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1968-05-09 第58回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月九日(木曜日)    午後零時三十六分開議  出席委員    委員長 山崎 始男君    理事 天野 公義君 理事 小山 省二君    理事 橋本龍太郎君 理事 河上 民雄君    理事 島本 虎三君 理事 本島百合子君       伊藤宗一郎君    塩川正十郎君       地崎宇三郎君    加藤 万吉君       工藤 良平君    佐野 憲治君       浜田 光人君    古川 喜一君       折小野良一君    岡本 富夫君  出席政府委員         科学技術庁研究         調整局長    梅澤 邦臣君         厚生政務次官  谷垣 專一君         厚生省環境衛生         局公害部長   武藤琦一郎君         通商産業政務次         官       藤井 勝志君         通商産業省企業         局立地公害部長 矢島 嗣郎君         通商産業省鉱山         保安局長    西家 正起君  委員外出席者         法務省民事局参         事官      味村  治君         厚生省環境衛生         局公害部公害課         長       橋本 道夫君         農林大臣官房参         事官      太田 康二君         農林省農地局計         画部長     加賀山國雄君         運輸大臣官房参         事官      内村 信行君         運輸省自動車局         整備部整備課長 景山  久君         建設省都市局都         市高速道路公団         監理官     角田 正経君     ――――――――――――― 五月九日  委員加藤万吉辞任につき、その補欠として古  川喜一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員古川喜一辞任につき、その補欠として加  藤万吉君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  大気汚染防止法案内閣提出第一〇五号)  騒音規制法案内閣提出第一〇六号)  産業公害対策に関する件(水質汚濁対策)      ――――◇―――――
  2. 山崎始男

    山崎委員長 これより会議を開きます。  産業公害対策に関する件について調査を進めます。  この際、谷垣厚生政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。谷垣厚生政務次官
  3. 谷垣專一

    谷垣政府委員 お手元に、富山県下におきまするいわゆるイタイイタイ病に関しましての厚生省見解並びに厚生省から委託いたしました研究班報告結論をお配りしてございますが、昨日、厚生省といたしまして、この結論を、それぞれの関係のところに発表いたしておきましたので、簡単に御報告をさせていただきたいと思います。  お手元の資料にございますので、簡略にさせていただきたいと思いますが、このいわゆるイタイイタイ病につきましては、三十八年以来四カ年にわたりまして、実態原因究明につとめてまいりましたが、本年の五月に厚生省が委託いたしました研究班から、最終的な調査結果の報告を受けました。厚生省といたしましては、この調査報告をもとにいたしまして、現在まで公表されておりまする他の科学的調査研究をも参酌いたしまして、慎重に検討した結果、次のような見解に達したものでございます。  一、本病はカドミウム慢性中毒に妊娠その他が誘因となって発生したものであること。  二、原因物質であるカドミウムについては、自然界微量に存在するものを除いては、神通川上流三井金属鉱業神岡鉱業所事業活動に伴って排出されたもの以外には見当たらないこと。  三、カドミウムは、農作物、飲料水を介して体内に吸収され、長年月にわたり蓄積されたと見られること。  以上でありますが、厚生省といたしましては、本事件に関しまする原因究明につきましては、これをもって終止符を打ちまして、今後は、本病を公害による疾患として、患者に対する保健医療対策を中心に、地元県とも協力して、できる限りの措置を講じていくことといたしております。さらに、本事件を契機として、環境汚染防止のための具体的施策を強力に推進して、再びこのような事件の発生することのないよう最善の努力を傾注いたしますとともに、あわせて公害による被害救済制度早期確立をはかる等、国民の健康を守る立場から、公害問題と一段と積極的に取り組んでまいる考えでございます。  以上、御報告をいたします。(拍手)
  4. 山崎始男

    山崎委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。古川喜一君。
  5. 古川喜一

    古川(喜)委員 ただいま報告されましたイタイイタイ病の件につきまして、若干質問を申し上げたいと思います。  イタイイタイ病の主たる原因が、神通川上流神岡鉱業所の鉱毒であるというふうに最初に発表いたしましたのは、昭和三十二年の十二月、地元で開業いたしておる萩野昇医博であります。それ以来、原因公害問題で争われていたイタイイタイ病につきまして、昨日厚生省が、イタイイタイ病公害による疾患と認めるという見解発表されたのであります。これはまあ当然の発表であると思います。いま大臣は出席されておりませんが、産業がすべての犠牲を無視する時代は終わった、産業国民のしあわせを築くことを目的とするという、いろいろのあったであろう圧力も断固としてはねのけて、良心的な結論を出された厚生省並びに厚生大臣に対しては、心から敬意を表するものであります。  しかしながら、まだたくさんな問題が残されておるわけであります。まず伺いたいのは、イタイイタイ病公害であるという認定をされた以上は、もっと企業責任を明らかにして、人命尊重立場からも、補償問題等をも具体的に出さるべきじゃなかったかと思うのですが、その点についてどのように考えておられるか、伺いたいのであります。
  6. 谷垣專一

    谷垣政府委員 本件につきましては、現在訴訟が進行いたしておる状況でございます。そういう状況でございますので、民事裁判についての当事者同士の問題でございまするから、行政として意見を述べますことは、差し控えたいと考えております。  ただ公法上の措置といたしましては、現在、鉱業法による和解の仲介という制度がございます。しかしこれは通産省に属します事項でございますので、厚生省といたしましては、通産省処置を待つ以外にないと思います。通産省は、このほかに事実上の行政的な措置といたしまして、和解のあっせんに、厚生省も協力して乗り出してはどうかという意見がございますが、この件につきましては慎重に判断をいたしたい、こういうのが現在の状況であります。
  7. 古川喜一

    古川(喜)委員 いま次官が、訴訟が行なわれているから行政上云々ということを述べられたが、いわゆるイタイイタイ病原因追及をされてきたのであるから、訴訟のいかんにかかわらず、厚生省調査として、そのようなことが述べられるのは妥当でなかったかと思うのです。なぜならば、公害であるという認定をしただけで、直ちにいま、そのことのために、苦しんでいる患者にどれだけの利点があるのかということです。そのことが明らかにされておらないのであります。公害であるという認定をしたために、今後どのような患者プラスがあるのかということを具体的にひとつ示していただきたいと思うのです。
  8. 谷垣專一

    谷垣政府委員 イタイイタイ病に関しましては、この患者及び観察を要しまするような人たちに対しまして、保健対策上、富山県と関係市によりまして、四十三年の一月以来対策が実施されておりますが、厚生省といたしましてもこれと並行いたしまして、患者の受療を促進いたしまするための区療研究を、特別の委託費によりまして、実施してまいっております。このたびこういう形で公害によるものと判断をいたしましたので、公害医療研究費補助金というものが現在厚生省にございます。この補助金をもちまして、医療研究を行なってまいりたい、現在の患者及び観察を要しまする人たちの施療に当たってまいりたい、かように考えております。この詳細なやり方、実施計画は、地元の主治医及び金沢大学医学部協議の上決定いたしてまいりたい所存でございます。  なお、公害原因一つを除きまするために、簡易水道設置計画地元でございます。これは適当な水源調査等を進めてまいっておりますが、四十三年度からその設置をいたすような取り計らいをいたす必要があるかと思っております。  なお、今後のこの地方の対策といたしまして、環境汚染防止のための定期的な測定や、住民の健康管理などに対しましての具体的な施策を推進いたしまして、微量重金属によりまする環境汚染原因いたしました、健康にかかわる公害に対する予防的な対策を今後進めてまいりたいと考えております。
  9. 古川喜一

    古川(喜)委員 ただいま説明されましたことは当然のことでありますが、これは公害であるという認定をされない以前から、実施段階に移されておったものばかりです。これを調査の結果、決定的に公害であると認定したからどう変わったというものじゃないのです。たとえば簡易水道の問題を話されましたが、以前から計画されておった。公害ということに認定されたから、補助額が現在までの三分の一が三分の二になるとか、何らか、公害であるということを認定したために、地域患者に利益があるのかどうかということなんです。ただ厚生省公害であるという認定をしただけでは、何らプラスにならないじゃないかということを私は言っているわけです。だから、公害であると勇気を出して認定をされた以上は、これこれのことが、公害であるためにプラスになるのだ、こういうことを具体的に政府が金をかけて実施していくのだという、何かが示されなければいけないのじゃないか。そういうことについて、何らか新しい考えがあるのかということを承っておるわけです。
  10. 谷垣專一

    谷垣政府委員 御存じのように、公害患者認定という問題につきましては、現在のところ、法律上の定めはないわけであります。ただ企業活動によって起こったものだということの認定が、この際ここではっきりいたしたわけであります。そのことから来たしますところの、間接的なと申しますか、あるいは直接的な振りかわりの問題は、方々に非常に大きな影響があるだろうと思います。  国の施策といたしましては、先ほど申し上げましたように、公害患者であるという認定が出されましたので、先ほど公害医療研究費補助金をもちまして、これらの患者の方あるいはそのおそれのある方に対する施策をやっていく。これは財政的には、ほとんど御当人の御心配のないような対策ができるものと思いますし、さらに丁重な対策を進めていくための、地元の医師あるいは金沢医学部等との打ち合わせをいたしまして、対策ができることと思います。それから、先般のときにも御質問がございましたが、水道の問題、国の補助率を高くするかどうかという問題がございます。この問題はまだ実は結論に達しておりませんけれども、こういう特殊な事情、あるいは近い神通川から水源を求めることができなくて、他のそういう心配のない水源を求めていくための負担が非常に多くなるじゃないかという事情もあろうと思います。そこらの事情をよく考えまして、財政当局と十分に打ち合わせ、相談をしてみたい、実はこういう考え方を持っておりますけれども、結論的に、いまここでこういうふうに補助率を上げたというのは、もうしばらくお待ちを願わなければできませんが、厚生省といたしましては、そういう対策を推し進めていくつもりでございます。
  11. 古川喜一

    古川(喜)委員 いまほど公害という認定をしたから直ちにどうこうするという法律はない、ということでございます。鉱区の鉱害と公の公害というものの解釈をどのように理解しておられるのかわかりませんが、いわゆる企業責任によるもの、もちろん公の害であっても、企業責任というものはあるのでしょうけれども、それがまだ具体的にはっきりしてこない間は、やはり公の害というものは、ある程度政府責任を持って処置すべきだというふうに考えるわけです。  そういうことで、厚生省としては、いわゆる災害の紛争処理及び被害救済法など、公害関係の四つの法案というものを考え発表され、そのことについて努力をされておるとは思うのですが、それが、聞くところによりますと、政府部内の意見調整ができておらないということや、あるいは現実的でないというようなことで、当初の見通しがそのとおり運んでおらないように承っておるのすが、それはどのように進んでおるのですか、どのように進められるつもりですか、承りたいと思います。
  12. 谷垣專一

    谷垣政府委員 御指摘のように、昨年の暮れに厚生省発表いたしまして――発表というと語弊がございますが、厚生省考えといたしまして推し進めたいと思った公害関係対策紛争処理、並びにその事前におきましても、被害者に対しまする救済策、この法律が実は今度の国会に提案する運びにまだ至っておりません。関係の各方面といろいろ御相相談もいたしておりますし、それから、公害基本法に基づきましてできました審議会におきましても、この問題を特に取り上げられまして、特別の少委員会がいまつくられております。そこで、厚生省の原案に対しましても説明を求められております。こういうような状況でございますが、今般のこの案件によりましても、そういう救済制度並びに紛争処理制度確立は急がなければならない、かように考えておりまして、厚生省といたしましては、極力これの法案化を急ぎたい、進めたい、かように考えておる現状でございます。  なお、先ほど来申しております公害医療研究費補助金制度でございますが、これは救済制度とは違いますけれども、まあいわば救済制度のできまするまでには、そういうような医療研究費というような形におきまして、被害者患者方々に対して何らかの措置ができるものと思いまして、そういう処置をいたした、こういうふうにお考え願いたいと思います。
  13. 古川喜一

    古川(喜)委員 いまほどから申されておりますように、また私が先ほどから言っておりますように、ただその公害であるという認定をしただけで、あと患者対策やあるいは行政上の措置などが具体的に講じられてこないとするならば、たいして意味がない。幸いにこれは訴訟を起こしておりますから、そのことが訴訟の一歩前進になっただろうということだけでは、やはり政府施策としてはもの足りないのじゃないか、このようにも考えるわけです。今後われわれも、公害であるという認定がされたということに対して、企業責任追及ということと、いわゆる具体的な患者対策救済対策というものが行なわれるように強く要望しまするし、われわれもこの問題と取り組んでいきたい、このように考えておるわけでございます。  そこで飲料水の問題は、簡易水道を実施されるということでありますが、補助率の問題についても、前向きの姿勢で考慮していこうということでございますので、大きく期待をしていきたいと思います。  飲料水、さらに食品衛生関係上からの問題ですが、いわゆる飲料水に含むカドミウム許容量の問題です。これは現在どのようになっているのか承りたいと思うのです。
  14. 橋本道夫

    橋本説明員 水道法関係におきましては、現在のところ、まだカドミウムにつきましての水質基準はございません。この点につきましては、水道課とよく協議をいたしまして、水道法でどう対処するかということにつきましての、具体的な方向を打ち出していく努力をしていきたいと思っております。  現在の段階では、アメリカ公衆衛生関係で、飲料水基準というのが一応ございまして、それによれば、〇・〇一PPMというのがございますが、これは世界的に、カドミウム事件が起こったのは初めてでございまして、この点につきまして、一応それを尺度として参考にはしておりますが、日本としても、これを参考にして制度をつくりたいというふうに考えております。
  15. 古川喜一

    古川(喜)委員 やはりそれは、これだけやかましくカドミウムの問題が叫ばれておるときに、しかもまた、世界にないというのではなく、アメリカですでに飲料水許容量をきめておるという段階で、これから検討していきたいというのはまことにけしからぬと思うのです。もっと早く結論を出してもらわないと、いろいろな面にその問題が波及してくるわけなんです。たとえば食品衛生関係からいいますと、お米の問題はすでに出ておりますね。大阪では越中米配給を中止するということを言っておるわけです。しかも金大石崎教授は、慢性中毒症のこの問題で、この平均含有量は一PPMと言われておるのですが、このくらいでは人体影響はないということを発表しておられます。しかしながら厚生省のほうで許容量というものをはっきりしておかないと、人体影響のない程度のものでも含有量として発表されると、とかく問題として取り上げられてくる、いろいろの方面にその問題が波及してくるわけですから、このお米の問題に対しては、厚生省はどのような見解を持っておられるのか、はっきりしていただきたいと思うのです。
  16. 谷垣專一

    谷垣政府委員 配給米につきましては、厚生省心配はないという結論に達しております。この同地域の玄米を平均的に見ますと、〇・七ないし〇・五PPM程度であると判断しております。まだサンプルがそれほど多量ではございませんが、そういう判断をいたしております。これを白米にいたしますと、おそらくこの含有量は二分の一に減るものと思います。先ほど委員からお話がございましたように、この含有量許容範囲はどれだけかという問題がございますが、金沢大学石崎教授が言っておられるように、一PPM以下であれば人体影響はない、こういうことを言っておられる論文がございます。こういう点から考えましても、配給米につきましての心配はない、こういうふうに厚生省考えております。
  17. 古川喜一

    古川(喜)委員 お米の問題でも、地元としては相当心配をしておるわけなんです。いわゆる悲惨な患者救済ということで徹底的にこれを追及していくと、富山県の農産物の売れ行きということを心配するということがあるわけなんです。しかもようやく明かるい曙光を見ようとしておるときに、こういう問題が出てくる。だからあまりイタイイタイ病追及をやってはいけないのだというような問題にまで発展してきて、せっかく解決曙光を見ておるものが、水をかけられるという状態になる。また富山県の県のほうでは、影響がないとの統一見解をしておりますが、富山県の食糧事務所食糧出張所のほうでは、厚生省見解待ちということを言っておるわけです。だから厚生省としては、そういう医学的な根拠に基づいて、現在の含有量では人体影響がないんだということをはっきり示していただきたいと思うし、また、農林省としては、富山食糧事務所、あるいは関西のほうでの配給の問題でいろいろ不安を感じておられる方々に対しては、そういう医学的な根拠から見て、人体には影響はないということをはっきりさせてやっていただきたいと思うのです。それと同時に、今後も、現在の土壌で生育してくる水稲、米がそのようなカドミウムを含むとなるとしますれば、これはやはり根本的に解決をしなければならない時期が来ると思うのです。そうすると、土壌を入れかえるということになってくるわけでありますが、この前の産業公害委員会でも、過去において質問したことがあるのですが、いや、地元からそういう要望はありません、という簡単な農林省の答えであったのですが、たとえ要望があっても、それは大きい事業であって、一県一市町村でやれる問題じゃないのです。国民生活を守る、人命を守るという立場から、これはやはり国の大きい施策としてやらなければ、とうていやれる問題じゃないのです。この土壌改良客土というものに対して、農林省のほうではどのように考えておられるのか、承りたいと思います。
  18. 加賀山國雄

