これは慎重に考慮して決定されるべきものでございますけれども、欠格条項として法律上明定をいたすということは、公庫の業務上、特にぐあいが悪い方を明記すれば足りるのじゃないかということで、この範囲を縮小しようというものでございます。実際の運用はもちろん当然慎重に考慮されてしかるべきであろう。私これは長官の申す筋かどうか若干問題でございますが……。
  58. 千葉佳男

    ○千葉(佳)委員 この点は、本来であれば厳重に大臣にそういう点を申しておかなければならない点であります。例の米価審議会の委員選任する場合も、盛んに兼職の禁止というような点もいろいろいわれておるときでありますし、むしろ私の考え方からすれば、いま長官は法律上の欠格条項ということで、法律上というところに力点を置いて説明されたようでありますが、本来の流れからいえば、やはりこういうものをより厳格に欠格条項をつけておくというのが、先ほど申し上げましたように、高級官僚の天下りとか落選代議士の格上げとか、そういうふうな点を禁止するという面からいえば、やらなければならぬ点だと思うのです。単なる法文、従来の立法例に従われたという、そういう安直な考え方でむろんないとは思いますけれども、厳格にひとつ適用されんことを要望しまして、私の質問を終わりたいと思います。
  59. 鴨田宗一

    ○鴨田委員長代理 中村重光先生。
  60. 中村重光

    ○中村(重)委員 乙竹長官には私と一緒に昼抜きで取り組んでいただきたいと思いますが、委員長、昼食の時間の関係もありましょうから、ひとつ適宜昼食されるようにお取り計らいを願いたいと思います。
  61. 鴨田宗一

    ○鴨田委員長代理 いま中村委員から言われましたとおり、昼食の時間でありますから、ひとつ適宜やってください。
  62. 中村重光

    ○中村(重)委員 いろいろお尋ねしたいことがあるのですが、週三回の委員会開催の中で一日は一般質問という形に理事会の了解がなっておりますから、その際にお尋ねをすることにいたします。ですが、せっかく各局長お入りになっているそうでございますから、簡単にひとつ触れてみたいと思います。  先ほど佐野君の質問に対して藤井政務次官がお答えになっておりましたケネディラウンドの問題この繰り上げ実施については、アメリカ課徴金実施する場合にケネディラウンドの繰り上げということはあり得ない、いわゆるダブルパンチということはあり得ないのだ、こういうお答えがあったわけですね。私は、藤井政務次官の御答弁は、これを決定するにあたって政府が相当検討された結果の態度であろうと思うのですが、非常に甘いと思うのです。お互いに個人間の関係ですと、話し合いの中で、君がこの要求をのまなければ君の要求はのまないよと、そういう形は私はできるだろうと思う。しかし国際間の関係にあってはそういうわけにいかない。特に政務次官イギリスアプローチによってこれをやったのだというお答えがございましたが、イギリスアメリカの関係、いわゆるドルとポンドの関係というのは、円とドルの関係とは違う。ポンドとドルの関係というのは全く一体化している。したがってドルの信用を守っていこうとすると、ポンドの信用を保持していかなければならぬことは当然です。したがって一体的な観点からアメリカはポンドを守ってきたということですね。スワップ協定の問題その他もろもろの施策を考えてみると、そのことははっきり裏書きされておると思うのです。したがって、イギリスがそのドルの信用を保持するという立場から、アメリカ課徴金の問題に対しての批判はそれなりに持ちながらも、やはりイギリスとしてはアメリカと同じ立場に立って、ガットの加盟国その他に対して協力を求めてくるという態度はあり得ると思うのです。しかし日本は、これはドルと円の関係はこれまた一体化という考え方、ドルの信用を保持していかなければ円の信用は保持できないのだというそうした政府態度で、御承知のとおりに金の保有にしてもわずか三億数千万ドルという程度でこれに協力してきた。しかしこの課徴金の問題に対して、一たん政府ケネディラウンドの繰り上げ実施を行なうという態度を決定をして、アメリカに対しても、課徴金実施は思いとどまってもらいたい、日本としてはドルの信用保持のためにこうした協力の方を決定をしたのだというような態度を通告をし、またヨーロッパ諸国に対して、日本と同じような方向で協力をしてもらいたいという働きかけをします場合、日本は、課徴金が五%であるとか、あるいは三%であるとか、あるいは一0%であるとか、その率においてこれが多少左右されるようなことがあっても、全然この課徴金というのはやらない、実施しないというような態度アメリカが決定をするということはむずかしいのではないかということが考えられる。それならば繰り上げ実施はやらないのだというように反射的にそういう態度方針を変更することが可能なのかどうか、これは非常に私は問題であると思うわけでございます。そこいらを十分検討されての態度決定なのかどうか。ひとつ政府の繰り上げ実施態度を決定するに至った経緯についてお答えを願いたい。
  63. 藤井勝志

    藤井政府委員 先ほどもお答えをいたしましたように、基本的な通産省並びに政府態度は、ケネディラウンドのあの精神に逆行するような、いわゆる貿易制限措置的な今度の課徴金創設は断固やめてもらいたいというきつい態度に変わりはございません。ただ、いま御指摘のように、ケネディラウンドを繰り上げ実施するというこの発表をいまの時期にしたというこの経緯、踏み切ったということのプラス・マイナス、これは私も実は中村先生のような考え方を個人的には意見として述べた一人でございます。ところが最終的に大臣の決定を見たわけでございまして、それはやはりイギリスも、一定の条件がいれられれば、すなわち課徴金をぜひやめさすための基本的な態度を示そうというので、イギリスからいわゆる誘いがわが政府にかかって、共同でこの際関税一括引き下げ実施の繰り上げについて一応意思表示をしておこう、条件つきでしておくことのほうが、課徴金そのものをやめさす有効な手段であるというふうな最後判断を下しまして、新聞でごらんのような発表をいたしたわけでございますから、まあ繰り返すようでございますが、万々それが食い逃げされるとか、結局課徴金実施される、繰り上げもまた実施される、こういうことには絶対ならぬという固い判断のもとに一応のこちらの条件を出したということでございます。
  64. 中村重光

    ○中村(重)委員 絶対にならないという判断だという。あなたのことばじりをとらえるわけではないのだけれども、絶対ということをあなたがおっしゃったことは、ある程度見通しが立っておるからだということですね。だから絶対そういうことはあり得ないということになるのだろうし、あるいは先ほど佐野君の質問にお答えになりましたように、ダブルパンチということはあり得ない、課徴金実施するならば関税の引き下げの繰り上げ実施ということはないのだ、そのいずれもということはないのだという意味の絶対なのかとかうことに——まあいまうなずいていらっしゃるから後者のほうだと思うけれども、先ほど申し上げたように私は、イギリス日本は対アメリカの関係において違っている。なぜにガット違反の行為をあえてやろうとするアメリカに対して日本がおみやげを持って交渉しなければならぬのか。そういう腰抜けた態度だからアメリカからなめられる。これはことばは悪いけれども、全く全面協力をしている日本アメリカはなめているということばが端的に当てはまると思うのですね。いかにイギリスの誘いかけがあったにしても、そういう不当な行為をやろうとするアメリカに対しては、絶対やめろということを主張することはいいんだけれども、こちらのほうから、こういたしますからやめなさいというおみやげを持っていかなければならぬ理由がありますか。どうもそういうような政府の腰抜けた態度はおかしいと思う。なぜか。民間団体においても絶対阻止する動きを展開しているじゃないか。政府も、これは絶対反対である、アメリカ課徴金制度というものはいわゆる自由貿易主義というものを破壊することになる、国際貿易というものを非常にこれは縮めてくる、こういう形になるのだということを堂々と、予算委員会においてもあるいはその他の委員会においても、アメリカに対してはきわめて好意的な態度を、外交、防衛は言うまでもなく、あらゆる施策において、アメリカのやっていることに対して、これを一体的な形で理解と協力をしてきた日本がこの課徴金問題に対してだけは非常に強硬な制度をとる、国会の当委員会において取り扱いをやって本会議決議をやろうということは与野党一致した考え方の上に立っている。そういう際に、何も国内において政府の足を引っぱろうというようなそういう情勢状態というものがないのにかかわらず、政府がおみやげを持って交渉するということは、これは当を得ないと私は考えている。あなたはその点どのようにお考えになりますか。
  65. 藤井勝志

    藤井政府委員 中村委員の御指摘、私も十分理解いたします。先ほどもちょっと申したように、こういう委員会の場において個人的な意見を申し上げることは不適当かと思いますけれども、時期として、おっしゃるとおり条件つき闘争をすべき問題の性質ではない、こういうものの考え方をもってこれに対処すべきだという考えを私は持っておったわけでございますが、外務省、大蔵省通産省、ここら辺の事務当局が折衝して大臣の結論を仰いだ、こういういきさつであります。   〔鴨田委員長代理退席、委員長着席〕 国内だけで見ますと中村先生の御指摘のようなことであり、私自身もそういう考え方を持っておる一人でございましたけれども、相手のある話であり、むしろこの辺でちょっと水を向けたほうが問題の根本を解決するのに、すなわち課徴金制度をやめさすのにいいであろうと、こういう最高判断をした、それに沿うて日本政府が動いておる、こういう状態でありまして、精神はあくまで課徴金をやめさせるという基本のねらいに違いはございませんので、いましばらく情勢推移を理解ある眼で見ていただきたい、このように考えるわけでございます。
  66. 中村重光

    ○中村(重)委員 当委員会において課徴金創設反対の決議をしようということに対しては、理事会において与野党一致した考え方でまとまった。ところが、私どもの議運を通じて伝えられておるところによると、どうも与党の態度は必ずしも商工委員会の与野党のようなすっきりした考え方ではないのじゃないかということが伝えられている。いま政務次官が、相手のあることだ、ここで水を向けることのほうがいいのではないかというようなお話があった。何か情勢の変化があったのではないかというように、御答弁の中から、それから与党のそうした動きの中からも実はうかがえる。かつてカナダあるいは日本を除外するというようなことも伝えられてきた。その後、いわゆる在米日本大使館を通じてこれは絶えず情勢の把握をやっておるでありましょうし、あるいは折衝も続けてきておるであろう、その他いろんなルートをもって情勢判断あるいはその他の動きを展開しておるのであろうと好意的に実は見ておるわけであります。そういう中からいろいろ情勢動きというのが出てきたのではないか。あとでお尋ねいたしますが、環境としては、いわゆる金の二重価格の問題等々から考えてみて、これは逆な形、より深刻な方向に進んできておると思うのだけれども、いま御答弁の中からは、課徴金問題に対しては何か期待できるような動きが出ておるのではないかというようにもうかがえる。そこいらの情勢動きはどうなんでしょう。
  67. 藤井勝志

    藤井政府委員 もう少し具体的なことにつきましては、いま貿易振興局長も参りましたので、補足させていただきたいと思いますが、私の聞き及んでいる範囲では、ごく最近、EEC理事会において、やはりこういう貿易制限措置を思いとどまらせるための一策として、ケネディラウンドの譲許繰り上げの問題を検討しておる、そしてその結論をアメリカ側に話を持ち込む、それと相呼応して、先ほどお話を申し上げましたように、イギリス自体日本に対して直接、イギリスもこういう考えで向こうにぜひ思いとどまらすような考えを持っているから相提携していきたい、こういうふうな話が日本政府にごく最近参りまして、やはり一人力んでおったところでしょうがないので、問題はやはり課徴金制度というものを創設すること自体これはよろしくない、これを思いとどまらせるためには、貿易の自由化、世界経済の拡大という基本線に沿うておるケネディラウンドそのものをもう一ぺんひとつ日本EEC並びにイギリスと相呼応して検討してみよう、これによってひとつ思いとどまらしていこうではないか、こういう判断に立ったものと私は判断するわけでございます。
  68. 原田明

    ○原田政府委員 予算委員会のほうから回ってまいりまして、少しおそくなりましてまことに申しわけありません。  先生御指摘の、アメリカ課徴金というような自由貿易に反するような政策をやっているところへ、こちらがKRを繰り上げて、おみやげを持っていってダブルパンチを食うようなことはけしからぬじゃないか、全く同感でございます。したがいまして、私どもは、アメリカ課徴金をやられて、しかもKRを繰り上げるなどということは絶対に考えておりません。ただ現在のところは、課徴金をやめさせるということが何より先決であるというふうに考えております。そのためには、世界の貿易が拡大的な方向課徴金をやめられるというほうが一番望ましいということでございまして、そのために英国、カナダ等はすでにある程度KRを繰り上げるというようなことをやって、それによってとまるならば、ドイツあたりも賛成しているようであるし、一番がんこなフランスあたりもこれに賛成をして、それによって拡大的な方向課徴金をとめるということが可能ではないかという話が進んでおります。したがいまして、わが国もこの世界的な動きに一緒になりまして、特にドル防衛の一番もとになっているヨーロッパ、EECの諸国が拡大的な方向で協力をしてくれるという機運をつくり出すために、条件をはっきりつけまして、それならばわが国ケネディラウンドの若干の繰り上げということをやらぬではないということを声明したという次第でございます。しかもその条件の中には、課徴金をやらないということはもちろんですが、その他アメリカイギリスは原則としてやらない、さらにまたEECその他世界の主要国がすべて一緒にやるということでないとやらないという厳重な条件をつけております。
  69. 中村重光

