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1968-03-06 第58回国会 衆議院 商工委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月六日(水曜日)    午後一時七分開議  出席委員    委員長 小峯 柳多君    理事 天野 公義君 理事 宇野 宗佑君    理事 鴨田 宗一君 理事 島村 一郎君    理事 中川 俊思君 理事 中村 重光君    理事 堀  昌雄君       内田 常雄君    小笠 公韶君       大橋 武夫君    岡本  茂君       海部 俊樹君   小宮山重四郎君       坂本三十次君    櫻内 義雄君       始関 伊平君    田中 六助君       橋口  隆君    武藤 嘉文君       佐野  進君    多賀谷真稔君       楯 兼次郎君    千葉 佳男君       中谷 鉄也君    永井勝次郎君       古川 喜一君    三宅 正一君       塚本 三郎君    吉田 泰造君       近江巳記夫君    岡本 富夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  椎名悦三郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         経済企画庁総合         計画局長    鹿野 義夫君         経済企画庁総合         開発局長    宮崎  仁君         通商産業政務次         官       藤井 勝志君         通商産業大臣官         房長      大慈彌嘉久君         通商産業省通商         局長      宮沢 鉄蔵君         通商産業省貿易         振興局長    原田  明君         通商産業省企業         局長      熊谷 典文君         通商産業省重工         業局長     高島 節男君         中小企業庁長官 乙竹 虔三君  委員外出席者         専  門  員 椎野 幸男君     ————————————— 三月五日  倒産関連中小企業者に対する資金の融通に関す  る特別措置法案玉置一徳君外一名提出、衆法  第四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件      ————◇—————
  2. 小峯柳多

    小峯委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件及び経済総合計画に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。橋口隆君。
  3. 橋口隆

    橋口委員 最初に通産大臣にお尋ねいたしたいと思います。  目下日本経済界で最大の関心の的となっておりますのは、アメリカ輸入課徴金制度の問題であろうかと思います。実はこの委員会におきましても昨日、わが国経済界のトップクラスである三人の方々に来ていただきまして、日本商工会議所足立正会頭、三菱商事副社長の寺尾一郎日本貿易振興会理事長駒村資正、こういう三人の方々をお招きいたしまして、そしてこの委員会質疑応答がかわされたのでございます。そこで、この課徴金制度がどういうふうになるかという問題でございますが、新聞の情報によりますと、日本に非公式に伝達をしてきている、その程度はおそらく四%ないし六%程度のものであろうか、こういわれておるのでございます。そこで、日本に対してはたして非公式に伝達してきているのかどうか、そういう点についてひとつお聞きしたいと思います。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 米国ドル対策一環として、あるいは国境税あるいは輸入課徴金というようないわゆる輸入制限的な措置をとるだろうというようなことが当初からいわれておりました。いわれておりましたけれども、これは申し上げるまでもなく、米国が従来先達として主張した自由貿易主義というものにまっこうから反する施策でございまして、まさかアメリカがそういう乱暴な措置に出るとは思いませんでしたが、最近はだんだんそれが実現性を帯びてまいりました。それで、その率すらうわさにのぼるような状況になっておりまして、おそらくこれはどうも実現するのではないかという考え方にわれわれは立って、その対策をいろいろ練っておる次第であります。いずれにしても、同じこの輸入課徴金にいたしましても、やり方はいろいろある、段階もいろいろある。それで一体どういうふうな実態を備えてくるのであるか、それがどうもまだはっきりいたしませんから、これに対して具体的にどういう対策を講ずるかということはまだ申し上げる段階には至っておらないのでございますが、いずれにいたしましても、まあ悪くすると、それに対抗措置をほうぼうの国がとったならば貿易縮小均衡というものにだんだんなっていくおそれがあるので、アメリカ自身もそうなったらやはり困るだろうと思うのです。出方をいま見守っておる状況でございます。
  5. 橋口隆

    橋口委員 そうすると、実現可能性は非常に強まってきた、そういうお話でございますが、それに対して政府としてはどういう想定をして、どういう対策を現在講じておられるのでございますか、それをちょっとお伺いしたいのです。
  6. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあいわばこれは戦争みたいなものでございますから、向こう出方を見て、それから最も有効適切な対策を講じていく、まだ敵があらわれないのですから、こっちでいろいろなことをしかけたのじゃ全然戦争にならない、そういう意味でただいまでは申し上げる段階じゃない、また事実これでいこうという腹も実はきまっていないのです、向こう出方がわからぬものですから。
  7. 橋口隆

    橋口委員 まだ対策はきまっていないということでございますが、問題は、こういう点はいかがでございましょうか。アメリカ輸入課徴金制度というものは、EEC国境税を創設して、それを撤廃しなければ輸入課徴金をやるぞ、こう言ってアメリカは開き直ったはずでございます。そのEECに対する措置日本にも適用するというのは少し筋違いではないかと思うのでございますが、この点はどういうふうにお考えになりますか。
  8. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そもそもホノルル会議にさかのぼるのですが、日本からも通産省局長が参りました。そのときドル防衛国際収支の問題を中心にして日米の間でいろいろな意見の交換がなされたのでございます。そのとき、主としてヨーロッパ諸国がボーダータックスを設けておるが、世界貿易障害になるのだから、ああいうことはやめさせなければいかぬというようなことが論議されたもののようであります。それで、もしアメリカがああいうことを言っても、EEC中心とするヨーロッパ各国がこれに応じないというような場合には、あるいはこれに対する対抗措置アメリカはとるかもしれぬ。かりにとるにしても、そういう貿易障害施策をやっておる国に対してとるのはそれはわかっているけれども、何もしない日本であるとかその他の国に対してそういう措置をとるということはよもやアメリカ考えていないだろう、こういうふうにわれわれは聞いておった。ところが先般ロストウ氏がやってまいりました。これは、ジョンソン大統領が年頭にドル防衛施策というものに対してかなり詳細な所見というものを世界に公表した、それを直接お聞きのとおりだと、こう言わないで、まあ友好国には直接行ってよく説明をして意見も聞いて帰るようにというので、ロストウ氏が日本にやってきて、その足で豪州のほうを回って帰ったようでありますが、そのときにどうも少しおかしいぞという気持ちを持たせるようなところもちょっとあった。けれども、まあ主としてほこ先ヨーロッパ諸国に向けられておったようにやはり聞こえたんです。聞こえたんですけれども、今度はいよいよ全然除外して考えることはできないというようなところから、今度は一律にどうもぶっかけてくるというようにだんだん段階的に話がわれわれに伝わってきたわけなんです。  そういうようなわけでございまして、その経過から言いましても、もともとこれは日本というような全く何もそういう貿易障害施策をやってない国に対してとられた措置じゃない、それがどうも一律に影響をこうむらざるを得ないような状況になった。アメリカのこういったようななには、民間の声が非常に大きく政府を縛るというような場合があるようでございますので、だんだん押え切れなくなってきておったのではないかというようなことも考えられますけれども、これは私の推測ですから、政府考え方でも何でもありません。私の推測でございますが、とにかくまことにその足取りを見るとどうも解せない、納得のいかない、きわめて理屈に合わないところがあるのでございますけれども、現実はそういうふうになってきております。
  9. 橋口隆

    橋口委員 大臣が非常に納得がいかないとおっしゃっておりますが、われわれも全くその点同感でございます。特にアメリカ自由貿易精神にのっとってケネディラウンドを提唱した国でもございます。それがこういうような阻害行為に出るということは非常に解しがたいものであるといわなければなりません。しかも、ただいまもお話がありましたように、EECに対するその報復措置を罪とがもないわが国に対して向けてくるとは実にもってのほかだろうと思います。そういう意味大臣におかれましては、アメリカに対してそういう処置に出ないようにというそういう説得をされる御意思はございませんですか。
  10. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それはもうすでに外交ルートを通じて厳重に抗議をしております。
  11. 橋口隆

    橋口委員 すでに政府万端準備は整えられておるとは思います。それにつきまして、きのうこの委員会日本商工会議所足立会頭がこういうようなお話をされました。それは、日本の財界の対米貿易合同委員会からアメリカ全米商業会議所に対して、こういう措置はとりやめてくれという要請をした、それに対する回答がやってきたそうでございます。それによりますと、全米商工会議所は全く日本意見同感である、日本側報復措置を招いてはいけない貿易戦争をしてはいけない、こういう趣旨の回答をよこしたそうでございます。そこで、この委員会で、ここにおいでになる中川委員から提案をされまして、それではひとつ業界代表をあなた方で編成をして、アメリカ側を説得するというような態度に出たらどうですか、こういう御意見が出たのであります。私は、これは非常に適切な御意見だろうと思いますが、もし業界代表アメリカに行くとなれば、政府としてもそれに対して積極的に支援される御用意がございましょうか。
  12. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 実際の直接の被害者日本経済界でございます。そしていろいろなルートもあるわけでありますから、そういう方面から適当な人を選んで、向こうに出かけていって説得するということは、私はきわめて適切な措置である、こう考えますので、政府としてもできるだけの支援はいたしたい、こう思っております。
  13. 橋口隆

    橋口委員 私はぜひ政府がそういう態度でひとつアメリカ側を説得していただきますように、特にお願いを申し上げたいのであります。  ただ、万一の措置に備えまして、わが国としては万端準備を整えておくことが必要ではないかと思います。特に、一般にいわれているように、五%の輸入課徴金となった場合には、日本輸出はもとより、特に繊維、雑貨等中小企業に与える影響はきわめて大きいと思うのでございます。  きのうもここでお話がございましたけれども、対米輸出見通しは一月から六月まで一三%から一五%増の見込みである、しかし後半になると前年の水準を下回ってくるだろう、おそらくは二億数千万ドルの減少になるのではないか、こういう御意見が出たようでございます。そうなれば、四十三年度において百二十三億五千万ドルの輸出を達成しようという目標は、きわめてむずかしくなるのではないかと思います。そこで、こういうような影響政府側の御調査と、それからそれに対する効果的な対策というものをひとつ御説明いただきたいと思います。この問題につきましてはすでに、まだ公表の段階ではない、こういうお話でございましたが、特に影響の問題ですね、かりに五%と見た場合にはどういう影響日本経済に与えるか。
  14. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まだ相手の出方がはっきりしませんから、ここで具体的な数字を述べることはどうかと思いますが、しかしこの間のアメリカドル防衛措置一環として、貿易面において世界全体から約五億ドルの収支改善考えておるということがいわれておる。世界全体で五億ドルということになりますと、一体その大部分を日本がかぶらなければならないという理屈はどこからも出てこない。しかし、どういうことを考えておるのかよくわかりませんが、あまりに楽観してもいかぬし、あまり見えない化けものにおびえてもいかぬだろうと思う。いろいろな場合を想定していま研究しております。
  15. 橋口隆

    橋口委員 ことに中小企業は現在倒産が相次いでおりまして、二月においてはいままでかつてない未曾有の数字にのぼっておるようであります。そういう点で、どうか通産省におかれましては万全の中小企業対策、それもあわせて講じていただきますようにお願いを申し上げておく次第でございます。  そこで、大臣、もう時間がないと思いますので、一つ最後に重ねてお願いを申し上げておきたいと思いますのは、先ほどちょっと触れましたように、ケネディラウンドの問題でございますが、各国国内手続を経ていよいよ実施される段階になっておりまして、アメリカ、カナダ、豪州等は一月一日から第一次引き下げをやっておるようであります。引き下げの第一段階を実施しております。そこでほかの国もだんだん批准をすることになると思いますが、特にわが国としては、この国会関係条約提案をされて国会の承認を待つばかりとなっておる状態でございます。この条約根本精神である自由貿易精神アメリカはみずから提唱しながら、そして今度は逆にほこ先を返して重大なこういう輸入課徴金制度のような新しい挑戦を試みようとしておることは、これは何としても理解しがたいことであろうと思います。そういう意味で、この際は、大臣におかれましてはいよいよ勇を鼓して、ひとつこの輸入課徴金制度アメリカが取りやめるように、この交渉を全力をあげてやっていただきたいと思うのでございます。私は、国会中でなければこの問題だけでもアメリカ側に飛んでいって交渉される必要があるかと思うのでございますが、たまたま国会中でもございますから、どうか大臣全力を尽くしてこの問題の解決に当たられますように切にお願いを申し上げて御質問を終わりたいと思います。  次に、経済企画庁長官にお伺いをいたします。  ただいまの輸入課徴金制度の問題は、経済政策全般を統括されます長官としては非常に重大な関心事であろうかと思います。そこで、大臣としての御所見をあわせてひとつ伺わせていただきたいと存じます。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま通産大臣がお答えをされましたところと私も同じような考えを持っております。  経済見通し、ことに国際収支の上では相当な影響があろうかと考えておりますし、またケネディラウンドを妥結いたしました経緯から申しますと、橋口委員の言われますとおり、確かにこれはこの精神に沿わないものであります。また伝えられるような輸入課徴金であれば、ガットの違反であることも明らかだと思います。したがって、アメリカ側としてこれは再考をしてもらわなければ困る問題だというふうに考えております。
  17. 橋口隆

    橋口委員 それでは次に経済企画庁長官に、わが国の現在の過密過疎の問題またそれに対して現在進行中と承っておりますわが国全国総合開発計画内容等について御質問をしたいと思います。  地域開発の問題は、国民全体にとって、特にまたこの委員会におきましても一番の関心の的ではないかと思われます。ところが、なかなかこの政策は思うようにいかないというのが現状ではないかと思われます。と申しますのは、この現象面を見ておりますと、大都市への集中はいよいよ強まってまいり、あらゆる弊害が露呈をされつつあるかのようでございます。交通難住宅難、その他あらゆる過密に伴う弊害が出てきているようでございます。一面また地方においては、今度は人口が希薄になって、労働力は不足する、それで農業はいよいよ衰退していくというような、そういう現象を呈しております。  そこで、この過密過疎の問題を解決して、そして均衡のある経済発展あるいは国土開発を進めるために経済企画庁全国総合開発計画を、最近では三十七年に制定されて、それからすでにもう五年以上たっているわけでございます。その間にこの計画は、予想されておった事態は、一面非常に——あとで申し上げますが、非常にすごい経済発展の陰にいま申し上げたような社会現象があらわれていると思います。この前の総合開発計画というものは、いい面でも悪い面でも、ただ単なるビジョンにとどまったのであって、あまり効果がなかったのではないか、そこでこの際あらためて新しい経済計画を練って、そして新しい時代に即応したそういう計画を立てるべきだろうと思われます。こういうような問題について大臣はどういうふうにお考えになりますか、御意見を承りたいと思います。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、昭和三十七年につくりました全国総合開発計画は、いわば当時の所得倍増計画地域に展開したようなものがありました。ただ、率直に申しますと、その当時すでにいわゆる地域間の成長アンバランスというものが政治意識に出ておりました。そこでこの計画を画定いたしますときに、人口なり資本なりがいわゆる関東近畿東海以外にもある程度散る、集積をするということを幾らか希望的にこの計画に盛り込んだ形跡がございます。実際はしかしそのようになりませんで、何と申しますか、経済のなまの原則がそのまま実際に適用されたような感がございまして、私どもの期待に反して、人口はやはり関東近畿東海集中をしてしまいましたし、富の集積もまたそうであったわけであります。その後になりましていよいよこの地域間のアンバランスという問題が政治の上に深く認識されるようになりまして、経済計画の面では、経済社会発展計画が昨年書かれましたわけであります。  そこで、これらの事態を踏まえまして、もう五年あまりもたっておりますから、新しく全国総合開発計画を策定したいと考えまして、昨年から準備をいたしております。今年秋ごろには最終的に決定をいたしたいと思っておりますが、これには、今度経済社会発展計画をつくりましたときに、従来のような経済計画だけでなく、その地域問題を別途に部会を設けまして検討をいたしました。これは地域間の地域モデルというものをつくりまして、そうしてどうやれば地域間の格差解消ができるかということだけを専門に研究いたしたわけでありますが、その報告はできております。それらのことを参酌しながら、新しくこの際全国総合開発計画を書き変えてみたい。政治意識地域間のアンバランスという問題がこれほどはっきり出てきておりますので、私どもは、今度の計画を書きます上で、この経済のなまの法則だけでなく、それをどのように誘導したらば地域間のアンバランス解消方向に向けられるかということも、この全国総合開発計画、新しい計画では取り込んでみたい、こう考えておるわけでございます。
  19. 橋口隆

