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1968-03-05 第58回国会 衆議院 商工委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月五日(火曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 小峯 柳多君    理事 天野 公義君 理事 宇野 宗佑君    理事 鴨田 宗一君 理事 島村 一郎君    理事 中川 俊思君 理事 中村 重光君    理事 堀  昌雄君 理事 玉置 一徳君       内田 常雄君    遠藤 三郎君       小笠 公韶君    大橋 武夫君       岡本  茂君    海部 俊樹君      小宮山重四郎君    坂本三十次君       櫻内 義雄君    始関 伊平君       塩谷 一夫君    田中 榮一君       田中 六助君    橋口  隆君       武藤 嘉文君    久保田鶴松君       佐野  進君    多賀谷真稔君       楯 兼次郎君    中谷 鉄也君       永井勝次郎君    古川 喜一君       三宅 正一君    吉田 泰造君       近江巳記夫君    岡本 富夫君  出席政府委員         通商産業政務次         官       藤井 勝志君         通商産業省貿易         振興局長    原田  明君  委員外出席者         参  考  人         (日本商工会議         所会頭)    足立  正君         参  考  人         (三菱商事株式         会社副社長)  寺尾 一郎君         参  考  人         (日本貿易振興         会理事長)   駒村 資正君         専  門  員 椎野 幸雄君     ————————————— 三月五日  委員中谷鉄也辞任につき、その補欠として岡  田春夫君が議長指名委員に選任された。 同日  委員岡田春夫辞任につき、その補欠として中  谷鉄也君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商に関する件(貿易振興に関する問題)      ————◇—————
  2. 小峯柳多

    小峯委員長 これより会議を開きます。  通商に関する件について調査を進めます。  本日は、貿易振興に関する問題について、参考人から意見を聴取することになっております。参考人として日本商工会議所会頭足立正君、三菱商事株式会社社長寺尾一郎君、日本貿易振興会理事長駒村資正君、以上三名の方に御出席を願っております。  この際、参考人各位にごあいさつを申し上げます。  参考人各位には御多忙中にもかかわらず本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。  申し上げるまでもなく、現在のわが国を取り巻く経済情勢は、まことにきびしいものがあると存じます。この機会に、貿易発展に御尽力願っております参考人各位より、貿易振興に関する問題について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承り、もって本委員調査参考に資したいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。  なお、御意見の開陳は、お一人おおむね十分程度におとりまとめ願いまして、そのあと委員からの質疑をお受けいただきたいと存じます。  それでは、足立参考人にお願い申し上げます。足立参考人
  3. 足立正

    足立参考人 意見といたしましては、最近の貿易情勢国際収支、その次が四十三年度の貿易収支国際収支見通し、次がアメリカ輸入課徴金の問題、それから四番目が輸出金融措置、五番目が中小貿易関連企業への配慮、それから貿易振興運動、これだけを申し上げることにいたします。  第一の、最近の貿易情勢国際収支。  大蔵省が一日に発表しました国際収支統計によると、一月の総合収支は二億八千万ドルの赤字で、記録的な赤字であります。貿易収支貿易外収支資本収支とも赤字であります。  貿易収支は、輸出が六億五千万ドル、前年同月に比べまして一五%の伸びでありましたが、輸入が七億九千万ドル、前年同月に比べまして、一八%の伸びを続けたために、一億四千万ドルの赤字となりました。  次に四十三年度の貿易収支国際収支見通しを申し上げます。  政府の四十三年度の国際収支見通しによると、輸出は一五・二%の増加を続け、輸入を八・六%の増加で押え、貿易収支で二十億ドルの黒字を出して、この貿易収支黒字で、貿易外収支赤字十二億ドル、資本収支赤字九億五千万ドル、移転収支赤字二億ドルなどの赤字を埋めるわけでありますが、結局、総合収支で三億五千万ドルの赤字となる見通しになっております。  輸出を前年比一五・二%の増加で、百二十一億五千万ドルの目標を達成するには、官民一体となって非常な努力をしなければならないと存ずるのであります。  次にアメリカ輸入課徴金問題。  このようなときに、アメリカドル防衛一環として輸入課徴金問題が起きたわけであります。日本商工会議所では、これまでアメリカ保護貿易主義的政策について、アメリカ民間業界として反対するよう、全米商業会議所協力方を依頼し、友好的な回答を得たので、このたびもさっそく全米商業会議所会頭に対し、課徴金制度のような措置は、数年にわたる国際的協力によって得られた自由貿易の基調を乱すものであり、日米貿易に対する影響もきわめて大きいので、反対してくれるように打電いたしました。  また、日本商工会議所日本貿易会ジェトロと協力して運営をしております貿易振興推進本部の総会において、日本政府に対し、アメリカ政府に対して強力に反対の働きかけをするように決議をしました。  輸入課徴金アメリカにおける日本品競争力が非常に弱まることはもちろんでありますが、比率によっては相当な打撃を受ける業界もあります。  また発展途上国輸入課徴金を免除されると伝えられております。後進国関税特恵問題が憂慶されておりますおりから、さらに打撃が加わるわけであります。  また在米日系商社日本輸出に果たしています役割りは非常に大きいので、輸入課徴金を払うとなると、たいへんな出費となるわけであります。  対抗措置として、業界では、この際輸出所得控除制度を復活してほしいという意見が出ていますが、もっともなことと存じます。ガットとの関係もあるというが、一国の国際収支重大危機に当面すれば、アメリカでも思い切ったことをやるのでありまするから、日本としても十分国益確保立場に立って、税制問題を考慮してほしいと存るのであります。  輸出金融措置。  輸出振興のためには輸出金融措置が最も大切であります。現在、輸出の七〇%近くが重化学工業品であるから、重化学工業品輸出を伸ばすことが輸出増大のために特に必要でありまするが、そのためには輸銀利子据え置きとその資金確保が必要であります。  四十三年度の輸銀資金量は、昨年の三千二百五十億円から三千三百五十億円に増加するという予算で、このうち財投からは百億円増加するというわけでありますが、この資金には利子を払わねばならないので、輸銀貸し出し利子を上げたいという意見があるそうであります。輸銀の一番安い利子は四%くらいとのことでありまするが、つい最近にフランスは、海外諸国輸出拡大のため、政府が三%から三・五%の低金利でしかも十五から二十年の長期借款に踏み切ったという新聞の報道を見ております。利子の引き上げはどうしても防がねばならないが、そのためには政府出資増加しなければならぬ。前年と同額では政府輸出振興への努力を評価できない。何とか政府出資増加を考慮していただきたいと存ずるのであります。  ついでに申し上げたいが、きびしい国際競争が行なわれておる中で商売しているのでありまするから、他国が出した条件を伺って日本がまねするというようなやり方では競争には勝てない。決済条件などは、規制を弾力的にして、業者が自主的にきめることができるように計らっていただくべきものと存ずるのであります。  次に、中小貿易関連企業への配慮。  日本中小企業輸出に占める比重は、重化学工業で三二%、軽工業で七四%であるという数字がありますが、中小企業は、資本自由化、引き続き技術自由化、さらに特恵関税供与、今度の輸入課徴金問題で、先進国発展途上国の双方からはさみ打ちにされているような窮境に立っております。中小企業対策については特に積極的な政府施策と指導を希望する次第であります。  次に、貿易振興運動。  最後に一言申し添えたいのは、政府はもとより、業界国民こぞってこの際貿易立国の気がまえを強力に打ち立てる必要があると存じます。日本商工会議所では、日本貿易会ジェトロと一緒になりまして、貿易振興推進本部というものをつくって、政府から若干の補助金をいただきまして、貿易振興国民運動全国各地で行なっておるのでありますが、少し国際収支がよいと、もうやめてもよいではないかというような話が出てくるのでありまして、政府としてもこのような運動を今後とも十分御支援を願いたいと存ずるのであります。  とりあえず私の意見を申し上げました。(拍手
  4. 小峯柳多

    小峯委員長 ありがとうございました。  次に、寺尾参考人にお願いいたします。
  5. 寺尾一郎

    寺尾参考人 寺尾でございます。社長の藤野が目下静養中でございますので、かわりまして商社立場から申し上げたいと存じます。もちろん、輸出振興の問題についてはいろいろございますが、ただいま足立参考人から、また後ほど駒村参考人からるるお話があると存じますので、私は当面問題でございますアメリカ輸入課徴金及び輸出金融措置について申し上げたいと存じます。御聴取願います。  米国輸入課徴金問題につきましては、現在、米国財務省、商務省及び議会関係委員の間で論ぜられているところでございまして、ただいまもお聞き取りのとおり、種々の報道が流れておりまするが、いずれもまだ公式のものではございません。しかし、現状での判断といたしましては、どうやら輸入税輸出戻し税の組み合わせによる国境税方式は採用せず、五%前後の輸入課徴金方式が採用される可能性が濃厚でございます。  われわれといたしましては、これまで国境税にしろ、課徴金にいたしましても、世界貿易発展を大きく阻害しかねないといたしまして、あくまで実現阻止米国側に要請してまいったのでございますが、課徴金の実施が避けられないとなりますれば、むしろカナダ、英国の先例にならって、商品別ないしは地域別に何らかの軽減を獲得するという条件交渉に持ち込むべき段階に来ているのではないかと考えております。このためには、通常の外交ベースを越えまして、場合によっては政府ベース民間ベース、あるいはその混成による強力な交渉団をワシントンに派遣することが必要ではないかと思います。また、米国では、本件議会関係委員の間におきまして相当に議論されている模様でありますし、わが国におきましても、国会ベース本件重要性を十分御認識いただきまして、その対策についても真剣に取り上げて御討議いただきたいと存ずる次第でございます。  米国景気は、どうやら四十二年のミニ不況を脱しまして、昨年第四四半期より上向きになってきております。ことしの米国経済成長率名目で七%前後、実質で四%ないし四・五%くらいになるものと予想されております。米国では通例、名目経済成長が七%程度に達すると輸入は一〇%以上の増加を示すものとされておりますし、現に昨年末から一月にかけての米国輸入は一一%増程度水準に達しております。この場合、従来の経験によりますれば、日本品に対する需要は一〇%をさらに上回るものと想定されます。最近の米国経済について注目すべきファクターといたしまして、賃金物価悪循環という問題が生じておりますことは御承知のとおりであります。この結果、主要の産業分野におきまして賃上げストライキが避けられない状況になっております。すでにこうしたストライキを前提にした仮需要ないし見越し買いが生じておりまして、われわれの現在の成約状況から見まして、本年前半の対米輸出は前年比一三ないし一五%増し水準に達しております。既契約わが国全体で約十四億から十五億ドルに達しているものと推定されます。  もし課徴金が五月一日から、あるいは六月一日から実施されることになりますれば、この既契約分の処置がまず大きな問題となります。業界といたしましては、種々陳情につとめてはおりまするものの、対米輸出契約は多くの場合デューティーペイドの形で契約が取りかわされているので、追加される課徴金のほとんどは日本側において負担せざるを得ないことになる見通しでございます。もし五%が一律に適用されることとなりますれば、おそらくその額は七千ないし七千五百万ドル、二百五十億ないし二百七十億円に達するわけでございまして、業界負担限度を越えることともなり、輸出保険制度における拡大措置等政府の善処が要請される次第でございます。  次の問題は、五%前後の課徴金が実施されたといたしまして、本年のわが国の対米輸出がどうなるかという点でございます。本年一月から六月の対米輸出は確かに昨年に比べまして一三ないし一五%増加ということになるかもしれませんが、七月から十二月、つまり後半にはおそらくこの増加がなくなりまして、さらには前年の水準を下回る可能性すらなしとしないのであります。  われわれは、前述の景気回復にかんがみまして、四十三年度の対米輸出を前年度比四億ドル以上の増加と予想しておりましたが、もし前年度並み、ないしは微増程度にとどまることとなりますれば、対米輸出総額政府見通しの約一五%増し、すなわち百二十三億五千万ドルに達することはとうてい困難だと存じます。  このような情勢に対処いたしまして、わが国として何をなすベきかということが問題になります。報復措置ということは考えられないことはありませんけれども、これはむしろ避けたい。最小限度対抗手段をさしあたり考えなければならないと存ずるのでございます。日本米国同様の課徴金制度をもし採用するといたしますれば、わが国輸入の六〇%以上が原材料でございますることから考えまして、国内物価を高め、物価賃金悪循環を招来する可能性もありますし、ひいては国際競争力にマイナスの効果を与えることになりかねないと存ずるのであります。したがいまして、むしろ輸出奨励のための具体的施策実現に移していくよりほかはないと考えるのでございます。  国際収支危機に臨んでいるわが国にとりまして、六月ごろには外貨資金繰りが行き詰まり、円の不安が起こるのではないかとさえうわさされていることは、御承知のとおりでございます。したがいまして、何といたしましても輸出をふやさなければならないのであります。  この緊急時に際しまして、四十三年度予算政府案国会提出時期ではございますが、財源がないからいかんともしがたいということではなく、何とか輸出振興措置災害対策費並みに取り上げてお考え直し願いたい。財政資金輸出への配分について、あらためて深甚な御配慮が望まれる次第でございます。  具体的には、輸出入銀行への原資増額を行ない、プラント類の延べ払いに対する輸銀貸し付け金利上昇を食いとめることこそ、まず第一に必要なことじゃないかと考えます。  さらに、財源面での新たな措置を講じていただきまして、輸出面への何らかの報奨、リベート的なものが実施されることが必要であると考える次第でございます。  また、ガットに対する顧慮からさきに廃止されました輸出所得控除制度をこの際復活すること、あるいは別途輸出奨励のための減税政策など、税制面からの施策につきましても、切に御考慮をお願いしたいと存ずるのであります。  なお、先ほど足立会頭からもお話がありましたが、民間では、政府と合同で、二月以来、産業別輸出会議を開催いたしまして、輸出振興について熱心に検討しておりますが、国会がこの上ともこのような民間の盛り上がりをバックアップしていただくことを切に切に希望いたしまして、私の陳述を終わります。(拍手
  6. 小峯柳多