    加賀山説明員 ただいまの古川委員お尋ねにお答え申し上げます。  確かに、厚生省のほうから御発表になりましたように、食物を通してそういうものが蓄積されるということになりますと、あの近辺は米が重点でございますから、米の中にカドミウムがどのように土壌から根を通して入ってきたかという、一つのメカニズムの問題があると思いますが、それは残念ながら、非常に研究がおくれておりまして、まだ十分明らかになっておりません。それからもう一つは、土壌中にどのくらいのカドミウムがあった場合に、どのくらい、米粒に移行するかというような、今後研究をやらなければならない問題が残っておりますけれども、ただいま御指摘のように、そういうようなことがあるなということをわれわれも考えておりまして、何らかの対策を立てなければならないと考えております。そういうことで、やはりこういう問題を進める前には、そういう実態と申しますか、その原因と申しますか、それをかなり深く突っ込んでおきませんと、ただいま委員から御指摘のございました、客土をする場合においても、客土量の問題、それからもう一つは、カドミウムの含まれておる土壌の深さなどの問題がございまして、場合によっては、浅い場合には反転客土ではございませんが、土壌を引っくり返すというふうな反転耕をやるだけでも効果があるかもしれませんし、そのようなことをわれわれといたしましては、今後とも検討してまいりたいと思っておるわけです。  それから、あとのほうのお尋ねの、国がどうすべきじゃないかというお尋ねでございますが、現在の土地改良法制度上は、地元の申請が主体になるものでございますから、あの地域でどのくらいの広がりをもってそのような汚染土壌があるかということがはっきりいたしますれば、それに対応して、われわれのほうも、どういうふうな観点でやっていくべきかということが、実態が明らかになると思いますので、富山当局と協力いたしまして、こういった問題は検討してまいりたいと考えております。
  19. 古川喜一

    古川(喜)委員 そのカドミウムが、重金属が、どのように水稲、米に被害を与えて、米に含まれていくのかということについては、これは昭和十六年の大はんらんに、神岡鉱業所排かすが流出いたしまして、膨大な農地被害を与えたことは、当時の小林技師調査に出て、その報告農林省には、今度われわれが報告申し上げましたから、あるはずです。当時はなかったと言っておられましたが、あるわけですから、もうそういう状態で、相当多くの重金属があの辺に流出して、あるいは沈でんしているだろうということが想像されているわけですから、やはり先ほど申し上げましたように、人命を尊重する、あるいは生活を安定させるという立場からも、もっと真剣に具体的にこの問題について取り組んでいただきたいと思うのです。  さらに、通産省に御質問申し上げますが、先ほど厚生政務次官から、救済の問題については鉱山局のほうでいろいろ和解の話もあるだろうということでありますが、せっかく厚生省がいろいろの医学的な、専門的な立場から研究をし発表をされても、ややそれに水をさすような見解が常に――常にですよ。いま初めてじゃない、常に出てくる。そうすると、厚生省は、いわゆる人命尊重立場からいろいろのことをやる、通産省は、企業経営者立場から、それにいつもイチャモンをつけるというふうな印象を国民に与えてしまっている。まことに残念なことだと思うのです。今度も、厚生省神岡鉱業所にも責任があると言っているので、神岡鉱業所だとは断定していないんだというような見解を、西家局長発表したりしているのですが、これは私は、やはりこの前も言ったように、刑法上の問題として、疑わしきは罰せずということばもあるが、公害問題は、疑わしきは罰せなくては、国民生活人命を保護していくことができないんだということも申し上げておったのですが、このことに対しての見解と、今後の被害者患者の問題についてどのように考えておられるのか、承りたいと思うのです。
  20. 藤井勝志

    藤井政府委員 先ほど来お話があったごとく、イタイイタイ病の病気の本態とその発生原因については、昨日、正式に厚生省から見解が示されたことは御承知のとおりでありまして、われわれは、その発生原因は当然、厚生省見解に従う――政府としては当然、その見解に従うということは、これはもう多言を要しないことでございまして、新聞紙上を通じて、いかにも厚生省通産省がばらばらな見解を述べているように印象をお与えしているとするならば、これは非常に遺憾なことでございまして、少なくとも、ただいまから申し述べる私の見解通産省の正式の見解である、このようにお聞き取りを願いたいと思うのであります。  ところで、ただ、御理解いただきたいのは、その原因物質としてのカドミウムが、そのイタイイタイ病にどのような割合で影響しているかということの原因については、まだはっきりとしていない面がある、おそらくそういう点を、賠償責任の問題とのからみにおいては慎重な発言をせなければならぬ、こういうところが、私は、誤解を生んだといいますか、新聞あたりで、いかにも企業者側の味方のごとき発言にとられておるのではないか、こういうふうに思うのでありまして、これは私はいずれ、神岡鉱業所の場合、企業責任の範囲は、すでに裁判所に持ち込まれておりますので、これが法的解決を待つということで、この問題についてとやかくわれわれが言うべき筋合いではない、もう公害だという認定を受けておるわけでありますから。そこで、わが省といたしましては、この病気の実態にかんがみまして、被害者救済のためのあらゆる現在許された行政上の措置を早急に適用しなければならぬ。その一環といたしましては、先ほど申し上げました法的解決とは別個に、鉱業法に基づく和解仲介の制度を活用して、今度は公害ということがはっきり認定されましたから、そこで通産省としては、さっそく地元、県に連絡をいたしまして、今明日中に連絡をとる手配をすでにいたしておりますけれども、そういうふうにして、当事者間の損害賠償等にかかる紛争について事実上の話し合いを進め、かつ被害者対策の迅速な実施をはかる、こういったことについて、今後積極的に、県を通じてあっせんをいたしたい、このように考えております。
  21. 古川喜一

    古川(喜)委員 時間も参りましたので、質問を終わりたいと思いますが、いまほど両次官からいろいろと承りました。今後はすみやかなる患者救済対策とこれからの予防措置、それは飲料水土壌問題などを含めてでありますが、積極的に取り組んでいただきたいと思います。われわれもまた、患者救済やその他の問題について、言っちゃ悪いですが、あいまいな解決とならないように、りっぱな前向きの姿勢で解決されるように努力をしていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  終わります。      ――――◇―――――
  22. 山崎始男

    山崎委員長 大気汚染防止法案及び騒音規制法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。河上民雄君。
  23. 河上民雄

    ○河上委員 私は当委員会にただいま提案されております公害関係法案につきまして、その内容について若干御質問いたしたいと思います。この法案は、国民ひとしく注目し、待望しているところでございまして、この法案に対するわれわれ委員会一同の責任は、非常に大きいと思いますので、少しく細部にわたる点があるかと思いますが、審議の促進に協力する味意もありまして、できるだけ簡単に御質問いたしたいと思います。  まず、騒音関係のほうから先にお尋ねいたしたいと思います。公害裁判の実情を見ましても、また地方公共団体における公害関係の窓口に、統計であらわれる苦情の件数の内容なんかを見ましても、大気汚染、水質汚濁及び騒音の中で、一番大きな割合を占めておるのは騒音でございます。そこで、初めに、この騒音規制法ができたことによりまして、これまでもございました騒音裁判というものに、実質的にどういう変化があらわれてくるというふうにお考えになっておりますか。その点をまずお尋ねしたいと思うのです。
  24. 谷垣專一

    谷垣政府委員 御指摘がございましたように、従来騒音の対策といたしましての、いわゆる騒音を規制いたしまする法律がいままでございません。そういう意味におきまして、この法律が、騒音を特別に対象といたしましての規制法ができましたことの意味は、相当に大きいと私たちは考えておりますが、内容から申しまして、一定の規制基準を定めることになります。そういうことで、工場の騒音あるいは建設関係の騒音の規制を進めていく仕組みになっておりますので、従来いろいろと苦情や紛争が起きておりますが、紛争が起きます以前に、かなりの予防的な措置がこれで行なわれるんではないか、こういう考え一つ持っております。  それから、不幸にして紛争が起きました場合、従来はこういうような法律がございませんために、いわば事実上のやり方しかできておりませんが、このたびは法律で、紛争処理のための和解の仲介制度が規定されておりますので、専門的な知識を持っておる方々を常時指定をいたしまして、これらの適切な運営によりまして、解決がはかられるだろう、こういう期待をいたしておる、こういうことでございます。
  25. 河上民雄

    ○河上委員 騒音規制とそれから大気汚染防止法と比較いたしますと、その目的において一つ重大な違いがあるということは、御承知のとおりだと思うのです。つまり大気汚染においては、人間の健康ということが非常に重要な比重を占めておりますのに対しまして、騒音の場合は、環境基準というようなことがうたわれておりまして、健康の保持というのが抜けておるようなわけでございます。専門家に聞きますると、騒音の場合は、健康維持の場合よりも環境基準で縛るほうがよりきびしく縛れるのだ、こういうような御説明でございますが、しかしそこで一つ問題が出てまいるのです。それは環境基準の場合は、公害基本法でも問題になりましたように、産業の発達との調和という問題が出てくるわけでございます。そこで騒音の場合、受忍の限度といいますか、それが非常に微妙になってくると思うのです。一方では、環境基準ということで縛ることにより、騒音なんかの何ホンというような数字をきびしく縛れるというのも事実でありましょうけれども、しかし他面産業との調和という問題がそこで出てまいります。時と場合によりましては、それが非常に重要になってくると思うのです。一例をあげますならば、たとえば万博の工事などというような、非常に時間が限られた中でやらなくちゃいかぬというようなことのときには、これは公共性というようなことが出てきて、そこに住んでおる人々の人権というものはどうなるのかというような問題が出てくると思うのであります。そこで厚生省並びに法務省におきましては、騒音に関して、一体受忍の限度というものを大体どういうふうに考えておりますか。それを伺いたいと思います。
  26. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 御質問の前段でございますが、法律の目的に、大気については健康問題が書いてあるけれども、騒音については書いてない、こういう御指摘につきましては、先生もお触れになりましたように、私どもといたしましては、騒音というものは、いわゆる生活環境との問題を重視しておるわけでございまして、生活環境を守るためのいろいろの基準を置きますれば、それはいわゆる健康の問題をも含めて、当然規制ができ――先生か御心配になるように、騒音の問題は、生活環境と、それから産業との調和の問題だから、あるいはそこがくずれまして、健康までいくんではないかという御心配については、私ども考えております規制の基準というものは、現在都道府県では、夜は大体四十ホンぐらいから昼間でも七十ホンぐらいが規制されておりますので、この範囲で、それぞれの地域なり時間によって規制が行なわれることと思いまして、先生が御心配になるように、少なくとも工場騒音については健康問題は起こらない、かように考えておるわけでございます。
  27. 河上民雄

    ○河上委員 いまのような御答弁でございますけれども、従来、この法案が出る前に、騒音裁判が行なわれておるわけでございますが、その実情を二、三、実際に担当した弁護士の方から伺ったり、あるいは「ジュリスト」その他の、そういう一般的な雑誌で拝見する限りでは、実際に争われているホンの数というものは、かなり高いのでございます。受忍限度というものが、従来この法律がなかった時代におけるものと、この法律の立案者が想定しております受忍限度というものと、どういうふうに違いがあるか、またその受忍限度というものをある程度科学的に測定できる基準というものと産業との調和の問題、あるいは騒音防止の技術が、現在ではまだ開発されておらないのでやむを得ないというような面、あるいは開発されておるのにやらない、いわば過失の責任というような問題、それから騒音が被害を与えております地域の性質、住宅街とか商業地域とか、あるいは工場地区、こういうような違い、それから被害者の職業ですね――一般的に夜は低くして昼間はある程度やむを得ない、こういうようなお考えのようでありますけれども、われわれの社会では、夜間働いて昼間寝なければならないという職業の人がかなりいるわけでございます。現に、騒音判決がわが国で初めて下されたものとして注目されております。昭和四十二年十月三十一日の有名な事件によりますると、これはおまわりさんであります。夜勤のあと寝なければならない、それが近所の工場騒音によって眠れない、健康上非常に大きな損失を受けたというような事件が、その申し立てが認められたのでありますけれども、こういうような被害者の職業というようなものの特異性も考慮されなければならない。こういうような問題について、立案者はどういう基準を想定しておられるのか。それが従来の裁判で主張され、また裁判所が妥当とみなした基準とどう違ってくるのか。それとも、従来の裁判で認められたものをそのまま追認するというお考えなのか。そういうようなことについてお尋ねしたいと思います。
  28. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 この法案の規制基準と裁判上のいわゆる受忍限度の問題の御質問だと思いますが、私どもが考えておりますのは、この法案の規制基準というものは、もちろん行政上の規制基準で、いわゆる環境基準的な要素を含んだ、いわゆる排出基準でございますが、直接的には、これはもちろん裁判上のものさしとはなるものではございませんけれども、実際上は被害者サイドの受忍限度の判断の一要素になるというふうに考えております。もちろん、先生御指摘のように、受忍限度の問題は、地域、時間、被害者の年齢、職業等、ケース・バイ・ケースで判断が行なわれてくるだろう、かように考えております。
  29. 河上民雄

    ○河上委員 最近の「ジュリスト」という雑誌によりますと、受忍限度認定の具体的基準として、従来の判例から抽出して五つほどあげられておるのであります。その第一は、騒音の大小、性質、発生時間、つまり他人の生活に及ぼす影響、第二は、騒音が付近の静穏を害するかいなか、第三は、騒音の原因となる行為が社会的に有用かいなか。第四は、騒音防止の技術が開発されているかいなか、第五は、その費用が経済的に不合理なほど費用を要するかいなか、かような五つの具体的基準というものをめどに、裁判が争われているという事実が出ておるわけでございます。この法案が今度できまして、そうしてある基準というものが定められた場合に、これが今後の騒音の判決の上でどういう影響を与えるかということについて、法務省ではどんなふうに考えておりますか、御意見を承りたいと思います。
  30. 味村治

    ○味村説明員 先ほどお話のございましたように、この騒音規制法は、いわば行政的な規制でございます。騒音に基づきます損害賠償は、民法の不法行為に基づく損害賠償請求でございますので、法律的には影響はないということになりますが、事実上といたしましては、従来の実績、実例、判例等は、大体従来から騒音防止条例があるところがあるわけでございますけれども、そこで定めておりますような騒音の基準というようなものをかなり重視して、受忍限度というのを認定しているという事情があるわけでございます。もちろんそのような条例に定められております基準そのものを採用したわけではございません。先ほど仰せになりましたいろいろな要素というものをともに考慮して、定めているわけでございますが、やはりこの基準がかなり重要な要素になっていることは、従来の判例から見ますと、いなめない事実であろうかと思います。したがいまして、今回の法律によりまして、同じように受忍限度が、この騒音の基準が定められますと、かなり重要な要素として、裁判上考慮されることになるというように考えております。
  31. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、厚生省では、騒音の受忍限度といいますか、取り締まりの基準になるホン数というものを、それぞれの地区について、大体どういうふうに考えておられるのでございましょうか。
  32. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 現在各都道府県並びに市町村では、それぞれ地区によりまして多少程度の違いはございますけれども、たとえば住宅専用地域でありますと、夜間の場合で大体四十ホンから四十五ホン、それから住宅地域でありますと四十ホンから五十ホン、それから商業地域、準工業地域でありますと四十五ホンから五十五ホン、工業地域でありますと五十ホンから六十ホンというのが大体の基準でございます。いまの例は夜間の場合でございますが、そういう点を主務大臣のいわゆる基準として定めまして、それぞれ都道府県が決定する。それから学校、病院等につきましては、さらにこれよりも五ホン程度低く基準を示したい、かような考えでございます。ただいまのは夜間の問題でございますので、昼につきましては、たとえばそれよりも五ホン程度高くなるという考え方でございます。
  33. 河上民雄

    ○河上委員 それから、いまのお話と関連いたしますけれども、法務省の方に伺いたいのですが、先ほど、裁判では、不法行為成立ということが非常に問題になるということでございましたが、不法行為成立の根拠として、民法の七百九条と七百十七条というのが用いられているやに聞いておるのでありますが、どちらをおもに考えておられるのか。
  34. 味村治

    ○味村説明員 騒音によります身体あるいは健康に対する侵害につきましては、おおむね民法の七百九条の不法行為の一般原則を定めました規定、これの適用のある場合が多いのでになかろうかというように考えております。
  35. 河上民雄

    ○河上委員 今度の騒音規制法では、騒音発生、公害発生の施設について、不備な点は直させるとか、そういうようなことは行政的にやるという意向は示されているわけでございますが、そういう場合に、民法七百十七条との関係はどういうようになるとお考えでしょうか。
  36. 味村治

    ○味村説明員 民法七百十七条は、「土地ノ工作物ノ設置又ハ保存ニ瑕疵」があることによる損害賠償責任を規定したわけでございます。本件の場合に、いわゆる特定施設でございましたか、それによりまして騒音が発生するといたしましても、それは障壁を設けましたりあるいは一応適当なところに設ける等いたしまして、近隣のものに被害の生じないようにすることもできるわけでございますから、そのような場合には、七百十七条の適用というよりは、そういう騒音の発生するような施設を近隣の迷惑になるようなところに設置した、そしてそれを運転することによりまして近隣の人に対して精神的あるいは物質的な損害を与えたということになろうかと思いますので、むしろ問題は七百九条ではないか。したがいまして、このような騒音規制法に定めます特定施設を設けたこと自体をもちまして、七百十七条に該当するということは、やはり少しむずかしいのではあるまいかというふうに考える次第でございます。
  37. 河上民雄