    橋口委員 この計画は、ただいま長官がおっしゃいましたように、均衡ある国土あるいは経済発展させるために最も必要な計画であろうかと思います。私はこの計画実績とを比較いたしまして、これからの計画では、いつも計画のほうが経済の自然の趨勢におくれないように、牽引力を持つことが必要ではないかと思うのでございます。前の全国総合開発計画というのは、いわば描いたもちであって、大きく育つ子供に小さい着物を着せたために、やがてもうそれに包み切れなくなったという傾向がございます。それは経済成長率をとってみますというと、この計画では七・二%を想定しておりましたのに、実績は三十六年から四十一年をとりますと、年率九・七%となっております。想定は七・二、実績は九・七でございます。鉱工業生産指数をとってみますと、この計画想定が大体一一・九%になっておりましたのが、三十六年から四十二年平均で一五・二%という驚異的な成長を遂げておるのでございます。(発言する者あり)また国民総生産の目標は、四十五年を目標として二十六兆円になっておりましたけれども、四十一年ですでにこれは達成されております。そういう意味では、日本経済というのはこの計画をしり目にかけて前進をしていったといわなければなりません。そういう意味で、今度こそはひとつ計画がむしろ自然の経済を押え、あるいは伸ばしていくという調整機能を果たすべきであると思うのでございますが、その点どういうふうにお考えになりますか。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今度の総合開発計画を書きますときに、前回の三十七年の計画との関連で私どもが反省をいたすべきことは、各地域に特有の開発ビジョンというものがやはりあるはずであって、しかもそれが国全体の経済発展と整合すると申しますか、両方がうまくマッチするような、そういう開発方向というものが各地域ごとにあろうと思うのでございます。それをどうやって打ち出すかということが今度の開発計画主眼であると思います。こう申します意味は、昭和三十七年に総合開発計画を書きましたときに、いわゆる経済主義だけの開発をしたくないという意識はありながらも、国全体の経済はやはり経済法則で進む、どうしてもそういう傾向がございますので、何となくそれを開発計画の中で少しずつ全体との関係なく盛り込んだという感じがございます。人口の移動などにしても、関東近畿東海にこういうふうに密集してはいかぬ、これはもう少し地方に分散しなければいかぬという意識だけがあって、それをそのまま書いてみたわけでございますが、実際はそのとおりにならなかったわけで、これはやはり国全体の経済発展方向地方開発ビジョンとばらばらに考えたというところに問題があったのだと思います。それを、今度は何か両者が整合した形で、しかも地方開発ビジョンが書ける、こういうふうにやってみたいと思います。
  21. 橋口隆

    橋口委員 この国土開発の問題は非常に重大な課題でございます。特にこの商工委員会においてはいまだあまり取り上げられない問題でございます。ただいまやじが飛んだようでございますけれども、私は、この商工委員会がこの問題に取り組まなければ、いつも法案の重箱のすみばかりいじくっているようなことをやるから、それではほんとうの日本の大きな国土開発はできないと思うのでございます。商工委員会に課せられた非常に大きな課題でございますから、どうか皆さんも御一緒によくこれは聞いていただきたいと思います。  そこでお伺いしますが、この問題は現在進行中でございますけれども計画重点として経済計画あるいは社会計画、いろいろな問題があると思われますけれども、一番の重点というのはどこに指向されるおつもりでございますか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 基本になりますのは、昨年策定をいたしました経済社会発展計画と、それから先ほど申し上げました、そのとき作業いたしました地域部会での報告であります。そこで、これを基本にして全国にこれを展開するわけでありますけれども、その際に、先ほど申し上げましたように、全国各地で、わが国全体の経済発展と整合しながら、その地域の特色を盛った開発ビジョンを書いていく、これを私は主眼にいたしたいと思います。
  23. 橋口隆

    橋口委員 そうしますと、この計画目標とする期間はどういうふうになりますか。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先までの到達点で申しますと、昭和六十年を最終の頭に置いております。
  25. 橋口隆

    橋口委員 そうしますと、これに基づく十年あるいは五年というような年次計画はつくらないのでございますか。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 おそらく年次計画を書くことは困難ではないかと思います。
  27. 橋口隆

    橋口委員 それでは、経済社会発展計画、五カ年計画との関連というのはどういうふうになりましょうか。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 経済社会発展計画は、便宜四十六年を最終年次に置いておりますけれども、おそらくそのプロジェクションをすることによって六十年を想定する、こういうことになるかと思います。
  29. 橋口隆

    橋口委員 この計画実現の手段でございますが、従来は先行投資で港湾、道路を建設し、それから工業を誘致するというのがその方式であったろうかと思います。そのために工業立地の条件というのが大都市周辺に集中し過ぎて、そして今日の過密の弊害を招いたかと思うのでございます。したがってわれわれとしては、この工業立地というものはこれから考え直して、広く日本列島全体に分布させなければならないものと考えます。特にそういう点でどういうような実現の手段を使われるか。地域開発金融、あるいは税制等の問題もございますが、今度の新計画のその手段となるものはどういう点に重点を置かれるつもりでございますか。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実はこの計画を書きます。いよいよ本格的に作業を始める際に、それらの委員会を設けましたりまた専門家のグループをつくったりいたそうと思っております。そして基本的にどういうことを目ざして計画をつくるかということを、そこでまずきめたいと思っております。まだそういう段階にきておりません。しかしながら、おまえはどう思うかというお尋ねであれば、私自身は、昭和六十年と申しますといまから十六、七年の先でございますけれども、そのころからおそらく都市というものはだんだん情報産業を中心にした管理機能を持つようなものになっていくのではないだろうか。二十一世紀のほうに向かっての都市のあり方はそういうふうになってくると思います。したがいまして、そういう都市に工業が現在のようにほとんど集中しておるという姿は、おそらく二十一世紀までのことを考えますと、あまり正しい姿ではありませんで、都市地帯はむしろ管理機能を持つということになると思うのであります。ですから、さしずめ申しますと、新産都市でありますとか工業整備特別地域であるとかいうもの、ことに新産都市の場合は先行投資をいたしておるのでございますが、鉄道道路、それから通信、ことに通信と思いますが、こういうものの発達によって、工場というものは全体の趨勢としては、都市周辺にあるのではなくて、地方に分散をしていく、こういう趨勢にあることは確かだと思います。それが六十年までにそうなると言うのではございませんけれども、そっちのほうに向かって、おそらく六十年ごろの段階では事態は進んでいくのではないか、こういうことを私自身は思っております。ですから、今度計画を書きますときにも、そういうことを頭に置いてやはり考えていくべきではないかと私は思います。
  31. 橋口隆

    橋口委員 いままでの計画では、ちょっと触れましたけれども、金融と税制にたよっておったようでございます。しかもそれは工業を中心にとどまっておったようでございますが、今後は日本列島の中で北海道とかあるいは四国、九州というような農林漁業地帯に対してはその第一次産業を徹底的にひとつ再編成をしていく、そのために新しい財政金融あるいは税制、そういう方策を打ち立てるべきであると思いますけれども、今度の計画にもそういうような手段まで織り込んでいただけますか。それはまた大臣の御見解でもよろしゅうございます。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 全国を見渡しまして地域開発のプログラムが非常に書きにくいところは、私の感じでは一つは東北地方であります。それからもう一つは南九州であります。そのほかに、たとえば山陰あるいは四国の南部というようなものがございますけれども、山陰と四国南部はおのおの四国の北側あるいは山陽というところと連絡をすることによって、開発の方法はないわけではないと思います。東北の場合はこれが非常にむずかしい。南九州の場合には、北九州がいわゆる地盤沈下をしておりますために、これがやはりむずかしい、こういう感じがいたします。北海道には問題がございますけれども、これはもうすでに北海道そのものを開発するというものでいろいろな特別立法ができております。これはまあまあこの辺でよかろう。それで今回東北地方には、北海道東北公庫の特利というものをともかくも導入をしてみたわけであります。今度新年度からでございますのでどうなりますかわかりませんが、考え方としてはそういうことをいたしてみております。同じような問題が実は南九州にあるということを私は感じておるわけであります。そういう意味で、この二つの地方にはやはり政府として何か少しずつ特別の配慮をしていく必要がある。それが税制の形をとるということになりますと、なかなか簡単にまいりません。低開発地帯のようなものは、御承知のように、地方税との関係は幾らか処理しておりますけれども、その辺になりますとなかなかむずかしゅうございます。金融などならば幾らかやりやすい、あるいは高速道路計画などでもやろうとすれば何がしかのことはできる、こういうことでウエートをやはりこの二つの地方は置いて考えなければならないのではないか、いまそう思っております。
  33. 橋口隆

    橋口委員 一番基本的な考え方として想定されますことは、これから日本の都市集中というのはもっと激しくなってくると思います。それをそのまま認めて都市はそれなりに再開発をしていくのか、それとも地方に一時言われたように分散をさせるのであるか、そういう点が非常に基本的な課題になると思われますが、その点についてはどういうふうにお考えですか。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これもまだ私見の程度で、はなはだ恐縮でございます。と申しますのは、そういうことを審議すべき機構なり場なりをこれからつくるところでございますから。ただ、私思いますのに、いわゆる東海道・近畿メガロポリスというものは、おそらくメガロポリスの方向をますます進めていくであろうと思います。ただその場合、そのメガロポリスは二十年あるいは三十年の単位で考えますと、先ほど申し上げましたように、工業地帯になるというよりはむしろいろんな意味での管理機能を持つようになる。工業というものはその外へ出ていくという傾向にあるのではないのだろうかと思います。
  35. 橋口隆

    橋口委員 そうしますと、従来の拠点開発主義というものは実行がなかなか進まないようでございますけれども、そういうようないわば前の総合開発計画でとっておりました拠点を開発していって、そして地方人口を分散していこうという考え方は今回修正をされて、そして大都市は管理機能としてそれを認め、地方には第一次産業、第二次産業をやっていくという、そういう構想でございますか。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと私の申し上げようが悪かったかもしれませんが、むしろそうではありませんで、たとえば札幌、仙台、広島、福岡がただいま大規模地方開発都市になっておりますが、こういうものにその地方中心としての管理機能をやはり与えていく必要がある。そうして工業そのものは、昭和六十年までとはちょっと申しにくうございますけれども、やはり臨海性を持ったものは、これは海を離れられないと思いますけれども、多くのものはだんだんメガロポリス地帯を離れていって、地方のそういう大きな管理機能を持った大規模開発都市の周辺に出ていく、こういうことになるのではないだろうか。これはしかしもう少し長いビジョンかもしれませんけれども、そういうことになっていくのではないかというふうに考えております。
  37. 橋口隆

    橋口委員 私は、特に都市の再開発とあわせて地方開発にあたっては、現在の第一次産業あるいは自然の観光資源、そういうものを生かした多面的な総合的な施策がほんとうに必要だろうと思うのでございます。そういう意味では、今回の開発計画においては、全国地域かに分けて、その個性を生かしたような方向でこれを進めていただきたいと思うのでございます。従来の方式は、何もかも工業を誘致さえすればそれでいい、そういう考え方で非常に乱雑な結果になったと思います。また北海道や九州という特殊性を多少は認めておりましたけれども、今度はぜひとも、日本列島でどういうような役割りを北海道は果たし、あるいは東北は果たし、あるいは北陸、山陰はどういう役割りを果たすかという、そういう地域的な特殊性を列記することが非常に大事じゃないかと思われますが、大臣の私見としてのお考えはどうでございますか。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういうことを実はやってみたいと思っているわけであります。問題は、ただたいへん都合のいいことが書いてあるということでなくて、現実に国全体の経済発展との関連においてそういうことを、こうすればできるというふうなところまで入ってみたいというわけであります。
  39. 橋口隆

    橋口委員 そのお考えをぜひこの計画の中に織り込んでいただきたいと思います。  それと同時に、この法律の体系が、地域開発については非常に重複する個所が多いのではないかと思われます。現在のこの法体系を——おそらく地域開発関係だけでも二十幾つあるかと思われますけれども、これを整備して、そうして新しい法体系をつくるというお考えはございませんですか。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう考えはございます。昨年、地域開発立法の整備をいたしますために、各省間のそういう会議を設けました。すでに検討を始めております。ただ、この地域開発法の中には、国会の御意思で成立したものが実は多うございまして、私どもが行政府だけの立場でどうこうするということにまいらないものがかなりございますので、一定の私どもとしての考えをまとめました上で、また国会の御意思も伺ってみたい、こう思っております。
  41. 橋口隆

    橋口委員 最後にお伺いしたいと思いますが、国土総合開発法、これも検討を要する段階にきていると思われます。たとえば一番大事な都道府県でございますが、これは各府県ごとに現在総合開発計画を持っております。ところが国土総合開発法では、それに関する特別の規定がないと私は思うのでございます。この点は非常に重大な盲点ではないかと思いますので、ひとつその修正の方向でやっていただきたいと思うのでございます。また、特定地域総合開発計画、これは政府全国開発計画の中でございますが、この特定地域の役割りというものは、もうすでに成功したものと、それから途中で眠ってしまったものと、こういうふうに分かれているようでございます。そういう点でも特定地域の総合開発というものはこれを考え直していただいたほうがいいのではないかと思います。そういう意味で、総合開発法につきましても大局的な見地から将来の方向考えていただきたいと思うのでございますが、いかがでございますか。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる特定地域につきましては、確かにその歴史的役割りをほぼ終えたのではないかというふうに考えております。  それから都道府県でございますが、都道府県総合開発計画というものがございまして、これは政府に提出をして承認を求める規定がございますのですが、実際なかなかそういうふうにいっておりませんで、事実上は各県が開発計画を書かれて、そうして私どもの役所にその途中で御相談があるとか、あるいはしかるべき指導をしてくれとかいうようなことはしばしばございます。また、できるだけお役に立つようにいたしておりますけれども、今度総合開発計画を書きますときには、そういう都道府県の御意見もまずよく聞くことが必要だと思いますし、それからできましたあと、それにのっとって都道府県が御自分の役割りをおのおのの計画でお書きになれるように、緊密に連絡をしていきたいと考えております。
  43. 橋口隆

    橋口委員 この全国総合開発計画は、ことしの秋ごろまでに策定をされる運びとなっており、現在進行中と聞いておりますけれども、私はぜひ宮澤長官意見を強力に織り込んでいただきたい、それを切望する次第でございます。どうか、この総合開発計画は、国民の、特に都市、地方で困っているそういう人たちが、明るい日がやがてやってくる、そういうような期待の持てるような計画にしていただきたいと思います。同時に、ばらばらのイメージがいまできつつありまして、各省ごとに十年あるいは二十年後のビジョンなり計画はできつつございますけれども、それをひとつ統合されてまとまりのある計画に仕立てていただきたいと思います。そしてただ絵にかいだそういう計画だけではなくて、その内容についてどうか強力な政策、手段が講じられますように、筋金を入れていただきたいと思うのでございます。それを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  44. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもの一番苦心をいたしますことは、各省の意見をそのまま入れますと、えてして経済主義的になりやすいわけでございます。なかなか全国の格差というものを解消する方向に向かわないのが大体常でございます。それから、それを無理に一つのビジョンを貫こうといたしますと、かりに計画ができましても、現実の行政はそういうふうにいかないということになるわけでございます。ですから今度の場合、できるだけ各省にもその気になってもらいまして、できるような地域格差の解消を計画に盛り込んでいきたい。これは二つやや背反する傾向がどうしてもございますので、そういうところは各省に、もとの問題をよく納得し協力をしてもらう形で、せっかく努力をいたしたいと思います。
  45. 小峯柳多

