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1968-03-07 第58回国会 衆議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月七日(木曜日)    午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 小沢 辰男君 理事 佐々木義武君    理事 橋本龍太郎君 理事 藤本 孝雄君    理事 河野  正君 理事 田邊  誠君    理事 田畑 金光君       大坪 保雄君    海部 俊樹君       齋藤 邦吉君    澁谷 直藏君       中野 四郎君    中山 マサ君       増岡 博之君   三ッ林弥太郎君       箕輪  登君    粟山  秀君       渡辺  肇君    枝村 要作君       加藤 万吉君    後藤 俊男君       島本 虎三君    西風  勲君       平等 文成君    八木 一男君       山本 政弘君    本島百合子君       和田 耕作君    大橋 敏雄君       伏木 和雄君    關谷 勝利君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 園田  直君  出席政府委員         外務政務次官  藏内 修治君         厚生政務次官  谷垣 專一君         厚生大臣官房長 戸澤 政方君         厚生省医務局長 若松 栄一君         厚生省薬務局長 坂元貞一郎君         厚生省保険局長 梅本 純正君         厚生省援護局長 実本 博次君         社会保険庁医療         保険部長    加藤 威二君  委員外出席者         法務省入国管理         局次長     笛吹 亨三君         参  考  人         (日本赤十字社         衛生部長)   北村  勇君         参  考  人         (日本赤十字社         外事部長)   高杉  登君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 三月六日  せき髄損傷障害者援護に関する請願伊藤宗  一郎紹介)(第二一一五号)  同(北山愛郎紹介)(第二一一六号)  同(坂田道太紹介)(第二二〇四号)  同(戸叶里子紹介)(第二三一四号)  外傷性せき髄損傷障害者援護に関する請願  (西宮弘紹介)(第二一一七号)  同(戸叶里子紹介)(第二三一五号)  クリーニング所適正配置に関する請願(渡海  元三郎君紹介)(第二一四五号)  同(田中正巳紹介)(第二二〇六号)  同(長谷川四郎紹介)(第二三一七号)  ソ連長期抑留者の処遇に関する請願内田常雄  君紹介)(第二一四六号)  同外一件(久保三郎紹介)(第二一四七号)  同(中川一郎紹介)(第二一四八号)  同(藤波孝生紹介)(第二一四九号)  同外一件(白浜仁吉紹介)(第二三一九号)  同(早川崇紹介)(第二三二〇号)  衛生検査技師法の一部改正に関する請願(米内  山義一郎紹介)(第二一五〇号)  柔道整復師法制定に関する請願(吉田之久君紹  介)(第二一五一号)  同(藤井勝志紹介)(第二二〇七号)  同(武藤嘉文紹介)(第二二〇八号)  同(早川崇紹介)(第二三一八号)  登録医制度反対等に関する請願谷口善太郎君  紹介)(第二三一三号)  視力障害者援護に関する請願戸叶里子君紹  介)(第二三一六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  この際おはかりいたします。  本件調資のため、本日、日本赤十字社衛生部長北村男君、外事部長高杉登君の両君に御出席を願い、参考人として御意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 八田貞義

    八田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  4. 八田貞義

    八田委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。山本政弘君。
  5. 山本政弘

    山本(政)委員 昨年の九月に初診料入院料の一部改正がございました。そして十月に投薬の一部改正、それから薬価改正、十二月に医療費改正、こうあったわけですけれども、二月の二十六日の朝日新聞によると、患者負担増受診率が非常に減っておる、こういうことが出ております。それから三月の一日の日本経済新聞にも抜本対策暫定対策のことについて書いてあります。そしてその中で、やはり初診時の自己負担の増加と薬代の一部負担の実施に伴って受診率がきわめて低下をしておる、こういわれております。たいへん皮肉な申し上げ方かもしれませんけれども、私は、政府受診を押えないんだと言っておったけれども、結果的には受診率がこのように減ってきたということは、厚生省が言われてきたようなことではなくて、実際に診療を受けたくても受けられない人たちがたいへん多くなってきたのではないか、こういうような感じがするわけですけれども、この点についてどうお考えなのか、まず御意見をお伺いいたしたいと存じます。
  6. 加藤威二

    加藤政府委員 御指摘のとおり、昨年の九月に特例法初診入院の一部負担改定されました。十月に投薬の一部負担が新しく特例法によってできたわけでございます。その結果によりますところの被保険者受診状況でございますが、これは先生ただいま御指摘のように、若干受診件数が下がっておるという事実がございます。具体的に数字で申し上げますと、昨年の九月は受診件数前月、八月に比べまして四・二%落ちております。十月は前月、九月に比べまして八・九%落ちている、そういうような状況でございます。ただ私ども、これにつきましては、まず九月、十月、十一月は例年非常に気候がいいというような関係もございまして、受診件数が減る月でございます。たとえば四十一年の九月は、八月に比べまして三・一%受診件数が落ちております。特例法の施行されました昨年の九月は四・二%。ですから若干ふえておりますが、前年は三・一%落ちているというようなことで、季節的な問題があることがたまたま特例法の施行時期と合致している。それが受診件数が減った一つの原因であるというぐあいに考えられます。ただしかし、十月の八・九%というのは、季節的なものはあるにいたしましても相当大きな減少でございまして、特例法によって受診件数に全然影響がなかったということは、数字の上からはなかなか説明ができないと思うのでございます。  しかし、私どもは、この相当大幅に下がりました十月の受診件数というものが、特例法ができたために、たとえば薬の一部負担、一日一剤十五円の負担ができたために、こんなに大幅に下がったのかどうかという点については、若干疑問があるわけでございます。と申しますのは、特例法は、先生御承知のように、本人外来のときの一部負担でございまして、家族については全然特例法関係ないわけでございますが、家族受診件数を見ますと、昨年の十月には七・七%前月に比べて下がっておるわけでございます。本人だけではなくて、特例法の全然影響のない家族まで大幅に下がっているということは、私どもは、八・九%下がったというのがすべて特例法影響であるかどうかということについては、相当の疑問があると思うのであります。しいて言いますならば、新聞にいろいろ出ましたので、患者やあるいはその家族の間に、医者に行けば薬代を非常にたくさん取られるのじゃないか、そういうような誤解があったためかとも思われますが、そういう現象でございます。  しかし、その後、一日一剤十五円というたいした金額ではないというようなこと、しかも本人だけだということが大体わかってきたせいだと思いますが、受診件数は再び上昇に転じております。たとえば昨年の十二月は、前月に比べて四・六%のアップになっております。本年の一月は十二月に比べて五・四%のアップということで、十月に一時がたっと下がりました受診件数が、十二月、一月になりますとまた上昇に転じてきておる。こういうことから言いまして、十月の受診件数には、若干おかしな数字と申しますか、相当大きなダウンが出ておりますけれども、その後の数字を見ますと、必ずしもこの程度の一部負担受診抑制ということまではいっていないのじゃないか、こういうように私どもは見ておるわけでございます。
  7. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、受診抑制というものの効果はあまりなかったのだということになるから、それではあなた方は、暫定対策から二年後には抜本改正をなさる、こういうことをおっしゃりたいのですかどうか。その点、もう一ぺん確かめたいのです。
  8. 加藤威二

    加藤政府委員 私ども特例法改正をやりますときに、これによって受診抑制をやろうという気持ちは、率直に言ってなかったわけでございます。一日一剤十五円程度の軽微な負担でございますから。この特例法をやりましたのは、それによりまして財政効果をあげる。と申しますのは、一日一剤十五円であれ、いままで保険で持っていたものを患者負担してもらう。そういたしますと、保険のほうの負担が減るわけでございます。そういうようなことで、特例法によって百八十億くらいの財政効果をあげよう。それをいままで保険で持っておりましたのを患者負担してもらうことによってやろうということで、受診抑制をねらったのではございません。
  9. 山本政弘

    山本(政)委員 それではちょっとお伺いします。これは昨日いただいた資料ですけれども、「政府管掌健康保険診療件数等資料」となっておる。少なくともこのいただいた数字の中では実数で出ておるから、私は外来入院も含んでいると思うのです。そうすると、九月以降の中で外来幾ら入院幾らという数字がありますか。あったらお知らせを願いたい。そうでないと、実際に、あなた方がおっしゃっているように、受診件数がそんなに減っておらないという証明にならないと思うのです。私は主としてこれは外来に問題があると思うからそう申し上げておるので、外来数字をお聞かせ願いたいと思うのです。
  10. 加藤威二

    加藤政府委員 先生おっしゃるように、確かに特例法外来でございますから、外来について申し上げますと、外来本人は、四十二年十月に薬の一部負担ができましたときに、前月に比べて一一%の減でございます。したがいまして、トータルから言いますと八・九%でございますが、本人外来だけを抜き出しますと一一%。ところが、全然関係のない家族外来がどうなっているかというのは、四十二年十月を見ますと八・一%減になっております。家族外来も減になっておる、こういうことでございます。それから本人外来は、その後十二月は三・七%の増。こういうことで、やはり十二月からだんだんまたふえてきている、こういう傾向になっております。
  11. 山本政弘

    山本(政)委員 一月は。
  12. 加藤威二

    加藤政府委員 一月はまだ外来入院の区別の数字が出ておりません。
  13. 山本政弘

    山本(政)委員 九月は。
  14. 加藤威二

    加藤政府委員 四十二年の九月から申し上げますと、四十二年の九月は、外来本人前月に比べて二・二%の減でございます。それから十月はただいま申し上げました一一・一%の減、それから十一月は六・八%の減でございます。十二月になりまして、今度は逆にふえ始めまして、前月に比べて三・七%の増、こういうことになっております。
  15. 山本政弘

    山本(政)委員 そうしますと、やはり外来というのは、一一%、八・一%、六・八%、かなり率としては高い減少ということになりませんか。ここに出ている、実数からいけばそんなに減ってないけれども外来本人から見たって一一%減。一一%というと一割ですね。それから八・一%も一割近い。六・八%もそうです。私はかなり高いと思うんだけれども、この点についてはかなり減少だとあなた方はお考えになっておらないのですか。
  16. 加藤威二

    加藤政府委員 決して小さな減少ではないと思います。相当減少だと思います。ただ申し上げますと、先ほど申し上げましたように季節的なものがある。たとえて申しますと、全然特例法関係なかった四十一年を見ますると、十月は一・四%程度の減でございますが、十一月になりますと六・八%減になっておるというようなことで、季節的なものもある。しかしながら、それを上回った受診件数の減というものは確かにありましたけれども、それは一時的なものであろうという見方をしておるわけであります。もう十二月あたりからまた上昇に転じておるということで、若干ショックを受けましたけれども、すぐまたもとに復活しつつあるという見方をいたしておるわけでございます。
  17. 山本政弘

    山本(政)委員 あなたは十二月ごろからまたもとに復帰しているということをおっしゃったけれども、それではお伺いいたします。  九月に初診入院の一部負担、それから十月の投薬の一部負担薬価改定、それから十二月に医療費改定、こういう条件があるんだけれども、こういう条件がもしもなかったとするならば、四十一年と四十二年、つまり四十二年の推計についてはあなた方はどうお考えになっておりますか。やはりあなた方は、前年度と比べて同じような傾向があるとお考えになっておるのか。あるいは推計があるんだったら、推計として出してください。
  18. 加藤威二