    小峯委員長 ありがとうございました。  次に、駒村参考人にお願い申し上げます。
  7. 駒村資正

    駒村参考人 貿易振興会理事長駒村資正でございます。わが国貿易現状振興策について申し上げます。  四十二年度の輸出は、最高輸出会議において、百十一億六千万ドル、前年の一二%増し目標を設定いたしたのでありますが、現在の見通しでは、百七億五千万ドルにとどまりそうでございます。これは前年の七・九%増し模様でございますが、残念ながら目標を大幅に下回っております。これに対しまして、四十三年度の輸出目標は百二十三億五千万ドルで、前年の一四・九%増しとなっております。  四十二年度輸出の不振の原因を考えてみまするに、まず第一に、わが国経済活動過熱化の傾向を持っておって、そのために輸出品品不足という現象を生じたことであります。  また、第二には、欧米景気が悪かったこと、とりわけわが国輸出の三分の一を占める大市場である米国の年初の景気後退が同国の輸入を縮小せしめましたがために、米国輸入増加率は四十一年度二〇・二%であったものが、四十二年度はわずか五・一%となったわけでございます。大体この二つが最大の要因であったと考えられます。特に北米は日本にとって三割市場であるだけに、その増加率が低かったことがわが国輸出総額に最も大きな影響を与えたものと考えられます。  しからば四十三年度の輸出環境はいかがであるか。  本年になりまして、わが国景気動向について申しますと、財政支出の削減、金融引き締め等の適切な対策によりまして景気鎮静化実現されつつあるようでございます。また一般に、強い輸出意欲が各業界に認められております。  一方、欧米景気について申しますと、米国景気はようやく上昇機運になってまいりました。六八年の国民総生産も名目七・八%、実質四%以上に増加するだろうと予測されております。また欧州におきましても、独、仏ともに大規模な景気振興策がとられることとなり、英国ポンド切り下げを契機として新たに経済活動を始めたわけでございます。このような次第で、全般的に世界景気はこれから回復の過程に立ち向かうものと一般に観測されております。  このように内外景気情勢の新展開に加え、より重要でまた私どもの非常に心強いことといたしておりますることは、現在わが国輸出いたしておりまする諸商品品質、性能が近来飛躍的に向上しつつあることでございます。また新しく輸出商品として多くの商品が成長してまいっておることでございます。日本商品品質向上の点につきましては、たとえば「リーダーズ・ダイジェスト」の本年の二月号に、「メード・イン・ジャパン」という題目のもとに、いかに最近の日本品のすぐれておるかということにつきまして、べたほめと申してよいほどのほめ方の記事が載っております。また、後者の輸出商品といたしまして最近成長してきたものの中では、特に乗用車を中心にテープレコーダー、カラーテレビ、腕時計、工作機械ガスライター等といった商品群がございます。  しかしながら、一方、海外市場動向を個別に検討してまいりますと、英国におけるポンド切り下げとか、米国におけるドル防衛とか、後進国特恵関税問題とか、わが国輸出にとってその環境は決して楽観を許さないものがあるようでございます。この中で特に注意を要しますものは、米国における各種輸入制限的な動きがあることであります。  保護貿易法案。  すなわち、昨年は繊維、鉄鋼、雑貨、食品等に関する多数の輸入制限法案議会に提出され、中には下院を通過して上院に送付されたものもあるのでございます。このような保護貿易風潮は、わが国にとってきわめて遺憾なことであり、ジェトロといたしましても、これを阻止するため全力をあげることとし、在外施設を動員して極力情報の収集につとめるとともに、あるいは各種の現地の機関を利用して反対運動を展開いたし、あるいはわが国業界代表を派遣して、先方の関係者と直接折衝してもらったり、あるいは米国の著名なジャーナリストを招いて、わが国実情を見聞せしめたりする等、広範な活動を行なっておる次第であります。  ドル防衛法案。  これらの輸入制限法案は、幸いに今日までのところいずれもまだ成功するに至っておりませんが、これにかわって最近では、ドル防衛一環として、米国政府の側から国境税または輸入課徴金の問題が打ち出されておることは御承知のとおりでございます。現段階ではまだ具体的な米国考え方が不明でございますが、これが実現いたしました場合には、わが国の対米輸出に容易ならざる打撃を与えることが予想されますので、ジェトロといたしましても、全米施設に指令いたしまして、本件に関する各方面情報を細大漏らさず収集することに努力をいたしております。政府におかれましても、全力をあげて本件実現阻止につとめられますとともに、万一不幸にして実現を見た場合には、わが国関連商社、メーカーの負担を極力軽減するような強力な輸出振興策を講じられますよう切に希望する次第でございます。  次に、四十三年度の輸出のための努力。  内外情勢は決して容易でありませんが、官民一致して輸出のために総力を結集し、民間における自己努力と相まって、政府におかれましても強力な輸出振興策を講じていただくならば、一四・九%増しという四十三年度の輸出目標達成は決して不可能ではないと確信いたす次第でございます。  ジェトロ輸出振興のための機関として設立された特殊法人であります。毎年多額の国庫補助金をいただいております。及ばずながら、その責務の重要性を十分に自覚し、輸出振興のため全力を傾ける所存でございます。  ジェトロ輸出振興策。  これをやや具体的に申し上げますと、四十三年度において特に重点を置く事業といたしましては、まず第一に、中小企業輸出振興事業並びに市場開拓事業強化することであります。  わが国輸出に占める中小企業重要性にかんがみ、また特恵関税問題を控えて急速な体質改善を求められておる中小企業に対しまして、より一そう充実した輸出振興対策をきめこまかく実施してまいりたいと存じております。  そのためには、海外市場動向について基礎的な調査を進めるとともに、国際経済環境の変動に対応した情報をより適確かつ迅速に集め、広報活動の場あるいは情報サービス網などを通じて関係方面に周知させていく方針であります。また商品別マーケッティング調査市場開拓のための特殊市場等拡充させるほか、秩序ある売り込み、及び各国の輸入制限動向に対応した輸出秩序維持対策にも特に本年は力を注ぎたいと考えております。  また別に、きめこまかいPRを実施いたしまして、新しい販路の開拓をはかるとともに、展示会専門見本市開催等を通じまして、わが国輸出商品を着実に相手国流通ルートに乗せていくように努力いたす考えでございます。  また地方支部相談所拡充をはかりまして、貿易あっせん業務強化を行ないますとともに、東京及び大阪の資料センターの充実をはかり、中小企業に対する情報サービス拡充を行ないたいと存じております。要しまするに、それぞれ性格を異にいたしまする海外市場実情に即した輸出体制の確立、未開拓市場開発等ジェトロの機能を十分発揮いたしまして、輸出目標達成のため貢献いたしたい考えでございます。  次に、近年ますます顕著になっております輸出構造高度化、すなわち機械化の方向に対応いたしまして、機械輸出振興事業体制を整備することを重点事業の一つと考えております。そのため、本年二月開きました豪州メルボルンセンター展示室強化及び技術担当職員派遣増を行なうほか、東ヨーロッパ圏市場を主としてウィーンに機械中心展示場を有するセンターを設置する方針でございます。  次に、資本取引自由化が本格化するに伴い、わが国中小企業に密接な関係を有する海外企業及び業界について詳細な調査を行ない、その結果を外資情報サービスとして広く国内の企業業界に提供することを新たに実施いたします。その他、中小企業に対するデザイン改善のための事業発展途上国の一次産品を展示して、その片貿易是正のための事業等、ジェトロ事業は各方面にわたっておりますが、以上申し述べたような重点事業について、今後政府業界と密接な連携を保ちながら、その要請に応じるとともに、各事業の効率を高めるよう格段の努力を傾注して、輸出振興のため邁進したいと存じておる次第でございます。(拍手)     —————————————
  8. 小峯柳多

    小峯委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見開陳は終わりました。
  9. 小峯柳多

    小峯委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中六助君。
  10. 田中六助

    田中(六)委員 足立寺尾駒村、三参考人、本日はお忙しいところを私どものために御出席くださいまして、まことにありがとうございます。  私のまず質問したいことは、現在国の内外で非常に問題になっておりますアメリカ輸入付加税、つまり国境税課徴金の問題でございます。  課徴金は、寺尾参考人がいま申しておったように、国境税のほうは別といたしまして、輸入課徴金制度というものがほとんど十中入、九——五月からになるか六月からになるかは明らかではありませんが、大体実施される公算のほうが強い現実でございます。実は、きのう、アメリカ大使館のある者に聞いたら、やはり輸入課徴金のほうは実現可能性がきわめて強いようでございます。しかし、わが国といたしましては、まずこれを阻止すること、これが第一点。それから第二段階といたしましては、これができたらどうするか、こういう二つに分けて考えなくちゃいかぬと思います。  これを阻止するためには、足立参考人寺尾さんも言っておりましたように、強力なる交渉団体を編成して、早い機会に米国に行くとかというようなことをしなくちゃいかぬのじゃないかと私どもも感じております。しかし、EEC諸国などのアメリカとの交渉などを見ましても難航しておりますし、これは何とか抵抗して、これをまず阻止することに全力をあげなくちゃいかぬのですが、しかしアメリカの自国のやることでどうにもできないという場合が起こってくると思います。これは仮定の問題ですが、もしこれができたらどうするか。  まず、寺尾参考人にお聞きしたいのですが、この輸入課徴金がたとえば五彩とした場合に、わが国貿易に十億ドル前後響くことは巷間伝えられておりますが、どの品目にどの程度一番強く響くかということをお尋ねしたいと思います。
  11. 寺尾一郎

    寺尾参考人 お答えいたします。一番こたえるのは繊維、それから雑貨関係と存じます。ほかの品種におきましては、もしこれが五%となると、やはり甚大な被害を受けますけれども、二%程度である場合はある程度までアブソーブ、吸収することができるのじゃないかといわれております。大体繊維の打撃は、もう新聞でも御承知と思いますが、二億ドル程度になるのではないかといわれております。先ほど申し上げましたように、五月ないし六月一日から課徴金五%程度が実施されるといたしますると、ことしの一−六月——これはカレンダーイヤーで、一月−六月はほとんど影響ないのではないか。しかし七−十二月、後半におきましては、約二億二千万ドル程度の減少を来たすのではないかと存じます。これが行なわれないといたしますれば、むしろ前年比一億八千万ドル程度伸びが見込まれる次第でございます。
  12. 田中六助

    田中(六)委員 特に繊維に響く。それから私は、まあ軽工業部門だけじゃなくて、重工業にも当然響いてくると思いますが、いままでこれを阻止するために業界では具体的にどういうようなことを自主的におやりになってきましたか。
  13. 寺尾一郎