    ○河上委員 厚生省では、こういうような問題について、民事訴訟が起こってきた場合と、それから行政上の指導で行なう場合と交錯するような場合もあると思うのでありますが、そういうような際に、どういうふうに処理していくお考えでございましょうか。
  38. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 先生御指摘のように、騒音の問題は地方でも非常に多数にわたっておりまして、これは自治省の調べでございますが、昭和四十一年度の騒音についての受理件数は全国で七千六百件になっておりまして、その点一応処理されておりますのが五千八百件にわたっております。したがいまして、騒音問題はいわば生活妨害でございますので、あるいは行政当局の指導等で解決する問題が多かろうと思います。しかしながら、中には今度新しい法律で設けられます和解の仲介制度にも持ち込まないとなかなか解決つかない問題もあろうかと思いますので、こういう制度をつくったわけでございますが、さらに問題自体が複雑かつ解決がむずかしい問題は、あるいは裁判上の問題として処理せざるを得なくなる場合もあるめではなかろうか、かように考えております。
  39. 河上民雄

    ○河上委員 昨年公害基本法が成立したのでございますけれども、こういうような法律ができたことによりまして、権利意識というものが非常に高揚されたと思うのでございます。今度こういう二法案ができますことによって、そういう紛争は従来よりもかえって多くなるのではないかというように私は思うのでございますが、公害基本法が昨年通りましたあと、何かそういうような変化があったかどうか、その点についてもちょっと……。
  40. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 昨年の夏、公害基本法ができました以後の統計等がまだ処理されておりませんので、統計的に確実にお答えすることはできませんけれども、特に増加したというような話も、私のほうでは聞いておりません。
  41. 河上民雄

    ○河上委員 時間があまりございませんので、騒音についてなお幾つか伺いたいことがございますが、少しくこまかくなりますので、大気汚染のほうに移らしていただきたいと思います。  大気汚染の許可制の問題とか、あるいは排出基準の強化の問題とか、いろいろ伺いたい点、さらに脱硫装置の破究促進、燃料規制の明示の問題など、いろいろございますが、すでに他の委員から昨日来御質問がございましたので、私はそれらを省きまして二、三伺いたいと思います。  まず、この法案を拝見いたしまして、われわれとしてちょっとけげんな感を起こさせますのは、排出基準の決定の主体というものが、いわゆる煙突の場合は通産、厚生両省の共管になっておりますのに、自動車の場合は運輸省だけでございまして、厚生省はどういうわけか遠慮されておるのでございますけれども、これは一体どういうわけでございましょうか、政務次官、この点について承りたいと思います。
  42. 谷垣專一

    谷垣政府委員 確かに、法文を読みますと、そういう感じがお起きになるのはもっともだと思います。ただ、自動車の場合、これの構造、装置というものと非常に密接不可分――そういえば、工場だって同じじゃないか、こういうことになりますけれども、その質と申しますか密接度が非常に不可分の問題がございますし、技術的あるいは経済的な条件も考えなければなりませんので、運輸大臣が定める、ただし、これを定める場合には厚生大臣意見を聞くのだ、こういう形にしたわけでございます。たてまえの上から見ますと、一つ法律の中に少し毛色の違ったような書き方になっておりますが、これは工場と動いております自動車というものとの違い、こういうふうにお考えを願いたい、かように考えます。
  43. 河上民雄

    ○河上委員 いまの御説明は、心中たいへんお苦しいところだと思うのでございますけれども、どう考えましても、煙突と自動車というのはそう違うものかどうか、また、それによって影響を受ける人間のほうからいえば、全く同じことでございまして、公害問題そのものは、要するに人間の健康保持ということから起こってくるのであります。政務次官御承知だと思うのですけれども、公害規制に関しましては、最近ではアメリカとそして日本が非常に騒がしくやっているわけでございます。ところがそのアメリカは、公害問題は厚生省が一手に主管官庁としてやっているのであります。私は、自動車の排気ガスの問題につきまして、向こうのカリフォルニアの州の立法やあるいは連邦の立法などを見ましたけれども、これは厚生省が全部やっておるのでございます。法案なども、セクレタリーはかくすべきである、つまり厚生大臣はかくすべきであるというふうになっておりまして、決してセクレタリーズにはなっておらないのでございます。いまのお話ですと、自動車の構造上これは運輸省がやるべきであって、厚生省はただわずかに意見を述べる程度でいい、こういうようなことですが、ちょっとこれはおかしいのでありまして、アメリカと日本は、自動車産業では世界の雄たる国になっているわけですけれども、アメリカと日本でそんなに自動車の構造が違うのでしょうか。これは全く理解に苦しむところでございます。厚生政務次官の御意見をもう一度重ねて伺いたいと思います。
  44. 谷垣專一

    谷垣政府委員 御指摘のとおりに、アメリカ厚生省ということになっております。大陸系統は逆に運輸省という形に実はなっておりまして、これはどちらがいいか、いろいろ議論のあるところであろうかと思います。いわば日本の場合は運輸省、厚生省両方でやっていく。運輸省も十分に厚生省意見を尊重して運営をしていく、こういう形になっておりまして、アメリカのやり方とは若干違っておることは率直に認めざるを得ない、こういう形でございます。
  45. 河上民雄

    ○河上委員 先ほど古川委員からも御質問があった、例のイタイイタイ病公害認定の問題を見ましても、今回は厚生省が最終的な責任を持って、そして国の方針を出すということにいたしましたがゆえに、ここに少なくとも公害認定に関してすっきりした結論が出たわけでございます。ほかの省が不熱心であるとは決して申しませんけれども、いろいろとほかにやるべきこともたくさんあるわけでございまして、公害問題に関してはやはり厚生省責任を持つ。それが少なくともこの公害問題の解決の突破口になるのだという実例を、きのうのイタイイタイ病に関する公害認定発表が、われわれに一つの教訓として残していると思うのであります。  少し話がそれますけれども、日本の国会では、帝国議会以来この公害問題というものは絶えずあったわけでございます。その輝かしい先駆者であります田中正造代議士が、渡良瀬川の例の鉱害問題を取り上げて、荒野に叫ぶ声のように孤軍奮闘いたしたことは、歴史上よく知られているところなんですが、そとき農商務省が答弁したその答弁内容というのを今日読みますと、ほとんど現在の答弁と変わっておらないのでございます。要するに、被害はあるけれども原因は明らかでない、確実ならずということばが書いてございます。被害あるのは確かだけれども、原因確実ならずということばがありまして、いまも、いろいろこまかく科学的な用語を使いますけれども、同じような答弁をしております。それに対しまして、昨日のイタイイタイ病に関する公害認定のあの政府の声明は、六十年間にわたる停滞を打ち破ったものだというふうに評価することさえできるのでございます。その輝かしい歴史的な一つの文書でございますけれども、それをやることができたのは、やはり厚生省公害問題については、他の省もいろいろあるけれども、私たちがその責任を持つのだというそうした気魄があったればこそであろうと思うのであります。そういう点から申しまして、同じ大気汚染の排出基準に関しまして、煙突と自動車が、基準決定の主体において、こういう食い違いがあるということは非常に遺憾なことでございます。しかも自動車に関しては、同意を要するというような表現ではなくて、ただ意見を述べることができるというふうになっていることは、これは将来非常に重大な禍根を残すことになるのではないか。私はその点を非常に憂えるのでございますが、この点につきまして、重ねて厚生省見解を承りたい。
  46. 谷垣專一

    谷垣政府委員 厚生省といたしましては、当然に国民の健康、生命を守るという立場から、行政を進めていかなければならぬと思っております。本件御指摘の問題におきましても、いろいろと御意見があると思います。ただ、大気汚染防止法の中で、この条文が書かれておるということの意味も、十分に御理解を願いたいと思います。これは自動車その他の法文に書いてあるのではございません。大気汚染防止法の中で書かれておるということ、これはやはり厚生大臣が申します意見というものが、実際上も行政上も十分に尊重されなければならないということを意味しておるものと、私たちは解釈をいたしております。確かに、もう一歩こういう点を強くやれとか、まだいろいろ意見は私たちも持っておりますが、しかし技術的な問題設計の問題というものもございますし、また厚生省自体の中に、それだけの技術的なそれぞれのメンバーがあるかと申しますと、それも十分でない点も現実にはございます。ただ健康を守り、また生命を守るという立場におきまする主張は、これは厚生省といたしまして、運輸省に十分申し入れをいたしますし、またそのことによって、厚生省意見が運輸省にのみ込められないという事態は、私はいまの社会的ないろいろな公害に対しまする世論の立場考えましても、ないものと、かように考えておるわけでございます。
  47. 河上民雄

    ○河上委員 政務次官の御答弁にあらわれた誠意を疑うわけではございませんけれども、これはやはりたてまえとしては、公害問題は厚生省が主役である。しかしいろいろ産業との関連がありますので、他の各省等の協力を仰ぐ、こういうふうでなくてはならないと思うのでございます。この条文はそうした姿勢が全く見られない。むしろ逆にさえなっておって、何か関係各省のあとから、厚生省はついていくような感じさえ与えるのでありまして、われわれとしてはこれは非常に納得しがたいものでございます。なお他の委員からもいろいろこの点について鋭く御質問があろうと思いますし、時間がもう非常に迫っておりますので、これはこの程度にとどめまして、私としては、質問を留保する気持ちで、次に移りたいと考える次第でございます。  今度の法律の中で、一つの特徴として、仲介制度のことが出ておるのでございますが、この仲介制度というものの実効はどの程度のものか、われわれとして期待も持ち、また疑問も持っておるわけでございます。一例を申しますならば、中労委とか地労委とか、労働関係のそういう仲裁制度があるわけですけれども、こういうものと権限上ほぼ近いものであるのかどうか、その点について、立案者のお考えを承りたいと思います。
  48. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 大気汚染防止法あるいは騒音防止法で、和解の仲介制度を設けておりますが、この点につきまして、大気につきましては、実は実際上の実例は数件にすぎないわけでございまして、和解の仲介制度そのものも再検討すべきではないか、こういう御意見も率直のところございます。騒音につきましては、騒音の地域性にかんがみまして、私どもとしては、今後の問題でございますけれども、相当利用度の意味が出てくる、かように考えておるわけでございます。  先生御指摘のように、紛争の処理の問題につきましては、現在厚生省を中心といたしまして、政府部内、あるいは先ほど政務次官からもお答えいたしましたように、根本的に中央公害審議会の中で、小委員会なり専門委員を任命いたしまして、現在検討中でございまして、御指摘の点については総合的に、今後公害問題の紛争処理につきましては、積極的に検討してまいりたい、かように考えております。
  49. 河上民雄

    ○河上委員 いまの御答弁では、将来できるであろう紛争処理制度というものとの関連の中で、ここに述べられております仲介制度の具体的な姿というものも明らかになる、こういうふうに理解しておるやに受け取れるのでございますが、そのように理解してよろしゅうございますか。
  50. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 さようでございます。
  51. 河上民雄

    ○河上委員 では、問題が少しこまかくなりますので、時間が中途半端になりますから、この際は一応質問を終えまして、残りは留保したいと思います。
  52. 山崎始男

    山崎委員長 本会議散会後再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時五十四分休憩      ――――◇―――――    午後三時四十七分開議
  53. 山崎始男

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。河上民雄君。
  54. 河上民雄

    ○河上委員 先ほどは、本会議の予鈴が鳴りましたので、質問を中断いたしましたが、大気汚染防止法の中で、一つ新しい内容として、自動車の排気ガスの規制がうたわれておることは御承知のとおりでございますが、この自動車の排気ガスの規制の対象になりますのは、新車、中古車ございますけれども、どの範囲になるのでしょうか。
  55. 内村信行

    ○内村説明員 ただいまの問題につきましては、主管課長である自動車局の整備課長から御答弁いたさせます。
  56. 景山久

    ○景山説明員 ただいまの御質問でございますが、新車と中古車と二つあるわけでございまして、現在直接規制をいたしておりますのは、新車についてでございます。中古車につきましては、車が、使っております段階でだんだん排気ガスの程度が変化してまいります。この変化してまいります程度を、車の整備と申しますものでどれくらい押えていけるか、そういうことをはっきりさせなければいけないわけでございます。これにつきまして、昨年来破究調査を実施いたしておりますが、ようやくいま中間段階に参っております。いままで私どもが得ましたデータでは、点検整備をいたしますことによりまして、ある程度の効果が得られるということが、まだ技術的に完全ではございませんけれども、見通しがつきましたので、昨年の暮れ、定期点検整備要領というものを指導要領として出しまして、現在この指導要領にのっとって車の整備をするようにということを、鋭意指導いたしております。  なお、この調査研究は続行して、引き続いて推進してまいりたいと思っておりますが、その結果を得まして、車の定期点検整備基準というものをつくりまして、義務づけてまいりたい、中古車対策としては、こういうふうに考えております。
  57. 河上民雄

    ○河上委員 車はだんだん新車がふえてくると思うのですけれども、そういう中古車に対する点検、整備というようなことを加味いたしまして、自動車排気ガスの規制が、一応その所期の目的をあげるに至るまでに、どの程度の年月を要するというふうに考えておられますか。
  58. 景山久

    ○景山説明員 どの程度の年月という御質問でございますが、自動車の排気ガスの技術の問題は非常に歴史が浅うございまして、世界じゅうでいま一生懸命になって研究しております。私どものほうも、船舶技術研究所という名前でございますが、運輸省の直轄の研究所がございまして、その中に自動車の公害関係あるいは安全関係を担当いたしております部がございます。昨年の予算におきまして、交通公害部の設置を認めていただけましたので、その交通公害部を中心といたしまして、いま鋭意研究を進めておる段階でございます。したがいまして、いまいつというようなことは、ちょっと技術的に申し上げる段階にないわけでございます。
  59. 河上民雄

    ○河上委員 装置の開発ですね、これは公害問題一般に関して非常に重要なファクターだと思うのですが、それに対して、予算上どの程度の金をつぎ込んでおるのか、また、今後どういう方針で臨んでいるのか、それからそういう問題についてアメリカは非常に、自動車王国であるだけに、研究の蓄積があろうかと思うのでありますけれども、アメリカでは大体どの程度努力をしているのか、そういうようなことについて教えていただければ幸いだと思います。
  60. 景山久

    ○景山説明員 先ほど申し上げました私どもの研究所の予算額でございますが、四十三年度予算におきまして、約三千八百万円という研究予算をお認めいただいておるわけでございます。なおアメリカ政府関係研究機関の予算でございますが、私が承知しております範囲では、民間に対します委託研究費なども含めまして、あちらの会計年度で一九六八年度でございますが、約二十二億円というふうに承知いたしております。
  61. 河上民雄

    ○河上委員 二十二億円と三千八百万円では、だいぶ差があるようですけれども、ひとつこれは政府において、もう少し本格的に努力をしていただきたいと思うのです。なお自動車の排気ガスの場合、燃料規制というものはどの程度重要な意味を持つのか、あまり専門的なことはわからないのですけれども、例の脱硫装置の研究の場合と同様、やはりかなり重要なものだと思うのですが、これについて、運輸省では何か今後の方針を持っておられましょうか。
  62. 景山久

    ○景山説明員 先生御指摘のように燃料の問題がいろいろあるわけでございます。現在自動車に使われておりますのは、ガソリンとそれからいわゆるLPガスと申しますものと、いわゆるディーゼル車が使っております軽油、エンジンと燃料の組み合わせになりますが、そういった三つがございます。このうちでディーゼルは非常にきれいでございまして、ほとんど有害ガスを排出しない。それからLPガスでございますが、これはガソリン車と比べまして大体半分のきれいさでございます。そういうことになっております。なおその燃料そのものの研究でございますけれども、これは非常にむずかしいようでございますが、先ほど説明いたしましたアメリカの二十二億円の中には、そういったような研究費が計上されているようでございます。
  63. 河上民雄

    ○河上委員 いまのようなお話ですが、今後の方針というものは、あまりはっきりいまの御答弁では伺えなかったようでございます。もう少し研究の現状など御説明の上、今後の方針というようなものを、もう少しはっきり発表していただきたいと思います。
  64. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 自動車の排気ガスに対する技術の開発につきましては、通産省といたしましても非常な関心を持っておりまして、運輸省と調整をとりつつ、諸般の研究を進めております。たとえて申し上げますと、現在一酸化炭素の排出量を三%にするとかなんとかいろいろ問題になっておりますが、通産省の昨年発足いたしました自動車安全公害センター、こういうものがありますが、そこにおきまして、できるだけ完全燃焼に持っていきまして、一酸化炭素等の有害成分を極力押えて、現在規制しているもののほぼ半分程度に保っていくことを目標にして研究を進めておるわけでございます。それが一酸化炭素等の有害成分そのものを減らすということ、それから同じく安全公害センターでは、今度はかりに排気ガス中に有害分がありましても、それを無害化する装置として、いろいろ触媒等を使いまして研究しておるのでございまして、いわば触媒式コンバーターによる無害化の耐久試験、そういうものを行なっております。なお同じくその場合、別な面でございますが、排気ガスの測定方法、これがなかなかむずかしいわけで、この測定方法を簡易化する、簡単に測定する、それからより正確に、走行中におきましてもこれが測定できる――実験室等においては相当正確に測定できるわけですが、走行中におきましても、簡易に、しかも正確に測定する方法が、いま研究が進捗中でございます。  なお、通産省関係のそういう自動車安全公害センターの排気ガスだけの予算、ここで私が目の予算で計算いたしましたところ、約一億五千万ぐらい計上されております。
  65. 河上民雄