    加藤政府委員 私どもは、医療費の予算を組みますときは、特例法等国会でも申し上げましたとおりに、たとえば医療費ならば過去三年の実績に基づいて推計する、こういうやり方をやっております。それで、受診率なら受診率、一日当たり金額、それから一件当たり日数ということで、過去三年の実績に基づいて推計をやっておるわけでございます。たとえば受診率について言いまするならば、四十二年度は本人入院外については、前年に対して六・一%のアップというぐあいな推計をやっておるわけでございます。
  19. 山本政弘

    山本(政)委員 推計というのは私はいま即刻出せないと思うけれども、十二月というのは、新聞によればインフルエンザも非常にしょうけつをした、こう言っている。その反面に、なぜ件数が上がったのか。これは厚生省からいただいたのですけれども、この金額がやはり上がっている。上がっているのは、一つは十二月のベースアップということもありますよ。同時に雇用増ということもあるでしょう。要するに就業人口がふえたといいますか、そういう条件もあるのではありませんか。そういうものを捨象してみたら、現実には、あなた方のおっしゃるようにそんなにふえてはおらないというふうに考えたほうが、私はむしろ正しいと思うのだけれども、その点どうなんですか。
  20. 加藤威二

    加藤政府委員 確かに十二月から上昇に転じたということのためには件数——いままで私は件数を申し上げましたので、件数につきましては、医療費アップというようなことは問題ないわけでございます。金額につきましては、先生おっしゃるとおりに金額上昇しておりますから、これは医療費アップということはやはり関係あると思います。先ほど来件数について申し上げておりますが、件数については十二月以降にふえたということは、確かにおっしゃるように、インフルエンザが十二月以降、ことに一月になりまして相当蔓延いたしておりますので、その影響は否定できないと思います。したがって、十二月以降上昇に転じた件数のうち、インフルエンザによるものがどのくらいあるのか、あるいは特例法ショックから立ち直ったものがどのくらいあるかという分析はまだできておりませんので、もうしばらく推移を見ませんとはっきりしたことは申し上げられない。確かに先生おっしゃるように、インフルエンザ影響もあるということは否定できないと思います。
  21. 山本政弘

    山本(政)委員 時間が一時間だそうですから簡単に申し上げたいと思うのですけれども、いままでのあなた方のお話によれば、かりに患者に一部負担をかけても、二ヵ月か三ヵ月たてば復元作用が起こってくる。つまりふろ代と同じですよ。これを若干上げると当分ふろには行かぬけれども、人間というものはふろに行かぬではおられないから行き始める。そうすると、それは一つの日常の習慣になっているから、一週間行かなかった者が三日に一ぺんとか二日に一ぺんとか行くようになってくる。あなた方の考えの根底の中にあるのは、いずれ二ヵ月か三ヵ月するならばそういう復元作用が起こってくるだろう、そういうことをお考えになってやっているのですか。どうも答弁を聞いていると、ふえるのはあたりまえです、こういうふうに言っているのだけれども、私はその辺どうもつじつまが合わぬのだ。あなたたちは、財政効果というものを考え抜本改正をやったのだ、こう言っておられる。私の質問に対しては、しかし減っているけれどもいずれ最終的には上がるのです、上がることになっておるのです、こういう話だ。昨年の四十一年の条件と比べてみてもかくかくのとおりでございます。しかし十二月、一月についてはちゃんと上がってきております。こういうふうな答弁でしかないように私は思います。そうすると、あなた方のお考えが何か矛盾しておりませんか。
  22. 加藤威二

    加藤政府委員 繰り返して申し上げますが、特例法でこういう一部負担をやりますときに、財政効果というものは確かに見込んでおります。財政効果というものは、結局、いままで薬なら薬は全部保険で見ておったのを、そのうち一日一剤十五日分だけは保険で見ないで本人負担してもらう。そうするとそれだけ保険負担する分が減ります。それから初診料の百円も二百円にすると、百円分だけ保険負担していたものが減りますから、そういう意味財政効果はある。これを見込んでおるわけであります。これは大体四十二年度で百八十億ぐらい見ておるわけでございます。  そのほかに問題になるのは、たとえばそういう一部負担をやりました場合に、波及効果がどうなるかということが問題だと思うのです。先生はおそらく、波及効果があったじゃないか、そういう百円とか二百円減ったほかに、さらに患者医者に行かなくなって波及効果が出たじゃないか、こういう点をおっしゃっているのだろうと思いますが、この特例法をやりますときに、その波及効果が大いに国会で議論になったわけでございます。これだけのことをやれば患者が行きたくても行けないじゃないかということで、野党の先生から非常におしかりを受けたわけでございますが、そのときに厚生省といたしましては、しかし、この程度負担、しかも千二百万の被保険者のうち、標準報酬の等級の低い七百万くらいの者は免除になっている。そうすると、わりあい月給の高い人たちだけの一部負担でございますから、そういう人たちが一日一剤十五円程度なら、病気になってそのために医者に行かぬということはそうないだろう。そういう意味で、波及効果は全然ないとは言わないけれども、あっても微々たるものであろう、こういうことを御説明申し上げたわけでございます。実際に移してみますと、正項に申しまして、十二月あたり受診率低下というものは、私ども予想以上に大きかったと思いますが、それは一時的なものであって、こういう軽微な負担であり、しかも低所得者の大半は免除されているわけでありますから、そういう点からいきまして、いずれこんなものはたいした負担じゃないということで、ほとんど受診には影響ないのじゃないか、こういうぐあいに考えているわけでございます。
  23. 山本政弘

    山本(政)委員 私はあなたのおっしゃる波及効果というものはあったと思うのです。現実に一割以上の人が最初の月には減ってきておる。そしてその次にも減ってきておる。そしてその次の月も減ってきておる。だがあなた方がとらえておる十二月とか一月という時点というものは、インフルエンザとか、あるいは金額から言えばベース・アップというようなことがあって上がってきておる。しかし、上がってきているということを理由にしてあなた方は抜本改正をさらに推し進めようとしているということを、実は私は申し上げたかったのです。  時間がないからその次に進みたいと思いますけれども薬務局長のほうにお伺いいたしたいと思います。  薬品の収載についてちょっとお伺いしたいのです。これを承認するといいますか、許可を与えるのは、私はかなりな手続があると思うのです。基礎データをまず見、それから臨床データをとり、そして薬事審議会にかけて、最終的に薬務局長のほうでこれを認可されるのだと思う。そこでお伺いいたしたいのは、私は一つの例だけをとってお伺いしたいのですけれども、たとえばある病気についてヒスタミンがきく、あるいは抗ヒスタミンがきく、こういった場合に、この両方の薬を薬価基準収載をするということはあり得ますか。
  24. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 私どものほうで医薬品製造許可を出しているわけでありますが、その際の基本的な態度といたしましては、いま御指摘のように、もろもろの必要なデータを取りそろえまして、そのデータを私どものほうの薬事審議会なるもので相当長期間にわたりいろいろな角度から慎重に審議をしまして、そして許可を与えている、こういう仕組みになっておるわけであります。いまお尋ねのように、一つ症状に対していろいろな医薬品というものが現在許可を与えられているわけでありますが、その際に、これを医家向けの専門の薬として薬価基準収載するという場合には、私どもとしましては、薬事審議会で決定をいただき、これは医家向けの薬としてこれこれの治療効果を持っているというような、学問的な検討の結果による判断がなされた場合においては、それをそのまま薬価基準収載する、こういうような考え方で従来きているわけであります。
  25. 山本政弘

    山本(政)委員 簡単でけっこうなんです。私がお伺いしたいことは、つまり薬の効能、薬効というのが全く相反する場合に一つ病気に適用されるということがあり得るのか、あり得ないのか、そういうことに対して薬務局長としては、かりにそういうものがあった場合には、一体どういうふうにおやりになるのか。承認を与うべきか、与えざるべきか、こういうことなんです。
  26. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 端的に申し上げますと、学問の問題でございますので、一つ症状のために相反するような面でそれぞれ同一の効果を持っておるというような問題につきましては、これは先生もお気づきのように学問の問題でありまして、相当学問的に究明いたしまして、ほんとうにそれが治療効果なるものが出てまいるのかどうかというような点をしさいに検討いたして態度をきめなければならぬ問題だと一般的には言わざるを得ない、かように思っております。
  27. 山本政弘

    山本(政)委員 それではもう一ぺんお伺いいたしますが、動脈硬化というものがあります。これには一つの型といいますか、脳卒中と心筋梗塞というものがある。もう一つ脳血栓狭心症、こういうものがあると思います。そこで後者のほうなんですけれども、ある薬が従来、脳血栓もしくは狭心症に対して有効だとして、学会においても承認をされて使われておった。ところがもう一つ他の薬が、これは薬効からいっても、薬理からいっても、全く相反する論争というものがなされておった。しかもそれが薬価基準収載をされておったということがある。しかもその論争というのはそう古いことではありません。二、三年前のことであります。しかもその相反する薬が収載されたのも、それから間もなくのことである。私、お伺いしたいのは、局長通知六四五号、去年の九月十三日にこれはお出しになっておるのです。したがって収載をされた当時ではないけれども、この「医療用薬剤、審査の基本方針」というものは、つまり九月十三日以降からお使いになっておるのだと思うけれども、それ以前には、このことに対して、これと同じような方針でおやりにならなかったのかどうか。まずその点を簡単にお答えください。
  28. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 昨年の九月の医薬品製造承認に対する基本方針というものの通達でございますが、これの背景については、ずいぶん時間がかかりますが、いろいろあります。簡単に申し上げますと、従来、医薬品製造許可というものが、私ども行政当局としましても若干不明確になっていた。あるいはデータ等のとり方なり何なりが、非常に一つの基本的な方針というものに基づいてやられていなかったというような点が若干ございましたので、そういうような点をはっきり明確にいたしましてつくり上げましたのがこの基本通達であります。したがいまして、いまお尋ねのように、従来もこのような基本的な方針でやってまいったわけでありますが、若干しさいな点にわたりますと、不明確な取り扱いをしていたというようなことがありましたので、そういう点をはっきり厚生省の正式の見解ということで、この基本通達を出したわけでございます。したがいまして、承認自体についての基本的なやり方については、従来と大綱において変わっていない、こういうことでございます。
  29. 山本政弘