    寺尾参考人 先ほど足立会頭からお話がございましたように、アメリカの各関係機関及び関係者に対しましてあらゆる手を打ってきておるのでございます。また最近も、先ほど足立会頭からお話がございましたように、経済団体連合会、日本商工会議所日本貿易振興会、三団体が対米貿易合同委員会というのをつくっておりますが、この輸入課徴金制度の再考を強く要請するという文書を各方面に出して、官民合同でこれに対処して阻止の実現をはかるという運動を着々やっておりますし、ことに、先ほど足立会頭がお触れになりましたように、先月の二十二日に全米商業会議所会頭のアラン・シバース氏に対しまして、その善処方を要請する電報を打ちました。これに対しまして足立会頭あてに三月の四日、昨日返電が参っております。  朗読いたします。   全米商業会議所シバース会頭不在につき、米  合衆国の国境税あるいは輸入課徴金制度の設定  の可能性について懸念をのべられた貴電に対  し、我々は以下の通り回答いたします。   我々は貴電に同感であり、事実、去る二月二  十二日に開催いたしました全米商業会議所の役  員会において米合衆国はもちろん他の関係貿易  国もそのような人為的な貿易抑制策をとること  に対し、反対であるという声明を承認いたしま  した。   我々は、貿易に対しそのように不当な抑制策  を課した場合に起るであろう世界各国の報復措  置を認識し、双方とも損害を受けることになる  「貿易戦争」をどちらの国からも起さないよう  我々も希望する次第であります。  以上。
  14. 田中六助

    田中(六)委員 これは何とか阻止しなくてはいけませんが、私は、政府民間が強力にアメリカに——まあ下田大使を通じてやっておるのですが、現地に乗り込んでやるということになると、またかなり影響があるというふうに信じております。というのは、アメリカの国際環境が、ベトナム戦争を控えまして、特に日本とのいろいろな問題で必ずしも日本に不利ではない。これは有利、不利をそういうものに結びつけるとちょっと語弊がございますが、いずれにいたしましても、必ずしもアメリカがこれを一本に押し通すということを阻止できないということには感じておりません。あなたたちも自分の商売のことですし、日本貿易立国ということから、これは官民一体でやらなくちゃいかぬと思っておりますが、第二にこれができたらどうするか、この対策というものを寺尾さんもそれから足立参考人も述べておりましたが、輸出入銀行のファンドの拡大とかあるいはプラント輸出類の金利の引き下げ、あるいは輸出リベート、それから税制面からの優遇措置などの具体的な対抗策の裏の面を言っておりましたが、このほか考えられる対抗策の具体案がありますか。
  15. 寺尾一郎

    寺尾参考人 適確な対策はなかなかない。しかし経済協力の面で、従来アメリカから輸入していた原材料を開発途上国からの開発輸入あるいは経済協力によってシフトするというようなことは、やはりアメリカに対する若干の牽制になるということです。これは先ほど申し上げました輸出入銀行の原資の増額による金利の引き上げ回避、それからガットを顧慮いたしまして廃止された輸出所得控除のあの制度の復活、さらには他の措置による税制上の優遇措置、いわゆる輸出すればもうかる、国際収支も外貨獲得によってなおる、こういう面から輸出マインドにメーカーも商社もあげてなるように御措置願うことが必要だと考えます。
  16. 中川俊思

    ○中川(俊)委員 関連。ちょっとお尋ねいたしますが、いま全米会議所から来た電報を御朗読願ったのですが、向こうでも非常な関心を持っておるということがみんなにわかったわけです。そこで、私は先ほどから足立さん、それから寺尾さん、駒村さんのお話を伺っていて、非常に御努力願っておることを感謝するのですが、さらに百尺竿頭一歩を進めて、あなた方アメリカへ行かれたらどうですか、特に商工会議所は。アメリカに行って大いに実情を吐露していただいて——もしアメリカが今回のような措置を講じますと、私は日米間にひびが入りはしないかと思うのです。これはアメリカが一番いまおそれておるところじゃないかと思います。ですから、そういう見地から言いましたならば、たいへん御足労でございますが、特に足立さんあたりにおいでいただいて、日本政府にたよっていたってだめですから——政府はだめなんです。私も通産省におったのですが、あなた方御存じですけれども、予算に第一制約されます。それから役人というのは自分の首ばかりなでておって、積極的な仕事はやりません、実際問題として。うっかりやって、下田君のようにつまらぬことを言ったりなんかすると、国会で野党からすぐ責められますから、なかなか役人は積極的によう動かないです。これは私も役人の立場を了承しておりますが、実際は動かなければいけないのです。この問題は単に通産省だけの問題じゃありません。これも外務省あたりがどんどんやらなければならぬ。外務省を通じて、おまえの国で日本に対してそういう措置を講ずるのなら、日本もおまえの国の極東政策に協力しないぞ、このくらいなことを外務省がやらにゃだめなんですよ。ところが外務省の役人は腰抜けばかりですから、そんなことをやるやつは、実際問題としておりはしない。こんなことは私が言わぬでも、足立さんや寺尾さんや駒村さんは百も御承知なんです。ですから、日本貿易が今日まで伸展したのは、政府の力じゃない、私は民間の力だと思っている。経済が発展したのも同じだと思う。寺尾さんあたりが非常に努力された。それはあなたのところは努力されればマージンも入るからいいというわけじゃ実際ない。非常に努力された。それは私が商工委員長時代も南アフリカのほうへ行ってみまして、実際女がおるわけじゃなし、あの殺風景なところへ各商社が命がけで商品を売りさばいておる。それだけの努力をしたから、私は日本の経済が伸び貿易が今日伸びてきているのだと思うのです、実際問題として。ですから役人にたよっておっても、役所にたよっておってもだめだということは、私が言わなくても、もう皆さん御存じだと思うのです。ですから、たいへん御迷惑でございますが、せっかくアメリカにそういう空気が台頭してきておるのですから、このチャンスをのがさないで、商工会議所なんかばっと行ってごらんなさい。電報でやりとりしておってはだめですよ。そんな手ぬるいことをやっておってもこの問題はなかなか解決しない。そこまでやるということはアメリカもたいへんな問題でございます。友好国の日本に対してそういうことをやるということは、アメリカもよくよくのことだと私は思うんです。ですからそれを打破するのには、電報でやりとりしたり、手紙でやりとりしたり、それから駒村さんがジェトロの向こうの方を使って一緒にやっていらっしゃるのはよく了承しますが、そのくらいなことではなかなか解決しない。結局、このままでまいりましたならば、私はアメリカは既定方針どおり、この課徴金の問題は、日本に対しても諸外国と同じようにやってくると思います。ここで先輩に対してかってなことを申し上げてたいへん失礼でございましたけれども、そのくらいな努力をお考えを願いたい。質問じゃございません。私はこのことをお願いを申し上げておきます。
  17. 田中六助

    田中(六)委員 時間もございませんので、私あと二点ぐらいお聞きしたいと思います。  輸出の振興ということがわが国の至上命題でございますが、私ども毎年外国に行って聞くのですが、日本輸出入銀行はむしろ日本輸出入阻害銀行だというようなうわさも聞くんです。ただいま参考人の方々から輸出入銀行のファンドの拡大あるいは金利現状維持並びに引き下げ、アップはいけない。もちろん私どももそう思いますが、いま四%程度金利、これは国際的に見ますとそう高い金利ではございませんが、といって、だんだん貸し出しが累積してきますと、それをカバーする意味でどうしても四・二とか四・五に金利を上げようとする動きもあることは問題であるということは私も十分知っております。輸出入阻害銀行だといわれておる。必ずしもそうじゃないかもわかりませんが、たとえば融資条件あるいは輸出入銀行の人的な構成の問題あるいは条件審査などの問題についていろいろ御意見があろうと思いますが、この点について、三人の参考人の方々、簡単に答えていただきたいと思います。
  18. 寺尾一郎

    寺尾参考人 それでは、お答え申し上げます。いま、輸出入阻害銀行ということはないと思うのですが、むしろ非常に奮闘努力されております。ただ、いかんせん、原資が、われわれも一生懸命にお願いしたのですが、ついに七百三十億ドルをくっつけていただくのすら実現しないのです。それで結局私は、これは少し政府批判になるかもしれませんけれども、財政配分が少し間違っているのじゃないかと思うのです。先ほど田中委員からお話がございましたように、日本輸出振興というのは、もう至上命題なんです。外貨を獲得しなければ、原材料の輸入ができないのです。したがって、政府がほんとに輸出を振興させたいという考えがあるならば、財政資金の配分の率を、もっとこれら輸出関連の面にお出し願うことを政府の姿勢として考えていただきたいと存じます。それが問題だと思います。
  19. 田中六助

    田中(六)委員 時間がもう過ぎたという委員長の御注意でございますので、これで終わりますが、ただ、条件でいろいろ問題があるでしょうが、ときどき頭をかすめるのは、商社側の過当競争という問題なんです。国内でもそうですか、外国においても、日本商社が働くのはいい。確かに網の目のようになった白人の中を日本商社が必死になって、血みどろになってわが国貿易発展のために働いていることはわかるのですが、それが過当競争化してむだなことがあり、あるいはそのために、とるべき商社の談合も妙にくずれ去ったというようなことも聞くわけであります。したがって、こういう点の御配慮関係者の方々が十分頭に置いて、いまより以上の効果をあげることを望みまして、私の質問を終わりたいと思います。
  20. 小峯柳多

  21. 永井勝次郎

    ○永井委員 最初に、寺尾さん、足立さんにお尋ねをいたします。  課徴金見通しですが、これはいろいろな運動もあるでしょう、あるいは各国の反応もあるでしょうけれども、見通しとしては、結局は実行されるのではないか、こう思うのですが、その点はいかがでありますか。  それから第二点は、先ほど、日本輸入は原材料が六〇%だ、したがって報復措置日本にとって損だ、だからその課徴金の補完は国内的な措置でやるべきだ、こういう御意見であったと思うのですが、もしそういう措置を国内的に行なっていくというやり方でまいりますと、国の関係から申しますと、これはドル防衛に対する間接協力、こういう結果で、直接援助は直接援助で表通りでやって、裏では国内措置で間接援助だ、こういう結果にならないかどうか。  それから、一方でケネディラウンドなり特恵関税なり、あるいはUNCTADというような会議がずっと進んでおる。そして全体としては貿易自由化資本自由化の方向をずっとやりながら、アメリカでもイギリスでも逆な方向をとってくる。そして国際経済の指導的な役割りを果たしておる。これらの地域でそういうことの方向に動くといたしますならば、国際貿易自由化の基調は転換する。これはまたもとに戻るというよりは、違った形の反自由化の方向に動いてくるのではないか。その場合に、従来の貿易のパターンと、今度新しく、こういう条件自由化運動の動きの中から転換してくる反自由化のパターンとは、どういうふうな違いがあるのか、どういう展望を持ってこれから善処すればいいのか。まずこの三点についてお伺いいたします。
  22. 寺尾一郎

    寺尾参考人 なかなかむずかしい問題でございます。しかし、第一点、これはおっしゃるとおり実現可能性きわめて大です。  それから第二点、その場合、国内処置でこれをアブソーブするということは、間接援助になるじゃないか。確かに一応は表面そうなります。しかし一方におきまして、これによって外貨はよけい入ってくることで、この外貨の獲得という面のメリットも、やはり考えなくちゃならない。あわせて、私は対抗措置ということばを使って、これに対する報復措置ということばは使いたくない。これは、われわれ商社民間が軽々に用いることばであってはならないと思うのでございます。これは、大きく国の政策を遂行される政府国会の問題だと思います。この点は、私発言を差し控えたいと存じます。  それから第三点、こういった貿易自由化をとうとうとやっているのに、それに逆行するじゃないか、そして、みんなまた国境をこさえて、保護政策をやるようになったら一体どうなるか。さっきのシバース会頭の返電の中に、こういう措置をとって各国が貿易戦争に入るということは絶対に避けなくちゃならない。これは全米商業会議所の会頭の名において、やはり同様の懸念を十分お持ちであるということが、率直にあの電報の上にあらわれておるのでございます。したがいまして、かりにベトナム戦争遂行、ドル防衛という点から、一時的にやむにやまれずやるかもしれませんが、これはきわめて短期間の——こっちのほうにもいろいろ関連することがありますが、私は永続的なものでは絶対にあり得ないというふうに感じております。したがって、こういうものが出て、各国が貿易戦争に入るようになったときにはどうするかという御質問でございますが、これはいま軽々に申し上げられない大きな問題で、われわれもそういう事態の出現を考慮いたしまして、十分これからも検討を続けてまいりたいと存じております。  以上、お答え申し上げます。
  23. 永井勝次郎