    小峯委員長 中村重光君。
  46. 中村重光

    ○中村(重)委員 いま地域開発の点について質疑がかわされたわけであります。長官が、計画と実際の行政はなかなかうまくいくものじゃないと言われた、そのとおりだとは思うのです。ところが、どうも計画は立てるのだけれども、行政は必ずしもそれに伴ってうまくやれるものでないというあとの考え方に非常に強く支配されてきているという感じがしてならない。私は、宮澤長官に対しては、与野党を越えて、宮澤さんは何かやるだろう、そうした期待というものがあるように思う。だから企画庁というのが何かビジョンづくりをする官庁ということから一歩出て、もっと総合的な強力な計画を立て、そして各省に対して、あるいはまた地方自治体に対してもその実行というものをあくまで強く推進をしていくという役割りを、もっと強い発言力というものを持つようにしなければいけないんじゃないかという感じがしてならない。そうしなければ、この過密都市解消の問題にいたしましても、いろいろな計画というものは十年前くらいから立てられておる、ところが何一つとして、そいつは実行されていないですね。最近何か研究機関というのを移すんだということを忘れたころに言い出している。そういうことであってはならぬと思いますね。まだ私はたくさんの問題点、これではいけないと感じておることが多々あるのですが、いま私が申し上げたようなことについて、あなたは実際に閣内にあって、現在のような進め方でいいのかどうかということに対していろいろと構想なり、あるいは矛盾点というものに対してお考えになっている点がありましょうから、ひとつそれらの点を聞かしていただきたいと思います。
  47. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まことにおっしゃいますように、縦割り行政の弊というものはもうその極に達した感がございます。ただいま御審議願っております都市計画法、いわゆる新法でございますが、これ一つつくりますのにも実はもうたいへんなことでございまして、立法の段階でそうでございますから、いざこれを執行する段階となりますと、また同じような問題がさらに出てくるだろうということを実は心配しております。これはやはり行政硬直化の一つの現象だと思います。そうかといって、経済企画庁がそれらを全部総合する権力をかりに握った、握れたといたしまして、そういうことがうまく解消できるかといいますと、それはなかなか、おそらくそうではあるまいと考えます。やはり各省と人事の交流を行なうとか、それからこの問題の本質を各省の行政官の頭によくたたみ込んでもらうとか、そういう行政をする者の頭の使い方をだんだん時間をかけて直していく、こういう方法しかないのじゃないかというふうに感じます。私も中村委員の言われますとおり、まことに官庁間のセクショナリズム、ことにこれが縦割りでありますから地方に一番迷惑をかけることになりますので、この点はもうおそらくだれよりもよく痛感をいたしております。できるだけ関係の閣僚に、あるいはまた各省の担当者にものの考え方を改めていってもらうという努力を私どもがする、これ以外にないのではないかと思っております。
  48. 中村重光

    ○中村(重)委員 まああなたにここで答弁だけ、強い、格調の高い答弁をしてもらいたいという期待は別にないのですけれども、おっしゃるようなことだけでなくて、やはりもう少し私は突っ込んでいく必要があると思う。いまお認めになりましたたとえば工場立地の新法の問題にしても、この前の特別国会のときに実は出そうとして、すったもんだ各省なかなか話がつかないで、ついにこれも提案の運びに至らなかった。私どもがこれに賛成するか反対するかは別として、過密都市解消の一環という形でこれは考えられておると思うのですが、工場疎開の問題、いま内容等についても、簡単な説明をいただいた中でもこれは問題点がある、こういう弱いことではだめだというふうに感じておるのです。しかしいずれにしても、政府としては、これは前向きの措置であるという考え方でお取り組みになって、これを提案しようと考えていらっしゃるのだと思いますが、通産省関係の法律でありますが、今度のこの国会提案するということでも実際どうなるかわからないという、そういうていたらくです。ともかくそんな各省の割拠主義というのかなわ張り争いというのか、小さい権限を主張して一歩も譲らぬというような考え方ではどうにもならぬと思うのです。だから、私は、そういった点を頭を切りかえてもらわなければならぬのだということ、それもそのとおりでありましょうけれども、やはりあなたが閣内において現在のこのあり方というものを根本的に直していく、そういうことが必要ではないか、それらの点をあなたに期待しているのだ、こう思うのです。  それから、お話がありました企画庁、がそういう権力を強く持つとしても、官庁としてはなかなかむずかしいことだ、これもそうだろうとは思いますけれども、あまりにもしかし弱いと思います。問題の離島振興のことだけ長官考えになってみられたらどうですか。私どもは、やはり離島振興法を改正をするということに対しましても、公共事業関係だけしか従来は高率補助がなかった、厚生、文教関係が取り残されておったからこれを入れるのだ、まだたくさん離島の問題はその他あるわけですが、しかしそういうものに対して高率補助をするということだけが私どもの離島振興法を改正しようとしたねらいじゃない。やはり総合的な予算をひとつここで企画庁に計上してもらって、そうして一貫した地域開発、離島振興を進めてもらわなければならないという考え方に立っているんですよ。ところが予算的には、形式上はそういう総合的な一括計上という形になっているけれども、実際の実施の段階になってくるとどうか。この辺は全く企画庁というのは、予算に目を通すだけで、実際問題として実施の段階では何も発言力はないんですよ。これでは話にならぬじゃないですか。それらの点に対して、いまあなたが、頭の切りかえであるとかなんとかいうことだけではなくて、すでにあなたのほうの手に入ったもの、これをほんとうに実りある方向へ強力に進めていくことができるんじゃないかと思いますが、どうお考えになりますか。
  49. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 離島の場合は、その中では、まあこれでもうまくいっておるほうでございます。と申しますのは、ともかく十何年歴史がございますので、各地方のヒヤリングを聞くにいたしましても、私どもの役所でみんな集まりまして聞くというようなことにいたしております。それでも、たとえば漁港は漁港、道路は道路といったような点はございますけれども、まあまあ各省との調整はうまくいっておるほうでありまして、この程度にでもほかのことがいけば、かなりの進歩だというようなのが実は率直な感じでございます。
  50. 中村重光

    ○中村(重)委員 議員提案というのはいつもたいしたものはないといわれてきた。ところが私は、離振法は最高によく働いている法律だと思うんですよ。それが企画庁のこの法律の運用よろしきを得てよく働いておるというならばよろしいのですけれども、そうではなくて、離島は非常に経済力が低い、所得水準も低いでしょう、負担能力がないですね。そこへ高率補助なものだから、それだけ負担が非常に軽減されるという形で、この法律はよく働いているといわれておるのであって、長官がこのくらいほかのほうが動いてくれればいいんだがなと言うが、私の期待はそういうものじゃない。実質的に企画庁の強力な法の運用、行政の推進というものによって大きな成果をあげるのでなければならぬ。これも、長官、問題がある。  離島振興法によって高率補助があるでしょう。ところがこれが、ただ都道府県だけを律する形に働いているのではないかという点が一つある。そうでしょう。国から高率補助があったのだから、その分だけ都道府県が負担するのをどこかへ持っていってしまったのでは、地域開発発展に対しては大きな効果はない。ただ都道府県の負担を国が肩がわりしてやったのにすぎないということになる。だから問題がある。だから、やはりそこらあたりも追跡していく必要があるのではないか、いわゆる追跡調査ですね。そしてほんとうに国がそうした特別の措置をやっておるのが名実ともに実効あるものになっておるかどうかということを十分確かめていく。そしてそのとおりなっていなければ、それを直していくということでなければならぬと思いますが、これらの点に対してはどういう取り組みをやっていらっしゃいますか。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 開発局長からお答え申し上げます。
  52. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、確かに現在離島振興法によります高率補助の制度はいろいろの事業種目について行なわれております。これによって軽減される部分は、都道府県の負担に帰するべきところの軽減が行なわれるのがほとんどでございます。したがいまして、そういった形で、新しく離島に指定される、あるいは事業の採択が行なわれるということによって軽減される部分が、現在の制度では県の負担軽減にだけなってしまうというようなところはあるわけでございます。で、企画庁といたしましては、もともとこの離島の高率補助の問題は、ただいま御指摘のように、離島に対しておくれた公共施設を整備する、あるいはいろいろの産業振興の施策をできるだけ助けてあげたいということにあるわけでございますから、そういったことで浮く財源は、できるだけ県の単独事業としてさらに離島に運用してもらいたい、こういうような指導を従来いたしております。相当数の府県については県単事業のワクがとられまして、そういったことも行なわれております。しかしながら、これは言ってみれば便宜の措置でございます。私どもといたしましては、離島振興計画そのものの規模なり、あるいはその推進のテンポという形におきまして、本来考えておる離島振興の目的に沿うように予算措置をし、また府県もそれに応じて負担をしてもらうというような形にもっていきたい、このように考えております。
  53. 中村重光

    ○中村(重)委員 まあそういうことで強力にやってもらわなければいかぬし、ただ指導するだけではなくて、結果がどうなっているかということをあなたのほうで追跡調査をやって把握する必要がありますよ。国と都道府県が一体となって離島振興を強力にやる、そういうところは比較的目的のとおりになる。そうではなくて、国から負担してもらったのだからというので、国が高率補助でない場合に当然その離島に注ぎ込まなければならない費用をほかに持っていくということになってくると、やはりアンバランスが出てくるように思います。ですから、それらの点は一つの盲点と言ってよろしいと思います。法の盲点というのではなくて、実際上の盲点になっている。ですから、その点を十分配慮していただきたいと思う。  それから、そのついでにお尋ねいたします。具体的な例として私は対馬の例を申し上げます。対馬には、実は縦貫道路もなければ、循環道路もない。いまですら、航送船で行かなければ端から端まで行けない。また全然支線がありませんから港には一切行けない。船で行かなければ行けない。ところが、対馬というところはするめの加工が中心なんです、林業ももちろんあるのですけれども、そのするめの加工を、大臣、一度ついでがあったら——陛下も行かれるような御予定もあると思いますが、あなたはおいでになれば、驚かれますよ。するめを天日で加工する。いわゆる干すわけです。雨が降ったら、どうにもならぬでしょう。倉庫がないです。またそこに雨が降ってきたからといっても、一々するめをはずして倉庫に入れたのでは、これは手間賃でたいへんなことになる。ですから、天気のときも雨のときも、乾燥するまでそのままなんですね。だから、これは動力があったら問題は解決する。ところが、動力がそこまでいっていないのです。ほとんどの町村、部落がそういう状態です。どうしてこういう問題を放置しておくのだろうか。こう言うと、君は長崎県だから、君が関心がなかったのじゃないかと言って、やじられたり、おしかりを受けたりするかもしれませんが、私は通産省にも経企庁にも、至急調査をして、電力会社と連絡をとって、適切な対策をお立てにならなければならぬじゃないかということを、いつも言っている。ところが、なかなかみこしを上げない。電力事業は御承知のとおり公益事業でございますから、もっと強力にそういうところに供給の義務を持たせるということでなければならないと私は思うのです。それらの点に対しては、どのようにお考えになりますか、そういうことは他の離島にも数多くあるのではないかと思うのですが。
  54. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まことにうかつでございましたが、そういう実情を存じませんでしたので、少しよく事情を自分で聞きまして、考えさしていただきたいと思います。
  55. 中村重光

    ○中村(重)委員 何か具体的にわかった方、あるでしょう。
  56. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 御承知のとおり、現在振興計画によります電気導入事業という形で、相当の進捗を見ております。ただ御指摘のように、現在の電気導入事業、あるいは自家発電所に対する補助の制度と申しますのは、電燈、電力を主たる対象としてやっておりますが、ただいま御指摘のような問題がこれから相当数生じてくると思います。最近の傾向といたしましては、できるだけ本土とケーブルでつなぐということで改良のできるところはそういう計画を進めることにいたしております。対馬の場合具体的にどのような計画になっておりますか、私も実はそこまで詳しく存じておりませんが、御指摘もございましたので、至急検討していきたいと思います。
  57. 中村重光

    ○中村(重)委員 またもとに戻りますけれども、ひとつ企画庁が総合的に、強力な発言力を持って計画にタッチし、またその推進役も担当する必要があるのではないかと思う点で、一つの干拓の問題を考えてみたいと思うのです。  御承知のとおり、干拓がどんどん行なわれています。その干拓地の三分の一は干拓目的に使っていない。他の用途に転換する、あるいはこれを遊休地として遊ばしている。これはたいへんなむだでしょう。このくらい国のむだはありません。ところが、そういうことをやっておいて、今度はまた新たな干拓を進めていく。私どもは、農地の拡大、国内農業の発展ということを党としても基本的な方針にいたしておりますから、干拓とか開墾そのものには反対もしない。しかし、そういう無計画的な干拓ということは問題がある。これもまた具体的な例として参考になるからお話しをするのですが、長崎に約六千ヘクタールの長崎干拓という計画がある。これに十二の漁協がある。この漁協の中で三漁協が絶対反対。ところが、そうした漁民の説得がなかなかむずかしいということから、経済性がないということから、四条の三項を適用して、漁民の同意をとらないで強権でもって公有水面の埋め立てをやろうとしておる。いわゆる市町村の同意を求めることにしたけれども、条件闘争で、補償金その他の条件によっては賛成をいたしましょうという態度をとっておった他の九つの漁協が、これに猛然と抵抗して、全部が反対した。その後いろいろ説得をして、六漁協か七漁協は、賛成ではございませんが、県や国の計画にも協力をしなければならない、私たちは生活が保障されるならば何とか考えましょうというので、条件的に踏み切っているのが、いま申し上げた六つか七つ。ところが、その残り、五つか六つの漁協は依然として反対である。これは反対の根拠はあるのです。ノリの養殖漁業が中心で、いままでノリをつくれ、品質改良だというので盛んに指導奨励をしてきた。ところが、それによって今度はとたんにやめろ。しかも、一漁業者が年間三百万以上の収入を上げておる。だから十億ぐらいになるであろう。農地の干拓をいたしますと、もっとそれ以上の計画は立てておるようでございますけれども、ほんとに農地に使うのか、あるいはそうでなくて、多目的な用地としてこれを使用していくのかということ、それすらもまだはっきりしていない。それははっきりしているという説明を農林省はするかもしれませんけれども、必ずしもはっきりしていないという根拠がたくさんある。そういう問題でいまたいへんな混乱に実はなっておりまして、先般三百名の漁民があの長崎のはしから上京してきて、ここで総決起大会を開くというような場面が実はあった。私どもは、地元の問題でございますから、与党自民党の議員とも話し合いをやって、何とかして県あるいは農林省と漁民との接触をするようにやっていこうということでつとめてきた。そこでこの漁民の人たちから、いま私が申し上げた干拓地をほんとうに使っていないじゃないか、そういうことをしておきながら、自分たちの生業、生活権を奪ってしまって、ただ補償金を渡せばいいという態度はけしからぬと言って、憤慨をして反対をしておる。私はうなずける点が多々あると思う。やはり国自体が干拓というような問題に対して、ほんとうに国民納得し、同意をするようなことを考えなければいけない。それから干拓の場合に、どこであってもよろしいということではならぬ。ほとんど収入の上がらないような地域で干拓をやっているところがある。そして長崎の例のような、現在の漁業というものによって相当な収入が上がっていく、経済にも貢献をしているというところは、慎重に考えていかなければならない。そういうことが農林省、水産庁だけにまかされておるというところに問題がある。そして農林省、大蔵省で予算をつける、つけない、もう四年目なんです。これまでの予算はいままで執行していない。そして繰り越し、繰り越し。委員長は決算委員会におられたのでおわかりでしょうが、私はこの問題を取り上げて、水田大蔵大臣に、三年間予算の執行もしないでおいて、また新しい予算をつけていくというやり方は、決算の面からいってもけしからぬ話だ。やめるのか、補償額等を明らかにして、漁民を土俵に上げるのか、こういうことでなければならぬと申し上げたことがあるのですが、これは私が先ほど申し上げた、いわゆる総合的な地域開発一環というようなことも、その中では考えてみなければならないのではないかと思うのであります。そうしたいろいろな問題に私が自分でぶつかって、その矛盾を感じておるものだから、これはやはり企画庁が総合的な計画を立て、これにタッチしていくということでなければならないのではないか、そういうことで申し上げたのですが、非常に具体的な問題でございますから、これに賛成とか反対とかは別として、あり方ということに対して、長官はどのようにお考えになりますか。
  58. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いかにもありそうなことでございます。やはり県として一つの総合計画を持つということがその前段にあればいいのではないかと思いますが、私どもとしては、そういう場合にときたま調整の立場から乗り出すことはございますが、いままでのところ、そういう問題についてはどっちかといえばはなはだ消極的な態度を実はとってきております。地域開発の問題として提起されれば、やはり県内の意見を聞いてよく検討しなければならないのではないだろうかと存じます。
  59. 中村重光