    山本(政)委員 それではお伺いいたします。ここに、「提出を求められた資料のうち主なものは、原則として日本国内の専門の学会もしくは学会誌に発表されまたはこれらに準ずる雑誌に掲載され、もしくは掲載されることが明らかなものでなければならない。」こう書いてあります。私が先ほど申し上げたのは、明らかに学会において論議をされたものであります。学会において論議されたならば、業務局長、そのことを知っているはずでしょう。従来脳血栓狭心症に使われた薬の中には、カリクレインというものがある。それ以外の薬は、薬理として、あるいは薬効から見ても全く相反するという、激しい論争があったはずです。そのことについてあなた方もおっしゃるんだったら、これを見ているはずだ。こういう基本方針が従来もあったとするならば、あなた方はこれをやるはずでしょう。これを見れば、そういう論争があったときに、それから間もなくその薬というものを収載することが、はたして厚生省の良心として正しいかどうか、私はそのことをお伺いいたします。
  30. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 臨床データの取り方でありますが、臨床データの取り方につきましては、私どもは、従来から権威ある研究機関等で一定の数量の臨床例を取り番せるように指導はしてまいったわけでありますが、いまお尋ねのように、学会なり学会誌に発表されるとかいうような点についての基本的な明確な線が、従来必ずしもはっきりしていなかった。個々のケースとしてそういうような行政指導をしてまいったわけでありますが、厚生省の正式見解として、いまお述べになりましたような、つまりこの基本方針の中にあるような点が、必ずしも国内的にはっきり明確化されていなかったというような事情がありましたので、ここで私どもとしましては、その辺を明確にいたしまして、学会なり学会誌等で発表されるものとか、あるいは発表される予定のものとか、そういう権威あるものでないと臨床データとしての価値はない、こういう正式見解をこの際出した、こういう事情に相なっているわけでございます。
  31. 山本政弘

    山本(政)委員 大臣にそれではお伺いいたしますが、抗キニン剤とキニン剤がある。そして脳血栓 狭心症については、従来はキニン剤というものが有効だとされておったわけです。ところが二、三年前の学会で、抗キニン剤というものも、いま申し上げた脳血栓あるいは狭心症にきくということで、大きな学問上の議論がなされておったわけです。それから間もなくその薬は薬価基準に登載をされておる。私は、いまの答弁ではデータが云々と言ったけれども基礎データを調べ、臨床データを調べ、そして審議会に十分かけてつくる。しかも同時に、ここに書いてあるように、学会もしくは学会誌に発表されたものでなければならぬと、こう局長通達が出されておる。一つの薬に対して薬理的にあるいは薬効的に相反する薬が出てきたということで、かりにお医者さんが、私はまあお医者さんは勉強するだろうと思うけれども、これもきく、これもきくということで、これを同時に使ったり、あるいは従来こちらの薬を使っておる、そしてその次にはこちらの薬を使うというようなことがあり得た場合には、一体どういたします。要するに薬効が全く相反するものを薬価基準に登載するということ、しかもそれが学会内において論争があったというものに対して、そんなに時日がかかってないにもかかわらず、早急に薬価基準に登載する必要があるのかどうか、そういうことに対して大臣にひとつお考えをお伺いいたしたい。
  32. 園田直

    ○園田国務大臣 ただいま御指摘の薬については、ただいま聞いたばかりで十分研究はいたしておりませんが、少なくとも相反する二つの薬、しかも論争されておるもの、あるいは相反しなくても副作用について疑義が出てきたようなもの、こういうものについては非常に慎重にやるべきだと考えております。と申しますことは、やはり法令できめ、あるいは基準で厚生省政府がきめるということは、それについての責任を政府が負うわけでありまして、もし万々一の場合に誤りがあるとするならば、それは政府が人命に対する責任を負うわけでありますから、そういう点については十分慎重に検討すべきであって、たとえ法令で定める審議会あるいはその他の手続を踏んでおりましても、最終決定は政府でありますから、最終決定が政府にまかされているゆえんのものは、人命に対する最後の責任を負えという点でありますから、そういう点については十分検討しなければならぬ。ただいまの御指摘の点については、さらに後刻詳細に検討いたします。
  33. 山本政弘

    山本(政)委員 私は大臣の答弁で一応了解をいたしましたので、薬の名前を出しません。しかし私は、今後そういうことについては十分に注意をしていただきたい、こう思います。  昨年の健保国会で私が質問を申し上げたときに、薬務局長は、以後ひとつ十分注意をしてまいりたい、こう御答弁なされたことがあります。それは実勢価格と希望価格のことについてであります。五十五国会というのは七月二十一日に閉会になっている。そして二十七日に臨時国会が開かれた。その段階で私はお伺いいたしたのですけれども薬務局長は今後そういうことのないように十分注意をいたします、こういうお話がございましたが、ここに「医薬品業における景品類の提供および表示の制限に関する公正競争規約(案)」というのがあります。これはもちろん厚生省のものではないと思うのです。要するに製薬団体連合会あるいは卸業連合会その他の団体の自主的な規制だと思うのです。自主的な規制だけれども厚生省ももちろんこのことは御存じだと思うのです。私がそういう質問を五十五国会で申し上げて、局長が十分注意をするという答弁をされて間もなくのことです。薬の業者が三泊四日の飛行機の招待旅行をしている。しかもノルマをかけて——ノルマというか、強制的ではありません。強制的ではないけれども、これだけのものを売ったなら大阪から北海道に三泊旅行に連れてまいりますと言って、しかも点数制ですよ。十六点かせいだならばおとな一人、十三点だったら子供一人、しかもそれをセット販売でやらしている。薬を組み合わせてやらせている事実がある。あなたたちは、私が申し上げて、それでは処置をいたしましょうと言ったときに、どれだけの処置をおとりになったのです。
  34. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 医薬品メーカーの過剰サービスの点でございますが、たびたび国会等でも事例を指摘されているわけであります。昨年も健保国会においてそのような事例が指摘されました。私どもとしましては、従来から通達なりあるいは医薬品の業界の会合等において、そのつど、そのつどいまの過剰サービスというものについて早急に自粛するようにということを伝えて、警告を与えているわけであります。そこで、昨年来の私どものとった措置でございますが、昨年の秋に大手の三十六社の最高責任者を招致いたしまして……。
  35. 山本政弘

    山本(政)委員 いつですか。
  36. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 日取りははっきり覚えておりませんが、十月か十一月ごろでございます。三十六社の社長を厚生事務次官が招致いたしまして、当面の医薬品業界のもろもろの問題点についていろいろ警告を発し、また指導をいたし、懇談をいたしたわけであります。その際の席上におきまして、いま問題になっております過剰サービス、添付とかそういうものを含めました過剰サービスというものを今後早急に自粛するようにという警告を口頭で発し、同時にまた、当日集まらなかったそれ以外の医薬品メーカーについても、私どものほうから文書をもって同様の趣旨を徹底させましたわけであります。  それから最近に、ことしになりましてからも、同じように医薬品業界に対して、三回くらいにわたりまして過剰サービスの自粛方について厳重な警告を発しているわけでございます。それから、私どものほうとしまして、そのような事実が認められましたら、その事実を徹底的に究明をしまして、最近におきましても三例くらい、それに類するような事例がありましたので、そのような会社の責任者に対して、厚生大臣あての誓約書をとり、今後一切やらないという趣旨を末端のプロパー段階まで徹底させるというような取り扱いもやっているわけでございます。  そこで、ただいまお述べになりました北海道等の招待旅行というものは、従来のわれわれの指導の方針から言いましたら、事実とすれば確かに行き過ぎの面があると思いますので、さっそくそのような事実を調査しまして、厳重に今後警告を発するなりしかるべき措置をとりたい、かように思っているわけでございます。
  37. 山本政弘

    山本(政)委員 局長、いま最近三例あるとおっしゃった。私の手元に「5月医家向拡売御案内」という資料がある。これを見てみると、おまけというのですか、添付といいますか、これは金額から見てもそれほどのものではないと思うのです。しかし、ここにあるセット、販売、セットで売りなさいというのはたいへんなものですよ。ピリペニ錠七千五百タブレットで十八万円、そしてコーナイン錠一万タブレットで九万円、合わせて二十七万円ですね。これをセットで売りなさい、そうしたら大阪から三泊四日の北海道旅行をさせます、こういうことなんですよ。そんなばかなことがありますか。しかも、これはあれだけ議論になって、大臣、ここに私どもも強行採決を八月二日にやったんですよ。そして八月七日に衆議院を通過しておる。これがやられたのは八月二十四日から二十七日の間ですよ。こんなばかなことが一体どこにあります。しかもABCDというふうにちゃんと薬の組み合わせができておる。そしてイロハニという組み合わせもできておる。イロハニというのはかなり大衆的なものです。大衆的なものについては十三点という点数がついておるのですね。子供さんが行けるということになっておる。十六点のほうについてはおとなです。大臣、一体この点についてどうお考えですか。当時の副議長であり、いま大臣である。私は当の責任者だと思うのだけれども、こういう事態に対して一体どうお考えですか。どう処置されようというのですか、その点ひとつお伺いしたい。
  38. 園田直

    ○園田国務大臣 ただいまの御発言も残念ながら初めて承りますことでございます。しかしながら、御案内のごとく、製薬に対しては厚生省は重大なる監督の責任があると同時に、製薬業務だけは業務の育成指導もまかされております。しかしながら、製薬会社についてはそのような声がしばしば聞こえてくることもございまするし、あるいは製薬の企業の実態あるいは販売の方法等についてもいろいろな問題が起こっております。ただいまの事実は、事実をよく調査した上で検討したいと考えております。
  39. 山本政弘

    山本(政)委員 事実を調査される必要もないほどにこれだれ明白なことなんですよ。先ほど、受診の抑制とか、あるいは復元だとか、波及効果だとか、こういう議論がありました。そういう議論の背景の中にこういうことがあるということをあなた方はもっとお考えになって、ひとつ厳重にこのことについての監督をやっていただきたいと思うのです。  それでは、時間がありませんので次に進みたいと思います。一般的にかぜを引いたときに、診察料といいますか、一体幾らになりますか。
  40. 梅本純正

    ○梅本政府委員 ただいまの御質問でございますが、一般的にかぜとおっしゃいましてもいろいろございますが、基本診察料が、甲表が四十三点、乙表が二十八点、こういうことでございますので、あといろいろの処置を含めましておおむね千円未満に近い程度だというふうに思われます。
  41. 山本政弘

    山本(政)委員 感冒になったら初診料は甲表が四十三点、乙表が二十八点。急性胃腸炎というのも同じように甲表が四十三点、乙表が二十八点。そこでお伺いいたしますけれども、精神療法は診療報酬点数表によれば二十四点ですね。どうですかその点は。
  42. 梅本純正

    ○梅本政府委員 精神療法でございますが、いまおっしゃいました二十四点といいますのは、持続睡眠療法一日につき、あるいはその一回につき精神療法二十四点、こういうことでございます。
  43. 山本政弘

    山本(政)委員 ちょっとお伺いいたしますが、統計的に見て最近ノイローゼというものはふえておりますか。その点どうですか。
  44. 梅本純正

    ○梅本政府委員 ちょっと所管局長が来ておりませんので、正確に申し上げかねます。
  45. 山本政弘

    山本(政)委員 それでは、時間がありませんのでけっこうですが、かぜの診察に私はそんなに時間がかからぬと思うのです。ところが、精神療法の診察というのは時間がたいへんかかると思うのです。その証拠にここに書いておる。診療報酬点数表の四十三ページ、これは備考だと思うのですが、「外来患者に対し説得指導を行なった場合も一回として策定できる。」こうありますね。これは二十四点でしょう。その点どうなんです。
  46. 梅本純正