    ○中村(重)委員 私どもよりも振興局長はこれは非常に詳しい。ところがいま政務次官並びに振興局長のお答えを聞いておっても、私はどうも納得いかぬですね。先ほど藤井政務次官から相手があることだ、全くそのとおりと思います。当の相手であるアメリカ動きはどうなのかということが私は問題だと思うのです。アメリカがいわゆる国際的な批判ということもあえて忍んでこの課徴金制度を創設しようということに対しては、これはアメリカなりの大義名分というものを持っていると思う。それがどういうことなのかということを予算委員会においても私は質問したのだけれども、お答えがなかったのだから、きょうは原田振興局長からその点についてもお答えが願いたい、これが一点。  いま一つは、アメリカが実はこういうことなんだからひとつケネディラウンドの繰り上げ実施ををやってもらえたならば、課徴金についてはこれを取りやめるということも可能だという何らかの一動きが出ていた、それがイギリスをはじめヨーロッパ諸国の動きとなり、いわゆる日本にこれの働きかけが出てきたということで、これを繰り上げ実施をするということであるならば、私はある程度の理解ができると思う。にもかかわらず、アメリカのそうした無謀なやり方に対して、こちらがおみやげを先に持っていって交渉する、そのことは私は条件闘争的な形になると思う。五%の実施、それを三%にいたしましょうとか、あるいは一0%と実は考えておったのだが、それならば五%に縮めよう、そういうような、アメリカから逆にこちらのおみやげを利用していろいろな、のむことのできない条件が出されたけれども、一応政府としては態度を決定はした、ヨーロッパ諸国としても足並みをそろえたということになってくると、いや全然だめですよと言って引き下がれない形になってくるのではないか。多分にそれが予想されると私は思う。だからアメリカ課徴金実施の大義名分をどこに求めてきたか、それから  ヨーロッパ諸国がそういう動きをしたということに対してのアメリカの何か流動的な課徴金に対するそういった動きが出てきたのかどうか、それに対応する動きなのかどうかということについてのお答えを願いたい。
  70. 原田明

    ○原田政府委員 アメリカの大義名分と申しますか、アメリカがいままで自由貿易のリーダーといたしまして世界に主唱してまいりましたにもかかわらず、課徴金というような激しい制度を考えざるを得ないということを言い出してまいりました理由は、先生御存じのとおり、アメリカの国際収支が年間三十数億ドルも赤字になってまいりました。そのためにドルの価値に問題が生ずる、したがって、ドル価値の防衛のためにはアメリカの国際収支の回復が最大の先決事項である、そのためには資本取引の領域が一番必要な分野ではありますけれども、直接投資、クレジット、それからインビジブル、こういう領域と並びまして貿易の分野にも若干の改善をしたい、約五億ドル見当の見込みを立てた、そのくらいのところで国際収支の改善をはかりたい、しかしそのためには輸出を伸ばし輸入を控え目にする以外にはないわけでございますので、その輸入を押える手段として、当初は国境税調整措置といったようなことを考えていたようでございます。しかしアメリカ国内でも、国内産業の側からする強い保護主義的な動きがございます。また課徴金というようなものは各国がやった前例もございますが、国境税調整措置といったようなものはなかなか技術的な困難というものもないではない、いろいろな観点から、この際ガットに一応違反ではありますけれども、アメリカの国際収支の困難に対処するということを理由にしてガットにはかって各国から認めてもらいたい——認めるか認めないかは別でございますが、アメリカ立場としてはウエーバーを求めて認めてもらいたいということで課徴金というものを出さざるを得ないのじゃないか。しかしまだ決定をしたというわけではないが、これが一番有効な手段と思うといううわさがこちらのほうにまいったわけでございます。そうなりますと、特に日本におきましては、この課徴金によって受ける影響が非常に大であるというふうに考えられますので、これを何とかして防止をしなければならぬ、そういうことで、財界あたりからも使節団が行かれまして、防止のために全力を尽くしておられるわけでございます。その場合の私どもの一番の立場は、何と申しましてもアメリカドルの収支が悪くなりました原因は、ヨーロッパの大陸諸国に黒字がたまったということでございます。日本はその責任を持っていないということにあると思いますので、これはそちらのほうを強調されて、ヨーロッパにドル防衛のための協調の機運をつくらせるということが最大の先決になるというふうに考えられるわけでございます。  そこで、そういう話をさんざんいたしておるわけでございますけれども、アメリカのほうといたしましては、なかなかヨーロッパの特にフランスあたりがそういう機運に乗ってまいらない、かたがたアメリカ国内におきましては保護主義の動きというものがかなり強くなっておりまして、国際収支の困難なときであるから輸入を制限するのはけっこうではないかという動きが強くなっている。したがいまして、アメリカ政府といたしましては、一方においてはフランスその他の欧州大陸諸国に同調をする、他方国内の保護主義を押えるために何とか拡大的な方向課徴金をやらないで済むというような手段はないものだろうかというサウンドをしているわけでございます。そのサウンドの一つ方法として、ケネディラウンドの若干の繰り上げという方法も考えられたように聞いております。このケネディラウンドわが国といたしましては相当努力をいたしまして、できる限りのところでここまできたわけでございます。これをさらに繰り上げるというからには、相当の効果というものが期待されなければとても踏み切れるものではないわけであります。しかし現在の客観的な情勢は、アメリカの国際収支の困難というのがちょっとやそっとのところではなかなか簡単にはいかないかもしれません。そういたしますと、もしEECが協調しないならば、課徴金に踏み切るということにならざるを得ないかもしれない。それよりはEECを協調させまして、拡大的な方向輸入課徴金その他の制限措置を防止するというほうが、わが国にとっては得策である、よりベターであるという判断に立つわけでございまして、その意味でこれが最善の策でわがほうから進んでやりたいという策であるわけではございませんけれども、世界の貿易を拡大的な方向課徴金を防止できる対策一つとしては有効なものではないかという考えに立ちまして、条件をつけました上でこれをやることを考えたらどうかというところまでまいりましたような次第でございます。
  71. 中村重光

    ○中村(重)委員 私はそれが甘いというのですよ。最後の結論以外は振興局長のおっしゃっているとおりだと思います。日本は全面協力で国際収支の非常に悪化しているという問題等についても、あるいは今度のような金の二重価格制度という形になって、ドルの価値が非常に低下してしまうということになってくると、いわゆる金の保有というものを日本が押えてきた、そのことが日本としてはたいへんな窮地におちいるという形になってきたのですね。ヨーロッパはそうではない。だからヨーロッパ諸国のケネディラウンドの繰り上げ実施という問題については、アメリカとしてもある程度これは言いまえがあるだろうと思う。またヨーロッパ諸国はこれに協力をしなければならぬということであろうと思う。日本は全く逆なんだ。その日本は、いわゆる自主性をもって、日本立場において堂々とものを言ってもいいじゃないか。それがどうして言えないのか。それは振興局長がヨーロッパは当然のことだとおっしゃったんだから、あなたのことばじりをとるわけじゃないんだけれども、ヨーロッパ諸国と日本立場は違うのだということです。違うのだから、ヨーロッパ諸国はヨーロッパ諸国としてそうしなさい、そして日本は当然日本としての自主的な行動を展開をしてもいいじゃないか、こう私は申し上げる。いまあなたが言われるような方向に事が進むのならば、いわゆるダブルパンチを食わないという形に進むのならばいいけれども、金の二重価格の制度の問題等考えてみてごらんなさい。情勢は非常に深刻になってきたのですよ。国際通貨であるところのアメリカドル、これの信用というものは非常に低落してきたわけですね。そうなってくると、この課徴金制度というものの創設が、当初問題になったときよりも、何とかアメリカに対して協力していこうという国際的な機運というものが自由圏諸国の中に高まってきております。そういう際にケネディラウンドの繰り上げ実施ということをこっちが言ってしまったら、完全にアメリカ課徴金制度というものをやめてしまうというようなことにならなかったにしても、何らかの形においてこれを妥協しなければならなくなってくる。いわゆるダブルパンチというものをどうしても日本は受けなければならぬというような形になってくる可能性というのか、危険性というものがあるような気が私はするのです。まあしかし、きょうは時間の関係もございますから、いずれあらためて一般質問の際に、この点はさらに突っ込んでお伺いをいたしたい、こう思います。  そこで、せっかく大蔵省おいでを願っていることでございますから、金の二重価格制度の問題について簡単に触れてみたいと思いますが、金の二重価格制度がここで実施されるということになってくると、自由価格というものが上がってくることは間違いございません。ある意味においていわゆるドルの兌換制度というものは中止されるということに実質的にはなってくるのではないかというように思います。きょうのテレビ、新聞等の報道によりますと、若干落ちついたようなことでございますけれども、情勢推移を見守っておるという警戒的な面もなきにしもあらずと私は思う。そうすると、金の自由市場におけるところの騰貴ということは避けられない。その結果はどういうことになってくるかというと、申し上げるまでもなく、金を材料として製品化するところの商品というものは値上がりしてくる。そのことは一般物価を押し上げるという役割りを果たしてくるのではないかというように私は思うわけであります。それらの点に対して通産、大蔵両省はどのようにお考えになっていらっしゃるのか、伺ってみたいと思います。
  72. 原田明

    ○原田政府委員 金の二重価格制度の設定、つまり金プールを通じましての民間市場への金の放出を事実上やめるという、去る十七日の七カ国中央銀行総裁の会議の結果といたしまして、さしあたりは金の政府間における交換は公定レートで行なわれ、民間の需要に対する取引のほうは自由価格で行なわれるということになるわけでございます。したがいまして、もし民間の需要が非常に起きて、かつ投機的な動きが強いという状態になりますと、金がさらに騰貴をするおそれがないわけではございませんが、こういう二重価格制度をとりました理由は、協調いたしました各国の中央銀行その他が、自由市場における価格のところまでは責任を持たないで、中央銀行間の取引のところにだけ責任を持つというふうに範囲を狭めたということになると思います。したがいまして、狭められた範囲の中で価格を維持し得るキャパシティーというものは増加したのだという結果になろうかと思います。ただ、反対に、自由価格のほうはどうなるかということは、今後の見通しいかん、つまりアメリカの国際収支の改善の努力がどの程度功を奏するか、それからまた国際協調によって金の公定価格を維持していこうという努力がどのくらい功を奏するか、それからまた自由価格市場に供給される金、特に南アフリカ連邦あたりからの金がどういうぐあいに、どの程度の量、どのくらいの価格で供給されることになるであろうかというような、幾つかの条件によって左右されるというふうに考えます。したがいまして、いまのところ直ちに金がぐうっと上がるようになるという見通しよりも、やはり本日の動きがちょっと示しておりますように、それでしばらくの間鎮静といいますか、上がったり下がったりを繰り返しまして、自由市場における価格がどの辺かという目安が一応出るのではなかろうかというふうに考えます。したがいまして、その点で、今回の措置によりまして非鉄金属やその他の価格が直ちに騰貴のほうにだけ向かう。そうしてまたそれが物価全体に拍車をかけるというふうにいくかどうかというのは、なおしばらく様子を見ないとわかりにくいところではないかと思います。また特にアメリカ経済は若干インフレぎみの傾向もあるといわれておりました状態でもございますので、今回の措置によってデフレ的な要素が加わるわけではございますけれども、それが直ちに非常に強いデフレになるかどうかというところもかなり問題もあるかと思います。  以上、総合いたしまして、まだまだ事態はかなり流動的でございまして、十分注意をして見て、これに対応する対策を弾力的に考えていかなければならないような状態ではないかというふうに考えております。
  73. 中村重光

    ○中村(重)委員 大蔵省にお答え願う前にお伺いいたします。  ただいまお答えになったような見解もあると私は思うのです。しかしいずれにしても、国際通貨であるところのドルの信用が低下したことは間違いない。そのドルの信用の低下というのは、いわゆる流動性というものが低下してくる。流動性が低下するということは貿易が低下をしてくることになる。そのことが日本貿易にどのような影響を及ぼすかという問題がきわめて重要な問題点になってくるであろう。なかんずくアメリカに三割依存をしているところの日本貿易というものは、これはたいへんな痛手である。特に中小企業貿易の打撃というものは大きいと私は考えるが、そこいらの点について、どのように大蔵省見通しておられるのか、また通産省はどうお考えになっいらっしゃるのか、ひとつお答えを願いたいと思います。
  74. 熊田淳一郎