    ○河上委員 ただいま運輸省並びに通産省から、自動車の排気ガスの防除の装置の開発について、いろいろ御努力のあることを伺ったわけですけれども、ここでまた、先ほど基準決定の主体の問題に返ってくるわけですが、そうして努力した結果の基準に合致しているかどうかの基準をきめるのが、実は運輸省であるわけでして、何か試験の答案を書く人と採点者が同一人であるというような感じがいたしますので、これはやはりどうしても厚生省が入って、健康の維持という観点から、その御努力基準に合致しているかどうかということをきめるその基準を、責任を持って、少なくともその一端をになうという形になるのが順当ではないかという感を深くするのでございます。こういう点、まことにおかしい話だという気がするのですが、厚生省、あるいは通産省、運輸関係の方の重ねての御答弁をいただきたいと思います。
  66. 内村信行

    ○内村説明員 ただいまの御質問でございますが、昨日、この問題につきましては、島本先生からも御質問がございまして、私その際に歴史的な経過もあってというふうに申し上げたかと存じますが、その点につきまして、もう少し詳細に申し上げますと、御理解いただけるのではないかというふうに感ずるのでございます。  そこで、まず運輸省のやっております自動車につきましての技術行政、これの本質は何かということから申し上げたいと思うのでございますけれども、まず運輸省では、自動車の技術的な安全性ということに関しましては、もっぱら専管いたしまして、最終責任を持ってやっているわけであります。そういった関係で、道路運送車両法というものがございまして、それに基づく保安基準というものを設定いたしまして、それによって安全を確保してまいる、それに合致していないものは運行させない、こういうたてまえをとっております。この際には、もちろん片側には自動車のメーカーというものもあるわけでございますが、これについては通産省さんのほうで御所管になっておられるわけでございまして、私どもは、そういうメーカーとは離れて、いかにしたら安全ということを確保できるかという、もっぱら規制の立場から講じておるわけです。  そこで、その公害の問題でございますが、公害の排気ガスの問題につきましても、この安全を確保すると全く同様の立場から、運輸省ではいままで規制してまいったというわけでございます。そこで、いまの車両法の保安基準というものは、昭和二十六年にできたわけでございますが、その際に、安全性の基準をつくりますと同時に、排気ガスにつきましての公害基準も同様に設けましてやってまいったというふうなことでございます。そして、先ほど整備課長からも御説明申し上げましたように、おととしから新車について三%の規制を加え、逐次その範囲を拡大し、あるいは定期整備点検基準というような方法によって、実際に排気ガスの量を少なくするというふうな行政に向かって、非常に努力しております。さような意味におきまして、運輸省のやってまいりますことは、経済との調整という意味では全くなく、もっぱら安全を確保すると同じような意味の規制をしてまいるというのが実情でございます。  さらにもう少し申し上げますと、この排気ガスの規制というものは、安全の面と公害的な面の排気ガスの規制と密接不可分の関係に立つわけでございます。と申しますのは、いずれも技術的な対象になりますのはニンジンの問題でございます。エンジンの問題とか、そういうことにからんでまいります。その場合に、いずれを立てる、いずれを立てないということはできなくて、他のものと不可分一体のものとして把握していくというようなことから、この場合には運輸大臣がこれをきめる、ただし健康の関係につきましては、もちろん厚生省さんのほうがエキスパートでいらっしゃる、そういった関係から、そういった御意見も十分伺って使命を果たしたいという趣旨でございます。どうか御了承いただきたいと思います。
  67. 河上民雄

    ○河上委員 いまそういういろいろ御説明がありましたけれども、そこからはっきりわかることは、運輸省の場合は、一台一台の車の排出ということに非常に重点があるような感じでございます。公害というのは、もっと総合的な総体的な現象が健康に対してどういう影響を与えるかということが一番肝心な点であります。そういう点から見ますと、御答弁を伺えば伺うほど、自動車の排気ガスの基準決定者が運輸省一人であるということに対する疑問をかえって深くするのでございます。これはもう本来は、厚生省一つ基準をきめて、それに対して運輸省が、個々の構造その他の点からの専門家的な立場から助言をするというのが、本来の筋ではないかという感じをかえって非常に強く確信を深めたような感じでございます。一体これは、先ほどから何度も繰り返されて、本会議の前に繰り返し討議したところでございますから、あまりこれ以上申し上げません。ただ厚生政務次官から、もう一度この点について御意見を承って、次の問題に移りたいと思います。
  68. 谷垣專一

    谷垣政府委員 自動車の問題は、自動車そのものを運転する立場と、自動車がその周辺にどういうような害を及ぼしておるか、いわゆる公害という問題になると思いますが、そういう分野が新しく出てきたと思います。したがいまして、この新しく出てきておる公害をどういうふうにして防いでいくかという立場は、これは従来の行政の中では含まれることの少なかった新しい分野であろうと思います。したがいまして、運輸省のほうといたされましても、従来の経験を、そういう新しい立場から拡大をされるというふうに私たちは了解をいたしております。また私たちの立場は、自動車の発達ということによってむしろ害を受ける人命の健康等を守る立場からの発言になると思います。したがいまして、この第十九条の条文にそれぞれ書いてございますが、今後におきまする実際の行政の運営というものは、この三項の「厚生大臣意見をきかなければならない。」ということは、現実問題といたしましては、両者が同意をしてやっていくということでなければならないと同じ程度行政運営をなすべきものだと、私たちは考えております。そのことが、結論的には、この大気汚染防止法を貫いておりまする精神を行政的に遂行していくのに大切な態度であろう、こういうふうに厚生省としては考えておりまして、またその点につきましては、この法案をいろいろと立案いたしまする過程において、運輸省当局も十分に御了解をしていただいておる、かように厚生省としては考えておる次第でございます。
  69. 河上民雄

    ○河上委員 この問題は、なお釈然としない点もあるわけですが、なお質問者があと二人おられますので……。  先ほど、騒音の問題について、こまかい問題はあとに残したわけでございますが、今度は、騒音規制法で対象になりますのが、工場と建設工事の二つに限られているようでございまして、交通、あるいは、これも交通かもしれませんが、航空関係、これは一応対象から除外されておるわけであります。これをなぜ除外したか。いろいろ御事情はあろうと思いますし、ほかの関連法との関係もあったろうと思うのですが、今回、騒音規制法という、ある意味においては新しい分野を開拓した法律案をつくる際に、これを除外いたした理由を御説明いただきたいと思います。
  70. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 騒音規制法の対象になっておりますのは、御指摘のように、工場騒音とそれから新しく条例でも触れておりませんでした建設騒音の問題を、直接法律で規制するようになっておりまして、それ以外のいわゆる雑騒音、たとえば商業放送でありますとか、あるいはその他、最近問題になっております深夜営業等に関します騒音、あるいはボーリング場その他スポーツ場にかかわります騒音等につきましては、第二十八条で、地方公共団体が地域的な問題として積極的に措置を講ずるという、政策的な条文を置いておるわけでございまして、御指摘の飛行機の問題あるいは新幹線の問題、高速道路の問題等につきましては、この騒音規制法では対象にしていないわけでございます。その理由といたしましては、昨年の公害対策基本法と同時に、飛行機につきましては、運輸省のほうで特別の立法をなさいましたし、それから新幹線の問題につきましては、当初この騒音規制法を立案する段階でも、両省間で相当検討いたしましたけれども、やはり新幹線の問題は、どちらかというと一つの工場とか建設工事と違った面の、技術的に非常にむずかしい問題あるいは公共性の強い問題等がございました関係上なお将来の検討事項というふうに残して、現在両省で検討を続けている次第でございまして、特別立法をするかあるいはほかの法律でやるか、あるいはこの法律で盛り込むかということについては、前向きの姿勢で検討いたしたい。高速道路に関します騒音問題についても、さように考えております。  ただ、一般の交通騒音の問題につきましては、道路交通法によりまして、運転者にはそれぞれの義務が課せられておりますし、それからまた、条例等によりましては、それぞれ交通騒音についての規制を行なっているところもございます。そういうような点で、地域的に解決できる部分もございましたので、一応直接的にこの法律では対象としなかったわけでございます。
  71. 河上民雄

    ○河上委員 ただいまの御答弁ですと、新幹線あるいは高速道路等に関しては、特別立法の用意があるとまでは言われなかったのですが、これは現在検討中でありますならば、やはりそういう特別立法を準備する必要があるのじゃないか、こんなふうに思うのでございますけれども、ぜひひとつ前向きで御検討をいただきたいと思います。  新幹線については、すでに島本委員からもお話がありましたので、高速道路について一、二お尋ねしたいと思いますが、高速道路に伴う騒音についての苦情などはかなり出ておるのでしょうか。その実態について御説明願いたいと思います。
  72. 角田正経

    ○角田説明員 ただいま先生から御質問のありました点は、特に高速道路の建設にあたりまして、いろいろと建設される地域の住民等から反対の意見等もございます。私どもは、当初そういうふうなことで、高速道路が非常に騒音を発するのじゃないかというふうな懸念も持ちまして、あまり多くの例ではございませんけれども、いろいろな個所で実例等をはかっております。その結果によりますと、同じ交通量があるといたしました場合に、高速道路の場合のほうが一般の平面街路、普通の道路よりは約五ホン程度低い数値になっております。これはいろいろな原因があるようでございますが、やはり自動車の普通走っております際に出ます音は、構造そのものによりますものと摩擦音と両方ございます。それからそのほかに、一般の平面街路でございますと、発進する際に非常に大きな音が出ているようであります。高速道路の場合には、停止発進がございませんので、その分だけ低くなっておるというふうな数字が出ております。
  73. 河上民雄

    ○河上委員 アメリカなどでは、高速道路の周辺に五十メートルぐらいのグリーンベルト地帯を置きまして、その先に非常に高い木を植えて、一種の防音林みたいなものをつくっておるようでございます。いわゆるパークウエーですけれども、ああいうものは――日本の高速道路か通っておりますところは、元来非常に静かなところを通っておったのだと思うのです。従来の普通の道は、繁華街を抜けていくというのが道であったわけですが、最近では全く静かなところを選んでいくわけですから、そういう意味で、普通よりも一そう音のしないように、特別な配慮が必要だ。そういうふうな意味で、パークウエーなどに類した防音林のようなものをつくる考えはないのかどうか。建設省でしょうか、政府の御答弁をいただきたいと思います。
  74. 角田正経

    ○角田説明員 先生の御指摘のとおりでございまして、都市高速の道路でありますと、一般に街路を拡幅しながら高架でまいります場合と、一部水路等を使いましてやります場合とございまして、水路等の場合は、問題になる個所がときにございます。一般的に騒音のはね返りますのは、ある一定の角度をもちまして、上のほうにはね返りますので、都市の中の住居地域その他で騒音が出ますような場合は、屋根の高さ以上に高速道路の高さを持っていくというふうなことにいたしますと、大体、路側ではかりますものよりは十ホン程度まで、下のほうには少なくなるような数値も出ておりますので、そのような措置をとりましたり、あるいは病院その他学校等につきましては特別の遮音壁、そういうふうなものもつくるようなことにいたしております。ただ、先生御指摘のように、ほんとうはそういうふうなものができますとよろしいのでございますが、なかなか狭い土地を利用して高架でいっておりますので、できますところはそういうふうな措置もとりたいと思っておりますけれども、一般的にはいま申し上げたようなことで、できるだけ一般の住民にいろいろな御迷惑をかけないような措置をとっておるということでございます。
  75. 河上民雄

    ○河上委員 いまの高速道路の問題は、ある意味では、日本全体の現状から見るとあるいは非常にぜいたくだという感じさえするかもしれませんが、もっと差し迫った問題として、工場騒音が騒音規制の対象としてあるわけです。この工場騒音が大きな公害となりますのは、結局住宅と商店と、そして工場等が雑居しておるというところにあるわけでありまして、単に工場の音がやかましいというだけではないわけです。そうなってまいりますると、都会の下町などによく見られる、ああいう込み入った状態というものを根本的に解決しない限りは、工場騒音対策としては十分な実効をあげ得ないのではないかというふうに私は考えるわけであります。先般この委員会で成立を見ました例の公害防止事業団法の一部改正法がございますが、あの公害防止事業団の仕事の一つにもなっておりますけれども、中小企業の工場団地の実例などが、各所でようやく見られておるわけです。私はああいうことを一方では積極的に推進しない限り、この工場騒音の問題はなかなか解決しないのではないか、こんなふうに考えるわけですが、いまのところ、この工場団地の形成は、まあ一番問題は金がかかるというようなことでありますし、また中小企業が対象であるというようなことで、いろいろ問題があるわけですが、これにつきまして、やはり財政的な措置というものが非常に必要であろうと思うのです。政府では、公害防止事業団法をつくってそういう仕事をしておるわけですけれども、これ以外にもっと積極的な方策というものを、この騒音規制法の提案と並行して考えるべきではないかと思いますが、何かそのことにつきまして、政府の方針というものがあるのかないのか、明らかにしていただきたいと思います。
  76. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 先生御指摘のように、騒音のような公害を発する業種、鍛造とかプレスとか、そういうものには、規制だけでは限界がありますので、やはり抜本的な対策は、そういうものが仕事をしていても問題を生じないというような地域へ、その企業を分散する、その分散を強力に促進する必要があるわけでありまして、通産省としては、かねてから、この分散対策の重要性については十分認識しておりまして、諸般の措置考えておるわけです。まず通産省では、工場立地調査法というのがございまして、それによりまして、全国にわたって適地調査というのをやっておるわけでございますが、すでに四千カ所以上について、適地調査というものをやっておりまして、それぞれの工場適地にどういう業種が行ったら一番いいのであろうかということ、鍛造であればこういうところがいいのじゃないか、水を大いに使う産業についてはこういうところがいいということをやっているわけです。そういう適地を選定しておりまして、同時に、問題となる騒音を起こすような業種の実態調査をやりまして、それに基づいて、強力な行政指導をやっておるわけでございます。現在でも、東京の城南地区の鍛造の組合について、これを関東の近県のどこかに移すというようなことが問題になっているわけですが、十分とはまいりませんが、いろいろ相談に乗って、適地をさがすようにやっております。  それから、先生御指摘のように、公害防止事業団、これまた有効な一つの方法でございまして、共同化あるいは集団化ということによりまして、騒音等の公害防止を考えるということで、公害防止事業団による工場アパートの制度の積極的利用ということもございますが、全般を通じまして、いずれにしても分散促進のための行政措置としては、開発銀行あるいは中小企業金融公庫等の長期低利の融資、あるいは企業に対する特別償却その他の税制上の優遇措置を、昨年来検討しておりまして、早急にこれが実現につとめてまいりたいと思っております。  以上でございます。
  77. 河上民雄

    ○河上委員 今回の法案は二法案とも、われわれから見まして、はなはだ不満な点がたくさんあるわけでございます。ただ、わずかにわれわれが希望を託することができるといたしますならば、もし公害対策の政策の担当者に熱意のある適任者を得ることができるならば、この法案はある程度の実効をあげ得るという面もあるやに見受けられる点でございます。したがって、この法案の実施にあたりましては、特に地方公共団体に対しましては、そういう角度から大いに叱咤勉励されることを望むとともに、厚生省をはじめとして、各省、ことに厚生省に対しまして、自分たちがやるんだという強い責任感と自負を持って事に当たられることを希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  78. 山崎始男

    山崎委員長 工藤良平君。
  79. 工藤良平

    ○工藤委員 私も、この二法案につきまして、若干御質問をいたしたいと思いますが、すでに島本、河上両委員のほうから詳細に御質問がありましたから、なるべく重複を避けてまいりたいと思います。   〔委員長退席、河上委員長代理着席〕  まず厚生省にお伺いいたしたいのでありますが、この両案は当然、先般の国会できまりました公害基本法に基づいてなされたと考えるわけであります。当然、人間の健康を守るという立場というものが第一義的に取り上げられているだろうと思いますが、その点について、まず冒頭にお伺いいたしたいと思います。
  80. 谷垣專一

    谷垣政府委員 御趣旨のとおりでございます。
  81. 工藤良平

    ○工藤委員 そういたしますと、大気汚染防止法案の第一条の「目的」、この中にあります「大気の汚染に関し、国民の健康を保護し、あわせて産業の健全な発展との調和を図りつつ生活環境を保全するとともに、」こういうように書かれているわけでありますが、私はここで、この問題で再び論争を繰り返そうとは思いません。すでにこれは基本法の際に、実に長期間にわたりまして、これは集中的に論議をした事項であります。その基本法の決定の際に、どのような形で修正をされたか、その点についてはっきりと御回答をいただきたいと思います。
  82. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 公害対策基本法では、国会で御修正いただきました点でございますが、その点は、「国民の健康を保護するとともに、生活環境を保全することを目的とする。」というふうに第一条の一項でうたって、二項で「経済の健全な発展との調和が図られるようにするものとする。」というように書き分けた点が、国会での御修正でございました。
  83. 工藤良平