    ○梅本政府委員 ちょっとただいま年表か乙表か調べておりますので、もうちょっと……。
  47. 山本政弘

    山本(政)委員 甲表の診療報酬点数表に二十四点と書いてあるのです。これはもう少しすぐに調べるようにしてください。これは保険のあれなんですから。  そこでお伺いいたしたいのは、感冒なんかを診察する時間というものは、そんなに私は時間がかからないと思うのです。だが精神療法については、いま言ったように説得指導ですよ。つまり、ノイローゼとか精神的に悩んでいる人たちが来て、いろいろくどくどとあるいは言うかもしらぬ。それを黙って聞いておる。話を中断しないで聞いておる。場合によっては三十分か一時間という時間がかかると思うのです。現に一週間ほど前に、ノイローゼの患者——たぶんそうだと思うのですが、私のところに来た。非常に長文の文章を書いて、それを黙って一時間ばかり聞いてやれば、それで納得して帰るのですよ。現に私の聞いた医者もそう言っている。そうすると、感冒にかかってちょっとした時間の診察で、甲表と乙表で四十三点と二十八点。ところが一時間あるいは場合によってはそれ以上も診察に時間を要すると思われる精神療法については、二十四点しかやっていないのですよ。おそらくノイローゼの患者というものは、私はずいぶんふえていると思うのですよ。そういうことに関して、それじゃお医者さんは、真剣に一時間もあるいはそれ以上の時間もその人に説得指導をやるというようなことはできますか。あなた方は常識でそういうことをお考えになっておりますか。それくらいならそれをやめちゃって、わかったわかった、じゃお帰りなさい、次、感冒、肺炎、そういうふうに診察をやっていくでしょう。そういうふうな傾向になるかもわからないですよ。現に暫定の特例法についてもお医者さんは反対しているのですから。こういう矛盾というものをあなた方はどうお考えになるのです。その点に対する答弁をお願いします。
  48. 梅本純正

    ○梅本政府委員 ただいまの御質問、少し観点が変わるかと思いますが、そもそもこの診療報酬の点数表につきましては、御承知のように、中央社会保険医療協議会におきまして、診療側の委員も加わりまして、そしておのおのの行為につきましての点数の配分をおきめ願いまして、それの答申に基づいてやっておるわけでございます。その点につきましてのいろいろの問題点につきましては、御承知のように、昨年の中央社会保険医療協議会の建議におきまして、今後実態調査の結果を待つて抜本的に適正化をするというふうな形で決議がなされておりますので、いろいろの諸点につきましての抜本的な改正は、この調査の結果を待ちました本年の終わりごろから着手されるという形になっております。
  49. 山本政弘

    山本(政)委員 抜本改正までの一年か一年半の間については、それじゃ精神病の患者というものは二十四点だから、結局はお医者さんというのは、そういうことについては軽視せざるを得ぬ状態に追い込まれておるということも私はあると思うのです。追いまくられているお医者さんは現実にあるのですから。そういうことについて、それじゃ点数配分については審議会があるのだからということで見過ごしていいのか、つまり、二十四点というものについてこういう決定をするときに、厚生省当局というものはそういうことすら考えなかったのか、こういう疑問が私はわくのです。考えたのか、考えなかったのかというその点だけをお聞かせ願いたいのです。考えたというならば、審議会に対してあなた方は、少なくともこの点数は不十分である、そうしないと精神療法を要する患者に対しては十分な説得指導が行なわれない、こういうことがあってしかるべきじゃありませんか。そういうことについては考えたのか、考えなかったのか。これは不合理であるとあなた方はお考えになったのか、ならなかったのか、その点だけお聞かせ願いたい。
  50. 梅本純正

    ○梅本政府委員 御承知のように、この点数表の問題につきましては非常に経過がございまして、先生も十分御承知と思いますが、同じような行為につきまして、そもそも現段階におきまして旧表と乙表というふうな形の二本立てになっております。これも御承知のように、いろいろな事情でこういう変則といえば変則の形に推移したわけでございます。それからその後におきましての点数表の改正も、残念ながら先ほど申しましたような十分適正化された観点で改正をされてきておりません。御承知のように、いわゆる緊急是正緊急やむを得ざる引き上げという形で数次の改定が行なわれまして、そういう経過におきまして、この緊急是正におきましては、医療費アップの配分というものにつきましては、やはり各科のバランスを考慮するというふうな観点でこの引き上げの配分がなされたわけでございます。その点、先ほど申しましたように、個々の行為につきましていろいろと不合理なり不十分な点があると思いますけれども、今後におきましては、抜本的な適正化の際に、しかも資料に基づいて適正化していくということを早急にやる必要があるというふうに考えております。
  51. 山本政弘

    山本(政)委員 中表は二十四点です。しかし乙表は十七点ですよ。乙表は感冒の二十四点よりかまだ低いのです。しかも時間がかかる。そういうことで精神療法なんというものは期待できない。私は今後ますますノイローゼ患者はふえてくると思うのです。そういう点についてもう少し厚生省当局としても考えていいのではないか。しかもこれは備考にちゃんと記入があるわけだ。乙表においては、説得指導とか精神療法については何々に準ずるという明細なことまであるわけですよ。私は、ただ点数だけをここで配分をすればいいという問題ではなくて、医者の立場に立ってだって、そうして患者の立場に立ってだって、この点数というものは変えなければいかぬと思うのです。変える意思があるのかどうか、また変える必要があると認めるのかどうか、その点をひとつお聞かせ願いたい。
  52. 梅本純正

    ○梅本政府委員 ただいま申し上げましたように、先ほどのような経過で非常に当面必要な緊急是正を繰り返してまいりましたために、各診療行為につきましての問題ということにつきましては、やはり抜本的に改正をしまして、全体的に、総合的におのおのの各科の行為を横に並べたバランスというふうな点も十分考慮して適正化をはかる必要があるというふうに痛感いたしております。
  53. 山本政弘

    山本(政)委員 時間が参りましたので、私の質問はこれで終わりますけれども、先ほど申し上げたように、いまの問題にしろ、それから薬のセット販売にしろ、あるいは病気に対して薬効相反する二つの、しかも論争があるにもかかわらずそれが収載をされたということ。これは、あなた方が抜本改正をただ赤字対策としておやりになることは、私どもは反対でございますが、けっこうかもしれぬ。しかしその前に、たくさんのなすべきことがあるということも、ぜひひとつお考え願いたいと思うのです。そうしないと、国民医療とかなんとか言ったって、そんなものは、実際には形骸であるとしか言えないのです。現実に困るのは患者さんなんです。少し患者さんの立場に立って医療政策を——そう言ったら言い過ぎかもわかりませんけれども、医療政策というものをお考え願いたい、こういうことを申し上げて、私の質問を終わりたいと存じます。
  54. 八田貞義

    八田委員長 後藤俊男君。
  55. 後藤俊男

    ○後藤委員 質問の内容は大体日赤事業の関係でございまするが、日赤事業と申しましても広範囲にわたっておられると思います。その中で、特に日赤病院関係につきましてお尋ねしたい点がありますので、日赤病院関係の経営の問題なり、あるいは労使関係の問題なり、あるいは要員関係の問題なり、さらには海外の派遣の問題なり、これらが大体中心になろうかと考えておるような次第でございます。実は昨年の十月であったと思いますけれども、わが党の代表としてある日赤病院を現地調査もいたしました。その内容なり、さらにはいろいろな点につきまして調査もしてまいったような次第でございますが、それらに基づきまして、ひとつ質問をいたしたいと思います。  まず第一番に要員の問題でございますけれども、看護婦の問題でございます。現在病院が全国に百前後あると思いますが、その中のはっきりした数は、私、把握いたしておりませんけれども、半分くらいの病院が、これは看護婦さん関係でございますが、かなりの超勤をやっておられる。しかも超勤はやっておられますけれども、労働基準法三十六条に基づく協定が無協定である。労働基準法の三十六条におきましては、労働組合がある場合には協定を結べ、ない場合には半数以上の代表と書面によって協定をした場合においてのみ超勤は許されるのだ、これがその内容でございます。これらが無協定のまま、今日かなり多くの日赤の病院におきまして、多いところは月に五十時間から六十時間という超勤を、やっておられる、こういうような状態であろうと思うわけでございます。いま申し上げましたように、日赤関係の病院の中で無協定の病院は一体幾つあるのか、無協定の場合に一体超勤をやっておるのか、おらぬのか、しかもそのことが一体いいのか思いのか、しかもそのことに対して今後一体、どうしていくのだ、この点につきまして、きょうは日赤の副社長もおいでになりませんので、出席の責任者のほうから御答弁をお願いいたしたいと思います。
  56. 北村勇

    北村参考人 ただいまの御質問にお答え申し上げたいと思いますが、三六協定の点は、確かに御指摘のように協定を結び得ないような状態の病院が相当数ございます。にもかかわらずやはりいろいろの点から時間外という労働をやっておる現状は実際にございます。しかし労働協約、三六協定を結ぼうというのには相手のあることでございますので、赤十字本社といたしましては極力この協定を結ぶように指導はしておりますが、いろいろな関係からまだそれが実現しておらない病院はあるという実情でございます。
  57. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま言われたように、労使の関係の問題でございますから、いろいろな事情があることはわかっておるわけです。私たちが調査に行きました病院におきましては、過去半年や一カ年ではございません、それ以上の長きにわたって、超勤をやる場合にはこういうふうに協定を結んでやりなさいという法律を犯して、長年月というと語弊があるかもわかりませんが、長い間そういうことがやられておる。しかも、病院側のほうからの三六協定の提案の内容は、これは看護婦等は勤務時間が大体九時間でございますが、さらに一日七時間まで、合計すると十六時間、こういう内容の協定を結ぼう。しかも組合のほうといたしましては、そういう考え方を持っておりません。そういう無理な提案なり、あるいはその他いろいろな条件が伴いまして、この協定が結はれておらぬ。これが失態ではないかと私考える次第でございます。いま答弁なされましたが、大体、全国に日赤の病院が幾つあって、その中で幾つの病院が協定なしに超勤をやっておられるか、その点を具体的にひとつ御回答願いたいと思います。
  58. 北村勇

    北村参考人 お答え申し上げます。実はこの人事問題については、私、直接の担当部長でないものでございますから、はっきりしたことはお答えいたしかねますが、私の聞いておる範囲内では、大体半数くらいは無協定ではなかろうかと思います。
  59. 後藤俊男

    ○後藤委員 いまの問題につきましては、労働基準局長もまだ御出席ではございませんので、あとに回したいと思うわけですが、女子の深夜作業について日赤としてはどういうお考えであるか。労働基準法の関係もございますが、深夜作業については一体どういう考え方であるか。これは皆さんも御承知だと思いますが、新潟の県立病院におきまして、深夜作業のことで、月に九時間以上やらないということで、まさにストライキに入ろう、こういうふうな争議があったことは御承知であろうと思いますが、それなら一体これらを考えまして、日赤において現在女子の深夜作業についてはどういうような方針でやっておられるか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  60. 北村勇