    ○熊田説明員 お答え申し上げます。まず、二つに分けてお答えしたいと思いますが、最初に先年の御質問になりましたわが国の物価に及ぼす影響でございますが、これはわが国国内の金価格というものがすでに従来の国際価格よりも相当割高になっておったわけでございます。これは御存じのように、一グラム国際価格ですと四百六、七円でいままでは買えた、輸入できたわけでございます。ところが国内価格は一グラム六百六十円で山元から払い下げる、売り渡す、こういうことになっておったわけでございます。したがいまして、これは国際価格に比較をいたしますとすでに六割くらい高い価格でございます。こういうようなものを使いまして金製品がつくられておったわけでございますが、今度国際市場が二重価格制になりまして、産業用金は自由市場で売買をされるという場合に、その価格がどの程度騰貴するか、これがはたして、六割も騰貴するかどうかということは、これは先ほど通産省からもお答えのございましたように、今後の推移を見ませんとわからないことでございますけれども、しかしながら、きょうの新聞なんかの報道で見ましても、十五日におけるパリ市場の金の価格とそれから昨日におきます金の自由市場の価格と比較してみますと、下がっておるわけでございます。一オンス四十四ドル三十六セントという価格が四十ドル台に下がっておるわけでございます。そういうような状況でございますから、私は、この二重価格制になったことによって、わが国の金製品の価格に影響を及ぼすということは、現状ではまずまず考えられないのじゃないかというふうに考えるわけでございます。  それから次は、流動性の縮小あるいはそれによる世界貿易の縮小、こういうことがあるのではないかという御質問でございますけれども、これは、今度の七カ国中央銀行総裁の会議のコミュニケの中でも言っておりますように、現在の通貨、外貨準備用としての金、これは現在の量でも国際決済としては十分であるということを申しております。これはどういうわけかと申しますと、現在国際的に討議をされておりますSDR、特別引き出し権、これの審議が現在進んでおりますが、SDRが発動されるようになりますと、非常に国際流動性というものはそれによって追加をされるということになるわけでございます。したがいまして、今度の二重価格制をとったことによって、流動性は欠如し、世界貿易が縮小の方向に向かうということは考えられないというふうに思うわけでございます。ただこの二重価格制を維持していきますためには、アメリカあるいはイギリスの非常に節度ある経済の運営と申しますか財政金融面からの引き締め、それから国際収支改善のためのいろいろな措置、これが強力に行なわれまして、そうしてドルとポンドの信認を回復し維持するという必要があるわけでございます。したがいまして、そういう面ではアメリカに対しますわが国貿易、これが全く影響を受けないとは申せないと思います。ただ、一方におきまして、今度の七カ国の中央銀行の総裁の会合の決定といたしまして、ヨーロッパ諸国は世界貿易のそういう縮小を招かないように、つまり現在ヨーロッパ諸国は経済が上向きぎみでございます。そういう状況でございますから、ここでヨーロッパ諸国は引き締め政策をむしろ緩和をいたしまして、そうして従来の大幅な黒字というものをむしろなくしていくべきである、こういうことを申しておるわけでございます。これはヨーロッパ諸国の貿易が拡大をしていくということを意味するものでございます。したがいまして、ヨーロッパに対しては貿易は拡大する要因がある、こういうことでございまして、いろいろな要因があるわけでございますので、必ずしも今回の金の二重価格制によりまして世界貿易が縮小に向かうというようなことは考えられないわけでございます。
  75. 中村重光

    ○中村(重)委員 あなたからそうした型どおりの事務的な答弁を私は期待しているのじゃない。しかし説明員であるあなたにそれ以上の答弁を求めるということは無理であるし、またもっと高度な判断の上に立ったお答えも聞かなければならぬ。金プールの中央銀行の総裁の会議で、あなたがお答えになったような一つの声明を発表した。しかしこれは、ゴールドラッシュというものはできるだけ鎮静させていかなければならぬという配慮がああいうような声明になってきたわけです。それからドルの信用が低下してくる、このことは流動性が低下していくことは間違いないです。それは貿易の低下につながる。ただ一片のああいう声明によって私どもはそうした型どおりの判断をするほど甘くはないですね。事態はそんなに楽観したものではない。まあしかし、あなたからはこれ以上お答えはいただかなくてもけっこうでございますが、振興局長に見解を伺ってみたいと思うのですが、金プールの中央銀行総裁の会議では、ドルの信用を保持するためには、アメリカの国際収支を改善することが最優先でなければならぬということを、この声明の中で強調しておりますね。それはどういうようなことがこの後結果として出てくるかということになると、アメリカの引き締めというのが相当強まってくるであろうということです。それから課徴金の問題しかりである。あるいは増税の問題も、今度は議会の抵抗というものを何とか納得をさせて、これを実施するという方向に進むであろう。その他まだいろいろありますけれども、いずれにしても、日本貿易を伸ばしていくという点について、マイナス要因として働くことは、これは間違いないわけです。四十二年度の貿易の結果も実はどういうことになるのか、あるいは四十三年度の輸出にいたしましても、一五%という大幅の伸びを実は予想しておるわけですね。このように日本輸出貿易の環境というものが非常にきびしくなってきた。このことは、どうしてもわが国の四十三年度の輸出貿易見通しに誤りが出てきたということは否定できないと思う。だから修正をしなければならないのではないかと思いますが、そこらに対してどのような見解を持っておらるれか伺ってみたいと思います。
  76. 原田明

    ○原田政府委員 先ほども申し上げましたように、今後、金、ドルの価値がどのように安定の経過をたどり、流動性がどのように補給されてまいるかという点は、なお事態は流動的でございますので、アメリカドル防衛政策がどの程度成功するか、EECをはじめとする国際協調がどの程度功を奏するか、それに先ほどお話の出ました特別引き出し権というような、新しい通貨による供給がどの程度追いつくかというような条件によって変わってくると考えております。したがいまして、先生御指摘のとおり、その情勢いかんによっては、非常に注意しなければならない情勢が起こってまいります。特にアメリカにおきまして、増税並びに引き締め、さらに輸入の制限というようなことがもし万一実施されるというようなことになりますと、日本輸出を取り巻く環境というものがきびしさを増すという点については、先生御指摘のとおりではないかと思います。ただ、いままでの日本経済の引き締めにおきましては、通常その次の年には二二%から二六%くらいの輸出の伸びというものが実現をいたしております。しかし今回は、すでに見通しをつくりますときに、これからの輸出環境が非常にきびしくなるということを予想いたしまして、世界の貿易の伸びは去年に比べれば拡大をすると考えられましたにもかかわらず、過去におけるほどの大きな伸びは期待できないのではないかということで、一五%程度の伸びという見通しを立てた次第でございます。しかしこの一五%の輸出の実現というのは、ただ何もしないで容易に達成できるというような環境でないことは御指摘のとおりでございます。私どもこれから一そう輸出振興努力をいたしまして、この目的を実現をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  77. 中村重光

    ○中村(重)委員 私の質問に対してお答えになっていないのですが、いずれあらためてお尋ねすることにいたします。  きょうは発展途上国の繊維、雑貨等の日本との輸出競争力というもの、その原因、いろいろな点についてお尋ねをしたかったわけでありますが、省略をいたします。そこで本来の信用保険法の問題について、いろいろお尋ねをいたしまして、私の質問を終わることにいたしますが、振興局長はもうけっこうでございます。  先ほど来、中小企業信用保険公庫法の改正案の内容に対しまして、同僚委員諸君からいろいろお尋ねがあったわけですが、私は端的にお尋ねをいたしますが、第五十一回の国会において、信用保険法の一部を改正する法律案に対しまして附帯決議がつけてある。ならびに中小企業信用保険臨時措置法案に対する附帯決議もつけてあるわけであります。昨日、附帯決議の問題について、これがどのように実施されておるのか、洗ってみたいと私は御連絡申し上げておきましたので、これがどう生かされてきたのか、生かされていない点はどのような問題点があったのかという点について、ひとつお聞かせ願いまして、それによって質問を続けてまいりたいと思います。
  78. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 第五十一国会及び第五十五国会の商工委員会におきまして附帯決議がつけられております。その各項目につきまして、私たちが実現方努力をいたしました点を申し上げます。  まず第一でございまするが、特別小口保険の付保限度額の引き上げ、他種保険との併用、具備すべき要件の緩和について改善をはかれという御指示がございました。この特別小口保険の付保限度額の引き上げと他種保険との併用の問題でございますが、端的に申し上げまして、併用は法律的に非常に問題がございまして、どうもこれは非常にむずかしゅうございました。それから小口保険の付保限度額五十万円、これを引き上げるという問題も、これを真正面から取り上げますというのは、現在の小口保険についての事故率の経験値がまだ十分得られておらぬ、また相当数の協会が、その限度引き上げについては警戒的であるという現状でございまするので、後日引き上げの方向に向かって努力をする、検討をするということにしてございます。しかし、この決議の御趣旨をいかにして実現するかということで努力をいたしました結果、次のように措置をいたします。すなわち、特別小口保険の利用者が初めて無担保保険を利用する際には、百万円までは低い料率を適用するということに、近く実施をいたしたいと思います。低い料率と申しますと、これは一厘二毛の料率を適用いたしたいということでございます。この意味は、本件につきましては中村委員から強く御指摘があり、御鞭撻を賜わったのでございますので、くどくど申し上げる必要はないと思いますけれども、実質的には何と申しますか、併用が認められたのと経済的には非常に似ておる、また特別小口保険の限度額が百万円まで引き上げられたのと相当似ておる、もちろんまだ不完全ではございますけれども、似ておるということを御報告申し上げられると思います。  第二に、いまの決議第一号の中の具備すべき要件の緩和の点でございますが、この特別小口保険の要件には居住要件と納税要件と二つございまして、実質的な審査を経ずしてすみやかに形式的に保証ができるようにということで要件がついておるわけでございますが、決議で御指示のこの要件の緩和、特に納税要件の緩和でございます。これにつきまして努力いたしました結果は、身体障害者それから老年者、寡婦等につきまして、この方々は特別の控除が受けられておりますために、所得割りの納税額がなくなる場合があるわけであります。このような場合におきましては、そういう控除のために納税額がなくなったことが証明されますならば、均等割りの納税要件だけで保証の対象とするということで処置をいたすべく検討をしております。検討と申しますのは、実施という方向で検討をいたしております。これが五十一国会の御決議でございまするが、その後五十五国会でさらにつけ加えられました点の御報告をいたします。  まず中小企業向け長期安定資金の確保につきまして必要な制度を検討せいという御指示でございまするが、現在の中小企業経営の安定をはかり、特に体質を強化いたしまするために長期資金の供給が非常に緊急でございますことは、御指摘のとおりでございます。昭和四十二年度からは中小企業信用保険公庫の融資基金のうちから二十億円を長期保証推進特別貸し付けといたしまして貸し付けをいたしまして、三年以上の貸し付けにかかわる保証増大の原資として全国の信用保証協会に特別貸し付けをいたしました。この結果、実績が相当あがりまして、四十一年度は全体の中のシェアが一四・四でございましたが、四十二年四月から四十三年一月までで千四百三十五億円、全承諾額の中の一八・一%ということになっております。今後もこの貸し付けワクの拡大につきましては努力をしてまいりたいと存じます。  それからその次に、信用保証協会の保証料率の引き上げ及び保証能力を拡大するために融資基金、保険準備基金等の増額をはかるべきであるという御指示でございまして、今回九十五億円を両基金合わせましてお願いをしておりますのは、この御趣旨を受けた点でございます。二十五億円を準備基金に充てるということによりまして、保険金支払いの四十三年度の準備基金としては十分と申しますか、支障がないと思いまするが、七十億円の融資基金につきましては、これは先ほど御指摘もございましたが、この基金がもっと多ければ、一面には保証協会の経理状況の改善、したがいまして保証料率の引き下げ等、また一面には保証契約を増大するという面におきまして、特に金融引き締め、また体質改善の必要なときに、この融資基金は七十億円にとどまりませず、もっとわれわれとしてはほしい金でございまするが、一般の財政事情やむを得ずということで、不満足ながらこういうことになっておる次第でございまするが、来年度以降もこの融資基金の増大には積極的に努力してまいりたいと思います。  それから次に、保証づき借り入れの金利の引き下げにつきまして必要な指導を行なえという御指示でございます。  本件につきましては、一応大蔵省から四十二年八月一日に通達を出しておることではございますが、その後、いろいろ実情を聞きますと、必ずしもまだ十分ではないと思います。保証つき貸し出しの金利が現に一厘ないし二厘程度下がっておる銀行もあるようでありますけれども、しかし、あまり下がっていないところも相当あるということで、本件につきましては特に大蔵当局に対し、銀行検査等のチャンスをつかんで特に積極的に指導をしてもらうよう要請をしておるわけでございます。ただ、この金利引き下げを制度といたしますことにつきましてはいろいろ問題もございますので、極力私たち及び大蔵省、行政当局の行政指導によりまして、保証つきの金利の引き下げにつきまして努力をしてまいりたいと思っております。  それから第五に、災害、産炭地域及び倒産関連保証のためのてん補率の引き上げでございますが、現在八0%のてん補率になっておりまして、この八0を引き上げることは事実上相当むずかしい問題であると思います。なお、現状におきましても、残りの二0%分につきましては地方庁が全部または一部の損失補償でカバーしておるというふうなことでもございますので、協会の危険負担はきわめて少なくなっておるのではなかろうかというふうに思います。しかしさらに私たちといたしまして、保険公庫から保証協会に対します融資基金の特別貸し付けにおきまして、この点を十分考慮いたしまして、災害等の場合に十分な措置がとれるように努力をしてまいりたいと思います。  以上、御報告申し上げます。
  79. 中村重光