    ○永井委員 長期展望は無理といたしますならば、重ねてお伺いしたいのですが、一九六八年の国際収支見通しは、こういう情勢の変化はまだこれから動いていくでしょうから、いまの時点で的確な見通しは立たないと私は思うのですが、少なくとも昨年の暮れに政府の立てた国際収支とは、もうすでに違ってきておるわけです。そこで見通しをお伺いしたいのですが、経常収支はいかがですか。それから貿易外収支、これはベトナムの特需が多くなっていますから、まあ好転はしていると思いますが、これもそう安心できる条件ではない。それから長期資本収支あるいは短期資本収支、これらに対していまの時点でどういう分析をし、把握し、そして現実にこれから貿易戦争を担当される皆さんですから、どういう戦略、戦術でこれからを乗り切っていくか、ひとつ四十三年度の貿易収支についての個別的、項目別な見通しを伺いたい。
  24. 寺尾一郎

    寺尾参考人 永井先生御指摘の政府見通し、これは一月二十六日発表の政府見通しの数字はお持ちのことと存じます。先ほど私申し上げましたように、五月、六月のころから輸入課徴金が五%程度課せられるようになりますると、一−六月はこれはもう変わりませんと存じますが、七−十二月の輸出は二億二千万ドル減ということになります。したがいまして、一月二十六日政府御発表のこれから二億二千万ドルをお引き願いますると数字は出ると思います。
  25. 永井勝次郎

    ○永井委員 これは見通しの問題ですから、いま議論してもなにですからあれしますが、貿易自由化といっても、現実には、それぞれの地域に個々的ないろいろな条件があって、必ずしも自由ではなかった。貿易障壁がそれぞれの地域にあることは、ヨーロッパのほうにはやはり対日差別があり、あるいはアメリカには反ダンピング・コードがあり、いろいろ障壁があるわけですが、ことにこういう新たな条件の中で、どういう障壁がそれぞれの地域に出てくるということが予想されるか。それをひとつ低開発国はどうだ、こういうような御意見を伺いたい。  それから第二は貿易外収支の点ですが、これらについては運輸の面あるいは保険の面、旅行の面、投資収益の面、政府取引の面、これらについて、ひとつ見通しを伺いたいと思います。
  26. 寺尾一郎

    寺尾参考人 第一点が非常にむずかしいのですが、しかしあれでございますね。そういったようないろいろな障害は、今度のこういったアメリカの政策によって倍加するとかなんとかいうことじゃないと思います。むしろまだわれわれの伸びていない面を伸ばす着意が必要だと思うのです。私は中東四カ国を二十日余回りまして二十九日帰ってまいりました。いわゆる中東の産油国です。サウジアラビア、イラク、イラン、クウェート、これらを回ってまいりました。ここらにはまだまだ、われわれが考えていた以上われわれが進出しなければならない地域であることを現地に参りまして非常に痛感してまいりました。これからだんだん各方面ともまた御相談して、これらへ少し、いままでのただ物を売るという観点からもう一つ高い次元で進出することを考えなければならない。それに十分値する。また金は幾らでもあるのです。油の利権収入、また石油収入、ですからこれを開拓したいと存じております。これは一例でございますが、そういう面を官民あげてひとつ力をいたしてまいりたいと存じております。  それから、御指摘の貿易外収支。幾らわれわれが一生懸命になって外貨を稼ぎましても、こっちでざるみたいにどんどん海運収支の赤なんというのがこう出てまいりましては、まことに残念なんです。あのノルウェーあたりはわずか人口六百万、それで造船所もたいしたものはありませんし、それから運輸物資だって、あそこじゃ自分の国としてはもう微々たるものなんです。これに比べて、わが国の保有船舶量はまだかれらに負けているという実情、まことに残念だと思います。しかも積み取り比率が輸入で四三、四%、輸出では三八%くらいでしょう。この世界に冠たる造船工業を持っている、しかも海上輸送物資は日本はおそらくアメリカ、ソ連、もうおそらくソ連を抜いていやしないか、それだけの力、物資を持っているのです。なぜもっと船をつくって保有船舶量をもっと大きくして、しかも今度は積み取り比率を上げて、これらの流出する外貨をセーブすることを考えないかということを、これはちょっと貿易以外なんですけれども、常日ごろ考えているところでございます。その他の面も、ソ連にしましても、もうみんな着々やっております。したがいまして、こういうせっかく稼いだ外貨を食ってしまう、流してしまうような面、これはひとつ国会でも大いにお取り上げ願いたいと思います。
  27. 永井勝次郎

    ○永井委員 伺いたいことがいろいろあるのですが、時間がございませんから最後に……。一つは、いまのお答えのように、貿易というのは単に品物を取引するだけじゃなくて、もっと立体的に構造の体質改善の中で分野を開拓していかなければならぬ、ごもっともだと思うのです。ことにそういう見地から、私は共産圏の貿易伸び率が、金額は少なくとも、伸び率は年率で非常に高いわけです。LT貿易にしましても、日ソの貿易にしましても、あるいは東欧各国の貿易にしましても、アメリカのほうを向いて、業界の人たちはびくびくしながら隠れた会社をつくって、そしてこそこそやっておるというようなところがあって、少しへっぴり腰じゃないか。もっとそういう面を強調しなければいけないと思うのですが、その点についてはいかがですか。それが一つ。  それから、特に足立参考人に伺いたいのですが、私は木材関係ですが、詳しくおわかりだろうと思うのですが、木材の日本の現在の需要は六千六百万立方、そのうち輸入の量が二千六百万立方、実に四割近いものが輸入材でまかなわれておる。ことにその輸入もソ連材関係は前年に比べて二五%の値上げ、あるいはアメリカにおいてはこの間も会議をやったようですが、現地の業者が日本であまりに高く買ってもらって迷惑だ、困る、何とか調整してくれというほど過当競争で原木を値上げしてどんどん買う、こういうようなことについてもう少し調整がつかないものかどうか、そういうことが一つ。それから四割近いものが外材に依存しておる。そうしてこれからはもっとどんどん依存率が高まっていく、こう思うのです。そういうようなときに国内需要の四割近い量をノーズロースで輸入するということは少しおかしいのではないか。それから国内で切っている国産についても、人工造林の地帯から切っているものは十万ヘクタールにすぎません。いま切れるような木の人工造林というものはその当時はあまりやっていなかった、こういうのですから、原資はどんどん切り込んで生長率を食っていく、こう思うのです。そういうようなときに、二千六百万立方からの輸入があるのですから、これに関税をかけるということはいけないにいたしましても、国内における流通税をかけて、そこからあがる収益を日本の山に還元していったらどうか。あるいは国内だって木引税その他があるわけです。国内には木引税があるのに、輸入材は全く手放しで入れておる。   〔委員長退席、鴨田委員長代理着席〕 こういう関係を、もっと取引税を課徴して、その原資を投資不足になっておる山に還元していって、できるだけ早く輸入材に対抗できるよう国産の増強をはかるべきでないか、こういうふうに考えるわけですが、これはもう足立さん専門でありますから、そういう関係の御意見を伺いたい。
  28. 足立正

    足立参考人 非常にむずかしい問題で、私はほかのことならば御答弁できますけれども、材木のほうは非常にしろうとでありますが、ただ、いまの現状でいくということはどうも当分はしかたがないのではないかと思います。いまお話しのように、これから植林するにいたしましても三十年、四十年かかる問題ですから、これはむろんやらなければならぬことですからやることはけっこうなんですが、しかし、それに依存するというわけにはいかないわけですから、どうしてもソ連なりアメリカから、もしくは南洋方面から持ってこなければ現在の日本需要はまかない切れぬ。それで私はソ連との間の経済の立場でこの間からも話をしておったのでございますが、しかし、これはまとまらずに、もう少し研究しようということで別れております。別れておりますが、結局はサイベリアを開発するのならば、これから少し割安な木を持ってこれたらば、私はそれが一番便利じゃないかと思います。ところがロシアはなかなか辛いのでして、そう安々とは持ってこれないと思います。それですから、やはり南洋のほうなんかをあさってみて、それで埋め合わせをしていくより現在の行き方では方法がないと思います。この問題はまたお教えを願って、できるだけ勉強したいと思います。
  29. 鴨田宗一

    ○鴨田委員長代理 佐野進君。
  30. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は、いま参考人の方々からお話を聞きながら、あるいはきょうお話があるということでいろいろ調べておったわけですが、特にその中で一致したというか、貿易を振興する場合における問題点として非常に心配なことがやはりお三方から強調されておるという点について、質問したいことの大部分が終わったわけですが、せっかくの機会でございますので、二、三御質問してみたいと思います。  第一点は、いろいろお話ございましたが、結局輸入課徴金の問題にしろ、あるいは貿易振興についての将来の展望にしろ、いろいろな面で一番大きな影響を受けるのは中小企業者である。特に七四%を占める軽工業生産が輸出中心であり、そしてまた輸入課徴金措置によって、繊維、雑貨等を含めていわゆる軽工業に属するものが一番大きな影響を受けるということが強調されております。また事実そのとおりだと思うわけでございますので、そういう点について二つばかりお聞かせをいただきたいと思うのです。  その一つは、いわゆる発展途上国、低開発国と申しましょうか、この方面におけるところの軽工業生産、特に繊維関係の生産というのは非常に急速に伸びを示しておる。したがってこの伸びというものと、低開発国におけるいろいろな政治上の問題と関連して、御承知のように特恵関税問題等があらわれてきておるわけでございますが、そうした場合、アメリカ輸入課徴金の問題と関連して、この低開発国との関連が日本の産業、なかんずく中小企業に対してどのような影響を与えるのか、それに対してどういうような取り組みをしていかなければならないのか、この点についてひとつどなたでもけっこうでございますからお答えを願いたいと思います。
  31. 寺尾一郎

    寺尾参考人 お答え申し上げます。これも御指摘のとおりほんとうにむずかしい問題です。繊維にしても雑貨にしても、香港フラワーあるいは台湾の綿製品の輸出動向等から見ましても、日本としてはこれから受ける打撃というものは非常に大きいことはお説のとおりでございます。ことにそれがお話しのとおり中小企業に最も大きくしわ寄せせられるということは、これは事実でございます。これは御当局でも非常に考えておられると思うのでございます。単に中小企業金融ばかりじゃございません、いろいろ指導センターとか、あるいはこれらの業務提携あるいは統合合併というようなこと、それと同時に近代化、合理化の追求というようなことでこれらに対抗措置考えて、着々施策を進められておるのでございますが、何せ日本には非常にばく大な中小企業が存在いたしておりますので、これらの成果を見る過程におきましても、いろいろ問題が起こりつつあることは御指摘また御承知のとおりでございます。  われわれの側では、いまこれをどうするということはなかなかむずかしいのですが、しかし下請企業的のものの育成、支援強化ということについては、これは同甘共苦的の立場にございますので、一生懸命にそういう面に力をいたしておる実情でございます。これ以上はなかなか、私はそういう面ばかりにあれしておりませんので、お答えいたしかねることを遺憾に存じます。
  32. 佐野進

    ○佐野(進)委員 お答えできないということでございますのに答えろということも無理だと思う。これはわれわれが研究しなければならぬ課題の一つだと思っておりますが、特にこの際お聞きしておきたいことは、輸入課徴金の問題は先ほど来強調されておりますけれども、こういう低開発国の日本に対する特恵関税、特に繊維、雑貨等、後進国において直ちに工業化し得る部門と、日本経済なかんずく中小企業者との競合について、政治的と申しましょうか、いわゆる政策的に皆さんの立場ではどのように判断しておられるかということを一言お聞きしたい。
  33. 寺尾一郎