    北村参考人 看護婦の問題だと思いますが、いわゆる女子職員は三交代制をやっておりますので、八時間になります。そういうことになると思います。
  61. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま言われましたのは、瞬間じゃなくして、大体月にどれだけの深夜作業を行なうという方向で指導をしてやっておられるか、こういうことでございます。
  62. 北村勇

    北村参考人 はっきりしたデータは持ってまいりませんが、これはなるべく少なくするという方向には、私どもは指導をしておるわけでございますが、現実の問題といたしまして、八日、九日あるいは十日くらいの病院もあると思いますが、できれば十日以下に押えたいというふうに指導しておるわけでございます。
  63. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま言われましたのは、別に資料に基づいて言われるわけではなし、大体こんなような考え方でやっておるんだというようなお答えでございますけれども、私が調べたところによりますと、一ヵ月間にかなり看護婦さんの深夜作業というのは行なわれておると見ております。事実、資料もあるわけなんです。あなたのほうでそういう関係資料を明確なものをきちっと握っておられないわけですか。それとも国会のことだから抽象的な答弁でよかろうということで出てこられたのか。その辺をもう少し明確にしていただかないと、適当な抽象論議に終わってしまう、こういう危険性がございますので、できればもう少し確実性のあるお答えをいただきたいと思います。
  64. 北村勇

    北村参考人 御指摘のとおり、きょうはそのデータを持っておりませんが、看護課というのがございましてそのほうのデータを持っておりますので、いずれそのデータを調べまして……。
  65. 河野正

    ○河野(正)委員 いまも後藤委員からいろいろ御指摘があったわけです。そういう問題もあろうかということで、実は私どもいろいろ検討を加えてひとつ参考人として日赤の副社長に御出席願おう、こういうことで日赤の副社長の御出席を要請をした。ところが日赤の副社長は、私どもは納得しませんけれども、きわめて薄弱な理由で御出席ができない、こういうことでございます。しかし参考人でございますから、私どももそれはやむを得ぬだろうということで、やむを得ず日赤の副社長の出席については了承を与えた経過があるわけです。したがって、後藤委員のいろいろな具体的な質問については、この日赤の都合、事情によって、副社長が御出席願えぬわけですから、それぞれ責任を持ち得る方の御出席が私は当然だと思うのです。ところが、いまのような御答弁でございますと、これはこの委員会審議もスムーズにまいりませんし、もちろん私どもは、先ほど申し上げますように、責任ある答弁を願いたいということでの副社長の出席要請であったわけですから、そういうことでは因りますし、それからなおまた、私どもも実はいま申し上げますようないろいろな問題点がございますから、そこで、せひ副社長の出席が願いたいというのが私どもの願いであったわけです。私どもわからぬことは言わぬつもりです。ですから出席できない相当の理由があれば私どもは了承いたします。ところが、きょうの日赤副社長の出席できないという理由については、実は私どもは非常に不満足なんです。単に、日赤の社長問題がいろいろ言われておるので、それで飛び回っておるから出席できない、そういうことで国会審議を軽視されることについては私ども非常に不満足でございます。しかも、いま御出席願っておる方々は責任ある答弁ができないということでは、なおさら私どもは困るのです。ですから、こういうことでは困りますので、委員長からひとつ厳重に注意を与えてもらいたい。特に日赤の社長人事については、厚生大臣の所管にかかわる人事なんですよ。全然別問題ではないのです。社長、副社長の人事については厚生大臣の所管にかかわる人事なんです。そういう意味では、やはり日赤当局もこの委員会においては十分責任があるわけなんです。そういう意味で私ども非常に不満足でありますから、この点は委員長のほうから厳重に忠告を与えていただきたいと思います。
  66. 八田貞義

    八田委員長 委員長から申します。こまかい点についての質問の要旨を十分にこちらのほうで了解しておりませんでしたから手違いがあったと思います。したがって、ただいまの御質問に対してしっかりとした御返事ができないということは、十分こちらのほうの皆さま方の質問の要旨を理解していなかったということでございますから、ここでひとつ後藤さんに両参考人についての質問を続行願いたいと思います。
  67. 後藤俊男

    ○後藤委員 ただいま御質問を始めたわけでございますけれども、質問者に対して十分納得を与えるような問答もしていただけない状態でございますので、さらにさらにたくさんな問題をかかえており、これを継続してやっておりましてもその成果を得ることができない、こう考えますのでぜひ次の機会には副社長等に出席をしていただいて、責任ある立場のお方に責任のある回答をしていただきます。この手配を十分していただいて、続きの質問につきましては後刻に保留をいたしたいと存じます。  さらに、きょうの副社長の出席について、どういう根拠で出席ができないのかわかりませんけれども、少なくともこの国会においてお願いをしたのですから、いかに忙がしいかもしれませんが、万障繰り合わせて出席をしていただくのが当然の義務ではないかと考えておる次第でございますが、これに対して、もうとやかく申し上げるわけ、じゃございませんが、ぜひひとつ日赤関係においても十分反省をしていただいて、質問を保留をいたします。
  68. 八田貞義

    八田委員長 田邊誠君。
  69. 田邊誠

    ○田邊委員 厚生大臣お見えでございませんから、お約束に従いまして在日朝鮮人の帰国問題に対して、関係当局並びに御出席をいただきました日赤の外事部長さんに御質問をいたしたいと存じます。  この問題に関連をいたしまして、私は昨年九月の八日、当時モスクワにおいて、日本赤十字と朝鮮赤十字で、帰国協定の延長かいなかをめぐって会談が開かれている際に質問をいたしました。その際は、日本政府が一昨年から昨年にかけて二回閣議決定をやりまして、この帰国協定はすでに八年余を経過したという事実にかんがみて、これが打ち切りを宣言いたしたのであります。私どもは、この種の帰国協定は、当然人道に根ざした問題であるし、特に在日朝鮮人の人たちが日本に居住をしているという歴史的な経過、特異的な立場というものをよく踏まえて、その上に立ってあくまでも自由意思による帰国を希望する人たちに対しては、これが最終まで見届けてやることが、日本政府としてのとるべき道筋ではないかということを私は強調いたしたのであります。  不幸にしてモスクワ会談は不調に終わりました。したがって、昨年の夏までに帰国協定が存続する間に、この帰国の申請をいたしました人たちが一万七千余名にのぼっておるという事態であります。事態を憂えまして、私どもは日赤、朝赤の間におけるこれが会談の続行をお願いしてまいったのでありまするが、政府もこの国民的な意を受けて、日赤と協議をされて、再び昨年の十一月からコロンボにおいて会談が再開されたのであります。  私は、十二月の二十日に当委員会で再びこの問題に対してお伺いをいたしましたが、その際に、厚生政務次官並びに援護局長御存じのとおり、当時はコロンボ会談が非常に微妙な段階でございました。答弁をされる皆さんのほうも私どものほうも、願わくはこの会談の成功を期待をし、切望しておったわけでございましたから、私はできるだけこれに支障のない形で、実は質問を行なった次第であります。ところが、そういういわば私どもの期待に反して、コロンボ会談が不調に終わったわけでございまして、非常に実は残念に思っておるわけでございます。  まず、これは日赤の外事部長さんに、コロンボ会談が一体どういう点に問題を残して決裂されたのか、経緯は大体私どもも承知をいたしておりますから、その結末のところだけ御報告をいただきたい、こういうふうに思うわけであります。
  70. 高杉登

    高杉参考人 先生の御指摘なさいましたように、コロンボ会談が決裂いたしましたことは、われわれ日赤といたしましても非常に残念に思っております。決裂いたしました最後の段階は、日赤といたしましては協定は延長しない、これはおととし、去年にかけて私ども方針がきまったわけでございます。したがって、協定は延長しないという方針で、そういうたてまえで北朝鮮側の赤十字会と打ち合わせて会談をやったわけでございますけれども、朝赤といたしましては、協定はなくなっても、協定類似のようなものをつくろう、したがいまして、会談でいろいろ話をいたしました。日本国内の帰還措置に関する行政措置を改めて、赤十字団体同士が合意できる法律的拘束力を持たすべき書類につくり上げるべきだということで、要するに朝赤といたしましては、協定はなくなっても協定類似のものをつくろうということが根本のわれわれと意見の違うところで、会談は残念ながら決裂をいたしたのでございますが、これの最後の段階におきましては、決裂したまま、あとどうするということはわれわれは約束して別れたわけではございませんので、今後はどうするかということは全然新しい立場に立って検討しなければならぬと思っておるわけであります。
  71. 田邊誠

    ○田邊委員 そういたしますと、コロンボ会談で、日本側は日本側の立場を表明をされたことは私もお聞きをしております。これに対して朝赤のほうは、やや具体的な提案をされたことも聞き及んでおるわけでございますが、これらをめぐって、延々二カ月に及んで会談が中断、続行という形で続けられる中で、その中身についてば、いま高杉さんがおっしゃいました法的拘束力を持つところの合意書の作成の問題に対して、意見が分かれたということはお聞きをいたしましたけれども、この中身、いわば具体的には昨年の八月段階における帰国申請者の一万七千人に対して、具体的にどう帰そうとするのかという問題、それからそれといわば向こう側は関連をしてといいましょうか、日本側は協定打ち切り後の措置は別個だと考えておられるようでございますけれども、いずれにいたしましてもその後の希望者に対しての措置はどうするかというような、大まかにわけてそういう分かれ方があると思うのであります。いずれにいたしましても一万七千名の帰国申請者に対しては、これはぜひ帰さなくちゃいかぬ、帰したい、こういう意志については日赤もお持ちだったと思うのであります。その上に立って、内容的には意見の一致に到達した、こういうふうに聞き及んでおるわけですが、その問題は間違いございませんか。
  72. 高杉登

    高杉参考人 先生がおっしゃいましたように、協定が有効であった当時に申請を受け付けました一万七千という数字でございますが、これはその後正確に調査いたしますと大体一万五千という数字になるわけでございます。この一万五千の申請者に対しては、日赤といたしましても、帰ることができるように配慮すべきであるということで、これはモスクワ会談のときから私たち日赤といたしましては、北朝鮮の赤十字会にこれを提案いたしたわけでございます。会談が済みました後にもわれわれは、私が新潟に参りまして新潟で代表団に会いまして、この問題については同じように帰したい、それからコロンボ会談におきましても、日赤といたしましては、これらの人々を帰るようにする道は講じなくてはいけないということで、向こうに極力説得いたしました。  結局、先生のおっしゃいましたように、いろいろな主張の違いはございましたけれども、一致点を見出しまして、ことしの七月末までを限って、協定はなくなったけれども協定の例による便宜を供与する、それから北朝鮮側は、船を一ヵ月に一隻ないし二隻持ってくるということで、事実上その話し合いはついたのでございます。しかし、朝赤といたしましては、この問題は協定終了後に、どんな方法で、新しく帰ることを申請する人が帰ることができるか、そういう方法がととのうということを条件にこの一万五千の帰還の問題について合意書に署名するということでお預けになったわけでございまして、それで会談の最後の段階におきましても、これは一月二十四日の会談でございますが、この会談におきましても、われわれは会談が決裂するという見通しがつきました段階におきましても、この問題だけは、もう話し合いも事実上ついておることだから、せひ日朝両赤十字社代表団ともサインをして、一万五千の人の帰る道を講じようじゃないか、そうすれば、協定がなくなって新しく帰還を申請する人々について、日赤が政府にかわって説明いたしました帰還方法というものは実施できるのであるし、また赤十字同士これに関連してどういう措置をとるかということを打ち合わせたことも実施するんだから、ひとつ帰る人々の立場に立ってこれにサインしようじゃないかということを、最後の最後の段階までわれわれは提案いたしたのでごいますけれども、残念なことにこれが同意を得なかったわけでございます。
  73. 田邊誠