    ○中村(重)委員 詳細にお答えがあったのだけれども、端的に言えば附帯決議は全然尊重しなかったということだ。何にもやっていない。運用の問題について多少配慮するというようなことがあるようにお答えになったのだけれども、何にもやっていない。やれないような附帯決議をつけておると思いますか。無理がありますか。はっきりお答えなさい。この附帯決議は無理がありますか。
  80. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 いま御報告申し上げたところ、微力ではございますが、相当努力をし、相当程度やったと思うわけでございます。決して十分ではございませんことは自覚をしております。今後努力をいたします。
  81. 中村重光

    ○中村(重)委員 十分でないということばは当たらない。ほとんどこれはやっていない。  大蔵省、この附帯決議についてずっと洗ってこられたと思うのだし、またそれなりに中小企業庁との間に予算折衝等々を通じて議論されたことだと思うのだけれども、どういう点が無理だとお考えになりますか。
  82. 長岡実

    長岡説明員 附帯決議の内容につきましては、当然四十三年度の公庫予算をきめます際に、大蔵省中小企業庁の間におきまして熱心な議論を戦わして検討したわけでございますが、おっしゃるとおり、中には財政の事情さえ許すならばそこまで措置すべき問題というのもございます。それから制度的に——国会の附帯決議に対してそういうことを申し上げるのはいささかどうかとは思いますけれども、現状においてそのような措置をとることがはたしてどうであろうかという疑問を持った点もございます。たとえば特別小口でございますが、なるほど小零細企業者に対して、特別小口の非常に条件のいい、保険料も低いし、それから無担保無保証といったような特別小口を受け得る金額が多ければ多いほどいいと思いますけれども、一方、この金は、やはり担保もなく保証人もなく、しかし借りた金はやはり返すということが原則でございますと、これをあまり広げますと、かえって保証協会等も危険を感じて、この特別小口を活用するというようなことに対してちゅうちょする向きもある、現在四十二年の一件当たりの特別小口の利用額総平均が三十六、七万円でございますので、またそういう点からいいましてもいま五十万円でいいのではなかろうか、ただそれについても、これが直ちに五十万円をこえて無担保保険へ移りますと日歩一厘五毛ということになるのでは、やはり零細企業者にとっての負担が大きいということから、中小企業庁長官の申し上げましたような刻みの一厘二毛という保険料率を認めたといったように、私ども一つ一つ慎重に検討いたしましたけれども、現時点においてそれを実現することについていささか疑義がある点もございましたので、先ほど長官が申し上げたような程度にとどまっておるわけでございます。
  83. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまあなたがお答えになったように、附帯決議は一00%生かされない面もあるだろう。それは理解できる。だがしかし、お答えの内容では私は納得できない。いわゆる特別小口保険の平均が三十七万円とかお答えになった。五十万円でありますけれども、それを押えるから、だからして三十七万かその程度になっているということです。だからあなた方は数字だけ見て、これでいいんだなんて言って、しさいにどうしてそういうことになったのかという追跡調査をおやりにならぬからおわかりにならない。現場の事情がちっともおわかりにならない。そういうところに問題がある。  それで私は、附帯決議をここでつけて、最後に御趣旨を十分尊重してまいりますなんという型通りの大臣の附帯決議に対する意思表明、そういうことだけをとって大きく問題にしようとはしないのだけれども、この質疑応答の中できっぱりと大臣答弁をしているのがある。必ず実施いたしますと言っている。たとえば乙竹長官が特に力こぶを入れてお答えになったいわゆる保証協会の保証つき融資に対して、その保証料を引き下げていく、あるいは保証つきのものは信用程度が高くなったんだから金利を下げるということ、そういうことはそのとおりでございますから実行いたしますときっぱりお答えになっている。それからもう一つ政府資金の融資をいわゆる代理業務をやっている、そういう場合に民間の金融機関はいわゆる歩積み・両建てなんということをやっている、こういうけしからぬ話はない、そういうような金融機関に対しては断固代理業務を停止しなさい。全くそのとおりでございます、こう言っている。まだたくさんある。時間がございませんから私はその一つ一つについて大臣と私との間に質疑応答を繰り返し重ねてきたことについての答弁をここで全部は申し上げない。いま私は二つの例をあげて申し上げたのだけれども、その二つとも実行していないではないか。ここに与党の皆さん方がたくさんおられる。その当時もそのとおりだということで共感を持っていただいたんだけれども、一つもいまも変わらないと私は思う。  私はこういうことを提案したい。保証協会の保証をつけて、その保証料等を銀行自身に負担させなさい、それを負担しないような金融機関に対しては保証つき融資を中止しなさい、ストップしなさい、こう私は申し上げたい。この点に対して中小企業庁長官あるいは中小金融課長もお答え願いたい。それから信用保険公庫の総裁にひとつ考え方を聞かしていただきたい。本来ならば、大臣答弁ですから、これは藤井政務次官のきっぱりしたお答えを伺うことだけで足りるのだけれども、ひとつそれぞれ衝に当たっておられるあなた方の考え方を聞かしてもらいたい。
  84. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 保証つきの銀行債務につきまして、銀行金利の引き下げについて極力努力するということは事実やっておるわけでございますけれども、何せ相手のあることであります。さらに、特に一律的に追い込もうといたしますと、逃げて、そういう保証つきの貸し出しは困るというふうなことになるとまたよけい困る、この点は少し気が弱いかもしれませんけれども、そういう気持ちで実は心配しておるわけでございます。先生いま御指摘のような案も検討をさせていただきます。何とか保証つき債務につきましては銀行金利を一般のものより下げさせるように今後積極的に努力をしてまいります。
  85. 長岡実

    長岡説明員 中村先生御指摘の点、まことにごもっともでございまして、大蔵省といたしましても、保証つきの融資の金利の引き下げにつきましては、先ほど中小企業庁長官がお答え申し上げたように、去年の八月に附帯決議の御趣旨を体しまして通達も出しておりますけれども、なお通達だけではなしに、今後とも強力に実行してまいりたいと思います。ただ金融機関の貸し出しの金利と申しますのは、一応標準金利等を定めておりますけれども、個々の金融機関の個々の融資によって定めていく、要するに公定率によってすべて押えるわけにもまいりませんので、すべて保証料の負担をめり込ませて、それだけ信用もついておることであるから、それをこえるものについてはたとえばこの協会の制度を利用できないというようなことにするのはいささかどうかと考えております。現在のところ、大体、私どももいろいろ指導いたしまして、一厘から二厘は下がってきておる、それから全国の保証協会につきまして、この保証つきの融資の保証料のほうもだんだんに下がってきておる、こういうようなことから、でき得る限り私どもといたしましては保証つき融資の金利の引き下げについても業界の指導等に当たりたいと考えております。  それから歩積み・両建ての点につきましては、まことにごもっともでございまして、この点につきましては大蔵省の金融検査官がおりますが、金融機関の検査を行ないます際に、特にこの問題に目をついて厳重に取り締まるように指導いたしております。
  86. 長村貞一

    ○長村説明員 ただいまの保証つき債務の金利の引き下げの問題、保証つきのものの歩積み・両建ての問題、私も全く同感と申しますか、当然金利は引き下げるべきであり、また歩積み・両建てのごときは供給すべからざるものと考えておりまして、厳に監督当局のほうにもこの点についてお願いをいたしておるわけであります。実質的にぜひ何らかの方法で改善してまいりたいと思います。
  87. 中村重光

    ○中村(重)委員 小峯委員長に特に耳を傾けてもらいたいことがある。耳を傾けておいてください。あなたは、特にいまから私が指摘することについては、どうしてそういうことが実行されないのかということで驚かれるだろう。先ほど納税事件の問題でお答えがあった。身体障害者の問題について検討する、これはいまごろ検討するという答弁委員会の納得が得られるとあなたお考えになるか。いいですか、課税最低限というのは、所得税であろうと住民税であろうと、これを引き上げる傾向にある。そうでしょう。そうすると、都道府県や市町村の条例によって、身体障害者であるとか、あるいは母子家庭であるとか、あるいはこれに類似するような人たちの税金の減免の措置があるのですよ。課税最低限は上がる。そういう特定の方々に対しては特に税の減免措置があるのだから、所得割りを納めるというような人が非常に少なくなってくるわけです。ところが、そうした所得割りというようなものを納めていないがために、減免の措置がとられておるために、この特別小口保険の制度の適用を受けられないというばかなことがありますか。過去数回にわたって附帯決議がつけてある。にもかかわらず、この保険公庫法の一部改正法律案の審議にあたって、検討いたしておりますという答弁でもって法案の審議をしろということはあつかましい。そんなけしからぬ話はないです。これは大蔵省もひとつ責任を持ってお答えになってもらいたい。
  88. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 少しどうも先ほどのことばが不十分だったようでございます。端的に申し上げます。大蔵当局と相談の上、四月一日から先ほど申し上げました点で実施いたします。
  89. 長岡実

    長岡説明員 長官のおっしゃるとおりでございます。
  90. 中村重光

    ○中村(重)委員 その対象は。
  91. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 先ほど申し上げましたとおりでございまして、身体障害者、それから老年者、寡婦でございます。
  92. 中村重光

    ○中村(重)委員 そういう特定な人に対しては、それじゃ了解いたします。ところが、課税最低限が上がるのだから、所得割りを納めない人が住民税の場合たくさん出てくるのです。いいですか、そういう人は特にこの特別小口保険の対象にしなければならない階層の人たちです。そういう者がはずされてくることになります。したがって、納税要件というものはこれを緩和して、均等割りだけでもって保証をするということに改めなければならぬと私は考える。この点はどのようにお考えになりますか。
  93. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 この点につきましては、特別小口保険が形式審査だけで保証をするというたてまえから、現在のところ、いま申し上げました特別の事由で控除のために所得税が免除になっておるという人に限りまして納税要件をはずすということにいたしたく、その他の点につきましては、現在まだ決心ができておりません。
  94. 中村重光

    ○中村(重)委員 できていない。これはできていないならできていないとお答えになってよろしい。どうするつもりですか。
  95. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 本件につきましては、税の控除といいますか、課税限度が上がるにつれまして、また一面では所得が上がっていくという点もございますし、また特別小口保険の特別な、先ほどの繰り返しになりますけれども、制度上の運営もございますし、またこの保証協会の財政上の事由もございますので、現在のところ、先生御指摘の点につきましては勉強するということにさしていただきたいと思います。
  96. 中村重光

    ○中村(重)委員 財政上の問題というのは、それは都道府県であるとか、あるいは市町村であるとか、あるいは金融機関であるとか、そうしたところからの出捐金というものも期待すべきであるし、あるいは国からの出資あるいは融資というものもこれを行なうという形において解決をしなければならない。私はあえて特殊部落ということばを使ったことがあるのだけれども、この特別小口保険の一番対象にしなければならない層の人たちというもの、いわゆる保護育成の措置が最も強く行なわれなければならないような零細なこういう企業者に対し、この制度を財政的な理由をもって適用しないということ、これを漏らしていくということは私は許されないと思う。この制度の趣旨からいって許されない。むしろこの制度を適用されなくとも、対象にならなくとも何とかいけるような人たちがこの対象になって、この対象に大きくかかえていかなければならない人を漏らすということは、私は許されないと思う。いまあなたは長官になってきてこういう議論をしたのはきょうが初めてでしょう。ですけれども、歴代の中小企業庁長官と議論をし、それに対しては、お説のとおりでありますと答えている。あなたは議事録等お読みになって勉強しておられると思う。これから強勉いたしますということになってまいりますと、長官がかわるたびごとに、私どもがいままで答弁を得てすみやかに実施されるであろうと期待をしたものが実施をされない。私ども、それは議員の質疑応答の問題を言っておるのじゃない。いわゆる大きくそれを期待している零細な中小企業者の方々の期待を大きくはずす。そのことは、政治、行政に対する不信感というものが高まってくることになるではございませんか。勉強をいたしますということで済むようなことではございますまい。政務次官、どのようにお考えですか。
  97. 藤井勝志

    藤井政府委員 確かに御指摘の点は、所得税を納めるところまではいかない、しかしまじめに働きたいという意欲を持ってやっておる人たちがこの特別小口保険によって税金を納められるような能力を持つ方向へ国が援助する、こういうことは御趣旨としては私は非常にけっこうだと思います。かねて大蔵委員当時から私はそういう考え方を持っておる一人でございます。ただ、先ほど長官から研究さしていただきたいという、御質問に対してきわめて消極的な答弁で御不満のようでございますけれども、やはりこれはまだ制度が発足して、その危険率といいますか、——これは社会保障制度ではございませんから、ある程度この保証協会あるいはまた保険公庫、こういったところが持っておる財源全体ともにらみ合わせながら、ひとつ今後御趣旨の点を十分考えて前向きで検討さしていただきたい、このように思います。
  98. 中村重光