    ○中村(重)委員 私は、自治権を尊重していくということはたてまえとしなければならないと思います。ところがこの干拓の問題もしかり。その他の地域で港湾なんかをどんどん埋め立てて、工場用地の造成等をやっておりますね。ところが、相当広大なそうした埋め立て計画というものをやっておるが、どういう工場を持ってくるのかということについては全く白紙、全然そういうものはないのですね。長崎なんかで外港計画というものをやっておりますが、そのとおりなんです。私はそういうことはやはり問題があると思う。ただこういう計画を立てたいのでこれだけ予算が要る、これをつけてもらいたいという都道府県が、その計画によってそれぞれの関係省に陳情して予算をつけてもらう、それであってはならないんじゃないでしょうか。その開発というものがほんとうに経済性を十分発揮していく可能性があるのか、そしてほんとうにそこに工場が来るのかどうかというようなこと、その見通しというものをまず立てるべきだ。そういう点については、これは地域開発という形において当然企画庁がこれにタッチしていくということでなければならないと私は思う。産炭地の問題も、長官、あなたは無関心ではないと思うのです。炭鉱があったところは、これは炭鉱が閉山をして荒廃してしまう。そして、産炭地振興事業団によって土地造成はどんどん行なわれております。ところが、その土地が非常に高いというので、その土地は造成をしただけで全然これは売られていないところが非常に多い。かつては炭鉱離職者対策という形において土地造成も考えたのでございますから、それなりの意義はあったと思います。ところが、現状はもうそういう形ではございません。非常に変化してまいりました。変化してまいりましたが、国がやっていることについては少しも変化はいたしておりません。旧態依然として同じようなことである。それであってはならぬと私は思う。やはり国の基幹産業というものをそこへ持っていって、そしてその他の中小企業等がそこで成り立つようなことも考えていかなければならないでしょう。その他、民間産業をそこへ誘致するという場合におきましても、やはり国がこれに強力にタッチをしてこれを推進をしていくということでなければならぬと思う。そうしなければ、産炭地振興にもならないし、地域開発発展ということにもならないし、せっかく投じたお金というものがたいへんなむだな形になってくると思います。ですから、それらの点に対して、たくさん私は例をあげたのでございますから、反論がございますならば、ひとつお聞かせ願いたいと思いますが、確かに検討を要する点だとお考えになるならば、私はこの際、大臣としてはそれらの問題に対して積極的な取り組みをしていかれる必要があるのではないかと思います。お考え方はどうでしょう。
  60. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどの橋口委員のお尋ねに関連いたしますが、やはり県としての地域開発計画というものを私どもとよく御相談願って立てていただく、あるいはそのときに私どもとしていろいろな意見を申し上げる、そういう機会を通じて、ただいま言われましたようなことがないように、それを避けていくようにいたすべきかと思います。
  61. 中村重光

    ○中村(重)委員 どうもかみ合わないのですよ。いままでの形式はそうだと思いますよ。ところが、従来の形式が私がいま申し上げたようないろいろな矛盾、問題点、むだというものが出てきているんだから、それらの矛盾をなくするために、問題点を解消するためにはどうするかということですね。そこの取り組みを私はあたに期待をしている。ただ事務的なことでいろいろ意見を申し上げ、あなたの見解を伺っておるのではないわけです。そのあり方として、これではよくないのではないかということで申し上げたのでございますから、もっと高い次元であなたのお考え方をお聞かせいただきたい。
  62. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これが考え方方向といたしましては、ある程度の規模を持っておる都市でありますと、今後いわゆる都市計画法に基づく土地利用計画というようなものを書くという、そういう形で発展をしていくのでありましょうし、港湾であれば港湾の計画ということになるのでございましょうが、いま言われましたような規模のことでありますと、どうもいまの行政のたてまえで私どもが乗り出してどうこうということがあまり実効的でないような気がいたします。繰り返すようでありますが、やはり県の全般の開発計画を御一緒に考えていくというようなことではなかろうか。御不満であろうと思いますけれども、どうもそれ以上お答えのしようがないように思います。
  63. 中村重光

    ○中村(重)委員 実は月例経済報告をもとにして、引き締めの問題その他見通し等についてお尋ねをする予定でございましたが、実は通産大臣にきょうぜひお尋ねしておかなければならぬ問題がございます。時間の関係がございますから、この問題はあらためてまた近い機会にお尋ねをすることにいたしまして、保留しておきたいと思います。それでは、あとでまた通産大臣が来られたら質問をいたします。
  64. 小峯柳多

    小峯委員長 佐野進君。
  65. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私も企画庁長官質問する予定ではなかったのですが、通産大臣がいないものだから、中村先生もだいぶ苦労して質問しておられたようですが、私もそういう意味でたいへん唐突になるわけですが、ひとつ質問してみたいと思います。  その前に、委員長、私さっき聞いておってちょっと気になったのですが、橋口さんが、いまいないのですが、さっきこういうことを言ったのです。さっきやじにこたえて、法案審議のように重箱のすみをつつくようなことに熱心にならないでこういうことに熱心になれ、こう言っておるわけです。法案審議が重箱のすみをつつくようだということは、やはり本委員会として重大な問題だと思うので、これは委員長のほうであとで適宜取り計らってもらいたい。これを冒頭に申し上げておきたいと思います。
  66. 小峯柳多

    小峯委員長 承っておきます。
  67. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は経済企画庁長官にお伺いするわけですが、あなたはこの前、ケネディラウンドのとき、日本代表として行かれた。そうしてまあ一応の成果をあげてこられたということになっておるのです。したがって、いま一番問題になっておる輸入課徴金の問題に関連して、国連貿易開発会議がいま開かれておるわけです。これには通産大臣が出席してあいさつを述べてこられたということですが、あなたもその問題については非常に大きな関心を持っておられるし、政府の一閣僚としてこの問題についていろいろ関係が深いと思うわけですから、この際お伺いしておきたいと思うのですが、いま一番問題になっておるのは、いわゆる低開発国が先進国に対して求めている特恵援助、特恵関税の問題を農産加工品にまで広げるのかどうか、こういうような点について日本代表団の態度がきわめて不明確である、この面については、欧州をはじめとする先進諸国、なかんずくその中においてもアメリカはきわめて好意的である、こういうような新聞報道がされておるわけでありますが、これに対して日本政府は、どちらを向いていいのかわからないという不安定な姿勢をもって対処しておるということでありますが、この特恵関税の問題特に農産加工品に対する問題について、政府は現段階においてどのような指示をしておるのか、その点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  68. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の知っております限りでは、特恵は製品、半製品というものについて考えるということであって、それも工業製品を中心考えるわけでございます。したがって、私どもの立場は、いわゆる農林省関係のものについては特恵というものはこの際考えないという立場と思います。そこで非常に警戒しておりますのは、これは第一回のときにもそういう動きがございましたが、いわゆる先進国側の中でも、必ずしも国情が一緒でありませんために、ある段階で先進国側の歩調が乱れるということがございます。この問題についても、いま御指摘のようなことがあるやに聞いておりますが、その場合に、EEC諸国などと歩調を合わせて、先進国側の歩調が乱れないようにするというのが、現地におります代表部が基本的な方針として持っておるところである、こう承知しております。
  69. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私の質問したいのは、常識的にはあなたの答弁されたようなことで事足りると思うのですが、現実の問題として、この国連貿易開発会議における日本代表団が追い詰められた形に立たされておるということに解釈できる段階だと思うのです。これは特に、いま輸入課徴金の問題と関連して、アメリカ政府は低開発国についてはこれを適用しない、したがって、低開発国に対しては非常に好意的である、こういうような報道がなされておるのです。そうなりますると、日本政府として派遣しておる代表団が、これに対して何らかの対策を立てなければ、結局押し切られてしまう、こういうような危険があるのではないか、こう思うわけです。したがって、そういう点について、日本政府としてはどういう措置をするのかということをお聞きしたい。措置をしていないのかどうか、その点もひとつあわせてお聞かせ願いたい。
  70. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 直接の所管でございませんので、非常に正確なことは申し上げにくいのでございますが、大まかに申しますと、いわゆる農林省関係のものに特恵が今回及ぶということは、これは排除しよう、これはすでに、OECDで特恵問題を先進国側だけでやりましたときに、実は基本的にはそういう了解があるわけでございます。それはアメリカも反対ではないわけでございます。ただ御承知のように、米国という国は大工業国でありながら大農業国でございますために、いまのような問題が、特に中南米との関係で起こってきやすいわけでございますが、やはりOECDで話をいたしましたとおり共同歩調をとっていく、ディバイド・アンド・ルールをやられないようにするというのが、代表団の基本的な方針であります。
  71. 佐野進

    ○佐野(進)委員 この問題については、中村委員もあとで質問することになっておるそうでございますから、通産大臣のほうがやはり本来かと思いますので、これはやめておきたいと思います。  そこで私は、経済企画庁長官がこの委員会において説明されました最近の経済情勢と今後の見通し、これに関連して若干質問をしてみたいと思います。先ほど橋口さんもいろいろ地域開発の問題等について御質問をなされておりますが、一番問題なのは、国際収支の改善の中において、ことしはたいへん苦しい見通しになる。これもあとで課徴金の問題のときに、その課題が出てくると思うのですが、その際、内部の問題として税制面あるいは金融面から特段の配慮をするということになっておる反面発展途上国に対する経済協力はますます重要となってくるということが、ここでしるされておるわけです。わが国のいわゆる海外協力特に経済協力についての、発展途上国に対する取り組みは、いまほど非常にクローズアップされてきた時期はないと思います。したがって、それが先ほどの国連貿易開発会議における一つの取り組みにもあらわれておると思うのでございますけれども、現実に経済企画庁としては、この経済協力に対して、いま何が一番必要かという点についてお考えになっておられるか、この際お聞きしておきたいと思います。   〔委員長退席、宇野委員長代理着席〕
  72. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 相手の国によって、みな一緒ではないと思いますが、一般論として申せば、やはりそのおのおのの国の経済を、基盤から築いていくことに協力をするということであると思います。それは多くの場合、まず食糧の増産ということから始めるのがほんとうではないかと思います。したがって極端な例を申しますと、たとえばホテルを建てるとか、いきなり大きなダムをつくってみるとかいうのは、本来本筋ではありませんで、どうやって農業基盤の整備をやるかということが、多くの国にとっては経済開発の一番の取っかかりでなければならないと思います。そういう意味では農業技術開発センターであるとか、あるいはかんがいであるとか、そういったようなものから出発するのが、これはよその国のことでありますから干渉がましいことを申すのではありませんが、私はそれがほんとうであると思います。その上に中小企業を立てていく、その上でさらにそれから上の資本の高度化をはかっていくというのがほんとうであって、国によってはその順序が、この十年近く見ておりますと、どうも手はずが少し間違っておるのではないかと思われる国もございます。やはり私は、根本は農業から経済をつくっていくという状態を必要とする国が非常に多いのではないか、発展途上国にはそれが非常に多いのではないかと思いますので、私ども経済協力の基本方向はやはりそういうところであろうと考えております。
  73. 佐野進

    ○佐野(進)委員 発展途上国に対する経済協力については、いわゆるOECDのほうでもそれぞれ勧告がなされ、特に発展途上国のそれに対する要望が非常に強いわけであります。しかし経済協力が実際の効果をあげていない。いわゆる金を投資して、投資した金がその地域住民の福利というか、あるいはまたその国の経済発展というか、そういう方面に非常に効果を上げるというより、その目的に反して浪費されておる、こういう点がいろいろな面でわれわれの耳にも非常に入っておるわけでございます。具体的にはインドネシア等における経済協力、これに対する効率は、政府のほうでは現在どのように判断しておるか、この際ひとつお聞かせを願っておきたいと思います。
  74. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 特定の国を批判いたしますことは差し控えなければならないと思います。一般的に申しまして、賠償から始まりまして、今日の経済協力に及ぶまで、わが国も相当な支出をいたしておりますけれども、国によりましては、それが必ずしも国力の増進あるいは国民全体の福祉のために有効に使われたようには思われないという国があるような感じがいたしております。
  75. 佐野進

    ○佐野(進)委員 だから、その有効に使われていないように思われる国の一つとしてインドネシアがたまたまよく爼上に上がっておるわけですけれども、これに対して日本が援助しておる、日本の国力相応で現在五・六%ですか、その程度の援助をしておる。その範囲の中において、インドネシアに対してどの程度の割合でこれを援助し、具体的にどの程度の効率をあげておるというように考えられるか。これはあなたのほうの専門だから、わからないというわけじゃないだろうと思うので、これは、あなたでなく、どなたでもけっこうだから、ひとつ答弁していただきたい。
  76. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 特定の国を批判をする意図は私どもございませんが、そういう前提のもとに計数について調整局長から申し上げます。
  77. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 いま、インドネシアに対します経済協力の全般的な数字についてはちょっと持ち合わせがございませんので、賠償担保借款、それから基金によりますところの投融資、それから輸銀によりますところの緊急援助、こういったものが全体でございます。その中で、いま企画庁が担当いたしておると申しますか、所管いたしております経済協力基金の面だけについて数字を持っておりますので、その面だけとりあえずお答え申し上げますと、経済協力基金は、現在まで全体を通じまして約七百三十八億円の承諾ベースの投融資をいたしておりますが、その中におきますインドネシアの比率は約一一%、八十三億円余りがインドネシアに対する案件の投融資でございます。
  78. 佐野進

    ○佐野(進)委員 ですから、八十三億円がどの程度効率的に利用されておるかということを聞きたいということなんです。
  79. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 経済協力基金で投融資いたしました案件は全体で約十四件ございますが、そのおもなものは、北スマトラにおきますところの石油開発、それからスラウエシ島におきますところのニッケル鉱山の開発、さらにはカリマンタン、もとのボルネオでございますが、カリマンタン地区におきますところの森林開発、こういったものがその主要な事業の内容でございます。  北スマトラ石油につきましては、御承知のようにプロダクション・シェアリング、PS方式と俗に言っておりますが、投融資いたしましたものにつきまして石油でもってその開発代金を支払ってくるということでございます。これは、現在までのところ、三十六年から事業を始めておりますが、着々と進行いたしておりまして、当初の計画どおりではございません、その計画内容は若干遅延をいたしておりますが、現に北スマトラの油田からの石油は日本にも参っております。ニッケルにつきましても同様でございまして、これまた三十八年からの開発計画でございますが、これも、すでにニッケル鉱石が日本の内地に参っております。ただ、カリマンタン地区におきます森林開発事業につきましては、現地資金の調達あるいは現地におきます労務者の作業訓練等に非常に手間どっておりまして、この事業につきましては、まだ完全にこれが軌道に乗ったという状況にはなっていないと承知をいたしております。
  80. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私の聞きたいのは、いわゆる開発基金で貸し付けた金が八十三億あるとするならば、それが効率的に利用されておるかどうか、全体的な投資があなたのほうでわからないというなら、せめてこの開発基金関係だけでも、それが有効に、返済その他利子の支払い、そういう面については滞りなく行なわれておるかどうかということを聞きたいのです。   〔宇野委員長代理退席、委員長着席〕
  81. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 いまの御質問の点でございますが、ただいま申し上げました約八十三億円は承諾額でございまして、そのうち、現在まで貸し付けあるいは投資の実行いたしました金額が四十五億七千万円でございます。年度別にずっとこれの償還計画が立っておるわけでございますが、現在までの回収額は約二億でございますので、まだ全体といたしましては回収するという段階にまで入っておりません。  実際効率的に行なわれたかどうかということでございますが、ただいま申し上げましたように、石油あるいはニッケルの開発につきましては、私どもとしては、まだ十分とは申せませんが、ほぼ所期の計画に沿いながら行なわれておる。この面では、いずれにいたしましても、日本にとりましては緊要な物資でございますから、きわめて有効な投資ないしは融資であったと思っております。  森林開発、この点はまだ緒についたばかりでございまして、先ほど申し上げましたように林区の設定が行なわれ、そこに関係の労務者左集め、その訓練をし、機材を持ち込むという段階でございまして、まだこれが十分行なわれておるとは思っておりません。承諾年月日にいたしましても、東カリマンタンのほうは比較的早くて三十八年でございますが、中カリマンタンあるいは南カリマンタン、こういうところは四十一年度から始まったものでございます。まだ緒についたばかりでございます。しかし、木材の関係につきましては、御案内のように日本におきましてもいま需給が相当逼迫いたしておるような状況でありますので、私どもといたしましては、鋭意これが計画達成を推進したい、かように考えておる次第でございます。
  82. 佐野進