    ○田邊委員 いまお話をお聞きいたしまして、私は非常に残念に思うのは、何といっても、やはり日赤はこの問題を取り扱ってきたいわば当事者と言いましょうか、お世話をしてきた一番のもとでございます。したがって、現在の事態に対してもよく御認識のはずでございますから、せっかくいままでこの帰国業務を取り扱ってこられた日赤としては、これは私は中身の合意ということがあれば、当時の一万七千、その後増減はありましても帰国希望者があるという事態です。問題は、これは釈迦に説法ですけれども高杉さん御案内のとおり、帰りたい人を帰すことですね。私はそれは形式でないと思うのです。現実に帰りたい人が帰っていけるという、ここに実はこの事業の最大の意味があるわけですから、そういった点から見ますと、どちらが悪い、いいということは私はここで言わないつもりでございますけれども、形式上の問題の最終的な不一致でもってこの会談が決裂したということは、いかんとしても私どもはやはり理解をしにくいわけでございます。したがって、日赤側としては、もし不一致の点がありましても、一致をされた中身についてはこれが最終的な合意を見るような、そういう努力を私はされるべきだったと思いますけれども、その点はいかがでございましたか。
  74. 高杉登

    高杉参考人 先ほど申し上げましたように、日赤といたしましては、最善を尽くして、誠意を披瀝いたしましてこの問題の解決に努力いたしたのでございますけれども、北朝鮮側の同意が得られなかったために、残念ながらこういうことになった。しかし、先生も御指摘なさいましたように、一万五千の申請者が残っておるということは、これは現実のことでございまして、われわれはこれは放置しておくことはできない、事態に応じて必要な帰還措置を考えなくちゃならないということをわれわれは頭に持ちまして、いろいろ検討いたしておる次第でございます。
  75. 田邊誠

    ○田邊委員 いみじくもいま高杉さんお話がありましたように、歴史的な経過を経て今日に至ったこの帰国業務というものを、いわば有終の美を飾るためには、どちら側が忍耐をし、どちら側が譲歩をするかといえば、これはやっぱり日本側でなければならなかったのではないかと思うのであります。そういった点で、あなた方の努力というものがあったといたしましても、これが最終的な決裂を見たというこの現実の事態は、きわめて不幸なことであると私は思うのであります。  そこで、いま高杉外事部長からもお話がありましたけれども、形式論でもって最終的な決裂を見たという裏には、これはどちらの国といいましょうか、それはわれわれはなかなか判定に苦しむのでございますけれども、日本側としては、これに対してあまりにも形式にこだわるような、いわば柔軟性を欠いたものが中にひそんでおったのではないか、こういう気が私はするのであります。しかも、もし日赤が、柔軟な立場をとりたかったけれどもそれをとり得なかったといたしますならば、これはやはり日本政府考え方というものが、その背後に大きなおもしとなっておったのではないかというふうに私は考えるわけであります。何といっても一昨年、昨年の閣議決定によって、この帰国業務は打ち切るということを、人道上の問題としてとらえながらも、日本政府が言明をした、閣議決定をしたというこの事実というものが、日赤の交渉をして、最後まで柔軟性ある態度で、粘り強く忍耐強く成功せしめることに、一つの大きな影を落とした原因ではなかったかと実は判断するわけであります。  そういった点から見まして、外務、厚生両政務次官おいででございますが、閣議決定はございましたけれども、いま私が申し上げたような歴史的な経過を経て今日に至った帰国業務というものを——しかも今後の問題は、私は実は昨年の十二月の質問以来あまり言っていないのであります。控えておるのであります。今後の問題は、もちろんいろいろとあるのでありますけれども、一応これを控えても、去年の八月の現在における一万数千人の帰国を希望する申請者、現実に申請をした人たちに対して、これが帰国の措置ができない、こういう事態だけは、これは許しがたいと思うのであります。そういう考え方に立ちますならば、このコロンボ会談の決裂という事態に対して、政府側は一体どういうふうにお考えなのか、これをひとつお聞きをしておかなければ、日赤の立場も今後なかなか困難ではないか、こう私は思うのであります。ひとつお答えいただきたいのでありますが、そのお答えの中に、これは日赤が独自でやっていることだから政府は知らぬというような話は、当然出てこないと思いますけれども、念のためにひとつそういうことでなく、ぜひこの事態に対して政府の率直な御意向というものを、それぞれ非常に関係をされ、関心を持たれている両政務次官からお答えをいただきたいと思う。
  76. 藏内修治

    ○藏内政府委員 外務省の立場からまずお答えを申し上げたいと思います。  北鮮の帰還問題、いわゆる在日朝鮮公民の祖国帰還問題というのは、いま田邉委員のお話のとおり、確かにこれは人道上の問題であり、国際政治の問題とはできるだけ切り離して処理をいたしたいということにつきましては、外務省もこの基本的な考え方は変わっておりません。ただ、いまお話がございましたとおり、この問題について、当面の双方の当事者は両国の赤十字社が当たっておりますが、不幸にしてとんざ、停滞をいたしましたこのコロンボ会談の結果、祖国に帰還することができない人たちを、いかにして送還するか、送還するとすればその時期、方法をいかに選ぶべきか、これらにつきましては、朝鮮半島の政治上の情勢がきわめて微妙な時期でもあり、私どもはこの問題が最も円滑に処理さるべき時点というものをいつに発見するかという点につきまして、ただいまジュネーブの赤十字社を通じまして、あるいは北朝鮮と関係を持っております諸因の外交機関を通じまして、その最も適切なる時点をいつに発見しようかという努力を行なっている時点でございます。そうして外交的にこの問題についてできるだけいい時点が発見で、きましたならば、この当事者として担当いたしております日赤当局のこの帰還業務に対する最大限の協力は、もちろん惜しむものではございません。そういう態度で今後進みたいと思っております。
  77. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 厚生省といたしましても、いま外務政務次官からお答えがありましたのと同様の立場でございます。この問題を、人道上の問題として取り扱っていこうというこの態度方針には、全然狂いは持たずにこの問題を処置してまいったわけでございますし、今後ともにそういう立場でこれをやっていく必要がある、かように考えておる次第であります。  ただ、田邊さんからも御指摘がございましたように、二ヵ月にわたり、また二十数回のそれぞれの苦労をいたしましたコロンボの交渉というものが、これが私たちの目から見まして、ほとんど妥結に至るであろうという期待をいたしておりましたのに、こういうふうな結果になりました。これは相手のあることでございますので、その原因がどちらにあったとかなんとかいうことをいま申し上げることは、かえってまずいと思います。しかし、この二十数回の苦労をした交渉があって、なおこれがだめになった。これは私たちといたしましては、先ほど来田邊委員からお話がありましたとおりの立場で、きわめて残念に存じております。しかし、この交渉に当たっております日本赤十字社のいろいろな行動なりその他の範囲におきまして、ことさらにこちらが足を引っぱるとか、そういうようなことはございません。従来の経緯から見まして、赤十字社のやりましたことと私たち考えておりますこととは一致している、かように考えております。  今後の問題につきましては、先ほど来外務政務次官のほうからお答えがありましたので省略させていただきたいと思います。
  78. 田邊誠

    ○田邊委員 いま両政務次官から、軌を一にしたおことばを受けたわけですけれども、これはちょうどいま佐藤総理が非核三原則の問題で言っておるのと、実は同じようなことなんですね。いわゆる国際政治と切り離して考えるべき人道上の問題だと言っておるけれども、現にそれは二回にわたる閣議決定で、帰国を打ち切るという政府態度をきめておるのですよ。私はそういうかたくなな態度をきめられない状態、フランクな状態の中で日赤が交渉をしたならば、結果はまた違ってきたのじゃないかと実は考えておるのです。実はきわめて一方的な閣議決定をしておいて、それでいわば人道上の問題だから、これに対してはひとつ政治情勢等は考えないでやりたい、こういう裏表のあるような考え方、態度というのが実はこの問題を混迷におとしいれている大きな原因じゃないかと非常に残念に思っておるのであります。それが現実でありますから、私どもはここでさらに政府がほんとうに虚心たんかいに、裏から見ても表から見てもこの問題は人道上の問題であるというように考えて処理をされるように、再検討、反省をしてもらいたいと思っておるのでありますけれども、さてそれならば、現実にコロンボ会談が決裂をした事態の中で、いま外務政務次官も、この問題に対しては今後努力をしようという話がございました。二月二十八日の衆議院の予算委員会におきまして、わが党の楢崎委員の質問に対して、総理大臣も「政治とは別に、人道上の見地から話し合いを続ける、こういう立場に立てば、また相手のほうも協議する、こういうことであれば、私は協議をして、ぜひそういうものをまとめたい、かように思っております。」という発言があったわけであります。厚生大臣もこれを受けて「今後につきましても、この問題については人道的立場から国際政治問題と切り離して善処したいと考えております。」日赤の田辺副社長は、「日本赤十字社といたしまして今後とも人道主義的立場に立って、政府とも十分協議いたしまして善処してまいりたい、かように考えておる次第でございます。」こういうようにそれぞれ意思表示をされたわけであります。当面の折衝の責任者は日赤であります。しかし、田辺副社長も言われているように、これは閣議決定もあることですから、日赤独自でやれるものじゃない。さらに日赤の持つ性格からいいましても、政府と一体となって十分協議して対処したい、こういう話は当然なわけでありまして、何としても政府態度が今後の事態をどう開かしていくかというかぎを握っていることは御案内のとおりであります。  そこで、外務政務次官なり厚生政務次官から政府の統一見解として、この問題に対して今後解決をはかる、打開をするためには、具体的には一体どういうことを現在はかっているか。いまジュネーブの国際赤十字を通じていろいろと感触をはかっているというような話がありました。総理は、具体的な協議をしてまいりたいと言っているわけであります。これは日赤と朝赤の会談を再開——再開ということばがわずらわしければ、あらためて会談を持つ、こういう意味だろうと私は思うのであります。そういう方向に向かって努力をする、これが政府のなすべき態度である、こういうように思うのでありますが、その点はどうでございましょうか。
  79. 藏内修治