    ○中村(重)委員 私は、政府がとっておる課税最低限の引き上げという方向と矛盾しなければ言わないのです。最低限を引き上げるという方向は、これは所得割りを納めない階層の人たちがたくさん出てくるのですよ。いいですか、いままで対象になってきた零細企業ですら、そういう最低限を引き上げてきたために所得割りを納めなくなる階層が出てくる。そういう人たちがはずされてくる。これはいけないと言う。  それから、いま政務次官から非常に重要な御答弁があった。これは決してその答弁を私はとがめようというのではない。実は、この保証協会の制度というのが、社会政策的なものかあるいは経済政策的なものなのかということがいまに至るまではっきりしていない。だから、保証協会もこの問題の扱いに実は非常に困っているわけです。全国的にこれがアンバランスになってくることもその点なんです。いまあなたは、これは社会保障ではないということばをお使いになった。これは社会政策ということを含めてのお考えでそういう御答弁になったのかどうか。実は政府がまだ態度を決定していないのだから、社会政策経済政策か、まずこの点をはっきり確立してもらわなければ困る。実はこれは混乱をしているのです。だから、いまの政務次官答弁で、これは経済政策だというようなことで簡単に私どもこの問題についてケリをつけるわけにはまいらない。答えを出さなければならぬ問題です。だから、通産大臣並びに関係大臣とこの点については話し合いをされて、はっきりしてもらわなければならぬと思います。非常に重要な御答弁ですから、この点についてはあらためてお答えを願いたい。
  99. 藤井勝志

    藤井政府委員 後段の問題につきましては、よく関係大臣と御相談申し上げまして、大臣からかあるいは私からまた後刻答弁さしていただきたいと思います。  で、いまの所得控除の引き上げに伴うてこの恩典に漏れる層が多くなる、これを何とかしろという御意見は、十分検討さしていただきます。
  100. 中村重光

    ○中村(重)委員 それから併用の問題、これも先ほどお答えがあったのだけれど、私は納得できない。これは附帯決議をお読みになればおわかりですが、ずっとついているのです。考えてごらんなさい。特別小口保険によっていわゆる融資をされているのですよ。その企業というものは成長していくのです。信用が高まってくるのです。すると、他のいわゆる普通保険あるいは近代化保険というようにずっと対象があがってくると思う。ところが、この特別小口保険というその対象から除外しなければ普通保険の対象にはなり得ないということ、これは私は適当でないと思うのです。併用でいいじゃないですか。いま特別小口保険で融資しているんだけれども、今度は百万円金を借りるという場合において、これは特別小口保険というものをなくしてしまって、終了した形をとって、普通保険を適用するということも、これは事務的には処理できるだろうと思う。しかし、対象の金融機関というようなものも変わってくるということにもなりましょうし、これは非常に複雑になってくる。だから、これは併用にするということはそう大きな障害じゃないと私は思うのです。だから、併用してもいいんじゃないですか。あまりこの点についてこだわられる必要はないんじゃないですか。
  101. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 併用をするしないの問題は、一応特別保険制度のたてまえの根本に関するものでございますのと、それからもう一つは、これは釈迦に説法でございますけれども、併用問題は保証協会と保険公庫との関係で議論がある問題だと思います。零細の方々が保証を受けておるという場合に、五十万円までは保証人も要らなければ担保も要らない。ところが、先生御指摘のように、これが順調に成長されて、さらに三十万円の金を借りたい、保証を受けたいという場合には、今度の措置によりまして、保証協会は合わせて八十万円は一厘二毛の保険料率で保証いたします。かつての五十万円につきましては、特別に保証人も要りません、こういうことをやろうというわけでございます。この点は先ほどからだいぶ実はおしかりを受けておるのでございますが、私と申しますより中小企業庁の考え方といたしましては、この特別決議につきましては非常に真剣に取り組んできておりまして、こういうふうな零細の方々からすれば、企業の成長に従ってそう御支障なく、事実上併用と違わないような保証を受けられる、こういうふうなことで、びほう策ではないかとおしかりを受ければ確かにそうでございますが、その根本問題につきましては、さらに文字どおり検討させていただきたいと思います。  それからなお、先ほどの勉強いたしますということをちょっと弁解させていただきたいと思いますのは、私たちのほうは、実は歴代の大臣なり長官なりがずっと御答弁を申し上げていること、それはもう全部勉強済みでございます。ただ私たちといたしまして、大蔵当局と話がつきまして、大体実現の見込みのあるものにつきまして検討という字を申し上げて、実は事務当局少しかたくななとしかられるかもしれませんけれども、申し上げられると思いますことは、いろいろ甲論乙説ありというふうなことで、しかし、前向きにいろいろ勉強していかなければならぬという意味で勉強という字を使ったことを弁解させていただきます。
  102. 中村重光

    ○中村(重)委員 特別小口保険と無担保保険との——これは無担保保険の中に一厘二毛という制度を考えておるんだろうと思うが、二つの意味があるのですね。これはだいぶん苦心されたんだろうと思います。付帯決議の二つをここで一つで生かそうというようなもので、私はあえて苦肉の策なんということばは使いたくないんだが、まあ苦心の作だろうと思う。一方百万円程度まで特別小口保険の付保限度を引き上げなさいという附帯決議がついている。一方は併用するという附帯決議、こう二つついている。そうすると、いまお答えのように、特別小口保険は一厘、無担保保険のほうは一厘五毛、この中間をとって一厘二毛というものを無担保保険のほうへ持ってきて、この二つをこれでひとつ生かしていこう、こうしておられるようですね。これは前向きであることは認めます。先ほどお答えになった中で、これはぴったり生かしてないんだけれども、苦心の作としてこういうことを考えましたという意味で、前向きで取り組んだということは、それなりに私は評価したいと思いますが、ここらあたりは漸進的におやりになることも必要でしょうけれども、きっぱりと割り切っていいものはひとつ割り切っていく、こういうことにしなければ、いまのように、中小企業者の倒産は増加の一途をたどってきている。しかもそれは負債額一千万円以上の倒産である。一千万円以下の負債による倒産というのは、企業庁も実は把握しておられぬでしょう。興信所もこれを把握してない。これはもうたいへんな数であろうと思う。こういう点については、ほんとうに前向きも積極的な前向きでもって対処してもらわなければならないと私は思う。ですから、この点に対処する姿勢として政務次官のお答えを願いたい。
  103. 藤井勝志

    藤井政府委員 十分御趣旨を体して前向きで検討さしていただきます。
  104. 中村重光

    ○中村(重)委員 建設省からお見えいただいておりますのでお尋ねいたします。  この倒産の中で建設業者の倒産というのが非常に高いわけですが、中小建設業者の倒産対策としてどのような対策を持っておられるかという点が一点であります。  時間を節約する関係から数点をお尋ねいたしますが、次は官公需の問題でございます。御承知のとおり官公需の確保、これは法律としては「機会の確保」ということになっておりますけれども、官公需を中小企業者に確保するという点については、中小企業庁と建設省は十分連絡をとりながら対処しておられると思うのでございますけれども、中小建設業者に対する官公需についてどのような取り組みをしていらっしゃるのか、この二点について一応お答えを願いたいと思います。
  105. 桑山行夫

    ○桑山説明員 御説明いたします。建設業者の倒産の問題につきましては、最近倒産の件数が非常にふえてまいっておりますことは先生の御指摘のとおりでございまして、建設省といたしましても、その事実につきましては非常に憂慮をいたしておるわけでございます。  倒産の原因につきましてはいろいろ考えられるわけでございますけれども、過去数年間建設投資の継続的な増加にもかかわりませず、中小建設業者が非常にふえてきた、また乱立したというふうに申し上げてもいいかと思いますけれども、その結果、受注競争が一段と激化したというようなことによりますところのいわゆる構造的な要因というものが実は考えられるわけでございます。この点につきましてはまたそれなりの対策が必要でございますが、倒産原因の中には建設業者内部に原因する問題もあろうかというふうに実は考えておるわけでございます。したがいまして、建設省といたしましては、これが対策といたしましては、まず中小零細業者のいわゆる経営能力の向上をはかる必要があろうじゃないかというような問題を押えまして、この経営能力の向上という問題につきましては、いわゆる中小企業近代化促進法というのがございますが、この近促法に基づきまして、土木工事業につきましてはもうすでに近代化計画を策定いたしまして、実施の運びに至っております。  それから建築工事業についてでありますが、現在実態調査を終わりまして、近代化計画の策定を実は進めておる段階でございます。四十二年度におきましては、さく井工事業を近促法の指定業種といたしまして実態調査をいたしておる、こういうような作業を進めておりまして、いわゆる中小建設業者の経営能力の向上ということをまず大きく指導する必要があろうじゃなかろうかというわけで、努力をいたしておるわけでございます。  もう一点は、いわゆる中小建設業の一つの合理化、近代化という問題をとらえます場合に、やはり経営規模の適正化というのがこの要諦だろうというふうに考えておるわけでございまして、そういう意味では、中小建設業の組織化の推進をはかる必要があるのじゃないかというようなことで、中小企業等協同組合法に基づきます組織化を推進する、そういう中小企業等協同組合の設立等に上りまして経済行為の効率化をはかり、さらに金融の確保をはかっていくというふうな組織化を推進するということで指導をいたしておるわけでございます。  また、最近協業組合という形のものも実は新しくできてまいっておりますので、そういう意味での協業組合化への指導というようなことも実は考えておるわけでございます。  さらに、そういうふうな構造的な改善をはかりますと同時に、中小建設業が立ち行くためには、やはり仕事を与えなければならないということでございますので、従来から建設省に付属機関として設置しておりますところの中央建設業審議会の勧告に基づきまして、発注調整ということを実はやっているわけでございます。入札なんかを希望する業者につきまして、契約予定金額に相応する等級別の区分をしまして、実際に発注するにあたりましては、契約予定金額に相応する業者から原則として指名をいたしまして、特定の階層の業者に工事が片寄ることがないように実は指導いたしているわけでございます。  さらにまた、工事が非常に大型化する傾向にもございますので、中小建設業の受注機会の確保をはかりますためには、やはり施工能力の向上をはかる必要があるというような観点から、ジョイントベンチャー等を指導いたしまして、大規模の工事にも、ジョイントベンチャー方式で施工能力を増進させ、受注の機会を与えていくというような、共同請負制度も実は指導をいたしておるわけでございます。  それから、最近倒産の原因になっております人件費の高騰によりますところの採算性の限界というようなこと等も考えまして、技能労務者の養成、確保ということが非常に喫緊の要務になっておるわけでございます。この点につきましては、関係省といたしましての労働省の公共職業訓練制度、あるいはまた事業内の共同訓練制度というものにつきまして助成をいたしますと同時に、建設省直轄として実施いたしておりますところの産業開発青年隊、これの拡大をはかりまして、オペレーターとか測量関係の技術者の養成とか、フォアマン的ないわゆる現場職員の確保というようなこと等に関しますところの技能労務者の養成、確保に努力をいたす等々の対策を実は進めてまいっておるわけでございます。  それから第二点の、中小建設業者に対するいわゆる直轄工事等の対策はどうか、発注にあたっての考慮が払われているのか、特に官公需等を念頭に置きましての中小建設業者に対するところの受注確保の施策はどうやっているかという先生の御質問でございますけれども、先ほど、いわゆる発注調整をいたしまして、特定の階層の業者に工事が片寄らないような措置を実は従前から講じているというふうに申し上げましたけれども、中小建設業関係業者の間から、そういうふうに指導はしておられても、必ずしもそれが守られていない、特に第一線におきます発注機関におきましてはこれが必ずしも守られていないというような声もございまして、建設省といたしましてはこれをもう少しきめのこまかい指導をする必要があろうじゃないかということで、四十一年の三月七日付で事務次官通達を出しまして、中小建設業者に対しまして受注確保をはかる措置を講じたわけでございます。その通達の内容を御説明いたしますと、やはり発注標準を厳格に守って、みだりに小規模の工事に大きい業者を入れないようにしてほしい、あるいはまた、地元建設業者を活用するような方策を講じてほしい、あるいはまた中小建設業者の施工能力の向上をはかって受注機会の確保をはかろうじゃないかというようなことで、ジョイントベンチャーを積極的に指導をしてほしいというようなことで、もちろん建設省の直轄工事につきましては指示をいたしておりますけれども、指示権の及ばない主要な発注機関に対しましても建設省からこの趣旨を要請いたしまして、中小建設業者の受注確保につきましては特段の配慮を払っておる次第でございます。
  106. 中村重光