    ○佐野(進)委員 経済協力の問題については、あとでそれぞれ海外経済協力基金の業務範囲の拡大をはかるというところでおそらく議論しなければならないと思いますから、私はこの程度でやめておきたいと思いますが、経済協力という名のもとにOECDの要請に基づいて、日本が先進国の一員として、先進国と称される範囲の中に入って経済協力をやるわけですから、そのやるということについて、ともかく内容について、私も検討した段階の中においては相当問題があるようにいま感ぜられておるわけです。したがって、この問題についてはもっと突っ込んだ議論をしたいと思いますが、きょうはその程度でやめておきたいと思います。  その次に、国民生活行政の推進の中でお伺いをしておきたいと思うのです。  宮澤経済企画庁長官は、この消費者物価の説明には、きわめて巧妙というか、きわめてうまく説明をしておるようでありますが、本年度の物価上昇が消費者物価で四・五%の範囲でとどまる、来年度は四・八%程度の上昇にとどめたい、こういうように言っておられるわけですが、消費者物価といういわゆる内閣の発表するその範囲の中に、国民生活に最も密着する部面というもの、たとえば具体的に言うならば、魚屋さんとか八百屋さんとかあるいは床屋さんとか、そういうようなものを、範囲を狭くして国民の日常生活に密着する消費者物価というものにしぼった場合、ことしの上昇率が四・五%だ、こういうぐあいにあなたのほうでは言い切れますかどうか、この際聞いておきたいと思うのです。
  83. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは総理府統計局で調査いたします消費者物価指数がどういうものを含んでおるかというお尋ねに結局帰着すると思いますが、これは御承知かと思いますが、ただいまの消費者物価指数は昭和四十年をベースにいたしておりまして、五年ごとにベースをかえておるわけでございますが、そこで昭和四十年のある時点で、総理府統計局が全国の標準となるべき世帯、数千を現実に調査をいたしまして、そのときのバスケットに入っております。いわゆるマーケットバスケットになるわけでございますが、現実の支出項目を一つ一つ全部調べたわけでございます。そしてその後それらの品目が毎月、大体月の十二日ごろでございますが、を中心に何日間かでどういう動きをしたかということを、一つ一つの品目について全国の商店を調べまして、そしてそれを集計いたしましたものが消費者物価指数になっておるわけであります。したがって、言えますことは、昭和四十年の標準世帯の現実の生計を基礎としているということ、それから支出されるものの金額に従ってウエートがついておるということ、非常にウエートの小さいものはしたがって除外されるという場合があること等々のことはございますけれども、まず、いまから二年前の標準の生活世帯が実際に支出したものについて、その後の足取りを毎月たどっておるわけでございますので、まあこれは考え得る消費者物価指数としては一番よくできておる、行政でなし得る限りの完全に近いものであろう、こう私は思っております。
  84. 佐野進

    ○佐野(進)委員 したがって、総理府の統計局で統計をとる上に消費者のいろいろな物資を対象として出したわけですね。その中で、私の聞きたいのは、国民生活に最も密着する——これは消費者物価ですから、密着しないものはないと言えばそれまでですけれども、日常生活に欠くことのでき得ない物資を幅を狭めて、たとえば全体の総合的なもののうちの三分の一なら三分の一というように限定した場合においても、四・五%でとどめ得ることができるのかどうかという点について、それはここじゃ出ませんよというなら別だけれども、この際聞いておかないと、国民は、あなたの言われる、四十年のときのマーケットバスケット方式に基づいたものの値段を基準にして四十一年から四十二年にかけては四・五%だといっても、実際上の感じとしては四・五%にとどまっているようには感ぜられないわけです。したがって、そういう点について、最も国民生活に密着したという、幅の狭い範囲内においてどの程度になるのかという点をこの際お聞かせ願いたいと思います。
  85. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはやや分類をして申し上げればいいということになると思いますが、大きく分類いたしまして食糧、住居費、光熱費、被服費、その他雑費というようなことになるかと思います。それで、四十二年度はまだ完結いたしておりませんので、二月、三月を多少推定で申し上げて、そうして四・五をどういうふうな考えでおるかと申しますと、主食、これは米等々でありますが、これが一応五%ないし六%、それから生鮮魚介が一割三、四分になるのではないかと思っております。野菜がおそらくやはり一割四、五分ではないか、こう思います。住居費は五%足らず、光熱費はおそらく、持ち合いかあるいは多少マイナスになるかもしれないと思います。被服、雑費等がおそらく三%内外、分類いたしますと大体そのぐらいではないかというベースの上で、ただいま四・五%を考えております。
  86. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、そういうような分類で、四・五%は、本年度内においてはこれらのものを含めて押えることができる、その基準の上で来年度は四・八%程度にとどめ得る、先ほど来いろいろお話のある輸入課徴金をはじめ輸出の問題その他を含めても四・八%にとどめ得る、こういうように判断しておるということですか。
  87. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実際の計算といたしましては、これらのものの値動きを推測することが実は非常にむずかしゅうございますので、積み上げた計算ではなくてマクロで計算をしておるということになると思いますが、たとえば、その中で、これはしばしば御議論のありますように、主食のうちで米は私ども一応いまの段階で横ばい、消費者米価の変更なしというふうに見ております。それから被服とか、ことに雑費でありますが、雑費などについては、あるいは光熱費などもそうでありますが、いままでのトレンドというものをそのまま受け継いでいくというような考え方をいたしております。あと、野菜、くだものなどにつきましては五%とか、私どもはいま大体従来の経験法則考えてはおりますけれども、答えは、それらのものの積み上げと申しますよりは、現実に四・八を出しましたときには、四十二年度から四十三年度に持ち越すところのいわゆる床の上がっておる部分が相当高いわけで、これが三・四ぐらいあるのではないかと考えておりますから、そうすると、年度内の動きは一・四ぐらいの動きになる、そういうことを大数的に考えておると申し上げたほうが実は正確でございまして、一つずつのものを積み上げた計算というものはできないものでございますから、やっておりません。
  88. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は、国民が、政府の言うように四・五%でおさまるとかあるいは四・八%で物価の上昇はおさめ得るのだ、こういうことを説明しても、生活の実態の中から、毎日買わなければならない野菜であるとかあるいは魚であるとか、さらに米の値段というのは、去年は御承知のように一四・四%も上がっておる、こういうような形で、ことしも当然上がるということは大蔵大臣が証明しておるということになれば、こういう日常生活に最も密着するそういう消費物価の値上げ率というものは、四・五%あるいは四・八%という表現に対しては、きわめて感じが密着しない、そういうように感ぜざるを得ないわけです。したがって、政府国民生活行政を推進する、経済企画庁が特に物価問題の観点からこれらの面に取り組もうとする場合には、ことしの取り組みもそうですか、これは通産省もそうですけれども政府のほう——政府というか企画庁のほうも特にそうですか、消費者行政あるいは国民生活向上のための施策というものに対する予算上というかそういう面における取り組みは、きわめて弱いというかおざなりというか、そういうような気がするわけですが、特に消費者物価の中における生鮮食料品関係、そういうような問題に対する流通機構の改善あるいはその他の面について、どうしてもっと予算措置が講ぜられないのか、そういうことにどうして経済企画庁としては積極的に取り組もうとしないのか、そういう点についてひとつお答えを願いたいと思います。
  89. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その前段の点でございますが、確かに家庭の主婦の実感というものと消費者物価指数があらわすものとは何か違っておるという感じ方には、多少理由がございます。つまり、たとえば野菜なんというものはほとんど毎日主婦が買いますので、これが上がっていくと、それが消費者物価全体四・五なんというものではとてもないという感じを主婦は持つわけでありますが、そこでさっき申し上げましたマーケットバスケットに戻りますと、全体を一万といたしまして、野菜の持っておるウエートが三百余りでございます。ですから、この三百余りのものがかりに一五%上がりましても、消費者物価全体に持っておりますウエートが小そうございますので、その全部が消費者物価になるわけではございません。これに反して、たとえば雑費と申しますと、教養娯楽費であるとか衛生費であるとかいうようなものを含みますが、このウエートは三千ぐらいございます。しかし、そうしばしば、毎日支出をするものではございません。ですから、毎日支出をするものを、これをウエートのいかんでなく頻度によって感じてしまうということが確かにあると思いますが、これはやはり消費者物価というものをたてまえにいたします限り、ウエートの問題というものを実は忘れるわけにまいりませんで、統計局が間違いを言っておるわけではなくて、それは多少その点に、主婦のほうの感じ方と統計とが、全体が一万であるというようなことから、そういう問題が出ておるのだと思います。  それから生鮮食料品についてでありますが、このごろは指定産地制度というものがかなりはっきりできてまいりましたし、また、貯蔵、加工というようなものもいっときよりは進んでおりますので、大きな傾向としては、少しずつ需給関係が安定してくると思います。もちろん季節商品でありますから、フラクチュエーションは免れませんけれども、数年前に比べますと、かなりその施策は進んできたと思いますが、ことに流通関係につきましては、この四十三年度、ただいま御審議願っております予算では、国民金融公庫と中小企業金融金庫と、それから農林漁業金融公庫とかなり思い切って流通面に、それも小さい流通面に融資をすることにしていただく、こういうことで財投も考えておりますので、流通面について初めて施策らしい施策が四十三年度にできるのではないか、こう考えております。これはかなり画期的な施策になるのではないかと思っております。
  90. 佐野進

    ○佐野(進)委員 その流通面における施策としてかなり思い切ったことがやれる、こういうような御説明なんですが、私ども、経企庁関係をはじめ通産省関係の消費者行政に対する予算上の措置というようなことについて、特に生鮮食料品に関連する問題については、税制の面あるいは金融の面、さらには機構、設備の面、特にいわゆる一割ないし一割何分にも及ぶといわれる上昇率を示しておるこれらのものに対する対策としてはきわめて弱い、こういうことが強く感ぜられるわけなののです。特に市場関係を有する業界については、そういう点が感ぜられるわけなんですが、これらの点についても本年度政府としての施策としてはきわめておざなりというか、そういうような感じがするわけなんですが、これらの点についていまお話がありましたので、どういうように画期的な点があるのか、どう考えるのかという点をひとつ聞かしていただきたい。
  91. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昭和四十三年度におきましては、農林漁業金融公庫から市場関係の貸し付け、特別のワクで三十億円、それから国民金融公庫から小売り関係の貸し付けで百三十億円、そのほかに流通近代化の貸し付けとして中小公庫が二十億円、国民金融公庫が十億円、これはいままでほとんどなかったことでございますので、かなりの改善が行なわれると見ております。
  92. 佐野進

    ○佐野(進)委員 いや、だけれども、これはいわゆる国民金融公庫関係から出る資金ですが、環衛公庫に対応すると、環衛公庫のほうは三百億以上という金額になって、前年度をプラスすればさらに多くの金額になるわけです。さらにこれに対して出資金というか交付金というか、そういうようなものが加わるわけですから、国民一般の、いわゆる環衛公庫に関係する業種に対応して生鮮食料品のほうの業界としてはその融資金がきわめて少ないと思うのです。百三十億ないし三十億ということでそれを全国にそれぞれ措置したとしても、これはそうたいした金額ではないし、特にこれらの金額はいわゆる直接店舗を持つそういうような人たちを対象にして融資をするわけです。しかし、中央市場ないしいわゆる流通機構の根幹に触れるそういうような方面における施策というものがなければ、これらの物価の引き下げという本来の目的に合致するわけにいかないのではないか、そういうように考えるわけですが、そういう点をどのように措置したか、措置する考えであるかという点をお聞きしておきたいと思います。
  93. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはただいまやや意識的に市場のことは申し上げなかったのでありますけれども、中央卸売市場、地方卸売市場の整備のための予算は、これは相当実は大きいわけでありまして、中央卸売市場の整備は十三億ほどであります。それから公設市場の整備が一億二千万でございますが、これは財投ではございませんで、予算そのものの支出でございます。
  94. 佐野進

    ○佐野(進)委員 国民生活行政の推進の面については、経済企画庁長官が公共料金の値上げ、その他物価の値上げということについては非常に抵抗を示しておるという点で、国民も大いに期待をしておるわけですが、しかし現実の面から見ると、なかなか、佐藤内閣の本質がそこにあるせいかどうかわかりませんが、思うような物価の抑制、特に公共料金の抑制ということがむずかしい状況になって、きのうの本会議においても示されたように、たばこの値上げ、酒の値上げをはじめ、いろいろな値上げ案が国会にも上程されようとしておるわけです。したがって、そういう部面からすると、いわゆる中央卸売市場等、これは私は足りないと思うのですよ、十三億にしても。現実に中央卸売市場関係意見を聞いても足りないと思うのですが、そういう施策を講ずる反面、国民生活の向上充実のためにいま少しく何か公共料金の値上げに対する措置その他ないものかどうか。私どもとしては非常に苦慮しているわけですが、佐藤内閣の中における経済企画庁長官として、物価抑制に対するこの際何か具体的な考えがあればひとつお示しを願いたいと思います。
  95. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは流通機構の問題もございますし、また交通関係のこともございます。それらについて政府もできるだけの支援をするということではございますけれども、やはり私は、中心は米であるというふうに考えております。四十二年度の場合もそうでございましたし、過去でもそうでございますから、この今年度四十三年度の消費者米価がどう形成されるということが、やはりこの物価問題にとっては最大の眼目であろう、こう思っております。
  96. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それでは、この商工委員会における経済企画庁長官のあいさつということについては、一応質問を終わりたいと思います。
  97. 小峯柳多

    小峯委員長 堀昌雄君。
  98. 堀昌雄

    ○堀委員 実は本日の委員会の運営については、当初通産大臣は一時半から二時半まで欠席だということでありましたけれども、現在三時十五分になっても依然として通産大臣が出席できない。これでは委員会の運営、質問に非常に困るわけでありまして、途中で佐野君がいま質問に立っておられたわけですが、予定を過ぎること四十五分もたっても依然として通産大臣は入らないということでありますから、通産大臣が入られるまでちょっと……。私、あとは通産大臣と一緒でなければ実はきょうの論議は成り立ちませんので、企画庁に関する部分についてだけひとつ最初にお伺いをいたしておきたいと思います。  私、今度商工委員会に参りまして、きょう初めて一般質問で伺うことになるわけでありますが、企画庁の問題については、これまで大蔵委員会でもしばしば論議をさしていただきましたが、この一月の貿易収支の問題でございますけれども、一月の現在速報で出ておる。ところの輸出入の状態をちょっと最初にお答えをいただきたいと思います。
  99. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでは調整局長から……。
  100. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 一月はまだ速報でございますが、IMF方式によりますところの数字を申し上げます。  まず貿易収支でございます。輸出が六億四千五百万ドル、輸入が七億八千九百万ドル、その差額でございます貿易収支の小計がマイナス一億四千四百万ドルでございます。貿易外収支がマイナス一億一千七百万ドル、移転収支がマイナス千百万ドル、これを通計いたしました経常収支はマイナス二億七千二百万ドルでございます。このほか長期資本収支がマイナス五千四百万ドル、短期資本収支は三千三百万ドル黒でございます。誤差脱漏千百万ドルの黒ということで、総合収支マイナス二億八千二百万ドルでございます。
  101. 堀昌雄