    ○藏内政府委員 人道問題として、政治問題とは切り離して処理をいたしたいということを申し上げた趣旨は、この問題を先ほど来外務省としてはできるだけ前向きの形、表現はあまりいい表現ではないかもしれませんが、今後前進するような形に持っていきたいという趣旨で考えておりますことは、先ほど来申しました会談再開の時点の選択を誤りますと、人道問題がことさらに国際政治問題に発展する、再燃してくるおそれがございます。したがいまして、これらの会談再開の時期をいつに読み取るかということは、これは非常にむずかしい問題であることは、田邊委員も御推察がいただけるものと思います。そういう判断がつきまして、もう会談再開してもだいじょうぶだ、人道問題としての処理が可能であるという時点を発見いたしましたならば、私個人といたしましては、この会談再開の申し入れを日本赤十字社が申し出ることに少しもこだわる必要はないと思っております。そういうつもりで、できるだけ早くこの問題はいい時点を発見する、そうして会談再開に持っていきたいという気持ちであることは変わりはございません。総理が予算委員会で御答弁申し上げた趣旨もその辺にあるだろうと私は思っております。
  80. 田邊誠

    ○田邊委員 私は、かいつまんでこの際ひとついろいろと事態を究明してまいりたいと思うのでありまして、まず何といっても一番最初は政府部内の意思統一、関係の外務なり、法務なり、厚生なりという各省間の意思の疎通と統一がはかれておらなければならぬと思うのでありまして、この点はどうでしょう。だれがイニシアチブをとるということでなくして、ひとつ、本委員会厚生省の所管をするわけですから、谷恒厚生政務次官、どうでございましょうか。厚生大臣とよく御連絡いただきしまて、厚生省は、最も人道的な立場に立って仕事をされておるわけでございますから、そういった点で、政府内部の意思を統一するということにまずつとめられる、これが必要だと思うのですが、いかがでございましょう。
  81. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 御指摘のとおりに、厚生省といたしましては、いままでの経緯、またこれを人道上の問題として処理すべきであって、その他の問題についての混淆を避けなければならぬという立場で従来ずっとやってきておるわけでございます。ただし、考えねばなりませんことは、モスクワ会談あるいはそれに続きましてのコロンボ会談、その経緯がございます。こちらの真意は十分向こうに通じておると私たち考えておりますし、そしてコロンボ会談のときに妥結ができるものと思われた状況が、今日こういうふうになっておる。こういうことは、先ほど外務政務次官のほうからお話がございましたが、これの再開と申しますか、その問題については、かえってこれを完成させるために考慮を払う問題がいろいろと出てきておるということであろうかと思います。しかし、事は、先ほど御指摘がございましたように、人道上の問題としての取り扱いをやっていくというその趣旨を十分に体しまして、政府部内の意見の統一をして、そうしてこれの状況の問題も十分判断をしてやっていかなければならぬ、こういうふうに考えておる次第でございます。厚生省ひとりでできるわけではございませんけれども、御指摘のとおりに人道上の問題として扱う、その立場においてこれを進めてまいる必要がある、かように考えております。
  82. 田邊誠

    ○田邊委員 先ほど藏内政務次官から、事態が熟してくれば、日赤のほうから朝赤に対して、協議再開を申し入れすることにやぶさかでないという話がございました。私は、それが一番大切なことだと思います。それと同時に、朝赤のほうから時期を見て日赤側にこの会談再開の意思表示等があった場合には、これまた当然受けて立つ必要があるだろうと思うのであります。  いずれにいたしましても、これら二つの事態に対処して、政府考え方というものが積極性を持ってきますならば、事態の熟してきたことをとらえて、日赤に対して、この問題についてさらに会談等を行なうべきであるという指示をやることがあり得ると思いますし、また必要になってくると思うのでございますが、先ほど御両所から、これにはいろいろタイミングがあるというお話がありました。これもいろいろ考え方によっては、ああいう事態であったために、すぐこれをまた申し出をしても、なかなか機が熟さぬではないかという意見もありますが、一方においては、政治情勢をからめないと言いますけれども、いまや在日朝鮮人の問題は——それ以外にも民族教育の問題という外国人学校制度の問題等も、国会の場所で論議になろうといたしておるわけでございまして、これらとからめぬなどと言っても、なかなかからめざるを得ない事態がくるんではないかと私は思うのであります。したがって、このことはいわば拙速と、慎重と、どちらをとるべきかということについての意見はそれぞれ分かれましょうけれども、私はやはりこの問題がこういう事態に、暗礁に乗り上げていることを考えたならば、なるべく早くこの事態打開の道をさがすことが日本政府としては大切なことである、こういうように思っておるのですが、一言ちょっとお答えいただきたいと思います。
  83. 藏内修治

    ○藏内政府委員 御指摘の点、まことにごもっともだと思っております。実はモスクワ会談及びそのあとに行なわれましたコロンボ会談、これらの会談を持ちますことにつきましても非常に慎重な配慮を行ない、しかも関係諸国の内情等も細密に打診いたしました結果、モスクワ会談の時期も選定いたしましたし、コロンボ会談も選定をしてあの会談に至ったわけでございます。会談再開をいたしましてからも、いろいろ微妙なる反応というものが関係諸国からもきております。しかしながら、これらをできるだけ調整、説得いたしながら会談を進めてまいったのが真意でございまして、いたずらに関係諸国のそういう意向に引きずられて会談を遅延さしたというような事実は今日まではございません。したがいまして、今後におきましても、これら関係諸国の情勢等をしさいに検討いたしました結果、最も適切なるタイミングと判断いたしました時期に、関係四省におきましては、すでに前回、コロンボ会談に臨む態度といたしましては関係各省の間に一致を見ておるのでありますから、この線に沿いまして会談を再開いたしたいと思っております。
  84. 田邊誠

    ○田邊委員 そこで、いま現実には協定が効力を失ったといいましょうか、打ち切られたといいましょうか、そういう事態でございますが、そういう事態の中で、一体在日朝鮮人の人たちが自由意思に基づいて自分の国へ帰る、こういう手だてというものは円滑にできるという現在の状態でございましょうか。あるいはまた、一たん帰った人が気軽にまた日本に来るというようなことが実際にはでき得ないという事態でございまして、いわば外国人並みに扱って、便船によって帰ったらいいじゃないかという話は、この場合には幾らか通じがたいのであります。そういった点に対して、これは法務省、どうでございましょうか、一般の外国人と同じような立場で出入国ができる、したがって、いつでも自由にお帰りくださるような意思があれば手続をとります、また自由にひとつ日本においでください、こういうような形でその希望を達するような、そういうことになるわけでございますか。
  85. 笛吹亨三

    ○笛吹説明員 在日朝鮮人の北朝鮮への出国の問題でございますが、御承知のように、この在日朝鮮人という人たちは、旅券を持ってない人でございます。したがいまして、出入国管理令の二十五条は、外国人が本邦以外のところに出向くために出国しようとするときには、出入国港において入国審査官から旅券に出国の証印を受けなければならない、出国の証印を受けなければ出国はできない、こういう規定になっておるわけであります。したがいまして、旅券のない人が出国しようということは、原則としては、たてまえからいうとできないわけでございます。しかしながら、在日朝鮮人の北朝鮮へ帰りたいという人につきまして、われわれは人道的な立場から考えまして、旅券がないから出れないんだということでは困りますので、その点を特に便宜をはかりまして、旅券にかわるべき証附書ということで、出国証明書というものを法務省の入国管理局長名で発給するというたてまえをとってまいりました。これは昨年の八月十二日に、北鮮帰還協定が間もなく終了するという三ヵ月前でございますが、そのときに官報で告示いたしまして、出国証明書をどういうようにして申請すればどういう手続で発給できるかということを告示したわけであります。  その手続を申し上げますと、私どもの入国管理事務所は全国に十三ヵ所、出張所が六十六ヵ所ございます。そこへ在日朝鮮人が参りまして出国証明書の発給申請をいたします。それによって、特別に刑事事件にひっかかっているとか、あるいは退去強制にひっかかっているというような人を除けば、私のほうで本省のほうにその書類を進達して、そこで出国証明書を発給する、その出国証明書を持って出入国港に参りましたならば、どういう船に乗って帰るかということを自分で選ぶわけでございますが、その船に乗るために出入国港に参りましたならば、そこで入国審審官が出国の証印を押して出国を認める、こういう手続になっておるわけでございます。これは一般のほかの外国人でございますと、それぞれみな旅券を持っておりますので、旅券に出国の証印を受けて自分の選んだ船で、あるいは航空機でそれぞれ出国するわけでございます。在日朝鮮人は先ほど申し上げましたように、旅券がございませんので、旅券にかわるべき出国証明書を特に法務省で発給しまして、それに出国証印を押して出ていく、こういうことにしております。  そこで現実に、それではそういうことがあったかと申しますと、これは本年の一月十七日に横浜港を出港しましたバイカル号というソ連の船がナホトカ港に向かったのでございますが、その船で朝鮮人の洪三孝とその妻君の尹澄子の両名が出国いたしております。これはナホトカ経由で北鮮のほうに帰った模様でございますが、一月十七日に帰りたいというので出国証明書の発給申請を八日にしてまいりましたので、私のほうでは特に手続を急ぎまして、いろいろ調査もし、一月十二日に発給いたしまして、十七日の出国に間に合わせたわけでございます。これはもちろんソ連の通過ビザが要るわけでございますが、ソ連のほうでも非常に好意的に、こういうケースにつきましては通過ビザを付与するということでやっていただいておるようでございます。したがいまして、この手続をとりますればスムーズに出国できる、こういうようなたてまえで、在日朝鮮人の北朝鮮への出国という道は十分広げておるものだ、このように思っております。  そのほかの道といたしましては、年間二百五十ばかりの貨物船の便がございます。これは貨物船と申しましても、若干人員を乗せる余裕のある船でございますが、そういう船で、日本のいろいろな港から、北鮮の清津とか、興南とか、いろいろな港へ直接出向いておる船がございますので、それを利用することも道としてはあるわけでございます。  それから北朝鮮からこちらへ入ってくる問題ですが、これは北鮮帰還の問題とは少し性質が違うものでございまして、北鮮からこちらへ来る人というものは、これは国交のない国でございますので、いまのところでは原則としてはなかなかむずかしい問題でございます。
  86. 田邊誠

    ○田邊委員 時間がないから応酬はしませんけれども、あなたの考え方なり答えというのは、私の質問の真意をよく理解をしていない点があるが、それはいい。しかし、何か恩恵的に、特に出国証明書を出したとか、入国するのは帰国と関係ないと言うが、そうですか。そういう話ならこれはまた質問をし直しますよ。ここに歴史的な経過を踏まえて——私は前のことを言ってないんだ、去年からのことを言ってない。これを繰り返して言うことは、委員会審議に支障があるから私は言わぬのですけれども、それじゃ、ひとつそれをやりましょうか。それはやはり在日朝鮮人が日本に来た歴史的な経緯もあり、いま国交が回復されておらないから、日赤を中心として実はいろいろな努力なりやられておるわけでしょう。その中で、朝鮮人の人たちが帰りたくても帰ることになかなかもってちゅうちょするのは、一たん帰ればまた日本に入国できないという、そういうこともあるのですよ。何で帰国に関係ないか、言ってごらんなさい。
  87. 笛吹亨三