    ○中村(重)委員 時間がございませんから、一つ一つお尋ねをしないで、私の考え方を申し上げて、最後にまたお答えを願うのですが、中小企業者に対する発注をできるだけ確保するために、受注の確保、そのために通達をお出しになったということを伺って、まあそれに鹿島さんですか、反発をした。パンフレットを私は見たことがあるのですが、どうも官公需の確保に対して通産省を中心とした話し合いの場というものがもっと活発に行なわれなければならないじゃないか、そういう点が欠けておるように考えます。各省ばらばらであってはならない。それから建設省の、中小企業のあり方に対していまお答えがあったわけですが、それなりの意義があると私は考えております。ところが、当面中小企業者が倒産をしている現実をどうするかということはきわめて重要な問題点であり、いまやっていらっしゃることで改めてもらわなければならぬ点が私は多々あるような感じがいたします。どうもABCというように、こうずっと業者をそれぞれのランクに当てはめておられる、そういう点が、これは何というんですか、毎年毎年再調査をやって下げたり上げたりするということだろうと思うのですけれども、なかなかそういう点がうまくいっていない。それからあまりにも実績主義にとらわれ過ぎているというような傾向も問題点の一つであると思う。  それから入札保証価格というもの。あるいは落札の場合においてその保証金を取っておられる。これが中小の建設業者にとっては大きな負担になっておる。そういう点からどうも官公需の確保というものがなかなか確保されない。そういうような点、申し上げると多々あるわけでございますが、この際、建設省としても十分この実態を把握されて、適切な措置をおとりにならなければ、この中小企業の倒産というこの最高のきわめて不名誉な状態にあるものを解消することは私は困離だと思う。それらの点に対してのお考え方をいま一度伺ってみたいと思います。
  107. 桑山行夫

    ○桑山説明員 ただいまの先生の御指摘の点につきましては、実態を把握いたしました上でさらにきめのこまかい指導をしていきたい、かように実は考えております。  さらに、先ほど先生がちょっと触れられましたABCDEのいわゆる級別格づけ基準の問題でございますけれども、これも昭和四十年の十二月二十日に中央建設業審議会の勧告がございまして、やはり中小建設業対策としての改正も行なわれておりまして、ある程度契約予定金額の基準というものを引き上げるという措置が講ぜられているわけでございます。さらに実態の把握をいたしまして、きめのこまかい指導をいたしていきたいと考えております。
  108. 中村重光

    ○中村(重)委員 それではこれで終わります。  政務次官にお答えを願いたいと思うのでございますが、中小企業の倒産対策にいたしましても、あるいは中小企業経営を安定させるというようなことにしても、諸施策が講ぜられておるわけでございますけれども、現実はなかなかぴったりした対策がないように私は感ぜられる。金融の問題等にいたしましても、いま金融引き締めの中において政府関係金融機関に期待するところは非常に大きい。ところが中小企業の金融の事情を見てみますと、政府関係の金融機関、三機関でもって八・七%、これは少しも改善されておりません。あるいは九%ぐらいまでなったことがあるのでおります。それがまた下がってくる。こういう点は中小企業、なかんずく零細企業対策というものが強力に行なわれておることにはならない。  それから信用補完の問題にいたしましても、ともかく四十二年度よりも四十三年度は融資基金というものが二十五億も実は削られておる。準備基金を二十五億今回出資されたのだから、それでいいではないかということは理由にならない。中小企業経営が非常に苦しくなって、借りた金がなかなか返済できないということから、結局代位弁済となり、今度は保険金というものがそれによって支払いがされておる。それでは保証協会というものがどうにもできなくなった、だからして準備基金を二十五億増額しなければならぬという形に追い込まれてきた、そういう深刻な状態であるにかかわらず、二十五億も融資基金を四十二年度よりも減額をしたというこの事実は、どんなに弁解されようともこれは弁解になりません。中小企業対策をやっておりますというお答えにはならないであろう。  倒産の問題に対しましても私は先日の委員会において問題点を指導いたしましたから、きょうは重ねて申し上げませんが、ともかく中小企業が好況であろうとも不況であろうとも、倒産の激増というこの状態を何としても回避していかなければならない。それらの点に対して、積極的なほんとうにきめこまかい対策を講じられる必要があると考える。また、先般私は中小企業のために高度化資金であるとかあるいは近代化資金補助であるとか、出資が行なわれておるけれども、実際は支出済み額よりも不用額のほうが多いではないかという指摘に対して、中小企業庁長官は、実は従来の高度化資金はこれはよくなかった、だから、中小企業振興事業団をつくったのでございますとお答えになったけれども、それは理由になりません。高度化資金だけが不用額になっておるのではございません。目を通されるとおわかりでございましょうが、中小企業近代化補助だって不用額が非常に増加しておるというこの事実に対して、きめこまかい中小企業対策が行なわれていないということと同時に、実は府県が二分の一を負担しなければならぬというところにも問題がある。いわゆる富裕県と弱小県、その地域格差が新たに起こってきている。これは中小企業振興事業団の二五%の負担を受けることができなくなって、必要な融資ができないでおるということで、中小企業振興事業団ができたからといって、高度化資金の問題が解決をするということにはならない。四十三年度のこの予算の編成にあたって、四十二年度の実績がどうであったのかという追跡調査をされて、洗うものは洗って、新たな観点に立ってこれらの問題も処理していくという姿勢でなければ私はならないと思います。そういう点に対しての取り組みが弱いということを指摘いたしまして、また適当な機会にいろいろとお尋ねをすることもございましょうから、きょうはこれをもって私の質問を終わることにいたします。  最後に政務次官のお答えをいただきたいと思います。
  109. 藤井勝志

    藤井政府委員 全くいろいろ御指摘のとおり、われわれも従来の中小企業施策については、最近の労働需給の逼迫並びに御指摘がございました国際環境のきびしい変化、こういったところをよく考えて、ひとつせっかくの御指摘の問題につきましては将来十二分に善処をすべく努力をいたしたい、このように考えます。
  110. 小峯柳多

    小峯委員長 岡本富夫君。
  111. 岡本富夫

    岡本(富)委員 先ほどからもいろいろと課徴金問題について論争がございましたが、この米国の輸入課徴金につきまして、少しこまかい面から申し上げますれば、兵庫県下の輸出産業はほとんど、小さいケミカルシューズや、あるいは播州織物や、三木や小野の金物、あるいは豊岡のかばん、こういうのが対米輸出でありまして、この輸入課徴金について非常に神経をとがらしております。またうわさによると、台湾とか韓国、こういうところが適用除外になる。そうすれば、ますますわが国への影響というものは大きいと思うのです。そこで、これに対して通産省として、アメリカに向かって、この課徴金問題についてどういうように働きかけておるか、あるいはまたどういう姿勢なのか、この中小企業を守るためにはどういうようにしたい、こういうビジョンあるいはスケジュール、これをひとつ明らかにしてもらいたい。これは、まず政務次官からお願いしたいと思います。
  112. 藤井勝志

    藤井政府委員 御指摘ごとく、このたびアメリカが創設しようとする課徴金制度、これがかりに何%になろうとも、日本輸出産業、わけてもただいま御指摘のような中小企業者である繊維、雑貨、こういったものに致命的な打撃を与えることは必至でございます。のみならず、これはしばしば御指摘がございましたように、ケネディラウンドの考え方というものを自己否定するもはなはだしい措置である。したがってわれわれは、ともかく基本的なかまえとしては、あくまでこれはやめてもらいたい、そして国際経済が拡大する方向に向かって大勢が進んでいくというこのケネディラウンドの精神を今後も堅持してもらいたい、こういうかまえでアメリカに折衝する。すでに民間の特使はアメリカに出発をいたしておりますが、いずれ適当な時期を見て政府の代表もこれが阻止に交渉に出向く、こういうことになっておることを御報告をいたしておきます。
  113. 岡本富夫

    岡本(富)委員 その問題につきまして、民間のほうはすでに出発したということを、この間話がありまして聞きましたけれども、新聞によると、宮澤長官が行くとか、あるいはまただれかほかの人が行くとか、いろいろなうわさは出ておりますけれども、またいずれ機会を見てということになりますれば、これはおそきに失する、すなわち、日本が認めてしまってそれからになれば何にもならないと思うのですから、強力にひとつやっていただきたいと思います。  そこで、その問題につきまして、この間日中貿易について若干私はお尋ねをいたしましたが、普通の商売でありますと、アメリカのほうでとめられるならば、ほかの買ってくれるところをさがすのが普通であります。そこで、日中貿易の促進につきましてもいろいろ力を入れている、こういう話がありましたが、ジェトロの理事長でしたかのお話では、中共に対してはジェトロの活躍はありません、これは政府から指示がないからできないのです、こういうお話がありました。その点について政務次官からお聞きしたいと思うのですが、どうでしょうか。
  114. 藤井勝志

    藤井政府委員 民間特使が出て、政府の出る時期を失してはいけないという御意見はごもっともでございます。しかし、政府が出るということになるといよいよ本番でございますので、民間の使節にフリーな立場でひとつ大いに接触してもらって、手ごたえを見ながら不敗の体制を整えたい、こういうことでございますから、その点はわれわれも十分時期を失しないように、また最もいい潮どきに手を打つ、こういう考えであることを御理解いただきたいと思います。  それから、アメリカのほうの貿易依存度、これを中共貿易に転換をさすというような御趣旨の御質問でございますが、これはいきなりこっちがいけないからこっちへというふうな、そう簡単に変わり身といいますか、身を変えるという簡単なものではないと思います。しかしながら、中共貿易を一そう振興さすというかまえはもう御指摘のとおりであります。ただジェトロを使っておらないということは、これはすでに御承知のごとくLT貿易方式、これは最近覚書貿易という名前に変わったようでありますが、これが政府の窓口でございまして、その窓口を通じて政府はできるだけ中共への輸出の振興をはかる。ただ、すでに御承知だと思いますが、中共のほうからはバーター的に、これだけ買ってくれればこれだけというかまえできておりますから、こちらも貿易拡大をつとめておっても、なかなか簡単にまいらないという事情であることはつけ加えて御報告さしていただきたいと思います。
  115. 岡本富夫

    岡本(富)委員 この問題につきましては、いまアメリカ一辺倒のような——一辺倒ではありませんけれども、一辺倒のような政策、またアメリカに対する依存度が非常に多い輸出。そうしますと、アメリカからこうした無理難題のような課徴金制度を加えられたときに、それに対してこちらから申し入れる力というのは非常に弱いわけです。したがって、あなたは外務省ではありませんけれども、外交というものはやはり両方を押えつつ、一辺倒にならずにやっていくというのが商売の常道であろう。したがって、もう少し早く日中貿易にも手を打っておけば、今度の課徴金問題に対しても、それならばその商売はこっちへ回すぞというふうな牽制ができるのじゃないか。いまここまできてからあわてふためくような、すなわちビジョンのないいままでのやり方というものを政府は考えていかなければならぬと私は強く感じているわけです。したがって、いまからでもおそくない。日中貿易のほうも強力に推進していただく。また東南アジアのほうも推進を強力にしなければならぬ、こういうことを私は思っているわけです。それに対しては、政務次官大臣あるいはまた外務省の関係といろいろと話し合って、今度の機会に、将来こうしようというようなビジョンを発表していただきたいと思います。  そこで、時間も非常におくれておりますので、中小企業信用保険公庫法案について若干質問いたしたいと思います。この改正案に示されました準備基金が二十五億、融資基金が七十億、この積算根拠と申しますか、これでことしは十分なのか、これについて長官からお聞きしたいと思います。
  116. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 まず保険準備基金の二十五億でございますが、四十二年度も予想を相当上回りまして保険金の支払いが高かったのでございますが、四十三年度も四十二年度とほぼ同程度と申しますか、相当高水準の保険金支払いを行なわざるを得ないのではなかろうかということがまず前提になっております。これは四十年度、四十一年度にかけて金融がゆるみまして、ゆるんだ結果、中小企業者に対してもむしろ積極的に金融機関からの貸し出しが行なわれ、その相当部分につきまして保証つきの貸し出しが行なわれた。それが約二年近くたちまして、ちょうどこの金融引き締めにあいまして、それで代位弁済の急増、保険金の支払い、こういうことになってきたわけでございますが、この四十二年度の状況は来年度も大体続いていくのではなろうか、こういうふうに思います。先ほど保険公庫の総裁からお話がございましたが、一応保険金の支払い額を来年度は百八十四億という推定をいたしまして、この百八十四億程度の保険金支払いをいたしますと、本年度から来年度への基金の持ち越し等々を入れまして二十五億円程度あれば十分やっていけるということで、二十五億を算出したわけでございます。  それから第二に融資基金のほうでございますが、これは先生も御高承のとおり、準備基金のほうは、なければ保険制度はとまってしまうわけでございますので、これは絶対なければ困るわけでございますが、融資基金のほうは、多々ますます弁ずというやつだと思います。多々ますます弁ずと申しますのは、保険公庫から保証協会に融資基金が貸し出されまして、さらにそれが中小企業向けに貸し出しをする銀行に預託されるわけでございますが、公庫からの貸し出しの率ないし保証協会からの銀行に対する預金の金利の差がございますので、それが保証協会の収益に非常に貢献する、こういうような面のほかに、融資基金を預託されました中小企業向け専門の金融機関としては、安んじて中小企業者に対する貸し出しができることになるわけでございますので、特にこういう金融引き締めの時期がございますと、この融資基金は、先ほど申し上げましたように多々ますます弁ずというのが実は偽らざるところでございます。ところが、財政の事情もございますし、まあまあ七十億というところで、先ほど御答弁申し上げましたように、不満足ながら来年度は七十億程度の融資基金の追加ということでやってまいりたいと思うわけでございます。保証協会の財源といいますか流動資産と申しますか、これは融資基金のほかに地方公共団体からの資金も出ますし、また協会の保有資金もあるわけでございますので、四十三年度、公庫から七十億程度を補給いたしますと、本年よりも二十数%増の銀行に対する預託額になる。非常に不満足でございますけれども、財政硬直化のおり、この辺がやむを得ずがまんせざるを得ない金額であるというふうに思っております。
  117. 岡本富夫