    ○工藤委員 いまの回答のように、産業の発展との調和をはかるということにつきましては、生活環境の保全そのものが本来の目的であるのだ、調和ということはあくまでも考慮条件であって、目的概念ではないということが明らかにされているわけであります。これは板川委員質問の中で、総理も明らかにされたし、そういうことが貫かれて修正されたわけであります。  それでは、その修正が、今度のこの第一条の中にはたして生かされているか、生かされているとするならば、少なくともそのとおりに入れるべきではないだろうか、なぜそれができなかったのか、明らかにしていただきたいと思います。
  84. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 もちろん、大気汚染防止法なり騒音規制法という二つの法律は、公害対策基本法に基づきまして制定されます実施法でございますから、その精神をそのままくんでおりますことはもちろんでございます。ただ実施法でございますので、「目的」の条項を一条にまとめたわけでございまして、その点につきましては、「大気の汚染に関し、国民の健康を保護し、」というふうにはっきりと明記し、「あわせて産業の健全な発展との調和を図りつつ生活環境を保全するとともに、」というふうに、「あわせて」という文言を入れまして、基本法と同じような精神にしたつもりでございます。
  85. 工藤良平

    ○工藤委員 この点については、非常に理解のしかたが混乱をする、こういうことから、わざわざ先般の修正の際には、一項と二項と分けまして、その混乱を避けるということで明らかにしたわけです。この法案が具体的な政策の実施の法案であるとするならば、より具体化されなければならないと私は思うわけです。このように一項と二項を一緒にすることによって、さらに混乱を招くというようなことになりはしないか。二つに分けるなり、もう少し文言を明確にするということは、この法案をつくる際にきわめて差しさわりがあるわけでございますか。その点を一ぺんお伺いしたいと思います。
  86. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 これは法制局での議論でございましたけれども、大体実施法の目的というものは、一条でずっと流しに書くというのが慣例でございますそうで、したがいまして、特にこの点を基本法と違えた精神で一条にまとめたということではなくて、法文表現上のテクニックとして、この問題を書いたわけでございまして、その点、先生の御疑念の点については、法制的には、「あわせて」云々というところで、先生の御指摘の点については十分考慮を払っているつもりでございます。
  87. 工藤良平

    ○工藤委員 私もあまり固執するつもりはございませんけれども、しかしこの点については、あくまでも国民の健康を保護するために、生活環境を整備するのだ、その具体的な施策の中でいろいろと障害もあるということも、私どもも了解できるわけであります。その点の調整については、やってはいけないということでなく、それはやってもよろしいわけでありますから、私はそういうことをこの条文の中に明らかにすべきではないかと思うが、それはできませんか。
  88. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 繰り返すようで恐縮でございますけれども、「大気の汚染に関し、国民の健康を保護し、」、というふうにはっきり書きまして、そこで切りまして、そして「あわせて」云々というふうにしたことによりまして、国民の健康を保護するということを明確に打ち出したつもりでございます。
  89. 工藤良平

    ○工藤委員 この点については、いずれかの機会に、大臣のほうからも明確な回答をいただいておきたいと思います。  次に、提案理由の説明でありますから、大臣が一番いいと思うのですが、この提案理由の説明の中に、大気汚染防止のための総合的な規制法として整備拡充をする、こういうことがうたわれているわけでございます。たびたび総合的とかあるいは合理的なとかいうことばが使われるわけでございますが、この総合的というのは、大気汚染関係についてはすべて網羅をして、この法案が出される、こういう形になるわけでございますか。具体的に、総合的というのはどういう程度のものを含めているのか、お聞きしたいと思います。
  90. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 総合的にと提案理由で申しましたのは、いままでは、ばい煙規制法の法律では、工場から出ますばい煙の規制でございましたけれども、今度新たに目的にも「自動車排出ガスに係る許容限度を定めること等により、」云々とありますように、自動車の排気ガスにつきまして一章を設けまして、大気の汚染を防止するということでこの法律をつくりましたので、総合的にと書いたわけでございます。それからまた、合理的に云々という点につきましては、一例でございますけれども、第四条の三項をごらんになりますと、排出硫黄酸化物につきましては、排出口の高さに応じて許容限度をきめるというような点につきまして、改正を行なっておりますが、そういう点が一つの事例でございます。
  91. 工藤良平

    ○工藤委員 将来のばい煙規制法からいたしますと、確かに広範にわたっているということは理解ができるわけであります。先般、私ども現地を視察に参りましたが、家庭から出ますばい煙、排ガスの問題、こういうものが含まれるかどうかということが一つと、もう一つは、鉱山等から自然に発生するガスなりあるいは粉じん等に対する規制についてはどうなるのか。これもやはり大気の汚染ということになろうと思いますが、この点についてはこの法が適用になるのか、別の法律を適用せられるのか、その点をお聞きしたいと思います。
  92. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 家庭ばい煙につきましては、先生御指摘のように、御視察になりました北海道等寒冷地等におきましては、一つの大きな問題になっております。ただこれは、事業活動に伴って発生いたします工場ばい煙と同様に本法で規制の対象とすることは、適当でない。適当でないというよりも、住民の日常生活に伴って発生するものでございますので、直接、現段階におきまして規制することは適当でない、かように考えている。しかしながら、やはり寒冷地等では問題でございますので、将来、地域暖房計画等の実施等、現在札幌で考えておられますのは、主として中心街の事業場の集中暖房でございますけれども、やはり将来は地域暖房を家庭等にも及ぼしまして、予防的に解決をはかるということが必要かと思います。  それから鉱山保安の問題につきましては、定義の第二条をごらんになりますと、三項で、「鉱山保安法」云々とありまして、一応この法律の対象からはずしております。この趣旨は通産省から御説明があろうかと思いますが、鉱山保安法によって、総合的に鉱山の取り締まりが行なわれているわけでございまして、実態としては、法律上取り締まられている状態でございます。
  93. 工藤良平

    ○工藤委員 第二条の中に、「ばい煙」という一つの規定があるわけでございますが、この中に家庭ばい煙が入るかどうか、広義の意味で含まれるとするならば、たとえば地域指定の場合も、この法律の適用として、札幌なら札幌を地域指定をする、こういうことが起こり得るのではないだろうかというように解釈できるわけですが、その点もう一ぺんお聞きしたいと思います。
  94. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 定義にありますばい煙には、一般的にはこれは入るわけでございますけれども、この法律の取り締まりの規制の対象にはなっていない、こういうことでございます。
  95. 工藤良平

    ○工藤委員 はい、わかりました。  それでは通産省にお伺いいたしますが、鉱山保安法、この関係で、鉱山関係のガスあるいは粉じん等については取り締まっていくということでございますが、これに含めなかった理由を、簡単に御説明いただきたいと思います。
  96. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 御指摘のとおり、第二条第三項の工場、事業場は、これは鉱山保安法に規定する鉱山を除いているわけでございますが、鉱業は地下資源産業であって、鉱山の所在地も、人口密集地でなく、山間僻地に存在することが多いということ等、一般の地上産業とは異なる特殊性を有しておることは、御案内のとおりであります。したがって、鉱業の実施に伴って発生する公害はもちろんたくさんございますが、そういう鉱山の公害というものは、一般の公害と態様を異にしている面が少なくないわけでございます。   〔河上委員長代理退席、小山(省)委員長代理着席〕 このような特殊性がございますものですから、鉱山保安法が制定されておりまして、この法律に基づいて、体系的かつ強力な公害防止行政を推進しているわけでございます。すなわち、鉱山保安法では、鉱山労働者に対する危害の防止と並んで、鉱煙等による公害の防止をはかることを鉱業権者に義務づけておる。省令で詳細な公害防止のための規定を設けております。また大気汚染との関係で問題となる鉱山施設、すなわち鉱山の製錬所あるいは鉱山のボイラー、そういうものは、鉱山保安法で、設置する段階で、初めから認可を受けなければならないということになっておりまして、設施の計画段階から、公害が絶対に発生しないように、厳重なチェックをやっておるわけであります。また鉱山には鉱山保安監督官というものがたくさんおりまして、これが常時巡回検査して、法規の違反状況を発見した場合には、直ちに改善を指示している、こういうようなことでございまして、罰則も十分な規定が用意されております。鉱山保安諸体系のもとで、この鉱山の公害を防止することは十分可能なので、鉱山関係を大気汚染防止法の適用対象から除外したわけでございます。
  97. 工藤良平

    ○工藤委員 鉱山保安法に基づいた、そういった規制というものがありますので、この適用から除外しても何ら差しつかえない、こういうような御回答でございますが、たとえば、私どもの地域には、これはもちろん地下資源でありますが、セメントの工場なり、その近くには、御存じのようにセメント山がたくさん密集しているわけでありますが、この粉じんというのが非常に大きくなってきているわけであります。先般も事故が発生いたしまして、その際に通産省にもお聞きしましたけれども、その監督の行政的な指導なり、そういった機構というものがきわめて微弱であるということを先般お聞をいたしました。大分の津久見市あたりの場合にも、わずかに一年間に一ぺん来るか来ないかという状態の中で、はたしてそれらの監視なりあるいは指導というものがうまくいくかどうかということを先般お聞きしたわけでありますが、それらの点について、はたして規制がうまくいくのかどうか。それと同時に、この点はもう一ぺん厚生省のほうにお聞きしますが、第二条の「その他の粉じん」というものの中には、そういうものが含まれるわけですか。これは一切煙突から出てまいりますばい煙あるいは粉じんということになるわけでございますか。その点、ひとつ明らかにしておいていただきたいと思います。
  98. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 先生の御設例の粉じんは、第二条の定義には入らないと思います。といいますのは、燃焼に伴って発生する云々というふうに、最初に書いてございますので、燃焼に伴いますものを、この定義では対象といたしておるわけでございます。
  99. 工藤良平

    ○工藤委員 そういたしますと、この提案理由の説明にありました、大気汚染に対する総合的な関係法律ということについては、実はそういったものは含まれない、あくまでもこれは工場及び事業場における事業活動に伴って発生するばい煙の排出を規制をするという意味の規定だ、このように理解をしてよろしゅうございますね。
  100. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 工場だけではございませんで、大きなビル等は、この法律の規制の対象になっておりますし、先ほど申しました自動車の問題も、この法律の対象としておりますので、やはり総合的に推進するということで、私どもはこの大気汚染防止法の立案をいたしたわけでございます。
  101. 工藤良平

    ○工藤委員 それでは、第四条の排出基準の問題について、若干お聞きしたいと思うのですが、その前に、農林省にお伺いいたします。  大気汚染による農産物に対する影響というもの――もちろんこの法律そのものは、国民の健康を保護するという立場がとられているわけでありますけれども、農産物に対する影響というものは、一体どういうようなかっこうであらわれてくるのか、そういう点についてお伺いをしたいと思います。
  102. 太田康二

    ○太田説明員 大気汚染によります被害につきましては、農作物の被害につきましてみてまいりますと、一般的には局地的、一時的なものとして、工場からの粉じん、亜硫酸ガス、塩素ガス、弗素ガス等による被害、それから交通量の増大によります、道路からの砂じんによる桑の被害報告されておるのでございますが、被害の態様を見てまいりますと、大都市や工業地帯周辺に見られますような、集積された大気汚染による被害はほとんど見られないのでございまして、特定工場から発生する原因物質による被害がほとんどであります。  作物別に若干触れてまいりますと、水稲等につきましては、主として突発的な事故によって発生した濃厚な亜硫酸ガス、塩素ガス、粉じん等による被害報告をされております。それから園芸特産物でございますが、セメント工場からの粉じんによる葉たばこ、白菜等の品質低下が、福島県において報告されておりますし、それから京葉工業地帯からの亜硫酸ガスによるナシの生育障害、あるいは果実の品質低下等が、千葉県の市原市で起こっておる事例がございます。それから製鉄工場からのガス、粉じんによる野菜の落葉、落果等が和歌山県の和歌山市、それから水島工業地帯からの亜硫酸ガス等によるイグサの先枯れ、ミカンの品質低下等が岡山県の水島地区、あるいは製油工場からの亜硫酸ガスによるビワの品質低下、生育障害が、愛媛県の松山地区で起こっております。それから蚕糸関係につきましては、工場等から排出される亜硫酸ガス、弗素ガス等によります工場近接桑園の生育障害、蚕児の中毒などが起こっておるのでございます。それから、先ほど申し上げましたような未舗装道路に近接した桑園の、砂じんによる汚染等によります繭の収繭量の減少が報告されております。  大体以上のようなことになっております。
  103. 工藤良平

    ○工藤委員 各種の農産物に対する、特に生育過程の中における被害というものが相当出ているようでございます。その際の亜硫酸ガス等の濃度の調査といいますか、データといいますか、そういうものが出ておりますか。   〔小山(省)委員長代理退席、委員長着席〕
  104. 太田康二

    ○太田説明員 実は大気汚染防止法案が立案されました過程におきまして、われわれといたしましても、公害基本法に言う生活環境の中に、「動植物及びその生育環境」が入っておりますので、保護の対象としてこれを含めたいという努力もいたしたのでございますが、大気汚染の原因物質が農畜産物の生理にいかなる影響を及ぼすかということにつきましては、実ははなはだ研究等がおくれておりまして、残念ながら科学的に究明されていないという状況でございます。いま先生のおっしゃったように、亜硫酸ガスがどういう影響を及ぼすかというようなことにつきましての若干の調査はあるわけでございますが、まだ、先ほど申し上げましたように、全面的にこれをもって足りるというようなデータを実はまだ十分用意しておらぬのでございまして、特にわれわれといたしましては、四十三年度から、農林水産生物の生育環境保全に関する研究という研究費を計上いたしまして、そのうち、大気汚染による農林作物被害に関する研究約一千万の経費をもちまして、今後、各種汚染物質の測定方法を確立し、環境基準等の設定に資するということで、試験研究を進めてまいりまして、できますれば、われわれは、そういったことでその結果が得られますれば、将来われわれといたしましては、基本法でも保護の対象となっておることでございますので、大気汚染防止法の対象として、動植物等も加えてまいることが適切ではないかということで、目下検討いたしておるところでございます。
  105. 工藤良平

    ○工藤委員 厚生省にお伺いいたしますが、この第四条の排出基準の問題でございますが、これによりますと、それぞれ厚生大臣それから通産大臣が工場ごとのばい煙の規制をしたりする、そういう規定が設けられておるわけでありますが、私ども人間が生活する上において、人体影響を及ぼしてくる一つの限界というものは一体どの程度のものであろうか、こういうことが非常に重大な関心であるわけでございますが、そういう点についての若干の基準といいますか、そういうものを、できればお示しいただきたいと思います。
  106. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 先生が御質問になっております趣旨は、たとえばどの程度の亜硫酸ガスの濃度が人の健康上許されるかというような御質問だろうかと思いますが、この点につきましては、公害対策基本法の九条で、「政府は、大気の汚染、水質の汚濁及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、取び生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準を定めるものとする。」、こういうふうにございまして、いわゆる人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準をきめる責務があるわけでございます。この点につきましては、基本法の制定以来、当省におきましては、専門家を動員いたしまして、現在このSO2亜硫酸ガスにつきまして基準をきめようというふうに考えておりまして、いま最終段階に差しかかっておりますが、いままでのところ、大体、まだ確定的ではございませんけれども、一時間値〇・〇五PPM、二十四時間値〇・一PPMという数値が、現在専門家の間で検討されておりまして、この数値につきまして、どういうような条件、状態――これは一つの数値そのものでございますので、その数値につきまして、たとえば地域の問題あるいは頻度の問題等をかみ合わせて、環境基準というものをきめていこう、こういうような段階にいまなっております。
  107. 工藤良平

    ○工藤委員 たいへんむずかしい問題でございますが、そのような大気の汚染の最低限というものが一つの目安としてきまる。もちろん、これは地域によってどの程度の工場の集中度があるか、あるいは、それぞれの種類によっても違いましょうけれども、それぞれから出てまいります排水物に対しまして、規制をしていくことになるわけですね。そういたしますと、この規定のしかたというのはきわめてむずかしいと思うのでありますが、それを厚生省通産省相談をしてきめる、こういうことになるわけでございますが、この点を御説明いただきたい。
  108. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 環境基準を近い将来きめますが、いままでは排出基準だけで規制を行なっておりましたが、先生御承知のように、工場がたくさんになってまいりますと、いわゆる個々の工場だけの排出基準を強化していくだけでは不十分な面もありますし、あるいは工場が重なりますと、いろいろいわゆる量的な蓄積の問題が起こってまいりますので、ただいま御説明いたしました環境基準の設定というものが必要になってくるわけでございます。したがいまして、今後は、単に排出基準の強化のみならず、その他のいろいろな総合的な立地の規制その他の施策が、総合的に行政的に行なわれなければいけない、かように思っています。  直接の御質問の、排出基準厚生大臣と通産大臣がきめるか、こういう御質問でございますが、この点につきましては、両省の専門家が相談いたしまして、きめるような次第でございます。  なお、先ほど環境基準の数値を申し上げました場合に、二十四時間値と一時間値の数値を逆に単位を申し上げましたので、この際、御訂正をさしていただきます。
  109. 工藤良平

    ○工藤委員 私は、先ほどの河上委員の御質問の中で、どうもさっぱり釈然としないわけでありますが、自動車の排気ガスの規制の場合には運輸大臣がきめる、それに厚生大臣意見を聞くということになっているわけですね。ここの場合には二つを並列してありますから、幾らか前向きではないだろうかという理解も立つわけでありますが、本来、人間の健康を守るという立場からするならば、厚生省一つ基準をきめる、それに対して文句があるならば、通産省なりあるいは運輸省が公害対策会議ですか、そこに持ち込んで調整をはかってもらうという行き方というものが、本来の姿ではないだろうか、こういうふうに思うわけでありますが、この点、厚生、通産、両政務次官から、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  110. 谷垣專一