    寺尾参考人 これにつきましては、特恵関税問題でも、輸入ばかりじゃなくて、広くこういう面の開発途上国からの輸出と競合し、それによって阻害を受けるわが国の特殊事情をUNCTADでもOECDでも大いに強調して、私どもの最近承知しているところでは、大体関係各国ともこの日本の主張を承認したように聞いております。これが中小企業関係に大きな影響、いい影響をもたらすものと私は存じております。   〔鴨田委員長代理退席、委員長着席〕
  34. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこでジェトロにお聞きいたしたいのです。中小企業貿易振興をはかるということになると、大企業はそれぞれの持つ独自な調査機関その他いろいろな資金関係等においてそう心配は要らないと思うのですが、中小企業の場合には、どうしてもそのよりどころをジェトロないしそれにかわり得るようなところに求めなければならないという形があるわけです。したがって、ジェトロの持つ中小企業貿易振興に対する役割りをわれわれは高く評価しておる次第であり、いままでの実績に対してもこれを評価するにやぶさかではないと思う。ことしはそういう面において、先ほど輸出振興事業に対して市場開拓事業強化するというような形の中においていろいろ御説明をお伺いいたしたわけですが、ジェトロの持つ前身的な組織からするならば、いわゆる貿易のあっせん、見本市あるいは海外市場調査、あるいは貿易の直接的な振興というような、中小企業の人たちが一番待望しておることをその役割りとしておるわけです。こういう事態に対処して、抽象的な輸出振興事業市場開拓事業強化するという毎年出ておるようなことでなく、現実当面する問題、前年度いわゆる成長力が予想どおり伸びなかった、ことしも後半非常にむずかしいのではないかという見通しの中で、具体的に中小企業、特に繊維をはじめとする軽工業の人たちに対する対策として、政府予算措置との関連の中で希望するところをお聞かせ願いたいと思います。
  35. 駒村資正

    駒村参考人 先ほど申しましたが、ことしの予算にいたしましても、先年に比べまして二割四分か二割五分ほど増しまして、いま先生からおっしゃいました従来の中小企業の育成のための仕事を進めております。またこういう際でございまして、いろいろとむずかしい問題の起こっていることは御承知のとおりでございますので、なるべくわれわれのところに御相談に来られるように、まずそれが第一だ。今日まで比較的遠慮しておられた先があるような気もいたしますので、なるべくそういう行き渡った方法でもって理解していただくように努力をし、またきめこまかに仕事仕事のたちをよく検討して、その仕事に向くような指導方針で進んでいきたいというふうに努力いたしております。
  36. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は、ジェトロが力が足りないからできないんだということを申し上げておるのでなくて、いまお話しのような形、いわゆる中小企業の方々が進んで喜んでということで相談にいけるということは、なかなかその仕事をやっておる本質からいってもできないと思うのです。したがって、ジェトロのほうで日本における中小企業のいわゆる輸出関係する業態、業種というようなものは一読して判明し得るような調査が行き届いておるかどうか。そうすれば、その業種別にあるいは業態別にそのときどきの国際的な情勢の変化に対応して、そういうような業界や業態に対して、指導なりあるいは通知なりを出すことによって国際的な変化に対応できる日本中小企業貿易体制というものができていくんじゃないか。それをやってやらなければ、あとになって、倒産してから、おれのところに相談に来ればよかったというような、あとで、何か人が悪いような形の中における措置だけに終わってしまう、こういうような気がいたしますので、そういう点についてのお考えを一点お伺いしたいと思います。  時間がありませんので、引き続いて御質問を申し上げておきたいのですが、もう一つの仕事の中で、いわゆる見本市というものの役割り、特に、今日の貿易振興における見本市の果たす役割りというのは私ども相当高く評価しておるのでありますが、ジェトロがこれに対して、日本の見本市はもちろん、海外の見本市に対して果たしておる役割り、今後日本においてどの程度の中核的な組織をジェトロは持っておるのか、これも業務の中心の一つでありますね。これには地方に見本市協会とかいろいろありますが、ジェトロがそれらに対してどういう関連をもって指導しておられるのか、あるいは関連をもって提携しておられるのか、その関係について一点お聞きしておきたいと思います。
  37. 駒村資正

    駒村参考人 第一の問題でございますが、われわれはこの国内にも二十二カ所相談所を設けております。各地で、各県でといいますか、二十二カ所の相談所中小企業の方にも御相談に応じておるわけであります。ところが現実を申し上げますと、各府県おのおの独自の産品について、たとえば塗りものであるとか瀬戸ものであるとか、あるいは民芸品であるとか、そういうようなものについてやはり貿易の対象になるよう御相談に応じているわけであります。各地方のいろいろな産品を紹介して中小企業貿易あっせんを行なっていくというふうなことをやっておりますが、少し高い段階から見ますと、各県でおやりになっておること自体が非常にまちまちといいますか、統制がとれない、また非常に重複もしておるようなかっこうにもなることが往々あるわけであります。私らも時間を得ますれば、各地を回りましてそういうふうな状態を見て、この品物はおやめになったらどうか、むしろこれをお出しになることは他の県とも競合するし、こことも競合するし、しかもこのような品物はもうすでにあまり人気のないものだからというふうなことを、現実においては、各地方の中小企業の方に対しては、その構造といいますか、あり方を非常に強く指導していかなきゃならぬということでありまして、もちろん中小企業におきましても、大きな会社との関連のある、いわゆる下請事業をやっておられる方と独自でおやりになっておる方との間で非常に考え方も行き方も違いますが、その独自でおやりになっておる方のほうに、ただ貿易さえやれば何とか県でも見てもらえるとか見てもらえないというようなことの弊害が各地に起こっておる。これはやはり一応整備していかねばならぬし、整備した上で、一つのまとまったものに対してわれわれとしてはできるだけの御援助を相談所を通じてやっていくということにいたしておるわけでございます。この上ともPRいたしまして、十分われわれの存在と仕事を理解していただくように努力をしていきたいと考えております。  次に、見本市なりEXPOの関係でございます。これはただいま大体日本政府関係しておられますものの実施の面をいろいろとやっておりまして、最近におきましては、いろいろな方面で経験も積んでまいりまして、まず大過なくといいますか、平穏にスムーズに仕事が運ばれるようになりまして、これが一般貿易界に与える影響その他のことにつきましても、非常に私自身といたしましては有意義に進展していると思います。御承知と思いますが、一昨日マニラへ参りまして、日本の工業の生産部門の商品を主として展示会をいたしまして、大統領夫妻も来ていただきました。非常に喜んでいただき、また、先ほどちょっと申し上げましたように、非常にわれわれの心強いのは、最近日本商品のバラエティー、しかも非常にいいものが展示されておる。われわれと同じ地域に住むアジアの日本でこういうものをこしらえておるのだ、フィリピン人もよくこれを見習わなければならないじゃないかというような演説をマルコス大統領が開会の席でせられたようなわけでございまして、非常にこの見本市なりEXPOは有効に働いておるというふうに考えております。
  38. 佐野進

    ○佐野(進)委員 いまの見本市の問題については、これができる限り数多く開催されることはもちろん望むべきですが、非常に数多く開催されるということのために内容がそぐわないということであってはいけないと思いますし、そういう点については、特に展示会専門見本市開催等、ここに書いてございますけれども、その内容等についても十分なる御配慮があってしかるべきではないか。さらに、その面においては、まぎらわしいと言っては語弊がありますが、いわゆるジェトロが責任を持って指導し——責任を持ってということばは適切かどうかわかりませんが、いかなる場合においても誠意をもって努力をされるということがいいことではないか、私の感じとしてはそういうぐあいに考えております。  それからもう一つ、それに関連するわけですが、私もジェトロ海外展示場等も何カ所か見た経験を持っておるわけですが、近時日本商品が高度の技術をもって海外に非常に評判のいいということも私は認めることができるわけですが、これらについては、それぞれの海外の諸都市において形式的に展示するということでなくて、展示場における内容の充実あるいはその都市における特徴と対応した形の中で、やはりただ日本の店があるのだということだけでない配慮が必要ではないかということも感じました。特にそういう面で感ずることは、ジェトロの出張員でありながら、日本の国産品を使うのでなく、いわゆるその国の品物も使えないという、財政的な面における脆弱性かどうかわかりませんが、具体的に言うならば、車にしてもその他のものにしても、やはりジェトロ出張員である、駐在員であるということに誇りを持って、その国の、日本の国の品物が堂々と使えるような配慮がやはり日本の国の貿易を伸長する上に必要じゃないかということも二、三のところを回ってみて私は感じましたので、今後運営の上で、ジェトロ当局において十分な配慮をしてしかるべきではないか、こう考えましたので、意見を申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  39. 寺尾一郎

    寺尾参考人 ちょっと佐野先生に。いまのお話に関連いたしまして、巡航見本市船の効用というものを十分御認識願いたい。これは世界各国に類例を見ないのです。これは外務省から出ている高官でも、これの果たす役割りの大きいことについて十分承知されているはずであります。私も昨年見本市船の団長で、アメリカ及びカナダに使いいたしました。至るところで非常な成果をあげております。いま私の聞いているところでは、いまのさくら丸よりももっと大きな船をつくって、もっと積極的にやりたい。これは一カ所でもって固定しているのより、こっちが回って、向こうから来なくてもどんどん——また実によく配列その他考えてあって、これはアメリカの商工局長なども絶賛しておりました。これをお見のがしなく、これらの問題が出ましたときにはひとつ大いに国会でもバックアップしていただきたいと存じます。
  40. 駒村資正

    駒村参考人 だいぶ話が出たあとでおかしいのでございますけれども、アメリカ課徴金ができたときにこうもしなければならぬ、ああもしなければならぬということよりも、現時点におきましては、どうしても食いとめなければならぬということに邁進すべきである。中川先生がおっしゃいましたように、民間から出ていけということも一つの方法でありますが、先年繊維の問題が起こりましたとき、 ロバート・ケネディがこっちへ来た。国をあげて国会で問題にしていただいて強く反対していただいた。こういうことがアメリカの政策の変更を来たす一つの大きな原因になるのであります。御承知と思いますが、アメリカは、最高国防会議できまらなければ、大きな問題はそういうところで最後にいろいろ変更を起こしたりきまったりするようなことがある国なので、国をあげて、国会でいえば各党が協力、全会一致でこれに反対するということをひとつぜひやっていただきたい。大統領の教書の中にも、いろいろなことを考えれば、ドル防衛一環としての対策によって世界各国に大きな打撃を与えるようなことはしないつもりである、十分顧慮するつもりであるということを言うておられるはずであります。そういうこともあるので、わが国に与える影響が大きい。これはどうしてもわれわれの国にあっては耐え忍べぬものであるし、また先ほどからお話が出ておりますけれども、自由貿易に逆行するのではないか。ケネディ・ラウンドのことが妥結しましたあとで、すぐに非関税障壁のことが起こってくるようでは、われわれはどうしてやったらいいかということを大きくうたってもらって、国全体の声としてやっていただけば対策として望ましいのでないか、そこまでやっていただきたいというふうに思います。
  41. 小峯柳多