    ○堀委員 実はいまお話しのように、経常収支の赤字が二億七千二百万ドル、総合収支は二億八千二百万ドル、かなり赤字が依然として計上されておるわけですが、私はちょっと得心がいきませんのは、これが季節調整をやりますと、とたんに大幅な黒字になるという問題です。なるほど一月は過去におきましても入超月でございますから、季節調整の指数というもので修正すると多少変わってくるというのはわかるのですけれども、いま貿易収支が一億四千四百万ドルの赤字であるのが、これに季節調整をやると一億五千四百万ドルの黒字になる、こういうことなんです。通関のほうで見ると、輸入が十億七百万ドル、輸出が六億六千百万ドルで、この通関で見ると輸入との差は三億四千六百万ドルもある。ところが、季節調整をやると、これがとたんに一億五千四百万ドルの黒字になるというのは、これはいろいろ指数のとり方があるのでしょうが、これを土台にして、季節調整済みはこれだから貿易収支はやや好転しておるんだという話になると、これは統計上の問題から見てもちょっと問題があるような気がするのです。企画庁長官に伺いたいのは、この一月の季節調整のやり方というのがいまのままでいいのかどうか、判断を誤るもとになりはしないか、こういう感じがするのですが、その点はいかがでございましょう。
  102. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに季節調整をいたしますと、ただいま仰せられたような数字になります。そこで、この季節調整の計算そのものはむろん間違っておらないわけでございますし、季節調整のベースはときどきやはり変わってくるわけでございますが、どう申しますか、季節調整ということそのことが、非常に変化していく日本経済をどれほど正確に反映しているかということには、確かに問題があるであろうと思います。さりとて、しかし、これにかわる方法というのは何かということになりますと、どうもほかにうまい方法がございませんから、やはりその数字をたよるしかない。一月の調整指数としてはこれでいいわけでございます。従来から申しますといいわけでございますが、季節調整そのものがこういう変化が大きい経済ではやはり絶対に確実なものであるというふうに見ないほうがいい。そこには多少の疑問を持ちながら見ておったほうがいいという感じは、私もいたします。
  103. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私、いまは確かに原指数でなくていろいろなものを見ますときに、季節調整後の指数で一応見ているわけでありますが、いまの季節調整の指数をつくるつくり方ですね。ここに私は、景気が上り坂になるとき下り坂になるとき、そういういろいろな情勢に応じてやはりファクターのとり方が変わってくるんじゃないだろうかと思う。ですから、そういう意味では、私は原指数がずっと並んで出ているほうが、あるいは全体を見たほうが、見る人の判断によると思いますけれども、季節調整ということは、一つのレールによって出してしまうものだから、判断の余地は入らないわけですね。いまちょっと季節調整をされた土台が私もよくわかりませんし、こういうところであまりこまかい議論をすることはどうかと思いますから、きょうは差し控えて、また適当な機会に伺うようにいたしたいと思います。ですから、たとえばいま私がちょっと申し上げた通関の実情がずっと毎年、過去三年なり五年なりのものがこうあるとすれば、そうすると、ここは上り坂、ここは下り坂、ここは上り坂というものをにらみながらものを見れば、それは見る人の判断に多少よりますけれども、判断しやすいと思うのですが、いまはすっと季節調整だけが出てしまうというところにやや——私はこれに多少比重がかかると、案外実はそうではなかったのではないかということがあると思う。国際収支状況というのは、今後日本経済をどうコントロールするかというので、一つの一番重要なものさしですから、その点は私はちょっと再検討が必要なのではないだろうかという感じがしておるわけです。ただそれはレールというよりも、もののとり方のところに多少修正が入るか何かする余地がないのかどうかというふうに感じておるわけですが、その点は長官いかがでしょう。
  104. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は季節調整の指数は、過去七年でございますか、八年でございますかをとっておりますから、一年ごとに少しずつ変わってまいります。それで、つい最近も変わりまして、たいした違いじゃございませんけれども日本銀行の新しい季節調整の指数でやっております。過去の八年間だそうでございます。  季節性というものがあるということはおそらく事実でありましょうと思いますが、貿易なんかの場合には日本だけの季節性ではないのであって、世界各国の季節性がここに入ってくると思います。それで季節性というものを三年間でとったらいいか、八年間、長いほうがいいのか、あるいはむしろそうでないほうがいいのかということは、日本なんかの経済ではやはりかなり問題があるかもしれません。世界全体として見れば、おそらくまあまあ長いほうがいいということになるのでありましょうが、私も季節調整がこうだからそれをそのままうのみにしていいというような感じは実は自分自身で持っておりませんで、その点堀委員のおっしゃることは、やはり注意して数字を見ていかなければいけないと思っております。
  105. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、あとのことが先になってしまうわけですが、実は昨日も例のサーチャージの問題で参考人の方に委員会に来ていただいていろいろやりました中で、要するに、産業界、貿易商社のほうでは五%くらいの課徴金になれば大体二億二千万ドルくらい貿易収支が変わるだろう、こういう話が昨日ございました。これはいろいろな見方もありましょうから、通産大臣いらっしゃってないわけですが、長官が、そういう所管大臣ということでなくて、まあ経済的な常識の判断といいますか、それでお感じになったらいかがでしょうか。私は私なりの判断で申し上げるつもりですが、先にちょっと長官の感触として、もしかりに五%のサーチャージが行なわれるということになったらどうなるかということをひとつ承りたい。
  106. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは逃げるわけではございませんのですが、実際はっきりとしたことは申し上げられないと思います。と申しますのは、たとえばおそらくは低開発国からの輸入を、国によりますか品目によりますかははっきりいたしませんが、どういった形かで優遇するというようなことをいたすと思うのでございます。そういたしますと、そのものの選び方によってわが国輸出するものがそっちに早く入るか入らないかということが出てくると思いますので、確実に入るというものもあるように思いますが、どうもそうでないものもあるように思いますから、何とも申し上げにくいと申し上げるよりほかないと思います。
  107. 堀昌雄

    ○堀委員 もちろんそうだと思います。ただ、まあ私は感触として見ると、大体一億ドル内外というのはおそらく起こるだろう。そこから先、誤差があると思います。その誤差は、一億ドルからもう少し大きい誤差がその上にあるだろうと思いますから、非常に——しかし少なく見ても一億ドル少し切れるか、まあ一億ドル内外というのが下限じゃないだろうか。上限がどうなるかわかりませんが、一億ドル内外の誤差があるだろうから、上限が二億ドルから少しこえるだろうが、そこらの間に入るんじゃないか。そういうことになると、一番かたい下限を見て、これが大体七月以降後半で起こってくるとすると、いま経済見通し三億五千万ドルの赤字というのを出しているわけですね。そこへかたく見て一億ドル、これはアメリカだけの問題ではなくて、それに対してEECなり後進国なりがいろいろな処置をしたもののはね返りを含めての話でありますから、国際収支の面、貿易収支の面として一億ドルぐらいのところはやはり起こってくるんじゃないか。そうすると、国際収支が、三億五千万ドルで計算された現在の見通しは、四億五千万ドルの赤字ということになってくるんじゃないだろうか。そうすると、その四億五千万ドル、ここで一億ドル違いということは、私はどうもここいらで経済見通しの再改定をすみやかにやらなければならぬ条件が、これは向こうがきめたところでやらなければ無理ですから、きめたら、ちょっと見通し改定をやる必要が出てくるんじゃないだろうか。なぜかというと、いまの経済見通しというのは、国際収支にポイントを置いてここからはじかれている経済見通しですから、問題は、一億ドル動くということは、それがきまったときには当然経済見通しのすみやかな改定を行なうという必要があると思いますが、宮澤さん、その点はいかがでしょうか。
  108. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはもう堀委員はよく御承知でいらっしゃいますので、その上で実は申し上げることでございますが、この経済見通し国際収支見通しの中でも、実は資本収支の部分はかなり弾力性が本来ございます。短期はもちろんでございますが、長期についてもかなり弾力性がございますので、それでいまの時点だけで申しますと、資本流入がどうも私ども考えておったよりは多少多いように思います。これはいいことであるかないかは別といたしまして、そういう要素がございますので、課徴金の影響を私は相当深刻に考えてはおりますが、さりとて、いま申したような資本取引、資本収支のファクターもございますので、まず三億五千万ドルというものを動かさなければならないというふうには、ただいまの段階では思っておりません。影響がないのはおかしいではないかとおっしゃるのはそのとおりでございますけれども国際収支全体としてはいまのようなことを感じております。
  109. 堀昌雄

    ○堀委員 あとでまたもう一ぺんやりますが、ちょっといま締めくくりだけやる意味で、いまおっしゃった確かに資本収支はいいわけですが、資本収支がいいということは、少なくとも現状の、要するに貿易収支という前提で資本収支はあると思うのですね。この間から盛んに問題になっております円の切り下げの問題等も、もしこれから貿易収支が改善をされていかないということがかなりはっきり見通しに立ってきた場合、はたして依然としていまのような資本収支の状態が続くかどうかというと、私は続かないと思いますね。それは急速に資本収支は悪くなってくる。要するに貿易収支が非常に悪いということがわかってくれば、外貨準備が非常に少ない日本の場合に、これはそうみな安心してユーロダラーが入ってくるというふうには私は甘くは考えられないし、インパクトローンにしても何にしても、かなりむずかしい条件が出てくるのではないか。ですから私は何としてもここでは、いまおっしゃる資本収支、それが一億ドルも——今後うまくいくかどうかそれはわかりません。わかりませんが、やはり私はこの問題に端を発して相当はね返りをよこすんじゃないか。そういう心配がありますのは、私は特に今度のこの経済見通しがやや甘いのではないかという感触を実は持っておるわけです。昨日もちょっと触れたわけでありますけれども昭和三十七年という年はことしと非常によく似た情勢であったわけです。そうして皆さんのほうの経済運営の何々というやつをお出しになったのを読んでみますと、ことしのとまことによく似たことばがずらっと出ているわけです。非常によく似た年ですが、そのときの見通しは、名目が五・四%、実質が五・四%ということであったわけです。その次に三十九年にもう一ぺん引き締めなければならぬことが起こってまいりました。このときは名目が九・七、実質七・〇という見通しで実は見通しが組まれたわけです。この二つのときに比べて、今度は名目一二・一%、実質が七・六%と、かなり高いんですね。この三回の引き締めの中では今回がGNPとしては実は一番高い見通しになっているわけです。反面、要するに輸出入の諸条件というものが前二回に比べて非常にいいのかというと、私はそういう判断をいたしておりません。ことしの国際的環境というのは非常に動く要素がたくさんあって、現在OECDが出しておりますところの世界の輸入の増加率というものも、これはポンド・ショック後に出て改訂されたものでありますけれども、これはアメリカ輸入課徴金あるいはそれに端を発して各種の各国におけるそれなりの措置が生じてきた場合には、世界の輸入の伸びというのは、いまOECDが出しているようなものではなくなってくるのじゃないだろうか。客観的なそういう情勢というのは、これは前二回の引き締めに比べて決して楽観を許さない情勢に私はあると思います。にもかかわらず、実は成長率は前回に比べても名目で約二・四%違う、実質で〇・六%違うということになっておる点は、私は少しことしの見通しはゆるきに過ぎるのではないだろうか、こういう感じがしておるわけですが、その点についての企画庁長官のひとつ……。
  110. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう御指摘の意味は私はよくわかるような気がいたします。もう少しこの成長率を低く出すべきではなかったかということではないかと思いますが、そういうわけにまいりませんでした。いろいろ計算をしてみましたが、どうしても最低限度このくらいのものが出るというような計算になりまして、人為的にそれをもう少し下に押えておくということは、私は自分でいたしたくなかったので、いたさなかったわけでございます。もうちょっと低いほうが、ほんとうはこの引き締めのときには、いわゆるアナウンスメント・エフェクトはいいのでありますけれども、どうも計算でそういうことが出てまいりませんでした。それでそのまま正直にそれを出したわけであります。  それから輸出の一五%につきましては、確かに二以上の弾性値を考えておるわけでありますけれども、これはまあ世界貿易が六%ないし七%伸びるということを前提にして、二・二とか二・三とかということになりますが、こういうときにはそんなに絶対無理だというような数字ではない、こう思って一五%というものを出しておるわけであります。
  111. 小峯柳多

    小峯委員長 佐野進君。
  112. 佐野進

    ○佐野(進)委員 通産大臣が約束の時間よりおくれて来たものだから、さっき苦労して経済企画庁長官に質問を続けたわけですが、話の続きということになるわけですけれども通産大臣質問をしたいと思います。  きのうからこの委員会では、輸入課徴金の問題について非常に重大な問題として取り上げて議論しておるわけですが、先ほど橋口さんの質問に対して大臣の答えておることが、私にはたいへんどうも不満足な答弁なので、そういう点について若干質問をしてみたいと思います。  大臣は先ほどの答弁で敵があらわれぬ前に対策は立てられない、こういう表現で、まだどうともこうともはっきりしない問題だというような表現をされておるようです。しかしこの問題については、本年一月元日におけるアメリカジョンソン大統領ドル防衛対策のその内容においても、さらにロストウ特使が日本に来て佐藤総理に会っていかれた経緯についても、あるいはその後各政府機関、さらにはまた産業界、関連輸出関係の商社、貿易関係の商社の方々が非常に深い憂慮と関心とを持ってこの問題に取り組みをしておる。ここ四、五日来の新聞におけるそれぞれの論調を見るにしても、この問題は既定の事実として、当然来たるべきものとして考えて、具体的な対策を立てておる、こういうぐあいにわれわれは解釈しておったわけですが、先ほど大臣は、それについては敵があらわれない前に対策は立てられないというようなきわめてばかにしたようなというか、何か問題をはぐらかすような答弁をしておるわけです。敵があらわれないという認識は一体どこにあるのか、この点をひとつはっきり、簡単でいいから答弁してください。
  113. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 どうも措辞明確を欠くきらいがございました。結局、課徴金の実態がまだはっきりいたしません。それで、具体的にこれでいくということがきまらぬ。あらゆる場合を想定して研究はしておりますけれども、それはこの段階では、こういう場合にはこの手でいく、ああいう場合にはあの手でいくということを公の場合に発表すべきではないような気もいたします。事柄がきわめて重要であればあるほど、あらゆる場合を想定して慎重に考究しておる、こういう状況でございます。
  114. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、われわれの得ておる情報によれば、アメリカ政府EECの動向によってこの問題について最後の態度をきめるのだ。そのEECの閣僚理事会においては、すでに具体的にドル防衛に対して対応策を立てつつある。したがって、それがきのうかきょうかという段階に置かれておるというような形からすれば、大臣政府の最高責任者の一人として、こういう事実が単なる外国におけるできごとにすぎず、日本の国の政府としては、こういう問題については何らわずらわされないで、アメリカを信頼して対策を立てていくんだ、こういう認識でおるのかどうか、この点をひとつお尋ねしたいと思います。
  115. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この問題に関しては、アメリカを信頼するなんていうことは考えておりません。いよいよやるとなれば、これはもう相当こすからい、そろばんづくでやってくるにちがいない。
  116. 佐野進

    ○佐野(進)委員 アメリカはこすからいか、こすからくないかはわからないけれども、少なくとも議会筋の意向としては、特に下院のミルズ歳入委員長中心とした、かねて保護貿易を推進しようとする人たちにとっては、増税案に対する対応策としてどうしても課徴金の問題を解決しなければ国内の政治を円滑に運営していくことはできない、もっと端的に言うならば、ベトナム戦争を遂行することすら不可能である、したがって、こういう問題については不退転の決意を持ってやるのだ、ということをある新聞は報じておりますけれども、そういう点について大臣は、いわゆるこすからいという表現で、どの程度やるのかまだわからないという形の中で、手をこまねいておられるのかどうか。このことを、あとの具体的な質問をする前提としてひとつお聞かせ願いたいと思います。
  117. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先ほど申し上げたように、あらゆる場合を想定して研究をしております。
  118. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、非公式な通告というのが具体的にあるわけですね。アメリカにおける日本大使館を通じて非公式な通告があった、こういうことをいわれておりますが、非公式な通告はいつあったのか、その内容はどのようなものか。
  119. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 非公式な通告は全然ございません。情報だけです。
  120. 佐野進

    ○佐野(進)委員 その情報は、どこから入ったのか。
  121. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 情報ですから、いろいろなルートからくるわけですが、そのうちで、アメリカ大使館筋からきた情報が一番信憑性があると思われますが、これは、やはり情報です。四%から六%の間できまるのじゃないかという情報です。
  122. 佐野進

    ○佐野(進)委員 在アメリカ日本大使館からそういう情報がきたということを聞いておるのですが、そういうことはございませんか。
  123. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 間違いました。アメリカにある日本大使館からの情報であります。
  124. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それに対して、アメリカ日本大使館からもそれと同じような、いま言われたような情報があったわけですね。四%から六%というのは、在日アメリカ大使館からそういうような情報があったというように解釈していいのですね。
  125. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 間違いました。在日アメリカ大使館ではなくて、在米日本大使館であります。
  126. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうですか。そういう非公式な情報、非公式な通告でなくて情報が入ったということは、情報で受けとめるのか通告で受けとめるのか、あるいはその情報がどこからきたのか、ぼやっとしているからはっきり言えないのだというような答弁になろうかと思うのですが、これはしかしあくまでも既成の事実として認識しなければならない情報だと思う。いわゆるアメリカドル防衛対策の概要が発表せられたとき、非関税障壁にどのようにして対応するかという形の中でいろいろ対策が立てられた。その一環として、輸入課徴金なり国境税調整なり、いろいろな方針をアメリカ側が立てた。その結論として輸入課徴金をつくるんだ、それによってドルを防衛するんだ、とこういうことになっていったと思うのです。明らかに非関税障壁をなくするんだということであるとするならば、それに対応するEEC諸国に対する対策ということになってくれば、EEC諸国の意向というものがアメリカにとってはきわめて重要なものであるということは当然であり、したがって、その当然な結果として、EECの閣僚会議ないしその他の対ヨーロッパにおけるところの諸情勢をアメリカが一番注意しておるというのも、それはけだし的を射たことだと思うのです。それならば、こういうようなことについては直接関係のない日本が、これによって、先ほど大臣は、受ける被害というものは五億ドルにものぼるんではないかというようなことを答弁されておったと思うのですが、いわゆるEEC諸国に対する対応策に基づいて日本が五億ドルに近い被害を受けなければならないという、それは大臣としてはどう解釈されますか。
  127. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私はそういうことを発言した覚えはございませんが、なお速記録を調べてみますが、五億ドルというのは、全世界に対してアメリカが五億ドルの国際収支改善をねらっているということが明らかにされております。そのうち日本がかぶるべきものは、そう大部分だとかなんとかいうことは考えられぬというような趣旨の発言はいたしたつもりでございます。
  128. 佐野進