    谷垣政府委員 健康を守るという立場から申しますと、立て方といたしましては、工藤委員のおっしゃいましたような立て方のほうがあるいは妥当かと思います。しかし、これは行政の従来からの一つの流れもございます。また、発生をいたしましたものに対するいわば実質的な指導の力の問題もございまして、どちらが甲でありどちらが乙であるかということは、いまの段階におきましては、かえって公害の問題に対して効果が薄いのではないか、こういう感じで、それぞれの大臣が、お互いに協調してやっていこう、こういうことになっておるわけであります。公害立場から、人命を守るという立場からのみ発言をいたしましても、やはりこれはそのもとになるそれぞれの指導が必要になりますので、そこらのところは、それぞれの主管官庁が隔意のない意見でやっていくということが、実際上の行政の運営からはしかるべきじゃないか。   〔委員長退席、小山(省)委員長代理着席〕 公害を守るというたてまえから申しますと、それだけの面から申しますと、あるいは工藤委員のような立場が成り立つかと思うのですが、実際上の行政の運営の効果をあげることから申しますと、私は、この規定のほうがベターではないか、こういうふうに考えております。
  111. 藤井勝志

    藤井政府委員 おっしゃるお考え方そのものは、私は、人命尊重という線からいって、厚生省が中心になるべきだというこの考え方においては、全くそのとおりだと思います。ただ、形の上において、厚生省だけでやるのがいいか、それとも、むしろ技術面あるいは燃料関係あるいはボイラーの問題、こういった専門的な知識が一枚加わることによって、実質的に人命尊重が一そう確保できる、こういったような場合には、両省の相談ということのほうがよりベターではないか、こういうふうに考えられる点もあるのです。従来とってきた基本的な態度というのは、そういう考え方がその基礎にあるというふうに理解していくべきじゃないか、こう思います。
  112. 工藤良平

    ○工藤委員 もちろん私も、現在の行政機構の中で、厚生省が一方的にきめるということ自身については問題があろう、というように考えたわけであります。しかしながら、本来の考え方からするならば、この公害基本法なりあるいはそれに基づいた今回のこの法案ということを考えてみると、当然そういう基本的な考え方の上に立って、ただ調整の問題については一体どうするかということを二義的に考えていくということが本来の考え方であろう、こういうように考えているわけでありますが、先ほどから、それらの問題についてはどうも明確な答弁がいただけないわけでありますけれども、その程度にいたしますが、特に通産省といたしまして、それではこの一つ基準が定められたとしても、さらにそれを引き下げる努力というものはやっていかなければならないだろう、こういうように思うわけでありますが、それらの具体的な目的、基本的な方向というものを、できれば明らかにしていただきたい、こういうように思います。
  113. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 おっしゃるとおりに、排出基準というものは、可能な範囲内において逐次下げていくということが望ましいと考えまして、通産省といたしましても、つとにその点について十分なる認識を持ちまして、諸般の施策を講じておるわけでございます。具体的に申し上げますと、やはり一番基本は――当面亜硫酸ガスが一番問題なんですが、亜硫酸ガスについて申しますと、やはり何と申しましても、そこでたく重油の硫黄分、これをできるだけ早い機会に下げていくということが一番基本で、そのためには、まず原油の手当ての面からいって、なるだけ硫黄分の少ない原油を輸入する、現在日本が輸入している原油というのは中近東のものが大部分でありまして、これは不幸にして非常に硫黄分が高いのですが、インドネシアのミナスとかあるいはその他の、硫黄分の非常に少ない原油を今後輸入するような原油の輸入政策ということも、まず考えなければならぬと考えております。さらに石油開発公団などができまして、日本みずからの手によりまして海外の油田を開発するに際しては、低硫黄原油の開発ということを目標にしていかなければならないと思います。それが原油面の手当てです。  次に、しかし当分の間、中近京のような硫黄分の高いものを輸入せざるを得ないのですが、それを精製の段階におきまして脱硫する技術を早急に開発しなければならない。先日も申し上げましたように、直接脱硫が最も望ましい姿で、脱硫率が非常に高い、それからコスト的にもいいということで、直接脱硫が一番望ましい姿であるものですから、すでに大型プロジェクトによりまして、四十二年度から相当額の国家予算を計上して、その研究開発を推進しているわけでございまして、現在四年四カ月という目標で、したがって、四十二年から数えますれば四十六年の六月くらいにはこれができるという目標になっておりまして、できるだけこの予定どおりに完成いたしたいと思っております。  それから次に、煙突から出る段階で――いまのはもう重油の製品そのものから取ってしまって、それをみんなに供給する、需要者に供給するわけですが、かりに硫黄分の高いものを使いましても、煙突から出る段階でもって硫黄を回収してしまうということができれば、これまた一つの方法でございまして、たとえば火力発電所のような、大量に使う、しかも大規模な設備を使うものについては、排ガスの段階から硫黄を取る、これをやはり研究開発しなければならぬ、そういう観点で、これまた大型プロジェクトでもってすでに研究をやっておりまして、これは現在二つの方法がありますが、四日市でやっている活性酸化マンガンのほうは一応本年末くらいに完成する、それから千葉県でやっている活性炭法のほうは来年の六月、比較的近い時期において完成する予定でございまして、すでに四十一年の当公害委員会の御決議にもございますが、大体その線に沿って、この研究が開発するものと期待しております。
  114. 工藤良平

    ○工藤委員 確かに御指摘のような点で、今後通産省として特に企業側に対する指導というものが徹底していかなければならない、こういうように考えるわけでありますが、私ども現地を回りましても一番強く感じますのは、やはり発生源であります産業界側の現状というものが、ややもいたしますと、現状維持的なムードに支配されておりまして、非公開――私どもが入りましても、重点的なところについてはどうもはっきりしないという点がありますので、やはり公開の原則に基づいて、産業側もより積極的にこの問題に取り組んでいく、こういう立場というものが特に通産省側から指導されてまいらなければならないのではないだろうか、こういうように考えるわけで、この点は、特に排出基準なりあるいは環境基準を設定をする際の全体的な姿勢として考えていただきたい、こういうことを申し上げておきたいと思うわけであります。  それから次に、届け出制の問題もあるわけですが、これはすでに島本委員質問をしたようでありますから、私はこの点については省略したいと思います。  次に、第四章の和解の仲介というのが、従来なかった一つの点として出てきたわけでありますが、これは先ほど河上委員質問にもございましたように、このたび出されておりますこの和解の仲介の制度で、はたしてこれで問題の解決になるだろうかという心配をいたすわけでございますが、これは全体的に、和解さらには救済という面に対する法案というものが準備をされているということを聞きますので、それまでの暫定的なものとして、私どもが理解をしていけばいいのか、その点をまずお伺いしたいと思います。
  115. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 第四章の和解の条項でございますが、これは先生、私どもの御説明が不十分であったかと思いますが、現在のばい煙の排出の規制等に関する法律でも、第五章に和解の仲介の制度がございまして、それをそのまま大気汚染防止法案でも踏襲したわけでございます。この点は先ほど河上先生の御質問のときにも申し上げましたように、現在紛争制度の問題につきまして、既存の制度との問題あるいは裁判等の問題等も勘案しまして、総合的に現在政府部内で検討しておりますので、今度の大気汚染防止法案では、前のばい煙の排出の規制等に関する法律をそのまま踏襲したわけでございます。それにつきまして、騒音につきましては、これは新しい法律でございましたけれども、そういうことも考えました上で、水、大気等で、一部に制度として和解の仲介があまり活用されていないというような御指摘があるようでございますけれども、騒音についてはなおなじむのではないかということで、騒音のほうにも同じような制度を取り入れた次第でございます。もちろんこの和解の仲介制度につきましては、十分各方面の御意見をお聞きいたしまして、現在検討中の紛争制度の中にどうやって取り入れていくかは前向きで検討いたしたい、かように思います。
  116. 工藤良平

    ○工藤委員 この問題については多くを申し上げませんけれども、現在までの公害の紛争というものを見ますと、非常に公害の発生そのものが複雑になっておりますので、その解決そのものがまたきわめて困難になってくるということから、必然的に裁判に持ち込まざるを得ない。裁判ということになりますと、費用がかかりますので、みんなが裁判に持ち込めないということで、泣き寝入り、こういうことになります。したがって、たとえば地方労働委員会なりあるいは中労委のように、経費が安くてほとんど公的な機関として、それが認められたものであれば、たやすく私どもが持ち込むことができる。こういうような立場から、本来そういうようなものをつくるべきではないだろうか、こういうように思います。もちろんこの要綱を見ましても、そういうような意図というものが若干うかがわれるわけでありますけれども、早急にこの公害紛争処理に関する法律というものを出していただいて――もちろんこれは暫定的なものとして、私どもが理解できるような対策を早急に講じていただきたい。その点について、いつごろ出せるのか、一年も二年も先ということになりますとたいへん困りますので、そういう実態を踏まえながら、ぜひひとつ御決意のほどをお伺いしたいと思います。
  117. 谷垣專一

    谷垣政府委員 御指摘のように、公害関係の紛争の処理はたいへんにややこしい問題が多いのでございます。原因の究明その他、関係いたしておりますものの範囲が広いというような状況がございまして、裁判に持っていきましても、実際問題として長く続かないという問題がございます。むしろそういう形でない何らかの形で、もっと早い時期に行政的に関与すべき問題があろうかと思います。したがいまして、それだけに、この制度を新しくつくることになりますので、これは相当に慎重な議論を重ねなければなりませんので、今回ついに提案をいたすような運びにならなかったわけでありますが、先ほど話が出ましたごとくに、審議会におきましては、まず一番先にこの問題を審議会自体で取り上げられまして、小委員会でいろいろ議論をしていただいた、こういう段階でございます。したがいまして、いま工藤委員のおっしゃいますように、一年なり二年なりというようなことを私たちは考えておりません。でき得べくんば今度の国会と思って、努力をいたしたのでありますが、今日の状態でございますから、事実問題として、これは断念せざるを得ないと思いますが、できるだけ早い時期に成案を得て、提出をしたい、この考え方にはいまも変わりはございません。ますますそういうつもりで推進をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  118. 工藤良平

    ○工藤委員 最後の問題といたしまして、三十条の研究の推進等」という条項がございますが、この点につきましては、もちろん基本法の中にもその点が明らかにされているわけであります。基本法の内容と今度の法案の内容を見ましても、あまり大差がないわけでございますが、具体的に、試験研究機関の統一的な推進といいますか、そういう面についての構想をひとつ聞かしていただきたい、こういうふうに思うわけでありますが、これは厚生省と同時に、科学技術庁のほうからもお伺いしたいと思います。
  119. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 大気汚染につきましては、現在まで、たとえば国立研究機関で申しますと、約十一カ所の国立研究機関がこれに携わっております。   〔小山(省)委員長代理退席、委員長着席〕  予算額から申しますと、そのほか委託費を含めますと、大気汚染関係として、試験研究費が四十三年度は全部で約十二億円近くなると思います。四十二年度は約十億近うございます。  私たちのほうが、いまこういうものを一元的に総合的に進めるのをどうやるかということは、当然問題にしておりまして、現在のところでは、予算を出しますとき、あるいは業務計画をつくりますときに、基本的に、研究の中身につきまして総合調整さしていただいております。それで、その関係から脱落するものあるいは緊急的に必要とするもの――脱落するものの中で、特に各省共同でやらなければいけないものというのが多うございます。これにつきましては、私どものほうの特別調整費というのがございまして、そのワクの中から、各省にお回しして研究を進めていただいております。それから、こういう問題につきましては、やはり途中で緊急課題がございますが、これにつきましても、私どものほうで約二億近い金をもちまして、その中から該当する課題に回わしておるわけでございます。  それで、一元的に一つ研究所をつくる等の話も一部にはございました。しかし、現在のところでは、やはり医学から機械から気象から、こういうのが全部総合体制でやらなければならない専門分野というものがございます。しかし、その専門分野を一つところにまとめるというのは、いまの人材の関係等で問題でございます。したがいまして、研究を分担していただきまして、それを総合体制で情報連絡をする、研究連絡等を私たちもさせていただいて、その間で、できるだけ効果的に進むような措置をとっていくというのが現在行なっておる状況でございます。
  120. 工藤良平

    ○工藤委員 その点については、この「公害対策」という雑誌の――これは新年号だと思いますが、鍋島科学技術庁長官が、明らかに私どもの前に、早急にその体制を確立したい、こういうことをうたっているわけでありますが、予算的な措置あるいは陣容等から推定をいたしましても、非常に一もちろん広範にわたっておりますから、困難だと思いますけれども、やはり一日も早くそういった統一的な研究というものが、公害の場合には必要ではないだろうか、こういうように考えるわけでありまして、そういう面については、特に早急な体制の整備をお願いいたしたい。  なお、厚生省関係につきましては、この公害対策というものが、やはり厚生省に集中してまいりますので、厚生省自身の体制というものが、今後の公害対策の運営について、きわめて重要になってくるだろう、私はこういうように考えるわけでありまして、現在の陣容は一体どうなっているのか、こういうことではたしてできるのかどうかという疑問が出てくるわけであります。各地に問題が起こっております。しかも、これから、それぞれの地域に応じた環境基準を設定し、あるいは排出基準をきめていく、こういうことになれば、これはたいへんなことだと思います。もちろん県のほうにも委託することになっておりますけれども、総括的なことを、厚生省公害部がやらなければならぬ、こういうことになりますと、これはたいへんだと思いますし、そこら辺をひとつ、現在の陣容と、今後の運営に対する積極的な意見を、この際出していただきたい、こういうように思います。
  121. 谷垣專一

    谷垣政府委員 工藤委員の御指摘のとおりに、公害の問題は、関連をいたしておりまして、なおかつ未解明の分野がきわめて広いのでありまして、一例を申しますと、この法案自体を国会へお願いする段階におきましても、実は厚生省のそれぞれの担当者は全く寧日がない状況でございます。この命令されておりますような、期待されておりますような行政を、ほんとうに推進していきますためには、これは相当な覚悟とそれの体制を整えなければならぬと思います。しかし問題が非常に広くて、また困難でありますので、厚生省だけでやれるのだというような体制は、かえって悪いと思います。もちろん、厚生省が、人命を守るという立場から、きわめて積極的な働きかけをせなければならぬと思いますけれども、これは関係のそれぞれのところの方々の協力を仰ぐ体制でいかなければならぬと思っておりますが、現在の厚生省の陣容その他は、さらに整備をせなければならぬ、かように考えております。  現在の体制につきましては、担当部長のほうから御説明させたいと思います。
  122. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 昨年の六月に厚生省公害部ができまして、三課の編成になっておりまして、庶務課という課が、公害対策会議あるいは公害審議会の庶務をやると同時に、公害防止事業団等の指導監督をやっておりまして、課長以下八人の少数の人数でやっております。それから、主として実際の公害、たとえば昨日発表いたしましたイタイイタイ病等、実際の公害問題が起きました場合、あるいは法律の施行等につきまして担当しておりますのが、公害課といいまして、課長以下十二人でございます。それにもう一つ、環境整備課と申しまして、これは主としてし尿処理、ごみ、清掃法の関係の担当をする課がございまして、課長以下十二人でございます。したがいまして、主として現在直接各省と御連絡申し上げて、いろいろ対策考えるなり実施をやっておりますのが、私以下二十人の少数でございまして、率直の話、非常に少数で、病人が続出しておるような状況でございます。この点につきましては、なお今後、人員その他、予算等について、最大の努力をいたしたい、かように思っております。
  123. 工藤良平

    ○工藤委員 以上で終わりますが、いま申し上げましたように、ますます公害対策は必要になってまいります。具体的な法案なり施策というものが出てまいる中で、その点については、公害部のほうでも意見を出していただいて、私どももそれにこたえて、より人間の健康が守られるように、努力していかなければならぬ。公害対策に当たる人たちのために、また公害対策が必要だというのでは、これは国の政治としては全くナンセンスだと思いますので、特にこの点については、政務次官におきましては、大臣にもお伝えをしていただきまして、行政管理庁あたりからは相当きびしく言われると思いますけれども、ぜひこれらの対策については万全を期していただきたい、こういうことを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  124. 山崎始男