    小峯委員長 堀昌雄君。
  42. 堀昌雄

    ○堀委員 いまずっとお話を聞いておりまして、実は私も皆さんとたいへん同感なのは、政府輸出振興ということにほんとうに真剣でないということです。最近では、三十六年から引き締めをやりまして、三十七年は御承知のような状態。三十九年に引き締めをやりまして、今日引き締め。いずれも外貨危機に問題があるわけであります。外貨危機をどうやって切り抜けるかといえば、輸出を振興する以外には道はないわけです。もし輸出が振興しておるならば、日本の経済成長はもっとなだらかに大幅に伸長して、国民生活ははるかに豊かになるべきであるにもかかわらず、こういう天井があるために、そのたびに非常に不用意な引き締めをやって、産業界はもとより、中小企業に多数の犠牲者を出すということが何回も繰り返された。大体子供が火ばちでやけどをしましたら、たいてい子供というのは二度と火ばちに手を出さないのですが、日本政府は性こりもなくこれを繰り返してきておるというのが実は現状でありまして、その点においては、私はもう皆さんの意見に全く賛成なんです。  そこで、それではことしの財政計画なり経済見通しはどうか。いま予算審議の最中でありますから、政府は、この課徴金問題が出た時点では、先ほど皆さんのお答えにありましたように、財政を組み直してでも対処をしなければ、さっきちょっとお話が出ましたけれども、円の切り下げが起こる危険なしとしないと思っているわけであります。いまの政府考え方はやや甘過ぎるというふうに私は判断しております。  なぜかといいますと、三十七年は経済成長を名目五・四、実質五・四と見て、ようやく問題は一応解決をしました。三十九年は名目九・七、実質七・〇という経済成長をもくろんだわけでありますが、これは多少ずれ込みましたけれども、まあまあ何とかなったわけです。ところが今度のほうが、過去の二回に比べると、実ははるかに対外的客観情勢は悪いのです。御承知のようなドル防衛の問題があり、あるいはポンドの問題があり、周辺はきわめて問題がある。そこにまだ特恵関税の問題がこれから出てこようとする中で、名目経済成長率を一二・一%、実質七・六%というような経済見通しを立てておることは、実は非常に問題があると思っています。実はこの経済見通し——皆さんとは別のことでございますけれども、民間の設備投資が二七・五%ことしは伸びたのを、九・七%にしたいのだという。なりません、こんなことには。継続投資がずっとあるものを一ぺんに三分の一に減らすなんという考えられないような計算がこの中には入っておる。さらに輸出入の見通しにつきましても、輸入を七・三%ですか、減らすわけですが、いま鉱工業生産がこれまで一九%増くらいできておるものを、半分の九%に減らすというのは、なかなかたいへんです。ですから、輸入がここまで下がるかどうかということについても非常に疑問がある。そして輸出お話しのように出ていかないということになりますから、財界の皆さん、もうちょっと力を合わせて——自民党政府は一番弱いのは財界ですから、財界が力を合わせて予算の組みかえをしたらどうか。いま皆さんが対策をいろいろおっしゃる中には、輸出入銀行に出資するといえば、いま予備費は千二百億円あるのですよ。何も補正予算を組まないなんてがんばることはないのです。必要があれば補正予算を組めばいいのですから、この中から必要な原資を輸出入銀行に出せばいいのです。あるいは輸出税制の問題についても、今度の税制改正は、輸出割り増し償却なり、それから海外市場開拓準備金の積み増しとを合わせて、わずかに初年度二十五億円しか見ていない。平年度で百三億円しか組んでいない。これがいまの日本政府輸出対策のすべてだということは、私は、皆さんもう少し声を大にしておやりにならなければいけないのじゃないか、こう思うのですが、その点について、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  43. 寺尾一郎

    寺尾参考人 私、先ほど開陳いたしました参考人としての意見の中に、その点について触れたつもりでございます。いわば、輸入課徴金のごときは、これは災害対策費に比すべきものなんですよ。われわれが何かしてそれが起こったのではない。ぽかっと降ってきた台風あるいは地震等に比すべき問題だと思うのです。したがって、堀さんのおっしゃることはまことにごもっともです。何とかそういうふうにしていただきたい。ただ、財界と自民党がどうとかいうのは、これは私どもよく存じませんので、御了承願います。
  44. 堀昌雄

    ○堀委員 それは角度の問題でありますが、しかし冗談はさておき、私、政府は真剣さに欠けると思っております。だからこの点は、ぜひひとつ商工会議所なり、あるいは商社を含めて、これこそ経団連とか同友会とかずいぶんいろいろあるのでしょう。これが歩調を合わせて、政府に、ともかく予備費でも使いなさい、そうして、財政がゆとりがないから輸出振興なんということになっていないということを、ひとつ皆さんここではっきりお答えいただきたい。ひとつそういうのを財界で申し入れる。財界と言ったら聞こえが悪いのですが、日本商工会議所日本政府に対して申し入れるということを御答弁いただきたい。
  45. 足立正

    足立参考人 よろしゅうございます。やります。
  46. 堀昌雄

    ○堀委員 もう一つの問題は、振興策の中身でございますが、輸銀に出資をしたからといって、さっきお話しの七千万ドルないし七千五百万ドルの負担になる、これはストレートにはね返らない。あるいは輸出税制上ガットに問題があろうとも、輸出所得控除をやってみても、いずれも税制上の問題でありますから、非常に間接的に、先のほうで多少はね返ってくるのでして、即効性のメリットはあまりない。ガットなんかに峯まり遠慮しておるから、よそはガットなんかほったらかして、イギリスもカナダも課徴金やってけっこうですと言って貿易収支を改善してきておる。アメリカなんというのは、貿易収支は大幅の黒であるにもかかわらず、課徴金なんというのはもってのほかなんです。ほかの手でやるべきなんです。私のほうに言わせるならば、ベトナム戦争をやめればいいのです。何でもない。一ぺんに三十億ドル、四十億ドル収支改善できる。そういうことをやらないで、黒字のしにさらにウェーバーを出そうなんというのはもってのほかでありますから、輸出所得控除なんかやるべきだ。そういう課税処置だけでよろしいかどうか、その点ひとつお尋ねいたしたい。
  47. 寺尾一郎

    寺尾参考人 もうおっしゃるとおりなんです。確かにわれわれ、もちろん国策——いま国策というのはあんまり用いませんけれども、国策に殉じて一生懸命外貨をかせぐことをやっている。しかし、それは商売でやっているのですから、もうからなきゃだめなんです。したがって、いまの堀さんのおっしゃることも、もうかるようにしてほしいということに尽きるのです。それ以外の何ものでもない。ところが、現にいろいろ政府でもって、輸出割り当て制なんというのをつくろうとしてやっておられますが、メーカーさんが輸出して損するのじゃ長続きしないのです。もうかるように環境を整えていただけば、みんな一生懸命輸出します。だからそこが問題なのです。さっき永井さんおっしゃったように、間接援助になるじゃないか、あるいは見方によってはある点まで間接援助になるかもしれません。しかし、それによって至上命題の外貨獲得が可能になるのですから、間接援助でメリットが若干あっても、外貨の獲得によるメリットと、これまた比較考量する必要がある。いま駒村さんから非常にいい意見があったのですが、幾ら向こうにわれわれみんな出かけていってやっても、それは効果ないとは言いません。しかしそれよりも、国会がほんとうに全会一致でこれに対して反対ののろしを上げたら、これはジョンソンさん相当こたえます。したがって、ぜひそういうふうなムーブメントを起こしていただきたいということを切にお願い申し上げます。
  48. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの点は私ども明日の理事会でひとつ各党と話し合って、本会議において課徴金反対の決議をぜひ上程をして、日本国会の意思を明らかにいたしたい、こう私ども考えておりますけれども、われわれがやはりこの際考えていかなければならないのは、税制とかいろいろなものがありますが、これはみんなずれてシフトするわけです。問題はそんなことでなくて、やはりそれはそれとして、ことしの下期にさらに二億二千万ドルも赤字がふえれば、見通しがあるいは三億五千万ドル、これは私は決してからいと思わない。そのくらいは当然出そうでありますから、合わせると五億七千万ドル。とても下期に収支改善なんていうことにはなりませんから、ことしは七億ドル、来年が六億ドルなんということでは、日本の外貨の状態というものはたいへんなことになりますから、どうしても多少問題があっても、輸出だけはやっていただかなければならない。どこかで多少リスクを補てんする問題は、これはこの際政府考えなければ、前段で申し上げたように、これは国内をデフレに追い込むだけになってしまいまして、国民生活全体がデフレになることは何も賛成じゃないわけでありますから、その点については私ども十分考えていきたいと思いますが、商社の皆さん、貿易関係の皆さんも、ただそろばんだけでやっていただくようなことでは、これはたいへんなことになりますから、その点も当然だと思いますが、要望いたしておきたいと思います。  その次に、いまちょっとお触れになったのですが、ここまできますと、たとえば鉄鋼も原材料を買って輸出しなければならぬものですし、たとえば綿糸にしたって原材料を買って輸出をしなければならない。化学製品にしても、日本の場合に輸出商品というものは、それが一次産品になるか二次加工品になるか、三次になるか別としても、全部要するに原材料を買って出さなければいけないわけですから、ある程度輸出リンク制といいますか、特に鉄なんかについては、設備投資をたいへん御熱心におやりになるのですが、ある程度そういう設備投資等含めて、輸出にリンクしたかっこうでやらないと、要するに輸入はどんどんするわ、それの値段が高ければ国内にだけ売っていればいいということでは問題があろうかと考えますが、輸出リンク制、割り当て制といいますか、こういう問題については、皆さんはどういうふうにお考えになっておるか、ひとつ寺尾さん、駒村さんからお答え願いたい。
  49. 駒村資正

    駒村参考人 御説のとおりに、先ほども問題が出ましたけれども、日本の国柄として、原材料を六割以上も輸入しておるわけであります。貿易の収支その他のことに関しましては、ある程度の原材料の輸入をチェックすれば、すぐにもとへ戻る非常に便利な国になっておるわけです。しかし産業といたしましては、綿業界にいたしましても、鉄鋼界にいたしましても、原材料を何カ月持つのが適正原材料の保有であるかということが一つの大きな問題であります。そのうち、いま政府でも非常にやかましく熱心にお進めになっておるように、つまり輸出と内需とのパーセンテージを一応きめたようなかっこうをして、どうしても輸出はある程度輸出をしなければならぬというような考え方でメーカーもやっていただいて、それに見合った設備をし、そして何カ月分を持つのが適正な保有原料であるかということを、これは非常にむずかしい問題でありますがきめていただいて、そして最後の場合においては、私は輸出補助金を出すとかいうようなことに対しては、いろいろ国際的な会合その他で問題があるので、輸入のコストを安くするような方策を日本として大きく立てたらどうか。六割以上も原材料を持ってきて、またそれを加工して出す日本の国柄ですから、原材料をより安く買い付けすることができるということになれば、そのコストは正確に勘定すればそれだけ安くなる。輸出奨励金を出すようなかっこうをしないで、輸入の面で、物を買うときに、日本政府が、こういう国柄であるから、これに対してこれだけの援助を与えておるということになれば、世界の各国としても、向こうは売るほうですから、それに対してあまり大きな文句は出ないのじゃないかというふうな気がいたしております。これもよく調べていただかなきゃ、まだいろいろむずかしい問題があるかもわかりませんが、私は、日本の国柄に対して、輸出よりも輸入の点で、少し大きく考えてみたらどうかという構想でおるのでありまして、いま先生のおっしゃいましたリンクするといいますか、もちろんそういう場合には、原材料の輸入にミートした相当数の輸出量が前提として行なわれていけば、わりあいにうまくいくのじゃないかと思います。
  50. 堀昌雄

    ○堀委員 最後に一つだけ。今度KRが実施をされまして、日本もこれに伴った関税定率法の改正を今回出しておるわけですが、その中で、対中国の問題でございます。実は銑鉄と大豆は除外しまして、中国といえどもKR並みの関税定率法の引き下げにしているのですが、生糸が、かなりウエートが高いにもかかわらず疎外をされておるわけですね。この問題は、それでは生糸の関税率が、結局よそに比べて高くなるわけですから、もし中国が、関税が高いからということで、これを香港へ出して香港ルートで入ってくるということになりますと、中国貿易の場合バーターですから、これは日本輸出がそれだけ減るということが起こるわけですね。私は昨年西欧経済を見ておりますと、西欧経済といえども、実は輸出が非常に伸び悩んだけれども、西欧諸国が、それを東西貿易でカバーしたというのが六七年の現状でございます。さっき永井先生もお触れになりましたけれども、私どもはもうそういうイデオロギーの問題を離れて、西欧諸国がやっておることは、当然われわれも東西貿易を広げることによって、先進諸国間の貿易の下がった部分を補わなければならぬときにきておるのにかかわらず、いまの生糸が、銑鉄、大豆と特別に異なった方法で、今度KRの処置をされているのがいま提案されているのですが、そんなことはたいして問題じゃないので、やはり生糸も銑鉄や大豆並みの取り扱いをすべきではないか、こう考えておるのですが、それについて寺尾さんのお考えをひとつ伺いたい。
  51. 寺尾一郎

    寺尾参考人 お答え申し上げます。これは堀先生、結局農林関係にひとつお話しくださいませ。私も関税率審議会に席を持っておりますが、そういう点で矛盾を感ずるのですけれども、これはもうわれわれが言ってもだめですね。この前のバナナなども、あれはずいぶんやったのですけれども、きめて今度は国会に提出されるまでの間に、一ぺん活字を消してペンで直したのが、また元の活字に戻るというようなことになりますので、おっしゃるとおりだと思いますが、これはちょっと力及ばずでございます。どうぞあしからず。
  52. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  53. 小峯柳多