    岡本(富)委員 先ほどもだれか話がありましたように、この融資基金の七十億というのは、二十五億減らしてまった。そこでいま話を聞きますと、不満足ながら大体これで見合うようにする、こういう話でありますが、今度は、一つ一つの協会、すなわち五十一の協会がございますね、この五十一の協会に配分する。要するにあまり使ってない協会と、それからもう基金が不足で困っている協会と、こういうようにアンバランスがあると思うのです。したがって、この配分法について、これは長村さんからお答え願いたいと思います。
  118. 長村貞一

    ○長村説明員 融資基金の配分と申しますか、融資基準については、これは御承知のように、融資基準にいろいろございまして、普通長期の融資基金でございますとか、あるいは保証料引き下げのための特別の目的を持っているものとか、いろいろございます。したがいまして、必ずしも同じような標準で、機械的に、あるいはしゃくし定木に配分するわけにはまいらないわけでございます。一つ一つの詳細につきましては、担当の管理事もおりますので、また御説明申し上げますけれども、総じて申し上げますならば、大体各保証協会の保証実績と申しますか、そういうもの、それからその流動資産の状況、あるいは小口が多いか大口が多いかという一つの保証の構成の型があるわけでございますが、そういうもの、それからたとえば保証料引き下げという特別の目的を持っているものがあれば、全国的に見合わせて、特に保証料の高いところを幾つか選んで、重点的にそれに投げ込むというような幾つかの方法をとっております。
  119. 岡本富夫

    岡本(富)委員 これはなぜそういうように話をしましたかと申しますと、保証協会の基金がございますね、この基金が、最高五十倍しか活用ができない、業務ができない、現在こういうようになっていると聞いておりますけれども、兵庫県の保証協会なんかの場合を見ますと、もう五十倍を筒一ぱい、またほかのところを見ますと三十七倍、こういうような状態になっております。したがって、基金の筒一ぱいまでいっているところに対しては、今度の配分については相当考慮しなければならぬじゃないか、こう思うわけであります。それについての総裁のお答えを願いたいと思います。
  120. 長村貞一

    ○長村説明員 お尋ねは、保証の倍率での問題であろうと思いますが、お話しのように、現在のきめられました基準ですと、五十倍になっております。これは保証協会の活動が活発になればなるほど、つまり保証需要にこたえなければなりませんから、できるだけ多くの保証活動ができるように範囲を広げなければならないと思います。この問題は、どういう方法でその範囲を広げるのがいいか、一番実際的な方法でこの問題を——これは直接公庫の問題じゃないかもしれませんが、協会とも相談し、また役所のほうにもお願いして、解決してまいりたいと思います。
  121. 岡本富夫

    岡本(富)委員 そこで、保証協会の基金の五十倍、これが頭打ちである、こういうようにいわれておりますが、これは地方自治体あるいはまた金融機関、ああいうところから一生懸命に保証協会の方が集めてくるわけですけれども、なかなかそんなに集まらない。しかし需要は依然として多くなる一方であります。ことしの見通しは、先ほどからも話がありましたように、この五、六、七月、この危機を叫ばれておるときに、相当な資金が必要になってくると思います。そこで大蔵省の方、見えてますか。——大蔵省の主計官、岩瀬さんですか、これについてお答え願いたいと思います。
  122. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 保証倍率は実は私のほうで認可しておりますので、私のほうからまずお答えさせていただきます。先生御指摘のように、だいぶ苦しくなっておる協会もあるようでございます。一面、しかしまた御指摘のように、この引き締め時をいろいろこれから乗り切っていかなければなりませんので、保証制度に相当強い重荷がかかる、こういうことだと思います。従来は最高限五十位ということでやっておったのでございますけれども、協会の事故率、それから回収率、それから保険のてん補率等を勘案いたしまして、これは認可しておったのでございますが、最近保険の条件もだいぶ改善されてまいりました。と申しますのは、七0%てん補であったものが、特別のものについては八0%てん補になっておりますので、保証協会の荷が軽くなって、公庫のほうへおんぶと申しますか、負担がかかってくるということになってきておる点もございますので、保証協会の定款倍率五0倍というのをさらに見直して、少し上げてもいいのじゃなかろうかということで、いま大蔵当局とも相談をしております。そういう意味で文字通り前向きと申しますか、そういう方面で必要があれば、必要を考えながら考えてまいりたいと思っております。
  123. 長岡実

    長岡説明員 主計局の問題と申しますよりも銀行局関係だと思いますので、私からお答え申し上げますが、いま長官がおっしゃいましたように、現在全国の五十一協会のうちで五十倍に達している協会ももうすでに幾つか出てまいりました。従来はこの倍率が五十倍で押えられているということによって、保証のほうに支障を来たすということはなかったと思いますけれども、五十倍の限度まできた協会も出てきておることでございますので、前向きで検討いたしたいと思います。
  124. 岡本富夫

    岡本(富)委員 いままで五十倍の限度があってもそういう支障を来たさなかった、こういうようにあなたはおっしゃっていますけれども、事実私のほうの調査では、それで借りられなくて倒れたところの中小企業もあるのです。ですから実態をよく調べた上でやらなければならないと思うのです。  そこで、前向きに考えるといいましても、前向きというのはだいぶ先までありますから、大体いつごろまでにこの答えをいただけますか。
  125. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 これは前向きといっても、大蔵省からお話しございましたが、私もう少し強くお答えしたはずでございます。ほんとうにこれは改正と申しますか、改定する方向で、支障のある協会については至急検討いたします。
  126. 岡本富夫

    岡本(富)委員 この点は特にお願いしておきませんと、これを早くやっていただけませんと、保証協会は窓口の規制が非常にきびしくなってくるわけです。結局それを活用する中小企業が非常に困るわけです。だから、一日も早くこの問題を解決していただきたい、こう思うわけです。  小口保険の問題でありますが、これは先ほどからも議論がありまして、申請したらすぐ貸してもらえるような状態のお話がありましたけれども、事実はそうではない。事実はなかなかこの小口保険につきましてはきびしい審査——実際に小企業、零細企業がどうしてもこれだけの運転資金が要る、あるいはまた高利貸しに借りておりまして、毎月利子を払わなければならぬ。その利子が五分、六分、ひどいのになりますと八分くらい、これでは企業がまいっちゃうというわけで、借りてそれを返して、同時にあと仕事を進めて持ち直していく、こういう場合が非常に多いと思うのです。ですから、これをもっともっと簡単に——先ほどこれは福祉事業ではない、経済政策だ、いや、福祉政策だと論争がありましたけれども、この小口保険の精神というものは、私は福祉政策でなければならない、こう思うわけです。ですから、これは長官からもう一つ決意を伺いたい。前長官の影山さんは、私が質問したときには、たくさん余っているんだ、もっと使ってもらいたいのだという話でした。私のほうでPRしてあげますとこう言っておいたのですが、PRしてもなかなか事実はそううまくいかない。これに対する指導について、長官から決意を伺いたいと思います。
  127. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 この金融補完制度は、中小企業政策の中の非常に大事な大黒柱である、われわれそういう覚悟で運用をいたしておりますが、特に中小企業政策の中で最重点を置かなければいけない零細事業者に対しては、実はきめ手になるような政策がなかなかないわけであります。その点、特別小口の制度というのは非常に生きた制度でございまして、私たちといたしましては、前長官がはっきりお約束いたしましたように、特別小口の普及と申しますか、これがすみやかに貸し出されて、一人でも多くの人に、零細な方々のお役に立つようにということで、文字どおり一生懸命普及方に努力をしておるわけでございます。おかげさまで、全保険の引き受け額の中に占めます比率も毎年上昇いたしておりまして、四十年度が〇・四八%という非常に微々たるものであったわけでございますが、四十一年度になりますと、一・九七、四十二年度が一・九六、これは実は四月−十一月の数字でございますので、年間通じますると、さらにはるかに上回った実績になるというふうに思っておるわけでございまして、私といたしましては、特別小口は非常に大事な制度であって、特に零細業者に対します一番お役に立つ制度として、大事に重点を入れて運用してまいりたいと思っております。
  128. 岡本富夫

    岡本(富)委員 この問題で論争しましても時間がきますから……。去年よりはこんなにふえたと申しますけれども、去年、おととしは非常に少なかった、使ってくれないと前長官から言われるくらい少なかったのですから、決してそれがふえたといって喜ぶことはいけないと思います。もっともっとこの政策は伸ばしていかなければならぬ。  そこで、私が先国会で、全国の保証協会の保証料がばらばらである、これは聞いてみますと各保証協会のいろいろ事情があると思うのですけれども、これはできるだけ安く統一すべきである、こういうように私は要望しておきましたが、その経過と、それから、まだばらばらなところがありますが、高く統一されたのでは困りますけれども、今後どういう方針でいくのか、これについてただしておきたいと思います。
  129. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 保証協会の保証料率でございますが、各協会の経営基盤も相当実は歴史も長くなっておりますので、残念ながらどうも差が出てきております。それから地方庁の熱の入れ方と言ったら少しことばが適当でないと思いますが、おそらく地方自治団体のいろいろ財政事情に基づくものと思いますが、地方庁の財政援助にも差がございます。したがいまして、どうも保証料率について相当な差が依然としてございます。これは先生も前国会で御指摘になりました。私たちとしても、積極的にこの保証料率の差を縮める、差を縮めるといいますときには、低いものを上げるのではなくて、高いものをおろすということで、差を縮めるように努力をしておるわけでございますが、四十二年の三月現在で、四厘五毛以上という非常に高い協会が二十四協会あったわけでございますが、その後努力の結果、四十三年三月一日、最近でございますが、この現状では二十四協会が四協会に減っております。したがいまして四厘五毛から四厘というところが昨年は十七協会でございましたのが、ことしは三十三協会ということになっております。さらにまた安いといいますか、非常にサービスのいい四厘未満というのが、昨年は十協会でございましたのが、十四協会になっておる、こういうことでございます。しかしまだ依然として私たち非常に不十分だと思っておるわけでございます。昨年度も信用保険公庫から特別貸し付けを二億出しまして、それで保証料率引き下げの行政指導をいたしたのでございますが、さらに今後ともこういう特別貸し付け制度等を活用いたしまして、協会間の保証料率の差が少なくなるように、特に低いほうの線でなるべく頭がそろうように努力をしてまいりたいと思います。
  130. 岡本富夫

    岡本(富)委員 その努力はどういうようにしてやるのか。一つは、冒頭に私が申し上げたように、融資金をたくさんふやして、一般計会から入れませんと、この保証料というものは安くならない。当初の七十億では不十分ではないか。したがって私の申し上げたいのは、協会に元を補充せずに、ただ下げろと言ったって下がるわけがないのです。したがって、この点についてはいまさらしかたがありませんけれども、次のときにはもっともっと中小企業対策に対して力を入れていただきたい。  それから近代化保険というものがございますが、この近代化保険の対象、あれはどういうところに貸すのか、どういう制度になっておるのか、これはしごく私はあいまいだと思うのです。実はこの間、名古屋通産局のほうで審査をしておるのを見ますと、非常にあいまいであったので、この点ひとつはっきりした答弁を長官からいただきたいと思います。
  131. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 近代化保険は、近代化関係の、特に近代化を必要とする中小企業業種に貸すということでございますが、この点非常にはっきりいたしておりますのは、特定機械工業、これにつきましては機械工業の振興臨時措置法がございます。この法律で業種指定がございます。この指定業種、それから非常に似た法律で電子機器の関係の法律がございますが、これの指定業種というものを対象にしておりますほかに、近代化促進法で百余業種を指定しておりますが、これを対象にするということで、その点政令等で非常に明瞭に指定をしております業種のほかに、組合共同施設の資金でございますとか、小売り店舗の共同化資金でございまするとか、それから例の小売り商のボランタリーのための金でございますとか、それから商店街の近代化のためでございますとか、あるいは共同工場等の施設の譲り渡しの金でございますとかいうふうに、振興事業団の対象にしておりますような、重点的な近代化に必要な業種に貸し出しをしております。
  132. 岡本富夫