  125. 折小野良一

    ○折小野委員 公害全般についてでございますが、なかなか公害がなくならない。なくならないどころか、非常に広がっていきつつある。今度提案されております大気汚染防止法案関係から申しましても、資料によりますと、各都市における降下ばいじん量、これの経年変化の表で見ますと、総体的にはだんだん下がっていきつつあるように考えられますが、しかしよく見ますと、三十九年度を境にして、また再びその濃度が高くなってきつつある、こういうふうに考えるわけです。それから、一番問題になっております亜硫酸ガスの場合、この点につきましては非常に声も高いし、また対策もいろいろ講ぜられつつあるようでございますけれども、全体的にはその濃度がますます濃くなってきつつある。これはそれぞれの都市の経年変化で見られるわけでありますが、そのほかにさらに広がっていきつつある、こういうことも当然考えられるわけでございます。こういうような面から見まして、私ども、公害対策をさらに一そう進めていかなければならないというふうに考えるわけでございますが、今回大気汚染防止法案が出まして、これでもし通過して、これによっていろいろ具体的な施策が行なわれるというようなことになりました場合に、現在のこのような傾向をどの程度改善されるか、またこの法案を出された当局といたしましては、どの程度改善しようという意図を持ってかかっておられるか、その辺のお考え方をお伺いいたしたいと思います。
  126. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 先生御指摘の資料の中で、一部降下ばいじん等につきましては、上がった年もあるではないかという御指摘でございます。年回平均でございますので、その詳細な理由等は、現地に聞かないとわからぬわけでございますが、この表をごらんになるとわかりますように、多少上がり下がりをしながらも、どんどん下がってきておる、こういうことではないかと思っております。  それから、亜硫酸ガスについては、確かに、通産当局あるいは私どものほうでいろいろ努力しているにもかかわらず、一部上がっている年がございますけれども、こういう問題につきましては、やはり先般来の御質問に各省の方がお答えなさっているように、脱硫技術の問題、あるいはそのほか排出規制の強化、あるいは近く制定されます環境基準というものを一つの目標といたしまして、規制の強化を総合的にはかっていきたい、かように考えております。
  127. 折小野良一

    ○折小野委員 私ども、できるだけ公害が少なくなることを念願するわけなんですけれども、必ずしもそのとおりにいっていないわけでございます。やはりこれはお互いに努力をして、そして少しでも少なくしていくようにつとめてまいらなければなるまいと思っております。  ところで、公害行政がなかなか進まない、結果的になかなか進まないというふうに一般的に見られておるわけでございますが、その中の一つとして、従来いわれておりますことに、公害行政の一元的運営、こういう面が足らないのだ、したがってその行政の実効が上がらないのだ、こういうことがいわれておるわけでございます。昨日も塩川委員でございましたかの質問に対して、厚生大臣の御答弁がございました。しかし、厚生大臣の御答弁は、ただ単に公害対策基本法に定められております行政組織について御答弁になっただけでありまして、その後の一元的な運営の問題については、触れておられません。ところが、公害対策基本法に対する附帯決議は、さらに公害行政の一元的な運営について検討を加えて改善をはかるようにということでございますし、その点について、関係大臣それぞれ了承をされておられるわけでございます。私どもも、できるだけ行政の効率が上がるようにというふうに念願いたしますがゆえに、こういう点についてくどく申し上げるわけでございますが、今度出されております法案につきましても、たとえば大気汚染防止法案については、その四条で、厚生大臣及び通産大臣、これは両者の共管ということになっております。それから、先ほど来問題になっております自動車の排気ガスについては、運輸大臣、そして厚生大臣意見を聞くとなっている。それから騒音関係では、その二十六条で、主務大臣というのが、厚生大臣、農林大臣、通産大臣、運輸大臣、建設大臣と、非常にたくさん並んでおります。こういうふうに、それぞれの大臣が並んでおるということは、それぞれの行政が一元化されていない、ばらばらに行なわれておるということの証拠だと思いますし、先ほど来の御答弁でも、そういう現実のいろいろな事情等から、そういうことがいいのだというような御意見もございますが、しかし外部からいろいろ見ておりますと、やはり、こういうふうに行政がばらばらに行なわれておるということが、公害行政の実効を阻害しておるのだ、こういうふうに考えられるわけでございます。したがって、こういう点について、一挙にというわけにはまいらないと思いますが、附帯決議に対する当局対策というような形からいたしましても、今後、逐次効率をあげるための一元的な運営については、御考慮になっておかなければいけないのじゃないかと思いますが、今日まで、そういう面の実績が出てまいっておりますかどうか、あるいは今後そういう面についてどういうふうにお考えになっていますか、お聞かせをいただきたいと思います。
  128. 谷垣專一

    谷垣政府委員 ただいままでの行政のあり方が、それぞれの産業別という形で、大体とられてきております。それを、こういうように非常に産業が発達しましたために起きてまいりますところの、被害者側の公害という立場からつかまえた行政が、実はいままで非常に貧弱であったというところに、問題があるのだろうと思います。公害行政の一元化と申しましても、これは、公害を受ける被害者側を主とした立場から主張する必要と、それから同時に、その発生源その他になってまいります産業関係の規制をやっていくということと、この二つ意味があるのだろうと思います。確かに、公害を受けます被害者立場からの主張が従来非常に弱かったために、そちらの立場から公害の全体がはたして一本になり得るかと申しますと、現実の産業行政その他のところとのいわゆる接着点のところが、やはり現実の行政の効率を高くしていきますためには、問題になるだろうと思うのであります。そういう意味で、このように、各省と、公害被害者立場からかなり主張する厚生省の所管とが一緒になったような形になっておりますのは、現実の行政の姿といたしまして、またこれを効率よくいたしますためには、ある程度やむを得ないのじゃないか。ただ、これからの問題といたしましては、公害被害を受けます立場からの主張がより強くなければならぬということがほんとうだろうと、私たちは思っております。それは公害基本法が、産業との調整をはかるということをいいつつも、なおかつそのことをうたっておる趣旨だろうと考えておりますので、そういう立場でやってまいりたいと思っておるのであります。  それと、もう一つ考えなければなりません点は、いわゆる地方の自治団体の立場でございます。実際の公害を受けます人たち立場を一番早く影響を受けますのは、地方の自治団体でございまして、この自治団体の活動が、公害対策のためには広く活動されることを期待いたしておるような次第でございます。そういう状況をにらみながら、厚生省が公審関係の窓口になりまして、行政を進めてまいりたい、こういう状況でございまして、それが、公害基本法あるいは審議会等の事務をいたしますものが厚生省になっておる、こういう現状でございます。各地方に対しましてのいろいろな通牒、連絡というものは、個々の大臣がいたしませずに、厚生省が窓口になってやるというたてまえになっておりますのも、また同様のところでございまして、公害行政はこれからも一元化していかなければなりませんが、いわば公害行政立場で一元化するとすれば、そういう点が出てきておる、かように了承していただきたいと思います。今後なお、被害を受けます側の意見というものを、厚生省といたしましては、強く主張し続けながら、各指導をしております関係省と連絡を保っていきたい、かような考えでございます。
  129. 折小野良一

    ○折小野委員 私どもが期待いたしますのは、要は公害対策が進んで、公害による被害者がなくなるということであります。現実には、産業とのいろいろな調整というのが出てまいろうかと思いますが、しかしあくまでも目標は、国民の健康を保護するというところに中心を置いて考えていかなければならないというふうに思うわけであります。そういうような立場から、今度の大気汚染防止法、それから騒音規制法、この両者につきまして、いわゆる許可制と届け出制というのが立案の過程においていろいろ問題になったというふうに聞いております。またこれについては昨日質問もあったと思いますが、一点だけお伺いをいたしますが、まず最初に、厚生省立場として、許可制として立案されたものが、結果的に届け出制になった、これによって公害対策の有効性といいますか、これがどれだけ減退したというふうにお考えになるのか。それから次は通産省にお伺いいたしますが、許可制を届け出制に改めた、そのことによって、産業立場ですか、そういう面から、どれだけプラスであったというふうにお考えになるのか。その点、それぞれの立場の御意見をひとつ伺わしていただきたいと思います。
  130. 谷垣專一

    谷垣政府委員 制度の上から申しますと、許可制と届け出制とどちらのほうが規制を強くやり得るかということになれば、これは許可制のほうが強くやり得る、そういう制度になっておる、こう思わざるを得ません。しかし、この法律にうたっております届け出制の内容を見ていただきますと、この運用いかんによりますと、かなり弾力的な運営と申しますか、かなり強力な指導ができる届け出制でございます。厚生省といたしましては、この届け出制を実効のある形で運営してまいりまして、本法の公害予防に対しまする対策を十全ならしめたい、またやり得る、かように考えております。
  131. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 では、御質問に対してお答えいたしますが、公害原因となる施設の設置の規制、あるいはさらに公害を起こすような工場そのものの立地の許可制、そういう問題は、土地利用の規制とも関連を持つ問題でありまして、政府としてどのような形でそれを取り上げていくかということは、さらに引き続き検討を重ねることとして、本法案においては、とりあえず従来と同じような届け出制をとることにしたわけでございます。ただ、その届け出制の内容そのものについては、厚生政務次官から御説明があったとおりでございまして、実効があるものと、私どもは思っております。  そこで、先生の御質問で、当初の案の許可制が届け出制になることによって、産業界にどういうプラスがあったかというような御質問でございましたが、別に、本法案により、いわゆる届け出制になったから産業界にプラスになるとか、あるいはマイナスになるとかいうような判断でやったわけではないのでありまして、私どもといたしましては、もちろん公害のためのいわば立地規制というものは、公害対策基本法の十一条に書いておりまして、いずれは基本的な対策としてやらなければならないと考えておるわけでございますが、こういうような問題は、公害と同時に、都市の過密の問題ともあわせて考えなければならぬと思いますし、それから、単に公害といいましても、大気だけではなくて、水の公害もありますし、もろもろの公害を、その観点に合わせて考えて、工場立地を規制するということがまず必要だと思っておるわけであります。同時に、このような立地規制というものは、工場の分散あるいはその分散誘導のための助成、あるいは行き先の工業用地の確保、そういうような諸般の前向きの施策を伴った総合的な立法によらなければならないと、深く確信しているわけでございまして、そういうような観点から、すでに通産省といたしましては、二年前ぐらいから、そういう総合立法を準備しておりまして、御案内かと思いますが、工業立地適正化法として、昨年来関係方面意見調整を行なって、その実現方を期待しておったわけですが、不幸にして、法案提出の時間的制約その他もありまして、調整が間に合いませんで、残念ながら今回は見送ることになったのでありますが、いずれにいたしましても、そういう総合立法の一環として、いわゆる立地規制、施設の許可制というものをやるべきだと思っておるわけでございまして、それが産業界にマイナスになるから届け出制にして、届け出制が産業界にプラスになる、そういうようなことは全然考えておらない次第でございます。
  132. 折小野良一

    ○折小野委員 ただいまの政務次官の御答弁にもございましたが、通常、届け出制よりか許可制のほうが規制が強化される、強い、こういうふうに普通考えられておるわけでございます。したがって、公害対策という立場からいたしますと、より強い規制を行なうことによって、そして公害防止という面の実効があがることを望む、これは当然のことだろうと思っております。そういう点から、過渡的に、現在の状態は、届け出制にしなければやむを得ないということであろうと思いますが、将来だんだん規制を強化し、またその強化した規制に応じ得る産業界の態勢というものもできてこようと思っております。そうした際には、やはりこの公害基本法の方針その他からいたしまして、公害をより少なくしていく、そのためには将来この規制を強化していく、したがって、届け出制を将来許可制にしていく、こういうようなお考えはございますかどうか、お伺いしたいと思います。
  133. 谷垣專一

    谷垣政府委員 とにかくこの法律を動かしてみませんと、いま折小野委員の御質問の点につきましては、明確にお答えができかねる御質問だと思います。やってみまして、いまの届け出制が十分に効果があがるということを、私たちは実は期待いたしております。産業界その他につきましても、十分に御理解が願えれば、法律そのものの制度がきびしいもにのならなくても、実効はあがり得るという状況がもし来ますれば、これはむしろそのほうが好ましい状況ではないかと思いますが、どちらにいたしましても、いまこの法律をお願いいたしておる段階でございますので、私たちといたしましては、これをお認め願って、十分な運用をいたしまして、所期の目的を達成いたしたい。どうも所期の目的が達成しないという場合に、一体その原因はどこにあるのかという検討をいたす段階が、あるいは来るかもしれません。しかしいまのところは、この法案をお認め願えれば、十分にひとつ運用に努力してまいって、所期の目的を達成いたしたい、かように考えている状況でございます。
  134. 折小野良一

    ○折小野委員 ただいま通産省からあった御答弁の中に、将来、工場適正配置法を検討しておる、そういう総合的な立場から考えていきたいということでございますが、今度の法案におきましても、従来のばい煙規制法と違いまして、それに加えてばい煙発生施設が将来たくさんできるであろう、こういうふうに考えられる地域につきましても指定をするということで、幅が広がってきておるようでございます。その場合に、現在あります新産都市あるいは工業整備特別地域、こういうような地域につきましては、将来工場が設置されて、そしておそらくはばい煙発生施設というものがたくさんできるであろう、こういうことが予想されるわけでございます。こういうような地域は、新たに大気汚染防止法によって指定をされるか、あるいはそれらの地域について、現在立てられております基本計画、こういうものを、公害防止の立場から変更する、あるいは再検討させるというような措置をおとりになるのか、その辺の対策をお伺いいたしたいと思います。
  135. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 この御審議を願う大気汚染防止法の第三条の第一、項二号に書いてございますように、「ばい煙発生施設が集合して設置されることが確実である地域」、こういうところについては、予防的措置として、地域の指定をやっていくわけでございますが、先生御指摘の新産都市あるいは工業整備特別地域というようなものは、多くは今後ばい煙工場が逐次建っていきますから、「ばい煙発生施設が集合して設置されることが確実である地域」が多いと思います。したがいまして、新たに加わりました一項二号の地域の指定は、多くはこの新産都市あるいは工特の中から選ばれることとなるものと思います。たとえば、茨城県の鹿島地区というようなものが、例としてはあげられるのではないかと思います。そこで、先生の御質問の、こういう新産、工特等におきます立地計画というものは、現在すでにありますが、そういうものがこの指定によってどういう影響を受けるかということでございますが、この一項二号の指定そのものによりましては、直接現在の立地計画が変更されるようなことはないと思います。しかしながら長い将来のことを考えまして、そういう地域において公害が非常に起こるというようなことでは困るので、その現在の立地計画に加えまして、今後の立地計画につきましては、公害対策基本法の十九条による公害防止計画、具体的に言いますと、十九条一項二号の「人口及び産業の急速な集中等により公害が著しくなるおそれがあり、かつ、公害の防止に関する施策を総合的に講じなければ公害の防止を図ることが」「困難」という地域、そういうところにおきましては、十九条におきまして、公害防止計画をつくりまして、それについて諸般の行政指導等を講じまして、公害の発生がないように措置してまいりたいと思っております。
  136. 折小野良一

    ○折小野委員 新産あるいは工特地域等におきまして、現に非常に進んでおりますところ、たとえば水島地区、こういうようなところにおきましては、もうすでに公害の問題が起こっきておるわけです。ある程度考慮されておるにかかわらず、今日すでに公害の問題が起こってきておる。まだこれから先、新しく発展する地域は多いわけでございます。そういう地域の基本計画というものがすでにできておるわけでございますけれども、おそらく、それをそのまま実行されるということになりますと、これらの地域においてさらに公害が広がってくる、こういうことが予想されるわけでございます。やはりこういう面につきましては、あらかじめ十分検討をして、そうして将来公害が起こらないように、広がらないように、こういうようなことを今日していただくということが大切なことじゃなかろうか、かように考えております。これは大気汚染だけではないわけでございますけれども、今後の問題として、通産省として、いろいろな指導の立場から、ひとつよろしくお願いをしておきたい、かように考えております。  それから、公害対策基本法によりますと、新たに第九条に環境基準というのが規定されておるのでありますが、今度の大気汚染防止法あるいは騒音規制法、この両法に、環境基準については全然触れておられないわけでございます。もちろん、環境基準については、具体的にいろいろな検討がなされておるということは聞いておるのでございますが、排出基準の設定ということは、結局、環境基準を維持するという立場においてなされなければならないわけでございます。そういう意味において、環境基準というものが、この法案の中で何らかの形で出てきていいのじゃなかろうかというふうに私どもは考えるわけであります。また具体的には、環境基準の設定のしかたによっては、当然排出基準というものも改定されなければならない。また環境基準につきましては、科学技術の進歩その他によって、環境基準そのものも改定すべきである、こういうような規定にもなっておるわけでございまして、そうなりますと、当然それに伴って、排出基準の改定というような問題も起こってくる。したがって、この両法案について、環境基準というものに全然触れていない、これはどういうことか。私どもは、それについて、ある程度の規定がなければならないのじゃないかと思うのでありますが、御意見をお伺いします。
  137. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 御指摘の、両法案に環境基準のことが何も出てこないのは消極的ではないか、こういう御意見だと思います。この点につきましては、やや事務的な答弁になって恐縮でございますが、私どもといたしましては、この第四条の第二項にあります、特別の排出基準をきめることができる地域という問題の一つの目安といたしまして、環境基準をこえまたはこえるおそれがあるというような地域については、きびしい基準を適用するということを、実はこの第二項で考えておったわけでございますが、環境基準そのものが、まだ政府として最終的な数字が決定しておりませんでした関係上、法制当局の御意見等がありまして、その点につきましては、そこの二項の二行目にありますように、「政令で定める限度をこえる」云々というところで、政令の中でその点を規定したらどうだろうかというような御意見がありましたので、その点は中に含まって、この法律の立案がなされたわけでございまして、実質的には、第四条第二項の特別基準地域は、環境基準をこえるようなおそれがあるようなところについては強い規制をやろうじゃないか、こういうことは、通産、厚生両省で合意に達している次第でございます。  それから騒音につきましては、環境基準の問題につきましては、実はこの規制基準の第二条の定義の「この法律において「規制基準」とは、」云々というところで、二行目に、「敷地の境界線における大きさの許容限度をいう。」ということでございまして、一応形式的には排出基準ということがこの規制基準になっておりますけれども、工場の敷地の境界線における基準でございますので、いわば環境基準的な要素を非常に含んでおる基準でございます。したがいまして、この規制基準といいますのは、第四条の、規制基準の設定の場合には「主務大臣が騒音について規制する必要の程度に応じて昼間、夜間その他の時間の区分」等を考えまして、たとえば住宅地域あるいは住宅専用地域、商業または準工業地域、工業地域というように、そのゾーンによって規制基準考えていこうという考え方でございまして、実質的には環境基準的な要素が多分にこの規制基準には盛り込まれているわけでございます。もちろん、一般的なことについての環境基準というものにつきましては、現在専門家に御依頼申し上げまして、いま検討している段階でございます。
  138. 折小野良一