    小峯委員長 吉田泰造君。
  54. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 きょうは参考人の方々、ほんとうにお忙しいところをありがとうございました。貴重な時間でございますし、また質問時間もあまりございませんので、二、三点にしぼってお伺いを申し上げたいと思います。  先ほど駒村参考人から、リーダース・ダイジェストに日本商品海外に非常に声価を高からしめておるという話を聞いたのでありますが、それと逆に米国、ヨーロッパ並びに豪州等で、日本商品のボイコットが起きておるということですね。この最大の原因は過当競争で、日本商社間の過当競争に基因したものが非常に多いと思うのであります。そういう実情をお伺いしたい。もちろん資本主義経済の原則として競争は当然でございますが、日本の場合、外国と競争するのではなくて、日本商社問がお互いにどろ仕合いをしておるということが非常に多いのではないか。一部の人は、いまおっしゃったように非常に日本商品が高く売れるにもかかわらず、国内商社がどろ仕合いをするおかげで高く売れない。また同一市場日本の特定商品がはんらんしており、そうして輸入制限の口実を与えてしまうというようなことが非常に多いと思うのであります。そういう問題につきまして、競争からくるマイナスの要因が各地で非常に起こっておりはせぬのか。そういう業界の最高の首脳者であられる参考人の方々でありますので、こういう点について皆さん方の御意見をひとつお伺いしたいと思います。
  55. 寺尾一郎

    寺尾参考人 まことに遺憾でございますけれども、ないとは言えないのです。しかし私ども、戦前アメリカにおりましたそのころから見ますと、いまのところはそういう現象はずいぶん少なくなっております。また、いま先生のおことばにもあったように、過当競争、過当はいけないのです。しかし公正競争は、これはもうぜひ必要なことでございまして、それは先ほど永井先生も田中先生もおっしゃったと思います。それから中川先生がまたおっしゃっていただいたと思うのですが、砂漠の中を、ちゃんともうかばんを持って、みんなあごひげはやして回っている。競争心がなければそんなことはできない。酒も飲めないところで、砂漠の中をそうやって高い日本品の販売に努力している、この努力の渕源は何かというと、やはり競争です。ただそれが過当になりますと、お互いに足の引っぱり合いなんかして、いま先生のおっしゃったように、外国と競争ならいいけれども、国内の競争になるのですね。これはよく商社性悪説などと言いますが、何でもかんでもみな商社がしょわされるのですが、そのうしろにあるものをよく御認識願いたい。このごろは四社連合で日本としては一本の札を入れるとか、非常に協調ムードで、競争より協調という面にわれわれ一生懸命になっておる。しかしながら若干やはりあとのほうから、バックシートドライバーがおりまして、これがそれ売れ、それ売れ、売るのはこれだけ出してやるからそれ売れ、こういう面があるわけですね。もう一つ掘り下げますと、そのうしろには銀行さんがいる。そういうわけで心ならずも競争している面必ずしもなしとしません。しかしこれはもうあれですな、戦後貿易自由化時代から、お役所の指導方針もそこにありましたし、われわれもこれを受けて、いろいろ商社間の会合など持ちまして、お互いに親睦をはかり、そうして一つの線にまとめていくような努力をずっとやっております。あるいは商品別に、あるいは地域別に過当競争の弊を除去することには一生懸命にやっているのですが、これはなかなかむずかしいです。国会の野党四派の協調がどうとか、自民党と何とか、よく新聞で拝見いたしておりますが、これと同じような面がありはせぬかと思います。
  56. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 非常に手痛い御回答でございまするけれども、私が申し上げたいのは、最後に、貿易輸出の秩序ということに触れてまいりたい、その前段の質問として二、三さしていただいておるわけでございます。大体御意向もよくわかりますし、業界の実態をそういうふうに把握なさっているというのはそのとおりだと思います。ただ角度を変えて、貿易業者が非常に乱立しているのじゃないか。これは通産省の貿易業態の統計表によると、年間輸出入取り扱い額百億以上、これを扱っている大規模な商社は全商社四千百八十七企業のうちわずか一%、三十九企業にすぎない。輸出入取引額では輸出の六九%、輸入の八〇%を扱い、大商社に対する集中度は非常に高い。このうち日本商社を代表する大手商社十一社は輸出の五二%、輸入の六七%を扱っておる。一方、小規模、これは年間輸出入取引高十億以下、従業員十人前後ですね。こういうところは三千八百七十四企業日本商社の九二・五%を占めている。取り扱い額に占める比率は輸出が一五・一%、輸入が六・五%を占めているにすぎない。  こういう統計を見てみますと、貿易業者のほとんどが非常に小規模な業者である。また取り扱い額のほとんど大部分が少数の大手商社に握られておる。こういう、いわゆる貿易業界の二重構造、こういうものが乱立した結果で悪い過当競争、適当競争でなくて過当競争に拍車をかけておるんじゃないか。こういう問題について、これはたびたび——もちろんいま四社協定とかいろいろなことで非常に協調をとっておやりになっているというような話でございますけれども、過当競争について、何か業界でそういう指導的ないろいろな会を持たれたり、あるいはそういう指導をなさっている現実のそういう機関がございますかということをお伺いしたいと思います。
  57. 寺尾一郎

    寺尾参考人 確かに、たとえば日本貿易会とかいうようなところで、また商工会議所あるいは経団連も若干これに関連いたしますが、やってはおりますけれども、これはなかなかむずかしいのです。たとえば、御記憶かと思いますが、前に商社登録制をやろうという御指導があったのです。登録制さえできなかった。これはもう憲法で保障されているのだといって電話一本、それから女の子一人、三人でも貿易商社は成り立つ。したがいまして、これはもう一番通産御当局の頭の痛いところだと思います。これを整理するとかいうことは、さっきの中小企業問題にも関連してまいりますが、なかなかできない。そこで、中小企業指導所とか技術指導センターとかいうようなことで、これからもなかなかたいへんなんです。中小企業のほうが御案内の雇用関係が非常にむずかしくなっておる。先ほど堀先生も御指摘になったが、倒産ですね。いまは倒産のおそらく半数は資金面で倒産するんじゃないですよ。結局労働関係で倒産している。労働倒産ということばがこのごろできているのです。これはみな賃金の高騰のために製品のコストが上がって、あるいはもう今度は雇用できないのです。せっかく設備をいたしましても、それに要する従業員の半数も集まってこない。また集まっても、それがどんどん高給が取れるところに逃げるということから、契約の不履行あるいは今度は資金繰りの悪化、これによって倒れるといったような労働倒産が起こっている、こういつたような実情でございます。しかし、だからもっと整理統合していきたいと思っても、幾らお役所でそういう指導をなさっても、なかなかそこへ行けないのが現状でございます。だから、それを整理していく、少数化していくという適確な施策を行なう機関、こういった機関は一応できますけれども、実効あがらざる現状であります。
  58. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 貿易輸出入の業者が、いま輸出なんかの場合一番問題になっているのはいわゆるコミッションセールス、これに問題があるのではないかと言う人が一部おるのですが、それはなるほど日本の場合、取引量を増大してコミッション率が非常に低くなった、過当競争でますますそれに対し利益率が下がっていく。大手商社、いまの寺尾参考人も三菱のあれでございますが、そういうおたくなんかの会社の場合、実際の収益率を見ると非常に低い。〇・二から〇・六くらい。大手商社がそういう状況で収益率が非常に低い。したがって、取引の増大をはかっていく、ますます利益が低下していく。ということは、大手商社なんかの利益率の低下による過当競争に拍車をかけることに結果的になっておるのではないのか。コミッションベースによる商売の場合、これは「輸出戦略」という豊永さんの書いたものがございますけれども、やはり商社がメーカーと独占的な契約を結ぶとか、あるいは外国市場を独占する商社同士がカルテルを結成する、お互いにそういう条件を充足しなければどうしてもいけないのではないかというような考え方が言われておるのでございますが、そういう問題についてあくまで低マージンで——資本主義の体制下にあるなら競争というものが当然の権利であるといって片づけながら、ますますそういう状態の悪循環日本輸出入業者が繰り返そうとするのか。あるいは何らかの意味でそういう協調をしようとする意思があるのかないのか。そういうことはできないから放棄するのか。そういう考え方をひとつ明示願いたいと思うのです。
  59. 寺尾一郎

    寺尾参考人 非常にむずかしい問題だと思います。しかし、これが限度を越えればまいっちゃうんですよ。だからそこに限界があると思います。ただ、これは吉田先生などよく御承知だと思うのですが、アメリカだとか、まあアメリカが一番はっきりしますが、各国のマージンというものは非常に大きいのです。ところが日本では、これはやはり小さな島に一億の民がいてお互いに食わなければならないから、日本ほどこんなに卸と小売りの値幅の狭い小さいところはありませんね。それと同じ原理がやはり働いているのでございます。したがって、初めてアメリカから来たようなアメリカのメーカーさんとかあるいは商社、これなど日本に来て驚くんですよ。したがって、この間うちから盛んにやかましく言われております資本自由化に伴う外国企業商社日本上陸なんというのも、言うほどすぐ実現しないのは、あけてびっくり玉手箱というやつですか、そういうことです。われわれだってやはりほんとうは利益を追求しているんですからね。幅のあるところを念願しているんですけれども、それをそうさせない経済機構と申しますか、流通・消費機構と申しますか、そういう日本独自の形態があるために、われわれもこんな低マージンで甘んじていなければならない。これはさっき吉田先生がおっしゃったように、四つのカテゴリーのどれかに、ぱっととうふを切るようにうまくいけばいいのですけれども、おそらくこれはそうはまいらないと存じます。
  60. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 いまの参考人からの御回答で、大体の業界状況は、なるほどむずかしいこともあるだろうし、たいへんな難問題だと思うのでございます。ただ、そういう問題で輸出秩序を確立するということの前段のために御質問をさしていただきます。そういう秩序を確立するためにアウトサイダーを規制して輸出入取引法を改正するとか、そういうものの考え方、もちろんこれは国会の仕事でございますが、業界の最高の指導者でおられる参考人の方々でございますから、そういうようなアウトサイダーを締め出して、輸出入の秩序を正しくしようじゃないか、そうして国際競争力をつけようじゃないかというような考え方がおありかどうか、同時に、いわゆる専門商社、専門化したようなものの考え方、これは通産省もそういう意味でいろいろ整理統合ということを考えておるようでございますが、たまたま日経のおととしの新聞で水上達三さんの提案でございますけれども、これはその原文のままでございますけれども、「それは市場別、商品別の専門商社を育成することである。欧米には十年一日のごとく同一市場向けの、同一商品を手がける専門商社が多い。これが責任ある輸出をすればそこに信頼が生まれ、採算の合う安定輸出の素地ができる。専門商社は当然小ツブとなり、市場調査などには外からの手助けが必要」で、それをカバーするためにジェトロ海外調査網と有機的に結びつける。それによって総合商社との調整もスムーズになれば「百億ドル輸出時代の輸出秩序確立に大きく貢献するであろう。」こういう一つの論文が日経に載っておったのでございますが、そういう問題を、そういう業界の最高の指導者でおられる方々でございますので、お考えになっておられると思うのですが、実際できない、へたるまで何とか〇・二%、〇・六%——三菱さんはたいへんな財閥でございますからそれでいいと思いますが、そのままでいかれて、これから工業立国で、輸出でめしを食っていかなければならない日本の将来を考える場合に、はたしてそういうことで業界の人はいいのかどうか。非常にむずかしいけれども、何らか抜本的な政策を困難があると思うが打ち出すべき時期にきているのじゃないか。したがって、いまの水上さんの論文じゃございませんけれども、確かに専門化して利益率を上げていく、そういうことによって過当競争を防いでいく、そういうことが目下の急務になっておるのじゃないかというような気がするのですが、そういうお考えに対して再度お考えを承りたいと思います。
  61. 寺尾一郎