    ○笛吹説明員 在日朝鮮人の北朝鮮への出国といいますか、帰国といいますか、この問題につきましては、日本に戦前から、ずっとおった朝鮮人が北朝鮮へ帰りたい、自分の生まれた国へ帰りたいということでございますので、そちらへ帰る道を開いておるわけであります。  ところが、北朝鮮からこちらへ入国するという問題になりますると、これは北朝鮮だけの問題ではございません。中共でも、北ベトナムでも、東独でも、それぞれわが国と国交のできていない国からの入国というものは、原則としてできないわけでございます。入国するためには旅券とビザが必要になってまいります。しかしながら、そういう国交の開いてない国の旅券というものは、わが国としては旅券として認めるわけにいかないわけでございます。まず原則といたしましては、国交のない国につきましては入国はできないというのがたてまえで、特別な場合において入国を許可する、こういうことで取り扱っておるわけでございます。
  88. 田邊誠

    ○田邊委員 そういうような平たんな、表面だけの話をしているのなら、私はあえてこの問題を取り上げてやりませんよ。帰国をするのに、実はいろいろな複雑な事情がその中にある。その中には、私がいま申し上げたように、一たん帰れば再び日本に帰ってこられない、したがって、帰るにはよほどの決心といろいろな準備が要る。これが帰国業務が実はだんだんここまで延引をしてきた一つの要素になっていることは、これは疑いない事実なんですよ。そういうことをあなた方は考えないで、ただ形式的な国交回復というのは、——そんなのは百も承知だよ。冗談言っちゃいけませんよ、あなた。そういうようなふらちな考え方でもって言うんだったら、われわれとしてはもう一度これは、法務省相手に徹底的にやります。そうでしょう。私どもは人道的な問題として、それはまた総理以下が予算委員会答弁をしていることを踏まえながら言っている中には、これはいろいろな事情があるんですよ。通り一ぺんなそんなことでもって——特にそれを認めた、何を言っているんだ、あなた。冗談言っちゃいけないよ。そういう考え方なら、私はこれはあらためてまた機会を見て質問いたします。  最後に、ひとつ政務次官なり援護局長からお答えいただきたいのですが、帰国を準備して申請してきた人たちは、いま私が申し上げたようないままでの長い日本の生活を打ち切っていくには、いわば仕事、職業、あるいは生活上の家財道具等の始末をし、整理をして帰国する、こういう立場に立ったと思うのでありますが、これが現在打ち切られておる。そうすると、いわば生活上からいっても非常に困っている人たちが多いんじゃないかと私は思うのです。生活保護を受けている人たちは、もちろんそれ相当の措置をされなければなりませんけれども、いわば生活に困っていらっしゃる、そういう事態になっている人たちに対して、これはやはり日本政府はあたたかい手を差し伸べていただくことが私は必要だろうと思うのでありますけれども、これに対してどういう措置をおとりになろうといたしておるか、ひとつお伺いしたいと思います。
  89. 実本博次

    ○実本政府委員 いま先生のお話しの方々は、要するに前の協定が有効期間中に申請されました、最初から先生が言っておられました、先生のお話では一万七千人の方々の中の早く帰りたいという方々がその部分に属するだろうと思います。この問題は、もう一万六千人全体の問題を解決する中で解決していくのがやはり本節であろうと思いますので、家をたたんで困っておられる方も、これはまた保護法なら保護法の面、あるいはその他の援護の面の、既存の行政措置でいろいろお世話するといたしまして、やはり根本的には一万七千人の前の協定で申請された方々の根本的な措置と一緒に早急に解決して差し上げたらどうであろうか、こういうふうに考えておるわけであります。
  90. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 関連資問を通告しておりましたが、一時から本会議が開かれるということを聞きましたので、あと七分しかありませんから、本会議終了後この件に関しての委員会の再開を要求いたします。——それじゃ、時間一ぱいまで質問させていただきまして、あとこの次の委員会まで質問を留保したいと思います。  在日朝鮮公民の帰国事業問題は、いまや国際的人道問題になってきております。重大問題ということで世界の注目を集めていると言っても過言ではないと思うのであります。ところが、政府は口には人道問題で解決を促進するというように言っておりますけれども、口と事実はうらはらのように思うのです。先ほどの田邊委員の質問の中にもありましたように、先般の予算委員会での佐藤総理の答弁におきましても、口ではその促進方を答えております。しかし、先ほど外事部長さんの答弁の中に、モスクワ会談、コロンボ会談等の基本方針として、帰国協定は延長しない、こういう方針で臨んだんだ、こういうお話がありました。ところが、この帰国事業というものは、その協定書に基づいて過去八年間順調になされてきた。その順調に運営されてきた帰国協定を、中途はんぱにここでなぜ破棄しなければならないのか、打ち切らねばならないのか、こういう点について非常に疑問を抱いたものであります。この点について外し事部長さんから一言お願いします。
  91. 高杉登

    高杉参考人 帰還協定は、御承知のように一九五九年に結ばれまして、一年三ヵ月の期間で結ばれたわけでございますが、これは当時大量の帰還者がたまっておったので、この大量の帰還者を短期間に帰そうということで協定ができたわけでございますが、初期のころにおきましては、一ヵ月に四千人という人が帰ったわけでございます。しかし、その後に至りましてだんだん数が減りまして、最近では一ヵ月百五十人前後というような事態になりまして、この帰還の状態は、一般の外国人の帰還と同じようなことで、平常に化した。したがいまして、帰還協定は目的を達したというのかわれわれの一つの基礎になったわけでございます。同時に、先ほども田邊先生から御指摘がありましたように、この協定がなくなっても、一般の外国人と同様に帰国する道を講ずるのだ、便宜を供与する、配慮するという決定がございましたので、これは赤十字としても、協定がなくなっても帰る道はあるという判断のもとに協定を延長しないということにいたしたわけでございます。
  92. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は「朝鮮通信」というものを読ましてもらったのですが、その中に、コロンボ会談での朝鮮の赤十字の代表の発言が載っておりますが、その中に、モスクワ会談での日赤の発言が載っておりました。それは、「現行帰国協定がもっとも合理的であることを認めはするが、いろいろやむにやまれぬ事情があって、特に日本政府が帰国事業にこれ以上国庫から補助金を出さないというので、現行協定の無修正延長に同意することができない」というような発言をしたということが書かれておりますが、そういう事実はあったのでしょうか。その点お願いいたします。
  93. 高杉登

    高杉参考人 日赤がこの事業を政府の委嘱によりまして引き受けましたのは、政府の依頼があったことも事実でございますが、同時に人道上の道にも沿うものであるという二つの考え方から日赤がこの事業に御援助したわけであります。したがいまして、政府からは援助がないといわれても、もし赤十字が人道上からぜひこれは行なわなくちゃならぬという問題であるならば、また別な考え方もございますが、先ほど申し上げましたように、協定はなくなっても帰る道ができるということで、いままでどおりの、協定どおりの帰還方法による必要はないと赤十字は判断いたしたわけであります。
  94. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 時間がありませんので、両政務次官にお尋ねいたしますが、協定が破棄されたあとに、何らかの姿でこれを促進していくといういまのお話でありますが、政府側としての所信を明らかに答弁していただきたいと思います。
  95. 藏内修治

    ○藏内政府委員 御承知のとおりコロンボ会談におきましては、いわゆる暫定措置と称しておりまする、すでに帰国を申請した一万七千余名についての暫定措置は合意に達しておったわけでございます。暫定措置以後の送還につきまして、巷間俗に任意出国、自由出国と称しておりますが、それにつきましても、ほぼ合意に達しつつあった段階で交渉が決裂したことは事実でございます。したがいまして、この暫定措置に関する合意について、双方からこの合意によってこれだけはひとつやろうじゃないかという時期がございましたら、外務省としては異存はございません。また、あとの自由出国につきましても日本側の提案、これがコロンボ会談でもほとんど最終段階まで煮詰まった段階で決裂をいたしたということは非常に残念でございまして、この線でまとまるということならば、私どもは、日本側が閣議で決定いたしました政府の帰還方針の原則をひとつ認めていただくならば、その中においてできるだけ北朝鮮側の希望も最大限に盛り入れた形で、実質的にできるだけ従来の帰国業務というものに近い線でこの交渉をまとめようと思っておったということは、先ほど来日赤のほうからもおそらく御説明があったと思います。そういう線でまとまりますならば、私どもはいつでもこの会談に応ずる用意がございます。
  96. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 外務政務次官と同じでございます。
  97. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いま暫定措置というお話が出ましたけれども、これは暫定措置で何名帰国させる予定だったんでしょうか。
  98. 藏内修治

    ○藏内政府委員 正確な数字は、私からお答えするよりも、厚生省あるいは日赤が適当かと存じますが、私どもは約一万七千名と承知しております。
  99. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 一万七千名を三月一ぱいに帰すということは、もういままでの帰国の姿から、その運営の上から見て、とてもできることではないと思うのですが、もしそれが一万七千を暫定的に考えているというならば、これは単なる口先だけの問題ではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  100. 実本博次

    ○実本政府委員 いまの一万七千といいますのは、昨年の十二月から——先生いま三月までとおっしゃいましたが、実は日赤の案としては七月までを予定いたしておりましたので、その間一万七千人の方をお帰り願う。現実の問題といたしましては、お帰り願う船は北朝鮮側のほうから持ってきていただくということになっておりまして、その辺は、ことしの七月までの間にそういう人たちはお返しできるということで、大体その案で向こうも事実上の合意に達しておった、こういうことでございます。
  101. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それではちょっと立場を変えてお尋ねしますが、在日朝鮮公民の皆さんは、一応三月で帰れるのじゃないかということで、三千人から五千人と聞いておりますが、ほどの人たちが、事業をやめ、あるいは家を売り、その準備にかかっておった。今度の決裂でその見通しがなくなりまして、実際、生活に非常に困っているという現実の声を聞いたのでありますが、これに対して政府側としてはどのように対処なさろうとしているのか、お尋ねします。
  102. 実本博次

    ○実本政府委員 この問題は、先ほど田邊先生からもお話がございましたように、一応早く帰れるものだということで家をたたまれたという方もおありのようでございますが、その問題を全部含めまして、とにかくいまさっき先生がおっしゃった一万六千名という人たちの送致を早く一括して何とかやはり善処すべきじゃないかというふうなことで考えておりました。特にそういうことで生活にお困りになるような方は、生活保護なりその他で、そういうことができ上がりますまでの間のお世話は、一応国内的な措置として見るというふうな態度は変えておらぬわけでございます。
  103. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 時間の関係できょうはこれで打ち切りたいと思いますが、とにかく人道的な立場に立ってこの帰国事業を促進するという政府のことばどおりに現実的に運んでもらいたい、これを要望して質問を終わります。
  104. 八田貞義

    八田委員長 両参考人には、御多忙中御出席いただき、まことにありがとうございました。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時六分散会