    ○佐野(進)委員 しかし、アメリカの五億ドルというのは、アメリカがこれによって得ようというものが五億ドルであうかとも思うのですけれども、実際上におけるところのドル防衛に対する金額は約三十億と称せられ、その中で、一月一日のジョンソン大統領の決定した声明に基づいてロストウ日本に来たとき、いわゆる五億ドルを日本の協力において防衛したいんだというようなことをいわれておったと思うのですが、その点は事実かどうか。
  129. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それはございません。
  130. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、日本ドル防衛に対し協力をしようとする姿勢あるいはまた協力をしないのかわかりませんが、ともかくロストウ日本に来て、佐藤総理と会って帰ったとき、あるいは帰る過程の中で、日本もそれを理解してくれたと感じて帰られたような節があるわけですが、その防衛に対する具体的な協力の内容、協力を要請せられた内容、あるいはそれに対する日本政府態度、それは一体どこにあるのか。
  131. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 あれは、アメリカ国際収支改善の全般に関してよく日本政府に、直接当路者に会って説明をするということでロストウが来たようでございます。そして、ここを済ましてから豪州のほうに回って、そしてあと帰ったようであります。特に友好国に直接話をして、そして協力してもらう、そういう意味であったろうと思います。そのときに、初めて課徴金制度ということがロストウの口から出たのでございますけれども、はたしてこれを全面的に、ヨーロッパのボーダータックスというものに端を発したこの話が、今度はもう何らそういう非関税障害なんか設けてない国、それにも一様に網をかぶせるんだというようなことは、どこからもそういう示唆がなかったし、そういうふうに解釈してなかったのに、場合によってはどうも相当ひっかぶるんじゃないかというような疑いがそのときから出てまいったわけでございます。しかし従来のいきさつから見て、まさか同じような程度に網をかぶせるということにはならぬだろうくらいに、どう考えてもそういうふうに思われるようでございましたので、さらにその点は在米大使館等にも外務省を通じて聞き合わせたり、いろいろ探っておったわけでありますが、最近になってそれがどうも一様にかかってくるというように感ぜられてきたわけでございます。
  132. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、具体的に五億ドルのドル防衛日本が分担する、あるいはまたドル防衛に対して具体的に日本ロストウ特使あるいはアメリカジョンソン大統領に対する協力をしなければならない、そういうような取りきめはないというように理解していいですね。
  133. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これはしばしば申し上げているように、アメリカのドルであると同時にこれは世界の通貨であるドルである。そして日本も国際貿易に非常な意欲を持って参加しておるわけでございますから、やはりアメリカとその点においては共通の利害関係に立つわけですが、しかしそれには限度がある。そういうことだけは必ず忘れないようにつけ加えておるわけでございます。でありますから、今度の限度を越えたような措置については、何ら協力するというような言質は与えておるわけじゃございません。
  134. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、先ほどの質問に対する答弁もございますが、アメリカに要請に行く諸団体があれば、できるだけ支援する、こういうような、私どもから見ればきわめて手ぬるい表現で意思を大臣が発表されておりますが、そういう具体的なアメリカ政府との約束もなく、しかもこのことによって国際収支の赤字が非常に大きくなり、産業界をはじめあらゆる方面に重大な影響を与えようとしつつあるこの課徴金問題に対して、いま直ちに政府の責任ある代表ないし国会はじめその他のいわゆる日本政治を代表する人たちが、これに対して敵があらわれない前に対策を立てるということでなくして、具体的な事実として起きておる問題に対して、特にEEC諸国においては具体的にこれが対策を協議しつつある。こういう段階の中で日本政府としてどのような処置をとられるお考えか。いわゆるアメリカへ直接、いまのように日本大使館から情報が入った、アメリカ大使館から情報が入ったというようなことでなく、もっと積極的な姿勢を示すべきではないかと思うわけですが、大臣の決意をこの際聞きたい。
  135. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 だんだん課徴金の実現の色が濃くなってまいりましたので、たしか二週間くらい前と思いますが、在米大使館を通じて相当に強い抗議を——そういうことであっては絶対ならぬ、もしかりにそういうことをやれば、これはもう連鎖反応が随所に起こって、今度は世界の国々がたいへんな逆効果に苦しまなければならぬ、そういう事態を招来することになるのだが、そういうことにかんがみても、絶対にかようなことはやるべきではないという強い抗議を申し入れてあるわけです。そのときまでははっきり日本に対してやるぞというような通告も何もなかったわけでございますけれども、情勢を一応見通して、かりにそういうことをやったならばたいへんなことになるぞという抗議を申し入れてある。
  136. 佐野進

    ○佐野(進)委員 したがって、そういう点の抗議を申し入れるだけでなく、いわゆる閣僚会議を開いた、懇談会を開いたという形が新聞紙上に出ていますが、まだわれわれとしては日本政府の具体的な意思表示に基づく行動というものは聞いておらないわけですが、政府機関として大臣はどのように取り組むか。みずから行ってでもそういう問題について、アメリカのそういう不当な要求に対して積極的な行動を示す意思があるかないか、そういう点をこの際聞いておきたいと思います。
  137. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 最も有効適切なこれに対する対策を実行したい、かように決意はしておりますが、ただいま具体的にどれが最も有効であるかということについての、政府としての結論にまだ達しておらない状況でございます。
  138. 佐野進

    ○佐野(進)委員 政府の結論に達していないということは、きわめて私どもとしては手ぬるい、こういうように感ずるわけですが、それでは時間もあまりないので結論を急ぎたいと思います。  もし具体的に——もしということばを入れざるを得ないわけですが、もしこれが五%、あるいはアメリカ筋における発表によれば、一〇%程度はやむを得ないではないかという意見さえあるということですが、そのように五%ないし一〇%程度の課徴金が実施される、こういうような形になったとき、国内物価あるいは財政あるいは輸出体制、こういうものに非常に大きな影響日本経済の上に出てくる、こう考えるわけですが、これは大臣でなくともけっこうですが、もしだからなかなか具体的に答弁できないと思うのですが、日本経済として五%ないし一〇%の場合、どのような影響を予想せざるを得ないか、局長ひとつ答弁してください。
  139. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢(鉄)政府委員 日本輸出に非常に大きな影響が来るというふうに考えていますが、特に向こうの仕組みのことはわからないわけでございますが、もしも後進国あるいは低開発国と申しますか、そういう国に対して除外例が設けられるということになりました場合、国別除外例を設けられますと、現在でもアメリカ市場におきましては繊維とか雑貨、それから機械の一部あたりにつきましては、日本輸出のシェアがだんだん減っているものでございますから、それに非常に追い討ちをかけられるようなことになります。相当そういうものについての輸出に大きな支障を来たす可能性があるというふうに考えられます。具体的に、それではその額がどうなるかということにつきましては、あまりはっきり申し上げる段階になっておりません。
  140. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私はこの問題についてまだまだ質問したいと思って、きょうは用意してきておったのですが、さっき企画庁長官のほうで時間をとりすぎたし、中村、堀両先輩も待っておられるので、結論にしたいと思うわけですが、いずれにせよ課徴金問題が持つ内容、影響は、当面する日本経済に対してはきわめて大きなものがあると思うのです。とにかく私はこの際通産当局に反省してもらわなければならぬ。同時にその意見を、きょうは時間がないのでたいへん残念なんですが、聞かしていただきたいと思うことは、通産省が去年の暮れからことしのいままでの段階の中で出されたあらゆる資料を私は丹念に研究し、あるいは予算の内容等についても研究いたしました。しかし輸入課徴金問題に対する対策、もちろんそれは一月の初旬から、ドル防衛策が出されたときから当然ある程度予想しなければならない問題であったと思うのですけれども、それらの問題について具体的な説明というもの、あるいは取り組みというものが、ドル防衛策という表現の中にはあっても、それがこのような形で出てくると予想したものは一つもない。そういうような状況の中で、これから四十三年度の通産省の予算の総括質問が終わり、われわれがその審議をするわけですが、はたしてこのままの状態で対応できるかどうか、ことし一年課徴金の問題が具体化されたとき対応できるかどうかということになると、非常に疑問を持たざるを得ないわけです。通産大臣並びに局長は、この問題についてはどう取り組みをされる考えであるか。いわゆる予算修正というか、予算に対して重大な変更を加えなければならぬ状態が予想されるのではないか、こういうことも考えるわけですが、それらの点についてひとつお答えを願いたいと思います。
  141. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあ内容によって考えなければなりませんが、ただいまの段階では、その必要に迫られているということは考えておりません。
  142. 佐野進

    ○佐野(進)委員 ですから、大臣の答弁が、あるいは考えがそうなのかわかりませんが、冒頭からアメリカのこのドル防衛策に対する対策考えというものが、きわめて甘いというように受け取らざるを得ないような説明が先ほど来ある。これは私だけではなく、さっきの橋口さんへの答弁にもあるので、そういう面からすると、非常に甘く見ておられるんじゃないかという気がするわけです。しかし、甘く見てそのとおりいけばいいですが、そのとおりいかなかったときの影響がたいへんだと思うので、この点についてはひとつもっと決意を込めて取り組みをしていただきたいと思うわけです。  さらに、これで終わりますが、委員長、特に許しを得て、中谷委員が私の関連質問でここでする予定になっておったのですが、中谷委員がいま見えませんので、中村さん、堀さんとも相談して、私かわってちょっと質問したいと思うので、お許し願いたいと思うのです。  実は、きのう各新聞に、「JIS汚職」「新段階にはいる」「金属業会の七ヵ所捜索」「通産省内部に拡大か」、こういうことで、いわゆる公務員の汚職問題については、単に政府関係だけでなく、各地方公共団体をはじめ、あらゆる方面に非常にその醜態をあらわしつつあるわけですが、通産当局はこの問題について現在までどのような取り組みをしておられるか、今後どうされる考えか、この際ひとつ大臣より明らかにしておいていただきたいと思います。
  143. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 当省の職員がかような汚職の疑いをもって起訴されるに至ったことは、まことに遺憾でございます。これらの者につきましては、取り調べの進捗を待って厳正に対処していきたいとともに、一段と綱紀の粛正につとめる、かような考え方を申し上げております。
  144. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それがいわゆる官僚でない大臣の、もっとも昔官僚だったかもわからないのですが、単なる答弁だと思うのです。もう少し現事態における通産行政の最高責任者として、これらの問題に対して、国民に対して、その持つ職責上の遺憾の意をもっと率直に表される必要があるのではないか。同時にまた、これから起こり得るいろいろな問題について、やはりこの際具体的にこうしたいというような希望は、当然きょうの段階の中でだれかが聞くべき問題なのであるから、その取り組み姿勢についての考えが明らかにされていいのではないか、こう思って質問したのですが、木で鼻をくくったような答弁ということになると、何らそこに反省がないと断定せざるを得ないと思うのですが、それでよろしいかどうか。
  145. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ことばが少ないから木で鼻をくくったような答弁だと言われては、どうもまことに私も遺憾なんですが、それにこういったような問題は、これはもうほんとうに事実によって綱紀の粛正を断行しなければいかぬ、かように考えております。なおまた、これに関連して制度上改善すべき点があれば、これはもうどんどん改善する、これも決意をしております。ことばが少ないから軽く考えておるということでは決してないことをよく御了解を願いたいと思います。
  146. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私この汚職事件の内容を見て、いま防衛庁を中心にして天下り官僚というような形できょうの各紙をにぎわしているような多くの高級官僚が、それぞれ特定の関連する企業へ天下って、特定の利益を得る、それも一つの重要な問題ですから、これはこれとして、これからいろいろな場所で追及し、そのことによって発生する疑惑を解かなければいけない、こう思うわけです。それについては通産当局も当然高級官僚が相当程度各企業へ行っておるというような関係もありますから、これらについても後ほど私はまたただしてみたいと思うのですが、この問題はそういう天下りすることのでき得るような状況でない、ある特定のポジションにある係官が、零細企業を対象にしてもてなしを受け、金品の贈与を受ける、こういうことになって問題が発展しつつあるわけです。したがって、これは通産当局として慎重に考えなければならない問題だと思うのです。ただやったのが悪いということだけでなく、どうしてそれをやらなければならなくなったかということの問題、あるいはまたこういう日本金属プレス工業会というような中小企業の集まった企業が金を出してしなければ中小企業近代化促進法の適用をされないとか、あるいは開銀の融資を受けることができないとか、あるいは外国の技術提携に関してそれがもらえないとか、こういうようなことをそのまま放置しておいていいということではないと思うのです。したがって、これについて特に中小零細企業を対象にする業種に対して将来の高級官僚として天下りすることのできない状況にある係官がそういうような汚職をせざるを得ない、またその係官に贈与しなければいけないというような問題がこの内容であろうと思うのです。したがって、こういう面について最後に大臣の根本的な、これらの通産省の持つ本質的な汚職にまで発展しなければならないそういう内容についてどう処理すべきであるか、あるいはまたこういう点について、中小企業をはじめ零細企業に対しこういうことをさせないようにどう努力するかということについて、決意をひとつ聞いて質問を終わりたいと思います。
  147. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 根本はやはり官吏の心がまえの問題だと思います。それから業界のほうにも相当反省すべき点があれば、その点を十分に反省してもらう。それから制度上の、何かつい誤りをしでかすような、制度的に考えなければならないような仕組みがあるならば、これまたその制度をできるだけ改善をしていく、こういうことだろうと思います。そういう点につきまして、十分に、今回の事件を契機として、再びさようなことが起こらないように進めてまいりたいと考えております。
  148. 佐野進

    ○佐野(進)委員 終わります。
  149. 小峯柳多

    小峯委員長 中村重光君。
  150. 中村重光

    ○中村(重)委員 いま大臣は綱紀の粛正について考え方をお述べになったのですが、大臣がおっしゃるとおりだと思うのですが、許認可事項のあるところ汚職はつきものだと言われている。運輸省でも御承知のとおりたいへんな汚職が発生した。そこで部内に対して、あるいは部外に対して、綱紀粛正について強力な対策を立てて、要請すべき面については業界に対しても協力方を要請をした、こういうことなんですが、大臣就任されてから、特に通産省は許認可事項が非常に多いわけですから、そうした汚職事件というものが起こらないように、綱紀粛正について格段の留意をされて、それぞれの措置をされるべきであったと思うのですが、いまの佐野君の質問に対するお答えでは、今回の事件、再びそういうことが起こらないようにつとめてまいりたいということでございましたが、いままではどういう措置をとっておいでになったわけですか。
  151. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それぞれの職場職場において奉仕するその心がまえの問題を確立するということだと思います。これは折にふれてそういう点を十分に、そういう精神をできるだけ固めていく、そういうことに注意を払ってまいりたいと思います。
  152. 中村重光

    ○中村(重)委員 この問題に対して、また綱紀粛正全般にわたって同僚中谷委員からあらためて質疑をすることになっていますから、私は十分ひとつ大臣に綱紀粛正について強い決意をもって対処していただきたい。私の質問に対してそのままお答えができなくて、事務当局のほうからどういう措置をしたのかということについて尋ねられてお答えになったのですが、しかし私はそれはとがめません。やっているかいないかということをはっきりしないまま適当に答弁するという態度は、私はいいことではないと思うのです。ですから、いままで大臣がそれだけ強力な措置をやってきたかどうかということに対して、みずから御存じなかったということであるならば、それはそれとして、今後十分この点に対処していただきたいということを強く要望しておきたいと思います。  なお私は、ニューデリーのUNCTAD第二回会議の問題あるいは課徴金の問題等に対していろいろお尋ねをしていきたいところがあるのでございますが、明日予算委員会で一般質問をいたしますので、その際にひとつ譲りたいと思います。  ただ、先ほど佐野委員の質問に対して大臣がお答えになったのは、強い抗議を実はやったのだ、そういうことをやったら、連鎖反応を起こして、国際自由貿易というのが全くくずれてしまうというようなことで反省を促してきた、こういうことであったのですが、ただ当時はそうした通告があっていなかったのでというようなことばがあったように——私の聞き違いかどうか速記録を見るとわかるわけですが、そういうようなことばが入ったように思います。先ほど来まだ公式、非公式の通知はないので、ただ在米日本大使館を通じて情報があっているにすぎないのだということであったわけです。この問題に対して、ことさら通告があったのを、それを隠さなければならぬというような内容のものでは私はないと思うのですが、あったのならあったように、はっきりひとつお答え願ったほうがよろしいのではないかと思います。その点どうなんですか。
  153. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それはもう別に隠し立てをする必要はない。通告があればあったと申し上げます。まだなかったのです。
  154. 中村重光