    寺尾参考人 いまの水上君のあれは、当時政府というか御当局からもそういうあれが出まして、非常に考えていた。ただむずかしいのは、これは経済的には非常に望ましいことですが、しかし社会的に考えたらどうでございましょうか。おまえのところはもういけないぞ、ちっぽけなことをやっちゃいけないぞ、おまえのところはやめろと言ったら、これは経済政策としてはいいかもしれませんが、社会政策としては非常な問題が起こると思います。これが一点。  それから、もう一つの、一つの商品を十年にわたって一地域でもって大いにやっておる、これはおそらく先進国で、もうある程度まで伸びたところ、たとえばドイツだとかアメリカだとかあるいはイギリスだとか、そういうようなところであろうと思います。はたしていまの日本輸出量がもを限界に、かれらのそこまでいっているかどうか、そこまでいってからだったら、今度そういう保守的のそれで利益を増大する政策を当然とるべきだと思います。しかし、いまその段階にまで来ているかどうか、これが問題だと思います。したがいまして、前者に対しましては、経済政策としては非常にけっこうであるが、社会政策上はたしてそういうことが可能であるかどうか。第二点におきましては、日本現状で、日本は満足していいのかどうか。満足できる状態でないとすれば、あるところまでいくまではまだそういう退嬰的な、と言っちゃ語弊がありますかな、方策はとるべきではないのではないかというふうに考えます。
  62. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 寺尾参考人の御意見もっともでございますが、経済的に許されて社会的に非常に許されないならば、中小企業の、現在の国内産業を見てみますと、だんだんいわゆる事業団がつくられたり、いろいろな体質改善、構造改善ということが一番大切なことであり、非常に急がなければいかぬということで精一ぱい取り組んでおるというのが現状でございます。したがって、貿易商社にそれができない、社会問題としても取り上げることもできないというような体質でもなかろう。ほかの業界、もっとそういうところの低い次元の業界でも構造改善の必要性が叫ばれておる、そういう方向に向いておるという現在の時点をとらえまして、経済的に非常に高能率を発揮できるかもしれませんけれども、社会的にやりにくいというような考え方を首脳者の間で一変をしていただきまして、御認識をしていただいて、何とかいわゆる構造改善の方向に貿易業界が向いていっていただくように、そういう御指導をお願い申し上げたいと思います。  なお、時間がございませんので、もう一点だけ最後にお伺いいたしますが、現在、大手商社が信用状なしの自由取引を非常に要求し、望んでおる。中小の商社は、それは海外に支店もありませんし、また代金回収とかいろいろな点でも不利になるので反対しておる。こういう信用状のあるのとないのと、大商社の場合の貿易の比率はどのくらいになっておるかということ、いま御質問申し上げたようなそういう動きがあるのかということと、それに対する考え方、信用状についての考え方、そういう点を最後に御質問を申し上げたいと思います。
  63. 寺尾一郎

    寺尾参考人 これは私いま持っておりませんで、はっきり申し上げられませんけれども、私は、数年以前から総合商社貿易デパートになれということ、つまり中小業者、中小商社ですね、これは向こうに支店を持ってないので駐在員もいない。ジェトロがその補完をしておるのですが、むしろこういうところは優秀な品物であるならば、総合商社を使って、総合商社の信用を利用してやられたらいいのじゃないか。要するに、総合商社貿易のデパートメントストアというふうに活用されることが望ましいという意見をいつか私は新聞に書いたことがあるのですが、これは一部できておりますが、しかし、まだわれわれの満足するようなところまでいっておりません。しかし、先生のおっしゃるとおり、構造改善なり何なりについては及ばずながら御協力申し上げてやっている現状でございます。  これではたしてお答えになるかどうかと存じますけれども、以上御回答申し上げます。
  64. 小峯柳多

    小峯委員長 岡本富夫君。
  65. 岡本富夫

    岡本(富)委員 参考人の方にはおそくまでお食事もなさらずにたいへん御苦労さまですが、もう私一人ですからよろしく……。  大体いろいろとお聞きしたいことは尽きましたので、もう一つお聞きしたいことは、最近、日中貿易、LT貿易についてやかましく言われておりますし、また、政府もそういうような方向に向きたいということを言っておりますけれども、これについていまいろいろお話を伺っておりますと、大体、対米輸出のほうが非常に多かったと思うのです。これについての御見解なり、あるいはまたどうしたらもっと伸びるだろうか、こういうことについて、これは会頭さんにお願いしたいと思いますが……。
  66. 足立正

    足立参考人 こちらのほうが専門ですから……。
  67. 寺尾一郎

    寺尾参考人 お答え申し上げます。たまたま輸出振興に関する現下の問題というので輸入課徴金の問題から対米関係が特に本日の話題になったのでございますが、われわれ決して対米一辺倒でやっておるわけではございません。しかし、少なくともいままでの現状日本貿易量の三分の一、これがアメリカ、三分の一が東南アジア、三分の一がその他の欧州並びにアフリカ、こういうようなかっこうになっております。それで過去二、三年の輸出増大にわれわれの一番指向いたしました地域は欧州並びにあちらのアフリカ、中東関係、これに指向しておりました。それでだいぶふえてまいりましたが、この面は今後とも大いにやっていかなくちゃならぬ。それから共産圏各国、ソ連、東欧、それから中共、こういったところも協力いたしておりまして、ここにございますが、輸入におきましては、中共が四十一年には三・二%日本輸入の中で占めておりましたが、これが四十二年は二・三%に減っております。それから輸出は三・二が二・八にこれも減っております。しかし今度は、ソ連圏につきましては、四十一年の三・二が四十二年には三・九にふえておりますし、輸出は逆に二・二が一・五に減っております。東欧圏は輸入の〇・五%が〇・九%にふえ、輸出におきましても、〇・六が〇・七にふえております。そんなようなあれで、地域別に見ますと、むしろアメリカからの輸入は二七・九から二七・五に微減、それから輸出も三〇・四から二八・九に微減しておりますし、先ほど申し上げましたように、西欧各国につきましては、輸入が九・一から一〇・四にふえておりますし、輸出も一三・三から一三・七にふえております。  われわれの指向しておるところは着々実効があがっておるわけでありますが、先生のさっきお話しになりました中共関係のほうは、例のLTの関係やら、それから例の毛・林の台頭で若干ごたごたしまして、それで若干減っておりますけれども、まあ今度はLTがOLになるかどうか知りませんが、何かまたそこに妥結がつきますれば、必ずしもこんなことではないと考えております。
  68. 岡本富夫

    岡本(富)委員 もちろんアメリカのこの課徴金に対しては私どもは反対でありますし、日本はどうしても輸出にたよらなければならない国情でありますけれども、いまお聞きしたのは、今後の日中貿易に対する、いまいろいろ現状お話しいただきましたけれども、これからの促進の方向についてお聞きしたいと思ったんです。  それで、ジェトロは、そういう中共に対してどういうような活躍をしておるのか、ちょっとお知らせをいただきたい、こう思います。
  69. 駒村資正

    駒村参考人 お答えいたします。ジェトロは、いま直接LT貿易にも関係いたしておりません。で、高碕事務所にはジェトロを通じて出しております。事務的にはいろいろとジェトロが直接高碕事務所の仕事をやっていますが、まあ局外者のようなかっこうで相談しております。
  70. 岡本富夫

    岡本(富)委員 将来こちらのほうにも輸出入の振興をしていかなくてはならないと思うのですが、では将来はやっていくようなお考えでしょうか、また現状維持か。
  71. 駒村資正

    駒村参考人 政府のおきめくださることで、やれと言われれば明日からでも関係いたします。そういう関係でございます。中共から見ましても、やはり日本というこれだけ発展した産業国を無視するというわけにはどうしてもいかない。日本側から考えますと、いま輸出入銀行資金に非常に制約されて、どうしてもそれを使わなければいかぬというような考え方で交渉しておられると思われます。その問題が気軽く片づくような——資金コストとしては、中共から見ても必ずしも輸銀資金コストよりも高いというものでなく、われわれ同等もしくは以下でもやれるような場合があっても、やはりどうしてもその問題にかじりついていろいろな難問題が発生しているように聞いておりますが、何とかして中共とも経済的にもっともっと交流を進めていきたい、こう考えております。
  72. 岡本富夫

    岡本(富)委員 この問題は、時間がありませんからそのくらいにいたしまして、今度ケネディラウンドに基づいて関税の一括引き下げというような意見が出ているわけですけれども、そうしますと、この日中貿易の促進面から対中共の輸入の関税も引き下げるべきであるか、それとも現在のままでよいか、これについてちょっと、駒村さん。
  73. 駒村資正

    駒村参考人 これは相対的に国と国とのこともやっておられるわけでございますので、中共との間の問題が出ておらなければ、おそらくケネディラウンドの利益といいますか、かりに下がることが利益とすれば、利益はお互いに受けられないのではないか、こう考えます。
  74. 岡本富夫

    岡本(富)委員 ちょっと理解に苦しむのですけれども、これに対する御意見がございましたら、今後の私どもの法案の審議にいろいろとまた参考にしたい、こう思いますので、ひとつお願いいたします。
  75. 駒村資正

    駒村参考人 ただいまのお話はむずかしい問題でございまして、関税なんかお互いの国でいろいろと話し合いすれば、必ずしも——もちろん最恵国条款とかというものもありまして、それに影響するという点もございますが、まだ国交が正式に回復しておらない国との間でありますから、その問題はやはり個々に解決していくよりしようがないんじゃないか。一般の各国の内容をそれにあてはめて、均てんしていくということはできないんじゃないかと私は思っております。
  76. 寺尾一郎

    寺尾参考人 中共との関税のあれは、中共がガットに加盟していないのですよ。ですからその意味で、いまその爼上に乗ってこないのですよ。そういうことです。
  77. 岡本富夫

    岡本(富)委員 最後に、国内問題について……。  実は私は兵庫なんですけれども、大阪とか神戸に零細な貿易業者がございますが、状況によってはすぐ倒産して大きな影響を受ける。これに対して、倒産するのはしようがないんじゃないかというのじゃなくて、何か育成法と申しますか、こういう業者の育成等で何かいい御意見がございましょうか。
  78. 駒村資正

    駒村参考人 中小企業の育成法というものに対しましては、もちろん非常にむずかしい問題でありまして、中小企業庁でもいろいろとおやりになっておるわけであります。合同さしたりあるいは転業さしたり、いろいろなことをして、体格の強化ということを非常にうまくやっておられるはずでございます。今日は、私の了解しておる限りにおいては、必ずしも資金の問題じゃなくて、先ほどもいろいろな話がありましたような雇用の問題とか、つくっているものが売れないというようなことがございますが、そういうようなことで結局うまくいかないんじゃないか。業界によっては、特に零細企業の中には非常に過当競争があるので、これを何とかひとつまとめていこうという考えで、いろいろと政府でも指導しておられるはずでございますが、やはり小さくても一城のあるじというようなこともあり、メンツもあり、なかなか一緒になっておやりになるということもなく、この問題は非常にむずかしい問題で、何とか組合をこしらえてやっていくとか、少し各個人の基盤を固めていくといいますか、体格を固めていくというふうなことができなければ、いまのままでは現状のようなことが続いていくのじゃないかというような気がいたしております。
  79. 岡本富夫

    岡本(富)委員 時間もあれですから、もう一点だけ……。  実は最近東南アジアあるいはまた台湾とか韓国で非常に工賃が安く、いろいろなものができる。これに対して今後の日本の行くべき道として、一つはそれよりもいいものをつくる、こういう面がありますけれども、ほかの面で日本中小企業の生きていく道、こういうものの何か参考の話がございましたらひとつお願いいたします。
  80. 寺尾一郎

    寺尾参考人 御案内のとおり、ほんとうに台湾なり韓国なりは非常にチープレーバーで、まあ一時いわれたように日本が安かったのが、今度はまた向こうでそういう問題が起こっている。もう御承知と思いますが、しぼりや何かは京都から韓国へ出しまして、韓国でもってしぼりをやって、また返ってきて売る。つまり、向こうへ出ていく、そのほかに、向こうへそういう工場を持っていく。そうしてそれと合弁する。それでそれをまた日本へ持ってくるなり、そこから今度輸出する。その輸出は、最近はもう独自でどんどんおやりになりますが、この間までは、そういう販路とかあるいは輸出のいろいろな手続、方法等をあまりよく御承知にならないので、それらをわれわれの中小企業あるいはわれわれでもこれらを売って差し上げる、こういったような相互扶助、これを眼目にして企業進出あるいは経済協力という面を生かしているわけです。それからまた、これらの安い品物には対抗するに処置がないです。ですから、先生おっしゃったように、今度高級のものをつくって、その上をまたいくというような、そういったようなことを考え、実施しております。これに伴って関税問題や加工再輸入の問題とか、そういった問題点が発生してきておりますが、これは両国の商工会議所とか、あるいは業者間でおのおの各国の該当機関にアプローチしまして、そうしてこれの是正、調整をはかるというのが現況でございます。
  81. 岡本富夫

    岡本(富)委員 どうもありがとうございました。
  82. 小峯柳多

    小峯委員長 参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、たいへんありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  次回は、明三月六日水曜日午後零時三十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十八分散会