    岡本(富)委員 その業種についてはわかっているのですよ。そこで、一つ企業があります。それが、あまり金に困っているところには貸さない、それから運転資金のあるところには貸さない、こういうようになっているのですか、その中間の層というところに大体貸すようになっているのですか、どうですか。業種はわかっているのですから別として、その業種の中に当てはめて、そういうような内規になっているのですか、その辺……。
  133. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 これは十分独力でもって金融機関と取り引きができるというふうな人は、もちろん独力でやられればいいわけでありますが、それ以外の、保険協会の保証でございますならば近代化の金が借りられるというふうなところには、積極的に協会としてアプローチいたしまして保証をして差し上げる。それによってその業種に属する方の近代化を進めてまいるという方針で運営しております。
  134. 岡本富夫

    岡本(富)委員 中小企業というのはやはり運転資金も要るのです。運転資金もある程度ありませんと、これは商売できません。同時に、どんどん進んでまいる日進月歩の今日の産業ですから、やはり設備もそれに合わした設備をしなければ中小企業はもたない。古い機械でやっておりますと、このごろは人手不足ですし、また競争も激しいから、設備の改善もしなくちゃならぬ。したがって、この近代化保険というものはそういう意味においてあるじゃないか、こう思うのです。ところが、その経理内容を見て、これは運転資金があるんだからだめだ、これはあまり危いからだめだ、この中間というまことにあいまいな、中間のどちらにも属さない、こういう面を見ているんじゃないかと思うのですが、長官その点はどうですか。そうじゃないのですか。
  135. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 先生御指摘の点は、おそらく具体的な特定のケースの場合で、これはもちろん一つじゃなく、幾つか踏んまえての御質問だと思うわけでございますが、私たちは実はまことに不勉強と申しますか目が届かぬと申しますか、そこまでどうもわからぬわけでございます。これはもし先生御指摘のようなことがありましたら、とんでもないことでございまして、私たちといたしましては、先ほど申し上げましたように、とにかく近代化をする、その近代化の必要な対象は法律、政令等できまっておるわけでございますけれども、それに属する業種の方で、一人前で金融機関と取り引きが若干できないというふうな方については、極力お役に立てるということが、この近代化保険のねらいでございまして、実は近代化保険は設けましたものの、浸透度と申しますか、わりに十分ではございませんので、これは私達のPRが不足の点もございます。また対象とする資金かどうかというふうな点が若干繁雑だというふうな、運営の面も実は若干あるようでありますが、そういうようなことでいやがられないように、むしろ極力近代化保険が拡充されるように私たちは努力をいたしまして、四十一年度から次第次第にふえまして、四十三年度は四十一年度の三倍程度の実績をあげているわけでございます。今後とも努力をしてまいりたいと考えます。
  136. 岡本富夫

    岡本(富)委員 その問題は扱うほうに問題があると思うのです。中小企業の人たちはそういう問題についてはもうすでによく知っているわけです。機械はどうして、どういうことで、どれだけの機械をつけたらどうということをよく知っているわけです。ですから扱うほうをもう少し強力に指導をしていただきたい。  次に、この前附帯決議がありました、先ほども話がありましたが、金利についてでありますけれども、大企業が銀行から借り入れておるところの金利というものはどのくらいであるか。大蔵省長岡金融課長さんいらっしゃいますか。——大体大企業が市中銀行の金を利用している金利というのはどれくらいのところが一般なんですか。
  137. 長岡実

    長岡説明員 ちょっといまここに資料を持ってないのでございますけれども、都市銀行等におきまして標準貸し出し金利——よくプライムレートといっておりますが、これがたしか八分一厘ぐらいではなかったかと思うのです。ただ個々の貸し付けによりまして、大企業の場合でも、金を借りる企業の側と、それから融資いたします金融機関の側で交渉の結果、個々の金利がきまりますので、一概には申し上げられませんが、おそらくその標準金利をやや上回る程度で、実際の貸し出しが行なわれておるのではないかと思います。
  138. 岡本富夫

    岡本(富)委員 そうしますと、今度のこの中小企業の貸し出し制度につきまして、保証料を金融機関が持ったらどうか、こういう話がありましたが、私は、その保証料を銀行が持つということになりますと、金利を高くしたらそれでいいんですから、中小企業はじゃ保証料を持っていただきます、ところが金利が高い、それでは何にもならないと思う。したがって、少なくとも都市銀行は、あるいはまた貸し付けるところの銀行はこういう大きな保証があるわけです。大企業よりむしろまだ間違いのない保証があるのですから、少なくともこれは大企業が借りているような標準以下ぐらいの金利で考えてあげていいんじゃないか、こういうように指導はできないものでしょうか、どうですか。
  139. 長岡実

    長岡説明員 個々の金融機関あるいは個々の保証協会等によって事情は異なっておりますが、全国的に私どもが見えておりますと、先ほど長官からもお話がございましたが、全国の協会の保証料は平均していま約四厘でございます。三厘九毛ぐらいになっていると思います。その四厘のうちの半分、二厘程度は、すでに一般の金利の中にめり込ませておるといってもいいんじゃないかと思います。まだ全体をめり込ますというところまではいっておりません。これにつきましても、おっしゃるように保証がつけばそれだけ融資をする金融機関側にとっては安全度が高まるわけでございますから、でき得る限りその保証料が普通の金利のほうへめり込んでいくように指導いたしましてまいりたいと思っております。
  140. 岡本富夫

    岡本(富)委員 高いところでは二銭七、八厘、銀行から。それに対し保証料をつけますと相当なものになるわけです。大体銀行のほうでは、二銭八厘としますと約一割になりますか。市中銀行のほう、あるいはまたこの貸し出しするところの銀行には大体五分五厘で公庫から渡しているわけですね。そうすると、むしろ大企業に融資するよりもこの中小企業に融資したほうが金利が非常に多い。まずいままで中小企業に対しては危険度があったから金利が高かったかもわからないけれども、考えますと、これだけの保証がついているのですから、何の危険度もない。むしろ大企業よりも金利は下げていいんじゃないか、こういう計算を長官はなさったことがありますか、どうですか。
  141. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘のとおりでありまして、私しろうとで、きょう大蔵省のくろうとの方もおられるし、非常に先生もお詳しいようですが、銀行の金利というものは、銀行のいろいろの経常経費等をまかないますもののほかに危険率と申しますか、これで金利が相当左右されると思うわけであります。その辺から申しますと、確かに保証協会の保証ということは、間接ではございますが、国家が最後に控えておるわけでございますから、危険がないということから申すと、確かに金利は、信用度においては十分の担保を持った貸し出し先と変わらないということでございます。さらに政府の助成措置また地方自治団体の制度保証等々でいろいろの助成といいますか、推進措置、その重要な一つとして、五分五厘でもって保証協会から金を預託される。もっともその預託されたものの金を六倍程度にはふくらましてと申しますか、六倍程度にはよけい金を貸すということでございますが、いずれにいたしましても、保証つきの中小企業者に対します融資は銀行として非常に有利になってきていることは事実であると思います。したがいまして、それが保証制度を活用するということになってまいりまして、それの引き締めによりますしわ寄せが今回の準備基金の追加投入ということをはかってきた、これは裏をひっくり返しますと、非常に保証制度がもてはやされて、しかも保証措置に対して保証つきの融資を中小企業専門金融機関が積極的にするという態度になってきたと思うわけであります。私たちといたしましては、むしろそういう金融機関が貸し出し競争をしてくれまして、それによって保証つきの中小企業向け金融の金利が下がるということになることを希望するわけでございますけれども、なかなか急にはそうもいかぬものでございますから、特に大蔵省のほうから積極的に行政指導でさらに、あなた方は危険がないのだからひとつ金利を引き下げてほしいということで指導しているわけでございます。先々といたしましては、むしろ先生御指摘のように、保証つきの融資は得なんだから、金利は低くてけっこうでございますというふうになってくることが道筋であるというふうに思います。
  142. 岡本富夫

    岡本(富)委員 これについて長岡課長、どういうようにこの対象の銀行に対して指導なさるか、また大体見通しとしてできるのか。ただここでいまお話がありましたように、確かに間違いないのだから、そういうふうになってくるのが望ましい。こういうようなことでは納得できない。あなたはどういうように指導され、また金利を下げるところの決意がありや、簡単に……。
  143. 長岡実

    長岡説明員 先ほど佐野先生の御質問でございましたかにお答え申し上げましたけれども、大蔵省としては、まず去年の八月に通達を出しまして、財務局並びに各銀行協会等にも呼びかけておるわけでございますが、今後もそういったようないわゆる行政指導と申しますか、そういうものが中心になろうかと思いますが、でき得る限り引き下げさせていきたい。ただ一挙になかなかそこまでまいりませんので、先生御承知と思いますが、金融機関の貸し出し金利等は個々の金融機関の持っております資金コスト等によってみんな違うわけでございます。ですから公定歩合は一律でございますけれども、貸し出しのほうになりますと個々の金融機関の事情等もあるわけでございますから、でき得る限り金融機関がいろいろな経営の合理化をはかりながら全体の貸し出し金利を下げていく、その過程において保証つきの金利については保証分をめり込むにしても、金融機関としては経営が成り立っていくというような方向に指導をしてまいりたいと思います。
  144. 岡本富夫

    岡本(富)委員 銀行に対して貸し出しをさせるときにはそれだけの保証をして、要するに準備金を渡すわけでしょう、五分五厘で。
  145. 長岡実

    長岡説明員 それは融資の基金が各保証協会に流れまして、保証協会からそれが金融機関に預託されまして、この預託金を見合いに大体その六倍くらいの資金をその金融機関から引っぱり出そうという一つの手段としてそういう五分五厘の預託をいたしておりますけれども、制度としてはひもつきにはなっていないわけでございます。
  146. 岡本富夫

    岡本(富)委員 しかし六倍ですか、その六分の一はそういう安いものを渡してあるわけです。たとえば定期をしてあると同じようなものです。ですから市中銀行にこの金利は大企業並みにさしてよいと思うのです。なぜかなれば信用度は高い。ほかのことでそのしわ寄せをこの中小企業の信用補完制度のところへ持ってこられたのではお門違いだと思うのです。したがって、もっと強力にあなたのほうで銀行に申し入れ、また指導して、この問題は解決していただきたい、これを強く希望しますがどうですか。
  147. 長岡実

    長岡説明員 先生の御要望の線に沿って今後も努力を続けてまいりますが、ただ一言申し上げたいのは、信用補完制度は、要するに、この制度がないと金融機関がなかなかコマーシャルベースで金を借さないというものに対して、こういう一種の公的な補完制度によって融資をさせるわけでございますから、その信用補完制度の普及度合いと見合いながら、こちらの指導の姿勢と申しますか、そういうものもだんだん強く推し進めていくということでありませんと、やはり要は中小企業に対する融資が確保されるということが一番肝心でございますので、先生のおっしゃる点はまことにごもっともでございますから、そういう線でいくつもりではございますけれども、そういう実情もあるということだけ一言申し上げたいと思います。
  148. 岡本富夫

    岡本(富)委員 この問題は、それをちゃんと長岡さんのほうで努力してやっていくのがあなたのほうの仕事じゃないかと思うのです。強く要望しておきます。  最後に商工中金の尼崎支店を開設してもらいたい、こういうような陳情が出ておりますけれども、これについて長官若干のお答えをいただきたい、こう思うわけです。
  149. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 商工中金の支店網でございますが、これは四十二年度設置されました船場の支店、これは最近でございます。合わせまして七十になっております。この支店設置につきましては地元の中小企業者の利便を考えまして、それから中小企業者の密集度、また交通事情を考慮いたしますとともに、私たちは以上の点を考えるわけでございますけれども、また大蔵省とされては銀行に対する店舗行政の点もおありになる。その辺も考慮されて、両者つまり大蔵と私のほうとで相談をしてやっていくのが一般原則になっております。とにかく御迷惑を極力かけないように考えたいということでございます。  いま先生御指摘の尼崎の件でございますけれども、これは個別案件でございますし、また現に両者で真剣に検討はしておりますけれども、まだお答え申す段階までには行っておりません。
  150. 岡本富夫

    岡本(富)委員 それではこの点につきまして、もっとこまかい話をしたいと思っておりましたが、これはあとでこの実情をお出ししますから、検討し、また、業者の人たちが待っておりますので、一日も早くお願いしたい。これを要求いたしまして、きょうは終わります。
  151. 小峯柳多

    小峯委員長 おはかりいたします。  本案の質疑はこれにて終局するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  152. 小峯柳多

    小峯委員長 御異議なしと認めます。よって本案の質疑は終局いたしました。      ————◇—————
  153. 小峯柳多

    小峯委員長 参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、中小企業投資育成株式会社法の一部を改正する法律案について、参考人の意見を求めることとし、その日時、人選等につきましては、委員長に一任するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  154. 小峯柳多

    小峯委員長 御異議なしと認めます。よってそのように決しました。  次回は、来たる二十二日金曜日午前十時より理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時十二分散会