    ○折小野委員 公害対策基本法の考え方というのは、むしろ環境基準に重点があるのであって、その環境基準を保持するための手段として、排出基準というものをきめこれを操作する、こういうことでなければならないのじゃないかと私どもは考える。そういう点からいきますと、やはりこの法案の中に、環境基準というものをはっきりうたっておく必要があるのじゃないか。たとえば、前条あるいは前項の排出基準については、別に定める環境基準が確保されるようなものでなければならないとか、こういうような一項というものがあってしかるべきじゃないかというふうに考えるのですが、その辺に対する御意見をお伺いします。
  139. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 先生のおっしゃっている御主張につきましては、それとして御意見もっともだと考えます。ただ、環境基準といいますのは、排出基準だけで守られる問題ではございません。そういう点については、あるいはもう少し総合的に、先ほどから議論になっております集積公害等の問題について、もう少し積極的に規制を強化すべきではないかという御意見もあろうかと思いますので、この環境基準と排出基準とを直ちに直接的に結びつけるということは、あるいは一つの理屈ではございますけれども、また別の面で、一つの問題点があろうかと思います。御承知のように、環境基準というものは、排出基準のみならず、その他あらゆる要素を行政上の問題として取り上げて守っていく、こういう一つ行政上の目標でございますので、その点は御理解していただきたいと思います。
  140. 折小野良一

    ○折小野委員 結局、環境基準を中心とする考え方というものが守られなければ、排出基準というのは結局免責基準である、こういうようなことになるのではないかということを、私どもおそれるわけであります。もちろんそういうものではない、またそういうものであってはいけない、こういうふうに考えるわけでありますけれども、現実には、えてしてそういう考え方がとられやすい。そういう面に対しては、どのように御指導を考えておられますか、ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  141. 谷垣專一

    谷垣政府委員 ただいまの、環境基準の問題と排出基準の問題との関係は、私は折小野委員のお考えのとおりだと思います。ただ、環境基準というものは公害基本法のほうでうたっておりますので、大気汚染防止法なり騒音防止法だけがそれを目標としておるものではない。もっとほかの対策、たとえば、先ほどもお話がありましたが、重油の低硫黄分のものを確保する方法だとか、あるいは脱硫装置をどういうふうに開発していくかというような努力も重ねられつつやっていくことだと思います。ただし、排出基準の問題が、一番大きく環境基準を実現いたします力になるだろうということは、私たちも予測いたしております。ものの精神は、折小野委員がいまおっしゃっておりますように、これを実現いたしますための最も有効な方法としてこれがきめられていくべきものである、こういうふうに私たちも考えております。
  142. 折小野良一

    ○折小野委員 そういう問題に関連をして、もう一つお尋ねいたしますが、大気汚染防止法案の二十六条、それから騒音規制法案のうちの三十条三項、いずれにおいても、「犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。」という、たいへん珍しい規定があるのでございますが、こういう規定が置かれた理由をお聞かせいただきたいと思います。
  143. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 この点の規定につきましては、実はほかの法律あるいは現行のばい煙規制法の二十六条三項でも、同じ趣旨の規定が書いてございまして、決してこの二法で新しく入れたわけではございません。この点は、立ち入り検査というものを犯罪捜査の端緒にするということではないんだ、行政上の一つの権限であるんだということを明記したものでございまして、従来からも、ほかの法律でも多々用いられている用例でございます。
  144. 折小野良一

    ○折小野委員 念のための規定かと思いますけれども、こういう規定を置かなければならない理由、あるいは置くことの効果といいますか、それは具体的にどういうことですか。
  145. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 これは先例に従ったわけでございますが、新しい憲法のもとでは、やはり行政的な立ち入り検査というものは、その限度で行なわれるべきであるというふうに、私どもは理解しております。
  146. 折小野良一

    ○折小野委員 おっしゃる理解は一向差しつかえないのですけれども、わざわざそれを法律の条文としてはっきりここにうたわなければならないというのが、私どもよくわからないのです。
  147. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 ほかの法律にございますので、この法律だけを落としますと、何かむしろ消極的というふうにとられるんではないか、そういうようなことになろうかと、私どもは推察いたしております。
  148. 折小野良一

    ○折小野委員 実は、私どもこういう規定を見ますと、とかくうがった考え方をしたくなるのです。公害を発生いたしております。この場合は工場、事業場、こういうところなんですが、公害を発生することを犯罪というふうに考えない、あたりまえだ、こういうところにむしろ問題があるのじゃなかろうか。たとえばきょう御報告がありましたか、例のイタイイタイ病にいたしましても、資料によりますと、五十六人の人をいわば殺した、あるいはそれ以上の死亡者があったかもしれない。それから水俣病にしましても、四十一人の人が死亡しておる。あるいは阿賀野川にしても七人の人が死んでおる。そしてその何倍という人たちが病床にあえぐ、あるいは非常に悲惨な生活をしいられる、こういうことになる。これはいわば犯罪だろうと思うのです。ところが、これらの原因になったところに対しまして、何らその犯罪といいますか、そういう責任追及されていない、また罪の意識がない、犯罪としての意識がない、こういうところがむしろ公害対策として一番の問題じゃなかろうか、私どもはそう考えるわけであります。ですからむしろこういう立ち入り検査、これはもちろんいまおっしゃるように、犯罪捜査のためにそういう権限があるのでないということは、これは当然なことだと思います。しかし相手方がそういう犯罪の意識がないということならば、その立ち入り検査の機会にでも、そういうものをほんとうに摘発する、こういう気持ちでやっていかなければ、ほんとうの対策というものは出てこないんじゃなかろうか、 こういうようなうがった考え方もしたいわけであります。そういう点については、基本的な問題でございますが、どういうふうにお考えになっておりますでしょうか。特にこの点については、通産省にお伺いいたしたいと思うのです。特に工場、事業場等の関係があるので、こういう面の考え方というものがほんとうに改まらなければ、ほんとうの意味の公害対策公害防止というものはできないんじゃなかろうかというふうに考えるわけなんです。
  149. 谷垣專一

    谷垣政府委員 いま折小野委員のおっしゃいましたのは、私たちも前に法律をつくったときは、確かにこういう文句は使わなかったのでありますが、最近はこういうのが例になっておりまして、その点の他意は私はないと思っております。  また、御指摘になりましたように、公害発生を犯罪と見るかどうかという問題、これは相当論議のある問題で、無過失責任の問題等いろいろあると思います。しかし、もしかりにそれを犯罪と規定いたすといたしましても、この立ち入り検査のところでそれをうたって、それをどうこうするというよりも、問題はもっと本質的な問題でございますので、ここでどうこうというものでは、私はちょっとないと思いますし、この条文のところに関します限りは、どうも最近のずっと例でございますので、その程度に私たちは考えまして、このようにいたしておる、こういうことでございます。
  150. 折小野良一

    ○折小野委員 その問題は一応おくといたしまして、大気汚染防止法案の十七条ですか、緊急時における措置というのがきめられております。これは現在もある程度実施をしておられるというふうに考えるわけでございますが、この際、この第二項にありますいわゆるばい煙量を減少するための措置に関する計画、これが知事に届け出をしておくと、その届け出を参考にして、非常事態が発生した場合に、それに対する措置をとる、こういうことでございます。ところが、この計画につきましては、ただ単に届け出をするというだけなんでありますが、こういう際の実効を期するという面からいきますと、その計画について一定の基準を示す、あるいはその計画の内容について実効があがるような指導をする、こういうようなことで、その実効を期すべきであろうというふうに考えるのでございますが、こういう面については、ここに書いてある以上の行政上のいろいろな指導というものは必要であろう、またそれがなければ、実効というものはあがらないんじゃなかろうかというふうに考えますが、どういうふうにお考えでしょうか。
  151. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 本条を、今回新しい大気汚染防止法に入れました経緯を申し上げますと、御指摘のとおりに、十七条の第二項と第三項が新たに入ったわけでございますが、この第二項、第三項は、実は現在のばい煙規制法のもとにおきましても、行政措置としてやっておる問題でございまして、それを、この新しい大気汚染防止法ができるに際しまして明文化し、その点をはっきりさせ、さらにこれを推進しょうという観点から、この二項、三項を入れたわけでございますが、おっしゃるとおりに、このばい煙量の減少のための措置につきましては、諸般の行政指導をやらなければならないわけでございますが、まさにその行政指導をさらに進めるために、この三項において、末段にありますように、「ばい煙量の減少のための措置をとるべきことを勧告することができる。」というふうに書いているわけでございまして、従来に引き続いて、この明文化された二項、三項を根拠にいたしまして、行政指導を進めてまいりたいと思います。ただ、工場の態様というものは千差万別でございまして、あらゆる産業にわたり、大は火力発電所、石油精製工場から、小は中小工場のボイラー等にもまたがっておりまして、もちろん、大規模のものを大体対象にしておるわけでありますが、それにいたしましても、産業の態様も違いますし、工場の規模も違うので、これについて一律の基準を適用することは困難でございまして、それぞれの工場の実態に即しまして、都道府県知事がこれを指導していくというのが、当面の間やるべき問題であろうと思っております。
  152. 折小野良一

    ○折小野委員 いまの御答弁、少し違うのです。第二項の計画を確保するために、第三項の「ばい煙量の減少のための措置をとるべきことを勧告する」、こういうふうにおっしゃったのですが、そうでなくて、あらかじめ計画を立てさしておいて、そして緊急時に、何とかそのばい煙の対策を講じなければならないときに、その計画に従って、減少することを要請する、こういうことによって緊急時の措置をやろう、こういうわけですからね。ですから、かねて行政指導をするということからいきますと、この計画を作成するときに、実効のある計画を立てさしておかなければ、いざという場合に、勧告をしても全然効果がないということになるわけなんです。もちろん、それぞれの排出者は千差万別だと思います。しかし、それはそれなりに、一定の計画についての方向というのはやはりきまるわけです。特に亜硫酸ガス等ですと、燃料を亜硫酸ガスを多く排出しないような燃料にかえさせるとか、いろいろな方法があるわけでして、そういう点は、やはりある程度の、できる範囲内の行政指導はやって、そして実効をあげるというふうに考えませんと、せっかくこういうような規定ができましても、何ら効果をあげないということになるんじゃなかろうかというふうに考えるわけであります。別にそういうような規定を置くことはむずかしいかもしれませんが、現実にはやはり相当の行政指導を行なって、実効のある計画を立てさしておくということが大切なことじゃなかろうかと思うのです。
  153. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 先ほどの私の説明は若干不十分でございましたので、訂正さしていただきますと、おっしゃるとおりに、第二項の計画を作成して届けるのは、漫然と、工場が自分かってな計画をつくってそれを届けるということではなくして、その計画の内容そのものが行政指導の結果であるものを届け出さす、こういうことでございます。それで、私が先ほど説明しましたように、そういう線に沿う行政指導は従来もやってまいっておりますが、引き続いて、行政指導した結果のものを工場の計画として、都道府県知事に届けることになるわけでございます。
  154. 折小野良一

    ○折小野委員 かわりまして、騒音規制法案についてですが、公害対策基本法の附帯決議によりまして、公害対策基本法に基づく施策を講ずるにあたっては、その趣旨が国民の健康の確保を第一義とするものであることに常に留意すること、こういうような附帯決議がついておるのでありますが、この点から考えましても、今度の騒音規制法の第一条の目的の置き方について、私ども疑問を感じます。それは、この目的において、健康の保護ということが全然うたわれておりません。ということは、騒音は健康には全然関係がないのかということなんですが、私ども普通に常識的に考えまして、騒音が頭痛の原因になったり、あるいは聴力障害になったり、あるいは神経障害の原因になったり、こういうようなことがあるのじゃないかと思うのでございます。こういうものが健康に関係がないのか。したがってまた、この法案において健康の保護ということをこの目的の中にうたわなくていいのか、そういう点についてお答えをいただきたいと思います。
  155. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 騒音そのものは、主として生活環境との問題でございまして、先生御指摘のように、全く健康には関係ないということは言い切れないかと思います。ただ、直接的に、騒音が健康に影響を及ぼすということになりますと、それが非常に高いという場合には――いわば規制の面からいきますと、ゆるい程度になるわけでございまして、先ほども御質問がありましたときに私がお答えしましたように、夜眠れる程度基準をそれぞれの地域についてきめよう、こういうふうな観点でございまして、その基準そのものは、むしろ健康に直接害があることよりもずっときびしいことでございますので、したがって、騒音につきましては、生活環境を守ることは即健康をも守ることになる、というふうに私どもは考えておりますので、したがいまして、法律の目的には、その点については触れなかったわけでございます。
  156. 折小野良一

    ○折小野委員 それでは、時間も迫っておりますので、最後に、四十一年の四月二十一日の、五十一国会の衆議院産業公害特別委員会における決議でございますが、亜硫酸ガス排出防止につきまして具体的に一つの目標を定めております。この具体的な目標に対しまして、その実施の状況、その効果、それから今後に対する対策、その点わかっておりましたら、ひとつお知らせをいただきたいと思います。
  157. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 御指摘の四十一年四月二十一日の当特別委員会の御決議、これは大ざっぱに分けまして二つございまして、一つは重油の脱硫、重油そのものから硫黄分をとる、それから第二番目は排ガス中の亜硫酸ガスを除去する、二つに分かれると思います。先ほど工藤先生の御質問に対して詳細にお答えしましたとおりでございますが、前段の重油脱硫の開発につきましては、直接脱硫は四年四カ月かかりますので、四十六年の六月に開発が完成するわけでございますが、間接脱硫につきましては、外国においてもすでに技術が開発されておるので、外国の技術の導入等によりまして、石油精製会社に対して、間接脱硫の設備を設置するように指導しておりまして、現に石油業法の許可にあたりまして、許可の条件として、新たに新設する精製所につきましては、間接脱硫の設備を必ずつけるようにやらしております。それから、排ガス中の亜硫酸ガスの除去につきましては、先ほど工藤先生に対してお答えしましたように、一つは本年じゅう、一つは来年の六月に破究開発が完成いたしますので、それが完成しました暁におきましては、その効果を見ました上で、大規模のばい煙発生施設について、これを設置するように指導いたしたいと思っております。なお、排ガス脱硫装置に対し、特別融資を行なうこと、ということがこの決議に入っておりますが、すでに本年度から、開銀の中に特別のワクをつくりまして、特別融資を行なうように措置してございます。
  158. 折小野良一

    ○折小野委員 ひとつ一そう推進をお願いいたしたいと思います。  さらに、同じそのときの決議に「自動車排気ガス規制に関する件」というのが出されております。これも三つに分けられまして、具体的に示されておるわけでございますが、これの実施状況、その効果、今後の対策、こういう面について、お伺いをいたしたいと思います。
  159. 景山久

    ○景山説明員 お答えいたします。  ただいまの四十一年四月の自動車排気ガスの改善に関します決議でございますが、私どもといたしましては、昭和三十八年度に、破究所に日本で初めての自動車の排気ガスの測定装置を設置いたしまして、技術研究をつとに進めてまいっておるところでございます。ちょうどそういった御決議をいただきまして、まず第一項の御決議にございますが、新型車につきましては、四十一年の九月から規制を実施いたしております。そしてまた、決議にございますように、四十二年九月までには、新車について規制を実施するというふうに、逐次規制を実施しておる段階でございます。  さらにこれを強化いたします問題でございますが、これには技術開発の推進が必要でございまして、それを実施してまいりたい、この線に沿いまして、当省といたしましては、この決議に沿ってまいりますように、私どもの船舶技術研究所の強化をはかりまして、四十二年度には、在来交通技術部というのが一つでございましたけれども、これを交通安全部と交通公害部と二つの部に拡充強化いたしまして、専門の交通公害部で、目下鋭意研究をいたしておるという段階でございます。  なお、整備関係の問題でございますが、整備関係の問題につきましては、先ほども御説明申し上げたところでございますけれども、車の点検整備の効果と申しますものを、目下継続して調査研究いたしておりまして、まだこれが技術的に中途の段階でございます。これが完成いたしましたならば、点検基準というものを制定いたしまして、自動車の使用者に、車の点検整備を義務づけてまいりたいというふうに考えております。  なお、効果でございますが、規制をいたしましたので、現在出ております車は、この規制の範囲内にすべて入っております。規制をいたします前の排出度合いに比べまして、大体半分ぐらいにきれいになっておるという状態でございます。
  160. 折小野良一

    ○折小野委員 終わります。
  161. 山崎始男

    山崎委員長 次回は、明十日午前十時より理事会、理事会散会後、委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時二十五分散会