    ○中村(重)委員 大臣にお尋ねいたしますが、LT貿易の交渉が昨日妥結をしまして、きょう双方の代表によってコミュニケの取りかわしが行なわれて、このLT貿易に関する取りきめ事項の調印がなされるということが新聞に報道されておるわけです。当然通産省に対しては具体的な連絡等があっておるのだと思いますが、どういう連絡があっておりますか。
  155. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 本日北京で調印の予定で、まだその予定の調印が行なわれたことについての報告がございません。それで、品目、数量は非公表ということで、まだ公式に通産省には調印の連絡はございません。  それから政治問題に関するコミュニケも、詳しい内容はわかりません。  そういう状況でありますが、予想される品目は、輸出の面において化学肥料、これは硫安、尿素それから塩安、この化学肥料、それから普通鋼、それから特殊鋼、それから農薬その他の化学品、それから機械、これらがおもなものであろうと思われます。  それから輸入の品目としては米、トウモロコシ、それから雑豆ですね。それから大豆、ソバ、塩、すず、石炭及び鉄鉱石、こういうものがおもなる輸入品であろうと思われます。  貿易規模といたしましては、昨年の一億五千万ドルをどうしても下回ることになるだろう、こういうふうに予想をしております。
  156. 中村重光

    ○中村(重)委員 訪中の古井団長以下団員の方々が、相当長期間にわたってねばり強く交渉を続けてこられた。私どもも代表団に対し敬意を表したいと思うわけですが、政府としましても、きょうの新聞に報道されておりますように、この妥結に対して好感を持ってこれを歓迎しているというようなことが伝えられておるわけです。もちろん今日まで通産省としましても十分な関心を持って対処してこられたが、これまで長期間にわたる交渉を進められておる中において、通産省としては代表団とどういう連絡を続けておられたのか。
  157. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 古井君以下向こうに行かれます際に役所で会いました。交渉の心がまえなんかについて二回にわたって会いまして話し合いました。そして高碕事務所を通じてその後簡単な動静の報告が二回くらいあったと思います。最後には、どうしても米の輸入量を急いで決定してもらわないとあとのことが一切運ばない、こういうことでそれを督促する知らせがございました。それで、もちろんその督促電報があろうとなかろうと、とにかく日本としては明確な態度を一日も早く決定したい、こういうことで、それで農林当局と折衝いたしまして、十万トンに落ちついたわけであります。
  158. 中村重光

    ○中村(重)委員 農林当局と話し合いをやって十万トンに落ちついた、こういうことですが、日本としては肥料をもっとたくさん売りたい、中国としては米をもっと購入をしてもらいたいということで、これは必ずしも完全に妥結をしているということではないのではないか、双方ともいわゆる努力目標ということでけさの新聞報道では伝えられておるようであります。その点はどうなんですか。これは完全に妥結をした、こういうことですか。
  159. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 一応きょうじゅうに妥結して調印を完了する見込みである、こういう電話があったのであります。私は直接聞きません。
  160. 中村重光

    ○中村(重)委員 御承知のとおりに、五年間の契約がなされるであろうということが考えられた。まあ正常な形でいきますとそれでなければならない。にもかかわらず、難航に難航をしました末に、一年間の暫定的な存続という形に実はなったわけです。この点に対して大臣はどのようにお考えになっておられるか。また一年間の暫定的な契約にすぎなかったということの原因というものを、大臣はどのように受けとめていらっしゃるのか、伺っておきたいと思います。
  161. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 こういう貿易の取りきめは、ソ連との経験にも徴しまして、やはり一年じゃ短かい、計画性がない、あっても計画が立たない、そういうわけで、たしかこれが二年になり三年になり、そして今日五年ということに日ソの間はなっている。それと同じようなことがやはり日中の場合にも言えると思います。これは双方不自由である。これはこっちが不自由なだけではなくて、向こうだってやはり不自由だ。やはりその原因は両国の間に正常な国交が開かれていない、それが大きな原因だと思います。
  162. 中村重光

    ○中村(重)委員 ソ連の場合の経験ということで大臣お答えになったのだけれども、私はソ連との関係の経験というものは今回の中国の場合には必ずしもあてはまらないと思うのです。やはり問題は、日本が今日までとってまいりました中国敵視政策、それから佐藤・ジョンソン会談における中国に対する脅威の問題あるいは政経分離とは言いながら、事実上はむしろ日本政治的にこれをからませておる。また積み上げ方式でもって輸入を促進すると言いながら、実際は米の輸入においても、その他輸入物資についても、これを回避するというような態度をとっておるというような、もろもろの日本政府態度に対するところの中国の不満というものが私は最大の原因であったのだ、こう思うわけです。   〔委員長退席、鴨田委員長代理着席〕 今回の妥結にあたって非常に重要な意義といいますか、それはやはり政治三原則、申し上げるまでもなく、中国を敵視しない、さらには二つの中国をつくる陰謀に加担しない、三つ目は日中国交正常化を妨げない、というこの政治三原則に対してこれに同意した。日中友好は、これを基本としていくのだということ、一年間の暫定契約ではございましたけれども一応妥結した重要な意義がそこにあるのだというように考えておるわけでございますが、この点に対する大臣の所感はどういうことでございましょう。
  163. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私は、結論的に言うと、いま申し上げたように両国の国交が正常化されておらぬ、そのためにいろいろな誤解も誤解のままで残ってしまって、何らそれを解消すべき適切な手段が講ぜられない、それが不可能になっておる、そういうところにあると思うのであります。
  164. 中村重光

    ○中村(重)委員 おっしゃるとおり、根本的な問題は国交が回復していないということにある。ところが、その問題はそう簡単にはまいらないということになってくるでありましょう。そこで、いままで歴代内閣において一貫してとってまいりました、特に佐藤内閣になりまして政経分離の政策というものを強調しておられた。いずれの国とも仲よくするのだ、貿易は促進していくのだということを表明をされた。ところが現実には貿易を積み重ねてこれを発展させていくというような態度をおとりにならなかったということにあるのではないか。したがって根本的には、大臣のお答えのとおりに、国交正常化がなされていないということでございましょうが、しかし、ほんとうに政経分離のたてまえをもって、いずれの国とも仲よくして貿易をさらに促進をさせていくのだというならば、誠意を持ってそうした問題に対処していくというならば、私は、この契約というものも一年間ではなくて五年間が期待されたでありましょうし、また日中関係というものはもっと親善の度合いを高めていくことが可能であろうと思うわけです。したがって私の質問に対して大臣が国交正常化ができておらぬからだという答弁では、私があなたに問うておることに対するお答えにはならないわけです。  そこで、あなたのお答えを引き出しますために重ねて私からお尋ねをいたしますが、一年間ではあったといたしましてもこれが妥結をした、そうして政治三原則というものが確認されてきたという意味は、かつての契約よりももっと重大な意味があるでありましょうし、また政府もこれに対するところの関心というものはいままで以上に強いものであると私は考えるわけです。   〔鴨田委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、今回の妥結というものをさらに強力にこの後実践をしていくために、政府はどのような態度をもって臨もうとお考えになっていらっしゃるのか、伺ってみたいと思います。
  165. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 結局もう少し相互の理解を深めていくことだと思いますが、いずれにしましても、結論は国交正常化ができておらない。国交正常化がなぜできないかということは、いろいろ言われるでしょうけれども、根本の問題に日華関係という問題が必ずからんでくる。いまの日華関係というものを維持する限りにおいては国交正常化は不可能である、どうもこういう宿命的な状況に置かれておることも基本だと私は考えております。
  166. 中村重光

    ○中村(重)委員 もう少し具体的な答弁ができませんか。そうした国交正常化の根本的な問題に対しては、お互いにわかっておることですから、そのことを議論しようとはきょうは考えていないわけです。また、日華の問題しかりであります。いままで政経分離と言いながら、積み上げ方式をやっていくというようなことを表明をしておきながら、現実にはこれを阻害する態度をとってきたというものが反省として出てこなければならないのではないでしょうか。大臣がいまお答えになりました日華関係の問題においてもしかりであります。吉田書簡に拘束されて、いわゆる輸銀資金を使用しての延べ払い輸出というものをストップさせたということは、ほんとうにこれで政経分離ということが言えるでありましょうか。政経分離を口にしながら、現実にやっておられることは政治経済をからましてきたという佐藤内閣の言行不一致の態度というようなことが、今日、日中関係貿易を停滞させた根本の原因であるし、またLT貿易におけるところの今回の協定というものが非常に困難をしたということになるのではないか。私は、それらの点に対して大臣は、いまもう妥結したのでありますから、率直なお答えができるであろうと思うのであります。したがって、あなたは、そう抽象的でなくて、担当大臣でありますから、ほんとうの気持ちを聞かしていただきたい、こう思うわけです。
  167. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大体見当がついてまいりました。吉田書簡の問題は、これはどうも個人の書簡であって、何ら国の行動をしばるものではございません。たまたまその当時の日本の方針に合致した点が書かれてあったものですから、手っとり早く吉田書簡、吉田書簡、こういうことでございますが、もう御本人もおなくなりになったわけでございます。あの手紙に拘束されるなら、虫に食われぬようにしまっておいたら、何百年でも……。そんなものではないですから。これは、日本貿易金融政策は、申し上げるまでもなく相手方を利するために輸銀の資金が動いておるのではなくて、その国に輸出する人間なりあるいは商社なりの金融上の負担を軽くして競争力を強めるという趣旨のものでございます。ですから、いよいよ国が政経分離の原則のもとに中共と貿易を進めていくんだということでありますから、その方針に基づいて輸銀資金を活用するのが当然のことなんです。こんなことはもう申し上げるまでもない。なぜこれが実行されないかということは、結局、日華関係をそこなうということになるならばこれはちょっと控えなくちゃいかぬということでいま控えておるだけのことだろう、私はいま外務大臣でもありませんから何ですが、そういうことです。ですから、その点を十分に理解してもらって、そうして中共にこの輸銀資金をフルに開放するということに一日も早くしたい、こう考えておるわけでございますが、どうも相手のあることでございまして、日華関係の現状を打開するということがまず先決ではないか、こう考えております。
  168. 中村重光

    ○中村(重)委員 私が指摘いたしましたように、あなたのお答えの中からは、政経分離がたてまえである、だけれども輸銀資金を使うということに対しては、当然国内の業者を利する、そうして貿易を十分伸ばさせていくという役割りを果たさせなければならないのだけれども、日華関係があったからこれを控えておった、こうおっしゃった。そのことは、これは政経分離ということにはならないのであって、やはりこれを混同してきた、からみ合わせてきた、こういうことになると私は思います。ところがおっしゃるように、もう吉田書簡なんというのは個人の手紙だし、一私信にすぎない。吉田さんもなくなられた。これは虫に食われただけじゃなくて、この吉田書簡そのものはもう死んでしまった、こうあなたも考えていらっしゃるようであります、いまのことばの中からは。ところが今回LT貿易に対するところの協定ができたということは、いわゆる輸銀を使っての延べ払いというようなものが期待されておるということは事実だろうと思う。先ほど来、長期間にわたって難航に離航を重ねてきたこの話し合に対して通産省としてはどのような連絡をとってこられたのかということに対しては、私は、いま申し上げたようなことを頭に置いてお尋ねをしてきたわけですが、そこで、いまお答えを願いたい。LT貿易が一年間の暫定的な存続であるけれどもここで妥結をした。したがって、輸銀資金というものを予算の範囲において使わしていく、そうして延べ払い貿易を促進をしていくというような用意が政府にはなければならぬと私は思うのであります。だから、その用意ありやということに対してひとつ簡明率直にお答えを願いたいのです。
  169. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これはあらためて行動をとるということを要しないで、もうすでに外務大臣にも、この点が打開をされないとなかなかうまくいかぬ、それで全部がオーケーというわけにはいかぬだろうが、とにかく非常に対中共の貿易というものがスムーズに運ばれるだろうと思うけれども、この輸銀資金問題が片づかなければどうにもならぬ、これを片づけるには台湾政府に十分に説いて、そうして納得させなければいかぬ、そうじゃないと、どうもこっちのほうで仲よくなっても、こっちがけんか別れになるというようなことじゃ、これはいかぬのでありまして、その点の工作をひとつぜひ進めてほしいということは話してあります。結局、問題はその一点にあると私は思います。ですから、いまお話がございましたが、お話があるまでもなく、私はその責任当局でございますから、この問題は今後ともひとつ努力してまいりたい、こう考えております。
  170. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは、この後日中貿易を促進していくということに対しては、いわゆる輸銀資金を使って延べ払い貿易をさらに強めていくということでなければならないし、大臣としてはそういう方向でこれを推進していくという決意がある、こうあなたははっきり考えておる、また、みずからの責任においてこれを必ずそういうふうに実行する、こういう態度であると理解をしてよろしゅうございますか。
  171. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 こっちがその気になっても、相手方のあることでありますから、必ずこれをやり遂げるという、そういうことまでは申し上げにくいのですけれども、とにかく努力するということだけは申し上げておきます。
  172. 中村重光

    ○中村(重)委員 あなたがおっしゃった相手があるということは、私の頭の中では、あなたが相手と言うその相手は、大体いわゆる台湾政府を念頭に置いてお答えになったのだろうと思う。しかし、いま私は、これから台湾政府と話し合いをしていくのだというようなことをお答えをいただこうとは思わなかった。いままで吉田書簡の問題、さらには輸銀資金を使って延べ払いを伸ばしていくという問題については、もうここ四年くらい——あなたが外務大臣のときのことでございますから、三木さんが通産大臣をしておられた。通産大臣はもうあなたで四回目になった。もうしばらく待ってほしい、ケース・バイ・ケースでこれはやるのだ、当然輸銀資金は使っていかなければならないのだというようなことをずっとお答えになってきた。それらの問題が解決をしないので、LT貿易の存続の問題に対しては、これは事実上無契約状態になっておった。そして今度長期間にわたって契約が妥結をしたということは、当然、その問題が中心になって論議され、妥結をしたであろうということは想像されるわけでありますから、相手があることだからというようなことではなくて、あなたは、日本政府として、当の責任ある通産大臣として、どうあらねばならないか、どういう方向で進めていくかということを明確にお答えになるべきではないか。私は、相手がある、いわゆる台湾政府のことなんだということをあなたが認められて、それでなければどうにもならぬというようなことでこれを引き下がるわけにはまいらない。また、そういうことであってはならぬと思います。日本政府の自主性というものは、そういうことではそこなわれるでありましょう。そんなことであってはならぬと思います。何のために台湾政府から日本はそんなに拘束されなければならないのですか。どうお思いになりますか。
  173. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 元来がこれは外務大臣の仕事でございますので、外務大臣にひとつ強力に働きかけて、そしてその調整をとってもらう。どうも、外交ですから、私は通産大臣としてはそこまでお引き受けするわけにまいりません。非常に残念でございますけれども、どうぞ……。
  174. 中村重光

    ○中村(重)委員 これはあなたの答弁に混乱があり、矛盾があるのですよ。先ほど吉田書簡の問題については、あんなものは虫が食ってしまってどこかにしまってあるのだ、そんなことによって拘束されるものではないのだとおっしゃった。現実にこの吉田書簡によって輸銀資金を使わないということになったことは、間違いないのであります。また、予算委員会等における速記録をお調べになればわかるわけですが、佐藤総理にいたしましても、あなたも、これに拘束をされるという答弁をしてこられたのであります。いまあなたはそれが拘束されないと言うのであるならば、いま台湾政府の了解を受けなければならぬ、これは外務大臣が担当なんだから外務大臣にやってもらわなければならぬというのは、筋違いじゃないですか。輸銀資金を使うという問題については、それは広い意味において外務大臣関係があるかもしれませんが、通産大臣と大蔵大臣が担当の大臣であると私は考えるのであります。したがって、いま日中関係において円満にLT貿易の問題が妥結をいたしました以上は、その精神に沿って強力にこれを推進していくということでなければならないのじゃないか。いまこの委員会において台湾政府の了解を受けなければならないのだ、そういうことで私ども納得させようとおっしゃるのは、これは筋違いであると私は思うのであります。先ほど来あなたが、この輸銀資金というものは国内の業者を育成していって貿易を促進するためにあるのだ、こういうことを明確にお答えになった点からいたしましても、いまの台湾政府の了解云々ということは、これは私は了解できない。筋違いだと思います。
  175. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ことばの争いをしようという気持ちはありませんけれども、私は前から吉田書簡に拘束されるという気持ちでなくて、これは日本の広い外交方針というものにのっとってやっていることで、あれに拘束されるなんということを考えたこともない。したがって、そんなことを言った覚えはありませんが、これはどうでもいい。外交上の障害がなければ通産大臣でやっていける問題です。ところが外交上の障害があるから待ったがかかるわけなんです。そういうわけですから、どうぞ……。
  176. 中村重光

    ○中村(重)委員 もう時間が五時になりまして、私の許された時間を超過しましたが、いまのお答えでは私は引き下がれない。だから、明日予算委員会においてこの問題は重ねて質問をすることにいたします。
  177. 小峯柳多

    小峯委員長 次回は、来たる三月十二日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十二分散会